側近「割と暇な魔王様の一日」 (77)

○月×日

魔王様が最近部屋にこもってゲームばかりしている
別に仕事はサボっているワケじゃない
キッチリこなした上でこの状態だから私も何も言えない

魔王様が勝手に自分の仕事を終わらせていくせいで、私の管理している魔王様スケジュール表が真っ白だ
明日も1日、魔王様にとっては何も無い日になるだろう

それと、今日も魔王様は可愛い

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魔王「あ゛ー、朝かー」

魔王「ゲームずっとやってたから5時寝だよ5時寝」

魔王「あ゛ー辛いわー、3時間しか寝てないわー」

側近「おはようございます魔王様。これが本日のスケジュールです」

魔王「辛いわー、マジ辛いわー」

側近「自業自得です」

側近「お仕事はキチンとこなしてもらいます」

魔王「言われなくてもわかってるよ……えっと、始めは」

側近「庭の草むしりです」

側近「ここの所、清掃が行き届いていなかったので」

魔王「魔王のする仕事じゃないよね?」

側近「この家の家主があなただから当然の仕事です」

魔王「こんな小さい家に住まわせといて何を言うか……」

側近「ではお城に戻りますか?一声かけていただければすぐに引越しの準備は出来ますが」

魔王「お城は完全に仕事も無い兵士達の詰め所になってるから嫌だもん。臭いし」

側近「ならば文句を言わないでください」

側近「……ほら早く着替えて、私も草むしり手伝うから」

魔王「うー……スヤァ」

側近「寝るな」

魔王「うあー、日差しが強いー」ムシリムシリ

側近「普段から家に引きこもってるからそう感じるんですよ。大体今日は曇りですが」ムシリムシリ

魔王「ねぇねぇそれよりさ、、オーク隊長とか他の連中何処行ったの?」

魔王「一緒に暮らしてるのに私だけ草むしりっておかしくね?」

側近「オーク隊長達は兵の訓練で先にお城へ行っています」

魔王「訓練なんてするだけ無駄じゃん、戦争も無いのに」

側近「何時如何なるときも鍛錬を欠かしてはいけません。あなただって毎日剣を振るっているではないですか」

魔王「それはお父様に言われていた事だし既に日課だしー」

魔王「よっしゃ!庭掃除終わり!次っ!」

側近「はい、ご苦労様。ちょっと遅めの朝食です」

魔王「わーい!メニューは?」

側近「今日はあなたが当番です」

魔王「……」

側近「あなたが当番です」

魔王「二回も言うなよ」

魔王「やっぱりこういうのは魔王のする事じゃないと思うんだ」ジュージュー

側近「この家に住むときに当番製にするといったのはあなたです」

魔王「でもローテーションが私→お前→オーク隊長→私……って期間が短すぎると思うんだ」

側近「それを決めたのもあなたです。面倒ならコックも居るお城で食べればいいじゃないですか」

魔王「連中の料理は私の舌に合わない」

側近「私は凄く美味しいと思いますが?」

魔王「魔界さながらのゲテモノ料理出されても困るだけだ!私は地上生まれ地上育ちだ。へいお待ち!」コトン

側近「わがままですね。いただきます」モグモグ

魔王「ところで、オーク隊長は何も食べなかったのか?向こうで何か食べるのか?」モッキュモッキュ

側近「朝早くに自分で作っていきました。お弁当も」

魔王「ガキ共の分は?」モッキュモッキュ

側近「それもオーク隊長が(食べ方可愛いなぁ)」

魔王「悪い事したな」

側近「ホントですよ」

魔王「でもお前は私を待っててくれたんだよな?」

側近「……うるさい」

魔王「にひひ!」

魔王「次のスケジュール!」

側近「お城で他国の使者が来る予定です」

側近「貢ぎ物でも持ってくるんじゃないですか?」

魔王「そういうの迷惑だよな。私は何もねだっていないのに」

側近「なんだかんだでこちらの軍事力とあなたの力を恐れていますから、ご機嫌取りでしょうね」

