○このスレは所謂、京太郎スレです
○安価要素はありません
○設定の拡大解釈及び出番のない子のキャラ捏造アリ
○インターハイ後の永水女子が舞台です
○タイトル通り女装ネタメイン
○舞台の都合上、モブがちょこちょこ出ます
○たまにやたらと重くなりますが笑って許してください
○雑談はスレが埋まらない限り、歓迎です
○(本番)エロは(本編には)ガチでないです
【咲ーSski】京太郎「今日から俺が須賀京子ちゃん?」【永水】
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【咲】京太郎「今日から俺が須賀京子ちゃん?」巴「12まで来ちゃったのね」【永水】
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―― 原村和にとって男と言うのは苦手なタイプだった。
彼女は女性としてあまりにも恵体過ぎたのである。
小学校高学年になった頃にはグラビアアイドル顔負けになった胸は幾度となく男子からからかわれた。
そうでなければ、粘ついた欲望混じりの視線を向けられてきた彼女が男を好きになれるはずがない。
高校生になった頃には、『男なんて』と自然に胸中に思い浮かぶほど彼女はやさぐれてしまっていた。
―― とは言え、彼女は同性を好きになるほど倒錯してはいない。
高校生になっても尚、彼女の夢は『素敵なお嫁さん』だったのである。
その胸中に浮かぶ未来へのイメージもまた顔も知らない素敵な男と結ばれるものだった。
親友である優希の嫁発言に、少しはっちゃけもしたが、それは決して本気ではない。
生真面目な彼女なりの冗談だったのである。
「原村さん、宜しくね」
―― 宮永咲と出会うまでは。
最初、和は彼女の事が嫌いと言っても良かった。
プラマイ0 ―― 和が趣味としている麻雀で行われたそれは彼女のプライドを深く傷つけるものだったのだから。
幾ら後一人で団体戦に出られるようになるとはいえ、そんなふざけた真似をするような子に麻雀部に入って欲しくはない。
彼女と最初に出会った時、和はそう思っていたのである。
―― だが、それは彼女の事を良く知る内に変わっていった。
宮永咲は根っからのポンコツ少女だった。
少し目を離せばすぐ迷子になり、和の得意な機械類もろくに扱えない。
最初はキャラづくりだろうと疑惑の目で見ていた和も、何時しか咲が本物のポンコツだと理解し始めていた。
その頃には、もう和は咲の事を放っておく事が出来ない。
何だかんだで彼女は優しい性格をしているのだから。
最初はいやいやながら面倒を見ていた咲に、自分から世話を焼くようになっていった。
―― そんな彼女が和の中で少しずつ『特別』になっていく。
宮永咲は和の知る中で最も女の子らしく、また庇護欲を擽る子だった。
読書が趣味で、料理上手で、機械の操作を教えている間にも良い匂いがする。
時折、見せるはにかむような笑顔は可愛いが、麻雀中の彼女は背筋が冷たくなるほど真剣で格好良い。
そんな彼女に向ける感情は何時しか庇護欲を超えたものに ―― 恋慕に変わりつつあった。
―― 当然、和は最初、それに悩んだ。
彼女は自分のことをあくまでもノーマルだと思っていたのだから。
幾ら女の子らし過ぎるほど女の子らしい咲相手とは言え、好きになるのはおかしい。
彼女の側には仲の良い男の『幼馴染』がいるという事もあって、和はその気持ちを抑えようとした。
自分は決して咲と結ばれるような事はないのだと初めての恋を忘れようとしていたのである。
「和ちゃん。私…和ちゃんの事が好きです」
それが覆ったのは高校一年生の夏 ―― インターハイが終わってからだった。
無事に優勝を果たし、清澄残留が決まった彼女は、他でもない咲からそう告白されたのである。
友達としてではない ―― 一人の女の子としてのそれに和は涙を浮かべるほど喜んだ。
こんなの気持ち悪がられるだけだと抑えこもうとしていた感情を、相手もまた抱いてくれていたのだから。
初めての恋が最高の形で実った嬉しさに、言葉を失った和は何度となく頷いて応えた。
―― それからの和は幸せだった。
二人の関係は他の部員達には秘密だった。
共にインターハイを超えた仲間たちの事は大事に想っているが、同性愛が異常であるという事もまた理解しているのだから。
大事だからこそ打ち明ける事が出来ないという咲の言葉に、和もまた頷いた。
結果、二人の逢瀬はあまりにも頻度の少ないものになったが、和がそれに不満を抱く事はない。
部活の忙しさは二人っきりになる時間を減らし、咲が機械類を苦手としている所為でろくに電話も出来ないが、部活中、ふと視線が合う度に咲は微笑んでくれる。
何処か意味ありげなそれに和は胸をときめかせ、幸福感を湧き上がらせていた。
―― 何より、咲は和のイメージよりもずっと積極的だった。
キスも愛撫もその先も、迫ったのは和ではなく咲の方だった。
初めての恋愛かつ女の子同士だと言う事もあり、躊躇いを覚える和を咲は徹頭徹尾リードし続けたのである。
彼女が抱いてきた『ポンコツ少女』とはかけ離れたその積極性を、和が嫌がれるはずがない。
そんな咲さんも素敵だと胸を疼かせ、彼女の手や唇に身を委ねていた。
―― それが少しずつ色を変えていった事に和は気づけない。
最初は優しく触れ合う程度のキスが、和の口腔を貪るような激しいものへ。
その胸を宝物のようになでてくれた指先は、まるで玩具を弄ぶようなものへ。
秘所を慈しむような指先も、処女膜が傷つくのも厭わない激しいものへ。
その言葉も積極的を超えて、嗜虐的なものになっていく咲に和は溺れていく。
彼女が強い被虐性を隠し持っていたと言う事もあって、二人が付き合って数ヶ月もした頃には、和は咲の事を『ご主人様』と呼ぶようになっていた。
―― それから少しした頃には、和は咲の言いなりなっていた。
初めての恋と同性の恋人。
それに目を曇らせた和は、恋人の言葉を信じる事が愛だとそう思い込んでしまったのである。
咲が勧めるままに首輪をつけながら公衆トイレでイかされも、目の前で自慰を強要されても。
アナルだけでイけるよう開発されても、その痴態をビデオで録画されていても。
和はそれが咲なりの愛し方なのだと信じこみ、人並み以上に淫らな身体を調教されていったのである。
和「はぁ…はぁ…♥」
そんな和は今、咲の部屋で縛り上げられていた。
メスとして成熟した身体を亀甲で縛られる彼女は荒い吐息を漏らしている。
だが、それは決して彼女が縛られる事を嫌がっているからではない。
咲によってむき出しにさせられた被虐性は、恋人の部屋で縛り上げられ抵抗出来ない状況に喜んでいた。
咲「ふふ。和ちゃん、すっごく無様」
咲「縛られただけでもうアソコ濡れちゃってるよ」
咲「自分がマゾ豚ですって言うみたいにトロトロォって…人として恥ずかしいとは思わないの?」
和「あぁ…♪ ご主人様ぁ…♥」
それを見下ろす咲の目はとても冷たいものだった。
いっそ軽蔑の色さえ混じっていそうなそれが和は気持ちよくて堪らない。
その言葉責めにも身体を震わせ、触れられてもいない秘所から愛液を滴らせてしまう。
咲「一人で雰囲気出さずにちゃんと答えてよ…!」
和「ひぐぅっ♪」
瞬間、咲の手が和の乳首をギュっと抓った。
愛撫と言うよりも押しつぶすに近いその指先に和の口から悲鳴のような声が漏れる。
しかし、それは快楽ばかりで苦痛の色などまったく見当たらない。
普通なら痛覚を刺激されるであろう愛撫に快楽を得るほど、和の身体は淫らになっていた。
和「ご、ごめんなさい…♪ 恥ずかしいです…♥」
和「こ、こんなの人間として最低です…っ♪」
和「縛られて乳首抓られて気持ち良くなるなんて…も、もう人間じゃありません…♪」
和「ご主人様の言う通り、和はマゾ豚なんですう…♪」
咲「へー」
媚びるような和の言葉に、咲は興味なさげに返した。
自分から言わせたとは思えないその冷たい態度に、和の興奮が強くなる。
次は一体、どんな風にいじめて貰えるのか。
そんな期待が背筋をゾクゾクと這い上がるのを感じる彼女の前で、咲はゆっくりと口を開いて。
咲「…じゃあ、私の恋人はマゾ豚って事だよね」
和「あ、い、いや、それは…」
咲「私は豚と付き合うような変態女だったんだ。残念だな」
和「あ…あぁぁぁぁぁ…っ」
失望。
その色は和にとって耐え難いものだった。
幾らプレイの一貫とは言え、恋人に捨てられそうになるのは悲しすぎる。
自身が同性愛者である事を受け入れてしまった彼女は、そのプレイとあいまって咲に依存しているのだから。
どんな酷いプレイをされても悦ぶ自信はあるが、咲に嫌われる事だけは許容出来ない。
和「ち、違いますっ」
和「ご主人様は、あの、その…」
咲「言い訳は要らないよ。さっき和ちゃんが言ったのは間違いなく本心からのものなんだろうし」
咲「…でも、だからこそ、私、不安になっちゃうな」
和「ふ、不安?」
咲「そう。私の事、本当は好きじゃなくて、性欲を満たしてくれるから付き合ってるんじゃないかって」
和「そんな事ありません!!!!」
和にとって咲の言葉は心外という表現でも物足りないものだった。
自分が咲に抱いている感情は、そんな穢らわしいものではない。
彼女の周囲にいた男たちとは違って、純粋かつ真剣なものなのだ。
半ばトラウマを刺激された和は強くそう訴えようとするが。
咲「でも、今までの和ちゃんの姿を見てるとそうは思えないな」
和「じゃ、じゃあ、どうすれば信じてくれますか?」
和「私、ご主人様に信じてもらえるなら何でもします…!」
咲「何でも…ね」クス
それは咲に聞き入れられるものではなかった。
しかし、だからと言って、和も引き下がる事は出来ない。
咲への恋慕と、男たちへの嫌悪。
その2つを刺激された和は何でもと口にして。
咲「…じゃあ、和ちゃんは性欲になんて負けたりしないよね」
和「も、勿論です」
咲「私以外の人に感じたりもしない?」
和「当たり前です…!」
咲「そう。じゃあ、ちょっと実験してみよっか」
和「…え?」
それが咲の誘導だったのだと和が理解した時には、既にその視界は黒く染まっていた。
咲の手によってアイマスクをつけられた和はほんの数センチ前ですら見る事が出来ない。
視覚という人間の中でも重要な情報ソースを閉じられた彼女は思わず戸惑うような声をあげた。
咲「本当はここで他の人に登場…って言うのが一番なんだろうけれどさ」
咲「私にも独占欲くらいあるし、和ちゃんの身体を他の人に触って欲しくない」
和「ご、ご主人様…♥」
だが、それも長くは続かなかった。
暗闇の向こうから聞こえる咲の声は彼女に安堵と歓喜を与えてくれるものだったのだから。
独占欲混じりのそれは、和の声に艶めいたものが戻らせた。
咲「だから、私はこのままの状態で和ちゃんと放置するね」
咲「時間は…今から一時間くらいかな」
咲「私は今の間に夕飯の買い物でもしてくるけれど…」
咲「でも、もし、その間に和ちゃんの身体が今よりもグチョグチョになっていたら…」
和「ぅ…」
そこから先の言葉を、咲は口にしなかった。
言わなくても分かるだろうと暗に告げるそれは、和の背筋に恐ろしさを這い上がらせる。
これまでの話の流れから想像出来るリスクは、彼女にとって決して許容出来るものではない。
この放置プレイに耐えなければいけないと強く身体に言い聞かせる。
咲「じゃあ、頑張ってね、和ちゃん」
咲「私も和ちゃんの事嫌いたくないから」
ガチャ バタン
そんな彼女の耳に扉を閉じる音が聞こえる。
『実験』が始まった事を知らせるその音に、和の胸は孤独感と不安を覚えた。
何も見えなくなっても、咲の声が聞こえ続けていたが故に、気にならなかったそれは少しずつ大きくなっていく。
今の彼女は両手両足を縛られ、その上、視覚まで封じられている状態なのだから。
もし、今、咲の部屋が開かれてしまったら、自分はこの上ないほどみっともない姿を見られてしまう。
しゅっきんじゅんびー(´・ω・`)尚、タイトルバレ
(´・ω・`).;:…(´・ω...:.;::..(´・;::: .:.;: サラサラ..
うーん…私も面白いと思って書いてた訳じゃないですが、そこまで面白く無いつもりもなかったのですよねー
既出感ありまくりと言う意見もありますが、何処で書いたか記憶にないです…
割りとマジで読者と私の中で意識の差があってかなりの危機感がががが(´・ω・`)
読者と私の意識の差が根本的な問題なんで休んでもどうにもならない気がします……
今日は早めに帰れたので上の小ネタ終わらせるつもりでしたが
かなり反応微妙そうなのでとりあえずオーバーウォッチでトレーサーちゃんの太ももハァハァしてきます(´・ω・`)
色々とご意見ありがとうございます
特に本編に関して頂いた意見は身にしみるものが多いです
が、既にエンディングに片足突っ込んでる現状で、大幅に話をいじる事は出来そうにありません…
蛇足だと言う意見が多いようですが、ラストエピソードが残るヒロインも少しだけですし、このまま行かせてください
とりあえず書かなきゃダメだって事は良く分かったので、極力、早く本編をお届け出来るよう頑張ります
また、既視感に関してですが、色々と考えた結果、私ではどうにも出来ないという結論に達しました
実際に私が既視感を意識出来ていないと言う事と、私がそういう話が好きだからこそ何度も書いているんだろうという事
また無理に既視感から逃れようと別の話を書いても、きっと今まで以上に酷い出来にしかならないだろうというのが主な理由です
申し訳ありませんが、私はそういうのしか書けない奴なんだと思って諦めてくださるのが一番だと思います
ふたなりスレとか積極的スレとかは徹頭徹尾ヒロイン側に主導権がありましたよー
まぁ、両方とも挿入即イキだったような気もするのでマジカル☆チンポである事に変わりはないでしょうけど(´・ω・`)その辺は多分性癖なのでどうしようもないと思います
明日には投下したい(小声)
小学校の頃から俺は陰気な奴だった。
運動よりも本やゲームの方が好き。
友達がいない訳じゃないが、三人以上になると口が重くなってしまう。
友達と何処に行くか話し合う時も、相手に決めて貰う事の方が多い。
一歩引いたと言えば、美徳に思えるかもしれないが、まぁ、ウジウジした奴って方が正しいんだろう。
そんな俺が図書委員になったのは、ある種、当然の流れだったと言うか。
新入生は何かしらの委員にならなきゃいけない清澄高校で、俺が違和感なく馴染めそうだったのがそれしかなかったんだ。
だから、俺は数人の立候補者達とじゃんけんで争い、そして勝利した。
最初はそれに喜んだものの、一週間もした頃には、安易に図書委員を選んだ事に後悔していた。
清澄高校の図書室はそれなりに立派で、また委員会もかなり力を入れていたんだから。
二週に一回は図書室前に張り出す『図書室だより』を更新し、新刊のPOPなんかも作らされる。
図書委員なんてぼぅっとカウンターで座ってれば良いと思っていた俺にとって、それはかなり面倒な事だった。
ただ ――
「こ、これお願いします」
「は、はい」
彼女と出会えた事だけは幸運だったと素直に思う。
宮永咲 ―― 俺と同じ一年生の女の子。
栗毛色のショートカットと女の子らしい小顔は、まるで小動物のような印象を与える。
実際、良く図書室を利用しているし、委員に本を差し出す手もおずおずとしている。
俺と似たようなタイプ…と言うのはちょっと憚られるけれど、少なくとも活発な子じゃない。
でも、そんなところも可愛いって言うか、すごい庇護欲を唆るって言うか。
「あ、あの…」
「い、いや、すみません。ちょっとぼうっとしちゃって」
「はぁ…」
「そ、それより…この前、勧めた本、どうでしたか?」
「あ、お、面白かったです、はい」
…で、凄い単純かもしれないが、俺は今、彼女に恋をしている。
俺の人生で彼女ほどの美少女との接点なんてなかったって言うのもあるし、本の趣味もバッチリ合ったって言うのもある。
でも、何より大きいのは、好きな本を読んでいる時の彼女の目だったんだろう。
キラキラとまるで子どものように目を輝かせ、本の世界に没頭する彼女。
同じ本好きとして、それは羨ましささえ感じさせるほど魅力的な姿だった。
「え、えぇ。勿論」
……まぁ、お互い、まだまだぎこちなさが残っているし、話題も続かないけれど。
でも、必要最低限しか話す事が出来なかった頃に比べれば前進しているはずだ。
このまま行けば一年…いや、二年も経てば、友人関係くらいには辿り着けるかもしれない。
正直、女の子に自分から声を掛けるなんて初めてで緊張したけれど…なけなしの勇気を振り絞ってよかったと思う。
「アレ、咲?」
―― …………咲?
彼女を呼び捨てにする言葉に、俺はつい眉を顰めた。
一体、何処のどいつが彼女を馴れ馴れしく呼んでいるのか。
俺でもまだ宮永さんと呼ぶ事さえ出来ていないのに。
そう思いながら図書室の入り口に目を向ければ、そこにはやたらとでかい金髪の男がいた。
―― ……な、なんだよ、コイツ。
ソイツは、俺とは対照的な奴だった。
見るからに明るく、社交的で、友達の数も多そうなタイプ。
身長は俺より20cmほど高く、顔もイケメンだ。
身体つきもがっしりしていて、運動が得意なのが分かる。
とは言え、学ランが弾けそうなほど逞しい訳でもないし、所謂、細マッチョって奴なんだろう。
……しかし、どうしてそんな奴が彼女のことを呼び捨てにするんだろうか。
俺と対照的だって事は、彼女にとっても縁遠い人間なはず…。
「あ、京ちゃん」
「きょっ!?」
し、しまった、つい驚きの声が…。
じゃ、なくて…な、なんで京ちゃん!?
コイツがまだ馴れ馴れしいのは分かるけれど、なんで彼女の方までそんな親しそうに声を掛けて…。
しかも、貸出た本を胸に抱えてトテトテと子犬みたいに…。
―― ……あぁ、そうか。
彼女の目は光っていた。
それもただ光るだけじゃない。
好きな本を読む時と同じようにキラキラと…子どものように。
俺に二人の関係は分からない。
分からないが…彼女の気持ちだけは今、嫌というほど分かってしまった。
俺には欠片も見せてくれないあの姿は、俺が好きになった彼女の目は。
俺でも他の男達にでもない…彼にだけ向けられているものだったんだから。
「なんだ、また本を借りてるのか」
「うん。この前のはもう読み終わっちゃったから」
「ホント、読むの早いな、咲は」
「京ちゃんは一冊読むのに時間掛けすぎなんだよ。この前勧めてあげた本も10日くらい掛かったでしょ」
「いやぁ、咲が勧めてくれる本には外れがないし、じっくり読みたかったからさ」
「じゃ、帰ったらまた新しいの見繕ってあげるね」
「なら帰りになんか奢らなきゃな」
「私、新しく出たハーゲンダッツが良いな」
「アレ、400弱もするじゃねぇか。調子にのんなよ」
「えー」
……だから、当然、図書室を去っていく彼女は俺に振り向きもしない。
楽しそうに彼と ―― 京ちゃんと話しながら、楽しそうにしている。
本の趣味までバッチリ合うらしい二人は一見、対照的だけれど。
しかし、まるで完成した絵画のように、俺が割って入れる余地を感じさせないものだった。
……つまるところ、凄く俗っぽく、単純な話をすれば、俺は今、見事に失恋してしまったんだろう。
横恋慕を自覚し、彼女の想いに負け、彼の大きさに打ちのめされ…略奪愛をする気など欠片も起きないほどに、
「…明日の帰り、カラオケにでも付き合って貰うか」
失恋の痛みは、俺の胸の中で収まらなかったらしい。
大きなため息と共に、ついつい言葉が飛び出してしまう。
その中身がウジウジ系の俺にとって、どれほど異質なものか理解しながら。
俺はそっと肩を落として、涙が出ないよう天井を見上げた。
Q(急に総合スレの方から)D(電波が)K(来たので)
み、見直しもちゃんとやってます(´・ω・`)明日の朝には投下出来ると思います 多分
ヒャア!もう我慢出来ねぇ!投下だー!!
………
……
…
霞「んふー♪」
石戸霞はご満悦だった。
今、彼女の部屋には想い人である京太郎がいてくれているのだから。
入浴を終えてからずっと彼の事を独占し続けられているのが嬉しくて嬉しくて堪らない。
その上 ――
京太郎「力加減とかはどうだ?」
霞「大丈夫よ」
今の彼女は京太郎に髪を拭いて貰っていた。
霞の綺麗な髪が例え一本でも傷つかないようにと精一杯気遣った彼の指先はとても心地良い。
その仕草の一つ一つから自分を大事に思ってくれているのが伝わってくる時間に、霞の頬は蕩け続けている。
彼女を膝の上に乗せている京太郎には、それを見る事は出来ないが。
京太郎「(大分、機嫌が良さそうだな)」
京太郎「(あんな事があったから拗ねているんじゃないかとも思ったんだけれど…)」
あんな事。
胸中に浮かぶその言葉は、京太郎の身体に欲求不満を感じさせた。
いざ霞と事に及ぼうとした瞬間、長湯を続ける彼を心配して、小蒔が脱衣所までやって来たのだから。
結果、二人の間にあったムラムラとしたムードは霧散し、一線を超えるような雰囲気ではなくなった。
どれほど理性をトばそうと二人は、小蒔には勝てないのである。
京太郎「(ぶっちゃけ残念…い、いや、アレで良かったんだよな、うん)」
結局、射精出来ないまま艶事が終わってしまった。
その感覚に京太郎の身体が覚えるのは7割の不満と3割の安堵。
理性は安堵しているものの、今回も欲求不満を解消出来なかった身体の不満は大きい。
今日明日にでも自家発電に勤しまなければ、気が狂ってしまいそうなほど彼の身体はムラムラとし続けていた。
京太郎「(こんな状態で霞と一緒に寝て、本当に大丈夫なのかなぁ、俺)」
小蒔の声に理性を取り戻したとは言え、あそこまで踏み込んで何もなしは悲しい。
そう訴える霞に京太郎は添い寝と言う形で譲歩し、納得して貰ったのだ。
普段ならばまだ何とかなるであろうそれも、未だ立ち直りきっていない理性にとってはかなりのプレッシャーである。
また風呂場の時のように誘惑されてしまったら、自分はもう絶対に止まる事が出来ない。
二人っきりの部屋で溜まった欲求不満をぶつけるように犯してしまう未来が今からでも目に見えていた。
京太郎「(だから、出来るだけ霞の機嫌はとっておかないと…と思ってるんだけれど)」
霞「~♪」
霞を含む女の子達は不機嫌になればなるほどアプローチが激しくなる。
心の不足分を身体で埋めてもらおうとするようなその代替行為は、理性へのトドメになりかねない。
だからこそ、何時も以上に甘やかすのを心掛ける彼の前で、霞は今にも鼻歌を歌いそうになっていた。
艶事の中断に対する不満もまったく感じられないその様子に、京太郎は内心、胸を撫で下ろす。
京太郎「しかし、霞の髪は綺麗だな」
霞「本当?」
京太郎「あぁ。こうして拭いているだけでも女の子なんだなって伝わってくるよ」
霞「えへへ…♪」
とは言え、油断する訳にはいかない。
秋の空に例えられるように女心が変わりやすい事を京太郎も良く分かっているのだから。
もう十分なのだと手を抜いて、彼女を不機嫌になどしたくない。
それは理性の為だけではなく、さっきの中断を京太郎なりに申し訳なく思っているからで。
霞「そう言って貰えると髪の手入れを頑張ってきた甲斐があったわ」
京太郎「あぁ、やっぱ大変なのか」
霞「えぇ。髪のケアだけで一時間くらい掛かっちゃうしね」
霞「髪を短くすれば、この時間もなくなるのにと思ったのは一度や二度じゃないわ」
京太郎「でも、ずっと今の髪型だよな」
京太郎が霞と出会ってからもうすぐ一年が経つ。
その間、周りの少女たちは大なり小なり髪型を変えてきたが、霞は頑なにその長さを維持し続けていた。
一年も経てば髪も伸びるのに、今の髪型に拘るのは一体、何か理由があるのだろうか。
そう思って踏み込む京太郎に霞は小さく頷いた。
霞「神代家に来る前に見たテレビドラマの影響かしら」
京太郎「どんなドラマだったんだ?」
霞「幸せな結婚をした奥さんと旦那さんが細かいトラブルを乗り越えていく話よ」
霞「大きな事件もなければ、胸を震わせるほどの感動もない」
霞「ただただ、幸せなだけのお話で、きっとかなりマイナーな作品なんだろうけれど」
霞「でも、霞はその幸せなだけのドラマが大好きだったわ」
霞「霞もこんなお嫁さんになって、幸せな家庭を築きたいってそう思うくらいに」
京太郎「じゃあ、ここまで髪を伸ばしていたのも?」
霞「えぇ。その奥さんが今の霞と同じロングヘアだったから」
霞「それを今も続けているのは…多分、惰性じゃないかしら」
霞「今はもうそのドラマのタイトルも思い出せないから」
京太郎「…そっか」
惰性と口にする霞の言葉に、京太郎は嘘の色を感じ取った。
恐らく無意識的に、彼女は自身の心を偽っている。
少なくとも、その髪の長さと美しさは、惰性で維持出来るようなものではない。
きっと今も『奥さん』への憧れは、霞の中で残っているのだろう。
京太郎「(きっついなぁ…)」
それを口に出来ない霞の姿に京太郎は痛ましいものを感じる。
ここで彼女が嘘を吐く理由などまったくないのだから。
きっと彼女自身、自分の中に憧れが残っている事に気づいていない。
そんなものになるのは無理だととうの昔に思い知った霞はそれから目を背け続けていたのだ。
霞「あ、でも、パパが切ってほしいって言うなら切るわよ」
京太郎「いや、そのままで良い…と言うより切らないで欲しい」
霞「え?」
京太郎「俺は是非とも霞にはその奥さんと同じ…いや、それ以上に幸せな家庭を築いて欲しいからさ」
ここで霞に髪を切れと言えば、きっと彼女は躊躇いなくそれを実行に映すだろう。
だが、それは霞が長年、胸の内に秘めていた憧れを捨てさせる行為でもあるのだ。
そんな言葉を胸中に浮かばせる京太郎が、切ってほしいと言えるはずない。
寧ろ、その憧れを是非とも実現して欲しいと口にしてしまう。
霞「それは…無理よ」
京太郎「…霞」
霞「だって、霞はパパの性奴隷なのよ」
霞「今更、奥さんになんてなれるはずないわ」
京太郎「そ、それ引っ張るのか」
霞「ふふ。だって、その所為で霞、完全に堕ちちゃったんだもの」
霞「今日明日どころか一生、引っ張ってくれないと拗ねちゃうわ」クス
無論、霞も京太郎の要望は出来るだけ叶えたいと思っている。
だが、彼女にとってそれは既に実現不可能と言っても良いものだった。
霞にとって須賀京太郎の性奴隷と言う立場はかけがえのない唯一のものなのだから。
彼以外の男と家庭を作る事を想像すら出来ない彼女は、クスリと悪戯っぽく笑って。
霞「…でも、嬉しいわ。ありがとう」
京太郎「ん」
彼なりに自分の事を想って言ってくれている。
それを感じ取った霞は京太郎の方へとそっと背中を傾けた。
今までは髪が濡れていた所為で、触れ合う事の出来なかった彼の身体はとても心地良い。
そのまま全身から力を抜いて、何もかもを委ねたくなってしまう。
そんな彼女を優しく抱きとめながら、京太郎はゆっくりと口を開いた。
京太郎「まぁ、髪のケアが面倒なら俺も手伝うから」
霞「本当?」
京太郎「あぁ。つっても、男の手だからあまり上手くはないかもしれないけれど」
霞「そんな事ないわ。パパの手は魔法の手だもの」
霞「霞の事を何時だって気持ち良く幸せにしてくれる魔法が掛かってるわ」
切らないで欲しいと言った自分が、何もしない訳にもいかない。
彼女の負担が軽くなるよう可能な限り手伝おう。
そう思って口にした言葉に、霞は嬉しそうに応えた。
京太郎の膝に乗りながら髪をケアしてもらえる時間はとても心地良いものなのだから。
毎日、ほんの一時間ちょっととは言え、愛しい人を独占出来ると言うのも大きい。
霞「だから、パパは今日から霞の髪の毛をケアする係ね♥」
霞「他の子にもして良いけれど、ちゃんと毎日、霞にもしてくれなきゃ嫌よ?」
京太郎「って、毎日で良いのか」
霞「毎日が良いの♥」ギュ
甘えるように言いながら、霞は京太郎の手のひらにそっと手を重ねた。
後ろから抱擁してくれる彼をその場に止めようとするそれに京太郎は抗わない。
その指先から伝わってくる彼女の気持ちを反芻するように沈黙を続ける。
そんな彼に霞もまた何も言わず、二人の間を無言の時間が満たしていく。
霞「…ん♪」
しかし、それは二人にとって決して気まずい時間ではなかった。
言葉はないものの、お互いに相手の事を考えている事がハッキリと分かるのだから。
まるで二人の心がジリジリと近づいていくようなその感覚に霞はウットリとした声を浮かべる。
このまま時間が止まってしまえば良いのに。
思わずそんな言葉を思い浮かべながら、霞はそっと目を閉じた。
京太郎「…もしかしてもう眠いのか?」
霞「ん…そうかも…」
京太郎「それじゃ早めにケアを終えないとな」
霞「ぅー…」
その時間を打ち破ったのは京太郎の言葉だった。
無論、彼も出来るだけ霞の事を甘やかしてやりたいとは思っている。
だが、彼女の髪は未だケアの途中で止まっているのだ。
その全ての行程が終わるまで眠る事も出来ないだけに早めに終わらせてやった方が良い。
そう思った京太郎の言葉に、霞はつい唇を尖らせてしまう。
霞「…パパの意地悪」
京太郎「これも霞の事を思って言ってるんだぞ」
京太郎「甘えたいのは分かるけれど、今はおとなしくパパの言う事を聞きなさい」
霞「…後でご褒美くれたら霞も頑張る」
京太郎「あぁ。幾らでも甘えさせてあげるよ」
霞「ふふ…♪」
霞もそれが致し方ない事だと分かっている。
分かってはいるが、さりとて、甘えん坊な彼女の心はそう簡単に納得しようとしなかった。
せめて何かご褒美のようなものがなければ、頑張る事は出来ない。
そんな甘えを力強く受け止めてくれる京太郎に、霞は甘い気持ちを強めた。
霞「…じゃあ、はい」スッ
京太郎「あぁ、ありがとうな」
おおまかにではあるものの、水気はもう殆ど拭き取れている。
これ以上、バスタオルを使い続けても、キューティクルを傷ませるだけ。
そう判断した京太郎は背筋を浮かせた霞にお礼を言いながら、テーブルに準備されたトリートメントを手に取る。
風呂場で使うものとは違い、洗い流さなくても良いそれを京太郎は挟むようにして霞の髪に広げていった。
京太郎「力加減はこんなので大丈夫か?」
霞「バッチリ。流石はパパね…♥」
京太郎「あんまり持ち上げないでくれよ。こっちは内心、恐々としてるんだから」
霞「そんなに怖がらなくても良いのに」
霞「もう霞は身も心もパパのものなんだから、ちょっと髪が傷ついたところで気にしないわ」
京太郎「こんなに綺麗な髪を手入れさせて貰ってるんだぞ。こっちの方が気にするって」
霞「霞は多少、傷物にされた方が嬉しいんだけれど…」
京太郎「そういうのはもっと色っぽい方が好みなんだよ」
霞「…と言う事は、パパは霞とそういう事をしてくれるの?」
京太郎「ぅ」
誘導された。
それに京太郎が気づいた時にはもう遅い。
添い寝を提案したお陰で有耶無耶になったそれはナイフのように突きつけられてしまったのだから。
するともしないとも答え難いその疑問に、京太郎は言葉を詰まらせてしまう。
京太郎「え、えっと…」
霞「…」
京太郎「その……なんだ」
霞「…霞の事、パパ専用のオナホ女にした癖に」
京太郎「ぐ…」
そんな京太郎に霞が容赦するはずもなかった。
彼女にとって、ここは『次』の約束をもぎ取れるかもぎ取れないかの瀬戸際なのだから。
背中から気まずそうな声が聞こえたところで、許しをくれてやるつもりはない。
寧ろ、彼の良心を責め立てるような言葉を口にする。
霞「霞のおっぱいもエロマンコも一杯触って、イかせた癖に」
霞「霞に本物のアクメと…気が狂いそうなほどの欲求不満を教えた癖に」
霞「ちょっと冷静になったらダメだって言うの?」
霞「確かに霞は無責任で良いとは言ったけれど…それは流石にあんまりだと思うわ」
京太郎「そ、その通りなんだけれどさ…」
霞の言葉も尤もなものだと京太郎は思う。
小蒔の乱入があったお陰で一線を超えてはいないとは言え、彼女の痴態を自分で引き出した事実は変わらない。
ましてや、自分は小蒔が来る瞬間まで、霞のことを犯す気だったのだ。
詰るような彼女の言葉に、良心がズキズキと痛む。
霞「勿論、パパの立場が一体、どういうものかってくらい霞も良く分かってるわ」
霞「だから、霞は身も心もパパのものになったけれど、パパの心までを求めるつもりはない」
霞「霞の事を身体だけでも好きになってくれるだけでも満足だし、それを誰かに言いふらすような事は絶対にないわ」
霞「でも、あそこまでされてやっぱりなし…ってなるのは流石に一人の女の子として傷つくのよ」
霞「あの瞬間の霞は人生で一番、幸せだったから尚の事」
京太郎「霞…」
霞「だから、せめて口約束が欲しいの」
霞「霞とまたエッチな事するんだって…それくらい魅力的なんだって」
霞「この場しのぎの嘘で良いから、そう言って欲しいのよ」
京太郎は例え、その場しのぎの口約束でも、一度、口にした約束を簡単に反故に出来るような男ではない。
だからこそ、それを引き出そうと言葉を弄する自分を、霞は止められなかった。
彼女が口にするのは、京太郎を追い詰める為だけの言葉ではないのだから。
傷ついたという言葉も幸せだったと言う言葉も、全て霞の本心から出たものだった。
京太郎「か、霞はその…とても魅力的だよ」
京太郎「正直、その…霞を膝に乗っけてる今もかなり興奮してる」
霞「…本当?」
京太郎「本当だって。つか、俺ってそんな立派な奴じゃないから」
京太郎「一旦は冷静になったとは言え、興奮はまだまだ残ってるし」
京太郎「霞とそういう事したいって言う気持ちは間違いなく俺の中にもある」
そんな霞に京太郎は嘘を吐く事が出来なかった。
自分が有耶無耶で良しとしてしまった所為で、彼女のことを傷つけてしまったのだから。
それに報いる為には嘘の言葉では物足りないと、自身の内心を打ち明ける。
霞「じゃあ、良いわよね?」
京太郎「そ、それは…」
霞「…ダメなの?」
京太郎「そ、そりゃそうだろ」
京太郎「今更だけど、俺は婚約者がいるんだ」
京太郎「そんな事したって不幸になる人を増やすだけで…」
霞「…湧ちゃんや巴ちゃんには良いって言ったのに?」
京太郎「な、なんで知ってるんだ?」
湧の名前が出てくるのはまだ分かる。
霞の親友であり、京太郎の婚約者である初美には、彼女との間に何があったかを話したのだから。
初美経由で霞の耳に入っていてもおかしくはないだろう。
だが、巴との事は誰にも話していないはずなのだ。
にも関わらず、霞の口から出てきた二人の名前に、京太郎は驚きを声に浮かばせてしまって。
霞「やっぱりそうなのね」
京太郎「か、カマ掛けたのか」
霞「そうだろうという確信はあったわ」
霞「湧ちゃんも巴ちゃんもパパと二人っきりになった次の日にはもう幸せオーラ全開って感じだったし」
霞「理由を聞いても誤魔化してたから、恐らく言えない理由があるんでしょうとは思っていたけれど…」
霞「……でも、やっぱり嫉妬しちゃうわ」
無論、霞も自分が二人を責められる立場にないと分かっている。
肉体関係を橋頭堡に、京太郎の心を、『特別』を得ようと迫ったのだから。
しかし、だからと言って、先に『特別』となった二人に心中穏やかではいられない。
事前に予想していても、ついつい唇を尖らせてしまう。
霞「まぁ、湧ちゃんはともかく、巴ちゃんはあんまり大胆な事が出来るタイプではないし」
霞「恐らく何かしらのアクシデントがあって、そうせざるを得なくなってしまったからなんでしょう」
霞「だから、霞もそれと同じことをしようと思うんだけれど」
京太郎「お、同じことって…」
霞「霞を抱くって言ってくれなきゃ、今のを全部、他の子にバラすわ」
霞「そうなったら…霞と同じく我慢してる子達は一体、どんな行動に出ちゃうかしらね?」
京太郎「ぅ…」
京太郎が霞の言葉に連想する未来はあまりにも悲惨なものだった。
裸で混浴するのをバラされるのは、まだ嫉妬を呼びこむだけで済む。
だが、既に二人が愛人関係を勝ち得ているとなれば、彼女たちも穏やかではいられない。
それが自分に向かうのならまだ良いが、最悪、初美達の敵意や害意になる可能性もある。
彼女たちの好意が尋常ならざるものではないと知る京太郎は胸中にそんな言葉を浮かべた。
霞「脅しと思わないでね」
霞「霞はパパを手に入れる為ならなんだってするわ」
霞「例え、それが六女仙の和を乱す事であっても」
霞「例え、家族と呼ぶ子達を物理的に排除する事であっても」
霞「パパを手に入れる為なら安い代償だわ」
だからこそ、京太郎は霞の冷たい言葉が嘘に聞こえなかった。
自身に思いを寄せる少女たちの中でも、霞は特に依存を強めているのだから。
文字通りの意味で世界で唯一と言っても良い相手を決して手放したりはしない。
ここでNoと言えば、最悪の手段に訴え出る事が容易く想像出来る。
霞「ねぇ…パパ。もう選択肢は一つしかないでしょ?」
霞「パパは霞達にお互いを蹴落とし合うような修羅場を演じて欲しいの?」
霞「そんな事ないわよね。パパは皆、仲良しな方が良いでしょ?」
京太郎「それは…」
霞「それとも霞と二人の間に何か違いでもあるの?」
霞「ないわよね。だって、二人はパパと『特別』な関係だけど、パパにとっては『特別』じゃないもの」
霞「初美ちゃんを含めて、女の子として好きになったりはしていない」
霞「霞はパパの事ずっと見てるから、それくらいは分かるわ」
諭すようなその言葉はさっきと打って変わってとても優しい声音だった。
まるで飴と鞭を使いこなすような霞に京太郎は反論出来ない。
どうして巴と湧が良くて、他の皆はダメなのか。
そう詰め寄られた時に説明出来るだけの理由が、彼の中にはなかったのだ。
霞「霞もその『特別』の中に、パパの愛人関係の中に入れて欲しいだけ」
霞「それに霞は何も今すぐ抱いてと言っている訳じゃないわ」
霞「他の子もまだ抱かれた訳じゃないんだろうし、霞もパパの決心つくまで我慢する」
霞「何より、霞が欲しがっているのは、ただの口約束なのよ」
霞「何時か霞を抱いてくれるって言うだけで、さっきの事は聞かなかった事にする」
霞「……ここまで譲歩してダメだと言われるなら、霞もパパ以外の何もかもを失う覚悟をしなきゃいけなくなっちゃう」
最後通告。
その意思を込めた霞の声に、京太郎は冷や汗を浮かべた。
無言で居て良い時間は終わったのだと決断を迫られる感覚は、彼の脳裏に無数の言葉を生み出す。
混乱混じりのそれは、しかし、ゆっくりと洗練され、一つの形になっていった。
京太郎「…分かったよ」
霞「…じゃあ、改めてちゃんと言って」
京太郎「あぁ、俺は霞と…その、セックスする」
京太郎「何時になるかまでは確約出来ないけれど…でも、口約束だからと言って覆したりしない」
京太郎「性奴隷とまで言わせてしまった分の責任は一生を掛けてでも取るよ」
霞「んふ…♪」
京太郎の口から漏れる言葉は、諦観に満ちたものではない。
無論、まったく無関係ではないが、それよりも多いのは覚悟の色だった。
例え、流されたとしても決断したのは他ならぬ自分自身。
そんな彼の意思を伝えるような言葉は、霞の期待以上のものだ。
霞「ぱぱぁ♥」
京太郎「っと」
瞬間、霞の胸中に浮かんできたのは溢れんばかりの歓喜と安堵だった。
淡々と京太郎の逃げ道を塞いでいたように見えて、彼女も内心、不安だったのだから。
ここまで冷淡な言葉を積み重ねて幻滅されてしまっていたらどうしよう。
それが杞憂だったと教えるような強い言葉に、霞は媚びるような声と共に半身を捻って。
霞「…ごめんね」
京太郎「いや、悪いのは全部、俺と神代家だ。気にすんな」
そのまま京太郎を抱きしめながら、霞は謝罪の言葉を口にする。
迷いも躊躇いもなかったとは言え、愛しい男に辛い決断を強いた事くらい彼女も理解出来ているのだ。
だからこそ、漏れでた本心からの言葉に、京太郎は首を振って応える。
自分がもっと理性的で、神代家がもっと六女仙を大事にしていれば、霞が血迷う事もなかっただろう。
そう思う彼にとって、彼女が謝らなければいけないような理由はなかった。
京太郎「ま、それに霞ほどの美少女とエロエロ出来るなんて役得である事に間違いはないからな」
霞「そんな事言ったら、霞、パパに今すぐ可愛がって欲しくなっちゃうわよ…♪」
京太郎「じゃあ、霞の髪を可愛がってあげるとしますか」
霞「もー…」
ジィと京太郎を間近で見つめる目には、興奮の色が見え隠れしていた。
風呂場での出来事を彷彿とさせるその輝きを、京太郎はあっさりとスルーする。
それに拗ねるような声をあげながらも、霞はワガママを言ったりしなかった。
その腕を解き、捻った半身を元に戻して、再び前へと向き直る。
そんな彼女の髪に最後のトリートメントを塗った京太郎は、今度はドライヤーを手に取った。
それを襟足の辺りへと向けながら、彼はスイッチを入れて。
京太郎「悪い。でも、そういうのはまた今度な」
霞「大体、どれくらい『今度』になりそう?」
京太郎「ん、んー…ど、どうだろうな」
興奮しているのは決して霞だけではない。
京太郎の身体と思考の一部もまた『今すぐ』を求めていた。
どうせ何時かやらなきゃいけないのであれば、今であっても問題はない。
先延ばしにしても、霞を焦らすリスクが増えるだけなのだと京太郎も内心、分かっている。
京太郎「…多分、小蒔さんの卒業式の後になるかなぁ」
霞「……そう」
しかし、それは先に約束した湧を裏切るものでもあるのだ。
監禁する一歩手前まで気持ちを荒ぶらせた彼女を、こんな形で裏切りたくはない。
だからこそ、京太郎は湧との約束の後を指定して。
霞「出来れば、その前が良かったけれど…仕方ないかしら」
霞「こうも具体的な時期を指定してきたって事は誰かと約束があるんだろうし」
京太郎「…なんでそこまで分かるんだ?」
霞「だって、ヘタレなパパがこんなに早く決断を下せるはずないもの」
霞「それ以降じゃないとダメな理由があると考えるのが当然でしょう」
霞「その理由を霞に説明出来るなら、パパはちゃんと説明してくれるはず」
霞「それがなかった上に、さっきのパパの言葉は申し訳無さそうなものだったわ」
霞「それを向けられているのが霞だけじゃない、となれば」
霞「霞以外の子にも似たような約束をしているとしか思えないでしょう?」
京太郎「…………正解です」
霞の結論に京太郎はグゥの音も出なかった。
理路整然と並べられる理由の中、一つ足りとも、否と言えるものがなかったのだから。
心が読めるのではないかと思うほどの正確さに京太郎は彼女の髪を乾かす手もぎこちなくなってしまう。
それでも頭皮を中心に乾かす手は止まらず、霞の髪もふわりとした仕上がりに近づいていく。
京太郎「こりゃ霞に隠し事は出来ないなぁ」
霞「ふふ。まぁ、パパが霞にご褒美をくれるなら、多少は気づかないフリくらいはしててあげるけれどね」
霞「パパの事がこんなに分かるのも、パパを心から愛しているからだもの」
霞「それに報いるだけの何かがあれば、霞は何時だってパパの味方よ」
京太郎「心強いような恐ろしいような」
霞「そんなに怖がらなくても大丈夫よ」
霞「とりあえず今のところはパパに甘やかして貰えるだけで満足するから」
京太郎「…今のところはってところが気になるんだけど」
霞「その辺りは、これからの関係次第かしら」
霞「霞はパパの娘じゃなくてパパ専用の性処理肉便器でもあるから」
霞「パパの調教次第じゃ後者のほうが強くなっちゃうかもしれないわ…♪」
京太郎「責任重大だなぁ」
霞「そうよ。だって、霞はパパに身も心も委ねちゃったんだもの」
霞「きっとパパ次第で霞は何にでもなってしまうわ」
霞「だから、霞の事、大事に育ててね…♥」
京太郎「あぁ、当然だ」
育てる。
その言葉の中に込められる意味を、京太郎は良く理解していた。
環境によって作られてしまった【石戸霞】とは違い、霞は小蒔の天児になった時から殆ど前に進んではいないのだから。
誰かに甘える事も許されず、六女仙の長として、エルダーとして同年代の少女たちの前に立ち続けていた彼女。
そんな霞の手を良い方向に引いてやれるのは自分だけなのだと京太郎は言い聞かせる。
京太郎「で、こんなもんでどうだ?」
霞「えぇ。大丈夫よ」
京太郎「そっか。良かった」
そこで京太郎はドライヤーのスイッチを切った。
温風を当てるドライヤーは髪のケアには必須だが、あまり当てすぎると逆に髪を傷ませてしまう。
だが、勝手の分かっている自分の髪ならばまだしも、霞のロングヘアがちゃんと乾いたかどうかは分からない。
大体は出来たと思うが、乾かし残しはないだろうか。
そう尋ねる京太郎に霞はニコリと微笑みながら頷いた。
京太郎「しかし、随分とふわっふわになったな」
霞「まるでお姫様みたい?」
京太郎「そうだな。でも、霞は何時だって、魅力的なお姫様だよ」
霞「えへへ…♪」
ドライヤーによって下から上へと乾かされた彼女のロングヘアは、今、ふわりと左右に広がっている。
普段のストレートヘアとは違うその広がりは、それを眺める京太郎に別人のような印象を与えた。
しかし、だからと言って、彼女が魅力的である事に変わりはない。
それを伝えてくれる彼の言葉に霞はだらしない笑みを顔に浮かべた。
京太郎「もうちょっとふわっふわな霞を見ていたい気もするけど、髪に変な癖とかついちゃうそうだしな」
京太郎「名残惜しいけれど、最後までやっちゃおうか」
霞「じゃあ、はい」
京太郎「あぁ、ありがとうな」
京太郎の言葉に霞はテーブルに準備したブラシを手渡した。
イノシシの毛で作られたそれは静電気が発生しにくく、また髪にツヤを与えてくれる。
髪の毛がまとまり易く、ダメージケアにも適しているそれは、しかし、手入れの難しさでも有名だった。
出来れば『家族』以外に貸し出したくはない。
霞がそう思うほど大事にしているブラシを受け取った京太郎は毛先からゆっくりとブラッシングを始める。
京太郎「えっと…とりあえずこんな感じで良いのか?」
霞「えぇ。とっても気持ち良いわ」
京太郎「そっか。でも、途中でダメなところがあったら遠慮なく言ってくれよ」
京太郎「ここまでは自分でも禿げないようにやってたけれど、流石にブラシを掛けたりはしなかったからさ」
京太郎「これから何度もする事になるだろうし、ダメなら早めに言ってくれた方が嬉しい」
霞「じゃあ、そのまま同じ場所を何度もブラッシングしてくれる?」
霞「出来れば、一つの場所で五回くらいは繰り返して欲しいの」
京太郎「お安い御用ですよ、お姫様」
霞の髪をケアし始めてから、既にかなりの時間が経っている。
それでも霞の要望に二つ返事で頷くのは、京太郎が霞の事を大事に思っているからだ。
今日までずっと甘えさせてあげられなかった後ろ暗さも手伝って、彼はブラシを丁寧に動かし続ける。
不慣れながらも霞への労りを感じさせるその仕草に、彼女の身体から力が抜けていった。
霞「んふー…♪」
京太郎「っと」
それが終わった時、霞の口から満足気な吐息が漏れ出る。
ブラッシングの時間は自分でも心地良いものだが、京太郎がしてくれるとまた格別だ。
もっと早く彼に甘えておけば良かったかもしれない。
そんな言葉が浮かび上がるほどの心地良さに霞の背中は再び後ろへと倒れていく。
京太郎「随分とリラックスしてくれているけれど、これで終わりで良いのか?」
霞「んーん。後もう一つ大事な事があるわ」
京太郎「大事な事?」
霞「このまま寝ちゃうと髪の毛が絡まって逆に傷んじゃうからナイトキャップをつけなきゃいけないの」
京太郎「ナイトキャップ?」
霞「うーん…なんて説明すれば良いのかしら」
霞「外国のドラマとかだと女の人が就寝時につけている事が多いらしいけれど」
京太郎「あぁ。アレか」
瞬間、京太郎の脳裏に浮かんだのはパーマキャップに良く似た白い帽子だった。
柔らかそうなキャップの中に、髪の毛を全て纏めるそれは、しかし、京太郎の中で霞の姿と重ならない。
彼がイメージするナイトキャップの装着者は、年若い女の子ではなくアラフォー以上の女性ばかりなのだから。
まだ成人もしていない霞がそれを身につけるところをあまり想像出来ない。
霞「でも、今回はそれはなしかしら」
京太郎「良いのか?」
霞「えぇ。と言うより霞が恥ずかしいのよ」
霞「髪の毛を全部纏めて入れるってのもあって、あんまりパパに見られたい姿じゃないし」
京太郎「あー…もしかして前回、ナイトキャップをつけてなかったのも…」
霞「…霞だって女の子だもの。好きな人には可愛い姿以外見せたくないわ」
京太郎「そっか」
前回 ―― 霞が風邪を引いてダウンしていた時にはそんなものを身につけたりしてはいなかった。
その疑問を解決する霞の応えに、京太郎は平然とした顔で頷く。
だが、その心臓は霞の素直な言葉に反応し、ドクンドクンと鼓動を強めていた。
身体中に興奮と庇護欲を行き渡らせるようなそれから京太郎は目を背けて。
京太郎「でも、そのまま寝たら髪が痛むんだろ?」
霞「緩く三つ編みにするだけでも大分、改善されるから、今回はそれにしようかなって」
京太郎「んじゃ、次は髪の毛を編んでいくのか?」
京太郎「流石にやった事ないし、ちょっと自信がないんだが…」
霞「大丈夫。ちゃんと教えてあげるから」クス
どれほど甘えん坊になったとは言え、霞の心は女性のまま。
女の命とまで言われる髪の毛を、初心者に編ませる事に抵抗感を感じる。
だが、彼女の背中を受け止めているのはただの初心者ではなく、自身の心も身体も受け入れてくれるであろう唯一無二の男なのだ。
これからの為にも慣れて貰った方が良い。
そう思いながら、霞は小さく微笑んだ。
霞「でも、それは寝る前でも良いから…今はパパに甘えたいわ♥」
京太郎「さっきのじゃ足りなかったか」
霞「ううん。十分過ぎるくらいよ」
霞「…でも、さっきまでパパの顔が見れなかったでしょ?」
霞「だから、霞、ちょっと寂しくて、パパの顔見ながらイチャイチャしたいなって」
京太郎「そうだな」
そのままチラリと振り返った霞に京太郎は首肯を返した。
ここ一時間ほど彼女の背中ばかり見ていたのは彼も内心、気にしていたのだから。
自分も出来れば思いっきり甘えてきてくれる霞の顔が見たい。
胸中にそんな言葉を浮かばせた京太郎は、どんな風に霞を甘えさせてやろうと思考を張り巡らせて。
霞「…霞、パパに膝枕して欲しいな」
京太郎「つっても…男の硬い膝だが…良いのか?」
霞「パパのお膝は特別だもの。硬いなんて気にならないわ」
霞「それに下手にハグして貰うよりもパパの顔がちゃんと見えると思うの」
京太郎「そっか。それじゃおいで」
霞「ん…っ♪」
それが形になるよりも先に出た提案を、京太郎は二つ返事で受け入れる。
興奮の残滓が未だ胸中に残る彼にとって、彼女との抱擁は欲情を蘇らせてしまいかねない危険なものなのだ。
少なくとも、抱き枕ならば、霞を襲うような事はまずないだろう。
そんな打算もあって、膝を叩く京太郎に霞はそっと腰を浮かせて。
霞「ふふふ…♪」
京太郎「どうだ?」
霞「予想していた通り…とても素敵な気分よ」
彼の膝は事前に言われていた通り、硬いものだった。
藍色の作務衣越しでもハッキリと感じる筋肉の感触は、しかし、霞にとって嫌なものではない。
彼女はもう一人の女として、そしてメスとして堕ちてしまっているのだから。
愛しい人から感じる逞しさに、胸と子宮がキュンとときめくのを感じた。
霞「視界一杯にパパの事が見えて…すっごく安心する」
京太郎「俺も久しぶりに霞の顔が見れて安心したよ」
霞「…霞、変じゃない?」
京太郎「あぁ。何時も通り可愛くて素敵な霞のままだよ」
霞「ん…♥」
京太郎の手が霞の頬を撫でる。
彼女の細い線を手のひらで包み込むようなそれは心地良いものだった。
思わず声を漏らしてしまう彼女に、京太郎は優しく微笑む。
安心して良いのだと告げるような彼の表情に、霞は強い父性を感じた。
京太郎「だから、もうちょっと気を抜いて俺に能力も預けてくれて良いんだぞ」
霞「でも、大変じゃない?」
京太郎「そんな事気にする必要はないって」
京太郎「今の俺は霞のパパで、霞を甘やかすのが仕事みたいなもんなんだから」
京太郎「その重荷を全部、預けてくれた方が俺は嬉しい」
霞「じゃあ…」ゴワァ
京太郎「お、おう」
霞から漏れだした禍々しいオーラは京太郎の想像以上のものだった。
以前、彼女の看病をしていた時よりも勢いが強いそれは、彼女の内心が大きく様変わりしたからこそ。
昔はなかった嫉妬や恋慕、独占欲と言った感情が、霞に取り付く悪霊たちを強め、育てている。
霞が暴走一歩手前と言っても良いほど押しが強くなったのも、彼らから少なからず影響を受けているからだ。
京太郎「コレなんか以前よりもヤバイ気がするんだけど」
霞「確かに禍々しさは増したけれど、意外と大人しいわよ」
霞「寧ろ、最近は私を護ろうとしている面さえあるわ」
京太郎「そう…なのか?」
霞「えぇ」
霞に取り憑いている悪霊の殆どは幼少期からの付き合いだ。
幼い彼女に引き寄せられ、その身を食い破ろうとしていた彼らはその成長をずっと間近で見てきたのである。
娘というほど親しい訳ではないが、さりとて、嫌いにはなれない天児の巫女。
そんな霞が恋慕を覚え、一人の少女に戻りつつあるのを、一部の霊達は歓迎していた。
霞「流石に守護霊と呼べるほど、露骨なものではないけれどね」
霞「でも、以前と比べれば、大分、大人しくなってくれたし、制御しやすくもなったわ」
霞「このまま無害化するようなら守護霊の一種として祀って慰撫するのも良いかもしれないわね」
京太郎「なるほどなぁ…っと」
―― おうこら兄ちゃん、あんま調子乗ってんじゃねぇぞオラァ
―― つーか、あそこは最後までヤるべきだろ、女に恥かかせるんじゃねーよ
―― 霞もそれ望んでるんだし、今からでも遅くないからヤっちまえって
―― 操なんかよりも目の前のメスだろ、常識的に考えて
―― 拙者たちも霞たんのアヘ顔楽しみにしてるのにここで焦らすとかヘタレを通り越してクズでござるなwwwww評価に値しないwwwwww
だが、それはあくまでも霞に対してだ。
元々が悪しきものである彼らは京太郎に対して容赦する理由がない。
取り込んだ身体の中で好き勝手に暴れ回るそれらに京太郎の頭がクラリと揺れる。
以前よりも遙かに強く心に訴えかける無数の言葉が思考からオーバーフローしそうだった。
霞「…パパ?」
京太郎「いや、なんでもない。ちょっと酔っただけだ」
京太郎「もう抑えこんだから問題はないよ」
霞「ホント?」
京太郎「あぁ、本当だ。霞のパパを信じろ」
京太郎「俺は霞の為ならどんな事だって出来る最強のパパだからな」
とは言え、京太郎の方もずっとやられっぱなしではない。
霞から模倣させて貰った能力を発動し、それらを意識の底に閉じ込める。
それに胸の奥から不満そうな声が聴こえるが、彼はそれから目を背けた。
色情霊に近い彼らの訴えをマトモに取り合っていては、それこそ理性が崩壊してしまうのだから。
霞に対して格好つけた今、悪霊たちに負ける訳にはいかなかった。
京太郎「それより霞の方はちゃんと楽になってるか?」
霞「えぇ。パパのお陰で雲泥の差よ」
霞「まるで肩こりがなくなったような軽い気分だわ」
京太郎「そんなに劇的なんだったらもっと早めに気づいてやればよかったな。悪い」
霞「んーん。そもそもそれは霞が背負わなきゃいけないものだから」
霞「パパに代わって貰えるだけで十分、有り難いし、謝ったりしなくても良いわ」
今の霞は普段からは比べ物にならないほど甘えん坊になっている。
しかし、だからと言って、自己中心的な考えに染まりきった訳ではないのだ。
それを背負う事が一体、どれだけ辛いか分かるだけに、そう簡単に京太郎へと預ける事が出来ない。
結果、自分では口に出来なかったそれに気づいてくれたと言うだけで、霞の心は喜色に染まっていた。
霞「それにパパ、さっきそれ預かってたらきっと止まれなかったわよ」
京太郎「ぅ」
霞「小蒔ちゃんが外にいるのも構わず、霞と初めてエッチしてたと思うわ」
霞「霞としてはそれも嬉しいけれど、小蒔ちゃんの教育に悪いし」
霞「何より、パパとしても本意じゃないでしょう?」
京太郎「まぁ…そうだな」
霞「だから、ちょっと残念だけど、コレで良いの」
霞「少なくとも、霞は今とても満足してるわ」
無論、そこにまったくの陰りがない訳ではない。
先に外堀を埋めておけば、今頃、自分は京太郎の子を孕んでいたかもしれないのだから。
後一手あれば、京太郎を堕とせた自信のある彼女にとって、それは決して小さくない後悔だった。
だが、それは今の霞が感じる喜色を妨げるものではなく、本心から満足だと口にさせる。
京太郎「…霞に気を遣わせるなんてまだまだパパとしては未熟だなぁ」
霞「娘とセックスするって言っちゃった時点で今更だと思うけれど」
京太郎「か、霞…」
霞「んふふふ…♪」
ついさっき父性さえ浮かべていた彼が子どものように狼狽える。
ギャップを感じさせるその変化に、霞はイタズラっぽい笑みを浮かべた。
甘えと悪戯心の同居したそれは彼女が日頃、他の少女たちに向けるものとはまったく違う。
より幼く見えるその表情を、数秒後、霞は少し引き締めて。
霞「…だから、あんまり焦らなくても良いのよ」
霞「未熟どころかパパ失格かもしれないパパが、霞にとっては唯一無二で最高なんだもの」
霞「未熟とか足りてないとか気にせず、一歩一歩ゆっくり進んでいきましょう」
霞「霞もパパと一緒に歩む一歩一歩を楽しみたいから」
二人の関係はある種のハイエンドに到達している。
だが、そこは決して終着点ではない事を霞は良く理解しているのだ。
これから幾らでも関係は変わるし、呼び名もまた変化するかもしれない。
しかし、それもまた京太郎と一緒ならば楽しめるはずだと彼女は思う。
霞「どの道、霞はパパの手籠めにされちゃって何処にも行き場がないんだもの」
霞「一生の付き合いになるんだから、無理せず等身大のパパの方が良いわ」
霞「下手に無理してパパに嫌われちゃう方が霞はずっと悲しいもの」
京太郎「…ん。分かった。ありがとうな、霞」
霞「えへへ…♪」
そんな彼女に京太郎が否と返せるはずがない。
自身を励まそうとしてくれているその言葉に、彼は霞の頬を再び撫でた。
手入れを終わった髪の代わりに慈しむように撫でる手に、霞はトロンと頬を蕩けさせる。
霞「んー…ぱぱぁ」
京太郎「おう、どうした?」
霞「ふふ、呼んでみただけ」
自然、彼女の口から漏れる言葉も甘ったるいものになっていた。
それは京太郎の手に自分から顔をすり寄せるような仕草と相まって、京太郎の心を掴む。
あまりの可愛らしさに庇護欲を掻き立てられた彼は、頬だけではなく霞の顎も撫で始めた。
霞「もぉ…パパったら霞の事、猫か犬とでも思ってるの?」
京太郎「勿論、俺にとって霞は大事なお姫様ですよ」
京太郎「ただ、あんまりにも可愛いからもっと色々としてやりたくなってさ」
京太郎「ダメか?」
霞「…気持ち良いからもっとして」
京太郎「おう」クス
霞「ん…♪」
甘えるようなその声に京太郎はクスリと笑いながら手を動かす。
その度に心地よさそうな声をあげる霞は京太郎にそっと左手を伸ばした。
まるで何かを求めるようなその手に、彼は指を絡めていく。
俗に恋人繋ぎと言われるその交わり方が、霞にとっては嬉しくて堪らない。
愛撫と甘やかしの中間のような彼の撫で方も相まって、心が満たされていくのが分かる。
―― それからの二人は言葉を交わしたりしなかった。
手を繋ぎあった二人には最早、言葉は必要なかった。
その目や指先の変化で、自分の気持ちを相手に伝える事が出来るのだから。
甘ったるいその時間に霞が満足しているのもあって、愛撫だけが長く続いていく。
幸せだと断言できるほどの心地良さに、霞は時折、声を漏らしながら瞳を潤ませていた。
霞「あぅん…♪」
京太郎「う…」
その時間に陰りを齎したのは京太郎の声だった。
日頃から身体を鍛えているとは言え、二人が入浴を終えてからかなりの時間が経過しているのだから。
その殆どを霞の身体で圧迫されていた膝が響くような不快感を広げ始めていた。
それを霞の身動ぎに刺激されてしまった京太郎は、ダメだと分かっていながらも、ついつい声を漏らしてしまう。
霞「パパ…?」
京太郎「い、いや、大丈夫だぞ」
霞「…嘘つき」ムスー
そこで霞が不機嫌そうに頬を膨らませるのは、心地良い時間を邪魔されたからではない。
この期に及んでも足の痺れを隠そうとされている事が面白くなかったのだ。
限界が近づいている事を認めるまで足をつっついてやろうか。
そんな意地の悪い言葉さえ胸中に浮かばせながら、霞は自身の上体を持ち上げた。
霞「痺れてたならもっと早くに言って欲しかったわ」
京太郎「悪い。あんまりにも気持ち良さそうだったからさ」
霞「…そういう無理はしなくても良いって霞、言わなかった?」
京太郎「ご、ごめんなさい」
霞「まったく、格好つけるところが間違ってるのよ」
霞「そういうの全然、嬉しくないんだからね」
京太郎「はい…」
霞「……反省した?」
京太郎「反省しました」
そのまま反省を迫る霞には、さっきまでの甘えは何処にもなかった。
まるで唐突に年上のお姉さんである事を思い出したかのような彼女に、京太郎は逆らえない。
元々、彼は師匠であり皆の纏め役である霞に頭が上がらないのだから。
優しさの使いどころが間違っているのだというその指摘に、しょぼんと肩を縮こまらせてしまう。
霞「…じゃあ」チュ
京太郎「お、おうふ…」ビク
とは言え、霞も決して本気で怒っている訳ではない。
不満を覚えたのは確かではあるが、自分のことを精一杯、甘えさせようとしてくれたその気持ちはとても嬉しい。
それを伝えようと霞は唇を彼の口元へと触れさせて。
霞「…格好つけてくれた事、ちょっぴり嬉しかったからチューしてあげる♥」
霞「でも、今度、同じ事したら、チューじゃ済まないからね」
京太郎「それはどっちの意味で?」
霞「多分、パパが考えてるであろうやらしい方じゃないかしら」クス
京太郎「き、肝に銘じておきます」
言外に次は襲うと宣言する霞に、京太郎は頬を引きつらせた。
骨まで響くようなその痺れは、普段通りの動きを最初から諦めさせるほど強いものなのだから。
幾ら霞が自分より非力だとしても今の状態で襲われたら勝つ事が出来ない。
あっという間に作務衣を脱がされ、無理やりにでもその気にさせられてしまうはずだ。
霞「ふふ。まぁ、丁度、良い時間になったみたいだし、そろそろ休まない?」
京太郎「あぁ。俺は構わないぞ」
明日は休日で、学生である京太郎は比較的のんびり出来る。
だが、学生組の日常生活をサポートする霞達には休日など無関係なのだ。
朝食一つ作るのにも、火を起こす事から始めなければいけない。
そんな彼女たちの朝はとても早く、またそれに合わせて就寝時間も前倒しになっている。
京太郎にとってはまだ寝るには早い時間も、霞にとっては丁度良い時間だった。
京太郎「でも、寝る前に温かい飲み物を準備しなきゃいけないな」
霞「覚えててくれたの?」
京太郎「当然だろ」
数少ない睡眠時間を安らいで過ごせるように寝る前は温かい飲み物を飲みたい。
霞が風邪を引いた時に聞かされたそれを京太郎は良く覚えていた。
それは強請った時の霞がやたらと色っぽく、印象に残っていたというのもあるが ――
京太郎「アレは俺にも効果があるみたいだったしな」
何より、自分に対しても効果てきめんだった。
それを口にしたのは数回程度だが、必ず三十分以内に強烈な眠気がやってくるのだから。
まるで脳が気怠さに染まったようなそれを京太郎は殆ど我慢出来ない。
自覚した瞬間から一気に身体が鈍り、沈むように眠りへと堕ちてしまう。
霞「ふふ」
京太郎「どうかした?」
霞「ううん。何でもないわ」
京太郎「…?」
霞が浮かべるのはとても意味ありげな笑顔だった。
微笑ましさと妖しさが同居しているそれに京太郎は思わず首を傾げる。
そのまま彼女の顔を見続けるが、その表情から霞の真意を捉える事は出来ない。
だが、誤魔化された以上、突っ込んでも無駄だろうと京太郎は追求を諦めた。
霞「それより、パパはまだ動けないでしょ?」
京太郎「動けないって事はないけど…まぁ、まだ痺れてはいるな」
霞「じゃあ…」
そんな京太郎に霞は寄り添うように移動する。
躊躇いを感じさせないその動きは京太郎との触れ合いが途切れてしまったからこそ。
彼女の依存は、彼に甘やかされる度に強まっていっているのだから。
何もする事がないのなら、京太郎の事を感じていたい。
胸中から浮かび上がるその欲求のまま霞はそっと右手を動かした。
霞「折角だから、今の時間を有効活用させてくれないかしら?」
京太郎「具体的にはどうするつもりなんだ?」
霞「こうするつもりよ」
そのまま霞は京太郎の手に自分の右手を重ねる。
指を絡ませあっていた先ほどに比べるとあまりにも弱く、頼りにない触れ合い。
それに背を押されるようにして、霞はそっと京太郎の肩に頭を預けた。
霞「…パパ♥」
京太郎「おう」
霞「んふぅ…♪」
それに応えるように、京太郎は霞の肩を抱き寄せる。
もっと頼ってくれても良いのだと教えてくれるようなその仕草についつい甘えん坊な自分が顔を出してしまう。
自然、このまま京太郎に全てを預けたいと言う欲求が浮かび上がってくるが、彼女はそれに負ける訳にはいかなかった。
ここで自身の欲望を満たそうとすれば、京太郎の快復を妨げてしまいかねないのだから。
今はコレ以上のスキンシップは諦めるべきだと疼く心に言い聞かせ続ける。
霞「…もっと強くギュってして」
京太郎「こうか?」
霞「うん…♥」
その代わりにと口に出した言葉が、京太郎の腕に力を込めさせた。
自身の身体を胸板へと押し付けさせるようなその強引さに、彼女は満足そうな首肯を見せる。
恋する乙女と娘と言う2つの顔を持つ霞にとって、京太郎の腕の中は世界で一番安心できる場所なのだから。
拘束されたいとさえ思う逞しい腕に捕まえられた彼女は、それが離れないように左手を重ねる。
霞「重くない?」
京太郎「霞が重いはずないだろ」
京太郎「何なら後でお姫様抱っこでもしようか?」
霞「ホント?」
京太郎「あぁ。霞が良いなら台所まで抱っこして運んでやるよ」
霞「ふふ。もし、見つかっちゃったら大変な事になりそうね」
京太郎「その時はその時で言い訳考えるさ」
霞「例えば?」
京太郎「そうだな。接着剤でくっついたとかどうだ?」
霞「それで騙せるのは小蒔ちゃんだけだと思うわ」クス
瞬間、霞の脳裏に浮かぶのは小蒔の姿だった。
つい先程も邪魔してくれた彼女の事を霞はどうしても憎む事が出来ない。
誰よりも長く、小蒔の側で暮らしてきた霞は彼女の魅力を良く理解しているのだから。
冗談めかした京太郎の言葉についつい笑みを浮かべてしまうのも、想像の中の小蒔がとても愛らしいからだ。
霞「もし、見つかっちゃったら口止めを頼みましょうか」
霞「皆もパパに抱っこをして貰えるとなれば、口を噤んでくれると思うわ」
京太郎「まぁ、それくらいなら安い代償だけど」
霞「…パパの浮気者」
京太郎「娘を護る為なら身を晒すのも厭わないだけだよ」
霞「そう言って本当はちょっと楽しみにしてるんじゃない?」
京太郎「そんな事ないぞ。俺は霞一筋だからな」
霞「へー…」ニマー
それがあくまでも『娘』に対するものだと分かっている。
分かっているが、しかし、それでも霞は頬が緩むのを止める事が出来なかった。
京太郎の周りには魅力的な少女たちがあまりにも多いのだから。
後発な上、あまり二人っきりになれない霞はその言葉にあっさりと追及の手を緩めてしまう。
霞「…じゃあ、私ともう一人、見つけちゃった子を同時に抱っこくらい出来るわよね」
京太郎「ま、任せろ。パパが逞しいところ見せてやるよ」
霞「ふふ。パパ、頑張れー♪」
震える声で応える京太郎に、霞は楽しそうな声援を送った。
愛しい男が自分の為に頑張ってくれる喜びは決して小さいものではないのだから。
京太郎の負担になってはいけないと分かっているが、その光景を見てみたいとも思ってしまう。
それを無責任な声援で発散する霞に京太郎は口を開いた。
京太郎「じゃあ、一先ず、お姫様抱っこを頑張るとしますか」
霞「もう良いの?」
京太郎「あぁ。痺れはもう大体、取れてるよ」
霞「…そう」
後数分はこのままイチャイチャ出来る。
そう思っていた彼女は京太郎の力強い声についつい寂しさを感じてしまう。
勿論、この後にはお姫様抱っこが待っていると分かっているが、それは彼との別離を意味するものでもあるのだから。
身も心も『パパ』に依存しきった霞は、ついつい重ねる手に力を込めてしまう。
京太郎「離してくれないとお姫様抱っこ出来ないぞ」
霞「……うん」
京太郎「…………まったく、しょうがない子だな、霞は」
霞「ふぇ?」
言い聞かせるように言われても、その手から力が抜ける事はない。
頭では分かっている事に、心と身体は納得してはいないのだ。
そんな霞の内心を感じ取った京太郎は右手をゆっくりと彼女の身体に回して。
京太郎「まぁ、その分、パパが頑張るんだけれどな…っと」
霞「っ♪」
そのままあっさりと持ち上げてみせた。
腰の力を使わず、ただ腕だけで持ち上げられる感覚に霞はついつい言葉を失ってしまう。
逞しいとは思っていたが、まさかここまであっさりと自分の事を浮かせられると思っていなかった。
一見、細身なその体の何処にそれほどまでの力が込められているのか。
そんな疑問さえ浮かべながら、霞の胸はキュンキュンとときめいていた。
霞「パパ、すっごい…っ♪」
京太郎「そりゃ霞のパパだからな」
霞「んふー♪」
そんな彼女を抱きかかえたまま、京太郎はスクッと立ち上がった。
パーフェクトコントロール ―― 後輩を経由して手に入れたかつての仲間の能力は、京太郎の身体をまったくフラつかせない。
抱きかかえている霞にまったく危険を感じさせないその動きは、彼女の口から満足気な声を漏らさせる。
京太郎の下腹部まで持ち上げられた今、身体が完全に地面から切り離されたが、彼女は不安をまったく感じない。
自分の足で立っている時よりも、安心出来るような気さえする。
京太郎「どうだ?」
霞「パパ、最高よ。まるでヒーローみたいだったわ」クス
京太郎「そりゃそうだ。パパは霞の為なら百人力だからな」
京太郎「娘一人持ち上げるくらい訳ないさ」
京太郎「まぁ、でも、万が一って事もあるから、ちゃんと腕は回しといてくれ」
霞「はいっ♪」ギュ
京太郎「おふぅ」
霞のワガママを文字通り、力技で解決して見せたヒーローは、しかし、密着感を強める彼女の身体に情けない声を漏らしてしまう。
極力、理性的に振る舞おうとはしているものの、彼の身体は未だ欲情の色を残しているのだから。
もう数ヶ月近く尾を引くそれは、能力の影響下であっても我慢出来ない。
自身の胸に押し当てられる大きくてやわらかな感触についつい身体が反応してしまう。
霞「パパ、格好悪ーい」
京太郎「い、今のは違うんだ」
霞「言い訳なんて聞いてあげないっ♪」
京太郎「ぬぉ…」
霞も本気で京太郎の事を格好悪いと思っている訳ではない。
その声は彼女にとって女としての喜悦を覚えさせられるものだったのだから。
京太郎もまた自分の身体に興奮してくれていると思うだけで胸のときめきが淫らなものに染まっていく。
だからこそ、より密着しようと腕に力を込めた霞に京太郎の頬は赤くなった。
京太郎「ま、まぁ、ともかく、そろそろ行こうか」
霞「はーい。あ、襖を開けるのは任せてね」
京太郎「あぁ。頼む」
そう言いながら霞は自身の部屋の襖を開く。
瞬間、二人の目の前に現われるのは廊下への道だ。
部屋の中よりも幾分、冷たいその空気の中に京太郎は躊躇いなく足を踏み出す。
―― ギシリ
その音は霞の耳の中に強く残るものだった。
普段、彼女が鳴らしているものとは比べ物にならないほど大きい。
二人分の体重が奏でるその音に霞の心はスリル感を湧き上がらせた。
霞「…なんだかこうしているとちょっとドキドキするわね」
京太郎「俺もまるでかくれんぼしてるような気分だぜ」
京太郎「角からばったり鉢合わせなんて事にならないよう注意しないとな」
霞「今のところ大丈夫だと思うわ。他の子の足音は聞こえないもの」
霞達が暮らす屋敷は築百年単位の古物件だ。
何度も補修されて大事に使われているとは言え、歩く度に床が軋んでしまう。
意図的に足音を消そうとすれば話は別だが、日常生活でそんな歩き方をするものは殆どいない。
少なくとも、耳を澄ませる霞にそのような音が届く事はなかった。
霞「ちなみにパパはかくれんぼ得意だった?」
京太郎「んー…多分、そこそこだな」
京太郎「幼馴染から隠れるのも見つけるのも得意だったけれど、それ以外は人並みだったと思う」
霞「なるほど…」
京太郎「霞の方はどうだった?」
霞「そうね。両方共、得意だったと思うわ」
霞「上手く隠れすぎて明星ちゃんを泣かせちゃった事もあったし」
京太郎「明星ちゃんが?」
霞「えぇ。あの子、実は結構、泣き虫だったんだから」クス
霞の脳裏に浮かぶのは、在りし日の石戸明星だ。
まだ霞が天児になっていなかった頃の姿はとても可愛らしい。
今からは想像も出来ないほど素直だった明星は、霞の後ろに良くついて回っていた。
意図的に自身と同じ言葉を口にする事さえあった義妹の姿に霞はついつい微笑みを浮かべてしまう。
霞「…なのに、ちょっと見ない間にあんなにエッチな身体になっちゃって」
京太郎「そこはもうちょっと言い方あったんじゃないかなぁ…」
霞「あら、エッチなのは否定しないのね?」
京太郎「ま、まぁ、その、色々とありましたんで」メソラシ
霞「その色々が霞はちょっと気になるかしら」ジィ
京太郎「か、霞ほどヤバイ事はしてないぞ」
藪蛇になってしまった。
そう思いながら、目線を逸らしてしまう京太郎に霞はジィと視線を送る。
ほんの一片でも嘘を見逃すまいとするその目は、彼に言葉を吃らさせた。
その言葉に嘘はないが、しかし、明星との間には幾度と無く過激なイベントがあったのだから。
もし、それらに踏み込まれてしまったら、霞の機嫌を損ねてしまうかもしれない。
霞「ふーん…」
京太郎「う、嘘じゃないぞ」
霞「勿論、パパの事を疑ってる訳じゃないわ」
霞「そもそも明星ちゃんはそういうの隠し通す事が出来ない子だもの」
霞「もし、何かあればひと目で分かってしまうでしょう」
霞「……でも」
京太郎「でも?」
そんな不安とは裏腹に、霞は具体的な内容に踏み込もうとはしない。
代わりに彼女が口にしたのは不満の色を強めた言葉だった。
京太郎が嘘を吐いている訳ではないのは分かるが、しかし、納得が出来ない。
それをありありと伝えてくる声音に、京太郎は思わず聞き返した。
霞「女の霞が言うのも変かもしれないけれど、明星ちゃんの身体ってとってもエッチだと思うの」
霞「その上、明星ちゃんもここ最近はかなりアプローチを強めていっているはずなのに良く我慢出来るなって」
京太郎「ぶっちゃけ、その辺りは俺が一番、良く思ってる」
須賀京太郎と言う人間は決して理知的でも理性的でもない。
自分と言うものに誰よりも長く付き合って来た彼にとって、それは偽らざる本心だった。
だが、今の自分は多くの少女たちから誘惑されながらも、どうにか一線だけは守り通している。
他ならぬ京太郎自身が、誰よりもそれを一番、予想外だと思っていた。
霞「明星ちゃんを自分のモノにしたいとか思ったりしないの?」
京太郎「そ、その…」
霞「正直に答えてくれないと、またエッチな事しちゃうわよ?」
京太郎「あ、あります…」
霞「~♪」
出来れば、その問いに答えたくはない。
だが、ここで黙秘権を行使して、霞の機嫌を損ねるのはもっとまずいだろう。
そう判断した京太郎の口から、肯定の言葉が漏れだした。
蚊が鳴くほどの小さなそれにニンマリと満足そうな顔を見せた霞は、そっと腕に力を込めて京太郎の耳元に口を近づける。
霞「じゃあ、しちゃえば良かったのに♥」
京太郎「い、いや、でも、それは色々とまずいって言うか…」
霞「大丈夫よ。アレで明星ちゃんもマゾだから、パパに迫られるとダメとは言えないわ」
京太郎「だからこそ、ヤバイんだって」
ただ仲が良い家族というだけならば、囁くようなその声を冗談の一種で済ませられる。
だが、彼は既に明星が自分にどのような感情を向けてくれているのかを良く知っているのだ。
一見、冗談に聞こえるその言葉に、頬が引き攣るほどの真実味を感じてしまう。
霞「…いっその事、霞が明星ちゃんの事調教してパパにプレゼントしましょうか?」
霞「もうパパのオチンチン以外考えられないような状態にしちゃったらパパも決心がつくでしょうし」
霞「パパも明星ちゃんも霞も皆、幸せでwin-winじゃないかしら」
京太郎「いや、調教って…義理の妹だろ?」
霞「義理の妹だからこそ、背中を押してあげたいのよ」
これがただ恋敵と言うだけであれば、霞もこんな事を言い出したりはしない。
石戸霞と言う少女にとって、須賀京太郎の存在は掛け替えのないものなのだから。
自分のもとから奪われる可能性と言うものを、彼女は軽視出来ない。
だが、霞にとっての明星は今も尚、可愛らしい妹分でもあるのだ。
周囲から一歩リードしているという余裕もあって、手を貸してあげたくなる。
霞「それに明星ちゃんって言う優秀なサポーターがついてくれたら、パパも霞の事をもっともっと意識しちゃうでしょ?」
霞「明星ちゃんもパパ好みな女の子だし、早めに自陣営に取り込んでおいた方が得策かなって」
京太郎「も、もうちょっとなりふり構った方が良いんじゃないかな?」
霞「これが霞だけにモテモテなパパなら、その辺りにも気を配る余裕があるんだけれど」
京太郎「うぐ」
霞「……でも、パパは激戦区なんだから、手に入れるのに手段を選んではいられないわ」
霞「下らない良心で躊躇っている間に他の子にかっさらわれてしまったら、私、一生後悔するって分かってるもの」
霞「衣食足りて礼節を知ると言うけれど、霞にとってパパは衣食よりもずっと不可欠なものなんだから」
霞「パパの心を引き止める為なら、明星ちゃんだって喜んで差し出すわ」
何より、同盟を結んだ明星をさておいて、一人、関係を先に進めた負い目は決して小さいものではなかった。
出来れば、自分と同じ領域まで明星の事も引き上げてあげたい。
そう思う彼女の言葉に京太郎は思わず言葉を詰まらせた。
当て擦るようなそれは、一定の正しさを感じさせるものだったのだから。
続く霞の言葉にも、なんと返せば良いのか分からない。
京太郎「(霞以外に見向きもしないよなんて言えるような男なら、こんな事にはなってないんだが…)」
しかし、現実、自分の理性はあまりにも頼りのないものだった。
幾ら、そうせざるを得ない状況に追い込まれたとは言え、既に三人の少女と関係の発展を確約してしまったのだから、
俗に浮気相手と呼ばれるその中に霞も入っているだけに、自身の誠実さをアピールする事など出来ない。
それがどれほど白々しいものか、京太郎自身が誰よりも良く分かっていた。
霞「まぁ、明星ちゃんが本気で嫌がるなら霞もしないけれどね」
霞「でも、元々、今日の作戦は明星ちゃんと一緒にする予定だったのよ」
京太郎「え?」
霞「ふふ。言ったでしょ。あの子、アレで案外、エッチなんだって」
霞「霞の方が持ちかけた側だったとは言え、明星ちゃんも乗ってくれたわ」
それは嘘ではないが、決して真実でもない。
明星が乗らなければいけないように話を持って行ったのは他ならぬ霞なのだから。
だが、彼女はそれを口にしたりはしない。
京太郎の抵抗感が少しでも減るように誤解させるような言い回しを選んで。
霞「今回はパパと思いっきり甘えたかったっていうのもあって明星ちゃんには言わなかったけれど」
霞「でも、ちゃんと話を通せば、明星ちゃんも一緒に踏み込んでくれるはずだわ」
霞「…その時、パパは耐えられるかしら?」
京太郎「…」
無理だ。
それが偽らざる京太郎の本心だった。
霞一人でさえ耐えられなかった自分が、明星とタッグを組んだ彼女に太刀打ち出来るはずがない。
流されるままに二人を犯し、溜まりに溜まった性欲を発散してしまうだろう。
霞「霞としてもパパに無理をさせるのは本意じゃないし…最初から諦めてくれた方が楽なんだけれど」
京太郎「それは出来ない」
しかし、だからと言って、何もかもを投げ出して石戸姉妹を貪る訳にはいかない。
勝機がない戦いだと分かっているが、それは諦めて良い理由にはならないのだ。
石戸姉妹に、欲望に、負けてしまうのだとしても、それは最後まで抗いきった後でなければならない。
そうでなければ、今度こそ婚約者に、顔が上がらなくなってしまう。
霞「パパも強情ね」
京太郎「何度も霞に負けてる状態で言うのもアレだけど、その辺は男としての意地があるんだよ」
京太郎「でも、男の人にとってハーレムって夢じゃないの?」
京太郎「夢はあくまでも夢だから良いものなんだって俺は最近、気づいたんだ」
無論、京太郎の中にもハーレムへの憧れというものはあった。
だが、実際にそれが許される立場になると倫理観や貞操観念が『おかしい』と騒ぎ始める。
例え、勧めてくれているのが見惚れるほど美しい霞であってもそれは変わらない。
興奮で思考が歪んでいる時ならばまた話は別だが、幾分、冷静な今の状態で首を縦に振ってしまってはただのクズだ。
霞「むー…」
京太郎「どうかしたか?」
霞「…何でもない」
京太郎「なんでもないなんて事はないだろ?」
そう思う京太郎の前で、霞は目に見えて不機嫌そうになった。
今にもその唇を尖らせてしまいそうなそれは到底、何でもないようには見えない。
間違いなく、自分の言葉が霞の機嫌を損ねてしまった。
その責任は取らなければいけないと京太郎は踏み込んで。
霞「…………だって、パパ、迷惑そうだったんだもん」
霞「勿論、霞とそういう関係になるのはパパにとって迷惑だったって…霞のワガママなんだって分かっているけれど」
霞「ハッキリ、良いものじゃないって言われちゃったら、やっぱり面白く無いわ」
それが一体、どれほど理不尽な言葉なのか、霞も良く分かっている。
嫌がる京太郎に身体を使い、宥め、脅し、今の立ち位置を手に入れたのだから。
既に婚約者がいる京太郎が、それを喜べるはずがない。
そう告げる理性とは裏腹に、彼女の『女性』はあまりにも自分勝手だった。
羞恥心のタガを外し、抑制も殆ど働かない今、そのエゴはついつい表に出てしまう。
京太郎「悪い。確かに霞の言う通りだな」
京太郎「俺にデリカシーがなかった。すまない」
霞「…つーん」
京太郎「か、霞ぃ…」
しかし、それはあまり長続きするものではない。
霞も自分がどれほど無茶苦茶な事を言っているのか理解しているのだから。
こうして素直に謝ってくれた以上、不機嫌さはもうなくなっている。
それよりも遙かに強いのは、京太郎に対する申し訳なさだ。
霞「…今日はちゃんと添い寝してくれなきゃ許さないわ」
霞「ううん。ただの添い寝じゃなくて腕枕もセットでね」
京太郎「まぁ、最初からそれくらいはするつもりだったし、構わないけれど…」
霞「良いの」
だからこそ、彼女は賠償として必要最低限のモノを求めた。
根が自罰的な彼は、ここで何も要求しなかったら逆に申し訳無さを引きずってしまう。
それを防ぐ為の心遣いに、京太郎もまた気づいていた。
だからこそ、本当にそれで良いのかと言外に尋ねる京太郎に、霞は小さく頷く。
霞「それよりほら、台所はもう目の前よ」
京太郎「んじゃ、ラストスパートと行きますか」ダッ
霞「きゃんっ」
強引に話を打ち切ろうとする霞に京太郎は駆け出しながら応えた。
残り10m程度の距離を一気に詰めようと彼の足はドタドタと言う足音をかき鳴らす。
自然、大きく揺れる胸の中で霞は声をあげるが、それは決して嫌そうなものではなかった。
思った以上に早く、そして余力を残していた京太郎の身体に、鼓動の甘さを強めてしまう。
京太郎「ふぅ」
そのまま台所へと駆け込んだ京太郎は一息吐いた。
だが、それは決して肉体的な疲労から放たれたものではない。
最後に小走りとなって駆け抜けたとは言え、京太郎の身体はまだまだ余力を残しているのだから。
それでも尚、彼の口から漏れるのは、精神的疲労からのため息だった。
これでもう霞の豊満な胸を押し付けられるような事はない。
未だ理性のレッドアラートが鳴り止まない彼にとって、それは思わず安堵を覚えるものだった
霞「もう…パパったら、子どもみたいに走っちゃって」
京太郎「はは。霞に良いところ見せたくてさ」
霞「…もう十分、見せて貰ったわよ」クス
しかし、京太郎はそれを霞に見せようとはしない。
たまにメスの顔を見せるとは言え、霞の本質は甘えん坊なのだから。
彼女の前で見せるのは基本的に格好良い須賀京太郎でなければいけない。
そう言い聞かせる京太郎の前で霞はクスリと嬉しそうに笑った。
京太郎「じゃあ、降りれるか?」
霞「…………う、うん」
霞の自室から台所まで。
その間、ずっとお姫様抱っこを続けてくれた彼に霞は満足している。
だが、満足したからと言って、それを容易に手放せる訳ではない。
その口から漏れる返事はさっきよりも躊躇いの色が強くなっていた。
霞「(幾らパパでも、この状態ではどうにもならないだろうし…)」
先ほどは力技で解決して貰えたが、流石に今回はどうにもならない。
京太郎がどれほど逞しかろうがその腕は二本しか無いのだから。
霞の事を抱き上げながら、飲み物の準備をするなんて不可能だ。
幾度となく胸中でその言葉を繰り返しながら、霞は徐々に腕から力を抜いていく。
京太郎「それじゃ降ろすぞ」
それを感じ取った京太郎はゆっくりと自身の膝を折っていった。
そのまま片膝立ちになるのは、霞の身体を優しく着地させる為。
そう理解した瞬間、霞の胸中に疼くような寂しさが訪れる。
だが、彼女はそれに屈する事なく、導かれるままに床へと降りた。
京太郎「霞は偉いな」
霞「んふー…♪」
直後、霞へと送られる称賛に彼女は自慢気な顔を見せる。
京太郎を『パパ』と呼ぶ霞にとって、それは自尊心を満たしてくれるものだったのだから。
寂しさにも負けないその感覚に彼女は小さく胸を張る。
そんな霞を微笑ましそうに見ながら、京太郎の手はそっと頭へと伸びて。
京太郎「っと」
霞「うー」
その途中で手が止まるのは、既に髪の手入れを終えてしまったからだ。
入念に手入れを行い、ツヤを増した彼女の髪を乱してはいけない。
いっそタブーと言っても良いその感覚に、京太郎は手を降ろした。
瞬間、霞が寂しそうな唸り声をあげるものの、撫でて欲しいと強請ったりはしない。
彼女もまた自分のロングヘアがどれほど面倒臭い存在かを良く理解しているのだから。
ここで撫でられてしまったら、京太郎にして貰った手入れが無駄になる。
モジモジと落ち着かなさそうに揺れる身体の中では、そんな言葉が欲求とぶつかり合っていた。
京太郎「ともかく、今は準備だな」
霞「そっちは霞がやるわ」
京太郎「確かに霞の方が慣れてるだろうけれど…でも、良いのか?」
霞「流石にお茶くみまでパパに任せるのはちょっとね」
霞「そういうのは女の子の仕事でしょうし、霞に任せて」
霞「代わりにパパは霞の部屋に戻って、バスタオルの片付けとお布団の準備をしておいてくれないかしら?」
京太郎「あぁ。構わないが…」
霞がお茶を淹れるなら、ここで自分が出来る事は何もない。
ならば、霞の部屋に戻って、寝る準備を整えておいた方がまだ有意義だろう。
胸中に浮かぶ同意の言葉とは裏腹に、京太郎は違和感を覚えた。
さっきは中々、自分から離れようとしなかった霞が、今、自分を遠ざけようとしているのだから。
幾ら効率の為とは言え、これまでずっと自身に甘え続けてきた彼女にはそぐわない言葉だと感じる。
京太郎「(まぁ、また褒められたくて、自分でやるって言い出したってところだろう)」
京太郎「(それより今は…)」
京太郎「ちなみに迎えは必要か?」
霞「流石に熱いお茶持った状態でお姫様抱っこして貰うのは危険だからやめておくわ」
霞「一組分の布団を出したら、そのまま待ってて」
京太郎「ふ、二組でも腕枕はしてやれると思うんだけど」
霞「だーめ♥」
その違和感に適当な答えを出した京太郎は、霞の言葉に冷や汗を浮かべてしまう。
娘としても、女としても、彼女のアプローチは激しいのだから。
ここで同衾などしてしまったら、未だ立ち直りきっていない理性が崩壊の危機に直面しかねない。
だからこそ、それを回避しようとする京太郎の前で、霞はニコリと微笑みを浮かべる。
霞「お布団挟んでの腕枕だなんて、霞、寂しすぎて絶対に夜泣きしちゃうわ」
霞「ううん。泣くだけじゃなくて、きっとパパともっともっと触れ合いたくなっちゃう」
霞「それも服越しにじゃなくて直接肌を合わせたくなっちゃうかも…」
京太郎「…一組だけにしときます」
霞「お願いね」ニコ
あくまでも可能性に過ぎないその話を、京太郎は真実味のあるものとして受け取らざるを得なかった。
そもそも霞は既に一線を超えるつもりで誘惑し、実際にその直前まで進んでいたのだから。
もし、必要があるならば、霞は再び自身に肌を晒し、肉体関係を求め始めるだろう。
そんな彼女にNOと応えれば、パパも期待していたんでしょうと押し切られてしまいかねない。
だからこそ、その要求を丸呑みにするしかない京太郎はまた肩を落とした。
霞「その分、美味しく淹れるからね」
京太郎「あぁ。期待してるな」
とは言え、それを見た霞が前言を撤回するはずがない。
ここで自分に出来るのは血迷う可能性が極力、低くなるように頭を冷静にする事だけだ。
そう言い聞かせながら、京太郎は台所から出て行く。
その背を霞は手を振りながら見送って ――
「…えぇ♪ いぃっぱい期待してくれてて良いわよ、パパ…♥」
………
……
…
京太郎「むぅ」
それから十数分後、京太郎は霞の部屋でそわそわとしていた。
まるで落ち着きの見えないその仕草は、霞に頼まれた仕事を終えてから、それなりの時間が経過しているからこそ。
自身をパパと呼ぶ見目麗しい女性と添い寝をするのだと言う意識が、時間の経過と共に京太郎の中で強くなっていく。
京太郎「(お、落ち着け。俺)」
京太郎「(あくまでも添い寝であって、エロい事する訳じゃないんだ)」
京太郎「(そもそも添い寝は前もやっていたし、我慢は出来るはずだろう)」
それを宥めようと繰り返す言葉を、京太郎自身、信じる事が出来なかった。
確かに以前、彼は霞と添い寝をしていたが、それは彼女が風邪でダウンしていた時。
好意を伝えてくれた後でも、なりふり構わず誘惑された後でもない。
あくまでも霞が大人しく添い寝に応じてくれたからこそ、耐える事が出来たのだと良く分かっていた。
京太郎「(ま、まぁ、添い寝を受け入れた以上、霞もそれなりに譲歩してくれるだろう)」
京太郎「(今はまだそういう事をする訳にはいかないって言うのは既に伝えたし…)」
京太郎「(抱きついたりキスを強請るくらいはするかもしれないけれど、風呂場みたいな事を言い出したりはしないはず)」
京太郎「(…つーか、そうじゃないと俺が耐えられる自信がない)」
京太郎「(添い寝ってだけで意識してドキドキして…しかも…)」
霞「パパ」
京太郎「お、おう」
ムラムラ感がさっきからずっと止まる事がない。
その言葉が胸中で形になる前に、襖の向こうから霞の声が届く。
それを襖を開けてと言うアピールなのだと感じ取った京太郎は畳に降ろしていた腰をあげた。
そのまま数歩ほど歩いて襖を開けば、木製の盆に白磁のティーセットを載せた霞が現われる。
霞「ありがとう、パパ」
京太郎「どう致しまして」
部屋の中に踏み込む霞に合わせて、京太郎はそっと襖を閉める。
瞬間、彼の鼻腔を擽るのは嗅ぎ慣れない香りだ。
独特の癖を感じる甘い香りに京太郎は興味と視線をティーポットへと向ける。
京太郎「…で、霞は一体、何を準備してくれたんだ?」
霞「今日はリラックス効果のあるハーブティを選んでみたの」
霞「効果は折り紙つきよ」
京太郎「へー…そりゃ楽しみだ」
霞「ふふ」
京太郎の口から漏れる声は父性の色はまったく感じさせないものだった。
まるで子どものようなそれは、少なくない興味と興奮を霞へと伝える。
待ちきれないと言わんばかりのそれに彼女は小さく笑みを浮かべながら、盆を机の上に置いた。
そのまま腰を降ろした霞の横に、京太郎も身体を沈めていく。
霞「もうちょっと待っててね。今、淹れてあげるから」
京太郎「悪いな」
霞「ううん。気にしないで」
霞「今日のお礼って言えるほど大層なものじゃないけれど」
霞「霞だって、パパにお返しの一つや二つくらいはしたいから」
言いながら、霞はティーポットをそっと持ち上げた。
そのまま白亜の陶器を円を描かせるように揺らした霞はゆっくりと注ぎ口を傾けていく。
瞬間、流れ出るのは桃色の液体だ。
紅茶の色を薄めたようなそれはカップに落ちた瞬間から甘い匂いを周囲に広げる。
京太郎「良い匂いだな」
霞「そうでしょう。霞もお気に入りなの」
霞「でも、これは匂いとは違って、ちょっと苦いハーブティだから」
霞「初心者のパパは砂糖を入れた方が飲みやすいと思うわ」
京太郎「そうだな。それじゃ砂糖も頼めるか」
霞「えぇ」ニコ
京太郎の言葉に笑顔で応えながら、霞はシュガーポットへ手を伸ばした。
陶器らしい色艶を放つ白亜の壺の蓋を開け、小さなスプーンで白い粉を二杯ほどカップへと運ぶ。
その後、スプーンでハーブティをかき混ぜた霞は、粉がしっかりと溶けているのを確認してから、京太郎へと手渡した。
霞「はい。パパ」
京太郎「おう。ありがとうな」
霞「多分、まだまだ熱いだろうから気をつけて飲んでね」
京太郎「おう。子どもじゃないんだから大丈夫だ…アチッ」
それを受け取った京太郎は霞の忠告に軽く返しながら、唇へと運ぶ。
だが、それに口をつけた瞬間、伝わってきた熱さは予想以上のものだった。
ついつい声が漏れ出るほどの熱量に、京太郎は口を離してしまう。
霞「パパー?」
京太郎「い、いや、俺が平然と飲んでしまったら霞も熱くないと思って火傷するかなって思ってさ」
霞「情けない言い訳だけど、霞の為だって言ってくれるなら騙されてあげる」クス
瞬間、自身へと送られるジト目に、京太郎はぎこちなく応えた。
さっきのアレは霞への気遣いから出た演技であり、決して本気で熱がっていた訳じゃない。
そう醜態を取り繕おうとする京太郎に、霞は深く突っ込んだりはしなかった。
代わりに彼女は自分の分のカップにもハーブティを注いで。
霞「はい」
京太郎「ん?」
霞「パパがふーふーして」
京太郎「あぁ。そうか」
そのまま差し出されるふたつ目のカップは、勿論、霞のものだった。
普段の霞なら自分で冷ますが、しかし、今の彼女は甘えん坊。
大好きなパパにまた甘やかして貰おうと、カップを手渡した。
それを受け取った京太郎は、まず霞の方から冷ましてやろうと吐息を吹きかけていく。
霞「ふふ」
そんな京太郎の姿に、霞の口から嬉しそうな声が漏れ出る。
頼りがいのある『パパ』であり、愛しい男でもある京太郎が自分の為に動いてくれているのだから。
そろそろ三桁に突入しそうなほど甘やかせて貰っているが、その喜びは未だ色褪せる気配がない。
むしろ、強くなっていっているような気さえする霞は、愛おしそうに京太郎のことを見つめる。
それにほんの僅かな居心地の悪さを感じながらも、京太郎は吐息を吹き続けた。
京太郎「こんなもんでどうだ?」
霞「んー…丁度、良いと思う。ありがとう、パパ」
京太郎「どういたしまして」
数分後、湯気の勢いがグっと弱まったのを確認した京太郎は、カップを霞へと返した。
それを受け取って数秒ほど温度を確かめた霞の口からOKの言葉が返ってくる。
それに内心、安堵しながら、京太郎は自身のカップを手に取り、ふーふーと息を吹きかけた。
一分ほどそれを繰り返している内に我慢出来なくなった京太郎は、再びそれを口へと近づける。
京太郎「(…うん。我慢出来ないレベルじゃないな)」
京太郎「(少なくとも、さっきみたいに反射的に口を離してしまうレベルじゃない)」
霞「どうかしら?」
京太郎「あぁ。美味しいよ」
京太郎「ただ、やっぱりちょっと苦味がきになるところもあるし…」
京太郎「霞に砂糖を入れて貰って正解だったな」
霞「ふふ。でしょう?」
本来、ハーブティは香りを楽しむ為のもの。
はちみつや砂糖を淹れる事もあるが、飲みやすくする程度に留めるべきだと言う意見が一般的だ。
だからこそ、霞が二杯も砂糖を運んだ時には内心、驚きもしたが、今では正解だったと思う。
砂糖を入れても尚、微かに感じる苦味は、砂糖なしの状態を想像させるに足るものだったのだから。
もし、砂糖を入れていなかったら、顔を顰めていたかもしれない。
霞「ただ、のんびり飲んでると砂糖が下の方に沈んじゃって大変な事になるから」
霞「早く飲んじゃった方が良いかもしれないわ」
京太郎「そうだな。そうさせて貰うか」
霞が淹れてくれたハーブティを思う存分、味わいたい。
そんな気持ちは、決して小さいものではなかった。
だが、他ならぬ本人がこうして勧めてくれているのに、ちびちび飲むのも失礼だろう。
そう思った京太郎はグっとカップを持ち上げて、その中身を喉の奥へと流しこんだ。
霞「…ちゃんと全部、飲んでくれた?」
京太郎「あぁ。飲んだけれど…」
霞「ふふ。良かった」
霞「正直、気に入って貰えるか不安だったから」
京太郎「なんだ。そんな事か」
京太郎「ちょっと薬っぽい苦味があってビックリしたけど、美味しいって感想に嘘はないぞ」
霞「…そう」チラ
京太郎の言葉に応えながら、霞はチラリと視線をカップへと向ける。
瞬間、彼女の視界に入るのは、カップの底に残った粉だった。
ハーブティに濡れたそれはもう殆ど残ってはいない。
その大半が京太郎の身体の中へと取り込まれた事を確認した霞はほんの僅かに唇を釣り上げて。
霞「それじゃ眠くなる前に三つ編みをお願いしましょうか」
京太郎「あぁ。ただ、さっきも言ったけど、俺はやった事ないし…」
霞「大丈夫よ。どうせ二つ作るつもりだったから」
霞「お手本ついでに霞が髪を結ぶから、それを見ながら一緒にやりましょう」
京太郎「分かった」
言いながら、霞は首を大きく回した。
それに合わせてうしろ髪を持ち上げれば、肩から黒い滝が流れ出る。
その髪束の半分を目測で手に取った霞は残りを逆側の肩へと流した。
霞「まず最初にしなきゃいけないのは髪の毛を3つ均等に分ける事」
京太郎「均等…」
霞「えぇ。でも、バッチリ1/3にしなきゃいけないって訳じゃないわ」
霞「大体、髪の太さが一緒になるくらいなら大丈夫よ」
京太郎「ふむ…」
霞「ふふ」
霞とは別に髪束に手を伸ばした京太郎は、言われた通り、髪を3つに分けていく。
未だ加減が分かっていないのか、おずおずと触れるその手が霞には微笑ましく思える。
三つ編みよりも難しいはずの手入れを、あんなにしっかりやってくれたのに、どうしてここまでぎこちなくなってしまうのか。
胸中に湧き上がるその言葉に、ついつい笑みを漏らしながら、霞もまた髪束を3つに分けた。
霞「それが出来たら、準備は完了よ」
霞「後は真ん中の髪に左右から髪をクロスさせるだけ」
霞「ただ、この真中は最初に分けた真ん中じゃなくてその時々に応じた真ん中である事」
霞「真ん中の髪を常に下側にクロスさせると覚えておけば、まず失敗はしないと思うわ」
京太郎「むぅ」
霞の説明に京太郎はつい唸り声を漏らしてしまう。
今まで編み物などをしてこなかった彼にとって、それはイメージしにくいものだった。
分かったような気もするし、分からないような気もする。
曖昧な感覚の中、京太郎は髪束に戸惑うような視線を送った。
霞「ふふ。とりあえず実演しましょうか」
京太郎「悪い。頼む」
霞「えぇ。じゃあ、見ててね」
その視線を引き寄せるように言いながら、霞はその手を動かし始める。
右の髪束を真ん中とクロスさせ、次は左の髪束を真ん中になった髪束に重ねた。
その一つ一つを数秒掛けてゆっくりと見せる霞に、京太郎の中でイメージが出来上がっていく。
京太郎「あー…なるほど」
霞「分かった?」
京太郎「大体だけれど…でも、さっき霞が言ってた事は分かったと思う」
霞「じゃあ、もう大丈夫よ。三つ編みなんてとっても簡単だから」
霞「慣れれば意識しなくても出来るようになるわ」
霞「ただ、あくまでもこれは髪の毛が傷まないようにする為のものだから」
霞「あんまりきつく結ばないでくれると嬉しいかしら」
京太郎「了解。んじゃ…ちょっとやってみますかね」
このまま見ていても、イメージは前に進まない。
これ以上は実践で経験を得るしかないだろう。
そう判断した京太郎は霞に倣って、髪束を重ねていく。
一つ一つ確かめるように繰り返されるそれは少しずつ上達の兆しを見せ始めていた。
霞「分からない事や気になる事があったら何時でも言ってね」
京太郎「あぁ。その時はよろしくな」
念のためにそう言ったものの、霞は既に京太郎ならば大丈夫だろうと安心していた。
彼はとても器用なだけではなく、物覚えも良いのだから。
繰り返される編み方も希望通りのものである以上、失敗する事はまずないだろう。
だからこそ、ここは自分の三つ編みに集中するべきだと霞は手際よく髪を編みこんでいき。
京太郎「早いなぁ…」
霞「三つ編みは女の子の嗜みの一つだもの。これくらいはね」
京太郎から漏れる感嘆の声に、霞は微笑みながら応えた。
どんな形であれど、京太郎に褒められるのは彼女にとって嬉しいことなのだから。
嗜みの一つだと応えながらも、ついつい自尊心を擽られてしまう。
霞「それで最後はこんな風に毛先を留めてくれれば完成よ」
京太郎「ん。分かった」
とは言え、京太郎の方ももうかなり終盤に近づいていた。
最初はおずおずとした焦れったささえ感じさせる手つきだったが、今はもうそんな事はない。
スルスルと淀みなく動く指先はすぐさま終点へと辿り着く。
それを待ってからゴム紐で毛先を留めた霞は、同じものを京太郎へと手渡した。
京太郎「っし。出来たし、確認頼む」
霞「そんなの要らないと思うわ」
京太郎「そう言ってくれるのは嬉しいけど、俺が気になるんだよ」
霞「…じゃあ、念のためにね」
霞の髪を纏め終わった今、二人の予定は就寝しか残っていない。
もし、ここで何かしらの不備があった場合、気づくのは何時間も先になってしまう。
結果、霞の髪にダメージを与えていた、なんて事にならないよう、しっかり確認して欲しい。
そう促す京太郎に、霞はそっと畳から立ち上がり、部屋の隅に置いてある姿見へと近づいていく。
霞「…うん。大丈夫」
京太郎「本当か?」
霞「霞だって自分の髪はそれなりに大事なのよ」
霞「これからパパには霞の髪を何度も編んで貰う事になるかもしれないし、嘘なんか言わないわ」
霞「むしろ、本当に初心者なのって思うくらい上手に編めていると思う」
京太郎「そっか」フゥ
霞の言葉は決して世辞ではなかった。
流石に自分ほど手慣れたものではないが、目立った修正点は見つからない。
初めてでこれならば、いずれ自分すら追い越してしまうのではないか。
そんな事さえ思わせるほどの出来に満足しながら、霞はクルリと振り返って。
霞「ふふ。それじゃあ…パパ♥」
京太郎「う…」
霞「お楽しみの…時間よ」クス
そのまま京太郎へと近づく霞は、瞳に期待と興奮の色を浮かべていた。
彼に添い寝される事が楽しみで仕方がないというその顔に、京太郎は淫らなものを感じ取る。
もしかしたら、自分はまた霞に誘惑されてしまうのではないだろうか。
そんな不安に一瞬、気まずそうな声を漏らした彼はそれをねじ伏せるように、彼女へと腕を伸ばした。
京太郎「分かってるよ…と」
霞「~っ♪」
まるで霞を出迎えるようなその腕は、彼女を再び空中へと持ち去った。
抵抗する間もなく完成したお姫様抱っこに霞の胸は喜悦に震える。
京太郎が座っていた場所は布団のすぐ近くで、目的地まで数歩もない距離だったのだから。
あっという間にたどり着いてしまうであろうその場所にお姫様抱っこで連れて行って貰えるなど彼女は予想していなかった。
霞「パパぁ…♥」スリスリ
京太郎「おう。もうちょっと我慢しててくれ」
その呼びかけには大した意味などなかった。
ただ、胸の底から湧き上がるドキドキを何か別の形にしたかっただけ。
京太郎も勿論、それは分かっている。
それでもこうして応えるのは、その方が霞も甘えやすいと思ったからこそ。
少なくとも、呼びかけを無視されるよりも意識しているとアピールされた方が嬉しいだろう。
そう思いながら、京太郎はゆっくりと膝を降ろし、霞の身体を布団の上へと優しく横たわらせた。
京太郎「しょっと」
霞「ん…♪」
それから彼が掴むのは霞の下敷きになっている掛け布団の端だ。
左手で彼女の身体を浮かせるのに合わせて、敷布団から引き剥がしたそれを霞の上へと掛けていく。
瞬間、彼女の口から声が漏れるのは布団の中が心地良いからではない。
冬の寒さが染みこんだ繊維の中は未だ温まりきってはおらず、外よりもマシと言う程度。
それよりも移動から就寝の準備まで徹頭徹尾、世話して貰える事の方が嬉しい。
霞「パパも早くぅ…♥」
京太郎「はいはい。今行くよ」
しかし、それは霞の心を満足させるに足らない。
彼女の胸はもう京太郎との添い寝で満たされているのだから。
早くそれが欲しいと口から誘いともオネダリとも言えない言葉を漏らしてしまう。
甘いその声に応えながら、京太郎も布団の中へと潜り込んで。
霞「んーっ♥」ギュゥ
京太郎「お、おふぅ…」
瞬間、彼を出迎えたのは、布団の中の冷気ではなかった。
それよりももっと暖かく、豊満な身体が京太郎へと飛びついてきたのである。
まるで待ちきれなかったのだと言うように、柔らかなメスの肢体は京太郎へと絡みついた。
もう二度と逃さないと言わんばかりのそれに京太郎は心地良さとも困惑とも言えない声を漏らしてしまう。
霞「えへへ…パパぁ…♥」
京太郎「…ん。俺はここにいるぞ」
しかし、それも数秒ほどで引いていく。
今の霞は自身に父性を求めているという事が、その身体全体から伝わってきたのだから。
ここは頼りがいのあるパパとして、霞の気持ちを、そして身体を受け止めてやらなければいけない。
胸中を揺らすような困惑と興奮にそう言い聞かせながら、京太郎もまた霞の背中に腕を回す。
京太郎「(後は腕枕も…だったな)」
霞「んふぅ…♪」
そのまま彼が霞の首下に腕を伸ばせば、彼女はそっと首を浮かせる。
京太郎の意図を感じ取ったが故の反応に、彼もまた応えた。
生まれたスペースにスルスルと腕を差し込み、そのまま霞の頭を優しく抱きかかえる。
瞬間、熱い吐息を漏らした彼女は、トロンと顔を蕩けさせた。
霞「パパとの添い寝…♪ やっぱり幸せぇ…♪」
京太郎「そんなに喜んでもらえると俺も嬉しいよ」
霞「ホント?」
京太郎「あぁ。娘が喜んでくれてるんだし当然だろ」
霞「んふ…♪ じゃあ、もっと霞、喜んじゃう…♥」スリスリ
京太郎「う…」
今の二人は腕でも胸でも足でも密着している状態だ。
そんな状況で甘えるように身体を擦り寄せられれば、興奮が強くなってしまう。
下手をすれば、また勃起して、霞を暴走させてしまうかもしれない。
そう思った京太郎は理性を強めようと身体に力を込めるが。
京太郎「(アレ…?)」
身体から返ってくる反応は、あまりにも朧気なものだった。
意識と身体の間に霧が掛かってしまったような感覚に、京太郎は内心で首を傾げる。
それは決して覚えのないものではなかったが、しかし、あまりにも突然過ぎた。
さっきまで眠気などまったくなかったはずなのに、一体、どうしてなのだろうか。
そんな疑問に、京太郎の脳裏は霞のハーブティを思い浮かべた。
霞「…どうしたの、パパ」クス
京太郎「あ、いや、その…」
霞「もしかしてもう眠くなっちゃった?」
京太郎「みたい…だな」
京太郎「悪い。霞が寝るまで起きてるつもりだったんだが…」
霞「ふふ。そう言ってくれるだけで十分よ」
霞「パパも最近、色々とあって疲れてたんでしょうし」
霞「ゆっくり休んで…♪」
恐らくさっきのハーブティがもう効果を発揮し始めたのだろう。
そう答えを出している最中も、京太郎の眠気は強まっていく。
まるで雪崩のように押し寄せるそれは彼の瞳にも現れ始めていた。
トロンと緩んだその目は、恐らく後数分もしない間に閉じきってしまうだろう。
霞「でも、その前に、霞はお休みのチューが欲しいわ…♥」
霞「エッチな奴じゃなくても良いから…パパからして欲しいの…♪」
京太郎「そうだ…な。じゃあ…」
霞「ん…♥」
ならば、その前に最後のオネダリだけはしておかなければいけない。
そう思った霞の唇に京太郎から優しいキスが贈られる。
優しい分、技巧がまったくないそれが、しかし、彼女にとっては嬉しくて堪らない。
愛しい人からして貰えたと言う事実は、唇を触れ合わせるだけの接吻を、幸せなものに変えていた。
霞「パパ…好きよ…♥ 大好き…♥」
京太郎「お…ぅ…」
結果、ついつい漏れでてしまう愛の言葉は、もう殆ど京太郎の意識に届いてはいなかった。
強くなる一方の眠気は、泥沼のように彼の意識を取り込んでいたのだから。
既に瞼も半分、閉じかけている状態で、返事など出来るはずもない。
抵抗するように何度か瞼を持ち上げながらも、少しずつ閉じる時間が長くなっていく。
京太郎「すー……」
霞「ふふ…♪」
それから一分もしない間に、京太郎の口から寝息が漏れ始める。
穏やかなその音に霞が笑みを浮かべるのは、彼の寝顔がとても幼いものだったから。
ついさっきまで自分の『パパ』をやってくれていた男とは思えない、『年下』の彼に、彼女はゆっくりと手を這わせる。
霞「パ…パ♥」サワサワ
京太郎「ぅ…」
甘く呼びかける声に返事はない。
それどころか霞が京太郎の胸や腹筋を撫でても尚、抵抗と呼べるような反応を見せる事はなかった。
その口から戸惑うような声は漏れるものの、閉じた瞼は決して開く事はない。
一杯目のシュガースプーンに予め盛られていた睡眠薬は、既に彼の意識を深い眠りへと連れ去った後だった。
霞「…今日は本当に色々とありがとう」
霞「そして…ワガママばっかりでごめんね」
霞「あんまり頼り過ぎちゃダメだって分かってるんだけど…でも、パパったら何でも叶えてくれるから」
霞「ついつい調子に乗っちゃって…」
そんな京太郎に霞はお礼と謝罪の言葉を口にした。
無論、彼女もそれは彼が起きている時に言うべきものだと分かっている。
だが、京太郎と二人っきりの時は、自分でも思っている以上に甘やかされ、その二つが口から出てこない。
そして、何より ――
霞「だから、今度は霞が…ううん…♪」
霞「『私』が京太郎君のお世話をする番ね…♥」
それは霞にとって、免罪符だった。
寝込みを襲う為に睡眠薬を盛ってしまった事を正当化する為の理屈だったのである。
そんな自分を卑怯だと思いながらも、霞はもう止まれない。
どれだけ甘やかされても数時間前から続く疼きは子宮から離れる事がなかったのだから。
霞「京太郎君が悪いのよ…♪」
霞「私の事…こんなに焦らしちゃうから…♪」」
霞「とっても美味しそうなオチンチンお預けにするから…♪」
霞「だから…私、もう京太郎君の事襲わずにはいられないの…♥」
責任転嫁の言葉を続けながら、霞は自身の寝間着を結ぶ紐を解いた。
そのままグイと京太郎の身体を押せば、横向きになっていた身体が仰向けへと変わる。
『世話』がしやすいようにと変えられる姿勢に、しかし、彼は目を覚ます事はない。
すぅすぅと穏やかな寝息を立てるだけの京太郎に霞は妖しい笑みを浮かべながら馬乗りになって。
霞「ねぇ…起きないと、大変な事になっちゃうわよ…♪」
霞「私、もう京太郎君の事、欲しくて欲しくて堪らないんだもの…♥」
霞「我慢出来ずにしちゃいけない事までしちゃうかもしれないわ…♥」
霞「それでも…良いの?」
霞「京太郎君は…私に犯されたいの…?」
霞「返事がないって事は…そういう事よね…♥」
彼の作務衣を脱がしながらの言葉に返事が返ってくるはずがない。
そんな事は京太郎に何度となく睡眠薬を盛った彼女が良く分かっていた。
これから数時間、彼はどれほど肉棒をしゃぶられようが、秘所を押し付けられようが起きる事はない。
自分の好き勝手に出来る人形になってくれる。
それでも疑問の言葉を続けるのは、彼女にとってそれがとても大事なものだからこそ。
決して受け入れられてはいないかもしれないが、拒絶されている訳ではない。
その感覚に背を押された霞は勢い良く京太郎の下着を引きずり下ろし、ねっとりと唾液まみれの口を開いて ――
霞「それじゃあ…今日もいただきまぁす…♥」
ってところで今日は終わりです(´・ω・`)次回は姫様編に入れたら良いなぁ
明日の朝には投下したい(小声)
明日の朝に投下すると言ったな
アレは嘘だ(´・ω・`)ヒャッハー!投下だー!!
