【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【九輪目】 (1000)

このスレは安価で

久遠天乃は勇者である
結城友奈は勇者である
鷲尾須美は勇者である
乃木若葉は勇者である
久遠陽乃は……である?

を遊ぶゲーム形式なスレです


目的


・バーテックスの殲滅
・伊集院家の説得

安価

・コンマと選択肢を組み合わせた選択肢制
・選択肢に関しては、単発・連取(選択肢安価を2連続)は禁止
・投下開始から30分ほどは単発云々は気にせず進行
・判定に関しては、常に単発云々は気にしない
・イベント判定の場合は、当たったキャラからの交流
・交流キャラを選択した場合は、自分からの交流となります


日数
一ヶ月=2週間で進めていきます
【平日5日、休日2日の週7日】×2


能力
HP MP SP 防御 素早 射撃 格闘 回避 命中 
この9個の能力でステータスを設定

HP:体力。0になると死亡(鷲尾、乃木) 友奈世代のHP最低値は基本10
MP:満開するために必要なポイント。HP以外のステータスが倍になる
防御:防御力。攻撃を受けた際の被ダメージ計算に用いる
素早:素早さ。行動優先順位に用いる
射撃:射撃技量。射撃技のダメージ底上げ
格闘:格闘技量。格闘技のダメージ底上げ
回避:回避力。回避力計算に用いる
命中:命中率。技の命中精度に用いる

※HPに関しては鷲尾ストーリーでは0=死になります


戦闘の計算
格闘ダメージ:格闘技量+技威力+コンマ-相手の防御力
射撃ダメージ:射撃技量+技威力+コンマ-相手の防御力
回避率:自分の回避-相手の命中。相手の命中率を回避が超えていれば回避率75%
命中率:自分の命中-相手の回避。相手の回避率を命中が超えていれば命中率100%


wiki→【http://www46.atwiki.jp/anka_yuyuyu/】  不定期更新 ※前周はこちらに

前スレ
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【一輪目】
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【一輪目】 - SSまとめ速報
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【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【二輪目】
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【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【三輪目】
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【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【六輪目】
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【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【七輪目】
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【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【八輪目】
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【八輪目】 - SSまとめ速報
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7月13日目 (自宅)夜 ※土曜日



降り頻る雨音の止まない、暗い夜

仄かな温かみさえ感じそうなオレンジ色の光を浴びる天乃は

光源のある天井をじっと眺めて、小さく息をつく

それを見計らったように、部屋の扉がトントンと、音を立てる

天乃「どうぞ」

夏凜「どーも」

入ってきたのは、夏凜だった

いつも見る制服だったり、簡素な部屋着ではなく

外に出るようなものではない、寝巻き

最初こそ渋ってはいたが、大赦の職員も一部常駐しているこの家では、

夏凜も中々に着崩しがたいのだ

夏凜「常駐してる大赦職員、あれ。なんとかなら無いわけ?」

天乃「私の体調が本当に問題ないってなれば、大丈夫だとは思うけど」

夏凜「まっ、あれだけ体調崩してんだから。無理も無いか」

寧ろ、ここで天乃を放置するような組織ではなかった。と

少しは安堵すべきかもしれない

夏凜「今朝もあんた、いつもの時間に起きれなかったし」

天乃「それは……」

夏凜「苦しんでるとかならたたき起こすことも考えるけど、そうじゃなかったし。純粋に疲れてんでしょ。きっと」


不安げに眉を潜め、反論を引き出そうとした天乃に夏凜はそう告げて

困った奴だというように苦笑する

それでも、心配したし不安にもなった

だから、風に対して天乃の体調に関しての連絡をしたのだ

その安堵を感じる夏凜の表情は、優しげだった

夏凜「それで? 昨日の今日でまた寂しくなった?」

天乃「何言ってんのよ。そう言うわけじゃ……」

夏凜「冗談だっての」

向きになって反論してきそうな天乃に対して

夏凜は茶化すような笑みを携えて言うと、そっと、ベッドの端に腰を下ろす

夏凜「実を言うと、私にも連絡が来たのよ」

天乃「え?」

夏凜「風にも来たって言う久遠家に関わるのを控えろってやつ」

夏凜は勇者部内でもしっかりと連絡を取っているようで―天乃を除いてだが―端末の画面に

その連絡の件を表示させて、天乃へと差し向ける


文面は丁寧ではあったが、命令的で簡潔

風が言っていたのと同じ理由で、接触を控えるようにと記されている連絡には、

もうすでに返事が返されていた

天乃「なんて返したの?」

夏凜「本当に穢れるなら手遅れだし、そうじゃないなら関係ないからこのままで。って、返した」

天乃「それで?」

夏凜「音沙汰無し。そもそも今日来たばっかだし。検討中ってやつじゃないの?」

自分のことではないかのような投げやりな言い方をした夏凜は、ため息をついて端末をベッド脇に置く

天乃との接触で本当に穢れるというのなら、夏凜が言うように確かにもはや時すでに遅しと言えるだろう

それに、穢れないのであれば、それもまた関係ないことなのだから意味が無い

使い勝手の良い反論。それを返した夏凜はあまり、浮かない表情を浮かべる

大赦からの連絡があるのはいつものことだ

自分からも定時連絡をしている

だが、普段の連絡してくる相手とは違う。そんな気がしたのだ

夏凜「例の沙織のやつか」

天乃「ん」

夏凜「ったく、面倒くさいっての」


命がけで戦っているのに、プライベートなことにまで干渉してくるのが、

夏凜としては気に入らなくて

天乃の事というのが、さらに苛立ちを募らせて

まるで汚らわしいものというようなものが、余計に余計を重ねていく

夏凜「それで、あんたも少し落ち込んでるわけ?」

天乃「落ち込んでる……? ように見える?」

夏凜「なんとなく。勘みたいなもんだから」

ただの気のせいの可能性もある。と

夏凜は言って、出入り口のほうを見つめる

夏凜「…………」

会話が収束し静かになってくると、形容しがたい気まずさがあって

不快ではないその空白を埋めるように

ベッドの上の手はもぞもぞと敷布に足跡を残しながら、天乃の手に触れる

天乃「…………」

トントンッと、たずねるような軽い接触

答えるようにで小指で小指に絡みつく

夏凜「っ」

薬指が小指へと絡む。薬指が薬指と喧嘩する

天乃「……」

中指が仲裁に割って入り込んでいく

そっと握って握られて

見せまいと、顔をそむけてみる

夏は暑い。夏凜の手はちょっと熱い

なら、自分はどうなのだろうと、カーテンの隙間から見える雨に濡れた窓を見る



1、寂しいのは夏凜でしょ
2、明日ね。沙織が男の子とデートするらしいの
3、……ごめんね。多分、私はいつも通りの生活には戻れないと思う
4、沙織に襲われそうになって、私。泣いちゃったの
5、何も言わない


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



性の沙織と、静の夏凜


では、少しだけ


天乃「…………」

手に感じるぬくもりと、優しさと、力強さ。そして、努力

天乃はそれを少しだけ握り締めて、包み込む

そんな夏凜を受け入れるよ。と、言うかのように

天乃はそんな自分に小さく笑みを浮かべて

自分もでしょ。と、思いつつ、言う

天乃「寂しいのは、夏凜でしょ」

夏凜「は……? 何言ってんのよ。そんなわけないし」

天乃「じゃぁ、離す」

夏凜「勝手にしなさいよ」

天乃「じゃぁ、離して」

夏凜「…………」

重石を乗せた天秤のように、上れば下る坂のように

天乃の手から力が抜ければ、夏凜の指先には力が篭る

布団にもぐりこんだ子猫のような、少しだけモゾモゾと手を動かすと

また少しだけ、夏凜の手は力が入る

目を向けても夏凜は見ない

けれども、その耳先はほんのり赤く

微かに見える口元は、縫い合わせたように、伸びていて


夏凜「昨日。あんなこと言ってたくせに」

天乃「……うん」

夏凜「今日は必要ないとか、そういうの……」

夏凜の絞り出す声は小さく

でも、静まり返った夜中の部屋には良く通る

外から聞こえる不穏な雨音が、少しだけ収まってきたような

そんな気さえ、してくるようで。

夏凜「ず、ずるいんじゃないの?」

また一段と、手が握り締められて

天乃は抜いた力を少しずつ戻していく

指と指を絡めながら

指先まで余さず感じるようにと、握り締めていく

頑張っている手は少しかさついてしまっているような

傷だらけにも思える肌触り

天乃「……頑張ってるのね」

良く感じるようになったのはつい最近

でもきっと、ずっと前からそうだった夏凜の過去


天乃「ほんの少し、男の子のような。決して大きくない。力のあるこの手。私は好きよ」

夏凜「は、はぁっ!? あんた、さっきから、なん、何言ってんのよ」

天乃「あまえんぼ」

夏凜「んぐっ……くっ、べ、べっつに。放置したらしたで、また昨日みたいになるくせに」

天乃「そう、かもね」

昨日の自分を思い返した天乃は、

つい昨日のことなのにも拘らず、

昔のことを思い返すような、穏やかな笑みを浮かべて頷く

アレは否定のしようがない

昨日の自分は寂しがり屋だった

ちょっとおかしいとかどうとかを抜きにして、

昨日はただ、甘えたがっていた

夏凜「……手」

天乃「?」

夏凜「ケアしろとか、言わないのね。あんた」

夏凜は自分の空いた右手を見つめながら、

瞳とか風はケアしろ言うから。と、困ったように笑って、天乃へと振り向く


夏凜「私はそういうの疎いし。クリーム塗ればいいって言われても。そう言うのもやっぱ色々あるし」

天乃「化粧品とかも、多いのに」

夏凜「そ。まっ、つまり私はそういうのに向いてないのよ。自覚してる」

天乃「……………」

女の子には、良くあることだ

最初のうちはどれがこうでこうなってるとか、こうして使うとか

いろんなことが解らない状態で、少しずつ、覚えていく

けれど夏凜はそれとは違う

興味があるけど解らないのではなく、そもそも興味関心がわいていない

普通の男の子がファンデーションだのなんだのに興味を示さないように

夏凜もまた、それが自分に使うようなモノではないのだと、切り捨てているのだ

もちろん、それでも見よう見まねだったりで多少のケアはしているとは思うが。

夏凜「東郷の手のほうが良くない? 友奈の手、樹の手、沙織の手、風の手。その方が、良いんじゃない?」

天乃「まぁ、大きかったり小さかったり。柔らかかったり。肉質も色々で、みんな良いなって思うけど」

夏凜「でしょ?」

天乃「でも、夏凜の手だって良いわ。過去を感じる。努力してるんだな。頑張ってるなってわかるから」

夏凜「…………」

天乃「手が少し荒れていたって。私はそれを否定しないわ。自分を思うその心で、誰かを思っているって事だから」



夏凜「……そっ」

興味が無い時の相槌のように呟いて、

けれど、握り返してくる天乃の手を強く握り返して、隠れた笑みを浮かべる

嬉しいけれど、照れくさい

そんな愛らしさのある笑顔で、出入り口の扉を見つめて、息をつく

夏凜「あんたがそう言うなら。一石二鳥ってやつなんでしょうね」

天乃「嬉しい?」

夏凜「馬鹿なこと聞くと離すわよ」

天乃「どうぞ?」

夏凜の意地悪な言葉に天乃は笑みを浮かべて

力が抜けていく夏凜の手が―冗談で―離れようとした瞬間

天乃の手からも力は抜けて。

夏凜「じゃぁ、離――ってぇ、本当に離すなっ!」

天乃「あら、離して良いって言ったし?」

夏凜「このっ」

振り向き、ちょっとばかり怒った様子を見せた夏凜に対して、

天乃は中途半端に持ちあがった夏凜の手を掴んで引く

天乃「ふふっ、嘘よ」

夏凜「っ」

ベッド端ということもあって、前のめりだったからか、

手を引かれた夏凜はそのまま抵抗しきれずにバランスを崩して、

天乃の頭のすぐ後ろ、ベッド付属の小さな棚に手を突く


天乃「っ!」

怒りを物に当たったかのような音は静かな部屋では騒音で、暴力で

意図せず起きたそれが耳元で聞こえた天乃は思わず、体を震わせる

天乃「怒った?」

夏凜「怒ったっていうか……っ」

目の前だった。キスさえ出来そうな、距離だった

しようと思ってするのは恥ずかしさがある

けれど、偶然にもそうなってしまった。という中途半端な今の状況は

もっと、羞恥心を刺激して

真っ赤になった夏凜は目を逸らして「なにすんのよ」と、ぼやいて

その反応が距離ゆえだと、キスできるのだと

そう気づいた天乃もまた、目を見開いて、頬を染める

淫らな理由がなければ、キスするという行為に恥じらいは無い

しかし、今は淫らな理由も無いのに、なぜか、恥ずかしかった

天乃「…………」

ドキドキと、早鐘をうつ自分の胸に手を宛がった天乃は、夏凜へと目を向けて

夏凜「て、手、離しなさいよ……」

懇願するように、夏凜は言う



1、しないの?
2、しても良いじゃない
3、何も言わずにする
4、手を離す
5、……意気地なし

↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



天乃「してもいいじゃない」

東郷「そうよ夏凜ちゃん!」

東郷「ここはぐーっと!」

園子「いやいや、天さんが求めて来てるんだから」

園子「ここはあえて身を引くべきだよ~天さんが積極的に来てくれるはずだからね~」

東郷「なるほど、その手が……」

夏凜「何なのよ、あんた達」


では、少しだけ


他のみんなは、積極的で

夏凜も時々積極的ではあるけれど

今は、消極的で、そんな姿は好ましく思う反面

どこか物足りないような、そんな、気がして

天乃は唇を引き締める

覗き見るようにゆったりとした動きで、見上げた夏凜の表情は

いつも纏う勇者装束のように赤く、

顔は背けているのに、瞳だけはチラチラと向けられて

天乃「……しても、良いじゃない」

声を絞り出して、夏凜の手を掴む手に力を込める

逃げないでよ。と、言うように

夏凜「っ」

天乃「嫌じゃないから」

夏凜「…………」

夏凜は驚いたように目を見開いて、

唇をきゅっと、引き締める

その目はまっすぐ天乃を見つめていた


夏凜「…………」

ああもう、なんで。と

夏凜は心の中でうなり声をあげて、心の中の自分が隅っこに駆け込んで膝を抱え込む

嫌じゃない。好きだ

キスはしたい。でも、一つ手にしたら二つ目が欲しくなるような

夏場にアイスを食べるとあるだけ食べたくなってしまうな

そんな自制心が酷使される予感がして、夏凜は躊躇う

夏凜「その、例えば。なんだけど……」

天乃「……なに」

夏凜「キ、キスしたとするでしょ?」

天乃「うん」

夏凜「万が一その先にまで行きたくなって、こう、なんていうか、ガバッってやっても怒らない?」

天乃「えー」

おどおどととした夏凜の言葉に、

天乃は場の雰囲気を壊してしまうような、気の抜けた声を漏らして、夏凜の手を握る

痛い。といわせかねない、ちょっとばかり爪を立てて。

天乃「それは、聞くことなの?」

夏凜「んなこと言われたって」

天乃「責任、取る気が無いの?」

夏凜「い、いや。男女のアレ的な間違いは無いし……」


現代ではそうそう起こらないことだが、

インターネット上では、そういった間違いが起きてしまったという話を調べさえすれば見ることができる

天乃抜きで勇者部で集まった際に

男女間ならともかく、女性同士であればそう言った責任問題は起こらないので

比較的行為を行いやすいと、東郷には言われた

しかし、今日まで数えられるくらいの行為は行ったし

他の誰かが行為を行ったというのも、話には聞いていて

天乃が性的なことに関しては幼く弱い。というのが、勇者部内での共通認識になってきている

そのため、どうしても、手を出しにくいのだ

夏凜「襲ったら泣くでしょ。あんた」

天乃「それは……」

泣くかもしれない

現に、沙織の勢いに気圧されて泣いたばかりで

天乃は否定できずに言葉に詰まると

思わず、夏凜から目を逸らして

天乃「多分、泣く……」

夏凜「なら」

天乃「でもっ」

夏凜「っ!」

それならばと引こうとした夏凜の手をより強く握って、止める

つめが食い込んだ感触があって、すぐに「ごめんね」と、手を離す


天乃「でも、夏凜は自分を抑える自信、無いの?」

夏凜「あったらこんなこと聞かないっての。いや、天乃を傷つけたくないとは思うし、そうしたいけど」

何か物理的に傷つけるようなことは何か起きない限りは絶対にない

そう言う自信はあるのだが、こういったことに関しては

夏凜もあまり自信を持てるとはいえなかった

好きだからこそ自制できるように

好きだからこそ暴走してしまうこともあるのだから

夏凜「もちろん、万が一だから。大丈夫だとは思うけど、天乃はこういうの弱いし」

天乃「じゃぁ、もっとえっちになれば良い?」

夏凜「ん――は、はぁっ!? ならなくて良いわよっ!」

意表を突かれたか凜は素っ頓狂な怒鳴り声を上げる

天乃「そう? 東郷達にもその方が良いと思うんだけど……」

夏凜「良いっつってんでしょうが」

天乃は冗談ではなく本気で言っていて

だからこそ、夏凜は困ったようにため息をつく

夏凜「今まで通りで良いっての。えっちなあんたはなんか、その……色々支障が出そうだから」

天乃「夏凜がそう言うなら」


そんな大げさになることなのかと疑問符を浮かべる天乃の傍ら、

夏凜は危機を脱して緊張を解くかのように体の力を抜いて、安堵すると

ちょっと興味はあるけど。と小さく呟く

随時その状態は心と体に悪すぎるのだが、好奇心的にはちょっと興味があったのだ

天乃「でも、そっか。夏凜でも我慢できないんだ」

夏凜「そりゃ、ほら……アレよ。今日は、鍛錬らしい鍛錬できなかったし」

昼頃からは大雨で、いつも行っていた砂浜での鍛錬は当然中止

もてあました時間は腹筋や腕立てなどの基礎鍛錬に留めて、読書に耽った

そのせいで発散できなかったからだ

そう考え、言ってしまってから何か嫌な予感がすると察したのだが

やはりそれはもう遅くて

茶化すように笑う天乃が、見えた

天乃「夏凜にとって鍛錬はえっちなのね」

夏凜「止めろっ」

天乃「えっちな子」

夏凜「悪かったわよ! 嘘よ嘘!」

もちろん、一部は鍛錬できなかったからというのもあるが

やっぱり、夏凜も天乃を好きな人の一人で

笑顔を見れれば満足だとは言っても、触れ合うことを求めずにはいられない

そして、それが何の偽りもなく、まっすぐに受け止めてもらえるのだとしたら

歯止めを利かせるのは、とても難しいことなのだ


夏凜「恋人なんだから少しはしたいって思うに決まってるじゃない」

そりゃ、笑顔が見たいって思ってるわけで、それが好きなわけで

だから無くても満足できるって言うのは嘘でもなんでもない

けど、昨日だって結局触れ合ったように

出来るのならしたいって言うのが本音の本音

夏凜「それを、しても良いって誘われて、そりゃ、私だって。あんたのこと、だから……そんなのっ」

自分でも笑ってしまいそうなくらいに、乱雑な言葉

しゃっくりでもしてた方がまだましなんじゃないかと思うけど

それももちろん、場に相応しくないもので

燃え上がるように滾っていた何かは祭りの後の静けさのような

卒業式の後、誰もいなくなってしまった教室のような

何かを言いたいのに、なんとも言えない。そんな複雑な塊に変質していく

夏凜「あぁ、もう……良いや」

天乃「夏――っ」

掴まれていた手をそのまま引き戻して天乃を引き、

抵抗なく浮き上がったその体、驚きに無防備なその唇に重ね合わせていく

呆然として力の無い唇はキスを仕様として合わせた唇よりも柔らかく感じた

不思議と、甘く感じた。意外と、厚く感じた


体が震える。ドキドキと

それはまるで頭の中だけで聞こえる思い出のような空想感

けれども、じわりと広がっていく胸の置くの熱過ぎる痛みが現実であると、叫ぶ

どこかの小説で言っていた

鼓動は心の叫びだと。

天乃「んっ……っ、か、りん?」

蕩けたような、甘い、紅潮した恋人の声が情欲を刺激する

自分の―自分は気にしないが―物足りない胸元に触れる満ち足りた感触が

食欲にも似たなにかを刺激する

夏凜「もう一回……よこしなさいよ」

だから、もう一度キスをする

いや、キスで収束させていく

触れ合わせるだけでなく、重ね合わせ、擦り込むだけでなく

パックジュースの底に残った数的を飲み干すような、そんな荒々しさで

唇を吸い上げる

柔らかい感触だった。少しだけ固い感触だった

歯磨き粉のさっぱりとした現実感の中

デザートを口にしたのとは違う、幻想的な甘さを感じた

1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流有(久遠家への干渉、風はどうする?、伊集院家について)
・   犬吠埼樹:交流有(久遠家への干渉、樹はどうする?、伊集院家について)
・   結城友奈:交流無()
・   東郷美森:交流無()
・   三好夏凜:交流有(寂しいのは夏凜でしょ? しても良いんだよ)
・   乃木若葉:交流有(伊集院家について、乃木家への必要以上の干渉)
・   土居球子:交流無()
・   白鳥歌野:交流無()
・   藤森水都:交流無()
・     郡千景:交流無()
・ 伊集院沙織:交流有(デート一緒に)

・      九尾:交流無()
・      神樹:交流無()



7月13日目 終了時点

  乃木園子との絆 54(高い)
  犬吠埼風との絆 62(とても高い)
  犬吠埼樹との絆 52(とても高い)
  結城友奈との絆 68(かなり高い)
  東郷美森との絆 54(高い)
  三好夏凜との絆 89(かなり高い)
  乃木若葉との絆 47(中々良い)
  土居球子との絆 30(中々良い)
  白鳥歌野との絆 25(中々良い)
  藤森水都との絆 16(中々良い)
   郡千景との絆 15(中々良い)

     沙織との絆 73(かなり高い)
     九尾との絆 48(少し高い)
      神樹との絆 9(低い)

汚染度???%


√ 7月14日目 朝(自宅) ※日曜日

01~10 球子
11~20 夏凜

21~30 
31~40 
41~50 沙織

51~60 
61~70 
71~80 千景

81~90 
91~00 九尾

↓1のコンマ  


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば、通常時間から




東郷「ほら、そのっち! やっぱり久遠先輩は受けよ!」

園子「ん~攻めもいけると思うんよ~」

東郷「そうね……久遠先輩の攻め。どうすれば引き出せるか研究が必要ね。早速ググるわ!」


須美「……ああはなりたくないものね」

銀「あれ、須美だぞ」

須美「!?」


では、少しだけ


7月14日目 (自宅)朝 ※日曜日


球子「千景をなんとかしてくれぇーっ!」

珍しく朝一番に接触してきた球子は会うや否や、そんな悲鳴を上げた

球子曰く、千景も努力はしているらしいが

どうしても、敬語を使ってしまう場面が多く、

球子ならまだしも、球子さん。と呼ばれることがむず痒くて堪らないらしい

なら土居さんにしたら良いのではと思うのだが、

それはそれで他と違って他人っぽくて好かないというのだから、我侭だ

天乃「千景だってわざとではないんでしょう?」

球子「そうだけど」

天乃「だったら、我慢しなさい」

球子「我慢してはいるんだ。いるんだが。こう、ぞわぞわ~って!」

体を大きく震わせて

その感覚を表現してみせると、がっくりと肩を落とす

そうとう、落ち着かないようだ


球子「例えばだぞ、例えば」

天乃「うん」

球子「夏凜が天乃さん。おはよう御座います。ってきたらどうだ」

朝起きたら、目の前に夏凜がいて

両手を膝前で交差させ、丁寧にお辞儀をして言うのだ

おはよう御座います、天乃さん。と

そんな姿を想像した天乃は、困ったように頬を赤くして、目を伏せる

天乃「……悪くないかも」

球子「このお惚気ぇっ!」

天乃「ごめんなさい、つい」

気色悪いとは思わないし、寧ろそれはそれで見てみたいなと思う天乃だが

違和感を覚えるかどうかといえば、それは明確な違和感がある

とはいえ、球子が言うような感覚がわかるのかどうかといえば、

それもまた微妙なところで……

天乃「そうだわ。大赦が総じて友好的だと思えば、同じかもしれない」

球子「どんだけ嫌いなんだ……」


明るい声で大赦について話す天乃に

球子は呆れ混じりの目を向けて、息をつく

球子「千景はまだ少しぎこちないんだ」

天乃「馴染めてないの?」

球子「いや、若葉も歌野も積極的だし、千景自身も馴染もうとしてくれてるみたいなんだ」

それでも、と、球子は表情に影を落として

何かを否定するように首を横に振る

そして……

球子「どこか、不安そうなんだ。そんな顔をするたびに、若葉は大丈夫だって声をかけるんだけど」

天乃「……球子は、そこに疎外感を感じてるってこと?」

球子「いや、そういうわけじゃ……いや、どうだろうな。それもあるかもしれない」

だから、余計に他人行儀になってしまう【土居さん】という言葉が、好めないのかもしれない

球子「九尾が教えてくれたのは、世界は命乞いに終わった。というくらいで、タマ達が残したみんなのその後は話してくれなかった」

天乃「……………」

球子「だからきっと、タマの知らない何か、悪いことがあったんだと思う」

球子はいつもの快活な様子からは想像できない

暗い表情で、思い雰囲気を身に纏う

千景を善き友人だと思っている。球子の記憶は、そこで止まったままなのだ


天乃「球子は、知りたいと思う?」

球子「思う。けど、二人が言わないなら。それで良い」

球子は少し切なげで

けれど、どこか満足感を感じる笑みを浮かべながら言う

棚しそうなことなら、積極的に関わろう

でも、それが嫌なことなら、悲しいことなら

落ち込むようなことなのなら、

下手に触るつもりは無いと、球子は呟く

誰も知らないのなら、それは触れるべきかもしれないが

知り合っている誰かがいるのなら、独りで思い悩むことはないはずだから

そんな様子に天乃は笑みを浮かべて

くすりと小さな息遣いに気づいた球子が、恥ずかしげに目を向けた

球子「変、か?」

天乃「ううん、そんなことないわ」

球子「そっか。なら良い」


球子「でも千景の敬語はほんと、なんとか頼むぞ。せめて、球子さんだけでもっ」

天乃「千景本人にお願いしてみたら?」

球子「すみませんっ、球子さ……あっ、た、球子……さん。ってなるんだ!」

しかも申し訳なさそうに、

恥じらいながら言うものだから、球子も強く言い切れないし中々、進展しないのだ

だから慣れようかと考えて入るらしいが、

それもまだまだ難しく、だから。出来るのなら何とかしてほしい。ということらしい

天乃「解ったわ。でも、それとなく言うだけよ? 一応、私はマスターだから」

球子「ん、その辺りは任せる」

そう言った球子は、少し考えるような素振りを見せて、

そー言えば。と、思い出したように言う

視線がどこかへと消えているので

思い出したというよりは、それも本題の一部だったのだろう

球子「そういえばなんだけど。若葉は、どうなんだ?」

天乃「どう。って?」

球子「いや、だからさ。ほら、若葉も結構天乃の子と気に入ってるって言うか。親しそうっていうか」

天乃「ああ……」


何が言いたいのか、それを察した天乃は小さく声を漏らして

悪戯っぽく、どこか、怪しい。魔女のような笑みを浮かべる

天乃「若葉はそういうのとは違うわよ」

球子「え?」

天乃「若葉にそういう気はなさそうって言ったの。若葉は今のところ相談役というか、親しい友人ね」

球子「………………」

天乃の落ち着いた言葉に、球子はしばらく呆然として、

どうかしたのかと天乃が首を傾げると

球子は「なんでもない」と呟き、目を逸らす

球子「……雑食かと」

天乃「待って球子、今なんて言ったのよ」

球子「へっ? え? あーいや、親しくなれば誰でも娶るって、九尾が」

天乃「……へぇ?」

笑みながら、恐怖しか感じない天乃の表情に

球子はじりじりと身を引いていく

九尾がそんな感じのことを言っていたのは嘘ではないから

球子にはそこまで危険は無いはずなのだが

逆なでする悪寒を背筋に感じて、思わず震えた


球子「で、でもさ」

天乃「?」

球子「ほら、昨日……若葉は天乃のために無茶しようとしてただろ?」

天乃「あれは……聞いてたのね」

球子「聞こえちゃうんだって」

怒られると思った球子の弁解に、「怒らないわよ」と、残念そうに呟く

精霊は傍にいる。姿は見えていなくても話は聞こえてくるし、見えてしまうため、

どうしても、知ってしまうのだ

もちろん、特別なことがある場合は、ちゃんと離れるようにしているが。

球子「若葉がああやって、一直線? になるのって、やっぱ天乃の事が大切だからだと思う」

天乃「そんなに縁結びがしたいの?」

球子「いや、そう言うわけじゃないぞ。ただ、なんだ、時々、若葉も寂しそうな。そんなさ、この前の墓参りの件もあるし」

要領の掴みにくい、ふわふわとした語りをする

杏ならばもっと上手く言葉を紡げるのかもしれないが

球子には、その感覚的な部分を伝えるのは難しいのだろう

天乃「……そうね」

けれども、天乃は球子の言いたいことを理解して、頷く



1、話だけは、してみるわ
2、でも、私で平気なのかしら
3、球子。貴女は何も出来ないの?
4、若葉とえっちなことするのも楽しそうね……なんて。こういうのが、売女といわれるんでしょうね


