・艦娘×提督の学園もの
・全然艦隊とか関係ありません
・エロ、グロといった描写があるかもしれません
・なんかドロっとしているかもしれません
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前スレ
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ヒロインまとめ(○はエンド艦娘、次回登場は不可、○付いてない子は出せます)
【1周目】
電(幼馴染)
浜風(娘)
あきつ(後輩)
足柄(先輩)
○青葉(同士)
【2周目】
大和(管理人)
○不知火(親友)
飛鷹(教師)
五十鈴(転校生)
北上(同居人)
【3周目】
雷(クラスメイト)
球磨(スラッガー)
間宮(バイト先の店長)
○那珂(超人気アイドル)
阿武隈(義妹)
【4周目】
陽炎(幼馴染)
川内(学生であり怪盗)
卯月(妹分)
榛名(後輩)
○暁(妹)
【5周目】
初春(宇宙人)
叢雲(↑のライバル)
長門(ながもん)
響(帰国子女)
山城(元カノ)
BAD。
【6周目】
千代田(義妹)
吹雪(親友)
赤城(大食いチャンピオン)
由良(後輩)
古鷹(フライフェイスとオッドアイの演劇の天才)
BAD。
【7周目】
比叡(記憶喪失・幼馴染)
○漣(家政婦)
明石(近所のお姉さん)
大井(クラスメイト)
レ級(クラスメイト)
【8周目】
○明石(義姉)
鈴谷(同居人)
文月(姉)
熊野(財閥令嬢・崩壊寸前)
白露(クラスメイト・電波)
【9周目】
○潮(従妹)
村雨(幼馴染)
鳳翔(先生)
朧(後輩)
武蔵(応援団長)
【10周目】
深雪(親友)
曙(従妹)
大鯨(母)
翔鶴(弟の彼女)
瑞鶴(弟の彼女)
BAD。
【11周目】
伊58(未亡人)
隼鷹(お嬢な同級生)
初風(面白い同級生)
蒼龍(担任)
ビスマルク(留学生なお姫さま)
いまここ。
【8月2週】
ゴーヤさんがご飯を作っていた。
凄く…チャンプルーです。
…いや、どうでもいいけど。
提督「…食堂のおばちゃんはいないんですか?」
ゴーヤ「お盆だからね、皆帰ってるよー」
提督「ゴーヤさんは?」
ゴーヤ「君みたいな子がいなければ帰るんだけどねー…」
提督「……すいません」
ゴーヤ「ううん、いいよいいよ、それに…」
提督「…それに?」
ゴーヤ「あ、…うん、あんまり、お墓参りはしたくないなあ、って」
提督「……怖いんすか?」
ゴーヤ「……あのねー…下げるよ?」
提督「冗談っす!」
コミュ対象 00:07に一番近いレス
伊58 **0/500
隼鷹 **2/500
初風 500/500
蒼龍 *46/500
ビス 365/500
おめでとう初風
先に12週を募集するね、エピローグも並行して書く
一人目>>+4
はいちょっとした学園もの
二人目>>+4
すまんがそういう場合は安価下で、ごめんね
ガチサイコストーカーといじめられっことか濃すぎませんかね
三人目>>+4
お、おう
4人目>>+4
オアシス枠睦月
ラスト>>+4
阿賀野(いつもニコニコガチサイコストーカー)
瑞鳳(いじめられっこ)
龍驤(陰陽師)
睦月(おなちゅー)
翔鶴(従妹で居候な部活の後輩)
わかんねぇ
とりあえずエピローグ書き始めるよ
おなちゅーって同じ中学、という認識で良いのでしょうか
今日はもうエピローグで終了?
【エピローグ】
夏休みが終わり、新学期。
忙しない喧騒に包まれた教室は、夏休みの話題で持ちきり。
そんな中、教卓に頬杖をついてそれをつまらなそうに見つめる一人の先生がいた。
「………教師って忙しいんだよ、提督くん、知ってる?」
「…何故俺に」
「一番前だもーん!」
そう、席替えで引いてしまったのは、一番前の席。
蒼龍先生が、もーやだやだと駄々を捏ねながら俺へと思いの丈をぶつけている。
「大体さー…おかしいよ、あんな仕事量、新人なのにー」
「…そ、そうですか」
「それに!酷くない!?遊びに行く予定だったのに、飛び飛びの休みばっかりで連休も取らせてくれなかったんだよ!」
「…酷いですね」
「夏休みが楽しいのなんて、学生の時代だけだよ…ふふふ、提督くんも覚悟しておくことだねー…」
「……はあ」
…いきなり社会の辛さを見せつけられた、そっちのほうが酷い話である。
しかし……。
「…提督くん?」
「いえ、大変なんですね、先生も」
「そーだよ!この前もねー!」
教卓にむにぃと押し付けられた胸。
和服から覗く肌。
これを特等席で見られるというのなら、このくらいの労力も悪くはない気がする。
「聞いてるのー!?」
「あ、はい」
…話、長いなぁ……。
「……ふぅ、お仕事いっぱいでちー…」
「…あー…大変でちー……」
「………あー…」
「わかりましたよぉっ!」
私室。
プライベートガバガバな俺の部屋の鍵を開けて入ってきた寮母が、ベッドに寝そべった俺の耳元で囁く。
あ、ここだけ切り取ると官能小説みたい。
……畜生、疲れてんのかな、俺。
「いやー助かるよ、いつもごめんね」
「絶対謝罪の気持ちとか持ってないですよねゴーヤさん…」
「そんな事ないよぉ!」
「…いいですよいいですよ、俺は働くだけですから」
「んー…そんなに言うなら、それっ!」
ぎゅむっ。
肩に、柔らかい手で加えられた圧力。
「…ゴーヤさん?」
「肩揉みでち!」
「……え、いや」
「まぁまぁ、大人しくする!」
見た目に反して、中々に強く込められた力。
…うん。
結構気持ちいい。
「終わったら馬車馬のように働くんでちよー」
「…そうですよねぇ…知ってましたよ、ええ」
…まあ、この人にはお世話になってるし。
仕方ないから頑張ろう。
>>115 はい というか多分プロローグ作成に時間かかると思います…
「……隼鷹さん」
「はい?」
「…いえ、進路希望表…」
「…ああ…」
この間に続き、第二回目の進路希望表も出していなかった隼鷹さん。
勿論使い走りにされたのは俺。
…畜生、せめて少しくらい揉ませろ、理不尽だぞ。
「………んー…」
「ああ、白紙なら白紙でもいいって、蒼龍先生が…」
「…よしっ!」
相変わらず白紙の用紙を机に並べてうーんと唸っていた彼女が、手を叩く。
そして、乱暴にシャーペンを走らせ始めた。
第一希望の枠を大きくはみ出す勢いで記された、雑な文字。
『適当に生きる』
「……ちょ、あの」
「…うん、これ、出しといて」
「…へ?でも」
「いーからいーから」
ずずい、と用紙を押し付けられた。
…これでいい、って。
出しに行くのは俺なんですけれども。
…はぁ。
「…そっか」
突き抜けるような晴天の屋上。
ビスマルクは、その箱を受け取って、大きく息を吐いた。
飾りの少ない、けれども綺麗な細工を施された箱。
お姫さまの紋章。
ケッコンの印。
「…返すよ、ビスマルク」
「……それが、貴方の返事なのね」
「…うん」
「……提督くん」
「……」
声に頷く。
彼女が、大きく息を吸い込んだ。
「……ばぁーかっ!」
そして、叫んだ。
屋上から、この校舎に、学園に、街に響く程の大きな、大きな声で。
その叫びと一緒に投げたのは、綺麗な細工の、お姫さまの紋章。
それは学校の裏山の雑木に当って、バキバキと枝を折りながら転がっていった。
「……あー…スッキリしたっ!」
「…ビスマルク、お前な」
至近距離で聞いた耳がキーンとする。
一体どんな声量なんだ。
「…提督くん」
「…お、おう」
ビスマルクが、人差し指で俺を指す。
「後悔しても、もう遅いからね!」
言って、彼女はいつもの快活な笑顔を作ったのだった。
「………」
「……すいません」
「…別に良いのよ、ええ、別に良いわ、提督くんが私以外の女の子をそういう目で見ても」
初風の部屋、ベッドの上で正座。
見た目ではわかりにくいが、今の彼女は非常に怒っている。
何となくわかる。オーラ的な。
「……」
「…あの、初風さん」
「…そんなに不満かしら」
「…へ?」
「……胸…小さいの」
そこで初めて怒りのオーラが消える。
明らかに落ち込んだ様子で、目線を下に向けた。
「…提督くんは…」
「……初風」
「…あっ」
そんな彼女を見ていられなくて。
めちゃくちゃぷるぷると小刻みに震える手で、正面から抱きしめた。
これは武者震いである。断じて。
「…あの」
「……大丈夫」
「…俺は、お前が好きだ」
……噛まずに言えた。
なんとか格好が付いた気がする。
「……提督くん」
「…ああ」
「……流石に手がぷるぷるしすぎてるわ」
「…………そうか」
はい失敗。所詮こんなもんでした。
「でも…」
「…好きよ、私も」
「だから、あんまり不安にさせないで」
「……努力す――」
「断言して」
「…はい」
「よろしい」
初風も、俺の背に手を回した。
その手も少しだけ震えていたのは…まあ、黙っておこう。
【初風 HAPPYEND】
11週目はこれにて終わり
プロローグ書いてくる
お付き合いいただきありがとうございました
案外続くもんだなぁ
帰って付けたらブランコ2ランでうっひょいだったけどその後上本のタイムリーでテレビ消したら寝ちゃった、結果は案の定だったよ
とりあえず明日休みだし半分は書けてるから今からさっさと完成させる
んで次回の埋めネタ、方向性を模索するっぴょん
>>+4
A.構ってうーちゃん、というお話。
お兄さんお兄さん、うーちゃん暇だっぴょん。
構って欲しいっぴょん。
ねー、ねーってばー。
むー、何で無視してるっぴょん…。
……がばー!ふっふー、押し倒してやった…ぴょん……。
………な、何でうーちゃんの手を握ってるっぴょん?
え?我慢できない?何が!?
B.北上さんと梅雨の昼下がり、というお話。
付き合って、何か変わったかって?
…うーん……いや、変わんない変わんない、結局前と同じだよね。
あーでも、うん、あれは気持ちいいから好き。
……やる?
いいじゃん、外雨だし、やること無いし。
ゴム?…あー…めんどい。
まーまー、ほらてーとっくん逃げんなこら、なになに、じっとしてりゃすぐ終わるってー。
C.赤城の欲、というお話。
…あのですね、食事だけではないんですよ、ええ。
流石に年中そんな事は考えていません、年320日くらいです。
……だって、食事は重要ですから。
え?
…あ……提督くんの事は……考えて、ますよ。
……えっと…そういう、ことも、考えて無いことも無い、です。
…そ、それは言えません!言えないです!
………わかりました。
…あの、いつも、その、一人でする時は、貴方の事を、むぐっ!?