魔王「逆に機嫌が悪くなるっての……」

側近「それでは遅れないうちに移動しましょう」

魔王「めんどくせーなー!」

――――――
―――



「魔王様、今日もお美しい姿で……」

魔王「世辞などいらん、用件を早く伝えろ」

「はっ、失礼いたしました」

「本日は、魔王様にこの剣をお納めいただきたく参りました」

魔王「ふん……持っているだけで邪魔になりそうな剣だな」

「名のある鍛冶師に作らせた、数々の宝石が散りばめられた最高品質の剣です」

側近(……魔王様には魔剣があるからいらないと思いますが。ま、受け取らないわけにも行かないですけど)

魔王「まぁよかろう、私の部屋にでも飾っておこう」

「ありがとうございます」

魔王「それで、用件はコレだけか?他にも何か用事がありそうな顔をしているようだが」

「流石魔王様、その鋭さには恐れ入ります」

魔王「なんだ?早く言え」

「それでは単刀直入に」

「こちらに我が国の王子の写真、つまりお見合いの……」

魔王「摘み出せ」

側近「はい、兵士さん連れて行ってください」

「えっ、ちょっ、あー」ズルズルズル

魔王「ふぅ……朝も早くからご苦労なことだ」

側近「魔王様の地位は魅力的ですからね」

魔王「私はまだ14だ、そんなことを考えるのは早いだろう」

側近「そんなことはありません、王族なら生まれたときから結婚相手が決まっているなどザラですし」

魔王「お父様はそういう話も全部蹴ってくれてたんだろか」

側近「前魔王様は恋愛結婚でしたので、あなたにもそうなって欲しいのでしょうね」

魔王「しかし結婚ねぇ……考えられないな」

側近「そう言っていると、婚期を逃しますよ。私みたいに」

魔王「逃すなんて事はしないよ。これでも相手は見つけているつもりだからな」

側近「逃しますよ」ジリジリ

魔王「迫るな、二度も言うな」グイグイ

側近(私は見た目がチンチクリンで中身が年寄り……需要はあるんでしょうか?)

魔王「よし、謁見も終わり!次っ!」

側近「超ペースですね。まぁ仕事が極端に少ないのも原因ですが」

側近「次は兵達の訓練視察です」

側近「魔王様自らその練度を確かめてください」

魔王「なんだ?剣振っていいのか?本気で戦っていいのか!?」

側近「やめてください、死者が出ます」

オーク隊長「ようし、おめぇら休憩だ」

オーク隊長「オーバーワークは身体に毒だ、適度な休憩と水分補給を……」

リザード君「はいコレ!みんなの分のドリンクだよ!」

エルフちゃん「あの……よかったらみなさんどうぞ……」

ウォォォォ!エルフチャーン!! ドドドド

エルフちゃん「み、みなさんの分はちゃんとありますから!おさないでください!」

リザード君「」



魔王「おー、ガキ共も手伝ってるのか……ってなんだ、休憩入ってるじゃないか軟弱な」

側近「そう言ってあげないでください、誰しもあなたみたいに数時間ぶっ続けで剣を振るえるわけではありません」

オーク隊長「お、魔王様!全員敬礼!」バッ

シュバババ!!

魔王「統率は出来ているのな……訓練ご苦労、休憩中なのに邪魔したな」

オーク隊長「いえ!魔王様にお越しいただけるのは光栄なことです!」バッ

魔王「ああ、では引き続き励んでくれ」

オーク隊長「ありがとうございます!」バッ




魔王「……あ、今晩のお夕飯何食べたい?」

オーク隊長「ビーフシチュー食いたい」

リザード君「俺は焼肉!」

エルフ「私はサラダで!」

魔王「うん、帰りに材料買ってくよ。焼肉は嫌だから今度な」

リザード君「」

側近「兵達が見ているのに突然私語を使うのはやめてください」

魔王「でもせっかく戦えると思ったのに休憩中かー、仕方ないね」

側近「仕方ないですね、では次のスケジュールです」

魔王「えっと次は……」

側近「何もありません、真っ白です」

魔王「平和の証だね」

側近(一国の王が暇ってどういうことだ)

