「アイドル水木聖來、スタートアップ」 (24)


ダンスが好きで好きで仕方なくて、どうしても続けていたかった。

そういうアタシの気持ちに反して、アタシが本気で踊ることができる世界はどんどん狭くなる。

アタシの本気を受け入れてくれる場所はなくなっていく。

それでも、ダンスだけはやめたくなかったから諦めずに踊っていた。

そんなあるとき、道を示してくれた人がいる。

アタシが踊り続けられる場所をくれた人がいる。

きっと、そのときからアタシが踊る理由は一つ増えた。


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◆ ◇ ◆ ◇



高校の頃に始めてから、ずっと手放せなかったものがある。

中途半端に握りしめ続けてしまったものがある。

本気で踊りたい、と願いはするものの、それができる場所を本気で探すことはしなかったアタシ。

プロデューサーさんはそんなアタシを見つけてくれた。

真っ暗で何も見えないし、ごつごつしてて歩きにくいんだけど、歩むべき道を教えてくれた。

なら、全力で応えるのが筋だよね。

そう思って、レッスンに明け暮れる日々だ。

プロデューサーさんは、いつもレッスンの終わりになるとちょこっとだけ顔を出してくれる。

もちろん、事務所に行けば会えるんだろうけど、お仕事の邪魔になっちゃうだろうから、それはしない。

レッスンは、アタシの好きなダンスだけじゃなくて歌とか演技とか、そういうのもたくさんある。

まぁ、アイドルなんだし当たり前と言えば当たり前か。

他のレッスンが嫌ってわけじゃないけど、やっぱりダンスが好きだから、ダンスレッスンの時は胸が躍る。

そして、今日は一日フルでダンスレッスンの日なんだ。

朝から楽しみで楽しみで、わんこに餌をあげて散歩に行って時間まで家で暇を潰してようかと思ったんだけど、そわそわしちゃっていつも

より1時間くらい早く家を出た。

まだトレーナーさんもいないだろうに。

大人なのに、浮かれちゃって恥ずかしいなぁ。

自分で自分がおかしかった。




レッスンスタジオに着くと、自分の予約が入っているルームを確認する。

よんまるさん……四階かぁ。

よーし、階段で行っちゃおう。

とん、とん、とん、と階段を駆け上がり程無くして4階に到着する。

体力がかなり戻ってきてるのを、ちょっと実感して軽くガッツポーズ。

廊下をてくてくと進み、四○三の部屋に入った。

「あれ、水木さん早いね。おはよう」

アタシが部屋に入ると同時に、いつもレッスン終わりに聞く優しい声がした。

プロデューサーさんだ。

「あれ? プロデューサーさん?」

「驚いたかな。今日はちょっとトレーナーさんに水木さんのレッスンで相談があってね」

「アタシの? え、アタシ何か問題あったの?」

「んーん。逆、やっぱりダンスはすごいんだね。水木さん」

逆、ってどういうことだろ。

問題なし、ってことなのかな。

ということは、褒められてる?

だとすると、なんで?