あ、今日は姫様編って事ですっごくほのぼのしてるのでパンツは履いてて下さい
小蒔「ふんふふーんふーん♪」
その日の小蒔は上機嫌だった。
今日の彼女は京子と一緒に買い出しの当番になれたのだから。
他の誰かと一緒の事が多い京子と、二人っきりになれるのはとても嬉しい。
他の『家族』が一緒の時よりも遙かに浮かれた様子で、彼女は昼過ぎの道を歩いていた。
京子「ふふ。小蒔ちゃん、そんなに浮かれてると転んじゃうわよ」
小蒔「その時は京子ちゃんが何とかしてくれるはずです!」
京子「頼りにしてくれるのは有り難いけれど、私も別に万能って訳じゃないのよ?」
京子「だから、手を繋ぎましょうか」
小蒔「はーいっ♪」
そんな彼女に注意しながらも、京子はついつい甘い顔をしてしまう。
京子にとって、神代小蒔と言う少女は、年上の妹のような存在なのだから。
人懐っこく純真な彼女に、厳しい顔を見せ続ける事が出来ない。
浮かれる彼女にクスリと笑みを見せながら、しっかりとその手を繋いだ。
京子「にしても、今日は随分と上機嫌だけれど、何かあったの?」
小蒔「えへへ。京子ちゃんとお出かけ出来るのが嬉しいんです」
京子「そう。確かに最近は色々と忙しくて皆とお出かけ出来なかったし…」
京子「今度、霞さんに皆で何処かに行こうって提案してみようかしら」
小蒔「本当ですか!?」
既に12月も半ば。
小蒔の卒業まで ―― 彼女たちとの関係が大きく様変わりするまで既に一ヶ月を切っている。
その先がどうなるのかはまだ分からないが、今のように穏やかな時間が続く訳がない。
その前に皆で遊びに行って、最後の思い出を作るのも良いだろう。
そう思った京子の言葉に、小蒔は瞳を輝かせた。
小蒔「じゃあ、私、一生懸命お弁当作りますね!」
小蒔「おにぎりもたぁくさん握っちゃいますから!」
京子「ふふ。まだ決まった訳じゃないわよ」
京子「皆の予定が合うかって言う問題もあるしね」
窘めるように言いながらも、ほぼ間違いなく実現可能だろうと京子は思っていた。
『家族』と呼び合う彼女たちはとても仲が良く、また全員がタイムリミットを意識している状態なのだから。
否応なくバラバラにされるであろう時間の前に、最後の思い出を作りたい。
それは自分と小蒔だけではなく、皆も共有している想いだろう。
京子「ただ、その時が来たら、小蒔ちゃんにも一杯、手伝って貰わなきゃね」
小蒔「はい。全力以上でおにぎりを握ります!」
京子「おにぎり以外もお願いね」クス
何処かほわほわとした雰囲気とは裏腹に、小蒔は料理上手だ。
幼いころから霞と一緒に花嫁修業を続けてきた彼女は、和食に限ればかなりのレベルに達している。
霞達が卒業してからはそれを発揮する事も少なくなったが、腕が錆び付いているという事はないだろう。
また小蒔の料理が食べられる期待と、小蒔の的はずれながらも可愛い応えに、京子はまた笑みを浮かべた。
京子「でも、何処が良いかしら」
京子「恐らく、そう時間が取れないから日帰りで帰ってこれるくらいのところが良いでしょうけれど…」
小蒔「動物園とか水族館はどうですか?」
京子「あぁ。確かにそれも良いわね」
以前、霞達と動物園に足を運んだ時には目当てであるハシビロコウもコウノトリも見られなかった。
それに小蒔が寂しそうにしていた事を思い出した京子は、小さく頷く。
何だかんだとアレから半年以上経っているし、また別の動物園に行くのも良いかもしれない。
勿論、今度は事前に目当ての鳥達がいるかどうかを電話で確認してから。
小蒔「ちなみに鹿児島の水族館はイルカさんに触れたり、お泊り出来たりもするんですよ」
小蒔「申し込みをすれば、餌やり係になれたり、ばっくやーど?も見せてくれるんですって」
京子「良く知ってるわね」
小蒔「実は一回、遠足で行った事があるんです」
小蒔「もう何年も前でしたけれど、とっても楽しかったのを覚えてます」
小蒔「で、色々とパンフレットを貰って…こんなに色々と出来るんだったら、今度は皆と一緒に行きたいなって思ったので」
京子「なるほど。とても楽しみにしてたのね」
小蒔「はい」ニコ
しかし、水族館も決して悪い選択肢ではなさそうだ。
小蒔が語る内容には心惹かれる自分もいるし、何より、彼女もそれを楽しみにしている。
数年来のそれを叶えてあげるべきか、或いは前回の心残りを解消してあげるべきか。
今の京子だけでは判断が出来なかった。
京子「まぁ、どっちにするかはまた皆に提案してから決めましょうか」
京子「もしかしたら、他の子も行きたいところがあるかもしれないし」
小蒔「そうですね」
先延ばしにする京子の言葉に小蒔も素直に頷いた。
しかし、その仕草からは彼女の浮かれている様子がありありと伝わってきている。
『家族』と一緒に何かをするというのが大好きな小蒔は、やはり皆とのお出かけが楽しみで仕方がないのだろう。
きっと何処に行っても、彼女は楽しんでくれるはずだと京子は思った。
京子「(だからと言って、手を抜く訳にはいかないけどな)」
京子「(恐らく、これが皆と出かけられる最後って言うのもあるし…)」
京子「(何より、永水女子を卒業したら小蒔さんは…)」
顔も知らない男と結婚する。
それは彼女たちの口ぶりからなんとなく伝わってきていた。
現代社会の価値観で育った京子は早過ぎると思うが、小蒔は神代本家の一人娘であり、神代の巫女でもあるのだ。
次代に力と血を繋ぐ為に、卒業と同時に結婚させられるのは決しておかしい事ではない。
頭では理解出来ているそれを、心はどうしても納得しようとしなかった。
京子「(…いや、小蒔さんだけじゃないよな)」
京子「(他の皆に対しても、俺はモヤモヤとしたものを抱えてる)」
京子「(本当に彼女たちの婚約者は、皆を幸せにしてくれるのかって)」
京子「(初美さんを体のいいオモチャにしか見てなかったあいつみたいに扱うんじゃないかって)」
京子「(そんな風に思って…)」
婚約者がいるのは決して小蒔だけではない。
初美以外の六女仙は、幼い頃から決められた許嫁がいるのだから。
霞達旧三年生組が、婚約者の元に行かず、小蒔の近くに居続けていたのは、その生活をサポートする為。
小蒔が結婚してしまえば、彼女たちもまた婚約者の元へと嫁がされるだろう。
京子「(…いや、これは詭弁だ)」
京子「(俺は…皆は幸せになれないと思ってる)」
京子「(俺が皆から受ける想いは、そう簡単にどうにかなるものではないって分かってるんだ)」
時に自身を、『家族』を、他の何かを人質にとってまで関係を前へと勧めようとする少女たち。
その原動力になっているのは、もう麻疹のような初恋ではなかった。
多かれ少なかれ、彼女たちは京子に依存し、強い想いを向けている。
ともすれば、お互いを破滅させかねないそれは、嫁いだところでどうにかなるようなものではない。
むしろ、下手に離れてしまったら、制御が効かずに暴走してしまう可能性だってある。
京子「(……それに俺は)」
京子は恋心に鈍感ではあるが、愚鈍ではない。
溢れんばかりの想いを向けてくれる彼女たちに、京子もまた心動かされつつあった。
彼女たちを手放したくない。
自分の元で幸せにしてあげたい。
そんな庇護欲とも独占欲ともつかぬ感情はゆっくりと成長を続けている。
それは未だ恋や愛と呼べるほど立派なものではないが ――
京子「(端的に言って最低だよなぁ、俺)」
京子「(あっちこっちで浮気相手作ってる癖に、相手には嫉妬するとか…)」
小蒔「京子ちゃん?」
京子「あ、ごめんなさい。ちょっと考え事してて」
自己嫌悪の色を強めていく京子に、小蒔は心配そうに呼びかけた。
京子と無言で歩くだけの時間は決して嫌ではなかったが、さりとて、その変調を放置は出来ない。
自分は年上なのだから、何とかしてあげなければと、首を振る京子に真剣な眼差しを送る。
小蒔「…何か悩み事ですか?」
小蒔「でしたら、私に任せてください」
小蒔「私は京子ちゃんよりお姉さんですから、きっと解決して見せます」フンス
京子「ふふ。頼もしいわ」
そのまま軽く胸を張る小蒔は、頼もしさからはかけ離れていた。
お姉さんだからと言う理屈には一片の論理もなく、彼女の顔も変わらず愛らしいままなのだから。
しかし、だからこそ、心配してくれる小蒔が、微笑ましくも有り難くて。
京子「じゃあ、一つ聞きたい事があるのだけれど」
小蒔「何ですか?」
京子「小蒔ちゃんはお妾さんとかってどう思う?」
小蒔「うーん…」
京子がつい口にしてしまった言葉に、小蒔は考えこむような仕草を見せる。
右手の人差し指を顎に当てながら、軽く唸る彼女はそのまま沈黙に入った。
一秒二秒…京子にとって数分にも感じられたその時間を経て、小蒔はゆっくりと口を開く。
小蒔「今の世の中にはそぐわないかもしれませんけれど、私はそれほど抵抗感があったりはしません」
小蒔「少なくとも、私達にとって恋愛結婚というのは、縁遠いものですから」
小蒔「一人の女の子として好きな人と結ばれたいっていう気持ちは分かりますし」
小蒔「逆に好きな子をお妾さんでも良いから、側に置いておきたいっていう男の人の気持ちも分からなくないです」
京子「…なんだか意外ね」
小蒔「そうですか?」
京子「えぇ。小蒔ちゃんはそういうの絶対に嫌だって言うと思ってたわ」
小蒔は箱入りで育てられた結果、今時、珍しいほど純真に育った少女だ。
ちゃんとした性行為すら知らない彼女が、妾を受け入れるなど思ってもみなかったのである。
少なくとも、眉をひそめられる程度の忌避感は見せるだろうと京子は予想していた。
小蒔「勿論、私だって抵抗感が少ないだけで、無条件に肯定してる訳じゃありません」
小蒔「隠れて浮気されたりするのはやっぱりションボリしますし」
小蒔「相手の女の人を知らないままなのは、どうしても不安になりますから」
小蒔「それよりもお妾さんって立場で、目に見える場所にいてくれた方が安心しますし」
小蒔「何より、そっちの方が家も安定します」
京子「家の安定?」
小蒔「旦那様は隠れて浮気していると、あんまり家に帰らなくなっちゃうらしいですけれど」
小蒔「公認のお妾さんとして家にいて貰えば、自然と旦那様も帰って来ます」
小蒔「どちらかを贔屓と言うのもしにくくなるので、結果的に家が安定すると言う風に教わりました」
京子「なるほど…」
家の安定。
自身の気持ちよりも上位に躍り出るその言葉に、京子は共感する事が出来ない。
幼い京子に与えられたのは恋愛結婚を中心とした現代的な価値観だったのだから。
家の安定の為に結婚があるのだという旧態然とした価値観には内心、首を傾げてしまう。
しかし、だからと言って、彼女の言葉が荒唐無稽なものだとは思えず、得心したように頷いて。
小蒔「だから、私はそれほど嫌じゃありません」
小蒔「勿論、私の事を蔑ろにされるのは嫌ですけれど、そうじゃなかったら六人くらいは大丈夫です」
京子「ろ、六人って…ちょっと多すぎないかしら」
小蒔「いいえ、寧ろ、ぴったりです」
京子「ぴったり?」
小蒔「はい」ニコ
京子の言葉に小蒔は深く答えたりしない。
ただ頷くだけで肝心な部分はボカしたままだ。
それに好奇心が疼くものの、京子の目の前には既にスーパーの扉が迫っている。
近くの主婦も買い物に集まっているこの場所は、妾云々の話を続けるにはあまりにも不適切だ。
一定の答えは得られたのだから、その話題は後回しにしよう。
そう判断した京太郎は小蒔と共に自動ドアを潜った。
小蒔「はふー」
京子「ふふ。暖かいわね」
小蒔「はい。やっぱり暖房って良いですね」
普段は巫女服姿の彼女たちも、今は上に防寒具を羽織っている。
しかし、12月の寒さはもうそれで防ぎきれるほど容易いものではない。
屋敷からスーパーまでがそれなりに離れているのもあって、身体も冷たくなっていた。
それを暖めてくれる暖房の熱に二人は笑い合いながら、スーパーのカゴをカートの上に乗せる。
小蒔「それでは出発進行です!」
京子「気合充分ね」
小蒔「皆が待ってますし、何より、今日も美味しいご飯が食べたいですから」
小蒔「不肖、神代小蒔。今日も全力でいきます!」ググ
メラメラと燃えるような気合を入れる小蒔はカラカラとカートを押していく。
その目的地は入り口近くにある野菜売り場だ。
今夜の夕飯を美味しいものにする為に、まずは最高の野菜を見つけよう。
そう思いながら、小蒔はキョロキョロと周りを見渡して。
京子「それで今日は何を頼まれていたかしら?」
小蒔「確かここにメモが…ありました!」バーン
小蒔「えっと……お野菜は白菜さん、にんじんさん、ごぼうさん、大根さん、ニラさん、にんにくさん」
小蒔「後は鶏肉さんと鶏ミンチさん、タラの切り身さん、エビさんなんかもあると嬉しいそうです」
小蒔「これはきっと鍋ですね!」キラン
京子「私も同意見だわ」
コートの内ポケットから取り出したメモを小蒔は読み上げていく。
その特徴的なラインナップに二人が思い浮かべるのは、ぐつぐつと煮えたぎった鍋だった。
大きな土鍋に一杯に出汁と食材が詰まったそれは想像しているだけで唾液が出てきてしまう。
小蒔「じゅる…これは今日の晩ごはんが楽しみですね」
京子「えぇ。この時期の鍋…しかも、作るのが巴さんとなると絶品間違いなしだもの」
京子「二人で頑張って、お腹空かせてから帰りましょう」
小蒔「はい!」
京子の言葉に力強く頷きながら、小蒔は白菜へと近づいていく。
鍋には欠かせない名脇役であるそれを彼女はそっと片手で持ち上げた。
それとは逆の手に、また別の白菜を持ち上げた小蒔はジィと両者を見比べる。
小蒔「うーん……うーん……」
京子「どう?」
小蒔「こっちです!」キリッ
京子「はい」クス
より重く、中身の詰まっていそうなものを。
真剣そのものな視線でそれを判断した小蒔は、選考から落ちた側の白菜を野菜売り場へと戻す。
そしてそれとはまた別の白菜を手に取り、再びうーんと唸り始めて。
小蒔「じゃあ、今度はこっち…」
京子「そろそろ代わりましょうか?」
小蒔「いいえ。まだ大丈夫です」
それを幾度か繰り返した小蒔に、京子は気遣いの言葉を掛けた。
彼女はさっきから一玉丸々の白菜をずっと持ち上げ続けているのだから。
重さを比べるのは、主婦の必須技能とは言え、あまり長く続けていては手も疲れてしまう。
だからこそ、手伝おうとする京子に、小蒔は首を振った。
小蒔「京子ちゃんはゆっくりしててください」
京子「では、お言葉に甘えさせて貰うわね」
京子「でも、疲れたら何時でも言って頂戴」
小蒔「はい」
ゆっくりと言われても、手持ち無沙汰と言うのが正直なところだ。
そんな本音は京子の口から飛び出す事はない。
それは小蒔なりの優しさなのだと分かっているし、何より、彼女を一人にするのも不安だった。
ここはあくまでもゆっくりしていると言う体で、小蒔の側にいる方が良いだろう。
そう思いながらの言葉に、小蒔は小さく頷き、再びジィと真剣そうな眼差しを白菜へと送った。
小蒔「うーんんん……」
京子「…ふふ」
小蒔「あ、変な顔してました?」
京子「いえ、そんな事ないわ。とっても可愛かったわよ」
小蒔「えへ」テレ
可愛い。
京子の口から飛び出したその言葉に、小蒔の顔はニヘラと緩んだ。
ついさっきまでの真剣さを何処かへと投げ出してしまったようなその顔に、京子の手もついつい伸びそうになってしまう。
だが、野菜を選んでいる最中にそんな事をすれば、邪魔になってしまいかねない。
小蒔を甘やかしたいという欲求に言い聞かせながら、京子は再び口を開いた。
京子「ただ、一生懸命な小蒔ちゃんの顔を見てると、なんだかもうお嫁さんみたいだなって」
京子「それもただのお嫁さんじゃなくて、素敵なお嫁さんになれそうだなって思っちゃったの」
一見、箱入りな小蒔は、かなりの家事スキルを持っている。
もし、結婚して家事全般を任せられても、人並み以上にこなす事が出来るだろう。
ましてや、彼女は何事にも一生懸命な性格と献身さを兼ね備えているのだ。
例え、今すぐ ―― 一ヶ月後に結婚したところで、彼女は間違いなく良妻になれるだろう。
京子「(だからこそ、良い奴と結婚して欲しいんだけれどなぁ)」
京子にとって、神代家は敵だ。
自身の人生を狂わせた仇敵として、叩き潰す事を心に決めている。
しかし、だからと言って、小蒔やその両親を不幸にしたい訳ではない。
何だかんだと情が深い京子は、神代の一部である彼女たちの幸せを願ってさえいた。
小蒔「本当ですか!?」パァ
京子「えぇ。私が保証するわ」
小蒔「京子ちゃんっ♥」ダキッ
京子「ちょ!?」
瞬間、小蒔は弾かれたように京子へと抱きついた。
それに京子が驚きの声をあげるのは小蒔の手にいまだ白菜が残っているからこそ。
野菜を持ったまま抱きつかれては、傷んでしまいかねない。
小蒔「~~~っ♥」ギュゥゥ
そんな京子の心を知らず、小蒔はギュっと腕に力を込めた。
白菜を持ち続けているのも構わず、京子の身体を抱きしめるその手はまったく緩む事はない。
内心の嬉しさに突き動かされた彼女は、自分の頭を押し付けるように抱擁を続ける。
小蒔「京子ちゃん、私、頑張りますから!」
京子「な、何を?」
小蒔「今まで以上に、素敵なお嫁さんになれるよう頑張ります!!」
京子「そ、そう。そうなの」
小蒔の言葉はとても力強いものだった。
スーパーにはあまりにもそぐわないその強さに、京子は周囲から視線が集まるのを感じる。
しかし、だからと言って、ここで小蒔に、もう少し静かにして欲しいなど言えるはずがない。
そんな事をすれば、嬉しそうにしている彼女に水を差してしまうのだから。
京子「…頑張ってね。私も出来る限りの協力はするから」
小蒔「ん…♪」
だからこそ、京子は小蒔の頭をそっと撫でる。
さっきは事情があって諦めたそれは、小蒔の逸る気持ちを落ち着かせた。
一撫で毎に幸せな感覚を広げる京子の指先に、彼女は甘い声をあげながら目を細める。
まるで微睡んでいるようなその顔は、小蒔がリラックスしている証で。
―― ドサ
小蒔「はっ…」
京子「あ」
小蒔「白菜さんが…」
当然、白菜が小蒔の手から堕ちる。
無論、その表面にはラップが巻かれているが、だからと言って、床に落ちたものを買いたいとは思えないだろう。
まだ選んでいる途中だったが、ここは落ちた二つを買い取るしかない。
それに申し訳無さを感じた小蒔はそっと京子から離れた。
京子「…とりあえず今日はこの白菜にしておきましょうか」
小蒔「ごめんなさい…」シュン
京子「謝らなくても良いわよ。小蒔ちゃんの集中を乱すような事を言った私も悪いんだし」
京子「選別も大分、進んでいたから、最後まで続けていても、この二つになっていた可能性は高いわ」
京子「何より、小蒔ちゃんが頑張って選んでくれた野菜が美味しくないはずないもの」
京子「きっと巴さんが最高の鍋にしてくれるはずよ」
小蒔「…はい」
努めて優しい声を選びながら、京子は腰を屈めて落ちた白菜をカゴへと入れた。
しかし、その間も小蒔は肩を落として申し訳無さそうにしている。
折角、良いお嫁さんになれると褒めて貰ったところで、こんな失態を見せてしまったのだから。
犠牲になった白菜と期待してくれていた京子への申し訳無さが、彼女の心を重くしていた。
京子「……でも、流石に白菜を落としちゃったなんて言ったら霞さん達に怒られちゃうかもしれないから」
京子「今のコレは二人だけの秘密ね」
小蒔「え?」
京子「私と小蒔ちゃんだけの大事な秘密よ。…他に人には話さないでね」
小蒔「…京子ちゃん」
そんな小蒔に京子は抑えた声と共にウィンクを送った。
何時も通りのその仕草は、小蒔の心に、京子がまったくさっきのトラブルを気にしていない事を伝えた。
それに胸中が軽くなった小蒔は顔に小さな笑みを浮かべて。
小蒔「…私よりも京子ちゃんの方が素敵なお嫁さんになれると思います」
京子「そうかしら」
小蒔「はい。だって、京子ちゃんすっごく綺麗で格好良いですもん」
小蒔「私、憧れちゃいます」
京子「ふふ。そう言ってくれるとちょっと嬉しいかしら」
小蒔の言葉は本心からのものだった。
無論、彼女も京子が男であるという事は理解しているものの、外見からはそれをまったく感じ取る事が出来ない。
背が高くて、気遣いも出来て、格好良い女性にしか見えない京子に、『同性』としての憧れを浮かべてしまう。
京子「でも、私は小蒔ちゃんの方がお嫁さん適正が高いと思うわ」
京子「可愛いし、料理上手だし、尽くす子だし、一生懸命だし」
京子「ちょっと失敗する事はあるかもしれないけれど、それを補って余りあるほどの魅力が小蒔ちゃんにはあるわ」
小蒔「京子ちゃんだって綺麗ですし、料理美味しいですし、とっても優しいですし、一生懸命ですよ」
小蒔「何時もキラキラしてて、見てるだけでもドキドキしちゃいます」
京子「それじゃあ私、小蒔ちゃんと結婚して、奥さんとして養って貰おうかしら」
小蒔「私が旦那さんですか。それも良いですね」
冗談めかした京子の言葉に、小蒔も嬉しそうに頷いた。
彼女はたくさんの人に大好きを向けているが、その中でも京子は『特別』なのだから。
他よりもずっと色濃いその『好き』は、京子との関係を拘らせなかった。
京子と結婚できるのであれば、自分が夫側であっても構わない。
例え、どちらであろうとも京子ならば自分のことを大事にしてくれるだろうと小蒔はそう信じていた。
京子「じゃあ、旦那様。買い物を続けましょうか」
小蒔「はい。お財布は気にしないでください」
小蒔「お菓子でもアイスでも好きなもの買ってくれても良いんですよ」
小蒔「京子ちゃんに不自由はさせません」フンス
京子「あら、太っ腹。じゃあ、私、後でアイスが欲しいわ」
小蒔「幾らでも買って良いですよ!」
漠然とイメージする男の甲斐性を見せようとする小蒔に、京子は笑いながらアイスをリクエストする。
それに力強く応えながら、彼女は京子の代わりにカートを押し始めた。
今は自分が『旦那様』なんだとアピールするようなそれに京子は笑みを強めながらついていく。
京子「じゃあ、その分、後でサービスしないとダメね」
小蒔「何をしてくれるんですか?」
京子「私の代わりにカートを運んでくれてる旦那様にお疲れ様のマッサージとか」
小蒔「えへへ、楽しみです」
そう言葉を交わしながら、二人はカゴの中身を増やしていく。
ニラ、ニンジン、えのき…その他様々な食材はあっという間にカゴの中を埋め尽くした。
幾ら、大半が女の子達とは言え、八人分の食材はかなり多い。
それがこぼれ落ちたり、中身が潰れたりしないように気をつけながら、二人はカートを進めて。
京子「さて、それじゃあ何にしましょうか」
小蒔「中々の難問ですね…」
最後に二人が足を踏み入れたのはアイス売り場だった。
買い出し組の特権として、生活費からお菓子などを買うのを認められている。
基本的に個数や金額の制限などはないが、殆どの場合、100円前後の商品を一つ買うのが常だった。
小蒔「うーん…」
彼女たちの屋敷は霧島神宮の遥か上 ―― 山の中にある。
階段をのぼるだけで数十分掛かる神境に住んでいる小蒔にとってコンビニでさえ気軽に行ける場所ではなかった。
だからこそ、後悔しないようなアイスを選ぼう。
そんな気持ちを視線に乗せて、小蒔はジィとアイスケースを見つめた。
小蒔「…どれも美味しそうで迷っちゃいます」
京子「ふふ。確かにそうね」
京子「まぁ、別に時間がギリギリと言う訳でもないし、ゆっくり選びましょう」
小蒔「はい」
とは言え、あまり長い間、迷い続けている訳にはいかない。
二人が食材を届けなければ、今日の夕飯を作る事は出来ないのだから。
自分たちが遅くなればなるほど、夕飯を作る巴たちの負担が大きくなってしまう。
それは可哀想だと自分に言い聞かる小蒔の目に、とあるアイスが留まった。
小蒔「よし。私、この二つに別れる奴にします!」
京子「あら、パピコで良いの?」
小蒔「はい。私、このパピコさんが好きですし」
小蒔「何より、これなら京子ちゃんと半分ずっこ出来ますから」
京子「なるほどね」
小蒔が手にとったアイス ―― パピコは最初から二人で食べる事を想定されたアイスだ。
瓶を模したプラスチック容器は一袋に二つ入っており、簡単に手で分ける事が出来る。
折角、京子と一緒に買い出しに来たのだから、同じものを食べて、同じ気持ちを共有したい。
そんな気持ちから選んだそれを小蒔はそっと買い物カゴの上へとのせた。
京子「じゃあ、私の分も小蒔ちゃんに分けてあげないとね」
京子「何か他に気になるアイスはあるかしら?」
小蒔「いいえ。京子ちゃんの好きなものを選んで下さい」
小蒔「私は京子ちゃんと半分ずっこ出来るだけで満足ですから」
京子「もう。そんな可愛い事言われたら逆に迷っちゃうわよ」
言いながら、京子はチラリと視線を、アイスケースへと向けた。
定番商品ばかりがつめ込まれているそこから、京子が選べるものというのはそう多くはない。
小蒔がアイスを分け合う事を提案した以上、京子もまたそれに応えなければいけないのだから。
少なくとも、二人で分け合うのが難しい棒アイスやモナカ系を選ぶ事は出来ない。
京子「(となるとほぼ四択な訳だけど)」
スーパーカップ、爽、ピノ、アイスの実。
季節を問わず、一定の人気があるそれらの中で、京子が手にとったのは紅白のパッケージだった。
ピノ ―― 中に6つのチョコアイスが入ったそれならば、不公平感なく、小蒔と分け合う事が出来る。
小蒔「ピノさんにするんですか?」
京子「えぇ。仲良く3つずつ食べましょう」
小蒔「そ、そんなに食べちゃって良いんですか?」
京子「勿論よ。私だって小蒔ちゃんから半分貰うんだし」
小蒔「でも、なんだかピノさんって高級アイスと言うか大人向けのイメージがあって…」
京子「あぁ。なんとなくその辺りは分かるかも」
小蒔「本当ですか?」
京子「えぇ。私も子どもの頃はちょっと敷居が高く感じたわ」
京子「確かに内容量は少ないけれど、良く良く考えればハーゲンダッツほどじゃないのにね」
それぞれのアイスを買い物カゴへと入れた二人は、そのままレジへと向かった。
暖房が強く掛かった店内はとても暖かいが、長居すればするほど食材が傷んでしまう。
メモに書かれた食材は全て買い物カゴへと入れた以上、早めに精算を終えて帰路についた方が良い。
そんな意識を共有する二人はのんびりと会話を膨らませながら、居並ぶレジの一つに入った。
「いらっしゃいませ」
京子「コレをお願いします」
小蒔「あ」
瞬間、二人を迎えるように女性店員が頭を下げた。
細かい小じわが隠しきれなくなってきた年頃の彼女に、京子はカートから持ち上げた買い物カゴを手渡す。
直後、カートを押していた小蒔の口から漏れるのは不満そうな声だった。
京子「どうかした?」
小蒔「…今日は私が旦那さんですから、力仕事は全部やろうと思ってたんですけど」
「え?」
京子「あ、いえ、気にしないでください」
その内実はさておき、今の二人は高校生の女の子二人組にしか見えない。
そんな彼女たちから聞こえてきた『今日は私が旦那さん』と言う言葉に、レジ打ちの店員は驚きの声をあげた。
それに気にしないでと返しながら、京子はそっと小蒔の手に触れて。
京子「ごめんなさい。でも、幾ら旦那さんだからって力仕事を任せっきりにするのはちょっとどうかな、って思ったの」
京子「やっぱり夫婦としては、苦難を分けあってこそでしょうし」
京子「小蒔ちゃんは今まで頑張ってくれた訳だから、今度は私が旦那さんになる番かなって」
その言葉は、決して本心から出たものではなかった。
夫婦と言う言葉こそ使っているものの、二人は実際に婚姻関係を結んだ訳ではないのだから。
あくまでも冗談の一貫であるそれよりも、京子は買い物カゴの重さを気にしていた。
溢れんばかりに食材が詰まったそれは、小蒔の細腕だと大変かもしれない。
カートを押すよりも遥かに大変なそれを、京子は一人の男として小蒔に任せたくはなかった。
京子「私の方が力も強いし、ここは任せてくれないかしら?」
京子「その代わり、小蒔ちゃんには袋詰なんかをお願いするから」
小蒔「分かりました」
応える小蒔の声に不服そうなものはなかった。
京子の言葉は本心から出たものではなくとも、自分の事を気遣ってくれている事に間違いはない。
何もかも仕事を取り上げられてしまえば、流石に寂しいが、代わりに袋詰を任せようとしてくれている。
ならば、ここで拗ねる理由はないと小蒔は首肯を返した。
小蒔「では、まず奥さんとしてお会計頑張りますね」
京子「えぇ。お願いね」
小蒔「はい」フンス
言って京子は小蒔にトリコロールカラーの長財布を差し出した。
それを受け取った小蒔は気合を入れた表情を見せる。
自分がうっかり屋である事を彼女は良く理解しているのだ。
折角、渡してもらった財布を落としたり、なくしたりしないようにしよう。
そう自身に言い聞かせる小蒔の前で、全ての商品がレジに登録されて。
小蒔「えーっと」
直後、告げられる値段に、小蒔は財布を開いた。
そのまま数枚の千円札と小銭を払った彼女はレジから吐き出されたお釣りを受け取る。
その間に京子がカゴをカートに載せて、カラカラと音を鳴らしながら、袋詰用の台へと近づいていった。
小蒔「さて、それじゃあ袋詰頑張りますね」
京子「私も手伝った方が良いかしら?」
小蒔「じゃあ、透明の袋だけお願いします」
京子「分かったわ」
その背に追いついた小蒔は手際よく商品を袋の中へと詰めていく。
のんびりしているように見えるが、彼女は幼いころから親元を離れて生活しているのだ。
家事全般は元より、スーパーでの買い物もとうの昔に慣れている。
溢れんばかりだった買い物カゴは、その中身をあっという間に4つの袋に詰められ、空っぽになってしまう。
小蒔「お待たせしました」
京子「ううん。気にしないで」
京子「一生懸命に動いている小蒔ちゃんは、とっても可愛かったもの」
京子「見ているだけであっという間に時間が過ぎちゃってたわ」
小蒔「えへへ。じゃあ、これからも一生懸命、動かなきゃいけませんね!」グッ
京子「小蒔ちゃんは普段から一生懸命だから、これ以上、頑張ると疲れちゃうんじゃないかしら」クス
可愛い。
その言葉に気を良くした小蒔は、京子の為にと両手で握り拳を作る。
本人なりに一生懸命さをアピールするその仕草は、さっきよりも可愛らしい。
しかし、ここで止めておかなければ、小蒔は本当に頑張りすぎてしまうだろう。
だからこそ、京子は微笑みを浮かべながら、諭すような言葉を口にした。
京子「それより今はアイスを食べましょう」
小蒔「はい。じゃあ、何時ものベンチですね」
神代の巫女として育てられた小蒔は歩きながら食べると言う事が出来ない。
どうしても行儀が悪いという意識が先立ち、心に躊躇が生まれてしまう。
ましてや、今回、二人が買った商品は、4つの袋に詰められている。
半分ずつ持っても両手が塞がってしまうその数は、歩きながら何かをするのには適さなかった。
小蒔「あいす♪ あいすっ♪ あいすさーん♪」
小蒔「ぴのぴのぴーの♪ パピコさーん♪」
京子「ふふ」
とは言え、家までアイスを我慢していたら溶けてしまいかねない。
スーパーの外にはベンチもあるし、そこでアイスを食べてしまった方が良いだろう。
そう判断した小蒔は袋を手に持ち、即席の歌を口ずさみながら、自動ドアを潜った。
アイスが楽しみで楽しみで仕方がないと言わんばかりのその様子は、さっきの一生懸命さとはまた別の意味で可愛らしい。
それを笑顔という形にしている間に、京子は目的のベンチへと辿り着く。
京子「はい。どうぞ」
小蒔「えへへ。ありがとうございます」
瞬間、京子が懐から取り出したのは一枚のハンカチだった。
小蒔のコートが汚れないようにとベンチに敷いたそれに、彼女は笑みを浮かべながら腰を降ろす。
そのまま小蒔が地面に袋を降ろしたのを確認した京子は、同じようにベンチへと座って。
京子「まずどっちから食べる?」
小蒔「そうですね。やはりここはパピコさんからが良いと思います」
京子「理由は?」
小蒔「パピコさんも好きですけど、やっぱりピノさんが後の方がちょっぴりリッチな気分が味わえるかなって」
京子「なるほどね」
小蒔の言葉に、京子は異論を挟まない。
彼女の理由には説得力があったし、何より、京子もまた同意見だったのだから。
これが逆だとピノの高級感に、パピコが霞んでいしまうかもしれない。
そんな危惧さえ胸中にあった京子は自身の袋の中に入っていたパピコを取り出す。
京子「はい。小蒔ちゃん」
小蒔「ありがとうございます」
そのまま包装を破き、中身を二つに割った京子は、片方を小蒔へと手渡した。
それをお礼と共に受け取った小蒔は、瓶の先端部分を手で破る。
瞬間、露出した先端に向かって、小蒔は小さく口を開いて。
小蒔「ん~♪」
パクリとそれを口にした瞬間からアイスの冷たさとコーヒー牛乳のような甘さが口の中に広がる。
冬の寒さの中にあっても心地良いその感覚に、小蒔はついつい声を漏らしてしまう。
さっき歌を口ずさんでいた時よりも、幾分、上機嫌なその声と共に小蒔は一旦、パピコから口を離した。
京子「どう?」
小蒔「美味しいです。やっぱりパピコさんは素敵ですね」
小蒔「特に今は京子ちゃんと一緒ですから余計にそう思えます」
京子「あら、そんな風に持ち上げても何も出ないわよ?」
小蒔「お世辞なんかじゃありませんよ」
小蒔「京子ちゃんはパピコさんよりもずっと素敵なんですから」
京子「ちゃんと素敵な旦那さんになれてる?」
小蒔「はい。勿論」ニコ
京子「ふふ。よかった」
小蒔の称賛に笑みと共に応えながら、京子もまたパピコへと口をつける。
長野で味わった時とまったく変わらないその味は、もう京子の胸を傷ませるものではなくなっていた。
夏のインターハイで咲と決別した時から、京子の中で少しずつ長野での出来事が『思い出』になりつつあるのだから。
きっとこのままいけば、幼馴染への想いも風化し、なくなってしまうのだろう。
それにほんの少しの寂しさを感じながら、京子はチョココーヒー味のアイスをまた口へと運んだ。
小蒔「京子ちゃんに相応しい奥さんになれるよう私も頑張らなきゃいけませんね」
京子「小蒔ちゃんは今の時点で素敵な奥さんになれると思うけれど…」
小蒔「いいえ。全然、足りません」
小蒔「だって…だって、私は京子ちゃんの奥さんなんですから」
小蒔「もっともっと頑張らなきゃいけないんです」
京子「…小蒔ちゃん?」
まるで自分を追い詰めるような言葉に、冗談の響きはなかった。
それに京子が疑問の声を返すが、小蒔は応えられない。
彼女が気にしているのは京子との釣り合いだけではないのだから。
京子の周りにいる『家族』と比べて、不足を感じているなど京子に知って欲しくはなかった。
京子「私はそのままの小蒔ちゃんで十分だと思うわ」
小蒔「…そうですか?」
京子「えぇ。確かに私は一生懸命な小蒔ちゃんが好きだけど」
京子「でも、それは無理したり、自分を追い詰めたりして欲しいからじゃないのよ」
京子「等身大で素の小蒔ちゃんが、私は一番、好きなんだから」
小蒔「…京子ちゃん」
ストレートに好意を示すその言葉は小蒔にとって、とても嬉しいものだった。
しかし、それでも彼女の心が完全に晴れきる事はない。
京子に好かれているのは、決して自分だけではないのだから。
他の『家族』もまた同じように好意を向けられていると思うと、どうしても心がモヤモヤしてしまう。
小蒔「(…私、嫌な子です)」
小蒔「(幾ら京子ちゃんが好きだからって言っても、皆に嫉妬するなんて…)」
小蒔「(こんなの知られたら、きっと嫌われちゃいます)」
そのモヤモヤ感が『家族』達へと向ける嫉妬の感情である事を、小蒔はもう自覚していた。
『家族』と呼ぶほど大事な仲間達にさえ負けたくはない。
恋しているが故に自然と湧き上がるその言葉は決して弱いものではなかった。
根が純真な小蒔は、そんな自分を醜いと捉えてしまい、その口も噤んでしまう。
京子「それともまだ他に気になる事があるの?」
小蒔「…あります。でも…」
京子「言えない?」
小蒔「はい…ごめんなさい」
それが京子の心配を加速させてしまう事だと小蒔も分かっていた。
しかし、分かっていたところで、素直に全てを打ち明ける事は出来ない。
今の小蒔にとって、最も恐ろしい事は京子に嫌われる事なのだから。
良心がキリキリと痛みを訴える彼女に出来る事はただ謝る事だけだった。
京子「謝らなくても良いわ」
京子「小蒔ちゃんが言えないって事はよっぽど大きな理由があるんでしょうし」
京子「ただ、さっき言った事に嘘はないって事だけ忘れないで」
小蒔「はい。勿論です」
京子「良し。じゃあ、もう湿っぽいのは終わりね」
京子「折角、美味しいアイスを食べてるんだから、もっと楽しいお話をしましょう」
そう言って京子は小蒔にウィンクする。
明るいその仕草は、気に病む小蒔にアピールする為のもの。
自分はまったく気にしていないのだとそう伝えるアイコンタクトに、小蒔はそっと胸を撫で下ろす。
そんな小蒔の前で京子は、考えこむように人差し指を顎へと当てた。
京子「例えば…そうね。そろそろクリスマスだし、神道的に問題がないならパーティーしない?」
小蒔「別に問題はありませんけれど…例えば、どんな事をするんですか?」
京子「そうね。本場のクリスマスはどういうものか私も知らないけれど…」
京子「日本では基本的に、ターキーやケーキなんかを準備して皆で食べたりするわね」
京子「後はプレゼント交換なんかも割りとメジャーな方かしら」
小蒔「なんだか楽しそうですね!」
その経歴から能力までどっぷりと神道に浸かっている彼女だが、他宗教を敵視している訳ではない。
『家族』と楽しく過ごせるのであれば、他宗教の行事であるなど些細な問題だ。
元々、お祭り好きな小蒔はそんな言葉を浮かばせながら、京子の提案に頷いて。
小蒔「帰ったら、さっきのお出かけと合わせて、霞ちゃんにお話してみます」
京子「霞さん、オッケーって言ってくれるかしら」
小蒔「霞ちゃんは優しいからきっと大丈夫だと思います」
小蒔「今までやってなかったのも、そういう習慣がなかったからって言う理由が一番大きいでしょうし」
小蒔「何より、神道は八百万の神を祀ってる訳ですから」
小蒔「キリスト教の神様だって神道の一部と言っても良いですし、当然、クリスマスも神道のお祭りと言えるはずです」
京子「以前も言った気がするけれど、その辺、大分、アバウトなのね、神道」
小蒔「はい。でも、そういう包容力があるところが神道の魅力だと思います」
八百万 ―― 数えきれない無数の神々を内包する神道は、排斥よりも融和の色が強い宗教だ。
他宗教の神々さえも、八百万の一柱だと取り込んでしまう神道にとって、他宗教は決して相容れないものではない。
その行事もまた神道の一部だと受け入れられる土壌を持っている。
それを理解する霞がNOと断るところを、小蒔は想像出来なかった。
小蒔「…でも、もし、ダメだって言われちゃったら、こっそりパーティしちゃいましょうか」
京子「ふふ。小蒔ちゃんったらイケナイ子ね」
小蒔「ダメですか?」
京子「ううん。そんな事ないわ」
京子「そういう可愛らしい反抗は、私も大歓迎よ」
京子「誰にも知られないように二人っきりのパーティなんてのも楽しそうだしね」
小蒔「二人っきり…」テレ
京子の言葉に小蒔の頬が赤く染まる。
照れと嬉しさが入り混じったそれは京子の口から出た二人っきりという言葉が予想外だったからこそ。
他の皆も一緒にと言われると思っていた小蒔にとって、それは望外の喜びを与えてくれるものだった。
小蒔「(霞ちゃん、ダメって言ってくれないでしょうか)」
小蒔「(なんて思っちゃうのは流石にちょっとズルいですよね)」
小蒔「(でも…)」
京子「それより小蒔ちゃん、そろそろ食べないとアイス溶けちゃうわよ」
小蒔「わわ…っ!?」
再び自己嫌悪の沼に沈んでいきそうだった小蒔の意識を、京子の言葉が拾い上げた。
ずっと手に握ったまま食べていなかったアイスが、体温で急速に柔らかくなっている。
その指摘に焦りを覚えた小蒔は考え事を投げ捨てて、再びアイスの先端に口をつけた。
そのまま中身を手で崩し、一つずつ吸い上げる小蒔は無言でパピコを食べ続ける。
小蒔「はふ」
京子「そんなに急いで食べてお口の中、大丈夫?」
小蒔「はい。まだまだいけます」ググ
パピコがアイスケースから取り出されたばかりだったなら、厳しかったかもしれない。
だが、プラ容器に入ったそのアイスは小蒔の体温によって溶け始めていたのだ。
冷たいと思う事はあれど、辛いと思ったりはしない。
寧ろ、程よく溶けたアイスの汁が、アイス本体とはまた違った感覚で舌を楽しませてくれた。
京子「じゃあ、次はピノの方を開けましょうか」
小蒔「はい!」
京子の言葉に小蒔は力強く頷く。
その胸中にはもうパピコの余韻は見当たらなかった。
勿論、京子と一緒に食べたパピコは美味しかったが、今の彼女はピノが楽しみで楽しみで仕方がない。
結果、身体も落ち着かなくなってしまう小蒔の前で京子は足元の袋からピノを取り出して。
京子「はい。小蒔ちゃん、あーんして」
小蒔「えへへ、あーん」
そのまま紅白の包装を開けた京子は、中に入っていたピックを取り出した。
それをチョコでコーティングされた小粒のアイスへと突き刺し、小蒔の口元へと運ぶ。
それに照れ混じりの笑みを浮かべてから、小蒔はゆっくりと口を開いた。
その中に京子がピノを運んだのを確認してから、彼女はパクリと口を閉じる。
京子「どう?」
小蒔「パピコさんには悪いですけど、あーんして貰った分、こっちの方が美味しいです」ニコ
京子「ふふ。じゃあ、パピコの方もあーんさせてあげれば良かったかしら」
小蒔「嬉しいですけど、でも、パピコさんだと赤ちゃんみたいな感じになっちゃいますよね…」
小蒔「人前でするのは流石にちょっと恥ずかしい気がします」
京子「そ、そうよね、うん」
赤ちゃんみたいで恥ずかしいと素直に告げる小蒔に、京子はつい気まずそうな返事を返してしまう。
つい先日、霞を甘やかしたばかりの京子は、その恥ずかしさをまったく意識していなかった。
赤ん坊のようだとは思っていたものの、それは小蒔に喜んで貰える事だと思っていたのである。
自分は思ったよりも、霞の影響を受け始めているらしい。
自覚と共に浮かび上がるその言葉に、内心、冷や汗を浮かべながら、京子は再びピノへとピックを突き出した。
小蒔「あ、今度は私の番ですよ」
京子「じゃあ、お願いしようかしら」
小蒔「はい」
それを口に運ぶ前に、小蒔がそっと手をあげる。
今度は自分があーんするのだと言うそのアピールに、京子はピックを差し出した。
それを受け取った小蒔は万が一にも落ちないよう、逆の手で受け皿を作る。
小蒔「京子ちゃん、あーんです」
京子「あーん」
そのまま口へと運ばれるピノに、京子は躊躇なく食いついた。
夏以来、京子の側から離れなくなった小蒔は、食事の最中もまた甲斐甲斐しく世話を焼くようになったのだから。
あーんされた回数は最早、数えきれない京子が抵抗感を感じる事はなかった。
あくまでも日常の一種として、小蒔との間接キスを受け入れる事が出来る。
小蒔「どうですか?」
京子「えぇ。とっても美味しいわ」
京子「小蒔ちゃんの言っていた通り、あーんしてもらうと格別ね」
小蒔「そう言って貰えると、京子ちゃんへの愛を一杯、込めた甲斐があります!」グッ
京子「ふふ。じゃあ、ピノそのものよりも小蒔ちゃんの愛そのものの方が美味しかったのかもしれないわね」
小蒔「ピノさんに勝てましたか?」
京子「そうね。中々に良い勝負だったけれど、最後の方は大きく引き離してたと思うわ」
小蒔「えへへ」
愛とは精神的なものであり、味そのものではない。
そんな事は小蒔も良く分かっている。
しかし、京子の言葉は、そんな事がどうでも良くなるくらいに嬉しいものだった。
それが冗談だと分かっていながらも、ついつい頬が緩んでしまう。
京子「じゃあ、今度は私の愛を小蒔ちゃんに味わって貰う番ね」
小蒔「はい。お願いします」
京子「あーん」
小蒔「あーん♪」
そんな彼女の口に、再びピノが運ばれる。
それを機嫌よく口に含んだ瞬間、濃厚なチョコの香りが口の中に広がった。
体温で溶けるよう作られた滑らかな口溶け感の奥から現われるのはミルクの甘さ。
コクのあるチョコの後から染み出すミルクの甘さに、小蒔は目を細める。
小蒔「(…でも、多分、一番は)」
先ほど京子に食いつかれたピックには、その唾液が残っている。
ほんの一部分ではあれど、京子を味わっているという感覚が、小蒔の心をさらに舞い上がらせた。
ただ美味しいだけではなく、幸せさえ感じる味。
京子と間接キスをしているが故のそれに彼女の胸はキュンキュンと甘い疼きを発した。
京子「どうかしら?」
小蒔「…はい。京子ちゃんの愛を感じます」
小蒔「とっても幸せな味です」デレデレ
京子「もう。可愛いんだから」
小蒔「んふー♪」
間違いなく最初のピノよりも美味しい。
それを言葉に込めた彼女はデレとだらしない顔を晒してしまう。
のんびりとした性格がオーラとなって漂う普段よりも、数割増しで締りのないその顔が、京子にとっては可愛くて仕方がない。
右手に持っていたピックを手放して、艶のある黒髪を優しく撫でてしまう。
小蒔「やっぱり私、京子ちゃんのナデナデが一番、好きです」
小蒔「優しくて、心地良くて…一番、幸せな気持ちになれます…♪」
京子「ふふ。私も小蒔ちゃんの事を撫でるの大好きよ」
京子「髪も綺麗で肌さわりも滑らかだし、幾ら撫でても飽きないわ」
京子「何より、撫でられている時の小蒔ちゃんはとっても可愛いんだもの」
小蒔「じゃあ、両思いですね!」
京子「夫婦だもの。当然よね」
小蒔「はい…♥」
夫婦を強調する京子の言葉に、小蒔の顔はさらに緩んでしまう。
まるで今にも眠りに落ちそうな子猫のような彼女は、そのまま京子の方へと傾いていった。
夫婦と言うよりも仲睦まじい恋人のように甘えようとする小蒔の身体を、京子は拒んだりしない。
寧ろ、もっと甘えてくれて良いのだと言わんばかりに、右手で彼女の肩を抱き寄せた。
小蒔「じゃあ、今度は私が奥さんとして京子ちゃんにあーんしてあげなきゃいけません…」
京子「出来そう?」
小蒔「大丈夫です。全力以上を出しきれば何とかなります!」
唐突に甘えてしまう自分に驚きもせず、自然に受け止めてくれる懐の大きさ。
それが霞のワガママに慣れてしまったからだと思いもしない小蒔は、京子に報いる事が出来る方法を一つしか思いつかなかった。
だが、今の状態では京子にあーんをする事は出来ない。
完全に甘えたモードに入った身体は、このまま京子に甘え続ける事を望んでいた。
それを切り替えるには、自身の全身全霊が必要だろうと小蒔は思う。
小蒔「…………でも、ちゃんと出来たらご褒美貰えると嬉しいかもです」
京子「ふふ。勿論よ」
京子「小蒔ちゃんが頑張ってくれたら、私、何でも叶えてあげちゃうわ」
小蒔「な、何でも…?」
京子「えぇ。何でもよ」
だからこそ、頑張った後には何かご褒美が欲しい。
そんな彼女の言葉に返ってきたのは、『何でも』と言う言葉だった。
他の少女達には滅多に出さないそれは、小蒔が今時、珍しいほど純真な少女だからこそ。
最近、邪な要求が増えてきた『家族』達とは違い、彼女ならば、それを悪用したりしないだろう。
小蒔「そ、そんな事言われたら、逆に困っちゃいます」
京子「そう?」
小蒔「はい。だって、私、京子ちゃんにして欲しい事、たくさんあるんですから」
小蒔「ナデナデとかハグとか…ほ、他にも色々…」モジ
しかし、小蒔もまた京子に恋しているのだ。
何でも叶えるなどと言われては、邪な要求も脳裏を過ぎってしまう。
それは他の少女たちとは比べ物にならないほど可愛らしいものだが、性行為も知らない彼女にとっては違った。
何時もしているナデナデやハグ以上 ―― キスまで思い浮かべてしまう自分がとてもはしたなく思える。
小蒔「だ、だから、ご褒美は京子ちゃんが決めて下さい」
小蒔「私、京子ちゃんがしてくれるなら、チューだって嬉しいです…」
小蒔「ってわわ…!い、今のは聞かなかった事にしてください…!」マッカ
京子「ふふ。分かったわ」
そんな自分を、ついつい言葉に浮かばせてしまった小蒔は顔を真っ赤に染めた。
羞恥心を強く浮かべるその色に、京子は突っ込んだりしない。
小蒔が聞かなかった事にして欲しいと言うのであれば、それが一番なのだろう。
京子「ただ、私も丁度、小蒔ちゃんとチューしたかったから」
京子「ご褒美はチューで良いかしら?」
小蒔「本当ですか!?」パァ
京子「えぇ。げんにゃあよ」クス
しかし、ポロっと零れ出た小蒔の言葉を完全に無視する事は出来ない。
さっきの反応を見る限り、彼女は間違いなくキスを望んでいるのだから。
白紙の小切手を渡したに近い自分が、それに応えない訳にはいかないと京子は思う。
京子「(それに小蒔さんの場合、どう考えても唇にするタイプのキスじゃないからなぁ)」
京子「(額や頬にするキスなら、それほど恥ずかしくない)」
京子「(まぁ、唇にするタイプでも、多少、恥ずかしいだけで抵抗感はあんまりないんだけどさ)」
今の京子は貞操を切り売りして、自身の立場を守っている状態だ。
ほんの一瞬でも手を緩めれば、ケダモノとなって襲いかかってきそうな『家族』達を止める為、幾度となくキスをしてきたのである。
そんな京子が、今更、唇同士のキスに戸惑いを覚えるはずがない。
その程度で小蒔を満足させられるならば安いものだとさえ思ってしまう。
京子「(…なんだか俺、順調に価値観が歪んでいってるな)」
京子「(これ性別逆ならビッチって言われてもおかしくないんじゃないか…)」
小蒔「なら、私、頑張って京子ちゃんにあーんします!」
京子「えぇ。お願いね」
そんな自分が歪だと言う意識は、京子の中にも残っていた。
しかし、だからと言って、京子はそれを是正する気が起きない。
身体を使ってでも関心を買おうとする少女たちに囲まれている現状、その歪みは必要不可欠なものなのだ。
胸中にビッチと言う言葉を浮かばせてしまう自分にそう言い聞かせながら、京子は思考を打ち切る。
そのまま小蒔にピックを手渡した京子の前で、彼女は傾いていた身体を再び直立に戻して。
京子「ご馳走様でした」
小蒔「ご馳走様でした」
京子「さて、それじゃお片づけに入りましょうか」
小蒔「は、はい」
数分後、ピノの箱は空となった。
それぞれ三個ずつ食べた二人は、同じように感謝の言葉を告げる。
しかし、そこから先の反応は大きく違っていた。
京子は落ち着いた様子で片付けを提案し、小蒔はそれにぎこちなく頷く。
そわそわと何処か落ち着かないその様子のまま、彼女はピックをピノの箱へと戻した。
小蒔「それで、京子ちゃん、その…」モジ
京子「分かってるわ」スッ
小蒔「あ…♥」
もう待ちきれないと言わんばかりの小蒔を京子はそっと抱き寄せる。
さっきよりも強引なそれに、しかし、彼女は嫌なものを感じなかった。
寧ろ、京子に求められていると思うだけで、胸の奥から甘いモノが浮かび上がってくる。
それが一体、何なのか、未だ知らない小蒔に京子はそっと顔を近づけていく。
京子「恥ずかしいから目を閉じて…」
小蒔「はい…♥」
その声は囁くようなものだった。
普段のものよりもずっと小さく、落ち着いた声音に小蒔の目はトロンと潤む。
そのままゆっくりと降りていく瞼は、京子の指先が顎に触れた瞬間、閉じきった。
自然、目の前に広がる暗闇に、しかし、小蒔は恐怖を感じる事はない。
その胸中に安堵すら浮かばせながら、京子の指に従って顔を上向きにして。
京子「ん」
小蒔「んぁ…っ♪」
直後、小蒔の頬に柔らかなものが触れた。
ほんのり暖かなそれは、彼女の頬を火照らせる。
僅かに紅潮したその頬に色っぽさを感じながら、京子はそっと唇を離した。
小蒔「…京子ちゃん」
京子「どうだった?」
小蒔「はい。とっても素敵な気持ちでした…♪」
京子「ふふ。良かった」
尋ねる京子に、小蒔はそっと瞼を開く。
その奥から現われるのは、さっきよりも艶めいた彼女の瞳だ。
頬へのキス一つで今にも蕩けそうなほど幸せそうな表情を浮かべた小蒔に京子は庇護欲を擽られる。
何もかも考えず、そのまま抱きしめてしまいたいと訴えるそれを京子は押さえ込みながら、笑みを浮かべた。
小蒔「でも、その…もう一回して貰って良いですか?」
京子「そんなに気に入ったの?」
小蒔「はい。私、京子ちゃんと一緒に寝て貰った時と同じくらい幸せでした…♪」
そんな京子の前で、小蒔は二回目のキスを強請ってしまう。
さっきのキスはとても幸せなものだったが、しかし、あまりにも短すぎたのだから。
ドキリとした瞬間にはもう離れてしまった所為で、京子の唇の感触さえ残っていない。
記憶に刻み込まれるような心地良さはハッキリ残っているが、それ以外はさっぱりだった。
京子「私は構わないわ。…ただ」
小蒔「ただ?」
京子「続きはお屋敷に戻ってからでも良いかしら?」
京子「ちょっとイチャイチャし過ぎて、結構、注目を浴びちゃってるみたいだから」
小蒔「あ…」
言われて小蒔はそこがスーパーの出入り口付近に置かれたベンチである事を思い出す。
そのままキョロキョロと視線を動かせば、自分たちに訝しげな視線が向けられているのに気づいた。
同性同士であると言う事を差し引いても、さっきの二人はあまりにも仲が良すぎたのだから。
人前でキスをするのはやり過ぎだったと小蒔はそっと項垂れる。
小蒔「ご、ごめんなさい」
京子「ううん。小蒔ちゃんが謝る必要はないわ」
京子「本来ならば、私が止めてあげるべきだったのに、受け入れちゃった訳だし」
京子「小蒔ちゃんとイチャイチャしたかったとは言え、もうちょっと周りに気を配るべきだったわ」
京子「ごめんなさい」
スールと言う制度をその根本に据える永水女子では女性同士のキスも頻繁に行われている。
流石に唇にする生徒はごく少数だが、頬や額へのキスは日常的に見られるものだった。
しかし、それはあくまでも永水女子での話であり、世間一般の常識とはかけ離れている。
例え、頬や額に向けられたものであっても、同性でキスをするなんておかしい。
永水女子での生活にどっぷり浸かった京子はそんな常識すら見失ってしまっていた。
京子「…まぁ、アイスも無事に食べ終わった訳だし、そろそろ帰りましょうか」
小蒔「…はい」
そんな自分に心の中で冷や汗を浮かべながら、京子はそっと立ち上がる。
このままベンチで座っていても、事態が好転する訳ではないのだから。
寧ろ、時間を無駄にすればするほど屋敷で待っている巴達に迷惑が掛かってしまう。
そう結論づけながら買い物袋を持ち上げた京子は小蒔と共にゆっくりと歩き始める。
小蒔「…」
しかし、その間、小蒔から言葉が出る事はなかった。
申し訳無さそうに項垂れた彼女はトボトボと京子の横を歩いている。
目に見えて落ち込んでいる小蒔の様子を京子はどうしても放っておけない。
奇異の視線が自分たちから離れた事を感じ取ってから、京子はゆっくりと口を開く。
京子「小蒔ちゃん、そんなに気にしないで」
京子「別に悪い事をした訳じゃないんだから」
小蒔「でも、私が何も考えずにオネダリしちゃった所為で京子ちゃんまで…」
京子「それは私にも責任があると言ったでしょう?」
京子「それに私は有象無象になんと思われようがまったく気にしないわ」
京子「私にとって大事な人にちゃんと理解して貰っていればそれで満足よ」
言い聞かせるようなその言葉は、本心からのものだった。
京子は人付き合いが得意で、誰ともすぐに仲良くなれるが、人の評判をあまり重視するタイプではない。
仲の良い友人に悪しように思われると傷つくが、顔も名前も知らない人たちになんと思われようが適当に受け流す事が出来る。
例え、それが同性愛者と言う不名誉なものであっても、京子にとってはどうでも良い事だった。
京子「それとも小蒔ちゃんは今ので私の事、嫌いになっちゃった?」
小蒔「そ、そんな事ありません!」
小蒔「私は京子ちゃんの事、だいだいだいだい大好きです!!」
小蒔「…ってあ」カァァ
思わず口から飛び出たその言葉は、彼女が普段、良く使う『好き』とは気色の違うものだった。
ただ漠然と好んでいるのではなく、もっと範囲の狭い ―― 異性としての好意。
それを勢い任せに口にしてしまった小蒔は照れくささに顔全体を赤く染めた。
京子「ふふ。嬉しいわ」
京子「私も小蒔ちゃんの事、大好きだから」
小蒔「京子ちゃん…」
京子「だからね、そんな風に自分を責めないで欲しいの」
京子「私は大好きな小蒔ちゃんが、申し訳無さそうにしているのを見ていたくないわ」
小蒔「…はい」
京子から伝えられた『大好き』の言葉は、小蒔の自責を吹き飛ばすほど強力なものだった。
優しいその声音に、小蒔の顔から紅潮が引き、代わりに歓喜が浮かんでくる。
安堵混じりのその色に京子は悪戯っぽく笑って。
京子「良かった。小蒔ちゃんが立ち直ってくれなかったら、私、キスがトラウマになるところだったわ」
小蒔「え?」
京子「だって、私がキスしちゃった所為で、小蒔ちゃんを落ち込ませちゃったんだもの」
京子「また落ち込ませるんじゃないかって思うと怖くてキス出来なくなっちゃってたかも」
小蒔「だ、大丈夫です! 私、すっごく元気ですから!」
京子「本当?」
小蒔「はい! だから…あ、あの、またチュー…」モジ
京子「ふふ。帰ったらね」
小蒔「はい…っ♪」
期待に身体を揺れ動かす小蒔に、京子は優しい視線を送った。
微笑ましささえ感じるその暖かさに、彼女の顔はニヘラと緩む。
トラブルがあったとは言え、それは京子とのキスを色褪せさせるものではなかったのだから。
京子からされるキスは、今も変わらず、素敵なご褒美だった。
小蒔「京子ちゃんの方は何か私にして欲しい事はないですか?」
京子「あら、いきなりどうしたの?」
小蒔「私ばっかり京子ちゃんにご褒美を貰ってますし…私もお返ししたいなって」
小蒔「私は京子ちゃんのお姉さんですし、先にチューもしてもらっていますから」
小蒔「京子ちゃんのして欲しい事を、何でも叶えてあげますよ」
京子「うーん…そうねぇ」
自身に返ってくる『何でも』と言う言葉に、京子は考えこむような素振りを見せた。
色々と追いつめられたり、理性が危なくなる事もあるが、京子は今の生活に満足している。
少なくとも、見目麗しい美少女たちに囲まれる日々に、パッと出てくるほどの不満はなかった。
京子「(とは言え、ここで小蒔さんに何も言わないのは逆に落ち着かないだろうし)」
小蒔は京子に『お返し』をする事を望んでいる。
それを要らないと言われてしまえば、彼女も立つ瀬がなくなってしまうだろう。
だからこそ、ここは何かしら小蒔に対する要望を口にしなければいけない。
そう思う京子の目に、彼女の艶やかな黒髪が入った。
京子「…そうね。それじゃあ、髪の洗い方やお手入れの仕方を正式にレクチャーしてくれる?」
小蒔「別に構いませんけれど…どうして髪の毛なんですか?」
京子「あら、私だって女の子だもの」
京子「小蒔ちゃんみたいな綺麗な髪が欲しいって思う事くらいあるわ」
首を傾げる小蒔に返す言葉は、100%混じりっけのない嘘だった。
日頃、女装して過ごしているとは言え、京子は自分が男である事を忘れたつもりはない。
カツラで窮屈な思いをしている髪が弱らないようにとケアはしているが、綺麗な髪が欲しいと思ったことはなかった。
それでもこうして小蒔に教えを請うのは、霞の髪の毛をケアする係に任命されてしまったからこそ。
女の命と言っても過言ではない髪を間違った方法でケアしていたら、霞に申し訳が立たない。
小蒔「京子ちゃんの髪はそのままでも十分、綺麗だと思いますよ」
京子「ありがとう。でも、やっぱり小蒔ちゃんには及ばないと思うの」
京子「小蒔ちゃんの髪を撫でる度に、凄いなって思っちゃうくらいだから」
しかし、その辺りの事情を、小蒔に伝える事は出来ない。
まるで幼児退行を起こしたような霞の顔は自分だけに向けられるものなのだから。
幾ら姉妹以上に仲が良い小蒔相手とは言え、京子と二人っきりになると甘えん坊になってしまう事を知られたくはないだろう。
そう判断した京子は、小蒔の髪を褒め称える。
さっきの嘘とは違う、100%本心からの賛辞に、彼女も照れくささを顔に浮かべて。
小蒔「えへへ。ありがとうございます」
小蒔「そこまで言われると…私も頑張らなければいけませんね」
小蒔「全力で京子ちゃんに髪のお手入れを教えます!」グッ
京子「じゃあ、これからは小蒔先生って呼ばなきゃダメね」
小蒔「小蒔先生…」
京子「嫌だったかしら?」
小蒔「いいえ。嫌じゃないです」フルフル
先生。
今までずっと護られ、教えられる側だった小蒔にとって、それはとても新鮮な呼び方だった。
まったく予想していなかった彼女は、最初、その呼び名を確かめるように舌の上に乗せる。
瞬間、彼女の胸に広がったのは違和感ではなく、むず痒さ混じりの嬉しさ。
それに自分は決してその呼び方を嫌がってはいないのだと判断した小蒔は首を振りながら、その頬を緩める。
小蒔「小蒔先生かー。えへへへ…」ニマー
京子「はい。小蒔先生」
小蒔「何でしょう、京子ちゃん」
京子「小蒔先生はどうしてそんなに可愛いんですか?」
小蒔「か、可愛いですか?」
京子「はい。とっても」クス
小蒔「っ」カァ
初めての呼び名に、ついつい笑みを浮かべてしまう小蒔は、挙手しながら自己主張する京子に指を向けた。
早くも先生然としたその仕草は、しかし、京子の質問にすぐさま消えさってしまう。
自身の事を可愛いとそう告げてくれる愛しい人に、彼女の顔は赤く染まった。
それに呼応するように、トクンと甘く脈打つ心臓から歓喜が広がっていく。
小蒔「(嬉しい…とっても嬉しいです)」
小蒔「(でも…今の私は京子ちゃんの先生な訳ですし…)」
小蒔「(ちゃんと質問に応えてあげないと…!)」
顔を染め上げるその音色は、決して弱々しいものではなかった。
何時もの小蒔であればあっさりと屈し、心地良さに身を委ねていただろう。
しかし、今の彼女は湧き上がる歓喜に抗おうと、グっと身体に気合を込めていた。
生来の生真面目さから、京子の質問に全力で答えようとする小蒔は、脳内で可愛いの理由を探し始める。
小蒔「う、うーん…でも、どうしてって言われても特に理由は…あ」
京子「何か思いつきました?」
小蒔「はい。多分、コレだって言うのが一つありました」
京子「それは一体、何なんでしょう?」
小蒔「私が恋しているからだと思います」
京子「え?」
そんな小蒔が口にした理由は、京子にとって予想外のものだった。
京子にとってその質問は、冗談の一種であり、決して重要なものではなかったのだから。
小蒔の事を可愛いと伝えられれば、それで良かったのである。
だが、気軽に口にしたその質問に思ってもいないカミングアウトが返ってきてしまった。
それに思わず顔を強張らせてしまう京子の前で、小蒔はニコリと幸せそうな笑みを浮かべる。
京子「…こ、小蒔ちゃん、好きな人がいたの?」
小蒔「はい。います」
京子「それって家族的な意味…とかじゃないわよね?」
小蒔「ち、ちゃんと異性としてお慕いしています…」ポッ
京子「そ、そうなの」
それでも尚、質問を続けるのは、それがなあなあで済ませて良い事ではないからだ。
京子と小蒔は一つ屋根の下どころか、同じ部屋で寝ているほどの関係なのだから。
時に同衾をせがまれる事さえある京子にとって、それは地雷と分かっていても踏み込まなければいけないほど重大なものだった。
京子「私も知っている方なのかしら?」
小蒔「え、えぇっと…京子ちゃんも良く知ってる…と思いますよ」
続く京子の質問に、小蒔は言葉を濁してしまう。
彼女が慕っている相手とは、他ならぬ京子自身の事なのだから。
幾ら小蒔が純真とは言え、本人を前にして深くを語る事は出来ない。
ましてや、【制約】に関わる事でもあるだけに、曖昧な言葉しか出てこなかった。
京子「もしかして小蒔ちゃんの婚約者の方とか?」
小蒔「…」コクン
京子「なるほど…」
朱色の頬で頷く小蒔に、京子の中で思考が組み上がっていく。
神代家との接点を殆ど持たない自分が知っていると言う事は、婚約者は『祭り』の最中に、屋敷へとやってきた誰かだ。
思い返すまでもなく、殆どが年配の男だった気がするが、旧時代的な神代家にとって歳の差婚は普通の事なのだろう。
下手をすれば、父親以上に歳を重ねた男に嫁がされる小蒔が不憫な気持ちはあるが ――
京子「でも、それなら安心ね」
小蒔「安心ですか?」
京子「えぇ。だって、小蒔ちゃんは好きな人と結ばれるって事だもの」
京子「正直、その辺り、結構、気にしていたから良かったわ」
それ以上に京子の中で大きいのは、小蒔の結婚に愛があるという事だった。
他の少女達のように、ただ家が決めただけの男に嫁がされるのではない。
ちゃんとその胸の中に恋する気持ちがあるのならば、きっと大丈夫。
相手が初美の婚約者のようなクズではない限り、大事にして貰えるだろう。
京子「(だが、万が一って事もあるしな)」
京子「(小蒔さんが惚れた男だし、悪い奴じゃないとは思うが…)」
京子「(ちゃんと仔細を聞いておかないと)」
京子「それでお相手の方はどんな人なの?」
小蒔「…とっても優しい人です」
小蒔「私が落ち込んでいる時には絶対に声を掛けてくれますし」
小蒔「私が傷つけてしまった時だって、私の事を考えて行動してくれていました」
小蒔「今だって、私の事をとても気にかけて…」
京子「今?」
小蒔「い、いえ、何でもないです」フルフル
ついつい口にしてしまった言葉を、小蒔は首を振って誤魔化す。
そんな彼女に京子が首を傾げるものの、小蒔は口を開こうとはしなかった。
ここで下手に口を開けば、自身の想い人が、京子であるとバレてしまいかねないのだから。
不思議そうにする京子に良心が痛むものの、ここは黙っているしかない。
京子「他には?」
小蒔「そ、そうですね。ただ、優しいだけじゃなくて、強いところもあります」
小蒔「普通なら折れちゃうような苦難にあっても、自分よりも他の人を優先して」
小蒔「自分の大事な人を傷つけられた時には、ちょっぴり怖くなっちゃうくらいに苛烈な顔を見せたりもします」
小蒔「でも、そんなところも格好良くて、見惚れちゃった事もありました」デレ
京子「そ、そう」
小蒔「その上、運動も得意で、勉強も出来ますし、何より、物知りなんですよ」
小蒔「私の知らない事を沢山、教えてくれて…それがまた嬉しくって…」デレデレ
それを感じ取った京子が別の角度から踏み込めば、まるで数珠つなぎのように甘い言葉が出て来た。
いっそ惚気にさえ思えるそれに聞いた京子の方が、気圧されてしまう。
そんな京子に構わず続けられる言葉は止まる気配がない。
その恋心を自覚した時から、彼女の周りにいるのは『家族兼ライバル』ばかりだったのだから。
一番、仲の良い少女たちにも言えなかったその言葉は、抑圧の枷を外されて、幾らでも吐き出されていく。
小蒔「恥ずかしがらずに毎日、好きって言ってくれますし、愛されてる実感もあって…」デレレ
京子「なるほど。小蒔ちゃんが好きになるだけはあるわね」
小蒔「はい。私には勿体無いくらいの人だと思います。ただ…」
京子「ただ?」
小蒔「あ、いえ、その…」
京子「…何か気になる事があるんでしょう?」
京子「ここまで聞いたんだし、最後まで聞かせて欲しいわ」
小蒔「…じゃあ、その…不満って程じゃないんですけれど」
京子「えぇ」
小蒔「その人、素敵過ぎて、色んな人から好かれてるので」
小蒔「ワガママなんですけれど、私が独占出来たらなって」
京子「ワガママって…小蒔ちゃんが婚約者なんでしょう?」
小蒔「そう…ですけれど」
それから十数分もの間、ノンストップで惚気を口にし続けた彼女はおずおずと不満を口にし始める。
それに思わず疑問の声を返してしまうのは、小蒔の言葉が理解出来ないものだったからだ。
一体、どうして婚約者である彼女が、そこまで遠慮しなければいけないのか。
その背景がまったく分からない京子は、そんな疑問を胸中に浮かばせる。
京子「もしかして口出しするなとか言われてるの?」
小蒔「そんな事はありません。その人はとっても優しい人ですから」
京子「分かった。じゃあ、優し過ぎて、女の子に厳しく言えないタイプなのね」
小蒔「そう…かもしれません」
京子「小蒔ちゃん。そういう男は世間一般では優柔不断って言うのよ」
京子「そして、それは自発的に治るものじゃないわ」
京子「小蒔ちゃんは婚約者なんだし、外で既成事実を作られないためにも一回ビシって言った方が良いと思う」
小蒔「でも、そんな事言って嫌われませんか…?」
京子「本当に小蒔ちゃんが言ってた通りの男なら、その程度で嫌ったりしないと思うわ」
京子「寧ろ、小蒔ちゃんほど可愛い女の子に独占欲をアピールされるなんて、普通の男なら嬉しくなるはずよ」
小蒔「そ、そうですか」テレ
言い聞かせるような京子の言葉に、小蒔は照れくさそうに笑う。
彼女にとってそれは、想い人本人からの太鼓判に他ならないのだから。
こうして許可を貰った事だし、思い切って言ってしまおう。
そう決断を下した小蒔は、スゥと息を吸い込んで。
小蒔「じゃあ…あの、京子ちゃん」
京子「えぇ」
小蒔「ビシッ!!!!!」
京子「………………………???」
小蒔「ふぅ」スッキリ
気合充分と言ったその声に、京子は首を傾げてしまう。
どうして自分は小蒔からビシッと言われてしまっているのか。
そもそもどうして小蒔はそれでスッキリした顔をしているのか。
よもや彼女が口にしている婚約者が自分などと思いもしない京子に、その答えが出せるはずがなかった。
京子「小蒔ちゃん?」
小蒔「ほら、京子ちゃん。もうすぐ霧島神宮ですよ」
京子「え、えぇ」
だからこそ、おずおずと尋ねる京子に、小蒔はにこやかな顔で応えた。
京子の言葉通り、『ビシッ』と言った彼女は、胸中に溜まった独占欲を幾分、発散する事が出来たのだから。
その顔にはまったく陰りはなく、とても活き活きとしていた。
京子「(正直、良く分からないけれど、でも、小蒔さんはこんなに嬉しそうにしてるんだ)」
京子「(多分、さっきの事は小蒔さんにとって、悪い事じゃなかったんだろう)」
京子「(だから、今はそれを脇に置いてっと)」
そんな小蒔に疑問を投げかけるのは京子にとって憚れる事だった。
何やら納得した彼女に自分が分かっていない事を伝えてしまえば、その笑顔を曇らせてしまうかもしれない。
胸中に浮かぶその言葉は、京子の意識に躊躇いを生み、日和見へと流させる。
京子「疲れたら何時でも言ってね。荷物持ってあげるから」
小蒔「まだまだ大丈夫ですよ」
小蒔「寧ろ、京子ちゃんの方こそ、何時でも先生に甘えてくれて良いんですよ」
京子「ふふ。頼もしいわ」
代わりに口にする言葉に、小蒔は力強く応える。
若干の強がり混じりのそれは、京子の顔に微笑みを浮かばさせた。
こんなに可愛らしい小蒔と結婚できる果報者は一体、何処のどいつなのか。
そんな言葉を浮かばせながら、霧島神宮を歩く京子の視界に見慣れた栗色の髪が映り込む。
最早、見ることはないだろうと思っていたそれに意識よりも先に身体が反応して ――
咲「…京ちゃん久しぶり」
―― 聞こえてきたその声は、紛れも無く京子の、須賀京太郎の幼馴染のものだった。
いやぁ、ほのぼのしたイチャイチャでしたね!!!(´・ω・`)あ、次回、咲ちゃん襲来編になります
登場するだけで悲鳴があがるヒロインがいるらしい(´・ω・`)おかしい…こんな事は許されない…
それはさておき、次回はまだ展開悩んでるのでちょっと遅くなるかもです
そしてどうでも良い事ですが最近、持病の発作が…(´・ω・`)京ちゃんの事いじめたい…エロが書きたい…
実際、期間限定安価スレやるとしたらどんなのが良いんでしょうねー
いじめたい+エロと考えるとやっぱりふたなりスレリターンズとか(錯乱)
限界まで絞りとる方向でオナシャス!
霞さんの続きでいいんじゃない(適当)
もうこっちもエンディング間近なんで1、2スレ程度で終わる程度の奴が良いんですけどねー
色々と考えましたがいじめたい+エロだとどう考えても長くなっちゃいそうで(´・ω・`)普通に短編安価スレ立てた方が満足出来そうな気がする
或いは>>207+>>208って事で京ちゃんの雄っぱいをしゃぶりながら、幼児プレイをする霞さんとか(錯乱)
_____
... : ´: : : : : : : : : : `: : : ..
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|: : : : : |: : : : : |匕Ⅵ: /ト、: : /从 |: : : | こんなに可愛いわた咲ちゃんが魔王扱いだなんてそんなのあり得ないよ!!
|: : : : 八: : : :.i:|:{ V ノ ∨ ,ィ |: : : |
. : : : : : : ヽ: : 从 _ ≠⌒ Ⅵ:/}
\: : :{⌒\:.{ r==ミ , ::::::::::Y
乂: \r' ::::::::::: uノ
丶、:_ー‐、 r‐ ー' フ /
_ヘr─ァ、ー ┬ 、 ≦-─、
/⌒ヽ\ \ } ノ}\
しかし、こうして書き込んでくださる人のアイデア見る限り、女の子に主導権があったり、逆レの方が望まれてるっぽいですねー
和の転校を知り、自分が何でもするからと清澄を優勝させてくれとお百度参りする京ちゃんに神様が現れて
インハイ中射精しなかったら優勝させてやんよって言われたから必死に我慢するんだけど
神様パワーで付与されたフェロモンにヒロインのスキンシップが過激になっちゃって泣きながら堪える京ちゃんとか…?(´・ω・`)
あ、別にいじめる+エロの条件を絶対に満たさなきゃダメって訳でもないのですよ
と言うか、京ちゃんをいじめる場合、その後、いじめるに足るカタルシスを準備しなきゃいけないので1、2スレじゃ厳しいかなーと今更ながらに
なので、見たいエロシチュとかを満たせる安価スレの方が良いかなーと思ってます
そして京ちゃんの処女を狙う安価スレってまた業が深いものを…(´・ω・`)色々とあって京子ちゃんにやってたら、ヒロインが勘違いして、モロッコで竿つけて帰ってくるとか?
うん、小ネタで軽くやる程度ならともかく、スレ立ててやるにはちょっと需要がニッチ過ぎる気がします、ごめんなさい
安価でシチュとか決めて貰うのだといっそこっちでやった方が良いかなと思わなくもないです
個人的には安価で皆さんとワイワイやりたいんで、可能な限り、頂いた意見に添えるような世界観とかシステムを考えられればなーと
キャラくらいは安価で決めた方が良いかもしれませんが、何処で何をしたかはコンマで決めるのも面白いかもですねー
好感度20からはこのコンマ表、好感度60からはこのコンマ表、好感度80からはこのコンマ表と三種類くらい作ればあんまり事故らなさそう
俺の脳内選択肢云々のパロで、安価で3つまで行動を募集して、その次の安価でその3つの中の何かを必ず実行しなきゃいけないってのもあり
完全に即興で滅茶苦茶になる可能性大だから苦労するかもだけど
明日には投下したい(小声)
そして次の投下が終わったら、ちょっと一回、頭をリフレッシュさせる為に安価スレに浮気しようと思います
今のところ候補は>>218、艦これネタ、催眠ネタの3つです
>>229はすっごく面白そうなんですが、私の安価処理力では難しそうなのでなしにさせてください(´・ω・`)ごめんなさい
ヒャア!もう我慢出来ねぇ!投下だー!!
