島村卯月



■12月18日　20時11分

もしもし、卯月？

うん、今は別に大丈夫だよ。

どうしたの？

え。私は寂しくなんかないよ。

平気。

だって、1週間だけだし。

ちょっとした旅行みたいなものだと思えば、ね。

まぁ、お仕事だしあんまりそんな余裕はないんだけどさ。

はいはい、私も卯月と会えなくて寂しいよ。

心がこもってない、って。何それ。

こもってるよ。

ほんとのことを言えば、ちょっとは寂しい、かな。

もう、からかわないでってば。

ん。ご飯？

夜ご飯はまだなんだ。

さっき撮影終わったとこでさ。

卯月は何食べたの？

へぇ。卯月のプロデューサーと。

そっか。よかったね。

卯月のプロデューサーって卯月に甘いよね。

ううん、大丈夫。

私もこれから食べるし。

あー、何食べようかな。

考えてなかった。

でも、明日も撮影あるし少しだけ何かお腹に入れたら台本の確認するつもりだよ。

あ、そうだ。

お土産ってほどでもないけどさ、卯月にはちゃんと用意したからね。

事務所で渡すと他の子達にも用意しなきゃいけなくなるからまた今度、一緒に出かけるときにでも渡すよ。

いいよ、別に。お返しなんて。

んー、じゃあお言葉に甘えて。

うん。電話ありがとう。

おやすみ。

■12月20日　22時5分

もしもし。

ふふっ、そうだね。二日ぶり。

私は卯月がこうやって電話くれるおかげで、寂しくないよ。

ああ、うん。

ハナコのことはちょっと心配、かな。

いや、お父さんかお母さんが散歩は行ってくれるし、心配ではないんだけどね。

やっぱり、ちょっとね。

電話と言えば卯月、未央になんか変なこと言ったでしょ。

一昨日、卯月と電話してから少し経った後に未央から電話かかってきたよ？

『しぶりん、しまむーから聞いたよ！　ホームシックなんだって？』って。

ふふ。似てた？

そっか。

え。

私のプロデューサーがどうかしたの？

ううん。別に何も連絡来てないけど。

ちょ、ちょっと待って。

そんなこと聞いたの？

いや、焦ってないけど。

それで？

だから、卯月の『凛ちゃんに会えないと寂しいですね』って話にプロデューサーはなんて答えたの？

秘密、って。

ここまで話振っといて、ずるいよ。

ほら、話してって。

……。

私の声が聞けなくて寂しい、か。

ふふっ、ほんとに。もう。

そんなこと言うくらいなら電話してくれればいいのにね。

え、っと。

つまり、私のお仕事に支障が出るといけないから電話しないって言ってたの？

……。

変なとこ、律儀だなぁ。

私から？

私から電話はしないよ。

しないって。

別に、帰ってきたらいくらでも話せるし。

強情とかそういうのじゃないから、ほんとに。

はいはい、分かった分かった。

うん。

おやすみ。

■12月23日　23時33分

もしもし。

ううん。大丈夫。

そろそろ寝ようかな、って歯磨きし終わったとこ。

え。

何？　あれから？

別に何もないけど。

電話？

あー、さっき加蓮と奈緒から電話かかってきたよ。

それだけ、って。

うん、それだけだよ。

プロデューサーに電話は、しないかな。

というか、もしかして加蓮と奈緒と口裏合わせてたりする？

……ならいいけど。

同じこと言われたんだよね。

さっき。

どうせ明日の夕方には帰るし。

せっかくのクリスマスなんだから、って言われても。

明後日？　明後日は普通にお仕事だって。

うん、だから明後日には会うし話すのはそのときでいいよ。

おやすみ。

北条加蓮



■12月19日　20時52分

もしもし。

加蓮から電話なんて、珍しいね。

どうしたの？

ああ、事務所で。

ふーん。未央から聞いたんだ。

え？　ホームシック？

ないない。

未央までそんなこと言ってるの？

…………。

いや、怒ってないよ。

なんというか、新鮮だな、って思ってさ。

電話。

そうそう、いつもはメッセージだから。

こういうのも、たまにはアリかもね。

……。

話、変わるんだけど。

加蓮はクリスマス、予定あったりするの？

ううん、そういうことじゃなくって。

気になっただけ。

それで、どうなの？

あー。

やっぱりお仕事だよね。

その後は？

当ててみようか。

加蓮のプロデューサーに、ご飯誘われてるでしょ。

ふふっ、この反応は図星だ。

私？

私は帰るの、24日の夕方以降だし、何にもないかな。

どうして？

なんでもない、って……。

まぁいいけど。

うん。

おやすみ。

■12月23日　23時10分