魔王「つーワケで王座に鎮座!」

側近「無理やりスケジュールを埋めようとしても結局何も無い……」

魔王「朝の草むしりとか無理矢理感凄かったからな」

魔王「住民からの要望とかの資料なんかは無いの?」

側近「それは先日あなたが全部解決してしまいました」

側近「腐っても魔王。腐りきっているのにやることはしっかりやっているのが何か腹立ちます」

魔王「そこ腹立てるところじゃないよね?」

魔王「それより何解決したんだっけ?」

側近「主なものは……4日前、落石による山道の通行止め」

魔王「ああ、私の魔法で大岩全部撤去したな」

側近「3日前、豪雨によって氾濫した川」

魔王「勇者が手伝ってくれて塞き止めたね」

側近「2日前、強盗事件」

魔王「犯人を直接絞めたな」

側近「昨日、迷子の子の親探し」

魔王「見つかってよかった」

魔王「なぁ、何でどれもこれも私が直接解決してるんだ?」

側近「あなたが毎回自分で出向くからです」

魔王「こういうのは救助とか派遣とかを命令したり許可したりする立場なのにね」

側近「大体何とかしてしまうせいで私の仕事も少ないです」

魔王「いいことじゃん」

側近「いいことですね、納得いきませんが」

側近(結構なことをしているのに、あなたにとってはそれが当たり前の暇な日常なんですね)

魔王「あー、暇だ」

側近「暇ですね」

魔王「帰ってゲームしたい」

側近「定時まではお城に居てください」

魔王「城に居ればいいんだな?」ピコピコ

側近「だからといって携帯ゲーム機を持ち込まないでください」

魔王「って言うか、定時って何だよ。そこまでして私をここに閉じ込めておきたいのか?」

側近「放っておいたら国のトップであるハズのあなたが、絶対にこの場所には寄り付かないので午後6時まではここに留まるということを定めさせていただきました」

魔王「戦時中とかならともかく何にも無い時にずっとこの場所にいるって言うのもなぁ」

側近「戦時中はあなた絶対前線に出ようとするでしょ」

魔王「私だってそこまで馬鹿じゃないよ。国のトップがやられたらお仕舞いだもん」

側近「わかっていただけるなら結構」

側近(前魔王様との約束……あなたを危険な目には会わせません、絶対に)

魔王「じゃ、そういうことで。帰っていいよね?」

側近「まったく意味がわかりません」

魔王「非常時ならまだしもそこは融通利かせてよー。今日くらいはね?」

側近「それを認めてしまったら以降あなたが調子に乗るので、却下します」

魔王「意地が悪いなぁ」

ガタン


「魔王様、失礼いたします」

側近「どうしました兵士さん?」

「魔王様に隣国からのお客様が来ております」

魔王「アポ無しで来るとは相当肝が据わっているな……適当な理由をつけて突っぱねろ」

「いえ、しかし……」

側近「……もしや」

勇者「やぁ、遊びに来たよ」ヒョコ

側近「隣国のお客は勇者さんだったんですね」

勇者「うん、兵士さんに無理を言って連れてきてもらったよ」

側近「そうですか、わかりました。あなたは下がっていいですよ」

「はっ!」

勇者「それより魔王は?見当たらないけど?」

側近「魔王様なら王座に……いない?」

側近「おかしいですね、さっきまで居たのですが……逃げたか」

勇者「困ったなぁ、魔王と遊ぶつもりで来たのに」

魔王「ふ……フフフ」スッ

側近「あ、王座の後ろから出てきた」

勇者「魔王どうしたの?そんなところに隠れて」

魔王「なに、隠れていたワケではないさ!お前が私が何処にいるのか気が付くか試していたのさ!」

勇者「ははっ、面白い事をするんだね」

魔王「ふふん!ライバルの力量を見るのは至極当然のことだからな!」

側近(ライバル……ねぇ)

