【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十八輪目】 (1000)


このスレは安価で

乃木若葉の章
鷲尾須美の章
結城友奈の章
  楠芽吹の章
―勇者の章―

を遊ぶゲーム形式なスレです


目的

東郷家、犬吠埼家への挨拶と伊集院家の説得
元気な子供を産む
進路決定
結婚式
全員生存


安価

・コンマと選択肢を組み合わせた選択肢制
・選択肢に関しては、単発・連取(選択肢安価を2連続)は禁止
・投下開始から30分ほどは単発云々は気にせず進行
・判定に関しては、常に単発云々は気にしない
・イベント判定の場合は、当たったキャラからの交流
・交流キャラを選択した場合は、自分からの交流となります


日数
一ヶ月=2週間で進めていきます
【平日5日、休日2日の週7日】×2
基本的には9月14日目が最終

※勇者の章に関しては、9月以降も続きます


戦闘の計算
格闘ダメージ:格闘技量+技威力+コンマ-相手の防御力
射撃ダメージ:射撃技量+技威力+コンマ-相手の防御力
回避率:自分の回避-相手の命中。相手の命中率を回避が超えていれば回避率75%
命中率:自分の命中-相手の回避。相手の回避率を命中が超えていれば命中率100%
※ストーリーによってはHP0で死にます


wiki→【http://www46.atwiki.jp/anka_yuyuyu/】  不定期更新 ※前周はこちらに

前スレ
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【一輪目】
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「母乳は出るのよね? あげて見る?」

天乃「ええ……」

元々、それが理由で来たようなものだ

天乃の赤ちゃんは天乃の力を継承しているため、

力を暴走させたり、自傷するようなことにならないようにする必要がある

そのためには、普通のミルクではだめだ

天乃「二人同時にあげたほうが良いですか?」

「それは天乃ちゃんによるわね。必ず同時じゃないといけない。なんてことはないわ」

ただ、一人ずつだと授乳のリズムが崩れることや、

偏りが出てきてしまうなどのリスクもある

もちろん、一人ずつの方が上げやすいということもあって、

必ずしも悪いわけではないと看護師は言う

「母乳は左右どっちから出てる?」

天乃「両方」

「今も?」

天乃「見えてはいないけれど……」

少なくともほんの十数分前はそうだったから、頷く

流石に夏凜に吸われた時なんて話はできない


「それなら……ちょっと脱がすわね」

母乳用のパッドの為に脱がせ易くしてある胸元のボタンをはずし、パッドも外す

友奈と夏凜に吸われてもまだ、十分な貯えのある乳房

飲まれてもしぼむどころか

さらに膨らんでいるようにさえ感じる胸を、子供へと向ける

「ちょっと待って、クッションを持ってきてあげる」

天乃「ありがとう」

二人に母乳を上げる際に役立つ、大きなクッション

あらかじめ用意しておいてくれたのか、

管理用の棚にしまわれていた明らかに新しいクッションを看護師は取り出して、

天乃の膝上に置く

赤ちゃんをその上に下ろして頭を支えても、無理な体制にはならない

そこに、もう一人が並ぶ

「サポートはするから、支えてあげてね」

天乃「う、うん……」


天乃「………」

夏凜と友奈

二人は自分の意志で体を動かし

赤ちゃんにはないちゃんとした力で母乳を飲んでくれた

でも、赤ちゃんは違う

確かに自分の意志で動いてはいるけれど、

夏凜達のように動いてはくれない

ただ、本能のままに、吸おうとしてくる

天乃「……えっと」

二人のことを思い出す

どのようにしていたか

どのように、乳房に触れ、乳頭を咥えていたか

天乃「こう……よね」

「あら……やり方知ってるの?」

天乃「ええ、みんなが調べてくれたの」

嘘じゃない。

本当のことでもないが嘘でもない

そう思いながら、赤ちゃんに集中する

天乃「良いわよ、飲んで」


天乃「清潔にしすぎてるとか、ないわよね?」

「天乃ちゃんは母乳が溢れ出ちゃう傾向にあるから洗う頻度も多いからね」

嫌がるようならやめたほうが良いかもしれない。と

余り近づこうとしない赤ちゃんを見つつ看護師は答える

でも、それを言われたからなのか

興味を持ち始めたのか

赤ちゃんの手が求める様に動いたのを見て、微笑む

「大丈夫そうね」

天乃「ええ」

母乳……ではなく。

赤ちゃんじゃない二人が吸ったからこその消毒等なのだが、

子供たちは気にせず咥えようとして、鼻先を乳首にぶつける

天乃「ふふっ、こっちだよ」

子供たちの頭を支え、咥えやすいように近づけていく

開いた小さな口に、乳頭を差し入れる

友奈がしていたように咥えられるように

二人の動きをしっかり確認しながら、咥えさせて――

天乃「っ」

ようやく、授乳をすることが出来た


√ 12月16日目 昼(病院) ※火曜日


01~10 風
11~20 園子
21~30 樹
31~40 
41~50 友奈
51~60 九尾
61~70 
71~80 夏凜

81~90 
91~00  東郷

↓1のコンマ

※コンマ一桁判定付与
 →1~0  判定+1 
※ただし、例外有


√ 12月16日目 昼(病院) ※火曜日


夏凜「へぇ、それじゃクッション使えば二人同時にもできるのね」

天乃「ええ、ちょっと……痛いけど」

夏凜「授乳の体位は都度変えたほうが良いって話よ」

天乃「慣れたほうが良いんじゃなくて?」

夏凜「それはそうだけど、ちゃんと調節しないと乳腺炎になるって話よ」

乳房の全体的に広がっている乳腺

一部ばかり吸われ、一部が吸われないままだと詰まってしまったりして

乳腺炎になってしまうのだと、夏凜は調べたことをそのまま語る

夏凜「ま、詳しい話は病院の人に聞くのが一番だけどね」

天乃「それはそうでしょうね。でも、ありがと」

夏凜「と、とうぜ――」

千景「久遠さん!」

天乃「千景?」

千景「悪いけれど――最悪だわ」

何の前触れもなく唐突に姿を見せた千景は、

深刻な表情で、告げる

千景「犬吠埼さんがやられた……」

夏凜「!」

千景「……二人は急いで病室に戻って」


天乃「病室に風がいるの?」

千景「危険だから戻って、と、言っているのよ」

何が起こるか分からない

だから、今すぐにでも病室に戻れと言う

夏凜「風はどこにいんの?」

千景「その説明は病室に戻ってから」

夏凜「……ただ事じゃなさそうね」

千景の表情が一切崩れず険しいのを見て、

夏凜は天乃を一瞥すると、車いすの持ち手を握る手、

床を踏みしめる足に力を籠める

何か一つでも緩めてしまったら大変なことになるのではないか

そんな不安を感じてしまう

天乃「風のところに連れて行って……とは、言わない方がよさそうね」

いえばどこにいるのかが分かる

そして、その答え次第では……いや

そんなのは聞くまでもなく分かっている

それで連れていくのが病室だというのだから

もはや、余計な会話一つの時間すら無駄にはできない

天乃「夏凜、病室に戻りましょ」

夏凜「分かった」


樹「……っ」

友奈「……風先輩」

千景「一緒にいた乃木さんも巻き込まれて、今は出てこられないわ」

天乃「病院の人たちは何か言ってた?」

千景「点検はしたばかりだそうよ」

だが、その点検時に何らかの見落としがあったのかもしれないと

自分たちの非を認めるようなことも言っていたが、

それは違うと、千景は首を振る

千景「ただの偶然なら、乃木さんの力を抜いた理由に説明がつかない」

東郷「若葉さんがいて、きっと、犬神もそこにいたはず」

樹「それでも、ダメだった」

夏凜「………」

二階から天乃たちがいる病室のある階に移動するためのエレベーター

それが、落ちたのだ

落下の衝撃によって酷い怪我を負っており、風は今もまだ手術室

病院中に響くほどの轟音を生んだ落下は人命を運ぶ鉄の箱を残骸のように変形させ、

引きちぎれたロープ、火花を散らす電線、半開きの血に塗れたドア……と

千景は自分の目に移した凄惨な光景を語るか迷う

園子「エレベーターはもう一つあるけど、使わないほうが良いね」

沙織「それ以前に、この部屋から出るべきじゃないと思うよ」


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



風「そろそろ子どもの名前考えなきゃ」

若葉「それで本を見たいと……なるほど」

風「双子だから似た名前とか、そういうのもあるかもしれないし」

若葉「……嬉しそうだな、風」

風「若葉こそ」

若葉「ふふっ、あぁ……そうだな。嬉しいよ。だから、いい名前が考えられるように本を探しに行こう」


では少しだけ


沙織「この病室の中なら、何か起こるとしてもそんなに危険なことにはならないはず」

樹「でも、エレベーターが落ちたんですよ? この中でも何が起こるか……」

ベッドが壊れる? 天井が崩れる? 床が抜ける?

外から何かが飛んできて窓ガラスを突き破ってくる?

なんでも考えられる

友奈「樹ちゃん……」

樹「ありがとうございます、友奈さん」

でも、大丈夫です。と、樹は言う

ネガティブな雰囲気に呑まれてしまいそうな樹だったが、

友奈の心配そうな声には、笑みを見せる

大好きな姉の凄惨な事故が起きて、

まだ手術中の手術室の前にすらいくことのできない危険な状態

それでも、樹は折れない

樹「こういう時に、何もできないのはもう嫌なんです」

似たような状況だとは言いたくない

でも、両親が亡くなったときに姉の背中に隠れていることしかできなかった自分にはもう、なりたくない

樹「沙織さんは、ここに居れば絶対に大丈夫だって言えますか?」


沙織「確証はないかな」

ここに居れば、

サポートできるメンバーが多くいるというだけであって、

絶対に安全だとは言うことが出来ない

それこそ、歌野や水都、沙織の力などを使い続け

病室を絶対的なテリトリーなどにして守らない限り、不可能だ

だが、そんなことをすれば力が枯渇する

室内のパワーバランスの傾きによって、

天乃の体調が崩れてしまうかもしれない

園子「風先輩が狙われたのはなんでだろう?」

東郷「そのっちは理由があるって考えてるの?」

園子「不謹慎だけど狙われる理由がわかれば、今回のような事態は避けられるかもしれない」

友奈「でも、風先輩だけ特別なことはなかったと思う」

天乃「どちらかと言えば、夏凜と友奈の方が特別よね」

夏凜「まぁ……それは言えてるかもね」


東郷「だとしたら、無差別……ということになるわ」

夏凜「完全に無差別ってわけでもないけどね。ある程度は絞られる」

祟りを受けた勇者部

その周囲にいる人が対象になっている

今回の場合は若葉だったが、一般人がいても関係なく巻き込んでくることだろう

若葉と犬神

精霊の加護を二つ重ねてなお、風は重傷に陥った

一般の人だったらどうなっていたか

その人を守るために力を費やしていたらどうなっていたか

考えるだけでもおぞましい

沙織「久遠さんは隔離したほうが良いかな」

夏凜「天乃を離したからってどうにかなる問題でもないでしょ」

むしろ、近くにいてくれた方が安心できるまである

夏凜「ベッドが壊れるとか床が抜けるとか……不安は確かにあるけど、そんなことばかり考えてたって仕方がないでしょ」


1、そうよ、。みんなでいたほうが良いわ
2、みんなが安心できる方で良いわ
3、無責任だとは思うけれど、もう少しだけ……頑張って
4、みんなは祟り、平気なの?


↓2


ではここまでとさせていただきます
巣もできれば通常時間から


東郷「それはそうと、友奈ちゃんたちのした特別なことを私にもさせてください」

天乃「今はそれどこ――」

東郷「風先輩がこんな目に遭った可能性を探るためです」

東郷「もしかしたら、二人がしたことで風先輩が被害に遭う可能性が高くなった。というのもあるんです」

東郷「つまり、久遠先輩との特別なことが被害に遭う可能性さらには、被害を軽減できるかもしれないんですよ」

東郷「なので、お願いします」


では少しずつ


天乃「みんなは祟り、平気なの?」

夏凜「………」

東郷「久遠先輩、それはあまり口にすべきことじゃないんです」

祟りは情け容赦なく伝播する

その苦しみを語ろうとしただけでも、悪影響を与える

それは、祟りに蝕まれる人を追い詰めるための悪夢

救いはないという明示

自分たちがどれだけの大罪を冒したのかという戒め

沙織「久遠さん自身は、穢れの力の影響とかその耐性もあってそこまで害にはならないだろうけどね」

東郷「そんな油断していたら寝首をかかれてしまいますよ」

園子「そうだね……試しに。と言ったら語弊があるかな……連絡する必要もあったから大赦に一言言ってみたんよ」

そしたら。と、

園子は申し訳なさそうに眉を顰める

園子「連絡相手の大赦の人は怪我したって」

沙織「幸い、軽傷だったけどね」

千景「怪我をしたとか、何があった。という程度の話なら問題はなさそうに思うけれど……祟り自体の話をするのは控えたほうが良いわ」

天乃「言葉自体にその力があるのね」


樹「言霊みたいなものでしょうか」

沙織「神様だからね……まぁとにかく、みんなに対しての祟り自体は大したことじゃない……はずなんだよね」

実際は、風が大怪我をした

いや、怪我なんてものではない

園子「風先輩が重症になったのは、祟りなのは間違いないと思うんよ」

友奈「問題はやっぱりその原因かな?」

東郷「……そうね。結局そのっちに同意することになるわ」

夏凜「って言っても、さっき言ってたけど風は特に何もやってないでしょ」

沙織「なら、消去法で考えてみたらどうかな」

天乃「消去法?」

沙織「そう。犬吠埼さんが特別なことをしたんじゃなく、ほかの人が特別なことをした」

その特別なことが、

天の神の怒りを買ったか、何かで祟りが増幅し風を襲った

そんな可能性を沙織は口にして

沙織「もちろん、二人を責めるわけじゃないよ」

友奈「………」

夏凜「……現状の可能性で言えば私たちのせいってことになるわよね」


天乃「二人は私の我儘に答えてくれただけなんだけど……」

樹「天の神にとっては許せない我儘だったと思いますか?」

友奈「えっ? えっ……っとぉ……」

話を振られた友奈は

自分に来るのかと驚いた様子で目を逸らすと、モジモジと声を消してしまう

東郷「大丈夫よ友奈ちゃん! 授乳行為は淫らなことじゃないわ」

友奈「はっきり言われたっ」

夏凜「別に恥じることでもないでしょ」

天乃「母乳が出るかどうかの確認と、出るようにしてほしいって願いだったんだもの。平気よ」

友奈「うぅ」

ちょっぴり羽目を外してしまったことを悔いてか

恥ずかしそうにする友奈を見て、微笑む

樹は特別なことをした二人を責めるような様子はない

樹「久遠先輩の母乳に触れる……? 飲むことが天の神の怒りを買う行為というのは良く分からないですね」

園子「赤ちゃんの分が無くなるだろー! みたいな?」

千景「久遠さんの母乳に天の神が好ましくない力があるとかじゃないかしら」

沙織「……なるほど」

天乃「何がなるほどなのよ……あと胸を見ないで」


では、途中ですがここまでとさせていただきます
明日はできれば少し早い時間から


では少しだけ


夏凜「それが、風にのしかかる原因だっていうのは間違ってないかもしれない」

東郷「でも、こうも考えられるわ」

恥ずかしさに小さくなっている友奈を見つつ、

天乃を一瞥した東郷は真剣な声色で切り込む

東郷「天の神の祟りから逃れるための手段」

園子「わっしーはやっぱりそう考えるよね」

友奈「私と夏凜ちゃんに被害が出なかったから?」

樹「でも、それだけだと理由にはできないと思います」

話すだけで他人に伝播する祟り

自分に被害があるよりも、他人に被害を与えたほうが絶望するだろう

そういう考えのもとに断罪が行われているのであれば、

友奈と夏凜が逃れられた理由にするのは難しい

むしろ、風の被害が大きくなった原因。と、考えるべきだ


樹「ただ、久遠先輩の母乳に力があるのは事実……なんですよね?」

天乃「どう?」

夏凜「あー……そういえば、九尾に聞くって話だった」

天乃「聞いてないの?」

夏凜「……ごめん。まだ聞けてないわ」

聞くと言ってからまだ数日

その間にもいろいろあったし、聞けていなくても仕方がない

大丈夫よ。と、天乃は宥めて自分の胸に触れる

友奈と夏凜、そして赤ちゃん

授乳をある程度行ったからか、多少触れた程度で溢れ出てくるようなことはない

天乃「でも、力があることはあると思うの」

沙織「そうだね……母乳って血でできてるらしいし」

天乃「そうなの?」

東郷「そうらしいですよ。調べたのと、看護師さんが言っていたので間違いありません」

友奈「看護師さんにまで聞いたんだね」

東郷「確実な情報が欲しかったの。専門家がすぐそこにいるんだから、聞かない手はないわ」


友奈「それはそうだけど……うん、そうだね」

夏凜「母乳は成人でも飲めるかって話の流れで聞いたでしょ。それ」

友奈「あっ」

暴露する夏凜と、口を押える友奈

あはは。と、笑い声をこぼす園子と呆れる千景

視線の集まった東郷は「それがなにか」と言いたげな表情を浮かべる

東郷「大事なことだから聞いただけよ」

樹「でも久遠先輩の血でできてるなら、九尾さんが言っていた対策になるんじゃないですか?」

夏凜「……確かに」

天乃「九尾が干渉してこないのって、母乳が血でできているから力があるのは当然。言うまでもないってこと?」

千景「無きにしも非ずね」

樹「とにかく、原因が分かったなら対処したほうが良いと思います」

園子「赤ちゃんプレイが必須?」

天乃「えー……」

夏凜「血を抜かれるよりいいでしょ」

友奈「血を飲むよりもいいと思います」


東郷「体験者の言葉を尊重します」

沙織「えーあたしも欲しい」

千景「貴女は祟り関係ないでしょう」

園子「ちーちゃんも吸ってよかとーよ?」

千景「遠慮しておくわ」

風が被害に遭った恐ろしさ

けれど、それに挫けるだけではない勇者部の面々

風のことは心配だ

でも、心配して不安になって怯えているだけではどうにもならない

樹「じゃぁ、九尾さんに確認したほうが良いですね」

友奈「うん、それで問題がなければ久遠先輩のおっぱい……だね」

天乃「……赤ちゃんのためだってことを忘れないでね?」

沙織「溢れるほど出てたのはもしかしたらみんなの分があるからかも」

東郷「そこも含めて九尾さんに確認してみますか?」

夏凜「九尾もさすがにそこまでは分からないんじゃないの?」

園子「とにかく確認。だね」

風のような被害を出さないために、

勇者部は対策を考え、最優先にすべきことを決めた


√ 12月16日目 夕(病院) ※火曜日


01~10 樹

11~20 
21~30 
31~40 九尾

41~50 悪いこと
51~60 風
61~70 
71~80 夏凜
81~90 
91~00 千景

↓1のコンマ


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


友奈「言わないほうが良いと思ったんだけどなぁ」

夏凜「東郷はあれくらいで折れるメンタルじゃないから」

樹「久遠先輩も受け入れてくれてますし」

園子「私達も天さんのそういうの受け入れないとね」

東郷「久遠先輩の……性癖?」


風「ぐっ……ツッコミ……しないと……」

千景「大丈夫、私が何とかするわ」


では少しだけ


√ 12月16日目 夕(病院) ※火曜日


樹「久遠先輩……」

天乃「良いわよ。入ってきて」

樹「すみません、ゆっくりしなくちゃいけないのに」

天乃「ただ黙って休んでいるだけじゃ逆に疲れちゃうからね」

残念ながら体を起こすのは難しいが

眠くもなかったし。と

負い目を感じているような樹に微笑んで、手招きする

天乃「風は?」

樹「手術は終わったみたいですけど、まだ目は覚ましてません」

祟りに怯えているわけにはいかない

そう、決心して風のいる病室に向かったのだが

半身が包帯に覆われ、ピクリとも動かない

声の代わりのような心電図の音が、嫌だった

天乃「……友奈と、夏凜は責めないでね」

樹「………」

天乃「あの二人は、あくまで私の我儘を聞いただけだから」


樹「責めるなんて、そんなっ」

天乃「樹がそういうことできる子じゃないっていうのは分かってるわよ。もちろん」

信じてさえいる

けれど

ポジティブである友奈がネガティブな考えを持ってしまうことがあるように、

どうしようもないことがある

天乃「今って、精神的に辛い状況でしょう? だから、心のどこかで燻ってるかもしれない」

樹「…………」

天乃「だから、これは私からの意地悪」

樹「久遠先輩のことは、責められないからですか?」

天乃「ううん、私なら責めやすいんじゃないかなって」

何もしてあげられない

我儘を言うだけで、何も返せない

無理難題を押し付ける、悪い人

そんなことを天乃は笑いながら言って「ね?」と、同意を求める

だが、樹にはむしろそれこそ不評だったようで

困った表情で天乃を見る

樹「……何言ってるんですか」

天乃「怒った?」

樹「呆れます」


樹「怒れると思いますか?」

天乃「別に怒ってほしいとは思ってないわよ?」

樹「怒った? なんて聞いてきたのにですか?」

天乃「ふふっ……ちょっと怒ってるでしょ?」

樹「……」

楽しそうに、笑う

からかっている表情

怒っていなくても、やり返したくなる

樹「……あの、久遠先輩」

天乃「なぁに?」

樹「久遠先輩は、もう少し気を付けたほうが良いと思います」

天乃「祟りのことなら大丈夫よ。幸い、耐性もあるみたいだから」

樹「本気か冗談か、分からないんですよ」

樹は困ったように言うと、

相変わらずな天乃を見つめて、苦笑する

二つ上の先輩

大人な時もあれば、子供の時もある

格好いいけど、可愛らしい人

樹「祟りのことをってるわけじゃないって、本当は分かってますよね?」


1、さぁ? どうかしら
2、ええ、もちろん
3、さっきの今だと、何があるか分からないから気を付けてって話じゃないの?

↓2


では少しだけ


天乃「さぁ? どうかしら?」

樹「………」

天乃「ふふふっ」

樹「そういう、態度だから。友奈さんまで手を出すようになっちゃうんですよ」

友奈の場合は、興味はあっても手を出していいのか迷う

だから、誘われてしまえばその奥手だった分

全力で取り組んでしまうし、やりすぎてしまう

そして、東郷たちは

きっと余裕そうな表情を、崩してみたくなる

いや、崩す自信があるから、やってやろうと意気込む

特に東郷と沙織の二人はそれを楽しむタイプだ

樹「……そういえば、久遠先輩の母乳は飲んだほうが良いって話でしたよね」

天乃「まだ、九尾には確認してないんだけど」

樹「力があるのは事実。久遠先輩はそういってましたよね?」

天乃「ええ、言ったわ」

樹「なら、確認するまでもないんじゃないですか?」


天乃「……あら、その気になられても、今は相手できないわよ?」

樹「何言ってるんですか?」

樹はくすくすと笑う天乃の視線を自分へと留めるように、

天乃の頬に手を当てて、向けさせる

樹「友奈さん達の代わりに責めろっていたのは久遠先輩じゃないですか」

天乃「似たようなことは言ったけど、今すぐだなんて言ってないわ」

樹「誘ったのは、久遠先輩ですよね?」

天乃「……もしかして、本気で言ってる?」

樹「さっきと、逆ですね」

樹は本気かウソかわかりにくい笑顔を浮かべながら、

横たわる天乃に跨るようにして、ベッドへと上がっていく

降りた髪の影のできた表情は

どこか、恐ろしさも感じられるような気がした

天乃「樹……?」

樹「久遠先輩……」

だが、樹は淫らな雰囲気などまったく感じさせずに、

天乃の体へと折り重なっていく

身体の触れる割合が大きくなっていっても、

下心のある触れ方はしない


樹「少しだけ、こうしててもいいですか?」

天乃「少しだなんていわなくてもいいわよ」

エッチなことをする体力こそないが

こうして抱いてあげることくらいはできる

抱かれておくこともできる

大切な姉が重傷を負っても

樹は大丈夫だと気丈さを見せた

ここでまた、泣いているわけにはいかないのだと強さを見せた

でも、限度はある

強いからと言って弱さがないわけではない

完全になくなるわけではない

天乃「……大丈夫」

樹「………」

天乃「風には、貴女がいるんだもの」

自分の頼れる存在が急にいなくなってしまうこと

その絶望感を、痛みを

彼女は誰よりも知っていることだろう

だから、その生きたいという意志はとても強い

生か死か

それの最終決定が己の意志にあるのだとしたら、風が死ぬことはない


天乃「でしょう? 風」

樹を抱きながら、問いかける

風に届かないことは分かり切っているけれど

問わずにはいられなくて、苦笑する

思えば最初ハ仲がいいとは言えなかったシ

天乃。と、呼んでくれるような仲でさえなかった

それが今では、付き合っていて名前も呼んでくれている

信頼もしあっている

天乃「樹、頑張りすぎたらダメよ」

樹「分かってます」

天乃「そっか……」

樹「頑張りすぎた人を、知ってますから」

自分なら大丈夫、心配いらない

そう言い聞かせて擦り切れるまで頑張ろうとした人を知っている

だからこうして、少しでも甘える

頑張りすぎないように、壊れないように

そう思って、樹は少しだけ強く天乃に縋った


√ 12月16日目 夜(病院) ※火曜日


01~10 樹(継続)
11~20 
21~30 九尾
31~40 
41~50 悪いことは続くもの
51~60 風
61~70 
71~80 沙織
81~90 
91~00 東郷

↓1のコンマ


ではここまでとさせていただきます
明日はできれば昼頃から


では少しずつ


√ 12月16日目 夜(病院) ※火曜日


夜になって、風が目を覚ましたという一報が精霊を経由して、伝わってきた

目を覚ましただけで怪我は治っておらず

まだ話すことはままならないけれど

でも、そのまま亡くなってしまうなんてことは無かったという安堵があった

もちろん、まだ予断を許さない

祟りがここで何らかのミスを引き起こさせることで

復活の希望から急転直下させてくることもあり得るのだから

天乃「でも、一先ずは安心して良いわね」

東郷「そうですね……とりあえずは山場を越えたと考えていいと思います」

友奈「どうしよう? 誰か行ったほうが良いよね?」

天乃「一人ではいかせられないわよ?」

複数人いても容赦のない祟り

それに怯えて外出制限するなんてことは止めたけれど

だからと言って、単独行動まで許すわけにはいかない

夏凜「風のことだし、樹は行くべきだと思うけど」

樹「それなら、久遠先輩も候補にするべきだと思います」


沙織「流石に自力で動けない久遠さんを連れ出すのは危険だよ」

園子「天さんには力があるから。だね?」

樹「園子さんの言う通りです」

天乃が絶対に襲われないという保証はないが

今ここにいるメンバーでもっとも襲われない可能性があるのが、天乃の精霊と天乃自身だ

そして、天乃が想定通りであるのならば

たとえ母乳を与えなくても

その力で、風に手を出せなくする程度の抑止力になる可能性がある

樹「可能性ばかりで不安はあるけど、でも、何もしないよりはいいと思います」

夏凜「行動しようがしまいが事態は動くか……」

天乃「少なくとも、じっとしていては好転することはあり得ないんでしょうね」

沙織「だからって……」

東郷「そうですね。では、私もここはあえて、伊集院先輩の側につかせて貰うわ」

友奈「東郷さん?」

東郷「夏凜ちゃん、樹ちゃん、友奈ちゃん、そのっちは久遠先輩を連れ出すということで良い?」

夏凜「んな議論なんてしてる余裕あるの?」

園子「メリットとデメリットを把握しておくことは重要だと思う」

夏凜「風のところには千景がいるんだっけ?」

天乃「球子も一緒よ」

夏凜「なら、少しは平気ね」


天乃「私はどうしたらいい?」

沙織「久遠さんは犬吠埼さんに会いたい? 会いたくない?」

樹「……久遠先輩がどっちかですね」

天乃が行きたいと言えば、話す必要があるだろう

だが、行きたくない―行かない―そういうのなら、

この天乃を連れていくことのメリットデメリットの話はいったん置いておくことが出来る

天乃「そういわれると困るのだけど」

夏凜「アンタはまぁ、そうでしょうね」

天乃「………」

もう夜だし、風も目を覚ましたばかりだ

明日にしよう。と、

少しだけ延期させることもできると言えばできる

もっとも、ただの先延ばしだが。

その間に夏凜達と話してもいいだろう


1、行く
2、行かない
3、連れて行ってもらうのよ? メリットがあるのなら、連れて行って頂戴
4、風もまだ休む必要があるだろうし、明日にしましょう?

↓2


天乃「お世話にならないといけない立場で言うべきか分からないけれど、行きたいわ」

東郷「お世話になっているのは私達も一緒なので、気にしないでください」

夏凜「なら、天乃を連れて行きましょ」

沙織「でも久遠さんは自力で動けないんだよ? 何かがあったとき、危険じゃないかな?」

樹「そこは、同行する人でサポートするべきです」

友奈「何かがあるかもしれない。だからって、何もしないのはダメだと思います」

沙織はそれでも納得がいかない。というような表情を浮かべる

何かがあるかもしれないということにおびえてるだけで良いわけではない

それは沙織も分かっていることだろう

だが、自力で動ける―受け身も取れる―はずの風と樹が大怪我をした

風に至っては、精霊に守られてなお。だ

そんなことがもしも起きたら?

その最悪は、最悪ということでは言い表せないほどの惨劇となる

少なくとも、天乃は……

東郷「そうね友奈ちゃん。畏れていてはいけないわ。でも、恐れから目を背ける蛮勇であっていいわけでもない」


東郷「樹ちゃん、久遠先輩はエレベーターで連れて行くしかないわ。それがどういうことか分かってる?」

樹「……はい」

厳しいけれど、そうだ

エレベーターが使えないならエスカレーターを使おう

それもダメなら天乃を抱えて階段を降りよう

そんなことをしようものなら悪化してしまう

どうしても移動にはエレベーターが必要になるが

そこでもしも

周囲を巻き込む風のような事故が起きたら

まず、助からないだろう

樹「でも、久遠先輩を連れて行くことが出来ればお姉ちゃんを助けられます」

沙織「絶対に助けられるという保証もない」

夏凜「天乃の力があれば、祟りの影響を最小限に抑えられる可能性はあるんじゃない?」

東郷「どうしてそう言えるの?」

夏凜「天乃の力が祟りを抑えられるなら、力を完全に制御しきれず漏れてる今はその周囲も救われるはず」

東郷「……歌野さん達の力は久遠先輩の力。それに守られている病室では被害が軽微」

天乃の周囲にいるだけで、それと同等の効果が得られる可能性はある

もちろん、血を与えられるなどと言った直接的なことに比べれば

抑止力としての効果はそこまで得られないかもしれないが


東郷「久遠先輩のいるエレベーターを領域とすれば……」

沙織「確かに、犬吠埼さんにやったほどのことは出来ないかもしれないね」

あれほどのことを起こすには

祟りの力を最大限―であってほしい―使わなければならないはず

だとしたら、天乃の力に妨害されれば不可能

よって、多大な被害を出す事故は防げる

そして、それが事実ならば

天乃を風の病室に連れて行くことは大正解だ

みんなの病室と風の病室二つの病室を領域とするには、

歌野達の力の消耗が激しすぎるため、どちらかが手薄になる

天乃のがいるだけで病室全体とは言えなくとも、二人分の被害を軽減できるなら

連れて行ったほうが良い

少なくとも、今の風をそのままにしておくのは無しだ

夏凜「どうする? 天乃を連れて行くメリットは大きいと思うけど?」

沙織「……それでも、個人的なことを言わせて貰えば、嫌だね」

風を見捨てたいわけではない

だが、どちらかを危険に晒せという状況を考えれば

沙織は即断で天乃を危険に晒さない方を選ぶ

沙織「薄情だね……うん、分かってるけどね……でも、メリットは理解してるから、良いよ。久遠さんを連れて行こう」


沙織は自己完結させて、天乃へと目を向ける

心配と不安を感じさせる瞳

でも口元は笑みを浮かべていて、仕方がないね。と、言う

東郷「伊集院先輩も納得してくださったことですし、久遠先輩」

天乃「……うん」

樹「眠くないですか? 大丈夫ですか?」

天乃「ええ、大丈夫よ」

少し眠気は感じるものの今すぐ眠りたいほどではない

今行くことが、風の為になる

だったら、行かないという選択はない

天乃「悪いけれどお願いね」

樹「任せてください」

天乃「それと、夏凜もね?」

夏凜「ん……? あぁ、そっか無理だったわね」

歌野達はこの病室の守護、千景と球子は風の病室

若葉は力の消耗によって休養中

精霊で出てこれるのはいない

夏凜「分かった任せなさい。何があっても守ってやるわ」

天乃「なにもないために、私が行くんだけどね」

夏凜の宣言に、天乃は悪戯っぽく笑って返した


√ 12月16日目 夜(病院) ※火曜日


01~10 
11~20 
21~30 九尾

31~40 
41~50 
51~60 大赦

61~70 
71~80 
81~90 千景

91~00 

↓1のコンマ


風のいる集中治療室は薄暗かった

外からの光が入ってこない、電気がつかない

だからではなく、風の弱った目に強い光が入らないようにするためだ

目を逸らすこと、首傾ける事

何もできないのが、今の風だった

天乃「……生きてて、良かったわ」

風「…………」

樹から聞いてはいたが、実際に見てその重みを感じる

骨折しているからだろう、固定された両足と両腕

包帯から少しはみ出て見える縫い糸

打撲によって色の変わった肌

半開きの瞳に、動かすことのできない口

きっと呼吸をする事さえ、辛いのだろう

酸素マスクが曇るたびに、辛そうな表情が見える

樹「お姉ちゃん……良かった」

風「っ……」

樹「無理に、喋らなくていいから」

動かない手を優しく握る

握らなくていい、答えなくていい

でも、体温がしっかりと伝わってきてくれればそれでよかった


樹「お姉ちゃん、心配しないで」

風「…………」

樹「お姉ちゃんの言いたいことは分かるよ」

自分がこんな目に遭ったのだ

心配するななんて無理な話

出歩くことすら危ないことだ、大人しくしてて欲しい

そう言いたいのも分かる話

けれど、大丈夫だと樹は言う

心配していると知りながら、笑顔を見せる

それは天乃がみんなにしていたのと似ているようで違う

樹「私はもう、昔の私じゃないから。夏凜さん達も、いてくれるから」

夏凜「あんたはゆっくり休んでなさい、風」

天乃「私は……ふふっ、メンタルケアは任せなさいな」

夏凜「天乃は何でもさせてくれるらしいし、そこは信じていいわ」

天乃「えっ?」

夏凜「何がえ? なのよあんた」

どうせ何も言わなくても受け入れるくせに。と

夏凜は部屋の空気を払拭するように苦笑する

夏凜「だから、心配しなくていいわよ」


風「…………」

樹「それで、久遠先輩の力があれば祟りによる影響を軽減できるって話があってね」

暫くお姉ちゃんの傍に居て貰うことにしたんだ。と、樹は今後の方針を伝える

少なくとも、風の怪我が治るまでは傍に居るほうが良い

祟りのせいで医療ミス……だなんてことがあってはいけない

樹「えっと……手を出したくなるかもしれないけど、我慢してね?」

風「…………」

天乃「そんなことないって言ってない?」

夏凜「何言ってんの? って感じだと思うけど」

ほんとは分かってるでしょ。と

夏凜の呆れた声を背後に受けて、

天乃は「さぁね」と苦笑する

まだ辛さは残っているが、風の精神面に問題はなさそうに感じたからだ

これなら、後は表面的な怪我の問題だけになる

天乃「頑張りましょう、風」

風「…………」

天乃「私が傍に居るから。ね」


1日のまとめ

・   乃木園子:交流有(祟り、行く)
・   犬吠埼風:交流有(事故、病室)
・   犬吠埼樹:交流有(祟り、行く、さぁ? どうかしら)
・   結城友奈:交流有(祟り、行く)
・   東郷美森:交流有(祟り、行く)
・   三好夏凜:交流有(あかちゃん、母乳、祟り、行く)
・   乃木若葉:交流無()
・   土居球子:交流無()
・   白鳥歌野:交流無()
・   藤森水都:交流無()
・     郡千景:交流無()
・ 伊集院沙織:交流有(祟り、行く)

・      九尾:交流無()
・      神樹:交流無()


12月16日目 終了時点

乃木園子との絆  99(高い)
犬吠埼風との絆  120(かなり高い)
犬吠埼樹との絆  107(とても高い)

結城友奈との絆  134(かなり高い)
東郷美森との絆  138(かなり高い)
三好夏凜との絆  164(最高値)
乃木若葉との絆  107(かなり高い)

土居球子との絆  54(中々良い)
白鳥歌野との絆  52(中々良い)
藤森水都との絆  44(中々良い)

  郡千景との絆  54(中々良い)
   沙織との絆  140(かなり高い)
   九尾との絆  77(高い)

    神樹との絆   ??(低い)


√ 12月31日目 夜(病院) ※水曜日


01~10 
11~20 復帰

21~30 
31~40 
41~50 悪いこと

51~60 
61~70 
71~80 
81~90 復帰

91~00 

↓1のコンマ

※空欄:風は回復しているが、戦闘復帰は不可


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


日付は飛んで12月最終日
その後に、1月


では少しずつ


√ 12月31日目 朝(病院) ※水曜日


風が大きな事故に遭ってから約半月

気が付けば年末だった

あれ以降、祟りによる被害は小さくなっている

もちろん、天の神が温情を与えてくれているわけではなく、

病室の結界と、天乃の抵抗力

それに守られていること

そしてなにより、登校を諦めたからだ

エレベーターが落ちるのだから車の一つや二つは衝突してくるだろう

天乃の母乳との関係を聞いた際に、

九尾がおまけのように言ったその言葉が切っ掛けだった

風「そろそろ、通常の病室に戻れそう」

天乃「大分話せるようにもなったものね」

風「ん……まぁ、まだ……」

言葉が止まる

困ったように眉を顰めた風は、何とか動かせる右手で顎のあたりに触れる

風「長く話そうとすると、骨が痛いけど」


天乃「痛む程度で済むようになってよかったじゃない」

風「痛いって言える程度にまで来たのは良かったけどね……」

喜んでいいのか何なのか

ため息もつけずに顔半分を覆う包帯をなぞる

ちゃんと治っている

けれど、とても遅い

半月経ってもまだ満足に動けない

いや、それほど重かったのか

風「……正直、最初のころは全く分かってなかったのよ」

天乃「………」

風「身体が動かないとか、目が見えないとか、口が動かないとかもうめちゃくちゃで」

樹たちの言葉も、はっきりと聞こえていたわけではない

でも、危ないことをしようとしているような気がして、心配だった

風「揺れて、若葉が叫んで、犬神が出てきて……それで、アレ? ってなった」

天乃「記憶までなくならなくて本当に良かったわね」

あのダメージなら、物理的に記憶が消されてしまう可能性だってあった

祟りによる影響でそこまで重度であってもおかしくなかったけれど、

幸いにも記憶は無事だった

それは、素直に喜ぶべきだろう


風「クリスマスは結局潰れちゃったし、この分だと初詣も無理よねぇ」

天乃「……うん」

風「神樹様の神社でも、5人分の祟りが集まってきたらさすがに辛いだろうし」

天乃「私のところなら平気かもね」

久遠家の力に満ち満ちている天乃の神社

そこならば、祟りに対して抵抗があるはず

建物が崩れたりすることはないだろうし、

天乃たちが被害に遭うこともないかもしれない

天乃「あるいは、私の母乳をみんなに飲んでもらうか」

風「神樹様の種を使ってからって話なんでしょ?」

天乃「ええ。でも、今日は調子が良いのよ」

風「だからって無理をしたらダメなんじゃないの?」

天乃「無理まではしないわ。でも、このままいくなら、夜にでも使おうかなって考えてるの」

神樹様の種

体内のパワーバランスを整えるために大赦から奪ったキーアイテム

それゆえに天乃の体調も良くなければいけない


年末ということもあり、

人々の神樹様への信仰心がより強固なものとなったことで

天の神による影響が最小限に抑え込まれている

神樹様の力が強くなるものの、

神樹様と天の神

両方からの干渉がなくなる分、扱いやすい

力を整えるには好条件だ

天乃「……きっと、これから大変なことが起こると思う」

風「…………」

天乃「でも、私はきっと戦いに出る事は出来ない」

ここまで衰えてしまった以上、

特別な力だけで補うなんてことは難しい

だからこそ。と、天乃は言う

天乃「私は、出来る限りのことをしたいのよ。今このチャンスを、逃したくない」

神樹様の種を取り込み、

穢れの力と勇者の力を整えて、自分自身の崩壊を防ぐとともに

みんなへの力の供給ができるようにする


1、そうしたら、風を一番最初に相手してあげるからね
2、貴方こそ、無理はしないでね
3、でも……覚悟は、しておかないとね
4、そろそろ、負け続けはごめんでしょう?


↓2


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



東郷「久遠先輩、もし最後の戦いがあっても出たらダメですよ?」

天乃「大丈夫、私にはそんな力ないから」

九尾「じゃがお主、満開は使えるじゃろう?」

九尾「もっとも、それはやはり……代償を伴うがのう」

友奈「なら、絶対にダメです」

九尾「そううまくゆけばよいがな」


では少しずつ


天乃「でも……覚悟は、しておかないとね」

風「覚悟?」

天乃「そう。私も貴女も命運を分ける戦いには間に合わないかもしれない」

風「………」

今日来るか、明日来るか

それとも、来月? 再来月?