「え。え? どういうこと?」

にこにこ顔でアタシにそう言うプロデューサーさんと、その隣で微笑むトレーナーさん。

なんだかアタシだけ置いてけぼりだ。

「えー、っとね。詳しくは言えないんだけど、水木さんに課題をお願いしようかと思って」

「……課題?」

「うん。それで、その課題が水木さんにできそうかどうかをトレーナーさんと相談してたんだ」

「トレーナーさんは何と……?」

「水木さん次第、だって」

「なるほど……」

「それじゃあ、トレーナーさん。お願いします」

そう言うとプロデューサーさんはトレーナーさんにぺこり、と頭を下げて出て行ってしまった。




説明されたものの、何が何やら分からず、呆然としているとトレーナーさんがぱちん、と手を叩いた。

「じゃあ、水木さん。今日も頑張りましょうか!」

はい。と返事をして、いつも通りアップを始める。

そのアップの最中にトレーナーさんが今日のレッスン内容を話してくれた。

なんでも、プロデューサーさんが持ってきた課題は、3曲。

これを今日と明日で完璧に踊れるようにして欲しいんだとか。

無茶苦茶言うよね、全く。

トレーナーさんは選ぶ権利はアタシにあるって言うし、いつも通りトレーナーさんが組んだレッスンメニューでもいいよ、とも言う。

さぁ、どうしたものか。

なーんて、考える必要ないよね。

プロデューサーさんがくれた課題だし、応えなきゃ恰好がつかないもん。

「やる。やります!」

こうして、鬼のようなレッスンが幕を開けた。




ワン、ツー、スリー、ワン、ツー、スリー。

トレーナーさんの手拍子に合わせて、体を動かす。

一通りフリを頭に入れたら後はひたすら曲に合わせて、動く、動く、動く。

曲に合わせて動けるようになると、トレーナーさんが呼んだのか、他の手の空いているレッスンスタジオの職員の人達がやってきて、立ち位置を決めて、ステージを想定して踊ることになった。

