男「夜空の色は」死神「空ろ色」 (56)

死神「こんばんは」

男「……君は誰だい?」

死神「俗に言う死神です」

男「小さな死神さんだ」

死神「よく言われます」

男「僕に、何か用かな?」

死神「死を告げに来ました」

死神「あと3日です」

男「そうか」

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死神「信じるのですね」

男「うん、そのくらいで自害しようと思ってね」

死神「自害ですか」

男「色々、嫌になってしまった」

死神「生きることは嫌ですか」

男「うん、嫌だね」

男「君はどうして僕に死を告げに来たの?」

死神「あなたが寂しそうだったから」

死神「それだけです」

男「寂しそうだからか」

男「僕はどんな死に方をするんだい?」

死神「言えません、死を告げても方法は言えません」

男「そうか、残念だ」

死神「夜空、綺麗ですね」

男「綺麗だね」

男「僕はね、ここで天体観測するのが日課だったんだ」

死神「素敵な趣味ですね」

男「うん、誇れる趣味だよ」

男「そうか……僕も、3日後にはあの空に輝く星になるんだね」

死神「どんな動物も、死んでも星にはなりません」

死神「ただの肉塊になるだけです」

死神「タンパク質の塊です」

男「うん、知ってるよ」

男「そう思わなきゃ、死んでも救われないよ」

死神「……」

男「冷えるね」

死神「もう冬になりますから」

男「死神さんでも寒がるんだね」

死神「死神はそういう名前の生き物ですから」

男「へぇ、生き物なんだね」

死神「はい、生き物です」

死神「人間とさほど変わりはありません」

男「僕はそろそろ家に戻るよ」

死神「そうですか」

男「君はどうするんだい?」

死神「寝泊りする場所がありません」

死神「お邪魔します」

男「うん、いいよ」

男「ここが、僕の家だよ」

死神「片付いてますね」

死神「何もありません」

男「持っていかれてしまったからね」

死神「持っていかれてしまったんですか」

男「うん、怖いお兄さんたちにね」

男「お腹は好かないかい?」

男「パンと牛乳くらいならあるよ」

死神「いただきます」

男「はい、どうぞ」

死神「…………」

死神「あなたは食べないんですか」

男「僕には必要ないよ」

死神「必要ないんですか」

男「うん、もう食べないからね」

男「お風呂はいいかい?」

男「水も出ないけどね」

死神「いいです、必要ありません」

男「そうだよね」

男「でも、3日間も君はどうするつもりでいるんだい?」

男「娯楽もないし退屈だろう」

男「お風呂も入れない、食事もろくに出来ない」

死神「構いません」

死神「あなたの死が確認できればそれでいいです」

男「それじゃあ、僕は眠るよ」

男「お腹が減り始めたら嫌だからね」

男「それで死ねたらいいのだけれど」

死神「3日後までは死にません」

死神「多少前後はしますが、これは絶対です」

男「そうか、残念だ」

男「……」

死神「……」

男「君は眠らないのかい?」

死神「襲われるのは嫌なので起きています」

男「僕はそんなことはしないよ」

死神「冗談です、今眠る必要がないだけです」

男「夜更かしかい?」

死神「はい、夜更かしです」

男「……」

死神「……」

男「……」

死神「眠りましたか」

男「……」

死神「おやすみなさい」


――――――
―――

男「……」

男「……朝か」

死神「おはようございます」

男「おはよう、夢じゃなかったんだね」

死神「はい、夢ではなかったです」

男「それなら仕方ないね」

死神「出かけるのですか」

男「ご飯を買いにいこう」

死神「もう食べないのではないですか」

男「食べることにしたよ」

男「いつ死ぬか分かったからね」

男「どうせ死ぬなら我慢してても仕方がない」

死神「仕方がないですね」

男「何か食べたいものはあるかい?」

死神「特には」

男「着いてくるんだね」

死神「はい、着いていきます」