天乃「私は力を取り戻したから戦います。とはいかないし、貴女だって体が治ってすぐに動くわけにはいかないでしょう?」

風「それは、ね」

精霊の力すら乗り越えてくるほどの天の神の力

それが呪詛としてではなく戦いに用いられたら

衰えた神樹様の力による補助など意味をなさないだろう

天乃「祟りによる影響は、私達で何とかできる。でも、手の届かない場所ではどうにもならない」

風「っ」

願うしかない、祈るしかない

それは、神の不条理に対して最も無力である

ゆえに……

天乃「覚悟をしないといけないのよ」

風「諦める気?」

天乃「ふふっ……まさか」


天乃「諦めることに、覚悟はいらないわ」

諦めないからこそ人は祈る、願う

そして、諦めない人々

その待ち人たちにこそ、覚悟が必要なのだ

天乃「貴女は覚悟をする側になるか、させる側になるか……どっちかしらね」

風「前は、覚悟をする側だった」

沢山の覚悟をしていた

樹の将来を背負う覚悟

世界の未来を担う覚悟

みんなを巻き込むという覚悟

だが、気付けばそのどれもが自分の手元にはない

風「その全部は、天乃がしてくれてるのよね」

樹のこと、みんなのこと、世界のこと

世界を左右する力を持ち、世界を守る勇者達を救う力を持ち、

樹だけでなく、みんなの生涯の伴侶となっている

風「……背負わせすぎ、のような気もするのよねぇ」

天乃「諦めるの?」

風「そろそろ、卒業の季節だから」


風「あたしたちは退くことも考えないといけないのかもしれないって思うのよね」

ここまでボロボロになってしまった今、復帰は難しい

ならば、足手纏いになるよりも座して待つべきなのかもしれないと。

中学からの卒業、勇者部からの引退

退かなければならないことがあるから、

今から待つ側に回ってしまうのもありなのではと思う

風「出来るなら……っていう気持ちもあるのよ? でも、天乃が言うように厳しい」

話すことさえ難儀する現状

戦いに行くなどと言ったところで、ドクターストップはもちろんのこと

戦力が欲しいであろう樹たちにでさえ、止められるような状態だ

風「だったら、お姉ちゃんが頑張るから。じゃなくて、頑張って。って、見送るべきだと思うのよ」

天乃「なるほどね」

風「天乃もいるし」

天乃「私、介護はする方じゃなくてされる方だから。ごめんね」

冗談で返した天乃は小さく笑って、困った表情の風へと目を向ける

ボロボロの体は、引退させるべき状態

だが、本人の心はまだまだ戦う意志を見せている

それは天乃も……同じだ

天乃「待つか待たせるか。まだ、貴女があなたが決めるには早いわよ」

諦めずに祈りましょう

諦めずに待ちましょう

来るべき戦いの日に、万全の状態であれることを。

天乃はそう、諭した


√ 12月31日目 昼(病院) ※水曜日


01~10 東郷
11~20 
21~30 夏凜

31~40 
41~50 
51~60 樹

61~70 九尾
71~80 
81~90 大赦
91~00 

↓1のコンマ


√ 12月31日目 昼(病院) ※水曜日


体調を崩したときの看護師たちの慌ただしさはなく、

友奈たちほかの勇者部メンバーの姿もない、静かな病室

平和だと言えるのかもしれないが、

風の体が体なだけに、

平和と言っていいのだろうかと、天乃は逡巡して息を吐く

風はそんな悩みなど抱いていない

動くことが出来ないし、自力での読書も難しい

楽しく雑談と言うのも一筋縄にはいかなくて

ただただ、退屈そうに目を瞑っている

天乃「…………」

風「……天乃は、好きにしてていいのよ?」

天乃「んー……」

ぼーっとしてると風は申し訳なさそうに声をかけてくる

祟りの影響を抑えるために風の病室に同伴している天乃は、

それがなければみんなと一緒の病室だったのだ

話すことも難しい自分が一緒では、退屈でも話すことさえできないのではと、気遣っているのだろう

天乃「と言ってもね。ほら、私もこんな状態だからどうにもならないのよね」

両足はもともと動かないし、両腕、両手の力は並以下。

本を持とうものなら、ものの十数分で痛みが来る

残念ながら、好きにしていてもいいと言われても何もできないのである


風「あたしのこと、好きにしていい。とかは?」

天乃「貴女のベッドに行くだけでも一苦労よ」

怪我をしている部分や、

触れてはいけないような部分に触れないようにするなら最難関の冒険になってしまう

風は自分のことを好きにしてくれと言う考えを持っているのかもしれないが天乃にはそれが出来ない

風だけでなくみんながその気持ちがある

でも、出来ない

天乃「貴女からきてくれないと、体を持て余しちゃうかもしれないわ」

風「本来の病室で言えないくせに」

天乃「言ったら壊れちゃうもの」

風「ベッドが?」

天乃「私が」

沙織や東郷は聞き逃さない

友奈や樹も便乗する

夏凜と若葉はどうだろうか

二人は陰ながら見守りつつ、みんなの手が退いたら……いや

口は禍の元だと言いながら迫ってくるかもしれない

天乃「流石にね。一日でみんなの相手は無理よ」

風「ネットだと、出来るっぽいけど」

天乃「止めてよ、怖いわ」


一体どうやっているのかと考えるだけでも恐ろしい

ひと段落した会話、回る思考

考えるのを中断した天乃はふと息を吐いて枕に沈む頭の重みを感じ取る

平和だ

退屈であり、暇であり、何もない

だからこそ日常であり、平和だと言える

天乃「……」

何度目かの、平和というものの考えの確認を行う

他愛もない会話の種すらも尽きる凶作状態

辟易しそうなほどの退屈さ

でも、それが良いと天乃は思う

穏やか過ぎて、鳥の囀りさえも大音量な静けさ

それこそが、平和というものなのだから

天乃「……のんびり、お茶でもしたいわね。出来るなら」

風「それを言うなら炬燵にミカンでしょ」

天乃「あー……布団の中が基本だから忘れてたわ」

風「あっ」

天乃「えっ?」

風「年末で思い出したけどうどん……年越しうどん……」

天乃「今年は諦めましょ」

風「うぐぐぐっ」

悔しそうな声を漏らす風の傍ら

天乃は「もしかしたらお夜食にあるかもね」と、僅かな希望を持たせて苦笑する

上手く噛めない風の為に、飲み込んでも平気なように調整して持ってきてくれるかもしれない



1、精霊組
2、イベント判定
3、来年、みんなが元気になってから色々しましょ

↓2


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



樹「………」ペラッ

樹(吊られた男の逆位置……)

樹(あまり良くない、けど。だからこそ取り乱さない。冷静にいこう)

樹(一人じゃない、みんながいるから)


では少しだけ


天乃「来年、みんなが元気になってから色々しましょ」

風「来年の年越しうどんはもう高校生の年越しうどんになっちゃうぅ」

天乃「……なれれば。ね」

風「やめろぉっ……っいたた……」

試験勉強なんて余裕がないまま年末を迎えてしまった風は、

数か月後の自分の結果を思い浮かべて、痛む喉にもがく

卒業はできるけれど、入学できるかは分からない

大赦が勇者としての働きを踏まえて、

補助―勇者としてあるまじき不正―してくれるかもしれないが

流石に、風もそんなことは望まない

かといって高校での浪人なんて、さすがにやっていられない

天乃「私も勉強は少し置いていかれちゃってる感じはあるし、一緒に勉強する?」

風「天乃は置いていかれてないでしょ……十分すぎるほど勉強してたじゃない」

天乃「つわりが出始めてからは全然よ。少しは頑張ったけれど、ね」

ちゃんと勉強している人に比べれば遅れている

もっとも、天乃には子供もいるため

勉強ができるとしても、進学するかは別だけれど


天乃「そうねぇ……留年するのはどう?」

風「いやいやいや」

天乃「夏凜達と同級生よ?」

風「それ嬉しいの天乃だけだから……」

もう一年、みんなと一緒

それだけ考えれば悪いことばかりじゃないけど。

そんなことを考えつつも、風は「やっぱなし」と断じる

勇者部の活動を通して有名になってしまっている風が留年でもしたら?

それを考えてしまうと、とてもではないが無理だ

風「あぁもう……バーテックスのせいだわ」

天乃「それはそうなんだけど、あれはもう自然災害みたいなものだから」

風「はぁ」

天乃「他の人に被害が出ないだけマシ。そう考えておきましょ」

風「そうねぇ」

ポジティブに考えるなら

そう思いつつ、風は抑えきれない絶望を感じて

頭の中に学んだ公式を羅列していく

羅列して――消えていく

風「……本格的に、やばい」


天乃「園子も勉強できるし、教えて貰ったら?」

風「3年の勉強も?」

天乃「ええ。出来ると思うわよ」

学校に行くことが出来なかったから

出歩くこともままならなかったから

出来ることと言えば勉強くらい

だから、やってしまったのだと園子は笑って言っていた

天乃「私でもいいわよ? 出来る事には限りがあるけどね」

風「………」

天乃「風?」

目を向けたままじっと固まった風は、

ゆっくりと目を逸らす

きっと、体を動かしたかったのだろう

腕がむなしく震えた

風「天乃は、ご褒美担当よねぇ、やっぱり」

天乃「ご褒美……?」

風「そっ、一日自由にしていいとか」

天乃「別にいいわよ? そのくらい」


恋人なのだからむしろ断る理由がない

けれど、風は「そうだけどさ」とつぶやく

風「そういうシチュエーションとか、面白そうじゃない?」

天乃「シチュエーションって、貴女も物好きね」

風「勇者部の脚本家よ? 当たり前じゃない」

雰囲気とか、シチュエーションとか

そういうものが好きなんだと、風は微笑む

風「それに、デートを勝ち取ったって、なんかよくない?」

天乃「その気持ちは分からなくもないわね」

努力して、勝ち得た結果

それが心から望んでいるものなら、とても喜ばしいことだろう

だからと、天乃は苦笑する

悪だくみを感じる、笑み

天乃「なら、しばらく私にはお触り厳禁ね」

風「えっ」

天乃「ふふふっ」

風「それは……無理」

我慢に我慢を重ねての、我慢

それはさすがに無理だと、風はシチュエーションを投げ出した


√ 12月31日目 夕(病院) ※水曜日


01~10 大赦

11~20 
21~30 
31~40 千景

41~50 
51~60 
61~70 九尾

71~80 
81~90 若葉
91~00 天の神も努力する

↓1のコンマ


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


東郷「久遠先輩を一日自由にできる券」

東郷「これがあるかないかで大きく変わる」

東郷「そう……久遠先輩を征服しているかのような高揚感が得られるのよ!」

沙織「ベッドの上ではいつも征服してるけどね」


樹「先輩が、とてもエッチなのですがどうしたらいいのでしょうか」

友奈「申し訳ございませんが、お客様のご質問は法令に基づきお答えすることが出来ません」

樹「クレーム入れますね」


すみませんが、本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば少し早い時間から


では少しずつ


√ 12月31日目 夕(病院) ※水曜日


風「そういえば……天乃って進路希望出したんだっけ?」

天乃「……出してない」

出せなかった。が、正しい答えだろうか

登校していた風達に任せてもよかったのだが

ちゃんと、答えを出すまで考える時間がなかった

ただ、どこの高校に行きたいかという進路ならともかく、

子供がいる上での将来

考えるのは簡単じゃなかったのだ

天乃「あくまで希望調査だから、出さなくても大丈夫だったとは思うけど……」

風「先生としては、天乃の進路希望よりも、また学校に来てくれることに期待してたのかもね」

天乃「クラスのみんなもね」

待ってたのよね。と天乃は申し訳なさそうに答える

実はクリスマスなどにも面会に来たのだが、

機密かつ、状況が状況なだけに会うわけにはいかず

顔を見せることは叶わなかった

風「せめて、卒業式くらいは参加したいわね」

天乃「」風はできるでしょ

風「あたしが。じゃなくて、天乃と……だから」


風「天乃だけじゃなくて、沙織も、みんなも」

天乃「そうね……多分、卒業式には出られると思うわ」

卒業式までには天乃の体の問題も解決させられるだろう

別の狙いがあったとはいえ、

神樹様の種を盗り返さずにいてくれるのは感謝すべきだ

天乃「みんなに何もなければ」

風「天乃が回復するなら、大丈夫じゃない?」

祟りによる影響は軽減できる

もちろん、軽減するだけで解決にはならないため

ちゃんと対応すべきだけれど卒業式への参加に支障はないはずだ

だが……きっとそんな生易しくはない

天の神はきっと攻めてくる

捧げものを強奪した挙句、それによる祟りを打ち消す

いい加減にしろ。と、お怒りになっていることだろう

むしろ、犬吠埼姉妹の大怪我もその怒りが要因なのかもしれない

そう考えながら風へと目を向けると、風も目を向けていて

痛まないように、笑みを浮かべて見せる

風「今日は体の調子がよさそうでよかった」

天乃「うん。このままいくといいんだけど……」


風「あんまり弱気になったらだめよ?」

天乃「ええ……」

病は気から

よく言われていることだ

でも……と天乃は眉を顰める

調子がいいときほど怖いものはない

動いた布団の隙間から入り込む冷たい空気が、

嫌に、不穏に感じてしまう

身体が弱くなったのと同時に、心も弱くなった

頑張れているのは、みんなのおかげだ

天乃は布団の中で自分の手を握る

年明けから、色々と変わっていくことがある

風が言ったように3年生は卒業しなければならないし、

出産を終えた天乃も、いつまでも入院というわけにもいかなくなる

もちろん、祟りの影響を考えれば入院を続けることもできるだろうけれど……



1、精霊組
2、イベント判定
3、ねぇ、風はそろそろ家に帰りたいって思う?
4、足、治ると良いなぁ


↓2


天乃「……足、治ると良いなぁ」

風「神樹様の種を使えば、治るんだっけ?」

天乃「運が良ければ治るかもしれない」

風達の体は一度、満開による影響でその機能を喪失したが、

神樹様の力によって、取り戻した

だから天乃も神樹様の種を使えば、

そういった現象が起こる可能性はあるのだ

残念ながらみんなと違って神樹様の力を用いた満開ではないこと

穢れの影響によって、神樹様の力の大半が打ち消されるため、

体内のパワーバランスを整えることしかできない可能性の方が高い

天乃「勇者の力を使うなら、常に動かせるみたいだけどね」

風「そういえば、戦ってるときはさすがに歩いてたわよね。東郷はなんか、違ってたけど」

天乃「東郷とはタイプが違うから」

風「その東郷も今では歩けるのよねぇ……しかも、天乃を襲う勢いで」

天乃「あの勤勉さはありがたいけど、ちょっと怖いところもあるわ」

動けなかった東郷、園子

二人が自分の足でしっかりと動けるようになってくれたのは、嬉しい

でも、羨ましくもある

小さい。と、言われてしまいそうなことではあるけれど

誰か別の人も同じ状況であるのは、少しだけ心に余裕を持たせてくれるのだ


風「歩けるようになったら、もうされるがままにならなくて済むんじゃない?」

天乃「エッチなことで優位に立てるとは思ってないわ」

風「何諦めてんのよ」

天乃「友奈にも勝てないし」

風「あぁ……」

天乃「納得しないでよっ」

友奈どころか樹にも勝てない

と言うより、二人が非常に積極的になってしまう

そうさせる天乃は周りが求めない限り、

永久的に責められる側になることだろう

いや、もしかしたら別の誰かの技術を駆使して反抗してくるかもしれない

そう考える風の一方で

天乃は布団の中でモジモジと動いて、顔を赤くする

天乃「結構……恥ずかしい」

風「……無理ね」

天乃「えっ?」

風「いや、うん……頑張って」

風は考えを拭い去って、目を瞑る

経産婦とは思えないほどの、無垢さ

これでは友奈たちには一生勝てない

それが、天乃のいいところでもあるのだけど


風「足だけじゃなく、味覚も戻らないとね」

天乃「東郷の牡丹餅も食べてみたいわ」

風「美味しいわよ、本当にね」

天乃「うん」

友奈たちの反応からして、

間違いない味であることは分かっている

ちょっぴり見た目の悪い樹の手料理も、風の手料理も

友奈の作ったお菓子だって

みんなで行ったつるやだって

まだちゃんと味わえていない

だから、治って欲しいと頷く

天乃「牡丹餅のことでは、東郷たちに悪いことしちゃったしね」

風「あれは……まぁ、仕方がなかったでしょ」

天乃「勇者のことは伏せたままでも話すことは出来た。それをしなかったのは、私よ」

風「それでも、悪くない。それに今更謝ったら何言われるかわかったもんじゃないわよ?」


風は茶化すような声色で苦笑して

確かに、今のみんなに下手に出たら何をされるか分からないと天乃も笑う

特に、沙織だ

東郷は言動の端々にえっちな思考が見え隠れしているが、それ以上に顕著だ

そして、それに負けじと友奈たちも頑張ろうとするため、

最終的には大変なことになってしまう

天乃「一日中エッチさせられるのはさすがに嫌だわ」

風「でも、それで疲れ切ってる天乃も見てみたいと思ったりしなかったりするのよねぇ」

天乃「本気……?」

風「半分くらいは」

天乃「もう風とはしない」

風「えっ」

きっぱりと言い切って天乃は風へと背中を向ける

もちろん、そんなことはないのだけれど

淫らな考えを持ちすぎている罰だと

背中に届く言葉を、跳ね除け続けた



√ 12月31日目 夜(病院) ※水曜日

01~10 
11~20 大赦
21~30 
31~40 悪いこと
41~50 九尾

51~60 
61~70 
71~80 千景 
81~90 
91~00 悪いこと


↓1のコンマ


※空欄は全員


悪いことの程度

1~0

↓1コンマ


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から


程度は2・・・軽め


では少しだけ


√ 12月31日目 夜(病院) ※水曜日


東郷「くっ……私としたことが」

園子「ドンマイだよ、わっしー」

夏凜「なんにせよ、大した怪我じゃなくてよかったんじゃない?」

東郷「それは、そうだけど」

友奈「東郷さん。東郷さんがそんなに落ち込んでたら、久遠先輩も風先輩も心配するんじゃないかな」

東郷「友奈ちゃん……」

まもなく、年が明ける

そのためにしていた準備は、今まさに東郷の目の前で無残に砕け散ってしまった

正確に言えば、破れ去ったと言うべきだろうか

天乃が風の病室に常駐するようになってから地道に作り上げた、赤ちゃんのためのお洋服

それが台無しになってしまったのだ

落としかけた糸を拾おうとした瞬間に布団がズレ、ベッドから落ちたときに

引っかかり、引っ張って、ダメになった

幸いにも東郷自身は体を打つ程度で済んだけれど。

樹「運が悪ければ串が刺さっていたんですよ、東郷先輩」

東郷「ええ……そうね」

夏凜「予定通りお年玉で良いんじゃない?」

樹「久遠先輩が絶対に喜ばないって言ったの夏凜さんじゃないですか」


友奈「久遠先輩、味覚がないから美味しい食べ物っていうのだけじゃだめだもんね」

園子「ゆーゆ?」

夏凜「……ま、でしょうね」

ふぅ。と息を吐いた夏凜は、

暗い表情を浮かべる友奈から視線を外す

年越しうどんだとか、おせちだとか、お雑煮だとか

天乃は味覚がなくてそれで喜べるような状態ではない

風だって、今年は食べられないという話だった

自分での咀嚼が難しい状態だから仕方ないけれど。

東郷「やはり、ここは自由にしていい券を渡しましょう」

園子「諦めてなかったんだねぇ~」

東郷「私たちのことを好きにしていい券! これなら、久遠先輩が普段させられないようなことだってさせられるのよ!」

友奈「久遠先輩は券があってもさせないと思うなぁ」

樹「東郷先輩は欲望に忠実すぎるんです」

夏凜「樹にまで言われるなんて、東郷……やばいわよ」

東郷「授乳された人が何言ってるの?」

友奈「それは私もなんだけどなぁ」

園子「早く天さんのところ行こうよ~」


天乃「あら……勢ぞろいね」

夏凜「あと数時間で年明けだし」

天乃「そっか……」

友奈「久遠先輩、体の調子はどうですか?」

天乃「うん、大丈夫そう」

幸いにも、体調が崩れることはなかった

今まで体調がすぐれなかったりしたのは妊娠が原因だったわけだし

当然と言えば当然かもしれないけれど。

樹「じゃぁ、ようやくですね!」

樹は嬉しそうに声を上げて慌てて口を押える

年末ということもあって、

特別にまだ起きているところもあるけれど

寝ている人もいる

離れている治療用の病室とはいえ、あまり騒ぐのは迷惑だ

風「あたしにも、癒しの光を」

園子「アルファ派~」

東郷「私もやるわ」

みょんみょんみょんみょん……と

手を動かす二人の一方で

すっっと、沙織が病室へと入ってきた


沙織「どうする? 久遠さん」

天乃「そうねぇ……」

今すぐ行うか、せめて年明けまでは待つか

天乃の体に神樹様の種を使った場合、

当然ながら拒絶反応が出るし、多少は寝込むことになる

でも、それを乗り切れば無事、完治したと言える

逆に言えば、これを行わなければ完治とは言えない

どれだけ元気になれていたとしても、

最終的には体内のパワーバランスの崩壊によって、死に至る

それは九尾も言っていた確定事項だ

夏凜「どうするかは天乃に任せるわ」

東郷「っ……」

年越しくらいは……と

言いたげに動いた東郷は口を閉ざして目を背ける

このわずかな我儘が、

最終決戦があった際に天乃のたった一言の声援の有無にかかわるかもしれない

聞きたいときに声を聞くとができるかどうかに、関わってくる

天乃「明日調子がいいとも限らないのよね」


1、今日やってしまう
2、せめて年明けに行う
3、みんなはどう?

↓2


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


久遠さんは年明け、現実は改元
久遠さんはもうちょっとだけ続きます


では少しだけ


天乃「ごめんねみんな……今日やっちゃおうと思う」

友奈「っ」

園子「そっかぁ……仕方がないね」

東郷「せめて、せめて年が明けるまで待ちませんか?」

樹「年明けまで待てない理由があるんですよね?」

勇者部の面々の割れる呟きに

天乃は困った表情を浮かべながら、耳を傾ける

年明けまで数時間

それくらい待ってもいいのではという意見も分かる

けれど、その数時間が命取りになりかねないのが天乃なのだ

天乃「神樹様の力を借りる以上、向こうも万全であるべきだから」

沙織「そう……だね。久遠さんの力に打ち負けたりなんてしたら最悪だからね」

神樹様への信仰心が最高潮に達し、

天の神からの影響をほぼ完全にシャットダウン出来る時間

勇者の力と違い際限なく湧き出てくる穢れの力もそれならば容易く包み込んで抑え込んでくれることだろう

こんな機会は、もうない

中学3年生としての年明けも最期だけれど、年末年始は生きていれば来年以降も訪れる

だから、今なのだ


夏凜「みんな、楽しみにしてたのよ」

天乃「……うん」

残念そうにする友奈たち

せめてあと数時間くらいはと、求める東郷たち

その姿を見ていなくても

せっかくの年末……辛く苦しく、けれど生き抜くことのできた今年を

そして、来年こそは。という思いを込めての何かがあることくらいは分かっていた

夏凜「約束できるんでしょうね。あんた」

樹「夏凜さん……?」

夏凜「確実に回復するって、その足もその舌も、目も……全部ちゃんと治るって」

天乃「難しいことを言うわね、夏凜は」

天乃の気力次第だというのなら、それは当然完治するだろう

しかし、そんな優しくはない

神の嫌われ者である天乃には、そのような幸福は断じてあり得ない

それが現実である

天乃「でも、ちゃんと見えるようになったら。ちゃんと聞こえるようになったら、ちゃんと感じられるようになったら……良いな」

風「……隣であたしも、頑張るわよ」


風「だから、頑張りなさい」

天乃「風……」

今は風も満身創痍

だからこそ、その言葉には茶化せない思いがあって

天乃は苦笑いを浮かべて、頷く

天乃「もちろんよ」

むしろ、頑張るために逃げないのだから

後回しにできることをせずに

僅かな希望に縋って、突き進むのだ

友奈「久遠先輩、絶対、絶対に……ちゃんと」

東郷「せっかくの年末年始をつぶすんです。ちゃんと埋め合わせはしていただきます」

天乃「体に負担がかからなければなんだってしてあげるわよ」

東郷「……分かってて、そういうこと言うんですから」

園子「天さんがそう決めたなら、私から言えるのは一つだけ……負けないで」

天乃「ええ」

園子「天さんの力は強い。強いからきっと、飲み込まれちゃうこともあると思う。でも負けたらだめだよ」

天乃「分かってるから、大丈夫」


沙織「本当に良いんだね?」

天乃「ええ」

沙織「……そっか」

ちょっと残念だな。と、沙織は呟く

沙織も楽しみにしていたのだろう

用意をした身でありながら

それが無駄であることを願っていたらしい

でも、「仕方がないね」と笑みを浮かべる

沙織「今日やることで少しでも久遠さんの負担が軽くなるなら、やらない手はないからね」

天乃「確証はないけどね……でも、迷わないわ」

樹「……大丈夫です。きっと、その強さがあれば」

樹は秘かに引いていたタロットカードを戻し、口を開く

引いたカードは月、そして、逆位置

それは決して良いとは言えないが悪いとも言えない

己の道が正しいと信じ、強い心をもって望めば打破できる

天乃「なんだかみんな、お別れみたいな雰囲気だけれど……そんなことないからね?」

夏凜「分かってるわよ。だから……頑張ってきなさい」

天乃「うん」



神樹様の種の反動

1~0

↓1コンマ

※小~大
※ぞろ目ならなし


01:全快 02:右足× 03:聴記× 04:味視× 05:右足× 06:味覚× 07:聴覚× 08:全快 09:右足× 10:視覚×
11:視覚× 12:全快 13:全快 14:視覚× 15:全快 16:聴視× 17:味覚× 18:味覚× 19:視覚× 20:味視×
21:聴覚× 22:視覚× 23:両足× 24:両足× 25:味覚× 26:視覚× 27:記憶× 28:視覚× 29:記味× 30:聴覚×
31:記憶× 32:聴覚× 33:記憶× 34:右足× 35:味視× 36:視覚× 37:記憶× 38:右足× 39:右足× 40:聴記× 
41:両足× 42:視覚× 43:聴視× 44:視覚× 45:両足× 46:両足× 47:視覚× 48:記味× 49:視覚× 50:記憶×

51:記味× 52:左足× 53:味覚× 54:記味× 55:聴覚× 56:両足× 57:全快 58:両足× 59:全快 60:全快 
61:記憶× 62:味覚× 63:全快 64:両足× 65:聴覚× 66:記憶× 67:味視× 68:左足× 69:全快 70:全快 
71:聴覚× 72:記憶× 73:両足× 74:足 75:記憶× 76:聴覚 77:全快 78:聴記× 79:全快 80:聴覚× 
81:左足× 82:聴覚× 83:全快 84:全快 85:聴覚× 86:味覚× 87:全快 88:全快 89:左足× 90:全快 
91:全快 92:全快 93:記憶× 94:全快 95:聴覚× 96:全快 97:聴視 98:左足× 99:左足× 00:全快



