ヤママヤ (36)


艦これSS

同じ艦娘が複数体存在するなど独自設定、キャラ崩壊、地の文注意


提督「成層圏で昼食を」
提督「成層圏で昼食を」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1413/14132/1413284883.html)

ちっさい金剛型一番艦
ちっさい金剛型一番艦 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1408/14084/1408413778.html)

の続きのようなもの


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1422073824


平和、というものはとてもいいものだと思う

誰かに生活を脅かされずに、安心して眠れる

防波堤のコンクリに横たえていた身体を起こし

ぐっ、と伸びをすると同時に正午を知らせるサイレンが鳴った

ついこの間まで、アタシ達は平和じゃなかった

深海棲艦という侵略者に、日常を脅かされていた

アタシ達はそんな日常を打破するために造られた兵器

艦娘

平和な今では、既に用済みとなった存在なのだ


切っ掛けは、とある提督のブッ飛んだ行為だった

艦娘と共に前線に出て、深海棲艦に降伏勧告を行った

誰もが馬鹿げていると思ったし

アタシの提督も馬鹿げていると言った

戦後に公表された話では、既にこの頃に深海棲艦とのコンタクトを取っていたらしい

アイツらはただ、怨嗟の念に囚われて暴走していた船霊だった

アタシ達と同じ、船霊だった

違うのは

アタシ達艦娘は、提督の近くに居て巫力を得ないと実体を保てなかった事くらい


アタシ達艦娘は、過去に沈んだ艦からサルベージされた船霊

その一つの船霊から分霊され、艤装諸々と組み合わせて札に封じられて完成し

術者、つまり提督によって召喚される

深海棲艦は、海の中に散らばった船霊が寄り集まって発生する

数年間敵だと思って戦っていた相手が、だ

同じ船霊どうしで撃ちあっていたのだ

たくさん撃ったし、たくさん撃たれた

アタシは沈まなかったけど、沈めた

沈めなかったけど、沈んだヤツもいた

そんなアタシ達は今


アタシを呼ぶ声に、ふと振り向く

チ級、深海棲艦のチ級が、アタシに見えるように大きく手を振りながら歩いてくるのが見える

今はそれくらいの、仲間だ


「何してるの?」

「昼寝。さっきまで寝てた」

「いいお天気だもんね」


コイツの顔は仮面に隠れていて判りにくいが、僅かに見える口元は微笑みを湛えている


「何か用か?」

「あ、ご飯食べに行く途中で、摩耶が見えたから一緒に行こうと思ったの」


どうかな?と、少し不安げにこちらを伺ってくる

こういうお節介焼きというか何と言うか、まぁ、こういう性格はとても古鷹に似ていると思う

恐らく断ったら、とても寂しそうにするんだろう

アタシはそれに耐えきれる程冷血じゃない。一緒に行く事にした


戦いが終わってから、世界は変わった

いや、正確にはアタシ達の立場が変わったから、そう思えるんだろう

ある鎮守府は、艦娘を踊り子に歌劇団を立ち上げた

ある鎮守府は、海上運送会社を立ち上げた

ある鎮守府なんかは、丸ごと宇宙ステーションになった

次世代型艦娘なんてモンも開発された

戦う事以外を任される艦娘が増えた

アタシも今は、深海棲艦達の社会適合プログラム……

まだるっこしい言い方は嫌いだ。深海棲艦の学校の教師をやっている


けどアタシは、やっぱり戦いたいんだ

食後、いつも通り防波堤の上で海を眺める

右腕の主砲を展開し、水平線に向ける

射線の先に居たのは、いつだって敵だ

戦いたい理由を提督に聞かれた時、アタシはこう答えてやった

アタシが兵器だから

それだけで充分だと思う

提督はアタシの事を兵器じゃないと言ったが、だったら何なんだ


そういえば一度だけ

たった一度だけ、提督に砲を向けた事がある

深海棲艦の正体が、バシー島からの映像で公表された日

深海棲艦との戦いを止めようとした提督に、アタシ達は砲を向けた

それは、大本営が仕組んだマインドコントロール、いや、プログラムか

深海棲艦トノ戦闘ヲ止メル障害ハ、全力ヲ以ツテ是ヲ排除セヨ

完全に自我を失ったアタシ達四姉妹を、提督はいとも容易く無力化した


アタシ達は何も知らなかったのだ

アタシ達より前に提督達が深海棲艦と戦っていた事も

アタシ達が提督に逆らわないようなプログラムを仕組まれていた事も

そのプログラムすら上塗りするようなプログラムが仕組まれていた事も

提督が大本営に逆らわないような洗脳を受けていた事も

その洗脳がバシー島からの映像に仕込まれた術によって解かれていた事も

少しだけ、記憶の片隅に残っているのは

