1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2017年12月24日 (日) 02:10:04 ID: lFEhVh8y0

背後に気配を感じて、イヤホンを耳から外した。

ソファに体を預け、反り返るようにして後ろを見やる。

そこには、私の座るソファに肘をかけて身を乗り出しているプロデュ...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2017年11月16日 (木) 00:54:08 ID: 4TBLGcT+0

汗ばんだ手を横着にジャージで拭って、今度はその手でシューズの裏を片足ずつなぞる。

なぞったあとで、少しだけ強めに足を床に打ち付けると、きゅっという音が響く。

左足、右足。...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2017年09月16日 (土) 01:42:16 ID: QcRc5/5m0

あたしたちアイドルは、たくさんの人からの期待に応えなくちゃいけない。

その上で予想を裏切っていかないと、とてもじゃないけど一番になんてなれっこない。

だからこそ、自分の最...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2017年08月27日 (日) 12:48:24 ID: IW6lTeqn0

午前中のお仕事を終え、夏の暑さから逃げるようにして事務所に入る。

すれ違う社員の人たちにお疲れ様ですと挨拶をしながらソファを目指す。

先客がいないことを確認して、ソファに...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2017年08月22日 (火) 15:34:43 ID: ryn1QpcY0

「それ、この前の？」

ついこの前の動物モチーフのお仕事、その撮影の合間に撮った写真たちがモニター上に並んでいたから、思わずプロデューサーに声をかけた。

どうやらプロデュー...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2017年08月18日 (金) 06:20:12 ID: x60B3tho0

「海、行きたいなぁ」

なんとなく、ただの暇つぶしのつもりでテレビで流れるビーチの特集を眺めていたら、そんな言葉が無意識で口をついて出てしまった。

「海、海かー」 ...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2017年07月12日 (水) 03:07:43 ID: gmIz35NR0

「ねぇ、屋上の歌姫のウワサ。知ってる？」

教壇の上で、現国教師の音読する平家物語を子守歌代わりに寝入ろうとしていたところ、隣の席の友人に声をかけられた。

「屋上...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2017年06月08日 (木) 20:08:46 ID: NwQQgSel0

既読『起きてる？』

『起きてるよ』

既読『ちゃんと眠れてる？』

『それなりに』

既読『寝ないとだめだよ』

『分かってる...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2017年04月07日 (金) 00:39:44 ID: dcM+r2Ub0

午後二時、うちの事務所の会議室。

打ち合わせの終了予定時刻から既に一時間が経過した。

よその事務所との合同ライブということもあって、念入りに念入りに確認作業は行われる。

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2017年03月24日 (金) 02:02:28 ID: ZNWwUKBB0

もしもし。

夜更けにごめんなさい。

なんだか寝付けなくって。

……同じ、ですか。

ふふふ。

いえ、何故か、頬が緩んでしまって。

ご迷...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2017年03月23日 (木) 23:47:50 ID: BnLOc9/Z0

お店番をしていると、おきゃくさんに「えらいねー」とほめられます。

ほめられるとうれしいので、お店番をします。

ちゃんとお手つだいをすると、お母さんはちょこれーと...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2017年03月14日 (火) 00:36:48 ID: 64ZzKcsd0

ホワイトデー。

一月前の贈り物にお返しをする日。

わざわざ一月時間を置いてからお返しをするだなんて、なんだか回りくどいなぁ、と思ってしまう。

でも、それが大事な...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2017年03月02日 (木) 22:37:46 ID: leYHHf5W0

アタシは雨が嫌いじゃない。

正しくは、嫌いではなくなった、か。

理由は、まぁ、単純なんだけど。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1488461865

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2017年02月20日 (月) 23:05:05 ID: G5GC7UEv0

ダンスが好きで好きで仕方なくて、どうしても続けていたかった。

そういうアタシの気持ちに反して、アタシが本気で踊ることができる世界はどんどん狭くなる。

アタシの本気を受け入...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2017年02月14日 (火) 00:35:24 ID: lMZfio/z0

バレンタインでもらって何よりも嬉しいもの、って何だろう。

そんなことを少し考える。

やっぱり意中の相手からのチョコレートかな。

となると、女の私に...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2017年01月22日 (日) 01:56:39 ID: xsB5Pcfe0