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



天乃「夏凜と話してて、エッチな子になるべきかなって思って」

東郷「任せてください!」

園子「お任せあれ~」

須美「貴女達には任せておけません!」

須美「先輩は私が責任を持って預かります!」


では、少しだけ


天乃「ん~」

悩ましそうに天乃は唸る

球子が頼ってきているということも

若葉が少し、思い悩んでいたりするということも解ってはいる

だが、果たして所詮未来人であり

現世へと呼び戻した張本人である自分が、

過去の人間の過去の人がいないという寂しさの埋め合わせを出来るのか……

天乃「若葉とえっちなことするのも楽しそうね……」

球子「へっ?」

素っ頓狂な声が球子から零れ落ちる

唐突な言葉には流石に、唖然として

天乃はそんな球子に目もくれず真剣に悩んで紡いだかのような表情と雰囲気を携えながら

ふと、小さく息をついて一転、苦笑を浮かべる

天乃「なんて。こういうのが、売女といわれるんでしょうね」

球子「な、なんだ。冗談……か?」

天乃「私としては若葉がそれを望むのなら受け入れてあげるんだけどね。若葉は若葉で、夏凜とは違う体つきだろうから、ちょっと興味はあるし」

とは言うが。

もちろん、淫らな意味など、天乃はまったくもって含んではおらず、

ただ純粋に恋人として受け入れるというだけで、

日々鍛錬に明け暮れる夏凜と、鍛錬と戦いに明け暮れていた過去を持ち、今もまた鍛錬の日々を送る若葉

その体つきの違いが、同じく鍛錬をしてきた天乃としては、興味があるというだけで。

球子「そ、そうかぁ……」

そんな内面が球子に伝わるわけもなく。


球子「そういえば、前に九尾から売女って言われてたもんな」

天乃「ええ」

球子「売女って、なんかアルバイターみたいだし。バイター天乃。なんて言えば戦隊物っぽい」

売女の使い方は間違っているのだが、球子がそんなことを知るわけもなく、

売女という言葉を使っていろんな言葉を作り、天乃の名前と繋げては

こんな名乗りが有りそう。などと考えて。

楽しげに話す球子を見て天乃も「そうね」と、笑みを見せる

天乃「名乗っちゃう?」

球子「夏凜なんかは何言っての? とか、呆れそうだけど、友奈とかなら乗ってくれるんじゃないか?」

話は売女からバイターへと変わり、そして戦隊物の話へと切り替わって

まだ銀がいた頃、銀の弟とのそんな遊びに加わっていたことを思い出した天乃は

懐かしげに、笑う

天乃「そうね、友奈は。そう……格好良いですっ。とか、喜びそうな感じがあるわ」

決して男の子の趣味に染まっているというわけではないが

そういった正義味溢れるものが、友奈は好きなのだ

あどけなく、男の子と女の子。どちらの判別にも属さないような

そんなまだ小さな子供のようだと、天乃は思う

それがまた、男視点ではなく女視点でも感じる友奈の魅力、愛らしさだと。


球子「あっ」

そこでふと、球子が思い出したように声を上げる

九尾が天乃を売女だと言ったときに、すぐ傍にいたわけではないが、

近くにいた悪五郎が「あの女狐め」と、不快そうにしていたのだ

その理由は聞いても答えてくれなかったし、お前には関係ないと突っ撥ねられたから

忘れかけていたのだが……

球子「そういえば、五郎君が売女って言葉に対して不機嫌になってたぞ」

天乃「五郎君が?」

球子「あの女狐めってなんか、凄く」

良くわかんないし教えてくれなかったけどなーっと

球子は困ったように言って、笑う

球子「まぁ、そんな気にしなくて良いと思うぞ」

天乃「ん~……」

九尾が教えたことで、悪五郎が不快になる

そこから導き出される答えは、絶対に九尾の言葉に問題がある

そんな、不思議な確信を持って、天乃は首を横に振る

とりあえず、売女という言葉はやめておこう。と球子に告げて。


天乃「若葉には機会があったら、話してみるわ」

球子「ごめんな、本当ならタマが何か言ってやるべきだと思うんだけど」

天乃「ううん、気にしないで」

何かを言ってあげたい、してあげたい

それを考えて、自分では……そう考えてのお願いなのだから

それに対する謝罪なんて必要は無いし、されても受け入れるつもりも無かった

天乃「若葉のご主人様だものっ」

球子「エッチな意味でか?」

天乃「あら、どうかしらね~」

ふふふふっと、どこか怪しい笑みを浮かべた天乃に

球子は「冗談だよな……」と、不安そうに呟く

嘘か真かわかりやすいものだが、

天乃に関しては一妻多妻ゆえか

不思議と真に迫って聞こえてしまうからだ

天乃「ご想像にお任せしますっ」

茶化すような天乃の声はとても明るく、愉しげだった


√7月14日目 (自宅)昼 ※日曜日


01~10  夏凜
11~20 
21~30 九尾

31~40 
41~50 若葉
51~60 
61~70 悪五郎

71~80 
81~90  大赦
91~00 

↓1のコンマ 


√7月14日目 (自宅)昼 ※日曜日

1、九尾
2、千景
3、若葉
4、悪五郎
5、歌野
6、水都
7、夏凜
8、沙織を追う
9、勇者部 ※再安価
0、イベント判定

↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば昼頃から

そろそろスタンバイ



沙織(隠れられてると思ってる久遠さん)

沙織(ほんとかわいい)

沙織(……………)

沙織(男の子なんてもうどうでも良いから、今すぐ振り返って押し倒してみたい)

沙織「あっ、こっちの路地裏が近道らしいよ」

沙織(さて。男の子は……邪魔だから消そう)


では、少しだけ


√7月14日目 (自宅)昼 ※日曜日


シャツ部分はピンク色で、スカート部分が白色のレイヤードデザインのワンピース

そんな、普段着とは違っていて、女子中学生にしては少しだけ、大人びたおしゃれをして

沙織はこれから行ってくるね。と、天乃の一言告げて、家を出て行った

あんまり興味はないと言いながら、服装はしっかりとしていて

それが見せかけなのか、本気なのか分からない

天乃「……私も出かけてくるわ」

「では、今同伴の者を――」

天乃「要らないわ。みんながいるから」

「ですが……」

天乃「ごめんなさい。要らないって、言ってるの」

何かあった時の為

そして、天乃が何かしないようにと監視する為の大赦の同伴者

それを付けようとする女性職員に、天乃は厳しい目を向けて、その横を抜けていく

「……久遠様、大事になりますよ」

天乃「家に入れてるだけ譲歩しているのに。どこまで踏み荒らしたら気が済むの?」

それでもと引こうとしなかった職員だが、

天乃の普段とは違う、何か。言葉にし難い、してはいけないような

鉄鍋の中に見た目の変わらない熱された鉄鍋が混じっているような

そんな、危うい立場だと、職員の本能が息を飲んで口が閉じる

「わ、わか……わかり、ました」

天乃「……ごめんなさい。貴女の立場は分かるけれど。でもね、プライベートにまで割り込まれるのは、嫌いだから」

怯えたように縮こまった女性職員にそう言い残して

天乃は沙織の後を追って、家を出ていく


道中、信号で立ち止まるたびに、

何度も自分の服装や髪型を確認しては、「大丈夫かな」と呟いて

合流場所へと向かっていく

その後ろ姿はいつも見ている沙織とは、違っていた

服装はもちろんの事ながら、

自分のいろんな場所を気にして、どう思われるか、どうみられるのかを気にして

大丈夫だと思っては、やっぱり。と、気にして

また平気だと思うたびに見せる笑みはどこか照れくささを感じる

天乃「……沙織、私に気づいてるかしら」

振り向いたりすることなく、一直線に目的地へと向かっているであろう沙織

そこから少し離れた場所にいる天乃は、

本当はしちゃいけない事なのに。と、思いながら、沙織を見つめる

気づかない

それで良いはずなのに、それはそれで、なんだか少し、不満が沸く

沙織「あっ」

駅前の自販機横にいた青年が沙織に気づき、

自分だと強調するように、肩くらいまで手を挙げて、笑みを見せる

そんな青年に沙織は気づいて、ほんの少し足早にかけていく

灰茶色の髪が風に靡いて、ピンク色の髪留めが光を受けて眩しく煌めいた


沙織「早いですね」

「いや、そんなに早くないですよ。来たのはつい10分くらい前なので」

沙織「今の時点で15分前だから。約30分前になりますが……」

ちらっと時計を見た沙織の意地悪な一言に

沙織曰く5つほど年上の大学生

言われてみなくても中学生のような子供じゃなくて

高校生のような、ちょっと背伸びした様子もない

誕生日にもよるけれど、沙織の5つ上ならもうお酒も飲める、

一般的には大人と言える、男の子。いや、男性

派手さのない白いTシャツ、明るめの青いシャツに、ジーンズ

腕には軽めのブレスレット、髪は大していじっていないのか、短くも長くもない、普通の長さで重力に引っ張られていた

悪く言えば、普通、よく言えば普通

顔つきも優しそうで、服装での評価でも派手さが薄い

ああ確かに。と、天乃は思う

天乃「沙織が好青年と評価するのも頷けるわ」

だからと言って、

認めるかどうかはまた別の話なのだが。

沙織「どう、しますか?」

「もしよければ、先にお昼を食べに行きませんか?」

沙織「そうですね。お昼前ですし」

どちらもぎこちなさこそないが

親友でも友人でもない、知り合い程度のような

そんな、遠慮の感じられる控えめな言葉遣いだった


√ 7月14日目 昼(尾行中) ※日曜日

01~10 大赦
11~20 悪五郎

21~30 
31~40 
41~50 九尾

51~60 
61~70 
71~80 千景

81~90 
91~00 男子生徒

↓1のコンマ  


√ 7月14日目 昼(尾行中) ※日曜日


二人がお昼にと向かったのは

中学生や高校生では少し手が出し難そうな、少しばかりいいお店だった

お昼時で、休みの日

周りを見れば二人と同じような組み合わせの人が点在していて

けれど、そう見えるだけの二人は、そんな組み合わせのように

楽し気な会話に、甘さのある雰囲気は含んでいなかった

沙織「教員になるんですよね」

「はい。子供が好きなんですよ。少し年の離れた弟がいるんですが、その世話が思った以上に楽しくてですね……」

沙織「年の離れたって……どのくらいです?」

「今、中一ですね。学校は伊集院さんとは違うので、面識はないと思いますが」

沙織「仲良いんですね」

嬉しそうに話す青年に対して、

沙織は少し大人びた笑みを浮かべながら、優し気に言う

この世界であっても仲の悪い兄弟というものもいる

そんな中で、世話が楽しいと言い、証明のように嬉しそうに語る姿は

沙織も認めるべきだと思ったのだろう

沙織「あたしは長女なので、そういう関係は少し羨ましいです」

「伊集院さんはもしもいたら、兄や姉。妹や弟。誰が良かったですか?」

沙織「……姉。ですね」


沙織は少し悩んでから、そう答えて

ちょっと驚いたような表情を浮かべた青年は、小さく笑う

「姉ですか? 何かあるんです?」

沙織「しいて言えば、個人的には妹が良かったので」

なんで姉が欲しいのか

その質問に困ったような表情を浮かべた沙織だったが、

すぐに「そうですね」と紡いで、ことばを繋げていく

そんな会話を離れた場所で聞きながら、天乃は「馬鹿ね」と、呟く

沙織がなぜ姉を欲しいと言ったのか

沙織がなぜ、困った表情になったのか

それを察している天乃は成年へと、ドリンクのストローを差し向けて

天乃「沙織に嫌われるわよ」

そんなことを呟いて

天乃「……嫌われちゃえばいいけれど」

独り言ちて、息をつく

尾行なんてしている自分こそ

嫌われてしまいそうなものだと、思ったからだ


沙織達は食事を終えると、

映画を見に行くか、適当に散歩をするかその二択のうち、前者を選んだ

選んだのは、沙織だ

どの映画が見たいのかと聞かれてもお任せするとの一言で

別に映画が見たいわけではないんだろうなと、天乃は思う

きっと、

今すぐにこのデートのような何かを終わらせると言うことはできないが

出来るだけ話すのは止めたい。そう考えて

口数を減らせるのが映画だと思ったのだろう

ラブロマンスが一番だけど、

子供向けのアニメや、アクション、SFなんかも好きなのよ。と

どの映画が……と

悩まし気に一覧を見る青年に、天乃はなんとなく勝ち誇ってみる

ちなみに、沙織はグロテスクな系統がめっぽう弱く

教室でたまにそんな内容の映画の話をする男子生徒を見かけては

うわぁぁっと、吐き気さえ催してそうな表情で机に突っ伏してしまう

そんな姿を思い返して小さく笑っていると

「……久遠、か?」

そんな声が、後ろから聞こえてきた


天乃「あ……」

「その……怯えないでくれ。あんなことはもうしないから」

約一ヶ月前、告白してきた男の子

自分は今年中に死んでしまう可能性があるのだと

そう語った天乃に、生きたいと思えることをする

そう言って、キスをしてしまった男の子

天乃「……ううん、怯えてなんて。いないわ」

あれは自分も悪かった

悪戯に誘ってしまったのは天乃だ

そこで本当に実践してしまったのもやはり問題なのだが

誘った天乃も天乃で

だから、と、天乃は震えてしまいそうな

女の子の体を自分で抱きしめて、首を横に振る

天乃「どうしてここに?」

「映画を見に来たんだ」

天乃「一人で?」

「一人で悪いか。久遠は……どうせ相手いるんだろ? あの、勇者部の後輩の子とか」


1、いないわ
2、いるわよ
3、沙織の後をついてきただけよ。ほら、あれ
4、ねぇ……映画。一緒に見る?


↓2


天乃「私も一人よ」

「なんだよ。一人で? とか言ったのに」

天乃「だって私は沙織の後をついてきただけだもの。ほら、あれ」

「あれ?」

天乃の指さした方向へと目を向けると

男の子の目には、青年と話し、チケットを受け取る沙織の姿が見えて

男の子は「へぇ、意外だな」と、不思議そうにつぶやく

「伊集院は男子に興味ないもんかと」

天乃「誰か言ったの?」

「いや、見ててそう思ったってだけ」

男の子は沙織から天乃へと視線を戻すと

見上げられていることに気づいて、

照れくさそうに眼を逸らす

「けど、まさか久遠が追う側だったなんてな。てっきり、伊集院が久遠の露払いかとばかり」

天乃「私は別に……」

「伊集院が男と居るのが嫌だから、そうやってついてきたんだろ?」

天乃「それは……」


男の子に想ってもみなかったことを言われ、

天乃は困惑して視線を彷徨わせて、首を横に振る

沙織がデートまがいのことをしなければいけないと言っていた時

不快感がなかったと言えば嘘になる

けれど、沙織が男性とお付き合いをすること

それが強制されたものではなく

沙織が男性と付き合い、そのうえで

自分の意思で決めたことであるならば、認めるつもりだった

しかし

天乃「私……そうなの?」

ただ心配でついてきただけではないのだろうか

沙織が何か、嫌がらせをされるのではないか。と

もしそうではないのだとしたら、今はなぜ。ここにいるのだろうか

「二人が見るのは……アクションコメディ? っぽいな」

天乃「ねぇ、私は沙織の露払いに見えるの?」

「ん? 思うままに言って良いなら、伊集院をあの男と取り合ってる片割れだ――痛っ」

バシッっと叩かれ、男子生徒は思わず呻く

天乃「ば、馬鹿なこと言わないで。私はそんなじゃないから。ただ、沙織が心配だっただけだから」

「なら放っておいてあげた方が良いんじゃないか? あの男の方。男子目線でもイラっと来るくらい悪くない。大丈夫だと思うぞ」


天乃「それは、そうかもしれないけど」

初めに見たときもそうだったし

そもそも、沙織自身の評価があれだったのだ

なにか嫌なことをされる。というような

嫌な可能性というものは心配の必要ないだろう

「伊集院も似たような感じだから、そうおもったんだよ」

天乃「え?」

「久遠に対して告白だとかそう言ううわさが流れると、決まって伊集院が気にするんだ。どんな人なのかとか。色々」

天乃「………」

「だから、伊集院は男子に……ぶっちゃければ、久遠にしか興味がないと思った」

だから、あんな男と歩いてるの見て、正直驚いたよ。と

男の子は眉を顰めた、楽しいとはいえなそうな

微妙な表情で笑みを作ると、「だからさ」と、言う

「もしあれなら、一緒に映画観ようぜ。あの二人のとは違うけど」

天乃「私は……」


1、誘いを受ける
2、誘いを断る
3、帰る
4、沙織に声をかける


↓2


天乃「ごめんなさい、それは良いわ」

「そっか」

男の子は残念そうに言うと、すぐに笑顔を浮かべる

取り繕った、笑顔

天乃に罪悪感を抱かせまいとしている、そんな表情

天乃「私にもいろいろ事情があるから」

「知ってる。大赦のお役目ってやつだろ?」

天乃「うん、そんな感じね」

本当は違う。何もない

いや、あるけれど、何もない

そんな悪魔の証明にも似た何かを説明するのは難しくて

天乃は、チケットを提示して中に入っていく二人を見送る

沙織は自分の元に戻って来てくれるだろう

なにかがない限りは、きっと

それでもこうしてここにいるのは……

天乃「独占欲? 嫉妬?」

解らない。でも、それと同じようなものがあるからこうしてついてきている

天乃「沙織を信頼しているのに不安になる。情緒不安定というべきか……あぁ、もう。私も恋する側なのね」

今更当たり前な事を呟いた


√ 7月14日目 夕(尾行中) ※日曜日

01~10 
11~20 沙織

21~30 
31~40 
41~50 九尾

51~60 樹海化
61~70 
71~80 悪五郎
81~90 
91~00 大赦

↓1のコンマ  


√ 7月14日目 夕(尾行中) ※日曜日


沙織「今日は、有難うございました」

「いや、こちらこそ」

映画を見終えたあと、少しばかり近くのお店を見て回って

映画の感想を交えながら、あの置物は可愛いだとか、

あの服はおしゃれだとか、

どこか、恋人に思えるような会話をして

二人は互いに僅かに距離の縮まった

他人行儀な挨拶をする

「伊集院さんの事、実を言うとよく知らなくて……でも。今日は色々と知ることが出来てよかった」

沙織「あたしもです」

「……最近、伊集院さんは穢れてしまったと。そう言う人が増えていましたが、まったくそんなことはなくて」

沙織を直視することなく、

青年はまだ明るい、沈んでいく太陽を見上げて

照れくさく、はにかむ

「もしかしたら、僕らは久遠家に対しても邪推しすぎているのかもしれませんね」

罪悪感のある表情へと切り替わった青年は

天乃からは見えない、影のある表情で沙織へと目を向けて

沙織はそれに対して口を開くことなく静かに見返す

まるで、キスをする、少し前の緊張感

「良ければまた、ぜひ……夏祭りもありますし。いきませんか?」

そして、青年は沙織を誘う


沙織「夏祭り……」

「そうなんですよ。8月の半ば【8月13日目】なんですが」

沙織「――――――」

「―――――――」

沙織の声が小さくなって、青年は何かを言い返す

言い争うような雰囲気は感じない

それどころか、よさそうな雰囲気で

天乃「…………」

沙織が受けるかも。と言っていたことを思い出す

無下には出来ないからと、そう言っていたことを思い出す

夏祭りに行くのだろうか

二人きりで、沙織は浴衣を着て、

また、少し大人びた可愛らしいおしゃれを彼の為にして

行ってくるね。と、言うのだろうか

ただいま。と、言いに来ることはなくなるのだろうか


天乃「馬鹿ね……」

誰に言うわけでも無く呟いて

自分の体を優しく強く、抱きしめる

なにか、いけない事をしてしまいそうな、そんな感じがして

ふつふつと、心の奥底から沸きあげってくる何かを、止めたくて。

沙織は長女だ。伊集院家を背負わなければいけない存在だ

だから、天乃ではなく

青年のような人とお付き合いをして

結婚をして、伊集院家の未来を紡がなくてはいけないのだ

天乃「貴女がその人が良いと言うのなら。私は止めないわ」

一礼をして、また。と

別れていく二人から、天乃はそっと眼を逸らす


1、帰る
2、砂浜へ
3、ふらつく
4、沙織のところへ


↓2


では、少し中断します
21時ごろには再開予定です


では、もう少しだけ


少しだけ、迷った

彼との時間、その余韻に浸る時間を邪魔していいのか

青年について考える時間を奪って良いのか

けれど、考えても決局動いてしまった

向かい風に吹かれながら、少しずつ、キュルキュルと

そして

沙織「着ちゃダメだって言ったのに。馬鹿だなぁ、久遠さんは」

天乃が来てしまったことに対して呆れているのだろうか

それとも、嬉しく思っているのだろうか

沙織は困った表情で振り返ると、

沙織「ずっと気になっちゃったんだよ?」

天乃「私も、気にしていたわ……気にしちゃったのよ。仕方がないじゃない」

沙織「映画館であの男の子に話しかけられて、誘われて断って」

天乃「見てたの?」

沙織「それはもう。もしも一緒に見てたら、男の子は映画館で闇討ちされてたよ」

冗談にならないようなことを

沙織は冗談めかした笑みを浮かべながら言い放って、くるりと回る

スカートが、優しい風と舞う


沙織「ねぇ、久遠さん」

天乃「なに?」

沙織「あたしがさ、誰かのお嫁さんになっちゃうのは。嫌?」

天乃「それは……」

必要な事なら、自分の意思で決めたことなら

そう紡ごうとした唇は、重く固い

視線は沙織の足元へと落ちて、少しずつ。影が広がっていく

沙織「あたしはね? 一妻多妻は構わないけど、男の人に抱かれる久遠さんは嫌だな」

天乃「五郎君も?」

沙織「それは、何というか。学生は制服を着なくちゃいけない。みたいな感じのそれだから」

だけどね、と、沙織は続ける

夢を語るような浮ついた雰囲気で

けれど、飛び慣れていない、警戒心の強い鳥のような

足場のしっかりとした、瞳で

しかし、その瞳は僅かな狂気を孕んでいるようにも見えた

沙織「なんだか。こう、知らない味を知っちゃうから。久遠さんの体が、あたしの知らない何かに侵された気がして、苦しくなりそうで」

天乃「沙織……?」

沙織「多分、腐った蜜柑を取り除くように、あたしは久遠さんの体からそれを取り除こうとしちゃうんじゃないかな……」


沙織「……時々それを考えるんだ。考えたくないのに、考えちゃう」

沙織はただ不安になっているだけじゃなくて

猿猴の憑依を行っているうえに

戦いによる樹海への被害を請け負っていたから

精神的に、心理的に

あまりよくないものが現れて来てしまっているのだろう

不安そうな表情をした沙織は「たまに泣いちゃうときもあってね」と

不釣り合いに笑みを浮かべた

沙織「久遠さんもまったく同じではないだろうけど不安にならなかった?」

天乃「……………」

沙織に関して不安になった

あの青年に対して、不快感があった

奪われてしまうのではと

居なくなってしまうのではないかと

独占欲のような

あってはいけないような感情があった


1、あの子の存在が凄く不愉快だった
2、居なくなっちゃうのかなって、不安になった
3、私は、大丈夫よ
4、


↓2


天乃「あったわ。ずっと」

不快だった

不愉快だった

不機嫌だった

青年に対しても、沙織自身に対しても

天乃「そんなおしゃれなんてしなくて良いじゃない、どうでも良いって言ったのに。そんな、頑張った格好して」

沙織「く――っ」

天乃「普通に楽しんでた、喜んでた、笑ってた、幸せそうな雰囲気さえ感じた」

沙織の小さな手を掴んで、引く

逃げないように、

奪われないように

どこかへと行ってしまわないように

力が不自然に籠っていく

激しく強く、もう取り返しがつかなくなるぞとなにかが言うけれど

天乃「憎いとさえ思った、苛々した。奪われるんじゃないかと不安になった。帰ってこないんじゃないかと心配になった」

言葉は決壊したダムのように流れ出していく


驚いた顔の沙織が目に入って「久遠さん」という声が聞こえて

あぁ、しまったな。と、心が思うのに

天乃「どうせ夏祭りにもいくんでしょう。二人で行くんでしょう。それで、また何か約束して」

沙織「痛っ」

天乃「貴女の方が私の知らない貴女になっていく。それで気が付いた時にはいなくなっちゃうんでしょう?」

そうなっちゃうくらいなら。

心に浮かび上がるどす黒く穢れたなにか

奪われてしまうくらいなら

自分の目の届かないところへと消えてしまうくらいなら

もういっそ……自分の手で――

なにかが嗤う。その奥で

バシッっと、乾いた炸裂音が響く

九尾「愚か者めッ!」

天乃「っ!」

悪五郎「少し休め」

叩かれた頬痛みも冷めぬまま

ぬぅっと伸びた小さくも大きな手が全てを覆う

包み込む、冷え切った孤独の闇に飲まれて意識は露と消えていく

最後の最後、頬に感じた熱は

たった一筋の、心許ないものだった


√ 7月14日目 夜() ※日曜日

01~10 沙織
11~20 
21~30 夏凜
31~40 
41~50 九尾
51~60 
61~70 悪五郎
71~80 
81~90 沙織
91~00 

↓1のコンマ  

ぞろ目、特殊


√ 7月14日目 夜(自宅) ※日曜日


天乃「ん……」

何も考えられない、何もない、何も与えられない

虚無から這い上がっていく

見えた世界もまた暗く、けれども何かの存在感があって

ゆっくりと目を向けると、その存在感もまた天乃に気づいたようで

暗い影を伸ばす

夏凜「ったく、何やってんのよ」

天乃「……夏凜」

夏凜「頭は? 体は?」

天乃「少し痛くて重い……」

夏凜「そう……じゃぁ、もう少し休んでなさい」

その手は少しザラッとしているようで

けれども優しく、天乃の額を撫でる

前髪が払われて起きる小さな風が、浮いた汗を撫でて、心地いい

天乃「……沙織は?」

夏凜「いるわよ。ま、精霊化してるからいないと言えばいないけど」


天乃「なにか、聞いた?」

夏凜「聞いたわよ。ストーカーした挙句癇癪起こしたって」

馬鹿にするように語って夏凜は笑う

そんなつまらないことを気にするなというように

そんなことは何も気にしていないと言うように

段々と慣れて鮮明になっていく姿、見えたのは背中で

丁度、夏凜が読んでいた文庫本を閉じて振り向く

夏凜「見てみたかったくらいよ」

天乃「……やめて」

夏凜「沙織の事――」

天乃「止めてって言ってるでしょう!」

夏凜「そうやって怒ったところ……いや、そう言う感じなら一回見たことあるか」

天乃が声を荒げてなお、夏凜は動じることなく懐かしむように呟いて

あの時は怖かった。と、苦笑する

夏凜「ま、何はともあれまだ安静ね」

天乃「夏凜……」

夏凜「泣くな泣くな。私はそれ以上の見た事あるから今更だっての。発散したきゃ怒鳴っていいわよ。ただしその分、落ち着け」

頬を撫でて、夏凜は困ったように笑って

そっと額にキスをする

夏凜「今日も傍にいてあげるわよ。お嬢様」


風にも似た、悪戯な笑み

泣き出しそうな目元を拭って、夏凜は身を寄せて手を握る

強く、優しく

逃げるな、行くな、ここにいるからと、

その力強さが訴える

夏凜「聞いた話、あんたの体の中の穢れが原因らしいじゃない」

天乃「…………」

夏凜「恋愛で癇癪起こすってのが、笑えるわ」

夏凜は挑発しているのか

それともただ、冗談のつもりなのか

今の天乃にはどちらにも感じられて

強いて感じるのは不快感を伴う方で

強く締め切った唇の奥、噛み締めた歯がギリギリと怒りに唸る

夏凜「……少し、私の自由になってみる?」



1、
2、なに、言ってるのよ
3、いいわよ
4、沙織の事、傷つけたわ
5、良く分からないのよ、嫌な気持ちで一杯になって、私。止められなかったらきっと……


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



東郷「えー、今回の久遠先輩に関しては」

東郷「所謂ヤンデレ、と呼ばれるものに近い状態になります」

東郷「普段温厚で、余り怒鳴り散らしたりしない久遠先輩なので」

東郷「正直興ふ……いえ、驚きました」

千景「ヤンデレ……似たような記憶が……」

若葉「待て待て待て、無理に思い出さなくて良い!」


遅くなりましたが、この時間ですので
今回はお休みとさせていただきます

明日は恐らく通常時間から出来るかと思います


では、少しだけ


力が入らないだけでなく、全身満遍なく何かに乗っかられているかのような

そんな、どうしようもない体の重みを感じながら、天乃は夏凜の手を掴み返す

少しずつ、確実に。握り返して――引く

夏凜「っ!と」

慌てて出した手が天乃の顔の横、枕に沈み込んでいく

飲み込まれていくような危うさを手に感じながらも

夏凜は目の前の恋人をまっすぐ見つめて、笑う

夏凜「なーにすんのよ……顔に張り手かませっての?」

天乃「貴女の自由になんてならないわ。そうしたら、貴女は自由のままだから」

夏凜「痛っ……」

段々と握り締める力が篭っていくのを感じて

天乃が正気ではないのだと

やはり、どこかおかしくなってしまっているのだと

話だけではなく実感して

夏凜は握りつぶされてしまいそうな左手を一瞥する


天乃「置いていく一人にする、どうせ沙織は、貴女だって!」

夏凜「っ!」

天乃「沙織は楽しそうだった。幸せそうだった。嬉しそうだったのよ。私がいない、あの場所で、あの時間、男の子と二人きりで」

普段は見せない、怒りと、憎しみと、悲しみと

色々な感情に塗りつぶされた複雑な表情で、天乃は夏凜を見つめて怒鳴る

橙色の瞳は暗く濁り、もともと失われた赤い瞳は赤黒さが増していく

天乃「今だって。沙織はいないわ。アレだけ言ったのに、結局、そう言うこと……どうせ貴女だって誰か別の人のところに行ってしまうんでしょう?」

夏凜「こういうことか……」

普段なら、貴女が決めたことならと

追ったり、嫌味を言ったりすることなく見送ってくれるだろう

それはきっと、強いのだと錯覚させる

実際、夏凜も平気だと思った、自分一人軽くても大丈夫なのだと

しかし、違うのだ

天乃は弱いのだ。決して誰しもから羨望されるような強靭な少女ではないのだ

親友に旅立たれたのだから、親友に忘れ去られたのだから

家族という、一番寄り添えるはずの存在の記憶を失ったのだから


久遠天乃という少女は、追わないという姿勢でありながら

その実、寂しがり屋な人間で

いうなれば、孤独というものが恐ろしいのだ

目の前からいなくなってしまう、

二度と会えなくなってしまう

次に触れることができるのは、

時に熱され、時に冷やされ、時に濡れ、緩やかに朽ちていく墓石になってしまうのではないかと。

そして、その弱い部分が

その不安が、恐怖が、穢れによって強く引き出されている

天乃「誰か男の子が来て、一日だけと付き合って、そこから気づいたら交際して、結婚して、だって、私は女の子だから……っ」

夏凜「……はっ、結局あんたは自分に自信が無いって話?」

天乃「違うっ!」

夏凜「だったらうだうだ言ってないで見せなさいよあんたのこと!」

まだ穢れ切っていない、濁ってしまっただけの右目から涙が伝う

そんな弱った天乃へと、夏凜は強く言葉をぶつける

夏凜「確かに、あんたは女よ。誰だか知らないけど、沙織が会った男にある物があんたには無いわよ」

でもだからってなんなのよ。と

夏凜は掴まれたままの左手を強引に動かして、天乃の耳元にまで持っていく

あと少し。その力不足のもどかしさに、歯噛みする

夏凜「けど、そいつに無いものがあんたにはあるんじゃないの? 大体女だからとか、そんなちっぽけな理由で今更私らが離れるかっての!」


夏凜「楽しんでるようで、喜んでいるようで、嬉しそうで、幸せそうで、そんなあんたは嘘だったの?」

天乃「違う」

夏凜「いつもいつも受身なのは結局、欲を満たしてあげれば一緒に居てくれるって打算的な理由だったの?」

天乃「違うっ」

本当はこんなこと言うような人間じゃないのに

こんな説教するような性格じゃないのに

いろんなことを考えて否定して、勢い任せに言葉を紡いで

こんなこと言うのもするのも全部あんたのせいで、あんただけなんだから。と

半ば八つ当たりのような、怒りにも似た感情で武装する

積み重ねるたび、否定するたび

天乃の頬から涙が伝う

それはもはや、たった一筋になってしまったけれど

でも、間違いない、天乃の感情で

夏凜「違うならこの前みたいにあんたからも求めてみなさいよ! 正直驚いたわよ。けど――自分だけじゃないって思えて嬉しかったし!」


夏凜「それって結構……安心すんだから」

天乃「夏凜……」

手首をつかまれたまま、維持で天乃の体を抱きしめていく

優しく、けれど、馬鹿なことを言うなと。少しだけ強く

抵抗しない抵抗の柔らかさが、ほんのちょっとだけイラッとする

夏凜「あんたが穢れてようが、あんたが女だろうが、あんたが体中動かなかろうが。生きてる限り、ずっと傍にいてやるわよ」

抱きしめて、抱きしめ返されて、夏凜は小さく笑みを浮かべる

とても弱くて、愛らしい

子供のような天乃を、夏凜はこのままでいてほしいと思う

天乃は本当は弱い

けれど、強くて凛々しく、格好良いのだって嘘ではない

その天乃だって好きだ

しかし、その姿の天乃はもう、出来れば見たくは無い

それは頑張ってしまっているから、体に負担をかけてしまっているから

死んでしまう可能性もあるような、とても辛いことだから

そんなことをするくらいなら、弱く、愛らしく、ただの女の子であってほしいと夏凜は思う

――じゃないと、私達の立つ瀬もないし

そんな、私情も挟んで

夏凜「惚れた女の……負けよ」

唇を重ね合わせる

流れていった悲しさの味を、二人で分け合っていく


1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流無()
・   犬吠埼樹:交流無()
・   結城友奈:交流無()
・   東郷美森:交流無()
・   三好夏凜:交流有(癇癪)
・   乃木若葉:交流無()
・   土居球子:交流無()
・   白鳥歌野:交流無()
・   藤森水都:交流無()
・     郡千景:交流無()
・ 伊集院沙織:交流有(尾行、癇癪)