↓コンマ

※×はそれ以外が回復


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


「ぞろ目なら…」という文言を入れ忘れましたが、祟りのせいにしておきます


では少しだけ


沙織「行くよ……久遠さん」

天乃の意志をもう一度確認すると、

沙織は神樹様の種が納められた器を左手に持ったまま天乃の腹部を撫でる

軽く押し込んで、天乃の顔が困惑のままなのを見て、苦笑する

沙織「お腹だけ出してもいい?」

天乃「いいけど……必要なの?」

沙織「禊する時だって羽織ってるのは衣だけでしょ? まぁ、これは禊じゃないからいいと言えばいいけど」

天乃「必要ならいいわ。裸でも」

沙織「そこまでしなくてもいいよ」

体に障ったら悪いからね。と

沙織は自分の欲求を押し殺して裾をめくる

沙織「……神漏岐かむろぎ神漏美のかむろみの……皇親神伊邪那岐の大神、伊邪那美の――」

殺気の接触とは違い、

煩悩のかけら一つなく、沙織は触れる

小さく、大きく

祝詞と呼ばれる言葉を紡いでいく

天乃の中に宿る穢れ、その元凶たる神々

扱う神樹様の種、その源流たる神々

そのすべてに聞いていただくための、祝詞


沙織「禊祓ひ給ふ時に……」

器――羅摩から神聖な輝きを放つ種を取り出し、

天乃の腹部……へそのあたりに宛がう

祝詞を唱える前からではなく、唱えてから宛がうのは馴染ませるためだ

東郷「凄い……」

本物の、巫女だった

普段のお茶らけた言動、淫らな欲望に塗れた思考

それらとは全く違う、巫女としての姿

沙織「諸々禍事罪穢を……」

天乃「ひぐっ……!」

沙織「っ……申す事の由を」

ずずっと……天乃の腹部に種が沈み込んでいく

その拒絶反応によってか、大きく跳ね、呻いた天乃を沙織は押さえつけて、祝詞を続ける

苦しかろうが、辛かろうが

途中で止めるわけにはいかなかった

中途半端に入って拒絶反応の収拾がつかなくなったら大変なことになってしまうからだ

沙織「っ、三好さん!抑えて!」

夏凜「わ、わかった……」


鬼気迫る沙織の声に、さすがの夏凜も一歩押されて反応し、言われた通りに天乃を抑える

足こそ動かないが、

両手が、頭が、腰が、自傷しかねないほどに動く

その激しさが、意識してでの動きではないことを明確する

抑える腕に伝わってくる抵抗

その強さに夏凜は眉を顰めた

天乃「ぅぁっあぁああああああっ!!」

夏凜「っ」

沙織「聞食せと――」

神樹様の種は、

沙織の祝詞が終わりに近づいたのを見届けたかのように、

天乃の体の中へと溶けて消えていく

一際大きく上がった悲鳴

ごぷっ……と、零れだしてきた血をすぐに拭う

失明していた左目からは血が、右目からは涙が……流れ落ちて

天乃「ぅ……」

強かった抵抗は急激に弱くなって

そして――完全に途絶えた


樹「久遠、先輩……?」

沙織「……畏み、畏み……も白す」

願い、祈る

息絶えてしまったかのような天乃の静けさを前にして

沙織はくっと口を噛んで目を瞑る

叫んでも、何しても意味がないと沙織が一番分かっているからだ

賽は投げられた

もう後戻りすることはできない

出来る手は打った

あとはもう、天乃が頑張るしかないのだから

友奈「久遠先輩っ、久遠先輩っ!」

沙織「大丈夫だよ……死んじゃったわけじゃない」

心臓は動いている

ただ、目を覚ますことはないだけで。

頭に浮かんだ続きの言葉をかみ砕き、飲み込む

沙織「神樹様の力と、久遠さんの穢れの力。それが互いに潰しあって……久遠さんを壊そうとしてる」

園子「でも、大丈夫なんだよね?」

沙織「うん……大丈夫。久遠さんは、きっと、大丈夫」

五体満足で戻ってきてくれるかどうかの保証はできない

もしかしたら、失ったものは失ったままかもしれない

でも、それでも

それでもいいから帰ってきてくれるはず。と。

沙織は頷いた


↓1コンマ一桁


※1~0
※判定結果+反動値9日間の昏睡
※ぞろ目なら11日


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

14日間=約一ヶ月分



陽乃「神様ってしぶといわよね……でも、そろそろ限界。ようやくくたばるのね」

陽乃「停滞した世界は守る価値があった? 命を削る意味があった? ふふっ、無様ねって罵ってあげようかしら」

天乃「でも、貴女もそうしたんでしょう? 陽乃さん」

陽乃「馬鹿なこと言わないで。私は神も仏も人間も守る気なんてこれっぽっちもなかったわ」

陽乃「私は私が生き残るために力を尽くしただけ。その恩恵に集った乞食が生き残っただけよ……本当、狡賢いわよね」


では少しだけ


沙織「………」

年が、明けた

どこからか、鐘の音がする

少し前から始まっていたであろうそれは、

百八つ目なのか、ちょうどいいタイミングだと思ったのか

一際大きく鳴り響いて沙織達のもとへと届く

沙織は目を瞑り、耳を傾ける

他の病棟、病室からは

年明けを祝う声、病気が治りますようにと願う声

様々な声が聞こえてくる

友奈「……はっ、はっぴーにゅーいやーっ!」

東郷「友奈ちゃん!?」

友奈「落ち込んでちゃだめだよ!」

きっと、それじゃダメなんだよ。と、

友奈は天乃のことを見つめながら言い聞かせるように声を張る

友奈「力のこともあったと思う。でも、大晦日だからこそ儀式をやったんだって、思うんだ」

樹「大晦日だからこそ?」

友奈「うんっ」

夏凜「持ち越してもいいことないでしょ。今回の問題は」


夏凜「新年になってからやるよりも、年が明ける前にやっちゃった方が区切りが良いし」

園子「除夜の鐘みたいなものかな~?」

年が明ける前に叩き始め、

年明けとともに最後の一回を打ち終えるという除夜の鐘の鳴らし方

始まりは大晦日に

そして、終わりは年が明けるのと同時に

そうすることで、新年に持ち越さないというやり方をまねたのではないか。と、園子は言う

残念ながら、年明けと同時に目を覚ませるほど生易しいことではなかったが。

友奈「久遠先輩は希望を持って決断した。だから、目が覚めた時に私たちがダメになってるわけにはいかないんだっ」

風「その通り……って、あたしが言ったってしょうがないかもしれないけど」

あはは。と、笑って痛みに顔をしかめた風に樹は心配そうな目を向けつつも頷く

東郷「お呪い。ですね」

樹「頑張るから、みんなも頑張って……でしょうか」

切り出したのは風からではあったけれど、天乃にも初めからその思いはあったのだろう

どちらかがダメでも意味がない

一蓮托生、願うは大きく広くけれども――一つ

沙織「みんなで一緒に居られること……」

夏凜「そのために必要なことなんだから仕方がないでしょ。とか、天乃なら言うんじゃない?」

樹「久遠先輩、意外に我儘ですから」


風「そうなれって言ったのはあたし達だけどねぇ」

すぐ横の眠り姫

目を向けきれないもどかしさに頬を膨らませながら

風は限りなく明るい声色で呟く

天乃の苦しむ姿を見ることにはなってしまったけれど、

儀式は行われてしまった

あとは、祟りに負けず天の神に屈せず

目が覚めるまで生き延びるだけだ

いや、【まで】ではない

それからもずっとだ

そのために、ここで悲しみに暮れているわけにはいかない

沙織「そうだね。久遠さんは生きるために頑張ってるんだから。それであたしたちが挫けるわけにはいかない」

友奈「はいっ」

夏凜「それじゃ、風は体を治して」

風「任せろっ」

樹「受験も頑張らないとだね」

風「まかっ……」

東郷「目を逸らさないでください。風先輩」

だってぇーと、

意気込んだ屋下記に、弱弱しい声が病室に流れていく



1月中の勇者部、コンマ判定

0~9

↓1

※悪~良
※ぞろ目ならびっくりすることが起きる


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

判定は7、中吉


沙織「でも、分かってる? 久遠さんが眠っちゃったってことはエッチなことが出来ないんだよ?」

友奈「!」

東郷「いいえ待ってください、世の中には眠姦なる性行為というものが――」

夏凜「あんたが待てっ!」


樹「除夜の鐘では祓いきれない煩悩があるみたいです」

千景「あれこそが人間の穢れよ」


すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日はできれば通常時間から


再開は1月14日目、勇者部視点


では少しだけ


√ 1月14日目 朝 (病院) ※水曜日


年が明けてから、二週間

風の体は外傷こそまだ残ってしまっているものの

軽く動かすことや、運動することはできるくらいには回復した

順調な回復を見せる風には

身体的な後遺症などの心配もないだろう。とのことだ

天の神による祟りは、

風や樹を襲ったような怪我などが伴うものは殆どなく

転んだり、ぶつかったりぶつけられたり

ちょっとした不注意での事故のようなものばかりになっていた

しかし……

友奈「……東郷さん、大丈夫?」

東郷「うん、友奈ちゃんは?」

友奈「大丈夫」

そう言って笑みを浮かべる友奈だったが、

その表情はとても辛そうで

東郷は「無理しないでね」と、声をかける


天乃や歌野達の力による祟りへの対抗

それがあってか、外因的な被害を与えることはなく、

直接的に生命力を奪っていく方向へとシフトしたのだと沙織は言うが

それが祟りの本来の在り方なのだろう

胸元にあった痣のような印は大きく広がりを見せ

人前には晒すことが出来ないほどにまで大きくなりつつある

夏凜「冬で良かったわよね、コレ」

襟首を伸ばして自分の体を覗いた夏凜は、

苦笑いを浮かべながら、呟く

冗談にはならないけれど

冗談にでもしていなければ、辛い

園子「プールに入れないからね~」

東郷「エッチなこともできないわ……」

樹「祟りのことより絶望してませんか?」


軽口を、叩く

祟りによって蝕まれていても心まで蝕まれているわけじゃない

痛みはあるし、熱っぽい時もあるし

当然のことながら、苦しくもある

けれど、一人ではなく、みんながそうであるからこそ

それぞれが頑張っているのだから。という力強さがあって。

たった一つ、天乃の為にと言う強い想いがあって

だから、平気ではないけれど平気なのだ

東郷「当然よ樹ちゃん……分かる? 二週間も、久遠先輩の体に触れる事すらできていないのよ?」

樹「それは……その気持ちは分かりますけど」

今までは、話すことが出来た

見ることが出来たし、触れることだってできた

でも、今は祟りの進行もあってろくにできていない

東郷は胸元を握る

忌々しそうに、いらだたしさを感じさせる

東郷「こんなものを見せたら、久遠先輩が泣いてしまうわ」

夏凜「その前に怒るかもね」

東郷「怒られるなら、まだ良いだわ」


怒られるのも嫌と言えば嫌だが、

泣かせてしまうことだけは絶対に嫌なの。と、東郷は拒絶する

友奈も、樹もだ

今の天乃は非常に涙もろいけれど

今の姿を見て天乃が泣くのは罪悪感からだ

自分の代わりに無理をさせた、自分のせいでこんなことになった。と

目の前では泣かないかもしれない

でも、きっと泣かせてしまうことになる

東郷「そんなことになったら、私は私が許せないわ」

沙織「かといって、無理をしてもいいわけではないことを忘れないでね?」

樹「今は眠っているのであれですけど、ずっと会わないわけにはいきませんから」

友奈「特に、東郷さんは目が覚めた瞬間にでも全速力で飛んでいかないとおかしいからね」

東郷「友奈ちゃん……」

夏凜「理解して貰えてるみたいな顔してるけど、悪い意味よ?」

樹「でも、久遠先輩の元気な姿を見ることが出来たら……そのためなら、大丈夫な気はします」

樹は東郷の反応に困った反応を見せながら、

一理はあります。と、つぶやいた


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


では少しだけ


√ 1月14日目 昼 (病院) ※水曜日


01~10 
11~20 大赦
21~30 
31~40 久遠さん
41~50 
51~60 九尾

61~70 
71~80 悪いこと 
81~90 
91~00 久遠さん


↓1のコンマ


※久遠さんは基本的に夜
※判定でのみ、引いた時刻


√ 1月14日目 昼 (病院) ※水曜日


友奈「はぁ……」

東郷「友奈ちゃん、本当に大丈夫?」

友奈「……うん」

額の汗を、拭う

大丈夫、大丈夫

そう言い聞かせて、息を飲む

友奈「でもちょっと、息苦しいね」

東郷「そうね……少し、辛いかも」

友奈「寝てるだけでも、なんか怠くてご飯も吐いちゃいそうな気がする」

東郷「分かるわ」

冗談を言い合うように、笑う

でも、内容はまったく楽しくはない

けれど笑っていれば、少しは軽くなる気がした

東郷「お風呂に入るのも怖いわよね」

友奈「うん……」

東郷「久遠先輩のための体なのに……こんなに穢されて」

友奈「う、うん?」


東郷「出来る限り早く、綺麗にしないと」

友奈「東郷さんは、えっちなことしたいの?」

東郷「その有無に限った話じゃないわ」

たとえそれがなかったとしても、

自分の体が穢されているのは気に入らない

したいこと、したいけれど。

東郷「……なんというか、久遠先輩を喜ばせたいの」

ちょっと勢いに乗りすぎて困らせてしまうこともあるけれど

でも、いつも楽しんでくれている

終わった後は、満足してくれている

ほどほどにね。と言いながら

嬉しそうに笑ってくれる

東郷「友奈ちゃんは、どう?」

友奈「私は……まだ、えっちなことは良く分からなくて、全然力になれてないなぁって思う」

それが必要な頃だって

自分よりも東郷たちが役立っていて、全然役に立てていなかったと心の中では思う

でも、天乃は嬉しそうだった

自分のせいで淫らになっていく

それには少し申し訳なさそうではあったけれど

でも、自分たちの望んでいることであると伝えたら

困ってはいたけれど、ダメとは言わなかったし嬉しそうだった


友奈「本当は高校生くらいから、なんだよね?」

東郷「そうとは限らないけどね」

友奈「そ、そうなんだ……」

東郷「久遠先輩みたいに妊娠や出産を経験するのは……ないみたいだけど」

神世紀以前はどうだったのか

千景は多くはないが少なからずあったと言っていたから

少なくとも、道徳的に正しくはないことなのだろうと思う

東郷「でも、久遠先輩はどちらでも嬉しいのよね」

友奈「うん」

東郷「私たちが幸せなら、それでいいの」

天乃はみんなの幸せを願い、

みんなは、天乃の幸せを願っている

だからこそ、それが踏み躙られている今が許されない

そんな姿を、見せたくない

東郷「私たちの幸せには、久遠先輩が必要」

友奈「そのために、久遠先輩は凄く頑張ってくれたんだよね」

今も、頑張ってくれているんだよね。と

友奈は悲しそうに、けれど嬉しそうに言う

友奈「そのために、もう少し私達も頑張らないとだよね」


東郷「友奈ちゃん……分かってるよね?」

友奈「……うん」

友奈や東郷、夏凜は

すでに一度、天乃の穢れの一端を請け負っている

その効果はすでに消え去っており

恩恵も何も得られないような普通の体だが

天の神からしたらすでに穢れた不浄な者だろう

その分、影響は樹達よりも大きくなる

それは努力で賄える苦痛ではない

東郷「辛ければ辛いって言ってね? 私も……辛いから」

友奈「東郷さん……」

東郷「でも、えっちなことを話す余裕があるならまだ大丈夫ね」

友奈「東郷さんっ!」

東郷「ふふふっ」

もうっ! と

ちょっぴり怒った友奈の声はいつも通りで

東郷は嬉しそうに笑う

まだ大丈夫。まだ平気

病気ではない熱っぽさの強くなっていく体の息苦しさを感じながら、

東郷は極力、笑みを見せた


√ 1月14日目 夕 (病院) ※水曜日


01~10 久遠さん

11~20 
21~30 風 
31~40

41~50 大赦

51~60 
61~70 
71~80 千景 
81~90 九尾

91~00 

↓1のコンマ


※久遠さんは基本的に夜
※判定でのみ、引いた時刻


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


夕方は夏凜と九尾の交流
そして夜に久遠さん


では少しずつ


√ 1月14日目 夕 (病院) ※水曜日


夏凜「天乃はどうなのよ?」

九尾「案ずるな、問題はない」

夏凜「予定では今日なんでしょ? あんまり、そんな感じはしないんだけど」

九尾「見た目は変わらぬが、確実に力を取り戻しておる」

大丈夫。と

九尾はもう一度繰り返して言う

はたから見たら今までと変わりなく思えるが

内面ではしっかりと力を取り戻しており

目を覚ますことは確実だと九尾は感じていた

これで、勇者部も救われることだろう

九尾「と言っても、力を取り戻すだけで本調子ではない。無理はさせるでないぞ」

夏凜「させるわけないでしょ……もう、させない」

九尾「じゃが、お主らが無理をしても主様は嫌がるじゃろうな」

くくくっと笑った九尾は

厄介じゃのう。と、あざけるように笑う


九尾「その祟り、主様に勘付かれるぞ」

夏凜「………」

九尾「もっとも、主様の手を借りる以上。知らせる事じゃが」

天乃の力が戻った後は、久遠家の血を借りて祟りの影響を最小限に抑え込むため

祟りの影響は知られてしまう

どれだけの苦痛だったか

どれだけの辛さだったか

全部、知られてしまうことになる

夏凜「……やっぱり、アンタもそう考えてんのね」

東郷達もそれは気がかりで

無理に力を貸し与えようとしてくるのではないかと、

少し……いや、かなり不安だった

夏凜「天乃の力は全盛期に比べてどうなの?」

九尾「それには劣る。子がおるのじゃから当然じゃな」

夏凜「それでも、戦うことはできる?」

九尾「うむ。血を分け与えた後はまた時間がかかるじゃろうが時期にできるようになるじゃろう」

無理をするのならば、すぐにでも。

もちろん、その場合に命の保証はできないが


夏凜「……頼みがある」

九尾「妾に頼みじゃと?」

いい度胸をしておるのぅ。と

九尾はぐっと身を寄せ、夏凜の瞳の奥までをも見透かそうとしているかのように

目を見開く

ただでさえ大きな瞳が、紅く強く光る

九尾「聞くかどうかは保証せぬが、よいかや?」

夏凜「ダメ」

アンタにしか頼めないことだから。と、

夏凜は九尾の威圧感にまったく怯むことなく、続ける

夏凜「私達じゃできないことなのよ」

九尾「ふむ……」

夏凜「あんたが素直にお願い聞いてくれるような奴だとは思ってない」

でも、と夏凜はつづける

夏凜「天乃のためなら、やってくれる奴だとは思ってる」

九尾「何を言うか」

夏凜「九尾も私達も……みんな、天乃が大切だから」


夏凜「でしょ?」

九尾「…………」

じーっと夏凜の瞳を覗いていた九尾は、

おもむろに目を閉じ、身を引いていく

つまらないと言いたげな様子ではあったが、

九尾は何も言わずただ息を吐いて瞬きする

紅い瞳は怪しげな光を放ちつつ夏凜へと戻る

九尾「妾は人間とは違う。久遠家の血その契りがあるが故のこと。主様個人に思い入れなどない」

子供が産まれ、出涸らしと言ってもいいような天乃のことは

もう、気にする必要もない

何をしようが、どうなろうが

力を継承した子供たちさえいるのならばどうでもいい

しかし……

九尾「妾の本来の主を引き継いだ貴重な娘じゃ。特別、聞いてやろう」

夏凜「素直になったほうが良いんじゃないの?」

九尾「貴様が言うか、小娘」

夏凜「私は素直になってるわよ……一応、そのつもり」

じゃないと、伝えたいことも伝えられずに後悔してしまいそうだったから

失ってから、こうしておけばよかったと嘆くことになりそうだったから

なにより、まっすぐであっても受け取ることに難色を示す人だったから

夏凜「天乃が面倒だっていう九尾の意見には……異論はないわ」

過去の数か月

その難しさを思い出した夏凜は

呆れたように、そう言った


√ 1月14日目 夜 (病院) ※水曜日


01~10 大赦

11~20 
21~30  
31~40

41~50 大赦

51~60 
61~70 
71~80  
81~90 大赦

91~00 

↓1のコンマ


※空欄は久遠さん


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


風「確かに、夏凜って素直になったわよね」

東郷「久遠先輩って、自分に向けられる好意に関して否定的でしたから」

樹「率直にぐいぐいいかないとーって感じだったとは思います」

友奈「でも、それなのに手当たり次第に口説いていたような……」

園子「天さんの天は天然さんって意味もあるんよ~」


夏凜「あんたが言えたことじゃないでしょ。それ」


では少しだけ


√ 1月14日目 夜 (病院) ※水曜日


天乃「っ……」

冷え切った身体が急激に温められていくような感覚が広がっていく

乾いた喉の痛みも瞬く間に癒えて

身体の鈍さも和らいでいく

天乃「ぁ」

目が見える

濁っていない、歪んでいない、半分欠けてもいない

耳が聞こえる、左からも、右からも

片方からしか聞こえなかった音が、両方からしっかりと聞こえてくる

消えていた、大切な人たちの記憶

それもまた、まるでなくなっていたことが嘘のように、鮮明だった

足も動く

弱弱しいけれど、しっかりと動いてくれる

ただ一つ、左足を除いて

天乃「……望みすぎは、毒ね」

どうせなら左足も治してくれればよかったのに

そう言いたいけれど、

左足以外は治ってくれたことに感謝すべきだろう


天乃「九尾の力とは……全然違う」

若葉達の記憶

それを取り戻す際に感じた記憶の復元とは全く違って

痛みなどもなく、すんなりと収まっている

もっとも、寝込んでいる間に激痛にもがいたのかもしれないが。

少なくとも、意識を失う寸前に血を吐くまで来ていたのは、体が覚えている

一瞬感じたのどの痛みも

その感覚を覚えていたからだろう

天乃「風……?」

横を見てみると、医療器械に囲まれていて

風の姿はどこにもない

歌野達の力に守られている病室の方に移されたのだろうか

天乃「そう……貴女は、大丈夫そうなのね」

起きて独りと言うのは寂しいけれど

順調に治ってくれているのなら、良かった。と

天乃は苦笑する

天乃「今、いつなのかしら」


携帯端末も、時計もない

すぐ近くにあるモニターには時間の表示がない

ナースコールでも押そうかと手を伸ばす

天乃「……普通、押すべきなのよね」

寝込んでいたとは思えないほどの快調な感覚

抑圧されていたものを解放したがっているのか

頭は、押さなくてもいいのではなどと考える

友奈たちは呼べないが、精霊は呼べる

精霊が呼べれば、友奈たちも来てくれる

天乃「元気になった途端これなんだから」

自分自身のことなのに、笑えてしまう

若葉は無事だろうか

風はどうだろうか

みんなは、あれ以降大丈夫だろうか?

自分のことよりも、気になることが多い


1、とりあえずナースコール
2、精霊
3、とりあえず、片足で立ってみる
4イベント判定


↓2


では本日はここまでとさせていただきます
明日は恐らく、お休みになるかと思います
再開は明後日、通常時間から



天乃「……思い出した」

天乃「私、一昨年までお兄ちゃんとお風呂に入ってたんだ」

ガタンッ……ガタッ、ガッシャーンッ

   トウゴウ!? チョッ……トウゴーッ!!

天乃「マッサージも、良くして貰ってたわね……懐かしい」

ドゴンッ
      アノヘンタイッ!!

歌野「わぉ……デンジャラスね」


では少しだけ


天乃「でもまずは、ちょっとだけ」

見られたら怒られるけれど、

少しだけ。と、天乃は機器がアラートを慣らさないように気遣いながら、体を起こす

左足を手で誘導し、右足をゆっくりと動かす

天乃「動く……うん」

動くことが不思議で、怖い

地に足を付けた瞬間に砕け散るのではないか

そんな謎の不安を感じる

天乃「戦うより、怖がってるんじゃないかしら」

ドキドキ、ドキドキと

強く高鳴る胸に手を宛がう

苦しくなっていく呼吸を整えるように、大きく息を吸って吐く

天乃「少しだけ、頑張って」

酷く衰えた右足を、ベッド縁から降ろす

支えのないぶらぶらと揺れる感覚

それを感じられる嬉しさと恐怖

竦みそうになる身体を、何とか押し出す

天乃「そーっと、そぅっと」

ピクリピクリと、怖がる指先

薄氷に触れようとしているようなその足はやがて、床に触れる


天乃「ゃっ……」

指先から感じるひんやりとした冷たさに、思わず声を上げる

改めて指先を床に触れさせ

ゆっくりと、体重をかけていく

軋んでいるのはベッドか、体か

指先から足の裏

少しずつ範囲を広げていく

天乃「……あっ」

そして、ようやくベッドと足が支える体重が均等になって

みしりと、足が悲鳴を上げた

天乃「っ」

治ったと言っても、長らく使われなかった足

筋肉が削がれて体重が落ちたのだが

足の支える力も併せて落ちているのだから、無茶な話だったのだ

天乃「いったっ……痛いっ」

ビキビキとした痛み

今まで、感じられなかった痛み

辛いけれど、少しだけ嬉しかった


天乃「長時間立つのは無理ね」

当然のことではあるが、歩くのなんてもってのほかだ

リハビリが必要だし、筋力を取り戻す必要もある

二年以上の筋力的ブランクは非常に重い

子供を抱いての生活など不可能だ

天乃「お母さんになるのも、大変だわ」

子供を産んだら終わりじゃない

弱った体に鞭打ってでも頑張らないといけない

もちろん、伴侶がいればその手が借りられるが

その相手だって、子供だけ世話していれば良いわけじゃない

そう考えれば、

10人以上のサポートを得られる天乃はずいぶんと恵まれていると言える

天乃「……ふぅ」

けれど。

こんな体では、みんなのサポートに回ることはできない

助けられる一方なのは変わらない

天乃「みんなは今までしてくれたからっていうけど……」

やっぱり、自分の願いなのだから

出来る限り何かしたいという気持ちは出てきてしまうのだろう

取り戻した体の弱さに、ため息をついた


01~10
11~20 大赦
21~30  
31~40 若葉
41~50 
51~60 大赦

61~70 
71~80  
81~90 夏凜

91~00 千景

↓1のコンマ


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


沙織交流
その後に2月


では少しだけ


沙織「久遠さんっ」

天乃「きゃっ」

沙織「久遠さん久遠さん久遠さん久遠さん久遠さん久遠さんっ!」

天乃「ちょ、ちょっと!」

精霊の感覚で伝わったのだろう

全速力で―足音が聞こえるほど―病室へと駆け込んできた沙織は

ベッドに座る天乃めがけて飛び込み、押し倒す

沙織「久遠さん久遠さん久遠さん久遠さん……」

天乃「……落ち着いて」

強く抱きしめてくる沙織の体を抱き返して、

優しく……背中を擦る

まだ大した力は入らないが、そのくらいはできる

天乃「大丈夫よ……もう」

沙織「うん、でも……もう少し」

もう少しだけこうしていたいと

沙織は十数分間も、抱き着き続けた


沙織「すーっ」

天乃「………」

沙織「………ゴクッ」

天乃「なんで飲むのよ……吐きなさい」

まったくもう。と、

天乃は呆れつつも笑いながら、沙織の体から離れる

ふざけてはいるけれど、大丈夫

そしてなにより、

沙織の第一声がこれならば

みんなもまた、無事なのだろうと

少しだけ、安堵する

天乃「大丈夫?」

沙織「うん、大丈夫。いい匂いだった」

天乃「そういう意味じゃないのよ?」

沙織「分かってる分かってる」

天乃「そんな満面の笑みで言われてもね……」


天乃「みんなは?」

沙織「犬吠埼さん達のような大きな被害は出てないよ」

今のところは酷い外傷のあるような被害は出ていない

事件や事故もなく、平穏だと言ってもいいだろう

ただ一つ、勇者たちの体を除いては。

祟りの印は広がり始め、体を蝕んで苦しめている

満開を行った勇者に関しては

それによって喪失した体の機能が神樹様の力によって補われているため

その部分の機能が著しく低下しているなど

問題も発生している

……隠すことは、出来ないだろう

沙織「ただ、祟りは着実に進んでる」

天乃「そう……」

沙織「今のままでは、満足に戦うこともできないと思う」

気合で何とか出来る人

今までの努力と、その技でどうにかできる人もいるけれど、

通常時と比べれば劣ってしまうし、バーテックスに対しては非常に心もとない

沙織「久遠さんの力が必要だよ」


天乃「時間は? もうない?」

沙織「まだあるよ……でも、長くはない」

もう一月も終わってしまう

二月に入ったあとは、祟りはどうなってしまうのだろう

蝕むことに注力するのか

周りを巻き込み、絶望に誘うことを目的とするのか

どちらにしても、良いことは何もない

祟りは最終的に勇者たちの生命力を食い尽くして、殺してしまう

沙織「このままだと、春まで持てばいい方だよ」

天乃「そこまで……来てるの?」

沙織「平静さを保ってるのが凄いというほどには」

一人ではなく、みんなで抱えている罪だからだろう

だから、辛さを分かち合うことが出来て

精神的に追い込まれてしまうことがないのだ

沙織「……良かったね。一人にだけ背負わせることにならなくて」

天乃「……ええ」

奉火祭を東郷だけに背負わせていた場合、

同じように救出しても祟りの対象は勇者の中の一人

口にするだけでも伝播するその苦しみをたった一人で背負うことになっていたらと思うと

天乃は恐ろしく、首を振る

天乃「時間はないけれど、明日にしましょう……一番危ない子から、私の力。分けてあげないと」

沙織「そうだね……久遠さんも大変だけど、頑張って」


√ 2月1日目 朝 (病院) ※木曜日


01~10 
11~20 九尾 
21~30  
31~40

41~50 大赦

51~60 
61~70 
71~80 若葉

81~90
91~00 悪いこと

↓1のコンマ


※空欄なら全員


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば昼頃から

朝は大赦交流
昼からは勇者部のみんなと対面、祟りの話


では少しだけ


√ 2月1日目 朝 (病院) ※木曜日


「ご健勝のようで、なによりです」

天乃「あら? そう見える? 大赦の持ってる私の記録と見比べて衰えてない?」

「ええ、まったく」

天乃「お世辞が上手ね、ふふふっ」

余裕を見せる天乃は、

楽しげに笑いながら無粋な大赦の遣いを眺める

天乃「それで? 目が覚めて早々……穏やかではなさそうだけど」

「……流石ですね。貴女には話が早い」

天乃「お世辞は結構よ」

もう聞いたから。と

牽制するように言った天乃は

まだ慣れない体を動かして、息を吐く

天乃の回復を受けて

そう時間も経たないうちに会いに来た

ということは、確実に良くないことだ

普通なら、回復の祝いも考えられるが

久遠家には、そんなことはあり得ない


天乃「何が起きているの?」

「天の神による侵攻はいまだ収まりがついておりません」

それどころか、奉火祭を中断させたことで怒りは強まり、

神樹様をも飲み込もうとしているのだと、神官は告げる

天の神による祟りについては、

簡単に口外することはできないのだろう

かなり遠回しながら、付け加えて情報を伝えてくる

祟りを払うことはできない

それは天乃の力であっても、影響を抑える程度にしかならないほどに凶悪だからだ

だが、

それらすべてを払拭する方法がないわけではない

「久遠様は、神婚……というものをご存知ですか?」

天乃「神婚……? そういうものがあるという程度なら」

「……なるほど」

天乃「神樹様と人を結婚させるつもりなの?」

まさか、天の神ではないだろう

そう判断した天乃は、

神樹様が相手だと断定して、問う

天乃「……それが、大赦の出した答え?」


「そうする以外に方法はないでしょう」

このまま祟りに生気を吸い尽くされて勇者部が力尽き

バーテックスに対する抵抗力を完全に損なって崩壊までの一途を辿るか

神婚を行うことで神樹様の眷族となり、

天の神によって滅ぼされる未来から逃れるか

人類を存続させることを望むのであれば

どちらか。などと言う選択はない

神婚を行う。という選択肢以外に道はない

天乃「神婚……神婚ね。言葉を濁しても無駄なのは、分かってるでしょう?」

「はい。久遠様の御傍におられる精霊であれば、それがどのようなことであるかを理解していることでしょう」

天乃「人類は本当にそれで生き残ることが出来るの?」

神婚することによって、眷族となる人類

それ果たして、人であるのか、否か

聞いた話だけでは、その先は分からない

「そうですね……人類は存続します。しかし、人としての形ではなくなることになります」

天乃「人じゃなくなる……?」

「眷族となり、神樹様とともに永遠となるのです」

天乃「それが救いだと、本気で思っているの?」


「少なくとも、天の神による完全な崩壊は免れます」

天乃「だからと言って……」

「久遠様の仰りたいことは分かっております」

それが本当に望まれている救いではないかもしれないこと

正しい救い方ではないことも

本来、目指すべき終着点ではないことも

だが、それでももう、残っていないのだと神官は言う

「時間がないのです。久遠様」

天乃「…………」

「神樹様はもう、長くはありません」

決断する以外にはない

かといって、無断で行っては無理やりにでも止められてしまう

それではまた大変なことになる

だからあえて、話に来たと告げる

天乃「……筋は通す。ということね」



1、九尾を呼ぶ
2、悪いけれど、お断りよ
3、それは……誰が対象なの?
4、おばあさまに会わせては貰えないかしら?


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



東郷「神婚……?」

東郷「寝取るつもりですか、神様でありながら人様の女を奪い取るおつもりですか」

東郷「何が神様ですかただの俗物だわ」

東郷「これはもう、殺――」

風「ストーップ!」

友奈「お、落ち着こう? 落ち着こう? ねっ?」


では、少しだけ


天乃「それは誰が対象なの?」

まさか、大赦の一存で決められるわけではないだろう

そう踏んだ天乃の問いに、

神官は「そうですよね」と、半ば諦めたように

そして、天乃本来の厄介さを疎むように息を吐く

「久遠様は、回復なさらないほうが良かった」

天乃「急に何言ってるのよ」

「神婚を行うことを真っ先に伝えなければならないのは、それを行うべき対象者」

天乃「…………」

「それだけ言えば、十分でしょう」

神婚

その相手に神樹様が求めたのは、天乃なのだ

恐らく、元々の力が強いこと

天の神側の強力な力を併せ持っていること

そしてなにより、神樹様の根を吸収したことが大きいだろう

「久遠様、貴女です」

天乃「……私、穢れてるんだけど」

そんな冗談を笑ってくれる人は、この場には居なかった


「久遠様が何と言われようと、神託に選ばれたのは久遠様です」

天乃「……馬鹿じゃないの? 私なんかと結婚したら殺されるわよ?」

冗談ではない

神樹様の根を取り込んだことで

多少はプラスに働いているかもしれないが

それでも、穢れていることに変わりはない

天乃「………」

だけれどきっと、祖母は初めからそれが狙いだったのかもしれない

天乃が万全だったら……と言っていたあの言葉は

そういうことだったのだろう

天乃を用いて神婚を行うことで人類の救済を行う

それが、天乃が万全ならできたことなのだろう

天乃「……そう。私なのね」

「はい」

天乃「大赦は、それを望んでいるのね?」

「はい、そうする以外には道がないと」


天乃「………」

それ以外にも道はある

それは、天の神の祟りを打ち負かしてバーテックスに攻めさせ

片っ端から叩きのめして、侵攻を諦めさせること

……なんて

そんなバカげたことは出来ない

天の神本体が攻めてくるようなことがない限りは

天乃「……ねぇ、お祖母様はどこまで考えているの?」

「と、言われますと?」

天乃「神婚……それによる人類の救済」

あの人はその程度で終わるような人だろうか

そんな、救いがあるようで救いのない結果

それで満足する人だろうか

天乃「お祖母様は、それだけしか言っていないの?」

「申し訳ございません。私は直接伺ったわけではございませんので」

天乃「そっか……そうよね」

何を考えているのか

どこまで考えているのか

語ってくれるような人ではないことを、天乃は良く知っていた


√ 2月1日目 昼 (病院) ※木曜日


01~10 
11~20 歌野
21~30 悪いこと
31~40
41~50 九尾

51~60 
61~70 
71~80 若葉

81~90
91~00 夏凜

↓1のコンマ


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

久遠さんの一番最初は2014/12/22ですね
約4年半前です

神婚は保留
後日、大赦が再接触


では、少しだけ


√ 2月1日目 昼 (病院) ※木曜日


あれから、約一ヶ月

ボロボロになってしまっていた人間である風が快復して来たように

精霊である若葉もまた、元に戻っていた

むしろ、精霊である分若葉の方が治りは早かったらしい

若葉「……どうやら、無事のようだな。天乃」

天乃「若葉こそ、もうすっかり元気ね。力も戻った?」

若葉「ああ、バーテックスを討つのには十分だ」

にっこりと笑みを浮かべる若葉に笑みを帰して、

天乃は、ふっと息を吐く

音も気配もなく姿を見せた若葉は初めから傍に居たということになる

つまり、朝の大赦との会話はすべて筒抜けだ

若葉「天乃は左足……か? 記憶の方は万全か?」

天乃「ええ、記憶も大丈夫」

これだけよ。と

天乃は冗談っぽく左足を叩く

その冗談をあざ笑うように、左足から返ってくる感覚はなかった


若葉「そうか……」

天乃「ねぇ、大赦の人との話は聞いていたんでしょう?」

若葉「ああ、すまない」

天乃「別に怒ったりするつもりはないわよ」

話を聞いていたって言っても

天乃を守るために傍に居るから聞いてしまうというだけで、

言ってしまえば、不可抗力だ

責めるような理由はない

天乃「西暦時代の勇者様はどう思う? 本当にそれ以外に道はないって思う?」

若葉「どうだろうな……」

かつて見た、外の世界を包んだ神罰の炎

その時の若葉は、隣にいたひなたは

こんなものには勝ち目がないと……絶望を叩きこまれた

だが、いつかは勝つために

報いを受けさせるために、託した力

それがあれば……と、今は思う

若葉「……いや、簡単には言えないな。すまない」


今のみんなの状況を考えれば、楽観視は出来ない

天乃の力が完全に回復し、

戦いに戻ってきてくれるなどという奇跡でも起これば話は別だが

そんな希望的観測は、すべきではないだろう

若葉「……正直に言おう、非常に厳しい」

天乃「みんなのことを考えれば、当然でしょうね」

若葉「ああ」

天乃「若葉たちの力を合わせてもダメそうなの?」

若葉「相手がどれほどのものか想像がつかないんだ」

一体一体が強力なバーテックス

それの親玉ともなれば、そのすべての力を束ねていると考えるのが妥当だ

つまり……最悪であり、災厄

天変地異などという言葉には収まりがつかないほどの大災害に見舞われるかもしれない

若葉「……だが、神婚は」

天乃「確実にみんなが認めないでしょうね」


1、一応、妖怪の子供を産んだんだけどね?
2、でもどうしようかしら。神様にまで求婚されちゃったわ
3、ねぇ、おばあさまは本当に神婚だけしか考えていないと思う?
4、もし、私が神婚を受け入れると言ったらどうする?


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日は、所用によりお休みとさせていただきます
再開は明後日、通常時間からとなります


では少しだけ


天乃「ねぇ、もしもの話なんだけど……」

若葉「嫌な予感しかしないんだが?」

天乃「もしもの話よ。大丈夫」

結果は見えているしね。と

天乃は苦笑しながら、冗談であることを仄めかす

どう考えても、誰一人として了承するわけがないのは火を見るよりも明らかだった

天乃「もし、私が神婚を受け入れるって言ったらどうする?」

若葉「認めるわけがないだろう……」

だが、どうするかという話なら。と

若葉は呆れた表情を切り替える

若葉「まず、天乃を縛り上げるだろう?それから病院の出入り口を見張って大赦関係者が一切来ることが出来ないようにする」

天乃「縛り上げるって、病み上がりなのよ?」

若葉「もしもの話なのだろう?」

天乃「……良い性格になってきたわね、貴女」


若葉「でもきっと、冗談じゃないんだろうな」

誰かがそれを考えて、実行する

神婚なんて、なにがなんでもさせられない

だから、何をしてでも止めようとする

縛り上げるなんて手段の一つだ

病院から連れ出して、

誰にも見つからないような場所に隠れ潜むことさえやろうとするかもしれない

若葉「何はともあれ、無理だな」

天乃「……そうね」

若葉「みんなと結婚をするんだろう?」

天乃「ええ」

若葉「なら、絶対にダメだ」

特に東郷あたりは壁に穴をあけてバーテックスの仲間になりかねない

冗談にしては質が悪いが、否定しきれないことを若葉は言う

天乃「だから言ってるでしょ、もしもの話だって」


天乃「私はみんなと一緒に居たいの。みんなと結婚をしたいの」

この体は一度捧げられ、

みんなが死に物狂いで取り返してくれたものだ

だから、たとえ左足が欠けたままでも不満はない

簡単に誰かにくれてやるわけにはいかない

大切なんてものじゃない

天乃「ここには、みんなの命が込められているのよ……」

若葉「………」

天乃「分かるでしょう?」

若葉「ああ、分かるとも」

自分の胸に手を当て、微笑む天乃を一瞥して、

若葉もまた、自分の胸元に手を宛がう

天乃と違うようで似ている

若葉は、天乃の力によって存在している

それは、天乃の命によって補われていると言ってもいい

だから、頷く

若葉「簡単に、くれてやれるものではないな」

天乃「ええ」


若葉「天乃も、十分変わったよ」

以前なら、人々を救えるのならと身を犠牲にしたはずだ

だが、今はもうそんなことはない

己の願いを口にし、みんなの願いを背負いすぎず、無碍にはせず

自分がどうあるべきかを、

みんなにとっての自分がどれほどのものであるかを、理解している

若葉「だから、神婚の話も冗談だろうと考えられる」

天乃「そうじゃなかったら?」

若葉「今すぐみんなを呼んでお説教だな」

天乃「あらあら……」

若葉「とはいえ、今の天乃でなかったら相談さえしなかっただろう?」

天乃「……否定は、出来ないわね」

相談すると、絶対に止められる

それでは世界を救えない

だから……きっと

天乃はそんなことを思って、苦笑した


√ 2月1日目 夕 (病院) ※木曜日


01~10 悪いこと 
11~20
21~30
31~40 九尾
41~50

51~60 
61~70 
71~80 夏凜

81~90
91~00 東郷


↓1のコンマ


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


九尾と交流
夜は悪いことがなければ、勇者部


では少しだけ


√ 2月1日目 夕 (病院) ※木曜日


九尾「もう、体に問題はなさそうじゃな」

天乃「問題はあるにはあるけどね……九尾には些細な問題だろうけど」

九尾「治すことは出来ぬが、動かせるように力を貸すくらいならば可能じゃからな」

今までだって、戦闘においては

そうやって身体能力を補ってきたのだ

左足一本、容易いことだと九尾は言う

九尾「じゃが、今ある問題はそれじゃなかろう」

天乃「……貴女、いつも話を聞いてるわよね」

九尾「主様の精霊じゃからな」

天乃「私だけじゃなく、若葉達からも隠れる必要はないでしょ?」

九尾「隠れてはおらぬ、きゃつらが見つけられておらぬだけじゃ」

意地の笑みを浮かべた九尾は、

クスクスと茶化した声を上げて天乃を見る

神樹様の力を感じるのだろう

少し、不機嫌そうに眉を顰めた

天乃からも若干距離を取るのは……それが理由だろう


九尾「神婚の話……じゃったか」

天乃「ええ、聞いてたなら分かるでしょう?」

そういった天乃は、どうせ。と、続けて言う

天乃「若葉との話も聞いていたんでしょう?」

九尾「うむ」

天乃「なら、私が考えていることは若葉に言った通りよ」

みんなの為にも、神婚を受けるわけにはいかない

だが、神婚を受け入れなければ世界が危機に晒されてしまう

奉火祭と違って、力があるものを扱えばいいのではなく、

神託によってえらばれたもののみが受けることのできるもの

それゆえに、天乃でなくてはならない

もちろん、そのおかげでほかの誰かが犠牲になる。などと言うことはないのだが

天乃「……九尾は、やったほうが良いとでも?」

九尾「妾がそのようなことを言うとでも思うとるのかや?」

天乃「ううん、全然」


天乃「でも、九尾ならお祖母様の考えも分かってるかなと思って」

お祖母様に何か裏があったとしても、

九尾ならば、それもお見通しであることだろう

であれば、何か言ってくれるのでは……と、思ったのだが

そんなに優しくないのが、九尾だ

天乃が祖母の真意について悩んでいるのは分かっているはずなのに

九尾「ふむ……あの小娘の考えか」

天乃「小娘って……」

九尾からしてみれば、

祖母であろうと小娘なのかもしれないけれど

自分の祖母をそのように言われるのはなんだか、不思議で

困った反応を見せる天乃に、九尾は妾は人の子ではないからの。と、苦笑する

九尾「あやつが考えておることならば……そうじゃな」

天乃「分かるの?」

九尾「一つは、大赦の人間が言うように神の眷族となるため」

天乃「二つ目は? 言い方から察するに、それとはまた別みたいだけど」

九尾「そうは言っても、単純なことじゃろう」


神婚など、天の神が許すわけがなく

当然ながら妨害してくることが予想されるだろう

場合によっては、あまりにも違えた道を突き進む人類を滅ぼすために

バーテックスのみならず

その親玉が自ら、姿を現す可能性もある

それを、天乃とその仲間である勇者部に討ち滅ぼさせようと考えているのだろう。と

九尾は少し言葉を選んで言う

もし、それが出来なくても、神婚の成立まで時間が稼げればもう一つの本来の作戦が成功する

どちらに転んでも

失敗さえしなければ、大赦にとっては成功となる

天の神を倒しきることが出来たのなら

神婚を諦めてくれるかもしれない

もっとも、天の神を打ち破ったからといって

神樹様の寿命が厳しいことに変わりはなく

倒した後の世界によっては、やはり

神婚を成立させようと考えているかもしれないが

九尾「あやつは神婚成立までの時間稼ぎに防人ではなく勇者部を駆り出すことじゃろう」

天乃「……そんなこと、みんながやるわけがない」

九尾「うむ。成立までの時間稼ぎなんぞはやらぬが、天の神を討とうとはするじゃろう」

それが結局は時間稼ぎになる

そして、成立までに間に合わなければ……

天乃「私を生贄にして、人類が救われる。ということね」

九尾「そうじゃな」


しかし、それは天乃が神婚を受けなければ始まらない話

天乃が神婚を拒否し、神樹様のもとに行かなければ

神婚の儀など始めることは出来ないし

怒りに燃える天の神の親玉の登場……なんて

現実世界への被害が計り知れないような戦いが繰り広げられることもないはずだ

天乃「……でも、終わらせないと祟りも終わらない」

九尾「その通り。当然、あやつは勇者部が祟りに冒されていることを知っているじゃろう」

久遠家の力をもってしても

それに対し出来るのは、影響を最小限に抑える。というだけでしかないということも

つまり、勇者部を救いたければ天の神を討伐するほかない

だが、祟りを払拭するほどの損害を与えるには

親玉を討つくらいのことは必要だ

少なくとも、バーテックスを討伐するくらいでは話ならない

天乃「……なるほど」

九尾「主様、あまり良からぬことを考えるでないぞ」



1、でも、親玉を引きずり出すには必要だと思わない?
2、よからぬことなんて……でも、どうしましょう
3、みんなに、相談しないとね
4、九尾は、何かいい方法を思いつかない?


↓2


ではここまでとさせていただきます
明日は出来れば少し早い時間から



九尾「いい方法かや?」

九尾「ふむ……主様が結界の外で満開を使えばよかろう」

九尾「無論、主様の体への負担は大きいがのう」

夏凜「やらせないわよ。そんなこと」


では少しだけ


天乃「九尾、貴女は何かいい方法思いつかない?」

九尾「妾とて、万能ではないぞ」

天乃の力を用いて、祟りの影響を抑えるのだって

かなり無理のあるやり方なのだ

そうでもしないといけないような力相手に

より良い方法など、簡単なことではない

九尾「そもそも、主様の求める良策など不可能じゃろう」

天乃「そう?」

九尾「囮としての贄の賭けすら、主様は嫌じゃろう?」

天乃「それは……」

出来れば、避けたい

失敗することを考えたくはないけれど

そうなった場合、

その贄として出された人は犠牲になってしまう

自分で良ければ率先して行う。と言いたいところではあるが

それができる体では、もうない


九尾「不快ではあるが、あやつの策に乗るのが良いのやもしれぬ」

天乃「お祖母様の……?」

九尾「神婚の儀ならば、天の神とやらも確実に引っ張り出せるはずじゃ」

バーテックスの親玉を引っ張り出す作戦としてこれほど優秀なものは中々ないだろう

九尾「どうしてもというのなら、外の天の神の結界に打撃を与えるかや?」

以前、防人が行おうとしていた神樹様の種を用いて道を作って攻め入る策

あれを再度決行していけば、看過は出来なくなるはずだ

もっとも、防人には多大な被害が出るだろうし、

勇者部に対する祟りもより凶悪なものになってしまう可能性があるが

九尾「……被害に関しては、神婚だろうとそれだろうと出る可能性はあるがのう」

天乃「いずれにしても、被害は避けられない?」

九尾「神を討つというのであれば、戦うことは必然。であれば、被害は出る」

天乃「そうよね……」

九尾「神婚の儀であれば、大赦側も何かしら対抗策を用意してくるじゃろう」

天乃「向こうの考えたことだものね……防人は出してくるかもしれない」

バーテックスの相手は難しいが、

星屑の相手は出来る

いるよりはいてくれた方が安心できるかもしれない


天乃「みんなは……受け入れてはくれないわよね」

九尾「じゃろうな」

それ以外には方法はない。と、

説得を試みれば渋々受け入れてはくれるかもしれない

自分たちが頑張ればいいのだと

命を懸けてくれることだろう

天乃「……怖いわね」

その命懸けが、どこまで行くものなのか

瀕死の重傷を負うまででも頑張ってしまうだろうか

いや、瀕死になっても天乃のためならばと、立ち上がってしまうかもしれない

九尾「じゃが問題は、神婚の中断ができるかどうかじゃろう」

天乃「確かに……戦いを終えたから中断したい。なんてダメよね」

よくよく考えれば、そんな不敬なことをしてしまったら、

天の神を打ち破ったとしても

流石に、今度ばかりは許されず守って貰えなくなるかもしれない

九尾「あるいは、守られなくても良い。と、神樹に叩きこむかじゃな」

守られなくても人類は何とかやっていける

神婚などせずとも、大丈夫。と

今まで人類を守り続けていたお人好しな神々なのだ

それを示せば、大丈夫かもしれない


九尾「いずれにせよ、小娘共に話す必要があるじゃろう」

天乃「そうね」

夏凜達に話して、

どうするのかを考えなければならない

そこで、中断できる可能性がないのなら

神婚の儀は行わないようにしよう。という話になる可能性もある

そんなことするくらいなら、

自分達で攻め入ろうと考えるかもしれない

東郷なんかは、天乃にリスクがあるなら

その分のリスクを自分たちで背負ったほうが良いとまで言うかもしれない

特に、結婚なんて単語は禁句に近いだろう

天乃「どうなるのかしらね、ほんと」

九尾「くふふっ」

怪しく笑った九尾は

それもじゃが。と、続けて

九尾「祟りの件も忘れる出ないぞ」

天乃「ええ」

九尾「今日は目も覚めたばかりじゃから仕方がなかろうが、明日は、何とかしたほうが良いやもしれぬ」

天乃「うん、分かってるわ」

みんなにも会いたいし、と、天乃は笑みを浮かべた


√ 2月1日目 夜 (病院) ※木曜日


01~10 悪いこと
11~20
21~30
31~40 悪いこと
41~50

51~60 
61~70 
71~80 
81~90 悪いこと

91~00 


↓1のコンマ

※何もなければ、勇者部


悪いこと追加コンマ判定

1最低 0最大


↓1


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


悪いことは4


では少しだけ


√ 2月1日目 夜 (病院) ※木曜日


天乃「熱?」

「夕食前あたりから、体調がすぐれない……と、おっしゃられる方がおりまして」

天乃「それで、夜になってみんなダウンしちゃったのね」

「一応、応急に手当はしたのですが熱が上がるばかりで……どうにもなりませんでした」

体温は40度近くまで上がっており、

余りの高熱に眠っていても、うなされてしまうような状態

6人が一気にかかる高熱は感染症も疑われたが、

病気の類ではなく、原因不明で

治療をしようにも解熱剤を投与するくらいしか、手の施しようがない

「恐らく、明日まで長引くかと思われますのでお会いさせることは出来かねます」

申し訳ありませんが。と

残念そうに言う看護師に、天乃は笑みを浮かべる

看護師も、医師も、病院も

何も悪くはない

原因不明とは言うが、原因ははっきりとしている

天乃「仕方がないわ。なんとか、してあげたいけれど……」


天の神による祟り由来の特別な高熱だが、

それが病気として、天乃に害を及ぼさないとは限らない

ここで無理をして、

万が一にでも天乃が体調を崩してしまえばそれこそ終わりだ

それを警戒して何もしないのは相手の思うつぼだけれど

ギリギリの状況なのだから、仕方がない

むしろ、ここで手を出してきた辺り

天の神が本気だと言うのがひしひしと、伝わってくる

天乃「……悪いけれど、みんなのことをお願いするわ」

「はい、お任せください」

看護師の女性が出ていくのを見送って、息を吐く

ここまでままならないと、ため息も我慢しきれるものではない

天乃「やってくれるわね、向こうも」

完全に後手に回ってしまっている

歌野達の力があってもなお高熱と言うのなら

部屋の外では卒倒していてもおかしくはない


天乃の力の一部を使うことのできる歌野達でも、

殆ど守り切れない状態なのならば、

天の神も本気を出してきたということになる

それなら、親玉を引き摺りだすこともできるだろうか

天乃「……無茶は、出来ないわね」

天の神を刺激することは、多分。簡単だ

九尾が言っていたように、

天乃が結界の外で少しでも力を使えば逆襲してくることだろう

ただ、それではきっと勇者部が狙われる

やるにしても、みんなに力を分けて祟りの効力を弱まらせてからにするべきだ

天乃「すぐに会えると、思ったのだけど」

そう簡単には、行かないらしい


1、精霊組
2、イベント判定

↓2


01~10 若葉
11~20 千景
21~30 ばてくす
31~40 水都
41~50 球子
51~60 九尾
61~70 オネエチャン
71~80 沙織
81~90 オニイチャン
91~00 歌野