センターやらせてもらえるのかな、みたいな淡い期待を抱いたけど、残念ながらバックダンサーとして配置されてしまう。

でも、やるからには、だよね。

職員の人達は踊りはしなかったけど、フリの通りに移動はしてくれるから、なんとなくステージをイメージできた。

そっか、そっか。

自分が使うことを許された場所で、ダイナミックに踊る。

プロデューサーさんが教えたかったのはこういうことなのかな。




そんな感じで朝から昼まで踊り通して、お昼に軽食を挟んでまた踊る。

夜になる頃には、トレーニングウェアは汗で鉛みたく重かった。

「水木さん、お疲れ様でした。アイシングして、アミノ酸摂ってしっかり休んでくださいね」

そう言って微笑むトレーナーさんの声は、少し枯れていた。




家に帰ると、どっと疲れが押し寄せる。

待ってました、と言わんばかりに尻尾をぱたぱたと振って跳ね回る、わんこの頭にぽんと手を置き「ただいま、わんこ」と言う。

「わぉん!」という少し気の抜けた返事を聞くと、不思議と疲れも和らぐ気がした。

わんこ用のボールにドッグフードを入れてやる。

「待て、だよ」

アタシがそう言うと、わんこは「まだですか」とでも言いたげな目でこちらを見ながらお利口に待っている。

ドッグフードの上に、犬用の缶詰を少しだけ乗せて「はい、どうぞ」とアタシが言うと、わんこはがつがつと食べ始めた。

散歩も行かなきゃだ。

そう思って、自分の頬をぺち、っと叩く。

アタシのその動作を、わんこはきょとんとしながら眺めていた。

「ふふ、リード持っておいで。散歩行こっか」

散歩、というワードに反応してわんこはぴょんぴょんと跳ねながら器用に自分のリードを持って来る。

さぁ、もう一仕事だ。




散歩を終えて、本日2度目の帰宅を果たす。

それから、お風呂に入ったら、もう寝ないと。

明日も早いし、何より疲れた。

高校で部活やってたとき、こんな生活してたなぁ。

朝練に出て、へとへとになって授業を受けて、放課後も夜遅くまで練習してへとへとになって、帰ったらすぐ寝ちゃったっけ。

本気で踊るのって、やっぱり楽しい。

そう思った。




お風呂から出て、歯磨きを済ますとメールが入っているのに気が付く。

プロデューサーさんからだった。

内容は、明日のレッスンに立ち会ってくれる、というだけの簡単なもの。

あれ。プロデューサーさんがレッスンに立ち会うなんて初めてじゃないかな。

ちょっと緊張しちゃうなぁ。

そんなことを考えながら「了解です」の四文字を入力したところで、眠りに落ちた。




アラームのけたたましい音がアタシを起こす。

爆睡しちゃってたみたいだ。

携帯で時刻を確認する。

午前7時。

ぴょん、とベッドから飛び起きていそいそと支度を始める。

その内に、わんこも起きてきて「ごはんは? ごはんはまだですか?」なんて顔でアタシについてくる。

「はいはい、分かったよ」

いつもの如く、ボールにドッグフードを入れてあげると、お利口に待っている。

「缶詰は夜だけ」

アタシがそう言うと、わんこは少し不満気にして、食べ始める。

相変わらず、表情豊かだ。




菓子パンとヨーグルトをお腹に入れて、わんこの散歩に行く。

いい天気だ。

昨日、必死で覚えたフリを軽く踊り、曲を頭の中で再生しながら歩いた。




散歩から家に戻ると、散歩用の鞄やリードを置いて、代わりにタオルやドリンク、それから着替えなどが入った鞄を持って再び家を出る。

今日はプロデューサーさんが来るらしいし、気合入れないと。

もちろん昨日は全力だったし、プロデューサーさんが来なくとも気合はばっちりだけど……って、アタシ、何を考えてたんだっけ?

誰にするわけでもない言い訳を、頭の中で取り繕いながら、レッスンスタジオへ向かった。




スタジオに到着し、アタシの名前で予約が入っているレッスンルームを確認する。

昨日と一緒だ。

よっ、ほっ、という間の抜けた掛け声とともに階段を駆けていく。

「おはようございまーす」

挨拶と共に、ドアを開けると中には昨日レッスンに付き合ってくれた職員の方とトレーナーさん、それからプロデューサーさんがいた。

「水木さん、おはよう。今日は最終調整とその出来栄えの見極めをしに来たんだ」

「おはよう。プロデューサーさん。大丈夫だよ、結構自信あるからね!」

「そりゃ、良かった。それじゃあ、俺は見てるから、いつも通りでいいよ」

プロデューサーさんはそう言うと、部屋の隅にパイプ椅子を運んで、そこへどかっと座った。

ひゃー、お客さんがいるとちょっと緊張しちゃうかも。




そうも言ってられないし、まずレッスンは待ってくれない。

トレーナーさんに曲の順番を教えてもらう。

どうやらノンストップみたいだ。

きついんだろうな。

でも、昨日の練習ではできたんだ。

できるよね。

たぶん。




トレーナーさんの合図から3秒待って、曲が始まる。

一曲目、スタートに相応しい元気な曲でその分だけフリも大きく、動きも多い。

いち、に、さんっ。

よし、タイミングバッチリ。

頭にみっちり叩き込んで、体に覚えさせた甲斐あって、自然と体が動く。

考えるより先に、足がステップを刻む。

いける。いける。

最後に、くるっと回って……ポーズ!

ふー。できた!

……おっとっと、通しで行くんだった。

次の定位置は……大丈夫、問題なし。

間髪入れずに二曲目が始まる。

ちらりと、プロデューサーさんを見る。

わ。目が合った。

あ、やっちゃった。

ジャンプがワンテンポ遅れた。

焦らない焦らない。しっかりと、軌道修正。

うん、大丈夫。

きゅっ、きゅっ、きゅっ、とダンスシューズが床とこすれて気持ちいい音を鳴らす。

後奏も気を抜かないで……よし。

ちょっと失敗しちゃったけど二曲目もまずまず、かな。

最後の三曲目!