男「君は他の人には見えていないの?」

死神「よく見えていません」

死神「あなたにだけ見えて、あなたにだけ声が聞こえます」

男「そうか」

死神「でも、あなた以外でも触れることは出来ます」

男「着いたね」

死神「コンビニですか」

男「うん、お金そんなに持ってないしね」

死神「私の分はいいですよ」

死神「必要になれば、自分でどうにかしますから」

男「いいよ、大した物は買えないけど」

男「どれがいい?」

死神「シャケで」

死神「他は嫌いです」

男「うん、わかったよ」

男「飲み物は、また牛乳で」

死神「はい、大丈夫です」

男「結構買ってしまったね」

死神「買ってしまいましたね」

男「今開けるよ」

死神「お願いします」

男「ずいぶん美味しそうに食べるんだね」

死神「はい、美味しいです」

死神「あなたの分は少ないですね」

男「君の分で手一杯だったみたいだね」

死神「ごめんなさい」

男「夕方になってしまったね」

死神「夕方ですね」

男「そろそろ行こうか」

死神「どこへ行くのですか?」

男「夜空を見に行くよ」

死神「そういえばそうでしたね」

死神「寒いですね」

男「今日は一段とね」

死神「何か見えますか?」

男「今日は曇ってるや」

男「帰ろうか」

死神「帰りましょうか」

死神「あと2日です」

男「うん、そうだね」

死神「遣り残したことはないですか?」

男「色々あるよ」

死神「あるんですか」

男「うん、でもやりきるのは無理だね」

男「たくさんありすぎる」

男「ご飯がなくてごめんね」

死神「朝の残りがありますから」

男「ちゃっかりしてるね」

死神「ちゃっかりしてます」

男「僕はそろそろ眠るよ」

死神「おやすみなさい」

――――――
―――


男「朝……」

男「……あと2日」

死神「……」

男「……おはよう、眠っているのかい?」

死神「……」

男「朝は弱いみたいだね」

死神「今起きました」

男「大丈夫かい?」

死神「大丈夫です」

男「今日は何をしようか」

死神「何をしますか?」

男「そうだ、手紙でも書こう」

死神「手紙ですか」

男「両親に書くよ」

男「先立つ不幸をお許しください」

男「親不孝者だね」

死神「親不孝者ですね」



カタン

死神「何か来ました」

男「手紙だね」

死神「変な封筒」

男「借金の通知だ」

死神「借金ですか」

男「逃げた恋人の連帯保証人だからね」

死神「大馬鹿ですね」

男「うん、知ってる」

男「これが原因だね」

死神「どうしようもないですね」

男「うん、どうしようもない」

男「僕が選んだことだから仕方がないよ」

死神「……」

男「夕方になるね」

男「お腹は減らないかい?」

死神「あれば食べます」

男「残念何もないよ」

死神「残念」

男「今日はよく晴れているね」

死神「夜空が一層綺麗ですね」

死神「あ、猫がいますね」

男「チョコチョコ動いて、まるで君みたいだ」

死神「私みたいですか」

男「うん、可愛いよ」

男「ここから見る景色はやっぱりいいね」

死神「いい場所ですね」

男「猫座はないかな?探してみるよ」

死神「猫の星座はありません」

死神「昔はあったみたいですけど」

死神「今は無いです」

男「うん、知ってる」

男「最後の夜だから、新しいものでも見つけたかったんだ」

死神「明日のこの時間です」

死神「あなたが死んでしまいます」

男「死に方は?」

死神「教えません、そのときになったら分かります」

男「そうだよね」

男「そのときまで楽しみにしているよ」

死神「……」

死神「明日のこの時間だったら」

死神「また夜空は見えます」

死神「見ないのですか」

男「明日は見ないよ」

男「もう空っぽだからね」

死神「空っぽですか」

男「うん、僕の心が空っぽ」

男「帰ろうか」

死神「帰りましょう、寒いです」

男「寒がりだね」

男「おいで、暖めてあげるよ」

死神「はい、暖めてください」

男「それじゃあ行こうか」

男「最後の夜だね」

死神「最後の夜ですか」

