○このスレは所謂、京太郎スレです
○安価要素はありません
○設定の拡大解釈及び出番のない子のキャラ捏造アリ
○インターハイ後の永水女子が舞台です
○タイトル通り女装ネタメイン
○舞台の都合上、モブがちょこちょこ出ます
○たまにやたらと重くなりますが笑って許してください
○雑談はスレが埋まらない限り、歓迎です
○エロは(本編には)ガチでないです
【咲ーSski】京太郎「今日から俺が須賀京子ちゃん?」【永水】
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怒涛の姫様推しの中、霞さんスナイプである
やはりおもちは強かった
それはさておき、霞さん了解です
そして今から投下しまーす
………
……
…
―― それからは色々と大変だった。
能力を使ってた時はあんまり意識しないで済んだけど、俺の身体は思っていた以上にやばかったらしい。
神代家との繋がりが深く、秘密も護って貰える医者に見せた瞬間、怒られてしまった。
本当にもうちょっと無茶を続けていたら、俺の足は障害が残っていたらしい。
まぁ、それでも良いと思ってその無茶をやっていた訳なんだけれど。
京太郎「(でも…なぁ)」
瞬間、心の中に浮かぶのは明星ちゃんの言葉。
あの何だかんだと素直になりきれない子が俺の事を大事だとそう言い切ってくれたのだ。
きっとよっぽど俺の事を心配してくれていたんだろう。
その上、小蒔さんもずっと泣きそうな顔で俺の世話を焼いてくれていたとなれば、それでも良かったなんて言えない。
寧ろ、依子さんの言葉で試合が中断された事を喜ばしく思うべきだろう。
京太郎「(ま、ともかく治療も間に合ったし)」
どうやら神代家のかかりつけというだけあって、その医者は中々の腕前だったらしい。
まだ痛みは残っているものの、それでもかなりマシになっている。
少なくとも激痛で眠れない、なんて事はなさそうだ。
まぁ、これも痛み止めが切れたらどうなるか分からないんだけれど。
京太郎「(ただ、部屋の中でずっとじっとしてるのもなぁ…)」
俺が医者から言い渡されたのは数日の絶対安静と、数週間の松葉杖生活だった。
本来なら無理をさせない為にも入院させたかったらしいが、俺の秘密の都合上、それは出来ない。
渋々と言った様子で俺を解放する医者は、きっと心から親身になってくれるタイプの人なのだろう。
そんな人の気持ちに報いたいとは思うが、俺もやっぱり年頃の男。
自室でずっと寝転びっぱなしでは、やっぱり暇過ぎる。
京太郎「(つっても、今は皆、お風呂タイムだし…)」
普段なら俺の部屋で駄弁っているであろう春達は、今、ここにはいない。
春は念のためと言う事で一日入院する事になったし、小蒔さんは今、霞さん達とお風呂に入っている。
出来れば、一人の男としてその現場に踏み込みたいが、女の園で暮らす俺がそれをやれば後に待っているのは地獄。
だからこそ、ここで小蒔さんが帰ってくるのを大人しく待っているのが良いんだろうけれど…。
京太郎「むうぅぅ…」
今までは何だかんだ言ってやる事が山積みだったからなぁ…。
こうして身体が動かないとなると、どうにも時間を持て余してしまう。
何かやった方が良いんじゃないかとそんな強迫観念めいたものが出てくるというか…。
小蒔さん達が側にいる時はあんまり気にならないんだけど、一人になるとどうにも落ち着かない
「…」コソ
京太郎「ん?」
…今、部屋の前で何かの気配がしたような…。
もしかして小蒔さんがもうお風呂からあがってきたのか?
…いや、流石にそれはないよな。
小蒔さんは結構、お風呂好きで長風呂するタイプだし。
幾ら俺の事が心配だからってお風呂に行って十分も経たずに帰ってくるとは思えない。
人並み以上に自身の髪を気遣う事を思えば、まだシャンプーを始めたばかりではないだろうか。
京太郎「(…じゃあ、誰だろ?)」
無論、春が入院中で小蒔さんが入浴中とは言っても、この屋敷の中にはまだ六人の女の子がいる。
その内、初美さんと霞さん、そして恐らく明星ちゃん辺りは除外出来るだろう。
小蒔さんを呼びに来たのは霞さんと初美さんだし、明星ちゃんが霞さんとお風呂に入らない訳がないからな。
となると残りは巴さん、わっきゅんに絞られる訳なんだけれど…。
京太郎「(…多分、巴さんはない)」
この屋敷は日々、皆が掃除して大事に使っている。
そのお陰か、目に見える痛みは殆どなく隙間風なんかも入っては来なかった。
だが、それでもやはり目に見えない痛みと言うのはジリジリと広がっていっているのだろう。
この部屋の前に広がる廊下も、普通に歩くだけでギシギシと軋むような音が鳴る。
だが、さっき気配を感じるまで、廊下が軋むような音は聞こえなかった。
それは相手が意図的に音を消す歩法を心得ている証拠だろう。
京太郎「(つまりさっき微かに感じた気配は武術家のわっきゅんだったんだよ!!!!!1111)」
ふっ…我ながら見事な推理だ。
平成のシャーロック・ホームズとはやはり俺に相応しい名前だな。
…………まぁ、問題は実際、舞踊をやってる巴さんなら、音を消して歩くのも出来なくはなさそうって点なんだけれど。
霞さんの影に隠れて目立たないけれど、巴さんも割りとなんでも出来るからなぁ。
それくらい出来たってあんまり驚かない…ってそれはさておき。
京太郎「(…まぁ、やる事なさすぎてテンションも馬鹿になってきた訳だし)」
とりあえずこの気配が誰なのかは保留しておくにしても、俺に用があるのは確実だろう。
さっきから気配の主は、部屋の前からジッと動かないままだし。
正直、俺との間に何があったのかは分からないが、相手は俺と顔を合わせるのを気まずく思っているらしい。
そんな彼女の決心がつくまで放っておいてあげた方が良いような気もするが…気づいているのに放置するのも酷だろう。
ガバガバ推理で少しは時間も経ったのだから、もうそろそろ声を掛けても良い頃じゃないだろうか。
京太郎「えーっと…誰かいるのか?」
「っ」ビク
うん、やっぱり誰かいるな。
俺の声で身体が強張った感覚が襖越しにもハッキリと伝わってきてる。
ただ、ここで身体を強張らせたって事は…やっぱり俺と会うのを躊躇っているって事なんだろうな。
うーむ…しかし、心当たりがまったくない…。
情けない話だけど…体育祭が終わってからの俺は殆ど皆に頼りっぱなしだったからな。
こうして会うのを躊躇われるような事をする余裕なんてなかったと思うんだけど…。
京太郎「(…まぁ、その辺は会えば分かるか)」
京太郎「もしかして…わっきゅんか?」
湧「あ…う…」
よし、ビンゴ。
流石にこの距離で声を聞けば、相手を間違う事はない。
襖の前で躊躇っていたのは、やっぱりわっきゅんだ。
…しかし、改めてわっきゅんに絞って考えてみても、躊躇われる理由が思いつかないな。
思い悩んでいるのか、若干、表情が暗くなっていたけれど…でも、逆に言えばそれだけ。
松葉杖を突きながら大階段を登る俺に手を貸してくれたりもしていたんだ。
京太郎「俺に何か用があるのか?」
湧「え、えっと…その…」
…ただ、普段のわっきゅんならもうとっくの昔に俺の部屋に入ってきてるよなぁ。
彼女は人見知りだけれど、それさえ乗り越えれば、人懐っこい良い子だし。
俺の部屋に何度も遊びに来てるわっきゅんが、今更、男の部屋と言うだけで躊躇するとは思えない。
だから、俺が何かしたと思うんだけれど…やっぱり原因らしい原因は思いつかないままで。
京太郎「…待ってくれ。今、そっち行くから」ヨイショ
湧「え、えぇぇ!?」
なら、今はとにかく身体を動かすべきだよな。
このまま襖越しにわっきゅんと話してても、埒が明かなさそうだし。
寧ろ、今の様子だと出会った頃のように逃げられてしまう事だってあり得る。
ずっと布団の上で横になってたら身体も鈍っちゃいそうだし、ここはわっきゅんを出迎えるとしよう。
湧「だ、ダメだよ。安静にしてなきゃ」
京太郎「今まで安静にしてたから良いんだよ」スッ
湧「よ、良くな…ひゃあ!?」ビク
…まさかそこまでビックリされるとは。
俺はただ襖を開けただけなんだけどなぁ。
何時、小蒔さんが部屋に戻ってくるか分からないし、服装もそれほど乱れてないはずなんだが…。
それとも俺のイケメンっぷりにビックリしたとか?
…………うん、自分で言ってて薄ら寒くなるくらいねぇな。
京太郎「よっす。わっきゅん」
湧「え、えと…よかばんなー」ペコリ
しかし、そんな状態でもわっきゅんはちゃんとこっちに挨拶してくれる。
やっぱり元々が武門の家系だけあって、そのへんの礼儀作法はしっかりと叩きこまれてるんだろうな。
ペコリと頭を下げるその姿からは礼儀正しさがしっかりと伝わってきてる。
何処か小動物めいた雰囲気からはあんまり想像出来ないけど、やっぱりわっきゅんも立派なお嬢様って事なんだ。
京太郎「それで改めて聞くけど、どうかしたのか?」
湧「そ、その……」モジモジ
…うーん、こうしてモジモジしてるところを見る限り、ただ躊躇っているって言うよりも恥ずかしがってるって感じなのかな?
でも、俺とわっきゅんは今まで文字通りの意味で家族同然の付き合いをしてきた訳で。
正直、今更、恥ずかしがるような理由があるとは思えない。
ただ、俺の幼馴染曰く、女心は複雑怪奇かつ流動的なものらしいからな。
昨日までは大丈夫だった事でもキッカケ次第でダメになる事だってあり得るらしい。
京太郎「…とりあえず立ち話もなんだし中に入るか?」
湧「よ、良かの…?」
京太郎「今更、遠慮するような仲じゃないだろ」
湧「ぅ」カァァ
ま、こうして恥ずかしがってるわっきゅんを部屋の前で立ちっぱなしにさせてあげるのも酷な話だ。
とりあえず部屋の中に入ってもらって、そこで改めて要件を聞くとしよう。
そう思ってわっきゅんの事を誘ったけれど…これはちょっとデリカシーがなさすぎたかな。
頬が思いっきり真っ赤に染まった上に、顔も俯いちゃってる。
京太郎「あー…やっぱ居間の方とかが良いか?」
湧「う、ううん。キョンキョンの部屋で良か」
湧「と言か、き、キョンキョンの部屋が……い、良ぃ」マッカ
京太郎「お、おう」
…やっべ、なんだコレ。
わっきゅんがやたらと恥ずかしがっている所為か、妙な色気を感じる。
いや、元々、わっきゅんは可愛らしいというか愛らしい子ではあったんだが…。
何かそういう愛らしさとは真逆の女らしさを感じるというか…。
俯きながらも俺にチラチラと向けてくる視線に、何か熱っぽいものが混じっているような気が…。
京太郎「(ま、まぁ、気のせいだろ)」
俺とわっきゅんの付き合いはそれなりに長く、ついでに濃厚だ。
だけど、逆に言えば、それだけの付き合いがあって尚、ずっと家族の枠組みを超えられなかったのである。
そんな俺が今更、わっきゅんに惚れられるなんて事はあり得ない。
きっと今のは俺の自意識過剰っぷりが見せた幻影のようなものなのだろう。
京太郎「と、ともかく入ってくれよ」
湧「う、うん。お邪魔しまーす…」
それに、今、考えるべきはわっきゅんの変化じゃない。
どうして彼女がそんな風になってしまったのかって言う理由の方だ。
恐らくだけど、こうして彼女が俺を訪ねてきたのも、それが深く関わっているんだと思うし。
まずはそれを聞き出す事に専念した方が良いだろう。
湧「…あ」カァァァ
京太郎「ん?」
…ってなんでわっきゅんは入り口でまた赤くなっているんだろうか。
何時、小蒔さんが帰ってくるか分からないから、特に変なものは出てないはずなんだけれども。
何時もと変わっているのと言えば、畳の上に敷いてある布団くらいなんだけどなぁ。
湧「あ、あの…布団」モジモジ
京太郎「あぁ。何時でも横になれるようにって小蒔さんが敷いてくれたんだよ」
どうやらわっきゅんはその布団が気になっているらしい。
…いや、でも、そんなに気になる要素があるだろうか?
日頃から巴さんが干してくれてるから、特に変なところはないし…。
小蒔さん達が使っている布団とかと殆ど変わらないと思うんだけれど。
京太郎「まぁ、気になるなら片付けるよ」
湧「う、ううん!だいじょっ!」
京太郎「…本当に大丈夫か?」
湧「うん!!」コクコク
……うーん…そんな気合を入れて答えられると逆に不安になるな。
そもそも、どうしてそこまで布団に対して反応するのか謎が深まるばかりだ。
ただ、本人が大丈夫と言っている以上、改めて聞くのもなぁ…。
松葉杖をつかないと歩けない今の俺じゃ布団をあげるのも一苦労だし…ここはわっきゅんの言葉に甘えるとしよう。
京太郎「それじゃ座布団出すから」
湧「…あ、あちきがやるよ」
湧「ちゅうか、あちきにやらせて欲し」
湧「怪我人のキョンキョンは大人しくしちょって」
一応、わっきゅんはお客様になる訳だし、俺がやった方が良いと思うんだけどなぁ。
絶対安静とは言われているけど、別にまったく身体が動かない訳ではないんだし。
何だかんだとあの大階段を登り切った俺にとって、座布団を出すくらいは造作も無い。
…ただ、それはやっぱり本人だからこそ言えるものなんだろうなぁ。
わっきゅんから帰ってくる言葉は思いの外、強いものだったし。
きっと今も俺の事を心配してくれているんだろう。
京太郎「…分かった」
そんなわっきゅんに今更、意地を張るのも…な。
明星ちゃんにはもっと皆の気持ちを大事にして欲しいとお説教された訳だし。
ここは彼女の優しさに甘えて布団の上でゆっくりしていよう。
湧「んしょっと」ストン
そんな事を考えてる間に、わっきゅんはもう座布団の上に座っていた。
勝手知ったるなんとやら…と言うよりは、この屋敷にある部屋の殆どがほぼおなじ構造をしている所為だろう。
座布団の置き場所も全部屋決まっているんだから、俺より長くこの屋敷に住んでいる彼女が迷うはずがない。
…ただ、それはあくまでも座布団に限った話。
自身が置いた座布団にチョコンと座るその姿からは再び迷いの色が見え始めている。
京太郎「(なら、こっちで何か話題を振ってあげた方が良いか)」
多分、このままだとわっきゅんは何時まで経っても本題を切り出す事が出来ない。
今の彼女はまるで最初の頃のように物怖じしてる状態なんだから。
なら、ここは俺が小粋でウェットに富んだ話題を提供した方が良いだろう。
そうすればわっきゅんの緊張も少しは解けるだろうし、彼女の用件にも近づけるかもしれない。
京太郎「そう言えば、春なんだけど…心配だよな」
湧「え?」
京太郎「いや、急ぎだったからあんまり黒糖持ってってやれなかったって初美さんも言っていたし」
京太郎「今頃、病院のベットの上で禁断症状でも出てるんじゃないかと」
その言葉は冗談めかしているものの、春の事を心配しているのは事実だった。
俺は絶対安静を言いつけられ、春の見舞いにも行ってやる事が出来なかったんだから。
見舞いに行った初美さん達の言葉から察するに、意外と大丈夫そうだったらしいが、やっぱり安心しきる事は出来ない。
俺に必要以上の心配をさせまいと彼女達が優しい嘘を吐いてくれている可能性もある以上、自分の目で確認したいと言う気持ちは強かった。
京太郎「(ただ、そんな事言っても彼女達を困らせるだけだろうし)」
医者に絶対安静を言いつけられた俺の事を皆はとても気にかけてくれている。
ただ、心配するだけではなく、極力、不便がないようにあれやこれやと世話をしてくれているんだ。
そんな彼女達に春のお見舞いに行きたい、なんて言っても困らせてしまうだけ。
明日には春も帰ってくるって話だから、今日一日くらいは我慢しておこう。
湧「…ふふ。春さあじゃったら病院抜けだしてコンビニで黒糖買てるかもしれんね」
京太郎「あー確かに…春だったらそれくらいやりかねない」
春の黒糖に対する執着は本当に凄いからな。
まさしくソウルフードと言う勢いで毎日、黒糖を食べているし。
まぁ、勿論、春が選んだ黒糖と言うのは美味しいんだけど…それでも彼女ほど食べる気にはなれないっていうか。
飽きの来にくい味ではあるが、普通の人は毎食後に食べるのは遠慮したいと思うだろう。
京太郎「春は我慢の効かない奴だからな」
湧「…春さあはわっぜか我慢強ぇとおも」
京太郎「え?そうか?」
…割りと春って感情表現がストレートだと思うんだけどなぁ。
俺が男だって分かっているのに腕とかすぐに絡めてくるし、胸の中に飛び込む事にも躊躇がない。
ほぼ毎日やってる朝の混浴も、気を抜いたらすぐに俺のテリトリーに入り込んでくるくらいだ。
それに何より… ――
京太郎「(…インターハイの時にキスされた事も…)」カァァ
ああああああ!馬鹿!思い出すなよ!!!
アレはまだ俺の中でまったく整理出来てない事なんだからさ!
まさかあんな形でファーストキス奪われるとは…い、いや、春ほどの美少女ならご褒美ですけれども!!
ただ、流石にアレはいきなり過ぎて、ちょっと未だに恥ずかしいというか、どう処理していいか分かんないって言うか!!
勿論、俺の背中を押す為であって他意はないって分かってるんだけど…キスの後、何処か幸せそうな春の顔が脳裏に張り付いて離れない…!
湧「…あちきじゃったらあげん我慢出来ん」
湧「今でせか、あちきは…」チラ モジモジ
京太郎「…?」
…って今は春の事よりもわっきゅんの事だよ。
……でも、わっきゅん、なんでそこで俺をチラ見してくるんだろうか。
まるで俺に対して何かを我慢しているような仕草に見えるんだけど…。
しかも、気のせいか、その視線もさらに熱っぽくなっちゃってるような気が…。
京太郎「(エロ漫画とかなら発情一択なんだけどなぁ…)」
ただ、これは俺の買い集めてたエロ漫画じゃなくって現実である。
女の子は早々、発情なんかしないし、そもそも俺とわっきゅんの間に色っぽいものはない。
どれだけ好意的に見ても、兄くらいにしか思われてない俺に対して発情するなんてあり得ないだろう。
だから、これもきっと春の時と同じく自意識過剰だな、うん。
湧「………ね、キョンキョン」
湧「キョンキョンは…その…えっと…」
京太郎「……」
そんな風に結論が出たところでわっきゅんがゆっくりと言葉を漏らし始める。
さっき春の話をした事で幾らか彼女の中で決心がついたのだろうか。
戸惑うように言葉を途切れさせるその姿には本題に切り込もうとする意思が見える。
ならば、これ以上の雑談は必要ないだろう。
ここは大人しく彼女が俺に伝えたい言葉を待つべきだ。
湧「…春さあの事、好き?」
京太郎「…え?」
……そう思って沈黙を続けた俺に予想外の言葉が掛けられる。
正直なところ、なんでそこで春の話に飛ぶのか、俺には良く分からなかった。
何せ、さっきの躊躇いを見る限り、わっきゅんが切り込もうとしていたのは本題なのだから。
てっきりそんな風に物怖じするようになった理由をぶつけられると思っていた俺にとって、春の名前は予想外と言っても良い。
ましてや、その好意の有無を尋ねられるなど不意打ちも良いところだった。
湧「…っ」グッ
京太郎「(でも、わっきゅんは真剣だ)」
俺にとっては不意打ちではあっても、彼女にとってそれは本題に繋がるもの。
ならば、ここで俺があまり長い間、戸惑っている訳にはいかない。
わっきゅんが握りこぶしを作るくらいに真剣な表情を見せているのだから、こっちもそれに応えなければ。
京太郎「勿論、好きだぞ」
湧「ん……」
そう思っての返事は、しかし、わっきゅんにとっては不十分なものだったらしい。
俺の前で彼女が見せる表情は、何処か物足りなさそうなものだった。
きっと俺の返事は彼女が望んでいたものとは、少しピントがずれていたのだろう。
それに申し訳無さを覚えた瞬間、わっきゅんは躊躇いを浮かべながら口を開いて ――
湧「…………そや女として?」
京太郎「…あー」
―― 瞬間、俺の脳裏に浮かんだのは幼馴染の姿だった。
…インターハイの後、連絡をとる手段すらなくなってしまった幼馴染。
彼女への想いを俺はもう完全に捨て去ったつもりだった。
少なくとも、何時ものように転んでしまったアイツを見捨てた時点で、俺には咲を想う資格がない。
あそこで助けていたら間違いなくボロが出ていたとは言え…俺は最後に咲を手酷く傷つけたのだから。
京太郎「(…あぁ、クソ…女々しいったらありゃしねぇ)」
いい加減、咲の事は吹っ切るべきだ。
俺は自分から咲の事を見捨てたのだから。
でも、幾らそう言い聞かせても、胸の奥底に眠る痛みはなくならない。
長年、アイツと一緒にいて積み重なった想いは、理性よりもずっとずっと強かった。
湧「…ごめん」
京太郎「え?」
湧「…キョンキョン、今、辛そな顔しちょっ…」
…そしてその想いはちょっとしたキッカケで表に出てしまう。
無論、ここでそんなものを出してしまってはわっきゅんが傷つく事くらい俺も分かっていた。
彼女とて好きで俺の事を追い詰めたい訳ではないのだから。
こうして俺に疑問をぶつけたのも、彼女の中での何かを解決したいからこそ。
それに俺がこうして表情を曇らせれば、ただでさえ物怖じしてるわっきゅんに責任を感じさせるだけだ。
京太郎「いや、こっちこそごめんな」
京太郎「なんか辛気臭い雰囲気にしちゃってさ」
…なのに、何をやってるんだろうな、俺は。
ホント、学習しないというか進歩がないと言うか…。
咲の事になるとどうにもコントロールが効かなくなってしまう。
運動会の時にはあれほど完璧に自分をコントロール出来てたのに…情けないよなぁ…。
京太郎「…で、さっきの言葉に改めて応えると…まぁ、否…かな」
京太郎「勿論、春の事は魅力的な女の子だと思ってるけれど…そういう風には見れない」
湧「…そう…なんだ」
ただ、ここで自己嫌悪してウジウジしてたら、それこそ余計に情けなくなっちまう。
正直、あんまり気分の良い状態じゃないけれど、それはひとまず横へと置いた方が良い。
俺一人だけならばともかく、今は目の前にわっきゅんがいるんだから。
真剣に俺へと疑問をぶつけてくれた彼女の前で、あまりウジウジはしていたくない。
湧「…でも、どうして?」
京太郎「え、どうしてって…」
湧「キョンキョンだって春さあみたいな女の人、好きでしょ?」
湧「最初の頃は良く春さあ達のお……おっぱい見ちょったし…」カァァァ
京太郎「ぐふ」
…ま、まさかここで若気の至りにツッコまれるとは思ってなかったぜ…。
いや、まぁ…そりゃね、女の子としてはそりゃ当然、疑問だろうさ。
どうして好きでもない女の子の胸を見ちゃうんだって言いたくなる気持ちは分からないでもないよ。
でも、男は本能からはどうしても逃げられない生き物なんだ…。
そこに大きなおっぱいがあればついついチラ見しちゃうのが男の性って奴なんだよ…!
湧「そいに春さあはキョンキョンの事大好きだよ」
湧「ううん、春さあだけじゃなくって…明星ちゃんもそう」
湧「皆、わっぜか可愛ぞて…キョンキョンの事、わぜー想っちょる」
京太郎「…それは」
それは一体、どういう意味なのか…とは聞けなかった。
無論、それが家族としての親愛であろう事は俺も良く分かっている。
もう一年近く一緒に過ごしている春達に、親愛はあっても異性愛はない。
でも、こうして改めてわっきゅんから聞かされると…どうしても脳裏に『もしかしたら』が過ってしまう。
もしかしたら、春が俺の唇を奪った理由も俺の事が好きだったからなのかもしれない。
もしかしたら、明星ちゃんの態度が変わったのは、俺への好意を自覚したからなのかもしれない。
自意識過剰と言っても良いその予想を打ち消すのに、俺は必死だった。
湧「普通じゃったら…きっと二人の事を女として好きになっちょっとおも」
湧「だって…二人ともそれくらい魅力的なんだもん…」グッ
湧「あちきなんかじゃ…ひとっも敵わない…」ポツリ
京太郎「……わっきゅん」
だが、それでもわっきゅんが最後に呟いた言葉はしっかりと俺の耳に届いた。
…きっと彼女は春や明星ちゃんに対して強い劣等感を抱いているんだろう。
ただ、それは武術や体力と言ったわっきゅんの得意とする部分じゃない。
恐らくわっきゅんが今まであまり重視してこなかった女性としての魅力を見比べてしまっているんだ。
京太郎「(…どうしてそんな事になったのか分からないけれど)」
…でも、その傾向は今までもあった。
今まで俺達の間で胸の話題は何度か出たが、その度に彼女は自身のスタイルを気にするような言葉を口にしていたのだから。
ただ、それはその瞬間だけにポツリと漏れ出るものであって、彼女をここまで曇らせたりしない。
また別の話題に切り替えれば、明るい笑顔のわっきゅんが見れるはずだった。
京太郎「(でも、今回はかなり深刻みたいだな…)」
今のわっきゅんに別の話題を振ったとしても元気になるとは到底、思えない。
一時は忘れられるかもしれないが、それはあくまでも一時しのぎにしかならないのだ。
幾らそのコンプレックスを胸の奥底に沈めても、それは時間の経過と共にドンドンと大きくなる。
何時かそれが彼女の心を押しつぶす事を思えば、こうして彼女から相談を受けている俺が何とかしなければいけない。
京太郎「…そうだな」
京太郎「わっきゅんの言う通り、二人ともかなり魅力的な女の子だし…」
京太郎「ぶっちゃけ、俺にとって好みのタイプである事に間違いはないよ」
湧「…っ」
少なくとも、俺ならば何とかしてくれるとそう思ったからこそ、わっきゅんはこうして本音を漏らしてくれている。
そんな彼女に対して、俺は自分を偽ったりしたくはなかった。
無論、もろバレとは言え、そうやって二人を好みのタイプだと口にするのは恥ずかしい。
だが、それは彼女の心を晴らすのに必要不可欠な言葉なのだ。
大事な妹であると言っても良い彼女の為ならば、その程度の羞恥心を乗り越えるくらい訳がない。
京太郎「でもさ、わっきゅんだって負けず劣らず魅力的なんだぞ」
湧「…え?」
わっきゅんは何故か驚いているけれど…でも、その言葉に偽りはない。
無論、どうにもちんまい彼女がスタイルという面で春や明星ちゃんに負けているのは否定しようのない事実だ。
だが、女の子の魅力と言うのは何もスタイルだけで決まるものではない。
無論、それも重要な要素ではあるが、それと同じくらい大事な部分はたくさんあるのだ。
京太郎「まず顔が可愛いだろ」
湧「ふぇっ」カァァ
京太郎「んで、ちょこちょことした仕草や動きも可愛い」
湧「あ…ぅ…」フルフル
京太郎「そうやってすぐ赤くなっちゃう恥ずかしがり屋な性格も可愛いし」
湧「~~っ!」マッカ
京太郎「ていうかもう全部可愛い。わっきゅん可愛いっ!」
…まぁ、若干、オーバーに表現している部分はあるが、俺がそう思っているのは事実だ。
赤くなる顔や細かい仕草、恥ずかしがり屋な性格などなど。
他にもたくさん…それこそ言い尽くせないほどに彼女の可愛らしい部分を知っているんだ。
勿論、わっきゅんは俺の好みから外れているけれど、そんな俺にさえ伝わってくるくらい魅力的な部分を彼女は持ち合わせている。
湧「も、もう止めて…」フルフル
京太郎「えー…まだまだ可愛いって言い足りないんだけど」
湧「も、もう十分…っ!十分じゃっで…っ!」プシュウ
…むぅ、本人がそう言うならば仕方が無いか。
俺も別にわっきゅんの事を追い詰めたり、いじめたりしたい訳じゃないからな。
まだまだ良い足りない気はするけれど、一応、俺の言いたい事は伝わっただろうし。
今回のところはこれで良しとしておこう。
湧「き、キョンキョンのぎろ悪…」プイ
京太郎「えー…そんなに意地悪だったか?」
湧「…だって、つとーから面白がってたもん」
…バレてたか。
まぁ、でも、仕方が無いと思うんだ。
だって、可愛いって言う度に、わっきゅんってば何かしらのリアクションを見せてくれてた訳だし。
あのまま連呼してたら最後、どんな風になるのか好奇心を唆られるのが普通だと思う。
京太郎「まぁ、若干、好奇心混じりだったのは確かだけど、嘘は言ってないぞ」
京太郎「わっきゅんは春や明星ちゃんに負けないくらい魅力的な女の子だって俺はそう思ってる」
湧「はぅ…」カァァ
おーおー、また赤くなってる。
やっぱりまだ魅力的だとか可愛いとかそんな風に言われる事に慣れてないみたいだな。
…そう思うと胸中でちょっと悪戯心…いや、好奇心が復活しそうになるけれど…ここでまた連呼したらわっきゅんも本気で拗ねそうだし。
ちょっと惜しい気もするけれど、大人しくしておこう。
湧「……げんにゃあ?」
京太郎「あぁ。本当だよ」
湧「だ、だったら…えっと、その…」モジ
…まぁ、それでもやっぱりそう簡単には信じられないよな。
わっきゅんの中にあるコンプレックスは、昨日今日出来たものではないだろうし。
きっと何年も胸の内にあったそれはそう簡単にはなくなったりしない。
だが、それでも、俺の言葉で不安を晴らしてあげる事くらいは出来る。
その為にも俺はわっきゅんにどんな事を言われても誠実に応えなければ ――
湧「~~っ」ガバッ
京太郎「ふぇあ!?」ビックゥ
え、いや、ちょ、な、なんで!?
なんで、わっきゅんがいきなり俺の前で巫女服肌蹴させてんの!?
し、しかも、わっきゅんブラしてないから、小さめの乳首まで全部丸見えで…!!
って、そ、そんな事よりも今はわっきゅんから目を逸らさないと…!!
湧「…キョンキョン、見て」
京太郎「い、いや、見てって言われても…」
い、いや、勿論、俺としてもまったく見たくない訳じゃないんですよ?
さっきも言った通り、わっきゅんは美少女だし…何より俺だって男なんだ。
女の子の胸には興味津々だし、俺の前で胸を晒すわっきゅんに邪な想像だってしてしまう。
…でも、俺にとってわっきゅんはそれ以上に大事な女の子なんだ。
幾ら自分から晒したとは言え、あんまり恥ずかしいところは見てやりたくない。
湧「…お願い。見て」
湧「見て…あちきにいっかせっ欲し」
湧「あちきでも…興奮出来っのか…ちゃんと欲情出来っのか…」
湧「そうじゃねとあちき安心出来ん…」
京太郎「う…」
だが、わっきゅんはどうしても俺にその胸を見て欲しいようだ。
一つ一つ漏らすようなその声は恥ずかしそうではあれど強い決意に満ちている。
俺が答えを口にするまで一歩も引かないのだとそういうような彼女に、俺は言葉を詰まらせてしまう。
自身が納得する為、異性へ胸を晒す事も厭わない今のわっきゅんをどう納得させれば良いのか、今の俺にはまったく分からなかった。
湧「…キョンキョン」
京太郎「(あうあうあうあうあうあ…っ!)」
無論、その間にもわっきゅんは決して容赦してくれない。
その小さくて可愛らしい唇から弱々しく俺の名前を呼ぶのだ。
目を逸らした俺にははっきりと見えないが、きっと彼女も恥ずかしいのだろう。
恥ずかしがり屋なわっきゅんが、異性を前に自分から服を肌蹴させて平気なはずないのだから。
京太郎「(でも…一体、どうしろって言うんだよ…!!)」
そんなわっきゅんの希望を叶えてあげたいとは俺も思っている。
だが、それは男である俺が女の子である彼女の胸を見ると言う事なのだ。
しかも、ブラも何もつけてはおらず、完全に素肌を晒している胸を。
無論、男としてそれに役得感を感じない訳ではないが、だからと言って、簡単に流されるには色々と柵が多すぎる。
少なくとも、俺にとって覚悟もなしに見て良いほど、女の子の胸というのは安くなかった。
湧「…あちき、そげんダメ?」
湧「見ろごちゃねほど…あちきの胸、ダメなの…?」
京太郎「(アカン)」
しかし、そうやって俺がまごついてる間に、わっきゅんの思考は悪い方へと流れていっている。
彼女の漏らすような声はドンドンと追い詰められ、今にも泣きそうなものになっていた。
元々、わっきゅんは自身に女性としての魅力が乏しい事を思い悩んでいたのだ。
俺がこうして目を逸らしているのも拒絶としか受け取る事が出来ないのだろう。
京太郎「(勿論、それは誤解な訳だけど…)」
だが、今の彼女にそれを説明して分かってもらえるとはあまり思えない。
今の彼女は俺が思っていた以上に追い詰められているのだから。
それこそ俺に胸を晒すほど思いつめた彼女に、言葉だけでの説得は難しい。
コンプレックスに目が曇っている今のわっきゅんを冷静にするには、言葉だけではなく行動が必要不可欠だ。
京太郎「ち、違う。その…なんつーか…ちょっと驚いただけで」
京太郎「今、見るから…も、もうちょっと待ってくれ…!」
……無論、この期に及んでも、俺の中で良心の痛みが収まる事はない。
彼女のコンプレックスに乗っかって、胸を見てしまって良いのだろうかって言う気持ちは決して小さくはなかった。
だが、事ここに至って躊躇い続ける方が、わっきゅんを傷つけてしまう。
ズキズキと疼く心にそう言い聞かせながら、俺はそっとわっきゅんの方へと視線を戻して。
湧「あ…♪」マッカ
瞬間、すれ違った視線に、わっきゅんの顔が赤く染まる。
まるでリンゴのように真っ赤になった彼女は、ついと逃げるように顔を背けた。
だが、それでも彼女は自分の前を肌蹴させる手を動かしたりはしない。
まったく膨らみのない壁のような身体を俺に向かって晒し続けている。
京太郎「(…勿論、俺はおっぱい派だ)」
京太郎「(好きになったのは貧乳少女の咲だけど…それは幼馴染だからこそ)」
京太郎「(ただの貧乳に性的な興味を持ったりはしない)」
…そう、そのはずだ。
なのに…どうして俺は今、わっきゅんの胸に興奮を覚えているんだろう。
胸どころか脂肪すら見当たらないつるりとした身体は、本来ならばまったく興味引かれないもののはずなのに。
それがわっきゅんのものだと…俺にだけ開かれているものだと思うだけで、とても尊く、暖かく、そして… ――
京太郎「…綺麗だ」
湧「ふぇ…!?」ビックゥ
京太郎「あ、い、いや、その…」
な、何を言ってるんだ、俺は。
心の中で思うのならばまだしも、口に出してしまうだなんて。
幾ら、わっきゅんの胸に集中していたとは言え…今のはちょっと恥ずかしすぎる。
どれだけ俺はわっきゅんの胸に夢中になってたんだと自己嫌悪を覚えるくらいだ。
湧「…あ、あちき、綺麗…?」
京太郎「そ、その…まぁ…なんつーか……そ、そう…だな」
湧「こ、興奮…する?」
京太郎「…し、して…る」
湧「…エッチ…出来そう?」ジィィ
京太郎「う…」
そ、そこまで聞くのか…!
い、いや、まぁ、女の子としてはその辺、大事なのかもしれないけどさ!!
でも、そういうのは本来、好きな相手に聞くべき事だと思うんだ!!
少なくとも家族同然に暮らしてる奴に言うべき言葉じゃないだろう…!!
京太郎「そ、その…わっきゅん、ごめん」スッ
湧「…え?」
さ、流石にそれに応えるのは恥ずかしすぎる。
と言うか、ここで正直に答えたら、それこそ俺とわっきゅんの関係そのものがギクシャクしそうだし…!
ちょっと悪い気もするけれど、ここははぐらかす方向に持って行かせて貰うとしよう。
その方がわっきゅんにとっても良いはずだ 多分、きっと…い、いや、間違いなく。
京太郎「…」ピト
湧「…あ」
そう思いながら、掴んだわっきゅんの手を自分の胸へと導く。
瞬間、わっきゅんが声をあげるのはきっと俺の鼓動が彼女にも伝わったからなのだろう。
何せ、俺の心臓はさっきからうるさいくらいドクドク鳴ってるからな。
幾ら服越しだっつっても、触れればはっきりと分かるんだろう。
湧「…これあちきの…」
京太郎「あぁ。わっきゅんの所為だぞ」
湧「はぅ…ぅ♪」キュゥン
…どうしてそこで嬉しそうにするのか。
いや、まぁ…多分、それだけ自分に自信を持てなかったって事だよな。
あくまでもその反動が来てるだけであって、相手が俺かどうかは重要じゃない。
…だから、ここで勘違いしちゃいけないぞ、須賀京太郎。
わっきゅんの顔がまた発情してるようなものになってるけれど、それは全部、気のせいだ。
あくまでも家族として信頼してくれているだけであって、俺は絶対にそういう対象じゃない。
京太郎「(そういう対象だったら、ここまで大胆な事出来ないだろうしなぁ)」
わっきゅんが今、やっているのはそのままレイプされてもおかしくはないほど過激な行為だ。
そんな事を恥ずかしがり屋のわっきゅんが出来るのは、きっと俺の事を異性としてまったく認識していないからこそ。
家族或いは京子としてのイメージが強すぎて、俺に襲われるなんて欠片も思ってはいない。
それ以外にわっきゅんがここまで大胆になれる理由を俺は思いつかなかった。
京太郎「まぁ…そのアレだ」
京太郎「大きいおっぱいが好きな俺でも、こんな風になるんだからさ」
京太郎「わっきゅんはもっと自分に自信を持って良いと思うぞ」ナデナデ
湧「…ん…♥」
とは言え、俺だって健全な男子高校生。
幾ら性的嗜好とはズレているとは言え、女の子の裸を前にし続けていては理性を保ち続けられるか分からない。
だからこそ、早めにこの話題を終わらせようと、俺は改めて、わっきゅんの魅力を伝える。
それと同時に彼女の頭を撫でれば、わっきゅんは心地よさそうな声を漏らした。
完全にコンプレックスが消えた訳じゃないにせよ、少しはその不安も晴れたのだろう。
京太郎「(にしても…わっきゅんがそんな事気にするようになるとはなぁ…)」
無論、これまでも胸の事を気にする素振りを見せていたが、あくまでもそれだけ。
少なくとも、ここまで強く思い悩んでいる姿など俺は一度も見たことがなかった。
そんな彼女の中でコンプレックスが急激に大きくなった理由なんて…俺は一つしか思いつかない。
京太郎「(多分、わっきゅんは今、誰かに恋しちゃったんだろう)」
……正直、何処の馬の骨に惚れてしまったのだと問い詰めたい気持ちはある。
普段からストレートに好意を示してくれるわっきゅんを俺は妹同然に思っているのだから。
そんな彼女が俺の知らない間に、誰かに惚れてしまったとなれば、やっぱり色々と不安も覚える。
わっきゅんが惚れた相手が、もし、悪い男だったらどうしよう。
このお屋敷に住む少女たちは多かれ少なかれ世間知らずな面があるだけに、そんな言葉が俺の胸の内から浮かび上がってくる。
京太郎「(だ、だが、それを確認して本当に良いものなのだろうか…!?)」
俺が言うのも何だが、この年頃の女の子と言うのはとてもデリケートである。
下手に突っ込んでしまったら、その敏感な心に傷跡を残してしまいかねない。
ましてや、わっきゅんは初恋の経験があるかどうかさえ危うい少女なのだ。
間違いなく恋の病に掛かっているである彼女に下手な言葉を掛けてしまえば、これまで良好だった俺達の関係にヒビが入りかねない…!!
京太郎「(く…!まさかこの年で娘の私生活に踏み込んでいいか悩む父親のような状態に陥るだなんて…!!)」
湧「…キョンキョン?」
京太郎「お、おう。悪い」
しまった、悩んでる間にちょっと撫で方が杜撰になってたな。
わっきゅん達には気軽に触れるようになったとは言え、女の子の髪って言うのは特別なものなんだ。
折角、それを触らせて貰っているんだから、気の抜けた撫で方をするのは失礼だろう。
とりあえずさっきの悩みは脇においておいて、今は全身全霊でわっきゅんの髪を撫でるべきだ。
湧「…えへぇ♪」ニコー
…こうして撫でてると改めて感じるけど、やっぱりわっきゅんの髪も女の子って感じだよな。
あんまりケアとか気にしてないって感じなのに指の間からさらさらって落ちていく。
その上、撫でる度に安心しきった笑みを浮かべられるんだから、庇護欲がガンガン刺激されてしまう。
もう何時まででもこのまま撫で続けてあげたいくらいだ。
京太郎「(…こんな子にコンプレックスを抱かせるくらい好かれてる奴がいるのかー)」
……しかも、体育祭が終わるまでは何時ものわっきゅんだった事を考えれば、ほぼ一目惚れに近い感じなんだよな。
く…!胸は若干、物足りないとは言え、こんなに可愛くて愛らしいわっきゅんに一目惚れされるなんて…!!
くそ…!!相手は一体、どれほどのイケメン野郎なんだ…!!!!
湧「…キョンキョンの手、凄ぜ気持っ良か…♪」
京太郎「はは。ありがとうな」
正直、顔も知らないその男には憎らしさすら感じる。
俺なんて女の園でずっと暮らしているってのに浮いた話すらないんだから。
一目惚れなんてされるようなイケメンは残らずもげてしまえば良いとさえ思っている。
京太郎「(…だけど、そいつはわっきゅんが恋した相手なんだよな)」
勿論、並の相手であれば付き合いを許すつもりはない。
顔だけではなく性格までイケメンでなければ、断固として反対する所存だ。
…けれど、それと同じくらいに、俺は女の子としてわっきゅんが幸せになってくれる事を望んでいる。
だからこそ、俺は ――
京太郎「さて」スッ
湧「…え?もう終わい…?」
京太郎「ん。終わりだから、服もそろそろ元に戻して…な」
湧「…あ」カァァ
その顔を再び赤く染めるのは、今までそれをわっきゅんが意識してなかったからなのだろう。
まるで今更、肌蹴たままの服に気づいたように彼女は急いで服を元に戻り始めた。
自然、純白の布地に隠されていく肌にちょっと勿体無いものを感じるが、でも、あのまま胸を晒され続けるのはちょっとな。
薄桃色の乳首も気になって、真面目な話も中々、出来そうにないし。
これ以上、彼女の黒歴史を増やさない為にも、ここで終わりにするのが一番だ。
京太郎「後、これからは俺に抱きついたりするのは控えないとな」
湧「……え?」
京太郎「だって、ほら…その…」
俺はわっきゅんの事を妹同然に思っている。
だが、現実、俺と彼女の間には血の繋がりと言うものがまったくないのだ。
もし、その相手とわっきゅんが上手くいったとして、自分以外の男に抱きついて喜ぶ彼女の姿を見たいと思うだろうか。
…少なくとも、俺はそんな恋人の姿を見たいとは到底、思えない。
見た瞬間、気が狂いそうなほどの嫉妬を覚える自分と言うのが今からでも容易く想像出来るくらいなのだから。
京太郎「(…でも、その辺りの事を一体、どうやって説明したものか…)」
わっきゅんの恋と言うのはとてもデリケートな話題なのだ。
こうして彼女を諭すのも、極力、それにノータッチで行きたい。
だが、見知らぬイケメンへの嫉妬混じりに口にした言葉は完全にノープランだったのだ。
どうすれば恋愛の話に触れず、わっきゅんに納得して貰えるのか。
そんな展望は俺の中にはまったくと言って良いほどなかったのである。
京太郎「も、もうわっきゅんも大人のレディと言っても良い年頃だしさ」
京太郎「あんまり気安く男に抱きついたり、頭を撫でて貰ったりするのはいけないと思うんだ」
湧「…でも、春さあや姫さあは何時も撫でて貰ってるよ?」
京太郎「うぐ…」
それでも何とか口にした言葉は、到底、倫理性に欠けるものだった。
何せ、俺は日頃から春や小蒔さんの頭を撫でているのだから。
わっきゅんよりも年上の彼女達に甘えさせておいて、彼女だけダメでは示しがつかない。
少なくとも彼女を納得させるだけの理由には到底、足りないだろう。
湧「…もしかしてあちきの髪汚くて…嫌になった…?」
京太郎「え…い、いや…」
湧「ご、ごめんなさい…次からはちゃんと洗ってから来るから…その…」ジワ
ぐあああああ!失敗した…!完全に失敗した…!!
まさか、窘めようとする言葉をそんな風に受け取られるなんて…!
下手にデリケートゾーンに踏み込まないとしたのが完全に仇になってる…!!
くそ…恋愛の件に触れないのであれば触れないで、もっとルートを考えるべきだった…!!
京太郎「だ、大丈夫だって。わっきゅんの髪が汚いなんて事はないから」
湧「でも…あちき、まだお風呂入ってないし…」
京太郎「そんなの今更、気にしないって」
京太郎「今までだってそんなの関係なしにわっきゅん達の事、撫でてただろ?」
湧「…じゃあ、どうしていきなりそんな事言いだしたの…?」
京太郎「あー…それは…」
…これはもう誤魔化してはいられない…よな。
さっき俺は完全に地雷を踏んでしまったんだから。
これ以上、失敗が許されない現状で、下手な嘘はつけない。
ここは彼女と真摯に向き合い、俺の考えをちゃんと伝えるべきだ。
京太郎「その…いきなりだけどさ」
京太郎「わっきゅんって好きな人出来ただろ?」
湧「ふぇっ!?」カァァ
…うん、まぁ、そういう反応になるよな。
今まで俺はわっきゅんの恋に気づきながらも、まったく話題に出さなかった訳だし。
それを隠してたつもりであろうわっきゅんからすれば、まさしく寝耳に水と言っても良いものだろう。
湧「な、ななななななななななななんで…!?」
京太郎「いきなり自分を魅力的だと思うかって聞かれたら、幾ら俺が鈍感でも気づくって」
湧「…はぅ」プシュウ
しかし、だからと言って、ここで手心を加えてやる訳にはいかない。
今の俺はもう追いつめられたと言っても良い状況なのだから。
ここで再び誤解を生んでしまえば、またわっきゅんの心を傷つけてしまう。
だからこそ、ここは多少、彼女が恥ずかしがっていても、一歩一歩着実に進まなければ。
京太郎「まぁ…その事に関しては俺も喜ばしく思ってるよ」
湧「…え?嬉しの…?」
京太郎「そりゃ当然だろ。他でもないわっきゅんなんだから」
…でも、なんでそこでわっきゅんは意外そうな顔をするんだろうか。
俺達は家族同然と言っても良い付き合いをしているんだから、その恋の始まりを嬉しく思うのが当然だろうに。
…それとも俺か、あるいはわっきゅんがまた勘違いをしているんだろうか?
湧「…あ、あちきじゃっで…?」
京太郎「あぁ。大事なわっきゅんだからな」
…分からん。
正直、分からないけれど…でも、ここは即答しなくては。
ここで言葉に詰まってしまったら、わっきゅんは俺に嫌われているんじゃないかって誤解しかねないし。
そこまで話が拗れてしまった時、どれだけの気まずさが残るか想像もしたくないくらいなんだから。
湧「~~~~っ♥」ブルル
……そう思ってハッキリ応えた訳だけど…どうしてだろうか。
俺の目の前でわっきゅんは顔一杯に喜悦を浮かべて震えてるんだけれど。
勿論、まるで宝くじの一等が当たったような顔は、魅力的ではある。
あるけど…これ間違いなく、俺とわっきゅんは今、すれ違ってるよな。
明らかお互いに何か誤解をしてるんだって分かっているんだけれど…。
湧「キョンキョンっ♥」ダキッ
京太郎「うぉ…!?」
だが、それをどうやって解消すれば良いのか分からない。
そんな俺にわっきゅんは、感極まったように飛びついてくる。
身体中から喜びを撒き散らすようなその小さな身体は、思いの外、強かった。
俺の怪我なんて気遣う余裕もないと言わんばかりに、ギュっと抱きつくわっきゅん。
普段のものよりも強くて激しいそれに、流石の俺も顔が赤くなった。
幾ら妹だ家族だと言っても、ここまで情熱的な接触をされては、色々と意識してしまう。
湧「嬉し…っ♥あちき…わっぜか嬉し…っ♥♥」スリスリ
京太郎「お…おう。そ、そっか」
…だが、それだけでは済まないのは、やっぱりわっきゅんの喜び具合が大きすぎる所為だろう。
俺は既にすれ違いに気づいてはいるものの、彼女は未だ気づいている気配がないのだから。
わっきゅんが真実を知った時、間違いなくその喜びは霧散してしまう。
それに強い気まずさと申し訳無さを覚えながらも、何処ですれ違ったのか分からない俺はわっきゅんの抱擁を受けるしかなくって。
湧「…ね、キョンキョン…♪」
京太郎「…っ!」ドキッ
…そうしている間に、彼女の目には艶やかさが増して来る。
俺の胸に抱きつきながらそっと見上げるわっきゅんの小さな顔。
そこに浮かんでいるのはただの喜びだけではなかった。
潤んだ瞳の中には艶やかさといやらしさが同居している。
いつものわっきゅんからは想像も出来ないその姿に俺の胸が強く反応するのを感じる。
湧「…ん♥」スッ
京太郎「…え?」
そんな俺の胸の中、わっきゅんはそっと瞳を閉じた。
上目遣いのまま目を閉じるその仕草に、俺の胸はさらに大きく高鳴ってしまう。
だって、それはまるでキスを強請るような仕草だったのだから。
自然と視線も彼女の小さくて可愛らしい唇に引き寄せられてしまう。
京太郎「(お、おおおおおおおおちつけ俺…!!)」
と言うか、ど、どうしてこんな事になってるんだ…!?
一体、何がどうなったらわっきゅんにキスを強請られるなんて状況に陥るんだよ!!
い、いや、ま、待て、落ち着け。
そもそもそれが俺の勘違いだって言う可能性はあるんじゃないか!!
そ、そう!これはキスを強請られているんじゃなくって、わっきゅんが眠いって言うポーズなんだよ!!!
京太郎「(…いや、流石にそれはねぇだろ)」
いや、勿論、俺はわっきゅんに男として代えがたいほどの信頼を向けてもらっていると言う自覚はある。
でも、だからってここでいきなり眠ろうとするほどわっきゅんも無防備ではないだろう。
そもそも、日頃から道場に通ってるわっきゅんは人懐っこくはあれど、礼儀をちゃんと弁えている。
何も言わずに、いきなり目の前で眠ろうとするはずがない。
京太郎「(じゃ、じゃあ、やっぱりこれって…)」
湧「……」パチ
京太郎「…ぅ」
し、しまった。
俺の中で応えが出ない間にわっきゅんの瞳がまた開いて…。
それだけならばまだしも、開いた瞳の奥から不機嫌さが見え隠れしてる…!
心なしか頬も膨らんでいるし…間違いなく今のわっきゅんはお冠だ…!
湧「……キョンキョン?」ジィィ
京太郎「い、いや、あの…え、えっと…」
湧「…してくれんの?」
な、何をすれば良いんですかねえええええ!?
つーか、さっきの仕草はキスのオネダリとしか思えなかったんですよ!!
でも、俺以外の男に惚れてるわっきゅんがキスを強請る訳ないし…!!
例え、強請られたとしても、そこは家族として超えちゃいけないラインだと思うんだ!!
まぁ、もう既に生乳見ちゃった俺が言うのもアレだけどさ!!!!
湧「そいなあこっちにだって考げがある…♪」グイ
京太郎「え、ちょ…!?」ドサ
って、そんな事考えてる間に、わっきゅんの手に押し倒されちゃってるし…!
しかも、ただ押し倒されるだけじゃなくって…これ完全にマウントポジション取られてる…!!
他の子ならまだしも、わっきゅんを相手に ―― しかも手負いの状態で抜け出せる気がしない…!
京太郎「わ、わっきゅん、落ち着いて…!」
湧「んふぅ…♪こん格好…ゾクゾクするぅ…♥」
京太郎「(アカン…!)」
完全にわっきゅんは俺の話を聞いてくれてない。
その瞳をさらに潤ませながら、俺の事をジッと見続けている。
そのままペロリと唇を舐める仕草はもう完全に捕食者のそれだ。
普段の彼女からは感じない色気も全身から染み出しているようにさえ感じる…!!
湧「はぁ…♪キョンキョン…♥キョンキョン…ぅ♥」チュゥ
京太郎「っはぁ…っ」ゾクッ
しかも、その状態で俺の首筋にキスなんてされたら…身体も反応してしまう。
女の園で暮らしていると言っても、俺は未だに童貞なのだから。
ホモでもインポでもない俺にとって、首筋から感じる刺激はあまりにも淫ら過ぎるものだった。
しかも、それは一度や二度では終わらないのだから、身体が興奮していくのも致し方ないだろう。
京太郎「(こ、このままじゃ…ヤバイ…!)」
わっきゅんの真意は分からない。
分からないけど…今のこの状況は決して健全じゃないだろう。
少なくとも、俺達は決して愛を交わした訳ではないのだから。
こんな風に情欲に流されるような事をしていては後で必ず後悔してしまう。
湧「むぜ声…♥もちっとしてあげたくなっしも…♪」ペロォ
京太郎「わ、わっきゅん…っ!」
湧「ん…ぅ♪」スリスリ
それは俺も分かってる…!分かってるんだ…!!
でも、小蒔さんと春が俺の部屋で寝るようになってから本格的に自家発電の時間がないんだよ…!!
お陰で溜まりに溜まった欲求不満は、わっきゅんの下で完全に火がついてしまってる…!!
このままじゃ遠からず俺のムスコは勃起し、わっきゅんに襲いかかってしまうだろう。
それを避ける為にも…ここは…!!
京太郎「ごめん…っ」グイッ
湧「んぁ…♪」
く…無理矢理、押しのけようとしてもやっぱりダメか…!
伸ばした手はわっきゅんの顔を首筋から離したものの、そのポジションは変わらない。
未だに圧倒的有利な態勢で彼女は俺の事を見下ろしている。
その足はがっちりと俺の下半身をホールドしているし…やはり自力での脱出は困難だろう。
湧「…どうして抵抗するの?」
湧「キョンキョンはあちきとしたくない…?」
京太郎「そ、そういう問題じゃ…ふあ…っ!?」
湧「じゅる…♪ちゅふゅぅ♪」ジュル
って返事をしてる間にも容赦してくれないのかよ…!?
伸ばした手の指をいきなり口に含んで…グチュグチュ音立てながらしゃぶり始めてるし…!
しかも、ただしゃぶるだけじゃなくて指の間までじっくりねっとり愛おしげに味わうようなもので…。
ま、まるで指をフェラされているみたいな感覚にムスコが…ムスコがぁ……!!
でも、ここで手を離したら、わっきゅんに密着されてキスの雨を降らされてしまうし…!
どっちを選んでも地獄とかもう詰んでるじゃねぇか…!!
京太郎「と、とにかく、い、一端、落ち着こう」
京太郎「お、俺達の間には今、誤解がある」
京太郎「俺達が今、するべきはお互いの間でコンセンサスを取る事だと思うんだ…!」
湧「ちゅぱぁ…♪コンセンサス…って…?」
よ、よし、反応してくれた…!
まだ半分、俺の指を口に含みながらではあるものの、俺の話を聞く気にはなってくれたらしい。
これまでまったく俺の声に反応しなかった事を思えば、それは大きな進歩。
だが、ここで下手を打てば、またさっきの強引でエロエロなわっきゅんに戻ってしまうかもしれないのだ。
このチャンスがラストなのだとそう肝に命じながら、慎重に説得しなくては…!!
京太郎「と、とりあえずだな」
京太郎「俺はわっきゅんの事をとても魅力的だと思っている」
京太郎「加えて家族としても一緒に過ごしてきた俺は、わっきゅんの事がとても大事だ」
湧「えへぇ…♥」クイクイ
京太郎「ふおぉ…」
ちょ、ま、待って。俺の上で腰を動かさないで…!
丁度、わっきゅんの下辺りに俺のムスコがあるから!!
マウントポジションを維持する為にがっしりと落とされたまま動かれると刺激がヤバイ…!
しかも、腰だけ前後に動かすようなそれは視覚的にもエロくて…!!
このままじゃ最初にわっきゅん達と混浴した時の二の舞いになってしまう…!!!
京太郎「で、でも、だからこそ、こういう事はそう簡単にしちゃいけないと思うんだ…!」
京太郎「す、少なくとも、俺達は今、状況に流されてしまっている…!」
京太郎「わ、わっきゅんだって本来ならこんな事するつもりじゃなかったんだろう?」
湧「…そいは…」
よ、よし!わっきゅんが口篭った…!!
やっぱり元々、わっきゅんもこんな事をするつもりはなかったんだろう。
それがちょっと状況に押し流されて、後に引けなくなってしまった。
なら、この方向で説得を続ければ、きっと突破口を開けるはず…!!
京太郎「俺は知ってるよ」
京太郎「わっきゅんがとても恥ずかしがり屋な子だって事」
京太郎「そんなわっきゅんが理由なく、こんな事出来るはずないもんな」
京太郎「きっと何か退っ引きならない理由があったんだろう?」
京太郎「俺にそれを教えてくれないか?」
京太郎「きっと俺はわっきゅんの力に…」
湧「…あ、あの…」
京太郎「……ん?」
…あれ?いつの間にかわっきゅんの顔から興奮の色が引いてってる。
…と言うか、寧ろ、今、わっきゅんから血の気すらなくなっていっているような…。
さっきまでは紅潮して今にも蕩けそうだった頬も、白くなっていってるし。
もしかして、彼女も自分のやろうとしていた事の過激さに気づいてくれたんだろうか…?
湧「…さ、さっきキョンキョン、あちきの好きな人に気づいたって…」
京太郎「あぁ。体育祭で会った誰かなんだろう?」
京太郎「大丈夫。他の皆には秘密に…」
湧「…」クラァ
京太郎「わ、わっきゅん!?」ビックリ
な、なんで、いきなりわっきゅんが卒倒するんだ…!?
おかしい…俺はちゃんと他の皆には秘密にするってフォローしたはずなのに…。
い、いや、今は理由なんてどうでも良いよな。
ともかく、今のわっきゅんはショックのあまり態勢の維持さえ出来ていない状況なんだ。
俺の顔の方へと倒れこんできた彼女の事を支えてあげなければ。
湧「……もう…もうもうもうもうもうもうもうもうもぉおっ!!」ポカポカ
京太郎「い、いてててて!!」
って、いきなりわっきゅんの手が俺の胸板に…!?
ま、まるで駄々っ子のようなパンチで腰も入ってないからあんまり痛くないけど、それでも怪我をした身体に衝撃が響いて…!!
痛くないけど痛い!!
響くように痛い!!!
湧「キョンキョンの馬鹿!馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ぁあっ!!」ポカポカ
京太郎「ご、ごめん!説得遅れてごめん!!」
湧「そっちじゃね!!」クワッ
じゃあ、どっちなんだ…!?と言うか、何が原因なんだ…!?
わっきゅんが怒っているのは分かるけど、心当たりが多すぎて特定出来ない…!!
で、でも、あんまり怒った顔を見せないわっきゅんが、ここまで怒りを露わにしているんだ。
きっと俺はとんでもない失態を彼女に見せてしまったんだろう。
湧「うぅぅ…」グス
京太郎「え、えっと…ホント、ごめん」
湧「…知たんっ」ギュゥ
…そんな彼女のポカポカパンチが収まっても、わっきゅんは俺の事を許してくれなかった。
どうやら俺の失態は、思っていた以上に彼女のことを傷つけてしまったらしい。
泣き声混じりのわっきゅんの声は、今まで聞いたことがないものだった。
それに内心、胸が痛むが、だからと言って、俺に出来る事は何もない。
未だ原因の特定に至れない俺に出来る事と言えば、ただただ謝罪し続ける事だけだった。
京太郎「…ごめん。その…俺に出来る事だったら何でもするから」
湧「…ぐす…何でも…?」
京太郎「あぁ。何でもする」
京太郎「だから…せめて泣き止んでくれないか?」
…本当は許して欲しいと言いたい。
けれど、俺がやってしまったのはきっとそう簡単に許してもらえるような事ではないんだろう。
少なくとも…あのわっきゅんが、未だに泣き続けているくらいなんだから。
その心に負った傷を思えば、俺に許しを乞うような資格はない。
湧「……じゃあ、今度、あちきのおやっどんとおっかはんに会うて」
京太郎「え?」
湧「…おやっどんとおっかはんもずっとキョンキョンに会いたいってゆうちょったから」
湧「いっどき、えさっしにたっ欲し」
京太郎「…俺は良いけど…」
…でも、本当にそんな事で良いんだろうか。
そりゃまぁ…熊殺しとまで呼ばわれるわっきゅんの親父さんには微かな恐怖心はあるけれども。
しかし、だからと言って、両親への挨拶と言う要求が、俺の罰に足りているとはあまり思えない。
少なくとも、もっとヘヴィなものを想像していた俺にとって、若干の肩透かし感が否めなかった。
京太郎「(…ってか挨拶って…)」
…まるで結婚の報告に行くみたいだけど…違うよな。
そもそも俺とわっきゅんは付き合ってすらいないのだから。
多分、わっきゅんとしては友達の紹介をするくらいのつもりなんだろう。
そう思うと余計に今回のお詫びには物足りない気がするんだけれど…。
京太郎「…でも、そんなの今でなくても言ってくれれば何時だって…」
湧「良いの」ギュゥ
京太郎「…わっきゅん」
…でも、わっきゅんは中々、強情だった。
俺の身体に抱きつきながら、それで良いのだと言葉を返す。
頑ななものさえ感じるそれは、さっきよりも若干、落ち着いたものになっていた。
俺の顔に胸を押し付けているわっきゅんの表情は見えないが、おそらく涙も収まりつつあるのだろう。
湧「…さっきのはあちきもちっと強引じゃったから」
湧「とゆか…事前にキョンキョンの鈍さに関して春さあから聞いちょったのに浮かれすぎちゃったし…性急過ぎたって反省しちょっ…」
京太郎「いや、そんな事は…」
だが、その声は時を経る毎にトーンダウンしていた。
落ち着きを超えて落ち込んでいるようなそれに俺は何とかフォローしようと口を開く。
だが、その具体的な内容までは出てこない。
一体、どうしてわっきゅんが反省しようとしているのかさえ今の俺にはまったく分からないのだから。
彼女の真意が分からないのにフォローなど出来るはずがなかった。
湧「そ、そいでも…まだ物たっしらんってゆのであれば…」
湧「あ、あの…そん…えっと…」モジモジ
そんな俺の前でわっきゅんはモジモジと身体を揺らす。
全身で俺を押し倒すような姿勢のまま見せるその動きは相変わらず俺の股間を刺激した。
が、さっきのようにいやらしい動きではない所為か、まだなんとか耐える事が出来る。
少なくとも、変な声を出して何かを伝えようとするわっきゅんを邪魔せずに済んだ。
湧「さっきの事…きゃあすれんで…欲し」
京太郎「え?」
湧「も、勿論、恥ずかしかったし…わ、忘れて欲し気持っはあるけれど…」
湧「で、でも…アレはまっげなくあちきの気持っ…じゃったから」
湧「じゃっで…出来れば…覚えておいて欲し」
覚えておいて欲しい。
…それが一体、どれだけの覚悟と想いで口にした事なのか、俺には分からない。
だって、今回の事はわっきゅんにとって、とても恥ずかしい事だったんだろうから。
間違いなく失敗と言っても良いそれは本来であれば今すぐにでも忘れて欲しいものなのだろう。
京太郎「(事実、わっきゅんは忘れて欲しい気持ちもあるって言っている)」
京太郎「(でも、彼女から出た結論はそれとはまったく真逆と言っても良いもの)」
京太郎「(それが気になるって気持ちは俺の中にもあるけれど…)」
京太郎「…あぁ。分かった」
京太郎「絶対に忘れない。ちゃんと覚えておくよ」
でも、今の俺にその疑問を口にする資格はないだろう。
何せ、俺はわっきゅんの事を一度、泣かせるまで追い詰めてしまったのだから。
その上、未だに彼女が変貌した理由さえ分からない俺に選択権などあろうはずもない。
ここは彼女の言葉通り全てを受け入れ、絶対に忘れないよう胸に刻んでおくべきなんだ。
湧「…後、ギュってして」
京太郎「ん」ギュゥ
湧「…それとナデナデも」
京太郎「はいはい」ナデナデ
湧「…んふぅ♪」
い、意外と要求多いな…。
まぁ、でも、こうして撫でている間にわっきゅんから満足気な声が漏れてるし。
少しずつではあるけれど、普段の甘えん坊で可愛い彼女に戻りつつあるのだろう。
…それは勿論、喜ばしい事なのだけれど、問題が一つある。
京太郎「(…静まれ、俺の下半身よ…!!)」
…一応、一段落こそしたものの、わっきゅんは未だ俺から離れようとはしない。
挿入してないだいしゅきホールドみたいな形で俺にしがみつき続けている。
…で、さっきのわっきゅんがエロ過ぎた所為で、俺の下半身に火が点いちゃってるんだよな。
興奮と刺激を求めて疼くようなそれを抑えるのは一苦労。
でも、わっきゅんに償わなければいけない俺には、彼女に離れて欲しいなんて言えなくて ――
―― そのまま小蒔さんが部屋に戻ってくるまで俺達はずっと布団の上で抱き合い続けていたのだった。
というところで今日の投下は終わりです
尚、もう大体の人が分かっていると思いますが、このスレで一番エロいのはわっきゅんです(´・ω・`)本能で即堕ちだからね、仕方ないね
多分、ここでわっきゅんに手を出しちゃったらわっきゅん関係の小ネタに繋がるんじゃないんでしょうか
おつおつ
相変わらずの文量流石
乙
しかし自分に向いてる矢印を無理矢理よそに向けるようなマネは感心しないな
乙&スレ建て乙
他の企画も待ッてるよ
乙です
わっきゅんエロすぎぃ!
わっきゅんエロかわいい!
なんか一気にヒロ…エロインポイント稼いでる!
本能って言われるとクンカーとかペロリストとかそっち方面に覚醒しそうで怖い
はるるのメインヒロイン力は大丈夫か?
わっきゅんが京太郎をご両親に会わせるつもりですよ?
ここまで鈍感だと最早罪悪だよな。
事ここに至って改めて思った。
おつー
本能に負けちゃう女の子ほんすこ
ところで思ったけど、何で京太郎は「自分は恋されてる」という考えを必ずと言っていい程最初に持ってきて一々それを否定するんだ?
毎度毎度それはあり得ないと結論付けるなら、いい加減最初からそういう考えが頭に上がらなくなってもおかしくないと思うんだが。
思春期故と言ったらそれまでだけど、京太郎の自己評価の低さを鑑みるとどうもな...。
小鷹さんみたいに気づいててスルーしてるんだよきっも
きっもじゃなくてきっとだったわなんか批判みたいになってすまん
>>1の京太郎のいつもの事
話が長くなればなる程、酷くなる
こころがメス化してきてるわけじゃないしなあ
売られた関連は自己評価低い理由にはやや弱い気がする
ここの>>1のいつもの事だから気にするだけ無駄
メスになった京ちゃん?
>>91
売られる前に散々告白しては「彼氏にするにはちょっと...」的な感じで振られて、売られてからは女装して尚隠せない男らしさが無かったのが止めになってこんな感じになった、的なの言って無かったっけ?
もしかして、今までフラれた女子の中にも乳晒したりキスしてきた女子がいた、という世界であるとか?
―― 京太郎くんのお陰で私も随分吹っ切れたのでしょう。
変に変わらなくても、今の自分のままで良い。
そんな風に言ってくれた彼の言葉は私の重石を取り除いてくれたのです。
今ではこうしてのびのびと、昔のようにして麻雀が打てるようになりました。
勿論、違うルールの中で、自分のルールを貫こうとする私の打ち方はとても歪なものでしょう。
―― でも、どうやら私は思っていた以上に中国式の麻雀が好きだったみたいです。
それでも尚、私は勝つ事が出来ました。
いえ、勝つだけではなく、ゆっくりと世界式のルールにも適応し、強くなっていったのです。
勿論、それは私の周りにいる雀士達が、世界でも上位に入る実力者ばかりと言うのも大きいのでしょう。
ですが、私にとってそれよりも重要なのは、自分の麻雀を貫いているという満足感でした。
―― 勿論、完全に好き勝手は出来ませんが…。
それでも今の私は麻雀を楽しむ事が出来ている。
楽しみ、強くなり、その上で勝つ事まで出来ているのですから。
その充実感は決して言葉に出来ません。
麻雀を始めたばかりの頃、覚えていたようなワクワク感と期待が私の中に蘇っていたのです。
―― そんな私に監督はとても目をかけてくれて。
元々、臨海女子の監督は、ただ強いだけではなく変わり種が好きなタイプです。
彼女がスカウトした雀士は皆、一風変わった打ち方をするのですから。
そんな彼女の目に、中国式の麻雀を貫こうとする私が目に止まらないはずがありません。
スランプが抜け、部内でも連戦連勝であった私を彼女はレギュラー候補に加えてくれたのです。
―― 勿論、レギュラーの壁はとても厚いですが。
臨海女子は世界中の有望な雀士を呼び集めて作られたチームです。
レギュラーに選ばれる可能性のある雀士と言えば、それは世界でもトップクラス。
実際、その中には私も良く知っている相手が少なからず混じっていたのですから。
まさしく跳梁跋扈と言っても良いその環境でレギュラーの座に収まるのはかなりの困難でしょう。
―― ですが、そんな中で、私にも友達が出来ました。
まず去年のインターハイで指折りの成績を残した智葉。
アメリカから日本にやって来て、メキメキとその頭角を現し始めたメガン。
風神の異名を持ち、世界大会を荒らしまわった明華。
サカルトヴェロから日本に来て、未だその底を見せていないネリー。
どれも世界で指折りの強者たちは、勿論、私とレギュラーを争うライバルです。
ですが、それ以上に通じるものがあった私たちは麻雀を通じてすぐさま仲良くなる事が出来ました。
メガン「ムムム」
智葉「何がむむむだ…と言いたいところだが」
明華「…本当に難しいですね、コレ」
そんな彼女達に私は今、中国式の麻雀を教えていました。
もっと麻雀のことを知りたいという智葉に、他の四人がついてきた形です。
しかし、その顔は今、とても悩ましそうなものでした。
中国式と世界式では細かいルールも役も全部違うのですから。
今まで積み重ねてきたセオリーが殆ど通用しない環境では、そんな顔をしてしまうのも当然でしょう。
ネリー「ぬあー!もどかしいーっ!!」
メガン「まるでカップラーメンが出来上がるのを待っていルような感じデスね…」
智葉「いや、その例えはおかしい」
明華「じゃあ、目の前に明太子があるのに食べれないもどかしさと…」
智葉「まず食べ物から離れようか」
それでも彼女達の表情は明るいものでした。
こうして日本にやってきている彼女達は私に負けず劣らず麻雀バカなのです。
本来、知るひつようのない中国式の麻雀を習いたいって言うほどの情熱は、そう簡単に冷めたりしません。
勿論、もどかしさに声をあげる事はありますが、彼女達もまた楽しんでくれている。
そう思うと私の指導にも熱が入ってしまいます。
智葉「だが、ハオは何時もこれを感じているという事か」
ハオ「まぁ、何時も、と言うよりは以前は、と言った方が正確でしょうね」
ネリー「今はもう吹っ切れたの?」
ハオ「はい」
勿論、今も完全に割りきった訳ではありません。
中国において役満に数えられる役が、世界ではただのタンヤオになる事だって珍しくないのですから。
それから感じるもどかしさはきっと一生、なくなる事はないでしょう。
しかし、だからと言って、私はもうそれに囚われたりしません。
私が選んだのは…いいえ、彼に導いてもらった道は茨の道だと最初から覚悟しているのですから。
自分の麻雀を貫くと決めた今の私は、もう吹っ切れたと言っても良いでしょう。
明華「…なるほど。愛の力ですね」チラッ
ハオ「ふぇっ!?」カァァ
あ、あああああああ愛っ!?
い、いえ、ここは落ち着くべきです。
明華は可愛らしい見た目とは違って、イタズラ好きな性格をしているのですから。
これはきっとカマかけであり、下手に狼狽してしまえば負け。
きっと敗者の運命として根掘り葉掘り聞かれて、辱められてしまう事でしょう。
ハオ「な、ななななななな何を言っているんですか」
ハオ「わ、私と京太郎君は別にそんな関係じゃ…っ」
智葉「うん。落ち着こうか、ハオ」
ネリー「盛大に墓穴掘ってるよ」
う…うぅぅ、だって、仕方ないじゃないですか。
い、いきなり愛とか言われたら…誰だって狼狽してしまいます。
ましてや、あ、相手は京太郎君なんですから。
い、いえ、別に決して彼が嫌いという訳ではなく、寧ろ好ましく思っていますが…。
ハオ「(だ、だって、京太郎君、格好良いし、優しいし…)」
アレから私は息抜きと称して何度も彼とデートをしてきました。
しかし、そうやって回数を重ねても、私は慣れる事がありません。
…だって、京太郎君は回数を重ねる毎にデートが上手くなっていくんですから。
もうエスコートの達人と言っても良いほど上達した彼に、胸がドキドキさせられてしまいます。
メガン「そもそも相手ガその京太郎君とやらだトハ一言も言っていない訳デ」
明華「愛ですね」ニッコリ
ハオ「あうぅぅぅぅ」マッカ
…し、しまった…まずそこからでしたか。
い、いえ、まだリカバリーは出来るはずです。
そもそも、私にとって一番近い異性は京太郎君なのですから。
同じ家で暮らし、二人っきりの時間も長く、週末には良くデートをする彼の事を意識しないはずがありません。
えぇ、あくまでもそれだけであり、私は彼の事が好きであったりはしないのです。
ハオ「ち、違いますよ」
ハオ「私はただ、京太郎君が一番、身近な異性だからで…」
ネリー「…でも、ハオってそのキョータローって奴の話するけど…毎回、顔にやけてるよ」
ハオ「ぅ」
メガン「完全にメスの顔ヲしてマスね」
ハオ「うぅぅ…」
ま、まさか明華だけではなく、他の二人からも追求を食らうなんて…!
…まぁ、元から二人も楽しいのが好きと言うタイプでしたし、予想は出来る結果ではあるのですが…!!
ですが、このままでは人数的にも私が圧倒的に不利…!
こ、ここはなんとか残った智葉に救援を頼まなければ…!!!
ハオ「…」チラッ
智葉「…そうだな。確かに普段のハオを見てる限り、それだけとは思えない」
ハオ「さ、智葉…!?」
そ、そんな…智葉にさえ裏切られてしまうだなんて…!
比較的、他の皆にツッコミを入れる事が多い智葉はこっちの味方になってくれると思っていたのに…。
これでは完全に孤立無援…故事になぞらえれば四面楚歌ではないですか…!
智葉「…悪いな、ハオ」
智葉「だが、ハオも悪いんだぞ」
智葉「私たちは雀士であるが女子高生でもあるんだ」
智葉「そういう色恋沙汰の話には興味があって当然だろう」
…まぁ、その気持ちは分からないでもないです。
私だって彼女達の立場であれば、踏み込んでいたでしょうから。
そもそも臨海は女子校であり、そういった色恋沙汰はめったに起こらない環境なのです。
ましてや、麻雀部は麻雀に情熱を傾ける雀士ばかりが集まっているのですから、尚更、恋とは無縁でしょう。
明華「で、実際、どうなんです?」
ハオ「ど、どうとは…」
明華「ぶっちゃけ、好きなんですか?」
ハオ「そ、それは…」
…ま、まぁ、好きと言えば、好きです。
だって、京太郎君は何度も私の事を助けてくれたヒーローなんですから。
毎日の生活でも、私に細やかな気配りをしてくれる彼の事を嫌いになるはずがありません。
京太郎君の事が嫌いになるような人なんて、きっとよっぽどのひねくれ者だけでしょう。
ハオ「(…でも、それはあくまでも一人の人物としてのものであって…)」
決して異性としてのものではありません。
た、例え、毎週末と言っても良い頻度でデートしていても…例え、その最中、胸がドキドキしていても!
風呂あがりで何時もより色気を増した彼に見惚れても、ふとした時に京太郎君に視線が引き寄せられても!!
手が空いている時に彼の事をすぐに考えたりしても、彼に襲われる夢を何度か見てしまう事があっても!!!
私は彼の事を男として意識している訳ではないのです。
えぇ、決して。
ハオ「私と彼との関係は、ただ擬似的な家族であるというだけですよ」
ハオ「それ以上でもそれ以下でもありません」
明華「…ふーん。そうなんですか」
ハオ「えぇ。だから…」
明華「じゃあ、私が貰っても良いですよね」ニッコリ
ハオ「…え?」
―― ここでこの話は終わりにしましょう。
そうつなげようと思った私の言葉を、明華が遮りました。
まるでそこから先は言わせないと言わんばかりの強引なそれに私の思考は止まってしまいます。
だって、それは京太郎君を奪うと私に宣言するものなのですから。
まったく彼と接点のない彼女がどうしてそんな事を言うのか私にはまったく理解出来ません。
ハオ「な、なんで…」
明華「だって、これまで話を聞いている限り、彼、とても好青年じゃないですか」
明華「ちょっぴりエッチではあるみたいですけれど、それは男の子ですから仕方ないでしょうし」
明華「何より、年上としてはそういうところも可愛いなってずっと思ってたんですよ」
た、確かに京太郎君は今時、珍しいくらい真面目で優しい好青年です。
大抵の人は彼と知りあえば、好きになってしまうでしょう。
で、でも、明華はまだ京太郎君の顔すら知らない状態なのです。
それで、こうして宣言をするなんて…ちょっと行き過ぎではないでしょうか。
明華「それに私はこのまま世界ランカーとして活躍する予定ですし」
明華「麻雀の強い女性は婚期を逃しやすいと言うジンクスを打ち破る為にも早めに相手を捕まえておこうかなって」
智葉「…確かにな」
ちょ、そこで遠い目してないで、こっちをフォローしてくださいよ…!
まぁ…日本はグランドマスターと言う身近で圧倒的な存在が居るからそのジンクスも、より強く意識しているのかもしれませんが…!
でも、幾ら何でもジンクス回避の為に京太郎君の事をもらうだなんて…流石に看過出来ません。
これでも私は京太郎君よりも数ヶ月だけ年上ですし…ご両親から彼の事を任されているのですから。
明華「まぁ、私としても友人の好きな相手を奪うほど見境ない訳ではないですし」
明華「今まではちょっと遠慮もあったのですが…好きではないのならば良いですよね」
ハオ「そ、それは…」
…ですが、明華はとても良い子です。
ちょっと天然というか変わったところがありますが、とても優しい子ではありますし。
私よりも胸の大きな彼女は、おっぱい好きな彼の嗜好にも沿う相手でしょう。
ましてや、彼女は私とは違って、麻雀だけの女ではありません。
歌を始め、他にも色々な趣味を持っているのです。
明華「…彼の事、紹介してくれますか?」ジィ
ハオ「……」
私よりも遥かに女としての魅力にあふれている彼女を京太郎くんに紹介する。
それに私が覚える抵抗は決して小さいものではありませんでした。
ただ、ご両親から彼の事を任されているという事以上に、心の中が反発を覚えてしまいます。
まるで自分の宝物を他人に奪われるようなそれは、いっそ恐ろしささえ感じるものでした。
ハオ「だ、ダメです」
明華「あら、どうしてですか?」
瞬間、口にする私の言葉は明華を拒絶するものでした。
勿論、そんな事を口にすれば、さっきの追求がより激しいものになる事くらい私にも分かっています。
ですが、それでも尚、私はその言葉を口にしなければいけませんでした。
…だって、彼女と京太郎くんが付き合う姿を想像するだけで…京太郎が私とデートしてくれなくなるというだけで…。
私の胸は暗く沈み、涙が出そうになってしまうのですから。
ハオ「わ、私はご両親から京太郎君の事を任されていますし…」
明華「あら、私はそんなに悪い女と思われていたのですか?」
ハオ「そういう訳ではありませんけれど…」
明華「大丈夫ですよ。私は物を大事にする方ですから」
明華「必ず京太郎君の事を幸せにしてみせます」ニコリ
ハオ「っ!」
京太郎君。
私以外の口から出たその言葉に、胸の奥が張り裂けそうな痛みを覚えました。
一体、貴女に京太郎君の何が分かるのか。
そんな反発混じりの言葉が喉元から出てきそうになるくらいに。
明華「…ハオ」
ハオ「わ、私は…」
しかし、それでも明華は容赦してくれません。
まるで追い詰めるようにして、私の名前を呼ぶのです。
穏やかな、しかし、有無を言わさないそれに私の言葉は思わず震えてしまいました。
麻雀で追い詰められている時よりもずっとずっと大きなプレッシャーが今の私にはのしかかっていたのです。
智葉「そこまでだ」
明華「…智葉さん」
そこで明華に対して静止を掛けたのは状況を見守っていた智葉でした。
まさしく鶴の一声と言っても良いそれに、追求しようとする明華の表情が揺らぎます。
それは智葉が私達の中で、中心人物と言っても良い存在感を放っているからでしょう。
残した実績で言えば、この中で一番、見劣りがしますが、彼女は間違いなく臨海女子のエースなのですから。
智葉「友人として背中を押したい気持ちはわかるが、少しやりすぎだ」
智葉「見ての通り、ハオは真面目なんだから許してやれ」
明華「…はい」
そんな智葉の言葉に、明華はそっと頷きました。
その身体からは追い詰めようとするような気配が消え、私のプレッシャーも軽くなります。
フッと身体が軽くなったようにさえ感じるそれは、まるで九死に一生を得たような心地でした。
少なくとも、私は香港でさえそのような気持ちになった事は一度としてありません。
明華「しかし、それだけではありませんよ」
明華「私は名前しか知らない彼に興味惹かれていますし」
明華「一度会ってみたいと思っているのもまた事実です」チラッ
瞬間、私の背筋はまたジリジリと嫌なものを感じます。
それは明華の言葉がさっきよりも真実味に溢れていたからでしょう。
きっとさっきの言葉は単純に、私の背中を押す為だけではなかった。
私がプレッシャーに負けて紹介されても良いと彼女はきっとそう思っていたのです。
メガン「まァ、私も確かに興味ありマスね」
メガン「ハオをそこマデゾッコンにスルなんてよっぽどノ色男なんでしょうシ」
ネリー「んー。私はちょっと気になるかな」
ネリー「確かその子の家ってカピバラ飼ってるくらいお金持ちなんでしょ?」
ハオ「だ、ダメです!!」
明華よりも邪な感情が交じるネリーの言葉を私は到底、受け入れられませんでした。
彼そのものに興味を持った明華ならば、ともかくお金目当てのネリーは絶対に近づけられません。
勿論、彼の好みは巨乳の女性みたいですし、そう簡単にはなびかないと思いますが…ネリーの貪欲さは凄まじいものがあるのです。
時にこちらが圧倒されるようなそれを発揮されてしまったら、幾ら京太郎君の好みとは真逆であってもコロリといってしまうかもしれません。
智葉「…まぁ、こんな感じで、彼を気にしている相手と言うのは多いんだ」
智葉「ハオももうちょっと自分に向き合った方が良いと思うぞ」
ハオ「自分に向き合うと言われても…」
…多分、智葉や明華は私の気持ちに気づいているのでしょう。
私の気づいていない…いいえ、目を逸らし続けている望みを、二人は叶えてあげようとしてくれているのです。
それに感謝を抱く事はあれど…中々、その気持ちに応える事は出来ません。
私はこれまで多くの雀士と同じく色恋沙汰とは無縁でしたし…何より ――
ハオ「(…彼と私は一つ屋根の下で暮らしているんですから)」
勿論、それは使いようによっては最大の武器にする事が出来ます。
ただでさえ間違いを犯しやすい環境は、彼と心通わせるには絶好のシチュエーションなのでしょう。
ですが、私が彼と一緒に暮らしているのは、何も京太郎くんと結ばれる為ではありません。
私の肩には送り出してくれた両親の期待、そして私に一人息子を任せてくれている須賀夫妻の信頼が掛かっているのです。
ハオ「(…もし、全てが上手くいって彼とここここ…恋人になってしまったら…)」
それらを全て裏切る事になってしまう。
いえ、ただ裏切るだけならばともかく、環境的には不適格だと引き離される可能性だって考えられるのです。
…そんな環境で自分に正直になれるはずありません。
彼の為にも、私の為にも…この気持ちに蓋をするのが一番。
ずっと気づかないでいるのが…最適なのです。
ネリー「…もう認めちゃいなよ」
ネリー「明華にあれだけ言われて渋った時点で、もう分かってるんでしょ」
ネリー「自分がもうキョータローって言うのが好きで、その気持ちも抑えられないって事」
ハオ「…それは」
ですが、その蓋はもう開いてしまいました。
明華の言葉によって、閉じていた蓋の奥から嫉妬が溢れだしてしまったのです。
それを今更、元の状態に戻す事は出来ません。
自分の気持ちに気づかないフリをし続けていた頃にはもう戻れないのです。
ネリー「そんなに好きになってるのにずっと共同生活とか無理でしょ」
ネリー「それでまたスランプに陥って私達の足を引っ張られても困るし」
ネリー「さっさと付き合って、公認の仲になっちゃった方が建設的だと思うよ」
ハオ「……」
自分の事をまず第一に持ってくるその言葉は、ネリーらしいドライなものでした。
しかし、その中にはきっと友人としての情が少なからず含まれているのでしょう。
私に向ける彼女の目は、優しいものになっていました。
けれど、私はそんなネリーに応える事が出来ません。
その言葉に背中を押されたのは事実ですが、私の中の迷いは未だ大きいものだったのです。
メガン「私は恋ナンテした事ないですが、分かる事は一つありマス」
メガン「決して譲れナイものがある時は、思いっきり攻めるベキです」
メガン「護り続けてイテモ、欲しイものは決して手に入らナイのですから」ズルズル
…いつの間にかカップラーメンを啜っているメガンの言葉は力強いものでした。
正々堂々とした麻雀をする彼女にとって、私の躊躇いはあまり共感出来るものではないのでしょう。
単純明快なその言葉には若干、憧れる気持ちもありました。
…ですが、私にとって、彼との間に広がる柵はそうやって振り切るのにはあまりにも大きすぎるものなのです。
麻雀の為、日本へと渡った私にも共感出来る部分はありますが、そう安々と受け入れられませんでした。
智葉「…ま、幸い、もうちょっとしたらクリスマスだからな」
明華「あぁ、日本ではカップルで過ごすイベントになっているんでしたっけ」
メガン「相変わらず日本人は魔改造が好きデスね」モグモグ
ネリー「それハロウィン魔改造したアメリカ人が言っちゃいけないと思うな」
…クリスマス。
元イギリス領であった香港では、それは家族と穏やかに過ごす祝祭です。
無論、香港人である私としては、実家に帰りたい気持ちもありましたが、あっちとは違って、日本にはクリスマス休暇などありません。
当日も普通に学校がある事を思えば、香港に帰るのは現実的ではないでしょう。
智葉「欧米とは違って、日本人にとってクリスマスは特別な日だ」
智葉「もしかしたら、彼の方から告白してくれるかもしれないぞ」
ハオ「こ、こ、告白…!?」カァァ
な、なんで、いきなり告白なんて事に…!
い、いえ…ま、まぁ、嫌ではないですけれども…。
で、でも、ほら、幾らなんでも話が突拍子過ぎると言うか…と、突然過ぎるというか…。
そもそも、彼が私に好意を持ってくれているだなんて、京太郎君と会った事もない智葉に分かるはずが… ――
明華「まぁ、なんとも思ってない相手とほぼ毎週末デートなんかしないでしょうしね」
ネリー「幾らお金持ちでもなんとも思ってない相手とデートして無駄金なんか使わないって」
メガン「聞いテル限り、意識されているノハ確かだと思いますヨ」ケプ
う…うぅぅ…そ、そんなに京太郎君の態度って分かりやすいんでしょうか…?
まさか話を聞いているだけの四人が意見を完全に一致させるだなんて…。
でも…確かに京太郎君は私と一緒にいると妙に楽しそうにしてくれているのですよね。
ただ格好良いだけじゃなくて、ちょっと可愛ささえ感じるその顔は私も好きで…。
だから、彼とのデートに夢中になった私はついつい手を繋いじゃったりとか…。
ハオ「…っ」ボン
ネリー「…あ、オーバーヒートした」
メガン「これは先ガ思いやられマスネ」
だ、誰の所為だと思ってるんですか、一体…。
好きな人が同じ気持ちでいてくれているんじゃないかって言われたら、誰だってこうなっちゃいますよ。
……もしかしたら、彼と本当の意味でデート出来る日が来るんじゃないかって。
手を繋ぐだけじゃなくて、その先までして貰えるんじゃないかって思ったら…もう胸のドキドキが止まりません。
智葉「まぁ、念の為、告白されたらどうするか考えておいた方が良いと思うぞ」
智葉「ハオも下手な返事をして彼を傷つけたくはないだろう?」
ハオ「…はぃ」プシュウ
…そんな私を微笑ましげに見ながらの智葉の言葉はとても優しいものでした。
心から私の事を考えてくれているのが伝わってくるそれに、私は小さく頷きます。
彼女の言う通り、私は決して彼の事を傷つけたい訳ではないのですから。
もしもの為に心の準備をしておくのは決して悪い事ではないでしょう。
ハオ「(…彼がもし、私に告白してくれたら…)」
ぜ、絶対に我慢出来なくなっちゃいますよね。
きっと私、嬉しすぎて泣いちゃうと思います。
でも、それを誤解されない為にちゃんと言葉を…。
あぁ…でも、もし、嬉しすぎて言葉に詰まっちゃったらどうしましょう。
…そ、その場合は、まず京太郎くんに抱きつくしかないですよね。
ち、ちょっと…いえ、かなり恥ずかしいですけど、でも、それで彼を傷つける訳にはいきませんし。
た、ただ、それで京太郎くんが必要以上に興奮しちゃったら…ど、どうしましょう。
抱きついている私は逃げられませんし…き、きっと無理矢理キスされちゃって…そ、そのままベッドに…っ。
明華「完全にトリップしてますね」
智葉「ま、これで少しは自分の気持ちに向き合うだろうさ」
メガン「それじゃあ、麻雀再開しますカ」
ネリー「先生役のハオが帰ってこないから何時もので良いよね」
―― そんな友人たちの言葉さえ届かなかった私が元に戻ったのは、それから一時間ほど経った後の事でした。
流石に眠いので寝ます(´・ω・`)ちなみに後二回くらいの投下でエロに入れるんじゃないかなーって
またキリの良いところまで書き上がったの明日は投下します 多分
これ時期的にはいつ頃なんだ...。
>>77
文章量あってもあんまり話進んでないですけどね!!
なんとか二周年とかになる前に京子スレ終わらせたい…(切実)
>>78>>84>>86>>87>>88>>90>>92>>94
美少女が目の前で目をつむって上目遣いになったら、そりゃ健全な男子高校生としては自意識過剰になっちゃうだろ!!
まぁ、一応、京太郎が鈍感なのは>>94以外にも理由があります
それで納得していただけるかは分かりませんが、今しばしお待ち下さい
>>79
今やってるハオの即興終わる頃には少し時間も出来るでしょうしSW2.0スレの書き溜めも進めようかなって思ってます(小声)
>>80>>81>>82>>85
春は京ちゃんの事好きすぎてスキンシップがいきすぎちゃう子ですが
わっきゅんの場合、本能が強すぎてすぐに孕みたがっちゃう子ですからね(´・ω・`)エロくても仕方が無いね
まぁ、あくまでもエロいだけなので、あんまり変態方面にはいかないと思います 多分
ちょっとした事ですぐスイッチが入って即堕ち2コマレベルで本能に負けるのは確実でしょうけど
>>83
大丈夫だ、問題ない
はるるのメインヒロイン力はちょっとお寝坊さんなだけ
やれば出来る子だってお母さん信じてるから
>>91>>93
つまり京ちゃんと和がなんかこうオカルトっぽい何かで意識が入れ替わってしまい
自分の体を好きにされてはたまらないと和(京ちゃんボディ)が、京ちゃんの部屋に上がり込み、
なんとか両親が帰ってくるまでに原因を探ろうとするんだけど中々、上手くはいかず、
そろそろ寝なければ、と言う時間になったところで、二人は牽制の為、一緒に風呂に入り、
目の前でシャワーを浴びる自分の身体に、オスの欲望を抑えきれなかった和(京ちゃんボディ)が京ちゃん(和ボディ)を襲って
結果、自分の体にメスの悦びを教えられるという摩訶不思議な体験をする和を書けば良いのか(錯乱)
>>95
この世界ビッチ多すぎィ!