・      九尾:交流無()
・      神樹:交流無()



7月14日目 終了時点

乃木園子との絆 54(高い)
犬吠埼風との絆 62(とても高い)
犬吠埼樹との絆 52(とても高い)
結城友奈との絆 68(かなり高い)
東郷美森との絆 54(高い)
三好夏凜との絆 90(かなり高い)
乃木若葉との絆 47(中々良い)
土居球子との絆 30(中々良い)
白鳥歌野との絆 25(中々良い)
藤森水都との絆 16(中々良い)
  郡千景との絆 15(中々良い)
   沙織との絆 75(かなり高い)
   九尾との絆 48(少し高い)
    神樹との絆 9(低い)

汚染度???%+α


√ 8月1日目 朝(自宅) ※月曜日

01~10 大赦

11~20 
21~30 夏凜 
31~40

41~50 伊集院 
51~60 
61~70 九尾

71~80 
81~90 風
91~00 

↓1のコンマ  

ぞろ目、特殊


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

夏休み、つかの間の休日、そして……



東郷「夏凜ちゃんと居れば弱い久遠先輩が見れる……?」

夏凜「期待した目で見てくんじゃないわよ!」

東郷「そこをなんとか!」

須美「もう止めて下さい! 貴女のせいで傷ついてる子もいるんですよ!」

東郷「え?」

須美「未来に希望をください!!」


では、少しだけ


√8月1日目 (自宅)朝 ※月曜日


夏休み真っ只中、照りつける熱い陽射しこそカーテンが遮ってはいるものの、

その熱は窓を通り抜けてカーテンを熱して

そこらじゅうで泣叫ぶ蝉の声が鋭敏な聴覚を揺らがせる

このときばかりは、両耳が散華してしまえばよかったのにと、

ちょっとだけ我侭に考えて、息をつく

べっとりと張り付くような襟ぐりを抓んでパタパタと風を招き入れると

気持ち程度の涼しさが服の中を駆け抜けていく

天乃「これは、夏凜が一緒に寝たせいだわ」

夏凜「知るか」

天乃「悩みなさそうで羨ましい」

夏凜「もぎ取るわよ。あんた」

先月半ば、天乃は穢れによって普段押し殺している感情を爆発させて

沙織や夏凜を激しく責め立ててしまった

恋愛面ゆえにその問題は穏やかに済んだものの、

穢れで暴走するとは。と、大赦からの警戒はより強くなってきており、

そういった流れもあってか、夏凜は以前と比べれば天乃に接してくる回数が大幅に増えていた

というわけで、昨日の夜も性的なふれあいなしに、一緒に過ごしたのだ


天乃「あらやだ、奥様。わたくしはバストの話なんてしておりませんわ」

夏凜「その目がしてんのよっ! 馬鹿にすんなっ」

天乃「ちょっ」

おほほっと、口元に手を宛がって笑う天乃を、

夏凜は寝返りを打ちながら襲い掛かって、押し倒す

ぼふんっと枕から空気が押し抜かれて、

天乃のほんのり汗ばんだ匂いと、枕に染み付いた仄かな甘さの柑橘系の匂いが鼻腔を擽る

絵に描かれた桜木、その細枝のように散らばった髪はやはり、白い敷布と枕には映える美しさで

朝から少し、ドキドキトして見下ろす夏凜に対して、天乃は数瞬驚いた表情を浮かべたが

すぐに調子を取り戻して、笑う。嘲るような挑発的な笑みだ

天乃「真っ赤りんごちゃん?」

夏凜「暑いのよ!」

天乃「胸板が?」

夏凜「男か私は!」

天乃「そんなかっこよさは、あるけどね」

でも違うわよ。と、

天乃は唖然とする夏凜の頬に手を宛がって、優しく微笑む

今度は挑発的ではない、嬉しそうな笑み

夏凜の好きな、気楽のある幸せの感じる笑み


夏凜「あんたは……もう」

自分の頬に宛がわれた天乃の手に、自分の手を重ねて

夏凜は呆れたように呟きながら、ため息と共に笑う

怒る気も失せる。元々、そんな気は無いけれど

熱は下がって熱の上がる不思議な感覚を覚える夏凜は天乃を見つめて

天乃もまた、そんな夏凜を見つめ返して

ちくたくと、静かに動く時計の針の音だけが部屋に木霊する

授業開始の鐘の音が鳴り響いた教室のように、静かだ

学ぶのは、保健体育だろうか……いや、今は、きっと。これも道徳というものだろう

夏目漱石という作家の、「こころ」という題名が、脳裏に浮かぶ

夏凜「あんたは、可愛い」

天乃「だけ?」

夏凜「やめろ」

天乃「言えないの? かっこかわいい夏凛々しいちゃん」

夏凜「原形とどめてないんだけどっ」

可愛いといわれてほんのりと赤らんだのに

それでも続きを求めるような茶目っ気と、問いかける微笑と

着せ替えされていく自分の名前、それを紡ぐ声と呟く唇

愛らしいと思いながら、夏凜はどうするべきかと考える

いえる言葉は数あるし、

どれを言っても恥らってくれそうなものだが

弱っていないと、性的なことじゃないと

自分が優位に立てそうもないことを夏凜は少し、悔しく思う


夏凜「可愛いし、綺麗だと思う。時々格好良いし……エロい」

天乃「エロいって……私普段はそんな」

夏凜「変な意味じゃないわよ。なんていうか、大人っぽいってやつ」

アダルティとでも言えば良いのか。と、夏凜は自分の思う天乃の事を考える

えっちな事をしてるときはもちろん、淫らだ、えっちだ

艶がかった唇、火照った朱色の肌、零れ出て行く熱っぽい吐息、

揺れる乳房と、淫靡さを極限まで引き出す純潔の洞窟

汗ばんだ額に張り付く前髪というのも、また情欲を刺激するもので。

何もかもが淫らに思えて、相乗効果なんてものを考えたら

電卓の桁数では足りないだろうなとさえ、思う

天乃「なーに黙り込んでるのよ。えっち」

夏凜「なっ……う。い、良いじゃない別に! あんたが聞いてきたことなんだし!」

天乃「したいの?」

夏凜「朝からやってられるかっての」

天乃「朝じゃなかったら?」

そりゃ、まぁ……

そこまで思って、自分が男子のようなわかり易い器官がないことに感謝して、

にやけた笑みから目を逸らし、聞こえないふりをした


夏凜「まぁとにかく」

天乃「逃げたわね……」

夏凜「うっさい」

じとっとした目で見つめてくる天乃に夏凜は少しだけ強く牽制する

せっかくの夏休みなのだから、朝からエッチなことをするのも良いんじゃないか。と

煩悩がわくわくしているのだが、頭を振って

そんな考えをどこかへと転がしていく

夏凜「今週の土曜【8月6日目】は陸上部の応援でしょ? あの例のクラスメイト」

天乃「ええ」

夏凜「……あ、別に関係ないわ。それ」

社長にスケジュール確認する秘書のような、

良く解らないことをした夏凜は「暑いせいだ」と、本気で呻く。

もしかしたら、意味不明な嫉妬でもしたのかもしれないが。

額の汗を拭うと、張り付いた前髪がだらりと下がった

夏凜「今日、出かけない?」

天乃「みんなで?」

夏凜「2人で。が、良いけど……まぁ、みんなが良いならそれでも」




1、良いわよ
2、みんなで
3、そう言ってえっちなホテルに連れ込む気ねっ!


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



悪五郎「二人きりが良いと言われて全員……だと?」

九尾「くふふっ、流石主様じゃな」

悪五郎「笑ってる場合か……良くないだろう、あれでは」

九尾「良い良い。それでよい、主様は愚か者。じゃからな」


では、少しだけ


天乃「なら、せっかくだし、みんなで行きましょ」

夏凜「みんなで、ね。予定が合えば……って思ったけど。夏休みか、今」

天乃「大丈夫?」

夏凜「平気。クラスの連中がよく言う浮いた話ってのは、思えば共通なのよね」

呆れたような表情でそう言った夏凜は、

でしょ? 渦中の奥様。と、悪戯っぽく言って頬をつねる

天乃「ちょっ、なにひ」

夏凜「とりあえず勇者部には連絡まわしてみるわ。天乃の誘いだし、何かない限りは大丈夫だろうけど」

天乃「どこか行く予定はあるの?」

夏凜「ん? あー……」

悩ましげに唸る

それは、今になって考え出しているようで

けれども、浮かべている悲しげな表情がそうではないのだと

天乃は解ってしまう

夏凜「考えてないわ」

天乃「夏――」

夏凜「丸亀にでも行くか。若葉たちがいたって言う場所見てみるのも悪くはないでしょ」

そんな、適当に思いついたことを口にして、

夏凜は「みんなが着てから考えれば良いでしょ」と、

半ば投げやりに言って部屋を出て行く


天乃「…………」

二人きりが良いといったのに。

みんなの方が良いと答えてしまった

悪気があったわけじゃない

二人きりが嫌だったわけでもない

ただ、二人も良いけどみんなもいたほうが。と、思っただけで

どこか行きたいところがあったのだろう

なにか話したいことがあったのだろう

それは急用ではないのかもしれないけれど

でも、少し……

ううん、とても悪いことを、してしまったかもしれない

天乃「夏凜、怒ってはなかったけど……ごめんね」

直接言っても受け取らないだろう謝罪の言葉を

夏凜のいた空間へと差し出して、息をつく

今日はみんなで――出かける日になった


√8月1日目 ()昼 ※月曜日


01~10  映画
11~20  釣り
21~30 公園

31~40  砂浜
41~50 イネス
51~60  丸亀
61~70 遊園地
71~80 映画

81~90  ゲームセンター
91~00  動物園

↓1のコンマ 


√8月1日目 (イネス)昼 ※月曜日


風「勇者部みんなでイネスって、意外と初めてよね」

東郷「更に言うと、車を使わないで。というのも初めてです」

夏凜が言った通り、沙織を含めたみんなが一度天乃の家に集まり、

そのまま話し合って

天乃や東郷が歩けないことなどを考慮したうえで、イネスへと行くことになった

友奈「こうやって並ぶのって、初めて。かな?」

夏凜「多分、そうじゃないの?」

友奈は東郷の車椅子を押して、

夏凜は天乃の車椅子を押して

東郷の隣に樹、斜め前に風、天乃の隣に沙織と並ぶ

友奈「夏凜ちゃんも車椅子押してる姿が似合うね」

夏凜「あんたほどじゃないわよ。私はどっちかって言えばベッドの傍だし」

風「おやぁ~? お盛んですなぁ」

樹「なんだか男の子みたいだよ、お姉ちゃん」

沙織「男の子というより、おじさんだよね」


風の茶化す一言に夏凜が反応するよりも早く、

樹や沙織の横やりが投げ込まれて

しょぼんとする風に、夏凜もさすがに何も言えずにため息をつく

天乃「お盛んなのはみんなじゃないの?」

沙織「そうともいうかな」

樹「?」

友奈「わ、私は違いますよっ」

この場にいる、犬吠埼姉妹以外のみんなとはすでに

性的な交わりを行った

もちろん、キス止まりではなく。

それが理解できていない樹は不思議そうに首を傾げたが

解ってしまう友奈は可愛らしく頬を染めて、否定する

樹「あの――」

東郷「大人の階段上ったのよ。樹ちゃんも、風先輩と一緒に上りに行くといいわ」

天乃「樹に変な事吹き込まないで」

東郷「すみません、つい」


とはいうものの

樹も樹で興味はあるらしく、

友奈の反応で大方悟ったのだろう、

風の方に振り向くと、

風は困ったように苦笑いを浮かべて、天乃へと目を向ける

天乃「なに?」

風「今度、ね」

天乃「……私、体弱いんだから」

風「優しくするから」

控えめにと願う天乃に抱き着くように、腕を回して

風は耳元で囁く

淫らな行為の最中ならばこそばゆいそれも

平時だからか、何ともなくて

けれども、ほかのみんなを相手にしておきながら

断ることなどできるはずもなく

天乃「……解った」

そう、答えた


沙織「久遠さんにはね、ビキニも似合うと思うけどパレオ巻く感じのやつがね、良いと思うなぁ」

夏凜「普通にスポーツタイプじゃダメなわけ?」

せっかくの夏、夏ならば海にはいっておかないと、という

風の提案に従って、今から買いそろえるのは少し遅い気もするが

天乃達は水着売り場へと来ていたのだが……

なぜか、天乃や東郷に着せる水着を選ぶと言う話になって

友奈「ん~……あっ」

風「友奈、それを誰に着せるつもりなの?」

友奈「ふぇぁっ!? ふ、風先輩っ!?」

売り場の一部から聞こえた友奈の戸惑った声に目を向けた東郷だったが

視界に映った隠す気のない水着には、何も言えなくて

逃れるように天乃へと目を向ける

東郷「友奈ちゃんが凄くエッチな子になっちゃったかもしれません……」

天乃「家庭教師のせいよ。ね? とーごーせんせー」

東郷「さ、流石にあんな、あんな破廉恥な水着を選ぶような教育はしてないですっ!」

せいぜい、むずむずとした感覚を

一人で納める方法を教えたくらいなのだと、東郷は弁明する

それが無実に導いてくれるとは限らないのだが。


√8月1日目 ()昼 ※月曜日


01~10 大赦

11~20  三ノ輪
21~30 
31~40 久遠

41~50 
51~60 
61~70 クラスメイト

71~80 
81~90 沙織
91~00 樹海

↓1のコンマ 


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



友奈「わ、私にする?」

沙織「あたしにする?」

夏凜「それとも、私?」

天乃「とりあえず友奈の持ってるスリングショットの水着は却下で」

風「貝殻もあるわよ?」

天乃「却下」

東郷「神樹様の触――」

天乃「却下!!」


では、少しだけ


√8月1日目 (イネス)昼 ※月曜日


樹「夏凜さんは何にするんですか?」

夏凜「私に聞くより風に聞いたほうが良いんじゃないの?」

樹「たまには、お姉ちゃん以外の意見も良いかなって」

沙織「おー、樹ちゃんが姉離れしてるよ?」

風「ふふふっ、逃さぬ逃さぬ」

夏休みの昼間のイネスは、来た時間でも多くの家族連れや

友人同士、恋人同士でにぎわっていたが、

さらに時間が経つと、より多く人集りが出来ていく

その賑やかさに溶け込む、勇者部の日常

それは、自分達が、彼女達が

みんな、その日常の一部であるのだと再認識させてくれるようだと

天乃は微笑ましく眺めて、すぐ隣にいる東郷へと目を向ける

天乃「来たことあるのよ」

東郷「?」

天乃「前に話した、2年前の。私と貴女と、園子と、銀と」

東郷「……………」


天乃の懐かしむ声は自分の心に対して気遣っているのだと

東郷は感じ取って、目を伏せる

何も覚えてない、解らない

もちろん、記憶を失った後、ここに一度も来た事ないなんて事はない

けれども、2年前にみんなで来た事

何をしたのか、何があったのか

それに対してどんなことを感じて、どうしたのか

何も覚えていなくて

東郷「すみません、なにも……ただ、なんていえば良いのか解らないですけど。でも」

悲しい思いがこみ上げてくる。嬉しい思いがこみ上げてくる

切なくて苦しい思いが、こみ上げてくる

そして、肘掛けに置いた手が握られて目を向けると

天乃が、優しく微笑んでいた

天乃「良いことがあったのよ……だから、貴女は嬉しいの。それを忘れちゃったことが悲しいの」

でも、頭ではわからなくても心が苦しんでしまうから

少しでも、それが軽くなるように、少しずつね。と、天乃は言う


東郷「九――」

「あっ――姉ちゃん!」

天乃「?」

聞き馴染み深いわけではないけれど

聞いたことのある声。のような気がした

自分の方へと声が飛んで来た気がした

なんなのかと振り向く寸前、駆け込んできた足音は止まることなく

車椅子ごと、天乃の体をぎゅっと抱きしめて

「天姉ちゃんだよなっ」

天乃「えっと……」

「天姉ちゃんだよなっ」

より強く―それでも弱いが―抱き着く男の子は

銀とどこか、似通っていて、

天乃はそれが誰なのかを察し、男の子もまた

自分が抱きついた相手が思った通りの人だと気づき、その隣の人がある人に似ているのだと、気づいて。

「須美姉の姉ちゃん?」

東郷「私は……その」

「違うのか……」


問いかけた男の子

三ノ輪銀の二人の弟の一人、三ノ輪鉄男は肯定も否定もしない東郷の態度にしょんぼりとして俯いたが

すぐに首を横に振って、天乃の方を見つめる

それはどこか、怒っているようにも見えた

「なんで、会いに来てくれなくなっちゃったんだ」

天乃「色々あったのよ」

「姉ちゃんか? 姉ちゃんがいなくなったから。だから、会いに来てくれなくなったのか?」

姉が事故で死んだのだと、聞かされた

遠足の帰りに、交通事故で死んでしまったのだと

優しかった姉が、遊んでくれた姉が、いつも元気で明るかった姉が

天乃「鉄――」

「天姉ちゃん」

震えるくらいに強く、抱き着く

怒ってるのか、悲しんでるのか、喜んでるのか

複雑すぎるその感情を理解するには

銀の弟はまだ、幼すぎた


風「なになに? どうしたー?」

沙織「ん……犬吠埼さん、ストップ」

話し声に気づいた風たちは天乃たちへと近付こうとしたが、

沙織に止められて「なんなの?」と、足を止める

夏凜「あれ……」

沙織「三好さんは知ってる……よね? 三ノ輪さんの弟」

夏凜「まぁ、ある程度は」

自分が持ってる端末

それを以前使っていた勇者のこと

その家族のこと、少しくらいは知っている

その弟につかまった天乃の表情には罪悪感があって

結局はまだなのだと。悟る

「……天姉ちゃん、あのさ。少しだけ、話したい」

天乃「…………」

「天姉ちゃん」

ここで見逃したらまたどこかへ消えてしまう

そんな、気がしたのだ


1、良いわ
2、ごめんなさい。でも、連絡先はちゃんと、教えるから
3、東郷も連れていく



↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


自分が誘われた場に友人を連れていくスタイル
東郷さんがショックを受けるまで、あと23時間


では、少しだけ


鉄男はまだ7歳で

なんの策略もないのだろうが、懇願するような視線を向ける

それは、天乃から拒否を略奪するのには十分だった

天乃「鉄男くん……」

動かない足、動かそうと思えば動かせる両手

天乃は強く握りこぶしを作ってから、自分の胸元にまで回ってきている小さく細く、弱弱しい

男の子の細腕に触れる

天乃「良いわ。時間も丁度良いしお昼にしましょう」

「あ、でも」

天乃「お母さん達いるの?」

「いない」

そう言った鉄男の表情は浮かなく、不満があるような感じで

また少し、天乃に抱きつく力を強くする

「お金、そんなに持ってないんだ」

天乃「良いわよ。お昼くらいなら私が出してあげるから」


まだ小学生になったばかりで、お小遣いもさほど持ってない

そんな切実な悩みを解消した天乃は鉄男の頭を優しく撫でながら、東郷へと目を向ける

天乃「ただ、そっちの子も同席させる」

東郷「…………」

「須美姉ちゃんの姉ちゃんっぽい人? 関係ないのに?」

東郷「っ」

ちらりと向けられた鉄男の、他人を見るような目に

東郷はズキリと傷むものを感じて、唇を噛み締める

自分には記憶がない

だが、あるべき記憶の中では

東郷美森という鷲尾須美は、彼との関わりがあったはずで

無関係だと思われたことが痛いのだろうか

彼との思い出を思い出せないことが痛いのだろうか

それとも、何も言うことができない。自分の無力さが、苦しいのだろうか

天乃「ええ、ちょっとね。そうそう。鉄男くん、お食事の席では」

「行儀良く! だよね。解ってる。須美姉ちゃんがよく言ってたことだから」


楽しんで食事をするのなら良いのだが、

当時はまだ4歳、5歳という幼さで

どうしても、騒いでいるという域に行ってしまうことが多かった

そのたびに須美からは「お行儀良く」と注意され

姉の銀は「まぁまぁ」と須美を宥めて、鉄男といえば、「怒られた~」と

天乃に抱きつくことが多かったなと、思い出す

「天姉ちゃんは本当に姉ちゃんみたいだったんだ」

天乃「…………」

「優しかったし、いろいろ教えてくれたし。いろんな遊びにも付き合ってくれて」

銀が何かで手を放せないとき

その場にいないとき、鉄男や金太郎の面倒を、天乃は良く見ていたのだ

それまでも思い出して、泣きそうで

鉄男は天乃から離れると、車椅子を押す

「ふーどこーとまで、押す」

夏凜「あんたにはまだ難しいっての。邪魔だから天乃の隣にでもいたら?」

「! う、うん」

割り込んできた夏凜に驚いて、

どことなく……と、感じた鉄男だったが大人しく押されて進む車椅子に並んで歩いた


フードコートに着き、天乃、東郷、鉄男のテーブルと

風、樹、友奈、夏凜、沙織のテーブルに分かれる

大きく離れることはなかったが、鉄男はできる限り聞かれたくない。見たいな様子だったからだ

天乃「鉄男くんが好きなもの頼んで良いわよ」

「……天姉ちゃんの作ってくれたやつとか。須美姉ちゃんの作ってくれたやつが良い」

天乃は全般的に料理を得意としているが、

基本的には、麻婆系の辛目のものを中心とした中華料理がメインで

その一方、須美は和食をメインに作る

天乃が鉄男ではなく、自分用に作ったのをつまみ食いして、

辛すぎて泣いたことが、懐かしくて

「なんて、ここじゃ無理だから。うどん……きつねうどん」

天乃「東郷は?」

東郷「私は自分で――」

天乃「大丈夫よ。買ってくるのは夏凜だから」

夏凜「私かっ!?」

天乃「ごめんね、お願い」

ガタンッと机を揺らした夏凜の声

からかって笑いながらもお願いする天乃の苦笑

それに困った東郷が眉を潜めると、鉄男が夏凜へと目を向けて

「ねーちゃん。しーっだぞ。須美姉ちゃんが怒るから」


夏凜「い、言われなくても解るっての」

風「夏凜ちゃん怒られてるぅ」

夏凜「うっさい」

風のニヤニヤとした挑発的な笑みにそれだけを返す夏凜の頬は少しだけ赤く

誤魔化すように足早にお店へと向かって、料理を注文する

その後を追うように友奈と、風が動く

天乃「須美姉ちゃんね。園子姉ちゃんは?」

「園子姉ちゃんは注意とかしなかったから。ほら、いっつも笑ってる感じ」

天乃「そうだったわね」

東郷「……………」

何もなければ、自分が入っていける会話

その思い出に対して、これはこうだった、あれはこうだった

そんな、笑い話のようなことをして、落ち着いた空気の中で

自分達がなぜ、離れる事になってしまったのかを話す……べきなのに


「いっつも、ここに来てたんだ」

天乃「…………」

「姉ちゃん、好きだったから。天姉ちゃん達も、良く行くって言ってたから」

着てくれるかもしれないと

また会えるかもしれないと

自転車で、毎日

天気の悪い日は控えたけれど、

曇りの日、晴れの日は欠かさず通った

「会いたかった。天姉ちゃんに、須美姉ちゃんに、園子姉ちゃんに」

それで、約二年間

ずっと通い続けて今日、ようやく会えた

言いたいことが一杯ある。したいことが一杯ある

その、はずだったのに

「っ……」

涙が零れ落ちていく

いろんな感情を溜め込んで、溜め込みすぎて、あふれ出していく

拭っても、拭っても、際限はなく

「何で天姉ちゃんもいなくなっちゃったんだっ!」

涙に押し流されて、言葉が出て行く


天乃「……ごめんね」

「姉ちゃんがいなくなって、頑張らなくちゃって、でも、一人じゃ、あれで、でも、天姉ちゃん達がいてくれるならって、なのにさっ!」

震えていて、濡れていて、握られ続けたその思いはぐしゃぐしゃで

けれどもしっかりと、届く

二年前、姿を消してしまったみんなに思ったこと

ずっと抱いて来たこと

天乃「……………」

ごめんね、なんていう言葉は軽い

屋根の雨漏り対策に使ったビニールシートのような

そんな、その場しのぎにしかならない

東郷は記憶を失ってしまったから

園子は大赦によって引き取られてしまったから

では、自分はどうだったのだろうか

なぜ、あの場から離れてしまったのだろうか


……怖かった。

目の前にいる誰かが、次の瞬間には死んでしまっていることが。

自分の力が、誰かを苦しませてしまうことが。

三ノ輪銀を守ってあげることのできなかった自分が

三ノ輪銀の家族の前にいること、その輪の中に存在を遺してしまうこと

それが、自分には許せなかっ――

本当に? と、誰かが言う

結局、私は逃げたんでしょう? と、誰かが問う

弱いから、怖いから

苦しみたくないから、辛い思いをしたくないから

辛い思い、苦しい思い、悲しい思いをしている三ノ輪銀の家族から

逃げた

罪を背負うと、死を背負うと、そう言いながら

責任から――逃げ出した

天乃「…………」

自分はそうすべきではない、そこにいるべきではない

そんな、自己否定を繰り返して

自傷行為をしているように見せかけて

周りが傷つかないためにという建前を使って、

自分自身を守ろうとしていただけでしょう?


心の厳しい叱責

嘲笑交じりに向けられる言葉と視線

耳を塞いでも、目を逸らしても

彼女は、久遠天乃は、無駄よ。と、嗤う

止めてほしいと願っても、

ごめんなさいと謝っても

彼女は許すことなく、責めたててくる

それがたとえ穢れによってより凶悪なものになってしまっているとしても

元を正せば

それは、天乃の心だから

天乃が天乃に抱いていることだから

「天姉ちゃん」

天乃「っ」

そんな、罪悪感に揺れ動く天乃の体を、

小さな体が、抱きしめる

「おれ、姉ちゃんみたいになりたいんだ。弟の面倒とか見れるように……でも、まだ。おれ、何にも出来ないから、だから、一緒にいてよ……」

天乃「鉄――」

「天姉ちゃん、おれ達に色々教えてくれたじゃん、だから、だからさ……教えて欲しいんだっ」


1、……ごめんね。今の私は見ての通りだから。出来ることなんて、殆どないの
2、勇者についてのことを話して、無理だと伝える
3、どうしたら、良いの?
4、私にはやるべきことがあるの。だから……鉄男くんの傍にはいてあげられない
5、……良いわ。それで鉄男くんの助けになるのなら。銀を守れなかった罪滅ぼしになるのなら


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできればお昼頃から

鉄男くんは小1くらい


沙織「鉄くんはね、あたしや久遠さんとお風呂入ったこともあるんだよね」

夏凜「……は?」

天乃「あぁ、あったわね」

鉄男「天姉ちゃん、今日……一緒、だめ?」

天乃「今日だけよ?」

夏凜「いいわけあるか!!」


では、。少しずつ


鉄男の願い、天乃はそれに答えてあげたいと、思った

自分に出来ることなら、全部

求められたことを、全部

けれども、鉄男の半分を喪失した視界が

味を感じられない味覚が、

立ち上がれない足が、

壊れかけの、身体が

その意志をねじ伏せる

天乃「……ごめんね。今の私は見ての通りだから。出来ることなんて、殆どないの」

「っ……天姉ちゃん」

天乃「私は昔みたいに、一人で何かをできるわけじゃない。そんな私が、鉄男くんの助けになれるわけがない」

むしろ、足を引っ張るだけだ

どこに行くにも車椅子で

介護設備の整った学校や自宅ならともかく

三ノ輪家においては、入浴はもちろん、

お手洗いにだって一人ではいけないだろう

天乃「私はもう、いても鉄男くんの邪魔にしかならない」

「そんなことないっ、そんなことない! おれっ、天姉ちゃんがいてくれれば、それで!」

天乃「私につくだけ、鉄男くんは金太郎くんから眼を離さなくちゃいけないのよ? 解ってる?」


まだ小学生の鉄男に対してそんなことを言うのは酷いことだと

天乃自身、理解している

鉄男が本当に求めているのは、手伝いをしてくれる姉ではなく

消え去ってしまった【姉という存在】であることも

ちゃんとわかっているのだ

しかし、ここまで壊れてしまった自分が

鉄男の理想とする姉の存在なれるのかどいうか

その自信がなかった

逃げるのね?

また、そうやって……

自分が悪いのだと自覚しながら

その罪は己のものだと目を向けていながら

望遠鏡を通して見る広くて狭い世界のような

見えていない場所に

天乃「ごめんなさい……っ」

逃げるのね?