1032行とかいう最長作になった
相変わらず意味不明だけどね
投下する
【プロローグ】
「…お兄さん、お兄さんってば」
「んが……」
「…遅れますよー……?」
朝、小さな力で揺すられて目覚めた。
鼻の先には、白髪の少女―翔鶴。
今年からこっちの高校に通う、弓道部に入ることになっている後輩で、従妹。
今は家に居候している。
「……お兄さん…」
「…おはよう、翔鶴」
「あ…おはようございます」
やっと起きてくれた、そんな顔で翔鶴が微笑んだ。
「あの、今日から学校ですよ」
「……あれ、もうそんな時期だっけ」
「もう、しっかりしてください」
「持っていくものの準備は出来ましたか?あ、ハンカチとかティッシュは…」
「……大丈夫、今から準備する」
「…全然大丈夫じゃないです…」
言って、翔鶴が俺の鞄を取る。
「ほら、何が必要なのか言って下さい」
「…んー……筆記用具とー…春休みの課題とー…」
「…あ、筆箱がボロボロじゃないですか、後で新しいものを買いに行かないと……」
「…………」
…後輩と言うよりは、これではまるで母親である。
その後も、翔鶴の小言やらなんやらは続いた。
……何とも面倒見の良い、そして面倒臭い従妹である。
「あらー起こしてくれたの、ごめんね、翔鶴ちゃん」
「いえいえ、このくらいは」
「もう本当良い子ねー!うちの子にしたいくらい!むしろ交換して!」
「…あ、あはは」
…母よ、好き勝手言うでない。泣くぞ。
そんな喧しい母が食卓に並べた朝飯。
悔しいが美味しそう。頂きます。
「……ずずー…」
「わー…美味しいですねこのお味噌汁、どんな風に――」
「普通よ普通、作り方は――」
女同士の会話には入っていけない。
適当にテレビに目線をやりながら食事を続ける。
『…沿岸再開発事業の工事現場で、また事故です』
『建材の落下で1人が死亡、3人が重軽傷を――』
「またですか…怖いですね」
最近テレビを賑わす、横須賀市沿岸埋め立て再開発事業。
どうにもずぼらな管理のようで、しきりに事故を起こしている。
「…全くだ、気を付けてほしいよなぁ」
通学路にあるんだぞ、工事現場。
巻き込まれて死にでもしたらどうするってんだ。
「気をつけろよ、翔鶴」
「はい、ありがとうございます」
「何か落ちてきたらアンタ代わりに死になさいねー」
「………」
「…あ、あはは…」
…母よ。
冗談でも、傷つくぞ。
通学路。
翔鶴の案内をしながらの登校。
「おーこの子が噂の翔鶴ちゃんですかー!」
「あの……」
「睦月、あんまりぺたぺた触るな」
「いやいや、この触り心地がもち肌でですね、すんばらしーのでっ!」
「あぅ…」
「やめなさいっつーに」
「おおぅ!」
首根っこを掴んで引き剥がす。
翔鶴よりも小さなシルエットの同級生―睦月は、ぷらーんとぶら下がったままで笑った。
「にゃはは、注意されちゃったにゃー」
「…お、お兄さん、この方は…?」
「ん、友達の睦月…変に気を使う必要は無いぞ」
「…そうでしたか、翔鶴と申します、以後お見知り置きを」
「こっちらこそ、おみしりおきをっ!」
「……お前、ぜってー意味わかってねーだろ」
崩れた襟をせっせと伸ばしながら、睦月がにゃはーとまた笑う。
「面白い方ですね」
「…翔鶴、正直に変な奴だって言っていいんだぞ」
「ふふ、そんな事はありませんよ」
「わー…何か大人っぽーい」
「お前が子どもなんだよ」
「たはー、ひっどいにゃー」
「ふふ」
この図を見た時に。
まず、睦月が年上で翔鶴が年下という事を信じる奴は…いないだろう。
「…あれ」
「ん、どうしたのさー」
「いや、取り壊してんだな、この神社」
「みたいだねー」
学校へ向かう道、見慣れた風景に一つ、違和感を覚える。
小さな鳥居の、小さな神社。
子供の頃の遊び場だったそこに並ぶ重機と作業員。
「何か、思い入れでもあるのですか?」
「うん、小さい頃よくここで遊んでてさ」
「…そうだったんですか、それは…」
「…仕方ないさ、風景とは移り行くものだからな」
「おおぅ、何だか詩人っぽいですな!」
「…よせやい、恥ずかしくなんだろが」
「しかし、どうしてこの神社――」
「きらりーん!」
「ごはぁ!?」
奇声。
一瞬の後に響く衝撃。
思わず朝飯が飛び出そうになった。
「……あ、阿賀野…お前な」
「おはよー!提督くん!」
「…おはよう」
しかし声の主には悪びれる様子は一切ない。
それどころかいつもより元気そうだ、そうか、春だもんな、変な奴が元気になるんだよな。
「おお、阿賀野っち、おはよーございまーす!」
「睦月ちゃんもおはよー!…あれ?そっちの娘は?」
「…あ、えと、私、翔鶴と申します…提督さんの従妹で、今年から此方の学校へ…」
「なるほど親戚さんなんだね!阿賀野は阿賀野っていうの、よろしくね!」
「は、はい…よろしくお願いします」
「それで提督くん!」
「…なんだよ」
「おはよー!」
「…おはよう、ちなみに2回目だぞ」
「提督くんとの挨拶なら何回してもおっけーおっけー、だよ!」
「……そうか、うん、もう勝手にしてくれ」
「あ、そうだ、提督くん」
「んー?」
「朝はちゃんと起きなきゃダメだよ!せめて始業日くらい!」
「…まるで知ってるみたいな言い方だな…ふん、翔鶴、説明してやれ、俺の寝起きの良さを」
「本当に、朝はちゃんと起きて下さい、お兄さん」
「ええっ!?」
「ほらーやっぱり!」
「にゃはは、提督くんの行動くらい誰にでも予測できるみたいですねー!」
「…翔鶴、そこは嘘でも従兄を立てておくもんだぞ」
「申し訳ありません、ですが、お兄さんの寝起きの悪さは…その」
「……ちくしょう」
味方がいない。
笑う女子三人組に囲まれながらも、どこか孤独感を味わいながら。
俺は学校までの道を歩いて行くのだった。
「同じクラスですなっ」
「ですなですなっ」
「…そうだなぁ」
始業式も終わり、それぞれのクラスへと移動する。
何の運命の悪戯か。
阿賀野と睦月も、1年から続いて同じクラス。
こいつら両方居ると2乗でうるさいんだよ。
「む、不満ですか、提督くんったら贅沢です」
「そういうわけじゃないけどさ」
「元気無いねー?阿賀野パワーを分けてあげよーか?」
「…因みにどういうパワーなんだ」
「こう、びびびーって!」
「びびびーてお前」
「…ぎゅいーん?」
「いや、擬音の問題じゃねーっての」
「阿賀野っちー!」
謎のやり取りをしていると、飛んできた声。
あれは確か…茶来、だったか?苦手とまではいかないが、あまり得意では無い部類の女子である。
…あのグループと何故か仲良いんだよなぁ、阿賀野。
「あー、ごめん提督くん、ちょっとお呼ばれー!」
「おう、いってこいいってこい」
一人減るとその分楽になるからな―とは、流石に言わないが。
手を振って、阿賀野を見送る。
「………ん?」
「…およ?提督くん、どういたしましたかー?」
「あ、いや…あのグループの後ろの方にいる…瑞鳳?だっけか」
「あー!はい、づほちゃんですね!」
「づほちゃん?…仲良いのか?」
「いやいやー!勝手に呼んでるだけです!」
「……そうか、そういう奴だったなぁ、お前」
「それでそれで、づほちゃんがどうかしましたか?」
「…ん、なんか俺の方見てた気がした」
「…………自意識過剰だにゃー」
「…違うんだって!マジで見てたから!まーじーで!」
はいはい、わかってますわかってますとによによ顔で頷く睦月。
結局、この不毛な主張は担任が入ってくるまで続いたのであった。
「転校生の龍驤や!関西の方から――」
「…おお、睦月」
「何ですか、提督くん」
「関西弁だぜ、関西弁」
「関西弁ですなー」
「本場物だぜ?」
「ツッコミもしてくれるんでしょうか…」
「こらそこぉ!ウチの自己紹介をしっかり聞いとかんかい!」
「…おぉー」
「…ツッコミしてくれましたにゃー」
ぱちぱちぱち。
教室から小さな拍手が飛ぶ。
「あ、いやいや、どもども」
龍驤は、それに会釈で応える。
「まー、こっちのことは全然わからんから、皆よろしゅうなー!」
「はは、面白そうな転校生だなぁ」
「ですねー!仲良くやって行けますでしょーかー」
しかし、この時はまだ。
本当の龍驤との出会いは終わっていなかったのだと。
それを知るのは、放課後になってからだった。
「どーする?昼飯食って帰るか?」
「うーん、睦月は金欠なのですよー」
睦月と一緒に入った図書委員会の話し合いとやらで、遅くなってしまった帰り道。
人もまばらな廊下を、並んで歩く。
「金欠かー…マック?」
「最近は高いじゃないですかー」
「…んだなー…水だけ飲んで帰るかー?」
「にゃはは、出来るものならどーぞどーぞ」
「……そんなに図太くは無いな、うん」
「………おりょ?」
窓の下を、睦月が何かに気付いた様子で覗き込んだ。
「どした?」
「いえいえー…づほちゃんがいましたもので」
「…瑞鳳?」
変だな、HRが終わってすぐに出て行ったような気がしたけれど。
まだ学校の中に居たのか。
「…えらく慌てておりましたがー…」
「……んー…どこ向かってた?」
「校舎裏の方ですねー」
「……行ってみる、か?」
「…そですね、提督くんが気になるなら」
階段に向かいかけていた足を、渡り廊下の方へと動かす。
こんなことは、普通はしない。
…まあ、なんというか、強いて理由を挙げるなら。
あの時、俺に向けた視線が気になった、それだけだろう。
「――野っちが考えたんでしょ?」
「えっぐい事するよねぇー」
「ま、うちらには利益しか無いじゃん」
「だなー、つか、マジで良いの?」
「いーわけないじゃん、馬鹿じゃないのアンタ」
「はは、確かに、良い訳ねーな、ぎゃはは!」
少し急いでやって来た、校舎裏。
そこでは、4人の男女が賑やかに談笑していた。
その様子を、少し離れた物陰から伺う。
「…本当にこっちなのでしょうか?」
「あの場所からこっち側に走ってたんだったら、ここしかねーだろ」
「…ですけど、あんまりづほちゃんの友達、という感じには…」
「いや…茶来がいる」
「茶来さん…あ、本当だ」
男女の輪の中心で下品に笑う女。
それは、確かに朝、瑞鳳と居たグループのリーダー格―茶来だった。
「……づほちゃん」
「……随分慌ててるな」
その向こう、俺達の隠れている場所と反対側から、息を切らして瑞鳳が走ってくる。
「……ぁっ…はぁっ…」
「おせーよ、瑞鳳ちゃーん」
「…茶来…さん、何ですか」
「…んー?言わんかったっけなー、写真のお話ー」
「……け、消してくれたんですよね!?」
「ああうん、消した消した」
「でもさー」
茶来が、脇に控えた男女を見る。
すると示し合わせたように、スマホを掲げた。
彼らのスマホの画面に表示されている物を見て、瑞鳳の顔が固まった。
「あっははー、皆に送っちゃったー」
「……え…?」
校舎裏に、嘲笑が響く。
「瑞鳳ちゃんってスタイル良いんだねー」
「下着めっちゃ可愛いのなー、つーか、子供っぽい?」
「ばっか、それが良いんじゃねーの?」
「……な、何で…消すって」
「ばーか、んなことするわけねーじゃん」
掠れた瑞鳳の声を上書きするような、平坦な声。
此方からは彼女の顔は見えないが―おそらく、死ぬほど楽しく、下品に嘲笑っているのだろう。
「…でもさー、意外だったのは、これ結構売れたんだよねー」
「マジで?売れたんかこれ?」
「マジマジ、儲かったんよ結構」
「売……え…だれに……?」
「何かそーいうサイト、アタシよく知らねーけどさ」
「……サイ…ト…?」
「だーいじょうぶだって、顔隠しといたからさー」
「でも、あいつらめっちゃ食いついたからね、うちの学校の生徒だってバレたらやべーかも」
「他人事かよー!」
「あはは、他人事じゃん」
「……う……」
瑞鳳が、下を向いた。
小さな嗚咽が聞こえる。
「……提督くん」
「………ああ」
これは。
…昨日今日始まった話ではないのだろう。
おそらく、ずっと続いてきたような…そんな。
「…くそ――」
「…待ってください、出て行ってどうするつもりなのですか」
「………殴る」
「……提督くん、それは」
「………わかんねーよ、どうすりゃいいかなんて」
「…とにかく、誰か呼ぶべきです――」
俺たちが相談をしている間にも、話は続く。
瑞鳳にとって悪い方向に。
「そんでさー、瑞鳳ちゃん」
「…………」
「おい、返事ねーぞー?」
「まーいーって、用件はちゃーんと伝えるんだから」
「んで、瑞鳳ちゃん」
「…もっと高く売れる写真あるみたいでさぁ」
「…………」
俯いたままの彼女は、何も答えない。
それでも、愉快そうな声は勿論止まらない。
「生ハメ処女卒業画像、だってさー」
「………っ!?」
動いた。
固まった瑞鳳が、初めて。
そして、恐怖に染まった顔を上げる。
「んでー、今日は此方の方々に協力いただけるってことでー」
「どーも、瑞鳳ちゃーん」
「初めてのお相手でーす」
脇の男二人が、軽い声を出す。
「あんの――っ!」
「提督くん…!」
思わず物陰から飛び出しそうになって、睦月に止められる。
「やー瑞鳳ちゃん、そゆことでさー」
「…サクッと、いってみよーか」
「嫌――っ!」
逃げようとした瑞鳳を、男二人が抑え、組み敷く。
男の身体の下、瑞鳳がじたばたと暴れる。
「やだっ!やめて!やめてよ!」
「大丈夫だって、大人しくしとけってば」
「あー…面倒臭えな、茶来、手押さえといてくんね?」
「ムリムリ、私撮影班だし」
「うへ、動画かよ」
「ちゃんと俺達の顔修正しとけよー」
「おっけおっけー、瑞鳳ちゃんさえ取れりゃーいいのよ」
「や、助けて!助けてっ!」
悲痛な声が、校舎裏に響く。
「睦月、離せっつってんだろ…!」
「でも、今出ていったって…」
その時、だった。
悲痛な声が、変わる。
「助けて――」
それは同じく助けを求める声。
だけど、明らかに知らない誰かに向けたものでは無い。
『助かる』と、確信を持って叫んだ声。
「――イ級っ!」
声がして、すぐに。
瑞鳳に被さった男の一人が、あり得ない力で弾け飛んだ。
そのまま5メートル程も吹き飛ばされ、校舎の壁に当たる。
「ごがっ!?」
大きな悲鳴をあげ、当たった場所からズルズルと地面まで落ちていく。
転がって、何度か呻き声をあげていたが、やがてすぐにそれも聞こえなくなった。
「ちょ……」
「……な、何…?」
困惑したのは、先程まで嘲笑を浮かべていた男女達。
そして、俺達も。
「……提督くん、何なのでしょう、あれ…?」
「…わかるわけないだろ」
全員の視線の先。
瑞鳳の横に立つ、異形。
「グァ――――!」
岩のような皮膚に覆われた、顔だけの、おたまじゃくしのような形をした異形が、吠えた。
それに、あの場にいる男女達だけでなく俺達までもが後ずさる。
決して大声ではなかったが、まるで虫の大群が耳の周りで飛んでいるかのような不快な声。
その声に応えるように、寝転んでいた瑞鳳が立ち上がった。
「……良い子、だね」
彼女は笑っていた。
昏く、光のない瞳で、笑っていた。
「…ねえ、茶来さん」
「……ひっ!?」
その笑顔のまま、一歩踏み出す。
尻もちをついた女達の群れ、リーダー格の茶来に。
「…私ね、ずっと苦しかったんだよ」
「…辛くて、悲しくて、嫌で」
「そして、何よりさ」
唇が歪む。
笑みの形に歪む。
先程まで、瑞鳳に向けられていたような物に。
「――アナタ達が、憎かった」
満面の笑みだった。
心から楽しそうな笑みだった。
元々、教室で余り笑うような少女ではない。
だから、あんな表情の瑞鳳は、初めて見た。
「憎くて、怨めしくて、忌々しくて!」
「何より悔しかった!力のない自分が、悔しかった!」
「…でもさぁ、茶来さん」
「今はあるんだよ、ちから――」
「この子が、助けてくれたんだぁ…」
もう一歩、異形を従えた瑞鳳が近付く。