まぁ、もし、それなら流石に、何処ぞの幼馴染みたく内心、好意を持ってたけど
突然、告白されて素直になれなかった…とかそんな感じですかね(´・ω・`)まぁ、流石にエロイン増えすぎるんで、そんな過去はないでしょうが
>>124
原作に冬服を着た臨海女子が寮?の中で麻雀打ってるシーンがあったので、時期的にはあの辺りを想定してます
原作には何時とは書いてないですが、このスレでは多分、クリスマス一週間前くらいじゃないでしょうか
―― 霧島神宮において秋の例祭は一大イベントである。
霧島神宮は大小合わせて年に100近い祭りが行われる場所だが、その中で一番、盛大なものと言えば、殆どの人間が秋の例祭を挙げるだろう。
実際、主祭神に縁深い日に行われるその祭りは、県内外から多くの観光客を集める。
ほぼ一日掛けて催されるそれを楽しみにしている者は、霧島神宮の中にも多かった。
―― だが、それはあくまでも『表』向きの話。
初美「…はぁ」
霞「どうしたの、初美ちゃん?」
初美「いや、今年の『お祭り』もまた忙しくなりそうだなと思ったのですよー…」
『お祭り』。
初美が口にする言葉が示すのは、秋の例祭ではなかった。
そもそも、秋の例祭はもう一ヶ月前に終わってしまっているのだから。
霧島神宮はもう秋の収穫を祝う神嘗奉祝祭の準備に入っている。
霞「まぁ、でも、例年よりはマシじゃないかしら」
巴「そうですね。学生と巫女の二足草鞋なんて事にならなくて済みますし」
しかし、彼女達が口にする『祭り』は神嘗奉祝祭の事でもなかった。
無論、彼女達も霧島神宮に所属する巫女であり、それらの手伝いに借り出される事はある。
だが、それは霧島神宮最大と言っても良い例祭の時でさえ数回程度。
六女仙と言う特殊な立場にいる彼女達はあまり『下』の事には関わらない。
彼女達にとって本来の仕事は、神代の巫女である小蒔のサポートにあるのだから。
―― それでも年に数回は彼女達に大仕事が回ってくる事がある。
それは霧島神宮ではなく、神代家に纏る祝儀が行われる時だ。
他の巫女達とは一線を画する立場ではあるが、それは彼女達が神代家にとって重要だからこそ。
神代家が昔から行われてきた祭事となれば、どうしても大仕事を任せられてしまう。
初美「それでも、このお屋敷の大掃除は面倒なのですよー…」
ましてや、今回の『お祭り』は、彼女達の住む屋敷が主な舞台となるのだから。
日頃は男子禁制の神鏡も、その日ばかりは男女の別け隔てなく受け入れる。
無論、入れるのは神代とその分家 ―― それも一定以上の地位にいる者達だけだが、その数は決して少ないとは言えない。
少なくとも、そのもてなしを任された初美達が若干、憂鬱になる程度には。
巴「まぁ、日頃からちゃんと掃除はしてるし、大掃除と言ってもそこまで大した事しなくても大丈夫よ」
初美「でも、今年もまたあのババ…クソババア連中が来るんですよねー…」ハフゥ
無論、初美は決して掃除が不得手と言う訳ではない。
六女仙に選ばれた時から一通りの家事は仕込まれているのだから。
一見、適当そうなその性格からは考えられないほど、部屋も綺麗に整頓されている。
そんな彼女にとって掃除は決して憂鬱なものではない。
憂鬱なのは、その『お祭り』で、会いたくはない人たちと会わなければいけなくなるからだ。
霞「どうして言い直したのかしら…」
霞「まぁ…気持ちは分からないでもないけれど」
初美の言う『クソババア連中』とは、六女仙に選ばれなかった巫女達の事だ。
神代を取り巻く分家にとって、六女仙とは別格と言っても良い地位にある。
選ばれれば、後の権力を保証されるその称号を欲しがるのは一人や二人ではない。
だが、六女仙の名を望む数に対して、その門はあまりにも狭すぎる。
家柄或いは巫女としての才覚が足りず、涙を呑んだ女性の数は決して少なくはなかった。
霞「(それだけであれば、まだ害もないのだけれど…)」
そうして覚えた悔しさは、何時しか僻みや嫉妬、疑心暗鬼へと変わる。
幾ら巫女だと言っても、人の業から完全に逃れられる訳ではないのだから。
それに同情する気持ちは霞にもあるが、だからと言って、会う度に嫌味を口にするのは止めて欲しい。
石戸本家の一人娘だから六女仙に選ばれたのだと数えきれないほど言われた彼女は、どうしてもそう思ってしまう。
霞「(…それに私達を引きずり降ろそうと画策する人もいるし)」
基本的に六女仙は代替わり以外での交代を認めない。
不慮の事故や病などでその一角が欠けたところで、代わりを探したりしないのが通例である。
だが、六女仙としての選考に漏れた彼女達にとって、それは決して絶対のものではなかった。
六女仙の誰かに致命的な不手際があれば、自分か娘がなり代われるかもしれない。
そんな願望を胸に抱いた女性達に、邪魔をされた回数は一度や二度ではなかった。
初美「どーせ今年も家からゴミを持ち込んで、汚れてるってイチャモンつけられるのに、頑張って掃除するのも馬鹿らしいのですよー」
巴「あ、あはは」
呆れるように初美が口にするものの、それはまだ可愛らしい方ではあった。
歴史を紐解けば、六女仙に罪をなすりつける為、神代本家の人間を毒殺しようとした巫女さえいる。
流石にそのような巫女の数はごく少数だが、今年も無理難題やイチャモンをつけられるのは確実。
そう思うと今からでも憂鬱な気分になり、その言葉も愚痴っぽくなってしまう。
初美「ぶっちゃけ、そんなに良いもんじゃないと思うんですけどねー…」
無論、それは六女仙と言う立場にあるからこそ言えるものなのだと初美は分かっている。
それを持っていない側の立場からすれば、良いところしか見えないのだと言う事もまた。
だが、それでも初美がポツリと漏らしてしまうのは、それが決して楽しいだけの仕事ではないからこそ。
その名に負けないだけの苦労と周囲の嫉妬がある事を思えば、到底、全肯定出来るものではない。
初美「(…それに京太郎君の事もありますしね)」
無論、彼女は霞達と知り合うキッカケになった六女仙と言う名には感謝している。
きっと一生涯を掛けて付き合っていくであろう親友達の存在だけでも、六女仙になった価値はあると思うくらいに。
だが、六女仙は、決して神代の巫女の世話をするだけの役職ではないのだ。
神代家と密接に関係するその立場は、時に嫌な仕事を押し付けられる事もある。
初美「(出来れば、どうにかしてあげたいのですけれどねー…)」
例えば、それは神代家によってその人生を雁字搦めにされた須賀京太郎の監視。
もう二度と逃げ出したりしないように、と言うそれを出来れば初美も断りたかった。
実際に自分たちは京太郎に逃げ出されても仕方が無いような事をしているのだから。
それを引き止めるような事は極力、したくない。
初美「(…でも、京太郎君は神代家にとって特別な子で)」
京太郎がただ須賀家の直系と言うだけならば、神代家もここまで強引な手段を取ったりはしない。
須賀直系の子と言うのは貴重ではあるが、逆に言えばそれだけなのだから。
本来、女性でない京太郎は六女仙にもなれず、そこまで執着する理由がない。
その血筋を残す為、有力な分家の子 ―― 例えば明星辺りを婚約者に充てがうかもしれないが、あくまでもそれだけ。
恨まれるのを覚悟でその人生を破壊したりはしなかっただろうと初美は思う。
初美「(向こう100年の繁栄…ですかー)」
初美は六女仙と言うオカルティックな環境の中にいながらも、比較的、現実を見据えて育ってきた。
そんな彼女は京太郎を神代家へと縛りつけるその言葉を、あまり信じてはいない。
向こう100年の繁栄と言われてもピンと来ないというのも大きかった。
だが、その言葉を直接、聞いた神代家は、心から信じきっている。
それが神代の巫女の言葉 ―― ひいてはそこに降りてきた神のお告げであるが故に。
初美「(ホント、面倒な言葉を残してくれたもんですよー)」
その言葉の所為で、自分の大事な人達が今、とても苦しんでいる。
京太郎は未だ完全に喪失から立ち直る事は出来ておらず、小蒔はそんな京太郎を可哀想になるくらい気にかけていた。
その上、春や明星もその言葉の所為で、素直に想いを告げる事が出来ない。
結果、京太郎を取り巻く関係が拗れつつある事を思えば、幾ら神が相手でも文句を言いたくなる。
良かれと思ってやったのだろうが、自分の影響力を自覚して欲しいと説教してやりたくすらあった。
初美「(まぁ、そう言ってる私も、京太郎君達の為に何かしてあげられてる訳じゃないんですけど…)」
京太郎達の事を思いながらも、自分は特に何かしらの行動を起こしている訳ではない。
無論、日頃、京太郎達が楽しく過ごせるよう、心を砕いているつもりではある。
いざと言う時は神代家ではなく、京太郎の味方をするつもりでさえあった。
だが、それらは決して彼らの問題を根底から解決するものではない。
どれだけ初美が道化になったところで、本来の問題から目を逸らす程度の効果しかないのだ。
―― だが、根本的な治療をしようにも、その問題の根が深過ぎる。
初美は六女仙に選ばれこそしたものの、未だ実権は何一つとして持ってはいない。
あくまでも将来の成功を約束されているだけの立場に過ぎないのだ。
そんな彼女には100年の繁栄と言う言葉に目が眩んだ神代家を変える力はない。
彼女に出来る事と言えば、その側に寄り添って、辛い時に支えてやる事だけだった。
初美「(どうにもままならないですよねー…)」フゥ
霞「…初美ちゃん」
それに無力感と自己嫌悪を覚える初美は小さくため息を吐いた。
さっきまで彼女から漏れていた愚痴とはまた違うそれに霞は初美の内心を感じ取る。
元々、初美は京太郎に対して、強く入れ込んでいたのだ。
そんな初美が京太郎に未だ我慢を強いているという状況を許容出来るはずがない。
京太郎達の前では決して表に出さないものの、京太郎の脱走から初美はずっと思い悩んでいた。
霞「…もしかして初美ちゃんも京太郎君にやられちゃった口なのかしら?」
初美「…はい?」
だが、霞はそれを決して指摘したりはしなかった。
無論、霞も親友であり家族でもある初美の悩みを解消してあげたい。
しかし、それを解決するには、六分家筆頭である石戸家の一人娘では力不足なのだ。
その問題の根が神代家全体にある以上、個人の力ではどうしようもない。
それを誰よりも良く理解する霞にとって、この場で出来るのは初美の気を紛らわせる事だけだった。
霞「だって、ほら、最近は湧ちゃんも京太郎くんにお熱みたいだし」
巴「…やっぱり運動会の事が大きかったんでしょうか」
霞「でしょうね。十曽家は本能的に強いオスを求めるみたいだし」
霞「あんな姿を見たら、堕ちちゃうのも無理ないでしょう」
無論、十曽家は強いオスであれば誰でも良いと言う訳ではない。
その恋を本能に一任している彼女達は、思いの外、一途かつ我儘なのだから。
ただ強いだけのオスには惹かれず、性格や身体の相性も重要視する。
そんな血を誰よりも濃く受け継ぐ湧と、京太郎の相性は外から見ても分かるくらいに良好だったのだ。
殺意をむき出しにして戦うその姿に、湧が堕ちないはずがない。
初美「…で、どうしてそこから私が京太郎君に惚れたとかいう話になるのですかー?」
霞「あんなに物憂げなため息吐かれちゃ邪推もしたくなるわよ」
初美「…まぁ、相手が京太郎君だって事は否定しないですけどね」
だからと言って同じように初美もまた堕ちるかと言えば、答えは否だった。
無論、仲間の為、春の為に戦った京子の姿を彼女もまた格好良いと思っている。
恐怖を覚えた事は否定しないが、それ以上に心を引きつけられたのは事実だ。
しかし、それは決して女として ―― メスとしての好意に繋がったりはしない。
多少、やんちゃな姿を見せられたものの、京太郎は変わらず初美にとって家族のままだった。
初美「でも、私と京太郎君がどうこうなったりはしないですよー」
初美「ぶっちゃけ、アレ、私にとって放っとけない弟みたいなもんですしね」
霞「あら、湧ちゃんだって、それは同じ事だったと思うわ」
霞「まぁ、湧ちゃんの場合、弟じゃなくて、お兄ちゃんって感じだったんだろうけれど」
初美「…言いたい事は分からないでもないですが、流石に十曽家と一緒にして欲しくないのですよー」
無論、初美は十曽家に対して思うところはない。
分家の中でも神代家との繋がりが深い薄墨家は、その護衛役を務める十曽家に救われた事が何度もあるのだから。
そのエピソードを聞いて育った初美は、十曽家の事を好意的に思っている。
ましてや、相手は家族同然に過ごしてきた湧なのだ。
その言葉に含むところなどまったくない。
初美「(…でも、十曽家は思い込んだら一直線ってタイプですし)」
初美「(流石に本能から恋に堕ちる事を宿命づけられている一族と同じにはなれないのですよー)」
そう思いながらも初美は、これまで恋と言うものをした事がない。
その特殊な家系は彼女の周りから異性を排除していたし、また彼女は外見以外は大人びている方なのだから。
先天的に男が持つ幼稚な部分を感じ取ってしまう彼女にとって、これまで恋愛対象となる相手はいなかった。
京太郎に対しても異性と言うよりは、自分が護ってやらなければいけない相手、と言う意識の方が強い。
霞「じゃあ、京太郎君の事は嫌い?」
初美「そういう極論で話を進めようとする人は嫌いなのですよー」ツーン
巴「ふふ」
そんな初美の心を揺さぶろうとするような霞の言葉に、初美はプイっと顔を背けた。
何処か子どもっぽいその仕草は、しかし、本気で拗ねている訳ではない。
このくらいの応酬は幼馴染である彼女達にとって日常茶飯事なのだから。
嫌いという言葉さえも信頼の裏返しである彼女達に、巴は小さな笑みを浮かべて。
初美「大体、そんな事言ってる二人はどうなのですかー?」
巴「えぇ…っ」
瞬間、初美から帰ってきた言葉に、巴は狼狽を浮かべた。
その言葉は霞だけではなく今まで交戦圏外だと思っていた自身をも巻き込むものだったのだから。
完全に不意打ちと言っても良いそれに冷静さを保つ事が出来ない。
反応しては負けだとそう思いながらも、その声には驚きの色が滲み出ている。
初美「あれぇ…巴ちゃん、もしかして…」ニヤニヤ
巴「ち、違うわよ。ちょっと驚いただけだから」
巴はそう言うものの、彼女は既に京太郎の事を意識していた。
無論、家族だという認識そのものが変わった訳ではない。
しかし、その脳裏には先日、京太郎が見せた戦いが焼き付いてしまっているのだ。
輝夜を徹底的に叩きのめしたそれは、彼の本質が『オス』である事を彼女に思い知らせたのである。
巴「(勿論、今までも分かってなかった訳じゃないけれど…)」
巴は須賀京子の正体を知っている。
幾らその外見を取り繕ったとしても、男である事を忘れた事はなかった。
だが、こうして一緒に暮らしている中で、それは徐々に薄まってきていたのである。
それは勿論、神代家に来てから京太郎がずっと自分の中の男と言うものを殺してきたからだ。
突如として美少女達と共同生活を営むには、彼はあまりにも健全すぎたのである。
極力、平穏に少女たちとの生活を作り上げる為には、男らしさなど邪魔なだけ。
女性ばかりの清澄麻雀部で磨かれた彼のバランス感覚は無意識にそう言い聞かせてきた。
巴「(…あの時の京太郎君は何時もと違って…ドキドキさせられるものだった)」
だが、そんな抑制も、輝夜の非道によって弾け飛んだ。
大事な少女たちを傷つけられた怒りに、京子は自身の獣性をむき出しにしていたのである。
その姿に少なくない怯えを覚えながらも、巴は内心、魅入られてしまっていた。
自分が庇護しなければとそう思っていた相手は、心の中にこんなに激しい物を飼っている。
どれだけ抑えこんでもなくなる事はないその男らしさに、巴はもう京太郎の事をただの庇護対象とは見れなくなっていた。
巴「(で、でも、別に好きとかそういうんじゃないわよね)」
巴「(確かにあの時の京太郎君は格好良かったし、普段から色々と手を貸してもらっているのは事実だけれど…)」
巴「(それだけで好きになっちゃうほど私はチョロくないもの)」
しかし、それはまだまだ異性愛に繋がるには程遠かった。
そもそも巴の中で、京太郎が家族という認識は未だ根強いものなのだから。
先日の戦いは京太郎が男である事を彼女の中に刻みこんだが、あくまでもそれだけ。
出来の良い弟から魅力的な男になった程度であり、彼女の中のメスを呼び覚ましたりはしない。
初美「…怪しいですねー」ニヤニヤ
巴「あ、怪しい事なんて何もないわよ」
巴「私にとっても京太郎君は弟みたいなものなんだから」
そんな自分を巴は良く自覚していた。
しかし、だからと言って、それを正直に伝える訳にはいかない。
彼女がそう思うのは、自分を見上げる初美の目が猫のそれに近いからだ。
面白そうな気配を感じて、ニマニマと笑みを見せる親友にこれ以上、餌をやれない。
ここで弱みを見せてしまったら、また延々と玩具にされるのを巴は良く知っているのだ。
巴「それに…そういうの春ちゃん達に悪いじゃないの」
だからこそ、その言葉はただ話を逸らす為のものだった。
しかし、それだけでは済まないのは、その言葉が決して嘘ではないからだろう。
この屋敷に来てそろそろ一年が経つ京太郎には既に三人の少女が懸想しているのだ。
日頃から京太郎と一緒にいる事の多い彼女達の恋路を、巴は決して邪魔してやりたくはない。
それは勿論、神代を取り巻く六分家の中、比較的、立場の弱い狩宿の出と言う事も関係している。
だが、それ以上に大きいのは、巴が春達の事を家族として想っているからだ。
初美「まったく…巴ちゃんは真面目過ぎるのですよー」
霞「そうね。私も気にし過ぎだと思うわ」
霞「私達だって『候補』である事に間違いはないんだから、もっと気楽に考えても良いと思うわよ」
巴「それは…そうかもしれませんけれど…」
『候補』。
その言葉の意味を巴は良く分かっている。
本来ならば男子禁制の神境に京太郎が放り込まれたのは、決して偶然でも間違いでもないのだ。
何が何でも京太郎を確保しようとする神代家の意図だけではなく、しきたりも深く関係している。
昔から行われてきたそれを、巴は決して否定するつもりはない。
しかし、恋愛に対して人並みの憧れを持っている一人の女として、どうしても躊躇いを覚えてしまう。
霞「…まぁ、その辺は外野からとやかく言っても仕方ないわよね」
霞「こういうのは本人の気持ち次第だもの」
そんな巴に対して霞は深く突っ込もうとはしなかった。
元々、狩宿は六分家の中でも、『外』と関わる機会が多い。
その恋愛や結婚に関する価値観は、現代社会のものと殆ど変わりがなかった。
そんな家で幼少期を過ごした巴に、何を言っても納得させられる訳がない。
一般的な価値観から遠いのは自分たちの方である事を霞は良く理解しているのだ。
霞「(それに…きっと巴ちゃんもそれを受け入れなきゃいけない日が来るわ)」
霞がそう思うのは、巴が京太郎の事を一人の男として認識しつつある事を感じ取っているからだ。
輝夜と京太郎が戦った時から、巴が彼に送る視線の色は変わりつつある。
無論、それは春達のように熱っぽいものではないが、以前のように微笑ましさや庇護欲だけのものではない。
そこに女としての意識が混ざっている事を、敏い霞は気づいていた。
霞「(最近は京太郎君と触れる度に赤くなっちゃったりもしているし…)」
霞「(キッカケさえあれば巴ちゃんも堕ちちゃうでしょう)」
そして何より、霞は京太郎の事を高く評価している。
無論、六女仙として小蒔と共に暮らす彼女は、まったくと言って良いほど異性の知り合いがいない。
唯一、『外』との接点と言っても良い学校でさえ、女子校続きだった彼女は男の事を殆ど知らないと言っても良かった。
しかし、それでも、京太郎が人として、とても好ましい相手である事くらい分かる。
霞「(…私達を恨んだりしないだけでも本当は有り難い事)」
霞「(でも、彼は恨むどころか、私達の事を幾度と無く助けてくれて)」
霞「(石戸の娘である私にだって…京太郎君は手を差し伸べようとしてくれたわ)」
無論、特殊な環境下で長期間を過ごしている京太郎がストックホルム症候群を起こしている事くらい霞は分かっている。
しかし、それだけで彼の優しさ全てが説明出来る訳ではない。
そもそも、ストックホルム症候群は親しみや連帯感を産むだけであり、その性格を歪ませたりはしないのだから。
事実、京太郎は霞だけではなく、ほぼ他人と言っても良い依子にも手を差し伸べ、彼女の窮地を救おうとしていた。
霞「(とっても優しくて、凄く強くて、ヘタレだけど頑張り屋)」
勿論、ただ、それだけの男であれば、ここまで霞も評価したりはしない。
六女仙の長であり、また石戸本家の一人娘でもある彼女は、ロマンチストな部分とリアリストな部分を併せ持っているのだから。
優しさだけがどれだけ優れていても、色々と柵の多い自分たちを受け止める事が出来ない事を彼女は良く分かっている。
だが、京太郎はこれまで幾度となくその力と才覚を示してきた。
霞達が掛ける期待に応える事によって、彼は優しさだけではなく、自身が優れた男である事を証明し続けていたのである。
霞「(『家族』と言う色眼鏡が外れた時、どれだけ彼が魅力的に思えるのか私には分からないけれど…)」
霞も巴達と同じく、初恋を経験していない。
六女仙の長として、そして小蒔の天児として日々を過ごす彼女に、そのような余裕は一切、なかった。
だが、霞の周りは今、初恋に目覚める少女たちの数がじわじわと増えてきているのである。
今まで恋など無縁であったはずの仲間たちが次々と堕ちてしまうほどに京太郎は魅力的な男。
それを肌で感じ取る霞にとって、京太郎を男として意識し始めた巴が堕ちるのは時間の問題だった。
霞「(…そもそも京太郎君みたいな相手を巴ちゃんが放っておける訳ないもんね)」
誰かの為に無理しがちな頑固男と、世話を焼くのが好きな女の子。
その相性の良さは、これまで多くの創作物で語り尽くされてきている。
その上、京太郎は未だその心にある影が消えきらず、また巴にとって負い目のある相手でもあるのだ。
そんな京太郎の事を巴が放っておけるはずがない。
事実、彼女は京太郎を男として意識しながらも、今までと変わらず世話を焼こうとしていた。
霞「(元々、好意と言う意味では十分に足りているでしょうし)」
霞がそうであるように、巴もまた京太郎の事を十分過ぎるほど好意的に思っている。
とは言え、それは家族や仲間としての面が強く、巴を女として目覚めさせるほどではなかった。
だが、今の巴は京太郎の事を男として意識し、その視線も少しずつ変わりつつある。
まるでリバーシブルのようにその胸中が塗り替わってしまう日はそう遠くはないと霞は思う。
初美「じゃあ、そういう霞ちゃんの気持ちはどうなのですかー?」
霞「そうねぇ…」
霞「…やっぱり優しいエゴイストって印象が強いかしら」
巴「良いのか悪いのか良く分からない評価ですね…」
そんな霞に話題を振る初美の言葉に、彼女は正直な感想を返した。
僅かに思索に耽るような姿を見せながらのそれは、決して良いものでも悪いものでもなかった。
無論、霞は京太郎の事を高く評価しているが、あくまでもそれだけ。
巴のように京太郎の事を異性として見てはいない彼女にとって、それは中々、覆りにくい印象だった。
霞「勿論、京太郎君はとても良い子よ」
霞「ううん。ただ良い子なだけじゃなくて、とっても強くて格好良い子だと思うわ」
初美「ほーぅ…霞ちゃんは京太郎君の事をそんなに評価してるですかー?」ニヤリ
霞「実際、私たちはそれだけの事を彼にしてもらっているんだもの」
霞「これくらい当然の評価でしょう」
再び猫のような顔を見せる初美を、霞はさらりと流してみせる。
彼女もまた巴と同じように、初美の事を良く理解しているのである。
ここで狼狽など見せてしまえば、むこう数週間はこのネタで弄られてしまう。
霞はそれを良く理解している上に、やましいものなど何もないのだ。
どれだけ親友が面白がるような表情を見せたところで、心を揺れ動かしたりはしない。
霞「ただ、あの子は常に自分の事を真っ先に犠牲にする」
霞「自己犠牲すら厭わないそれは美徳ではあるのかもしれないけれど…」
だが、事前に京太郎の事を調べた報告書にはそのような傾向は記載されていなかった。
勿論、その報告書を書き上げた人物が手を抜いていたという可能性は完全に否定出来ない。
しかし、それを書き上げたのは六分家の中でも観察力と調査能力に優れた滝見の人間なのだ。
神代本家からの命令に、彼らがいい加減な報告をするとは到底、思えない。
霞「でも、あの子は何度言っても、それを中々、改めてくれない」
霞「もっと自分を大事にして欲しいのに、自分の事を簡単に二の次三の次にするんだもの」
だからこそ、京太郎の中で自身の優先順位が低くなってしまったのは神代家にやって来てからだと霞は思う。
親に売られてしまったという事実が、彼を自暴自棄にさせ、そしてそれは未だに改善されてはいない。
先日の戦いでも、京太郎は自身の足を差し出すようにしてずっと戦い続けていたのだから。
本来ならばもっと楽に勝てる方法だってあっただろうに、輝夜のプライドを叩き折りにいっていたのである。
霞「日頃、私達の事を家族だなんだって言っているのに…最後のところで私達の事を省みてはくれない」
霞「…本当に…本当に酷い子」
巴「…霞さん」
ポツリと呟くその言葉は、霞が京太郎の事を心から心配しているからだけではない。
彼女が京太郎に対して抱える負い目は、小蒔のそれに負けないほど大きいものなのだ。
本来ならば何をしてでも償わなければいけない相手が、自分の事を後回しにして無茶を続けている。
ましてや、それが自分たちの所為なのだから、胸が苦しくならないはずがない。
京太郎の事を詰るようなその声も、自己嫌悪の色が滲み出ていた。
霞「私達の事を思うなら、もっと甘えるべきだと思うわ」
霞「実際、私たちは皆、彼に対して好意的なんだし…普通の事なら喜んでしてあげられる」
霞「中には普通以上の事だって出来る…ううん、して欲しがる子だっているでしょう」
霞「なのに、彼は何もかも自分で解決しようとして…そして、それが出来るだけの能力が実際にあって」
霞「結果、自分を追い詰めるように無理するんだから…気が気じゃないわよ」
初美「か、霞ちゃん?」
そして、その声はエスカレートしていった。
その声に篭っていた自己嫌悪の色も薄れ、少しずつ愚痴へと変わりつつある。
それに初美が驚きを感じるのは、そんな霞の姿を殆ど見たことがないからだ。
幼馴染と言っても良い頃から付き合いのある初美にだって、霞はあまり愚痴を漏らした事はない。
良くも悪くも、霞は自身が口にする須賀京太郎と同じタイプなのだから。
初美「(よっぽど溜め込んでた…ってだけじゃないですよね)」
初美「…霞ちゃん、ちょっと熱測って来た方が良いのですよー」
霞「え?」
初美がそう思うのは、霞の顔が少しずつ紅潮を見せ始めるからだ。
まるで愚痴ってる間に興奮を覚えてきたようなその色に、初美は霞の体調不良を感じ取る。
間違いなく今の霞は万全とは言えない。
そう遠回しに告げる初美の言葉に、霞は驚いたような表情を見せて。
霞「大丈夫よ。自己管理はしっかり出来ているから」
初美「まぁ、その辺は確かに疑ってはいないですけれども…」
小蒔の天児として過ごす霞は他の少女よりもふとしたキッカケで命を落としてしまう可能性が高い。
それを良く理解している彼女は、他の誰よりも入念に自己管理をしてきた。
その甲斐あってか、霞は殆ど体調を崩した事がない。
ここ数年は風邪すら引いた事がないくらいだった。
初美「でも、今の霞ちゃんは多分、風邪か何かだと思うのですよー」
それでもまったく病気と無縁でいられる訳ではない。
どれだけ徹底した自己管理をしていても、それは病気に掛かる確率を0に出来たりはしないのだから。
特に今は季節の変わり目。
どれだけ気を遣っていても、体調を崩しやすい季節である。
霞「…ダメよ」
初美「霞ちゃん…」
しかし、そんな初美の言葉を、霞は聞き入れようとはしなかった。
無論、彼女が自分の事を心配してくれているのだと彼女は良く分かっている。
だが、神代家の『祭り』が迫る今、霞を含む六女仙は最も多忙となるのだ。
そんな時期に自分だけが休んでいる訳にはいかない。
霞「ありがとう、気持ちは嬉しいわ」
霞「けれど、私は大丈夫」
霞「多分、ちょっと熱っぽいだけよ」
初美「うー…」
そう強がる霞の言葉に、初美は唸るような声をあげた。
無論、本音を言えば、今すぐにでも霞を布団に突っ込んでやりたい。
『祭り』は準備だけではなく、当日もまた多忙を極めるものなのだから。
自分たちの中核を成す霞がその日に倒れてしまえば、文字通り大混乱が起きてしまう。
初美「(…でも、この頑固者は口で言っても、考えを変えたりしないでしょうし…)」
霞の頑固さが筋金入りな事を幼馴染である初美は良く分かっていた。
ここで無理に布団へと突っ込んだところで、すぐそこから抜けだしてしまうだろう。
それが容易く想像出来る初美にとって、下手に霞を遠ざける方が不安だった。
少なくとも、自分達の近くにおいておけば、最悪な状況になってもフォローが出来るのだから。
初美「…じゃあ、ヤバイと思ったら、すぐに休んでくださいね」
巴「準備の方は私達だけでもなんとかなると思いますから」
霞「えぇ。ありがとう」
そう思って折れた初美の言葉に、巴もまた声を重ねる。
巴は霞に対して、色々とコンプレックスを抱いているとは言え、決して嫌っている訳ではない。
長年、共同生活を営んできた霞の事を彼女は家族だとそう思っているのだから。
そんな巴にとって、体調不良に目を逸らして働こうとする霞の姿は到底、放っておけるものではない。
あまり強く言ったりしないものの、巴もまた霞に休んで欲しいとそう思っていた。
霞「(…本当に、ありがとう)」
それでも霞の意思を尊重しようとしてくれる二人に、彼女は強い感謝を感じていた。
彼女自身、自分の体調が決して良好とは言えない事を自覚しつつあるのだから。
さっきまでは意識していなかったが、身体が妙な熱を灯し、背筋には寒気が浮かんできている。
それはまだ倦怠感混じりのものになってはいないが、遠からずそうなってしまうのは彼女にも予想がついた。
霞「じゃあ、まずはここの奥からお掃除していきましょ」
巴「力仕事とかはこっちに任せてくださいね」
初美「寧ろ、霞ちゃんは現場監督みたく後ろでふんぞり返ってて良いのですよー」
霞「普段から掃除して綺麗にしてるし、掃除機を掛けたり拭き掃除をするくらいなら出来るわよ」
だからこそ、動けなくなる前に極力、仕事を進めておかなければいけない。
そう思う霞にとって、巴達の優しさは甘えられるものではなかった。
寧ろ、自分を追い込むようにして身体を動かして掃除を始める。
そんな彼女に巴や初美が抑制の声を掛けるが、霞は決して止まらない。
掃除機や拭き掃除だけでも完璧に済ませてしまおうと彼女は働き続けて。
………
……
…
京太郎「…え?霞さんが風邪?」
初美「えぇ。見事にダウンしやがりやがったですよー…」フゥ
その数時間後、霞は倒れこんでしまった。
無論、普段の彼女であれば、そのようなミスを犯さない。
ギリギリまで自分を追い込む事はあっても、限界を超える事はないはずであった。
しかし、今、霞はウィルスに蝕まれている状態なのである。
徹底した自己管理を続ける霞にさえ発熱させるそのウィルスは、彼女が思っていたよりも遥かに強力なものだった。
初美「(…まったく、だから言ったのに)」
結局、掃除の最中でフラリと倒れ込んだ霞に、初美は呆れるような言葉を胸中に浮かべる。
しかし、その言葉とは裏腹に、内心から浮かび上がってくるのは心配の感情だった。
無論、霞の身体を蝕んでいるのはただの風邪だと思うが、だからと言って、安心は出来ない。
体調を崩してしまった彼女は医者に見せる事どころか、看病する事さえ難しいのだから。
初美「だから、霞ちゃんの部屋に近づいちゃダメですよー」
京太郎「まぁ、元からあんまり近づくつもりはないですけれど…そんなに悪いんですか?」
初美「いや、問題はそっちじゃなくて、能力の方なのですよー」
京太郎「能力…?…あっ」
霞の能力。
それは小蒔の天児となり、ありとあらゆる災厄を引き受ける事だ。
無論、それは普段、彼女の意思で完全に制御され、霞を害する事はない。
しかし、今の彼女は体調を崩し、能力の制御など望めない身。
普段、霞が従えている悪霊達も、今は完全に野放しになっていた。
初美「とりあえず襖に封印して外に漏れないようにしときましたが…今のあそこは悪霊の坩堝も良いとこなのですー」
初美「並の人間が近づけば、即座に正気を失ってしまうのですよー」
京太郎「マジですか…」
小蒔は悪霊・悪神の類にとって是が非でも手に入れたい存在なのだ。
その天児である霞には数えきれないほどの悪霊達が取り憑いている。
心霊スポットとは比較にならないほどの数と濃度に、何の備えもない人間は耐えられない。
その才覚を持ってして六女仙に選ばれた初美達でさえ、長時間の滞在が出来ないくらいだった。
京太郎「でも、それなら…」
初美「…放っとくしかないのですよー」
無論、初美としても布団の上で一人苦しむ霞の事を放っておきたくはない。
出来れば、準備の事を放り出して、看病してあげたいとそう思っていた。
だが、長年、天児であり続けた霞の悪霊は、初美達でさえ払いきる事が出来ない。
霞の協力があって尚、その身体から引き離すのが精一杯なのだ。
初美「(…ホント、無力なのですよー……)」
霞の協力が望めない今、彼女達が部屋に踏み込めるのは十分程度。
それを超えれば、正気を失い、一気に悪霊達の餌食になってしまうのは目に見えていた。
そんな彼女にとって、今、霞の為に出来るのは、学校帰りの京太郎達に警告する事だけ。
六女仙などと言われてもそれだけしか出来ない自分に初美は内心で小さくため息を吐いた。
初美「まぁ、食事を含む最低限の世話くらいはなんとか出来ますから安心してください」
初美「ただ、快復に関してはほぼ霞ちゃんの体力任せになっちゃうので数日は若干、窮屈な思いをさせると思いますが…」
小蒔「そんな事気にしません」フルフル
初美の言葉に、制服姿の小蒔は小さく首を振った。
彼女にとって霞は母であり、姉でもあり、親友でもあるのだから。
そんな霞が苦しんでいると言うのに、窮屈な思いなど気にしてはいられない。
寧ろ、今すぐにでもその側に駆け寄って、看病してあげたい気持ちで一杯だった。
小蒔「(…でも、私は霞ちゃんに何もしてあげられなくて)」
だが、神代の巫女である小蒔にとって、それは出来ない。
彼女は神を降ろすほどの才覚と感受性の高さを誇るが、それを完全にコントロール出来ている訳ではないのだ。
下手に霞の側に近寄ればあっという間に身体を乗っ取られ、その才能を悪しき事に使われてしまう。
それが分かるだけに、今の小蒔は胸の痛みを堪えるしかなかった。
明星「…では、霞お姉様の分は私達が働かなきゃいけませんね」
そんな小蒔よりも霞の事を慕う明星は、内心、冷静ではない。
その胸中には動揺が広がり、声にも心配の色が現れている。
しかし、だからと言って、明星は取り乱したりはしなかった。
勿論、価値観の柱と霞をほぼ同化させていた頃であれば、きっとこのように冷静になどなってはいられない。
初美の静止も聞かず、すぐさま霞の元に駆け寄っていただろう。
明星「(…ただ、私一人で何か出来る訳ではないし…)」
明星「(ここで霞お姉様の元へと行ったところで、その側に居る事が出来る貴重な時間を無駄にしてしまうだけ)」
明星「(なら、ここで私がするべきは霞お姉様が復帰した時、極力、負担にならないような環境を整える事…!)」グッ
だが、今の明星は以前ほど霞に依存してはいない。
未だに霞の事を大事に思っているが、まるで神のように神聖不可侵なものだと思ってはいなかった。
勿論、明星がそうまで変わったのは、恋を知ってしまったからこそ。
いつの間にか霞よりも大事なものが出来た彼女は、揺れ動く心をなんとか抑え、表面だけでも冷静さを保っていた。
初美「ありがたいのですよー。正直、今回は結構、危ない感じなので…」
湧「あちきも出来っ事あったら気張っ!」グッ
春「…私も」
明星の言葉に湧や春も同じように手を挙げる。
彼女達にとっても霞は頼りになる姉のようなものなのだ。
その窮地となれば、決して助力を惜しんだりしない。
寧ろ、出来る事があれば進んでやりたいと言わんばかりに声をあげて。
京太郎「…あの」
初美「ん?どうかしました?」
そんな二人とは対照的に、京太郎の声はおずおずとしたものだった。
まるで屋敷に来たのように遠慮の色が見え隠れするそれは、初美に小首を傾げさせる。
普段の京太郎はあまり物怖じせず、堂々としているタイプなのだから。
気を遣いすぎて遠慮する事はあっても、こんな風におずおずとした様子などあまり見た記憶がなかった。
京太郎「…霞さんの側に近寄る事が出来ないのは、能力制御が出来ないから…ですよね」
初美「そうですねー」
まるで確認するような京太郎の言葉に初美は大きく頷く。
確かに霞を取り巻く悪霊の数は厄介ではあるが、それは全て彼女がコントロールしていたのだから。
霞が制御を取り戻しさえすれば、何ら恐れる事はない。
普通の少女と変わらない霞を存分に看病してあげられるはずだった。
京太郎「…じゃあ、俺、どうにか出来るかもしれません」
京太郎「いや…してみせます」
初美「…京太郎君?」
瞬間、京太郎が返した声は力強いものだった。
まるでこれから決戦に挑むようなそれは、決して破れかぶれとは思えない。
間違いなく京太郎には霞の事をどうにか出来る案がある。
それが伝わってくる姿に、初美は京太郎の名前を呼んで。
初美「何か勝算でもあるんですか?」
京太郎「えぇ。まぁ…ぶっつけ本番になっちゃうのが若干、怖いですけれど」
京太郎「でも、きっとなんとか出来るはずです」
そのまま疑問へと繋げる初美に、京太郎は頷きながらそう返した。
無論、その内心には不安の色が微かに浮かんでいる。
もし、狙い通りにいかなかった場合、自分は正気を失ってしまうのだから。
しかも、それがリハーサル無しの一発勝負ともなれば、どうしても冷静ではいられない。
以前から考えていた事ではあるし、理論上は出来るだろうという確信はあるが、失敗した時のリスクはあまりにも大きすぎる。
京太郎「(でも、ここでなんとか出来る可能性があるのは俺だけなんだ)」
しかし、だからと言って京太郎は二の足を踏んだりはしなかった。
彼にとって石戸霞と言う少女は、ただの家族というだけではない。
その人生の中で最も好みと言っても良い理想の相手であり、そして何より、数えきれないほど支えてもらった恩人でもあるのだ。
そんな彼女が今も尚、一人で苦しんでいるとなれば、臆病風に吹かれてはいられない。
どれだけの無謀であれども必ず成功させてみせると、そう自分に言い聞かせながら口を開き ――
―― そのまま自分の持つ勝算を、初美達に説明し始めるのだった。
………
……
…
Qで、結局、今回はどういう話だったんだよ
A導入回兼三年生のスタンス説明会兼伏線回
ちょっと短くて京ちゃんの出番もあんまりないですが今回はここまでです
次の投下からは京ちゃんがもうちょっと出張るかと思います(´・ω・`)
後、今日の即興ですが、ちょっとご飯食べたりゆっくりお風呂入ったりしたいのでもうちょっと後にさせてください(´・ω・`)もしかしたら仮眠もするかも…
眠気になんて絶対に負けない!キリッ → お布団には勝てなかったよスヤァ
の黄金コンボ決めましたが、今から即興やってきまする
>>168
まぁ、京子スレが終わっても、まだまだ書きたいものはたくさんあるので
多分、京太郎スレは続けるんじゃないかなーと思います(´・ω・`)寧ろ最近AAも増えてきたのでAAで京太郎スレをやりたい
―― とは言え、そう簡単に答えなんて出るはずもなくって。
…えぇ、認めましょう。
私は間違いなく京太郎君の事を男性だと意識しています。
明華達の言う通り…す…す…好きであると言う可能性も否定出来ません。
ですが、私達の間にはあまりにも柵が多すぎるのです。
彼に告白されたとして、その答えさえいまだ私の中で決まらないくらいには。
ハオ「(…しかも、その所為でギクシャクしてしまいますし…)」
京太郎君が私に対して好意を持ってくれているのではないか。
そんな智葉達の言葉は私の心を今までにないほどに動揺させていました。
こうして家で二人っきりになる度に、そして彼とデートする度に。
もしかしたら、このまま京太郎くんに告白されてしまうのではないかとそんな言葉がよぎってしまうのです。
ハオ「(…し、しかも…今日はクリスマスイブです)」
日本人のカップルにとって、もっとも重要かつ情熱的と言っても良い日。
その日を私は京太郎君とリビングで過ごしていました。
…無論、過ごしていると言っても、私の胸中は決して穏やかなものではありません。
クリスマスの日が近づけば近づくほど大きくなっていた動揺は今、最高潮を迎えていたのですから。
ハオ「…」カチカチ
京太郎「…あの、ハオ、大丈夫か?」
ハオ「っ!」コクコク
そんな私の身体は緊張でガチガチになっていました。
麻雀の世界大会でさえ、このように緊張を覚えた事がありません。
私を気遣ってくれる京太郎君に返事さえ出来ない自分が情けなくて仕方ありませんでした。
ですが…私にとってこれは家族ではなく異性を過ごす初めてのクリスマスイブなのです。
それが日本人にとって特別なのだと聞けば、硬くなってしまうのも当然でしょう。
京太郎「もしかして体調でも悪いのか?」
京太郎「それなら部屋に戻った方が…」
ハオ「らいじょうぶです!!」
………噛んじゃいました。
いや…でも、その…仕方ないじゃないですか。
京太郎君が気遣ってくれるのは嬉しいですが、私はここで部屋に戻りたくはないのです。
極力、一緒にいた方が彼も告白しやすい…じゃなくって、そのえっと…やっぱりクリスマスイブに一人は寂しいですし。
何時ものように部屋でネト麻をやってクリスマスを迎える…なんてオチにはしたくありません。
京太郎「そっか。でも、無理はすんなよ」
京太郎「今日は確かにご馳走だけど、別に明日に回したって良いんだ」
京太郎「ハオの体調が一番なんだからさ」
ハオ「……はい。ありがとうございます」
…そんな邪な私に京太郎くんの優しい言葉が突き刺さります。
本心から私に気遣ってくれている彼に対して、私は一体、何を考えているのか。
そんな言葉に自己嫌悪すら覚えそうになりますが…だからと言って、ここで逃げ帰る訳にはいきません。
確かに私は強い緊張を覚えていますが、逆に言えばあくまでもそれだけなのですから。
京太郎君と過ごす時間が心地良いと言う事はまったく変わっていないのです。
ハオ「(…いえ、変わってないどころか緊張と共に強くなっていって)」
…こうしてリビングで二人、テレビを見ている状況でも、殆ど内容が頭に入ってきません。
私の神経は隣に座る京太郎君に全てを傾けているのですから。
その微かな身動ぎ一つすら見逃すまいとするような集中力は、公式戦の最中にだって負けません。
いえ、相手が三人ではなく一人である事を考えれば、世界戦以上に私は集中していると言っても良いでしょう。
ハオ「(…京太郎…君…)」
…彼は私と同じ年齢であり、まだまだ伸び盛りです。
実際、出会った時に比べれば身長も幾つか伸びているようでした。
顔つきもより男らしく、格好良くなっています。
まるで少年から男性へと生まれ変わるようなその変化に私の胸はよりドキドキして ――
プルルル
ハオ「っ!?」ビックゥ
って、ち、違います!違いますよ!!
別に私は京太郎君の横顔に見蕩れていた訳じゃありません!!
た、ただ、やっぱり京太郎君って格好良いなぁって改めて思っていただけであって… ――
京太郎「っと電話か。ちょっとごめんな」ピッ
京太郎「はい。もしもし」
ハオ「…ふぅ」
…な、なんだ、ただの電話ですか。
ま、まったく…人騒がせな電話です。
人が京太郎くんに夢中に…い、いえ、ちょっと視線がいってた最中に電話を掛けてくるなんて。
お陰で妙な恥ずかしさが湧き上がって、京太郎君の顔が見れなくなっちゃったじゃないですか…。
京太郎「えー…マジか」
京太郎「あぁ。分かってる。仕事なら仕方ねぇよ」
京太郎「おう。そっちも頑張ってな」ピッ
ハオ「…?」
そんな事を思っている間に京太郎君の通話は終わったみたいです。
しかし、それは心なしか肩透かしを喰らったようなものでした。
まるで楽しみにしていたものが遠ざかってしまったようなそれに私は疑問を覚えます。
ハオ「どうかしたんですか?」
京太郎「あぁ。今日、ちょっとトラブルがあったらしくてさ」
京太郎「親父達、帰ってこれないらしい」
ハオ「そうなんですか…」
須賀夫妻はこれだけ大きな家を構えるだけあって立派な実業家です。
色々と手広く商売をしている彼らは、家に帰ってこれない日も珍しいものではありませんでした。
何時もであれば、京太郎君がそれを気にする素振りを見せませんが、今日はクリスマスイブ。
やはり家族と一緒に過ごしたいという気持ちは彼の中にも ――
ハオ(って、ちちちちちちちちょっと待ってください!!)」
ハオ「(須賀夫妻が帰ってこれないって事は、今日は二人っきりって事じゃないですか…!!)」カァァ
クリスマスイブに一つ屋根の下で健全な男女が二人っきり。
しかも、何度もデートを経験して、お互い難からず思っているとなれば…答えは一つしかないでしょう。
私はきっと今日、京太郎君に告白されて…そ、そして初体験を迎えてしまう。
まるで運命がそう決めているようなシチュエーションに、私はそうとしか思えなくなってしまいました。
京太郎「ま、準備してたご馳走とかはこっちで食べて良いみたいだしさ」
京太郎「親父達には悪いけど、こっちはこっちで楽しくやろうぜ」
ハオ「た、楽ひく…!?」ビクッ
…た、楽しくですか!?
い、いえ…確かに私も京太郎君に告白されるのは楽しみではないとは言いませんけれど…!
で、でも、エッチな事はまだやっぱり怖いというか…男の人とは違って、女の初めては痛いって聞きますし…。
い、嫌ではないんですけれど…で、出来れば優しくしてくれると嬉しいなって……。
京太郎「おう。折角だからシャンパンとか開けてパーッとやろうぜ」ニコ
ハオ「しゃ、シャンパン…」
こ、これはアレですね…。
お、お酒の勢いを借りて最後までって奴なのでしょう。
ま、まぁ、確かにお酒の力を借りれば、私も決心がつくと思いますし。
それに最初の痛いのだって緩和されて、気持ち良くなれるかも…。
京太郎「…ハオ、本当に大丈夫か?」
ハオ「は、はひっ!だ、大丈夫です!!」
ハオ「シャンパンでもビールでもなんだって飲みまひゅ!」
も、勿論、私は今までお酒なんて呑んだ事がありません。
私は堅物と言われるタイプですし、両親もまた真面目な方だったのですから。
18歳になるまでは飲酒はダメだと言われていました。
ですが…こ、こうしてお誘いがあるのに、断ってしまったら角が立ってしまうのです。
お酒の勢いを借りる為にも、思いっきり飲んでしまいましょう。
京太郎「うーん…でも、今日のハオ、ちょっとおかしいぞ」
京太郎「なんか悩み事でもあるのか?」
そう思って力強く返した私の言葉は京太郎君を心配にさせただけみたいです。
私に向けるその視線はさっきよりもずっと心配そうなものになっていました。
私の異常を放置したくはないと言うようなそれは勿論、ありがたいです。
…けれど、今の私はそれに応える訳にはいきませんでした。
ハオ「(だ、だって、私が悩んでいるのは…京太郎君の事なんですから)」
麻雀の事が解決してからずっと私の心の中には京太郎君の姿がありました。
両親から遠ざかった今、誰よりも身近な異性となった彼の事を私はずっと考えてきたのです。
そんな彼を意識している今、ギクシャクしてしまうのは当然の事。
ですが、それを正直に言えば、私の気持ちが彼に悟られかねないのです。
ハオ「(…そ、それは出来ません)」
勿論、初めて告白されるなら男性から…と言う夢は私の中からあります。
ですが、それ以上に大きいのは、彼が日本人だという事でした。
大和撫子と言う言葉があるように、日本人は昔からおしとやかな女性が好きなのです。
ここで私から告白してしまったら、京太郎くんに幻滅されてしまうかもしれない。
それを思えば、ここで正直になる事なんて出来ませんでした。
ハオ「だ、大丈夫ですよ」
京太郎「…そっか」
…ですが、その代わりを務める言葉では、京太郎君の心配を晴らしてあげる事が出来ませんでした。
寧ろ、私が強がった事に残念そうな言葉を漏らしています。
そんな彼に心の中が痛みますが、さりとて、正直にはなれません。
私にとって彼に幻滅されるというのは絶望と言っても良い未来なのですから。
ハオ「(な、なんとかしないと…!)」
だからと言って、何処か落ち込むような京太郎くんをそのままにはしておけません。
そうやって彼を傷つけてしまったのは、他でもない私なのですから。
せめて他に話題を振って、さっきの事を気にならなくしてあげたい。
そんな言葉が胸中から出てきますが、しかし、私の思考は中々、それに相応しい言葉を作れませんでした。
未だ困惑と混乱の中にある私の脳は、処理能力がもう一杯いっぱいだったのです。
ハオ「(そ、そうだ…!)」
そんな私の脳裏に浮かんだのは、ついこの間、監督から聞いた言葉でした。
クリスマスに纏る小ネタとして彼女が口にしたそれならば、世間話として最適。
日本人にとっても無関係ではないだけに、きっと彼も食いついてくれるでしょう。
まるで私の希望を全て満たすようなその話題を、思考で精査する前に口を開いて ――
ハオ「あ、し、知っていますか、京太郎君」
ハオ「クリスマスイブの22時から朝の6時までは日本でもっとも性交が活発な八時間だそうですよ」
ハオ「何でも、性の八時間とも言われているそうで…」ハッ
…………あれ?
い、いえいえいえいえいえいえ…ち、ちょっと待って下さい。
これは幾らなんでも不適切過ぎる話題ではないですか?
だって、私と京太郎君はその性の八時間を二人っきりで過ごすんですから。
それを私の口から言ってしまったら、まるで誘っているような形になるのでは…。
ハオ「~~~~~っ」ボン
ああああああああっ!
何をやっているんですか!本当に何をやっているんですか、私は!!
例え、誘っていなくても…い、今のは酷すぎます。
まるで慎みを知らない痴女のような言葉ではないですか!!!
馬鹿馬鹿!私のバカ!!
後、ついでに私に変な知識を植えつけた監督の馬鹿!!!
京太郎「え、えぇっと…」
って、そんな風に監督に八つ当たりしている場合ではありません…!
京太郎君、今、思いっきり、反応に困っているじゃないですか…!
流石に私に対する軽蔑なんかは浮かんでいませんが…間違いなく困惑させています…!!
こ、ここはなんとかそれをリカバリーする事で汚名挽回しなければ…!!
ハオ「い、いえ、あああああああの、違うんです!!」
ハオ「か、監督が!監督がそう言っていたのをふと思い出しただけで!!」
ハオ「べ、別に私はそういうのに興味があったりする訳じゃないんです!!」
ハオ「え、エッチな事なんて苦手ですし…そ、そもそも初めてですし!!!」
……ハッ。
私…今、何を言いましたか?
その、初めてとか…そんな事を…口にしたような…。
い、いや、確かに私は初めて ―― 処女である事に嘘偽りはないのですけれど…。
で、でも、それを自分の口から…しかも、京太郎くんに伝えてしまうなんて……!!
ハオ「わ、わわわ…私、お風呂に入ってきます!」ダッ
京太郎「は、ハオ…!?」
…もう私はその場にいたくありませんでした。
いえ、より正確に言えば…京太郎君と合わす顔がなかったのです。
さっきから私は数えるのが馬鹿らしいくらい失敗を繰り返しているのですから。
このまま彼の前にいても、きっと幻滅されたり、軽蔑されるだけ。
それを避ける為に今の私に出来る事と言えば、京太郎君から逃げ出す事しかなかったのです。
ハオ「…はぁああああああああああああ」
そのまま脱衣所に逃げ込んだ私の口から重い溜息が漏れ出ました。
まるで肺の中身を全て交換しようとするようなそれは、しかし、私の胸中をまったく晴らしてくれません。
暗雲のような自己嫌悪が私の心を覆い尽くしているのですから。
スランプに陥っていた時よりも遥かに重く、そして暗いそれはきっと一生、忘れる事は出来ないでしょう。
ハオ「(だって…こんなのもうリカバリー不可能じゃないですか…)」
あんなにはしたないところを見せた挙句、京太郎くんの前から逃亡してしまった自分。
最早、醜態という言葉でさえ言い表せないそれは、もう言葉ではどうしようもないものでした。
どれほど言葉を尽くしたところで、さっきの自分を取り繕う事なんて出来ません。
ただただ、彼が忘れてくれる事を祈るしかないのです。
ハオ「(…泣きたい…)」グス
…………クリスマスイブと言う日は日本人だけではなく私にとっても特別なものでした。
これまでずっとなぁなぁのまま来ている彼との関係に決着をつけられるのだと。
思い悩む自分に一つの区切りをつけられるのだとそう思っていたのです。
ですが、実際に訪れたのは決着や区切りどころか、新しい問題。
それも京太郎くんに幻滅されてもおかしくないほど大きくて恥ずかしいものばかり。
頭に思い浮かべてきたイメージとはあまりにもかけ離れたその現実に、私の目尻が潤むのが分かります。
ハオ「(……お風呂に入りましょう)」
そのまま蹲って何もしたくない。
そう思う自分は私の中で決して小さなものではありませんでした。
さっきの出来事は、今日という日に期待していた私の心を折るのに十分過ぎるものだったのですから。
しかし、それに浸っていられないのは、それでは何も解決しないと分かっているからです。
ここでうずくまっていても自己嫌悪に潰されるだけなのですから、少しは身体を動かしていた方が良い。
その方が気持ちも紛れる事を私は本能的に悟っていたのです。
ハオ「…」ヌギヌギ
ですが、それでも身体の動きは緩慢と言って良いものでした。
精神から来る強烈な倦怠感は私の全身に付き纏っているのですから。
服を脱ぐと言う動作さえ手間取るそれに、私は再びため息を吐きたくなりました。
ハオ「…」プチ パサ
それでもなんとか脱衣を続ける私から、服が滑り落ちていきます。
瞬間、鏡に向かった私に見えるのは自身の肌と桃色の下着でした。
何時も身に着けているものよりも幾分、派手なそれは所謂、勝負下着と言うものです。
クリスマスイブに彼と結ばれる事を考えて購入したそれは、私にとって期待の象徴ですらありました。
ハオ「……はぁ」
ですが、今の私にはそれに滑稽さしか感じません。
それだけ期待しておいて、私が全てをぶち壊してしまったのですから。
きっとこれから私達の間でそんな雰囲気になる事はないでしょう。
いえ…今までどおり和やかな雰囲気になる事すら難しいかもしれません。
ハオ「(…そんなの嫌)」
…勿論、それは決して私にとって許容出来るものではありません。
彼と知り合ったばかりの頃でさえ、私はギクシャクする関係に心痛めていたのですから。
京太郎君に心奪われた今、それがどれほどの痛みを産むのか想像もしたくないくらいです。
しかし、それが分かっていても、私にはどうしようもありません。
さっきの醜態は何時も通りに振る舞うにはあまりにも大きすぎるものだったのですから。
私がそれを忘れられるまで、この胸の痛みはずっと続くのでしょう。
コンコン
ハオ「…え?」
それに再びため息を漏らしそうになった瞬間、私の耳にノックの音が届きました。
コンコンと軽く扉を叩くそれに私は思わず身体を竦ませてしまいます。
だって、この家にいるのは今、私と彼の二人なのですから。
その私が内側にいる今、ノックしているのは京太郎君としか考えられません。
ハオ「(な、何を言われるんでしょう…!?)」
さっき私は京太郎くんにお風呂に入ると言いました。
にも関わらず、こうして彼が脱衣所に来たと言う事は、きっと私に用があるのでしょう。
…ですが、今の私はその言葉に何の希望を思い浮かべる事が出来ません。
もしかしたら、私に軽蔑したのだと…そんな言葉を伝えられるかもしれない。
それを思い浮かべただけで下着姿になった身体が震え、再び涙が浮かびそうになってしまいます。
ハオ「は…はい…」
ですが、それでもここで無言を貫く訳にはいきません。
恐らく彼は私に用があるのだと思いますが、それは決して100%ではないのですから。
もしかしたら脱衣所や洗面所に用がある可能性だって否定出来ないのです。
その場合、ここで無言を続けていれば、彼が中へと踏み込んできてしまうでしょう。
その時、私が京太郎君の前で晒す醜態を思えば、震える声で返事をするしかないのです。
京太郎「あ…えっと…その…さ」
ハオ「……」ゴクッ
そんな私に帰ってきたのはポツリポツリとした彼の声でした。
何処か気まずそうに漏らすそれからは京太郎君の意図が感じ取れません。
一体、彼が何を言いたいのか分からない私は、息と共に生唾を飲み込んでしまいます。
京太郎「俺、今日、外に出てくるから」
京太郎「いや…出てくるっつーか…帰ってこないっつーか…」
ハオ「…え?」
…………え?
…京太郎君が帰って来ない?
……ち、ちょっと待ってください。
一体、どうしてそんな話に…。
いえ、と言うか、そもそも、京太郎君は何処へ行くつもりなんですか…?
ハオ「(ま、まさか…)」
…もしかして私が知らない間に、京太郎君に恋人が出来ていたのでは…。
…………正直、信じたくない想像ではありますが、あり得ない話では…ありません。
だって、彼はとても優しくて、格好良くて、可愛いところだって併せ持っているのですから。
一人暮らしが出来るような年上の女性だって、容易く落としてしまいかねません。
ハオ「(そして、今日はクリスマスイブ…そして性の八時間な訳で…)」グッ
日本人のカップルにとってはとても特別な時間。
それを女性と共に過ごすと言う事は…その結論は一つだけでしょう。
彼は…きっとエッチな事をしに行くのです。
私ではない女性と思い通わせ、あの逞しい腕で抱きしめながら愛を囁いて… ――
ハオ「(…嫌…っ!そんなの…そんなの絶対に嫌…!!)」
彼が私以外の誰かとクリスマスイブを過ごす。
その想像は暗く沈み込んでいた私の心を一気に嫉妬に染め上げました。
名や顔どころか存在すらあやふやな女性に対する反発心と京太郎君を独り占めしたいという独占欲。
それらが入り混じり感覚はあまりにも大きく、そして強いものでした。
ハオ「(…でも、でも…私は……)」
出来れば彼の事を行かせたくはない。
今日はずっと私の側にいてほしい。
そんな言葉に否と唱えるのは、私の中の理性的な部分でした。
私と京太郎君は付き合っている訳じゃないのだから、引き止めるのはお門違い。
寧ろ、ここで嫉妬に負ければ、彼に幻滅されてしまう。
今にも暴走しそうなくらいに荒ぶった感情に理性は幾度となくそう言い聞かせていたのです。
京太郎「まぁ…そういう訳だから戸締まりはしっかりしといてくれよ」
京太郎「何かあったら大変だからさ」
ハオ「っ!」
ですが、そうやって理性が感情を押しとどめている間に、彼の話は進んでしまいます。
未だ返事のない私から去っていこうとするような言葉。
…私ではない女性の元へ行く為のそれに、私はもう我慢出来ませんでした。
例え、何をしてでも彼を引き止めたい。
最早、衝動と言っても良い言葉に突き動かされた私の中には、幻滅されるとかお門違いなんて言葉はもう存在しませんでした。
ガチャ
ハオ「待ってっ!」ダキッ
京太郎「ふぁ!?」
…あぁ、良かった。
こうやって彼の事を抱きしめていると…身体のあちこちから京太郎君の存在を感じます。
暖かくて優しくて…そして逞しい…京太郎君の身体…。
手を握った時にも感じていたそれを何倍にも強くしているみたい…。
…きっとこの胸を独占出来る人は、とっても幸せなんでしょう。
ハオ「(…こんなの知っちゃったら…もう後戻りなんて出来ません…)」
……今ならまだ後戻りが出来ます。
一人になるのが不安だったのだとそう誤魔化す事は決して不可能ではないでしょう。
……ですが、私はほぼ無理矢理のような形とは言え…知ってしまいました。
彼に抱きつく悦びとその幸せを…味わってしまったのです。
嫉妬に揺らぐ心に一筋の安堵をくれるそれは…私にとってもう手放せないものでした。
ハオ「…好き、なんです…」
京太郎「…え?」
ハオ「京太郎君の事が大好きなんです!」
瞬間、溢れだす言葉は、容赦も羞恥もないものでした。
自分の心の中でずっと押し込めてきた感情がそのまま言葉になっていくのです。
それは勿論、止めようと思っても止められるものではありません。
ずっと自分の気持ちを我慢してきた反動が、今、この瞬間にやってきたのですから。
ハオ「本当はずっと前から好きでした…!」
ハオ「貴方が私の事を気遣ってくれるから…デートしてくれるから…!」
ハオ「私はもうずっと前から、京太郎君の事が好きになっていたんです…!!」
そんな言葉が一言二言で終わるはずがありません。
いえ、終わらせて良いはずがないのです。
私にとってその感情は、ただ好きだと言うだけではありません。
初めて覚えたその恋は、私にとって宝物と言っても良いほど素晴らしいものだったのですから。
ハオ「本当は我慢しなきゃいけないんだって分かってるんです…!」
ハオ「私は日本に麻雀をしに来たのであって…恋をしに来たんじゃないんだって…!!」
ハオ「でも…どれだけそう自分に言い聞かせても…私、止まらなくて…」
ハオ「…もう自分を誤魔化す事すら出来ないくらい…好きになってしまいました…!」
ハオ「麻雀をしている時だって京太郎君の事を考えてしまうような…そんな女になってしまったんです…!!」
その気持ちを彼へとぶつけるような言葉はドンドンとエスカレートしていきます。
自分の恥ずかしいところ部分さえ余すところなく伝えるそれに私の胸は羞恥心を覚えました。
でも…だからと言って、ここで止まる訳にはいきません。
ここは私にとって京太郎くんが手に入るか奪われるかの瀬戸際なのですから。
彼を他の女性の元へと行かせないためにも…自分のすべてを伝えるしかないのです。
ハオ「だから…行かないでください…!」
ハオ「私…私、絶対に京太郎君好みの女の子になりますから…!」
ハオ「京太郎君の為なら…どんなことだって出来ますから!!」
ハオ「だから…私以外の女の人のところに…行ったりしないでください…」ギュゥゥ
京太郎「え、えっと…」
まさしく一世一代と言っても良い告白。
それを伝えきった私の前で、京太郎君は戸惑うような声を漏らしました。
…それに私の胸がズキリと痛みますが…それも当然でしょう。
彼からすればいきなり下宿人に告白されたも同然なのですから。
あまつさえ、恋人のところに行かないでと嫉妬混じりに言われて困惑しないはずがありません。
京太郎「と、とりあえずだな、ハオ」
京太郎「とても言いづらい事だけど、ハオは一つ勘違いしてる」
ハオ「ぐす…勘違い…ですか…?」
しかし、そう分かっていても、私の胸の痛みは消えませんでした。
私だって女の子であり…初めての告白というものに夢や希望を持っていたのです。
それが、決して意中の相手に喜ばれていないとなれば、心の中が痛むのも致し方無い事でしょう。
実際、張り裂けそうに傷んだ私の胸からは涙が浮かび上がり、私の目尻を再び濡らしていました。
京太郎「あぁ。そもそも俺が行こうとしてたのは女の人のところじゃない」
京太郎「高久田のところだよ」
ハオ「…ふぇ?」
高久田…君?
確か…何度も京太郎君の話に出てきたから名前だけは知っています。
元ハンドボール部のチーム仲間で、彼にとって親友と言っても良い間柄だったとか。
勿論、彼は女性ではなく男性で… ――
ハオ「も、もしかして京太郎君って同性愛…」
京太郎「ちげぇよ!!」
…良かった。
もし、ここでそうだと言われたら…私はきっと本当に心折れてしまっていたでしょう。
だって、それは私はどうあがいても彼の恋愛対象にならないという事なのですから。
ここまで勇気を振り絞って告白した私にとって、それは死刑宣告も同然だったのです。
ハオ「…でも、それならどうして…?」
京太郎「…いや、だってさ、さっきからハオは俺と一緒にいても気まずそうだったし…」
京太郎「その上、あんな事があったら楽しく食事って雰囲気にもならなかっただろ?」
京太郎「俺も混乱してたし、今日は高久田のところで泊めてもらって頭冷やそうと思ってたんだよ」
…そうだったんですか。
どうやら京太郎君は私が思っていた以上に、私の事を気遣ってくれていたみたいです。
それさえも気づかなかった自分があまりにも情けないですが…しかし、それに負けないほどの嬉しさが胸中から浮かんできました。
ここまでの話を聞く限り、彼は同性愛者ではなく、そして恋人もいないのですから。
胸中を覆い尽くしていた暗雲も緩やかに晴れていくのを感じます。
京太郎「…でも、こんなに情熱的な告白…しかも、こんな格好でされたら…もうダメだわ」ギュゥ
ハオ「はわ…っ!?」ビック
な、なななな…なんで私、いきなり京太郎くんに抱きしめられているんですか…!?
い、いえ、いきなりと言うか…そ、そもそも私のほうが彼に抱きついてる状態だったんですけれども…!
でも…そうやって抱き返されちゃうと…わ、私、ダメになっちゃいますよ…。
不安が一気に消し飛んだ今、私の胸にあるのは、京太郎君の身体から感じる心地よさと幸せだけだったんですから。
その上、京太郎君から抱きしめ返されてしまったら…もう胸のドキドキがおかしいくらいになっちゃって…!
ハオ「き、京太郎君…」
京太郎「…我慢してたのはハオだけだと思うなよ」
京太郎「俺だって…ハオの事ずっと好きだったんだからな」
…え?
京太郎君も…私の事が…好き???
…………え、なんでしょう、コレ。
私…夢でも見ているんですか?
何時も見ている夢と変わらず、都合の良い展開が続いているような気が…。
京太郎「…だって、考えても見てくれよ」
京太郎「一つ屋根の下に、真面目で一生懸命だけど、ちょっと天然入ってて」
京太郎「なおかつ俺の事を先生先生って慕ってくれるような可愛い子がいるんだぞ」
京太郎「そりゃ堕ちて当然だろ」
ハオ「はぅ…」カァァァ
…い、いえ、これ夢以上に都合が良すぎます。
だって…私は今まで夢の中でさえそんな事を言われた事がないのですから。
私の事を褒めながら、好きだと伝えるそれに、私の顔は真っ赤に染まりました。
でも、それはさっきまでと違って、羞恥の色ではありません。
あまりにも嬉しすぎて…顔の紅潮が止まらないのです。
京太郎「でもさ、ハオは麻雀のプロを目指して頑張ってて」
京太郎「そんなハオに告白して…邪魔しちゃったりしたらダメだと思ってた」
京太郎「もし、俺が振られたりしたら、ハオもここに居づらくなるだろうし…」
京太郎「せめてハオが卒業するまでって…そんな風にさ」
ハオ「…京太郎…君」
…なのに、京太郎君はもっともっと私に嬉しい言葉をくれるのです。
私の事を気遣って…好きだと言う気持ちを抑え込んでいたって言う気持ちを伝えてくれるのでした。
……そんな彼に私はどんな言葉を返して良いのか分かりません。
もう一杯になってしまった胸から出てくる言葉と言えば、彼の名前くらいだったのです。
京太郎「…で、そんな風に禁欲してたところでコレだろ」
京太郎「…もう辛抱堪らんわ」
京太郎「…好きだ。ハオ」ギュゥ
京太郎「愛してる」
ハオ「~~~~っ♥」キュゥゥゥン
そんな私に帰ってきた言葉は…なんとも落ち着いたものでした。
感情をぶちまけるだけだった私の告白とは対象的なそれに…私の胸は締め付けられるような痛みを覚えます。
あまりにも胸がドキドキしすぎて痛みにさえ届いたからこそのそれは、勿論、彼の言葉にたくさんの感情が篭っていたからこそ。
その静かな声音からは想像も出来ないほど大きな『好き』がそこから感じられたのです。
ハオ「京太郎君っ京太郎君!京太郎君…っ!」ギュゥゥ
瞬間、私の目尻に涙が浮かびます。
ですが、それはさっきとは違って、悲しさや苦しさ故のものではありません。
…今の私は嬉しいのです。
嬉しすぎて溢れだす涙が…どうしても止められません。
あの日、智葉に言われてから考えていた通りに…私は嬉し涙を流していました。
京太郎「ん」ナデナデ
涙を浮かべるほど高ぶった感情のまま強く抱きつく私。
けれど、京太郎君はそんな私の事を引き離したりしませんでした。
寧ろ、私の背中に手を回したまま、ゆっくりと背中を撫でてくれるのです。
まるで臨界を超えてしまった感情を慰撫するような手つきは、逆効果でした。
優しく暖かなその手に私はさらにうれしくなって、涙を流してしまうのですから。
ハオ「(…神様、お願いです)」
ハオ「(どうか…これを夢にしないでください)」
そんな私の中に残る一抹の不安は、これが夢ではないかという疑問でした。
だって、これはあまりにも私にとって都合が良すぎる展開なのです。
幻滅されたとそう思っていたところからの逆転は…少女漫画でさえ滅多にあるものではありません。
一気に私を幸せへと押し上げたこれが夢であったなら、自分はきっと絶望してしまう。
そう思うほどに私は今、幸せで満ちていたのです。
ハオ「…ぐす」
京太郎「…落ち着いたか?」
ハオ「…はい」
それでも長らく京太郎君に撫でられている間に、気持ちも落ち着いてきます。
しかし、それは私の嬉しさが色褪せたからではありません。
私の歓喜は未だ胸の内を満たすような強いものだったのですから。
ただ、それが波打つような仕草を見せなくなっただけで、私は変わらず幸せであり続けていたのです。
京太郎「…そっか。じゃあ…その、申し訳ないんだけどさ」
京太郎「一端、離れて貰えるか?」
ハオ「…え?」
ですが、その幸せは彼の言葉によってすぐさまヒビが入ってしまいます。
ようやく思い通わせた私に離れて、と伝えるそれに、表情が強張るのが分かりました。
もしかして、あまりにも泣きすぎて幻滅されてしまったのでしょうか。
そんな言葉に不安が掻き立てられ、身体がまた震えてしまいます。
ハオ「ど、どうして…」
京太郎「い、いや、だって、ほら…今のハオの格好…」
…格好?
……そう言えば、私、服を脱いでいる途中…でしたよね。
しかも、京太郎君の言葉を聞いてから、すぐに脱衣所から飛び出して…服を着る暇なんてなかったですし。
……あれあれ、と言う事は私、今、もしかして… ――
ハオ「(ほぼ裸じゃないですか…!)」ボンッ
あうあうあうあうあうあうあう…ま、まさか今さら、そんな事に気づくなんて…!
い、いえ、途中でおかしいとは思ってたんですよ!
京太郎君から抱きついた瞬間、やけに直接的に暖かいのが来るなーとは…。
で、でも、当時の私にそれを追求するような余裕なんてなくって…結果的に、彼に指摘されるまでずっと気づかなくて…!!
ハオ「(で、でも…離れたく…ありません)」ギュゥ
私にとって京太郎君はもう太陽のような人なのです。
こうして触れ合うだけで胸の奥底から暖かくしてくれる人と離れたくはありません。
ましてや、私はついさっき京太郎君とお互いの思いを確認したばかりなのです。
ようやく大手を振ってイチャイチャ出来るようになった私が、彼の事を手放せるはずないでしょう。
京太郎「ちょ…は、ハオ…!?」
ハオ「…ごめんなさい。私…分かっているんですけれど…」
ハオ「でも…今は京太郎君の事…欲しいんです」ギュゥゥ
それが京太郎を困らせてしまうという事くらい私にだって分かっていました。
ですが…それで抑えられるほど、私の中の衝動は小さくありません。
真冬の中、下着姿でいる事さえ気にならないその暖かさは、私を完全に虜にしていました。
その暖かさをもっと欲しくて、抱きつく力を強くし、その身体をすり寄せて ――
ハオ「…ぁ♥」カァァ
京太郎「う…わ、分かっただろ」
京太郎「俺も一応、男なんだし」
京太郎「その…好きな子にそんな風に抱きつかれてるとマジで色々我慢出来なくなるっていうか…」
瞬間、私の顔が赤くなったのは…彼の下腹部に硬いものがある事に気づいたからです。
知らず知らずのウチにガチガチになっているそれは…え、えっと…間違いなく男性器でしょう。
抱きつく私に喜ぶだけでなく、興奮までしてくれている事を伝えるそれに…私の身体が強張ります。
だって、それは私が想像してたものよりもずっと大きく…そして逞しいものなのですから。
それが今、私の下腹部をグイグイ押していると思うと…私だって…我慢出来ません。
ハオ「…良い…ですよ」ボソ
京太郎「え?」
ハオ「で、ですから…我慢しなくても…良い…んです…」ボソボソ
…勿論、そんな事を言うのは恥ずかしいです。
だって、それはどう言い繕っても、彼を誘惑する言葉なのですから。
躊躇う京太郎君に最後の一線を超えてもらおうとするそれは、まさしく痴女そのもの。
そんな事は私にだって分かっていますが…しかし、だからと言って、もう自分を止める事は出来ません。
ハオ「(…私も…欲しがって…しまっているんですから)」
内心ずっと待ち望んでいた初恋の成就。
それだけでも嬉しくて仕方が無いのに、京太郎君は私に興奮してくれているのですから。
私を一人の女性ではなく、生殖相手として見るそれに…身体がゾクゾクしてしまいます。
寒気とはまた違ったそれは…多分、興奮なのでしょう。
私もまた彼とエッチすると言う事に、強い興奮を覚えてしまっているのです。
ハオ「さ、さっき言った通りです」
ハオ「私は…京太郎君に何でもしてあげますから…」
ハオ「だから…我慢しないで良いんですよ」
ハオ「私の事が欲しいなら…その通りにしてくれて…良いんです」
京太郎「は、ハオ…」ゴクッ
そんな私の言葉に、京太郎君が生唾を飲み込みます。
ゴクリと言う音さえ聞こえてきそうなそれは私の興奮をより強いものにしました。
私の誘惑に…愛しい人がこんなにも興奮してくれている。
想いを通わせた時とはまた違った喜びに、私の身体はゆっくりと彼に傾いていくのでした。
京太郎「…じゃ、じゃあ…」スッ
ハオ「ひぁ…っ」
まるで彼に自分の全てを預けるのだとそう言うような仕草。
それに京太郎君が返してくれたのは、お姫様抱っこでした。
身体を優しく抱き上げるそれに、私は小さな悲鳴を漏らしてしまいます。
ですが、そうやって地面から切り離される不安定感に、心が驚きを覚えたのは一瞬の事でした。
京太郎「しょっと…」スタスタ
ハオ「…ぁ♥」
そのまま私を運ぶ京太郎くんの身体はとても逞しいものでした。
人ひとりを抱えていると言うのに、その身体はまったくブレたりしません。
まるで私の重さなどどうともないと言うように、歩いて行くのです。
そんな彼に頼もしさを感じてしまうのは…きっと女として致し方無い事でしょう。
胸の内が愛しさで一杯になり、その腕が彼の首へと回ってしまうのもまた。
ハオ「(…京太郎…君…♥)」ハァ
そうして見上げる彼の顔はとても格好良く、そして興奮したものでした。
今にも私に襲いかかりそうなそれは、優しいその手つきからは考えられません。
でも、今の彼は間違いなく私に欲情し、そしてエッチする為に私を運んでくれている。
そう思った瞬間、私の下腹部は甘く疼き、口からも暑い吐息が漏れでてしまうのです。
ちょいきゅーけー(´・ω・`)流石に疲れました
京太郎「じゃあ、ちょっと揺れるけど我慢してくれよ」
ハオ「…はい♪」ギュゥ
そのまま京太郎君は階段を登り始めます。
1段1段、ゆっくりと踏みしめるようなそれにはまったく危なさを感じません。
確かに揺れる事は揺れますが、それも京太郎くんの胸の中に居れば心地良いもの。
その揺れもまた彼に抱かれている証だと思えば、喜ばしく思えるのです。
京太郎「えっと…」
そんな階段を上がりきった後、京太郎君が向かったのは自分の部屋でした。
きっとその中で私は彼と…その…え、エッチな事をしてしまうのでしょう。
それを思うと妙な気恥ずかしさが湧き上がりますが、でも、恋人の部屋で結ばれると言うのは女の子にとって憧れでもありますし…。
それに…私はもう京太郎くんに貞操を捧げる覚悟を決めてしまったのです。
今更、ここで躊躇いを覚えたりはしません。
ハオ「…どうぞ」ガチャ
だからこそ、私は京太郎くんに代わって、部屋の扉を開きました。
彼の首に回している手を動かし、ドアノブを動かしたのです。
勿論、率先してその道を開くそれに…恥ずかしさは否めません。
その先にある事を期待していると彼に思われたらどうしようという気持ちは私の中にもあるのです。
ハオ「(…でも、私は今までにもう死にそうなほど恥を重ねてしまっていますし…)」
勝手に彼の気持ちを勘違いして暴走した挙句、その欲望を受け入れようとする自分。
私達の関係を今日一日であまりにも書き換えるそれに、今更、言い訳などしても無意味でしょう。
…それに私自身、京太郎くんと結ばれる事を期待しているのは事実なのですから。
べ、別に淫乱な訳ではないですが…その、やっぱり女の子にだって、初めてを好きな人にと言うのは憧れな訳で…。
京太郎「ありがとうな、ハオ」
ハオ「はぅ…」カァァ
…それに京太郎君はそんな私を受け入れてくれます。
ちょっぴりエッチかもしれない私に、こうして優しい笑顔をくれるのでした。
そんな彼に抱きしめられているのに、自己嫌悪など感じるはずがありません。
一瞬で紅潮を強めた頬に浮かんでいるのも、気恥ずかしさではなく、嬉しさでした。
京太郎「じゃ、ゆっくり降ろすからな」
ハオ「は、はい…」ギュゥ
…とは言え、その嬉しさはあんまり長く続きません。
こうして彼の部屋に入ったと言う以上、目的地はもうすぐそこなのですから。
数歩歩けば、彼のベッドへとたどり着き、そのままゆっくりと私は降ろされてしまいます。
勿論、その手は優しいものですが…それでも私は心から喜ぶ事は出来ませんでした。
居心地の良すぎる彼の胸の中は、私をもう虜にしていたのです。
ハオ「(…でも、ここで我儘なんて言えません)」
勿論、本音を言えば、僅かな別離でさえ寂しくて仕方がありません。
ですが、私の寂しさよりも、京太郎君の興奮の方が遥かに大きいのです。
こうして紳士的に私を運んでいる最中でも、彼の視線は私の身体を幾度となく横切っていたのですから。
まるでチラ見する事を辞められないようなその目は、強い興奮と欲情を見せていました。
京太郎「…ハオ」
ハオ「は…ぁ…♪」
そして、その目は今、最高潮に達していました。
ベッドに横たわる私を見下ろす彼の目は…もうケダモノ同然です。
下着だけを身に着けた私の身体を撫でるようにして視線が動きまわるのを感じました。
今の私は京太郎くんに目で犯されている。
そんな言葉さえ浮かぶような目に、私は肌をゾクゾクとさせてしまうのです。
ハオ「(私…京太郎君に見られて…気持ち良く…なってる…)」
彼が私を運んでいる最中、チラ見している時には感じなかったゾクゾクとした感覚。
視線が横切って行く場所から背筋へと伸びていくそれは…紛れも無く快感でした。
勿論、私は今まで人の視線で感じた事なんてありません。
私はどちらかと言えば真面目なタイプですし、また人に注目されるのも比較的慣れているのですから。
自分がそんな風に視線だけで快感を得てしまうだなんて考えた事もありませんでした。
ハオ「(でも…京太郎君だから…)」
ハオ「(京太郎君だけは…特別だから…)」
今まで恋を知らなかった私に恋を教え、そして私の気持ちを受け入れてくれた人。
優しくて、暖かくて、でも、ちょっぴりエッチな彼は、私にとって唯一無二と言っても良い人なのです。
特別という言葉でもまだ足りない彼だからこそ…私はきっと快感を得てしまっているのでしょう。
…それにちょっと誇らしく思ってしまう辺り、私はもうダメなのかもしれませんが…。
京太郎「綺麗だ…」
ハオ「~~~っ♪」
しかし、そんな自分も嫌ではない。
そんな言葉を思い浮かべようとした瞬間、京太郎君の口から短い言葉が漏れ出しました。
僅か四文字のそれは、しかし、私の心を信じられないほど揺さぶります。
だって…だって、それはほぼ裸になっている今の私を賞賛するものなのですから。
局所以外隠していない今の私をそうやってほめられると…やはり恥ずかしくて、嬉しくて…。
ハオ「(…あぁ…もう…言葉すら出てこない…)」
そして…ちょっぴり気持ち良い。
今までの人生では無縁と言っても良かった不思議な感覚に、私は言葉を失っていました。
彼の賞賛に何か言わなければと思考が思い浮かべても、その内容までは出てこないのです。
まるで言葉にすれば、この不思議な感覚が薄れてしまうというように…私の感情が邪魔をしていました。
京太郎「良い…よな?」グイ
ハオ「ぁ…♪」
でも、そうやって私が言葉を失っている最中も、京太郎君は止まってくれません。
…いえ、そもそも、その目に欲情を湛えるほど興奮している事を考えれば、良く我慢してくれていると言うべきでしょう。
リビングや風呂場ではなく、わざわざ自室に私を連れ込んだのも間違いなく彼の優しさ。
ただ…そうやって私に気遣う気持ちも、もう興奮に呑まれつつあるというだけなのです。
ハオ「…今更、聞かないで…ください…」
勿論、放っておいても、彼は私に襲いかかるでしょう。
紳士的であった彼は時を経るに毎にいなくなり、ケダモノの顔が見え隠れしているのですから。
しかし、それが分かっていても、私はそこで無言を貫く事はしませんでした。
これは私と彼が結ばれる…初めての経験なのですから。
それが嬉しいのだと…嫌ではないのだという主張を欠かせば、彼に対してあまりにも失礼でしょう。
京太郎「…ハオっ」
ハオ「んっ」ビク
そんな私に京太郎君の顔が一気に近づいてきました。
まるで食いつくようなそれに、私は思わず肩を震わせてしまいます。
ですが、それは彼の動きが思いの外、早く、そして強引だったからこそ。
それが持つ意味を知った瞬間、私の身体から力が抜けて行きました。
ハオ「(私…キス…されてる…♪)」
キス。
それは旧イギリス領である香港人にとっても特別なものでした。
そもそも欧米人は挨拶にキスをするという風に言われていますが、唇同士を触れ合わせるのは恋人だけ。
事実、私は家族と頬にキスした事があっても、唇同士のキスなどした事がありません。
ハオ「(なんでしょう…すごい…幸せ…です…♪)」
ハオ「(ただ、唇を触れさせているだけなのに…胸の中、トロンってしてしまって…♥)」
勿論、彼と身体の一部を接触させる事くらい私は何度もやっています。
デート中に手を握った回数は一度や二度ではないのですから。
でも、私は一度としてそのような感覚を感じた事がありません。
いえ、まるで胸の内側から蕩けるようなその感覚は、私の人生で初めてと言っても良いでしょう。
ハオ「(これ…ダメ…♪)」
ハオ「(きっと癖に…癖になっちゃいます…♪)」
私はあまり詳しくはありませんが…そこには技巧も何もありません。
だって、京太郎君はただ私に唇を押し付けているだけなのですから。
本当に触れ合うようなそのキスは、まるで子ども同士のようなもの。
でも、だからと言って、私の中でその喜びは色褪せません。
京太郎くんにキスされているという、それだけで私は心から幸せになっていたのです。
京太郎「ちゅ…ハオ…」
ハオ「きょう…たろぉ…♥」チュッ
そんなキスを…京太郎君は何回もくれます。
まるで一度や二度では物足りないと言うように私の唇を求めてくれるのでした。
何処か鳥のついばみを彷彿とさせるその愛撫は、まさしくバードキスと呼ぶに相応しいでしょう。
ハオ「(そう…これは…バードキス…)」
ハオ「(キスの中でも一番、軽いものなのに…)」
でも、私はこんなにも幸せになっている。
いえ…ただ、幸せになっているだけではなく、私はもうキスの虜になっていました。
私を求める彼に応えるようにして、自分から唇を押し付けてしまうのですから。
まるでもっともっとと強請るようなそれは…私が京太郎君だけではなくキスの虜になってしまったからなのでしょう。
ハオ「(すごい…キスって…すごいです…♪)」
ですが、それはまだ何も知らない子どものお遊びと言っても良いようなもの。
この先にはまだ恋人同士に相応しいディープなものが待ち受けているのです。
それを思うと、私の胸に賞賛と…そして期待の言葉が浮かび上がってきました。
ですが、私はそれを言葉にする暇すらありません。
私の唇はもう夢中になって、彼とバードキスを繰り返していたのですから。
京太郎「…」スッ
ハオ「ふゅっ…♪」
それでも私の口から変な声が漏れたのは、京太郎君の手が私に触れたからです。
無論、お姫様抱っこされて運ばれている最中も、私はずっと彼に触れられていました。
ですが、それはまだ紳士的であった頃の京太郎君なのです。
ゆっくりとタガが外れつつある今の彼は、もう到底、紳士とは言えません。
優しい事は優しいですが、私の身体を撫でる手には、欲情の色がハッキリと浮かんでいるのですから。
ハオ「(あぁ…またゾクゾク…しちゃいます…♪)」
ですが、私はその手が決して嫌ではありません。
勿論、相手が京太郎君以外であれば、即座に相手を突き飛ばし、逃げていた事でしょう。
きっと一生のトラウマになって、苦しみ続けていたと思います。
でも、今、私に触れてくれているのは京太郎君。
私が唯一、その心を、そして肌を許した相手なのです。
私の身体は彼に触れられるのを嫌がるどころか、喜びを示すようにして快感を得ていました。
ハオ「(もっと触って…欲しい…♪)」
ハオ「(もっともっと…私を気持ちよくして…欲しい…♥)」
その快感に私の中のタガも外れていくのを感じます。
私は決して淫乱ではありませんが…でも、それ以上に京太郎君の事が好きなのでしょう。
私の身体を撫でるその手はあまりにも愛おしく、そして気持ちの良いものなのです。
キスに負けず劣らず、私を虜にする京太郎君の手に…私はもう我慢出来ません。
もっと触って欲しいとアピールするように彼の手に自分の手を重ねてしまうのです。
京太郎「…ハオ」
ハオ「んふぅ…♥」
キスの合間に彼は私の名前を呼んでくれました。
でも、それはさっきまでに比べれば、とても熱っぽく、そして情熱的です。
その中に愛しさだけではなく、興奮まで込めた彼の言葉に、私はすぐさま応えられません。
その言葉にさえ胸を蕩けさせてしまう今の私は、まず真っ先に熱い吐息を漏らしてしまったのです。
ハオ「…良い…ですよ…♪」
ハオ「さっき言った通り…京太郎君の好きなようにしてください…♥」
ハオ「私はもう…貴方のものなんですから…♥」
その後に私が口にしたのは、彼の欲望を受け止めようとするものでした。
…いえ、より正確に言えば、受け止めようとしたのではなく、求めていたのです。
だって…私はキスも愛撫も…両方、気に入ってしまったのですから。
まだエッチの入り口も入り口だと言うのに、私に沢山の初めてをくれると言うのに…嫌がれるはずがありません。
もっともっと過激で…そしてエッチな事をして欲しい。
私がそう思ってしまうのはごくごく当然の事でしょう。
京太郎「…っ!」グイ
ハオ「ひゃん…っ♪」
ただ、当たり前の言葉は彼の心を大きく揺さぶっていたみたいです。
私の言葉に獣性を強めた京太郎君は、強引に私の胸を掴みました。
ブラの上だと言うのに構わず鷲掴みにするようなそれに、流石の私も驚きます。
誘惑するような言葉を口にしたとは言え、まさかいきなり胸を揉まれるとは思っていなかった私の口から驚きの声が漏れました。
京太郎「ハオの胸…すげぇ柔らかい…」
ハオ「はうぅ…♪」
ワイヤーが入っているとは言っても、ブラは基本、厚布です。
強引に掴めば、その感触を感じる事は不可能ではないのでしょう。
事実、京太郎君の口から漏れる感想は、とてもしみじみとした…真実味のあるものだったのですから。
彼が本心からそう思っている事をあますところなく伝えるそれに、私は変な声を漏らしてしまいます。
ハオ「(褒められてる…♪私の…胸…♪)」
ですが、それは決して彼の賞賛が嫌だったからではありません。
寧ろ、私は彼の熱っぽい感想に、心の底から喜んでいました。
だって、彼が胸に強い性的興味を覚える人だと言うのは、これまでの生活で分かっているのですから。
自身がそのお眼鏡に叶ったと思えば、嫌がるどころか興奮を覚えてしまいます。
ハオ「(その上…彼の指が…私の胸を揉んで…♪)」
自身の胸を揉まれる感覚は、決して弱いものではありませんでした。
ブラ越しなどお構いなしに動くその指には、それなりに力が入っていたのですから。
私の柔らかさを無理矢理、堪能しようとするようなそれに…私もまた興奮を覚えてしまいます。
情熱的と言っても良いほど興奮にまみれたその指は京太郎君のものなのですから。
愛しい人にこんなにも求めて貰っていると思えば、恋する私の心も幸せに…そして気持よくなってしまうのです。
京太郎「やばい…これ俺もう癖になっちゃうかも…」
ハオ「…な、なっても…良いですよ…♪」
…その上、キスを中断した京太郎君は愛おしすぎる言葉をくれるのです。
熱っぽい吐息混じりの…そして何より、興奮にまみれた言葉を。
綺麗だと告げてくれた時よりも、欲情を強めたその言葉を、私が拒絶出来るはずありません。
寧ろ、そんなになるまで夢中になってくれる彼の事が、より好きになってしまうのです。
ハオ「でも…これだけで…満足…なんですか?」
京太郎「え?」
ハオ「き、京太郎君は…ブラ越しで・・満足出来ちゃうんです…か…?」
だからこそ、私は誘惑するような言葉を口にしてしまいます。
勿論、まるで痴女のように彼を誘う自分に恥ずかしさが止まりません。
でも、エッチな彼が、ブラ越しで満足出来るはずなどないのです。
本当は直接、私の胸を揉みしだきたいと思っているに違いありません。
ハオ「(そ、それにちょこっと…ちょこっとだけですけれど…)」
…私自身、直接触って欲しいんです。
彼の逞しい指で…まるで玩具にするように激しく。
も、勿論、私は淫乱ではありませんので、それはあくまでも少しです。
彼を思う気持ちに比べれば、チリのように小さいものですが… ――
京太郎「…じゃ、じゃあ…」ゴクッ
ハオ「あ…♪」
それでも、京太郎君が私のブラに触れた瞬間、声が漏れてしまいます。
しかも、それは羞恥心によるものではなく、歓喜から出てしまったもの。
私の望みに彼が応えてくれた事を喜ぶようなそれは…その、京太郎君が正直になってくれたからこそ。
そんな声が漏れてしまうほど私が期待していた…なんて事はないのです。
京太郎「…ん…あれ…?」
ハオ「……」
…………だから、私は今、失望なんて感じていません。
えぇ、だって、私はほんのちょこっとしか期待していないのですから。
そもそも、これまで女性の影が見えなかった彼が簡単にブラを外せるはずがありません。
えぇ、ここであっさりと外されてしまった方が、私にとってはショックだったでしょう。
ハオ「(…………でも、もどかしいです)」
私のブラを前にして、京太郎君は今、四苦八苦していました。
ブラの付け方もコツが必要ですが、外し方にも若干のコツがあるのです。
女性であれば否応なく慣れていくものですが、男性である彼にそれを求めるのは酷でしょう。
……とは言え、京太郎君がその気になってくれてからもう一分近くも経てば、どうしてももどかしさを否めません。
ハオ「あ、あの…京太郎君…」
京太郎「あ…ご、ごめんな。その、俺…」シュン
…あ、可愛い…。
普段の格好良い京太郎君も素敵ですが…シュンとした顔も悪く…ってそうじゃありません。
このまま京太郎くんに任せ続けても、中々、事態は好転しないでしょう。
ならば、彼の為に…えぇ、あくまでも京太郎くんの為に私が手を貸すしかありません。
ハオ「い、いえ、良いんです…」
ハオ「でも、ここは私に任せて貰えませんか?」
……具体的な方法はまた今度、教えてあげるとしましょう。
今はそれよりももどかしさの方が大事……い、いえ、京太郎くんの興奮の方が大事なのですから。
あんまりここで落ち込まれると、いざ本番と言う時に出来なくなってしまいかねませんし…。
恥ずかしいですが…ここは私の手でブラを外すべきでしょう。
京太郎「あ、あぁ…頼む」
ハオ「では…」
……でも、やっぱり恥ずかしい…ですね。
好きな人の前で、自分からブラを外すなんて…その…き、期待しているみたいですし…。
い、いや、まぁ、期待している事は否定しませんが、それよりも私の中で大きいのは彼への気持ちです。
あくまでも京太郎君の為に自分からブラを外そうとしているだけであって、自分の中の期待はオマケ。
そう自分に言い聞かせながら、私はブラのホックに手を掛けて ――
ハオ「ん…」プツ
京太郎「お、おぉぉ…」
…外した瞬間、京太郎君の口から感嘆の声が漏れました。
やはり彼も私の胸に膨大な期待を寄せてくれていたのでしょう。
私が自分でブラを外したのは、決して間違いではありませんでした。
……とは言え、自分でこのままブラを脱ぐのは恥ずかしいですし…。
ハオ「…後はお願いできますか?」
京太郎「お、おう。任せてくれ」
その後を任せた彼の手は、思いの外、優しいものでした。
まるでブラを壊さないように、ゆっくりと私からそれを脱がしてくれるのです。
それに嬉しさと…そしてほんのすこしのもどかしさを感じる私からブラが外されて…。
京太郎「…っ」ゴクッ
ハオ「~~~~っ♥」カァァ
…………見られて、います。
私の胸を…乳首まで完全に晒しきった私の胸を…全部…。
当然、京太郎君の視線はさっきよりもより興奮を増して…私の胸をガン見してきます…。
撫でるのではなく、最早、刺すようにさえ感じるその視線があまりにも恥ずかしいです。
何時もよりもちょっぴり大きくなってる乳首まで見られていると思ったら…もう顔から火が出そうなくらいでした。
ハオ「…ぅ」カクシ
京太郎「あ…」
結果、私は羞恥心に負けてしまいました。
自身で胸を晒そうとしたも同然なのに…ついつい両腕で胸を隠してしまうのです。
それに京太郎君の口から漏れるのは、寂しさと悲しさが入り混じった声。
これからエッチするとは思えないほど落ち込んだそれに私もまた良心の呵責を感じます。
ハオ「(…そもそも誘ったのは私の方ですし……)」
…確かに私は今、とても恥ずかしがっています。
それこそ今にも穴を掘って埋まっちゃいそうなくらいに。
ですが、それは彼への愛しさに敵うかと言えば、勿論、否。
私にとって最上と言っても良いその気持ちに敵うものなど、私の中をどれだけ探しても見つかりません。
だから…ここは羞恥心に耐えて…再び彼の前に胸を晒すべきなのです。
ハオ「~~~っ♪」スッ
京太郎「ハオ…っ」ガバ
ハオ「ひゃうっ♪」
そう自分に言い聞かせながら、胸から腕を離した瞬間…彼が襲いかかってきました。
まるで私の隙を見逃すまいとするようなその動きはとても素早く、そして強引です。
さっきまでの紳士な京太郎君は何処にいったのだとそんな事さえ思うくらいに。
京太郎「ハオ…ハオ…っ」
ハオ「ん…ぁぁ…っ♪」
しかし、だからと言って、私は彼の事を嫌いになったりしません。
そもそも…私自身、そうやって彼に求めてもらうのを望んでいたのですから。
その為に自分からブラを外した私にとって、胸を揉みしだく彼は可愛いもの。
いえ、私の名前を夢中で呼びながら指を動かすその姿は愛おしいと言っても良いものでした。
ハオ「(京太郎くんがこんなにも私の身体に夢中になってくれるなんて…っ♥)」ハァ
今の彼には私の胸しか見えていませんでした。
その顔を胸のギリギリにまで近づけ、両手を使って揉みしだいています。
まるで全身の神経を胸へと集中させるようなその姿に、私は嬉しさを禁じえません。
愛しい人がこんなにもタガを外してくれていると思うと、それだけで吐息も熱くなってしまいます。
ハオ「(それに…京太郎くんの指…気持ち良い…ぃ♪)」
経験のない私には、京太郎君の技巧がどれほどのものなのか分かりません。
ですが、ただ欲望のまま私の胸を揉みしだくそれが、到底、上手なものとは思えませんでした。
私と同じく経験のない彼は、きっとまだまだ下手と言っても良いのでしょう。
とは言え、そんな彼の手に、私が快感を感じない、と言う事はありません。
まるで私の胸を思いっきり楽しむような指の動きに、私の胸は甘い痺れを広げていました。
ハオ「は…ふ…ぅ♪」
それは撫でられていた時よりも、ブラ越しに揉まれていた時よりも遥かに強いものでした。
直接触れられるだけでこんなにも違うのかと微かな驚きを感じてしまうくらいです。
無論、私の口もそれに反応し、吐息と共に微かな声が漏れてしまいました。
快感混じりのその声に、私の胸は羞恥心を強めますが、だからと言って止まりません。
それはもう出そうと思って出しているものではないのですから。
京太郎「ハオの胸…最高だ…」
京太郎「肌さわりも良くて、柔らかくて、吸い付いてきて…」
京太郎「揉んでるだけなのに…俺、おかしくなっちゃいそうだ…」
ハオ「~~っ♪」カァァ
その間に、京太郎君も落ち着いてきたのでしょう。
今まで私の名前しか呼ばなかったその口から、私の胸の感想が漏れ始めました。
きっと彼にとって最上級に近いその賞賛は、しかし、とても恥ずかしいものです。
正直、聞いているこっちの方がおかしくなってしまいそうでした。
京太郎「止まらない…」
京太郎「ハオの胸揉むの止められねぇ…」
ハオ「ふ…うぅ…ん♪」
勿論、そうして賞賛を口にする最中も、京太郎君の手は止まりません。
いえ、ただ、止まらないだけではなく、私の胸を揉みしだくその指がちょっとずつエッチになっていっているのです。
最初は全ての指を同時に動かして感触を楽しむだけだったのに…今はもうそれだけでは収まりません。
ただ揉むだけではなく、私の胸を撫でたり、ギュっと押し上げたりしてくるのです。
ハオ「(な、何なんですか…その成長速度…ぉ♪)」
勿論、ただでさえ敏感になった私の身体が、それに快感を得ないはずがありません。
ゆっくりと、しかし、何も言わずとも上達していく彼に、私の身体は感じてしまうのです。
それを喜びながらも、私の心に不公平感が浮かんできました。
私はまだまだ一杯一杯なのに、彼は一人で上達を始めているのですから…どことなく置いて行かれたように感じるのです。
ちょい休憩(グラたん堀)はまだ終わっていませんが、あまりにも放置しすぎたのでこっちもちょこちょこ進めます(´・ω・`)
と言いながら今日はここまでです
本編の方は一応、キリのいいところまでは終わってますがまた一気に投下したいので、もうちょっとお待ち下さい
京太郎「…はぷ」チュッ
ハオ「ひぅっ♪」
瞬間、京太郎君の唇が私の胸に触れました。
さっき私の事をあんなにも心地よくしてくれた…愛おしくて蕩けるような唇。
それが私の胸に吸い付くような感覚に思わず声をあげてしまいます。
…勿論、それは恥ずかしかったり、くすぐったいからではありません。
その唇に、私は気持ちよくなってしまっていました。
ハオ「(あぁ…♪また…こんなぁ…っ♥)」
私は殆どと言って良いほど自慰をした経験がありません。
恐らく、元々の性欲が薄かったと言うのもありますし…どれほど自分の身体を弄っても、あまり気持ちよくはなれなかったのです。
ですが、私の身体は今、そんな事を忘れたかのように快感を得ていました。
自分の手ではただくすぐったさしか感じなかった胸を揉まれ、そして吸われる度に…エッチな声が漏れてしまうほどに。
ハオ「(私…こんなにエッチな子…だったんです…か…ぁ♪)」
い、いえ、そんな事あるはずがありません。
だって、私は今まで性的な快感とは無縁と言っても良い人生を送ってきたのですから。
そんな私に快感を教えこむような京太郎君がイケナイのです。
そう…悪いのは全部、エッチでドンドンと上手になっていく彼の方。
彼がエッチ過ぎるから…私もそれに呑まれてしまっているだけで… ――
ハオ「き、京太郎君…エッチ…過ぎ…です…っ♪」
京太郎「あ、ごめん」パッ
ハオ「ぁ…」
え…そ、そこで、どうして離れちゃうんですか…。
た、確かにエッチ過ぎって言いましたけど…で、でも嫌じゃないのに…。
い、いえ、勿論、私は京太郎君みたくエッチでも淫乱でもありませんけれど…でも、相手は私の恋人なのですから。
恋を知らなかった私に快感まで教えてくれる愛しい人の事を嫌えるはずがありません。
ハオ「…京太郎君の嘘つき…」
京太郎「え?」
ハオ「と、止まらないって…言ったじゃないですかぁ…♪」
…でも、嘘つきな京太郎君はあんまり好きじゃありません。
他の彼はとってもとってもとってもとってもとっても大好きですけど…でも、前言撤回するのはどうかと思います。
べ、別に私が彼の愛撫を待ち望んでいるとかそういうんじゃありませんが、そういうのは男らしくないでしょう。
だから、ここは宣言通り私の胸をたっぷり気持よくするべきだと思うのです えぇ、絶対に。
ハオ「私…嘘はどうかと…思います…♪」
ハオ「京太郎君はさっき言った通り…ちゃんと私の胸に思う存分、エッチな事を…」
京太郎「ハオ…っ」ムギュ
ハオ「ん…ぅぅっ♪」
は…ぁ…京太郎君の手…激しすぎです…。
まだ私の言葉の途中なのに…思いっきり鷲掴みにして…。
そのままモミモミグニグニって…私に対する遠慮とか…もうまったくありません。
ただただ、私の胸を弄び、気持ち良くしようって言う気持ちだけが…伝わってくるんです。
ハオ「(さっきよりも…さらにエッチになってて…♪)」
私が愛撫を求めるような事を口にした事で、彼の中の遠慮や躊躇いが完全に吹っ切れてしまったのでしょう。
私の胸を揉み、撫で、押し付け、吸いつく京太郎君は、さっきよりもエッチになっていました。
まるで私の胸に魅了されたような姿は勿論、嫌ではありません。
で、でも、それは京太郎君が甘えるような顔が可愛いからであって、別に気持ち良い事とは無関係… ――
ハオ「きゅ…ふゅぅ…♥」ジワァ
…あぁぁ…わ、私…今、濡れちゃいました…。
いえ…多分、元々、濡れてはいたんだと思います。
京太郎君に告白を返された時からずっと私の身体は甘い火照りを見せていたのですから。
愛しい人と想いを交わしたその感覚は、ムラムラとはちょっと違いますが…でも、私の身体を女として目覚めさせていた事に間違いはありません。
ハオ「(でも…それが今、外に漏れちゃって…ます…♪)」
鈍感であった胸から感じる快感。
それは私の身体の中で抑えきれるものではなくなりつつあるのでしょう。
こうしている今もエッチな愛撫を繰り返す彼に…私のその…あ、愛液が外に漏れ出してしまいました。
ジワァと中から外へ熱い粘液が広がるその感覚はあんまり気持ち良いとは言えません。
それに伴って下着が肌に張り付く事を思えば、不快感さえ伴っていると言っても良いでしょう。
ハオ「(私…私…もう準備…できちゃって…る…♪)」
ハオ「(まだキスと胸しか弄って貰ってないのに…もう受け入れる準備…終わって…ぇ♪)」
ですが、それは私に強い興奮をもたらすものでした。
愛液が外に染み出すほど濡れている自分に…私は自身の快感を再確認してしまうのです。
自分は京太郎くんにこんなにも気持ち良くして貰っている。
何処か喜びさえ伴ったその言葉に、私の肌がブルリと震えました。
京太郎「ハオ…気持ち良い?」
ハオ「っ♪」ドキ
瞬間、私に尋ねる京太郎君の声に、私の心臓が跳ねました。
何時もの甘い高鳴りとは違うそれは、彼の言葉に強い驚きを感じてしまったからこそ。
だって、私は今、自身の下着を濡らすほど気持ち良くなってしまっているのですから。
そんないやらしい私を京太郎君に感じ取られたのではないかと思うと、どうしても驚きを隠しきれません。
ハオ「き、聞かないで…ください…ぃ♪」
京太郎「いや、でも…俺も初めてだしさ」
京太郎「出来れば、ハオの事、気持ち良くしてあげたいんだよ」
…京太郎君は優しいですけれど…でも卑怯です。
大義名分に私の事を掲げられたら…普通、拒めません。
彼の優しさに心が震えて…恥ずかしさよりも嬉しさの方が強くなってしまうのですから。
ついつい京太郎君の気持ちに答えようと…口が開いてしまうのです。
ハオ「気持…ち良い…です…♪」
京太郎「本当か?」
ハオ「ほ、本当…ですよぉ…♪こ、こんな嘘…吐けません…ぅ♪」
ま、まぁ…より正確に言えば、今まで生きてきた中で一番、気持ち良いんですけれど…。
でも、それは流石に京太郎くんに伝える事は出来ません。
自分からブラを外して彼に胸を晒した私とは言え、羞恥心を投げ捨てた訳ではないのですから。
愛しい人に淫乱だと思われたくはないという気持ちは未だ私の中で強いものだったのです。
京太郎「じゃあ、こうやって撫でるのもどうだ?」スス
ハオ「は…うぅ…♪」
ちょっとだけくすぐったい…撫で方…。
でも、さっきまでずっと揉まれてた私の胸は…それにまるで焦らされているように感じてしまうのです。
京太郎君の手によって女として目覚めつつある私の胸は、そのフェザータッチに抗えません。
触れるか触れないかのギリギリをずっと歩き続けるようなそれに、胸が敏感になってしまいます。
ハオ「く、くすぐったいけど…気持ち…良い…です…♪」
京太郎「へぇ…こうやって撫でられるのもハオは好きなんだな」サワ
ハオ「…ぅ…♪」
そう言いながら、京太郎君の手は私の胸の先っぽへと登っていきます。
まるで塔を登るようにして外周を回りながら…ゆっくりと乳首の方へ進んでいくのです。
瞬間、私の胸に浮かぶのは強い期待の色でした。
彼の言葉から感じる気恥ずかしさ以上に…私は乳首を弄られるのを楽しみにしていたのです。
ハオ「(だって…そこはまだ京太郎君に触れられていない場所で…)」
我慢できずに私の胸を手を伸ばした京太郎君にとって、そこは興味の薄い部分なのでしょう。
ピンと突き出た桜色の乳首は、今まで彼からのアプローチをまったく受けてはいませんでした。
それに物寂しい感覚を覚えてしまうのは…やはり致し方無い事でしょう。
そこは私の胸の中でも一番、敏感なはずなのですから。
こうして胸を弄られているだけでも濡れてしまう私が、そこを攻められるとどうなるのか。
そんな期待と興奮は私の胸の中にずっとあり続けていたのです。
ハオ「(あぁ…もう…ちょっと…♪)」
ハオ「(もうちょっとで…彼の指が…乳首に…♪)」
そんな私の目の前で京太郎君の手が私の胸から離れていきます。
乳首に近づく度、一本ずつ離れていくそれは、きっと範囲よりも正確さを取ったのでしょう。
事実、人差し指だけになった彼の手は…今、私に強いじれったさを与えていました。
もう乳輪の縁まで指先が届いていると言う事も相まって、期待感が膨れ上がっていくのが分かります。
ハオ「(もう…もう…すぐ…っ♪)」ゴクッ
京太郎「じゃあ、次だな」スッ
ハオ「え…?」
…でも、京太郎君はそんな私の期待に応えてはくれませんでした。
乳首までほんの1cmと言う距離で私の胸から指を離したのです。
結果、私に残ったのは期待感が反転したような物足りなさ。
その期待が成就する寸前に霧散した感覚は決して小さいものではありませんでした。
ハオ「あ、あの…♪」
京太郎「次は揉み加減とか確かめていかないといけないからな」
それについつい声を漏らした私に、しかし、京太郎君は気づきません。
……いえ、これは間違いなく気づかないフリをしているのでしょう。
そうでなければ、あんなところで指を離すはずありません。
最初から私の事を焦らすつもりで…彼はあんな事をしていたのです。
ハオ「(は、初めてだって言った癖に…ぃっ♪)」
…なんと鬼畜な事を、と言うのが正直な感想でした。
それくらい私は期待…い、いえ、していませんけれども!!
でも、その…彼の手は本当に気持ち良くて…でも、じれったくて…。
お、女の子であれば、誰でももっとって言いたくなるくらい上手だったんです。
ハオ「(…初めての子にする事じゃないですよ…もぉ…)」
その上、今まで恋すら知らなかった私は…その…これが初めてのエッチなのです。
そんな相手を前にして焦らしプレイだなんて…鬼畜と言われても仕方がないでしょう。
そもそも…そうやって私を焦らすほど余裕がある事もあんまり気に入りません。
さっき私の胸にあんなにも夢中になっていたはずなのに…もう飽きてしまったのか。
そんな不機嫌さが私の胸の奥から湧き上がって来ました。
ハオ「…」ムスー
京太郎「…え、えっと、ハオ…?」
ハオ「…意地悪な京太郎君なんて知りません」ツーン
……とは言え、それでも嫌いになれないのは惚れた弱み…と言う奴でしょうか。
勿論、意地悪をされた事に怒ってはいますが、あくまでもそれだけ。
それは決して失望にも、嫌悪にも繋がったりはしませんでした。
…自分でもチョロいとは思いますが…でも、こういうのは心の働きなのです。
理性でどれだけ自身のチョロさを自覚しても、心の中まではどうにもなりません。
京太郎「あー…ごめん」
京太郎「その…ハオが可愛すぎて、つい意地悪したくなって…」
京太郎「でも…初めてなんだから、そういう事するべきじゃなかったよな」
京太郎「本当にごめん」
それに何より、彼は私の不機嫌さにすぐ気づいてくれるのです。
いえ、すぐに気づくだけじゃなくて…こうして謝罪の言葉を口にしてくれて。
本気で反省してくれているのが伝わってくるのですから…嫌いになれるはずがありません。
寧ろ、そうやって真摯に謝罪の言葉を口にする彼の事を私は余計に好きになってしまいました。
ハオ「…反省してますか?」
京太郎「してます」
ハオ「…こ、今度はちゃんとしてくれますか?」
京太郎「あぁ。もう二度と意地悪とかしたりしない」
ハオ「…べ、別に…それがダメって言う訳じゃないですけれど…」ポソ
…まぁ、その…焦らされる事そのものはあんまり嫌じゃなかったですしね。
そうやって私に意地悪する彼も…何時もと違ってドキドキしましたし…。
それに…今、私の胸は自分でも分かるくらいに敏感になっているんですから。
乳首なんてもう今にもピクピクって震えそうなくらいに疼いてしまっています。
ハオ「(…こ、このまま京太郎君にエッチな事されたら…きっとすごい事になっちゃう…♪)」
ただでさえ、私の下着はもう薄っすらと染みを広げている状態なのです。
この上、敏感になった乳首を愛撫されなどしたら…きっと大洪水になってしまうでしょう。
下手をすれば、彼に下半身を見せられなくなってしまうような状態になってしまいかねません。
内心でそんな危機感を覚えるほど敏感な身体を、私は嫌いにはなれませんでした。
なんだかんだ言いつつも…私は彼にエッチな事されるのを楽しんでいるのですから。
より淫らになる自分の身体を恥ずかしいとは思いますが、それは嫌悪感に繋がったりはしませんでした。
京太郎「え…?」
ハオ「な、何でもないです…」カァァ
しかし、そんな私でも、自身の胸中を素直に伝えたりは出来ませんでした。
だって、エッチにされるのが嫌いじゃないなんて…もう痴女そのものじゃないですか。
私はそこまで淫乱じゃありませんし…そんな風に京太郎君に思われるのも我慢出来ません。
だからこそ、今の私に出来るのは驚き混じりに聞き返す彼へ誤魔化す事だけで… ――
ハオ「と、ともかく、許してあげますから…つ、続きしてください…」モジモジ
京太郎「ん。了解」チュ
ハオ「ふぅ…♪」
こ、今度はおっぱいキスから…入るんですか…。
しかも、さっきまでの吸い付くようなものじゃなくって…唇を押し付けるような優しいもので…。
愛しさをたっぷりと込めたこのキスは、多分、京太郎君なりのお詫びなのでしょう。
実際、私はこのキスで大分、機嫌も治ってしまったと言うか…胸がドキドキって甘く高鳴ってしまって…。
京太郎「じゃあ…とりあえず、ハオお待ちかねのこっちから…だな」スス
ハオ「~~~っ♪」マッカ
べ、別に待ち望んでたりしないですよ…!