砲を向けられた提督は、笑っていた

次の瞬間には、アタシ達はその場で仰向けに倒れていた


遠く、カモメの鳴き声で我に返る

雲一つない青空の下、悠々と飛ぶ鳥達の姿が見える

アタシはもう、鳥のように自由なはずだった

いや、もしかしたらずっと自由だったのかもしれない

なのに消えないこのモヤモヤした感じを抱えたまま

アタシは今日も大きな欠伸をした

スレタイミスってた


×ヤママヤ

○マヤヤマ


「ふぅん……ウチの事、大切に思ってくれてるん?」

「あぁ。もちろん君だけじゃないが、ね」

「……そんなん言われんでも判っとるよぉ。オトメゴコロっちゅーもんが解っとらんねぇ、キミは」


いつだったか聞いたやり取り

感情があって、言葉でやり取りが出来る、兵器

情を移すな、と言う方が無理なんだろうか

それともアタシ達が船霊だからだろうか

いいぞ。もっとアタシを敬え。崇めろ


やめよう。虚しい


例によって例の如く、アタシは防波堤の上から水平線を眺める

ふと、海上を水平線に向かうチ級とリ級が見えた

向こうもコチラに気付き、手を振る

二言三言交わしてコチラに向かって来たのは、やっぱりチ級だった

手には綺麗な花束を携えている


「よお、どこ行くんだ?」

「バシー島だよ。姉妹の墓参りに、ね」


バシー島には、チ級二人の墓がある

艦娘が建てた墓だ

三人で撤退中の艦娘を護衛し、そこで力尽きた勇士だと聞いている

もう一人生き残りのチ級がいるが、それは目の前のコイツじゃない

それでも姉妹と言い切るのは、同型だからだろうか

同族だからだろうか


「摩耶も……あ、流石に行かない、よね」


同族、か


「いや、行く」


バシー島沿岸部の崖にぽっかり空いた洞穴

二人の墓はその中にある

前衛基地の連中が手入れしているのか、周りは綺麗なモノだった

仲良く並べられた二つの墓標に手を合わせる

同族、姉妹、家族

アタシ達と深海棲艦

アタシと高雄達

アタシと


「家族を気遣うのは当然だと思うんだが……」


鎮守府のヤツラ、という事になるんだろうか


他の所の摩耶は、どう思ってるんだろう

ふと、例の歌劇団のポスターを横目に思う

そこには化粧をして、髪型も変えて男装した摩耶が、デカデカと写っていた

女性からの人気が高いらしい。他には、千歳や那智も

自分に似ている人は世界に三人はいる、というのは人間の話だそうだが

アタシ達は片手で数え切れないほどいるのだ




またアタシは防波堤の上から水平線を眺める

いつもと違うのは、高雄達、姉と妹が横に並んでいる事


「家族を心配するのは当たり前よ」


アタシはいつも一人でどこかに行くから、心配だったらしい

家族を心配するのも当然らしい

少しウザい

少し照れくさい

でもなんだか嬉しい

アタシの胸の中は、まだモヤモヤしている


そういえば前に、アタシの誕生日というモノを祝ってもらった事がある

その日は何故かあきつ丸に散々街を歩き回された


「どこか……コッチの方であります。多分」

「本当に行先決まってんのか?」

「き、決まっているであります」

「……どこだよ」

「秘密、であります」


そんなやりとりを数十回繰り返しながら、ただ歩いていただけだった

そうして謎の長時間歩行訓練を終えて鎮守府に帰ってきたアタシ達を迎えたのは、盛大なクラッカーの音

誕生日おめでとう、という台詞

戦時中だと言うのにイチゴの乗ったケーキや、豪勢な料理の数々


ウザかった

アタシなんかを気に掛ける提督が

姉妹が

仲間が

家族が

ウザくって

なのに嬉しくて


ぼうっとしているアタシを見て勘違いしたアイツは言った


「イチゴは嫌いだったか?」


その顔とセリフだけで、アタシは大笑いしてしまった

イチゴは全部頂いた

それ以来だ

この鎮守府は、全員の誕生日を祝うようになった


今、こうやって四姉妹で並んで雑談している時間が

あの時と同じように、少しウザくって、少し嬉しい

悩みというモノは、人に話す事で楽になる事もある

そんな言葉があるが、正にその通りなんだ、と思う

詰まる所、アタシは小さな事で悩んでいたのだ

1足す1がどうして2になるのか、そんな感じで

アタシらしくない、どうでもいい事で悩んでいたのだ


アタシは兵器で

でも戦争は終わっていて

だから何だ

アタシは摩耶様だ

今日も雲一つない空のした

アタシは大きな欠伸をした


――マヤヤマ・おしまい

お粗末様でした
おまけが少々


――おまけ


サイレンが響く

いつもの正午を知らせるサイレンではなく、防災のサイレンだ


「総員戦闘態勢!準備が出来たモノから正門に集合せよ!」


身体を起こし、海を見る

何も無い、いつも通りの平和な海が広がっている

陸の方だろうか

ともかく正門の方に向かった