事務所のソファに腰掛け、いつもの如く読書に興じていたところ凛さんがやってきました。

「お疲れ様。邪魔だったかな」

「……いえ、そんなことは。凛さんはこれからお仕事でしょうか...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2017年01月12日 (木) 01:25:02 ID: 8YGcTchr0

凛「突然だけど、今から問題を出そうと思うんだ」

Ｐ「ほんとに突然だなぁ」

凛「チョコが好きで、かわいい子、誰だと思う？」

Ｐ「魔人ブウ？」

凛「かわい...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2017年01月08日 (日) 03:36:10 ID: UTCGoW4g0

スマートフォンの電源を落とし、顔を上げる。

時計を見やると針は午後3時を指していた。

おやつの時間。

しかし、2時間後に撮影の仕事が控えているから、そうもいかない...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2017年01月03日 (火) 17:11:56 ID: b9hcov4q0

「プロデューサー、そろそろ起きないと。お正月休みだからってあんまりぐーたらしてたらだめだよ？」

そんな聞き慣れた声で目が覚めた。

「あ、やっと起きた。ふふっ、寝...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2016年12月26日 (月) 02:57:02 ID: oaYbpXUL0

「せーんぱい。せんぱい、先輩！」

すぅすぅと寝息を立てる先輩を揺り起こします。

とても安らかで、穏やかで、温かいその寝顔を壊してしまうのはもったいなかったけれど。

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2016年12月24日 (土) 05:41:04 ID: FpW/p1WV0

通話履歴


島村卯月

12月18日　20時11分

12月20日　22時5分

12月23日　23時33分


北条加蓮

12月19日　20時52分
...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2016年12月17日 (土) 17:34:46 ID: QkpiARok0

アタシの今までが崩れていく音がした。

レッスンを終え、帰宅する前になんとなく事務所に寄った。

ただの気まぐれ。なんとなく。

そのせいでアタシは、アタシの今までが...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2016年12月14日 (水) 22:50:59 ID: vv+85nUE0

私の家には一冊の写真集がある。

いつだったか、撮り溜めた写真を写真集として出してみようという話になって作ったものだ。

なんて言ったらいいか分かんないけど……そうだなぁ、オフ...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2016年11月30日 (水) 00:34:20 ID: Qv3eBjyc0

渋谷凛「おはよう、パーティ楽しんでる？」

鷺沢文香「はい、おかげさまで。凛さんも楽しまれているようで何よりです」

凛「うん。事務所の飾り付け、やってくれたんだっ...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2016年11月17日 (木) 01:04:20 ID: IIwdgjic0

機械音と共に紙を吐き出していくコピー機、たくさんの人がキーボードを叩く音、電話の着信音、業務連絡の声。お世辞にも静かとは言い難いこの環境こそが私の読書スペースです。

幸いなことにも...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2016年10月31日 (月) 22:44:05 ID: Yzl0qw5G0

毎年、十月の暮れは賑やかだ。

元々は秋の収穫を祝してのお祭りであったハロウィンだが、現在の日本ではそんな事情などは知ったことかと言わんばかりに若者は奇抜な装いで街へと繰り出し、友人...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2016年10月27日 (木) 00:00:56 ID: VDWYu6GQ0

これまでの人生の中で、誕生日プレゼントとしていただいたもののほとんどは、図書カードでした。

もちろん、図書カードに不満があるわけではありません。

本以外にも、様々な用途に...

1 :  ◆TOYOUsnVr. sagａ 2016年10月22日 (土) 02:00:31 ID: LzSFbzV40

見栄なんて張るだけ損だと思う。事実、私はたくさんたくさん損をしている。

例えば、ある日のレッスン帰りに寄ったファミレス。

いつも通り加蓮がポテトを注文して奈緒が...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2016年10月06日 (木) 01:13:58 ID: +hfZpNLO0

「冷蔵庫に入れてあったはずのプリンがない」

午前中のレッスンと、お昼の収録、ハードな一日の最後にはやっぱり甘いものを、
ということで買っておいたちょこっとだけ高いプリンが、ない...

1 :  ◆TOYOUsnVr. saga 2016年10月03日 (月) 01:07:03 ID: ALbUnFss0

文香「へいらっしゃい」

がちゃり、とドアノブがゆっくりと回り

凛さんが私のいる部屋、第三会議室へと入ってきたため、笑顔でそう挨拶をします。

凛「待って」