黒髪少女「青空真下のカフェテラス」 (60)

見渡す限りの大自然
生い茂る緑の草原
遠くに見えるは壮大な山々
果てしなく澄んだ青空の真下

正体を隠す少女のお店
今日はお客が来るか来ないか……





黒髪少女「今日も客なし、平和な日々ですね」

金髪少女「カフェなのにお客さんがいないのは一体……」

眼帯少女「……いつもの事」

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過去作一部

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先に失礼します

ある理由でSSと小説がグッチャグチャになっているのであしからず

黒髪少女「客と言えば、たまに来る色ボケジジイか……」

金髪少女「私の愛しい彼か……」

眼帯少女「……迷い人か……でも、一応私もお客」

黒髪少女「儲けも何も無いですね」

金髪少女「儲けは考えていないだろう、初めから」

黒髪少女「ええ、まぁ。好きな時に好きなだけ好きなことをする、それが私のモットーです」

黒髪少女「ま、印税生活でお金には困ってないですし」

金髪少女「1000年以上前の英雄が、よくもまぁ未だに印税で生活出来るものだな」

黒髪少女「生きている以上は教科書に載るだけでガッポリ貰えますので」

眼帯少女「……うらやまー」

黒髪少女「実際、こんなカフェなんて完全に趣味でやってますので」

金髪少女「世の経営者に謝れ」

黒髪少女「それはともかく」

黒髪少女「今日はせっかく二人の友人が私のお店に来ているということで、私の昔話でもさせていただきましょうか」

金髪少女「お前の幼少期の話なら聞かないぞ。知ってるからな」

眼帯少女「……流石幼馴染……途中参加の私では踏み込めない領域」

金髪少女「そ、そんなんじゃありませんよ!」

黒髪少女「あら、私には照れた表情なんて見せてくれないのに」

金髪少女「お前に見せる表情は無い」

黒髪少女「私にだけ敬語だって使ってくれない、あー悲しい悲しい」

金髪少女「ふんっ」

眼帯少女「……どーどー」

黒髪少女「まぁ、せっかくコーヒーを用意させていただきましたので、召し上がってくださいな」

コトッ

眼帯少女「……ありがとう」

金髪少女「ああ、悪いな」

黒髪少女「あなたたちとこうしてお茶会を始めるちょっと前のお話です」

黒髪少女「では、これを飲みながらゆっくり聞いて行ってください」

黒髪少女「3年ほど前のお話を……」

――――――
―――

人の住む場所ではない

しかし魔物の姿もない


あるのはその存在感のある……ログハウス?


一人、旅人の男は首を傾げた

まだ若く、そして顔立ちは幼い
その姿に似合わない大きさの剣を背負っている

男は名を上げる為に旅を始めた

暴漢あらば立ち向かい、魔物あらば剣を振い

そんな事を想像して旅立った

しかしその後数年、世間の厳しさに揉まれ途方に暮れ

挙句旅費さえも底をついた


粋がって飛び出した家にも帰れるはずがない

男は最後の望みをかけ、魔物討伐の依頼を受け生計を立て直すべく"魔物の棲む森"へと足を運んだ

運んだはずだった

ところがどうだ

辺りは見渡す限りの草原、山、青空

確かに森に入ったはず

しかしどういう訳だろう、ここは"何もない大自然"

いや、「何か」はある


それは目の前の……


「カフェ……なのか?ここ」

目の前には「cafe」と書かれた木の看板

木で作られた質素な建造物は確かにそう見える

広がる大地にポツンと建てられたソレに男は戸惑う

振り返っても、元来たはずの森は無い

ここで立ち往生していても現状は変わらない

男はとりあえずそのカフェに入る事にした


……迂闊だった

自分の不用心さを今改めて実感しただろう

透き通った声で迎え出たのは一人の可愛い少女だった

身の丈は男と同じくらい

背中まで伸びたその黒髪はとても美しい

しかし、問題はそこではない


「ま、魔物ッ!?」


"羽"と"角"

