巫女「優しい声は」竜「竜の唄」 (144)
これは遠い昔の記憶
私と貴方が出会う前
解き放たれるずっと前
ずっと昔の遠い記憶……
優しい声のあの記憶……
これは夢、夢が見せたプロローグ
私が目覚める物語
私が始まる物語
――――――
―――
―
竜(幾数千年、私はどれだけ長い時間をこの薄暗い洞窟で過ごしただろう)
竜(封印を施され、外に出ることも叶わず。憧れのあの空は、天井に空いた大きな穴から仰ぐだけ)
竜(天の真上から射す月と星の光、いつか飛び立ちたいと思っていても、叶う事無くいずれ私の命はここで終わるだろう)
竜(誰も愛することもなく、誰にも愛されることもなく……)
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過去作
勇者「定食屋はじめました」
勇者「定食屋はじめました」 - SSまとめ速報
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着物商人「レアなアイテム売ります買います!」
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ディアボロ(……ブチャラティのジッパーが!?)
ディアボロ(……ブチャラティのジッパーが!?) - SSまとめ速報
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「竜神様、新しい生贄を連れてまいりました」
竜(これだ、意味が分からない)
竜(近くに住む人たちは、私のこと竜神と呼ぶ)
竜(それは違う、私はただの竜。名もなき竜)
竜(遥か昔、貴方達の先祖によって両親は殺され、私はこんな場所に閉じ込められた)
竜(そして何を今さら、私を神と称えているのだろう)
「今回の生贄……竜神様に祀る巫女は若い娘を見繕ってきてまいりました、どうかお納めください」
竜(不憫だ、こんな意味のない生贄を差し出されても私はどうすることもない)
竜(私は今まで連れてこられた生贄をこっそり逃がしていた)
竜(村に帰しても酷い目に合うだけだ、一番初めの生贄を迂闊に帰してしまったのを今でも後悔している)
竜(二人目からは遠い場所へ逃がしていた、私の使い魔に命じて遠い遠い安全な場所まで)
「竜神さまー」ダダダダダ
竜(そして今回も、私はその生贄を逃がすだろう……ずっとそれを繰り返していくのだろう)
巫女「竜神さまー!!!」ダダダダダダ ダキッ!!
竜「ファッ!?」
「こ、こら!何をしている!!申し訳ありません、生贄はこの者なのですが……」
巫女「えへへ~竜神さまー」スリスリ
竜「……」
「自らその身を差し出したいと申し出てきたので選んだのですが……オイいつまでやってんだ!?」
巫女「やっと会えましたね!お元気ですか?どこか体の具合が悪かったりしてませんか?」
「……気に入らないのでしたら連れて帰るつもりですが」
竜「……」
「まただんまりですか……生贄は置いていきますので、我が村にどうか平和と繁栄を……」
竜(生贄を差し出されたところで私にそんなことをする力、あるわけがない)
竜(神頼みをするくらいならもっと自分たちで出来ることがあるだろうに)
竜(この村の人たちはみんな勝手だ、小さな不幸があれば神に対する敬意が足りない、大きなことが起これば厄災は神の怒りだ)
竜(そんなことばっかり……自分たちでどうにかしようともしない)
巫女「……竜神さま?」
竜「……」
巫女「竜神さまー」ツンツン
竜(まずは目の前の少女をどうにかしようか)
竜「……あなたは怖くはないのですか?」
巫女「うわっ喋った!?」
竜「……」
巫女「あ、ごめんなさい。続けて続けて」
竜「自ら生贄となることを望んだようですが、何故ですか?死ぬのが怖くないのですか?」
巫女「怖いですよ?」
竜「ならばどうして……」
巫女「竜神さまを一目見たかっただけです」
竜「そんな理由で……」
巫女「私にとっては重要です。この地に生ける神の姿、見ることが叶わず死にゆく者も多いはずです」
巫女「ですから私は、見て死ぬことを選びました」
巫女「……と、いうのは建前で。あなたというヒトに会ってみたかっただけです」
竜「私に?」
巫女「はい!私は知ってるんですよ?生贄にされた人たちがみんな生きてるってこと」
竜「ッ!」
巫女「……過去にあなたへの供物にされ、逃がされた女がいたんです」
巫女「それが私の祖母。因果が巡って私がここに来たんです」
竜「……私の逃がした人の中には命をつないでいる人もいるんですね」
巫女「そりゃ、人ですもの!恋に落ちれば命が産まれます!」
竜「過程をいろいろすっ飛ばしている気もしますが」
巫女「それよりも……さっきはすみませんでした。あなたが救ってくれた命だと考えたらいてもたってもいられなくなって……」
竜「私が救った……?」
巫女「それよりも……もちょっとスリスリしてもいいですか?」
竜「それはいいですが……」
巫女「え!いいんですか!?やったー!!」ダキッ
竜「あ、ちょっと!……もう」
竜(出会いは滅茶苦茶だった)
竜(目の前の少女は私に畏怖することもなく、まして崇めることもなくただ私に会いたかっただけ)
竜(私という存在を見てくれていた、そんな初めての訪問者に私は心躍った)
巫女「と、言うわけで。これから住み込みで竜神さまのお世話をさせていただきます」
竜「どういうわけですか」
巫女「それが目的の一つですので!何事にも感謝感謝!」
竜「はぁ……」
巫女「まずはお掃除しましょう!この洞窟かなり広いですしやりがいがあります!」
竜「そんなことはしなくてもいいですよ、使い魔が綺麗にしてくれます」
使い魔「キキッ」サッサッ
巫女「器用なコウモリさんたちですねぇ」
巫女「じゃあお料理!美味しいものを作らせていただきます!」
竜「それもいいです、私は食事というものをあまりしたことがないので」
巫女「えー、死んじゃいますよそれー」
竜「使い魔が死なない程度に魚や木の実を取ってきてくれるので」
巫女「じゃあ体を綺麗にしてあげましょうか!ブラシを持ってきました!」
竜「頭はともかく体の方は鱗が鋭利になっているから危ないのでいいです」
巫女「私することないじゃないですかー!やだー!」
竜「……だったら、私の話し相手になってくれますか?」
巫女「話し相手ですか?」
竜「はい、あまり誰かと長く語ったことがないので」
巫女「今まで生贄で連れてこられた人たちとは話さなかったのですか?」
竜「必要な用件だけを話てみんなを解放してましたから……」
巫女「私だけちょっと違うって事ですか」
竜「私に会いに来てくれたのは貴女が初めてですから」
巫女「いいですよ!それならどんな事だって話します!」
竜「ごめんなさい、突き合わせてしまって……」
巫女「違いますよ!私が好きで付き合うんです!」
竜「……ごめんなさい」
巫女「それも違います!感謝ですよ感謝!」
竜「え?」
巫女「それはあなたが申し訳ないと思うところじゃないと思うんですよ?」
巫女「だから『ありがとう』!これです!」
竜「……上から目線のような気もするんですが」
巫女「う~ん……なんかイメージと違うと思ってたらそういう事か……」
巫女「竜神さま!」
竜「はいッ!?」ビクッ
巫女「口調、変えちゃいましょう」
竜「はぁ……?」
巫女「竜と言えばいかにもって感じの強い生物じゃないですか?」
巫女「だから、思い切って威厳のある口調に変えちゃうんです!」
竜「……でも、そんな変えたところで私は誰かと話すことは」
巫女「私とこれから語り続けるんです!!」バンッ
竜「ヒィ!?」ビクゥ
竜(何故か少女は私にもっと年を取ったようなしゃべり方をするように要求してきた)
竜(曰く、「祖母から聞いた話では、もっと威厳のある性格だと思ってた」とか)
竜(……生贄として連れてこられた人たちと碌に会話もなかった為にそれが神秘性を上げたのだろう)
巫女「一人称はワシ!二人称はお主!プリーズ!」
竜「わ、ワシは……お主と……話がしたいです」
巫女「ぬぅ……最後が敬語になっちゃってますよ。私が下、竜神さまが上なんですからね?」
竜「そんな勝手な……」
巫女「だって生物の頂点に立つようなドラゴンがそんな畏まってたら舐められちゃいますよ?」
竜(誰にだ誰に)
竜(そんな彼女との語源の矯正に数日間を費やすことになった……)
――――――
―――
―
竜「ぬぅ……これでよいか?」
巫女「バッチリですよ竜神さま!」
竜「何故ワシは話がしたかっただけなのにこんなことに数日も費やさねばならなんだのだ」
巫女「ありがとうございます!私のわがままに付き合っていただいて!」
竜「ただの我が儘ならよかったのじゃが……サボろうものなら無言の圧力が降りかかってきてたからのぅ」
巫女「えーそんなことしてませんよー?」
竜「どうだか……」
巫女「でも竜神さま?ここ数日で気が付いたんですけど……」
巫女「竜神さまって女の子ですよね?」
竜「今更か」
巫女「えーっと……確かにそんなような喋り方でしたけど、なんというか出立ちがそんなような」
竜「……別の種族から見ればどんな竜も同じに見えるじゃろうな」