―― その邂逅は京子にとって想定外のモノだった。
宮永咲と言う少女は、迷子の達人だ。
ほんの少し目を離しただけであっという間に逸れてしまう。
知らない土地どころか知っている土地でもすぐに迷子になる彼女が、一人で長野を出られるはずがない。
京子「(何より…なんで俺達の住所を知ってるんだ?)」
京子は咲の事を良く知っている。
あまり隠し事が得意ではない彼女が、偶然に依る出会いを誤魔化せるはずがない。
間違いなく、咲はここに自分がいると知って、来ている。
それは彼女の足が関係者専用の通路前で立ち止まっていた事からも分かった。
京子「(いや、今はそんな事はどうだって良いだろう)」
京子「(大事なのは…ここで咲をどう誤魔化すかって事だ)」
それは口にするほど簡単なものではないと京子も分かっていた。
インターハイの時と今とでは状況がまったく違う。
咲は京子を求めて、遠く離れた鹿児島までやって来ているのだから。
住所まで抑えられてしまっている今、生半可な言葉では先延ばしにもならない。
かと言って、決勝の時のように彼女を撒く事も出来ず、京子は内心に冷や汗を浮かべながら口を開いて。
京子「宮永さん、お久しぶりです」
京子「インターハイ以来でしょうか? 元気にしておられましたか?」
咲「…」
京子から放たれる言葉に、咲の表情がピクリと動く。
あくまでも【須賀京子】を崩そうとしないその言葉は、彼女にとってとても不愉快なものだった。
もう全てバレているのに、この期に及んでシラを切り通すつもりなのか。
そんな言葉を投げつけたくなってしまうほどに。
咲「うん。私も色々とあったけれど…でも、元気だよ」
咲「京ちゃんの方は? 体調を崩したりしてない?」
京子「見ての通り、身体だけは丈夫なものですから」
京子「病気とは無縁です。ありがとうございます」
小蒔「…」ハラハラ
それでも一見、にこやかに続けられる言葉に、小蒔の胸中に落ち着かなさが浮かび上がる。
自身を置き去りにしてやり取りされるそれは、お互いの腹の中を探るジャブのようなものなのだから。
ともすれば、導火線になりかねない言葉は、今にも火が着いてしまいそうなほど危険なもの。
そうなった時に自分がどうすれば良いのか、小蒔は未だ測りかねていた。
京子「今日は霧島神宮にお参りですか?」
咲「ううん。京ちゃんに会いに来たの」
京子「…私は『京ちゃん』ではありませんと再三、告げたはずですよ」
咲「ううん。京ちゃんは京ちゃんだよ」
咲「私が京ちゃんを見間違えるはずない。…だって、十年以上、一緒だったんだから」
京子「…」
十年。
年月と想いの深さを感じ取れるその言葉に、京子の胸がズキリと傷んだ。
咲にとっての十年以上は、そのまま京子にとっての十年以上でもあるのだから。
鹿児島での生活の中、徐々に風化していったはずの思い出が再び色鮮やかに蘇ってくる。
京子「宮永さん、失礼な事を言いますが…貴女はそろそろ現実に向き合うべきです」
京子「確かに私と京太郎君は親戚で似ているところはあるでしょうが」
京子「だからと言って、男性と女性を見間違えるほどの思い込みは危険ですよ」
咲「ふぅん…そんな事言うんだ」
しかし、だからと言って、ここで痛みに負ける訳にはいかない。
幾らか待遇が改善されたとは言え、神代家にとって須賀家の一人息子は重要人物であり続けているのだから。
ここで何もかもをぶち撒けてしまえば、自分を取り巻くゴタゴタに彼女を巻き込んでしまう。
それだけは避けなければならないと、京子はキツイ言葉を選んだが。
咲「…じゃあ、京ちゃんは、その服の下を私に見せられるよね?」
京子「…流石に良く知らない人の前で脱ぐほど露出を好んではいませんし」
京子「何より、私の肌には酷い傷跡がありますから。あまり見せたくはありません」
咲「じゃあ、それは何時、ついた傷なの?」
咲はそれに怯む気配を見せなかった。
同性を騙るのであれば、肌を見せろと京子に迫る。
それに京子が返すのは、今まで幾度となく繰り返してきた言い訳だ。
これまでであれば、追及の手が緩んでいたはずのそれに、咲は躊躇なく踏み込む。
京子「…すみませんが、当時の記憶は私にとって思い返したくないものなので」
咲「なるほど。アレもダメ、コレもダメ…」
咲「それで自分の意見だけは信じろって言うんだ?」
京子「そもそも、宮永さんの方が言いがかりをつけて来られていると言う自覚はありますか?」
京子「本来ならば、貴女の方に直感以外の根拠を説明する責任があると思いますが」
自然、それを迎撃する京子の言葉は険悪なものになっていく。
咲とは違い、後ろ暗いところがある京子は、突き放すようなもの言いでしか誤魔化せない。
それに良心がズキズキと痛むが、今の京子にはそれしか選べる道がなかった。
咲「じゃあ、説明しよっか」
京子「え?」
咲「また会っても、絶対にシラを切られるって分かってたから」
咲「今日までずっと証拠を集めてきたんだよ」
インターハイが終わってから四ヶ月。
その間、咲はただ漠然と日々を過ごしていた訳ではなかった。
手が届かなかった幼馴染と、本当の意味で再会するために考えうる手段を取り続けてきたのである。
時に仲間の手を借りて、収集されたそれらは、今、彼女が手に下げるベージュ色のバッグの中に詰め込まれていた。
その中に手を入れた咲は、まず手のひら大のテープレコーダーを取り出す。
咲「まずこっちが新道寺の鶴田さんの証言ね」
咲「中には京子ちゃんが私の事を幼馴染って言ったっていう証言とか色々と入ってる」
京子「どうしてそんなものを…」
咲「インハイ終わった後、合宿でちょっとね」
京子「(…ごめん、姫子さん)」
ニコリと笑った咲の顔は、容赦のないものだった。
幼馴染としてではなく、魔王としての顔を覗かせるそれに京子は内心で友人に謝罪の言葉を浮かべる。
そんな京子の前で次に咲が取り出したのは、バインダーに挟まれた紙の束だった。
咲「それでこっちが京ちゃんが通ってたっていう学校での聞き取り調査の報告書」
咲「京ちゃんの写真を見せて聞いたけれど、誰も須賀京子なんて知らないって」
咲「…学校には確かに在籍していた書類が残ってるらしいけれど、おかしいよね」
そこに書き連ねられていたのは、探偵からの報告だった。
一枚ごとに【須賀京子】の虚構を浮き彫りにしていくそれに京子の背筋に冷や汗が浮かぶ。
学校の書類にまで踏み込まれてしまった今、ハクをつける為に嘘を吐いていたなど言えない。
他人のプライバシーを暴くプロの調査に、京子はなんと返せば良いのか分からなかった。
咲「最後に、これ京ちゃんの戸籍ね」
咲「…京ちゃんは親戚だって言うけれど、お父さんとお母さんのところに書いてあるのは私も良く知ってる人」
咲「私は京ちゃんに双子がいたなんて聞いた事ないんだけれど、一体、どういう事なのかな?」
京子「どうやったらこんなものまで…」
咲「世の中には色んな職業があるって事だよ」
最後にと晒される自身の戸籍に、京子は驚きを声に浮かべてしまう。
本来なら、それは本人や親類縁者でなければ取得出来ないものなのだから。
幾ら幼馴染とは言え、手に入れられるはずがない。
そんな京子の言葉に、咲はクスリと笑いながら答えた。
咲「他にも麻雀の時の細かい癖とか、顔立ちとか色々とあるけれど」
咲「それらは私の主観って言われたら、言い逃れされちゃうって事は分かってる」
咲「ただ、こっちはそうもいかないでしょ?」
咲「こうして揃えた証拠全部が、【須賀京子】なんていないって事を示しているんだから」
京子「…だから、私が須賀京太郎だと?」
咲「もし、【須賀京子】だって言うなら、それを証明出来る人と連絡を取って欲しいな」
咲「【須賀京子】は人と仲良くなるのが得意みたいだから、小学校中学校時代の友人でも良いよ」チラ
小蒔「ぅ」
そこでチラリと小蒔に送られる視線には敵意が強く込められていた。
京子の調査を進める中で、二人が一つ屋根の下で暮らしている事を突き止めているのだから。
幾ら京子の女装が完璧とは言え、同じ家で一年間暮らしていて、正体がバレないはずがない。
間違いなく、小蒔も ―― 神代家も京子が生まれた事情に関わっているのだろうと咲は思う。
咲「(それに何より…)」
小蒔が京子へと向ける目は、咲も良く知るものだった。
瞳の奥に宿る甘い輝きに、彼女は小蒔の恋を感じ取る。
間違いなく、彼女は恋のライバルで、そして倒さなければいけない敵。
幼馴染を女装させておきながら、恋心を寄せる小蒔の存在を、咲は到底、許容する事が出来なかった。
京子「…今の私の性格は、高校デビューならぬ永水デビューで大きく変わったものですから」
京子「つい一年前まで一人でいる方が多いぼっちでしたし、いじめられもしていました」
咲「だから、以前の学校で知ってる人がいなかったのも当然だと?」
京子「あり得なくはない話でしょう?」
あり得なくはない。
そんな言葉すら持ち出さなければいけないほど、京子は追いつめられつつあった。
咲が揃えた証拠は、彼女の本気を容易く感じ取れるものばかりなのだから。
その一つ一つに京子は苦しい言い訳しか用意出来ない。
咲「じゃあ、鶴田さんの証言はどう説明するの?」
京子「先ほども言った通り、私はぼっちでしたから」
京子「コミュニケーション能力も高くはありませんでしたし、姫子さんを誤解させてしまったのかもしれませんね」
咲「戸籍の方は?」
京子「父と母は駆け落ち同然に長野に逃げていったのですが、運悪く実家に見つかってしまいまして」
京子「双子の兄である京太郎は親元に、妹である私は実家に引き取られたと言うだけです」
咲「…なら、須賀京太郎なんていないって言われた事に関してはどう説明するの?」
京子「っ」
ポツリと呟かれたその声に、京子は言葉を詰まらせる。
【須賀京子】の実在を証明する事ばかりで頭が一杯だった京子にとって、それは想定外のものだった。
頭の中に準備していた言い訳を遥か超えたそれに背中に浮かぶ冷や汗の量が増えていく。
咲「鬼籍に入ったとか、そんな理由じゃない」
咲「最初からそんな人はいないって言われたんだよ」
咲「私も皆も京ちゃんの事を覚えてるのに…そんな人物は存在しないって」
咲「いるのは須賀京子だけなんだって言われたのはどういう事?」
京子「…そこまでは私も存じ上げません」
咲「双子なのに?」
京子「両親達とは既に縁を切ったつもりでいますから」
京子「何かあったのだろうとは思いますが、それだけです」
それは最早、言い訳ですらなかった。
説得力を持たせる事すら放棄したそれはただの言い逃れでしかない。
そう理解しながらも、京子は空虚な言葉を繰り返す事しか出来なかった。
咲「……つまり京ちゃんは、京ちゃんじゃないって言う明確な証拠を一つとして示す事が出来ないんだ」
京子「私の説明では納得頂けませんか?」
咲「今の説明で納得出来るなんて、よっぽどの天然さんだと思うな」
京子「…ならば、それに足る証拠を準備させて頂きます」
京子「ただ、それは一日二日で用意出来るものではありませんから」
京子「今日のところはお引き取り下さい」
無論、京子に証拠など用意出来るはずがない。
だが、この場で問答を続けていても、咲に追いつめられるばかりなのは分かっていた。
ここは一旦、退却して、霞達に相談した方が良い。
そう判断した京子がそっと頭を下げるが。
咲「その必要はないよ」
咲「それよりももっと簡単に証明出来る方法があるから」
京子「…それは」
咲「京ちゃん、その髪、自毛じゃないよね?」
咲「色艶は良く似てるけれど、私は騙されないよ」
咲「京ちゃんの髪はもっとお日様みたいにキラキラ輝いてたはず」
京子「(まずい…!)」
ジィと自身の髪を見つめながらの言葉に、京子の危機感は強くなる。
今の自分がカツラを被っているのだと見破った彼女が次に何を言うのか予想出来るのだから。
今の間にそれを回避する言い訳を考えた方が良い。
理性からの訴えは、しかし、胸中に広がる狼狽にかき消されてしまう。
咲「あんまり目立たないけれど、お化粧もかなり濃い目だよね」
咲「カツラを外して、お化粧を全部を落とした時、一体、どんな顔になるのかな?」
京子「…つまり私にスッピンを見せろと仰られるのですか?」
咲「少なくとも、数日待たされなきゃいけないほど大層な証拠よりも、そっちの方が手軽で分かりやすいと思うな」
京子「(…やられた)」
ニコリと笑う咲の顔に、京子の胸は敗北感を湧き上がらせる。
並べられた証拠も、問い詰めるような疑問の数々も、全てはこの時の為にあった。
証拠を京子から提出すると言う言葉を引き出す為に、そして手軽故に言い逃れすら出来ない『証拠』に追い込む為に。
自分はずっと幼馴染に誘導され続けていたのだろうと、今、この瞬間の京子は悟った。
京子「…流石にほぼ初対面の相手に素顔を見せるのは抵抗感があります」
咲「でも、それがこの場で身の潔白を証明する唯一の方法なんだよ?」
咲「【須賀京子】さんからすれば、私は意味不明な理由で付き纏うストーカー女だろうし」
咲「スッピン一つ晒す事で私と縁が切れるなら、喜んですると思うな」
京子「…」
その言葉は今までのように京ちゃんに向けられたものではなかった。
自身が虚構と突きつける【須賀京子】へ語りかけられたそれに京子の口は動かない。
無論、例え、無様であろうと、咲の事を思うならば、言い逃れを続けなければいけないと京子も分かっている。
だが、完全に術中に嵌ってしまった京子には最早、言い逃れの言葉すら思い浮かばなくて。
咲「京ちゃん」スッ
京子「だ、ダメです。今は買い物帰りで汗が…」
咲「お願い。逃げないで」
京子「あ…」
瞬間、京子へと踏み込んだ咲はそっと京子の髪へと手を伸ばす。
強引にカツラであるか否かを確かめようとするその手を京子は拒もうとした。
だが、その最中、咲から告げられた言葉が、京子の抵抗を阻む。
今までのように淡々と証拠を並べあげて、自身を追い詰めていた宮永咲の言葉ではない。
長年、自身と共に過ごしたポンコツで頼りない幼馴染としての言葉に、京子の身体は固まってしまう。
咲「ふふ。やっぱり」
咲「思った通り、京ちゃんはカツラなんだ」
咲「自毛はこんなのよりもずっとずっと綺麗なのに勿体無い」
京子「あ…ぅ」
その間も動き続ける咲の手は、京子の髪を強引に掻き上げる。
瞬間、彼女の前に晒されるのはカツラの付け根だ。
間違いなく一つの状況証拠となるであろうそれを京子は釈明しようとするが、中々、上手くいかない。
ほんの少し手を伸ばせば、そのまま抱きしめられそうなほど接近した幼馴染の姿に、感情がざわついていた。
京子「(…咲)」
何よりも大事であった幼馴染が浮かべる笑みは、決して明るいだけのものではなかった。
その瞳は潤み、目尻からは今にも涙が零れ落ちそうになっている。
一年ぶりに近づけた幼馴染に、心の中が落ち着かないのは決して京子だけではない。
寧ろ、その心に鬱屈としたものを抱え込んでいた彼女の方が、心を強く揺さぶられていた。
小蒔「…宮永さん」
咲「…私は今、京ちゃんと話してるんです。邪魔しないでください」
その最中、小蒔から掛けられた声に咲は不機嫌さを隠そうともしなかった。
言い逃れを続ける京子に、言い訳さえさせずに手に入れたその証拠は、彼女にとって大きな一歩なのだから。
これを橋頭堡にして、京子の心を完全に折ってしまおう。
溢れかえるような嬉しさの中、その算段を立てていた咲にとって、それは邪魔以外の何物でもなかった。
小蒔「私も邪魔はしたくはありません」
小蒔「でも、ここではどうしても人目に晒されてしまいます」
小蒔「込み入った話をするのには向きませんから」
京子「こ、小蒔ちゃん…」
小蒔「良いんです。ここまで調べられた以上、下手な言い訳は効きませんから」
小蒔「ゆっくりお話出来る場所に移動するのが二人にとっても一番だと思います」
三人が話しているその場所は、霧島神宮の境内から離れている。
しかし、だからと言って立ち入り禁止な訳ではなく、迷い込んだ人がやって来てしまう事もあり得た。
だからこそ、二人に移動を促そうとする小蒔に、咲は訝しげな視線を送る。
咲「確かにそうですね。じゃあ、京ちゃんはこのまま連れて帰ります」
京子「…お願い、宮永さん。そんなワガママを言わないで」
咲「ワガママ? ワガママってどういう事?」
咲「幼馴染が女装させられて、女子校にまで通わされて…その上、戸籍まで滅茶苦茶にさせられてるんだよ…!」
咲「そんな場所に居てほしくないって思うのがワガママなの!?」
京子「それは…」
いっそ悲痛と言っても良いその叫びに京子は言葉を詰まらせてしまう。
既に受け入れてしまったとは言え、自身の状況がどれほど特異なものなのかを京子も良く理解しているのだから。
それを慮って、一緒に帰ろうと言ってくれている幼馴染の優しさは間違いなく嬉しいものだった。
咲「京ちゃんもこんなところ居たくないでしょ? 長野に戻りたいよね?」
京子「それは出来ません」
咲「どうして?」
「私達がいるからですよ」ヌッ
咲「!?」
瞬間、現れた大男に、咲は声にならない悲鳴をあげた。
大柄な京子よりもさらに二回りほど巨大なその体躯に、しかし、咲は声を掛けられるまで気づかなかったのだから。
声を掛けるギリギリまで自然と一体化していたような黒スーツの大男は、そのまま咲の退路を断つように回りこんで。
京子「山田さん、彼女は…」
「無論、京子お嬢様の気持ちは良く理解しておりますとも」
「しかし、我々もボディガードとしての職務がありますから」
「彼女の存在を放置する訳には参りませんな」
京子「彼女はまだ何も知りません。今のは全て彼女の憶測で」
「ですが、その憶測でここまで踏み込まれた以上、後顧の憂いと言うものも考えなければいけません」
「神代家から特に京子お嬢様の事をよろしくと頼まれている私としては、ここで後腐れなく処理するのがベストかと」
小蒔「それはダメです」
監視役兼ボディガードとしての言葉に、小蒔が首を振って答えた。
幾ら彼女が天然であろうと山田が口にする『処理』が穏当なものではない事くらい理解できるのだから。
しかし、ここで咲が害されるのを見過ごしてしまえば、間違いなく、京子が傷つき、神代家への恨みを強めてしまう。
京子に恋する小蒔にとって、それは決して軽視出来る事ではなかった。
「小蒔お嬢様には我々に対する命令権はないはずですが」
小蒔「理解しています。ですが、そこを何とかお願いできないでしょうか」
小蒔「ここで宮永さんを害したら、長い目で見た時、確実に神代家への不利益が発生します」
小蒔「神代に雇われるボディガードとして、どうか職務よりも家の事を考えていただきたいのです」
京子「小蒔さん…」
ペコリと頭を下げる小蒔の姿に、普段の天然オーラはまったく見当たらなかった。
神代の一人娘として立派に振る舞う彼女に、京子はズキリと胸を傷ませる。
自分が至らなかった所為で、山田に嫌な役目を押し付け、小蒔にも頭を下げさせているのだから。
すみませんと言う謝罪の言葉が喉元まで出そうになる。
「……幼い頃から知っている小蒔お嬢様に頭まで下げられると無碍には出来ませんね」
小蒔「山田さん…っ」パァ
「ですが、このまま帰されるつもりでしたら、私も対応を考えねばなりませんよ」
小蒔「分かっています。だからこそ、宮永さんが納得するまでお話をする時間を下さい」
「……分かりました」スッ
京子「ありがとうございます、山田さん」
「礼を言うのはまだ早いですよ。まだ状況がどう転がるのか分からないんですから」
小蒔の言葉に、山田はそっと咲から離れた。
そのまま一歩二歩と下がる彼に、京子は腰を直角に曲げるように頭を下げる。
そんな京子に小さな笑みを返しながら、山田は軽く手を振って。
「なので、話し合いの席には私も同席させて頂きます。宜しいですね?」
京子「えぇ。構いません」
そのまま告げられる言葉は、異論を挟めるようなものではなかった。
京子の正体は神代家の中でも、かなり重要度の高い秘密なのだから。
その証拠をここまで集めた咲を説得する時間を与えてもらえただけでもかなりの譲歩だ。
小蒔の言葉も無視して、幼馴染を連れて行かれても文句は言えなかっただけに、彼からの提案を受け入れるしかない。
「では、こちらへどうぞ。内緒話に向いた部屋がありますので」
咲「あ…ぅ」
京子「…宮永さん」
咲「っ」
促すような山田の声に、咲の身体は動かなかった。
どれだけ強く振る舞おうとしても、彼女は平和な日本で生きてきた女子高生でしかないのだから。
多少、特異な能力こそあるが、それは特殊部隊上がりの大男に通用するようなものではない。
小蒔の執り成しがなければ、自分は間違いなく殺されていた。
そんな実感を浮かび上がらせ、強張ってしまう咲に、京子はそっと手を伸ばす。
京子「行きましょう、宮永さん」
咲「京ちゃん…」
京子「大丈夫です。山田さんもアレでとても優しい人ですから」
京子「きっと悪いようにはなりませんよ」
咲「…うん」
そのまま握った彼女の手は、思った以上に冷たいものだった。
冬の外気の中にあっても、ひんやりと感じるその指先を、京子は温めるように握りしめる。
ただ、強張りを解すだけではなく、安心させようとしてくれるその手に、咲は小さく頷いた。
幼いころからずっと自分の側にあった京子の暖かさは、彼女にとって特別なものなのだから。
ほぼ一年ぶりと言っても良い京子の手は、咲をただ安堵させるだけに留まらず、その目尻に光るものを浮かばせた。
小蒔「…」
その光景を一歩離れたところで見ながら、小蒔は一人胸を傷ませていた。
気遣うように手を繋ぐ京子の仕草は、とても自然で、かつ優しいものだったのだから。
もう数えきれないほどそうやって手を繋いできたであろう二人を、彼女はついつい自分を比べてしまう。
自分はあんな風に手を繋いで貰えるだろうか。
胸中に浮かびあがるその言葉は、小蒔の胸に嫉妬の念を呼び起こした。
小蒔「(…でも、きっとコレで良いんです)」
小蒔「(ここで宮永さんが酷い事をされてしまうと、きっと京子ちゃんは立ち直れません)」
小蒔「(きっと一生、自分を許す事が出来なくなっていたと思います)」
小蒔「(それを回避出来たと喜びこそすれ、後悔する必要はありません)」
小蒔「(私は人として、そして彼に償わなければいけない神代の人間として当然の事をしたのですから)」
どれだけ言い聞かせても、胸の痛みはなくならない。
そんな小蒔の目の前で、京子は無言で歩き続けていた。
その背に小蒔がジっと視線を送ってしまうのは、京子の両手が埋まってしまっているからこそ。
咲と手を繋ぐ為、左手に集められた買い物袋は、自身の事を静かに拒絶しているように思えた。
京子「小蒔ちゃん」
小蒔「は、はい!」
京子「さっきはありがとう。お陰で助かったわ」
小蒔「い、いえ、気にしないでください」
京子の言葉は小蒔にとって、胸の痛みを強めるものだった。
当然の事をしただけなのだと自身に言い聞かせる最中も、小蒔は嫉妬の感情を抑えきれないのだから。
咲と手を繋ぎながらも、自身の事を考えてくれるのは嬉しいが、どうしても申し訳無さが先立ってしまう。
京子「後で必ずお礼はするから期待しててね」ウィンク
咲「む…」ギュー
京子「…あの、宮永さん?」
それを感じ取った京子は、小蒔にパチリとウィンクを送った。
その声にも意味深なものを込めた幼馴染の手を、咲は全力で握りしめてしまう。
久方ぶりに手を繋いだ幼馴染を放置して、どうして他の女の子を口説いているのか。
そんな抗議を込めた手は、しかし、決して痛いものにはならなかった。
咲「京ちゃんのばーか」プイ
京子「馬鹿と仰られますけれど、正直、宮永さんには負けると思いますよ」
京子「勇ましく単身、飛び込んできたのは良いものの、周りが見えなさすぎです」
京子「もうちょっと冷静になったら、自分がどれほど危険な事をしようとしてたか分かるでしょうに」
咲「…だって、早く京ちゃんの事を取り戻したかったんだもん」
京子「だからって、結果的にピンチになってしまっては取り戻すも何もないでしょう」
京子「小蒔ちゃんが執り成してくれなかったら本当にどうなっていた事か」
咲「わ、分かってるよぉ…」
そのままプイと顔を背ける咲に、京子は説教じみた言葉を向けた。
自分のためだと思うと手心が鎌首をもたげそうになるが、彼女のやった事は向こう見ずと言っても良いものだったのだから。
二度とこんな事を起こさないように、しっかり釘を刺しておかなければいけない。
そう思う京子の言葉に、咲は気まずそうな声を返した。
京子「なら、ここで小蒔ちゃんに何を言うべきかくらい分かりますよね?」
咲「でも…」
京子「宮永さん?」
咲「うぅぅぅぅぅ…」
詳しい事情を知らない咲にとって、小蒔は元凶の一人だ。
幾ら助けて貰ったとは言え、お礼を言う事に抵抗感がある。
出来れば、このままなぁなぁで済ませたい。
そんな咲の甘えを京子は決して許さなかった。
咲「…神代さん、ありがとうございます」
小蒔「いえ、人として当然の事をしたまでですから」
小蒔「それに悪いのは私達の方で…」
京子「…小蒔ちゃん」
首だけで振り返った咲の言葉に、小蒔は首を振って応えた。
その中に自責の念を込めた彼女の姿は、京子の胸を傷ませる。
京子にとって、小蒔は幼馴染と同等か、ソレ以上に庇護欲を唆られる相手だったのだから。
そんな相手が今も自分を責めていると思うと、何とかしてあげたくなってしまう。
「お嬢様方、お話中、申し訳ありません。到着しました」
京子「…はい」
しかし、それに足る時間は、京子に与えられる事がなかった。
山田の声に前を向けば、周囲を木に囲まれた小さな社が目に入る。
普段、ボディガード達が過ごしている詰め所から少し離れたその場所が目的地なのだろう。
そう判断する京子の前で、山田が社の中へと入っていった。
京子「お邪魔します…っと」
その背を追いかけて入った社の中は、意外なほどハイテクなものだった。
靴を脱いだ瞬間、床暖房がしっかり効いた床が迎えてくれる。
その先にある襖を開けば、そこにはピカピカに磨かれたエアコンが温風を吐き出していた。
神代家にとって重要な子息達が暮らす屋敷よりも、遥かに現代的なここは一体、何を目的として作られたものなのか。
思った以上にハイテクなその光景に京子は首を傾げて。
京子「ここは一体…?」
「謂わば、我々の宿直室のようなものですよ」
「神代家の護衛は、十曽家の役目だそうですが、たまに我々にもスクランブルが掛かる事がありますので」
「毎日、ここに一人は詰めて、緊急時に対応するんです」
京子「なるほど」
まるで漫画のような殺人拳を使う十曽家とは違い、山田達は現代戦に対応したプロフェッショナルだ。
ただの筋肉ダルマではなく、エリートと呼んでも差し支えのないその頭脳は、電子戦にさえ対応出来る。
幾ら雇い主とは言え、そんな彼らが過ごす宿直室に、盗聴器の類を仕掛ける事は不可能だ。
京子「(何より、まだ日が高い今の時間、宿直室に立ち寄る人間なんてほぼいない)」
京子「(例え、いたとしても、周囲十数メートルに木しかないこの状況で、山田さんの感覚から逃れる事は不可能だろう)」
京子「(内緒話に向いていると言ったけれど、確かにここなら神代側の人間に聞かれる事はなさそうだ)」
「では、こちらの座布団をどうぞ」
小蒔「何から何まですみません」ペコリ
咲「えっと…」
思った以上に盗聴とは無縁そうな部屋に、京子は胸を撫で下ろす。
その間に山田は押入れから座布団を取り出し、一人用のちゃぶ台の周りへと並べた。
ホストとして精一杯出迎えようとする彼に、小蒔はそっと頭を下げ、咲は気まずそうに俯く。
小蒔に対しても未だ思うところが多々ある彼女にとって、淡々と殺意を示した山田は恐ろしくて仕方がない相手だった。
「いえ、気にしないでください」
「それよりもお二人の荷物をこちらに渡して頂けますか?」
「このままでは傷んでしまいますので、お茶の準備ついでに冷蔵庫に入れておきます」
京子「えぇ。では、お願いします」
小蒔「はい」
咲「ほっ…」
買い物袋を渡す京子達の後ろで、咲は安堵をため息に浮かばせた。
ほんの僅かとは言え、苦手な相手が自分たちから離れてくれるのだから。
自業自得だとは分かっているものの、そのまま帰ってこないで欲しいと思ってしまう。
「私は所詮、第三者ですから、私を気にせず、先に話を進めておいてください」
京子「…じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいましょうか」
小蒔「そうですね。あんまり時間に余裕がある訳ではありませんし」
小蒔が気にしているのは、巴達の事だ。
あんまりのんびりしていては、買い物に出た自分たちを待っているであろう彼女達に要らぬ心配と迷惑を掛けてしまう。
だが、ここからでは電波の届かない屋敷へと連絡する事も出来ず、かと言って、咲の件を後回しにする事も出来ない。
ここで自分たちが出来るのは、極力、早く咲に納得して貰う事。
そう思った小蒔は、京子と共に座布団へと腰を下ろした。
それに追従するように咲もまた膝を曲げて ――
京子「さて、それでは何から話しましょうか」
咲「…私は話よりも先に、京子ちゃんじゃなくて、京ちゃんの顔が見たいな」
京子「…結構、メイクに時間が掛かるんですけれど」
咲「じゃあ、せめてカツラだけでも外してよ」
咲「正直、完璧な女装過ぎて違和感があるレベルなんだから」
京子「しょうがないですね」
未だ京子と手を繋いだままの咲は、京子の右隣りへ座った。
普段であれば、自分か春の定位置であるそこを抑えられる光景に、小蒔の嫉妬が強くなる。
それをまた一人抑えこむ彼女の前で、京子はそっと自身の髪に手を伸ばした。
そのまま慣れた手つきでカツラを外せば、咲の顔が感嘆とも驚きともつかないような表情を浮かべる。
咲「うわー…」
京太郎「なんだよ、うわーって」
咲「いや、なんていうか…カツラ外してもボーイッシュな女の子にしか見えないんだもん」
京太郎「まぁ、そうじゃなきゃ女子校になんざ通えないだろ」
咲「一つ聞きたいんだけど、京ちゃん改造とかされてないよね」
京太郎「改造?」
咲「おっぱい作られたり、男の人の…そ、その、アレ取られちゃったり…」
【須賀京子】としてではなく、【須賀京太郎】としての言葉。
それを口にする彼の姿に、しかし、咲は不安の色を払拭しきれなかった。
カツラを外し、普段の声に戻っても、その顔立ちは未だ美麗な女性のものなのだから。
もしかしたら何かしらの改造手術でも受けてしまっているのかもしれない。
そんな疑問と不安が咲の胸の中に浮かんでくる。
京太郎「流石にそこまでやられてたら首吊って死んでるわ」
咲「そ、そっか。良かった」
咲にとって京太郎はただの幼馴染ではない。
幼稚園の頃から自分を支えてきてくれた彼に、咲はずっと恋し続けているのだ。
そんな相手が、社会的にも肉体的にも同性になってしまったら、悪夢と言う言葉でも物足りない。
そう思う咲は、京太郎から帰ってくる否定の言葉に、内心、胸を撫で下ろした。
咲「…でも、どうしてそんな格好をしてるの?」
京太郎「まぁ、色々、あるんだよ」
咲「その色々と聞きたいんだけど」
京太郎「…言っとくけど、聞いたらマジで後戻りが出来なくなるぞ」
咲「後戻りするつもりなら、最初から鹿児島まで来てないよ」
京太郎を再び取り戻す。
ただ、それだけの為に、咲はインターハイからの数ヶ月を生きてきた。
京子の情報を集め、涙ながらに携帯の使い方を覚え、霧島神宮への道筋を頭へと叩きこみ。
それがようやく実を結んで、【須賀京子】ではない京太郎と出会えたのに、躊躇など覚えるはずがなかった。
咲「私、きっと京ちゃんが思ってるよりもずっと覚悟して来てるから」
京太郎「その割には山田さんにビビリまくってたけどな」
咲「あ、アレはしょうがないでしょ。不意打ちにも程があったし…」
咲「と言うか、あの人、何なの?」
咲「明らかに外国の人なのに、山田って名前だし、完全に日本文化に馴染んでるし…」
京太郎「一応、日本人の血は混じってるから、まったくの偽名じゃないらしいぞ」
咲「それほぼ偽名って言ってるようなものじゃないかな」
京太郎「咲の癖に良く気づいたな」
咲「私に勉強教わってた京ちゃんに言われたくないよ」ムスー
京太郎「はは。確かにな」
意図的に話の本筋から脱線させられている。
それは咲も気づいていた。
だが、それを指摘するよりも先に、彼女の口は勝手に動き、軽口を漏らしてしまう。
人見知りの咲にとって気兼ねなく、言葉をぶつけられる相手と言うのはとても貴重なのだから。
一年ぶりにその相手を得た彼女は、話の本筋よりも、京太郎との縁を確かめるような冗談を選んでしまう。
京太郎「まぁ、俺も良く知らないけど、山田さん、故郷で色々とあったらしくて」
京太郎「軍隊辞める時に本名名乗らないようにって言う誓約書まで書かされたんだってさ」
咲「どうして?」
京太郎「さぁ。そこまでは守秘義務もあるらしくて俺も聞いてないけど」
京太郎「でも、本名名乗れないレベルの有名人だったんじゃないかな?」
咲「実はランボーとか?」
京太郎「山田さんなら似たような事出来そうな気がするから怖いな…」
山田の知識や技術が、一体、どれほど多岐に渡っているのか。
それは日頃、彼から教えを受けている京太郎が一番、良く知っていた。
その上、尋常ならざるタフさまで兼ね備えた肉体は、映画の偶像にさえ負けはしない。
心からそう思う京太郎は、咲の冗談を笑って受け止める事が出来なかった。
咲「…で、京ちゃんの方はどうして本名が名乗れなくなっちゃったの?」
京太郎「そうだな…」
唐突に戻る話の本筋に、京太郎は小さく肩を落とした。
出来れば、このまま話がズレている事に気づかず、帰って欲しかったが、それは叶わないらしい。
幼馴染はその覚悟を示すように、話を本題へと戻したのだから。
これ以上、誤魔化そうとしても、ただの時間稼ぎにしかならないだろう。
京太郎「その辺はちょっとややこしいから、最初から話していくよ」
京太郎「色々と言いたい事もあるだろうけれど、とりあえず最後まで聞いて欲しい」
咲「うん。分かった」
このまま冗談で終わらせてしまいたかったのは咲も同じだ。
【須賀京太郎】と出会えなかったこの一年間は、彼女にとって無味乾燥と言っても良いものだったのだから。
世界から色が抜け落ちたその時間を埋めるためにも、旧交を暖めたい。
そんな気持ちに一時は負けてしまったものの、それでは何も解決しない事を彼女は良く分かっていた。
だからこそ、再び本筋へと踏み込んだ彼女は、幼馴染の言葉に、力強く頷いて。
京太郎「まぁ、そういう訳で、俺は女装して永水女子に通う事になったんだ」
咲「……」
それから語られる言葉は、咲にとって理解が出来ないものだった。
神代家が百年の栄光を享受する為。
ただ、それだけの理由で京太郎は友人も家族も過去も奪われてしまったのだから。
理不尽という言葉では物足りない話に、咲は思考が整理しきれない。
咲「…そんなの変だよ」
咲「神代の人たちがそんな事をする権利があるの?」
咲「存在するかも分からないような神様がお告げを下したからって…」
咲「京ちゃんの人生を滅茶苦茶にして、逆らえなくして…そんなの酷すぎるよ…」
それでも彼女の口から言葉が止まる事はなかった。
幼馴染へと降りかかった不幸は、咲の予想よりも遥かに重いものだったのだから。
怒りという言葉では表現しきれない複雑な感情は、思考よりも先に言葉になってしまう。
京太郎「そうだな。確かに酷い」
京太郎「だから、俺だって神代家の連中は恨んでるし、復讐だって決意してる」
咲「じゃあ、私と一緒に逃げよう?」
咲「それが神代の人たちにとって一番、辛い復讐だよ」
京太郎「さっきも言ったけど、それは無理だ」
咲「どうして…?」
京太郎「神代家にとって、俺はそれだけ重要な人物なんだ」
京太郎「下手に逃げたところですぐに見つかって連れ戻される」
京太郎「実際、一回、脱走騒ぎやらかして監視はかなり厳しくなってるしな」
だからこそ、咲は再び脱走への誘いを口にしてしまう。
小蒔の前である事も忘れて、差し伸べられるその手に京太郎は首を振って拒んだ。
以前であれば、まだ逃げられる余地があったかもしれない。
だが、今の京太郎は何処に行くのも監視役がつき纏い、一人になる事さえ出来なかった。
そんな自分が逃げ出したところで、恐らく一日も経たぬ間に追いつかれ、捕縛されてしまう。
京太郎「何より、俺が脱走なんてしてしまったら、周りの人に迷惑が掛かる」
咲「周りの人って神代の人達でしょ?」
咲「そんなの気にする必要ないよ…!」
京太郎「別に皆が皆、神代側って訳じゃない」
京太郎「山田さんだって、本来ならお前をどうにかした方が楽なのに、こうして見逃してくれてるし」
京太郎「小蒔さんだって、咲の事を助けようと、山田さんに頭を下げてくれたじゃないか」
咲「それは…そうだけど」
京太郎にとって、彼女たちの存在は簡単に投げ捨てられるようなものではなかった。
鹿児島での生活は、彼女たちのサポートがあって始めて成り立つものなのだから。
一年近い年月をずっと支えて貰っていたと自覚している京太郎は、何もかもを投げ捨てられるほど自棄になる事が出来ない。
京太郎「それに俺にはもう婚約者がいるんだ」
咲「…………え?」
何より、その心にはもう大きな楔が打ち込まれていた。
薄墨初美と言う婚約者の存在は、彼を神代へと縫いとめるのには十分過ぎる。
婚約者になってから既に幾度と無く傷つけてしまった初美を、これ以上、傷つけたくはない。
例え、今も恋心を引きずる幼馴染からの提案であっても、その心は変わらなかった。
咲「だ、誰?」
京太郎「去年の永水女子に薄墨初美って人がいただろ。その人だ」
咲「薄墨さん…って、あの和ちゃん以上の露出狂だった日焼けロリの人!?」
京太郎「その通りだけど、もうちょっとオブラートに包んだ言い方をしてやってくれ」
咲「だ、だって、そんなのおかしいよ」
咲「京ちゃんっておっぱい大きくて、家庭的で、母性的な女の人が好みだったんでしょ?」
咲「京ちゃんの好みと薄墨さんって完全に正反対じゃない」
京太郎「まぁ、そうなんだけどさ」
驚きを顔に浮かばせる幼馴染に、京太郎は気まずそうな声を返した。
咲の指摘は正しく、またその辺りの事情はとても複雑なものなのだから。
初美の名誉にも関わるであろう話を簡単にする訳にはいかない。
一体、どうやって彼女に説明すれば良いのだろうか。
そんな言葉を思考に浮かばせる京太郎の前で、咲は口を開いて。
咲「もしかしなくても、神代の人から強要されてるんじゃ…!?」
京太郎「いや、これは俺の意思だ」
咲「…嘘」
京太郎「本当だ。俺から言って、婚約者になって貰ったんだよ」
重ねて告げられるその言葉を、咲は信じる事が出来なかった。
京太郎が一体、どれほど女性の胸に情熱を注いでいたのかを彼女は良く知っているのだから。
時にはからかいの種にもされたそれを、彼が捨てられるとは到底、思えない。
間違いなく、何か理由があったはずだとそう思う。
京太郎「ともかく、色々とあったが、今の俺には目標も、婚約者も、大事な友人も出来た」
京太郎「始まりこそ滅茶苦茶だったが、今はこの生活も悪く無いと思ってる」
京太郎「咲が心配するような事は何もねぇよ」
小蒔「…京太郎君」
安心させるようなその言葉は、決して嘘ではない。
だが、真実だけが込められている訳でもないのだろう。
小蒔がそう思うのは、ほんの数カ月前に、彼の感情が爆発したところを目の当たりにしたからこそ。
京太郎がどれほどの嘆きと悲しみを内側に溜め込んでいたかをよく知る彼女にとって、それは強がり以外の何物でもなかった。
咲「嘘…」
京太郎「嘘じゃない」
咲「でも…! 京ちゃんは神代の人たちに人生を滅茶苦茶にされたんだよ!」
咲「そんな人たちに囲まれてるのに悪くないだなんて、そんなの嘘に決まってる…!」
咲「隣に神代さんがいるから気を遣って、そんな事を…!」
京太郎「咲」
咲「っ…」
だが、小蒔は二人の会話に口を挟む事が出来ない。
咲がその声音を荒々しいものにしていく間も。
京太郎が諌めるように咲の名前を呼んだ時も。
二人から少し離れた位置でぽつんと座った小蒔は、咲の言葉に胸を傷ませていた。
京太郎「全部、本当の事だ」
京太郎「そうじゃなきゃ、俺はこんな風に小蒔さんと一緒にいられないし」
京太郎「初美さんと婚約者になる事もなかった」
京太郎「皆が俺にとって一番、つらい時期を支えて、サポートしてくれたからこそ」
京太郎「俺はもう長野での事を吹っ切って、新しい人生を歩んでいるんだ」
咲「……そんな」
新しい人生。
その言葉は胸を引き裂くような痛みを咲に与えた。
彼女にとっての『人生』とは、常に幼馴染と共にあったものなのだから。
だが、それは幼馴染の中で知らぬ間に終わり、自分とはまた別の『人生』を歩み始めている。
他ならぬ京太郎から与えられたその言葉に、咲は音を立てて足元が崩れ落ちるような感覚を覚えた。
京太郎「だから、もう長野に帰って、俺の事なんか忘れた方が良い」
京太郎「往復に使う分の交通費くらいは俺が出すからさ」
咲「そんなの…出来るはずないよ…」
京太郎「…咲」
咲「だって…だって、私、幼馴染なんだよ?」
咲「ずっと…本当に物心ついてからずっと京ちゃんと一緒で…」
それは彼女にとって、無理難題と言っても良いものだった。
お互いに離れがたいほど強く結びついた幼馴染は、咲のこれまでの人生とほぼ同じなのだから。
京太郎を忘れるという事は過去を全て投げ捨ててしまうに等しい。
咲「わ、私…本当に頑張ったんだよ」
咲「京ちゃんとまた元通りになれるようにって…」
咲「これまで貯めた貯金を崩して、探偵さんを雇って…」
咲「自分でも伝手を頼って、京ちゃんの事を調べて…」
咲「携帯の使い方も和ちゃんに教えてもらって…」
咲「迷子にならないように方向音痴を治せるよう頑張って、それで…」
咲「それでようやく…ここまで来れたのに…」ポロ
京太郎「っ」
何より、彼女自身、それを望んではいなかった。
咲の望みは京太郎を、自分の半身を取り戻す事だけ。
交通費や探偵の調査費を捻出する為、趣味であった読書すら辞めた彼女にとって、その答えは残酷過ぎる。
グッと強張った目尻に大粒の涙が浮かんでしまうほどに。
京太郎「…でも、しょうがないだろ。俺と咲は…もう生きてる世界が違うんだ」
咲「そんなの…勝手だよ。勝手過ぎるよ…!」
京太郎「咲、聞き分けてくれ」
京太郎「俺達はもう一緒にいない方が良いんだ」
京太郎「一緒に居ても、お前に迷惑を掛けるだけ」
京太郎「俺をそんな格好悪い男にさせないでくれ」
咲「格好悪くても良いよ…!」
無論、咲も分かっている。
ここで強引に京太郎を連れ帰ったところで、誰も幸せにはなれない。
どれほど上手くいったとしても、親や友人たちに不幸の輪を広げるだけだ。
だが、そう理解しているのは咲の思考 ―― それも冷静さを残すごく一部のみ。
他の彼女は残酷なその答えを何とか撤回させようと涙を流しながら、言葉をぶつける。
咲「私にとって、京ちゃんは何時だって最高の幼馴染だったもん!」
咲「ちょっぴりスケベで、お馬鹿で、デリカシーなくて、鈍感だったけれど…!」
咲「でも、それ以上に優しくて、格好良くて、何時だって安心させてくれて、一緒にいると心地よくて…!」
咲「だから…だから、私は…!」
咲「京ちゃんの事、好きになったんだから!!」
京太郎「……え?」
予想だにしなかった幼馴染の告白。
それを聞いた瞬間、京太郎の頭の中は真っ白になってしまった。
今も彼の中に残る幼馴染への淡い恋心は、片思いだからこそ抑えられるものだったのだから。
ここで彼女の気持ちを聞いてしまったら、ついついその蓋が空いてしまいそうになる。
咲「な、何…!? 私が京ちゃんの事、好きじゃ悪いの?」
京太郎「い、いや、悪いなんて言ってないけどさ」
咲「じゃ、じゃあ、何なの?」
咲「い、言っとくけど、私、コミュ障で、友達少なくて、ポンコツなんだよ!」
咲「イケメンで運動バッチリで、意地悪だけど優しい幼馴染なんて好きにならないはずないもん!」
咲「本当は…本当はずっとずっと京ちゃんの事、好きだったんだから…!!」
その告白は咲にとっても予想外のものだった。
夢見がちな文学少女である彼女にとって、告白とはもっとロマンチックで素晴らしいものでなければいけなかったのだから。
少なくとも、こんな風に勢い任せにぶち撒けて良いようなものではない。
しかし、今の彼女は冷静さを失っている上に、京太郎との縁が切れてしまう寸前なのだ。
ここで何とかしなければ、自分は終わりだと勢い任せに言葉を続ける。
咲「だから、一緒に長野に帰ろうよ…」
咲「きっと…きっとなんとかなるよ」
咲「ううん。私が何とかして見せる」
咲「京ちゃんの事、一生、護ってみせるから…だから…私と一緒に…居てよ…」グス
咲「じゃないと…私、ダメなの…」
咲「京ちゃんが居ないと…生きているのも虚しいだけで…」
咲「毎日、京ちゃんがいた頃を夢見て、泣いて…」
咲「辛くて、苦しくて…後悔ばっかりで…京ちゃんの言うポンコツにもなれないんだよ…」
京太郎「…」
言葉と同調するように咲の涙も溢れ続ける。
頬に涙の跡を残すようなその勢いに、京太郎はなんと返せば良いのか分からない。
未だ彼は幼馴染からの告白から立ち直りきってはいないのだから。
頭の中は未だ真っ白で、泣き続ける幼馴染に言うべき言葉すら見つからなかった。
京太郎「(…でも、何とかしなきゃいけない)」
京太郎「(だが、何とかってなんだ?)」
京太郎「(その場限りの優しい嘘で、咲を泣きやませる事か?)」
京太郎「(それとも泣くほど俺の事を想ってくれているコイツを完膚なきまでに突き放す事なのか?)」
そのどちらも京太郎にとっては選びがたいものだった。
彼もまた幼馴染の少女の事を深く、そして強く想っているのだから。
どっちを選んだところで、咲は傷ついてしまう。
胸にのしかかるようなその言葉は、京太郎にどちらかを選ぶ事さえ躊躇わせるものだった。
京太郎「そう、か。そうだったのか」
京太郎「ありがとう。そう言って貰えると…嬉しい」
咲「京ちゃん…っ」
京太郎「……でも、俺は…俺は、咲の事をそんな風に思った事はない」
京太郎「俺にとってお前は…ただの幼馴染だ」
咲「っ!」
それでも動けと念じる意識に、身体がゆっくりと従い始める。
だが、その動きはぎこちなく、漏れだす言葉も小さいものだった。
時折、途切れながらのそれは、当然、彼の本心ではない。
本当ならば、そんな事を言いたくないのだと、幼馴染の咲にはすぐに分かった。
京太郎「だから、俺はお前の気持ちを受け止められない」
京太郎「一緒にも…居てやる事は出来ない」
咲「京ちゃん…!」
京太郎「…何度も言ってるだろ」
京太郎「俺とお前の道はもう別れたんだ」
京太郎「これ以上、ここに居られても…迷惑以外の何物でもない」
京太郎「早く帰ってくれ」
咲「あ…ぅ…」
しかし、それでも突き放すような言葉に胸がズキズキと痛む。
例え、本心とは違うものであっても、自分が幼馴染にフラレてしまったのは事実なのだから。
その上、迷惑とまで言われてしまったら、一体、どうして良いのか分からなくなる。
泣けば良いのか、それとも縋れば良いのか。
その答えさえ見失った咲の前で、京太郎はゆっくりと手を離そうとして ――
小蒔「……ダメです」
京太郎「…小蒔さん?」
小蒔「こんなのは…こんなのはダメです」
小蒔「こんな二人が不幸になるような別れ方…私は認めません」
それに否を唱えたのは、今まで沈黙を守り続けた小蒔だった。
無論、このまま二人が別れた方が、彼女にとっては都合が良い。
宮永咲と言う少女が、京太郎にとってどれほど特別な存在なのかを小蒔は今、嫌というほど目の当たりにしていたのだから。
そんな少女が、このまま放っておけば、自動的に脱落してくれる。
後ろ暗いその考えに、心惹かれてしまう自分も小蒔の中にいた。
小蒔「…京太郎君、本当の気持ちを言って下さい」
京太郎「本当の気持ちも何も俺は…」
小蒔「嘘です。…だって、私は知ってるんですから」
小蒔「京太郎君も宮永さんの事が、大好きだって事を」
京太郎「い、一体、何を根拠に…」
小蒔「…私もまた京太郎君の事が好きだからです」
京太郎「……え?」
だが、それは決して京太郎の為にはならない。
ここで二人の道が本当に分かたれてしまったら、彼は深く傷ついてしまうのだから。
無論、皆と一緒ならば、その傷も癒せる自信はあるが、それは小蒔の中で京太郎の傷を見過ごして良い理由にはならない。
これまで神代に翻弄され、傷ついてきた彼を慈しみ、護る事が自分の使命。
そう心に決めた彼女は自分の気持ちをハッキリとした言葉に変える。
小蒔「あの夏の日からずっと貴方の事を考えていました」
小蒔「どうすれば貴方に償えるのか、どうすれば貴方の失ったものを補う事が出来るのか」
小蒔「…その気持ちはあの『お祭り』の時に…私の為、お父様達にぶつかってくれた時に」
小蒔「私の中で恋に変わりました」
京太郎「小蒔…さん」
それは本来ならば、彼に伝えてはいけない事だ。
少なくとも、自身の卒業式まで秘さなければいけない事だと彼女も分かっている。
しかし、だからと言って、ここで気持ちを誤魔化すなどという卑怯な手段を小蒔は選べない。
咲がその想いを口にし、そして自身が京太郎の秘密を暴露した今、そこから逃げてはいけないと彼女は思う。
小蒔「…それから私はずっと京太郎君の側で、京太郎君の事を見てきました」
小蒔「それだって…多分、同い年の春ちゃんには及ばないでしょうけれど」
小蒔「でも、それでも…京太郎君の気持ちは分かります」
小蒔「京太郎君の中で、どれほど宮永さんが特別なのか…私には分かるんです」
重ねられていくその言葉は、咲のものとは違い、とても静かで暖かなものだった。
勢い任せではなく、自分の意志で想いを伝えるそれは真実味を強く感じさせる。
そんな小蒔に、咲も、そして京太郎も口を挟む事が出来ない。
場の主導権は一転して第三者であったはずの小蒔が握っていた。
小蒔「…だから、私はここで二人にお別れして欲しくありません」
小蒔「そんな事になったら、きっと京太郎君は一生、後悔しちゃいます」
小蒔「私は…これ以上、京太郎君に苦しい想いをさせてあげたくありません」
小蒔「大好きな京太郎君にはずっとずっと幸せで居て欲しいんです」
咲「…神代…さん」
ただただ、京太郎の事を想って、恋のライバルにも塩を送る小蒔の姿に、咲の胸が傷んだ。
それは最早、恋ではなく、愛と呼ぶに足る想いの強さだったのだから。
もし、自分が彼女と同じ立場なら、同じように言えるだろうか。
傷心の想い人を慰めて恋仲に至るという欲望をねじ伏せて、ただただ、京太郎の為に行動出来るだろうか。
心に浮かぶ比較の言葉に、咲は応と即答する事が出来なかった。
京太郎「…例え、そうだとしても…どうにもならないじゃないですか」
京太郎「俺は完全に身柄を神代家に抑えられてるんですよ」
京太郎「咲と付き合うどころか、側にいる事すら出来ません」
小蒔の告白に、京太郎の思考は混乱を覚えていた。
幼馴染からまさかの告白をされたと思ったら、それに対抗するように小蒔からも想いを告げられてしまったのだから。
スタイルは真逆ながらも、共に庇護欲を唆る美少女達の告白に、なんと応えれば良いのか京太郎は分からない。
だからこそ、代わりに彼が口にしたのは、小蒔の想いではなく、願いを否定するもので。
小蒔「方法はあります」
京太郎「え?」
小蒔「京太郎君は神代家の頭首になる人ですから」
小蒔「六女仙の皆は元より、宮永さんをお妾さんとして迎え入れる事だって不可能じゃありません」
咲「…………え?」
その言葉を、小蒔はあっさりとねじ伏せた。
相変わらず、静かで穏やかなその声には嘘の色が見つけられない。
少なくとも、小蒔は本気で言っているのだと言う事が、驚きに固まる二人には伝わってきていた。
京太郎「い、いや、ちょっと待って下さい」
京太郎「俺が神代家の頭首になるってどういう事ですか?」
京太郎「つーか、神代家の頭首って、確か神代の巫女と結婚する人がなるんじゃ…」
小蒔「はい。だから、京太郎君には私と…そ、その、結婚して貰います」モジ
京太郎「でも、俺、初美さんって言う婚約者が…」
小蒔「初美ちゃんとも勿論、結婚してもらいます」
小蒔「所謂、重婚という奴ですね」
京太郎「え…えー…」
気恥ずかしそうに身体を揺らす小蒔の言葉を、京太郎はすぐさま咀嚼する事が出来ない。
勿論、神代と言う環境がどれほど特異な場所であるかは、これまでの生活で嫌と言うほど思い知っている。
だが、それと同時に京太郎は自身の立場がどれほど弱々しいものであるかも、また良く理解しているのだ。
後ろ盾と呼べるものが殆どない自分が、どうして神代の中でもトップクラスに重要な小蒔と結婚する事が出来るのか。
神代の内部事情を知っている京太郎の胸には、そんな疑問が浮かび上がってくる。
そんな疑問を彼が言葉にするよりも先に、咲が口を開いて。
咲「…もしかして、最初からそのつもりで京ちゃんを…?」
小蒔「はい。京太郎君は元々、私の婚約者でした」
小蒔「尤も、それを知っているのはごく僅かな人たちだけですけれど」
京太郎「って事は皆はこの事を知っているんですか?」
小蒔「はい。霞ちゃん達は、京太郎君が神代家の頭首に相応しいか否かを判断する役割がありましたから」
京太郎「じゃあ、もしかして小蒔さんの卒業式って…」
小蒔「私の卒業後は京太郎君が神代家の頭首に相応しい人かどうか多数決で決める事になっていました」
京太郎「あー…なるほど」
小蒔の言葉に、京太郎の中で一本の線が引かれていく。
これまでバラバラだった点が規則正しく結びついていく感覚は、決して気持ちの悪いものではなかった。
それでも京太郎がそっと額に指を当ててしまうのは、導き出された答えが、あまりにも荒唐無稽なものだからこそ。
京太郎「(これまで修羅場らしい修羅場が見えなかったのも不思議だったけれど…)」
京太郎「(小蒔さんを正妻として、全員、妾になれる算段がついていたからなのか…)」
京太郎「(元々、霞さん達はお互いを家族と呼び合うほど仲が良かった訳だし)」
京太郎「(全員が俺と結ばれるなら、そりゃお互いの排除よりは共闘方向で動くよなぁ…)」
一夫一妻を是とする日本社会で育った京太郎にとって、それは認めたくはないものだった。
だが、数えきれないほど積み重なった状況証拠が、脳裏に浮かぶその言葉に肯定している。
認めたくない感情と、認めろと繰り返す思考が京太郎の中で乖離し、軽いめまいを呼び起こした。
小蒔「…あまり皆を悪く思わないであげてください」
小蒔「皆も本当は京太郎君を見極めるなんて仕事をしたくなかったでしょうし、本当の事をずっと言いたかったと思うんです」
小蒔「でも、六女仙による次代頭首の見極めは、ずっと昔からされていた事で…」
小蒔「この事を京太郎君が知ってしまったら、頭首になる資格を失うって言う罰則までありましたから…」
京太郎「まぁ、抜き打ちテストみたいなもんじゃないと人の本質なんてものはみえないですよね」
京太郎「驚きこそしましたけれど、嫌いになったりはしていませんよ」
小蒔「良かった…」ホッ
申し訳無さそうに俯く小蒔を責めるつもりはなかった。
彼女の語る『罰則』は仲良くなればなるほどに、彼女たちの心を縛り付けるものなのだから。
残念だという気持ちはあるものの、それは彼女たちへの失望には繋がらなかった。
咲「でも、それならどうして今…」
小蒔「私は霞ちゃん達みたいに頭が良くありません」
小蒔「大事な事を隠したまま、二人のことを説得できる自信がありませんでした」
小蒔「それに山田さんはここなら内緒話も出来るって言ってくれていましたし」
小蒔「今ならば、ちょっぴり悪い子になっちゃっても、お父様達には分からないんじゃないかなって」テヘ
咲「だ、だけど、もし、知られてしまったら…」
小蒔「その時は皆と一緒に神代の手が届かないところへ駆け落ちするのも良いですね」
京太郎「駆け落ちかー…」
代わりに京太郎が感じるのはプレッシャーだった。
小蒔の言葉は明るいものではあるものの、決して冗談の類ではない。
ハーレム前提で動くほどに自身を想ってくれている彼女たちにとって、最早、家とは楔にもならないものなのだから。
もし、自分たちが引き裂かれようものなら、忽ち全員で結託し、駆け落ちへの準備を進めるだろう。
京太郎「(駆け落ちそのものは多分、不可能って訳じゃない)」
京太郎「(母さんへの連絡先は今も大事に残しているし、母さんのコネで海外への渡航手段を用意して貰えるかもしれない)」
京太郎「(親父から受け取った金もあるし、無駄遣いしなければ、海外でも皆を養う事は可能なはずだ)」
京太郎「(何年かは逃亡生活になるだろうけれど、その後は腰を据えて皆とゆっくり出来るだろう)」
そんな彼女たちを見捨てるという選択肢は、京太郎の中にはなかった。
彼は小蒔達の事を、『家族』同然に思っているのだから。
離れがたいとそう思っているのは京太郎もまた同じ。
だからこそ、京太郎は手元に残った札を見据えながら、じっと思考を深めて。
京太郎「(ただ、それはあくまでも最後の手段だ)」
京太郎「(どれだけ歪んだ環境とは言え、ここは彼女たちの故郷なんだし…)」
京太郎「(何より、逃亡生活は皆への強いストレスになる)」
京太郎「(駆け落ちなんて手段に至らない方が良いだろう)」
京太郎「(だから…)」
京太郎「とりあえずそれは最悪の場合という事で脇においておきましょう」
京太郎「それよりも…」
小蒔「宮永さんをどうすれば娶る事が出来るのか、ですね」クス
咲「あぅ」カァァ
にこやかに笑う小蒔の言葉に、咲の顔は赤く染まった。
その言葉は、彼女に京太郎との結婚を強く意識させるものだったのだから。
今までは驚きと困惑に流されていたが、もしかしたら、自分は今、凄い話に巻き込まれているのではないだろうか。
今更ながら、思考に浮かび上がったその言葉は、咲の身体をモジモジと揺らした。
京太郎「ま、まぁ…その、それを含めた今後の方策というか…」
小蒔「そんなに照れる必要はないと思いますよ」
小蒔「京太郎君の気持ちは私も宮永さんも良く分かっているんですから」
京太郎「…それでもハッキリと言葉にするのは恥ずかしいんですよ」
咲「…私はちゃんと言ったのに」
京太郎「うぐ」
無論、小蒔の言う通り、咲も京太郎の気持ちを良く理解している。
しかし、幼馴染の様子から感じ取る事と、言葉にされるのはまた別なのだ。
もう今さらなのだから、ハッキリと声に出して欲しい。
そう訴えるような咲の呟きは、京太郎の耳にしっかりと届いた。
京太郎「……あー…そうだな」
京太郎「確かに言われっぱなしで、はい、そのままなんて男らしくないよな」
京太郎「でも、流石に何度も繰り返すのは恥ずかしいから…ちゃんと聞いていてくれよ」
咲「…うん」
京太郎「んじゃ………その…なんだ」
京太郎「……俺も好きだよ、咲」
京太郎「ずっとずっと好きだった」
咲「うんっ」ダキ
京太郎「っと」
自身の気持ちに気づいてから、一年越しの告白。
それに返ってきたのは、幼馴染からの熱い抱擁だった。
手を繋いでいるだけではもう我慢出来ないと言わんばかりの激しいスキンシップに、京太郎は思わず驚きの声をあげる。
その間にも京太郎のぬくもりを求めて身体を密着させる咲に、彼もまたおずおずと抱きしめ返して。
小蒔「…良かったですね、二人とも」
京太郎「小蒔さん、俺は…」
小蒔「何も言わないで下さい。京太郎君は何も悪く無いんですから」
小蒔「悪いのは二人の運命を狂わせ、それを忘れて貴方に恋してしまった私達の方」
小蒔「元々、両思いだった二人が結ばれる事を、何ら後ろ暗く思う必要はありません」
そんな二人の様子を見ながら、小蒔は嬉しそうに微笑む。
しかし、それはさっきのものとは違い、何処か無理を感じさせるものだった。
どれほど純真と言っても、小蒔もまた一人の女の子なのだから。
好いた男が、自分以外の女性と想い通わせているところを見て、嫉妬しないはずがない。
小蒔「まぁ、それはそれとして、私達もしっかり娶ってもらいますから」
咲「…だ、ダメ」ギュ
京太郎「咲…」
咲「京ちゃんは私のだもん」
咲「私の旦那さんになるんだもん…」
咲「幾ら神代さんでもあげない…」
しかし、それでも祝福しようとする小蒔に、咲は頑なな声を返した。
その声に警戒の色を強く浮かばせるのは、彼女が魅力的な女性だからこそ。
これほどまでに強く京太郎の事を想っている小蒔が側にいたら、ようやく手に入れた幼馴染の心を奪われかねない。
怯えにも似た気持ちを、咲はそのまま言葉にした。
咲「それに…京ちゃんは私の事が好きなんです」
咲「それなのに神代さんと結婚するなんて、そんなの間違ってます…!」
何より、大義名分は自分にある。
京太郎の心は今、自分が手に入れたのだから。
根が良い子な小蒔に、京太郎の気持ちと言う錦の御旗を見せれば強くは言えない。
痛む良心にそう言い聞かせながら、咲は威嚇するように小蒔のことを睨めつけた。
京太郎「(一夫一妻が決められて、自由恋愛が謳われる日本社会じゃ咲の方が正しい)」
京太郎「(少なくとも、頭首になった男が何人もの美女を侍らせて生活するよりもずっとずっと健全だろう)」
京太郎「(…でも)」
京太郎の脳裏に浮かぶのは、自分に拒まれてしまった彼女たちがどうなるかだった。
次世代を残す事を義務付けられている彼女たちが、一生、京太郎に操を立てて生活する事は出来ない。
その優秀な血を残す為、誰かとの結婚を強要されるだろう。
つい一時間ほど前にも辿り着いたその言葉は、京太郎にとって耐え難いものだった。
京太郎「(…結局のところ、認めるか認めないかなんだよな)」
京太郎「(俺の中にあるこの嫌な感じが、ただの独占欲なのか)」
京太郎「(或いはその先にある…咲と同じ気持ちなのか)」
京太郎「(答えを出すには…今しかないんだろう)」
まだまだ期限に余裕があると思っていた宿題が、一気に目の前に迫ったような状況。
何処か理不尽感さえある急展開に、しかし、京太郎は困惑に浸ったりしなかった。
その『宿題』はそもそもがずっと先延ばしになり続けていたものなのだから。
既に『家族』全員から告白されている状態で、答えを出せないなどと情けない事を言いたくない。
京太郎「(…ホント、色々あったもんな)」
京太郎「(まるでジェットコースターみたいにグルングルン振り回されて…)」
京太郎「(落ち込んだり、頭を抱えたりしたくなった事は数えきれないほどあったけれど)」
京太郎「(でも、嫌だって思う事は一度もなかった)」
そんな京太郎に、彼女たちとのこれまでが浮かび上がる。
毎日、お互いに支え合うその生活は、大変だったが、とても楽しいものだった。
出来れば、そんな日々を一生、続けていきたい。
彼女たちと『家族』同然ではなく、本当の『家族』になりたい。
胸の底から湧き上がったその欲求は、京太郎の腹を決めさせた。
京太郎「その、咲」
咲「…何?」
京太郎「…悪い。俺、多分、小蒔さん達の事も好きだわ」
咲「はいぃ!?」
ポツリと漏らされた幼馴染の言葉を、咲は最初、信じる事が出来なかった。
何せ、彼女はつい先程、京太郎に応えて貰ったばかりなのだから。
万感の想いに浸っていた咲にとって、それは寝耳に水という言葉でも足りない。
天地がひっくり返るような驚きと台無し感に溢れるものだった。
咲「こ、告白して一分も経たない内に浮気宣言とか鬼畜過ぎるよ、京ちゃん!!」
京太郎「い、いや、だってさ…しょうがないじゃん」
京太郎「こんなに可愛くて健気な小蒔さんに好きとか言われたら、そりゃコロっと行くわ」
京太郎「ここでコロっといかない奴なんてホモに決まってるって」
咲「そこで開き直るの!?」
京太郎「開き直るしか無いだろ。俺だって自分がどれだけ最低な事言ってるのか理解してるんだから」
咲は、この一年が京太郎にどれほどの影響を与えていたかを知らなかった。
自身の過去までも奪われた彼にとって、彼女たちがどれほど大きな存在なのかを見誤ってしまったのである。
結果、京太郎の気持ちを御旗に、小蒔を排除しようとした咲は、思いっきりハシゴを外されてしまう。
京太郎「でも、この一年、俺も色々とあってさ」
京太郎「俺の事を支えようとしてくれていた小蒔さん達の事を…ただ大事に想うだけじゃ済まなくなってるんだ」
京太郎「俺に好意をアピールしてくれる彼女たちを…俺は他の男に渡したくない」
京太郎「独占欲めいたものを感じ始めているんだ」
小蒔「ほ、本当ですか…?」
京太郎「流石にこの状況で、こんな最低な嘘吐きませんよ」
京太郎「まだハッキリと形になるような好きではありませんけれど…」
京太郎「俺にとって、小蒔さん達は紛れも無い『特別』です」
小蒔「あ…」ポロ
京太郎の言葉は、小蒔にとって光と言っても良いものだった。
彼と一緒に居る最中にも消え去る事がなかった自責の感情。
心の奥に染み付き、二度と取れる事はないだろうと思っていた陰りを拭い去ってくれるものだったのだから。
ようやく本当の意味で自分を許せるようになった彼女の胸に歓喜の感情が湧き上がる。
あっという間に小蒔を満たしたそれは、そのまま涙となって目尻から溢れ出した。
京太郎「小蒔さん」
小蒔「…い、良いんですか?」
京太郎「泣いてる女の子を放っておけませんよ」
京太郎「ましてや、俺にとって特別な女の子ならば尚の事」
小蒔「…っ! 京太郎君…っ」ダキッ
そんな小蒔を京太郎が放っておけるはずがない。
右手で咲の事を抱きしめながら、左手で小蒔の事を誘う。
それに彼女も最初は遠慮していたものの、『特別』とまで言われると我慢出来ない。
ついつい衝動のまま京太郎の胸へと飛び込み、その逞しい胸板に顔を埋めてしまう。
咲「うー…」
京太郎「悪いな、咲。お前の幼馴染はこんな浮気性な男なんだよ」
咲「本当だよ…こんなのってないよ…」
咲「折角の告白とか全部台無し…」
咲「多分、今の私は世界で一番、不幸な女の子だと思うな」ハァ
京太郎「そっか」
それに不満そうな声をあげるものの、咲は京太郎の身体から離れようとしなかった。
寧ろ、そのため息に落胆の色を込めながらも、その腕に強い力を込めている。
まるで小蒔に対抗するように密着しようとするその身体は、しかし、悲しいほどに平坦だった。
どれほど身体を押し付けても胸の柔らかさが感じさせられない彼女は、そっと目を逸らしながら口を開いて。
咲「…だから、ちゃんと幸せにしてくれないと許さないから」
咲「勿論、私だけじゃなくて神代さん達もだよ?」
咲「告白してすぐの女の子を前にして、ここまで言ったんだから」
咲「ちゃんと皆みーんな、幸せにしてくれないと」
小蒔「…宮永さん」
無論、咲も出来れば、そんな事を口にしたくはない。
彼女にとって京太郎は自身の半身と言っても良いものなのだから。
どうして自分と両思いだったはずの幼馴染を分け合わなければいけないのか。
そんな言葉が咲の中から消える事はなかった。
咲「…一応、私だって京ちゃんの事独り占めするのがどれだけワガママなのかって事くらい分かってます」
咲「本当はそうしたいけれど、それが出来るような状況じゃないって事も」
咲「だから…本当は嫌だけど、すっごい腹が立つし、納得してないですけれど…」
咲「…でも、それ以上に、私は京ちゃんの事が好きだから」
咲「京ちゃんと一緒にいられるなら、きっと私はそれだけで幸せだから」
咲「私は妾さんの一人で我慢します」
それでも小蒔を正妻と認めるのは、彼女も理屈では分かっているからだ。
京太郎は彼女たちの事を捨てられず、捨てられたところで幸せにはなれない。
一生、見捨てた小蒔たちの事を引きずり、後悔し続けるだろう。
それを理解しているのに、独占したいとワガママを言い続ける訳にはいかない。
そんな事をしてしまえば、ただ見苦しいだけではなく、京太郎を想う一人の女性として小蒔に負けてしまうのだから。
咲「…こんなに優しくて、心の広い幼馴染がいる事を京ちゃんは感謝するべきだと思うな」
京太郎「あぁ。本気で感謝してるよ」
京太郎「ありがとうな、咲」ナデナデ
咲「ん…♪」
小蒔「あ…」
一年ぶりに幼馴染から撫でられる感覚は、とても心地良いものだった。
その髪の一つ一つまで愛撫されるようなその快感に、思わず声が漏れでてしまう。
そんな咲の姿に小蒔の口から羨ましそうな声が溢れて。
京太郎「勿論、小蒔さんにも感謝していますよ」
京太郎「ここに小蒔さんがいてくれなかったら、咲の事を説得出来なかったと思います」
京太郎「本当にありがとうございます」
小蒔「んふぅ…♪」
瞬間、京太郎は小蒔にもお礼を告げながら、彼女の髪を優しく撫でる。
ほぼ毎日、途絶える事なく繰り返されるその愛撫は、小蒔の中で色褪せるものではなかった。
寧ろ、恋い焦がれる相手から撫でられる感覚は、想いを通わせた事もあってより強くなっている。
利き手とは違うが故に、何時もよりもぎこちなくなっている撫で方すらまったく気にならないくらいに。
咲「…京ちゃん、撫で方変わった?」
京太郎「そうかな?」
咲「うん。昔よりも女の子慣れしてる感じになった」
咲「きっと私以外の女の子にもこうやってナデナデしてきたんだね…」
咲「やらしー…」
京太郎「ま、待て。誤解…」
小蒔「確かに京太郎君は皆を毎日、ナデナデしてますね」
咲「やっぱり」ジト
京太郎「…」メソラシ
ジト目を送る幼馴染を、京太郎は直視する事が出来なかった。
自分の撫で方が変わった自覚など彼にはまったくなかったのだから。
知らぬ間に小蒔達に染め上げられてしまった自分に、申し訳無さを感じてしまう。
そんな京太郎に険しい視線を送り続ける咲は、数秒後、クスリと笑って。
咲「…でも、良かった」
京太郎「何が?」
咲「京ちゃんが脅されたり洗脳されたりしているようだったら、無理やり連れて行くつもりだったから」
咲「そんな血生臭い事にならなくてよかったなって」
京太郎「お前、何するつもりだったんだよ…」
咲「私だって、なんの準備もせずに敵の本拠地に乗り込むほどポンコツじゃないよ」
咲「護身用のアレコレとかちょっぴり危険なソレとか準備して、いざって時は殺してでもって…」
京太郎「…護身用の奴以外は後で没収な」
咲「えー」
京太郎「えーじゃねぇよ。そんなの持ってたら危ないだろ。お前が」
物騒な事をさらりと漏らす咲に、京太郎は呆れるようにして返す。
彼にとって、宮永咲と言う少女は何時までもポンコツなのだ。
人様を傷つけるところよりも、転んで自分を傷つけてしまうところを容易く想像出来てしまう。
一人で霧島神宮まで来れたとは言え、安心して凶器の類を預けられるはずがない。
咲「もう京ちゃんは心配しすぎなんだから」デレ
京太郎「十数年と振り回され続けたら、心配性にもなるっての」
咲「それだけ?」
京太郎「……まぁ、ソレ以外にも理由がない訳じゃないけどさ」
咲「んふー♪」
そんな京太郎に咲はデレデレとだらしのない顔を見せる。
彼女が彼女らしく ―― ポンコツの宮永咲として過ごす上で、幼馴染の心配は必須と呼べるものなのだから。
敵の本拠地へと乗り込み、京太郎を取り戻そうと気を張っていた心が、少しずつ融かされていくのを感じる。
それに満足気な声を漏らした咲はスリスリと京太郎の胸元に顔をすり寄せた。
「そろそろ宜しいですかな」ススス
京太郎「あ、山田さん」
咲「えっと、もしかして…」
「空気を読んで外で待機していました」
小蒔「はぅあ…!?」カァ
直後、襖を開けて入ってきた山田は、3つの湯のみが乗った盆を手に持っていた。
だが、そこから立ち上る湯気は既になく、かなりの時間、放置されていたのが分かる。
それに裏付ける山田の言葉に、小蒔の顔が赤く染まった。
まったく山田の存在を意識していなかった彼女は、自分の告白を聞かれてしまった事に気恥ずかしさを覚えてしまう。
「ちなみに自分は何も聞いてはいません」
小蒔「ほ、本当ですか?」
「はい。職務上、ボディガードは依頼主の踏み込んだ事情や話を聞いてしまう事もままありますから」
「何も聞かない、知らないのもまたボディガードとして必要なスキルです」
小蒔「良かった…」ホッ
そんな小蒔を安心させるような山田の言葉には、嘘が混じっている。
時に鋭く、時に愚鈍になるのはボディガードとして必要なスキルではあるが、今回の彼は愚鈍どころか鋭く室内の様子を探っていた。
京太郎の幼馴染を名乗る少女は、ずっとその瞳に危なげなものを宿していたのだから。
放っておけば刃傷沙汰にも発展するかもしれない彼女を、彼らの側に置いて安心出来るはずがない。
護衛対象として以上に彼は京太郎達の事を大切に思っていた。
「それで話は纏まったのですか?」
京太郎「えぇ。大体は」
京太郎「本当にありがとうございます」ペコ
「いえ、丸く収まったのなら、何よりですよ」
だからこそ、ボディガードとして以上に尽くした彼に、京太郎は頭を下げる。
山田がこの場所へと案内してくれなければ、【須賀京太郎】として咲に向き合う事も出来なかったのだから。
そうなれば、咲は決して納得しなかっただろうし、最悪の結末だってあり得たかもしれない。
そう思うと山田に下げた頭が簡単に上がらなかった。
「しかし、こうして久方ぶりに会えた訳ですし、色々と積もる話もあるでしょう」
「お邪魔虫の私はまた外で待機させて貰います」
京太郎「気を遣わせてごめんなさい」
「なに、これもボディガードとしての勤めですから」
「それではごゆっくり」
そんな京太郎の前に、山田は長居しなかった。
三人の前に冷めかけた湯のみを置いた彼は、そそくさと襖を開けて出て行く。
その背に再び京太郎と小蒔が頭を下げるのを見た咲は、自身もぎこちなく会釈のような仕草を見せた。
京太郎「と、山田さんは言ってくれているけれど、あんまりゆっくりし過ぎると皆に心配を掛けるしな」
咲「えー…。私、もっともっと京ちゃんと話がしたいのに…」
京太郎「それは俺も同じだよ。だけど…」
京太郎が気にしているのは、霞達一部の『家族』が『外』の人間の排斥をハッキリと露わにしている事だった。
ここで咲が婚約者の一人になったと告げたところで、彼女たちは間違いなく納得しない。
寧ろ、率先して二人の仲を引き裂こうとする光景が容易く想像出来る。
少なくとも、今はまだ咲との関係が進展した事を知られない方が良いだろう。
京太郎「でも、これからはまた携帯で連絡取れるしさ」
咲「そう言って、段々、メールを返してくれる頻度も減っていったのは誰なのかな?」
京太郎「ごめんなさい、反省してます」
咲「じゃあ、それをちゃんとした形で示して欲しいな」
京太郎「あー…」
スっと目を閉じる咲の前で、京太郎は気まずそうな声を漏らした。
山田がいなくなったとは言え、この部屋にはまだ小蒔が残っているのだから。
幾ら二人を娶る宣言をしたとは言え、彼女の前でキスをして良いのだろうか。
そんな躊躇いが京太郎の胸中に湧き上がってくる。
京太郎「(…でも、俺が不義理したのは否定しようのない事実だし)」
京太郎「(何より、咲の肩は少し震えてる)」
京太郎「(…何だかんだ言って、コイツもヘタレだし、かなり勇気を出して誘ってくれているんだろう)」
京太郎「(だから…)」
咲「……ん」
京太郎「これでどうですか、お姫様?」
咲「……京ちゃん」
京太郎「ん?」
咲「正直に言って。…他の子にもこうやって自分からキスしたでしょ?」
京太郎「な、なんの事かな?」
咲「だって、ヘタレの京ちゃんがこんな簡単に、しかも、上手にキス出来るとかおかしいもん」
咲「絶対、ぜえええっったい、初めてじゃないよ…!」
その唇にキスした直後、返ってきたのはジト目といらだちを隠し切れない声だった。
インターハイで春にキスされているところを見てしまった咲は、京太郎が清い身体であると思っていない。
最低でも自分は二番目以降なのだとそう理解しながらも、キスを強請っていた。
だが、そんな彼女に齎されたのは予想を遥かに超えるほど優しく、そして躊躇のない口づけだったのである。
二度三度の経験では到底、至れないであろうそのキスは、彼女の心に不安まじりの不機嫌さを与えるものだった。
京太郎「い、いや、あのな…」
咲「言っとくけど、弁解すればするほど京ちゃんの罪は重くなるから」
咲「素直に全部、吐いちゃった方が楽だよ」
京太郎「吐けと言われても…」
小蒔「わ、私も気になるなって…」
京太郎「こ、小蒔さんまで…」
とは言え、幼馴染の追求に本当の事を言えるはずがない。
自身の貞操を護る為とは言え、京太郎はこれまで幾人もの少女達とキスしてきたのだから。
何とかして誤魔化す方法はないだろうかと思考を練る京太郎の横で、小蒔はそっと手を上げた。
小蒔「…だって、宮永さんへのキス、さっきよりも『特別』だったんですもん」
小蒔「さっきのキスも良かったですけれど…やっぱりちょっと悔しいですから」
小蒔「京太郎君に意地悪しちゃいます」ギュ
咲「…ほら、神代さんもこう言ってるよ?」
京太郎「う…うぅぅぅ…」
小蒔は純真ではあるが、決して愚鈍な子ではない。
まるで見せつけるような先ほどのキスが、自分に与えられたものとは違う事くらいすぐに気づいた。
つい一時間前までの彼女であれば、その不公平感を胸の内に仕舞っていただろう。
だが、自身の告白に応えて貰った小蒔は、胸の底から湧き上がる嫉妬の色を隠せない。
甘えるように京太郎に身を寄せながら、むぅと頬を膨らませてしまう。
京太郎「(お、おかしい…どうしてこんな事になったんだ?)」
京太郎「(良かれと思ってしたキスひとつで何故、俺は追い詰められている…?)」
京太郎「(流石にちょっと理不尽じゃないだろうか…)」
咲「京ちゃん?」
小蒔「京太郎君?」
京太郎「うあー…」
気まずそうな声をあげる京太郎に、しかし、咲も小蒔も容赦しなかった。
不機嫌さをアピールする彼女たちに挟まれるのはとても居心地が悪い。
いっそ針のむしろと言っても良いその状況で、京太郎が沈黙を守り続けられるはずがなかった。
二人の圧力に負けた京太郎はポツリポツリと自身の『罪状』を口にし始め ――
―― 結果、嫉妬を強めた二人のご機嫌取りに、京太郎は一時間ほどキスをし続ける羽目になったのだった。
ってところで今日は終わりです(´・ω・`)つ、次はメインヒロインである春の出番だから…別に姫様に今回の出番を取られた訳じゃないから…(震え声)
とりあえず今日は息抜き用安価スレの予告を書いて、夜に多数決取れればなーと思ってます
―― 今度のインターハイで優勝出来なかったら、私、転校するかもしれません。
夕暮れの中で聞いたその言葉に、俺は自分の無力さを呪うしかなかった。
それを俺に打ち明けてくれた相手は好きとまでは言わないけれど、間違いなく意識していた相手で。
そして何より、俺は自他共に認めるほどの麻雀初心者なのだから。
憂いに翳る顔で不安を告げる彼女にしてやれる事など、片手の指で事足りる程度しかなかった。
―― 皆には心配させたくないんです。秘密にしておいて貰えませんか。
その一つが彼女 ―― 原村和の為に口を噤む事。
彼女の転校を知れば、和の親友である優希や少しずつ心を開き始めた咲のメンタルに影響が出てしまう。
それが良い方向に転べば良いが、二人はまだ高校一年生。
ただでさえ気負いもあるだろうし、悪い方向に働いてしまう可能性の方が高い。
だからこそ、俺だけにと打ち明けてくれた彼女を裏切る事は出来なかった。
―― …でも、他に俺が出来る事なんて何がある?
漫画やアニメなんかじゃ、一念発起してパワーアップイベントでも起きるかもしれない。
だが、俺が生きているのは紛れも無く現実で、そんな都合の良いイベントなんてあり得ないんだ。
俺はインハイ出場を決めた彼女たちの練習相手になれるほどの実力もなく、出来る事と言えば、精々が荷物持ち程度。
勿論、女所帯の黒一点なんだし、それは喜んでやるけれど。
しかし、彼女の転校を知った今、俺はそれだけでは満足出来なくなった。
―― だから。
京太郎「ふー…」
朝六時。
日が昇り始めてから既に数時間が経過したその時間は、既に夏の熱気を孕んでいた。
歩いているだけでジワジワと肌に染みこんでくるような熱が、身体に汗を強要する。
しかし、それが不快なだけではないのは、梅雨の時とは違う爽やかさが朝の空気の中に含まれているからなんだろう。
夏の朝特有のそれに俺は長らく息を吐きながら、石畳の階段を登り切った。
―― 瞬間、俺を出迎えるのは朱色の鳥居とこじんまりとした社だ。
多分、日本中の何処にでもあるであろう何の変哲もない神社。
そこに俺が毎朝、通い詰めているのは、清澄の優勝を神様に祈願する為だ。
彼女たちに出来る事が驚くほど少ない俺には、もうその程度しか ―― 神頼みしかない。
勿論、現代日本に生きる可愛げのないガキとしては、神様の存在なんてまったく信じていないけれど。
京太郎「(…それでも何かの一助にくらいなってくれるかもしれない)」
ひでぇ矛盾だと自分でも思う。
俺は信じてもいない神様に毎朝、頭を下げて、清澄の優勝を願ってるんだから。
…でも、まったく論理的ではないその行動を、俺はどうしても止められない。
そんな自分に自嘲混じりの笑みを向けながら、俺は今日も水舎で手を洗って。
―― パンパン
二礼二拍一礼。
初詣なんかの時には適当にやっていた動作を、俺は強い意思を込めて繰り返した。
俺にはもうこれだけしかしてやれる事がないんだと。
指の先々にまでそう言い聞かせながら、丁寧に頭を下げ、手を鳴らす。
京太郎「(…どうかお願いします)」
京太郎「(清澄の皆を、優勝させてやってください)」
そのまま再び頭を下げた俺は、心の中で念じる。
信じてもいない神様に届けと願いながらのそれに、当然、何かしらのレスポンスが返ってくるはずがない。
こんな朝早くから有名でもなんでもない神社に詣っているなんて俺一人だけなんだから。
神主の姿さえ見えない社には、鳥達の鳴き声くらいしか聞こえない。
京太郎「(…でも、それも今日で終わり)」
インターハイへの切符を手にした仲間達とは違い、俺の個人戦は散々な結果だった。
当然、俺はお留守番になるはずだったが、長らく指導をほっぽっていた負い目があるのか、或いは単に荷物持ちが欲しかっただけなのか。
生徒議会長でもある部長は俺もまた東京へと連れて行くと宣言してくれた。
その集合時間が、もう数時間先に迫っている今、この神社に戻ってくるのは全ての結果が出てからになる。
京太郎「(本当にお願いします。俺に出来る事なら何でもしますから)」
だからこそ、俺は最後に軽くおじぎをしながら、心の中でそう唱える。
まるで念押しのようなそれを迎えるのは、相変わらずチチチと言う鳥の鳴き声のみ。
それにどことなく落胆に似た感情を感じながら、自分はそっと踵を返して。
―― 本当に何でもするのか?
京太郎「…え?」
瞬間、聞こえてきた声はとても不思議なものだった。
まるで耳を通してではなく、脳に直接語りかけられているかのように近く、そして重い。
聞いているだけで相手との次元の差を感じるそれに俺の足は自然と止まる。
和の転校を知ってから、この神社に詣り続けていた俺にとって、その声の主はたった一人、いや、一柱しかいなかった。
京太郎「ま、まさか…神様…!?」
―― そんな事はどうでも良い。先ほどの言葉の真偽を聞かせろ。
京太郎「っ!」
俺の言葉に、相手は応えようとしない。
だが、俺の頭がおかしくなったんじゃなければ、この声の主は間違いなく超常の存在だ。
神様かどうかは分からないにせよ、今の俺が縋るに足る相手だろう。
京太郎「えぇ。嘘じゃありません。俺に出来る事なら雑用でも何でもします」
―― そのような事は望んではおらん。
―― ワシが見たいのは人が試練にもがき、乗り越える姿よ。
京太郎「…試練?」
脳裏に響くその声に、俺は薄ら寒いものを覚えた。
ただ神社参りをしていた俺にとって、その言葉はスケールが大き過ぎるのだから。
一体、俺はこの相手に、何をされるのだろうか。
そんな不安がまるで隙間風のように心の中へと入り込んでくる。
―― 恐ろしいか? お前の言う何でもとはその程度の軽いものだったのか?
京太郎「…いいや、そんな事ないですよ」
しかし、だからと言って、ここでヘタレる訳にはいかない。
俺にとって、これは間違いなく千載一遇の好機なんだから。
清澄が優勝し、和が長野に残れるなら、どんな試練だって乗り越えてやろう。
内心、ビビる自分に俺はそう言い聞かせながら、グっと握り拳を作って。
京太郎「試練が一体、どういうものかは知りませんが、受けて立ちましょう」
―― 良い言葉だ。ならば、お前に与える試練を教えてやろう。
―― お前は仲間たちが優勝するまでの間、決して射精してはいけない。
京太郎「…はい?」
…それだけ?
いや…なんつーか、流石にちょっと甘く見過ぎじゃないか?
確かに俺は健全な男子高校生で、性欲もそれなりにあるけれど。
でも、仲間の為を思えば、インハイ中に禁欲するくらいは余裕で出来る。
試練って言う言葉の響きからもっとヤバイのを想像してただけに若干の肩透かし感すらあった。
―― もし、射精したならば、お前の仲間は確実に負ける。
―― いや、ただ負けるだけではなく、お前の仲間たちはバラバラになり、二度とその道が交わる事はない。
京太郎「わ、分かりました」
とは言え、安心するにはまだ早いよな。
相手から告げられる罰則は、試練の名に相応しく、とても重いものだったのだから。
手心を加えて貰っているなどと思わず、しっかりと気を引き締めて臨むべきだ。
―― 努々忘れるでないぞ。 お前が射精してしまえば、皆が不幸になる事をな。
京太郎「あ、あの…!」
…ただ、その前に色々と聞きたかったんだが…どうやら声の主はもういなくなったらしい。
念押しのような言葉を最後に、俺の身体からプレッシャーが抜けていった。
呼びかけるように声を出したけれど、まったく反応もないし。
契約は済んだら、もう用なしって事なんだろうか。
京太郎「(…ただ、俺の一挙一動は間違いなく見られてる)」
相手の本意は分からない。
分からないが、誤魔化しが効くと思わない方が良いだろう。
これからインハイ団体戦が終わるまでの間、絶対に射精はしない事。
そう自分に言い聞かせながら、俺は一段一段、確かめるように階段を降りていった。
【安価】京太郎「絶対に射精してはいけないインターハイ」【R18】
○エロが書きたいという衝動のままに立てた京太郎スレです
○タイトル通り、射精してしまったら即ゲームオーバー
○普通ならヌルゲーですが、今回の京ちゃんは神様パワーで謎フェロモンが付与されてます
○つまり女の子はほぼエロエロ状態
○そんな女の子からのアプローチを回避しつつ、一日三回の行動を十日間繰り返すスレです
○尚、このスレはコンマ一桁による判定を多様します
○基本的に登場する女の子を決めた後、何処で何をしたかをコンマで判定
○何をしたかに利用するコンマ表は女の子の好感度毎に違います
○好感度が高ければ高いほど、女の子のアプローチは激しくなっていきます
○当然、京ちゃんの理性は女の子のアプローチが激しければ激しいほどガリガリ削られます
○理性は時間経過によりコンマによって回復しますので生かさず殺さず長く楽しんでげふげふ
○女の子の好感度は登場する度にコンマの半分ずつ上昇していきます
○尚、起こったイベントによって、好感度上昇にも補正がかかります
○色々と実験的な部分も多いんで、後で色々といじるかもです(´・ω・`)ゴメンナサイ
好感度20 好感度40 好感度60 好感度80
1 普通にお話 1 普通にお話 1 ハグ 1 フェラチオ
2 キス 2 Dキス 2 ペッティング 2 セクロス
3 ハグ 3 ハグ 3 Dキス 3 ペッティング
4 普通にお話 4 普通にお話 4 普通にお話 4 普通にお話
5 ハグ 5 ハグ 5 Dキス 5 ペッティング
6 キス 6 キス 6 キス 6 Dキス
7 キス 7 ペッティング 7 フェラチオ 7 セクロス
8 普通にお話 8 ハグ 8 ハグ 8 ペッティング
9 ハグ 9 ハグ 9 ペッティング 9 フェラチオ
0 普通にお話 0 キス 0 キス 0 キス
ゾロペッティング ゾロフェラチオ ゾロセクロス ゾロ一日セクロス漬け
ハグ = 好感度上昇+5 理性低下10
キス = 好感度上昇+10 理性低下10
Dキス = 好感度上昇+20 理性低下15
ペッティング = 好感度上昇+10 理性低下20
フェラチオ = 好感度上昇15 理性低下30
セクロス = 好感度30 理性低下50
一日セクロス漬け = 好感度カンスト 理性低下80
京ちゃんの理性 100/100
多分、こんなスレになります
もう一個催眠の予告も書いてきまーす
上のは射精しちゃったら即終了で良いような気がしますねー
あんまりにも早かったら二周目やりますが、題材的に何回もぶんまわし出来るもんじゃないですし
「京太郎、今まで黙ってたけれど、私達の一族には不思議な力があるの」
唐突に母親から告げられたその言葉を、信じられる奴が果たしてどれだけいるだろうか。
少なくとも、夕飯時の俺は ―― 丁度、ごぼうサラダを箸の先でつまんだところだった ―― それを信じなかった。
当然だろう、俺の家は確かに一般よりも多少裕福だが、不思議な力とやらを意識した事は一度もない。
ぶっちゃけた話、また変な冗談を言っているって言うのが正直なところだった。
京太郎「(家の家はスサノオの遠い子孫だとか良く言ってるしなぁ…)」
スサノオ。
神話とか興味がない俺だって知ってるマジモンの有名人 ―― 有名神? ―― が俺達のご先祖など流石にちょっと痛すぎる。
もう30をとうに超えてるのに、未だ女子大生、下手すりゃ女子高生でも通りそうなその見た目と相まって、色々とキツイ。
親が今も中二病を患っているだなんて繊細な年頃の男子高校生には辛すぎるのだ。
京太郎「あ、ごぼうサラダウメェ」
「ありがとう。…でも、まじめに聞いてくれないかしら?」
京太郎「いや、真面目にって言われてもなぁ…」
「お小遣い増額してあげるから」
京太郎「OK。最高にシリアスで行くぜ」キリ
とは言え、小遣い増額とまで言われたら、こっちもスルーしてはいられない。
年頃の俺には色々と欲しいものがあるのだから。
一般よりも裕福とは言え、一般的な小遣いしか貰えていない俺にとっては小遣いアップのチャンスは見逃せない。
「お母さん、そういう現金な京ちゃんが好きよ。勿論、世界で二番目だけど」
京太郎「はいはい」
そう言って、母さんは隣の親父にしなだれかかった。
まるで岩のように硬い表情で、黙々と食事を続ける親父はそれに何も言わない。
でも、それは母さんのアプローチに諦めてるから…ってだけじゃないんだろうな。
母さんとは違い、順調に年を重ねながらも、親父の身体には未だ湧き上がるような覇気を感じるのだから。
まるで生きている巨壁のようなこの男は、ただ状況に流されるのを善しとしない。
本当に嫌ならば、無理やりにでも母さんの事を押しのけていたはずだ。
京太郎「両親が仲睦まじくて息子としては何よりですよ」
…結局、親父も何だかんだ言って、母さんにベタ惚れって事なんだろう。
口数少ないながらも、大事なところを外さない親父は、息子としても格好良いと思うし。
年々、外見の年齢差が犯罪的になっていくものの、何だかんだで二人はお似合いなんだと感じる。
ただ、まぁ、それを正直に口に出すのは恥ずかしいし、何より本題から外れてしまうから脇に置くとして。
京太郎「でも、せっかく、そっちから話を振ったんだし、ちゃんとやってくれねぇ?」
「あぁ。そうだったわね。ごめんなさい」
京太郎「まぁ、何時もの事だし、別に良いけど」
京太郎「それより、その不思議な力ってなんなんだ?」
「端的に言えば、催眠能力よ」
京太郎「…催眠?」
催眠ってアレか?
所謂、洗脳とかそういう能力の事だよな?
実は光速の異名を持ち、重力を自在に操る高貴なる女騎士だったと言われるよりはマシだけれど。
でも、眉唾ものである事に代わりはないよなぁ…。
「私達のご先祖様がスサノオだって言うのは以前に話したわよね?」
京太郎「あぁ。何回も聞いたけど…」
「じゃあ、そのスサノオが元々、手がつけられない暴れん坊だったのは知ってる?」
京太郎「あぁ。なんか色々とやらかして、アマテラスが引きこもった原因も作ったんだっけ?」
「それも諸説、色々とあるんだけれど…まぁ、それはさておき」
「大筋はその通りよ。高天ヶ原での騒動に、ついに天照大神も庇いきれず、スサノオは子ども達と共に地上へと追放された訳」
「で、地上を彷徨ったスサノオは、ヤマタノオロチに脅かされていた神々を助け、その娘を娶って、須賀の地に王国を築き上げる…」
「でも、それには語られていないエピソードがあるのよ」
京太郎「語られていないエピソードねぇ…」
うーん…なんだか眉唾モノの話に思いっきり胡散臭さをぶっかけたような展開になってきたぞ。
真面目に聞かなきゃ小遣いアップは望めないと分かっているけど、なんだかその気も失せてくる。
正直、アマチュア漫画家が考えたようなストーリーだとしか思えない。
「そもそもそこまで高天原で大暴れしたスサノオが、地上に降りてから一転して善神になっているのがおかしいと思わない?」
京太郎「流石に追放までされたら反省したんじゃねぇの?」
「それも勿論、あるでしょうね。でも、それよりも大きいのは、彼の心をある一人の女神が掴んだから」
「クシナダヒメ。後に彼の妻となるその女神は、非力な代わりにとても強力な能力を持っていた」
京太郎「…まさかそれが」
「そう。今も私たち、須賀の一族に伝わる催眠能力」
「支配の邪眼とも呼ばれる強力な力よ」
京太郎「へー」
クシナダヒメって凄いなー。
まさか最高神の弟にまで催眠を掛けられるなんてー。
これまでまったく想像していなかった斬新な展開だぞー。
「もぉ…信じてないでしょ」
京太郎「いや、信じてる信じてる。いやぁ…支配の邪眼だって? すげーじゃん」
京太郎「それがあれば世界征服でも余裕で出来るんじゃねーの?」
つーか、その邪眼とやらでヤマタノオロチを従えられたんじゃねーの?
そんなツッコミは野暮だからしない。
母親から中二病のガキでさえ見向きもしないような話を聞かされて、精神的にそろそろ限界なんだ。
小遣いアップとかどうでも良いから、さっさと終わって欲しいってのが本音だった。
「良くも悪くも須賀の一族は始祖からして近視的だったらしくて」
「その能力が発現しても、使い方は、ごく一部分に限られていたらしいわ」
「実際、私も能力が使えたけれど、世界征服だとかそんな事はまったく考えなかったし」
「使ったのは、パパを捕まえる時くらいよ」
京太郎「へー…じゃあ、俺にも何か催眠掛けられんの?」
「同じ須賀の血統には掛からないみたい」
「詳しい理屈は分からないけれど、この能力は相手と視線を合わせなければ使えないから」
「お互いに打ち消し合うんじゃないかってお祖母様が言ってたわ」
京太郎「ふーん」
…そういや、親父って昔はかなりモテてたんだっけ。
母さんからその心を射止めるには色々と苦労した、なんて話を聞いた覚えがある。
だからこそ、今の親父に泥棒猫がちょっかい出さないか心配…なんて愚痴も今も良く聞くなぁ。
「…興味なさそうにしてるけど、その能力は高確率で貴方にも発現するわ」
「それも恐らくそう遠くない内に」
京太郎「俺にも?」
「えぇ。そして覚悟しておきなさい」
「その能力は否応なく、貴方の望みを浮き彫りにする」
「…私がそうであったようにね」
…その言葉は思いの外、真に迫るものがあった。
何時もの何処かのほほんとしてお喋りな母さんとは違う。
俺の想像よりもずっと暗くて重いものが、その言葉の裏から感じられる。
京太郎「は、はは。そんな風に息子を脅かすなよ」
「脅かしているんじゃない。これは本心からの忠告よ」
「全部終わった後に後悔しても遅いから」
京太郎「…」ゴク
だからこそ、明るく返した俺の声は微かに震えていた。
母さんは別に怒っている訳でもないのに、俺は何をこんなにビビっているんだろうか。
そんな疑問を胸中に浮かべる俺に、母さんはただただ真面目な声を返した。
嘘偽りなんてまったく感じられないその声に、俺はつい生唾を飲み込んでしまって。
「…おかわり」
「ふふ。はぁい。今すぐ準備するわねー」
―― 瞬間、その空気が霧散した。
俺達が話している間も、マイペースに食事を続けていた親父が母さんへとお椀を差し出すからだ。
ついさっきまで真面目な顔していたのを忘れてしまったように、母さんはその顔に笑みを浮かべ、ウキウキと台所へと戻っていく。
まるでスイッチが切り替わったかのようなその変化に、俺は呆然と母さんの背中を見つめた。
だが、スキップするように跳ねる母さんの身体からは、さっきの真剣な雰囲気がまったく感じられなかった。
「……あまり気にするな」
京太郎「親父…」
「お前は俺と母さんの息子だ」
「決して悪人ではないし、なるようになる」
親父が一体、何を言いたいのかは分からない。
だが、少なくとも、親父が俺の事を励まそうとしてくれている事だけは伝わってきた。
…かなり無口だし、怖いところもあるが、何だかんだで親父は一人息子である俺の事を大事に思ってくれている。
世の父親のように構ってもらった記憶はそんなにないが、その想いはこうしてふとした時に感じる事が出来た。
京太郎「ありがとう、親父。お陰で少し冷静になれたよ」
「ん」
…そうだ。俺は何をビビってたんだか。
そもそも母さんの言う事なんて信じる必要なんてない。
今は科学万能の時代で、催眠能力なんだのはフィクションの中にしかないんだから。
アレで結構、悪戯好きなところがあるし、俺の事をからかっていただけなんだろう。
「はい。アナタ♥」
「ありがとう」
「で、京太郎、さっきの話だけど」
京太郎「まだ続くのか」
「寧ろ、こっちの方が本題だからね」
そんな風に決断を下した直後、母さんは食卓に戻って来る。
そのまま手に持ったお椀を親父へと差し出した母さんは、俺へと向き直りながら話を戻した。
それについつい呆れ混じりの声を返してしまう俺の前で、母さんは椅子に腰を降ろして。
「私とパパは明日から二週間ちょっとの海外旅行に出かけるから」
京太郎「オヤジの出張に着いて行くんだろ。もう何回も聞いてる」
「そう。二週間ほどパパと一緒に海外旅行を楽しんでくるわ」
明日から親父は半月ほどの海外出張だ。
それに母さんがついていくから、俺は夏休みをのんびりと羽根を伸ばして生活できる…なーんて訳にはいかない。
明後日には清澄麻雀部の仲間と一緒に、俺も東京へと行くのだから。
帰りが何時になるかはまだ未定だが、少なくとも10日以上はあっちで過ごす事になるだろう。
「今まで隠していた事を、こうして事前に伝えたのも、パパとのイチャイチャラブラブ海外旅行を邪魔されない為…」
「もとい私達の手が及ばぬところで、大事な京太郎が変なトラブルに巻き込まれたりしない為だから」
京太郎「本音が丸見えなんだよなぁ…」
「だってー、パパと海外旅行なんて久しぶりなんだもの♥」
京太郎「旅行じゃなくて、ただの同伴出張だろ」
と突っ込むものの、心配してくれているのは事実なんだろう。
ただ、問題はその心配があさっての方向にぶっ飛んでいる事なんだよなぁ。
正直、喜んでいいやら悲しんだ方が良いやらで複雑な心境だ。
「まぁ、そういう訳だから、京ちゃん頑張ってね」
京太郎「頑張るも何も俺は出場選手じゃないけどな」
「でも、来年は自分の力で行くつもりなんでしょう?」
京太郎「…まぁ、な」
勿論、咲たちと一緒に東京に行けるのは楽しみだ。
楽しみだが、女子におんぶ抱っこで国内最高峰の大会に連れて行ってもらう事にどうしても思うところはある。
来年こそ、自分の力でインハイへの切符を手にしてやる。
今まで一度も口にしなかったその気持ちは母さんにはお見通しだったらしい。
その気まずさと気恥ずかしさに、俺は視線を逸らしながら、おかずに箸を伸ばして ――
_k‐ ̄
ィ ̄ .| ヽ
-  ̄ | | ヽ
_ -─  ̄ | |_ ヽ
__ -──フ ̄ _ -─ ニ-| | \
-─  ̄/ / __ -‐二 -─  ̄ | | \
/ /-─ 二-─  ̄ | |
/ / __ -── ̄_ -ヘ├'´ ̄`ヽ
/ _ --──  ̄ ̄ ̄__ -─,ァ T ̄| ヽ| //
/=_フ"_ -┬‐┬ <ヽ、 ,r‐.、, -/ | | | /
/-‐'´ | | ヽ, ヽ::::::/,/ | | |
" i ヽ / < > 〉 / / |
ヽ ヽ \ / / /
\ \ `ー __~___/ / /
` 、 ヽ / /
`ー- _` ー──'_ -=千─
 ̄ ̄ ̄  ̄
京太郎「…なんだコレ」
次の日の朝。
目が覚めて、顔を洗いに行った俺の瞳に不思議な模様が浮かんでいた。
まるで飛んでる鳥のようなそれは、どうやら俺の見間違いではないらしい。
じっと鏡と見つめ合い、あちこちに視線を動かしてみたが、それが俺の瞳から消える事はなかった。
京太郎「うーん…」
分からん。
分からんが、あんまりのんびりしていられないよな。
インハイに向けての練習は、今日も朝から詰まっているんだから。
俺は出場選手ではなく、また彼女たちの練習相手にもなれないが、さりとて朝練に遅刻して良い訳じゃない。
寧ろ、東京に連れて行って貰うのだから、誰よりも早く部室に到着しておかなければいけないだろう。
京太郎「(隣の寝坊助も起こさなきゃいけないしな)」
朝練慣れしてる俺とは違い、隣の幼馴染 ―― ポンコツ文学少女の咲は低血圧だ。
ちゃんと目覚ましを掛けていたとしても、高確率で二度寝してしまう。
そんな咲を起こすのは、直接、叩き起こしてやるのが一番だ。
それを経験則的に知っている俺は、さっさと顔を洗って、リビングへと向かい。
京太郎「お」
扉を開けた先には、既に朝食が準備してあった。
いや、朝食だけじゃなく、弁当まで置いてあるって事は、息子を半月ほど放っておく申し訳なさもあったんだろう。
俺も高校生で、精神的にも親離れが始まっているから、ぶっちゃけ、そんな気にしてなかったんだけれど。
こうして出発前の慌ただしい時間に用意してくれたであろう厚意は有り難く受け取っておこう。
京太郎「(ってコレは…)」
その弁当の下には一枚の紙が置いてあった。
反射的にそれを手に取れば、そこにはもうアラフォーの領域に片足を突っ込んでいるとは思えない可愛らしい文字が踊っている。
年を考えろと言いたくなるその文字は、小言に近い言葉を綴っていた。
やれ歯磨きはちゃんとしろだの、やれ夜遊びはほどほどにしろだの、やれ女の子を連れ込む時はちゃんとコンドームをつけなさいだの…。
―― もし、瞳に異常があったら、以下を参照にしなさい。
―― 私が知る限りの対処法を記しておいたから。
京太郎「瞳…?」
最後に並べられたその文字に、俺は右手は右目へと伸びる。
そのまま目元を抑える指先に、異常と呼べるものは感じられなかった。
だが、そのほんの数センチ先には、異常が ―― 鳥のようなマークを浮かべた瞳がある。
京太郎「(…別に母さんの与太話を信じてる訳じゃないけれど)」
どうして俺の瞳に異常が起こるかもしれない事を、母さんは知っていたのか。
そもそも対処しなければいけない異常とはなんの事なのか。
胸中に浮かぶその疑問に、俺は妙な胸騒ぎを感じる。
母さんが残してくれたこの文章は、しっかりと読んでおいた方が良い。
本能に近い部分でそう感じ取った俺は、その下に視線を流していく。
―― 相手と視線を合わせ、言葉を放つ事によって能力は発動する。
―― 発動させるという意識があれば、言葉は何でも良い。
―― 相手は状態によって、その言葉に逆らえなくなる。
―― Lv1。初めて能力を受けた状態。軽度の暗示や抵抗感が少ない事くらいなら従わせる事が出来る。
―― Lv2。二度、能力を受けた状態。認識の上書きや感情の操作などが出来る。
―― Lv3。三度、能力を受けた状態。ありとあらゆる命令に逆らえなくなる。
―― 能力は老若男女、誰にでも発動し、須賀の主血統以外で回避する事は出来ない。
―― 重要なのは、この能力は発動しなければ、その分、強化されていくと言う事。
―― 抵抗感があるからと使わなければ、視線を合わせたり、言葉を放ったりするだけで相手を催眠状態へと陥れる。
―― そうなると理解のある人物が居ない限り、社会復帰は絶望的なので適度に能力を使って発散する事。
―― 特に能力が発現したばかりの頃は、【溜まりやすい】ので注意。
―― オススメなのは好きな女の子をメロンメロンにして虜にする事だぞ☆
―― ハーレムも良いけれど、四方八方に手を出すと後で困るから注意ね。
―― 私とパパは何時でも京太郎の味方だって事を忘れないで。
京太郎「………は?」
まるで箇条書きのように並べられたその言葉は荒唐無稽という表現でも物足りないものだった。
もう何回も言ったような気がするが、こんなものあり得ない。
こんな能力が現実に存在するなら、世界の秩序は滅茶苦茶になる。
たった三度出会うだけでどんな人物も逆らえなくなるだなんて危険人物も良いところだ。
常識で考えれば、母さんの悪戯がまだ続いている…ってところなんだろうけれど。
京太郎「(……昨日の話とこの手紙、そして実際に俺の瞳に浮かんだこのマーク)」
京太郎「(これを偶然の一致だと片付けて本当に良いのか?)」
幾ら母さんが悪戯好きだと言っても、寝ている俺に気づかれず、カラコンを着けさせるのは無理だろう。
そもそも俺は両目とも2.0の健康優良児だし、コンタクトをつけていたらすぐに分かる。
つまり俺の目にハッキリと浮かんだこの異常は、母さんの悪戯によって生まれたものじゃない。
俺の中から自然と生まれ出た ―― つまり『俺の常識ではあり得ない』もので……。
ピピピピピ
京太郎「っと…」
どうやら考えれば考える程、俺はドツボにハマっていたらしい。
気づけば、スマホのアラームが、鳴り始めていた。
咲を起こさなければいけない時間を知らせるその音に俺の身体はのそのそと動き出す。
まるで答えを先送りにするように服を着替えて、玄関の扉を開き ――
―― 自身の持つ『能力』に振り回される奇妙な日々は、こうして幕を開けたのだった。
【R18】京太郎「催眠能力とインターハイ」【安価】
○エロが書きたいという衝動のままに立てた京太郎スレです
○能力を使わなければ暴走してしまう京ちゃんがなんやかんやで女の子に能力使ってエロエロするスレです
○ママンの説明通り、女の子に能力を使う度に、より深く心の中に入り込み、エロい命令が出来ます
○レベル毎にそれぞれ何が出来て出来ないのかは、多分、好感度によって変わります
○また女の子を過度に不幸へと陥れるような催眠、リンカーンされるような催眠は弾きます
○ここはあくまでも京ちゃんが女の子とエロエロするスレですし、私もそんなの書きたくないので!
○でも、ほのぼの安価とか投げてくれてもええんやで(小声)
○考えるんじゃない。感じるんだ(ぶん投げ)
○基本的にゲームオーバーはなく、催眠フェーズ→観察フェーズ→催眠フェーズと移行していきます
○エンディング条件は100まで溜まった京ちゃんの催眠パゥワを全て消化し切る事
○また催眠を掛けるヒロインの状態によって、必要な催眠パゥワが変わります
○Lv1は5、Lv2は10、Lv3は15消費し、催眠パゥワが回復する事はありません
○エンディング到達時のヒロインの状態によって、エンディング内容が変わります
後は艦これと王様ゲームスレですねー
王様ゲームスレは白糸台と清澄以外なら、よっぽどマイナーなところじゃなければ何処でもオッケーです
王様ゲームスレが選ばれた後で舞台を決めますね
艦これの方はご指摘通り、艦むす安価くらいしか話が広がらないんでもうちょっと何か付け加えたいところですが
中々、良いの思いつかないんですよねー(´・ω・`)イベント表や戦果表作って、鎮守府運営のフレーバーにしてみるとか…?
この辺、きっちり固まったら、軽い予告出して、多数決取ります
艦これは戦果に応じて新しい嫁もとい艦娘が追加されるみたいな?