主張し過ぎないように、それでいてダイナミックに。

アタシのレッスンなのにセンターじゃなくて、バックダンサーの位置に配置されたってことは、そういう意図があってのことだと思う。

言われてないから、推測でしかない。

でも、きっと、そうだと信じて。




踊り切ると、レッスンルームの隅から拍手が起こった。

たった一人のお客さんだけど、満足してもらえた、のかな。

「ありがとうございました」

そう言って、深々と頭を下げる。

顔を上げると、さっきまで隅にいたはずのプロデューサーさんが目の前に来てて、アタシにタオルを差し出してくれた。

「ふー。どうかな、アタシなりに頑張ったんだけど」

「いいね、でも俺と目が合ったときワンテンポ遅れたでしょ」

「もー。それは言わないでよ」

「ははは、ごめんごめん。それじゃあ、水木さんの頑張りに、今度は俺が応える番だな」

「何。どういうこと?」

「初仕事を持ってきたよ」

「嘘」

アイドル水木聖來としての初仕事、と聞いて思わず飛び上がってしまいそうになる。

「こんな嘘つかないって。急なんだけど、今日の夜だ」

「……え?」




その後、プロデューサーさんから今日のお仕事について説明を受けた。

なんでも、うちの事務所に所属するアイドルのライブが今日あるらしいんだけど、そのバックダンサーの子が一人倒れたんだとか。

その情報をどこからか掴んだプロデューサーさんは、今日欠員が出ることを見越してアタシにその子が担当するはずの三曲を練習させたみたい。

急にそんなことを聞かされたアタシは、どう答えていいか分からなくて、突っ立ったままでいるとプロデューサーさんに声をかけられる。

「さて、この仕事。受けるも受けないも水木さん次第だ。水木さんはどうしたい?」

そんなの聞かなくったって決まってるでしょ?

「踊りたい」

アタシの返答を聞くと、プロデューサーさんはにっこりと笑う。

「なら、決まりだ。ちなみに、リハで一回合わせてもらえるけど、ここでその時間まで最終調整をしてくれて構わない」

「それってあとどれくらい時間あるのかな」

「移動時間とかも考えると……ここで練習できるのは2時間半、ってとこかな」

「分かった。任せて」

「ああ、任せた。何か欲しいもの、ある? 軽くお腹に入れるものとか」

「んーん。持ってきてるから平気。……あー、でも一個お願い、いいかな」

「いいよ」

その返事を聞いて、アタシは鞄から小さなポーチを取り出してプロデューサーさんに投げた。

「何、これ」

「わんこに餌、あげといて!」

「水木さん、こういうのは……。それに、俺も男だし」

「信じてるから、ね?」

「そうまで言われちゃ、断れないか」

「じゃあ、ヘマした方が晩ご飯おごり!」

「どちらにせよ、おいしいお店は予約しとくよ」

「あれー? アタシの家で何するつもりなのかな?」

「いや、そういう意味じゃなくてだな?」

「ぷっ、あははははは。わかってるよ。大丈夫だって」

「もう、あんまりからかわないでくれ」

「ごめんごめん。はー、笑った笑った。今ので緊張抜けちゃったよ」

「何よりだよ。なんか釈然としないけど」

「あはは、じゃあ、何かおまじないみたいなの、かけてくれる?」

アタシがそう言うと、プロデューサーさんは少し考えた後に、アタシをくるっと回す。

何されるのかな、って思ってたら背中をぽーんと、押された。

「行ってらっしゃい」

「ふふ。行ってきます。……あ、それとさ。『おかえり』のときは"水木さん"じゃなくて、セイラって呼んで欲しいな!」




プロデューサーさんがいなくなったレッスンスタジオで最終調整を済ませ、ライブ会場へと向かう。

会場の関係者専用の出入り口で名前を告げると、すんなりと入れてもらえた。

通された楽屋に荷物を置いて、指示に従う内に、あれよあれよと準備が整っていく。

「ちょっとキツいかもしれないんだけど」と渡された衣装は、ぴったりとは言わないまでも着れる範囲だった。

中でも、どきどきしたのはメイクだ。

プロのメイクさんにしてもらうのなんて、初めてで、少しむず痒かった。

そうして、準備が整うとリハのために舞台裏に集められ、そこで今日一緒に踊る人達と顔を合わせた。

分かってはいたけど、みんな「こいつ大丈夫なのかな」なんて目でアタシを見ている。

大丈夫。ステージの上で証明できる。

「今日はよろしくお願いします!」

自分を奮い立たせるべく少し、大きな声で挨拶した。




曲目通りにリハが始まる。

アタシの番は分かりやすくて、最初の三曲だ。

ステージに立ち、客席を見下ろす。

今は誰も座っていない、この数千の席が数時間後にはお客さんで埋め尽くされるんだと思うと、わくわくした。

主役のアイドルの子がセンターに立ち、その後ろにアタシ達、バックダンサーが立つ。

スタッフさんの合図で、曲が始まった。

そこからはもう、無我夢中だった。




三曲目が無事終わると、アイドルの子がくるりとこちらを振り返る。

「……すごいですね」

何か、褒められたみたい?