尻もちを付いたまま、茶来が後ずさろうとして、壁に当たる。
「や…やだ、来ないでよっ!」
瑞鳳とは対照的な顔。
いつもとは逆の構図。
嗜虐的な笑みを浮かべる女と。
やめてくれと恐怖の表情を浮かべる女。
「嫌」
短い返事。
抑え切れない喜色の込められた、返事。
瑞鳳が片手を挙げる。
異形がそれに応えて、鋭い牙を持つ口を開けた。
「……ひ、や、助けて!誰か!やだっ!」
茶来が髪を振り乱し、校舎の壁をどんどんと叩きながら叫ぶ。
異形が、それを嘲笑う瑞鳳の気持ちを代弁するかのように、ゆっくり、ゆっくりと顎を閉じていく。
そして、遂に触れようかという瞬間。
異変は起こった。
「………ガ…?」
茶来に触れかけた異形が。
弾かれた様に、咄嗟に牙を引く。
その手の陰の下。
「…龍驤さん!?」
睦月が、異変の名前を呼んだ。
「おーおー、勝手しくさりよってからに、低級が」
ひらり、と右手に持った札を振り回しながら、龍驤が笑う。
「急造とはいえウチの新しい庭に――」
それを、空中に弾く。
札は風に乗り、遥か天高くへと吸い込まれるように消えていく。
「お前みたいなもんは必要ないわ」
天へと掲げられた札から出た光が、龍驤を包む。
「かっ、九字切るのも面倒やな」
「急急如律令――疾く去ねや、妖怪」
呪文、なのだろうか。
呟いた言葉とともに、もう一度飛ばした札。
それは、今度は空ではなく異形へ向かう。
そこからの顛末は、呆気無かった―そう言う他無い。
「…………!……!?」
札が瞬く間に小さな護り刀へと変わり、異形の喉の奥へと突き刺さる。
その場所を中心として、異形が砕ける氷のように崩れていく。
「ま、これに懲りて地獄で2000年くらいやり直してこいや、大人しくな」
それを見ながら、彼女はケラケラと声を出す。
そして、異形は最後の一片まで崩れ落ち、破片が霧散した。
同時に、隣で立っていた瑞鳳も地面に倒れる。
「………ね、ねー…提督くん」
「…………わかるわけないだろ」
目の前で起きた現実は、余りにも認識からかけ離れていて。
理解など、納得など出来るはずも無かった。
「……ふぅ…んで、ちょーっとノリが悪いんちゃうかー、おふたりさん?」
龍驤が、俺達の隠れている陰の方へと眼をやる。
それに促されるかのごとく、睦月と俺は壁から身体を出した。
「せっかく特等席でウチの術見たってんにーさ、拍手の一つくらい飛ばしなよー」
「……いや…その」
「はっは、流石にそれは冗談や冗談、気にせんとって」
「しっかし、誤魔化せんよなぁ、これは」
「…そうだな、説明は…欲しい」
「…ほんならまぁ、説明せなアカンわなー」
あーめんど、と彼女は両手を伸ばした。
改めて俺達に向き直る。
「……ん、とりあえず、ウチの職業からやな」
「こほん、陰陽師やっとる龍驤や!」
無い胸を思い切り張って、名乗る。
右手に挟んだ札を見せつけながら。
「…おん…みょうじ?」
睦月が、顎に指を当てて首を傾げる。
「せやで、陰陽師や、安倍晴明公から続く、由緒ある家柄やで!」
「あべの…みくす?」
あ、こいつ絶対何もわかってねぇな。
…つっても、俺も特別詳しいわけじゃないが。
「…陰陽師…つーのは、わかった」
「うんうん、手早いね、そういうのはウチの手間も減るから助かるで」
「それよりも…その、瑞鳳の事は」
…瑞鳳は、とてもじゃないが陰陽師やら妖怪やらの関係者には見えない。
だが、あの異形を呼んだのは―おそらく彼女だろう。
「…ああ、瑞鳳ちゃんなぁ」
「…なんて言やーええか…まー、可哀想な娘やねー、随分」
「可哀想?」
「そうそう、タイミングやらなんやら、丁度良すぎてなぁ」
「……どういう…?」
「それを説明するには、まずウチがこの街に来た目的から説明せなあかん」
「…さっき言ってた…新しい庭がどうこう、ってやつか?」
「せやせや、いやー、ええ観客やな、よー覚えてくれとるやん」
「簡単に言うんやったらな…あー…呪われとるねん、この街」
「………はぁ?」
「…さっきの敵は深海棲艦ちゅうて、…所謂『鬼』の類なんやけどな」
「こいつらが、この街に集まっとるんよ」
「……どうしてだ?」
「…キミもこの街住んどんやったら知っとるやろ、沿岸再開発事業」
「ああ…」
…確か。
沿岸の昔の軍事施設を取り壊して、その周りの海を埋め立ててニュータウンを作るとかなんとか。
「…それが何の関係があるんだ?」
少なくとも、呪われるような工事には思えないが。
「深海棲艦は、ただの鬼やないんや」
「…あれは、海で死んだ海兵や…沈んだ船の恨み」
「せやから、普通は街なんかに現れたりせん…やけどな」
「…この横須賀は別や」
「…別、って」
「知っとるやろ?この街が海軍基地だったのくらいは」
「うん、まぁ…それは」
「…し、知ってる…」
やっとついていける話題になったらしく、固まっていた睦月も再起動した。
…まあ、ここに住んでる奴らなら当然知ってるってレベルの事だしな。
「……奴らはな、自分の帰る場所を壊される思うとるんよ」
「…帰る場所を壊される………って、再開発で…」
「そう、全く別の物になるんや」
「…それを、奴らはどうしても防ぎたいんよ」
「……じゃあ、呪われてるって」
「その言葉通りや、ニュースで見んかったか、死亡事故」
「あ……」
『建材の落下で1人が死亡、3人が重軽傷を――』
『またですか、怖いですね』
『…全くだ、気を付けてほしいよなぁ』
「……もしかして」
「せや、あれは事故なんかやない」
「…でも、じゃあ瑞鳳は…?」
「…ああ、言ったやろ、タイミングが悪かったんよ」
「深海棲艦の中には、実体化出来ひんような存在の小さな奴もおる」
「そういう奴は…人から力を貰う…いや、奪うんや」
「…貰う?」
「欲望に付け込んで、甘い言葉で人を騙して、心の中に入り込んで―まずは宿主の力を奪って実体化して、宿主と、その周辺に居る人間を『喰らう』」
「…く、喰らう…って」
「ウチが来るのがあと5分も遅けりゃ、瑞鳳ちゃんもいじめっこグループも死んどったで、多分な」
すらすらと語るその言葉は、とても冗談には聞こえない。
思わず、冷や汗が流れた。
「…まぁ、まだこの街にはあんなみみっちい低級しかおらん」
「あんなんは、人の心の隙間に入らな何も出来んから…実際、現場でもそこまで派手な被害は出とらんしな」
「……でも、これからどんどん来るで、でっかいのが」
「…じゃあ、それを防ぐために…?」
「せや!この街を救うためにやって来た、安倍晴明公より続く由緒正しき29代目陰陽師、龍驤や!」
ドーン、と。
再び無い胸を張る。
「………理解が追いつかねぇ」
「あはは、そりゃ無理もないわな!」
「そんでもって、提督、睦月」
「…ん?」
「…なに?」
「いやな!ウチが活動するのに、協力者が必要やったんや!」
「……待て、嫌な予感が」
「せーっかくここまで説明したんや!頼むでー!」
「は!?おい、どういう」
「大丈夫大丈夫、ただのサポートや、サポート!ちゃーんとウチが守ったるから!」
…まるで、漫画のような話で。
俺も睦月も、ただただ呆けるだけだったが。
それは、確かに現実だったのだ。
日常から逸脱した、不思議な不思議な一年間。
その間だけではあるが、俺は陰陽師見習いまたは陰陽師お側付きとして新たな人生を歩むことになった。
…盛大に人生の道から外れている気がするぞ。
【プロローグ 終】
終わり 赤レス使ってみたかったのです
どっちをメインにするか迷ったがづほメインにすると流石に暗すぎるからね
お、陰陽バトル学園もの…
ベイスクリニック、残塁を掻き出す名治療を行う 尻ェ
始めます
【4月1週】
瑞鳳「…………」ポー
あれから。
気絶した瑞鳳達を保健室へ運び。
酷い怪我をしていたクソ男Aは龍驤さんの伝手でそういう類専門の病院へと入れられた。
瑞鳳は次の日から学校に来ていたが、茶来達の席は空いたままだ。
提督「…なあ」
龍驤「…んー?」
提督「…瑞鳳の事、放っといていいのか?」
龍驤「アホ、良い訳あるかいな」
龍驤「あのいじめっこ共は直接深海棲艦に触れたわけちゃうけど、瑞鳳ちゃんは宿主にまでなったんや」
龍驤「あいつらに心の隙間に無理矢理入り込まれて、存在を食われかけた」
龍驤「ちゃーんとアフターケアせな、今の瑞鳳ちゃん、半分抜け殻みたいなもんやで」
提督「…そっか、良かった、考えてたんだな」
龍驤「ちなみにそれはキミの仕事やで、提督」
提督「は?」
龍驤「いやー、協力者って便利やなー!」
提督「お、おい!?何すりゃいいのかもわかんねーのに!」
龍驤「ま、ゆっくりでええから頑張りやー」
提督「…いやいや…いや…」
アフターケアとか言われても。
どうすりゃいいんだよ。
コミュ対象 22:31に一番近いレス
阿賀野 **0/500
瑞鳳 **0/500
龍驤 **0/500
睦月 **0/500
翔鶴 **0/500
提督「なあ、龍驤」
龍驤「なんやー、つーかちゃんとセンセって付けーや、見習い」
提督「…好きで見習いになったわけじゃねえっての」
龍驤「あっはは、ま、そんならそれでええけどさ…で、どうしたん?」
放課後、見回りという名目で街を歩く。
どうも妖気の発生源があれば龍驤にはわかるらしい。ほんまかいな。
…ただ、あの時も助けに来たし…本当なんだろうなぁ。
つくづく人間離れしている奴である。
提督「いや、この前、御札使って色々やってたじゃん」
龍驤「それがどしたん?」
提督「あれって、俺にも出来るのかなーって」
龍驤「ははーん、やってみたいんか?」
提督「……まあ、はい」
仕方ない。男の子ならああいうばびゅーんって感じで敵を倒して行くのには憧れてしまうものだ。
…卒業したと思っていたが、やはり実際目の当たりにすると…うん。
龍驤「うーん、期待させたみたいで悪いんやけどな、無理や」
提督「…そんな」
提督「…アレか、修行か?」
龍驤「まー勿論そういうんもあるけどね、一番の原因は妖力やな」
提督「妖力?」
龍驤「そ、言葉通り…自分の持つ妖気の大きさや」
龍驤「生まれとかに関わらず、子どもの頃は皆まぁまぁ持っとんのやけどな…普通に過ごしてたら、無くなってまうんや」
提督「……無くなる、のか?」
龍驤「そそ、現代人的生活しとったらな、ぽーって霧散してまうんよ」
提督「また適当だなぁ」
龍驤「ええやん、一々原因並べるのもめんどいし」
提督「…はぁ…つまり、俺にはもう無理なのか」
龍驤「そういうことやね、一応測る方法はあるけど…やってみる?」
言って、龍驤が懐から札を出す。
提督「…なんだこれ?」
龍驤「空っぽの式札や」
提督「式札…?」
龍驤「それに力を込めると、キミの力相応の式神が出てくるで」
龍驤「ま、妖力があればやけどね」
提督「へえ…面白そうだな、なんか」
龍驤「…つっても、本当はそんな遊び半分で使うもんちゃうけどね」
>>+4
A.…無理そうだし、別に良いよ。
B.んじゃ、やってみようかな。
C.…にしても、胡散臭いなー。
B.んじゃ、やってみようかな。(*1.5)
提督「んじゃ、やってみようかな」
無理だと言われても、尚そんな感じの物に憧れる。
そう、それが男の子なのである。
龍驤から受け取った札を、言われたように掌の上にそっと置く。
龍驤「そー、そんで、掌の真ん中に思いっきり力を込めるんや」
提督「…よし」
…何でもいいから何か出ろ。
俺に秘められし力よ、覚醒するのだ。
………むむっ。
掌から、何か出て行くような感覚。
これは――!?
提督「あ」
じゅっ。
無惨。掌の上の御札は綺麗に焼き切れた。
人を象った形の札は、丁度腹の部分で切れて真っ二つ。
提督「……………」
ああそうかい。
知ってたよ畜生。
でも期待するくらい良いじゃねえかよ。
提督「……すまん」
半分になった札を差し出す。
龍驤「…………」
彼女は、驚いたようにそれをずっと見ていた。
提督「…龍驤?…もしかしてそれ高かったのか?」
龍驤「え?あ、いやいや!んなこたないで!気にせんで気にせんで!」
提督「そんなら良いんだが…はぁ、やっぱ俺には無かったか、妖力」
龍驤「…せやなぁ」
提督「夏休みにパワースポットでも回ってみるか」
龍驤「…アホ、そんなんで付くかいな」
提督「……だよなぁ」
龍驤「…そうや、付かんのや、そんな事じゃあ…せやのに…」
提督「龍驤?」
龍驤「…ああ、すまんな…この式札のお代をどう請求しようか考えとったわ」
提督「…すげー理不尽!アンタがやってもいいって言いましたよねぇ!?」
龍驤→ 126/500
【4月2週】
睦月「提督くん!」
提督「ん?」
睦月「睦月、陰陽師についてしっかりと調べてまいりました!」
提督「……一応聞くけど、どこで?」
睦月「はい!ニ○ニ○動画に――」
提督「…わかったわかった」
睦月「なー!最後まで聞いて下さいよぅ!」
提督「うんうん、睦月は凄いなー」
睦月「むー!せっかくあべのみくす?についても調べてきたんですよ!」
提督「そうかそうかー、睦月すげー」
睦月「もー!」
コミュ対象 23:25に一番近いレス
阿賀野 **0/500
瑞鳳 **0/500
龍驤 126/500
睦月 **0/500
翔鶴 **0/500
『まあ、アフターケア言うてもそんな大したことは無いんや、実際はな』
『というかそもそも、そんな重要な事なら自分でやるわ』
『…キミは、慰めてあげるだけでええ』
『…ええか、ただし気ぃ付けることが一つある』
『瑞鳳ちゃんは今、深海棲艦の事についての記憶を朧気にしか覚えてない』
『…せやから、アレを思い出させるような発言はしたらアカンで』
『―ん?…そうやな、思い出させてもうたら…』
『…また、求めてまうかもしれんで、あの力』
…簡単に言ってくれる。
そんな前置きをされたら、余計に難しいじゃないか。
提督「………なあ、瑞鳳」
瑞鳳「…提督…くん?」
提督「…良かったら、昼飯でも一緒に食わないか?」
瑞鳳「……お昼?」
提督「ああ、良い天気だしさ、屋上でも」
瑞鳳「……ん…良い…けど」
提督「そうか、良かった」
行こうか、と手で促すと、瑞鳳はのろのろと立ち上がった。
こんな動作一つ取っても、今の彼女はどこか薄い。
教室の中にいても、注意しなければ気付かない程だ。
屋上へ行く間も、弁当箱を持った彼女がとてとて後ろを歩くのを何度も確かめなければならなかった。
――――――――――――――
瑞鳳「……珍しいよね」
提督「うん?」
瑞鳳「…提督くんって、いつも睦月さんと一緒に食べてるってイメージだったから」
提督「…んー…まあな、ただ何となく瑞鳳と一緒に食べたくなったんだ、弁当」
瑞鳳「そうなの?……変なの」
提督「……そういう瑞鳳はさ、いつも誰と――」
瑞鳳「…………」
言いかけて、明らかに変化した瑞鳳の表情に気付く。
ああ、そうだった、瑞鳳がいつも一緒に飯を食ってたのは――
提督「……誰とも、食べてないよな、最近は」
瑞鳳「………そう、だね」
…何をやっているんだ俺は。
沈黙が流れる。
そんな中、俺の目の前にいきなり差し出された弁当箱。
提督「……?」
瑞鳳「……あの、卵焼き、私が作ったの、これ」
提督「…へぇ、自作か」
瑞鳳「…ん、本当にこれだけ、だけど」
瑞鳳「……良かったら、食べて欲しいな」
提督「良いのか?」
瑞鳳「…うん」
意図は良く分からなかったが…、何となく、断りづらい雰囲気で。
差し出されたピンクの弁当箱の中で輝く、黄色の卵焼きを箸で掴んだ。
提督「…んぐ」
…甘い。
勿論、不味い訳ではない。
だが、少しだけ俺の好みからは外れた味であったというのは確かだった。
瑞鳳「………どう、かな?」
不安を湛えて、瑞鳳が俺を見る。
俺は――
>>+4
A.そうだな、もうちょっと――
B.…うん、美味しいよ。
C.凄く美味しかった、もう一個貰っていいか?