そ、そもそも…京太郎くんが焦らしたりしなかったら…私だってこんな風になってません。
乳輪の縁をなぞるようにして京太郎君の指が動く度、乳首がピクンと反応したりはしなかったでしょう。
…だ、だから、ここは京太郎くんに責任を取ってもらうしかありません。
彼の所為でこんなにもエッチになってしまった私の乳首を満足するまでかわいがって貰わなければ。
京太郎「ほい」ズリ
ハオ「きゅぅ…うぅううっ♪」
は…走った…ぁ…。
き、京太郎君の手がいきなり私の乳輪こすって…ズリってした瞬間…ビリビリ来ました…。
まるで胸の奥まで突き刺さるような…鋭い気持ちよさ…。
今までとは…やっぱり全然、違います…。
おっぱいよりもやっぱりその乳輪の方は敏感で…エッチで…。
ハオ「(で、でも…なんで乳輪、なんですか…ぁ♪)」
そこがどれだけ敏感なのかを私はもう思い知りました。
ほんの僅かに擦られただけで、今まで以上に大きな甘い声が出てしまうのですから。
今の私はただ揉まれていた時よりもずっとずっと…感じてしまっています。
でも…だからと言って、私はこれで満足出来ません。
だって、私が欲しがっているのは…その先なのですから。
乳輪よりもさらに敏感な場所を疼かせている私が、満たされるはずないのです。
ハオ「き、京太郎…くぅん…♥」
京太郎「あ、いや、意地悪してる訳じゃないんだぞ」
京太郎「俺はさっきちゃんと反省したし…そういうつもりはまったくない」ズリ
ハオ「んあぁあっ♪」
そう言いながらも…乳首弄ってくれないじゃないですかぁ…。
乳首…ぃ、もう…ピクピクしてる私の乳首ぃ…っ。
乳輪も気持ち良いですけど…すぐに声出ちゃいます…けどぉ…。
それじゃ全然…まったく足りないんです…っ。
どれだけ胸の奥までビリビリ来ても…気持ち良くなっても…ダメなんですよぉ…。
京太郎「…だから、このまま、さ」ズリ
ハオ「あ…ひぃいいぃい♪」ビクン
あ…あぁああぁあっ♪
い、意地…悪ぅ…、やっぱり…京太郎君、意地悪です…♪
乳輪ズリズリしてた指をいきなり乳首…乳首にもっていって…ぇ♪
そのまま同じ力でゾリゾリされたら…変な声漏れちゃうに決まってるじゃないですかぁ…♪
か、完全に感じてるのまるわかりな…エッチで…やらしい…声ぇ…♪
私の乳首が疼いてた事も、そこにエッチな事されるの期待してた事も…ぉ♪
全部…全部…京太郎くんに…バレちゃい…ましたぁあ…♪
京太郎「うわ…指の中で乳首パンパンになってる…」
京太郎「まるでいやらしい気持ち詰め込んでるみたいに腫れあがってるぞ」
京太郎「一体、どれだけ期待してたんだよ」
誰の所為だと…思ってるんです…かぁ…っ♪
あ、あんなに焦らされたら…誰だってそうなるに決まってます…ぅ♪
もう自分で乳首触っちゃいそうなくらい…私、疼いちゃってたんですからね…♥
京太郎君の所為で…私…すっごくエッチな乳首になっちゃったんです…から…♪
ハオ「せ、責任…ぅ♪責任とって…くださいぃ…♥」
京太郎「…なんだか分からないけど、もっとしろって事だよな」ズリリ
ハオ「きゅぅうううぅっ♪」
ぜ、絶対、とぼけてますよね…っ♪
本当は京太郎君も分かってます…よね、絶対…ぃっ♪
なのに、そんな風にとぼけて…私の乳首ズリズリしてぇ…♪
意地悪…ぅう♥京太郎君は…本当に意地悪ですぅ…♥
何時もは優しいのに…エッチの時はこんなにも意地悪で、スケベだなんて…本当に反則…ですよぉ…♥
ハオ「(私…こ、こんなの…嫌になれないじゃ…ないですかぁ…♥)」
京太郎君に意地悪されながら…気持ち良くなっちゃってるからぁ…♪
京太郎君の指で乳首弄られる度に気持ち良くなってるからぁ…あ♪
私の中で…気持ち良いのと意地悪が…結びついちゃい…ますよぉ…♥
まるで変態みたいに…意地悪されると…気持ち良くなっちゃう…ぅ♪
私…初めてなのに…京太郎くんに調教され…ちゃってぇ…♥
京太郎「まぁ、安心してくれよ」
京太郎「さっきのお詫びにちゃんとハオが満足するまで気持ち良くしてやるからさ」
こ、このままじゃ…満足する前に…私、ダメになっちゃいます…ぅ♪
京太郎くんに意地悪されるのが大好きな…へ、変態女に…なるぅ…♥
だ、だから…ダメって…ダメって言わな…きゃぁ…♪
京太郎君に意地悪しないでって…元の優しい京太郎くんに戻って…て…♥
そうじゃなきゃ…私…わた…しぃ…♪
京太郎「じゃあ、ちょっと強くするからな」ギュゥ
ハオ「ひぃいぃいいんっ♪」
な、なんでこのタイミング…でぇ…♪
言わなきゃいけないって…そう思った時に…ぃっ♪
なんで…なんで私の乳首、ギュゥするんですかぁあっ♪
上下に擦るだけじゃなくって、指の間で押しつぶすようなギュゥゥ…♥
そ、そんなの…感じるに決まって…ます…♪
焦らされた乳首が…勝てるはずないじゃないですかぁ…♥
京太郎「またエロ声漏らして…本当にハオは乳首が弱いんだな」
弱く…弱くなんかないんですよぉ…♪
自分が…自分が触った時も、殆ど感じたりしませんでした…し…♥
一時は不感症なんじゃないかと悩んだくらい…なんですからね…♪
で、でも、私にとっては…京太郎君は特別…で…♥
その上…焦らされちゃった…からぁ…♪
だから、私の乳首…こんなにエッチになって…ぇ♥
京太郎君の所為で…こんなにダメな乳首になっちゃってぇ…ぇ♪
京太郎「このままだと乳首でイけそうな感じもするよな」
京太郎「…試してみたいと思わないか?」
ち、乳首で…い、イく…?
…や、やだ…そ、そんな…ダメですよ…♪
今でさえ、こんなにエッチなのに…そ、その上、イかされたりなんかしたら…ぁ♥
わ、私…絶対にダメになっちゃい…ます…♪
乳首もっとダメになって…く、癖に…なるぅ…♥
京太郎くんに乳首イジイジされるのが大好きな…変態女になっちゃいます…よぉ…♪
ハオ「(でも…で…もぉ…♥)」
そんな自分を…心の底から厭う事がどうしても出来なくて…♪
勿論、恥ずかしいって言う気持ちはあるけど…それでも…京太郎君…なら…♥
私の愛しい人なら…変えられても良い…変態女になっても良いって…思ってしまうんです…♪
そんなのおかしいって…一時の感情に流されちゃダメだってそう分かってるのに…♥
私…私、もう…乳首が気持ち過ぎて…何より、京太郎君の事が好きすぎて…えぇ…♪
京太郎「…沈黙は肯定、だよな」ズリズリ
ハオ「ふあぁ…あぁあっ♪」
ま、まだ決まってない…だけです…っ♪
迷ってる…ぅ♥迷ってる…だけぇ…♪
だ、だから…そんな風に乳首ズリズリしないでえっ♪
ギュってしながらズリズリされたら…か、感じる…ぅ♥
さっきよりもさらに刺激が強くなって…アソコがジュンってなるの…はっきりと感じちゃうんです…ぅ♪
京太郎「まぁ、嫌なら俺の事押し返してくれよ」
京太郎「それまで俺は好き勝手にハオの胸を弄んでるからさ」
な、何が…反省してる…ですかぁ…♪
反省してるどころか…余計に…余計に意地悪になってる…のに…ぃ♪
いえ…それどころか…これ絶対に調子乗って…ますよね…♥
絶対に…私が押し返す事が出来ないって…そう思ってるから…こそ…♪
そんな条件を私につけて…エッチな事…してぇ…♥
ハオ「(お、押し返さ…なきゃぁ♥)」
ハオ「(このまま流されちゃ…ダメ…ぇ♪)」
ハオ「(このままだと…私、本当にイかされ…ちゃう…♥)」
ハオ「(イかされて…へ、変態女に…なっちゃ…うぅぅ…♪)」
勿論…私は絶頂って言うものがどういったものかは分からないですけど…ぉ♪
でも、今の私はもう身体揺らしちゃうくらいに…感じちゃってるんです…からぁ…♥
乳首からビリビリ来る度に…胸の奥で何かが膨れ上がるのも感じ…ますし…♪
間違いなく…私は絶頂に…近づいて…います…ぅ♥
京太郎君の指で…私、イかされそうになっていて…っ♪
京太郎「まぁ、ハオが拒めるとは思えないけどさ」
京太郎「ハオさっきからすげぇエロい顔してるし」
京太郎「気づいてるか?もう目もトロンってして、口も半開きになっている事」
京太郎「…まるで俺にオネダリしてるようなエロ顔になってんぞ」
し、知りま…せん…っ♪
そんな事…そんな自分なんて…知らない…っ♥
わ、私は…拒むんですからぁ…♪
ドンドンと意地悪になっていく京太郎君を拒む為にも…ぉ♪
これ以上…エッチな女にならない為にも…♥
ここで中断…しない…と…♪
エッチ止めないと…いけないんです…からぁ…♪
ハオ「はぁ…ぁ♪ん…あぁあぁっ♥」ギュゥ
なのに…なのに、どうして…なんですかぁ…♪
私の手…まったく前に動いて…くれません…♪
それどころか…まるで離れたくないって言うようにシーツ握りしめて…ぇ♥
こ、こんなんじゃ…京太郎君の事…押し返せません…♪
エッチな事して良いんだって…意地悪大歓迎なんだって…そ、そんな風に思われちゃい…ます…ぅ♥
京太郎「ほら、良いのか」
京太郎「このままだともっとすごい事しちゃうぞ」
京太郎「イかされるまで気持ち良い事されちゃうんだぞ」グリ
ハオ「きゅふぅうっ♪」
つ、爪…ぇ♪爪…があっ♥
京太郎君の爪が…私の乳首に押し込まれて…ます…っ♪
指よりもずっと硬いのが…まるで刺さるみたい…にぃっ♥
だ、ダメです…こ、こんな…意地悪…なのぉ…っ♪
普通じゃ…ないぃ…♪こんなの普通のエッチじゃないです…ぅ♥
恋人にするんじゃなくて…ど、奴隷にするための…エッチじゃない…ですかぁ…あ…♪
ハオ「や…や…あぁ…♪やめ…止め…てぇ…♥」
だ、だから…い、言わない…と…♪
ちゃんと自分の気持ちを…京太郎君に伝え…てぇ…♥
そうすれば…きっと…きっと京太郎君は元に戻って…戻ってくれる…はずぅ…♪
さっきみたく何時もの優しい京太郎君…にぃ…♥
私が好きになった彼に…戻ってくれる…はずだか…らぁ…♥
京太郎「悪いけど、今のハオが何を言っても信じられないぞ」
京太郎「俺には意地悪される度に、よりエッチになって…興奮してるようにしか見えない」
京太郎「本当に嫌なら俺の事押し返してくれよ」
ハオ「そ、それ…は…あぁ…♪」
それが出来れば…苦労はしてない…んですよぉ…♪
まるで意地悪な京太郎君を受け入れるように…私の手が言う事聞いてくれないんですからぁ…♥
押し返すどころか、まったくシーツから動かないんですよぉ♪
それなのに…押し返すなんて出来るはず…ない…♥
今の私にそれはあんまりにもハードルが高すぎるんです…ぅ…♪
京太郎「ま、そうやって押し返されるまで容赦しないけど…さ」チュゥ
ハオ「ふぁああっ♪」
あぁぁ…♥
乳首…ぃ♪乳首がぁあっ♪
京太郎君の口に…ぃ♪食べら…食べられ…てぇ…♥
吸われてる…ぅ♪私の…乳首…ぃ♥
まるで赤ちゃんみたいにちゅーちゅーって京太郎君…っ♥京太郎…君がぁあっ♥
京太郎「んー…やっぱり母乳は出ないか」チュパ
ハオ「で、出るはず…ないじゃないですかぁあ…♪」
一応、世の中にはそういう体質の人もいるらしいですけれど私はそういうんじゃ…ありません…ぅ♪
麻雀以外はごくごく普通な女…なんですからぁ…♥
そんな風に残念そうに言われても…母乳なんか…出ないですよ…ぉ♪
ちょっと申し訳なくなっちゃいますが…体質の問題だけはどうにも出来ないです…♥
あ、ありのまま今起こった事を話すぜ!
私は本番まで京ちゃんをベッドヤクザにしまいとしていたのに、いつの間にかベッドヤクザになっていた
頭がどうにかなりそうだった…
ハオのマゾオーラがヤバイとか、何時ものお約束だとかそんなチャチなもんじゃ断じてねぇ…
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…(ちょっと休憩しますの意)
ふたなりスレは基本レイプ被害者だったし…魔物娘スレでも智葉との最初のエッチは受け身だったから…(震え声)
くくく…よもや今日、本編の投下があるとは予想しておるまい…(投下出来なかったらごめんなさいの意)
ここからハオの本(番)編とか書こうと思ったら半日仕事になるんじゃないかな!?
まぁ、ぶっちゃけかなりお待たせしてるんで私もさっさと書き終わりたくあるんですが…(´・ω・`)やっぱ12月忙しかったです…ゴメンナサイ
と言いつつ本編投下いきまーす
………
……
…
―― 初美の言う通り、石戸霞の部屋は悪霊の坩堝と化していた。
普段、彼女が宿し、コントロールしている無数の悪霊。
それらは今、霞の周りで渦巻き、好き放題に暴れまわっている。
生きとし生ける者全てに恨みを抱くその本性を撒き散らし続けているのだ。
どれだけ優れた巫覡でも一歩踏み込め卒倒するであろうその場所は、最早、現実世界とは程遠い。
あまりにも濃縮されすぎた悪霊たちの所為で空間が歪み、家具がカタカタと揺れている。
軽い物は悪霊たちによって持ち上げられ、ふよふよと宙を舞っているような有様だった。
霞「…っぅ…っ」
オカルティックを通り越して非現実感すら漂う部屋。
魔境と言っても良いその場所に、霞は一人、布団の中で横になっていた。
無論、体調を完全に崩してしまった彼女の顔色は悪く、また脂汗も絶えず浮かび続けている。
しかし、彼女が苦悶混じりの声をあげるのは、体調だけが原因だけではなかった。
霞「ひ……ぁ…ぁ」
悪霊たちにとって霞はただの主人というだけではない。
神代の巫女である小蒔の側にあって尚、そちらに惹かれてしまうような極上の餌なのだ。
自然、そのコントロール下から離れた悪霊たちは、それぞれ好き勝手に霞の身体を弄ぶ。
仰向けになっても尚、自己主張の激しいその豊満な胸や、むっちりとした安産型の尻。
男であれば誰であっても惹かれるようなそれらをねっとりと、しゃぶるようにして悪霊たちは味わっていた。
霞「はぁ…あ…ふぅ…ぅ」
無論、それはあくまでも霊的なものであり、物理的に何かをされている訳ではない。
だが、そうやって身体を弄ばれる感覚は、決して偽りのものではないのだ。
不快感と快感が入り混じったそれに、霞はうなされるような声を漏らす。
しかし、それを聞いても、悪霊たちは止まったりはしない。
普段、良いようにこき使われている恨みを晴らそうとしているように霞の身体を弄り続ける。
霞「(また…こんな…)」
勿論、幾ら快感を覚えているとは言っても、それは不快感よりもずっと小さい。
こうやって霞が声を漏らすのは気持ち悪さが九割と言っても良かった。
だが、逆に言えば、残りの一割には快感が混じっていると言う事でもあるのだ。
そんな自分に霞は強い自己嫌悪を覚えてしまう。
悪霊に好き勝手されて感じている自分が、堪らなく汚れているように思えるのだ。
霞「(でも…耐えるしかないわ…)」
霞「(ただ…耐え続けるしか…)」
だが、どれだけ嫌でも、今の霞に出来るのはただ耐える事だけだった。
霞が纏う悪霊たちは彼女の制御を離れてしまっているのだから。
微かに働く能力も、まるで異界のような状況で正気を失わないでいるのが精一杯。
その他、まったく余裕のない霞は指一本すらマトモに動かせない状態だった。
霞「(…時間が経てば初美ちゃん達も来てくれる…)」
霞「(そうしたら…少しはマシになるわ…)」
いっそ絶望的と言っても良い状況。
その中で霞が唯一、希望に出来るのは、初美達の存在だった。
彼女達が来れば、動けない自分に代わって、食事や水分補給をして貰える。
その上、初美達に祓ってもらえば、少しは悪霊達も大人しくなるのだ。
その効果は数時間も保たないが、それでも眠りに堕ちる事くらいは出来る。
霞「(…でも、今、何時なのかしら…)」
霞「(もう…それすらも分からない…)」
だが、その希望が一体、何時訪れるのかが霞にはまったく分からない。
そもそも今の彼女にとって首を動かすと言う動作すら難しいのだから。
部屋には時計があるものの、それはポルターガイストによって宙に浮き、何処とも知れぬ場所を彷徨っている。
そんな時計を探すような余力など今の霞にあろうはずがなかった。
霞「(けれど…もうそろそろ来てくれるはず…)」
霞「(アレでいて初美ちゃんは気遣い屋だし…それに他の皆だっているんだもの…)」
霞「(忙しすぎて私の事忘れているないわ…)」
それでも霞はなんとか希望を繋ごうと自分に言い聞かせる。
しかし、その声は普段の彼女からは考えられないほど弱気なものだった。
そもそも何時もの霞であれば、そんな風に自分に言い聞かせたりはしない。
霞は自分の能力に強い自信を抱いており、また彼女達の事を心から信頼しているのだから。
家族と言っても良い彼女達が自分の事を忘れるなどあり得ないと断言し、そのような弱音すら思い浮かばせる事はなかっただろう。
霞「(でも…でも、もしかしたら…)」
だが、今の彼女は体調不良と悪霊たちにより弱気になってしまっていた。
幾ら能力によって踏みとどまっているとは言え、その影響を完全に遮断出来る訳ではない。
快感と共に染みこんでくるような暗い思考は彼女の心を緩やかに侵食していく。
胸中に浮かぶ不安と疑心は時間が経つ毎に大きくなり、霞の心を揺さぶっていった。
霞「(…辛い…寂しいわ…)」
無論、胸中に不安と疑心が染みこんでくる原因を、霞は良く知っている。
幾ら自己管理を徹底していても、これまで彼女は何度か体調を崩していたのだから。
こうして心が悪い方向に傾いていくのも、悪霊や体調不良の仕業。
だが、そう分かっていても、その心の中は変わらない。
普段の気丈さが嘘のようにして、自分が弱くなっていくのを霞は感じる。
霞「(せめて…誰か来てくれたら…)」
食事や水分補給はなくても良い。
ただ、話し相手にさえなってくれれば、自分は立ち直る事が出来る。
霞はそう思うものの、しかし、彼女の周りにいる悪霊達がそれを許さない。
初美達が霞の部屋へと踏み込める時間はたった数分。
しかも、一回踏み込んだ後に、数時間の禊が必要となれば、時間の無駄遣いなど出来ない
霞「(…誰か…)」
霞「(誰か助け…て…)」
そんな事は霞も良く分かっている。
しかし、彼女の心はこの数時間の間にかなり追い込まれてしまっていた。
無理だと、あり得ないと分かっていても、助けを求める声は止まらない。
人恋しい気持ちはどうしても胸の内から溢れてしまって ――
カタン ススス
霞「…ぁ」
瞬間、そんな霞に応えるようにして部屋の襖が動き出す。
それによって微かに鳴る音に、霞は思わず声を漏らしてしまう。
熱っぽい吐息混じりのそれは、期待の色に満ちていた。
きっと初美か誰かが来てくれたのだろう。
これで少しは楽になれる。
そんな言葉を思い浮かべた胸中から、まるで波が引くようにして不安と疑念、そして人恋しさが薄れていった。
京子「…霞さん、大丈夫ですか?」
霞「ぇ…?」
だが、そんな霞に話しかけてきたのは初美でも、巴でも、春でも、湧でも、明星でもなかった。
巫女装束に身を包み、メイクをしっかりと決めた京子だったのである。
勿論、霞はここで京子がやって来るなど霞はまったく予想していない。
巫覡としての京子の才能は飛び抜けているが、あくまでもそれだけなのだから。
未だその才能は磨かれきってはいない彼が、この場にいたところで危険しかない。
京子「(…何か物が浮きまくってるし、バチバチってラップ音が聞こえるし…)」
京子「(まるで異世界に踏み込んだような状況だけでもSAN値が削られそうだってのに…)」
事実、京子の額には既に脂汗が浮かんでいた。
扉を開けた瞬間から本能が危険を訴えるその場所は、踏み込んだ瞬間から精神力が削れていく。
こうして立っているだけでも悪霊が纏わりつき、怨嗟の声を囁いてくるのだから。
どれだけ拒んでも後から後から大挙して押し寄せるそれに、京子は自分が状況を甘く見ていた事を悟る。
常人であれば瞬時に正気を失うほどの怨嗟と狂気の渦に、京子は完全に気圧されていた。
京子「(…でも、こんな状況で霞さんは一人で耐えているんだ)」
京子「(それなのに、助けに来た俺がさっさと逃げ帰る訳にはいかない)」
京子「(せめて、俺の考えていた方法が有効なのかどうかだけでも確かめないと…!)」
しかし、だからと言って、京子の中に逃げ帰ると言う選択肢はなかった。
勿論、その胸中には臆病風に吹かれてしまった自分と言うのはいる。
だが、霞の部屋が過酷な環境になっているというのは事前に初美から聞いていたのだ。
予想以上ではあるが、それは決して想定から外れるほどではない。
少なくとも、霞の為に頑張ろうとする京子の覚悟が揺らいだりはしなかった。
霞「な…んで…」
京子「霞さんが大変だと聞いて、看病しに来ました」ニコ
霞「看病って…」
無論、霞とてその気持ちは嬉しい。
ついさっきまで彼女が寂しさに初美達の事を求めていたのは事実なのだから。
こうして京子の顔を見て、安心した自分と言うのは間違いなく心の中にいた。
しかし、だからと言ってそれに身を委ねられないのは、京子がまだまだ未熟だからである。
霞「(初美ちゃん達でさえ十分も保たないのに…)」
京子の才覚は六女仙である霞達でさえ超える。
ともすれば小蒔にさえ届きそうなそれは、しかし、まだ完全に磨かれきってはいないのだ。
そんな京子が悪霊達の坩堝となった部屋に踏み込んで、何分耐えられるかは未知数。
実際、その額に脂汗が浮かんでいるところを見て、心から安心する事など出来るはずがなかった。
霞「私は…大丈夫…よ」
京子「そんな顔して言われても説得力ないですよ」
だからこそ、強がる霞に、京子はそっと頭を振った。
さっき霞が一瞬、顔に浮かべた期待と歓喜の色を、京子は見逃さなかったのだから。
普段、頼りがいのある姉として皆を纏める彼女のらしくないその表情に、大丈夫など思えない。
心身ともに弱ってしまっているのが一目で分かる彼女の強がりを聞き入れてやれるはずがなかった。
京子「まぁ、私を帰らせたいって言うのであれば…」
霞「っ!京子ちゃん!」
瞬間、霞が声をあげるのは、その後ろでゆっくりと机が持ち上がったからだ。
ふわりと空中に浮き上がるそれは勿論、悪霊たちの手によるもの。
自分たちのテリトリーに入り込んできた異物を、彼らは物理的に排除しようとしている。
普段ならそんな悪霊たちをコントロール出来る霞も、今はただの傍観者。
京子の死角から飛びかかるような大型の机に、ただ振り絞るような声をあげるしかなくて。
京子「破ァ!!」
霞「…………え?」
―― そんな霞の目の前で、京子の拳が机を叩き割った。
この屋敷に置いてある全ての調度品は、古いものの、かなりの金額を掛けている。
霞の部屋にあるその机も、大量生産された安物ではなく、職人が一つ一つ手を掛けて作った特注品だった。
長年、使えるようにと丹精込めて作られたそれは、少なくとも普通の人間が拳で割れるものではない。
それを良く理解する霞は呆然とした表情を浮かべてしまう。
霞「(しかも…私、楽になってる…)」
振り返りざまに京子が放った拳は、机を叩き割る瞬間、強い光を放った。
退魔の力を込めたそれは、机を持ち上げていたものだけでなく、この部屋全体の悪霊を怯ませている。
それは勿論、その力の源が、京子自身ではなく、その身に降りた神のモノだからだ。
日本神話において最悪と言っても良い怪物を倒したその神にとって、並の悪霊など問題ではない。
無論、京子は巫覡としてまだまだ未熟であるが故に、その力を完全に発揮出来はしないが ――
京子「まったく。随分とせっかちですね」
京子「そんなにがっついては女性に幻滅されてしまいますよ」
それでも、神を降ろすその身体に傷一つつける事が出来ない。
精神的なものはさておき、その身体は神の力に護られているのだから。
元々、並桁外れている身体能力を、その身に降ろした神の力で強化した今の京子にとって、大型の机と言えども皿同然。
机を割ったその拳が微かに痛むが、被害と言える被害はそれだけだった。
霞「…まったく、もう」フゥ
そんな京子に霞がため息を漏らすのは、胸中が無力感と驚きから一転し、安堵へと傾きつつあるからだ。
無論、彼女も京子の強靭さや巫覡としての才能を高く評価している。
しかし、死角から襲いかかる大型の机を割って見せるなど想像してはいない。
その身体に傷一つなかった事に安心したものの、悪霊を抑える事なく前へと進むその不用意さに呆れの色が声に浮かんでしまう。
京子「すみません」ペコリ
勿論、それは霞が自身の事を心配しているからなのだと京子は分かっている。
だからこそ、素直に頭を下げる京子には、愚直に前進する以外の選択肢がなかった。
今の京子はその身に宿した神の力を、まだまだ使いこなせてはいないのだから。
自身が触れた部分からその力を注ぎ込む事は出来ても、離れた部分にその力を飛ばす事は出来ない。
春達に教えてもらった付け焼き刃のお祓いではまったく目に見えているだけに、京子は不用意でも前に進むしかなかったのだ。
京子「まぁ、でも、これで少しは分かって貰えたと思います」
京子「私だって多少は霞さんのお手伝いは出来るんだって事」
霞「それは…分かったけれど…」
さっきの一撃は初美達のものよりも強烈なものだった。
その距離が近かった分、一気に雪崩れ込んだ退魔の力は机に取り付いていた悪霊の一部を祓っている。
それに今まで好き勝手やっていた悪霊たちが怯えている事を考えれば、京子がいてくれているだけでも有り難い。
事実、今の彼女は悪霊達によって苦しめられていた分が軽くなり、言葉もスムーズに出てくるようになったのだから。
霞「…それでもやっぱりダメよ」
霞「京子ちゃんは帰るべきだわ…」
しかし、そんな京子に霞はどうしても頼る事が出来ない。
それは彼女が京子に対して、強い負い目を抱いているからだ。
京子の人生を狂わせたのは神代家ではあるが、その尖兵となったのは石戸家。
自らの祖母がどれだけ京子の事を傷つけたかを思えば、京子をこのような場所に置いておきたくはない。
京子「…仕方ありません。では、私とじゃんけんしましょう」
霞「…じゃんけん?」
京子「えぇ。霞さんが勝ったら、私は大人しく部屋に戻ります」
京子「ですが、私が勝ったら、限界までこの部屋にいる…と言うルールで」
霞「(…一体、何を考えているの…?)」
そんな京子からの提案を、霞は内心、訝しんだ。
京子の頑固さは霞も良く理解しているのだから。
何時もの京子であるならば、そのように運を天に任せるような真似はしないだろう。
そもそも、幾らか楽になったとは言え、今の霞はまだまだ起き上がる事も出来ないのだ。
もし、京子が居直ってしまった場合、追い出す手段は彼女にはない。
霞「…分かったわ」
京子「ありがとうございます」
にも関わらず、こうして勝負を挑んできた時点で、間違いなく京子は何かを企んでいる。
それを理解しながらも霞がその勝負に乗ったのは八方塞がりだったからだ。
フェアな京子はきっと勝負の結果を蔑ろにしたりはしない。
ここで勝てば、約束を護って部屋に戻ってくれるだろう。
現状、それ以外に京子を部屋へ戻らせる方法が思いつかない彼女にとって、それは受けるしか無いものだった。
霞「(…それに例え何を企んでいても…)」
それはきっと自分にとって悪いものではない。
霞がそう思うのは、今までの京子に、自分たちに対する悪意がまったくなかったからである。
屋敷に来て混乱していた当初でさえ、京子は怒りを自分たちへとぶつけたりしなかった。
小蒔の為にその身を差し出そうとした霞にさえ、京子は手を出さなかったのだから。
それからもずっと自分たちの事を支えてくれた京子の事を霞は心から信用している。
だからこそ、霞はモゾモゾと布団の中から腕を出して ――
京子「では、最初はぐー」
京子「じゃんけん」グー
霞「…」チョキ
そんな霞と京子の勝負は、あっさりと一回目でついた。
それは勿論、京子が霞の出す手を内心、予想していたからである。
彼女は体調を崩していても、とても聡明な少女だ。
京子がこうして勝負を挑んできた以上、京子に勝算がある事を感じ取っていたのである。
京子「(…で、その理由を霞さんは自分の体調不良に求めた)」
京子「(体調が悪い今の自分は、難しいチョキではなく、グーやパーの方を出してしまいやすい)」
京子「(そう予想されているのだと彼女は思っていたんだろう)」
じゃんけんは三すくみのルールだ。
グーとパーを出しやすい相手ならば、パーを出せば負ける確率はかなり低くなる。
だからこそ、パーを出すであろうと考えた霞の思考を、京子は完全に読んでいた。
彼女の聡明さを良く理解する京子は、その裏を掻いてグーを出し、見事、勝利して見せたのである。
京子「ふふ。私の勝ちですね」
霞「…えぇ。見事に負けてしまったわ」
無論、普段の霞であれば、そのように完敗する事はなかった。
京子が自分の思考を読んでいる可能性にだって、気づいていただろう。
だが、今の彼女は高度な心理戦が出来るような状態ではないのだ。
自身を良く知る上に、万全な体調である京子を相手にし、勝てるはずなどない。
霞「…でも、お願いだから…無茶はしないで…ね」
霞「ここで京子ちゃんまで…倒れたら…私…皆に顔向け…出来ないわ…」
そんな京子に敗北してしまった事を認めても、霞はその言葉を止める事が出来なかった。
京子が自分と同じか、それ以上に無茶しがちなタイプである事を彼女は良く知っているのだから。
きっと限界ギリギリまで部屋に居続けようとする京子の事を思えば、どうしてもそんな言葉が口から出てしまう。
京子がいてくれると言う安心感は大きいが、それ以上に、京子まで倒れてしまったらどうしようという不安を霞は感じていたのだ。
京子「大丈夫ですよ」
京子「私は無茶なんてしません」
京子「する必要すらないんですから」
―― 豪ッ
瞬間、部屋の中に、強い風が吹き荒れた。
まるで嵐のように荒々しいそれは、しかし、ただ強いだけではない。
青空の高原を通り抜けるような、強くも清々しい風。
それに霞の肌に張り付いていた悪霊たちはゆっくりと剥がれていく。
霞「(これって…もしかして…!?)」
そうして霞から引き離されていく悪霊たちは、京子の身体に集まっていく。
まるで海に浮かぶ大渦のように、今の京子は周囲の悪霊を引きずり込んでいった。
その身体に無数の悪霊を取り込むようなその姿を、霞は一度も見た事がない。
しかし、それが一体、何を意味するのかくらい、今の彼女にも予想がついた。
霞「…京子…ちゃん…貴方、私の…」
京子「はい。霞さんの能力、頂きました」ニコ
霞「っ!」
今も尚、悪霊をその身体に取り込んでいく京子。
その力が一体、何処から来ているのか、考えるまでもない。
今代の『制するもの』である京子は、自身が下した相手から能力を模倣する事が出来る。
それは、例えじゃんけんのような軽い勝負であっても例外ではない。
相手に負けたのだとそう認識させた途端に発動するその能力は、そして今、霞の能力をコピーしている。
そして京子はそれを使って、彼女の代わりに悪霊を制御しようとしているのだ。
霞「(迂闊だった…!)」
それに自身の迂闊さを呪うのは、何も霞が京子の事を嫌っているからではない。
そうやって能力を取り込み、京子が成長する事そのものは喜ばしく思っている。
だが、霞の能力はメリットよりも、デメリットの方が遥かに大きいものなのだ。
それを負い目のある京子がコピーしたと思えば、喜べるはずがない。
寧ろ、何も考えず、あっさりと京子との勝負に乗ってしまった自分に対して自己嫌悪を感じていた。
京子「…ふぅ」
そんな霞の前で京子は全ての悪霊を取り込みきった。
瞬間、その口からため息が漏れるのは、その制御が思いの外、大変だからである。
勿論、それは霞からコピーした能力を、今、初めて使ったと言うのも大きい。
だが、それ以上に京子を手こずらせていたのは、その内側に取り込んだ悪霊たちが未だ暴れ続けているからだ。
―― まだまだ暴れたりねぇ…!もっとぶっ壊してぇええ!!
―― 霞たんのおっぱい、もっとペロペロしたかったおおおおお!!
―― 眠い…だるい…しんどい…
―― おなかへったおなかへったおなかへったおなかへったおなかへった
―― ちくわ大明神
京子「(おいなんだ最後の)」
破壊衝動や三大欲求、そしてちくわ大明神。
それらを無理矢理、増幅させたような悪霊たちの声は京子の中で止まる事はなかった。
まるで腹の底で怨嗟が渦巻くようなそれは到底、心地良いものではない。
寧ろ、微かな吐き気を覚えるくらいに気持ちの悪いものだった。
京子「(まぁ、最後のはともかく…気を抜いたらあっさりと身体を持って行かれそうだな)」
勿論、京子とて霞の全ての能力をコピー出来ている訳ではない。
その他コピーしたものと同じく、京子が再現するのは劣化品。
しかも、京子は霞ほどその能力を使いこなしている訳ではないのだ。
ほんの少しでも気を抜けば、自身の内側で暴れる悪霊たちに、身体を乗っ取られてしまいかねない。
それに背筋が冷たくなるのを感じながらも、京子は能力を使うのを止めたりしなかった。
京子「(霞さん、ずっとこんな状態だったのかよ…)」
霞は京子よりもその能力を使いこなし、また悪霊に対する耐性も高い。
長年、従えている悪霊たちの中には、霞に対して好意的なものも少なくはなかった。
しかし、だからと言って、その能力が霞の負担になっていなかった訳ではない。
京子のように気を抜いた瞬間、乗っ取られるような事はないが、それでもなんとも言えない気分の悪さが消える事はなかった。
霞「…京子ちゃん」
だが、今の霞にはそれはない。
小蒔の天児になってから今までずっと途切れる事のなかったそれが、今、完全になくなっていた。
それは勿論、彼女の周りにいた悪霊たちが、今、全て京子の中に取り込まれてしまったからこそ。
ずっと自分を縛りつけていた天児と言う鎖が、京子によって断ち切られてしまったのである。
霞「(でも、それは、私の代わりに京子ちゃんが苦しむって言う事で…)」
勿論、そうやって自分の事を助けてくれたのは嬉しい。
長年、自分を押さえつけていた鎖から解き放たれた解放感は、彼女が想像していたよりもずっと大きいものだった。
まるで日も差さぬ狭くて辛い穴蔵から、暖かな青空の下へと踏み出したようなその感覚に、霞は心の底から浸る事が出来ない。
ずっとその能力と共にあった彼女は、悪霊たちを引き入れると言う事がどれだけ辛いものなのか良く分かっているのだから。
幼い頃からゆっくりと慣れていった自分でも負担なのに、その能力にも感覚にも不慣れな京子がどれだけ苦しむ事になるのか。
そう思っただけで霞の胸中に張り裂けそうな痛みが響く。
京子「これでもう大丈夫ですよ」
京子「私が全て引き受けましたから」ニコリ
霞「っ」
しかし、京子はその辛さをおくびにも出さない。
まるでこの程度、なんともないのだと言うように霞に向かって微笑んだ。
優しく暖かなそれは、霞の知る京子の笑みとまったく変わらない。
しかし、だからこそ、京子が無理をしている事を感じ取った霞は、思わず息を呑んでしまう。
霞「…馬鹿な…馬鹿な事をして…」
霞「そんな事をしなくても、私は…」ポロ
大丈夫。
その言葉が出るよりも先に、霞の目尻に熱いものが浮かんだ。
まるで決壊したかのように、そのまま目尻から溢れるそれを彼女は止める事が出来ない。
そもそも霞は自分がどうして涙を流しているのかさえ分かっていないのだから。
安堵と解放感、そして自己嫌悪と申し訳無さ。
それらが複雑に入り混じった胸の内を、彼女は整理出来なかった。
京子「すみません。お節介でしたよね」
京子「でも、私はどうしても霞さんの力になりたかったんです」スッ
霞「ぅ…」
そんな霞に京子はゆっくりと近づいていく。
寝ている霞を刺激しまいとするその歩みは、霞のすぐ側で止まった。
そのまま霞の目尻を拭う手は、とても優しい。
幾重にも折り重なり、荒れた胸中まで慰撫するようなそれに霞は小さな声を漏らしてしまう。
京子「だから、これは私の我儘であり、霞さんが気に病んだりする事はありません」
霞「…で、も…っ」
京子「それでも、悪いと思うのであれば私に甘えてください」ナデナデ
京子「今まで辛かった分、思いっきり頼ってほしいんです」
霞「あ…」
それでも、京子の優しさを受け入れられない霞に京子はそっと手を伸ばした。
そのまま頭を撫でるその手に、彼女は言葉を失ってしまう。
それはさっき目尻を拭っていた手とは違い、ただ優しいだけではない。
それよりももっと大きくて、暖かいものを彼女は感じていた。
霞「(…まるでお母さん…みたい…)」
それは母性。
自身を受け入れ、包み込もうとするそれに、霞は実母の事を思い出した。
勿論、幼い頃から天児としての役目を背負わされ、小蒔と一緒に過ごしてきた彼女に、実母との思い出は数えるほどしかない。
しかし、それでも、まるで自分の全てを護ってくれているような安堵感は記憶の中に残っている。
霞「(…嫌だわ、これじゃ、私…)」グス
半ば忘れかけていた思い出を彷彿とさせるその手に、霞の胸中が大きく揺らぐ。
京子に対する申し訳無さや自己嫌悪が薄れ、代わりに安堵の色が強くなっていた。
まるで母親のように自分を包み込んでくれる京子であればきっと大丈夫。
今まで自分が背負ってきた重荷を預けてしまっても良いのだとそんな言葉が彼女の中で大きくなっていく。
京子「…大丈夫ですよ。私はちゃんと分かっていますから」
京子「霞さんが、これまでずっと頑張ってきた事も、辛かった事も」
京子「だから…甘えて良いんです」
京子「六女仙や天児なんて関係ない…普通の女の子に戻っても良いんですよ」
霞「…っ」
そんな自分に何とか抵抗しようとしている霞に、京子は甘い言葉を囁く。
常に六女仙の長として周囲を導いてきた自負すら蕩けさせるそれに、彼女はもう耐えられなかった。
まるで悪魔のようにして自身を堕落させる京子の言葉を、心が受け入れてしまう。
それに抵抗を覚える彼女は、もういない。
今まで霞を支えてきた意地や矜持は、全て折れてしまったのだ。
霞「京子…ちゃん」ギュゥ
京子「はい。私はここにいますよ」
自然、霞の手は京子の服を掴んでしまう。
自分に甘えて良いのだと、一人の女の子に戻っても良いのだと、そう伝えてくれた京子の事を確かめるように。
本当に甘えても良いのか、幻滅したりしないのか、と怯えるように。
そして何より、行かないで欲しい、側にいて欲しいと縋るように。
京子「今まで良く頑張りましたね」ナデナデ
霞「うあ…あ…あぁぁ…」ポロポロ
―― 瞬間、霞の中で張り詰めていた糸が千切れた。
縋すような自身の手を拒むどころか、安心させるようにして自身の手を重ねてくれる京子。
その上、頭を優しく撫で、今まで頑張ってきた自分を労ってくれるのだから。
ついさっきまで霞は生き地獄と言っても過言ではない環境で、一人耐えるしかなかった霞がそれに耐えられるはずがない。
気丈であったその心はもう弱りきり、京子の前で声をあげて泣いてしまう。
京子「今は思いっきり泣いてください」
京子「ここには今、私と霞さんしかいませんから」
京子「私が幾らでもその涙を拭ってあげます」
霞「う…ひぐっ…」
霞にとって、そんな風に自分を受け入れてくれる相手などいなかった。
その半生を小蒔の天児として過ごしてきた彼女に気を抜く余裕などなかったのである。
結果、幼馴染である初美達にさえ甘えられなくなった霞は、今、子どものように泣きじゃくっていた。
今までの分を取り戻すようなそれを、しかし、京子は決して止めたりはしない。
寧ろ、その背中を押すようにして優しく、その顔を拭い続ける。
京子「…」ナデナデ
霞「ん……」
まるで今までの分を取り戻すようなその涙も、しかし、永遠に流れ続ける訳ではない。
十分を過ぎた頃にはその勢いも弱まり、二十分も経った頃には殆ど落ち着いていた。
だが、それでも霞は京子に重ねてもらった手を離したりはしない。
その涙が収まっても尚、縋るようにしてその手に力を込めている。
霞「(…あぁ、もう…恥ずかしくて死んじゃいそう…)」
しかし、だからと言って、その胸中に浮かぶ羞恥心がなくなる訳ではない。
涙となって溢れるほどの激情がなくなった今、彼女の中で羞恥心がじわじわと広がっていく。
それは勿論、子どものように泣きじゃくった自分を、霞が強く恥じているからだ。
高校も卒業してもうすぐ一年が経つとは思えないその醜態に、霞の頬が赤く染まっていく。
霞「(…でも)」チラッ
京子「…どうしました?」
元々、霞は京子の事を信用していた。
最早、家族と言っても良いほどに馴染んでいる京子が、自分たちを傷つけたりする事はないのだとそう思っている。
そして、それは京子の前で泣きじゃくっていた最中、信頼に変わっていったのだ。
ただ、信じるだけではなく、頼る気持ちが生まれた彼女にとって、京子の前は母親の膝下同然。
そこにいる限り、自分は絶対に大丈夫なのだと、そんな言葉さえ霞の中には浮かんでいた。
霞「…京子ちゃんってホント、卑怯よね」
京子「え?」
霞「だって…こんなの絶対に耐えられるはずないじゃない…」
とは言え、その母親に対する不満がない訳ではない。
京子が霞に行ったそれは、不意打ちに近いものだったのだから。
これまで自分を支えてきたものを全て台無しにするその優しさに、卑怯だと言う気持ちはどうしても否めない。
無論、京子のやった事は最善だと分かっているが、それでも拗ねるような気持ちは捨てきれなかった。
京子「霞さんが悪いんですよ」
京子「前々から頼って欲しいって言っているのに、全然、頼ってくれないんですから」
京子「そんな霞さんに頼って貰おうと思ったら、ちょっと卑怯な手段だって使わなきゃいけないじゃないですか」
霞「…開き直るつもりかしら?」
京子「悪い事をしたとは思ってませんから」
霞「…もう」
しかし、そんな霞の言葉を京子はあっさりとスルーする。
勿論、それが本気であれば、京子だって真っ先に謝罪しただろう。
だが、霞の声に浮かんでいたのは、拗ねるようなものであって、責めるようなものではないのだ。
自分の中で収まる気配のない気恥ずかしさを誤魔化す為のそれに、遠慮してやる義理はない。
霞だって悪いのだとそう本音を告げながら、ゆっくりと霞の頭を撫で続ける。
京子「それとも…嫌でしたか?」
霞「…嫌じゃないって分かってて言っているんでしょう?」
京子「えぇ。それくらい顔を見れば分かりますから」ニッコリ
そうやって京子に頭を撫でられる霞は、とても心地よさそうな顔を見せていた。
少し閉じた瞼から、トロンとした目を晒す今の霞は子猫そのもの。
今にも眠気に負けてしまいそうなその姿を見て、嫌われていると思うはずがない。
若干、強引なやり方ではあったものの、霞は自分を受け入れてくれている。
その重荷を預けても良い相手だとそう認識してくれている事が、その顔から伝わってきていた。
京子「(…ぶっちゃけ可愛すぎてヤバイ)」
京子にとって石戸霞と言う少女は、ただ年上のお姉さんというだけではない。
その穏やかな物腰からスタイル、そして家事スキルにおいて、自分の理想そのままと言っても良い相手なのだ。
そんな霞が自分の前でこんなにも蕩けきった表情を見せているというシチュエーションに、どうしても興奮を禁じ得ない。
霞が体調不良でさえなければ、もしかしたら襲っていたかもしれない。
京子がそんな言葉さえ思い浮かべるほど、今の霞は色っぽく、そして魅力に溢れていた。
霞「…そんなに私、分かりやすい顔してるかしら…?」
京子「まぁ、初美さんに見られたら向こう一ヶ月はからかわれそうなくらいには」
霞「や、やだ…」モゾモゾ
京子の言葉に霞は空いた手で布団の襟を掴む。
そのままモゾモゾと布団をずりあげていく彼女の顔がゆっくりと隠れていった。
まるで京子から逃げようとするようなそれは、しかし、半分くらいで止まってしまう。
恥ずかしさから隠れようとしたものの、京子の事が完全に見えなくなるのは嫌なのだ。
その手も相変わらず京子の事を掴んでいる彼女が、完全の布団を被れるはずがない。
京子「ふふ。それで…どうします?」
霞「……どうするって?」
京子「いえ、こうして私は無事に能力を発動出来ている訳ですし…」
京子「私ではなく初美さん達に交代した方が良いかなって」
今なら初美達も無理をせずに、この部屋へと踏み込む事が出来る。
それを考えれば、自分がこの場に留まる理由はあまりない。
あまり霞を警戒させないようにと京子の格好でやってきたとは言え、自分は男なのだから。
体調を崩している女性の側に居続けるのは、あまり好ましいとは言えないだろう。
霞「…京子ちゃん」ムスー
京子「え?」
そう思う京子の前で霞は不機嫌そうな顔を見せる。
さっき拗ねたのとは違い、本気で不機嫌そうなその表情に京子は驚きを感じた。
自分は霞の事を気遣ったはずなのに、どうしてここまで不機嫌になっているのか。
それが分からない京子の前で、霞はジト目を向けて。
霞「…責任取ってくれないの?」
京子「せ、責任って…」
そのまま口にする彼女の言葉は本心からのものだった。
何せ、霞を京子によって自身を支えていたものをドロドロに溶かされてしまったのである。
今の霞は歳相応の ―― いや、それよりも若干、幼く甘えん坊な一人の女の子になっていた。
そんな彼女が京子の事を素直に見送れるはずがない。
ここでいなくなられる方が酷だとそんな気持ちを込めて、京子の事を見上げていた。
霞「わ…わ、私の事、甘えさせてくれるんでしょう…?」カァァ
京子「それは…そうですけど…」
霞「だったら…ちゃんと最後まで面倒見て頂戴…」
霞「ここで終わりだなんて…そっちの方が酷いわよ…」モジ
無論、そうやって甘えさせて欲しいと自分から訴えるのは恥ずかしい。
正直、今すぐにでも布団の中に潜り込みたいくらいだった。
しかし、ここで下手に言葉を濁せば、鈍感な京子が気づいてくれない可能性がある。
その結果、京子がいなくなってしまうかもしれない事を考えれば、羞恥心に負けてなどいられなかった。
京子「か、霞さん…」
霞「…ここで京子ちゃんがいなくなったら、私、一生、恨んじゃうから」ツン
自身の名前を呼ぶ京子に、霞はプイと顔を背けた。
普段の霞であれば絶対にしないであろうその仕草は、勿論、京子に甘えているからこそ。
京子であれば、こんな子どもっぽい仕草もきっと受け入れてくれる。
いや、ただ受け入れるだけではなく、甘えさせてくれるはずだと霞は心から信じていた。
京子「(…コレ、ホント、ヤバイ)」
そんな霞の前で京子が胸中で片言のような言葉を浮かばせるのは、それがあまりにも可愛すぎるからだ。
穏やかさの中に凛々しささえ感じさせる普段の霞は、大人の色香のようなものを漂わせている。
その印象も美少女と言うよりも美女に近く、可愛らしいと思うよりも綺麗や格好良いと思った回数の方が遥かに多い。
だが、こうして京子に甘えるような仕草を見せる今の霞は、普段の何倍にも可愛らしく思えるのだ。
それが自分に心を開いてくれているからだと思うと胸の奥から興奮と庇護欲が湧き上がってくる。
京子「(その上…一々、セリフがエロくて…)」
勿論、霞は意識して、そんな言葉を口にしている訳ではない。
そもそも、体調不良で思考も鈍っている今の彼女にそのような余裕などあるはずないのだから。
しかし、外見はともかく、京子は健全な男子高校生なのだ。
紅潮した頬を見せながら行かないでと責任取ってと言われる霞の姿に、どうしても性的なものを感じてしまう。
京子「(だ、だが、ここで興奮に流されちゃダメだ)」
京子「(こうして俺に甘えてくれるって事は、霞さんはそれだけ辛い状態なんだから)」
京子「(興奮とか性欲とかそういうものを出してしまったら、きっと霞さんだって素直に甘えられない)」
京子「(それが分かっているからこそ、俺は京子の姿で霞さんの部屋に来たんだろ)」
こうして須賀京子の姿で部屋に踏み入れたのは、霞に必要以上の警戒をさせない為。
だが、それ以上に大きいのは、自分の感情を正確にコントロールする事であった。
普段から身に着けている『京子』と言う仮面であれば、熱に浮かされる霞を見ても、欲情を覚えたりしない。
いや、覚えていても、それを表に出す確率と言うのはグッと下がるはずだろう。
そう思ったからこそ、京子は化粧を落とさず、そのまま初美達に清めてもらった巫女服を身につけたのだ。
京子「…霞さんに恨まれるのは嫌ですね」
霞「だったら…」ギュゥ
京子「えぇ。霞さんの面倒は私がきっちり見させて頂きます」
そんな京子にとって霞を拒むという選択肢はなかった。
無論、ギャップすら感じるほど何時もと違う霞の姿に、最後まで我慢しきれる自信はない。
しかし、だからと言って、ここで霞を突き放せば、きっと彼女は二度と自分に甘えられなくなってしまう。
体調不良が治った後も霞に頼ってもらう為には、ここで完璧に彼女の世話をするしかない。
霞「(……良かった)」
勿論、霞とて京子がここで自分を見捨てられるはずがない事くらい分かっている。
京子は人並み以上のお人好しであり、また彼女達は家族同然に過ごしているのだから。
しかし、それでも内心の不安が消えきらなかったのは、霞が京子に対して依存し始めているからだ。
普段は家族にさえ気丈な姿を見せているとは言え、霞も一人の女の子。
体調不良や悪霊によって、あまりにも弱り過ぎたその心は、そこから救ってくれた英雄の事を求めていた。
霞「(それに…こんな私、他の誰かに見せられないし…)」
霞自身、今の自分が何時もとあまりにも違いすぎる事くらい理解しているのだ。
だが、幾らそれを理解していても、彼女は中々、普段通りの姿に戻る事が出来なかった。
霞は今日一日だけではなく、その半生が過ぎるまでずっと一人で耐えてきたのだから。
その重荷を預けられる相手を得た今、彼女の心は沈むように依存へと堕ちていく。
京子「それじゃあまずタオルの方から失礼しますね」
霞「ん…」
その上、霞の世話をする京子の手はとても丁寧なものだった。
霞の額に載せられ、もう既に微温くなってしまったタオルも、優しく剥がしていく。
まるで自分が宝物であるかのように気遣うその手つきは、彼女の心をさらに弱らせた。
もっともっと京子に甘えてしまいたい。
心の底から子どもに戻って、京子に甘やかされてしまいたい。
今まで一人で耐えてきた反動のようなそれらを霞はもう止められなかった。
京子「よいしょっと…」ギュゥゥ
霞「…京子ちゃん、寂しい」
京子「え?」
霞「…ナデナデしてくれなきゃ寂しい…」
無論、霞も今の京子が手を離せないと言う事くらい知っている。
布団横の水桶でタオルを濡らし、その水気を絞り出しているのが自分の為だと理解していた。
だが、幾ら分かっていたところで、彼女の寂しさはなくならない。
さっきまで自分を撫でてくれていた京子の手がなくなった事に、霞は強い寂しさを覚えていた。
京子「もう。霞さんったら甘えん坊さんなんですから」
京子「でも、もうちょっとだけ待ってくださいね」
京子「すぐまたナデナデしてあげますから」
そんな霞の要望に京子も応えたい。
だが、その為に適当な仕事をしてしまえば、後で霞が困ってしまうのだ。
まるで呟くような霞の声に心惹かれるが、今はまずタオルの事が先決。
そう思う京子は思いっきり腕に力を込めて、水気を一気に絞り出した。
霞「ん…待ってるぅ…」
その外見からは考えられないほど力を込めた京子の横で、霞は素直に納得の言葉を返す。
自身の我儘に応え、京子が急ごうとしてくれているのは水桶へと堕ちる水の量からもはっきりと分かるのだから。
これ以上、我儘を言っても京子を困らせるだけなのだから、大人しく待っておいた方が良い。
そう自分に言い聞かせながらも、霞の中で京子に甘えたいという気持ちはなくならなかった。
寧ろ、こうして京子に焦らされれば焦らされるほど、その気持ちは燃え上がるようにして強くなっていく。
京子「(これもう反則レベルだろ…)」
結果、その声も舌足らずなものになった霞は、京子にとってあまりにも魅力的だった。
自分の一挙一動にジィと瞳を動かすその姿は、母親の側で昼寝をする幼子を彷彿とさせる。
何を言わずともまだかな?まだかな?と自身の愛撫を心待ちにしている事が伝わってくるほどだった。
自分よりも年上で、たまに母性すら感じさせる霞が、それほどまでに自分を求めてくれている。
男冥利に尽きると言っても良いその状況に、京子は庇護欲とオスの欲情を覚えた。
京子「はい。お待たせしました」
霞「ん…頑張って待ったぁ…」
それを極力、外へと出さないようにしながら、京子の手はそっとタオルを霞の額へと載せた。
瞬間、霞の口から漏れるのは待ちきれなさで一杯になった声。
勿論、京子が仕事を早めようとしてくれていた事くらい霞にだって分かっているが、それはそれ。
一分にも満たない別離の時間に積もり積もった寂しさはあまりにも大きいものだった。
霞「だから、褒めてくれる…?」
京子「えぇ。霞さんは良い子ですから沢山、褒めてあげますよ」ナデナデ
霞「ぁ…♪」
だからこそ、遠回しに褒めてと強請る霞に、京子の手は優しく応える。
彼女の頭を再び撫でるその手つきは、さっきと殆ど変わらない。
だが、そこに込められている京子の感情は違う。
霞を安心させようとするさっきとは違い、今の京子は我慢した彼女を心から褒めようとしている。
それを感じ取った霞はその口から心地よさそうな声を漏らし、その目をさらに蕩けさせていった。
霞「…京子ちゃんの手は…まるで魔法の手ね」
京子「あら…どうしてですか?」
霞「だって、こうしてナデナデされるだけで…色んな事が分かるんだもの…」
その手つきは変わらないはずなのに、気持ちの変化には気づく事が出来る。
勿論、それは京子の特殊性と言うよりも、霞の優秀さの方が大きい。
こうして体調を崩していても尚、京子の僅かな変化に彼女は気づいていたのだから。
霞「京子ちゃんが私の事、沢山、想ってくれている事も…」
霞「私の事をドロドロになるまで甘やかしちゃおうってしている事も全部…分かっちゃう…」
しかし、今の霞にとって、それは些細な事だった。
今、京子に対して依存し始めている彼女にとって、大事なのは自分よりも京子の方。
自身の優秀さよりも、それほどまでに京子が自分を想ってくれている事の方が大きい。
だからこそ、彼女が漏らす声は、京子への賞賛とそして歓喜に満ちていた。
まるで京子が自分の事を想ってくれいるのが嬉しくてたまらないというようなそれに霞は笑みを浮かべて。
霞「…ねぇ、京子ちゃん」
京子「何でしょう?」
霞「…私ね、自覚なかったけれど…でも、多分、とっても重いと思うの」
瞬間、霞が漏らす独白のような言葉は、理性がNOと突きつけたからだ。
加速度的に京子へと依存していく自分に、彼女の脳が危機感を覚え始めている。
このままでは、元の自分に戻れなくなってしまうのではないか。
もう京子なしでは生きていけないようなだらしない女になってしまうのではないか。
霞の胸中にそんな言葉が思い浮かぶほど、ここは大きなターニングポイントだった。
霞「……このまま京子ちゃんに優しくされたら…私、きっとダメになっちゃうわ」
霞「京子ちゃんに甘やかして貰わないと、きっと何も出来ないような子になっちゃう…」
霞「だから…」グッ
引き返すなら今、しかない。
その言葉は霞にとって身を裂くほどに辛いものだった。
既に霞は理性が危機を覚えるほどに京子に対して依存しているのだから。
自身が頼る事が出来る唯一無二の相手を自分から遠ざけるなど、本来ならばしたくはなかった。
霞「(…でも)」
しかし、霞にとってそれ以上に大きいのは、未来に対する不安だった。
このまま京子に依存していった先で、自分がどうなるかはおおよそ検討がつく。
だが、そんな自分に対して京子がどう思うかまでは、流石の霞も分からないのだ。
京子の事だから見捨てたりはしないと思うが、出来ればその負担にはなりたくない。
そう思う霞にとって、ここは自分の中で線引が出来る最後の場所だった。
京子「…だから、もっと甘やかして、ダメにして欲しいって事ですね」ニッコリ
霞「き、京子ちゃん…」
そんな霞の言葉に、京子は優しい笑みを返す。
それは勿論、京子にとって、それは最初から想定済みのものだったからだ。
元から京子は霞が一人で何もかもを抱えている事に心痛めていたのである。
小蒔のため、一人でずっと耐え続けてきた彼女が少しでも心安らげるのであれば、幾らダメになられても良いと京子は思う。
京子「大丈夫ですよ。こんな格好をしていても、私は一応、男ですから」
京子「霞さんをダメにしてしまった責任はしっかりと取ります」
霞「っ♥」キュン
例え、それが一生、続いたとしても自分は構わない。
そんな覚悟さえ込められた言葉に、霞の胸は甘く疼いた。
まるで胸の奥を締め付けられるようなそれは彼女から一瞬、言葉を奪う。
霞の一生を引き受けるようなその言葉は、彼女にとってそれほどまでに嬉しいものだった。
霞「…まるでプロポーズみたい…ね」
京子「あ…いえ、流石にそこまでは…」
それでも霞が口にした言葉には、隠し切れない喜悦の色が浮かんでいる。
それは勿論、彼女にはもう遠慮する必要も、理由もまったくないからだ。
京子が今だけでなく未来まで ―― 間違いなく重い女になってしまうであろう自分を受け入れてくれた今、思う存分、甘える事が出来る。
最早、その心が半ば依存に染まっている今の霞にとって、それは人生で一番と言っても良い喜びだった。
霞「これは…明星ちゃん達に言いつけないと…ダメかしら…」
京子「そ、それは許して下さい」
そんな霞とは裏腹に、京子の背筋は今、若干の寒気を覚えていた。
そのような意図がなかったとは言え、さっきの言葉はプロポーズと受け取られてもおかしくはないものだったのだから。
もし、それが春達の耳に入れば、ただ弄られるだけではすまない。
霞に対して心酔している明星辺りは、きっと自分の事を絶対に許さないだろう。
未だ彼女との関係に何処かギクシャクしたものが残る事を気に病んでいる京子にとって、それは絶対に阻止しなければいけない事だった。
霞「…何でもする?」
京子「何でもします」
霞「……じゃあ、このまま私が眠るまでずっと撫でて…いて…」
無論、霞とて本気で明星達に言いつけるつもりなどはない。
まるでプロポーズのようなさっきの言葉は、優しさに満たされた力強いものだったのだから。
自分の事を一生、面倒を見ても構わないのだと本気で思っているようなその気持ちを、霞は裏切りたくはない。
何より ―ー
霞「(あんまり人に言いたくないもの…)」
その言葉は霞にとって特別なものだった。
それは異性からプロポーズを受けたのが初めての経験だったから、と言うだけではない。
そもそも京子にはそのような意図がなかった事くらい彼女は分かっているのだから。
それでも彼女の中で特別感が色褪せないのは、それが霞に大きな喜びをくれたからこそ。
今まで生きてきた中で一番と言っても良いそれは、彼女にとって人に分け与えたくないくらい特別なものだった。
霞「多分…私、もうそろそろ眠っちゃう…から…」
それでも霞がそれを交換材料に使ったのは、自分の身体がもう限界だと言う事に気づいていたからだ。
悪霊や体調不良によって追い詰められていたのは、何も精神だけではない。
その体力もまた大きく削ぎ落とされていたのだ。
京子によって悪霊達が大人しくなったとは言え、削られた体力までは戻らない。
未だ体調不良の続く身体からは体力がこぼれ落ちていっているのもあって、そう遠くない内に自分は眠りに堕ちてしまう。
京子「そんな事、言われなくてもするつもりでしたよ」ナデナデ
そんな霞から手を離すつもりは京子にはなかった。
これまでの会話から、霞が自分の手を強く求めている事に気づいていたのだから。
その上、彼女の目に少なくない眠気が浮かんでいるともなれば、休憩する理由すらない。
せめて霞が眠りに堕ちるまではこのまま優しく撫で続けておいてあげよう。
霞「ん…でも…言いたかったの…」
勿論、京子にその意識を集中させている今の霞が、その優しさを感じ取れないはずがない。
それでもこうして強請るような言葉を口にしたのは、彼女の心が『甘える』事を望んでいたからだ。
『甘えさせられる』のではなく、自分から京子へと甘え、その上で応えて貰う喜びは、彼女の中でとても大きい。
京子に依存し、ダメになっていく事を引き換えにするようなその喜びは、霞にとってもう麻薬のようなものだった。
霞「私からお願いした事を…京子ちゃんに叶えて欲しかったから…」ニコ
京子「…霞さん」
霞は今まで、誰かにお願いした事など殆どなかった。
無論、0ではないが、その殆どは自分の為ではなく、小蒔を始めとする他の誰かの為。
だが、今の霞は100%自分の為だけに願い、そしてそれを叶えて貰っている。
まるで包み込むような安堵混じりのその喜びに、霞の顔に笑みが浮かんだ。
京子「じゃあ、他に何かお願いしたい事ないですか?」
京子「折角ですから、全部、叶えてしまいましょう」
京子「そうすれば、霞さんも安心して眠れるでしょうし」
それは普段の霞が浮かべる、穏やかに微笑むようなものとはまったく違う。
何処か幼ささえ感じさせるほどストレートに感情を表現した笑み。
一瞬、小蒔の姿さえ重なるようなその表情に、京子は一歩、霞に踏み込んだ。
それは勿論、霞の笑みが、ただ幼いだけではなく、とても暖かで、そして魅力的なものだったからこそ。
霞「…じゃあ、一つだけ…追加でお願いして…良いかしら?」
京子「えぇ。何でもどうぞ」
霞「霞って…呼んで」
京子「…え?」
そんな霞から帰ってきた言葉は、京子の予想を超えていた。
そもそも、彼女は今にも眠りに落ちてもおかしくはない状況なのだから。
京子が予想していたのも子守唄や膝枕と言った安眠へと導く為のもの。
まさかここで呼び名の変更を求められるなど、京子は想像すらしていなかった。
霞「ううん。霞だけじゃなくて…敬語も止めて欲しいわ…」
霞「同い年の…いえ、年下の女の子みたいに…扱ってくれると嬉しいかなって…」
京子「(…あぁ、なるほど)」
それでも、続く霞の言葉に京子はなんとなくその意図を感じ取る事が出来た。
これまで殆ど誰かに頼る事が出来なかった霞は京子に対して、母性を求めている。
勿論、今までだって霞は京子に全てを包み込むような温もりを感じていたが、それだけではもう満足出来ない。
その温もりを感じる度、理性の殻を剥がされていく彼女の心はより貪欲になっていった。
京子「…霞ちゃん」
霞「ふぁ…ぁ♪」ブル
だからこそ、京子から名前を呼ばれた瞬間、霞は蕩けきった声を漏らしてしまう。
落ち着いた声音の中、たっぷりと無償の愛を詰め込んだ短い言葉。
聞いているだけで心の中が安堵に堕ちていくようなそれは、霞が期待していた以上のものだった。
心地良いと言っても良いほど優しさと愛に満ちたその声に、喉だけではなく身体までもが震えてしまう。
京子「って…大丈夫?」
京子「もしかしてまた寒くなっちゃったのかしら…?」
京子「ほら、もっとお布団しっかり被らなきゃね」ポン
霞「ぅ…ん…♪」
それを寒気の所為だと受け取った京子は甲斐甲斐しく霞の世話をやいてみせる。
彼女を撫でる手はそのままに布団をかけ直すその手つきは勿論、暖かに満ちたもの。
触れらてもいないのに安堵を感じるその手に、霞は安堵の色を顔に浮かべる。
こうして京子が側にいてくれるのであれば、きっと大丈夫。
無償の愛に応えるようにして胸中から浮かび上がるその言葉は、より強く、そして揺るがぬものになっていく。
霞「…お母さ…」
京子「…お休みなさい、霞」
霞「……ん…」
まるで心が安堵と依存で出来た沼に沈み込んでいくような感覚。
そこにはもう京子が異性であるという認識すらなく、京子ならば自分の全てを受け入れてくれるのだという甘えだけがある。
そんな彼女が口にした言葉に、京子は否定も肯定もしない。
自身を母と呼ぶ彼女に、ただ優しく包み込むような言葉を返して ーー
ーー 数分後、霞は京子に撫でられながら、その意識を眠りの中に落としたのだった。
………
……
…
―― 霞の意識が覚醒した時、真っ先に感じたのは違和感だった。
霞「…ぁ…れ…?」パチ
眠った後までも暖かさと安堵に包まれていたはずの自分。
だが、意識が眠りから浮上しつつある今の彼女は、それをまったく感じられなかった。
ひたすら自身をダメにするような甘美さと中毒性を味わってしまった今の彼女がそれに耐えられるはずがない。
未だ眠り半ばにあった意識は急速に覚醒し、霞の瞼を開けさせる。
霞「京子…ちゃん…」
そのまま京子の名前を呼んだ霞に、しかし応える声はなかった。
彼女がグルンと周りを見渡せば、部屋の中には誰もいない。
悪霊たちが暴れまわっていたのが嘘のように整理整頓された自室の中、彼女は一人横たわっている。
勿論、その周りに悪霊はおらず、体調不良も睡眠によって幾分、改善されていた。
霞「…ぅ」グス
だが、一人である事を確認した瞬間、霞は強い寂しさを覚えてしまう。
最も辛かった時間と遜色ないそれは、彼女が無償の愛と言うものを知ってしまったからだ。
その心身ともに包み込まれるような暖かさがなくなるのは、あまりにも恐ろしく、そして辛い。
暗闇の中に差し込んでいたたった一つの光を奪われたような絶望感を今の霞は感じていた。
霞「(…寒いわ)」
霞「(この部屋、こんなに寒かったのかしら…)」
。
今の彼女は幾重にも布団を被り、身体も快復へと向かっている。
外気から感じる寒さは元より、肌に差し込むような寒気もなくなっていた。
だが、それでも霞が寒さを感じるのは、心の中があまりにも冷え込んでしまったからこそ。
絶望感と孤独感、そして不安が広がる感覚は、彼女に寒空の下、一人佇むような寒さを与える。
霞「…京子…ちゃん」
ススス
霞「あ…っ」
それに霞が京子の名を呼んだ瞬間、部屋の襖がゆっくりと動く。
その向こうから現れたのは手に盆を持った京子だった。
瞬間、霞の中に湧き上がったのは胸の内がざわつくほど大きな歓喜。
今にも絶望の中に沈み込みそうな自分のところに、再び希望が帰ってきてくれたのだから。
さっきまで自身の胸に広がっていた絶望感などあっという間に吹き飛んでしまう。
京子「あら、霞ちゃん、起きてたのね」
霞「っ」フラ
だが、それは霞にとってあまりにも強すぎる感覚だった。
絶望から一転、胸中が希望に振りきれるようなそれを彼女はまったく制御出来ない。
早く京子の側に行きたい。
京子に撫でて貰って、その存在が嘘ではない事を確かめたい。
さっき絶望に沈んでいた自分を慰めて欲しい。
そんな感情が胸の中で暴れる彼女はフラフラと立ち上がろうとしていた。
京子「ちょ…っ!?」
そんな霞に京子は驚きの声をあげる。
それは勿論、今の彼女が到底、平静ではない事が分かるからだ。
未だ霞の顔から紅潮は引かず、そして目尻には涙が浮かんでいる。
そんな霞がいきなり自分の前で立ち上がるなど想像すらしていなかった京子は、急いで自分の脇に盆を置いた。
霞「京子ちゃ…っ」フラァ
京子「っ!」
その間に立ち上がりきった霞が京子の方へと踏み出す。
しかし、それは頭をフラフラと左右へと揺らす危なっかしいものだった。
それでも京子の事を呼びながら、前へと進もうとする霞は、あっさりとそのバランスを崩してしまう。
布団の上で足を取られた彼女は重力に引かれるようにして前へと倒れこみ ――
京子「…ふぅ」ダキッ
霞「…あ…♪」ギュゥ
そのまま床へと打ち付けられる前に、京子の身体が霞を抱きとめる。
まさしく間一髪と言っても良いそれに京子の口から安堵の吐息が漏れた。
何とか間に合ってよかった、とそんな意図が込められた吐息に霞はゆっくりと腕を回す。
自分を抱きとめてくれた京子の実在を確かめるようなその腕は、そのままギュっと力を込め、二人の身体を密着させた。
京子「ぅ…」
無論、京子とて、霞が寂しがっていた事くらい理解している。
こうして自分を抱きしめる彼女の腕からは愛しさよりも寂しさの方が遥かに強く伝わってくるのだから。
自分がトイレに行っている僅かな間に起きてしまった霞は、まるで迷子になってしまったような感覚を覚えたのだろう。
霞の腕からそう感じ取った京子は、彼女に対して強い申し訳無さを覚えていた。
京子「(お、おっぱいが!!大変、素敵な霞っぱいがああああっ!!!)」
だが、それ以上に大きいのは、自分の胸に広がる柔らかでムチムチとした感触だった。
少しでも楽になるようにと、事前にブラを外しているその胸を包んでいるのは今、寝間着のみ。
勿論、薄手のそれでは霞の並桁外れた胸の感触を隠しきる事は出来ない。
ほぼストレートに伝わってくるその柔らかさと存在感は、健全な男子高校生にとって凶器と言っても良いものだった。
京子「(お、落ち着け!落ち着くんだ、マイサン!!)」
京子「(確かに霞さんのおっぱいは素晴らしい…!)」
京子「(文化財指定…いや、国宝指定してしかるべきシロモノだと俺も思う…!)」
京子「(だが…ここで欲望に負けちゃダメなんだ…!!)」
自分にとって理想と言っても良い宝物がすぐ側にある。
しかも、それは触れて欲しいと言うように霞の方から押し付けられているのだ。
その誘惑を断ち切るのは、まさしく京子にとって断腸の思いと言っても良い。
しかし、それでも、京子が下半身にストップと言い聞かせるのは、今の自分が霞の『母親』であるからこそ。
まるで幼い子どものように母性を求める霞の前で、オスの欲望など出せるはずがなかった。
京子「ダメよ、霞ちゃん」
京子「まだ横になってなきゃ」ナデナデ
霞「…」ギュゥ
だからこそ、京子は自身の興奮を必死に押さえ込みながら言葉を紡ぐ。
眠る前にも聞いたその優しい声音に霞の中の安堵が強くなった。
だが、それでも彼女は京子の事を手放す事は出来ない。
今の彼女は甘える喜びだけではなく、それを取り上げられる怖さをも知ったのだから。
もし、離れてしまった瞬間に、京子がまたいなくなってしまったらどうしよう。
そんな荒唐無稽と言っても良い想像すら彼女の中には浮かんでいた。
霞「(…それに京子ちゃんの身体、暖かい…)」
全身で抱きついた京子の身体は、決して女性らしいものではなかった。
服越しに触れる身体からは柔らかさよりも硬さや逞しさが強く伝わってくる。
否応なく、京子が男性である事を知らせるそれに、しかし、霞は躊躇ったりしなかった。
勿論、彼女は永水女子で三年連続エルダーを務めただけの淑女であり、こんな風に男性と触れ合った経験などない。
神代と言う閉じられた世界の中で生きてきた霞は、婚姻前の男女がこうして抱き合うなんてはしたないとさえ思っている。
霞「(…とっても…幸せ…)」
だが、今の彼女にとってそれらは決してストッパーにはならなかった。
勿論、恥ずかしい気持ちはあるが、それ以上に京子の身体が暖かすぎたのである。
孤独と絶望感に冷たくなってしまった心を優しく解してくれるようなその熱は、霞に安堵と心地よさを与える。
幸福感にも繋がるほど大きくて強いその感覚は、霞の心を虜にしていた。
京子「…霞ちゃん」
霞「やぁあ…」フルフル
京子「もう…霞ちゃんったら」
そんな霞に促すように言ったところで、京子の事を手放そうとするはずがない。
まるで駄々っ子のような声をあげながら、霞は首を左右へと振った。
全身で拒絶を示すその姿に、京子はそっと肩を落とす。
勿論、京子も出来るだけ、彼女の望みは叶えてやりたい。
しかし、このままではただでさえ悪い霞の体調が悪化する事だって考えられるのだ。
京子「(まぁ…勿論、強引に引き離すのは難しい事じゃないけれども…)」
元々、京子と霞の身体能力には大きな開きがある。
その上、今の彼女は寝込んでしまうほど体調を崩しているのだ。
京子が本気にさえなれば、霞を引き離す事は容易い。
だが、今の彼女は何処か必死ささえ感じさせるほど強く自分に抱きついてきているのだ。
それを無理矢理、引き離すと言うのは流石に良心が咎める。
京子「(…なら、答えは一つしかないよな)」
京子「…じゃあ、ちょっと強引にいかせて貰うわよ」ダキッ
霞「え…きゃんっ!?」ビク
そんな京子が至った答えは、このまま霞を布団へと戻す事だった。
勿論、それは霞の事を説得すると言った穏便な手段ではない。
ここで幾ら言葉を尽くしたところで、彼女が自分に従わない事くらい京子には分かっている。
だからこそ、京子は霞の背中と足に手を回し、そのまま一気に抱き上げた。
京子「よいしょっと…」
霞「はぅ…」カァァァ
それに悲鳴のような声をあげる霞に、京子はまったく躊躇しない。
床から切り離した霞の身体を抱えながら、器用に姿勢を変えさせていく。
豊満な霞の身体からまったく重さを感じないと言うようなその腕は、京子の胸の中で彼女を横たえさせる。
所謂、お姫様抱っこと呼ばれるその姿勢に、霞の頬が紅潮を強めた。
霞「(こ、こここここれ…)」
霞は京子が来るまで恋愛どころか男性と無縁の人生を送ってきた。
だが、そんな彼女でも、恋愛に対する憧れのようなものは捨てきった訳ではなかったのである。
何時か自分も漫画の中のヒロインのように素敵な恋をし、そしてお姫様のような扱いをされたい。
純粋無垢な小蒔の検閲係として、少女漫画を読んでいた霞は、そんな欲求を胸の奥底に秘めていた。
―― だが、霞はその欲求が叶う事はないと諦めていた。
霞は小蒔の天児であり、そして六女仙の長でもあるのだから。
後に分家を率いる立場が約束されている彼女には婚約者がおり、また異性と会話する機会も年に数回程度しかなかった。
そんな自分が恋愛 ―― それもお姫様抱っこされるような甘く蕩けるようなものが経験出来るはずがない。
どれだけ夢見ても無駄なのだと彼女はずっとそう自分に言い聞かせてきたのである。
霞「(は、恥ずか…しい…)」
だが、そんな言葉が裏返ったかのように、今の霞は京子に抱き上げられている。
それも宝物のように優しく、そしてヒーローのように力強く。
胸の中から見上げるその姿は、あまりにも霞の夢と合致しすぎていた。
かつて夢見ながらも、叶わぬと諦めていた願望の一部が現実になるその光景。
それに霞は気恥ずかしさと嬉しさが入り混じったような感覚を覚えてしまう。
霞「(…でも、これは…)」
今の霞は、京子からあまり母性を感じなかった。
こうして自身を抱き上げる身体はあまりにも逞しすぎるのだから。
彼女の持つ『母親』のイメージからは程遠いその力強さに、母性の色はどうしても薄れてしまう。
その代わり、霞の中で広がっていくのは『父親』のイメージだ。
自身の我儘を受け止めてくれる母性ではなく、自身を護ろうとしてくれる父性に霞の胸はドキドキと高鳴る。
霞「(…好き…かもしれないわ)」
無論、これが他の男であれば、霞も全力で抵抗しただろう。
だが、今、彼女を抱き上げているのは京子なのだ。
常日頃から家族として共に生活し、自身の心と苦しみを引き受けてくれたたった一人の相手。
最早、依存を止められない相手にお姫様抱っこされて嫌な気分になるはずがない。
勿論、恥ずかしい事は恥ずかしいが、それ以上に護られている実感を感じられる。
京子「じゃあ、このまま布団の中に戻しちゃうからね」
霞「ぅー…」
しかし、そうして霞が実感に浸っていられる時間と言うのはそう長くはない。
彼女は何とか布団から立ち上がる事は出来たものの、数歩しか歩いていないのだから。
布団と床との境界線すら超えていないその身体は、すぐさま布団の中へと降ろされそうになってしまう。
それに不満を覚える霞は唸るような声をあげながら、ギュっと京子に抱きついた。
京子「良い子にしててくれたら後でご褒美あげるわよ」
霞「ご褒美…」
まるで抵抗するように抱きつく霞を大人しくさせる為、京子が口にした『ご褒美』。
勿論、それが一体、何なのか霞には分からない。
しかし、それでもその言葉が持つ響きは、彼女の心を大きく揺さぶる。
今の目の前の安堵か、それとも後のご褒美か。
その二つを心の中で天秤に掛けた霞は、数秒後、ゆっくりと腕から力を抜いた。
京子「ふふ。霞ちゃんは良い子ね」ナデナデ
霞「ふ…ぅ♪」
ご褒美と口にした途端、従順になった霞に京子はそっと布団に横たえさせる。
そのまま掛け布団を戻し、彼女の頭を撫でれば、霞の口から心地よさそうな声が漏れた。
まるで外から自室へと帰って来たようなその声は、しかし、それだけではない。
きっと京子のご褒美は撫でるよりもずっとずっと幸せな事なのだろう。
そんな期待を隠そうともしない霞の声に、京子は内心で冷や汗を浮かべた。
京子「(…どうしよう)」
それは勿論、ご褒美の内容に関して、京子がハッキリとした案を持っていないからだ。
そもそも京子は最初から霞の我儘を何でも叶えるつもりである。
そんな京子にとって、『何でも』以上の『ご褒美』などそう簡単に思いつくものではない。
正直、今にも溢れそうな霞の期待に応えられる自信は、京子にはなかった。
京子「(ま、まぁ…それはともかく)」
京子「それで…霞ちゃんは食欲はある?」
京子「少しでもあるのなら、明星ちゃんが作ってくれたお粥を食べてみないかしら」
とは言え、今はご褒美の内容を考えている場合ではない。
京子がそう思うのは、ついさっきまでその手に持っていた盆に、明星が作った粥が乗っているからだ。
トイレに行っていた帰り道、明星から手渡されたそれを、京子はあまり冷ましたくはない。
倒れた霞に代わって働いている故に、未だ見舞いには来れていない明星達の想いがそこには山程、込められているのだから。
無論、嫌がる霞に無理矢理、食べさせるつもりはないが、極力、出来立てで美味しい時に味わって欲しかった。
霞「……ふーふーしてくれる?」
京子「えぇ」
霞「あーんも?」
京子「勿論よ」
その気持ちのまま尋ねた京子に、霞は甘えるような声を返した。
疑問よりも甘えの方が強いそれは、何も言わずとも、京子ならば甘やかしてくれると信じているからこそ。
ただのオネダリと言っても良いその言葉に、京子は優しく頷いた。
元々、京子は霞を思いっきり甘やかせるつもりではあるし、何より、今の彼女は体調を崩しているのだから。
若干の気恥ずかしさはあるが、それは京子を躊躇わせるものではなかった。
霞「…………じゃあ、頑張る…」ニコ
未だ歩く事すら覚束ない今の霞に、あまり食欲はなかった。
しかし、だからと言って何も食べないままでは、体調も中々、元には戻らない。
結果、京子に甘え続けられる事に、心惹かれる霞と言うのは間違いなく存在している。
だが、それ以上に、京子や明星達の優しさに応えたい気持ちの方が大きかった。
京子「それじゃあお粥持ってくるから、もうちょっと待っててね」
霞「…ん」
そんな霞の側から京子はゆっくりと立ち上がる。
そのまま背を向けて自分から遠ざかる京子の姿に、霞は寂しさを覚えた。
距離にして10mにも満たない距離でさえ、今の彼女には遠過ぎる。
その背中が視界の中に入っていなければ、きっと自分は耐えられなかっただろう。
最早、幼子を超えて赤ん坊にも負けないほど依存しきった自分に、しかし、霞は情けなさを感じたりはしなかった。
霞「(…京子ちゃん…まだかしら…)」
それより彼女にとって重要なのは、京子が何時帰ってくるか、だった。
無論、京子が離れたのは襖のすぐ側にあるお粥を取りに行く為であり、数十秒もすれば戻ってくる。
だが、今の彼女にとってはその数十秒すら待ち遠しいものだった。
早く自分の側に来て、また甘やかして欲しい。
ちゃんと待ってて良い子だねって頭を撫でて欲しい。
そんな言葉に身体をウズウズとさせながら、霞はジッと布団の中で耐え続けていた。
京子「霞ちゃん、お待たせ」
数十秒後、京子はその手に盆を持ちながら、霞の元へと帰ってくる。
瞬間、彼女の嗅覚を擽るのは、卵と出汁の混ざり合った匂い。
病人であっても食欲を唆られるそれの匂いに、霞も微かな空腹を覚えてしまう。
体調を崩している霞がほんの少しでも食べられるよう熱意を込めて作られたその粥は明星にとって渾身の出来と言っても良いものだった。
霞「…京子ちゃん」
京子「良い子で待っててくれたのね、えらいえらい」ナデナデ
霞「えへぇ…♪」
だが、今の霞にとって、それは興味の対象にはならなかった。
それが美味しいものである事くらいは分かっているが、それよりも京子に褒められる方が大事。
そう思って京子を呼んだ霞の声には、甘えの色が多分に含まれていた。
それに霞の求めを理解した京子は、彼女の期待通り、優しく頭を撫でる。
瞬間、霞は顔を蕩けさせ、喉の奥から嬉しそうな声を漏らした。
京子「じゃあ、次はお粥を食べる為に、ちょっとだけ起き上がりましょうか」
霞「…ん」スッ
京子「はいはい」クス
そんな彼女が一人で起き上がろうとするはずがない。
こうして期待に応えてくれたとは言え、まだ霞は甘やかされたりないのだから。
お粥を運ぶ為、京子が離れていた時間の補填はまだ済んでいない。
だからこそ、両手を京子に伸ばす霞の姿に京子は小さく笑みを浮かべた。
全身で自分を抱き起こして欲しいとアピールするような霞に、京子は優しく手を伸ばして。
京子「これで良いかしら?」
霞「…やあ」フルフル
そのまま上体を起こさせた京子に、霞は小さく首を振った。
京子は抱き起こして欲しいと甘える自分の望みを叶えてはくれている。
しかし、彼女が望んでいたのはそれだけではない。
ほんの数十秒の間とは言え、京子から離れていた彼女には、それではもう物足りないのだ。
霞「…後ろからギュってしながら支えて」
京子「それは構わないけれど…」
自分の身体を支える事すら、京子に依存しようとする霞。
無論、そんな彼女の求めに京子も応えたいとは思っている。
それでもその声に躊躇いを浮かべるのは、これから彼女の口にお粥を運ばなければいけないからだ。
自分ならばともかく他人へ食事を運ぶのに、口が視界に入っていないのは危険。
そう思う京子にとって、それはそう簡単に肯定して良いものではなかった。
霞「大丈夫だから…」
勿論、霞も京子の躊躇いは理解している。
未だにその体調が万全ではないとは言え、彼女はとても敏いのだから。
京子が気乗りしない様子を見せるのも、自身を気遣っての事だと理解している。
だが、それは霞にとって必要のない気遣いだった。
元々、彼女はそれらのリスクを込みで京子にオネダリしているのだから。
多少、熱い思いをしたり、服が汚れるよりも、今の霞は京子に甘えたかったのである。
京子「……分かったわ」
京子「じゃあ…ちょっと背中の方、失礼するわね」スッ
そんな霞の言葉を、京子もまた受け入れた。
それは自身の躊躇い以上に、霞の求めが強いものだったからだ。
胸中に未だ迷いは残っているが、霞はここまで言うのであれば従おう。
そう思った京子はそっと腰をあげ、抱き起こした霞の背中へと回った。
京子「はい。もうオッケーよ」
霞「ん…♪」
準備完了を伝える京子の言葉に霞はそっと背中を倒していった。
自分から後ろへと倒れこむようなそれはすぐに京子の身体へと受け止められる。
瞬間、霞の身体が感じ取ったのは、お姫様抱っこされた時と同じ京子の逞しさ。
そしてそれに反応するようにして湧き上がる自身の安堵だった。
霞「(やっぱり…これ良い…)」
その感情は京子にお姫様抱っこされていた時よりも弱い。
身体全てを支えられていた時とは違い、今の霞は京子に背中しか預けてはいないのだから。
だが、それでも今の霞は不満やもどかしさを覚えたりはしない。
そもそも、その安堵はお姫様抱っこされた時に比べれば低いと言うだけなのだから。
彼女の人生を見渡してもこれほどの安心感を覚えた事は数えるほどしかない。
京子「それじゃ、そろそろ食べ始めましょうか」
何より、霞の胸は今、京子にお粥を食べさせてもらえると言う状況に期待を浮かべている。
まるでひな鳥のようにして京子に給餌される瞬間を心待ちにしているのだ。
そんな彼女の前で京子はゆっくりと土鍋へと手を伸ばし、その蓋を開く。
瞬間、先ほど霞の嗅覚を擽った匂いが湯気と共に部屋の中へと広がっていった。
霞「…美味しそう…」
京子「ふふ。明星ちゃんが頑張って作ってくれたのよ」
京子「後でありがとうって言わなきゃね」
霞「うん…」コクン
それに素直な感想を漏らす霞の前で、京子は横にあったスプーンでお粥を掬う。
そのまま自身の口に近づけて吐息を吹きかける仕草は、強い集中を感じさせるものだった。
今の京子は霞の背中を支えており、殆ど片手しか使えない状態なのだから。
明星が並々ならぬ想いを込めて作ったお粥を無駄にしない為にも、気を抜く事は出来ない。
京子「はい。霞ちゃん、お待たせ」スッ
霞「……」
そんな京子の手がゆっくりと霞の顔の前へと回る。
その口の辺りへと近づくそれに、しかし、彼女は反応しなかった。
無論、京子の口で冷まして貰った今も、そのお粥はとても良い匂いをさせている。
京子に運んでもらったと言う事もあり、今すぐにでも食べたい気持ちはあった。
そんな気持ちがあるのにも関わらず、霞が動こうとしないのは後一歩足りないからこそ。
その心を幼子と変わらぬほど甘えん坊にさせた今の彼女にとって、その一歩はとても重要なものだった。
京子「…あーん」
霞「あーん…」
あーん。
文字数で言えば、たった三文字のそれに霞はゆっくりと口を開いた。
そのままパクリとスプーンを口に含んだ彼女の中で、出汁と卵の味がふわりと広がる。
病人である霞に合わせて、普段よりも若干、薄めに味付けされたそれは、彼女の心を捉えた。
間違いなく美味しいと言えるその味に、霞の顔は知らず知らずの内に綻ぶ。
京子「どう。美味しい?」
霞「…うん。美味しい…」
京子「ふふ。じゃあ…」
霞「…その前にナデナデ…して」
ふわりと花開くような霞の笑みに、偽りはまったくない。
体調を崩していても尚、美味しいと感じられるそのお粥に、彼女はとても気に入っていた。
だが、甘えん坊になった霞は、そのお粥だけでは満足出来ない。
その心が満たされる為には、思う存分、京子に甘やかされなければいけないのだ。
京子「ちゃんと食べられて偉かったわね」ナデナデ
霞「……んふぅ…♪」
だからこそ、霞が口にしたオネダリに、京子は嫌な顔ひとつせずに応える。
人並み以上に手の掛かる子どものようなそれも、彼女が自分に対して甘えてくれている証なのだから。
これまで霞がどれほどの辛さを一人で耐えてきたかを思えば、それくらいは許容範囲。
嫌われるかもしれないという不安すらなく、ただただ自分に甘えてくれる霞を可愛いとさえ思っていた。
京子「(…多分、俺、こういうの嫌いじゃないんだよな)」
元々、京子は他人の為であれば、躊躇なく一生懸命になれるタイプだ。
その上、世話好きであり、子どもの相手をするのも嫌いではない。
そんな京子が、心から自分に甘えてくれるような霞の世話を嫌がるはずがなかった。
ともすれば、面倒くさいと思われかねない彼女の要求にも笑顔で応えられる。
だからこそ、霞もまたそんな京子に強請るのを止められなくて ――
霞「はふ…」
京子「はい。良く出来ました」
霞の食事が終わった頃には、もう一時間以上が経過していた。
それは一口食べる毎に甘えようとする霞に京子はずっと付き合い続けていたからである。
撫でて欲しい、お水を飲ませて欲しい、抱きしめて欲しい。
そんな欲求を一つ一つ叶えてもらった霞の心は今、満たされている。
自立心と引き換えにした甘い毒に彼女はもう完全に溺れきってしまっていた。
京子「じゃあ、今度はお薬ね」
霞「お薬苦い…?」
京子「そうね。ちょっと苦いかもしれないわ」
霞「…またご褒美くれる?」
京子「えぇ。勿論」
そんな霞にとって京子の『ご褒美』は魔法の言葉だった。
京子は『ご褒美』などなくても、霞の欲求を全て叶えてくれているのだから。
自分でも面倒だと思うようなオネダリにさえ嫌な顔せずに付き合ってくれる京子に否応なく期待感が高まっていく。
そんな霞にとって二つ目の『ご褒美』は決して見過ごせるものではない。
それが貰えるのであれば、苦い薬の一つや二つ我慢しよう。
幼い心にそう言い聞かせる霞の前に、京子はそっと錠剤を運んだ。
京子「じゃあ、あーんして」
霞「…あーん」
京子「はい。今度はお水ね」スッ
霞「んく…」ゴク
次に運ばれるペットボトルから霞はゆっくりと水を飲み込んでいく。
まだ熱の残るお粥を嚥下し、汗の浮かんだ喉がゴクゴクと音を鳴らしながら震えた。
その様に艶やかさを色気を感じながらも、京子の手は揺るがない。
霞が安心して飲みきれる程度の水をその口に運び続ける。
京子「ちゃんと飲めた?」
霞「ん…ごっくん出来た…」
京子「そ、そう…」ナデナデ
霞「…♪」ニコ
とは言え、京子も健全な男子高校生。
見目麗しい年上のお姉さんに、ごっくんなどと言われればいかがわしい想像をしてしまう。
それに思わずどもってしまう自分に恥ずかしさを感じながらも、京子の手は霞の頭を撫でた。
苦い薬を飲んだ事を褒めてくれるその手に、霞は言葉ではなく、笑みを浮かべる。
京子「じゃあ、ご飯も食べ終わったし、もう一回、お休みしましょうか」
霞「うー…」
しかし、それはあまり長くは続かなかった。
今の霞は布団から上体を起こし、その身体を半ば布団から出してしまっている。
自然、その肌も冬の外気に触れている状態では、中々、体調も良くならない。
そう思った京子の言葉に、霞は不満そうな声をあげた。
京子「ダメよ。まず霞ちゃんの身体が第一なんだから」
京子「このままじゃ良くないって言うのは良い子の霞ちゃんも分かっているでしょう?」
霞「…ぅん」
無論、京子も霞がどうしてそんな声をあげるのかくらい分かっている。
自身に母性を求める彼女は、きっとまだまだ甘え足りない。
それこそ一人立ち出来ないほどダダ甘な奉仕を望んでいるのだろう。
それに応えたい気持ちはあるものの、京子にとっては霞の体調の方が大事だった。
京子「大丈夫よ。私はずっと側に居てあげるから」
京子「霞ちゃんのして欲しい事を全部、叶えてあげる為に…ね」ナデナデ
とは言え、ここで無理矢理、霞を布団の中に戻してやりたくはない。
体調不良に身体を弱らせた彼女を強引に導くのは簡単だが、それはあくまでも最後の手段。
これまで辛い思いをしてきた分、霞を甘やかすとそう決めた京子にとって、優先すべきは彼女の納得だった。
だからこそ、京子は霞の頭を撫でながら、優しい言葉を紡ぎだす。
暖かでゆっくりとしたそれは、まさに幼子を言い聞かせる母親のようなものだった。
霞「…本当に全部、叶えてくれる…?」
そんな京子に霞は思わず確認の言葉を向けてしまう。
それは勿論、京子の言葉を疑っている訳ではない。
元々、京子は彼女の我儘を殆ど叶えてくれているのだから。
全部と言ったその言葉は決してその場しのぎのものではないと分かっていた。
―― それでも霞が疑問の声を漏らすのは、彼女の理性がギリギリのところで抵抗しているからこそ。
無論、寝る前の彼女は、京子から『何でもする』や『全部叶える』という言葉を引き出している。
それでも理性がこうして危機感を訴えなかったのは、それがまだ自身でコントロール出来る範囲であったからだ。
しかし、今の霞はその時とは比べ物にならないほど京子への依存を強めてしまっている。
一人取り残される恐怖と食事を経て、堕ちてしまった今の霞にとって『全部』と言う言葉はあまりにも甘美過ぎた。
そんな事を言われてしまったら本来なら自分で行うべき事も、全て京子に任せきってしまいかねない。
食事だけではなく排泄までもを京子に委ねる前に、何とか踏みとどまらなければ。
京子「えぇ。勿論、体調を悪化させるようなお願いはあんまり聞き入れてはあげられないけれど…」
京子「でも、それ以外なら全部、叶えてあげるわ」
霞「ぁ…ぅ…♪」ブル
最後に残った理性のその訴えを、しかし、京子は台無しにしてしまう。
優しいその言葉は、ギリギリのところで何とか耐えようとしていた霞の背中を思いっきり突き落とした。
まるで重力に惹かれて堕ちていくようなその感覚に、もう霞は我慢出来ない。
いっそ残酷にも思えるほど甘い言葉に、霞はブルリと肌を震わせて。
霞「じゃあ…フキフキして…」
京子「え?」
霞「汗…汗をかいちゃったから…私の身体…綺麗にして欲しい…」
そのまま霞の口から飛び出したのは、京子の予想を遥かに超える言葉だった。
勿論、京子にだってそうやって汗のふき取りを求める霞の気持ちは理解出来る。
元々、寝汗をかいていた身体は、お粥の熱さでさらに火照っているのだから。
このまま薬が効いてきて眠ってしまう前に、すっきりしたいと思うのは当然だろう。
京子「(でも、俺男なんですけど!!)」
だが、京子は男であり、霞は美少女なのだ。
その身体を拭くとなれば、どうしても肌を見てしまう。
さらに言えば、今の霞は寝苦しくないようにとブラを外している状態なのだ。
寝間着を剥いた瞬間からその胸を隠すものがなくなってしまうと思えば、どうしても躊躇いを覚えてしまう。
京子「(いや、まぁ、勿論、役得だし、興味がないとは言わないけれど…!)」
京子「(だが、俺は果たして霞さんのどたぷんおっぱいを前にして我慢出来るだろうか…!!)」
京子「(そもそも、風邪で弱っている霞さんの裸を見るとか、弱みにつけ込んでるような気さえするし…!!)」
霞「…京子ちゃん」ジィ
京子「…っ」
しかし、そんな京子とは違って、霞はまったく躊躇しなかった。
勿論、霞も京子が男であるという事を忘れたつもりはない。
今も尚、自身を受け止める背中からは男性特有の逞しさを感じるのだから。
冬の外気に触れる霞を暖かくしてくれるそれは、彼女も強く意識しているものだった。
霞「(…でも、京子ちゃんなら絶対にいやらしい事しない…)」
とは言え、それは霞の中で警戒心を呼び起こすものではなくなっている。
今の彼女はもう依存という底なし沼に沈んでしまった状態なのだから。
そんな自分を受け止めてくれる京子に対して、霞が疑念を抱くはずがなかった。
確かに京子は男ではあるが、自分を無理矢理、襲ったりはしない。
まるで子が親に向けるような無条件の信頼は彼女に大胆な行動をさせる。
霞「…ほら、見て…」スッ ブルン
京子「ちょっ!?」
京子に甘やかされ、役目を放棄していた霞の手。
それは今、彼女の胸に上り、身につけていた寝間着を肌蹴させる。
胸元をゆっくり開くその手に、寝間着から肌色の双丘が溢れだした。
瞬間、耳に届いたブルンと言う音が錯覚なのかは、京子自身、分からない。
京子「(で、でっけぇ…)」
分からないが、そんな音が鳴ってもおかしくはない。
京子がそう思うほどに霞の胸は大きく、そして美しいものだった。
片手では収まりきらないほどの存在感を持つそれらは、強い張りに満ちている。
それを支えるブラもない状態だと言うのに、まったく形が崩れる気配がない。
勿論、自重によって若干、下がってはいるものの、それは決してその美しさを損なうものではなかった。
寧ろ、そうやって重みを主張する姿から、京子は強い興奮を感じてしまう。
京子「(し、しかも、乳首…!乳首見えてますって!!)」
その上、今の霞は胸の先にある桃色の乳首まで晒してしまっているのだ。
以前見た湧よりも色素が濃く、そして大きな突起。
並桁外れた双丘に相応しいその乳首は、京子の本能を刺激するものだった。
その先っぽから母乳が出るまで思いっきりむしゃぶりついてしまいたい。
どれだけ淫欲を抑えこもうとしても、そんな言葉が浮かんでくるのを京子は止められなかった。
霞「私…もうこんなに汗だくで…我慢…出来ないの…」
霞「今すぐ…京子ちゃんに気持ち良くして欲しい…」
霞「私の事…気持ち良くしてくれるのは京子ちゃんだけ…」
京子「(アカン…!!!)」
そんな自身を追い込むような言葉に、京子は強い危機感を感じる。
勿論、霞にそのようなつもりはないが、彼女の言葉はあまりにも性的過ぎるのだから。
その前後さえなければ誘惑されているようにも聞こえるそれに、きっと自分は耐えられない。
このままでは遠からず我慢出来なくなり、霞の事を襲ってしまうだろう。
それを防ぐ為に京子が出来る事と言えば、たった一つしかなかった。
京子「…分かったわ」
霞「ホント…?」
京子「えぇ。私も霞ちゃんに嘘つきだって思われたくないもの」
京子「気持ち良く眠れるように身体を拭いてあげるわ」
半ば敗北宣言のようなそれに、しかし京子は敗北感を感じている余裕すらない。
今の京子が立っているのは、新しい戦いへの入口なのだから。
しかも、次の戦いは間違いなくさっきよりも苦しいものになるのだから、気を抜く事など出来ない。
ここから先は常在戦場 ―― 常にやるかやられるかの精神でいかなければ耐える事が出来ない事を京子は良く分かっていた。
京子「じゃあ、一回、霞ちゃんから離れるわね」
京子「寝転がっていた方が、霞ちゃんも楽でしょうし、私も拭きやすいから」
霞「…ん…」コクン
勿論、京子が自分の背中からいなくなるのは自身の我儘を叶える為だと分かっている。
しかし、それでも霞は自身の身体を浮かせ、離れようとする京子に寂しさを禁じ得なかった。
出来る事ならば、ずっとその中で温もりに包まれていたい。
そう思うほど居心地の良い居場所に、霞が後ろ髪惹かれるのは当然の事だった。
京子「(さて…っと)」
そんな霞をゆっくりと布団へと横たえさせた京子はテキパキと準備を進めていく。
まず京子が着手したのは、霞の額を冷す予備のタオルだった。
それを外気で冷えた水桶へと浸してから、京子は思いっきり水気を絞る。
一度だけではなく二度三度と繰り返すそれは、勿論、霞に清涼感を与える為。
ただ汗を拭き取る為だけではなく、少しでも気持ちよくしてあげようとするそれは数十秒も経てば終わって。
霞「京子…ちゃん…♥」
京子「(…さぁ、ここからが本当の地獄だ…!)」
今、京子の目の前にいるのは、間違いなく絶世と言っても良い美少女だった。
しかも、ただ美しいだけではなく、京子にとって理想から抜け出してきたような相手である。
そんな霞が上気した顔で、愛おしそうに自分の名前を呼んでいる。
その上、その服が自身を受け入れるようにして肌蹴たままとなれば、我慢しがたい。
正直、今すぐにでも霞の胸へと飛び込み、曝け出された肢体を貪りたい気分ではあった。
京子「(…でも、耐えなきゃ)」
京子「(霞さんは俺の事を家族だってそう言ってくれた人なんだから)」
京子「(家族を相手に…そんな気持ちを抱いちゃいけない)」
『家族』。
その言葉はかつて京子の心を救い上げたものだった。
例え、須賀京太郎でなくなったとしても、その過去が奪われても、ここは自分の居場所だとそう教えてくれたのだから。
それによって少しずつ霞達に甘えられるようになった事を思えば、それは京子にとってターニングポイントと言っても良いものだった。
―― だが、それは今、京子の心を強く縛り上げている。
例え、どれだけ美辞麗句を並べても、京子は神代家にその過去を奪われてしまった。
『須賀京太郎』としての自分を殺された京子の中で、そのアイデンティティはずっと失われ続けていたのである。。
そんな京子が新しく創りだしたアイデンティティは『霞達の家族』。