男「眠るのはこれで最後」

男「……」

死神「……」

男「……」

男「……」

死神「……」

男「泣いているのかい?」

死神「泣いてはいません」

死神「泣いているのは」

死神「あなたです」


――――――
―――


男「……最後の朝か」

死神「……」

男「おはよう」

死神「……」

男「……なんとか」

男「……なんとか言ってくれよ」

死神「……」

男「眠っている分けではないよね?」

死神「……」

男「ご飯は食べる?」

死神「……」

男「気に入らなかったかい?」

男「それじゃあ遊ぼう!」

男「僕と遊ぼうよ!」

死神「……」

男「おい……」

男「何とか言えよ!!」

男「何が気に入らないんだよ!!」

死神「……」

男「……何か話そうよ……」

男「寂しいよ……辛いよ……」

男「嫌だよ……やっぱり死にたくなんてないよ……」

男「……1日」

男「……無駄に過ごしたな」

死神「……」

男「もう嫌だ……死のう……死ねるかな」

死神「……」

タッタッタ

男「え……?」

男「どこへ行くんだい?」

男「まってよ……」

男「僕を一人にしないでよ……」

死神「……」

男「待ってよ……待てってば!!」

死神「……」

男「ここは道路だよ?」

男「こんなところに飛び出したら危ないじゃないか」

男「さぁ、帰ろう」

男「帰って、僕が死ぬところを見ていてくれるんだろう?」

死神「……」

死神「……」

死神「最後くらい」

男「え?」

死神「最後くらい、自分で決めたらどうですか?」

男「……」



ズッ


「キャーーーーーー!!」


「人だ!人が轢かれたんだ!」


「何やってる!早く救急車呼べ!」


「運転手!逃げるなよ!」

死神「馬鹿みたいですね」

男「ウゴ……ガ……ア……ア」

死神「最後に私を庇って轢かれて」

死神「あなたが選んだことですよ」

死神「やっと……あなたが、ちゃんと死ぬことを決断したんですよ」

男「……アガ……」

男(そうか……)

男(そうだよね)

男(今まで何やってたんだろう)

男(借金背負って誰にも頼れずダラダラ生きて)

男(明日死のう、また明日死のうと何日も何日も)

男(結局最後は自分に3日の期限なんて付けて)

男(死ぬ気なんて、さらさら無かったのに)

男「バカ……みたいだ……な」

男「最後の……最後に……善行のつもり……か?」

男「猫相手に……ずっと一人で……喋りかけて……」

死神「……」

死神「ニャー」

タッタッタ

男「……ホント……」

男「……」

男(嫌だな……)

男(お父さんとお母さんに会いたいな……)

男(まだ生きていたかったな……)

男(死にたくない……)

男「……あ」

男「空……綺麗……だな」

男「……」

男「……」


――――――
―――



死神「空ろな心のあなたが最後に見た景色は何色ですか?」

死神「猫の私に話しかけて、寂しさは紛らわせることが出来ましたか?」

死神「結局、私との会話は全部あなたが妄想した出来事でした」

死神「私は、あなたが創造した猫の皮を被った虚空の存在でした」

死神「だから付き添いましょう」

死神「あなたが作り出した私という存在は」

死神「あなたが満足するまで、ずっとそばにいましょう」

死神「あなたが寂しくないように」

死神「あなたが夜空の星になるまで」

死神「ずっと」



男「夜空の色は」死神「空ろ色」 終わり

終わった
突然思いついたネタ書きなぐったらスーパー電波になった
でも楽しかったからいいや

流石に今回はいないと思いますが、お付き合いしていただいた方がいましたら、どうもありがとうございました

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そこはどう文にしていいか分からずに変な事になってしまいました
私の表現力不足ですね

まったく無いです

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