巫女「わーわー!そういう事じゃなくて!カッコよくて見惚れてて、男の人だったらよかったかなーって……」
竜「何じゃお主、竜相手に恋愛でもしに来たのか?」
巫女「んー……異種での恋愛って憧れません?」
竜「子を残せぬ時点で成り立たんわ」
竜「ところでお主、こんなところに数日もいてよかったのか?」
巫女「何がですか?」
竜「親は心配してはおらぬのか?祖母からワシの話を聞いていたのならお主が外に出られることを知っておるじゃろう」
巫女「お父さんもお母さんも病気で亡くなってて……」
巫女「祖母ももう昔に亡くなってるんで天涯孤独なんですよ、えへへ」
竜「……悪いことを聞いたの」
巫女「いいんですよ、外からの流れ者で天涯孤独。だから竜神さまの巫女もとい生贄に選ばれることが出来たんですから!」
竜「そうか……頼る者がいないのでワシのところに来たか」
巫女「あはは……」
竜「ワシがお主の祖母の言うような竜出なかったらどうするつもりだった?」
竜「気まぐれで逃がしただけかもしれんし、言葉も通じないボケ老人だったかもしれん」
巫女「……それならそれでよかったんですけどね?」
竜「本当に食われたかもしれんのじゃぞ?」
巫女「そうしたら両親の下へと旅立てるのでそれでも構いません」
竜「ふむ、天国とかそういうのを信じるタチか」
巫女「ちょっと違いますけど……竜神さまはそういうの、あると思います?」
竜「無い、ただの肉塊になって朽ちるだけじゃ」
巫女「むぅ、ピシャっと言い放ちますねー」
巫女「……天国ではないですけど、私はあると思います」
竜「天国でなければ地獄か?」
巫女「確かに死後行く場所って言ったらその二つが定番ですけど……」
巫女「死んだ者の魂は、ガラスの海に行くと思います」
竜「ガラスの海?なんだか突き刺さりそうで痛そうじゃのう」
巫女「ホントにガラス片が漂ってるワケじゃありませんよ!?」
竜「分かっておる、冗談じゃ。何かの比喩じゃろ?」
巫女「はい、まるでガラスに映る光が乱反射して見える……水の中のような、空に浮かんでいるような」
巫女「そんな場所で魂は漂い続けるんです」
竜「その漂い続ける魂はどうなるんじゃ?」
巫女「そのままずっと……ガラスの海の中で眠るらしいです」
竜「ほう……輪廻転生を真っ向から否定か、創造にしてはなかなか挑戦的じゃのう」
巫女「違います!創造じゃなくて見たんです!」
竜「」
竜「いや、確かに少しおかしいところはあると思っておったが……ここまで頭の中がメルヘンじゃったとは」
巫女「あ!確実に信じてませんね!?」
竜「そりゃ信じれるワケなかろう、お主死にかけた事でもあるのか?」
巫女「無いです!」フンス
竜「信憑性が今ゼロになったぞ」
巫女「でも見たんですよ!どこで見たか、どうやって見たか、そしてどうやって知ったか……それが思い出せないんです」
竜「……精神疾患か」
巫女「おいちょっと待て」
竜「まぁよい、なかなか面白い話ではないか。もっと何か聞かせておくれ」
巫女「面倒臭くなって話を変えようとしてますね」
竜「言っても、思い出せぬのならそれ以上話せんじゃろう」
巫女「そうですけどぉ」
竜「うむ、お主を追い出さないで正解じゃったの。語らいを続けようか」
巫女「あ、それじゃあですね―――……」
竜(口調まで変えられて散々だったけれど、彼女は私の知らないことを知っていて、私が彼女の知らないことを知っていて)
竜(それが楽しかった、誰かと対等に話す日が来るなんて思ってもみなかったから)
竜(でも……不安もあった)
――――――
―――
―
使い魔「キキッ」パサパサ
竜「はい、いつもすみません……」
使い魔「キキッキ」パサパサパサ
竜(……あまりこういう事はしたくは無いのだけれど……)
巫女「んー……どうしたんですか竜神さまー?」
竜「ぬ?なんでもない、使い魔と話しておっただけじゃ」
巫女「こんな夜遅くにですかー?」
竜「うむ、こんな夜遅くにじゃ。というよりお主、あっちにワザワザ部屋を用意してやったんじゃ。そこで眠らんか」
巫女「いやですよー、竜神さまの横で寝るー……むにゃむにゃ」
竜「人間はか弱い、風邪をひくぞ?」
巫女「グーグー」
竜「ふぅ……布くらいかけておいてやるか」サッ
竜(……使い魔達にこの少女の情報を出来るだけ集めさせた)
竜(こんなにも楽しいと裏があると思ってしまう。昔、人々が私たちを襲ったように……)
巫女「うにゅう……」クカー
竜(そんなことは、思いたくないのに)
――――――
「ところで、今回の巫女は誰になったんだ?」
「ほら、最近越してきたあの子だよ」
「ああ……あの不気味な子供か」
「こう言ったらなんだけど……ウチの子じゃなくて本当に良かったよ」
「みんなそう思ってるさ、貴族たちが勝手にやっている習わしなんだ」
「前の時なんて可哀そうに、一人娘を連れていかれて」
「生活力の無い家から選ばれていくんだ、仕方ないさ……」
――――――
竜(使い魔の見た記憶の中の一つ……屑共め)
竜(別に私の事なんて崇めなくていい、みんなが疑問に思っているのにどうしてこんなことを続けるの?)
竜(そんなに貴族が怖いの?)
竜「……まだ、お願いします」
使い魔「キキッ」
「あの子、気づいたら村にいたよね?」
「いっつも訳の分からないことばかり繰り返して言ってたな……ウチの子は近づかないようにしていたけど」
「竜神様に会いに来た、竜神様はお優しい、そんなことばっかりだったな」
「貴族にケンカ売ったときは焦ったよ……竜神様はお前たちの道具なんかじゃないって」
「ボコボコに殴られてたな……でも恐ろしいのが次だよ」
「貴族たちがいなくなってから何か光ったと思ったらみるみる傷が治って行ったんだから」
「魔法を使うのか!?……やはり悪魔の子だったのか……」
――――――
竜「……」
巫女「むにゃむにゃ……」スースー
竜(この時代、まだ魔法は一部の種族たちの間では使うことは出来ず、魔法を使えるのは魔族のみとされていた)
竜(その魔族もまだ地上との交友は築けておらず、半ば敵対関係になっていた)
竜(魔法がどの種族でも使えることが発覚したのはこの300年ほど後……魔族がようやく地上に出ることを認められるまでの長い期間が必要であった)
竜(彼女は本能的にその才能に目覚めた人間、ただの人間。理解が無い時代に生まれてしまっただけの……)
小休止
見てる人いたのかな?
再開
竜「……変な疑いを持ってしまいましたね」
竜「あなたは、両親が亡くなってからずっと一人だったんですね……私と同じで」
巫女「ウーン……」
竜「……」
竜(やり場のない感情、種族を憎むつもりもない。私が憎むのはこの子を迫害した個人だ)
竜(誰もこの子に手を差し伸べようとしない、ただ見ているだけ)
竜(誰も、剣を持とうとしないのですね)
竜(その刃を貴族なり私なりにでも向ければまだ救いはあるのに)
竜(私さえいなくなればこんな事……)
――――――
―――
―
「……ッ!……ッ!」
竜(近くからけたたましい声が聞こえる)
竜(一体なんでしょう、ここは洞窟。竜の洞窟。好き好んで来る人なんていないはず)
巫女「竜神さま……ッ!竜神さま……ッ!」
竜(ああそうだ、この子がいたんだった。最近少し眠っただけでも物忘れを起こしてしまう、もう歳だろうか)
巫女「竜神さま!起きてください竜神さま!!」
竜「……何を慌てておる、ワシはもう起きておる」
巫女「あ……よかった……」
竜「なーにをそんな安堵しきった顔をしておるか」
巫女「竜神さま、どのくらい眠っていたか覚えていないんですか?」
竜「む?眠りすぎたか。最後の記憶は……お主がワシの隣で寝てて、使い魔と話していた辺りかのう」
巫女「もう4日も前の事ですよ!」
竜「ぬ?なんじゃ、4日程度か」
巫女「程度って……寝過ぎですよ!」
竜「スマンのう、お主ら人と違ってワシの眠りは長いんじゃ」
竜「永い時を生きるには、お主らのように毎日寝て起きては繰り返さず、定期的に眠り続けねば精神が持たん」
巫女「それって常にそうしてなきゃいけないんですか?」
竜「そういうワケでもない、退屈でなければずっと起きていても構わんくらいじゃが」
巫女「私と話していたの……退屈でしたか?」シュン
竜「ああいや!そういうわけではないぞ!あくまで理由の一つじゃ!つい居眠りをしてしまってそのまま熟睡してしまっただけじゃ!」
竜「……お主が退屈な者であったらとっとと追い出しておる」
巫女「居眠りでこれですか」
竜「うむ、ちょっと目をつむっただけでもこれじゃ……お主、4日も一人で何をしておった?」
巫女「竜神さまを起こそうとしたんですが、使い魔さん達が邪魔をして……」
竜「むぅ……あ奴らはワシを最優先してくれるのはいいんじゃがどうも融通がきかん頭でっかちばかりじゃからのう」
使い魔「キキッ」ドヤァ
竜「褒めてはおらんぞ?」
竜「よし、ならば分かった。お主がワシの下を発つ日が来るまでずっと起きていよう」
巫女「そんなこと出来るんですか?」
竜「竜の体力を甘く見る出ないぞ?ワシみたいに極端に体力を温存している竜であれば造作もない事じゃ」
巫女「行動範囲はこの洞窟の中だけですからねぇ」
竜「ああ……じゃから、お主に気を遣わせてしまって悪かったのう」
巫女「いえいえ、ありがとうございます。こちらこそ気を遣わせてしまって」