自分を支えようとしてくれている彼女達に一人の男としてではなく、兄として弟として報いる事であった。
―― 勿論、それだけであれば何も問題はなかった。
だが、こうして時を経る毎にして、その歪さが浮き彫りになっていっている。
ストレートな春の好意に、素直になれない明星の気持ちに、思いっきりぶつかるような湧の本能に。
京子が無意識で目を逸らしているのは、その根底に『家族』と言う言葉があるからだ。
家族だからこそ、彼女達も自分の事をそんな風に見たりはしない。
家族だからこそ、自分は決して彼女達に欲情してはいけない。
無意識から湧き上がるその抑制は、京子の心を歪なものにさせていた。
京子「ちょっと冷たいかもしれないけれど我慢してね」
こうして霞の胸を前にして京子が冷静を装う事が出来るのもその為だ。
幾ら、この屋敷に来てから鉄の自制心を手に入れた京子とて、極上と言っても良いメスの身体を前にして我慢し続けてはいられない。
流石に後先考えずに襲いかかるような事はなくとも、勃起くらいはしてしまう。
それを何とか堪え、こうして『須賀京子』のままでいる事が出来ているのは、京子の心が並々ならぬ歪みを生み出している証であった。
霞「ふ…ぅん…♪」
京子「(ヤバイ)」
だからと言って、そうやって我慢するのは決して容易い事ではなかった。
幾らそのアイデンティティが歪んでしまったとは言え、京子は健全な男子高校生なのだから。
霞の身体を拭くだけでも興奮するのに、今の彼女は心地よさそうな声を漏らしている。
その手が動く度に鼓膜を震わせる甘ったるいその声は、我慢を続ける京子にとって猛毒と言っても良いものだった。
京子「(つーか…霞さんの身体柔らか過ぎるだろ…)」
京子「(何処もかしこもエロすぎて…この感触だけで一年は充実した自家発電が出来そうだ…)」
京子「(まぁ…今はあんまりムスコに構ってやれる環境じゃないんだけれど)」
勿論、京子と霞の身体の間には濡れタオルが存在している。
だが、彼女の柔らかさはタオル一枚で防ぎきれるものではないのだ。
こうして拭き取る度に、その肢体がどれだけ柔らかく、そして魅力的なのかが伝わってくる。
いっそ美味しそうだとそう思うほどの魅力を、京子が忘れられるはずがない。
まるで艷声をあげるような霞の姿と共に記憶に刻み込まれていく。
霞「(気持ち…良い…♪)」
もう二度と忘れられぬほどの興奮と欲情。
それを強く覚える京子の前で、霞は心地よさに浸っていた。
無論、京子が異性であるという意識は残っているものの、それは彼女に抑制を促すほど大きいものではない。
彼女にとって大事なのは、濡れタオルで優しく身体を拭く京子が自身に清涼感を与えてくれるという1点のみ。
それ以外を思考の外へと置いた今の霞が艶声を止められるはずがなく、悦びを伝えるようにして甘い声を漏らし続ける。
京子「(…ど、どうしよう…)」
そんな霞の身体を拭き続けた京子に、今、大きな壁が立ちふさがっていた。
仰向けになっても尚、ドンと突き出るそれは勿論、京子にとっても大好物と言っても良い。
霞の許可があれば、きっと理性など投げ捨てて、一も二もなくしゃぶりついていたくらいには。
だが、今の京子は家族である霞の為に、自身の欲望と戦い続けなければいけない身の上なのだ。
何の柵もなければ天国と言っても良いその双丘が、今は悪魔の巣窟のように思える。
京子「(で、でも…とりあえずめぼしいところは拭き終わったし…)」
勿論、京子はまだ霞の汗を全て拭き取れた訳ではない。
あくまでも京子が拭いたのは寝間着から肌蹴た上半身の部分 ―― それも胸を除いたところだけ。
だが、霞は未だ満足する気配はなく、自身に対して期待の眼差しを向けている。
早く自分の身体を綺麗にして欲しいと訴えるその濡れた瞳を前に京子が逃げられるはずがなかった。
霞「京子…ちゃん…?」
京子「あぁ、ごめんね」
京子「霞ちゃんが綺麗だから、ちょっと見惚れちゃって」
霞「…♪」テレ
進む事も戻る事も出来ない京子に、霞が疑問の言葉を投げかける。
いきなり手を止めてしまってどうしたのかと、そう尋ねるようなそれに京子は誤魔化しの言葉を返した。
普段であれば、霞も誤魔化しに気づいただろうが、今の彼女は決して万全とは言えない。
その言葉が完全に嘘ではないという事もあって、霞は照れるようにしてはにかんだ。
京子「(あーくそ…可愛いなぁ!可愛いなぁ…チクショウ…!!)」
京子「(可愛くてエロいとか…もうホント、反則だろ…)」
京子「(こんな霞さんを前にして我慢しなきゃいけないとか…立川のパンチパーマじゃないと無理だって…)」
言葉もなく、褒められた嬉しさを浮かべる霞の姿に、京子の胸から弱音の言葉が浮き上がる。
元々、彼は男子高校生の中でも人並み以上に性欲旺盛であり、また性的な興味も強いタイプだったのだから。
百人中百人が美しいと褒め称えるであろう霞を前にして、何時までも我慢し続けてはいられない。
こうして悩んでいる今も理性がゴリゴリと削れ、身体の奥底で欲情が強まっていくのを感じるのだから。
京子「(もうこっからはスピード勝負だ…!)」スー
京子「(躊躇ったら…絶対に負ける…!!)」ハー
そんな欲情を必死に押さえ込みながら、京子は一つ深呼吸をする。
その肺から脳へ新鮮な空気を一気に送り込もうとするそれに意識が少しだけクリアになるのを感じた。
勿論、それは一瞬の事であり、根本的な問題解決には繋がらない。
だが、その一瞬で覚悟を決めた京子は、そっと手を霞の胸へと伸ばして。
京子「(お…おおぉぉぉ…)」
瞬間、湧き上がる感触は、その他の部分とは比べ物にならなかった。
柔らかさも張りも艶っぽさも、それ以外とは一線を画している。
濡れタオル越しに触れているだけだと言うのに、若干の気持ちよささえ感じるのだから。
まさしく魔性と言っても良いその感触に、京子の意識はグラリと揺れる。
京子「(お、おおおおお落ち着け…!永水女子の淑女は狼狽えない…!)」
京子「(こ、こんなのただの脂肪の塊じゃないか…!)」
京子「(そう…何もしてないのに指が沈んでいきそうなほど柔らかくて…)」
京子「(でも、その柔らかさとは裏腹に触れる指をグイグイ押してくる張りがあって…)」
京子「(肌もきめ細やかな上に、何処か甘い匂いもして、パイズリされたら瞬殺されそうだってだけだろ!!!)」
それに抗おうと京子は必死に否定の言葉を浮かべるものの、それは完全なものではなかった。
元々、京子は女性の胸に並々ならぬ興味と情熱を向けているのだから。
その理想がそのまま体現されたような霞の胸を、悪しように言える訳がない。
どれだけ肯定してはダメだと思っても、彼の本能は彼女の胸を求めているのだ。
京子「(と、とにかく…とにかくおっぱいがなんだ!霞っぱいがどうしたっていうんだ!!)」
京子「(今はともかく…拭くんだ…!拭くしかないだろう…須賀京太郎!!)」
その本能を何とかねじ伏せながら京子はゆっくりと手を動かす。
だが、それは流石にさっきよりもぎこちないものになっていた。
タオル一枚を隔てた先にあるのは、京子が今までずっと追い求めてきた理想の胸なのだから。
どれだけ京子が自身をコントロールしようとしても、本能からの欲求は止められない。
京子「(色即是空色即是空色即是空色即是空…っ!!)」
無論、後輩を経由して手に入れた原村和の能力があれば、それも制御出来る。
だが、今の京子は霞から手に入れた天児としての力をまだ使いこなせてはいないのだ。
どれだけ抑えつけても内側で抵抗を続ける悪霊たちがいるのに、他の能力を使ったり出来ない。
自身が気を抜いてしまった瞬間、それがまた溢れだして霞を害する事を思えば、精神力で耐えるしかなかった。
京子「…」ゴクッ
そんな京子の前に、今再び試練が立ちはだかっていた。
幾ら霞の胸が並桁外れた大きさをしているとは言え、所詮は人間。
どれだけ丁寧かつ優しく拭いたとしても、数分も経てば粗方、拭き終わってしまう。
残ったのは胸の谷間と、頂点でピンと自己主張をする乳首の周辺のみ。
胸の中でも特に魅力溢れるその部分に、京子は二の足を踏んでいた。
京子「(乳首の周りは別に良い…最悪なしって事で済ませられるけれど…)」
胸の谷間を回避するのは不可能だ。
京子がそう思うのは、そこが人体の中でも汗が溜まりやすい場所だからこそ。
特に、霞の場合、貧乳が世の不公平を嘆きそうなサイズをしているだけあって、不快で仕方がないはず。
きっと彼女もそこを綺麗にするのを待ち望んでいると思えば、何時迄も停滞し続けてはいられない。
京子「…それじゃあ今度は胸の間を…ふ、拭いちゃうわね」
その言葉が若干、どもってしまうのは、流石の京子もそろそろ限界に近づいてきているからだ。
湧き上がる期待とそれ以上のプレッシャーは、もう自身の胸の内では収まりきらない。
数秒の躊躇いの後、漏らした言葉にもそれが浮かんでしまっていた。
そんな自分に内心で自己嫌悪を感じながらも、今の京子はもう止まれない。
宣言した以上、進むしかないのだと霞の谷間に手を伸ばして。
京子「(ふぉおおおぉおおぉおおおおおっ!!)」
―― 瞬間、京子の胸中で爆発が起こった。
それは勿論、今の京子が、霞の胸に直接触れてしまっているからだ。
まるでクレヴァスのような深い谷間を拭くには手を差し込むしかない。
そして、それは濡れタオルが壁となっているのとはまた逆側 ―― 手の甲に柔肉が押し当てられるのを意味する。
幾ら鋼に負けない自制心を持ってしても、その喜びは耐えられるものではない。
京子の胸中で歓喜の色が爆発したのも致し方無い事だった。
京子「(って叫んでる場合じゃねぇ…!)」
京子「(早くここから抜け出さないと…大変な事になってしまう…!!)」
一瞬とは言え、我慢する辛さを上回るほどの歓喜。
しかし、京子はそれに溺れている訳にはいかなかった。
まるで生きている意味を見つけたようなその喜びに、今の京子は耐えなければいけないのだから。
霞の身体を綺麗にするという目的を忘れない為にも、早く谷間から脱出しなければ。
霞「あ…ひぅ…♪」ビクン
しかし、そうやって手を動かす度に、霞の口から声が漏れてしまう。
敏感な谷間を自分以外の手が動き回っている感覚は、身体を拭かれるのとは違って何処かこそばゆい。
だが、そのこそばゆさは決して嫌なものではなく、何処か気持ちよさを伴っている。
身体を拭かれている時の心地よさとは明らかに色の違うそれを霞は身体を揺らしながら表現してしまうのだ。
京子「(ぐあああああああああああっ!!!)」
我慢を本能に命じる京子にとって、それは苦痛と言っても良いものであった。
その胸中に飼う悪魔に負けない為に、今の京子は理性を切り売りしている状態なのだから。
自分を削るようにして何とか踏みとどまる京子にとって、その反応はメスそのもの。
自分の手で霞が感じているという想像は、胸を貫かれるような衝撃を京子に与えた。
京子「(耐えろ…耐えるんだ、須賀京太郎…!!)」
京子「(ここで自分に負けたら…全部終わりだぞ…!!)」
そうしている間にも、京子の手は濡れタオルと共に霞の谷間に挟まれている。
両側から感じるムチムチとした感覚は、媚毒と言っても良いものだった。
自身を色に迷わせるその柔らかくも張りのある感触に、立ち止まっている暇はない。
挟まれている手に圧迫感すら感じる淫獄のような場所から早く抜けださなければ。
京子「…っ!」ズポ
霞「ふあ…あぁ…♪」フル
そう自分に言い聞かせながらも、京子が谷間から脱出出来たのは数分が経過した後だった。
格差社会を象徴するようなその胸が生み出す谷間は、作業をするには決して向かない場所だったのだから。
両側から挟み込まれるのをハッキリと感じる谷間で、強引に汗を拭き取る事など出来ない。
その上、霞が甘い声を漏らしながら身体を跳ねさせるのだから、順調に作業が進むはずなかった。
京子「(…か、紙一重だった…!)」
瞬間、京子の胸の浮かぶのは安心感ではなく、紙一重と言う感想だった。
後、ほんの数秒でもあの場所にいたら、自分はきっと『須賀京子』でいる事は出来なかった。
欲情と興奮が理性を超え、間違いなく勃起していただろう。
いや、それだけならばまだしも、霞に襲いかかっていた可能性だってあった。
それを何とか回避した京子は安堵の溜息を吐くよりも先に冷や汗を浮かべて。
霞「…京子ちゃん…もう終わり…?」
京子「え…?」
霞「まだ…先っぽの方…残ってるのに…」
京子「(ぐふ…っ!)」
だが、京子にとっての地獄はまだ終わらない。
それは勿論、霞がまだまだ満足していないからだ。
谷間に溜まっていた汗は完全に拭き取って貰えたのは嬉しいが、それはそれ。
完全に甘えん坊となってしまった霞にとって、京子に綺麗にして欲しい場所は山程あるのだ。
京子「(ちょっとは休憩させてくれよ!!本気で泣くぞ!!!)」
インターバルすら挟まず、オネダリを投げかけてくる霞。
無論、それは自分が霞を変えてしまったからであり、また自身もそれを望んでいた事くらい京子は覚えている。
だが、さっきの京子は九死に一生を得たと言っても良い心地だったのだ。
それに浸る暇すら与えず、さらなる死地へと向かわせようとする彼女に、京子の中で泣き言が浮かぶ。
京子「(…まぁ、あんまり休憩してる余裕がないのは確かなんだけどさ)」
今の霞は汗を拭き取る為に寝間着を肌蹴させた状態だ。
自然、布団など被ってはおらず、冬の外気に肌が晒されている。
普段ならばともかく、体調を崩している霞が、長々とそんな状態でいるのは良くない。
どっち道、時間との勝負は続いているのだと泣きそうになる自分に言い聞かせながら、京子はそっと濡れタオルを動かした。
霞「ひゃ…ぅ♪」ピクン
胸の谷間からその頂点へとゆっくり動く濡れタオル。
それに霞が覚えるのは紛れも無く快感だった。
京子に谷間を拭かれている時に感じたものよりも幾分強いそれは、再び霞の喉を震わせる。
彼女の肩を微かに跳ねさせながらのそれは、しかし、それだけでは収まらなかった。
霞「(私…これ…もしかして…)」
事ここに至るまで、霞は性的快感と心地よさを完全に混同していた。
『気持ち良い』の一言で、その両者を一つのものとして扱っていたのである。
しかし、今、彼女が感じたそれは心地良さとは明らかに別物。
熱に浮かされた脳であっても、混同出来ないその感覚に、霞はようやく自身が快感を得ている事に気づいた。
霞「(……は、恥ずかしすぎる…)」マッカ
瞬間、霞が覚えるのは、胸の底から吹き出すような恥ずかしさだった。
元々、彼女は京子に肌を晒す事に恥ずかしさを覚えていたが、今のそれとは比べ物にならない。
顔だけでなく首元まで一気に真っ赤に染まり、今すぐにでも顔を隠したい気持ちで一杯だった。
霞「(…でも)」
混同していたとは言え、自分が求めていたのは快感であったと京子に知られたくない。
その為には今も濡れタオルを動かし、自身の身体を拭きとっている京子を止めるのが一番だ。
それを内心で理解しながらも、霞は行動に移せない。
勿論、それは快感を求める彼女の心が強すぎるからではなく ――
霞「(…京子ちゃんってばとっても真剣なんだもの…)」
今の京子はインターバルもなく、さらなる死地へと向かわされたようなものだ。
何とか土俵際に理性を引っ掛けている京子が、その表情に余裕を浮かべられるはずがない。
その顔は真剣そのものであり、また霞の身体を見下ろす目にもまったく遊びがなかった。
まるで目の前にあるのが女体ではなく、重症患者であるようなその真剣さに、霞は邪魔する事が出来ない。
一言声を掛ける事さえ無粋であると感じてしまうのだ。
京子「(初美が一匹…初美が二匹…!)」
そんな霞の予想とは裏腹に、京子の内心はもう一杯一杯であった。
こうして京子が動かす濡れタオルの先には、ピンと張った霞の乳頭があるのだから。
思わずしゃぶりつきたくなるほど大きく、そして淫らなそれは濡れタオル越しでもその存在感を発揮していた。
否応なく男子高校生としての心を揺さぶるその感覚に、京子はひたすら初美の顔を思い浮かべる。
悪戯が成功し、満面のドヤ顔をするその姿は、欲情へ傾きそうな京子を何とか繋ぎ止めていた。
霞「ふあぁ…あぁ…♪」
京子「(し…死ぬかと思った…)」
京子にとって幸いな事は、拭き残していた部分の少なさだった。
乳輪を含む胸の先以外を拭き終えた京子は一分ちょっとでその作業から解放される。
瞬間、霞の口から蕩けた声が漏れるが、京子はもうそれを聞き入れる余裕すらない。
何とか霞を傷つける事なく、一仕事終える事が出来た。
その解放感に胸の中が一杯だったのである。
京子「(…だけど)」
しかし、それはあくまでも一仕事。
霞の身体で拭き終わっていない部分はまだ山程ある。
上半身は一段落したとは言え、それは腹部側のみ。
背中はまだ未着手な上、下半身はまったくの手付かずだった。
京子「(……頑張ろう)」
自分はまだ一つの苦境を乗り越えられただけであり、まだまだ苦境は続いている。
そのまま安堵に沈みそうな自分に言い聞かすようなその言葉は、若干の哀愁さえ漂っていた。
まるで数日の残業を言い渡されたサラリーマンのようなそれは、京子の手を再び動かしていく。
未だ汗が残る部分を優しく、丁寧に拭き取り続けるそれはゆっくりと上半身から下半身へと移っていき ――
京子「…じゃあ、帯を一回解いちゃうわね」
霞「ん…」
その境目にある帯の部分で京子の手は一旦、止まる。
上半身の殆どを拭き終わった今、残るは霞の下半身だけ。
無論、その先に何があるのかは京子も理解しているが、今更、止まる訳にはいかない。
霞が京子に向ける信頼は揺らぐどころか、より強くなっていっているのだから。
彼女の依存がその視線にさえ感じられる今、逃げる事など出来なかった。
京子「よいしょっと」シュル パサ
京子「(…うわー…もう…ホント…うわー…)」
霞の帯を解いた瞬間、京子の目に移ったのは落ち着いた黒だった。
艶やかな彼女の髪色とはまた違ったそれは勿論、霞の下着である。
前面にレースをあしらい、何処か大人っぽさを感じさせるそれに京子の心はグラグラと揺れた。
そもそも京子は女性の下着姿など殆ど見た事がないのだから。
ほぼ耐性がないに等しい京子にとって、そのショーツはあまりにも淫らに映った。
京子「(つーか、これで勝負下着じゃないとかエロすぎでしょ…)」
京子「(もし、勝負下着とかになったら一体、どれだけヤバいんだ…)」ゴク
今日の霞は来るべき『祭り』に向けて、屋敷を掃除し続けるつもりであった。
当然、誰かに会う予定などあるはずもなく、その下着はあくまでも何時も通りのもの。
だが、その色の落ち着きとは裏腹に、それはレースを多くあしらったものなのだ。
黒いレースの向こうに見え隠れする艶肌に、京子は無性にドキドキしてしまう。
京子「じゃ、じゃあ…下の方も拭いていくわね」
霞「…」コクン
しかし、今の京子はその下着をまじまじと見つめる余裕も、資格もない。
こうして彼女の下着を見ているのは、何も肌を重ねる為ではないのだから。
心許されているのは感じるものの、自分はあくまでも霞の家族。
恋人ではない自分がじろじろ見てはただ失礼なだけではなく、霞の信頼も裏切ってしまう。
初めて見る大人の下着に心惹かれる自分へとそう言い聞かせながら、京子は再び濡れタオルを動かしていった。
京子「(流石にもう慣れてきたからな…)」
それは勿論、霞の身体に飽きを覚えたからではなかった。
自身の理想からそのまま出てきたような霞の肢体は何度触れたところで飽きる事はない。
きっと一度抱けば、二度と忘れられないであろうとそんな予想さえ脳裏を過ぎっている。
だが、京子は今までずっとその誘惑に耐え続けてきたのだ。
理性の限界も限界まで追いつめられるような苦境は、京子の自制心をさらに強くしていく。
京子「(まぁ、また霞っぱいを拭けって言われたら即堕ちする自信はあるけど)」
だが、大一番と言っても良いその場所はもう既に乗り越えた。
噛み締めた歯茎から血が流れそうな我慢を持ってして、京子は死地から帰ってきたのである。
そんな京子にとって下半身の汗を拭き取ると言うのは決して難しい事ではなかった。
無論、油断は出来ないし、下着のインパクトは強いが、きっと乗り越えられる。
苦境の中、微かに見えたその光明に、京子は焦る事なく手を動かし続けて。
京子「(…で、問題はここだよな)」
京子が辿り着いたのは、霞の足の付根であった。
勿論、黒い下着で覆われたその先まで拭くつもりは京子にはない。
霞から強請られれば別だが、自分から触れようとするには、そこはあまりにもハードルが高すぎる。
ある種、胸の谷間に近い鬼門に目を背けても、その先にあるのは霞の太もも。
胸に負けず劣らずむっちりとしたその足は、胸に性的嗜好を向ける京子でさえ興奮をもたらすものだった。
京子「(だが…俺は絶対に負けない…!)」スー
京子「(おっぱい派の俺があの霞っぱいを乗り越えられたんだから…太ももになんて負けるはずがない…!!)」ハー
そんな自分に叱咤の声をあげながら、京子はゆっくりと息を吐く。
どれだけ強がっても、これから向かう先が、胸に負けないほどの死地である事を京子は感じ取っているのだから。
興奮を抑える事にも慣れ、光明が見えてきたとは言え、決して気を抜ける場所ではない。
寧ろ、全力を持ってして挑まなければ、即座に理性を打ち砕かれてしまうのだとそんな予感が背筋を這い上がってきていた。
京子「(よし…行くぞォ!!)」ス
霞「んあ…っ♪」
そのまま心の中で勢いをつけた京子は、ゆっくりと霞の内股に濡れタオルを侵入させていく。
瞬間、霞が感じるのはタオルの冷たさではなく、性的な快感。
乳頭から離れてからずっと無縁であったその感覚は、乳首の時よりもずっとハッキリとしている。
メスの本能にも、そして自分自身にも『近い』その快感に、霞の顔は再び赤く染まっていった。
霞「(ま、また…私…っ♪)」カァァ
小蒔とは違い、霞は性教育もしっかり受けていた。
悪霊の影響もあって時折、性欲を昂ぶらせてしまう彼女は自慰の経験もあり、ある程度、自身の性感帯も把握している。
だからこそ、胸で感じてしまう自分が恥ずかしくはなっても、戸惑いを覚える事はなかった。
だが、今、彼女が快感を得ているのは胸ではなく内股。
性感帯にもほど近い場所とは言え、そこで感じる事など性経験のない霞は想像すらしていなかった。
霞「~~っ」ギュゥ
京子「ちょ…!?」ビクッ
結果、戸惑いを覚えてしまった霞の足は、京子に驚きの声をあげさせる。
その魅力的な柔肉で自身の手を挟み込むように彼女の足が閉じてしまったのだから。
拒むようにも閉じ込めるようとしているようにも思えるそれに、京子の手は逃げられない。
柔らかさと張りを共存させた極上の肉壁に、今の京子は挟まれてしまっていた。
京子「(うぉお!こ、これ…ヤバイ…!!)」
瞬間、京子の胸中に思い浮かぶのは、胸の谷間に手を差し込んだ時の感覚だった。
勿論、太ももは何時迄も沈み込むような柔らかさを持ってはいない。
だが、その分、張りを強めた肉壁が、谷間の時とは比べ物にならないほど圧迫してくるのだ。
まるで霞とはまた別の胸にに挟まれてしまったようなその感覚は、一気に京子から余裕の色を失わせる。
京子「か、霞ちゃん、足を開けてくれないかしら…」
霞「…」フルフル
自然、若干、どもってしまう京子の言葉に、霞は首を左右に振って応えた。
無論、彼女としてもそうやって京子の手を挟み込むのは本意ではない。
京子の邪魔になる上に、京子を挟み込む太ももから快感を得てしまうのだから。
そんな自分に強い羞恥を感じる霞は、京子の手を解放するのが一番だと分かっていた。
霞「(で、でも、もし…もし、私の下着が濡れちゃったりしていたら…)」
それでも足から力を緩める事が出来ないのは、彼女の心に浮かぶ一抹の不安だった。
熱で何時もよりも敏感になった霞は、自分の手で身体を弄るよりもずっと感じてしまっている。
流石にまだまだ絶頂には程遠いが、女としての部分は間違いなく反応しているだろう。
それがもし、外へと漏れだし、あまつさえ下着に浮かんでしまったらどうなるのか。
霞「(…死ぬ。絶対に死んじゃう…)」
恥ずか死。
霞の脳裏に浮かぶその言葉は、決して冗談ではなかった。
そもそも今でさえ霞は顔から火が出そうなほど恥ずかしがっているのだから。
この上、自分が快感を得ていた事まで知られたら、もう死ぬしかない。
そのような黒歴史を抱えて生きるなど不可能だと霞は心からそう思っていた。
京子「…じゃあ、ちょっと強引にいっちゃうわね」グイ
霞「んんっ♪」ビクン
そんな霞の不安も幾らか言葉を交わせばなくなったかもしれない。
だが、今の京子に言葉を尽くしているような余裕はまったく残ってはいなかった。
まるで閉じ込めるようにして圧迫されている手から、魅惑的と言っても良い太ももの感触が伝わってくるのだから。
幾らか慣れてきたとは言え、胸の谷間を彷彿とさせるその感覚に、京子が耐えられるはずがない。
霞「(き、京子ちゃん…力…強い…♪)」
だからこそ、強引にでもその場所を突破しようとする京子に、霞の身体は甘い声をあげてしまう。
元々、彼女は自身を優しく撫で、汗を拭きとってくれる京子の手が大好きなのだ。
そんな手を太ももで挟み込むだけでも気持ち良いのに、こうして撫でられてしまっている。
自分の我儘を受け入れた上で、力強くそれを乗り越えようとする京子に身体の奥から甘い疼きが広がっていった。
京子「(…なんかさっきから霞さんの声、さらにエロくなってねぇか…?)」
それに合わせて霞の口から漏れる声は、とてもエロティックなものだった。
どう聞いても嬌声にしか思えないその甘さは、健全な青少年にとってはセイレーンの歌声同然。
ついついそっちに心惹かれてしまいそうになる自分を、京子は理性の鎖で引っ張り続ける。
ともすれば欲望に負けてしまいそうな自分を引きずるその作業は、決して楽しいものではない。
だが、ここで自分が負けてしまった時、どれほどの少女が落胆し、そして傷つくかを思えば、絶対に負ける訳にはいかなかった。
京子「(そんな事よりも今は…)」
京子「よいしょ…っと」ズボ
霞「きゅん…っ♪」
そう自分に言い聞かせながらの戦いは、それほど長くは続かない。
流石に谷間に比べれば大きいとは言え、内股の範囲はそう大きくはないのだから。
あくまでも霞の汗を拭き取るのが目的な京子は、数分も経たずに霞の太ももから手とタオルを抜き出す。
瞬間、太ももの間を強引に動かれるのとはまた違った感覚に、彼女の口から小さな鳴き声が漏れた。
霞「(…も、もう終わっちゃったの…)」
それと同時に霞が感じるのは落胆の色だった。
それは勿論、霞が強引な京子の手に内心、喜んでいたからこそ。
元々、彼女はその心と身体を預けられる相手をずっと待ち望んでいたのだから。
嗜虐性よりも被虐性を強く本能に秘める彼女にとって、京子の強引さは喜ばしいものだった。
霞「(…い、いや、そ、それで良かったのよね、うん…)」
とは言え、そんな自分をそう簡単に受け入れられるはずがない。
幼い頃から天児として過ごしてきた霞はずっと自身に我慢を強いてきたのだから。
誰の目も惹きつけるようなそのカリスマ性とは裏腹に、彼女はあまり自分と向き合うのが得意とは言えない。
そうやって自分と向き合ってしまえば、すぐさま崩れてしまいそうなほど、彼女は多くのものを抱え込んでいたのだから。
京子「(な…何とか燃え尽きる前に終わったか…)」
それでも京子が霞の事を促せば、彼女も自分へと向き合う事が出来ただろう。
今や誰よりも信頼し、依存している京子の言葉は、霞にとってとても大きいものなのだから。
しかし、今の京子はそのように言葉を紡ぐ余裕などない。
霞の太ももの間はあまりにも気持ち良すぎて、そして辛い環境だったのだから。
谷間に負けず劣らずその精神力をゴリゴリと削られた今の京子は、何処か残念そうな色を浮かべる霞に気づけない。
その理性が白く燃え尽きる前に終わった安堵で胸中が一杯だった。
京子「(ま、ある意味、これが山場で、後はもう殆ど消化試合だろうし…)」
京子は既に胸と太ももと言った二つの山場を乗り越えてきている。
その上、身体の前面はほぼ拭き終わり、残るは背中だけとなっている状態だった。
そこまで何とか理性の灯を消さなかった京子にとって、それは希望混じりの言葉。
もうコレ以上、山場など来ないで欲しいという切実な願いがそこには込められていた。
―― そしてその願いの通り、何事もなく作業は進んで。
京子「…ふぅ」
十数分後、京子は霞に寝間着を着せ終わっていた。
勿論、それはさっきまで彼女が着ていたものではない。
汗を思いっきり吸った寝間着では霞も気持ち悪いだろうと京子が着替えさせたものだった。
無論、ほぼ全裸に近い霞を着替えさせると言うのは健全な男子高校生には辛い作業ではあったが ――
京子「(…なんつーか、今にも悟りを開けそうな気分だ)」
京子の精神は既に摩耗しきっていた。
それこそ火をつければ一瞬で燃え上がり、そして灰になってしまいそうなほどに。
自身の持つ心のエネルギーを全て自制へと注ぎ込んだ今の京子は疲れきってしまっている。
限界を突破したその疲労は、京子の心を鈍くさせ、欲情を遠ざけていた。
京子「お疲れ様、霞ちゃん、とっても良い子だったわよ」
霞「ん…♪」
だが、その疲労を霞に見せる訳にはいかなかった。
京子にとって地獄と言っても良い仕事が終わった後も、彼女は京子に母性を求め続けているのだから。
その瞳に甘えの色を浮かべて自分を見上げる霞の期待に応えない訳にはいかない。
薬が効いて彼女がまた眠るまでは、何とか頼れる京子でいよう。
今にも弱音が漏れそうな自分の心にそう言い聞かせながら、京子は優しく霞の頭を撫でていた。
京子「さて、それじゃまたお布団被って寝ちゃいましょうね」
霞「……やだ」フルフル
そのまま霞に布団を被せる京子に彼女は首を振って応えた。
勿論、霞もそれが一番であろう事くらいは分かっている。
幾ら甘えん坊になったとは言え、考える事を放棄した訳ではないのだから。
じわじわと効き始める薬が霞に眠気をもたらし始めている今、拒絶するのは我儘でしかない。
霞「…添い寝、して」
京子「え?」
そう理解しながらも京子に否と返したのは、霞の心がまだ満足していないからだ。
勿論、自身の身体を優しく拭き取り、着替えまでしてくれた京子に感謝している。
今ならばきっとさっきよりも気持ち良く眠れるであろうという確信が霞の中にはあった。
だが、今の彼女は眠気よりも京子に甘えたい気持ちの方が大きかったのである。
霞「(…それに私、もう知っちゃったんだもの)」
京子に抱きしめられる暖かさと嬉しさ。
それはただ頭を撫でられるよりもずっと大きく、そして霞の心を完全に虜にしてしまっていた。
どうせ眠るのであれば、京子に抱きしめられながら蕩けるように眠ってしまいたい。
その欲求はもう甘えん坊になった彼女に抑えきれるものではなかった。
京子「…えっと、じゃあ、横にお布団を」
霞「やあ…」
彼女の横に自分の布団を敷こうとする京子に霞は唇を尖らせる。
彼女が望んでいるのはそんな誤魔化しのような添い寝ではないのだから。
一つの布団の中、身体をくっつけるような甘くて気持ちの良い添い寝が欲しい。
そう思う彼女は自分の望みをよりハッキリとした形にしようと口を開いて。
霞「…京子ちゃん…抱枕になって…」
京子「(アカン)」
その言葉は京子の逃げ場を完全に失わせた。
瞬間、京子の背筋に浮かぶのはじっとりとした冷や汗。
それは勿論、霞の望みが、既に摩耗しきった京子の精神をより追い詰めるようなものだったからだ。
欲情を覚えないほど疲れてしまったとはいえ、それは身体を拭いたり、着替えさせたりした時の話。
極上と言っても良い霞の身体に抱きつかれてしまった時にも欲情が湧き上がって来ないかは正直、自信がなかった。
京子「(…だけど、逃げられない…!!)」
だからこそ、京子は霞の望みに気づきながらも、そこから逃げようとしていた。
隣で布団を敷く事を添い寝として認めてもらおうとしたのである。
だが、そんな京子の望みはあっさりと砕かれ、よりハッキリとした要求をつきつけられてしまった。
誤解や曲解の余地がないその言葉に、京子の肩は小さく落ちる。
京子「…分かったわ」
京子「でも、私もお風呂とか入りたいし、寝るまでで良いかしら?」
霞「…じゃあ、私も京子ちゃんとお風呂入る…」ギュ
京子「(もう勘弁してください…)」
霞の我儘を受け入れながらも、逃げ場を用意しようとする京子に、霞はついていこうとする。
それは勿論、今の霞が一時たりとも京子の側から離れたくないからだ。
自分の起きている限り、ずっと側で甘やかし続けて欲しい。
そんな我儘を隠そうともしないその声に、京子の心が限界を訴える。
京子「(ここで霞さんと一緒に風呂とか…絶対に我慢出来ねぇよ)」
今の霞は体調不良もあるが、それ以上に甘えん坊となっている。
自分の欲求を全て我儘に変えようとする今の霞は、間違いなく風呂でも自分に甘えてくるだろう。
髪や顔ならばともかく、その他の部分 ―― 胸や太もも、尻なども洗う事になってしまうはず。
さっき乗り越えたはずの死地が再び蘇るようなその想像は、思い浮かべるだけでも京子の精神力を削っていく。
京子「ダメよ。熱があるのにお風呂に入っちゃったら、また辛くなっちゃうでしょう?」
霞「…ぅー」
京子「唸ってもダメです」
何より、それは霞の体調を上向かせるどころか逆効果になってしまう可能性が高いのだ。
彼女の我儘を極力、叶えてあげたいと思っている京子にとって、一番大事なのは霞の体調。
それに悪影響を及ぼしかねないと思えば、その我儘を受け入れてやる事は出来ない。
例え、それに残念そうな声を霞が漏らしても、頑として首を縦には振らなかった。
京子「…まぁ、私はあんまり長湯するタイプじゃないから霞ちゃんが寝てる間に帰ってくるわ」
京子「だから、聞き分けて頂戴、ね?」ナデナデ
霞「………………うん」
そんな京子に、霞は我儘を言い続けたりはしなかった。
彼女は甘えん坊ではあるが、京子がこれまで自身の我儘を極力、叶えてくれている事くらいは分かっている。
そんな京子がこうして強く否と告げるのだから、駄々っ子になったところで無駄。
それは京子にとって決して譲れないラインである以上、幾ら言葉を尽くしても譲歩を引き出す事が出来ないだろう。
一見、状況に流されやすくてもその芯だけは流されない京子の性格を、霞は良く理解していた。
霞「その代わり、治ったら一緒にお風呂、入ってくれる…?」
京子「えぇ。勿論よ」
とは言え、霞はそれで大人しく逃げ帰ったりはしない。
今、譲歩を引き出す事が出来ないのは、自身の体調が悪い所為。
ならば、それが治った後に約束を取り付ける事は可能なはず。
そう思って見上げる霞の言葉に、京子は優しく頷いた。
京子「(…ま、まぁ…今日じゃないなら大丈夫…だよな)」
京子「(混浴自体は割りとしてるし…きっと耐えられるだろ)」
京子「(そもそも霞さん自身、忘れる…というかなかった事にする可能性もあるし…)」
何処か余裕を感じさせるその仕草とは裏腹に、京子の内心は大きく揺れ動いていた。
勿論、京子はこれまで春や小蒔達と何度も混浴してきたが、霞はまた別格なのだから。
その性格からスタイル、顔立ちまで全てが好みと言っても良い相手との混浴に、心踊る自分と恐れる自分がいる。
まるでその心が真っ二つに割れるようなその感覚を表に出さないまま、京子はゆっくりと霞から手を離した。
霞「ぁ…」
京子「じゃあ、添い寝の前にもう一個掛け布団出しちゃいましょうか」
京子「二人で入って隙間でも空いちゃったら大変だものね」ニコ
霞「…」コクン
瞬間、寂しそうな顔をする霞に京子は優しく微笑んだ。
寂しがったり心配する必要はないのだと言うようなその表情に霞は小さく頷く。
無論、京子を引き止めたい気持ちは決して小さいものではないが、今の京子は添い寝の準備に入っているのだ。
京子との添い寝を早く迎える為にもここは大人しくしておいた方が良い、と彼女は自分に言い聞かせる。
京子「っしょっと」
そんな霞から離れた京子は部屋の押し入れを開き、中から布団を取り出す。
来客用兼予備としてどの部屋にも常備されているそれは京子の腕の中でも収まりきらないほど大きい。
だが、その中に詰まっているのは最高級の羽毛ばかりなのだ。
その見た目からは想像も出来ないほど軽いその布団を京子は難なく霞の元へと運び、彼女へと優しく掛けた。
霞「…京子ちゃん」ジィ
京子「(うあー…)」
その間にも膨れ上がっていく甘い期待。
今か今かと京子との添い寝を待ち望む霞の視線は、とても熱っぽいものになっている。
その上、自身を呼ぶ霞の声には甘えと媚がたっぷりと込められているのだから、京子が平静でいられるはずがない。
自分は今、霞に性的な誘惑をされているのではないか。
あくまでも彼女が望んでいるのは添い寝だと分かっているものの、そんな言葉が京子の脳裏を過ってしまう。
京子「ふふ。大丈夫よ、焦らないで」
京子「すぐに霞ちゃんの抱枕になってあげるから」
霞「ん…♪」
無論、その狼狽を、京子は今更、表に出したりはしなかった。
既に京子はそれ以上の修羅場を乗り越えているのだから。
あくまでも『須賀京子』としての顔を崩さず、霞へと近づいていく。
そんな京子に胸中から浮かぶ期待と喜びを強めた霞は、その顔を甘く蕩けさせた。
京子「それじゃお邪魔しま」
霞「京子ちゃん…」ダキッ
京子「わ…っ!?」
そんな霞が京子の事を大人しく待っていられるはずがなかった。
その布団の縁を持ち上げ、中へと入り込もうとする京子に一も二もなく抱きついてしまう。
まるで久しぶりに会った主人に甘えるようなその姿は、流石の京子も予想外だった。
ついついその口から驚きの声をあげて、身体を強張らせてしまう。
京子「(わ、分かってたとは言え…ヤバ過ぎるだろ…)」
強張りを見せる京子の身体とは裏腹に、霞の身体はとても柔らかかった。
その全身から女性らしさをアピールするようなその身体は、寝間着一枚では到底、防ぎきれない。
特に京子が並々ならぬ興味を向ける胸はその豊満さと、乳首の存在を伝えてくるのだ。
ついさっき自分を死ぬほど苦しめた魔乳がすぐそこにあるかと思うと、京子は頭の中がクラクラするような感覚を覚える。
霞「京子…ちゃぁ…ん…♥」ギュゥ
京子「(げふっ)」
その上、霞の抱擁にはまったくの遠慮がない。
その全身で甘えるようにして京子に抱きついてきているのだ。
腕だけではなく足までも絡めるその姿に、京子の下半身で欲情の色が灯る。
疲れきった精神からは無縁であったはずのそれが、再び京子の中で蘇ったのだ。
京子「…もう。幾ら何でも焦りすぎよ」
京子「ほら、もうちょっとそっちに行かないと…二人とも布団に入れないわよ」
霞「んふぅ…♪」
並桁外れた女らしさに呼び起こされるようなそれを、京子は何とか胸の内へと抑えこむ。
その代わり、口にした言葉に、しかし、霞は従う気配を見せなかった。
今、彼女の目の前にあるのはずっと待ち望んでいた京子の身体なのだから。
身体を拭いて貰っている最中も、忘れる事が出来なかったその暖かさと逞しさから離れる事など考えられない。
京子「…仕方ないわね」ギュゥ
霞「あ…ぁ♥」ブル
そんな霞の身体を京子の腕は力強く抱きしめ返した。
自身の身体を硬い胸板に押し付けるようなそれに霞の口から喜悦の声が漏れる。
こんなに我儘でどうしようもない自分を京子は抱きしめ返してくれている。
それを背中に回る腕の逞しさから感じ取った霞はその肌を小さく震わせた。
京子「そぉい!」
霞「きゃん…!?」
瞬間、京子の身体がグイっと霞を押し込んでいく。
半ば布団から転がり出た身体を無理矢理、中へと押しこむようなそれに霞は驚きの声をあげた。
京子に受け入れて貰えた喜びに、さっきの彼女は胸と頭が一杯だったのだから。
京子の言葉も半ば聞き逃してしまっていた霞がその動きを予想出来るはずない。
京子「はい。これで大丈夫ね」ナデナデ
霞「ふぁ…ぁ…♥」
だが、その驚きは長くは続かない。
強引に霞を押し込んだ京子は慈しむように彼女の背中を撫で始めたのだから。
驚かせてごめんね、と謝罪の色を込めたそれに、霞が悪感情を抱く訳がない。
驚きも何もかもを喜びと安堵に上書きされた彼女はその喉を甘く震わせた。
京子「(さて、それじゃあこのまま寝ましょうか…と言いたいところだけれど)」
霞「ん…ん…っ♪」スリスリ
京子「(…そう簡単に眠ってくれないよなぁ)」」
無論、胸中を一気に塗り替えるほどの感情がそう簡単になくなるはずがない。
それどころか今の霞は甘えるようにして身をすり寄せる度に、その喜びと安堵を強めていた。
まるで子猫のように目を細めて甘えるその仕草に、眠気はまったく感じられない。
まだまだ甘えたりないのだとそう全身で訴えているようだった。
京子「…じゃあ、何かお話しましょうか」
霞「…お話…?」
京子「えぇ」
そのまま甘えられ続けられたら霞が眠るよりも先に身体の方が反応してしまう。
そう思った京子が口にしたのは、ただの誤魔化しだけではなかった。
日頃から六女仙の纏め役として忙しく動く霞は、他の少女に比べれば京子との接点が薄い。
春達とは色々と込み入った話をする事もあるが、彼女とはあまりそういう話をする機会がなかったのだ。
京子「(まぁ、勿論、最低限の事は知っているけれど)」
今まではその最低限の話で事足りていた。
霞が六女仙の纏め役であり、小蒔の天児であるというだけで十分だったのである。
だが、こうして霞に甘えられている今、それだけでは到底、事足りない。
もっと彼女が心から甘えられるようになる為にも、霞の事を良く知らなければ。
そんな気持ちはずっと京子の中にもあったのである。
京子「出来れば霞ちゃんの事を聞かせてくれないかしら?」
霞「…あんまり面白くはないと思う」
京子「面白い話なんてしなくても良いのよ」
京子「私は霞ちゃんの事をもっと良く知りたいだけだもの」
京子「貴女の事を知れば、もっと安らぎを与えてあげられるかもしれないから」ナデナデ
霞「……」
それを素直に言葉へと変える京子に、霞はすぐさま応えられなかった。
彼女自身、自分の過去があまり面白いものではない事を理解しているのだから。
ともすれば不幸自慢になりかねないそれは、彼女にとってもあまり思い返したいものではない。
寧ろ、自身の辛さから目を逸らす為にも、ずっと心の奥底に閉じ込めておきたいと言っても良かった。
霞「(…でも、今なら)」
今の霞は紛れも無く幸せだ。
勿論、身体の火照りやダルさは未だに根強く、気分は決して良いとは言えない。
だが、今の彼女にはそんな自分を癒やし、慈しみ、愛してくれる京子がいるのだ。
その胸の中で全身を絡みつかせている今の彼女にとって、それは決して乗り越えられないものではない。
霞「…ん」コクン
京子「ありがとう。でも、無理はしなくても良いのよ」
僅かな逡巡の後、首肯を返す霞に、京子は気遣いの言葉を口にする。
ほんの数秒の間に霞の表情に浮かんだ躊躇いに、京子は気づいていたのだ。
彼女の為と思って踏み込んだが、もしかしたら逆効果であったかもしれない。
そう思う京子にとって、自身の提案は決してゴリ押しするものではなかった。
霞「…ううん。私も嬉しいから良いわ」
京子「嬉しい?」
霞「京子ちゃんがそんな風に私の事を気にしてくれていて嬉しいの」ニコ
しかし、既に霞の心は決まっていた。
自分をこんなにも甘やかしてくれる京子に、彼女は深い感謝と依存の念を抱いているのだから。
思い返したくはない辛い過去でも、京子の為ならば向き合う事が出来る。
だからこそ、霞はその口から漏らす声を舌っ足らずで子どもっぽいものから普段の口調へと変えて。
霞「…そうね。じゃあ、私がここに来る前の事から話しましょうか」
霞「と言ってもあんまり語る事が多い訳じゃないんだけどね」
霞「ここに来る前の私はごく普通の女の子だったから」
京子「…」
ごく普通の女の子。
その短い言葉に込められた想いは、複雑と言っても良いものだった。
今の自分はもうそれとはかけ離れてしまっているからこそ、そこには羨望と痛みが込められている。
それを感じ取りながらも、京子は口を挟まない。
ここで自分が何を言っても霞の境遇は変えられず、またその痛みを取り去る事も出来ないのだから。
どれだけ耳障りの良い言葉であっても、今はただの邪魔にしかならない事を京子は理解していた。
霞「勿論、巫女としての修行とかはあったわ」
霞「これでも石戸本家の一人娘であったし、私自身、才能もあったみたいだから」
霞「お祖母様と同じように六女仙になれるようにって、物心ついた時から修行させられていたかしら」
京子「(…一人娘…?)」
そんな京子の心に、霞の言葉が引っかかる。
それは勿論、霞を姉と呼び慕う明星の存在が、彼女の言葉から感じ取れなかったからだ。
二人を血の繋がった姉妹だとそう思い込んでいた京子は、内心、首を傾げる。
だが、ポツリポツリと漏らされる霞の言葉に口を挟む訳にはいかず、胸中に浮かんだその疑問を保留にした。
霞「ただ、お母様もお父様もいたし、遊びにも行かせて貰えていた」
霞「巫女としての修行がある以外は、多分、他の子と殆ど変わらなかったと思うわ」
霞「……でも」
そこで霞は言葉を区切り、その顔に暗いものを浮かばせる。
少し変わってはいても、『普通』から大きく逸脱してはいなかった人生。
今も色褪せる事なく、記憶にハッキリと残るその人生は、そう長くは続かない。
彼女が物心ついて少しした頃から、それは大きく歪み始める。
霞「…神代の巫女を継いだ小蒔ちゃんは、初お披露目の日から飛び抜けた才能を見せていたわ」
霞「石戸では六女仙確定だとまで言われていた私でさえ…足元にも及ばないくらいに」
霞「でも、その才能を小蒔ちゃんはちゃんと制御する事が出来なかった」
霞「…だから、お祖母様達は何が何でも小蒔ちゃんを護らなければってそう思ったんでしょう」
霞「神代の巫女は、私達の象徴であり、そして希望でもあるのだから当然ね」
当然と告げながらも、霞の言葉には苦々しいものが浮かんでいた。
それがどれだけ仕方がない事だと理解していても、自身が生け贄に捧げられた事は変わらない。
自身の父母も祖母も、自分よりも神代の巫女である小蒔の方を選んだのだから。
それに対して、未だ整理できない複雑な気持ちが彼女の中にも残っていた。
霞「…そして私は天児になった」
霞「私は小蒔ちゃんとも血が近かったし、何より、小蒔ちゃんの天児になれるほど才能があったのは私しかいなかったから」
霞「…でも、それは決して楽な道じゃなかったわ」
そこで霞が遠い目をするのは、その当時の事を思い返しているからだった。
両親や祖母の期待に応える為、天児の役目を引き受けた自分。
その瞬間から自身の肩に逃れ得ぬ重荷がのしかかり、苦難が始まったのだから。
勿論、霞はその選択に関して後悔はしていない。
もし、再びあの時に戻ったとしても同じ選択をするだろうと断言出来る。
霞「(…でも、もし、あそこで私が嫌だと言っていたら)」
今頃、どんな人生を送っていただろうか。
きっと義務から逃げたとして六女仙候補から外されてしまっていた事だろう。
初美はともかく、春や巴達とはまったく接点が出来なかったかもしれない。
だが、その代わり、自分は『普通の少女』として生きる事が出来た。
神代とも六女仙とも縁の薄い一人の少女として生きるその人生に、霞はどうしても思いを馳せてしまう。
霞「…最初は体調を崩しやすくなる程度だったかしら」
霞「でも、そうやって体調を崩している時間はドンドン長くなっていったわ」
霞「小蒔ちゃんは人並み以上に悪霊を惹きつける体質だったし、天児となった私も同じ」
霞「その二人分を一人で背負うんだから…まだ慣れていない私のキャパシティなんてあっという間にオーバーしちゃった」
それでも霞の言葉は止まらない。
もしもでその胸中を埋め尽くしながらも、その口はポツリポツリと言葉を漏らしていく。
それは独白のようなその言葉を、彼女が自分の意思で口にしていないからだ。
ずっと胸の奥底で押し込めていたそれは、今までの鬱憤を晴らすかのように彼女の喉を這い上がっていく。
自分勝手に動く喉や舌を霞は止めないのではなく、止められないのだ。
霞「一時は部屋から殆ど出れなかったくらい辛かったわ」
霞「勿論、お祖母様は私の為に悪霊を祓ったり結界を張ってくれていたけれど…」
霞「大本が体質である以上、それはただの焼け石に水にしかならなくて…」
霞「…本当の意味で誰も助けてはくれなかった」
結果、彼女の言葉はドンドンと本音に近いものになっていく。
本当は助けて欲しかったのだと、天児になって後悔していたのだと。
そんな気持ちをまったく隠さずに独白を続けてしまう。
勿論、そんな自分に微かな抵抗があるものの、あくまでもそれだけ。
京子に応えて、完全にその抑圧を開けてしまった今、それは何の効果も発揮しなかった。
霞「でもね、まったく嫌って訳ではなかったの」
霞「私が寝込んでいる最中、小蒔ちゃんが周りの目を盗んで私のところに来てくれて…」
霞「苦しんでいる私が少しでも楽になれるよう話をしたり、看病したりしてくれていたわ」
霞「…だから、私は…天児になっても良いと思った」
霞「こんなに良い子の為ならば、多少、辛くても頑張れるんだって…そう思ったの」
京子「…霞ちゃん」
それでも小蒔の事を語る彼女の声は明るいものだった。
まるで辛く苦しい記憶の中、それだけは素晴らしいものであるかのように声音も優しくなっている。
以前、京子が霞から似たような話を聞いた時よりも暖かいその声に、京子の胸も暖かくなった。
どれだけ彼女が小蒔の事を大事に思っているかがその言葉から伝わってくるのだから。
聞いているだけでも胸が苦しくなるような環境の中でも、霞は素晴らしいものを見つける事が出来た。
それを家族として嬉しく思う京子の口から、霞の名前が漏れ出てしまう。
霞「……でも…でもね、ダメなの」
京子「…え?」
しかし、霞の声に浮かんだ暖かさは一気に冷え込んでいく。
何処か春の陽気を彷彿とさせる声から、冬の北極のような冷たいものへ。
急降下と言う言葉さえ生易しく感じられるほどのその変化に、京子はついていく事が出来ない。
以前、京子が天児の話を聞いた時は、そのような冷たさはまったく出てこなかったのだから。
小蒔の事を語る霞の口から、そんな冷たい言葉が出るなんて京子は想像すらしていなかった。
霞「…勿論、私は小蒔ちゃんの事が大事よ」
霞「本当に辛くて苦しかった時期に手を差し伸べようとしてくれた事は忘れていない」
霞「…けれど、どうしても…どうしてもふとした時に考えてしまうの」
霞「もし…もし、小蒔ちゃんがいなければ、私はどうなっていたんだろうって」
京子「っ」
瞬間、京子が言葉を失うのは、京子もまた同じような事を考えた事があるからだ。
勿論、小蒔自身は今時珍しいほどに純真で、優しい良い子だと分かっている。
だが、その存在によって人生を狂わされた身としては、やはりどうしても心の何処かで思ってしまう。
小蒔さえいなければ、自分の人生は滅茶苦茶になる事はなかったのに。
心の底で京子がそう思った回数は一度や二度ではなかった。
霞「…きっと私は天児になる事はなかった」
霞「気持ちの悪い悪霊に四六時中張り付かれて…気を抜けない日々を送る事はなかった」
霞「お父様やお母様から引き離される事もなかったし、体調を崩した時だって辛いと素直に言えた」
霞「誰かに助けてって…そう言えるような…普通の女の子だったはずなのよ…」ギュゥ
そんな京子の前で霞は独白を続けていく。
それはさっきの暖かさからは信じられないほど暗く、そして複雑なものだった。
ただ単純に小蒔の事を責めているのとはまた違ったそれに京子は何と言えば良いのか分からない。
独白を続けながら縋り付くようにして力を強める霞の気持ちが今の京子には胸が詰まるほど共感出来てしまうのだ。
霞「…私、嫌な子なの」
霞「私が自分で決めた事なのに…それで良いって自分で言ったはずなのに…」
霞「自分の不幸や苦しさを…小蒔ちゃんの所為にしてしまってる…」
霞「そんな自分を隠す為に…私は小蒔ちゃんに優しくして…」
霞「それで何とか心のバランスを保ってるような醜い女…」
勿論、それは霞が一生、胸の内に閉じ込めておくつもりだった言葉だった。
恩人である小蒔に優しくする事全てがカモフラージュだなどと分かっていても認められるものではない。
だが、今の霞は理性や抑圧が半ば吹っ飛んでしまった状態にあるのだ。
普段は目を逸らしている醜くて嫌な自分すら、独白の中に浮かんでいってしまう。
霞「だから…」
京子「それは違うわ」
霞「…え?」
だが、そんな霞の言葉を京子は認めなかった。
未だ独白を続けようとする彼女を遮るようにして否定の言葉を口にする。
その声音は何時もよりも硬く、そして強い。
まるでハッキリと否を突きつけるようなその声に、霞は思わず疑問の声を漏らしてしまう。
京子「霞ちゃんが小蒔ちゃんに優しくする理由に、後ろ暗さが絡んでいるのかもしれない」
京子「でも、決してそれだけじゃないでしょう?」
京子「いいえ。それだけのはずがないわ」
京子「だって、さっき霞ちゃん自身が、どれだけ小蒔ちゃんの事が大事なのかを口にしていたんだもの」
京子「後ろ暗さや代替行為なんて関係なしに、霞ちゃんは小蒔ちゃんの事を想っているはずよ」
その言葉は強い確信に満ちていた。
京子は霞と小蒔がどれほど仲良しであるかをずっと側で見続けていたのだから。
彼女の独白そのものを否定するつもりはないが、決してそれだけとは思えない。
ともすれば明星よりも姉妹らしい二人の様子から察するに、それはあくまでもオマケ。
霞の澄んだ心の中で悪目立ちしているだけだと京子は思う。
霞「…でも、一度や二度じゃないのよ」
霞「ううん…さっきだって…私はきっと心の何処かで思っていたわ」
霞「小蒔ちゃんさえいなければこんなに辛くなる事なんてなかったのにって最低な事を考えていて…」
京子「そもそもそれが間違いなのよ」
霞「…間違い?」
京子「えぇ。だって、霞ちゃんが辛いのは小蒔ちゃんの所為だって言うのは間違いじゃないでしょう?」
霞「っ」
瞬間、霞の胸中に嫌なものが過った。
自身の嫌な部分をただ、受け入れるのではなく肯定しようとする言葉。
それが霞の中で安堵と結びつかないのは、それがあまりにも甘美過ぎるからこそ。
ともすれば、それに溺れ、自分を見失ってしまいそうな言葉に霞はすぐさま反論する事が出来ない。
何か言わなければと頭では分かっているものの、喉で言葉が詰まってしまい、京子に主導権を奪われてしまう。
京子「でも、小蒔ちゃんは何も知らず、のほほんとしてる」
京子「霞ちゃんがどうしてこうも苦しんでいるのかさえあの子は分かっていない」
京子「護られている事も知らずに、一人だけ優しい皆に囲まれて楽しそうにしている」
京子「そんな小蒔ちゃんに不公平だって、ズルいって思うのは当然でしょう?」
京子「本当に嫌な子なのは霞ちゃんじゃなくて、小蒔ちゃんの方なんだから」
霞「京子ちゃん…っ」
それでも霞はその言葉を見過ごす事は出来なかった。
無論、それに共感を覚えてしまう自分と言うのは彼女の中にもいる。
猛毒と言っても良いその甘さに心惹かれないと言えば、嘘になってしまうだろう。
しかし、それでも彼女が口にしたのは怒りの声であった。
小蒔は決して京子が言っているような嫌な子ではない。
そんな思いを込めて口から放たれたそれに、京子はニコリと笑って。
京子「それが答えよ」
霞「…………え」
そのまま京子から齎される言葉に、霞はすぐさま反応する事が出来ない。
一体、京子の指している『それ』とは何なのか。
そして『答え』とは一体、何を意味するのか。
普段であればすぐさま感じ取れるであろうそれが、体調を崩した今の霞には分からない。
結果、その顔に疑問を浮かべる霞の前で、京子はゆっくりと口を開く。
京子「私は今、霞ちゃんが自分で醜いと言っていた部分を肯定し、甘やかす言葉を口にしたわ」
京子「もし、霞ちゃんの中で醜い自分が大きければ、きっと私に反論出来なかったはず」
京子「或いはその言葉に溺れて、小蒔ちゃんの事を害そうとしていたかもしれない」
京子「でも、霞ちゃんはそうはならなかった」
京子「自分を肯定してくれる私の言葉に、怒りを持って応えたでしょう?」
霞「ぁ…」
まるで種を明かすような京子の言葉に、霞の中でも理解が広がっていく。
自身をとことん甘やかすような京子の言葉は自分の中から本音を引き出す為のモノ。
自分が小蒔の事をどれだけ想っているのかを改めて知らせる為に、京子はわざと悪役になったのだ
京子「そうやって私に怒れる時点で、霞ちゃんの気持ちは本物よ」
京子「ただ自己正当化の為に小蒔ちゃんの事を想っているんじゃない」
京子「その優しさは間違っていないって私が保証してあげるわ」ナデナデ
霞「…ん♪」スリ
それに申し訳無さと感謝を覚えながらも、意味ある言葉を放つ事が出来ない霞。
そんな彼女の背中を京子はゆっくりと撫でて続ける。
自己嫌悪に沈んでいた彼女の心を慰撫するようなそれはとても心地良いものだった。
その優しい言葉も相まって、独白の中、知らず知らずに力が入っていた身体も弛緩していく。
まるで心だけではなく身体ごと蕩けさせるようなそれに霞が耐えられるはずがない。
その口から甘い声を漏らしながら、身体をすり寄せてしまう。
霞「(…京子ちゃん、ありがとう)」
まるで身体全体で気持ちを伝えようとするその抱擁の中、霞は感謝の言葉を胸中に浮かべる。
勿論、彼女とてそれをハッキリと言葉にした方が良いと頭では分かっているのだ。
だが、京子から与えられる心地良さは、霞の芯にまで入り込んでしまっている。
とうの昔にその虜になってしまった彼女は、再び心の中を甘えん坊に戻らせてしまっていた。
霞「(…それに)」
京子はきっと自分の気持ちを感じ取ってくれている。
甘えにも似たその言葉を霞が思い浮かべるのは、自身を見下ろす京子の目がとても優しいものだからだ。
彼女の独白を経て、より暖かくなったその視線に、嫌なものなどまったくない。
自身を包み込むような母性を強く浮かべたそれに、霞の心は満たされていく。
霞「(さっきよりも私の胸、一杯になっちゃってるわ)」
それは勿論、京子の言葉によって、霞は痛みを一つ乗り越える事が出来たからだ。
自身の胸中にずっと巣食い、抑えこむしかなかった醜い自分。
自分でさえ決して認められなかったそれを京子は受け入れ、そして同時に否定してくれた。
結果、無意識の内に感じていた自己嫌悪が減り、その空いたスペースに歓喜の色が入り込んでくる。
霞「(…これも間違いなく京子ちゃんのお陰ね)」
内心、ずっと抑えこみ、そして肥大化を続けてきた自己嫌悪。
しかし、それは今、彼女の中で信じられないほど小さくなってしまっていた。
無論、まだまだ消滅するには程遠いが、しかし、それはもう決して直視出来ないものではない。
京子の言葉によって、自身が小蒔に向ける一番大きな感情が何なのかを彼女は悟ったのだから。
例え、そういう自分がいたとしても、決してそれだけではないと今の霞は胸を張る事が出来る。
霞「(まったく…私をどれだけダメにしちゃうつもりなのかしら)」
そんな胸の中で霞が思い浮かべるのは甘い言葉であった。
まるで呆れるようなその響きとは裏腹に、京子への好意が溢れるほどつめ込まれた言葉。
それは彼女自身、その心の奥底まで曝け出してしまったからだ。
自分の中で最も醜い部分まで受け入れてもらった霞にブレーキはまったくない。
ここからはもうとことんまで堕ちるだけなのだとそんな確信さえ彼女の中にはあった。
霞「(…でも、怖くなんかないわ)」
こうして添い寝をして貰う前から、後戻り出来るラインは踏み越えてしまっている。
父性と母性の両方を感じさせる京子の優しさに霞の心は完全に溺れてしまっているのだから。
京子がほんのすこし離れるだけでも辛くなってしまう今の彼女が、彼女が堕ちる事に恐怖など覚えるはずがない。
霞にとって、それは既に堕ちきったと思った場所が底ではなかっただけの事。
さらに深いところに堕ちたとしても京子は自分を受け入れてくれるのだから何も問題はない。
―― それは明星がかつて自身に対して抱いていたものと似通っている事を、霞は知らない。
今の霞は自身の価値観の中枢に京子が入り込んでしまっている。
京子が受け入れてくれるのであれば、京子がそう言ってくれたのだから。
そんな言葉を持ってしてあらゆる苦難を乗り越えられるほどに霞は京子に依存している。
無論、そんな自分を彼女も自覚しているものの、それを改めようとは思わない。
寧ろ、責任感の強い京子が逃げられなくなるように、何もかもを預けてしまった方が良いのではないか。
そんな打算めいた言葉を思い浮かべる心の中で、京子の存在がドンドンと大きくなっていく。
京子「まぁ、それでも自分が許せないと言うのであれば、私が霞ちゃんに罰をあげる」
霞「…罰?」ドキ
そんな霞にとって、京子の言葉は胸がときめくものだった。
元々、彼女は被虐的な性癖を胸に秘めている上、その依存は最早、病的なレベルにまで達しているのだから。
京子ならば本当に嫌な罰を与えたりはしないという絶大な信頼感も相まって、霞の心は揺れ動く。
そこには罰に心惹かれてしまう自分への自己嫌悪などまったくない。
その心の中枢まで京子に侵された霞にとって、京子に罰を下されて喜ぶのはごくごく当たり前の事だった。
霞「…お仕置きしてくれるの?」
京子「えぇ。霞ちゃんが自分を許せるように私が思いっきり罰してあげるわ」
霞「~~っ♪」ブル
自然、その声にも興奮の色が浮かぶ霞に、京子が優しく頷く。
その内容とは裏腹に優しいその声音は、彼女の背筋に寒気を走らせた。
まるでその声だけでも感じてしまうようなそれに、今の霞は耐えられない。
心だけではなく身体でも京子のお仕置きを欲しがってしまう。
霞「…じゃあ、して…♪」
霞「思いっきり…私にお仕置き…ください…♥」
京子「(…あ、あっれぇ…)」
その自分をウットリとした表情で口にする霞の前で京子は内心、首を傾げた。
無論、さっき彼女に対して罰を下すと言ったその言葉は決して嘘ではない。
霞の中から完全に自己嫌悪を駆逐する為にも、何かしら罰があった方が良いだろう。
そしてそれが出来るのは、彼女から直接、話を聞かせてもらった自分しかいない。
そう思ったが故に、京子は罰と言う言葉を口にしたのである。
京子「(流石にここまでやらしい顔を見せられるのは想定してねぇよ…)」
京子にとって想定外であったのは、自身にお仕置きを強請る霞の表情があまりにも性的過ぎる事だ。
今、霞が浮かべているのは、甘えん坊の子どもを彷彿とさせる穏やかで安心しきった表情ではない。
何処か陶酔すら感じさせる霞の顔には、性的な興奮が混ざっている。
無論、それは決して大きいものではないが、しかし、健全な男子高校生として無視出来るものではない。
京子「(つ、つーか…この流れって…)」ゴク
性的な興奮と共に、お仕置きを求める霞。
それに京子の脳裏が浮かべるのは、邪な言葉であった。
このままお仕置きと称して、彼女に対して淫らな事が出来るのではないか。
今も尚、キリキリと引き絞られる理性をもう解放してやっても良いのではないか。
さっきタオル越しに味わったメスの身体を思う存分、貪れるのではないか。
そんな言葉がじわじわと本能から浮かび上がってくる。
京子「(い、いや、駄目だ駄目だ)」
京子「(霞さんがこんな顔を俺に晒してくれている意味を考えろよ)」
京子「(そんな事を俺がしないってそう思ってくれているからこそ、こんなに甘えてくれてるんじゃないか)」
京子「(そうやって積み上げてきた信頼を、ここで全部、フイにする気か?)」
とは言え、その言葉に従う理由など京子の中にはなかった。
無論、京子の理性は順調に限界を超えつつあり、そろそろ下半身に血液が集まり始めている。
今はまだ女装用の下着の中で押さえつけられているムスコもそう遠くない内に勃起してしまうだろう。
だが、京子にとって自身の欲情よりも、霞が向けてくれる無上の信頼の方が遥かに大事なものだったのだ。
ようやく身も心も甘える事が出来る相手を得た彼女の期待はどうしても裏切れない。
京子「…じゃあ、まず…」
霞「…」ドキドキ
京子「このまま寝ちゃわないとね」
霞「…え?」
だからこそ、欲望を振りきって口にしたその言葉に、霞の口から声が漏れる。
微かに不満の色を浮かべたそれは、勿論、彼女にとってそれが物足りないものだったからだ。
尻を叩かれるくらいを想像していた霞からすれば、そのお仕置きは甘すぎる。
もっと酷い事をしてくれても良いのに、と言うのが今の正直な気持ちであった。
京子「まだあんまり眠くないのは分かるし、お話したい気持ちは私もあるけれど」
京子「でも、今の霞ちゃんは本調子じゃないんだから、今は寝るのを優先しないとね」
霞「…………」コクン
だが、霞はそれを素直に言葉に出来なかった。
無論、そうやってお仕置きを求めるのがはしたないという気持ちは彼女の中でも大きい。
しかし、それ以上に霞の欲求を阻んだのは、自身にお仕置きの選択権などないからだ。
そうやって強請ってしまった時点で、それはもう罰ではなくご褒美になってしまう。
優しさを持ってして罰を下そうとした京子の意図に反するのは、霞にとっても本意ではなかった。
霞「(…それに京子ちゃんのお陰で安心したからかしら)」
京子に諭して貰った時からゆっくりと胸中の中で広がっていた安堵。
それはもう彼女の中で最高潮に達していた。
今までよりもさらに強く、そして身近に感じられるその暖かさに、身体の底から眠気が湧き上がってくる。
薬の効果も相まってじわじわと膨れ上がるそれは、今すぐ眠りに堕ちるほど強いものではない。
しかし、そう遠くない内に意識が眠気に囚われてしまうのが目に見えていた。
霞「じゃあ…」
京子「えぇ。眠るまでずっと霞ちゃんの事を撫でて…抱きしめておいてあげる」
霞「んふ…♪」
そんな彼女が言わんとする事を京子は正確に感じ取る。
再び甘えん坊と化した霞が何を望むかなど今更、考えるまでもない。
より深く、より甘くを求めているのだろうと応えたその声に、彼女はそっと顔を綻ばせた。
自分が言葉にしなくても、京子は求めを理解してくれている。
まるで心の中が繋がっているようなそれが、霞にはとても嬉しかった。
霞「…京子ちゃん、好き…♥」
霞「だぁいすき…ぃ♥」
京子「…っ」ドキ
その上、京子は嘘を吐いたりしない。
その言葉が事実であると霞の身体に教えるように優しく抱きしめ、暖かく撫でてくれる。
仕草から母性を、触れ合った身体から父性を感じさせてくれる京子に、霞の心はさらに堕ちていった。
底なし沼へとハマったその身体がさらに沈み込んでいくその感覚は、彼女の唇に一つの言葉を登らせる。
子どものような拙い好意をたっぷりと詰め込んだそれに京子の胸も高鳴り、一瞬、言葉を失ってしまう。
京子「(お、落ち着け。これはそういう意味じゃないはずだ)」
異性としての好意と受け取るには、その言葉はあまりにも幼すぎた。
それは子どもが両親や友人に向けるような好き以上の意味はない。
しかし、そう分かっていても、京子の心は大きく揺さぶられた。
これまで生きてきた中で、京子はハッキリと異性から好きと言われた事などないのだから。
それが告白ではないと分かっていても、胸のときめきは止められなかった。
京子「……えぇ。私も霞ちゃんの事愛してるわ」
霞「~~っ♥」キュゥゥン
それでもずっと無言でいる訳にはいかない。
それは自身が期待していたような愛の告白ではないが、好意を伝えてくれたのは事実なのだから。
自分もまた正直に、いや、それよりも過激にその胸の内を言葉にしよう。
そう思って口にした京子の言葉に、霞の胸は締め付けられるような疼きを覚えた。
霞「(…こ、これ…ぇ♪)」
その感覚は今まで彼女が感じてきたものとは一線を画するものだった。
嬉しさと甘さ、そして切なさで胸の奥が詰まるようなその感覚は一言で言い表す事が出来ない。
一瞬、呼吸さえも忘れてしまうそれは、しかし、霞にとって決して嫌なものではなかった。
寧ろ、胸が詰まるほどの大きな感情の波はあっという間に彼女の意識を飲み込み、その甘い感覚に溺れさせていく。
霞「もっと…ぉ♥」
霞「もっと言ってぇ…♪」
京子「好きよ。愛してる」
霞「ふぁ…あぁぁ…♥」ブルル
結果、オネダリを始める霞に、京子は甘い言葉で応えた。
今までの優しげなものよりも幾分、声のトーンを落としたそれは囁きに近くなっている。
それを耳元で聞かされる彼女にとって、その声はもう媚薬と言っても良いものだった。
耳の奥から脳へと入り込んでくるその甘い声音に彼女の身体は興奮と快感を覚えるのだから。
思わず肩が震えるほどのそれらは、霞の心を完全に鷲掴みにしていた。
京子「私は霞ちゃんの事を何時も想ってるわ」
京子「大好きな霞ちゃんの為ならなんだって出来る」
霞「も…とぉ…♥」トローン
無論、まるで霞を口説いているようなその言葉に京子は並々ならぬ羞恥を感じている。
こんな風に甘く囁くなんて自分のキャラではないと声高に主張したいくらいだった。
だが、告白の虜となってしまった霞は満足せず、もっともっとと甘いオネダリを繰り返す。
今にも蕩けそうなくらい目元を潤ませた霞に、京子は否と返す訳にはいかず ――
―― 結局、霞が満足して眠るまでずっとその耳元で愛の言葉を囁き続けたのだった。
Qなんで霞さんが幼児退行してんの?
A霞さんにパパって言われると興奮するやん?
そして、どうして私は150レスも投下してるのか…
これが分からないですが昼から出勤なので寝ます(´・ω・`)オヤスミナサイ
乙です
相変わらず凄い分量だ
しかし京太郎、その内人格分裂起こさんだろうな
ペットボトルじゃなくて吸い飲みぐらいあっても良さそうだと思った。(小並感)
3年組のスタンス説明回の霞さん→絶対京子ちゃんなんかに負けたりしない(キリッ
今回の霞さん→京子ちゃんには勝てなかったよ…
というかすごく長いです…乙ー
興奮しました(真顔)
病気が直ったらどうなるか気になるな
乙
霞さんに能力が戻ったとき悪霊の一部が
「霞たんペロペロ」から「京子たんペロペロ」になってたりしたら
霞さんは抵抗できるだろうか
>>450
悪霊が霞さんに取り付いて京子のお払い棒をペロペロするだって?!(意訳
あ、乙です
いつも濃厚な描写ありがとうございます!
乙です
霞さん可愛すぎる
それはそうとして京子(というか>>1)ははっちゃんをなんだと思ってやがんだッ!!!
乙。
丸一スレ程メインヒロインの筈の春の姿を見てないような...あれぇ?
霞さん正気に戻った時が大変そうよねー。
はっちゃんにでも見られようものなら...一緒に甘やかすのもいいな!
あとこの本編、最後にエロやらなかったら京太郎も読者も>>1もリビドーの持ってき場所がないな...
乙ですー
後ろ暗いものを抱えての自罰的というか被虐的な感じが……とてもいいですね
エロ描写はもちろんとして、こういう内面の濃厚な描写が好みです
しかし霞ちゃんでこれなら、M明言されてるはっちゃんはどうなってしまうのか
乙
よく耐えたわ
お仕置きは日常のなかにあるから意味がある
非日常のなかのお仕置きは、非日常に埋もれてしまって効果が弱い
よって、霞ちゃんお仕置きシーンは日常シーンに挿入されるべき
あと、今回の京太郎は勃起はしてないらしいが、我慢汁でパンツにシミを作ってそう
春は‘メイン’ヒロインなので他のキャラがヒロインやってても問題ありませんね。
というかいちいちうざい
地味に京子ちゃんがお祓い(物理)しているのだが
東北から生き霊来てるよwww
おつー
てかここの京ちゃんも寺生まれだったのか…(戦慄)
>>446
京太郎なら耐えられないけど京子なら耐えられるっていう時点で割りとヤバイ気がします
>>447
哺乳瓶かペットボトルかを悩んだんですが、確かに吸飲みだと打倒かつ病人にも優しいですし、そっちの方が良かったですね
もし、また看病イベントなど書く事があったら参考にします(´・ω・`)完全に思いつかなかった…
>>448
霞さんが巴さんに向かっていっていた言葉の殆どが自分にも適用出来ると言う見事なブーメランでございました
長さに関しては本当にごめんなさい(´・ω・`)身体を拭くところはもうちょい省けた気がするけど、思いっきり書きたかったんや…
>>449
まぁ、実際、パパって言わせてないんですけどね!!
次回の投下で霞さんのヒロイン回が終わりますが、その後にもう一回ヒロイン回を予定してるんでその時にはきっと(´・ω・`)
>>450>>451
ちょっと考えてみましたが、一応、小蒔ちゃん達がいる時は耐えられるんじゃないでしょうか
が、二人っきりになった瞬間、タガが外れて大型犬のように飛びつきながらペロペロスリスリする霞さんしか見えない…!
>>453
コメディリリーフ要因です(真顔)
まぁ、なんというか話を回すのに姉さん女房的ロリックスターって言うのはすごい重宝するのです
真面目キャラばっかりじゃ、やっぱり話が回しにくいので…(´・ω・`)話の空気を抜く意味でも有り難いキャラです
結果、京ちゃんの扱いが雑のようになっていますが、それだけ信頼を寄せているって事だと受け取って思ってもらえると幸いです
>>454
い、今は霞さんヒロイン回だから(震え声)
正気に戻った時なんかは次回の投下を楽しみにしていただけると嬉しいです
はっちゃんに見られたら…多分、空気呼んで黙ってるんじゃないですかね
はっちゃんが石戸(祖母)が嫌いな理由も霞に対する仕打ちって言うのが大きいですし
なんだかんだ言って霞さんの事が好きなんで、きっとオナニーを目撃してしまった母親のように生暖かい目を向けてくれるはずです
>>455
うへへへ、ありがとうございますありがとうございます
濃厚にしすぎて若干、クドいと自分では思ってしまうので、そう言っていただけるととてもうれしいです
後、はっちゃんは跳ねっ返り型で、霞さんは依存ご奉仕型なのでMの方向性が違うかなーと
多分、両方ともお仕置きされるのは好きですが(断言)
>>456>>457
多分、この一日でインポになってもおかしくないくらい我慢してますからね!
まぁ、それでもパンツの中は我慢汁でグチョグチョドロドロで、春やわっきゅん相手だとそのまま襲われてもおかしくないくらいオスの匂いをさせてたんでしょう
そして>>457の前半部分が名言過ぎる…
お仕置きは有耶無耶にするつもりでしたが、そこまで見たいのならやろうじゃありませんか…!(´・ω・`)まぁ、次回ヒロイン回に回しますが
>>459>>459
ヒロインは姫様と六女仙の皆だよ!!
咲ちゃん?アレはラスボス枠だから…(震え声)
>>460>>461>>462
お祓い(物理)くらい出来ないと一瞬でぶっ倒れる環境だからね、仕方ないね
設定的には寺で生まれててもおかしくはないですが、あのスレに勝てる気がしないのでそんな設定は追加しません
そもそもここ女の子とイチャイチャするスレであって、怪異やら妖魔やら戦うスレじゃねぇしな!!!!
と言いつつ久しぶりに早起き出来たんでハオの話進めようと想いましたが、やっぱ違和感がハンパないのでちょっと>>257から書き直します(´・ω・`)ゴメンネ
京太郎「じゃあ…ここは?」キュ
ハオ「く…うぅぅううっ♪」
そんな期待に応えるように彼の指が私の乳首を摘みました。
親指と人差指の間でしっかり掴むようなそれに私の口は我慢出来ません。
まるで焦らすような愛撫を受け続けていたのもあって、乳首は敏感になってしまっているのですから。
乳首をつまむ彼の指先に抵抗するようにビンビンになってしまいます。
京太郎「うわ…すご…」
ハオ「うぅぅ…っ♪」
京太郎君の口から感嘆の声が漏れるのは…きっとそれが予想以上だからなのでしょう。
実際、私だって、そこまで硬くなった自分の乳首を見た事がありません。
私にだって自分で自分を慰めた経験はありますが、それでもこんな風になった事は一度としてありませんでした。
そもそもこんなに快感を得る事すら私にとっては初めてだったのです。
京太郎「これ…感じてくれてるんだよな」
京太郎「俺の指で…こんなに乳首ビンビンになるくらい」
ハオ「~~っ♪」カァァ
そんな私に京太郎君の言葉に応える余裕なんてありませんでした。
今の私は乳首から胸の奥に突き刺さるような初めての快感に、驚き戸惑っているのですから。
無論、それは嫌なものではありませんが…でも、今までこういった事とは無縁であった私にとってはあまりにも強すぎるもので。
まるで心が自分を護ろうとするように、口から勝手に漏れてしまいそうな声を止めてしまうのです。
ハオ「(そ、それに…もうそんなの分かりきってるじゃないですか…♪)」
私はもう京太郎君に気持ち良いって伝えたのです。
彼の手で撫でられるのが良いって…ハッキリと言葉にしてしまったのでした。
それよりももっと気持ち良い事をされているのに、私が感じないはずがありません。
実際、こうしている今も私の乳首からはビリビリとした快感が胸の奥まで響いているのですから。
京太郎「…ハオって結構、エッチ?」
ハオ「し、知りません、そんなの…っ!」プイッ
それでもその言葉は見過ごせませんでした。
だって…私はエッチでも何でもないんですから。
これまで自慰をしてもろくに感じられなかった私が、エッチであるはずがありません。
こうして私が乳首をピンと張らせてしまっているのも、京太郎君がエッチ過ぎる所為なのです。
ハオ「…と言うか…京太郎君の方こそ手慣れてません…?」
京太郎「まぁ…男は色々と勉強してるからな」
…多分、その言葉は嘘じゃないんでしょう。
ここで嘘を吐くほど京太郎君は不誠実な人ではありません。
…しかし、なんだか胸がモヤモヤするのは、きっと私が重い女だからなのでしょう。
そうやって彼が『勉強』した本にさえ、私は嫉妬してしまっているのです。
ハオ「だ、ダメです」
京太郎「え?」
ハオ「こ、これからは…そういう勉強は禁止です…っ」カァァ
その嫉妬は思いの外、ハッキリと言葉になってしまいました。
…そんな風に恋人を縛り付けようとする自分に微かな自己嫌悪が胸の中から浮かんできます。
ですが、だからと言って、私はその言葉を否定しようとは思えませんでした。
自分の重さに感じる自己嫌悪よりも、彼が私以外の女に興奮する事の方が嫌だったのです。
ハオ「か、代わりに…私の身体の事、勉強してください…♪」
ハオ「私だったら…あ、あの…何時でも大丈夫ですから…♥」
…そんな私に差し出せるものなんて、自分の体くらいしかありませんでした。
まぁ…その、それはもう恋人となった彼のモノ同然だと言っても良いのですけれども…。
でも…ほら、やっぱりハッキリと言葉にするのとしないのとでは違いますし…。
流石に年頃の男の子にそういう事を禁止して終わりと言うのはあまりにも酷過ぎますからこれも致し方無い事で…。
京太郎「ハオ…っ!」ダキッ
ハオ「ひあ…っ♪」
ってそんな纏まりもない事を思い浮かべてる間に京太郎くんが抱きついて来ちゃってます。
さっき私の胸に夢中になってた時みたいに力強くて甘い抱擁…。
あまりにも突然過ぎてちょっぴり驚きましたけど、でも、嫌じゃありません。
寧ろ、そうやって身体中で彼の事を感じると、快感とはまた違う感覚が私の胸を打って ――
京太郎「…んな事言われたら…マジであちこち勉強するぞ」
ハオ「んあ…ぁ…♪」ブル
…その上、京太郎君は私の耳元で囁いてくるんです。
熱くて低いその声は…彼が限界を迎えている事を私に伝えてきました。
きっとここで受容の言葉を返せば…彼は本当に私の事を『勉強』してくれるでしょう。
私が何処が感じるのか、どうすれば一番、イイのか。
それら全部が…彼によって暴かれてしまうんです。
ハオ「良いですよ…♥」
ハオ「思いっきり…私の事、勉強してください…♪」
ハオ「京太郎君になら…私の全部、見せても良いですから…♥」
きっと恥ずかしいところも沢山、知られてしまいます。
変態チックな事も…されてしまうんでしょう。
そう思いながらも…私の言葉は止まりませんでした。
京太郎君の事を独占出来るなら…私だけの人になってくれるならそれで良い。
そんな風に思ってしまうくらいに…私は京太郎君の事を好きになっていたんです。
京太郎「…ゴクッ……じ、じゃあ…」キュ
ハオ「ひぃんっ♪」
勿論、そんな私の言葉に京太郎くんが止まれるはずがありません。
私の前で生唾を飲み込んだ彼は再び私の乳首をいじり始めました。
でも、それはさっきとは違って、力強く、そして遠慮のないもの。
まるで私の乳首が自分のものだと言うように…ギュっと指に力を込められてしまうのです。
京太郎「…こうすると…どうだ?」クリ
ハオ「んあぁ…っ♪」
そのまま彼の指はクリクリと動き始めます。
まるで指の間で転がすようなその動きに私の乳首はすぐさま反応してしまいました。
乳首を微かに捻るそれが気持ち良いと甘い快感を脳へと伝えてくるのです。
ただつままれるよりもずっと刺激的で気持ち良いそれは私の口から嬌声を漏らさせました。
京太郎「ほら、ちゃんと答えてくれないと勉強出来ないだろ」
ハオ「い、意地悪…ぅ♥」
京太郎君はそんな私に容赦してくれません。
その顔に意地悪な表情を浮かべながら、私をせっついてくるのです。
普段の優しい彼からは考えられないその顔に…しかし、私は嫌なものをまったく感じませんでした。
いえ、それどころか、私の胸はキュンと唸り、疼きのような感覚を乳首に伝えてくるのです。
ハオ「(これも…きっと京太郎君の事が好きだから…♥)」
ハオ「(…私は意地悪されて喜ぶなんて変態じゃありません…♪)」
ハオ「(あくまでもごくごくノーマルで…ぇ♪)」
…それもこれも全部、私が京太郎君の事を愛しているからです。
その意地悪な表情一つでさえときめいてしまうくらいに…溺れてしまっているだけ。
だから…私は変態 ―― 俗に言うえむ…と言う奴ではありません。
私としてはもっと甘くてイチャイチャしたエッチが良いんです。
ハオ「き、気持ち…良いです…よぉ…♥」
…でも、京太郎君の言葉には一理あるのは確かです。
勉強と言うものは、ただ問題を解くだけで終わりではないのですから。
それが正しいのか否かをきちんと答え合わせしなければいけません。
その答えを彼に伝えられるのが私だけである以上、私は京太郎くんに応える義務があるのです。
ハオ「(それに…まぁ、気持ち良いくらいは言っちゃってしまっていますし…)」
今更、恥ずかしがるようなものではない…とは言えません。
やっぱり恥ずかしいですし、私の中で抵抗感と言うものは途切れませんでした。
でも、それは決して私にとって口に出来ない言葉ではないのです。
一度、口にしている以上、心の中のハードルは大きく下がっていました。
京太郎「どんな風に?」
ハオ「も、もぉ…ぉ♪」
でも、京太郎君はその言葉だけで満足しようとはしてくれません。
その顔に浮かぶ意地悪な表情を強めながら、私に踏み込んでくるのです。
ただ、気持ち良いだけではなくその感覚まで聞き出そうとする彼に私は拗ねるような声をあげました。
だって、それは初めての女の子に聞くにはあまりにもデリカシーがない言葉なのですから。
初めてのエッチと言うものにそれなりの夢を抱いている私としては、あまり面白くはありません。
ハオ「…胸の奥にビリビリって来る感じ…です…♪」
ハオ「まるで乳首の中に気持ち良いスイッチがあるみたいに…ずっとビリビリってしててぇ…♪」
…それでもこうして素直に応えてしまうのは惚れた弱みと言う奴なのでしょう。
えぇ、決して私がそうやって自分の気持ちよさを口にする事にハマってしまったなんて事はありません。
まぁ…確かにその…さっき気持ち良いと応えた時にドキドキしたのは事実ですが、あくまでもそれだけ。
それが癖になってしまうほど私は変態ではないのですから。
京太郎「じゃあ、もっと強くした方が良いのか?」
ハオ「は…ぃ♪きっと…良いと思い…ます…♥」
…だから、これも決してオネダリなんかじゃありません。
ただ、京太郎君の疑問に応えてあげただけ。
確かに胸中に期待はありましたが…それは彼の言葉がなければ形にならないものですし…。
初めてである私が、自分からオネダリするなんてそんなエッチな事ありえるはずが…。
京太郎「…ん」ギュゥ
ハオ「ひうぅうぅうううっ♪」
ふあぁぁ…これ…気持ち…良い…。
さっきよりも激しいビリビリが…私の胸の中で暴れてるのが分かります…。
ちょっと乳首の圧力が強くなっただけなのに…こんなに感じてしまうなんて…。
正直、期待以上…です…♪
京太郎「結構、力入れてるけど…十分、気持ちよさそうだし…」ズリ
ハオ「あぁあぁああぁああっ♪♪」
ちょ、ちょっと待って…ください…っ。
私、まだこの快感に慣れてないんです。
京太郎君の指で押しつぶされそうなくらいギュってされるのまだ不慣れなんですから…っ。
だから、今、そのまま指でズリズリされたら…か、感じちゃいます。
口からエッチな声飛び出しちゃうくらい…気持ち良いのが止まらないんですよ…ぉ♥
京太郎「すっげぇ反応…」
京太郎「そんなに良いのか?」ズリズリ
ハオ「ふあっ♪ひあぁああぁっ♥」
よ…良すぎです…っ。
は、初めての女の子にはハードルが高すぎるくらいなんですから…!
でも、私の口、エッチな声止まらなくて…沢山、身体感じちゃって…。
あぁ…もう恥ずかしい…。
こんなの…恥ずかしすぎます…っ!
ハオ「(で…も…ぉ♪)」
そんな恥ずかしい私を見てるのが…京太郎君だけだからでしょうか。
恥ずかしいと思いながらも、私は決して嫌じゃありませんでした。
いえ、それどころか、私の身体に惹かれるようにして、心もまた喜んでいて…。
彼の前で痴態を晒す恥ずかしさに顔が真っ赤になっているのに…どうしても拒めないんです。
京太郎「ハオの身体、ホント、エロ過ぎ…」
京太郎「こんなの見せられたら…もっとヤりたくなるだろ…!」パク
ハオ「~~~っ♥」
あ…あぁぁ…っ♪
京太郎くんが…私の乳首…右の乳首を…♥
パクって口にしてくれて…た、食べられ…ちゃってます…♪
私の乳首…指じゃなくて京太郎君の暖かい粘膜に包まれて…♪
京太郎「じゅる」
ハオ「んあぁぁあっ♪♪」
す…吸われてます…♥
私の乳首を…まるで赤ちゃんみたいに…ぃ♪
京太郎くんがじゅるじゅるっていやらしい音を立てながら…ぁ♪
やだ…これ…気持ち…良い…♥
指とはまた違うヌルヌルとした気持ち良さが…中で膨れ上がって…っ♪
ハオ「(おっぱい…別々…ぅ♪)」
ハオ「(まったく違う快感で…両方愛されてる…♥)」
その間も…私の左の乳首は京太郎くんにクリクリってされてて…♪
意地悪で刺激的な指の快感と…ジュルジュルでドロドロな口の快感が頭の中で混ざり合ってます…♥
両方から同じ気持ちよさを貰うよりも…こっちの方がずっとずっとエッチで…♪
まるで相乗効果を発揮しているように…私の身体、感じちゃってます…ぅ♪
ハオ「(しかも…京太郎君、必死で吸っていて…♥)」
勿論、京太郎君は赤ちゃんなんかじゃありません…♪
その心も身体も立派な男の人です…♥
でも…やっぱり男の人にとって胸というのは特別…なんでしょうか…♪
こうして私の胸を弄りながら、乳首を吸う彼の表情は何処か必死に見えていました…♥
ハオ「(京太郎君、可愛い…♥)」ギュゥ
京太郎「わぷっ」
意地悪な彼が見せてくれる何処か甘え混じりのその表情…♥
それを嫌がれる女の子は…きっと世の中にいないと思います♥
少なくとも、私は…今の京太郎くんが可愛くて可愛くて仕方がありませんでした…♪
まるで赤ちゃんのように必死な彼の顔を、思わず抱き寄せてしまうくらいに…♥
京太郎「ふぅ…」グリ
ハオ「きゅぅうっ♪♪」
でも…京太郎君はそれが気に入らなかったのでしょうか…♪
私の胸に顔を埋める彼は…私の乳首をギュっと捻りあげます…♥
ただ、指の間で転がすのではなく、無理矢理、こね回すそれに…しかし、私は腕を離したりしませんでした…♥
今の京太郎君はまるで赤子を思わせるような可愛さを見せてくれているのですから…♪
愛しい人が見せるその幼さに、胸の奥をキュンとうならせる私が、簡単に引くはずがありません…♥
ハオ「もっと…良いんですよ…♥」
ハオ「私に…甘えてくれても…♪」
京太郎「じゅるるるる」
ハオ「ひああぁっ♪」
代わりに彼の耳元で囁やけば…京太郎君は私の乳首を再び吸い上げます♥
さっきより強いそれは私に不満を訴えているようでした…♪
まるで赤ん坊扱いしないでくれと言うようなそれは…とってもエッチなんですから…♥
私の口からも甘い嬌声が漏れ出て、ついつい足まで震えが走ってしまいます…♪
京太郎「れろぉ…」
ハオ「は…うぅぅ…ぅっ♪」
とは言え、京太郎君もずっと私の乳首を吸い続ける訳にはいきません…♪
彼は私よりもずっと強靭ではありますが、呼吸と無縁ではいられないのですから…♪
乳首と共に吸い込んだ空気を吐き出そうとその鼻が動くのが分かります♪
ですが、彼はその間も責め手を止めたりはしません…♥
その舌をねっとりと動かし…乳輪を舐め回してくれるのです…♥
ハオ「(これ…すっごく…すっごくエッチです…♥)」
母乳を飲むのに必死な赤ちゃんには決して出来ないエッチな舌使い…♪
私をお母さんではなく、女として感じさせようとするそれに…私の身体がゾクゾクを止めません…♥
京太郎君の舌が乳輪をじっとりと味わう度に…その先っぽに疼きを走らせてしまうんです…♪
まるで今やっているのが授乳ではなくエッチなのだと改めて突きつけるようなそれは快感よりも興奮を私に与えるものでした…♥
ハオ「ひんんんんっ♪♪」
勿論、そうやって疼いた乳首を京太郎君はそのままになんてしません…♪
その肺の中身を吐き出した彼は再び私の乳首を吸い上げるのです…♥
ジュルジュルとグチュグチュと…そんな音が聞こえてきそうな粘膜の刺激は…たまりません…♥
さっき疼きを覚えた分、より気持ち良くさせられた身体は、モジモジと足をすりあわせてしまうんです…♪
ハオ「(も、もう私…下までびしょびしょになってます…♥)」
瞬間、クチュリと言う音が聞こえたのはきっと幻聴でしょう♪
…でも、そんな音が聞こえてもおかしくないくらいに、今の私は昂ぶっていました…♪
止まらない乳首への愛撫に…私のアソコはエッチな粘液を止められるはずがないのですから…♥
溢れでたそれらがもう下着の中いっぱいに広がり…もう少しで外に漏れ出てしまいそうなのを…ハッキリと肌で感じてしまいます…♪
ハオ「あぁあっ♪ん…ふぁあぁっ♥」
ですが…京太郎君はそんな私のアソコにまったく興味を示しませんでした…♪
まるで、今は胸の方で満足出来ているんだって言うように…私の乳首を弄ぶんです…♥
まるで牛の乳搾りみたいに乳輪を手のひらでつまみ上げ…より膨れ上がった乳首を指でゾリゾリってしごいたり…♪
口の中の乳首を舌で弾いたり…乳輪ごと思いっきり吸い付いたり…♥
エッチで意地悪なそれらに私のアソコはもっとびしょびしょに濡れてしまって…♥
京太郎「ぷあ…」
ハオ「うあぁぁあ…♥」
…京太郎君が口を離した時には…もう私はグッタリしていました…♪
勿論、彼を抱きしめていた手を離してはいませんが…あくまでもそれだけ…♪
両乳首からの刺激は、初めての私にはあまりにも強すぎるものだったんです…♥
快楽というものさえマトモに感じたことのない私はその感覚に翻弄され…ハァハァと荒い息を吐いていました…♥
京太郎「…ハオ」スッ
ハオ「あ……♥」
そんな私の腕から京太郎君は優しく抜け出します…♥
私の抱擁を拒むのではなく、ゆっくりと解かせるそれは彼の優しさが伝わってくるものでした…♪
ついさっきまで意地悪に私を責め立てていた人と同じだとは思えないそれは…私の心を甘く揺さぶります…♥
突然、私の好きな京太郎君に戻ったようなそれに…私は微かな声を漏らしてしまって…♥
京太郎「気持ち良かったか?」ナデナデ
ハオ「は…ぃ♥」
その瞬間、京太郎君は私の頭をゆっくりと撫で始めます…♥
さっきまで私の事を弄んでいたその手は…何時も通りとても優しいものでした…♥
まるで私が彼の宝物であるかのようなそれに…心の中がドキドキしちゃうのが分かります…♪
でも、今の私はその感覚に溺れていられません…♪
京太郎くんが私に問いを投げかけてきている以上、それに応えるのが私の中で優先事項なのですから…♥
京太郎「そっか。それなら良かった」
ハオ「…まぁ、ちょっと意地悪でした…けど♪」
京太郎「それはほら…なんつーかハオもそういうのが好きなのかなってさ…」メソラシ
ハオ「ふふ…♪」
…私は別にそういうのが好きな訳ではないんですけれどね…♪
出来れば普通のイチャイチャしたエッチが良いって言う気持ちは今も変わっていませんし…♥
でも…それを一々、彼に突きつける気にはならないのは…きっと目を逸らす京太郎くんが可愛らしいからでしょう♥
ちょっと罰が悪そうな彼の顔を見ると…あまり強くは出られません…♪
寧ろ、胸の奥から甘い感覚がジワァと漏れでて…何もかも許してあげたくなってしまうんです…♥
京太郎「…で、その…さ」チラッ
ハオ「~っ♪」
そんな私の前で京太郎君は視線を下へと流しました…♪
私の胸より更に下…今も下着に隠されているそこは私にとって本丸同然です…♥
そこを京太郎くんに責められたら…きっと私は陥落してしまうでしょう…♪
胸でさえこんなにも感じてしまう私が…それに耐えられる未来などあるはずないのですから♥
ハオ「…京太郎…君♥」
京太郎「…俺、そろそろ我慢出来なくて…さ」
それに恐怖を覚える私と言うのは、もう心の何処を見渡してもいませんでした…♪
勿論、痛みに対して怖がる私はいますが…あくまでもそれだけ…♪
京太郎君に堕とされてしまう事に私は決して少なくない期待を抱いていたのです…♥
好きな人をより好きになってしまうであろう瞬間を…心待ちにしていたと言っても良いかもしれません…♪
ハオ「…はい♥」
だからこそ、私は京太郎君の言葉を受け入れました…♥
そもそも、私自身、もう十分過ぎるほど準備が出来ているのですから…♪
ここから彼の事を拒む理由なんて…私にはありません…♪
今すぐにでもエッチ出来るほど私はもうびしょ濡れになっているんですから…♥
京太郎「じゃ、じゃあ…」スッ
ハオ「んふ…♥」
…そんな私の身体を京太郎君の手が下がっていきます…♪
それはさっきとは比べ物にならないほど遠慮しがちでぎこちないものでした…♥
胸の時はあんなに意地悪だった事を考えれば…やはり彼もこれから先の事に緊張しているんでしょう…♪
そう思った瞬間、私は微笑ましさを顔に浮かべてしまうのです…♥
クチュゥ
ハオ「んあっ♪♪」
けれど、その笑みは長く続きませんでした♥
京太郎君の手が私の下着に触れた瞬間、粘り気のある水音が部屋になってしまったのです…♥
それと同時に私の中を駆け上がる快感は、胸のそれよりもずっと強烈なものでした…♪
技巧を凝らして責められていた時よりも弱々しいですが…それはより私に『近い』のです…♥
まるで快感の源泉と繋がっているような場所への刺激は、私についつい甘い声を漏らさせて…♪
京太郎「…すっげぇ濡れてる」ゴクッ
ハオ「あうぅぅ…♪」
そんな私の目の前で京太郎君は生唾を飲み込みました…♥
ゴクリと言う音と喉の動きがハッキリと分かるそれは…彼も興奮してくれているんでしょう…♪
私が水音を鳴らしてしまうほどに濡れ…京太郎君の事を待ち望んでいた事に…♥
女の子の一番大事な部分まで彼に埋め尽くされる瞬間を心待ちにしていた私に欲情してくれているんです…♥
ハオ「(恥ずかしいけど…嬉しい…ぃ♥)」
無論、私は未だ理性を投げ捨てた訳ではありません♪
京太郎君の愛撫で色々と気持ち良くさせられてしまいましたが、羞恥心もまた私の中に残っているのです…♥
そんな羞恥心が欲情を感じ取られる事に疼きますが…しかし、私はそれを隠そうとはしませんでした…♪
そうやって隠したところで…彼に見つかってしまった事実は変わりませんし…何より…♥
京太郎「…」グチュ
ハオ「ふぁああぁっ♪♪」
京太郎君の…邪魔になってしまうんです…♪
そうやって隠そうとすると…私のアソコを下着越しに撫でる彼の手を妨げてしまって…♥
私の身体を『勉強』してと言った私の言葉を…翻す事にも繋がるんですから…♪
だから…ここは恥ずかしくても我慢…しないとぉ…♥
京太郎「ハオはこっちも敏感なんだな…」
京太郎「下着越しに撫でてるだけだって言うのに反応すごすぎだろ」
ハオ「きゅうぅぅ…っ♪」
うぅぅ…だって…仕方ないじゃないですかぁ…♪
私、もう準備万端なんですよ…っ♥
胸だけでもう京太郎君とエッチする準備出来ちゃったんですから…ぁ♥
それなのに、この上、アソコまで弄られたら…気持ち良くなっちゃうに決まってます…♪
乳首よりも気持ち良い場所をナデナデされててるんですから…当たり前じゃないですかぁっ♥
京太郎「これで直接触ったらどうなるのか…『勉強』させてくれないか?」
ハオ「~~~っ♥」カァァァァ
し、しかも…直接…♪
今でさえ乳首よりも強烈なのが背筋にビリビリ来てるのに…直接しちゃうんです…かぁ…♥
そ、そんな『勉強』されたら…わ、私、きっとすっごく気持ち良くなっちゃいます…ぅ♪
ただでさえグチョグチョのアソコが…もうドロドロになっちゃうに決まってますよぉ…♥
何とか軌道修正したような気がしたけどやっぱりベッドヤクザからは逃れられなかったぜ!!
それはさておき、そろそろ時間なんで出勤準備してきまーす
ちなみに次回本編投下はエピローグ的な話になる予定なので、それほどお待たせしないと思います(´・ω・`)多分
包茎短小ド下手くそよりは楽しいから良し
乙です
私、今日定時であがれたら本編投下してハオの続きも書くんだ…(フラグ)
>>490
一応、京ちゃんが逆レされる話とかも好きなんですけどねー
この前の咲ュバスの奴とか反逆者の奴とかは完全逆レオンリーですし
ただ、私の中で逆レ出来るイメージの子をあんまりエロネタで指定されないというか
基本、女の子があへあへおほぉ♥ってなるところに興奮するんで、どうしてもそっちよりになりがちというか(´・ω・`)
>>493
逆にエッチド下手で早漏な京ちゃんが何とか美穂子と付き合う事に成功するんだけど
どうしてもエッチで美穂子を満足させる事が出来なくて、悩んでいるところに久が登場し
そのまま久の元でエッチの手ほどきされる二人エッチ的なスレもアリなんじゃないかな!?