彼女は人間にはない、特有のソレを背にもっていた

慌てふためく男は剣を抜こうにも上手く掴めない

もともと身体に不釣り合いな武器だ

邪魔でしかないものに男は振り回されている

そんな男の姿に見かねた少女はパチンッと指を鳴らす

すると、鞘ごと剣は宙を舞い、少女の手元へ落ちていた


「お客様、店内への武器の持ち込みは禁止されています。店の前の看板を見なかったのですか?」


軽く注意を促す目の前の少女に男は唖然としていた


………
……

「まずは当店のルールです。これくらいは守ってくださいね」


そう告げると、少女は男に店のメニューと共に注意書きの書かれた紙を差し出した

もちろん剣は没収

その後は無理矢理に外の席に着かされていた


「ご注文がお決まりになりましたらお呼びください」


少女はニッコリと笑顔を作り会釈し、パタパタと店の奥に消えていく

その姿を見て、男は自分の弱さ未熟さに泣いた

心の中で二度泣いた

いつまでもいじけているワケにもいかず、男は状況の整理を始める

いくら見た目は少女でも、見せつけられた力の差、そして魔物だということを忘れてはいけない

警戒心を保ったまま辺りを見渡す


この店の中は意外に広く、テーブルの数も多い

だが男以外には客はいない

先ほど、少女から押し付けられたメニューに目を配る


「魔物の出す食事だ、ロクなものでは無いだろう」


と、口に出すわけにもいかず、心中で呟く

しかし、サンプルの写真には目を引くようなゲテモノ料理はない

とはいえ安心も出来ない

相手は魔物、この写真のスープだって人間の体液から作られたかもしれない

このステーキは切り刻んだ肉か?サラダは眼球入りか?