↓2


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


大地「勇者部の怖い人たちがいない……?」

大地「分かった、俺が行こう」

大地「心配するな、警護のためだ警護のため」

大地「ボディケアもしてあげないといけないからな」

大地「もちろん、兄妹の関係なら当然やってることだぞ」

天乃「そうなの?」

春信「そんなわけがない」


では少しだけ


天乃「……夜にでも、会いに行こうと思ってたんだけど」

夜に会うのは時間的にどうなのか。と言われそうではあるが、

目が覚めたばかりで、まだ馴染み切っていない身体

それでも早く会いたいという気持ちを抑制しての夜なのだ

十分に我慢したと言えるだろう

もっとも、それも叶わないことだったが

天乃「はぁ……」

ぐるりと寝返りを打って、横を向く

今までは不自由だったからだが自由になった分、

精神的な不自由さが……顕著で

「元気ないな」

天乃「うん……」

すぐには、気付かなかった

天乃「うんっ!?」

バッっと勢い良く体を起こして、

侵入者とは反対側に回って、そのままベッド脇に転がり落ちる

ぶつりぶつりと電子パッドが強引に引き剥がれてけたたましくエラー音が鳴り響く


天乃「なっ、えっ!? だ、誰っ!?」

全く気付かなかった

病院だし、夜だし

夏凜達のこともあるし

自分の隙だらけな原因を頭の隅で探りながら、そうっとベッドの反対側に目を向ける

影のように真横に佇んでいた何者かはいなくなっていて

「慌て過ぎだぞ、大丈夫か?」

天乃「えっ……」

ベッドの下から、見上げてきていた

天乃「やっ……嫌ッ!」

悲鳴を上げた天乃の右こぶし一発が顔面に直撃

ぶっ……と吹きこぼれた空気の音

間髪入れずに左頬を殴って一気に立ち上がる

けれど、生身の体、片っぽの足

ブランクのある弱った力は上手く体重を支え切れずに、崩れ落ちてしまう

天乃「っ」

でも、その体が倒れきる前に抱きかかえられた

「そんな驚くとは思わなかった。分かるか? 俺だ」

天乃「ぇ……あっ」

大地「落ち着いたか?」


天乃「お兄ちゃん?」

大地「目を覚ましたって聞いてな。こっそり見て帰るつもりだったんだが……」

ため息が聞こえたから。と

心配そうにする兄の横っ面にぴしりと弱い平手を一発

天乃「せめて病院にでも連絡の一つくらい入れてからきて」

大地「すまん」

天乃「びっくりしたんだから……もう」

兄と分かっても、身体は震えてしまう

勇者としての力を取り戻しつつあるとは言っても

身も心も、力も

ただの少女同然だから

誰かに助けて貰わなければ、同年代の男の子にすら組み伏せられる

天乃「殴っちゃったけど、平気?」

大地「平気平気、気持ちよかった」

天乃「……弱かったって意味よね?」

にっこりと。

笑みを浮かべる兄は、具体的には答えなかった


医療機器の警告を聞き駆け付けた医師と看護師に厳重注意を受ける兄を横目に

天乃はうっすらと感じる気配へと、目を向ける

天乃「気付いていたなら、教えなさいよ」

本当に怖かったんだから

そういうと、「気付いてると思ってた」と言う言い訳と、「ごめん」という言葉が続く

天乃「別に怒ってるわけじゃないけど……なんて」

ふふふっと笑って、言葉を飲む

ここで怒ってるわけじゃないと言っても、まるで怒っているように聞こえる

そう思って笑う

大地「もう大丈夫そうだな」

天乃「大丈夫じゃないわよ、全然」

大地「そうか?」

天乃「…………」



1、お兄ちゃんなんて大っ嫌い
2、私の身体のことも、聞いたの?
3、お姉ちゃんは?
4、ごめんね、今まで


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



大地「真っ向から立ち向かってくるのもいいがこうやって怯えてるのも可愛く俺は好――」

ッターン

大地「うぐっ」

東郷「………」カチッ カチッ

カチャンッ...ピンッ
        ッターンッ

千景「壁抜きなんて、チートね」

風「気にするのはそこじゃなくない?」


では少しだけ


天乃「ねぇ、お姉ちゃんは?」

大地「あー一応誘いはしたんだが……忙しいってさ」

天乃「お兄ちゃんは来れるのに?」

大地「……お兄ちゃんじゃ不満か?」

しょぼん。と

露骨に落ち込んで見せる兄をじっと見つめて、目を伏せる

忙しいと言うのも嘘ではないけれど

きっと、ほかに行きたくない理由があるんだろうと天乃は思った

少なくとも、忙しいだけが理由じゃないはずだ

天乃「お兄ちゃんは何度かあってるから、お姉ちゃんにも会いたいと思って」

大地「そうか、一応伝言しておく」

天乃「お姉ちゃんは元気、なのよね?」

病気とかじゃないのよね? と

祟りではないにせよ、

怪我や病気で来れない可能性も考えて、伺う

でも、それは杞憂だったらしい

大地「それはないから安心して良いぞ」

逡巡するようなこともなく

大地ははっきりと、否定してくれた


大地「いたって健康なんだが、まぁ……」

途中で言葉を止めた大地は

天乃の視線を受け流さずにとらえつつ、考え込む素振りを見せる

そしてふと、頷いた

大地「今の天乃に嘘をついても仕方がないか」

天乃「ん?」

大地「いや、俺たちのことを思い出したなら、あいつが何を考えてるのかとかも、分かるんだろうなって思ってな」

天乃「やっぱり、聞いてたのね」

大地「一応関係者だからな。全部聞いてるよ」

満開をして、記憶を失ってから、今まで

子供ができたこと、産まれたこと、記憶や体が戻ったこと

今までの出来事のすべてを、知っている

天乃「それなら、入院しているときに会いに来てくれても良かったのに……」

大地「色々あってな、すまん」

駄目だと分かってはいても、

言わずにいられなかった愚痴

大地はそれを受け止めて、天乃の頭に触れる

天乃が小さい頃はよく、やってあげていたことだ


大地「お姉ちゃんはな、お前にばっかり頑張らせてることが嫌なんだ」

天乃「そんなこと……なんて、言えないよね」

大地「ああ」

勇者のことも、跡継ぎのことも

子供のことだって、何もかもを、押し付けることになってしまった

それは選ばれたか選ばれなかったかの運命によるものではあるけれど

それでも姉として。

妹にすべてを任せることになってしまったことに負い目を感じてしまっている

特に、成人した後ならばともかく

まだ中学生である妹が子供を産んだのだ

それを、重く受け止めるな。と言うのは、

同じ女である姉にとっては、簡単なことではなかったのかもしれない

大地「だからちょっと、顔を合わせにくいって」

本当は会いたいのに

本当は、話したいことややりたいことは沢山あるのに

数年早く生まれただけの、姉であると言うだけで

それは難しくて

大地「大丈夫、天乃なら怒らないぞって言ったら、殴られた」

天乃「お兄ちゃんはお兄ちゃんで軽すぎるのよ。そうあろうとした人を知っているから、分からないでもないけどね」

良く見れば赤い兄の頬

殴られたであろう場所を優しく触れて、天乃は困ったように微笑む


天乃「どうせ遊びに誘うような感覚で声をかけたんでしょ?」

大地「良く分かったな」

天乃「分かるわ……何となくだけど」

兄だって軽い気持ではなかっただろうけれど、

その軽い物言いは、きっと気に入らなかっただろう

ふざけないで。と、怒鳴ったかもしれない

天乃「あまり、お姉ちゃんを追い詰めたりしないでね?」

大地「心配するなって、俺はそこまで嫌なお兄ちゃんじゃないぞ」

天乃「どの口が言うんだか」

音もなく現れて、ベッドの下から覗いてきたり

妹でもない女の子に、

お兄ちゃん―それ以外にもいろいろ―と呼ばせたりとか。

正直、嫌なお兄ちゃんな気がする。と、

幼い頃の大好きなお兄ちゃん像に皹を入れる

天乃「私は大丈夫だから、いつでも会いに着てって、伝えておいて」

大地「分かった。明日も来るからな」

天乃「お兄ちゃんには言ってない」

大地「なっ、なん……だと……」

天乃「怖い思いさせられたから、しばらく出禁ね」

にっこりと。

お兄ちゃんへの意地悪を突きつけた天乃は

すぐに、冗談だから気にしないでね。と、慰めた


√ 2月2日目 朝 (病院) ※金曜日


01~10 大赦
11~20
21~30
31~40 千景
41~50  夏凜
51~60 
61~70 歌野
71~80 
81~90 呼ばれてきたばてくす
91~00 


↓1のコンマ


ではここまでとさせていただきます
明日は所用でお休みになります

再開は出来れば明後日、通常時間から


では少しだけ


√ 2月2日目 朝 (病院) ※金曜日


千景「昨日は申し訳ないことをしたわ、ごめんなさい」

天乃「良いわよ、もう」

千景「私達はお兄さんだと分かっていたから、普通に通したのだけど……」

良く考えると、いること自体がおかしかったわ。と

千景は思い返したのか、

いぶかしげな表情を浮かべる

千景「なぜ通したのか自分が不思議だわ」

天乃「ふふっ常識がないのかもね」

千景「……否定ができない冗談はやめて」

西暦時代はいろいろとありすぎて

千景は正直な話、常識の欠如を否定できそうになかった

もちろん、そんなことはないと思ってはいるものの

完全に否定はしがたかった

天乃「ごめんね? そんなつもりはなかったのだけど」


千景はそう思っていないのかもしれないが

天乃からしてみれば、

それをするか否かはともかくとして、

性的な部分を含めれば、千景はかなり常識的だ

だから、茶化すつもりでそんなことを言ったのだが。

天乃「……常識が無くなっていたのは私だったわ」

千景「なぜ……?」

天乃「色々、間違った道に進んじゃったのかもしれない」

迷わず性的なことも含めて考えていること自体が

そもそもおかしかったのだ

困惑する千景をよそに、天乃は苦笑して変な流れを押し流す

天乃「ところで、わざわざ出てきてくれたのは謝るためだけなの?」

千景「残念だけど、本題は別よ」

もちろん、謝りたいと思っていたこともあるのだけど。と

千景は困ったように呟き、皮肉ぶった笑みを浮かべる

千景「勇者部のみんなについては、夕方くらいまで掛かりそうだわ」


場合によっては、昼頃に回復してくれる可能性もあるが

今朝の段階ではまだ、予断を許さない状況だと、千景は言う

直接見ていない天乃でも、

歌野達が力を使ってみんなを守ってくれているおかげか

その力の消費の激しさから、察することが出来てしまうくらいには

祟りによる影響が強いのだ

千景「相手もいよいよ本気で来ているわ」

天乃「そう……みたいね」

千景「……久遠さんはどうするの?」

本当に、神婚を承諾して引き摺り出すつもりでいるの? と

千景の言葉が続いているような気がした


1、神婚を受けるわ
2、みんなより先に結婚しようとしてること、怒ってるの?
3、どうするもこうするも、何とかしたいわ
4、あえて、今のうちにみんなに会うというのは、どう?


↓2


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

GW中もできる限り行っていきますが、出来ない場合もあります


千景「……今度は神の子でも産むつもり?」

千景「と、思ったけれど」

千景「もうすでに凄い子供を産んでいるのよね……久遠さん」


遅くなりましたが、安価の部分だけ


天乃「私、神婚を受けようと思ってるわ」

千景「本気なの?」

天乃「ええ」

みんなが怒るようなことであっても

自分にできることがあるなら、したい

それに、

そうすることで一番遠い黒幕を呼び出せるのであれば、

やらない手はない

天乃「神婚のリスクは十分理解してるつもりよ」

それでも、必要なことなのだと天乃は言う

そうしなければ、つけるべき決着はつけられない

もちろん、天乃だけがよりリスクのある事をして良いというのなら

別に、出来ることはあるにはあるのだが。

天乃「九尾の話は貴女も聞いていたでしょう?」

千景「……最低の二択だった。と、記憶しているわ」

どう転んでも、失敗した場合のリスクは計り知れない

しかも、かたや成功させてしまうことこそが失敗でさえある


千景「神婚の成立は、人類を人類ではなくしてしまう」

しかも、天乃の命を奪いさえする

勇者部にとっては、大失敗もいいところだ

だが、大赦はそれを望んでいる

若葉は腐ってしまったと悔やんでいるが

人間はしょせん、そういうものなんだろうと

千景は嫌悪感を感じる表情を見せる

千景「今のみんなに、背負いきれるものではないと思うわ」

天乃「千景はやらない方が良いと思う?」

千景「出来るのなら。避けるべきだと思うわ」

提示された選択肢はどちらもハイリスク

それよりもローリスクなものがあれば、それにすべきでは。と千景は思う

しかし、その分得られるものも多くはないかもしれない

千景「ハイリスクハイリターンなのは分かるけれど……」

天乃「出来るだけ被害を少なくしたいのは分かってるわ。でも、一番被害が少ないのは間違いなく私が選ばなかった方よ」

天乃の力を使って、刺激する方法

天乃の力を分け与えた後なら、祟りによる被害も最小限に抑えられる

ゆえに、相当数の力を必要とし、結界の外に居なければならない上に集中的に狙われるだろう天乃

その被害だけで済む

あとは、勇者部にみんなが親玉を討つだけだ

一人分の被害と考えれば、軽いと言えるかもしれない


でも、勇者部としては全く軽くはない

だから、選んだのは別の方法

みんなのことを信じて

みんななら大丈夫だと思って神婚を選択した

いろいろ言われるかもしれないが

それでも、天乃は神婚する

天乃「みんなの前で改めて言うわ。きっと、そこでみんなの意見を求められると思う」

それに賛成か、否か

方法がないこと、信じているからこそであるこそ

色々と加味して、賛成と反対で意見が分かれることになるかもしれないが。

天乃「千景たちも正直に言って頂戴」

千景「……私は覆さないわ。それでも?」

天乃「ええ」

そうでなければ意味がない

天乃がそうしたいと言ったから。

だからその選択を後押しするなんて言うのは、誰もしない

それぞれの意見を、しっかりと述べてくれる

それも、みんなへの信頼だ


天乃「だから、千景もお願いね?」

千景「……貴女と言う人は」

千景は呆れたように零して、目を伏せる

記憶にある、天乃の先祖久遠陽乃とは似ているようで全く違う

彼女は仲間と言うものを信頼してはいなかった

仲間だとは思っていたのかもしれないが

本当に心を許した相手はあの中には居なかったように思う

同じ……とは言えないかもしれないが

心の距離を置く者同士としてのシンパシーを感じていたのかもしれない

だから、どれだけ近づいてきていても

そこに心はないように感じていた

でも、天乃は違う

本当にみんなのことを信じている

みんなのことを心から想っている

陽乃とは違って、自分自身よりも心が先行しているようにさえ、感じる

千景「ええ、分かったわ」

だから、千景は困った人だと苦笑を浮かべながらも頷いた

正直に、自分の意見を述べよう。と


では、時間も時間なのでここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

開始時に、時間経過の安価



陽乃「私って同族?」

千景「そう感じたわ」

陽乃「仲良くしてあげようとしたのに」

千景「それが不気味だったのよ」

千景「あの時の貴女は、本心を感じられなかった」

千景「……だから逃げたのよ。私は」


では、遅くなりましたが少しだけ


√ 2月2日目 昼 (病院) ※金曜日


01~10 東郷 
11~20 若葉
21~30
31~40 
41~50 夏凜
51~60 
61~70
71~80 歌野 
81~90
91~00 友奈


↓1のコンマ


※ぞろ目なら全員


√ 2月2日目 昼 (病院) ※金曜日


運命のお昼

みんなの体調は戻らないままで

面会させることはまだできない。と、看護師は言う

天乃「祟りの影響……よね?」

原因不明の高熱

未知の病気と言うことも考えられなくはない

でも、祟りの可能性の方がはるかに高い

あるいは

祟りの富鉱によって、その未知の病気に罹ってしまったか

天乃「治すこと自体に、私の力が必要である可能性はないのかしら?」

祟りが天乃に影響を及ぼす可能性や

病気が天乃に移ることを懸念しての、待機

だが、それ自体が罠で

天乃が何とかしない限り苦しむことになるとしたら?

天乃「最悪ね」

どちらも、考えが間違っていた場合のリスクは相当なものだ


みんなを助けに行った結果、天乃が病気になった場合

みんなが治るを待った結果、みんなが生命力を奪われてしまった場合

最悪の想像の二つを思い浮かべ、くっと奥歯を噛む

本当にこのまま待っていて良いのか

本当にみんなの祟りは退いてくれるのか

そんな不安を感じ、目を瞑る

九尾を呼ぶべきかもしれない

あるいは、沙織を呼んで状況を詳しく聞くべきかもしれない

天乃「ただ一つ言えるのは、ぼうっとしてることだけは絶対にありえないということね」

何かをするべきだ

みんなの回復を待つのであれば、

待っているなりのすべきことがあるはずだ



1、九尾
2、沙織
3、精霊
4、イベント判定


↓2


天乃「沙織、聞こえていたら出てきて欲しいのだけど……」

九尾達とは違って半精霊である沙織は、

すぐに出てくる。なんていうことは出来ない

それができるのは、精霊としての力をフル活用しているときだけ

だから、まずは声をかける

それが精霊を通して、沙織に伝わる

そうすれば――

沙織「聞こえてるよ」

天乃「わざわ呼び出してごめんね?」

沙織「ううん、全然気にしないで」

――沙織は応えて、出てきてくれる

沙織「一応、精霊のみんなには伝わってきてるって言うことだけは伝えておくね」

天乃「やっぱり、知ってるね」

沙織「精霊同士に繋がりがあるから」

隠そうとしない限り、話は筒抜けだと沙織は苦笑して

沙織「だから、隠さずにエッチしてると郡さん達も同じようになっちゃうって話だよ」

天乃「それは……いまするべき話だったかしら?」


大赦からの要求、天乃の考え

それはもう、勇者部のみんな以外には伝わっていると沙織は言う

夏凜達に伝えていないのは、

今は悩ませていい状態ではないと沙織たちが判断したからだ

考える時間は与えるべきだけれど

身体が弱っている中に、不安にさせるような問題は抱えさせたくはない

天乃「みんなは、まだ全然?」

沙織「うん……まだ厳しいね」

この様子だと、夕方や夜になっても治っていない可能性もあるらしい

曰く、祟りによって生命力が奪われているのだが

それが熱を持ち、高熱となってみんなを苦しめているとのこと。

つまり、病気や何かではない……が

沙織「今無理に力を渡すのは得策じゃないと思う」

天乃「……拒絶反応が起こる?」

沙織「その可能性がある」

祟りによる力があまりにも、強すぎるのだ

そこに天乃の力と、神樹様の力

それが重なり合い、ぶつかり合ってしまったら

大変なことになる恐れがあった

沙織「我慢したほうが良いって、あたしは思うよ」


では、途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


元号は変わってしまいましたが、
このスレは変わらず引き続き行っていきますので宜しくお願いします


では少しだけ


沙織「久遠さんの気持ちは分かるけどね」

いち早くみんなを助けたい

その気持ちは分かると、沙織は言う

沙織だって、

天乃が苦しんでいて自分に出来ることがあるなら

真っ先にやりたくなってしまう

たとえそれで自分が死んでしまう可能性があってもだ

だがそれでは天乃が報われない

本当の意味で救われることもない

だから、我慢する

我慢したほうが良いと、言う

みんなが助かっても

天乃が犠牲になるのでは、何も救えてなどいないからだ

天乃「……そうね」

大丈夫よ。と、天乃は微笑んで

天乃「ちゃんと分ってるから」


天乃「みんながいてくれなきゃ嫌だなんて我儘を言ったのは私なんだもの」

自分が欠けてはいけないと言うことくらい、良く分かっている

だから、大丈夫

無理をするつもりはない

強行するつもりだってない

天乃「心配しなくていいわ」

沙織「そっか……」

安堵したように言う沙織は

少し考える素振りを見せて、天乃を見る

沙織「久遠さんが考えてるのは待つのが正しいかどうか。だよね」

天乃「沙織は、分かる?」

沙織「未来を見通すほどの力はあたしにはないよ」

残念だけどね。と

沙織は目を伏せて、零す

それだけの力があればどれほどよかったか

沙織自身が一番、悔しく思う

沙織「回復しつつあるのは事実。それで治まるかどうかなんだよね、問題は」


これで回復しても

すぐにまた再発するのなら様子見をしている場合ではないし

回復してしばらく落ち着いてくれるのなら

それを見計らって力を分け与えたほうがいい

時期を待たずに力を分け与えるのも

待ちすぎるのもみんなにとってリスクが高い行為だ

力を取り戻して間もない天乃が力を分け与えるというのも危険だ

だから……待つべき。

本来ならそう思うのだが。

沙織「誰か一人に力を分けてみる?」

天乃「そんなことして平気なの?」

沙織「一人だけなら、何かあったときに対処しきれると思う」

もちろん、沙織は天乃の力を完璧に理解しているわけではないし

みんなの状態についても内面深くまで管理できていないため

はっきりと言えたことではないのだけれど。

沙織「少し考えてみてもいいんじゃないかな?」

沙織は、待つか力を分けてしまうかの選択肢に

ひとつ、分岐を作った


時間がかかってしまいましたが
ここまでとさせていただきます

明日は恐らくお休みとなるかと思いますが
出来れば、22時ころから


では少しだけ


√ 2月2日目 昼 (病院) ※金曜日


01~10
11~20 友奈
21~30
31~40
41~50 夏凜
51~60
61~70
71~80 東郷 
81~90
91~00 神託


↓1のコンマ


√ 2月2日目 夕 (病院) ※金曜日


沙織の案は、賭けてみる価値のあるものだろう

言っていたように一人分なら、負担は軽い

一人分なら異常があってもその力を抜くことは容易い

だから、やってみてもいいのでは。と、天乃は思う

しかし、その実験台にされる子は

もしも失敗した場合、かなりの苦痛を強いられることになる

天乃が言えば、みんな二つ返事で受けてくれるだろうが

天乃自身がそれは避けたい

でも、どうにかしなければならない

天乃「板挟み……」

しなければならないことと、したくはないこと

前にも後ろにも進めない

天乃「どうにかしなくちゃいけないのに」

どうすべきかが、悩ましい

もどかしくて、ちょっぴりイラっとしてしまう

でも、苛立って仕方がないと息を吐く


もし、力を一人に分け与えて様子を見るのなら

誰にするべきか

夏凜はそのご先祖様が、陽乃から力を与えられている

天乃のように力を自由に扱うなんてことまでは出来ないが、

力を分け与えられた際の反動は抑えられることだろう

また、天乃の力を与えられた―引き受けた―経験のある友奈と東郷に関しても

力そのものは消失したとはいえ、

一度は経験がある体は、うまく取り込んでくれるかもしれない

しかし……

天乃「安全なやり方では、意味がない」

夏凜達が問題なくても、

そういった保険の一切ない風達にも問題がないとは限らない

つまり、

本当に確かめる気があるのならば、

危険性の高い風達に確かめる必要がある

天乃「……一番私から遠い、園子。とかね」


園子は二年もの間、最も神に近い状態にあった

そこからは落ち着いたものの、

神樹様の力を素材にした体である園子は

やはり、天乃から程遠い存在のままだ

その園子が無事ならば、風達も同じように無事であることだろう

だが、リスクは大きい

天乃「相当、苦しむことになるわね」

二年も苦しんできたのに

また、苦しませてしまうことになる

ほんの一時で終われば良いのだが

園子の状態からして、長引くことは殆ど確実と言ってもいい

天乃「やるなら園子、やらないなら待つ」

どうするべきか


1、精霊
2、園子で試す
3、イベント判定


↓2


ではここまでとさせていただきます
明日は、出来れば少し早い時間から


天乃「園子、ちょっと試させて」

東郷「私ではだめなんですか?」

天乃「ええ、園子じゃないとダメなの」

東郷「……」ギリッ

園子「あれれ~? おかしいぞ~?」


東郷「冗談よ、そのっち」


では少しだけ


天乃「……園子に、お願いするしかないわね」

悠長に待ち続けて

あの時やっておけばよかった。と言う後悔よりは

挑戦して、

取り返しのつく失敗をしたほうが良い

もちろん、失敗しないのならそれが一番ではあるのだが。

天乃「辛いわよね、きっと」

神樹様の力、祟りの影響、天乃の力

交わることの難しい力が入り乱れるのだ

体の中がかき乱されるような苦痛を味わうことになるだろう

もしかしたら、神樹様の力で成り立っている体の一部が機能不全を起こすかもしれない

でも、必要なことだ

天乃「必要だからって、無理させたくはなかったけど」

いいよ。と、園子は言ってくれる

きっと笑顔で答えてくれる

天乃「ごめんね、園子」

安全な選択がある中で

もっとも苦しむであろう園子にお願いをする

そんな、冷酷な研究者のような考えをしなければならなかったことに

天乃は悔やんで、唇を噛む


流石に追い込まれ過ぎてしまった

それもこれも自分が何もできなくなったせいだ……と

全てを背負い込もうとは、思わないけれど

責任の一端はあるだろうと天乃は思う

天乃「みんなは頑張ってくれたし、力不足だとは思わない」

でも、適材適所と言うものがある

神樹様の寿命がギリギリになる前に決着をつけることが出来てさえいれば

巫女を犠牲にした奉火祭は行われなかった

それがなければ、みんなが祟られることもなかった

天乃「言っても仕方がないことでは、あるのだけど」

右手の人差し指の付け根を、ぐっと押し込む

弱い力、頼りない力

何も出来ないただの少女だと実感させられる

天乃「未来の為に子供を産んだ……だから、私はもう役には立たないのかもしれない」

九尾に言わせれば、絞り粕といったところだろうか

最後まで使い切れば死ぬ

実際、神樹様の種を用いなければ死んでいた

でも、それでもだ

天乃「やれることがあるのならやるわ。もちろん、死なないために」

そうすると決めたのだから頑張って。と

少女が怯えてしまわないように、弱い自分に、はっきりと言った


01~10
11~20 悪いこと
21~30
31~40
41~50 夏凜
51~60
61~70 悪いこと
71~80 友奈 
81~90
91~00 東郷


↓1のコンマ

※空白は園子


カツン、カツンと松葉づえを鳴らしながら

巧く歩けない天乃にとっては長い廊下を進む

車椅子を使うほうが良いと若葉は言ったが、リハビリの為にもと断ったのだ

天乃「はぁ……ふぅ」

松葉杖を壁に立てかけて、息を吐く

他の患者が通ることのない特別な通路は静かで

天乃のため息すらもうるさく聞こえる

だからだろう、万が一に備えて同行していた若葉は不安そうに眉を顰めた

若葉「やはり、車椅子の方が良かったんじゃないか?」

天乃「あら。私のことお姫様抱っこしたくはないの?」

若葉「それとこれとは関係ないだろう」

天乃「帰りは……そうして貰えると嬉しいなって話よ」

にっこりと笑って見せる天乃に

若葉は呆れた表情で「まったく」と笑った

若葉「そんなことを言う余裕があるなら大丈夫だな」

天乃「冗談じゃないのに……良いわよ。千景に頼むから」

若葉「千景は流石にお姫様抱っこはしないと思うぞ」


天乃「そう? 案外、頼めばやってくれると思うけど」

若葉「説得する必要があるだろう」

じゃないとやって貰えないぞ。と

若葉は松葉杖を手に取って、天乃へと手渡す

天乃「何とかなるわよ。今の話だって聞いてるだろうし」

若葉「……聞いてるだろうな」

精霊として千景ともつながっている若葉は、

どこからともなく聞こえる私は絶対にやらないわ。という

断固たる意志の元にある拒絶を聞きながら、苦笑する

でもなんだかんだやってくれるだろうと思っていることは、伝えない

天乃のお願いという甘えは中々に、断れないのだ

若葉「ともかく、あと少しだ。頑張れ」

天乃「ん」

カツン……と、小さな音がする

まったく動かない左足

地に足ついての支えにすらならない分歩きにくいが

それでも何とか進んでいく

若葉「……無理はするなよ」

天乃「園子にさせる無理はこれくらいじゃ済まないもの……大丈夫」

笑う天乃の額に浮かぶ汗は、尋常ではなかった


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間から

園子との交渉


天乃「だっこして?」

千景「嫌よ」

天乃「お願い」

千景「嫌って言ってるでしょう?」

天乃「……お願い」ギュッ

千景「あぁもう……なんで私なのよ」


では少しだけ


友奈「くっ……久遠先輩!?」

病室に入ってすぐに、友奈の声が響く

松葉杖の音が聞こえていたのだろう

友奈や東郷はベッドから降りようとしているし、

這い出そうとして失敗した手が見えているベッドもある

天乃「久しぶり……かな?」

友奈「久しぶりじゃないですっ!」

はにかんで見せる天乃と、

怒ったように声を張り上げる友奈

転げ落ちる勢いで出てきた友奈は急いで天乃の体を支えるために手を出す

自分の体のことよりも天乃を気遣ってしまったのだろう

祟りによる熱すぎる体温は天乃へと伝わっていく

天乃「……汗びっしょりね」

友奈「久遠先輩ほどじゃないですよ」

天乃「そう?」

友奈「そうです」

動いたわけじゃないので。と

友奈は笑みを見せる

それが気丈に振舞っているものだと天乃は分かっていても口にしない

友奈も同じだからだ


友奈「ごめんなさい、久遠先輩から来ることになっちゃって」

天乃「ううん、気にしなくていいから」

友奈「……もう歩けるんですね」

天乃「ちょっと、無理をすることになるけどね」

まだ、完全に自由になっていない身体

無理をしなければ歩けないわけだけれど

多少の無理は、リハビリにも必要だから。と、天乃は苦笑する

拭いてもぬぐいきれない汗は疲れもあるが、苦しさから来るものもあるだろう

天乃「今日はちょっと、園子……と、みんなに話があってきたのよ」

夏凜「園子……?」

天乃「ええ、園子は話せる?」

天乃が以前使っていた窓際のベッド

その対面にいる園子の部分だけがカーテンに遮られていて

念のため、問いかける

園子「……大丈夫だよ~」

天乃「大丈夫そうには、感じられないんだけど」

園子「ちょっと、疲れちゃってるだけなんよ」

笑い交じりの声

でも、疲弊しているのが分かってしまう弱弱しい声だった


友奈に支えられながら、園子のベッドへと近づいてカーテンを開く

疲れ切った園子の笑顔は辛さが目に見えていて

浮かべられている笑顔が、それをより強調させる

園子「天さん……動けるようになってよかった」

天乃「本当にね」

左足は不能だけれど

松葉杖を使えば歩くことが出来る

時期に松葉づえに慣れて、体もちゃんと取り戻せて

今日みたいな苦労はしなくて済むようになる

天乃「でも、貴女達が寝込んでいたら、ダメなのよ」

園子「えへへ……天さんの手、気持ち良い」

天乃「冷たい?」

園子「うん……ひんやり柔らかマシュマロだねぇ」

天乃「そう、じゃぁもう少し触っててあげる」

天乃の体温が多少低いのもあるかもしれないが

園子の体温が、熱すぎる

そのことを口にはせずに、額に触れて

滲む生ぬるい汗を指で拭って、前髪を少しだけ避ける

天乃「話、聞ける?」

園子「そうしててくれたら、頑張って聞くんよ」


天乃「あんまり無理されても困るけど……」

優しくなでながら、後ろの友奈に目を向ける

友奈は風のベッドの近くの椅子に座って、

夏凜たちはベッドで体を起こして、天乃たちの方に注目する

問題はあるが、大丈夫

そんなみんなの頑張りに天乃は頷く

天乃「力を分ける件だけど、まずは園子だけにやろうと思ってるの」

東郷「それは試す。と言うことですか?」

天乃「その通りよ」

樹「私達じゃダメなんですか?」

一番苦しそうな園子

それよりは自分たちにするほうが良い

そう考えているであろう樹に、天乃は首を振る

天乃「一番影響が大きいからこそ、園子じゃないとダメなのよ」

園子「一番悪い人が大丈夫なら、そうじゃない人は大丈夫。だからだよね」

天乃「……ええ」


実験台にされると分かっていても、笑顔の園子

天乃は申し訳ないという表情は見せずに答える

天乃「正直、祟りの影響も大きいから予想がつかないのよ」

次に何が起こるか分からない

でも、力を与えたことによる悪影響があっても困る

だから、一人だけ……園子に試すのだと、

天乃は自分の考えを説明する

危険だ。という呟きこそ漏れたが

それが必要なことであり、

現状での最善策なのだと、誰もが咎めない

園子「私は良いよ~……大変そうだけど、でも、打開するためには必要なことだから」

風「あたし達じゃダメ……か」

夏凜「少し貰った私達では到底役に立たないわね」

友奈「園ちゃん、大丈夫?」

園子「なせば大抵、なんとかな~る」

にこっと、園子は笑う

みんなは委ねるつもりで、園子はやる気

天乃「……やっぱり、誰も止めはしないのね」

分かっていた結果を前にして

天乃は嬉しいなどとは、思えなかった


では、少し早いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


園子(ようやく、ようやくなんよ)ドキドキ

園子(ここまで長かった……本当に、長かった)