あ、一応、ちょっぴりの残業で済んだので今から投下始めます(白目)
ちなみに今回はR15くらいです(小声)
………
……
…
―― 石戸霞が目を覚ました時、既に時刻は深夜に入っていた。
霞は多少の体調不良では、その能力制御を失ったりはしない。
それどころか、並の風邪程度ならば、体調に構わず動き続ける事が出来る。
しかし、今日 ―― 正確に言えば昨日の彼女は能力の制御を完全に失ってしまっていた。
それほどまでに体調を崩した上、悪霊によって心身を削られ続けていたのである。
霞「(京子ちゃん…)」モゾ
結果、普段よりも遥かに長く熟睡していた彼女はまず真っ先に京子の姿を探す。
それは勿論、彼女の側にあった京子の温もりが今、まったく感じられないからだ。
身体の芯から蕩けさせるようなそれがなければ、彼女はもう安心出来ない。
だからこそ、霞は眠気に残る瞼を開いて。
霞「…あ」
京子「…すぅ」
瞬間、彼女の視界に京子の寝顔が映り込む。
しかし、それは彼女が望んでいたよりもずっと遠い。
京子がいるのは霞の横に敷かれた布団の中なのだから。
手を伸ばせばギリギリ届くその距離は、霞にとっては遠すぎる。
霞「…ん…」モゾモゾ
だからこそ、霞はゆっくりと布団の中を移動し始める。
まだ眠気と倦怠感が残る身体をモゾモゾと動かし、京子へと近づいていくのだ。
二人を分かつ布団の縁さえあっさりと乗り越えた霞は、そのまま京子と同じ布団へと侵入する。
瞬間、彼女の心が感じるのは自分の布団よりも暖かく、そして優しい熱だった。
霞「(京子ちゃんの熱…♪)」
その身も心も預けてしまったたった一人の体温。
それが熱となってこもる布団の中は霞にとってとても居心地の良い環境だった。
まるで冬のこたつを彷彿とさせるようなそれに、しかし、霞は止まらない。
それよりももっと素晴らしいものを得ようと身体を動かし続け、その源である京子へと抱きついた。
霞「あふぅ…♥」
瞬間、霞の口からため息が漏れる。
しかし、それは疲労や倦怠感が入り混じったものではない。
あまりにも大きな心地良さと安堵が身体の中に収まらなかったからこそのため息。
普段、自分の口から出るものとはまったく気色の違うそれに霞は思わず頬を緩めた。
霞「(…とりあえず落ち着いたけれど)」スリスリ
そのまま甘えるように京子の胸板に顔を擦り寄らせるその姿にはまったく落ち着きが無い。
その顔もまた春の日だまりで昼寝をする子猫のようなものになっているのだから。
しかし、それでも彼女の心はゆっくりと落ち着きを取り戻しつつあった。
京子への欲求を止めない身体とは裏腹に、思考は普段通りのものになっていく。
霞「(少しは体調もマシになったからかしら…ね)」
それは京子の献身によって彼女の体調が大分、快復へと進んだからだ。
勿論、身体に倦怠感は残っているが、それはさっきのように足を取られるレベルではない。
自己診断で言えば、もう普通に歩き回っても問題ない程度には霞は復調している。
勿論、ここで京子に甘やかされれば、すぐさま甘えん坊に戻るが、今の京子は熟睡中。
順調に快復しつつある彼女の思考を止めるものは何もなかった。
―― 霞自身以外には、と言う注釈がつくが。
霞「(………あ゛ぁああぁあああああ)」フルフル
瞬間、彼女の思考に浮かんできたのは、今日一日で自分が晒した醜態の数々だった。
普段は頼れるお姉さんとして見られがちな事を霞は良く自覚しているのだから。
その為にずっと強がっていた自分が今日一日で完全に壊されてしまった。
例え、今から頼れるお姉さんに戻ったとしてもただただ滑稽なだけ。
そんな言葉さえ浮かぶほどに霞は甘えきってしまったのである。
霞「(ど、どどどどど…どうしましょう…)」ギュゥ
霞「(次、京子ちゃんに会った時…どんな顔をすれば良いのかまったく分からないわ…)」ハァ♥
そんな自分に顔を真っ赤にするほど恥ずかしがりながらも、霞の手は京子の身体を放さない。
仰向けに眠る京子に手足を絡ませながら、甘い吐息を吐いていた。
その内心とはあまりにもかけ離れたそれを、霞はまったく制御出来ない。
いっそ浅ましいとさえ思える身体からは、何よりも大事な暖かさが伝わってくるのだから。
どれだけその思考が普段通りに戻ったと言っても、麻薬のようなそれを拒めるはずがない。
霞「(まぁ…勿論、京子ちゃんなら…どんな私でも受け入れてくれるでしょうけれど…)」
何より、霞の心はもう依存へと沈みきってしまったのだ。
二度と浮上できない甘い泥の中に心も身体も完全に捕まってしまっている。
そんな彼女がこの半日で得た信頼感や依存をなかった事に出来るはずがない。
京子ならば自身の何もかもを受け入れてくれると言うその気持ちは、思考が落ち着いても変わる事はなかった。
霞「(…今も京子ちゃんは京子ちゃんのままだものね)」
頭にはウィッグをつけ、顔は化粧をし、服装は巫女服のまま。
勿論、普段の京子であれば、そんなズボラはしない。
男である自分の肌は、女性よりもずっと荒れやすい事を理解しているのだから。
家に帰って来た瞬間、化粧を落とす京子の習慣から考えれば、それは決してあり得ない寝顔であった。
霞「(…これもきっと私の為)」
そんな京子が化粧をしたまま眠っているのは、霞の為であった。
彼女が起きた時、隣にいるのが男の自分ならきっと驚くであろう。
或いは、さっきまで甘えていた人物とは違う顔に、甘えるのを躊躇するかもしれない。
そう思った京子は、風呂あがりに再び化粧をしてからこうして床に就いたのである。
霞「(…一体、どれだけ私の事をダメにしちゃったら気が済むのかしら)」
寝る時でさえ自分の事を優先してくれる京子の姿に、霞の胸は甘く疼く。
キュンと胸の奥が締め付けられるようなそれは中々、収まらない。
まるで京子の優しさが嬉しくて嬉しくて堪らないのだと言うように彼女の中で甘い波を広げる。
その指先にまで響くようなその嬉しさは、羞恥で真っ赤になっていた彼女の顔を再び蕩けさせていった。
霞「(…あー…もうこれダメね)」
霞「(薄々、分かってたけど…私、堕ちちゃってるわ…)」
京子に甘やかして貰っている時は、その心地良さと嬉しさに溺れきっていた。
だが、京子が眠りにつき、そこから抜けだした今、彼女は自分の心に向き合う事が出来る。
そうやって溺れていた間、自分の中に芽生えてしまった感情。
ただ大事な家族と言うだけでは説明しきれないそれに霞はそっと肩を落とした。
霞「(巴ちゃんに思ってたこと…全部、こっちに跳ね返って来ちゃった感じかしら)」
つい半日前、霞はキッカケさえあれば巴もまた京子の事が好きになってしまうのだろうと思っていた。
元々、巴は京子に対して強い好意を向けている上に、その本質は世話焼きなのだから。
誰かの為にすぐさま無理無茶をしてみせる危なっかしい京子から目を離せるはずがない。
その上、京子の本質が男である事を理解してしまったのだから、堕ちるのもそう遠くはないだろう。
―― そんな予想はブーメランのようにして霞の元へと帰って来ていた。
京子に対して好意を向けているのは霞もまた同じだ。
そして彼女は普段から重荷を背負っている身であり、京子もまた世話焼きなのである。
そんな二人の相性が悪いはずがなく、京子はこれまで何度も霞に向かって手を差し伸べていた。
その手を今まで取る事が出来なかった霞には、ただキッカケがなかっただけ。
それが生まれてしまった今、彼女の中の好意は、ただ家族に対するものでは収まらない。
依存混じりではあれど、それは間違いなく異性に向けるものであった。
霞「(だって、すごくドキドキしちゃう…)」
霞「(胸の奥から暖かいのがトクントクンって広がるみたいに嬉しくなって…)」
霞「(身体の芯まで蕩けちゃうような暖かい感覚が…私の中に染みこんでくる…)」
霞「(…こんなの絶対に家族に向けるものじゃないわ)」
彼女の胸をときめかせるのは安堵や心地良さだけではない。
それと同量の興奮が、霞の中に広がっていた。
彼女はこれまで何度も小蒔達と抱擁してきたが、そのような興奮を覚えた事はない。
安堵や心地良さ一つとっても、家族に対するものとは一線を画するのがハッキリと分かる。
霞「(…まぁ、でも、仕方ないわよね)」
霞「(だって…私、京子ちゃんに救われちゃったんだもの)」
霞「(ずっとずっと辛くて苦しくて仕方がなかったものを引き受けてもらって…)」
霞「(嫌で嫌で仕方がなかった自分も溶かしてくれて…)」
霞「(…チョロくなっちゃうのは当然)」
そんな自分をチョロいと称しながらも、霞は決して嫌な気持ちではなかった。
普通よりもずっと重いものを背負っている自分に恋愛なんて不可能だとずっと諦めきっていたのだから。
だが、今の彼女は自身の全てを受け入れ、重荷を引き受けてくれる相手を見つけた。
世界で唯一無二と言って良い相手と、こうして出会ってしまったのである。
霞「(…離さないわ、絶対に…)」ギュゥ
これまで霞は京子をこの屋敷に縛り付ける事にあまり賛成してはいなかった。
無論、神代家が京子に向ける期待は分かっているし、その重要性は理解している。
だが、霞はそれ以上に京子の辛さに共感してしまったのだ。
彼女もまた神代家によって多くの苦難を背負わされてしまったのだから。
納得した上でその重荷を背負った自分よりも辛く苦しい京子の境遇に霞は心から同情していた。
霞「(…本当はね、京子ちゃんが出て行くって言うのなら…止めないでおこうと思ったの)」
霞「(ここが京子ちゃんにとってとても辛い場所だって言うのは私も分かっているから)」
霞「(積極的に出て良いって言うつもりはないけれど…でも、貴方が覚悟を決めたのならば話は別)」
霞「(寧ろ、京子ちゃんが見つからないように撹乱する事だって考えていたわ)」
だからこそ、霞はいざと言う時の根回しを行っていた。
再び京子が神代家から離れようとした時、その逃避行が上手くいくように心を砕いていたのである。
しかし、その気持ちはもう彼女の中から完全に消え失せてしまっていた。
砕かれた心の殻は、その代替に京子の事を強く求めていたのだから。
霞「(…でもね、京子ちゃんが悪いのよ)」
霞「(…私、重いって言ったのに…ダメになるって言ったのに…)」
霞「(それでも甘やかしちゃうから…私、もう離れられなくなっちゃったわ)」
完全に重い女になってしまった自分を省みるつもりは霞にはまったくなかった。
例えどれだけ重くなっても京子はそれを受け入れてくれる。
いや、責任を取ると言った以上、受け入れなければいけないだろう。
そんな風に責任を京子へと丸投げしながら、霞はゆっくりと京子の胸板に手を這わして。
霞「(…だから、ずっとここにいてくれるわよね、京子ちゃん)」
霞「(じゃないと…私、許さないわ)」
霞「(もし逃げたら…草の根を分けてでも…貴方の事を探しだす)」
霞「(神代なんて関係なく…私の意思で貴方の事を捕まえるわ)」チュゥ
京子「ん…」
霞「…っ」ゾク
まるで決意表明のようなその言葉と共に、霞はその唇を京子の胸板へと触れさせる。
指で開いた巫女服の間から露出した肌に落とすそのキスはとても情熱的なものだった。
その肌を思いっきり吸い込むようなそれに京子は思わず声を漏らす。
眠気混じりの所為で普段よりも甘くなったその声に、霞の背筋は冷たい興奮を湧き上がらせた。
霞「んふ…♪」
それでも構わず京子の胸板に吸い付いていた霞は、一分ほど後にゆっくりと離れる。
瞬間、彼女の口から嬉しそうな声が漏れるのは、京子の胸板にしっかりと自身の痕が残っているからこそ。
その逞しい胸板の中でハッキリと浮かぶそのキスマークは、彼女にとって契約の証だ。
京子に刻み込まれた小さな痕には京子の居場所は自分のすぐ側なのだと言う意図が込められているのだから。
―― そんなキスマークが彼女には愛しくて愛しくて仕方がない。
その小さな疵一つで京子の全てが自分のモノになったように感じるのだから。
無論、京子の立場を考えれば、自分一人で独占出来るものではない。
その上、京子の事を想っているのは一人や二人ではないのだ。
そんな彼女達を縛っているルールを、纏め役である自分が破る訳にはいかない。
その程度の理性は、依存に沈む霞の中にも残っていた。
霞「(でも、今、この瞬間だけは私だけの京子ちゃんよね…♥)」スリスリ
何より、その束縛は決して嫌なだけではなかった。
無論、もどかしさはあるが、それによって燃え上がってしまう自分と言うのは確かにいる。
だからこそ、霞はその頬を蕩けさせながら、ゆっくりと京子の胸板に顔を埋めた。
そのままスリスリとキスマークに頬ずりするその表情は多幸感すら浮かべている。
霞「ふふ、京子ちゃん…♪京子ちゃぁん…♥」
京子「…ぅ」
そんな霞から漏れるその声は完全にメスのものだった。
媚と甘えをたっぷりと込めたその声音は、聞いているだけでオスの本能を擽ってくる。
無論、眠っている京子にはその声は届かないが、その心地良さは別だ。
極上と言っても良いメスの身体が自分に擦り寄ってくるその感覚に、京子の口からは再び声が漏れて。
―― ムクムク
霞「…え?」
それに合わせるようにして京子の股間が盛り上がっていく。
それは勿論、欲情を抑えこんでいた理性が、今の京子には働いていないからだ。
その分、興奮も弱まっているものの、京子は日頃から禁欲生活を強いられている。
最近は春や小蒔が常に自室にいる事もあって性欲を発散できない京子が、霞の身体に我慢し続けられるはずがなかった。
霞「(…え、こ、これ…何?)」
霞「(硬くて大きくて熱くて…も、もしかして、これ…)」カァァァ
抱きついた足から伝わってくるその存在感はあまりにも大きすぎるものだった。
巫女服と下着越しであるものの、その熱までがジンジンと霞の肌に伝わってくる。
まるで自身の存在を声高に叫ぶようなそれに、霞の頬は紅潮を見せた。
さっき京子の胸にキスマークを残したとは言え、彼女はまだ生娘。
こうして大胆な事が出来ているのも勢いと雰囲気に呑まれているからこそだった。
霞「(ど、どどどどどうしましょう…)」
霞「(これってどう考えても…ぼ、勃起って奴…よね)」
霞「(男の人が…こ、興奮した時に起こる現象…)」ゴク
そこで霞が生唾を飲み込んでしまうのは、その興奮が何処からやってきたのかに気づいているからだ。
そのタイミングや今の状況から考えても、京子は自分の身体で興奮してくれている。
眠っているのにも関わらず、世界で唯一、オスと認めた相手が自身に欲情しているのだ。
その興奮と悦びは霞のメスの部分を呼び起こし、下腹部に甘い疼きを走らせる。
霞「(多分、我慢…してくれてたのよね)」
霞「(私に遠慮させないように…ずっと)」
それはまったく根拠の無いうぬぼれではなかった。
京子の好みが一体、どういうタイプなのかを霞は良く知っているのだから。
そんな自分が胸を完全に晒していたのだから、京子も興奮しないはずがない。
それを抑え込んでいたのは、自分が母性を求めていた所為。
自身が遠慮なく甘えられる完全無欠な母親を演じるには勃起する訳にはいかなかったのだろう。
聡明な霞がその答えに至るのにはそれほどの時間を必要とはしなかった。
霞「(…じ、じゃあ…やっぱり私がどうにかする…べきよね)」マッカ
瞬間、自身の中に浮かび上がるその言葉に、霞の頬は真っ赤に染まる。
今にも頭から湯気が出そうなそれは、勿論、その意味を彼女は良く理解しているからだ。
依存していると言っても良いほど心傾けた男の性欲処理。
熱に浮かされていた時には自分から胸を晒したとは言え、それはとても恥ずかしい事だった。
霞「(…私が治っちゃったら…きっと中々、甘えられなくなってしまうわ…)」
霞「(そもそも京子ちゃん以外にあんな姿を見せたくないし…)」モジ
しかし、それ以上に恥ずかしいのは、小蒔達に甘えん坊となってしまった自分の姿を見られる事だった。
自分からそのように振舞っていたとは言え、彼女達にとって霞は非の打ち所のない頼れるお姉さんなのだから。
そんな自分がまるで赤子のように京子に甘えているところを見られたら絶対に幻滅されてしまう。
流石に嫌悪されたりはしないだろうが、彼女達との間に微妙な空気が流れるのは今からでも目に見えていた。
霞「(…けれど、京子ちゃんの周りには大抵、小蒔ちゃんや春ちゃんの姿があって…)」
霞「(同じ部屋でも寝泊まりしている状態なんだもの…)」
霞「(こんな風に京子ちゃんを独り占め出来る時間なんて…きっと殆どなくなっちゃう)」
瞬間、彼女の心の中に浮かぶのは独占欲と嫉妬だった。
幼児退行するまで自身を甘やかしてくれた京子に、霞はもう心の底まで依存してしまっているのだから。
好意と言う言葉では物足りないその感情は、常に京子と一緒に寝ている小蒔や春への嫉妬を浮かばせる。
無論、彼女は二人の事を好ましく想っているし、また独占する必要が薄い事は理解しているが、あくまでもそれだけ。
頭とは裏腹に女となった心はどうしても京子を独り占めしたいとそう思ってしまう。
霞「(…だから、私、離れたくない…)」ギュゥ
だが、それは決して叶う事はない。
京子の未来はもう神代家によって決められてしまっているのだから。
それに否と唱えられる立場にない霞にとって、今の時間は何よりも大事なもの。
まるで万金のようなその時間を彼女が無駄に出来るはずがない。
こうして密着したら京子が興奮しすぎて辛いと分かっていても、離れられないくらいには。
―― なら答えは一つだけだろ
―― デュフフ 拙者、霞たんが乱れる姿が見たいでござるよ
―― セーックス!セーックス!!
霞「(……い、いや、流石にそれはまだ怖いわよ)」
それでも尚、ふんぎりがつかない霞の背中を押すのは霞の別人格ではない。
普段、彼女の中に巣食っている悪霊 ―― その中でも特に色情の念が強い霊達だった。
ついさっきまで京子の中に閉じ込められていたそれらは、京子が眠りに堕ちたのをキッカケにゆっくりと漏れ出し始めている。
そんな悪霊たちにとって京子と密着する霞の身体は故郷同然。
快復に伴い、天児として復活しつつある彼女の中へと入り込み始めている。
霞「(…で、でも…手なら…手ならまだ大丈夫だと思うし…)」
勿論、普段の霞ならば、そんな大胆な事は出来ない。
彼女は多少むっつりスケベではあるが、それを上回る自制心を持っているのだから。
だが、今の彼女は未だ病魔に侵された状態であり、何時もよりも理性のタガが緩い。
その上、色情霊に背中を押された彼女にとって京子の性欲処理は一種の免罪符なのだ。
そうやって膨れ上がった興奮を処理すれば、京子から離れなくても良い。
無論、その答えに恥ずかしさはなくなっていないが、それでも今の霞は手を止められない。
自分の為、そして京子の為にはこれが一番なのだとゆっくりと京子の身体を下って行き。
霞「わ…っ」ビク
瞬間、霞が声をあげてしまうのは膨れ上がった京子の下腹部が彼女の手に反応したからだ。
まるで今から気持ち良くして貰えるのが分かっているように下着の中でビクンビクンと震えている。
無論、性交渉の経験など無い霞が、その反応を予想しているはずがない。
ついつい口から驚きの声をあげ、京子の下腹部から手を離してしまう。
霞「(…お、思っていたよりも…お、大きい…)」
霞「(少なくとも、私の手よりもずっと大きくって…)」
霞「(こ、こんなのが本当に女の子の中に入るの…?)」
そんな彼女の胸中に浮かぶのは、京子の逞しさだった。
硬い腹筋や胸板よりもよりオスである事を感じさせるその大きさは敏感な手のひらから十分、伝わってきている。
思わずそのサイズを脳裏に思い描いてしまうそれに、霞は決して少なくはない不安を感じた。
いずれ京子と結ばれる為には、その逞しさを自身の中へと招き入れなければいけないのだから。
初めては痛いという知識はあるが、このサイズは痛いでは済まないのではないだろうか。
不安混じりのそんな言葉が彼女の中から消える事はなかった。
霞「(ま、まぁ…それはともかく…)」
しかし、だからと言って霞は足踏みをしていられなかった。
京子の性欲処理は、彼女にとって唯一と言っても良い大義名分なのだから。
こうして京子に甘え続ける為にも、ここで迷っている訳にはいかない。
そう言い聞かせながら霞は再び手を降ろし、京子の下腹部へと覆いかぶせる。
霞「す…すご…」
瞬間、彼女の口から言葉が漏れたのは、その大きさだけが原因ではない。
無論、改めて触れたその大きさに圧倒される気持ちは彼女の中にもある。
しかし、それ以上に霞の心を揺らしているのは、その熱と硬さだった。
さっき足で触れた時よりも熱く、そして硬くなっているその逞しさに、彼女はつい感嘆するような声が浮かんでしまう。
霞「(…これが京子ちゃんの…ううん…)」
霞「(京太郎君の…お、オチンチン…なのね…)」ドキドキ
触れている部分全てからオスの逞しさを注ぎ込まれるような感覚。
それに霞の鼓動が早くなるのは、興奮と歓喜がその中で強くなっていっているからこそ。
一時は気圧されたとは言え、霞はもう心の底から京子にどっぷりと嵌っているのだ。
最早、逃れる事すら考えられない相手の肉棒を嫌いになれるはずがない。
霞「(…と、とりあえず…上下に擦れば良いのよね)」サスサス
京子「う…」
そんな肉棒を霞はゆっくりと上下に擦り始める。
それはまだまだ遠慮とぎこちなさの残る拙いものだった。
技巧も何もなく、ただただ上下に擦るそれに、しかし、京子は声を漏らしてしまう。
元々、禁欲生活続きの上、裸の霞を前にしてお預けまで喰らったのだから。
一時は我慢汁で下着をぐしょぐしょにしてしまった京子にとって、その刺激は堪らないものだった。
霞「(あ…ビクビクしてる…)」
霞「(つまり…これって私の手で感じてくれている…のよね)」
無論、今日一日で精神を擦り切れさせた京子の意識は未だ眠りの中に堕ちている。
こうして霞に男根を撫でられている今も、熟睡し続けていた。
だが、それでもお預けを喰らい続け、敏感になった身体は反応してしまう。
まるで意識などお構いなしに肉棒がビクンと跳ね、その悦びを霞へと伝えていた。
霞「(ふふ…思ったよりも可愛らしい…かも)」
自身の手が動く度に、ビクンビクンと素直な反応をしてくれる。
そんな肉棒に霞はついつい笑みを浮かべてしまった。
元々、彼女は決して他人の世話を焼くのが嫌いではないのだから。
好いたオスが自分の手でこんなにも喜んでくれていると思うと胸の奥から甘い熱が広がっていくのを感じる。
霞「…もっと…もっとしてあげるわね…♥」
その声は決して大きいものではなかった。
京子が熟睡しているのは分かるが、それでも下手に刺激して起こしたりはしたくない。
京子が自身の看病で疲れきっているのは分かるし、何より ――
霞「(…ここで中断なんてなったら…私も残念だもの)」
好きな男を悦ばせる感覚に、霞は早くものめり込み始めている。
それは勿論、胸の奥から広がる甘い熱が、彼女が感じたこともない興奮だったからだ。
ただ身体を熱くするだけではなく、快感混じりのそれに被虐的な性質を持つ霞は抗えない。
もっともっと京子の事を気持ち良くしてあげたいとその手を上下に擦り続ける。
霞「あぁ…♪すごい…本当にすごいわ…♪」
霞「京太郎君のオチンチン…私にコスコスってされてドンドン大きくなってる…♥」
その最中に甘く淫らな囁きを漏らしてしまうのは、その興奮がもう彼女の中で収まりきらないからだ。
幾ら熱も下がったとは言っても、その身体を蝕むその病が治った訳ではない。
結果、内心に入り込む色情霊達を完全にコントロール出来てはいない彼女は、その影響を受け始めている。
色情霊によって理性のタガが完全に吹っ飛び、興奮に支配された今の彼女に胸中から浮かび上がる言葉を止める手段はなかった。
霞「本当…何処まで大きくなっちゃうつもりなのかしら…♪」
霞「私…ちょっと怖くなって来ちゃった…♪」
京子のサイズは霞が最初に触れた時よりも一回り大きくなっている。
それだけでも彼女は内心、驚きを隠せないのに、今も膨れ上がり続けていた。
まるで最初の大きさがあくまでも半勃ちに過ぎなかったのだと言うようなその膨張に、霞の声に『怖い』という単語が漏れた。
だが、その言葉とは裏腹に、彼女の声は甘いまま。
ハァハァと吐息混じりに囁かれるその声音には媚と興奮しか浮かんではいない。
霞「しかも…これでいつもの下着履いているのよね…♥」
霞「オチンチン締め付けて…目立たないようにする下着…♪」ハァ
女装する為のそれは通常の下着よりも遥かに丈夫かつ窮屈なものだった。
だが、それは今、京子の陰茎によって思いっきり持ち上がり、今にもはちきれそうになってしまっている。
並の繊維よりもずっと丈夫なもので編まれた下着に悲鳴をあげさせるほどの逞しさ。
それに霞が媚と興奮を強めるのは、もう彼女の中のメスが完全に目覚めてしまったからだ。
霞「こんなの…こんなの絶対にダメになっちゃうわ…♪」
霞「挿入られたら…もう絶対に逆らえない…♥」
霞「京太郎君のモノになれって言われるように…アソコ押し広げられちゃう…♪」
霞「強引に…京太郎君の女にされちゃう…ぅ…♪」ブル
元々、石戸霞と言う少女は人並みよりも淫らな事に興味があった。
無論、悪霊に身体を弄ばれるのは嫌悪感しか無いが、ストレス解消の一環として自身を慰めた回数は決して少なくはない。
その外見こそ淑女足るものではあるが、内心にずっと鬱屈としたものを抱えてきた霞のタガは今、完全に外れてしまっている。
京太郎に犯されるその想像だけで、背筋に微かな快感を走らせてしまうほどに。
霞「したい…のね…♪」
霞「私を…京太郎君の女にしたいんでしょう…♪」
霞「だから…こんなにオチンチン大きくして…♥」
霞「私に…興奮してくれて…ぇ♥」スリ
瞬間、霞の身体が京子に擦り寄るのは、甘えが原因ではない。
無論、さっきまでは京子に甘えたいという気持ちが大きかったは、今はもう別なのだ。
彼女の心を支配しているのは京子への依存ではなく、興奮と欲情。
愛しいオスを興奮させているという悦びに霞の心はすっかり虜になってしまっていた。
霞「良い…わ…♪」
霞「私も…なりたい…♥」
霞「貴方の…京太郎君の女に…♥」
霞「貴方だけの石戸霞に…堕ちてしまいたいの…♪」クチュ
だが、性の悦びを知る霞はそれだけでは満足出来ない。
京子を気持ち良くするだけではなく、自身も気持ち良くなりたくて仕方がないのだ。
結果、彼女が選んだのはその身体 ―― 特に性感帯を京子へと擦り付ける事。
世界で最も大事だとそう断言できる特別な相手を使って、霞はオナニーをしていた。
霞「あぁ…♪これ…すごいわ…♥」
霞「すっごく…すっごくエッチ…♥」
霞「京太郎君だけじゃなくて…私も感じちゃう…ぅ♪」スリスリ
そんな自分をはしたないと思う気持ちは彼女の中にも残っていた。
だが、その内心に数えきれないほどの色情霊を宿した今の霞にとって、それはもう興奮のスパイスでしかない。
こんなに恥ずかしい事をしてしまうくらい自分は京太郎の虜になってしまっている。
そんな言葉が彼女の興奮を強め、その腰の動きを淫らにさせていった。
霞「こんなに感じちゃうの初めて…♪」
霞「本当よ…♥本当に…初めて…なの…♪」
霞「何時もはこんなに…エッチじゃ…ないんだから…ね…♪」
そうやって腰を動かす霞の口から言い訳のような言葉が漏れる。
幾ら股間を淫らに押し付けていると言っても、彼女はまだ生娘であり、少女なのだから。
好きな相手に誰にでも股を開くようなビッチなのだと思われたくはない。
無論、その言葉は熟睡する京子には届かないが、それでも彼女は構わなかった。
霞「だから…これも全部、京太郎君の所為…なのよ…♥」
霞「私に沢山の初めてをくれる京太郎君…だから…♪」
霞「私を…こんなにも大好きにさせちゃった京太郎君…だから…ぁ♥」
愛の告白。
それは彼女達にとって決して京子に伝えてはいけないものだった。
霞とは比べ物にならないほど以前から京子の事を想っている春でさえその言葉を胸中に秘め続けている。
そんな彼女のことを思えば、ここで気持ちを伝えるのはあまりにも不公平だ。
幾ら家族同然の付き合いがあるとは言え、春を始め、多くの少女たちに軽蔑されても仕方がない。
霞「あぁぁ…♪好き…ぃ♥」
霞「大好きよ…京太郎君…♥」
霞「貴方の事…全部全部…愛してる…ぅ♥」
それを理解しながらも彼女の言葉は止まらなかった。
興奮と共に強まる色情霊の影響が、霞を視野狭窄にしている。
普段ならば人並み以上に遠くを見渡せるその目も、今はすぐ目の前にいる京子しか映していない。
愛しくて愛しくて仕方がないオスに愛を告げる喜びはそれほどまでに大きいものだった。
京子「霞…さ…」
霞「~~~~っ♥」
瞬間、彼女の告白に応えるように京子の口から声が漏れる。
それは勿論、京子の意識が覚醒したからなどではない。
あくまでもそれは寝言であり、ただの偶然。
しかし、既にその心を好意に溺れさせた霞にはどうしてもそれだけだとは思えなかった。
朧気に自身に答えてくれる京子の言葉に運命めいたものを感じてしまう。
霞「んん…っ♥」チュゥ
理性がトんでしまっている霞がそれに耐えられるはずがない。
その全身に愛しさが満ち溢れる感覚に、霞はそっと京子の唇にくちづけを落とす。
それは先ほど胸板に対して吸い付いていたものとは違い、ついばむような甘いもの。
まるで自身の中の愛しさを京子に伝えようとするようなそれは一度二度では止まらなかった。
霞「(キス…良い…♥)」
霞「(良すぎる…わぁ…♥)」
今は色情霊に支配されていると言っても、元々の霞は夢見がちな少女だ。
出来ればファーストキスはロマンチックなシチュエーションが良いとそう思っていたのである。
しかし、今の彼女の心には後悔の色など一片もない。
愛しい人の寝こみを襲うと言う最悪と言っても良いシチュエーションなのにも関わらず、彼女の胸は興奮と歓喜で満ちていた。
霞「(こんなの…絶対に癖になっちゃう…♥)」
霞「(京太郎君の寝込みにキスしちゃうような…エッチな女の子になる…ぅ♪)」
勿論、それは彼女にとって思い通わせるその口づけがあまりにも心地良すぎるからだった。
口付ける度に胸の奥がジィィンと蕩けるような感覚に霞はもう癖になってしまっている。
だからこそ、彼女はエッチな女の子になると胸中で浮かばせながらも、そのキスを止められない。
一度二度と繰り返す度、より好きになっていくようなそれを止められるはずがなかった。
京子「ううぅぅ…」
霞「ふぁぁ…ぁ♪」
結果、夢中になってキスを繰り返す合間も、霞の手は動き続けていた。
どれだけ口づけに心奪われようとも、彼女は京子の性欲処理を忘れたりしない。
最優先事項であり、自身の免罪符であり、大義名分でもあるそれを果たす為、巫女服と下着越しに擦り続ける。
それに再び京子が声をあげた瞬間、キスの虜となっていた霞の口からも甘い声が漏れでてしまう。
霞「(京太郎君…もうガチガチになっちゃってる…♥)」
霞「(根本から先っぽまで全部、気持ち良いのが詰まっちゃってるみたいに…♪)」
霞「(ハッキリクッキリ…形分かっちゃうくらいガチガチになってるのが…ビクビクンって…♥)」
それは完全に勃起しきった京子の肉棒が、彼女の手の中で強い反応を示し始めているからだ。
抑えこまれたその切っ先を微かに揺らすようなその意味を、霞は勿論、知らない。
彼女にはそのような経験はまったくなかったし、また周りにいたのも今時珍しい清純な子ばかりなのだから。
ガールズトークにもそのような話題が登ったりしないその環境で、オスの反応が知れるはずなかった。
霞「(これ…もうイっちゃいそう…なのよね…♪)」
霞「(気持ち良いのを外にぶちまけたいって…射精したいって…♥)」
霞「(私の手で気持ち良くなってくれたオチンチンがそう言ってくれてて…♥)」
それでも霞はその反応の意味を間違える事はなかった。
彼女は生娘ではあるが、その内面はほぼ色情霊に支配されてしまっているのだから。
湧に負けぬほどメスの本能を強く滾らせた今の霞には、その意味をハッキリと感じ取る事が出来る。
霞「(良いわよ…イッちゃって…♪)」
霞「(このまま…思いっきり気持ち良いのぶちまけて…♪)」
霞「(私の手で気持ち良くなったところを…私に見せて…ぇ♥)」
京子「あ…ぁぁ…」
そして勿論、今の霞がそれを厭うはずがない。
頭ではなく感覚で京子の限界を知った彼女の手は、京子を絶頂に導こうとその手の動きを早くする。
ナデナデと撫でるのではなく、シュッシュと扱くその手にはもう何の遠慮もない。
ただただ自身をイかせようとするそれに京子は震える声を漏らした。
霞「(あぁぁ…♥可愛い…っ♪)」
霞「(可愛い過ぎるわよ…京太郎君…っ♥)」チュゥ
そんな京子に霞がくちづけを止めるはずがない。
半開きになった口にも構わず、チュッチュとキスをし続ける。
いっそ嗜虐的にも思えるその手とは裏腹に、甘く優しいそのキスに霞の脳も気持ち良くなっていった。
身体で感じるのではなく、心で感じるその快感は、決して強いものではない。
だが、その分、甘さを強めたその気持ち良さに彼女は我慢出来なくなり ――
霞「じゅるぅ♪」
京子「ん…うぅ…っ」ビクン
霞が京子の口に舌を挿入れた瞬間、京子の身体がビクンと跳ねた。
それは自身の粘膜の中に別の粘膜が入り込んでしまったからではない。
その口が犯される瞬間、京子は絶頂に達してしまったのだ。
数ヶ月単位で焦らされ続けていたその肉棒は下着の中で暴れながら精液を撒き散らす。
久しぶりと言っても良いその快感が脳へと突き刺さる感覚をもっと得ようと京子の腰が上下に揺れた。
霞「(射精ちゃってる…ぅ♪)」
霞「(京太郎君…私のキスで射精しちゃってるわぁ…♥)」
例え意識が眠っていても、本能で快感を得ようとする京子の姿。
浅ましいと言われてもおかしくはないその姿に、しかし、霞はまったく悪感情を浮かばせない。
今の彼女にとって重要なのは、京子が自身のディープキスと同時に絶頂したと言う事だけなのだから。
そのタガを砕いたのが愛情と欲情を込めた自身のキスだと思えば、誇らしさと愛しさで胸の中が満ちてしまう。
霞「(私…もうとっくの昔にダメなってるのに…♪)」
霞「(京太郎君の所為で…もう重くてエッチな女になっちゃったのに…ぃ♥)」
霞「(その上…キスでイくなんて卑怯だわ…♪)」
霞「(そんなところ見せられたら…もっと好きになっちゃうぅ…♥)」
霞「(京太郎君の事…愛しくて愛しくて…堪らなくなっちゃうわよ…♥)」レロォ
甘い言葉を胸中で浮かばせながら、霞の舌はねっとりと動く。
京子をイかせた満足感に胸を震わせながらも、彼女の愛撫は止まらない。
未だ絶頂を続ける京子をもっと気持ち良くしてあげなければ。
今にも溢れでてしまいそうなその愛しさを他に表現する術を知らない霞は、自身にそう言い聞かせながらディープなキスを続ける。
霞「(気持ち…良い…♪)」
まず霞が感じたのは自分以外の体温だった。
体面に浮かぶものよりもじっとりと絡みついてくるようなそれは、霞にとって決して嫌なものではなかった。
そもそも彼女にとって京子の暖かさは真冬のこたつにも匹敵するほどに心地良いものなのだから。
それがたっぷりと満ちた粘膜の事を厭うはずがない。
霞「(京太郎君の口の中…暖かくて甘くて…♥)」
霞「(こんなエッチなキスしてるのに…安心しちゃう…♪)」
次に彼女が感じたのはその粘膜の中に満ちる甘さだ。
砂糖と蜂蜜を混ぜたようなそのドロドロとした甘さは、どうしてかしつこく感じない。
それどころかその源である粘液が舌へと触れる度、もっと欲しくなってしまう。
まるで麻薬のような中毒性を誇るそれに今の霞が止まれるはずがない。
一瞬でそのキスの虜となった霞は思いっきり舌を伸ばして、京子の口を貪り始める。
京子「ん…ふゅぅ…ぅ…」
霞「(もっと…♪もっと欲しいのよね…♥)」
霞「(もっともっと射精する為に…エッチなキスが欲しいってそう言ってくれているのよね…♥)」
霞「(大丈夫…ぅ♪私はちゃんと分かってるから…♥)」
霞「(京太郎君が気持ち良くなれるよう一杯一杯、頑張ってあげるからね…♥)」
京子の為だと言いながらも、そのキスはあまりにも独りよがりなものだった。
寝ている京子の事にも構わず一心不乱に口腔を舐め回しているのだから。
キスと言うよりはしゃぶるに近いそれに京子の口は戸惑うような声を漏らす。
しかし、それでも霞は止まらず、京子の中を味わい続けて。
霞「ぁ…」
勿論、その間も霞は京子の肉棒を扱き続けていた。
京子の絶頂が決して終わらぬよう根本から先っぽまでを愛撫し続けていたのである。
しかし、そうやって刺激を与え続けても、ずっとイき続ける事など出来ない。
幾らここ数ヶ月禁欲生活を続けていたとは言っても、精液は有限なのだから。
霞「(…本当に…終わっちゃった…?)」
それが分かっていても、霞の胸中には残念な気持ちが浮かんでしまう。
それは勿論、その射精が彼女にとっての大義名分だったからだ。
京子を気持ち良くする為、と言うそれがなくなってしまった今、キスも愛撫も続けてはいられない。
何もかもを忘れて大人しく眠ってしまうのが一番だろうと霞にも分かっていた。
霞「(でも…私…)」ハァ
しかし、霞は未だ欲求不満だった。
それは彼女が本当の悦びと言うものを知ってしまったからである。
愛しい人と心通わせながら奉仕するその感覚は悪霊達に身体を弄ばれる時とはかけ離れていた。
ただ気持ち良いだけではなく胸の奥まで満たされるそれを彼女はまだ手放したくはない。
その悦びを知ってしまった霞はまだまだ満たされたりなかった。
クチュ
霞「…」
そんな彼女の心を引き寄せたのは、自身の指から鳴る淫猥な水音だった。
この数カ月の鬱憤を晴らそうと溢れ出た精液は下着どころか巫女服まで貫通している。
その上から撫でていた霞の手にも精液がベッタリと張り付いていた。
それが指の間でクチュクチュと鳴る音に、霞は好奇心を抑えられない。
愛しい人の精液とは一体、どんなものなのか。
匂いは?味は?色は?粘度は?
そんな言葉が胸中を揺らす霞は、ゆっくりとその指を自身の顔へと近づけて。
霞「…」クンクン
霞「あぁぁぁ…ぁ♪」ウットリ
その匂いを嗅いだ瞬間、彼女の頭はクラリと揺れた。
オス臭さと京子の体臭を極限まで濃縮したようなそれは霞にとっては劇物同然だった。
愛しい人の精液である事が否応なく分かるその匂いに、否応なく身体は興奮してしまう。
その下腹部の疼きも強くなり、彼女は再びその腰を京子へと押し付け始めた。
霞「(これは…酷いわ…♥)」
霞「(酷いくらい…エッチで…やらしくて…♪)」
霞「(こんな匂い…絶対に小蒔ちゃんには嗅がせられない…♥)」
霞「(こんなの嗅いじゃったら…小蒔ちゃんもエッチになっちゃう…♪)」
霞「(京太郎君の精液大好きな…やらしい子に育っちゃうわ…♥)」ハァハァ
匂い一つでそこまで自身を興奮させてくれる精液を、霞が厭えるはずがない。
その腰をカクカクと動かしながら彼女は何度もその匂いを嗅ぎ続ける。
溜め込まれすぎてゼリー状になった精液はその匂いをまったく色褪せない。
何時迄も射精した時のままの新鮮で粘着くようないやらしさを彼女に伝えてくる。
霞「(色も真っ白でドロドロって言うよりもプルプルしてて…♪)」
霞「(こんなの中で射精されたら…絶対に妊娠しちゃう…♥)」
霞「(どれだけ嫌がっても子宮を京太郎君のモノにされて…♥)」
霞「(ママに…京太郎君のお嫁さんにされちゃうんだわ…♥)」
瞬間、彼女の心を揺さぶるのは猛烈な誘惑だった。
この精液を自身の膣内へと塗りたくったらどうなってしまうのか。
勿論、普通の射精とは違い、奥へと放たれた訳ではない精液が卵子に届く事はまずないだろう。
でも、もしかしたら、何万分の1かの確率で妊娠してしまうかもしれない。
愛しくて愛しくてどうしようもないオスの子を孕めるかもしれないのだ。
霞「(そ、それは幾ら何でもダメよ…)」
霞「(そういうのはもうちょっと段階を踏んでからじゃないと…)」
その予想に心動かされながらも、霞はそれに負ける事はなかった。
幾ら色情霊の影響を受けているとは言っても、超えてはいけないラインと言うものがある。
春や湧達も我慢しているだろうに、自分だけがそれを踏み越えてしまう訳にはいかない。
ギリギリのところで冷静に戻った霞はそっと頭を振ってその誘惑を追い払った。
霞「(で、でも…味見くらいは…良いわよね…♥)」スッ
しかし、だからと言ってその淫らな欲求が止まるはずがない。
妊娠出来なくても味見くらいは許されるはず。
そんな言葉と共に霞はゆっくりと口を開く。
そのままさっき京子の口を遠慮なく舐め回していた舌を伸ばして。
霞「~~~っ♥」
ペロリと指先についた精液を舐めとった瞬間、彼女が感じたのは甘さだった。
砂糖と蜂蜜を混ぜあわせたような京子の唾液を、さらに煮詰めて濃縮したような甘さ。
たった一舐めで胸の奥まで蕩けるほど強烈なそれに霞は言葉すら口にする事が出来ない。
何処か満たされなかった自分が求めていたのはこれなのだと。
自分の身体はこれが欲しかったのだとそんな言葉が霞の胸中を埋め尽くしていた。
霞「(あぁぁ…♪これ…本当に…危ないわ…♥)」
霞「(他の子が触れたら…絶対に…絶対におかしくなっちゃうから…♪)」
霞「(私が全部…処理してあげない…とぉ…♥)」
霞「(我慢出来る私が…全部、全部、食べてあげなきゃ…あ…♥)」レロォ
霞の胸中に浮かぶそれは完全に言い訳でしかなかった。
今の彼女はウットリとした表情で、自身の指を舐めしゃぶっているのだから。
まるで指についた精液を一滴残らず味わい尽くそうとするその顔はもうメスそのもの。
顔一杯に劣情を浮かべながら美味しそうに精液の残滓を舐めとる今の霞からは自己犠牲の精神などまったく見当たらなかった。
霞「(…もう…もうなくなっちゃった…♥)」
そんな彼女の表情もそう長くは続かない。
彼女の指先についた精液はほんの一部に過ぎないのだから。
どれだけ大事に味わったとしても、その味は一分もすれば消えてしまう。
それに微かに残念なものを感じながらも、彼女の心は落胆する事はなかった。
霞「(だって…まだガチガチだもの…♪)」チラッ
そう流し目を送る霞の前で京子の肉棒は自己主張を続けていた。
射精が終わって数分が経過したと言うのに、その昂ぶりは収まる気配がない。
元々、京子は性欲が強い上に、この数ヶ月間、自身に禁欲を強いてきたのだ。
ともすれば暴発しそうなほど焦らされたその肉棒は、この機会を逃すまいとするようにその身を膨らませている。
霞「京太郎君も…まだまだイきたいのよね…♥」
霞「もっともっと…私に処理して欲しいんでしょう…♥」ペロ
その言葉に京子は応えない。
こうして一度射精したとは言え、京子の意識は未だ眠りの中に堕ちているのだから。
それでもこうして霞が京子に語りかけたのは、自身に新しい大義名分を与える為。
京子がまだまだ快楽を求めているのだから、自分もそれに付き合わなければいけない。
もう抑えきれないほど昂ぶったその劣情を発散する為には、そんな名目が必要不可欠だった。
霞「大丈夫よ…♥私はちゃんと最後まで付き合ってあげる…♪」
霞「京太郎君が満足するまで…気持ち良くしてあげるわ…♥」モゾ
京子「ぅ…」
そう言いながら霞はゆっくりと京子の服を肌蹴させていく。
スルスルと巫女服の中へと手を差し込み、内側からその結び目を解けさせていくのだ。
自然、なめらかな彼女の肌と触れ合うその感覚に、京子の口から短い声が漏れ出る。
しかし、京子はそれに起きる事はなく、その下着まで奪い取られて ――
―― 数時間後、起床した京子は謎の満足感と下着に張り付いた粘液に、夢精してしまったと思い込むのだった。
(´・ω・`)っ【○(本番)エロは(本編には)ガチでないです】
いや、まぁ、なんていうか、その、私も正直、書くつもりなかったんですが、実際、書いているうちに京ちゃんが不憫になったというか
ここで霞さんが京ちゃんを襲わない理由が思いつかないなーって事で…手コキになっちゃいました(´・ω・`)正直、すまんかった
尚、霞さんはまだ処女です 下の方はですが
あ、後、このまま続けてハオのってなるとちょっとつらいんで先にご飯とかお風呂とか済ませて休憩してきます(´・ω・`)
一番危ない人が堕ちたでござる
重い(確信)
まだ完全に雌堕ちてないのは巴さん(すぐ堕ちそう)とはっちゃんと小蒔ちゃんだけかな
やはりここの作者はおかしい(褒め言葉)
乙
相変わらずエロになるといい仕事するのう…
春「一番最初に好きになってた私を差し置いて京太郎を射精させた挙げ句、味見までするなんて。
全く...。
罪深いな」
でも寝てる間の性欲処理は春もやってそ...いや、どうだろう。
ハオ「……♪」コクン
…でも、拒めるはずありません…♥
だって…だって、私、もう覚悟を決めちゃったんですから…♪
クリスマスのこの日に…彼と結ばれるって…そう決めたんですよ…♥
その上、勉強させてあげるとまで言ったのに…ダメだなんて言えません…♪
京太郎君が望むなら…わ、私のそこを好きに弄らせてあげないと… ――
京太郎「ありがとう…なっ」グリ
ハオ「~~~~~っ♪」
い、い、いいぃ…いきなり…ぃいっ♪
し、下着グイってグイって引っ張って…えぇっ♥
食い込む…ぅ♪食い込んじゃってます…っ♥
クロッチの部分が丸ごとぜんぶ…グチュグチュのアソコにグイグイ着てて…っ♪
京太郎「後で下着は弁償するから」
ハオ「ひいぃいぃいっ♪」
そ、そういう問題じゃ…あぁあぁッ♪
ダメ…ぇ♪これ思ったより刺激キツイ…いいっ♥
思いっきり食い込んでる上に…京太郎君がグイグイショーツを動かすから…っ♪
こすれてる…ぅ♪粘膜全部、擦れちゃってるんです…ぅ♥
グチョグチョになったあそこが全部刺激されて…っ♪わ、私…いぃっ♪
ハオ「っ♥」クイ
京太郎「はは。腰浮いちゃってるぞ」
だ、誰の所為だと…おぉっ♪
こ、これも全部、京太郎君の所為なんですからね…っ♥
京太郎君が下着を思いっきり引っ張るから…っ♪
台無しにする勢いで…思いっきり食い込ませるからぁ…♥
私の身体が勝手に反応して…もう腰が…ぁ…♪
京太郎「これってもっと気持ち良くして欲しいって事だよな」サワ
ハオ「きゅうぅううっ♪」
あう…うぅ♪ど、どれだけ…ぇ♥
どれだけエッチなんですかぁあっ♪
腰が浮いちゃうくらい…力強くショーツ引っ張ってるのに…っ♪
その上…食い込んでむき出しになったアソコの周り撫でるなんて…♥
しかも、焦らすようにゆっくりといやらしい撫で方されたら…な、なっちゃい…ます…♪
例え、そんな事望んでなくても…気持ち良くして欲しいって思っちゃうんですよ…お♥
京太郎「ハオのココって…結構、肉厚な感じなんだな」サワサワ
ハオ「ううぅあぁぁ…♥」
しかも…私…じっくり見られちゃってます…♪
私も殆ど見たことがないところを…京太郎くんに触られながら観察されちゃってて…♥
こんなの…すっごく恥ずかしいのに…気持ち良いのが止まりません…♪
エッチな声もお汁ももう…殆ど垂れ流しに近い状態で…♥
京太郎「…すっげぇ気持ちよさそう」
京太郎「こんなところに突っ込んだら即射精する自信があるわ」
ハオ「~~~っ♥」キュゥゥ
あぁぁ…♪もぉぉっ♥
なんで…なんでこんな時にそういう事言うんですか…ぁ♪
そんなエッチで…素敵な事言われたら…私もっとエッチになっちゃいます…♥
早く京太郎君のオチンチン欲しいって…エッチしたいって…っ♪
お腹の奥が…私の子宮がそんな風に思っちゃうじゃないですかぁあっ♥
京太郎「お…また下着から汁が漏れてきたぞ」
京太郎「もしかして…想像して感じちゃった?」
ハオ「っ♪」フルフル
で、でも…でも、そんな事言えません…っ♥
だって…そんなの…エッチを通り越して…もう淫乱そのものじゃないですか…っ♪
それに…そんな事言っちゃったら、ただでさえ意地悪になってる彼がまた調子に乗っちゃいますし…♥
ここは否定…否定するのが一番 ――
京太郎「まぁ、そうだとしても今はお預けなんだけどさ」グッ
ハオ「んあぁああぁっ♪」
な、中ぁあっ♪
京太郎君の手が…周りじゃなくて中に…ぃっ♪
クロッチのところぉっ♥食い込んでるアソコに…グイグイって指が押し込んできて…っ♥
つ、強い…ぃっ♥こんなの…強すぎます…っ♪
刺激強すぎてもう…気持ち良いのがお腹の中に溜まってきて…っ♥
ハオ「(これ…も、もしかしてぇ…♥)」
い、今まで気持ち良いのは頭の方に流れていってました…♪
背筋を這い上がって…脳幹から私の脳に脳内麻薬を垂れ流しにさせてたんです…♥
でも…今のコレは…違います…♥
脳じゃなくて私の子宮に突き刺さって…その周りをブルブルと震わせるんです…からぁ…♥
まるで私の中で何か呼び起こそうとするそれに…私は一つの答えしか思いつかなくて…っ♪
ハオ「(わ、私…イきそうになってる…♥)」
ハオ「(京太郎君の指で…も、もう…イかされそうになってるんです…かぁ…♥)」
私は今までイった事どころか…快感すら殆ど感じたことがないのに…ぃ♪
まるで彼の指は魔法みたいに私の身体をドンドンエッチにして…♥
胸だけでグチョグチョになっちゃったんですから…ある種、それは当然なのかもしれないですけれど…♪
ハオ「(イ、イきたく…ないです…♪)」
ハオ「(イかされたく…ないぃ…♥)」
それは初めての…私の人生で初めての絶頂…なんですからっ♥
それを迎えるのは…京太郎君と一緒が良いんです…♪
さっき彼が口にしていたように…私の中にオチンチンを挿入して貰って…っ♥
射精と同時に…一緒に絶頂…ぉ♥
彼の愛を感じながら…共に果てたいんです…から…♪
ハオ「待っ…てっ♪京太郎…くぅっ♥」
京太郎「ん?何か言ったか?」
ハオ「ふあぁあっ♪」
もぉっ♪もおぉっ♥
意地悪…ぅうっ♥ホント…意地悪過ぎます…っ♥
絶対、絶対…聞こえてるじゃないですかぁっ♪
私の言いたいこと分かってるじゃないですかああっ♥
なのに、そんな風にとぼけながらグリグリするなんてひど…酷すぎます…っ♪
アソコを押し込むみたいに指でグリグリ擦るの…ホント、反則…うぅうっ♪
ハオ「(き、気持ち良い…っ♪良すぎる…からぁっ♥)」
もう私の身体…完全に火がついちゃい…ましたぁ…♥
まるで女の子として目覚めるみたいに…身体が絶頂へと傾いていって…っ♪
それなのに刺激を強められたら…も、もう本当に止まりません…っ♪
今ならまだ何とかなるのに…っ♪イくのも我慢出来るはずなのに…ぃ♥
これ以上エッチにされちゃったら…気持ち良くされちゃったら…もう絶頂止まらなくなっちゃい…ますぅ…っ♪
ハオ「お、お願い…しま…すぅっ♪」
ハオ「ほ、本当にダメ…っ♥ダメ…なんですぅうっ♥」
京太郎「ダメって顔じゃないぞ」
わ、分かってますよ…♪そんな事ぉおっ♥
だって…これ本当に気持ち良いんですからあっ♪
アソコグリグリされる度、理性が揺れるほど気持ち良いんですよぉっ♥
もう我慢するの止めて…京太郎くんにイかせて貰おうって…♪
そんな言葉が止まらないくらい…感じちゃってるんですからね…っ♪
京太郎「大丈夫。ハオがどんなところを見せても俺は嫌いになったりしないからさ」
ハオ「そ、そぉじゃ…そうじゃなひぃいぃいっっ♪」
た、確かにそれは怖い…ですけどぉっ♪
でも…もうそれは諦めちゃってると言うか…ぁ♥
こんなに意地悪な京太郎くんを私が嫌いになれない時点で大丈夫って…♥
貴方も私の事をきっと同じように想ってくれるはずってそう想ってるから…あぁ♥
だから…それはあんまり不安じゃないですし…大丈夫…なんです…っ♪
ハオ「わ、私…も、もうイ…っ♪イきそう…で…ぇっ♥」
京太郎「あぁ、なるほど…イくのが怖いのか」
ハオ「そ、そぉ…そう…ですぅっ♥」
まぁ…ちょっと違いますけれど…♪
でも、おおまかには…それで合ってる……かも…ぉ♥
あぁぁ…♥もう頭もあんまり動いてません…♪
普段の私なら…こんないい加減な考えで行動したりなんかしない…のにぃ…♪
でも…でも、もう私、もう限界で…イく準備がドンドン進んじゃって…ぇ♥
京太郎君が止まってくれるならもう何でも良い ――
京太郎「…じゃあ、一回、このままイっちゃわないとな」グッ
ハオ「あぁああああぁあああぁあっ♪♪」
ま、待って待って待って待ってええええっ♥
なんで止まってくれないんですかああっ♪手加減してくれないんですかああっ♥
私、怖いって言ったのにぃいっ♪イきそうだって言ったのにいっ♪
ただ、アソコをグリグリするだけじゃなくて…く、クリトリスまでえっ♥
鈍感だった私でもちょっぴり気持ち良かったところまでいじり始められたら…ぁあっ♪
京太郎「一回、イっちゃったら怖いのもなくなるって」
京太郎「大丈夫、俺がちゃんと気持ち良くしてやるから」
馬鹿ああああっ♥ホント…京太郎君の馬鹿あああああっ♥
そんな気遣い今は要らないのにぃっ♪欲しいのは京太郎君のオチンチンなのにぃっ♪
なんで、くれないんですかあっ♪
エッチしてくれないんですかああっ♪♪
もぉ…もうバキバキになっちゃってる癖に…ぃっ♥
私のエッチなところ見て…ズボンはちきれそうになるくらいパンパンになってるのにぃいっ♥
京太郎「まぁ、怖いかもしれないけど…一回イっちゃった方が身体から緊張も抜けると思うし」
京太郎「本番になった時、痛くないと思うんだよ」
ハオ「っ♥♥」キュン
あぁぁ…♪だから…だから…なんですね…♥
もうオチンチンガッチガチになってるのまるわかりなのにぃ…♪
エッチな形浮き出てるのに…それでも我慢してくれてるのは…♥
私を痛くしない為…♪
初体験の私を気遣ってくれていて…♥
京太郎「だからさ、このままイっちゃえって」
京太郎「後始末とかは俺がするから」
ハオ「ふゅううぅううんんっ♪♪」
それは…それは嬉しいんです…っ♥
ただ意地悪なだけじゃなくて…私の事考えてイかせようとしてくれているのは嬉しいんですよぉっ♥
でも、だからって…そ、そんな風にクリトリスクリクリしないでくださいいっ♪
そ、そこ…本当に敏感なんですっ♥
アソコよりもずっとずっと気持ち良いところなんですから…っ♪
ショーツから浮き上がってるそこを乳首みたいにクリクリされたら…も、もう本当にダメぇ…♥
ハオ「(痺れ…痺れ…るぅうっ♥)」
ただ気持ち良いだけじゃなくって…突き刺さった部分が甘くしびれるような快感…ぅ♪
それがまるで子宮に直接つながってるみたいに…流れ込んでくるんです…っ♥
京太郎君の指がクリクリってクリトリス弄る度に…私のお腹が甘くなっていって…♪
もう…こんなの我慢…出来ない…っ♥
理性も全部…と…トんじゃう…うぅぅ…♪♪
ハオ「(…わ、私…も…もぉぉっ♥)」
…確かに…私のこれは初めての絶頂で…特別…です…♪
でも、それを京太郎くんと一緒に迎えたいと言うのは…ただの我儘ではないでしょう…か…♥
だって、彼は私をイかせて…少しでも初体験の痛みを和らげようとしてくれていたんです…から…♪
私の事を気遣う彼と…自分の事しか考えていなかった私…♥
どっちが正しいかは…きっと考えるまでもない事で…♪
ハオ「(だ、だから…だから…あぁあっ♥)」ギュゥ
イ…イっちゃっても…良いですよね…っ♪
アソコグリグリされながら…クリトリスクリクリされながら…ぁっ♪♪
京太郎君の手で…っ♥私の一番、大好きな人の手でぇっ♥
絶頂しちゃっても…イっちゃっても…大丈夫…ううぅっ♥
もう我慢なんて…しなくても…良いんです…♪
ただ…ただ、イく事だけ考えていれば…それで…えぇええっ♪♪
ハオ「き、京太郎くぅ…ぅうんっ♥」
京太郎「あぁ。大丈夫」
京太郎「ハオがイくところ見ててやるから」
ほ、本当に…京太郎君はエッチです…♪
今にもイきそうな女の子に…そ、そんな…そんな事言うなんてぇ…♥
そ、そもそも…それは違う…でしょう…♪
私のイくところを…見たいんですよね…♥
私の身体をイジってる京太郎君が…絶頂する私を見たくないはずないんですからぁ…っ♥♥
ハオ「(い、良いですよ…♪見せて…♪見せてあげます…♪♪)」
そんなに私の事をイかせたいのであれば…それに応えてあげるのが恋人としての務めでしょう…♥
それに…わ、私ももう本当に我慢出来ないんです…♪
頭のタガが外れてから…気持ち良いのを止めるものがなくって…♥
まるで濁流みたいに…私の中に快感が流れ込んでくるんですからぁ…♪
もう子宮の中が一杯になるようなそれに…私はもう抗えません…っ♥
もぉ…イきます…♥本当にイっちゃいます…っ♥
初めての絶頂を…京太郎君に見せちゃいますからああっ♥♥
ハオ「ひっぐうぅううぅううぅううううっ♪♪♪」ビククン
はぁあぁあああぁあっ♪
すご…ぉ♥なにこれ…す、すご…いぃぃ…♪♪
気持ち良いのが私の子宮から膨れ上がって…か、身体中、揺さぶってます…うぅ…♪♪
今まで溜め込んだ快感を一気に放流したような…そんな激しいのが…身体中に響いて…っ♥
あっちこっちぶつかって…よ…良すぎる…うぅっ♥
身体の中で気持ち良いのが暴れまわってるみたい…です…ぅ♪♪
ハオ「(これが…これが…絶頂…おぉ…♥)」
あぁぁ…♥今なら…分かります…♪
これがどうして絶頂なんて言葉で表現されるのか…私は身体で知っちゃいました…あ♥
気持ち良いのがあっちこっちで響く身体が…フワって軽く…軽くなっちゃうんです…♪
まるで今にも昇天しそうな心地良さと…それとは真逆の気持ち良さ…♥♥
その二つが頭の中で入り混じってしまうんですから…もう耐えられません…♪♪
これが欲しくて…エッチしちゃう女の人の気持ちが…今の私には分からないでも…ないんです…♥
ハオ「(だって…これ…これ凄すぎる…ぅ♪)」
ハオ「(女の子の絶頂…本当に気持ち良い…ぃ♥)」
まるで完全に弁を開いたダムのようにして迸る快楽の数々…♥
今まで感じて来たものが、小さく思えるほど…それは気持ち良いんですぅ…♪
身体の奥まで染みこむようなそれに…私の身体は…勝手にビクンビクンって反応しちゃって…ぇ♥
京太郎君の前で…エッチな声をあげながら…イき続けちゃうんです…っ♥♥
ハオ「はー…♪はー…あぁ…♪♪」クタァ
…でも…その絶頂もずっとは続かなくって…♪
いつの間にか私の身体は彼のベッドの上に堕ちていました…♥
完全に脱力した私の身体は…もうさっきみたいに腰をあげる力さえ残ってません…♪
時折、ピクンと身体を跳ねさせたりするだけが精一杯…♪
しかも、それは私が意図してやっているものではなく…ただ絶頂の余韻に対する反応でしかなくて…♥♥
ハオ「(…なんだか50m走を思いっきり走った後みたいに疲れてますが…♥)」
でも、その疲れは…あんまり嫌じゃありません…♪
身体の芯に張り付くような倦怠感は…何処か爽やかなものでした…♥
それはきっと…私が…えっと…快感の果てに辿りつけたから…なんだと思います…♥
それも愛しい人の手で…初めての…果てを経験して…♥♥
京太郎「ハオ…」ゴクッ
ハオ「あ…ぁ…♥」
だけど…それは…私だけ…なんですよね…♥
だって…京太郎君はまだ何も気持ち良くなってないんですから…♪
私の事を気持ち良くして…興奮していたけれど…あくまでもそれだけ…♥
こうしてベッドの上に横たわる私に話しかける彼の目が…ケダモノめいたものになっているのも当然の事で…♪
ハオ「(お、犯されちゃう…♪)」
ハオ「(私…京太郎君に…犯されちゃうんですね…♥)」ブル
きっと…京太郎君はイったばかりの私になんてまったく考慮してくれません…♥
彼の目にはもう理性の輝きなんてなくて…私に向ける視線にも欲情しか込められていないんですから…♪
私が何を言ったとしても…京太郎くんに犯されると言う未来を覆す事は出来ません…♥♥
イった後の脱力した身体で…私は彼の事を受け入れるしかないんです…♪
ハオ「あ…あぁぁ…♪♪」
勿論、それが他の誰かなら…私だって絶対に嫌です…。
今この場で舌をかみきっても心残りがないくらいに…。
でも…これから私を犯すのは…私にとって最愛と言っても良い人…♥
ついさっきまで私の為に理性を総動員して劣情を抑えこんでくれていた…優しくも意地悪な京太郎君なのですから…♥
今から犯されるというその想像でさえ…私の喉は震えてしまいます…♪
怖さではなく期待と興奮に…私の身体は反応していたのでした…♥♥
京太郎「…っ」ジィィ
ハオ「…え…?」
…………え、何ですか、コレ…。
あの…もしかしてズボンから出てるそれが…京太郎君の…お、オチンチン…?
え、ま、待ってください、流石にそれ大きすぎません!?
太さとか私の手首と殆ど同じくらいなんですけど…!!
長さも20cmは優に超えてますし…そ、そんなの絶対無理です!!
例えイかされたとしてもそんなの挿入されたら私、裂けちゃいますよ…っ!!!
ハオ「あ、あの…京太郎君…」
京太郎「ハオ…っ」ガシ
あ…うぅぅ…で、でも…逃がしては貰えませんよね…。
だって、京太郎君はもう私とエッチする事しか頭にないんですから…。
私を見つめる目ももうギラギラで…人間のオスになったような顔をしているんですから。
身体に力が入らない今の私に、彼から逃れる術はありませんし…ここは大人しくしておくしかないでしょう。
ハオ「(で、でも…やっぱり怖いのは怖いですし…)」
…今の私に出来るのは神様に祈る事くらいでしょう。
いえ…まぁ、私は基本リアリストで、神様と言うものを本気で信じている訳ではないのですが…。
しかし、今この場に限っては…私にも縋るものが必要だったのです。
多少痛いのは我慢出来ますが、裂けたり怪我をしたりはしないで欲しい。
そう祈る相手がいるというのは決して悪いものではありませんでした。
ハオ「(…もし怪我しちゃったら後で彼がどれだけ自分を責めるか…)」
さっきは意地悪で、今はケダモノですが…京太郎君は基本的に優しい子です。
その気遣いがちょっぴりズレている事はありますが、彼がそれを欠かした事はありませんでした。
そんな彼がエッチで相手を傷つけてしまったとしたら…きっと一生気に病んでしまうでしょう。
それが原因で心の病に陥る事だって考えられるだけに…今は自分の体の丈夫さを信じるしかありません。
京太郎「はぁ…はぁ…」ヌギ
ハオ「あ…♪」
……そんな極限状態でも、服を脱ぎさった彼の身体に目を取られてしまうのは恋する乙女の性と言う奴でしょうか。
でも、そんな自分が嫌ではないと言うか…少し気持ちも楽になったと言うか…。
その彼のオチンチンに気圧され、興奮が引いていた身体が再び熱くなってしまって…。
い、いや、その…だって、京太郎君の身体って結構どころかかなり引き締まってる男らしいものだったんですよ。
その腹筋までクッキリ見て取れるその姿に女としての私が反応してしまうのも当然でしょう。
京太郎「…ハオ」ギシ
ハオ「っ」
ってそんな事考えてる間に裸になった京太郎くんがのしかかって…っ。
も、もう…このまましちゃうつもりなんですか…?
まだ私、下着履いたままなのに…え、エッチされちゃうんですか…!?
さ、流石にそれはアブノーマル過ぎでは……せ、せめてこっちも裸に… ――
京太郎「う…っ」ズリズリ
ハオ「っきゅぅ…♪」
あぁぁ…もう完全、そのつもりです…♥
京太郎君…私の下着ずらして、アソコにオチンチンこすりつけてきて…♪
すっごく…すっごく熱い…ぃ♥
まるでインフルエンザにでも掛かったみたいに火照ってて…♪
こんなの押し付けられたら…分かっちゃうじゃないですか…♥
エッチしたくてしたくて仕方がない京太郎君の気持ちが…オチンチンから伝わってきちゃいます…ぅ♪
ハオ「(…こ、怖いですけど…でも…♪)」
…でも、京太郎くんがこんなにも私の事を求めてくれているんです…♥
ケダモノそのものの表情で…私にあんなに大きい ―― 大きすぎるオチンチンを擦りつけてくれるんですから…♪
怖いけれど…でも、それ以上に必死で可愛らしいその姿を見てダメだなんて言えません…♪
だから…ぁ♥
ハオ「…き、京太郎…君…♥」クパァ
京太郎「っ」
で、出来るだけ挿入しやすいように…広げるくらいはしてあげるべきでしょう…♥
さっきまでの私はずっと受け身で…京太郎君に準備を任せっきりだったのですから…♪
その分を少しでも彼に返す為にも…ここは自分から恥部を開くべき…なんです…♪
ま、まぁ…幾らか興奮も冷めた頭の中では羞恥心が騒いでいますが…で、でも、もう私はイくところまで見られている訳ですし…♥
こ、これくらいは…別に耐えられない訳では ――
京太郎「ハオ…っ!」ズッチュゥ
ハオ「~~~~~~っ♪♪♪」
あ…ぐ…ああぁぁあぁああぁあっ♪♪
は、挿入ってる…うぅうっ♥京太郎君のオチンチンが…挿入ってるうぅうっ♥♥
私のドロドロのアソコ押し広げながら…グリグリってきて…ぇえっ♪♪
き、キツ…いぃいっ♪アソコキツキツ…うぅうっ♪♪
限界一杯までオチンチンで広げられるみたい…にぃいっ♪♪♪
ハオ「(な…なのに…っ♪なのに…どうしてぇ…えっ♥)」
私のアソコ…悲鳴あげてる…ぅっ♪
ギチギチって音がそこら中から鳴ってるはずなのに…ぃっ♥♥
私…ぜ、全然…痛くない…っ♪♪
勿論、痛みはあるけれど…でも、それは殆ど0に近いもので…っ♪
それ以上に気持ち良いのが私の中で暴れて…るぅうっ♥♥
ハオ「(嘘ぉっ♪嘘ぉおおっ♪♪)」
ハオ「(こんなの…絶対、嘘ですうっ♪♪♪)」
私…初めてなのにぃいっ♪
エッチの経験どころか…イったのさえさっきが初めてなのにぃっ♥♥
なんで、私…こんなに痛くないんですかぁっ♪
こんなに気持ち良いんですかあっ♪♪
こんなの…こんなのまるで…変態…みたいぃっ♥
エッチな事大好きな…淫乱みたいじゃない…ですかあぁっ♪♪
京太郎「う…おぉ…っ」ズッ
ハオ「おおぉぉぉおっ♪♪♪」
違う…ぅっ♥違いますぅうっ♪♪
私、変態なんかじゃないっ♪淫乱でもないですうっ♥
なのに…私の口…変な声…出しちゃってぇっ♪
さっきの嬌声とは違う…まるで鳴き声みたいな声ぇ…♥
ただ感じてるだけでじゃなくて…もうケダモノになったみたいな声が勝手に…漏れちゃってるぅ…♪♪
ハオ「(勿論…痛いのは怖かったし…嫌です…けれど…ぉ♥)」
でも…でも、最初からこんなに良いのに安心なんて…出来ません…っ♪
勿論、裂けちゃうよりはずっとずっとマシですが…それでも…こんなの変なんですから…ぁ♥
痛みもありますし…流石に乳首ほど気持ち良かったりしませんが…それでも普通じゃ…ありません…♪
これが本当に自分の身体から浮かんできている感覚なのかどうか…疑わしいくらい…なのに…ぃっ♪♪
ハオ「ふあぁああぁぁっ♪♪」
強…くぅうっ♪強くなってるぅうっ♥
京太郎君のオチンチン動く度に…っ♥私の奥にオチンチンが近づく度にぃいっ♪♪
痛いのよりも気持ち良いのがドンドン強くなって…大きくなってえぇっ♥
まるで…オチンチンが好きで好きで堪らないみたいな…甘い心地良さがキてるぅ…♪
オチンチンが気持ち良いものなんだって…わ、私のアソコ、学習しちゃってます…ぅう♥
ハオ「(こ、これで…もし、もし奥まで来ちゃったらぁ…♥)」キュン
あぁぁ…♪疼かないで…っ♥疼いちゃダメです…ぅ♪♪
そんな風にキュンキュンしたら…わ、私の身体、もっと気持ち良くなって…♥
ただでさえ…オチンチンの感覚に追いつけてないのに…余計にダメになっちゃう…ぅ♪♪
挿入されてる間に…あ、アソコがオチンチン大好きになっちゃうなんて…そんなのダメぇえ♥♥
京太郎「はぁ…はぁぁ…っ」ズッズッ
ハオ「(でも…止まらない…ぃいっ♪♪)」
京太郎君のオチンチンどんどん挿入ってくるぅ…♪♪
気持ち良いの求めて…私の奥まで進んできてるんですぅうっ♥
わ、私、まだ挿入の時の衝撃が収まってないのに…そんなのお構いなしにズルズルってぇえっ♪♪
ケダモノそのものの表情で…私のアソコ犯して…ぇえっ♥♥
ハオ「(気持ち…良い…ぃっ♪♪)」
ハオ「(もぉ…もぉ…気持ち良いぃっ♥♥)」
半分…っ♪半分過ぎたら…もう…ダメ…ぇ♥
もう気持ち良いの…認めないなんて…出来ない…ぃ♪
オチンチン…もう乳首よりも私の事、気持ち良くしてくれてぇ…♥
もう否定なんて出来ない…っ♪
オチンチン気持ち…良い…っ♥♥
私…初めてなのに…オチンチンで感じちゃってるぅううっ♪♪
一回仮眠挟んだけど明日もお仕事あるんでそろそろねまーす(´・ω・`)後二回くらいでハオの話も終わらせたい…
今週末に終わらせる予定でしたが思いっきり風邪引いてしまったでござるの巻(´・ω・`)ごめんなさい
来週にはハオの奴終わらせられるよう大人しくしています…
ハオ「ああぁあぁあぁあっ♥♥」ギュゥ
でも…堪え…堪えなきゃ…ぁ♪
こんなにエッチな声止まらないの…は、恥ずかし過ぎますっ♪
だから、頑張って我慢しなきゃいけないのに…き、気持ち良いのアソコから響いてぇっ♥
シーツをギュってしても…我慢出来ません…っ♪♪
気持ち良すぎて勝手に声出ちゃうぅぅ…っ♪♪
ハオ「(あぁ…っ♪も、もう反則…うぅっ♥)」
ハオ「(こんなの…こんなの絶対…京太郎君の所為なんですからあっ♪♪)」
勿論…私は入念に京太郎くんに前戯して貰って…一度イッちゃいましたけど…ぉ♪
それでも挿入してすぐにこれだけ感じるなんてあり得ないんですからあっ♥
これも絶対…絶対、京太郎君の所為ですぅっ♪♪
京太郎君のオチンチンにきっと不思議な魔法がかかってて…ぇ♥
それで私…こんなに乱れちゃってるんです…っ♥
気持ち良く…なっちゃってるんですうっ♥♥
ハオ「(そうじゃなきゃ…こんなの説明がつきません…っ♪)」
ハオ「(まだ挿入も終わってないのに…今にもイきそうなくらい感じてるなんて…ぇ♥)」
まだ…なんですっ♪
もう私、気持ち良いの認めたのに…っ♪ベッドシーツをギュって握りしめるくらい気持ち良いのにぃっ♪♪
なのに…まだ私のアソコ、気持ち良くなってるんですよぉ…っ♥
まるでまだ足りないって言うみたいに…私のアソコがドンドンエッチにされちゃって…ぇ♪
エッチなお汁も止まりません…ぅ♥♥
ドロドロだったアソコが…もっとグチュグチュで…エッチなトコロになっちゃうんです…っ♪♪
京太郎「っ」グイ
ハオ「ひああああぁああっ♪♪」
だ、だから…オチンチン、ドンドン入ってきちゃう…ぅう♪
もうすぐ奥なのに…♥子宮のお口もう目の前なのにぃ…っ♪♪
グチュグチュになったアソコを滑るようにしてオチンチンが入ってくるのぉっ♥♥
さっきよりも強く…激しく…大きく…ぅうっ♪♪
オチンチンの事感じて…気持ち良く…なってええぇえ♥♥
―― ズンッ
ハオ「~~~~~~~っ♪♪♪」ビクン
あ゛あぁぁあっ♪♪
き…来ちゃった…あぁあ…♥
お、オチンチン…お、奥まで来たの…分かりましたあぁぁ…♪♪
す…凄い…凄い…の来たからぁあっ♪♪
オチンチンが奥に当たった瞬間、また私、イッちゃったから…っ♥♥
分かるんです…っ♪分かっちゃうんですぅ…っ♪♪
私、今、京太郎君のオチンチンにうめつくされちゃってるの…すっごく分かるのぉっ♥♥
ハオ「(し…しあ…幸せ…ぇえ…♥♥)」
勿論、これは…すっごく…すっごくエッチです…♪♪
乳首弄られたりアソコを撫でられるのとはもう比べ物にならないくらい…エッチで恥ずかしい事ぉ…♥
挿入だけで絶頂するなんて…本来なら穴を掘って埋まっちゃいたくなるくらい…です…♥♥
ハオ「(でも…良い…っ♪)」
ハオ「(それ以上に…良すぎるんですよぉ…っ♥♥)」
だって…私の事を奥まで犯してくれているのは…京太郎君なんですから…あぁ♪♪
私が世界で一番愛していると自信を持って言える男の人のオチンチンを厭うはずがありません…ぅ♥
寧ろ、大好きで大好きで仕方がない京太郎君に埋め尽くされると思うと…幸せで幸せで仕方なくてぇ…♪♪
子宮から広がった快楽の波も…すごく甘いんです…♥♥
まるで私の細胞一つ一つに染みこんで蕩けさせるように…優しく…何より気持ち良い……♪♪♪
ハオ「(さっきと全然…違う…ぅ♪)」
ハオ「(これが…これがセックスの絶頂ぉ…♥♥)」
ハオ「(愛しい人に抱かれる…幸せぇ…♪♪♪)」
ダメ…ぇ♪ダメです…こんなの…ぉ♥♥
私が今まで感じてきたどんな幸福感も…これの前では塵芥同然なんですから…あ♥
どれほど麻雀に打ち込んできても…これほどの喜びを得られた事はありませんでした…♪♪
そんなに良くして貰ったら…私…もう忘れられません…♥♥
このままじゃ…私、セックスの虜になっちゃう…♪♪
麻雀よりもエッチするのが大好きな変態女に染められちゃいます…うぅっ♥♥
京太郎「ふぅ…ふぅぅ…っ」
ハオ「んあぁあぁああっ♪♪♪」
で、でも…止まって…止まってくれないぃぃっ♪♪
京太郎君、挿入終わったばかりなのに…またすぐ動き出して…ぇ♥♥
今度は私の中からオチンチン抜こうとしてるぅ…♪♪
気持ち良いオチンチンが私の中からいなくなっていってぇ…♥♥
ハオ「(ひ、引っかかってます…ぅっ♪)」
ハオ「(オチンチンの出っ張ったところが私をグリグリってぇえっ♥♥)」
そんなオチンチンに…アソコが引きずられてるのが分かります…っ♪
先っぽの大きな出っ張りにアソコのお肉がガッチリ食い込んでしまっているんでしょう…っ♥
まるで…♪まるでオチンチンいなくならないでって…泣き縋ってるみたいにぃ…♪♪
京太郎君のオチンチンにアソコが食いついてしまうんです…っ♥♥
ハオ「(き、気持ち良いぃっ♪♪)」
ハオ「(これも…ぉっ♥こっちも良いぃいっ♥♥)」
挿入されるのと…全然違うぅっ♪♪
どっちもオチンチンに無理矢理、ねじ伏せられる感覚ですが…こっちの方がより甘くて…ぇ♥♥
アソコが…もうダメになってるのが分かります…っ♪♪
たった一回の挿入でオチンチン大好きになってるのが、伝わってくるんですよぉっ♥♥
ハオ「(でも…でも、仕方ないじゃないですかあっ♪♪)」
ハオ「(これオチンチンなんですうっ♥)」
ハオ「(京太郎君のオチンチンなんですよぉぉ♥♥)」
これが他の人のオチンチンならば…不健全極まりない…です…っ♪♪
きっと私は躊躇なく自らの舌を噛みきっていた事でしょう…♥
でも…でも、これは世界で一番愛している人のオチンチンなんですっ♥♥
私が心も身体も許した唯一の男の人に…溺れない方が不健全…♪♪
性生活の不一致が私達の仲を引き裂く火種になりかねない事を思えば、感じすぎるくらいが丁度良い…はず…ぅう♥♥
ハオ「(だから…良いのぉっ♪♪)」
ハオ「(溺れても…良いぃっ♪)」
ハオ「(オチンチン好きで良いぃぃっ♥♥)」
京太郎君だけえっ♥♥
こんな風になるのは…京太郎君だけですからあっ♥♥
だから…良いんですっ♪変態なんかじゃないんですうっ♪♪
溺れちゃっても良いのぉっ♥気持ち良くなっても良いっ♪♪
またすぐにイっちゃいそうになっても…全然、問題なんか ――
ハオ「ひぐうぅううぅううううっ♥♥」
お、オチンチン、またキたあぁあ…♪♪
私がイきそうになった瞬間…っ♥
また子宮が絶頂しようとした瞬間ぅうぅう♥♥
オチンチングリって私のアソコ押し広げて…また奥までキたんですぅうっ♪♪♪
ハオ「(こ、こんなの…イっちゃうぅうっ♪♪)」
ハオ「(我慢するなんて…絶対に…絶対に無理ぃいっ♥♥)」ビククン
も、もう…もう三回目…です…ぅ♪♪
まださっきイった余韻も引いたばっかりだって言うのに…私、また絶頂しちゃって…ぇ♥
肌が波打つようにして…ビクンビクンってなってるのが分かる…ぅうっ♪♪
ベッド握りしめる手にも…もうあんまり力が入らなくてぇ…♥♥
私の身体…ドンドンダメになってるぅ…♪♪
エッチな事以外何も出来ない子にさせられちゃっているんです…♥♥
ハオ「(でも…逆らえ…ないぃっ♪♪)」
ハオ「(奥まで入ったオチンチンから…逃げられない…ぃいっ♥♥)」
私はもう…奥まで串刺しにされちゃってるんですからぁ…♥♥
京太郎君のオチンチンで…お腹の奥まで捕まっちゃってるんですぅ…♪♪♪
だから…ここで暴れても…絶対に…逃げられない…ぃ♥♥
ケダモノになった京太郎君が逃がしてくれるはず…ないんです…♪♪
だから…ここは大人しく…ぅ♪大人しくしてるのが最善 ――
ハオ「あぁあぁああっ♪♪♪」
な、何ですか…これええっ♥♥
今、ビリビリって…ぇっ♥やらしいのがビリビリって来ましたぁっ♪♪
勿論、さっきまでも快感が思いっきり私を襲ってたんですけど…でも、今のはそれよりもずっとずっと強くて…っ♥
子宮の奥まで突き刺さるのが…分かる…うぅ…♪♪
さっきよりも私…ずっとずっとエッチになってるのが分かっちゃうんですぅう♥♥
ハオ「(も、もしかして…これぇ…♥♥)」
私…敏感になっちゃってるんです…かぁ…♪♪
イく度に…私の身体の中で快楽神経が活性化して…♥♥
ドンドンと淫らに…そして気持ち良く…させられちゃうんですか…っ♪♪
身体の内側から…エッチに特化するように作り変えられちゃってるんですかあっ♪♪♪
ハオ「(も、もし、もし、そうならぁ…♥♥)」
私…どれだけエッチにさせられちゃうんでしょう…♪♪
今でさえ…もう最初からは信じられないほどエッチなのに…♥
エッチになりすぎた自分を受け入れるのに…もう三回は譲歩しちゃってるのにぃ…♥♥
このままさらにエッチになったらどうなるのか…もう…もぉ想像がつかないです…♪♪
一体、何処まで堕とされるのか…今からでも不安なくらいで…ぇ♥♥
ハオ「(でも…ぉっ♪でも…嫌じゃ…ないぃ…♪♪)」
私はきっと気づくのが遅すぎたんです…♪
まだ二回目の絶頂の前に気づければ…後戻りは出来たかもしれないのに…ぃ♥
もぉ…もう私…エッチになりすぎちゃったんですよぉ…♪♪
堕ちるのが分かってるのに…抵抗…ぉ♪抵抗…出来ないぃ…♥♥
エッチにされる期待感が多すぎて…私、京太郎君に嫌なんて言えなくてぇ…♪♪♪
京太郎「くぅ…っふぅぅっ」
ハオ「ふぁあぁあぁっ♪♪♪」
それに…京太郎君も…ぉ♪京太郎くんも…止まれません…ぅ♪♪
私に向かって…まったく無遠慮に腰を突き出してるんですから…ぁ♥♥
私が処女であった事なんて忘れたみたいに…がっついて来てるんです…っ♪♪♪
そんな京太郎君にダメなんて…言えるはずありません…♥♥
こんなにも私に夢中になってくれている愛しい人に…NOだなんて言ったら…それこそ非道の誹りを受けるでしょう…♪♪♪
ハオ「(だ、だから…っ♥だからあぁああぁああっ♪♪♪)」
よ、四回目…ぇぇ…♪♪
四回目の絶頂キましたぁ…♥♥キちゃいましたぁあっ♪♪♪
やっぱりこれ…三回目よりも早くて強い…ぃっ♥♥
ただでさえ身体中で暴れてるみたいな凄い波が…さらに強くなっていって…ぇ♥♥
こ、腰が…腰が勝手に浮いちゃいます…ぅ♪♪
痙攣しながらクイクイってやらしい動きしてぇ…♥♥
京太郎「うぉお…」
ハオ「ひぃぃぃいいぃいいいんっ♥♥」
う…嘘ぉ…♪こんなの…こんなの嘘ですぅ…♪♪
なんで…なんでまた大きくなるんですかぁ…♥
ただでさえ大きすぎて…もう私のアソコギチギチなのにぃ…っ♪♪
ここがもう限界だってアソコ中が叫んでるのにぃ…♥♥
オチンチン…ここからさらに大きくなるなんて反則…ですうぅっ♪♪♪
こんなの絶対に無理ぃ…♪無理無理無理無理無理無理ぃいっ♥♥
京太郎「ハオ!ハオ…ぉっ!!」
ハオ「やあぁあぁああっ♪♪♪」
なのにぃっ♪なのにぃいっ♥♥
突かれてるうぅっ♪♪大きくなったオチンチンでアソコ滅茶苦茶にされてるううっ♥♥
アソコ中からまたミチミチって悲鳴があがってるのに、腰の動き、早くしてるんですうっ♪♪♪
こ、こんなの…鬼畜…うぅっ♥♥鬼畜の所業…ですうっ♥♥
完全に京太郎君…理性をトばしたケダモノになっちゃってるぅぅ…♪♪
ハオ「(でも…気持ち良いぃっ♪♪)」
ハオ「(大きくなったオチンチンでも気持ち良くて堪らないぃいっ♥♥)」
勿論、ちょっぴり痛いのはありますけど…でも、そんなの殆ど気にならないレベルで…っ♥♥
それ以上に気持ち良いのに飲み込まれて、あっという間に見えなくなってしまうんです…♪♪
そんな気持ち良いオチンチンで…ガン突きされたら…ダメになるに決まっているじゃ…ないですかぁあ♥♥
また私イきますうっ♪♪京太郎君のガチガチオチンチンでイくぅうっ♪♪♪
無理矢理…イか…イかされちゃうぅうっ♥♥
京太郎「あ…あぁああっ」ドップゥ
ハオ「~~~~~っ♥♥♥」
な、なぁああ…あぁああっ♪♪♪
何ですか…ぁ♥何なんですか…これぇえっ♥♥
私が…私がイっちゃった瞬間、熱いのがドプゥっ♪ドプゥってえっ♥♥
私の奥で…思いっきり出てる…ぅ♥
暖かいのをぶっかけられて…るぅぅ♥♥♥
ハオ「(しかも…ただ熱いだけじゃなくって…ぇ♥♥)」
甘い…んです…♪♪甘すぎるんですよぉ…♥♥
味じゃなくて…感覚…が…♪♪お腹の奥が…甘くて甘くて仕方がないんです…♪♪♪
まるでこれが幸せで幸せで堪らないって言うみたいにぃ…♥
頭では分からなくても…本能では分かってるみたいにっ♥♥
甘くて幸せな感覚が止まらないの…ぉ♪
お腹の奥ジィィィンって震えて…蕩けていっちゃうぅぅ…♥♥
ハオ「(も、もしかして…これ…えぇ…♪♪)」
射精…なんですかぁ…♥♥
京太郎君の・・精液…ぃ♪ザーメン…なんですかぁ♥♥
あぁぁ…♪それなら…納得…です…♪♪
愛しい京太郎君の精液なら…こんな風に幸せになっちゃって当然…ぅ♥♥
身体だけじゃなくて子宮まで蕩けるような絶頂を避けられるはず…ないんです…♥♥♥
ハオ「(私…女の子で…良かったぁぁ…♥♥)」
ハオ「(女の子で生まれてきて…幸せ…です…ぅ…♪♪♪)」
愛しい人に膣内射精されるだけでこんなに幸せになれるなんて…ぇ♪♪
一時は色々な煩わしさから女である身を恨んだ事もありますが…♪♪
でも…世の中…案外、上手く出来ているもの…なんです…ね…♥♥
煩わしさが多い分…こんなにも…こんなにも幸せなものを感じる事が出来るなんてぇ…♪♪
この絶頂も女の子の特権だと思えば…今までの煩わしささえ肯定出来る気持ちに…ぃい♥♥
京太郎「う…うぅぅ…っ」ギュゥ
ハオ「んぁあぁあああっ♪♪♪」
その上…私の目の前には…京太郎君がいるんです…っ♥♥
ベッドに押し付けるようにして私の身体を抱きしめながら…思いっきり射精してくれる愛しい人が…♥♥♥
何処か必死ささえ感じさせる表情でドピュドピュ♪ドクドクってぇ…♪♪
そんな風に射精してくれるところを見るだけで…私はもう…ダメです…♥♥
絶頂がまた強くなって…口からエッチな叫び声が飛び出ちゃうぅ…♪♪♪
ハオ「(ううん…声だけじゃなくって…涙まで…ぇ♪♪)」
ただ、気持ち良いだけじゃなくて…幸せで幸せで堪らないんです…♥♥
生まれてきて良かったと…そんな言葉さえ浮かんできてしまうくらいに…♪♪♪
そんな感情が私の中で収まるはずもなく…目尻から涙となって漏れでてしまって…♥♥
私…嬉し泣き…してるんです…♪♪♪
京太郎君に射精されるのが嬉しすぎて…涙を止められないんですよぉ…♥♥
ハオ「はぁ……♪は…ふぁ…ぁ♥」
でも…その時間も長く続かなくって…♥♥
幾ら京太郎君が魔法が掛かってるみたいなオチンチンを持っていても…ずっとは射精出来ません…♪♪
自然、愛しい人から膣内射精されてるというシチュエーションにイっていた私の身体もゆっくりと収まっていって…♥♥
その口から漏れるのもエッチな叫び声じゃなく…熱い吐息へと変わっていって…♪♪♪
京太郎「…ハオ、その、ごめんな」
も、もぉ…今更、謝っても…遅いですよぉ…♥♥
私…この一回で…本当にダメになっちゃったんですからね…♪♪
ただ気持ち良いだけじゃなくて…あんなに幸せなの教えられたんですから…ぁ♥♥
もう私…絶対に忘れる事なんて出来ない…です…♪♪♪
あの絶頂も幸福感も…私の中に刻み込まれてしまったんです…からぁ…♥♥♥
ハオ「ん…ふぅ…ぅ♥♥」ギュゥ
…でも、今はまだ…そんな事言う余裕はないです…♪
私の身体は数度に渡る絶頂で疲れているんですから…♥♥
まぁ…勿論、動かそうとすれば返事も出来るでしょうけれど…今はその気にはなれません…♪♪
それよりも今は京太郎君と結ばれた余韻に浸っていたい気分なんですから…♥♥
京太郎「は、ハオ…?」
ふふ…♪だから…今は抱きつくだけ…です…♪♪
最後が最後だけに許してはいますけれど…ちょっぴり拗ねる気持ちは私にもあるんですからね…♪♪
私が一体、どういうつもりで抱きついているのか…それが分からずにおっかなびっくりしてれば良いんです…♥♥
それが私から貴方に対する罰なんですから…♪♪♪
京太郎「そ、その…そういう事されると…さ」ピクン
ハオ「ふあぁっ♪♪」
ちょ…ま、待ってください…♥
さっき京太郎君、思いっきり射精したじゃないですか…っ♪♪
私の奥で何度もオチンチン震わせて膣内射精しましたよね…♥♥
なのに、どうしてこんなに硬いまま…と言うか…っ♥
私の中でオチンチンピクンピクンって揺らしているんですかぁ…っ♪♪♪
ハオ「(そんなのされたら…私もまた興奮して来ちゃう…♪♪)」モジ
もう終わったと…そう思っていたのに…ぃ♪♪
エッチな事はもうしないんだって身体も落ち着き始めていたのに…♪♪♪
そんな風にまだまだだってオチンチンで言われたら…私の方だってその気になっちゃいますよぉ…♥♥
あの快感と幸福感をまた味わいたいって…私の身体が勝手に身動ぎしちゃってぇ…♪♪
京太郎「分かるだろ」
京太郎「その…俺もこれ以上、ハオに無茶させたくないし…」
もぉぉ…馬鹿ぁ…っ♥本当に…本当に馬鹿なんですからぁ…♥♥
今更ですよ…そんなの…っ♪♪
本当に…本当に今さら過ぎます…♥♥
だって、もう私は知っちゃったんですからぁ…♪♪♪
オチンチンの良さもセックスの幸せも全部全部ぅ…♥♥♥
京太郎くんに…貴方に教えこまれた後なんですからね…っ♪♪♪
ハオ「…っ♪♪♪」ギュゥゥ
京太郎「ぅ…」
だから…お仕置きです…♪♪
もっともっと…私の身体押し付けて…その気にさせちゃいます…っ♥♥
だって…私の方はもう完全にその気なんですから…♪♪♪
私をこんなにエッチにしちゃった京太郎君だけまだ冷静だなんて…そんなの不公平が過ぎます…っ♥♥
京太郎「…良いのか?」
京太郎「い…良いんだよな…?」
ハオ「……ん♥♥」コクン
まったく…肝心なところでヘタレなんですから…♪♪
こんなにアピールしてるんですから…もっと強気になってくれても良いのに…♥♥
まぁ…でも、そういうところも…あんまり嫌いではないというか…♪♪♪
可愛いとそんな風に思ってしまうのは、間違いなく惚れた弱みと言う奴なのでしょう…♥♥
京太郎「じゃ、じゃあ…今度は出来るだけ優しくするからさ」チュゥ
ハオ「ふぁぁ…ぁ♪♪」
その上…そんな風に優しくキスしてくれますし…♪
ホント、ヘタレな癖に…女の子をドキドキさせる術は良く心得ているんですから…♥♥
正直、本当に今日まで童貞だったか信じがたいくらいですよ…♪♪
こんなに私をドキドキさせて…♪堕としておいて…♪♪
本当に初めてなんだとしたら…エッチな才能に溢れすぎじゃないですかぁ…♥♥
ハオ「(だから…私が頑張って受け止めてあげないと…ぉ♪♪)」
きっと一度、エッチしたらほとんどの女の子は京太郎君の虜になってしまいます…♥♥
…まぁ、私という恋人がいる身でそんな不誠実な真似をするような人ではないと信じていますが…それでも万が一と言う事はある訳で…♪♪
だから、それを防ぐ意味でも…私は京太郎君の全てを満足させてあげなければいけないんです…♪♪
私以外の女に絶対に目がいかないよう…彼を虜に出来るような女にならなくてはいけなくて…♥♥
京太郎「ん…」ズル
ハオ「あぁぁぁ…っ♪♪」
そんな事を考えてる間に京太郎君のオチンチンが動き始めます…♪♪
何度も私に優しいバードキスをしながら…ゆっくりとオチンチンがお腹から離れていって…♥
さっきみたいに無理矢理、アソコのお肉を引きずるんじゃなくて…出っ張りで撫でるような引き抜き…ぃ♪♪
それはすごく甘くて優しいけれど…でも…ぉ♥♥
ハオ「(物足りな…い…っ♪♪)」
京太郎君の今の動きは…とても愛しさを感じさせるものです…♥♥
さっきのケダモノ染みたものじゃなくて…宝物のように私を愛してくれています…♥♥♥
それは勿論、嬉しいですが…でも…でも、私はもうそんなんじゃ満足出来ません…♪♪
私はもうケダモノのように京太郎君に求められる事を知ってしまったのですから…♥♥
処女である事もお構い無く腰をいっぱいに使ってオチンチンを叩きつける抽送に比べれば…あまりにもこれは弱々しすぎるんです…♪♪♪
ハオ「(極端から極端に走り過ぎ…ですよぉ…♪♪)」
勿論、それはさっきのお詫びと言う意味も込めているのでしょう…♪
処女を前にして我を忘れてしまった事を彼が悔やまないはずがないのですから…♪♪
でも…それはもう遅過ぎるんです…♥♥
今更、愛撫の延直線上のようなピストンでは足りません…っ♪♪
私もまたケダモノに堕とすようなそんな激しさが、欲しくて欲しくて堪らないんですから…っ♥♥
ハオ「(でも…流石に恥ずかしくて言えません…っ♪♪)」
私はさっき京太郎君の前で幾度となくケダモノじみた叫び声をあげました…♥
いえ、それだけじゃなく…イッた顔なんかも全て見られてしまっているんです…♪♪
しかし、だからと言って、ここで素直に激しくして…なんて言えません…♥♥
最中ならばともかく、今の私は多少のインターバルを挟んで幾分、冷静になっているんですから…♪
胸中に浮かぶ羞恥の感情は決して小さいものではありませんでした…♥
京太郎「ちゅ…ふぅ」ジュル
ハオ「(でも…こんな…ぁ…♥♥)」
優しすぎるくらい優しいピストンは…もう私には焦らされているようにしか思えませんでした…♪♪
勿論、幾度の絶頂を経て敏感になったアソコはそんな抽送でも感じていますが…それは求める水準には到底届いていないんです…♥♥
結果、私のお腹の中で疼きが強くなって…もう止まりません…♪♪
じっくり数十秒掛けて奥にチョンと触れられる度に、子宮から欲求不満が染み出してきました…♥♥
ハオ「(もう少し…ぃ♪もう少し強ければ…まだ我慢も出来るのにぃ…♥♥)」
京太郎君のピストンは腹立ちさえ浮かんでくるほど巧みなものでした…♪♪
快感を感じられるギリギリの強さで腰を動かし続けているのですから…♥♥
まるでアソコの中をフェザータッチされているようなそれに…私はドンドンと我慢を削られていってしまいます…♪
一度知ってしまった快楽を求める思考が大きくなるのを…私はもう止められませんでした…♪♪
ハオ「は…ぁぁ…♪」クイ
それでもまだ声に出せるほど吹っ切れたりしない私の腰が勝手に動いてしまうんです…♪
クイクイと自分から京太郎君を求めるようにして…エッチな動きをしてしまって…♥
勿論…そんな自分の動きを隠せているとは思いませんし…とっても…とっても恥ずかしいです…♪♪
でも、それ以上に私はもう限界でした…♥
京太郎君の焦らすような抽送が十回を超える前に、私の身体はギブアップしてしまったんです…♪♪
京太郎「…えっと」
ハオ「きゅぅぅ♥」
そんな私の上で京太郎くんが何とも言えない顔をするんです…♥
自分から腰を動かしている私に対してどうしようか迷っているような顔…ぉ♥♥
気づいた方が良いのか、それとも気づかない方が良いのか…♪♪
そんな風に逡巡しているのが…京太郎君の顔からはっきりと伝わってきましたぁ…♥♥
ハオ「(気づいて…っ♪気づいてください…っ♪♪)」
ハオ「(ここでお預けなんて…そんなの絶対に嫌ですぅっ♥♥)」クイクイ
だから…だから、アピール…しないと…♪♪
もう優しくなんてしなくても良いんだって…♥♥
ケダモノのように求めて欲しいんだって…♪♪
そうしっかりアピールしないと…鈍感な京太郎君は気づいてくれません…ぅ♥
だから…だから、腰が動いちゃうのも仕方がない事で…ぇ♪
ハオ「(良いですから…っ♪♪)」
ハオ「(また意地悪しても良いですからあっ♥♥)」
ハオ「(私の事いじめながら…膣内射精しても大丈夫ですからあっ♪♪)」
意地悪しても良いって…胸中でそう言っちゃうのも仕方がない事なんです…♪♪
だって、京太郎君は普段は優しいのに…閨ではとっても意地悪なんですからぁ…♥♥
今までも私の事を沢山、いじめてくれた彼が我慢出来るはずありません…♥♥
きっと私はまた京太郎くんにいじめられてしまうでしょう…♪♪
だから、こうやって言葉が浮かんでくるだけで…私がそれを望んでいる訳じゃありません…♪♪
もうエッチになった事は認めましたが…それでも私はいじめられて悦ぶような変態に堕ちたつもりはないんです…♥♥
寝ます(´・ω・`)オヤスミ
今週はどうやら今日以外ろくに投下出来ない感じなので、朝からまた始めます 多分
京太郎「…ハオ」
ハオ「は…うぅ…♪♪」
でも…でも…少しだけ…ですけどぉ…♥♥
私の名前を呼ぶ京太郎君の意地悪な顔にドキドキ…しちゃいます…♪♪
本当は怖いはずなのに…そういうの好きじゃないのに…ぃ♥
まるで興奮して堪らないって言うみたいに身体の奥から熱くなって…♪♪♪
京太郎「そんなに激しくして欲しいのか?」
ハオ「っ…♪♪♪」キュン
アソコも…ぉ♪アソコも今…キュンってしちゃいましたぁ…♥
意地悪な事言われてる…のにぃ…♪エッチな事言わされそうになってるのに…っ♥♥
オチンチンの挿入ってるところが…キュンって締まって…ぇ♪♪
反応…しちゃってるんです…っ♥
京太郎君のエッチな言葉に…私のアソコ思いっきり疼いちゃってるんです…っ♥♥
ハオ「ち、違い…ます…♪♪」
ハオ「わ、私はただ…そ、その…ぉ♥♥」モジモジ
それでも…私はまだ素直になる事が出来ません…♪♪
認めれば気持ち良くなれると分かっているのに…どうしても素直になれないんです…♥
でも、そうやって意地を張っても、私の身体はもうエッチになっちゃって…♪♪
何とか言い訳の言葉を探しながらも、身体が動いちゃうんです…♥♥
気持ち良いのを探すみたいに…腰がモゾモゾしてぇ…♪
京太郎「じゃあ、そんな風に動かなくても良いよな」ガシ
ハオ「ひ…いぃいっ♪♪」
い、意地悪…ううっ♪♪ホント、京太郎君は意地悪…です…ぅっ♥♥
私、もうこんなになってるんです…♪
一杯一杯、身体でアピールしてるんですよぉっ♥
それはもう絶対に京太郎君だって分かってるはずじゃないですかぁっ♪♪
なのに…なのに私の腰、がっちり捕まえて動けなく…してぇ…っ♥
その上、腰も動かすのを止めるなんて…意地悪過ぎます…ぅっ♥♥
ハオ「(もどかしい…っ♪)」
ハオ「(こんなの…もどかしすぎますよぉ…っ♥♥)」
これが京太郎君にその気にされる前だったら気にならなかったんでしょうけれど…♪♪
私の身体はもう…京太郎君の所為でその気になっちゃったんです…からぁ…♥♥
子宮の中にもう熱が入って…欲求不満に焦がされてるみたいなんですよぉっ♪♪
なのに、この上、ピストンまで取り上げられたら…我慢出来るはずありません…っ♥♥
もう気持ち良いのを知っちゃったアソコがオチンチン欲しい欲しいって泣いちゃってます…ぅう♪♪
京太郎「まぁ、ハオは別に激しくされなくても良いみたいだし」
京太郎「もう少しこのままイチャイチャしようぜ」ナデナデ
ハオ「きゅぅ…うぅん…♪♪」
そうやってイチャイチャして貰えるのは嬉しいですよ…っ♪♪
嬉しいです…けどぉっ♥♥
でも、今、私が欲しいのはそれじゃないんですっ♪♪
イチャイチャじゃないのぉっ♥♥
もっとエッチなのが欲しい…っ♪♪
溺れるくらい気持ち良いのを欲しがってるって分かってる癖にぃいっ♪♪♪
京太郎「ま、オネダリしてくれるんなら俺に拒む理由はないんだけどさ」ポソ
ハオ「はぁ…っ♥はぁあぁっ♥♥」ブル
こ、このぉ…っ♪この…変態…ぃい♥♥
私の事、こんなに焦らしておいて…それもう脅迫じゃないですかあっ♪♪
オネダリしろって…殆どそう言ってるようなもの…ですよぉお♪♪♪
ついさっき処女を失ったばっかりの私に…そんな事言うなんて変態です…っ♥♥
意地悪を通り越して…もう完全にサディストじゃないですかぁあっ♥♥♥
ハオ「(で…でも…おぉぉ…♪♪♪)」
欲しい…ぃっ♥欲しいんです…♥♥
さっきみたいに激しいのが…ぁ♪♪何もかも忘れられるような気持ち良いのがぁ…っ♥♥
もう…もう欲しくて…おかしくなりそうなんですよぉ…♪♪♪
まだ焦らされ始めてから十分も経ってないのに…私の心もう白旗をあげちゃって…ぇ♥♥
耐えられ…ないぃ…♪♪
こんなの…我慢出来るはず…ないじゃないですかぁあ…ぁッ♪♪♪
ハオ「…さいぃ♪」
京太郎「ん?なんだって?」
ハオ「くださいぃっ♪♪」
京太郎「何を?」ニヤ
き、京太郎君…もう勝ち誇った顔をしてます…♪♪
きっと…私が何を言おうとしてるのか…分かっている…んでしょう…♥
それにちょっぴり拗ねたくもありますが…でも、もう私の身体、限界で…♪♪
悔しいけど…抵抗…出来ない…♥♥
気持ち良いの欲しすぎて私…もぉおぉ…♪♪
ハオ「もっと激しくしてくださいいっ♪♪」
ハオ「オチンチンゴツゴツってぶつけるみたいにぃっ♥♥」
ハオ「アソコが壊れちゃうくらい滅茶苦茶なエッチして欲しいんですうっ♪♪♪」
あぁ…あぁぁぁ…♪♪♪
言っちゃった…ぁ♥言っちゃい…ましたぁあ…♥♥
オネダリの言葉…ぁ♪エッチな…事ぉお♥♥
いままでずっと我慢してたのに…♪言っちゃダメだって思ってたのにぃ…♪♪
私…気持ち良いのとオチンチンに負けちゃって…こんな風に思いっきりオネダリしちゃってぇえ…♪♪♪
ハオ「(恥ずかしい…けど…気持ち良い…ぃっ♪♪)」
私…こんなにエッチな事言わされてるのに…ぃ♥♥
オチンチンに負けちゃって…悔しいくらいなのに…っ♪♪
でも…私、気持ち良く…なっちゃってるんです…♥
恥ずかしい事言わされて…私、感じちゃってる…ぅ♪♪
まるで変態みたいに…ドキドキしてる胸の奥から気持ち良いのが広がってるぅう…♥♥
京太郎「へぇ…ハオは激しいのが好きなんだな」
ハオ「そ、そぉっ♪そうですうっ♥♥」
ハオ「激しいのが好きなんですっ♪グチュグチュにされるのが良いのぉっ♥♥」
ハオ「京太郎君に思いっきり犯されるの大好きぃいっ♥♥♥」
だから…私の声…もう止まりません…♪♪
私の身体、もう焦らされすぎてダメになっちゃったからぁ…♥♥
気持ち良いのに完敗しちゃったから…もう快楽に逆らえないんです…♪♪♪
気持ち良いのが欲しくて…勝手に恥ずかしい事、口走っちゃう…ぅ♥♥
エッチな事、京太郎くんに言いながら、アソコがまたキュンキュンしちゃって止まらないの…ぉお♪♪♪
京太郎「じゃあ、ご褒美に思いっきりしてやらないと…なっ」ズン
ハオ「ひぐうぅううぅうううっ♪♪♪」
い、いき…いきなり…いぃぃいっ♥♥
オチンチンがあっ♪♪京太郎君のオチンチンが動いてええっ♥♥
私の子宮をズンって突き上げて…い…イっちゃいましたぁあっ♪♪♪
ずっと焦らされ続けた子宮…耐え切れなくて…一突きで…もぉおっ♥♥
京太郎「ほら、お望み通り、犯してやってるぞ!」
京太郎「気持ち良いのか?」
ハオ「き、気持ち良いぃいっ♪♪気持ち良いですうぅうっ♥♥」
頭の奥までキましたああっ♪♪
子宮で弾けた絶頂の波が、思いっきり頭の中までえええっ♥♥
こ、こんなの…強…強すぎます…うぅうっ♪♪♪
これ何回も味わったら絶対に馬鹿になっちゃううっ♥♥
ずっとエッチなスイッチ入りっぱなしのダメな子になるうぅうっ♪♪♪
ハオ「(でも…ぉっ♪でも…良いのぉっ♥♥)」
ハオ「(馬鹿になっても良いのぉおぉっ♪♪♪)」
こんなに気持ち良いのを貰えるなら…私、馬鹿で良いぃっ♪♪
もうあんな風に焦らされるのよりはバカの方がずっとずっとマシだからぁっ♥♥
だから…もっとくださいいいっ♪♪
この絶頂をもっとぉっ♥♥焦らしてた分まで…一杯ぃいっ♥♥♥
京太郎「ついさっきまで処女だったのに感じるだけでもびっくりだってのに…」
京太郎「その上、オネダリまでするなんてホント、ハオは変態だな」
ハオ「だ、誰の所為だとおおぉおっ♪♪♪」
わ、私は普通…ぅうっ♪♪
普通だったんです…よぉおっ♥♥
エッチな事になんて興味がなかった…ぁ♪普通の女の子だったのにぃいっ♥♥
それをダメにしたのは京太郎君じゃ…ないですかあっ♪♪
変態にぃっ♪♪馬鹿になっても良いってまでエッチになったのは貴方の所為ぃいぃ♪♪♪
京太郎「そうだな。だから、ちゃんと責任取ってやらないと」チュゥ
ハオ「ふ…うぅぅ…♥♥」
あぁ…ぁ♥♥
騙…騙されません…よぉ…♪♪
またそんな風に優しいキスしてもぉ…ぉ♥♥
私の事…意地悪するつもり…なんでしょぉお…♪♪♪
もう完全に…意地悪スイッチ入っちゃってるの…まるわかり…なんですからぁあっ♥♥
ハオ「(でも…でも…嬉しいぃ…♥♥)」
反則…ぅっ♪♪こんなの…絶対、反則ですうぅ…♪♪♪
だって…こんな事言われながらキスされたら…もう後戻りしようと思う事さえ出来ない…ぃ♥♥
変態になった私を受け入れるような事言われたら…最後のストッパーすら…トんじゃうじゃないですかあっ♪♪♪
これもまた意地悪の伏線だって分かってるのに…堕ち…ちゃううっ♥♥
京太郎君にキスされながらオチンチンゴツゴツされて…私、もう完全に堕ちちゃいますうっ♥♥♥
ハオ「ふあぁ…あぁあ♪♪」
京太郎「もう完全にトロ顔になってるじゃないか」
京太郎「もしかしてキスの最中にもイってたのか?」
ハオ「は…いぃぃ…♥♥」
イきますよぉおっ♪♪イかないはずないじゃないですかあっ♥♥
ただでさえ、犯されてて気持ち良いのに…あんな事言われながらキスされたんですよぉっ♪♪
女の子なら誰でもイくに決まってます…ぅうっ♥♥
アレでイかないなんてそれこそ本当に不感症以外の何物でもないですよおお♥♥♥
ハオ「(ましてや…私はもう…完全に変態になっちゃってぇ…♪♪)」
もぉ…♪もう…認めるしか…ありません…♪♪
私はもぉ完全に…京太郎くんに染められちゃいました…ぁ♥♥
京太郎君の意地悪で感じちゃう…変態女になっちゃったんですぅ…♪♪♪
京太郎君の意地悪な言葉にも素直に答えちゃう私が…耐えられるはずありません…♥♥
もう…さっきからイきまくり…ですよぉっ♪♪♪
アソコからエッチな汁が止まらないくらいに絶頂してるんですからねぇっ♥♥
ハオ「い、イきましたあっ♪♪」
ハオ「今もぉっ♥今も…アソコイってますうっ♥♥」
ハオ「オチンチンジュポジュポされながら絶頂しててぇえっ♪♪」
京太郎「違うだろ」
違…うぅう…♪♪
何がぁ…♥何が違うって言うんですかあっ♥♥
私、本当にイっちゃってるんですよぉおっ♪♪♪
アソコがもう痙攣しちゃいそうなくらいにビックンビックンしててぇっ♥♥
オチンチンに悦んじゃってるまるわかりじゃ…ないですかああっ♪♪♪
京太郎「アソコじゃなくてオマンコって言わなきゃ」グリィ
ハオ「ひぃいいいんっ♪♪♪」
そ、そのタイミングでえっ♪♪
そこで…子宮グリってするの…ひ、卑怯ですよぉおっ♥♥♥
ただでさえ、敏感なのに…そ、そこを重点的に責められたらぁあっ♪♪
わ、私…またイっちゃうぅうっ♥♥
まださっきの余韻残ってるのに…イかされちゃいますうぅうっ♪♪♪
京太郎「それともまた焦らされる方が好みか?」
ハオ「や、やああっ♪♪それは嫌ですううっ♥♥♥」
ここで焦らされるなんて無理ぃいっ♪絶対に我慢とか無理ですうっ♪♪
確かに私は一回イったけど…あくまでもそれだけなんですからあ♥♥
一回の絶頂じゃ…私はもう満足出来ません…っ♪♪
まるで怒涛みたいに何度も何度もイかせて貰ってぇえっ♥♥
最後に膣内射精して貰えなきゃ…止まれないんですよぉっ♪♪♪
ハオ「お、オマンコですうっ♪♪」
ハオ「オチンチンに犯されて絶頂してるのオマンコぉおっ♥♥」
ハオ「も、もう間違いませんっ♪♪絶対に間違いませんからぁっ♥♥」
京太郎「…いや、必死過ぎだろ」
だ、誰の所為だと思ってるんですかあっ♪♪
あんなに気持ち良い事したのも…それを奪ったのも京太郎君なんですよぉおっ♥♥
私の人生観書き換えるだけの経験をさせたのは貴方なのに…そんな事言うなんて…っ♪♪
許しませんぅうっ♪♪絶対に…許しませんからぁあっ♥♥♥
ハオ「他にも…もっと教えて下さいぃっ♪♪」
ハオ「エッチな事、一杯ぃっ♪♪;一杯ぃいっ♪♪♪」
ハオ「京太郎君好みの女になれるよう…教え込んでくださいいぃっ♥♥♥」
だか…らぁっ♪♪だから…もっとエッチになるんですぅ…♥♥
京太郎君がもう二度と私から離れられないようにぃっ♪♪
私が彼に溺れる以上に、溺れて貰えるようにぃぃっ♥♥
もっともっと…エッチになって…変態になってぇえ…♪♪♪
他の女の子になんて…絶対に見向きも…させませんっ♥♥
京太郎君の全部を独り占めしてやるんです…ぅうっ♪♪♪
京太郎「やらしいな」
京太郎「そんなにご褒美が欲しいのか?」
ハオ「はいぃっ♪♪欲しいですぅっ♥♥」
ハオ「ご褒美も京太郎君の愛も…全部全部欲しいんですうっ♥♥♥」
京太郎「っ」カァァ
あは…ぁ♥♥京太郎君…赤くなっちゃってます…ぅ♥♥♥
動揺…したんですね…♪♪
ここまで情熱的に求められるなんて思ってなかったんでしょう…♪♪♪
ふふ…主導権握ってるからって調子に乗ってるから…そうなるんですよぉ…♥♥
私だって…もうエッチで…エロエロなんですからぁ…♪♪
京太郎君ばっかり好きにさせたり…しませんからね…♥♥
ハオ「ここぉっ♪♪ここですうぅっ♪♪♪」クイクイ
ハオ「私のっ♥私の一番、奥ぅうっ♥♥」
ハオ「子宮口の部分にくださいっ♪♪」
ハオ「ご褒美も愛も全部ぅうっ♥♥」
京太郎「ぅ…く…」
んふふ…♥♥
やっぱり京太郎君も…まだまだ余裕ないんです…ね…♪♪
私が自分から腰を押し付けたら…小さく声を漏らしちゃってぇ…♥♥
ホント…意地悪な癖に…可愛らしいところがあるんです…からぁ…♪♪
そんなところ見せられたら…私、もっと好きになっちゃいますぅ…♥♥
格好良くて優しくて意地悪なだけじゃなくて…可愛いところもある京太郎君に夢中になっちゃいますよぉ…お♥♥♥
京太郎「じゃあ…お望み通り、メスアクメさせてやるよ…!」グッ
ハオ「あ゛ぁあぁああああぁあっ♪♪♪」
つ、強く…ぅうっ♪♪
オチンチンの動き強くなってるぅうっ♥♥
私に主導権握られまいと…京太郎君、必死になって腰を動かしてぇえっ♪♪
グチョグチョヌルヌルのオマンコで暴れまわってるんですぅうっ♥♥♥
メスアクメさせてやるって全身で訴えるみたいにパンパンって腰押し付けてきてぇえっ♪♪♪
ハオ「イ…イきますうっ♪♪またイくぅうっ♥♥♥」
ハオ「京太郎君のオチンチンでアクメぇえっ♪♪アクメ…するううぅうっ♪♪♪」
こんなの…耐えられ…ないぃいっ♪♪
私の身体にがっつくようなエロエロピストンぅうっ♥♥
気持ち…気持ち良すぎるんですよおおっ♪♪♪
こんなの…こんなのすぐイっちゃううぅっ♥♥
あっという間に…メスアクメっ♪♪アクメ…させられちゃ…あぁぁあああっ♪♪♪
京太郎「イったな、ハオ…!」
京太郎「今、思いっきりアクメ、キめたんだろ…!」
ハオ「ひ…いぃいぃいいいいっ♪♪♪」
イ…イきましたあっ♥♥
ばっちりメスアクメ、キめちゃいましたああっ♪♪♪
京太郎君のお陰で…っ♪京太郎君のオチンチンでえっ♥♥
イったぁあっ♪♪もう隠し切れないほどイっちゃったのにぃいっ♪♪♪
京太郎「俺はまだだってのに、一人でイくなんて悪い子だな…!!」
ハオ「ん゛おぉおおぉおおおっ♥♥♥」
き、京太郎君、ピストンしっぱなしなんですうっ♪♪
今までで一番のアクメだったのにぃいっ♪♪悲鳴まで出ちゃうようなすっごい絶頂だったのにいっ♥♥♥
勢いを弱めるどころか…寧ろ、興奮するみたいに腰を打ち付けて来てるんですううっ♪♪
さっきよりもパンパンって肉の弾けるような音も大きくなって…ぇ♪
わ、私…これ…ダメぇえっ♪♪
思った以上に良すぎるぅうっ♥♥メスアクメ…強すぎる…うぅうう♥♥♥
ハオ「(だ、だって…も、もぉ、イきそうになってる…うぅうっ♪♪♪)」
ま、まだ私、イってる途中なのに…ぃいっ♥♥
今までで一番のメスアクメがまだまだ始まったばっかりなのにぃっ♪♪♪
オチンチンで奥まで犯されると…もぉダメなのぉっ♥♥
どんどん気持ち良いのが子宮に溜まっちゃってるぅうっ♪♪♪
もう次のアクメに向けて準備始めちゃってるんですよぉおっ♪♪♪
ハオ「(こ、このままじゃ私…イ、イき続けちゃうぅうっ♪♪)」
今までの経験上、イく度に身体が敏感になっちゃってる…からぁあっ♥♥
ここでイっちゃったら…もう後は転がり落ちてくしか…ないんですぅ…♪♪♪
京太郎君が止まってくれるまで…もうずっとアクメしっぱなしでぇえっ♥♥
身体の内側も外側もグチョグチョのドロドロになっちゃうのが今からでも…分かる…うぅうっ♪♪
ハオ「ご、ごめんなしゃ…っ♪ごめんなしゃぃいっ♪♪」
ハオ「ハオは悪い子にゃんですうっ♥♥」
ハオ「一人でイった悪い子ぉお♪♪」
ハオ「エッチでオチンチンに弱い子にゃんですよぉおっ♪♪♪」
でも…今更、止まれません…ぅ♪♪
だって…私、もう変態…なんですからぁ…♥♥
こんな恥ずかしい事言っちゃうくらい…エッチな事大好きになっちゃったんですからぁ…♪♪♪
イき続けるのとっても楽しみで…嫌だなんて言えなくて…♥♥
まだアクメしてる途中なのに…自分からオチンチンを迎えにいってぇえ…っ♪♪♪
ハオ「らからぁっ♪お仕置きぃいっ♥♥」
ハオ「このオチンチンでお仕置きくだしゃいいっ♪♪」
ハオ「もぉ悪い子にならなくても良いようにぃっ♥♥」
ハオ「京太郎君のオチンチンでお仕置き欲しいのぉっ♪♪♪」
京太郎「こ…のぉおっ」ガシッ
うひゅぅうぅううぅううっ♪♪♪
が、ガン突きしながら…わ、私のおっぱい握られてるぅうっ♥♥
京太郎君の両手で…思いっきり鷲掴みにされてえっ♪♪
さっきからプルンプルンって揺れるおっぱいを…弄られてるのぉっ♪♪♪
グニグニモミモミって玩具にするみたいにお仕置きされてえぇっ♥♥
ハオ「あぁあっ♪♪おっぱいもぉお♥おっぱいも良いんですうっ♥♥」
ハオ「おっぱいのお仕置き気持ち良いっ♪♪」
ハオ「すっごくエッチですうっ♪♪♪」
京太郎「って喜んでたらお仕置きにならないだろ…!」
わ、分かってます…ぅうっ♪♪
それくらい分かってるんですよぉおっ♥♥
でも…それでもエッチなの止まらないんですうっ♪♪
私…もうエッチになっちゃったからあぁっ♪♪子宮からメスにされちゃったからぁっ♥♥
エッチなの逆らえないぃっ♪♪エッチなの大好きなんですうっ♥♥♥
ハオ「ふぉお゛おぉおぉおぉおおっ♪♪♪」
だ、だから…イッちゃうぅうっ♥♥
またメスアクメ…しちゃいますうっ♪♪
おっぱい鷲掴みにされながら…奥までガンガンオチンチンぶつけられてえっ♥♥
喉震わせながら…も、もうイっちゃううぅうっ♥♥♥
イきっぱなしに…なっちゃいます…ぅうっ♪♪♪
京太郎「そんな淫乱には…このまま種付けの刑だからな…!」
京太郎「抜かずにまた膣内射精キめてやるから…!」
ハオ「~~~っ♥♥」
あぁぁ…♪♪それこそ…それこそお仕置きにならないですよぉ…♥♥
だって…だって、そんなの…今、私が一番、望んでる事なんですからぁ…♪♪
京太郎君にまた子宮と密着させながら射精して欲しいって…♥♥
思いっきり種付けして欲しいって…私の子宮がそうキュンキュン鳴っちゃってるんですからぁあっ♥♥♥
ハオ「(こ、このタイミングでそれは…卑怯…ですよぉおっ♪♪)」
私、今、イっちゃったんですよぉおっ♥♥
京太郎君のオチンチンにまたメスアクメさせて貰ったんですからぁっ♥♥♥
それなのに…そんな素敵な事言われたら…もう頭の中までグチョグチョになっちゃいますうっ♪♪♪
もうエッチな事で一杯だった頭の中が…蕩けるぅうっ♥♥
妊娠したいって…孕ませて欲しいって…それしか言葉が出てこなくなっちゃいますよぉっ♪♪
ハオ「ほ、本当…ですかあっ♪♪」
ハオ「本当に種付けしてくれりゅんですかああっ♥♥♥」
京太郎「当然…だろ…!」グイッ
ハオ「ひぃぃいぃいいいっ♪♪♪」
お、おっぱいだけじゃ…ないぃいっ♪♪
京太郎君の指が乳首まで届いてえっ♥♥
私のオマンコ犯しながら…思いっきりつねってるんですうっ♪♪♪
乳首いじってた時よりもさらに遠慮のない…意地悪な…指ぃいっ♥♥
こんなの…こんなのされたら…私…もぉおっ♪♪♪
京太郎「ハオは誰のモノだ…!?」
ハオ「き、京太郎君の…ぉっ♪京太郎君のモノれすうっ♥♥」
ハオ「おっぱいもオマンコもしょれ以外もぉっ♪♪じぇんぶじぇんぶ、貴方のぉおっ♥♥♥」
私…恋人…なのにぃっ♪♪
京太郎くんと思い通わせたはずなのに…ぃっ♥♥
私の口が…勝手にこんな事…言っちゃうんですうっ♪♪♪
自分から恋人じゃなくて所有物に堕ちるような事ぉおっ♥♥
エッチな興奮に流されて…私、言っちゃダメな事を口走っちゃううぅうっ♪♪♪
京太郎「そうだ。だから…俺がハオに種付けするのは当然なんだよ」
京太郎「だって、ハオは俺専用のオナホールなんだからな…っ」ヂュル
ハオ「ひぐぅう゛ぅううぅうううううっ♪♪♪」
でも…ぉおっ♪でも…幸せなんですうっ♪♪♪
所有物でもぉっ♥♥オナホールでも…幸せええっ♥♥♥
だって…京太郎君…優しいからあっ♪♪
意地悪でも…優しくしてくれるって信じてるからあっ♥♥
だから…私、安心して…堕ちられるうぅっ♪♪♪
恋人じゃなくても…オナホでも良いってぇっ♥♥
乳首をしゃぶられながらそんな事思っちゃうんですぅ…っ♥♥♥
ハオ「は…ひぃいっ♪♪おにゃ…オナホールですううぅっ♥♥」
ハオ「き、京太郎君専用のぉっ♥♥貴方だけのオナホールぅうっ♪♪♪」
ハオ「何時でも膣内射精しオッケーなオナホール女なんれすよぉおっ♪♪」
ハオ「らから…っ♥♥一生、京太郎君の性欲処理らけ考えまひゅぅうっ♥♥♥」
ハオ「頭の先っぽから足の指まで全部、京太郎君とのエッチに捧げましゅぅうっ♪♪♪」
あぁぁ…♪♪もう…もう止まりません…ぅ♥♥♥
エッチな宣言だけじゃなくて…私のアクメもぉ…ぉおっ♪♪
さっきイっちゃったばっかりなのに…もう次のアクメが…キてえぇえっ♥♥♥
頭の中が白く…ぅう♪♪白くなってくぅうっ♥♥
エッチで埋め尽くされた頭の中が…イきすぎて空白ができちゃってるんですよぉっ♪♪♪
ハオ「らからぁっ♪♪だから…このまま膣内射精しいぃいっ♥♥♥」
ハオ「子宮にマーキングすりゅみたいな凄いのくだしゃいいっ♪♪」
ハオ「オナホ女のハオに種付け欲しいのぉおっ♥♥♥」
京太郎「く…うぅうっ」ビクン
ふあぁあああっ♪♪
こ、この瞬間に…なんですかああっ♥♥
まるで私の言葉に興奮したみたいに…お、オチンチン大きくなってええっ♪♪♪
準備…してるうっ♥♥
オチンチンが膣内射精しの為に準備始めたのが分かりますううっ♪♪♪
ハオ「お゛ほぉおぉおおおぉおっ♪♪♪」
だ…めぇええっ♪♪♪
やっぱり…これ…これ気持ち良すぎるぅうっ♥♥
今までも十分、大きかったのにぃっ♪♪
今はもう大きさだけじゃなくて…硬さも熱もワンランクアップしてぇ…っ♥♥♥
もうイキっぱなしになったオマンコには…あ、あんまりにも強すぎる…ぅうっ♪♪♪
まるでオチンチンの興奮に引っ張られるように…私ももうイきかけてるうぅうっ♥♥♥
ハオ「わ、分かりまひゅぅうっ♪♪」
ハオ「お、オチンチンの準備っ♥準備ぃいっ♥♥」
ハオ「膣内射精の準備出来たのが分かりゅんですうっ♪♪♪」
ハオ「わ、わら…私で気持ち良くなってくれてりゅの分かるぅうぅうっ♥♥♥」
も、もう…こんなのおかしくなりそぉおっ♪♪
もう十分おかしいけれど…でも、これ気持ち良すぎてぇえっ♥♥
声に出していかないと…も、もう無理ぃ…っ♪♪♪
ちょっとでも我慢しようとしたら…パンクしちゃうぅうっ♥♥
私の身体が快楽で滅茶苦茶になって…立ち直れなくなっちゃいますよぉおっ♪♪♪
京太郎「そっちは…どうなんだよ…!」
京太郎「俺じゃなくて…ハオの方は…っ!?」
ハオ「も、もぉイきっぱなしですうっ♪♪」
ハオ「じゅっとメスアクメ止まりましぇんぅうっ♥♥」
ハオ「オチンチン動く度に眼の奥で白いのがバチバチしへるうぅうっ♪♪♪」
ハオ「し、舌も回らにゃいほど気持ち良くてえぇえっ♥♥」
ま、またあっ♪♪また…イったあぁあ♥♥♥
もう気持ち良いの全部、声に出してるのにぃいっ♪♪
我慢なんてまったくしてないのにいっ♥♥
気持ち良いの…も、もう…どれだけ言葉にしても減らないぃいっ♪♪♪
すぐにアクメして…イくの止められなくてえええっ♥♥
準備始めるぅうっ♪♪アクメの準備始めちゃううぅうっ♥♥♥
京太郎「じゃあ…こっからはマジで…本気でいくから…なっ」グイ
ハオ「ん゛ひぃいぃいぃいいぃいいっ♥♥♥」
ま、待ってえええっ♪♪
い、今、そんな風に…か、角度変えられたら…ぁあっ♪♪♪
ただでさえ気持ち良いのがもう止められないのに…真上からピストンされたら…無理ぃいっ♥♥
オチンチンの先っぽが突き刺さるぅううっ♪♪
ピストンの衝撃と共にオチンチンが子宮震わせてるぅううっ♥♥♥
京太郎「よだれも涙も垂れ流し…っ」
京太郎「口も半開きで目も虚ろだし…もう完全なアクメ顔だな…!」
とうぜ…んですよぉおっ♪♪♪
私、ただでさえイキっぱなしで…ぇ♪♪もう次のアクメの準備始めてた…のにぃっ♥♥♥
そんな私に…真上からオチンチン振り下ろされたら…すぐにダメになるぅうっ♪♪♪
逃げ場のないベッドの上で思いっきり種付けされて…身体全体が…もう言うこと聞いてくれないんですよぉっ♥♥
アクメしすぎて…もう…もう私の身体、壊れちゃったんです…ぅうっ♥♥♥
京太郎「そんなエロ顔晒してるんだ…!」
京太郎「射精まで…このまま種付けプレスされても文句は言えねぇよな…!!」
ハオ「ひぐううっ♪♪うお゛おぉおっ♥♥ほお゛おぉ゛おぉおおっ♪♪♪」
い、言いませんぅうっ♥♥
と言うか…もう言えないんれすううっ♪♪♪
京太郎君のガチガチオチンチンで種付けプレスされて…頭のネジがもう二本も三本も吹っ飛んじゃったんですからあっ♥♥
口から出るのはもうエッチな鳴き声…ううん、アクメ声だけなんですからあっ♪♪
文句を言う余裕なんて…私の身体の何処を見渡しても出てきません…っ♥♥♥
今の私にあるのはただのアクメだけなんですからあっ♪♪¥オンプ
京太郎「よだれも涙も垂れ流し…っ」
京太郎「口も半開きで目も虚ろだし…もう完全なアクメ顔だな…!」
とうぜ…んですよぉおっ♪♪♪
私、ただでさえイキっぱなしで…ぇ♪♪もう次のアクメの準備始めてた…のにぃっ♥♥♥
そんな私に…真上からオチンチン振り下ろされたら…すぐにダメになるぅうっ♪♪♪
逃げ場のないベッドの上で思いっきり種付けされて…身体全体が…もう言うこと聞いてくれないんですよぉっ♥♥
アクメしすぎて…もう…もう私の身体、壊れちゃったんです…ぅうっ♥♥♥
京太郎「そんなエロ顔晒してるんだ…!」
京太郎「射精まで…このまま種付けプレスされても文句は言えねぇよな…!!」
ハオ「ひぐううっ♪♪うお゛おぉおっ♥♥ほお゛おぉ゛おぉおおっ♪♪♪」
い、言いませんぅうっ♥♥
と言うか…もう言えないんれすううっ♪♪♪
京太郎君のガチガチオチンチンで種付けプレスされて…頭のネジがもう二本も三本も吹っ飛んじゃったんですからあっ♥♥
口から出るのはもうエッチな鳴き声…ううん、アクメ声だけなんですからあっ♪♪
文句を言う余裕なんて…私の身体の何処を見渡しても出てきません…っ♥♥♥
今の私にあるのはただのアクメだけなんですからあっ♪♪♪
ハオ「(ドスンドスンってオチンチンプレスきてるううっ♪♪♪)」
ハオ「(もう限界なのにぃっ♪♪オチンチンはちきれそうになってるのにいっ♥♥)」
ハオ「(一番、気持ち良い射精する為に…オチンチン我慢してるぅうっ♪♪♪)」
オチンチン…頑張ってるんですね…っ♥♥
気持ち良くなる為に…一生懸命堪えててぇ…♪♪
でも…でも良いんですよぉっ♥♥
そんな風に…必死に我慢…しなくても…ぉっ♪♪♪
だって、私は…京太郎君のオナホールなんですからぁっ♥♥
何時でも京太郎君を気持ち良くしてあげる…性欲処理の道具…なんですからね…♥♥♥
ハオ「(だから…我慢しないで…ぇっ♪♪♪)」
ハオ「(このまま…私の中で射精してくださいいいっ♥♥)」ギュゥ
京太郎「う…ああぁあっ」
あぁぁ…ぁ♥♥分かります…っ♪♪
私…これ…ちゃんと分かってますよおっ♪♪♪
オチンチン…限界になっちゃったんですよね…♥♥
今、私がイきながらキュンって締めちゃったから…ダメになったんですよね…♥はーtp♥
良いですよ…ぉっ♪♪そのまま射精してえっ♥♥♥
私の中にぃっ♪♪オマンコにっ♥♥子宮にぃいっ♥♥♥
思いっきり膣内射精ししてくださいいいぃっ♥♥♥
京太郎「は…おぉぉっ!」
ハオ「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁああああああああああっ♥♥♥」
射精……してるうぅうっ♪♪♪
私の名前呼びながらどっぴゅぅどっぴゅぅう♥♥
もう一回、射精してるはずなのに…ぜ、全然、勢い衰えて…ないぃっ♪♪♪
さっきと同じ勢いで…私の中で熱いのが撒き散らされて…それで…えぇえ♥♥♥
ハオ「~~~~~~~~~~~っ♥♥♥」
射精のまま…最後のピストンぅうっ♪♪♪
暴発したオチンチンが…無理矢理、私の奥にねじ込まれてぇえっ♥♥
子宮に密着しながら…射精してるのが…分かります…うぅっ♪♪♪
熱くてドロドロで…そして甘いのが…また私の中に入ってきてるぅううっ♥♥♥
ハオ「(しゃ…しゃっきよりもこれ…♪♪す、すっごひぃ…いぃぃっ♪♪♪)」
もぉ…もぉ数えきれないほど…イってましたぁ…♥♥
最後の方は…オチンチンが子宮口突く度にイかされちゃってたんですよぉ…ぉおっ♪♪♪
そんなとろとろのグチョグチョな子宮に…精液注ぎ込まれたら…ぁあ♥♥
さっきの膣内射精よりもずっとずっと…感じ…ちゃうぅ…♪♪♪
熱いのもドロドロしたのも甘いのも…全部ぅうっ♥♥
ハオ「(も、もう…何も…分かんにゃい…いぃ…♥♥)」
それが強すぎるのか…はたまた、他の部分がダメになりすぎたのか…♥♥
私の中にあるのはもう…オマンコと子宮の感覚だけでした…ぁ♪♪
まるで他の部分を切り捨てたみたいに…それ以外はまったく感じられません…♥♥
普段は思い通りに動くはずの指先ですら私の頭の中にはなくって…ぇ♪♪♪
ハオ「(き、気持ち良いのしか…残って…ないぃ…♪♪♪)」
まるで全身がオマンコと子宮に乗っ取られたように…気持ち良い事だけぇ…♥♥
身体中の何処を見渡しても…快楽だけしか…詰まってないんです…♪♪♪
きっと…きっと今なら…何処を触られてもアクメ…しちゃうってそう思うくらいに…ぃ♥♥
私の身体は根っこからアクメに書き換えられてしまってぇ…ぇ♪♪♪
京太郎「…っ」ギュゥ
ハオ「きゅぅうぅううぅうううんっ♪♪♪」
なのに…それだけは…分かるんです…♥♥
射精しながら…京太郎君が私の事を抱きしめてくれている事…ぉッ♪♪♪
さっきあんなに酷い事を言って…ケダモノ染みたピストンをしていたなんて思えないくらいに…♥♥
優しく…愛おしげに…アクメで震える私の身体を抱きしめてくれて…♥♥♥
種付けされてるってだけでも幸せなのに…こんなのされたら…私…また堕ちちゃいます…♪♪♪
心も身体も京太郎君の事、もっともっと大好きになって…一生離れられないくらいに依存…しちゃうぅうっ♥♥♥
うん、まぁ、なんとなく二回掛けても終わらないような予想はしてた(白目)
もうちょっとで終わりなんですが、ちょっと時間が危ないのでここで中断させてください…
続きはまた土曜日辺りにでも書けたら良いなって(希望)
全然終わる気配がねえw
乙
乙
溜まってたんだな…うんうん
乙ー
すばらしい
>>544>>547
原作はともかく、こっちの霞さんは一見完璧に見えてもずっと拠り所探してた普通の女の子ですからねー
そんな子が堕ちたともなれば、重いのも当然な訳で
ありおあらゆる手段を使っても京ちゃんと引きとめようとする性格と言い
そして男子高校生を絶対に殺すあのスタイルと言い、一番危ない人であるのは間違いないと思います(´・ω・`)霞さんが京ちゃんを寝取る話とかも書いてみたい…
>>548>>549>>550
なんでや!好きな男が自分に欲情しとったら性欲処理してあげるのが普通ちゃうんか!!