幼き日から刷り込まれた魔物への偏見は男の恐怖心を駆り立てる

ヒラリ


と、メニューと一緒に持っていた紙がテーブルの上に落ちる

一緒に渡された注意書き

この店にはルールがあると言っていたが、これの事だろう

無秩序のはずの魔物に存在するルールを不審に思いつつも、男はその紙に書かれた文を読み始める

当店で守っていただきたい事     
                             

1、武器の持ち込み禁止:お持ちの場合は店外のお預かりボックスへ

2、店内でのケンカ禁止:暴力お断りです

3、人間魔物の差別禁止:当店ではどんな種族も関係なくサービスを行っております

4、人間の精力吸引禁止:そういった行為自体禁止しています

5、みんななかよく:私の願望です

当店は種族間のしがらみを取り払った憩いの場を目指しています

どうかご協力をお願いします

店主、テリア・アンフォートより


深く考えても始まらない、男は行動に移すことにしたようだ

紙を読みきった男はこの平和的文章の僅かな望みに賭け、思い切って何か注文することにした


………
……

「お待たせいたしました、ご注文をどうぞ」


少女は笑顔を崩さず催促する

呼び出したのは良かったが、男には金がない

そもそもその金をもらう為に魔物を討伐しに来たはずなのだ

出費するとは思わず、財布は宿に置いてきた

その財布にも金は入っていないようだが……


「……とりあえずお冷ください」

「はい、かしこまりました」


情けなく注文する男に少女は会釈をし、パタパタと店の奥へ消えていく

二度目の光景に男は苦笑する

本当ならこのまま逃げ出せばいいのだが

剣を取られていること、力の差を見せつけられていることでそんな気はとうに失せていた

本当に少女が自分の知りうる魔物ならば、とっくに食われているハズなのだから大丈夫

大丈夫と、何度も自分に言い聞かせて……


パタパタと少女が足音を立てて再び男の前に現れる

その手の盆にはコップと水が乗っている

それともう一つ……

「お冷をお持ちしました」


どうぞ、と少女がテーブルの上にコップに水と……


「いや、これ頼んでないんだけど……」

「当店では一杯のみサービスさせて頂いております」


水と一緒に並べられていたのはコーヒーだった

ゆらゆら揺れる湯気が鼻に触れ

香りが鼻腔をくすぐる

「当店のコーヒーは香りに重点を置いています。匂い……気に入っていただけましたか?」


男の予想に反し、人間汁ではなく、ちゃんとしたものが出てきて肩すかしを喰らった

もちろん味も保障します

と、少女が付け加える

そうだ、見た目こそおいしそうだが中身が安全とは限らない

香り豊かなそのコーヒーにすぐにでも手をつけたかったが、そこはグッと堪えた

きっかけを掴んだ男はとうとう我慢できなくなり一気に疑問を口に出した


「……君は魔物じゃないのか?」

「どうしてボク食べようとしない!遊んでいるのか?」

「このコーヒーには……ん」


「このコーヒーには何が入っているのか……ですね?」

少女はいたずらっぽい笑みを浮かべ、人差し指を男の口にあて静止させた

男は自分の言いたかった事を先に言われ、驚いていて動かない

発言権は少女に移り、意気揚々と話し始める


「今日の仕事はもう終わりかな。あ、大丈夫ですよ。リラックスしてください」


魔物を恐怖の象徴と考えている男にはとても落ち着ける雰囲気ではない


「取って食べたりしませんよ。でも多いんですよね、私たちの事勘違いしてる人」


少女は男とは反対側の席に腰をかける

話を続けようとすると温かい風が吹く

風が少女の長い髪をなでると、少し間を置いて、もう一度続ける


「フフ……。あぁ、あなたの質問には一つ一つ答えますよ。こういうのは慣れてますから」


辺りの大自然の環境からか、男は大分落ち着きを取り戻したようだ

深呼吸から始まり「すまない」と一言詫びて、質問を一つ一つ辿る


「それじゃあまずは……君は魔物じゃないのか?ボクの知る限りでは羽の生えた人間なんて見たことがない」

「私もそんな人間は見たことがありませんよ」


そりゃそうだ、と言わんばかりにお互い肩をすくめる


「私はあなた達人間のいう魔物で合ってます。種族は一応サキュバス……って事で」


サキュバス……

服の露出の高さはそのためかと頷く


「サキュバスは好色で、主な糧は人間の男性の”精”ですね。流石に同じ人型である人間は食べませんよ」

ん?