天乃「顔紅いし、熱も上がってきてるわ。やっぱり止めましょうか?」

園子「え~……犯すよ?」ニコッ

天乃「えっ?」


夏凜「東郷がうつったんじゃないの? あれ」

東郷「人を病気みたいに言わないで」


すみませんが本日はお休みとさせていただきます
明日は出来れば通常時間から


では少しだけ


夏凜「嬉しくなさそうね」

天乃「……ちょっと、複雑」

天乃は深刻なことではないことを示すかのように苦笑する

みんなが協力的なことは、喜ぶべきだし

ありがたいことではある

だが、それが危険なことであればあるほど、

喜ぶことは難しい

若葉達を還すか否かで話し合ったこともあって、

みんながただすべてを頷いてくれるわけではないということは良く分かっている

考えたうえでのものだと分かっている

でも、それでもやっぱり……嬉しいとは言いにくかった

天乃「もちろん、みんなの為にって手を貸してくれることはありがたいのだけど」

園子「天さん、罪悪感は……要らないんよ」

天乃「うん、分かってる」

弱弱しい園子の頬に触れたまま、微笑む

せっかくの厚意

それに対して罪悪感を抱いていては、

その思いを足蹴にするようなものだ


天乃「だから、複雑なんだけどね」

罪悪感を抱くつもりはないけれど、

天乃自身の心に嘘をつかないのであれば素直に喜べない

天乃「………」

祟りの件

それに対して、天乃が打とうと考えていた手の一つ

園子の体を借りての力の譲渡のテストは、話した

でももう一つ、話すべきことがある

神婚をする。という大切なこと

当然ではあるが、神様と本当に結婚するわけじゃない

あくまで、バーテックスの親玉を引き摺り出すための手段

でも、失敗したら神婚は成立する

天乃を犠牲に人類は神の眷族となって

永遠の安寧を得ることが出来る……ことになってしまう

それは勇者部にとってはあってはならないことだ


友奈「久遠先輩、どうかしたんですか?」

天乃「ちょっと、考え事をね」

友奈「祟りのことですか?」

天乃「ええ」

祟りのことについて。と言うこと自体は嘘じゃないから、

友奈は少し誤魔化した答えであることには、気付かない

困った用意、ぎゅっと胸元に手を宛がう

見せられないほどに穢れてしまった身体

それを見せてしまったらどれほど憤るだろうか

どれほどの無理をさせる決心をさせてしまうのか

その不安が、痛み以上に重く、友奈に息を飲ませる

風「祟りのことって、力を分ける以外に何かできることがあるの?」

樹「もしかして、力を分けるのって聞かされてた以上に負荷がかかるとかですか?」

天乃「ううん、あれ以上ではないはずよ」

天乃自身の力を消耗するため

酷く弱るということはすでに勇者部のみんなに伝わっている

多少の誤差はあるけれど

それ以上に酷いとなると死すら覚悟しなくてはならないため

そこまでではないはずだと、天乃は言う


東郷「そのっちのことが心配ですか?」

天乃「かなりの負担をかけちゃうもの……心肺だわ。凄く」

逃げているわけではない

ただ、聞かれていることに答えているだけ

答えながら、考える

今すぐに神婚のことを打ち明けるべきか

少し、時期を見計らってから……

そう、せめて、園子が精神的にまで追い詰められないように

力の譲渡が無事に終えられるまでは話さないでおくか

体調の万全を期すのであれば、後者であるべきだが

時間的猶予を考えるのであれば、今すぐ話すべきかもしれない

どちらも、悪いとは言えないが……

生命の危機に直結する力の譲渡のことを考慮すべきではと、天乃は思う


1、今は話さない
2、実は、神婚を考えているの


↓2


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


天乃「実は、神婚を考えているの」

風「……そういえば、まだ冷えるから薪が欲しかったのよねぇ」

東郷「あれ使えば暫く持ちそうですよ、風先輩」

樹「束にするのは私がやりますね」

友奈「わーっ! ちょっと落ち着こう? ねっ? ねっ!?」


では少しだけ


天乃「こんな時に申し訳ないとは思うのだけどもう一つ相談があるの」

東郷「申し訳ないなんてそんなことありません」

友奈「そうですよっ久遠先輩っ」

ありがとうと言いたいけれど

言えなくて、天乃は笑ってごまかす

友奈の優しい心を感じる表情

それを曇らせてしまうことが、申し訳なくて。

天乃「実は、神婚をしようと思ってるの」

東郷「神前式のことですか?」

天乃「ううん、違うわ」

教会式とは違う、日本の挙式

それではないかと上げた東郷の言葉を否定する

息を飲んで、真正面の園子を見る

二年前からの付き合いだからか

大赦の奥深くに居たからだろうか

園子は察しているような表情だった

天乃「神様……神樹様と結婚をするの」


風「神様と結婚……?」

天乃「ええ」

樹「どういうことですか? どうして……」

東郷「大赦ですか?」

また、余計なことを。

強い憤りを感じさせる東郷のつぶやき

大赦が原因であると断定しているかのような鋭い瞳

満開のことや、園子のこと

奉火祭の件などいろいろありすぎたのだろう

東郷にとって、大赦は忌むべき組織でしかないのかもしれない

東郷「……また、またですか」

天乃「強制されたわけじゃないわよ。東郷」

東郷「誰かのためだという言葉は、久遠先輩にとっての強制です!」

夏凜「それには同意するけど、天乃だって単に自分一人の犠牲で済むなら。って考えてるわけじゃないんじゃない?」

今までとは違う

犠牲になろうとしているわけじゃない

そう確信しているような夏凜の言葉

東郷は不機嫌さを隠しきれていないながらも

ぐっと引き下がって首を振る


夏凜「私たちが反対することくらい、天乃は分かってる」

友奈「そう、だよね」

園子「……そうだねぇ」

今の天乃であれば

勇者としての力の有無に関わらず押し込むことが出来る

比較的非力である樹でさえ、天乃を抑えることは出来るだろう

そんな状態でありながら、止められると分かっていることを相談してきたのだ

考えなしに承諾したわけじゃないはずだ

園子「天さんには天さんの考えがある。それも、今までとは違う、ちゃんとみんなが幸せになるための考え」

天乃「それは買い被りすぎだわ」

園子「そうかな~?」

天乃「そうよ。だって、必ずって、約束はできないもの」

これは博打だ

天乃自身の命と、人類の在り方をかけた博打

もしも失敗をしたら、天乃は本当に神様と結婚してしまうし、それだけではすまない

天乃「失敗したら、私は死ぬわ。神樹様に魂を持っていかれちゃうの」

東郷「なっ……そ、そんな反対ですっ!」

幸せになるためであるのだとしても

また、命を失わせてしまうようなことなんて、させたくない


東郷「そのっちに力を渡して、私達にも力を渡して……その状態でやるんですよね?」

神婚ですべてにかたがつくのであれば、

園子に無理をしてもらう必要はない

それをやるということは、少なくとも神婚はみんなに力を分け与えた後になる

つまり、天乃の神婚は万全な状態では行われない可能性が非常に高い

神婚が生命力を削って行われるのであれば

与えられる猶予は限りなく短いだろう

そんなの、許せるわけがない

東郷「久遠先輩にやらせるくらいなら、私がやります」

天乃「東郷、それは――」

東郷「私は勇者であり巫女でもある……神婚を行う価値があるはずです」

沙織「それは無理だよ」

どこにいたのか。

おもむろに姿を見せた沙織の無情な一言が続く

沙織「これは神託で選ばれたことなんだ。久遠さん以外の何者にも、代わることは出来ないよ」


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は恐らくお休みになるかと思います

再開は明後日、通常時間から


では少しずつ


東郷「神託……ッ!」

歯ぎしりさえ聞こえそうな、憤った東郷の声

神託と言う抗えない強制力を提示されたからだ

神託が天乃でなければだめだという以上

それ以外のなにかでは成立させられない

奉火祭のように、巫女か東郷か。

そんな選択はなく、天乃が持っていかれてしまう

そして、天の神ではなく神樹様

祟りのように勇者達を苦しめるようなことはないだろうけれど

加護を与えてはくれなくなってしまうかもしれない

もしそうなのであれば……

友奈「久遠先輩、それ以外に出来ることはないんですか?」

苛立ちを見せる東郷を一瞥し、友奈は天乃へと問う

東郷を鎮めるためには、

神婚を止めるにせよ止めないにせよ

納得させられる何かが必要だから。

友奈「夏凜ちゃんが言ってたけど……ただ犠牲になるだけじゃない考えがあるんですよね?」


東郷「久遠先輩が死んじゃうのよ? それを――」

友奈「うん……でも、だから。じゃないかな」

友奈は、難しいことは言えないよ。と前置きをすると

困ったように、はにかむ

自分の考えがあっているかどうか、不安なのだろう

そんな友奈に、園子は軽く頷く

園子「……教えて、ゆーゆ」

友奈「う、うん」

東郷「………」

友奈「犠牲になるつもりがない久遠先輩が、犠牲になるかもしれないことをしようとしてる」

それってね。と、友奈は天乃を見る

追い込まれていると、分かったからだろう

無理をさせたくはなかった天乃に無理をさせてしまうことになっているからだろう

少しだけ、唇を噛むのが見えた

友奈「それをするだけの理由があるんだと思う。もちろん、誰も犠牲にならないためだよ?」


東郷「でもっ」

夏凜「東郷。あんたが天乃に無理をさせたくないって思ってるのは、分かってるわよ」

こういう議論の場で

天乃の考えに対しての反論を述べて、反感を買う

それも覚悟をしてのことだ

天乃のためを思ってのことだ

嫌われるのだとしても、少しでも天乃の為になるのであれば、為すことが出来る

そういう人だと、夏凜は思っている

夏凜「でも、そうせざるを得ない状況なんでしょ?」

天乃「……私の本心を言えば、神様となんてお見合いすらもしたくないわ」

風「天乃、神樹様嫌いだったしね」

天乃「ええ」

お見合いが嫌なのだ

結婚だって当然、避けられるならば絶対に避けていることだ

それでも神婚を行うのには、

みんなが言ったように理由があって。

天乃「それでも私が神婚をするのは親玉を引き摺りだすためよ」


天乃「神婚をするなんてなったら、天の神は何が何でもぶち壊しに来るでしょうね」

人類を神の眷族とすることに怒り狂うか

天乃という極上の贄を持っていかれることに怒り狂うか

それとも、両方か

だが、来ることだけは確実

天乃「みんなには、その親玉を討伐して欲しいの」

園子「親玉を倒せば、祟りも、神樹様の寿命の問題も何とかなるかもしれないからね」

東郷「そんなこと……」

沙織「東郷さんは、出来ない?」

東郷「久遠先輩が無理をしなくてもできるかもしれないじゃないですか」

祟りの件だって

天乃の力を得られれ葉時間を稼ぐことが出来る

そうするれ葉、戦う力を得られるし

親玉を引きずり出すような何かだってなせるはず

天乃の話は早計だと、東郷は切り返した


東郷「久遠先輩の力を借りて、祟りに抗えば出てきてくれるかもしれません」

樹「それは、そうかもしれないですけど……」

風「それまで神樹様の寿命が持たないかもしれないわよ」

夏凜「神樹様の力が本当になくなったら、私達も戦えない」

亡くなることがなかったとしても

消耗しすぎて、勇者に回すような余裕がなくなってしまうかもしれない

時間はないが、余力もないのだ

どちらかがあるのならばまだ、方法があったかもしれない

しかし、ないのが現実

東郷「下手に待って、余計に追い込まれるのを避けたい……ですか」

天乃「ええ」

東郷「………」

それでも何とかする手立てはないのか

それを考え、見つけられなかったのだろう

苦悶の表情を浮かべた東郷は目を伏せる

東郷「だからって、久遠先輩にこれ以上無理をさせるなんて」

嫌だ。

そんなの、許せない

なにより、そうせざるを得ないような状況に追い込まれるような

自分の未熟さが、許せない

握りしめる拳は、食い込む爪は

痛覚を乗り越えて、血を滲ませる

東郷「……その神婚、止める手立てはあるんですか?」


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は出来ればお昼ごろから


では少しずつ


東郷「人と人との結婚じゃないんです。ちょっと待った。なんて言って簡単に止められるものではないと思います」

それこそ、祟りのような何かがあってもおかしくない

いまさら何を言っているのだと

反対意見なんて跳ね除けられて結婚させられてしまうかもしれない

新郎が、その友人が、その親が

ふざけるなと阻むのとはわけが違う

東郷「仮に陽動が上手く行き、倒せたとしても久遠先輩が消えてしまうという結果は免れ得ないのでは?」

天乃「そうね。神婚を中断させられるかどうかは、分からない」

東郷「やっぱり……」

神樹様に対する信仰心はこの世界規模で考えれば非常に厚く

天乃一人の命か、神樹様による存続かを考えれば

圧倒的に後者である

人類は神樹様の存続から、天乃を手放すことは出来ない

神樹様がそう考えるかもしれない

東郷「神樹様が、そうしなくていいと納得できるだけの証明が必要になります」

沙織「東郷さんは、それが無理だって?」

東郷「神樹様の今までを考えれば、生半可なものではいわゆる曲解されたような結果になるだけかと」


東郷の一言に、沙織は反論を飲み込む

静まり返った病室に誰かの吐息

誰かが動いて、布の擦れる音

東郷は自分の発言による沈黙を吸って、吐く

銀の死によって与えられた力

それはとても強い力ではあったし

それ自体は悪いものではなかったと東郷自身も思う

だが、人ならざる者へとさせてしまう力など、

結局、銀を失った東郷たちが望んだものなんかではなくて。

東郷「人類の救済だってそう、きっと神婚によって訪れるのは人ではなくなった何かが蔓延る世界なんだと思います」

風「東郷はどっちも認められないのね」

友奈「人じゃなくなっちゃう世界も、久遠先輩がいなくなっちゃう世界も……私も嫌だよ」

友奈の悲痛さを感じる声に

東郷はぐっと眉を顰めて、友奈を視界から外す

東郷「久遠先輩、神婚を確実に止める手はありますか? 誰も、何も、変らずにです」


天乃「そう詰め寄られると、困っちゃうわね」

止める手立ては考えられていないに等しい

行き当たりばったりだ

だが、東郷はそんな曖昧な考えを許しはしない

神樹様はそんな考えではまさしく望まない結果を生み出してしまうことだろう

天乃「それについては、九尾にも具体的な答えは用意できなかった」

東郷が問題にしていることは、

九尾も問題点としてすでに上げてくれていることだった

神婚を行うとして、それの中断が行えるのかどうか

それに対して九尾が出したのは、

人類はもう守って貰う必要がないということを、神樹様に示す。ということだった

天乃「ただ、守る必要がないって神樹様に示せば良いかもしれないって」

夏凜「だったらそれは、私たちがやって見せるしかない」

東郷「どうやって?」

夏凜「どうやるもこうやるもないわよ。私達は今まで通りに、奪おうとするやつから、守るだけ」


樹「でもきっと、いままでとおりじゃ、ダメなんだと思います」

今まで通りで良いのなら、

ここに来るまでに話は終わっているはずだ

神樹様の寿命が尽きそうになっているという話が出たときに、

この問題は片付いているはずなのだ

そうならないのは、それだけではだめだからだ

沙織「神樹様の説得かぁ」

園子「それは多分、天さんにしかできないことなんよ」

天乃「……私にしか?」

園子「うん、天さんにしか」

弱弱しく

けれども力強く笑みを浮かべて見せた園子は、

小さな手で、天乃の細腕を握る

園子「過去と未来の架け橋……すべてを紡いできた、久遠天乃が、すべきこと」

天乃「私なんかに、人類の言葉を託すなんてどうかしてるんじゃないの?」

困った笑みを浮かべ、天乃は茶化したように言う

全人類の思いを、神授嫌いの自分一人に任せていいのか

普通なら、駄目だろうけれど

夏凜「最も神に近づくアンタがダメなら、ほかの誰にもできないんじゃない?」


言葉を通じ合わせることのできない神と人

その相容れない存在が、交わる

交わろうとする、特別な時間

きっと、最も近づくことで

純粋で穢れのない想いがぶつかり、重なることだろう

友奈「沢山のことを経験した久遠先輩だから、こそです」

樹「久遠先輩じゃないと、ダメだと思います」

西暦の魂に触れ、従えて

現代の人類の触れ、その善悪を経験して

色々なことを考え、ここまで生きて

これからも生きていこうとしている

沙織「……久遠さんなら、神樹様の考えを変えられるだけの想いを伝えられるはず」

天乃「………」

東郷「久遠先輩……出来ますか? 出来ませんか?」

反論ではなく、問う

天乃がそれを、成し遂げることが出来るのかどうか


1、もちろん、成し遂げるわ
2、みんなが、力を貸してくれるなら
3、分からないけど、でも、やるしかないわ
4、できるできないじゃないわ。やるのよ

↓2


天乃「そうね……」

園子を見て、友奈を見て、風を見て

東郷を見て、樹を見て、沙織を見て、夏凜を見て

また、園子へと戻っていく

不安だし、怖い

絶対に大丈夫だなんて安心感は得られない

でも、それでも

みんながいるのなら。

天乃「みんなが、力を貸してくれるなら」

樹「当然です」

友奈「もちろんですっ」

風「最後まで、付き合うわよ」

夏凜「言われなくても」

園子「ずっとも~」

東郷「……ずっとも」

園子の伸びた手にくっつけるように

東郷は自分の右手を伸ばす

東郷「久遠先輩、絶対ですよ」


東郷は振り絞るように言って、息を吐く

本心では、嫌だ

でも、どうしようもない懸けるしかない

だからせめてと、東郷は目を瞑る

東郷「……分かりました。神婚、してください」

天乃「ごめんね」

東郷「本当ですよ」

こっちはまだ結婚してないのに。

明らかに不満そうにする東郷を、友奈は宥める笑みを浮かべる

仕方がないことだと分かっていても

神樹様に先を越されてしまうのが、嫌で。

でも、それを言っても仕方がない

だから、飲み込む

園子「全部終わったら、ちゃんと……してくれないとダメなんよ」

風「神様との結婚するんだから、あたし達とも、ね」

天乃「そうね、本当はみんなとするだけのはずだった」


まだみんなの家の説得

そのすべてを完了しているわけでもないのに

神様との結婚を先にするなんて本当、何なのかと思う

こんなことしてる場合じゃないのにと思う

でも、そうしなければ説得はできなくなってしまう

結婚は出来なくなってしまう

だから、やるのだ

天乃「……私たちの将来の為に」

夏凜「私たちの平和の為に」

東郷「私たちの日常の為に」

やりたくないことから逃げるのではなく

やりたくないことにも手を出して……何とかする

天乃「成し遂げましょう、私達で」

覚悟を決め、希望を抱き、将来を願う

天乃のいつもと変わらないトーンの言葉

ほんのり笑い混じりの日常感

みんなは意気込んだ返事をすることはなく

そっと自分の胸に手を当てて、自分の思いを確かめ頷く

天乃「世界を勝ち取るわよ」

「「「「「「「おーっ」」」」」」」」

文化祭のような、体育祭のような

そんなのりで

みんなの声が、病院に響いた


√ 2月2日目 夜 (病院) ※金曜日


01~10
11~20 夏凜
21~30
31~40
41~50 東郷
51~60
61~70
71~80 悪いこと 
81~90
91~00 若葉


↓1のコンマ


√ 2月2日目 夜 (病院) ※金曜日


みんながいた夕暮れ時の病室から

独りぼっちの窓のない病室へと戻った天乃は

ベッドに横になったまま、息を吐く

天乃「……園子に力を渡すためにも、体を何とかしないと」

回復は順調で

園子一人に力を与える程度であれば何とかなるかもしれない

けれど、松葉杖での歩行だけで疲労困憊してしまうのでは、

先が思いやられてしまう

天乃「とはいっても、寝ていれば戻ってくるわけでもないのよね」

今ある体力分は戻るだろうけれど

それ以上にはなってくれない

運動するべきだけど、出来るのはリハビリ程度

無理をすれば死にかねない

勇者としての力を使えばいいけれど

力を渡すときには使えない


天乃「弱いって……いやね」

出来ることが制限されるだけでなく

出来ることの中でもまた更に制限が付けられる

天乃「弱くてもできることはある。でも、強くなければ出来ないことがある」

だからお姉ちゃんは強くなりたいの。

天乃がまだ小学生のころ、姉の晴海は空手の大会で優勝した

でも、それでも満足せずに鍛錬に励み、より強くなろうと別の武術まで手を付けていく

そんな姿を見て、どうしてそこまでするのかを聞いた時に言われた言葉

天乃「お姉ちゃんはずっと、こんなだったのかな」

何をするにしても、弱さを感じる

もっとできることがあるのではないか

もっと別の方法があったのではないか

そう、悩んで……

満足する結果は一度も得られていないのかもしれない


天乃「……きっと、私が強ければもっと方法があった」

神婚なんて手段を選ばなくても

みんなに親玉を倒して貰うなんて危ないことをさせなくても

何か、解決するすべはあったはず

天乃「でも、出来ない」

弱くなってしまったから

追い込まれてしまったから

だから……みんなの力を借りることにした

一人の力では不十分でも

みんなの力を合わせれば何とか出来る

天乃「一人じゃないから、大丈夫」

みんなで世界を取り返す

そう決めたし、出来ると信じている

だから悩んでなんていられないと

天乃は心を強くする


1、精霊組
2、イベント判定
3、お休み

↓2


01~10 友奈
11~20 夏凜
21~30 樹
31~40 東郷
41~50 風
51~60 千景
61~70 球子
71~80 若葉 
81~90 沙織
91~00 歌野


↓1のコンマ


では少し早いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


東郷「私も結婚したいわ」

風「全部終わったらねー」

友奈「終わらせよう……頑張って」

園子「ふぁいとっ、お~」


樹「恋人たちの逆位置」ペラッ

樹「……でも、大丈夫。踏み込むことは間違いじゃない」


では少しだけ


天乃「………」

病室の外から聞こえる小さな足音

ゆっくりとした歩みは、

出来る限り気付かれまいとしているからだろう

天乃「……夜這い?」

それはないと首を振る

天乃もそうだが、みんなにもそんな余裕がない

耳を澄ます

ゆっくりで、静か、小さな足音

ちょっとだけ、不安を感じる

片耳を失ったことで鋭敏になった聴覚で感じ取る

天乃「友奈、かしら」

東郷の線も考えたが

東郷ならもう少し大胆だし、静かだ

足音に不安は混じらない

天乃「ん」

きゅっと足とが止む

病室の扉に何かが触れて

コンコンッと、微妙な音が病室に流れ込んできた


天乃が返事する前に、病室の扉が開く

友奈「……久遠先輩?」

みんながいる病室と違って

天乃一人の病室では遮るためのカーテンを閉めてはおらず

ひょっこりと壁際から顔を覗かせた友奈はベッドに天乃がいるのを確認して、ぐっと息を飲む

友奈「久遠先輩?」

さっきよりも小さく、囁くように

天乃が寝ているかどうかを確かめようと声をかけ、

数秒間待って、ベッドへと近づく

天乃「…………」

友奈「……寝て、ますか?」

寝ていたら帰るのか

それとも、何かしようと言うのか

来客用の椅子に座ったりせずに、友奈は天乃の顔を覗く


1、……なぁに?
2、寝たふり
3、「んっ友奈……やめて……」という寝言


↓2


天乃「んっ……」

友奈「っ」

寝返りを打つ

友奈に顔が見えないように背を向けて、

もう一度寝返りを打って友奈の方を向く

うなされているのかもしれない

友奈の心にそんな不安を感じさせて、隙を作る

そして

天乃「んっ友奈……やめて……」

友奈「!?」

艶っぽい声を漏らす

口元に手を当てて、

布団を少しだけ、跳ね除けて

びくっと身体を震わせる

天乃「やっ……んっ……」

友奈「ぇっ? えっ!?」

天乃「はぁっ……はぁ……んっ」

友奈「……っ」


天乃「……zzz」

友奈「お、落ち着いた?」

少し上ずった声で友奈は問いかける

変に色っぽい声を漏らしていた天乃だけれど

大人しくなって、一安心だと友奈は胸を撫で下ろす

友奈「………」

どくんっどくんっとうるさい心音

ちょっぴり温まってしまったせいか、ほんのり汗ばむ

天乃「んっ」

友奈「!」

天乃「友奈……っ」

そこに友奈がいるような素振りで、布団を抱く

顔を埋めて、抱きしめて

布団に押し殺されたくぐもった声を漏らす

天乃「ゆっるして……っぁ……」

友奈「ゆ、夢の中の私はなにしてるんだろう……」

ごくりと喉を鳴らすのがはっきりと聞こえた


01~10
11~20 久遠先輩が悪い
21~30
31~40
41~50
51~60 久遠先輩が悪い
61~70
71~80
81~90 久遠先輩がいけない
91~00


↓1のコンマ


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


東郷「いって、行くのよ友奈ちゃんっ」グッ

東郷「誘ってるに決まってるわ、大丈夫、行ってっ」

東郷「何をためらってるの……」

東郷「その手を伸ばして、さぁ、さぁっ!」


風「落ち着け」


では少しだけ


友奈「………」

そっと右手を伸ばす

摘まむような広がりの小さな手は

ゆっくりと広がって、天乃の頬まで数センチのところで、止まる

友奈「……だめ、だよね」

天乃「んんっ……」

友奈「気に、なるけど」

右手を引き戻して、左手で抑え込む

今ここにいるのはお忍びで

天乃は体が治ったばかりで余裕がない

ちょっと気を惹かれたからって悪戯をするのは

それこそ、忍びない

友奈「………」

なら、どうしてここに来たんだろう

何もしないのに

何もできないのに。


友奈「さっき、言っておけば良かった」

一緒に行っていいですか。と

一緒にいてくれませんか。と

そうすれば、手を出すこともできたのにと、ちょっとだけ後悔する

友奈「なんで、来ちゃったんだろう」

病室に来てくれた時は嬉しさが勝ってしまっていたのだろうか

夜になってだんだんと静けさに包まれていく中で

冷めていく体に心がついていくことが出来なかったのかもしれない

いや……違う。

友奈「っ」

神婚すると言う話で決まった

バーテックスの親玉を呼び出すその作戦は効果がある分かなりのリスクがある

それ自体に反対をする気はないが、

病室から去っていく姿が不安になったのだ

そのまま世界が樹海に包まれて

離れ離れになってしまうような不安を感じたのだ


友奈「……そんなこと、ないけど」

天乃の艶っぽい声もそうだが

何より、寝返りを打てているというのが、ほほえましくさえ感じる

今までは寝返りを打ちたくても不自由な身体では寝返りなんて打てるはずもなく

とても窮屈そうで

傍に居る誰かが体を動かしてあげる必要さえあったのだから。

友奈「久遠先輩」

天乃「すぅ……すー……」

友奈「久遠先輩がいてくれて、良かったです」

友奈や勇者部にとって、

天乃がいるのは当たり前のことだけれど、

もしも天乃がいなかったら。

長く会えなくて、祟りに冒されて、不安になった心で考えてしまったこと。

首を振る

そうっと、近づく

きし……っと、手をついたベッドが軋む

強く嗅がなくても天乃の匂いが強く感じられる距離

総毛立つ感覚とはまた違う、全身に迸るぬくもりのある感覚

友奈「……ごめんなさい」

一言謝って、唇――ではなく、頬にキスをする

友奈には、それが精一杯の行為だった


天乃「んっ……」

友奈「ぁっ」

天乃「………」

さっきまでとは違う反応を見せた天乃を見て

起こしてしまったのではと、友奈は後退りする

人によっては逃げることも、隠れることもするだろうけれど

友奈にはそんなことできなくて

友奈「久遠、先輩?」

じっと見つめて、声をかける

起こしてしまったらそうしようと思うのに

声をかけてしまったのは、

無意識なのか、思いがあっての事なのか

天乃「………」

寝たふりをしたのだ

このまま起きない方がいいような気もするけれど……

1、起きる
2、起きない


↓2


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



友奈「もしも久遠先輩がいなかったら」

友奈「祟りはどうなってたんだろう」

友奈「神樹様は誰をお嫁さんにしようとしたんだろう」

友奈「私達は、どうしてたんだろう」

友奈「……その悩みのほとんどを、久遠先輩が抱えてくれてるんだよね」


では少しだけ


起きようか起きまいか

少し考えて、閉じた瞼の奥で瞳を揺らす

暗い中、見える友奈の表情

どこかにある手を求めて、手を伸ばしながら瞼を上げていく

天乃「ん……ゆ、うな?」

あくまで、起きてしまったという態で

引き起こされたばかりのぼんやりと揺れる瞳を作り上げる

天乃「……どうか、した?」

友奈「お、起き上がらなくて大丈夫ですっ」

もぞもぞと動いて見せると

友奈は慌てて布団を引き上げて動きを止める

谷を作った眉、

わずかに光を反射する瞳

天乃はじっと見て、ベッドの上に手に触れる

天乃「……そう?」

友奈「大丈夫です」

天乃「そっか……じゃぁ、このままで」


友奈「このままでって……寝れなく、なっちゃいました?」

天乃「んーまぁ、ね」

友奈「ごめんなさい」

天乃「良いわよ、別に」

元々寝ていなかったからとはいえずに苦笑い

友奈の罪悪感を覆うように手を握る

天乃「何かあるんでしょ?」

友奈「それはっ……その……」

天乃「友奈は相変わらず、嘘をつくのが下手よね」

悪いことじゃない、良いことだ

素直で、まっすぐ

勇者になる前から変わらないところ。

天乃「……馬鹿にしてるわけじゃないからね?」

友奈の手をにぎにぎと

ちょっとだけ遊びながら、微笑む

申し訳なく思うよりも困った顔

それでいいと、見つめる

天乃「わざわざ危険を冒してまでここに来たんだもの。何もないわけではないでしょ」


天乃「……私、自慢じゃないけど授業中に寝たことないの」

友奈「え?」

天乃「妊娠してからは、あれだけどね」

良く分かっていないような友奈に、続けて言う

だから大丈夫よ。寝ないから

そこまで言って、友奈の目が開く

理解を得た瞳の大きさ

それは反動によって小さくなって……閉じる

友奈「……ごめんなさい」

天乃「布団に入る?」

友奈「良いんですか?」

天乃「もうお腹大きくないし」

友奈「それなら、失礼します」

どうぞーと、招く

少し冷えた友奈の体が、触れた


友奈「………」

天乃「………」

すぐ横の、沈黙

布団と寝間着の擦れる音

友奈の方をちらりと見た天乃は

開きかけた口を閉じる

布団に招き入れるのは、意地悪だったかな。と、思う

友奈がこの病室に抱えてきたことは

隣り合ってしまったら痛むようなものであると分かっていた

けれど――

天乃「最後じゃない」

友奈「っ」

天乃「大丈夫よ」

自分よりも大きく

でも、小さな女の子の背中に触れる

今までは見ることのなかった、自分を背負おうとしてくれている背中

だから、触れる。

天乃「貴女達の後ろに、私はいる」

友奈「うし、ろ……?」

天乃「そう。行ってらっしゃいって見送って、お帰りなさいって言うためにね」


前線から退いて、戦いを託した

今の天乃はみんなの帰る場所

だから見送って、迎え入れるみんなの背中にいる

それは過去ではなく、後悔でもなく

これからだ。

天乃「私は必ずここにいる。頑張るみんなを置いてどこかに行ったりなんて絶対にしない」

背中から、手を回す

弱い力ではあるけれど

だからこその優しさに、友奈を包み込んでいく

天乃「だから、そんな顔しないの……私は元気な友奈の方が好きだわ」

友奈「久遠先輩……」

天乃「ね?」

友奈「そう言ってどこか行っちゃいそうなのが久遠先輩なんです」

目を離してしまうと、離れたところにまで行ってしまう

そんな、ある意味で自由な人

だから。と、友奈は返す

友奈「今日は一緒にいてください」

友奈はそう言って、身体の前にまで来ていた天乃の手を握った


√ 2月3日目 朝 (病院) ※土曜日


01~10 悪いこと
11~20
21~30
31~40 夏凜
41~50
51~60 大赦
61~70
71~80 九尾 
81~90
91~00 友奈


↓1のコンマ


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


友奈(後ろにいる。そう言ってくれた久遠先輩は、目が覚めた時にはもういなかった)

友奈(温もりも、痕跡も。何一つ、残っていなかった)

友奈「………」

友奈「……あれ?」キョロキョロ

友奈「どうして、ここにいるんだっけ?」


風「とか?」

東郷「神樹様には前科があるので冗談になりませんよ」


では少しだけ


√ 2月3日目 朝 (病院) ※土曜日


天乃「………」

目を覚ますと、友奈がいる

浸食が祟りの浸食が酷くなっている影響か

うなされたように動く眉

露出する首筋からわずかに見える禍々しい気配

天乃の傍や、歌野達の力の中にいても

進行は遅くなるが、治るわけではない

天乃「……もう少しの辛抱だから」

友奈「っ……」

顔に触れると、べっとりと汗が張りついて

熱を出してしているかのような体温を手に感じる

時折開く口から洩れる吐息は熱く

拭っても、友奈の汗は止まる気配がない

天乃「……友奈」

誰も犠牲にはしたくない

その願望が生み出してしまった被害は、とても重い


天乃「祟り……」

力を取り戻しつつあるからだろう

以前はあまり感じ取ることのできなかった力を強く感じる

神樹様の力と

それを飲み込み腐らせていく天の神の力

神樹様が本調子ならば劣ることもなく

対抗できるほど供給され続けるのだろうけれど

消耗し続ける神樹様の力は、祟りには勝てない

天乃「無理はしないでね」

このままでは満開によって失い、神樹様の力に補填された身体機能も

だんだんと失われていくことになるだろう

完全に消滅するなんてことにはならない……と思いたいけれど

弱っていくことになるのは間違いない

神樹様の種の力で均衡を取り戻し、穢れの力で飲み込み吸収している天乃とはわけが違うのだ

園子で試して問題なければ……と

時間をかけるのであれば、今すぐにでも園子に試したほうが良いのかもしれない


天乃のように、淫らなことをして毒気を抜く

そんなことが出来れば早いのだが、

天の神による祟りはそんなに甘いものではない

むしろ

そんなことで祓おうと言うのか。と

力を強めてきてもおかしくない

天乃「…………」

頬を撫でて、汗を拭う

傍に居るからと、手を握りしめる

うなされる友奈は苦しそうで、辛そうで

その痛みによる不安もあったのだろうと、天乃は目を瞑る

園子で試す。という話にはなっているが

先んじて友奈に与えてしまうのもありと言えばありだ

もちろん、失敗のリスクはあるが。



1、友奈を起こしてあげる
2、寄り添う
3、こっそり、力を与えてしまう
4、イベント判定


↓2


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


東郷「力を与える方法はいくつかあるらしいですよ」

東郷「一つ、輸血」

東郷「二つ、母乳を飲ませる」

東郷「三つ、久遠先輩が妊娠させる」

東郷「3番がおすすめですよ」


友奈「また東郷さんが適当なこと言ってる……」

九尾「出来るならば間違ってはいないぞ。出来るなら。じゃがな」

友奈「えっ?」


では少しだけ


天乃「……頑張れる?」

答えられないと分かっていながら問いかける

無情に蝕まれていく友奈たちの体は、あとどれくらい持つのか分からない

ほんの些細なことが大怪我に繋がる

友奈たちがどれだけ意識していたとしても、大きな事故に巻き込まれる

精神的にも身体的にも追い込まれていく一方でありながら、

猶予もないとなればその不安はどれほどのものか。

一度は余命宣告を受けた天乃は、少しだけその心が分かるからだろう

頬を撫でていた手で、頭を撫でる

優しく、強く

大丈夫よ。と、語りかけるように

天乃「貴女は強い子だから、きっと大丈夫」

祟りになんか負けるはずがない

不安や恐怖に押しつぶされてしまうわけがない

穢れに染まり切ってしまうはずがない

なにせ、一度はそれを受けた身なのだから。

天乃「私の力を、受け取って」


勇者部の中で、一番適合しやすいのは夏凜だが

次点で友奈と東郷だ

だから、樹達に試す前のテストケースとして考えることは出来ないけれど、

祟りの症状が看過できないのであれば、試しても問題はない

天乃「……寝てるのに、出来るかしら」

血を直接飲ませるのは、さすがに無理だ

輸血も血液型の問題がある以上リスクを余計に冒すことになる

よって、代用が聞くのであれば母乳でもいいのだが。

寝ている状態で飲んでくれるのかどうか

天乃は少し考えて、友奈の体を揺する

天乃「友奈、起きて」

友奈「ん……」

天乃「大事な話があるの」

うなされているということもあって

天乃は躊躇することなく、友奈を起こす


友奈「ぅ……ぅ? 久遠先輩……?」

天乃「ええ、そうよ」

友奈「あ……」

ぼんやりとした声

身体の高い熱と、

時折上げていた苦悶の声による喉の渇きと痛み

そして何より、自由が利かなくなる程の気怠さ

起きたばかりだからと言うだけでは誤魔化せないものを感じているのだろう

友奈は気丈に振舞うような笑みを浮かべかけて、閉じる

誤魔化しも、嘘も

簡単に見抜かれてしまうと分かっているからだ

友奈「……えへへ、もう少し、このままでいいですか?」

天乃「それは良いのだけど……ちょっと。大事な話があるの」

友奈「大事な話ですか?」

みんなも呼びますか? と

何とかしようとする友奈の体に触れ、首を振る

天乃「ねぇ友奈、母乳……飲まない?」

友奈「えっ?」

痛みも苦しみも、一瞬で吹き飛んだ


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


東郷「母乳ですか……飲みたいし絞りたいわね」

東郷「でも、絞るより直のみの方がお得だって偉い人が言っていたわ」

風「それは偉い人じゃない、ただのエロい人よ!」

東郷「変態と偉人は何とやら。ですよ風先輩」


夏凜「そんな言葉があってたまるか」


すみませんが、本日はお休みとさせていただきます
明日は出来ればお昼ごろから


では少しずつ


友奈「きゅ、急に何言ってるんですかっ!」

天乃「何って、母乳には力があるから」

友奈「それはそうですけど、急に……っ」

声を上げた友奈は、

ぐっっと強く胸を抑えて、口を閉じる

額に汗が浮かぶ

噛みしめられた奥歯がギリッと……鳴る

暫くすると、

固く引き締められた唇が緩んで、ため息が零れる

友奈「はぁ……っ」

天乃「ごめんね、無理させたわ」

友奈「いえ……」

友奈は笑みを浮かべては見せるけれど

痛みに激しくなった動悸を落ち着けるためか

胸に手は当てたままで。

友奈「えへへ、忘れちゃって」

自分が祟りにさいなまれていること

それが今はより激しくなっていること

いつもとは違う朝だったから、考えていなかったと友奈は笑う


友奈「力を分けるのは園ちゃんにやってからじゃないんですか?」

私で試すのは全然いいんですけど。と

友奈は前置きする

園子の状態が良くないことが分かっている友奈の優しい進言だが、

自分の結果は参考にならないことは理解しているからだろう

駄目ですよねとすぐに続けた

天乃「友奈たちは殆ど確実に無事に終わるわ」

友奈「前に久遠先輩の穢れを受けたからですよね?」

天乃「ええ。だから試しじゃなく、力を与えておこうかと思って」

影響を抑えられるのなら、抑えてしまったほうが良い

無駄に苦しませておくなんて、嫌なのだ

天乃「風と樹は後回しになってしまうけれど、貴女達は大丈夫だから」

友奈「でも、それじゃ……風先輩たちは、辛いままなんですよね?」

天乃「そうね」

後回しになるということはそういうことだ

けれど、風達はそんなことでねたんできたりはしない

友奈だって、風と樹がそんな性格ではないことは十分承知のことだろう

友奈が考えているのは、

自分たちだけが助かっていいのか。と言うものだろう


苦しみと痛み、辛さから早く解放された位と言う気持ちがある一方で、

その気持ちを分かっているから、

共有している二人を置いて解放されてしまうことに、気が引けてしまう

友奈は、そういう【優しすぎる】子なのだ

天乃「風達もできるようになってからのほうが良い?」

友奈「本当は……出来るなら、やったほうが良いとは思います」

みんなで。ではなく

出来る人から一人ずつ

余裕がないのは神樹様も友奈たちも変わらない

今ここでバーテックスが出てきたらどうなるだろうか

万全な状態で望めない命懸けの戦いなど想像したくはない

最悪の結果になる可能性は非常に高い

でも、叶うのならみんなで。

誰か取り残されるかもしれないなんて不安もなく、完璧に。

友奈「……久遠先輩は、やるべきだって思うんですよね?」

天乃「私が傍に居るだけでは、余り意味のないところまで来てしまってるのよ」

外因的に天乃の力を感じ取れるだけ、包まれるだけ

それでは、体に直接刻まれた印から流れてくる祟りには対抗しきれない

天乃「だから、少しでも早く私の血を受け継いでもらいたいの」


友奈「……そう、ですね」

まだ痛む胸にあてた手で握り拳を作る

押し当てた手の奥で強く脈打つ心臓

オーブンの中に入れらてしまったかのような

表面を丸焼きにされているかの如く熱を持った体

寝間着の中に隠れた禍々しい痕は

胸元を少し引っ張れば良く見える

友奈「夏凜ちゃんと東郷さんにも?」

天乃「平気そうなら」

そこは体調に寄ってしまう

いくら耐性があっても、

身体が弱り切っていたら非常に危険だ

園子だって、本当ならもっと万全な状態にしたいと、天乃は言う

天乃「でも、このまま待っているだけではだめなことは確か。どうする? 怖い?」

友奈「怖くなんて、ないです」

胸を抑える手を引いて、うつむきがちな顔を上げる

友奈「久遠先輩のことなら、なんでも大丈夫です」

それは嘘偽りのない信頼

お願いしますと続く友奈に、天乃は少し困った笑みを浮かべる

天乃「あんまり美味しくないけどね」

友奈「ある意味、手料理ですね」

天乃の体で作られる母乳

だから手作りだという友奈は、ちょっと照れくさそうにしていた


天乃「前にも一度、貴女は飲んでいるけれどその時とは状況が違うから覚悟してね」

友奈「……はい」

天乃が持つ力が、流れ込む

それは血族として力を受け継ぐのと違って

無理やりに押し込むのに近い

友奈たちは一度経験をしているけれど、

あれはまだ性的興奮と言う形に収まったが、

今回のは、そうはならない

最悪の場合、祟りにより影響よりも苦しむことになることだろう

天乃「……寝込むことになるかもしれない。でも、私が傍に居るから安心してね」

友奈「大丈夫です、久遠先輩の力ですから」

天乃「その私の力が、悪質なんだけどね」

神樹様の力ではなく、穢れ

光か闇かと決めるのであれば即断で闇の力

混濁する意識の中で負けてしまわないように、寄り添う

友奈「そ、それじゃ……その……頂いて良いですか?」

天乃「コップじゃなくていいの?」

友奈「直接が良いですっ」

東郷さんではないけど

やっぱりそっちのほうが良いと、友奈は笑って吸い付いた



影響判定 ↓1のコンマ

最低0 最大9
判定-3


√ 2月3日目 昼 (病院) ※土曜日


01~10 夏凜
11~20
21~30
31~40 大赦
41~50
51~60
61~70 九尾
71~80  
81~90
91~00 千景


↓1のコンマ


√ 2月3日目 昼 (病院) ※土曜日


天乃「……苦しんだりは、してないのね」

友奈「すぅ……すー……」

天乃の母乳を飲んだ友奈は、

暫くしてからゆっくりと……眠りについた

祟りにうなされていた時のような苦しんでいる様子はなく、

穏やかで、何もなかったころと変わらない穏やかさ

身体に触れても汗ばんでいるのは過去のもので

さっきまでの高熱が嘘のように、落ち着いた体温だった

天乃「大丈夫ならいいのよ」

きゅっと握り合う手に、力は込められていない

天乃が目が覚めてから続々とお役御免になっていった医療機器に見守られながら

開いている手で、友奈の頬に掛かった髪を払う

中学二年生

まだどこか幼さが残っているけれど

数ヶ月前の友奈よりも一回り大きくなったと、天乃は微笑む

その分辛いことがあって、苦しいことがあって、大変だった。と一言で片づけられないけれど

でも、だからこその成長を得られた

もうすぐだ

もうすぐ、全部終わらせることが出来る

天乃「……そのためにも、今は頑張って」


友奈がここまで落ち着いているのは

やっぱり、穢れを引き受けたことがあるからだと天乃は考える

穢れを引き受けたこと、一度は母乳を口にしたことがあること

それによって、流れ込んでくる穢れの力をどう受け入れればいいかを体が分かっていたのだ

だから、すんなりと受け入れ、自分の力へと変えている

天乃「でも……」

それはある程度分かっていたことだ

でも、友奈が落ち着きははっきり言って特別

眠りにつくのも穏やかで

眠ってからも穏やかで

天乃「あれ、かしら」

穢れの力を穢れと思わず

天乃の力として信頼して受け入れているから

力もそれに呼応してくれているのかもしれない

天乃「私の力は、浮気性なのかしら」

だとしたら、自分もそう言うことになるのだが。

それに気づいて苦笑した天乃は友奈の額にキスをする

天乃「あるいは、友奈たちが婚約者だから……なんてね」


友奈に力を与え、今ここで眠っている以上

ここから離れるわけにはいかない

天乃「…………」

夏凜達の様子は精霊のみんなが確認してくれる

神樹様の状況などは、

九尾や沙織、水都に聞けばある程度は分かるが完全ではない

ふっと……息を吐く

友奈が大丈夫なら夏凜は当然東郷も大丈夫だろう

友奈に施したことも含め

みんなと話すべきだろうか

天乃「両足が無事なら、おんぶも抱っこもできるんだけど」

理想としては、だけど。

今の天乃にはそんなことが出来るほどの力はない

はっきり言って貧弱

まるでお姫さまだ


1、精霊
2、イベント判定

↓2



01~10 沙織
11~20 風
21~30 九尾
31~40 東郷
41~50 樹
51~60 千景
61~70 歌野
71~80 大赦 
81~90 夏凜
91~00 若葉


↓1のコンマ


では少し中断とさせていただきます
21時半ごろまでに再開できればと思います


ではもう少しだけ


友奈の愛らしい寝顔はまさしく日常で

天乃はただ眺めているだけで、時間を流していく

夏凜達も気にはなるが

若葉達が姿を見せないということは

良くも悪くも大きな変化はないということだ

友奈が居なくなっていることは、逆に伝えてくれていることだろう

もしかしたら、千景が。

呆れながら東郷達に報告する千景を思って苦笑する

そういう報告はしてくれるのに

友奈に母乳を飲ませた―力を与えた―ことは黙っていてくれる

話すべきことだと天乃が言わない限りは下手に語ることはない

けれど、彼女は違う。

九尾「………」

天乃「咎めに来たの?」

九尾「いや、悪くはない判断じゃろう」


九尾「こ奴らは乃木の娘と違って、大きな影響が出ないという判断は間違っていない」

天乃「ならやっぱり、友奈に溶け込みやすいのはそれが理由?」

九尾「いや、それはまた別の話じゃろうな。最も、主様が考えていたこともあってはいるじゃろうが」

ふむ……と

いつもの考える素振りを見せた九尾は

その悩まし気な表情のまま友奈を一瞥する

何か言いたげな瞳だけが動き、紐は強く結ばれた

九尾「人間には病は気から。という便利な言葉があると聞くその類じゃろう」

天乃「適当なこと言っちゃって」

九尾「結果はどうであれ、力を確実に取り込むのに重要なのは否定ではなく肯定じゃ。間違ってはおらぬ」

天乃「知ってるわ……友奈は無事だった。それで充分よ」

九尾「じゃが、あくまでその娘だからこそと考えておくほうが良かろう」

希望を持たないのはダメだが持ちすぎてもいいことはない

適度な緊張感がなければ、余計な失敗を招くことになる

九尾「あまり、甘く見る出ないぞ」

天乃「うん……そうね」


九尾とて、何も出ばなを挫きたいわけではない

だが、世界が良いことが起きた後に

続けて良いことがあるような優しさに満ちたものではないことを九尾は良く見てきた

陽乃の時代はもちろん

陽乃の後の時代もだ

ずっと、ずっと……報われない世界というものを見続けてきた

だから、九尾は希望だけを口にすることはない

九尾「もちろん、三好や東郷は主様の力を受け入れても問題なかろう」

そういった九尾は

ついでに言うのならば。と、付け加える

九尾「純正な犬妹。あの小娘は神聖さが薄いからのう。姉よりは軽いはずじゃ」

天乃「そう、なの?」

九尾「間違いない……が、安全とは言えぬ」

保証は出来ない

あくまで、風よりは安全であろうというだけだ

天乃「………」



1、ありがとう。参考にしておくわ
2、友奈が大丈夫なのは私の婚約者だからではないの?
3、みんなはどうなの? 神樹様は?
4、ねぇ……友奈繋がりで、高嶋さんのことを聞いてもいいかしら