まぁ、霞さんは重い上にエロい子なので(´・ω・`)多分、はるるとタメをはれるくらいに
ちなみに春は既に一回エロやりすぎて拒まれてるので寝てる間の性欲処理はやってません 自分のはしてますが
>>646
さ、流石に次で終わるから…(震え声)
>>647
色々とたまってたのは事実なんですが、ちょっぴり間が空いてしまった所為かあまりスッキリしてないのですよねー…
なので、年明けくらいに息抜きついでのエロスレ立てようかなーとか思ったりも(´・ω・`)
>>649
間が空きすぎて抜くのには適さない感じですがそう言って貰えるとありがたいです(´・ω・`)
あ、今日は多分、投下します(小声)
まあ霞さんは物理的にもおm(ゴシャ
>>652
ミンチよりひでぇや…
それはさておきヒャッハー!日付も変わった事だし投下だー!!
―― 3日が経った頃には霞も快復していた。
無論、本来ならば彼女はとうの昔に動き回れるようになっている。
若く力に溢れる霞は回復力に優れているし、また京太郎の献身的な看病もあったのだから。
二日目にはもう殆ど能力を取り戻し、今すぐにでも仕事に復帰出来たはずなのである。
それが三日目まで伸びてしまったのは、京太郎が無理をさせまいとしていたからと言うのが一つ。
もう一つは京太郎に甘やかされ続けた霞は色々と理由をつけて、復帰を先延ばしにしていたからだった。
霞「(…とは言え、何時迄も京太郎君に甘えるのは…ね)」
しかし、それも三日目までが限界だった。
二日目の途中からは体温も平熱に戻り、身体の気怠さも殆どなくなっていたのだから。
病み上がりは危険だからと先延ばしにするにしても、三日目まで寝込んではいられない。
何より、今の時期は彼女達にとって一年で最も忙しいと言っても過言ではないのだ。
そんな時期に理由もなく休み続けるのは、流石に良心が咎める。
霞「(それに…この三日間の間で結構、リフレッシュしちゃったし)」
霞「ふぅ…」ツヤツヤ
今の彼女は何時もよりもその肌を艶やかにさせていた。
病み上がりとは到底、思えないその艶やかさはいっそ色気さえ感じさせる。
元々、彼女が大人の色香漂わせる少女ではあったが、そのように色気を撒き散らしたりはしない。
その外見と伝説通り、霞は非の打ち所のない淑女であったのだから。
初美「(…これは間違いなく)」
巴「(…何かあったわよね)」
何処か満足気なその様子には、女らしさが満ち溢れていた。
まるで一足先に霞だけが『大人』になってしまったようなその姿に同い年二人が同じ言葉を思い浮かべる。
しかし、だからと言って、そんな彼女に踏み込む勇気は二人にはなかった。
今は久しぶりに全員が揃った朝食時であるのだから。
もし、ここで自分たちが思っていたよりも遥かに大きな爆弾が出てきてしまったらどうなるか。
巴「(出来れば修羅場なんてない…と言いたいけれど)」
初美「(…最悪、血の雨が降るのですよー)」
二人がそう思うのは、霞が色香を強めた原因が、間違いなく京太郎にあるからである。
京太郎はこの屋敷唯一の男であり、そして彼女の看病を誰よりも熱心にしていたのだ。
今も霞が意味ありげに熱っぽい視線を送っている事を考えれば、彼以外の原因など思いつかない。
無論、霞の事を家族として大事に想う二人にとって、それは決して悪い事ではなかった。
問題なのはそんな京太郎に懸想をしている『家族』が一人や二人ではないと言う事で ――
春「…」ジィ
明星「…」ムスー
湧「…」ショボン
巴「(あぁっ!食卓の空気が重く…!!)」
春を始め、京太郎を誰よりも強く想う少女たちは、その雰囲気を暗くしていた。
彼女達にとって霞の存在は何よりも警戒せざるを得ないものだったのだから。
女性の胸に並々ならぬ情熱を注ぐ京太郎の嗜好を考えれば、彼女の参戦は絶対に阻止しなければいけない。
そんな彼女達の想いとは裏腹に、色気を漂わせた霞は、京太郎に熱い視線を送っているのだ。
何処か媚びるような色さえ感じさせるそれは、霞が堕ちてしまった事を彼女達に知らせる。
明星「(ぐぬぬぬぬ…!!)」
そんな彼女達の中でも一番、面白くないのは明星だった。
元々、明星は霞こそ絶対普遍の正義であるとそう断言出来るほどに心酔していたのだから。
いっそ神と言っても良かった霞が、まるで一人の女の子に成り下がってしまったような今の状況が面白いはずがない。
ましてや、相手は自分が懸想している京太郎なのだ。
自分の上位互換と言っても良い義姉の参戦に胸がざわついて落ち着かない。
明星「(そりゃ…まぁ、確かに京太郎さんは悪い人じゃないし)」
明星「(か、格好良いところがまったくないとは言わないけれど…)」
明星「(で、でもでも…京太郎さんなのよ)」
明星「(お屋敷に来た時は霞お姉様のみならず私達の胸をチラチラ見てたエッチな人に…)」
明星「(どうして霞お姉様ほどの人がそんな目を送るのかしら…)」
その胸に浮かぶ言葉は、京太郎の評価を何とか下げようとするものだった。
まるで霞の懸想が錯覚であると言い聞かせるようなそれに、しかし、彼女の心は落ち着くことはない。
そもそも明星自身、とうに京太郎に堕とされてしまっているのだから。
霞至上主義者であった彼女でさえ鞍替えさせるほどの魅力を、誰よりも明星が一番、良く分かっている。
明星「(一体…一体…二人の間に何があったって言うの…?)」ギュ
以前ほど心酔している訳ではないとは言え、明星は未だ霞に崇拝とも近い感情を抱いている。
そんな彼女が体調を崩した霞の事を放っておけるはずもなく、この三日間で足繁く義姉の部屋へと通っていた。
だが、その時に明星が見た霞の姿は何時もと殆ど変わらない。
彼女が襖を開ける直前まで赤子のように甘えていた事などおくびにも出さなかった。
明星「(大体…おかしい事ばっかりよ)」
明星「(確かに京太郎さんの能力が霞お姉さまの看病に必要不可欠なのは分からないでもないけれど)」
明星「(でも、だからって三日間ずっと付きっきりになる必要はないじゃないの)」ムカムカ
瞬間、明星の胸に浮かぶむかつきは嫉妬だった。
だが、それが果たしてどちらに向いているのかは彼女にはまったく分からない。
霞を『女』にした京太郎なのか、或いは三日間京太郎をほぼ独占していた霞になのか。
未だ自身の好意を完全に認めきれない彼女はその判別がつかず、ジッと不機嫌さを浮かべた視線を京太郎へと向けた。
京太郎「(はぁぁぁぁぁぁ……)」
そんな視線を受け止める京太郎は今、とても憂鬱だった。
無論、こうして霞が快復してくれた事は素直に嬉しい。
自身の看病が無駄ではなかったのだと心からそう思えるのだから。
しかし、それは彼の心を満たす憂鬱さよりも若干、見劣りするものだった。
京太郎「(…まさか3日連続で夢精する事になるとは)」
その胸中を埋め尽くしそうなほど大きな憂鬱さ。
それは彼がこの三日ほど起きてからすぐに射精の後処理をするハメになっていたからだ。
無論、それは夢精ではなく霞の手により性欲処理だったのだが、熟睡していた彼には分からない。
この三日間、常に霞によって禁欲を強いられていた京太郎が途中で起きる事は一度としてなかったのだ。
京太郎「(…どれだけ溜まってるんだって話だよなぁ…)」
京太郎「(まぁ…その分、すっきりしたっつーか…)」
京太郎「(やたらと気持ち良い感覚が残ってるんだけどさ)」デレ
とは言え、それを心から喜ぶ事は出来ない。
男にとって夢精と言うのは、とても情けない事なのだから。
ましてや、霞は事前にどれだけ言い聞かせても自身の布団へと入り込んでくるのだ。
そのまま自身に絡みつくようにして眠る彼女に、もし夢精を気取られていたらどうしよう。
そんな不安が京太郎の中からなくなる事はなかった。
霞「…ふふ」
そんな京太郎の姿を見ながら、霞は顔に笑みを浮かべさせる。
それは一瞬、デレっとした彼の顔がとても助平なものだったからだ。
その胸中に自身との一夜が浮かんでいる事を伝えてくれる京太郎が、今の霞は愛おしくて仕方がない。
もし、これが朝食時ではなく二人っきりであるならば、その身体を押し付けるように抱きつきたいくらいだった。
小蒔「霞ちゃん、ご機嫌ですね」
霞「そう見えちゃう?」
小蒔「はいっ。そんなに嬉しそうな霞ちゃんを見るのは久しぶりなくらいです」ニコ
小蒔「何かあったんですか?」クビカシゲ
だが、それは出来ないと自重する霞に小蒔は笑顔のまま踏み込んでいく。
それは勿論、彼女が今の食卓を取り巻く暗い雰囲気にまったく気づいてはいないからだ。
純真な小蒔は、3日ぶりに全員が揃った食卓が嬉しくて嬉しくて仕方がないのである。
その中に交じる不穏な空気に気づく事もなく、ただ嬉しそうな霞に好奇心を疼かせてしまう。
「「「…っ」」」ピクッ
巴「(ひ、姫様ああああっ!!)」
勿論、その疑問は食卓に冷たい緊張感を走らせる。
誰もが気になりながらも踏み込む事が出来なかったそれに他でもない小蒔が踏み込んだのだから。
日頃から彼女の事をダダ甘に甘やかす霞ならば、きっと無下にはしないはず。
この三日間で何があったのかを語ってくれるだろう。
霞「んー」チラッ
京太郎「…ん?」
霞「……ないしょ」ニコ
「「「…」」」ゴゴゴ
初美「(あー…またそんな火に油を注ぐような事を…)」
そんな予想とは裏腹に、霞の口から真実が語られる事はなかった。
一瞬、意味深に京太郎へと流し目を送ってから、秘密の言葉を返す。
瞬間、春達の間で広がったのは疑惑と確信の感情だった。
やはり小蒔に隠し立てしなければいけないような何かが二人の中であったのだろう。
そう認識を新たにする三人の中で嫉妬の感情が燃え上がっていくのが初美には分かった。
小蒔「えー…」
霞「ごめんなさいね。流石にちょっと恥ずかしいから」
巴「(ひ、姫さまにも言えないくらい恥ずかしい事しちゃったんですか…!?)」カァァ
霞の言葉に頬を赤らめる巴の脳裏に二人がキスをしている光景が思い浮かぶ。
弱っている霞から求めたそれは、しかし、実際に起こった事から考えれば大分、マイルドなものだった。
幾ら巴が想像力逞しい年頃であるとは言え、霞が赤ん坊のように京太郎に甘えていたなど想像出来るはずがない。
ましてや、霞が寝ている京子を襲って射精させたなど思いつく事さえなかった。
初美「(と、とりあえず空気を変えないとまずいのですよー…)」
そう初美が思うのが今の食卓の雰囲気が今までで最悪と言っても良いものだったからだ。
長年一緒に暮らしてきて、家族の中で喧嘩などが起こった事はあるが、今はその比ではない。
京太郎に懸想する少女たちにとって霞の存在は爆弾という言葉では生易しいレベルなのだから。
表面上はまだ平穏を保っていられるのも、今が食事時だからこそ。
しかし、その平穏も霞の存在によって破られつつある事を初美は感じ取っていた。
初美「…まぁ、霞ちゃんが上機嫌なのは、きっと良いアンチエイジング化粧品でも見つけたからなのですよー」
霞「もう、初美ちゃんったら」ニコ
初美「(…やっべぇ)」
だからこそ、何とか普段の空気に戻そうと憎まれ口を叩く初美に、霞はニコリと笑みを浮かべた。
普段の数割増しでにこやかなその表情にはまったく悪感情が見当たらない。
普段ならば冗談だと分かっていても拗ねるような顔をするのに、今は笑顔を浮かべているのだ。
上機嫌すぎて不機嫌になるポーズすら取れない霞の表情に、初美は思ったよりも事態が深刻である事を感じ取る。
初美「(…霞ちゃんがこんなにも上機嫌になるなんて…)」
初美「(ホント、そこの色男は一体、何をやったのですかー…)」
この中では最も霞との付き合いの長い初美ではあるが、その気苦労を完全に感じ取れてはいなかった。
無論、彼女が人並み以上に重いものを背負っているのは知っていたが、それに耐えられる強い女だとそう思っていたのである。
そんな初美に、霞がその重さに内心、参っていた事が分かるはずもない。
彼女の目に見える親友は、多少、むっつりなところはあれど、それ以上に素晴らしい淑女だったのだから。
正直、この三日間で春達と同じように堕ちてしまうなど想像すらしていなかった。
初美「(まぁ…今はそれよりもですね)」
初美「そう言えば今年の奉納舞はどうするですかー?」
京太郎「奉納舞?」
とは言え、今の初美にその疑問を追求出来る余裕はない。
こうしている今も上機嫌な霞に反比例するようにして場の温度が下がっていくのだから。
それが臨界点を迎える前に何とか話題を逸らさなければいけない。
そう自分に言い聞かせる初美から出てきたのは、京太郎にとってあまり馴染みのない言葉であった。
巴「あぁ。京太郎君は知らないのよね」
小蒔「神代では今の時期、分家の皆さんと一緒に大きなお祭りをする事になっている…というのは伝えましたっけ?」
京太郎「えぇ。だから、基本的な会場になるこのお屋敷を皆で掃除してるんですよね」
小蒔の説明に京太郎は頷き返した。
ここ数日、霞の看病を続けていたとは言え、その辺りの事情は京太郎も既に聞いている。
だからこそ、日に日に『祭り』に近づいていく現状に憂鬱な気分が強まっているのだが、それは決して表に出せるものではなかった。
神代の事を恨む気持ちは今も強いが、それ以上に小蒔達を想う気持ちの方が遥かに大きいのだから。
神代に関係する人々の中でも特に重要な人物が集まってくるその『祭り』を嫌だなんて子ども染みた事を言えるはずがない。
小蒔「はい。とっても楽しいお祭なんですよ」
小蒔「下のお祭りほど豪華じゃないですけど、でも、皆でご馳走を持ち寄ったりしますし…」
小蒔「有志の方々が屋台なんかを出してくれたりもするので、そっちで楽しむ事も」
巴「…姫様、ちょっと脱線してます」
小蒔「はわ…っ」
とは言え、その感情は彼女達も良く知るものではあった。
京太郎は一度、神代家の非道に耐えかねて逃げ出してしまっているのだから。
その一部を小蒔にぶちまけて多少は内心の整理もついたとは言え、苦手意識はまだまだ残っているはず。
だからこそ、その楽しさを何とか伝えようとする小蒔に、巴の指摘が飛んだ。
無論、それが彼女の優しさである事を巴は分かっているが、それはあまりにも本筋からズレている。
巴「(…何より、そんな事聞いても京太郎君は楽しめないんだもの)」
それが京太郎の為になる話であれば、巴も口を挟まなかっただろう。
だが、一生懸命に『祭り』の楽しさを伝えようとするそれは、決して彼の心に響くものではないのだ。
どれだけ理知的に振舞っていても、京太郎の心に神代への憎しみが消える事はない。
そんな彼が神代が楽しむ祭りの話を聞いても、ただただ辛いだけだろう。
京太郎「はは。大丈夫ですよ」
京太郎「別に話を急いでる訳じゃないですからね」
小蒔「えへへ、そう言って貰えると嬉しいです」ニコー
そう思う巴の前で京太郎は優しい笑みを見せる。
無論、その内心には巴の予想通りモヤモヤとしたものが浮かんでいた。
しかし、今の京太郎はそれよりも歓喜の方が大きい。
本当の意味で小蒔達に心を許し始めた今、自身を気遣おうとしてくれる彼女の優しさがとても有り難かった。
小蒔「…って、それでですね」
小蒔「そのお祭りの中で神代の巫女が皆様の前で奉納舞を披露するんですけれど」
小蒔「その前にもう一人、奉納舞を待ってくれる人がいるんです」
小蒔「勿論、それは私だけではなく皆様のお手本にもなるもので生半可な技術では選ばれません」
小蒔「基本的に全ての巫女の中で一番、舞の上手な人が選ばれるので、とても名誉な事だと言われているんですよ」
京太郎「なるほど…」
六女仙ではなく『全ての巫女』。
その言葉が意味する重要性を京太郎は良く理解してはいなかった。
元々、彼は神代の中に所属してはいるものの、その規模までは把握していないのだから。
六女仙になれなかった巫女達が、その座だけは譲るまいと日々、練習し、足を引っ張ろうとしている事など想像もしていない。
ただ凄い事なんだろうな、と言う事が漠然と伝わってくるだけだった。
初美「まぁ、そういう基準なので、お祭り前に選考会みたいなのがあるのですよー」
初美「で、基本的に全ての巫女が参加するよう促されますが、辞退する事は可能です」
初美「舞そのものが不得手と言うか向いていない人もいますしね」
湧「えへへ…」
そこで湧が照れくさそうに笑うのは、彼女がその不得手なタイプだからだ。
巫女の中でも若干、特殊な位置に属する湧は舞の練習など一度もした事がない。
普段から武の鍛錬に勤しむ彼女にとって、それはまさしく異世界と言っても良いものだった。
無論、湧の身体能力は高く、感受性も豊かであるが故に、習えば並以上の結果は出せる。
しかし、彼女は舞よりもずっと武術の鍛錬の方が向いており、またそれを楽しんでいるのだ。
並桁外れた湧の才能は舞に浮気をする事さえ許さない。
初美「まぁ、最近は私達含め一部の人以外は殆ど辞退しているのですよー」
京太郎「それはまたどうして…?」
初美「ぶっちゃけ私達の世代には霞ちゃんがいますし」
京太郎「あぁ、なるほど」
そんな京太郎でも、初美の言葉が意味する事は良く分かった。
その仕草を女らしいものにする為に、京太郎は彼女達から舞を習っているのだから。
普段から忙しくしている霞が師匠役になってくれる事は少ないが、それでもその舞を見た回数は10や20では効かない。
そしてその度に未だ初心者である京太郎でさえ見惚れさせるほどの舞を披露するのだ。
まさしく天才と呼ぶに足るその技量に、並の演者では太刀打ち出来ない。
優秀程度の舞では霞んでしまう事が容易く想像出来た。
京太郎「でも、巴さんとかもかなり綺麗だと思うんですけれど」
巴「ふぇっ!?」ビクッ
瞬間、そこで巴が肩を強張らせるのは、そんな風に話題を振られるなど想像もしていなかったからだ。
普段から舞の師匠役をこなす事も多いとは言え、自身は凡人。
霞のような天才に及ぶはずがないと彼女はそう思い込んでいる。
しかし、そんな彼女の思い込みとは裏腹に、巴の実力もまた周囲から抜きん出ているものだった。
京太郎「勿論、霞さんの実力にケチをつけるつもりはないんですけれど…」
京太郎「でも、巴さんだって決して霞さんに見劣りする訳じゃないと思うんですよね」
巴「っ」カァァ
狩宿巴と言う少女は決して自己評価が高いとは言えなかった。
元々、全てにおいて水準以上の結果を残せる才覚の持ち主だが、彼女の上には常に石戸霞が居続けているのだから。
その生まれからして決して勝てない相手が家族と呼べるほど側にいて、自身の実力を正当に評価出来るはずがない。
だからこそ、そんな自分を評価してくれる京太郎の言葉に、胸中で嬉しさと恥ずかしさが入り混じってしまう。
巴「わ、私はその…良いのよ」
しかし、だからと言って、そこで彼女は調子に乗れはしなかった。
長年、霞の存在によって正当に評価されなかった彼女は、そこで意気揚々と勝負に出れるような性格をしていない。
ましてや、石戸家と狩宿家は神代を取り巻く分家の中でも特に密接に結びつき、上司と部下のような関係を構築している。
そんな中で石戸本家の一人娘である霞と対立するような事があれば、両親だって胃を痛めるだろう。
巴「(…そう…私は出ちゃいけない…)」
巴は自己評価が低い以上に、心優しい少女であった。
湧を除く六女仙たちが血縁者に対して比較的ドライなのに対して、どうしても見捨てる事が出来ない。
親の顔など一年に数回ほどしか見ないと言うのに、自分の気持ち以上に親の気持ちを考えてしまう。
幾ら京太郎に背中を押されても、そんな彼女が容易く首を縦には振れるはずがなかった。
京太郎「いや、でも、勿体無くないですか?」
京太郎「俺は良く分からないですけど、それに選ばれるのは名誉な事なんでしょう?」
無論、京太郎もまたそんな巴の性格は良く分かっている。
基本的に気遣い屋の多い屋敷の中で、彼女は特に周りに気を配っているのだから。
その上、京太郎は巴本人から親に泣き付かれてエルダー選挙も辞退した事を聞いているのだ。
常に霞に対して一歩引く事を強要されてきた彼女が、その気になるには難しい。
下手にその背中を押したところで迷惑になってしまう可能性さえ京太郎の脳裏には浮かんでいた。
京太郎「(…これはチャンスじゃないか?)」
それでもこうして巴の背中を熱心に押そうとするのはそれがチャンスだからだ。
昨年のエルダー選挙で親に泣き付かれてしまった彼女は、霞と勝負出来なかった事を悔やんでいる。
だが、どれだけ後悔したところで、巴達は既に永水女子を卒業してしまったのだ。
あの時を取り戻すように再びエルダー選挙で競い合う、と言う事は出来ない。
京太郎「(だけど、この条件なら以前とほぼ同じだ)」
京太郎は詳しい選考会の様子までは知らない。
だが、それが舞の実力を見るものである以上、その実力をアピールするものである事に疑う余地はなかった。
そして、それはエルダー選挙もまた同じ。
エルダー選挙もまた淑女としての自分をアピールし、多くの人にそれを評価して貰うのだから。
違うのはアピールするべきポイントが舞の実力か、淑女らしさかの違いだけ。
無論、その違いが大きいのは京太郎も良く分かっているが。
京太郎「(俺の見る限り、二人の実力にそれほど差はない)」
京太郎「(まぁ、俺がまだまだ素人なのかもしれないけれど)」
少なくとも、二人が実力を完全に発揮した時、どちらに天秤が傾いてもおかしくはない。
そう思う京太郎にとって、これは巴がその後悔を晴らす千載一遇のチャンスだった。
こういう機会でもなければ、引っ込み思案な彼女は決して霞と雌雄を決しようとはしない。
その後悔と劣等感を一生、引きずる事になるのは今からでも目に見えていた。
京太郎「(それはあんまりにも辛すぎるだろ)」
京太郎にとって巴はちょっと抜けているところもあるが、可愛くて頼りがいのある素敵なお姉さんだった。
そんな巴がその言葉にまで後悔を浮かべる姿を、彼は二度と見たくない。
何度も自身を支え、そして癒やしてくれた彼女にはずっと笑って欲しいとそう思っている。
だからこそ、京太郎は迷惑かもしれないと内心、思いながらも、巴の背中を押そうとしていた。
巴「…でも、霞さんに勝てるとは思えないし…」
霞「あら、私は正直、巴ちゃんが一番、怖いけれど」
巴「え?」
そんな京太郎の言葉に気まずそうな返事をする巴。
それに反応したのは他の誰でもない霞だった。
無論、それは決してお世辞や冗談などではない。
自身を打ち負かすとするならば、それはきっと巴であろうと彼女は本心からそう思っている。
霞「(巴ちゃんと私じゃ舞の方向性が違うけれど…)」
それでもその才覚の大きさと言う面では、それほど大きな違いはない。
そう思う霞にとって、自身に並び立つ巴の存在はとても脅威であった。
彼女の自己評価が低く、その舞がこじんまりと纏まったものになってしまっているが故に、自身の方が上に立てているだけ。
もし、巴が自信を取り戻せば、両者の差なんてあってないようなものだと霞は思う。
霞「だから、巴ちゃんが勝負してくれるなら大歓迎よ」
霞「そうやって切磋琢磨していった方が、私もまた伸びる事が出来ると思うし」
霞「何より、私だけがずっと『お祭り』で舞続けるのも不健全な話だもの」
巴「ぅ…」
唯一、自身と対等だと言えるライバル。
その背中を押す霞には恐怖の感情はまったくなかった。
京太郎に対してドロドロになるまで甘えていたとは言え、彼女は永水女子で伝説を打ち立てた淑女なのだから。
ライバルである巴を縮こまらせるのではなく、勝負の土俵へと引き上げ、共に切磋琢磨しようと誘ってみせる。
まさに王者と呼ぶに相応しいその言葉に巴はどう返せば良いのか分からない。
予想外に自身を評価する霞の言葉が、彼女の喉を詰まらせていた。
初美「…ま、ともあれ、今は食事を優先しなきゃいけないのですよー」
初美「ぶっちゃけ、今日平日ですし、あんまりのんびりしてると遅刻しちゃいますからね」
小蒔「はわわ…!」
そんな親友の姿に初美はそっと助け舟を出した。
無論、彼女もまた巴が昨年の事を悔やんでいる事を知っている。
だが、それ以上に、ここで答えを迫ったところで巴が応えられるはずない事も理解しているのだ。
今はまず気持ちの整理をする時間を作ってあげよう。
そう思った初美の言葉に、小蒔は焦りを浮かべた。
小蒔「皆が揃っているのが楽しすぎて完全に時間を忘れてました…!」
小蒔「これからは全力…いえ、全力以上でお食事します!!」モグモグ
春「…大丈夫です。まだ時間の余裕はありますから」
明星「でも、春さんもあんまり箸が進んでいないみたいですけれど」
春「…久しぶりに京太郎が隣にいるから胸が一杯で」ポッ
明星「む…っ」
頬を染める春の言葉に、明星は不機嫌そうな色を顔に浮かべる。
それは彼女が既に完食し、食事が終わるのを待っている状態だったからだ。
無論、春にあてつけのような意図がない事くらい分かっているが、両者の差を浮き彫りにするようなその言葉は面白く無い。
京太郎「はは。有難うな」
京太郎「俺も久しぶりに春に色々、世話焼いてもらって嬉しいよ」ナデナデ
春「…ん♪」テレテレ
明星「むむむ…っ」
その上、京太郎はそんな春の頭を優しく撫でるのだ。
冗談だと思いながらも嬉しさを隠さないその手のひらが、明星には羨ましくて仕方がない。
義姉ほどではなくても、彼女もまたその手の虜になってしまった一人なのだから。
二人きりで思いっきり甘える時間を夢想する彼女にとって、それは見せつけられているようにしか思えなかった。
明星「…京太郎さん、あんまり春さんの事、甘やかさないでくださいね」
京太郎「え…いや、俺にはそんなつもりは…」
明星「甘やかしてるじゃないですか」ジトー
湧「あちきもそう思っ」ジー
京太郎「わ、わっきゅんまで…」
そんな明星の援護射撃をするのは湧だった。
その本能から堕ちてしまった彼女にとっても、春を撫でる京太郎の姿は目の毒でしかない。
普段ならば彼に抱きついて自身もと強請る事が出来るが、京太郎の隣は基本的に春と小蒔のポジションなのだから。
自然、愛しい人から離れて座る彼女達は、どうしても不公平感は否めなかった。
湧「春さあだけじゃねじ、ちゃんとあちき達も甘やかすべきだと思っ」
明星「そうそう…ってち、違うわよっ!?」カァァ
湧「えー…」
そんな二人の足並みは揃っているとは言いがたいものだった。
素直にその気持ちを口にする湧とは裏腹に、明星の方は未だ素直になりきれてはいないのだから。
春と同じように甘やかして欲しいなどシラフで言えるはずがない。
だからこそ、その顔を真っ赤にして否定する親友に湧は不満そうな声をあげて。
湧「そいぎ、明星ちゃはキョンキョンに甘やかして欲すない?」
明星「そ、そんなの…」
明星「ほ…欲しく…欲しくない…わよ…」
そのまま自身へと向けられる疑問に、明星の声はドンドンとトーンダウンしていく。
それは勿論、彼女自身、京子に甘やかされたいと強く思ってしまっているからだ。
言葉だけであっても否定する事すら出来ないほどのその想いは、中々、収まる事はない。
まるで素直になれない自分に胸中が騒ぐようにしてモヤモヤ感が浮かび上がってくる。
明星「た、ただ…そ、その…大した事じゃないですけれど…」モジ
明星「本当に大した事じゃないんですが…私だって…そ、その…」チラッ
明星「ひ、久しぶりに京太郎さんと一緒に食事出来て…う、嬉しいです…よ」ジィ
京太郎「おう。明星ちゃんもありがとうな」
瞬間、明星の口から漏れるのは、そんなモヤモヤ感を解消するためのものだった。
意地を張った分、素直になろうとするようなその言葉は、以前の彼女からは想像も出来ない。
インターハイ前の自分であれば、幾ら心のバランスを取る為であったとしても、そのような言葉は口に出来なかっただろう。
自身の変化をそう自覚する明星の前で、京太郎は照れくさそうに笑った。
初美「うわー…超あざといのですよー」
湧「あざとーい」
明星「あざとくありません!」マッカ
そんな明星をあざといと称する六女仙のロリ枠二人に、彼女は真っ赤になりながら声を返した。
若干、語気を強めたそれは明星の中に余裕と呼ばれるものがまったくないからこそ。
照れくさそうな京太郎の笑みには素直になれなかった自身への悪感情などまったくなかったのだから。
それどころか頑張って素直になった言葉に彼はとても喜んでくれている。
そう思うと心臓が高鳴り、胸の奥がキュンと甘く締め付けられるような感覚を覚えた。
霞「…ちなみに京太郎君はあざといのは好き?」
京太郎「痛々しかったりしなければ、好きですよ」
霞「ふふ。良かったわね、明星ちゃん」
明星「か、霞お姉様までそんな…」
義妹を揶揄するような事を言いながらも、霞は内心、胸を撫で下ろす。
それは勿論、京太郎に甘えている時の自分があざといという自覚があるからだ。
第三者がいる時は普段の霞に戻るものの、二人っきりの時は身体から構ってオーラを出してしまう自分。
それをあざといと思いながらも止められない霞にとって、京太郎に嫌われてはいないというのは安堵を覚えるものだった。
初美「まぁ、とりあえず京太郎君には湧ちゃんや明星ちゃんを甘やかす義務があるって事で」
京太郎「義務なんですか」
初美「勿論、義務ですよー……ってあれ、なんか霞ちゃん怖くありません?」
霞「あら、別にそんな事ないわよ」
それでも自分以外の女が京太郎に甘やかされると言うのはあまり面白くない。
色々と納得済みではあるものの、彼女もまた女なのだから。
この三日間、ほぼ独占していた京太郎を他の誰にも渡したくはない。
そんな感情を心の奥底にしまい込もうとする霞に、僅かな不機嫌さが浮かぶ。
どれだけ理性が訴えても、胸の内に収まりきらない嫉妬の感情は、彼女の笑みに迫力を与えていた。
小蒔「じゃあ、私が京太郎君の事、甘やかしてあげますね」ナデナデ
京太郎「あ、ありがとうございます」テレテレ
小蒔「いえいえ、良いんですよ」
小蒔「お茶のおかわり淹れますね。ご飯の方はどうですか?」ニコニコ
その場に居る全員が何処か気圧されるようなものを感じる中、小蒔だけは京太郎を甘やかそうとしていた。
京太郎の家出からその真実を知った彼女は甲斐甲斐しく、彼の世話をするようになったのだから。
例え、皆が京太郎に甘えるようになったとしても、彼女は素直に甘える事が出来ない。
そうやって甘えるには彼女が持つ負い目はあまりにも大きすぎるのだ。
小蒔「(…でも、嫌じゃないんです)」
何より、彼女の中にあるのは決して負い目だけではない。
元々、小蒔は京太郎の事をとても好意的に見ているのだから。
周囲に結婚を強要されても嫌ではない相手の世話は彼女に喜びを与えている。
少なくとも、小蒔が自覚できる程度には。
小蒔「(私…やっぱり嫌な子ですね)」
勿論、それは京太郎の面倒を見る度に胸中の自己嫌悪が薄れるからと言うのも大きい。
京太郎の言葉によって幾らか軽くはなったものの、小蒔の自己嫌悪は未だ根深いものなのだから。
しかし、それ以上に大きいのは、そうやって誰かの世話をした経験が彼女の中で殆どないからこそ。
周囲から支えられるのが当然であった小蒔にとって、誰かを支える経験と言うのは自尊心を満足させてくれるものだった。
小蒔「(本当はこんな風に喜んじゃいけないのに…)」
京太郎「…小蒔さん」
小蒔「え?」
京太郎「お茶のおかわり貰えますか?」
そんな自分に自己嫌悪を覚える小蒔に京太郎はそっと湯のみを差し出す。
だが、それは甲斐甲斐しく彼の世話をやこうとしている小蒔によって、ついさっき一杯になっていたはずであった。
そんな湯のみがいきなり空になったのは、京太郎が彼女の自己嫌悪を感じ取ったからこそ。
隠し事が出来ない小蒔が急にシュンとなってしまったのだから放っておけるはずがなかった。
小蒔「……はいっ」
瞬間、小蒔の頬が緩むのは、京太郎の言葉によって意識が自己嫌悪から外れたからだけではない。
無論、それも大きいが、それ以上に彼女の顔を綻ばせているのは、歓喜の感情だった。
その言葉や仕草から京太郎が自分の事をとても気にかけてくれている事が伝わってくるのだから。
自己嫌悪なんてあっという間に胸中から駆逐され、ただ嬉しさだけが広がっていく。
初美「いやぁ…姫様はホント甲斐甲斐しいですし、良いお嫁さんになるのですよー」
春「…私だって負けるつもりはない」ギュ
湧「あ、あちきもいっぺぇお世話するよ!」ジィ
明星「べ、別に私はどうでも良いですけど…で、でも、良いお嫁さんになるつもりではあります…よ」チラッ
京太郎「お、おう」
初美の面白がるような言葉をキッカケにして始まるアピール合戦。
その真っ只中に放り込まれた京太郎は何処か胸がむず痒くなるような感覚を覚えていた。
無論、彼女達の良いお嫁さんになるとアピールされるのが嫌な訳ではない。
寧ろ、そうやって目と口で関心を引こうとする彼女達がとても可愛くて仕方がなかった。
だが、京太郎にとって春達はもう家族として固定されてしまったのである。
そのアピールも一体、どういう反応を期待しての事か分からず、微妙な返事を返してしまう。
初美「まぁ、この場にいる誰でも良いお嫁さんになるのは確実ですけどね」
初美「ねっ、霞ちゃん?」チラッ
霞「…どうしてそこで私に振るのかしら」
霞「まぁ…私も基本的には旦那様に尽くすタイプではあるつもりだけれど」チラッ
京太郎「あぁ、確かに霞さんはかなり尽くしてくれそうですよね」
「「「む…」」」
二人っきりになった瞬間、甘えすぎるほど甘えてしまうが、元々の霞はとても面倒見の良い方だ。
家事全般も万能どころか一流であり、容姿と相まって隙がない。
きっと霞と結婚すれば甘えられるのと同じかそれ以上に甘えさせて貰えるだろう。
そんな言葉が自然と胸中に浮かんできた京太郎に、三人は不機嫌そうな声を漏らして。
巴「……」
何時も通りの賑やかな食卓。
しかし、巴はどうしてもその中に混ざる気にはなれなかった。
無論、そうやって皆で騒ぐ日常が彼女は決して嫌いではない。
普段ならば、調子に乗る初美を諌めたり、霞の言葉に同意したりしていただろう。
だが、今の彼女にそのような余裕はまったくなかった。
巴「(…私、どうすれば良いのかしら…)」
それは勿論、さっき京太郎に言われた言葉が巴の内心で渦巻いているからだ。
自身に霞との勝負を勧めるそれに一体、どうすれば良いのか。
その話題がとうに過ぎ去ってしまった今も、彼女の心はそれに囚われ続けている。
結果、巴はそれ以外の事を考える余裕を失い、ただ黙々と一人食事を続けるだけで ――
京太郎「……」
―― そんな自身を心配そうに見つめる京太郎の視線にさえ今の彼女は気づく事が出来なかった。
………
……
…
巴「…ふぅ」
それから数時間が経過しても彼女の心は未だ答えを出す事が出来ていなかった。
まるで霧のようになった迷いが巴の胸中へと覆いかぶさり、どっちに進めば良いのかまったく分からない。
結果、進む事も戻る事も出来なくなった彼女は一人廊下を歩きながら、今日何度目かになるため息を吐いた。
普段、彼女がそんな風にため息を漏らす事はないが、今日の悩みはそれだけ深刻だったのである。
巴「(霞さん達にまで心配されちゃうし…)」
本人にその自覚は薄いものの、巴は霞に並ぶ万能選手ではある。
だが、それほどの迷いを抱えて何時も通りの仕事が出来るはずがない。
来客用の部屋を一通り掃除するという大仕事を前にしてミスを連発していた。
何時もならば決してしないような失敗の数々に、霞達は決して怒ったりしない。
寧ろ、彼女の体調や精神状態を心配して、何度も声を掛けてくれてさえいた。
巴「(これ以上心配させない為にも早めに答えを出さなきゃいけないんだけれど……)」
そんな自分を改善するために必要な事。
それは今の巴にもハッキリと見えている事だった。
しかし、幾ら見えていたところで、そこにどうやってたどり着けば良いのかが分からない。
京太郎によって齎された迷いはそれほどまでに根強いものだった。
巴「(…とりあえず状況を整理しましょう)」
それでも何時迄も迷い続けてはいられない。
巴がそう強く思うのは、今が六女仙にとって一年で最も忙しい時期だからだ。
自分が足を引っ張ればその分が霞達の負担となって重くのしかかってしまう。
責任感の強い巴はそれをどうしても許容出来ず、一人その迷いに向きあおうとしていた。
巴「(まず…京太郎君の言葉が嬉しかったか嬉しくなかったか)」
巴「(……当然、嬉しいに決まってるわ)」
巴「(今まであんな風に私の背中を押してくれた人なんていなかったんだもの)」
無論、巴の周りには彼女を家族と想い慕う少女たちが数多くいる。
だが、そんな少女たちもまた神代を取り巻く分家の柵に囚われてしまっているのだ。
巴がどれだけのものを背負っているかを良く理解し、また共感する彼女達にとってそれは容易く踏み込んで良い問題ではない。
下手にその問題に触れてしまえば、生家との繋がりを失う事になると彼女達が分かっていたのだ。
結果、彼女はこれまでそのデリケートな問題に触れられる事なく、一定の距離を保っていられたのである。
巴「(勿論、皆の事を責めるつもりはないわ)」
巴「(それはそれで優しさだと分かっているもの)」
実際、彼女自身、家族が自身と同じ立場であった時、背中を押せるとは言えなかった。
幾ら彼女達を家族だと思っていると言っても、やはり血の繋がりというものは大きいのだから。
六女仙の役目が終われば、いずれ彼女達もそれぞれの実家に帰ってしまう。
それを思えば、そう簡単に絶縁を促す事は出来ない。
そのリスクを十分に理解している彼女にとって、それはとても無責任な行為だった。
巴「(でも、彼の事を無責任だとも思わない)」
しかし、それはあくまでも相手の立場を良く理解する彼女の場合だ。
神代を取り巻く事情を未だ良く知らない京太郎にそれと同じものを適用する事は出来ない。
寧ろ、色々と難しい立場にありながらも、情熱的に自身の背中を押そうとしてくれた彼を彼女はとても好意的に思っている。
まっすぐなその優しさは巴の心にもしっかりと届いていた。
巴「(きっと京太郎君は私に気を遣ってくれていたんだもの)」
巴「(霞さんと勝負すら許されなかったっていう私の話を覚えていてくれて…)」
巴「(だから、あんな風に…ちょっぴり強引なくらいに勝負を勧めてくれたんでしょう)」
インターハイが始まるよりもさらに前に漏らしてしまった小さな愚痴。
それを京太郎がとても気にかけてくれている事くらい彼女にだって分かっていた。
だからこそ、巴もまたその気持ちに応えたい。
ヘタレな彼の滅多にみない強引な優しさに応えたいと彼女も思っている。
巴「(でも…)」ハァ
だが、そこから先に気持ちが中々、進まない。
応えたいという言葉は決して小さいものではないのに、それを阻む霧はとても濃厚なのだ。
前へと進もうとする気持ちから比べても決して見劣りしないそれに巴は再びため息を吐く。
折角、気持ちを整理しようとしているのに、また同じ所で立ち止まってしまった。
その徒労感は彼女の肩に強くのしかかってきている。
巴「(…後、もう一つ、キッカケがあれば良いんだけど…)」
それさえあれば、自分の足はきっと前へと進む。
長年、自分を縛りつけてきた狩宿と言う鎖から解き放たれるのだ。
そんな予感が胸中に浮かびながらも、彼女自身にはどうしようもない。
そのキッカケが巴の中にはないからこそ、彼女はこうも悩み続けているのだから。
巴「(ともかく、今はお仕事に集中しましょう)」
巴はそう思考を切り替えようとするものの、時刻はもう夕方に差し掛かっている。
そろそろ京太郎達が帰ってくる事を思えば、これ以上、掃除をしてはいられない。
夕飯や風呂の準備など、彼女達にはまだまだやる事が沢山あるのだから。
こうして彼女が廊下を歩いているのも、掃除に使ったバケツや雑巾を綺麗にする為だった。
湧「たっだいまーっ」
巴「…あ」
そんな巴の耳に元気な湧の声が届く。
玄関から力いっぱいに放たれたそれに、巴は思わず声を漏らしてしまった。
永水女子へと通う後輩たちは安全の事を考えて、ほぼ一緒に帰って来ているのだから。
湧が帰って来たと言う事は、他の四名 ―― 京子もそう遠からず屋敷の扉を潜るだろう。
巴「(別に気まずい…なんて事はないのだけれど)」
それでも京子の存在を妙に意識してしまうのは、巴の中で未だ答えが見つからないからだ。
朝の時間に齎されたその迷いを、自分は未だ引きずってしまっている。
それを京子に感じ取られると言うのは、出来れば避けたい事であった。
もし、自分の迷いに感づかれてしまった場合、心優しい京子が気に病むのは今からでも目に見えているのだから。
巴「(でも、お屋敷は広いし…)」
そもそも巴がこうして歩いているのは、屋敷の中でも人気のない客室の辺りだ。
京太郎の自室とかなり離れている事を思えば、そう簡単に出会う事はない。
どうしても夕食の時は顔を合わせる事になるが、それもたった数十分程度。
その後は部屋に閉じこもっていれば、京太郎と会う事はまずない。
巴「(…まぁ、意図的に避けるようでちょっと申し訳ない気持ちはあるわ)」
巴「(でも…)」
その申し訳無さよりも、今の彼女は顔を合わせづらい気持ちの方が大きかった。
無論、そうやって京太郎を避けても何の解決にもならない事は分かっているが、だからと言って顔を合わせても何も変わらないのだから。
変に心配をさせない為にも、そして京太郎を失望させない為にも、ここは必要以上の接触を避けるべき。
そう自分に言い聞かせる巴の足は自然と足音を殺すようなものになって ――
京子「巴さん」
巴「ひゃうっ!?」ビックゥ
瞬間、背中から掛かった声に巴の肩がビクンと跳ねる。
今にもその手に持ったバケツを落としてしまいそうなそれは勿論、その声の主が京子だったからだ。
今、彼女が最も会いたくないとそう思っていた相手の呼びかけに、身体の反応を抑えきれない。
その口からも驚きの声を漏らしながら、巴は急いで振り返った。
京子「ごめんなさい。驚かせてしまいましたか」
巴「う、ううん。大丈夫…だけど…」
巴「い、何時、帰って来たの?」
京子「ついさっきです」
巴「(…き、気付かなかった…)」
まるで全身から驚きを表現するような巴に京子が謝罪の言葉を口にする。
後ろから不意を突く形になったとは言え、京子に驚かせる意図などまったくなかったのだ。
湧よりも早く玄関に辿り着いた時も声をあげていたし、彼女に近づく時も決して足音を殺したりしていない。
それでも巴が京子の接近にまったく気づけなかったのは、偏に彼女の悩みが大きすぎる所為だった。
巴「そ、それでどうしたの?」
京子「実は巴さんに謝ろうと思って」
巴「え…?」
それを自覚する巴から出てくるのは誤魔化すような言葉だった。
何処かぎこちないそれに京子は申し訳無さそうな声を返す。
しかし、巴にはどうして京子が謝罪しようとしているのかが分からない。
そもそも彼女には京子に謝罪されるような何かをされたという自覚がまったくなかったのだ。
京子「あれから色々考えたんですが、朝の件、やはりちょっと強引過ぎました」
京子「巴さんの気持ちも考えずに…申し訳ありません」ペコリ
巴「あ…」
そんな巴に京子はそっと頭を下げた。
朝食時の強引さを詫びようとするそれに、彼女はようやく京子の意図を理解する。
瞬間、巴の口から声が漏れるのは、それがとても意外な事だったからだ。
彼女からすれば、それは決して謝罪されるような事ではない。
寧ろ、その強引さは巴にとって喜ばしいものだった。
巴「大丈夫よ。私は別に気にしていないし」
巴「それにちょっと嬉しかったから」
京子「嬉しかった…ですか?」
それを素直に口にする巴の前で、京子が聞き返してしまう。
そう言って貰えるのは有り難いが、しかし、その言葉はあまりにも意外過ぎるものだったのだ。
件の話が出てからずっと黙り込んでいた巴の姿を見れば、到底、喜んでもらっていたようには思えない。
余計な心労や悩みを与えて申し訳なかったとそんな謝罪が出てきてしまうほどに彼女は思い悩んでいたのだから。
巴「えぇ。あんな風に真摯になってくれる人って今までいなくて」
巴「勿論、はっちゃん達は親友だし家族ではあるけれど…」
巴「でも、だからこそ踏み込めない部分って言うのはやっぱりあるから」
巴「だから、私、あんなに強く言って貰えて嬉しかったわ」ニコ
京子「…巴さん」
とは言え、京子に微笑む彼女の表情に嘘の陰りなどまったくない。
実際、こうして京子に語る言葉にはまったく嘘偽りはないのだ。
何度も自身の中で反芻していたが故に、それは巴も自信を持って口に出来る。
だからこその微笑みは、若干の照れくささが浮かぶ魅力的なものだった。
巴「…寧ろ、謝らなければいけないのは私の方よ」
巴「あんなに真剣になって勧めて貰ったのに…私、まだ何も決められていないんだもの」
しかし、その表情は次の瞬間には陰りを見せ始める。
自己嫌悪と申し訳無さを浮かばせる巴は、今にもため息を漏らしそうな雰囲気を纏っていた。
こうして京子に謝られても、未だに巴は自身の中で答えを見つけられてはいないのだから。
未だ迷い続ける自分の情けなさに、ダメだと分かっていてもついつい言葉が漏れでてしまう。
京子「それだけ巴さんにとって問題の根が深いって事なんでしょう」
京子「無責任に背中を押しただけの私に謝るような事じゃありませんよ」
巴「でも…」
そんな巴をフォローするような京子の言葉も、彼女は素直に受け入れられない。
京子自身が無責任と称するその真摯さは、それだけ巴にとって嬉しい事だった。
出来ればそれに応えたい。
だが、それをするには自分を取り巻く柵はあまりにも大きすぎる。
そんな二律背反に陥った彼女にとって、そのフォローは安堵こそすれ、簡単に甘えられるものではなかった。
京子「…では、私に相談してください」
巴「相談…?」
京子「えぇ。悩み事も案外、人に話せば解決への筋道が立てられると言いますし」
京子「私も巴さんが一体、何を背負っているのか知りたいですから」
巴「はぅ…」カァァ
瞬間、巴が頬を赤く染めるのは、それが有り難かったからだけではない。
勿論、それも無関係ではないが、それよりもずっと大きいのは京子への認識。
もう一ヶ月以上前になる体育祭で、巴は京子の事を完全に男であると認識してしまったのだ。
誰よりも身近にいて、家族だと思っていた相手が見せたその素顔を、未だ巴は忘れられてはいない。
巴「(あうぅ…私…どうしちゃったのかしら…)」
他の六女仙達と同じく、巴は今まで異性と接する機会というものを殆ど持たなかった。
例外と言えば、山田や分家の男性くらいだが、前者は護衛であり、後者はその大半が老人である。
そんな状況で男を意識するはずがなく、彼女はずっと恋を知る事もなかった。
同じ年頃の少女が色鮮やかに花開かせている部分が、巴はずっと蕾のままだったのである。
―― しかし、今の彼女の目の前には誰よりも男を意識させる京子がいる。
無論、屋敷に返ってきて間もない京子は今も永水女子の制服を身に纏っている。
その姿は頭の先から足の指まで徹頭徹尾、淑女らしいものだった。
その仕草一つ一つにさえ気品を感じさせる京子を、しかし、巴はもう女らしいとは思えない。
京子が胸の奥に秘めているであろう獣性を意識し、その身体からは感じられないはずの男らしさを感じ取ってしまうのだ。
巴「(こ、こんなのおかしいわよね、うん…)」
巴「(普通に…普通にしないと…)」
女装していても尚、異性であるという認識が消えきらない相手。
そんな相手からの『知りたい』と言う言葉は彼女を動揺させるには十分過ぎるものだった。
異性と話をした経験さえろくに持たない巴にとって、まるで口説かれているように聞こえるのだから。
相手が家族同然に過ごしてきた京子であると分かっていても、胸がドキドキしてしまう。
京子「…巴さん?」
巴「う、ううん。大丈夫」
巴「な、何でもないからっ」フルフル
無論、そんな自分を巴が表に出せるはずがない。
元々、彼女は恥ずかしがり屋な上に、それが家族として相応しくない事を理解しているのだから。
これから先も京子の家族として振る舞う為にも、必要以上に意識しすぎてはいけない。
しかし、そう言い聞かせても彼女の中の鼓動は中々、収まる気配を見せなかった。
京子「そう…ですか?」
急に黙りこんだ彼女を心配しての言葉に、巴は顔を振って大丈夫さをアピールする。
しかし、その必死さは京子をさらに心配にさせるものだった。
間違いなく平静とは程遠いそれが気になるが、しかし、京子はここで踏み込む事が出来ない。
こうして首を振る巴からは自身の介入を避けようとする意思が感じられるのだから。
ここで踏み込んでしまったら気まずい雰囲気になるのは目に見えていた。
巴「う、うん。それより…ほら、さっきの相談だけれど…」
巴「本当に…良いの?」
そんな京子に巴が返したのは、ただ誤魔化すだけの言葉ではなかった。
おずおずと上目遣いになってしまうそれは、彼女の中で躊躇いがあるからこそ。
勿論、そうやって相談に乗ってもらえるというのは嬉しいし、有り難い。
自分の中で答えを出すのが絶望的なだけに渡りに船と言っても良かった。
巴「きっと…と言うか、絶対、面倒くさい話になっちゃうと思うし…」
それでも巴が京子の提案に飛びつけないのは、自身を取り巻く環境があまりにも面倒だという事を自覚しているからだった。
その中にどっぷりと身を浸し、最早、抜け出す事さえ出来ない彼女はともかく、京子は外から来た人間である。
無理矢理、神代と言う底なし沼に頭まで沈めこまれた京子からすれば、その話は決して面白いものではない。
実際、京子は一年近く彼女達の中にいても、未だ神代の事を良く知らないままなのだから。
彼女達自身の事はともかく、神代の事情からは意図的に距離をおいているように感じられた。
京子「もう。気にし過ぎですよ」
京子「相談なんですから面倒くさいのは当たり前ですし…」
京子「それでも良いって言うくらいに、私は巴さんの事を大事に思っているんですから」
彼女の考えは正しい。
夏の逃走を経て、京子は多少、自身の境遇を受け入れられるようにはなった。
だが、あくまでもそれだけであり、未だ神代家の事を許してはいない。
神代の事を知ろうなどと言う気持ちは未だ京子の中には沸き起こらず、ただただ暗い怒りを燃やしていた。
京子「(…でも、それと巴さんは関係ないし)」
京子「(何より、俺は辛い時に巴さんに助けてもらったんだから)」
瞬間、京子が思い返すのは数カ月前の事。
インターハイに出場する為、東京に足を運んだ京子の精神は最悪に近いものだった。
鬱屈としたもののやり場を何処にも見つけられず、ただ一人で迷い、苦しむしかなかったのである。
そんな時、巴が気晴らしに連れだしてくれた事を、京子は決して忘れてはいない。
だからこそ、京子は神代を取り巻く話であろうと躊躇なく彼女に手を差し伸べる事が出来る。
巴「ぅ…」カァァァ
無論、そんな事は巴も良く分かっている。
京子がこうして自身に手を差し伸べてくれるのは、あくまでも家族だからこそ。
これまでにお互いが積み重ね続けてきた絆が、京子に暖かな言葉を口にさせている。
しかし、それを理解していても、『大事』と言う言葉が恥ずかしい。
ようやく紅潮が抜け始めた頬が再び熱を灯すのが分かるほどに、彼女はまた動揺し始めていた。
京子「それとも…私は頼りになりませんか?」
巴「そ、そんな事ないわよ」
それでも京子のその言葉を見過ごす訳にはいかなかった。
それが一種の罠に近いものだと分かっていても、彼女は反射的に否定の言葉を口にしてしまう。
それは勿論、巴が京子の事をとても好ましく思っているからだ。
京子は神代側にいても横暴としか思えない仕打ちに耐え続けている上、こうして自分たちに優しくしてくれている。
その上、地味で目立たなかった自分を可愛いと称し、アニメ鑑賞という新しい趣味まで与えてくれたのだ。
そんな京子を巴が悪しように思っているはずがない。
京子の背負っているものがあまりにも大きすぎるが故に、あまり頼った事はないが、それでも、甘えた分には応えてくれる相手であろうと彼女は思っている。
巴「…分かったわ」
巴「そうまで言われて断る理由なんてないし…」
巴「遠慮無く頼らせて貰います」
そんな相手に頼りになると言った今、彼女に断る理由はもうなかった。
元々、巴は内心、京子の提案を喜ばしく思っていたのだから。
予防線を軽々と乗り越えられてしまった今、彼女はもう断りたいとさえ思えない。
結果、提案を受けた巴の前で、京子の顔は明るくなり。
京子「じゃあ」
巴「ただし」
そのまま相談に移ろうとする京子の言葉を巴は遮った。
勿論、提案を受けた彼女としても、今すぐ相談したい気持ちはある。
だが、今の京子は学校から帰ってきたばかりで化粧すら落としてはいないのだ。
自身にもやらなければいけない諸々がある事を思えば、今すぐ、と言う訳にはいかない。
巴「その前に宿題とか色々済ませてから…ね」
京子「あら、焦らすおつもりですか?」
京子「中々、意地悪なんですね」
巴「も、もう…違うわよ」
それにどうせならば時間など気にせず、ゆっくりと相談したい。
その為にはお互いに作業を終わらせきってからの方が良いだろう。
そう思った巴の言葉に、京子は微笑みながらからかいの言葉を口にした。
瞬間、巴は唇を尖らせるように否定するが、決して嫌な気分ではない。
巴「(…なんだかんだ言って、私、京子ちゃんの事頼りにしちゃってるのよね)」
これまでも何度か巴は京子に頼った事があった。
そしてその度に、京子は彼女の期待に応えてくれていたのである。
そうして積み重なった信頼感は、多少、からかわれた程度では揺るがない。
それどころか、京子に相談出来るようになった時点で、自身の悩みが若干、マシになったような気がするのだ。
巴「(自分でもちょっぴり現金だな、とは思うけれど)」
だが、そうやって京子を頼りにしているのは巴一人だけではない。
他の少女達もまた同じようにして京子の事を頼りにしているのだ。
それを思えば、自分が現金だと言うよりも、京子の頼りがいがありすぎると言ったほうが適切だろう。
そんな風に自身を納得させながら、巴はそっと肩を落として。
京子「ふふ。じゃあ、お言葉に甘えて、こっちも色々と準備してきますね」
巴「えぇ。私も早めに終わらせられるよう頑張るわ」
巴「まぁ、どれだけ遅くても22時くらいには一段落ついているとは思うし…」
京子「では、私もそれくらいにやるべき事を全部終わらせておきますね」
そのまま予定を詰める彼女に、京子もまた応える。
以前ならば22時に予定を終わらせるのは中々に厳しかったが、今はもう麻雀部の活動は殆どない。
娯楽以外で卓を囲む事がなくなった今、どれだけゆっくりタスク消化をしていっても22時までは掛からないだろう。
何かトラブルに巻き込まれたりしなければ、大丈夫なはずだと京子は内心で予定を立てていく。
京子「それで時間になったら居間に集合…と言う形で良いですか?」
巴「えーっと…」
そんな京子の前で巴が言葉を詰まらせるのは、極力、居間を避けたいからだ。
22時ともなれば皆、寝る準備を始めている頃だが、居間に誰かがやってくる可能性は否定出来ない。
この屋敷には彼女達以外に誰もいない為、それは家族の誰かになるのだが、やはり抵抗感と言うのはどうしてもある。
無論、巴は彼女達に心許しているが、それとこれとは話が別。
自身の胸に秘める相談事を、京子以外に知られたいとは思えなかった。
巴「(…でも、ここでお互いの部屋…となってしまうと…)」カァァ
年頃の男女が夜中に逢引。
瞬間、巴の脳裏に浮かんだのは、いかがわしささえ感じさせる言葉であった。
無論、彼女にも京子にもそのようなつもりはないが、さりとてその言葉は簡単に消えてはくれない。
未だ恋を知らないとは言っても、巴もまた年頃の少女であり、そういう事に興味を持っているのだ。
京子「…やはり別の場所が良いでしょうか?」
巴「そ、そうね。うん。それが良いと思うわ」コクコク
結果、再び顔を赤くする巴に、京子が助け舟を出す。
それに首を上下に振りながらも、巴には案らしい案が思い浮かばなかった。
お互い普通の家に住んでいるならばともかく、ここは山の中にぽつんとある屋敷。
街中に出るには長い階段を下っていかなければいけないのだ。
同じ年頃の少女たちのようにファミレスで集まって相談、と言う訳にはいかない。
巴「(でも、ずっとこうして京子ちゃんを拘束する訳にはいかないし…)」
京子は所謂『ギャル』と呼ばれる少女たちのように厚塗りのような化粧はしていない。
元々、京太郎は女顔であり、肌も殆ど荒れてはいないのだから。
その素材を活かしたナチュラルメイクで十分、事足りてしまう。
だが、それでも肌からチリチリと感じる窮屈感はどうしてもなくならない。
それを女性として良く理解する巴は、あまり長く京子を拘束してやりたくはなかった。
巴「(その上、私自身、あんまり時間の余裕がある訳じゃないもの)」
こうして掃除の後始末をしているのは巴だけではない。
霞達もまたそれぞれバケツを持って後始末を始めているはずだ。
それで今日の仕事が全て終わりならば気も楽だが、彼女達にはまだまだ仕事が沢山残っている。
無論、多少、遅れたくらいで不興は買わないだろうが、それでも確実に親友達の迷惑になってしまう。
そう思う巴にとってコレ以上の立ち話は許容出来るものではなかった。
巴「え、えっと…その…ね」
巴「代わりに…わ、私の部屋なんて…ど、どう…かしら…?」
京子「え…?」
だからこそ、勇気を振り絞った巴の言葉に京子は思わず疑問の声を返してしまった。
無論、京子とて巴がその相談を誰かに聞かれたくないと思っている事くらい察している。
だが、人気のない場所で話をするならば、別に客室で構わないのだ。
特に今は大掃除の真っ最中であり、いくつかは使える客室があるだろう。
巴「あ、あの、変な意味じゃないのよ!?」
巴「ただ…その…話を聞かれる可能性が少なくて」
巴「それで…ゆっくりくつろげる場所って言うと…やっぱり…私の部屋が一番かなって…」ボソボソ
そう思う京子の前で、巴は最初、強い否定の声を放った。
しかし、それは風船が萎むようにして急速に弱くなっていく。
一つ一つ言葉を放つ度に小さくなるそれは、最後の方にはもう呟きに近いものになっていた。
最初こそ勢いに任せてどうにかなったものの、やはり巴の中で羞恥心と言うのは大きい。
巴「(まるで…と言うか…男の人を部屋に誘ってる訳だもの…)」
巴「(恥ずかしくて当然だっていうのは分かっているけれど…)」
しかし、当然という言葉で冷静になれるなら、巴の頬は赤く染まってはいない。
分かっていても尚、湧き上がってくる感情に彼女の頬はまったく冷める気配がなかった。
そんな自分に情けなさを感じるものの、巴にはどうする事も出来ない。
その顔もゆっくりと俯いていき、京子の顔から視線を逸らしてしまう。
京子「宜しいのですか?」
巴「べ、別に今さら、遠慮するような仲でもないでしょ?」
巴「だから…い、良いのよ」
京子「(う…今、ドキっとした…)」
瞬間、京子が胸に思い浮かべるのは、淫らな想像混じりの期待だった。
もしかしたら、巴は『そういう事』がしたいが為に自分を部屋に呼ぼうとしているのではないか。
うつむき加減の顔のまま上目遣いに誘う巴の顔は、そんな言葉が浮かんでくるほど魅力的なものだったのだ。
ただ、相手が恥ずかしがっているだけだと内心、分かっていても、健全な男子高校生である京子は意識してしまう。
京子「では、遠慮無くお邪魔させて貰います」
巴「…ありがとうね、京子ちゃん」
京子「いえいえ」
とは言え、今更、京子がそのような感情を表に出すはずがない。
決して本意ではないが、既に京子はそれ以上の修羅場を幾度と無くくぐり抜けて来ているのだから。
この一年で踏み固められた『須賀京子』の仮面は硬く、そう簡単に破る事など出来ない。
幼馴染である宮永咲でさえ、『須賀京子』から『須賀京太郎』の部分を引き出すのは難しいだろう。
京子「では、私は準備に戻りますね」
巴「えぇ。それじゃあ、また夕食の時に」
京子「はい。今日のお夕飯も楽しみにしていますね」
巴「あ、あんまり期待し過ぎないでね」
京子「ふふ。それは難しい相談です」
巴はそう言うものの、京子の中から期待がなくなる事はなかった。
インターハイが終わった後も家事を引き受ける巴達の料理はとても美味しいのだから。
この一年間、ほぼ毎日、口にしているはずなのに、京子には飽きる気配すらなかった。
飽き性であるはずの舌を毎日、楽しませてもらっているのだから、期待しない訳がない。
京子「(ま、最近はやっぱり結構、忙しいみたいだけどさ)」
今の彼女達は大掃除に日中のリソースを奪われている状態なのだ。
その分、他の仕事が押している事を考えれば、あまり手の込んだ食事など作れるはずがない。
しかし、そうやって幾分、手を抜かれているはずの食事でさえ、手抜きとは思えないほどに美味しいのだ。
元々、京子は食にうるさくはない方と言うのも相まって、毎日の食事を楽しみにしていた。
京子「(それはさておき…っと)」
巴との話に一段落がついた今、この場に留まる理由はほぼない。
それよりも、早く移動し、諸々の仕事を消化していくべきだろう。
そう考えた京子は巴に一礼してからそっと踵を返した。
そのまま自室に向かう途中、一度だけ巴の方を振り返って。
巴「よいしょっと」
掛け声と共にバケツを運ぶその顔はさっきよりも幾分、明るいものだった。
声を掛けた時には背中から憂鬱そうな雰囲気を漂わせていただけに大分、改善の兆しが見えている。
そう思いながらも京子が安心できないのは、未だその影を払拭しきれていないからだ。
明るくなったのはあくまでもさっきに比べての話であり、普段から比べれば、やはり暗さが目立つ。
京子「(…何とかしないとな)」
その原因を巴に与えた京子としてはそれはどうしても見過ごせない。
勿論、巴はそれを気にしていないと言った。
寧ろ、喜ばしい事だとそう言ってくれたのである。
それを疑うつもりはないが、その胸中にある申し訳無さは消えない。
良かれと思ってやった事が巴を追い込んでいるのは、紛れも無い事実なのだから。
―― だからこそ、京子はその決意を新たにしながら再び正面へと向き直り。
―― そのまま夜に向けての準備を整えていくのだった。
ってところで今日は終わります(´・ω・`)
本来ならハオのも終わらせたかったのですが、ちょっと今、お酒が入っているので、朝に書く形にさせてください…
乙 次々と堕ちていく
酒入ってると暴走して今回で終わらないからですねわかります
良かれと思ってやった行動で六女仙の皆がどんどん堕ちていく……
幼なじみの咲ちゃんでも、京子ちゃんから京太郎の部分を引き出すのが難しい、か。
咲ちゃんが今後京子ちゃんに会える話はあるんですかね……?(小声)
ハオ「(ひあ…幸しぇえっ♪♪)」
ハオ「(膣内射精ぃいっ♥♥種付けぇえっ♪♪♪)」
もぉ…♥もう…ダメ…えぇえ♪♪
これ絶対に…絶対に癖になっちゃったぁああぁ♥♥♥
気持ち良くって幸せなの…完全に覚えちゃい…ましたよぉお♪♪♪
もう…絶対に…絶対に…無理…いぃいっ♥♥
膣内射精…逆らえません…っ♥♥
何時だって種付けして欲しく…なっちゃ…うぅぅっ♥♥♥
京太郎「はぁ…あぁぁ…っ」ブルル
ハオ「ひあぁっ♪♪あ゛あぁぁああxかあっ♪♪♪」
なのにぃっ♪♪なのに…京太郎君、まだ射精してえぇっ♥♥♥
オチンチンの先っぽ震わせながら…子宮に精液塗りこんで来るんです…うぅうっ♪♪♪
もう…私、完全に堕ちてるのにぃっ♥♥
種付け射精にアクメ堕ちしちゃったのにぃいっ♥♥♥
まだ堕とそうとしてるぅうっ♪♪♪
もうオチンチン大好きになった私の子宮に…どっちが上か教えこまれて…るぅうう♥♥♥
京太郎「ふぅう…ふ……っ」
ハオ「あ゛…お…おぉぉっ♪♪♪」
お…終わった…の…ぉ…♪♪
本当に…本当に終わったんです…かあぁ…♥♥
最高の…種付け…えぇっ♪♪♪絶頂…ぉぉ♥♥
私…もう…もう身体中…アクメだらけ…ですけどぉ…♪♪
ようやく…一息つけるんです…かぁ…♥♥♥
アクメの余韻に浸る事が…出来る…うぅぅ…♪♪♪
ハオ「(れもぉっ♪♪お、オチンチン…まだビクンビクンひてぇえ…っ♥♥♥)」
もう精液なんか出てないはずなのに…オチンチン…子宮口こすって来る…ぅうっ♪♪♪
ズリズリって…アクメオマンコの奥をお…っ♥♥
一滴残らずちゃんと精液飲み込んだか確かめるみたいにぃっ♪♪♪
ズリズリぃいっ♥ゴリゴリぃいぃっ♥♥
ハオ「(しょ、しょんなのされたら…逆効果…れすううっ♪♪)」
ハオ「(精液…漏れ…ちゃうぅっ♥♥)」
ハオ「(京太郎君のザーメンぴゅっぴゅしちゃうぅうっ♪♪♪)」
私…そんなのされたらアクメするんですからあっ♥♥
射精終わってもずっとアクメから降りて来られない子宮が即イキするんですよぉっ♪♪♪
もうオチンチンに絶対に勝てないオマンコになったんですぅうっ♥♥
だから…漏れ…ぇ♪♪子宮から…漏れちゃうぅうっ♥♥
アクメする度に子宮から漏れる濃厚汁に精液混ざっちゃいますよぉお…♪♪♪
ハオ「(それ…とも…ぉ♪それが…望みなんです…かぁあ…♥♥)」
ハオ「(私から…精液漏らさせて…お、オシオキ…するつもり…なんですかああっ♪♪♪)」
こ、壊れ…壊れ…ちゃいますぅう…♥♥
私…も、もうこんなにアクメしてるのにぃ…♪♪
まだ…身体にちゃんと感覚すら戻ってきてないのにぃっ♥♥
ここからオシオキなんてされたら…私、もう…ハオ・ホェイユーじゃなくなっちゃう…うぅ♪♪♪
京太郎君のオチンチンに負けるのが大好きな…メスに…なっちゃいますよぉお…♥♥♥
ハオ「(れ…もぉっ♪♪良い…ですよぉおっ♥♥)」
ハオ「(京太郎君がしたいにゃら…しょれでも…良ひ…ぃっ♪♪♪)」
ハオ「(永遠にオチンチンに負け続けりゅのも…きっと…ひあわせ…ぇえ♥♥♥)」ギュゥゥ
あぁぁ…♥♥
私…抱きついちゃって…ますぅ…♥♥
種付けしてくれてる京太郎君に…オネダリ…するみたい…にぃ…♪♪♪
勝手に足動いて…彼の事挟みこんじゃってるぅう…♥♥
こんな…こんなの…すっごく…やらしい…ぃい♪♪♪
まるで…私が京太郎君に壊されたいって…言ってるみたいになっちゃってぇ…ぇえ♥♥
京太郎「…ハオ」ゴクッ
ハオ「ふぁぁあぁあああ…♪♪♪」
き、京太郎君…ぅうっ♪♪京太郎君の…エッチぃいっ♥♥
私が足をからませた瞬間…お、オチンチンビクンってさせてぇ…♪♪♪
元々…硬いままでしたけど…ぉっ♥♥お、オチンチン…もっと硬くなってるぅ…♥♥♥
やる気…なんですね…っ♪♪
やっぱり…私の事、完膚なきまでに…壊しちゃう…つもりなのが…オチンチンから分かり…ますぅう♥♥♥
京太郎「も、もう一回、良いか?」
そんなの…分かってる…癖に…ぃ…♪♪
私が…私がもうオチンチンに堕とされちゃってるの…アクメマンコからまるわかりじゃないですかぁ…♪♪♪
今も硬くなってオチンチンに…だいすきだいしゅきぃって締め付けちゃってる…のにぃ…♥♥
その度にビクンビクンってイかされてるのに…嫌なんて…言えるはず…ないですぅ…♥♥♥
このまま…壊され…たいぃ…♪♪♪
もう後戻りなんて出来ないから…完全に堕ちきってしまいたいんですぅ…う♥♥
ハオ「ふぁ…あぁいい…・・♥♥♥」
京太郎「じゃ、じゃあ…っ」ズル
ハオ「ひぃいぃいんんぅっ♪♪♪」
お、オチンチン…動き始めて…るぅうっ♪♪♪
私のジュルジュルドロドロになったアクメマンコぉっ♥♥
もう完全に京太郎君の奴隷になっちゃったメスマンコの中ぁあっ♪♪♪
気持ち…良すぎますぅうっ♥♥
ゆっくりと抜かれてるはずなのに…イくぅうっ♪♪♪
オチンチンビクビクよりも強いから…すぐにアクメ…しちゃうぅううっ♥♥♥
チュポン
ハオ「あぁ…あぁあ…っ♪♪♪」ブル
で、でも…お、オチンチン…抜けちゃい…ましたぁ…♥♥
今までずっと私の中を満たしてくれてた…京太郎君のオチンチン…うぅっ♪♪♪
完全に…私の中からなくなって…ぇ♥♥
オチンチンに広げられてた穴が…キュンって締まってくぅ…♪♪
寂し…ぃっ♥こんなの…寂しすぎ…です…♥♥
アクメマンコにオチンチンないの…酷いぃ…♪♪♪
オチンチン大好きなオマンコの事…もっともっとかわいがって欲しいのにぃっ♥♥♥
ハオ「き、京太ろぉ…きゅぅ…んっ♥♥♥」
京太郎「…ったく、一体、どれだけチンポの事が好きなんだよ」
そ、そんなの…決まってるじゃ…ないですかあっ♥♥
世界で一番…ですぅっ♥
京太郎君のオチンチン…世界で一番…愛してるぅうっ♥♥
父や母よりも…ずっとずっとずっとぉおっ♪♪♪
世界中の大好きを纏めても比べ物にならないほど…京太郎君のオチンチン、大好きですうっ♥♥♥
京太郎「そんなハオにはこっちの方がお似合いだろ」グッ
ハオ「ひきゅぅ…うぅ♪♪♪」ゴロン
私…うつ伏せに…されちゃいましたぁ…♪♪
京太郎君の手でぇ…♥♥仰向けから…ゴロンさせられちゃってぇ…♪♪♪
でも…それが…とっても優しいんですよ…ぉ♥♥
口調は意地悪なのに…♪まるで宝物みたいにゆっくりと私の姿勢を変えてくれて…♪♪
相思相愛なのが…わかっちゃい…ますぅ…♥♥
京太郎君も私の事、大好きなのがそれだけでも分かっちゃってぇ…♥♥♥
京太郎「このまま挿入れるからな…!」
京太郎「発情期のメス犬みたいになったハオの事…このまま躾けてやる!!」グリ
ハオ「んあぁ…あぁあっ♪♪♪」ブル
その上…そ、そんな事言っちゃうんですかぁ…あ♥♥
私のお尻に硬くて熱いオチンチンこすりつけながら…ぁ♪♪
私の大好きなオチンチンズリズリさせながら…そんな事…言われたらぁ…♥♥
私…勝手に足…開いちゃい…ますぅ…♪♪♪
挿入れてくださいって…躾けてくださいって言うみたいにぃ…♥♥
もうエッチな事しか考えられない身体が…足をゆっくりいぃいぃ…♪♪♪
京太郎「まったく躾けだって言ってるだろ」
京太郎「それなのに自分から足広げるなんて…本当に分かってるのか…よっ」ズッジュゥ
ハオ「ひぃ゛い゛ぃいいぃいいい♪♪♪」
わ、分かって…分かってますぅうっ♪♪
京太郎君が…も、もう我慢出来なかったって事ぉおっ♥♥
もう私の事犯したくて仕方がなかったの…オチンチンから分かるのぉっ♪♪♪
だって…これ…さっきよりも強いんです…からぁあっ♥♥
私の中から抜けていった時よりも興奮…してるぅうっ♪♪♪
ハオ「わんっ♪♪わんぅうっ♥♥」
ハオ「わふぅううぅううううっ♪♪♪」
だ、だから…私も…もっとエッチに…なっちゃうんですよぉっ♥♥
オチンチンがまた射精する前のガチガチオチンチンになってるからぁっ♪♪
ガチガチオチンチンで…オマンコがまたエロアクメしまくっちゃってるからあ♥♥
だから…鳴いちゃうんですぅ…♪♪♪
後ろからケダモノみたいに犯される度に…エッチな鳴き声ぇえ♥♥
完全に発情期のメス犬になった…アクメ声で…京太郎くんに甘えちゃってえぇ…ぇ♪♪♪
―― そんな私に応えるように京太郎君は寝バックの姿勢で犯し続けてくれて…♥♥
―― 私がイキすぎて…気絶する瞬間まで…沢山、メス犬として愛してくれたんです…♥♥♥
………
……
…
ハオ「それロンです」
ネリー「げ…っ」
智葉「また負けたか…」
明華「流石ですね」
…ふぅ、何とかこれで一位。
序盤は大分、抑えこまれましたが何とか捲れたようで良かったです。
正直、この卓についてる人たちは全世界で見ても、上位に入る実力者達ですしね。
間違いなく次代の世界戦を担っていくであろう相手を前にして、連続一位を堅守出来たのは大きいです。
智葉「しかし…負け惜しみのつもりはないが、最近、絶好調だな」
ハオ「ふふ。そうですね」
……本当はかなり不安だったんですよね。
その、私がクリスマスに経験した事は、私の一生を滅茶苦茶にしてもおかしくないほどのモノだったので。
正直、麻雀の事が分からなくなるくらいに壊されると確信を持って思ったくらいでした。
ハオ「(でも、実際は麻雀のことを忘れるどころか絶好調で)」
…まぁ、人間、そう簡単に壊れたりはしないって事なのかもしれません。
なんだかんだ言って、京太郎君は私の事をとても想ってくれている人ですし。
意識がトんじゃう瞬間まで、彼は私を心から愛してくれていました。
だからこそ、私は心も身体も滅茶苦茶にされても、こうして『ハオ・ホェイユー』に戻る事が出来たのかもしれません。
ハオ「(…まぁ、まったく変わらなかった訳ではないのですけれど)」
クリスマスからもう二ヶ月ほど経過していますが、私はその間、毎日、京太郎君 ―― いいえ、ご主人様と結ばれていました。
それはご主人様の性欲が強すぎるから…と言うだけではありません。
あの日、私に刻まれた快楽の痕は、決して消える事のない深いものなのですから。
その身も心まで壊れるほど愛される経験は、私に我慢を許しません。
ご主人様と二人きりになった瞬間から私はメス犬になり…彼にご奉仕するオナホ女に堕ちるのです。
ハオ「(まぁ、それがきっと良い息抜き兼目標になっているのかもしれませんね)」
彼と結ばれる前から私の生活はとても充実していました。
臨海女子と言う環境は私と同レベルか或いはそれ以上の雀士を世界中から集めてきているのですから。
そんな彼女達と毎日、切磋琢磨出来るのですから、満たされないはずがありません。
その上、今の私は最高の息抜きと娯楽を手に入れた状態なのです。
ご主人様に愛されるのを日々の潤い兼目標にしている私が絶好調になるのも当然の事なのでしょう。
明華「何か理由でもあるのですか?」
ハオ「そ、それは…」
…とは言え、それを彼女達に言う事は出来ません。
無論、彼女達は私にとってライバルではありますが、大事な仲間でもあるのです。
彼との関係を進展させる為、色々と骨を折ってくれた事を思えば、答えるべきなのでしょう。
…そう思いながらも私が言葉を濁らせてしまうのは、それがあまりにも過激過ぎる為で ――
ハオ「(さ、流石にお尻まで開発されたなんて言えませんし…)」
…今の私は『ハオ・ホェイユー』ではありますが、一皮むけば、ご主人様の愛玩奴隷なのです。
その子宮までご主人様にマーキングされた私が、アナルを拒めるはずがありません。
寧ろ、そっちの穴でもご主人様を満足させられるよう自分から開発を乞うたくらいでした。
そんな自分を赤裸々に伝えるのは真面目な『ハオ・ホェイユー』にはハードルが高すぎます。
智葉「まぁ、何があったのかは大体、察しがつくけどな」クス
ネリー「そのチョーカーを見れば一目瞭然だよね」
ハオ「はぅ…」カァァ
……違うんです、ネリー。
これはチョーカーではなく、首輪なんですよ。
私がご主人様のメス犬だって事を示してくれる…私にとっての宝物なんです。
……でも、流石にそんな事を言ってしまえば、彼女達も引かれてしまうでしょうし…。
ハオ「…そ、そんなに分かりやすいですか?」
ダヴァン「まァ、そのチョーカー見て、四六時中ニコニコしてたらまるわかりデスよ」ズルズル
…何より、そんなに分かりやすいのかと想って尋ねてみましたが…どうやら私は思った以上に重症みたいです。
この中でも特に色恋沙汰に疎そうなメガンにまで指摘されてしまうとは。
あまり自分では自覚していませんでしたが…これからは気をつけておくべきかもしれません。
ハオ「(あんまり幸せ過ぎて、興味を持たれても困りますし…)」
…京太郎君は私だけのご主人様です。
壊れてしまった私が身も心も預ける事が出来る唯一無二の人。
きっと私が生まれてきた意味は…あの人と出会う事にあった。
そんな風にさえ感じるご主人様を誰にも渡したくありません。
ダヴァン「で、実際、ドーなんです?」
ハオ「…………まぁ、その」スッ
ハオ「とっても…とっても幸せ…ですよ」ニコ
…それでもメガンの言葉に嘘を吐く事は出来ませんでした。
思わずチョーカーに触りながら、幸せだと、そんな言葉を返してしまいます。
軽く頬を緩めがながらのそれは、きっととてもだらしないものなのでしょう。
そう分かっていても、私は自分の頬を引き締める事が出来ませんでした。
明華「思いっきり惚気けられてしまいました」
ネリー「うーん…それよりもお金が沢山、あるほうがずっとずっと幸せだと思うけどなー」
智葉「ふふ。まだネリーには色々と早いのかもしれないな」
ダヴァン「私はラーメンの方が…」
智葉「…言っとくがメグのそれは論外だからな」
ダヴァン「ナント!?」ガーン
ハオ「ふふ」
……それはきっと京太郎君の所為だけではありません。
だって、私は京太郎君の側にいない今も心から楽しんでいるのですから。
無論、京太郎君と一緒にいる時には劣りますが、さりとてその彩りは決して色褪せるものではありません。
実力伯仲するライバル兼仲間達との何気のない会話が…私にはとても楽しいのです。
ハオ「(…だから)」
ハオ「…勝ちましょうね」
ネリー「え?」
ハオ「インターハイですよ」
ハオ「このメンバーで必ず優勝しましょう」
無論、私達はあまり慣れ合うべきではない関係です。
今は同じ学校に通う仲間ではありますが、数年後には間違いなく敵になるのですから。
次代の世界ランカーになっていてもおかしくはない彼女達を前に、心を許しすぎるのは危険です。
将来の事を考えれば、仲間と言えどあまり手の内を晒さない方が良いでしょう。
智葉「…当然だ」
ネリー「スポンサーに対する絶好のアピールポイントだしね」
明華「智葉以外の日本人に遅れをとるつもりはありませんよ」
ダヴァン「私もリベンジしたい相手がいますカラ」
…それでもこうして私が言葉にしてしまうのは、このメンバーで戦うインターハイがこれで最後だからでしょう。
来年になれば、きっと私たちはバラバラになり、完全な敵同士に戻ってしまうのですから。
だからこそ…私はこの一分一秒を大事にしたい。
いずれ敵になってしまうからこそ、彼女達と夏を長く楽しみたくって ――
智葉「…では、とりあえず目の前のハオにリベンジといくか」
ネリー「負けっぱなしは性に合わないしね」
明華「今度は負けませんよ」
ダヴァン「あ、私も食べ終わったノデ、そろそろ混ぜてクダサイ」
―― 彼女達と切磋琢磨するその勝負に、私は二つ返事で応えたのでした。
なんか最後の方は臨海女子の話になっちゃってごめんなさい(´・ω・`)完全に麻雀眼中になくなってしまったハオとか書きたくなくて
ともあれ、これでハオとイチャイチャする話はこれで終わりです
元々のヒロインをメス堕ちさせる話とはちょっとズレちゃったというか(´・ω・`)何時もよりマイルドになっちゃってる感があって不完全燃焼ですが
順調に一歩ずつ進んで結ばれた二人の先を書いても蛇足にしかならないでしょうし、ここで終わりとさせてください
しかし、正月からの息抜きはどうしましょうかねー
こっちの京ちゃんがやたらと真面目なのもあって、完全にオープンスケベで馬鹿っぽい京ちゃんを書きたくなったりもしますし…(´・ω・`)そして逆レ
メス堕ちと言う面では若干、弱かったので完全にエロ特化スレなんかもいいかなーと思ったりも(´・ω・`)悪の組織の総統京ちゃんがヒロインを調教して堕としていくとか
つまりこれまでの設定を全部纏めて…
昔、悪の魔王として暴れまわった親父が勇者に倒され平和になった魔族領で魔王(暫定)となったんだけど
淫魔を母に持つ京ちゃんはエロい事にしか興味がなくて幼馴染のヒロイン(玄)とセフレになったり、二人で人間の国に行っておもち味わいまくったりして
その内、その悪行がバレて討伐命令が出るんだけど、あんまり人を傷つけるのが好きじゃない魔王京ちゃんの城にはエロいトラップしかなくて
罠に引っかかって裸になったり、感度があがったりしながらも王座の間にたどり着くヒロイン達とエロエロして堕としていき
堕ちた女の子達が京ちゃんの精液目当てに魔王城を目指そうとするスレが良いって事だな!!!!!