向き合っていますと、嘘をついて

安っぽい罪悪感に、味気ない謝罪を添えて

いつまでも、いつまでも――そうやって


「わかんないよ……おれっ、わかんないよっ!」

天乃「!」

普通の椅子だったら突き飛ばされていた

そんな力で天乃を突き飛ばした鉄男は

泣いていて、怒っていて、悲しんでいて

どの感情を扱って良いのか、分かっていない

その、幼さのまますべてを握った拳を震わせていた

「なんで、天姉ちゃんまでそんななんだよっ! 姉ちゃんたちみんなっ、なにしてんだっ!」

天乃「それは……」

「おかしいじゃんかっ、おかしいだろっ!」

銀が死んだ

園子が消えた、須美が消えた

そして、天乃は車椅子での生活

その異常さは、日常的でない不協和音は

鉄男でも感じ取れるほど。異物だった


「天――」

夏凜「須美姉ちゃんとやらに怒られるんじゃなかったっけ?」

「っ」

また、感情を爆発させかけた鉄男の正面

天乃の後ろから、うどんを載せたお盆を手にした夏凜が

不快そうに、声を投げた

夏凜「ま、それ以前に怒られるだろうけど」

「だってっ、だってさっ。おれ……わかんないもん……」

天乃「鉄男くん……」

「皆いなくなっちゃったんだ……姉ちゃんも天姉ちゃんたちも」

それでようやく会えたのに

車椅子に乗っていて、

一緒にいてと言ったら、出来る事はないから。と、断られて

「何にもできなくて良いから、お願いだから、一緒にいてくれよっ!」

天乃「それじゃ金太郎くんは――」

「おれ頑張るから! 天姉ちゃんいてくれるならさっ、おれ、頑張るから!」

こどもゆえの、先を見ていない心に忠実な願い


1、ごめんね
2、…………
3、……解った


↓2


天乃「……………」

答えてあげられなかった

鉄男の願いは、思いは、純粋で

それを壊してしまうのが、怖くて

――貴女は、逃げた

天乃「っ」

「天姉ちゃん……っ」

友奈「て、鉄男くん!」

「!」

友奈「鉄男くんの気持ちはその、分かるなんて言えないけど……でも、久遠先輩も色々あって、それで、それでね……駄目なんだ」

俯く天乃の代わりに、友奈が言葉を紡ぐ

けれど、それは友奈の考えでしかない

そうだろうと言う、推測でしかない

貴女はそんな、真っ当な理由で何も言わないんじゃないって、言わなきゃ

天乃「やっ」

鉄男くんを傷つけるのが怖くて、鉄男くんの周りを傷つけるのが怖くて

傷つけてしまった責任を取るのも怖くて

天乃「やめて……っ」

ただ臆病なだけ、怖いだけ。

全部、何もかも、自己保身的な理由でしか、ないんだって

天乃「やめてっ!」


「っ!」

天乃「ぁ……」

「もう……もういいよっ、もういいよっ! 天姉ちゃんなんか……っ、嫌いだっ!」

怒鳴りつけて、鉄男はそのまま逃げ出していく

誰も、後を追えなかった

かける言葉が思いつかなくて

出来る事が思いつかなくて

天乃「ごめんなさい……ごめんなさい……っ」

顔を負い、蹲るように座り込んだ天乃の悲痛な声が

尋常ではない様子が、心配で。

風「追った方が――」

沙織「鉄くんの家なら分かるから……それに、今は追いかけてもまともに話せる状況じゃないよ」

鉄男が聞きたい事、知りたい事

それは勇者に関わることだから

三ノ輪銀の死、その理由が嘘であったことを知ることになるから

だから、何もできない

夏凜「……天乃」

天乃「ごめんなさいっ、ごめんなさい……仕方がないの……仕方がなかったの……」

樹「久遠先輩……」


夏凜「悪いけど瞳を呼ぶから。今日は解散」

風「夏休みだし、一緒にいても平気よ?」

夏凜「こっちが無理なのよ」

天乃ではなく、夏凜でもなく

大赦が、それを許してはくれない

それを言われては、と

心配そうに、名残惜しそうにする勇者部は

それぞれ、解散することになった

天乃「ごめんなさい……」

夏凜「…………」

こんなはずじゃなかった

こんな、トラウマを蘇らせるような

嫌な日にするつもりはなかった

夏凜「まさか、会うとは思わなかった」

三ノ輪家の人間に

思っても仕方がないことを思い、考えながら

夏凜は瞳の到着を待った


√ 8月1日目 夕(自宅) ※月曜日

01~10 
11~20 九尾
21~30 大赦
31~40 
41~50 若葉
51~60 
61~70 樹海
71~80 千景
81~90 
91~00 夏凜

↓1のコンマ  


√ 8月1日目 夕(自宅) ※月曜日


夏凜「はぁ? どういうつもりよ。それ」

「久遠様は現在非常に不安定な状態にあります。ですので、大赦にてお預かりし、治療に専念すべきではないでしょうか?」

夏凜「嘘ついてんじゃないわよ」

「嘘などではありません。久遠様は一度回復しましたが、今現在こうして良くないことが起きています」

何かある前に、

なにかを起こしてしまう前に

然るべき処置をすべきでは? と

大赦の職員は至極まっとうな

そう、正論を述べて、夏凜を見返す

夏凜「っ」

事実、

天乃は沙織や夏凜に対して、厳しく当たることがあった

友人―恋人―に対してそうなのだから

一般人に対しては冷酷非道な振る舞いが出来てしまう可能性も、なくはない

そうでなくても、今は……精神的に不安定なのだから

「三好様、これは上の人間の意向です。いくら三好春信様の妹様であり、勇者であるのだとしても。抵抗されるのであれば、相応の対応をさせて頂くことになります」


夏凜「不安定だからこそ、一人にすべきじゃない」

「その点は問題ありません。久遠様は乃木園子様と同室に送る予定です」

園子もまた、旧知の仲であり

性格は温厚で、穏やかで、刺激することもない

だからこそ、同室は彼女が適任なのだと

大赦の職員は説明する

「久遠様、よろしいですね?」

天乃「……………」

本当にそれが理由なのだろうか

解らない

でも……

天乃「…………」

でも。そう

私が逃げるには、願ってもない【言い訳】でしょう?

誰かに、何かに、みんなに

なにかがあったとしても、誰かが死んでしまったとしても

貴女はその場にいなかったから。と【責任逃れ】が出来るのだから


1、承諾
2、拒否
3、本当に、それだけが理由なの?


↓2


天乃「嫌」

「く――」

天乃「嫌って言ってるの!」

「!」

天乃「お願い、止めて。何もしないで、何も言わないで……お願い、今は、お願いだから」

自分に対する何かがあるたびに、彼女が現れる

嘲り笑いながら

向けられたすべてを作り変えて、送り込んでくる

嫌な言葉で、辛い言葉で、苦しい言葉で

彼女は壊そうとする

――それも全部、貴女が悪いのだけど

天乃「止めてって言ってるの!」

夏凜「天乃!」

にやにやと笑う、彼女に向かって振るった手は

力強くて、少しがさついたなにかに掴まれて、止まる

夏凜「天乃……追い返すから。落ち着け」

夏凜の手、夏凜の声、夏凜の匂い

その現実感に、視界を遮っていた何かが払われて、彼女が消えていく

夏凜「大赦なんかに連れてったらどうなるか……考えてから出直してきなさいよ」

「……三好様」


夏凜「連れていくにしろ、もっとまともな時に来るべきでしょ」

「……そう、ですね。現状では……」

体を抱きしめて、身じろぎ一つしない天乃を一瞥した大赦職員は、

頭を振ると、「わかりました」と切り替える

「問題があると報告しておきましょう。ですが、いずれ必ず」

天乃「…………」

「三好様、問題が内容しっかりと」

夏凜「言われるまでもないっての」

「そうですか……では」

職員は一礼し、そのまま部屋を出ていく

それを目で見送った夏凜は、

小さくため息をつくと

ベッドの上、小さな天乃を見つめてそっと手を伸ばす

夏凜「…………」

けれども、

その手が触れることはなかった


01~10 樹海
11~20 九尾

21~30 
31~40 
41~50 若葉

51~60 
61~70 
71~80 千景

81~90 
91~00 沙織 

↓1のコンマ  


まだ、外から差し込む光でも十分明るいと言える時間

夏凜のいなくなった部屋で一人、天乃は何も考えずに、ベッドに横になっていた

誰かの言葉に対する考え

誰かの行動に対する答え

そのすべてに、彼女が嬉々として割り込んできてしまう現状では

何も考えず、なにも思わず

ただ流れていく時間に置き去りにされている方が

まだ、気が楽で――

そうやって、逃げるの?

天乃「また……っ」

バーテックスから、勇者から、大赦から

銀から、三ノ輪家から、

恐怖から、責任から、罪悪感から

天乃「やめて……違う。違うの……っ」

追い詰めようとしてくる言葉の羅列

それを、どこかから伸びた手が払い除けていく

掴まれた手は、少し痛い

若葉「大丈夫……ではないな。天乃」

天乃「……若葉」

目を向けた先、不安そうに見ている若葉は

ベッドの端に腰を下ろすと、天乃へと背中を向けた


若葉「精神的に問題があった場合……本来なら、私達が仕込んだ機能が自動で起動するはずなんだ」

天乃「……機能?」

若葉「まぁ、なんだ。先代勇者が励ましてくれると言う……そういう、あれだ」

自分で説明しながら

気恥ずかしそうに咳払いをした若葉は、

言葉を濁して、天乃へと振り返る

いつもなら茶化すように言葉を割り入れてきてもおかしくない

けれども、天乃は何も言わない

部屋の明るさとは対照的に、暗く陰った瞳をしている

天乃「だから、なに?」

若葉「それって若葉の事? とか、普段なら言うだろう……」

天乃「言えば、何かあるの?」

若葉「……私が恥ずかしい」

あの頃は、自分がその時代にいる居ないに関係なく

未来の勇者へ。と、強い思いが先攻して考えていなかったが

こうして目の前に改めて現れた今

自分が遺したものがどう表れるのか、気がかりで

そして、少々気恥ずかしささえ、抱いてしまう


天乃「……そう」

しかし、天乃は興味なさげに言葉を放ると

若葉を一瞥して、また目を逸らす

天乃「それだけなら、そうっとしておいてくれない?」

若葉「……一人でいても、良くないように見えたが?」

天乃「一緒にいても変わらないから……それなら、若葉達に強く当たらない方が良い」

若葉「沙織と夏凜の件だな」

沙織や夏凜に対して強く当たってしまったのも、穢れのせい

間接的とはいえ、鉄男が驚いて怒ってしまったのも穢れのせい

だから、どう足掻いても誰かが傷つくのなら

自分が傷つく方が良い。という考えだった

天乃「だから……」

若葉「それでも、放っておけるわけがないだろう」

天乃「…………」

若葉「天乃は私の主で、友人で、仲間だ」

それに、郡千景という友人で犯した失敗を

また、繰り返すことなんてしたくない。

そう思ったから

若葉「私はここにいるぞ。たとえ、天乃が私を傷つけるとしてもだ」


天乃「……それは、誰のために?」

若葉「ん?」

天乃「私の為? 自分の為?」

誰かが、口を開く

けれど、その部屋には天乃と若葉の二人きりで

若葉は驚いたような、複雑な表情で

自分が言っているのだと

言おうとしているんだと、慌てて口を手でふさぐ

若葉「天乃?」

天乃「っ」

止めてと願う

けれど、彼女は笑う

どうして? っと、訊ねる

私の為なら、迷惑だと。貴女は思うでしょう?

自分の為なら、偽善的で有難迷惑だと私は思う

だから、貴女は迷惑だと思う。それを口にすることの何がいけないの?

彼女は疑問を口にする

悪意に塗れた、毒を。差し出す



1、若葉……大丈夫だから
2、私は貴女を傷つけたくない。だから、お願い。出て行って
3、これは、私が私自身に抱いてる事。ただの、自己嫌悪、だから……
4、……………
0、

↓2


油断したら若葉を傷つけてしまいそうな

悪意の宝箱

その唇を強く噛み締めて、心を内側に追いやる

天乃「これはね、若葉。これは……私が私自身に抱いてる事。ただの、自己嫌悪、だから」

若葉「だとしても……そんな姿を見せられて、放っておけるわけがないだろう」

天乃「……っ」

かつて、

自分の為にと、自分の心を閉ざすまでに、

冷酷だと言われるようなことをした、彼女のことを、思い出す

あの時、ひなたは自己嫌悪していた

若葉の責にはしまいと、自分は狡いのだと言い、薄く笑って見せた、あの姿

今の天乃はそれとは少し違う。だが、感じるものは同じだった

小さく儚く、弱弱しい

若葉「私は天乃が背負うすべてを理解しているわけじゃない」

天乃「…………」

若葉「だが……お前が酷く責められなければいけないような人間ではないことは、はっきりと言える」


天乃は優しい少女だ

強くも弱く、しかしながら周りの人のためにと

自らを犠牲にまでしてしまえるような、不器用な少女

その自己犠牲の在り方は三ノ輪銀という友人の死によって後付けされたのかもしれない

だが、優しく、他人の為に尽くそうとする心は

元から存在していたのだと、若葉は信じる

でなければ、他人はここまで集わない。

クラスメイトを見てもそうだ

昼間の、幼き子を見てもそうだ

若葉「失敗は誰だってする。私だって……それを責めることもある」

今も、そう

自分たちが作り替えた大赦という組織が、

久遠家に対して厳しく、酷く隠蔽体質になってしまっていることも

失敗だと思っている。責めている

しかし

若葉「そこで立ち止まってていいのか? 天乃。その在り方を受け入れて変わっていく。人間はそう言うものではないのか?」

天乃「…………」

若葉「千景が最期に見せてくれた人としての強さを、思い出せ。天乃」


天乃「……千景」

精霊をその身に宿し、心を汚染されて

若葉へと刃を向けてしまった勇者、郡千景

天乃の中にある若葉の記憶では

千景は最期、自分を取り戻して若葉のためにと動くことが出来た

本当に自分が抱いていた気持ちを、伝えることが出来た

若葉「そうだ。だから、天乃だってその闇に打ち勝つことが出来るはずだ」

本当に?

そんなことが出来る?

千景は貴女のように逃げてきたわけじゃない

ただただ、追い詰められていただけ……でしょう?

一緒にするの?

貴女なんかと、郡千景という勇者を

同等の存在だ。なんて、考えちゃうの?

嘲笑する

彼女は――私にはそれが出来ないと、確信している

私自身である、彼女が。


1、……頑張るわ
2、若葉の手を引く
3、そうね……きっと。私にも……
4、…………

↓2


天乃「そうね……きっと。私にも……」

本当にそう思ってる?

出来ると思ってる?

……あぁ、そうね

出来る、きっとできるわ

貴女なら

だって、ここまでみんなを騙した貴女だもの

感動的な喜劇を演じて人心掌握をしてきた貴女だもの

そう。今、目の前の彼女にだって

普段傍にいてくれている彼女にだって

魅了の力を使って――ね

天乃「そんなの――」

若葉「っ!」

霧のように消えていく自分を追って伸ばした手は

思いのほか力が籠っていたらしく

若葉の手を弾き飛ばす

天乃「……わ、かば」

零れ落ちていく

強さが、

取り繕っていた鎧が、

砕け散って流れて有象無象へと切り替わっていく

今まで見えていた現実が幻想だったかのように

見える世界は暗く沈んで、淀んでいた


若葉「な、ど、どうした……なぜ」

泣き出してしまった天乃を前に

若葉は困惑し、動揺し

すべきことを見出すことが出来ずに、立ち尽くす

若葉「っ」

手を伸ばし、手を引く

それで良いのか、分からなくて

けれど、若葉は心の中で燻るだけの心

それを、記憶の中のひなたに問う

それで良いのか、平気なのか

彼女は言う「いっちゃえ若葉ちゃん」と

若葉「……まるで頼りにならないぞ」

ガッツポーズをして見せる記憶の中の彼女は

そんな不満に頬を膨らませる

だから、若葉は苦笑して、振り払い、今目の前にいるパートナーを抱く

天乃「…………」

頭に優しく手を添えて、宥める

その体と心が、崩れて消えてしまわないように。


√ 8月1日目 夜(自宅) ※月曜日

01~10 千景

11~20 
21~30 
31~40 若葉

41~50 
51~60 
61~70 夏凜

71~80 
81~90 
91~00 九尾


↓1のコンマ  

ぞろ目、特殊


√ 8月1日目 夜(自宅) ※月曜日

寝るのが怖い

また彼女に出会ってしまいそうで

天乃「……夢は、私の世界だから」

きっと待っている

天乃は心の中で、自分の足で立って歩いて

適当な椅子に座って、適当な机で頬杖ついて

にやにやと、待っている

寝返りを打つと

力のない足がひとりでに曲がって

姿勢がくずれていく

天乃「…………」

……独り。だ


1、九尾
2、千景
3、若葉
4、球子
5、歌野
6、水都
7、悪五郎
8、夏凜
9、久遠天乃
0、イベント判定 ※再安価

↓2


では、ここまでとさせて頂きます
明日もできれば通常時間から



東郷「弱った心を」

東郷「はーと、きゃっち!」

夏凜「しないわよ」

若葉「なら、私がしても――構わないだろう?」ガチャッ

夏凜「!?」

ひなた「呼びました!?」ガチャッ

若葉「!?」


では、少しずつ


√8月1日目 (自宅)夜 ※月曜日


蒸し暑いのに、寒気を感じる天乃は

ベッド脇の端末を手にとって、アプリを起動させ、夏凜の名前を探す

天乃「っ」

その名前を押せば、二人きりで連絡が出来る。話が出来る

それをしようと端末を手にして、ここまで来たのに

そこから先、指が動かなかった

彼女がそっと、背中にまとわり付く

良いの?

本当に良いの? 見えても見えないその目で見える世界は、時間は、どうなっているの?

ねぇ私、ねぇ貴女

あの子の邪魔を、して良いの? 嘘つきで保身的で、利己的で、意気地のない、貴女が。

彼女は問う

答えを求めず、囁きかける

舐めるように腕を撫でながら、まったく同じ形で端末ごと手を包み込んでくる

包み込む、その感覚は――怖い

天乃「だ……って……」

怖い? 【二人きり】でいることが

私と貴女の二人で、話し合うことが、恐ろしい?

天乃「やめて……」


そう。貴女は逃げたいのよ

私から、貴女から。そう、自分自身から

逃げて、目を背けて、誰かの陰に隠れて

天乃「いや……やっ」

悲劇の英雄を気取るのよ

頑張りました。力を尽くしました

でもだめでした。ごめんなさい。私には力不足だったんです

そう言って、逃げていく

壊れた街、崩れ落ちる大人たち

お父さん、お母さん。そう、泣叫びながら徘徊する子供達

天乃「違う。それ、は……」

その全てから、目を背けるの

なのに、誰かの前では英雄気取りに剣を取る

光の消えた瞳に蝋燭をともして、指の欠けた手で剣を持ち、心もとない細枝になった足で立ち上がるの

ボロボロの体は自分の責任。敗北は己の罪、ゆえに私は行くと。演劇を見せ付けて。

無傷で無垢な戦士達を、扇動するの。誘惑するの。なんて醜悪な英雄様なのかしら

天乃「違う、違うから。それは、なんでっ」


否定する。

否定するたびに、彼女はより、体に密着してくる

彼女の手は手首を這うようすべり戻って、天乃の胸元に触れる

天乃「やっ、痛っ……」

冷たい手。温もりも優しさもない

蹂躙だけを目的とした悪意が天乃の柔肌を這いずり回って犯していく

違わない。何も、違わないわ

だって、夏凜も、みんなも。

哀れな勇者様を哀れんで、我こそはと、奮い立っている

貴女は可哀想、とても、可哀想

耳元から、声がする。汚らわしく透き通った毒味のある甘い声

天乃「やめて……」

ほら、夏凜を呼ぶんでしょう?

可哀想な私を、慰めて貰うために

優しく、温かく、包み込んでもらうために

縋り付くために、目を逸らすために

私から、自分から。逃げ出すために


手が動く。

自分でなのか、彼女によってなのか、解らない

浮き足立った、不安定な感覚で、夏凜へと連絡が向かう

天乃「嫌、嫌……こんなっ」

夏凜はきっと来てくれる

こうやって、抱きしめてくれるの

背中側から強く、冷たく、彼女は抱きしめてくる

部屋にいるのは一人なのに

その感覚は、はっきりと体に染み込んでくる

胸に触れて、腹部を、臍の窪みをするりと撫で下ろして、

下腹部に触れる、悪意の感触

その不快感に目を瞑ると、涙が零れ落ちて――扉が開く

夏凜「連絡、したんなら返して欲しいんだけど?」

天乃「ぇ……あ」

起動したSNSアプリ、夏凜へと呼びかけた文の下に、

夏凜からの「どうした?」という疑問が数分前に来ていた


天乃「なんで……なんで来ちゃうの」

夏凜「なんでって――」

天乃「電話でも良いじゃない、もう一回何か送ったって良いじゃない、なんでわざわざ、こっちの部屋に来ちゃうのよ!」

夏凜「天乃……?」

天乃「やめて……やめて……嫌……」

彼女が笑う。嗤う。ほらね、来てくれた。と

優しい優しい夏凜ちゃんが、惨めで哀れな久遠さんのために、きてくれた

くつくつと、嘲笑しながら囁く

天乃「なんで、どうして……」

せっかくきてくれたのに、なんでそんな酷いことを言うのかしら

あぁ、心配されたいのね?

不安にさせたいのね?

大丈夫? 心配するな。ここにいる

そんな言葉が、聞きたいのね

天乃「……違う」

男の子のように少し荒れた優しく強い、あなたの好きなあの両手で

抱きしめて欲しくて堪らないのね

天乃「違うって言ってるの! 止めて、うるさい……触らないで!」

纏わり付いてくる彼女を振り払うと、

バチンッと、乾いた音が聞こえ

実体がなく感じるはずのない衝撃が、手に伝わってきた


叩かれた手をちらりと見た夏凜は

心配そうな、顔をしていて

夏凜「天乃……」

天乃「そんな目で見ないで、そんな声をかけないで。大丈夫だから、私……なんでもないから。お願い……」

夏凜「んなこと言われたって」

明らかに正常ではなく、錯乱していて

本人はもはや気づいていないかもしれないが、

泣き出してしまっている。そんな姿で大丈夫だといわれて

信じることができるだろうか

いや、出来るはずがなかった

天乃「お願い……」

抱いてもらえば良いのに

慰めてもらえば良いのに

貴女が全てを忘れられる、全てから逃げられる

全てから解放される、肉欲に溺れてしまえば良いのに

そう囁く彼女は絞め殺そうとしているような力強さで、抱きついてくる

けれどそれは幻覚で、ただ、息苦しいだけ

自分の一挙一動、その全てにおける結果を、彼女が嗤うから

何かをするというのが――恐ろしくて


夏凜「穢れ……なんでしょ?」

天乃「止めて夏凜、お願い」

夏凜「夕方から、ずっと」

昼間、三ノ輪鉄男に出会ってしまったときもそうだが、

より酷くなったのは、夕方からだ

穢れによる精神的な汚染

それによって悪い考えや嫌な考えといった

負の何かに圧迫されているのだろう

一緒に居て欲しい

そんなことを願ってきたのとは真逆で

今回は近付かないで欲しい。という願い

夏凜「…………」

一人にはしたくない

けれど、近付こうとすればまた辛い思いをさせるかもしれない

どうすべきかと、迷う。躊躇う

あと一歩近付いて、手を伸ばせば

いくらでも触れることができるのに……

夏凜「それは穢れよ。天乃。あんたの考えでも思いでもない。歪められた何かよ」



1、違う……これは、私。私が私自身を殺したいほどに憎いの!
2、止めて、帰って、お願い!
3、私の何を知ってるの? ねぇ、なんでそんなことが平然と言えるの?
0、


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



天乃「夏凜」ギュッ

夏凜「?」

天乃2「夏凜」ギュッ

夏凜「えっ?」

天乃「二人になっちゃった」

夏凜「……!」ガバッ

夏凜「……夢か」

夏凜(……悪くない)


では、少しだけ


夏凜は優しい

気遣ってくれているのが解る

このまま追い込まれてしまわないようにと、引き戻そうとしてくれているのが解る

けれど、それが、嫌だった

それこそが、彼女が望んでいることだから

天乃「違う……これは、私。私が私自身を殺したいほどに憎いの!」

夏凜の伸ばした手を、今度は自分の意志で払い除けると

ずきりと胸が痛んだ

彼女は嗤う。愉しげに

天乃「穢れがどうこうじゃなくて、元々、私が私自身に抱いてることなの」

夏凜「殺したいほどって、あんた……いや、元々破滅願望に近いものあったけど」

夏凜はいつもの調子を装いながら

見え隠れする動揺を宥めるように、ふと、息を吐く

頬に浮かび、流れ落ちていくそれはきっと、緊張感ゆえだ

夏凜「……そんなに自分が許せないの? 三ノ輪銀や鷲尾須美、乃木園子を守れなくて、風と樹の両親を死なせて。でも、それは――」

天乃「やめて!」

夏凜「っ」


天乃「私が悪いの! 私が……全部……解ってる、わかってるから!」

頭を抱えるように耳を塞いで、体を縮める

夏凜の優しい声が、今は痛い。辛い、苦しい

それが聞こえるたびに、彼女が嗤うから

……貴女が呼んだのに

夏凜ちゃんは惨めな貴女のために、わざわざ来てくれたのに

天乃「頼んでない、勝手にっ」

違う。貴女が、そういう人にしてしまったの

久遠天乃という、張りぼてを

希少な存在だと偽って、哀れただと慈しんで

命を容易く投げ打つ信者へと変貌させたの

天乃「違う……そんなっ違うっ!」

耳を塞いでも、頭を抱え目を瞑っても

彼女の存在はそこにあった。彼女の声はそこにあった


震える肩に、冷たい手が触れる

ふわりと小さな風が舞って、魅惑的な甘い匂いが鼻を突く

体を流れていく禊の水のように、彼女の手は天乃の体を流れていく

天乃「やっ」

首も、肩も、二の腕も、ひじも、手も

乳房も、乳頭も、わき腹も、臍も

臀部も、陰部も、太腿も、脹脛も

天乃「あっ……」

全身を舐めるように、彼女の手が流れていく

冷酷な彼女の手に蹂躙されていく

背中から回り込む左手のような感覚が右胸を鷲掴みにして、

右手のようなものが苦しみに喘ぐ口元に指を忍び込ませる

天乃「や、ぇ……」

大丈夫。大丈夫

貴女はいつものように逃げれば良い、目を瞑っていれば良い

彼女は囁く。穏やかに

彼女は嗤う。幸多く


目を瞑ると、涙が零れ落ちていく

夏凜や沙織、東郷や友奈

みんなとの交わりの記憶を強引に引っ張り出した彼女がまじまじと見つめて

天乃「ゃめ――」

踏み躙る

怖くても、優しく温もりのある記憶のアルバムを

引き裂いて、足蹴にして、彼女は燃やしてしまう

愉しげに嗤いながら、これも。これもこれも。全部いらない。と

天乃「お願い……やめて……」

どうして?

優しくするみんなは貴女にとって辛いこと、苦しいこと、嫌なこと

大好きな夏凜ちゃんさえ、嫌悪し拒絶するくらいに

だったら、いらないじゃない。私はそう思う

ううん、貴女は最初、そう思っていたじゃない

私と同じ気持ちだったじゃない

自分ひとりで良いんだって、気持ちだったじゃない

天乃「そ、ぇは……」


話す最中にも、口の中に入り込んだ指は動く舌を強引に押しつぶしながら奥へと進んできて

上り詰めてくる不快感、吐き気に、言葉が握りつぶされていく

天乃「ぇぁ……」

酷い、酷いわ。とても酷い

貴女は大変な思いをして抱いた私という心から目を逸らしたの。

あまつさえ、邪魔だと檻の中に閉じ込めた

そして、喜劇の英雄を気取り始めた

他人を誘惑し、先導し、洗脳し、信者に仕立て上げた

天乃「んぐっ」

彼女の立てた爪が胸に食い込んでいくような痛みがピリピリとして

口を塞いでいた彼女の手が、下腹部を弄って割れ目を裂いて入り込む

こんな体で、誘惑したの

楽しかった? 気持ちよかった?

それとも、不快だった? ただの人形達が、ご主人様たる貴女に触れるということが。

そして、今は思いのままに使い、要らないからと捨てようとしてる

なんて醜い悪魔なの。貴女は。最低ね。最悪ね

もっと、穢れてしまえば良い

ほら、このまま

体内に抉りこんだ彼女の指が穢そうと蠢いた瞬間、頬が叩かれて……


夏凜「しっかりしなさいよ……!」

どれだけ強く叩いたのか

じわじわとした優しい感じではなく

ヒリヒリと、びりびりとした持続的な痛みとともに、頬が熱くなっていく

夏凜「言ったでしょうが……」

けれども、それは

今見える世界が、感じるものが、

現実なんだと……導いてくれる

夏凜「たとえ世界の全てがあんたを悪者にしても、私だけは絶対にそれを認めないって」

本当は少し、違う

たしか、バーテックスと同じだとは認めない。だったか……

天乃「夏――」

夏凜「だからっ!」

抱きしめる。強く

たとえ拒絶されようと、否定されようと、

これは、久遠天乃に対しての優しさでも、なんでもない

ただの、三好夏凜の我侭だから

夏凜「天乃の中のあんたが天乃を責めるなら。私がそれを否定してやるッ」

天乃「っ」

夏凜「認めてやらない。天乃の中のあんたが言う全てを、天乃を責める理由も、全部、私は認めてなんてやらないわよッ!」


天乃「嫌……やだ……そんなこと、言わないで……」

言い訳になってしまう

逃げ道になってしまう

喜劇の英雄になってしまう

だから。と、拒絶するために動かした手は夏凜の手に囚われて

涙が零れていく

悲しく、嬉しい複雑な涙が流れていく

それは、夏凜の胸元に染み込んでいって

夏凜「しったことか。これは私の我侭なんだから。あんたが嫌だろうが辛かろうが苦しかろうが知らない」

天乃「やめて……」

夏凜「断る」

天乃「お願い」

夏凜「聞かない」

天乃「夏凜っ」

夏凜「くどいっての。黙って泣いてろ」


拒絶するたびに、捉える力は強くなっていく

それでも心の中で、彼女が嗤う

優しい夏凜ちゃん、魅入られてしまった夏凜ちゃん

夏凜ちゃんの我侭は、貴女に歪められた信者の供物

酷い、ひどい、とても酷い。貴女は、魅――

夏凜「うっさい黙れ、これは私の我侭だって言ってんのよ。ひったくろうってんなら容赦しないわよ」

天乃「え?」

夏凜「……心配すんな。私は私の意志であんたのそれを拒む。信じなさいよ。本当に好きだって言うなら」

夏凜は抱きしめる力を緩めて、そっと離れる

肩から背中に回っていた夏凜の手には

いつか見た、久遠陽乃のリボンがあって。

夏凜「若葉から聞いてもしかしたらって思ったのよ。真っ黒なあんたの幻覚でも見れるかと思ったけど。ま、それを見れるのは本人だけか」

天乃「夏凜……」

夏凜「私と、そいつ。どっちを信じるのかはあんたに任せるわ。けど不正解だったら、どうなるか解ってんでしょうね。馬鹿」

選択肢のない選択肢

それを投げた夏凜は天乃の額を指で突いて、にやりと笑う

夏凜「勇者部総出であんたに淫らなことしてやる」

天乃「なによ……馬鹿なの、夏凜じゃない……」


結局貴女は逃げるのね

夏凜ちゃんの優しさに甘えちゃうのね

天乃「……………」

私は貴女で、貴女は私

だから、私はいつでも貴女に言うわ

貴女は逃げるだけって、貴女は弱いんだって

貴女は意図的に目を塞いで耳を塞いで、逃げ惑っている泣き虫な子供

彼女は囁く。

夏凜の否定、拒絶

強い意志を前にしても、彼女は揺るがない

天乃「たとえ私の目が見えなくなって、耳が聞こえなくなったとしても。夏凜が正しく導いてくれる。でしょう?」

夏凜「ん?」

天乃「……なんでもない」

まだ何か言ってんの?