巫女「ですが、眠ることも大事なことですよ?疲労回復もそうですけど、記憶の整理なんかも眠っている間に行われるみたいなんですから」
竜「眠っている間に?そんなことが頭の中で出来るのか?」
巫女「眠りについて記憶を辿り、それが夢になるんです」
竜「夢……?」
巫女「はい、知性のある生物はみんな夢を見るんです……見た事無いんですか?」
竜「風の便りで聞いた程度の言葉じゃ……眠ることで見る景色、夢か。見たことは無いの」
巫女「その人の記憶、願望、今日はこんなことがあったな、こうあったらよかったなって思う事を見せてくれる景色」
竜「悪いがワシは幼き頃からずっとこの洞窟にいた、辿るような記憶は無い」
巫女「あー……ごめんなさい」
竜「謝るでない、気にはしておらん」
竜「……よし、本当にそんなものが見れるかどうか試してみるか」
巫女「今日の夜は眠るんですか?」
竜「ああ、お主の言っていたことが絵空事ではないかどうか試してみよう」
巫女「でも一回眠ったら……」
竜「安心せい、使い魔には邪魔させぬように命令しておく……毎朝、誰かがワシを目覚めさせてくれるのなら、ワシだって起きることができる……」
巫女「……はい!」
竜(夢、不思議な響きだった)
竜(当時、私は閉鎖されたこの空間での記憶しか存在せず、夢を見ることは叶わなかった)
竜(しかし、その日。私は夢を見ることが出来た)
竜(記憶の中に眠る事。過去、両親が目の前で殺される景色。私が封印される景色)
竜(そして……あの天井の大穴から見える青い、或いは月明かりが照らす空を羽ばたく景色)
竜(私の記憶、私の願望……そして今客観的に見ているこの景色の私もきっと……)
巫女「竜神さま、朝ですよ?」
竜「……ああ、朝か」
巫女「……竜神さま、泣いているんですか?」
竜「ぬお!?なんか目から涙が!?」
巫女「悲しい夢を見たんですか?」
竜「夢?ああ、夢のう……アレが夢だったのか」
巫女「見れたんですね?」
竜「ううむ、とても曖昧じゃ。思い出そうとしても霞がかってよく思い出せん」
巫女「ふふ、そういうものですよ夢って」
竜「はぁ……」
竜「うむ……いや、思い出した!」
巫女「えー、ホントですか?」
竜「ウソは言わんよ。……確かワシの両親が出てきたのう」
巫女「あ……無理に話さなくてもいいですよ?」
竜「もう何千年も前の話じゃし折角じゃ、話のタネにさせてもらおう」
竜「聞いてくれるかの?」
巫女「もちろんです」
竜「数千年前、この時代とは文化も言葉も違う時代じゃった……」
竜(今ほど多種多様な人種もおらず、文明も今と比べればまだまだの時代)
竜(私は気が付いたら生まれていた、気が付いたら意識を持っていた)
竜(両親の竜は父が風竜、母が炎竜。私は違う種族の竜の混血でした)
竜(竜はその時代ではまだ多くが生息していました。もちろん人を襲う事もあります)
竜(田畑を荒らし、家畜を襲い、抗う者達から身を守る為に戦い……)
竜(地上における最強の種族と言っても差し支えなかったでしょう)
竜(でも、その地に生きる人々だって黙ってはいませんでした)
竜(竜を討伐するために色々な知識や技術を発展させていったのです)
竜(竜の生態を知り、竜の弱点を知り……そうして人々は竜を駆逐していきました)
竜(竜は必要以上に人々に被害を与えていたため、これは自業自得と捉えてもいいでしょう)
竜(私たちの繁殖能力は極端に低く、瞬く間にその勢力は減り、絶滅の危機にまで追い詰められてしまいました)
巫女「……その時にご両親が?」
竜「んにゃ、ワシの事はその後。人がいらん知識を仮定したことが原因じゃ」
竜(人々は最強の象徴である竜のその生命力に目を付けました)
竜(その血を浴びれば不老不死の力を得、その肉を喰らえば竜になることができる)
竜(そんな噂を広めてしまうほどに)
竜(その話が信じられたのは、竜を狩る者達の存在もありました)
竜(彼らは竜を狩る上で、血を浴び肉を食い、その亡骸で装備を作り。強き存在として認められていたからです)
竜(彼らは不老不死となり、竜の力を手に入れて竜を狩り続けた……そこまで話が大きくなっていました)
竜(権力者たちはこぞってその力を欲しました)
竜(……そして、山奥で静かに暮らしていた私たち親子が追い詰められました)
竜(両親は抗いました)
竜(父は風を生み出し、奴らを引き裂き。母は火を噴き、奴らを焼き払い……)
竜(ですが、竜の対策が万全な彼らを倒すことは出来ませんでした)
竜(父は首を刎ねられ、母は頭を潰され……)
竜(彼らはその血を浴び、肉を喰らい、狂喜し祭りを始めていました)
竜(残された私は、養殖を目的とされこの洞窟にて封印の術式を施され幽閉されました……)
竜(……なぜこの時代にそんな術が存在していたかはわかりません)
竜(もしかしたら、古代の地底の魔族たちが人々をそそのかしてそういった知識を広めたのかもしれません)
竜(地上に存在する竜を大人しくさせる為に、或いは自分たちの手で手なずけられるように……)
竜「……これがワシの見た夢、ワシの知りえる一番古い記憶じゃ」
巫女「……ひょっとして、近くの村に住んでいる人たちって」
竜「その者達の末裔じゃろうな」
巫女「じゃあ、私もそんな……」
竜「気に病む出ない、ワシは気にしておらん」
巫女「ですけど……」
竜「……その後にのう。笑い話になるんじゃが」
巫女「笑い話?」
竜「自分の両親が殺されておいて笑い話というのもなんじゃが……」
竜「我が両親の血を浴び肉を食った者どもは全員奇病で死におったわ。こんな愉快な話はないわ!」
巫女「あー……衛生的な問題ですよね絶対」
竜「そこに野営を組んでおった血肉を喰らわなかった者達は、まだ幼かったワシの魔法か呪いか何かと勘違いしおって」
竜「そこからワシの待遇は悪くは無くなったのう。よく貢物を置いて行かれるようになったわ」
巫女「それがいつの間にか生贄になっていったと?」
竜「ああ、権力者たちのせいでその野営から離れるに離れられなくなった者達の家族が集まり」
竜「それが集落となり、近くの村との交通の便が良くなると一気に一つの村へと変わっていったわ」
竜「ま、余所者はこんな場所怖くて来るに来れんかったがのう。たま越してくる者は嫁ぎに来たものだけだったわ」
竜「……そんなこんなで今のこの状態じゃ。権力者は貴族へと変わり、いつまでも古いワシの迷信を信じてずっと生贄を差し出しておる」
巫女「勝手ですね……私たち人は」
竜「先に手を出したのはワシらの種族じゃ。それに皆そういう生き物じゃ、割り切っておる」
竜「それに、ワシは種を憎まず個を憎むことにしておる。関わっていた連中は全員死んでおるからもう気にしていない」
巫女「……目が覚めたときに泣いていたのはご両親の事だったんですね?」
竜「あー……いや、それもあるが……むむむ、こっちも思い出してきたぞ」
竜「夢というものは突飛押し無い物じゃのう。突然景色が切り替わったと思ったら違うものが見えておったわ」
巫女「違うもの?」
竜「ああ、決して叶わぬ幻を見ておった」
竜「……この洞窟の天井のど真ん中、大きな穴が開いておるじゃろ」
巫女「はい、雨が降ったら悲惨ですね」
竜「うむ、少量ならいいんじゃが大雨じゃと大惨事じゃが……まぁそれはよい」
竜「あそこから仰ぐだけだった空を……ワシは優雅に飛んでいた」
竜「それは太陽が燦々と照らす青空の下だったか、月と星の輝く夜空の下だったか。よく覚えてはいないが」
竜「確かに飛んでいた、まともに空を飛んだこともないのにのう……竜の本能でそんな幻を見てしまったか」
巫女「叶わない……ですか」
竜「……封印の術式は誰にも解けん。使い魔たちに魔族を探すよう言いつけておるが見つかりはせん……ワシはもう諦めておる」
竜「この場所に骨を埋める覚悟は出来ておる、せめて夢の中だけでも飛べて満足じゃ」
巫女「……」
竜(この時の私は完全に未来を捨てていた。外の世界を知らず、この閉鎖された世界で一生を終える)
竜(つまらない生き方だが、それも仕方がない。目の前に現れた彼女と出会えたことが、数少ない幸福だったかもしれない)
竜(……でも、淡い希望もあった)
竜「じゃが、不思議なことにのう」
竜「空を飛んでいるワシのとなりに、他の竜が飛んでおったのじゃ」
竜「その流は父でもなく母でもない……ワシは他の竜を見たことが無いのにもかかわらず、その者を竜と認識していた。何故じゃろうな」
巫女「そ、それじゃあ!きっと誰か他の竜神さまが助けにきてくれるんですよ!」
竜「あくまで夢の中の話じゃぞ?」
巫女「夢が見せるのは過去の出来事や願望だけじゃないんです……時には、未来の姿を映すことだってあるんです」
竜「未来……か」
巫女「だから……いつかきっと、竜神さまを助けてくださる方が現れるかもしれません!きっと!いえ絶対そうです!」
竜「ふむ……まぁ、期待はせずに待っておくか」
竜「じゃが、そんな夢だったらまた見てみたいのう……今度はお主をワシの背に乗せて飛ぶ夢を見たい」
巫女「竜神さまぁ……」テレテレ
竜「……のう、そこそこ仲良くなったことじゃし……」モジモジ
巫女「はい!なんですか!なんでもおっしゃってください!私はあなたの忠実な僕です」ビシィ!!