C.凄く美味しかった、もう一個貰っていいか?(*1.5)
提督「凄く美味しかった」
瑞鳳「…ほんと?」
提督「ああ、…てことで、もう一個貰うぞ」
瑞鳳「え、ちょ、ちょっと!?」
ひょいぱくひょいぱく。
重ねられていた黄色の卵焼きを、次々と平らげていく。
…うん、少し甘いけど、食べ進めてみると案外悪くない。
瑞鳳「…あー…全部食べちゃった」
提督「ふふん、ご馳走様」
気付けば、ピンクの弁当箱を彩っていた黄色は跡形も無くなっていた。
瑞鳳「…もう、良いって言ってないのに」
提督「はっは、男子高校生の食欲を侮るでない」
瑞鳳「……むー」
そう頬を膨らませた瑞鳳の目に、先程までの不安は無かった。
困ったような振りをしながら、嬉しそうに笑っている。
瑞鳳「…でも、良かったなぁ」
提督「……ん、何が?」
瑞鳳「えっとね、お料理…前より、少しは上手くなったみたいで」
提督「………」
瑞鳳「…前、お友達が食べた時は……あんまり…あんまり、美味しくないって言ってたから」
提督「…そうだったのか?はは、そいつは随分馬鹿舌なんだな」
瑞鳳「……あはは、…そうだった、のかな」
瑞鳳「…でも、良かった、提督くんが気に入ってくれて」
提督「おう、…そうだ、また作ってくれよ!」
瑞鳳「…え?…また?」
提督「ああ、また食べたいな、あんな美味い卵焼きならさ」
瑞鳳「……うん、…もう、褒め過ぎだよ」
一度は陰った表情が、また困った笑顔に戻る。
……そうだよなぁ。
…お友達ってのは、つまり…あったんだろうなぁ、そういうことが。
提督「よし!んじゃ!お次は俺の母親の自信作を――」
瑞鳳「…わ、なにこれ」
提督「はは、聞いて驚け――」
瑞鳳→ 106/500
今回2レスに跨るイベントが多くなるかも、すまんな
お風呂
【4月3週】
提督「…翔鶴」
翔鶴「はい?」
提督「…甘い卵焼き食べたい」
翔鶴「…あら?いつもと違うのですね?」
提督「少し心境の変化がな」
翔鶴「…そうですか、わかりました、作ってみます」
提督「ふわーっとしたやつな、ふわーっと」
翔鶴「はいはい」
コミュ対象 00:58に一番近いレス
阿賀野 **0/500
瑞鳳 **0/500
龍驤 126/500
睦月 **0/500
翔鶴 **0/500
提督「……なあ睦月」
睦月「んにゃー?」
提督「…高くなったなぁ、マック…」
睦月「…だねぇー」
学校の側、学生に大人気のたむろ場所。
そんなお財布に優しかったバーガーチェーンも、いつの間にやら不況の煽りだの何だのを受けて。
提督「…500円超えるとなぁ」
睦月「これだとファミレスの方が良いですよねー」
そんな益体なき会話を交わす俺たち。
まさに現代学生の鑑…いや、鏡みたいなもんだな。
姿を映すって意味で。…まあどうでもいいか。
提督「……しかしさぁ」
睦月「…?」
提督「…アレは、やっぱ現実なんだよなぁ」
睦月「……現実、なんでしょーねー…」
思い返すは、異形。
深海棲艦と呼ばれた鬼。
そしてそれを屠る龍驤。
睦月「……いっそ、今からでもドッキリだー、って言って欲しいにゃー」
セットのドリンクを音を立てて啜りながら、睦月が漏らす。
提督「…そうだな、というかそっちの方がまだ納得が行きそうだ」
睦月「だよねー」
いつの間にか、ドリンクを啜る音は掠れていた。
どうやら、空になってしまったようだ。
それでも、ずずーと音を立てながら、睦月はストローを吸う。
睦月「……怖いにゃー」
提督「……睦月」
睦月「…あんなの襲ってきたら、睦月、きっと動けないよ」
瑞鳳が従えたあの怪物の矛先が、もし自分に向けられたら。
そんな事を考えているのだろう。
…俺だって、そんな想像はしたくない。
あの時の龍驤のようなヘルプがなければ、文字通り『喰われる』のだろから。
睦月「……ほんとに居るんだ、あんなの」
やっとストローから口を離した睦月が言った。
睦月「怖いにゃー…」
もう一度の、か細い呟きとともに。
>>+4
A.……本当に、怖いよな。
B.…何とかなるさ、多分。
C.大丈夫、俺に任せろ!
C.大丈夫、俺に任せろ!(*1.5)
提督「大丈夫、俺に任せろ!」
睦月「…ほへ?」
…そんな姿は、こいつには似合わない。
こいつは、笑っている方が良い。
提督「あんなおたまじゃくしの出来損ないみたいな奴、何匹いようが俺が追い払うっつーの」
睦月「提督くん」
提督「だから大丈夫だ、睦月」
睦月「…にゃはは」
安心しろよ―とサムズアップしてみせると、やっと睦月が笑顔を作る。
睦月「提督くんじゃちょっと頼りないにゃー」
提督「何だと!?いやいや、龍驤に出来て俺に出来ない筈がないだろ!?」
睦月「うーん、びみょー…」
提督「…微妙ってお前…」
睦月「ま、…しょうがないから、提督くんで我慢するかにゃー」
提督「む、何だその上から目線は」
睦月「まぁまぁ、こちらにポテトがございますですから、これでご機嫌をなおしなさってくだせー」
提督「頂こう」
…うむ。
ポテトである。
……しかし、本当にまた、アレに襲われるようなことがあったら――
…いや。
大丈夫だ、大丈夫。
龍驤の奴だっている。
…大丈夫な筈だ。
睦月→ *60/500
【4月4週】
提督「阿賀野」
阿賀野「どしたのー?」
提督「…いや、最近お前の友達来てねーからさ、学校」
阿賀野「ああ…そうだねー」
提督「何かあったのか?」
阿賀野「…んー…わかんない、阿賀野も気になるんだけどねー」
提督「…そっか」
とりあえず…あの件は、あいつらから漏れちゃいないってことかな。
少なくとも、今のところは。
コミュ対象 01:35に一番近いレス
阿賀野 **0/500
瑞鳳 106/500
龍驤 126/500
睦月 *60/500
翔鶴 **0/500
眠い、ここまで
明日昼からやれたら頑張る
お付き合いいただきありがとうございました
やる気が出ないのでおやすみします
スミイチってなぁ…
にゅふふ
30分後くらいに始めます
屋上、既に何度目かの瑞鳳との昼飯。
本当にいくらかだけれども、彼女の控え目な笑顔も現れるようになってきた、そんな晴天の日。
瑞鳳「はい、卵焼き」
提督「お、悪いなー、いつも」
瑞鳳「ううん、美味しく食べてくれるの、嬉しいから」
弁当箱と同じピンク色の箸で、俺の弁当の蓋へ卵焼きを乗せた。
提督「もぐ……ん?今日は少し味付け変えたか?」
瑞鳳「あ、…わかった?」
提督「流石にな、うん、いつものも良いけどこっちもいいなぁ」
甘さではなく、出汁の風味と程良い塩味が舌に残る。
提督「瑞鳳は本当に上手いなぁ、料理」
瑞鳳「そんなことないよ、卵焼きだけ」
瑞鳳「…一応、今のところは…って、ちょっと強がってみるけど」
提督「そうだな、これからどんどんレパートリーも広がるさ」
瑞鳳「……そ、その時は」
提督「うん?」
瑞鳳「…その時は、また、提督くん、食べて…くれる?」
伏し目がちな表情で向けた言葉。
朱に染まった頬が何とも初々しい。
異性に慣れてない事を、強く感じさせる仕草だ。
提督「勿論、楽しみにしてるよ」
瑞鳳「……そ、そっかぁ…じゃあ、頑張んなきゃね」
提督「おいおい、変に気張るなよ、緊張して塩と砂糖でも間違えられたら困る」
瑞鳳「もー、流石にそんなことしないってばー」
提督「…どうかねー、ま、ほどほどに期待しときますか」
…こうして見ると。
瑞鳳もだいぶ前よりも明るくなったように思える、のだが…。
そもそも、アフターケアってのは何処までやればいいんだろう。
何にしても曖昧で大雑把な奴だな、あの陰陽師。
瑞鳳「……あのさ、提督くん」
提督「…うん?」
瑞鳳「…ずっと、気になってたんだけど」
瑞鳳「何で、…えと、最近、私に…色々、構ってくれるの?」
提督「…んん、…あー…」
…マズいな、困った。
こういう時、何と言ったものだろうか――
>>+4
A.瑞鳳が、何となく気になって。
B.……秘密。
C.何でもいいじゃないか。
A.瑞鳳が、何となく気になって。(*1.5)
提督「…何だろうなぁ」
提督「…瑞鳳が、何となく気になってさ」
瑞鳳「へっ?…わ、わたし!?」
提督「って、あ、いや、……まぁ…そんな、感じ」
瑞鳳「…あ、そう…そんな感じ、なんだ」
提督「…うん」
…言ってみて、というか改めて口にして気付いた。
これじゃあ、まるで告白のようだ、と。
瑞鳳「……あの」
提督「…あのさ」
お互い、俯いて。
その空気を払拭しようと話しかけたそのタイミングまで被る。
瑞鳳「て、提督くんどうぞ!」
提督「いや、瑞鳳が先に…」
瑞鳳「…わ、私は…別に、何でもないのよ」
提督「……俺も別に、何でもない」
…なんだそりゃ。
もはや訳のわからないことを言い合っている。
提督「…瑞鳳」
とにかく、少しでも会話を続けて―そう思って、また瑞鳳に向き直った時。
きーんこーん。
予鈴が鳴った。
瑞鳳「あ、予鈴…い、行かないと」
提督「…そ、そうだな」
慌てて帰り支度を始める俺たち。
…ああ、何とも。
慣れない、というかこれからも慣れることはないような空気であった。
瑞鳳→ 170/500
【5月1週】
龍驤「らたらたらったら~」
提督「ご機嫌だなぁ」
龍驤「お、わかるかわかるか!?」
そりゃそんだけ鼻歌盛大に鳴らしながら歩いてりゃあ誰にでもわかる。
触れて欲しいの丸わかりだ。
龍驤「実はなー…ふふん、成長しとったねん、ウチ」
提督「へー…身長?」
龍驤「ま、それも勿論あるんやけどなー」
胸の辺りをぺたぺたと触りながら、俺に視線を送る龍驤。
提督「…あー…大きくなったのか、それ?」
龍驤「あ、わかってもうた!?いやー…見抜かれてもうたかー…いやいやー…」
…誰にでもわかる。二度目。
……しかし、正直変わったようには見えないが…これでも、成長したのだろうか。
龍驤「…ふふー…これからウチの天下が…」
「あ、龍驤さん」
龍驤「ん?センセ?どしたん?」
「ごめんね、さっき渡した身体測定の結果表、阿賀野さんのと数値入れ替わってたの」
龍驤「………は?」
提督「……………」
絶句し、固まる龍驤の手から、身体測定の結果が滑り落ちる。
…いや。
…流石にこの数値と自分の胸を見比べて疑う事をしないのは、むしろお前の怠慢であろうよ、陰陽師。
コミュ対象 23:16に一番近いレス
阿賀野 **0/500
瑞鳳 170/500
龍驤 126/500
睦月 *60/500
翔鶴 **0/500
翔鶴「お兄さんお兄さんっ」
提督「ん?」
家に帰るなり、やたら上機嫌な翔鶴に話しかけられる。
…つーか物凄いウキウキだなお前。
翔鶴「見て下さいっ」
そう言って差し出されたのは、紙。
提督「…んー…『実力考査成績表』…?」
その紙には翔鶴のテストの出来が細かに書かれていて――
『…総合 494/500点(1位)』
最後の締めは、これだった。
提督「……おー」
思わず漏れるは、感嘆の声。
翔鶴「………ふふ」
俺のそんな様子に満足したのか、翔鶴はどうですか、と言わんばかりに微笑み、胸を逸らした。
…相変わらず、変な部分だけ子どもである。
提督「…なんだ、凄いなお前」
翔鶴「ふふ、日頃の成果です」
などと言いつつもやはり、私やりました凄いでしょう的なオーラが見える。
提督「…そっかそっか、一位かぁ」
提督「あ、因みに俺この時、128位/300人中だったぞ」
翔鶴「……は、反応に困る順位ですね」
提督「だよなぁ、俺も他人にそれ言われたら反応に困るわ」
まあだからどうしたというわけでも無いのだが。
…にしても、翔鶴が俺に紙を渡したまま動こうとしない。
まだ何か用事があるのだろうか。
……ふーむ?
>>+4
A.撫でる。
B.もうちょっと褒める。
C.わかんねーから突っ返して部屋に戻る。
A.撫でる。(*1.5)
…そういえば。
昔からこんな奴だったか。
たまに会う親戚の家でも、自慢できる事があったら何でも自慢してきて。
…最後は――
提督「…流石、翔鶴だな」
手触りの良い髪の毛に、置いた手が沈む。
翔鶴「……お兄さん」
最後は、いつも頭を差し出してきて。
ぽんぽんと軽く叩いてやると、それはそれは嬉しそうに笑ったものだ。
…あれも、最近はやってなかったなぁ。
すっかり卒業したのかと思っていたが…どうも、変わらないようだ。
提督「…全く、子どもだな、翔鶴は」
翔鶴「……子どもです」
翔鶴「…やっぱり、お兄さんに自慢したかったんです」
提督「はは、そうかそうか」
提督「…なあ…翔鶴」
翔鶴「はい?」
提督「…今度さ、良かったら」
翔鶴「…はい」
提督「俺に、一年の範囲のノート写させてくんね?」
翔鶴「……は?」
提督「いやー!結構振り返りたくなってさー、でも俺のノートって汚いから」
翔鶴「……勝手にどうぞ」
頭に手を置かれたまま、翔鶴がふい、と顔を背ける。
…あれ?怒ってる?なんで?