側近(……謁見でもないのにちょっと跳ねてた髪と着崩してた鎧が直ってる。あと若干香水の香りが)

側近(魔王様、勇者さんにいい自分を見せようとしているのがバレバレです)

魔王「それで、今日は何して遊ぶ?」

勇者「手合わせ……は前に来たときにやったね」

勇者「今日は魔王と買い物がしたくてね」

魔王「か、買い物!?」

勇者「あー……やっぱりダメだよね、僕なんかとそういうことは」

魔王「いやいやいやいやいや!そんなことは無いぞ!大歓迎だ!着替えてくる!」ダダダ


勇者「ふふっ、彼女は本当に面白い女性だ」

側近「私は外出の許可を出していません、どういうつもりですか?」

勇者「だったら今出して欲しいな、外出許可」

勇者「彼女、引きこもりがちで外になんてあまりでないだろ?」

勇者「それに、今日は暇みたいだし。普段仕事で忙しいからこういうときに息抜きしなきゃ」

側近「普段からあまり仕事は無いですが……大体誰から暇だなんて聞いたんですか?」

勇者「リザード君」

側近「後で折檻ですね」





リザード君「何だろう、嫌な予感がする」

エルフちゃん「?」

魔王「着替えてきたぞ!」ダダダ

魔王「ってアレ?勇者は?」

側近「先に外で待っていてもらっています」

魔王「チッ、出かける前にお前の顔を拝むとは」

側近「失礼ですね魔王様」

魔王「ところでさ」

魔王「これって……デートのお誘いだよな?どう考えても」

側近「世間一般的に見ればデートのお誘いですね」

魔王「……」

側近「いかがなさいましたか?」

魔王「わ……私はなぜ了承してしまったんだ……は、恥ずかしいぞ」

側近「知らんがな、さっさと行け」

――――――
―――



魔王「ま、待たせたな……」

勇者「そんなに待っていないよ、行こうか」

魔王「あ、ああ……」

勇者「どうしたの?何かぎこちないよ?」ナデナデ

魔王「ふあぁ!?頭を撫でるな!子ども扱いするな!」

勇者「はは、ゴメンよ。可愛いからつい」

魔王「か!可愛い……」

側近(あのすけこまし勇者、魔王様を誑かしてどうするつもりでしょうか)

側近(……他意はないんでしょうね、勇者さんとはそこそこ付き合いが長いのでああいう人って言うのは知ってますが)

ジッジー

オーク隊長『こちらオーク、配置に着きましたぜ、どうぞ』

側近「はい、では私とそちらの二手に分かれて二人の追跡をします」

側近「あの人たちを放っておくと、何かよからぬ事が置きそうなので、どうぞ」

オーク隊長『両名ともトラブルメーカーだからな、了解!』

側近「あ、目標動きます」

勇者「何処へ行こうか?」

魔王「誘った側がノープランかよ!とりあえず町へ繰り出すぞ、買いたいものがある」

勇者「うん、いいね。僕もちょうど買い物があったんだ」

勇者「何を買いに行くんだい?」スタスタ

魔王「新作ゲーム」スタスタ



側近(デートしてるときに買うものじゃないですよそれは)