竜「……ワシはそんな僕に言葉の矯正をさせられたのか」
竜「そんな関係は嫌じゃ、……その……出来たらそうではなく……」
巫女「はい?」
竜「ワシと友達に……なってはくれんかのう?」
巫女「お友達……ですか?」
竜「だっ、ダメだったら別にいいんじゃ!」
巫女「いえいえいえ!!滅相もない!!私から頭下げてお願いしたいくらいですよ!!」
竜「おお!本当か!!」
巫女「憧れだった竜神さまとお友達になれるだなんて……ああ!私はなんて幸福なんだ!」
竜「そ、それではのう……お主の名前をそろそろ教えてはくれぬか?」
巫女「あ、そうですね。そういえば一回も言ってなかったですよね」
巫女「……私の名は『シルフィア』。かつてこの世界に存在した、人でもなく神でもなく、ましてや悪魔でもない」
巫女「小さな風の名前……確かにそこに存在した『小さな風のシルフィア』。それが私の名前です」
竜「……いい名前じゃのう」
巫女「はい、この名前を与えてくれた両親に感謝しています」
竜(素敵な名前、初めて知った人の名前)
竜(この時の私は、初めての友達、名前を私に預けてくれた彼女に心から感謝した)
竜(存在さえ信じていない神に感謝をしたくらいだ)
竜(でも、私は彼女と対等になりえることは無かった……そう、この時の私はまだ……)
巫女「それで!竜神さま!貴女のお名前、教えてくれるんですよね!?」
竜「う、うーむ……」
巫女「なぜそこで渋るんですか、泣きますよ?」
竜「ここまで来て申し訳ないのじゃが……すまん!」
竜「ワシは名前を持っておらぬのじゃ……」
竜「竜の間では別に名を付ける意味もなくてのう」
竜「それも今思えば、こうして人と意思の疎通をするときになかなか不便じゃの……」
巫女「人と竜がこんな風に語り合う、なんてことはあり得ないことでしたからね」
竜「むぅ……ワシも答えてやりたいが、どうしたものか……」
巫女「なら付けちゃいましょう!私たちで考えて!」
竜「……それも有りか!」
巫女「有りです!」
竜(いくつか候補が上がったが、名前が決まるのはもうしばらく先の事だ)
竜(けれど、今思い出す。私の名前、大切な名前。貴女が残してくれたかけがえの無いこの名前……)
竜(けれど、今述べよう。私は感謝します、すべてのものに感謝します。貴女と出会えたことを、貴女が私にくれたものを)
竜(そうして、私たちはまた語らいを始めた。あの大穴から見える月の下で)
竜(月明かりの下寄り添いながら、二人永い夜を語り明かして)
――――――
―――
―
小休止ではなく休憩
前SSとの温度差がやべぇ
再開
「竜神様、どうかお納めください」
竜「……」
竜(また来た。そう、また来たのだ。何をしに来た)
「竜神様、前の巫女。やはり気に入りませんでしたか?」
「このところ、村の方で病が蔓延しております。呪いだというのなら、どうかお怒りを収めください」
少女「……」
竜(連れてこられた少女は奴の隣で震えている、それもそうだ。普通ならみんなこんな反応だ)
巫女「」コソッ
竜(彼女がちょっとおかしいだけだ)
「この者にはキチンと言い聞かせております、前の巫女のようにはなりません」
竜(そういう事じゃない……この人は本当に分かっていない、分かるつもりも無い)
「……まただんまりですか」
竜「……いらぬ」
「ッ!今なんと!?」
竜「贄などいらぬと言っている」
竜「もう十分であろう、お主らの自己満足に付き合うのも飽きた」
「そ、そんな……それでは村は……私の収める村をどうする気なのですか!」
竜「知らん、どうもしない。お主らが厄災を勝手にワシが引き起こしたものだと思っているだけであろう」
「しかし!それでは今までの事は……私の面子は……」
竜「お主の面などいくら汚れてもワシの知ったことではないッ!今のワシはすこぶる機嫌が悪い、立ち去れ!さもなくば……」
「ひ、ヒィイイイ!!」
少女「りょ、領主さま……私は……」
「退け!お前などもういらん!!」ガスッ
少女「ウッ……」
竜「いい大人が関係のない子供に手を挙げおって……」
巫女「このバカ野郎!!」バキッ
「おぐぅ!?」
少女「!?」
竜「!!?」
巫女「自分の都合が悪くなったからって勝手すぎますよそんなの……ましてやどんな理由があろうと人に手を挙げるなんて、考えられません!!」
竜「今お主は直接手を挙げた自分の言ったことに責任が持てないという事を知っておけよ?」
巫女「こんな屑は殴ったって誰も困りません!」
竜「熱血じゃのう……嫌いではないが、迂闊じゃぞ」
巫女「へ……あ!!」
「貴様……生きていたのか!!」
巫女「……お化け、信じます?」
竜「物理的干渉をしておいて何を言うか」
竜「生かしておいて何が悪い、ワシの気まぐれじゃ。この娘が気に入っただけ」
竜「悪い事でもあるか?」
「ふ、フフフ、そうか分かったぞ。貴様が竜神様を誑かしたか!」
「通りで村が厄災に見舞われるワケだ!この悪魔の子めが!!」
巫女「……ッ」
竜(殺すか……!)
巫女「ダメ、竜神さま……!」
竜「ッ!しかし……」
「覚えていろよ悪魔め!!お前は極刑だ!ハハハハ!逃げられると思うなよ?アッハッハッハ!!」
竜「チッ、本当に胸糞悪い」
巫女「でも……あの人が死んでしまったらそれこそ竜神さまの立場が危うくなってしまいます」
巫女「村にとってあの人の存在は絶対、生きるも死ぬもあの人の裁量……」
竜「ならば殺してしまえばよかろう、そっちの方が手っ取り早いし村の者も解放される」
巫女「違うんです!村の仕事も生活もすべてあの人が管理しているんです、ですから亡くなれば全てのバランスは崩れます」
竜「生活すらも他人任せか、あの村の連中は」
巫女「……そうしなければ生きていけないんです」
竜「……生贄を育てるだけの……家畜ではないか」
巫女「そして、竜神さまをよく思っていない人たちも大勢いいます」
巫女「きっと解放された時点で、あなたは用済み。討伐隊が組まれるでしょう」
竜(一人の時はそれでも構わなかった。殺してくれるのなら是非殺してほしかったものだ)
竜(全力で抵抗はする。それでもダメだったのなら諦めがつく。この退屈な世界から抜け出せる)
竜(でもこの時の私は、もう一人ではなかった。彼女がいた。危険な橋は渡れなかった……)
竜「ところで、そこの小娘」
少女「は、ハイッ!」
竜「家族は?いるのか?」
少女「お、お父さんが一人……」
竜「……使い魔を護衛に付けてやる、こっそり連れてこい」
少女「え、え?」
竜「聞こえなかったか?今すぐ連れてこい……お主らはもう村には住めんじゃろう」
――――――
―――
―
巫女「……ここから見える月は綺麗ですね」
竜「うむ、外の景色はそこからしか見えぬがのう」
巫女「……あの子達、ちゃんと逃げ切れたんでしょうか」
竜「お主の祖母と同じ方法……と、言うより。皆同じ方法で他の遠い場所へ逃がしてきた、だから大丈夫じゃろう」
巫女「そうですよね……」
竜「しかし感心ならんのう、あそこで殴るためだけに顔を出すとは」
巫女「竜神さまがいつも通り黙っていてくれれば私も顔は出しませんでしたよ?」
竜「ワシのせいか!?」
巫女「あのまま私が現れずにあの人が帰ったらどうなってたと思います?」
竜「む……ワシに報復に来るか?」
巫女「大人数を引き連れてくるでしょうね」
竜「ワシなら構わん、焼き尽くしてやるだけじゃ。今までワシに戦いを挑んできた連中は全部そうしてやった」
竜「殺せるものなら殺してほしいのじゃがな……まったく」
巫女「私は、竜神さまが誰かをそんな風にするところなんて見たくありません」
竜「そうは言っても、自分の身を守るためじゃ。そこは容赦せんか」
巫女「それは……そうですけど……」
巫女「でもよかった」
竜「?」
巫女「その報復を受けるのが竜神さまではなくて、私だってことです。あなたを傷つけさせたくはありません」
竜(私は何も言えなかった、軽率なのは私の方だった)
竜(彼女は私を守る為に出てきた。こんな簡単なことも分からずに、私は偉そうに)
竜(もし彼らがここに来ることがあるなら、私は彼女を、シルフィアを守ろう。命を懸けて守ろう)
竜(たった一人の友達を、たった一人の愛する者を……)
竜(それから数日たった。彼はあれから姿を見せず、割と平和に私たちは過ごしていた)
竜「そぉい!!」ブンブン
巫女「何してるんですか?」
竜「運動じゃ運動!何もしていないと体が弱ってしまうからのう!」ブンブン
巫女「体を振り回しているようにしか見えないんですが……」
竜「いやぁ、結構広い洞窟で助かるわ。体が埋まるほど小さい場所であったらこんな動きも出来んしの」ブンブン
巫女「なんか動きが愛らしいなぁもう」
竜「ところでなんじゃ!なにか用か!?」ブンブン
巫女「はい、実は……ゲホッゴフォ!?」