翔鶴→ *34/500
【5月2週】
提督「なあ、龍驤」
龍驤「んー?」
提督「この前、式札ってあったじゃん」
龍驤「…あー…せやな、どしたん?」
提督「あれ、上手く召喚すると、どんなん出てくんの?」
龍驤「…ふふ、妖精さんやで」
提督「…………」
龍驤「何やその目」
提督「……妖精さんっすか」
龍驤「…いや、マジやから」
提督「…わーすっげ、陰陽師すっげ、ガチ憧れるわー」
龍驤「マジや言うとるやろが!」スパーン
提督「ぐほっ!?」
睦月「おぉー、ないすつっこみー」
コミュ対象 23:59に一番近いレス
阿賀野 **0/500
瑞鳳 170/500
龍驤 126/500
睦月 *60/500
翔鶴 *34/500
『ん?何すりゃ良いかって…結構簡単やで?』
『あの娘がまたあの力を求めないように、幸せになればええんや!』
『…まーそりゃ流石に言いすぎやけどな、普通に楽しく生きてけるくらいのレベルまで戻したらええねん』
『あんな力、日常では過ぎたるものやねんから』
……なあ。
お前は簡単に言ってくれるけどさ。
それめちゃくちゃ難しいからな。
しかも、瑞鳳は…事情が事情だし。
…こうなると、茶来達が全く学校に来てないことが救いではあるのだが。
そんな訳で、今日も今日とて俺は瑞鳳の新たな日常を模索しているのである。
瑞鳳「…わー…弓だー」
提督「ま、木製じゃなくてカーボンなんだけどなー」
瑞鳳「あはは、何でも良いよー、正直良くわかんないし」
提督「何を言うか、木製弓は味があるんだぞ」
瑞鳳「…わかんないなぁ」
その一環。
瑞鳳を弓道場へと連れてきていた。
一応先輩や同級生に事情を説明はしたのだが、視線が痛い。
何いちゃついてんだてめぇというオーラがビンビンである。
翔鶴「…………むー」
あと翔鶴。
君にも説明したろ、同級生が見学に来るって。
何でそんなにこっちを睨むのだ。
瑞鳳「…ね、ねぇ、提督くん」
提督「うん?」
瑞鳳「…これ、射ていいの?」
提督「……あー…流石にそれはちょっと危ないかな」
提督「ああ、そうだ、構えだけでもなぞってみるか」
瑞鳳「構え?」
提督「そそ、ちょっとその弓持って…」
瑞鳳「わわっ」
提督「…っと!」
手を持つと、瑞鳳が驚いたように声を出す。
いかん。これでは構えを矯正するという名目で合法的に触っているだけだ。
…ここは、誰かに頼むべきか?…いや、俺の仕事だし…。
>>+4
A.翔鶴、頼む。
B.…仕方ない、俺がやろう。
C.…瑞鳳、嫌じゃないか?
A.翔鶴、頼む。(*0.5)
提督「あー…翔鶴」
翔鶴「…は、はいっ!?」
提督「…すまんが…瑞鳳、こいつに、構え教えてやってくれないか?」
瑞鳳「…え?い、いいよ別に、提督くんでも…」
提督「ん?…いや、やっぱり異性に触られるのは…」
翔鶴「はい!ダメです!ダメだと思います!」
瑞鳳「……えーと」
翔鶴「では構えてみましょうか!まずですね…」
瑞鳳「いたたたたたた!?痛い痛い!そっちに関節は曲がらないからぁ!」
翔鶴「あら?」
提督「うーん、やっぱりいいよなぁ、女の子同士仲良くて」
この調子で、瑞鳳に友達が出来てくれれば…俺の役目も、無くなるのだろうか。
…何となく、そんな事を思って…少しだけ、寂しくなったのだ。
瑞鳳「違うでしょこれ!弓道の構えじゃないよ!」
翔鶴「あらあら?」
…しかし…。
翔鶴、教えるの下手だなぁ。
瑞鳳→ 214/500
【瑞鳳―その1】
それはきっと、恋心というには余りにも幼いもの。
ただ何となく気になってる、そのくらいの感覚だった。
新しく始まった学生生活、そんな小さな、暖かい気持ちを抱えて。
あの頃は、本当に幸せだったように思う。
いつからだろうか、狂ってしまったのは。
『…ねーえ、瑞鳳ちゃん』
「うぷっ………ぁっ…」
忘れられない、忘れることの出来ないあの屈辱。
数えられない程の苦痛と、辱めを受けた。
…理由なんて、私が聞きたいくらいで。
……でも。
突然、あの人達は学校に来なくなった。
そして…小さな幸せは、また私に訪れた。
…ああ。
今は、しあわせ。
楽しくて、暖かい。
だから、しまおう。
忘れられないのなら、せめて、遠くにしまおう。
癒されることがないのならば。
傷だらけでも、その幸せに浸っていたい。
どうか、そのくらいは許してください。
お風呂
いじめの内容はご想像におまかせいたします
翔鶴ちゃんはお兄さんの異性のお友達にちょっとやきもち焼いてるだけです
【5月3週】
提督「テストかぁ」
睦月「だにゃー」
提督「…この前の考査」
睦月「…153いー」
提督「よし!4つ勝った!」
睦月「…うにゅー…がっくし」
龍驤「………」テクテク
提督「お、龍驤」
龍驤「あーん?」
提督「この前のテスト、何位だった?」
龍驤「ふっふー…一桁やで」
提督「……嘘だろ?下から?」
龍驤「何でそうなんねん!」
コミュ対象 01:26に一番近いレス
阿賀野 **0/500
瑞鳳 214/500
龍驤 126/500
睦月 *60/500
翔鶴 *34/500
…元の笑顔に戻った。
…いや―正確には、俺は瑞鳳の『元』を知らないから。
多分、普通に戻った―というべきなのだろうか。
瑞鳳「いつやるかー…今で…いや、いつでもいいけどね」
提督「…何だ、ハマってんのかそのネタ」
瑞鳳「…使う機会が無かったから…」
提督「まあ、使い所難しいよなぁ」
それ専用の振りをしてくれないと使えないんだよね、そのネタ。
瑞鳳「…ふぅ、嫌だなぁ、そろそろ梅雨だよ梅雨」
髪がくるくるするのよね、なんて。
そう言って溜息を吐く彼女。
その横顔には、以前程の陰はない。
声も、消えそうなどこか掠れていた物から、少しずつ張りを取り戻しつつある。
…なんだろうな。
この「アフターケア」は、そろそろ終わるのだろう。
瑞鳳が気を許せる友達でも出来て、俺の役目が終わってしまえば。
…やはりそれは、寂しい事だ。
今なら、はっきりそう言える。
瑞鳳「……提督くん?」
提督「…ん、あ、ああ、すまん」
…そのせいかは知らないが、なんだかボーっとしてしまう事が多くなった。
いかんいかん、瑞鳳にも失礼である。
瑞鳳「……あのさ、提督くん」
提督「…ん?」
瑞鳳「提督くん…私といて、無理…してない?」
提督「無理?」
瑞鳳「…実は嫌だ…とか、ホントは私の…こと、き、嫌い…とか」
提督「…瑞鳳」
一気に曇る、表情。
きっとこの娘は―ずっと、心の底で怯えているのだろう。
消えた記憶はあの時の物だけで、今まで受けた仕打ちは全て、この娘の中に刻まれている。
癒えることのない、消えることのない傷として。
…ああ、クソッ。
俺は何をやってるんだ。
そんな自責は、俺の中できっと――
>>+4
A.これがただの義務ではなく、瑞鳳と過ごす楽しい時間になっていたからだろう。
B.傷ついたこの子に対する情が、本当に深まってしまったのだろう。
C.…義務感が芽生えていたのだろう。
C.…義務感が芽生えていたのだろう。(*0.5)
…義務感が芽生えていたのだろう。
この子を何とかしなければならない。これ以上傷つけてはいけないと。
提督「…そんな訳ないだろ」
瑞鳳「…ほん…と?」
提督「はぁ…心配症だなぁ、お前も」
提督「だいたい、嫌いなやつとこんなに一緒にいるわけねーってば」
瑞鳳「……提督くん」
瑞鳳が俯く。
その影に、一筋、何かが光ったような気がした。
瑞鳳「……っ!」
目元を、服の袖で乱暴に拭う。
そして、しっかりとまた顔を上げ、俺に向き直った。
瑞鳳「…あの…あのね」
提督「ん?」
瑞鳳「…弓道部…私も、入りたい…な」
提督「…お、やる気になったか?」
瑞鳳「うん…変わるような、気がするんだ」
提督「変わる?筋肉でも付けるのか?」
瑞鳳「ち、違います!」
提督「…ムキムキはどうかと思う」
瑞鳳「違うのー!」
そんな、晴天、真昼の空。
青空を彩る、ひこうき雲。
それに、幸せな俺達は気付かない。
瑞鳳→ 232/500
【5月4週】
提督「…かゆい」
翔鶴「……布団洗わないからですよ」
提督「…何でダニが湧くんだよ俺の布団だけ!」
翔鶴「…もう、不衛生なんですってば」
提督「……うぅ…かゆい」
翔鶴「はいはい、布団洗っちゃいますから…あら?」
提督「…ん?」
翔鶴「……もー…ティッシュなんて投げ出してる…こういうのがですね」
提督「わーったぁ!すとーっぷ!」
翔鶴「きゃっ!?」
提督「いやあ!確かになぁ!こういうのがいかんよなぁ!」ポイー
翔鶴「…お兄さん?」
コミュ対象 02:07に一番近いレス
阿賀野 **0/500
瑞鳳 232/500
龍驤 126/500
睦月 *60/500
翔鶴 *34/500
今日はここまで
お付き合いいただきありがとうございました
思うように安価がとれないと汚い工作に手を染める奴が出てくるからな
翔鶴推し「(俺にとって都合悪いのは)全部自演」
睦月推し「瑞鳳派ないわー」
はいはいそっすね
なんか最近那珂ちゃんばっか書いてて可愛くなってきた
始める
提督「…で、何これ」
龍驤から渡されたのは、謎の札。
なんて書いてあるのかは、達筆すぎて俺には読めない。
龍驤「後で説明したるから、それにこの前みたいに力込めてみ」
提督「…この前…って、あの失敗の時か?」
龍驤「せや、ほら、ちゃちゃっとやり」
提督「あ、ああ…」
…また御札焼き切れさせて俺を笑い物にするつもりじゃねえだろうなこいつ。
……とりあえず、やってみるか。
提督「…ふっ!」
右の手のひらの上に御札を乗せ、力を込める。
また、あの時の何かが出て行くような感覚。
違ったのは、その後。
御札が光に包まれる。
提督「…お、おおっ!?」
一瞬して、収まる光。
そして、手のひらには御札ではなく――
提督「……な、何だこりゃ」
立派な拵えの長弓が乗っていた。
手よりも遥かに大きなサイズであるにもかかわらず、全く重さを感じさせない弓。
龍驤「…やーっぱりかぁ」
提督「…ど、どういうことっすかね、これ」
龍驤「こん前のあの安物の式札じゃあ、キミの妖力には耐えられんかったっちゅーことや」
龍驤「どうしてかは知らんけど、キミの中には恐らく…めちゃくちゃな量の妖力が眠っとる」
提督「…ま、マジで…?」
龍驤「証拠に、その札に封印された長弓、かなり使い手を選ぶんや」
龍驤「生半可な陰陽師じゃ、絶対に顕現させられん」
提督「……」
…うおお。
俺マジか。本当に隠された力があったのか。
すげえ、すげえぞ俺。
龍驤「…ただ…まぁ、なんちゅーかな」
提督「おう!この天才陰陽師候補に何か言いたいことがっ!?」
平手で頭をスパーンと殴られた。痛い。
龍驤「調子に乗るのやめ」
龍驤「…キミの妖力は、ホンマに『あるだけ』なんよなぁ」
提督「ある…だけ?」
龍驤「せや、例えるなら…タンクみたいにパンパンに詰まってはいるんやけど、現状で補給はされてない」
龍驤「川の流れが既に止まっとるダムみたいなもんや」
提督「…え?何それ?」
龍驤「普通、自分の中で作られるもんやから…」
龍驤「……よーわからん、としか言いようが無いけどね、ウチには」
提督「じゃあやべーじゃん!この前の無駄使いとかやべーじゃん!」
龍驤「……いや、そこまで食いつかんでも」
心配せんでも、そうそう無くなる量やないわ―苦笑いしながら溜息を吐いた。
龍驤「……しっかし…興味深いなぁ、キミ」
提督「…ん?」
龍驤「未だ見たことない事例や…な、なぁなぁ」
提督「どした?」
龍驤の声が、明らかに俺の機嫌を伺うような甘い物に変わる。
龍驤「ちこーっと、解剖させてくれへん?」
提督「アホか嫌だよ!」
と思ったらこれである。
何を言っているんだこいつはマッドすぎるぞ。
龍驤「…ちぇー…おもんないなぁ」
提督「お前の面白さの為に死ぬつもりはねーよ!」
龍驤「大丈夫大丈夫、死にゃせんて」
提督「どっちにしろ嫌だ!」
龍驤「…んー…わーかったって…あ、ほんなら」
提督「…今度は何だ」
龍驤「ちょいと脱いでくれへん?」
提督「脱…おまっ!?」
龍驤「あーいや、上だけでもええから、しっかりと妖気の流れを確かめてみようかとなー」
…こいつ怖い。
…どうしようか――
>>+4
A.観念する。
B.断固として拒否する。
C.よし、ならお前も脱げ。
C.よし、ならお前も脱げ。(*1.0)
提督「…よし、ならお前も脱げ」
龍驤「え?あーウチも脱げばええんか、おけおけ」
龍驤「…って誰が脱ぐかアホォ!」
提督「いや、不公平じゃん」
龍驤「だからって乙女に何頼んどんねん!」
提督「上だけでいいぞ」
龍驤「………もうええわ」
一際大きく龍驤が項垂れる。
…よし、諦めてくれたようだ。
と、安心したのも束の間――
龍驤「勝手に脱がさせて貰うで!」
キラリと目を光らせた龍驤が突進してくる。