――――――
―――



魔王「勇者勇者!こんなに買っちゃったぞ!!」

勇者「楽しそうだね」

魔王「ゲームってのはな、買うときが一番楽しいんだ」



オーク隊長「順風満帆でデートを楽しんでいる模様、どうぞ」

側近『こちらでも確認しています、引き続きお願いします』



魔王「む、もう昼か……お腹空いたな」

勇者「何か食べていこうか」

魔王「それもそうだな」

オーク隊長「おいおい、店に入っていっちまったぞ」

側近『気づかれないように後を着けてください』

オーク隊長「俺の体格的にそりゃ無理だよ……」

リザード君「父ちゃん父ちゃん」グイグイ

オーク隊長「ん?どした?」

リザード君「オレとエルフが行こうか?」

エルフちゃん「うん」

オーク隊長「おお、助かるぞ。俺だと普通に見つかっちまうからな」

オーク隊長「いいよな?側近の嬢ちゃん」

側近『気づかれなければ構いません』

魔王「何食べる?」ペラ

勇者「僕は君に合わせるよ」ペラ




リザード君「こちらリザード、メーデーメーデー」ヒョコッ

エルフちゃん「めーでー」ヒョコッ

側近『助けを求めてどうする、意味わかって使ってますか?』

側近『とりあえず、あの二人を見張っていてください』

側近『国王と隣国の勇者が街中で問題を起こしたら色々と面倒なことになるので』

リザード君「ラジャー!」

エルフちゃん「らじゃー!」

魔王「別に何食べてもいいんだぞ?私が奢ってやる」

勇者「女性に奢らせるなんてとんでもない、僕が出すよ」

魔王「そ、それは流石に悪い!」

勇者「誘ったのは僕なんだし、ここはカッコよく出させてよ」ナデナデ

魔王「むぅ……撫でるな!」



リザード君「オエ、甘ったるくて吐き気がする、どうぞ」

側近『我慢してください、私も殴りこみに行きたいくらいです』

勇者「でもさ、一国の王である君がこんな店で食事って……大丈夫なの?」

魔王「こんな店、という言い方はするな」

魔王「私の生活は国民の税で成り立っている、お世辞にもいい国、いい国王とは言いがたいが……」

魔王「その国の中で立派に店を構えてくれているんだ、誇らしいことだよ」

勇者「ふふ……」

魔王「な、何だよ……」

勇者「いや、立派に王様やってるんだなぁと思って」

魔王「失礼な奴だな!コレでも頑張っているんだぞ!」

勇者「それだけしっかりしているなら、しばらくは結婚とかは考えていないのかな?」

魔王「けっ!!?」

勇者「聞いたよ?お見合い写真持ってこられたんだって?」

魔王「……誰から聞いた?」

勇者「リザード君」

魔王「わかった、ぶちのめしておく」



リザード君「えっ?」

側近『内情をペラペラと他国の人に話している時点で当然です』

エルフちゃん「リザードくんかわいそう……」

魔王「私に結婚話を持ってこられたら、政略結婚だということが丸わかりだろう」

魔王「必要なことなのはわかるが、この国にはそんなもの必要もないし、私もまだそんな気は無い……一応」

勇者「ごめんゴメン、身分の違う僕が聞くような事じゃなかったね」

魔王「身分の問題じゃなくてモラルの問題だろ!あと、そんなこと気にしているようだったら今ここでお前と食事なんてしてないっつーの!」

勇者「そうだね、君はそういう子だ」

魔王「不快だ!まったく!」プンプン



リザード君「顔を赤くしといてなに言ってんだあの人」

側近『魔王様相手にあの人とか言わない』

魔王「もしさ……」

勇者「ん?」

魔王「もし、私が結婚するってことになったら……お前はどう思う?」

勇者「……祝福するよ、君がそれを望むのなら」

魔王「……そ、そうか」

勇者「でも、もし君が望まないのなら……」

魔王「望まないのなら?」

勇者「ふふ……どうだろうね?」

魔王「何なんだよ!」



リザード君「オエェ!ペッペ!」

側近『耐えてください、私も耐えますから』

エルフちゃん「きたない……」

「オラァ!お前らおとなしくしろぉ!」ガチャーン!