>>318
ですねー。後は新装備とかも戦果によって配給されるとか良いかも
ダメコンとかバケツなんかも交換できるとイベント海域とかも再現できそう
イベント表
1 通常業務(戦果表へ)
2 グッドイベント
3 艦むすとゆっくりコミュ
4 大規模イベント
5 艦むすとゆっくりコミュ
6 通常業務(戦果表へ)
7 グッドイベント
8 艦むすとゆっくりコミュ
9 大規模イベント
0 通常業務(戦果表へ)
ゾロ目 あっ
グッドイベント表
1 艦種毎に設定された戦果点を支払い、ランダムで艦むすが仲間に
2 戦果点を支払い、新しい艦むすが仲間に(指定)
3 新装備配給
4 今回の取得戦果が倍になる
5 新装備配給
6 艦種毎に設定された戦果点を支払い、ランダムで艦むすが仲間に
7 戦果点を支払い、新しい艦むすが仲間に(指定)
8 新装備配給
9 今回の取得戦果が倍になる
0 艦種毎に設定された戦果点を支払い、ランダムで艦むすが仲間に
ゾロ目 あっ
戦果表
1 +1
2 +5
3 +2
4 -2
5 +3
6 +3
7 +5
8 +2
9 -2
0 +1
ゾロ目+10
尚、潜水・駆逐1隻毎に+1
軽巡1隻毎に+2
重巡、軽空母1隻毎に+3
戦艦、空母1隻毎に+4
艦むすに装備された新装備の数一つにつき+1される
また装備の改修レベル(☆1→☆4→☆7→☆10)によってさらに1ずつ戦果点が増える
必要戦果点数
駆逐艦=戦果点5
軽巡=戦果点7
重巡=戦果点10
軽空母=戦果点10
戦艦=戦果点15
装甲・正規空母=戦果点15
潜水艦=戦果点7
高速修復剤=戦果点10
ダメコン=戦果点10
装備改修=一回につき戦果点5、レベル6からは戦果点10
※高速修復剤やダメコンの購入、装備の改修はターン終了時に指定出来る
大規模イベント
イベント海域専用のE戦果点を集めて、攻略していくマップ
第一作戦海域突破に20、第二作戦海域突破に40と必要戦果点が設定されている
指定された時間内に攻略できなければ作戦失敗
失敗してもすぐさまゲームオーバーにはならないが、戦果表が厳しくなったり、バッドイベントが起こりやすくなる
成功すれば大量の戦果点を獲る事が出来るが、イベントによっては大破(数ターン行動不能)や轟沈(キャラロスト)有り
支配域
人類側がどれほどの海域を支配しているかどうかを表す数字
開始時は50%
これが増減する事で、グッドイベントやバッドイベントが減ったり増えたりする
尚、どれほど海域を支配しても、イベント海域でのバッドイベントが減る事はない
【R18】京太郎「今日から始める提督業」?「艦これ。始まります」【安価】
○エロが書きたいという衝動のままに立てた京太郎スレです
○深海棲艦に脅かされる世界で、京ちゃんが提督になってなんやかんやしてエロい事に巻き込まれます
○支配域とか設定してますが、ぶっちゃけフレーバー
○とりあえずエロやりたいのとシステムの調整がしたいだけなので、人類側が完全勝利する事は(多分)ありません
○恐らく1、2スレやって区切りの良いところで終わります
○つまりエンディング条件などは特になし、艦むすとイチャイチャエロエロする為のスレです(重要)
○エロだ。エロは全てに優先する。
○尚、このスレはイベント表→戦果表→艦むすとのイチャイチャ→戦果による購入処理で1ターンが経過します
○基本的に艦むすは性欲が強いですが、イチャイチャは常にエロになるとは限りません
○エロばっかりだと皆、飽きるからね、仕方ないね
○また鎮守府に迎え入れられる艦むすは六人のみ+ヒロイン毎に艦種は決まっています
○なので、目当てのヒロインがいる場合、グッドイベントでランダム加入が決まっても拒否するのも大事です
○システムはかなり未完成なので後から色々と手を入れるかもしれませぬ、ごめんなさい
フレーバーな安価部分はこんな感じで考えてます
ちなみにこっちのスレでははるるが初期艦でしたが、新しいスレでは立ててから決める予定です(´・ω・`)
ちなみに艦これスレの京ちゃんは最初こそアレですが二回目からは率先してご褒美エロに出る予定です
と言いつつ、おおまかにですが決まったんでそろそろ息抜き用のスレ決めましょうかー
1、絶対に射精してはいけないインターハイ
2、催眠能力とインターハイ
3、今日から始める提督業
4、王様ゲームスレ
下1~5でー
それじゃ2か3かの決選投票ですねー
下1でー
はーい、って事で艦これスレに決定です
催眠スレは京子スレ終わった後の次回作候補に回しますねー
ヒャア!もう我慢出来ねぇ!スレ立てだー!
【R18】京太郎「今日から始める提督業」?「艦これ。始まります」【安価】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1468640031/)
あっちは艦これにかこつけてヒロインとイチャイチャエロエロするスレですし
そもそも艦これにストーリーがないんで別に問題なく見れるんじゃないかなーと思ってます
今年度入る前なら安価と書き溜め両立出来たんですけどねー…
ちょっと今は色々とゴタゴタしてるんでもうちょっと待っていて下さい(´・ω・`)ゴメンナサイ
二ヶ月ほど放置しててごめんなさい
あっち一段落ついたんで今日からこっちの書き溜め頑張っていきまする
ヒャッハー!久しぶりの投下だー!!(´・ω・`)
………
……
…
「春はさっきの子が好きなのか?」
「うん」
彼と別れてから一時間。
両親と一緒に鹿児島行きの新幹線に乗った私にお父さんがそう尋ねた。
何時もよりも真剣で、何処か気まずそうな声に私は躊躇なく応えたのを良く覚えている。
だって、その時の私にとって、彼は紛れもない『王子様』だったのだから。
幼い私の心は幾度となく彼の事を思い返し、トキメキを覚えていた。
初恋もまだな子どもでも、それが好意であるとハッキリ理解出来るほど強くて甘いトキメキを。
…そしてそんな彼ときっともう会えないのだろうという寂しさもまた。
「そうか。…じゃあ、一つお願いがあるんだ」
「おねがい?」
「アナタ…」
「大丈夫。春は賢い子だ。きっと分かってくれるさ」
お父さんの『お願い』に、お母さんは困ったような声をあげた。
…きっとその時のお母さんは、お父さんの言おうとしている事を分かっていたんだろう。
分かっていて、それでも尚、強く止める事が出来なかった。
神代家の命令で、お父さんとお母さんはずっと須賀一家を監視していたから。
彼らに対する同情心も、きっと心の中にあったんだろう。
「春。あの男の子…いや、京太郎君とはきっとまた会える」
「…きょうたろうくん?」
「あぁ。須賀京太郎。それがあの子の…いずれ神代を継ぐ子の名前だ」
「すが…きょうたろう…」
須賀京太郎。
私の『王子様』の名前。
初めて知ったそれを私は何度も舌に乗せた。
すがきょうたろうすがきょうたろうすがきょうたろう。
繰り返す度に馴染むその名前と、きっとまた会えるというお父さんの言葉は私の寂しさを吹き飛ばした。
だって、お父さんはとても真面目で、不確かな事は言わない人だから。
お父さんの言う事なら、どんな荒唐無稽な事だって信じられた。
「でも、それがあの子にとって、良いものにはならないだろう」
「あの子に課せられた運命はとても過酷なものだ」
「…今の幸せでさえ、あの子の心を引き裂きかねないほどに」
でも、その時の私にはお父さんが何を言っているのか分からなかった。
当時の私は神代と言う名前の意味すら、ちゃんと把握出来ていなかったのだから。
当然、神代の中でもトップシークレットだった京太郎の運命なんて知らない。
その上、ずっと両親から人並みに、『平凡』に愛されて育って来た私は、幸せが心を引き裂くってどういう事か、想像すら出来なくて。
「そして春。これからお前にもきっと辛い事が待っているかもしれない」
「でも、それはあの子に再び会う為に必要な事なんだ」
「我慢、出来るか?」
「…うん」
幾ら内側に溜め込みやすいタイプとは言え、辛い事が平気な訳じゃない。
事実、お父さんが口にする『辛い事』に対して、当時の私は不安を覚えていた。
でも、京太郎と会えるなら、我慢出来る。
またあの子と会う為なら、頑張れる。
当時の私は心からそう思っていた。
「うん。春は良い子だ」
…だから、私の事を撫でてくれるお父さんの手が何時もよりも寂しそうだった事に気づかなかった。
これから先、私を待っている『辛い事』が、大好きな両親から引き離される事だと言う事も。
引っ込み思案の私が知らない女の子達の中で、辛い修行を課せられる事だと言う事も。
何もかも知らず、ただ、優しい手に目を細めて。
「…じゃあ、改めてお願いだ」
「あの子の事を…京太郎君の事を助けてあげてくれないか?」
「たすける?」
「そう。あの子が再び春と会った時、その心は深く傷ついているはずだから」
「それを癒やす事が出来るのは、きっと春だけだ」
「わたしだけ…」
それはとても甘美な響きだった。
『王子様』に寄り添い、癒やし、心を通わせる。
それは私にとって、迷子になったのを助けてもらった恩返しじゃない。
100%自分の欲求だけで出来た……エゴだけで出来た甘い衝動だった。
「うん。わかった」
「わたし、きょうたろうくんをたすける」
「わたしがきょうたろうくんをいやしてあげる」
多分、その頃から私は既に女だったんだろう。
『王子様』に自分だけがしてあげられる事。
それに胸をときめかせ、その時を楽しみにしていたんだから。
彼をの手助けを通じて、想いを通わせ、私だけをずっと見てくれる『王子様』にする。
……独善的と誰もが言うであろうその未来予想図に当時の私は胸を疼かせていた。
―― …でも。
巫女の修行は思った以上に辛く、厳しいものだった。
彼との思い出の品である黒糖や、初美さんがいなかったら、心折れていたかもしれないほどに。
それでも、私は頑張って、支えられて。
京太郎と再会する日を楽しみにしていた。
その最中、彼と姫様が婚約者である事を知っても、私の気持ちは変わらなかった。
彼を癒せるのは私だけ。
私だけが彼を本当に慈しんであげられるんだって心から信じていた。
―― …ううん。多分、優越感もあったんだと思う。
姫様や他の子とは違って、私は京太郎を知っている。
直接会って、話をして、そして恋をした。
一時間にも満たない僅かな間だったけれど、それは私の中でとても大きくて。
私のアイデンティティにも強い影響を与えていたんだと思う。
―― なのに、私は最初、京太郎に何もしてあげられなくて。
私は京太郎の境遇を軽く考えすぎていた。
私も同じ立場だったのに、両親からも友達からも引き離される辛さは、六女仙の中では一番、良く分かっていたはずなのに。
感動の再会なんてものを夢見ていた私は、思った以上に打ちのめされていた京太郎に何も出来なくて。
あの時のお返しにと黒糖を差し出したくらい。
…そうやって戸惑っている間に初美さん達の手で京太郎は少しずつ立ち直っていって。
…………私の中の優越感は粉々にされてしまった。
―― 私はきっと凄いワガママなんだと思う。
―― 京太郎が立ち直ったのを喜ぶ一方で寂しく思っていて。
―― 私の手で彼を立ち直らせてあげられなかった事に嫉妬すらしていた。
醜い…本当に醜い自分。
でも、京太郎はそんな私に微笑みかけてくれた。
自分勝手な欲求で彼の側にいようとする私を一番の親友だと言ってくれた。
本当の意味で彼の味方になりきれない私を家族だと呼んでくれた。
…だから、私はきっと彼に恋をしたんだと思う。
十数年越しの初恋じゃなく、今の彼にもう一度。
心から、彼の為に何でも出来るって…そう思うような恋を。
だから…私は ――
京太郎「はー…」
部屋に戻った瞬間、京太郎の口から漏れでたのは大きなため息だった。
久方ぶりに会った幼馴染は、別れる最後の瞬間まで、スキンシップのオネダリを続けたのだから。
一年間を埋め合わせするようなその欲求の数々に、小蒔もまた触発され、オネダリを繰り返していた。
いっそ愛らしいと言っても良い二人に応えるのは嫌ではないが、犠牲になる理性を思うと素直に喜ぶ事も出来ない。
二人の想いを受け入れた事もあって、緩みがちな理性は、このまま二人を押し倒せという欲望に幾度となく負けそうになっていた。
春「…お疲れ?」
京太郎「あぁ。ちょっとな」
しかし、それも一時間ほど前の事。
屋敷に荷物を運んだ京太郎は、夕食の時間までゆっくりする事が出来る。
だが、その後には霞の髪をケアしたり、巴と次回の衣装を決めたりと予定が詰まっているのだ。
疲弊した理性を今の間に回復させなければ、と京太郎は自室の畳に腰を下ろす。
春「マッサージでもしようか?」
京太郎「んや、大丈夫。気疲れみたいなもんだから」
京太郎「適当にのんびりするだけでどうにかなるよ」
春「…そう」
一人、京太郎の部屋に残っていた春は、彼の言葉に気遣うような視線を送る。
彼女にとって、京太郎は唯一、自分が仕えるべきと決めた主なのだから。
出かける前まではまったくなかったはずの疲労感がどうしても気になってしまう。
そして何より ――
春「……そんなに宮永さんとの話は疲れた?」
京太郎「んな!?」
春「やっぱり」
春から告げられた言葉に、京太郎は驚きを隠しきれなかった。
ついさっき帰って来たばかりの京太郎は、咲と出会った事を誰にも話していないのだから。
夕飯前の神事を済ませる為、別行動をしている小蒔にも、厳重に口止めを頼んである。
小蒔はあまり秘密を守れるタイプではないが、しかし、春どころかこの部屋にさえ近づいていないはず。
ずっとこの部屋でのんびりしていたはずの春が、どうして咲の事を知っているのか、京太郎にはまったく分からなかった。
京太郎「な、なんで分かったんだ?」
春「…京太郎の身体に皆とは違う匂いが染み付いてた」
春「こんなにハッキリ残るって事は、よっぽど長く抱きついていた証拠」
春「当然、そんな事を、京太郎が普通の相手に許すはずがない」
春「許すとすれば、お姉様か、何時もの三人くらいだけれど」
春「でも、京太郎の身体に染み付いているのは皆が普段、使っているシャンプーとは違う匂いだった」
春「そもそも、彼女たちとの関係は比較的良好だけど、京子として一線を護った付き合いをしてるから」
春「帰って来て早々、ため息を吐かなきゃいけないような事には発展しづらい」
春「以上の事を踏まえて、導き出される相手は…」
春「普段、京子の側にいないのにも関わらず、京子がため息を吐いてしまうほど押し込まれてしまう人」
春「その条件に一致するのは鶴田さんか、宮永さんのどっちかだけ」
春「で、鶴田さんには、アポもなしに京子に会いに来る理由なんてまずないから、消去法で宮永さんかなと」
京太郎「すげぇな…」
淡々と語られる推理は、彼女の主観が強く入ったものだった。
京太郎の事を良く理解していなければ、すぐさま正解から道を踏み外してしまいそうなそれは、ズレる事なく正解に行き着いている。
まるで名探偵さながらのその推理に、京太郎から感嘆の言葉しか出てこない。
ここまでピタリと言い当てられると、誤魔化す気さえ起こらなかった。
春「…まぁ、一番の理由は女の勘」
京太郎「女の勘って…」
春「…自覚してない?」
春「襖を開けて私を見た時、一瞬だけど気まずそうな顔をした事」
京太郎「…してたか?」
春「してた。だから、私に言えないような事があったんだって、すぐに分かった」
京太郎「oh…」
そんな京太郎の前で、春はそっと瞼を落とす。
普段よりも数ミリ下がったそれは、彼女が不機嫌になっている証だ。
咲と会っていた事と、それを隠そうとした事。
その不満を、一見、平穏な顔で訴える春に、京太郎は気まずそうな声を漏らした。
春「…で、何があったの?」
京太郎「いや、その…」
春「……大丈夫。皆には秘密にするから」
春「絶対に誰にも言わないし、京太郎の味方で在り続けるって約束する」
京太郎「……」
春「…本当に宮永さんと出会ったのなら、きっと今の京太郎は大変なはず」
春「神代家の事を良く知ってる人間にアドバイスして貰えるのは重要だと思う」
促すような春の言葉に、京太郎は即答する事が出来なかった。
彼女の言っている事は正しく、またその声音にも嘘は感じ取れない。
この一年、誰よりも身近に居てくれた春ならば、きっと秘密にしてくれるだろうとも思う。
それでも打ち明けるのを躊躇ってしまうのは、さっきの出来事が彼女にとって決して好ましいものではないからこそ。
春「…宮永さんの為を考えたら答えは決まっていると思う」
京太郎「そういう言い方は卑怯だろ」
春「京太郎が言ってくれないから仕方ない」
京太郎「まぁ、それは悪いと俺も思ってるけどさ」
京太郎「ただ、そんな事言われたら、俺が何を言っても、咲の為になるじゃないか」
春「…違うの?」
京太郎「無関係だとは言わないけれど、それだけが理由じゃねぇよ」
京太郎「少なくとも、俺は春の事を信頼してるから、言おうと思った訳だしな」
春「京太郎…」
しかし、当人にここまで言われて、隠し事を続ける訳にはいかない。
春の言っている事が正しいと京太郎も内心、認めているのだから。
何より、これからどうするべきなのか、京太郎はまるで分かっていない。
情報も力も何もかも不足している彼にとって、屋敷の中で誰よりも味方になろうとしてくれている春の協力は必要不可欠だった。
京太郎「…ただ、本当にややこしい話だし、聞かなかった方が良かったって思うかもしれないぞ」
春「今更。そんなのこのお屋敷に来てから、沢山、経験してる」
春「それにここまで来て、聞かない方が逆に気持ち悪い」
京太郎「分かった。んじゃ、壱から順に説明させて貰うな」
それでも引いた最後の予防線を春は軽々と乗り越える。
最初から決まっていたかのように即答する彼女に、京太郎もまた心を決めた。
色々と知られてはまずい情報もあるが、春がそれを悪用する事はない。
それを口にするべき時が来るまで、ずっと心に秘めてくれるはずだ。
そんな信頼の言葉を胸中に浮かばせながら、事の経緯を口にする。
京太郎「って事なんだが…」
春「…そう」
その全てを説明し終えた京太郎に、春はそっと目を伏せる。
彼女も京太郎と咲が接触した事は分かっていたし、二人の関係が進展したのも理解していた。
だが、頭の中で理解していても、心の方はまた別なのである。
彼に恋する乙女としては、どうしても嫉妬を禁じ得ない。
京太郎の為に喜ぶべきだという意識はあるが、それは複雑な感情を解きほぐすほどではなかった。
京太郎「春…?」
春「大丈夫。私は冷静」
しかし、だからと言って、春は嫉妬で我を忘れたりはしない。
複雑な内心に表情が暗くなるが、あくまでもそれだけだ。
京太郎の現状や望みを加味し、自身がするべきアドバイスを考える。
春「……ただ、ちょっぴり、ほんの少しだけだけど、アドバイスには報酬が必要だと思う」
京太郎「…おいで」
春「ん…っ♥」
京太郎「っと」
だが、アドバイスと一口に言っても簡単に出てくるようなものではない。
春は神代家の事を京太郎よりも知ってはいるが、全てを理解している訳ではないのだ。
六女仙それぞれの性格嗜好なども相まって、容易く即答は出来ない。
ならば、答えが出るまでの間、京太郎に甘えさせて貰った方が良いだろう。
そうすれば、自分の中のモヤモヤも吹き飛ぶし、何より。
春「(さっきの溜息は、宮永さん達の相手に疲れたからだけではなかった)」
京太郎が幼なじみと結ばれる為には、六女仙を説得するだけでは足りないのだから。
神代に属する様々な権力者を、説き伏せ、首を縦に振らせなければいけない。
その道程が辛く険しい事を知っているからこそ、京太郎は溜息を漏らしてしまった。
それを感じ取った春は、自身の身体を精一杯、京太郎へと押し付ける。
春「…元気出して」
京太郎「ありがとうな」
豊満に育った自慢の胸を惜しげも無くすり寄せながらの言葉に京太郎も気恥ずかしそうに返した。
春の要求が嫉妬から出たワガママだけではない事を、彼もまた気づいている。
自分を気遣って、こうして身体全体で包み込むように抱きつく彼女が嬉しくて、そして擽ったい。
春「…それで、宮永さんと京太郎の事だけれど」
京太郎「うん」
春「…実際、それほどハードルは高くはないと思う」
京太郎「そうなのか?」
春「うん。京太郎は須賀家最後の生き残りで、姫様との婚姻が決まってるから」
春「このままじゃ須賀家が取り潰しになるし、もう一人娶らせる予定だった」
京太郎「…相変わらず、俺の意思は度外視なんだな」
京太郎にとって結婚とは人生の一大イベントだ。
一生を添い遂げる相手と将来を誓うそれを神聖かつ不可侵なものだと思っている。
だが、そんな彼の考えとは裏腹に、結婚までの道筋は既に知らない誰かによって敷かれていた。
神代家の横暴には慣れたつもりだったが、ついつい溜息が出そうになる。
春「とは言え、六分家の一つを再興させるのに普通の女の子じゃダメ」
春「せめて同じ六分家の血筋をって事で、最有力候補は石戸分家の明星ちゃんだった」
京太郎「それって明星ちゃんも…」
春「知ってる」
京太郎「あー…なるほどな」
春の言葉に京太郎は得心したように頷いた。
最初から明星が比較的、好意的だったのはただ同情があったからだけではない。
ともすれば、自身と結ばれる相手だからこそ、仲良くしようとしてくれていたのだ。
本来なら秘すべき性癖 ―― 霞ラブをあけすけに伝えてくれていたのも将来を見据えての事だったのだろう。
春「勿論、明星ちゃんは霞さんに何かあった時、石戸家を継ぐ役目があるから」
春「有力候補というだけで確実と言う訳ではなかったし、違う誰かをねじ込むのはそれほど難しくはないと思う」
春「ましてや、宮永さんは私達とはまた別の、それでいてとても強い力を持っている人」
春「それを分家筋に取り込みたいと思う人は、決して少なくはないはず」
京太郎「そうか…!」
そう思う京太郎の前で、春は淡々と言葉を続けた。
それに光明を見出した京太郎はその声音を明るくする。
そんな彼の下で、春はおずおずと口を開いて。
春「……でも、だからと言って、容易い道のりじゃない」
春「そもそも京太郎の存在を危険視してる人も少なくはないから」
春「京太郎の意見を通さず、飼い殺しにするべきだって考える人はそこそこいる」
京太郎「…つまり種馬に徹しろって事か?」
春「…言い方は悪いけれど、そんなところ」
春は言葉を濁したが、そちらの意見の方が神代家では主流だった。
幾ら彼らが現代社会の常識から外れているとは言え、人の心が完全に分からないほど愚鈍ではない。
その中枢を担う者達からすれば、須賀京太郎は神からの福音であり、神代を滅ぼしかねない猛毒でもあるのだ。
必要以上の権力は与えず、あくまでもお飾りの頭首に留めるべき。
既得権益を護ろうとする彼らからすれば、それは当然の結論だった。
春「京太郎はそんな彼らを従わせなければいけない。その為に必要なのが」
京太郎「必要なのが?」
そこで春が言葉を区切るのは内心、迷いがあるからだ。
自身の至ったその考えは、きっと間違ってはいない。
だが、それは自分にとっても京太郎にとっても、辛い道を歩ませるものなのだ。
京太郎にそれを教えて本当に良いのだろうか。
そんな言葉が土壇場で彼女の心に浮かび上がってくる。
春「(…でも)」
春の躊躇いは決して小さいものではない。
ともすれば、彼女に答えを誤魔化させていたかもしれないくらいに。
しかし、京太郎の顔は真剣で、覚悟を感じさせるものだった。
そんな彼が自分のことを頼ってくれているのに、応えない訳にはいかない。
胸の痛みにそう言い聞かせながら、春はゆっくりと言葉を続ける。
春「……六女仙の完全攻略」
京太郎「はい?」
春「一応、言っとくけれど、冗談でも嘘でもない」
春「六女仙は後にそれぞれの分家を率いる立場になるから」
春「皆で団結すれば、こっちの要求を無視出来ないはず」
分家頭首が持つ権力は強大ではあるが、決して最大ではない。
それぞれの分家を実質的に支配しているのは、数代前の六女仙達なのだ。
神代家頭首が神代家において最大の権力者ではないように、分家もまた影の支配者によって牛耳られている。
しかし、彼女たちは分家を裏から支配する者達であり、容易く表側に出てこれる存在ではない。
現役の六女仙が、分家の頭首達が、一斉に反旗を翻せば、分が悪いのは彼女たちの方だ。
春「勿論、今のままでも皆は京太郎の為に協力はしてくれる」
春「皆は京太郎の事が大好きだから」
春「京太郎が理不尽な扱いをされて見過ごす事なんて出来ない」
春「……でも、宮永さんの為に協力は出来ないって言う人は一人や二人じゃないと思う」
京太郎「そうだよなぁ…」
その為に必要な土台は既に出来上がっている。
六女仙の全ては京太郎によって堕とされ、恋する乙女になってしまったのだから。
神代家頭首となる京太郎を中心に据えれば、協力は出来る。
が、それはあくまでも京太郎の為だからこそ。
幼いころからずっと一緒に暮らしていた『家族』ならばまだしも、『外』の人間である咲の為に足並みを揃えられない。
春「だから、京太郎は皆を堕とさなきゃいけない」
春「それも並大抵の堕とし方じゃなく、京太郎がいなきゃ生きていけないくらいに」
春「京太郎の言う事なら何でも聞いてしまうくらいに依存させなきゃダメ」
京太郎「マジかー…」
幼なじみと結ばれる為には、幼なじみ以外の少女達を堕とさなければいけない。
いっそ理不尽なその答えに京太郎は巫山戯ていると返す事が出来なかった。
春の言葉は真剣そのもので、なおかつ、その正しさを彼自身認めるところではあるのだから。
受け入れがたくはあるが、理性ではそれが必要であるという事が分かる。
京太郎「女の子に言う事聞かせる為に骨抜きにするとか…完全にヒモ男の発想だよな」
春「…やっぱり辛い?」
京太郎「そりゃあな。正直、そんな目的で皆と仲良くなるのは遠慮したい」
京太郎「ましてや、俺はついさっき自分の気持ちに答えを出したばかりなんだ」
春「答え?」
京太郎「あぁ。俺は皆の事が好きなんだってさ」
春「ぁ…♥」
春の事を抱き締めながら、京太郎は自身の『答え』を口にする。
本来ならそれは約束の日まで胸の内に秘するつもりだったが、こうも状況が変われば話は別だ。
春の献身に応える為、彼女達の事が好きだとハッキリと口にする。
そんな彼の胸の中で、春はブルリと震えて。
春「…ほ、本当?」
京太郎「あぁ。本当だよ」
京太郎「家族愛だとかそういう誤魔化しじゃない」
京太郎「俺は本気で皆の事を独り占めしたいし、他の男になんかやりたくない」
京太郎「皆の気持ちに応えたいし、ずっとこうして皆で暮らしたいって心からそう思ってる」
春「っ♥」
そのままおずおずと口にした確認の言葉に、京太郎は力強く応えた。
自身でも最低と感じるその答えは、しかし、決して揺るぐものではないのだから。
例え、相手が誰であろうと、誰に非難されようと、こうして言葉にする事が出来る。
春「京…太郎…♥」
京太郎「悪いな。答え出すのが遅れて」
春「ううん…良い」
春「それを聞くまいとしてたのは私達の方だし…何より…」
春は京太郎と想いを通わせるのは難しいと思っていた。
彼女たちの環境は特殊で、またライバル達は自身よりも魅力的な美少女ばかり。
無論、手を抜くつもりはなかったが、そんな彼女たちを出し抜いて、京太郎の寵愛を受けられる自信は春にはなかった。
春「私は今、凄く幸せ…♥」
春「今まで生きてきた中で…一番、幸せだから♥」
京太郎「そっか」
それでも春は一生を彼の為に尽くすつもりだった。
例え、愛されなくても関係はない。
彼女にとって須賀京太郎とはレーゾンデートルに等しい存在なのだから。
妾の一人として、彼の子を孕む女として、その側に居られるだけで十分。
そう思っていた彼女は、京太郎の答えに ―― 例え妾の一人としてでも愛してもらえると言う言葉に望外の喜びを覚える。
春「京太郎…♥」
京太郎「おう」
自然、その喜びは、彼女の胸の内で収まらない。
滾々と湧き出る泉のように、胸の底から溢れ出てくる。
それは何時しか春の目尻に浮かぶ涙となり、ポロポロと身体の外へと漏れ出した。
それでも尚、なくなる事はない感情に春は幾度となく想い人の名前を呼び、京太郎はそれに応える。
その手で彼女の背中を慈しむように撫でながら、飽きる事なく、何度も何度も。
春「ぐす…」
京太郎「落ち着いたか?」
春「…うん。ごめん」
京太郎「いや、そんだけ嬉しかったって事だろうしさ」
京太郎「謝る必要なんてないって」
十分ほど経過した頃にはそれも落ち着きを見せ始める。
嬉し涙を流し続けたお陰で、湧き上がる感情から激しさが抜けていったのだ。
だが、春の胸中から、幸福感を伴う嬉しさがなくなった訳ではない。
さっきのような激しさはないものの、彼女の心と身体は未だ喜びで満たされていた。
春「…私はどうしたら良い?」
京太郎「どうしたらって?」
春「私、京太郎に何かしてあげたい」
春「ううん、してあげなきゃいけない」
それを春は奉仕への欲求へと変えていく。
元々、彼女は献身的な性格で、自己評価も低い。
何より、心の底から京太郎を想っている彼女にとって、今、優先するべきは自分の事ではなかった。
自分をこんなにも喜ばせてくれた京太郎にお返しがしたい。
この嬉しさの半分でも良いから、彼を喜ばせてあげたい。
いっそ衝動に近いそれに春は唇を動かし続ける。
春「…おっぱい揉む? それとももっとエッチな事したい?」
春「私、何でも良いよ…♥」
春「京太郎にされるならどんな変態なプレイでも喜んで付き合う♪」
春「ううん…付きあわせて欲しい♪」
春「京太郎の性癖に身も心も染めて欲しい♥」
京太郎「ま、待って。落ち着いてくれ」
切れ目のない春の言葉に、京太郎は困惑の声を返した。
春ほどの美少女に迫られるのは嬉しいが、幾らなんでもいきなり過ぎる。
まだ告白したばかりでそれは、あまりにも段階を飛ばし過ぎだろう。
春「こんな状態で落ち着けるはずない…♪」
春「だって…私、今、京太郎の事好きになったんだから♥」
春「京太郎の事もっと好きになって…おかしくなりそうなくらい大好きになってる♥」
春「私は今、完全に京太郎に堕とされちゃった…♥」
無論、そんな京太郎の躊躇いも春は分かっている。
だが、彼女はもうそれではどうしようもないほどにタガが外れてしまったのだ。
自分の全てを彼に捧げたい。
滝見春と言う女をあますところなく味わって欲しい。
今までも幾度と無く感じたその欲望は、今、最高潮に達していた。
春「だから…しよ…♥」
春「今日こそエッチしよ…♪」
春「両思いセックス…♥ 私と京太郎の初めてのセックスぅ…♥」
春「告白された記念日セックスしたい…♪」
京太郎「ぬおぉぉ…」
抱きついたまま、耳元で囁かれる春の声に京太郎の理性も揺れる。
元々、彼は禁欲続きで、ロクに自己処理も出来ていないのだ。
霞と添い寝をした時には幾分、スッキリもするが、それも完全ではない。
そんな彼にとって、春のストレートな誘惑は拒み難いものがあった。
自分から告白し、ついに想い通わせたと言う事もあって、本能が鎌首をもたげる。
京太郎「す、ステイステイ」
春「…ダメ?」
京太郎「ダ、ダメだ」
春「…ダメって顔じゃないのに?」
京太郎「ダメって顔じゃないけどダメだ」
春「ここは…もうその気なのに?」
京太郎「そ、その気どころかヤる気満々だけどダメだ」
自然、大きくなる肉棒に春は身体をすり寄せる。
スリスリと下腹部で刺激してくるその仕草だけで、京太郎の声は震えた。
しかし、だからと言って、一時の欲望に負ける訳にはいかない。
何人もの少女たちと交わした約束を反故には出来ないと理性を引き締める。
春「……でも、練習は必要だと思う」
京太郎「れ、練習?」
春「そう。京太郎はコレから六女仙を堕とさなきゃいけないから…♥」
春「こういう色事を使いこなす必要も出てくるはず…♪」
京太郎「ぅ…」
しかし、一分もしない内に京太郎は言葉を詰まらせてしまう。
春が用意したそれは明らかに名目でしかないが、だからこそ、一定の正しさがあるのだから。
目的の為、婚姻が本格化するまでの間に、六女仙全員を籠絡しなければいけない。
その為には色事でも何でも、使えるものは全て使うべきだと彼も理解していた。
春「…私は練習台♥」
春「京太郎の目的の為に利用するだけ…♪」
春「練習なら…約束を破る事にはならない…♪」
京太郎「そ、そういう言い方は卑怯じゃないかな?」
春「…京太郎がヘタレだから悪い…♥」
春「そういうところも好きだから良いけど…♪」
京太郎「おうふ…」
その声に媚と甘さを浮かべながら、春はペロリと京太郎の首筋を舐めた。
チロチロと舌先を揺らしながらのそれに、彼はゾクゾクとした感覚を覚える。
それに想わず声を漏らしてしまう京太郎に、春はクスリと笑った。
春「…どうするの?」
春「京太郎の想いは…その程度?」
春「据え膳一つ食べられない程度の覚悟で…皆を籠絡出来るの?」
京太郎「あー…」
不可能だ、と京太郎は思わない。
彼女たちがどれほど自分の事を想ってくれているのかを彼は肌で感じて来たのだから。
だが、それぞれ独占欲を覚えながらも、ハーレムを許容してくれる彼女たちを完堕ちさせられる自信まではない。
その強い想いが、女としての意地が、仲間への優しさが、障害となるのは目に見えている。
それらを残り一ヶ月で乗り越え、一人残らず、完全な虜とするのは現状では不可能に近い。
春「…それとも私は理由があっても抱きたくないような女…?」
京太郎「だから、そういうのは卑怯だってば…」
今の京太郎にあるのは、春を抱けない理由だけではない。
春を抱いた方が良い理由を、彼は背負ってしまったのだ。
そんな状態でも尚、拒み続けられれば、女としてのプライドが傷つく。
これまでも何度か同じ言葉を口にしてきたが、その言葉は今までで一番、悲しそうなものだった。
そんな彼女を卑怯だと言いながら、京太郎はそっと肩を落として。
京太郎「…言っとくけど、あくまでも練習だからな」
京太郎「本番は絶対にしないから」
春「…ゴム有りは練習に入る?」
京太郎「入らねぇよ」
春「えー」
京太郎「えーじゃありません」
それが京太郎にとって、譲歩出来るギリギリのラインだった。
既に自己嫌悪が胸の内に巣食っているが、これ以上、自分を嫌いになりたくはない。
あの時、初美や湧に言った言葉は何だったのかと後悔しない為にも明確な線をしっかりと引いておこう。
そう思った京太郎に、春は不満で一杯の声を返した。
京太郎「コレはあくまでも練習なんだろ?」
京太郎「だったら、そこまでする必要はない」
京太郎「他の子にだって、そこまでヤるつもりはないんだからな」
春「…でも、京太郎はコレから鉄火場に飛び込むようなもの」
春「一つ加減を間違えて、主導権を握りきれなかったら、睡眠薬盛られて睡姦されるかも」
京太郎「いやいや、幾ら籠絡するつっても、相手は霞さん達だぞ」
京太郎「流石にそんな事にはならないだろ」
京太郎は知らない。
他ならぬ霞が、添い寝を頼む度に睡眠薬を盛っている事も。
自身が寝入った後に、病的なまでの熱心さで肉棒を舐めしゃぶっている事も。
その最中、自身を慰める霞が一晩で幾度となく絶頂している事も。
知らないどころか、想像すらしていなかった。
春「…………」
京太郎「いや、ないよな?」
春「…ぶっちゃけ、私は興味ある」
京太郎「おい」
不自然な沈黙の後、ポツリと漏らした春の言葉に京太郎の頬は引き攣った。
鹿児島において、誰よりも信頼している親友兼恋人が、不埒な欲望を抱いている。
それは彼女と同じ部屋で寝る京太郎に、貞操の危機を感じさせるに十分過ぎた。
流石に今すぐ春を引き離すほどではないが、冗談であって欲しいと思うくらいには。
春「だって、京太郎は焦らしすぎ」
春「焦らされ過ぎると女の子だって、エッチしたくなる」
京太郎「まぁ、それは俺も悪いとは思ってるけどさ」
こうして春の誘惑を拒むのは一度や二度ではない。
その関係が友人と呼べるようになった頃から、幾度となく袖にし続けているのだ。
彼女が拗ねるのも無理はないと京太郎も思うが、さりとて、これ以上の譲歩は出来ない。
そこを譲ってしまえば、他の皆を堕とすどころか顔向け出来なくなってしまう。
春「じゃあ、私で女の子をメス堕ちさせる腰使いの練習…」
京太郎「ダメ」
春「…本当にダメ?」
京太郎「本当にダメ」
春「…私の中、きっと気持ち良いと思う」
京太郎「ぶっちゃけこうして抱きしめてるだけで気持ち良いけどダメだ」
春「むむむ」
京太郎「何がむむむだ」
ほんの数分前に繰り広げた問答を、再び再現するようなやり取り。
しかし、京太郎の声はさっきよりも強く、そして固いものだった。
絶対に譲れないラインだけは死守しようとする彼を春は攻めきれない。
これ以上、押しても時間を無駄にするだけ。
『京太郎の童貞』を楽しみにしていた春はその結論に悔しそうな声を漏らした。
春「じゃあ、とりあえずはそれで良い」
春「後は流れでしっぽりむふふと行くから」
京太郎「それ口に出してる時点で台無しじゃないかなぁ…」
春「京太郎もこれくらい予想してるだろうし問題ない」
さっきの問答で、春は京太郎の防衛ラインが思った以上に強固なものである感じ取った。
欲望にブレる事はなく、淡々と拒絶の意を返す彼は、不意打ちでどうにか出来る相手じゃない。
そもそも、それで欲望に流されるような男ならば、春と京太郎は幾度となく身体を重ねている。
それでも尚、一線だけは護り続けてきた鋼の理性には、下手な小細工よりも真正面からの直球勝負の方が効果的。
これまでの経験からそう判断を下したと言うのが一つ。
春「…それに結構、緊張もしてる」
京太郎「ぅ」
もう一つは、彼女もまた緊張しているという事だ。
どれだけ積極的で、どれほど京太郎の事を愛していると言っても、春は処女なのだから。
初めてを目前として、意識してテンションをあげている面は少なくはない。
それをポツリと告白する彼女に、京太郎の胸はドキリと反応した。
春「…今、ドキっとした?」
京太郎「結構どころじゃなくドキっとしたわ」
春「ふふ…♪」
いつも通りにも見えた彼女が一瞬だけ覗かせた弱々しい顔。
それに庇護欲と愛らしさを感じた京太郎は素直な言葉を返す。
春が少しでも緊張を解せるようにと紡がれたそれに彼女は頬を綻ばせた。
これまで恋い焦がれてきた想い人が、自分にドキドキしてくれている。
その喜びに背を押されるようにして、春は身体をすり寄せた。
春「私もドキドキしてる…♥」
春「これから京太郎に何をされるのか…♪」
春「どんな事をするのか…♪」
春「緊張と期待…それと興奮で…胸の中、ドキドキって鳴りっぱなし…♥」
それは春にとって、隠さなければいけない事ではない。
ともすれば、いやらしいと思われかねないそれも、京太郎にならば容易く口に出来る。
いや、寧ろ、自分は喜んでいるのだと、期待しているのだと、彼に伝えたくて仕方がない。
京太郎「そっか。それじゃあ…」
春「っ♪」
そんな春に京太郎は手と声で応えた。
その右手で抱きついたままの春を上向かせ、左手で彼女が逃げないようしっかりと抱きしめる
そのままゆっくりと近づく顔からは低く抑えられた声が漏れた。
いっそ扇情的にも思える魅惑的な声音と近づいていく顔。
そして上向かせられたその指先から、春は京太郎が何をするつもりなのかを悟る。
京太郎「…まずはキスから。良いよな?」
春「うん…♥」
キスの練習。
それを拒む理由は、春にはなかった。
そもそも、彼女は最初からそれを望み、そして期待していたのだから。
頷きながら、抵抗なく瞳を閉じた春は、ほんのすこしだけ唇を突き出し、彼のキスを待ち続ける。
京太郎「ん」
春「ふぁ…♪」
数度目になる京太郎とのキスに、春の口から声が漏れ出る。
唇が触れ合った瞬間、胸中に広がった甘い感覚はとてつもなく大きなものだった。
心臓が甘く蕩けてしまいそうなその感覚は、慣れる気配がないどころか、する度に大きくなっている。
春「(これだけでも…幸せ…♥)」
春「(京太郎からのキス…♪ キス…ぅ♥)」
ましてや、春はついさっき京太郎と想いを通わせたばかりなのだ。
未だトキメキっぱなしの胸はキスの感覚を何倍にも膨れ上がらせる。
それに幸福感を感じながら、春の方からも唇を触れ合わせた。
自然、二人の間で幾度も繰り返されるキスは、少しずつその激しさを増していく。
春「ちゅぅ…♪」
それはもうただのバードキスではない。
お互いに唇を吸い付けるようなキスは、子どもが好むそれとは一線を画していた。
貪り、貪られるような感覚すら覚えるほどの接吻に、春の心は夢中になる。
もっと京太郎とキスしたい。
もっともっと彼に貪られたい。
もっともっともっと彼の事を味わいたい。
その一念でキスを交わす彼女の中にヌルヌルとした粘膜が入り込んでくる。
春「(あぁぁぁぁ…♥)」
その正体を、春は間違えたりしない。
彼女は既に一度、京太郎と同じキスを ―― お互いの舌を絡ませ合うフレンチキスをした事があるのだから。
何度も思い返し、そして自分を慰めたその感覚に、春の心は歓喜で震える。
愛しい人に、恋人だけのキスをされている。
しかも、今度は雰囲気や欲情に流されてではなく、自分の意志でキスしてくれている。
自らの想いが成就すると信じていなかった春にとって、それは再び嬉し涙を漏らしてしまいそうなほど嬉しい事で。
春「く…ふぅ…♪」
何より、彼女の身体は興奮していた。
久方ぶりに粘膜の内側へと招き入れた愛しい人の一部。
それに喜び悶える粘膜が、彼を味わおうと絡みついていく。
舌は勿論の事、上顎や下顎でも京太郎を求めるようなキスに春はくすぐったさ混じりの快感を感じる。
春「(私…もうスイッチ入りそうになってる…♪)」
春「(キスだけで…京太郎とエッチしたいって気持ちが強くなってる…ぅ♥)」
無論、それは春を絶頂へと追いやるほど激しくも、また強くもない。
彼女の性感は未だ発展途上にあり、絶頂の経験もまた数えるほどしかないのだから。
しかし、そんな春でも、自分が感じているそれが快感であるという事が分かる。
自分の感じているものはとても弱々しく、もっと気持ち良くなれるという事もまた。
春「ん…♥ れりゅぅ…♪」
京太郎「(ぬおぉぉぉ…)」
だからこそ、興奮ではなく、欲情を強めていく春はねっとりと京太郎と舌を絡ませる。
口腔から漏れ出る粘液を塗りたくるようなそれに京太郎は胸中で悲鳴をあげた。
彼女のキスは決してテクニックに優れている訳ではないが、その分、愛情が溢れんばかりに詰め込まれている。
こうして舌を絡ませる度に、『好き』が伝わってくるようなその熱に、童貞の京太郎が平然としていられるはずがない。
既に半勃起している肉棒に、さらなる力が込められていくのが分かる。
京太郎「(ヤバイ…思った以上に春とのマジキス気持ち良い…)」
京太郎「(あの時は興奮と困惑で、あんまり自覚してなかったけれど)」
京太郎「(幾分、冷静な今はそれがダイレクトに頭と身体に伝わってきてる)」
京太郎「(こ、コレ…耐えられるのか、俺…)」
元々、京太郎は人並みに比べて、性欲旺盛なタイプだ。
しかし、今はそれを理性によってなんとか抑え、禁欲生活を続けている。
そんな状態で続けられるフレンチキスに、理性が音を立てて削れていくのを感じた。
さっきはあんな風に格好つけたが、このままでは流されてしまいかねない。
春と最後までセックスしたいという気持ちが、胸中で膨れ上がっていくのが分かる。
京太郎「(つーか…春の奴ってホント可愛すぎなんだよ)」
京太郎「(こうしてキスしてる最中もエロい声漏らして…目を閉じてても分かるほどのうっとりっぷりで……)」
京太郎「(その上、俺に逃げないでって言うみたいに…両頬包まれてる)」
京太郎「(逃がさないようにするような力強さじゃなくて、縋るような弱さで俺の顔を撫でて…)」
京太郎「(俺の事が好きなんだって全身でアピールしてるみたいだ…)」
京太郎以外と口づけした事がない春は、まだまだキスに慣れていないと言っても良い。
だが、彼女はその分、身体全体で京太郎の事を求め、愛そうとしている。
その指先の一つ一つから愛しさを感じてしまう京太郎は、自身の不利を悟った。
京太郎「(このままじゃダメだ)」
京太郎「(ほんの少しでも弱気になったり、主導権を握られたら…もう立ち直れない)」
京太郎「(絶対に最後までヤってしまう…)」
京太郎「(だから…)」
春「んんんっ♪♪」
とは言え、彼は負け試合を演じるつもりはなかった。
春はとても魅力的で、その上、自分を愛してくれているが、それとこれとは話が別。
どれほど心地良かろうがキスだけで流されるような男では、六女仙の籠絡など不可能だ。
そう自分に言い聞かせた京太郎は、ゆっくりと春の身体を撫で始める。
春「(京太郎の手が…やらしくて…優しくてぇ…♪)」
春「(これぇ…♥ これ良い…♪)」
春「(幸せなのと気持ち良いのが同時に来る…ぅ♪)」
キスはキスだけにあらず。
全身を使って行う愛情表現だ。
それを他ならぬ春から教わった京太郎は、それを実践し始める。
最初は背中に、その後は肩に、それから脇腹に。
自身の身体を確かめるようなその手に春の幸福感はまた強くなる。
春「(キスなのにどんどん気持ち良くなる…♥)」
春「(身体が京太郎にエッチくされていくのが分かる…♪)」
自然、それは春の感覚をより敏感にしていく。
今もクチュクチュと絡みあう舌も、メスとして十分過ぎるほど成長した身体も。
どちらも京太郎を感じ、京太郎に愛される事で開発されていく。
ともすれば、困惑さえ覚えてしまいそうなそれを、しかし、春は厭う事はない。
彼女にとって、須賀京太郎は自身の全てと言っても過言ではない相手なのだから。
彼に染められる事を、至上の喜びとして受け止め、身体の芯を蕩けさせていく。
京太郎「(段々、春の身体から力が抜けて、こっちに寄りかかってきてる)」
京太郎「(って事は、キスとスキンシップの同時攻めは結構、効果的なんだな)」
京太郎「(まぁ、流石に他の皆にも春ほど強く効くって訳じゃないだろうけれど…)」
キスの最中はそれだけに集中したい。
そう思う少女たちにとって、愛撫のように身体を撫でるのは悪手だ。
だが、加減さえ間違えなければ、きっとアドバンテージを握る事が出来る。
事実、今の春は先程よりも力を失い、受け身になりつつあるのだから。
完全に主導権を握り、好き放題にキスが出来る状況に京太郎は手応えを感じる。
京太郎「(その辺はまた実地で少しずつ試していくとして…今は)」
春「ふぁ…♥」
京太郎の手は今、春の脇腹を撫でていた。
なだらかな曲線を描くそのくびれは既に十分過ぎるほど敏感になっている。
ほんの少しの刺激で声を漏らし、嬉しそうに春がしがみついてくるのだから。
まるでもっと触ってと言わんばかりのその反応に、京太郎の手はさらに下へと降りていく。
春「きゅん…っ♪」
臀部。
尻たぶとも呼ばれる部分への刺激は、春の声に羞恥心を浮かべさせた。
だが、それでも彼女は京太郎から離れたりしない。
一瞬、驚いたように身を固くしながらも、ずっと彼へと身を委ね続けている。
そんな彼女の尻肉を、京太郎は大事そうにゆっくりと撫で回し始めた。
春「はぁ…んぅ…♪」
それは春にとって意外な攻撃だった。
京太郎が自他共認めるおっぱいフェチな事を、彼女はその身体で知っているのだから。
気を抜いた京太郎に、時折、その胸を覗き見される春は、真っ先に胸を揉まれるものだと思っていた。
そんな予想を裏切るように突如として始まった尻たぶへの愛撫は、彼女に快感を与える。
脇腹のように擽ったさ混じりのものとは違う、背筋を這い上がるような快感を。
春「(私…ゾクゾクしてる…♥)」
春「(京太郎にお尻撫でられて…今までで一番、気持ち良くなって…♪)」
春「(そんなところ…今まで自分でも触った事なんてなかったのに…♪)」
春のオナニーはクリトリスと乳首が中心で、ソレ以外は殆ど触った事がない。
時折、気分が盛り上がった時は秘所を弄る事もあるが、指を入れるまでに至った事はなかった。
そんなごくごく普通のオナニー遍歴の持ち主にとって、尻たぶで感じる快感は初めてのもの。
しかし、春はそれに戸惑う事なく、その快感を心地良いものだとして受け止める。
春「(これも京太郎の所為…♥)」
春「(京太郎のお陰…♥)」
春「(だから…気持ち良い…♪)」
春「(京太郎の手だからこそ…私、お尻でも気持ち良くなってるぅ…♥)」
それが他の男の手ならば、春は悲鳴をあげていただろう。
だが、他ならぬ京太郎に気持ち良くされている彼女が、それを拒む理由はない。
心の中から湧き出る悦びと快感に身を委ね、愛しい人とのキスだけに意識が傾いていく。
春「ぢゅる…♪ くちゅぅぅ♥」
二人がキスを始めてから既に数分が経過している。
その間、途切れる事はあっても、離れる事はなかった二人のキスは粘ついた音を伴うようになっていた。
口の端から唾液が溢れるのも構わず、延々と唾液を塗りたくりあった2つの粘膜は乾燥どころか粘液塗れになっている。
そんな舌での刺激をさらに求めて、春は粘膜を伸ばすが。
春「っ♪」
その途中に、京太郎の舌が撤退していく。
もう用はなくなったと言わんばかりの鮮やかな引き際に、春は我慢出来ない。
二度目のディープキスは、彼女の心を虜にするのに十分過ぎたのだから。
興奮と嫉妬任せだった以前よりもハッキリと感じられるキスをもっと味わいたい。
その一念で春は精一杯、舌を伸ばしてオネダリする。
京太郎「ちゅぅ」
そんな春の舌を、今度は京太郎が口の中へと受け入れる。
瞬間、彼女が感じたのは蕩けるような熱と染みこんでくるような甘さだ。
無論、それは今までのキスでも感じていた事だが、その濃度が、量が違う。
あちらこちらから感じる圧倒的なその量に春の心がきゅぅぅんと唸った。
春「(わ、罠…♪ これ…罠…ぁ♥)」
春「(京太郎…♥ ここに誘い込むつもりだった…♪)」
春「(ここで…私にトドメを刺すつもりぃ…♪)」
本能的に春は感じ取る。
このままここにいたら、自分はダメになってしまうと。
京太郎に骨抜きにされて、キス中毒になってしまうと。
京太郎の思うがまま弄ばれる肉人形になってしまうと。
しかし、それは滝見春と言う少女にとっては些細な事。
例え、罠であったとしても、関係ない。
京太郎がそれを望むのであれば、自分は存分に堕ちるまでだ。
春「んふぅう♪」
彼女の胸中がそんな言葉を思い浮かべた瞬間だった。
京太郎の舌は再び春の事を捉え、粘液と共にまとわりついてくる。
だが、それは彼女の口腔内で行われたものよりもやらしく、そして細かい。
舌の表面に生えた溝で擦り洗うようなその愛撫に春の舌は甘い快感を覚える。
京太郎「くぢゅ…りゅぅ」
だが、京太郎の愛撫はそれで終わらない。
激しい舌使いで春の事を弄ぶ一方で、唇の裏側の粘膜を彼女の舌へと押し付ける。
淫らな舌のそれとは違う、穏やかなその感覚は快感と共に混ざり合い、春の頭へと届いた。
自然、それは彼女の脳にとても心地良いものとして受け止められて。
春「(もっと…されたくなる…♥)」
春「(京太郎に…おしゃぶりされたく…なっちゃうぅ…♪)」
二人でキスするのとは違う。
一方的に京太郎に愛され、貪られるようなキス。
ともすれば独善的にもなりそうなそれが、しかし、春の心を何よりも掴んだ。
ずっとこうしていたい。
京太郎に思うがまま味わって欲しい。
そんな欲求に支配された春は、想い人のされるがままになる。
春「くふぅぅ…♪」
そんな彼女に与えられる刺激は様々だった。
これまでリードしてきたものの、京太郎は初心者なのだから。
元々が練習を意図したものであるし、アレコレ試して、何が女性に対して効果的なのか確かめなければいけない。
そう思った彼は、唇の粘膜だけでは飽きたらず、歯でのアマガミや口を窄めてのフェラなど、様々な愛撫を試す。
思いつくままに与えられるその愛撫に、春の身体は甘く反応し続けた。
何をされても気持ち良い上に、幸福感が絶えず胸の内から湧き上がって来たのである。
春「はぁ…あぁあ…♥」
人生でも指折りの幸福に心も身体も溶かされそうになった時間。
しかし、それは彼女が望んでいたほど長くは続かなかった。
舌を身体の外へと突き出し続けるのは、顎に強い負担を強いるのだから。
どれほどそれが幸せであろうと永遠に続けてはいられない。
キスを十数分と続けた頃には、痺れるような疲労感が限界に達していた。
京太郎「良し良し」
春「はふぅん…♪」
疲れすぎて、満足に口を閉じる事も出来ない春から、京太郎はそっと口を離す。
そのまま彼は右手を上へと持ち上げ、彼女の髪を優しく撫でた。
トレーニングの相手として頑張ってくれた春を労ろうとするそれに開きかけた春の目がまた閉じる。
疲れたところに与えられる想い人からのスキンシップは、到底、抗えるものではなかった。
京太郎「どうだった?」
春「ん…ぅ♥」
それが一段落した頃に、京太郎は春の耳元で囁く。
さっきと同じ落ち着いたトーンのそれに彼女の背筋はゾクゾクと快感を走らせた。
キス前よりも開発された春の身体は、欲情と相まって、声だけでも感じてしまう。
そんな自分に誇らしさにも似た感情を浮かべながら、春はコクンと頷いて。
春「…スガルゲンが沢山、補給できて素敵だった♥」
春「これなら他の皆も満足してくれると思う…♪」
京太郎「そっか」
京太郎「俺も…その素敵だったよ」
京太郎「やっぱり好きな子とするキスってのは良いもんだな」
春「~っ♥」
春の言葉は陶酔の色を強く浮かべるものだった。
彼女が幸福感に満たされているのがハッキリと分かるそれに京太郎は応える。
自分もまた素敵だったと、春が好きだからなのだと告げる言葉に、彼女の胸は震えた。
感動という言葉でも物足りない激しい感情が、彼女の中で荒れ狂っている。
春「京太郎…♥」
京太郎「…もっと欲しいのか?」
春「うん…♥」
春「もっとして…♪ もっともっと…京太郎を頂戴…♥」
京太郎「それじゃあ…」
いっそ溺れてしまいそうな激しい感情。
嵐のようなそれは彼女に京太郎を強く求めさせる。
まるでそうしなければ生きていけないような強い訴えを京太郎が拒めるはずがない。
これもまた練習なのだと理性の手綱を強めながら、小さく頷く。
京太郎「…一杯キスしてやるよ」
春「ぁ…♥」
そのまま京太郎は春を巻き込むようにして身体を反転させる。
それに春が声をあげた時には、彼女の身体は畳へと押し倒されていた。
まるで逃げ場はないのだと訴えるように自身に覆いかぶさる大きくて逞しい身体。
だが、その身体は押し倒す際に、彼女を抱きとめ、優しく畳へと横たえさせてくれたのだ。
何より、その相手が京太郎だと言う事実が、彼女の心に恐怖ではなく、陶酔を湧き上がらせる。
京太郎「ちゅ」
春「ふ…ぅ…♪」
そんな彼女に京太郎はキスをする。
だが、それはさっきのように唇に行われるものではない。
額、頬、鼻頭、顎、首筋。
まるで親愛の情を示すようにあちこちにキスの雨を降らせる。
そのどれもに心地よさを感じてしまう春の口から、甘い吐息がまた漏れだした。
京太郎「他はどうして欲しい?」
春「撫でて…♥ キスした…ところ…撫でて欲しい…♪」
春「京太郎の事をもっと感じられるように…一杯…♪」
京太郎「了解」
春「ふぁ…あ♥」
とは言え、春はそれに溺れてばかりはいられない。
これはただの睦事ではなく、京太郎の練習でもあるのだから。
彼の言葉に、彼女は自身の胸の内から欲求をすくい上げる。
そうすればもっと心地よくなれるのだと本能から湧き上がるそれに京太郎も応えた。
キスの痕を意識させるように指先で擽り、時折、爪で軽くひっかく。
自身の欲求を満たすだけではなく、さらにその上をイく愛撫に春の声はさらに蕩けていった。
京太郎「春はいい匂いがするな」
京太郎「黒糖みたいに優しくて甘い匂いだ」
春「はぅ…♪」
京太郎の甘い囁きに、春は呻き声を返してしまう。
彼女にとって黒糖とはただのソウルフードではないのだから。
思い出の『王子様』と自分を繋ぐそれは、好物と言う言葉でも物足りない。
そんな黒糖に自分の体臭を例えられた春の胸はキュンとときめいた。
京太郎「そう言えば、良い匂いがすると身体の相性が良いんだってのは春が教えてくれたんだっけ?」
春「そ、そうだった…かも…しれない…♥」
京太郎「んじゃ、春と俺は相性が良いんだな」
京太郎「だって、こんなに春が美味しそうに感じるんだから」
春「きゅぅ…♪」
京太郎にペロリと首筋を舐められる感覚は、心地よさとは一線を画するものだった。
ハッキリ快感と言っても良いそれは、春にとって不意打ちに近い。
ついさっきまで心地よさ重視だった愛撫の中から、急に快感が湧き上がってきたのだから。
ついつい身体が反応し、可愛い声が漏れでてしまう。
京太郎「可愛いな、春は」
京太郎「その上、敏感で、美味しそうで…堪らない」
春「は…あぁ…♥」
そんな春に京太郎はクスリと笑いながら、愛撫を続ける。
口づけ、撫で、舐め、囁き、春の事を昂ぶらせていくのだ。
自身で誘惑し、仕方なしにされているのではない。
愛しい人の意思で、想いで、自分は今、求められている。
春「(すごい…コレ凄すぎる…♥)」
春「(こんなにされたら…私、溺れちゃう…♪)」
春「(心も身体も幸せに呑み込まれちゃう…ぅ♥)」
その感覚は、春にとって容易く処理出来るものではなかった。
今まで京太郎と一線を超えそうになった事は数あれど、それは自分から京太郎を追い詰めての事。
本能任せに求められた事はあれど、こうも優しく愛撫された事は、今までに一度もない。
だからこそ、春は心地よさと幸福感を処理しきれず、胸の内に溜め込んでしまう。
結果、胸の中がはちきれそうになった彼女は本格的に感情に溺れ始めていた。
京太郎「春…」
春「っ♥」
今の彼女は言葉すらロクに浮かんでこない状態だった。
胸の中は京太郎で埋め尽くされ、思考も幸福一色で塗りつぶされそうになっている。
そんな彼女にとって、京太郎から齎された恋人繋ぎは堪らないの言葉でも物足りない。
普段から京太郎と恋人繋ぎはしているが、今の彼女はあまりにも敏感過ぎるのだ。
心も身体も彼に開発されつつある春は、触れられた指先から快感すら感じてしまう。
京太郎「春の手は綺麗だよな」
京太郎「結構、家事も手伝ってるのに、まったく荒れてなくて、スベスベで」
京太郎「こうしてるだけでも気持ち良いよ」
春「はわぁ…♥」
その上、京太郎は彼女の手に頬ずりしてくる。
愛おしそうに、その想いを伝えるように。
スリスリと顔を使って行われる愛撫に、春の頬が赤くなる。
本来、表情の変化に乏しいはずの彼女が紅潮を抑えられないほど、その心は蕩け始めているのだ。
京太郎「やっぱり…春だからかな」
京太郎「こうして手を繋いでるとドキドキする一方で安心もするんだ」
京太郎「春はどうだ?」
春「あ、あの…その…♪」
京太郎「嫌?」
春「っ!」
とは言え、その問いに沈黙を返す訳にはいかない。
今の春は京太郎の愛撫に嫌なものを感じているどころか、心の底から喜んでいるのだから。
そんな甘いやり取りが ―― 癖になってしまいそうなほど幸せな時間が、ここで終わってしまうかもしれない。
それに焦りを覚えた春は、動かない口の代わりにブンブンと首を左右に振った。
京太郎「じゃあ、好きか?」
春「ん…♥」
京太郎「そっか。なら、良かった」
京太郎「コレでもちょっと強引過ぎたかなって心配してたんだよ」
当然、京太郎も春が嫌がっていない事など分かっている。
そもそも普段の春は、自分から手を繋いで欲しいと強請る事も多いのだから。
大人しそうな外見からは想像もつかないほどスキンシップ好きな彼女は嫌がるどころか喜んでいる。
それを理解しながらも、こうして心配と口にしたのは、今のコレが『練習』だからこそ。
京太郎「春に嫌われたら生きていけそうにないからさ」
京太郎「頷いてくれて本当に安心した」
京太郎と彼女たちは仲良くなりたいという共通認識を抱き、共に生活してきた。
その御蔭で、京太郎は六女仙たちと順調に仲を深める事が出来たのである。
だが、今の彼は、ただ六女仙と仲良くなる事を目的としている訳ではない。
彼女達を完全に堕としきり、自身の言いなりにする事を目標にしている。
だからこそ、会話の主導権を握り続ける彼は、その声に不安と安堵を入り混じらせた。
春「そ、そんな事…」
京太郎「ない?」
春「絶対にない…!」
そんな京太郎に、春は力強く言い切る。
彼女にとって、京太郎は自身の全てと言っても良い存在なのだから。
京太郎にならば、自身の持つ全てを差し出してしまっても良い。
いや、いっそ捧げさせて欲しい。
心からそう思う春にとって、京太郎を嫌う自分など『滝見春』ではなかった。
京太郎「じゃあ、俺のお姫様になってくれるか?」
春「お、お姫様…?」
京太郎「そう。俺の、俺だけのお姫様だ」
春「~~~っ♥」
自身を『お姫様』と呼ぶその言葉は、春の胸に悲鳴をあげさせる。
春は京太郎の事を『王子様』だと思いながらも、それを口に出した事はないのだから。
特別扱いをして欲しいと思った事はあれど、お姫様と呼ばれたいと思ったことさえない。
しかし、それでも心の奥底にあった願望が、今、形になっている。
その悦びに彼女の心臓はきゅんきゅんと狂ったようにトキメキを繰り返した。
春「な、なる…♪」
京太郎「本当か?」
春「なる…♥ 絶対に…絶対になるぅ…♪」
いっそ不整脈にも近い激しくも甘い鼓動。
それに春は幼い笑顔が浮かべた。
陶酔と幸福感を隠す気などまったくない、蕩けた笑顔。
ふにゃりと言う音が聞こえてきそうなその表情に、京太郎も笑みで応える。
そのまま彼はそっと春の手を口元へと近づけて。
京太郎「じゃあ、改めて誓いのキス…だな」
春「ふぁぁ…♥」
口づけ。
それはさっきのような親愛や愛情を示す為のものではない。
敬愛と忠誠に彩られた契約の証だ。
だが、それを彼女が厭う事はない。
これで京太郎は自分のモノになった。
自分だけの『王子様』になった。
その実感が胸中に押し隠して来た独占欲を溶かしていく。
京太郎「これで春は俺のお姫様だ」
京太郎「だから、俺に何でも命令して良いんだぜ」
京太郎「春のされたい事、俺が何でも叶えてやる」
京太郎「俺が春の心も身体も満たしてやるから」
春「あぅあふぁ…♪」
そうして空いたスペースに、すぐさま陶酔と幸福感が入り込む。
最早、満たされているどころか溢れてしまっているその感情に、春は再び答えを見失ってしまった。
既に自分は十分過ぎるほど満たされている。
そんな簡単な言葉すら口に出来ず、ただうっとりと吐息を漏らすだけだった。
京太郎「はは。もう顔がトロトロだな」
京太郎「そんなに喜んで貰えるのは嬉しいけれど、それじゃ後が続かないぞ」
京太郎「これからもっともっと凄い事をするつもりなんだからな」
春「すご…♥」
京太郎「あぁ。春もして欲しいだろ?」
京太郎「こんなんじゃまだまだ足りないんだろ?」
言いながら、京太郎は春の顎に手を添える。
恋人繋ぎをしたままの手とは逆のそれは、そのままクイと彼女の顔を持ち上げた。
ほんの僅かに、けれど、しっかりと自分の方へと視線を向けさせる指先に春は逆らえない。
優しい顔のまま、熱っぽい言葉で詰め寄る彼にドキドキが収まらなかった。
京太郎「俺はまだまだ春の事を愛し足りない」
京太郎「もっともっと満たしてやりたい」
京太郎「俺の事を感じさせて、忘れられないくらい刻みつけてやりたい」
春「~~っ♪」
その瞬間の春は、言葉だけではなく呼吸すら忘れてしまった。
彼女は今の時点でも自分の身体から、感情が溢れてしまっているのを自覚しているのだから。
この上、愛情を注がれたら、自分は壊れてしまうかもしれない。
そんな言葉が、彼女の胸に浮かんでいた。
春「(でも…良い…♥)」
春「(京太郎になら…壊されたい…♪)」
春「(身も心もドロドロのぐちゃぐちゃになるまで…愛されたい…♥)」
だが、それは決して恐怖にはならない。
元々、春は京太郎を強く恋い慕っているのだから。
その上、この十数分の間に好感度も高まり続けているとなれば、恐怖を感じるはずがない。
むしろ、その瞬間を心待ちにして、京太郎に繋がれていない左手を胸元へと動かして。
春「はぁ…♪ はぁ…♥」
京太郎「へぇ…」
そのまま春は自身の胸元を乱暴に肌蹴させる。
言葉を口に出来ないほど満たされた彼女にとって、それは今現在出来る唯一の返事であり、誘惑だった。
今の自分はここに、京太郎の為に育てた自慢の胸に愛を求めている。
視線と仕草でそう訴える春の上で、京太郎は面白そうな顔をした。
京太郎「…分かってるのか、春」
京太郎「ここは俺の部屋で、もうちょっとしたら小蒔さんも帰ってくるかもしれない」
京太郎「そうじゃなくても、もう少しで夕食の時間で、きっと誰かが呼びに来る」
京太郎「それを理解した上で、俺とエッチな事してるのを見られるかもしれないと分かった上で」
京太郎「こうして…俺の事を誘ってるんだよな?」
春「きゅふ…ぅ♪」
言いながら、京太郎の指先は春のブラに円を描いた。
クリクリと乳輪の上をなぞるような手つきに、春の口は快感の声を漏らす。
キスや恋人つなぎでさえ快感を覚えてしまう彼女にとって、ブラ越しなんて関係ない。
それが京太郎の指先であるというだけで、ジュンと身体の奥を湿らせてしまう。
京太郎「…悪いお姫様だ」
京太郎「いや、ただ、悪いだけじゃなくて、淫乱で、変態なお姫様だ」
京太郎「エッチだとは思ってたが、流石にコレほどだと予想してなかったよ」
春「あううぅぅ…」
そんな春の耳に呆れるような声が届く。
勇気を出して、京太郎を誘惑しようとしたのがダメだったのか。
やはりもっとおしとやかな方が『お姫様』にはふさわしかったのか。
そんな後悔がシミのように、春の胸中に広がっていく。
京太郎「…………だけど、俺も悪い男だ」
京太郎「春のそんな姿を見て、我慢出来ない」
京太郎「エッチな春に応えたいって、もっと過激な事をしたいって思ってる」
京太郎「ダメだって分かってるのに、エッチな春を愛したくて仕方がないんだ」
春「あ…あぁぁ…♥」
しかし、それも一瞬の事。
春の事を悪しように評価した京太郎は一転して、その声を熱っぽく変えた。
その中に欲情の響きさえ込めた声に、春の心は不安と後悔から掬い上げられる。
代わりに広がる安堵の色は、春の声を、身体をフルフルと震わせた。
京太郎「春の所為で、こんな風になってしまったんだぞ」
京太郎「普通はこんな風になったりしない」
京太郎「お姫様のエッチで変態な要求にもNOと言えるはずだったのに」
京太郎「春の事が好きな俺だからこそ…こんな姿の春を見て、我慢出来なくなってるんだ」
独占欲混じりのその言葉は春の心に染みこんでいく。
自分の口にした事は本来ならば、拒絶されても仕方がない事なのだと。
それを受け入れて貰えるのは京太郎だけなのだと。
無論、普段の彼女ならば、それが彼の狙いだと気づいただろう。
だが、今の春はマトモな思考能力はなく、心までドロドロに蕩けさせられていた。
当然、その強引な話術の狙いが分かるはずもなく、心がまた一つ、京太郎へと依存していく。
京太郎「その責任は、ちゃんと取ってくれるよな?」
その言葉と共に、京太郎は春に迫る。
ジリジリと顔を近づけていく彼に、相変わらず春は何も言えなかった。
自分の変態的で淫らなオネダリを、こうして受け入れてもらっている。
その悦びに、春ははぁはぁと熱い吐息を漏らしながら、期待の眼差しで京太郎を見上げていた。
京太郎「ま、ダメって言っても、容赦しないけどさ」
春「きゅんっ♪」
そんな春の胸を、京太郎の手は鷲掴みにする。
ワイヤーの入ったブラの形が変わるほど強引な愛撫。
しかし、それは彼女に痛みを与えるものではなかった。
むしろ、胸の奥からしみるような快感と焦れったさが湧き上がり。
―― 一時間後、小蒔が部屋にやってくるまで二人は熱心にお互いを高め合い、愛を深めたのだった。
残りは省略されました
表示するにはこのスレは健全ですと書き込んでください(´・ω・`)と言いつつ今回は終わりです
恐らく後二回でこのスレも終わると思いまする
「京咲良いよね…」
「京咲良い…」
突然だが説明しようッッッ!!!!!
彼らの言う京咲とは、『幼馴染の京太郎と咲ちゃんのカップルは最高』の略ではないッッ!!!
最近、巷で有名な長崎 宮と言う作家の作品 ―― 京之介君と咲子ちゃんの恋愛事情の略であるッッ!!!
シリーズ開始から数年で累計5000万を売り上げたその作品は、今や日本の多くの人々が知る恋愛小説となったッッ!!!!
当然、メディアミックスされた作品も人気で、最近、発表された新作映画では興行収益100億を超えたと言われるッッッ!!!!!
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説明しようッッッ!!
本屋で聞こえてきた会話に笑みを浮かべたこの少女は、宮永咲ッッ!!!!
長野県の某高校に通う一年生であるッッッ!!!
だが、その正体は京之介君と咲子ちゃんの恋愛事情を書く長崎 宮先生なのだッッッ!!!!
咲「(やっぱり幼馴染モノは正義だよね)」
彼女が長崎 宮先生になったのは今からほんの数年前ッッッ!!!!
幼馴染との生活をちょっぴり脚色した作品を、出来心でとある賞に応募したのが始まりであるッッ!!
惜しくも最優秀には選ばれなかったものの、審査員特別賞を与えられたその作品は敏腕編集者とのやり取りを経て、超人気シリーズとなったッッッ!!
それに手応えを感じた咲は、数年間、ずっとそのシリーズだけをッッ!!!
幼馴染の恋愛だけを書き、日本中を沸かせてきたのであるッッッ!!!
咲「(っと、そろそろ帰らないと打ち合わせに遅れちゃう)」
説明しようッッ!!
人見知りな彼女は担当ともロクに話す事が出来ないッッ!!!
故に、彼女の打ち合わせは常にチャットッッ!!!!
長年、お世話になっている担当の顔も知らないッッ!!!!
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説明しようッッ!!!
咲は極度の方向音痴であるッッ!!!
行きつけの本屋からの帰り道でさえ、平気で迷ってしまうッッ!!!
そんな自分を地味に気にしている彼女は一生懸命、帰り道を思い返そうとしているッッ!!!!
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と二二_ヽ ∨、:ミ /:::::::::::// / \::\ |/////////////////////} 〉/////|
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説明しようッッ!!!!
いきなり咲の背中から声を掛けた少年の名前は須賀京太郎ッッ!!!
咲の幼馴染にして、同じ高校に通う一年生であるッッッ!!!!!
尚、部活はハンドボール部ッッ!!!
麻雀などまったく知らないスポーツ少年であるッッッ!!!!
咲「な、なんで京ちゃんがここに?」
京太郎「なんでって、そろそろ打ち合わせの時間だろ?」
京太郎「まだ帰って来ないから心配だって、親父さんに泣きつかれたんだよ」
咲「お父さんったらもぉ…」
/: : : : : : : : : : : : ,ィ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ : : : : : : ヽ
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_,. :´: : : : :/: : : : : : : :/:/ ': : : : : : : : : : : : : : : : | : : : : : : : : : ∨: : : : : : :.
` ー /: : : : : : :-/:/-|: : : |: : : : : : : : : :|--- 、: : |: : : : : : : :V: : : : : : |
': : : : : : : /|/ |: : : |: : : : : : l: : : |、: :|: :`ヽ、: : : : : : :.|: : : : : : :|
/:,: : : : :,: / { {∧: {: : : : : 从: : :| \{、: : :|: : : : : : ,: |: : : : : : :|
': |: : : :/: | {从: : : : :' \{ \: |: : : : : :/: |: : : : : : :
|: |: : : ': /| -- \: : | V: : : : : :': .' : : : : : : | (超GJだよ…!!)
{八: : :|:,: :},ィ≠≠ミ \| -- 从: : : :/}/: : : : : : ,: |
l 、 : |: V ィ≠≠ミ、 / |: : : イ/⌒V: : : :/:/
\|: , :.:.:.:. ' |:/ /⌒} }: : :/}/
V{ :.:.:.:.:. / ノ 人:,:' /
人 __ _ イ:/
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説明する必要もないが説明しようッッ!!
咲は幼馴染の京太郎にぞっこんラブ(死語)なのであるッッッ!!
今書いているシリーズも幼馴染同士で結婚するのが幸せなのだという風潮を作る為だと言うのが大きいッッ!!
決して金や名誉の為に作品を書いている訳ではないのであるッッッ!!!!
京太郎「それよりほら、帰るぞ」
咲「うんっ♪」
差し出された手を咲は自然と繋ぐッッッ!!!!
幼馴染の二人がこうして手を繋いだ回数は最早、三桁では足りないッッ!!!
彼女を迷子にしない為、そして幼馴染は自分のものなのだとアピールする為っッ!!!
二人の手は恋人同士のようにしっかりと繋がれるッッ!!
咲「あ、そうだ。お礼に晩御飯食べていく?」
京太郎「良いのか?」
咲「うん。二人分も三人分もあんまり変わらないし」
京太郎「分かった。んじゃ、母さんに後で連絡入れとくわ」
咲「うん。よろしくって伝えておいてね」
京太郎「? おう」
咲は幼馴染にポンコツ扱いされる事も多いが、割りと強かだッ!!
鈍感な幼馴染を堕とす為にはまず外堀から埋めていくべきなのだと分かっているッッ!!
だからこそ、彼女は頻繁に京太郎を部屋や食事に誘い、既成事実を積み重ねていたッッ!!!
今やクラスメイトはもとより京太郎の両親にさえ未来のお嫁さん扱いされているッッッ!!!!
咲「(あぁ…幸せだなぁ)」
作家としても、そして幼馴染とも順調な日々ッッ!!!
相変わらず、高校で友人は出来ないが、咲はそんなのこれっぽっちも構わなかったッッッ!!!
幼馴染がいれば、それだけで良いッッ!!!
そんな依存に片足を突っ込んだ考えは、彼女の中に完全に根付いていたッッッ!!!!
咲「(ずっとこのままこんな日が続けば良いのに)」
無論、それは不可能だと咲も分かっているッッ!!!
自分と京太郎の関係はどんどんと前に進む一方なのだからッッ!!!
いずれ京太郎から告白され、付き合い、彼の部屋で最高のロスト・バージンをし、子どもを授かり、幸せな結婚をしッッ!!!!
最後は孫と子ども、そして何より京太郎に看取られて死ぬところまでバッチリ人生設計済みであるッッッ!!!!
尚、それが失敗するところを彼女はこれっぽっちも考えてはいないッッッ!!
それでも、このぬるま湯のような日々がずっと続けば良いと彼女は本心からそう思って ――
{ ` /,ヽ
ヽ \ _, -‐ ´ ∟_
\ ヽ / \ /λ ヾ 、
\ へ / |iミ V.彡} l } ヽ
、 ー 、 j |l ノ j| | ゝ 〉
>、 ` ヽィュ_ |i ハ ゝ, {| ヘ \i
/ \ \``ゝ, }. / ヾ、ヽ ヽゝ `, ヽ
/ | , -‐ ` ヽ \ ノ. ∠`へ, ' ノ x弋 ヾミ 、 \
〈 ',. | } } \ }´`ゝ~ ュ _ . 〃 i'〈弋::リ` ´{テ:::} 〉ヽハ ,
ヽ }. | ´ / ,,_ ゝ,,._ \ゝ 从 ,, , ` ,,, / 从 / 「先生!! 時代は今、お嬢様×金髪ハンド男子ですわ!!!!」
′. ヽ ヘ.__, -‐ ト _ >、  ̄ ` ヽ .\ ', ヘ ャー― , . /ヘ ゙,ソ /j ゝ
ゝ ー,,ュ, -‐ ´ ー´,, ` ー- , } ヘ ` ヾ , ヽ ノ , ´{| ゝ /ノ\ `ゝ、
 ̄ ゝー‐< ,, _`` ‐- ´ } ヽ ー < | f メ ⅳ \ \ `\
, -‐ `>ー- ェ 〉 \ /V ,ヘー- ュ ゝ ゝ、 ` ,,
/ /´´ \ \ .` ひ二つ ∧ `ヽ } ー 、 \
, -‐ ´ / ' / ヘ 〉 \ | 、 ノ ヘ ヽ }
/ ノ ノ 〉、 / i \ ', { 〉 \ \
/ / /| | | ヽ \
. / / / / / | |. | | | | ', ヽ ∧
/ / /./ / | | | | _|L.--|.,,,_ | | :l ',
/ / | ト|_,r|''´|`:| | |\ | `ト| :| | :|
/ | | ィ| |─ト :|ヽ | / ̄V| | :| | | |
/ | レ´| \|_\| ト、. |::::彡三=、 :| ./ / / !
/彡イ | ト| 彡 ─ヾ:\|::::\::::/,'⌒ヽ \/ / / |、
. | ヽ ゝ///;'⌒',ヽ:::::::::::::::::::::|:!::::::::::!:| ||イレ' | ハ!
. | ト、 || | ';::::::::!:|:::::::::: ヾ、;;;;;;;ノ |/ ハ / |
. | ハ, \:::ヾ.;;;;;...' , ハ / /
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/ \トハ ー_,ア ノ'´//
|ゝ、 //イ/
|人> ._ <:| / /
\|\| ー< :|´
| :|> 、
/| / \
説明しようッッ!!!
今のはチャットでやり取りされた一幕であるッッッ!!!
根が人見知りな咲は当然、カメラの類は起動していないッッ!!!!
故に自身の担当がほぼ同年代の女性 ―― 龍門渕透華だと知る良しもなかったッッ!!!
透華>>まぁ、今のは2割ほど冗談ですけれど
咲>>ねぇ、喧嘩売ってるの?
透華>>そんなまさか。今や日本の歴史に残るほどになった長崎先生に喧嘩を売るほど馬鹿ではありませんわ。
透華>>ただ、私は先生の行く末を案じているだけです
咲「(…案じる?)」
咲と透華の付き合いは長いッッッ!!!!
特別賞を取った時から二人三脚でここまでやって来たッッ!!!
幼馴染を除けば、世界で一番、信頼していると言っても過言ではないッッ!!!
だからこそ、咲は落ち着いて次の言葉を待ったッッ!!!!!
透華>>ご存知ですか? 最近、シリーズの人気に陰りが出てきているのが。
咲>>そうなんだ。じゃあ、次は気合い入れて、もっと二人をイチャイチャさせないと。
透華>>…先生、それがダメなのです。
咲>>ダメ?
透華>>えぇ。だって、端的に言えば…人気が陰ってきている原因はマンネリにあるのですから。
l:.:.:.:./:.:.:.:./:.:.:.,:.:.:.|:.:.:.:.:l.:..:i.:..:...:....:.....',
li:.:.:.|:.:.:.:.:l:.:.:./l:.:./!:i:.:.i:ハ:.:|l:.l:.:.:.:l:.:.:...i
|:.r‐!:l:.:.`iー/‐ァァT':.:/フTナiT´:.:.|:トi、|
{:.{ ‐N、:.:{r―r-r l/!'―r-i'|:.:.:,リ:リヽ! (ま、マンネリ…)
ヽ!ヽ _ `{. _ヒソ _ヒソノ/イ:|
`ヽ!ゝ ////////////j:i:/|ハ!
,∠_ ̄〈: :` こ__ー--_ュ,/く'
i: : : :ヽ 、ヽ : : ヽ 丁:i : : i: :ハ
{: : : : : : :} : : ヽ: /: : :l : : l': : :
説明しようッッ!!!
文学少女ルートに進んだ咲は、かなりのむっつりスケベであるッッ!!!!
マンネリと言う言葉に、ついついエッチな妄想をしてしまうほどにッッ!!!!!
京太郎を相手役に思い浮かべるそれは決して悪いものではなかったが、咲はそれを頭を振って振り払うッッッ!!!!
自分と京太郎の相性は抜群で、マンネリなどとは無縁だと、彼女は根拠もなく信じていたッッ!!!!!!
透華>>先生の作品は素晴らしいですわ。
透華>>まるで自身で体験したような臨場感あふれる描写。
透華>>焦れったいながらも微笑ましい二人の関係。
透華>>その両方を兼ね備えた先生の作品はまさしく名作と言えるでしょう。
透華>>ですが、その展開をもう数年と続けてきました。
透華>>ぶっちゃけ、読者もいい加減飽きてきてるのです。
咲>>そ、そんな…。
その言葉は咲にとってショック以外の何物でもなかったッッ!!!
咲にとって幼馴染とイチャイチャする作品を書くのはライフワークと言っても良いのだからッッ!!!
それが世間から飽きられているという指摘に、めまいにも似たものを感じてしまうッッ!!!
これが信頼している担当でなければ、嘘だと叫んでしまいそうだったッッッ!!
透華>>だから、この辺りでテコ入れしましょう。
透華>>何も二人の仲を引き裂くという訳ではないのです。
透華>>ただ、当て馬を作って、話に変化をつけるだけでも違うはずですわ。
咲>>そんなのダメだよ!!!!!
無論、咲も分かっているッッ!!!
相手は決して悪意でこのような事を言っている訳ではないッッッ!!!
これまで苦楽をともにした作家が埋もれないように、道を示そうとしているッッッ!!!
だが、それは咲の主義に反するものだったッッ!!!!!!
咲>>京ちゃんも咲ちゃんも浮気なんかしないもん!!!!
咲>>ずっとラブラブイチャイチャで他の連中なんてモブにしかならないんだからっ!!!!
透華>>まぁ、それが先生の作品であると理解はしておりますけれど。
周りにいるのは名無しのモブだけで、数年もシリーズを続けた咲の才能は透華も認めているッッ!!!
出来れば、彼女も咲の主張を受け入れてあげたいッッッ!!!
しかし、それでは咲の作品は凡作に堕ちてしまうッッ!!!!!
止めるべき時に止められず、惰性だけで続いていくような作品にッッッ!!!
咲と作り上げてきた作品を我が子のように思っている彼女にとって、それは愚行以外の何物でもないッッ!!!!
もっともっと目立って、煌かせて、日本だけではなく世界をとりこにしてやりたいと透華は思っているッッッ!!!!!
透華>>しかし、このままでは…。
咲>>また明日。
透華>>え?
┐
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|::|:::|:::l:|::l::::l:l::|:::l\从:::l:::: |:l::l:l/: : : : : :/
|从:|::从八从乂{´廴}乂::::从劜: : : : : :./ 「また明日、ここで打ち合わせしよう。最高の京咲を見せてあげる」
)イ::圦 , ∧/----: : :__:_/
}//> . - . イ:::::: : : : :/´ ̄∨ ̄ ̄\
. ___∠{: : : : : :| ̄ _」::: : : : :./ l| | |__
// ∧: : : : :.ー―.:: : : :/} ___ } リ リ
ノノ \{ {\: : : :. .: : :/ニ/ l/ ̄\__彡'-- 、 \
{ {  ̄ハニ、:_:_:.//ニニ/ | \ \
/\ ___/ |`ー ‐┼┼≦___} -=ニ三三三三ニ=- \ \
/ / ̄ ̄ 八 ,{三三三三三三三≫  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄` \
. ´ / } \三ニ=- ̄{ ̄ ̄ \
/ / | \三三三ニ=- __
/ / _| /≧=====┬=ニ三三三ニ=--
. / / {廴___/´ / ̄ ‘, ___ .... . -――-
/ / ____. .: ::| \ ___/ --- ‘, /: : : : : : : :./::}:_:_:_/::
,/ / ̄ ̄/: : : : : /: : :人  ̄ ̄ /: :|: :\: : ̄: : : : : : : : : :/::/: : /::::::
透華「っ!!!!」
ゾっとしたッッッ!!!
画面越しにもハッキリと伝わってくる気迫ッッ!!!
文字から訴えられるようなその迫力に、透華は思わず呑まれたッッ!!!
あの日、彼女の作品を初めて読んだ時ッッ!!!
荒削りな文章力の奥から感じた鬼気迫る様子を、彼女は再び叩きつけられたのであるッッ!!!
透華>>良いでしょう。楽しみにしていますわ。
透華>>では、今日のところはコレで失礼いたします。
透華>>また明日、同じ時間に。
出来る出来ないではないッッ!!!
長崎 宮は必ずソレをやり遂げるッッッ!!!
そんな確信とも信頼ともつかぬ感情と共に透華はログアウトボタンを押したッッ!!!
一瞬のズレと共に咲の画面にも、透華の退室が表示されるッッ!!!!!
それを咲は静かな表情で見つめながら振り返ってッッッ!!!!!!
__,. : : : ¨¨¨¨: : : . 、
,. :´: : : : : : : : : : : : : : :`ヽ、
/: ,: : : : : : : : : : /: : : : : : : : :\
.': : :/: : :,: : /: :/: /: : : : : :.|: : 、: : :ヽ
/: : :/: : :/: : ': : :': :i: : : |: ! : |: : : ,: : : : :.
.': : : ': : :.:|:{: :|: : :|: :{: : : |、|:_/: :|: :|: |: : : ::.
|: : : {: : :^{从ィ笊ミ、 ∨ ,ィ笊ミ/}: /: : | \} 「きょぉぉちゃぁああああああんっっ」
|: : :∧: : | { ん::刈 ん:刈ムイ : : |
|: : :{ \:、 r弋こソ 弋zソcl:.|、: :|
从: : 、 ' 乂ノ:.:.:. ' :.:.: |/ \:}
Ⅵ、: ー: .、 ___ 人 `
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从 :| > __. ´
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,:' `ヽ、
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' 、 | /`/ } ' 「はいはい。今度はどうした?」
} ∧ /イ /
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泣きついたッッ!!!
恥も外聞もなく、部屋で漫画を読んでいた幼馴染にッッ!!!!
目尻に涙を浮かべながら、思いっきりダイブしたのであるッッッ!!!!
それを京太郎は軽々と受け止めながら、咲の背中を優しく撫でてッ!!!
咲「あのねあのね、担当さんがねっ」
京太郎「おう、よしよし」
まるで子どもが親に言いつけるようなそれに京太郎は頷くッッ!!!
幼馴染が意外とメンタルが貧弱なのを彼は良く知っているのだッッッ!!!
スイッチが入ったときは空恐ろしいくらいだが、ソレ以外は基本ポンコツッッ!!!
そんな幼馴染のまったくまとまりのない話に、京太郎は何十分と付き合い続けるッッッ!!!!!
時間が来たのでしゅっきーん(´・ω・`)続きはまた何時か!!!!
乙
照「もちろん私も愛読してる」
乙です
照さんも幼なじみなのだろうか
後二回の投下でこっち埋めきれる気がしなかったのでこっちで良いかなって…(´・ω・`)ゴメンネ
それと小ネタなのに名前欄変えてなかったのはダメでしたね、何回も注意されてるのに学習しない奴でごめんなさい
>>434>>438
恐らく照は幼馴染かつ愛読者かつ宮先生のライバルなんじゃないでしょうか
同じ幼馴染モノだけれど年上のお姉さんキャラなので、宮先生は邪道扱いしてる的な
_........----......._
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从{∧ _ _ 人:∧{
|/ >:../^} /⌒l、` .イ }:./ リ 「…それで京ちゃんはどうしたら良いと思う?」
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| ` ー ´|:.:.:.:|:.:.:.:.マ:.:.| {
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Ⅳ ,:.: ∧:.:.:.:.:.:/ ∨ |
そのお陰で感情も落ち着いた咲は、京太郎の胸の中でポツリと呟いたッッ!!!
思い切り啖呵を切ったものの、具体的な方策など彼女は思いついていないッッ!!!
容易い道に流れるのか、それとも迷惑を承知で意地を張り続けるのかッッ!!!!
そのどちらも選び難い咲にとって、幼馴染の意見は重要なものだったッッッ!!!!
京太郎「そうだな。咲の好きにすれば良いんじゃないか?」
咲「…私の好きに?」
京太郎「あぁ。咲は自分の本で人たちに伝えたい事があるんだろ?」
咲「う、うん」
それが何なのかまでは京太郎は知らないッ!
しかし、幼馴染の情熱や本気っぷりから、それがとても大事なモノであるくらいは感じ取っているッッ!!
だからこそ、京太郎は咲の背中を躊躇わずに押したッッ!!!
このままで良いのだとッッ!!!!
好きにすれば良いのだと元気づけるッッッ!!!!!
京太郎「なら、それを最後まで続ければ良いさ」
京太郎「書きたくないものを無理に書いたって面白いものになるとは思えないし」
京太郎「何より、俺は人気や評判に左右されるよりも、咲が思うがまま書いた作品の方が好きだな」
咲「…京ちゃん」
_,.......---............_
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|: : :ハ: |: : : ハ: / /:イ }: :/:/ }: ∧:/: : : : ト、}: :.|
{: : {-从: : :{/ ̄ テ雫ミ/イ /イ }イ雫}: : /:/:| リ\}
八:{、:、__ \:lヽ Vり ヒり/:イ:/: :|
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| { 、、\:::::::∨/::::://:∧ |
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恋する乙女である咲の思考回路はとても都合が良いッ!
作品に向けられた好きの言葉を、自身に対する好きと容易く置き換えるッッ!!
自然、顔は赤くなり、身体も気恥ずかしそうに揺らすが、京太郎はそれを特に気にしなかったッッッ!!!
トイレにでも行きたいのかな、と軽く考える辺り、この男も救えない朴念仁であるッッ!!
京太郎「まぁ、俺に出来る事なんて少ないけどさ」
京太郎「でも、アイデアを出すくらいなら付き合うから」
咲「じゃ、じゃあね、その…」
長崎宮にとって、その発言は謙遜も良いところだったッッ!!
なにせ、彼女の作品は幼馴染との日常を脚色して書いている半フィクションのようなものなのだからッッッ!!
出来る事が少ないどころか、作品の質は、京太郎次第で大きく変わるッ!!!
それを理解している咲は、実益を兼ねて、幼馴染とデートに誘おうを口を開いて ――
―― Prrrrrrrrrr
京太郎「っと、悪い」
咲「むー…」
それを阻むように咲の部屋で鳴ったのはスマホの着信音だッッ!!
京太郎のポケットから鳴ったそれに、咲は思わず頬を膨らませるッ!!!
とは言え、ここで京太郎に電話に出ないで、というのは、幾ら恋人でも面倒くさすぎるッッッ!!!
実際には恋人でもなんでもないのだが、彼女の中ではもう幼馴染と恋人は同義だったッッ!!
京太郎「もしもし。って、和か。どうした?」
咲「(……和?)」
幼馴染の口から出たその名前は、聞きなれないものだったッッ!!
咲の把握している京太郎の交友関係の中には、そのような名前は一度もあがっていないッッッ!!!
しかし、それでも咲は、電話の相手が、美少女 ―― それも巨乳で家庭的で将来の夢がお嫁さんである事が分かるッッ!!!
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/:.:.::::::::. '´ /:.: :::∧:.:.:.:.:.:::.:.:.:.::::.:. :::.:: |.:.:.::::∧:.;.::′:::|:.:. /:: |':.:.x豕刋: 芍⌒マⅥ:.:::∧ V:.'i:.:. |
./:.::::. '´ ' :.:.:::/:∧:.:.:.:.:::.:.:.:::::.:.:::::: /|.:.:.::::':::V::;|::::::::|:.:/:::.:.:.:,狄i[_ o -i| :.:. }! |:::/ i i:. |:.: ′
/ . '´ .i:.:::::/i/ ∧:.:.::::::.:.:.::::.:.::: /:::|:.:.:.:.':::::∨|::::::::|:/:::::.:.:.:.:.:.汽,. 、汐:.:.: リ .|イ / /:.:.:|:.:′
./'´ .|:.::/ .| / ∧:.:::::::.:.:::::.:.:.:i′:|:.:.:.;'::::::::V|::::::::|':::::::::.:.:.:.:.:.:.:.`¨¨´ ' ' / |_/ /:.:.:. |/
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.|':./ |:.:.:.:∧:. /|:.:`¨¨へ '´ ./ iル′
.|/' |: / ∨: !、:.::/ |>o。_ / .!-ー-- .._
{. |:./ ∨{. Y/ |:.:.:.:./i:.:¨7 T¨¨¨¨¨¨´ ^ー 、 ` ̄
電話に出た幼馴染はとても上機嫌だったッッ!!!
冗談を口にするその頬は緩み、眉毛もだらしなく下がっているッッ!!
普段の格好良さがまったく感じられないそのデレデレとした姿は、相手が彼の好みのタイプであるからこそッッ!!!
そう思うと満たされていたはずの胸中に嫉妬と不機嫌さが浮かび上がってくるッッ!!!
咲「(私だって、ちゃんと育てて貰えばCはいくもん………多分)」
そう思いながらペタペタと胸を触るが、帰ってくる感触は悲しいほど微弱だったッ!!
咲のバストサイズはA ―― 起伏らしい起伏がまったくないのだからッッ!!!
何処から何処が胸なのかさえ分からないペタンとしたバストに咲はぬぐぐと歯を噛みしめたッッ!!
京太郎「おう。あぁ。分かった」
京太郎「それじゃあまた明日な」
/ / /| | | ヽ \
. / / / / / | |. | | | | ', ヽ ∧
/ / /./ / | | | | _|L.--|.,,,_ | | :l ',
/ / | ト|_,r|''´|`:| | |\ | `ト| :| | :|
/ | | ィ| |─ト :|ヽ | / ̄V| | :| | | |
/ | レ´| \|_\| ト、. |::::彡三=、 :| ./ / / !
/彡イ | ト| 彡 ─ヾ:\|::::\::::/,'⌒ヽ \/ / / |、
. | ヽ ゝ///;'⌒',ヽ:::::::::::::::::::::|:!::::::::::!:| ||イレ' | ハ!
. | ト、 || | ';::::::::!:|:::::::::: ヾ、;;;;;;;ノ |/ ハ / |
. | ハ, \:::ヾ.;;;;;...' , ハ / / 「京ちゃん?」
. | /ヘ ヽ..ハ ハ// /
/ \トハ ー_,ア ノ'´//
|ゝ、 //イ/
|人> ._ <:| / /
\|\| ー< :|´
| :|> 、
/| / \
当然、咲も京太郎が浮気をしていると本気で信じている訳ではないッッ!!
何だかんだで幼馴染は自分の面倒をずっと見続けてくれているのだからッッ!!!
自分以外の恋人を作る余裕はないだろうと冷静な部分は判断したッ!!!!
―― だが、それとは別に感情は納得しないッ!!
疑わしきは罰するッッッ!!!!
裏切りの芽は出る前に断ち切るのは宮永流だったッッ!!!!!!
咲「今の電話、誰?」
京太郎「あぁ。クラスメイトの原村和って子だよ」
咲「その子の事、もっと教えて欲しいな」
京太郎「良いけど…どうしてだ?」
不機嫌全開な咲からはどす黒いオーラが立ち上っていたッッ!!!
魔王と呼ばれてもおかしくはないそれに京太郎はまったく微動だにしないッッ!!!!
オカルト適正がなく、さらに人並みはずれたな彼は、咲の恐ろしさをこれっぽっちも理解できないッッッ!!!!
不機嫌なのは分かるが、それがどうしてなのかもまったく分かっていなかったッッ!!!
咲「ちょっと考え方変わって、当て馬出すのも良いかなって」
京太郎「良いのか?」
咲「うん。別に当て馬出したところで、京咲の前提が崩れる訳じゃないし」
咲「それにそういうのを乗り越えてこそ、二人の絆は強まると思うんだ」
咲「常識的に、うん。常識的に考えてね」
そこで自分たちの事だと言えれば、二人の仲も進展していただろうッッ!!!
だが、どれだけ禍々しいオーラを垂れ流していても、咲はそれを口に出来ないッッ!!!!
どれほど恐ろしくても彼女の本性は、ヘタレでポンコツで京ちゃんラブな文学少女なのだッッッ!!!!
そうやって本音を口に出来るならば、とうの昔に告白しているッッッ!!!!!!
咲「で、その子の名前にティンと来たから、当て馬としてちょっと登場してもらおうかなって」
京太郎「それじゃあ本人の許可を…」
咲「そんな事しなくても大丈夫だよ。ちゃんと分からないうように設定は変えるし」
京太郎「んー…それならまぁ大丈夫、なのかな?」
咲の言葉に京太郎は迷いながら頷いたッッ!!!
何だかんだで京太郎も咲の事を強く信頼しているのだッッッ!!!
このポンコツが自分に嘘を吐き通せるはずがないッッ!!!!
そんな風に思いながら、クラスメイトの情報を口にするッッッ!!!!!
咲「(さぁ…この泥棒猫をどうやって料理してやろうか)」
咲「(今からでも楽しみだよ…!!)」
京太郎の口から出てくる情報は思いの外、大量だったッッ!!!
某高校に入学してからまだ数ヶ月ッッ!!!
その間、二人が順調に仲良くなっているのを感じさせるほどの量ッッッ!!!!
それに咲は内心で歯ぎしりしながら、次回作のプロットを組み立てるッッッ!!!!
新たに登場した泥棒猫をどう地獄に突き落とすかを主眼に置いたそれはあっという間に固まってッッッ!!!!!!
/ \_/\-―‐-y'´ \
/-‐y'" ,ヘ ヽ / ∧ \
/ ! \ヽ/ //i ヽ
,:!. |'"´`゙ y''"´ ´| i
| | i | /′ | i .|
. i | ハ| 〈.! | | |
!/ / |! ヾ、 |ハ | 「あの、うちはサスペンス系小説は専門外なのですけれど」
/ 廾ー-_、__, )!、_,._-‐┤ .゙、
/ /./ fr、)) /′ fr、i) ゙、 `、
/.イ ∧| ゛'" `゙'" ト、 丶
. /// ハ._ヾ⊂⊃ ⊂⊃ !人 ヾ、、
i/ i ,i 〈 `,! / .リ ) i、 ヽ!
. /リ 、ソ Y´;/i\. ∠ニゝ ,..イ / |ノ ノ
/ >、 ヽ! `ー---イ´|:.:.:`ヽ/ / \
/ /:Y´:.:.:\ \ / |:.:.:.:/ イ、 \
_..................._
,. : : :´: : : : : : : : : : : : `: : . 、
/: : : : : : : ,: : : : : : : : : : : : : : \
/: : : : : : : : /: : :,: : : : : : : : : : : : : : ヽ
,:': : : /: : /: /: ': : :/: : :,ハ: : : : : : : :、: : : : '.
/: : : /: : /: /: :,|: : :l: : : | | : : | : : : : ∨: : : .
/: : : :' : : :|: :| : /|: : : : : :.| |: :l|:|: : : |: : |: : : : :.
/: : : : |: :|: :{: :|: :! { : : |、: :| }: :l|:|: : : |: : | : : : : |
/: : :/ : |: :|--Ⅵ、{_从: :{ \{ ム斗|-: : |: : | : : : : |
l: イ {: : :从{ 比刈 比J刈 }イ : / 、: : : : ' 「解せぬ」
' l |: : : : } Vzソ 弋こソ /: :イ }: イ: ,
|: ∧: | `¨ , `¨¨ ムイ__,ノ:/ }:/
|/ }从 /: :/}/ /
/ }: 、 ‐-----‐ 、 イ: :/ /
l从` . ィ |:从
` ーr = ´ |、
/| |::\
,..:<:::::/ /::::::::>:..._
...:<:::::::::::::/ /:::::::::::::::::::::::::::> 、
―― この後、めちゃくちゃ校正して何とか恋愛小説に戻しました
~オマケ~
\
ハ
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> >
| <
_| \__
. -‐< \ >‐-、
/ \ / \
/ \ / ,.へ \
〈 /ヽヽ∨///∧ ヽ
∧ /``〉 7‐'='='≠! ∧
i ! ' / / ' / | / i
| ノ / / ' ' ,′ |i { |
/ / /ハ{ |i |i ヽ.ノ (…しかし、先生がアレほど幼馴染に入れ込んでいるなんて)
. // / //ヽ. \八{ 八 \
/ / / /ァ=≧ミ ヽ \ (、ー-‐<ノ ヽ ヽヽ
〃 / , //ヽ弋r'シ^ヽ ) ァ=≧ミハ ハ
. 〃 / i //{ ` 弋r'シノ ∧ ∧ !
{{ ' i 人_ :::::.:.::: , :::.:... / } } :. j
∨人 ヽ 从 /_,ノハ l }
// /ヽ \ 个 .. へ .イ__ノ ノ ノ ノノ
. // / /\ ヽ /{` . ._ r<´ ` < イ∧
//__/_/___ヽ ∨ \ ` /./|ヽ._,ノ、 `ヽ ハ
/ } } ∧ ∧ ヽヽ`二フ \ }\
/ } ノ ノ /ヽ∨,ノ\)ー―'^ ー-へ.. __ / ヽ
/ /il | .//| \ \
| トヾ| ///,| | i
/ ||`゛゙i'""´ |i | |
/ __| | / |ハ___ i |
/ ハ.|`‐{ ィ'´ヽ ヽ |
/ /-/≧ミ\ ケテ=-、_ \i (幼馴染ってそんなに良いものなのかしら…?)
/イ ,ィ.|` i;;;:;! ) i';;;;!,ィ ヽ
. // / .| /人i ,,, , ,,, | iヾ、
. |.|.〈 |/リ. ! ,! /. ト、 )
!| ゙、 .!( \ r-、 /|レ' / i
>、. \ i ゝ `´ /| ./ / l
// | ) | ノフiー ' ´ ク ,.イ (
< / / / _/`ト,--‐' ´| ,.< ゙、 \
) / /‐'´ | ,イVヽ 丶 (_ `ー-、 \_
. / ! i / |/./ハヽ| ./\ ゙、 `ー-、 、\
. / /\| /ノ |.」\/ ) ) / ゙、 | )
/ . :|: :\ /:/〉: : : . \: . \
{ : :}\: :}///{: : : : . } : . ヽ
l . . :八Z}/ハ``^| ; : : : : { : : . :.
; . :/ / | |: : : : : 、 : : .
,′. . ;′ { | |: : : : : . `、 : . .