もしもし。

大丈夫だよ。まだ起きてた。

何か用事？

クリスマスの予定って、加蓮は加蓮のプロデューサーとご飯行くんでしょ？

それに、この前電話した時教えたでしょ？

いいから、って。

……ないよ。

何にもなし。

25日はお仕事だけど……って。

……あれ、切れちゃった。

なんだったんだろ。

神谷奈緒



■12月23日　23時15分

もしもし。

夜遅くにごめん、って言うなら、明日にしてくれたらよかったのに。

うん。怒ってるよ。

……ぷっ、あはは。

奈緒はほんとにからかい甲斐があるよね。

ごめんって、そんなに怒らないでよ。

奈緒のお土産もちゃんと買ってあるよ。

そういう話がしたいんじゃない、ってどういうこと？

ああ、クリスマスの話か。

残念ながら、今年は家族と過ごすことになりそうかな。

担当プロデューサーに甘やかされてる奈緒とは雲泥の差。

加蓮から聞いたよ。

奈緒、デートするんだって？

……あははは、ごめん。

もう笑い堪えられないよ。

嘘だって、加蓮はそんなこと言ってないし。

でも、ご丁寧にデートコースまで自白してくれてありがとね。

ほら、落ち着いて落ち着いて。

クリスマスの話するんでしょ？

……。

え、私のプロデューサーが？

ふーん。そんなこと聞いたんだ。

奈緒が？

……ねぇ、加蓮と口裏合わせてるでしょ。

どうだか。

ばればれだからね？

で。私のプロデューサーの返事は？

そっか。24日、暇なんだ。

別に、声のトーン変わってないって。

……。

気のせいじゃないかな。

それじゃあ、またね。

担当プロデューサーさんとのデート、楽しんで。

おやすみ。

本田未央



■12月18日　20時50分

もしもし。

未央までどうしたの？

もしかして、私に会えなくて寂しかったり？

え。

私がホームシックって誰から聞いたの。

はぁ、全然そんなんじゃないから。

はいはい、電話貰えたのはうれしいよ。

ありがとね。

ああ、お土産のことも聞いたんだ。

安心してよ。未央のも買ってあるよ。

で。そんなこと言うために電話したの？

なんてね。

わかってるよ、卯月から私のこと聞いて心配してくれたんだよね。

ありがとね。

でも、私は大丈夫だから。

というか、ホームシックなんてなってないからね。

そこは、そこだけは抗議させて。

……うん。

まぁ、私も未央の声聞けて嬉しいよ。

今日は素直って、いつも私は素直だから。

笑うとこじゃないでしょ？

……もう。

うん。

おやすみ。

■12月23日　23時45分

もしもし。

どうせ未央からもかかってくるだろうな、って思って起きてた。

ねぇ、一つ聞いていいかな。

奈緒と加蓮と卯月と、口裏合わせてるでしょ。

そして、用件はプロデューサーに電話しないのか、ってやつ。

違う？

隠さなくていいよ。

というか、こんなばればれで隠せると思ってる？

うん。

電話はしないよ。

明後日のお仕事で会うからね。

……もう、いいかな。

眠くって。

ああ、気にしてないよ。

みんなと電話するのは、楽しいし。

プロデューサーと？

それは、どうかな。ふふっ。

私の話はいいからさ、未央の方はどうなの。

未央は未央のプロデューサーと約束してたりするの？

……。

あー、やっぱり明日明後日は忙しいよね。

アイドルだし。

でも、お仕事終わったらご飯くらいは行くんでしょ？

……やっぱり。

クリスマスディナー、か。

いいね。楽しそうで。

別に。

羨ましくなんかないって。

……ほんとだから。

それじゃ、電話ありがとう。

おやすみ。

着信中

[スライドで応答]

……。

…………。

もしもし。

驚いた。

……私も、かけようとしてたから。

いいよ。

先に電話したのは、プロデューサーだし。

お先にどうぞ？

……。

…………そういえば、そうだね。

もう、今日なんだ。

お仕事で、全然頭になかったよ。

うん。

……めりーくりすます。

もしかして、それを言うために電話したの？

ああ、ここからが本題なんだ。

うん。今日帰るよ。

帰ってからの予定は……ないけど。

荷物とか、あるし。

別に、お祝いとかそういうのはいいよ。

今更、クリスマスではしゃぐような歳でもないし。

……そっか。

プロデューサーが行きたいんだ。

……私と。

なら、仕方ない、かな。

ふふっ。

じゃあ、エスコート、頼んだよ。

プロデューサー。

プロデューサー

通話履歴

■12月24日0時00分

おわり