男は目の前の少女の答えに疑問を投げる


「サキュバスが好色なのは知っている。だがいかなる魔物も人間を無差別に殺し、肉をはぎ取り、それを喰らうと教えられてきた……」

「それこそ人間の偏見です!そして心外です!」


力強く言い放った言葉を途切れさせることはなく続ける


「私も事情は知らないですけど、人間にはそう伝わってるんです。他のお客様からも同じことを毎回聞かれますし、怯えられていては私も気分が悪いです」


どうやら少女もたまに来る客の態度にはウンザリしているようだ

これは悪い事をしたと、男は何の疑いもなく少女の言うことを真剣に聞く

これで解りましたよね?私が何者か、あなたを食べる気はない、遊んでいるわけでもありません」


握りこぶしを作り、まるで演説でもしているかのように力説をする


「でも……ボクの”精”を食べるなんてことはしない……よね?」

「なっ!」


突飛押しのない男のその言葉を聞くと、少女は顔を真っ赤にして反論をする


「わ……私はそういう事をする気もありませんし、その……したことも……ありません」


何とも不思議なサキュバスだ

生まれもった特性を一度も使わずに生きてきた少女は何とも健気に見える

少女の言葉を信じるに値したのか、いつの間にか男は警戒心を解いていた

コホン

わざとらしく咳払いをして息を整える

それはともかく……と、繋ぎ


「とりあえず私の身の上は話しました。次はあなたですよ」


若干話は逸れてはいるが、そう催促されたので男は自分の事も話すことにした

勇者にあこがれて旅に出ようとしたこと

歓迎してくれると思っていた親に反対されたこと

家を飛び出したのはいいものの、予想以上に旅がつらかったこと

自分が大多数の中の人間だと思い知ったこと

とてもちっぽけな存在だということ

「まぁ、人それぞれ何じゃないですか?」


自分から話せと言っておきながら適当な返事で返され、ショックで動きを止めた

しかし、少女は続ける


「自分が思っていた理想と現実は確かに違うと思います」

「私は勇者というものを知りませんから何とも言えませんが、ちっぽけだろうが何だろうが"あなた"は"あなた"です」

「道に迷って探すのが人間です。あなたはその旅で何を得ましたか?巨万の富ですか?最愛の恋人ですか?」

「違いますよね?……あなたが得たのは、人生のほんの一欠片……自分自身ではないですか?」

男は思い返す

思えばそうだった

未熟で弱虫で情けない自分をこの旅で見てきた

だったら何をすべきか、どうするべきかをずっと考えさせられてきた

自分の力量を思い知った

だからこそまた旅を続けようと思った


「確かにボクは自分を手に入れた……自分が気がつかなかった一面を」

「そうです、納得してください。じゃないとこんな臭いセリフを吐いた私の立場がありません」

「でも一つだけいいかな?」

「何でしょう?」

男は少女に向き直り、真剣な眼差しで見つめる


「魔物の君に人間とか人生とか語られても……ねぇ?」

「それも……そうですよね」


二人はその後しばらく笑い続けた

男は旅をしていた数年分を取り戻すかのように

そして少女は接客ではなく、一人の"魔物"として……


………
……

「ご来店ありがとうございました、またのおこしを」

「意図的に来れたらまた来るよ」


男は出発の時を迎えていた

流石にお金もないのに長居は出来ない

帰り道は少女が示す場所まで行けば自然と元来た森に帰れるらしい

「あ、あと最後に。聞いてなかった質問があったんだけど」


男は思い出したかのように聞く


「あのコーヒーの中身……ですよね?」

「実は私もよく解らないんですよ。知っているのはちょっといい豆ってことくらいですね。タダ同然で仕入れてますけど」


客にそんなワケのわからないもの飲ませているのか

やはり魔物の感性は解らない

男はそう思いながらも店を後にする


………
……

――――――
―――


黒髪少女「どうですか?純真無垢な私の日常の物語、楽しんでいただけましたか?」

金髪少女「……それだけ?」

眼帯少女「濡れ場は無いのか!」ガタッ

黒髪少女「無いです、落ち着きなさい」

黒髪少女「コーヒーを飲みながら、風を感じて聞く語りもオツなものでしょう」

金髪少女「その後、その男はこの店には現れたのか?」

黒髪少女「彼はその後店には来ていませんよ。招き入れる気もありませんので」

眼帯少女「……どうして?」

黒髪少女「単純な話、興味を無くしてしまったので」

黒髪少女「自己保管で迷いを無くした人間はあまり観察していても面白くないですし」

金髪少女「出たよ性悪女め」

黒髪少女「趣味が人間観察なだけです」

眼帯少女「……その男の人のその後がそこそこ気になる」

黒髪少女「……風の便りで聞いた話ですが」

黒髪少女「どうやら綺麗なお嫁さんを貰って農家で暮らしているみたいですよ」

眼帯少女「……あ、平凡だ」

金髪少女「人の人生なんてそんなものですね。私たちは人間ではないのでもっと違う生き方をしますが」