. :/ . :{ \ l/\: : : . . `、 : . i
. : :/ :} \__ ) 、__/⌒ 、: : : . . \: . . {
.:// . :ハ,.ィ苳 斗允=ミ\: : : . `、: . {
/ / . . :/ {{ h/} h/ハ }} `、: : : : .`、. {
/ { . :/ : :} Vツ 乂ツ `、:} . .}): :} ‘ 「今度のパーティで、京太郎に幼馴染ってどういうものなのか聞いてみましょうか」
{ 、: . : :{ : : { , }/ . .:ノ : ,′‘,
\ . .:\八 / . :,:′ `、
\ . . :\ r-っ /. . . :,.:'′: : `、
/\: . . `: .. . :/. . . :,.:′: : : : i: . `、
,:′ : }:}\: : l`` rn- `` / . . . /: : l : : : : l: : . \
,.:′: : /:/: : :) . : l : /八 _,,.{ : : . {: : : l : : : : {: : : : . \
, :'′ : :/:/ : : : . . :_ノ /^Vヽ \ : . . \: :l : : : : { : : : : . \
/ . : :/^「{: { ̄ ̄ ̄^{ /ヽ ノ\ \ : . } ̄ ̄ ̄```ヽ: : . . \
/ . : :/ l \_ },/ /{に}\ \_/)ノ}:./ , ∨: : . . \
/, . : : :/ {{__,ノ/l{__,}} 〈/ / ∨: : . . . `、
/. ./ . : : :/ l // :| | ,′ ∨: : . . \ `、
/ . :/ . : : : / { / 〈/ | | ∨: : : . \`、
~オマケ~
\
ハ
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> >
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. -‐< \ >‐-、
/ \ / \
/ \ / ,.へ \
〈 /ヽヽ∨///∧ ヽ
∧ /``〉 7‐'='='≠! ∧
i ! ' / / ' / | / i
| ノ / / ' ' ,′ |i { |
/ / /ハ{ |i |i ヽ.ノ (…しかし、先生がアレほど幼馴染に入れ込んでいるなんて)
. // / //ヽ. \八{ 八 \
/ / / /ァ=≧ミ ヽ \ (、ー-‐<ノ ヽ ヽヽ
〃 / , //ヽ弋r'シ^ヽ ) ァ=≧ミハ ハ
. 〃 / i //{ ` 弋r'シノ ∧ ∧ !
{{ ' i 人_ :::::.:.::: , :::.:... / } } :. j
∨人 ヽ 从 /_,ノハ l }
// /ヽ \ 个 .. へ .イ__ノ ノ ノ ノノ
. // / /\ ヽ /{` . ._ r<´ ` < イ∧
//__/_/___ヽ ∨ \ ` /./|ヽ._,ノ、 `ヽ ハ
/ } } ∧ ∧ ヽヽ`二フ \ }\
/ } ノ ノ /ヽ∨,ノ\)ー―'^ ー-へ.. __ / ヽ
/ /il | .//| \ \
| トヾ| ///,| | i
/ ||`゛゙i'""´ |i | |
/ __| | / |ハ___ i |
/ ハ.|`‐{ ィ'´ヽ ヽ |
/ /-/≧ミ\ ケテ=-、_ \i (幼馴染ってそんなに良いものなのかしら…?)
/イ ,ィ.|` i;;;:;! ) i';;;;!,ィ ヽ
. // / .| /人i ,,, , ,,, | iヾ、
. |.|.〈 |/リ. ! ,! /. ト、 )
!| ゙、 .!( \ r-、 /|レ' / i
>、. \ i ゝ `´ /| ./ / l
// | ) | ノフiー ' ´ ク ,.イ (
< / / / _/`ト,--‐' ´| ,.< ゙、 \
) / /‐'´ | ,イVヽ 丶 (_ `ー-、 \_
. / ! i / |/./ハヽ| ./\ ゙、 `ー-、 、\
. / /\| /ノ |.」\/ ) ) / ゙、 | )
/ \_/\-―‐-y'´ \
/-‐y'" ,ヘ ヽ / ∧ \
/ ! \ヽ/ //i ヽ
,:!. |'"´`゙ y''"´ ´| i
| | i | /′ | i .|
. i | ハ| 〈.! | | |
!/ / |! ヾ、 |ハ | (幼馴染がいない私には良く分からないですわ…)
/ 廾ー-_、__, )!、_,._-‐┤ .゙、
/ /./ fr、)) /′ fr、i) ゙、 `、
/.イ ∧| ゛'" `゙'" ト、 丶
. /// ハ._ヾ⊂⊃ ⊂⊃ !人 ヾ、、
i/ i ,i 〈 `,! / .リ ) i、 ヽ!
. /リ 、ソ Y´;/i\. ∠ニゝ ,..イ / |ノ ノ
/ >、 ヽ! `ー---イ´|:.:.:`ヽ/ / \
/ /:Y´:.:.:\ \ / |:.:.:.:/ イ、 \
x , -‐x‐- 、/ ̄>
/ \ /::. \ く ´
′ |ミ、∨rf|: : ヽ ヽ
/ 厂丁 ¨ ||、::. ∨ Y
,ィ / / / || ヽ:. ∨ .|
. // n // . :7ト- ヽ、 _」L斗: . V |
{ ´三了 /ィ .:.:.:/:l笊圷 } /rュゃ : :. 丶 .|
| fソ. l .: : :./:|ゝソ ′ 込リ| }: : : :ハ |
. |. | 、: : ト 八 ' l/: : :.// !
r‐┴ ┴t ト、: :.ヽ\ ー _/: : :.ィ: : ∧ (…そう言えば、京太郎は幼馴染がいると言っていましたわね)
|::::::::::::::::| | /ヽ: :}_>-‐.≦/:.:/:.|: : : ∧
| ̄ ̄ ̄| /厂/: :リ | 癶 / : :/、_: :| : : : .∧
| |. // { / j/7く`ハ:.〈  ̄ ー 、:.ヘ、
l l /¨` ヽ、 //. !ヽ ヽヽ l : . ヘ、
| .L, -<. ソ 〈/ し′ j/ / , L: : ヘ、
|. / ` / / |  ̄ ̄  ̄ }: . ヘ、
| / _, .{::... / j - 、 \ ヘ、
. l __ , .斗</: : |::::::: ...... /、 ー 、 \ i
`¨ 7/ /: : / : :/: : :/-‐ ヽ:::::::::::::: 〈:.: :\ _  ̄ \ |
/′i : :/ : :/ /: :{ x  ̄ i: :. : :./ヽ._ _ \|
| |: :l{.: :/: {: : :.ヽ / V |: : /: :/: :)_ _ }
| ヽ:l:.V : : ヽ、/ \′ ヽ __ 斗.:彳/:.:/:.:.{ /
\ : : : : 〈 〈: : :.{、: :/| : :/ /
\ : : / ヽ: :l:.V.: :/、 , '
ソ:/ \ヽ/:::::::\ /
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{ : :}\: :}///{: : : : . } : . ヽ
l . . :八Z}/ハ``^| ; : : : : { : : . :.
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/ { . :/ : :} Vツ 乂ツ `、:} . .}): :} ‘ (先生のキャラと名前も似ていますし、今度のパーティで彼に幼馴染ってどういうものなのか聞いてみましょうか)
{ 、: . : :{ : : { , }/ . .:ノ : ,′‘,
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\ . . :\ r-っ /. . . :,.:'′: : `、
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~オマケ2~
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ヽ ! .{: :{:| | | 」|:.| :|: :ィ‐十ト|:|:} : : }:::::\
/ |/{ |.!.| {斤人|ヽj\| .レ゙リリル: :ノ::::ィレ′
├┤| :沁 :::::::: :::::::: ノ/: : ! (私は本当に幸運です。まさか高校に入ってすぐ長崎先生の事を語り合える友人と出会えるなんて)
|:.:.|',| : :人 r─‐┐ ハ/ /:|
|:.:.|::| : : |> , `.-- ' ,∠// /! :|
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ヽl |_l: : |: :|: :|rテ干示ト'\lヽl´::rf苡圷¨} |/-|:  ̄:|: :l |
レ \ト、 \ヽ 弋:ツ ゞ夕 ノ/ ´|: : : :|: :| |
イl| |\}l`.:xwx:. , .:xwx::. _ノ; ::| | |
/ j|! ハ // | : :|:l: : :|
/ .イ j|l介 、 /´ ! : :!:l: : : |
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/ / l| |l||| __」 ̄ {、:::::ヽ、 | : :| !: : : ∧
/ // l| ||厶斗‐::´:r‐! /::::::::::::`::| : :ト、: : : : ハ
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{イ / / / l ヽ:.:.:}>-::!./-‐<:.:.:.:.:.:.:.:.:イ/ ∨イ Vヽ 、: : }{
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iハハ∨ヘヽ::`ヽ i | //´ (娘からラブオーラを感じる……)
ヾ:::::ヘい\ 」 | ハ{、 )
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やっぱ降った電波は一回の投下で出しきらなきゃダメだな!!!!(´・ω・`)何か思いついた時よりも微妙に感じる
ちょっと勢い足りなかった気がします、ごめんなさい…
一応書き溜めはちゃんとやってて空いた時間でしかやってないんで許してください(´・ω・`)
何処の大学にも名物キャラってのはいるもんだ。
例えば、毎日コスプレして登校してくる奴だったり、やたらと人間讃歌を見たがるバカだったり、自称超高校級の希望だったり。
まぁ、大抵が一度見たら忘れられないぶっ飛んだキャラだって事はほぼ間違いない。
意外と大学の交流ってのはサークル、ゼミ、学科なんかで纏まりがちだからな。
よっぽどインパクトがなかったら名物キャラだなんて言われない。
京太郎「(で、うちの大学にも当然、名物キャラって呼ばれる奴…いや、奴らが居て)」
「…ところで京太郎」
京太郎「どうした?」
昼下がりのカフェテラス。
学生自治会に依って運営されるその場所に、目も覚めるような美人が座っていた。
まるで琥珀のように透き通る瞳に金と銀の間のような細く綺麗な髪。
ウェストはキュっと締まっているのにバストは豊満で、太ももやお尻もむっちりと男好きする体型をしている。
片手で日傘を支えるその様は、まるで絵画のように様になっていた。
正直、どこかの王族だと言われても納得できるような気品が彼女 ―― 雀明華にはある。
明華「仁奈ちゃんが可愛くて生きるのが辛いです」
京太郎「お前なー…」
―― が、重度のアイドルオタだ。
いや、より正確に言えば、重度のアイドルゲーオタである。
日本にやって来てから出会ったアイ○スと言うゲームに彼女は滅法嵌っているらしい。
こうして所構わずその話題を口にし、その気品を何処かへとぶん投げる。
…まぁ、何だかんだで彼女との付き合いは何年にもなるし、それに驚きを感じたりはしない。
ただただ、呆れの感情だけが俺の胸に浮かび上がっている。
京太郎「いい加減、ゲームなんて卒業しろ、なんてうざったい事は言わないけどさ」
京太郎「少しは控えるようにした方が良いぞ」
明華「だってー…」
京太郎「だってじゃねぇ」
無論、それが現実に外を成さないのであれば、俺もこうまで口酸っぱく言わない。
趣味なんて人それぞれだし、俺だってゲームは好きだ。
だが、こいつのアイドルゲー好きは正直、常軌を逸している。
なにせ、本来なら潤沢にあるはずの生活費を使ってまでガチャを回し、こうして俺に昼飯を集っているのだから。
京太郎「つーか、お前、この前、どっかの地方大会で優勝してただろ?」
京太郎「その優勝賞金はどうしたんだ?」
明華「そんなの新SSRを引くためのガチャで全部吹っ飛んだに決まってるじゃないですか」
京太郎「自慢げに言うんじゃねぇよ」
明華「あたたっ! ちょ、京太郎! ベアクローは! ベアクローは乙女の尊厳が!!」
京太郎「お前が乙女なんてタマか」
…で、何の因果か、神様はこいつにすっげぇ麻雀の才能を与えた。
魔境と言われる国際ランキングで今や堂々の43位。
しかも、それはこうして大学に通いながらの成績なのだから、明らかに何かがおかしい。
麻雀だけに専念すれば確実に二十位を割るだろうと言われるその実力は、こうしてバタバタと腕を振るってベアクローから逃れようとする彼女からは感じられなかった。
明華「…私、まだ処女ですよ?」
京太郎「知ってる」
で、当然の如く、明華はモテる。
下手なアイドルなら裸足で逃げ出すほどのその容姿は、男を引き寄せるに十分なのだから。
が、そんな男達も彼女の本質を知ると、まるで潮のように引いていく。
幾ら目を見張る程の美人だろうが、アイドルゲーオタはちょっと、と思う男が大半ならしい。
明華「やだ。京太郎ったら知ってるだなんて…」
明華「もしかしてこの前の宅飲みの時に確認…」
京太郎「お前、俺より酒強いだろ」
顔だけ良ければ良いって男も稀にいるが、明華はかなりの酒豪だ。
ほぼザルに近いその飲み方についていける男を俺は見たことがない。
こうして彼女に白旗をあげる俺もかなり強い方だが、大抵、明華よりも先に潰れるからなぁ…。
この前、彼女の家でサシで飲んだ時 ―― 金欠で明華が泣きついてきたから保存食を恵むのも兼ねてだったが ―― も俺の方が先に眠ってしまった。
京太郎「つか、うちの大学の残念美人を堕とせる奴なんていねぇだろ」
そんな明華はうちの大学の名物キャラだ。
立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花、口を開けばラフレシア。
そんな彼女を残念美人とネーミングした奴は、中々にセンスがあると思う。
特に美人じゃなくて、残念を前に持ってきたところが良い。
俺が先生ならはなまるをあげたいくらいだ。
明華「まぁ、私の心は仁奈ちゃんに捧げていますから」
京太郎「ホント、好きだなぁ…」
俺はやってないから分かんないが明華は仁奈って子に夢中らしい。
寂しがり屋なその子の為に新しい友だちを作ろうと新ガチャが出る度に限度いっぱいまでぶん回す。
それで毎回、俺に泣きついてくる辺り、いい加減、どうにかした方が良いと思うが…こいつの入れ込みようはハンパじゃないからなぁ。
下手に手を引かせようとすると、将来を憂いて自殺してもおかしくない。
明華「えぇ。だって、仁奈ちゃんはこの世に降り立った天使ですから」
明華「まんまるの頬、キラキラとした瞳、人懐っこい子犬のような性格、それでいてほんのり闇を感じさせる設定…」
明華「あぁ…まるでイクラみたい…」
京太郎「うん。その例えはどうかと思うが、とりあえず小学校には近づくなよ、お前」
……何より、明華が仁奈って子に向ける感情はロリコンのそれに近いような気がするんだよなぁ。
正直、俺は明華が飽きるよりも先にゲームのほうが終了してしまったら、近場の小学校に突撃しかねないと思ってる。
それを防ぐ為にも、少しずつ彼女を社会復帰させて行きたいとは思ってるんだが… ――
明華「失礼ですね。私は…」
京太郎「いや、ちょっと待て」
今、俺のレーダーに何かが引っかかった。
コレは…うん、初めての子だな。
この大学に通う一定以上の子は把握しているから、恐らく外部の人だろうか。
まずはその実力の程を確かめさせてもらわないといけない。
京太郎「…………ふむ。85のEってところか」
黒スーツにタイトスカートで歩くその女性は中々のモノをおもちだった。
目の前の明華ほどじゃないが、十分、巨乳と評価できるサイズだろう。
まぁ、年齢的には30前後ってところだろうが、俺にとっては関係ない。
とりあえずお近づきになる為に声を掛けに… ――
明華「はい。ストップです」
京太郎「離せ!そこにまだみぬ巨乳がいるんだ!!」
京太郎「お近づきにならなきゃ嘘だろう!!!」
明華「私は貴方の反応に嘘だって言いたいですよ…」
何故か明華が呆れるような顔をしている。
巨乳の子と仲良くなりたいと思うのは男としてごくごく当然の欲求なんだがなぁ。
思い返せば、咲や和達も良くそんな顔をしていたような気がするし、やっぱり女に男のロマンは理解できないんだろうか。
明華「…ホント、京太郎は残念美人ですよね」
京太郎「待て。俺は全然、マトモだろ」
明華「ちょっと胸が大きい人を見つけたら見境なく声を掛ける人の何処がマトモだって言うんですか…」
…で、何故か俺もこの大学の残念美人の一人に数えられている。
と言うか、俺と明華で基本的に残念ペアと一括りにされる事が多かった。
だが、俺としては残念なのは明華だけだと切に主張したい。
…まぁ、彼女以外にも俺のことを残念美人と呼ぶ奴はいるが、基本的に明華と一緒に行動してる所為で悪目立ちしてるんだろう、うん。
京太郎「声を掛けて仲良くなるくらい普通だろ」
明華「一人ならともかく、人といる時にまで声を掛けようとするのは尋常じゃないです」
京太郎「解せぬ」
明華「そういうところが普通じゃないって言われるんですよ」
…どうして俺はアイドルゲーオタに普通を説かれているんだろうか。
いや、うん、それは流石に世の中のアイドルゲーオタに失礼だな。
どうして大学の名物キャラであり、残念美人と呼ばれ、尚且つ生活費全ツッパな明華に普通を説かれなきゃいけないのか。
社会不適合率で言えば、間違いなく明華の方が上だと思う。
明華「まったく…私じゃなかったら本気で嫌われてますよ」
京太郎「まぁ、明華だしなぁ」
そんな明華とも、もうそれなりに付き合いが長い。
高校の時に出会ったから…もう六年近くか。
まさかあの時出会った神秘的なおっぱい美人がこうも残念になってしまうだなんて…。
……高校時代の俺はどうしてそれを止められなかったのか、切に後悔するレベルである。
明華「…言っておきますが、それは私も同じですよ」
明華「怪我で引退するまでアジア大会でも活躍し、将来はヨーロッパの一流選手になるだろうと言われてたハンドボール選手が…」
明華「まさかこれほど重度かつ残念なおっぱいフェチになってるなんて思いもよりませんでした」
京太郎「…口に出してた?」
明華「出してないですけど分かります。京太郎の事ですから」
…こういう時、こいつは卑怯だ。
ドキッとするくらい魅力的な笑顔で、殺し文句を口にする。
幾ら明華が残念美人だと分かっていても、胸のトキメキが止まらない。
…あぁ、本当にこいつは魅力的で。
明華「…今、ドキドキしたでしょう?」
京太郎「…分かってるなら口に出すなよ」
明華「ふふふ…」
京太郎「ツンツンするなよ…」
明華「京太郎が可愛いからイケナイんです」
京太郎「うぬぬぬ…」
……好きだ。
あぁ、好きだよ、大好きだ。
だが、それは口に出来ない。
こいつが好きなのは俺じゃなく、ゲームのキャラだ。
仁奈って子に何もかも捧げてるこいつに告白したところで玉砕するだけ。
…だから、俺はそれを胸の内に秘める。
ただ、彼女のお世話係として、いざという時の緊急避難先として。
それで良いと、自分に言い聞かせる。
京太郎「そ、それよりそろそろ行こうぜ」
京太郎「このままのんびりしてると講義に遅れちまう」
明華「そうですね。あ、ご馳走様でした」
明華「この御礼は次の賞金が入ってきたら必ず」
京太郎「お礼とか良いからちゃんと貯金しとけ」
明華「無理です!!!!」
京太郎「自慢げに言うなって…ほら」
明華「はい」
…それに俺は結構、今の生活に満足してる。
明華と同じ大学に通って、たまにあいつの家に飯を作りに行って。
酒を飲みながら、愚痴聞いたり、逆に愚痴を聞いてもらったり。
一緒に歩く時は、こうして手を繋いだり、たまに一緒のベッドで寝たり。
恋人にはなれないけれど、親友と呼べるであろう距離感で良いって思ってる。
明華「…いっその事、京太郎に私の資産管理を全部任せるのも良いかもしれませんね」
京太郎「そういう金銭関係はデカイトラブルにつながりかねないし、ちゃんとした職業の人に頼んだほうが良いぞ」
まぁ、それもいつまで続くかって感じだけどさ。
俺たちもそろそろ大学卒業を視野に入れなきゃいけない時期なんだから。
このぬるま湯のような関係もそう遠くない内に終わってしまう。
誰よりも明華の側に居た俺が、性別を超えた親友という立場が終わってしまうんだ。
京太郎「(…いっそそういう職業の人間になるのも良いかもなぁ)」
明華「…バカ」
京太郎「って今、バカって言ったか」
明華「バカだからバカって言ったんですよ、この馬鹿」
京太郎「三回も言うほどか…」
一応、俺としては真面目に答えたし、真面目に将来の事を考えてたつもりなんだけれど。
…まぁ、好きな女と一緒にいたいから職業選ぶ…なんて馬鹿の所業以外の何物でもないか。
こればっかりは正直、否定できないかもしれない。
明華「ほんっとうにもう…」
京太郎「って明華?」
明華「お礼ですよ、お礼」
明華「特に深い意味はありません」
明華「所謂、虫よけ的なアレです」
言いながら明華は俺の腕に胸を押し付けてくる。
まぁ、俺としては役得以外の何物でもないし、とっても嬉しいのだけれど。
しかし、こうして周囲から注目を浴びたり、やけに明華が早口になっているのもあって少し恥ずかしくて…。
明華「それにまた巨乳な女の子を見つけてそっちに飛んでいかれても面倒ですから」
明華「こうしてしっかりと私が京太郎の重石にならなきゃ…」
明華「…いえ、重くないですよ、えぇ。全然、軽いですけど」
京太郎「あぁ。うん。分かってる」
…でも、まぁ、嫌な気分じゃない。
なんだかんだで俺たちはこの大学の名物ペアなんだ。
注目されるのはそれなりに慣れてるし、こいつの突飛な行動にドキドキさせられるのもいつもの事。
寝起きの明華はかなり甘えん坊で、お姫様抱っことか歯磨きとかリクエストしてくるからなぁ。
それに比べれば、まだ腕を組むくらいは全然、許容範囲だ。
明華「…でも、この気持ちは決して軽いものではないですから」
京太郎「…いや、ゲームキャラへの愛をそんな真剣に語られても」
明華「はぁあ」
京太郎「…にゃんれためひきちゅきながらほぉーひっぱりゅんら?」
明華「京太郎が度し難いほど馬鹿で鈍感だからです」
バカの自覚はそれなりにあるが、鈍感と言われるような事は何かあったっけか?
寧ろ、俺はおっぱいに関してはかなり敏感かつ優秀なつもりなんだけれど。
ただ、明華は本当に呆れているようで、中々、頬から手を離してくれない。
それどころか頬を膨らませたまま、俺と視線を合わせようともしなくて。
―― 結局、俺はそのまま講義室まで連れ歩き、多くの生徒達の見世物になったのだった。
よし。じゃあ27日になったからちょっとバサカピックアップ引いてくる!!!!(ダッ
諭吉突っ込んで茨木とフランちゃんが出たのを喜んでる時点でやっぱFGOのガチャはおかしいな!!!!!!
オルタニキとは言わないけれど、バサクレスも欲しかったよ…(´・ω・`)
乙
オルタニキ引けるの祈ってるぜ
イッチのフレンドになって周回のサポートしてあげたい(重課金者並感
☆3は呂布ダレイオスきよひーの三人が丁度、六人ずつでしたねー
これにフランちゃんと茨木入れて50回で鯖20人出た計算かー…
諭吉突っ込んで☆4鯖一人も出なかったときよりはマシですね、うん(白目)
>>484
ワグナス! 水着ガチャからずっと諭吉突っ込みまくって瀕死のカルデアだが本当に良いのかワグナス!!
正直、次のイベントは諭吉突っ込める気がしないぞワグナス!!!!(´・ω・`)育成も全然追いついとらんですの…
―― 私は容姿が優れています。
それは決して自慢ではありません。
私は子どもの頃から沢山の人に称賛を受けて来たのですから。
今更、それを認めまいとしてもただの嫌味になってしまうでしょう。
純然たる事実として、私は美人で、そして ――
「好きだ。付き合って欲しい」
明華「(…またですか)」
今の私がいるのは大学のカフェテラスです。
何時も京太郎と利用している席とは別の場所に、私はほぼ面識のない男性と座っていました。
清潔感のあるその顔立ちは、決して悪いものではありません。
いえ、寧ろその姿は甘いマスクとあいまって、好青年と呼べるものでしょう。
実際、カフェで話す女性の中には、チラチラと彼に視線を送る人もいました。
明華「有難うございます。そう言って頂けると嬉しいです」
「じゃあ…!」
明華「ですが、お断りさせてください」
ただ、私は彼に興味を唆られる事はありませんでした。
私の心はとっくの昔に奪われてしまっているのですから。
彼の外見をどれだけ評価していても、それは好意には繋がりません。
…というか、外見以外に評価出来ないような関係でいきなり告白されて好きになるはずがないと言うべきでしょうか。
「…どうしてか理由を聞いても良いかな?」
明華「今の私は夢中になっているものがありますから」
明華「お付き合いしたところでお互い不幸になるだけです」
とは言え、こうしてほぼ初対面の相手から告白されたのは初めてではありません。
この国に来る前からずっと私は目立つタイプだったようですから。
この手の断り文句は意識せずともスラスラと出てきます。
「それは付き合ってみなければ分からないんじゃないかな?」
「もしかしたら、僕と君との相性がとても良いかもしれない」
「少なくとも、僕は君の趣味を尊重するつもりでいる」
明華「(趣味、ですか)」
……そこで趣味なんて言葉が出てくる辺り、本当に私の事をよく知らないのですね。
いえ、まぁ、それも大きな理由ではありますし、否定するつもりはないですけれど。
でも、私が彼の告白を受け入れる気にならないのは、もっと根本的な理由からです。
明華「そこまでして貰って、返せるものが私にはありません」
「ほんのすこしで良い。君が僕の側にいてくれればそれで…」
明華「申し訳ありませんが、それさえも私にとっては苦痛なのです」
明華「私はそうやって人に縛られるのが嫌いなタイプですから」
それは決して嘘ではありません。
自分の選択に、誰かの意思が介在するような状況はとても気持ち悪いです。
ただ、まぁ、それも人に依るといいますか、その人に縛られても良いと思える許せる人も稀にいて。
そして彼はその人ではないというのが、一番の大きな理由なのです。
「…僕は某企業の御曹司だ。金なら沢山ある」
「君が夢中になっているゲームの課金だってしてあげても良い」
明華「……はい?」
……えっと、コレはアレですか。
ゲームの課金をしてやるから、俺の女になれって事ですか。
…この人は私の事を娼婦かなにかだとでも思ってるのでしょうか。
例え、そうでもそうじゃなくても…嫌いでも好きでもないという領域から、感情が一気にマイナスに突き落とされたんですけれど。
「出来れば、こんな格好悪い事を言いたくはなかった」
「でも…初恋で一目惚れなんだ」
「こんなに誰かの事をほしいと思ったのは初めてで、だから…」
明華「……」
夢見がちな女の子なら、それで堕ちるのかもしれませんね。
爽やか系の好青年が申し訳なさそうに俯きながら、一目惚れと告白しているのですから。
さっきの拙い引き止め方も、一目惚れならば、致し方ないと思う子だっているのかもしれません。
…ただ、私は別です。
私の中で彼の評価は最悪に近いものになったのですから。
こうして同じテーブルを囲んでいる事さえ苦痛で仕方ありません。
>>485
ノエルよ構わんのだ
こちらもプリヤで爆死して膝に致命傷を受けたから次のイベントは呼符の予定なのだ。ははは、諭吉10人から先は数えてないわ
真面目な話、新規参入を大事にしないと続かないからねぇ。
明華「その一生懸命さは他の誰かに向けてあげてください。では」
「あ、み、明華君…!?」
明華「っ!!」
手、伸び…!!
やだ、こんな男に掴まれ…!!
助け…京太郎…!!
京太郎「はい、ストップ」
明華「あ…」
………京…太郎?
やだ、嘘…ほ、本当に京太郎です。
私が助けを求めた瞬間、割って入ってくれて…。
この男の手を阻むように掴んで…護ってくれています…。
「き、君は…残念ペアの…」
京太郎「なんで会う人会う人そっちが先に出てくるかねぇ…」
京太郎「…まぁ、アレだ。俺はたまたま通りがかっただけの奴で事情も何も知らないけどさ」
京太郎「告白して振られた以上、潔く引き下がらなきゃ、恥の上塗りをするだけだぜ」
…嘘つき。
何がたまたま通りがかっただけですか。
私が告白されてた事なんて、前々から様子を伺ってなきゃ分からないじゃないですか。
……本当、不器用で、嘘つきで、スケベで、おっぱい好きで…。
「ぐ…だけど」
京太郎「……それでも諦めきれないって言うならさ」
京太郎「ちゃんと明華の顔を見てやれよ」
明華「え、あ…」
や、やだ、今、見られるとちょっとまずいです。
だって、私は、今、すっごくゆるゆるなんですから。
まるで王子様みたいに京太郎に…好きな人に助けられて、頬とか緩みっぱなしです。
私を背に隠すような形で立ちふさがってる京太郎には見えないと思いますが、他の人にだって見られるのは恥ずかしくて…。
「…そうか。そういう事か」
「なるほど、僕はとんだ道化だったと言う訳か…」
京太郎「理解してくれたか?」
「あぁ。…明華君も君もすまなかった」
「本当に…僕は頭に血が登ってたみたいだ」
「こんな簡単なことにも気づかなかったなんて…」
あうぅぅ…これ絶対、バレちゃってます。
と言うか…恐らく誤解されてます。
私と京太郎が付き合ってるって…そんな風に思われてるの丸わかりです。
…………で、でも、まぁ、それもアリ…なのかもしれませんね。
コレで意外と京太郎はモテるタイプですから。
あっちこっちに声を掛ける所為で顔も広く、話も面白いです。
口には出していませんが、彼に友人以上の感情を抱いているのは一人や二人ではありません。
そんな彼女たちを牽制する為にも、こういう形で外堀を埋めていくのは悪くないはずです。
京太郎「まぁ、気づいてくれたなら良かったよ」
「…あぁ。気づかせてくれてありがとう」
「そして…図々しいが一つ頼みがある」
京太郎「頼み?」
「…彼女のことをどうか幸せにしてあげて欲しい」
「彼女の気持ちも気づかないほど独善的になっていた僕が言うのもなんだけれど」
「本当に…初めて好きになった人なんだ」
……もしかしたら。
もしかしたら、さっき彼が言っていたことは嘘でも方便でもなかったのかもしれませんね。
今の彼は本当に好青年で、さっきの事を後悔しているのが伝わってきます。
まぁ、だからと言ってマイナスに振り切った評価が+になる事はありませんが。
しかし、それくらい私の事を想ってくれていた事くらいは受け入れてあげても良いかもしれません。
京太郎「えっと…良く分からないけれど」
分かってくださいよ!
結構、露骨じゃないですか!!!
明らか、私と京太郎くんが恋人同士だって想ってる反応じゃないですか!!!!
まったく…鈍感なのは分かってますけれど、流石にこれはちょっとにぶすぎですよ…!!!!
京太郎「でも、そう言われて無理です、なんて言えねぇよな」
京太郎「分かった。俺に出来る範囲で、明華の事を幸せにするよ」
明華「みょんっ!?」
……えへ。
えへへへへ…えへへへへへへへ。
ハッ、だ、ダメです、ダメですよ、明華。
ここでデレ顔幸せピースなんてする訳にはいきません。
そんなだらしない顔をもし京太郎に見られたら、嫌われてしまうかもしれないですし。
ここはびーくーる、びーくーるです。
いつも通りのミステリアスで女の色気ムンムンな大人の明華にならなければ…!!
「…有難う。じゃあ、僕はもう行くよ」
「二人ともお幸せに」
京太郎「…あぁ。そっちも気をつけてな」
明華「~♪」
京太郎「…………さて、って明華、どうしたんだ?」
明華「い、いえ、何でもないですよ」
なのに…中々、顔が元に戻りません。
気を抜いたらさっきの言葉を脳内再生してうっとり顔になってしまいます。
これはいけません。
このままでは年上のお姉さんとしての威厳がなくなってしまいます。
ここは何とか元の私に戻れるまで時間を稼がないと…!!
明華「そ、それより…あの、有難うございました」
京太郎「お礼なんて良いって」
京太郎「俺が助けたのは明華じゃなくて、あっちの男の方だしさ」
明華「え?」
京太郎「明華みたいな奴と付き合ったら苦労するのなんて分かりきってるし、あの好青年っぽい奴じゃ荷が重いかなぁってさ」
……えぇ、私も分かってますよ。
決して京太郎が本気で言ってる訳じゃないって事も。
そもそもの原因が私の嘘にある事だって理解してます。
……でも、流石にそれはないんじゃないですか?
幾ら照れ隠しでも、お姉さんでも…拗ねちゃいますよ…!!
京太郎「…あれ、明華?」
明華「つーん」
京太郎「明華せんぱーい?」
明華「つつーん」
京太郎「あー…もう…この20歳児め」
…誰の所為で20歳児になったと思ってるんですか。
京太郎と会うまで私は結構、ミステリアスなタイプだったんですよ。
それが色々あって…堕とされちゃって…。
京太郎の前でだけはこんな風に甘えが顔に出てしまうんです。
京太郎「…分かった。今度、飯作りに行ってやるから」
明華「グラタン」
京太郎「おう。作るよ」
明華「オムライスもです」
京太郎「お安い御用だ」
明華「後、ハンバーグも…」
京太郎「何処のお子様ランチだよ…」
それだって私が悪いんじゃありません。
京太郎の料理が何でも美味しいのが悪いんです。
特にいまあげたラインナップは絶品で、作り置きをお願いしたのだって一度や二度ではありません。
そこらのファミレスに食べに行くよりも、京太郎が作り置きしてくれた料理のほうが美味しいとか色々と反則だと思います。
京太郎「あー…もう。なんだって作ってやる」
京太郎「だから、機嫌直してくれよ、な?」
明華「……」
まぁ、正直、そんなに怒ってる訳じゃありません。
そもそも、最初から京太郎の冗談だって分かってる訳ですから。
こうしてご機嫌取ろうとする彼の姿を見て、溜飲も随分と下がっています。
正直、許してあげても良いんじゃないかな、とは思いますが。
明華「お酒もつけてくださいね」
京太郎「マジかー…」
明華「えぇ。マジです」
私は別に大酒飲みと言う訳ではありません。
京太郎曰くザルらしいですが、別にそこまで飲むのが好きという訳でもないのです。
ただ、気持ちの良いほろ酔い気分が長く続けば良い。
そんな感覚で嗜む私にとって、一番は彼と共に楽しむお酒でした。
京太郎「…分かった。買ってってやるよ」
明華「いえ、別に一緒に飲んでくれれば…」
京太郎「どうせ今月も無茶な課金して金ないんだろ?」
京太郎「月末には泣きつくことになるんだから、おとなしく奢られとけ」
……正直なところですね。
えぇ、正直、『それ』はちょっとやりすぎたと思っているのです。
幾ら京太郎に甘えたかったからと言って、ソシャゲに生活費を全部つぎ込むなんて正気の沙汰ではありません。
京太郎の好みがちょっとダメな女の子だと分かっていたとは言え、流石にそれはやりすぎです。
そこまでやったら、好み云々以前に恋愛対象から外れてしまうでしょう。
明華「(…でも、今更、嘘だなんて言えません)」
某アイドルソシャゲをやっているのは本当です。
ですが、何も生活費や賞金までつぎ込むほどやっている訳ではありません。
課金もあくまでも無理のない範囲に止めていますし、貯金も順調に貯まっています。
…それでも私がこの嘘を吐き続けているのは、京太郎が世話好きな所為。
彼とお酒を飲んでいる時、気の迷いで漏らしてしまった嘘を彼は完全に信じ込み、アレコレ世話を焼いてくれるようになったのです。
以前よりもずっと距離が近づき、京太郎の事を独占できるようになったその嘘を…私は今更、覆せません。
それを辞めるには、彼の優しさはあまりにも甘く、心地よく…もう私のココロを虜にしてしまっていたのですから。
明華「(…いっそ、付き合えれば、そんな事をしなくても済むのですけれど)」
…それは何度も考えました。
でも、京太郎は私の事を親友か庇護対象程度にしか思ってないのです。
少なくとも、色っぽい感情はないのは確実でしょう。
そんな彼に告白したところで玉砕は確実。
この心地良い関係も空中分解し、元に戻る事はありません。
明華「(…ですから、じわりじわりと距離を詰めていかなければいけません)」
明華「(京太郎がもう私しか見えなくなるように)」
明華「(私以外の女の子なんてどうでも良いと思うように)」
…鈍感な彼を虜にする、その道程はとても厳しいでしょう。
ですが、私はその為にプロ活動を休止し、彼のいる大学へと入ったのです。
彼と同じ講義を受け、たまにノートの貸し借りをし…試験前にはお互いの勉強を教え合って。
そんな高校時代には出来ないスクールライフを満喫する為に。
そんな大学生活が数年は続くのですから、きっと京太郎も私の事を意識してくれるはず。
そう思いながら、私はおずおずと京太郎に手を伸ばして。
―― それから彼と結ばれるまでの間に、十年近い年月が必要な事を、その時の私はまったく知らなかったのでした。
実は両方共残念じゃないようで残念ですよ、と言うそんな話でした(´・ω・`)明華はこういうポンコツ系の話もミステリアス系の話も似合う素敵な子だと思います
>>491
プリヤイベは本当に酷かったですね…
流石に諭吉十人ほどじゃありませんが私も見事に爆死しましたよ、えぇ
ドロップ礼装もあんまり出なくて、結構周回きつかったです…(´・ω・`)美遊礼装がもう一枚欲しかった…
それはさておき、ありがとうございます!
IDは210,919,767です
またお手すきの時に登録申請して頂けると幸いです
残念偽装系仏産爆乳女房
滾る…滾るな!
>>502
申請しときましたぜ
サポートが金時青王尻王乳上(以下略)の@爆死です
希望があればサポート弄るんで声掛けてくださいな
早くエロ書きやがれです
放っておけない人に弱いタイプはいるからねぇ
男にも女にも
明華ぐうかわ
そしてスマホゲームに重課金しているという風潮、一理ある
大丈夫、型月自家コラボは探せばまだ弾がある。自家コラボのいいところはガチャ確率を絞り過ぎたり
鬼畜難易度にして評判が悪くなろうともコラボ先から文句を言われる心配がないことだからね。
これからも容赦なく射幸心を煽られるよ!(白目)
待って いやマジで待って
昨日からフレンド登録十人来てお前ら何処に潜んでたんだとか
これが噂のボックスガチャか頑張らなきゃなとか
コンティニュー不可とかクリア出来る気がしないなぁとか色々と言いたい事あるけれど!!!!!
嫁王かよ!!!嫁王かよ!!!!嫁王なのかよおおおおおおおおおおおおお!!!!!!
こんなん全力出すしかないやん!!!ないやん!!!!!!!!!
イベント課金しない(キリッ)とか全力で手のひらクルーするしかないやん!!!!!!!
おめでとう>>1(FGOというかソシャゲ全般やらない勢より)
ふふふなけなしの十連でダレイオス君三歳を引き倒した直後の発表でしたよこちらは
嫁王はガチデレだから引けるといいですね
>>510
イベント課金なんかしない(キリッ
↓
課金には勝てなかったよ(アヘェ
あ、色々とびっくりして忘れていましたがフレンド申請本当にありがとうございます
この御礼は次のイベントの礼装で必ず返しますね(白目)
>>504
わざわざありがとうございます!
基本イベント中以外は主に種火を周回してる感じなので特に指定とかはありませぬ
そしてそのサポ欄羨ましい…(´・ω・`)特に金時
>>506
エロはついこの間書いただろ!!!!(´・ω・`)とりあえずまだもう少し良いかなって気がしてます
>>507>>508
結構、キャラ変えちゃって受け入れて貰えるかなーと不安でしたが可愛いと言ってもらえて安心しました(´・ω・`)だが、一理あるのか…
京ちゃんは結構、お世話タイプな気がするので放っておけない女の子の方がハマる気がします
具体的には京咲とか京咲とか京咲とか
>>509
つまり自社コラボ以外なら、難易度緩めで☆5がバンバン出てくる神イベントになるのか(錯乱)
しかし、聞いてる感じプリヤイベはまじで爆死した人多いみたいですからねー…
その分難易度は緩めで素材もそこそこ手に入ったんで初心者としてはありがたかったですけれど(´・ω・`)やはりガチャは悪い文明
そして、ホント、頼むから☆4鯖は10連で確定してくだち…
諭吉つぎ込んで銀鯖しか来ないとか心折れそう…
>>511>>513
らめええええ!諭吉が!諭吉が死んじゃうのぉおおおお!!!!!
な状態なので下手したら明日辺り死んだ目をしてるかもしれませんが(´・ω・`)骨は拾ってください
>>512
あのキャラで三歳とかダレイオス君発育良すぎじゃないかな!!
それはさておきFGOは毎回、告知遅くて頭抱える事多いですよね…(´・ω・`)せめてメンテ3日前には告知して欲しい…
そしてありがとうございます、とりあえず6諭吉ほど玉は用意したので引けると信じたい…信じたい……(フルフル)
ネリー「と言う訳で」
メガン「かんぱーい」
明華「かんぱーい、です」
そう言って三人がグラスをぶつけるのは、小さな小料理店だった。
美味しいツマミと各地の地酒を集めたそこは、かつて臨海で切磋琢磨した彼女たちにとってお気に入りの場所である。
臨海を卒業し、それぞれの場所で活躍するようになった彼女たちだが、こうして時折、この店に集まる事があった。
メガン「くぅぅ…やはり日本酒は良いデスね」
ネリー「なんかメグって会う度におっさんっぽくなってない?」
明華「そう言うネリーも真っ先にスルメに手が伸びてますけど」
ネリー「仕方ないじゃん! 日本酒にはこれが一番合うんだもん!!」
今日の集まりは、近くであった大会の打ち上げ兼同窓会だ。
かつて彼女たちと轡を並べて戦った智葉はホェイユーはいないが、空気が暗くなったりしない。
世界と言う舞台で戦う彼女たちは、こうして一同に介する事が極端に少ないのだ。
こうして三人集まれただけでも幸運だと明華は思う。
ネリー「それよりさ、明華はまだ世界戦に帰ってこないの?」
メガン「オ、いきなりツッコミますね」
ネリー「そりゃライバルだからね」
この中でネリーは最も線引が厳しいタイプだ。
共にインターハイを戦った仲間相手でも、心を許したりはしない。
それを受け入れた上で、ライバルだとそう宣言してみせる。
明華「大学を卒業したら、ぼちぼち復帰するつもりですけど」
ネリー「ふーん……まぁ、別に私は良いけどさ」
ネリー「四年も一線引いてるとブランクとかヤバイんじゃない?」
とは言え、それだけではないのがネリー・ヴィルサラーぜと言う少女だった。
自分ではドライなタイプだと思っているが、どうしても仲間意識を捨てきれない。
こうして敵情視察を装った心配の言葉を口にしてしまうのは、明華の事を大事に思っているからこそ。
出来れば、共に世界で戦いたいという意識もあり、一見、そっけない言葉を口にする。
明華「そうかもしれませんね。でも、これが私の選んだ道ですから」
ネリー「……でもさ、明華のところって母子家庭でしょ?」
ネリー「親孝行とかしたいって言ってたじゃん」
メガン「まァ、愛は強しって事ですヨ」
メガン「外野がとやかく言う事ジャありませン」
ネリー「それは…そうだけどさ」
無論、それはネリーも分かっている。
だが、彼女は明華の実力と才能もまた良く理解しているのだ。
他の競技よりも衰えが遅いとは言え、四年も潰して本当に後悔しないのか。
世界ランク一桁だって夢じゃない才能を、本当に潰してしまって良いのか。
どうしてもそんな風に思ってしまう。
明華「母は私のしたいようにしなさいって言ってくれましたし」
明華「それに、私は今、すっごく充実してますから」
明華「その所為で皆よりも出遅れても後悔なんてしませんよ」
ネリー「むぅぅぅ…」
意中の相手とスクールライフを楽しみたい。
そう言って、プロ活動を休止した明華の気持ちをネリーは理解出来ない。
彼女は未だ恋を知らず、金を価値基準の軸に置いているのだから。
愛に生きるその姿勢は時間とお金を溝に捨てているようにしか思えない。
メガン「オ、と言う事ハ、進展したンデスか?」
明華「…それは」
ネリー「あぁ。まったく進んでないんだ」
明華「う…」
まったく容赦のないネリーの言葉に、明華は言葉を詰まらせる。
出来れば否定したいが、進展らしい進展がないのは事実なのだ。
以前、三人と飲んだ時 ―― 半年前どころか、それ以前から二人の関係は完全に固定化されている。
それに明華もそれなりの危機感を覚えてはいるが。
明華「わ、私だって頑張ってるんですよ」
明華「でも、京太郎が鈍感だから…」
メガン「…イッソの事、裸で迫れバどうデス?」
明華「それで拒まれたら私、立ち直れません…」
だからと言って、カンフル剤を容易く受け入れる事は出来ない。
京太郎とのぬるま湯のような関係を、明華は心から大事に思っているのだから。
幾ら自身の容姿やスタイルに自信があっても、博打を打てるだけの勇気を持てなかった。
ネリー「…ヘタレ」
明華「そ、そう言うなら、何か良い知恵を貸してくださいよ…!」
ネリー「男と付き合った事もない私達に知恵なんか出せるはずないでしょ」
メガン「ですネー」
ネリーもメガンも異性との交流など半ば諦めている。
自分はこのまま麻雀に生きるのだと、麻雀だけが人生なのだとそう思っていた。
そんな自分たちとは別の道を歩き始めた明華にアドバイスなど出来るはずがない。
ましてや、ぬるま湯に慣れすぎて臆病になった明華を納得させるアイデアなど不可能だ。
明華「うぅぅぅぅ…」
ネリー「…まぁ、一般論だけど、そういう時はデートとかするのが良いんじゃない?」
メガン「何だカンだ言って、ネリーは優しイですヨネ」
ネリー「や、優しさとかじゃないし」
そう思いながらも、ネリーはテーブルに突っ伏した明華の事を放っておけない。
ついつい頭の中をさらって、自分なりのアドバイスを口にする。
そんな彼女を、メガンが優しいと称するが、ネリーはそれを認めない。
ぷいと顔を背けながら、清酒の入ったグラスを口に運び。
ネリー「…ただ、これで明華とその男が上手く行けば、さらに復帰が遅れるでしょ?」
ネリー「って事は、強力なライバルが一人いなくなるも同じじゃん」
ネリー「私はそれを重視しただけで、別に明華の事なんてどーでも良いし」
メガン「はいはい。そういう事にシテおきましょウカ」
ネリー「撫でるな、もーっ!」
理論武装を始めるネリーの頭をメガンはそっと撫でる。
何だかんだ言って、非情になりきれないネリーの事を、メガンは可愛らしく思っているのだ。
腕を振り回し、その手を弾かれた後も、彼女はニコニコと微笑ましそうに笑っていた。
明華「…しかし、一緒にお出かけレベルのデートは結構頻繁にしてますし…」
メガン「ソれじゃあ普段、行かナイところに行けバ良いのでは?」
明華「普段行かないところ…?」
ネリー「ラブホテルで良いじゃん」
明華「よ、良くないですよ…!!」
勿論、明華もそういう場所に興味が無いとは言わない。
最近のデート雑誌では、ラブホテル特集なども普通に組まれるようになっているのだから。
まるでレジャー施設のように扱われるその特集を、明華も何度か読んではいる。
だが、未だ恋人になってもいないのに、ラブホテルに連れ込むなどはしたなさすぎると、首を勢い良く左右に振った。
メガン「遊園地トカどうですカ?」
明華「遊園地…確かに行った事はありませんね」
明華と京太郎が二人で出かける時は、大抵、映画や買い物だ。
ソレ以外には精々、ぷつぷつとした食べ物好きな明華の為に、水族館に行った程度。
既に京太郎との付き合いは数年になるが、遊園地に足を運んだ事は一度もなかった。
ネリー「じゃあ、遊園地ね、はい、決まり」
明華「で、でも、遊園地ってあんまりにもデートっぽくないですか!?」
明華「下手に誘ったら、がっついてると思われるんじゃ…!?」
ネリー「あーもう…面倒くさいなー…」
それは決してなんとなく行きたくなかったから、ではない。
明華のイメージする遊園地は、デートの王道なのだ。
そんな場所にデートを誘ってしまったら、自分の気持ちがバレてしまうかもしれない。
それはジリジリと距離を詰める事を最優先に考えている彼女にとって、強い躊躇いを覚えるものだった。
ネリー「じゃあ、ダブルデートで良いんじゃない?」
明華「なるほど。確かにそれならば言い訳は効きますね」
ダブルデートを友人から持ちかけられたけれど、相手役がいない。
だから、今回だけ遊園地デートに付き合って欲しい。
その論法ならば、自分の気持ちを隠しながら遊園地デートが出来る。
しかし、それを実行に移すには一つ大きな問題があった。
明華「しかし、相手はどうしましょうか…」
ネリー「大学に友達とかいないの?」
明華「基本、京太郎と一緒にしか行動しないので」
メガン「私、明華の将来がチョット心配でス」
明華が大学に通っているのは大卒資格が欲しいからではない。
愛しい京太郎とスクールライフを満喫する為だ。
故に彼女は京太郎以外と殆ど接点がなく、顔見知り程度の関係しか構築していない。
彼と共に所属している麻雀部でも、顔と名前が一致するのはごく少数だった。
ってところで時間来たのでしゅっきんじゅんびー
僕はね、嫁王が欲しかったんだ…(虹演出で来た☆5セイバーのアルテラを虚ろな目で見つめながら)
あ、レギオンと吠えるは凸三枚あるから言ってくれれば好きなところに向かわせますよ、えぇ(白目)
フレ飛ばしましたのでよろしくお願いします 空きまだあるかな?
精神的に来ますよね……本当にほしい星5とは別のがやってくるとね……どんまい。
生活に支障が出ないよう気を付けよう!
10連したら星4のネロが三人出るとかいうカオスが起きた
あ、フレ承認ありがとうございます
プリヤイベから始めた新参ですがよろしくです
赤王5人一気に引いてる人がついったで流れててわらた
>>526
うへへ、また一人私に寄生させてくれる人が出来たぜ(ゲス顔)
ただでさえ1%って言う馬鹿げた確率なのに、狙いから外れると精神的なダメージがヤバイですよね…
特に虹演出からのセイバーだったので
,r=ヽ、 r';;;:;:;;:::;;;;;;;;;;;;ヽ、
j。 。゙L゙i rニ二`ヽ. Y",,..、ーt;;;;;;;;;;;)
r-=、 l≦ ノ6)_ l_,.、ヾ;r、゙t lヲ '・= )rテ-┴- 、
`゙ゝヽ、`ー! ノ::::::`ヽ、 L、゚゙ tノ`ゾ`ー ゙iー' ,r"彡彡三ミミ`ヽ.
にー `ヾヽ'":::::::::::: ィ"^゙iフ _,,ノ , ゙tフ ゙ゞ''"´ ゙ifrミソヘ,
,.、 `~iヽ、. `~`''"´ ゙t (,, ̄, frノ ゝ-‐,i ,,.,...、 ヾミく::::::l
ゝヽ、__l::::ヽ`iー- '''"´゙i, ヽ ヽ,/ / lヲ ェ。、 〉:,r-、::リ 来た! 嫁王来た!!!! これで勝つる!!!!!!
W..,,」:::::::::,->ヽi''"´::::ノ-ゝ ヽ、_ノー‐テ-/ i / ,, 、 '"fっ)ノ::l
 ̄r==ミ__ィ'{-‐ニ二...,-ゝ、'″ /,/`ヽl : :`i- 、ヽ ,.:゙''" )'^`''ー- :、
lミ、 / f´ r''/'´ミ)ゝ^),ノ>''" ,:イ`i /i、ヺi .:" ,,. /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;`゙
! ヾ .il l l;;;ト、つノ,ノ / /:ト-"ノ゙i ,,.:ィ'" /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
. l ハ. l l;;;;i _,,.:イ / / ,レ''";;;;`゙゙" ヽ_,,ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
人 ヾニ゙i ヽ.l yt,;ヽ ゙v'′ ,:ィ" /;;;;;;;;;;;;;;r-'"´`i,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
r'"::::ゝ、_ノ ゙i_,/ l ヽ ゙':く´ _,,.〃_;;;;;;;;;;;;f´' ll;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
` ̄´ / l ヽ ヾ"/ `゙''ーハ. l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
/ l ゙t `' /^t;\ ,,.ゝ;;;;;;;;;;;;;;;i;;;;;;;;;;;;
とばかりにテンション爆上がりだったので余計に…(´・ω・`)まぁ、結局さらに二万つぎ込んで嫁王は引いたんですけど(吐血)
やっぱり深夜二時教は正しかったんだ(ぐるぐるおめめで)
>>527>>528
なんか今回ネロちゃまはポンポン来てくれる気がしますね
私も通算、八人のネロちゃまをお迎えしました…(´・ω・`)流石に10連で三人とか五人なんてミラクルはありませんでしたが
そしてこちらこそフレ申請ありがとうございます
今回で予備弾倉まで打ち切って、シータちゃんかアっくんの実装か、きよひーのマイナーチェンジがない限り、
新年の福袋までお財布の冬眠期間に入るカルデアでよければよろしくです
あ、言い忘れてましたが誉れも五枚揃ってるので欲しいところあったら言ってくださいなー
凸礼装の方が使いやすいかなって思って下げてるだけなので
メガン「シかし、そうなると私達では助ケになれマセンね」
ネリー「いや、諦めるにはまだ早いんじゃない?」
メガン「まさかネリーに異性のアテがアルんですか!?」
ネリー「いや、まったくないけど」
驚きに目を見開くメガンに、ネリーはサラリと返した。
生まれてこの方、ネリーは男と言うものに価値を見出した事はない。
世界でもトップクラスの麻雀プロと言う事もあり、近づいてくる男も少なからずいるが、彼女はその全てを一刀両断にしていた。
ネリー「でも、ここにメグがいるじゃん」
メガン「エ゛ッ」
明華「…なるほど。確かに長身ですし、スタイルも格好良いから男の人で通用するかも…」
メガン「チョ、待っテ」
ネリーの言葉に、メガンは狼狽を顔に浮かべた。
これまで格好良いと言われたのは一度や二度ではなく、彼女もそれを自覚している。
女性から本気がにじみ出るようなファンレターを貰った経験もあり、そういう風に見られやすい事も分かっていた。
だが、幾らなんでも男の振りをしろと言うのは、無茶振りが過ぎる。
友人の為とは言え、二つ返事で引き受けるなど無理だった。
明華「…ダメ、ですか?」
メガン「う…」
明華「…今、この場で頼れるのは貴女しか…」
メガン「うぅぅぅぅ…」
とは言え、ダメと言い切る事は出来ない。
何だかんだでメガンもまた情に厚いタイプなのだ。
ライバルであり、元仲間であり、今も友人で有り続けている明華の頼みに心が揺れる。
ネリー「引き受けてあげなよ」
メガン「…軽く言いマスけどネー…」
メガンは自分が恋愛に縁のあるタイプだと思っている訳ではない。
しかし、だからと言って、女である事を捨てたつもりはないのだ。
ここで明華の頼みを引き受けたら、女性としての自意識が修復不可能になりかねない。
それは流石にメガンとしても遠慮したい事だったが。
メガン「ハァ…分かりましたよ」
メガン「今回限りデスけど、男役を引き受けマス」
メガン「その代ワリ、私の相手役はネリーがスル事」
ネリー「えー…」
メガン「エーじゃないデスヨ、まったく」
メガン「煽った分ノ責任はちゃんと取ってモラいまスからね」
結局、メガンは折れてしまう。
一日だけ、一日だけ我慢しようと溜息と共に頷いた。
その代わりにと提案した条件に、ネリーが露骨に嫌そうな顔をする。
元々、彼女は遊園地などのレジャー施設に時間の浪費以外を見いだせない。
そんな暇があれば、少しでも自分を高めたいというのが偽らざる気持ちだった。
ネリー「まぁ…でも、他に適任者がいないし、仕方ないかぁ…」
明華「二人ともありがとうございます…!」
だが、ここで自分が駄々をこねたところで、メガンが心変わりをする事はない。
そもそも明華はWデートを頼めるような友人が殆どいないのだから。
メガンの正体を知って、Wデートに協力する人間など世界中を探しても自分くらいなもの。
ならば、ここは一日だけと我慢して、明華達に付き合うべきだろう。
そう判断したネリーの前で明華はパァと花開いたような笑みを浮かべた。
ネリー「お礼を言うなら、今回の作戦、しっかりと成功させてよね」
ネリー「トッププロ二人の一日は決して安くないんだから」
明華「はい。分かってます」
メガン「おォ。気合十分でスね」
ここまで友人に協力してもらって、ヘタレてはいられない。
この機会に京太郎との関係を進展させなければ、彼女たちに顔向けも出来なくなってしまう。
それは嫌だと握りこぶしを作る明華の身体から、メガンは強い力を感じ取った。
対局中の明華を ―― 風神と呼ばれた彼女を彷彿とさせるそれにネリーはそっとたこわさに手を伸ばす。
ネリー「じゃ、まずは作戦会議からだね」
メガン「…何だカンだ言ってネリーも結構ノリ気デスよね」
ネリー「失敗して時間の無駄になるのが嫌なだけだもん」
メガン「ま、私としても男装シテ無駄になるのは勘弁ですカラ協力しますケドネ」
ツマミを口にしながらの作戦会議は、中々、終わらない。
彼女たちは一様に酒豪だが、まったく酔わないという訳ではないのだ。
ほろ酔い気分のままあっちこっちに話を脱線させてしまう。
それでも一歩一歩踏みしめるように作り上げた作戦は、恋人居ない歴=年齢の三人にとって渾身の出来だった。
これならきっと鈍感な男でもメロメロに出来るはず。
酔っ払った彼女たちはそんな確信を抱きながら別れて ――
「きゃああああ! 京太郎!! ゆるキャラですよ! ゆるキャラ!!!
まず写真取ってもらいましょう! ほら、一緒に!!!
はい、チーズ…えへへ、あ、もう一枚おねがいしまーす
はいはい…えぇ。ありがとうございました。
ふふ。どうでしょう、綺麗に撮れてると良いですね。
って、あ、京太郎、あっちにメリーゴーランドがありますよ!!
京太郎は勿論、白馬ですよね。
なんでかは聞いちゃダメですよ。
流石に恥ずかしいんで教えてあげません。
あ、でも、その前の馬車に乗ってる私に追いつけたら教えてあげても良いですよ。
でも、ダメだったら…その後はお化け屋敷に付き合ってもらいますからね。
ここ本物が出るそうなので、怖くなったら私に抱きついてくれても良いですよ。
ちゃんと写真取って一生データとして保存しちゃいますから。
それが終わったら、観覧車ですよ。
密室で二人っきり…ふふ、とってもドキドキしますね。
頂点にいったときにサプライズもありますから楽しみにしてて下さいね」
「 ̄`ヽ-―‐---、__
{:.. ,..-f( ))-、  ̄}
广}___クーく.___{ ̄`ヽ ..:::/
/ ,..-‐r:r―┬r::r--、 }!V、_
/7'..:::i::|^!...:::i:| |:ヒjハi::ヽ|! ヾヽ
{ハ:::::::f':n:i、:::::{"{::n:ヾi:::.:|! }!'^゙
|丶弋ツ `゙ 弋;ツ}::::.|! }!
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/.:ヽハ!:r‐` T"´ !イ':":.:.:.:.:\i!
r:<>、.:.:.:.:.:.ト--、 ,..-/:.:.:,:イス) >_>、 「おい」
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待ちに待った遊園地デートに明華のテンションは収まるところを知らなかった。
普段の落ち着いた雰囲気を何処かに忘れたように、はしゃぎにはしゃぎまくっている。
まるで大きな子どものようなその浮かれっぷりに、ネリーは思わずツッコんだ。
この間、皆で考えた計画の事をちゃんと覚えているのか。
覚えているならどうして今の時点で脱線しようとしているのか。
そんな意図を込めたネリーの声に、しかし、明華は気づかなかった。
明華「あ、そうだ。今日、お弁当作ってきたんですよ」
明華「えぇ。朝早くから早起きして、京太郎の好きなものを一杯詰め込んできました」
明華「お腹が減ったら皆と一緒に食べましょうね」
明華「とっても素敵なデザートも用意して」 ネリー「はーい。ちょっとこっち来ようねー」
明華「いたた! き、京太郎!! ネリーが! ネリーが私と京太郎の仲を引き裂こうとします!!!」
延々に一人で喋り続ける明華の頬を、ネリーは無遠慮に摘んだ。
そのままグイグイと引っ張る彼女に明華は痛みを訴えながら抵抗しようとする。
半泣きになりながらのそれに、しかし、ネリーは容赦しようとはしなかった。
悪いのは明華なのだから仕方ないと強引に二人を引き離す。
ネリー「悪いけど、ちょっと二人でお化粧直ししてくるね」
明華「あぁん! 京太郎!!」
京太郎「…うん。とりあえずここで待ってるからゆっくりしてきてくれ」
そんな二人の様子に、京太郎も何かしらを感じるところがあった。
そもそも今日の明華は出会った時からテンションが高すぎて、ついていくのが難しいくらいだったのだから。
久しぶりに友人と会ったという点を加味しても、ちょっと色々とおかしい。
鈍感な彼にはその理由までは分からないが、ネリーがそれを是正しようとしてくれているのが伝わってくる。
メガン「(…ってコレどうスれば良いんですカァアアアア!!!!)」
結果、京太郎はメガンと ―― ヅカ系ファッションに身を包み、頑張って男になりきろうとしてるトッププロと置いていかれる。
コミュ力の塊である京太郎は、それに抵抗感を覚えたりはしないが、メガンの方は別だ。
友人の想い人と言う接点しか無い相手と、何を話せば良いのか分からない。
ましてや、今の彼女は男装しているのだから尚の事。
京太郎「えっと…それで」
メガン「は、ハイ」
とは言え、この場から逃げる訳にはいかない。
名目上とは言え、今回の集まりはWデートなのだから。
気まずいから帰りますなんて言えば、こっちの企みが全てバレてしまう。
そうなると流石に明華が不憫だと、メガンは逃げ出したくなる心を何とか抑えて。
京太郎「明華のワガママに巻き込んだみたいで本当にごめんなさい」
メガン「え?」
そんな彼女の前で京太郎はペコリと頭を下げた。
本当に申し訳無さそうなそれに、メガンは思わず驚きと疑問を顔に浮かべてしまう。
元々、このデートはメガン達の側から明華に頼み込んだというシナリオなのだから。
普通なら、明華のワガママに巻き込んだなどという言葉が出てくるはずがない。
メガン「いエ、その、頼み込んだのはコッチの方デスし…」
京太郎「明華達はいないんで、嘘吐かなくても良いですよ」
京太郎「つーか、無理してるのバレバレですから」
メガン「む、無理なんて…」
京太郎「んじゃ、なんでメガ太郎なんて偽名使ってるんですか?」
京太郎「麻雀プロのメガン・ダヴァンさん?」
メガン「うぇェ!?」
つい数分前に名乗った偽名ではなく、自分の本名を言い当てられる。
その衝撃はメガンにとって、とても大きいものだった。
驚きと狼狽が顔の中で混じり合い、ついつい図星だという顔つきを作ってしまう。
それを真正面から見られてしまった以上、言い逃れを重ねても無駄になるだけ。
それならば観念して本当の事を話したほうが、幾らか話もスムーズだろう。
メガン「な、なんデ分かったンデスか…?」
京太郎「そりゃダヴァンさんが出た大会なんかは俺も良く見てますし」
そう思う一方でメガンは京太郎に疑問の声をぶつける。
彼女にとって、いや、彼女たちにとって、その変装は完璧だったのだ。
どこからどう見てもイケメンにしか見えないと自画自賛していたのである。
しかし、それはあっさりと見破られてしまった。
その理由を知りたいと口にするメガンに、京太郎はごくごく当たり前のようにそう答える。
京太郎「それにダヴァンさんみたいな人が男装だなんて似合いませんよ」
メガン「そ、そンナにダメでスカ…?」
京太郎「ダメと言うか、単純にキャラじゃないって感じです」
京太郎「確かにダヴァンさんは長身で格好良いですけど、やっぱりところどころが女の人ですから」
京太郎「下手にメンズファッションに手を出すより、大会で着てるいつもの格好の方が可愛いし似合ってますよ」
メガン「か、かわ…!?」
それはメガンの人生において、数えるほどしか言われた事がない言葉だった。
幼少期の頃には両親から何度か言われたような気もするが、ここ十数年はまったくない。
格好良い、男らしい、素敵。
彼女に向けられる褒め言葉は、そんな男性的なものばかりだったのである。
京太郎「ほら、そうやってすぐ赤くなる」
京太郎「やっぱりダヴァンさんは立派な女の人ですよ」
京太郎「下手に男の振りなんかしても一発でバレちゃうくらいに」
メガン「あ…うぅぅぅ…」
しかし、目の前の男は、それを容易く口にする。
お前は女なのだと、可愛いのだと、そんな言葉でメガンの心を追い詰めてくるのだ。
今まであまり意識して来なかった女としての部分を刺激するそれにメガンの顔はさらに赤くなっていく。
気恥ずかしさもあってか、その胸の鼓動は強くなり、トクントクンと鼓膜を打った。
時間が来たのでしゅっきーん(´・ω・`)なんでハイテンション明華書くためのネタでメグ口説いてるんだろうね
うーんこのジゴロ
きっとこの調子で清澄を焦土化した上で、誰とも同じじゃない大学に進学したんだろうなあ
メガ太郎……ストーンで進化しそう
実は京ちゃんのメガ進化だったのか
ヨメオウ ホウグ レベル2 ホシイ
ハナビラ オウジャ シュウカイデキナイ
アッアッ
あ、書き上がったんで明日から見直しやってきます(白目)
ただ、今回ちょっと長いので見直しに数日掛かるやも知れませぬ(´・ω・`)ゴメンナサイ
実際、嫁王もネロちゃまも最高なんだよなぁ…
ボックスガチャ引く度に可愛すぎて、もうちょっとで第三スキル解放できるガウェほっといて赤王の育成したくなるくらい(´・ω・`)
ネロは完全に好みから外れてるんだよなぁ
魔城ガッデム周回しなきゃ(迫真)
>>554
私は大好きですけど苦手な人は苦手だろうなぁって言うのは分かります(´・ω・`)
私の場合、EXTRAでの思い出補正もありますしねー
>>555
私も周回したいよぉおおおお!!!
が、
剣
ガウェLv58
弓
尻王Lv65 クロエLv60
槍
槍玉藻Lv71 水着きよひーLv50 槍王Lv45
騎
水着モっさんLv50 マルタLv50 ゲオゲオLv40
術
水着マリーLv70 アンデルセンLv35
殺
水着師匠Lv80 上姉様Lv50
狂
ヴラドの叔父様Lv60 きよひーLv55
その他
マルタ Lv60 マシュLv60(六章未クリア)
育ってるのがほぼこれだけしかいない我がカルデアではガッデムクリアはコンテ必須である…(´・ω・`)おのれ…せめて銅メダルを種火と交換できれば
ガッデムクリアの為に育成したい → 育成する為の交換素材で一番効率が良いのはガッデム と言うジレンマよ…
ガッデムマジガッデム
あ、なのでライダー枠にジョイント置いといてくれると私が泣いて喜びます(白目
>>557
オールにジャンヌオルタ(白薔薇)
ライダーにドレイク(ジョイント)
設定してやったぞ、おう
好きな方あくつかえよ
各クラス1体育てたら満足するから対処できないのが辛い
聖牌戦争スレ建てるフラグかな?
全力で支援するが?
すまない……祭りなのに空気読まず本気を出し過ぎてしまって本当にすまない……
>>558
今更だけど貴方が神か
丁度白薔薇出たから、白薔薇邪ンヌと白薔薇玉藻組ませて出したら普通にクリア出来ました
そこそこ安定したから次からはこの組み合わせてハナビラ稼ぐぜひゃっぽう!!!!!(´・ω・`)って思ったら予選終ったでござるの巻
まぁ、工場長達はフレから白薔薇セイバー借りればそこそこいけなくはないんですが、スプリガンがマジ怖ぇ…
勿体無いけど弓王の宝具溜まってたら即ぶっぱするレベル
>>559
私は前衛張らせるのに各クラス二人は育てたいなーと思ってます
が、今回のエキシビジョンの話を見るにやっぱ全員育てた方が良いのかなーと(白目)
今の私じゃ戦力もキャラも足りてなくてこふっ取りにいけない…!!(´・ω・`)
>>560
聖牌戦争は他所様のところで完成してるシステム使えば比較的、楽に作れそうではありますし、脳内に色々と設定とかあって書きたくはあるんですが!!!!
正直、名作多すぎて気後れするレベル(´・ω・`)
>>561
三時間で終わった本気モードとかすまないさんは本当にネタに欠かないな!!!
と言うか、普段からもっと本気出してくれよ!!!
すまないさんキャラ大好きだから、出来れば、使いたいんだよ!!!!!!
京太郎「そんなダヴァンさんに男のフリなんてさせて申し訳なかったのが一つ」
京太郎「もう一つは、その、個人的な話で申し訳ないんですけど」
京太郎「俺、ダヴァンさんのファンなんです。こんな形ですけど、会えて本当に嬉しいんですよ」
京太郎「俺はダヴァンさん達みたいに強くはないですけど、誰からも引かない格好良い麻雀に憧れてます」
京太郎「これからもがんばってください」
メガン「ァ」
ダメだ、とメガンは反射的に思った。
コレはマズイ。
踏み込んでしまったら、きっと後戻り出来ない。
理性はそう訴えるものの、照れるように笑う京太郎から目を背けられない。
まるで世界が彼だけで出来ているように、視線が、意識が、想いが引き寄せられていく。
メガン「じゃ、ジャあ、あの…」
京太郎「はい?」
メガン「握手、とか…シますカ?」
京太郎「良いんですか!?」
憧れのプロからの提案に、京太郎は一も二もなく食いついた。
メガンが異性であると言う意識が押さえ込んではいたものの、彼もメガンと握手がしたかったのである。
まさか本人から言い出してくれるなんて、なんて光栄なんだろう。
何だかんだで明華とデート出来るし、今日は最高の1日になりそうだ。
自身が泥沼の発生源になりつつある事を自覚していない京太郎は、そんな喜びを胸に手を差し出して。
今回のイベはジャックちゃん大活躍でおかあさん大満足ですの
しかしオールで出してあるけど魔翌竜さんにアンリの普段ゴミな宝具が有効とか普通に困惑する
京太郎「じゃあ、お願いします」
メガン「…ハイ」
そんな彼の手をメガンはおずおずと握った。
無論、トッププロとして、彼女も少なからず、人と握手した経験がある。
しかし、今のメガンはそれが嘘のように、穏やかではいられなかった。
今の自分の手は汗ばんだりしていないだろうか。
衝動的に口にした握手だったが、引かれてはいないだろうか。
そんな怯えにも似た言葉がいくつも浮かび上がり、メガンの身体を固くする。
メガン「(…大きい手デスね)」
メガン「(なるほど…コレは確かに…男になるのは無理ソウです)」
メガン「(私の手はコンナに大きクモなければ、硬くもないですシ)」
しかし、それも数秒程度の事だ。
彼女が握りしめる手は、とても暖かく、そして何より優しいのだから。
不安は実感に上書きされ、強張った身体に心地よさが広がっていく。
握手によって、力を貰ったような気がしたのは一度や二度ではないが、逆に力が抜けていきそうな感覚は初めてだ。
しかし、それは彼女にとって、決して嫌なものではなくて。
京太郎「はは。なんか緊張しますね」
メガン「緊張?」
京太郎「えぇ。もちろん、あこがれのプロって言うのもありますけど」
京太郎「ダヴァンさんの手、柔らかくて、すっげー女の人って感じです」
メガン「~~~っ」
京太郎の言葉にメガンは言葉を失ってしまう。
もちろん、彼女も友人たちによって男の格好をさせられている自身へのフォローだと理解はしていた。
しかし、自分が女に見られていると言う感覚は、理解していてもどうしようもならない。
背筋にゾクゾクとした感覚を、胸の内に蕩けるような喜悦を浮かばせてしまう。
京太郎「って…調子に乗りすぎましたかね」
メガン「!!」ブンブン
京太郎「はは。それなら良かったです」
それは今まで彼女が感じてきたどの喜びとも気色が異なるものだった。
大会で優勝した時とも、ライバルで競り勝った時とも、比べられない。
いっそ違和感を覚えてしまいそうなそれを、しかし、メガンは拒めない。
じわじわと染み出すように強くなっていくのを感じながら、彼女は力いっぱいに首を左右に振った。
メガン「(や、ヤバイですよ、コレ)」
メガン「(何がヤバイって…手を離シたくアリません)」
メガン「(流石にズットこのままじゃ怪しまレルって分かっテるのに…)」
元々、メガンは思考よりも感情を優先しがちなタイプだ。
だが、これほどまでに感情をコントロール出来なかった事は今まで一度もない。
それに危機感を覚えるものの、メガンは手を離そうとはしなかった。
寧ろ、その時間が長く続くよう、ギュっと強く握りしめて。
ネリー「ただいま…って何してるの、メグ…じゃなくてメガ太郎」
メガン「え、エット…」
しかし、その時間も長くは続かない。
遠くで作戦会議をしていたネリー達がメガンのところへと帰ってきたのだから。
ここからデートが再開する以上、手を繋ぎ続けている訳にはいかない。
そんな寂しさがメガンの心にズシリとのしかかる。
京太郎「いや、今日はWデートだし、お互いに頑張ろうって励まし合ってたんですよ」
ネリー「あぁ、なるほど」
メガン「ァ…」
言いながら、京太郎はメガンから手を離した。
瞬間、彼女の胸を突き刺す痛みは、さっきの寂しさの非ではない。
どうしてもうちょっとゆっくりしてきてくれなかったのか。
胸中に浮かぶ理不尽な思考を止められないメガンは、小さく肩を落とした。
京太郎「で、明華は大丈夫なのか?」
明華「はい。もう大丈夫です」
明華「私はもうミステリアスでクールな雀明華に戻りましたから」
明華「いえ、新たに決意を新たにした雀明華mk2と言っても良いでしょう」
京太郎「うん。まずミステリアスとクールの意味を辞書で調べようか」
メガン「……」
そんなメガンの前で、京太郎は明華と横に並ぶ。
その光景は、とても絵になるとメガンは思う。
彼よりもふたまわりほど小さい『女らしい』身体つきの明華は、まさしくベストパートナーだ。
彼と何でもほぼ身長差がない自分よりはずっとずっとお似合いだろう。
どれだけそう言い聞かせても、胸の痛みは収まらない。
寧ろ、胃もたれのようなムカムカ感が喉からゆっくりと湧き上がってくる。
メガン「…大学の入試ッテ、麻雀でドウにかナリますかね?」
「 ̄`ヽ-―‐---、__
{:.. ,..-f( ))-、  ̄}
广}___クーく.___{ ̄`ヽ ..:::/
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/7'..:::i::|^!...:::i:| |:ヒjハi::ヽ|! ヾヽ
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|丶弋ツ `゙ 弋;ツ}::::.|! }!
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|、::|ハ:.,、 、ノ ,..ィ:ノ::リ;》=《i ゙、 「いきなり何言ってんの???」
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r:<>、.:.:.:.:.:.ト--、 ,..-/:.:.:,:イス) >_>、
ζ√ーァ\:.:.:.ヽ /:fィ_トrJ しイ.,>イ
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カンッ
うん、やっぱチョロいメグはメグじゃないな!!!!
やっぱりメグはイケメンで京ちゃんが惚れてるくらいの方が丁度良いと思いました(小並感)
>>564
ジャックちゃんは最近Qやスターデバフなんかで働けてなか…あれ、相変わらず大活躍してたイメージしかないぞぅ
アンリもそうですが防御無視宝具が輝いてますよねー
後、普段ゴミ扱いされてる礼装達も(´・ω・`)やっぱり固定値は正義なんや!(ぐるぐるおめめで)
>>546
そんな事ない…と言いたいけれど、この京ちゃんだと否定出来ねぇ
修羅場って精神的にキてた時期に明華と出会って癒やされた、とかも有り得そう
>>548>>549
つまり京ちゃんのポケットモンスターがメガ進化して、メグと合体(意味深)するんだな(ゲス顔)
乙
ダヴァンさんが可愛くてなんの問題があるんですか
乙
これは女の友情クラッシャーSUGAですわ
工場長めんどくさいいい!W2のスプリガン戦でヒルデ介護とかもうやだあ
乙おっつ
工場長は弓王、ヘラクレス、孔明で回ってますわ
全員にジョイント着けてるからビラビラ(意味深)が美味しい
工場長は白薔薇付けた水着狐で弟を、嫁王で兄の方をそれぞれ宝具一発よ
乙
とりあえず白薔薇頼光ママ置いとくのよー
明華というものがありながら……鈍感とタラシは罪ですよ京ちゃん
メイヴ戦時のジャックちゃんの「狩場だぜ!」感は異常
>>571
イケメン:可愛いの比率が9:1くらいが私の中でのメグのイメージに近いんですよねー
なんかこう少女漫画に出てくる王子役みたいな事をサラリと京ちゃんにする的な
>>572
これで明華が好きじゃなかったらマジでサークルクラッシャー化してそうで怖いな!!!
でも、何だかんだでネリーも堕としてそうな気がしますこの京ちゃん(´・ω・`)
そしてやっぱりW2のスプリガンマジ怖いですよね…
うちも槍玉藻が事故って死なないか毎回ハラハラしてます
>>573
ネロちゃまはビラビラでもぴっちりでも美味しいと思う(´・ω・`)だが、毛が生えているのは認めない絶対にだ(真顔で)
そして全員ジョイントつけられるなんて羨ましい…
こっちは前衛に白薔薇積まないと安定しないです
それでもたまにガッツ発動しますし、白薔薇外せない…!
>>574
水着の時の不遇っぷりが嘘のようにここ最近、槍玉藻輝いてますよねー
自己バフデバフ積んでクリティカル絡めばLv71でもブレイブチェインだけで工場長沈めてくれる玉藻 マジ良妻
嫁王の宝具はあんま火力ないらしいですが、それでも技術顧問の方くらいは仕留められるんですね、私も早く育てたい…(´・ω・`)
>>576
ジョイントとかの方が稼げるだろうに白薔薇つけてくれてありがとう
ピースモニュ全然足りてない上、勲章取れるところまでメイン進んでないので本気でボックスガチャが生命線なんや…
頑張って周回する予定なので、すっごく助かります(´・ω・`)目指せ50箱
>>577
程度にもよるけれど、どっちか片方だけならそれほどギルティじゃない気がします
が、両方となると最早、有罪判決以外何もでもないですよね
だから、京ちゃんは咲ちゃん刑務所に終身刑を喰らえばいいと思うな!!!
>>578
女性ライダー+強化主体という設定だけで、もうジャックちゃんの狩場としか思えないですね!!
全国のお母さん大歓喜
これならフレジャックちゃん借りれば何とかなりそうだから一回くらい挑戦してみようかなー…
あ、それはさておきちょっとお待たせしてるので明日の夜くらいにキリの良いところまで投下しようかなーと考えてます
最後までQガード残って白目になったり、Qガード剥がす前にうっかり宝具ぶっぱして涙目になったりしましたが何とか令呪一画だけでクリア出来ました
正直高難易度クリア出来ないと思ってたから超嬉しい
白薔薇ジャック本当にありがとうございました!!
……ただ、最初からずっと前衛張ってたにも関わらず最後まで生き残って殴り続けたマルタネキは本当になんなんですかねぇ…(震え声)
夜からキリの良いところまでやると言ったな?
アレは嘘だ(´・ω・`)ヒャッハー!投下だー!!