「キャー!」

「大変だ!!」


魔王「む!?」

勇者「なんだ!」


「てめぇら全員動くんじゃねぇぞ!金だ!金を出せ!」


オーク隊長『大変だぜ嬢ちゃん!運悪く店に強盗が出やがった!』

側近『こう色々と巻き込まれては首を突っ込む、トラブルメーカーたる由縁ですね』

「この袋にありったけの金を詰めろ!」

「さもないとこのガキの命は無いぜ!」スチャ

リザード君「」

エルフちゃん「うわあああん!」

勇者「あ、リザード君とエルフちゃんだ」

魔王「着けて来てたのか……」ジロッ



側近『あ、メーデーメーデー、対象に見つかりました』

オーク隊長『いや、見つかった時点で助けを求められても……じゃなくてなんでアイツらが人質になってるんだよ!』

オーク隊長『しかしどうする?』

側近『まぁ、少し様子を見ましょう。気になることがあります』

オーク隊長『え?』



魔王「単独犯……か?」

勇者「2人ほど怪しい奴がいるな……下手に動くと裏目に出そうだ」

魔王「どいつだ?私が注意を引こうか?」

勇者「……頼めるかい?窓際で剣を握っている奴とその後ろの机の下に隠れている奴だ」

魔王「ここは普通行かせないだろ馬鹿……」

勇者「君は強いから、僕も気兼ねはしないよ」

魔王「ねぇお兄さん……」

「な、なんだよ」

魔王「剣持ってるんでしょ?戦ってあの子を助けてあげてよ……」

「お、俺にそんなこと言われたって……」

「おいそこ!変なマネするんじゃねぇ!」

勇者「……」トスッ

「うっ……」

勇者「いっちょあがりっと……」

エルフちゃん「あ!勇者さま!」

リザード君「ゲェ!?勇者に助けられちまった!」

勇者「後は……」

「テメェ動くな!このガキがどうなってもいいのか!?」グッ

魔王「む?やはりか……」


オーク隊長『おい!魔王様捕まっちまったぞ!』

側近『大丈夫です、彼女は私達より全然強いですから』

側近『それよりも……』


勇者「彼女をどうするって?」

「だから、このガキを……」

ザシュッ

魔王「気安く触るな下郎」

「うあ……」ドサッ

勇者「魔剣を分離させた一部か、何処に隠し持っていたのやら……」

魔王「私の剣はお父様から受け継いだ変形分離の自在な武器だからな!コレくらい出来て当然だ!」

魔王「あとそこの机の下の男!動くなよ?お前もグルだってわかってるんだぞ?」

「ヒィ!お許しを!」



オーク隊長『おーおー、ホントに遣って退けちまったなウチの大将は……アレ?』

オーク隊長『おーい嬢ちゃん?応答お願いしまーす!』

魔王「コレにて一件落着だな!」

勇者「殺気が消えない……」

魔王「どうした?」

「助かりました!ありがとうございます!」スタスタ

魔王「ん?この店の関係者か?いや、自国民を守るのが私の仕事だ!気にするな!」

「いやぁ、私は……」

ザシュ

ドサッ


側近「一手遅れてましたよ、魔王様、勇者さん」

「なんだ?店長が刺されたぞ!」

「アレは魔王の側近……何でこんな場所に!」


側近「魔王様より私の顔が知られているというのはいささか奇妙な事ですね」

魔王「……その男は"まだ"私に手を出していない、なぜ斬った」

側近「殺してはいないのでご安心を。魔王様に危機が迫っていたからです。それに、私が動かなくても勇者さんがやっていたはず……ですよね?」

勇者「……ああ」

魔王「そいつが私に斬りかかるなんて確証は無かったぞ」

側近「無くとも、疑わしきは罰しただけです」

魔王「私の国の者が私に刃を向けようとした、とでも言いたいのか?」

側近「あなたはただでさえあまり外へ顔を出さないお方です」

側近「あなたの事を知らない人だって大勢居るでしょう。この男もおそらくその一人」

魔王「しかし……」

側近「あなたが国民に希望を持っているという事は悪い事ではありません」

側近「しかし、中にはこういうどうしようもない人も居るのです」

側近「この店は店主が博打で増やした借金を抱えているそうです」

側近「今回の強盗は自作自演、保険金目当てで行った事でしょう」

勇者「そこまで調べたのかい?」

側近「もともと要注意人物でマークされていたので」

魔王「……」

側近「降りかかる火の粉を自分で振り払うのは結構」