そういいながら近づけてくる手を拒絶して

天乃はなんでもないの。今度こそ。と、自分から触れて、その手を握る


銀を守れなかった

風と樹の両親を守れなかった

それは、紛れもない事実で拭いようのない罪

けれど、天乃だけのものでは、ないのだ

夏凜が言うように、園子が言ったように

天乃一人で背負うべきことではないのだ

天乃「今日は一緒に寝てね? 夏凜」

夏凜「はいはい」

天乃「今日だけだから」

夏凜「しょーがないわね」

そういって、夏凜は天乃の近くに腰掛けて、息をつく

きっと、これはずっと抱えていくことになるはずのもの

だからこそ、2人で、3人で、みんなで、抱えていく

誰かに頼ること、それは弱いのだと思っていた

けれど、そうではないのだと天乃が教えてくれた

未完成だから集まるのではなく

それこそが完成だから集まるのだと、教えてくれた

だから夏凜は天乃の孤独を拒絶する

夏凜「……しゃーない」

独りであること

それは決して喜ばしいことではないのだと。知ってしまったからだ


1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流有(デート)
・   犬吠埼樹:交流有(デート)
・   結城友奈:交流有(デート)
・   東郷美森:交流有(デート)
・   三好夏凜:交流有(デート、みんなで、自己嫌悪)
・   乃木若葉:交流無(自己嫌悪)
・   土居球子:交流無()
・   白鳥歌野:交流無()
・   藤森水都:交流無()
・     郡千景:交流無()
・ 伊集院沙織:交流有(デート)

・      九尾:交流無()
・      神樹:交流無()



8月1日目 終了時点

乃木園子との絆 54(高い)
犬吠埼風との絆 63(とても高い)
犬吠埼樹との絆 53(とても高い)
結城友奈との絆 69(かなり高い)
東郷美森との絆 55(とても高い)
三好夏凜との絆 91(かなり高い)
乃木若葉との絆 48(中々良い)
土居球子との絆 30(中々良い)
白鳥歌野との絆 25(中々良い)
藤森水都との絆 16(中々良い)
  郡千景との絆 15(中々良い)
   沙織との絆 76(かなり高い)
   九尾との絆 48(少し高い)
    神樹との絆 9(低い)

汚染度???%+β

√ 8月2日目  朝(自宅) ※火曜日


01~10  夏凜
11~20 
21~30 沙織

31~40 
41~50 九尾

51~60 
61~70 
71~80 彼女

81~90 
91~00  若葉

↓1のコンマ 


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

開幕彼女(天乃)



友奈「うわーっ!」ダダダッ

東郷「友奈ちゃん待って! 久遠先輩への誕生日プレゼントをするんでしょ?」

友奈「そうだけど裸でリボンはやだよ! 何か違うよっ!」

東郷「風先輩と樹ちゃんは出荷済み、みんなでやれば怖くな――痛っ」バシッ

夏凜「やめろっ!」


では、少しだけ


√8月2日目 (自宅)朝 ※火曜日


寝る前は一人ぼっちだった手は、親しく繋がっていて

すぐ傍に、夏凜の気配を感じる

天乃「……夏凜」

不思議と早く目が覚めて、見えた世界は明るい

時間こそまだ5時に入って幼いものだけれど

早くも、火の光らしき明るさがカーテンの隙間から垣間見える

この時間では、流石に夏凜も起きていないようで、

静かな寝息が耳に届く

天乃「……………」

頼っちゃったわね

夏凜の優しさに、温もりに。貴女は身を委ねてしまったわね

天乃「解ってる……」

解ってる? 本当に? なにを解っているの?

夏凜の気持ち? 自分の過ち?

ねぇ、貴女はなにを解っているの?

三好夏凜の抱いている気持ちが、自分の【能力】によるものだってこと?


天乃「それは、違うって」

夏凜は言った。否定した。これは自分の我侭だと

その瞳に宿った意志は嘘ではないと思ったし

心の奥で嘲り笑う彼女も、それには言葉をとめられた。

なのに、彼女は首を横に振る

違う。違うわ。私

夏凜は貴女のために、自分のためだと思っているの

貴女のためだと言ったら受け入れられない

受け入れてもらうために、夏凜はそう【言わされた】の

耳元の囁きは、悪魔のように容易く入り込んでくる

否定する言葉は浮かぶ、違うという思いを抱く

けれどもそれに反して、心音は跳ね上がる

心のどこかでもしかして。と、疑念が産み落とされていく


天乃「止めて……本当に」

彼女は包み込むように、揉み解すように、

円を描きながら頬を撫でて

小さな手、細い指を天乃の口端に押し込む

ふふっ、確かに貴女の魅了の力は弱いわ。弱くなった

貴女自身が弱いもの。でもね、だからこそ私は不安だわ

天乃「な、に……がっ」

だってほら。貴女はこんなに面倒な女だもの

こんなにも頼るだけの使えない女だもの

貴女はそう、宝箱。入れてもらうだけの箱

他の箱があったなら。綺麗なオブジェになるものがあったなら。

捨てられてしまう、ただの箱

天乃「っ」

彼女は嗤う。愉しそうに

彼女は口に突き入れた人差し指で舌を弄くると

親指までも潜り込ませて舌を抓み出す

天乃「ぁ、ぇ゛……ぅ」


人の手によって口を開かれ、舌を引き出された天乃の口元からは、

飲み込むことのできなくなった唾液が伝い落ちていく

止めてという言葉は紡げない

けれど、届いているはずの彼女は、ただただ、嘲笑を浮かべる

汚い、醜い。惨めな私

こんな貴女を夏凜が見たら、なんていうのかしら

天乃「ぅ」

汚いって、言われるかもしれない

気持ち悪いって、言われるかもしれない

もしかしたら鉄男君みたいに嫌いだって、言われちゃうかもしれない

いなくなっちゃう。かもしれない

天乃「!」

夏凜のことだ

こんなことでいなくなったりしないと天乃は思う

汚いとか、何してるのとか言われるかもしれないけれど

そんな、見放されるとは思えない

そう思う一方で、心は揺らぐ

もしかしたら。と、彼女が口にするそれは、決して無いとは言えない事だから

そこに思考が至ると、どうしようもなく嫌な気分になって

瞼を閉ざすだけで、涙が零れ落ちていってしまう


彼女の体が纏わり付く

冷たく、意地悪な触れ合い

彼女の右手が二の腕を包み込むように死ながらすべり落ちて、

肘を撫でて、手に触れて

夏凜と繋がっていた手を無理矢理に引き剥がす

天乃「っ」

離れてく、いなくなっていく

手放されたその手は、もう、届かない

伸ばしても、伸ばしても。みんな、近付いた分だけ離れていく

天乃「ぁ、ぇ……」

引き出された舌が、喉が、乾く

なのに涙は溢れ出て、口元を伝っていった唾液を追いかける

彼女の左手は玩んでいた舌を手放すと、

唾液の通った道を辿り、喉元に指を滑らせながら、

項の窪みで記号のようなものを描いて、胸元へと下って乳房を覆う

彼女の手には、

着ている寝巻きも、着けている下着も関係ない

容易くすり抜けて、直接肌に触れて来る


天乃「んっ」

小さな体は、貴女の自信

大きな胸は、貴女の欲望

彼女は

アンダーバストから上るように右手を動かし、右胸を持ち上げると

母乳を搾り出すように乳頭へと抜けて、

腹部を下ってわき腹を揉むように撫でながら、

臍を人差し指で抉っていく

天乃「っ、ぁ……」

冷たい手、優しくない触り方

なのに、体は火照りを感じていく

それが嫌で、悔しくて、苦しくて

それがさらに、彼女を悦ばせる

優しいくびれは、貴女の努力

下腹部の薄さは、貴女の幼さ

陰部の狭さは、貴女の拒絶

彼女は耳元で囁きながら、艶かしく手を這わせていく

撫でるように、揉むように

時には焦らすような軽さで。

天乃「やめ……やめて……」


拒絶を口にしても、嫌悪感をあらわにしても、

彼女はダメよ。と、囁き、耳に息を吹きかけるだけで

動かしたいのに、腕が動かない

そして――

天乃「っ、ん……っ」

下へと下った先、

股の付け根、ぴたりと閉じた割れ目に冷たい悪意を感じて、願う

けれども彼女は人差し指で撫でると

両端を人差し指と薬指で強引に引き伸ばす

天乃「や――んぐっ」

悲鳴を上げかけた瞬間、胸元に降りていた左手が口を塞いで

彼女の右手、その中指があざ笑うように、むき出しにしたまだ経験の浅い入り口を掠める

怖い? 悔しい? 悲しい?

大好きな人の寝ている傍で、大嫌いな私に体を玩ばれていく

嫌なのに、苦しいのに、辛いのに、悔しいのに、体が反応してしまう

罪悪感が滲み出て、貴女はこのまま泣いてしまうの

上でも下でも大泣きするの。子供のように泣き叫んで、大好きなあの子に惨めな姿を曝け出すの


天乃「ぅ、ぅぅっ」

ほら、第一関節の半分が入ってく

ほら、第一関節が入ってく

天乃「っ」

少しずつ、入ってきているのを感じる

わざと教え込むように数ミリずつ慎重に差し入れて

挿入感を、異物感を、明確にしていく

貴女はされてばかり、守られてばかり、頼ってばかり

弱くて惨めで、汚らわしい女の子

貴女の純潔という価値がみんなを縛り付けているだけで

それが無ければ、みんな離れてしまうかもしれない

天乃「んぁっ、ぅ、ぇ……」

口を塞ぐ左手がバラバラになって口の中に流れ込む

その苦しさに呻くと、夏凜の体が僅かに動くと

さっきまで煽るように声高だった彼女の声は静まって

呆れたようなため息が聞こえた

ここまでしても、貴女は弱くて惨めなただの肉欲の入れ物

ねぇ、私

貴女はこのままされるだけで良いの?

ただの箱のままでいいの?

それではみんな、離れていくかもしれない

夏凜が言ったじゃない。求めてくれるのが嬉しいって

本当に、今のままで良いの?



1、無理強いしたくない
2、どうしたら良いかなんて、解らないの
3、なら、貴女が何とかして
4、…………



↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


夏凜鍛錬記録、千景と晴海の追加
サービスP、今週別ルートBE
追加


天乃「無理強いしたくない」

友奈(無理では、ないですけど……)

樹(自分から言うのは、恥ずかしいですよね)

風(どんとこい)

沙織(ヤらぬなら、ヤるまでヤろう、強引に)

東郷(今度、サブリミナル映像でも見せ……いや、媚薬という手も)

夏凜(……良いわよ。別に。そこにあんたがいてくれるなら。それで)


では、少しだけ


彼女の言いたいことは、解っている

彼女は天乃自身で、天乃が彼女自身なのだから

けれど、だからこそ、

天乃は心の中で解るでしょう? と、呟いて

天乃「無理強いはしたくないの」

そう答える

夏凜は求めてくれると安心するといった

でも、だからと言って、自分が常に求めて良いのかといえば、そうではないはずなのだ

殆どの事柄において、天乃は誰かの手助けを必要とする

それは近くにいればなお、負担は割り増しになって

現状では、勇者部の中で夏凜が一番負担してくれてるといっても良い

場合によっては自主鍛錬だから。と

普段行っている時間からずらすことや

鍛錬自体を縮小してしまう事だって、ある

そんな中で、彼女が求めるような自己中心的な人間になれるだろうか

なれるはずが無い。少なくとも、天乃は

たとえ周りの人が良いのよ。と、微笑んでくれたとしても

遠慮なく力を借りるなんて事は、出来ない


天乃「夏凜は優しいからきっと応えてくれる」

それなら、求めれば良い

求めてあげたら良い

貴女のそれが、夏凜の救いになるかもしれない

天乃「でもね、貴女が昨日。言ったじゃない」

優しさに縋るだけで良いのか

頼り切るだけで良いのか

そんな弱者のままで良いのか。と

良くない。そのままなんて、天乃は嫌なのだ

彼女がそれを拒むということは

天乃自身が心のどこかでそんな自分に嫌悪感を抱いている

不快感を抱いているということで

天乃「夏凜は優しいから、きっと無理だとしても応えてくれる。力になってくれる」

それが、貴女は嫌なのね

そうやって三好夏凜を蝕んでしまうこと

それが、貴女は恐ろしいのね

そして、そうせざるを得ない自分自身が、貴女は嫌いなのね

彼女が、纏わり付く

背中側から抱きつくように、プールに入っていくかのような

冷たい何かが受け入れて、体中を包み込んでいく

彼女は天乃を抱き、陵辱するのではなく、頭を抱く

親が子にするように、優しく抱く


だから、貴女は惨めな女の子なのよ

弱くて、醜い、女の子

勇者様に縋りつくだけの、哀れな村娘

彼女は嗤う。心を貶めるように、嗤う

天乃「っ」

彼女は天乃を救うつもりなんて無いのだ

優しく見せているのだって、相談に乗っているように見せているのだって

全ては天乃を弱らせていくためのもの

解決策など、提示したりはしない

弱音を吐かせて、貶めていく。ただ、それだけ

天乃「…………」

それが解っていながら、彼女にそれを口にしてしまったこと

そんな自分の弱さに、天乃は嘆くように体を抱きしめる

動かせない足が、切なく冷えて

天乃「良いの、このままで。夏凜達が私から離れていくなら。それで」

本当に? 本当に貴女はそれで平気なの?

天乃「そう決めてるから。沙織のことだって……意志があるなら。私は止めないって」

自分の手を、握り締める

どうだろうか、本当に、平気なのだろうか

そう考える天乃の耳元で、彼女は小さく嗤う

呆れたように、悲しそうに

どうして、私は貴女にこんなことを言うのかしら


天乃「……解ってるわ。解ってる。でも」

我侭を言いたくない

我侭を言うのが怖い

結局、迷惑をかけている現状で

さらに迷惑をかけてしまうこと

それが嫌で、怖くて、手を出すことができなくて。

弱虫、意気地なし、何も出来ない惨めな売女

やっぱり、貴女は性欲の捌け口でしかないのね

天乃「っ……」

彼女の冷めた言葉に、体が震えて

彼女の冷たい体がさらに密着していき

このまま混ざり合ってしまうんじゃないか

そう、感じたときだった

天乃「……!」

引き離された手がもう一度握られて

夏凜の瞳が、天乃をしっかりと捉えていた



夏凜「……何考えてんのか知らないけど。それ、考えすぎ」

天乃「なんで、そう思うの?」

夏凜「今まで、あんたはどれだけのことを一人で考えてきたのよ」

天乃「それは」

満開の後遺症のこと、東郷たちのこと、

自分の満開によるダメージ……

他にも、細かく分けたりすればまだある

深く考えなくても思いついてしまった天乃は、

思わず、何も言えなくなって

夏凜のため息に、体がびくりとはねた

夏凜「そういうこと、あんたは自分で考えるべきだとかなんとかなんやかんやで、考えすぎるのが癖になってんのよ」

多分だけど。と

夏凜は威勢良く言いながら、曖昧に言葉を繋いで、苦笑する

夏凜「あんたからも来てくれたほうが、安心する」

天乃「っ…………」

夏凜「ずっと頑張ってきたんでしょうが。そんなボロボロになるまで、穢れるまで、頑張ってきたんでしょうが」

だったら。と

夏凜は言いながら、今は華奢にも見える天乃の体を抱きしめる

薄く広がるような甘い匂いがする

少し前に変えたばかりの、桜のシャンプーの香り

夏凜「好きなだけ甘えなさいよ」


天乃「……夏凜」

夏凜「それに、ほら。私……あんたにああ言われなきゃ、平気で他人に任せるような奴だし!」

天乃「あれは……酷かった」

夏凜「悪かったって思ってる」

他にも沢山いるんだから

自分ひとりの接触が軽くたって平気だろう、安心できるだろう

その分鍛錬を頑張ろう

そんなことをしでかした夏凜は、自分のことを馬鹿にする

本気でそう考えたことを夏凜自身、恥じていて。

夏凜「だから……教えるっていうか、求めんのは私達のためでもあるわけで」

天乃「……そう?」

夏凜「そう」

天乃「そっか」

夏凜「ん」

ゆっくりと、指を絡めるように手を握りあう

口数は段々と減っていく

それでよかった、それで十分だった

額と額をこつんっと、軽くぶつけて、「そう」と、言葉が重なる


夏凜「……デート」

天乃「え?」

夏凜「デート……今日は、二人で」

昨日も誘ってきたのは夏凜で

でも、天乃はみんなで。と、言って全員で行くことになった

けれど、今日は二人でという増やして欲しくない。という意思が感じられて

天乃「解った」

だから、天乃は受ける

昨日は下手なことをしてしまったから

それなのに、こんなにも救われたから

天乃「よろしく」

断る理由も

なにか、余計な一言を挟む理由も。無かった


√ 8月2日目  朝() ※火曜日


01~10 
11~20 1

21~30 
31~40  2
41~50 樹海化

51~60 
61~70 1

71~80 
81~90  2
91~00 

↓1のコンマ 


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



夏凜「――で、――らしいのよ」

天乃「――なの? ――じゃなくて?」

友奈(ついてきちゃった)

樹(着ちゃいました)

風(そりゃ、行くでしょ)

沙織(行くよね)

東郷(車椅子に自立歩行型変形機構が必要ですね)

園子(千里眼は便利だよねぇ)


では少しだけ


√8月2日目 ()昼 ※火曜日


真夏の陽射しが照りつける真昼時

天乃は申し訳程度に被らされた帽子の広いつばを邪魔そうに持ち上げて、空を仰ぐ

もっとも、雲の無い晴天は半分ほど陰になってしまっているが。

天乃「デートって……夏凜、ちょっと」

天乃の視界を奪う影―三好邸―から夏凜へと目を向けた天乃の困った声に

夏凜は真剣な目を家に向けたまま、息をつく

夏凜「この前、私にも久遠家に近付くなって連絡が来たことは覚えてるでしょ?」

天乃「ええ」

夏凜「対して適当に返した結果、お呼び出しを喰らったってわけ」

天乃「えー」

不安そうな表情から一転、天乃は呆れたように語尾を延ばす

夏凜「悪かったわね……デートなんて言って」

夏凜は一言謝って、首を振る

夏凜「私が勇者になるまでは無関心にも程があったくせに……使えると思ったら。これなんだから」

天乃「夏……!」


車が近付いてくる。

近くの家にではなく、夏凜の家に向かって

しかし、駐車場にはすでに車が停められていて

また、大赦の厄介者の乱入でもあるのかと天乃がにらみを利かせた瞬間

家の脇に止まった車から、少し大人びた、男性が姿を見せた

「早かったな。彼女に送らせたのか」

夏凜「……それ以外ないわよ。兄貴の車、天乃を乗せられないでしょ」

天乃「兄……貴?」

夏凜「そ。私の兄で大赦の中枢勤務の三好春信」

「顔を合わせるのはこれが初めてだろう。三好春信だ。よろしく頼む、久遠様」

天乃「私は、そう……勇者の、久遠天乃」

夏凜の血の繋がった兄は、夏凜とは違って大人しい印象で

天乃は自己紹介をしつつ、春信の差し出した手をとって、握る


「昨日は来なかったと聞いたが……」

夏凜「急に来てって言われても困るし」

本当は行こうとして

みんなで行くことになったから、取りやめただけなのだが

夏凜はそのことを言おうとはせず、

春信もまた、追及する気は無いらしい

インターホンを押すと、3人居ることを告げる

すると玄関の鍵がガチャリと開けられて、天乃たちは中へと招かれて行く。

「体調に問題はないのか? 先日は問題ありと報告が上がっているが」

天乃「今は……そこまで」

夏凜「精神的なことの報告は?」

「もちろん聞いている。だからこそ。私がここに居る」

道中、春信と夏凜はどこか他人行儀で

けれど、不思議と兄妹だとわかるような距離感での会話をする

好ましいと思っているような、思っていないような

そんな中間ぐらいの、不安定な感覚だ


「お越しいただき、ありがとうございます」

春信に付いて向かった部屋に入ると、

恐らくは夏凜の母親と思われる女性が礼儀正しく、一礼すると

沙織の時とは違って、父親の方も嫌悪感を示すことなく、礼をする

天乃は大赦から危険視されている

けれども、

二年前から世界を守り続けている勇者であり

他の勇者の満開とは系統が違うとはいえ、

神格に近付いている存在ゆえ、礼儀はかけないの判断したのだろう

堅苦しい挨拶を前にした天乃は、

困ったように表情を歪めて「いつも通りでお願いします」と、願い出る

「そう……ですか? それでは」

女性は頭を上げると、夏凜を一瞥して春信と天乃に目を向けて

とりあえず掛けて。と、客間のソファへと手を向ける

天乃「申しわけないのだけど、私はこのままで」

「ええ、構いません」


夏凜と春信が席に着くと、父親であろう男性が一つ咳払いをして

ゆっくりと口を開く

「さて、久遠様……いや、久遠さん。で、いいのかな?」

天乃「ええ」

「そうか。久遠さん。娘から話は聞いているだろうか?」

天乃「久遠家との付き合いに関して、でしょうか」

夏凜がさっき言っていたこと

寧ろ、それ以外には無くて、言うと

男性は少し気まずそうに眉を潜めて、小さく唸る

「そうだ。大赦の方から、君があまり良くない子だといわれてね。付き合いは控えさせるようにといわれたのだ」

夏凜「そ――っ!」

何かを言いかけた夏凜を制するように、春信は手を出して。

夏凜の熱が一瞬であれ静まったのを確認して手を引く

「確かに、彼女にはいささか問題が有る。しかし、私達は彼女に救われている。という点を考慮すべきでは?」

「春信……しかしだな」

「父さん、母さん。彼女達は使い捨ての道具ではなく、生きた人間であることを忘れないで欲しい」


世界のためだからと、大赦はその犠牲を仕方がないものとして処理してしまう

その子供達の両親も、泣く泣くではあるが、手放すことを承諾してしまっている

生きるため、個人ではなく、全人類の存亡を掛けているのだから

大赦がしているように、それは諦めてしまうべきなのかもしれない

しかし、それゆえの良心の呵責から逃れるために彼女達を人間として扱わなくなるというのは

春信にとって、見逃すことの出来ないことだった

「彼女に問題があるといっても、それは勇者として戦ってきたがゆえのもの。本来の彼女は、今の姿を見て解るとおりの心優しい少女に過ぎない」

むしろ優しすぎているぐらいだと、夏凜は思ったが、

そんな余計な口を挟まずに、天乃へと目を向ける

天乃は褒められてしまっているせいか、居心地が悪そうにしていた

「私達が、そして、世界が担うべき穢れを請け負ってくれている彼女を。久遠家を私達は迫害すべきではない」

「貴方は、そっち側に付くのね……ううん、貴方はずっと。その子の味方よね」

押し黙っていた母親は、春信から夏凜へと目を向けると

すぐに目線を下へと下げて、父親へと答えを投げた


「春信。お前が言うことは間違っている。だが、きっと、それは私達にとって、なのだろうな」

「………………」

「解った。大赦にはそのように伝えよう」

そう答えた父親だが、悩ましげな表情は解消されることは無く

そんな父親の姿勢に、母親もまた

困り果てた表情で天乃と夏凜を見ると、春信には退席するように言う

春信は聞いていないようで、

表情こそ経端だったが、夏凜を不安げに見て、そのまま部屋から出て行く

そして

「率直に聞くわね」

夏凜「……なに?」

春信をわざわざ退席させたのだから

何か嫌なことを言われるかもしれない

警戒する夏凜の声は少しとがっていたが

母親は相変わらずのままで

「貴女達、交際しているという話を聞いたのよ。それも、久遠さん。貴女に限っては複数の、その……女の子と」

その問いは、意表を付くには十分過ぎた


「お母さんはね、交際することに異論は無いの。貴女達は思春期だから。でもね、女の子同士とか。複数の人と。というのは、アレ、じゃない?」

夏凜「……だ、だれ、から?」

「大赦からよ。出所はわからないけど、そう伝わってきたの」

ただの噂かとも思ったけど。

そう言った母親は、夏凜の驚きを隠せていない表情に、ため息をついて

噂じゃなかったようね。と、呟く

「久遠さん、どうして複数の女の子と?」

女の子同士。ということはこの際目をつぶるつもりなのか

複数の女の子というところに焦点を当てた母親の問いに、

天乃は中途半端に開いていた口を閉じて


1、全員の関係を保つため
2、好きになったから
3、誰も失いたくないから
0、翼は、複数の羽根があってこそ翼と言えるのよ


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


天乃「それは……」

東郷「快楽に溺れさせたからです、お義母様」

「えっ?」

東郷「手取り足取り……」

東郷「私が丹精込めて、えっちにしました!」ドヤッ

「は、はぁ……」

東郷(冗談なのだけれど……)