そして俺のTシャツを荒い手つきで鷲掴みに。
提督「ちょ!や、やめろっつーの!」
龍驤「ほら大人しくせーや流れが見えへんやろ!」
提督「ま、待って破れる!破れちゃうから!」
龍驤「うっさいわ黙っとき!ほれほれ脱げてまうでー!」
提督「いやぁぁぁぁぁ!」
パトロール中の路地裏。
女のやたら楽しそうな威勢良い声と男の悲鳴がこだました。
…逆だろ、普通。
……ああ、もうお嫁に行けない。
龍驤→ 192/500
【6月1週】
提督「…くくく」
睦月「…おや?提督くん、どうしたのですそんな不敵に笑って」
提督「ふ、睦月か…悪いな、俺は少しばかり人間として新たなステージへ進んでしまったようだ」
睦月「ほへー?」
提督「…すまないな…巻き込んでしまうかもしれないから、全ては説明できない」
提督「だが…大丈夫だ、睦月は俺が守るから」
睦月「………」
睦月「…あの」
提督「何だ?」
睦月「…悪いものでもたべましたか?」
提督「………ごめん、調子乗りすぎた」
コミュ対象 22:27に一番近いレス
阿賀野 **0/500
瑞鳳 232/500
龍驤 192/500
睦月 *60/500
翔鶴 *34/500
これだとキャラ安価同一ID連取はなくした方が良いのだろうか
いやースナイパー優秀過ぎてのう
別IDでの同じ娘は問題無しで、もし同一ID連取の場合はその下を採用します
別の娘のコミュ挟んでからなら全く問題ありません
というルールを加えときますね
今回は普通に瑞鳳です
瑞鳳「…ぐぅぅ…」
提督「おー瑞鳳、生きてっかー」
瑞鳳「……死んだぁー…ぐふぅー」
提督「…ただの屍のようだ」
そんなアホなやり取りを交わす、弓道場での俺たち。
本格的に部活に参加しはじめた瑞鳳は、結構体力的に辛いようだ。
部活後の掃除当番に割り当てられたのだが…半分死んでいる。
瑞鳳「…いやー…弓道部も大変なんだねー…」
提督「楽な部活なんてねーさ、ま、慣れる慣れる」
瑞鳳「…慣れるかなぁ」
床に倒れ込んだ瑞鳳が、ゴロンと転がる。
まだ弓道着は届いてないので、彼女が身に着けているのはただの体操服だ。
その隙間から、肌が覗く。
提督「…瑞鳳」
瑞鳳「なに?」
提督「へそ見えてる」
瑞鳳「…わきゃあ!?」
瑞鳳はその言葉に慌てて立ち上がり、体操着のシャツの裾をパンツの中に入れた。
…案外元気らしいな、どうも。
瑞鳳「…提督くんのえっちー」
提督「お前が見せてきたんだろ、むしろお前がえっちだ、痴女だ」
瑞鳳「酷ぉっ!?」
提督「……ま、どうでもいいか」
瑞鳳「どうでもよくないから!そこ結構重要だよー!?」
明るくなった。
瑞鳳は、とても明るくなった。
この2ヶ月程で、格段に。
俺は以前の瑞鳳を、茶来のグループの後ろについて歩く姿くらいしか知らないが…あの時は、こんな風には笑っていなかった。
…見えてきたのは、俺の役目の終わり。
……だからなのだろうか、そんな事を聞いてしまったのは。
提督「…なあ、瑞鳳」
瑞鳳「うん?どしたの?…ち、痴女じゃないからね!?」
提督「いや、それはもういいっての……あのさ」
提督「…お前は、…変われたか?」
瑞鳳「…え?」
提督「……弓道部に入って、変わるって…言ってたじゃないか」
提督「…よく意味はわからなかったけど…あれ、気になって」
…嘘だ。
俺は、瑞鳳にとっての「変わる」という言葉の意味を知っている。
そして、変わってしまったならば―俺の役目が、終わることも。
瑞鳳「…ん…変われた…のかな」
彼女は、小さな声で続ける。
瑞鳳「……少なくとも、…変わり始めたよ」
提督「…そっか、それは…良かった」
良かった、なんて言ってしまう時点で、俺は意味を知っていると言っているようなものだが。
幸いにも、彼女はそれに気づかなかったようだ。
瑞鳳「……あのね、提督くん」
何故なら―そんな事よりも、大事な用件があるらしかったから。
真剣な目をした瑞鳳が、俺を見る。
瑞鳳「…私が変われたんだったら…それはきっと、提督くんのおかげだよ」
提督「俺の?」
瑞鳳「うん」
両手を、自分の目の前に伸ばして広げた。
白い肌が、夕日に輝く。
瑞鳳「…楽しかったんだ」
瑞鳳「提督くんが話しかけてくれて、色んな事を私にしてくれて」
瑞鳳「楽しくて、幸せで」
瑞鳳「…だから、私は変われたの」
提督「…大したことは、してないよ」
瑞鳳「そんな事ない、全部、全部提督くんのおかげ」
瑞鳳「…ねぇ、知ってた?提督くん」
提督「…ん?」
瑞鳳「私が…提督くんのこと、入学した時から…ずっと、知ってたって」
提督「…え?」
瑞鳳「…入試の時、私にシャー芯くれたの、覚えてる?」
提督「……う、……ん?」
瑞鳳「あはは、やっぱり覚えてなかったかぁ」
瑞鳳「…提督くんは、いつも助けてくれるんだよ、私の事」
瑞鳳「貴方にとっては大したことじゃないかもしれないけど…私にとっては、凄く嬉しい事だったんだ」
瑞鳳「…だから、何となく提督くんを目で追ってた、助けてくれた人だなって」
瑞鳳「……それで、それでね…今は…はっきり、わかるの」
瑞鳳「私は――」
…この後に続く言葉は何でしょう、と言われて。
予想できない奴がいたら、そいつは殴ってもいい。
…だから、俺は――
>>+4
A.瑞鳳の言葉を遮る。
B.…そのまま、瑞鳳に続けさせる。
C.……あのー、弓道場の掃除、終わりましたかー?
B.…そのまま、瑞鳳に続けさせる。(*1.5 最低301)
…遮ることなく。
きっと紡がれるであろう言葉を、待っていた。
瑞鳳「好き…なんだ、提督くんのこと」
瑞鳳「…好きに…なってたん、だ」
提督「…瑞鳳」
瑞鳳「…あ、あはは…ご、ごめん!いきなり!」
瑞鳳「あ、あのあの!返事とか……は、全然、まだでいいから!」
瑞鳳「私、これ言いたかっただけっていうか、感謝を提督くんに伝えたかっただけっていうか!」
瑞鳳「あはは…何言ってるかわかんないや」
わたわたと、伸ばした手を慌ただしく瑞鳳が左右させる。
頬に差した朱は、きっと夕日のせいではない。
瑞鳳「と、とにかくね!それを言いたかったの!」
瑞鳳「…ありがとうございますと、好きですって!」
提督「…うん…その、嬉しいよ、瑞鳳」
提督「…返事は、ゆっくり考えさせてもらっていいかな?」
瑞鳳「あ…うん!全然大丈夫!待ってるから、私!」
瑞鳳「そ、それじゃお掃除の続きしないとね!おそーじ!」
提督「ず、瑞鳳!そこにバケツ…!」
瑞鳳「え?」
がしゃーん。
ばしゃーん。
びしゃーん。
素晴らしいコンボが決まる。
水浸しの体操服と床。
…ああ。
掃除、長くなりそうだ。
なのに、俺は…心の隅で、どこかそれを喜んでいて。
…きっと、あの言葉を遮らなかったのも――
瑞鳳→ 301/500
【瑞鳳―その2 Another】
「龍驤」
「…んー?」
「瑞鳳…そろそろ良いんじゃないか?」
「ま、確かになぁ…いやー、ウチの想像以上によーやってくれたわ!おつかれさん!」バッシバッシ
「…叩くなっつの…つーか、俺に投げんなよ」
「悪い悪い…あ!もしかしてその時間ウチと会えんで寂しかったんか?ん?」
「アホか」
「けっ、冷たいやっちゃな」
「…でも…ホンマにすまんかったな、押し付けるような真似して」
「ウチには…よーわからんから、そういう、人の気持ちとか」
「…随分しおらしいな、気持ち悪いぞ」
「きも――な、なんやてこら!」
「ぐえっ、やめろ、首絞めんなっておい――!」
【瑞鳳―その2】
『瑞鳳…そろそろ良いんじゃないか?』
走っていた。
放課後、人の少ない校舎の中を、宛もなく。
何処でもいい。
一人になりたかった。
一人になって、何もしたくなかった。
『…あ!もしかしてその時間ウチと会えんで寂しかったんか?ん?』
私は。
私は最初から、ずっと――
「………はぁっ、ぁっ…」
たどり着いたのは、校舎裏。
暗い、陽の光が届かない場所。
『大丈夫だよ、瑞鳳ちゃん、私がいるから』
優しくこう言ってくれた娘は。
『…ばーか、何本気にしてんだよ』
一週間後に、意地悪く笑っていた。
そうだ、あの時だって、幸せだった。
いじめの苦痛から、逃れられたような気がしてて。
それもいじめの一環だったって事をバラされた時―心が張り裂けそうに痛くなって。
「……何で…なんで…っ!?」
傷ついたまま浸っていた幸せが、色を変える。
輝いて見えたそれは、どこまでも深い底なし沼。
恐る恐る浸っていた私が、少しだけ深い所に足を伸ばしたら―そのまま沈んでしまう、沼。
「……提督くん…」
好きだったのに。
本当に、好きになっていたのに。
こんなの嫌だ。嫌だ。私はしあわせでいたいんだ。
…ねぇ、何が足りないの?
勇気は出したよ、諦めだってしなかった。
じめじめとした地面に、顔から崩れる。
「やだ……やだよぉ…」
泣いたって意味は無いのに。
それでも、涙は止めどなく溢れてきて。
「……あ、れ」
そんな時――
誰かが、私の頭の中で囁いた気がした。
『……力を、あげる』
【6月2週】
瑞鳳「……おはよう、提督くん」
提督「おはよー、瑞鳳」
提督「…ってあれ?…お前朝食でも抜いたのか?何か元気ねーぞ」
瑞鳳「…ううん、食べたよ」
提督「そっかー、そんならいいけど」
提督「暑くなってくるからなぁ、気をつけろよ」
瑞鳳「…うん、ありがと」
瑞鳳「………上っ面だけのくせに」ボソッ
提督「…ん?」
瑞鳳「…何でもないよ、提督くんも、気をつけて」
提督「お、おう…」
睦月「…おりょー、づほちゃんご機嫌ナナメでしょうか」
提督「……あの日…いやすいません睦月さん何でもないです」
コミュ対象 23:45に一番近いレス
阿賀野 **0/500
瑞鳳 301/500
龍驤 192/500
睦月 *60/500
翔鶴 *34/500
明日早いんで今日はここまで
お付き合いいただきありがとうございました
たまには内容についても触れてあげてください
毎回下1~5くらいから気分で指定とか色々考えたりもしたけどね、きっと意味ねーでしょうから
今日は22時頃からやると思います
校舎裏。
瑞鳳に呼び出されてやってきたその場所には、既に彼女が立っていた。
提督「…よ、どうした?」
瑞鳳「……ちょっと、ね」
…あまり好きな場所では無かった。
特に、此処にいる彼女を見るのは。
どうしても、あの時の彼女を思い出してしまうから。
瑞鳳「……ねえ、提督くん」
提督「うん、あ…そ、そうか、もしかして返事か!?」
…くぅ。
何かいつでもいいとか言われたからその言葉に甘えてしまっていた。
…でもそうだよな、そりゃ早く結果知りたいよな普通。
…ど、どうしよう…つっても、俺の中では既に結構気持ちは固まって――
瑞鳳「違うよ」
提督「…え?…そうなのか?」
瑞鳳「うん、全然、全然見当違い」
クスクスと、小さく瑞鳳が笑う。
…それは、どこか俺を嘲笑っているようにすら見えた。
瑞鳳「……あのね――」
真っ直ぐに俺を見ていた瑞鳳の瞳。
提督「……っ!?」
その色が、真紅に変わった。
同時に、校舎裏が―今、俺が立っている場所が、世界から切り離されたような、そんな感覚。
瑞鳳「…何で、嘘付いたの?」
提督「嘘…って、どういう――」
瑞鳳「答えてよっ!何で!?何で、私を裏切ったのよ!?」
提督「裏切る?…ず、瑞鳳、言ってる意味がわからないんだが」
瑞鳳「皆!皆、みんなっ!みんな私を裏切るんだ!」
瑞鳳「嫌、もう嫌、嫌なの!私は幸せになりたい、幸せでいたいのに!」
提督「瑞鳳、落ち着け、何を」
髪を振り乱し、目を滾らせながら叫ぶ瑞鳳は、とても正気には見えない。
そんな彼女の表情が、いきなり穏やかな笑顔に変わった。
瑞鳳「…ふふ、あはは、でも、でもね、私はやっと見つけたの」
瑞鳳「私を裏切らない、私と一緒に居てくれる子」
瑞鳳「あのね、すっごく優しいの、すっごく」
瑞鳳「ああ、そうだ、提督くんにも紹介してあげる、ね」
瑞鳳「ヲ級――」
「それ」の名前を、彼女が呼んだ、その瞬間。
彼女は、彼女で無くなった。
真紅の瞳を起点にして、異形が彼女の身体を覆っていく。
瑞鳳『……ああ、そうだ、提督くん』
瑞鳳『この子ね、すぐお腹空かせるんだって』
瑞鳳『…でも、当然だよね、だってそうだよね、まだこの子は何も食べてないもの』
瑞鳳『提督くん――』
第六感、とでも言うべきだろうか。
先程まで居た場所から反射的に身を引いたのは。
瑞鳳『…あれ?あれあれ?』
提督「………っ」
今まで立っていた、少し前方の場所。
そこが、瑞鳳の頭から伸びる触手によって抉られていた。
瑞鳳『ダメだよ、ダメだってば、提督くん』
瑞鳳『何で逃げるのよ、何で動くのよ』
瑞鳳は笑っている。
瑞鳳だったものは笑っている。
…あれは、マズい。
懐のポケットに入れた、龍驤から貰った札を掲げる。
力の込め方は、習った通り!