側近「ですが、あなたを失った場合の国への損失を考えてください」

側近「あなたは少女である前に一国の王なのです。それは自分で選んだ道です」

側近「年頃ですのでわかります、誰かと遊びに外に行きたいというのもいいでしょう」

側近「ですが、ただでさえトラブルに巻き込まれやすいんですから、こういう輩もいると言う事を知って今後気をつけてください」

側近「あなたは前魔王様と違い、まだ未熟です。それを支えるのが私の仕事ですから」

側近「何かあったら、自己補完せずに私に、誰かに頼ってください」

側近「みんなあなたの力になりますから」

魔王「……」

側近「あと、勇者さん」

勇者「は、はい!」

側近「今回連れ出したあなたにも大きな責任があります、後で個別で説教です。覚悟しておいてください」

勇者「はい……」

側近「それでは、デートの邪魔をして失礼しました。後はごゆっくりどうぞ」スタスタ



勇者「行っちゃった……」

魔王「ぅぐゅ」グスン

勇者「ま、魔王?」

魔王「うええええええん!アイツに怒られるのが一番堪えるんだよおおおお!!」

勇者「ちょ!?こんなところで泣かないで!ほらみんな注目しちゃってるよ!」

リザード君「勇者が泣かせたー」

エルフちゃん「勇者さまが泣かせたのー?」

側近「……」スタスタ

オーク隊長「説教お疲れ」

側近「横槍入れないでありがとうございます」

オーク隊長「本当なら父親代わりでもある俺が言わなきゃいけない様なことなのに……悪いな」

側近「大丈夫ですよ、あの子は言われた事は間違いではない限りちゃんと聞き入れてくれますから」

側近「それが友人である私の言葉でも……」

――――――
―――



魔王「側近!次のスケジュール!」プンプン

側近「先ほども申し上げたとおり真っ白です、定時まで王座でジッとしててください」

魔王「ふん!お前はこうやって私を束縛してさぞ楽しいんだろうな!」プンプン

勇者「あはは……魔王、少し落ち着こうよ」

魔王「私は至って冷静だ!」プンプン

オーク隊長「な、なぁ。ホントに聞き入れたのか?嬢ちゃんの言葉……」

側近「自身が無くなって来ました」

側近(でもまぁ……この子なら大丈夫)

側近(だって、本当に聞き入れてくれないのならこの場所には戻ってきてはくれなかっただろうし)

側近「予定といえば、そろそろお夕食の時間ですね」

リザード君「飯ー!」

エルフちゃん「めしー!」

オーク隊長「昼からずっと気が張ってたから腹減っちまったなぁ」

魔王「あ、ゴメン、材料買ってくるの忘れた」

オーク隊長「」

リザード君「」

エルフちゃん「」

側近「皆さん絶望の表情を作らないでください、私がちゃんと買ってきておきました」

リザード君「イェイ!」

エルフちゃん「いぇい!」

オーク隊長「流石優秀な側近はやることが違うねぇ!」

勇者「はは、みんな魔王の作る料理が食べたいんだね」

魔王「ようし!今日は勇者もいるし!腕によりをかけて作るぞ!」

魔王「そうと決まれば早速ウチに帰るか……」

側近「あと20分いて下さい、まだ時間ではないので」

魔王「チッ」

――――――
―――



側近(魔王様、あなたの忘れ形見であるあの子はすくすくと成長しています)

側近(あなたが選んだとおり、あの子は立派な王になりつつあります)

側近(私があの子を支えていきます、あの子をとります人々が支えになります)

側近(だからどうか、常に見守っていてください)


魔王「こんな時間にいなくなったと思ったら、やっぱりここに居たのか」

側近「あ、魔王様」

魔王「お父様のお墓……お前、毎日来ているな」

側近「その日の報告と……まぁ日課ですから」

魔王「そこにお父様はいない、あるのは遺骨とただの墓石だけだ」

側近「お墓というものは残された人たちへの慰めの形です」

側近「決して、その人を忘れないための」

魔王「そんなものが無くったって、私はお父様のことは忘れない」

側近「私もです。ですが、その慰めに話しかけるのも悪い事ではありません」

側近「私はそれで救われています」

魔王「……お前、お父様のこと……」

側近「さて、そろそろ家に戻りましょう。もう真夜中ですから」

魔王「……そうだな」



側近(……私は、あなたとあなたの母親が嫌いです)