↓2


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



東郷「高嶋さんって、郡さんが彼女って言っていた子よね?」

千景「言ってないわ」

東郷「エロ可愛かったって」

千景「言ってないわ」

東郷「……神樹様に寝取られたって」

千景「待って、その話は知らないわ」


では少しだけ


天乃「ねぇ……友奈繋がりで、高嶋さんのことを聞いてもいいかしら?」

九尾「西暦の小娘かや? なんじゃ急に」

天乃「千景から少しだけ話を聞いたし、若葉達の記憶を戻す際に垣間見たからある程度は知ってるけど、気になって」

九尾「ふむ……」

あまり関係ない話なんだけどね。と

天乃は自分の好奇心に困っているかのような笑みを浮かべて、友奈を見る

借り受けた記憶の中の高嶋友奈と言う少女

似てはいるが、別の存在であることは明白

けれど、瓜二つのような姿は何かあるのかと、思って

天乃「九尾なら、何か知ってるんじゃないの?」

九尾「妾もすべてを知っているわけではないが……そうじゃな。知らぬわけでもない」

懐かしむのは陽乃さんのことがあるからか

それとも、高嶋友奈と言う少女に対してか

目を細めた九尾は友奈の髪を撫でる

天乃「……高嶋さんと何か?」

九尾「いや、似てはいるが違うと。思うてな」


さらりと払われる前髪

頬に触れ、くすぐったそうにする友奈は

軽く寝返りを打つ

九尾は手から離れた友奈を目で追って、息を吐く

九尾「……高嶋友奈が戦死したことは知っておろう」

天乃「ええ。若葉の記憶で感じたわ」

九尾「じゃが、高嶋友奈の遺体は見つからなかった。なぜかわかるかや?」

天乃「バーテックスに食べられたわけでは……ないのよね?」

記憶の中で若葉話していた相手

上里ひなたの口からは、交戦中に生体反応が途絶えたということ

遺体が発見されていないことが伝えられた

だが、それだけだった

高嶋友奈がどうなったのかまでは分かっていない

九尾「そうならば、結城友奈という存在はここにはおらぬ」

天乃「友奈が? どうして? 関係あるの?」


九尾「高嶋友奈は、神樹に取り込まれたのじゃ」

神婚や、奉火祭と言った儀式的なものではなく、

己を守り、命を賭した勇者の魂を保護したと九尾は言う

九尾「バーテックスに食われた人間はどうなるか。知っておるかや?」

天乃「…………」

得られた記憶の断片

そこにあるのは、食い殺された人々の遺骨

しかし、九尾が聞いているのはそんな単純な話ではない

天乃の答えを待たずに、九尾は口を開いた

九尾「魂までも喰われる。そして、二度と戻ってくることは出来なくなる」

天乃「地獄に行くなんて、そんな生易しいことじゃないのね……」

輪廻の果てに、もう一度産まれてくることは出来ない

本当の意味で死を迎えてしまうことになる

九尾「それを避けるためかどうかは分からぬ。じゃが、神樹は高嶋友奈の魂を己の中に取り込んだ」

天乃「でも、バーテックスに食べられてしまうのとは別。なのでしょう?」

渦中の友奈を見つめて、天乃は問う

高嶋友奈と似ている結城友奈がいるのだから

そうはならなかったはずだと、天乃は願う


九尾「そうじゃな。高嶋友奈を取り込んだことで、その魂はこの世界に満ちている」

その結果が、結城友奈と言う少女

かつて、久遠家、弥勒家両名と強く関わりのあった赤嶺家の少女

その少女たちは普通の子供とは違って特別だった

その特別こそが、高嶋友奈を取り込んだことによる世界への影響

九尾「おかげで、この世界には高嶋友奈の魂を持つ少女が産まれるようになっておるからのう。まったくの別ものじゃ」

心配することはないと語った九尾は

くつくつと笑い、おもむろに笑い声を忍ばせる

高嶋友奈の魂が今もなお生を受けられることは良いことだと思っている一方で

どこかで、良く思っていないのだと感じる表情だった

九尾「知らぬじゃろうが、時折現れる逆手を打つ子供にはあるものが与えられた」

天乃「友奈。でしょう?」

九尾「くふっ、そう。そうじゃ。友奈という名じゃ」

ほんの少し驚いたように

でも、悟られまいとしているかのように

友奈と言う名は、大赦の人間が高嶋友奈にあやかって付けているものであり、

神聖さがあるかどうかは微妙だと、嘲笑する

九尾「じゃが、名の通りそこに高嶋友奈の魂の欠片はある。大赦は友奈因子と呼んでおるが……確かに、そこにある」


九尾「結城友奈が穢れに耐性があるのもそれが理由じゃろう」

天乃「天の逆手だったかしら? 高嶋さんが宿していた力の一つ」

九尾「そうじゃ。高嶋友奈も悪しき力を持っていた」

悪しき力と言っても呪詛の一種とされているというだけであり

神殺しの力となっている天乃の力とは全く異なるが。

九尾「それがあるからのう。三好の娘とも変わらぬじゃろうて」

その点で言えば、巫女と勇者の素養がある東郷美森に関しても、

通常に比べて耐性があることだろう

ある意味、以前の穢れを耐えられたのは

そういった部分があったことが大きいかもしれない

九尾「……高嶋友奈はけして不幸な死ではなかった。報われぬものではなかった。と。あえて言っておこう」

天乃「貴女にしては、優しい言葉ね」

九尾「妾ではない。陽乃の言葉じゃ」

そこに高嶋友奈を見ているのかもしれない

九尾はそうっと友奈の頬を撫でて、微笑む

それはとても優しい……表情だった


√ 2月3日目 夕 (病院) ※土曜日


01~10
11~20 大赦
21~30
31~40 樹
41~50 夏凜
51~60
61~70
71~80 友奈 
81~90
91~00 東郷


↓1のコンマ


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



東郷「思ったのですが」

天乃「うん?」

東郷「……陽乃さんと言う方も久遠先輩なんですよね」

友奈「それは、さすがに駄目だよ」


樹「あっ、友奈さんが本気の顔してる」

夏凜「流石に冗談が過ぎたわね。痛い目見なさい」


では少しだけ


√ 2月3日目 夕 (病院) ※土曜日


天乃「この様子だと、今日一杯はお休みになりそうね」

そっと友奈の頬を撫でて、天乃は呟く

朝、力を分け与えてからずっと眠ったままの友奈

触ると反応はあるが、目を覚まさない

幸いにも、穢れの力を与えられた影響で苦しむことや

祟りによって魘されることも無くなってはくれたけれど

夜か、明日の朝以降にまで掛かるかもしれないと天乃は考えていた

耐性があるとはいえ、適応には時間がかかるからだ

天乃「……せっかく、傍に居るのにね」

友奈「すぅ……」

天乃「ふふっ、でも悪いけれど、私は少し嬉しいわ」

幸せそうな寝顔だから

穏やかなままでいてくれているから

だから嬉しいと、天乃は申し訳なさそうに言って

静かに抱き寄せた


天乃「祟りは、きっと相変わらずなのよね」

千景たちがこないということは悪化していないということで

夏凜達がこないということは良くなっているわけでもないということ。

友奈が落ち着いているのは、あくまで天乃の力を与えたからであって

勇者部自体に降りかかっている祟りが鎮まっているわけではない

バーテックスと、それを率いる天の神

攻め入ってこないのは祟りを与えているから……なんて、生易しい理由ではないだろう

天乃と、天乃の精霊による祟りへの妨害

夏凜達勇者達のめげない強い心

それを感じてなお、そんな甘い考えを持っていてくれるのだとしたら

世界は今頃、壁に囲まれることのない安寧を取り戻していたことだろう

天乃「天の神は、きっと手強いわ」

友奈「ん……すぅ……すー」

天乃「苦戦するなんて話じゃない。きっと、大型バーテックスなんて比較にすらならないわ」


悲観すべきではない

だが、甘く考えて良いことではないと天乃は顔をしかめる

バーテックスの集合体である大型バーテックス

大赦が付けた名は、レオ・スタークラスター

しかし、天の神はそれを従えているような存在だ

バーテックスと天の神の関係を、

天乃とその精霊に当てはめれば、分かりやすいだろう

天乃は九尾達の力のすべてを扱うことが出来る

天の神もきっと、同じように扱えることだろう

単体でも強力な力を、より完璧に、凶悪に

天乃「間に合わなかったら最悪ね」

祟りに苛まれた状態ではまともに戦うことは難しいだろう

その状態で敵対して勝てる相手ではない

そこまで考えて、天乃はほう……と、息を吐く

日常の象徴のような、寝顔を見つめる

天乃「大丈夫。間に合うわ……きっと」



1、精霊
2、イベント判定


↓2


01~10 風
11~20 九尾
21~30 千景
31~40 夏凜
41~50 球子
51~60 歌野
61~70 若葉
71~80 大赦
81~90 沙織
91~00 おねえちゃん


↓1のコンマ


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



風「友奈が寝てる横で抱かれる気分はどう?」

天乃「……何言ってるの?」

風「ちょっと、さ。東郷ほどじゃないけど、あたしも色々溜まっててね」ペロッ

天乃「っ」

風「……ん、エッチな味」


樹「お姉ちゃんが壊れたっ!」

夏凜「どんまい」


すみませんが本日はお休みとさせていただきます
再開は明日、通常時間から


では少しだけ


風「昨日からいないかと思えば……」

夕方になって病室に訪れた風は、

分かってはいたけど。と、笑いながら友奈を見る

相変わらずぐっすりな友奈は天乃を抱くほどに近くて

甘えているようにも見える

風「ずっと一緒にいた?」

天乃「ええ、昨日の夜からね」

風「……やった?」

天乃「何言ってるのよ」

風が何を言いたいのかは、分かっている

えっちなことをしたのかと聞いてきたのだ

冗談っぽいと言うべきか

風は悪だくみをしているように見えて

天乃は苦笑交じりに、問いかけて首を振る

天乃「してないわ」

風「してない? 夜に行ったのに?」

天乃「ええ。私も友奈もそこまでの余裕はなかったから」


風「そっか……まぁ友奈だし無理強いはしないわよねぇ」

天乃「うん、だから安心して横においておけるわ」

東郷ならもしかするかもしれない

年相応の可愛らしい寝顔を見せる友奈を横目に、

大親友たる東郷の破廉恥への情熱を思い返して、苦笑い

東郷は天乃を第一に考える一方で

そういったことへも全力で取り組んでいて

女子中学生にしては非常にレベルが高い

横文字が云々と言うのに

パソコンを使いこなして情報量で優位に立つから手に負えないのだ

もっとも、東郷も友奈たちと同じで

天乃が断ったりしたときに無理強いしてくるようなことはないけれど。

天乃「樹達だって、無理やりはやらないでしょ?」

風「ん~……溜まってなければ」

天乃「溜まるって何が溜まるのよ」

風「性欲?」

天乃「私に聞き返さないで」


天乃「そんなことより、どうしたの?」

まさかえっちな今年に来たわけじゃないでしょ? と、続ける

友奈も恋人の一人で公認とはいえ

眠っているすぐ横でエッチなことなんて出来ない

カーテンで遮られているだけで

みんなのいる病室で出来るのに今更ではあるのだが。

同じベッドにいるのはさすがに避けたい

天乃のそんな気持ちを知ってか知らずか

風は笑いながら「違う違う」と否定する

風「祟りが少し軽くなったから顔を見に来たのよ」

天乃「部屋の外まで安全とは限らないのよ?」

風「分かってるけど、友奈もいなかったし」

独り占めされるのが嫌ではないが、ちょっぴり羨ましいと思ってしまう

警戒しすぎて会えないというのも、それはそれでなんだか気持ちが晴れない

風「友奈だって、ずっと一緒にいたんでしょ? 寝てるけど」


1、友奈には力を渡したのよ
2、風も一緒に寝たかった?
3、体は本当に平気なの? みんなも?
4、園子はどう? 挑戦できそうな感じだった?


↓2


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


東郷「挑戦……」

東郷「ついに過激なことするんですか……!?」

天乃「ううん、力を渡せるかどうかよ」

東郷「あ、そんな真面目に答えていただかなくても……」


風「東郷には突っ込まないのが正攻法だったのね」


では少しだけ


天乃「ええ、まぁね……神婚の件もあったから」

思うところがあったのよ。と

天乃は優しく言って、友奈から風へと目を向ける

天乃「話は変わっちゃうけど、調子良いのよね? 風」

風「今朝とかに比べれば、断然」

まだ多少、祟りに苦しめられてしまった感は否めないけれど、

死を感じさせるほどの苦しさなんて物はなくて

尾を引く程度の痛みに触れるように、風は自分の胸に手を当てる

祟りの痣が刻まれている場所

そこが最も痛み、熱を持つ

天乃「大丈夫?」

風「平気、ちょっと違和感が残ってるだけだから」

天乃「無理はしないでね」

風「ん、分かってる」

天乃「……ところで、園子はどう? 挑戦できそうな感じだった?」


風の口から最初に漏れたのは、「あぁ……」というあまり良くないことを思い出したため息

出来る限りいい方向に運ぼうとしているのが分かる、思案の数秒間

天乃へと向かない目はどこかを彷徨い、

やがて、天乃へと動く

風「そうねぇ……ここに来るほどの余裕はなかったわ」

天乃「やっぱり、重いのね?」

風「あたしたち以上に満開してたから……」

頷きながら風は考えを述べて、顔をしかめる

満開をしていればしているほど捧げた供物は多く

神樹様の力による補填の総量は増えてしまう

それゆえの弊害

風「でも、回復はしてるから、明日なら大丈夫なんじゃない?」

天乃「明日……」

風「万全でやりたいでしょ?」


天乃「そうね。出来る限り万全じゃないと」

園子でやる理由を考えれば、

その不安定なコンディションも加味するべきと言うか、

含めてやるのが最も確実な結果になることも事実ではあるのだが

しかし、そこまでしていたら身が持たない

あくまで、一番条件の悪い園子の最善の状態で試し、

それを踏まえて風たちに適用すると言うのが今回の目的だ

天乃「明日……それなら、まだ時間は大丈夫。かしらね」

風「このタイミングで狙われたら最悪どころじゃないけど……そこは祈るばかりよねぇ」

天の神とて祟りを与えて満足し、ふんぞり返ってるわけではない

何かしらの手は打ってくることだろう

神婚はその手を打たれるよりも前であることが望ましく

神婚の儀をせかしてこない現状ではまだ猶予があるのでは。と

風は沙織たちと話した考えを述べる

天乃「だと良いんだけど……向こうが隠してるっていう可能性も捨てられないのがね」

風「大赦? バーテックス?」

天乃「分かってて言ってるわね?」


風は、敵であるバーテックスからではなく、

先に大赦の名前を出してきた

それを聞いて分かってて言っているだろうと言う天乃に、風は苦笑いで答える

世界のことを考え、大のための小を切り捨てるという【大人】の考え

それ自体は、視点を変えれば絶対的な誤りではないかもしれない

だが、風達にとっては間違いでしかなくて

だから、不信感は拭えない

風「ギリギリになってから求めてきそうじゃない?」

天乃「否定は出来ないけど……」

考えさせて。という話をしている以上

ギリギリになって求めれば受けざるを得ないのではないか

そんな邪まな考えを持たないとは限らない

そんなことはないと、信じたいけれど。

天乃「大丈夫よ。もしもそうなら沙織たちの耳にも入るはず」

風「そう、よね」

流石に邪推が過ぎるわねと

風は困ったように呟いた


では、途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


では少しだけ



√ 2月3日目 夜 (病院) ※土曜日


01~10 夏凜
11~20
21~30
31~40 友奈
41~50
51~60 沙織
61~70 風(継続)
71~80
81~90
91~00 大赦


↓1のコンマ


√ 2月3日目 夜 (病院) ※土曜日


朝だろうが、夜だろうが

関係なく静まり返っているはずの天乃がいる特別な病室は

昨日と今日に関しては、友奈がいる

そのおかげか、明かり以上に明るく感じて

人肌以上の温もりを感じる

友奈「zzzz」

天乃「ふふっ」

友奈「ん……」

天乃「……どんな夢を、見てるのかしら」

苦しんでいないし、うなされてもいない

ならきっと、悪くはない夢だ

自分はその夢にいるのだろうかと、天乃は友奈の頬に触れる

天乃「かわいい」

普段も、今も

えっちなことを知ってもあどけなさの残る友奈は

まだまだ、子供に見えて

天乃は一人、大人びた笑みを浮かべる


天乃「こんな、子供っぽかったかしら」

穢れが増幅していたころや、逆に不足していた頃に芽生えていた性的欲求も

今は大分収まって、純粋な目でみんなを見ることが出来るようになった

しかし、母親となったからだろうか

以前よりも子供に感じるような気がして、問う

愛らしいのは変わらない

好きだと思うのも変わらない

でも、それは母親目線なのかもしれない

天乃「それとも、友奈が寝顔が子供なのかしらね」

友奈「んぅ……すー……すー……」

天乃「ふふっ、可愛い」

もし、これが母親としての物なら

色々なことが変わってくるだろう。と、天乃は思う


1、精霊組
2、イベント判定


↓2


01~10 友奈
11~20 東郷
21~30 樹
31~40 若葉
41~50 千景
51~60 九尾
61~70 沙織
71~80 大赦
81~90 球子
91~00 歌野


↓1のコンマ


友奈「ん……ぅ?」

天乃「ぁ」

友奈「………」

友奈の瞼がゆっくりと開いていく

瞼が開いただけで、覚醒しきっていないぼーっとした瞳が見える

友奈「………」

天乃「友奈?」

なにも反応してくれなくて

九尾か誰かが体を操っているんじゃないか

そう思って声をかけると

焦点があっていない友奈は髪を引かれたような動きで天乃の顔を見て、また戻る

友奈「天乃先輩……」

天乃「え?」

友奈「……っ!」

一言名前を呼んで、はっと目を見開く

彷徨っていた瞳に意思が宿って体が急激に熱を持つ

友奈「くっ久遠先輩!?」

天乃「それ以外に見える?」

友奈「見えないですけど……でも、あっ、そうだった」


どうしてここにと言いかけた友奈はその理由を思い出して、口を閉じる

天乃がここに来ているのではなく、自分がここにきているのだと。

不安になって、寂しくなって、こっそり会いに来て

祟りに苦しまなくて済むようにと、力を与えて貰って

そこから……記憶がない

友奈「今、いつですか?」

天乃「日は跨いでないけど、夜よ」

友奈「じゃぁ、その間?」

天乃「ええ。ずっと眠っていたわ」

友奈「寝てた……」

友奈としては気を失ってしまった感覚だが、

天乃からしてみれば、眠りについたという感じで

寝落ちですね。と、友奈は困ったように言う


天乃「身体はどう? 変なところはない?」

友奈「えっと……」

とりあえず、ベッドから降りてみる

足は問題ない、手も問題ない

声は出ていたし、触れている感覚も問題はなかった

胸元の痛みもない

けれど。

友奈「……印は、残ってます」

天乃「体は熱くない? 息苦しさとかも平気?」

友奈「は、はいっそれは、もう」

熱がないと言えばうそになる

でもこれは健全な熱だ

悪さはしない

天乃「そう……なら、一先ずは安心。かしら?」

友奈「そうですね」

天乃「…………」


力を分け与えても友奈の体調に問題がないのは幸いだったが、

天乃は同じタイミングで風達に対しての祟りの影響が消えたのが気がかりで顔をしかめる

もしも効果はなくて

ただ治まってくれただけだったら?

その疑いが晴れないのが、怖い

もしそれを狙って天の神が祟りを引いていたら?

わざと、天乃の力が確実な手段ではないという不安を与えるためにやったのだとしたら?

踏み躙ってしまえば簡単な不安の種からは、すでに芽が出ている

希望を糧に、それは育つ

花を咲かせてしまったら……終わりだ

天乃「飲み物とか、飲んでも大丈夫かしら。吐いたりしない?」

友奈「つばは飲んでも平気です」

天乃「食べ物は? 運動は?」

友奈「大丈夫、かと」

こみあげてくるようなものはない

狭い場所ではあるけれど

少し歩いたり、ストレッチ程度の運動をしても体に違和感は感じない

友奈「ほら、大丈夫ですっ」


安堵を感じさせない天乃に対して、

友奈は正反対に明るい笑みを見せる

自分の体のことだから

大丈夫なんだと、精一杯に

もちろん、天乃の力だけなら絶対に大丈夫だと言える

だが、天の神の祟りもあって絶対とは言えない

天乃「そうね。そう、思いたいわ」

友奈「何か駄目なんですか?」

天乃「絶妙なタイミングで風達の影響も鎮まったのよ」

友奈「だから、だめかもしれないんですか?」

天乃「私の力は関係ない可能性もあるの」

九尾が言ったことだし、

穢れが神樹様も天の神も関係なく寄せ付けようとしないものであることは周知の事実

でも、タイミングがあまりにも絶妙で。

そいう口にした天乃を見つめる友奈は、触れていた自分の胸元でぎゅっと握り拳を作る

そこにはまだ、印が刻まれたままだけれど……でも

友奈「私は、久遠先輩の力が守ってくれてるように感じてますけど……それじゃ、だめ、ですか?」

友奈はそう思うのだと、伺うように口にした


では、途中ですがここまでとさせていただきます
明日は出来ればお昼頃から



東郷「久遠先輩が母親?」

沙織「娘が母親と性的な行為をするって……胸が躍るね」

東郷「つまり、きじょ――?」トントン

樹「……」ニコッ

東郷「い、樹ちゃん? その鞭、どうするの?」


樹「歌野さんに習ってるので大丈夫ですよ。もっとも、エネミーに対しての扱い。ですけど」


では少しずつ


天乃「友奈……」

希望に甘えていられる状況じゃない

そう続けようとした思考を停止して、飲み込む

友奈はポジティブな子だが、

以前とは違って、何でもかんでもそう捉えようと努めるわけではなくなって

良くも悪くも考えて

今必要な考えを持とうとするようになった

それでも、天乃の力のおかげだと言っているのだ

天乃「それだと、まるでお呪いみたいだわ」

友奈「良いと思います、お呪いっ」

天乃は【まじない】は【のろい】とも言うと思い返したが、

そんな意地悪は言わずに微笑むと、友奈も嬉しそうに笑顔を浮かべる

友奈「お守りとも言えるんじゃないですか?」

天乃「使えるのは一回限りだけど、大丈夫?」

友奈「最後まで使わないので、大丈夫です」

ラスボスまで温存して、最後の最後で使う秘密兵器

元気よくそういった友奈だが。

予定では、次こそがそのラスボスとの闘いである


友奈「神婚、しちゃうんですよね?」

天乃「それをトリガーとする必要があるから、どうしても。ね」

友奈「………」

友奈は反対をしなかった

それは、天乃にはそれをしなければならないだけの理由があると思っていたし

ただ単に、犠牲になるつもりではないと言う信頼があったからだ

だがもし、それ以外の方法があったのなら

天乃以外の誰かでもいいといいのであれば

してもいいなどとは、言えなかっただろう

友奈「あの、神様。と、なんですよね?」

天乃「ええ、神樹様とするのよ」

友奈「えっと……その」

天乃「?」

友奈「………」

頬が赤らむ

眉間にしわが寄って行って、悩みが露見する

天乃を見ていた目が、下を向く

友奈「それって、あの……悪五郎さんみたいな感じじゃ、ないですよね?」


天乃「五郎くん?」

友奈「は、はい……」

聞き返すと、

さっと顔を背けた友奈をじっと見つめて、考えを探る

気恥ずかしさに染まった頬、引き締められた唇

答え次第ではやっぱり。と、反対しかねないような雰囲気

天乃は少し考えて「あぁ……」と思う

神樹様が、交流のための手段として

悪五郎のような人の形をとるのではないかと思っているのだ

そうなるかならないかで、関わり方は変わってくるだろうから

天乃「なるほどね」

友奈「分からないですよね」

天乃「そうねぇ……五郎くんはあくまで私の精霊としての具現化だったから」

神樹様が同じようにできるとは限らない

もっとも、神様なのだから何でもありではあるのだろうけれど。


1、でも、友奈が心配してるように子供産まされることはないと思うわ
2、神婚とは言うけど、私は本当に結ばれるつもりはないから安心して
3、本当は、先に結婚したいんだけどね
4、意外に友奈にも独占欲あるのね

↓2


天乃「でも、友奈が心配してるように子供産まされることはないと思うわ」

友奈「そ、そんなことまで考えてないですっ」

天乃「エッチなことするかもとは考えたでしょ?」

友奈「それは……その」

考えましたけど。

囁き程度の声で答えた友奈は

図星だったからか目を合わせようとはせず、赤みがかっていく

羞恥心を感じる友奈の反応に、天乃は意地悪な笑い声をこぼす

天乃「ふふっ、大丈夫よ」

そんなことにはならないし、させない

西暦時代には、神によって処女懐胎させられるという話もあったが

神樹様がそうさせることはないと思いたい

天乃「…………」

友奈に与えられた友奈因子と言う高嶋友奈の魂の欠片

それが似ているようなもののような気はするものの

天乃は首を振って、考えを払った


天乃「大丈夫、さすがにエッチな要求は拒否するから」

そもそも、そんなことを要求してきたら俗物的過ぎて神ではないような気はするが

そういった問題が多くあった神もいるのだから否定はしきれない

それに、天乃に性的な接触を図るのは不幸にしかならない

最悪の場合、バーテックスを嗾けられる事さえあり得るだろう

天乃「私の体を好きかってさせるつもりはないわ」

友奈「神樹様は、分かってくれるでしょうか?」

天乃「分かってもらうのよ」

そうするしかない

天の神さえ倒してしまえば、

説得しきれずに神樹様の寿命が尽きたとしても問題はないかもしれない

だが、本当の意味で救われたいと願うのなら

色んな事があったとはいえ

これまで人類を守り続けて下さったことに感謝する心が僅かにでもあるのならば

神樹様をただ枯らせるわけにはいかない

天乃「大丈夫、簡単ではないかもしれないけれど……でも、なんとかするわ」


友奈「久遠先輩なら、何とかできそうな気はします」

人だって、妖怪だって関係なく仲間に出来ているのだから

神様の説得だって出来るだろうと友奈は思って

でも、だからこそ思う考えを舌の上で転がす

友奈「でも……」

天乃「何か不安なことでもある?」

友奈「いえっ、不安と言うほどのことじゃないんですけど」

天乃「なにかあるんでしょ?」

友奈「その……久遠先輩のことだからまた増やしちゃうんじゃないかなって」

また増やす

その言葉の意味はすぐに分かって、天乃は苦笑する

確かにそう

常識で考えれば増やしすぎている

天乃「流石にこれ以上は増えたりしないし、神樹様はそこまでならないでしょ」

友奈「でも、久遠先輩の説得で九尾さんみたいに人になろうとするかもしれないですよ」

天乃「神樹様自身に、もうそれだけの力は残ってないと思う」

そんな戯れが出来る余裕があるのなら神婚に踏み切ることはなかったはず

天乃「心配しなくても、神樹様に盗られるようなことはないわ」


友奈「久遠先輩は、盗られそうです」

友奈は否定して、顔をしかめる

浮かべた困り顔

瞳の奥で、考えが回っているのが見えた

天乃「確かに、今は病弱でそういうイメージがあるだろうけどそんなことないからね?」

友奈「今は、そうなので」

九尾や千景、若葉達がいるから

大丈夫と言えば大丈夫ではあるけれど

万全に近い状態の時だって、

奪われてしまったものはあるのだから

友奈「神樹様にも油断しないでください」

天乃「ええ、分かってるわ」

笑うと、笑い事じゃないです。と、友奈はむっとして

だから、天乃は微笑む

天乃「もし、盗られてしまうようなことがあったら……必ず取り返しに来てね」

友奈「えっ」

天乃「油断はしないし、そうなるつもりはないけど絶対にならないとは言い切れないから」

それでもなったとき、天乃に自力で抜け出す力があるとは限らない

だからと口にする天乃を、友奈は不安げに見つめて、拳を作る

友奈「絶対に、助けます」

そうならないのが第一ではあるけれど

もしも万が一そうなってしまうことがあったら

その時は何が何でも助け出すと、友奈は心に誓って、答えた


1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流有(みんなの状態、園子)
・   犬吠埼樹:交流無()
・   結城友奈:交流有(力の譲渡、大丈夫、助けて)
・   東郷美森:交流無()
・   三好夏凜:交流無()
・   乃木若葉:交流無()
・   土居球子:交流無()
・   白鳥歌野:交流無()
・   藤森水都:交流無()
・     郡千景:交流無()
・ 伊集院沙織:交流無()

・      九尾:交流有(高嶋友奈)
・      神樹:交流無()


2月3日目 終了時点

乃木園子との絆  105(かなり高い)
犬吠埼風との絆  127(かなり高い)
犬吠埼樹との絆  112(かなり高い)

結城友奈との絆  141(かなり高い)
東郷美森との絆  143(かなり高い)
三好夏凜との絆  170(最高値)
乃木若葉との絆  112(かなり高い)

土居球子との絆  59(中々良い)
白鳥歌野との絆  57(中々良い)
藤森水都との絆  49(中々良い)

  郡千景との絆  59(中々良い)
   沙織との絆  145(かなり高い)
   九尾との絆  80(高い)

    神樹との絆   ??(低い)


√ 2月4日目 朝 (病院) ※日曜日


01~10 大赦
11~20
21~30
31~40 沙織
41~50 夏凜
51~60
61~70
71~80 樹
81~90
91~00 東郷


↓1のコンマ


√ 2月4日目 朝 (病院) ※日曜日


沙織「久遠さん、調子悪い?」

天乃「ん……平気よ」

子供に会いに行きたくてもひとりでは行けず、

やれることがなくても早く起きてしまう天乃がぼうっとしていると、

精霊としてではなく人間として扉から入ってきた沙織は、おもむろに体調を訊ねた

体を起こして見える沙織の表情

あまり感情の起伏を感じさせないのは、何か考えていることがあるからだろう

天乃「なぁに? 園子たちのこと?」

沙織「そうだね……園子ちゃんは昨日と違って体調も良さそうだから出来ると思う」

天乃「やっぱり、祟りは治まってるのね?」

沙織「十分牽制したって判断なのかはわからないけどね」

昨日の夕方に風が来たのもそうだけれど、

友奈に力を渡したあたりから嫌にタイミングよく鎮まってくれたらしい

それは今日も同じようで

園子だけでなく夏凜達もみんな調子が良いのだ


天乃「そう? それなら――」

沙織「でも、久遠さんは平気?」

天乃「私も大丈夫」

心配そうに言う沙織は、

天乃の浮かべる笑みをじっと見つめて、逸らす

小さく息を吐くと「あのね」と切り出した

沙織「結城さんに母乳飲ませたよね? 昨日」

天乃「えっ?」

沙織「昨日の夜に戻ってきた結城さんから久遠さんの力を感じたから、そう思って」

まさか結城さんが勝手にしたわけじゃないだろうし。と

天乃が眠っている間にそんなプレイに興じたわけではないだろうと断定して、問いかける

天乃の力は非常に特殊だが、普通なら

そう、風達ならば気づくことは難しいが

沙織たち、天乃の精霊としての力を持ち合わせている存在ならば、感じ取ることは容易だった

沙織「分かってると思うけど、久遠さん自身の力を与える以上負荷がかかるんだよ?」


天乃「それは、うん。分かってるわ」

沙織「園子ちゃんに力を分けて大丈夫?」

実際問題、各勇者に力を分け与える際に

天乃にかかる負担が均一であるという保証はない

満開をして、神樹様に補われている部分が多ければ多いほど負担がないかもしれないし

逆に、補われている部分が多いからこそ負担が大きくなるかもしれない

もしも後者であるならば

天乃への負担は計り知れないものとなるだろう

沙織「本当に体調は問題ない? 少しでも変なところがあるならダメだよ?」

天乃「ぼーっとしてたから、心配してるのね」

沙織「だって」

天乃「大丈夫よ。友奈に返した時の負担は軽かったから」

理由は分からない

以前行ったことがあるからかもしれない

高嶋友奈の因子があるからかもしれない

でも、体調に問題はない


1、予定通り園子に力を流し込むわ
2、私にどんな影響があるか。それも含めて確かめる必要があるわ
3、ありがとう。でも、大丈夫よ
4、沙織は、みんなよりも私を優先するの?



↓2


では少し中断とさせていただきます
再開は21時頃を予定しています


ではもう少しだけ


天乃「予定通りに私の力を園子に流すわ」

沙織「大丈夫、なんだよね?」

天乃「万全かどうかで言えば八分だとは思う」

友奈に力を渡した気怠さや苦しさはないものの

その事実は変わらない

であれば、大きく見積もって八分

天乃「でも、園子に渡すのには十分なはずよ」

沙織「久遠さんの体への負担は? 平気なの?」

天乃「それは、分からないけど……でも、猶予はない」

沙織「……平然と言うんだね」

天乃「今までどれだけ私が苦労したか、知らない貴女じゃないでしょ?」

天乃は笑うようなことではないことを、笑って言う

思い返して、困った笑み

沙織はぐっと飲み込んで首を振る

沙織「過去がどうじゃない、今がどうかだよ」

天乃「止めても、やるわよ」

沙織「知ってるよ。知ってるけど……無理はしてほしくないよ」


沙織「今更こんなこと言ったところで無駄だけどね」

沙織は諦めて言うと困った顔でベッドに膝をかける

軽く踏み込んで軋む音

性的欲求を感じない沙織の手は、

ベッドの上の天乃の手に触れて、登って……重なる

沙織「みんなで一緒に居続けるために、頑張るんだもんね。前とは違う」

天乃「なら、分かるでしょ?」

沙織「でも、分かるよね?」

沙織だけでなく、

友奈も、みんなも

だからと言って無茶してほしくはない

沙織「……まぁ、良いよ。うん、必要なことだもんね」

天乃「みんながいてくれるから出来るのよ。それを忘れないで」

離れた沙織の手を掴んで

驚いて振り向いた沙織の目をまっすぐ見る

天乃「今も昔も、沙織は私の大事なパートナーよ。無力じゃないわ」

沙織「……狡い」

天乃「貴女が言うなら、そうかもしれないわね」

自由になった身体

下半身が動かせるからこその身軽さで沙織を引き、胸に抱く

天乃「ありがとう、頑張るわ」

天乃は笑顔で、そう言った


沙織と一緒に、園子たちのいる病室へと向かった天乃は、

真っ直ぐに園子のベッドへと、向かう

園子「天さん、来たんだねぇ」

天乃「ええ、体調はどう?」

園子「体調は快調、気分は上々だぜ~」

のほほんとした声で、園子は答える

茶化すような言葉選び、溶けそうな柔らか笑顔

シリアスに捉えられるべき流れを完全に断ち切る園子の態度に、天乃も笑みを浮かべる

天乃「それは良かった。園子は注射で良さそうね」

園子「点滴とかで慣れてるけど、それはパスがいいな~」

天乃「大丈夫、痛いのは一瞬だから」

園子「せめて天井のシミを数えてる間とか」

天乃「……シミ、ないわ」

天井を見上げる天乃の一言に

周囲の誰かの「えぇ……」という呆れ声

園子は苦笑して、友奈をちらっと見る

園子「私もゆーゆと同じが良いな~」


園子の甘える声は友奈に思い出させたのだろう

顔を赤くした友奈は顔を背けて布団に潜り、

察した東郷が「したの? しちゃったの?」と羨ましそうに友奈に声をかけて

なぜか「あれはそういう……」と、風は悟った言葉を呟く

園子「いいな~いいな~」

天乃「そんな楽しむようなものじゃないわよ?」

園子「苦しいことを注射かちゅーちゅーのどちらかでするってなったら、ちゅーちゅーが良いよね~」

東郷「良いと思うわ、そのっち」

夏凜「なんで東郷が答えてるのよ」

樹「友奈さんは……今見る限り大丈夫そうですね」

天乃「友奈は耐性があるからね。でも、風達は分からない」

だから先に園子に試す

もう一度それを話して、カーテンを掴む

天乃「病室から出て行ってとは言わないけど、覗いたりしないでね」

夏凜「覗かないから心配すんな。やるやつは仕留める」

東郷「大丈夫よ夏凜ちゃん。さすがに、私もそんなことしないわ」

睨まれ、東郷は否定する

そんなみんなを見て、園子は嬉しそうで

園子「……私の結果次第。なら、失敗は出来ないんよ」

覚悟を決めて、笑顔を見せた


安価下1~2

コンマ判定一桁
0最小 9最大


※コンマ+2(0を除く)


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

指定が抜けましたが、1.園子2.天乃


東郷「待ってください久遠先輩」

東郷「そのっちに母乳を飲ませるから見られたくない。と思っていると思いますが」

東郷「世に出たとき、いつも人の目がないところで授乳できるとは限りません」

東郷「外でぐずった赤ちゃんに授乳した時の周囲の目、それの練習をすべきでは?」

天乃「言われてみれば……」


夏凜「哺乳瓶使えぇっ!」


では少しだけ


天乃の力でもある母乳を与えたのはほんの数分間だった

祟りの影響もあって弱っていたのだろう

本当の赤ん坊のように弱弱しい唇の触れ方で咥えこみ、

歯ではなく唇での圧迫とは違う吸い付き

母乳が吸い出されていくのと同時に力が吸い出されていく

体の内側に溜まっていた力が次から次へと奪われて

授乳を終えるころには、

天乃は眩暈を感じて俯き、額を抑え、疲れ切ったため息を吐いた

天乃「……園子、大丈夫?」

何とか声を絞り出して、問いかける

ぼんやりとする視界を定めようと目を細めて、顔を上げる

天乃「園子?」

園子「けふ……っ」

母乳を飲んだ赤ん坊がげっぷをするかのような軽さだった

園子自身も、それが何なのかをすぐには分からずに、口元から滴り落ちたものに目を落とす

白いシーツがだんだんと、紅くなっていく

園子「ぁ……コプッ」

一度流れ出てしまえば

それを止めることはもう、意思ですら叶わなかった


天乃「園子っ!」

際限なくあふれ出てきていそうな血の流れが、

喉元で滞留して窒息しないように、仰向けにならないように支える

もう片方の手でナースコールを引っ張り出し、鳴らす

天乃「無理に飲み込もうとはしないで、肺に入るわ」

園子「あ゛ぅ……げっ」

時折血を噴き出して、寄り添い支える天乃までもが赤く染まっていく

天乃「……頑張って、すぐに先生が来てくれるから」

絶え間なく血が溢れ出ていく苦しさ

焼かれるようなのどの痛み

吐いても吐いても止まらなくて、息苦しくて、涙が出てきて死にそうになって、もう駄目だと諦めそうになって

退いたかと思って息を吸えば、また吐血する

地獄のような経験を経た天乃は、園子のもの言えない苦悶の表情をまっすぐ見ながら、背中を擦る

頑張ることの難しさを、天乃は知っている

けれど、諦めたら終わりであることも、天乃は良く知っているから

頑張れば何とか出来ることであると、分かっているから

天乃「お願い、辛いだろうけど……耐えてっ」


風「天乃……」

ナースコールを押してから数分も待たずに駆けつけてくれた医師たちに園子を託し、

ベッドの上で園子に寄り添うような姿勢のまま動かない天乃へと、風は恐る恐る声をかける

天乃「……覚悟は、してたわ」

風「覚悟って」

天乃「私の力だもの。園子には重すぎるから……ね」

園子ほど神樹様の力に満ちている子が

天乃の力を受けて無事で済むはずがない

友奈のように穏やかではいられないと、分かっていた

それでも、実行した

そうしなければならないと言う理由もあるが

園子なら大丈夫だと、信じているからだ

天乃「でも、実際に目の当たりにすると……耐え難いものね」

夏凜「天乃……?」

園子の血に染まった手は震えていて、握りしめた途端に指の隙間から滴る

天乃は血だまりを吸い込んだベッドの上で息を吐く

酷い鉄臭さと、それに交じった刺激臭を鼻に感じ、

布団の上に置いた手は、びちゃりと沈み込んで――

夏凜「風ッ!」

風「!」

慌ててベッドから飛び出た夏凜と、その声に反応した風が身を乗り出す

けれど、その手が届くよりも先に

天乃の体は血だまりの中に、崩れた


√ 2月4日目 昼 (病院) ※日曜日


01~10 樹
11~20 夏凜
21~30
31~40
41~50 友奈
51~60
61~70
71~80 東郷
81~90
91~00 風


↓1のコンマ

※空欄は夕方移行


√ 2月4日目 昼 (病院) ※日曜日


天乃「ん……」

異様に重い瞼を何とか持ち上げて、瞳に光を取り入れていく

ぼやけていた視界がだんだんと鮮明さを増すに連れて

すぐ目の前に、人がいるのが分かった

夏凜「まだ寝てなさいよ」

天乃「か、りん?」

天乃が声をかけるよりも先に、その人――夏凜は目を覚ましたことに気付き

手元の本から顔を上げると

天乃の前髪を払って、額に手を乗せる

夏凜「熱とかはなさそうだけど……まぁ、安静にしておいたほうが良いわ」

天乃「…………」

夏凜「何があったか、覚えてる?」

天乃「……ええ」

忘れるわけがない

園子に力を与え、吐血する姿を目の前で見て

力を与えたことによる反動で、天乃も気を失ったのだ

正直なところ、園子が運ばれるまで持っただけでも良く耐えた。と言われるくらいには消耗していた


夏凜「園子はまだ意識が戻ってない」

天乃「手術も治療も、血を止める程度が限界よね」

吐血が収まるのを待って、

集中治療室にでも寝かせて、見守っているのだろうと、天乃は思う

園子は病気じゃないし怪我でもない

天乃の力を受けたが故の拒絶反応だ

出血箇所を特定してふさぐくらいのことは出来るかもしれないが

それ以上のことは何もできない

夏凜「アンタ、大丈夫なの?」

天乃「ええ、私は貧血みたいなものだから」

夏凜「そうじゃない」

天乃「……園子のこと?」

夏凜「目の前で、しかもあんたの力が原因」

覚悟をしていたとは言っていたが

気を失う直前の反応は、大丈夫には見えなかったと夏凜は言う


天乃「そう、見えちゃった?」

夏凜「見えちゃった? じゃないわよ」

天乃「……ごめんなさい」

覚悟はしていたが、さすがに応えた

震えてしまっていたし、それは見られたことだろう

天乃は言い訳を考えることなく、夏凜へと目を向ける

天乃「ある程度の予想はしていたし、覚悟もしていたのだけど……ダメだった」

夏凜「でしょうね」

天乃「でしょうねって、軽くない?」

夏凜「私も同じ経験したことあるのよ。知らないわけじゃないでしょ?」

目の前で崩壊していくのを見てしまった

瞬く間もなく自分も相手も血に染まっていって……何もできなかった

呆然と、唖然と、

頭の中も何も、真っ白になって空っぽだった

夏凜「……アンタは平気?」


1、袖をつかむ
2、一人にはしないで
3、大丈夫よ。ありがと
4、園子は、大丈夫かしら
5、大丈夫って言ったら?