……あれ、ふっつーにアリな気がする(´・ω・`)
一回のエロの時間長いからダレる(断言
安価要素としてはどんなヒロインが城に乗り込んでくるかとかトラップのパワーアップや種類を決めたりとか
そういうのを決められれば、タワーディフェンスっぽくて面白いかなーと思ったりも
後、私だって一応、ギャグは書けるんだからな!!!王様ゲームスレとか完全、ギャグやったやん!?(必死)
>>748
問題はそれなんですよねー…
ふたなりスレみたいに会話主体で進めていっても一回四時間くらい(投下二回分)くらいはかかっちゃいそうですし…
エロ主体となると絶対に話が進まなくて大変な事に…(´・ω・`)ぬぐぐぐぐ
エロはあるけど決してメインじゃない程度…ってなるとやっぱクリスマススレくらいのゆるさが良いのかなー
例えば、ウィルスで女の子が積極的かつ男性よりも身体が強くなった世界観で、京ちゃんが恋人作ろうとナンパを頑張る的な
愛情度と欲情度決めて欲情度が高くなりすぎると逆レされるとか…
会話文ダイジェストでええんやで
一回のエロシーンで何回も逝かせようとするからそうなる
一回のシーンで1~2回、前戯を入れても3~4回程度で収めた方が良いかと
ある程度、数をこなすなら前戯を入れて1~2回
18ページ程度のエロ漫画や、サブキャラとか敵モンスター娘とかとエロがあるエロゲーを参考にして、エロシーンのヤマとオチを考慮してはどうかと
エンディングとか、特別なシーンとかはその辺りの制約を外す形で
即オチに2コマ的に行こう
まずはエロを短く書く練習をするためのスレを立てればいいんじゃなかろうか
ポテチとか、一種類の味を一袋食べてるとただ貪るだけになるだろ?
でも他の味や違う菓子を食べてると飽きずに楽しめる。
つまり、長くなるならその分複数人のエロを書けばいいんだよ!!!!!
>>751>>753
ダイジェスト、或いは即落ち2コマだと私も参加者さんも楽しめるかなーと言う疑問があるのですよねー
例えばベッドヤクザ京ちゃんに性的な意味で勝とうとするんだけど敗北し続ける咲ちゃんとかだと即落ちダイジェストでも大丈夫だと思うのですが…
メス堕ち主体で展開させるスレだとエロシーンが短すぎるのは致命的かなって
参加者さんとしても当然そこを楽しみにして来てくれてると思いますし(´・ω・`)何より私のスレのニーズに合わない気がするのです
>>752
仰られている事はすっごく正論だと思うんですが、私自身がヒロインが数回しかイかないエロシーンに満足出来ないのです…
私が最もカタルシスを感じるのはヒロインがイキ続けて、自分が何を言っているのか分からないまま淫語とアクメ汁垂れ流す姿なので
商業、或いは恋人同士のイチャイチャ主体ならばともかく、私が今、書きたいのはアヘアヘンホーなガチエロですし、アドバイスには添えないと思います…
折角、為になる助言を貰っているのにごめんなさい(´・ω・`)
>>754
なるほど…!だけど、いきなり練習から入ると怪我をするかもしれませんし、やっぱりここはエロを短く書く為の練習をする為の準備運動をするスレから(ry)
>>755
そうやって色んなヒロインつまみ食いした魔物娘スレの最後は纏めるのに一ヶ月近く掛かったんですが…(震え声)
やっぱり私は致命的なまでに即興でやるエロスレには向かないのかなー…(´・ω・`)ぬぐぐ
咲「ふんふふーんふーんっと♪」
咲「はーい。お待ちどう様」
咲「特性トマト鍋出来たよー」
京太郎「おぉ、色々入ってて美味そうじゃないか」
咲「今日はお鍋だけじゃないよー」
咲「ケーキやワインなんかもばっちり準備してあるんだから」
京太郎「って普段、財布のヒモ硬いくせに…大奮発だな」
京太郎「大丈夫なのか?」
咲「大丈夫だよ。普段からきちんと節制してるし」
咲「年を越せませんって事にはならないから」
京太郎「んー…それなら良いんだけど…」
咲「もう。私のやりくり上手を信じてよ」
咲「これでも日頃から結構、頑張ってるんだからね」
京太郎「まぁ、財布預ける程度には信じてますよ」ナデナデ
咲「んふー…♪」
咲「それよりほら、覚める前に食べちゃおう」
京太郎「おう。頂きます」
咲「いただきまーす」
咲「あ、京ちゃん、装ったげるね」
京太郎「ありがとう……っておい」
咲「んー?」
京太郎「野菜ばっかりじゃなくて肉入れてくれよ…」
咲「だーめ。ちょっと目を離すとすぐにジャンクフード食べるんだもん」
咲「今日は野菜中心です」
京太郎「ちょ、折角のご馳走なのにそりゃないだろ…!」
咲「…じゃあ、何か言う事ない?」
京太郎「咲大明神様、よろしくおねがいします」ペコリ
咲「うーん…もう一声」
京太郎「…愛してるぜ、咲」キリ
咲「よいしょ」ヒョイヒョイ
京太郎「あぁ!数少ない俺の肉が!!」
京太郎「な、何が気に食わなかったんだよ…」
咲「京ちゃんのくせに私の事ドキってさせたから」
京太郎「横暴すぎるぞ…」
咲「ふふ。まぁ、でも、最初は野菜も中心でね」
咲「その後はちゃんとお肉も入れてあげるから」
京太郎「はいはい。分かりましたよ」
京太郎「まったく…うちの恋人は体調管理もバッチリで頭がさがるぜ」
咲「もーっと褒めてくれても良いのよ?」ニコ
京太郎「…まぁ、割りと真面目な話さ」
咲「うん?」
京太郎「昔はあんなにポンコツだった咲が良くもまぁ、ここまで立派にって関心してるのはあるよ」
咲「…ポンコツ?」ソッ
京太郎「言葉の綾だろ!?」
京太郎「怖い顔をして野菜山盛りにするの止めてくれよ!!」
京太郎「それにさ、実際、ポンコツだったじゃん」
咲「えー…そんな事ないよ」
京太郎「…今でも一人で出歩くと5割で迷子になる奴がどうして否定出来るのか」
咲「ちゃ、ちゃんと最近は携帯も使いこなせてるし、帰っては来れてるもん」
京太郎「帰って来れなきゃ問題だっての」
京太郎「こっちはもう社会人で、お前を迎えに行ってやれないんだからさ」
咲「……うん。それは分かってる」
京太郎「……あー…でもな」
咲「え?」
京太郎「…本当に道分からなくなったらすぐに頼れよ」
京太郎「お前のためなら仕事くらいすぐ抜け出すからさ」
咲「…京ちゃん」ニコ
京太郎「……だから、お肉を少しだけで良いんで増量…」
咲「そぉい!!」
京太郎「あぁ!!キャベツがついに山盛りに!!!」
咲「まったく…昔っから京ちゃんはそうだよね」
咲「ちょっと雰囲気が良くなったら、今みたいにすぐヘタレちゃってさ」
咲「キスするのだって一体、どれだけ掛かった事か」スッ
京太郎「…いや、それはお前も逃げてたからだろ」
咲「逃げてません」
京太郎「嘘つけ。そういう雰囲気になった途端、顔真っ赤にして距離とってたくせに」
京太郎「アレで俺、一時、結構悩んでたんだぞ」
咲「………ごめんなさい」
京太郎「まぁ、過ぎた事だし良いけどさ」
京太郎「今ではもうベッドの中で何度もオネダリ…」
咲「っ」
京太郎「いって!」
咲「デリカシーなさすぎ。さいてー」ジトー
京太郎「だからって蹴る事ないだろ…」
咲「いまのは絶対に京ちゃんが悪いもん」ツーン
咲「今はご飯なんだからそういうのは禁止です」
咲「これ以上、そういうネタ引っ張ったら京ちゃんのところにはサンタさん来ないからね」
京太郎「えー。ママ、僕、一年間、ずっと良い子にしてたよ」
咲「…良い子は台所に立つ私のお尻撫でたりしないと思うな」
京太郎「咲のお尻が安産型過ぎるのが悪い」
咲「もぉ。これでも結構、気にしてるんだからね」
京太郎「別に気にする事はないと思うけどなぁ」
京太郎「実際、俺はその尻にヤられた訳だし」
咲「そういうネタ禁止って私言わなかったっけ?」
京太郎「ちょ、待て待て、無言でキャベツの山を準備するなよ!?」
咲「…ごめんなさいは?」
京太郎「ごめんなさい」
咲「…宜しい」
京太郎「ふぅ…」
咲「…そう言えばサンタで思い出したけど」
京太郎「ん?」
咲「昔、京ちゃんってサンタを信じる私の事思いっきり馬鹿にしたよね」
京太郎「あー…」
咲「私、今でも一言一句違えずに覚えてるよ」
咲「『サンタさんなんていないんだぞ。咲ってば馬鹿だなー』」
京太郎「うぐ…っ」
咲「私、これ聞いて大泣きしたよね」
咲「サンタさんは絶対にいるもんって言いながらさ」
咲「…思えばアレが一番最初にした京ちゃんとの喧嘩だったなー」
京太郎「そ、その節はどうもご迷惑をお掛けしました」ペコリ
咲「ふふ。良いよ」
咲「さっきの京ちゃんじゃないけど、それはもう過ぎた事だし…」
咲「…それにさ」
京太郎「え?」
咲「その後、京ちゃん、私の部屋に来てくれたよね」
咲「自分の服、絵の具で真っ赤にして…顔にひげまで書いてさ」
咲「バレバレだけど…でも、子どもに出来る精一杯でサンタになりきろうとしてくれてた」
咲「…それって、アレでしょ」
咲「私の夢を壊さない為にサンタになろうとしてくれてたんでしょ?」
京太郎「あー…まぁ、その…なんて言うかだな」
京太郎「そういう事も無きにしもあらずというか、そういう側面もあったと言うか…」
咲「…で、本当のところは?」
京太郎「…そのとおりだよ、チクショウ」
京太郎「多少、意地悪しようとは思ってたけど、泣くとまで思ってなかったんだ」
京太郎「でも、俺も当時はガキで…仲直りしようなんてすぐには言えなかったし…」
京太郎「だから、せめていないはずのサンタに変わって、咲を泣きやませてやろうと思ったんだよ」
咲「まぁ、バレバレだったけどね」
京太郎「ぐふ」
咲「しかも、プレゼントが食べかけのお菓子はないと思うな」
京太郎「それくらいしか咲が欲しがりそうなものが手元になかったんだよ…」
咲「……でもさ」
咲「私、その時からだよ」
京太郎「何が?」
咲「京ちゃんの事を好きになったの」
京太郎「ぶふっ!?」ゴホゴホッ
咲「あ、喉詰まった?」
咲「はい。お茶」
京太郎「あ、ありがとう…じゃ、なくって…お、お前…」
咲「ふふ。その顔見ると結構、効果的だったかな?」
京太郎「…思わずむせるくらいにはな」
咲「やったっ」ニコ
京太郎「この性悪娘め…」
咲「サンタを信じる純真な女の子をこんなに性悪にしたのはどこかのサンタさんだよ」
咲「ちゃんと責任取って欲しいな」
京太郎「まぁ…そのつもりで同棲までしてるけどさ」
京太郎「でもさー…どうしてなんだ?」
咲「ん?」
京太郎「俺も当時の事覚えてるけど…ぶっちゃけアレ、かなり格好悪いエピソードだろ」
京太郎「次の日にはお袋に激怒されて、照さんに心配されるほど大泣きしてたしさ」
咲「まぁ、確かに終わりはどうにもしまらないけどね」
咲「でも…当時の私にはすっごく嬉しかったんだ」
咲「意地悪な京ちゃんが、私の為にサンタさんになってくれるなんて思わなかったから」
咲「不器用なその優しさに…コロっとイっちゃったの」
京太郎「コロっと…ねぇ」
咲「今思えば、吊橋効果的なものもあったかなー」チラッ
京太郎「…じゃあ、今は?」
咲「…うーん…」ジィィ
京太郎「…」ドキドキ
咲「……ふふ。ちょっと不思議」
京太郎「ん?」
咲「今日がクリスマスだからか…京ちゃんの事がサンタさんに見えちゃう」クス
京太郎「それって…」
咲「…ねぇ、サンタさん」
咲「私、実は欲しいものあるんだけど」
京太郎「…あんまり高いものはダメだぞ」
京太郎「一応、今は結婚資金タメてる真っ最中なんだからさ」
咲「んー…大丈夫だよ」
咲「ざっと2000万くらいだし」
京太郎「ごめん。何処が大丈夫なのか分からない」
咲「もう…鈍いなぁ…」
咲「…だから……あの…さ」モジ
咲「あ…赤ちゃん、欲しいの」
京太郎「え?」
咲「実はね、その…来月で結婚資金目標額に届きそう…だからさ」
咲「も、もう…色々と我慢しなくても良いかなって…お、思ったり…思わなかったり…」モジモジ
京太郎「い、良いのか?」
咲「…もう。良いも悪いもないでしょ」
咲「サンタさんは今年一年、良い子にしてた私の願いを叶える義務があるんだから」
咲「…素敵な赤ちゃん…一緒に育ててくれるよね?」ニコ
京太郎「さ、咲っ!」ガバッ
咲「そぉい!」スパーン
京太郎「…いひゃい」
咲「だから、今は食事中だって言ってるでしょ」
京太郎「あ、あそこまで言っておいてお預け食らうなんて思わんわ!!」
咲「それは京ちゃんが下半身で物事を考えてるからでしょ」
咲「幾ら聖夜だって言ってもやることは一杯あるんだから」
咲「ちゃんとそういうのを終わらせてからです」
京太郎「…はーい」ショボン
咲「…………まぁ、でも」
京太郎「え?」
咲「…終わったら一杯、サービスしてあげるから…ね♥」ポソ
京太郎「~~~~~っ!」ゴクッ
クリスマスにイチャイチャする京咲が書きたかった
今でも反省はしていない(´・ω・`)電波が…電波が悪いんや…
ところでついさっきおもちバカと麻雀と召喚獣なる電波を受信したので、ギャグオンリーの息抜きはもうこっちにしようかなーっと
エロ主体の方はまだ全然、思いつきませんが(´・ω・`)
>咲「あ、京ちゃん、装ったげるね」
良妻を装ってるのか……。(戦慄)
よそったげるね(マジレス)
総合スレで和とそいとげるSSがまた紹介されてたから久々読んだけど泣けた
>>773
そりゃ社会人になった京ちゃんモテモテで、本当は家の中に監禁したい気持ちを必死にこらえてる咲ちゃんだからな!!!!
…ごめんなさい>>774の言う通り、変換ミスです(´・ω・`)
>>775
以前も言った気がするけど、アレ書いてた時の私は神が降りてたからな!!
それでもぶっちゃけ未だに名前があがるとは思ってなかったので、本当に嬉しいです
未だに泣けるほど気に入ってくださってありがとうございます
―― 世の中には決して相容れないものというのがある。
例えば、それは水と油。
例えば、それは犬と猿。
例えば、それは凡骨と社長。
―― 例えば、それは人と魔族。
その二種族は有史以来ずっと争い続けてきた。
魔族にとって人間は餌であり、人間にとって魔族は他に類を見ない敵対者であったから。
大層な大義名分もなく、ただただ生存の為に両者は戦い続けなければいけなかった。
幾つもの人間の国が滅び、何人もの『魔王』が『勇者』に倒され。
両者の血でどれほど大地を汚し、精霊達が嘆き悲しんでもその争いは終わらなかった。
―― これまでは。
「…どうしてだ…!?」
「どうして裏切った…!!」
問い詰めるようなその声を発したのは、金属鎧に身を包んだ壮年の男性だった。
その両手でトゥーハンドソードを構えたその姿にはまったく付け入る隙がない。
何処に攻撃を撃ちこんだとしても、その攻撃ごと叩き返すような豪剣の使い手。
それを対峙した相手に悟らせるほどの騎士は、今、まったくの余裕がなかった。
月光の下で剣を構えるその肩は呼吸と共に大きく上下している。
「…簡単だ。それがこの国が生き残る唯一の道だからだよ」
「生き残る道だと…!? この国を魔族に売り渡す事がか!!」
彼の目の前に居るのは、漆黒の外套に身を包んだ貴族風の男だった。
その金色の髪を風に靡かせながら平然と立つその男は、その手にショートソードを持っている。
何の変哲もないそれは、彼の持つトゥーハンドソードと比べれば、どうしても見劣りするはずであった。
この国の騎士団長である彼の愛剣には最上級の魔力付与<<エンチャント>>が掛けられ、並の鋼鉄ならバターのように切り裂くのだから。
「ふざけるのも大概にしろ!!」
「私は別にふざけてる訳じゃないんだがね」
瞬間、騎士は一歩、男へと踏み込み、その手に持った剣を思いっきり振るう。
横薙ぎになぎ払うようなそれはまったく手加減のない ―― 殺気混じりのものであった。
完全に相手を殺すつもりのそれは、しかし、あっさりと男の手にあるショートソードに防がれてしまう。
本来ならば一秒も経たずに叩き切れるはずのそれが、まったく切れる気配がない。
並桁外れた男の魔力によって常時コーティングされているその剣は、騎士にとっては最大の障害であった
「第一、この国には未来がないのは分かってるだろう?」
「それを何とかするのが俺や貴様の仕事だったんだろうが!!」
だからこそ、騎士は振るう。
その声と愛剣に怒りと悔しさと悲しみを乗せて。
何度も何度も空気を切り裂き、地面を抉り、魔力を飛ばす。
だが、その一つとして、男には届く事はない。
その身ひとつで成り上がり、今や団長とまで呼ばれるようになった実力者。
それがまるで素人同然にあしらわれるほど、目の前にいる男は別格だった。
「(くっそ…!強い…!!)」
二人の周りは元々、森であった。
だが、戦闘の余波で木々は倒れ、地面はめくれあがっている。
まるでその一帯だけ不毛の大地になったような光景は、騎士の実力を指し示している。
この国から逃亡を図る男を見つけ、部下と共に追撃している最中、男が反撃した回数は数えるほどしかなかったのだから。
「(これが三貴士…! <<剣>>の一族なのかよ!!)」
―― 三貴士。
それはこの国において、最も重要なポジションを占める3つの血統を指す。
王権を担う<<勾玉>>の一族、国防を任された<<剣>>の一族、神事を託された<<鏡>>の一族。
その3つの頂点に位置する彼らは、並の実力者では歯がたたない。
神の祝福を得た特別な人間 ―― <<勇者>>でなければ、相手をするのが難しいくらいだ。
ただの人間である騎士がここまで追いすがれているのも、男に積極的に攻撃する意図がないから。
もし真剣勝負であれば自分はもう真っ二つになっていたであろう事が騎士には良く分かっていた。
「それだけの力があるなら、この国だって護れただろう!!」
「…それは不可能だ。私程度なんて、世界には幾らでもいるとも」
それでも騎士には諦めるつもりなどなかった。
目の前の男は魔族を国に引き入れようとした反逆者だが、それ以前に親友なのだから。
騎士団に入った当初の辛い時期を二人で一緒に乗り越えてきた戦友だったのである。
それが道を踏み外そうとしていると言うのに、剣を降ろす訳にはいかない。
「(少なくとも…俺が動けているって事は、こいつが迷っている証拠なんだ…!!)」
既に彼らの周りには血を流して呻く兵士達が大地に横たわっていた。
その誰もが深手を負っているが、しかし、それは命に関わるようなものではない。
治療には時間が掛かるが、年月をかければ職務にも復帰できる傷だと騎士には分かっていた。
並ぶもののいない圧倒的な実力者だからこそ出来る絶妙な手加減。
それを自分に適用出来ないのは、ただそれが出来るほど実力差がないからではなく ――
「いい加減、諦めてくれないか? 幾ら私でも君相手に障害を残さない程度の傷で済ませられる自信がない」
「…ホント、人の自信を砕くのが得意な奴だな」
その気になれば、何時でも倒せるほどの実力差。
それでも尚、戦況が硬直しているのは、騎士を破滅させたくないと男が思っているからだ。
平民から剣一本で騎士団長まで上り詰めた彼の努力を、男は良く知っている。
そんな騎士から剣を取り上げるような怪我をさせてしまったら、どれほど嘆き悲しむ事になるか。
国を裏切ると決めた男でも、親友の人生を破滅させる覚悟を固める事は難しかった。
「それでも引くつもりはねぇよ」
「…どうしてだ?」
「そんなの決まってんだろ ―― 俺がお前の親友だからだ」
ハッキリと実力者を言い表す言葉に自信も砕かれたが、男は決してへこたれなかった。
親友との実力差に打ちのめされたのはこれが初めてではないのだから。
傷つきやすい十代ならばともかく、酸いも甘いも味わった30にもなって凹んだりはしない。
寧ろ、超常の存在めいた親友が、裏切っても尚、自身に情を示してくれるのが嬉しかった。
「俺はお前に罪を認めさせ、罰を受けさせる。そして、その上でお前と一緒にこの国を護る」
「……」
「俺は…そう決めたんだ。 だから…お前を…魔族のところになんて行かせやしねぇ! 絶対にここで止めてみせる…!」
その企てが露見し、国から追われる身となった親友が、幼い子どもと妻を連れて何処に逃げようとしているのか。
平民の出とは言え、それを一々、考えるほど、男は馬鹿ではなかった。
間違いなく男は協力者の ―― 魔族のところに行こうとしている。
その庇護を求めて人類の天敵に、人を食らうバケモノ達を頼ろうとしているのだ。
「(絶対に…ろくな事になるのは目に見えてる…!)」
確かに男は並桁外れた強さを持っている。
<<剣>>の一族と呼ばれるようになった所以でもある特殊な武器を持てば、一軍を相手にさえ戦えるだろう。
だが、それは決して世界最強を意味しない。
男の言った通り、その程度の実力者は ―― 『勇者』と呼ばれる者達は世界中に山程いるのだから。
その『勇者』達すら超える『魔王』が魔族を牛耳っている今、男の身の安全など保証されるはずがない。
家族と共にその人生を弄ばれ、最後には餌になってしまうのが目に見えていた。
「…君はホモか何かなのか? 流石の私もドン引きだぞ」
「ちげぇよ!!馬鹿!!」
だからこそ、男を行かすまいとする騎士の言葉に、男は一歩下がった。
ドン引きと言う言葉を身体全体で表現するようなその仕草に、騎士は思わず抗議の声をあげる。
確かに親友の事を大事に思ってはいるが、それはあくまでも友人としてのもの。
妻も子どももいる身で同性愛者扱いされるのは流石に我慢が出来ない。
「…まぁ、君の気持ちは分かった」
「本当か?」
「うむ。まぁ…君の嗜好がどうであれ、私は君の友人だとも」
「おい、ちょっと待て」
「だが、あくまでも一般論としてだが…その、同性愛は良くないぞ。 非生産的過ぎる」
「待てっつってんだろおおお!!」
分かって欲しいポイントが致命的にズレてしまっている。
そう訴えようにも、男は騎士の言う事をまったく聞こうとはしなかった。
自身が同性愛者である事を確定事項のようにして話を進めていく。
それにさらなる抗議をしようと男が声をあげた瞬間 ――
「……あ?」
―― ヒュンッ
音は遅れて彼のところに届いた。
それは男が振った剣の速度があまりにも早すぎたからである。
音の壁を容易く破って振るわれたそれには、魔力が乗っていた。
大量生産の消耗品で、彼の愛剣を幾度となく受け止めるほどの並桁外れた魔力。
それが剣戟と共に放たれた一撃に、騎士は最初、痛みさえ感じなかった。
「…ぐっ」
気づいた時には自身の身体に熱が周り、激痛が四肢から湧き上がる。
両手両足が動かさないよう腱を切られた身体は、その場に倒れ伏した。
まるで糸の切れた人形のように崩れ落ちた身体は、まったく言う事を聞いてはくれない。
幾度となく立ち上がれと命じても、それを実行に移す筋肉が無力化されてしまっていた。
「…気を抜いたな、親友」
「て…めえぇ…!」
それは回復魔法で治療出来るギリギリのラインだった。
多少、治療が遅れても問題なく復帰出来る程度の重症。
自身のコンディションからそれを悟った騎士はその口から悔しそうな声をあげる。
まるでコントのようなやり取りに一瞬、気を抜いた瞬間。
ほんの一秒にも満たない間に自身は四度切られ、無力化されてしまっていた。
「君の実力は大したものだが、騙されやすいのがネックだな。 精進し給えよ」
「くっそぉおお…!!」
上から目線のその言葉を彼は決して否定出来ない。
アレほど止めたいと願っていた相手に一瞬の隙を突かれてしまったのだから。
両者の距離は5m以上あり、近接と呼べる距離にはなかったとしても、言い訳など出来ない。
相手の実力を考えれば、この程度、出来てもおかしくはないと警戒してしかるべきだった。
――そう後悔の言葉を浮かべても、彼の身体は回復しない。
騎士は人並み以上の魔力を持つが、それは殆ど肉体強化にしか使っていないのだから。
その派生で血止めくらいは出来るものの、これほどの深手を回復出来たりはしない。
後詰の部隊が、衛生兵を連れてくるまで、一歩も動けないだろう。
「行くな…!行くなよ!!」
「…すまないな。 だが、私と君の道はもう分かたれた」
そんな騎士に対して、男はそっと背を向けた。
30人を超える騎士と団長を壊滅させた男には、もうこの場に留まる理由はないのだから。
寧ろ、先に行かせた妻子の無事が気になる今、早くこの場から移動した方が良い。
血を流して倒れ伏せる親友に心惹かれるものを感じながらも、男はゆっくりと歩き始め。
「…だが、一言だけ言うのであれば……君の言葉は本当に嬉しかった。 ありがとう、我が親友」
「やめろよ…! まるで…そんな…最後みたいに…!! 行くな…! 行くなって言ってるだろ…!!」
そのまま最後にポツリと漏らした男の言葉。
まるでもう二度と会う事はないのだとそう思わせるようなそれに、彼は喉を震わせる。
まだ無事な喉で何とか引き留めようとするそれに、しかし、男は躊躇する事はなかった。
そのショートソードを腰の鞘へと収めて ――
―― 瞬間、光が空から舞い降りた。
「…え?」
月夜の中、まるで太陽でも現れたような眩しさ。
それに騎士が呆然とした声を漏らすのは、それがあり得ない光景だったからではない。
寧ろ、彼は今までに何度となくその光景を見ていたのだから。
まるで天から光の柱が降りてくるようなそれ ―― 御使いの降臨を。
「…やれやれ。こっちが本命だったって事か」
「その通りです」
その光から現れたのは桃色の髪を持つ美しい少女。
何処か浮世離れしたその美しさは闇夜の中にあっても色褪せる事はなかった。
寧ろ、ピンクブロンドの髪を夜風に流すその美しさは、最高級の画家でさえ絵の中に閉じ込める事が出来ない。
神がかった美貌のまま地面に落ち立つ彼女は勿論、人間ではなかった。
「…て、天使様がどうして…ここに…!?」
―― 天使。
御使いとも呼ばれる彼らの証である純白の翼を、少女は背中から生やしていた。
その数は二対 ―― 4つ並んだそれは彼女が中位の天使である証。
そしてその美しい体に纏う蒼銀の鎧は、ヴァルキリー ―― 天使の中でも武勇に優れた種族である証左であった。
「勿論、彼を止める為です」
「で、ですが…!」
その容姿だけではなく強さまでも人間離れをしたヴァルキリーならば、男を止める事が出来る。
いや、ただ止めるだけではなく、その命をここで散らさせる事だって難しくないだろう。
それを理解しながらも騎士が声をあげてしまうのは、この期に及んでも親友に死んで欲しいとは思えないからだ。
だからこそ、騎士は自身が持ちうる権力とコネクションを総動員し、騎士団だけでの追撃を王族に容認させたのである。
「無論、私も国家のいざこざに深く関わるべきではないと分かっています。…ですが、今回のこれは非常時」
「彼らほどこの国の内情を知る人物を魔族に渡しては大変な事になります」
「そ、それは…」
しかし、それでも理性では分かっているのだ。
これは国家の一大事であり、是が非でも男を処分しなければいけないという事くらい。
だからこそ、騎士は天使の言葉を否定する事が出来ない。
徹頭徹尾、正しさに満ちた彼女の後ろで言葉を詰まらせてしまう。
「…本当にそれだけかな?」
「…それ以外に何があると?」
「いやいや、御使であるヴァルキリーが嘘を吐くとは思っちゃいないさ。ただ…」
「…ただ?」
「君は随分とうちの息子にご執心だったようだから、もしかしたら息子だけでも取り戻しに来たのかな?とね」
「っ」
瞬間、天使の頬が小さな反応を見せる。
眼を見張るほど美しい中に頑固さと冷静さを混じらせる天使が見せた初めての変化。
それは後ろで倒れ伏せる騎士には見えないものだったが、目の前の男にはハッキリと見て取れた。
「…貴方も、そしてその罪を知りながらも黙っていた貴方の細君も大罪人です。…ですが、貴方の息子には罪はありません」
「彼の血筋はこの国にとっても重要なものですし、貴方のように道を誤らぬよう神殿で大事に育てられる事になるでしょう」
「…そして君好みの男に育て上げると?」
「…あまりその手の侮辱は好きではありませんね」
そんな男にとって、天使の言葉は取り繕ろおうとしているようにしか聞こえなかった。
無論、その声は平坦ではあるが、その中には微かな後ろ暗さが見え隠れしている。
それは勿論、彼女自身、男の言葉を心から否定する事が出来ないからだ。
寧ろ、自身の存在意義を思えばどうしてもそうなってしまうのは今からでも目に見えている。
「いやいや、私に侮辱しているつもりはないんだ。 ただ、オネショタと言うのもたまには良いものだと」
「死になさい!!」
―― ズドンッ
それを茶化そうとする男に、天使は一瞬たりとも容赦しなかった。
瞬間、怒号のような声と共に、右手から白色の光を放つ。
一切の詠唱と集中を廃したその神聖魔法は、人間の術者が詠唱して放つものよりもずっと強力だった。
魔族ならばともかく普通の人間相手に使えば、肉片しか残らないほどに。
「…未来の義父として忠告しておくが、あまりヒステリックだと息子に嫌われるぞ」
「…相変わらず巫山戯た魔力耐性ですね」
しかし、その魔法に直撃しても、男の身体に傷一つついてはいなかった。
湧き上がった土煙で多少、服が汚れているものの、あくまでもそれだけ。
天使の中でも戦闘を得手とする種族の魔法でさえ、ほぼ無力化してみせる絶対的な耐性。
それこそが<<剣>>の一族が持つ一番の特徴であった。
「やはり剣で勝負するしかありませんか」
「まったく…思い込みが激しすぎて、今からでも息子の未来が心配だな」
無論、天使である彼女が本気で魔法を使えば、男に傷をつけるのは決して不可能ではない。
だが、それほどまで強力な魔法を使ってしまえば、周囲に倒れ伏せる騎士達も巻き込んでしまうのだ。
仮にも人類に守護を与えるヴァルキリーとしては、それは決して本意ではない。
<<剣>>の一族と呼ばれ、その技を磨き続けた血統を相手に近接で戦う不安はあるが ――
「(…今の彼に<<剣>>はありません)」
<<剣>>の一族が扱う特殊な武器は、今も首都の神殿に安置されている。
数百世代掛けて磨き続けたその技を、今の男は十全に発揮する事が出来ない。
対して、天使は常にその身に最高の装備を身に纏っている状態である。
幾ら男が並桁外れた実力を持っていようと、圧倒的に彼女の方が有利だ。
「男の立場で言わせて貰えれば、ヤンデレなんて恐ろしいだけだぞ」
「その減らず口もいい加減、閉じてもらいましょう」
だからこそ、天使は男の言葉にも心惑わされる事なく、その手に持った剣を突きつける。
黄金色に輝く十字を象ったそれは、騎士が持つそれの何倍も強力な武器だった。
幾ら男の魔力が並桁外れていようとも、それと打ち合えば無事ではすまない。
両者のスペックはかなり近しいが、武具の差は絶望的を通り越して馬鹿らしいくらいだった。
「(…さて、どうするかな)」
それでも男は決して諦めるつもりはなかった。
彼の後ろには自身の帰りを待つ妻子がいるのだから。
自身の企みの所為で、お尋ね者になってしまった彼らの事を放って死ぬ訳にはいかない。
どれほど絶望的な戦いであったとしても、必ず生きて戻らなければ。
「それでは…いきます!!」
「ッ!!」
しかし、その方法を考える暇を天使は与えてはくれなかった。
その手に持った剣を光らせながら、自身へと大きく踏み込んでくる。
瞬間、放たれた剣戟は、彼の外套を切り裂いた。
その動きを見て咄嗟に回避したものの、それは完全に間に合ってはいなかったのである。
「ま…だまだあ!」
「く…っ!」
無論、天使の攻撃はそれだけでは終わらない。
ロングソードほどの剣を片手で軽々と振るいながら男の事を追い詰めていく。
その動きに合わせて周囲から再び木々が倒れていくが、今の彼にはそれを確かめる余裕はなかった。
一瞬でも気を抜いたらあっという間に真っ二つにされる攻撃が休まず続いているのだから。
「(それでも無理矢理、こっちのペースに持ち込もうとしたら…!)」
それでも何とか隙を作ろうと男も攻勢に転じようとする。
だが、男の持つ剣はどれだけ魔力で強化しようとも大量生産の粗悪品なのだ。
文字通り神の加護を受けた武具を貫くには威力が足りなさ過ぎる。
それでも可動部を狙って攻撃を繰り返すが、それは同じ技量を持つ天使にはお見通しであった。
もう片方の手で持った大型の盾によって、その尽くは阻まれてしまう。
「はぁ…はぁ…」
結果、防戦一方となるしかない男は、何時しか崖へと追い詰められていた。
この国に中央に流れる大きな川が流れているものの、それは数百メートルほど下。
その先には滝まである事を思えば、絶対に落ちる訳にはいかない。
そう思いながらも男は前に出る事が出来なかった。
「…知らない仲ではありません。 最後に私の疑問に応えてくれれば、苦しまずに天へと送ってあげましょう」
「笑えない冗談だね、まったく…」
それは勿論、彼の前を塞ぐようにして天使が立っているからだ。
無論、その身体には傷ひとつなく、呼吸もまったく乱れてはいない。
一撃一撃が必殺と言っても良い男は大きく避けなければいけないが、天使の方は最小限の動きで攻撃を防げるのだから。
幾ら元々の身体能力が近くても、二人が消費する体力には大きな開きがあった。
「彼は何処にいますか?」
「…それを私が応えるとでも?」
それでも男は妻子の居場所を口にしたりはしなかった。
ほぼ政略結婚ではあったが、男は貞淑に自分だけを愛してくれた妻のことを愛している。
そんな妻との間に出来た一人息子もまた溺愛しており、例え命と引き換えであっても口を割るつもりはなかった。
「そうですか。 …残念です」
瞬間、天使が漏らした言葉は決して嘘ではなかった。
飄々としたところが目立つものの、彼女は決して男の事が嫌いではなかったのだから。
寧ろ、天使が執着する『彼』の父親として、それなりに高い評価を与えていた。
そんな相手を自身の手で斬らなければいけない。
それに胸が小さな痛みを覚えるが、彼女はその手から剣を手放す事はなかった。
「(…彼はこの国の…ひいては世界の秩序を乱そうとした大罪人です。 情けを掛ける必要なんてありません)」
「では…最後に全力を持ってして決着とさせて頂きます」
そう自分に言い聞かせながら天使はゆっくりとその構えを変えた。
今まで片手で持っていた剣を両手で持ち、まっすぐに構えてみせる。
正眼に似たその構えからは、隙のなさだけではなく、魔力の高まりが伝わってきていた。
周囲の空気が震えているようにも感じるその莫大な魔力は、全て彼女自身の強化に使われていく。
次の一撃は絶対に外したりしない。
文字通り、トドメを刺す為のそれに男の背筋は冷たくなり ――
「…覇ぁあっ!!」
「っ!」
―― 烈号と共に放たれた一撃は、振り下ろしだった。
踏み込みと同時に上から下へ ―― 地面に当たる事も厭わず振られたそれは必殺の一言に尽きる。
歴戦の勇士である男でさえ、無駄だと分かっていても思わず剣で防御しようとしてしまうほどに。
だが、その剣では通常時の剣戟でさえ受け止める事が出来ないのだ。
さっきまで以上の速度でもって振るわれたそれを止められるはずがなく、パキンと虚しい音と共に砕けて。
「あ…」
そのまま振り下ろされた刃は男の身体を深く切り裂く。
肩から下半身までをまっすぐに開いたその傷は、一気に血を吹き出させた。
ブシュウと言う音すら聞こえるほどのそれに、男が短く声をあげる。
瞬間、その地面に突き刺さった剣が周囲の地面を粉々にしていき ――
―― その崩落から逃れる術は男にはなかった。
その身体に刻み込まれた傷は即死ではなくとも致命傷と言っても良いものだったのだから。
膝から地面へと崩れ落ちた身体は、そのまま石や土と共に重力へと惹かれていく。
今の男にはもうそれに叫び声をあげる余力すらない。
ただ空に真っ赤な線を描き続ける男は、数秒後、ドボンと言う音と共に川の中へと消えていった。
「(……これで良いんです。 これで…)」
自身の中の迷いが原因か、或いは相手の防御に目測を誤ったのか。
真っ二つになるはずであった男に、完全なトドメを刺す事は出来なかった。
しかし、完全な致命傷を与えた上、下は川。
未だに浮かび上がってくる気配もない事を思えば、そのまま溺れ死んでもおかしくはない。
痛みが強くなった胸にそう言い聞かせながら、天使はそっと視線を外して。
「……天使様!!」
「…今、終わりました」
「そ、そんな…じゃあ…」
「……」
そこで天使に追いついたのは他でもない男の親友であった。
少し遅れて辿り着いた後続に応急処置だけして貰った彼は、戦闘音を頼りにここまでやってきたのである。
しかし、それは幸か不幸か一歩遅く、ただ戦闘の結果を聞かされるだけとなった。
その絶望に騎士は顔を歪ませる。
「(…こういう時、どうしたら良いんでしょう)」
今にもその場に崩れ落ちそうなほど絶望した男に、天使は何を言えば良いのか分からない。
致し方なかった事とは言え、自身が彼の親友を殺したのは事実だったのだから。
ましてや、天使は人付き合いが苦手なタイプであり、若干の世間知らずでもあるのだから。
下手な慰めは騎士を追い詰めるだけだと分かっているものの、最適な言葉を見つける事が出来ない。
「(…これでは彼に呆れられてしまいますね)」
瞬間、天使の心の中に浮かぶのは、輝かんばかりの金髪を持った一人の少年だ。
ついさっき自身で殺した男の一人息子であるその少年は、彼女にとって唯一無二と言っても良い。
そんな相手の顔は普段ならば、天使の心を暖かくしてくれるものだった。
だが、今の彼女にとって、その呆れ顔は胸の痛みを強くするだけだったのである。
「(…いえ、彼の父親を殺した時点で…恨まれるのが当然でしょう)」
彼女の知る少年は、とても家族想いだった。
年頃であるが故に生意気な口を利く事はあるが、それも愛情の裏返し。
一人息子である自分に沢山の愛情を注いでくれる父母の事を、少年もまた愛していた。
そんな少年から父を奪ったのが自分なのだから、呆れられるどころか嫌われてしまう。
瞬間、浮かんできたその言葉に天使はそっと自身の胸を抑えた。
「……では、私は残り二名の捜索指揮に戻ります」
「え…」
まるで張り裂けそうな胸の痛みを何とか抑えようとするようなその仕草に、騎士は気づかなかった。
彼の胸には今、親友が死んでしまったと言う事実が重くのしかかっているのだから。
本来ならばそのまま涙の一つでも流してしまいたい。
しかし、それでもこうして指揮に戻ろうとするのは、男の遺した妻子の行方が重要だからだ。
せめて彼らだけでも魔族の手に渡る前に保護しなければ。
その一身で動こうとする彼は、天使の返事も聞かず、仲間の元へと戻っていった。
「(…………彼は強いですね)」
本来ならば悲しみに嘆きたいだろうに、恨み言の一つも言いたいだろうに。
それを堪えて、自身のやるべき事に向きあおうとする騎士の姿に、天使は眩しいものを感じた。
自身の持つ神性よりもずっと強いその眩しさに、天使もゆっくりと顔をあげる。
誰よりも一番辛いであろう騎士が、やるべき事をやろうとしているのだ。
自分も自己嫌悪に呑まれ立ち止まっている場合ではない。
そう自分に言い聞かせながら天使はその翼を広げて ――
「(…京太郎君、今、私が行きますから)」
………
……
…
「……あれ?」
「どうしたの、京太郎」
「今、なんかさ、和の声がした気がしたんだ」
「和って…またそんな名前で天使様の事を呼んで」
「別にいいじゃん。 俺らにとっては和名の方が親しみやすいしさ」
「それにノドゥなんとかって名前よりもこっちのが可愛いし、天使的じゃん」
「天使的かしら?」
「だって、平和の和だぜ?超格好良くね?」
「…いい名前だとは思うけれど、格好良いとは思わないかしら」
「まったく…かーちゃんってば遅れてるなぁ」
「遅れてるのは京太郎の方でしょ」
「今日中にこの山乗り越えて隣の国に行かなきゃ大変な事になるんだから」
「はーい。…でもさ」
「どうかしたの?」
「…親父、大丈夫かな?」
「大丈夫よ。あの人はとても強い人だもの」
「心も身体も…信じられないほど強くて逞しい人」
「だから、きっと私たちに追いついてくれるわ」
「…………ったく、息子の前で惚気けるなよな」
「ふふ。だって、私はあの人の妻だもの」
「息子の前でだっていくらでも惚気けてあげるわよ」
「はいはい。ホント、両親が仲良しで俺は幸せもんですよ」
「…あら、もしかして妬いてるの?」
「ばっ!?ん、んな訳ないだろ!!」
「ふふ。久しぶりに添い寝でもしてあげましょうか!!」
「い、いらねーよ!ババアの添い寝なんざこっちから願い下げだよ!!」
「あらあら…本当に可愛げのない子に育っちゃって」
「あの人の子どもの頃もこんな風だったのかしらね」クス
………
……
…
「…しっかし…最近は何処もかしこも羽振りが悪いな」
「あの教団様でさえ、最近は金を出し渋る事が多くなったとはねぇ…」
「かつては世界の大半を支配してたって言っても、今は大分、魔族側に押されてるからな」
「度重なる出兵によって戦費が嵩んでるって話だ」
「実際、今は戦争特需みたいなもんだからなぁ…」
「戦争に使う武器から必需品まで何でも飛ぶように売れるから相場も崩壊気味だし」
「この時代で笑ってるのは商人か、或いは通行税で稼げる国くらいだろうよ」
「いや、そういう訳ではなくなってきてるかもしれないぜ」
「ん?」
「俺も聞いた話なんだけどさ…何でも教団が増える出費に対応する為、幾つかの国を取り押さえる計画を練ってるらしい」
「取り押さえって…あいつら殆どの国を掌握してるようなもんだろ」
「それでもまだ足りないって事だよ」
「噂じゃあ、自前の騎士団まで出して傀儡国家を作ろうとしてるって話だ」
「正気かよ…今は人類同士で内ゲバやってる場合じゃねぇってのに」
「正気なら勝ち目の薄い戦いを何十回もやっちゃいねぇさ」
「ま、ともかく、今は交通の要所や、鉄の産出国なんかには近づかない方が良いと思うぜ」
「もしかしたら運悪く教団の内ゲバに巻き込まれて死亡…」
「良くても全財産没収なんて事もあり得るからな」
「戦争で儲けるなら大歓迎だが、戦争で身ぐるみ剥がされるのはごめんだもんな」
「肝に命じておくぜ」
「……つー訳で、最近、教団内部も色々ときな臭いらしいぜ」
「まったく…これだから人間はやだねー」
「ちょっと追い込まれると色々と見境なくなっちゃうんだから」
「それで自分たちが正義側だなんて思ってるんだから、ホントやんなっちゃうよ」
「こっちはしっぽりぬふふで気持ち良い事ばっかりだし、あっちよりも文化的な生活してるってのにさー」
「まぁ、言っちゃ悪いが、未だに魔物が人を食うって信じてる人も多いしな」
「ぶー。今はもう魔物じゃなくて、魔物娘ですー」
「ぴっちぴちの可愛い子ばっかりだし、人も性的な意味でしか食べませんー」
「昔と一緒にされるのは甚だ不愉快であり、遺憾の意を表明する所存であります」
「はいはい。こちらも謝罪の意を表明したく思っておりますよ」
「表明だけー?」
「…そっち帰ったら、ケーキの一つでも奢ってやる」
「やった! 私、マミーヤのケーキが良いな!!」
「ってお前、またそんな人気店のを…」
「えへへ、だってあそこのケーキ、大好きなんだもん」
「まぁ…俺も好きだけどさ」
「それで、そっち的にはどうなの?」
「どうって?」
「だって、聞いてた話、故郷の聖王国リッツとか言うのも教団に狙われてるんでしょ?」
「…まぁ、そうだな」
「里帰りの真っ最中に戦争に巻き込まれるとかヤバくない?」
「うん…ぶっちゃけヤバい」
「…………ヤバいって思うならもう帰っておいでよ」
「こっちは戦争とかないよ?」
「毎日、グチュグチュヌルヌルで気持ち良い事ばっかだしさ」
「追い出された国に戻る必要とかないじゃん」
「…………まぁ、それはそうなんだけどさ」
「…でも、やっぱ…俺にとってリッツは故郷なんだよ」
「それを教団の奴らに好き放題されたくない」
「…………はぁ、やれやれ」
「ホント、こうと決めたら、そう簡単に曲げないんだから」
「こっちがそれでどれだけ心配するとか、お構いなしだよね」
「悪いな」
「悪いと思ってるなら…ちゃんとマミーヤのケーキ奢ってよね」
「帰ってこれませんでした…なんてそんなの絶対、許さないから」
「…あぁ。分かってる」
「ん。じゃあ…超絶美少女な完璧系幼なじみの私がアドバイスをあげやう」
「…完璧かどうかはともかく、アドバイスは聞こうか」
「素直じゃないなー…ってそれはさておき」
「そっちも知ってると思うけど、基本的に私達 ―― 魔物は同族意識が強いです」
「魔物なんて根絶やしにしちゃえーな教団が、魔物らいしゅきいい♥な親魔物領を滅ぼせないのはそれが理由」
「下手に叩いた瞬間、魔物があっちこっちからやってきて大暴れしちゃうし、魔王軍の遠征までやってくる」
「でも、それは親魔物領であれば、の話」
「私たちは同族意識が強いけど、個人主義な子も多いから、繋がりがまったくなければスルーしちゃう」
「少なくとも、親魔物領でもない国を積極的に助けに行こうとする子はまずいないよ」
「だから…」
「…だから、リッツを親魔物領にしちゃえと?」
「いぐさくとりー!! その通りでございます!!」
「…いや、お前、そう簡単に言うけどさ」
「別にそう難しい事じゃないよ」
「何も他の親魔物領みたく、魔物ちゃんがいなきゃらめなのおおっ♥みたいに堕とせとは言わないし」
「王族の子に『親魔物領になっちゃおうかな?(チラッチラッ)』って言わせるだけで十分、効果はあるよ」
「少なくとも、これから親魔物領に転じようとしてる国を、魔王さまは絶対に見捨てられないしね」
「そりゃ有り難い話ではあるけどさ…」
「でも、聖王国って銘打ってるだけあって、リッツはガチガチの魔物排斥派だぞ」
「建国神話からして魔物を倒して神様が国を作ったって言われてるくらいだし」
「それを転向させるのはかなり難しいと思うんだが」
「その辺はそっちの腕の見せどころでしょー?」
「昔は良いところのお坊ちゃんだったんだから、ある程度は内部事情も知ってるだろうし」
「裏社会で上り詰めるもよし、教団とのきな臭さから傭兵として潜り込むも良し、商人として影響力を発揮するもよし」
「もう十年以上経って、顔も忘れられてるだろうし、好きなように動けるでしょ」
「まぁ…そうだけどさ」
「それも嫌なら素直に戻って来れば良いんじゃない?」
「私は何時でも歓迎するよ」
「…………いや、折角だけど、帰るのはもうちょい先延ばしにするわ」
「こんな事お前に言っちゃ笑われるかもしれないけどさ」
「俺が里帰りするってタイミングで、教団と故郷がきな臭くなってるって…何かの運命めいたものを感じるんだよ」
「だから、ここで何も行動しないと、それこそ一生、後悔しそうだ」
「……そっか」
「残念ながら私は遠い魔界で応援しか出来ないけれど…」
「いや、それだけでも十分ありがたいよ。ありがとうな」
「ん。…あ、ごめん。そろそろ時間だ」
「いや、こっちこそ悪いな。ちょっと通信し過ぎた」
「あはは。それだけ楽しかったって事で許してあげる」
「じゃあ、私はそろそろ寝るけど…あんまり無理しちゃダメだよ」
「もし死んじゃったらアンデッドにしてでも連れ帰るからね」
「…怖い事言うなよな」
「ふふ。それが嫌ならちゃんと五体満足で帰ってくる事」
「……私、京太郎の事待ってるからね」
「…あぁ。必ず帰るから安心して待っててくれ」
「…その言葉、信じてるからね」
「それじゃまた明日っ」
「おう。また明日な」プツ
「…………さて、それじゃ」
【咲×魔物娘図鑑】京太郎「聖王国を親魔物領へと変える仕事を始めよう」【安価・エロあり】
正月から始める息抜きスレ予告編その1(´・ω・`)
起きてからぶっ通しで30kも書いてる辺り、また何かが憑いてるのかもしれない
それはさておき、こっちはエロ主体の安価スレです
最初に京ちゃんのステータスや特性なんかを決めて、聖王国リッツに潜り込み、
内部から親魔物領へと変えていくのが目的です
悪役ロールやゲスロールも捗るスレになればいいかなーっとか考えてます
システム的には一週に一回ずつ行動して、一年でリッツを堕とせ、みたいな感じになるかと(´・ω・`)具体的なシステム?未定だよ
のどっちをどう堕とすかが鍵だな……まぁひとつしか方法思いつかないけど
>>805で母さん叫んでるのは別に誤字とかではないのかな?ちょっと笑ってしまった
とりあえずなんだ、長い
女王・立を墜とせば完了かな?
>一年でリッツを堕とせ
現実世界での時間かな?(すっとぼけ
でもこれ、魔物サイドの人間(京太郎)が人間側のリッツを堕としていくことになるから、魔物娘がヒロインになる余地がないんじゃないか…?
とりあえず超絶幼なじみちゃんが誰なのかが気になります
SWスレも待ってる
○んぽっぽ焼きスレも待ってるよ!
乙。またいろんな企画が。
魔物娘は大好きだけど魔物化はorz
システムねぇ...。設定に矛盾しないよう考えるなら
1、怪盗として一族の力を引き出す剣を盗んだり、他の一族の姫を身も心も盗んで魔物化することで実力的にも政治的にも実権を握って支配する。
2、商売人として財力を手にし、土地や勢力を金で買うことで国王も安易には処断できないような人間になって、国王に進言してそれを受け入れさせる。
3、魔物を秘密裏に引き入れ、正体を隠しながら魔物の力で悪人達から国民を守り、国全体の魔物に対しての認識を改めさせる。
4、魔物に対しての考え方を同調させられる国王の側近を勢力拡大させて、国王を変える。
5、魔物軍を呼び、内側と外側のダブルアタックで国を滅ぼして自分が王になる。
6、国王を魔物化させる。
の6つしか思い付かんが、真っ当なのが3かギリギリ2くらいというね。
危険度高けりゃ高いだけ手っ取り早くて安全であればあるほど面倒くさいのは現実的だと思うが、どうだろう?
>>813
個人的にはここでのどっちに見つかり、父親からも母親からも引き離されるんだけど
それを苦に思った和ママに有り余るほどの愛情を注いでもらい、過保護に育った京ちゃんとかも書いてみたいです(´・ω・`)勿論、最後は和ママのエロ堕ちで
叫んでるのは誤字なんですけど、京ちゃんのテンションに付き合って叫んだとかでも良い気がする(´・ω・`)多分、おちゃめな良いママンなんでしょう
>>814
下敷きがあるとは言え、完全に異世界ネタですし、世界観説明からストーリーの取っ掛かりまで説明しようとするとどうしても長く…(´・ω・`)ゴメンナサイ
>>816
流石にリアル人物を女王に据えるのはアレなので、女王は姫様のつもりです
>>817
魔物娘の時にも同じこと言ってたような気がしますが、今度こそ一ヶ月で終わらせるから…(震え声)
>>818
超絶幼なじみちゃんは名前無しのモブキャラでいこうかなーと
リッツ攻略できなかった時の為のヒロイン的な(´・ω・`)
>>823>>824
なんぽっぽスレもSWスレも選んでもらえたらやるよ!!!
>>825
今回は多分、それほど魔物化要素多くはないかと
堕ちたとしても基本は人間の姿で生活する事になりますし
堕とす手段にもよりますが、ヒロインは基本的にサキュバスになるのが多いと思うので
>>826
大体、その辺りが攻略ルートになりますねー
それぞれ一週間に一度、大体の方針を決めて、そのとおりに京ちゃんや仲間に動いてもらう形になるかなーと思ってます
個人的に悩んでいるのは、何を持ってして攻略終了とするかって言う点ですね
一応、それなりにエンディングは考えてますが、侵食度とか数字として見えた方が皆さんも妄想の余地が働くと思うので…
何をすればどんな風に数字が変化するとかそういうのを詰めていきたいなーと
まぁ、その前に選ばれるかどうかわかんないんですけどね(´・ω・`)選ばれたら残り一週間くらいでシステムつめて1月2日辺りからやってきたいなーと
―― 世の中には絶対普遍のルールと言うものがある。
多くの人はまず真っ先に物理法則を挙げるだろう。
世界の動きをミクロからマクロまで説明するそれは今の人類には決して手放せないものだ。
或いは、自分の中の常識を挙げる人もいるかもしれない。
ごく一般的な人にとって自分の中の『常識』とは価値観の根底に根ざすものなのだから。
それを普遍と信じたい気持ちは俺にも分かる。
「そんなルールをこの石版は自由に決める事が出来るんだよ!!!!1111」
京太郎「そーなのかー」
……だが、それを自由に決める事が出来る、なんて言うのはあまりにも眉唾が過ぎる。
確かに俺の親父は考古学者で、人並み以上にオカルトの知識なんかを持っているだろう。
しかし、だからと言って親父のお土産が『本物』だった事など一度もないのだ。
まぁ、そもそも親父が持って帰ってくるお土産なんて、大抵がそこらの露天で買った珍しいお守りなのだけれど。
「なんだよーノリが悪いなぁ」
京太郎「だって、これもどうせ露天で買ったんだろ?」
「あぁ。何ともミステリアスな美女から是非に、と言われてな」
京太郎「…母さんが怒るぞ」
「大丈夫だ。母さんは控えめな女だからな」
「ちゃんと後で可愛がってやれば機嫌も治してくれるよ」
…ったく、本当にこの夫婦は。
息子の前で惚気けるな、とは言わないが、そういうネタをもうちょっと自重しようとは思わないもんかな。
まぁ、夫婦仲が険悪になってるよりはマシだろうけれど…こっちは一応、色々と微妙な時期なんだぞ。
確かに親父も母さんも外見的には20代から殆ど変わってないが、『可愛がる』ところを想像したくはない。
「まぁ、それはともかく、今はこっちの石版だ」
「さっきはああいったが、俺も流石に世界のルールを決めるなんて話を信じちゃいない」
「まぁ、完全に否定するつもりはないんだが、精々が何処かの部族で使われていた法律発行用の石版だろうとな」
京太郎「…もしそうだとしたらこれ結構、重要な史料なんじゃね?」
それが本当なら割りと重要な発見じゃなかろうか。
考古学ならばともかく民俗学的には喉から手が出るほど欲しい一品だと思うのだけれど。
幾ら半年ぶりに出会った息子へのお土産とは言え、軽くプレゼントして良いものではないはずだ。
「いや、一応、何人か知り合いの学者にも尋ねてみたが、適当に作った石版だろうとさ」
「少なくとも、あの周辺の部族に石版で法律を発行するような習慣を持っていたものはいないらしいし…」
「世界中の何処を見渡しても、この石版に刻み込まえれている模様を使う部族はいなかったそうだ」
京太郎「へぇ…」
なんだ、一応、その辺りはちゃんと調べてから持ってきてくれてるのか。
それなら安心…は出来るんだけど、ちょっと微妙な気分と言うか。
親父には他意はないんだろうけれど、結果的に何の価値もないゴミを押し付けられている訳で。
ネットでは嫌なお土産、略してイヤゲモノなんて言葉があるが、確かにこれはイヤゲモノだと思う。
「まぁ、偽物だとしてもロマンは感じるだろう?」
「どうだ。お前の部屋のアクセントにでも置いてみては」
京太郎「…いや、流石にこんな石版が置いてある部屋はちょっとどうかなぁ」
石版のサイズは縦に120cm、横に80cmほど。
材質が何なのかは分からないが、黒鉛のような表面に文字が刻み込まれている。
一体、いつごろ作られたのかは分からないが、表面には傷一つないし、こうして見る限り新品同然だ。
…………しかし、だからと言って部屋に置く気がしないのは、その自己主張があまりにも大きすぎる所為だろう。
完全に洋風かつ男子高校生風の部屋には、その石版は異物過ぎる。
「…そうか。まぁ、確かに勢い任せで買ってしまった事は否定出来ないしな…」
「これは俺の部屋の物置にでも突っ込んでおく事にするよ…」シュン
京太郎「あー…」
…でもなぁ。
でも…半年ぶりに帰ってきた親父が、意気揚々と俺にプレゼントしてくれたものなのは確かなんだ。
それをこうして無碍にされたら、そりゃ落ち込むのも当然だろう。
…まぁ、もう30超えた男がそんなしょげかえった顔をするなと言いたい気持ちはあるが、メンタルが弱い以外は割りと立派な親父ではあるし。
ここは親父の顔を立てる為にも、素直に受け取っておくほうが良いだろう。
京太郎「…いや、折角だから貰うよ」
「…良いのか?」
京太郎「あぁ。ちょうど、漬物石になるものが欲しかったからな」
「そうか!」
…いや、どんな嘘だよ。
確かに最近、タコス作りを勉強し始めたが、いくらなんでも漬物はねぇって。
……そう胸中でツッコミを入れる自分はいるけど…でも、他の理由なんて特に思いつかないし。
少なくとも目の前で嬉しそうにしてる親父には疑われていないみたいだし、良しとしよう。
「じゃあ、これは今からお前のものだ!」スッ
「適当に自分の目標を書き込むなり、古代のロマンを感じて悦に浸るなり好きにしてくれ!」
京太郎「はいはい」
…って勢い任せに受け取ったけど、この石版案外軽いな。
大きさ的には10kgを超える事も予想してたんだが、まったく重くない。
つーか、殆ど重さなんて感じないくらいだ。
…これ書いてる内容よりも何で作られてるかって方が大事なんじゃないかな。
京太郎「(まぁ、流石にその辺は親父も理解してるだろうし)」
母さんと一緒に殆ど家を開けていて、たまーにしか帰ってこないとは言え、親父は立派な学者だ。
もう30半ばを超えていてもその身体に衰えはなく、また頭もバリバリに切れている。
未だに世界有数の考古学者として名前のあがる親父が、俺でも気づくような事に気づけないとは思えないし。
親父が何も言わなかったって事は、その辺の調べもとっくの昔についているんだろう。
京太郎「んじゃ、俺はこれを下手に持っていくついでに寝るわ」
「あぁ。明日も学校だもんな」
「話に付き合ってくれてありがとう」
京太郎「良いよ。久しぶりの家族団らんも楽しかったしさ」
ま、俺にとって重要な事は石版の材質よりも、明日の学校だわな。
高校に入ってから勉強もぐっとレベルアップしやがったが、それ以上にインターハイが近いんだから。
あいつらがインターハイに向けて集中出来るようにもっともっと精進しなければいけない。
まぁ、所詮、麻雀部だし、何より女の子ばっかりの中、男の俺に出来る事なんてたかが知れてる訳だけど ――
京太郎「(せめてタコスくらい作れるようになっとかなきゃ…っと)」フゥ
ようやくついたか。
幾ら軽いつっても、コイツ結構大きいからなぁ。
リビングからここまで運ぶのも思ったより大変だった。
流石に元運動部だから疲れてるって程じゃないが、それでもため息が漏れでてしまう程度には。
京太郎「(…しっかし、世界のルールを決める…ねぇ)」
……もし、それが本当ならそれこそ世界中の美女に俺がモテモテ!とかそんなルールも決められるんだろうか。
いや、それだとおっぱいの小さい女の子にまで好かれちゃうし、やはりもうちょっと絞るべきだな。
範囲もそうだが時期も曖昧にして、途中で効果が切れたりするのも怖いし…。
俺が書き込むとしたら、やはり、おっぱいの大きい綺麗な女性に一生、好かれ続ける…ってところか。
京太郎「(…まぁ、書かないけどさ)」
ちょっとテンション上がりこそしたものの、これは本物な訳ないしなぁ。
本物ならちょっと…いや、かなり心惹かれるけど、学者である親父が偽物だと断定してる訳だし。
そんなものに欲望混じりのルールを書き込んでるのを見られたら、流石にダメージがでかすぎる。
正直、黒歴史なんて言葉では足りないくらいだ。
京太郎「(…でも、なんか書いとかないと勿体無いよなぁ)」
俺の目の前にある石版はほぼ白紙の状態だ。
俺の知らない言語で上の方に何かしら刻み込まれてしまっているだけ。
そんな石版をそのまま部屋に放置しておくと言うのは流石に勿体無い。
親父が家にいる期間中くらいは部屋の中に置いておいてやりたいし…何か書き込んでおいた方が親父も喜ぶだろう。
京太郎「(…ってそう言えば)」
…丁度、今日、女の子から相談を受けてたっけ。
確か嫁田が好きなんだけど、どうして近づけば良いのか分からないって話だったか。
とりあえず当り障りのないアドバイスをして彼女も納得してくれたけど…流石にそれだけで終わるのも可哀想だしな。
後でそれとなく二人が接近出来るようアシストしてやるつもりだったけれど…。
京太郎「(…うん。折角だし、それを書いておいてあげようか)」
友人とまでは言わないが、クラスメイトの背中を後押しする内容なんだ。
幾ら他人に見られたところで恥ずかしくはないだろう。
ただ…流石に個人名をあげるのは色々とプライバシーの問題もあるからな。
ここはさっきとは別に範囲を大きく広げておくべきだろう。
京太郎「(女が男に対して積極的になりますように…っと)」キュッキュ
……ぶっちゃけ、あの子、スレンダーだったけどかなりの美少女だったからな。
あんな子に積極的になられたら、嫁田だってコロっと堕ちちゃうだろう。
そもそもあいつも俺と同じで年齢=彼女いない歴な訳で。
日頃から彼女欲しいと漏らしてるあいつを堕とすには積極的になるので十分だ。
京太郎「(まぁ、マジックで書いたおまじないみたいだから効果があるとは…)」
―― パァァ
京太郎「…え?」
……いや、ちょっと待て。
なんでこの石版、光ってるんだ!?
つ、つーか…さっき俺がマジックで書き込んだ内容が消えて…中に刻み込まれていってる…!?
まるでもう二度と訂正なんて出来ないって言うように…一瞬で…!?
京太郎「な…なんだよ、コレ」
……もしかして本物?
い、いや…流石に違うよな。
だって、これは親父が偽物だってそう言ってて…。
でも…さっき確実に俺の目の前で光って…何故か俺の書いた字が刻み込まれていて…。
京太郎「(あぁああ!もう…わっかんねぇよ!!)」
…ともかく、そういう事は全部、後回しにしよう。
親父も久しぶりの我が家でテンション上がって思いっきり酒飲んでるし。
今、ここで起こった事を説明しても、きっとろくに判断が出来ないだろう。
もうそろそろ日付が変わる時間だしオヤジの知り合い達に連絡するのも難しいだろうしな。
…だから、とりあえず明日だ!!
明日の朝、親父にこの石版を見せて色々と聞いてみれば良い。
―― …そう逃げるようにして自分に言い聞かせた俺は…また事の重大さを分かっていなかった。
―― 親父が気まぐれのように買ったそれが、一体、どれほどの力を持っているのかも。
―― それを知った時、俺は絶望と居たたまれなさに胸が張り裂けそうになるのだけれど。
―― この時の俺はただ目の前の理解できなさから逃げる事だけで頭の中が一杯だったのである。
………
……
…
京太郎「ふあぁぁ…」
……やっべぇ。
昨日はなんか寝る前に色々ありすぎた所為であんまり眠れなかった。
日付変わった時にはもうベッドの中に入ってたけど、眠気が来たのはもう三時過ぎだったんじゃねぇかなぁ…。
幾らか体力もあるとは言え、流石にこれは夜更かしし過ぎた…。
今日も部活があるし…早弁して昼休みは寝ておくかなぁ。
京太郎「おはよーっす…」ガチャ
「ん…っ♪ ちゅひゅぅ…♥」
京太郎「…………は?」
……いや、ちょっと待ってくれ。
なんで朝、扉を開けたら母さんがオヤジの膝の上に座ってるわけ?
いや、百歩譲ってそれは良いにしても、思いっきり濃厚なべろちゅーしちゃってる訳なんですけれども!!
幾ら夫婦仲が良いつってもそれはやりすぎだろ!!
つーか、ヤりすぎだろ!!!
京太郎「ちょ、あ、朝っぱらから何やってんだよ、母さん!!」
「ふ…ぅん…♪ 邪魔しないでぇ…♥」
「私は今、この人と愛を確かめる…キスしてるんだからぁ…♪♪」
京太郎「いやいやいやいや…!」
こ、これが本当にうちの母さんなのか…?
確かに…親父と母さんは仲が良くて、年中、イチャイチャしてたけどさ。
でも、親父が昨日言ってた通り…基本的に母さんは控えめなタイプなんだ。
朝っぱらから息子の前で、濃厚なキスぶっつづけるなんて正直、想像もしていない。
「でも、母さん。このままじゃ京太郎が学校に行けないよ」
「まずは朝食の準備をしてあげないと」
「……はぁい」
…親父の言葉に不承不承って感じで、母さんは離れていく。
が、それは本当に仕方なくって感じで、その声にも不満さが現れていた。
…流石に今まで俺の事を内心、嫌ってて、準備もしたくない…って訳じゃないんだろうけれど。
でも…そんな風に動く母さんの姿は、内心、とてもショックだった。
京太郎「な、なぁ…親父。一体、母さん、どうしたんだ?」
「…どうしたって…アレが母さんの普通だろ?」
京太郎「はい?」
いや、その、まぁ、たしかにさ、たしかに俺と両親の交流って言うのは普通よりも薄いよ。
家族仲は決して悪くはないけれど、両親が帰ってくるのは一年の中で数ヶ月くらいだし。
その大半は海外で発掘とか遺跡調査とかやってる事を思えば、俺の知らない母さんがいてもおかしくはない。
でも、アレが普通って一体、何処の文化圏なんだよ!!!
つーか、この前、帰ってきた時は普通だっただろ!!!!
どう考えてもおかしいだろうが!!!!!
京太郎「い、いや、普通って…何処がだよ」
京太郎「明らかに過激過ぎるだろ」
「過激…?いや、母さんは控えめな方だぞ」
「友人の家庭なんてキスだけじゃ済まされなくてその先まで求められるそうだし」
京太郎「…」クラァ
…………ダメだ、まったく理解出来ない。
これは本当に現実なのか?
本当は俺の身体は眠っていて…これも夢なんじゃないのか?
……いや、そうだ…そうに違いない。
だって、いきなり世界が変わったような光景を現実だなんて認められるはずが… ――
京太郎「…あ」サァァ
…………ま、まさか…い、いや……でも…。
たしかにそれなら…説明がつくかもしれない。
…昨日、俺がおまじないとして書き込んだあの石版が…正真正銘の本物で…。
その力が親父たちにも影響を及ぼしているのだとしたら…。
京太郎「(い、いや…そんな事あるはずがない)」
京太郎「(アレは…アレは偽物なんだ)」
久しぶりに家に帰ってきた親父が、俺を驚かせようとイタズラを仕込んでいたんだろう。
突然、光ったトリックなんかも、マジックがそのまま文字として彫り込まれたのも現代科学じゃ出来ない事じゃない。
…だから、こうして親父たちがおかしくなってしまったのも俺が原因じゃないんだ…。
そうだ…そんな事…あるはず…ない…。
「…どうした、京太郎」
「随分と顔色が悪いみたいだが…」
京太郎「い、いや、何でもねぇよ」
京太郎「そ、それより、俺、今日日直だったの忘れてたからもう出るわ!」
「あ、ちょ…!」
…そうだ、ともかく…外を確認しないと。
アレが親父の悪戯だとすれば…外はきっとマトモなはずなんだ。
俺が知っている通りの世界が、そこには広がっているはず。
だから、ここは嘘を吐いてでも…外に出なければ。
本当の事を…確かめなければいけないんだ。
―― …でも、そこに広がっていたのは絶望以外の何物でもなかった。
京太郎「…なんだよ、コレ」
…街に出た俺の目に飛び込んできたのは、異様と言う他ない光景だった。
女の子が男に対して腕を組んで歩いているのはまだ良い。
だが、中には男に首輪をつけたり、手錠で自分たちの腕を結び付けてる子もいる。
明らかにファッションという領域を超えたそれらに、しかし、俺以外の人々は何の違和感も感じていないらしい。
むしろ、まるで犬の散歩のように首輪から伸びた鎖を引っ張る女の子に、仲睦まじいと、近所のおばさんらしき人が言っていて…。
京太郎「…おかしいだろ」
京太郎「こんなの…こんなの絶対におかしい…」
…あの石版に書き込んだ時、俺が考えていたのはほんのちょっぴり女の子が積極的になる世界だった。
好きな人に好きだって伝えられるような…そんな勇気を出せるような世界だったはずなのに…。
でも、今のこの世界は…勇気とかそんな領域をあっさりと突破してしまっている。
積極的どころか価値観が完全に書き換わったようなその光景に、俺は… ――
咲「…京ちゃん?」
京太郎「っ!?」
瞬間、背後から掛けられた声に、俺の身体が反応する。
ビクンと肩が跳ねるようなそれと共に俺は悲鳴をあげそうになっていた。
それを何とか堪える事が出来たのは、俺の強靭な自制心のお陰…ではない。
ただ、ビックリし過ぎて、俺は声をあげる事すら出来なかったんだ。
咲「…って、どうしたの、そんなに驚いて」
京太郎「…あぁ、咲か…」ホッ
だが、その声の主は俺の幼なじみである咲だった。
振り返ってそれを確認した俺は、内心、胸を撫で下ろす。
…これが咲も男に首輪をつけてたら、俺は立ち直れなかったかもしれないが、咲は今、一人だ。
何時も通り、清澄の制服に身を包んで両手でカバンを持っている。
京太郎「…咲は変わってないよな?」
咲「もう。いきなりどうしたの?」
咲「私は何時も通りだけど」
京太郎「…そっか。そうだよな…」
…分かっている。
このおかしくなってしまった世界で、以前の価値観を持っているのはきっと俺だけだ。
幾ら麻雀が強いとは言っても…あの石版からの影響力を遮断出来る訳ではないんだろう。
この世界への違和感を口にしない時点で、咲もまた親父たちと同じ。
…それが分かっていても、安堵してしまうのは幼なじみがあまりにも何時も通りだったからだ。
例えそれが錯覚であると分かっていても…俺の知る宮永咲の姿は俺に偽りの安心をくれる。
下1 咲の好感度(最低保証40)
下2 咲さんの欲情度
【咲】京太郎「女の子が積極的になりすぎた世界」【安価・エロあり】
こっちもエロありで、基本的なシステムはふたなりスレと同じ感じになるかなーと
最初のコンマで好感度と欲情度設定して、欲情度を使用した判定に失敗すると逆レ
好感度の判定に失敗すると監禁、みたいな(´・ω・`)
久「うーん…暇ねぇ」
まこ「いきなり部室にやってきて何を言うとるんじゃ」
久「いや、だって、もうインハイも終わっちゃったし、議会長も引退でしょ?」
久「大学も推薦決まってほぼ安牌だしやる事がないのよねぇ…」グテー
まこ「だからって部室でダラダラせんでもええじゃろうが」
久「いやぁ、やっぱり部室って居心地が良くてねぇ」
久「やっぱりまこが居てくれるからかしら?」チラッ
まこ「…あ、わしは今日、実家の手伝いがあるけぇ、もう上がりじゃ」
久「えー…久しぶりにイチャイチャしましょうよー」
まこ「お断りじゃ」
久「ぶー…」
まこ「つーか、暇なら京太郎の指導でもしてやればどうじゃ?」
久「うーん…それも考えてたんだけどねぇ」
まこ「けど?」
久「…私が教えると変な癖がつくからダメって和が…」
まこ「あー…なるほど」
久「なるほどって何よー…私だって一応、デジタル打ちなんだからね!」
まこ「ここぞと言う時に悪い方を選んで、それが当たる雀士とか、ガチデジ派の和には認められんじゃろ」
久「むー…」
久「まぁ、そういう訳で暇してる訳なのよ」
久「意地悪せずに構ってよー」ゴロンゴロン
まこ「本当、面倒くさい女じゃなぁ…」
まこ「つーか、そんなに暇なんじゃったら昔、一人でやっとった遊びでもすりゃどうだ?」
久「一人遊びだなんて…やだそれエッチ…」カァァ
まこ「…いや、変な意味じゃなくな?」
まこ「一年の時は部室で一人っきりだったんじゃから、何かしら遊ぶものは置いてあったんじゃろ?」
久「あー…まぁ、確かあったわね」
久「えーっと…確かこの辺にっと…」ゴソゴソ
久「あ、やっぱりあった…!」
まこ「ほう。それはなんじゃ?」
久「えっと、これはねー」
京太郎「こんちゃーっす」
咲「こんにちは…ってあれ、久先輩」
優希「え!?って本当だ、久先輩だじぇ」
和「お久しぶりです」
久「あ、丁度良かった」
久「皆、剣と魔法の世界に興味はない?」
京太郎「そりゃまぁ、これでも男の子ですし興味はありますけど」
咲「私もファンタジー小説とかは好きですよ」
優希「格好良いマントはあるかい!?」
久「勿論よ!」グッ
和「……って言うか、いきなりなんですか」
久「あぁ。説明が遅れてごめんね」
久「これよ、これ」スッ
まこ「えーっと…ソード・ワールド2.0、ルールブック…?」
久「そうよ。皆はテーブルトークRPGって知ってるかしら?」
咲「確かキャラの演技をしながらサイコロを転がしてプレイするゲームの事でしたっけ…?」
優希「ゲーム機は使わないのか?」
和「元々はゲーム機が出来る以前に生まれた遊びですしね」
和「今で言うロールプレイングゲームの元祖は、このテーブルトークRPGを機械で処理する為に生まれたそうですよ」
優希「へぇ…」
久「あら、和は良く知っているのね」
和「何度かネットで誘われた事がありますから」
和「その時は麻雀に集中したかったのでお断りさせて貰いましたけど」
京太郎「先輩!ちなみに俺、まったく分かりません!」
優希「私もだじぇ!」
久「ふっ。安心しなさい」
久「この私がルーキーの皆にも理解出来るよう懇切丁寧に説明してあげるわ!」ドヤァ
和「…あの、と言うか、部活…」
まこ「諦めんしゃい。ああなった久は止められん」
まこ「それにまぁ、主要な大会も終わって一段落ついちょるし、たまには息抜きもええじゃろ」
和「…まぁ、そうかもしれませんね」
久「と部内の良心が大人しくなったところでさらにアクセルを踏み込んでいくわよ!」
久「野郎ども!振り落とされたら置いてくからね!」
京太郎「ヒャッハー!」
優希「ヒャッハー!」
咲「ひゃ、ひゃっはー…」カァァ
和「…咲さん、無理に場の雰囲気に合せなくても良いんですよ」
久「まぁ、ノリが悪い和はさておき、詳しい説明に入るわね」
久「基本的なゲームの説明は、さっき咲や和が説明してくれた通り」
久「その中で敢えて一つ補足するとすれば、このゲームには無限の可能性があるって事かしら」
京太郎「無限の可能性…!」ゴクッ
優希「無性に心惹かれる言葉だじぇ…!!」
久「確かにゲームマスターと言うゲームの進行役がいて、そこには絶対的な権力がある」
久「でも、ゲームを進めていくのは決してゲームマスターだけでは出来ない事よ」
久「プレイヤーはただサイコロを振るんじゃなく、ありとあらゆる困難にどう立ち向かうのかを決めなければいけない」
久「例えるなら、ゲームマスターがゲーム機であり、プレイヤーがコントローラーってところかしらね」
久「プレイヤーが演じるキャラの行動やセリフによって、どんどんと話の展開が変わり、時にはシナリオそのものが根底から覆る事もあるわ」
和「それはそれで大丈夫なんですかと言う気もするのですが」
久「その辺を上手くまとめるのもゲームマスターの裁量と言うか楽しみの一つでもあるからね」
久「相手の反応を目の前で見ながら、四苦八苦して畳むシナリオと言うのも良い思い出になるし」
久「まぁ、だからと言って、シナリオブレイクの為に好き勝手されちゃうのも困るけどね」
久「ゲームマスターとプレイヤーは決して敵ではないんだから」
久「むしろ、テーブルトークRPGを楽しむって言う大きな目標を目指す同志と言っても良いわ」
久「だから、その行動も自分が楽しむ為じゃなく、皆が楽しむ為でなければいけないのを忘れないでね」
優希「はーい」
久「まぁ、最後はちょっとお説教っぽくなったけど、テーブルトークRPGに関しては大体、そんな感じ」
久「問題がなければ、ソード・ワールド2.0の話に進もうかと思っているんだけれど…」
京太郎「とりあえず楽しそうだって事は分かりました!」
優希「空気読めって事は分かりました!!」
久「宜しい!それじゃあソード・ワールド2.0の話に行くわね」
久「さっきゲームマスターがゲーム機であり、プレイヤーがコントローラーだと言ったわね」
久「その流れに合わせるならば、この本はゲームカセットってところかしら」
まこ「ゲームカセットって…また古い表現を」
久「い、良いでしょ、別に」カァ
久「と、ともかく、大事なのはソード・ワールド2.0と言うゲームの遊び方は大体、この中に詰まってるって事」
京太郎「へぇ…でも、案外、薄いんですね」
久「まぁ、この本はルールブック1…謂わば本当に最低限の判定の仕方や職業なんかを書いたものだしね」
久「ソード・ワールド2.0と言うシリーズは結構長いから、全部集めればかなりの量になるわよ」
優希「ってもしかしてその全部を暗記しなきゃいけないとか…」
久「いいえ。基本的に覚えるのはルールブック1の内容だけで大丈夫」
久「後は拡張ルールとかそういうのが殆どだしね」
久「ゲームだってアップデートパッチを当てなくても、プレイは出来るし」
久「バージョンアップでまったくの別ゲーになっちゃうのも殆どないでしょう?」
京太郎「なるほど…」
久「と言う訳でソード・ワールド2.0の世界に踏み込んでいってみましょうか」
咲「…ちょっとだけワクワクしちゃうかも」
京太郎「咲はそういう世界観説明とか好きだもんなぁ」
咲「うん。こう…まったく違う異世界とかドキドキしちゃうよね」
優希「まぁ、その辺は分からないでもないじぇ」
和「…私も正直、楽しみにしてるところがありますね」
久「ふふ。じゃあ、そんな咲の期待に応える説明を私がしてあげましょう…!」
久「ソード・ワールド2.0はずばり…王道ファンタジーです!以上!!」
咲「えぇぇ……」
和「…流石に簡潔過ぎませんか?」
久「いや、まぁ、ぶっちゃけ語れば色々とあるんだけどね」
久「でも、ソード・ワールド2.0を説明する上で、王道ファンタジーって言うのが一番、分かりやすいのよ」
久「まぁ、細かく言えば、その名前から分かる通り、剣が世界観に大きく食い込んできているんだけれど…」
久「その辺りの説明をしだすと長いから、ぶっちゃけ以下の三点だけ覚えてくれればいいわ」
咲「三点…?」
久「1つ。この世界は人間と異種族がいて、共存、或いは敵対しながら過ごしている事」
久「2つ。この世界にはかつて大きな文明が幾度となく起こり、そしてその度に滅びていた事」
久「3つ。今は丁度、蛮族との全面戦争に人類が勝利した辺りで、まだまだ各地に火種が残っている事」
和「……確かに王道ファンタジーですね」
久「でしょう?」
京太郎「じゃあ、その世界では、かつての文明の遺産とか発掘出来るんですか?」
久「出来るわよ」
優希「じゃ、じゃあ、その世界で蛮族を滅ぼして、人類の英雄になる事も…」
久「勿論出来るわ」
咲「自分だけの特殊な武器を作ったりも…」
久「おまかせあれよ!」
和「…異種族とのロマンスなんかもあるんですか?」
久「勿論、ご用意させて頂いております!!」グッ
「「「おぉぉぉ…」」」
久「…まぁ、ただし、それが実るかどうかは皆、次第だけどね」
久「この本はあくまでもルールを用意してくれているだけ」
久「それに則ってどう活躍し、どんな栄光を掴むかはプレイヤー次第よ」
優希「な、なんかそう言われると今すぐ、やりたくなってきたじぇ…!」
京太郎「発掘王に俺はなる!!」
和「…私も少し興味出てきたかもしれません」
久「ふふふ。皆、その気になってきたようね」
久「それじゃあ…キャラメイクからいきましょうか!」
優希「キャラメイク?…なんだか美味しそうな名前だじぇ」
和「それはキャラメルでしょう。…ってツッコミはともかく、どういう事ですか?」
久「さっきも言ったでしょう?」
久「このルールブックはあくまでもルールを用意してくれているだけだって」
久「このゲームで遊ぶには、皆を動かすキャラクターから作っていかなきゃいけないの」
優希「ぬぐぐ…なんだか面倒そう…」
久「まぁ、そういう子向けにサンプルキャラもいるけれど、あんまりオススメはしないかしら」
久「やっぱり自分で一から作った子の方が愛着も湧くし、育ててあげたいってそう思うから」
優希「…うん。なんとなく分かるじぇ」
優希「授業と漫画以外で本を開くのなんて久しぶりだけど、頑張ってみる!」グッ
久「ふふ。頑張ってね」
久「その間に私は昔作ったシナリオを皆用に書きなおしてくるから」
久「分からない事があったら何時でも聞いてね」
「「「「はーい」」」」
まこ「もう皆、乗り気じゃなぁ」
久「ふふ。なんだかんだ言って皆、素直だしね」
まこ「まぁ、それは分かるんじゃが…久よ」
久「何かしら?」
まこ「…アレ、一年の頃から部室に置いとったんじゃろ?」
久「……そうね」
まこ「で、それが今もここにあるっちゅう事は…」
久「……お願い、言わないで」グス
まこ「…………うん。わしが悪かった」
まこ「(…まさか涙ぐむほど地雷だったとは)」
まこ「(久にとっては一人でテーブルトークRPGをやってたと言う過去は絶対に触れて欲しくないものなんじゃな…)」
久「ま、まぁ…何はともあれ、皆もこうして楽しんでキャラメイクしている訳だし…」
【咲×SW2.0】久「剣と魔法の世界を楽しみましょう」【セッションリプレイ+α】
以前から言ってたSW2.0スレです
最初のセッションはもう終わってるのでそれをリプレイに書き起こし終えてからのスレ立てになりまする
それが終わったら、また参加者募集してセッションやってみるのも良いかなとかも思ってます(´・ω・`)1月ならまだ余裕ありますし
―― 私立りつべ学園。
それは麻雀を楽しむ多くの少年少女達にとって、憧れの場所であった。
信じられないような新システム、革新的な教育方法、世界でもトップクラスの指導陣。
考えうる限り最高の形で生徒をサポートし、それぞれが夢見る世界へと連れて行ってくれる。
そこを卒業したプロが一体、どれほど世界で華々しい活躍をしているかを考えれば、高校生雀士の憧れを集めるのも当然だろう。
京太郎「ふっふっふ…」
そして俺はそんな世界でも最高クラスの学園に無事合格する事が出来た。
入学試験として麻雀が出てきた時はびっくりしたが…まぁ、俺の実力ならば合格は硬い。
十回に一回は最下位を回避するという驚異的な成績で無事に入学する事が出来たのである。
京太郎「(…そう。これから俺の栄光のロードが始まる…!)」
それを象徴するように、校舎へと続く坂道には桜が並んでいた。
暖かな日差しの中、肌を撫でる風と共にゆらゆらと揺れるその花びらはとても美しい。
思わず目を奪われそうなその光景の中、俺は優雅に歩き続ける。
りつべ学園に入学した今、俺の目の前にあるのは栄光へと続く道だけなのだから。
その立ち振舞一つ一つに優雅さと気品が伴うのも当然だろう。
「…おい、そこの新入生」
京太郎「ん?」
まったく…今の俺は優雅な気分で歩いているというのに…一体、誰だ、この厳つい声は。
まるで岩か何かのように硬く隙がない。
正直、聞いているだけで体育教師を彷彿としそうだ。
「遅刻だぞ、少しは急がないか」
…そう思いながら振り返ったら…やっぱりそうだ。
まだ肌寒さの残るこの時期に白いタンクトップに緑のジャージ。
季節感を何処かに置き忘れたその姿は体育教師しかあり得ない。
恐らく趣味はトライアスロンで、アダ名は鉄人辺りだろう。
ううん、知らないけど、きっとそう。
京太郎「ふふ…急ぐなど人生の落伍者がする事ですよ」
京太郎「俺のように人生の成功が約束された男には似合いません」
「…まぁ、お前がそう言うんならそうなんだろう、お前の中ではな」
…何故か可哀想な人を見るような目で見られてしまった。
まぁ、それもこの体育教師が俺の実力を知らないからなのだろう。
その無知をあげつらうのは、未来の成功者としてあまりにも気品に欠ける行いだ。
ここはその無礼を広い心で許してあげるべきだろう。
「ところで、お前の名前は?」
京太郎「ふ…お目が高い」
京太郎「俺こそ未来のトッププロ…須賀京太郎です」
京太郎「今なら500円でサインも受け付けていますよ」
「須賀須賀…あぁ、あった」
…あれ、まったく聞いてくれてない。
俺のサインが500円で手に入るなんて絶対にお得だと思うんだけどな。
後、十年もすればプレミアがついて数万…いや十数万で売れるはずだし。
下手な株よりもよっぽどお買い得なんだが…。
「……やっぱりお前はFクラスだったか」
京太郎「…Fクラス?」
「って知らないのか。オープンキャンパスでも説明があっただろ」
京太郎「そんなの行かなかったに決まってるじゃないですか」
「威張るんじゃないよ、まったく…」
いや、でも、真面目な話、オープンキャンパスって無駄じゃん。
他の人はともかく、俺はもう私立りつべ学園しか眼中になかった訳だし。
そこ以外に受けるつもりなんてなかったんだから、オープンキャンパスに行く必要なんてないかなって。
むしろ、オープンキャンパスに行く分のお金で一回でも多くゲーセンの脱衣麻雀に挑戦した方がげふんげふん。
京太郎「で、Fクラスって何なんですか?」
「…この学園はAからFのクラスに分かれている」
「で、勿論、それぞれが麻雀の強さに対応していて…」
京太郎「いや、大丈夫です。もう分かりました」
「そうか…?」
俺が天から授かったのは麻雀の才能だけじゃない。
この類まれなる知性もまた、俺の武器の一つだ。
その知性を宿す灰色の脳細胞が、今、たったひとつの答えを導き出している。
京太郎「Fクラスが最強って事ですね!!」
「Fがドベって事だよ、言わせんな恥ずかしい」
あっるぇ…俺がFクラスに所属してる時点で、どう考えても最強がFだと思うんだけどな。
それにFってなんか響きがAよりも強そうじゃん。
Aってアナルとかそんなのばっか出てくるけど、Fはフルアーマーとか連想するし。
やっぱAよりもFの方が絶対に強いって、うん。
「そもそもお前、確か入試麻雀で毎回、最下位だった奴じゃないか」
「それが最強のクラスに配属される訳がないだろ」
京太郎「失礼ですね。十回に一回は三位になれてました!!」
「威張る事じゃないだろ…」
むぅ、また呆れられてしまった。
まぁ、俺がどれだけ凄いかがきっとこの体育教師には分からないんだろう。
その辺りはおいおい結果で見せてあげれば良い。
恐らく二ヶ月もすれば、俺がどれだけの実力者か彼にも分かるはずだからな。
「ともかく、お前はFクラスだ」
京太郎「うぃっす」
何はともあれ、今はクラスに向かわないとな。
もう完全に時間がオーバーしてるが、このままダラダラしてるとホームルームまで終わりかねないし。
俺の強さに全校生徒が釘付けになるのは確実だが、下手に目立つのは俺も本意じゃない。
どうせ目立つのならば、やはり格好良い方が良いからな。
「違う。そっちじゃない」
京太郎「え?」
「お前が向かうFクラスはあっちだ」
京太郎「…あっち?」
………あれれ、おかしいな。
俺の目の前にあるのは、どう見ても打ち捨てられた洋館なんだけど。
窓ガラスなんかもヒビ割れていて、周りも荒れ放題。
今日は雲ひとつない晴天のはずなのに、あそこだけ薄暗く見えるくらいだ。
京太郎「…なんです、あのゾンビでも出てきそうな館は」
「お前たちFクラスの為の特別校舎だ」
特別ヤッター!
…………って流石の俺も喜べねぇよ!!
そういう特別は要らない…って言うか、流石にこれは酷すぎないか!?
どう見ても最低限、教育出来る環境ですらないぞ!!
京太郎「ノートパソコンや個人空調、冷蔵庫などの最高設備は!?」
「ねぇよ」
京太郎「マッサージ機能のついたリクライニングシートは!?」
「Fクラスはちゃぶ台と座布団だ」
京太郎「美人プロとのマンツーマンレッスンは!!?」
「お前らの教育係は定年間近の素人だ」
ひ、酷い…酷すぎる…。
これじゃあ普通の学校以下じゃないか…。
俺の栄光は今日から始まるはずだったのに…こんなのあんまりだ…!
「……まぁ、Fクラスから抜け出す方法は色々とあるから、悔しければ自分でどうにかするんだな」
「一体、どんな夢を見ていたのか知らないが、ここでは跪いていても、誰も助けてはくれないぞ」
……最後にそう言って去っていく辺り、あの体育教師も悪い人ではないのかもしれない。
…ならば、俺もその気持ちに応えて…一歩ずつでも進むべきだ。
確かに俺の夢や希望は完全に砕かれたが…しかし、それで何もかもが終わった訳ではないのだから。
スタート地点は最低ではあっても、まだ俺には3年もある。
その間に上へと這い上がれば、夢を叶える道筋もまた見えてくるのだ。
そう言い聞かせながら、俺は何とか立ち上がって ――
【咲-Saki-】京太郎「バカと麻雀と召喚獣」【バカテス】
まぁこんな感じで有能だけどバカな京ちゃんが色々と学園を巻き込んだ大騒ぎをやらかす話になります
京ちゃんのキャラは主要な男三人の設定を一箇所に集めたようなキャラなので、大分、バカっぽくコメディな話になるかと(´・ω・`)ならんかったらすまん
こっちは安価要素無しで即興オンリーの話になっていく予定です
まぁ、そんな訳で大体、来年からやる予定のネタの予告も書き終わったので
せっかくですし多数決にしようかなーと(´・ω・`)
1 【咲×魔物娘図鑑】京太郎「聖王国を親魔物領へと変える簡単なお仕事」【安価・エロあり】
2 【咲】京太郎「女の子が積極的になりすぎた世界」【安価・エロあり】
3 【咲×SW2.0】久「剣と魔法の世界を楽しみましょう」【セッションリプレイ+α】
4 【咲-Saki-】京太郎「バカと麻雀と召喚獣」【バカテス】
5 なんぽっぽスレの続き
この中で読みたいものを書いてって下さい
下10までで数が多いのを来年の一発目の息抜きにします(´・ω・`)
| ||
|_||_ -―  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ―-
n|上-―  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ― 二_
,r'´ __,.ェ=<―――>―-、 _フ
/ Y | ゞ '⌒ヽ、`チ 〈ィ_,豸⌒ー ̄ /
| | !、f 〃ィnメ〈 / 〃ィnメ、 i /!
| !| 「ヽ `ー" 厂`ヾ `ー‐' 厂 !
| i!| | `ー―仏小、` ー― ' /! そんなに逆レが見たいのか…!
ヽ l |i!、 / ハ / !
\_ヽ ト、 ヽ ノ !
_,.ィ―久ヽ `こ´ ,.イ
,. -rfュ三ニレ/ | ヽ <___> _//__
<三三ヘ< / | \ ー―ラ=' ̄K二二二
と言う訳で2の逆レ世界に決まりました
正月までもうちょっとシステム詰めてすぐスレ立て出来るようにします(´・ω・`)
まさかこんな時間に多数決が行われていようとは...
最近のこのスレは早起きすぎる
投票が終わってたやて・・・?
1月にセッションするんか
キャラ思い出しつつ待っとるで
二番か、四番でもまぁ悪くなかったが…それよりも本編はよ
あと4番のタイトル、バカと雀士と召喚獣の方が語呂はいいと思うんだ。
略称はバカじゃん。
バカじゃん吹いたwww
バカテスのやつ結構気になったけどすでに終わってたよ……
>>714>>715
そりゃ殆どの子がキッカケさえあれば即落ちするレベルで好感度溜まってるからな!!(´・ω・`)共依存に近い状態ってのもありますが
後、咲ちゃんについては私もかなり悩んでます(´・ω・`)ぶっちゃけ下手に遭遇しちゃうとその時点でエンディング一直線なんですよねー…
>>880>>881
これくらいの時間じゃないと出勤するのに間に合わんのや…
夜は夜で最近、忙しくて…
>>882
すまんな、工藤
セッションやるのはSWスレが選ばれた時だけなんや
今回は2になったから、セッションはまた延期するで
>>883>>884
何時もよりも本編の反応薄くてちょっと飽きられたかなーって感じなので、何時もよりも気合入れて書いてます(´・ω・`)
一応、今日には書き上がる予定なので、明日には投下出来るんじゃないかと…
そしてその発想はなかった…!
もし、また次息抜きの題材としてあげるときにはそのタイトル使わせて頂きます
>>885
一応、一巻まるごとのプロットは書ききったので私も書いてみたくはあるんですよねー
後、境ホラ×咲ネタなんかも(´・ω・`)完全に息抜きじゃすまなくなるのでアイデアのまま放置してますが
それはさておき、2の逆レ世界ですが、一体、どのへんまでアクセル踏んじゃって良いですかね?
今、考えている感じだと貞操逆転世界っぽくなっちゃいそうなんです
世界を変えてしまった負い目から女の子を拒めなくて結果的にビッチンポ扱いされる京ちゃんみたいな(´・ω・`)
咲ちゃんと遭遇したらエンディング一直線かぁ……そうなると本編中で会うのは厳しくて小ネタとかIF世界でしかないのか
いやでもインハイで別れたままだと咲ちゃんが可哀想で辛い…
反応見る限りあまり拒否感なさそうなので一安心しました(´・ω・`)アクセル踏み込んで良いんですかーやったー!!
京ちゃんのSAN値で世界観決めるのはちょっとむずかしそうなので最初っから貞操逆転っぽくいきます
後、導入からして今回はシリアスなのは目に見えてただろ!!