提督「……疾ッ――!」
光の後、現れたのは長弓。
『…なあ、素朴な疑問なんだが、矢は?』
『矢は、キミの妖力や』
『簡単や、イメージするだけでええ』
『…ま、大丈夫、やってみりゃあ慣れる慣れる』
…まさか、ここまで切羽詰まった状況で初めて使うことになるなんて思いもしなかったが。
提督「…………」
頭の中で、いつもの射法をなぞる。
弦を引く、イメージするのは矢。魔を祓う矢。
キリ、と弦に重みが掛かる音がした。
瑞鳳『…今度こそ、逃がさない』
再び振り下ろされる触手。
…だが。
瑞鳳『………え?』
それは、俺に辿り着く前に中程を撃ち抜かれ、地面に転がった。
呆ける瑞鳳。
その隙に、もう一度弦を引く。
触手が、また一つ弾けた。
瑞鳳『……え、な、何で、どうして!?』
瑞鳳『痛い、の?え、ダメだよ、痛いのはダメ、ダメだよね、治さなきゃ』
動きが乱れた。
明らかに瑞鳳が動揺している。
…そうか。
これは好機だ。
頭が下したのは、そんな判断。
弓を引く。
触手が弾ける。
弓を引く。
触手が弾ける。
単調な作業の如く、瑞鳳の周りを護る触手を一本ずつ貫いていく。
『…気ーつけるんは…せやな、まぁ、ウチの監視下以外でそれ使うことなんてあらへんとは思うけど』
『…呑まれんようにな、力に』
『ふ、この俺の意思を舐めてもらっちゃ困るね』
『……あーそ、ま、今度ウチが超スパルタレクチャーしたるから、覚悟しときや』
瑞鳳『……嫌、嫌…やだ、助けて、誰か、助けてよ』
瑞鳳『…ねぇ、ヲ級、ねえったら!何か言ってよ……何、か』
瑞鳳『……痛い、よ…苦しいよ、…何で、何で私だけ、こんな――』
遂に身を守る物を失った異形が、地面にうずくまる。
頭が、無防備だ。
…今なら、簡単に撃ち抜けるだろう――――
>>+1-5
A.異形を撃つ。
B.………撃たない。
C.カッコいい関西弁の陰陽師が乱入してくる。
最初は2択で401か退場かってしようとしたけど良く考えたら一発BADにしないって決めたから出てきたドラえもん的RJ
つーか何書いてんだろうな
風呂っす、久保最高だった
C.カッコいい関西弁の陰陽師が乱入してくる。(*1.0)
撃つ。
撃ち殺す。
あれは異形。
殺さなけれ――
龍驤「アホ」
提督「んがっ」
後頭部に、軽い衝撃。
靄が掛っていたような思考が、一気にクリアになる。
龍驤「……かー…まった面倒なことしくさりおってからに」
提督「…龍、驤?」
龍驤「せやでー、頼りになる陰陽師、龍驤さんやでー」
ほれ、と龍驤が指でうずくまった瑞鳳を指す。
龍驤「…キミ、今ウチが止めんかったら中身ごと殺そうとしとったやろ、あれ」
提督「………え?あ…あ!?」
龍驤に言われて気付く。
弦につがえた、妖力をたっぷりと蓄えた矢に。
龍驤「…この状況を見るに、正当防衛っちゃ正当防衛やけどね、それはキミの本意やないと違うんか?」
提督「あ、ああ…俺は…」
龍驤「やから言うたねん、呑まれるなって」
――まあ、と龍驤が一拍置いて続ける。
龍驤「…とりあえず今日は帰りや、後ん事はウチが何とかする」
龍驤「ただ…」
チラリと見たのは、天を仰いで呻く瑞鳳。
瑞鳳『………やだぁ……やだ、誰か…』
龍驤「…あの子の事を何とかするんは…また、キミに投げるで」
龍驤「……横須賀中央病院の地下2階、Bの3号室…多分、そこに入ることになると思う」
提督「…そう、か」
龍驤「…なあ、提督」
提督「……ん?」
龍驤「…すまんかったな」
龍驤「……巻き込んだくせに、偉そうに説教なんかして…そのくせまた、頼み事なんかして」
提督「いや…」
確かに、巻き込まれたのは確かだ。
だけど…、巻き込まれなければ、瑞鳳の苦しみを知ることすら出来なかったかもしれない。
提督「……感謝してる、龍驤には」
龍驤「……ウチが言うのも何やけど…変人やなあ、キミ」
驚いたような、呆れたような表情で。
龍驤はそう言って笑ったのだった。
瑞鳳→ 344/500
【6月3週】
翔鶴「…あら?」
提督「どした?」
翔鶴「いえ…あの、瑞鳳さんは今日もお休みですか?」
提督「…ああ…入院してるんだってよ、なんでも」
翔鶴「入院!?…事故、とかでしょうか?」
提督「わからん、なんせ詳しいことは聞かされてないもんでな」
提督「…まー…俺らは俺らで練習しましょうか、っと」
翔鶴「そうですね…あれ、お兄さん?」
提督「今度は何だ?」
翔鶴「いえ…何か、弓の構え方が…何でしょう、少し変わりましたか?」
提督「……ある人物から特訓を受けてなぁ」
翔鶴「…特訓?」
提督「…ぜってー巻き込んでごめんとか思ってねえわあいつ」
コミュ対象 23:48に一番近いレス
阿賀野 **0/500
瑞鳳 344/500
龍驤 192/500
睦月 *60/500
翔鶴 *34/500
睦月「睦月に足りないものは部活だったのです!」
提督「ほーん」
学校近くのファミレス。
金欠学生である俺達は昨日の言の通りにファミレスドリンクバーで粘る事にしたのだ。
もれなく店員のはよ出て行けまたは何か注文しろという視線付きである。
さて、そんな状況説明は置いて。
問題は睦月の謎の宣言であろう。
提督「足りない、ってのは?」
睦月「せーしゅんのピースです!」
提督「………」
ああ、そっか。
どうでも良い系の話か。
ドリンクバーの薄いコーラを飲み干して、睦月に向き直る。
提督「…ところで、明日の数学の宿題なんだけどさ」
睦月「なんでじゃー!」
睦月、怒る。
安っぽいぺらぺらのおしぼりを投げつけられた。
…こ、これで睦月は手を拭いたのか…と、流石にそんな事を思う俺ではないので、適当に突っ返す。
提督「悪かった悪かった、で、部活?」
睦月「そうですよー!睦月は今、帰宅部じゃないですか!」
提督「んだなぁ」
睦月「そんなんじゃダメだと思ったのです!やはりせーしゅんを味わうには部活だにゃー!」
提督「…前から思ってたけど」
睦月「にゃ?」
提督「…いや、単純だよなあ、お前」
どうせなんか漫画でも読んで影響されたに決まってる。
この後何部って言い出すかにもよるな。
…まあ、学生が放課後ドリンクバー飲みながら話す話題なんて、これくらいでちょうど良いのかもしれないが。
提督「つーか、今濃い青春を現在進行形で味わってるじゃないか」
睦月「…にゅー…陰陽師は流石に濃すぎるにゃー」
提督「程々の濃さを求めるのか」
睦月「人間平凡が一番、ですよー」
微妙に贅沢なやっちゃ。
こちとらその濃すぎる青春に両足突っ込んでんのに。
…しかし、そうだな――
>>+4
A.じゃあ、恋でもしてみろよ。
B.弓道、するか?
C.……お前何だったら出来るんだろうなぁ。
B.弓道、するか?(*1.0)
提督「んー…なら」
提督「弓道、するか?」
睦月「……えー…」
微妙な顔をする睦月。
ほら見ろ。
どうせこいつが読んだ漫画はそういう内容じゃなかったんだ。
提督「……何読んだの?」
睦月「3月の…」
提督「…お前に将棋は多分無理だからやめといた方がいいぞ、睦月」
睦月「酷っ!」
コップに残った氷を口に入れ、砕く。
冷たい。悪癖なのかもしれないが、どうにもやめられない行動である。
睦月「しかしー…もしかして提督くん、睦月と一緒に弓道したいのかにゃー?」
睦月「にっひー、睦月の弓道着を見たいとかー」
提督「安心しろ、微塵も思っていない」
睦月「にゃー!?」
まあ、そんな感じの。
どうでも良い会話を交わした、放課後だった。
睦月→ *57/500
好感度ミスってたわ
【6月4週】
夏。プール開き。水着。
…そう、水着。
龍驤「…………」
提督「…………」
龍驤「…何やこら、あ?言いたいことあるならはっきり言えやこら」
提督「………ふぅ」
龍驤「」ピキッ
俺は、他方、女子グループと戯れる阿賀野へと視線を移す。
阿賀野「でね――」
提督「……ふぅ」
ああ。
豊穣の大地。
豊かな自然の実り。
善哉、善哉。
龍驤「良いわけあるかアホォ!」
提督「ぐへぇ!?」
コミュ対象 00:35に一番近いレス
阿賀野 **0/500
瑞鳳 344/500
龍驤 192/500
睦月 *87/500
翔鶴 *34/500
今日はここまで
お付き合いいただきありがとうございました
次週入る前に安価システムまた見直そうと思います
何度も申し訳ありません
ポジが止まらない何だこのチーム
22時くらいには
後その場のノリで書いてる部分が多数ですので別にキャラの進行度でBADとかはないです
弓道の真髄は、その心持ちにこそある。
静かな心で放つ矢が、最も真っ直ぐに、疾く飛ぶ。
何より、放った後も気を抜いてはならない。
残心―むしろ放った後の姿勢こそが重要だ。
波打たず、揺れない心で弓を射る。
そしてその矢が的に当たるのを見届けて、初めて息を吐くのだ。
――とは、勿論俺の言ではありません。はい。
翔鶴「………ふっ!」
翔鶴の弓の弦が、矢を弾く。
それはまるでそうなるのが当然とでも言うように、的の中心へと吸い込まれた。
カッ、と小気味の良い短い音。
彼女は、そこで初めて身体の力を抜いた。
提督「……凄いな」
翔鶴「…ありがとうございます」
拍手する俺の側に近寄ってきた翔鶴は以前のように頭を此方に差し出してきたが。
流石に部活中に頭を撫でるわけにはいかない。その代わりに肩を軽く叩いて、お疲れ、とだけ言っておく。
翔鶴「…む」
提督「…あのな、周りの目という物がある」
不満気な態度を見せる彼女であったが、羨望やら尊敬やら色んな感情の篭った部員たちの視線に気付いたのだろう。
その表情を諦めたように苦笑いに変えた。
翔鶴「……どうでしたか?」
提督「どうも何も…文句の付け所がない」
翔鶴「ふふっ、そうですか」
本当に嬉しそうに、両手を合わせて笑う翔鶴。
…いつまで経っても、やはりこんな所は子どもだな。
「……あの、翔鶴さん」
翔鶴「はい?」
そんな所に割り込んできたのは、弓道部3年の先輩―女子部の部長だ。
彼女は困った顔をして、翔鶴に続ける。
「…弓原さん達が言ってたんだけどね、貴女、この前の弓道場の掃除サボったって本当?」
翔鶴「…え?」
翔鶴が、困惑した顔を見せる。
弓原…というのは、確か同じ新入生だったか?
…親族の贔屓目だというのはわかっているけれども、翔鶴が掃除をサボるとは思えん。
……レギュラー確定してるような同級生、その評価を下げようとする輩…ふむ、何となくしっくり来る構図ではある。
…はてさて――
>>+4
A.あ、すんません、先週の掃除当番俺でしたわ。
B.翔鶴がそんな事するわけないっすよ。
C.……翔鶴には悪いが、とりあえずこの場は黙っておくか。
A.あ、すんません、先週の掃除当番俺でしたわ。(*1.5)
しかし、これはあくまで俺の想像。
根拠など無いし、仮にこれが真実だとしてもこんな物水掛け論にしかならない。
提督「あ、すんません」
いかにも今思い出したという風に、先輩に向かって頭を下げる。
提督「先週の掃除当番、俺でしたわ」
「……はぁ?」
提督「いや、その日は女子の方が人出せないからやっとけって言われたのすっかり忘れてました」
「…それ、本当なの?」
提督「あはは…いやいや、すんません」
「……はぁ……もう、適当なのは良いけど、他に迷惑かけないでくれないかしら」
提督「はい、以後気をつけます」
「…とりあえず、今後は忘れないように」
提督「うっす」
怒るというよりも呆れたような様子で、女子部長は去っていく。
翔鶴「…あの、お兄さん」
提督「悪いなー翔鶴、すっかり忘れてた」
…多分、気付いてるだろうけど。
それでも、翔鶴の前でカッコつけたかったのだ。
お兄ちゃん的に。
提督「ま、元々俺の評価なんてあってなかったようなもんだしなー」
翔鶴「……お兄さん」
参った参った、と大きく広げた両手、その片方を翔鶴が握る。
それにぎゅっと力を込めて。
翔鶴「…ありがとうございました」
提督「……なんだ、最近は掃除サボるとお礼を言われるのか」
翔鶴「…もう」
仕方ない人ですね、と。
再びその顔を柔らかい物に変えて、翔鶴は困ったように言ったのだった。
翔鶴→ *88/500
【7月1週】
緊張の一瞬。
成績表が配られるこの瞬間は、まさに罪状を告げられるのを待つ被告人。
「提督くーん」
提督「はい」
薄っぺらい紙を、とてもとても大事に開く。
………。
…うん、うん、そう、世界史はできてたし。
…数学ッ!…踏み止まったか。セーフ。
……。
…おお。
100位に迫ろうかという順位。
何気に過去最高点じゃないか!
提督「~♪」
ああ、気分が良い。
龍驤「あちゃ」
そんな時、俺の前を通った龍驤が手に持った紙を取り落とす。
提督「…………」
…垣間見えた、その中身。
…ああ、気分が悪い。
コミュ対象 22:55に一番近いレス
阿賀野 **0/500
瑞鳳 344/500
龍驤 192/500
睦月 *87/500
翔鶴 *88/500
提督「………」
龍驤「何キョロキョロしとんねん」
提督「…いや…その」
放課後、龍驤と出かける事は多々あった。
しかしその理由は、訓練だとか警邏だとか。少なくとも、遊びになんていったことはない。
だが、今いるのは学生にとってはちょっとオシャレな喫茶店。
メニューを見た限り、値段もそこそこ良い。
龍驤「…頼まんの?」
提督「ああいや…何にしようか」
龍驤「心配せんでも、払いはウチや」
提督「……良いのか?」
龍驤「強引に誘ったんに払わせられんて」
龍驤「それにウチ、結構金持ちやで?」
提督「…それじゃあ…お言葉に甘えるよ」
龍驤「おーいねーちゃん、ウチはアイスコーヒーとこの日替わりおすすめケーキや!」
俺のその言葉を聞いてから、龍驤が声を張り上げた。
微妙にこの喫茶店には相応しくない態度である。
…つーか注文用ボタンあんだろ使えよ。
龍驤「提督、キミは何にするん?」
提督「あ、えー…同じので」
なんてことを考えていたらそんな注文になってしまった。
まあいいか、どうせこんなに種類がある中からケーキなんて選べないし。
程無くして、注文したケーキとコーヒーが俺達の前に並べられる。
さっそく一口つまんでみると、なるほど値段通り良いケーキだ。
龍驤「はぐ……うん、美味いやんこのケーキ」
提督「……だな、で、どういう風の吹き回しだよ?」
龍驤「…んー…あはは、言わなあかん?」
提督「…ダメってわけじゃねーけど…気になりはする」
龍驤がフォークを一度置いて、代わりにコーヒーを啜る。
龍驤「……なんつーかなぁ…ウチ、一回こういうの体験してみたかったんよ」
提督「体験?」
そ、と短い返事。
龍驤「あんま、フツーってもんに縁がなくてなぁ、昔から」
龍驤「ちゅーわけで、ウチの栄えあるファーストデート相手にキミを選んだんや!」
…普通に縁がない、というのがどんな物かは普通に生きてきた俺には想像できない。
だけどそれは、友達とちょっとお茶するような事すら許されない事だったのだろうか。
>>+4
A.そっか…そいつは光栄だよ、どうも。
B.……何アホなこと言ってんだ。
C.………それなら、せめて今日一日楽しませてやりたいな。
C.………それなら、せめて今日一日楽しませてやりたいな。(*1.5)
…それなら。
せめて今日一日くらいは楽しませてやりたい。
…そんな事を思ったのは、…まぁ、偏に俺の優しさであろう。俺やさしー!