眼帯少女「……幸せに暮らせるならそれでいい」

黒髪少女「そういったところで、あなた達に質問です」

眼帯少女「……質問?」

カフェから出た後、男は果敢に森の魔物と戦い片腕を失った

自分の信じてきたものや努力は決して実るという訳ではなかった

男は勇者になる事を諦め実家に帰る事になる

自分の弱さを知っているからこそこの決断をした

昔なら腕がなくなった時点で諦め、その場で息絶えることを選んだだろう

里に帰り、そこで生まれて初めて親を泣かせた

親にしてみれば片手を失っても息子が生きて帰ってきた事はどれほどまでに嬉しかったことか

男は里で親の農家を継ぐことになる

そして綺麗な嫁を貰い、平凡に暮らした……

黒髪少女「果たしてこれは幸せと言えるのでしょうか?」

黒髪少女「自分の夢を打ち砕かれ、腕を失い、お嫁さんを貰い過去から目を背けて……」

黒髪少女「手に入れたのが平凡な人生」

眼帯少女「……生きていればそれでいい、と思うけど」

金髪少女「納得が出来ない事も多くあるだろうが、家庭を持てばそれも変わるだろう」

黒髪少女「ハァ……面白みがないですね、あなた達は」

黒髪少女「人間は、醜く足掻いているからこそ美しい」

黒髪少女「平凡なんて真っ平ごめんです。必死でもがいて迷って見つけて」

黒髪少女「苦しんで挫折して絶望して」

黒髪少女「そして見つけるその先の幸福こそが……見ていて面白いんじゃないですか」

黒髪少女「ドラマの無い物語ほど見るに堪えない物はありません」

黒髪少女「……お分かりいただけました?」

金髪少女「お前の性根が腐っているのを再確認した」

眼帯少女「……でも、テリアは優しいから。ホントは心配になってその男の人の事調べたんだよね?」

黒髪少女「……風の便り、ただの気まぐれですよ」

金髪少女「フフッ、どうかな?」

黒髪少女「もう……」

金髪少女「あと、ちょっと今の話の内容で質問が二つほどあるんだけれど」

眼帯少女「……奇遇、私も」

黒髪少女「聞かれるだろうとは思っていましたけれど、一応聞き返します。なんでしょうか?」

金髪少女「お前、サキュバスじゃないよな?」

眼帯少女「……原初の悪魔の末裔……だったっけ?」

黒髪少女「はい、その通りです」

黒髪少女「物語を語る上で分かりやすい種族にした方がいいでしょう?」

黒髪少女「ですので、サキュバスを名乗らせていただきました」

眼帯少女「……物語を自分から破綻させてる」

黒髪少女「元を辿ればサキュバスだって原初の悪魔からの派生種族ですから、広義では間違ってはいません」

金髪少女「それでいいのかお前は……」

黒髪少女「天使のあなただって同じようなものでしょうに」

眼帯少女「……それで、二つ目の質問」

金髪少女「あー、これは……聞いていいのかやめた方がいいのか」

黒髪少女「遠慮せずにどうぞ、私たちの仲ではありませんか」

金髪少女「それじゃ遠慮なく聞くが……」

眼帯少女「……このコーヒーの豆、いったい何?」

黒髪少女「……」

金髪少女「……」

眼帯少女「……」

黒髪少女「エール」

金髪少女「ん?」

黒髪少女「シュシュ」

眼帯少女「……はい」




黒髪少女「コーヒーカップ、片付けますね」

「「オイ待てコラ」」

――――――
―――

「ふぅ……退屈」


客が来なければ何もすることはない

少女は一人コーヒーをすすりながら新聞を広げる
 
もう何年になるか……


少女は自分が魔物である事を嫌い、人間に憧れた

今まで人間の"精"は吸ったことはない

興味がないからだ

欲求不満なら自慰でもすればいい

"人"としての意識を持っている少女は"人"を襲って性行為など出来るはずがない


隔離されたこの空間で、商売にならない店を構える理由……

他人と関わりたくない心
『いつ自分が魔族の本能を出すかわからないから』

接点を持ちたい心
『ここに迷い込んでくる人はとても愉快』
『何かを抱えて生きている人たちばかりだから』

入り乱れた二つの思いは今日も少女をヤキモキさせる

誰にも立ち入ってほしくない領域

けれど誰か来るかもしれない期待感


少女の名は"テリア"

青空カフェの店主


そして今日も、道に迷った人間が……



「いらっしゃいませー」


黒髪少女「青空真下のカフェテラス」 

fin

短いけど終わった
台本形式部分以外は過去に書いていたちょうど3年前に更新をやめてしまった青空カフェシリーズを手直ししたものです

定食屋よりもずっと前の正真正銘の私の処女作です

お付き合いしていただいた方がいましたら、どうもありがとうございました

今回みたいなSSって読みにくいからやめておいた方がいいのかな?
そこら辺もちょっと聞いておきたいです

ありがとうございます
全員とも3年前に付けた名前なので覚えていない……というのが事実です

タイトル同じだから仕方がないけど
何故バレた

失礼しました

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