↓2


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


では少しだけ


天乃「園子は、大丈夫かしら」

夏凜「園子自身の頑張り次第なんじゃないの?」

天乃「そんな適当なこと……」

夏凜「出来ることなんて、身の回りのケアが限度でしょ」

夏凜達に出来るのは、

今の夏凜のように寄り添うことを除けば、

園子の身の回りのケアくらいだろう

痛みを分かつことも、苦しみを共有することも、肩代わりすることも出来ない

それを背負うことになった園子自身が、どうにかしなければならない

天乃の穢れを肩代わりした経験が夏凜にはある

今の園子に匹敵するなんて甘いことを言うつもりはないけれど、

それもやはり、自分の頑張り次第だった

夏凜「アンタが一番、良く分かってることでしょ」

妊娠と出産の苦しみ、それによる力のバランス崩壊

どれもこれも、他人にお願いできるようなものではなかった

絶対に死なないと、負けないと、天乃自身の頑張りが重要だった

夏凜「確かに、天乃の穢れなら、身を挺して引き受けることも不可能じゃないけど……してどうにかなることじゃない」

天乃「……そうね」


分かってはいる

しかし、だからといって何も出来ないのは嫌なのだ

園子への不安を感じる天乃のつぶやきを一瞥して、夏凜は手元の本を棚に置く

夏凜「ほんと、無力さを痛感するわよね」

天乃「私の時も、そうだった?」

夏凜「もどかしくて堪らなかった」

文化祭の二日目

一番楽しみにしていた劇当日の、前夜に寄り添った

その結果―ではないが―天乃が体調を酷く崩した事もあった

夏凜「何かできないか、してあげられないか。そう頑張って、報われないどころか悪化して」

自分が傍に居てもだめかもしれない

自分が傍に居る事こそが原因なのかもしれない

自責の念に駆られ、暴走しかけたこともあった

夏凜「……正直、どうにかなりそうだったわ」

天乃「別に、夏凜のせいじゃなかったのに」

夏凜「それはそうだったけど、私が一緒にいたせいだって思うに決まってるでしょ、あんなの」


自分が一緒にいたときだけ、かなり酷いことになった

天乃の先祖、久遠陽乃による未来予知的な力の譲渡が、

夏凜の先祖に行われていたということもあって

それが影響しているのではないかとか、嫌な考えばかりだった

夏凜「今回は天乃の力を渡したからだし責任感じるのは分かる。勘違いじゃないし、事実でもあるから」

下手に誤魔化さない

事実は事実だ

真実を否定したところで、覆すことが出来ることではない

夏凜「けど、園子は覚悟を決めた。あんたはその覚悟を信じた。そうでしょ?」

天乃「ええ」

夏凜「だったら、そんな不安そうな顔してたらダメなんじゃないの?」

天乃「……それは、分かってるのよ。でも、あんなものを見てしまったら恐れずにはいられない」

園子を信じられないのではない

それを蝕む力、それによる影響が恐ろしいのだ

天乃「夏凜も分かるでしょ?」

夏凜「分かるわよ」

その恐ろしさに震える手

天乃は自分のその手を嘲笑するように笑って言うと、夏凜を見て

その気持ちがわかるからか

夏凜は否定するでもなく同意して――その手を握る

天乃「っ」

夏凜「分かるけど……それに負けるな」


夏凜「怖いのは分かるけど、それに折れたら終わるわよ」

折れかけたからこそ、夏凜は確信を持って言う

天乃のそんな姿は見たくない

夏凜「園子を信じるんでしょ? だったら、信じて待つ……怖いなら、私があんたの傍に居るから」

今度は、今度こそは、ちゃんと

天乃の苦しみを少しでも軽減できるように

抱える不安を少しでも払拭できるように

天乃「夏凜……」

夏凜「今度こそ、あんたの力になるわ」

天乃「……違うわ」

今度こそなんかじゃない

いつも、夏凜は力になってくれていた

天乃の体調があまりにも不安定すぎて

不安にさせたし、怖い思いをさせたし、嫌な思いをさせただろう

でも、ちゃんと力になってくれていた

天乃「夏凜にはずっと甘えさせて貰ったわ」

握ってくれている手を、握り返す

天乃「ありがと」

夏凜「ま、まぁ……当然よっ」

思わず語尾が上ずった夏凜は

ちょっぴり気恥ずかしそうに目を逸らして「当然でしょ」と、言い直した


√ 2月4日目 夕 (病院) ※日曜日


01~10 友奈
11~20 夏凜
21~30
31~40 東郷
41~50 悪いこと
51~60
61~70
71~80 樹
81~90
91~00 大赦


↓1のコンマ


では少し早いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


友奈「………」ヒョコッ

天乃「あら、また来たの?」

友奈「ぁ……そ、その……なんというか」

天乃「大丈夫よ。おいで」

友奈「でも」チラッ


夏凜「別に気にしないわよ。そもそも、ここ天乃の病室じゃなくて私達の病室だし」

天乃「えっ」

では少しだけ


√ 2月4日目 夕 (病院) ※日曜日


天乃「そろそろ、みんなのいる病室に移動してもいいと思うの」

夏凜「祟りがどう影響するか分からないから駄目って言われてんでしょ?」

諦めなさいよ。と呆れたように言う夏凜だったが、

その気持ちは分かるからだろう

少し、笑みを見せる

何とかしたいが出来ない

そんな困った笑みだ

夏凜「祟りの件が解決するまでは、無理かもしれないわよ」

天乃「……いてわかるだろうけど、ここって一人だと何にもないのよ?」

夏凜「それは分かるけど――っと」

パタンッと、夏凜が本を閉じる

天乃に向けられていた目は扉の方に向かって

その先を確かめるべく体を起こした天乃は「あら……」と、声を漏らす

天乃「友奈?」

夏凜「分かるの?」

天乃「昨日一日中いた気配を忘れる私じゃないわ」

扉の奥

まだ病室に入ってきていない気配

それが友奈であると断言した天乃に応えるように、扉はゆっくりと開く

友奈「……」

顔を覗かせたのは、やっぱり友奈だった


天乃「ほら」

夏凜「こんなことで勝ち誇られても」

天乃「言い訳可愛い」

夏凜「は?」

自慢気な天乃と、

威圧的な視線を天乃に向ける夏凜

喧嘩のようで喧嘩に満たない他愛もないやり取り

それを横から見ていた友奈は

邪魔したと思ったのか

申し訳なさそうに、天乃たちのもとに近づく

友奈「……ごめんね、邪魔しちゃって」

夏凜「別に気にしてないわよ。私は」

天乃「夏凜は私といると退屈なんだって」

夏凜「んなこと言ってないでしょ」

天乃「ずっと本読んでたし」

夏凜「あんたが眠そうにしてたからでしょ」

天乃「なにか話してくれれば眠れたのに」

夏凜「あんたにとって私の話は校長の無駄話レベルなの?」


友奈「……や、やっぱり邪魔、だった?」

天乃「ううん、大丈夫。みんなでいる方が好きよ。私」

夏凜「……ちょうどいいから、友奈変わって」

友奈「えっ?」

夏凜「トイレにもいきたいし、少し天乃のこと任せる」

友奈「えっ、あっ、かっ」

夏凜の唐突な申し出―ほぼ強制―に困惑して出遅れた友奈が、

夏凜ちゃん。としっかり呼ぶよりも早く、夏凜は手を振って病室を出ていく

自分がいると友奈がやりにくいと思っての気遣い

だが、友奈はそれこそやりにくいのか

どうしよう。と呟く

天乃「…………」

一日中いなかったことをからかわれた?

いや、そんなことする子たちじゃない

なら、このオドオドしているような雰囲気はなんなのだろうか

友奈「……ごめんなさい」

天乃「ううん、別に謝らなくて大丈夫よ」


1、何かあったの?
2、東郷に余計なことでも聞かれた?
3、夏凜は勝手にやっただけよ
4、一緒に寝る?
5、話しづらい?


↓2


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


天乃「東郷に余計なこと聞かれた?」

友奈「…………」コクッ

東郷「友奈ちゃんっ!?」ガタッ

東郷「何も言ってないわ!」


夏凜「日頃の行いってやつよ」

東郷「冤罪だわ!」


では少しだけ


弱気な友奈は口を開きかけては、閉じてしまう

昨日の今日でこれなのだ

何か関係があるのだろうと思いつつ、天乃は友奈を刺激しないよう、見つめる

天乃「何かあったの?」

友奈「っ」

天乃「……無理に、言わなくてもいいけど」

びくっとした反応

元々大きく開かれていた瞳が股一段と大きくなったのを見て、

優しく、止める

気になることではあるけれど、無理に聞くべきではない。と。

友奈がこんなになってしまうこと

きっと、友奈にとっては憚られるようなこと

余り、口にしたくはないのだろうと、思って。

天乃「ただ、体調が優れないとかではないのよね?」

友奈「それは、はい……大丈夫、です」

天乃「ならいいわ。それだけ聞ければ大丈夫」


モジモジとする友奈は、きゅっと結んだ唇を開く

天乃を一瞥して、

なぜだか申し訳なさそうに目を背けて、また目を向ける

目と目が向かい合うと、逃げてしまう

余りのいじらしさに微笑んだ天乃は、

布団を軽く捲って、招く

天乃「入る?」

友奈「そ、それは……だめ、かと」

天乃「そう? 東郷達に止められちゃった?」

昨日一日中一緒にいたから

今日はさすがにダメだと門限を言い渡されたのだろうか

なんて――嘯く

カタン……と、友奈の座った椅子が揺れる

友奈「本当はここに来ない方がいいんだろうなって、思ったんです」

天乃「夏凜がいたから……って、わけではなさそうね」


天乃「前の穢れの時みたいにエッチな気分になっちゃった?」

友奈「……似たような、感じかもしれないです」

天乃「似たような?」

天乃の穢れを引き受けたとき

東郷と夏凜とも分け合ったのだが、

その時の友奈は性的な意味で、酷いことになっていた

東郷と一緒に色々とやっていて

一応、欲求の解消に一肌脱いだ天乃はよく覚えている

もしもまたあれと似たようなことが起こるのなら、一人では支えきれないかもしれない

だが、友奈は襲い掛かるようなそぶりは見せずに、うつむく

友奈「喉が渇くんです」

天乃「……まさか」

友奈「えへへっ」

照れくさそうな笑みを浮かべながら頬をかいた友奈は

多分考えている通りなんですけど……と、顔を赤くする

友奈「また、欲しくなっちゃって」


友奈「沙織さんに話したら、力が消費されてるせいだって」

天乃「そういうこと……」

友奈の反応から、もしかしたらとは考えていた

以前のように爆発的な貪欲さはないし、強引さもない

だから、このままなら大丈夫ではあるのだろうが

その渇きがどう作用するのかが分からない

友奈もそれが不安で聞いたのだろう

首を横に振ると、「どうなるかは沙織さんにも分からなくて」と、困ったように零す

天乃「私の力の消耗で求めちゃってるなら完全に消費すれば治まるとは思うけど」

友奈「飲まなくても平気なんですか?」

天乃「祟りを抑え込むのが目的だから、浸透しちゃえばしばらくは大丈夫なはずよ」

ただ、ここまで欲求が高まるとは思わなかったし、知らなかった

九尾もそんなことは教えてくれなかった

もっとも、天乃の穢れの暴走によって何が起きるのか

それを考えれば何となく分かりそうな気はしなくもないが。


天乃「私の体がもう少し丈夫なら、平気なんだけど」

園子が特別重かっただけだとは思うけれど、

風と樹、東郷に夏凜

四人にあげたのち、友奈と園子を含めた6人に与え続けることになったら、憔悴する

流石に力―母乳―を与えた相手全員に

供給を続けるほどの余裕はないだろう

天乃「ふふふっ身体を見てるから何かあるとは思ってたけど、飲みたいだなんてね」

友奈「わっ、笑わないでくださいっ」

天乃「だって、ふふっ」

友奈「っ~~~!」

友奈は照れくささこそあるが

迷惑をかけてしまうと言う罪悪感が先行してか神妙な面持ちで。

天乃はあえて笑う

恥ずかし気な表情と、必死さが愛らしくて

その悩みは決して気を落とすようなことではないと分かって欲しくて。

正直に言ってしまえば、今までのことを思えばまだまだ軽い問題だ

けれど、その気遣いは――

友奈「久遠先輩っ」

天乃「!」

力で勝る友奈に、勢いを与えてしまうのだった


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


東郷「飲めるのは一度だけ……夏凜ちゃんはいつ飲む?」

夏凜「天乃の体調が良い時」

東郷「確かに、母体が健康な時は美味しい母乳が絞れるはず……」

東郷「流石ね、夏凜ちゃん」

夏凜「は?」


東郷「そんな本気な顔しないで、搾らせてあげるから」

樹「みんなで東郷先輩搾りませんか?」ニコッ


では少しだけ


友奈「今は、私の方が強いんですよ?」

天乃「友奈……?」

友奈「こんな風に抑え込むのは違うって思いますけど」

無理やりするのは幸せになれない

なれてもそれを犯してしまった一瞬だけで、

得られた幸福以上の後悔をすることになってしまう

友奈「やろうと思えば、出来るんです。やっちゃダメだって、思うだけで」

天乃「友奈、落ち着いて」

友奈「落ち着いてます。大丈夫です。冷静です……多分」

天乃「多分って、ダメだと思うけど……」

両の腕を抑え込む友奈の力はそれほど強くはなく、

力任せに掴んでいないから痛みはない

それでも、馬乗りのような形で布団に押さえつけられる腕は上がらない

ほんの数センチ上がっても、すぐに抑え込まれてしまう

友奈「……コクッ」

天乃「だ、駄目よ……? 今、園子のこともあって消耗してるから……」


友奈「でも、久遠先輩が誘ったんです」

天乃「誘ったって……」

天乃としては、そんなつもりはなかった

ただ、友奈が思いのほか深刻に考えてしまっているから

そんな重く考える必要ないと、言いたかっただけで。

天乃「我慢できないの?」

友奈「……出来なかったら、もう重なってると思います」

天乃「そう、だけど」

普段の友奈を基準にしてみれば、

こうなっている時点で我慢は出来ていない

東郷や沙織ならこれも普通で

もはや冗談の一つとも考えられなくはないのだが

流石に友奈はおふざけで押し倒したりはしない


天乃「キスだけとか、大丈夫?」

友奈「続きしたくなると思います」

天乃「そうよね……ごめんなさい」

天乃たちの行為の始まりは基本的に、キスだ

それだけしてお預けなんて、無理だ

天乃だって状況が状況ならそれだけで終わりにされたら、困るし怒る

身体が自由ならとっ捕まえたりもするかもしれない

天乃「一緒に寝るのも、駄目よね?」

友奈「寝れないかもしれないです」

天乃「……でも、そのままじゃダメでしょう?」

友奈「…………」

友奈は悩ましそうに眉を顰めて、困ったように微笑む

大丈夫だと言いたいが、大丈夫ではないかもしれない

完全になじむまでの辛抱なのだが

やはり、簡単ではないのだ


友奈「久遠先輩、体がもたないんですよね?」

天乃「ええ、多分」

激しさに関わらず

園子で力を消費している今の天乃に、エッチな行為は難しい

普通の人なら体力の消耗で済むところを

体力の消耗とともに、力を消耗してしまう

そのせいで、貧血に似た症状が出る事もあるし

しばらく動けなくなってしまうこともある

そして、エッチの後動けなくなっているところを狙われる……なんていうこともあるが

それはまた別の話だ

友奈「だったら、我慢するしかない……ですけど」

天乃「?」

友奈「いい匂いがする」

天乃「え、ちょ、ちょっと!」

友奈「少しだけ、少しだけですから」

天乃「それ、少しにならないでしょうっ!?」


天乃「っ」

力を入れているわけじゃない

身体を重ねようとしているから、自然と体重がかかってきているだけだが

ぐぐぐっと……体がベッドに押し込まれていく

天乃「待って、友奈」

友奈「少しだけ……」

首元に、友奈の前髪が垂れてくる

天乃が友奈に出来るのは声をかけるくらいで

抵抗力は皆無に等しい

友奈「……ぁむっ」

天乃「んっ!」

友奈「ちぅーっ」

首筋を咥えて、吸い込む

母乳を飲む代わりにするように

吸って、吸って

友奈「ぺろっ」

天乃「ひぅっ」

ぺろりと舐める

友奈「……少しだけ、です」

そういう友奈の目は、輝いていた


01~10 若葉
11~20 千景
21~30
31~40 千景
41~50 若葉
51~60
61~70
71~80 夏凜
81~90
91~00 夏凜


↓1のコンマ

※空欄の現実は非情


ではここまでとさせていただきます
明日は出来ればお昼ごろから


夏凜「何してんの、あんた」

東郷「今、ここを通すわけにはいかないわ」

東郷「友奈ちゃんが頑張ってる。それを、邪魔させはしないっ!」

樹「荒縄とよく切れる私の――」

東郷「後者で良いわ、戦いましょう。樹ちゃん」カチャッ


風「やめんかっ!」


では少しだけ


天乃「んっ……やっ……友奈っ」

友奈「はむ……んっ」

天乃「っ!」

天乃の力が弱い分、

友奈は抑える力を必要としていない

むしろ、自然と掛かる体重だけで十分で

意識は天乃の体を貪る方に、大きく偏る

首筋に走らせていた舌から、唾液が糸を引き

友奈はわざと見せつけるように伸びた舌を唇の奥へと隠して、喉を鳴らす

堪えるたに顔を逸らした天乃の露わになった首筋はてかてかと光って

ほんのりと赤らんだ天乃の唇が、きゅっと締まる

天乃「やめて、駄目よ……これ以上は、駄目なの」

友奈「まだ、何もしてないですよ」

天乃「戻れなくなるわ」

友奈「大丈夫です……久遠先輩」

友奈の体がゆっくりと、降りてくる

上気して、少し大きく膨らむ胸に胸が重なって潰しあう

その圧迫感でにじみ出る母乳を感じて天乃が「やめて」と言うと、

友奈は勘付いたのだろう

すぐに離れて、天乃の胸元で、すんすんっと、匂いを嗅ぐ

友奈「あの、匂いだ」


天乃「駄目よ、友奈……少しだけなんでしょう?」

友奈「少しなら、良いんですよね?」

えっちなことを少し。から、母乳を少しへと考えが変わっている友奈の瞳は怪しく、

惑わされているような雰囲気があって

とてもではないが、言葉を聞き入れてくれそうにはない

天乃「そのままじゃどうせ吸えないわよ」

友奈「パッド、ついてるんですよね? 知ってます」

天乃の体にまだ自由がなかったころ

お世話をするために沢山学んだのだ

何をしたらいいのか、何ができるのか

何を使い、何を使うべきではないのか

だから、友奈は分かっている

友奈「……こうすれば、平気ですよ」

天乃「か、片手で抑えられるわけ――」

友奈「余裕です」

天乃の手首を交差させて、右手だけで抑え込む

力がないから簡単で、容易くて

止めてと懇願する天乃の瞳が閉じられ、友奈は唇を重ねようとして――

夏凜「そこまで」

思いっきり、襟首を引かれた


友奈「かっ、夏凜ちゃんっ?」

夏凜「流石にそれはダメよ。友奈」

友奈「久遠先輩が少しなら良いって……だから……」

夏凜は、首を振る

呆れているわけじゃない

困っているわけじゃない

ただ、悲しそうに。

その仕草に押されて天乃へと目を向けた友奈の言葉が消えていく

ベッドの上で両手を抑え込まれ

なすすべなく汚されていったなれの果てを、見たからだ

もちろん、夏凜のおかげで途中だった

天乃が多少許していたのなら未遂だと言えるかもしれない

だが、強引だったのは事実で

それをやってしまったのはほかでもない自分で

友奈は天乃の手を抑えていた右手を上げて、左手でつかむ

友奈「あ、あの……そのっ」

夏凜「……とりあえず落ち着いたら?」

友奈「でもっ」

夏凜「良いから、落ち着けって言ってんの」


夏凜「あんたは平気?」

天乃「うん……ありがとう」

夏凜「私にもあんたを放置した責任はある」

友奈の様子が普段と違うのは分かっていた

だから、ずっと二人きりにはせず

ちゃんと戻ってくることにした

けれど、それでも許しすぎたと夏凜は感謝を拒否する

友奈「ごめんなさい……少しだけ、だったんですけど」

だんだんと良く分からなくなってきて

歯止めも利かなくなっていて

気付いたら、夏凜がいた

乱されかけている天乃がいた

夏凜「多分、あんたの中の天乃の力が天乃を求めてるんじゃない?」

その欲求が、密接な距離と感じた匂いに増幅されて

惑わされてしまったのだ

夏凜「近づきすぎたのよ。あんた……しかも、エロいことしたし」

友奈「我慢、出来なくなっちゃったんだ」

我慢できなくなっちゃったんだ。と

友奈は繰り返して、天乃を見つめた


友奈「暫く、久遠先輩に近づかないほうが良いのかな?」

天乃「そこまでしなくても大丈夫よ」

友奈「でも、また……また久遠先輩に無理やりエッチなことしちゃうのは、嫌だよ」

幸せじゃない

心地よさを得ることは出来ただろうが

それはあまりにも自己中心的で

天乃「友奈なら1日か2日でも我慢したら大丈夫。こんな風にならないはずよ」

友奈「でも、久遠先輩……」

天乃「大丈夫。そんな暗い顔――」

夏凜「ストップ!」

落ち込む友奈を抱きしめようとした天乃を、ベッドへと押し戻す

近づきすぎて理性が消えかけたのに

抱きしめたりなんかしたら吹っ飛んでしまうだろう

夏凜は呆れたため息をついて、友奈はそそくさとベッドから降りる

天乃「……つい」

夏凜「笑ってごまかすんじゃないわよ。あんた、そういうことするから、勘違いされるし、襲われるんでしょ」

天乃「ごめんなさい」

夏凜「不用意に手を出さない。分かった?」

天乃「え、ええ……分かってるわ」


夏凜「友奈、体は平気なわけ?」

友奈「う、うんっ、平気……だよ」

夏凜「東郷にでも頼んだら?」

ぎゅっと、裾を握りしめて俯く友奈を一瞥する

天乃の力への欲求もそうだが、

性的欲求は火をつけられたままだろう

そのままでは、精神的に辛い

友奈「久遠先輩だって、出来ないのに私だけするのは狡いよ」

天乃「……私は平気よ、慣れてるから」

穢れが不安定だった時期は、

ほぼ一日中惑わされるようなことだってあって

身体が不自由だったから、自分で解消するわけにもいかなくて、堪えなければならない時もあった

だから、慣れてると天乃は微笑む

天乃「友奈は大丈夫でしょう? もしあれなら、夏凜が手伝うから」

夏凜「なんで私なのよ……東郷がいるでしょ」

友奈「東郷さんは多分、久遠先輩に手を出したこと知ったら色々してくるよ」


天乃の体調のことを考えて、手は出さない

だがその分、間接的に感じさせてくれる相手を貪りかねない

それはほかのみんなも例外ではなくて

特に、力を与えて以降はそんな状態が続くことだろう

友奈「自分で何とかしてみるから、大丈夫」

天乃「解消くらいなら、私がやっても――」

友奈「久遠先輩はエッチだからダメです……また、きっと、責めたくなっちゃう」

恥ずかしそうに、友奈ははにかむ

ふつふつと湧き上がる欲求

熱を感じる下腹部

戻る前にお手洗いにでも行くべきだろうかと

頭の中で必死に考える

友奈「夏凜ちゃん、止めてくれてありがと……それと、ごめんね?」

夏凜「気にしなくていいわよ」

友奈「戻って、大人しくしてるね」

天乃「何もしてあげられなくて、ごめんね?」

友奈「いえ、大丈夫です」

して貰う方が大変だから。と

友奈は困ったように言って、病室から逃げるように出て行った


√ 2月4日目 夜 (病院) ※日曜日


01~10 東郷
11~20
21~30 園子
31~40
41~50 友奈
51~60 千景
61~70
71~80 九尾
81~90
91~00 夏凜


↓1のコンマ


√ 2月4日目 夜 (病院) ※日曜日


天乃「……はぁ」

思わず、ため息が漏れる

えっちなことを中途半端にしてしまったせいか、

熱は冷めなくて、まどろみに沈むことも出来ない

かといって慰めるなんてしたら最後

明日は体調不良になることだろう

もはや命懸けの一人えっちなど、してられる状況ではないのに

天乃「友奈に慣れてるとは言ったけど……辛いわね」

東郷達が開相手をしてくれていたころは

求めればできた。やってくれた

でも、今は求めるわけにいかないし、やるわけにもいかない

天乃「友奈に、してあげられることはあったかしら」

自分が我慢しなければならないからと言って

友奈にまで我慢させる必要はなかった

友奈は襲いたくなるからと遠慮していたけれど。

天乃「何か、あったんじゃない?」


天乃の力による弊害への対処だったり、

性的な欲求への対処だったり

赤い顔、瞳に浮かぶ小さな雫

我慢していると分かる手の力の入り具合

下着の中はどうなっていただろうか……

天乃「んっ……!」

衝動を感じて、唇を噛む

目を瞑らず見開いて、友奈の姿態が浮かばぬようにと天井を見つめる

天乃「やだ……」

両手を抑え込んでいた友奈の手の感触が、戻ってくる

冷めていない熱が、夏凜が来るまでの時間を取り戻していく

やってはいけないのに、やりたくなってくる

友奈が言った「久遠先輩はエッチだから」と言う言葉が否定できないと

今更ながらに、思わされていた


1、精霊組
2、イベント判定
3、意地でも寝る


↓2


天乃「起きてたら……不味いわ」

起きていると考えてしまうし、熱は冷めない

このままではいけないと、目を瞑る

けれど、暗闇の中には友奈の顔が浮かぶ

性的な行為をしようと

天乃の体を貪ろうとしている、友奈の表情

罪悪感を押しつぶしたあの輝きのある瞳

力のない天乃は、怖くなかったと言えば嘘になる

けれど、それとは裏腹に体は友奈を求めた

今は友奈にも同じ力が流れているせいではあるのだろうが

嫌であるのと同時に、嫌でもなかった

天乃「ぁっ……んっ……だめっ、駄目ッ」

触れる右手を、左手で抑え込む

弱く繊細な腕は握ると痛いが、仕方がない


天乃「寝るの。寝ないと……だめ」

意識さえ落としてしまえば

あとは朝になってくれているはず

それを願って右手を抑え、固く瞼を閉じる

暗闇の中、火照った体の熱が衣服の中を蒸らす

触れたいと、慰めたいと

生唾を飲んでは唇を閉ざす

天乃「はっ……はぁっ……はっ、んっ」

呼吸が整わない

甘えるような声が漏れる

触っていなくても

触ってくれる誰かを呼んでしまう声

天乃「んっ……っは……はぁ……っ」

眠れ、眠れ、眠れ。と呪詛のように、祈る

次第に、身体の暑さに焼き尽くされていくように、

意識は煙に巻かれて、溶けていく

1日のまとめ

・   乃木園子:交流有(力の譲渡)
・   犬吠埼風:交流有()
・   犬吠埼樹:交流無()
・   結城友奈:交流有(衝動)
・   東郷美森:交流無()
・   三好夏凜:交流有(見守る)
・   乃木若葉:交流無()
・   土居球子:交流無()
・   白鳥歌野:交流無()
・   藤森水都:交流無()
・     郡千景:交流無()
・ 伊集院沙織:交流有(心配、予定通り)

・      九尾:交流無()
・      神樹:交流無()


2月4日目 終了時点

乃木園子との絆  106(かなり高い)
犬吠埼風との絆  127(かなり高い)
犬吠埼樹との絆  112(かなり高い)

結城友奈との絆  144(かなり高い)
東郷美森との絆  143(かなり高い)
三好夏凜との絆  170(最高値)
乃木若葉との絆  112(かなり高い)

土居球子との絆  59(中々良い)
白鳥歌野との絆  57(中々良い)
藤森水都との絆  49(中々良い)

  郡千景との絆  59(中々良い)
   沙織との絆  146(かなり高い)
   九尾との絆  80(高い)

    神樹との絆   ??(低い)


√ 2月5日目 朝 (病院) ※月曜日


01~10
11~20 園子
21~30
31~40 夏凜
41~50
51~60 ダメ
61~70 九尾
71~80
81~90 大赦
91~00 ダメ


↓1のコンマ


√ 2月5日目 朝 (病院) ※月曜日


目を開けるのも億劫になる倦怠感

腕を上げるのも面倒で、ため息すらつくのも躊躇う気怠さ

天乃「……あぁ」

無意識にやらかしたのか

それとも、夢の中でそういうことがあって体だけが満足してしまったのか

いずれにしても力が流れ出てしまったことには変わりがない

天乃「まずい、まずいわね……これ」

寝返りを打てない

ナースコールも押せない

何とか上がった腕を額に宛がう

天乃「はぁ……」

少しずつ

少しずつ、体に意思を通して、動かせるようにしていく

それと同時に訪れる湿っぽい不快感には目を瞑る

天乃「こんなじゃ、沙織のことも馬鹿にできないわ」


天乃「こうなるくらいなら、友奈にして貰うべきだったかしら」

友奈がしていれば、力は友奈に持っていかれる

だが、こうなっては力は流れ出ていくだけで無駄になってしまう

もちろん、行為をするだけで疲れてしまうため、

やらないに越したことはない

特に、みんなに力を渡さなければならない今

無駄にはしたくない

だから、友奈のことも断ったのだ

……が。

天乃「やだ、まだ残ってる……」

後処理にも糸を引くほどの欲求

友奈達には知られたくないと、ため息をつく

処理するのには、意外に時間がかかってしまった


1、精霊組
2、勇者組
3、イベント判定


↓2



√ 2月5日目 朝 (病院) ※月曜日


01~10 園子
11~20 樹
21~30 風
31~40 夏凜
41~50 千景
51~60 若葉
61~70 九尾
71~80 大赦
81~90 ダークネス園子
91~00 沙織


↓1のコンマ


√ 2月5日目 朝 (病院) ※月曜日


「久遠様、神婚の儀についてお話がございます」

天乃「……なんで、こんな時に」

一応、ノックはしてきたが

前触れがない大赦の神官の訪問

嫌悪感の強い表情で睨む天乃は

ため息をついて、布団を引き上げる

天乃「今すぐにやらないとダメ、とか?」

「いえ、ですが近いうちに行っていただく必要がございます」

天乃「なら猶予はあるんでしょう? なにも今来なくたって……」

「何か、困るようなことでも?」

天乃の不機嫌さ

何かしていたからなのかと

辺りを見回した神官の顔向きが、天乃へと戻る

「何かにおいますが、例の……久遠様の精霊が何か企てているのですか?」

天乃「そうね。デリカシーのない人を皆殺しにするかもしれないわね」

ぎゅっと布団を掴んで、顔を伏せる

声からして神官は女性ではなく、男性

アレの匂いをかがれたと、天乃は複雑に泡立つ心を宥めるために息を吐く


天乃「それで……神婚がどうかしたの?」

「久遠様から回答をいただいておりませんでしたので、伺うように。と」

天乃「あぁ……そういえば」

考えさせてとは言ったが、それに対しての回答はしていなかった

だから来ることになったであろう神官へと目を向け、

天乃は頷く

天乃「神婚は行うわ。そうしないといけない理由があるの」

「では――」

天乃「でも、勘違いしないで」

大赦の望みである、

人類の救済のためにやるのではない

勇者部みんなのため、

これからを生きるであろう子供たちや人々の為に行うのであって

命を糧にした救済を行うつもりはないと断言する

天乃「私は私達の望みの為にこの魂を懸ける。貴方達の望みは、叶えさせないわ」


「…………」

天乃「言いたいことがある顔してるわね」

「いえ、そのようなことは……」

天乃「仮面をつけてるのにそんなことがわかるわけないだろう?」

「…………」

天乃「分かるのよ。私」

天乃はあえて、笑みを浮かべる

仮面に隠れた男の顔

目に見えているものではないが、確かに分かってしまう

神官であれ、一人の人間だ

相手は【あの久遠家】であり、力を失いかけている少女

敬う気持ちよりも畏れる気持ちの方が大きかった今までとは違い、

もはや出涸らしである天乃を多少見下してしまう部分も少なからずあるだろう

頼まれる立場であることを利用している―ように感じる―話し方が特に来るのかもしれない

天乃「ふふふっ、ごめんなさい。からかったわ」

「久遠様……神婚は我々にとっても決して取りたかった手段ではないことを分かっていただきたいのです」


「大赦としましても、苦渋の決断でした」

天乃「まぁ、ね」

「久遠様も、よくご存じでしょう?」

出来ることはやろうとしたのだ

防人を使って攻勢に出ようとした

奉火祭を行って許しを請おうとした

だが、それらを阻んだのはほかでもない天乃たちだ

使う予定だった神樹様の種を奪い、

行っていた奉火祭は中断された

そうしている間に、神樹様の寿命は危うく

取り返しのつかないところまで来てしまった

天乃「まぁ……ね」

「ですので、不本意なことではあるのです」

どうかお判りいただきたい。

そう求めた神官は頭を下げる


「久遠様、神婚の儀を行うのは一週間後になります」

天乃「一週間って……」

「天の神による結界である外の炎は日に日に力を増しています」

このままでは、神樹様までもが燃やし尽くされてしまうかもしれない

一週間と言う時間も、

大赦なりに頑張って時間を作っての期日

これ以上伸ばすような余裕はない

「久遠様、勇者の皆様の代わりに、防人を護衛として付けます」

天乃「楠さん達を?」

「勇者の皆さまは本領を発揮できません。そんな状態では、防ぐことは難しい」

天乃「でも、防人の力で防げるものだと?」

「難しいとは思います。しかし、十分補えるかと」

そういった神官は躊躇いをかみ殺したように黙り込む

天乃はじっと神官を見つめて、その奥を探る


1、死ぬわよ。防人
2、お断りするわ。私にはみんながいる
3、防人には力はなくても数があるって?
4、言わなかった? 私は貴方達の望み通りにはならないわよ


↓2


天乃「死ぬわよ。防人」

はっきりと、言い切る

芽吹たちは頑張っている

勇者の力には劣るかもしれないが

それに匹敵出るようにと鍛錬を積んでいることだろう

だが、それでもだ

勇者でさえ死ぬことがあるように、防人も死ぬことはある

むしろ、勇者よりも確率は高い

天乃「まさか、そんなはずがないなんて楽観視しているわけではないんでしょう?」

「………」

天乃「そう、分かってはいるのね」

「なっ」

ただ黙っていただけ

それだけで悟ったように言う天乃に、神官は思わず声を漏らして

天乃の見つめる瞳と向かい合う


天乃「楠さん達はあくまで、時間稼ぎでしかないのね」

「……神婚が成立するまでの間。それだけなのです」

天乃「だからって捨てるの? 防人のみんなの命を」

「っ……捨てるなど!」

天乃「それと同じようなものでしょう?」

否定する神官を否定する

人類の救済を目的としている大赦は

多少の犠牲があっても仕方がないと考えているのだ

奉火祭もそうだが、

大を救う礎になるのであれば

小を切り捨ててしまうことは致し方ないのだろう

天乃「私は嫌よ。みんなを諦めたりはしない」

「ですが」

天乃「みんなだって、そう」

友奈たちが、諦めるはずがない

防人のみんなを犠牲に出来るはずがない

そのためにも……何とかしなければならない

天乃「貴方達が言及したい妨害の罪は、ちゃんと償う」

「!」

天乃「世界は、私達が何とかする。誰も、犠牲になんてさせないわ」

天乃は力強く、言い切った


√ 2月5日目 昼 (病院) ※月曜日


01~10
11~20 沙織
21~30
31~40 園子
41~50 風
51~60
61~70
71~80 夏凜
81~90
91~00 東郷


↓1のコンマ


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



東郷「久遠先輩は、雰囲気が違うわ」

樹「それ分かります」

樹「普通の人とはオーラが違うんですよね」

東郷「そうそう。あの犯してっていう雰囲気が堪らないわ」

風「そんなだから樹に縛られてるの、分かってる?」

東郷「……すみません、口が勝手に」


では少しだけ


√ 2月5日目 昼 (病院) ※月曜日


天乃「一週間……」

神婚を行うまでの猶予は一週間

その間に、みんなに力を与えて祟りに対しての抵抗を身に着けて貰わなければならない

友奈と園子は大丈夫ではないが、済んだ

夏凜、東郷はやろうと思えば出来るだろう

風と樹は分からないが

樹は満開をしていなかった分神樹様の力による抵抗力はなく

比較的軽く済むかもしれないという話だ

問題があるとすれば、天乃自身の体だろう

園子が一番重いとはいえ

一週間の間に四人に力を譲渡して体が耐えられるのか、分からない

友奈に与えた一昨日、園子に与えた昨日

二日連続で行った結果、気を失った

その程度で済んだことは喜ぶべきか、悩むべきか。

天乃「神婚の儀当日はさすがにダメ。みんなが万全である必要がある」

最後に行った勇者が体調を整えるために最低一日費やすと考えれば、

七日後の神婚の儀、その前日を療養日とするべき

つまり、猶予は五日だ


天乃「五日間で、四人?」

一日二人行えば二日で終わるが、それは絶好調である場合

絶好調である場合を除いて考えるとしても

最低でも一日一人を四日間連続で行う必要がある

それでなんとか、二日間の療養期間

天乃「今の、こんな体で?」

しかも、先んじて行った園子は体調を崩して目を覚ましていない

園子はいつ、戻って来ることが出来るのか

園子を基準に考える予定だったが、これでは考えられない

天乃「どう、するべきかしら」

夏凜や東郷、樹なら力を譲渡してもいいだろうが、

天乃自身の体が明日に間に合うのかどうか

そして、友奈のように訪れてくるようになってしまったら?

友奈の時は夏凜がいてくれたし

以降は千景たちがいるから大丈夫だろうけれど

そんな状態になってしまったみんながまともに戦えるとは思えない

だからこそ、決行の日までに猶予が欲しい

みんなに力を与えてから、最低一日は欲しい

可能であれば、二日間

やはり、ほぼ最短のスケジュールで挑む必要がある


天乃「私の体が、持つかどうか」

問題はやっぱり、そこに帰ってくる

園子の体調は心配だが、一番重い園子だからこそで

友奈は多少我慢ならなくなっていたけれど一日二日休めば収まるはずだ

友奈に近い東郷と夏凜は同じか、それ以上に問題はない

樹も風も、園子と比べればだいぶ軽く、友奈よりは少し重い程度

欲求は高まるだろうが、大きな問題は―天乃が耐えられない事を除けば―無い

天乃「…………」

ぎゅっと抱きしめるように身を屈める

手放された意識の解放もあってか、

性的欲求は沸いてこない

そもそも昨日は友奈の淫らさもあったからで

普段はさほどでもない

天乃「でも、一日一人のペースで返して平気?」

力が不足しすぎて、欲求不満にならないだろうか?

なる可能性はある

天乃「……欲求を解消して、みんなに力を渡して」

そんなこと、出来るのだろうか?

出来るかできないかで言えばできるだろう

だが……消耗は尋常ではないだろう


1、精霊組
2、勇者組
3、イベント判定
4、みんなに相談!