なので、こちらも「ありがとうございます」と返す。

「それでは、本番もよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします!」

こんなおっきい会場でやるアイドルの先輩だし、ちょっと気遅れしちゃってたけど、いい子っぽい。

俄然、やる気が湧いてくるな。

あの子のステージをいいものにしてあげないとだ。




楽屋でイメージトレーニングを続け、本番の時間を待つ。

早く早く、という気持ちと、まだ待って、という気持ちが入り混じっていて、変な感じ。

しかし、どんなに来ないで、と願っても、どんなに早く来て、と願っても時の流れは変わらない。

然る後に、アタシの初めてのお仕事の時間はやってきた。




今までの人生で見たことないくらいのたくさんのお客さん。

沸き起こる歓声。

揺れるサイリウムの海。

どれもこれもが初体験で、たった三曲だけど夢のような時間を、アタシは過ごした。

結果は……。

うん、アタシの担当した三曲は大成功、だと思う。

アタシの全力を出せたと胸を張って言える。

あとは、カーテンコールを待つのみ、だ。




カーテンコールを経て、万雷の喝采に包まれ、無事に公演は終了した。

今日、お世話になったスタッフの皆さん、それからアイドルの子やバックダンサーのみんなに挨拶をして会場を出る。

会場を出てすぐの道路で、見慣れた車が停まっているのを目にした。

プロデューサーさんの車だ。

アタシが気付いて駆け寄ると、助手席の鍵が開く。

すかさず、アタシはそこに乗り込む。

「おかえり。み……」

"み"と言いかけたプロデューサーさんの言葉を、大きく咳払いをして遮る。

「おかえり。……聖來」

「うーん。70点、かな。ただいま、プロデューサーさん!」

「そこは、まぁ、まけといてくれ。何よりその笑顔、大成功だったみたいだね」

そう言われ、ちらりとサイドミラーを見やる。

煌々とした街頭に照らされ、紅潮した自分の顔が良く見えた。

「……顔に出てたかな。でも、うん。自分でもびっくりするくらいには!」

でも、言葉が止まらない。

この気持ちを伝えたくて仕方ない。

「どう、本気で踊れた?」

「うん! ありがとう、プロデューサーさん。次はアタシ達だけで、あれくらいのステージに立ちたいな」

自分の返事の大きさに自分で少し、びっくりする。

それに、初ステージが終わったばかりで、アタシは何を言ってるんだろうか。

「すぐに立てるよ」

プロデューサーさんが躊躇いもせず、そんなことを言うもんだから、なんだかアタシまでそんな気がしてくる。

「ふふ、だよね。……あ。そうそう、わんこはどうだった?」

アタシが質問すると、プロデューサーさんはスマートフォンを取り出してその画面をアタシに見せる。

そこに映っていたのは楽しそうに公園でわんことじゃれるプロデューサーさんの写真だった。

「散歩まで行ってくれたの?」

「いや、餌あげたら帰ろうと思ったんだけどな。わんこがリードを持って来るもんだから」

「あはは、ご迷惑をおかけしました」

「ううん、楽しかったよ。それじゃあご飯行こうか」

「プロデューサーさんのおごり?」

「仕方ないなぁ」

「やったぁ!」


◆ ◇ ◆ ◇ ◆



あのライブを経て、一つだけ言えることがある。

本気で踊れる場所がない、なんて嘆いてたいつかのアタシ。

今、アタシは本気で踊れてるよ!



おわり

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