というのは置いておいて…ちょっとした恩返しである。そう、恩返し。他意はない。
提督「…そうか…なあ、龍驤」
龍驤「ん?」
提督「お前、いつも放課後制服着てるよな」
龍驤「…ん、ああ…別にええやろ、めんどいし」
提督「…よし!」
ぱん、と手をたたく。
龍驤が俺を怪訝そうに見た。
提督「この後、服でも見に行くか」
龍驤「へ?いや、何でそんなこと…」
提督「デートの相手を飾り付けたくなるのが、男ってもんなの」
提督「だいたい、制服でデートなんて味気無くて敵わねぇって」
龍驤「…提督」
提督「んじゃ、これ食ったら行くか」
龍驤「……せやな、キミのセンス、期待しとるで!」
提督「ふ、誰に言ってんだっつーの…ビビるなよ?」
龍驤「お、えらい強気やないか!」
…因みにこの後。
折角なので喫茶店の払いも持ったのはいいが。
提督「……やっぱアレだな、ファミレスだな」
…味が劣ろうが、うるさかろうが。
学生は無理に背伸びすべきではないと。
すっかり軽くなった財布を見て、思ったのだった。
龍驤→ 232/500
234だね、最近四則演算出来ないから困る
【龍驤―その1】
ウチの日常は、非日常で。
普通の日常は、ウチにとっての非日常。
別に、憧れたりはしなかった。
そりゃ、少しくらい羨ましいと思うことはあったけど。
ウチの仕事は大事なことだって、お母様もお父様も言っていたから。
「……日常、なぁ」
服を見たり、靴を見たり。
ファーストフード店で意味のない会話を続けたり。
日が暮れるまで、そんな事をする。
…ともすればバカらしい事だとも思っていたけれど。
「案外、ああいうのも悪くないんやなぁ」
手に入らないとわかっている。
それでも、楽しかった。
「…まぁ…また今度、暇なら誘ってみよーかなっと!」
ただ、その誘う相手がウチの中で決まっていたのは。
多分、それをすること自体が楽しいんじゃなくて。
その相手のお陰で楽しいんだって。
…そんな事を、心の隅で思っていたからだろうか。
【7月2週】
提督「そろそろ夏休みだなー…」
睦月「だにゃー」
睦月「提督くんは、何か予定があるのですかー?」
提督「…無い」
睦月「にゃは、暇人ー」
提督「うっせ、お前も変わんねーだろ」
提督「…今年も行くか、夏祭り?」
睦月「しょーがないにゃー、お供いたしましょー」
提督「去年みたいにはぐれんなよー」
睦月「にゃ!?あれは提督くんが迷子になって――!」
提督「はいはい」
コミュ対象 23:47に一番近いレス
阿賀野 **0/500
瑞鳳 344/500
龍驤 234/500
睦月 *87/500
翔鶴 *88/500
イ級「ゴガ……ッ…」
異形が、砕氷のようにバラバラと砕けていく。
それをやった当の本人は、つまらなそうにそれを見ていた。
提督「…お見事」
龍驤「アホ、こんなんに負けたら恥や」
キミでも勝てる相手やのに―と、ケラケラ笑う龍驤。
以前、瑞鳳―ヲ級とやらを相手取った時にも俺は圧倒していたが。
どうにも、この龍驤がくれた長弓はかなり霊格の高い装備らしい。
生半可な陰陽師には使えないという言葉の通り、常人には扱うことも難しい長弓。
しかし、まともに使える仕手にとっては非常に頼りになる。
…いやあ、やっぱ俺って天才だわ。
提督「…ふ、まーた俺の才能が発揮されてしまったか」
龍驤「あーはいはい」
提督「……冷たい」
提督「…ま、いいけどさ…にしても最近、随分と増えたな」
龍驤「せやなぁ…」
俺達が立っているのは、沿岸再開発工事現場近くの公園。
そして、砕けたイ級の残骸の側に転がる気絶した人間。
今までの警邏中、まだ人へ取り付いていない、まだただの悪霊程の力しか持たない深海棲艦を倒すことは多々あった。
しかし、こうして誰かに取り付いた状態の深海棲艦との遭遇率が、ここ最近明らかに増えている。
幸い、瑞鳳の時程に長い期間潜伏していなかった人ばかりで、この人もただ気を失っているだけだ。
提督「……悪い、予兆なのか?」
龍驤「…良かないわな、そりゃ」
提督「そうか――」
だから何ができる、という訳ではないが。
その言葉に、大仰に溜息を吐いてみせた。
提督「…もし、倒せなかったらさ」
龍驤「うん?」
提督「…もし、こいつらを倒せなくて、どんどん存在を喰っていって、大きくなってしまったら」
提督「その時…この街は、俺達は、どうなるんだろうな」
龍驤「知らんわ、んなこと」
提督「な、知らんってお前――!」
龍驤の方に突っ込みかけた身体を、彼女が俺の額に伸ばした指が止める。
龍驤「なんたって、ウチがいる限りそんな事はさせへんからな」
そう言って、大丈夫とでも言うように龍驤は笑った。
>>+4
A.……まぁ、それなら期待してる。
B.…カッコつけんな、アホ。
C.………でも、龍驤じゃなんか心配だなぁ……。
【艦これ】艦娘達と過ごすちょっとした学園もの★11【安価】
【艦これ】艦娘達と過ごすちょっとした学園もの★11【安価】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1410362553/)
次スレ
正直この週の設定詰めすぎて説明多くてごめんなさい
埋めネタ…今度は足りるかという
【構ってうーちゃん、というお話】
『ハワイ特集!夏はハワイだ――』
「だぁ畜生ぉー!何がハワイじゃボケ!」
「わっ、いきなり何やってるっぴょん」
夏休み。
クーラーの効いた室内。
俺は愉快にハワイなんぞを特集しているテレビに向かってリモコンを投げた。
勿論、電源をしっかり消してから。
「…俺だって…俺だってなぁ!」
「……完全に自業自得なのによくそこまで物に当たれるねー、逆に尊敬するっぴょん」
「ハワイー!」
現状を説明するのならば――
今は、8月に入ったばかりの暑い一日。
家には、昨日から母も父も暁もいない。
何故って、奴らはハワイまで高飛びしやがったからである。
「……忙しかったんだよぉ…勉強……」
「…はいはい、好きなだけ言い訳するといいっぴょん」
当然俺も最初はそのメンバーの一人だった。
だが…パスポートを作るのを忘れたのである。
それに気付いたのは前日になってからだった。
「ああ…青い海…白い雲…金髪のお姉さん…」
「……はいはい」
因みに、俺の枠を埋めたのは陽炎である。あーちくしょう、お前受験生だろ勉強しろよ。
「もー…せーっかくうーちゃんがお兄さんの寂しさを埋めにお泊りしに来てあげてるんだから、ハワイハワイ言ってないでもーちょっとうーちゃんにも構うっぴょん」
「…はーわーいー」
「……ぶー」
ソファーで寝転がって旅行雑誌を弄ぶ。
そんな俺を見て、食卓の椅子に座った卯月は唇を尖らせた。
「…お兄さん、うーちゃん暇だっぴょん」
「……俺はハワイっぴょん」
「……意味がわからないっぴょん」
「ワイハー…」
「…むー、無視すんなー」
「…ああ、常夏の島…」
「お兄さーん!」
「……リメンバー・パールハーバー…」
「…むきーっ!」
卯月が、勢い良く食卓の椅子を蹴った。
まさに兎が如く、素晴らしい跳躍力。
華麗に空に舞った彼女は、俺の方へ――――
「ごふっ!?」
「うーちゃんに構えー!」
非常に体重の乗ったボディプレス。
俺はソファーに寝たまま潰れた。ああ、ハワイが。
「……お兄さんは酷いっぴょん」
「…何がだよ」
「……うーちゃん、お兄さんの恋人だっぴょん」
「……そうだな」
「…なのに」
「…卯月」
俺の上に跨ったまま、卯月が俯いた。
悲しげな視線を俺に向けたままで。
「……悪かった、ちょっと、いつもの悪ノリが過ぎたな」
「…ぴょん」
半身を起こして、腰の辺りに乗った卯月を抱きしめる。
むすっとした表情は変えないまま、彼女は俺の胸に顔を預けた。
………それはいいんだけども。
「………汗臭え」
「ムード考えろっぴょん!」
「…いやだって」
「……しょうがないっぴょん…朝から部活でそのまま此処に来たっぴょん」
「………そんなに臭うっぴょん?」
「…正直かなり」
クーラーの冷風で汗自体は乾いているものの、臭いは…まあ、強烈なものがある。
だけど…なぜだろうか、嫌な気は不思議としない。
「…お、お兄さん?」
俺の顔の下、丁度見える胸に顔を埋めた卯月の長い髪。
そこに、思いっきり鼻を突っ込んだ。
「……く、臭いっぴょん」
「んー…卯月の臭い」
鼻孔を直接突くような、強烈な臭いが伝わる。
それを承知で、そのまま何度も息を吸う。
……とても変態チックである。
「……お兄さんの変態」
「卯月への愛ゆえの行動だっての」
「…キモいっぴょん」
「……というか…さっきから、その、当たってるっぴょん」
「…………」
臭いフェチなどとは自覚したことは未だ無いのだが。
腰に跨った卯月の下、俺の欲望はしっかりと反応していた。
「……こういうのが…好きっぴょん?」
埋めた顔を、卯月が上げる。
そのまま、上目遣いで俺を見た。
「……ひゃっ!?」
卯月は軽い。
少し力を入れてやれば、簡単に組み敷くことが出来た。
先程まで俺の上に乗っていた卯月は、逆に俺の下に。
「…お、お兄さん……何やってるっぴょん…」
「我慢できね」
「が、我慢って――っ!?」
文句を言いかけた唇を、無理矢理塞ぐ。
んー、と卯月が唸る。
入れようとした舌は、固く閉じられた歯に阻まれた。
「………っ!?」
…まあ、それならそれで良いかと。
卯月の歯茎に舌を這わせる。
さっきまでとは比べ物にならない程強く、卯月の臭いを感じる。
「……ぷはっ…」
散々舐め回してから舌を抜く。
大量に付いた涎が、重力に従って卯月の唇の周りに落ちた。
「…昼飯…何かトマトっぽいもん食ったか?」
「……お兄さんひでーっぴょん、鬼畜だっぴょん」
「…何とでも言うがいいわ」
薄いTシャツをめくる。
突っ込んだ手が目指したのはその下の可愛い小さなスポーツブラ…ではなく。
「うひゃっ!?」
…うっすらとした毛に覆われた、腋。
クーラーの冷風でも乾かしきれなかった汗が、指に付いた。
「……おに、さ、ちょ、流石にぃっ!」
くすぐったいのやら恥ずかしいのやら。
身を捩り、卯月が俺の下から抜けだそうともがく。
「………俺変態かもしれねーな、卯月」
「ぜった、絶対変態だっぴょん!いいから離し――!」
うるさい。ので。
もう一度唇を付けた。
大きく開けた口は、今度こそ俺の舌の侵入を阻むことは出来ない。
にちゃにちゃと、湿った水音が頭に直接響く。
ああ、きっと今の俺はどこかおかしいのだろう。
「……むぐ…んっ…っはぁっ!おにーさん!」
「怒るなっての」
「うーちゃんを玩具にするのはやめるっぴょん!」
「…でもさ、卯月、そう言う割には――」
卯月の下半身を覆うスパッツの、その股間部分に触れる。
じっとりと濡れているそこは、果たして汗だけによるものなのか。
「……ま、卯月がやめて欲しいなら…俺もここで我慢するけどな?」
「…お兄さんはやっぱり鬼畜だっぴょん……」
「…どっちでもいいんだぜ?」
太ももの辺りに手を這わせながら、意地の悪い顔を作って卯月に向ける。
彼女はその言葉に、せめてもの抵抗だとでも言わんばかり顔を背けた。
明後日の方向を見たまま、言う。
「……つ…続き、して、ほしい…っぴょん」
「………何の?」
「な、何の…って」
言葉に詰まる。
どうしてそんなことを言うんだと、卯月の瞳が俺を責める。
そんな姿の卯月が、無性に愛おしい。
あの悪戯好きの兎娘が、俺に縋るような視線を送っている事が。
…やっぱ変態かもしんね、俺。
「……しっかり言わなきゃ、わかんないって」
ぴん、とスパッツの股間に出来た割れ目の頂上付近を指で弾く。
卯月の身体が跳ねた。
「…おにー…さん」
「…ほら、卯月」
「…………」
幾程か逡巡して、卯月が背けた顔を正面に戻す。
そして小さく、本当に小さく、耳を近付けてようやく聞こえるくらいの声で言った。
「……もっと、うーちゃんの事、めちゃくちゃに、して…下さい」
「…よく言えました」
「ひあっ!?」
太ももを撫でていた手を、秘所へ。
さっきの比では無い程に、一際大きく卯月が跳ねた。
「…さて…卯月、んじゃ、お望み通りにしてやるよ」
蕩けた瞳が、俺を捉える。
さあ、本番は此処からだ。
この後めちゃくちゃセックスした。終わり!閉廷!
よし、だいたい埋めたな!
後は頼んだっぴょん
このSSまとめへのコメント
阿賀野だせや