新訳・ウサギとカメ (13)

※陰鬱注意

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むかしむかし、あるところに、それはそれは仲の良いウサギとカメがおりました

ある日、ウサギはカメにこう言います


「なぁ、カメよ」

「もう長い付き合いになるけれど、いつも何処に行くにも、オマエさんのせいで遅れてしまうんだ」

「こないだの、山のお祭りを見に行く約束だってそうだ。着いた頃には、お祭りは終わってしまっていたじゃないか」

「オマエさんは何でそんなに足が遅いんだい?」


するとカメは、こう答えました


「なぁ、ウサギよ」

「もう長い付き合いになるけれど、いつも何処に行くにも、オマエさんに追いつくのに精一杯なんだ」

「もうちょっと、ゆっくり歩いてくれないか?」


それを聞いたウサギは怒りました


「オマエさんが遅いのが悪いんじゃないか」


それを聞いたカメも怒りました


「オマエさんが速いのが悪いんじゃないか」


二人は散々言い争った結果、近くの丘の上まで競争する事にしました

ウサギが勝てば、カメはもっと速く歩くと約束し

カメが勝てば、ウサギはもっと遅く歩くと約束し

よーい、どんで走り始めました


あっという間にウサギとカメの距離は離れてしまい、ウサギにはカメが、カメにはウサギが見えなくなってしまいました

それでもカメは、一生懸命走りました

ここで走るのを諦めてしまえば、ウサギはきっと自分を嫌ってしまうだろう

歩くのが遅い自分を置いて行くような事はせず、必ず待っている

カメは、ウサギの事を大事な、大事な友だと思っているのです

ウサギとの約束を破る訳にはいかない、そう思って一生懸命走りました


いっぽうウサギは、走るのをやめてしまいました

自分は、カメにヒドイ事を言ってしまったと、気付いたのです

思えばカメは、いくら歩くのが遅くても、必ず自分に着いて来てくれました

おそいぞ、とからかっても、ごめんな、と、曖昧に笑いながら謝る

その顔が憎めなくて、ウサギはカメを、大事な、大事な友だと思っているのです

そうだ、カメに謝らなくちゃいけない

そう思って、道端の切り株に腰掛け、カメを待つ事にしました


けれど

待てども待てども、カメの姿が見えません

待てども待てども、カメの姿が見えなくて

ウサギは寂しくなりました

ウサギは寂しく泣きました

ウサギは寂しく死にました


その数刻後、切り株のそばを、やっとカメが通りました

けれど

カメは気付きません

切り株のそばで寝ているウサギが、死んでしまっている事に

カメは気付きません

切り株のそばで寝ているウサギが、カメを待っていた事に

カメは一生懸命走りました

ウサギとの約束を破る訳にはいかない、そう思って一生懸命走りました


丘の上に到着したカメは、ウサギを待ちました

寝ている横を、わざと起こさなかった事を謝ろうと

カメはウサギを待ちました

ウサギは驚くか、それとも怒るか

カメはウサギを待ちました

何年でも、何万年でも待ちました

それでもウサギが来ないので

カメは寂しくなりました

カメは寂しく泣きました

カメは寂しく死にました


おしまい

『おまけ』


ガチャ


モバP「すまんきらり、遅くなった」

きらり「もーPちゃん遅いにぃ!」

こずえ「……」スー スー

モバP「ん?何してたんだ?」

きらり「ご本読んであげてたんだにぃ!」

モバP「そうかー、ありがとな。どんな本?」

きらり「えっとねー……」


バタン


『おまけ』おしまい

以上、お粗末様でした。HTML化は明日にでも

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