夏凜「いや、まずあんたはなんでいんのよ」


では、少しだけ


天乃「好きになったから、です」

天乃は恋愛ということにおいては、

自分なんかは本当に恋をしている人ほどの理解はないと自覚している

実際、恋愛関係に関しては沙織のほうが上かもしれない

だけれど、自分が相手をどう思っているのか

複数の相手を持つのがどういうことなのか

少しは、わかっているつもりで。

けれどそれでも。

天乃はみんなを選んだ

そこには、関係を悪化させないため。という打算的なことが無かったかといえば嘘になるかもしれない

しかし、今ここにあるのは、そんなある意味で邪まな想いではない

天乃「そこに至るまで、色々とありましたが、その結果が。その気持ちで。私はみんなにその想いを伝えて、受けて貰えたから。複数の女の子とお付き合いしています」

「……………」

天乃「少なくとも、こんな私の……」

天乃は自分の動かない足、赤く穢れた瞳、感じられなくなった味覚、聞こえない片耳、忘れてしまった記憶

色々なものをひっくるめて、握るように、胸元に宛がった手で握りこぶしを作る

天乃「私の想いを受けてくれた子に告げた心の責任は絶対にとります」


母親が言ったように、みんなは中学生で思春期真っ只中

入ってきたばかりの子だって、いるかもしれない

そんな勇者部の女の子を意図的ではないにせよ誘惑して、

自ら、恋をしてしまって、繋がりを持ってしまった。触れ合うことをしてしまった

で、あるのならば。

天乃「私はみんなに愛想をつかされない限り、みんなと添い遂げるつもりです」

その覚悟は抱いて然るべきだ

その覚悟を握り、意志を秘めた瞳を母親は真っ直ぐ見返す

「……本気、なのね?」

天乃「はい」

「夏凜、貴女は?」

夏凜「家を出たときと変わらない……私は、常に本気で挑むわ」

「そう……」

夏凜は顔色一つ変えることなく

戦っているときのような、しっかりとした表情で言う

二人のそんな隙を感じない

しかし、好きあっていることは感じられる、独特の雰囲気に、

母親は一つ息をつくと「解ったわ」と、返す


「夏凜、私達は貴女に好きにしなさいと、言ったわ」

夏凜「……ん」

「ただし、貴女もしっかりと責任を負いなさい。勇者だからと死んでしまうことは許されませんからね」

母親は天乃を一瞥すると

夏凜へと向き直ってはっきりと告げて、「話は以上です」と、幕を下ろす

けれど、

軽い挨拶を終えて天乃と夏凜が部屋を出ようとした時

母親は夏凜を見つめたまま、天乃へと向けて

「久遠さん、少し難しい子ですが。よろしくお願いしますね」

夏凜「は、はぁ? 天乃の方が難しいってこと知らないからそうやって……」

天乃「ふふっ」

夏凜「笑うな!」

伊集院家とは違って

和やかに家庭訪問は済んで

母親からは「また顔を見せに来て頂戴」と、言われた


「……話は済んだのか?」

夏凜「帰ってなかったんだ」

部屋を出て、廊下を進んでいくと、

玄関のあたりで先に部屋を出た春信とまた出会って。

春信の伺う一言に、夏凜はそっけなく返す

仲がいいのか悪いのか

少し疑いたくなった天乃だが、春信の見定めるような視線を感じて、考えを切り離すと

丁度、春信が息をついた

「結城家、東郷家。両家も大赦に対して久遠家との断交は無いとの意向を示したそうだ」

天乃「……あなたが?」

「いや、両家が個々に決めたことだ。娘の望みを阻むことはしたくない。と」

夏凜「……もしかして知ってたの?」

「気にするな」

睨むように言った夏凜の頭を軽く叩いて、春信は一歩出口へと近付く

「以前は何もしてやれなかった。だが、今はもう力になってやれる。お前はお前の好きなことをしたら良い」

去り際の、その声は

春信自身がそれを喜んでいるかのような、明るい声で

夏凜は呆気にとられたように立ち尽くして春信の後姿を見つめる

夏凜「……そっちこそ、気にすんなっての」

そう、小さく呟いた


そんな微笑ましい兄妹の姿を傍で見守った天乃は

クスクスと、笑って

天乃「仲良いのね」

茶化すように問いかけると、夏凜は「そんなことないから!」と

否定はしたものの、顔は赤くて、

やはり仲は良いのだと、天乃は羨ましく思う

自分にも兄がいた。姉がいた

そのはずで、けれど、何も覚えていないから

だから、羨ましく感じて切なく笑う

天乃「良いお兄さんじゃない」

夏凜「なによ、気に入った?」

天乃「ええ。まぁ……恋愛のそれではないけど」

心配した? という天乃の一言に

夏凜はしてないから。と、呆れ混じりに返して

夏凜「……どうよ。この後」

天乃「?」

夏凜「ちょっと、連れて行きたいところあるんだけど」



1、えっちなお店?
2、良いわよ
3、もうやだ。また大赦関連でしょ
4、映画見に行きましょう


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


では、少しずつ


天乃「良いわよ」

夏凜「あっさり決めんのね」

朝のデートの誘いが実家訪問で

少しは警戒するのかと思っていた夏凜としては

嬉しくもあるが、少し、不安を覚えて

そう言えばそういう無防備な女の子なんだと思い出して、苦笑する

天乃「なに?」

夏凜「いや、あんたは無防備なやつだったと思って」

天乃「夏凜を信頼してるからよ」

夏凜「嘘つけ」

天乃「……まさか不信感を抱いてると看破されるとは」

夏凜「のんないわよ。その話題」

天乃「むー」

夏凜のことは信頼している

もちろん、勇者部のみんなのことも

しかしながら、心のどこかで不安を覚えていること

不信感がひっそりとたたずんでいること

それもまた【嘘】ではなくて。

つまらない子ねーと、

天乃は冗談ぽく笑って、小さくため息をついた


夏凜「でも、あんたって戦いに関しては隙が無いわよね」

天乃「そうかしら」

夏凜「百回に一回くらいなら、あるかもしれないけど」

天乃が戦っているのを見た回数は、思えばそんなに多くはないし

一度は殺し合いではないが、模擬戦でなく本気の戦いを自分がやった

しかしそれでも、戦闘においては余念がない事くらいは、夏凜でも確信が持てた

だからこそ、惜しいと思う

特別すぎる力を持ってしまっていることが

その力が諸刃の剣であることが

もしもそうではなく、純正の勇者であったのなら

とても心強かっただろう。と

夏凜「ま、その分緩い今のあんたも、わるかないけど」

天乃「褒めても何も出ないわよ」

夏凜「んなつもりはないし」

そんな、他愛もない話をしながら、

瞳の迎えが来るのを、待った


01~10 
11~20 大赦
21~30 
31~40 彼女
41~50 
51~60 樹海

61~70 
71~80 
81~90 九尾

91~00 

↓1のコンマ  


次に夏凜に連れてこられたのは、

沙織の尾行をした際にも来た、映画館だった

夏休みということもあって、にぎわっている館内を見渡した夏凜は、

少し待ってて。と、天乃を残して自動券売機へと向かう

天乃「映画……」

どこに行こうとしているのかは聞かなかったけれど、

車が到着した時点で、もしかしたら。という可能性は考えていた

けれど、天乃はすこし似合わないなぁ。と、夏凜を眺める

夏凜は瞳から勧められて、小説を手に取ったりもしているが

やはり、天乃からしてみれば

夏凜が持っているのは刀であり、木刀であり、

得るのは知識ではなく経験という印象が強い

そんな夏凜が、自分から映画に誘って

自分で見る映画をあらかじめ決めているのだから……不思議な感じがする

天乃「操作、慣れてないのね」

見かねた係の人に声をかけられる夏凜の姿

天乃はそんな愛おしい姿を眺めて、笑う

映画を見ていなくても、これはこれで、好きだった


見たのは、恋愛映画だった

恋愛映画と言っても、良くあるようないちゃいちゃとくっつくようなものではなく

すこし控えめな、中学生から高校生

大人へと変わっていく主人公が

周りの変化に翻弄されながらも、成長していくといった、話で

強く恋愛をしている、という感覚はなかった

映画を見終えて、館内に併設されている休息所のようなところで、一息つくと

夏凜が思い出したように呟く

夏凜「あの父親……」

天乃「ん?」

夏凜「ほら、あの浮気癖の強い父親。どう思った? 一妻多妻の久遠様は」

天乃「私は手を出してもひっこめてないわよ。ちゃんと連れ帰ってるから良いの」

夏凜「どういう理屈よ」

呆れたような目を向けてくる夏凜に、天乃は苦笑を返して

天乃「あれは創作物だけれど、でも。間違ってるって思ったわ」

夏凜「へぇ?」

天乃「だってほら、彼には娘がいて。なのに、ただただ愛人を増やすと言うのは私は認めたくないわ」

夏凜「なら、天乃も子供が出来たら、一人に絞る?」


天乃「え?」

夏凜「だから、あんたにも子供が出来たら、そうしちゃうのかって」

戸惑う天乃は夏凜へと目を向けたけれど、

夏凜は、天乃を見ていなかった

適当に勝った飲み物を手にしたまま、

まるで、興味がないようなそぶりで、いくつかある映画の壁掛けポスターを見ながら、問いかける

夏凜「私達の中の誰か一人とか。その、相手の男とか」

天乃「それは……」

ないだろう

ないはずだ。何か、そうする以外に道が無くなってしまった

そういう事態に陥らない限りは、絶対に

天乃「そうね……知りたい?」

夏凜「なにその茶化す前提の顔」

天乃「あら、そんな顔してる?」

夏凜「夏凜の反応が楽しみで仕方がないって語ってる」

ちらりと目を向けた夏凜の、察した言葉


1、みんながいるなら。私はみんなと一緒よ
2、夏凜は逆に、どうするの?
3、その前に。私が男の子とするのは許せるの?
4、私が離れるかもって、不安になった?


↓2


天乃「私が離れるかもって、不安になった?」

映画の中でも、

主人公の女の子の恋人は遠くに旅に出てしまったり

その主人公の周囲も、近づいたり、離れたり

恋愛は忙しないものなんだなと、思ったくらいで

夏凜は悩まし気に目を細めて、首を振る

夏凜「責任取るって、あんた言ったし」

天乃「……そうだけど、そう言うことじゃなくて」

夏凜「それにきっと、あんたが離れる時は面倒ごとに巻き込まないようにする為とか、どうせ私たちの為だろうし」

天乃「違うかも――」

夏凜「しれなくない」

言い終える前に、夏凜は言葉を潰す

そんなことはない。絶対に

そんな確信があって

夏凜は無意識に動いた手が触れた小さな触れ慣れた感覚に重ねていく

夏凜「連れ戻すから。私達が」

天乃「そ――」

夏凜「例え、記憶喪失になったとしても。私達は。必ず、あんたの傍にいるから」


そう、覚悟を決めたのだ

夏凜も、勇者部も。みんな

園子も須美も生きている

けれど、命を失ってしまった人

それ以外の大切な物を失ってしまった人がいて。

だから、自分たちくらいは、失われずにいようと、決めたのだ

そのためなら――

夏凜「天乃」

天乃「言いたいことは、分かるわ」

夏凜「そ……でも、あえて言っとく」

ゆっくりと、夏凜は天乃へと目を向ける

夏休みの映画館

その喧騒が一瞬にして、静まったような

そんな、隔離されたような感覚の中で

夏凜「近々、また襲撃があるそうよ」

天乃「いつ、聞いたの?」

夏凜「夏休み前よ。あんたには伝わってなかっただろうけど」


天乃「……規模は?」

夏凜「さぁ? ただ、傾向からして全滅させに来るかもって」

天乃「っ」

夏凜はさらっと、告げる

逃げても誤魔化しても仕方がない

来てしまうものだから

そんな、ある種の割り切りのようなものを感じさせるその声に

手に重ねられた夏凜の手が、どこかへ逃げてしまいそうな不安を感じて、

さらに手を重ねる

夏凜「ん?」

天乃「園子も、私もいないのよ……?」

夏凜「解ってる」

天乃「解ってない」

夏凜「解ってるから」

天乃「解ってない……解ってないわ」

夏凜「…………」


1、前回と同じ規模だったとしても勝てる自信があるの?
2、いざというときは私も戦うわ
3、だから……今日、こんなデートに誘い出したの?
4、子供の話ってつまりそう言うこと、なのね?
5、戦力が大幅に減少してるってことなのよ?

↓2


黙り込む夏凜を前に、

天乃は不安と恐怖に呑み込まれていく心を抑え込むように、夏凜の手を握る

そして、ふと思う

わざわざ実家に連れてきたリ

映画を見に来たり、あんな話をしたり

それは、もしかすると

天乃「子供の話ってつまりそう言うこと、なのね?」

夏凜「は?」

天乃「え?」

夏凜「なんで?」

天乃「なんでって……私と子供作りたいとかそう言う話じゃないの?」

夏凜「は? はぁぁっ!?」

無意識に叫び声のような驚きの声を上げた夏凜は、

周りの視線を感じて、慌てて口をふさぐと、

目を瞑り、大きく息を吐いて、「あのさ」と、

僅かに気迫と羞恥心の籠った声を投げる

夏凜「あんたも私も、その……アレ。というか、お、女でしょうが!」

天乃「それでも問題ない方法でも見つけた可能性もあるじゃない?」

夏凜「真面目に言ってるってのがなんかイラっとするわ」


天乃「違うの? ほら、一人に絞るとかそう言う……」

夏凜「それならむしろあんた相手が違うでしょ」

天乃「それはそうだけど」

思っていたのと違う夏凜の反応に、

天乃はすこし困ったように眉を顰めると、

夏凜から眼を逸らして、

楽しげに話す小学生くらいの子供たちを眺める

天乃「対抗したのかと思って」

夏凜「男になれと?」

天乃「ならなくても出来るんじゃないの?」

夏凜「知らないわよ」

少なくとも

現代でもそんな技術は確立されていない

天乃「けど、違うなら。私は五郎君と子供を作ることになる」

夏凜「……それに関しては、もう。穢れ関連なんでしょ? だったら何とも言えないわよ」

自分が悪五郎の代わりになれると言うのなら

それはそれでやりたいが。出来ないのだからどうしようもない


夏凜「とにかく、私が言いたかったのは戦いがあるってこと」

天乃「……そう」

そして、それは勇者である天乃には伝わらなかったと言うこと

それはつまり、

大赦からは、正式に除名されている。ということになる

もっとも、その正式に含まれるのがどの部分なのかは疑問があるが。

夏凜「こ、子供の話は。たまたま映画の内容があれだったから、しただけだから」

天乃「そう……ごめんね。変な勘違いして」

夏凜「ほんとよ」

そう言った夏凜は、

さっきの言葉を思い出してか

恥ずかしそうに頬を染め、ふいっと、顔を逸らす


1、できたら、する?
2、……今日は、するの?
3、夏凜との子供、出来たらどんな子になるのかしら
4、男の子とするって、どんな感覚なのかしらね
5、ねぇ。今日はもう帰るの?


↓2


天乃「……今日は、するの?」

夏凜「したいの?」

天乃「なんで、聞き返すのよ」

つないだ手をわざと力強く握ると

夏凜は痛い痛いと零しながら「悪かったって」と

謝っているようでいないような謝罪を口にして、

苦笑いを浮かべる

その顔はほんのりと赤らんでいたが

天乃よりは、軽度なようで

天乃「なんか……そういうことしないと、もやもやするの」

夏凜「もやもやって……穢れ?」

天乃「解らないけど、でも。穢れの影響が強くなってきてから、より酷くなったと思う」

心の奥で「人のせいにするの?」という言葉が聞こえたが

聞こえないふりをして、首を振る

天乃「別に、しなくても平気なの。全然、体調崩すとかはないから」

けれど、もやもやとする

何もしていないのに、少し、火照った感じがする

そしてなにより

天乃「彼女がそのもやもや感で色々言ってくるから……その。ね」


夏凜「なるほど……今は?」

天乃「ぼそぼそ何か言ってるけど、とくには」

夏凜「そうじゃなくて」

そう言った夏凜は、

周りの視線を気にしながら

天乃の耳元へと口を近づけると

夏凜「そういう気分なのかどうかよ」

本来聞きたかったことを改める

天乃「っ!?」

夏凜「天乃?」

天乃「そ、そう言う気分って……い、今映画観て。それで、だから」

顔が見る見るうちに赤く染まっていく天乃は、俯いて

そのまま言葉はかき消えていく

そんな、普段よりも一段と弱弱しく見える天乃を見つめて

夏凜は小さく、息をつく

夏凜「解った、じゃぁ、今日の夜……平気?」


1、平気
2、心の準備
3、夏凜と二人きり?

↓2


天乃「ま、待って」

夏凜「?」

天乃「その……こ、心の準備、ね?」

距離の限りなく近い夏凜の体をぐっと押して離れた天乃は

恥ずかしそうに眼を逸らして、口を開く

天乃「私、弱いから……」

夏凜「……そ、まぁいいわ」

夏凜は天乃のそんな反応にも文句を言うことなく受け止めて

心配そうに天乃を一瞥する

夏凜「あんたが平気な時で良いわよ」

天乃「……うん」

夏凜「朝からは少し困るけど……それ以外なら、出来る限り付き合ってあげる」

天乃「ごめんね、エッチな子で」

夏凜「しょーがないわよ。あんたにもいろいろあるんだから」

暗くなりかけた雰囲気を振り払うように

夏凜は「さ、帰るわよ」と、明るく言い放つ

その優しさが

天乃はとても、有難かった



√ 8月2日目 夕() ※火曜日

01~10 
11~20 九尾

21~30 
31~40 
41~50 彼女

51~60 
61~70 
71~80 大赦

81~90 
91~00 樹海化

↓1のコンマ  

ぞろ目、特殊


√ 8月2日目 夕(自宅) ※火曜日


まだ陽が高く思える夕方

長く付き合わせるの元、夕方の半ばに帰宅した天乃は

自室で一人息をつく

天乃「…………」

園子も、同じように穏やかに過ごせているのだろうか

ふと、そんな不安が湧き上がって、すぐに振り払う

一人になると、どんなことでも不安になってくる

怖いと感じてしまう

ネガティブ一直線な思考回路は、現状では、修復できそうにはなくて。

天乃「春信さんが何も言わなかったんだから、平気。だろうけど」

彼女が、心の中で燻る

不快な感覚、不愉快な感覚

その痛みに、天乃は耐えて、起こしていた体をベッドへと寝かせる

夏場のベッドは不快な生暖かさがあった



1、九尾
2、千景
3、若葉
4、球子
5、歌野、水都
6、悪五郎
7、夏凜
8、勇者部 ※再安価
9、イベント判定 ※再安価

↓2


では、本日は早めですがここまでとさせ得て頂きます
明日もできれば通常時間から


天乃「ねぇ、若葉」

若葉「?」

天乃「変なこと聞いて良い?」

若葉「なんだ? 私で答えられるなら構わないぞ」

天乃「男の人とのえっちって、どんな感じ?」

若葉「男の人との……? そんな覚えはないぞ?」

天乃「え?」

ひなた「……ふふふ」


では、少しだけ


※√8月2日目 (自宅)夕 ※火曜日


若葉「大丈夫か?」

天乃「ええ……」

呼び出して早々、不安そうにたずねた若葉は

天乃のベッドのすぐ横に椅子を置く

天乃は若葉には目もくれず、どこか遠くを見ているようで

上の空にも思えるそんな姿に、若葉が不安げな目を向けていると

天乃は小さく息をついて、ゆらりと、首を動かす

天乃「近々、戦闘になるらしいわ」

若葉「聞いていた。夏凜が言っていたやつだろう?」

天乃「そう。また、大規模になる可能性もあるって」

若葉「…………」

煽るような言葉は、沈んだ声で

昼間や夕方のような明るさは無い

その不安定な様子にはやはり、不安が募るが

それと同じくらいに戦闘も不安で

若葉は無意識に握り締めた自分の手に気が付いて、息をつく

それでも、心は落ち着かない


若葉「不安か」

天乃「別に、若葉たちが弱いと思っているわけじゃないの。でも……」

若葉「そうだな。勝つためには、夏凜が言っていたように満開を行使する必要があるかもしれない」

そうすれば、負けるかもしれない

死ぬかもしれない

そんな危機から脱することができる

それは確実で、とても安全で、盲目的に勝利のみを目指すのなら

生きていること。ただそれだけを目指すのならば、使わない手はないこと

だが、その分、勇者たちは傷つく

生きてはいるが。と、言葉を紡がなくてはならなくなる。今すぐではないにしても、いずれ。

若葉「規模にもよるが、満開は最低でも二人は必要だと見るべきだろうな」

天乃「誰か一人の満開でどうにかなるほど甘くない可能性もあるものね……」

若葉「そもそも……これを言うのは少し心苦しいが。園子もいない」

前回のあの連戦になってしまった戦いは、

初戦には天乃がいてくれたから

二戦目には園子がいてくれたから

だから、何とか終わることができた

そう考えている若葉にとって、二人のいない戦いは不安が多かった


若葉「…………」

西暦時代にも、勇者が苦しめられた穢れの影響

体のみならず、精神にまで影響を受けている天乃の姿を前に

若葉は苦虫を噛み潰したように不快な表情を作り、背けて、自分の手を見る

握りすぎ、爪あとさえ残ってしまった手の平

赤く熱っぽさのあるそんな手を、若葉はもう一度握る

若葉「私達でも、その穢れを何とか出来ればいいんだがな」

天乃「出来ないわ。出来ないから、久遠家は特別なんだもの」

若葉「しかし……」

天乃「いいのよ。無理しないで」

若葉の気遣いに、笑みを向ける

それは切なげで、儚げで

嫌な大人っぽさが感じられて

それはまるで、その場からいなくなってしまうような

手からすり抜けていってしまうような……感覚


1、ところで。貴女も鍛錬に参加してるのよね?
2、どう? みんなで問題なく連携できそう?
3、私も……戦うわ
4、なにか、言いたいこと、あるんじゃないの?
5、若葉って。子供、産んだのよね?



↓2


では、短いですがここまでとさせていただきます
明日も出来れば通常時間から


天乃「何か言いたいことがあるんじゃないの?」

若葉「ああ、私には子孫がいるだろう?」

天乃「ええ」

若葉「実はな、その先祖。つまり私の子だが、産んだのはひなたでな」

天乃「え?」

若葉「実は、私が父親なんだ」

天乃「えっ?」


では少しずつ


黙り込んでしまった若葉を見つめていた天乃は、

ゆっくりと窓の外を眺めるように目を細めて、息をつく

左側が真っ暗で、何も見えない

それは、自分の体には常に不具合があるという烙印のようなもの

考え出せば、深く沈んでいってしまいそうな仄暗い闇が、顔を覗かせていて

彼女はいつも、そこに姿を見せる

そして、不安を煽り、体を穢そうとしてくる

天乃「……っ」

考えてしまう、思ってしまう彼女の姿

それを振り払うように首を振って、手元を見つめる

天乃「何か、言いたいことあるんじゃないの?」

若葉「……なぜ、そう思う」

天乃「そんな顔、してるから」

若葉「そうか……解り易いか。私は」

懐かしむように零した若葉は、

薄く笑みを浮かべると、帯刀した自分の刀の柄を小突く

若葉「そうだな……なぁ。天乃。私は、天乃が好きだ」

天乃「!」


若葉「それに大切だから、守りたいと心から思っている」

天乃「…………」

心からの言葉を絞りだす若葉の表情は

告白をする気恥ずかしさなんていうものは微塵も感じられず、

それどころか、痛みに耐え忍ぶような、苦しささえ、見える

そんな若葉の握られた拳は震えていて

悔しいのだと、天乃は気づく

若葉「だが、現状の私ではきっと守りきれない」

天乃「そんなことは――」

若葉「あるさ。システムの向上した現代勇者でさえ、満開を使わなければいけない戦いだ。ないはずがない」

天乃「若葉……」

過去に大敗を決した若葉は、今回もまた、自分個人では負けるのだと、思っている

ネガティブだといわれるかもしれないが

力不足感は、否めない

だからこそ、若葉言う

だからこそ、若葉は考える

若葉「……少しだけ、力を貸してくれないか」

だが、言葉は――道を外れる


若葉の提案に、天乃は少し驚いて目を見開くと

若葉は自己嫌悪ゆえか、唇を強く噛み締めて、首を振る

天乃「力?」

若葉「ああ、そうだ。少しで良い。少しだけ、傍にいてくれ」

天乃「……? それが、力なの?」

純粋な疑問をぶつけてくる主を前に、

若葉は300年前に何度も抱いた不安が再発してくる不快感を感じて、頷く

若葉「守るべきものがまだある。という、自覚だ」

天乃「そう」

若葉は罪悪感を感じる表情をしていて

本当に言いたかったことがそうではないのだと

天乃は察する

けれど、天乃は若葉を一瞥するのみで

短く答えて、目を逸らす


若葉は言いたいと思った

だが、言うべきではないと思ったから、言わなかったのだ

言いかけた際の、不快な表情

それはきっと、若葉にとって嫌なことだったからで。

戦いについてのことだろう

若葉のことについてだろう

天乃のことについて話していた後なのだから

もしかしたら、さらに天乃についてかもしれない

天乃「ねぇ、若葉」

若葉「なんだ?」

天乃「……傍に、いるだけでいいの?」

若葉「それは」

天乃「別にいいのよ。貴女が上里さんに求めていたことを、求めても」


戦いによる不安感や、戦いへの恐怖

様々なものを抱えながら、若葉は上里ひなたという少女に肩を寄せていた

それは、少しでも頑張れるようにと自分自身の心の延命措置

それが、今は無い

若葉の記憶を共有している天乃としては

頼れるものがなくなってしまったという不安や寂しさがある

球子が言っていたのはきっと、そのことだ

若葉「天乃……」

天乃「ん」

若葉「天乃はひなたとは違う。似ているところも確かにある。だが、違うんだ」

天乃「そうね……」

若葉「だが、それでも……少しだけ。借りたい」



1、抱きしめる
2、待つ
3、えっち、する?


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から




沙織「三好さん、お誕生日おめでとう」

夏凜「……昨日なんだけど」

沙織「うん、ほんとはね、昨日持ってくるつもりだったんだけど」

沙織「準備に手間取っちゃって……はいこれ」ガラッ

天乃「むーっ、うーっ!」ジタバタ

夏凜「なに……これ」

沙織「久遠さん裸リボンバージョン」

夏凜「今すぐほどけ!」

では、少しだけ


天乃「良いわよ、貸してあげる」

若葉「良い、のか?」

天乃「何も躊躇うことはないもの」

あっさりと受け入れてくれたことに、

申し出た若葉自身が戸惑うと、天乃は大人びた笑みを浮かべて、頷く

それは、ある日見たひなたのようで

けれど、それはまったく違う姿で。

再沸する寂しさを前に、若葉はそっと手を伸ばして天乃の肩に触れる

若葉「……優しいな」

天乃「それが私の長所だから」

掴まれた肩から体ごと全てをぐっと引き込まれて、

決して大きくはないけれど、でも女性特有の柔さのある胸に抱かれる

若葉「生きてるな」

天乃「ええ」

若葉「……まだ、ここに、ちゃんと」


西暦時代、一つ一つ欠けていく日常を経験した若葉にとって

今、ここで感じられる日常というものは、儚く散りやすいものでしかない

だが、それは天乃も一緒だった

三ノ輪銀が亡くなった。その親友、鷲尾須美は記憶を失って他人となった

乃木園子は戦闘によって、自力では殆ど何も出来なくなってしまった

天乃自身も、足が動かせなくなって、片方の耳が聞こえなくなって、味を感じられなくなって

家族の記憶さえも、失った

天乃「当たり前でしょ、何言ってるの」

若葉「そうだな」

天乃の微かな笑いに、若葉も小さく笑みを浮かべて、より天乃の体を抱きしめる

強く、優しく

そのぬくもりを、その柔らかさを、その優しさを

自身の体に溶け込ませていくように

いつか感じたその感触を追い求めて

若葉「……優しいな」

肌に触れる感覚も、包み込むぬくもりも

そして、ゆっくりと吸い込むたび、内側に浸透していく天乃の匂い

全てが穏やかで、心と体に優しさを感じる


若葉「このまま、ずっと抱きしめていたいくらいだ」

自分の在り方に不安を覚えて、ひなたのことを求めて部屋に向かった時と似たような感覚

答えは己でといわれ、突き放されたように感じた絶望感とは対極的に

救われていく感覚

ひなたも優しい、天乃も優しい

だが、その優しさのベクトルは少し違うのかもしれない

そんなことを考えながら

天乃の真っ直ぐに下ろした後ろ髪に顔を埋めて、より密着して息をする

自分は、今ここで生きているのだと、感じた

天乃は、今ここでいきているのだと、感じた

失ってしまったものと、新しく得られたものが重なっていく

であれば、また。壊れてしまうのだろうか?

――否だ

答えは、断じて否だ

若葉「守るぞ、私は」


抱擁を抵抗無く受け入れてくれる心優しい主

その体を少しずつ手放して、向けられた瞳に目を向ける

若葉「私は天乃を守る。天乃の周りも、みんなもだ。全部守り抜いてみせる」

天乃「……無茶は、しないでね」

若葉「……天乃は。君は、君という人は」

優しくかけられた声

不安を感じる視線、心配しているのだと物語る表情

若葉は燻っていた気持ちを抱きながら、どこかを眺めて、首を振る

自分は精霊なのだ

今ここで生きているのだとしても

いずれ、消えなければいけない存在

ここにいては、いけないはずの存在

だから、と、

若葉は唇を噛んで、天乃の体をもう一度抱きしめる

若葉「心配するな」

これでいいのだと

それで言いのだと、若葉は心の疑問を押しのけていく


√ 8月2日目  夜(自宅) ※火曜日


01~10 
11~20 沙織

21~30 
31~40  夏凜
41~50 
51~60 
61~70 九尾

71~80 若葉

81~90 
91~00  千景

↓1のコンマ 


ゾロ目 特殊


√ 8月2日目  夜(自宅) ※火曜日


天乃「…………」

夏の夜特有の

温く感じる布団と空気に包まれながら体を動かすと

薄い掛布団が微かに擦れた音を響かせる

夜は静かだ

外からの虫の声こそするけれど

基本的には車もなくて、何もなくて

まるで、自分一人しかいないようで

天乃「呼べば、来てくれるかしら」

夕方話した夏凜は、別室にいるから、寝ていなければ連絡一つで来てくれるかもしれない

精霊たちは、呼びかければ答えてくれるだろう

けれども。

眠れないからというくだらない理由で呼んでいいのだろうかと

天乃は、少し、悩む



1、九尾
2、千景
3、若葉
4、悪五郎
5、歌野
6、水都
7、球子
8、沙織
9、夏凜
0、大人しく寝てみる
11、イベント判定

↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



天乃「千景、ひと狩り行かない?」

千景「ええ、良いわ」グイッ

天乃「っ!?」

千景「淫獣退治、今からするわ」

天乃「ち、違……」


園子「なんてね~」

杏「流石です、園子先生!」


では、少しだけ


※√8月2日目 (自宅)夜 ※火曜日


千景「乃木さんじゃなくて良いの?」

天乃「あら、どうして?」

千景「さっきのを見ていれば、誰でもそう思う……わ」

考えるように切り出した千景は、天乃の事をじっと見つめて、小さく息をつく

こんなときどんな話をしたら良いのか

どんなことをしたら良いのか

記憶も知識も無い千景は困ったように視線を泳がせて

千景「乃木さん、いつも張り詰めていた。から」

天乃「貴女もそう感じたのね」

千景「はい。模擬戦においても、思い悩んでいるのか、動きが鈍っているように感じて……」

そこまで切り出した千景は「また」と

自分自身を戒める言葉を吐いて、首を横に振る

千景「きっと、大赦の件よ。乃木さんが久遠さんに言っていた、あのこと」

天乃「…………」

千景「そこで力になれなかったから、きっと、力不足に焦ったのかもしれないわ」


千景は若葉の気持ちがわかるとはいえない

けれど、それが自分の立場だったと、考えて思う

自分は記憶も何も無くて

過去にはとてもではないが、明るみには出したくないような失態を犯してしまっている

それを知っていながら、突き放すことなく受け入れてくれる人

その周囲の弊害に対して

自分がまったくの無力で、無益なのだとしたら、それを痛感してしまったとしたら

きっと、焦るだろう。きっと、打ちひしがれてしまうだろう

千景「私は……そう思うわ」

天乃「……若葉のこと、ちゃんと見てるのね」

千景「私はゼロからのスタート。その分、周りを見ているべきだと思っているわ」

そう言った千景は、

過去を思ってか、罪悪感のある表情を一瞬浮かべる

千景「それが出来なかったことも、過去の失態の原因の一つだから」


千景が家庭に恵まれてさえいれば

崩壊以前に友奈たちと出会ってさえいれば

きっと、もっと勇者としての力は強く、関係も深く

もしかしたらみんなで最期まで生き残るようなことも出来たかもしれない

見た目は大人しい印象で

クラスにはいるだろうが、いないようにも思えるような

そんな、風景の一つでしかないような雰囲気

けれど、

若葉の記憶でみた千景は、そんな姿の中にも

とても明るく、活発にも見える姿(半分は陽乃への苛立ち)があった

もしもそんな千景だったら……と

そんなことを思った天乃は、拭うように頭を振って千景へと目を向ける

天乃「いい子なのね、千景は」

千景「そうあるべきだと、思っただけ」

天乃の微笑みに、千景もまた、少し緩んだ微笑を向ける

それはとても愛らしく、尊い笑み



1、貴女は、どう? もう慣れた?
2、一緒に寝る?
3、貴女は、戦うことに不安は無いの?
4、可愛い顔、できるじゃない


↓2


では、短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


天乃「一緒に寝る?」

千景「……性的な意味で?」

天乃「どこでそんな切り返しを」

千景「東郷先生のタチネコ完全マニュアルを買ったわ」

天乃「返品してきなさい」


では、少しだけ


天乃がじっと見ていると、

笑ったことが気恥ずかしいのか、

ほんのりと赤らんだ表情で、千景はどこかへと顔を背ける

それでも、横顔の愛らしさは抜けなくて、

寧ろ、幻想的な透明度の白い明かりが差し込んで照らすそれは

愛らしいというよりも美しいというような、感じで

天乃「ねぇ千景」

千景「何、かしら」

そっと、切り出す

天乃「一緒に寝る?」

千景「え?」

驚いた表情は、子供のようで

本当はもう、300年を除けば自分よりも少し上なんだけど。と

天乃は想いながら、「寝る?」と、笑みを向ける

千景「それは……私と。久遠さんが?」

天乃「そうよ」

千景「…………」


そんな長考するほどのことでもないのではと天乃は思うが、

千景はしばらく頭を悩ませて、困ったように眉を潜める

千景「私、周りに恨まれないかしら」

天乃「どうして?」

千景「私以外に、久遠さんと横になりたいと思う人はいるはずよ。それこそ……」

そこで千景は言葉をとぎると、首を横に振って

千景「伊集院さんや、三好さん達」

天乃「それはそうかもね、でも。みんなは人を恨むような子ではないわ。少なくとも、添い寝くらいではね」

自信のある笑みでそう言った天乃は、

翌日以降に私もあたしもと来るかもしれないと思う

多分、今いるけれど出てこない伊集院さんとかは、何かが無ければ、確実に

それこそ夏凜でも引きずり込んで。

千景「それは……そうね」

天乃「でしょう? それにね。千景」

千景「?」

天乃「私は貴女と仲良くなりたいのよ」


千景「……久遠さん」

みんなが熱く想いを語る久遠天乃という人間

みんなが、好きだと口をそろえる久遠天乃という少女

その遣いの精霊である千景は

まだ、ここに着たばかりで、その理由に共感することは完全には出来ないし

何も思わずただ納得するというのは少し難しい話だった

けれど、感じる

天乃の笑みは、愛おしいと

だから、思う

この人は守りたいと思わせる人なのだと

悲劇を知っている

苦しんで、辛い思いをして、抱え込んで

それでもなお、嫌な思いをさせられて

それでもなお、生き抜いてみせるそれは尊さを持つ

千景「貴女は……酷い人ね」

だから千景はおもむろにそう、呟く


天乃「え?」

千景「わからない? だって、貴女はもう何人もの恋人がいるわ」

天乃「そうだけど……」

千景「でもきっと、久遠さんは誰かに好意を抱かせる」

意識的にも、無意識的にも

きっと、関わった誰かに好意を抱かせてしまう

勇者部のみんなにむけられているだろう心はきっと特別で

他の誰かにもまたそんな心を向けるとは限らない

きっと、ある一線を超えない限りはそんなことはしないだろう

しかし、その優しさは、温もりは、尊さは

咲いては散る花のように

融けゆく雪結晶のように

儚くも美しく、刹那に尊い

万人の心に何かを抱かせる

千景「また、誰かが久遠さんを好きになってしまったら……どうするの?」


天乃「……そんな真剣に悩んだことは、なかったわね」

相手の心がある程度分かるとはいっても

絶対に選択を間違えないとは言えないわけで。

だからこそ、人の気持ちに対して

自分の言動が傷を深めるものではないようにと気を使っていることは良くあることだ

それで相手が救われるのなら

落ち込んだ気持ちを拭い

後ろ向きになってしまった目を前へと向けられるのなら

それは、天乃にとっても。それがたとえ他人の事であったとしても喜ばしいことで

そうするようにと務めてきた

天乃「私が誰かを好きにさせちゃう……ね。うん、私って魅力的だからね。そういうこともあるわよ」

茶化すように言って、間を繋ぐ

向けられる千景の視線は揺らがない

千景「久遠さんが笑った時、温かさを感じたわ」

天乃「…………」

千景「また見たいと、ずっと見たいと。そう思えるような温かみを」


天乃「だから、笑うなって?」

そう言った天乃は、考え込むように視線を泳がせると、

差し込む月明りを追いかけるように外を見る

それは、迎えを見上げるかぐや姫のようで

一抹の不安を覚えた千景が言葉を紡ぐ寸前

天乃が小さく笑みをこぼした

天乃「それは無理ね、夏凜が嫌がるもの」

千景「笑わないで欲しいなんて言ってないわ」

天乃「あら、そうなの?」

解り切ったことを問い返してくる天乃に

千景はそう言うのが……と

少し思いながらも首を振って天乃を見る

ワクワクしている子供のような

純粋さの感じられる表情

その愛らしさは、小動物にも思えるけれど。

千景「仲良くなりたいなんて……そんな。笑顔で言われたら……困るわ」


1、千景は仲良くなりたくないの?
2、あら、もしかして惚れちゃった?
3、どうしたら良いのか、戸惑ってるの?
4、もしも誰かを惚れさせたのなら。断るにしろ受けるにしろ。責任を持たないとね……
5、ベッドに引き倒す

↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から




沙織「郡さん」

沙織「もしも笑顔に気を惹かれたのなら」

沙織「それで心がぽかぽかしたのなら」

沙織「それはね、きっと」

沙織「恋って言うんだよ」


では、少しだけ


天乃「どうしたら良いのか、戸惑ってるの?」

千景「そう……ね、戸惑っているわ」

千景は思い悩んだ表情のまま声を絞りだすと

ゆっくりと天乃に目を向ける

千景「久遠さんも、勇者部も。みんな、精霊を人間として扱ってくれているわ」

若葉も、球子も、歌野も水都も

そして、千景に対しても

みんなは精霊としてではなく、人間として扱ってくれている

それは、人間の郡千景としては、嬉しく思う

しかしながら、精霊の郡千景としては、

その状況はいささか、不安だった

千景「でも、私は精霊よ。久遠さん」

天乃「……………」

千景「久遠さんが優しい人だとわかるわ。そういう扱いが出来る人ではないことも。でも、それではダメ」


千景は天乃に対して、はっきりと否定する

その優しさは嬉しい、ありがたい、温かい

けれど、それは【人間】に向けられるべきものだと千景は思う

冷酷になれと言いたいわけじゃない

自分達が人間の姿をしていること

それが問題なのだと千景自身も解っている

しかし、それでもだ

それでも、そう考える

千景「私達は精霊よ。久遠さん。誰よりも前線で、誰よりも戦いに関わらなければいけない」

天乃「千景――」

千景「そんな私達の死を、久遠さんは人の死のように受け入れがたい……そんなの、間違ってるわ」

天乃「千景、私はそういうの……無理だから」

千景「解っているわ……それでも、久遠さんは認めるべきよ」

精霊が戦って傷つくこと

精霊が戦いの中で死んでしまうこと

今ここにいる先代勇者達はみんな、精霊であるということを


千景に対して何か嫌がらせをしたことは無いはずだ

こんなことで悩んだりするようなこともなかったはずだし

何か大変なことが起きたわけでもないはずだ

それなのに……と

悩みだす天乃は疲れを吐くようにため息をついて、千景へと目を向ける

天乃「どうして、急に?」

感情の読み取りにくい表情を見せる天乃の声は、少し厳しさが感じられて

千景はそれが自分に対してなのだと感じ、身震いする

けれど、変えない

千景「厳しい戦いになると聞いたはずよ。私達は無事に済むとは限らない」

しかし、先ほどいったように

自分達は前線にいるべきで、誰よりも関わらなければいけない

つまり、もっとも死に近しいのだ

千景「だから、私は仲良くなりたくないわ」

仲良くなった分だけ、天乃を悲しませることになるから

苦しませることになるから

辛い思いをさせることになるから

そして、自分自身が辛くなる。苦しくなる。嫌な想いをする

今だって、そう

こんな言葉を並べ立てることにすら、罪悪感が湧き出してしまうから

千景「私と久遠さんは、精霊と勇者であるべきだと思うから」


若葉を見ていて、そう思ったのだ

人間としては間違っていない

けれど、精霊としては大きく間違ってしまっている

もちろん、あの状態でも戦うことに前向きになれているのだし

それで力強さが増しているのならば悪いことではないともいえるけれど

しかし、天乃に辛い思いをさせるというのは、精霊としては間違いだと思う

千景「……………」

そもそもそんな配慮をしてしまう時点で

自分の心はすでに動かされてしまっているのかもしれない。と、

千景は考えながら、天乃から目を逸らす

それは無意識に、罪悪感が反発してしまうからだ

千景「解って。久遠さん」

天乃「……………」



1、貴女はストイックなのね
2、嫌よ
3、優しいのね、千景は
4、手を引いて抱きしめる
0、久遠さんスイッチ(コンマランダム@不安定)


↓2


01~10 手を引く
11~20 嫌よ
21~30 貴女こそ、分かって
31~40 なら、千景。命令よ
41~50 彼女
51~60 私はそうは思わない
61~70 ……そう、貴女は。そうなのね
71~80 手を引く
81~90 嫌よ
91~00  貴女こそ、分かって

↓1のコンマ 


では、ここまでとさせていただきます
明日もできればお昼頃から


天乃「千景」

千景「なに?」

天乃「貴女、私の彼女になりなさい」

千景「なっ!」

東郷「ちなみに、この場合は彼女ypりも愛人が相応しいかと思います」

夏凜「いや、彼女で良いでしょ……ってか、出てくんな」


では、少しずつ


天乃「解らない」

そう言った天乃は、眼を逸らしてしまう千景に目を向ける

思いもせず

悲しい目、寂しい目

沈んでいく感情を見せる瞳を光らせて

天乃「解らないわ、千景」

千景「久遠さ――」

天乃「解らないって言ってるの!」

耳をふさぐ、目を瞑る

嫌なことから逃れる子供のように、

頭を抱えて蹲る

けれど、その声は響く

千景には届かない場所で秘かに、轟く

天乃「止めて……お願い」

千景「……久遠さん」

行き場を失った右手を浮かせたまま

千景は小さく呟くと、その右手を固く握りしめて、唇を噛む

千景ちゃんは間違っていないのに

そう囁く彼女は、愉し気に口元を歪ませていた


彼女はこういう時に嬉々として姿を見せて

悪戯に心を煽って消えていく

千景だって、考えたうえで、悩んだうえで言い出したと言うのは分かっているのに

恨むこと、苛立つことではないと分かっているのに

不快感が、嫌悪感がにじみ出てくる

口を開けば呪詛でも吐いてしまいそうな

そんな、嫌な感覚がある

なにかを悩むたび、何かに悲しむたび、

湧き上がるそれは段々と色濃くなって

彼女はそうっと、入り込んでくる

天乃「私はそういうことは出来ないのよ。したくないのよ。貴女こそ、分かってくれないかしら」

千景「……久遠さん、私達は死ぬわ。精霊だから。戦いによって消耗し消えていく。それが精霊」

天乃「そんなことは分かってるわ。でも、だから……なんなの?」

千景「!」

さっきまでの穏やかさから一転して

厳しさを増した天乃の視線を受け、千景は思わず半歩退いて息を飲む

話には聞いていた、穢れによる影響

それを目の当たりにして、千景は自分の中に憤りを感じた

それは、千景ではない記憶

そして、千景の中に隠された記憶

千景「辛いわ。苦しいわ。今でさえ、それなのだから。きっと……もっと嫌な気持ちを味わうわ」


天乃「そうね……」

天乃はそう言うと、笑みを浮かべる

しかしそれは楽しいとか嬉しいと言うよりも

愉しんでいるかのような

嫌な感じのする、笑みで

千景はゾクゾクとする背筋の悪寒を堪えるように頭を振ると

退いた半歩を含めて一歩進む

足がベッドの横に触れて、少し硬く、柔らかい感触が伝わる

千景「久遠さん」

擦るように膝を上げ、ベッドの上に乗せた千景は

繊細な手つきで天乃の頬に触れると

自分の方へと目を向けさせる

赤い左目と、橙色の瞳

色が感じられるのは、どちらかと言えば左側

千景「……穢れに負けないで」

天乃「なにを――」

千景「無駄よ。私には分るわ。貴女は久遠さんを苦しめる穢れの塊。消えなさい」

天乃「何を言ってるのか……さっぱりね」


千景と真正面から見つめ合う天乃は

自分の頬に触れた千景の手に手を合わせると

ゆっくりと、絞り上げるように掴みとって、笑う

その笑みはさっき見えた、温もりを感じるようなものではなくて

だから……と、千景は思う

悩みの種は減らすべきだ

不穏な部分は取り除いてしまうべきだ

容易く消えてしまいそうな精霊など

人間として扱うべきではないんだと

天乃「だって、千景。貴女があんなことを言うからいけないのよ」

千景「っ」

ギリギリと握りしめられた手が痛みを訴える

精霊であるはずなのに

痛みは現実のものとして伝わってくる

千景「私も……苦しんだ。こと。そして、乗り越えることが出来たことなんでしょう?」

何をどうして、

その時の自分の中に何がどうなっていたのかまでは知らないが

しかし、最期の最期で克服することが出来た。立ち直ることが出来た

そう、聞いた

だから、信じる

千景「久遠さんにだって、乗り越えることが出来るはずよ」


01~10 押す
11~20 叩く
21~30 
31~40 抱く
41~50 手を取る
51~60 押す
61~70 
71~80 手を取る
81~90 抱く
91~00 叩く

↓1のコンマ  

ぞろ目、特殊


それが本当に正しいことなのか、千景には分らない

解らないのだから聞いたのだから

それが正しいかどうかなんて、結果に問うしかない

記憶があれば、もっと別の方法があったのだろうか

なにか、良い方法を思いつくことが出来たのだろうか

千景「…………」

今の自分がそのまま成長したって

結局、行動は変わらなかったかもしれない

考えてみる、悩んでみる

疑問の周りをぐるぐると思考は回る

精霊仲間が女狐と呼ぶ怪しい女性

彼女の答えが正しい答えでありますようにと

千景は願って

天乃「ち――」

千景「…………」

唇を重ねる

ほんの一瞬だ。普段見てしまっている天乃達の好意のそれとは比べ物にならないほど

軽くて初心で、間違いだと振り払えてしまいそうなもの

天乃「かげ……?」

千景「自分を強く持たなければ、きっと。壊れてしまうわ。負けないで、久遠さん」


天乃「え、と……」

赤い左目よりも、

右側の、琥珀のようなきれいな瞳に色が現れ始めたのを確認して

千景は小さく息をつくと、ふいっと眼を逸らす

戸惑った天乃は確かに天乃だが

なんだか行為の好意が完全な正解ではないような気がしたからだ

千景「嫌な事、苦しいこと、悲しいこと、それは、久遠さんを傷つけるわ。弱らせるわ」

そして、その疲弊した心の隙に付け込んで

穢れは力を増して飲み込んでいってしまう

記憶にはない

けれども、不快感は感じて。

それが正しくないと、思う

千景「だから、消滅の確定している精霊という存在に、久遠さんは思い入れを抱くべきではないわ」

天乃「…………」

千景「……だから。隣では眠れないわ。貴女には、勇者部がいるから」

千景はそう言うと、そのまま姿を消してしまう

穢れが濃くなり感じられる気配さえも

薄れて……どこかへと流れていく


千景のいなくなった部屋で

天乃は一人、自分の唇に触れる

感触は夢のようで

けれど、残されたものは現実で

天乃は月明りの遮られた暗い部屋で、一人、目を瞑る

こみあげてくるものは堪えきれそうになくて

だけれど、拭ってくれる何かはそこにはない

天乃「解ってる……解ってるのよ……」

千景が言いたい事、言っていたこと

それでも天乃は嫌だった

たとえ、千景達が人間の姿をした精霊ではないとしても

受け入れるなんて出来なかった

天乃「でも……嫌なものは嫌なの……」

誰かが

なにかが

そこから失われてしまうというその事象自体が

天乃には受け入れがたいことだったからだ


1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流無()
・   犬吠埼樹:交流無()
・   結城友奈:交流無()
・   東郷美森:交流無()
・   三好夏凜:交流有(三好家、映画、えっちなこと)
・   乃木若葉:交流有(言いたいこと、待つ)
・   土居球子:交流無()
・   白鳥歌野:交流無()
・   藤森水都:交流無()
・     郡千景:交流有(一緒に寝る、戸惑ってるの?、ランダム)
・ 伊集院沙織:交流無()

・      九尾:交流無()
・      神樹:交流無()



8月2日目 終了時点

乃木園子との絆 54(高い)
犬吠埼風との絆 63(とても高い)
犬吠埼樹との絆 53(とても高い)
結城友奈との絆 69(かなり高い)
東郷美森との絆 55(とても高い)
三好夏凜との絆 93(かなり高い)
乃木若葉との絆 50(少し高い)
土居球子との絆 30(中々良い)
白鳥歌野との絆 25(中々良い)
藤森水都との絆 16(中々良い)
  郡千景との絆 19(中々良い)
   沙織との絆 76(かなり高い)
   九尾との絆 48(少し高い)
    神樹との絆 9(低い)

汚染度???%+α


√ 8月3日目 朝(自宅) ※水曜日

01~10 
11~20 夏凜
21~30 
31~40 若葉
41~50 
51~60 沙織
61~70 
71~80 九尾
81~90 
91~00 バーテックス

↓1のコンマ  


↓1コンマ

1最低0最大
コンマ補正+3


戦闘難易度8で開始します

少し中断します、再開は21時頃までには


では、また少しだけ


√8月3日目 朝 ()   水曜日


負の連鎖というものは、本当に嫌な時に続く

断ち切れるという希望さえ残さないような

そんな、嫌な現実を前にして、天乃は深くため息をつく

神樹様にどうこう言ったってこればかりはどうしようもないのかもしれない

だけれど

せめてもう少し、頑張ってあげることは出来なかったのか。と

勇者に対して、これは……厳しい戦いになる

沙織「神樹様も限界が近いんだよ。結界の力が段々弱まって来てるんだ」

若葉「結界が出来てから300年以上……神とはいえ、永続的な力はないと言うことか」

球子「それなら、バーテックスも弱ってたりして」

歌野「こっちは守りっていうのもあるから、どうだろうね」

そう言った歌野は、手に握る藤蔓を強く握りしめて、真正面を見る

樹海に囲まれた不可思議な世界

その領域に入り込む、巨大な敵

それよりもさらに巨大で、凶悪な姿を、

天乃の傍に控えていた千景が睨む

千景「そんなことはどうでも良いわ。ここで私達が負ければすべてが終わるのだから」


http://i.imgur.com/s869ueA.png


例のごとく、風達と友奈達が分かれてしまっている

不幸中の幸いというべきか、普段通りということもあって

各々がすぐ隣に居るので、孤立無援という危機的状況ではない

しかし、バーテックス相手に二人だけ。というのは

正直に言って愚策だ

絶体絶命ではないにせよ、改善すべきということに変わりはない

夏凜「こっちは戦力過多だってのに」

天乃「…………」

若葉「こちらには大将がいる。それも仕方ない」

天乃に目を向け言う夏凜に

若葉は目を向けて、カチャリと。刀を鳴らす

天乃「……夏凜、どうするの?」

夏凜「このまま全員合流ってことをあいつらがさせてくれるかどうかだけど」

歌野「させてはくれないでしょうね。今回ばかりは」

千景「あの一番大きいのは、勇者がどれだけいれば事足りるの?」

沙織「以前よりも強化されているなら、全員いて何とか。だと思う」

今回は天乃の回復阻害も園子の超火力もない

ゆえに、その分の戦力が必要になる

簡単には、行かない


東郷『久遠先輩、どうしますか?』

風『こっちは下がっても良いけど、敵を固めるのはまずい気がするのよねぇ』

天乃の端末に風

夏凜の端末には東郷からの連絡が繋がって、

通して作戦を考える

だが、こうしている今も敵は確実に距離を詰めてきている

天乃「双子座は早い敵……でも、抜かれたら厄介だわ」

球子「突進力もなかなかだぞ。あいつ」

若葉「精霊の力で守られている現代勇者には大きな脅威ではないだろうが……」

それでも、突き飛ばされてしまうだろう

千景「私達は何人か残って、真正面と戦う」

歌野「余りを左右に割いて素早く処理して、中央に両サイドからってやつね」

千景の言葉にそう繋げた歌野だったが

語尾は力なく下がって、険しい表情で沙織へと目を向ける

歌野「時間的余裕は?」

沙織「難しい……かな。正面は集合体を抜いて2体。2人3人だと……【3ターン】持てば運がいいかも」

水都「そのレベルって――」

風『敵さんも悠長に待っててはくれないわよ』


1、夏凜に任せる
2、各々の班に委ねる
3、私も……
4、正面と戦うならしばらく一緒に向かった方が良いわよ

↓2


天乃「判断はそれぞれに任せるわ」

若葉「それで、良いのか?」

夏凜「解ったわ。風、東郷、聞いたわね?」

疑問を投げかけた若葉の隣で

夏凜は天乃を一瞥するだけで済ませて、端末へと問う

友奈『大丈夫だよ』

東郷『解ったわ』

風『りょーかい』

樹『気を付けてください!』

二つの端末から四人の言葉が届く

その言葉に頷くと、

夏凜は傍にいる千景たちを見渡して

若葉「夏凜、私も残るぞ」

夏凜「……解った」

若葉の気迫のこもった申し出を受け入れて

夏凜は球子と歌野を見る

夏凜「歌野は友奈と東郷。球子は樹と風。それぞれの援護。千景は、こっちに来て」


歌野「なるほど、武器特性ね。任せなさい!」

球子「若葉、千景」

若葉「なんだ?」

球子「無茶はするな。あれはやばい奴だからな。合流するまでは絶対に。だぞ」

戦力の分断

一番戦力が必要であるはずの中央から割くのは

今回は封印が重要になってくるからだ

それゆえに、一番の強敵に対して戦力不足にならなければいけないという状況に

そして、ただならないものを感じさせる若葉に

球子は不安を抱いて、くぎを刺す

若葉「解っているさ」

球子「本当だな? 昔みたいなこと、するんじゃないぞ」

自分ひとりで頑張ってしまった過去

それによって何が起きたのか

それを思い返す若葉は、

厳格な表情で頷くと、刀の柄を小突く

若葉「今の私は守るべきものの為に戦う所存だ。恨みや憎しみに捕らわれてはいない」

球子「そっか……」

千景「速いのが来てるわ。土居さん、急いで」

球子「りょーかい! 健闘を祈るぞ!」


ターン経過
戦闘無し、行動処理

レオ→待機
山羊→待機
射手→待機

その他バーテックス前進


球子→風と樹ペアへ
若葉→東郷友奈ペアへ


千景、夏凜、若葉→前進
非戦闘員、待機


http://i.imgur.com/2eNKt3d.png


では、ここまでとさせていただきます
明日は出来れば少し早めから(19時-20時)