―― それからの一ヶ月は京子にとって苦難の日々だった。
春との『練習』によって、幾らかコツを掴んだとは言え、京子は今まで恋人がいた事などなかったのだから。
好みもそれぞれ違う六女仙達にどんなスキンシップが有効なのかを見つけるだけでも苦労を覚える。
その上、彼女たちは京子の事を心から愛しているのだ。
ほんの一瞬でも気を緩ませてしまえば、一線を超えてしまう。
そんな彼女たちと自身の欲望を宥めながらの日々は、綱渡り以外の何物でもなかった。
京子「(…でも、今日でそれも終わりだ)」
季節は新年を迎えて1月。
肌寒さが日々、増して行く中で、永水女子の卒業式は粛々と行われた。
それに感慨深いものを感じるのは、今日で六女仙攻略が終わるからだけではない。
校舎の向こう側に見える体育館で、依子が ―― 『お姉さま』が卒業したからだ。
京子「(…ホント、色々とあったよなぁ)」
エルダー選挙に巻き込まれてから今日まで、京子と依子の間には多くの出来事があった。
たった一ヶ月でスールの契り交わした彼女の卒業はそれを思い返させるに十分過ぎる。
依子にお弁当を作ってもらった事、膝枕をされた事、ブティックなどを巡った事、依子の家にお泊りした事。
それら全ては、京子にとって大変ではあったけれども、楽しい思い出で。
依子「お待たせしましたわね」
京子「いえ、今、来たところですから」
背中から掛けられた言葉に京子はクルリと振り返った。
学校生活でほぼ毎日、京子の傍らにいた彼女は両手に花束を抱えている。
そこに多くのメッセージカードが突き刺さっている事から察するに、仲の良い後輩達からのプレゼントなのだろう。
京子「それより、ここに来るまでの間にも皆に囲まれて大変だったのではありませんか?」
依子「えぇ。でも、決して嫌ではありませんでしたわ」
依子「あんなに多くの人達に泣きながら見送ってもらえて…身に余る光栄です」
京子「いいえ、そんな事はありません」
京子「お姉さまが立派にエルダーを務め上げたからこそ、皆もそれだけ慕っていたのですよ」
不幸な事故によって、京子と人気を二分する事になったが、元々、依子はエルダーになるのを確実視されていたほどの才女である。
エルダーになった当初は反発の声も僅かながらにあがったものの、今の永水女子で彼女をエルダーだと認めない生徒はいなかった。
それは京子とスールの契りを結ぶ事によって、その人気を取り込んだからだけではない。
生徒会長との二足草鞋を見事に履きこなしたからこそ、多くの生徒が称賛と憧れの眼差しを依子に向けているのだ。
依子「そう。務め上げた…なんですのよね」
京子「…お姉さま」
依子「もう私はエルダーではありません」
依子「永水女子の制服を着ているだけの家鷹依子」
依子「そう思うと肩の荷が下りたような、寂しいような…そんな気がしますわ」
言いながら、依子はそっと円形状のベンチに座り、膝の上に花束を置いた。
庭園風の中庭から少し外れたそこは、二人にとっての思い出の場所だ。
昼休みになる度に二人はそこで待ち合わせ、そして共に昼食を摂っていたのだから。
座り慣れたその場所は、しかし、依子の寂しさを慰めてはくれなかった。
依子「以前も言いましたが、私にとってエルダーは目標でした」
依子「母の語るような素晴らしい淑女になりたいと、そう思って目指してきた…一つの道標」
依子「幸運にも私はそれに選ばれ、そしてこれまでそれを汚さないように努力してきたつもりです」
京子「…えぇ」
依子の独白に頷きながら、京子はそっと彼女に近づく。
何時ものように、けれど、何時もとは違う胸の痛みを覚えながら。
こうして彼女とこのベンチに座る事はもう二度とないのだと言う寂しさを胸に抱えながら。
寄り添うように依子の隣に腰を降ろして。
依子「正直、今日まで一生懸命でしたわ」
依子「思った以上に大変だって思ったのは数え切れないくらいです」
依子「…でも、こうしてエルダーではなくなって、永水女子の生徒でもなくなって…」
依子「一つ…分かった事がありますの」
依子がどれだけ苦労していたかは京子も良く知っている。
人目のつかないこの場所で、あるいは二人きりのデートで。
依子は京子にだけ弱音を口にし、時に甘えたりもしたのだから。
しかし、依子はそれを表では口にせず、立派なエルダーとして一年近くを務め上げた。
依子「…私はこの学校が大好きですわ」
依子「私をエルダーとして受け入れて…認めてくれて」
依子「支えてくれた…この学校が…皆が大好きです」
依子「卒業なんて…本当はしたくないくらいに…」
京子「…お姉さま」
しかし、いや、だからこそ。
自身の内心を吐露する依子の声は震えていた。
寂しさを堪えるように、涙を我慢するように。
年相応の少女として、本当の想いを口にする。
依子「エルダーじゃなくても構いません」
依子「一生徒と言う扱いで十分です」
依子「だから…私はもっと皆と一緒にいたい」
依子「大好きな皆と…大好きなこの学校で過ごしたい…」
京子「…えぇ」
そんな依子に、京子は掛ける言葉が見つからなかった。
彼女の言葉は、京子の言葉でもあるのだから。
依子と過ごした日々はとても楽しく、だからこそ、本当は見送りたくはない。
もう一年、この永水女子で一緒に過ごしたいと京子も思っていた。
依子「…………でも」
依子「でも、卒業しなければいけないのですよね」
依子「私以外の皆も…歴代のエルダー達もそうやって卒業したのですから」
依子「ここでみっともなく縋っていては…エルダーの名に泥を塗ってしまう事になります」
だが、それは敵わない。
依子はエルダーとして、永水女子の代表として、三年間を皆勤に近い出席数で過ごしたのだから。
総合成績も一桁な彼女が卒業出来ない理由など何処にもない。
何より、彼女のエルダーとしての誇りが、卒業しないという選択肢を選ばせなかった。
依子「…ごめんなさい。分かっていますの」
依子「でも、こんなの他の子には言えなくて…」
京子「当たり前です」
京子「こんなの他の子に言っていたら、私、嫉妬しますよ」
エルダーになった時から、依子はそうあるべしと自身に課してきた。
例外はスールの契りを交わした京子のみ。
それに少なからず優越感を抱いていた京子にとって、それは心穏やかではいられない事だった。
嫉妬は冗談ではあるが、何か自分が悪い事をしてしまったのではないかと不安になってしまう。
京子「それにお姉さまがエルダーでなくなっても、私達がスールの契りを結んだ事に変わりはありません」
京子「隠し事なんてされる方が寂しいです」
依子「ふふ」
言いながら、京子は依子の手をそっと包んだ。
これまでも幾度となく繋いだその手は、依子の胸にあった申し訳無さを溶かしていく。
それについつい笑みを浮かべながら、依子もまた京子の手を握り返した。
依子「ありがとうございます、京子さん」
依子「私がこの一年、エルダーで有り続けられたのは…他でもない貴女のお陰ですわ」
依子「こうして貴女が側にいて弱音を引き受けてくれなかったら…私はきっと潰れていたでしょう。……ただ」
京子「ただ?」
依子「隠し事をされて寂しいと思うのは京子さんだけではありませんのよ?」
京子「(ぅ)」
そこでチラリと京子に向ける視線は悪戯っぽいものだった。
だが、それが決して冗談の類ではない事を京子は良く分かっている。
瞳の奥から覗く光は真剣かつ、とても真っ直ぐだったのだから。
嘘や誤魔化しは許さないと訴えるようなその目に、京子は内心で冷や汗を浮かべた。
京子「なんの事でしょう?」
依子「…京子さん、私も出来ればこんな事は言いたくありません」
依子「私にとって、貴女はただの友人や義妹と言う関係を超えた存在です」
依子「出来れば、綺麗な思い出のまま別れたい」
依子「それは私も思っている事ではあります」
依子「…ですが、このまま別れがたいとそう思っているのもまた事実なのです」
京子「……」
しかし、だからと言って、依子に全てを打ち明ける訳にはいかない。
京子の抱える秘密は、複数あるが、そのどれもが猛毒に等しいものなのだから。
もし、ここで依子に伝えてしまえば、彼女にも迷惑が掛かってしまいかねない。
依子「私はこれまで京子さんに沢山、助けて貰いました」
依子「だからこそ、私は貴女の秘密に踏み込まず、これまで関係を続けてきましたわ」
依子「でも、京子さん、私だって節穴と言う訳ではないのです」
依子「……もし、ここでお別れしてしまったら、私はもう二度と貴女に会えない」
依子「そう…なってしまうのでしょう?」
京子「…っ」
そんな事ありませんよ。
そう返すのが正解だと京子も頭では理解していた。
だが、それを言葉にするべき口が、まったく動かない。
彼女の指摘があまりにも正しいが故に、誤魔化す余裕を京子は失ってしまったのだ。
京子「(…元々、俺が永水女子に通わされていたのは小蒔さんの夢を叶える為)」
京子「(そして、何より、神代家の力を思い知らせ、俺を恭順させる為だ)
京子「(その両方が終わった今、俺がここに通う理由はない)」
京子「(これからの一生を神代以外で過ごせなくする為にも、三年生になる前に自主退学させられるはずだ)」
京子「(それは俺も覚悟していたつもりだったけれど…)」
それはあくまでもつもりにしか過ぎなかったのだろう。
本当に覚悟出来ていたのであれば、自身の事情を知らない依子がこうも核心に近づけるはずがない。
内心に浮かぶその言葉に、京子は後悔の念を胸中に広げた。
依子「私は…そんなの嫌です」
依子「私はもっと京子さんと一緒にいたい」
依子「さっき…京子さんが言ってくれたではないですか」
依子「私がエルダーではなくなっても、スールの契りがなくなる訳ではないのだと」
依子「なのに…貴女と会えなくなってしまうなんて私…」
自主退学した後の京子は、本格的に神代の道具にさせられる。
小蒔と婚姻を結び、彼女を孕ませ、神代に100年の栄光を齎す道具に。
当然、京子はそれを覆す為に戦うつもりだが、それは決して容易いものではない。
幾ら六女仙と小蒔の協力があったとしても、学生との二足草鞋では、乗り越えられないだろう。
だからこそ、京子は神代家の言う通り、学生を辞め、後の自由を勝ち取る為に力を蓄えるつもりだった。
依子「…ねぇ、京子さん」
京子「…………すみません」
それでも、その戦いがどれほど掛かるか分からない。
神代と呼ばれる魔物の恐ろしさは、京子も良く理解しているのだから。
間違いなく数年、下手をすれば十数年レベルでそちらに掛り切りになる。
その間、依子に会う事は出来ず、また終わった後にも会うのは難しい。
京子は今も成長期の真っ只中で、身体つきはどんどん男らしくなっているのだ。
数年も経てば、どれほど努力しようと、今と同じ姿には ―― 須賀京子にはなれない。
京子「(…それを説明しようとしたら、どうしても俺の正体に触れる事になる)」
京子「(でも、依子さんにそれを言えるのか?)」
京子「(今まで貴女が妹と呼んでいた須賀京子が全部、偽物でした、なんて…)」
ただ、性別を偽っていただけでも普通は幻滅されるだろう。
だが、『須賀京子』は石戸霞を元にして作られた仮面なのだ。
それを知られれば、間違いなく嫌われてしまう。
彼女の心だけではなく、その思い出にまで深い傷をつけてしまう。
それは京子にとって迷惑を掛ける以上に、恐ろしい事だった。
依子「…………つまり」
依子「つまり、京子さんは…本気で私と会えないと…そう思っているのですね」
京子「…はい」
かと言って、依子の言葉に適当な誤魔化しを返す事は出来なかった。
彼女は京子との仲がぎこちなくなるのを覚悟の上で、こうして踏み込んでいるのだから。
自身の様子以外には判断材料などなかったにも関わらず、勇気を出した彼女の気持ちを無駄にしたくはない。
今日で終わりなのだとハッキリと返さない方が、依子のしこりになってしまう。
依子「私が京子さんに協力すると言っても…不可能なのですか?」
依子「自慢ではありませんが、私の家もそれなりに力を持っています」
依子「京子さん一人を保護する事くらいなら出来るはずですわ」
京子「…お心遣い、本当に嬉しいです。でも…」
依子「言わないで。言わないでください…」
それでも依子は諦めなかった。
自身の家に頼ってても、京子と一緒にいたい。
そんな彼女の言葉に、京子は首を振って応えるしかなかった。
彼女がそうまで想ってくれている京子は偽物で、何より。
京子「(神代の中で俺に手を貸そうとしてくれてる皆の気持ちを裏切れない)」
京子は既に神代の中で生きる覚悟を決めた。
理不尽から逃げるのではなく、立ち向かうとしているのである。
そんな京子を助けようとしてくれている人たちは六女仙だけではない。
山田や小蒔の両親など、多くの人達の期待と想いが、京子の肩に乗っている。
それを全て投げ捨てて、自分だけ逃げるなんて格好悪い真似、幾ら依子の誘いでも出来ない。
依子「…悲しいですわ」
依子「比翼とも思える貴女と…ここでお別れだなんて」
依子「永水女子を卒業する事よりもずっとずっと…寂しくて悲しいです…」
京子「お姉さま…」
呟くように言う依子の目尻にジワリと涙が浮かび始める。
比翼と語ったその言葉に、嘘偽りはないのだから。
例え、京子がどんな事情を抱えていようと、一生を共に過ごしたい。
演技をする必要もなく、素の家鷹依子としていられる京子に側にいて欲しい。
心からそう思う依子にとって、それは身を引き裂かれるに足る答えだった。
京子「…はい。私も寂しいです」
京子「お姉さまは最高のお姉さまでしたから」
京子「出来ればずっと一緒にいたいとそう思っています」
依子「っ」
だからこそ、依子はその言葉に息を詰まらせる。
一つ一つポツリと漏すその言葉は、自身に負けない寂しさがにじみ出ていた。
京子もまた自身と同じように思ってくれている。
別れ難く思いながらも、しかし、断腸の思いで、そうしなければいけないと思っている。
それを感じ取って尚、「ならば」と京子に縋るような真似を依子は出来なかった。
依子「……京子さん…っ」
京子「はい…」
その代わりに依子は京子に抱きつく。
自身の身体一杯で想いを伝えるように、最後まで抗うように。
当然、エルダーを目指し、そしてエルダーたろうとしてきた依子は、これまでそのような事を家族以外にした事がない。
例え、同性であろうと抱擁を軽々しく行うなど、淑女らしからぬ行いだと自身を戒めて来たのである。
依子「…例え、これから先、何があろうと、どんな事があろうとも」
依子「私達を繋いだスールの契りは途切れませんわ」
依子「えぇ。貴方がどんな秘密を抱えていようと、どんな事情を抱えていようと…」
だが、今の彼女はそれを抑えられなかった。
胸の内から湧き上がる感情の勢いは、永水女子を卒業すると実感した時とは比べ物にならない。
依子にとって、『須賀京子』はずっと目指していたエルダーよりも、永水女子よりも遥かに大きいものになっていた。
そんな京子ともう会えないと言う辛さを、依子は制御出来ない。
その目尻から流れる涙も途切れる事なく、ポロポロと溢れ続けていた。
依子「本当は…どんな姿であったとしても」
京子「っ」
そんな依子だからこそ、京子の違和感に気づいた。
京子を強く想い、そして日々を一緒に過ごしていた彼女だからこそ。
京子が『見せようとしている』須賀京子が、本当の京子とは違う事に気づく事が出来た。
須賀の完成血統である京子が持つ『自身の認識を誤魔化し、見せたいものへと変える』 ―― 蛇神を欺いた英雄神の力を超えて。
彼女だけが『須賀京子』が作りものであるという事に気づき、そしてそれを口にせず、京子の方から伝えてくれるのを待っていたのである。
京子「わ、私は…」
依子「良いのです。何も言わないで」
依子「これまで秘密にしてきたと言う事は、何か言えない事情があったのでしょう?」
依子「ならば、私はそれに踏み込みませんわ」
依子「私はそれに足る信頼を勝ち取れなかったという事でしょうし…」
しかし、それは叶わなかった。
京子は最後まで依子を『本当の自分』へと寄せ付けず、非の打ち所のない須賀京子として過ごし続けたのだから。
それに恨み言を言うつもりはない。
京子が他の生徒達よりも遥かに心を許してくれているのは依子も感じ取っているのだから。
足りなかったのは勇気とそして信頼。
それさえあれば、今の自分の立場はもっと違っていたかもしれない、と依子は思う。
京子「そ、そんな事ありません!」
京子「さっきも言った通り、お姉さまは最高のお姉さまです」
京子「私には勿体無いくらいで…信頼していないなんて事はありません」
京子「ですが……」
それでも言えない。
ここまで自身を想ってくれている依子だからこそ、言う事が出来ない。
そのもどかしさと、説得力のない言葉しか口に出来ない自分への自己嫌悪。
それを潰すようにして、京子は歯を噛みしめた。
依子「…良いのです、京子さん」
依子「私は京子さんがとても優しくて暖かな人だと分かっていますから」
依子「それだけは嘘ではなかったと信じていますから……だから…」
京子「……はい」
言いながら、依子はその腕に力を込める。
その声に自己嫌悪を浮かばせる京子を慰めるように、それでいて、最後のワガママを伝えるように。
母性と甘えが同居する矛盾したその手に、京子もまた彼女の身体を抱きしめた。
依子「ぐす…京子さん…」
京子「……えぇ」
そのまま依子の背中を撫でれば、彼女の声がさらに涙ぐんでいく。
今の依子はエルダーでも、家鷹家の長女でもない。
自身の半身と分かたれる事を心から悲しんでいる一人の少女だった。
そんな彼女が容易く泣き止むはずはなく、京子に抱きついたまま涙を漏らし続けて。
依子「……恥ずかしいところを見せてしまいましたわね」
数分後、依子の感情は落ち着きを見せていた。
まだ寂しさと辛さは胸の中に残っているが、それはもう涙として溢れ出るほどではない。
代わりにはしたない事をしてしまったと言う自己嫌悪混じりの羞恥心が湧き上がり、頬が赤くなる。
さっきから心臓がやたらとドキドキしているのも、きっとその恥ずかしさの所為なのだろう。
そう思いながらも依子の身体は京子から離れる事がなかった。
依子「制服も汚してしまって…申し訳ありませんわ」
京子「いえ、気にしないでください」
京子「お姉さまの可愛いところを独占出来ただけでも十分お釣りが来ますから」
依子「もう。またそういう事を言うんですから」
京子の言葉に唇を尖らせながらも、依子は悪い気分ではなかった。
その心地良いやり取りは『何時も』を彷彿とさせるものだったのだから。
今日でお別れなのだと言う事実を、忘れたようなそれについつい頬が緩んでしまう。
同時に走った胸の痛みが、さっきのやり取りが嘘ではなかった事を彼女に知らせるが。
依子「…私、心配ですわ」
京子「何がです?」
依子「京子さんは女の子の扱いに慣れすぎていますから」
依子「変に期待をもたせて、後ろから刺されてしまうのではないかと…」
京子「だ、大丈夫だと思いますよ、えぇ」
それを無視して、依子は言葉を続けた。
何時も通りを意識したそれに京子はつい視線を反らしてしまう。
ほんの数ヶ月前ならば、大丈夫だと断言できたが、今はそうもいかない。
京子は『家族』達から寄せられている想いを知り、そしてそれを利用する為に行動していたのだから。
刺されてもおかしくはない状況なのだと言う自覚は、京子にもあった。
依子「ふふ。以前よりは自覚が出てきたようですわね」
依子「喜ばしい事ではありますが…反省の色が見えませんわよ」
依子「私を相手にこんな事をして…」
京子「お姉さまは特別ですから」
依子「もう」
特別。
それを依子は白々しいとは思わなかった。
例え、その心に踏み込むことを許してもらえなくても、例え、秘密を教えてもらえなくても。
京子は自身の事を大事に想ってくれている。
唯一無二の『お姉さま』としてのそれは、彼女にとって出処不明の不満を感じるものだったが。
「依子お姉さまー?」
京子「っと」
依子「むぅ…」
それでもこの心地良い時間を色褪せさせるものではない。
そう思った瞬間、遠くから依子を呼ぶ声がする。
依子は卒業式が終わった後、自身を取り囲もうとする後輩たちと最低限の会話しかしていないのだ。
まだまだ話し足りないと、卒業を祝い足りないと思う生徒たちがいるのも当然の事。
そしてエルダーとして、それに応える事もまた当然の事だろうと依子は思う。
京子「…お姉さま?」
依子「今の私はエルダーではありませんから」
依子「他の子の事よりも、大事な大事な京子さんの方を優先したいですわ」
だが、それは京子と分かたれてしまう事を意味する。
こうして抱きついてしまうほど愛しい義妹と二度と会えなくなってしまうのだ。
その寂しさは、依子の口からエルダーではなく、一人の少女としての言葉を漏らさせる。
依子「…それとも京子さんは、そういうワガママな私は嫌いですか?」
京子「いえ、私はどんなお姉さまも大好きですよ」
依子「ん…」
とは言え、それで京子に嫌われてしまったら元も子もない。
そう思って不安そうに見上げる依子に、京子は愛撫と共に答える。
髪の毛を優しく撫でながらのそれに依子の口は安堵の声を漏らした。
良かった、とそんな意味が込められた短い声に、京子も頬を緩ませて。
「あ、ここに…ってあ」
「依子お姉さまいましたの…ってあ゛」
依子「……」
瞬間、依子を探していた女生徒たちが、二人のいる空間に踏み込む。
そんな彼女達に依子が見せるのは、見慣れたエルダーとしてのものではない。
愛しい人との逢瀬を邪魔された一人の少女としての顔だった。
年齢よりも幾分、幼く見える ―― 拗ねたその表情に、女生徒達は気まずそうな顔をする。
「あ、あのあのあの…」
「えぇっとぉ…」
そのまま京子と依子が抱き合っている光景を数秒ほど見つめた二人は頬に紅潮を浮かべ始める。
二人がしているそれは同性同士で良くやるような軽いものではない。
お互いに別れ難く思っているのがハッキリと伝わってくる情熱的な抱擁だ。
少なくとも、ただの友人同士がするには情が入りすぎているそれを、しかし、依子も京子も解く様子がない。
特に依子の方は自分たちが異物であるかのようにジィと見つめてくる。
「失礼しましたああ!!!」
「ま、待ってよぉお!」
そんな状況に女生徒達は逃げ出してしまう。
申し訳無さと居た堪れなさに背を押された二人はあっという間に依子の視界外へと消えていった。
しかし、それは二人きりの時間に水を差された依子の感情を慰めるものではない。
むしろ、女生徒達がいなくなった分、思うがまま感情を露わに出来ると言うように頬を膨らませた。
依子「まったく…」
京子「ふふ。それだけ彼女達もお姉さまを慕っていると言う事ですよ」
京子「わざわざこんな外れまで探しに来るなんて可愛らしいではないですか」
依子「それはそうですけれど…」
そのまま呆れるように口にする依子に、京子はフォローの言葉を口にする。
二人っきりの時間に、水を差されるなんて、京子にとっては日常茶飯事なのだから。
親愛を向けるエルダーと最後の時間を過ごしたいと思う気持ちに悪意はないだろうし、目くじらを立てたりはしない。
むしろ、依子から子どもっぽく拗ねる可愛らしい顔を引き出してくれて有難うとさえ思っていた。
依子「…でも、京子さんは私よりもあの二人の肩を持ちますのね」
京子「え、いや、そんなつもりは…」
依子「言い訳無用です」
依子「スールの契りを結んだ私よりも、知らない下級生の方に甘い顔をするなんて…」
依子「京子さんは悪い子ですわ」
京子の言っている事が正しいと依子は思う。
普段の彼女であれば、京子の言葉に同意しただろうとも。
だが、今の依子は普段とは違うのだ。
エルダーとしての責務を下ろし、これが京子と最後の時間だと言う事実に傷ついている。
依子「だから、オシオキです」
京子「え?」
―― だからこそ、依子は京子に手を伸ばした。
その顔が逃げないように、両手でそっと包み込み、身体をぐっと前へと伸ばす。
自然、二人の間にあった距離は縮まり、そして0になる。
接触 ―― それは所謂キスと呼ばれるもので。
依子「………………ふぅ」
京子「…お、お姉さま?」
数秒後、京子からそっと離れた依子はふぅと溜息を漏らした。
様々な感情が混ざりあったその吐息に、呆然としていた京子の意識も我に返った。
何か言わなければいけない、しかし、何を言えば良いのか分からない。
そんな京子の前で、依子はクスリと笑みを浮かべた。
依子「ふふ。ファーストキスはレモンの味、と言いますけれど」
依子「どちらかと言えば、白桃に近い甘さですのね」
京子「ま、まぁ、そう言われて悪い気はしませんけれども…」
ついさっきのキスが自分にとってのファーストキスだった。
その情報と実感の篭った言葉に京子は驚きを隠せない。
素の依子は多少、悪戯好きではあるが、誰よりも淑女たろうとしてきたのだから。
スールの契りに関しても思い入れが強く、疑似恋愛のように扱うのは間違っていると言っていた。
そんな彼女が、自分からキスをするなど、あまつさえした後に反芻するように唇を指でなぞるなど京子は想像すらしていなかったのである。
依子「言っておきますが京子さんが悪いんですのよ?」
依子「これが最後、なんて悲しい事言うから…」
依子「だから、私にも貴女にも消えないものが欲しくなったんですわ」
当然、それは依子も同じだ。
自分がこんな大胆な事をするなど今まで考えた事もなかったのである。
だが、今の彼女はそれしか方法がないと ―― それが最良であるとそう信じていた。
二度と京子の事を忘れない為に、自分の事を忘れさせない為に。
依子にはソレ以外の方法が思いつかなかった。
依子「…嫌、でした?」
京子「そんな事ありませんよ」
依子「本当に?」
京子「えぇ。まぁ…少し驚きましたけれど」
京子「でも、お姉さまにこういう事して貰えるなんて光栄です」
依子「そう…ですの」
それでも不安はある。
どれだけの大義名分があろうとも相談もせず、勝手にキスをしたのだから。
レイプ扱いされてもおかしくはないそれに、しかし、京子は首を振って応える。
嫌どころか嬉しかったのだと言うその表情に、依子は嘘や演技の色を見つけられない。
きっと京子は本気でそう思ってくれているのだろうと内心、胸を撫で下ろした。
依子「…じゃ、じゃあ、あの…わ、私はそろそろ行きますわ」
京子「お姉さま…?」
依子「あんまり…ここでのんびりしていては皆に心配されますもの」
依子「いえ、心配されるだけならばともかく、あんな光景を見られた以上、変な噂が立ちかねません」
依子「私はそれでも構いませんが、目立つのを嫌う京子さんにとって、それは不利益になるでしょうし…」
その分、冷静になった胸は、強い気まずさを感じていた。
自分は今、勢い任せにとんでもない事をしてしまったのではないか。
そんな意識に背を押されるようにして、依子は京子から離れる。
そのまま乱れた身だしなみをそそくさと直し、花束を手に持った彼女は照れくさそうに背を向けて。
依子「今日はいきなり呼び出してすみませんでした。で、では…」
京子「お姉さま」
依子「っ」
その背中に、京子が声を掛ける。
瞬間、依子の身体が強張るのは、さっきの暴走に後悔の念を感じているからだ。
もう二度と会えないかもしれないとなったこの瞬間に、改めて言われる言葉など依子には一つしか思いつかない。
きっと恨み言言われるのだと、心の中で絶望を広げた。
京子「…私、お姉さまの事が大好きです」
依子「…………あ」
しかし、京子に恨み言を言うつもりはなかった。
京子はキスに慣れている上に、依子の事を心から大事に思っているのだから。
強引にキスされ、道は分かたれたものの、それは変わらない。
ソレだけは最後に伝えたいと京子は静かな声に想いを込める。
依子「私も京子さんの事が大好きですわ…」
京子「……はい」
依子「…さようなら、京子さん」
京子「えぇ。さようなら、お姉さま」
『また』は二人の口から出なかった。
二人とも再会が不可能であるという事を理解しているのだから。
受け入れたくはない、けれど、受け入れなければいけない。
それに痛みを感じながら、依子は再び前へと向き直る。
そのまま来た道を戻っていく彼女の背中を京子はじっと見つめていた。
京子「…………お姉さま」
ポツリと呟いたその言葉は誰かに聞かせる為のものではなかった。
比翼と呼んでくれた女性との別離は、自身で決断したものなのだから。
その寂しさと痛みを声に浮かべるような情けない真似はしたくない。
そう思いながらもつい漏らしてしまった声に、京子は頭を振って。
京子「…もう出てきても良いわよ、春ちゃん」
その声は意図的に明るく染められたものだった。
ここで下手に声を暗くすれば春に ―― 近くの茂みに隠れて、盗み聞きしているであろう親友兼恋人に気を遣われてしまう。
そうさせない為の言葉に、しかし、応えるものは誰もいない。
相変わらず、遠くから人の声が僅かに届くだけで。
京子「……今出てくるなら、盗み聞きしてた事も全部許してあげる」
京子「でも、もし出てこないなら、晩御飯の時に私の隣に座るのはナシね」
春「ごめんなさい」
京子の言葉に春はあっさりと茂みの向こうから顔を出した。
その髪に葉っぱを乗せながら謝罪する彼女は、申し訳なさそうな表情を浮かべている。
卒業式の直後、依子から二人きりで会いたいと呼び出されてしまった。
昨夜、食事の席でそう語った京子の後をこっそりつけたのは京子の事が心配だったからではない。
春は依子に対して複雑な感情を抱いてはいるものの、京子の事を害するはずがないと信じているのだから。
京子「まったく…春ちゃんったら」
京子「本当にイケナイ子ね」
春「…自覚はある」
それでも二人の会話を盗み聞きしてしまったのは、単純に嫉妬が故。
京子と依子を二人きりにしたくなかったからこそ、自分は京子の気持ちを裏切った。
それを自覚する彼女にとって、京子の言葉は否定出来るものではない。
ただただ、申し訳なさそうに身体を縮まらせる。
京子「ほら、落ち込んでないでこっちにいらっしゃい」
春「…良いの?」
京子「赦すって言ったでしょう?」
京子「反省もしているようだし、これ以上、何かを言うつもりはないわ」
そんな彼女を追い詰めるつもりは京子にはなかった。
山田との鍛錬によって、京子の感覚は以前よりも研ぎ澄まされている。
春が自身の後をついてきている事など、京子は最初から知っていた。
それでも尚、春の尾行を許したのは、依子と二人きりで会う事に他の『家族』も少なからず動揺していたからこそ。
折角だから、二人の間に何もなかったと霞達に証言して貰おうと京子は考えていたのである。
京子「それに私は春ちゃんに口止めしなきゃいけない立場だしね」
春「…さっきのキス?」
京子「そう。私としては出来れば、さっきのはノーカンにして欲しいのだけれど」
ただ、それは依子の大胆な行動によって、思い切り覆されてしまった。
突然のキスに反応できなかった京子は身の潔白を証明するどころか、後ろ暗さを抱え込んでしまったのである。
結果、気づかない振りをする予定だった春に声を掛けなければいけなくなった京子は、そっと肩を落とした。
春「…………京子次第」
京子「まぁ、そうなるわよねー…」
そんな京子に近づきながら、春は短い言葉を返した。
無論、春も本気で、さっきのキスを伝えるつもりはない。
特に霞は京子に対して並々ならぬ執着心を抱いているのだから。
もし、依子が強引にキスをしたなどと伝えてしまえば、彼女の排除に動きかねない。
色々と複雑な思いはあるが、依子が傷つけば、京子が悲しむのは目に見えている。
誰よりも京子を強く想っている春にとって、それは許容できる未来ではなかった。
京子「じゃあ、どうしたら見なかった事にしてくれる?」
それでも春が交渉を始めようとするのは、少なからず彼女も拗ねているからこそ。
盗み聞きしようと尾行していた自分が悪いのは分かっているが、目の前でキスをされるのは流石に堪える。
ましてや、春は京子の身体能力がどれほど優れているかを良く知っているのだ。
京子にまったくその気がなければ、さっきのキスを避けるのも可能だったのではないか。
そんな言葉を胸中に浮かばせる春に、京子はそっと手を伸ばす。
そのまま頭に乗っていた葉っぱを優しく取り払った京子の前で、春は数秒ほど考え込んで。
春「…じゃあ、そこの茂みでしっぽりねっとり」
京子「却下よ」
春「むぅ」
ポツリと口にするその言葉に許可が返ってくると春も本気で思っていた訳ではない。
この一ヶ月間、春は全力で京子の事を誘惑し続けていたのだから。
あくまでも他の六女仙を堕とす為と口にしながらのそれに、しかし、京子は屈さなかった。
時に自分でも過激だと思うような誘惑にさえ耐え続けた京子が、ここで了承を口にしてくれるはずがない。
そう理解しながらも、春は口から面白くなさそうな声を漏らしてしまう。
春「…どうせその貞操も今日までの命なのに」
京子「それ、まるで悪役のセリフよ、春ちゃん」
春「でも、事実」
小蒔が卒業した今、六女仙を留める枷はない。
あの手この手で焦らされてきた『家族』達は、一斉に京子の事を求めるだろう。
幾ら六女仙の寵愛を一身に受ける京子でも、それを止めるのは不可能だ。
寧ろ、この一ヶ月、彼女たちを焦らしに焦らし続けた京子は、最後の仕上げとばかりに彼女達を誘うはず。
その結果、どうなるかは神ならぬ身の春に分からないが。
春「…ほんの数時間前倒しになるだけ」
京子「初めてが外って言うのはスルーするのね…」
春「京子と一緒なら何処でも変わらない」
しかし、その貞操が自分に捧げられる事はない。
自分の『初めて』は京子にあげられるものの、京子の『初めて』は貰えないのだ。
それを平然と受け入れられるほど、春の愛は軽いものではない。
女性と違って、男性の貞操は自己申告制なのだから、こっそり自分にくれても良いのではないか。
諦めが悪いと自覚しながらも、春はそう思ってしまう。
京子「そう言ってくれるのは嬉しいけれど…でも、ダメよ」
京子「私はともかく、春ちゃんはもう一年、永水女子に通わなきゃいけないんだもの」
京子「変な噂が立ってしまったら、春ちゃんの居場所がなくなってしまうかもしれないわ」
春「…私の居場所なんて、京子の側にだけあれば良い」
京子「えぇ。勿論、春ちゃんなら何時でも大歓迎よ」
京子「でも、春ちゃんだって、人に嫌われたい訳じゃないでしょう?」
京子「少なくとも、舞ちゃん達の事は友人として大事に想っているはずだわ」
春「それは…」
とは言え、それは京子の意思をねじ伏せなければいけないほどではない。
ましてや、説き伏せるような京子の言葉は優しく、また彼女の本心を的確に突いているのだ。
ついつい言葉を詰まらせ、気まずそうに目を逸らしてしまう。
京子「ほんの数時間と言うのなら、我慢してくれないかしら?」
春「……分かった」
京子「ありがとう。良い子ね」
春「ん…」
そんな彼女の頭を優しく撫でながら、京子は暖かな笑みを見せる。
母性すら感じさせる京子の表情に、春は逆らえない。
諦めの悪い自分があっという間に溶かされ、首肯を示す。
そんな自分に誇らしさを感じながら、春は心地よさそうな声を漏らした。
春「じゃあ、ここでキスして欲しい」
京子「…ここで?」
春「そう。ここで」
それは春にとって、決して譲れるものではなかった。
キスによって、傷ついた心は、キス以上のスキンシップでしか癒やす事が出来ない。
だが、さっきの言葉を聞く限り、普段、家で京子にされているようなスキンシップは望めないだろう。
無論、後で改めて、京子に要求するという方法もあるが。
春「(…皆と合流すれば、それも難しくなる)」
春「(今は御当主様が来てるから、そっちにかかりきりになっているけれど…)」
春「(皆も京太郎の事は大好きで…そして何より、焦らされているから)」
春「(当分、彼から離れようとしないはず)」
京子と一線を超える時を楽しみにしていたのは、決して自分だけではない。
小蒔を除く全員が、心から待ち望み、楽しみにしている。
それを自分たちの間に流れる浮ついた雰囲気から感じ取る彼女にとって、京子の補填は後回しに出来るものではない。
この機を逃せば、次が何時になるか ―― 京太郎と二人きりになれる日が来るのかさえ、まったく分からないのだ。
春「…ダメ?」
京子「うーん…」
だからこそ、上目遣いでオネダリする春に、京子は唸り声を返す。
京子も春の事を愛してはいるが、この場所は京子にとってそれなりに特別なのだ。
ほぼ毎日、依子と二人きりで昼食を楽しんだこのベンチで他の女性とキスをする。
それを重大な裏切りのように感じてしまい、躊躇いが胸を過る。
春「…ダメなら無理やりする」
京子「ちょっとストロング過ぎないかしら…?」
春「…ここが私の譲れない一線だから」
春「京子に何を言われようが…絶対に上書きする」
当然、春は力勝負で京子に勝てるつもりはない。
性別の違いや行動傾向、そして才能の差は絶望的なまでに大きいものなのだから。
不意を打ったところで、その唇にたどり着ける確率は小数点を軽く割るだろう。
そう理解しながらも、京子に向かって宣言したのは、それが『言い訳』になるからこそ。
春「(私から無理やりと言う形なら、京太郎も自分の心に折り合いをつけられる)」
春「(仕方なかったんだって、無理やりされたんだって、言い訳が出来る)」
春「(だから…)」
春「…京子」
自分から迫る。
心の中でそう決めた春はズイと京子に詰め寄った。
一気にその距離を縮める彼女に、しかし、京子は抵抗らしい抵抗を見せない。
それに内心で勝利を確信しながら、春はそっと目を閉じて。
京子「はい、ストップ」
春「…なんで?」
そこで彼女の歩みを止めたのは京子の手だった。
春の頬を両側から受け止めるようなそれに春は疑問の声を口にする。
わざわざ言い訳まで準備したのに、どうしてキスを止めるのか。
依子の時は受け入れたのに、どうして自分は拒むのか。
そんな想いを込めた言葉に京子はそっと春の頬から手を離した。
京子「色々と理由はあるけれど、一番はこのままじゃ私が卑怯過ぎるから、かしらね」
春「卑怯?」
京子「そうよ。春ちゃんに言い訳まで準備してもらって、されるがまま、なんて格好悪いでしょう?」
春「ふあ…」
そのまま京子の手は、春の身体を抱き寄せる。
詰め寄って来たその身体を自身に密着させるその腕に、春は思わず吐息を漏らした。
今まで自分を幾度となく抱きしめてくれた、強く、太く、逞しく、そして何より愛しい腕。
それに逃げ場を奪われた彼女は、喜悦を胸中に広げていく。
京子「それにされっぱなしというのも趣味じゃないからね」
春「じゃあ…」
京子「えぇ。キスしましょう」
京子「それもただのキスじゃないわ」
京子「春ちゃんが私の…私だけのモノになる為の誓いのキスよ」
春「~~っ♥」
これまで京子が受け身になっていたのは、自身を雁字搦めにしていたからだ。
家の事情や彼女たちへの想いで作られたその鎖は、しかし、今はもうなくなってしまっている。
結果、その本性を ―― 誑しとしての顔を露わにする京子は、春の望みを言い当てる。
何もかも京子に捧げたいという想い。
京子の『初めて』が欲しいと言う独占欲。
その2つを同時に満たす京子の言葉に、春は全身を震わせる。
春「そ、それって…」
京子「一足先に結婚しましょうかって事よ」
春「け、結婚…」
それは春にとって、とても特別なモノだった。
京子の事情を知った時から正妻になるのを諦めていたとは言え、彼女もまた恋する乙女。
愛しい人との結婚式を何度も夢に見、妄想してきた。
そしてその度に不可能だと自分に言い聞かせてきた春は、その言葉をすぐさま咀嚼する事が出来ない。
春「わ、私と…?」
京子「えぇ。春ちゃんと」
京子「勿論、後で正式に結婚式をするつもりだけれどね」
無論、依子との思い出の場所で、結婚式など裏切り以外の何者でもないと京子も理解している。
だが、春は依子以上に特別な『恋人』なのだ。
その彼女がこうも嫉妬をアピールしているのに、されるがままではいられない。
日頃、尽くしすぎるほど尽くしてくれている彼女に報いる為にも、自分の思いつく最高のキスで応えよう。
そう思った京子は、彼女を抱きしめている腕を解き、春の唇をそっと撫でた。
京子「嫌とは言わないわよね?」
春「あ…ぅ…♥」
瞬間、京子が見せるのは勝ち誇った笑みだった。
春の想いと自身の魅力を理解しているが故の表情は、自信と、そして色気を強く感じさせる。
ともすれば、見惚れてしまいそうなその笑みに、春の心は反射的に白旗をあげた。
他の誰よりも念入りに堕とされた彼女はおずおずと頷いて。
京子「…じゃあ、まずは誓いの言葉からね」
京子「汝、滝見春は病める時も健やかなる時も、須賀京子を愛す事を誓いますか?」
春「……誓います♥」
うろ覚えながら口にした京子の言葉に、春はうっとりとしながら答える。
短いながらもしっかりとしたその応えに、京子の胸はむず痒さを覚えた。
神父も神主もいないおままごとのような結婚式に、しかし、春は心から喜んでくれている。
本気で永遠の愛を誓おうとしてくれている彼女の事が愛おしくて仕方がなかった。
春「汝、須賀京太郎は病める時も健やかなる時も、私を…滝見春を愛してくれますか?」
京太郎「……あぁ。勿論、誓うよ」
春「んふ…♪」
だからこそ、京子は、【須賀京太郎】として応える。
無論、人の目もある場所で【須賀京子】の仮面を外すのは危険だと良く分かっている。
しかし、春の言葉は演技しながら応えられないほど真剣なものだったのだ。
コレは結婚式なのだから、素の自分に戻るのも仕方がない。
躊躇いにそう言い聞かせながら、京太郎はしっかりと頷く。
京子「では、誓いのキスを…」
春「ん…♥」
とは言え、それも一瞬の事。
次の瞬間には再び【須賀京子】に戻ってしまう。
しかし、春にとってはそれで十分だった。
例え、一瞬でも本気で応えてくれた。
本当の言葉で誓ってくれた。
その喜びを甘い疼きに変えながら、春は京太郎とキスを交わす。
京子「はい。これで春ちゃんは皆より一足先に私のお嫁さんね」
春「うん……♪」
二人が触れ合っていた時間はそう長くはなかった。
しかし、それに春が不満を覚える事はない。
それは何時ものキスではなく、永遠の愛を誓う為のモノなのだから。
例え、数秒ほどの短い時間であっても、京子と心まで繋がれた気がする。
京子「これからも色々とやって貰う事になるし、きっと苦労を掛ける事もあると思うけれど」
京子「その分、一杯、幸せにするから宜しくね」
春「~~っ♥」
それが思い込みでないのだと教えるように、春の耳元で京子は囁いた。
優しく、それでいて何処か色っぽいその声音に春の背筋にゾクゾクとした感覚が這い上がってくる。
寒気にも似たそれは、不快どころか気持ち良い。
ついつい熱っぽい吐息が漏れ、京子を抱きしめ返す腕にも力が入ってしまう。
春「好き…♥ 大好き♥」
京子「あ、ちょ…もぅ」
しかし、春はそれでも物足りない。
彼女は甘えるのも尽くすのも大好きなのだから。
甘やかされた分、今度は自分が尽くしたい。
その欲求が高まり過ぎた春は京子の頬や首筋にキスをする。
ちゅっちゅとリズミカルに音を鳴らすその接吻に、京子は擽ったそうな、それでいて嬉しそうな声をあげた。
京子「そういうのはまた後でね」
春「…お預け?」
京子「そ。お預け」
とは言え、何時までも春のキス攻撃を受け続ける訳にはいかない。
情熱的過ぎる春のキスは微笑ましい友人同士のスキンシップとして受け入れられるものではないのだから。
この光景を、事情の知らない誰かが見てしまったら、間違いなく誤解されてしまう。
ましてや、ここは女子校で、生徒同士の距離も極端に近い。
京子が有名人と言うのも相まって、その誤解はあっという間に全校生徒の共有するものとなるはずだ。
京子「(何より、明日から俺はここに通えなくなってしまう訳だからなぁ…)」
【須賀京子】は浮気者だと罵られるのは良い。
明日から【須賀京子】は病に掛かり、退学する年度末まで登校しない予定なのだから。
幾ら影で悪しように言われたところでダメージは殆どない。
だが、春は後一年、京子のいなくなった永水女子に通い続けなければいけないのだ。
いなくなってしまった京子の様態を知ろうと、春の側に人が詰めかけるのは目に見えている。
そんな時期に春にとって不名誉な噂が流れてしまえば、悪い意味でも注目を集めてしまう。
最悪、京子の掛かった病は精神的なもので、強引にキスした春の所為なのだと言う根も葉もない噂が出てきかねない。
京子「代わりにちょっとデートに付き合ってくれないかしら?」
春「デート?」
京子「えぇ。二人だけの学校デートよ」
それを危惧しての言葉を、しかし、春はそう簡単に受け入れてはくれないだろう。
不満に瞳を曇らせる彼女にそう判断した京子は、代わりの餌で春の事を釣り上げる事にした。
二人だけの学校デートと言う言葉に、春は見事に食いつくが。
京子「私も今日で永水女子を卒業するから」
京子「最後にこの学校の事をじっくり見回っておきたいの」
春「…京子」
ポツリと漏れた次の言葉に、春の胸はズキリと痛む。
京子が口にした声音はあまりにも切ないものだったのだから。
卒業なんてしたくない。
春達ともう一年、この学校に通いたい。
そんな想いが染み出す言葉に、春はおずおずと口を開いた。
春「…やっぱり何とか退学しないで済むように」
京子「良いのよ」
春「でも…」
京子「良いの。私は本当なら一生を籠の中で過ごしていたはずなんだもの」
京子「それを皆の好意で、こうして一年間、モラトリアムを楽しませてもらって」
京子「まだそれを延長したいなんて、贅沢が過ぎるわ」
神代における自身の立場を京子は良く理解している。
ともすれば、小蒔以上に重要な自分は、間違いなく普通の生活を送らせては貰えなかっただろう。
神代の強引さを考えれば、座敷牢に軟禁され続けてもおかしくはない。
にも関わらず、自分は両親の愛を一身に受け、一年前までごくごく普通の男子高校生として過ごしていた。
それは自身の持つ30億と引き換えにしても足りない、最高の贅沢だと思う。
京子「それに私は他にするべき事があるもの」
京子「必要以上に恩を売られない為にも弱みは見せられないわ」
何より、京子がこれから踏み込むのは権謀術数の世界だ。
普通の男子高校生では到底、生きていられないその世界で、弱みを晒す事など出来ない。
小蒔の父親のような男に、まるで鋼鉄で出来ているような男にならなければ、大事なものを守るなど不可能。
それを良く理解する京子にとって、春の優しさは受け入れられるものではなかった。
京子「でも、ありがとうね、春ちゃん」
春「…そこでお礼を言われると逆に辛い」
京子を来年の卒業式に出席させるのは決して不可能ではない。
無論、簡単ではないが、六女仙全員で協力し、神代家側のメリットを ―― 例えば父親から受け取ったという30億などを適切なタイミングで切れば押し通す事は可能だろう。
だが、京子はそれを望まない。
倒すべき敵を見据えた京子にとって、ここは勝負を仕掛けるべきポイントではないのだ。
永水女子に通い続けたいという気持ちを捻じ伏せ、交渉材料を温存しようとしている。
将来の事をしっかりと考えたその姿は頼もしいが、しかし、心から喜ぶ事が出来ない。
本来、当たり前にあるべきはずの幸せを手放し、一足先に『大人』になろうとする京子に痛ましさを感じる。
その上、お礼まで言われてしまった春は、申し訳なさそうに瞳を伏せた。
京子「ふふ。じゃあ、辛い想いをさせたお詫びをしなきゃいけないわね」
春「…それはこっちのセリフ」
しかし、春はこれ以上、口を挟もうとはしなかった。
決して小さくはない望みをしまい込む京子の姿に胸が痛むが、喜ぶ彼女もまた大きい。
ソレは京子が春達と共に一生を過ごす覚悟を決めた証でもあるのだから。
京子の判断を尊重したい気持ちと相まって、春は促されるままベンチから立ち上がり。
春「折角、最初で最後の学校デートだし、忘れられない思い出を作ろ」
京子「そうね。でも、エッチなのはダメよ」
春「大丈夫。滅多に人が来ない空き教室を知ってる…」
京子「ダメです」
春「…意地悪」
京子「これでも春ちゃんの事思って言ってるのよ」
何時も通りを自分に言い聞かせながら、春は京子と腕を絡ませる。
その豊満な胸をグイグイと押し付けながらのそれに、京子は釘を刺した。
無論、春が本気で言っている訳ではないと分かっているが、ここで甘い顔をすれば押し切られかねない。
『練習』の成果もあって、幾らか従順にはなっているものの、春の欲求不満は収まるどころか高まっているのだから。
流石に逆レイプされると思っている訳ではないが、彼女の言葉にはしっかりとNOを返しておいた方が良い。
京子「それに…」
春「んぁ…♥」
その代わりに、京子は組んだ腕を、春の尻たぶへと伸ばした。
そのまま思い切り、尻肉を鷲掴みをする手に遠慮などまったくない。
この一ヶ月、京子は一線こそ超えなかったものの、春の身体を思うがまま弄んでいたのだから。
胸に負けない柔らかさと大きさを誇るその臀部を、まるで自分のもののように揉みしだく。
京太郎「帰ったら一杯、可愛がってやるから我慢しろ」
京太郎「俺の奥さんなんだからそれくらい出来るだろ?」
春「きゅん…♪」
同時に【須賀京太郎】が春の耳元で囁く。
他の誰にも聞こえないようにと普段よりも抑えたその声音は、高圧的なものだった。
春が拒否する事など微塵も考えていないそれに、開発された彼女は抗えない。
嬉しさ混ざりの疼きを胸の奥まで走らせながら、甘い鳴き声をあげる。
春「が、我慢する…♥」
京子「宜しい。それじゃあ、行きましょうか」
コクコクと頷いた春に京子はニコリと笑みを見せる。
さっきの高圧的な囁きが嘘のような優しくて暖かな表情。
何時も通りと言っても良いそれに、しかし、春は胸の鼓動を抑える事が出来なかった。
この優しい笑みが、京子の本性に ―― メスを従わせる冷たくも甘い表情に塗り替えられるところを、彼女は何度も見ているのだから。
その度に身も心も服従させられている春の心臓は、高鳴りをより甘いものにしていく。
期待と興奮が強まっていくのを否応なく自覚させられるようなそれに春は頬を緩めながら、京子と共に歩いて。
…………
……
…
―― その日の夕食は浮つきを隠しきれないものだった。
湧と言う例外を除き、六女仙の殆どは幼い頃から自立を求められてきた少女たちだ。
自然、その精神性は同年代の少女たちよりも大人であり、雰囲気も落ち着いている。
何より、彼女たちは例外なく良家のお嬢様であり、しっかりとした躾を受けてきたのだ。
食事時に賑やかになる事はあっても、浮ついたものを感じた記憶はない。
常に地に足をつけた、行儀の良いはしゃぎ方だったと京太郎は思う。
京太郎「(でも、今日はまったくの逆だ)」
京太郎「(何時もよりも会話は少ないのに、皆、何処か落ち着かない)」
京太郎「(そわそわを隠しきれない様子でこっちを見てくる)」
今、京太郎の前に並んでいるのは、ご馳走だ。
料理自慢の六女仙が手間暇と金を惜しまず作ったそれは、湧や初美を大喜びさせていただろう。
だが、六女仙の中でもムードメーカーな二人でさえ、今はあまり口を開こうとしない。
座布団の上でモジモジと身体を揺らしながら、京太郎の様子を盗み見している。
巴「き、京太郎君、そのポテトサラダはどう?」
京太郎「美味しいですよ。これ巴さんが作ったんですか?」
巴「えぇ。そうなの」
自然、沈黙が続く食卓に、気遣い屋の巴は我慢出来ない。
周囲から視線を浴びる京太郎の事を気遣って、話題を振ろうとする。
だが、落ち着かないのは彼女も同じだ。
気持ちだけが空回りし、会話を続ける取っ掛かりを作れない。
京太郎「やっぱり巴さんの料理は絶品ですね」
京太郎「きっと将来、良いお嫁さんになるだろうなぁ」
巴「そ、そんな…」
初美「む」
京太郎の言葉に巴は嬉しそうに照れ、初美は面白くなさそうな顔をする。
京太郎の正妻になるのは小蒔だと決まっているし、それに対して異論を挟むつもりはない。
だが、それでも今は、小蒔との結婚が決まっていない今は、まだ自分が彼の婚約者なのだ。
目の前で親友を口説くような事を言われて、面白いはずがない。
初美「何、人の親友口説いてるんですか、このチャラ男は」
京太郎「純然たる感想なんだけどなぁ」
初美「それで全てが許されると思ったら、大きな間違いなのですよー」
京太郎「よし。じゃあ、初美の作った料理を当てよう」
京太郎「それが出来たら許してくれよ」
初美「ほほーぅ」
とは言え、初美も拗ねていただけ。
本気で怒っている訳でもなければ、京太郎の事を許さないと思っている訳でもない。
ちょっと釘を刺しておこうと言う軽い気持ちだった。
そんな彼女にとって、京太郎の提案は決して悪いものではない。
本当に当てられるのであれば、自分も嬉しいし、京太郎を赦す理由にもなる。
当てられないならば、それを理由に構ってもらえる。
どっちに転んでも損はない以上、ここで乗らない理由はないと彼女は小さく頷いて。
初美「良いですよ。乗ってやりましょう」
京太郎「おし。それじゃあ…」
初美の応えに京太郎はちゃぶ台の上を見渡した。
十人でも容易く座れるその台には、和洋折衷様々な料理が並んでいる。
それぞれの得意料理と小蒔の好物を並べたその中から、初美の料理を見つけ出すのはそれほど難しくない。
初美が料理当番の時に出て来る味を思い返せば、自然と見つかるはずだ。
京太郎「…うーむ」
しかし、あれこれ食べてもその味が見つからない。
初美の料理は癖が強い訳ではないが、おおよそ3日毎に食べているそれを見つけられる自信はあったのだ。
だが、どの料理からも初美らしさというものを感じられない。
京太郎「(…初美さん達は朝から気合を入れてご馳走の準備をしていた)」
京太郎「(だから、初美さんの料理がない、なんて事は絶対にないはずだ)」
京太郎「(なのに…何故、見つからない…?)」
初美「ほらほら、早くするですよー」
京太郎「いや、待ってくれ。何処かにあるはず…あるはずなんだが…」
初美「じゅーう、きゅーう」
京太郎「待って! カウントダウン止めて!!」
初美「でも、挑戦状を自信満々で叩きつけておいて即答出来ない婚約者をこれ以上見てるのは忍びないですし…」
京太郎「ぐ…」
結果、答えを見いだせない京太郎を初美が追い詰める。
聞いているだけでも焦りを覚えそうなそれに京太郎は声をあげた。
それにニヤリとした笑みを返す初美に、京太郎は反論する事が出来ない。
今の自分があまりにも格好悪すぎる事を彼もまた自覚しているのだ。
初美「と言う訳で、これ以上、株を堕とす前に回答をどうぞ」
京太郎「な、ナッシン?」
初美「ファイナルアンサー?」
京太郎「ファイナルアンサー……」
初美「……」ジィィィ
だからこそ、これ以上、答えを引き伸ばせない。
躊躇いにそう言い聞かせながら、京太郎は自身の中で一番、自信のある答えを口にする。
だが、初美はそれにすぐさま答えず、ジィと穴が空くほどに京太郎の顔を見つめて。
明星「正解ですよ」
明星「初美さんが作ってたのはデザートで料理じゃありません」
初美「ちょ、明星ちゃん!? ここの溜めがすっごい大事なんですけれど!!」
明星「知りません。…と言うか、さっきから初美さん、頬ににやけっぱなしですし」
明星「正解だってバレバレでしたよ」
初美「ふ、風評被害ですよー。私は別にニヤニヤなんて…」
湧「してたっ」
春「してました」
巴「うん。バッチリ」
霞「よっぽど嬉しかったのね」
小蒔「可愛かったです!」
初美「あうぅぅぅ…」
瞬間、入った横槍に、初美は顔を赤く染める。
ここに自分の料理はないという詐欺のような答えに気づいてくれた嬉しさは決して少ないものではなかった。
だが、彼女はそれを上手く心の中にしまい込み、処理していたつもりだったのである。
それが自分の思い込みに過ぎなかったのだと思い知らされる家族からの追い打ちに初美の身体は縮こまった。
明星「それより、クイズみたいな真似をせず、純粋に料理楽しみましょう」
明星「今日は、姫様の卒業祝いなんですから」
霞「…とそれっぽい事言っているけれど、本当は見つめ合う二人に嫉妬してたのよね?」
明星「か、霞お姉さま!?」
霞「あら、違ったかしら?」
状況を仕切るようなその言葉は決して嫉妬だけで彩られたものではない。
見世物のように生暖かい視線を浴びていた初美への助け舟と言う気持ちも彼女の中にはある。
しかし、やはり一番は、二人が仲の良さを見せつけるようなやり取りをしていた事だ。
自分にも構って欲しい。
でも、二人きりならいざ知らず、それを素直にアピール出来ない。
そんな義妹の躊躇いに霞は微笑みながら突っ込んだ。
明星「そ、そんな事…………す、少しはありますけれど」
霞「ふふ。どうかしら、この面倒可愛さ」
霞「中々、見られるものじゃないでしょう?」
京太郎「えぇ。三年…いや十年に一度の逸材ですね」
明星「わ、私、そこまで面倒くさくありません!」
義姉と想い人の会話を明星はスルー出来ない。
以前ならばいざ知らず、今の自分は幾分、素直になったのだ。
照れ隠しに酷い事を言う事もなくなり、二人きりなら京太郎に甘えられる。
そんな自分を面倒くさいと称するのは間違いだと声を張り上げて。
湧「でも、明星ちゃ、むぜって言われて喜んでるよね?」
明星「え? ま、まぁ、そうだけど…」
霞「やっぱり面倒可愛いわね」
京太郎「ですね」
明星「だ、だから、面倒は余計ですってば」
明星「ちゃんと可愛いって言ってくれたらその…わ、私だって…」
湧「私だって?」
明星「な、何でもない…っ!」
タガを外して、京太郎に抱きつけるのに。
そんな言葉を明星は口にする事が出来なかった。
色々あって自分の気持ちを認めたとは言え、彼女は十年に一度の逸材なのだから。
人前で甘える抵抗感もあり、ついつい顔を背けてしまう。
明星「……」チラ
春「あざとい」
明星「あぅ…」
それでも期待を捨てきれず、明星はチラリと視線を想い人に向けた。
甘えにも似たその仕草に、定位置に座る春がポツリと感想を口にする。
瞬間、明星の顔が赤く染まるのは、その言葉を否定できなかったからこそ。
彼女自身、今の流し目に、誘惑の色が混ざっている事を自覚していた。
霞「京太郎君、今の感想は?」
京太郎「構ってオーラ全開の流し目にドキっとしました」
巴「確かに今のは女の子って言うよりも、女性って感じだったものね」
春「…いつの間にか明星ちゃんが大人の女性に」
湧「えっ、明星ちゃ、キョンキョンとしちゃったの!?」
明星「ま、まだよ!」
明星「じ、じゃなくて、その発想はおかしいから!!!」
予想外の方向に転がりだす親友の発想に、明星は否の言葉を返した。
何故かこの一ヶ月、京太郎とのスキンシップが増えているが、殆どが受け身で、京太郎の手や舌にあんあんと喘がされてばかり。
以前、欲望が暴走してしまった後悔もあるとは言え、ずっとされっぱなしな彼女は結局、京太郎と一線を超える事が出来なかった。
明星「(…でも、京太郎さんのテクって本当に凄いのよね)」
明星「(色々と複雑なくらい気持ち良くて、心地よくて…終わった後も京太郎さんが欲しくなる)」
明星「(京太郎さんの身体や熱、匂いを思い返して、自分を慰めた事なんて一度や二度じゃないわ)」
明星「(まぁ、それも今日で終わりになるはずだし、何より京太郎さんから求められるのは嫌じゃないんだけれど…)」
どうして急にスキンシップに対して積極的になったのか。
その答えを明星は未だ見つける事が出来なかった。
本人は色々と吹っ切れたからだと説明していたが、恐らくそれだけではない。
京太郎はこれまで初美に遠慮して一線を保った付き合いを続けていたのだから。
自分からキスするだけならばいざ知らず、壁際に明星を追い詰めてから、胸を揉みしだくなど以前の彼では考えられない。
特に時折、見せるようになった肉食獣めいた鋭い眼光は、今までとは違うドキドキを明星に与えていた。
明星「(とは言え、こうして皆と一緒の時は普段通りの京太郎さんのまま)」
明星「(記憶もしっかりとあるみたいだし、邪なモノが取り付いている気配もない)」
明星「(…だから、きっとアレが京太郎さんの本性…なんだと思う)」
明星「(そして、それを私に見せてくれているって言う事は…)」
自分だけが特別。
そんな都合の良い考えを抱いているのは明星だけではなかった。
京太郎が変貌した事情を知る者以外は、多かれ少なかれ同じことを思っている。
これまで異性と隔絶されていた彼女たちにとって、これが初恋であり、京太郎もまたそれを匂わせる事を口にしているのだから。
夢見がちな乙女が、それを信じ込んでしまうのも当然の事だった。
湧「…ちなみにキョンキョン、あちきは?」
京太郎「わっきゅんは何時も元気可愛くて…アレだな」
京太郎「ついつい構ってあげたくなる子犬みたいな感じ」
湧「…そいだけ?」
巴「え…?」
そいだけ。
そう湧が口にした瞬間、彼女の表情はその色を変える。
子どもっぽくも愛らしい顔から、熟練の娼婦のような色気混じりのものへ。
ともすれば、同性でも呑まれてしまいそうなその表情に、巴の背筋はゾクリとしたものを感じる。
湧とは決して仲が悪いつもりはなかったが、こんな顔をする彼女なんて知らない。
自分の知らない間に、湧の身に何があったのか。
そんな疑問は、巴の口から、いや、その場にいる誰からも出る事はなかった。
京太郎「そうだな。一生懸命なところも俺は好きだぞ」
京太郎「たまに手加減して欲しくなる事はあるけれど」
湧「そいはあちきのセリフ…♥」
京太郎「んじゃ、お揃いって事でどうかな?」
湧「ふふ。そいじゃあ許してあぐっ♪」
強力なオスを虜にする事で続いてきた十曽の血を彼女は完璧に受け継いでいる。
いっそ天然のサキュバスと呼んでも良いその本能は、しかし、京太郎の手によって押さえつけられていた。
どれだけ血筋が、才能が優れていようと、湧は京太郎以外の男に興味はない。
強い異性を惹き付ける異能を持つだけではなく、日頃から他の少女たちでテクを磨いている京太郎に勝てるはずがなかった。
湧自身、約束を護る意識が強いのも相まって、性交までには至っていない。
それにもどかしさを感じながらも、湧はニコリと笑みを見せる。
強いオスを好むその血は、京太郎の強靭な理性を好ましく思っていた。
霞「(…やっぱり皆、浮かれているみたいね)」
霞「(湧ちゃんも他の子も、何時もとは違う顔を見せているし)」
霞「(何時もとは違う話題、違う切り込み方をしているわ)」
霞「(だからと言って、ちょっと話題が過激な方に転がりすぎな気もするけれど…)」
霞「(他の子の牽制をしたいっていう気持ちは分かるから、まだ引き締めないでおきましょう)」
そんな彼女たちのやり取りを見ながら、纏め役の霞は分析する。
大まかにハーレムについての合意は取れているとは言え、彼女たちは皆ライバルだ。
積極的に蹴落とすつもりはないとは言え、一番を譲りたくはない。
そんな共通認識を抱く『家族』達が、それぞれ京太郎との仲の良さをアピールするのは当然の事だろうと彼女は思う。
霞「(気になるのは春ちゃんや小蒔ちゃんがとても静かな事)」
霞「(普段から彼の隣は二人の定位置とは言え…今日はちょっと静か過ぎるわ)」
霞「(普段なら湧ちゃんに対抗するであろう春ちゃんはほぼ無言で食事を続けているし)」
霞「(小蒔ちゃんに至っては、ニコニコと皆の様子を見ているだけ)」
霞「(勿論、小蒔ちゃんは、卒業を祝われて嬉しがっている、と言うのもあるんでしょうけれど)」
ただ、その笑みは、小蒔らしくない。
一見、何時もと同じ明るい笑みだが、それだけではない。
ニコニコと嬉しそうにしている瞳の奥に、女の情念めいたものが見え隠れする。
小蒔も恋する乙女である以上、それはおかしくはないが ――
霞「(……違和感を感じるわ)」
霞「(何かが、私達の中でズレている)」
霞「(…私達と春ちゃん達の間で、無視できない差があるって私の中の何かが言ってる)」
京太郎「霞さん」
霞「え、何かしら?」
京太郎「どうかしたんですか? 考え事でも?」
霞「えぇ。そんなところよ」
霞「ごめんなさいね、折角の祝いの席なのに」
ただ、それが何なのか、霞は答えを出す事が出来ない。
それよりも前に京太郎に話しかけられ、意識が現実へと引き戻される。
普段であれば、京太郎への応対と考え事を並行して出来るが、今の霞も冷静ではない。
京太郎に気にかけて貰っているという嬉しさに、思索をあっさり投げ出してしまう。
京太郎「もし、何か悩み事があるなら俺が力になりますよ」
霞「いえ、大丈夫よ。悩み事ってほどでもないから」
京太郎「そうですか。まぁ、何時でも言って下さいね」
京太郎「呼ばれれば、俺は何時でも霞さんのところに行きますから」
霞「~っ♪ え、えぇ、その時は宜しくね♥」
霞のところに行く。
それは特殊なプレイを好む霞にとって、思いっきり甘えられるチャンスだった。
身も心も京太郎に預けて、パパと呼び慕う。
そんな時間の甘美さは、とうの昔に霞の心を掴んでいた。
それを連想させる言葉だけで、ついついパパと呼んでしまいそうなくらいに。
初美「…」
霞「(…分かってるわ、初美ちゃん)」
霞「(今日は自重しろって事なんでしょう?)」
霞「(大丈夫。今日は特別な日だって事を忘れた訳じゃないわ)」
初美は京太郎と二人きりになった霞がどうなるのかを知っている訳ではない。
だが、京太郎の言葉に、霞が期待と興奮を強めた事くらいは感じ取る事が出来るのだ。
出来れば、それに水を刺してやりたくはないが、今日は特別。
本当の意味で自分たちが結ばれる日なのだから自重して欲しい。
そんな意図を込めた視線に、霞は内心で頷いて。
霞「(でも、それは初美ちゃんの方だって同じことなんだからね)」
霞「(幾ら京太郎くんの婚約者だって言っても…それも今日まで)」
霞「(順番その他を譲るつもりはまったくないから)」
そのまま霞は初美に牽制の視線を返す。
京太郎の『初めて』は彼女たちにとって、値千金という言葉でも物足りないものなのだから。
喉から手が出るほど欲しいそれは、例え、親友であり家族である初美にも譲れない。
流石に京太郎の前で醜い争いを繰り広げるつもりはないが、自分の持つ魅力全てで奪いに行く。
そう宣言する視線は、一つや二つではない。
表面上は賑やかな食卓の中で、何度もすれ違い、火花を散らす。
小蒔「ご馳走様でした」
春「ご馳走様でした」
初美「お粗末さまですよー」
しかし、それは決してギスギスとしたものにはならなかった。
何だかんだで彼女たちはお互いの事を強く想っているのだから。
『外』の人間ならばいざ知らず、『家族』ならば妥協も出来る。
そんな気持ちを共有する彼女たちは一見、静かに、そして何処か浮かれを残したまま食事を終えて。
巴「そ、それにしても…結構、作ったつもりですけれど、見事になくなりましたね」
明星「そうですね。私も…ちょっと食べすぎちゃったかもしれません」
初美「右に同じなのですよー…」
彼女たちはお互いの牽制と期待に胸と思考が一杯だった。
自然、節制など忘れた彼女たちは、特に何も考えないまま、食事を口に運び続けてしまったのである。
それに今更な後悔を覚えるのは、決して明星一人だけではない。
初美もまた後ろに身体を倒しながら、微かに膨れたお腹を撫でた。
湧「そいより霞さあ」
霞「気持ちは分かるけれど、もう少しゆっくりしましょう」
霞「いきなり急な運動をすると身体もびっくりしちゃうしね」
六女仙の中でも大食漢な湧も、強い満腹感を感じている。
出来れば、一時間ほど食休みが欲しい。
そう訴える身体とは裏腹に、心は逸っていた。
今すぐ京太郎にすべての秘密を打ち明けて、そして結ばれたい。
身体の奥まで京太郎のモノにして欲しい。
そんな湧の欲求を理解しながらも、霞は首を横に振る。
その瞬間は彼女も待ち望んではいるが、今はまだ時期尚早。
お腹が膨れた今の状態で激しい運動をしてしまうと、悲惨な事になる子も出てきてしまうかもしれない。
一生のトラウマになりかねないその想像は、霞の欲求にストップを掛けるに十分過ぎた。
京太郎「何かレクリエーションでもするんですか?」
霞「えぇ。まぁ、そんなところかしら」
京太郎「じゃあ、ちゃぶ台の上片付けた方が良いですね」
京太郎「俺、ちょっと余裕あるんで洗い物してきます」
初美「はい。すとっぷですよー」
湧「キョンキョンはこけいて」
明星「そうです。ずっしり構えててくれて良いんですよ」
席を立とうとする京太郎を、初美達は引き止める。
無論、京太郎がここで逃げ出すと想っている訳ではない。
だが、これから大一番を迎えるという状況で、想い人の姿が見えないのは色々と不安なのだ。
その方が効率的だと頭の中では分かっていても、ついつい引き止めてしまう。
京太郎「そうか? じゃあ…」
霞「…」
春「…」
小蒔「…」
その声に従って立ち上がりかけた京太郎は腰を下ろす。
しかし、その瞬間から彼らの間を沈黙が支配した。
少女たちは落ち着かなく身体を揺らし、モノ言いたげな視線を交わすだけで何も言おうとしない。
これまで会話の火付け役だった巴でさえ、京太郎と他の『家族』の間を視線で行き来するだけだった。
京太郎「…良し。んじゃ、折角ですんで俺からちょっと発表があります」
湧「発表?」
明星「な、なんですか?」
一歩足を踏み外せば、ぎこちなさにもなってしまいそうなほど静かな時間。
それに少女たちが耐えきれなくなるギリギリを狙って、京太郎は口を開いた。
その奥から飛び出した言葉に、湧は首を傾げ、明星はぎこちなく食いつく。
出来れば、食休みが終わるまで続くような話題であれば良い。
そう思う少女たちから視線を集めた京太郎は右隣に座る小蒔の肩をそっと抱き寄せて。
京太郎「俺、小蒔さんと結婚する事にしました」
小蒔「えへへ♥」
霞「…………え?」
初美「…………は?」
―― 瞬間、食卓の空気が凍った。
声をあげられた霞と初美はまだ冷静な方だ。
他の少女たちは皆、呆然とした様子で、口を半開きにしている。
当然だろう。
それは本来、霞の口から提案されるべき事柄だったのだから。
まさか京太郎の口から出てくるなど、霞でさえ予想していない。
京太郎「で、春には俺の愛人として公私共にサポートして貰う事になりました」
春「ぶい」
湧「ええええええっ!?」
しかし、京太郎はそんな彼女たちに容赦しようとしなかった。
ファーストアタックで取った主導権を活かそうと二の矢を放つ。
小蒔とは逆側に座った春を抱き寄せながらのそれに湧が驚きの声をあげた。
京太郎「メチャクチャな形だけど出来れば祝福して欲しいな」
湧「しゅ、祝福って…」
出来る訳がない。
なにせ、それは自分たちを除外したものなのだから。
自分たちをまるごと愛してくれるならばともかく、二人だけだなんてあまりにも酷すぎる。
今まで囁いた愛は全て嘘だったのか。
唇を奪い、胸を弄び、秘所を可愛がってくれたのは遊びでしかなかったのか。
混乱の中、絶望が混じり始める彼女たちの胸に、そんな言葉が浮かび上がる。
明星「ま、待ってください! 京太郎さんの婚約者は初美さんだったはずでしょう!?」
京太郎「あぁ。そうだな」
京太郎「でもさ、小蒔さんは俺に言ってくれたんだ」
京太郎「自分と結婚するなら何人でも愛人を作って良いって」
京太郎「…それが例え、六女仙以外の人間でも良いってさ」
初美「っ」
瞬間、初美が言葉を失うのは、それがあまりにも最低な言葉だからではない。
混乱した頭の中でも、京太郎がやりたい事がハッキリと分かるからだ。
京太郎はこの閉じた環境に、『家族』だけのハーレムという環境に、異物を持ち込もうとしている。
絶対に認めないであろう霞達を説き伏せる為に、自身の身を使った『交渉』を仕掛けて来ているのだと。
霞「(…これは小蒔ちゃんの考え方じゃないわ)」
霞「(そもそも、小蒔ちゃんはそんな事しなくても正妻の座が転がり込んでくるんだもの)」
霞「(だから、京太郎君に入れ知恵したのは…!)」
明星「(…やってくれましたね、春さん…!!)」
敵意の視線は、京太郎にではなく、春に集まった。
『家族』と呼び合う少女のそれは、決して生易しいものではない。
特に過激派である石戸の二人は、殺意に近いものを春に向けている。
しかし、それを受け止める春は表情を揺るがしたりはしない。
京太郎と触れ合っている限り、彼女の心は無敵なのだ。
京太郎「皆も知ってるかもしれないが、俺にはずっと好きな子がいた」
京太郎「幼馴染の宮永咲って子だ」
京太郎「勿論、俺はここに来てからもう関わっちゃいけないって思って、気持ちを切り替えようとしていたんだけど」
京太郎「一ヶ月くらい前に、咲が俺のこと訪ねてきてさ」
京太郎「やっぱり忘れられないって、咲の事が欲しいって欲が出てきた」
京太郎「んで、小蒔さんと春は俺の欲を受け入れてくれて」
京太郎「咲を迎え入れるために手を貸してくれるって言ってくれた」
京太郎「だから、俺は二人と結婚する」
京太郎「咲の為だけじゃない」
京太郎「俺の為にそうまで言ってくれた二人が愛おしいからこそ、俺のこれから先全部を捧げたいと思ったんだ」
湧「ぅ…」
その言葉を、明星は受け入れる事が出来ない。
彼女たちは今頃、勝利していたはずなのだ。
京太郎と結ばれ、愛を交わし、幸せな未来が待っているはずだったのである。
だが、それが今、脆くも崩れ去った。
それに現実感を感じられない湧は呆然とした顔で意味のない声を漏らす。
京太郎「だから…」
春「…京太郎♥」
京太郎「って、春…?」
春「もう我慢出来ない…♪」
湧「っ…!」
京太郎が続けるはずの言葉を、春は甘い呼びかけで遮る。
そのまま有無を言わさずキスをする春を、京太郎は拒まなかった。
すぐさま彼女の口の中に舌をいれ、皆の前でキスを見せつける。
くちゅくちゅと音が聞こえるほど激しいキスは湧に強い嫉妬を羨望を抱かせた。
小蒔「あ…」
京太郎「ん…」
小蒔「えへぇ♥」
それは小蒔も同じだ。
事前に打ち合わせをした通りの役割分担だと分かっているが、ズルいと言う気持ちは否めない。
そんな彼女に京太郎はそっと手を伸ばし、優しく頭を撫でる。
協力している彼女への感謝を伝えるようなその指先に、小蒔はあっという間に機嫌を治した。
霞「…小蒔ちゃん」
小蒔「霞ちゃん、ごめんなさい」
小蒔「でも、私、皆よりも京太郎君が…いえ、旦那様の事が大事なんです…♥」
小蒔「神代の所為で傷つけてしまったたから、とかそんなのもう関係ありません…♪」
小蒔「私はもう旦那様抜きじゃ生きていけない身体にされてしまったんです…♥」
霞「…そんな」
その声にはもう純真さなどまったくなかった。
自分と同じ ―― いや、それ以上の興奮と期待でドロドロになっている。
これまでずっと護ってきた彼女がメスに堕ちていた事を感じさせるそれに霞は目眩を感じた。
信頼していた京太郎に、こうも小蒔が染め上げられていた事が彼女には何よりショックだったのである。
小蒔「そんな旦那様に…今日、抱いて貰えるんです…♥」
小蒔「赤ちゃんの元を一杯、ここにびゅーびゅーして…私をお母さんにして貰えるんです…♪」
小蒔「勝てませんよぉ…♥ そんなの絶対無理です…♪」
小蒔「私はもう皆の気持ちよりも、旦那様と子作りする方が大事なんですよぉ…♪」
初美「姫…様…」
今日、京太郎に抱いてもらうのは決して一人や二人ではない。
その精力が続く限り ―― 出来れば全員を抱き、彼のモノにして貰うつもりだった。
当然、小蒔も例外ではなく、だからこそ、彼女たちは土壇場での性教育を考えていたのである。
だが、小蒔は既に堕ちていた。
京太郎の手で、或いは春の手で性知識を植え付けられ、完全にメスの顔を晒している。
ともすれば、自分たちよりも先に進んでいた『姫』の変化を、初美は正直、信じる事が出来なかった。
小蒔「でも、私だって皆に悪いと思ってるんですよ…♥」
小蒔「だから…見ててくださいね…♪」
小蒔「私が…旦那様にお母さんにして貰うところ…♥」
小蒔「旦那様に愛されるところを…皆にだけ見せてあげます…♪」
言いながら、小蒔はそっと自身の巫女服を肌蹴させる。
当然、何時もならば、彼女はそんな事をしない。
小蒔は幼いころから霞の祖母に、そして霞にしっかりと躾けられているのだから。
だが、今の彼女はそれを全て忘れたように胸元を開き、薄紅色の乳首まで露出させる。
ビンビンに勃起したその乳首は初美の非現実感をさらに強めるが。
小蒔「ふぁぁ…♪」
湧「う…うぅ♪」
小蒔の口から漏れたその声は、否応なく、それが現実であると教えるものだった。
可愛らしい声に、たっぷりと快感を込めたそれは、どれほど想像力豊かでも作り上げられるものではない。
ましてや、彼女たちの目の前では、まるで見せつけるようにして京太郎の手が小蒔の胸を揉んでいるのだ。
ふにふにもみもみと遠慮のないその手つきは、あまりにも手慣れすぎている。
そうやって小蒔が堕とされたのだと再現するような手に、湧の身体は熱くなっていった。
小蒔「旦那様…ぁ♥ 気持ち良いです…♪」
小蒔「もっとモミモミしてください…♪」
小蒔「私の…旦那様だけのおっぱい好きにしてぇ…♥」
湧「はぁ…はぁ…♪」
元々、湧はこの中で最も淫らで、尚且つ、欲情しやすい。
ともすれば、京太郎を監禁していた情動は、彼女に熱い吐息を繰り返させた。
それでも尚、まったく冷める気配のない身体を、湧はギュっと強張らせる。
そうしなければ、彼女は一も二もなく自分を慰めてしまいそうだったのだ。
京太郎「わっきゅん」
湧「あ…あぁぁ…♥」
そんな湧に京太郎は声を掛ける。
春とのねっとりとしたキスを止め、口の端から唾液のカクテルを零す彼に、湧の肩は震えた。
目の前で京太郎に愛される二人が羨ましくて、興奮して、嫉妬して、頭も心も滅茶苦茶なのだから。
どうにかしたいと言う想い、京太郎が欲しいと言う衝動だけが強くなるものの、どうすれば良いのかまったく分からない。
京太郎「わっきゅんは俺の事、嫌いか?」
湧「好き…っ♥ 世界でいっばん好きだよ…っ♥」
しかし、その疑問に、すぐさま答えを返す事は出来る。
この一ヶ月、念入りにスキンシップを味わった彼女は、京太郎を心から愛しているのだから。
逆レイプしようとするまで昂ぶっていた想いを、さらに高められたそれは、どれほど混乱していても迷う余地がない。
京太郎「じゃあ、分かるよな」
京太郎「俺が欲しいなら、俺と結ばれたいなら」
京太郎「何をすれば良いのか、分かってくれるよな?」
湧「あ…ぅ…う…♪」
まるで彼女の事を試すような声音に、湧は必死になって情報を整理する。
今まで京太郎達から齎された断片を一つ一つ繋ぎ合わせる作業は、決して簡単なものではない。
湧は思考よりも直感を重視するタイプであり、そして今はその直感も殆ど働かないのだから。
未だショックから立ち直れきれていないのもあって、中々、答えに辿りつけない。
湧「あ、あちき…♥ あちき…♥」
霞「っ!! ダメよ! 湧ちゃん!」
しかし、湧も決して頭が悪い訳ではない。
数十秒ほど経過した頃には、京太郎の求めている事がなんとなく見えてくる。
それをぎこちないながらも言葉にしようとする湧に、霞が制止の声を放った。
湧「あちき…♥ キョンキョンの為ならなんだってするよぉ…♥」
湧「宮永さあの事だって協力すっで…♪」
湧「じゃっで…じゃっで♥ あちきも愛して…♪」
湧「あちきとも子作いしてぇええっ♪」
京太郎「良し。じゃあ、わっきゅんも俺の愛人だな」
湧「~~~~っ♥♥」
既の所で、京太郎の思考に気づいた彼女の声は湧には届かなかった。
湧はもう心も身体も完全に堕とされてしまったのだから。
幾ら『家族』の声であっても、京太郎を求める想いは止められない。
そんな彼女を手招きする京太郎の胸に、湧は喜色を顔いっぱいに浮かべながら飛び込んだ。
霞「(やら…れた…!)」
実力で京太郎を奪い取り、監禁という手段が取れる湧はこの状況を覆せる鬼札だった。
幾ら京太郎が小蒔と春を味方につけ、咲を娶ろうとしようが関係ない。
何時でも自分たちの側に連れて来れる彼女を、最優先に確保するべきだった。
だが、湧は既に京太郎の手に堕ち、彼の胸の中で幸せそうな顔を見せている。
はぁはぁと吐息を漏らしながら、京太郎のあちこちを舐める彼女に、もう理性の色は何もない。
宣言したとおり、湧は京太郎の為なら何でもする忠犬と化してしまったのだ。
霞「(この一ヶ月の変化を…もっと重く受け止めておくべきだった…!)」
霞「(京太郎君もようやく私達を受け入れてくれたんだって、都合の良い結論を出すべきじゃなかった…!)」
霞「(京太郎君は…今日この時の為に準備してたのに…こっちは完全に無防備で…)」
霞「(京太郎君の思うがままになってしまってる…!)」
その企みに気づいたところでもう遅い。
既に状況は最終段階へと突入しているのだから。
知らぬ間に身体と心を調教されていた彼女たちは、目の前の光景から目を離せない。
まるで魅入られたように小蒔達を見つめ、羨望と興奮だけが募っていく。
それは霞も例外ではない。
元々、彼女は京太郎への依存心が人一倍強いのだから。
それが京太郎の狙い通りと分かっていても、身体を火照らせてしまう。
霞「(…でも、何とかしなきゃ)」
霞「(このままじゃ私達の中に異物が入ってくる)」
霞「(しかも、それは昔の彼を知る…幼馴染の宮永さんで…)」
愛人として咲を迎え入れるのは、神代頭首の座だけでは足りない。
各所の交渉は勿論のこと、少なくない譲歩を迫られる事もあるだろう。
それは次代と変革を担う京太郎にとって、重大な弱みになりかねない。
京太郎とそれに付き従う『家族』の事を思えば、ここはNOと返すのが最善だと霞は思う。
霞「(…ただ、どうしたら良いの?)」
霞「(どうしたら…)」
湧「キョンキョン…♥」
京太郎「あぁ。良いぞ」
その道を探そうとする霞の前で、湧が甘い声を漏らす。
さっきまで夢中になって京太郎を味わっていた彼女は、もうそれだけでは物足りなくなったのだ。
もっともっと京太郎が欲しい。
愛しいオスと深く繋がりたい。
そんな欲求を抑えきれなくなった湧は京太郎の同意に背を押されながら、彼のズボンに手を掛けて。
明星「ひゃ…!?」
巴「う、嘘…」
初美「う…わぁ……」
ブルンと音を立てながら、京太郎の肉棒は解放される。
興奮を堪える理由がなくなったそれは既にギンギンに張り、天井へと切っ先を向けていた。
ちゃぶ台の上から顔を出すそのサイズに、霞以外の三人は驚きを隠せない。
大きいとは思っていたが、彼女たちはそれを直接、見た事がないのだ。
初めて見る男性器の威圧感に、怯えにも似たものを感じる。
霞「(京太郎君の…ぱ、パパのオチンチン…ぅ♥)」
霞「(今日もとっても美味しそう…♪ ううん…絶対、美味しい…ぃ♪)」
霞「(ガチガチの勃起チンポ欲しい…っ♥)」
しかし、霞だけは別だ。
彼女は京太郎に添い寝をされる度に、その肉棒を一晩中しゃぶり続けたのだから。
その硬さや熱を口の粘膜で覚えたモノに、今更、忌避感など感じるはずもない。
寧ろ、身体が熱くなり、唾液の分泌速度も急激に増した。
ともすれば、口の端からヨダレを零してしまいそうなそれを霞は何度も飲み込む。
湧「あむ…♪」
霞「あぁぁ…!!」
しかし、その間に湧は京太郎の亀頭を口に含む。
真っ赤に膨れ上がったぷりぷりの先端を、一番美味しいところを独り占めしているのだ。
その羨ましさは、最早、霞の中で収まるものではない。
ついつい声をあげて、畳から腰をあげてしまう。
明星「か、霞お姉さま?」
霞「いや、あの…その…」
そんな霞に明星が驚きの表情を向ける。
色々と過激なところを見せ始めてはいるものの、明星にとって義姉は変わらず超然とした存在だ。
狼狽えるところなど想像もしていなかった彼女にとって、それは青天の霹靂に近い。
そんな義妹の前で霞は何とか自分を取り繕おうとするが。
京太郎「…霞」
霞「~~~~っ♥」
呼ばれた。
呼ばれてしまった。
それは霞にとって、悦びとも恐怖ともつかぬ感覚だった。
京太郎が名を呼んだと言う事は、次に切り崩されるターゲットになってしまったという事なのだから。
きっと湧のように堕とされ、メスにされてしまう。
胸中に浮かぶその言葉に、しかし、霞は反応する事が出来ない。
まるでそれを待ち望んでいるかのように息を呑み、京太郎の次の言葉を待ってしまう。
京太郎「そう言う事だから、添い寝は次で最後にしてくれ」
京太郎「今日から夜は小蒔達の相手をするのに忙しくなるし」
京太郎「何より、小蒔達と結婚すると決めた以上、一緒に夜を過ごすのは色々とまずいんだ」
京太郎「浮気を疑われるのはお互い避けたいだろうし、二人きりになるのも極力、控えよう」
春「きゅふぅ…♪」
霞「ぁ…」
言いながら、京太郎は春の尻を撫でる。
むっちりとしたそこはもう立派な性感帯だ。
キスを終えてから構って貰えていなかったのも相まって、ついつい甘い声が出てしまう。
それに反応したように開いた口を、霞はすぐさま閉じた。
反射的に飛び出そうとした言葉が、一体、どういうものなのか彼女は良く理解していたのである。
霞「そ、そう…。ま、まぁ…仕方ないわよね」
霞「(いやいやいやいやいやいやいやいや…そんなのいや…!!)」
霞「(パパと二人きりになれないなんて…そんなの死んだほうがずっとマシよ…!!)」
心の中に響く悲鳴は胸が引き裂かれるような痛みを伴っていた。
しかし、霞はそれに負ける訳にはいかない。
纏め役である自分が最後の砦である事を彼女は良く分かっているのだから。
何とかここで持ちこたえて、逆転の一手を考えなければ。
流されそうになる心に、彼女は幾度となくそう言い聞かせる。
霞「だから…あの…だ、だから…」
―― 彼女にとっての誤算は自分の想いを過小評価した事だ。
例え、どんな場所にいようと誰といようと、彼女は『石戸霞』である事から逃れられない。
そこから唯一、逃してくれるのは、ただ一人、京太郎だけなのだ。
そんな京太郎との別離は、予感させるだけで彼女の心をへし折る。
もう二度と京太郎に甘えられないかもしれない。
ずっと辛い事、苦しい事を一人で抱え続けなきゃいけないかもしれない。
その悲しさはあっという間に目尻へと浮かび、涙となってこぼれ落ちる。
霞「あ…ぅ…あぁああ…」
巴「か、霞ちゃん…?」
いきなり泣き始めた霞に、巴はどう声を掛ければ良いのか分からなかった。
六女仙の纏め役を務め、永水女子でも伝説となった淑女は何処にもいない。
豊満に育ったその身体を震わせ、子どものように感情を露わにしている。
十年以上、時間を遡ったようなその様に巴は驚きを通り越して、困惑を覚えた。
巴と霞の付き合いは長く、完璧と思われている彼女にも意外と抜けているところがあるのを知っている。
そんな彼女でも自分たちよりも数段、大人びていた霞が、子どものように泣きじゃくるところなど想像すらしていなかったのだ。
京太郎「霞は良い子だよな」
霞「うん…うん…っ」
京太郎「じゃあ…パパの言う事を聞けるだろ?」
明星「ぱ、パパ…?」
霞「聞く…ぅ。何でも聞くうぅ…」
霞「だから…パパ…パパぁ」
京太郎「あぁ。おいで」
それに困惑を覚えているのは、巴だけではない。
明星もまた義姉の様子に口を半開きにし、京太郎の言葉に聞き返す。
仕掛け人側である春や小蒔もまた霞の突然の変貌に、信じられないような顔を見せた。
しかし、その中心人物である二人は、彼女たちの困惑をまったく解消しようとしない。
霞はもう京太郎しか見えてはおらず、京太郎もまた霞を第一に考えているのだから。
泣きじゃくりながら席と立った霞に向かって、京太郎は右手を広げる。
霞「ぱぱっ♥ぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぁあ♥」
京太郎「良し良し。ごめんな、意地悪して」
霞「うーん。良いの。パパは悪くないの…」
霞「悪いのはパパに逆らおうとした霞だもん…」
霞「でも、霞はちゃんと良い子になるからぁ…」
霞「だから…捨てないで…」
霞「ずっとパパの霞でいさせてぇ…」
既に京太郎の身体は三人の美少女で埋まっている。
そんな中、飛び込んだ霞は京太郎の右手に精一杯、頬ずりした。
自分の愛情を伝えるように、償うように、縋るように。
涙で濡れた頬で懇願する彼女を、京太郎は強引に抱き寄せた。
京太郎「当たり前だろ。霞はずっと俺のモノだ」
京太郎「他の誰にも渡すもんか」
霞「あぁ…パパぁ…♥」
小蒔「ふふ」
小蒔のスペースを侵すその身体に、しかし、彼女は嫌なものを感じない。
こうして挑発する側に回ったとは言え、小蒔は決して家族の事を嫌いになった訳ではないのだ。
多少の嫉妬はあるものの、ソレ以上に霞が素直になったのが喜ばしい。
だからこそ、小蒔は彼女を歓迎するようにそっと身体をズラし、霞が京太郎に甘えやすい環境を作る。
初美「(…これで頭と手が取られちゃった訳ですかー)」
初美「(割りと死に体ですね、こっち)」
初美「(どう足掻いても逆転は無理…と言うか、もう二人とも待ちの態勢に入ってるですよー)」
初美「(これ京太郎君から声を掛けられるのを期待してますよね、絶対)」
当然、初美も幼馴染の変貌に驚きは隠せない。
お前は誰なんだと胸中で口走ったのも一度や二度ではなかった。
しかし、それも幸せそうな顔で、京太郎に頬ずりする霞を見てると少しずつ落ち着いていく。
所詮、霞もメスであり、京太郎には逆らう事が出来なかった。
ちょっとその路線が人と違っただけだと思えば、決して受け入れられないものではない。
初美「(混乱が収まりきらない内から重要な順から取っていって、後は消化試合)」
初美「(腹が立つけれど、実際、有効な手なのですよー)」
残った面々の中で、一番、クレバーなのは初美だ。
無論、最初は京太郎の宣言に驚きこそしたものの、既に峠は超えている。
何より、彼女は内心、予想していた。
京太郎が宮永咲への想いを容易く捨てられない事を。
何だかんだで諦めの悪い京太郎が、最後の最後で抵抗する事を。
婚約者である彼女だけは、なんとなく感じ取っていたのである。
初美「(…ただ、まぁ)」
霞「霞もパパのオチンチン、ペロペロするぅ…♥」
湧「ん…ふぅ…♪」
春「京太郎…♥ もっといじって…♪」
小蒔「そろそろ乳首も…♥ 乳首も旦那様に可愛がって欲しいです…ぅ♥」
初美「(こんなになるまで他の皆も調教されてるとは流石の私も予想外でしたけど)」
京太郎に群がる四人の美少女は完全に出来上がってしまっている。
欲情と興奮に顔を蕩けさせ、その身体を絡みつかせていた。
メスそのものと言ったその様子に、普段の彼女らしさはまったく見当たらない。
幾ら京太郎に焦らされていたとは言え、ちょっとアクセルを踏み込みすぎではないか。
そう言いたい気持ちは決して小さいものではなかった。
初美「(しっかし…霞ちゃんも湧ちゃんも美味しそうに舐めるのですよー)」
初美「(…アレってそんなに美味しいんですかね?)」
初美「(見た目グロくてデカくて匂いとかヤバそうなんですけど…)」
だが、調教されているのは初美もまた同じだ。
この一ヶ月、京太郎に弄ばれた身体は、順調に火照りを強くしている。
特に彼女が目を惹かれるのは、股間に顔を埋める二人だった。
最初は恐ろしささえ覚えた肉棒をまるでご馳走のように味わう二人に好奇心と身体が疼く。
京太郎のモノは一体、どんな味なのか。
舐めたい、味わいたい、しゃぶってみたい。
腹の奥から湧き上がるようなその欲求に、初美はモジモジと足をすり合わせる。
霞「じゅっぷっ♪ じゅるるるっ♪ ぐぷぅぅう♪」
明星「す…凄…」
そんな初美の前で、霞の口は勢い良く男根を飲み込んでいく。
慣らしも何もなしで勢い良くしゃぶるそのスロートは、思いの外、手慣れていた。
こうして霞が京太郎をしゃぶるのは一度や二度ではない。
それを感じさせる思い切りの良さに、明星は感嘆の声を漏らしてしまう。
一年前ならば、こんな霞などお姉さまではないと拒否反応を示していただろうが、今の明星は別。
霞が突然、幼児退行した時は驚きこそしたものの、今はその淫らな手管に流石は霞お姉さまだと尊敬の念を強くしていた。
明星「(で、でも、その…)」チラ
京太郎「ん? どうしたんだ、明星ちゃん」
京太郎「何か言いたい事でも…」
ソレ以上に強いのが、期待の念だ。
霞でさえ抗えなかった京太郎の誘惑に、彼女は耐えられる気がしない。
ましてや、六女仙の過半数が京太郎の側についた時点で、ほぼ勝負は決してしまったのだ。
例え、ここから本来の路線に戻したところで、小蒔との結婚は止められない。
だからこそ、早く堕として欲しいと期待を視線に込める明星に、京太郎は意地悪く尋ねようとして。
京太郎「ち、ちょっと霞、手加減してくれ」
霞「じゅぽぽぉお♪」
湧「あむぅ…♪」
京太郎「うく…っ」
その言葉を快楽が上書きする。
手加減も容赦もまったくない霞のフェラは、あまりにも気持ち良すぎるのだ。
ただ弱点を攻めるだけではなく、緩急つけた熟練の口遣いに、ついつい腰が動き、快楽を貪ろうとしてしまう。
しかし、未だ堕ちきっていない『家族』が残っている以上、欲望に呑まれる訳にはいかない。
全員、堕とすまでは情けないところを見せられないと小声で霞に懇願した。
だが、彼女はそれを意に介さず、思うがままに京太郎を味わい、楽しみ続ける。
それに触発された湧はまるで這いつくばるようにちゃぶ台の下に潜り込んだ。
そのまま睾丸や根本に舌を這わせる彼女に、京太郎はついつい呻き声をあげてしまう。
明星「まったく…全然、制御出来てないじゃないですか」
京太郎「で、出来てるぞ。滅茶苦茶、出来てるから」
明星「出来てるって顔じゃないですよ。…と言うか、春さん不満そうにしてますから」
明星「もうちょっと構ってあげないと悪戯されますよ」
春「…大丈夫。まだ我慢出来る」
そう言いながらも、春は膨らんだ頬を元通りには出来なかった。
全員を堕としきるという趣旨に対して、京太郎の身体が足らない事は彼女も良く分かっている。
しかし、一人また一人と増える間に、スキンシップの濃度も量も足りなくなっているのだ。
他の子に忙しいのは分かるが自分もちゃんと構って欲しい。
目の前で霞達が美味しそうに肉棒をしゃぶっているのも相まって、ついついそんな言葉が口から出そうになる。
京太郎「ごめんな、春。じゃあ…」
明星「…そこで春さんを構っても、焼け石に水でしょう」
明星「今度は姫様辺りが不満を覚えるだけですよ」
小蒔「ふあ…あぁ…♪」
今の小蒔はその顔にうっとりとした表情を浮かべている。
この一ヶ月の間に、小蒔は京太郎に胸の先端を弄られる快感を教え込まれたのだから。
京太郎に押し付けるだけで大きくなってしまう淫乱な乳首が、とても気持ち良い。
それを吐息に込める小蒔も、愛撫が杜撰になれば、平静ではいられなくなる。
『見本』として、小蒔達を調教したことが、今、京太郎の足を引っ張っていた。
明星「…結局、京太郎さん一人じゃ七人全員相手にするなんて無理なんですよ」
京太郎「…だから、諦めろって?」
明星「…そう言いたいのは山々ですけど、どうせ諦めたりしないでしょう」
明星「京太郎さんは頑固ですから」
明星「自分だけが損するならばともかく、こうして春さんや姫様まで巻き込んで、考えを改めるとは思えません」
明星「……だから、ですね、その…」
京太郎「その?」
明星「……分かってる癖に。本当に意地悪なんですから」
協力者がいる。
しかも、それはただ彼の事を肯定し、付き従うだけでは足りない。
時に欲情しきったメスを留める壁となり、時に京太郎の疲れを癒やす情婦となる存在でなければいけないのだ。
既に欲情に囚われてしまった四人には、それは出来ない。
出来るのは、これから堕ちる ―― 自分の意志で堕ちようとする者だけ。
京太郎「明星」
明星「……はい」
京太郎「俺のモノになれ」
明星「はい…っ♥」
京太郎の言葉に、明星は満面の笑みで頷いた。
待ち望んでいた言葉を貰った彼女は勢い良く立ち上がり、彼の側へと馳せ参じる。
そのまま京太郎にしなだれ掛かる明星に、京太郎はキスを返した。
両腕は春と小蒔に回し、下半身を湧と霞に埋め尽くされている彼にはもう口くらいしか残っていない。
だが、それでも明星は満足そうな表情を崩す事なく、ナメクジのようにねっとりと舌を絡ませ続ける。
巴「あ…」
初美「…」
これで残ったのは二人だけ。
しかも、初美は無言のままで、明星が堕ちた瞬間も、まったく動揺を見せなかった。
普段の彼女らしからぬその静けさに、しかし、巴は頼りがいを感じたりはしない。
京太郎と咲の接触を許してしまった時点で、自分たちは詰んでしまっていたのだから。
この状況を覆す事は、神の力を持ってしても不可能だろうと巴は思う。
何より。
巴「(この状況、どうしたら良いのかな…?)」
巴「(どうするのが一番、旦那様にとって有利な形になるんだろう…)」
元々、巴は京太郎に対して、同情的だ。
その上、奉仕精神の強い彼女は、最初から京太郎に逆らうつもりがまったくない。
京太郎がしたい事を、自分は全力でそれを支えるだけ。
勢い任せに告白してしまった時から彼女はそう決めていたのである。
そんな巴の気持ちを見抜いた京太郎は、春の次に彼女を仲間に引き入れた。
巴「(…やっぱりはっちゃんが素直になれるよう状況を整えるのが一番かな)」
巴「(さっきからずっと静かだけど…逆に言えばそれは感情を内側に溜め込んでるって事)」
巴「(元々、婚約者だったっていう立場もあって、はっちゃんも素直に認められないんでしょう)」
そんな彼女の役割は、獅子身中の虫として状況を京太郎にとって有利にする事。
間違いなく迷うであろう彼女たちの思考を誘導し、その背中を押す事だった。
ここまではその役目を果たす必要もなかったが、ここから先はそうもいかない。
初美の頑なな気持ちは、外からでもハッキリと分かるくらいなのだから。
ここは自分が彼女を誘導した方が良いと判断した巴はゆっくりと口を開いて。
巴「…は、はっちゃん、あのね…」
初美「…良いですよー」
巴「え…良いって…」
初美「ぶっちゃけ、もうとっくの昔に堕ちてるんでしょう?」
初美「巴ちゃんはこの中で一番、ダメンズ好きですからね」
初美「京太郎君の事、放っておけないし、力になってあげたいと思ってるんでしょう?」
巴「ぅ」
付き合いの長さは霞に劣るものの、巴と初美は一番の親友である。
一つ屋根の下で長年暮らしてきた彼女の性格や思考を初美は熟知していた。
この状況で尽くしたがりな巴が抗えるはずがない。
寧ろ、最初から獅子身中の虫として、手を回されていた可能性がある事を彼女は見抜いていた。
初美「私に遠慮せず、京太郎君に甘えて来れば良いのですよー」
巴「で、でも…」
親友の言葉に、巴は躊躇いを隠せない。
それは旦那様と呼び慕う京太郎の期待に応えられないからだけではない。
一人取り残される親友が一体、どれほどの孤独を味わう事になるか。
その想像は京太郎のところに向かおうとする心を引き止めるに十分なものだった。
初美「ほら、早くしないと」
巴「あー…」
明星「ちゅ…っ♪ あむぅ…♥」
今の京太郎は五人の少女たちに集られている状態だ。
両手に花どころか口でさえ花を味わう彼は、ゆっくりと彼女たちに押されている。
愛しい人の寵愛を少しでも強めようとする彼女たちに、京太郎は畳へと押し倒されていた。
初美「明星ちゃんと春ちゃんはまだ何とか理性を保ってますけれど他はもうドロッドロですからねー」
初美「このままじゃ巴ちゃんを置いて、先に始めちゃうかもしれないのですよー」
巴「そ、それは流石に嫌…だけど」
幾ら巴が尽くしたがりとは言え、滅私を極めた訳ではない。
尽くした分に足るご褒美が欲しいと言う気持ちは彼女の中にもあった。
だが、このままではそれを貰えないかもしれない。
その言葉に少なくない焦りを覚えた巴は、胸の内を揺り動かす。
巴「…でも、はっちゃんはどうするの?」
初美「ま、私はこれでも京太郎君の婚約者だった訳ですからねー」
初美「最後まで残らなきゃ、色々と格好がつかないじゃないですかー」
巴「じゃあ私が京太郎君のところに行けば…」
初美「…まぁ、そこの浮気男次第ですけどねー」
少なくとも、容易く堕ちてやるつもりはない。
京太郎が初美の顔に泥を塗るのはこれで二度目なのだ。
一度は寛大な心で許してやったが、今回はそうもいかない。
予想していたとは言え、少なからず、怒りを覚えている初美は呆れ混じりの声を口にする。
巴「…はっちゃんだって、好きなんでしょう?」
初美「好きですよ。大好きです」
初美「…私を絶望から救ってくれて、婚約者になってくれて」
初美「そんなの…好きにならない訳ないじゃないですかー」
初美「…でも、だからって、思い通りになってやるのは癪なのですよー」
初美「知っての通り、私は天邪鬼ですから」
初美「焦らして焦らして焦らして…不安にさせてやらなきゃ気がすまないのですー」
しかし、それは彼女が京太郎の事を嫌いになったからではない。
何だかんだで初美は京太郎の事を心から愛しているのだ。
色々と思うところはあるが、敵意や失望に変わったりはしない。
寧ろ、今後の付き合いを考える上で、感情を溜め込まない方が良いと彼女は前向きに判断していた。
初美「そう言う訳なんで、お先にどうぞですよー」
巴「ほ、本当に良いの?」
初美「えぇ。本当の本当に大丈夫です」
初美「と言うか、もう本当は結構、辛抱たまらないでしょう?」
巴「……実は」
この一ヶ月間、巴も京太郎からの開発を受けてきている。
元々、京太郎限定の露出狂であった彼女の身体は、より淫らさを増しているのだ。
そんな巴の前で、あぁも熱っぽいラブシーンを演じられたら、身体の火照りを抑えられない。
京太郎から頼まれていなければ、彼女はとうの昔に彼の胸に飛び込んでいただろう。
巴「じゃ、じゃあ…その、お先に…ね」
初美「えぇ。楽しんで来るのですよー」
初美がこうして『最後』に拘る以上、先に堕ちてしまった方が良い。
それが京太郎の頼みを果たす事になるし、親友が素直になる理由にもなる。
そう判断した巴はおずおずと、それでいて、ウキウキと腰をあげた。
そのまま京太郎の元へと近づいた彼女は、取り囲む少女たちの間に隙間がないかを探し始める。
だが、本格的に夢中になり始めた少女たちは、巴の事に気づく事はなく、それぞれの場所で京太郎を愛し続けていた。
巴「(あぁ…どうしよう…)」
巴「(流石に強引に割って入るのは悪い気がするし…でも、見ているだけなんで我慢出来ないし…)」
京太郎「ぷあ…巴」
巴「あ…♥」
そんな彼女に京太郎は声を掛ける。
明星と続けていたキスを中断してのそれに、巴は身震いした。
工作員としてずっと焦らされていた彼女は、ただ名前を呼ばれるだけでも嬉しくて仕方がない。
人並み以上にチョロい事も相まって、ついつい頬を緩ませ、我慢した甲斐があったと思ってしまう。
京太郎「一旦、皆を離したい。手伝ってくれないか?」
巴「…はい。旦那様♥」
京太郎「明星も頼めるな?」
明星「…わかり…まひたぁ…♥」
京太郎に答える明星の顔は、巴以上に緩んでいた。
彼女が京太郎とキスをしていたのは、ほんの数分程度。
しかし、それは明星にとって至福と言っても良い時間だったのだ。
この一ヶ月間、心だけではなく、口の中まで開発されたのも相まって、快感混じりの痺れが未だ残っている。
それでもしっかりと頷いた明星は、京太郎の言葉を実行に移そうと愛撫を続ける霞や湧に手を伸ばす。
湧「や…あぁあっ♪」
霞「ぱぱぁ♥ ぱぱあぁあ♥」
京太郎「悪い。ちょっと我慢しててくれ」
京太郎「またすぐに構ってやるからさ」
それに悲痛な声をあげる二人に、京太郎は心からの謝罪を口にする。
京太郎も堕とした彼女たちを引き離すなんて残酷な事をしてやりたくはない。
だが、残った最後の一人は、京太郎にとって、最強と呼ぶに足る強敵なのだ。
湧や霞のフェラを受け、快楽に緩んだ頭で説得出来る気がしない。
初美「…どういうつもりですかー?」
京太郎「いや、こういう小細工は初美には通用しないって分かってるからさ」
京太郎「真面目に、サシで、話し合った方が初美には効果的だろ」
初美「…アレが丸出しじゃなかったら格好もついたかもしれないですけどねー」
湧や霞が引き離され、渋々といった様子で春達も離れたとは言え、京太郎の下半身は未だに丸出しだ。
霞と湧の唾液がべっとりとついた肉棒は、今も反り返り続けている。
その圧倒的な存在感に視線が引き寄せられそうになるのを、初美は何とか堪えた。
ここで下手に弱みを見せてしまえば、自分の計画が台無しになってしまう。
そう言い聞かせながら、初美は努めて、呆れたような表情を作って。
初美「で、効果的だって言ってる事から察するに、私の事も欲しいって事で良いんですかー?」
京太郎「そうだ」
初美「へ、へぇ…」
挑発するような初美の言葉に、京太郎は素直な言葉を返した。
一切の誤魔化しや取り繕いがないそれに、初美の方が狼狽してしまう。
よもや、ここまでハッキリと肯定されると流石の彼女も予想していなかった。
驚きと嬉しさ、その両方が胸の中で混じり合い、表情筋から力が抜けていくのが分かる。
初美「でも、それは宮永さんを娶る為なんでしょう?」
京太郎「違う。俺は初美の事を…いや、皆の事を真剣に愛してる」
初美「騙し討のような真似をしておいて、それを信用しろと?」
初美「流石に都合良すぎじゃないですかー?」
京太郎「あぁ。勿論、俺だってそれくらい理解してるさ」
しかし、だからと言って、手を抜いたりはしなかった。
先に堕ちた少女たちに代わって、ストレートに非難をぶつける。
しかし、京太郎は棘のあるその言葉に狼狽えたりしない。
覚悟を固めた表情で、初美に頷き返す。
京太郎「でも、これまでの須賀京太郎には咲が必要で、これからの須賀京太郎には皆が必要だったんだ」
京太郎「どのどちらも取りこぼさない為には手段を選んでられなかった」
京太郎「悪いことをしたとは思っているけれど、後悔はしてない」
初美「…まぁ、遠慮すんなって言ったのは私達の方ですし、下手に溜め込まれるよりはマシかもしれないですけどね」
初美「でも、もうちょっと他にやり方はあったはずですよー」
初美「話し合いで解決する事を放棄して、開き直られても、楽な方に流れたとしか思えません」
初美「正直、私は今回の件で幻滅しました」
京太郎「…あぁ」
それでも、京太郎の心が鋼鉄になった訳ではない。
遠慮のないその言葉に胸が抉られるような感覚を覚える。
それでも頷いた京太郎の前で、初美は小さく肩を落とした。
初美「良いですか、京太郎君」
初美「京太郎君が私を裏切ったのは、湧ちゃんの件と合わせて、これで二度目」
初美「…まさか今回もなぁなぁで済ませてもらえるとは思ってないでしょう?」
初美「私は正直、怒ってますよー」
初美「いえ、怒ってるだけじゃありません」
初美「京太郎君がこれまで私に言ってくれた嬉しい言葉とか全部、嘘だったんじゃないかって」
初美「今日、この時の為の誤魔化しにすぎないんじゃないかって疑ってます」
京太郎「そんな事はない。俺は本気で…」
初美「その証拠を出せますか? 出せないでしょう?」
初美「唯一、根拠になるのは行動だけなのに、京太郎君はそれをしなかったのですよー」
初美「今更、何を言われても信じられません」
続く鋭い指摘は、京太郎の反論さえ許さない。
まるで詰め寄るように平坦な言葉を並べていく。
静かな怒りが込められたその声は京太郎に頑なさを感じさせた。
初美「……そんな私を言葉で説得しようだなんて不可能ですー」
京太郎「そうか。じゃあ」
初美「あ…♥」
それを解消する為に、京太郎は初美へと近づく。
下半身を露出させたまま、ズイと迫る彼の姿に、彼女の頬は一気に赤く染まった。
色々と格好つけたりしているものの、初美は未だ処女。
オスの肉棒を間近に見た事もなく、迫ってくるそれに羞恥心を刺激される。
京太郎「身体で堕とせば良いんだな?」
初美「だ、誰もそんな事言ってないですよー」
京太郎「俺にはそうとしか聞こえなかったけどな」
言葉はダメだ。
行動で示して欲しい。
それも前回のお詫びを含めたものでなければ、決して納得しない。
彼女が言葉の裏側に込めたそれらの意図を、京太郎は正確に受け取っていた。
だからこそ、彼はさらに初美へと近づき、その小さな身体をゆっくりと押し倒していく。
京太郎「…ほら、逃げないだろ?」
初美「う、うるさいのですよー」
初美「いきなり半裸の男に迫られたら、怖くて逃げられないに決まってるじゃないですかー」
初美「そ、それだけで私が堕ちただなんて思ってもらったら、困るのですー」
そのまま押し倒された初美はそっと顔を背ける。
彼にぶつけた言葉は全て本音だが、だからこそ、彼女は京太郎の事が嫌いになったとは言わなかった。
その心は未だ彼の元にあり、離れがたく思っている。
そんな彼女にとって、京太郎から押し倒される今の状況は狙い通りのモノだった。
明星「(…やられたわ)」
明星「(京太郎さんの性格からして最後まで残った初美さんの事を放っておけるはずがない)」
巴「(堕ちる為にそれが必要なんだってそれとなく誘導すれば、『始めて』を貰える可能性が高いって…)」
巴「(そう考えてたからこそ、はっちゃんは最後まで残ったのね…)」
ズルい、と言う想いを抱くのは明星と巴だけではなかった。
既に理性をトばした霞達もまた強い羨望を覚えている。
しかし、だからと言って、それに異を唱えるものはその中にはいなかった。
元々、彼女は京太郎の婚約者であり、『始めて』に関する約束も交わしていたのだから。
他の誰よりも彼の童貞を受け取る権利があると彼女たちも半ば認めていた。
初美「…だ、だから、あの…や、優しくしてくれなきゃ…ダメですよー?」
初美「知っての通り…私の身体、小さいんですから」
初美「いきなりケダモノになられちゃったら…壊れちゃうかもしれないですからね」
京太郎「分かってる」
初美「ふあ…♪」
春「うぅ…」
とは言え、それは完全ではない。
心の半分は仕方がないと受け入れていても、欲情と興奮で彩られたもう半分は別なのだ。
初美だけではなく、自分の事も可愛がって欲しい。
京太郎の手によって花開かされたメスの身体を満たして欲しい。
疼き混じりのその言葉に、彼女たちはモジモジと身体を動かした。
初美「(あぁ…もう…ホント、キスが上手になって…♥)」
初美「(これさえなければ…もう二度と顔も見たくないって言えたのにぃ…♪)」
初美「(こんな夢見心地になれるキスを覚えさせられなかったら…嫌いだって言えたのに…♥)」
そんな『家族』達とは裏腹に、初美の心は幸せで満たされていた。
これから自分は京太郎と結ばれ、『始めて』を捧げ合う。
それは計画通りに事が運んだ嬉しさなどとは比べ物にならない。
胸の内から感動にも似た震えが湧き上がり、彼と交わすキスにもついつい熱が入ってしまう。
京太郎「…ほら、皆もおいで」
京太郎「一緒に初美の事、可愛がってやろうぜ」
初美「え…ちょ、まっ!?」
しかし、彼女が幸せに蕩けていられたのもそこまでだった。
一分ほど続いたキスが終わった途端、京太郎は『家族』の事を呼び始めたのだから。
それに初美が制止の声をあげるが、時既に遅し。
まるでリードから開放された子犬のような勢いで、美少女たちは初美の事を取り囲んだ。
初美「ひゃあっ♪」
春「…初美さん、胸、敏感…♪」
湧「ちくっももうビンビンだよぉ…♪」
小蒔「えへへ♪ 初美ちゃん、とっても可愛いです…♪」
そのまま四方八方から弄る手は、同性だという事を差し引いても、まったく遠慮がないものだった。
彼女たちはもう完全に心を京太郎に捧げきってしまったのだから。
『家族』を愛撫するという事への躊躇いをあっさりと投げ捨て、言われたままに初美の身体を撫で、抓り、舐める。
これまで味わってきた京太郎の愛撫とはまた違うその手管に、初美は驚きと快感を感じてしまう。
初美「せ、せめて最初は二人きりで…!!」
京太郎「悪いな。初美の気持ちも分かるんだけどさ」
巴「これが旦那様のご要望だもの…♥ はっちゃんはそこで大人しくしててね…♪」
明星「京太郎さんの準備はこっちに任せてください…♪」
霞「ぱぱぁ…♥」
同性から感じさせられるという忌避感に、初美は懇願の声をあげる。
しかし、京太郎は、そして『家族』達はそれを聞き入れようとはしない。
今、彼が一番、避けなければいけないのは、他の『家族』が手持ち無沙汰になり、興奮が覚める事なのだ。
最初は邪魔者なしでという初美の気持ちも分かるが、完全に手綱をつける前に冷静になられるのは困る。
だからこそ、全員を巻き込んだ京太郎は、大人しく巴達の愛撫を受け続けていた。
初美「こんなの流石におかし…ひうぅっ♪」
春「…そもそもハーレムなんて受け入れてる時点で今更♥」
巴「それに元々、こっちの予定も多人数プレイだったし…♪」
明星「…まぁ、最初に選ばれた初美さんへのお祝いついでだと思ってください♥」
小蒔「ふふ…皆で気持ち良く…幸せになりましょうね…♥」
初美「あぁあっ♪」
自分以外のメスが京太郎を気持ち良くしていることへの嫉妬はある。
こんな初めてはおかしいという忌避感も未だ残っていた。
だが、ソレ以上の興奮と快感が初美の心を書き換えていく。
最愛のオスと、大好きな『家族』に与えられる快感は、あまりにも心地よく、そして甘すぎたのだ。
皆とならば、こんなセックスも良いかもしれない。
脳裏に浮かぶその言葉は、少しずつ初美の中で大きくなっていって。
―― 一時間もした頃には、忌避感は完全に消え去り、彼女たちはお互いに絡み合うようにして快楽と京太郎に溺れるのだった。
「うーん…」
うぅん。
うぬぬーん。
…なんて声を変えてみましたけど、目の前の作文用紙は真っ白のまま。
頭の中も同じで、何処から書けば良いのかまったく分かりません。
明日には先生に出さなきゃいけないのに…このままじゃ叱られてしまいます。
「どうかしたのか?」
「あ、お兄ちゃん」
そんな私にお兄ちゃんが声を掛けてくれます。
金髪で、ちょっぴり顔が怖いけれど、とっても優しいお兄ちゃん。
何だかんだで困った人を見捨てられないお兄ちゃんなら、私の事を助けてくれるに違いありません。
…と言うか、それを期待して、居間で宿題をしてたので、助けてくれないと本気で困ってしまいます。
「家族をテーマに作文を書いてきてって宿題があるんですけど…」
「あぁ。家庭内調査を兼ねてる奴か」
「かてーないちょーさ?」
「ちゃんと両親に愛されてるのかとか家庭内に問題はないのかとかそういうのを確認……ってこの辺はまだ早いか」
「むー」
お兄ちゃんは私よりも年上です。
でも、ほんのちょっぴりです。
この間、中学校に上がったばっかりでまだまだ大人じゃありません。
したのけ? って言うのもまだ生えてないってお姉ちゃんたちが言ってました。
なのに、私の事はこうして子どもみたいに扱います。
確かに私は一番下ですけれど、そういうのちょっとズルいと思います。
「拗ねるなって。どうすれば良いのか、ちゃんと教えてやるから」
「本当ですか?」
「おう。と言うか、俺も同じ頃、似た宿題出されて困ってたからな」
「その時、どう書いたか教えてやるよ」
「えへへ」
でも、こうして私の事を助けてくれようとしてくれるお兄ちゃんは大好きです。
私は大人ですから、ズルいお兄ちゃんを許してあげようと思います。
「ズバリ、そのまま書け」
「…えー」
…やっぱり許すの止めましょうか。
だって、お兄ちゃんの言葉は、全然、アドバイスになってません。
私が悩んでる理由なんてお兄ちゃんも分かってるはずなのに、そのまま書けなんて言うんですから。
もし、これが意地悪なら後でお姉ちゃんに言いつけようと思います。
「いや、本当にそのままで良いんだって。色々と書きにくい理由があるのは俺も分かるけどさ」
「でも、その作文は授業で読むんじゃなくて先生が確認する為のものなんだ」
「多少、特殊な家庭環境でもクラスメイトに知られたりはしねぇよ」
……確かに先生はクラスでの発表はしないって言ってました。
でも、だからと言って、気易く家族の事を書けません。
私はまだ六歳ですけど、自分の家族が人と違う事くらい知ってるんですから。
それを先生に教えるのは、とっても…とっても勇気のいる事です。
「それとも俺たちはそんなに書きにくい家族か?」
「そーいうのは論点ずらしって言うんだってお姉ちゃん達が言ってましたよ
「姉貴達め…」
そこで遠い目をしてるお兄ちゃんの影響も、結構、大きいと思います。
私は小さい頃からお兄ちゃんにベッタリだったんですから。
クラスの女の子たちに大人っぽいって言われるのも、きっとその所為。
でも、それを言うのは何となく恥ずかしいので言いません。
まだ六歳ですけど、私は立派な乙女なんです。
「ま、適当に取り繕うなり何なり好きにしろよ」
「もし、書いた内容で先生に変な事言われたり、いじめられたら、俺らが何とかしてやるからさ」
こうやってサラリと格好良い事を言うところは本当に卑怯だと思います。
ママは、やっぱり旦那様に似たんでしょうか、なんてニコニコしてますけど、言われた側としては溜まったものじゃありません。
そんな事言われたら、頼りたくなってしまうじゃないですか。
「…分かりました。じゃあ、書いてきます」
「おう。後でよければ見せてくれ」
「絶対に嫌です」
「相談に乗ってやったってのにつれねぇ奴」
そう言いながらケラケラと笑ってる辺り、きっと冗談だったんでしょう。
恐らくですが、好きな子に悪戯したくなると言う奴じゃないでしょうか。
やっぱりお兄ちゃんは子どもです。
そんなに私の事が好きなら、もっとわかりやすい優しさを示してくれてもいいのに。
冷蔵庫に隠してるアイスをくれるとか、お菓子を分けてくれるとか。
―― まぁ、それはさておき。
…多分、私は誰かに背中を押してほしかったんでしょうね。
お兄ちゃんにあぁ言われて、私の心は決まりました。
私の家族の事を、正直に書こう。
お兄ちゃんを含めた大好きな家族を、思いっきり自慢してしまおう。
そんな気持ちのまま、私は自分の部屋に戻って ――
『 わたしのさいこうのかぞく
神代美咲
わたしの家はちょっとふくざつです。
パパは一人ですけど、ママはたくさんいます。
こまきママ、かすみママ、はっちゃんママ、はるちゃんママ、ゆうママ、あきせママ、さきママ。
わたしを産んでくれたのはこまきママですが、他のママも、本当のママじゃなくてもいっぱい、あいしてくれます。
ただ、やさしいだけじゃなくて、こまきママとおなじようにしかってくれることもあります。
しかられるのはすきじゃないけど、しかったあとにはちゃんとなかなおりしてくれるから、きらいじゃありません。
わたしにはお姉ちゃんがたくさんとおにいちゃんが一人います。
お姉ちゃんたちは、やさしいです。
いろんなことを教えてくれますし、おかしを分けてくれたりします。
かぐらまいをおどっているときのお姉ちゃんたちも、せいふくを着てるお姉ちゃんたちもとってもきれいです。
とくにいちばん上のお姉ちゃんたちは、えいすいじょしのせいふくがとってもにあっています。
わたしも早くお姉ちゃんたちみたいな大人になって、えいすいじょしに通いたいです。
お兄ちゃんはいじわるです。
わたしのことをからかったり、子どもあつかいしたりします。
でも、わたしは知っています。
お兄ちゃんはすきな子にいじわるしちゃうつんでれです。
しかも、しすこんです。
お姉ちゃんたちが言ってたのでまちがいありません。
しすこんでつんでれだなんてたいへんです。
きっとがっこうでもぜんぜんもてなくて、おんなのひとにえんがない一生をおくるはずです。
しかたがないので、わたしがお兄ちゃんのめんどうを一生、みてあげようと思います。
パパは神代家のとうしゅです。
すっごいえらいのでおしごとが大変みたいです。
でも、しゅっちょういがいはどんな時でもお家に帰ってきてくれます。
わたしたちの事をなでて、はなしをきいてくれます。
わたしたちはたくさんいるので、きっとおはなしするだけでも大変です。
なのに、パパはぜんぜん、いやそうなかおをしません。
わたしたちと一緒にいるときのパパはとってもしあわせそうなかおをしています。
そんなパパをみてるとわたしもしあわせのかおになってしまいます。
わたしはパパが大すきです。
ママ達もお姉ちゃんたちも大すきです。
のけものはかわいそうなのでお兄ちゃんもギリギリ大すきです。
だから、わたしのかぞくはさいこうです。
みんな大すきで、みんななかよしです。
これからもみんなといっしょにいたいと思います』
カンッ
キリの良いところまで投下すると言ったな? アレも嘘だ(´・ω・`)これにて京子スレは完結です
二年以上もの間、付き合ってくださった皆様、本当にありがとうございました!!!
元々、咲ちゃんはクリスマスの時点で退場する予定だったんですよねー…
でも、それは流石に可哀想だと思って咲ちゃんハーレム入りに路線切ったら、これまでの伏線とか全部ぶっちぎるしかなかったですの
一応、30億やハギヨシさんの連絡先なんかも、最後、六女仙を神代の呪縛から解き放つ為に使う予定だったんですが(´・ω・`)尚、我慢出来なくなった全員から逆レされる模様
打ち切りエンドや駆け足感は本当に申し訳ないです
本来ならここまで踏み込む事なく、なぁなぁで小蒔の卒業式を迎えて、全員から逆レされる予定だったんですが
路線変更した結果、思いの外、じっくり攻略していくところを描写する余裕がありませんでした
これも行き当たりばったりで最後を書いちゃった私の責任です、ごめんなさい
また最後の方、展開がワンパターン過ぎた事も反省しております
途中でエンディング変えた事による弊害を、完全にコントロール出来ませんでした
次回作ではこのような事がないように路線変更の際はしっかりプロット書き直す事にします
次回作に関しては、ちょっと京ちゃんをいぢめたりないので、また安価スレやると思います
ただ、実験的にAAによる表現や改変なんかを多く取り入れる予定なので、今まで以上に1レス毎の間が空いたり、進むのが遅くなるかもです
それでもよければ、艦これスレを再利用する予定なので、見に来てくださると幸いです
その後は、今までやるやる言っててやってなかったなんぽっぽスレやSW2.0スレ終わらせてAAメインの京ちゃんのスレを建てようかな、と考えてます
また、依子の人気が思いの外高くてびっくりしました
オリキャラだから、顰蹙買うかなー…でも、依子は京子にとって外せないキャラだしなー…
そもそも姫様はパパンとママンの相手で忙しいから卒業式だからってそっちに焦点当てられないし…と思いながら書いたんですが
割りと受け入れられてるようで安心しました(´・ω・`)そして依子バレみたい人もいるみたいですし、スレも余ってるんで安価出しましょうかー
下1~5
依子に正体がバレたのは永水女子在籍中か永水女子卒業後か
そんなに中が好きなのか(男娼ルートポイーしながら)
それじゃあ在籍中って事で書いていきますが、AAの勉強とか色々ゆっくりしたいのもあってちょっと間が空くかもです(´・ω・`)ゴメンネ
そして咲ちゃんを迎えた日とか、清澄の皆との再会verとか面白そうなネタを貰ってるのでそっちも余裕があればきっと書きます
そして忘れてましたが巴さんもちゃんとママになってます(白目)
ちゃんと数数えて良し大丈夫だな!ってなってたはずなのに一体、何故…(´・ω・`)巴ファンの皆様には本当に申し訳ない事を…
また恐らく全員が複数回出産してるので、十歳以上離れてるとか、一番下が小蒔の娘とかにあまり深い意味はありません
神代家の闇とかハーレムによる弊害とかは京ちゃんがぶっ飛ばしてくれたはずなので
よかった、神代家保守派を相手に「別に倒してしまっても構わんのだろう?」した巴さんはいなかったんだ
初期プロットだったらハギヨシさんや須賀父母がどう動いてどうなったのか知りたいっす
このスレはそういった設定・ストーリー面も楽しませてもらっていたのでー
あひぃ騎ん時ちゅよいのぉおお
幾らクリティカル絡んだって言ってもジョイント礼装でBBAEXのブレイブチェインから七万削るって何なんだコイツ
これが配布鯖だなんて意味が分からんぞ!!!!(´・ω・`)欲しかった…
あ、それはさておき皆様のお陰で一軍メンバーがおおよそ70になって決勝安定しました
フレ白薔薇なしでもそこそこ安定して回れるようになったぜウヘヘヘヘ
お礼と言っては何ですが誉凸ってジョイント凸ったので置いて欲しいところとか書き込んでくれればそっちに置きます
今のところ誉は弓王に、凸ジョイントはどこに出しても仕事してくれる水着マルタにつけてます(´・ω・`)マルタネキマジ今回のMVP
>>713
多分、巴さん一人と神代保守派だと原作のヘラと紅茶以上の戦力差があるので…
京ちゃんっていうわかりやすい旗印が居て、六女仙がそれぞれの家を継いでようやく勝ち目が見えてくるレベルです
多分、美咲が生まれる頃までズルズルと泥仕合やってたんじゃないかなーと
ちなみに初期プロットでは
咲ちゃんを涙を我慢しながらフった後、京ちゃんは初美以外の六女仙がそろそろ婚約者と顔合わせしなきゃいけない時期だと話しているのを聞きます
当然、その時には京ちゃんに堕ちてるので、断る為の顔合わせと言っても気乗りしません
それを誤解した京ちゃんは、皆が里帰りした後の屋敷で自問自答
自分の事を支えてくれるであろう六女仙の皆がそれぞれの家を継いだ方が、自分にとっては都合が良い
けれど、皆が好きでもない相手と結婚し、子どもを作るのなんて嫌だ
それをどうにかする為ならば、自分は一生、神代の奴隷でも良い
そう思った京ちゃんはハギヨシさんに連絡し、六女仙の受け入れその他を頼みます
その後、調整やら色々と終えて、小蒔の卒業式
全ての準備が整った京ちゃんは父親から受け取った30億を皆の前に出します
「神代家の手が届かない場所があって、すでに受け入れも頼んである。
もし、皆に神代から離れたいという気持ちが少しでもあればこの30億を取ってくれ。
これだけあれば七人全員、お金に困る事なく生きていける」
そう真剣な眼差しで言う京ちゃんに喜びと呆れが入り混じった感情を覚えながら、六女仙達はネタバレを始めます
今まで一緒に生活していたのは、小蒔の伴侶としてふさわしいのか見極める為である事
神代家の次期頭首になった京太郎は、優れたオスとして合意があれば六女仙全員を愛人に出来る事
そして自分たちは京太郎の側から離れるつもりはなく、一生を尽くすつもりだと言う事
それに驚き戸惑う京ちゃんに、痺れを切らした六女仙が服を脱ぎながら迫って ――
が、大まかなエンディングの予定でした
尚、須賀父母の立ち位置は今と殆ど代わってません
半ば拉致同然で連れて行かれたパパンはきっとママンと何時までもイチャイチャエロエロしてます
ひとまず、お疲れ様でした
パソコン修理中なんでアナログですが
最近のスマホのスキャンアプリってすごい
http://i.imgur.com/JQUNKbb.jpg
投下も書き溜めもやってないとなんだか落ち着かないなー…
スマホに充電休み取らせてる間に何か出来るものないかなーとか考えてたら
支援絵貰ってたでござるの巻
うわあああああああああああああああ(AAry
色々と感想とかありますがそれは後回しにして!!!!