竜「ぬ?どうした?」ブンブン
巫女「砂埃!!砂埃激しくて喋れない!!動きをやめて!!」
竜「しょうがないのう」ピタッ
巫女「ケホッ……竜神さまって結構機敏に動き回りますね」
竜「鍛えておるからのう」
巫女「はぁ……じゃなくて!」
巫女「私、絵本を描いてみたいんです!」
竜「絵本?どうした突然?気でも狂ったか」
巫女「なんで!?どうしてそんな反応!?」
竜「いや、本当に突然じゃったからのう」
巫女「こうして毎日を過ごすのもなんかなぁっと思ったんで、やれることをやろうと思っただけですよ」
竜「流石に語り続けるのもつらいものがあるしのう……よかろう、使い魔に用具を収拾させて来よう」
ペン
紙
資料
ちくわ
竜「よし、描け」
巫女「ごめんなさい、流石に高度なのか低度なのか分からなくて突っ込みたくないです」
竜「気にするな」モグモグ
巫女「あ、食べるんだ」
竜「して、適当な資料を漁らせてきたが……どんな物語を描くつもりじゃ?」
巫女「はい……竜神さまの物語を描きたいと思います」
竜「ワシの?」
巫女「あくまでモデルってだけで、全然違うお話ですけど……ホントはこうなればよかったなってお話です」
竜「ふむ……面白そうじゃのう、考えているものだけでもいい。聞かせてくれぬか?」
巫女「ええ!恥ずかしいですよ!!」
竜「なに、ワシらの仲じゃ。よいではないか」
巫女「もう……わかりました!文章は考えてあるのでここで言っちゃいますね!」
竜(この物語は、後に私の運命に大きく影響を与えた)
竜(夢が見せたプロローグ、おとぎ話のような……)
昔むかし あるところに 一匹の竜がいました
竜は 悪い悪い悪魔たちに 捕らえられて過ごしていました
何十年 何百年 外を見ることもなく ずっと
ある日の朝 竜は悪魔たちの噂話を耳にします
「最近この辺を荒らしまわってる人間がいるみたいだぞ」
「それは大変だ 早く魔王様に伝えよう」
悪魔たちは 戦いに赴きます
竜は思いました
「ああ 人間の方が来ているのですね 私も見つけられたら 倒されてしまうのでしょうか」
そんな時 ずっと竜を見守っていたコウモリ達が 竜に問いかけます
「竜よ 竜の子よ 私はあなたを死なせたくはありません ですから選んでください」
「竜の姿を捨て コウモリとなり このまま飛び去るか」
「竜の姿を捨て 人間の姿となり 悪魔たちを倒す人間に味方するか」
そんな選択肢を突き付けられたのです
そう コウモリ達は かつて竜だった者たちだったのです
魔法の力を使い 違う生き物に姿を変える そんなことが出来てしまうのです
「私は人間を助けたい 一人で戦っている人の力となりたい」
竜はそう願いました コウモリ達と逃げてもよかった
けれど 心優しい竜は 人間を捨てて逃げることは 出来ませんでした
魔法の力で 人間の姿になったとき 一人で戦う人間が現れました
「おお 美しい少女よ なぜこのような場所に」
「囚われの身となっていました どうか私を連れて行ってください」
悪魔と戦っていた人間はなんと 誇り高き勇者でした
勇者と竜は共に生き 戦いました
来る日も来る日も 戦いました
そして魔王を 倒したのです
「君と共に生き抜いて 分かったことがあるんだ」
「何でしょう 勇者様」
「僕に相応しいのは君しかいない どうか僕と結婚して 妃になってほしい」
「まぁ なんて素敵なことでしょう」
勇者は国の王子だったのです
共に生きた勇者からの申し出を 竜は断る理由はありません
しかし 竜かけられた魔法の力もあとわずか
元に戻ってしまうでしょう
「勇者様 ごめんなさい 私は一緒に生きられません なぜなら私は竜なのですから」
そしてとうとう 魔法はとけてしまいました
勇者は驚きました 一緒に過ごしてきた少女の正体が 自分とは違う生き物だったからです
「さようなら 勇者様 いつまでも愛し慕っています」
竜は飛び立ちました 涙を見せないようにしながら
一人残された勇者は泣きました
少女の悩みに気づいてあげられなくて 後悔しました
そんな勇者に コウモリ達が語りかけます
「竜の子を 愛してくれますか」
「愛します 守ります 僕の全てを捧げて」
するとどうでしょう 飛び立った竜の姿は 見る見るうちに人間の姿へと戻っていきます
「この子をどうか お願いします 私たちの可愛い娘」
そう言って コウモリ達は消えていきました
彼らの正体は 竜の親だったのです
「勇者様 愛しています もう二度と離れません」
「ああ 僕は君を離さない 聞かせておくれ 優しい優しいその声を」
「あなたの為に 唄いましょう あなたの為に 奏でましょう」
こうして二人は 結ばれました
ずっとずっと 幸せに暮らしました
巫女「……どうでしょう!!」
竜「コメントに困る酷い無いようじゃ」
巫女「力作なのに!?」
竜「当たり前じゃ、陳腐にも程があるわ!」
巫女「えー、でも絵本のお話なんてこんなもんでしょ?」
竜「絵本舐めんな!!」
竜「物語自体は斬新じゃが展開が唐突過ぎて着いて行けん!」
巫女「絵本ってどうせ読むのは子供ですからわかりやすい方がいいじゃないですか」
巫女「ほら、勇者と魔王ってわかりやすい単語出てきてますよ!」
竜「竜の少女の存在がイレギュラー過ぎるわ!浮きすぎじゃ!」
巫女「うーん……でも竜神さまの恋愛ファンタジーにしたいしなぁ」
竜「いっそ文章力でも磨いて小説でも書いておけ」
巫女「えー、こんなの見せられたら正直寒いだけですよー?」
竜「お主が考えた話じゃろ!?」
竜「むぅ……しかし、ワシがモデルと考えるとこれは変な気分じゃのう」
巫女「じゃあどうすればいいんですかー?」
竜「知らん、自分で考えい!」
巫女「ブーブー!!……ケホッ」
竜「まだ砂埃が舞っておったか……大丈夫か?」
巫女「はい……大丈夫ですよ」
竜(彼女がくれた物語、私にくれた物語)
竜(こうは言ってしまったけれど、今では私の宝物)
竜(彼女の残した宝物……でも一つだけ)
竜(そう、この物語は悲しい結末を迎えている。迎えることになる)
竜「……じゃがのう、こんな幸せな気分で話が終わっているが」
竜「お主、竜の寿命と人間の寿命の差を考えたことはあるのかの?」
巫女「うげッしまった!」
竜「……この物語の勇者は、きっと先に逝ってしまうじゃろうな」
竜「取り残された竜の少女は……愛する者を失った者は何を思うんじゃろうな……」
巫女「……」
竜(決定的な矛盾だった)
竜(物語は幸せに終わっているのに、その先には悲しい出来事が待っている)
竜(彼女と出会う事で、私はそういった考えを持つことを知った)
竜(失う事の怖さを……)
巫女「ふん!もういいです!竜神さまには完成しても絶対に見せませんから!」プンプン
竜「まぁそう怒るな……どれ、描き始める前に景気付にいいものを見せてやろう」
巫女「いいもの?」
竜「そう、ちょっとした戯れじゃ……お主の扱う魔法のような力」メキメキメキ
巫女「うわなんかキモい」
竜少女「ふぅ……初めてにしては上出来じゃのう」
巫女「え……?」
竜少女「フフン!見て驚いたか!竜は魔法を使えるのじゃ!そしてこういった応用も出来る!」
巫女「変身した……わ、私の姿……ですよね?」
竜少女「うむ。変化させるにはモデルがいるのが難点じゃがのう」
竜少女(魔族たちから盗み見た魔法技術だというのは流石に言いませんけど……)
巫女「うわぁ……ホントに私そっくり」ペタペタ
竜少女「これ、胸を触って残念そうにするな」
巫女「他にも魔法が使えたりするんですか!?」キラキラ
竜少女「う、うむ。まぁ大したものではないが……」
巫女「わー!教えてください竜神さま!なんでもしますから!」ダキッ
竜少女「こ、こりゃ!この姿でいつも通りに抱き着くな!苦しいわ!」
巫女「キャーキャー!」
竜(彼女の喜ぶ顔が鮮明に思い出せる)
竜(私のルーツ、それは彼女と共にある)
竜(彼女と共に、生きた証……)
巫女「竜神さまっていっぱい色んな事知ってるんですねぇ」
竜「ワシからしてみたらお主の方が博識じゃ」
巫女「そうですか?……まぁ竜神さまの所に来る前から竜の事についていろいろ調べてましたけど」
竜「ほう、ワシの種族を知ろうとしていたのか。よくやるのう」
巫女「そりゃあ、これからずっと一緒に暮らすか一瞬で食べられるかの相手でしたからね」
竜「まぁ……ところで、竜の何を調べておったのじゃ?」
巫女「美味しい調理法」
竜「」
休憩
今日どこまで書けるだろう
再開
竜「そういう冗談はよせ、心臓に悪いわ」
巫女「え?」
竜「え?」
巫女「そうですよね!冗談ですよね!ハハッすみません~!」
竜「お、おう」
巫女「……竜の血肉で不老不死になる、なんて確証の無い知識とか身に付けましたね」