↓2


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


ゆゆゆいは夏から色々ありますが、
久遠さんは、早ければ今月中には2月14日目最終日まで行けそうです


では少しだけ


天乃「……悩んだら、相談」

今のみんなをさらに悩ませるのはどうかとも思うが、

神婚のことはすでに話してあるし、

その続きと考えれば、問題はない

と言うより、相談しない方が問題だろう

天乃「黙って無理することは出来るだろうけど」

確実に察しが付くだろうし、その状況で気付かれたら怒られる

しかも、かなり厳しく

みんながみんな友奈のようになるのだとしたら

ペナルティとして―性的に―散々な目に遭う可能性が高い

天乃「……」

ちらりと、松葉杖を見る

頑張ればなんとかなるが、無理は出来ない

天乃は諦めて、畳まれていた車椅子を引っ張り出す

天乃「千景、いたら手伝って」

千景「私で良いの?」

天乃「良いのよ。みんなのところに行くわ。お願い」

千景「分かったわ」

千景の手を借りて、天乃はみんなのいる病室へと向かう


大赦から言われた話と

そのうえでどうすべきかを考えた持論を、みんなに話す

神婚の儀までは一週間

みんなのことを考えれば休みなしで一日に一人

聞くだけでわかる時間の不足

神婚の儀まで一週間しかないという驚きすら飲み込んで

夏凜達は悩まし気に眉を顰める

夏凜「園子は戻ってないけど、強行するってわけ?」

天乃「そうするしかないと思ってるわ」

東郷「私や夏凜ちゃんはまだいいですが、樹ちゃんと風先輩は大丈夫なんでしょうか?」

風「気合と根性?」

ぐっと握り拳を作って見せる風だが、

誰一人として笑うことはなく、天乃は首を振る

天乃「さっきも話したけれど、樹は大丈夫な可能性が高いわ」

樹「私だけ満開してないのはそうですが、本当にそれだけで?」

夏凜「むしろそれが重要なんじゃないの?」

友奈「満開してる人よりも神樹様の力が弱いからだよね」


園子を含め、

満開を行った勇者たちの損なわれた身体機能を補っているのは、神樹様の力だ

天乃の力は穢れの力であり、

神樹様の力も天の神の祟りも関係なく相殺しようとする

そのせいで、満開をしていればしているほど症状が重くなるのと同時に

消耗も激しくなっていく

ゆえに、満開をしていない樹は祟りのみで

耐性はあるが満開をしている友奈や東郷とは同等に安全と言えるかもしれない

風「なら、東郷、樹、夏凜の三人……まぁあたし以外を優先したほうが良いんじゃない?」

東郷「いえ、それこそ風先輩を先んじて行うべきかと」

風「あー重いから?」

天乃「そうね。やるなら重い順」

夏凜「なら、私は最後ね。風、樹、東郷、私」

指を立てつつ順番を提示した夏凜は

軽く息をついて「でも」と続ける

夏凜「あんたは体的にきついんじゃないの?」


昨日の友奈の暴走には触れず、夏凜は不安げに天乃を見る

一番重い園子に返したというのもあるだろうが、天乃は気を失ったのだ

一人一人が園子ほどではないとはいえ

連日行うことによって積もり積もった体への負担は大きくなり

気を失うだけでは済まない可能性がある

それを分かったうえで……だろう

東郷が口を開いた

東郷「でも、そうしなければ神婚の儀に間に合わないわ」

風「大赦の言葉を信じるなら一週間しか時間がないし、天乃の言う通り療養期間は大事」

夏凜「それを考えれば、連日の消耗も仕方がないって?」

樹「確かに、久遠先輩には無理をさせることになっちゃいますよね」

出来ればそうしたくない、させたくない

そう言いたげな樹は夏凜を見て、東郷を見ると

自分の姉の方に向き直る

樹「お姉ちゃんは、やったほうが良いって思う?」

風「最終決戦を考えるなら……ね」

それが理由になると【無茶も致し方がない】と言っているようで

口にした風自身が、深い層に顔をしかめた


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


では少しだけ


風「本当にそれをやって平気なの?」

計画上では、実行後二日間の猶予がある

その間に回復できればいいが

出来なかった場合に、天乃はただの生贄になってしまう

もちろん、これは悪い方に考えた場合の話だが

だからと言って無視するわけにもいかない

天乃「そうねぇ……蓄積された疲労に潰されないとは限らないわ」

東郷「ですが――」

風「東郷、言いたいことは分かってる。けど、無視は出来ないでしょ?」

夏凜「最後の最後だからそこには目を瞑るのもありだとは思うけど、やっぱり」

友奈「夏凜ちゃん……」

最後まで言わなかった夏凜を見つめ、友奈は小さく想いのこもった名前を呼ぶ

今まで、苦しむ姿を見てきた

あるときは、誰よりも近くで見てしまったこともあった

それがあって、園子のことがあって

こんな時だからこそ賭けに出るべきだと思う一方で

ここまで来たのだからもう無茶はしないで欲しいという思いがある


夏凜「天乃は、やるつもりなんでしょ?」

天乃「万全じゃない貴女達を戦いに出したくないわ」

樹「ですよね……祟りも消耗しますから」

祟りによる消耗

そのハンデがあって、バーテックスの親玉と戦うのは厳しいだろうし、

天乃がそれを見逃すはずがなかった

先日の祟りによる弊害を感じさせなければ、まだ見逃されていた可能性もあるけれど。

見逃されていたからと言って、幸せになれるわけではない

天乃「夏凜は嫌なの?」

夏凜「嫌か嫌じゃないかの二択なら嫌よ」

樹「その二択なら、みんな同じ答えになるかと」

東郷「樹ちゃんの言うとおりね。久遠先輩が無茶するのを良いだなんていえないわ」

風は不快そうな顔をしたが実際問題、仕方がない

確実な生還を目指すのであれば、天乃の多少の無茶も必要なのだ


天乃「ふふっ、そうなるとは思ってたわ」

嫌か、嫌じゃないか

その二択ならば答えは決まっている

それは天乃も同じで、

みんなが無茶するのが嫌か嫌じゃないかで言えば

考えるまでもなく、嫌だと言うだろう

だから、天乃は笑う

天乃「そうよね、無茶してほしくない無理はさせたくないって散々言ってたもの」

風「でも、やるんでしょ?」

天乃「私が無茶しないと、みんなが無理をすることになるわ」

ただでさえ無茶なのに、

祟りが完全に残っていることで無理になる

みんなはそれでもやる―やらざるを得ない―が

そんなことさせるわけにはいかなくて


1、さっそく、風に力を渡すわ
2、そしたら、夜にやりましょう。風
3、最後の無茶に、しましょう


↓2


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


東郷「あの、一ついいですか?」

天乃「ええ、どうしたの?」

東郷「体調的に一人が限界なのは分かりますが……万全なら二人遊ぶことも可能ですか?」

風「万全が前提なら全員で囲むのが一番でしょ。もてあましそうだけど」

東郷「流石風先輩、いい考えです」

樹「万全なら、そういうのも面白いかもしれないですね」


夏凜「……」チラッ

友奈「……」フイッ


では少しだけ


天乃「さっそくだけど風、力を渡すわ」

風「えっ、い、今っ!?」

天乃「ええ、今から」

悲鳴に近い声を上げて身体を引かせた風は、

天乃や自分の周りにいる樹達を目だけで追って、天乃を見る

ほんのり赤いのは恥じらいがあるからだろう

風「みんないるんだけど……」

天乃「園子も同じだったでしょ? まぁ、貴女が嫌なら良いけど」

風「園子の時はカーテン閉めてたのに……」

天乃「流石にカーテンは閉めるわ」

園子にやった経験がある

すぐにみんなにもやる

それもあるが、破廉恥な理由ではないからだろう

天乃はカーテンを閉めておけばいいのではと言い切る

天乃「えっちなことじゃないのよ?」

風「それはっ、そうだけどさ」

ほら、こう、ねぇ? と、風は伺うように呟く


夏凜「ねぇ? なんていわれても困るんだけど」

風「夏凜は良いの!? 衆人環視の中授乳されるのよ!?」

夏凜「カーテンで仕切るって言ってるんだし良いんじゃないの?」

別に悪いことでもエロいことでもないんだし。と

夏凜は困ったように言いながら、息を吐く

衆人環視ではないにしても

見られている中でと言うのは、やや気になる

天乃は普段からエロいことも含めて精霊たちに見られているから、平気なのではと考えて

夏凜「場所、変えたら?」

天乃「別にいいけど、何かあったときに助けがある環境が良いわ」

東郷「それでこの場だったんですね」

樹「園子さんほどじゃないとは思いますが、何かあると怖いですもんね」

風「うぅ……で、でも、せめて、精霊のみんながいるだけの環境とかにしない?」

天乃「なら、私の病室に戻ったほうが良いわね」


天乃「それなら良いでしょ?」

風「ま、まぁ……その、ごめん」

天乃「ううん、仕方がないわ」

風の気持ちもわかるからと、

天乃は笑みを浮かべて、謝罪を拒否する

東郷達も特別な理由がなければ、個別で行うほうが良い

天乃「ごめんね、対処を優先しちゃったわ」

風「そんな謝らなくていいわよ、どちらかと言えば、晒す天乃の方が恥ずかしいでしょ?」

天乃「う~ん……どうかしら?」

交際している、肉体関係がある

不自由な時代には身体的なケアもしてもらった

恥じらいがあるかないかで言えば、あるけれど

そこまで大きな恥じらいは、なかった

天乃「とにかく、戻りましょうか」

風「あ、うん。じゃぁ、あたしが連れて行くわ」

天乃「お願い……みんなは、ゆっくり休んでてね」


樹「何かあったらすぐに呼んでくださいね」

沙織「何かったら精霊通信であたしが受け取るから大丈夫だよ」

ナースコールよりも精度も感度も速度も抜群だよ。と

沙織は冗談めかして言う

千景達がいるからだろう、心配そうな様子はない

その一方で、友奈は何か言いたげに目を向けたものの

天乃の目が向けられた瞬間、さっと逃げてしまう

自分がやらかしてしまいそうだった不安と

風先輩ならきっと大丈夫。と言う信頼

口出しすべきかどうか迷った末に友奈は苦笑いを浮かべた

友奈「久遠先輩、無理はしないでください」

身体は大事に……ですよ。と、呟く

天乃「大丈夫よ、そんな心配しなくても」

友奈よりは少し重いかもしれないけれど

園子よりは大分軽いはずだから

だから大丈夫。と、天乃は風に力を渡すべく、二人で病室へと戻ることにした


安価下1~2

コンマ判定一桁
0最小 9最大


※コンマ-1(0を除く)

※1、天乃、2、風


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

今日は久遠さんのお誕生日ですね、おめでとうございます
おかげで、被害は軽いようです


樹「久遠先輩の誕生日は、嫌なことが多いです」

友奈「うん……おうちの人たちが酷いことになっちゃったり……? あれ? そうだっけ?」

樹「? え、そうです……え? いえ、そんなことないですよ!」

友奈「あれっ?」


東郷「悩んだ時は久遠先輩と淫らなことをすると良いわ」

風「気持ちは分かるわ~、気持ちはね」


では少しだけ


√ 2月5日目 夕 (病院) ※月曜日


天乃「……大丈夫そうね」

力が持っていかれた感はあるものの、

気怠さなどは感じられないし、体調的な不安はない

それは風も同じで、

友奈のように眠ってしまっているけれど、

魘されていたりしないのも同様で、問題はなさそうに見える

天乃「風がこれなら、みんな平気かしら」

一番影響があるだろう風でこの軽さなら、

東郷や夏凜、樹は問題なく終えられるはず

問題があるとすれば、累積する天乃の負担だけだ

天乃は風を見つめながら苦笑する

きっと、今のような余裕はなくなる

笑ってごまかすことも可能だが、見抜かれるだろう

天乃「……気を失う程度で済めばいいけど」


風を含めた4人で園子一人分か

それ以下か、それ以上か

満開の合計数で言えば圧倒的に少ないのだが、

それだけで決まるわけじゃない

直接会うことはなかなかできていないが、

子供の為に提供する分もある

もちろん、それを込みで今回のことは考えているから

その点に関しては問題ないだろうが。

天乃「一人一人の消費を考えると、辛そうね」

他人事のように呟く

やると決めたことだから、それは考えても仕方ないのだと、改めて


1、風に触れる
2、精霊組
3、イベント判定

↓2


では、短いですがここまでとさせていただきます
明日は出来れば少し早い時間から


風先輩との触れ合い


では少しだけ


眠る風に、手を伸ばす

性的な欲求に求められているわけじゃないけれど

何となく、触れたくなった

そんな言い訳を心にして、温もりに触れる

人肌よりも少し熱い

天乃「熱、あるのね」

魘されるほどではないが

穢れの力を取り込んだことによる乱れはあるのだろう

時折寝返りを打つような仕草を見せては、

じんわりと浮き出た汗が流れ落ちる

天乃「貴女も、えっちなことしたくなる?」

友奈のように、自分のように

熱っぽさは体調不良なんかではなく

性的な欲求ゆえの物だったりするのだろうか

だとしたら、また、友奈のように来るのだろうかと考える


風「ん……」

きゅっと、動く

普段は中学三年生

姉として、先輩として

頑張っている風も、こうしていればごく普通の子供で少女

それも、あと数ヶ月で高校生になる

受験勉強は時折していたらしいが

このままでは学力的な問題で合格できない可能性がある

中学時代に勤しんだこととして勇者のことを出せば

大赦の繋がりもあって多少、優遇されるだろうけれど

風がそれを望むわけがないし

神樹様の寿命が途絶えるのだとしたら、大赦云々、高校云々の余裕もないかもしれない

だからと言って、受験しない理由にはならないが

天乃「私……結局進路決めてないわ」


天乃「選択肢なんて、あってないようなものだけど」

今の状態で進学は難しい

以前はついて行く程度の勉強もできていたが

妊娠以降は本当に辛くて、苦しくて

独学での勉強なんて全くできなかった

授業を受けている沙織や風がノートを見せてくれはするけれど

それで追いつくことなんて無理そうで

かといって、勉強の余裕はなくて

天乃「風は、みんなは……こんな私でも平気?」

少しだけ身を寄せると

風の胸元の柔らかさが胸にぶつかる

ほんのり汗ばんだ匂いを感じる

天乃「……もし、みんながいなかったら私はただただ、えっちな子になりそうだわ」

寄って、抱く

眠っている風は、少しだけ窮屈そうな声を漏らした


01~10 風(えっち)
11~20
21~30 風
31~40
41~50
51~60
61~70 風(えっち)
71~80
81~90
91~00 風


↓1のコンマ

※空白なら起きない


ではここまでとさせていただきます
明日は出来ればお昼ごろから


東郷「おバカ天然属性の久遠先輩……?」

東郷「……東郷「ちょっと見てみたいわ」

東郷「あと、久遠先輩はエッチですよ? ただただえっちで可愛い先輩です」

天乃「何言ってるのよ……おバカ天然って友奈のこ――」

友奈「つまり、えっちなことに没頭すれば完全に一緒ですね」ニコッ

天乃「あっ」ドサッ


では少しだけ


風「ん……天乃……?」

天乃「ぁっ」

ゆっくりと瞼を上げた風は、

自分の体が軽い拘束感に覆われている事を感じたのだろう

まだ眠気の残る視線を下げ、天乃を見ると腕を回す

風「どうしたのよ……死ぬかと思った?」

天乃「そういうわけじゃ、ないけど……」

風「じゃぁ、どうしたの?」

覚醒しきっていないふんわりとした声色

妹に見ているわけではないだろうけれど、

眠っている自分に抱き着いているというのが違和感を覚えさせるのかもしれない

心配そうに言う風の腕の力は少し緩んで、天乃の頭に触れる

天乃「ちょっ」

風「良いから、良いから」

なでなでと、風の手が動く

半無意識的な優しさは心地よくて、少し気恥ずかしくて

天乃は「そうじゃないのに」と、呟く


風「こうしてると、天乃も女の子よねぇ」

天乃「普段の私は何なのよ」

風「……女性?」

天乃「なにそれ」

風「大人びてるってこと」

ぎゅっと、天乃の体を抱いた風は、

髪に顔を埋めて、すんすんっと鼻を鳴らす

天乃「なっ、何してるの!」

風「ずっと寝てるのに、相変わらずいい匂い」

天乃「やっ」

風「柔らかいし、あったかいし、いい匂いだし……」

頭に触れる右手と、腰に触れる左手

左手はだんだんと下がって、お尻にまで下る

天乃「っ!」

風「……誘ってるんでしょ?」

天乃「ちょ、ちょっと……っ」


1、止める
2、受け入れる

↓2

※2は判定有


01~10
11~20 樹
21~30
31~40 夏凜(止める)
41~50
51~60
61~70 友奈
71~80
81~90
91~00 夏凜(止める)


↓1のコンマ


風「何……? 誘ってたんでしょ?」

天乃「ちが、それは、違うの……」

力を与えたことによる均衡の崩れ

それによって余計に沸き立った将来への不安があったからで

性的に誘うつもりはなかった

けれど、風にとっては性的な欲求を刺激されるものだったのだろう

風は寝起きでありながら、したそうで

天乃「……母乳飲まないって約束できるなら」

風「ん、分かった」

風の体に押し当てていた手を引いた瞬間、

距離は瞬く間に詰まって、抱きしめられる

一瞬の圧迫感、黒く染まる視界

目の前が明るくなった時に見えたのは、

天井と、僅かに紅潮した風の笑み

天乃「待って、あと一つ! あと一つ約束!」

風「っ」

もう一度攻めに回ろうとした風を制して、天乃は声を上げる

出来るのは、それだけ

止める力は天乃にはない

風「何? 脱がせちゃダメとか?」

天乃「それは良いけど……あまり、激しくしないで」


風「えっ……」

天乃「?」

風「あー……それ、約束しなきゃダメ?」

恥じらいを感じる頬、少し潤んだ橙色の瞳、揺れる唇

膨らむ乳房を隠す寝間着の、横に逸れたボタン

愛したい

情熱的に、果てしなく

そんな欲求に生唾を飲んだ風は、

泳ぎだす瞳を隠すように目を閉じる

風「は、激しくって、ちなみに線引きとかしてる?」

天乃「え……あ、えっと」

風「曖昧?」

天乃「……気を失わない程度?」

伺うように答えた天乃の目の前に浮かぶのは、笑顔

なんだそのくらいか。という安堵

風「それなら、大丈夫大丈夫。安心して、身を委ねて」

天乃「待って、安心できない。なんだか怖いわ」

風「……三度目のお預けは、無しでしょ?」

にっこりと見せられた笑顔は、

大丈夫なんて言葉を信じるにはあまりにも怖かった


天乃「んっ」

風「ちゅっ……ん」

始まりはいつもと変わらない

唇を重ねて、触れさせて、押しつぶして……心を奪う

重ねるたびに聞こえる小さな声

胸に当たる豊満な乳房

手で触れたい、キスをしたい

そんな欲求の代価のように唇へのキスをしながら、

天乃の手を握る

小さな手、弱い力

少女らしさと言っていいのか分からないけれど、

勇者ではない普通の女の子のような弱弱しさを感じる

風「っふ……」

天乃「っは……ぁふ……」

風の唇から糸を引く

天乃の口元からかすかに溢れ出ていく

どちらの物とも分からないそれを、風がぺろりと舐め取る

天乃「んっ」

風「久しぶりだから……燃えるかもいや、萌える。わね」

上体を起こし、天乃の手を離れた右手で口元を拭う

満足げに、しかしまだまだ不十分

鳴りやむことを忘れた心音の激しさ

高揚感に熱されていく息を吐いて、飲み込む

疼く体は、重なりを求めて天乃に触れていく


天乃「ほんとに、駄目だから……っ」

風「ふふっ……ちゅっ」

天乃「んっ」

不要な言葉は、口を塞いでせき止める

キスをしている間、握り返される手に愛おしさを感じて

ほんの少し長く唇を重ねると、

ちょっとだけ苦しそうな声が漏れて、慌てて離れる

天乃「はっはっはぁ……んっ」

風「その呼吸、何とかならない?」

天乃「はっ? なっ」

驚いた声を漏らした天乃の唇を、奪う

ねっとりとした温もり、溢れかえるどちらかの唾液

唇だけから、舌同士のキスへと移ろう

こくりと唾を飲む

そんな仕草さえも艶めかしく思えてしまう

整っていない荒々しさの感じられる呼吸が思いを募らせる

風「だめ……全部好き、天乃の全部が好きだわ。あたし」

ぬちゅりと淫靡さの滴る音を鳴らしながら離れて、風は呟く

始めてしまえば終わるまでは止まれない

想いを改めて、風は天乃と唇を重ねる

何度も、何度も

今までできなかった分を取り返すかのように


√ 2月5日目 夜 (病院) ※月曜日


01~10
11~20 風
21~30
31~40 夏凜
41~50
51~60 おやすみ
61~70
71~80
81~90 友奈
91~00


↓1のコンマ


√ 2月5日目 夜 (病院) ※月曜日


夏凜「……やった?」

天乃「ええ、しちゃった」

夏凜「アン――」

風「あ、あたし! あたしが、つい我慢できなくなっちゃったからなのよ!」

詰め寄りかけた夏凜と天乃の間に割り込むように身を乗り出して、

風は慌てて声を張る

えっちなことを始めてからはもう完全に起きていたけれど

そこで止まることが出来なかったのは自分だ

抱き着いてきていた天乃の柔さと女の子の匂い

その誘惑が強かったのもあるが。

風「だから天乃はあんまり叱らないで」

夏凜「あんたも同罪なのに何言ってるのよ」

風が天乃が

それ以前の問題だと言う夏凜はため息をついて、天乃を見る

心配そうな瞳が、天乃の心を揺さぶる


天乃「……ごめんなさい」

夏凜「別に謝れだなんて言ってないでしょ。体は?」

天乃「平気」

夏凜「風は?」

風「あたしも、まぁ……」

申し訳なさそうな風と天乃の答えを聞き、

顔をしかめながらも、来客用の椅子に腰を下ろす

夏凜「馬鹿じゃないの?」

風「面目もない……けどっ、ほんとっ、我慢できないわよ?」

夏凜「それでもすべきだって言ってんの。天乃がエロいことするのは命懸けだって忘れた?」

風「忘れてないけど……いや、まぁ、ごめん……」

正直な話、

そのことは頭の片隅に追いやられてしまっていた

風「暫くできなくて、我慢してたのもあると思う。ごめん、天乃」



1、受けることにしたのは私だから、謝らないで
2、誘ったのは私だもの……風を怒らないで
3、心配なら、夏凜が優しくえっちしてくれればいいじゃない
4、今まで体調不良が続いてたから、私も少しはしたかったの


↓2


天乃「受けることにしたのは私だから、謝らないで」

風「けど」

天乃「それに、抱き着いていた責任もある」

風の言葉を遮って、天乃は微笑む

元々は誘うような意図なんてなかった行為

でも、それが結果的に誘いであったこと

欲求に揺れる風を受け入れることを決めたのは変わらない

風「でも、自制心が足りなかったのも事実だから」

天乃「風……」

風「確かにいい匂いだったし、柔らかかったし……エロいことしたいって思ったけど」

そこで我慢するべきだった。と、風は申し訳なさそうに言う

互いに、相手が自身のことを悪く言うのは認められない

そんなやり取りを前に、夏凜は呆れたように首を振る

夏凜「その調子なら、本当に大丈夫そうね」

天乃「うん、ごめんね夏凜」

夏凜「だから謝らなくていいって言ってるでしょ」


夏凜「大丈夫ならいいわよ、もう」

天乃が持つ穢れの力によって性的欲求が高まることや

天乃自身がそれを必要とする体質であることも理解してる

だから、強く言う気はないし、

身体が無事ならそれでいいとも思う

だけど、心配なのは心配で、不安は不安だ

夏凜「力あげるたびに必要な感じなの?」

天乃「そう、ね……少し必要になってる感じはあるわ」

夏凜「あー……じゃぁ、止めないほうが良かった?」

天乃「ううん、そんなことない」

あの時はまだ、必要だとは思っていなかった

でもしなかったせいで、朝起きたら酷いことになっていて

結局必要なのだと思わされた

この体はもう、えっちなことが必要不可欠なのだと

だからこそ、そんな自分が中卒で終わる将来への不安が大きくなってしまう


風「渡すたびに必要なら大変なことになるんじゃない? 大丈夫?」

天乃「ええ、負担は想定よりも大きくなるかも」

風「そんな些細なことみたいな……」

天乃「考えるべきことではあるけれど、祟り対策をしない選択肢はないわ」

別に、我慢してもいい

その場合は多少、体の拘束が必要になったりするかもしれない

もしかしたら、身体が外因的な快感ではなく

内因的なもので満足しようとした結果かもしれないが

少なくとも、手を拘束しておけば変なことはしないはず

それで今日みたいなことになったら、また考えるしかない

風「無理、し過ぎじゃない?」

夏凜「ほんと……流石に4連続はまずいんじゃない?」

風「あれ? やる気なの?」

夏凜「んなっ……や、やらないわよ! 天乃が、必要なら、べつだけど」

批判した手前

やるとは言えなかったのか、言ってしまったことの気恥ずかしさか

頬を染めた夏凜は顔を逸らして、言い返した


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


友奈「そっかぁ」ニコッ

友奈「風先輩とは、したんだ。私はダメだって、拒否したのに」

天乃「あっ……それはね? えっと――んぐっ」グッ

友奈「言い訳なんて、良いです。久遠先輩がその気なら、私は私のやり方で、久遠先輩とやるだけですから」


東郷「なんて、修羅場になっていたかもしれないわ」

友奈「えぇっ!? そんなことしないよ!」

友奈(ショックで、ちょっと色々言っちゃうかもしれないけど)


では少しずつ


夏凜「風、天乃とやったことあんまり話すんじゃないわよ?」

風「ん? あー……それもそうね」

一瞬、なぜかと言いかけた風は

その理由を瞬時に察して、髪を掻く

自慢するようなことではないのだが

久しぶりと言うこともあって気持ちは昂ってしまっている

みんなもそうなのだ

天乃とそういう触れ合い方をするのは久しぶり

えっちなことを知らないのであればいいのだが

半端に触れ、興味も大きい時期に長いお預け状態

出来るのであればしたいと思うのは当然で。

風「樹達もしたいって言いかねないわね」

夏凜「樹も……まぁまぁ強いんだっけ?」

天乃「なんで私を見るの?」

夏凜「経験者でしょ。あんた」


夏凜「樹の性欲がどうかって話」

経験者と言う言葉でも首を傾げそうな目をする天乃を一瞥し、

ため息交じりに率直な言葉を吐く

妹のことと言うのもあって、ちょっぴり顔をしかめる風だったが、

以前樹と二人で天乃とまぐわった経験があるからだろう

軽くうなずく

風「樹は我慢もするけど、やるときはやるわよ」

天乃「……やめてって言えば、やめてくれるけど」

夏凜「そりゃみんな止めるでしょ……」

行為に没頭し始めたら止まるかはさておき

やる前なら、止まってくれるだろう

たとえ、どれだけしたくても。

夏凜「何はともあれ、明日はまた別の奴にやるんでしょ?」

天乃「ええ」

夏凜「だったら、今日はもう無理せず寝なさい……風は戻ってきて」

風「えー」

夏凜「えーじゃないわよアンタ。やった後の匂いがする天乃と二人きりになんかしておけるわけないでしょ」


千景たち精霊もいるのだが、

それでも不安にはなってしまう

天乃が受け入れたとはいえ、普通に見逃してしまうのだから

必要なことだったのだから仕方がないことではあるのだが

夏凜「…………」

天乃「……なにか考え事?」

夏凜「どうにかならないかって思ったのよ」

天乃「どうにかしたいけど、選んでいられないわ」

えっちなことは命懸け

だけど、それを避けて通れないからと言って止めるわけにはいかない

天乃「大丈夫、ちょっと頑張るだけだから……ね?」

許して。と

ねだるように見上げてくる笑みを、夏凜は困った様子で受け止める

駄目だと言っても聞かない

だから、いや、でも

いくつかの言葉を並べて、目を伏せる

飲み込んだいくつもの言葉から出てくる何かを吐き出す

夏凜「無理だったら無理って言いなさいよ?」

天乃「ええ」

止められない

止めても、どうにもならないことだから

これが本当に最後になるように願うことしかできなかった

1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流有(タイムリミット、授乳、えっち)
・   犬吠埼樹:交流有(タイムリミット)
・   結城友奈:交流有(タイムリミット)
・   東郷美森:交流有(タイムリミット)
・   三好夏凜:交流有(タイムリミット、無茶)
・   乃木若葉:交流有(タイムリミット)
・   土居球子:交流有(タイムリミット)
・   白鳥歌野:交流有(タイムリミット)
・   藤森水都:交流有(タイムリミット)
・     郡千景:交流有(タイムリミット)
・ 伊集院沙織:交流有(タイムリミット)

・      九尾:交流無()
・      神樹:交流無()


2月5日目 終了時点

乃木園子との絆  106(かなり高い)
犬吠埼風との絆  130(かなり高い)
犬吠埼樹との絆  112(かなり高い)

結城友奈との絆  144(かなり高い)
東郷美森との絆  143(かなり高い)
三好夏凜との絆  170(最高値)
乃木若葉との絆  112(かなり高い)

土居球子との絆  59(中々良い)
白鳥歌野との絆  57(中々良い)
藤森水都との絆  49(中々良い)

  郡千景との絆  59(中々良い)
   沙織との絆  146(かなり高い)
   九尾との絆  80(高い)

    神樹との絆   ??(低い)


√ 2月6日目 朝 (病院) ※火曜日


01~10
11~20 樹
21~30
31~40
41~50 園子
51~60
61~70 九尾
71~80
81~90 東郷
91~00


↓1のコンマ


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


あと6日


では少しだけ


√ 2月6日目 朝 (病院) ※火曜日


天乃「……っはぁ」

目を覚ましてすぐ、息を吐く

昨日のえっちなことの影響もあって体調を崩す可能性もあったが、

力を失った倦怠感はあるが、体調不良にまでは陥っていない

この状態ならば、次の授乳と言うべきか

力を与えることが出来るだろう

ただ、その次は難しいかもしれない

天乃「残ってるのは……」

樹、東郷、夏凜

言わずもがな、最も耐性のある夏凜は最後

満開を行っていない樹と

穢れの身代わりとなった経験があるが、

満開を数回行ってしまっている東郷はどちらでもいいと言えばいいだろう

どちらかと決めるのであれば東郷の方がいいのかな。と、天乃は思う


樹は、以前までも満開を使っておらず、

今回のシステムに切り替わってからもまだ、満開を使っていない

その一方で、東郷は以前に満開を行っており

今回のシステムに代わってからも満開を使ってしまっているし

今回に限っては代償はないと言っても、

それによって何らかの変化が起こっている可能性はある

天乃「……東郷、ねぇ」

友奈と風があの状態

なら、東郷はどうなってしまうのか

授乳行為の延長線上でそのまま押し込まれてしまうのではないか

そんな不安を覚えて、苦笑する

天乃「流石に、言えば止めてくれるわよね?」

それは、希望だ

東郷が、風や友奈のように

比較的軽い症状で済んでくれると言う祈り

だがむしろ、日に日に重くなっていくのは天乃自身だ


1、さっそく、東郷に力を渡す
2、精霊組
3、勇者組
4、イベント判定


↓2


天乃「……時間は、有限だもの」

一昨日に友奈、昨日に風

友奈とはエッチなことしなかったが、

朝に大変なことになってしまっていて

だからと……風とはエッチなことをしてしまった

本来ならばゆっくりするべきなのだろうけれど、

そんな時間はないと、天乃は首を振る

夏凜や精霊のみんなは良く思わないかもしれないが

東郷がいるみんなのところへ向かうべく、松葉杖に手を伸ばす

天乃「…………」

握る力は限りなく、弱い

左足以外を取り戻した頃よりも、弱い

握るだけで軋む感じのする骨

身体を支えようとして震える右足

松葉杖にかかる負担が目に見える振動

天乃「危ないわね」

思わずつぶやいて、歯を食いしばる


一歩一歩、慎重に進む

千景たちに助けてと言えば、昨日のように助けてくれる

でも、無理はさせて貰えなくなる

無茶することも渋られてしまう

それが、勇者部にとって不利益になるとしても

天乃の命が危険に晒されてしまうのであれば、止められてしまう

もちろん、精霊や勇者部

みんなでの話し合いをしてでの決定になるだろうけれど

満場一致になることは避けられない

天乃「っ……車椅子の方が、良かったかしら」

手すりのある壁に腰かけながら、ひと休憩

少しでも大丈夫なアピールのためだったけれど

流石に無茶をしたのではと、汗を拭う

天乃「はぁ……でも、頑張らないと」

これで最後、これが最後

だから、今は無茶を重ねてでも頑張ろう

天乃はそう意気込んで、微笑んだ


東郷「私ですか?」

樹「東郷先輩は満開をしているから……でしょうか?」

自分ではないのは、

園子が重い症状に見舞われている原因である満開のせいではと考え、首をかしげる

満開をしていない自分としている東郷では

明らかに、優先順位は東郷が上だ

風「ほ、本当にやるわけ?」

天乃「ええ」

風「でも」

天乃「大丈夫よ。何とかなるわ」

えっちなことをしてしまった手前

東郷のことを言えないが、大丈夫なのかと伺う風に笑みを浮かべる

東郷だって無理強いはしないはず

もちろん、症状が重い場合には強引になるのも致し方ないが

そうでなければ大丈夫……のはずなのだ

夏凜「誰か一緒にいたほうが良いんじゃないの?」

風「あたし達の時に居なかったんだから、それはちょっとひどくない?」

東郷「夏凜ちゃんの心配も我ながら分かるけれど……大丈夫よ。理性はあるわ」

友奈「その言い方は、ちょっと怖いような……」


では途中ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


では少しだけ


風「理性があるって言っても、簡単じゃないわよ?」

東郷「穢れの誘い、久遠先輩の魅力は重々承知してます」

東郷にとって、天乃は魅力的な人だし

性的な欲求が一切ない……わけがない

だが、穢れによる性的欲求の高まりと、理性への干渉は経験したことがある

その時は流されてしまったけれど

あれは互いにとって必要だったからであり

天乃の負担になるのであれば、我慢できるはず。と、東郷は言う

風「そ、そう? きついんじゃない? いつも、東郷ってエロいことばっかり考えてるでしょ?」

東郷「流石にいつも考えてるわけでは……」

無いですよ? と、

なぜだか天乃から目を逸らす東郷だが、

その視線の先、風をじっと見て眉を顰める

東郷「もしかして、風先輩は我慢できなかったとか?」

風「はぇっ!? いやっ!? そんなことないけど!?」

友奈「えっ?」

夏凜「はぁ……」

上ずった風の声

友奈の驚いた声と、夏凜のため息

それが流れの区切りであったかのように、音が止む


友奈「したんですか?」

風「いやー……なんていうか、気付いたら、やっちゃってたのよねぇ……」

まだ半覚醒状態の時からしていたからだろう

理性が働いていなかったと弁明する風は、

所在なさげに髪を掻いて、乾いた笑い声を漏らす

友奈「………」

自分はして貰えなかったのに。

そんな不満と言うよりは、

それならして欲しかったなーと言いたげな寂しそうな表情を浮かべた友奈は

はっとして、首を振る

今はやらないように気を付けるべきという話なのに

催促してしまいそうな自分にくっと唇をかむのが見えた

東郷「なるほど、風先輩が抗えなかった。と」

夏凜「そ。だから東郷も危ないんじゃないのってわけ」

東郷「そういうことであれば、確証は持てないわ」


天乃「そんな自信満々に言われても困るわ」

東郷「大丈夫です。いざというときは舌を噛み切ってでも耐えます」

樹「死ぬかもしれないので駄目です」

精霊に守られていないのだ

以前のように、死を遠ざけてくれるような力はもうないのだ

冗談でもそれはダメだと言う樹に、天乃は同調しつつ友奈に目を向ける

一人でしなければならなかった寂しさが、感じられた

東郷「では、やはりそのっちのようにこの場でするしかないのでは?」

天乃「それはそうなのだけど、必要になっちゃう場合もあるの」

以前のように、穢れの力による影響を抑えるため

性的な行為が必要な場合もある

実際の問題、友奈としなかったせいで朝には大変なことになっていたから、勘違いではない

東郷「では……必要ならすると言うことですよね?」

天乃「そうね」

東郷「……どうします?」

天乃「どうって?」

東郷「風先輩が出来なかった我慢を、二人きりの状況でできるとは思えないのですが」


えっちなことを二人きりの状況で我慢することは難しいのだが、

えっちなことをするのであれば、二人きりが望ましい

天乃が必要なのかそうじゃないのか

力を渡す前から明確であれば、二人きりになるかそうならないか決められるのに

渡してからでないと、分からない

夏凜「とりあえずここで力を渡して、必要なら二人きりにするっていうのは?」

友奈「えっと、力を渡した相手じゃないとダメなんですか?」

天乃「私個人なら、そんなことはないわ」

当然だが、

天乃個人なら相手は誰でもいい

しかし、力を渡した相手も必要な可能性があるし

もしもそうなら、天乃とその相手でやる方がいい


1、東郷、任せるわ
2、二人で良いんじゃない? 信じるわ
3、とりあえずここでしましょうか。必要なら、みんなに協力して貰いましょう


↓2


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


天乃「東郷、任せるわ」

東郷「では、友奈ちゃんと二人でまた楽しみたいです」

友奈「わ、私は良いよっ!」

友奈「えっと、そんなにしたくないなーというか、しなくてもいいかなーと言うか」

友奈「東郷さんもしたいだろうし、一人の方が楽しめるんじゃないかな~?」


園子(ハッ! 昏睡状態になんてなってる場合じゃない予感……っ!)

園子(でも体が動かないよ~っ)


では少しだけ


天乃「東郷、任せるわ」

東郷「個人的趣向と言うべきか、することを考えればやはり二人きりが好ましいです」

園子は状態もあって仕方がなかった

だが、風もそうだったけれど

この歳でおっぱいを吸う……授乳行為をされると言うのは

見られたくはないものなのだ

えっちな行為だって3人での行為など

その場の全員が一緒に行うと言う前提があってこそ

人前で行うという状況を受け入れることが出来るのであって

それがないのならば、出来れば見られたくはないと言うのが正直な話である

東郷「ですが、二人きりで理性が保たれるのかどうか」

樹「凄い考えてる……」

むむむむ……と

中々の剣幕で悩む東郷は次第に頭を抱えるような素振りを見せて、硬直する

東郷「参考までに、風先輩はどんな状況ですることになったのか聞いても?」

風「ふへっ!?」


夏凜「ふへって……」

風「そこうるさいっ! 急に来たから驚いただけよっ」

こほんっと咳払いをして、頬を掻く

嫌な記憶ではないけれど、恥ずかしい記憶

ちょっぴり思い出したくない昨日のことを思い出して、赤面する

風「えーっと……あれよ。あれ。ベッドで二人で寝てたのよ。それでまぁ……」

触れちゃうじゃない? と、

伺うように切り出した風は、天乃から目線をはずす

風「いい匂いだったし? 柔らかかったし? あーこれ、無理だなって」

天乃が受け入れたことまでは口にせず、

自分が我慢できなかった理由と、

そこに入っていったであろう状況を話して、東郷に目を向ける

勇者部の中では性的欲求が強い方であろう東郷もまた、

天乃が一緒は嫌だ。などと言わない限り、同じような状況になることだろう

つまり、絶対に同じことになる


東郷「……それは我慢できませんね」

沙織「今まで触れられなかった不満もあるから、無理だよ」

天乃「それは申し訳なかったわ」

夏凜「仕方がないことだったんだし、謝るようなことではないでしょ」

みんなが欲求不満になるような状況になってしまったのは

当然ながら天乃が理由ではあるが、原因ではない

樹「東郷先輩、我慢できないならやっぱりここでするんですか?」

東郷「ううん、二人きりになるわ」

夏凜「我慢できないんじゃないの?」

東郷「それは根性と、若葉さん達に助力をお願いするわ」

友奈や風はすでに問題はないけれど

夏凜や樹はまだ……祟りの影響を強く受けやすい

そんな中、歌野達の力に守られている病室から長く放り出すわけにはいかない

そう、考えたのだろう


東郷「久遠先輩、怖いとは思いますが……それで構いませんか?」

天乃「私は貴女に任せるって、言ったのよ?」

伺う東郷に、笑みを返す

怖いか怖くないかで言えば怖くはない

しかし、性的欲求を含めれば少しの不安がないわけではない

それでも東郷なら大丈夫

若葉達がいるなら大丈夫

だから、頷く

天乃「それで行きましょう」

夏凜「危なくなったら呼びなさいよ?」

天乃「ふふっ、大丈夫よ」

えっちなことはするかもしれないが

風の時と同じように、合意でのものになるはず。

友奈の時だって、受け入れる準備さえできていればあんなことにならなかった

だから……

天乃「友奈……今度はちゃんと、しましょうね」

避けてしまった友奈に、声をかけた


安価下1~2

コンマ判定一桁
0最小 9最大


※1、天乃(+1)
※2、東郷(-1)


ではここまでとさせていただきます
明日は所用によりお休みとなります

再開は明後日、可能であれば少し早い時間から


天乃8+1=9(重い)
東郷2-1=1(軽い)


では少しだけ


東郷「久遠先輩!」

東郷の悲鳴が聞こえた

扉一枚隔て、廊下に聞こえたクラスメイトの声のような声

それが、自分の意識が切り離されて行っているからだと天乃が気付いたのは、

東郷が触れた時だ

何にも感じられなかったのだ

自分のものではないような身体は

だんだんと、呼吸をしているのかさえ分からないほどに遠のいて

東郷「っ……まっ」

恐れを抱く東郷の泣きそうな顔

絞り出そうとしている声にこたえる余裕もなく、途絶えてしまう

夏凜「東郷!」

最初にカーテンを開いた夏凜は、

まず真っ先に声を上げた東郷の名を呼び、そして……天乃を見る

樹「夏凜さ――」

夏凜「来るな!」

風「夏凜?」

夏凜「いいから、ベッドに居なさい」


近づいてくる樹達に冷たく言い放った夏凜は、

自分の開いたカーテンを閉じる

夏凜「東郷、東郷」

東郷「か、夏凜ちゃ……」

夏凜「大丈夫、私よりは酷くない」

夏凜に肩を叩かれ、ナースコールを握る手に触れられ、

東郷の手がゆっくりと開く

押しボタンのわずかな隙間

その跡がくっきりとついてしまうほどに強くナースコールを握っていたのだろう

少し痛々しいその手を一瞥し、夏凜は天乃の口と目元を拭う

激しい吐血はないし、苦しみに悶えているような様子はない

しかし、激しくはなくとも血は流れている

口だけじゃなく、目からすらも

東郷には酷くはない。と言ったが

酷くはないだけで、悪いことに変わりはなかった


暫くして駆け付けた看護師たちによって、

治療と検査のために天乃が連れて行かれた後、

まだ汚れの残るベッドから動かない東郷に、夏凜は声をかける

夏凜「あんたのせいじゃない、だから、責めるんじゃないわよ?」

東郷「急だったわ……苦しんだりすることはなかった。ただ……」

口から血が溢れ出てきて、

それゆえの息苦しさからだろうか

目からも血が流れてきて

声をかけても反応はなく

硬直したように動かなくて

だんだんと、目に宿る光が失われていった

怖かった、恐ろしかった

このまま、天乃がいなくなってしまうのではないかと

夏凜「分かる……ほんと、怖いわよね」

東郷「夏凜ちゃん……」

夏凜「それでも泣き叫ばないあんたは凄いわ」

東郷「凄いなんてっ!」

凄いなんて……褒めないで

今はそんな言葉を聞きたくない

嫌悪感のある目を向ける東郷に対して、

夏凜はあえて、笑みを浮かべた


東郷「何を笑って――」

夏凜「いや、別に」

怒る余裕があるなら平気だ

まだ、心まで壊れてしまうほどではない

自分の限界にまで近づいたことのある心

それがまだ壊れていないから、思う

夏凜「穢れを失いすぎたわね……まぁ、予想は出来てたけど」

風「樹と夏凜には無理?」

夏凜「その可能性はあるけど……」

友奈「樹ちゃんか夏凜ちゃんのどっちかは、やると思う」

みんなが望むか望まないか

それに関係なく、天乃は体調が少しでも戻ったら

あと一人でも。と、無理をすることだろう

夏凜「やっぱり、そう思うわよね」

樹「久遠先輩は無理しますから」


樹も困ったように笑って、

少し辛そうに、天乃の残した跡を一瞥する

樹「もしそうなったときは、夏凜さん。お願いします」

夏凜「樹……」

風「何言ってるのよ樹っ」

樹「私よりも、夏凜さんの方が必要だと思うから」

こんなこと、天乃は認めないだろうけれど

戦力的に取捨選択をするのであれば、

取るのは夏凜であり、切るべきは樹

樹はそう、断言する

友奈「なら、樹ちゃんは病院で待ってるんだよね?」

夏凜「樹海に巻き込まれなければね」

一番初めの戦い

夏凜はその場にいたわけではないけれど、

否応なく引きずり込まれてしまう可能性はあると言う

すでに勇者としての力を保持している以上

まだ参戦できなかった頃の夏凜とは、違う

東郷「もしそうなら……祟りを背負った状態で戦うことになるわ」


樹「覚悟は、してます」

祟りを背負った状態で戦う辛さ

それは、祟りに苦しむ日常生活の辛さからでも分かる

もし、戦いの中苦しまされるのならば、

まともな戦いは確実にできない

囮にすらならない、足手纏いになるかもしれない

誰かを守って戦う。

そんな、余裕があるかもわからない戦いでだ

樹「それでも、私は勝つ方に懸けるべきだと思うんです」

そのために、天乃が無理をする

みんなで、生きていくために

だから、樹は自分の無理を受け入れる

樹「もちろん、まずは久遠先輩が助かるのが先だけど……」

風「不謹慎だけど、しばらく休んでて欲しい自分と良くなって欲しい自分がいて複雑ね」

戻ってきたら、今度は無茶ではなく無理をする

戻ってこなかったら、それだけ重い状態と言うことになる

どちらも嫌なのに、そうでなければ誰かがその分の無理をしなければならない

苦しめられることの堪えない現状に

風は不安を覚えつつも、吐露することなく飲み込む

弱音を吐いていられるような、状況ではないのだ

√ 2月6日目 昼 (病院) ※火曜日


01~10 天乃
11~20
21~30 園子
31~40 天乃
41~50
51~60
61~70 園子
71~80
81~90 べつ
91~00


↓1のコンマ


ではここまでとさせていただきます
明日はできれば昼頃から


一先ず久遠さんに戻ります


では少しだけ


√ 2月6日目 昼 (病院) ※火曜日


天乃「っふ……げほっ……けほっ」

咳に引き摺り出されたように戻ってきた意識

身体の奥底の痛みと、息苦しさ

味覚に染みる血の味を感じて、天乃は顔をしかめる

意識を失ったのだ

それも、園子の時とは比べものにならない、負担によって

天乃「風、東郷……」

園子を除けば、友奈と風と東郷の3人

それで、園子以上の負荷がかかった

あと1人

そんな我儘は許されるだろうかと、握り拳を作るだけで震える手を見つめる

天乃「ぅ……」

ベッドに手をつき、何とか状態だけでも起こそうと、試みる

キシキシと軋むベッド、ビキビキと痛む腕

自分を支える力すら、今は奪われているのだと

天乃は起きるのを諦めて、目を瞑る

その瞬間、額に冷たい何かが触れた


スレ立て忘れてました
続きはこちらでやります

>>997に関しては向こうに再度載せます

【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十九輪目】
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十九輪目】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1560668705/)

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