何かリクエストとかありましたら、書き込んでってくださいなー
なんぽっぽスレ復活の報せを見て思い出したんだけどさ、あのスレのヒロインは安価で決めたじゃん
俺は安価を取るギリギリまで数絵とマホとセーラの三択で悩んでだんだけど、イッチ的に誰が一番書きやすかったと思う?
>>715です
長い間楽しませて貰ったので、ついペンを取ってしまいました
よく見たら、菫お姉様(横髪)と照(角)とあわあわ(金髪)のハイブリッド見たいですね
リクエストですか……そういうつもりで描いた訳ではないんですが、強いていうなら大学生京ちゃんと社会人巴さんの慎ましくも愛のあるラブラブ同棲生活……とかですかね
http://i.imgur.com/NWSvTg4.jpg
>>715
前貰った支援絵とは方向性の違う美人さんですねー
線画な所為か、最初は蛇系の擬人化娘のような印象を受けました(´・ω・`)人外娘とか大好きなのでドストライクでしたの
キリっとした目元は格好良く、顔のラインなんかは男性的なのに全体で見ると女性寄りの中性美人でまとまってるのが凄い…!
ちょっと照れ笑いしてるような表情もポイント高いです、これは喘がせたい(直球)
個人的に清楚さを感じられる髪型もすっごく好みです
巫女服も相まって、大和撫子感を強く感じます
まぁ、その下は大和撫子どころか、ダイナマイトボディなんですけど!!!
巫女服で誤魔化されそうだけどこれ結構、巨乳(意味深)ですよね
幾らか巫女服で増量されてるとは言え、DからEくらいはありそう
これ間違いなくPAD一枚どころじゃなく数枚重ねてますね!!(´・ω・`)だが、京ちゃんならばやりかねない
だが個人的に一番、推したいのは胸じゃなくて肩から鎖骨にかけてのラインですよ
ちら見されてる首のラインと良い、思いの外細い肩と良い、巫女服の間から覗く鎖骨と良い!!!!!
なんだ、この色気は!!!!!!!!!!
思わず抱きしめて首筋にキスしたりしたくなるじゃないですか!!!!!
良い匂いしそう、つーかする(断言)
こんな美少女に抱きしめられたら、そりゃあ春達もコロっとイキますよね
その上、二人きりになったら本番しないだけで延々エロい事されるとか、春達が羨ましい…!
そして何より、字がとっても綺麗だと思いました(小並感)
>>717
マホは後輩から恋人になっていくまでの変遷とか面白そうですし
セーラも、身体だけじゃなく心も少しずつ女になっていく変化を書けると楽しかったと思いますが
やっぱり同級生ネタが使える数絵が一番、書きやすかったんじゃないでしょうか
まぁ、流石に恋に堕ちたら、のどっち並のおもちになるとは思ってませんでしたが!!!!!
>>718
はいなー了解です!
今はFGOのイベントなんかであんまりがっつり書けないですが、スマホ休みとかにちょこちょこ書いていきます
ちなみに巴の名前があがってますが、本編無関係の小ネタで良いでしょうか?
>>720
長い感想ありがとうございます!
こんな褒めちぎられたのいつぶりですかね
巴さんは小ネタで大丈夫です
ほんとは自分で書こうと思ってたけど、永水メンバーは>>1の影響があり過ぎて書きにくかった(悪い意味でなく)ので、せっかくの機会ですので丸なげしちゃおうかな、と
>>720
俺も同級生ネタが決め手になって数絵にしたんよね
んでもセーラに関しては京ちゃんを同い年にすれば他の関西圏の子との絡みもあって楽しそうじゃね?と後で思ったりもした
その場合、竜怜が攻略できないという仕様に身悶えしそうだから考えるのをやめたけど
ぐあああああああ!!!!
BOXガチャのお陰ですっげー育成進んだけど、骨足りない!牙足りない!逆鱗足りないいぃいいいい!!!!
流石に骨と牙は今のイベント中だとどうしようもないのでギルだけぶっ倒してきます(血走った目で)
もし槍師匠持ってて、すでに白薔薇凸った人がいれば、槍師匠に持たせておいてくれると幸いです…
槍玉藻がLv88からLv90になったらちょっと去勢してくるので
>>721
こちらこそありがとうございます
支援絵もそうですが、私の影響が大きいと言われるとSS書いてた甲斐がありまする
せっかくの丸投げに応えられるようがんばりますね!!(´・ω・`)尚、現在、BOXの追い込み中なのでもうちょっと待ってください…
>>722
関西圏もキャラ多い上に、横のつながりが強いですからねー
絡みと言う意味では確かに大阪組の方が書きやすかったかもしれません
数絵編だとモブを当ててるところを名有りキャラに出来るってだけでも大分、違いますし
ただ、普段なら女の子泣かすならハーレムでええやん?派ですが、添い遂げるのが目的のスレでハーレムは書けないですしねー
確かにここの依子みたいに描写増えた分、ヒロイン力増したりしたら、私も身悶えしてたかもしれませぬ(´・ω・`)
もちろん、令呪三角ぶっぱしてきます(ぐるぐるおめめで)
が、英雄王のHP120万あるので流石に宝具三連射だけじゃ仕留めきれない気がするのですよねー
令呪使って仕留められなかったら泣くってレベルじゃないので手持ちの槍玉藻育ててからぶっこみまする
デオンくんちゃんはいないけど、今回のでゲオルギウス先生とレオニダス育てたから多分、大丈夫なはず……!!!
120万じゃなかった、150万ですね
…いや、ホントマジで慢心捨ててるなこの英雄王(´・ω・`)
英雄王は孔明師匠マシュで後詰にヒルデさん使って仕留めたなー
ちょっとずつのんびり強化とかしてるし慢心しきってアレなんやで
あと骨は初級で落ちる
カルナ、槍玉、師匠、ダビデ、マシュ、兄貴で令呪なしクリアしましたよ
10ターン耐えて師匠の宝具ブッパするだけのお仕事。カルナはスペック枠での採用なので無くてもそこまで影響なし。
槍玉藻の第二スキルでチャージだけ増えて魅了入らなかった時はスマホ投げようかと思った
報酬いらないから何回も挑戦させてくれたらいいのに。次は完凸邪ンヌで挑みたい
ほうほう…って事は盾鯖はそんなに多くなくても良いのかな
そもそも全体宝具って時点であんまり止められませんもんねー…(´・ω・`)だが、いないと10ターン耐えられる気がしねぇ…
槍玉藻 きよひー フレ玉藻 ゲオルギウス先生 レオニダス マシュで様子見してきまする
ぬぐぐ…残り30万で宝具打たれて負けた…!!!
コレ一手間違ったら勝てない奴ですね…(´・ω・`)令呪全部ぶっこんでギリっぽい
宝具対策にダビデとトリスタン育てようかなー…
あ、それはさておきアドバイスありがとうございます
リトライ繰り返せばいけそうな気がするのでBOXガチャ回してダビデとトリスタン育てながらもう一回挑戦します(´・ω・`)令呪一つ切っちゃったんで明日になってからですが
>>727
あぁ確かに本気なら一気にバフ掛けてもおかしくはないですね(白目)
ぶっちゃけ5ターン目くらいで相性差ひっくり返されて、フレ玉藻が死にそうになってましたが!!!!
アチャのクリ率ほんとマジ自重して…(´・ω・`)対魔力でクリデバフも弾くしさああああ!!
そして銅は輝石まで含めてもう集め終わってるので初級に行く理由がないのです…
>>728
エキシビジョンは何回もやらせてくれってのはwikiでも良くみますねー
まだ全然育成進んでなくて選択肢がない我がカルデアからすると天上人の会話である
私も宝具止めようと思ってW玉藻で第二スキル打ったら両方共弾きましたよあの英雄王…(´・ω・`)ほんと自重して
あ、ジョイント二つ目凸出来たんでレベル70のサモっさんにつけてます(´・ω・`)もし他のところが良ければ言ってくれれば動かしますねー
他の礼装も全部凸ってるんで欲しいところあれば言ってくださいな
つまり咲と関係ある語尾をつければ良い訳だ南浦プロ!!!
ちょっと大変そうだけど、頑張りますばら!!!!
冗談はさておき。
正直、本編終わったし、スレの残りもまだまだあって、こっちでフレ募集に応えてくれる人が居たから軽く考えてました。
申し訳ありません。
これからはあんまり無関係なネタ引っ張りすぎないよう控えます(´・ω・`)
あんまり脱線しないって言ってたけどお世話になったのにガンスルーなのはアレなのでコレだけ!
ついさっき無事にギルぶっ倒してこれました!
ギルがクリ以外出さなかったりクリティカルダウン外したりして泣きそうになりましたが!
その他は魅了やスタンがしっかり入って仕留められました(´・ω・`)フレの凸薔薇師匠さまさまである
アドバイスしてくださった方、凸薔薇師匠出してくださった方、本当にありがとうございます
幸い、アドバイス貰ったお陰で二回目で勝てましたが、アレ対魔力次第じゃホントやばかったと思います…
次回作はあっちのスレ残ってるんで、あっちを利用した安価スレをやろうかなーと思ってまする
その後、なんぽっぽスレやSW2.0スレなどやると言っててやってなかったのをしっかり終わらせて
AAの京太郎スレでも作ろうかなーって言うのが今のところの予定ですねー
そしてmlt見てたら
, -‐  ̄ ` 丶、
/.::::::::::::::::::::::::::::::::.ヽ
/.::::::::::::::::i:::::::::::::::::::::::::ハ
/ . ::::::::,斗-,! :::|‐‐トl:::::::::',
_.r y-r 、 / ...:::l:::|'l从ハ:::::::|lハ从イ:::....i r´⌒\
./ ノ / 乂 .) ./ -イ|::ハ:| \| u. lレ':::::l /_ ノ '
/ Y |:::{ヾ:イrテミ , 'rテミ.ムイ::l ..´ / ‘
,r| / |ハトl /i/i rー、/i/il,イハ! { `{ ',
〈.__! .イYヽY >-‐ミ:..丶、u.V._ノ ,.ィ../}:∧ー 乂 ゝ _
. Y .| {_,}、{ }` <ニ=- ´ `¨´_ i ー ´i..`¨´ ` < _/⌒ハ |
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ノ 人 / .ハー=≦ .∧ '. ` ´ 八 ≧=‐- . ゝイ / 八
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./ イ ∨ .ハ .′ ./ { ! .ゝ--< {、_)
ーァ=≦ ∨ .リ .ィ≠ミ、 , ../ .ゝ| ` |
./ ∧ ∨ / 〃ヽ( Y.ハ { /{ .人 / .∧
/ / .∧ }` < ../ .《.)/´:Y}jヽ}} ∨ ..> ´ >、イ./ / ∧
./ / .\ `丶 Y : J : : :》 .∨ . ´ . イ ∨ /
/ >、‐ ‘. l}≧==.彳 .〉‘ ` ¨¨/ ∨ /
./ ヽ '. 〃 ij : : ハ ./ / ∨ /
′ ‘. ヽ ′: : : :.{ }} / . ‘ ∨ /
八 ‘, '.{{: : :八 :l :{/ ./ ∨
. / \ }:/爻‘ミ、Y /
\ . 彳从爻㌢人 イ
,≧=--=≦^´` ¨'"^゜Y ≧=- -=≦.
. ´ `
こんなAAを見つけたでござる
ついこの間まで咲ちゃんに18禁AAなんてなかったのに…!!(´・ω・`)使いたい…
咲ちゃんはチンポ生えてたとしても京ちゃんには使わなさそう
京ちゃんのマジカル☆チンポ挿入れられながら扱かれてアヘアヘんほぉおするのが大好きそう
でも、京ちゃんとの恋路を邪魔する女がいたら、アへ顔Wピースで写真撮るまでガン突きしそう
間接的ハーレムというか、それ完全に咲ちゃんのハーレムですからねー
それ系のネタだと咲ちゃんを思いっきり依存させた後
関係維持の為に必要だとそれとなく匂わせて和達を堕とす協力をさせる的なのが思いつきますが(´・ω・`)既に他の人がやってそう
ヒャア!もう我慢出来ねぇ!巴とのイチャラブ同棲生活だー!!!
―― 狩宿巴の朝は早い。
彼女の顔立ちは整っているが、しかし、社会人としてすっぴんでは出勤出来ない。
メイクをする前にはシャワーを浴びたり、髪を整える手間もある。
何より、彼女は社会人と言う事を理由に出来ない性格なのだ。
幾ら夜が遅かろうと平日には何時もの時間に起き出し、朝食を作り始める。
巴「ふんふふんふーん♪」
その間、彼女の口から漏れ出るのは上機嫌な鼻歌だ。
もともと、巴は朝が強い方で、料理も決して嫌いではない。
その上、彼女が作っているのは、大事な同居人の ―― 恋人の口に入る食事なのだ。
ほんの一時間先に迫った出勤など忘れて、鼻歌交じりに味噌汁をかき混ぜてしまう。
巴「良し」
とは言え、それも数十分と続く訳ではない。
鹿児島に ―― 霧島神宮にいた頃から、巴は毎日、料理を作り続けていたのだから。
熟練したその技は、あっという間に朝食を仕上げてしまう。
その出来上がりを最後の味見で確認した巴は、一つ頷きながら、エプロンを解いた。
そのまま鏡の前に立った彼女はジっと自分の顔を見つめて。
巴「んー…大丈夫、かな?」
高校生の頃よりも幾分、大人びたその顔は、雰囲気こそ地味であるものの、とても整っている。
見る人が見れば、磨けば光る原石のように映ってもおかしくはない。
しかし、そんな顔と二十数年付き合っている彼女は、どうしてもそうは思えない。
今まで巴の周りにいたのは、自身に負けず劣らず、美女揃いだっただけにどうしても劣って思えてしまう。
自らの劣等感に彩られたそれは人生で初めての恋人が出来ても、変わる事はなかった。
巴「(…細かいところがすっごく気になる。でも…)」
あんまり自分の顔とにらめっこしてはいられない。
朝食が出来上がった今、彼女に時間的な余裕はあまり残されてはいないのだから。
これから先の予定を考えれば、細かいところに目を瞑るべき。
うしろ髪惹かれる自分にそう言い聞かせながら、巴はリビングを離れた。
巴「京太郎くーん?」
そう呼びかけながら彼女が足を踏み入れるのは、二人の ―― 巴と京太郎の寝室だ。
ベッドとタンスが並んだその場所は、未だカーテンが締め切られて暗いまま。
そんな中をゆっくりと歩きながら、巴はベッドに近づく。
一歩、二歩、三歩。
呼びかけとは裏腹に、慎重で、静かなその歩みを繰り返す度、ゆっくりと京太郎の顔が近づいてくる。
京太郎「すー…」
巴「…ふふ」
未だ寝顔を晒す京太郎の顔は、とても幼いものだった。
彼女よりも二歳年下 ―― 未だ大学生である事を加味しても、その幼さは特筆すべきであろうものだと巴は思う。
まるで眠り姫のようにも思える顔に、巴は笑みを浮かべながら、ベッドの縁に腰を下ろした。
巴「(相変わらず、可愛い寝顔…なんて言ったら、京太郎くんはきっと拗ねるでしょうけれど)」
その寝顔を見られる時間は、巴にとって至福と言っても良いものだった。
幾ら世界が広いと言っても、ここまで安らいだ彼の寝顔を知っているものはそういない。
それは自分に自信がもてない巴にとって、強い喜びと、実感を与えてくれる。
あぁ、こんなに綺麗な子が、自分の恋人なのだと。
こんなに素敵な恋人と今日も一緒にいられるのだと。
陶酔の色で染められたその言葉に、巴の頬は緩んでしまう。
巴「(…本当に、なんて幸運なのかしら)」
巴「(京太郎君と恋人になれただなんて…夢みたい)」
巴と京太郎が出会うまでの間には幾つもの偶然があった。
もしも、巴が他の六女仙と同じく、一人娘だったならば。
もし、巴が今の会社に入らなければ。
もし、巴が普段は断っている飲み会に参加しなければ。
もし、巴が飲みすぎて家とは逆方向の列車に乗らなければ。
二人は夜の電車内で出会う事はなく、こうして恋人になる事もなかった。
その偶然の数々に感謝しながら、巴は京太郎の頬に手を伸ばす。
京太郎「ん…」
巴「可愛い…♪」
勿論、巴とて、普段はそんな事を言ったりしない。
幾ら彼女が京太郎以外の男を知らずとも、それが男のプライドを傷つけるものだと分かっているのだから。
しかし、今だけは。
京太郎が眠りに堕ち、無防備な姿を晒している今だけは。
心に浮かぶその言葉をそのまま口にし、慈しむように彼の事を撫でてしまう。
巴「…大好きよ♥ 本当に…愛してる…♥」
だから、巴は耐えきれなくなった。
彼女は二十年間初恋もせず、また自信と言うものがあまりにも足りていないのだから。
自分に告白してくれた京太郎の側にいたい。
もっともっと彼の為になりたい。
一生を尽くし続けたい。
そうすれば、きっと京太郎は自分だけを見てくれる。
自分が必要不可欠な存在になれば、京太郎は離れられない。
ずっとずっと、恋人として、妻として、彼の事を独占できる。
暗い希望に染まったその言葉は、彼女に同棲を口にさせ、そして。
巴「(…もう二年かぁ)」
二人が同棲を始めてから既に二年が経過していた。
最初は色々とすり合わせが必要だった生活も、今では巴の一部となっている。
もうコレ以外の生活なんて考えられない。
京太郎が帰ってきてくれない部屋なんて無理。
そう思うほどどっぷりと浸かった巴には、一つの懸念があった。
巴「(…京太郎君、もうちょっとで卒業なんだよね)」
出会った頃は初々しい大学一年生だった京太郎も、既に卒業を見据えて就職活動を始めていた。
元々、真面目で要領の良い彼は、既に複数の大手から内定を貰っていると聞く。
それを巴は心から喜ぶ事が出来ない。
勿論、恋人の頑張りが評価されるのは嬉しいが、それは今の生活が崩れてしまう事を意味するのだ。
比較的時間の自由が効く大学生ならばいざ知らず、社会人となれば一緒にいられる時間も減る。
転勤などになってしまったら、こことは別の部屋に移る、なんて話にもなりかねない。
巴「(…それに社会人になったら、大人の女の人との付き合いも増えていくだろうし)」
その時、自分が京太郎の恋人としての座を護りきれるだろうか。
その疑問に、巴は答えを出す事が出来なかった。
無論、意外なほど義理堅い京太郎が、浮気などという不義理をするはずがないと分かっている。
しかし、それと並び立つほどに、巴は自分の事が信じられないのだ。
これから彼と出会うであろう『大人の女性』に自分は勝てるだろうか。
自分よりもあの人の方が良いと思われたりしないだろうか。
どうしてもそんな不安がつきまとい、京太郎の就職を歓迎する事が出来ない。
巴「はぁ…私ってば、ホント、面倒だよね…」
自覚はある。
しかし、それを治す事は容易ではない。
二十数年間積み重なったコンプレックスは、知恵の輪のように絡まっているのだから。
京太郎はそれを一つ一つ、丁寧に解いてくれてはいるものの、未だ解決には程遠い。
そんな自分に溜息を漏らしながら、巴はポツリと呟いて。
京太郎「…何が面倒なんだ?」
巴「ひゃぅ!?」
その声に、京太郎はパチリと目を開けた。
そのままムクリとベッドから起き上がる彼に、巴は驚きの声をあげてしまう。
京太郎も朝に弱いタイプではないと知ってはいるが、まさか起きていただなんて予想していなかったのだ。
一体、何時から自分の独り言を聞かれていたんだろうか。
内心に浮かぶその言葉に、巴は背筋に冷や汗を浮かべる。
巴「い、何時から起きてたの?」
京太郎「多分、撫でられた時から意識は起きてたと思う」
京太郎「ずっと微睡んでたから定かじゃないけど」
巴「そ、そう…」
京太郎の返事に、巴は内心で胸を撫で下ろした。
とりあえず可愛いと言っているのは聞かれなかったらしい。
もしかしたら、好きだの愛してるだのは聞かれたかもしれないが、それはもう今更だ。
恥ずかしい事は恥ずかしいが、さりとて、隠さなければいけない事でもない。
休日前にはベッドの上で訳が分からないまま繰り返している訳だし、とりあえずそれはさておくとして。
京太郎「で、何が面倒なんだ?」
巴「え、えっと、それは…」
今はこの疑問にどう応えるべきかが最優先。
そう思いながらも、巴はすぐさま答えを返す事が出来なかった。
ここで下手な事を言えば、京太郎に心配を掛けてしまう。
それを回避する為に、適切な理由を探さなければいけないが、巴の思考はそれに集中出来ないのだ。
まるで生娘のように寝間着の間から見える彼の身体や視線にドキドキして、上手い考えが浮かんでこない。
巴「な、なんでもないの」
京太郎「…そっか」
巴「(あうぅぅぅ…ごめんね京太郎君…)」
結果、下手な誤魔化しを口にするしかない巴に、京太郎は寂しそうに返した。
恋人という立場にも関わらず、踏み込むことを許してもらえなかった彼の表情に、巴はズキリと胸を痛ませる。
良心から浮かび上がってくるそれは、巴の胸中に謝罪の言葉を響かせた。
京太郎「朝飯はもう出来てる?」
巴「う、うん。出来てるけど…」
京太郎「っし。んじゃ、ダラダラせずに、起きるとすっか」
京太郎「巴の美味しい朝飯食いそびれるなんて大損だからな」
巴「…もう」
そんな彼女に京太郎は明るい表情を向けた。
何時も通りのその表情に、巴の痛みがマシになる。
とは言え、その痛みは、決してなくなった訳ではない。
その痛みの根は、未だ彼女の心に張り付いているのだから。
京太郎を独り占めしたいというその願望は、その顔を見てもなくなる事はない。
寧ろ、彼への想いと共に、強まる一方だった。
巴「じゃあ、先にお着替えしないとね」
京太郎「あいよっと」
巴の言葉に頷きながら、京太郎はベッドから腰をあげた。
そんな彼に近づいた巴は、京太郎の寝間着からボタンを外していく。
一つ一つ、服が痛まないよう丁寧にボタンを外されていく間、京太郎は殆ど身じろぎしない。
巴にされるがままになりながら、恥ずかしそうに視線を彷徨わせる。
京太郎「(…慣れはしたけど、やっぱ恥ずかしいよなぁ)」
京太郎は既に成人式を済ませた男性で、数歳の子どもではない。
巴にされずとも、着替えくらいは一人で出来る。
だが、こうして同棲を始めてからの巴は病的なまでに京太郎の世話を焼きたがるのだ。
ともすれば、トイレにまで踏み込もうとする彼女を止めようと京太郎はいくつかの譲歩を口にした。
その一つである着替えは、数年が経った今でも、京太郎にとって気恥ずかしさを覚えるものだった。
京太郎「(出来れば、止めて欲しいけど…でも言えないよなぁ)」
京太郎「(んな事言ったら、至らなかったんだって自分を責めるタイプだし…)」
京太郎「(何より)」
巴ほどではなくとも、京太郎もまた彼女の事を愛している。
電車の中で酔っぱらいに絡まれていた巴を助けた時から、ずっと京太郎の心の中には巴がいたのだ。
そんな彼女が悲しむ姿を、京太郎は見たくない。
その為ならば、多少の羞恥心くらい捻じ伏せてやろう。
そう決意を固めた京太郎は巴の指示通り、腕をあげ、背中を向けて。
巴「はい。出来た」
京太郎「ありがとうな」
巴「ううん。私が好きでやってる事だから」
数分もした頃には、京太郎は巴がプレゼントし、巴がコーディネートした服に身を包んでいた。
昨夜から彼女が準備していたそれは、彼の雰囲気を幾分、大人びたものにしている。
大学生よりもほんの数歳年上に見えるその落ち着いた服装は、京太郎に良く似合っていると巴は思う。
京太郎「今日もイケメンになったか?」
巴「えぇ。惚れ直しちゃいそうなくらいにね」
冗談めかしたその言葉は、まったく嘘と言う訳でもない。
こうして京太郎と付き合い、同棲生活も二年近いが、それでも彼女の気持ちは強まるばかりだった。
京太郎の顔を見る度に、こうして言葉を交わす度に、雪のように想いが積み重なっていく。
それを実感する彼女は頬を赤く染めながら、笑みを作った。
京太郎「よし。んじゃ、朝飯をご馳走になるとしますかね」
京太郎「今日のメニューは?」
巴「見てのお楽しみって事でどう?」
京太郎「巴は焦らし上手だなぁ」
巴「京太郎君に言われたくはないかしら」
朗らかなその会話は食事中も止まる事はない。
多少、歪ではあるものの、二人の波長はしっかりと噛み合っているのだ。
会話を切り出すのは京太郎の方が多いが、巴もそれを広げていく。
特に考える必要もなく、ただ楽しさだけが続くその時間は、とても心地良い。
正直なところ、そんな時間がずっと続けば良いと巴も思うが。
巴「…それじゃ、そろそろ行ってくるわね」
京太郎「あぁ。気をつけてな」
しかし、仮にも社会に属する身で、『恋人とイチャイチャしたいから今日は休みます』などと言えない。
出勤時間がくれば、私人としてではなく、社会人としての思考に切り替えなければいけないのだ。
そう理解していても、巴の胸から寂しさはなくならない。
例え、その身体を黒のスーツに包み、ヒールを履いても、声に寂しさが残ってしまう。
巴「…京太郎くん」
京太郎「はいはい。今日もだな」
結果、巴の足は、中々、玄関から出ようとしなかった。
もうすぐ電車の時間だと分かっていても、ついつい京太郎との時間を長引かせようとしてしまう。
そんな未練を断ち切るには、生半可なものでは足りない。
それを理解する二人は、玄関の中でしっかりと抱き合って。
巴「…えへぇ♪」
京太郎「良し良し。今日も頑張れよ」
巴「うん…♥」
そのまま背中を撫でる京太郎に巴は甘い声を漏らしてしまう。
何時ものものよりも媚を数割増したその声は、どことなく子どもっぽい。
普段、自分の世話を焼きたがる年上の女性とは思えないそれに、京太郎は驚きを感じる事はなかった。
こうして巴が出勤前に甘えてくるのは、ほぼ毎日の事なのだから。
最初は驚きこそしたものの、今は何時もの事だと、そんな巴も可愛らしいと受け入れる事が出来る。
巴「…それじゃあ今度こそ行ってきます」
京太郎「あぁ。行ってらっしゃい」
そんな時間も長くは続かない。
京太郎とのスキンシップは心地良いが、それはあくまでも未練を断ち切る為。
社会人としての思考に切り替えた巴は、数分後、京太郎から離れた。
そのまま玄関の扉を開けた彼女は最後に寂しそうな顔を見せながら、部屋を出て ――
巴「…」
「狩宿さん?」
巴「あ…ごめんなさい」
昼休み。
巴は同じようにスーツ姿に身を包んだ三人の女性たちとテーブルを囲んでいた。
その時間は決して悪いものではないが、さりとて、京太郎との時間に及ぶものではない。
今、京太郎は何をしているのか。
自分の作ったお弁当を美味しく食べてくれているのか。
ふとした時にそんな思考が浮かび上がり、ぼうっとしてしまう。
「また彼氏の事を考えてられたんですか?」
巴「あ、あはは…」
「あ、やっぱり図星なんだ」
「狩宿さんは彼氏さんラブだもんねー」
それは決して今に始まった事ではない。
京太郎と出会ってからの巴が、ほぼ毎日、そうやって京太郎に思いを馳せているのだから。
仲の良い同僚たちも慣れたもので、微笑ましそうな目を向ける。
「狩宿さん、うちの課のエースって言っても良いくらいなのに、彼氏さんが関わるとポンコツだからなー」
「あ、勿論、悪い意味じゃないですよ。そういうところも魅力的って事で」
「そうそう。うちの課でも狩宿さん狙ってる奴多いんですから」
巴「もう。言い過ぎよ。私みたいな地味な女を狙う人なんていないわ」
「いやいやいやいや、狩宿さん、分かってませんよ」
「世の中にはそういうのを自分好みにするのが良いって男も多いんだって」
「それに狩宿さんって綺麗だし、気遣い出来るし、毎日作ってくるお弁当も美味しそうだし…男じゃなくてもお嫁さんに欲しいですよ、マジで」
彼女たちの言葉は決して嘘ではない。
巴は自覚していないが、彼女の優秀さは周囲に埋没するようなものではないのだ。
その雰囲気こそ地味ではあるものの、一度、目を引き寄せられたら、否応なくその良さに気づいてしまう。
そんな彼女に懸想している男は一人や二人ではなかった。
「それにしても彼氏さん羨ましいなー…」
「だよねー。狩宿さんにこんなに愛されてるだけでも果報者なのに」
「その上、毎日、お弁当まで作ってもらえるなんて…思わず嫉妬しちゃいますよ」
巴「そう…かしら」
だが、巴はそんな有象無象に興味はなかった。
彼女にとって最優先にするべきは、京太郎のことに他ならない。
だからこそ、恋人がいるのを知って、飲み会やデートに誘う男たちを、彼女はバッサリと切り捨て続けていた。
そんな巴にとって、京太郎が果報者だと言うその言葉は、思わず照れ笑いを浮かべてしまうもので。
「あ、今のまた恋人さんの事思ってたでしょう?」
巴「わ、分かっちゃう?」
「えぇ。モロバレです。狩宿さんって彼氏さんの事思うとすーぐ恋する乙女顔になるんですから」
「男どももこんな狩宿さんにアタックするだけ無駄だって気づけば良いのにねー」
呆れたようなその言葉に、食堂の中にいる何人かが居心地悪そうな顔を見せる。
大多数の男たちも無駄だと分かっているが、さりとて、簡単に諦めるには巴はあまりにも魅力的過ぎるのだ。
あの顔を自分にも向けて欲しい。
地味な雰囲気が嘘のように明るく、幸せそうな笑顔を独占したい。
そう思う男たちの数は中々、0にはならなかった。
「しかし、狩宿さんをこんなにする彼氏さんの事がすっごく気になるんですけど」
巴「だ、ダメよ。会わせたりとか絶対、ダメ」
「写真は見せてくれてるのに…」
巴「だ、だって…取られちゃうかも…しれないし…」
「あーもう。可愛いなー狩宿さん…!!」
巴「うぅ…」
視線を右斜に下ろし、モジモジと身体を揺する巴は、まるで小動物のようだった。
日頃、課のエースとして、男以上の活躍をする才女の姿はそこにはない。
まるで十年以上若返ったようなその初々しさに、彼女たちは思わず手を伸ばす。
そのままナデナデと頭を撫でる彼女たちに、巴は気恥ずかしそうな声を漏らした。
「寧ろ、私、狩宿さんを取りたい」
「先輩、そんな趣味があったんですか…?」
「いや、ないけど目覚めそう」
「ないわー。つか、アンタ、彼氏いるじゃん」
「いるけど、うちのはもう二年も一緒に暮らしてるしさー。殆ど家族って感じなんだよね」
巴「そ、そう…?」
「えぇ。そうですよ」
それは巴にとって未知の世界だった。
彼女は京太郎と同棲生活を始めて二年近くが経つが、未だ彼の事を家族だとは思えない。
未だ初恋が色褪せない巴は、日々、彼にドキドキさせられっぱなしなのだ。
それが落ち着き、家族と言う形に収まるところを彼女は想像すら出来ない。
「それに何度言っても働かないし…まぁ、パチンコとかそういう浪費癖ないからまだマシだけど」
「もういっその事養っちゃえば?」
「ぶっちゃけ、それも考えてる。うち給料良いもんねー」
「産休とかも結構、しっかりしてますもんね」
巴「……養う」
ふと飛び出したその言葉を、巴は口の中で確かめるように繰り返した。
養うと言う言葉が、一体、どういう意味なのかを彼女も知っている。
主夫やヒモと呼ばれる存在に、彼を堕としこみ、世間とは少し違う夫婦のあり方を作るという事。
呆れるように語る彼女の恋人とは違い、働く意志を持つ京太郎にそれを押し付けるのは酷だと思う。
巴「(…でも)」
そうなれば、京太郎と一緒にいられる。
仕事に彼を取られる事はない。
ずっと同じ部屋で二人、いや、三人四人と家族を増やす事が出来る。
その未来は巴にとって言い知れない喜びと、暗い希望を与えるものだった。
巴「…あ、あの、どうすれば…良いのかな?」
「え?」
巴「だから、えっと…お、男の人を養うのって」
「もしかして狩宿さん…」
巴「い、いや、あくまでもね! あくまでも参考に聞きたいんだけど!」
結果、彼女はその想いを、そのまま口に出してしまう。
無論、ここでそんな事を言えば、彼女たちの中で京太郎のイメージが悪くなってしまうという事くらい巴にだって分かっていた。
しかし、鹿児島から一人離れた巴にとって、相談出来る相手など彼女達くらいしかいない。
かつての友人たちはそれぞれ婚約者を充てがわれ、恋も知らぬまま結婚したのだから。
そんな彼女たちに恋の相談をするのがどれほど酷な事か、彼女にだって分かっている。
ってところで時間が来たのでちゅうだーん
また明日からちょこちょこ書いていきまする
「まぁ、ある意味では狩宿さんらしいかな?」
「他の子だったら驚いてたかもしれないけど、まぁ、狩宿さんだし」
「やっぱりそうなったかーって言うのが正直なところですよね」
巴「…皆は私の事、どう思ってるの?」
「だって、狩宿さん、ほぼ毎日、彼氏さんのご飯作る為に定時にあがってるし」
「彼氏さん就職してほしくないって漏らしてたし」
「依存一歩手前って言うか、かなり沼ってましたよね」
巴「うぅぅぅ…」
そんな巴に返ってきたのは、同僚たちからの容赦のない評価だった。
普段の彼女を間近で見ているからこそのそれに、巴は反論出来ない。
その全てが事実である事を彼女の頭も認めているのだから。
反論したい気持ちはあるが、言葉は出てこず、身体を縮こまらせてしまう。
「ほら、しょげないしょげない」
「そうですよ。何も責めてる訳じゃないんですから」
「一緒に考えてあげるから、ね?」
巴「…うん」
とは言え、同僚達も巴を追い詰めるのは本意ではない。
巴は、男性社員だけの人気者でもないのだ。
細やかな気遣いだけではなく、エースと呼ぶに足る活躍をしている彼女に女性社員達もまた憧れている。
そんな彼女たちの代表でもある同僚たちは、居心地悪そうにする巴に優しい声を掛けて。
「ストレートにヒモになって欲しい…って言うだけじゃきっとダメですよねー」
「そもそもヒモってだけじゃ生活に対する保証がないもんねぇ」
「まずはプロポーズしてヒモになっても大丈夫って安心させてあげるのが一番じゃない?」
巴「ぷ、プロポーズ!?」
「それでもダメって言われたらどうします?」
「うーん…狩宿さんのボディで骨抜きにしちゃうとか?」
「意外と出るとこ出てるもんねぇ、羨ましい」
巴「い、いや、あの…」
「後は今まで以上に甘やかすのも良いんじゃない?」
「狩宿さん抜きで生きていけなくしちゃえば、逆らえなくなりますもんね」
「後は社会の面倒さとか辛さを吹き込んで鬱にしちゃうのもアリかも」
「うわーわっるーい」
「狩宿さんに養われるんだから、これくらい十分アリでしょー」
盛り上がりは巴を置いてけぼりにしたものだった。
元々、巴は自己主張が控えめな上、今回の話はあまりにも彼女たちの興味をそそりすぎている。
無責任に、しかし、友人のためと言う大義名分を得た彼女たちは、喜々として言葉を交わす。
その最中に一人取り残された巴は、狼狽えながらも、それらを一つずつ心の中に留めていって。
巴「…ふぅ」
それから数時間後、巴は帰路についていた。
その手にぶら下がっているのはカバンと、そしてスーパーの袋。
夕飯の材料が入ったそれは、決して重い訳ではない。
その外見からは想像もつかないが、彼女の身体は同年代に比べて鍛えられている。
護身術の類も叩き込まれた巴にとって一食分の重みなど大した事はなかった。
巴「(…どうしよう…かなぁ)」
それでも彼女の口から溜息が漏れるのは、未だ巴が迷っているからだ。
同僚たちから色々とアドバイスを受けたものの、それを実行に移して良いのかどうか。
自身の良識はそれに否と返し、ソレ以外の部分は是と返してくる。
相反した二つの答えに、巴の心は悩みを深めていた。
巴「(こういう時、はっちゃんが居てくれたら…)」
胸中に浮かぶのは、竹を割ったような性格をした親友の姿。
幼いころからピタリと成長を止めてしまった彼女は、優柔不断な巴をずっと引っ張ってくれていた。
巴が鹿児島から出ると決めたのも、彼女が背中を押してくれたからこそ。
そんな初美に頼ってはいけないと連絡は最小限にしていたものの、今は無性に彼女に会いたい。
彼女に胸の内を打ち明けて、どうすればいいか決めて欲しかった。
巴「(…でも、それは流石にダメだよね)」
巴「(きっとはっちゃんもそんな事したら怒ると思う)」
巴「(それは人に言われて決めちゃダメな奴ですよーとか言われちゃいそうだし…)」
巴「はぁ…」
結局、自分で決めるしかない。
何度もたどり着いたその答えに、巴は再び溜息を吐いた。
思考は毛糸のように絡まり、中々、解く事が出来ない。
延々と堂々巡りをし続けているような感覚は、徒労感を強めていた。
巴「(…まぁ、今すぐ答えを出す必要はないし、それにそろそろ家だもの)」
巴「(こんな悩み事してますって顔で帰ったら、また京太郎君に心配されちゃうわ)」
巴「(だから、とりあえず先延ばしに…)」
巴「…あ」
そう思ってまた一歩踏み出した巴の視界に、コンビニが入り込む。
瞬間、巴が声をあげたのは、それが決して珍しいからではない。
そのコンビニは彼女たちの住んでいる部屋から最も近いのだから。
社会人ながらも家事を一手に引き受けている巴にとってあまり縁がある場所ではないが、それでも声をあげるほどではない。
巴「(あ、アレって…)」
にも関わらず、彼女が立ち止まったのは、歩行者向けのラックに結婚情報誌が入っていたからだ。
角を使えば、人を殴り殺せそうな分厚いそれを、巴は強く意識してはいなかった。
巴にとって、今の幸せは分不相応なものなのだから。
ここから京太郎と結婚し、家族になるだろうと意識はしていたものの、わざわざそれを手に取らなければいけないほど切羽詰まってもいない。
いずれ京太郎がプロポーズしてくれるのを待とうと、彼女は気長に考えていた。
巴「(…結婚、ぷ、ぷろぽーず…)」
しかし、今の巴は違う。
同僚たちに焚き付けられた巴は、結婚というものを強く意識し始めていた。
自然、その情報が纏められている結婚情報誌が、とても気になってしまう。
まだ早いという気持ちと、あくまでも参考にするだけだからと言う気持ち。
その二つがせめぎ合う巴はコンビニの前から動けずにいた。
巴「う…うぅぅぅ…」
一分、二分、三分。
ジリジリと過ぎていく時間の中、通行人達は巴に訝しげな視線を向ける。
コンビニの前で立ち止まっている彼女はどうしても目立ってしまうのだ。
今が帰宅ラッシュの最中だと言うのも相まったその視線に、巴はグっと握り拳を作った。
そのままうつむき加減だった顔をあげた彼女は、決心した顔でコンビニへと足を踏み入れて。
巴「た、ただいま」
京太郎「おう。おかえり」
十数分後。
無事に帰宅した巴を京太郎は出迎える。
巴の要望によって、家事全般はさせて貰えないが、荷物持ちは別だ。
玄関から冷蔵庫までの短い距離だが、巴の負担軽減にはなるはず。
そう思って近づいた彼はそっとその手を袋に伸ばした。
京太郎「重かっただろ? 荷物持つよ」
巴「あ、え、えっと…」
京太郎「ん?」
巴「こ、こっちだけお願いね」
しかし、差し出されたのはその内の一つだけ。
巴が良く使うスーパーの名前が入ったそれに京太郎は首を傾げる。
どうして片方だけなのか。
一体、もう片方には何が入っているのか。
そんな疑問を浮かべる京太郎から逃げるように巴は部屋の中に入っていく。
京太郎「(…なんかコンビニの袋に本っぽいのが入ってたのは分かるんだけど)」
それが一体、何なのかまでは分からない。
ただ、巴がそれを見られたくないと思っているのは確かなのだろう。
ならば、それをあまり追求してやるべきではない。
幾ら恋人であっても、踏み込まれたくない領域というものはあるのだ。
引っかかる自分にそう言い聞かせながら、京太郎はキッチンへと足を運ぶ。
そのまま袋の中身を冷蔵庫へと仕舞い込む間に、巴の着替えも完了した。
私服姿にエプロンをつけた巴は、髪を軽く纏め直しながら、キッチンまで戻って来る。
巴「そ、それじゃあ私はこれから料理するから」
京太郎「あぁ。何か手伝う事はあるか?」
巴「ううん。大丈夫」
巴「京太郎くんは好きな事してて」
京太郎「…ん。分かった」
京太郎の手助けを、巴はやんわりと断った。
高校生の頃、タコスを手始めに様々な料理を学んだお陰か、京太郎の料理の腕はそう悪くない。
流石に巴ほどではないが、野菜を切ったり、洗い物をするくらいは十分、任せられる。
それは彼女も理解しているものの、手を借りたいとは思えない。
巴にとって料理とは、特別なものなのだから。
愛しい人の身体を形作るモノを自分が作っていると思うだけで、心躍り、顔が笑みを作ってしまう。
それをほんの僅かでも奪われるのは、例え、京太郎でも、許せない事だった。
京太郎「それじゃ、俺、ちょっと課題やってるから」
巴「うん。それじゃあご飯出来たら呼ぶわね」
京太郎「頼むな」
そう言葉を交わしながら、巴は冷蔵庫から食材を取り出す。
手慣れたその動きは、決して素早くはないものの、迷いも淀みもない。
まるでプログラムされた機械のように正確な動作を続ける。
その動きから、巴が料理に集中し始めたのを察した京太郎は、二人の寝室へと足を踏み入れた。
そのまま部屋の隅に置いたカバンから課題を取り出そうとした京太郎はベッドの上に投げ出された袋に気づく。
お腹をすかせた京太郎の為、早く料理を作らねばと焦っていたのだろう。
その袋の中身が半ば漏れ出し、タイトルを判別する事が出来るようになっていた。
京太郎「あー…」
その本のタイトルは京太郎も良く知っているものだった。
ゼ○シィ。
結婚情報誌として全国で有名なそれに、京太郎は思わず声をあげる。
それを買ってくる女性が一体、どういうものを望んでいるのか、京太郎も良く分かっているのだ。
結婚。
人生において、一二を争う大きなそのイベントを、巴は期待しているのだろう。
京太郎「(…まぁ、俺もそろそろ社会人になる訳だしなぁ)」
既に数社から内定を貰っている今、よほどの事がない限り、就職浪人になったりはしない。
後、少しすれば、巴と同じ社会人となり、彼女を養う事が出来る。
その感覚は未だ薄いものの、しかし、結婚というものをまったく考えていなかった訳ではない。
寧ろ、就職して少し落ち着いたら、彼女にプロポーズしようと京太郎も考えていたのである。
京太郎「(ただ、まさかここまで期待してくれていたなんて)」
京太郎「(…これは色々と予定を前倒しにするべきかなぁ)」
未だ自分が大学生だと言うのに、結婚を強く意識している彼女を重いとは思わない。
何だかんだで、京太郎もまた気持ちが重いと言われるタイプなのだ。
寧ろ、彼女の期待に気づかなかった自分に自己嫌悪すら感じる。
さりとて、それに溺れていたら、それこそダメ男だ。
こうして巴が結婚情報誌を買ってきた以上、自分にはそれに応える義務がある。
京太郎「(まずはプロポーズの言葉からだな)」
何より、京太郎自身、巴の気持ちに応えたい。
コレは日頃、尽くしすぎるほど尽くしてくれる彼女にとって、あまりにも珍しいワガママなのだから。
来週までに出せば良い課題よりも、今はプロポーズの事を考えるべき。
そう思考を切り替えた京太郎は、カバンからスマホを取り出す。
そのままネットに繋げた彼は無数のサイトから情報を読み取り始めて。
巴「京太郎君、出来たわよ」
京太郎「おーう」
数十分後、扉越しに掛かった声に京太郎は顔をあげた。
そのままスマホをスタンバイ状態にし、ポケットの中へと突っ込みながら扉を開く。
瞬間、京太郎の嗅覚を擽るのは、巴の作ったご馳走に匂い。
肉じゃがと卯の花、キャベツのおひたしにすまし汁。
そのどれもが京太郎の胃袋を刺激し、食欲を強める。
京太郎「今日も美味しそうだな」
巴「そう言ってくれると嬉しいな」
何より、京太郎は巴の腕前を良く知っている。
次女とは言え、しっかりと花嫁修業を積まされた彼女は、料亭を開いてもおかしくはないほどの料理上手なのだ。
視覚や嗅覚だけではなく、経験からも訴えられる美味しさに京太郎は我慢出来ない。
間食もせず、巴の帰りを待ち続けた京太郎は急いで椅子へと座る。
京太郎「それじゃあ頂きます」
巴「はい。一杯あるから焦らず食べてね」
京太郎「ん!」
巴の言葉に、しかし、京太郎の動きが遅くなる事はなかった。
空腹に突き動かされるようにして、彼の手は料理を摘んでいく。
それを口へと運ぶ度、美味しそうな声を漏らす恋人に、巴は笑みを浮かべた。
巴「(この光景だけでお腹一杯になっちゃいそう、なんて)」
無論、それが錯覚であるという事を巴も良く理解している。
しかし、だからと言って、幸福感でいっぱいな感覚がなくなる訳ではないのだ。
料理よりもついつい京太郎に視線が引き寄せられ、箸の動きも止まりがちになる。
そんな自分に、誇らしさと嬉しさを感じながら、巴もまたゆっくりと食事を始めて。
京太郎「ふぅ…ご馳走様でした」
巴「お粗末さまでした」
京太郎「いや、今日も美味しかったよ。特に卯の花」
京太郎「昔はこういうのあんまり好きじゃなかったんだけど、巴の所為で大好物になっちまったな」
巴「もう。そんなお世辞言っても、お茶くらいしか出さないわよ?」
十数分後、食事を終えた京太郎に巴はお茶を差し出した。
淹れたての熱いものではなく、ほんのすこし冷めて温くなったお茶。
京太郎が食べ終わる時間に、最も好む塩梅に仕上がるように調整したそれは『お茶くらい』ではないと京太郎は思う。
京太郎「巴はきっと良いお嫁さんになれるな」
巴「あ…」
その言葉は決して嘘ではない。
京太郎がイメージする『お嫁さん』の条件を、巴は全て満たしているのだから。
きっと彼女とならば、幸せな家庭が築ける。
そう思いながらの言葉に、巴は顔を赤く染めた。
巴「…そ、その、見ちゃった?」
京太郎「悪い。見るつもりはなかったんだけど…袋から出てるの目に入ってさ」
無論、そうやって褒めて貰えるのは嬉しい。
正直、飛び上がりたくなるくらいに彼女の心は踊っていた。
だが、それだけではないのは、京太郎の言葉があまりにもタイミングが良すぎるからこそ。
もしかして、自分が買ったあの雑誌を京太郎に見られてしまったのではないか。
そんな疑念を口にした彼女に、京太郎は素直に頷いた。
巴「うああああ…」
京太郎「えっと…巴?」
巴「え、えと、その、わざとじゃないの」
巴「何も、京太郎君に見せようとかそういう気持ちで買ったんじゃなくって…!」
瞬間、巴は両手で頭を抱える。
そのまま漏らす彼女の声は自己嫌悪に染まったものだった。
結婚情報誌を買ったなんて知られたら、きっと京太郎にプレッシャーを掛けてしまう。
それを極力、避けたかった巴にとって、それは自分の手落ちも同然。
京太郎への申し訳無さが言い訳となって、口から飛び出してしまう。
京太郎「大丈夫。分かってるって」
京太郎「寧ろ、俺の方こそ、そういうのに気づけなくてごめんな」
京太郎「就職して生活も落ち着いたら、なんて考えてたんだけど」
京太郎「考えるだけじゃなくて、ちゃんと巴に話をしとくべきだったよな」
巴「……」
申し訳なさそうに頬を掻く京太郎の気持ちは嬉しい。
京太郎もまた将来の事をちゃんと考えてくれていた。
それは彼から告白された時に負けない喜びを巴に与える。
しかし、今の彼女はそれを素直にアピール出来ない。
京太郎が口にしているそれは、巴の望みとは相反するものなのだから。
ここで我を通そうとすると、京太郎の気持ちを台無しにしてしまう。
巴「そ…うなの」
京太郎「…巴?」
巴「あ、あの、嬉しいのよ。本当に」
巴「京太郎君がそんな風に考えてくれているとは思わなかったから」
巴「仮プロポーズみたいなものだけど…それでもとっても嬉しいの」
京太郎「…でも、それだけじゃないんだろう?」
巴「ぅ」
だからこそ、誤魔化そうとする巴に京太郎は踏み込んだ。
無論、巴がそれを隠したがっている事くらい、彼にだって分かっている。
しかし、結婚という人生を左右するイベントは、決して自分だけのものではないのだ。
彼女の気持ちも大事なだけに、ここは二人の認識の差を埋めておかなければいけない。
京太郎「…恋人の間で隠し事はナシ、なんて言わないけどさ」
京太郎「でも、そんな顔されてたら、流石にこっちも凹むし、気になるぞ」
京太郎「結婚って大事なイベントで妥協したら一生尾を引くだろうし…ちゃんと本当の気持ちを教えてくれ」
巴「……京太郎君」
京太郎の真剣な言葉に、巴の思考は揺れる。
絶好のチャンスであるこのタイミングで素直に言うべきか、それとも言わざるべきか。
そのどちらも選び難い巴は、目を伏せて沈黙を続ける。
しかし、その間、京太郎は何も言わない。
恋人の中で一つの答えが出来上がるのを無言で待ち続ける。
巴「…あ、あのね、私……私…」
京太郎「おう」
巴「……お、お仕事、辞めたくないの」
京太郎「ん? 別に辞めろなんて言うつもりはないけど」
数分後、おずおずと口を開いた巴に、京太郎は首を傾げる。
彼が内定を得た会社は大手だが、今の時代、終身雇用が通用する訳ではない。
結婚したら女性は家庭に入るものだと言う認識も強くない京太郎は、巴を必要以上に家に縛りつけるつもりはなかった。
そんな彼の前で、巴はモジモジと身体を揺らして。
巴「…え、えっと、そうじゃなくて…その…あの…」
巴「…………京太郎君に就職してほしく…ない…とか」
京太郎「え?」
巴「や、養ってあげたいの!」
巴「私が全部…全部してあげたい!」
巴「京太郎君にはひとかけらの苦労もさせてあげたくないの!!」
一度、飛び出した言葉は、もう止まらなかった。
今まで胸の内に押さえ込もうとしていたそれらは強い力を伴って、声になっていく。
控えめな彼女らしからぬその強烈な自己主張に、京太郎は目を白黒させた。
その訴えが予想外に過ぎる事も相まって、思考がついていけない。
京太郎「ま、待ってくれ。養うって…」
巴「ひ、ヒモ…とか、どう?」
京太郎「主夫じゃなくて?」
巴「家事は私が全部やるから主夫じゃなくて良いの」
京太郎「お、おう」
主夫ならば、京太郎もまた理解出来ただろう。
だが、巴が口にしているのはヒモ ―― 完全に巴に依存した存在なのだ。
彼女がいなければ文字通り生きてはいけないダメ男になって欲しいと言われて、応とは言えない。
人並みにある自尊心も、流石にそれはちょっとと否定の意を口にしていた。
巴「…お給料は多分、そんなに良くないです」
巴「おやすみもありません」
巴「で、でも…私に甘えて、時々、私に構ってくれるだけの楽な職場です」
巴「雰囲気も…その、フレンドリーで良いはずです」
巴「エッチな事も…い、今まで以上に頑張りますから」
巴「京太郎君だけの…特別な職場ですから」
巴「だから…私のヒモに就職して…くれませんか?」
京太郎「あー…」
しかし、だからと言って、不安げに求人情報を口にする巴を無碍には出来ない。
普段、自分の欲求を滅多に口にしない巴が、こうも勇気を出して求めてくれているのだから。
今にも涙が浮かびそうな目でジィと見つめられると、どうしても一蹴出来ない。
迷いが脳裏に浮かび、どうしようと言う言葉が、京太郎の胸中に広がっていった。
京太郎「…ごめん。やっぱ即答は出来ない」
京太郎「すっげぇ惹かれるけれど、俺だって男なんだ」
京太郎「巴に養われるのはちょっとって言う気持ちは割りと大きい」
巴「そ、そう…だよね」
巴「…じゃあ」
京太郎「うぇ!?」
その答えを出すのは一朝一夕では難しい。
せめてもう少し時間が欲しいとそう返す京太郎の前で、巴は勢い良く服を脱ぎ始める。
それに彼が驚きの声を返すのは、彼女の裸を見慣れていないからではない。
恋人同士になってから二年、その営みは人並み以上に続けているのだから。
だが、巴はとても羞恥心が強く、受け身なタイプなのである。
二年間の営みの中、自分からこうして服を脱いだ事など一度もなかった。
京太郎「な、何やって…!?」
巴「ほ、骨抜きにするの」
巴「京太郎君が私に養われても良いって思うくらいに…」
巴「わ、私の虜にしてあげちゃうんだから…!」
その望みを口にしてしまった今、退路はない。
京太郎を自分のヒモにし、一生を養い続ける以外に未来はないのだ。
そう思いつめる巴は真っ赤になった顔で、京太郎へと迫る。
その間にもブラやショーツを脱ぎ捨てる彼女に、京太郎は逃げる事が出来ない。
恋人になってから大きくなった胸も、引き締まったウェストも、もみ心地の良い尻肉も。
その全てが京太郎の視線を引き寄せ、興奮を高めていく。
巴「明日から週末で…あ、あの、月曜日は有給取ったから…」
京太郎「…つまり最初からヤる気満々だったって事?」
巴「ヤ、ヤる気って言うか…あの…その…」
巴「い、色仕掛けも有効だって皆が言うから…」
その身体で、巴は京太郎にしなだれかかってくる。
ぎこちないその仕草は、未だ巴の中に羞恥心が残っているからこそ。
それを振り切るように巴は、ギュと京太郎に抱きついて。
巴「…嫌?」
京太郎「嫌なもんかよ」
京太郎「虜になるかどうかは別だけど、内心、すっげー喜んでる」
京太郎「だから…手加減出来るかどうか分からねぇぞ」
巴「んあ…♪」
そんな彼女を拒む理由が京太郎にあるはずない。
元々、京太郎は人並み以上に性欲が強いタイプなのだから。
驚きが引いた頃には、恋人からの据え膳を味わおうと、その肢体に躊躇いなく手を伸ばす。
そのまま尻肉をガシリと掴む手に、巴は思わず甘い声をあげてしまった。
社会人である巴を気遣ってか、平日はあまり肌を重ねる事はないが、京太郎はかなりの性豪である。
そんな彼に二年間も調教された身体は、京太郎専用の娼婦と言えるほど淫らに育っていた。
当然、毎回、彼に屈してしまう彼女が京太郎に勝てるはずもなく ――
―― 結局、巴はベッドの中でその考えを改めるまで調教され続けてしまうのだった。
ダメ男製造機な巴さんを書きたかったけど、どうしてか京ちゃんがそれに屈する未来は見えない
こんな話で本当に良かったのか不安ですが、とりあえず巴さんとの同棲ネタはここで終わりです(´・ω・`)次は依子バレか、或いは次回作の準備かになりまする
乙ー
どうすれば京太郎(の下半身)に屈することなくヒモにさせることができるんだろう
という相談を女仙勢に持ちかけて一人ひとりのアイデアを聞いて実行する巴さんが見たいです
うわあああああおじさまっ!おじさまああああああ!!!!
ギャグイベなのに一人だけドシリアスしてるとかマジ空気読めてねぇな!!!!!
ほんとおじさまのバーサーカーっぷりは異常(´・ω・`)おじさまが好きすぎて本当に聖牌戦争スレやりたくなってきた、鯖はおじさまかおじさんの二択で
>>805
ほぅ…
霞「それでは巴ちゃんの里帰りを祝して」
「「「かんぱーい」」」
霞の音頭と共にグラスがぶつかりあう。
その数、4つ。
かつて六女仙と呼ばれた少女たちの手に収まったそれは小気味良い音を立てた。
それをそのまま口に運んだ少女たちは中に入ったアルコールをぐいと飲み干して。
初美「くぅぅ…この一杯の為に生きてるのですよー」
巴「ふふ。まるでおじさんみたいよ」
霞「でも、ちょっと気持ちは分かるかしら」
春「…普段はあんまり飲めないから私も分かる」
霞、初美、春。
かつて神代小蒔と共にインターハイを戦った彼女たちももう立派な大人だ。
それぞれの家に婿を招き入れ、日々を忙しくしている。
そんな彼女たちの日常に、お酒を思うがまま楽しむ時間というのはないに等しい。
神事の一環として口にする事はあれど、好きな酒を飲めるのは数ヶ月ぶりだった。
巴「でも、ちゃんとセーブしなきゃダメよ」
巴「この前みたいに酔いつぶれて霞さん達に背負われても知らないから」
初美「この前って、それ一年前じゃないですかー」
初美「男子三日会わざれば刮目して見よと云いますし、一年も経てば私もスーパー初美ちゃんになるのですよー」
彼女たちが腰を下ろしているのは居酒屋の一角だ。
巴の里帰りを記念し、貸し切ったそこには和やかな雰囲気が流れている。
一年ぶりの再会とは言え、彼女たちは日頃から連絡を頻繁に取り合っていた。
ぎこちなくなる事はなく、高校生の時のように華やかな会話が続く。
霞「そのスーパー初美ちゃんはこの前もベロンベロンになってたけどね」
初美「あ、アレはその…慣れないお酒だったからなのですよー」
巴「あら、新しいお酒があるの?」
春「うん。…飲んで見る?」
巴「そうね。ちょっと試してみようかしら」
巴はかなりの酒豪だ。
アルコールを飲み始めたのは数年前だが、泥酔するという事は殆どない。
ほろ酔いと呼べる領域が広い彼女は、嬉々としてメニューをめくり始める。
初美「あ、私の分もよろしくですよー」
霞「あ、もう空にして…」
春「…ペース早い」
初美「久しぶりに巴ちゃんと会えた訳ですしねー」
初美「そりゃもうグイグイいきますよグイグイ!!」
巴「なるほど。こうやって飲みつぶれちゃったのね」
初美「も、もうその話はナシにして欲しいのですよー」
巴「ふふ」
巴「(…こういうのも久しぶりね)」
社会人になってから得た友人たちの事が嫌いな訳ではない。
しかし、巴にとって彼女たちは友人以前に同僚であるという認識が強いのだ。
彼女たちといる時よりもずっと素の自分が顔を出し、初美の事をからかったりもする。
一年ぶりのその時間は、巴にとってとても心地良い時間だった。
初美「それより、巴ちゃんはこっちにどれくらいいられるんですかー?」
巴「そうね。一週間弱はいるつもりよ」
春「…そんなにいて大丈夫?」
巴「えぇ。寧ろ、有給がたまってるから、この機会に消化しろってせっつかれてしまって」
今は秋のシルバーウィークの真っ最中だ。
それとつながる形で有給を取った巴には、時間の余裕がかなりある。
一週間くらいならば地元で過ごしても問題はないし、何より ――
巴「京太郎くんもゆっくり羽伸ばそうって言ってくれたしね」
今、鹿児島にいるのは巴だけではない。
京太郎もまた巴の親と顔合わせを済ませ、本格的な婚約者になる為に鹿児島に来ている。
そんな彼から快く飲み会へと送り出された巴は、幸せそうな笑みを見せた。
初美「噂の恋人君ですかー」
霞「実際に会ったりしてみたいけれど、ダメなんでしょう?」
巴「絶対にダメです」
春「…残念」
京太郎と両親の顔合わせは恙無く済ませられた。
寧ろ、実直な彼を気に入った父親は、もう自分の息子同然に京太郎の事を扱っている。
そんな周囲の期待や思いを裏切れるような人ではないと巴も分かっているが、さりとて不安はなくならないのだ。
こうして酒の席に集った美女たちは、皆、間違いを起こさせてもおかしくはないだけに、ついつい頑なな言葉が口から出る。
春「…でも、顔合わせの方は上手くいったの?」
巴「バッチリよ。お父様もお母様も、気に入ってくれたみたい」
霞「良かったわね」
巴「うん」
霞の祝福の言葉に、巴は明るい笑みを返した。
これからの結婚生活を考えれば、両親と配偶者の仲が良いに越したことはない。
数年先となる結婚を前に、一つの問題が片付いた。
これで良かったのだろうと巴は思う。
初美「…何か気になる事でもあるんですかー?」
巴「気になる事というか…その…」
春「…言いにくい事なら紙とペン貰ってくる?」
霞「それ何の解決にもなってないわよ?」
しかし、そこには微かな陰りが見え隠れしていた。
割合にして1%にも満たないそれに、親友である初美はすぐさま気づく。
聞いている限り、仲睦まじい限りな二人に何か問題でもあったのだろうか。
そう心配する周りに、巴はモジモジと身体を揺らした。
巴「…その…えぇっと」
初美「良し。言いにくい事があるならお酒ですよー」
巴「え?」
霞「あ、ごめんなさい。これ一瓶下さい」
春「ついでにこっちのも瓶……いえ、樽で」
巴「樽!?」
言いづらそうな巴の様子はかなりのものだ。
恐らくこうして待っていても、彼女は中々、口を開こうとはしないだろう。
ならば、口が滑るように潤滑油を追加してやれば良い。
そう判断した彼女たちは矢継ぎ早に注文を繰り返す。
それぞれが酒豪が故のその盛り上がりに、巴は驚きながらも従って。
巴「はふー…」
初美「大分、飲んだですねー」
霞「そうねぇ…」
春「……ひっく」
2時間後。
かなりのハイペースで盃を傾けていた彼女たちは、かなりの酩酊状態になっていた。
泥酔の一歩手前に近いその身体は紅潮を見せ、理性も幾分、緩んでいる。
巴「こんなに飲んだの何時ぶりかしら…」
元々、巴は気遣い屋だ。
人並み以上にアルコールに強いのも相まって、基本的に飲み会ではセーブする。
だが、気心の知れた友人たちとの飲み会で、そんな遠慮は許されない。
ついついタガも緩みがちになり、周りが勧めるままに酒を煽ってしまった。
初美「おぉっと、もう締めムードだなんて許さないのですよー」
霞「そうよ。ここからが本番なんだから」
春「勿論、エッチな意味じゃない」
巴「当然です。そんなの京太郎君以外にしないんだから」
春「スキあらば惚気していくスタイル」
霞「これは中々の高得点が期待できるんじゃないかしら」
初美「結果次第じゃメダルも見えてきますねー」
自然、彼女たちの口から出てくるのは、勢いだけの言葉だ。
思考も投げ捨てて、感じるがままに飛び出るそれは酔っぱらい特有のものである。
普段とはちょっと違うその言動は、当然、普段とは違う話題に傾いていく。
初美「で、皆は夜の方はどうですかー?」
霞「んー…嫌じゃないってくらいかしら」
春「同じく。…好きじゃないけど、したいなら付き合うってくらい」
初美「私はまだ痛むんであんま好きじゃないですねー」
猥談。
それを好むのは決して男性だけではない。
年頃の女性 ―― 特に酒が入ってタガが緩んだ女性の口にも登りやすい話題だ。
特に巴以外の三人は既婚者というのも相まって、性交はとても身近であり、何より、必要な行為である。
酩酊している今、その話題に恥ずかしがる事はない。
霞「巴ちゃんは?」
巴「え、えっと…………す、好き…かも」
初美「うっわ! エッロ! エロエロですよー この子!!」
巴「お、大きな声出さないでよぉ…!」
春「…とりあえず初美さんは落ち着くべき」
春「落ち着いて、巴さんの話を聞くべきそうするべき」
霞「春ちゃんも落ち着いてないんじゃないかしら…? まぁ、私も興味はあるけど」
好意的な反応とは言えなかった三人とは違い、巴はセックスを好いている。
京太郎と付き合ってから開発され続けた身体は、彼専用となってしまったのだから。
休日前には思うがままに鳴かされる時間はとても気持ち良く、そして幸せだ。
意図的にセーブしなければ、それに耽溺して戻れなくなってしまいそうなくらいに。
初美「で、実際、どんな感じなんですかー?」
巴「どんな感じって……まぁ、その、やっぱり気持ち良い、が一番かしら」
春「…もっと具体的に」
巴「えーっと……まぁ、そのやっぱり最初はキスからするんだけど…」
霞「えぇえぇ」
巴「それも数分で腰砕けになっちゃうくらい気持ち良くて…」
初美「…ちょっとまって。キスってそんなに長くするんですかー?」
巴「長い時は休憩はさみながら十分とか二十分とかするわよ?」
春「二十分…」
それは子作りの為のセックスしか知らない彼女たちにとって未知の世界だった。
必要最低限の愛撫が終われば、挿入し、ただ射精されるだけ。
愛を深め、高め合う為に、じっくり準備された事などない。
そんな彼女たちには、20分も続くキスなど到底、信じられなかった。
巴「それが終わったらちょっとずつ身体も触られるんだけど…その頃にはもう出来上がっててね」
巴「胸とか揉まれる度に先っぽが疼いて、もっともっとってなっちゃうの」
初美「…確かに一年前よりも育ってますよねー」
春「育てられちゃった…?」
霞「色んな意味でね」
しかし、巴の言葉に嘘は見当たらない。
きっと本当に、彼女はそうして昂ぶらされているのだろう。
それに興奮を感じる身体を、彼女たちは冗談で誤魔化す。
そんな彼女たちに構わず、巴は惚気混じりの猥談を続けて。
巴「それでね、挿入して貰える時にはもうキュンキュンってなっちゃって…」
巴「めちめちって京太郎君のオチンポが中に入ってくるだけで中が喜びイキしちゃうの」
初美「よ、喜びイキ…」
春「…ごく」
霞「……」
数分後、そこは巴の独壇場となっていた。
延々と続く彼女の話はその真に迫ったものなのだから。
淡白なセックスばかり経験してきた彼女達は、それに呑まれてしまっている。
期待と興奮、そして何より欲情。
酔いとは違うそれらは少しずつ彼女たちの中で大きくなっていった。
初美「わ、分かりました! 分かりましたよー!」
巴「…そう? ここからが良いところなのに」
霞「そ、それは良く分かるんだけどね」
これ以上、聞かされたらおかしくなってしまう。
酩酊し、理性が緩んでいるのも相まって、イケナイ気持ちが芽生えてしまいそうだった。
その寸前でブレーキを掛けた初美達に巴は不満そうな顔をする。
普段、こんな話を会社の友人達には出来ないのだ。
もしかしたら、これが最後かもしれない。
そう思うとしっかり最後まで語りたかったと巴は思う。
春「順風満帆で何より」
初美「そ、そうですよー。聞いている限り、体の相性もバッチリみたいですし」
霞「ちょっぴり…えぇ、ほんのちょっとだけど羨ましいわ」
巴「…そう…ですよね」
順風満帆。
それを否定するつもりは、巴にはなかった。
自身が今、身に余るほどの幸せの中にいる事を彼女は自覚している。
しかし、だからと言って、巴の中に芽吹いた暗い欲望はなくならない。
京太郎を自身に依存させ、独占したいという思いを抱く彼女にとって、体の相性はあまりにも良すぎる。
初美「…やっぱり何かあるんですかー?」
巴「…あのね、強すぎるの」
春「…強い?」
巴「うん。夜の京太郎君はね、格好良くて、気持ち良くて…凄すぎるの」
巴「正直、本気になられると身体が保たないくらい」
性交を休日前に限定したのは、思うがまま愛し合えるから、だけではない。
京太郎の愛し方は激しく、強く、快楽に呑まれそうなほど気持ちの良いものなのだ。
思うがままに愛された次の日には中々、目覚める事も出来ず、腰が抜けて立つ事もままならない。
そんなセックスを毎週末味わう巴は、ふぅと熱っぽい溜息を漏らした。
巴「その所為でね…ヒモに出来ないの」
霞「ひ、ヒモ?」
巴「そうです。私…京太郎君にはヒモになって欲しいんです」
巴「働いてなんて欲しくない。全部、私がいるから、ずっと側にいて欲しい」
巴「もっともっと…私がいなくちゃ生きていけないようになって欲しいのに……」
初美「おぉぅ…」
ポツリと漏れたその欲望は、あまりにも暗すぎるものだった。
独占欲という言葉でも物足りないそれに、初美は思わず反応に困ってしまう。
清純かつ潔癖に見えた巴に、こんな欲望があったなんて親友である彼女でさえ知らなかったのだ。
巴「…どうすれば良いのかなぁ」
春「……黒糖をキめさせて、籠絡するとか?」
霞「それでキめられるのは春ちゃんだけじゃないかしら…」
それは春も霞も同じだ。
だが、ポツリと漏らしながらテーブルに突っ伏した巴からはかなり悩んでいる様子が伝わってくる。
たまにしか会えなくなったとは言え、大事な友人が悩んでいるところを見過ごしたくはない。
出来るだけ彼女の為になるようなアイデアを出そうと、酩酊した頭を動かし始める。
巴「キめるとかだーめーでーすー」
巴「京太郎くんにはずっとずっと健康でいてもらって、私が死ぬまで幸せで居てもらわなきゃダメなんだもん」
巴「健康に悪かったりするのはぜーんぶ却下します」
霞「ふむ…なら健康に悪くなければいいのね」
初美「何か案でも?」
霞「えぇ。石戸家秘蔵の媚薬ならその条件に合致するはずよ」
巴「…媚薬?」
霞「100%天然由来の成分で作られて、健康にも害はない素敵なお薬があるの」
霞「匂いも味も殆どなくて盛るのも容易く、かつ効果は劇的」
霞「どんな聖人君子でも、サルのように盛る…と言う触れ込みよ」
霞「あ、ちなみに男性にしか効かないらしいから誤って口にしても大丈夫」
初美「それすごすぎて犯罪臭すらするんですけど」
いっそファンタジーに近いそのクスリに、初美は思わずツッコミを入れてしまう。
とは言え、ソレがダメだと言うつもりはない。
巴は京太郎を性的に籠絡する事を望んでいるのだから。
それが触れ込み通りの効果を発揮すれば、幾ら相手が強かろうと堕とすのは簡単だと思う。
巴「そ、それ譲ってもらえませんか?」
霞「良いわよ。私は特に使う予定はないから」
霞「明日にでも持っていってあげる」
巴「ありがとうございます!!」
それは巴も同じ事。
絶望の中に差し込んできた一筋の光明をつかもうと、巴はずずいと霞の方に顔を寄せる。
霞はそんな彼女に意地悪をするような性悪ではない。
ニコリと笑みを浮かべながら、快諾の言葉を返した。
春「…これにて一件落着?」
初美「そうなれば良いんですけどねー」
初美は知っている。
一見、しっかりしているように見えて、意外と巴は抜けているところがある事を。
そんな彼女が、幾ら媚薬という強力な味方を手に入れたところで、容易く目的を達成出来るとは思えない。
失敗した時の事を考えて次善の策くらいは準備しておこう。
そんな事を考えながら、初美は水を煽って ――
き、京太郎君、そろそろ寝ない?
そ、そう? じゃあ、はい、コレ。
お水、要るでしょ?
な、何? へ、変なのなんて全然、入ってないわよ。
疑うんなら私が先に飲んでも良いわ。
そ、そう。じゃあ、どうぞ。
…………飲んだ? 飲んじゃった?
どう、身体の方は?
何かおかしいとか辛いとかはない?
え、い、いや、本当に何も盛って………ごめん、嘘
友達から貰ったお薬をちょこっと混ぜたの
でも、身体に悪いものじゃないらしいから安心して
ただ、ちょっとエッチな気分になりやすくなるだけらしいから
って、ま、待って!?
も、もう効いてきちゃったの!?
は、早すぎ…!!!
まだ私とエッチしたいならヒモになってとか何も言えてないのにぃい!
ひゃぁっ♪
ちょ、だ、ダメっ♥
そこ弱…あぁあああっ♪♪
ピロピロリーン
ご主人様に一杯、アヘらされて動けないので今日の飲み会兼報告会は欠席します
【媚薬エッチで虜にしよう作戦 失敗!!!!!!】
初美「という訳で、まずは前回の反省点から」
巴「…ご主人様の底力を甘く見てました」
春「…ご主人様って」
霞「よっぽどひどくヤられちゃったのね…」
翌日、再び同じ居酒屋に集った巴達は酒を飲み交わしながら反省会を始める。
当然、その中心となるのは、つい先日、無残に敗北した巴だ。
霞からクスリを貰ったにも関わらず、失敗した彼女は申し訳なさそうに身体を縮こまらせている。
初美「まぁ、次はちゃんと拘束してからにするのですよー」
巴「それなんだけど…やっぱりお薬はなしにしようかなって」
霞「どうして?」
巴「…本当に身体が持ちません。ほぼ一日中、効果が続いてましたし」
巴「絶頂で気絶して、絶頂で叩き起こされるなんて初めての経験でした…」
元々、性欲が強い京太郎が媚薬でさらに強力になってしまったのである。
理性を失った彼は巴の事を離す事はなく、延々と犯し続けた。
身体の外も中も白濁液で染められたその時間は、あまりにも気持ち良すぎる。
媚薬を盛った罰だと強要されたご主人様と言う呼び名が、未だ抜け切らないくらいに。
巴「幾ら拘束しても私の方が先にノックダウンしちゃいますし」
巴「あの状態の京太郎くんを放置するのも可哀想ですから」
初美「…となると次の作戦を考えなきゃダメですねー」
巴「…ごめんね」
初美「ぶっちゃけ予想してましたし、謝らなくても良いのですー」
自分のワガママの所為で、ハードルがさらに上がってしまった。
それに申し訳無さそうな顔をする巴に、初美は首を振って答える。
幾らヒモにする為とは言え、結果として京太郎に害を与えたり、嫌われたりしては元も子もない。
その辺のラインを把握できるのは、彼と直接接している巴なだけに、彼女に無理をさせても逆効果だろうと初美は思う。
初美「という訳で、次は私が作戦立案をさせて貰うのですー」
春「どんどんぱふぱふー」
初美「私が提案するのは…男のロマンを逆手に取ったイメプレ大作戦!」
霞「イメプレ?」
巴「えっと、シチュエーションとか役割を決めて、それっぽい演技をしながらエッチする事です」
霞「へぇ…なるほど」
首を傾げる霞に、巴は補足の言葉を加える。
それに頷きながらも、霞はイマイチ、その効果が理解出来ない。
既婚者になったとは言え、ついこの間まで霞は箱入りのお嬢様だったのだ。
学校で行われる性教育以上の知識はなく、男のロマンにも理解が及ばない。
初美「この作戦の利点はスムーズに巴ちゃんが主導権を握れる事にあります」
初美「幾ら巴ちゃんがヘタレでも、女王様プレイやソーププレイなら負ける事はないでしょう」
巴「な、なるほど…!」
しかし、巴は別だ。
京太郎と出会い、彼と同棲してからの彼女はグングンと性的知識を吸収していったのだから。
それが一体、どれほど興奮するかも、そして京太郎がそれに乗ってくれるであろう事も巴は良く分かっている。
これならば、きっと京太郎の事を籠絡出来るはず。
その喜びに、巴は瞳を輝かせたが。
巴「でも、私に出来るかしら…」
初美「…巴ちゃんの気持ちはその程度ですかー?」
巴「え…?」
初美「出来る出来ないじゃなくて、ヤるのですよー!」
初美「恋人を自分のヒモにしたいんでしょう?」
巴「……うん」
しかし、今まで巴はずっと受け身だったのだ。
奉仕する事はあっても、主導権を握った事など殆ど無い。
それに不安を覚える彼女に、初美は強い言葉で励ます。
思いっきり背中を押してくれる親友の言葉は、巴の顔に決意の色を呼び起こした。
巴「私、ヤるね…!」
初美「その意気なのですよー!」
初美「気合気合気合! 気合さえあれば、未来の栄光を手に入れる事が出来るのですよー!!!」
巴「おぉお!!」
初美の言葉に、巴はガタっと椅子から立ち上がる。
そのままグっとガッツポーズする彼女は気合に満ちていた。
今の自分ならきっとヤれる。
望む通りの未来を手にする事が出来る。
そんな自信を全身に行き渡らせながら、巴は拳を突き上げて ――
き、京太郎君、今日は…あの、その…ちょっと特殊なプレイをしない?
え、い、いや、ほら、この前はエッチなお薬盛って迷惑掛けちゃった訳だしね
今回はそのお詫び
ホント? じゃあ…はい、コレ
何って、首輪だよ
今回の為にちょっと奮発して買ってきちゃった
…え?アレ、なんでこっちに近づくの?
あ、ちょ…きゅん…♪
ま、待って、違うの
コレは京太郎君の…ふぁぁ…♪
ご、ごめんなさい…ご主人様ぁ…♥
はい…ご主人様はご主人様ですぅ…♥
巴はご主人様のメス奴隷で…オナホマンコですからぁ…♪
今日もいぃっぱい、巴のドスケベ奴隷マンコで気持ち良くなってくださぁい…♥
ピロピロリーン
ご主人様と夜のお散歩に出かけるので飲み会兼報告会は欠席します
【男のロマンを逆手に取ったイメプレ作戦 失敗!!!!!!】
残るは春なんだけどネタが思いつかない…(´・ω・`)そして時間が来たので離席しまーす
初美「と言う訳で今回は?」
巴「ご、ご主人様が一枚上手だったってことかしら」
霞「一枚で済むレベルなのかしら…?」
再び後日。
同じ居酒屋に集った彼女たちは盃を傾けながら言葉を交わしていた。
だが、その雰囲気は数日前よりも大分、ゆるくなっている。
巴も真剣に悩んでいるのは皆も分かっているが、彼女の報告は毎回、惚気混じりのものなのだ。
恋人とイチャつく出汁にされているような気がする彼女たちから真剣さが抜け始めている。
初美「と言うか話を聞いてるとムリゲ感すら出てきますねー」
巴「やっぱり…?」
霞「言ってはなんだけど、関係が固定化しすぎちゃってる気がするわね」
春「…ハッキリ言うと逆らえないよう調教済み?」
巴「うぅぅ…意識したくなかった事を…」
結果、降伏に近い言葉を口にする彼女たちに、巴は否とは言えなかった。
二度の失敗は、自身が京太郎に逆らえない事を否応なく突きつけてくるのだから。
自覚していた以上に虜になっていた自分に、巴はそっと肩を落とした。
初美「で、実際、どうするですかー?」
霞「…何か思いつく?」
初美「ぶっちゃけお手上げなのですよー」
春「…はい」
巴「春ちゃん…!」
そんな巴に手を差し伸べたのは春だった。
あまり自己主張をしない彼女がこうして手をあげたのだから、きっと良いアイデアがあるはず。
目の前に見えたその希望に、巴は信頼と期待を浮かべながら、春の名前を呼んだ。
春「…日本には3本の矢っていう有名な逸話がある」
巴「3本の矢って毛利家の?」
春「そう。今回はその故事に倣って、巴さんだけじゃなくて」
巴「却下」
春「…まだ最後まで言ってない」
巴「言わなくてもわかります」
巴一人で勝てないならば、他に手を借りれば良い。
春の提案しようとしたそのアイデアは決して悪いものではないだろう。
寧ろ、京太郎に性的な意味で勝つ事を考えれば、これ以上なく効果的な正攻法だ。
しかし、巴とただ京太郎に勝ちたい訳でもなく、その関係はセフレのような後腐れのないものでもない。
自分と彼との関係に他の女性が割って入るだなど到底、許容出来ない事だった。
春「…仕方ない。それじゃ次善の策にする」
初美「まだ何かあるのですかー?」
春「勝負したら負けるのなら勝負しなければ良い」
霞「具体的には?」
春「所謂、大人のおもちゃで搾り取る」
巴「な、なるほど…!」
巴はあまりアダルトグッズに詳しい訳ではない。
しかし、世の中にはオナホールと呼ばれる男性用オナグッズがある事くらい知っているのだ。
それを使えば、京太郎にイかされる事もなく、冷静なまま事を運ぶ事が出来る。
無論、京太郎から逆襲されたら、巴が一気に不利になるが。
春「寝てる間に手錠で拘束したら主導権を奪われる事なく焦らすもイかすも思うがまま」
初美「相手がギブアップするまで責め続けられるって事ですねー」
霞「それなら恋人に逆らえない巴ちゃんでもいけそうね」
巴「…うん。確かにこれなら大丈夫そう」
婚約者という立場を利用すれば、それもあっさりと解決出来る。
そう口にする春に、初美と霞も同意の声を返した。
ほぼ逆レイプに近い形だが、これなら負ける事はない。
そう考える彼女たちに、巴も頷きながら同調する。
初美「良し。そうと決まれば、飲み会終わりにアダルトショップにGOなのですよー」
巴「でも、場所とか…」
春「大丈夫。既にリサーチ済み」
初美「さっすが、はるる。頼りになるですよー」
春「どやぁ」
霞「私、そういうの行った事ないから、ちょっとドキドキするわね」
勿論、普段の彼女たちはそんな場所に足を踏み入れたりはしない。
家の決めた許嫁と結婚した彼女たちは、貞淑な妻として通っているのだから。
しかし、久方ぶりに巴と再会し、気が緩み、酒で理性も弱まっている。
これからアダルトショップに向かうというその提案に否と言うものは誰もいなかった。
春「…せっかくだから、すっごいエッチな下着なんかも買おう」
初美「良いですねー。エロは視覚からですよ、視覚から!」
霞「嗅覚からも攻められないかしら。アロマキャンドル的な」
春「後はローションで触覚もぬちょぬちょに…」
初美「ここまで来たら嗅覚なんかも抑えたいですよね。エロCDとかあったらそれも買うですよー」
巴「う、うん。わかったわ」
自然、トントン拍子に進んでいく話は過激になっていく。
こうして猥談をしているとは言え、巴を除いた三人は性的経験があまり多い訳ではないのだ。
加減など分かるはずもなく、無責任に巴の背中を押していく。
京太郎の脅威を間近で感じる巴はそれにストップを掛ける事なく、真剣な表情で頷いて。
ふふ。京太郎君、目が覚めた?
そうよ、今日もリベンジに来たの。
先に言っておくけど、暴れたって無駄よ。
京太郎君の身体はバッチリ手錠で動けなくしてるから。
あんまり暴れて身体が傷つくのは私も本意じゃないし、大人しくしててね。
勿論、私だって京太郎君に酷い事するつもりはないわ。
…うん、まぁ、たしかにこんな事して説得力はないかもしれないけれど。
でも、何も京太郎くんを痛めつけたい訳じゃないの。
ただ、ちょっと…ううん、すっごく気持ち良くなって欲しいだけ。
だから…ふふ…♥ これ分かる?
そう、本物のオナホールよ。
これで京太郎君のオチンポをぐちょぐちょのアヘアヘにしちゃうの。
男の人なら誰でも瞬殺されるっていうオナホールだから、きっと京太郎君も耐えられないわ。
これで私の虜になるまで…エッチな事してあげる。
楽しみにしていてね…♪
ほら、どぉう?
んふ…♪ 顔見たらすぐ分かっちゃった。
ローションでぐちょぐちょのオナホマンコ…気持ち良いのね…♥
本物のオナホマンコじゃないのに…こんなに悦んでる…♪
じゃあ…もっと悦ばせてあげるわね…♥
ふふ…ぐちゅぐちゅ…♪ ぐぅちゅぐちゅ…♥
特濃ローションで一杯だから、すっごい音しちゃうわね…♪
まるで本物のセックスみたい…♪
私も聞いてるだけで…興奮してきちゃいそう…♥
その上…半勃起だったオチンポもどんどんオナホールの中で大きくなって…♪
中にオチンポがあるの…ハッキリ分かっちゃう…♥
ガッチガチのオスチンポをオナホ越しに感じちゃうの…♥
ホント、逞し過ぎるわ…♥
こんなの挿入したら…女の子は絶対に勝てない…♥
オマンコからダメにさせられて…どれだけ我慢しようとしても強制アクメキめさせられちゃってぇ…♥
京太郎君の虜に…メスオナホになっちゃう…♪
だーめ♪ 言い訳は聞きません…♥
それに…私、ちょっと怒ってるんだからね?
私のオナホマンコじゃないのに…京太郎君のオチンポ、こんなに大きくなってるんだもん。
ううん…大きくなってるだけじゃない…♪
手の中でビクビク震えて…熱くなって…♥
先走りがもうトロトロって出てるんでしょ…?
美味しい美味しい…京太郎君のオスチンポ汁…♥
私じゃなくてオナホールに味あわせちゃってるんでしょぉ…?
はぁ…♪ ん…はぁ…あ…♥
ダメ…♪ 羨ましい…♥
京太郎君のカウパー…♥
私も飲みたい…♪ ペロペロしたいぃ…♪
だって、美味しいんだもん…♥
大好きなんだもん…♥
精液の匂いと味がちょっぴりするドロドロのカウパーぁ…♥
欲しい…♪ 舐めたい…ぃ…♪
え? ちょっとだけ?