竜「……まぁ、そんなものが実在するなら今頃数千年前の竜狩りの者達が生きておるじゃろうな」
巫女「ですよねー」
竜「……手順を踏まえる必要があるが、出来ないことも無かったりする」
巫女「え?不老不死ですか?」
竜「見た目だけは不老にはなるじゃろうが、決して不死ではない」
巫女「あるんだそういうの……」
竜「うむ、簡単には出来ない上にワシもその方法はよくわからん」
巫女「分からないことを知っているんですか?」
竜「うむ、お主のガラスの海の話と一緒じゃ。いつの間にか知っておった」
竜「まぁ、ワシの場合は竜としての種に刻まれた記憶と言ったところか」
竜「知っている限りのことを教えてやろうか?」
竜(竜の涙で心を洗い)
巫女「いいですよ、なんか話したくなさそうですし」
竜「む?そうか。人は皆そういうものを求めると思っていたのだがのう」
竜(汚れ無き血でその体を洗い)
巫女「それ、まるで私がその方法を得る為に竜神さまに近づいたみたじゃないですかー!」
竜「むお!スマンスマン……そんなつもりじゃないのはワシが良くわかっておる」
竜(大いなるその鱗ですべてを覆う)
巫女「ダメですよ、そういう事漏らしちゃったら」
竜「うむ、悪用されるかもしれんからのう……」
竜(死した体は甦る、竜と成りて蘇る……)
竜(人の命弄びし秘術、竜と成りて蘇る……)
竜「結局お主のガラスの海とやらは妄想という事でいいのじゃろうか?」
巫女「ひでぇ」
竜「ま、死後の事など誰も知るわけがないしのう」
巫女「死んでからのお楽しみってやつですね、ケホッ」
竜「……お主のおかげで死にたいとも思わなくなったわ」
巫女「竜神さまぁ……」テレテレ
竜(この時なぜ気が付かなかったのだろう)
竜(こんな話をしてきた彼女に)
竜(こんな小さな変化に……)
――――――
―――
―
竜「いつもスマンの……」
使い魔「キキッ……キッ?」
竜「ん?……ああ、日常的にこの口調だったせいでとうとうお主達に話しかける時もこうなってしまったわ」
竜「それはよい、慣れてくれ……では、奴の動向を見せておくれ」
――――――
「奴だ、あのガキめ……竜神を誑かして私たちを呪い殺そうとしている!」
「不味いな……あの子が我々を恨む理由は十分にある」
「悪魔の子……やはり厄災をこの村に呼ぶか」
「こちらで処分してくべきだったな」
「しかし、魔法が怖いな。今回の事でもしあちらの怒りを買い、遠くから火の魔法でも放たれたら……」
「竜神様まで味方につけている……やれやれ、どうするべきか」
「私にいい考えがある」
「なに、言ってみろ」
「あの悪魔の子、この村に来る前は魔法の力を使い、医療に携わっていたと聞きます」
「忌々しい……毒を盛っていたのだろう」
「怪我人が出たと、助けてくれと頭を下げてやったら案外飛んでくるかもしれません」
「ふん……そんな慈悲があるわけがないと思うが」
「試すだけ試しましょう、言伝だけなら竜神様とてお怒りにはならないだろう。命運を決めるのはあのガキ自身だ……」
――――――
竜「……」
使い魔「キッ……」
竜「もう下がってよいぞ」
使い魔「キィ……」
竜「お主らの言葉は分からんが……お主らに出来ることは何もない。その気持ちだけで十分じゃ、この子も喜ぶじゃろう」
竜(目が回った、あまりの醜さに吐き気すら催した)
竜(そうやっていつまでも人のせいにしなければいけないのか、そうやっていつまでも私の虚像を見ているのか)
竜(神なんて信じていない私には、分かることは決してなかった……)
――――――
―――
―
巫女「竜神さまー!」
竜「なんじゃ……こりゃまた豪勢な食事じゃのう」
巫女「使い魔さん達に材料を集めてきてもらいました!」
竜「ほう、お主が調理したのか?」
巫女「えっへん!どうですかこの美味しそうな料理の数々!」
竜「ううむ……食指が動かんのう」
巫女「なぜ!?こんなに美味しそうなのに!?」
竜「前も言ったが、ワシはあまり食事を必要とはしてないからのう」
竜「それに体格を考えよ、こんな大きな口にそんなちっこい料理を入れても味なんてわからんわ」
巫女「むぅ……あ、それなら!」
巫女「変身しましょう、私の姿に!ケホッ」
竜「なに?またアレをするのか?」
巫女「はい!それだったらこのお料理だって全部美味しく食べられるハズです!」
竜「むぅ……まぁいいじゃろう」メキメキメキ
竜少女「これで美味くなかったらパンチじゃからの」
巫女「竜神さまはまともに加工したものを食べたことが無いですから、味付けは好みかどうかわかりませんけど……」
竜(とても嬉しかった。初めて食べる料理が私の大好きな人が作ってくれたものだった)
竜(とても美味しかった。食事をとることに初めて喜びを覚えた。こんな幸せなことがこの世に存在していたなんて知らなかった)
竜(何故こんな豪華な食事になったのか、それに気が付かなかった私は純粋にバカだと思った。大切な日を忘れていた)
竜少女「お主が料理を振る舞ってくれるなんてのう……で、なんでじゃ?」
巫女「竜神さまー?怒りますよー?」ニコニコ
竜少女「スマン、笑いながらの圧力は普通に怖い」
巫女「あー!本当に分からないんですか!!」
竜少女「……何かの記念日……か?」
巫女「そうですよー?さて、何の日でしょうか?」
竜少女「むぅ……考えられる可能性は」
巫女「うんうん!」
竜少女「使い魔その4の誕生日じゃな!!」
使い魔4「キッ!?」
巫女「ふざけてんですか~?」グリグリ
竜少女「やめんかー!頭グリグリは痛いのじゃあ~!」
巫女「ホントに分からないとかそんなのですか?」
竜少女「スマン……」
巫女「もういいですよ!料理も食べ終わっちゃってますし……他にもプレゼント考えたのになぁ」
竜少女「ワシの誕生日か!」
巫女「惜しい!てか竜神さまの誕生日しらない!」
竜少女「惜しい?ふむ……」
巫女「一向に答えが出なさそうなので言っちゃいますと、なんと!今日で竜神さまと出会ってから1年が経ちました!!」
竜少女「ほう、もう1年経っておったのか。お主が来たのはつい最近の事だと思っておったが……そうか」
巫女「やっぱり竜と人間じゃ感覚が違うんですねぇ」
竜少女「確かに、ワシの記憶のお主の姿と……この姿じゃの」
竜少女「今のお主では少し違うのう」
巫女「髪がちょこっと伸びただけですけどね」
竜少女「早いものじゃのう……」
巫女「ですねぇ……ケホッ」
巫女「それでですね、プレゼント用意してきたんですよ!」
竜少女「今日の料理もそういうことじゃったか、ワシは何も用意出来ておらん……」
巫女「元々私が勝手に話を進めてるだけなんですけどね」
巫女「それに……」
巫女「竜神さまからは沢山の思い出を頂いています!だから、これ以上のものは望めません!」
竜少女「むぅ、そんなものこれからも作っていけばいいじゃろう」
巫女「……そうですね」
巫女「それじゃあまぁ、せっかく用意したんで受け取ってください」サッ
竜少女「これは……本?」
竜少女「『優しい声は竜の唄』……このフレーズは……」
巫女「えへへ……こっそり内緒で少し遠い村に読み聞かせに行ってたら本にしたいって話が出たので……」
竜少女「時々居なくなっていたと思ったらそういう事じゃったか……まったく危ない事をしおって」
巫女「ちゃんと色々と書き直してはいますけど、まだ正式には刷られていないので……それが原本って事になりますね」
竜少女「こんなものを……」
巫女「あと、ほら!開けてみてください!ケホッ」
竜少女「ほう、登場人物に名前を付けたのか……」
竜少女「勇者の名前はヴェイド、竜の名前は……」
巫女「竜の名前は『セルフィナ』。かつてこの世界に存在した、人でもなく神でもなく、ましてや悪魔でもない」
巫女「偉大なる風の名前……確かにそこに存在した『偉大なる風のセルフィナ』。それが……」
巫女「竜神さまへの、私からのプレゼントです!」
竜少女「ッ!!」
竜少女「ワシの……私の……」
巫女「私より上の存在ですからね、いい名前を選ばなきゃいけないのは当然ですよ!」
竜(私の名前はセルフィナ。偉大なる風のセルフィナ)
竜(言葉では言い表せなかった。こみあげてくる感情を抑えきれなかった)
竜(この最高のプレゼントに、私は何の遠慮もなく彼女の胸に飛び込んで、わんわんわんわん大泣きした)
竜(全てのものに感謝します。貴女の出会いに感謝します。ありがとう、出会ってくれてありがとう……)
―
―――
――――――
竜(……全てが終わる)
巫女(それは全ての始まり)
竜(違う、貴女が終わってしまう)
巫女(それでもあなたは進んで行く、私のいない未来を進む)
竜(貴女の居ない未来なんて)
巫女(これはあなたの物語、あなたが始まる物語)
竜(嫌だ!あの日が来る!思い出したくない!!)