情報が足りなかった

街中で怪物が暴れているから何とかしてくれ、だそうだ

怪物。深海棲艦では無い。だったら何なんだ

その答えは街に出てすぐに解った

真っ黒な身体をした巨大な熊のような何かが、手当たり次第に暴れていた

なるほど怪物以外に何とも言いようが無い

そんなのがざっと数百体以上は居たのだ

なんだか嫌な予感がした


その予感は的中した

アタシ達の攻撃でどんどん倒せるとは言え、単純に数が多いのだ

倒しても倒してもキリが無い

悲鳴と共に、視界の隅で愛宕が怪物の体当たりをモロに受けていた

地上じゃまともに避ける事も出来ない

怪物が一気に雪崩れ込んでくる

提督が後退を叫びながら、自身はその場から動かず艤装の小銃を乱射している

一度崩れた戦列は、そこに数で攻め込まれれば立て直すことが出来ない

黒い塊がアタシ達を飲み込もうとしていた

目の前に、骸骨のように白い怪物の顔が迫る

思わず目を閉じてしまう

両舷後進一杯

スクリューが、虚しくアスファルトを擦った


耳をつんざく轟音

しかしその音は、何百本の砲を撃っているような音

目を開ければ、怪物達が次々と倒れて行くのが見えた

呆然とするアタシの横を、パンツスーツ姿の女が見た事も無いような砲を構えてゆっくり前進していく

以前見た事があるCIWSの砲身のような、複数の砲を束ねた巨大な筒

そこから放たれる無数の砲弾は、怪物達の群れを押し返すのに充分だった

数秒後、すっかり黒い塊が消えた頃になって振り向いたソイツは、霧島だった


平行世界

球状に広がるパラレルワールド

怪物

「フユノ」と名乗った霧島の話した事は、荒唐無稽な御伽話のようだった

しかし実際にアタシ達が戦った相手がいる以上、紛れもない事実、現実だ

そして、こうしている今でも、先のように怪物に襲われている世界がある

この件を受けた大本営は、フユノの所属する機関「NIRO」に協力する姿勢を表明

これに先立って、有志を募って先遣隊が編成される事となった


先遣隊出発の日。アタシはいつも通り海を眺めていた

隣にはフユノが、同じように海を眺めている


「そういや、深海棲艦と戦ってた時なんだけどさ」

「海域に居た霧島の数と、出撃前後の霧島の数が合わねーって事があったんだよ」

「……数え間違いね。よくある事よ」

「そっか」

「よくある事、か」


先遣隊のテストには一発で合格した

また、戦えるのだ

今度はアタシが兵器だから、なんて下らない理由ではなく

世界を守る、という大層な理由だ


――おまけ・おしまい

お粗末様でした。少しでも楽しんで頂けたなら幸いで御座います

今回は趣向を変えて、これまでの分も含めた質問を受け付けてみようかな、と思います
こういう場合はスレタイだけ羅列でいいのかな


モバマス関連も全部見てきてるつもりだけど、見落としがあったらアレなのでアドレスも併記して貰えると探す手間が省けて有り難い

>>30
毎度ありがとうございます

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一晩明けてみたら大変恥ずかしい事を言っていた事に気付く。あると思います
恥ずかしついでに艦これ世界に関するアレコレ垂れ流しにして終わろうと思います

・艦ゲームシステムをSSに落とし込むにも設定があってないようなモノなので、インタビュー記事にあった初期案の「カードから艦娘を召喚する」設定をチョイス

・ゲーム中の建造、ドロップとは無縁

・提督=妖精(精霊)を使役できる術者。妖精=モノに取り憑いて能力をアップさせる精霊

・艤装=妖精が取り憑いた対深海棲艦用兵器。艦娘が開発されるまでは術者が運用していた

・艦娘=一つの船霊から、頭数を揃える為に分霊した船霊に艤装を持たせた兵器。札に封じられ、術者により召喚される

・深海棲艦=海に散らばった船霊の欠片が集まって出来た船霊。拿捕、研究された事が艦娘開発の切っ掛けとなった

少し続きます

・突如現れた深海棲艦に対して国連艦隊による攻撃(この辺適当)三日三晩にわたる戦闘の後、駆逐イ級一隻の拿捕に成功。艦隊ほぼ壊滅

・拿捕した深海棲艦に有効な兵器の開発に着手。妖精の取り憑いた武器が有効とされ、妖精にサイズを合わせた火器の開発が進められる

・妖精の取り憑いた武器は一般人では使えない為、その主である術者自身が前線に出る事に

・術者だけでは戦力として乏しい為、術者の代わりに妖精の取り憑いた武器を扱えるモノの開発が進められる

・過去に沈められた船から集められた船霊を用いて艦娘が完成


自分の書いた物は全部パラレルワールドなので変わっている世界もありますが、大体こんな感じ
ではまた、機会があれば

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