そ、そう…そうよね♥
ちょっとだけなら…お口でしゃぶっても大丈夫よね…♪
京太郎君のカウパーをオナホールに食べさせちゃうなんてあまりにも勿体無いもん…♥
私のオナホマンコに挿入れなきゃ…イく事はないし…♪
今の京太郎くんは身動きだって取れないんだから…♥
おしゃぶり…♪ ちょっとだけ…チンポフェラぁ…♥
じゅる…♪ じゅぷぅうぅううう♥
ピロピロリーン
オナホールに穢されたご主人様を私のオマンコで綺麗にするので今日の飲み会兼報告会は欠席します
【大人のおもちゃ作戦 失敗!!!!!!】
多分、この後、手錠引きちぎった京ちゃんに押し倒されてエロエロするんじゃないですかねー(´・ω・`)と言いつつこのネタはこれで終わりです
おもちゃの手錠なんか脆いからね。仕方ないね。
京ちゃんって一体……
>>844の言ってる通り、所詮アダルトグッズですからねー
鍛えてる成人男性が本気で引っ張るとすぐ壊れます
>>846
京ちゃんは京ちゃんだからこそ京ちゃんなのですよ
そんな京ちゃんと誰よりも一緒にいて、一緒にご飯食べて、迷子になっているのを何度も助けてもらった咲ちゃんこそ比翼連理の相手に他なりません
京咲は正義
京咲は宇宙の真理なのです
京咲を疑う事は世界と自分に対する裏切りに他なりません
さぁ、皆も京咲に帰依するのです(ぐるぐるおめめで)
巴さんが良いだなんて何と言う不心得者でしょう
世界は京咲によって出来ていると言うのに
彼は悪魔の囁きに屈し、魂を曇らせ、真実に気づく事が出来なくなったのでしょう
こうなってしまった以上、彼に現世の救えを与える事は出来ません
心は痛みますが、磔の上、浄化の炎を浴びせて、魂に輝きを取り戻させてあげるのです(ぐるぐるおめめで)
―― 家鷹依子の住居は現実離れしたものではなかった。
彼女は商人の家系である。
遡れば平安時代まで行き着くその家系は、財の使いみちと言うものを熟知していた。
軽く見られない程度の家さえあればそれで良い。
見栄を張るような贅沢よりも、リスク回避の為の蓄財を続けるべき。
そんな考えは現代でも彼らの中に根付き、受け継いだ家もまたこじんまりとしたものだった。
京子「(…それでも立派な屋敷なんだけどさ)」
大きさにしておおよそ500坪。
土地の狭い日本では滅多にみないその家は、決して豪奢なものではない。
しかし、居並ぶ調度品の類は品があり、どこか落ち着く雰囲気を感じられる。
家鷹家の格式の高さを感じられるその品々に、最初は京子も緊張していたが。
「君が京子ちゃんか。娘から話は聞いているよ」
「えぇ。もう毎日と言っても良いくらい」
京子「ふふ。光栄です」
こうして依子の両親と夕食を共にする頃には、それも幾分、抜けていた。
京子が住んでいる屋敷は調度品の類は少ないものの、家鷹家のそれよりも遥かに高価なものばかりなのだ。
普段通りを心掛ければ、きっと大丈夫。
そう気づいてからは肩の力も抜け、こうして談笑に興じる事も出来る。
依子「お、お父様、お母様…」
「なぁに、照れなくても良いではないか。本当の事なんだから」
「毎日、今日は京子さんが京子さんがって…まるで恋する乙女のようですわよ」
依子「そ、そんな事…」
京子「あら、違うのですか?」
当然、その中で話題にあがるのは依子の事だ。
京子と彼女の両親をつなぐのは、依子だけしかいないのだから。
テーブルのあちこちから飛び交う言葉に、依子はたじろいでいた。
京子「私はお姉さまの事が大好きなのに…お姉さまはそうではないのですね」
京子「…正直に言えば、とても寂しいです」
依子「そ、そういう言い方は卑怯だと思いますわ…」
京子「私が卑怯な女だというのはお姉さまも良くご存知でしょう?」
依子「…えぇ。そして結構、意地悪な性格だと言うのも理解していますわ」
とは言え、依子もやられっぱなしと言う訳ではない。
実家と言う事で幾分、気も緩んでいるが、彼女は永水女子のエルダーなのだ。
全校生徒から信頼を集める彼女は、京子のからかいに小さく頷いて。
依子「…ですから、ハッキリと言わせていただきますけれど」
依子「私も京子さんの事が大好きです」
依子「世界で一番、貴女の事を愛していますわ」
京子「…っ」
にこりと微笑むその顔に嘘はなかった。
同性同士で交わすには些か重いそれに、京子の頬は朱色を見せる。
まさかこれほどストレートな反撃を受けるだなんて京子は想像していなかったのだ。
ついつい胸がドキリとして、目を反らしてしまう。
京子「そうやって本気っぽい返しをするのは卑怯だと思います」
依子「あら、私が卑怯な女だというのは京子さんも良くご存知でしょう?」
依子「…それに私、今のを冗談で口にしたつもりはありませんわよ?」
京子「ご両親の前でそんな事言って、誤解されても知りませんよ」
依子「その時は手と手を取り合って、京子さんと駆け落ちでも致しましょうか」
京子「意外と意地悪なお姉さまに振り回される未来が今からでも見えますね」
依子「そういうのはお嫌ですの?」
京子「まさか。嫌ならば、お泊まり会のお話を受けたりしませんよ」
今回、京子が依子の家に来訪したのは両親への面通しが目的ではない。
それも少なからず関係しているが、一番の目的は依子とのお泊まり会だ。
一度、そういうのをしてみたかったのだと語る彼女に、京子は否と返せなかったのである。
依子「…そこで好きと返してくれませんのね」
依子「さっきちゃんと言ってくれたのに、答えてくれないと言う事を考えれば、やはり10点ほど減点するべきでしょうか」
京子「ちなみに今、何点あるんですか?」
依子「さっき好きと言ってくれた分も合わせて、おおよそ800ポイントですわ」
二人の付き合いは、もう何ヶ月も続いている。
その間に交わされるちょっとしたやり取りで、依子のポイントはグングンあがっていった。
エルダーを志してからの彼女は友人は出来ても、親友をつくる事が出来なかったと言うのもあり、多少の減点などものともしないほど積み重なっていた。
京子「私が言うのも何ですが、お姉さまはチョロ過ぎると思います」
依子「チョロくなんかありませんわ。これも全部、タラシの京子さんが積み重ねたものです」
依子「ちゃんと認知して頂かなければ、困りますわ」
京子「…その言い方は色々な意味でまずいですよ」
依子は知らないが、京子は男だ。
認知と言う言葉に、どうしても子どもの事を連想してしまう。
無論、彼女にそんなつもりはないと分かってはいるが、心は別だ。
ドキリとした胸が一拍ほど反応を遅らせる。
「はは。本当に二人は仲が良いんだな」
京子「お恥ずかしいところをお見せしました」
「気にする事はないさ。まさか依子がそんな顔を見せるとは私達も思っていなかったからね」
「きっと依子は貴女にとても心を許しているのですね」
京子「えぇ。光栄な事に」
そんな二人のやり取りは、依子の両親にとって悪いものではなかった。
少々、過激な言葉が飛び交うものの、スールの契を交わした事を考えれば許容範囲。
あくまでも友人としての好意だと分かるだけに、警戒心を覚える事もない。
寧ろ、子どもの頃のような朗らかな顔で語りかける娘の顔つきを見て、彼らは安堵していた。
「いや、良かった。こうして父親が言うのもなんだが…娘は堅物だと思っていたからね」
「えぇ。特に…エルダーを目指すなんて言ってから、お転婆も一気に鳴りを潜めて…」
依子「…そこまでお転婆だったつもりはないのですけれど」
「いいや。お転婆だったとも」
「ハウスキーパー達もお前の悪戯には手を焼いていたくらいだ」
京子「えぇ。良く分かります」
依子「京子さん?」
相槌を打つ京子に、依子はむぅと頬を膨らませる。
悪戯好きなのは、決して自分だけではない。
京子だってやり返す時にはやり返すではないか。
そんな気持ちを視線に込める依子に、しかし、京子は動揺する事はない。
相変わらずにこやかな顔で、父親たちの話に聞き入っていた。
「そんな娘が、貴女の前ではとても自然に自分を出す事が出来る。…親としてこれほど嬉しい事はないさ」
「これで京子さんが男性だったら、言う事もないのですけれど…」
京子「え、えっと…」
母親から飛び出た言葉に、京子は狼狽を浮かばせる。
今ではもう自分でも違和感がないくらいに化けているとは言え、京子は自分の性別を忘れた訳ではない。
彼女の言っている言葉の意味を ―― 結婚というものを視野に入れたそれをどうしても意識してしまう。
依子「お母様。流石にそれは京子さんに失礼ですよ」
依子「京子さんは恵体なだけで、私に負けぬ淑女です」
依子「それは彼女にとっての侮辱になりかねませんわ」
そんな京子に代わって反論したのは依子だった。
悪戯好きな彼女は京子をからかうのは好きだが、さりとて、京子を悪しように思っている訳ではないのだ。
例え、身内であっても、そのように言われて我慢できるはずがない。
ついつい刺を浮かんだ言葉で、強く反論してしまう。
「そうね。確かに失礼な発言だったわ。ごめんなさいね」
依子の母親も、永水女子に通っていたほどの令嬢だ。
礼儀作法はしっかりと教え込まれ、淑女としての心得もある。
それでもこうして漏らしてしまったのは、依子が親でも見たことがないほど楽しそうだったからこそ。
同性を相手にこんな顔を見せて、娘は本当に異性に心を許せるのだろうか。
京子以外の相手と子どもを作り、家鷹家を継いでくれるのだろうか。
安堵の裏側に宿ったそれを、彼女は胸の奥底に秘めておくことが出来なかった。
自身もまたスールの契を結んだ相手がいただけに、ついつい言葉にしてしまったのである。
京子「いえ、気にしていませんから」
京子「自分でも少し成長しすぎだという自覚はありますし」
京子「寧ろ、お姉さまを相手にそう言って頂けるなんて、光栄だと思っています」
「…ありがとう」
無論、京子も母親の言葉にドキリとしたのは事実だ。
もしや自分の正体がバレてしまったのではないかと内心、ヒヤヒヤだった事を忘れてはいない。
しかし、だからと言って、彼女の言葉は許せないほどのものではなかった。
寧ろ、正体に気づかれたのが勘違いだと分かった今、安堵した胸の奥から嬉しさが染み出してくる。
それは依子ほどの娘を預けられる相手として認められた証なのだから。
この短い間にそうまで評価してもらえたなんて、とても光栄な事だと思う。
「旦那様、ご歓談中、失礼します」
「ん?どうした?」
「それが…」
それに母親がお礼の言葉を口にした瞬間だった。
扉が開き、エプロンに身を包んだ年配の女性が食堂へと入り込んでくる。
そのままスタスタと父親の側に近づいた彼女は、彼の耳に何かを囁いた。
「そうか。分かった」
「…すまない、京子ちゃん。少し急用が出来た。私たちはこれで失礼するよ」
依子「お母様もですか?」
「えぇ。そうみたいね」
頷きながら立ち上がる父親に、焦りはなかった。
急用であるのは事実だが、それはトラブルに発展するようなものではないらしい。
しかし、母親まで一緒に連れて行こうとするのは一体、どうしてなのか。
その答えを見いだせない彼女の前で、母親もまた椅子から立ち上がる。
「私たちは今日はもう帰ってこれないかもしれないが、ゆっくりしていってくれ」
京子「はい。お気をつけて」
「ありがとう。では、行こうか」
「はい。アナタ」
そのまま二人で連れ立って歩く姿には強い信頼があった。
親同士が決めた結婚に依って結ばれたと言うが、到底、そうは見えない。
きっと結婚してから少しずつお互いの信頼を勝ち取り、今のような関係に至ったのだろう。
そう思わされる二人の後ろ姿が扉の向こうに消えるまで、京子は見送って。
京子「(…って、アレ、これ、もしかして)」
両親がいない状態で、依子と一夜を過ごす。
ようやく至ったその言葉に、京子は背筋に冷や汗を浮かべた。
無論、京子は依子を相手に何かしらの間違いを犯すつもりはない。
こうして好きの言葉を交わしてはいるものの、そんな関係ではない事を京子は良く理解している。
しかし、両親不在の家に、異性とお泊りという言葉の魔力は理解ではどうしようもないものなのだ。
ついつい依子の事を強く意識し、横目で彼女のことを見てしまう。
依子「あら、どうかしましたの?」
京子「いえ、大した理由はないのですけれど」
依子「大した理由もないのに、私が見たくなりましたの?」
依子「ふふ。まるで口説き文句ですわね」
クスリと笑う依子の顔に、喜色が浮かぶ。
同性異性、身内他人を問わず、彼女が一番、心を許しているのは京子なのだ。
他の誰にも見せない顔すら容易く見せられる義妹にそう言われて悪い気はしない。
依子「ですが、敢えて言わせていただきますと、気遣いは無用ですわ」
依子「こうしてお父様とお母様が急用でいなくなるのはそう珍しい事ではありませんもの」
依子「もう慣れましたし…それに今日は京子さんが居てくださいますから」
何より、依子はその視線に込められた心配の色を誤解していた。
きっと京子は両親がいなくなった自分の事を心配してくれている。
そう思った彼女は明るい声で、京子に応えた。
依子「それに考え方を変えれば、邪魔者がいなくなった…とも思えますわよね?」
京子「一体、何をするつもりなんですか」
依子「ふふ。それは後のお楽しみですわ」
当然、依子に何かしらのアイデアがある訳ではない。
こうして京子の事をからかってはいるものの、依子は自身が淑女である事を忘れたつもりはないのだ。
例え、両親がいなくても、人に言えないような事をするつもりはない。
京子「手加減してくださいね」
依子「それは京子さん次第ですわね」
依子「もっともっとポイントを溜めてくだされば、私も手心を考えるかもしれませんわよ?」
とは言え、ただそれらしい事を言うだけでは芸がない。
そう依子が思うのは、何だかんだで彼女が甘えん坊だからだ。
せっかく、京子が実家に泊まりに来たのだから、もっと色々としたい。
何時もは出来ない事をして欲しい。
そんな訴えを瞳に浮かばせる依子は、京子の目に魅力的に映った。
京子「意外と欲しがりなんですから」
依子「京子さんが私をそういう風にしたのです。責任取ってくれなければ嫌ですわ」
京子「勿論、お姉様の責任であれば喜んで取らせていただきますよ」
京子「手始めにあーんなどはどうでしょう?」
依子「ふふ。許可しますわ」
打てば響く。
そんなやり取りに依子の笑みは強くなる。
今にも頬が緩みそうなその表情が、京子はとても好きだった。
だからこそ、この笑みを傷つけてはいけないと京子は自分に強く言い聞かせて ――
京子「(…やっぱ緊張するよなぁ)」
数時間後。
京子は天蓋付きベッドの縁に腰掛けていた。
周囲をクルリと見渡せば、本棚に机、タンスなどが目に入る。
長年、大事に使われてきたであろうその家具達には、しかし、部屋の主の匂いが染み付いているのだ。
依子の ―― ついさっきまで一緒に居た女性の匂いに、一人取り残された京子はドキドキしてしまう。
京子「(依子さんと一緒にいたときはそんなに気にならなかったけどさ…)」
依子といる時は自然と意識も彼女の方へと向かっている。
だが、一人になった瞬間、意識があっちこっちに散乱してしまう。
ましてや、今の彼女は自分をおいて、入浴している真っ最中なのだ。
意識を引き締めるはずの理性もどこか緩み、気持ちも身体も落ち着かなくなる。
京子「(意識しすぎだ。こんなのどうって事ないだろう)」
京子「(屋敷じゃもっと過激な事だってあったし、ここまでドキドキする必要なんて…)」
依子「ただいま戻りましたわ」
京子「は、はい」
しかし、どれだけ言い聞かせても、落ち着きを取り戻す事が出来ない。
そもそも屋敷だって、京子は完全に落ち着いている訳ではないのだ。
表面こそ取り繕ってはいるものの、心の中はドキドキしている。
そんな京子が初めて見る依子の湯上がり姿を意識しないはずがなく、ついつい声をどもらせてしまう。
依子「あら、もしかして何か悪い事でもしていましたの?」
京子「滅相もないです」
依子「その割には驚いていたみたいですけれど」
そんな京子に依子はゆっくりと近づいてくる。
その髪は水気を吸い込み、何時もよりも艶めいていた。
ゆっくりとお湯に使った所為か、肌は赤く染まり、何時もよりも愛らしく見える。
特に京子の視線を引き寄せたのは、彼女のネグリジェだ。
薄紅色の上品なそれはレースとふんだんにあしらい、彼女の上品さを引き立てている。
京子「お姉さまが意外と早かったのと思っていたよりも湯上がり姿が魅力的だったので」
依子「…本当に?」
京子「本当ですよ」
依子「…ふむ。それならば許してさしあげましょうか」
不承不承そうに言いながらも、依子は顔を輝かせた。
京子の言葉が100%事実ではない事はわかっているが、決して嘘でもない事もまたその顔から伝わってくるのだから。
スールの契を結んだ自分に隠し事をするのは気にいらないが我慢してあげよう。
そう心の中で言いながら、依子は京子の隣に腰を下ろした。
依子「でも、この貸しは高く付きますわよ?」
京子「それ反応したら隠し事してるって言ってるも同然ですよね」
依子「…たまにはこういうカマかけに引っかかったほうが可愛げもあると思いますわ」
京子「考えておきます」
依子「もう」
言いながら、依子はベッドの横にあるコンセントにドライヤーのプラグを差し込む。
そのまま脱衣所から持ち込んだそれを起動し、髪へと温風を当て始めた。
未だ湿り気を含んだ髪を乾かそうとするそれは当然の事ながら手慣れている。
てっきりお嬢様な依子は他人にして貰っていると思っていただけに京子は意外さを感じた。
京子「良ければ乾かしましょうか?」
依子「あら、さっきの貸しをもう返して下さいますの?」
京子「どちらかと言えば、ポイント稼ぎと言った方が正しいですね」
依子「もう800ポイントも溜まっていますのに、京子さんは貪欲ですわね」
京子「お姉さまと仲良くなりすぎる、なんて事はないと思っていますから」
とは言え、それはあくまでも手の届きやすい範囲だけ。
流石に頭頂部や後頭部などを上手に乾かす事は出来ないだろう。
そう思った京子は依子に手助けを申し出る。
それに冗談めかして答えながら、依子はドライヤーと櫛を京子へと手渡した。
京子「それに私はもっともっとお姉さまと仲良くなりたいです」
依子「ふふ。京子さんったら」
それを受け取りながらの言葉に、依子は嬉しさを堪え切れない。
依子もまた同じ気持ちを胸に秘め、こうして京子をお泊り会へと誘ったのだから。
京子もまた同じ気持ちだったとそう思うと、ついつい笑みが浮かび、もぞもぞと身体が動いてしまう。
京子の手を握りたい。
京子の事を抱きしめたい。
そんな衝動を押さえ込む為の身動ぎは、中々、止まる事がなかった。
依子「しかし…京子さん手慣れていますのね」
京子「私のところは共同生活ですから」
京子「お互いの髪を乾かすなんて言うのも結構やっています」
依子「なるほど」
依子は家鷹家の一人娘だ。
誰かに髪を乾かしてもらう事はあっても、乾かしてあげた経験はない。
そんな彼女にとって、お互いの髪を乾かしあうその光景はとても魅力的に思えた。
依子「そういうのも楽しそうですわね」
依子「京子さんに髪を濡らしたまま出てきてもらえばよかったですわ」
京子「私のはちょっと長すぎますから、乾かすのは大変だと思いますよ」
依子「それを一人でやっているのですから、京子さんはもっと大変なのでしょう?」
依子「その手助けになれるなら、大変なくらい気になりませんわ」
京子「(…藪蛇ったかな)」
流石の依子も、ここで一緒に入浴したいと言ったりはしない。
京子が肌に大きなキズを抱え、人前でそれを露出する事を嫌っているのは彼女も良く知っているのだから。
しかし、だからこそ、それに触れない範囲で ―― 京子を傷つけないレベルで彼女のことを助けたい。
自らの感情だけではなく、京子の事を慮ったその言葉を、京子は拒む事が出来なかった。
京子「(でも、ココで本当はカツラです…なんて言う訳にはいかねぇよなぁ)」
【須賀京子】のトレードマークでもある金のロングヘアは偽物だ。
多少、毛先に触られるくらいならばまだしも、乾かすまでして貰ったら偽物だとバレてしまう。
だが、こうまで言ってくれている彼女を拒む理由は思いつかず、京子は肩を落として。
京子「…では、また今度、お願いしますね」
依子「えぇ。その時まで腕を磨いておきますわ」
そのまた今度が来ないよう祈りながら、京子は櫛とドライヤーを器用に動かしていく。
依子の髪はセミロングだが、髪は細く、水気も飛ばしやすい。
京子が手慣れていると言うのも相まって、どんどんその髪はふわりとした出来上がりに近づいていく。
依子「しかし、人に髪を乾かしてもらうと言うのは案外、気持ち良いものですわね」
依子「それともこれは京子さんが相手だから、なのかしら?」
京子「私としては後者であって欲しいですね」
依子「あら、そんな事言ってしまって…本当に良いんですの?」
依子「私、これからずっと京子さんに髪を乾かすのをお願いするかもしれませんわよ」
京子「私が出来る範囲であれば是非ともお受けしたいくらいです」
京子「お姉さまの髪は綺麗で、こうして触っているだけでも気持ち良いですから」
その言葉に偽りはない。
依子の髪は滑らかで枝毛の一つもないのだから。
自然と指の間を流れていきそうなその柔らかな髪は小蒔達のそれに劣るものではない。
出来れば、そんな髪に京子もずっと触れておきたかったが。
京子「はい。これでどうでしょう」
依子「…もう終わりですの?」
しかし、髪を乾かし過ぎると逆に傷んでしまう。
こうして話している間に出来上がったのだから、下手に長引かせるのは辞めよう。
そう思ってドライヤーを止め、手を離した京子に依子は寂しそうな声を向けた。
京子「そんな寂しそうな顔するくらい気に入ったんですか?」
依子「えぇ。私、もう京子さんの虜ですわ」
京子「じゃあ、こういうのはどうです?」
依子「あ…」
乾かすのは終わったとは言え、髪型までバッチリ決まった訳ではない。
ドライヤーによって広がったその髪は、未だ乱れているのだから。
それを元通りの髪型へと戻そうとする京子の手に、依子は声を漏らしてしまう。
依子「なんだかコレ撫でられているみたいですわね」
京子「嫌ですか?」
依子「…流石にちょっと恥ずかしい、と言うのが本音ですわ」
依子「でも、嫌じゃありません」
依子「だって…京子さんですもの。とても安らいだ気持ちになりますわ」
コレが他の相手であれば、戸惑いが先に出ただろう。
両親であったとしても、気恥ずかしさのほうが強かったはずだ。
だが、京子に限っては、戸惑いも恥ずかしさも少ない。
それよりも大きな心地よさが彼女の心に広がり、安堵しきった表情を浮かばせた。
【審議中】
|∧∧| <<ってところで今日は終わります。この小ネタおもったよりも長引きそうなので、のんびり付き合ってくださると幸いです。
__(;゚Д゚)___
| ⊂l l⊃| ノ火.,、 ノ人., 、 ノ人.,、
 ̄ ̄|.|. .|| ̄ ̄ γノ)::) γノ)::) γノ)::)
|.|=.=.|| ゝ人ノ ゝ火ノ ゝ人ノ
|∪∪| ||∧,,∧ ||∧,,∧ || ボォオ
| | ∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧
| | ( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )
~~~~~~~~ | U ( ´・) (・` ). .と ノ
u-u ( ) ( ノ u-u
`u-u'. `u-u'
あれ本当だ終わってない…(´・ω・`)14時開始の16時までだと思ってましたの
依子「ただ、私、されっぱなしというのは趣味じゃありませんの」
京子「え!?」
しかし、依子はそれに浸り続けるのを良しとしない。
こうして京子に構われるのは嫌いではないが、ソレ以上に京子に構うのが好きなのだ。
クルリと反転した依子は悪戯っぽい顔で、京子をベッドへと押し倒す。
当然、京子の身体能力ならば、それに抗う事は決して難しい事ではないが。
京子「もう…お姉さまったら」
京子は呆れたような顔で、そのままベッドに背中を預けた。
これが不埒な輩ならば、京子も全力で抗っていたが、相手に害意がないのは分かりきっている。
精々、『仕返し』をしたいと思っているであろう彼女に抵抗したところで、拗ねさせてしまうだけ。
ならば、ここは大人しくしていようと、京子は依子のされるがままになっていた。
依子「……」
京子「どうかしたのですか?」
依子「いえ…その、京子さんのあまりの色気にドキドキしていましたの」
京子「何を言っているんですか」
まるで満開のひまわりのように、ふわりと広がったブロンドヘア。
自分よりも二回り以上、大きな身体が、力なくベッドに横たわっている光景。
そして何より、呆れるような顔をしながらも、決して嫌そうではないその表情に、まるで誘われているような感覚さえ覚える。
その色っぽさは、押し倒したはずの依子が思わずドキドキしてしまうほど強く、そして濃厚なものだった。
依子「京子さん、危険ですわ」
京子「危険?」
依子「えぇ。そんな顔されたら…きっと殿方は我慢出来ませんもの」
依子「同性の私でさえドキドキしてしまうのですから、きっと野獣になるはずですわ」
京子「流石にそれは言い過ぎですよ」
依子「言い過ぎなどではありません」
依子はこれまで京子と長い時間を共に過ごし、その魅力も理解している。
しかし、それはあくまでも魅力であって、色気ではなかったのだ。
よもや、押し倒しされた京子が、こんなにも色香を感じさせるなど想像もしていなかった依子は思わず心配の言葉を口にする。
京子が並々ならぬ強さを誇っているのは知っているが、しかし、か弱い女性である事に変わりはない。
本気になった男に抗えず、押し倒され、レイプされてしまう事だって考えられる。
依子「良いですか、京子さん」
依子「京子さんはもう少し警戒心を持つべきです」
依子「でなければ…その、ひ、酷い事になってしまうかも…」
京子「お姉様は大げさですね」
依子「むぅ…」
愛しい義妹に降りかかるかもしれないその不幸を、何とか振り払いたい。
その一心で口にした言葉を、京子は真剣に受け取らなかった。
そもそも、こうして京子が押し倒されたのは相手が依子だからと言うのが最も大きいのだから。
有象無象 ―― 例え、それがどれだけ強靭な男であろうとベッドに押し倒されるような愚は犯さない。
京子「ですが、大丈夫ですよ」
京子「男性と二人きりで同じ部屋にいる、なんてシチュエーションになる事はまずありませんし」
京子「何より、相手がお姉さまだからこそ、こうして抵抗せず大人しくしてるのですから」
依子「…でも」
京子の言葉が信じられない訳ではない。
だが、ソレ以上に依子は心配で、何より魅入られているのだ。
普段、自分を見下ろす京子が、こうして見上げている感覚に。
愛しい義妹を自分の腕の中に閉じ込めているような錯覚に、今も彼女はドキドキしている。
それを自分以外の誰かが ―― 男が知ってしまったらと言う最悪の未来を、どうしても憂いてしまう。
京子「それより何か言う事があるのではありませんか?」
依子「え?」
京子「私を押し倒したんです。もっと何か言うべき事があると私は思うのですけれど」
そんな彼女の杞憂を笑い飛ばすように、京子はクスリと微笑む。
どこか悪戯っぽいその顔は、京子の色気を更に増した。
誘われているという感覚が強くなり、依子の胸は鼓動を強くする。
自然、その頬を赤く染めながら、彼女はおずおずと唇を動かして。
依子「…その、可愛いですわ」
京子「それだけですか?」
依子「…思った以上に色っぽくてドキドキしました」
京子「それはさっき聞きましたよ」
依子「魅力的と言うのはどうかしら?」
京子「最初のとさほど変わっていないと思いますね」
依子「もう…あんまりいじめないでくださいまし」
褒め言葉は依子の中から素直に出てこなかった。
彼女は今、押し倒しているはずの京子に魅入られてしまっているのだから。
豊富な語彙を活かす事は出来ず、出て来るのは月次な言葉だけ。
それをからかう京子に、依子は頬を膨らませながら、目を反らした。
京子「ごめんなさい。でも、お姉様も悪いんですよ」
京子「心配してくれてるのは分かってますけど、私が誰にでもこんな風に身を任せるような女だと疑うんですから」
京子「ちょっとくらいの意地悪したくなってもバチは当たらないと思います」
依子「それは…そうかもしれませんけれど」
京子「私はお姉さまのものですよ」
依子「はぅ…」
その言葉はあまりにも真っ直ぐなものだった。
誤解の余地をまったく与えまいとするその言葉に、依子のトキメキは最高潮に達する。
トクンと跳ねるようなそれは、彼女の口から甘い声を漏らさせた。
京子「お姉さま以外になびいたり致しません」
京子「信じてくださいますよね?」
依子「……ここで無理だなんて言ったら、淑女失格ではないですか」
不安の色は既に依子の心にはなかった。
ストレート過ぎる京子の言葉は、それを吹き飛ばすに十分なものだったのだから。
さりとて、ここではいと素直に頷くのも、どことなく悔しい。
悪いのは自分だと分かっているが、年下の京子に手のひらの上で転がされているような感覚を覚えてしまう。
京子「ふふ。でも、さっきのお姉さまは淑女というよりも、独占欲の強い旦那様のようでしたよ?」
依子「そ、そんな事ありませんわ」
京子「それは私を押し倒すのを辞めてから言わないと説得力がありませんよ」
依子「ぅ」
無論、その言葉が冗談である事くらい依子も分かっている。
だが、こうして指摘された内容を正しいと認めてしまう自分もいるのだ。
少なくとも、自分は京子に対して、強い独占欲を感じていた。
自身の卒業後、スールの後釜を狙う女生徒達ではない。
いずれ京子を娶り、その身体を好きに出来る男に対して、嫉妬していたのだ。
京子「正直、お姉さまの今後が心配です」
依子「そ、それは…京子さんだって同じではないですか」
依子「私のモノとか私以外に靡かないなんて言って…京子さんだって結婚はするんでしょう?」
京子「どう…でしょうね」
依子「え…?」
その事実を依子は認められない。
認めてはいけないと反射的に、話題を逸らす。
だが、それに返ってきたのは、肯定でも冗談でもない。
複雑で、何より、曖昧な言葉だった。
京子「…お姉さまの事を想って、障害独身で通すのも良いかもしれません」
依子「流石にそれは重すぎますわ…」
京子「えぇ。私、重い女なんです」
京子「ですから、早めにそこを退いてくださらないと…」
依子「退かないと…?」
京子「ふふ。大変な事になってしまうかもしれません」
あからさまに話題を逸らされている。
そう分かっていても依子はそこに踏み込む事が出来なかった。
こうしてお泊まり会を開くほど仲が良くなったからこそ、彼女は壁を感じている。
京子が絶対に中へと踏み込ませまいとする硬く、分厚く、何より高い壁。
どれだけ仲良くなっても乗り越えられる気がしないそれが、今、目の前にある。
それを感覚的に感じ取った依子に、踏み込む勇気が湧いてこない。
下手にその中に突っ込めば、玉砕しかない事を彼女は理解しているのだ。
依子「…仕方ありませんわね。今日のところはこれで許してあげますわ」
京子「と言う事は、また次回があるんですか?」
依子「あるかもしれませんし、ないかもしれませんわ」
依子「…まぁ、今はとりあえず」
横たわった京子の隣に依子はゆっくりと身体を倒した。
自然、視界の中で京子の顔が大きくなり、依子の胸がまた熱くなる。
そんな自分を自覚しながら、依子はそっと京子の頬に手を伸ばした。
依子「先程の分のお詫びをしなければいけませんわね」
京子「何をしてくださるのですか?」
依子「このままナデナデ、なんてどうでしょう?」
京子「それお姉さまがしたいだけでは?」
依子「えぇ。でも、京子さんだって嫌ではないでしょう?」
京子「勿論。お姉さまとのスキンシップを嫌がるはずがありません」
依子「なら」
京子「…ふふ」
そのまま顔のあちこちを撫でる手は遠慮の残るものだった。
幾ら依子とて、京子の顔を撫でる経験はそう多い訳ではない。
自然、ぎこちなくなるその手に、京子はくすぐったさを感じる。
依子「どうですの?」
京子「えぇ。お姉さまの気持ちが伝わってきて心地良いです」
京子「このまま眠っちゃいそうなくらいですよ」
とは言え、それは決して大きいものではない。
依子の手はただ自分の欲求を満たす為のものではないのだから。
京子の事を気持ち良くしようとするそれに、心と身体が解きほぐされていく。
リラックスしたその奥から微かな眠気が浮かび上がってくるのは、決して嘘でもお世辞でもなかった。
依子「まぁ、もう良い時間ですものね。そろそろ寝てしまっても良いかもしれません」
依子も京子も、あまり夜更かしはしないタイプだ。
日付が変わるまで起きている事は稀な二人にとって、今の時間は既にグレーゾーン。
ベッドの中に入って、目を閉じれば、そう遠くない内に眠れる自信があった。
京子「あら、まだ枕投げもしてませんよ」
依子「私に勝ち目がないではありませんか」
依子「それに枕投げだなんて淑女のやる事ではありませんわよ」
京子「ついさっき私を押し倒したお姉さまの発言とは思えませんね」
依子「さっきのは淑女としての家鷹依子ではなく、京子さんとスールの契を結んだ家鷹依子だったので」
京子「もう。都合が良いんですから」
呆れるように言いながら、京子は明るい笑みを浮かべていた。
依子の肩には永水女子生徒会長とエルダーと言う大きな重荷が二つ乗っているのだから。
それをほんの僅かでも忘れてくれるなら、義妹としてこれほど嬉しい事はない。
何より、京子も依子と気の置けないやり取りをする時間を楽しんでいるのだ。
都合の良いその言葉に呆れているのも、演技でしかない。
京子「でも、淑女としてとか、スールの契を結んだとか、そういうの気にしなくても良いんですよ」
京子「スールの契などなくても、私はお姉さまの事が大好きなんですから」
京子「私の前でだけは素の家鷹依子でいてくれると嬉しいです」
依子「…えぇ。ありがとう」
京子のその言葉が、依子にはとても嬉しい。
エルダーを目指したその時から、彼女は親相手にも自然体ではいられないようになってしまったのだから。
そんな自分を唯一知っている京子が、こうして素の自分を認め、引き出そうとしてくれる。
その喜びは、彼女に京子との出会いを感謝させるほど大きなものだった。
京子「だから、淑女だなんて忘れて、枕投げをしましょう」
京子「勝った方の言う事を、負けたほうが一つ聞くと言うルールで」
依子「…そんなに私に命令したい事があるんですの?」
京子「特に命令したい訳ではありませんけれど…」
京子「でも、私に負けて悔しそうな顔をしてるお姉さまの顔は見たいですね」
依子「まさか京子さんがこんなに性悪だったなんて…私の目でも見抜けませんでしたわ」
京子「その言葉、そっくりそのままお返ししますよ」
こうして相手の事をからかうのは京子の専売特許ではない。
寧ろ、普段は依子のほうがリードしている事のほうが多いのだ。
そんな彼女にちょっと仕返ししたいと言うだけで性悪扱いされるのは我慢出来ない。
そんな体を装いながらの言葉に、二人はクスリと笑みを浮かべ合っていた。
依子「まぁ、幾ら性悪だと言っても、京子さんはゲストですから」
依子「あまり夜更かしさせると家鷹家の格が疑われてしまいますわ」
依子「枕投げはまた今度にして、そろそろ寝る準備を始めましょうか」
京子「はい。…と言っても、こっちはもう大丈夫ですよ」
依子「あら、そうですの。では、少し待ってくださいましね」
言いながら、依子はベッドの脇にある小物置きに手を伸ばす。
その上にあったリモコンを操作すれば、部屋の照明が少しずつ弱くなっていった。
ピンクと白のレースであしらわれた天蓋つきベッドが暗闇の中に沈んでいくその光景を見ながら、二人はベッドの中へと潜り込んでいく。
依子「京子さんは部屋が真っ暗で良いタイプですの?」
京子「えぇ。そのほうが眠りやすいですし、それに」
依子「それに」
京子「今日は月が綺麗ですから。月明かりでお姉さまの顔は十分見えます」
依子「…えぇ。そうですわね」
依子のベッドは決して小さい訳ではない。
天蓋に合わせて作られたそれは、クイーンサイズの大きなものだ。
だが、二人はその真中で身を寄せ合うようにして顔を寄せ合っている。
距離にしておおよそ30cmほど。
ほんのすこし前に出ればキスできそうなその近さは、夜の闇でも隠せない。
カーテン越しに差し込む光で、お互いの顔を十分、判別する事が出来た。
依子「なんだか不思議な気分ですわ」
京子「それだけ私が性悪だったのがショックだったんですか?」
依子「それはもう終わりました」
依子「…と言うより、最初から京子さんの事を性悪だなんて思っていません」
依子「京子さんがとっても優しくて、頼りがいがある子だって私は良く分かってますから」
依子「本当に…何時も頼りにしてますわ」
京子「…光栄です」
その距離は、依子に本音の言葉を口にさせた。
冗談やからかいなど一切ない、ただただ本心から漏れ出たそれに京子の顔が綻ぶ。
無論、こうして頼りにしていると言われたのは一度や二度ではないが、それでもその嬉しさは色あせない。
元々、人に尽くすのが好きな京子にとって、それは並の感謝の言葉よりも胸を暖かくなるものだった。
依子「不思議なのは…こうして私の部屋のベッドで誰かと一緒に寝ている事です」
依子「知っての通り、私は親友と呼べる相手を作ってきませんでしたから」
依子「エルダーを目指してアレコレ習い事も詰まっていましたし、お泊まり会だなんて夢のまた夢だと思っていましたわ」
エルダーという完璧な淑女を目指していたとは言え、依子もまた人の子だ。
仲の良い友人たちと同じところに泊まり、一夜を明かす時間というのに憧れを持ち、そして同時に諦めてもいたのである。
だが、それはこうしてエルダーになり、京子と言う義妹を得た事で叶った。
その実感を依子は未だ咀嚼し切る事が出来ない。
どことなく夢見心地なまま、こうして京子と向かい合っていた。
依子「ふふ。考えても見れば、私の初めては沢山、京子さんに奪われてしまったんですのね」
京子「私の始めても沢山、お姉様のモノになったのでお相子…と言うのはダメですか?」
依子「ダメですわ。全然、足りませんもの」
だが、こうしている最中にも依子の胸は甘い鼓動を広げている。
処理しきれない心とは裏腹に、身体はそれがとても幸せな事だと理解しているのだ。
そんな彼女が、京子に首を縦に振るはずがない。
貪欲な言葉を口にしながら、そっと京子に手を伸ばす。
依子「もっともっと…私は京子さんの初めてが欲しいですし」
依子「私の初めても京子さんにあげたくて仕方がありませんもの」
京子「…それ何となくやらしくありません?」
依子「今の私は淑女の依子ではなく、素の依子ですから良いんですのよ」
言いながら、依子は京子の手をそっと掴んだ。
そのまま指を絡ませ、恋人繋ぎをする彼女に躊躇いはない。
京子にエルダーの重荷を打ち明け、甘えさせて貰う時など、何度も指を絡ませあっている。
その上、素の【家鷹依子】に戻った彼女が遠慮などするはずもなく、繋いだ手を確かめるように京子の手を指で撫でた。
依子「何時もよりもちょっと大胆な私はお嫌いかしら?」
京子「嫌いになんてなるはずありませんよ。お姉さまは何時だって最高ですから」
京子「エッチなお姉さまも私は大好きです」
依子「え、エッチじゃありませんわ」
確かに依子は自分が大胆になっている自覚はある。
しかし、それはあくまでも自分の心に正直になっただけの事。
自分の中に淫らなものなどないと思っている彼女は、京子の言葉に強い否定を返した。
依子「それよりも京子さん、一つ聞きたいのですけれど」
京子「何でしょう?」
依子「こういう時はガールズトークと言うものをするのでしょう?」
依子「ですが、私、寡聞にしてそういうのを知らなくて」
依子「一体、どういうお話をすれば良いのかしら?」
依子がこれまで積み重ねてきたのは、あくまでも表面上の付き合いだ。
友人達と共に出かけた経験もそう多くない彼女にとって、ガールズトークと言うのは未知のもの。
ましてや、今の彼女は夢にまで見た『お泊まり会』の真っ最中なのだ。
どんな話をするべきなのか、或いはどんな礼儀作法があるのかまったく分からず、不安そうに京子へ尋ねる。
京子「私もそれほど詳しい訳ではありませんが…所謂、恋バナというのが一般的ではないでしょうか」
依子「恋バナ…難しいですわね」
依子はこれまでエルダーを目指して努力を積み重ねてきた。
その為に友人づきあいすら薄めだった彼女に、恋の話など出来るはずもない。
初恋すら済ませていない依子は、大変そうに声を漏らした。
京子「まぁ、適当に相槌を打ったり、気になるところに踏み込んだりするだけでも構わないと思いますよ」
依子「じゃあ、せっかくなので踏み込ませて頂きますけれど」
京子「何でしょう?」
依子「京子さんに好きな人はいるのですか?」
京子「え…えぇっと…」
藪蛇った。
その瞬間の京子の感情を一言で言い表すなら、その四文字になる。
何だかんだで依子は、距離感を心地良い位置で保ち続け、踏み込まれたくない話題にはノータッチだった。
そんな彼女がよもやここで踏み込むと京子はまったく思っておらず、その顔に困惑を浮かべる。
京子「…お姉様や春ちゃん達がいますね」
依子「…………そうですの」
そこで京子が冗談めかして応えるならば、依子も軽く返す事が出来ただろう。
だが、一瞬、京子が浮かべた気まずそうな表情を、彼女は見逃さなかったのだ・
間違いなく、京子には想い人がいる。
しかも、それは自分ではない事が、今の反応でハッキリと分かってしまった。
京子「あの、お姉さま…?」
依子「京子さんの意中の相手がどなたかは知りませんが、私も応援しますわ」
依子「私に出来る事があったら、何でも言ってくださいまし」
瞬間、ズキリと走った痛みは決して小さなものでも、軽いものでもなかった。
心に重くのしかかるようなそれに顔が暗くなってしまいそうになる。
それを理性で押さえ込みながら、依子は明るい声をあげた。
しかし、それは空元気感が否めない空虚なもので。
依子「(…なんで私、あんな事を聞いてしまったのかしら)」
自分の声が空元気に満ちていると分かっていても、依子はそれをどうしようもない。
彼女が受けたショックは思っていた以上に強く、そして激しいものだったのだから。
胸中に浮かぶ後悔の念も強く、表面上だけでも前向きになる事が出来ない。
そんな自分を京子に見せたくなくて、依子は顔を俯かせる。
京子「…お姉さま」
依子「な、なん…ですの?」
京子「さっきの言葉は嘘じゃありません」
京子「私はお姉さまの事が大好きです」
依子「…えぇ」
きっと彼女は大事な義妹が、自分の元から離れようとしているのを寂しく思っているのだろう。
そう判断した京子は、依子に優しい声を掛ける。
だが、それは彼女の心を慰めはすれど、立ち直らせるものにはならない。
依子が欲しいのは、その大好きではないのだから。
義姉としての好きでは、彼女の心は半分も満たされない。
依子「分かっています。私も…京子さんの事が大好きですわ」
依子「出会ってからずっと私の事を支えてくれて、優しくしてくれて、仲良くしてくれて…」
依子「感謝の言葉もないくらいです…」
とは言え、こうして慰めようとしてくれる京子に無言で居続ける訳にはいかない。
これ以上、京子に心配させない為に、ちゃんと返さなくては。
そう思って口にした言葉の一つ一つが、依子の心に傷を残す。
まるで表面に鋭いトゲが生えているようなその言葉は、彼女の声をさらに暗くしていった。
依子「…ごめんなさい。ちょっと眠くなってしまって」
依子「今日はもう…このままおやすみしますわね」
京子「あ…」
そんな自分を彼女はもう制御出来ない。
ならば、ここでするべきは何も言わずとも良い状況にする事。
そう判断した依子は、言い捨てるような言葉と共に京子に背を向ける。
つい数分前まで嬉しそうに言葉を交わしていた依子からの拒絶に近いその仕草に、京子は声を漏らした。
だが、そこから言葉が続く事はない。
今の依子が放っておいて欲しいと思っている事が、彼女の小さな背中から伝わってくるのだ。
京子「…おやすみなさい、お姉さま」
依子「…………えぇ、おやすみなさい、京子さん」
交わす言葉はお互いにぎこちないものになっていた。
それに影響されたかのように二人の間に気まずい沈黙が横たわる。
普段は無言でいても気にならないが、今日はそれがとても苦しい。
その気まずさは自分が持ち込んだものだという自覚があるだけに依子は居た堪れない気持ちで一杯だった。
京子「(…コレ、どうしようか)」
そんな彼女の背中を見ながら、京子は一人考えを張り巡らせる。
だが、京子は彼女の気持ちを根本的な部分で勘違いしているのだ。
この状況をどうにかする案など浮かぶはずもなく、思考が空回りを続ける。
それでも何か一つくらいはと模索し続けるが、それが形になる前に眠気が限界を迎えた。
京子「(…しかたない。今日のところはもう寝よう)」
京子「(今、下手にフォローしたら悪化する可能性もあるし)」
京子「(きっと時間も経てば、依子さんの気持ちも落ち着くだろう)」
無論、京子も問題の先送りはしたくない。
だが、言葉を交わす事すら依子が拒んでいる現状で、何か出来る訳ではないのだ。
眠気で思考が働かなくなってきた事もあり、ここは先に休んで明日に備えるべき。
自己嫌悪と悔しさに沈みそうになる自分にそう言い聞かせながら、京子はそっとまぶたを閉じた。
京子「…すー…」
数分後、聞こえてきた寝息に、依子は首だけで振り返る。
瞬間、彼女の視界に入ってきたのはすぅすぅと寝息を漏らす京子の顔だ。
まぶたを閉じ、完全に眠りに堕ちたその顔に、依子は内心で胸をなでおろす。
ついさっきまで京子が起きている事に依子もまた気づいていたのだ。
その原因が自分のぎこちなさにあったと思えば、気も休まるはずがない。
今の今まで依子は申し訳無さに胸が一杯で、自己嫌悪で押しつぶされてしまいそうだった。
ってところで今回もちゅーだーん(´・ω・`)次は恐らくバレまでいけると思います
ドキッ おじだらけの聖杯戦争がやりたい…
狂おじさま
槍おじさま
叔父貴
叔父上
おじさん
オジマン
から一人選ぶ感じで(´・ω・`)そして私が何時もエロネタばっかに走る訳ないだろ!!!いい加減にしろ!!!!
依子「(…にしても可愛い寝顔ですのね)」
依子「(私の事を気にしていたのか、安らかとは言えないものですけれど)」
そのまま身体を反転させた依子はジィと京子の寝顔を見つめる。
時に自身よりも年上に見えるその顔立ちは、まぶたを閉じているせいか、何時もよりも幼く見えた。
どこか庇護欲を擽られるその寝顔に、依子はそっと手を伸ばす。
依子「(この顔を知っているのはそう多くないはずですわ)」
依子「(だから…それで満足するべきなのです)」
依子「(京子さんの何もかもを独り占めしたいと思うだなんて…そんなのはしたないにもほどがあるのですから)」
自身に言い聞かせるその言葉は、あまりにも空虚なものだった。
頭ではそれが正しいと分かっていても、依子の感情は納得しない。
ショックは収まったものの、心の中は今も鬱屈としたものを溜め込んでいる。
それを解消しようと京子の頬を撫でても、胸中が晴れる様子はなかった。
依子「京子…さん」
京子「ん…」
依子「ぁ…」
思わず呼びかけた依子に、京子の身体が身動ぎする。
それに驚いて手を離したが、京子が起きる気配はなかった。
変わらずすぅすぅと寝息を漏らすその姿に、依子は胸をなでおろす。
ただでさえ迷惑を掛けている上に睡眠まで邪魔してしまったら京子に顔向け出来ない。
それを回避出来た安堵は決して小さいものではなかったが。
依子「(…京子さんの…唇)」
ほんの少しだけ。
距離にして1cmにも満たないほどの微動を見せた唇に依子の視線は吸い寄せられる。
リップを塗ったように艷やかで、色鮮やかな桃色の唇。
どこか美味しそうにも見えるその場所に、依子はそっと触れた。
依子「(…もう、キスしましたの?)」
依子「(この唇で…京子さんの好きな人と…)」
瞬間、ズキリとした痛みが、依子の胸を襲った。
その奥底まで突き刺すようなそれに彼女は思わず身を強張らせる。
根も葉もない噂でエルダーを辞退しようと決意した時でさえ、これほどの痛みを覚えた事はない。
一体、これは何処から来る痛みなのだろうか。
そんな疑問を覚えながらも、依子は京子の唇から目を離せない。
疑問の解消も後回しにして、目の前の愛しい義妹の事を考え続けてしまう。
依子「(もし、そうでないなら)」
依子「(京子さんが…未だ誰ともキスをした事がないのなら)」
依子「(京子さんが眠っている今…私は初めてを貰う事が出来る…)」
依子「(京子さんのファーストキスを…誰に奪われる事もなくなる…)」
だが、それは決して建設的なものではない。
依子の胸中を支配しているのは嫉妬と独占欲なのだから。
自然、それを自覚も制御も出来ない彼女は、その思考をズルズルと悪しき方向に引きずられていってしまう。
普段ならば、思い浮かべる事すらないそれに、しかし、彼女は抗えない。
ドクンドクンと響く熱い鼓動に後押しされるようにして、京子へとその顔を近づけていく。
依子「(京子さんが…京子さんが悪いんですのよ)」
依子「(あんな…あんな顔を見せるから)」
依子「(だから…私、我慢…出来なくなってしまって)」
依子「京子さん…」
京子「…お姉さま」
依子「あ……」
だが、その唇が触れる直前に、京子が依子の名を呼んだ。
無論、ギリギリで京子が起きた訳でもなければ、囁くような依子の呼びかけに応えた訳でもない。
あくまでもただの偶然だと依子も分かっている。
依子「(あ…あぁあああ……!!!)」
依子「(わ…わ、私ったらなんて事を……!?)」
しかし、その偶然によって、依子は理性を取り戻した。
取り返しのつかない過ちを犯そうとしていた自分に気づく事が出来たのである。
当然、そんな彼女が、一時の感情に流されていた自分のことを許せるはずがない。
胸中で自己嫌悪に身悶えしながら、後悔の言葉を撒き散らす。
依子「(でも…あぁ…でも、私…)」
依子「(それでも…それでも欲しいのです)」
依子「(それがどれほどいけない事だと分かっていても…京子さんに嫌われかねない事だと分かっていても…)」
依子「(京子さんの唇が…私以外の誰かに奪われるのが我慢なりません…)」
後悔も自己嫌悪も決して弱い訳ではない。
寧ろ、意識が溺れてしまいそうなほど深いものだった。
だが、その最中でも、依子は京子の唇を求めずにはいられない。
ほんの少し自分勝手になれば手が届く、その唇が欲しくて欲しくて堪らなかった。
依子「(……私…は)」
依子「(私は…嫉妬しているのですか?)」
依子「(京子さんを…自分だけのモノにしたくて…他の誰にも渡したくはなくて…)」
依子「(スールの契を結んだ義妹以上に想っているからこそ…こんな暴挙に出ようとしたと…そういう…事なのですか…?)」
そんな自分を突きつけられても尚、本心から目を背ける事は出来ない。
無意識的に避けていたその結論は、今、彼女の心に広がっていった。
認めたくはない、けれど、ソレ以外には考えられない。
自分が京子に向ける好きは、最早、同性の枠組みを超えていた事を。
擬似恋愛ではなく、本当の恋愛に踏み込んでしまっていた事を、認めざるを得なかった。
依子「(お母様は…分かっていたのですか)」
依子「(分かっていたからこそ…夕食時にあんな事を…)」
スールの契と言うものが、永水女子の生徒達にどれほど重要なものなのか、依子は母から聞いている。
その時の彼女は、言葉通りの意味に受け取り、深く考える事はなかった。
だが、今の依子には分かる。
母もきっと同じようにスールの契を交わした相手の事を好きになりすぎてしまったのだと。
だからこそ、スールと言うものをとても重く捉え、娘に対しても擬似恋愛に踏み込んではいけないと言い聞かせていたのだと。
そして何より、それが手遅れだと分かっていたからこそ、京子が男であったなら、と寂しそうに漏らしていたのだと。
依子「(どう…すれば良いのでしょう?)」
依子「(京子さんが…好きだなんて…)」
依子「(こんな…こんなの…おかしいですよね…)」
京子への気持ちに気づいたとは言え、依子は常識を投げ捨てる事が出来ない。
これまで自分の性癖はごくごく普通のモノだと思っていた彼女は、困惑を広げる。
ジワジワと体の奥に広がるシミのようなそれは、広がる勢いを弱める事はない。
あっという間に胸の内を埋め尽くした困惑は、そのまま依子の目尻に涙となって浮かんでくる。
依子「(こんなの知られたら…きっと京子さんに嫌われてしまいますわ…)」
依子「(でも…私、こんなの我慢出来る気がしません…)」
依子にとっての京子は、ただの義妹というだけではない。
一番の親友であり、理解者であり、支えであったのだ。
そんな京子が奪われてしまう。
自分よりも大事な人を作り、自分も知らない顔をその人に向けてしまう。
その痛みは、自覚がなかった時とは比べ物にならない。
胸が張り裂けそうなほどの鋭い痛みに、依子は歯を食いしばって耐えるしかなかった。
依子「(あぁ…京子さん…京子さん、京子さん…!)」
それがただの痛みであれば、依子は京子に打ち明けていた。
エルダー選挙からずっと共に過ごしてきた京子ならば、自身の心を慰撫してくれる。
心からそう信じられる相手に、しかし、今の依子は頼る事が出来ない。
それを伝えれば、自分たちの関係は間違いなく終わってしまう。
そう自覚する依子は、眠る京子の服を掴みながら、心の中で義妹の名を呼び続けた。
依子「(…いっそ狂ってしまえば気も楽になるのでしょうか)」
依子「(でも、私は…)」
それで京子の身も心も手に入るのであれば、依子も狂う事を選べただろう。
だが、そうやって狂ったところで、京子の心は手に入らず、また身体が手に入るのも一時だけ。
お互いに同性であり、家と言うものを背負っている以上、何時までも一緒にはいられない。
いずれはそれぞれ別の相手と結婚させられ、別れる事を余儀なくされる。
それを理解して、破滅の未来を選ぶほど依子は考えなしにはなれない。
京子の幸せの事を考えても、自分が我慢するのが一番だろうと依子は思う。
依子「(せめて…せめて京子さんが男性なら…)」
一生を共に過ごす道筋がつけられる。
京子と結婚し、お互いの所有者として消えない印をつけられるのに。
胸中に浮かんだその言葉は、依子の心に暗く、そして深い悦びを与えた。
だが、それは所詮、もしもの話。
現実に即していない以上、夢どころか妄想の一種でしかない。
ともすれば道を踏み外してしまいそうな自分にそう言い聞かせるが、それは中々、彼女の中から消えなかった。
依子「(ダメ…ですわね)」
依子「(どんどん思考が悪い方向に進んでいますわ…)」
依子「(このままじゃ…私、本当におかしくなってしまいかねません…)」
理性と欲望のせめぎあいは、今も依子の中で続いている。
そのどちらが勝つのか、今の依子には判断がつかなかった。
だが、ここで理性が欲望に屈すれば、京子の事を不幸にするだけ。
ならば、少しでも理性の勝算をあげる為に、今日はもう休むべき。
きっと時間が経てば、この疼きもマシになっているはず。
そう判断した依子は、そのまぶたをゆっくりと閉じるが。
依子「(……眠れませんわ)」
依子「(眠れるはず…ありませんわよ…)」
望んだ眠気は一向に訪れない。
幾らか気持ちも落ち着いたとは言え、その心には悲嘆や後悔などがごちゃまぜになっているのだから。
複雑という言葉では物足りないそれに依子は溜息を漏らす。
そのままパチリと瞳を開けば、再び京子の寝顔が目に入った。
依子「(…まったく、私の気も知らないですやすやと眠って)」
依子「(そんな可愛らしい寝顔を見せつけるなんて、ずるいですわよ)」
依子「(…………だから)」
再び胸中で言い訳の言葉を浮かべながら、依子はそっと京子に身を寄せる。
しかし、それはさっきのようにキスを目当てとしたものではない。
今もせめぎあいが続いているとは言え、彼女の理性が敗れた訳ではないのだから。
こうして身体を近寄らせるのも、京子と触れ合いたいからこそ。
その大きな胸の中に身体を預ければ、少しは眠気もやってくるのではないかと依子は考えたのだ。
依子「…ふふ」
依子「(思ったよりも良い感じですわ)」
依子「(やっぱり京子さんの胸の中は落ち着きます)」
依子「(まぁ…本人に許可は取っていませんけれど、これくらいは役得と言っても良いですわよね)」
その身体を京子に預ければ、複雑だった胸中に安堵の色が差し込んで来た。
それは決して強いものではないが、しかし、感情が安定しなかった彼女にとっては十分過ぎる。
ようやく一息つける心地になった依子は思わず笑みを浮かべながら、身体を擦り寄らせて。
依子「…アレ?」
硬い。
最初に彼女の心に思い浮かんだのはその二文字だった。
無論、依子は、京子がどれほど身体を鍛えているのか良く知っている。
その腹部がアスリートのようにガッチリしているのも分かっていた。
だが、『ソレ』は知らない。
京子の股間から感じるその硬くて大きなモノを、依子は知らない。
依子「え?え…?」
当然、広がる困惑に、依子は思わず声を漏らす。
だが、寝入った京子はそれに反応する事はない。
夜勃ちした肉棒を隠す事もなく、無防備な寝顔を晒している。
そんな京子の顔と下半身を何度も見比べた依子の頭に、とある言葉が浮かんできた。
依子「(も、もももももももしかしてコレ…!?)」
オチンチン。
保険の授業で習ったものよりも幾分、卑猥なその呼び名に、依子は混乱する。
幾ら身長が平均を上回っていても、その身体がガッチリとしていても、京子は女性なのだ。
男性にしか生えていない『ソレ』が京子にあろうはずもない。
しかし、股間でそそり立つその存在感は、到底、気のせいで片付けられるものでもなかった。
一体、これはどういう事なのか。
自己嫌悪や悲嘆が驚きに吹き飛ばされた心の中、依子はそんな疑問をいくつも浮かべた。
依子「(あうあうあうあうあうあうあうあう…)」
依子「(わ、分かりませんわ…そもそも分かるはずないですもの…!)」
依子「(私…そ、そういうの見た事も触った事もないんですから!)」
依子「(『コレ』が本物なのかどうかなんて判断出来る訳ないでしょう…!!)」
しかし、当然のことながら、依子の中で答えが出るはずもない。
依子の混乱は、生半可な時間で落ち着くほど弱いものではないのだから。
まるで世界がひっくり返ったような驚きに、思考が白旗をあげる。
依子「(で、ですから…)」
確かめなければいけない。
普段の依子であれば、そんな結論に達する事はなかっただろう。
しかし、今の彼女は混乱し、また京子に対する想いも自覚してしまったのだ。
緩んだ理性は依子の無謀な行動にNOとは言わず、彼女はおずおずと京子の下半身へと手を伸ばす。
そのままゆっくりと下腹部の膨らみに触れれば、生々しい硬さが指先に伝わってきた。
依子「わ…わぁ…」
人の身体であるのが嘘のように硬いそれは、指先で触れても変わる事はなかった。
だが、そこから得られる感覚まで変化がなかった訳ではない。
その中に熱が篭っている事も、そして片手では収まりきらないほど大きな事も、今の彼女はハッキリと認識している。
依子「(これって…や、やっぱり、その…)」
サワサワと触る度に増えていく情報は、それがモノではないと言う事の裏付けになっていった。
伝わってくる熱や、反応からして、それは間違いなく、人の身体の一部。
たどり着いたその応えに、しかし、依子はそこから手を離す気にはなれなかった。
何だかんだで、依子も色事にまったく興味がない訳ではないのだから。
『ソレ』が京子のモノだと言うのも相まって、ついつい結論を先延ばしにしてしまう。
京子「ん…」
依子「ひゃ…!?」
その刺激は決して強いものではなかった。
だが、京子はこれまでずっと禁欲生活を続けていたのである。
夜勃ちしたムスコを撫でる手に、ついつい声を漏らしてしまう。
それに驚きながら依子は手を離し、反射的に目を瞑った。
京子「…すー」
依子「…ふぅ」
あまりにもぎこちない狸寝入りの最中、京子の寝息が再び届く。
どうやら京子は未だ夢の中にいるらしい。
それに安堵した依子は溜息と共にまぶたを開く。
その奥から現れた瞳は、しかし、さっきのように京子の寝顔を捉えない。
まるで何かに引っ張られるようにして、京子の下腹部へと向けられる。
依子「(今更だけど…私、とんでもなく大胆な事をしてしまったのではないかしら…?)」
依子「(幾ら確かめる為とは言え…と、殿方のアレに触れるだなんて…はしたないにも程がありますわ)」
依子「(…………でも)」
依子「…くんくん」
ついさきほどの自分をはしたないと評しながらも、依子は自身の興味を抑えきれなかった。
一体、京子の『モノ』はどんな匂いがするのか。
胸中に浮かんだその疑問を確かめようと、依子は指先を鼻に近づける。
そのまま吸い込んだ空気に嗅覚細胞は反応しない。
それに残念さを感じながら、依子は肩を落として。
依子「(って違いますわよ!!)」
依子「(こ、これ一体、どういう事ですの!?)」
依子「(どうして京子さんにオチンチンがあるんですの!?)」
そこでようやく冷静になった思考が、元の疑問へと立ち返った。
恥ずかしさについつい勢いを増したそれに幾つもの推測が浮かび上がってくる。
荒唐無稽なものも多く混じったその中から、依子は最終的に二つの候補を選び取った。
依子「(もしかして両性具有…なのでしょうか?)」
依子「(それとも…女装した殿方…?)」
今の依子に、そのどちらが正しいのか判断するだけの材料はない。
依子が分かっているのは、京子に男性器がついているという一点だけなのだから。
これ以上、答えを絞ろうとするならば、京子から情報を得なければいけない。
依子「(ど、どう…しましょう)」
依子「(どちらにせよ…コレは大変な秘密ですわよね…)」
依子「(偶発的にバレたのならばともかく…私がそれを暴こうとしたと知られたら)」
間違いなく嫌われてしまう。
その恐ろしさは依子の背筋を震えさせるに十分なものだった。
比翼とも思える相手からの嫌悪は、世界から孤立するよりもずっと辛い。
だからこそ、ここは何も見なかったことにするのが一番だと依子は思う。
依子「(……でも)」
依子「(もし…もし、京子さんが男性なら…)」
にも関わらず、依子の欲望は踏みとどまってしまう。
ここで京子の性別を確かめれば、先程思い浮かべた幸せな未来を掴めるかもしれないのだ。
その願望混じりの期待を、依子はどうしても振り払う事が出来ない。
何もかも忘れて現状維持を続けるべきか、或いは破滅を覚悟で幸せを手にしようとするべきか。
その両者の間で、依子の心は大きく揺れ動いていた。
依子「(…例え、京子さんが殿方であろうと両性具有であろうと)」
依子「(これまで積み重ねてきたものは、変わったりしませんわ)」
依子「(確かにこれほど大きな秘密を抱えていたのは驚きましたし…)」
依子「(どうして教えてくれなかったのかっていう気持ちもありますけれど)」
依子「(でも、何か重大な事情があった事くらいは察する事が出来ます)」
依子「(私の気持ちは…今も変わっては居ません)」
依子「(京子さんは、変わらず、京子さんですわ)」
振り子のように揺れる心の中で、依子はそう結論付ける。
彼女にとって、【須賀京子】とは最早、一言で片付けられる存在ではないのだ。
その全てを持ってして、自身の心に居座った京子に向ける気持ちは、その秘密を知っても揺らぐ事はない。
京子が京子であればそれで良いのだと、彼女は再確認して。
依子「(…………だから)」
依子「(だから…ごめんなさい、京子さん)」
依子「(私…やっぱりどうしても貴女の…いえ、貴方の事が諦められませんの)」
依子「(例え、貴方に嫌われても…どれほど卑怯な手段に訴えても…私は貴方が欲しい)」
依子「(この世界で、貴方を奪われる事ほど恐ろしいものはないと…そう思ってしまったんですのよ…)」
胸中に浮かぶ謝罪の言葉は、当然、京子に届くはずがない。
京子の正体を確かめる事を決めた依子にとって、京子が眠ったままの方が都合が良いのだから。
しかし、それでも彼女の中に残った僅かな理性が、謝罪の言葉を止めない。
こうして京子への想いを再確認し、外道に堕ちてしまったとは言え、京子の事を大事に思う気持ちがなくなった訳ではないのだ。
これから京子が受けるであろう痛みや苦難を申し訳なく思いながら、依子は京子の寝間着を少しずつ脱がしていく。
依子「(これは…)」
少しずつ露わになっていく京子の身体に、傷など一つもなかった。
少なくとも夏場でも長袖長ズボンでなければいけないほどの傷は見当たらない。
代わりにあるのは、いくつもパッドを重ねられた特製のブラだ。
特殊な性癖を持つ男性向けに作られたそれを依子はぷにぷにと指で押す。
依子「(…これ偽物でしたのね)」
依子「(てっきり本物だと思っていましたわ…)」
依子が京子の胸に触れたのはこれが初めてではない。
だが、彼女は今までそれが偽物だなどと疑いすらしてこなかった。
感触も何もかもが自身のモノとそっくりだったのである。
依子「(…何となく面白くありませんわね)」
依子「(別に…私のソレが劣っているなどとはまったく思っていませんけれども)」
依子の胸は平均よりも僅かに大きい程度だ。
谷間くらいは出来るが、決して巨乳と言われるほどではない。
そんな自分とほぼおなじサイズだった胸が、パッドによって作られたものだったのだ。
その感触も本物と見分けがつかないものなだけに、ついつい拗ねるような気持ちが浮かび上がってくる。
依子「(…しかし、これでハッキリしましたわね)」
依子「(こうして胸に詰め物をしているという事は…)」
間違いなく京子は男性だ。
もし、両性具有であるならば、こんなものをつける必要がない。
例え、胸の膨らみがなかったとしても、貧乳だと胸を張って登校すれば良いだけ。
にも関わらず、こうして特殊なブラをつけているのは、万が一にも男性だと疑われたくないからこそ。
きっと極端に肌を晒すのを嫌がったのも、傷が原因ではなく、正体がバレるのを避けたかったからなのだろう。
うーむ…なんか掘り下げが足りない気がしますが今日はここでちゅうだんしまーす(´・ω・`)
一旦乙
とある言葉が浮かんできたの辺りで「ボーナスステージ!」って台詞が脳内で出て来た辺り俺はもうダメかもわからん
正体がバレたことを知るまでに間があると、俺が喜ぶ
依子さんには日常生活での京子の行動原理を理解した優越感を味わってゾクゾクッ ハァハァしてほしい
>>929
ハイパーおにんにんタイム!!!!!とかじゃないだけマシじゃないかな!?
>>935
ちょっと心惹かれるけどスレの残り的にその展開は厳しいと思います…(´・ω・`)ゴメンナサイ
それはさておき、お前らこんなにKENZENなスレでヤったぜとかヤるぜとか卑猥な言葉を言いすぎだろ…
依子は、理想の淑女を目指してずっと努力してきた元おてんばお嬢様なんだぞ
ここでそんなエロ展開になるはずないじゃないか!!!!!!!!
依子「(と言う事はもしかして…)」
そこで依子の脳裏に、さきほどのやりとりが蘇る。
今度、髪を乾かしてあげると言った言葉に、京子はわずかに遅れて反応していた。
それはもしかして、ここにも何か秘密があるからなのかもしれない。
そう思って、京子の頭に手を伸ばせば、頭皮にしっかりと張り付いた金具の感触が返ってくる。
依子「(…やはりコレも偽物ですのね)」
依子「(流石に髪の色くらいは同じだとは思いますけれども)」
依子「(ただ、こうも色々と誤魔化されていると本当の京子さんの姿が気になりますわ)」
京子はカツラをかぶり、詰め物までして女の園に紛れ込んでいるのだ。
当然、その顔もしっかりと化粧が塗られ、本当の姿を誤魔化しているのだろう。
これからの関係を考えれば、その姿を暴こうとしないのが最善。
そう分かっていても、依子は自身の欲求を抑えきれない。
依子の恋する心は、意中の相手である京子の何もかもを知りたくて仕方がなかった。
依子「(…とは言え、ここで化粧落としを塗ったりすれば、京子さんが起きてしまうでしょう)」
依子「(その前にちゃんとした証拠を掴んでおかなければ言い逃れをされてしまう可能性もありますわ)」
依子「(だから…)」
まずは言い逃れが出来ない証拠を手に入れよう。
そう思った依子は、枕元に置いていたスマートフォンに手を掴んだ。
それから彼女は画面をタッチし、内蔵カメラを起動する。
それを寝ている京子に向けた依子は、しかし、すぐさまシャッターボタンを押せなかった。
依子「(…本当に良いんですのね、家鷹依子)」
依子「(今なら…まだ後戻りが出来ますわ)」
依子「(何もかもを忘れて…今まで通りの関係を続けるなら、ここで踏みとどまらなければいけません)」
半ば暴走に近い状態とは言え、依子は迷いを吹っ切った訳ではない。
自分がどれほど馬鹿な事をしようとしているかくらい今の彼女にも分かっていた。
だからこそ、胸中に浮かぶその言葉に、依子の指先は動かない。
それでも良いと容易く言うには、京子との関係は心地よすぎるのだ。
もうちょっと今の関係を楽しんで、証拠をつかむのはまた今度でも良いのではないか。
そんな妥協とも逃げともつかない言葉すら、彼女の心に現れる。
依子「(…ダメですわ)」
依子「(その今度が、一体、何時になるか分かりませんもの)」
依子「(いえ、今回は両親への挨拶ということで引き受けてくださいましたけれど…二度目があるとは思えませんわ)」
依子「(これほどの秘密を抱えている京子さんが、他人の家で寝泊まりするだなんて、かなりの勇気がいる事でしょう)」
依子「(何より…)」
その今度までの間に京子が奪われるかもしれない。
自分とは違う女性に、その唇を、貞操を、心を ―― 自分の欲しいなにもかもを奪われてしまうかもしれないのだ。
それを依子はどうしても看過する事が出来ない。
ただの【可能性】に過ぎないその未来を、依子は存在する事さえ許したくなかった。
依子「(…覚悟を、決めなさい)」
依子「(私の一番、大事なものは何?)」
依子「(エルダーである事? 京子さんの義姉である事?)」
依子「(違うでしょう。私にとって、それらはもう二の次三の次)」
依子「(一番は…)」
京子そのもの。
気づかないほど鮮やかに自身の心を奪った京子を独り占めしたい。
それが例え、京子に嫌われたとしても揺らぐ事はない。
京子さえいれば、自身は幸せで、いなければ不幸になってしまう。
初恋故の盲目なその言葉に、依子はゆっくりと画面をタッチした。
―― パシャ
京子「う…ん…」
依子「っ」
盗撮防止の為の鈍いシャッター音。
同時に広がったフラッシュは、京子のまぶたを貫き、その奥にある視覚を刺激する。
本来あらざるその感覚に、京子の意識はゆっくりと覚醒を始めた。
それを感じ取った依子は心臓をドキリと跳ねさせながら、ギュっと京子に身を寄せる。
京子「…あれ…?お姉さま…?」
依子「ごめんなさい、起こしてしまいましたわね」
京子「いえ…構いません…けれど」
覚醒したばかりの身体が、違和感を訴えて来る。
しかし、鈍い思考はそれを形にする事が出来なかった。
一体、自分の体は何をおかしいと感じているのだろうか。
無為に繋がるだけのその疑問に答えが出る前に、依子は京子へ微笑み掛けた。
っと友人から呼ばれたんでちょっと中断しまーす
今回で良からぬ事まで勧めるつもりだったんですが中途半端で区切ってごめんなさい(´・ω・`)
依子「それより、起きたばかりで申し訳ないのですが」
依子「少しこちらを見てくださいますか?」
京子「一体、何…え゛っ!?」
依子が見せたのはスマートフォンの画面だった。
当然、そこには京子の身体が ―― 女装用のブラをつけた男の体がしっかりと映り込んでいる。
誰でもひと目で自身の正体に気づくであろうそのデータに、京子の眠気は吹き飛ぶ。
一体、こんな写真を何時、撮られてしまったのか。
そう疑問を浮かべる京子は、ようやく自身の状態に気づいた。
京子「い、いや、あの、その…!」
依子「今更、隠しても無駄ですわ」
依子「見ての通り、画像はしっかりと保存してありますし、バックアップも完璧です」
依子「言い逃れなんて許しませんわよ」
瞬間、羞恥心を覚えた京子は両手で衣服を閉じる。
顔を赤くしながら、困惑を見せる京子に、しかし、依子は容赦しない。
ここで手を抜いてしまえば、京子が冷静になってしまうかもしれないのだから。
京子の優秀さを良く知っている彼女にとって、京子が冷静ではない今が勝負どころ。
目的のラインまで押し切ろうと、その顔を暗く染めた。
依子「しかし…残念ですわ」
依子「京子さんが隠し事をしているのは知っていましたが…よもや性別を偽っていたなんて」
依子「正直なところ、天地がひっくり返ったような驚きとショックを覚えました」
京子「…すみ…ません」
ブラフを交えて語る依子に、京子は謝るしかなかった。
こうして写真を撮られてしまった今、誤魔化す事も開き直る事も出来ない。
依子がどれほど自身に対して信頼を向けてくれていたのかを、京子は良く知っているのだから。
ただ、自分の罪を認め、誠心誠意償わなければ。
混乱する頭の中で至ったその答えが誘導されたものだと今の京子は気づく事が出来なかった。
依子「謝って、どうにかなる問題だと思っておりますの?」
依子「これは私だけではなく、京子さんを慕っている全ての者に対する裏切りですのよ?」
依子「これを知ったら…きっと多くのものが京子さんに失望し、幻滅するでしょうね」
依子「私だって…そうならないと言い切るだけの自信はありませんわ」
京子「う…ぅ…」
詰るような依子の言葉に、京子はその顔を歪めた。
こうして偽りの姿を見せ続けていたとは言え、京子は依子の事を本当の姉のように慕っていたのだから。
そんな彼女から嫌われ、こうして強い言葉を向けられている。
自業自得だと分かっていても、それは京子の心を深く傷つけていた。
依子「(あ…あぁ…♪ 京子さんったら…♥)」
そうして浮かべる表情は、依子にとってとても新鮮なものだった。
京子はこれまで頼りがいのあるパートナーとして依子の事を支え続けていたのだから。
こうして傷ついた顔を見せた事などほとんどなく、超然とした姿を崩す事もなかった。
そんな京子がこうして傷つき、弱々しい顔を見せている。
それが自分に嫌われる事を怖がっているからなのだと思うと、依子の胸に暗い悦びが浮かび上がった。
依子「(今すぐ抱きしめてあげたい…♪)」
依子「(抱きしめて…何もかもを許して差し上げたいですわ…♥)」
依子「(甘やかして、蕩けさせて、依存させて…♥)」
依子「(私だけの…京子さんにしてあげたい…っ♪)」
嗜虐心と歪んだ母性。
その二つを同時に刺激された彼女の胸に、強い欲求が浮かび上がる。
元々の計画を何もかも忘れてしまいそうなそれに、しかし、彼女の心は踏みとどまった。
それでは京子と仲良くなる事は出来ても、その心と身体を手に入れる事は出来ない。
今はさらに京子の事を追い詰め、逃げられなくするべき。
傷つけた分は後でたっぷりと癒やしてあげれば良い。
そう自身に言い聞かせた依子は、ジィと促すような目で京子を射抜いた。
京子「……ごめんなさい」
京子「私には…ただ謝る事しか出来ません…」
依子「…と言う事は事情の説明をするつもりもないという事ですのね?」
京子「…はい」
それが一体、何を促しているのか、京子も朧気ながらに理解している。
だが、それに応える訳には ―― 自身の秘密を打ち明ける訳にはいかなかった。
それを伝えてしまったら、春達だけではない。
依子にも迷惑が掛かりかねない事を、京子は良く理解しているのだ。
依子「分かりましたわ。私なりに譲歩したつもりなのですが…それなら致し方ありません」
依子「この写真は全校生徒に広く、知らしめましょう」
京子「そ、それは」
依子「エルダーとして私は全校生徒を護る義務があります」
依子「性別を偽って女の園に入り込んだ事情があるならまだしも、ソレすら教えない殿方の事を擁護出来ませんわ」
京子「…………っ」
依子の言葉は尤もだと京子も思う。
自分が彼女の立場ならば、きっと同じ選択をするはずだ。
しかし、だからと言って、彼女の言葉を肯定する訳にはいかない。
ソレは自身のみならず、彼女の破滅にもなりかねない方法なのだから。
自身の正体を知っただけではなく、大々的に広めて、神代家が依子の事を放っておくはずがない。
下手をすれば、実力行使を伴った報復さえあり得る。
依子「…あぁ、勿論、それだけではありませんわよ」
京子「え?」
依子「京子さんは春さん達と一緒に暮らしているのでしょう?」
依子「ならば、彼女たちもまた共犯者のはずですわ」
依子「京子さんという異物を永水女子に持ち込んだ彼女たちにもまたしっかりと責任を取ってもらわなければいけません」
京子「い、いえ、違います。春達は…!」
依子「言い訳は聞きませんわ」
その破滅を回避する為の思考さえ許されない。
怒涛のように押し寄せる言葉は、京子の事をさらに追い詰めていく。
それを打開しようと放った言葉は、依子にぴしゃりと遮られた。
彼女にとって春達が京子の潜入に関わっているかいないかなどどうでも良い。
ただ、京子からほんの僅かでも妥協を引き出せれば、それで良いのだ。
京子「お願いします…な、何でもしますから…」
依子「っ♥」
そんな依子の前で、京子はベッドから起き上がる。
そのままシーツの上で身体を折った京子は依子に向かって頭を下げた。
土下座。
意地やプライドと言ったものさえ差し出して許しを乞うその姿に、依子の悦びは強くなる。
背筋から這い上がってきたその悦びに、肩までがブルブルと震えてしまうほどだった。
依子「…何でも?」
京子「はい。私に出来ることなら何でも…」
依子「ならば、京子さんの全てを教えてくださいまし」
京子「…それは」
依子「それが交渉に参加するための最低ラインですわ」
依子「出来ないのであれば、ここで交渉決裂です」
依子「今すぐこの画像を知り合いに回しますわ」
京子「う…」
ついさっきまで譲歩の条件だったはずが、交渉参加の条件にすり替わっている。
それに京子は理不尽なものを感じるものの、拒否権はない。
ここで依子の暴走を許せば、自身の大事な人全てが傷ついてしまうのだから。
何としてでも、依子を止めなければいけない。
躊躇う自分にそう言い聞かせながら、京子はグっとシーツを握りしめた。
京子「…分かり…ました」
依子「ならば、顔をあげてくださいまし」
依子「そのような状態では落ち着いて話も出来ませんわ」
京子「…はい」
短く応えた頃には、京子の覚悟も決まっていた。
ここでヘタレたり、小細工を弄しようとすれば、間違いなく状況が悪化する。
ここは諦めて、自身の持つ情報全てを、依子に伝えた方が良い。
そう思った京子はそっと顔をあげて。
依子「えぃ♪」
京子「うぇ!?」
その瞬間を狙って、依子が身体を潜り込ませる。
自身の膝に対して垂直に腰掛ける彼女に、京子は驚きの声を禁じ得ない。
なにせ、ついさっきまで依子は不機嫌かつ頑なだったのだから。
こんなスキンシップを取られるほど状況が改善したとは京子は思えなかったのである。
依子「抵抗は許しませんわよ」
京子「い、いや、でも、あの…私は男性で…」
依子「勿論、それくらい存じ上げていますわ」
依子「…こんなに逞しい胸をしているんですもの」
依子「今更、京子さんの事を女性だなんて思ってはいません」
京子「ぬぉ…」
言いながら、依子は京子の胸をそっと撫でた。
さっきは触れられなかった硬く、逞しい胸板に、依子の胸はドキドキする。
しかし、ソレ以上にドキドキしているのは当然、京子の方だ。
突然、胸を、しかも、色っぽい手つきで撫でられて童貞の京子が我慢できるはずがない。
ついつい情けない声をあげながら、身を固くしてしまう。
依子「それに…私は京子さんと…殿方と同衾したのですよ?」
依子「これくらい今更ではありませんか」
京子「それは…そうですけれど」
依子「なら、つべこべ言わないでくださいまし」
依子「それとも…そうやって時間を稼ぐのが目的ですか?」
依子「ならば、私にも考えがありますわよ」
京子「考えって…むぐ!?」
一体、何の事ですか。
そう放つはずだった唇は悪戯っぽい顔をした依子によって塞がれる。
自身の膝に居座った上、不意打ちとなったそのキスに京子の思考は真っ白になった。
目の前で起こっている状況を理解できず、目を白黒とさせる京子に、依子はそっと手を回す。
そのまま京子の頭を抱きしめるようにして捕まえた依子は初めての交歓に胸踊らせ続けた。
依子「ふふ。まずは一つ…ですわね♥」
京子「お、お姉さま、何を…?」
依子「何って、手始めに京子さんとのキスの味を教えてもらっただけですわ」
京子「き、キスの味って…!?」
依子「全てを教えると、そういう約束だったでしょう?」
依子「当然、それは京子さんの事情だけではなく、ファーストキスの味も含まれていますわ…♥」
無茶苦茶だ、と京子は思う。
だが、キスの間に濡れた依子の瞳は、その正論を封じ込める。
普段よりも艷やかで色気のあるその目に、京子は魅入られ始めていた。
依子「でも、これではまだまだ足りませんわ…♥」
依子「もっともっと…素敵な事を教えて貰わなければ許しませんわよ…♪」
京子「ま、待ってください、落ち着いて話を…!」
依子「却下、ですわ♪」
間違いなく、今の依子はおかしい。
まるで夢魔でも憑いているかのように積極的に迫ってくる。
普段の意地悪好きながらもおしとやかな彼女からは想像もつかないその姿に、京子は何とかストップをかけようとする。
だが、今更、依子がそんなもので止まるはずがない。
京子の姿をデータにした瞬間、依子の心からブレーキがなくなってしまったのだから。
今の彼女の心にあるのは、陶酔と興奮。
そして京子の事が欲しいと言う強い欲求だけだった。
依子「次は…こっちの方も教えて貰いますわよ…♥」
京子「お、お姉さま…!? そ、そこは…!!」
依子「知ってますのよ。ここ…さっきからガチガチなんでしょう?」
依子「寝ている間にこんなに大きくするなんて…なんてスケベな方なのかしら…♥」
当然、その行動もエスカレートしていく。
心の中の欲求と感情の突き動かされた彼女は、京子の下半身に手を伸ばした。
そのままナデナデと撫でるのは、京子にとってとても敏感な場所である。
起きる前からずっと変わらずに勃起し続けていた部位への刺激に、京子は困惑を強めた。
依子「京子さんがこんなに淫乱だなんて…正直、幻滅致しましたわ…♥」
依子「ですが、私はエルダーであり、永水女子の生徒会長でもあるのです…♪」
依子「こんなケダモノのようなオチンチンを放っておく事は出来ませんわ…♪」
依子「京子さんの毒牙が皆に届かぬよう、私の身体で…しっかりと処理してさしあげます…♥」
京子「そ、それって…!?」
性行為。
それを示唆する言葉に、京子は目を見開いた。
依子の様子がおかしいのは分かっていたが、よもや、そこまで行くとは予想していなかったのである。
流石に止めなければまずい。
しかし、弱みを握られた自分に拒否権はない。
袋小路に近い状況を打破する方法を、京子は見出す事が出来なかった。
依子「(京子さんの性格は私も良く分かっていますわ)」
依子「(責任感の強い貴方は、抱いてしまった女性を無碍には出来ないでしょう)」
依子「(しかも、初めてで、尚且つ想いを重ね合ったものではないとなれば)」
京子は一生、負い目を抱える。
自身に逆らえず、何でも言う事を聞く奴隷になるはずだ。
その為には自身の処女を代償にする事になるが、依子に躊躇いはない。
依子にとって、京子は自身の全てを賭けても尚、手に入れたい至宝なのだから。
愛した相手に貞操を捧げるだけで、手に入るならば安いもの。
胸中に浮かぶその言葉に、依子はニコリとメスの笑みを浮かべて。
依子「さぁ…私に隠し事していた悪い子に…オシオキする時間ですのよ…♥」
―― 良心を刺激するその言葉に、京子は抗えず、結局、流されるまま、依子と関係を結んでしまうのだった。
京子「ふぅ…」
京子が依子から解放されたのは、次の日の夜だった。
元々の予定を大幅にオーバーしての帰還は、当然、依子が京子を離すのを渋ったからこそ。
初体験の後に京子の事情を知り、神代家の闇に触れた彼女にとって、そこは敵地も同然だったのだから。
歪んでいるとは言え、母性すら感じる愛しい相手を、帰らせたくはない。
そう訴える彼女を何とか宥めすかし、帰った後には、春達への説明に追われる。
依子との一夜はとても素晴らしいものだったが、その疲れと影響は二日後の朝 ―― 月曜日にまで残っていた。
春「どうかした?」
京子「う、ううん。なんでもないわ」
しかし、それを素直に春達へと伝える事は出来ない。
基本的に春達は自身の味方だが、それは神代家の利益に関わらない場合のみなのだから。
依子に正体がバレた事を知れば、間違いなく両家の間で抗争が起きる。
それを避ける為には、依子の事を隠し続けるしかないだろう。
学校以外では四六時中、六女仙の誰かが側にいる京子にとって、それは決して小さくはないストレスだった。
春「…なら、良いけど」
小蒔「疲れているなら、またハグしてあげましょうか?」
明星「ひ、膝くらいなら貸してあげますよ」
湧「じゃあ、あちきはナデナデしてあぐっ」
京子「……えぇ。皆、ありがとう」
そんな自身に春達は心配の言葉を投げかけてくれる。
それがまた京子の良心をキリキリと締め上げ、痛みを覚えさせた。
だが、それを表に出してしまえば、余計に心配させるだけ。
ここは意地でも何でもないように振る舞うべき。
依子「おはようございます、皆様」
依子「今日も良い朝ですわね」
京子「え゛っ」
京子がそう自身に言い聞かせた瞬間だった。
通学路の途中に依子が現れ、京子たちへとにこやかな笑顔を見せる。
瞬間、京子が濁った声を漏らしてしまうのは、昨日の出来事が強く心に残っているからこそ。
初めてであったのが嘘のようにセックスへとドハマリした依子は昼夜を問わず、京子の事を求め続けたのだから。
急速にメスとして目覚めていった彼女の痴態が自然と脳裏に浮かんでいた。
京子「(や、ヤバイ…ムスコが…)」
以前の京子ならば、それを抑える事が出来ただろう。
だが、今の京子は童貞を失い、性欲を押さえ込んでいた理性のタガも大きく緩んでいるのだ。
元々、性欲が強いのもあって、下着の中でムスコが大きくなっていく。
それを感じ取った京子は思わず前かがみになって。
依子「あら、京さん、どうしましたの?」
春「京さん…?」
依子「えぇ。この前のお泊り会で、とっても仲良くなりましたから」
依子「いい機会ですし、愛称で呼ぼうと提案したんですの」
当然、それは嘘だ。
依子がその呼び方を変えたのは、人前で京子の本名を呼ぶ事が出来ないからこそ。
さりとて、今更、偽りの名を口にする気にもなれず、こうして違和感を与えない新しい愛称で解決したのだ。
しかし、彼女はその偽りを、おくびにも出さない。
京子によって道を踏み外してしまったとは言え、依子も立派なエルダー。
腹芸の一つくらいは容易くこなす事が出来る。
眠い……>>1が投下終わるまで待とうと思ったけど無理そう
描いたのでよかったらどうぞ
フリーなんでお好きに使って下さい~
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira122325.jpg
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira122326.jpg
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira122327.jpg
依子「それはさておき、京さん、大丈夫ですの?」
依子「体調が悪いのですか?」
京子「い、いえ、大丈夫です、お姉さま」
依子「そうですの。ですが、やっぱり心配ですわ」
依子「そうだ。私の腕に捕まってくださいまし」
依子「私が京子さんを学校まで運んで差し上げますわ」
明星「え?あの…?」
一人で勝手に話を進める依子に、明星は困惑の声を漏らす。
そもそも、ここは依子の通学路からは大きく外れているのだ。
にも関わらず、一体、どうして依子が、さも偶然のようにこの場に立っているのか。
ましてや、京子を強引に連れて行こうとするその様子が彼女には理解出来ない。
それは明星の知る家鷹依子とはまったく結びつかない行為だった。
依子「勿論、断っても良いですけれど…」
京子「断るはずないじゃありませんか。喜んでお受けいたします」
依子「ふふ。良かった」
湧「キョンキョン…?」
そんな彼女に京子が否と言えるはずがない。
一晩経って、その関係も先に進んだが、未だ京子は弱みを握られたままなのだから。
その表情を意図的に明るくしながら、依子と腕を組む。
まるで恋人同士のようにしっかりとしたそれに依子は笑みを浮かべ、湧は困惑の顔を見せた。
依子「そういう訳で、京さんは預かっていきますわね」
小蒔「あ、あの、でも…」
依子「大丈夫ですわ。エルダーであり、京子さんとスールの契を結んだ私に任せてくださいまし」
小蒔「…………は、ぃ」
そのまま小蒔達に背を向ける依子に、小蒔は寂しそうに肩を落とした。
京子の隣に立って、共に学校へと向かう時間は、小蒔にとってとても大事なものなのだから。
それを理不尽かつ強引に奪われたとなれば、納得出来ない気持ちも浮かんでくる。
しかし、京子が依子の提案を受け入れた時点で、自分たちに口を挟む理由はない。
ましてや、エルダーやスールの契を口にされては見送る以外になかった。
依子「……ふふ♥」
春「……」
そんな彼女たちに依子は一瞬だけ振り返る。
後ろで足を止める小蒔達を一瞥するその視線には勝ち誇ったようなものが浮かんでいた。
それが一体、何から来ているのか春は分からない。
しかし、依子は間違いなく、自分たちにとっての敵になった。
その実感と怒りに、彼女はギュっと握り拳を作って。
ってところで眠気もマッハなので寝ます(´・ω・`)明日は完結までやりたい
そして依子はアヘりまくってはいますがまだ堕ちてません
つか、今の京ちゃんは流されっぱなしで堕とす意図はないですし、未だ暴走中です
そして支援絵ありがとうございます!!!!!!
ここでまた支援絵貰えるとは思わなかったで本気で変な声出ました!!!!
とりあえず今日は眠いので感想とかはまた明日書きます(´・ω・`)ゴメンネ
乙
これ長編なら自分がしてる弱み握って支配して、ってやり方が京ちゃん苦しめてる神代家と同じ事してるんだ、って後から気付いて自己嫌悪、そこから今更な遠慮が起きて関係が拗れるパターンですね
オリキャラが原作キャラに敵意持って好き勝手やり始めるとか
ヘイトSS一歩手前だな
これでチン負けしてハーレム入りとか京子取られる等
永水勢を踏み台にするとかマジでやめろよ
読む前は、男バレしても素直に受け入れてイチャイチャするもんだと思ってたが、斜め上だった
堕ちてないとは言うがその片鱗は十分に見せつけてるじゃないですか
>>960
ひゃあ!新鮮な支援絵だー!!!!
しかも、今回はSDですよSD!!!
京子verは巫女服と裾を抑えるようなポーズもあって、落ち着いた淑女って感じですねー
目元がちょっと鋭いのと、表情が悪戯っぽく見えるのもあって、狐っぽいイメージも受けました(´・ω・`)多分、後ろにこっそり尻尾生やしても違和感がない
なんというか「あらあら」よりも「クスクス」の方が似合いそうな巫女さんですね
こんな巫女さんが神社にいたら、男性だけじゃなく女性にも人気が出そう
そして、京子会いたさに毎日用もないのにお参りする人とか出てきそう(´・ω・`)つーか私は行く
京太郎verの方は京子とは違って活発な男の子オーラが出てます
顔のパーツなんかは京子とほぼ変わってないのに、ここまで男の子感出せるのは凄いなぁ
と言うか、SDだから分かりにくいですが、京ちゃん学ラン上まで止めてないんですけど!!!!!!
これは誘ってますね間違いない(´・ω・`)黒糖賭けても良い
それと同じくらい目を引かれるのは股間のビッグさですね
ここまで強調されているという事は、やっぱりビッグマグナムなのか…!?(ゴクリ)
両方ともとても可愛く、すぐさま保存してウヘヘヘしております
個人的には最後の二人並んだverが一番好きですねー
一見、お淑やかで悪戯好きそうな京子と、活発で明るそうな京太郎は対象的に見えますし
これが本当は双子や兄弟なんかじゃなく、同一人物なのだと思うと妙にニヤニヤします
素敵な支援絵、本当にありがとうございました!!!!(´・ω・`)そして願いを言うが良い、このスレじゃ無理だけど他のスレで叶えられるよう努力します
>>961
既に淑女としての道踏み外してエロエロになってますけどね!!!
理性投げ捨ててまで手に入れたかった相手との相性が抜群だったからね、仕方ないね
>>966>>968
すまない…残り30レスでそれを纏めきれる気がしなくてすまない…
それもすっごく面白そうで心惹かれはするんですけどねー…(´・ω・`)オリキャラの話を延々とやるのもアレなので
ただ、中編扱いとは言え、一応、決着つけるまで書くつもりです
>>967
ヤバイ、否定出来ない…
が、依子側の感情を考えると、私にはコレ以外に出てきません(´・ω・`)ぶっちゃけ神代家に組みしてる時点で、依子からの印象最悪ですし
ただ、永水勢を踏み台にするような話の展開にはなりません
春達はコレ以降出てきませんし、何より、今回は男バレして云々って話なのでそこまで書くつもりはないです
>>968
斜め上に定評のある私だからな!!!(ドヤァ)
まぁ、真面目な話、イチャイチャして終わり、とかだと山もオチもないような気がするのですよね
それなら最初から男バレしてた前提で書いたほうが良いかなーと(´・ω・`)それに淑女だった依子が、京子の所為で狂っていくところも書きたかったんや
そして主導権は完全に依子の方が握ってるので、まだ堕ちてません
身体は順調に堕ちていっているけどな!!!!!
京子「ふ…っ」
「きゃー!!!!」
午前最後の授業は体育であり、京子の独壇場でもあった。
溜め込んだストレスを発散するように、京子はは大きく跳ね、素早く動く。
最早、並の女生徒では相手にならないその活躍に、黄色い声援があちこちからあがった。
エルダー候補でなくなり、スールの枠も埋まったとは言え、京子のファンがいなくなった訳ではない。
時の人扱いではなくなった後も、京子に並々ならぬ情熱を向ける少女たちは根強く残っていた。
依子「……」
そんな彼女たちの声が依子は面白くない。
身体だけとは言え、京子と結ばれた今、愛しい義妹は自分のモノだと言う意識が強くなっている。
以前は軽く流せたその声援も耳障りで仕方がなかった。
依子「(でも、皆は知りません)」
依子「(京子さんの本当の姿も…そして人との接触を極端に避けようとする理由も)」
依子の視界の中で、京子の動きがねじ曲がる。
慣性を完全に無視し、直角に動いたその身体に、前に立っていた女生徒は反応できない。
あっという間にその背を抜かれ、また一つ敵陣へと切り込んでいく。
鮮やかなその手腕は、しかし、決してスマートなものではない。
京子ならば、もっとギリギリを狙って、上手くすり抜ける事が出来ただろう。
それをしなかったのは、京子が万が一にも他人と接触する訳にはいかないから。
秘密がバレてしまう事を、京子は何よりも恐れているのだ。
依子「(知っているのは神代の人たちと…)」
自分だけ。
その優越感は決して小さいものではなかった。
胸の奥に根ざした不機嫌さが蕩け、ゆっくりと小さくなっていくのが分かる。
しかし、だからと言って、京子の事を許す気にはなれない。
また一つ点数を取った京子はにこやかな顔で、声援を送る少女たちに応えているのだから。
自分以外にそんな顔を見せる悪い子にはオシオキが必要だ。
そう思いながら、依子は淡々と授業を受け続ける。
「はい。じゃあこれで授業は終了ね。お疲れ様」
依子「京さん」
京子「あ、お姉さま」
授業の終了を狙って、依子は京子へと声を掛ける。
それに応える京子は、一瞬、驚きと気まずさを顔に浮かばせた。
そんな京子に気づきながらも、依子は言及する事はない。
ただニコリと朗らかな笑みを浮かべながら、京子の方へと近寄っていく。
依子「実は今日の片付け当番の子が昼休みに用事があるらしくて」
依子「代わりに変わったのですけれど、一人ではちょっと大変そうですの」
京子「あぁ、それならばお手伝い致しますよ」
依子「ありがとうございます。助かりますわ」
京子は未だ依子に対してのアクションを決め兼ねている。
自身を脅迫という依子らしからぬ外道に出た彼女を、一体、どうすれば良いのか分からないのだ。
だが、それでも、困っている依子を放ってはおけない。
人手が必要ならば自分の出番だと、自分から手伝いを申し出る。
依子「…これで終わったかしら?」
京子「そうですね。お疲れ様です」
依子「えぇ。京さんもお疲れ様ですわ」
依子「お陰で助かりました」
京子「いえ、これくらい当然の事ですから」
数分後、二人は体育倉庫に最後のボールを片付けた。
後は教室に戻って着替え、再び依子と何時もの場所で待ち合わせるだけ。
そう思う京子とは裏腹に、依子は倉庫の扉前から動かない。
まるで通せんぼするかのように扉を背にし、ゆっくりと京子へと近づいていく。
依子「…でも、だからと言って、私、許しませんわよ」
京子「え…?」
依子「私以外の子にデレデレして…本当にスケベなんですから」
依子「昨日、アレだけエッチしたのに…まだ足りませんのね…♥」
京子「え、い、いや、違…!?」
依子「言い訳は聞きませんと言ったはずですわよ…♪」
当然、京子にそんなつもりはまったくない。
声援に応えていたのも、人に違和感を与えたり、孤立したりしない為だ。
そもそも、そんなのは毎日だったのに、どうして今日だけそれを責められているのか。
理不尽な彼女にそんな言葉が浮かび上がるものの、依子の事を拒む事は出来ない。
自身よりも弱い細腕にズルズルとおされ、置いてあったマットの上に押し倒されてしまう。
依子「私、京さんの性欲を甘く見ていましたわ…♪」
依子「一日一回では京さんは物足りませんのね…♥」
依子「なら、間違いを犯さないよう…時間がある時は京さんの事を搾り取って差し上げなくては…♥」
依子「他の生徒に手を出したりしたら、大変ですものね…♪」
京子「あ、あの、せめて着替えた後で…!」
京子「私、今、きっと臭いですから…!!」
依子「あら、そんなの気にしているんですの?」
依子「でも、安心してくださいまし。京さんの匂いはとっても素晴らしいですから…♥」
依子「私も…昨夜の情事を思い出して火照ってしまいますわ…♥」
するにしても、せめて着替えをさせて欲しい。
そう訴える京子に、依子が耳を貸す事はなかった。
彼女にとってその匂いは自身の興奮を掻き立てるフェロモンでしかないのだから。
スンスンと鼻を動かす度、京子の一部が自分のモノになっていく。
その悦びに笑みを作りながら、依子は京子の股座に顔を埋めて。
依子「まずは三…いえ、五回は射精して頂きますから」
依子「覚悟してくだふぁいまひね…♥」
京子「ふぁぁ…」
言いながら依子は京子の服を脱がし、露出した肉棒を口に含んだ。
昨夜、嫌というほど味わった粘膜の感触に、快楽神経が反応する。
自然、ヤる気がなかったはずの肉棒は依子の口の中でどんどんと大きくなっていって ――
依子「ん…♥ ふぁあ…♪」
京子「ん…お姉さま…ぁ」
昼休み。
二人は何時もの場所で昼食を共にしていた。
だが、その姿勢も雰囲気も何時ものものとは全く違う。
普段、お互い隣り合って座る二人は、今、身体を重ねるようにして向き合っていた。
京子「こ、コレ…流石にマズイですよ…」
依子「ふふ…♥ 大丈夫ですわ…♪」
依子「ここにいるのは初心な子ばかりですもの…♥」
依子「京さんのオチンチンが、私の中にずっぽり入っているなんて想像すらしませんわよ…♪」
俗に対面座位と言われるその体位は、二人の結合部を完全に隠していた。
だが、それでも性器から伝わってくる快楽がなくなる訳ではない。
依子の顔は快楽に蕩け、メスの表情を隠そうともしていなかった。
その上、腰をクチュクチュを揺れ動かすのだから、京子も我慢出来るはずがない。
諌めるその声にも、ついつい快楽を浮かべてしまう。
依子「それよりほら、あーんしてくださいまし…♥」
京子「あ、あーん…」
依子「ちゅぅ…♪」
学校の中で依子とセックスしている。
それだけでも頭がクラクラしそうなほどの背徳感を感じるのに、口移しで昼食を流し込まれるのだ。
まるで世界の常識が書き換わってしまったようなそのシチュエーションに、京子は興奮を隠しきれない。
一口分を流し込まれる度、ねっとりとしたディープキスをされるのも相まって、肉棒に熱が溜まっていく。
京子「ん…あぁ…お、お姉さま…っ」
依子「ふふ…♥ イっちゃいそうですのね…♪」
依子「私の中で京さんのオチンチンがビクビクしてるのがわかりますわ…♥」
そんな京子から、依子は離れる事はなかった。
寧ろ、早くイかそうとばかりに腰の動きを激しく、そして淫らにしていく。
クチュクチュクチュと粘ついた水音が連続するその腰使いに、京子の身体が否応なく昂ぶっていった。
依子「良いですわよ…♥ このまま…たっぷり膣内射精してくださいまし…♪」
京子「で、でも、それは…!」
依子「昨日から含めて、もう数え切れないほど私に射精しているのですよ…♥」
依子「膣内射精を気にするなんて…今更過ぎですわ♥」
京子「あ…あぁぁ…っ」
依子の目的は、京子の何もかもを手に入れる事だ。
例え、ゴムであっても二人の間を分かつものは許したくないというのもあって、昨夜からずっと生挿入かつ膣内射精を要求していた。
それに否と応えなくてはいけないと分かっていながらも、京子の身体は、心は快楽に流されてしまう。
依子「京子さんになら…孕まされても良いですから…♥」
依子「気持ちよく…びゅーびゅーしてくださいまし…♪」
京子「おねえ…さま…!」
依子「んんんんんっ♥♥♥」
自身を呼びながらの京子の射精。
それはずっと軽い絶頂を繰り返していた依子の意識をより高いところへと突き上げるものだった。
俗にマジイキとも言われるそれに依子は全身を震わせ、快楽に身悶えする。
自分は今、京子に、【京太郎】に種付けされ、メスになっている。
その悦び混じりの絶頂は、何度、味わっても色褪せる事はない。
その身体がどんどんと淫らに開発されているのも相まって、京子の射精はその度に依子を虜にしていた。
依子「はぁ…♪ はぁ…あ…♥」
依子「ふふ…♥ 今回も…凄まじい勢いでしたわ…♪」
依子「食事が終わる前に…お腹が膨れそうなくらい…♥」
京子「う…うぅ…」
お互いの絶頂が一段落した頃合いに、依子はうっとりとした声を漏らした。
陶酔と幸福感で満たされたそれは、聞いているだけでもドキリとさせられてしまう。
しかし、京子の口から漏れ出るのは、興奮の声ではない。
また流されて、膣内射精してしまったという後悔の声だった。
依子「…でも、まだこれで満足してはいないでしょう?」
依子「京さんのオチンチン…まだまだガチガチですものね…♥」
依子「私に膣内射精したくて貯まらないって…言ってますわ…♥」
依子「だから…私、ちゃんと付き合ってあげますから…♪」
依子「お昼休みが終わるまで…ずっとこうして京さんのオチンチンを処理してあげますから…♪」
依子「…他の女の子に目移りなんて許しませんわよ……♥」
そんな京子の上で、依子は再び腰を揺すり始める。
昼休み前から合わせて、既に十回近く射精しているはずなのに京子の肉棒はまったく萎えないのだから。
まるでオスの本能をむき出しにするようなそれを、依子は放っておけない。
自分以外のメスから興味をもたないようにと釘を刺しながら、絶頂に膣肉を締めつけて。
京子「……失礼します」
放課後、京子は依子に生徒会室へと呼び出されていた。
当然、弱みを握られている京子にそれを拒む術はない。
春達が先に帰るように言ってから、こうして重い足取りで生徒会室を訪れた。
依子「あぁ。京子さん。適当なところに座っておいてくださいな」
依子「もうちょっとで作業が終わりますから」
京子「はい。分かりました」
そんな京子を出迎えたのは、依子一人だけだった。
他の生徒会役員達の姿はなく、一人で黙々と書類仕事に没頭している。
何時もと同じその真剣な表情が、京子にはとても懐かしい。
昨夜から依子が京子に向けるのは、独占欲と暗い悦びに満ちたメスの顔ばかりなのだから。
久方ぶりに元の依子に戻ってもらえたような気がして、目尻に涙が浮かびそうになる。
依子「もう。何ですの、そんなにジロジロ見て」
京子「あ…ごめんなさい」
依子「いえ、責めている訳ではありませんわ」
依子「ただ、そんなに見られると、私、興奮しちゃいます…♥」
京子「え…?」
だが、それは一時の夢でしかない。
依子は既に道を踏み外してしまったのだから。
体の相性も抜群なのも相まって、性交の度に快楽を深く刻み込まれている。
そんな彼女が、京子に見つめられて我慢出来るはずがない。
その頬に紅潮を浮かべながら、そっと椅子から立ち上がる。
依子「出来れば、作業が終わってから…と思っていましたけれど…♪」
依子「でも、今日のコレは急ぎのものではありませんし…♥」
依子「家に帰ってからでも十分、間に合いますものね…♪」
言い訳の言葉を口にしながら、依子はそっと扉に近づく。
そこでガチャンと鍵を回せば、それでもう生徒会室は密室だ。
鍵を持つ依子が中にいる以上、教諭でもなければ入る事は不可能。
その上、永水女子は防音設備もしっかりしていて、よほど声を荒上げなければ声が漏れる事はない。
依子「(後は電気を消せば…私達の存在がバレる事はほぼありませんわ…♪)」
依子「(つまり…ここでならば、時間の制約以外を気にせず、京さんと睦み合う事が出来る…♥)」
依子「…ふふふ♥」
依子は、今日一日で二度、京子と肌を重ねている。
だが、あまりに身体の相性が良すぎた彼女は、それで満足出来ないのだ。
京子の心を未だ手に入れられていないという焦りも相まって、身体が心が京子との情事を求めてしまう。
そして彼女の理性は、そんな自分を抑えようとはしない。
寧ろ、嬉々としてその背を押し、椅子に座った京子に身を寄せる。
依子「…コレから私は京さんに何をすると思いますか?」
京子「そ、それは…」
依子「…勿論、セックスです…♥」
依子「京子さんが…神代さんのところで暴走したりしないように…♥」
依子「明日の朝、私の朝が処理してあげるまで頑張れるように…♪」
依子「いぃっぱいいっぱい…ドピュドピュして差し上げますわ…♥」
京子「うく…っ」
首筋を舐めながら囁く依子の声はドロドロになっていた。
どれほどこの場に居座ろうとしても下校時間を超える事は出来ない。
どうしても後数時間で京子と別れてしまわなければいけないのだ。
その後、半日ほど会えない寂しさは、依子の心に独占欲を浮かばせた。
依子「さぁ、服など脱いで…♥ カツラも外して…♪」
依子「素の私たちに…ケダモノの私たちになりましょう…♥」
出来れば、京子を神代の元へと帰したくはない。
だが、依子は京子の心を手に入れる事は出来ず、また身体を独占する準備も整っていないのだ。
今のまま事を進めたところで、最悪の未来が待っているだけ。
そうならないようしっかりと準備が整うまで、我慢しなければいけない。
逸る心にそう言い聞かせながら、依子は京子の服を脱がせて ――
………
……
…
依子「ふふふ…♥」
それから数週間、依子はとても上機嫌だった。
京子との情事は今も変わらず続き、また身体の相性はさらに良くなっているのだから。
挿入れただけでマジイキさせられる事も多く、途中で息も絶え絶えになってしまう。
だが、そんな彼女に変わって、最近は京子も積極的に動いてくれるようになったのだ。
心はともかく、身体は間違いなく堕ち始めている。
その実感に依子は一人、生徒会室で笑みを浮かべた。
依子「(この分なら京さんの心を手に入れるのもそう遠くないかもしれませんわね…♥)」
依子「(そうなったら、どうしましょうか…♪)」
依子「(やはり…両親に再び紹介するべきかしら…♪)」
依子「(将来を誓いあった…最愛の人です…なんて…♥)」
無論、依子もそれがどれだけ難しい事か良く理解している。
京子は戸籍もなく、また後ろ盾と呼べるものもまったくないのだから。
両親は自分に惜しみない愛を注いでくれたが、名家の出でもない京子との結婚を認めてはくれないだろう。
そう理解しながらも、依子の妄想は止まらない。
順調過ぎる今の状況に、彼女は願望を強めていた。
京子「…私、全てを話します」
依子「…………え?」
―― だからこそ、その落とし穴に気づかなかった。
願望混じりの未来を心のなかに描いていた彼女は、何時も通り京子を迎え入れ、扉に鍵を締めた。
そのまま身体をすり寄せ、事に及ぼうとする依子に、京子はポツリと言葉を漏らす。
小さいながらも、決意の色が込められたそれを依子は最初、何かの間違いだと思った。
それは何とか秘密を護ろうとする京子にとって、自爆に等しい事なのだから。
どうしてそんな事をしようとするのか、依子はまるで理解出来ない。
依子「…何を、言っていますの?」
依子「全てだなんて、そんな事をしたら…」
京子「はい。私の名誉は地に落ちるでしょう」
京子「外で生きていく事は、きっともう出来ません」
京子「でも、これならば、流出する情報をコントロールする事が出来ます」
京子「春達は俺に騙されていたのだと…そう皆に信じ込ませる事が出来ます」
依子「あ…」
この場における情報の真偽はさほど重要ではない。
先に京子から、皆を騙していたのだと告白した。
その事実が、春達に向けられる疑いの目を緩め、彼女たちを護る事になる。
同時に自分から打ち明ける事によって、依子の握っていた鬼札はブタ同然になるのだ。
つまり、京子はこれ以上、自分に従う理由がない。
完全に自分の元に繋いだはずの鎖が完全に砕かれてしまった。
依子「ば、馬鹿な…馬鹿な事を…!」
依子「そうやって自分だけ泥をかぶって、一体、何になるんですの…!?」
依子「神代の家に…それだけの義理はないはずでしょう…!!」
京子「えぇ。ありません。…でも、春達は別なんです」
京子「彼女たちがいなければ、私はきっと心折れていたでしょうし」
京子「彼女たちが私に抱いてくれているものも、私が彼女たちに抱いているものも決して偽物じゃないんです」
京子「どうしても…彼女たちの事を見捨てられません」
依子「っ」
その恐怖に、依子は声を荒上げる。
普段の彼女らしからぬその声に京子は静かに応える。
まるで揺らぎを感じられないそれに、依子は思わず息を呑んだ。
その声は京子の決意だけではなく、彼女たちへの想いの強さを感じさせるものなのだから。
神代に属する全てを敵だとそう思い込んでいる彼女にとって、驚きを感じるものだった。
依子「だったら…ずっとこのままで良いではありませんか」
依子「京さんが私に従っていてくれれば、私も口を噤んでいますわ」
依子「それとも…」
私を抱くのはそんなに嫌なのですか?
その言葉は依子の口から出る事はなかった。
希望的な願望に未来を彩らせていたとは言え、依子は自身が脅迫者である事を忘れてはいない。
普通に考えれば、ここで嫌と返ってくるだろう。
だが、それは自身の心にトドメを刺す言葉でもあるのだ。
勢いで喉元まで出かかったそれを、依子はぐっと奥まで押し戻した。
京子「…それに私はお姉さまの事も大事なんです」
依子「え…?」
京子「アレからずっとお姉様は避妊をしてくださいません」
京子「今はまだ子どもができていないというお話ですけれど…この関係がずっと続けば、きっと出来てしまうでしょう」
京子「ですが、私はお姉さまに対して責任を取れません」
京子「…【須賀京太郎】はもうこの世にはいないのですから」
京子「お姉さまが私生児を産んだなどという誹りを受けるなんて嫌なのです」
依子「京…さん…」
京子が決意したのは、春達を守りたいからだけではない。
自身を脅迫している依子に対する想いも深く関係していた。
元々、京子は情深く、また依子が考えているとおり、責任感の強い性格なのだから。
自身の所為で道を踏み外してしまった依子を悪しように思ったりはしていない。
寧ろ、身体を重ねた分、情が深くなり、向ける想いも変化しつつあった。
京子「ですから、私は今日でお姉さまとの関係も、須賀京子も終わりにします」
京子「…決断するのが遅くなってごめんなさい」
依子「あ…ぅ…」
終わり。
それは依子にとって、世界が終わったに等しいものだった。
京子を手に入れる為だけに、依子は自身の全てをベットしていたのだから。
その賭けに敗北し、京子を失うという現実に、世界が色を失っていく。
ついさっきまで幸せだった気持ちが嘘のようなその変化に、依子の身体はフラリと揺れた。
依子「(そんな…嘘…嘘でしょう…?)」
依子「(こんな…こんなのって…何かの間違いですわ…)」
依子「(だって、つい昨日まで京さんは私の事を抱いてくれて…幸せで…)」
依子「(それがこんなに唐突に終わってしまうなんて…)」
京子「…では」
依子「あ…」
信じられない。
いや、信じたくはない。
そう思う依子の前で、京子はそっと踵を返した。
そのまま扉から出ようとする京子に、依子はもう我慢出来ない。
京子を失いたくないという一心でその背中にすがりつく。
依子「行かないで…!」
京子「…お姉さま」
依子「好きなんです…!本当に…本当に好きなんですの…!!」
依子「ずっと前から…京さんが殿方であったと知る前から…!」
依子「貴方の事を愛していたんです……!!」
その言葉に打算はない。
今の依子は混乱し、秩序だった思考を紡ぐ事さえ出来ないのだから。
これで終わりだなんて認めたくはない。
子どものダダのような感情のまま、彼女は愛を口にし、京子を抱きしめる。
依子「でも、貴方はどうしても手に入らなくて…私以外に好きな人がいて…」
依子「だから…わ、私…馬鹿な事を…酷い事をしてしまいましたけれど…!」
依子「でも…本当なんです…!!」
依子「許してくださいなんて言えませんけれど…」
依子「でも…お願いします…思いとどまってくださいまし…!」
依子「何でも…何でもしますから…!」
依子「だから…どうか…どうか…私の元からいなくならないで…………」
京子「……」
必死なその言葉に、京子は何を言えば良いのか分からない。
彼女の好意には薄々気づいてはいたものの、よもやこれほどのものとは思っていなかったのだ。
ダメだと分かっていても道を踏み外すほどのその想いを伝えられて、京子の決意も鈍くなる。
何より。
京子「(し、静まれ…俺のムスコよ…!!)」
京子「(今はシリアスな場面だから!! 勃起していいところじゃないから!!)」
セックスによって開発されたのは依子だけではない。
色を知った京子の身体もまた、依子に対して敏感になってしまっているのだ。
抱きしめられただけで興奮が胸中から浮かび上がり、下半身でムスコが自己主張を初めてしまう。
あまりにも情けなさ過ぎるその反応に、京子は歯を食いしばって耐えようとするが。
依子「性欲処理の道具で構いません…」
依子「いえ…寧ろ、これまで私がしていた事を償う為にそう扱ってください…」
依子「私、誠心誠意、京さんに…いいえ、ご主人様に尽くしますから…」
依子「だから、どうか私をお側においてくださいまし…」
京子「う…」
ご主人様。
これまでの関係を完全に反転させるその言葉に、京子は思わず呻き声をあげてしまう。
今までずっと受け身ではあったものの、元々、京子は嗜虐的な性質の持ち主だ。
自ら傅こうとする美少女の言葉に、どうしても興奮と欲情が強くなる。
そんな京子の心境を、依子が見通せぬはずがない。
今まで積み重ねてきた経験から、京子の興奮を感じ取った彼女はスリスリと胸を押し付ける。
決して大きくはない、しかし、しっかしと自己主張をする柔らかなその双丘に、京子の決意は完全に砕かれた。
京太郎「…俺、戸籍上、女だし、結婚できませんよ」
依子「同性婚を認めてるところは世界中、沢山ありますわ」
京太郎「神代とのゴタゴタが間違いなくありますよ」
依子「私も物申したいところがありますから望むところです」
京太郎「…実は今まで満足出来た事はないんですけど」
依子「そ、それはちょっと自信ないですけど…精一杯がんばりますわ」
ポツリポツリと漏れる予防線の言葉を依子は軽々と乗り越えていく。
彼女は、それら全ての問答を想定していたのだから。
その上で足を踏み外すと決めた彼女にとって、その言葉は今更過ぎる。
最後以外は強い言葉で応える依子に、京子は ―― 京太郎はゆっくりと振り返った。
京太郎「…なら、これからも宜しくお願いします」
依子「…ほ、本当に?」
京太郎「こんな状況で嘘は言いませんよ」
京太郎「俺だって別に自分から嫌われたい訳じゃないですし」
依子「ご主人様っ♥」
京太郎「ちょ、よ、依子さん…!?」
自身に向き直るその身体に、依子は悦びを抑えきれない。
振り返る動きに合わせて離れた彼女は、再び京太郎の胸の中へと飛び込んだ。
そのままスリスリと頬をすり寄せた依子は、ゆっくりと下へと下がっていく。
依子「私はもう京さんの奴隷ですから、依子と呼び捨てにしてくださいまし…♪」
京太郎「そ、それは分かりまし…分かったけど!」
京太郎「脱がすの辞めて…!今日はゴムないから!!」
依子「大丈夫です…♪ お口で射精したら妊娠の危険性はありませんし…♥」
依子「それに…今日は後ろでも出来ますのよ…♥」
妊娠してしまったら、前では出来なくなってしまう。
さりとて、京太郎の性欲をオーラルセックスだけで発散できる自信が依子にはなかった。
だからこそ、彼女は秘密で自身のアナルを開発し、今日、その処女を京太郎に捧げようと思っていたのである。
その為の準備を済ませた彼女は嬉々として、京太郎の服を脱がせて。
―― 数十分後、生徒会が詰めるその部屋は、メスの嬌声と無数の愛の言葉が飛び交う淫靡な場所へと変わり果てたのだった。
(二重の意味で)堕ちました(´・ω・`)ってところで男バレネタはこれで終わりです
流石にこの残りじゃ小ネタは出来ないので、クレオパトラ出なかったとかブレエリちゃんエロ過ぎとか相変わらずおじさま空気読まねぇな!とか適当に色々書いてってくださいな
マシュケベ三枚出すんでクレオパトラください…(´・ω・`)三万突っ込んだけどあの愉快過ぎる世界三大美女出なかったんや…
カプ厨としてはどうしてもDEBUと並べたいのにいいいいいい
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