巫女(これは夢、あなたが見せる夢の中)
巫女(怖がらないで、私が一緒にいてあげる)
――――――
―――
―
竜(次の日、シルフィアは倒れた)
竜(昨日まであんなに元気だったのに、いや違う)
竜(元気に振る舞っていただけだ)
竜(私は気が付かなかったんだ、彼女の変化に気が付かなかった)
竜「無理をするな、掃除くらいなら使い魔にやらせる……そうやって眠っておれ」
巫女「無理はしてないですよー……ケホッケホッ」
竜「目に見えて顔色が悪い……スマンの、気が付いてやれなくて」
巫女「自分の体の事は自分がよく知ってます……まだ、大丈夫です」
竜「……かなり前から患っておったな?」
巫女「えへへ……どうでしょうね?」
竜「馬鹿者……」
エラーで書けないー
失礼
再開
竜「……お主の治癒魔法で治せんのか?」
巫女「私が治せるのは外傷だけです……病気まで治せちゃったらお医者さんいらなくなっちゃいますし、世界中の人が助かっちゃいますよ……」
竜「……何か効く薬を調達させよう、待っておれ」
巫女「いいですよ、竜神さま。私はすべてを受け入れます」
竜「……言っておる意味が分からん」
巫女「そんなことよりも、また語らいましょう?今度は私から話をしますね……」
竜「そんなことなどどうでもいい!休んでおれ!」
巫女「眠っている暇があったらあなたとずっと語っていたい……」
竜「……無理だけはするな」
巫女「えへへ……」
巫女「そうですね……私の祖母の話が……ケホッケホッ、したいです」
竜「ワシの逃がした娘の話か……いいじゃろう、話してみよ」
巫女「とても優しいお婆ちゃんでした……私のわがままを聞いてくれて、私のしたい事をさせてくれて」
巫女「でも、毎日厳しく言われていたことがあります。竜神さまへの感謝を忘れるなと」
巫女「ほとんど洗脳……ケホッケホッですよ……今思い返すと結構笑えて来ますね、ハハ」
竜「感謝したいのはワシの方じゃ。子を成して、こんな素敵な孫娘をワシに遣わせてくれたのじゃから」
巫女「……竜神さま、口説いてますか?」
竜「ああ、口説いておる」
巫女「私が男の子だったら一コロですよ」
竜「ワシが男だったら、お主を襲っておるかもしれんのう?」
巫女「そんな祖母も、流行病で亡くなってしまいました」
巫女「ケホッ、最後まで竜神さまに感謝しながら……」
竜「……祖母も?」
巫女「お父さんとお母さんが先に……そのあと祖母に」
竜「……」
巫女「ハハッ、私はその後その村から出たので大丈夫だと思ったんですけどねぇ」
竜「あ奴らが言っておった病か」
巫女「みたいです……ケホッ、もう治る見込みがないそうです……」
竜(原因不明の流行病、昔は病だけで村が壊滅していた時期もありました)
竜(今の技術では何ともない病気、もっと未来なら助けることが出来た命がどれだけあっただろう)
竜(何故生きることさえ許されないのだろう。この世界は、何故……)
巫女「ああ、でももうすぐ私の知りたいことが分かる」
竜「知りたいこと……?」
巫女「はい、たった一つ。知りたいこと」
竜「……ガラスの海か」
巫女「あるかどうか確かめに行くだけ、ケホッ無ければ無いでいいですけどね?」
竜「解決方法があるかもしれん……その病を治すことに専念してはくれないかの?」
竜「ガラスの海を探しに行くのは、それからでもよいであろう?」
巫女「出来ることならそうしたいです……出来ることならあなたの傍にずっといたい……」
竜「出来るさ……ワシがお主を助けよう」
巫女「えへへ……頼もしいですね」
竜「ああ、ワシを頼れ。好きなだけ……」
「巫女は!竜の巫女はいるか!」
竜「……来おったか」
巫女「私……?呼ばれてる?」
竜「構うな、寝ておれ」
「竜の巫女よ、いえ、竜の巫女様!あなたのお力を貸してください!」
巫女「竜の巫女……私の力……?」
「はい、あなたのその魔法の力で村をお救いください!」
巫女「流行病の事なら……申し訳ありません、私の力では……」
「違うのです!近くの山道で落石事故が起こり多くのものがけ怪我をしてしまったのです!」
「あなたのお力をどうかお貸しください!」
竜「虚言を……ほかっておけ。手のひらを返したように……どうせ行っても碌なことにはならん」
「どうか……どうか……!」
竜「それにお主は今……」
巫女「……わかりました、案内をお願いします」
竜「ッ!!お主!!」
竜「馬鹿者!お主もまともに動けないその体でどうする気じゃ!?」
巫女「大丈夫、さっきよりは気分がいいから……」
竜「しかし、これは……」
「竜神様、どうか……どうか……」
巫女「もし本当に事故が起こっているなら私の力が必要になるんです」
竜「……」
巫女「……竜神さまの言いたいことはわかっています、ですが……」
竜「捨ててはおけぬか……」
巫女「……はい!」
竜「よかろう、伝達の一匹を除いて6匹の使い魔をすべて護衛に付けよう。それが条件じゃ」
キキキキキキッ
巫女「みんな……」
竜「何かあったらすぐに連れて帰るようには言う……よいな?」
使い魔「キキッ……」
竜「お主はまだ幼い……危険な場所へ出向かなくてもよい、伝達にだけ専念してくれ」
巫女「行ってきます……」
竜(ダメ、行ってはいけない!)
「それではこちらです……」
竜(どうして止めないの!!危険だとわかっているのに!)
竜「こう言ったらもうお主は止められんからのう……無事を祈るだけじゃ」
竜( ど う し て 私 は 止 め な か っ た )
――――――
―――
―
「いやぁ、竜神様。お久しぶりです」
竜「お主か……よく顔を出せたものじゃのう、何のようじゃ」
「あの悪魔の子の処分の話についてですよ」
竜「やはりな……」
「ご安心を、今頃は既に始末されていると思いますので」
「これであなたを操る悪魔はいなくなりました、新しい巫女を用意いたしますのでしばしのお時間を……」
竜「いらんと言っておるのが聞こえなかったようじゃのう」
「あなたは呪いをかけているのです、無意識に我が村に呪いを」
「生贄さえその腹に収めてくれれば収まる事です、さぁ受け入れてください」
竜「……ワシは、生まれてこの方人間など食った覚えは無いわ」
「……なんだって?」
竜「今まですべての者をこっそり逃がしてきておった」
竜「たまに家族ごといなくなる事件もあったハズじゃろう?」
竜「お主らは心中したと思っていたらしいが、皆ワシが手引きして逃がした」
「……どういう事だ……」
竜「まさしくそういう事じゃ、今までお主らが信じてきたものは全て幻想全部無駄」
竜「無駄無駄無駄……残念じゃったのう」
竜「現にお主らが言うあの悪魔の子はワシが過去に逃がした者の孫だそうじゃ、因果は巡り巡る、おもしろい話じゃ」
「あ……ああああ」
竜「そして、そろそろ帰ってくるはずじゃ」
ギッ……ギギッ……
ドサッ
竜「ワシの使い魔……っ!何があった!!」
巫女「竜神……さま……」
竜「シルフィア!!」
「おーおー、領主様が何やら半狂乱だぞ?」
「貴様らか!助かる、その娘を早く殺せ!全部なかったことにする!!」
巫女「竜神さま……ごめんなさい……」
「残念だが、この娘は殺せないな?」
「何……!?」
竜「……お主ら、ワシを嫌っておる連中か?」
「ああそうさ、お前のせいでこっちはそこの貴族に散々接収されてきたんだからな!」ドンッ
「ヒィイ!!」
竜「使い魔は……全滅か、スマン……」
竜「お主らの要求はなんじゃ?ワシの命か?」
「御名答、アンタがいなきゃ俺たちはこんな生活から抜け出せるんでね」
巫女「違う……そうじゃない……!」
巫女「この村は皆が……変わらないといけないんです……」
「うるせぇ黙ってろ悪魔め!!」
巫女「うぐ……」
竜「貴様!その娘に手を出すな!!」
「随分とコイツに酔いしれてるみたいだな……ま、人質ってところだ」
竜「……ワシが死ねばその者の命は助かるのか?」
巫女「竜神さま!!」
「ああ、約束は守ろう」
竜「そうか……ならばこの命、喜んでくれてやろう」
巫女「そんな……どうして……」
竜「お主はワシの友達じゃ、ワシの愛した人間じゃ……命を賭して守って何が悪いか」
巫女「……」
「そんじゃ、早速その首貰うぜ!!」
「悪魔の子めがあああああああああ!!!!」
竜「!?」
「領主め何を!?」
巫女「ア……」
竜(目の前に血が飛び交う)
竜(私の愛する者が刺された、綺麗な色の赤で染まっていく)
竜(全てが私の招いた事。愚かな私の招いた結末)
「全部!全部お前が招いたことだ!!全部お前が現れた事で狂ったんだ!!」
「クソッ!領主を止めろ!!コイツに死なれたら俺たちが……!」
竜(私の意識が無くなった)
竜(目の前で起きている惨劇から目を逸らす為に)
竜(焦げた臭い、飛び散る臓物。原型の無い人の形)
竜(私の意識が覚めるとき、そこには彼女と私の声だけが残った)
――――――
―――
―
竜「……シルフィア」
巫女「竜神さま……ご無事……ですか?」
竜「お主を虐めた者どもは全ていなくなった……安心せい」
巫女「ダメです……それじゃあダメ……だよ?」
竜「少しへたっぴじゃが、お主に教えてもらった治癒魔法で傷は治した……気分はどうじゃ?」