一応、明るくバカやる話もあったのに逆レを選んだのは読者の方々なので私は悪く無い(責任転嫁)
>>894
私も今のままだと咲ちゃんが可哀想過ぎるんでどうにかしたいと思ってます
なので、恐らくエンディングまで別れたままにはならないかと…(´・ω・`)タブンネ
と言いつつそろそろ続き投下しまする
………
……
…
巴「(…ど、どうすれば良いのかしら)」
そう巴が胸中で漏らすのは、もうそろそろ約束の時間が近づいているからだった。
無論、こうして一人そわそわしている彼女の部屋はしっかりと片付き、ゴミ一つ落ちていない。
普段から巴は掃除を欠かさず、整理整頓も得意なのだから。
最近は多少、趣味も増えたが、それは彼女の部屋を圧迫するものではなく、戸棚の奥にすっぽりと収まっている。
巴「(…とりあえず目につくゴミなんかはないし)」
巴「(お菓子とジュースは準備したけれど…)」
巴「(で、でも…これで良いの?)」
巴「(本当にこれで京太郎くんを招き入れて大丈夫…?)」
机の上に並ぶお菓子の量は一山と言っても良いくらいだった。
こんもりと積まれたそれは幾ら二人であっても食べきるのは難しい。
無論、普段の巴であれば、多すぎず少なすぎない完璧な量を用意していた事だろう。
だが、今の彼女は初めて部屋に男を招くと言うシチュエーションに緊張している真っ最中。
頭ではバッチリ準備ができてると分かっていても、まだ何かするべき事があるのではないかと思ってしまう。
巴「(うぅぅ…本当、こういう時、免疫がない自分の身が嫌になるわ…)」
少なくとも、夕食の時までは普通だった。
だが、その後始末も終わり、ゆっくりと風呂に入っている最中に改めて思ってしまったのである。
今日、これから京太郎と部屋で会うのだから、念入りに身体を洗っておいた方が良いのかもしれない。
そんな言葉が浮かんできてしまった彼女には、彼と何かふしだらな事をするつもりなどまったくなかった。
京太郎が自室に来るのも『相談』の為であり、また彼が紳士的な人間である事も分かっているのだから。
春のストレートなアプローチにさえ屈しきらない京太郎が、自分を襲うはずなどない。
巴「(…でも、どうしても意識しちゃうのよ…)」
しかし、だからと言って、京太郎を意識してしまう自分と言うのを止められない。
どれだけ言い訳しても『夜に異性を自室へ招いた』と言う事実は変わらないのだから。
彼に嫌われない為に、と言う目的があったその言葉でさえ、何処かいかがわしい意味に捉えてしまう。
そんな彼女が冷静になれるはずもなく、風呂から上がって、こうして準備を勧める最中も緊張に身体がギクシャクとしていた。
今の彼女は胸中に掛かる迷いよりも、『相談』の事を強く意識してしまっている。
巴「(と、ともかく…そわそわしてもあまり意味がないし…)」チラ
そこでチラリと時計を見た巴には21時50分と言う数字が見える。
約束した時間の十分前を告げるそれに、巴の肩が再び強張りそうになった。
その外見からは想像出来ないほど須賀京太郎という少年は真面目なのだから。
きっともう数分もしない内にやってくるだろうと彼女には想像がついたのである。
巴「(ま、まず落ち着きましょう…)」スーハー
きっと今もこの部屋に近づいてきているであろう京太郎の姿。
それを想像するだけで巴の頬はまた赤くなってしまいそうだった。
そんな自分を落ち着ける為、彼女は大きく息を吸い、そして吐き出す。
肺の中身を入れ替えようとするようなその深呼吸は、緊張に止まりそうな巴の思考を幾分、クリアにしてくれた。
巴「(それで…とりあえず…)」ストン
少し落ち着きを取り戻した巴が選んだのは用意した座布団に座る事だった。
このままずっと立っていても、辺りをうろつく事くらいしか出来そうにない。
しかし、そうやってうろついたところで、事態は何も好転しないのだ。
寧ろ、そうやって焦りに突き動かされてると言う事を自覚し、悪化してしまう可能性さえある。
巴「(だから、ここはひたすら待ちましょう)」
巴「(幸い、京太郎君はもうすぐ来るでしょうし…)」ソワソワ
だからこそ、身体を先に落ち着けようとする巴は身動ぎを止める事が出来ない。
幾分、頭の仲が冷静になったとは言え、その胸中は未だ強い緊張が浮かんできているのだから。
今はただ待つ時間だと言い聞かせているのに、居心地悪そうに身体を動かしてしまう。
その上、チラチラと視線を時計に送る今の巴に落ち着きと言う言葉は見当たらなかった。
巴「……」
巴「…………」
巴「………………あれ?」
それでも何とか立ち上がらずに待ち続ける巴の前で秒針がゆっくりと動き続ける。
チクタクと独特の機械音を鳴らすその時計は、数分後、22時を指差した。
瞬間、巴が首を傾げるのは、未だ京太郎が部屋を訪れる気配がない所為。
予定した時間をオーバーした事を教えるそれに、巴は疑問を思い浮かべる。
巴「(…ど、どうしたのかしら…)」
巴の知る京太郎は遅刻をしたりするようなタイプではない。
どちらかと言えば、五分前行動を厳守する真面目な性格なのである。
そんな彼が遅刻するなど、巴はまったく考慮してはいない。
自然、予定が狂った彼女の中で、不安の色が濃くなっていく。
巴「(もしかしたら…私の相談に乗るのが嫌になった…とか?)」
勿論、巴も京太郎がそのような不義理を行える男だと心から思っている訳ではない。
彼女が京太郎の事を見てきた期間はもう一年近くにもなるのだから。
巴が驚くほどお人好しな面を見せ続けてきた彼が、土壇場で予定をキャンセルなどするだろうか。
そんな問いかけを改めて投げかけるまでもなく否であると彼女は断言出来る。
巴「(…でも)」
それでも彼女の中から不安がなくなる事はない。
それは彼女自身、自身の相談が面倒であることを自覚しているからだ。
巴の実家と神代が関わってくるその面倒事から逃げられたとしても文句は言えない。
そんな言葉さえ脳裏に浮かんでしまう彼女は、どうしても胸中のモヤモヤを晴らす事が出来なかった。
巴「(…うぅぅぅ)」
無論、それを解消するのは簡単だ。
自分から京太郎の部屋を訪ねてしまえば良い。
屋敷の構造的にも行き違いになる事はまずない上に、そこには小蒔達がいるのだから。
もし、京太郎と会えなかったとしても、その行方を聞く事が出来るだろう。
巴「(…だけど、もし、京太郎君が寝る準備をしていたら…)」
自分との予定を忘れたか、それとも途中で面倒になったか。
そのどちらであったとしても、彼女は立ち直れる気がしなかった。
こうして緊張してはいるものの、巴は京太郎に自身の悩みを打ち明けようとしているのだから。
それほどまでに心を許した相手の本心に、好奇心以上の恐怖を呼び起こされるものだった。
タッタッタ
巴「あっ…」
瞬間、聞こえてきた足音。
それは小走りに廊下を進もうとする力強いものだった。
日中ならばともかく、この時間にそんな風に進もうとするものは殆どいない。
いるとすれば、それは待ち合わせに遅刻している京太郎くらいなもので ――
巴「(外に出て確認…)」
巴「(…あ、いや、でも、そんな事したら随分と待ってたって思われるかもしれないし…)」ドキドキ
その足音は巴の中から落ち着きと言うものを完全になくしてしまう。
心臓の鼓動は早くなり、その顔は宛もなくキョロキョロと動き始めていた。
座布団の上に座った足の指先さえ動かしてしまう自分を巴は自覚さえしていない。
待ち人が来てくれたのかもしれないとそんな期待と不安で胸の中が一杯だったのだ。
京太郎「…巴さん」
巴「…っ」ドキン
閉じた襖の向こうから聞こえてきたその声は、彼女の期待に応えるものだった。
毎日、聞き続けている京太郎の声音を、彼女が聞き間違うはずがない。
それでも胸を跳ねさせてしまうのは、巴がそれだけ京太郎の事を待ち望んでいたからこそ。
普段、聞き慣れているはずの声にさえ反応してしまうほど、彼女は不安を感じていたのだ。
巴「(…き、来てくれたんだ、京太郎君)」
巴「(良かった……って、今はそれよりも…)」
そんな不安が一気に溶けていく感覚に、しかし、巴は身を委ねられなかった。
こうして襖の向こうから声がかかったという事は、もう京太郎が目の前にいるという証なのだから。
暖房器具が殆ど無い屋敷の中は大抵、何処も寒いが、木張りの床よりも畳の上の方が遥かに暖かい。
幾ら遅刻したとは言え、そんなところに京太郎を長居させるのは可哀想だろう。
巴「(…それに今、見られちゃうと変な誤解をされちゃいかねないし…)」カァァ
勿論、巴には京太郎と何かいかがわしい事をするつもりなどない。
こうして彼を自室に招いたのも、誰にも聞かれずに相談する為だったのだと断言出来る。
だが、幾ら彼女が断言出来たとしても、それを見た相手に伝わるかどうかは別問題。
特に京太郎を男として慕う少女たちにとって、それは間違いなく衝撃的な光景なのだから。
下手に彼女達を落ち込ませない為にも極力、リスクは最小限まで減らすべき。
そう思いながら巴は座布団から急いで立ち上がって。
巴「い、今、開けちゃうわね」ススス
京太郎「すみませんでした」ペコリ
巴「ぁ…」
そのまま部屋の入口にある襖を開けた瞬間、京太郎が頭を下げた。
腰を直角近くにまで曲げるその仕草からは彼の申し訳無さが伝わってくる。
そんな姿を見せられてしまったら、拗ねる事さえ出来ないではないか。
元々、京太郎の事を責めるつもりはなかった巴の内心にさえそんな言葉が浮かび上がるほど、その謝罪は真摯なものだった。
巴「そ、そんな風に謝らなくても良いのよ」
京太郎「でも、待ち合わせに遅れたのは事実ですし…」
巴が許しの言葉をくれても京太郎は中々、顔をあげようとはしなかった。
勿論、京太郎は彼女との約束を忘れた訳でも、予定がズレこんでしまった訳でもない。
巴との相談の為に普段以上に気合を入れて、予定を消化していたのだ。
それでもこうして数分の遅刻に至ってしまったのは、出かけに春や小蒔達に捕まってしまった所為である。
―― それは勿論、彼女が京太郎の監視役も兼ねている為だ。
二人の少女と布団を並べて眠る日々。
夏の家出から始まったそれは、彼女達が誰よりも不安に思っているからだ。
もし、京太郎がまた逃げ出してしまったらどうしよう。
今度もまた置いて行かれてしまったらどうすれば良いだろう。
そんな想いを抑えきれず、眠る時さえ一緒にいようとする少女たちが、夜中に出かける京太郎を見過ごせるはずがない。
一体、何処に何をしにいくつもりなのかと彼はそう踏み込まれてしまっていた。
京太郎「(…でも、言えないよなぁ)」
無論、京太郎は決して人に言えないような事をするつもりなどない。
こうして夜中に巴の部屋へとやってきたのは、あくまでも彼女の相談に乗る為なのだから。
しかし、相談者である巴は恥ずかしがり屋で、また遠慮しがちな性格でもあるのだ。
少なくとも、自身の悩みを他人に知られたいとはあまり思わないだろう。
そう思ったからこそ、京太郎は必死に二人を誤魔化そうとしていた。
京太郎「(結局、俺は予定の時間に間に合わなくて…)」
巴がそうであるように、京太郎もまた彼女の性格を良く知っている。
霞と言う大きな壁に、ずっと抑えこまれてきた巴は自己評価が信じられないほど低いのだ。
そんな彼女との待ち合わせに遅れてしまったら、一体、どんな風になるのか。
その感情の矛先が自分ではなく、巴自身に向いていた事は考えるまでもなかった。
巴「大丈夫よ。私も…えっと、今来たところだし…」カァァ
だからこそ、頭をあげられない京太郎の前で、巴は不器用ながらも言葉を口にした。
待ち合わせに遅れても問題なかったのだと伝えようとするその言葉に彼女は顔に熱を灯してしまう。
幾ら巴が異性とマトモに接した経験がないとは言え、まったく何も知らない訳ではないのだ。
自身が口にしたそれが、恋人同士のデートにおいて定番と言っても良いものである事くらい彼女は自覚していた。
京太郎「(…ここ巴さんの部屋なんだけど…)」
京太郎「(その辺りを突っ込むのはきっと野暮だよな)」
幾ら何でもいま来たところだと言う巴の言葉を信じる事は出来ない。
京太郎が見る限り、今日はそれほど忙しい訳ではなかったのだから。
寧ろ、全体を取りまとめる霞が復活したのもあって、この三日間よりも幾分、余裕があるように見えた。
それでもこうして巴が嘘を吐いてくれるのは、謝罪する自分に気遣ってくれているからだろう。
バレバレな彼女の嘘をそう理解する京太郎は、巴の言葉に敢えてそれを指摘する事はなかった。
巴「それより早く入っちゃって」
巴「その…見つかっちゃうと色々と面倒な事になるかもしれないし…」
京太郎「えぇ。お邪魔します」
そんな京太郎を巴は部屋へと招き入れていく。
瞬間、彼女の中で緊張が高まるのは、異性が自室にいるというシチュエーションが今までなかったからだ。
化粧を落とし、『須賀京子』と言う仮面を外した京太郎が、今、自分の部屋を背景にしている。
何処か現実感を見失ってしまいそうなその光景に、巴は羞恥よりも緊張を強めていた。
京太郎「にしても、やっぱ綺麗に片付いてますね」
巴「そ、そうかしら」
京太郎「えぇ」
彼女の部屋でまず真っ先に目立つのは指南書や参考書の類だった。
日頃から努力を怠らない彼女の本棚にはスキルアップの為の本が沢山つめ込まれている。
最近はその中にアニメ関係の本も増えてきたが、それはまだまだ極小数。
本棚の大部分は娯楽とはかけ離れた硬い本だった。
京太郎「(それ以外でも私物はあるっちゃあるけれど)」
しかし、その数は決して多くはない。
巴は京太郎に出会うまで趣味らしい趣味を持つ事が出来なかったのだから。
机やタンスなどもむき出しのままで、ぬいぐるみの一つも置かれてはいなかった。
ろくに装飾されていないその部屋を見て、主が女の子だとそう思う人は少数派だろう。
京太郎が内心、そんな言葉を思い浮かべてしまうほど、その部屋は殺風景だった。
巴「出来れば、あんまり見ないでくれると嬉しいわ」
巴「一応、掃除はしたけれど…その、あんまり女の子らしくはない部屋だから」
そんな部屋の状態を巴は良く理解していた。
こうして一つ屋根の下で暮らす彼女達は、頻繁にお互いの部屋を行き来しているのだから。
同い年である霞や初美の部屋から比べると、自分の部屋があまりにも面白味がない事くらい自覚している。
だからこそ、その部屋をジロジロと見られるのを、巴はあまり心地良いとは思えなかった。
自分もまたこの部屋と同じく面白味のない女性だと思われたらどうしよう。
そんな言葉が彼女の胸から浮かんでくるのだから。
京太郎「でも、これはこれで巴さんらしい部屋だと思うんですけどね」
巴「…私、そんなに面白味のない女かしら?」
京太郎「あぁ、ごめんなさい。そういう意味じゃないんです」
京太郎「ただ、部屋の中からでも巴さんの努力家な性格が伝わってくるなって」
しかし、京太郎は決してその部屋を面白味がないものだとは思わなかった。
つい昨日まで詰めていた霞の部屋に比べれば、勿論、殺風景である事は否定しない。
だが、そんな中で強く自己主張をする本棚には、スキルアップを目的とした本が大半を占めているのだから。
今の自分では満足せず ―― 或いは満足出来ずに、もっともっとと成長を求めた巴の努力がその本棚から伝わってきている。
京太郎「だから、俺は面白味がないなんて思わないですよ」
京太郎「寧ろ、すっげー格好良いなってそう思います」
巴「も、もう…それ女の子には褒め言葉になってないわよ」
そう拗ねるように言いながらも、巴の顔に悪いものは浮かんではいない。
それは勿論、京太郎の言葉が本心からのものだと分かっているからだ。
嘘偽りなく自身を格好良いと褒めてくれるそれが、嬉しくて仕方がない。
女性に対する褒め言葉としては不適切だとそう理解しながらも、頬が緩んでしまうくらいに。
京太郎「はは。すみません」
京太郎「でも、巴さんは勿論、女の子としても魅力的ですよ」
京太郎「綺麗なだけじゃなくて可愛いところもありますし、世話好きな性格で家事も万能なんですから」
京太郎「朝の話を蒸し返す訳じゃないですが、良いお嫁さんになると思います」
巴「…っ」カァァ
瞬間、緩んだ頬が赤くなってしまうのは、京太郎の言葉が完全に不意を突くものだったからだ。
さっきの言葉が自身を『一人の人物』として高く評価するものだとすれば、それは『一人の女の子』として評価してくれたもの。
いっそ口説き文句にも聞こえるそれは、彼女が思っていたよりも遥かに高い評価だった。
そんなものを不意打ち気味に聞かされて、恥ずかしがり屋の巴が我慢出来るはずがない。
下心をまったく感じさせないその言葉に巴は顔を真っ赤にさせながら、パッと視線を逸らした。
巴「も、もう…誰にでもそういう事言ってるんでしょう」
巴「私、絶対に騙されたりしないんだからね」
京太郎「いや、流石にこんなの誰にでも言ったりはしないですよ」
まるで心の中に防衛線を引くような巴の言葉に、京太郎は首を振って応える。
彼は基本的に人懐っこく、気安い性格だが、それ以上に場の雰囲気に敏感なのだから。
口説き文句と受け取られてもおかしくないセリフを、誰かれ構わず口にする事など出来ない。
相手が家族として認識している巴だからこそ、こうして本心を言葉に出来るのだ。
京太郎「つーか、俺、そういう奴に見えます…?」
巴「…見えるわ」
京太郎「ま、マジっすか…」
無論、京太郎のその言葉を巴は決して疑っている訳ではない。
『須賀京子』の正体を知る自分は、間違いなく彼の中で『特別』なのだから。
しかし、だからと言って、防衛線を崩さないのは、その『特別』が彼女だけではないからこそ。
最低でも他に六人の『特別』がいる彼にどうしても心が身構えてしまう。
巴「(…そもそもその『特別』な女の子達がドンドンと堕ちちゃってる訳で…)」
瞬間、巴の脳裏に浮かぶのは、自身をライバルだと言ってくれた石戸霞の姿。
巴の知る限り、彼女はまったく非の打ち所のない完璧な淑女であり、また京太郎に対しても線を引いて接していた。
だが、そんな霞も三日間一緒にいただけで、一目見て分かるレベルで恋に堕ちてしまったのである。
彼女の知る『石戸霞』と言う少女からはかけ離れたその様に、巴の心は警戒を呼びかけていた。
巴「(…ホント、注意しておかないと)」
無論、京太郎が自分の事を口説くなど巴は思ってはいない。
巴は自己評価が低い上に、京太郎の鈍感さも良く知っているのだから。
春や明星のアプローチにも微動だにしない彼が、地味な自分を口説くはずがない。
しかし、そう分かっているのは巴だけではなかったのだ。
恐らく自分以上にそれを理解していた霞が、もう完全に堕ちてしまっている。
この屋敷の中、最も攻略難易度が高かったであろう霞が恋する様を見て、気を抜く事など出来ない。
巴「(…実際、好きになっても辛いだけだしね)」
誰も京太郎の事を意識していない状態であれば、心から喜べたかもしれない。
だが、京太郎に懸想をしている『家族』は霞を含め、もう四人になってしまっているのだ。
既に過半数の『家族』が恋する乙女になってしまった状況で、巴が素直になる事は出来ない。
心優しい彼女にとって、『家族』と争うだけでも気が咎めるし、何より、霞達に女としての魅力で勝てる気がしないのだから。
巴「(顔もスタイルも何もかも負けちゃってるんだもの)」
内心ではそう思うものの、巴は決して醜い少女ではない。
あまり目立ったりはしないものの、その容姿はアイドルにだって負けはしないだろう。
スタイルも決して悪くはなく、その胸の膨らみも普通よりも大きいはずであった。
だが、自分に自信を持てない彼女は相手の有利な部分と自分の不利な部分を比べてしまうのだ。
当然、劣勢となるその戦力分析は間違いだらけなのだが、彼女はそれに気づけない。
結果、巴は心の中で引いた防衛線をより強固なものにしていった
京太郎「い、いや、でも俺、そこまで軽くないですよ」
巴「…でも、霞さん達にも同じ事言うでしょう?」
京太郎「うぐ…」
そんな巴に釈明しようとする京太郎に、鋭い言葉が帰ってくる。
それに京太郎が思わずうめいてしまったのは、実際に言ってしまったからだ。
朝から考え事に耽っていた巴はそれを知らないが、さりとて、京太郎に否定する事は出来ない。
実際にやってしまった以上、それは自身を取り繕う嘘にしかならないのだから。
彼女の為を思って優しい嘘を吐くならばともかく、そんな格好悪い嘘を口にしたくはなかった。
巴「…それより、ほら、座りましょ」
巴「お菓子も一杯、準備してるからね」
京太郎「…うっす」
結果、黙りこむしかなくなってしまった京太郎の事を巴は放っておけなかった。
そもそも彼女は彼の事を心の中で防衛線を引いてしまうほど快く思っているのだから。
さっき頑なな言葉を返してしまったのも、決して彼を傷つける為ではない。
だからこそ、巴は京太郎が凹んでしまいかねない話題を打ち切り、彼に座布団に座る事を勧めて。
巴「はい。お茶」
京太郎「ありがとうございます」
そのまま自身も座った彼女から暖かいお茶が出される。
巴が部屋に持ち込んだポッドから出てきたそれは、指先から京太郎の身体を暖めていく。
じんわりとしたその暖かさは暖房器具のない部屋の中ではとても有り難い。
だからこそ、京太郎は巴にお礼を言いながら、そのお茶を口に運んだ。
京太郎「…ふぅ」
巴「ふふ」
京太郎「え、なんかおかしかったですか?」
巴「あ、ううん。ごめんなさい」
巴「ただ…こういうの久しぶりだなって思って」
瞬間、巴が笑みを浮かべるのは、こうやって二人でのんびりする時間がここ最近、なかったからである。
インターハイ前の京太郎の頑張りは目を見張るものがあり、巴もまたそんな彼への奉仕を厭う事はなかった。
疲れた京太郎を癒す為、マッサージなども頻繁にやっていた彼女は、今、その役目を春や小蒔に奪われてしまっている。
結果、二人の距離は以前よりも開き、こうして二人っきりになる機会も数ヶ月なかった。
京太郎「…言われてみれば、ここ数ヶ月、こんな風に巴さんとゆっくりした事なかったですね」
巴「えぇ。京太郎君はモテモテだから」クス
京太郎「いや、アレ、モテてるって言うんですかね…」
何処か冗談めかした巴の言葉を、京太郎は素直に受け止める事が出来なかった。
それは彼の中で家族としての認識が足を引っ張っている事も大きい。
だが、それ以上に京太郎が気にしているのは、そのキッカケが自身の家出だったからだ。
こうして自身を気に掛けてくれているのは嬉しいが、それはそれだけ彼女達に心労を掛けてしまった裏返し。
そう思う京太郎にとって両手に花と言っても良い状況を、心から喜ぶ事など出来なかった。
巴「京太郎君は姫様達を侍らせるのは嫌?」
京太郎「勿論、嫌じゃないです」
京太郎「二人とも俺なんかには勿体無いくらい良い子ですしね」
京太郎「ただ…」
しかし、それは裏返せば、京太郎の内心に喜ぶ気持ちがあるという事でもある。
そして、その感情は今、京太郎の心を鋭く突き刺す棘になっていた。
自身から離れがたいほど二人を追い込んでおいて嬉しいとは一体、何様のつもりだ。
あまりにも不謹慎が過ぎると真面目な彼はそう思ってしまう。
巴「…理由が理由だけに申し訳ない?」
京太郎「……はい」
そんな自分を彼は隠そうとはしなかった。
勿論、そんな格好悪い自分を、美少女である巴に聞かせたくはない。
幾ら家族だと言っても、やはり男としては格好つけたいものなのだから。
そんな気持ちを京太郎が抑えこんだのは、これから巴の相談を受けるからこそ。
彼女の偽りのない気持ちを聞く前に、自身が偽るのはあまりにも不誠実だろう。
胸中でそんな言葉を思い浮かべる京太郎に誤魔化すという選択肢はなかった。
巴「…本当、京太郎君は真面目なんだから」クス
瞬間、巴が笑みを浮かべるのは、京太郎がとても可愛らしいからだ。
その見た目からは考えられないほど真面目でまっすぐな彼。
少し不真面目になればあっさりと解決する悩みも真っ向から受け止めてしまう京太郎が、巴はとても好ましい。
こうして机を挟んでいなければ、その頭を撫でてあげたいくらいだった。
巴「でも、気にしすぎよ」
巴「少なくとも、春ちゃんは今の状況を喜んでいると思うし」
彼女が口にした言葉は、決して無責任なものではなかった。
春と巴はお互いに自己主張が控えめではあるが、それでも家族としての交流はあるのだから。
彼女が一体、どれほど京太郎の事を想っているかも良く知っている。
そんな巴には春が今の状況を思い悩んでいるとは到底、思えない。
寧ろ、京太郎の側にいる時間が増えて喜んでいるだろうとさえ思えた。
巴「姫様も元々、京太郎君が大好きなんだし、嫌々やってる訳じゃないと思うわ」
加えて、巴達が姫様と呼ぶ小蒔も、京太郎に好意を持っている。
無論、それは異性に向けるそれではなく、家族としての域を出ない。
しかし、その大きさは異性のそれに負けるものではないのだ。
少なくとも、京太郎と一緒にいる小蒔はとても嬉しそうにしている。
もう何年も彼女と一緒に過ごしている巴には、それがはっきりと見て取れた。
巴「たまに辛そうな顔をするけど、それも京太郎くんと一緒にいるのが楽しい裏返し」
巴「ずっと一緒にいれば、それも飲み込んでくれるはず」
巴「アレでいて姫さまはとても強い子だもの」
巴「それは京太郎君も良く分かっているでしょう?」
京太郎「…はい」
小蒔は天真爛漫という言葉が何より相応しい少女だ。
同年代の少女たちに蝶よ花よと大事に育てられてきた彼女は、今時珍しいほど純真である。
だが、それでもその心の中には一本、太い芯が通っているのだ。
時々ではあるが、その純朴さからは想像もつかないほど強く、そして頑固な面を見せる事もある。
京太郎「(俺がこの屋敷から出てった時もそうだったもんな)」
何もかもが嫌になり、自暴自棄となって神代から離れようとしていた京太郎。
そんな彼に何を言われようとも、小蒔は決して離れようとはしなかった。
ついには実力行使で引き離されても、諦めずにずっと追い続けてきたのである。
熱中症に掛かっても尚、諦める事はなかった彼女に、自身の方が根負けしてしまった。
その記憶は今も色褪せる事なく、京太郎の中に残っている。
巴「それでも気になるって言うのなら…姫様の事を大事にしてあげて」
京太郎「…俺で良いんですか?」
巴「え?」
京太郎「…だって、俺、小蒔さんを傷つけてしまった訳ですし」
その記憶は、ただ小蒔の強さを感じさせるだけではなかった。
その日、京太郎は教えないで欲しいと霞から頼まれていた真実を、小蒔にぶつけてしまったのだから。
その苦々しくも痛い思い出は、到底、忘れられるものではない。
正直、今の京太郎には小蒔を大事にしてやれる自信などなかった。
京太郎「(…まぁ、アレほど追いつめられるような事態は滅多にないと思うけれど)」
そこで絶対にないと言い切れないのは、神代家の事をまったく信用出来ないからだ。
その始まりから理不尽であった彼らは、常に京太郎の心を追い詰めて来たのだから。
一旦、暴発した以上、幾らか心も軽くなったが、それもいつまで続くか分からない。
また同じように理不尽を突きつけられた時、自分は本当に自制出来るのか。
そんな言葉が彼の中から途切れる事はなかった。
巴「…でも、先に京太郎君の事を傷つけたのは私達の方でしょう?」
京太郎「そんな事は…」
巴「あるわよ」
巴「だって…私達は本気で京太郎君の味方をした事なんて一度もないんだから」
京太郎にとって巴達はこの屋敷で唯一と言っても良い味方だった。
神代の側にいながらも自身の事を慮ってくれる優しい人達だったのである。
だからこそ、家族と呼ぶほど心を許した彼に、しかし、巴は首を振った。
巴「…本気で貴方の事を考えるなら、ここから逃がしてあげるべきだった」
巴「神代家の手の届かない場所に逃げ延びられる手はずを整えてあげる方法なんて探せばあったでしょうに…」
巴「私たちは誰も貴方を逃がしてあげようとはしなかった」
巴「ううん。貴方を囲い込もうとする神代家の手助けをしてた…と言っても良いでしょうね」
京太郎「巴さん…」
それは京太郎の感じていた優しさが、彼の悩みを排除するものではなかったからだ。
無論、彼に並々ならぬ執着を抱く神代家から京太郎を逃がすのは難しい。
だが、手はずさえ整えれば決して不可能な事ではなかったはずだと巴は思う。
それでも彼女達がそうやって京太郎を逃したりしなかったのは、偏にリスクが大きすぎる所為。
その血筋からして神代に囚われている巴達にとって、彼らから睨まれるのは生きる術を失うのと同義だった。
巴「…分かってたのよ、本当は」
巴「女の子ばかりの中、一人だけ京太郎君が放り込まれたのも…」
巴「私達の存在そのものを、京太郎君の鎖にする事だって…」
だからこそ、巴はそれを分かっていながらも抗えなかった。
仲良くなりすぎてはダメだと分かっていても、同情と彼の好意に覚えてしまったのである。
結果、鎖で雁字搦めになってしまった京太郎は今も屋敷の中に囚われたまま。
彼女達の家族として、何事もなかったかのように生活している。
巴「…だからね、京太郎君が気に病む必要なんてないわ」
巴「私たちは結局、貴方の事を救ってあげられなかったんだから」
彼女の言葉が過去形になるのは、自分たちがもう離れられないと理解しているからだ。
同情と好意によって始まった関係は、最早、共依存の域にまで差し掛かっている。
きっとここで京太郎に逃亡を勧めても、彼は首を縦には振らないだろう。
自分たちの事を気にして、この屋敷に留まろうとするはずだ。
巴「(…何より、霞さんが堕ちてしまった時点で詰んでるわ)」
例え、そこで京太郎が逃亡したところで、きっとすぐに捕まってしまう。
石戸霞と言う少女が、京太郎に向ける執着は、神代家にも劣らないものなのだから。
自分たちの中でコンセンサスすら取る事の出来ない今、京太郎が捕まるのも時間の問題。
夏の一件から監視が厳しくなったのもあって、県外に逃げる事すら困難だろうと巴は思う。
京太郎「…それでも俺は巴さん達に感謝していますよ」
京太郎「俺がこの屋敷で、こうして普通に暮らせているのは巴さん達のお陰です」
京太郎「貴方達がいなかったら、俺はきっと今頃、自分で自分の命を絶っていたかもしれないんですから」
無論、京太郎も彼女の言いたい事は理解している。
しかし、それでも彼の中で感謝の気持ちが絶える事はなかった。
そもそも巴の言う方法は、彼女達の犠牲を伴うものなのだから。
こうして巴たちと心通わせている今、そのような事にならなくてよかったと安心してさえいる。
巴「…うん。分かってる」
巴「でも…だからこそ、私は…」
だが、その安堵でさえ、巴は申し訳なくて仕方がなかった。
そうやって京太郎が自分たちの事を思ってくれれば思うほど、自身の醜さが際立つのだから。
自己保身の為に味方になりきれなかった自分には勿体無いほどまっすぐで暖かな思い。
それを感じる度に巴の胸は痛みを強めてしまう。
京太郎「…巴さんは気にし過ぎですよ」
京太郎「そもそも俺、この生活に結構、楽しんでいるんですから」
京太郎「最近では胸の大きい美少女二人と同じ部屋で寝起きしてるってのもあって人生の絶頂期と言っても良いくらいです」
そんな巴に京太郎は冗談めかした事しか言えなかった。
二人の性格は似通っているが故に、彼女が何を気に病んでいるのかが分かるのだから。
きっとここで何を言っても、巴の心を追い詰めてしまう。
そんな京太郎に出来るのは、重苦しい空気を変える事だけだった。
巴「…もう。京太郎君ったら」
京太郎「いやぁ…だって、仕方ないじゃないですか」
京太郎「俺の人生で、これまで胸の大きな美少女とお近づきになれた事なんてないですよ」
巴「…それって京太郎君がスケベな顔してたからじゃないの?」
京太郎「ぐふ」
巴「ふふ」
その冗談に付き合いながらも、巴の内心は決して晴れる事はなかった。
自身の痛みを明るく吹き飛ばすような京太郎の言葉からは優しさからしか感じないのだから。
間違いなく京太郎は自分の事を慮って、話題を変えようとしてくれている。
その優しさに巴もまた甘えてしまいたいが ――
巴「……でもね、姫様達もきっと同じ気持ちよ」
京太郎「え?」
巴「好きな人と一緒にいられて役得だって言う事」
それでも巴はその優しさに甘えてしまう事は出来ない。
冗談に興じながらも、話題を元のところへと戻してしまう。
何気ない会話から始まったものの、彼のそれは決して軽いものではないのだから。
京太郎はきっと心から二人の事に悩んでいるのだろう。
巴「(…それを京太郎君が口にしてくれたんだから)」
何とか解決してあげたい。
巴がそう思うのは決して負い目だけではない。
こうして一緒に京太郎と過ごしてきて、巴は彼そのものが好きになってしまった。
無論、それは未だ家族としてのものではあるが、しかし、決して他の少女達に劣るものではない。
少なくとも、彼の悩みを知って、手を差し伸べずにはいられないほど、彼女は京太郎の事を想っていた。
巴「それにね、さっき京太郎君は姫様の事を傷つけたって気にしてたけど…」
巴「私はまだ今で良かったってそう思うの」
巴「少なくとも…こうして皆と一緒にいて、何十年も経った後よりはマシだし…」
何十年もの付き合いを示唆するその言葉は決して大げさなものではなかった。
神代家にとって京太郎は是が非でも自分たちの手元に置いておかなければいけない人物なのだから。
六女仙として次代の六分家を率いる立場になる彼女達との縁は一生、切れる事はない。
その関係は多少なりとも変わるかもしれないが、どちらかが死ぬまで付き合いは続く事だろう。
巴「そうやってお互いの事を知ったからこそより大事に出来るって前向きな見方も出来るでしょう?」
京太郎「…俺に出来ますかね」
巴「少なくとも、私はしてくれているとそう思ってるわ」
巴「…と言うか、そうじゃなかったら、姫様と同室で寝起きさせるなんて許しません」
巴「幾ら姫様に泣き付かれたとしても、間違いが起こっちゃったら色々と大変だしね」
神代家にとって京太郎は重要な人物ではあるが、それは小蒔も同様なのだ。
『神代の巫女』である彼女の子は次代の『神代の巫女』でもあるのだから。
少なくとも、生半可な男と面識をもたせられないし、また彼女達自身もそれを許容出来ない。
巴達にとって小蒔は仕えるべき主家の娘というだけではなく、大事な妹でもあるのだから。
巴「私たちはあんまり世間の事を知らないけれど…それでも人を見る目はあるつもり」
巴「特に滝見から六女仙に選ばれた春ちゃんを誤魔化す事なんて私達でも不可能よ」
巴「だから、京太郎君も私達の事、信じて欲しいな」
巴「貴方の事を信じた私達の目を…ね」
しかし、京太郎は生半可な男ではない。
その血筋や能力も然ることながら、その性格も紳士的かつ真面目である。
若干、ヘタレなところもあるが、それでも大事なところでは自分を譲らない。
そんな彼の事を彼女達が厭うはずがなかった。
その好意には幾分、差があるものの、小蒔との同室を許す程度には皆、京太郎を信頼している。
京太郎「……ズルいっすよ」
京太郎「そんな風に言われたら、俺、もう悩めないじゃないですか」
それは京太郎にとって決して軽いものではなかった。
寧ろ、短いながらも信頼の篭った巴の言葉にズシリと肩が重くなった気さえする。
しかし、京太郎はそれから逃げたいとは決して思わなかった。
その肩にのしかかっているのは家族と呼び慕う彼女達の気持ちなのだから。
そこから逃げて裏切るような事は絶対にしたくはないと京太郎は思う。
巴「ふふ。ごめんね」
巴「でも、京太郎君は明るく笑っている方が似合うと思うから」
京太郎「またそういうイケメンなセリフを…」
京太郎「んな事言われたら、俺、心まで京子になっちゃいますよ」
巴「そ、それはちょっと困っちゃうかしら…」
無論、それは京太郎なりの冗談だと巴も分かっている。
しかし、日々、京太郎は【須賀京子】と言う仮面を硬く、分厚いものにしているのだ。
今では違和感どころか気品すら感じさせるその姿を思えば、心から冗談とは思えない。
もしかしたら人格が分裂してしまったのではないかとそんな事を思うほど、京太郎は『化けて』いるのだから。
京子「…あら、巴さんは私の事がお嫌いですか?」
巴「え、えぇぇ…!?」
瞬間、その声音を京子のモノに切り替える京太郎に、巴は顔に狼狽を浮かばせてしまう。
それは勿論、巴が京太郎の事を強く意識してしまっているからだ。
春や小蒔達が彼を好いているとは言えても、自分が好きだとは中々、言う事が出来ない。
例え、それが家族としてのものであっても気恥ずかしさで胸の中が一杯になってしまう。
京子「…どうなんです?」ズイ
巴「そ、それは…ま、まぁ…その…」
巴「い、今までの話の流れで分かるでしょ?」
京子「分かりますが、巴さんの口からハッキリと聞かせて欲しいんです」
巴「あうぅぅ…」
何とか誤魔化そうとする巴の言葉に、京太郎は踏み込むのをやめようとはしなかった。
元々、彼は心を許した相手にはそれなりに意地悪をするタイプである。
実際、幼なじみの宮永咲にも不快にならない程度の意地悪をして来た。
そんな彼にとって、ここで退くと言う選択肢はない。
むしろ、恥ずかしがる巴から本音を引き出したいと思いっきり踏み込んでくる。
巴「す、好きよ。嫌いな訳…ないじゃない」
巴「色々と大変だろうに、それをまったく感じさせないし…立派だと思ってるわ」
京太郎「…そこまで言われると流石に照れますね」
巴「き、京太郎くんが言わせたんじゃないの…」
京太郎「あはは」
そこで京太郎が照れ笑いをするのは、巴の言葉が思ったよりもストレートなものだったからだ。
彼女の恥ずかしそうな様子から、彼はもうちょっと迂遠な言葉で応えるだろうと思っていたのである。
そんな予想とは裏腹に、真っ向から勝負に出て来られたのだから、内心、ドキっとしてしまう。
踏み込んだのは自分ではあるが、予想外の反撃を喰らってしまった気分だった。
京太郎「まぁ、でも、素直な巴さんの言葉が聞けて嬉しかったです」
京太郎「…出来れば、普段からもうちょっとそういうのが聞きたいんですけれどね」
巴「そ、そんなにホイホイ好きとか言わないわよ…」
京太郎「あ、いや、そっちじゃなくて」
巴「え?」
京太郎「巴さん、割りと自分の気持ちを表に出さないっていうか、遠慮しがちじゃないですか」
京太郎「だから、そういう素直な気持ちをもっと聞きたいなって…巴さん?」
巴「…ごめん。今はちょっと放っておいて…」カァァァ
瞬間、巴の頬が一気に赤くなってしまう。
京太郎の言う『素直な言葉』を好意のものだと彼女はそう受け取ってしまったのだから。
自分が盛大に勘違いした事を悟った彼女にとって、それは自意識過剰も甚だしい。
胸の底から湧き上がる羞恥と自己嫌悪の色は、あっという間に思考にまで手を伸ばしていた。
京太郎「あー…勿論、そういう意味も無きにしもあらずじゃなかったですよ」
京太郎「まぁ、その…俺も巴さんの事、好きですし…綺麗だと思ってるんで」
京太郎「巴さんに好きって言われた時も内心、ドキってしましたしね」
巴「…っ」マッカ
そんな彼女を何とかフォローしようとするその言葉に、巴の顔はさらに赤くなっていく。
無論、羞恥が今にも溢れてしまいそうなその胸中でも、彼の言葉は嬉しく感じた。
そういう意味もあったのだと、さっきの言葉は嬉しかったのだと、そんな恥ずかしい言葉に彼女は感謝さえしている。
だが、それを素直に表に出せないのは、それ以上に巴の羞恥を刺激しているからだ。
巴「…京太郎君のバカ」
京太郎「…ダメでした?」
巴「ダメじゃないけど…今のはちょっと口説き文句過ぎるわよ…」
結果、巴は素直に感謝を口にする事が出来なかった。
あまりにも強まりすぎた恥ずかしさは、彼女が素直になる事を阻んでいる。
その所為で、彼を罵ってしまう自分を、巴はどうしても止められない。
彼は何も悪く無いのだと分かっていても、甘えるようにして唇を尖らせてしまう。
京太郎「…堕ちちゃいそうでした?」
巴「…バカ。もう知らない」ツーン
京太郎「はは」
そこで京太郎が冗談めかして尋ねるのは、彼女の恥ずかしさを感じ取ったからだ。
心を許した相手には意地悪もするが、彼は基本的に優しい性格をしている。
これ以上の話題をあまり引きずるのを巴が望んでいない事を感じ取っていた。
だからこそ、冗談として今の話題を打ち切れるよう、デリカシーのない男を演じている。
そんな彼に巴は容赦なく拗ねながら、顔をそっと背けて。
京太郎「まぁ、話を戻しますと、巴さんはもうちょい自己主張しても良いと思うんですよね」
京太郎「何時も皆と一緒にいる時は一歩引いてますけど、そんなの勿体無いって俺は思います」
京太郎「こうして話してて思いますけど…巴さんとの会話も楽しいですし」
巴「…それは京太郎君が私に意地悪してるからじゃないの?」
京太郎「まぁ、それもありますが」
巴「そこは否定してよぉ…」
無論、巴とて京太郎が意地悪だと本気で思っている訳ではない。
こうして彼と二人っきりで会話している時にも、その優しさを感じる事は多いのだ。
さっきも自身の恥ずかしさを感じ取り、話題を変えてくれた彼に、心から感謝している。
それでもこうして面白くなさそうな顔をしてしまうのは、それが二人の立ち位置だからこそ。
こうして二人で話す機会はそう多くないが、彼女達はもう一年以上も一緒にいるのだ。
特に何かを考えなくても自然と何時もの関係に ―― 彼がからかい、彼女がからかわれる関係に戻ってしまう。
京太郎「あんまり自分に正直過ぎるのも角が立ちますけどね」
京太郎「でも、巴さんはちょっと遠慮しすぎですよ」
京太郎「PADの人にはPADとハッキリ指摘する俺のように正直になるべきだと思います」グッ
巴「…遠慮するわ」
巴「私が京太郎君みたいになっちゃうとただでさえ負担の大きい霞さんが大変な事になっちゃうし」フルフル
力強く握りこぶしを見せる京太郎の言葉に、巴は呆れの声を返した。
それは正直と言うにはあまりにも非道な行いだったのだから。
張り手を繰り出されても文句は言えないそれに巴はそっと肩を落とす。
相変わらず、貧乳やPADには容赦がないのね、とそんな言葉を思い浮かべながら、その首を左右へと振った。
京太郎「あー…確かに霞さんの負担は大きそうですね」
京太郎「色々と支えてあげたいです」ニヘラ
巴「…どうしてかしら、その言葉通りに受け止められないのは」
京太郎「巴さんがエロいからじゃないですかね」
巴「え、エロくなんかありませんっ」
京太郎の言葉に、巴が違う意味を連想してしまったのは彼の顔が一瞬、とてもいやらしいものになったからだ。
その頭の中で淫らな想像をしている事を隠そうともしないそれに誤解の余地などあろうはずもない。
しかし、京太郎はそれを彼女自身が淫乱な所為だとそう責任転嫁してくるのだ。
屋敷の中では比較的清純派のつもりである彼女にとって、それは決して受け入れられるものではなかった。
京太郎「まぁ、霞さんが色々と重そうなのはさておきですね」
京太郎「巴さんだって、重たいもの背負ってるじゃないですか」
巴「ぅ…」
そこで巴が言葉を詰まらせてしまうのは、京太郎の顔が再び変わったからではなかった。
確かに締りのない顔から一瞬で真面目な顔へと変わるその変化は軽いものではない。
しかし、それ以上に大きいのは、京太郎が何を言いたいかを理解出来るからだ。
そもそも今日の彼は雑談をしに巴を訪ねてきた訳ではないのだから。
相談を引き受けた彼としては、やはり彼女の悩みが気になってしまう。
京太郎「俺の事もそうですし、小蒔さんの事もそうですし、何より…」
京太郎「…巴さん、実家の事、すっごく気にしてますよね」
巴「……そう、ね」
本題に踏み込もうとする京太郎の言葉を、巴は決して否定しなかった。
既に一度、漏らしてしまった以上、それは彼も知っていて当然の事なのだから。
今更、ここで否定しても、話をややこしくしてしまうだけ。
一気に本題へと踏み込もうとする彼に躊躇いを覚えないでもないが、しかし、それは抵抗感に繋がるものではなかった。
巴「確かに…私がどうしても踏ん切りがつかないのは実家の事を考えちゃうから」
巴「霞さんはああ言ってくれたけれど…周りの人も同じように思ってくれるとは限らない」
巴「もし、私が勝負を引き受ける事で両親に迷惑が掛かってしまったらって…どうしてもそう思っちゃうの」
巴「勿論…私だって勝負したい気持ちはあるし、背中を押そうとしてくれている霞さんや京太郎君の言葉は嬉しく思っているけれど…」
京太郎「んー…」
だが、それはどうしても自分の中の抵抗感を超えるものではない。
それを言外に浮かべる巴の前で京太郎は短く声を漏らす。
何処か迷うような、逡巡するようなその様子は普段の彼にはあまり見られないものだった。
良くヘタレ扱いされるが、踏み込むと決めた時の京太郎は、とても頑固なのだから。
こうして悩みを漏らす相手の前で、躊躇いを浮かべる事など滅多にない。
京太郎「…こんな事言ったら怒られるかもしれないですけど…」
巴「…良いわ。京太郎君の意見を聞かせて」
そんな珍しい様子から出てきたのは、前置きの言葉だった。
もしかしたら巴を不愉快にさせるかもしれないと言うそれに、彼女は躊躇う事なく頷く。
巴が望んでいるのは悩みの解決であり、当たり障りない優しい言葉ではないのだから。
忌憚ない京太郎の意見が聞きたいと促しの言葉を口にする。
京太郎「…じゃあ、遠慮無く言わせてもらいますけど…俺はそこまで巴さんが親に遠慮するのかが分かりません」
京太郎「だって、巴さんのところの家族関係はもう破綻しているじゃないですか」
巴「っ…」
瞬間、京太郎から返ってきたのは本当に容赦のない言葉だった。
もう既に巴と両親の縁は切れているも同然なのだと鋭くそう指摘するそれに巴は思わず言葉を詰まらせる。
それは彼の言葉があまりにも忌憚なさすぎるものだったからではない。
その言葉が決して荒唐無稽なものではない事を内心、理解しているからだった。
京太郎「そもそも、巴さんがこの一年でご両親と会った回数はどれくらいですか?」
巴「…一回…よ」
京太郎「そうですね。それも正月の…親戚の集まりがあった時だけ」
京太郎「決して巴さんに会いに来てくれた訳じゃありません」
巴「…」ギュッ
それでも京太郎は巴に対して一切の容赦をしなかった。
無論、辛そうに言葉を詰まらせる巴に事実を突きつけるのは彼にとっても楽しい事ではない。
だが、ここで手心を加えたところで、問題を先送りにするだけ。
いや、既にその問題が彼女の心を圧迫してしまっている事を思えば、悪化させてしまう可能性さえある。
京太郎「湧ちゃんみたいにほぼ毎日、会わなきゃ家族じゃない…なんて滅茶苦茶な事は言いません」
京太郎「ですが、そういったもののついででしか会わない相手を本当に家族だなんて言えるんですか?」
巴「……」
京太郎の言葉を巴はどうしても否定出来ない。
それは楽しそうに両親の事を語る湧の姿がどうしても自分と重ならないからだ。
自分は決してあんな風になれないのだと彼女は内心、諦観を覚えてしまっている。
だからこそ、巴は湧に羨望や嫉妬を向けた事はない。
ただ、微笑ましさと眩しさを感じるだけであった。
巴「…でも、私が二人から生まれたのは確かなのよ」
それでも巴が抵抗するように声をあげるのは、両親との繋がりが決して断ち切れないからこそ。
彼女がどれだけ諦めても、血縁と言うものは決してなくなったりしないのだ。
ましてや、神代に纏る分家 ―― 特に六分家は血統に対する考え方が旧時代的である。
例え、一年で一回しか会わない相手であっても、情を捨てきる事は出来ない。
京太郎「そうですね。確かに巴さんは狩宿の娘である事に違いはありません」
京太郎「…でも、俺は血の繋がりなんてそんなに大層なもんじゃないと思います」
巴「え…?」
巴とは違い、『外』の世界で生きてきた京太郎。
そんな彼の言葉は血縁というものの重さを真っ向から否定するものだった。
それに巴が疑問の声を漏らすのは、京太郎が両親の愛を一心に受けて育ってきたからこそ。
その人生の大半を親の愛を受けて育った彼が、血縁を否定するとは思わなかったのだ。
京太郎「世の中、血が繋がってても、子どもを虐待する親や放置する親がいるんですよ?」
京太郎「子どもを愛さない親なんていない…だなんてキレイ事でしかありません」
今の京太郎は自身を神代に引き渡すしかなかった父親の悲哀を知っている。
そんな父親をどうしても許し切る事が出来なかった母親の悲嘆を分かっている。
しかし、だからと言って、親の愛と言うものが普遍的だと思うほど、脳天気ではない。
自身の周りにいる少女たちが血縁者からどういう扱いをされてきたかを考えれば、そのようなキレイ事を信じられるはずがなかった。
京太郎「子どもを産めば、自動的に親になる訳じゃないんです」
京太郎「子どもと向き合って、親になろうとして…それでようやく『家族』になれるのだと俺は思っています」
巴「……」
京太郎がそう思い至ったのは、幼少期の頃から親と引き離された小蒔の話を聞いたからである。
ようやく修行を終え、両親と面会出来た時に、自分は置いて行かれてしまった。
親に迎えに来ては貰えなかったのだと涙ながらに語る小蒔に、彼は大きな影響を受けている。
こんなにも愛らしく、天真爛漫な少女でさえ捨てられてしまうのであれば、血縁など何の意味もない。
少なくとも、湧を除いた彼女達には重苦しい鎖でしかないのだろう。
京太郎「実際、俺たちもお互いを家族だって認識しているのは、ひとつ屋根の下で暮らしているからじゃないでしょう」
京太郎「お互いを思いやる気持ちがあって、共に支え合う気持ちがあって、そして、皆を好きだってそう思っているからこそ」
京太郎「俺たちはお互いの事を家族とそう呼べるんだって思ってます」
だからと言って、京太郎は悲観したりはしない。
それは彼の周りにいる少女たちが、京太郎にとってとても大事な『家族』であるからだ。
例え、血縁が鎖でしかなかったとしても、新しい『家族』を作る事が出来る。
同じ時間を過ごし、思いを通わせれば、血縁などよりも素晴らしい関係に至れるのだと彼は経験的に知っているのだ。
京太郎「…でも、巴さんの両親は、貴女と向き合っているようには思えません」
京太郎「俺には六分家とやらのことは良く分かりませんが…それでも実の娘に会えないほど忙しい訳ではないでしょう」
京太郎「それなのに自分たちに火の粉が掛かりそうになった時には、率先して止めにやってくる…」
京太郎「そんな保身しか考えないような連中と、巴さんは本当に家族だってそう言えるんですか?」
巴「そ…れは……」
自身に踏み込んでくる京太郎の言葉が、巴の心を切り裂いていく。
それは勿論、彼の言葉が決して否定しようのない事実だと分かっているからだ。
無論、分家の中でも外様扱いされる事が多い狩宿家は、決して暇な訳ではない。
石戸や神代の指示によって内外問わず働かされるのが常であった。
しかし、実の娘に会いに行けないほど休みがない訳ではない。
忙しい事は忙しいものの、それは並の社会人よりも少しハードな程度だ。
巴「(それは私の方もまた同じで…)」
そうやって相手に会おうとしないのは決して両親だけではない。
巴もまた率先的に彼らと旧交を温めようとはしなかった。
それは決して六女仙としての役目が、忙しいからなどではない。
六女仙は小蒔の世話をするのが主な役割ではあるが、もう彼女は高校卒業を間近に控えているのだから。
甲斐甲斐しくついてまわり、あれもこれもと世話をする必要などない。
巴「(…それに私はもう高校を卒業していて)」
巴が高校生と六女仙を兼任している時期ならばまだ言い訳も出来ただろう。
だが、日中の大半を捧げなければいけない高校を、彼女は既に卒業しているのだ。
そんな巴にとって、時間と言うのは決して貴重なリソースではない。
最も六女仙が忙しくなる今の時期でも、こうして京太郎と雑談に興じる余裕があるのだから。
京太郎「…日頃、放置している癖に、自分の旗色が悪くなったら娘に縋りにやってくる」
京太郎「そんな両親を庇う巴さんに、俺は虐待された子どもの姿が重なります」
京太郎「悪いのは自分なんだって、両親は悪くないんだって」
京太郎「そう必死に弁明する子どもと…今の貴女はどう違うんですか?」
巴「…………」
それでも心の何処かで両親を庇ってしまう巴に、京太郎はジッと視線を向ける。
真剣そのものなその目に彼女は心を鷲掴みにされたような錯覚さえ覚えた。
決してその問題から逃げる事は許さないとそう告げるようなそれに、彼女は応えられない。
それを応えてしまった瞬間、自分の中で何かが終わってしまう事を、巴は本能的に悟っているのだから。
京太郎「…いい加減、幻を信じるのは止めにしましょう」
京太郎「巴さんが今、必死に護ろうとしているものは、最初からなかったんです」
京太郎「いえ…以前はあったのかもしれませんが、もうなくなってしまったんですよ」
そうやって沈黙を護る巴が、どれほど崖っぷちに立たされているのかを京太郎は良く理解している。
自分の目から逃げるように俯いた彼女の顔は、迷いに大きく揺れているのだから。
きっと彼女の胸中は、今、様々な感情でグチャグチャになっているのだろう。
そう分かっていても、京太郎はその言葉を止めたりはしない。
崖っぷちに立った巴を突き落とそうと、静かに言葉を重ねていく。
京太郎「それに巴さんは、決して一人じゃありません」
京太郎「貴女を家族だってそう言ってくれる人は沢山いるじゃないですか」
京太郎「霞さん達だってそうですし…俺だってそうです」
京太郎「元々、なかったものをないと認めるだけで、貴女は何も変わりませんよ」
その言葉はとても優しいものだった。
今まで冷酷に事実だけを突き付けていたものとはまったく違う。
その声音からして暖かくなったその変化に、巴の心は抗えない。
限界一杯まで追い詰められた心が、その優しさに足を滑らしそうになっているのを感じる。
京太郎「怖いのも抵抗感があるのも分かります」
京太郎「でも、俺たちは決してそんな巴さんを放っておきません」
京太郎「それによって生じる不利益から、必ず貴女の事を護ります」
京太郎「だって、俺達は『家族』なんですから」
巴「…っ」
『家族』。
その言葉は巴の心に染み入るように入り込んでいく。
血縁を否定した上で齎される優しいその言葉は、巴の心を揺れ動すのだ。
迷いと言う鎖に縛られ、決して動く事がなかった認識がゆっくりと動き始める。
その感覚に巴は思わずその唇を開いて ――
巴「……本当に?」
京太郎「えぇ。本当ですよ」
京太郎「こんな大事な場面で嘘なんて吐きません」
尋ねる巴に応えるその言葉は決して誤魔化しや優しい嘘ではない。
元々、京太郎にとって狩宿巴と言う少女は、代替の効かないほど大事な相手なのだから。
悲しみや痛みを背負う彼女の事を放っておけるはずがない。
自身の持ちうる全力を持って巴を護り支えようと彼は本心からそう思っている。
巴「(…本気、なんだ)」
巴「(京太郎君…本気で私の…『家族』になろうとしてくれている…)」
だからこそ、その言葉は巴の胸に届いてしまう。
無論、それは彼女に両親を捨てさせようとするものだと彼女も分かっている。
だが、まるで悪魔の囁きのようなそれは、自身の中に染みこむほど甘く、そして優しいものだった。
まったく顧みてはくれない両親とは違い、心から彼女を思うその甘さに巴の口は勝手に動き始める。
巴「…一つ聞かせてくれるかしら」
京太郎「えぇ。勿論」
巴「…京太郎君は一体、どれだけ私の味方になってくれるの?」
京太郎「え…?」
基本的に控えめな彼女は、考えなしに発言する事など滅多にない。
場の雰囲気や話の流れを読み、その場その場に合わせた言葉を吟味しながら口を開くタイプである。
しかし、その言葉は、思考と言うクッションを飛び越えて形になってしまっていた。
まったく自覚する事なく漏れでてしまったそれに、京太郎も、そして巴自身も驚きを感じる。
巴「(私、どうして、こんな事…)」
巴「私達だって何時までもこうして一緒に暮らしている訳じゃないわ」
巴「何時かそれぞれの家に戻る時がやってくる」
巴「でも、ここで両親と敵対する事になれば、私の味方が二人減るかもしれない」
巴「…その損失に足るほどのモノを貴方は私にくれるの?」
京太郎「…それは」
しかし、それでも彼女の言葉は止まらなかった。
それは決して京太郎を詰るものではない。
ただただ、冷静に、そして冷徹に未来を見通した上での言葉。
しかし、その冷たさとは裏腹に、その奥には燃えたぎるような熱が灯っている。
まるで釜の蓋を開けたようなその熱気に、京太郎は口篭った。
京太郎「…多分、無理です」
京太郎「俺は神代と言う環境の中で、あまりにも無力ですから」
京太郎「まったく何の力もないどころか…皆のおかげで人並みの生活が出来ていると言っても良い」
巴「……」
だが、それも一瞬の事。
どれだけ考えても、彼の中には彼女の損失を埋めるものなどないのだから。
自身の価値を未だ良く知らない京太郎にとって、出てくるのは情けない言葉のみ。
そんな自分に自己嫌悪を感じるものの、彼は言葉を止めなかった。
自分がどれほど情けないかを京太郎はもう嫌というほど良く知っているのだから。
今更、その自己嫌悪に足を取られて、大事なものを見失ったりしない。
京太郎「だからこそ、俺は自分の持ちうる全てで、貴女の事を支えます」
京太郎「俺に出来る事なんて微力でしか無い事は分かってます」
京太郎「ですが、それでも…俺は巴さんの力になりたい」
京太郎「例え、後に不利益を残す事になっても…親に心を縛られたままで良いとは思えないんです」
巴「……」
今の彼にとって最も大事な事は、巴に自分の気持ちを届ける事だった。
無論、その成功率は決して芳しいとは言えない事を京太郎は理解している。
今の彼がやっているのは感情論に依るゴリ押しにほかならないのだから。
巴が求めるような実利を何一つとして定時出来ない以上、鼻で笑われても仕方がない。
しかし、それでも諦めたくはない京太郎はただただ実直な言葉だけを重ねていった。
巴「(…まったく…もう)」
巴「(本当に…不器用なんだから)」
ここで誤魔化してくれるならば、巴もまた立ち止まる事が出来た。
自分に何もない事を認めず、虚勢を張るのであれば表面上の変化だけで済んだのである。
しかし、京太郎は意図しない彼女の言葉に応え、真摯にその胸の内を見せた。
そんな彼を前にして、言葉を濁して良い理由など巴には見つけられない。
巴「…じゃあ、応援…してくれる?」
京太郎「え?」
巴「霞さんとの勝負よ」
巴「霞さんじゃなくて、私の事を応援してくれるかしら?」
だからこそ、巴は躊躇いがちに言葉を漏らしてしまう。
それはずっと彼女が胸中で秘めていた言葉だった。
自身よりもずっと優秀で綺麗で家柄も良い霞ではなく…自分の事を優先して欲しい。
それは巴が長年、胸中に抑えこみ、そして意識してこなかったものだった。
自分が霞よりも優先されるなどあり得ないと、最初から否定し、見ようともしなかった願望だったのである。
京太郎「勿論ですよ」
京太郎「俺は誰よりも巴さんの勝利を望んでいます」
巴「(あ…)」トクン
だが、それは今、叶ってしまった。
あり得ないとそう思っていたその望みが、目の前の京太郎にあっさりと実現させられてしまったのである。
瞬間、彼女の胸の内側から溢れるのは色のついた歓喜の感情だ。
今までの人生で最大だと言って良いその波に巴は抗えない。
その胸がときめくようにして脈打った瞬間、自身の心が大きく変わっていくのを感じる。
巴「(…そう…なのね)」
巴「(私…ずっとこれを望んでたんだ…)」
あらゆる面で自分よりも優秀な霞にコンプレックスを抱き続けていた巴。
そんな彼女にとって、自身が生まれてきた意味と言うのはとても曖昧なものであった。
それを定義しよう彼女も努力を積み重ねたが、しかし、どうしても霞の存在を超える事が出来ない。
結果、彼女はその気持ちに蓋をし、ずっと諦めてきた。
そんなもの手に入るはずがないと自分を誤魔化しながら、漫然と生きてきたのである。
巴「(…多分、両親の事をどうしても突き放せなかったのも…それが原因なんでしょう)」
古い価値観の中で育った彼女にとって血縁というのはとても大きいものだ。
しかし、それでも破綻している家族関係にこだわり続ける必要などない。
他の六女仙がそうであるように見切りをつけてしまえばそれで良かった。
それでも彼女が両親に対して遠慮し続けていたのは、彼女にとって『両親』と言うものが唯一無二であった所為。
霞よりも自分の事を優先してくれる『かもしれない』相手の事を、巴はどうしても突き放す事が出来なかったのだ。
―― それは期待と呼べるほど大きなものではない。
少なくとも、彼女はそんな自分が胸中にいた事を知らなかった。
両親に対して見切りをつけられないのも、家族の情が残っている所為だとそう思っていたのである。
だが、彼女の本心は、そして本能はずっと求めていた。
霞よりも自分の事を優先してくれる『誰か』の事を。
霞の事を知っても尚、自分の事を一番だとそう言ってくれる人を諦めきる事が出来なかったのだ。
巴「(…きっと私は自分で思っていたよりもずっと我慢してたのね)」
巴「(ううん…我慢するのが当然になっていたって…そう思うべきかしら)」
その欲求は京太郎の言葉によって外へと開け放たれてしまった。
思考から忘れ去られ、本能にだけ根ざしていたそれは彼の真摯さによって目覚めてしまったのである。
彼女が思考するよりも先に、京太郎へと問い詰めるような言葉を放ってしまったのもその所為。
一度、蓋が開いてしまった欲求は、もう思考では抑えられないほど大きく育っていたのだ。
巴「…………卑怯よ」
京太郎「え?」
そして、その欲求は京太郎によって満たされてしまった。
無論、京太郎はそれが一体、巴にとってどれほど大きいものだったのかを理解してはいない。
その心の表層こそ理解していても、彼女がその奥底に抱え込んでいたものまでは知らないのだから。
こうして霞ではなく巴の事を選んだのも、彼女の背中を押した責任感が大きかった。
巴「私だって一人の女の子なんだから」
巴「そんな事言われたら…両親の事を忘れるしかないじゃない」ニコ
京太郎「っ」ドキ
彼女の奥底でずっと育ち続けたその願望が一体、どれほど凄まじいものだったのか。
彼女自身ですら分からないそれを京太郎が理解しているはずがないだろう。
そう思いながらも、堕ちていく巴の心は止まれない。
自身が内心、望んでいたものをくれた京太郎に笑みを見せてしまう。
歓喜と抑制からの解放感を一杯に浮かべるその表情は、ただ魅力的ではなく艶やかなものだった。
巴「(…まぁ、勿論、忘れるだけで縁を切るのは出来ないけれど)」
六女仙の役目が終われば、巴もまた実家に帰る事になる。
そこで血縁者達を取り纏めていく事を考えれば、完全に縁を切る事など出来ない。
だが、それでも彼女にはもう両親の事を必要以上に考えるつもりはなかった。
彼の言う通り、自身の家族関係は既に破綻してしまっているのだから。
『両親』と言う言葉は、霞や京太郎に背中を押されても尚、遠慮し続ける理由にはならなかった。
京太郎「…じゃ、じゃあ…」
巴「えぇ。京太郎君の言う通り…霞さんと勝負するわ」
巴「まぁ…正直、勝てるとは思わないけれど…」
京太郎によって気持ちは大分、前向きになっている。
しかし、だからと言って、巴と霞の間にある実力差がなくなる訳ではないのだ。
今のままの自分では霞の舞を上回る事は難しい。
その不安をポツリと漏らす巴の前で、京太郎はゆっくりと首を左右に振った。
京太郎「朝の時も言いましたけど、俺はそうは思わないですよ」
巴「…そう?」
京太郎「えぇ。巴さんなら霞さんに勝つ事だって出来ます」
京太郎「霞さん自身もそう言ってたじゃないですか」
巴「…」ム
その言葉はとても優しいものだった。
不安がる彼女を精一杯、元気づけようとするそれは、巴にとっては間違いなく有り難いものである。
にも関わらず、今の彼女はあまり面白い心地ではなかった。
京太郎の ―― 霞よりも自分を優先してくれると言った彼の口から出てくるライバルの名前に、どうしても心が反応してしまう。
巴「…京太郎君」
京太郎「あっはい」
巴「今は私といるんだから他の女の子の名前を出さないで欲しいわ」
京太郎「あー…すみません。デリカシーなかったですね」
巴「…」チク
だからこそ、巴の口から漏れる不機嫌な言葉に、彼は申し訳無さそうな声を返した。
こうして家族同然に過ごしているとは言え、巴もまた年頃の女の子。
ましてや、件の名前はライバルでもある霞のものなのだから。
あまりホイホイと霞の名前に頼られてはあまり面白くはないだろう。
巴「(…私、どうしちゃったのかしら)」
そう思って謝罪する京太郎の前で、巴は胸中に困惑の色を浮かべていた。
彼の謝罪を経て幾分落ち着いた今では、どうしてあんなに不機嫌になったのかまったく分からない。
何かとてつもなく面白くなかった事だけは覚えているが、その源が何処からなのかが見えてこないのだ。
しかし、目の前で申し訳なくする彼の姿からさっきの感情が幻ではなかった事を感じ取り、内心、胸を傷ませる。
京太郎「でも、巴さんなら大丈夫だっていうのは決して嘘じゃないですよ」
京太郎「俺は巴さんの弟子で、その舞も良く見せて貰っているんですから」
京太郎「素人でも分かるくらいの凄さを評価しないなんて考えられませんよ」
巴「…もう。持ち上げすぎよ」
そんな胸の痛みも、京太郎の言葉によって吹き飛んでしまう。
若干、大げさであるようにも感じるが、それだけ持ち上げられるのは悪い気分ではない。
ましてや、巴にとって京太郎は特別と言っても良い相手になりつつあるのだ。
彼からの賛辞に嬉しく思わないはずがない。
巴「…でも、ありがとう」
巴「私、頑張ってみるわ」
京太郎「えぇ。俺も応援しています」
巴「…応援だけ?」
京太郎「あ、勿論、俺も出来る限りのサポートはしますよ」
京太郎「まぁ、俺に出来るサポートなんてたかが知れていますけど」
巴の前で、京太郎があまりにも情けない言葉を口にする。
それに彼女が唇を尖らせるのは、その一言で雰囲気が霧散していくのを感じるからだ。
折角、良い雰囲気だったのに、どうしてそこでヘタレるのか。
まるで悪魔のような手管で自身を堕とそうとしていた京太郎が魅力的だっただけに、どうしても巴はそう思ってしまう。
巴「…さっきも言ったけど、私も女の子なんだからね?」
巴「……こういう時はもうちょっと夢を見させて欲しいな」ジィ
京太郎「っ」ドキ
唇を尖らせながらも、巴の瞳に宿る期待の色は薄れなかった。
ついさっき俯いていたのが嘘のように、まっすぐ京太郎へと視線を送ってくる。
ここでヘタレるのは許さないのだとそう告げるような視線に、彼は内心、冷や汗を浮かべた。
彼女の期待は、裏返った時が恐ろしくなってしまうほど大きく、そして深い。
京太郎「勝負の日まで誠心誠意、巴さんに尽くさせていただきます」
巴「ふふ」ニコ
改めて言い直される京太郎の言葉に、巴は満足気な笑みを浮かべた。
無論、彼女はさっき京太郎がヘタレた時の事を忘れてはいない。
胸中が盛り上がる中、思いっきり冷水をぶっかけられたような心地は一生でも数えるほどしか経験したことがないのだから。
しかし、それすら忘れてしまったような笑みを彼女が見せるのは、彼の言葉を心から信じられるからこそ。
律儀な京太郎がこうして口にした言葉を違えるはずがない。
彼と過ごした一年弱と言う期間は、彼女にそう思わせるのには十分過ぎるものだった。
巴「…それだけ?」
京太郎「か、勘弁してくださいよぉ…」
それでも巴はそうやって京太郎に促すのを辞めようとはしない。
それは勿論、日頃、彼女の方が京太郎に弄ばれているからだ。
彼の負い目を見つけた今、少しくらいは反撃してもバチは当たらないだろう。
京太郎の言葉に満足した巴はそんな言葉を思い浮かべながら、その笑みを意地悪なものへと変えて。
巴「だーめ。もっと素敵な事一杯、言ってくれなきゃ許さないわ」
巴「京太郎君はそういうの得意でしょう?」
京太郎「人をタラシみたいに言わないで下さいよ」
巴「実際、タラシだと思うけどね」クス
冗談めかした声音ではありながらも、それは決して嘘ではなかった。
事実、京太郎は既に三人の少女たちを堕としているのだから。
既に堕ちていた春を含めれば四人 ―― 屋敷にいる過半数が彼に懸想しているのである。
一歩間違えれば修羅場に発展しそうなその状況は京太郎がタラシでなければあり得ないだろうと巴は思う。
巴「…少なくとも、そういう才能がまったくないのであれば私に親との決別を決意させるとか無理でしょうし」
京太郎「うぐ…」
何より、京太郎の手管は人の心を把握したものだった。
鋭く『古いモノ』を否定する事から始め、優しく『新しいモノ』を肯定するモノへ。
そのタイミングも、一切の偽りなく感情をまっすぐぶつけてくる不器用さも絶妙と言う他ないものだったのだ。
もし、相手がそこまで人心掌握に優れた京太郎でなければ、根が頑固で優柔不断な自分は今もまだ迷い続けていただろう。
巴「何より、私だって…」
巴「(…………あれ?)」
そんな言葉を内心に浮かべた瞬間、巴は自分が何を言おうとしているのかを見失ってしまった。
いや、より正確に言えば、途中で自分が言おうとしているのかに気づき、思考が白紙に戻ってしまったのである。
しかし、そうやって思考が真っ白になっても、さっき自身が思い至ってしまった真実をなしには出来ない。
一旦、白紙になった思考が再び動き出した頃には、彼女の胸には強い羞恥が湧き上がってきていた。
巴「(…私、これ、もしかして…)」カァァァ
堕ちている。
その言葉は意外なほどスッキリと彼女の心の中に収まってしまった。
まるで最初からそこが定位置であったようなその納得感は、彼女の頬を赤く染める。
その感覚は自分が京太郎の事を好きになってしまっているという証左だったのだから。
巴「(多分…あの時…よね)」
巴の脳裏に浮かぶのは、京太郎が霞よりも巴の応援を優先すると言った時の事。
あの瞬間、胸の底から湧き上がった歓喜の色は彼女の人生で最も大きいものだったのである。
今までの人生で経験したどんな嬉しい出来事でも比べ物にならない勢いは、巴の心をあっという間に飲み込んでしまった。
結果、彼女は元々、異性として強く意識していた京太郎の事を、一人の男として好きになってしまったのである。
巴「(…いや、確かに嬉しかったのは嬉しかったし…)」
巴「(私自身、決してチョロくないつもりはなかったけれど…)」
たった一言。
それも責任を取る形で自分よりも選んでくれただけで恋に堕ちてしまった自分に巴は頭を抱えたくなった。
初恋も知らない自身に免疫と呼べるようなものが皆無なのは分かっているが、これではあまりにもチョロ過ぎる。
幾らその言葉が内心、飢えるほど渇望していたものだとしても、言い訳など出来ないチョロっぷりだ。
巴「(……でも)」
しかし、それは決して巴にとって嫌なものではなかった。
若干、情けなささえ感じるものの、それは彼女に初めての恋なのだから。
身の内から湧き上がるむず痒さ混じりの嬉しさは、決して拒否感を覚えるものではない。
寧ろ、そこまで京太郎に心奪われてしまった自分を当然だと受け入れてしまっている。
つい昨日まで恋を知らず、夢見がちな面を持つ彼女にとって、その恋は運命づけられていたものだった。
巴「(…きっと京太郎君じゃなかったら、私もこんな風にはならなかっただろうしね)」
確かに京太郎は巴が望んでいた言葉をくれた。
しかし、幾ら免疫がないとは言え、その言葉だけで堕ちるほどチョロくはない。
少なくとも、表面的な付き合いしかしていない相手に同じことを言われても、彼女はきっと心動かされる事はなかっただろう。
そんな自分がこうして一瞬で恋に堕ちてしまったのは、常日頃から一緒に暮らし、絆を強めてきた京太郎だからこそ。
お人好しで、頑固なのにヘタレで、それでいて人タラシな彼相手でなければ、自分は未だに恋を知らないままだった。
その言葉は巴の中で揺るがぬ真実として受け入れられている。
巴「(…まぁ、問題は)」
京太郎「あの…巴さん?」
巴「(…この子が後、どれくらい女の子を堕としちゃうか…よね)」
それでも彼女の胸中は決して穏やかではない。
そもそも京太郎は今の時点でも競争率の高い相手なのだから。
春を始め、多くの『家族』達 ―― 特にライバルでもある石戸霞が、彼の事を慕っているのだ。
その数は増える事はあっても減る事はないのだから、安心など出来るはずがない。
巴「(…でも、どんな相手にだって負けたくない)」
しかし、だからと言って、巴は京太郎の事を諦めるつもりはなかった。
ずっと内心に秘めていた飢えは、今、彼へと向かっているのだから。
今まで抑え続けてきた反動が一気に出てしまったようなそれは彼女自身では制御出来ないほど大きい。
どれだけ不利だと、難しい戦いになると分かっていても、京太郎の『一番』になりたいとそう思ってしまう。
巴「…ごめんね。急に黙っちゃって」
京太郎「いや、俺は良いんですけれど…でも、大丈夫ですか?」
巴「…えぇ。大丈夫よ」
京太郎「…でも、さっきから顔赤いですよ」
京太郎「今日はもう休んだほうが良くないですか?」
そんな巴の顔はさっきから紅潮し続けている。
その濃度は薄いものから濃いものまで様々ではあるが、その朱色が消える気配はなかった。
それを彼女の体調不良が原因だと判断した京太郎は気遣いの言葉を口にする。
その優しさは嬉しいものの、しかし、巴はそれを受け入れる訳にはいかなかった。
巴「大丈夫よ。体調そのものは悪くないし」
巴「…と言うか、多分、今、私は絶好調って言っても良いくらいだから」
京太郎「絶好調…ですか?」
長年の重荷から解き放たれた今の彼女にとって、身体の重さを殆ど意識していなかった。
まるで羽のように軽い舞を踊れてしまいそうなその感覚は、彼女の気分を高揚させている。
ましてや、今の彼女はようやくその心を恋へと漕ぎ着けた状態なのだ。
自身に『初めて』を教えてくれた彼との時間を、ここで終わりにはしたくない。
巴「えぇ。だから、私の事は気にしないで」
巴「……まぁ、京太郎君の方がダメだって言うのならば、私も大人しく寝るけれど」
京太郎「いや、俺も大丈夫ですよ」
それでも彼の事を気遣ってしまう巴に、京太郎はゆっくりと首を振った。
この屋敷に来てから彼の起床時間も早くはなったが、それでも時刻はまだ23時にも到達してはいない。
元々、寝つきも寝起きも良い方ではあるし、まだまだ巴と話していても大丈夫だろう。
そう判断した京太郎の前で巴はニコリと笑みを浮かべて。
巴「じゃあ…京太郎君は何かしたい事がある?」
巴「私、何でもしてあげる」
京太郎「し、してあげるって…」
まるで心から京太郎に尽くそうとするようなその言葉は彼の心を揺さぶった。
無論、普段から巴は尽くすタイプであり、京太郎も彼女に甘えている。
しかし、その言葉は普段よりも何処か色っぽく、そして艶やかなものだった。
まるで性的なものまでその中に含んでいるようなその声音に、健全なその身体はどうしても反応してしまう。
巴「…あ、え、エッチな事はまだダメだからね?」
京太郎「わ、分かってますよ」
巴「(……分かっちゃうんだ…)」
分からなくても良いのに、とそんな言葉が浮かんでしまう自分を巴は抑える事が出来なかった。
無論、こうして異性との共同生活を送る中で、『そういった事』は好ましくないと言う共通認識は彼女達の中にもある。
しかし、彼女達と一緒に暮らしているのは、そういった盛りである男子高校生。
しかも、日頃から自分たちに囲まれて禁欲を強いられている彼が暴走したところで咎められるはずがない。
そもそも悪いのは京太郎を屋敷へと縛りつけ、禁欲させている自分たちだと彼女達は良く分かっているのだから。
巴「(…多分、京太郎君に襲われても、皆、嫌だなんて言わないでしょうし…)」
それは未だ京太郎の事を異性として意識していない小蒔や、弟としか思っていない初美も同じだ。
その胸中には負い目も大きいが、しかし、それに負けないほど京太郎の事を想っているのだから。
これまで我慢に我慢を重ねてきた彼が性欲に負けたところで、決して嫌いになったりしない。
寧ろ、他の誰かにその矛先が向かわぬよう、受け入れる姿がありありと巴には想像出来る。
巴「(私なら…あの…き、キスくらいは全然オッケーって言うか…)」カァァ
そんな彼女達とは違い、巴はもう京太郎に心を奪われてしまっている。
今まで胸中に積み重ねてきた『家族としての好意』を全て『異性としての好意』に書き換えられてしまったのだ。
こうして一緒にいる最中も胸のドキドキが止まらない彼女にとって接吻程度は許容範囲。
寧ろ、そこから先へと繋げられる事を、巴は内心、期待していた。
京太郎「…と言っても、今日はもうやるべき事終わらせちゃいましたしね」
京太郎「マッサージして貰うほど身体が凝ってる訳じゃないですし…」
巴「そ、そう…」
期待する彼女とは裏腹に、京太郎から漏れる言葉は常識的なものだった。
無論、京太郎も年頃の男子であり、巴の言葉を意識してはいる。
だが、それ以上に彼は、彼女のことを家族として想っているのだ。
ここで下手な事を言って、恥ずかしがり屋な巴との仲をギクシャクさせたくはない。
そう思った京太郎の言葉は、巴にとって若干、肩透かしなものであった。
京太郎「あ、じゃあ折角なんで舞の練習しません?」
巴「今から?」
京太郎「えぇ。だって巴さん、今、絶好調だって言っていましたし」
京太郎「その時の感覚を覚えるのって結構、大事だと思うんですよ」
無論、絶好調だった頃のイメージに囚われて、逆にスランプに陥ってしまう可能性というのは否定出来ない。
しかし、そのリスクを加味しても、自身の感覚を掴むメリットと言うのは大きいと京太郎は思う。
そうやって経験を積み重ねれば、意図的に絶好調になる事だって不可能ではないのだから。
スポーツの分野でトッププレイヤー達も同じことをしていると思えば、今からの練習は決して無駄にはならないはずだ。
巴「まったく…」
京太郎「…え?ダメでした?」
そう思った京太郎の言葉に巴は呆れるような声を返した。
勿論、そうやって自身の事を考えてくれる彼の事を彼女はとても嬉しく思っている。
事実、その頬はにやけ、どうにも締りのない顔を見せていた。
巴「…一応、私は京太郎くんがしたい事を聞いてるのよ?」
京太郎「あー…その、俺も巴さんの舞が見たかったんで」
巴「…っ」ドキ
それでも声音に呆れを浮かべてしまうのは、彼の答えが質問の意図とズレている所為。
そう告げるような巴の声に、京太郎は視線を外しながら応えた。
何処か気まずそうなそれは間違いなく誤魔化し混じりのものだろう。
そう分かっていながらも、巴は自身の胸が甘く疼いてしまうのを止める事が出来なかった。
巴「…もう。本当に人をのせるのが上手なんだから」
結果、京太郎に甘い顔をしてしまう自分を、巴は決して嫌う事が出来ない。
元々、彼女は六女仙の中でも、特に彼に対して甘かったのだから。
日頃から誠心誠意、尽くしていた巴にとって、京太郎からの求めは何よりも嬉しい。
例え、それが誤魔化しのものであると分かっていても、さらに頬を緩めてしまう。
巴「でもね、一つだけ言っておくけど…私、結構、尽くしたい方だから」
巴「京太郎君の優しいところは素敵だと思うけど…でも、私に対しては遠慮は要らないわ」
巴「…だから、次はちゃんと京太郎君が『したい事』教えてほしいな」ジィ
京太郎「わ、分かりました」
巴「…ん。宜しい」ニコ
それでも念を押す巴の視線は、決して甘いものではなかった。
次はもうそんな誤魔化しには騙されないぞ、とそんな意図を込めた視線に京太郎は頷くしかない。
そんな彼に満足気な笑みを浮かべながら、巴はゆっくりと立ち上がった。
このまま京太郎と雑談に興じるのも楽しいが、彼のリクエストは舞の練習なのだから。
それに応える為にも早めに移動した方が良い。
巴「それじゃあ…一緒に稽古場に行きましょうか」
京太郎「はいっと…」ノビ
そう促す巴の前で、京太郎もまた立ち上がる。
そのまま軽く背伸びをするのは、寒さで身体が硬くなっているのを感じたからだ。
電気は通っているものの暖房器具が許されない環境下でじっとしていたら身体も強張ってしまう。
凝りと呼べるほど大きいものではないものの、思わず伸びをしてしまうくらいに。
巴「ごめんね。寒かった?」
京太郎「大丈夫ですよ。何だかんだ言って慣れましたし」
瞬間、巴は謝罪の言葉を口にするが、それは京太郎にとって謝られるものではなかった。
確かに冬を間近にしても暖房をつけられない生活と言うのは辛いが、既に彼は一度、冬を乗り越えているのだから。
ドテラやヒートテックなど、優秀な防寒具のお陰で、寒さに凍えるような事はない。
少なくとも、巴と話している最中に寒さを意識した事はあまりなかった。
巴「そ…そう…」
そのまま自身の横に並ぶ京太郎に巴は思わず言葉を詰まらせてしまう。
若干の動揺混じりのそれは彼がすぐ隣にいるという状況を彼女が意識しているからだ。
無論、これまでもこうして二人で並んだ事はあったし、その距離感も変わってはいない。
変わったのはそれを必要以上に意識してしまう彼女の心の方だった。
巴「(ほんのすこし…ほんのちょっとだけ手を伸ばせば…)」
京太郎「あぁ、そう言えば、この前の事なんですけど…」
巴「へ、へぇ…」
京太郎と手を繋ぐ事が出来る。
その言葉は彼女の中で決して収まる事はなかった。
勿論、巴は恥ずかしがり屋であり、そのように女性から積極的に行くのははしたないと思っている。
だが、そのような建前で抑えきれるほどその衝動は生易しいものではなかったのだ。
一緒に並んで歩き、彼の話に相槌を打ちながらも、意識が京太郎の手から離れようとしないくらいに。
巴「(せめてさっき寒いって言ってくれたら私も頑張れるのに……)」
しかし、それほどまでに意識しても、巴はどうしても踏ん切りをつける事が出来なかった。
元々、彼女は優柔不断なタイプであり、また京太郎の事も人並み以上に想っているのだから。
ここで強引な行動に出て、彼に嫌われてしまったらどうしよう。
そんな言葉が彼女の欲求の前に立ちふさがっていたのである。
巴「(確かに春ちゃんとか姫様とかは良く手を繋いでいるけれど…)」
巴「(それは二人がそういうキャラだからって言うのもあるし…)」
巴「(私は二人ほど京太郎君と一緒にいる訳じゃないから、そこまで心を許されていないかも…)」
結果、彼女の胸中で、グルグルと言葉が渦巻き続ける。
それは巴が未だ自分の事を正当に評価出来ていない所為だ。
京太郎のお陰で幾分、前向きにはなったものの、その性格まで変わった訳ではない。
幼いころから積み重ねてきた自分への不信感がそう簡単に消えるはずがなかった。
京太郎「…の」
巴「(…それについさっき好きって気持ちを自覚したばっかりだものね)」
京太郎「…………ん?」
巴「(あんまりがっついて嫌がられると立ち直れないし…)」
京太郎「…巴さん?」チョイチョイ
巴「ひゃあ!?」ビクッ
瞬間、巴の肩を突く指先に彼女がビクンと身体を跳ねさせる。
そのまま弾かれたように相手の方を見れば、そこには心配そうな京太郎の顔があった。
それは巴が途中から自分の話にまったく何も反応しなくなったからである。
それだけならばまだしも、巴は一人で考え事に耽るような表情を見せていたのだ。
まるでまた悩みが増えてしまったような彼女の事を、京太郎はどうしても放っておけなかった。
京太郎「大丈夫ですか?」
巴「え、えぇ、大丈夫よ」
京太郎「……じゃあ、さっき俺が何の話してたか覚えてます?」
巴「え…?」
そんな彼に巴が誤魔化しの言葉を返すのは、自身の気持ちを打ち明ける事が出来ないからだ。
京太郎と手を繋ぎたくて内心、悶々としていたなど知られたら恥ずかしくて死んでしまいかねない。
だからこそ、首を振って大丈夫だとアピールする彼女に、京太郎は一歩踏み込んでみせた。
これが軽い悩み程度なら彼も気にしないが、その悩み方はあまりにも深刻そうなものだったのだから。
また巴が一人で何かを抱えているのかもしれないと思えば、躊躇などするはずがなかった。
巴「…えっと、確か……アレよね」
京太郎「アレって?」
巴「えっと…あの…はっちゃんの話だったわよね」
京太郎「いや、それはもう終わりました」
巴「あぅぅ…」
結果、記憶を一生懸命掘り起こすハメになった巴の努力は報われる事はなかった。
確かに京太郎はその話をしていたが、それはもう終わってしまったのだから。
既に次の話を始めていた彼にとって、巴の答えは疑念を深めるものでしかない。
それを瞳に浮かべながら、真っ直ぐ自身を見つめる京太郎に、彼女は誤魔化しが通用しない事を悟った。
巴「…ごめんなさい。聞いてなかったわ」シュン
京太郎「……いや、こっちの方こそすみません」
京太郎「俺の話、面白くなかったですよね」
巴「そ、そんな事ないわ!」
申し訳無さそうに口を開く巴に対して、京太郎もまた表情を暗くしながら応える。
彼女を責める事なく、自分に理由を求めるその姿に巴の胸は鋭い痛みを感じた。
そもそもこうなってしまった原因は、自分がまったく別の事を考えていた事にあるのだから。
それがこうして京太郎を悲しませているとなれば、声を我慢出来るはずがない。
巴「ただ…」
京太郎「ただ?」
巴「う…うぅぅぅ…」カァァァ
それでも、巴は素直に内心を口にする事が出来ない。
京太郎の為にはそうした方が良いと分かっているのに、あと一歩のところで踏み出す事が出来ないのだ。
そんな自分に声が漏れるものの、高まり過ぎた羞恥心はそう簡単には収まってくれない。
結果、その顔を赤く染める巴はオズオズとその唇を動かして。
巴「……き、京太郎君の手が寒そうだなって…そ、そう思って」マッカ
巴から漏れたその言葉は、決して間違いではないが、本当でもなかった。
彼女にそのような意図があったのは事実だが、それは胸中を埋め尽くすほどのものではないのだから。
あくまでもその言葉は誤魔化しに過ぎない。
しかし、それでも彼女はその紅潮を強め、モジモジと身体を揺らしてしまう。
巴「だ、だから…え、えっと、その…私も…寒くて…」
それは彼女の心が、これを好機と捉えているからだった。
ここでちゃんとアピールをすれば、決して京太郎は無碍にはしない。
寒いと言えば、彼はそれを緩和する為の提案をしてくれるはずだ。
その中にはきっと自身の望みを叶えるものもあるはずだと彼女は小さな声でアピールを続ける。
その度に強くなっていく羞恥心はもう彼女の胸では収まらず、ゆっくりと顔を俯かせていった。
京太郎「…あー…そうですね」
京太郎「俺もちょっと手が寒かったところなんですよ」
巴「ほ、本当?」ジィ
京太郎「えぇ。つーか、この時期ですし、誰でも寒くて当然ですよ」
巴「そ、そうよね。うん…そうよ」パァ
そんな巴の顔が京太郎の言葉によって一瞬で明るくなる。
勿論、彼女もまた彼の言葉が自身のフォローであると分かっていた。
しかし、自身もまた手が冷たいと返す京太郎に、期待が強くなってしまう。
もしかしたら、自分が望んでいたものが手に入ってしまうのかもしれない。
そんな言葉に鼓動を早くした巴は期待混じり彼の事を見上げた。
京太郎「…だから、もし、良かったら、なんですけど」
京太郎「ここは一つ、俺と手を繋いでみませんか?」
巴「~~~~っ」ボンッ
幾ら京太郎が鈍感であっても、言葉と身体の両方で期待をアピールするような巴を前にして誤解などするはずがない。
さっきの巴に負けないほどおずおずとした様子で、彼女の望んでいた言葉を口にした。
瞬間、巴の顔が爆ぜたように赤く染まり切るのは、その嬉しさが限界を超えてしまったから。
彼女の予想よりもずっと大きく、そして激しい感情に、巴の耳まで赤く染まっていく。
京太郎「あ、もし、嫌でしたら断っても…」
巴「い、いいいいいい嫌じゃない!」ブンブン
巴「全然!これっぽっちも!一欠片たりとも嫌じゃないわ!!」グッ
京太郎「そ、そう…ですか」タジ
その変化を京太郎は羞恥心が故だと受け取った。
彼の知る狩宿巴と言う少女は、とても恥ずかしがり屋なのだから。
夏には自分から手を繋いでみせたが、異性から手を繋ごうと提案されるのはまた別なのだろう。
そう思った京太郎の言葉に、巴は大きく首を振りながら応えた。
手に握り拳を作りながら返事をするその様は、京太郎に彼女らしからぬ勢いを感じさせる。
京太郎「(…まぁ、正直、理由は良く分からないけど…)」
京太郎「(こうして巴さんが必死になるほど俺と手を繋ぎたがってくれているのは確かだろうし)」
京太郎「…では、お手を拝借して宜しいですか、我が姫」
巴「はうぅ…♥」キュゥゥゥン
それに京太郎がたじろいだのは一瞬の事。
すぐにその心を切り替えた彼はその胸に手をおきながら、そっと頭を下げた。
まるで舞踏会で貴婦人をダンスに誘うようなその仕草は、巴の胸を掴む。
何処か野暮ったいほど恭しいそれは、恋に憧れてた少女にとってあまりにも効果的過ぎた。
それが演技であると分かっていても甘く疼く胸は止められず、その顔もまた子猫のように蕩けてしまう。
巴「よ、喜んでぇ…♪」フニャア
京太郎「(ヤバイ)」
京太郎にとって狩宿巴は、頼れる年上のお姉さんであった。
自己主張こそ控えめではあるものの、ココぞという時に口を出し、話の流れを引き締めてくれる常識人。
そんな彼女が今、自分の手を取りながら、蕩けた顔を晒しているのだ。
まるで自分と手を繋げる事が嬉しくて嬉しくて堪らないと言うようなその表情に、彼の胸も反応してしまう。
京太郎「はは。一体、どれだけ寒かったんですか」
しかし、京太郎はそれを表に出したりしなかった。
それは無論、彼が既に石戸霞と言う例を見ているからこそ。
自分たちの纏め役であった彼女の甘えっぷりから比べれば、これくらいはまだ可愛いで済む。
胸はドキドキはするものの、狼狽を顔に浮かべるほどではなかった。
巴「そ、それは…とってもよ…♪」
巴「とってもとっても…寒かったんだから…ね…♥」ギュゥ
そんな京太郎の言葉に答えながら、巴はギュっと手に力を込める。
京太郎に重ねた手を掴むものへと変化させながらのそれは、勿論、彼女が寒がっているからではない。
そもそも今の彼女は外の寒さなどまったく気にならないほど甘く火照っているのだから。
内側から湧き上がる歓喜と言う名の熱に囚われた巴にとって、その手を離したくない気持ちの方が遥かに大きい。
京太郎「あー…それは申し訳ない事をしました」
京太郎「お詫びに誠心誠意、エスコートさせていただきます」ペコリ
巴「うん…♪」
まるで絶対に京太郎と離れないと言っているような巴の手。
普段の彼女らしからぬ大胆なそれを、しかし、京太郎は無碍にはしなかった。
こうして手を繋いでいるだけで、巴がどれほど嬉しそうにしているかが彼女の顔から伝わってくるのだから。
今までにないほど嬉しそうにしている巴を前にして、手を離したいなど思えない。
京太郎「(まぁ、そりゃ巴さんは春みたいなタイプじゃないし、ちょっと恥ずかしいけれどさ)」
京太郎「(それでも彼女がここまで喜んでくれるなら俺も吝かじゃないし…)」
何より、彼らの目的地はもうすぐそこだ。
幾ら屋敷の中が広いとは言っても、それはあくまでも一般家庭に比べればの話なのだから。
既に巴の部屋を出てから数分も経っている事を考えれば、すぐに稽古場へと着いてしまうだろう。
その短い間でさえ我慢できないほど京太郎は恥ずかしがり屋ではなかった。
京太郎「でも、そんなに寒かったのなら、もっと早くに言ってくれてよかったんですよ?」
巴「手を繋いで欲しいなんて…恥ずかしくて言えないわよ」
そして、彼よりも恥ずかしがり屋な彼女は今、羞恥心など感じている余裕さえなかった。
愛しい人と手を繋ぐと言う初めての感覚に、巴はもう虜になってしまっているのだから。
その手から伝わってくる感覚全てを歓喜に変えた彼女には、その口で言うほどの恥ずかしさなど何処にもない。
顔に浮かべる嬉しさの色を強めながら、京太郎と共に歩き始める。
巴「(…それにしても京太郎君の手…大きくて硬くて安心する…)」
巴「(…やっぱりって言ったら失礼だしおかしいけれど…京太郎君も男の人なのね)」
その胸中に浮かぶ言葉もまた京太郎の手で一杯であった。
自身のそれよりも一回り以上大きく、そして岩のように硬い男の手。
何処かゴツゴツとしたそれは彼女の人生の中で殆ど感じた事のないものであった。
しかし、それに巴が恐怖を覚えたりしないのは、それが京太郎のモノだからこそ。
その心を奪った唯一無二の相手であれば、その異質さも安心感に変わってしまう。
巴「ふふ…♪」
京太郎「どうかしました?」
巴「…ううん。何でもない」
巴「ただ…やっぱりこの前とは違うなって思って」
巴の胸中に浮かぶのは東京に到着してすぐの事。
当時の彼女は目に見えて沈み込む京太郎を、どうしても放っておく事が出来なかった。
放っておいた方が良いと分かりながらも、気晴らしに連れだしたのである。
それは途中までは上手く言っていたものの、原村和と片岡優希と言うイレギュラーにより失敗してしまった。
旧友との予期せぬ遭遇は、京太郎の心をそれまで以上に追い込んでしまったのである。
巴「(それを私はそのままにはしておけなくて…)」
自分からついつい手を伸ばして京太郎の手を取った。
その時の記憶は未だ彼女の中で色褪せる事はない。
巴は今まで自分から異性に触れようとした経験など数えるほどしか無いのだから。
京太郎を勇気づける為とは言え、あまりにもはしたない事をしてしまったと一人悶えた回数は一度や二度ではない。
巴「(…でも、あくまでも悶えていただけで、今みたいなドキドキはなかった)」
後で思い返しても京太郎に対して胸がときめくような感覚を覚えたりはしなかった。
それは勿論、当時の彼女にとって、須賀京太郎と言う少年が、ただの家族であったからである。
幾ら恥ずかしがり屋の巴とは言え、家族と手を繋いだ程度で鼓動を乱したりはしない。
だが、今の彼女はそれがまるで嘘のように胸を甘くときめかせている。
認識一つで信じられないほど変わってしまった自分の感覚が、しかし、彼女は嫌ではなかった。
京太郎「この前…ですか?」
巴「うん。ほら、夏に一緒にお出かけしたでしょ」
京太郎「あぁ。あの時のデートですか」
巴「で、デート…」カァァ
そんな巴にとってその言葉は顔を赤く染めるのに十分過ぎるものだった。
無論、京太郎は『デート』と言う単語にまったくの思い入れがない事くらい分かっている。
こうして彼が軽く口にするのは男女二人で遊びに行く事をそう表現しているだけなのだろうと冷静な部分は理解しているのだ。
しかし、それでも彼女は自身の頬が紅潮するのを止められない。
若干、強引でさえあった二人の散策を、京太郎がデートとそう受け止めてくれている。
かつてならばともかく、今の巴にとってその嬉しさは抑えられるほど簡単なものではないのだ。
京太郎「色々とありましたけど、アレは楽しかったですね」
巴「…本当?」
京太郎「勿論ですよ。巴さんのコスプレ姿も見れましたし」
巴「も、もぉ…それはいい加減、忘れてよぉ…」
しかし、そんな嬉しさに負けないほどの羞恥心が、今の彼女の心からは湧き上がってきていた。
無論、京太郎に懸想し始めた巴にとって、二人っきりの『デート』は素晴らしい思い出である。
思い返すだけで頬が緩んでしまいそうなそれは、しかし、ただ嬉しいだけでは済まされない。
その最中、彼女は京太郎の玩具にされ、そしてコスプレまでするはめになったのだから。
それをほじくり返す彼の言葉に、巴の紅潮が恥ずかしそうなものに変わっていく。
京太郎「いや、アレは無理ですって」
京太郎「本来ならスマホか何かで写真を撮って永久保存したいくらい可愛かったのに」
巴「そんな事されちゃったら私、絶対に死んじゃうと思うわ…」
それでも京太郎はその手を緩めたりはしなかった。
それは勿論、からかわれる巴の事がただ可愛いと言うだけではない。
それよりも彼の心を動かしているのは、巴の自信のなさだ。
致命的なまでに自分を正当に評価出来ていない彼女には、多少、強引でも魅力を訴えていった方が良い。
そう思った京太郎の前で巴は恥ずかしそうに言葉を漏らして。
京太郎「いやいや、死んでもらったら困りますよ」
京太郎「だって、あの時、撮影会するって言ってたのに、結局、まだやってませんし」
巴「…………あ゛っ」
瞬間、巴が濁った声をあげるのは、今まで有耶無耶になっていたそれを思い出したからだ。
インターハイ後から色々とあって完全に忘れていたが、当時の彼女は確かにそう乞われていた。
それを了承した記憶はないものの、巴は既に服を買ってもらってしまっている。
それを着ての撮影会を断れりきれる自信が彼女の中にはなかった。
京太郎「…やっぱり忘れてたんですね」
京太郎「俺はこんなにも楽しみにしてたっていうのに」
巴「だ、だって…それは…」
巴にとってそれが封印しておきたい記憶だったという事もある。
だが、何よりも大きいのはその後すぐに京太郎が家出した事なのだ。
あの出来事によって今までにないほど焦燥を覚えた自分が、撮影会の事など覚えていられるはずがない。
そう返した時に彼が覚えるであろう申し訳無さを思えば、本心を口にする訳にはいかなかった。
京太郎「これはお仕置きとしてもう一つ…それも過激なコスプレ衣装を準備するべきですね」
巴「む、むむむむむ無理よ…!絶対に無理…!!」マッカ
しかし、だからと言って、京太郎の言葉をそう簡単に受け入れられるはずがない。
そもそも彼女にとって彼が買ってくれた衣装 ―― 露出の少ない魔法少女風なモノ ―― でさえ恥ずかしくて堪らないものなのだから。
男である京太郎が『過激』と口にする衣装は間違いなくそれ以上のものだろう。
その上、彼はその衣装をただ着せるだけではなく、撮影会をすると宣言しているのだ。
その光景を想像するだけで巴の顔は真っ赤に染まり、羞恥で舌が回らなくなってしまう。
京太郎「絶対に他人に見せたりしないと誓ってもダメですか?」
巴「え…えぇぇ…」
にも関わらず、巴の拒絶は少しずつ弱くなり始めていた。
元々、彼女は心を許した相手にはどうしても押しが弱くなってしまうタイプなのだから。
その上、こうして巴をグイグイと押している相手は、彼女を堕とした京太郎なのだ。
こんなにも自分の恥ずかしい姿を見たいと言ってくれる彼の事が、巴は決して嫌ではない。
巴「……そんなに見たいの?」チラ
京太郎「当然じゃないですか」
京太郎「俺の心はもうあの時の巴さんにガッチリ掴まれちゃったんですから」
巴「~~~っ♥」キュゥゥン
だからこそ、ポツリと呟いてしまった彼女の言葉に、京太郎は力強くそう返した。
瞬間、巴の胸が締め付けられるような感覚を覚えるのは、その言葉が嬉しすぎるからこそ。
勿論、それは京太郎の冗談であろうとは思っているものの、彼の顔はあまりにも真剣なのだ。
好きな男からの何処か告白にも似たその言葉に、恋に堕ちたばかりの彼女が耐えられるはずがない。
巴「…………絶対に他人に見せたりしない?」ポソポソ
京太郎「えぇ」
結果、一時の感情でズルズルと流されてしまう自分を巴は止める事が出来なかった。
彼女も頭の中ではそんな事してしまったら後で後悔するはめになると分かっている。
しかし、今の巴にとって大事なのは、自身をこんなにも喜ばせてくれた京太郎に応える事だった。
自分自身よりも優先するべき事項として心に刻み込まれたそれは、彼女の心に許容の色を広げていく。
巴「…あ、あんまりエッチなのはダメよ…?」
京太郎「大丈夫です。さっきのは流石に冗談ですから」
巴「そ、そうなんだ…」
首を振って答える京太郎に、巴は内心の残念さを否定しきれなかった。
無論、清純派を自認する彼女は、そのような衣装を着たいと思っている訳ではない。
だが、彼が選んでくれた過激な服ならば京太郎の理性を打ち破れるかもしれないのだ。
そのまま彼に襲われる光景に若干の期待を抱いていた彼女にとって、その答えは安堵と肩透かしを同時に感じさせる。
巴「…………じゃあ、良ぃ…かも…しれない…」カァァァ
京太郎「おぉぉ…マジっすか…!」
巴「ぅ…うん…」
そんな感覚を振りきっての声は、して大きいものではなかった。
普段の彼女よりもさらに控えめで小さなそれを、しかし、京太郎は聞き間違える事はない。
間違いなく巴は撮影会の事を了承してくれている。
その喜びを顔に浮かばせる京太郎に巴の顔もまた緩みそうになるが。
巴「た、ただし…幾つか条件があるわ」
京太郎「条件…ですか?」
しかし、その前に言っておかなければいけない事がある。
ついつい京太郎に甘い顔をしてしまう自分に巴はそう言い聞かせた。
既に幾つかの条件で合意はしているが、それはあくまでも最低限のもの。
ある意味ではここから先の方が重要だと彼女は気を引き締めさせる。
巴「…とりあえず今すぐは無理」
巴「少なくとも『お祭り』が終わるまでは私もそっちに集中したいし…」
巴「それに……えっと、出来れば自分で服を作りたいから」
京太郎「え?」
瞬間、巴が口にした言葉は京太郎にとって予想外のものだった。
無論、今すぐ無理だと言う事くらいは彼も分かっている。
今の彼女達が普段よりも忙しいのは一緒に暮らしている京太郎も知っている事なのだ。
だからこそ、彼が驚いたのは、彼女が服を作りたいと口にした方。
巴の裁縫技術の高さは知っているが、それでもその言葉は意外なものだった。
巴「だって、京太郎君、衣装を買うつもりだったんでしょう?」
京太郎「まぁ、俺が着てもらう立場な訳ですし…」
巴「そういうのが余計だって言ってるの」
しかし、巴にとってはそうではない。
こうして自分が衣装を準備しなければ、京太郎が準備する事になるのだから。
無論、そうやって彼が買ってくれた衣装を無碍にするつもりものの、どうしても気が進まない。
日頃から自分たちに気遣ってくれている京太郎に、お金まで使わせたくはなかったのだ。
こそっと次スレー
【咲】京太郎「今日から俺が須賀京子ちゃん?」小蒔「大台突入の10です!」【永水】 - SSまとめ速報
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続きはあっちに投下します
こっちは適当に埋めてってくださいな
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