側近(あなた達は、私が本当に欲しいと思ったものを意図も簡単に掠め取ってしまうからです)

側近(……魔王様も、勇者さんも……)

魔王「なぁ、側近」

側近「はい」

魔王「お前はさ、ずっと私の友達で居てくれるか?」

側近「突然どうしたのですか?」

魔王「眉間に皺を寄せて睨むな、怖い」

魔王「今日のことも……私が間違った選択をしたときにお前が正してくれた」

魔王「私自身は未だに間違ったことをしたとは思ってはいないが……それでも」

魔王「お前が私を思ってくれていることが、やっぱり嬉しくてさ」

側近「……」

魔王「……周りはむさ苦しい連中ばかりで、歳が近い奴もそういないし」

側近「私はあなたより遥かに年上です」

魔王「言葉の綾だよ!見た目が同い年っぽいし!」

魔王「……だから、ずっと。私の傍に居て欲しい」

魔王「友達として、側近として」

側近「……」

側近(この子は本当に……)

魔王「改めて聞くのもおかしな話だけど……だ、ダメかな……?」

側近「ぶっちゃけ転職を考えてました」

魔王「!?」

魔王「ごーべーんーなーざーいー!謝るがらゆるじでぐだざいー!」ズルズル

側近「泣きながら引っ張らないでください、冗談です」

側近(そんなことを言われなくたって私はあなたの傍にいますよ)

側近(それが、魔王様……前魔王様との約束)

側近(そして、私が望んだこと)

側近(大嫌いで大好きです……魔王様!)

○月△日

今日も特には何も無い1日だった
変わったことは強いて言うなら魔王様がまた強盗を退治したことくらいだろうか
正直、毎日何かしらのトラブルに遭遇しているからもうこのくらいではなんとも思わない

あと、勇者さんがウチに泊まっていった。嬉しい
でも魔王様に付き合わされて、眠るのも許されず部屋でゲームをしている。怨めしい

それと、今日も魔王様は可愛い



側近「日記のネタ、もう尽きそうですね」

側近「……ま、あの方々と過ごすのは暇ではあっても退屈ではないですから」

側近「おやすみなさい、それでは明日もまたよい日になるように……」




側近「割と暇な魔王様の1日」 おわり

終わった
ラストで定食屋以来のスレタイ間違えるという失態
特に言うこと無し


お付き合いしていただいた方がいましたら、どうもありがとうございました

突然思いついたおまけ



仮面男「なるほど、思い出してみればそんなこともあったね」

鎧少女「私が側近に泣きついたなんて忘れたい過去だ!」

側近「あの時のあなたは本当に可愛かったのに、今ではコレですか」

鎧少女「コレとは何だ!」

仮面男「私は今でも君は可愛いと思っているよ」ナデナデ

鎧少女「あう……」

側近(相変わらず仲のいいことで)

仮面男「じゃあ、私達はそろそろ行くよ」

鎧少女「帰国しない、なんて啖呵切ったのに何度も帰ってきているからな。示しがつかん」

側近「国王様には会ってはいかれないのですか?」

仮面男「アイツはいいでしょ、会っても無駄な戦いが始まるだけだよ」

鎧少女「自分の子供が血の気盛んとは……誰に似たんだか」

側近(あなたですよあなた)

側近「……お元気で」

鎧少女「息子を頼む……今度は、アイツの支えになってやってくれ」

仮面男「君も、自分の言いたいことは口に出さなければアイツには伝わらないよ」

側近「善処します」

鎧少女「それじゃ」

仮面男「元気でね」




側近(あなた達の明日がよい日であるように……魔王様、勇者さん)


おわり

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そろそろ削るか

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