巫女「……まだ大丈夫だよ、まだ貴女が見えるから」
竜「会話がまったくつながっておらぬではないか……」
巫女「えへへ……そうだね……」
巫女「月……綺麗……」
竜「ああ、星もよく見える……今日はよい天気じゃ」
巫女「凄く綺麗……でも、貴女は本当の……空を知らな……い」
竜「そうじゃ、この洞窟の天井の大穴から見える空がワシの空……それ以上は知ることは無い……これからもずっと」
巫女「……貴女の見た夢を……忘れちゃった?」
竜「ワシが空を飛ぶ夢か……覚えておる」
巫女「うん……忘れ……ないで」
巫女「いつか……きっと……貴女を……セルフィナを……助けてくれる人……会えるハズだから……」
竜「ワシは……お主に助けて欲しかった……」
巫女「ううん……私じゃダメ……貴女の相手は……勇者の王子様じゃ……ないと……」
竜「そんなもの……そんな幻想……」
巫女「……セルフィナ……貴女は、あの大空を飛んで……その後に……何かしてみたいこと……ある?」
竜「ある……山ほどある!いろんな町へ赴きたい!人との交流もしてみたい!海も見てみたい!ここらへんじゃ降ることのない雪というものも見てみたい!!」
竜「もっと美味いものを食べてみたい!!もっと沢山遊んでみたい!!両親の形見の剣を……取り戻したい!!」
巫女「うん……だから、あきらめちゃ……ダメ」
竜「嫌じゃ……全部、全部全部全部全部!!!!お主と一緒出なければ嫌じゃ!!!!」
竜「だから……」
竜「貴女の代わりなんて……何もいらない……」
竜「私は……貴女じゃないと……ダメになる……」
巫女「代わりなんかじゃないよ……その王子様は……セルフィナを見てくれる人……私以上に……」
竜「……そうだ……貴女を助ける方法……ある……」
竜「竜の秘術を使います……今なら分かる……」
竜の涙で心を洗い
汚れ無き血でその体を洗い
大いなるその鱗ですべてを覆う
死した体は甦る、竜と成りて蘇る……
人の命弄びし秘術、竜と成りて蘇る……
巫女「だ……め……」
竜「何故!!私は貴女を……目の前で失いたくは無い……」
巫女「ダメ……セルフィナ……自分の都合で命を弄んでは……」
竜「こんな別れ……」
巫女「……私は……元々病で……命が尽きるハズ……だった……」
巫女「それが……ちょっと……ほんのちょっと……早くなった……だけ」
竜「こんな……こんな辛い思いをするのなら……」
竜「初めから……出会わなければよかった……」
竜「誰かを愛することを知らなければ……こんな気持ちになんて……ならなかった……」
巫女「違うでしょ……セルフィナ……」
巫女「貴女との出会いは……私にとってはかけがえの無い……」
巫女「全てのものに……感謝……だよ?」
竜「……嫌だ、言いたくな……言ったら……お主が消えていくのを認めてしまう……」
巫女「ありがとう、セルフィナ……私を愛してくれて……私に、愛されてくれて……」
竜「う……あ……」
巫女「そして……さよならは……言わない……」
巫女「ガラスの海で……また会おうね……」
竜「いや……」
竜(いや……)
竜(あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!)
――――――
―――
―
竜(一つの歯車がかみ合っただけ)
巫女(そして一つの歯車が狂い始めただけ)
竜(貴女の世界は終わってしまった)
巫女(でも、あなたの世界は始まった)
竜(何の希望も持てなかった)
巫女(あと少しだけ待ってみて)
竜(もう何千年と待ち続けていた)
巫女(後数百年でもいいから待っていて)
竜(もう待つことに疲れてしまった)
巫女(諦めないで、彼が来る)
竜(彼って誰?)
巫女(貴女が与えた命の一つ、巡りに巡る、因果は巡る)
竜(私が与えた命は無い)
巫女(確かにあなたが与えた命)
巫女(だって、彼の名は……)
――――――
―――
―
竜(そこから私は、ずっと一人だった)
竜(あの日からもう、誰もこんな場所には寄り付かなくなった)
竜(眠っては起きて、眠っては起きて。そんなことを繰り返して)
竜(私の体は着実に衰えて行った。鍛えていないせいではない、おそらく老化が始まったのだろう)
竜(あれから数百年間生き続け、私もすっかり老け込んでしまった)
竜(天井の大穴から見える空は、今日も手の届かないところにあるだけ)
竜(あの時と何も変わらない、彼女が死んでも世界は回る)
竜(私はずっと一人ぼっち……)
使い魔「キキッ」
竜「そうか……お主がおったのう、スマンスマン」
竜(あの時伝達係で生き残った幼い使い魔の末裔だ)
竜(……立派な血統書付き……?)
使い魔「キキッ!!」
「何だよここ……流石に云百年放置してるだけの事はあるな……苔だらけだな」
竜(誰か来た、誰だろう?)
「洞窟の癖になんかやたらシッカリした作りだな……アレ?何だこれ、術式?」
竜(まるで聞き覚えの無い声、でもどこか安らぎさえ感じる)
「ウチの先祖が竜に助けられたなんて話、信じられないな……」
竜(助けた……私が?)
騎士「戦争間近で相手国に利用されるかもしれない竜の見張りでこんな場所に派遣されるなんて、ツイてないよホント」
竜「……不満そうじゃな、小僧」
騎士「……竜……ホントに……いたんだ……」
――――――
―――
―
これは私の始めの記憶
私と貴方が出会う事
あともう少しで解き放たれる
優しい声のあの記憶……
煌めく風のあの記憶……
これは現実、今が見せるプロローグ
私が出会う物語
貴方と出会う物語
――――――
―――
―
巫女(私は、貴女に救われた。私は貴女に愛された)
巫女(だから彼にもそうしてあげて、彼が貴女を救うから。貴女が彼を救うから)
巫女(……セルフィナ、私は待ってるよ。このガラスの海で)
巫女(ちょっとくらい遅れたっていいから……彼の傍にいてあげて)
巫女(これは夢、貴女が見ている夢の中。私と見ている夢の中)
――――――
―――
―
騎士「セラ……おーい、セラ。朝だぞー?」
竜少女「む……ん?」
騎士「おはよう、寝覚めが悪そうだな」
竜少女「ヴェイド……おはよう」
騎士「お前朝は弱いなホント」
竜少女「うるさいのぅ。起こしてくれる者が居なければそのまま数百年ぶっ通しで眠ってしまう体質なんじゃから仕方なかろう!」
騎士「朝飯、作ってみた」
竜少女「ゲッ!?どういう風の吹き回しじゃ!?」
騎士「そりゃどういうこった!?」
竜少女「というよりのぅ……お主の作る飯は不味くて仕方がないんじゃ」
騎士「お前の舌に合わないだけだ、俺に取っちゃこれが普通だ」モグモグ ペッ
竜少女「オイ今何口から捨てた?」
騎士「気のせいだろ、さぁ食え」
竜少女「……ワシが作り直すから待っておれ」
騎士「わるぅ御座いましたね不味くてさ!」
竜少女「やれやれじゃ」
竜少女「……のう、ヴェイド」ジュージュー
騎士「なによ?」
竜少女「なんか不思議な感じじゃのう」
騎士「だから、何が?」
竜少女「こうしてお主と冒険者として旅をしておることがじゃ」
騎士「なんでそれが不思議なんだよ」
竜少女「幽閉されておったワシがこうやって表へ出て、野宿をして」
竜少女「時に空を飛びまわり唄を唄う……昔のワシからしてみれば考えられんことじゃ」
竜少女「……全部お主のおかげだと思っての」
騎士「いや、そもそも封印の術式を解いたのって俺じゃなくてあの仮面の魔王の部下だからな?」
竜少女「連れてきたのはお主じゃ、変わらん」
騎士「……なんか気持ち悪いな、突然」
竜少女「いい、気にするな。ただの戯れじゃ」
竜少女「ホレ、作ってやったぞ。ありがたく食え」
騎士「いつもありがたいと思ってるよ、いただきます」モグモグモグ
竜少女「ありがとう……こうやって、私を愛してくれて……」ボソッ
騎士「さっきから何よ!?」
竜少女「気にするな!さて、次の街へ向かうぞ!!」
騎士「おいちょっと待てまだ食ってる最中……オイ引きずるな!バカやめろ!!」
竜少女(私に残された時間はもう少ないけれど、シルフィア)
竜少女(私は最後の時まで彼に、貴女に言えなかった分、感謝をしようと思います)
竜少女(ガラスの海で会うのは……まだ先でいいよね?)
騎士「セラァァァァァ!!首!!首締まってる!!!」
竜少女「竜のお主がその程度で死ぬワケないじゃろう、ほら立て」ガスッ
騎士「おうふ」ガクッ
竜少女(彼に永遠を与えてしまった事への罪滅ぼし……もう少しだけ、あともう少しだけ)
竜少女(ありがとう、シルフィア。ガラスの海でまた会おう!!)
巫女「優しい声は」竜「竜の唄」
終わり
一回長編書いてるとなんかいろいろ吹っ切れた
1日でこの程度かけるなら前回そうしろよって話だけど
プロット先に考えるだけでここまで違うのね
見ていた人がいたらお付き合いありがとうございました
最後らへん竜の口調が戻ってるハズなのにお主とか言っちゃってる死にたい
プロットは出来てるんで続きはいつか書きます
いつになるかは知らんけど
やるのは別スレになります
ここHTML依頼出しちゃってるし
それにタイトルも変えたいので
当分は別のまったく関係ないSS書くつもりだけど
このSSまとめへのコメント
読み終えてもまだ涙でる(涙)