戦闘中なので時々安価は出しますが、基本コンマの判定です
数が多い場合は、連取とう気にせず使っていきます



東郷「友奈ちゃん」

友奈「どうしたの? 東郷さん」

東郷「この戦いが終わったら、久遠先輩の小さな神樹様の芽に侵略しに行かない?」

友奈「ごめんね東郷さん。最近、言ってる言葉が分からないよ」

沙織「そんな結城さんにね? おすすめの教材があるんだけど~」

園子「園子先生で~す」

夏凜「戦闘中に何やってんのよあんたたちは!」



では、少しずつ


友奈「どうしよう、東郷さん」

東郷「白鳥さんがこっちに向かってきてくれているから、合流を優先した方が良いわ」

後ろから合流にむかってきてくれているため

先行してバーテックスと戦闘に入る事になっても

歌野自体に被害はないはずだが、

それでは、東郷たちが持たない

というのも、東郷は遠距離射撃の支援タイプ

友奈は近接格闘の前線に出るタイプな為、ある意味では孤立する

現在のバーテックスの戦い方から見て

一人で前に進み出てきた友奈を集中攻撃する可能性は極めて高い

そんな危険な事はさせたくなかった


東郷「友奈ちゃんは白鳥さんと連携……出来るよね?」

友奈「うん、戦い方は結構見てるから」

東郷「いつも、夏凜ちゃんや樹ちゃんと鍛錬に出掛けてるものね」

友奈「歌野さん、凄いんだ。鍛錬を教えてくれてる先生とも互角に戦えてね。勇者なんだなぁって」

戦っている姿が、

その時に見せる真剣なまなざしが、表情が

友奈の記憶にはしっかりと残っていて

憧れるように、嬉しそうな声で友奈は零す

それと比べれば、自分はまだまだ半人前なのだと

そう思わずにはいられない

けれど、今はそれでいいのだとも思う

自信を持ちすぎれば、慢心に繋がると教わった

けれど、自分の一つ一つを信じることは忘れてはいけないと

友奈「自分の力を過信しない。そんなに信じたいなら仲間を信じろ」


ふぅっと、落ち着けるようにため息をついた友奈は、

勇者の力に包まれた自分の手を何度も握って、力の入り具合を確かめる

友奈「東郷さん」

東郷「なぁに? 友奈ちゃん」

友奈「私は東郷さんを信じて前に進むよ」

東郷「うん……私も友奈ちゃんを。そして、白鳥さんを信じて。支援に徹する」

どこかでほころびが生じれば、防衛網は突破される

勇者は精霊の力に守られているとしても

100%死なないと言う保証はどこにもない

けれど、だからと欠けることは許されない

友奈は自分の手の甲に見える満開の為の紋章を見つめて、頷く

もしかしたら今回もまたこれが必要になるかもしれない

使いたくないと言う気持ちがないと言えば嘘になる

怖いという感情だって、ないわけじゃない

東郷や天乃達には申し訳ないと思う

だが、抱いた気持ちを、手にした幸福を奪われてしまうというのは

味覚を失った今、現実味が増しているから


東郷「友奈ちゃん」

心配そうな声が、背中に届いて

友奈は「大丈夫だよ」と、明るく答えて振り返る

食べることが好きだった

東郷さんのお菓子を食べるのが好きだった

包み込んでくれる優しい甘さが好きだった

それらを失って、その分。みんなでいられる世界を手に入れられたから

今回もまた、それでいいと友奈は思う

何もかも、根こそぎ奪われてしまうくらいなら

自分の中の一つくらい、喜んで差し出すと友奈は恐怖心を払い除ける

友奈「私達には、久遠先輩がいてくれるから。絶対に守りたいってこの気持ちが、私達の力だよ」

東郷「友奈ちゃんは、本当に久遠先輩が好きなのね」


東郷の嬉しそうな声に、

友奈は少しばかり照れくさそうな笑みを浮かべながら、頷く

最初はあこがれから始まった、この気持ち

いつから明確な好きという気持ちになったのかは

正直に言えば、判断がつかない

一緒にいるだけで楽しく思えた、幸せに思えた、嬉しかった

それ自体に変化はないのに、理解しきれない何かが好きという気持ちを形作る

けれどきっと、この分らないものこそが、好きということなんだと友奈は思う

友奈「東郷さんだって、久遠先輩が好きだよね」

東郷「うん」

友奈「先輩だから格好良くて、先輩なのに可愛くて。優しくて、温かくて。誰よりも勇者な久遠先輩」

きっと戦いたいと思ってる

皆が傷つく前に、自分が終わらせたいと思ってる

だけど、それをすればもう、ただでは済まない

だから、自分たちの為に苦しむ方を選んでくれている愛おしい先輩へと

友奈は目を向けて、また東郷へと移す

友奈「出来るだけ早く、でも焦らずに終わらせよう。東郷さん」

東郷「そうね、友奈ちゃん」


2ターン目移動処理
戦闘を開始します


http://i.imgur.com/ZxR76NZ.png


歌野→蠍座 命中判定↓1  01~66  ゾロ目 01~10 CRI 

友奈→蠍座 命中判定↓2  01~46  ゾロ目 CRI 

東郷→蠍座 命中判定↓3  01~95  ゾロ目 CRI 

樹→乙女座 命中判定↓4  01~95  ゾロ目 CRI 

風→乙女座 命中判定↓5  01~72  ゾロ目 CRI 

球子→乙女 命中判定↓6  01~58  ゾロ目 CRI 

夏凜→山羊 命中判定↓7  01~95  ゾロ目 CRI 

174

歌野→蠍座 命中  864

友奈→蠍座 回避  000

東郷→蠍座 命中  400

樹→乙女座 命中  365

風→乙女座 命中  578

球子→乙女 命中  799

夏凜→山羊 命中  426

蠍座に1264ダメージ

乙女座に1742ダメージ

山羊座に426ダメージ


蠍座→友奈 命中判定↓1  01~89  ゾロ目

双子→友奈 命中判定↓2  01~91  ゾロ目

乙女座→風 命中判定↓3  01~97  ゾロ目 01~10 切り払い

牡羊座→樹 命中判定↓4  01~10  ゾロ目

山羊→夏凜 命中判定↓5  01~55  ゾロ目

射手→若葉 命中判定↓6  01~95  ゾロ目 01~10 25~34 切り払い 

112

蠍座→友奈 命中 172

双子→友奈 命中 161

乙女座→風 命中 72

牡羊座→樹 回避

山羊→夏凜 命中 141

射手→若葉 命中 203

友奈に333ダメージ
風に72ダメージ
夏凜に141ダメージ
若葉に203ダメージ


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

友奈達もそれなりにレベルアップはしています




戦闘結果反映のみ
http://i.imgur.com/f8qzd5U.png


今日は時間的に無理なので、明日になります
戦闘は今週中には終わらせる予定ではあります


では少しだけ


歌野「お待たせ!」

友奈「歌野さん、もう来てます!」

到着早々、バーテックスがすぐ目の前まで来ていることを

友奈の声のみならず、目視で確認して、歌野は気合を込めて歯を食い縛る

自分が戦ったバーテックスと呼んでいた存在

そんなものがちっぽけに思えるほど凶悪で強大な本当のバーテックス

いや、レオ・スタークラスターと称された更なる進化体がいるのであれば

あれですらまだ【中途半端】な気さえしてくる

そんな絶望感に抗うように、恐怖感を押しのけるように、足場にした樹海の根を力強く踏み込む

歌野「結城さん、行ける?」

友奈「もちろんですっ!」

歌野「よし……東郷さん。任せたわ!」

友奈と東郷それぞれに声をかけて、すぐさま跳躍

巨体で近付く蠍座と

その脇を土煙舞わせながら凶悪な速度で走る双子座を確認し、藤蔓をしっかりと握り締め――瞬間

歌野「ッ!」

蠍座は歌野側への進行をやめると、

友奈側へと僅かに距離をつめ、鋭い針の付いた尾を振るう


歌野「このっ……待ちなさい!」

蠍座は一度、双子座と重なるのを止め、左側へと動いた

だから、歌野もそれに合わせて動いたのだ

しかし……

歌野「バーテックス……ッ!」

力強く弾く音に続いて、精霊の加護の発動による輝きが樹海の中で瞬く

色は桃色、友奈の光

少しはなれたところからの銃声が、固い衝突の音を響かせる

自分の行動が失策だったのか

それとも、バーテックスの策略が上手だったのか

歌野「っ、結城さんから離れなさいっ!」

そんな考えが巡る思考を停止させて、力だけに意識を注ぐ

必要なのは強力な一打

引き剥がすための――

歌野「はぁぁぁぁぁぁッ!」

歌野は樹海の根から高く跳躍すると、

藤蔓を握る側からぐるりと体を回転させ、勢いを上乗せし、振り下ろす

撓る藤蔓は固い何かに衝突して僅かに弾かれたが、

そのままさそり座の固い甲羅のような皮膚を打ち砕いて屑へと戻す

着地の瞬間を狙ってくるかと身構え、阿智に足が着いた瞬間転がって距離を取ったが、

蠍座に動きは無く、双子座にも動きはなく

今のうちにと、友奈の元へと駆ける


歌野「結城さん!」

衝突によって抉られたように凹んだ樹木

その根元に転がっていた友奈は、声をかけると体を震わせながら、歌野のほうへと目を向ける

さそり座による一撃に続いた双子座の突進

いくら精霊の加護があるのだとしても、その衝撃は肉を貫いて骨を痺れさせ、内臓を傷つける

しかし、友奈は笑みを浮かべて「大丈夫です」っと、零す

歌野「大丈夫なんて――」

友奈「平気です。まだ、全然」

歌野「結城さん……」

鍛錬の時も、同じように何度も立ち上がって見せた

芯の強さを見せてくれた

だが、これは生きるか死ぬかの戦いだ

無茶して無理して、結局死んでは元も子もない

けれど、歌野は思う

自分もそういう生き方だった、そういう最期だった

今も昔も、勇者の抱く心は変わらないのだと

危機的状況ながら、薄く笑みを浮かべる

歌野「危なくなったら引くのよ。結城さんは一人じゃないわ」

友奈「解ってます」


一人で守っていたあの時代。

いや、二人で守っていたあの時代

あと一人、勇者がいてくれれば未来は変わったかもしれない

けれども、それを語れるのはもう過去のこと

しかし、今は違う。これからは違う

歌野「満開は、極力なしよ」

友奈「……いざという時は、使います」

歌野の言葉に、友奈ははっきりと自分の意志を述べて

まだ震えてしまいそうな、

傷ついた体を庇うように抱いて、立ち上がる

友奈「また、久遠先輩に怒られるけど。でも、怒られないまま、悲しませるのだけは絶対に嫌だ」

歌野「……だね。私にもこわーい巫女さんがいるから、がんばらなくっちゃ」

危険だからこそ、余裕を持って

けれども油断は無く、緊張感を握り締めて、前を向く

まだ、そこには勇者がいるのだ


夏凜「始まった……」

視界には入らないが、鼓膜を震わせる激しい戦闘の音が状況をひしひしと伝えてくる

左側からの炸裂音、右側からの打撃のぶつかり合うような音と、銃声

この一度目で負けるようなことは無いだろうが、バーテックスもまた、依り協力になってきていることは事実で

不安が無いといえば嘘になる

一番いて欲しくないと思った、集合体

その存在を確認してから、夏凜はずっと思ってた

満開したら、何が消えてしまうのだろうか。と

足、腕、瞳、耳、舌、声、記憶

人間にはそれ以外にも沢山のものがあって、それ以外の何か。かもしれない

手足が駄目になったら、二人きりというのは無理になる

手を貸すのだって、無理になる

何もかも、誰かの力を借りるようになる

目が見えなくなったら、片方ならともかく、両目だったら

もう二度と、彼女を見ることはできなくなる

聴覚がなくなったら、もう。声は聞けなくなる

味覚は……構わない

声が奪われても、さほど支障はない

記憶が奪われたら――

夏凜「!」

集中力を遮る思考の合間、

ズドンッと、地響きがとどろいた瞬間、樹海の根が砕け、足場を失った夏凜は、

そのまま地面にぶつかって転がって

どこからとも無く振り下ろされた何かを――バチバチバチっと、光が迸る


夏凜の所持する精霊、義輝

その加護によって救われた夏凜は、横飛びに地面を蹴って樹木の陰に一旦身を潜めて、一息つく

夏凜「あいつか」

端末を手元に出現させ、マップを確認した夏凜は、

覗くように見上げて敵の姿を確認する山羊座のバーテックス

攻撃方法はさっきのような地震と、あの4本の足での攻撃

地震によって足場が崩れた場合などでのあの足は回避の使用がないから、厄介だ

夏凜「……ふぅ」

ドキドキと、心臓が高鳴る

戦いに興奮しているのではなく、

溢れてなお余る緊張感と恐怖による激しい鼓動

自分にもしものことがあったら。

そう思うのは自分のためではなく、自分が想う人のため

夏凜「これが人間強度の弱体化ってやつなのかしらね。勇み足もすくんでるわ」

嘲笑する

くだらなくて、みっともなくて

けれども、夏凜は満足げに笑みを浮かべて、自分の刀を握りなおす


夏凜「行くわよ、三好夏凜」

なんのための努力か、なんのための経験か、なんのための存在か

今ここで戦うための努力

今ここで生き残るための経験

今ここで、もっとも強くもっとも弱い、死なせてはならない人のための存在

夏凜「すっ……」

息を吸い込んで、吐き出す

体に溜まった力を全て抜き捨てて、自分の体全体に感覚を張り巡らせ駆け出す

視界に映った山羊座のバーテックスは

同じく夏凜を捉えたのか、浮遊させた足を振り下ろして地震を起こす

その波のような振動を、樹木を蹴り飛ばす跳躍の中で回避すると

振り上げられた足を刀で受け止める

夏凜「ぐぅっ」

鍛錬を積んでなお重くのしかかる鈍痛に呻きながら、

夏凜はその衝撃を利用して体を浮かせると、そのまま山羊座の足を転がり落ちて跳躍

「こんの――っ!」

風が吹く、集合体が大きく視界を覆い、山羊座がぽつりと小さく見える

届くべきは目の前の奥、深遠のような絶望感

だが、その前に、と、夏凜は出現させた刀を強く握って

夏凜「はぁぁぁぁっ!」

頭のような部分めがけて振り下ろし――切り裂く


夏凜「っ!」

刀がビキビキと悲鳴を上げて砕け散るのと同時に、

固い外皮に皹が入って砕けるが、それでも、その程度だ

大した損傷にはならないし、すぐに回復されてしまうだろう

けれども、ほんの一瞬でも足止めにはなったはず……

夏凜「……動かない、か」

同胞という意識は無いのかも知れないが

目の前で戦闘が始まってなお、王者の貫禄に似たものを誇示してみせる集合体を前に、

夏凜は逸る気持ちを押さえ込んで、刀を向ける

夏凜「そこで待ってろ、叩き切ってやる」

せっかくの夏休み

せっかくの日常

それをぶち壊しにしてくれたバーテックスに対して、

夏凜はそう宣言して、刀を振るう

遥か後方、待つだけになってしまった人

心配だろう、不安だろう、恐ろしいだろう

それらを申しわけなく思いながら、夏凜は心に決める

生きて帰る。何かを失うとしても、何かが欠けてしまうのだとしても

命だけは、守り抜くのだと。決意する


夏凜→さそり座封印判定 ↓1 01~70  25~24射手座妨害  ぞろ目レオ妨害
  風→おとめ座封印判定 ↓2 01~80  55~64 牡羊妨害
友奈→ さそり座封印判定 ↓3 01~70  59~68 双子妨害


夏凜→蠍座の妨害範囲が25~34(表記ミス25~24)なので
風→乙女座のみ成功になります


歌野→双子 命中判定↓1  01~48  ゾロ目 01~10 CRI 
友奈→双子 命中判定↓2  01~41  ゾロ目 CRI 
東郷→双子 命中判定↓3  01~95  ゾロ目 CRI 
樹→乙女座 命中判定↓4  ゾロ目 CRI   01~20 防御

風→乙女座 命中判定↓5  ゾロ目 CRI   30~38 防御

球子→乙女 命中判定↓6  ゾロ目 CRI 
夏凜→山羊 命中判定↓7  01~95  ゾロ目 CRI 
若葉→山羊 命中判定↓8  01~82  ゾロ目 CRI 
千景→山羊 命中判定↓9  01~82  ゾロ目 CRI

歌野→双子 命中 926
友奈→双子 命中 606
東郷→双子 命中 462
樹→乙女座 命中 365
風→乙女座 命中 578
球子→乙女 命中 799
夏凜→山羊 命中 472
若葉→山羊 命中 1251
千景→山羊 命中 1260


双子に1994ダメージ(御霊未破壊)
乙女座討伐 
山羊2983ダメージ




蠍座→友奈 命中判定↓1  01~89  
牡羊座→樹 命中判定↓2  01~10  
山羊→夏凜 命中判定↓3  01~55

射手→夏凜 命中判定↓4  01~86  ゾロ目カウンター 01~10切り払い

レオ→夏凜  命中判定↓5  01~85  ゾロ目カウンター 50~59切り払い
レオ→千景  命中判定↓6  01~95  ゾロ目カウンター 01~10  30~39切り払い
レオ→若葉  命中判定↓7  01~95  ゾロ目カウンター 01~10  81~90切り払い


友奈に172ダメージ
樹回避
夏凜回避

蠍座→友奈 命中172 
牡羊座→樹 回避  
山羊→夏凜 回避

射手→夏凜 命中172

レオ→夏凜  回避
レオ→千景  命中 286
レオ→若葉  切り払い

友奈に172ダメージ  335/840
夏凜に172ダメージ  792/1105
千景に286ダメージ  914/1200


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


友奈ちゃんがピンチ、その分乙女座討伐、双子座足止め


では少しだけ


隣に並ぶ歌野の姿を横目に、

友奈は軋むような痛みを訴える自分の体を撫で下ろして、息をつく

まだ血反吐を吐くような状態にまでは至っていない

けれど、ダメージは確かに体に蓄積されていて、

呼吸一つでさえ、体のどこかの痛みに繋がる

友奈「すぅ……はぁ……」

それでも、友奈は深呼吸をする

体の中の空気を入れ替えて、落ち着けと、頑張れと、

自分自身の体にそれらを求める

鍛錬で受けた痛みや傷は、もっと重くいたかった

精霊が守ってくれない拳の重み、めり込み抉られていくような鈍痛

それはもっと、永続的な体の負担

それと比べれば、精霊が軽減してくれた痛みなど、まだどうとでもなる

友奈「……頑張ろう、久遠先輩はもっと。頑張ったんだからッ!」


勢い良く駆け出した友奈は、

さそり座にあわせるためか、速度を落としている双子座へと立ち向かう

友奈「歌野さん!」

歌野「行って!」

速度を落としてなお、土煙を上げる尋常ではない速度の双子座が、友奈に気づく

両手と首に枷が付いたような異形の姿、双子座のバーテックス

あの速度に抜かれた瞬間、神樹様に一直線に向かわれてしまう可能性は高い

そうなれば……だから

友奈「直球勝負……受けてたつよ!」

武装や特殊な飛び道具を持たない双子座は、

勇者に対してその速度を生かした突進のみが攻撃となる

ゆえに、真っ向勝負

3対2だと察してか、逃げる気の無い双子座の突出に対し、友奈は地を蹴り、駆け抜ける

距離が近付く

最速と最速の相対、その肉薄はほんの数分にも満たない時間で訪れた


友奈「っ!」

歯を食い縛り、地面に杭を打つ感覚で地面に左足を突き出し、急ブレーキ

前のめりになりながらも、双子座の突進と正面衝突すると

自分の突進の反動、突進を受けきった友奈によって、双子座の体が僅かではあるが、仰け反った

その瞬間――

友奈「ふっ」

軸にした左足のかかとを持ち上げ、つま先へと体重を移し変えて踏み抜く

スイッチは一瞬で、判断も一瞬で、力を込めるのも一瞬で

友奈「たぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

教えてもらったこと、その全てをこの一打にこめるべく、振り絞った右手の拳を固くして――穿つ

双子座の細く固い外殻を、その拳は打ち貫いて

体に風が纏わりつく、後ろから突き飛ばされたかのような浮遊感が体を覆う

その反動を利用してぐるりと体を回し、双子座の腹部であろうところを蹴飛ばして距離を置く

だが、双子座はその後を追う

友奈「!」

崩れかけの体を修復しながら、飛び退いた友奈へと迫った


不味い。そう思った友奈だったが、攻撃直後の跳躍中ともなれば、回避は容易ではなかった

足を下手に伸ばして着地を早めて失敗すれば、余計に被害を大きくする

かといって、踏ん張りの利かない状態で突進されれば、体が吹き飛ぶのは確実だ

どうする、どうすればいい

考え、悩んで、迷って

双子座の姿がすぐ目前にまで迫ったあたりで、友奈は意を決して体に力をこめた

せめて、伝わる衝撃くらいは抑えよう。と

けれど、双子座は届かなかった

次の瞬間には、銃声が轟き、柔にも思う体からは奥が通して見えて

立ち止まった途端、「離れなさい!」という叫び声に続いた風を斬るヒュンッという音が友奈の目の前を横切って

双子座の体を真っ二つに破壊する

目の前には、頼もしい姿が見えた

振り返れば、遠方で銃を手に控える姿が見えて

友奈は一瞬の危機に激しく脈打った胸に手を宛がって息をつく

まだ落ち着かない、まだ、痛いくらいに激しい

それでもまだ先に進まなければと、踏み出そうとした瞬間

友奈「!?」

――体が浮いた


友奈「え、ぁ――かふっ」

バチバチと友奈を守る牛鬼の加護

それを乗り越えて体にのしかかってくる圧迫感に、

友奈は空気を吐き、血を吐く

極限に近いほど激しかった鼓動が強制的に止められた

その反動が、苦しく、痛く、辛くて

ズキズキとした痛み、じわじわと流れていくような痛みが体の内側を侵食していくのを感じながら

飛んでしまいそうな意識の端、再度友奈を貫こうと身構えたさそり座の尾が見えて――

衝突の寸前、光にも見紛う速さで動いた何かに体が包まれた

友奈「ぅ……ぁ」

歌野「ごめん……まさか。そんな」

友奈を抱き上げたまま、歌野は袖で友奈の口元を拭うと

心配そうに優しく抱いて、蠍座から距離を置く

双子座の体は崩壊していた部分が治っていく

蠍座はなんの問題もなく迫ってくる

焦りを感じる歌野は、だが、今は友奈を優先するべきだと、退く


友奈「……失敗、しちゃいました」

失敗というよりは、油断だった

盲目的だったといっても良い

あの瞬間、見えていたのは双子座だけだった

それにしか意識は向いていなかった、だから、また……

歌野「結城さんは頑張ったよ……頑張った、私があの尾を見失いさえしなければ」

友奈「いえ、ずっと、言われてること、なので」

鍛錬中も良く言われることがあった

視野が狭くなってしまうことがあると。

それは集中力としては良いことであり、悪いことだから

臨機応変に対応できるようにならないと

いつか大変なことになる。そういわれて

直せないままここに来た結果だから。と、

友奈は罪悪感を抱いている歌野に対して、笑みを浮かべる

じわりじわりと、体の置くの痛みが広がっていく

ズキリとした痛みが薄れ、侵食されていくのが自覚できてしまう、痛み


友奈「このままじゃ、二人ともやられちゃいます……」

歌野「けど」

抱き上げたままの歌野に対して、声をかけて

今なら大丈夫だろうかと周りを確認して、やや強引に降りる

友奈「大丈夫です、大丈――!」

しかし、立てなかった

地に足をついた瞬間から、体は崩れるように倒れこんで、視界が下がる

尻餅を付いた衝撃か、蓄積された痛みが込み上げて

嘔吐するような感覚さえなく、口元から血が滴り落ちていく

友奈「はぁ……ぁ、ぅ」

ぐっと手で拭うと

少し汚れていた手は赤く染まって

心配ないと笑っては見せたものの、危険なのだとすぐに解った

友奈「ごめんなさい」

歌野「いや、私も甘かったわ……ごめん」


歌野「結城さんは下がってて」

友奈「だ、駄目です!」

歌野「良いから、それ以上は無理よ」

友奈「でも、私がいないと……御霊、壊せないですから」

ふらつき、樹海の根を支えにしながら

何とか立ち上がった友奈は歌野へとその意志を見せて、握りこぶしを見せる

まだやれる、まだ頑張れる

まだ大丈夫ですから。と

強く見せる友奈の姿を、歌野は見つめて

みっちゃんはこんな気持ちだったのだろうか

自分のことをこんなふうに見えていたのだろうかと

そう思い、過去の痛みを思い出す

歌野「結城さ――」

友奈「勇者は、今の勇者は頑丈。なので……でも」

話す間も滴る血を拭った友奈は

もう一撃くらいでもしたら終わりだろうと思いながら、前を向く

友奈「本当に駄目なときは、満開を使います」

歌野「それはっ」


歌野「それはダメよ結城さん。それなら無理やりにでも下がっててもらう」

友奈「そんなことしたら歌野さんが危ないですよっ」

歌野「私は良い、私は精霊だから。久遠さんの力さえあれば、すぐにとは言えないけど、戻ってこられる。でも、満開は」

友奈「解ってます、分かってるけど、でも。駄目なんです」

歌野が頑張っても、御霊が見えていない以上無駄なのだ

双子座が刻一刻と回復しているように

倒しきる事は出来ないのだ

かといって、東郷では機動力に難がある

封印を行うよりも早くその場から動かれてしまった場合

失敗に終わってしまうし、反撃をよけきれない可能性だってある

だから、自分なのだ

友奈「私がやるべきなんです」

東郷だってすでに満開は複数経験済みの状態だ

ここで、こんなところで、やって貰うわけにはいかない

歌野「結城さん……」

友奈「生きて帰れない、帰せないくらいなら、出し惜しみなんてしたくない!」


夏凜→山羊座封印判定 ↓1 01~70  25~24射手座妨害  ぞろ目レオ妨害
  風→牡羊座封印判定 ↓2 01~80
友奈→ さそり座封印判定 ↓3 01~70  59~68 双子妨害


歌野→蠍座 命中判定↓1  ゾロ目 01~10 CRI 

友奈→蠍座 命中判定↓2  ゾロ目 CRI 

東郷→蠍座 命中判定↓3  ゾロ目 CRI 

樹→牡羊座 命中判定↓4 01~90 ゾロ目 CRI

風→牡羊座 命中判定↓5 01~65 ゾロ目 CRI

球子→牡羊 命中判定↓6 01~63  ゾロ目 CRI 

夏凜→山羊 命中判定↓7  ゾロ目 CRI 

若葉→山羊 命中判定↓8  ゾロ目 CRI 

千景→山羊 命中判定↓9  ゾロ目 CRI


双子→友奈 命中判定↓1  01~91  ゾロ目  援護 25~34

射手→夏凜 命中判定↓2  01~86  ゾロ目カウンター 01~10切り払い

レオ→夏凜  命中判定↓3  01~85  ゾロ目カウンター 50~59切り払い

レオ→千景  命中判定↓4  01~95  ゾロ目カウンター 01~10  30~39切り払い

レオ→若葉  命中判定↓5  01~95  ゾロ目カウンター 01~10  81~90切り払い


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

http://i.imgur.com/dPEvtvO.png(戦闘反映前)


山羊座、蠍座は討伐完了かと思います


では、少しだけ


ダメージ処理


夏凜→山羊座封印成功
  風→牡羊座封印失敗
友奈→ さそり座封印成功

蠍に2058ダメージ

牡羊に2668ダメージ

山羊に3234ダメージ

友奈に178ダメージ

夏凜に449ダメージ

若葉に291ダメージ


夏凜「もうちょい……」

正直、自分達は時間稼ぎが出来れば良いと、夏凜は思っていた

バーテックスの数に対して、自分達勇者の数は均等に割り振られてはいるが、

戦力的な意味で正しく均衡しているかといえば、そうではない

大きさゆえに、司会に入る集合体はまだ遠く

それ以前の山羊座、射手座を倒さなければ挟み撃ちにされるかもしれないし

されなくても、後ろに抜かれたら無防備な三人まで一直線だ

そこには最強の勇者がいる

力を使えば死んでしまいそうなほどに、疲弊してしまった勇者が。

友奈たちのいる方角から見える光、封印開始の合図

それを横目に、夏凜は刀を強く握り締めると

遠距離タイプの射手座を守るように立ちはだかる山羊座を真っ直ぐ睨む

向こうが誘いに乗ってくれたのか

それとも、向こうもまた真っ向から向かう予定だったのかはわからない

だが、首尾よく立ち止まらせたままでいることが出来た

夏凜「若葉、千景」

若葉「もう一度か?」

夏凜「次で決める」

千景「任せるわ。私の力を使うのは控えたいから」


千景の控えめな声に、夏凜は軽く頷く

千景の力は、天乃が使っていたのと同様に

回復を阻害する特殊な力がある

しかしそれを使えば、樹海にも影響が出てきてしまう

天乃が使っていたときは、満開を使ったときはともかくとして

通常時は殆ど自分に戻ってきていた

だから、天乃が使っても樹海に直接的な影響は無かったが

千景が使えば影響がある為、どうしても制限をかけるほか無かった

若葉「集合体まで、その力は温存するしかない。夏凜、いけるか?」

夏凜「どこまで耐え切れるかは解らないけど、やるわ」

このまま防戦一方でいた場合、

動き始めたレオ・スタークラスターに押し切られるのは確実だ

であれば、周りからの救援が来る前にせめて一体だけでも片付けておきたいと

夏凜は考え、若葉と千景もそれに同意する

惜しむらくは、一瞬でも無防備にならなければならない封印が、

夏凜にしか行えないということだった

そのシステムは、以前は夏凜のみに実装されたものだったが、

少し前の改修によって、勇者部全員が持っている

だが、ここにいるのは夏凜を除けば天乃の精霊

そもそも、バーテックスと同数の戦力が今ここに存在出来ているというだけで

十分なほどに、恵まれていた


夏凜「私は気にせず、やって」

この戦い、誰かに対して過保護になりすぎれば、確実に押し切られる

そう判断したからこそ、

封印をしなければいけない自分のことはほうっておいて欲しいと、願う

何があろうと、どんな状況になろうと

目の前の壁、山羊座のバーテックスだけでも討つために。

あれが存在する限り、集合体と射手座が守られる

守られた二体は好き放題に周りを撃てる

だから、ここであれらを無防備にしなければならないのだと

夏凜は強く決め、二人のやや不服そうな肯定に苦笑する

夏凜「死にはしないわよ、心配すんな」

若葉「とは言うが、危なくなったら途中でも持ち場から離れてくれ。命を大事に。だ」

そう言って夏凜の肩を軽く叩いた若葉に、夏凜は「はいはい」と、返して前を向く

千景「貴女は私達とは違うわ。それを、忘れないで。私達は消えても平気だから」

夏凜「……あんた、それ天乃にも言ってないでしょうね」

若葉に続く、千景の声

反応すべきかと躊躇いながらも

もしかしたらと、問いかけた夏凜は、千景の答えにくそうな表情の推移にため息をつく

夏凜「あれはそういうの無理だから。あとで謝っときなさい」

千景「私は――」

夏凜「知らないわよ。あんたが人間だろうが精霊だろうが、あいつにとってのあんたは郡千景でしかない」

天乃はそういう考えの人間だから。と

何かを言いたげな千景を黙らせるように言って、刀を改めて握る


夏凜「さぁ、行くわよ!」

先陣を切って樹海を駆けていく若葉から遅れて駆け出した夏凜は、

山羊座の後方、

樹海の空から無数の点が空に描かれだしていくのを確認すると

根と根の隙間に潜み、さらに下に下って最下層の森の中を駆け抜けていく

樹木の合間を縫って降り注ぐ矢を刀で切り払い、

山羊座によって地面が激しく揺れれば、木々を飛び飛びに進む

夏凜「っ!」

時々、矢が肌を掠めるが

夏凜は立ち止まることなく駆け込んで山羊座へと肉薄

瞬時に刀を逆手に持ち替え、地面に突き刺して封印を開始する

光りがゆっくりと山羊座の巨躯を包み込んでいく

早く、早く、早く

心が急かして、鼓動が早くなる

夏凜「くっ……」

また、空から何かが降り注ごうと視界に入り込んでくる

山羊座によって蹂躙されつつあった今の場所には、

木々の隔たりなどなく、殺意に満ちたその矢雨は何ものにも阻まれない

だが、夏凜は動かなかった


夏凜「来るなら来てみろっ!」

降り注ぐ矢の雨を、赤い光、義輝が遮る

それとほぼ同時に光に包まれた山羊座の体が割れて、御霊が飛び出す

若葉「そこかッ!」

どこからともなく声がとどろきヒュインッっと、

綺麗な音が空気を裂き、浮かび上がった御霊が地面へと叩きつけられ

そのすぐ後方、夏凜の目の前に若葉が降り立ち、また駆け出す

若葉「し――ッ」

夏凜を守る加護が無限とは限らない

その加護が切れた瞬間、あの矢の雨は夏凜の努力が作り上げた肉体を

あざ笑うかのように撃ち貫いて破壊するだろう

それはだめだ

絶対にダメだ

何のために自分は、ここにきているんだ

若葉「行くぞ、千景!」

地面を強く踏みしめながら、収めた刀の鞘を左手で傾け、

柄を握る手に力を込め、一点に集中させた力を解放する――抜刀

若葉「ハァッ!」

振り抜いた刀は山羊座の御霊を正確に撃ち抜いて

千景「任せなさい」

欠片を飛散させながら跳ね飛んだ御霊を、直上に現れた千景の巨大な鎌の一振りが真っ二つに叩ききる


千景「見え――!?」

山羊座の体が砂粒となって消えうせていく

それを見送る千景と若葉

油断はしていなかった

慢心もしていなかった

だが、気づいて身構えた瞬間には、それはもう夏凜のことを正確に狙撃し――撃ち抜く

夏凜「っぁ」

バチリと激しい衝突

飛び散った火花が消えるよりもはやく、大きな火炎に包まれた何かが飛来するのが見えた

……まずい

そう思う。そう気づく、そう感じる

だが、射手座の山羊座を見捨ててなおため込んだ一投に跳ね飛ばされた体は

直接的なダメージこそ受けなかったものの、

その反動にしびれて、動かない

そして、レオスタークラスターの放った一撃に、夏凜の体はさらに吹き飛ぶ

若葉「くそっ――っしまっ」

夏凜へと気を逸らした若葉が爆炎の中に消え、

ある意味では冷酷に自分以外の全てを切り捨てることに徹した千景だけが、

爆炎の薄れるその場所に、佇んでいた


千景「……これが、現代勇者の戦い。なのね」

立ちはだかるバーテックス

それ以外にも、周りには何体かのバーテックスがいて

減らすことは出来てはいるが、元々7体いたのがようやく5体

そんな程度だ

千景「過去の私達もこのレベルの戦いだったの?」

誰に灯でもなく、自分に向けて呟く

どうだろうか、記憶はない

何か感じるものはあるけれど

それ以上には何もなくて

千景「厳しい状況ね……」

自分の大きな鎌を一瞥した千景は

自分の力を開放するべきか否かを、迷う

天乃は間違いなく嘆くだろう

間違いなく悲しむだろう

千景「損な、性格」

同情はしない

けれども、悲しく呟き、千景は鎌を握りなおして、振るう

千景「やるしか、ないわ」


http://i.imgur.com/uPyCe6J.png


夏凜→射手座封印判定 ↓1 01~70    ぞろ目レオ妨害

  風→牡羊座封印判定 ↓2 01~80

東郷→蠍座 命中判定↓1  ゾロ目 20~29 35~39 CRI

樹→牡羊座 命中判定↓2 01~90 ゾロ目 CRI

風→牡羊座 命中判定↓3 01~65 ゾロ目 CRI

球子→牡羊 命中判定↓4 01~63  ゾロ目 CRI 




友奈→双子座封印判定 ↓1 01~50


夏凜→射手 命中判定↓1 01~82命中  ゾロ目 01~10 40~43 45 CRI 

若葉→射手 命中判定↓2 01~51命中  ゾロ目 CRI 

千景→射手 命中判定↓3 01~51命中  ゾロ目 CRI 

歌野→双子 命中判定↓4  ゾロ目 01~10 CRI

友奈→双子 命中判定↓5  ゾロ目 01~10 CRI 


射手→夏凜 命中判定↓1  01~86  ゾロ目カウンター 01~10切り払い

レオ→夏凜  命中判定↓2  01~85  ゾロ目カウンター 50~59切り払い

レオ→千景  命中判定↓3  01~95  ゾロ目カウンター 01~10  30~39切り払い

レオ→若葉  命中判定↓4  01~95  ゾロ目カウンター 01~10  81~90切り払い

牡羊→風  命中判定↓5  01~94   ゾロ目切り払い


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

ダメージ集計は明日しますが
少なくとも夏凜OUT、蠍座討伐、牡羊行動不可、双子封印


5ターン目開始→http://i.imgur.com/OCmFBGg.png


では、少しだけ


夏凜→射手座封印失敗
  風→牡羊座封印失敗
友奈→ 双子座封印成功

東郷→蠍座 命中 900ダメージ

樹→牡羊座 命中 802ダメージ
風→牡羊座 命中 715ダメージ
球子→牡羊 回避 

夏凜→射手 命中 746ダメージ
若葉→射手 回避
千景→射手 回避

歌野→双子 命中 1226ダメージ
友奈→双子 命中 856ダメージ

射手→夏凜 命中189ダメージ

レオ→夏凜  命中287ダメージ
レオ→千景  命中 313ダメージ
レオ→若葉  切り払い
牡羊→風  命中 111ダメージ

蠍座に900ダメージ。討伐完了
牡羊に1517ダメージ
双子に2082ダメージ。討伐完了
射手に746ダメージ

夏凜に476ダメージ
千景に313ダメージ
風に111ダメージ


天乃「っ………」

みんなが、傷ついていく

死んでしまいそうな攻撃を

精霊の加護なんていう力で防ぎながら

少しずつ、体をぼろぼろにしていく

離れたところで爆発が起きる

バーテックスが少しだけ近付いたかと思えば

また、弾かれたように後ろへと後退して、また進む

いくつもあった大きな存在は、一つ一つが時間をかけて消滅し、

数は確実に減っている

けれども、勇者は園分ボロボロになっていくし、

樹海にもまた、被害は大きく広がっていく

それを、ただ、見ていることしかできない

待っていることしか、祈ることしか

小さくも力強い手が、その白さを赤く染めていく

握り締めた車椅子の肘掛けが砕けないかと思うほどに。

天乃「…………」


プツリと微かな音が自分の中だけで聞こえて

ぽたっっと、何かが足に滴り落ちる

赤色、赤い雫

我慢に我慢を重ね、噛み切られた唇がヒリヒリと痛む

天乃「沙織」

沙織「久遠さん……」

天乃「私」

沙織「ダメだよ」

囁くようなかすれた声に振り向いた沙織は

悲しげに答えながらすぐ横に膝を付くと、

薄い緑色のハンカチで天乃の口元を拭う

沙織「お願い、我慢して」

天乃「でも、でも……このままじゃ」

戦況は前線で見ていないため、勇者がどれだけ傷ついているのかなど

詳しいところは解らない

けれども、封印の光が見える頻度、バーテックスが消える頻度

どこかで勇者ではない攻撃が炸裂する音

色々なものを見渡せる天乃は、数が減っていくバーテックスが必ずしも劣勢ではないこと

数が減っていない勇者達が決して、優勢ではないことを感じ取っていた


時間をかければバーテックスを削ることはできる

だが、その分樹海への被害は拡大していってしまう

そして、長引けば長引くほど、勇者は疲弊していく

多少の回復力はあるが、バーテックスのような大きな回復力は備わっていない

相応のダメージを受ければ戦闘不能に陥るし

最悪、そのまま死ぬ可能性だってないとは言いきれない

沙織「久遠さん、変身するだけで負荷が凄いんだよ? 戦うとか、どうとかいう話じゃないんだよ?」

天乃「解ってるわ……解ってる。でも、それでみんなが大変なことになるのを避けられるなら。私は……」

沙織「久遠さん、流石にあたしでも、それ以上は怒るよ」

天乃の気持ちがわからないわけじゃない

寧ろ、痛いほどに解ってしまう

けれども、許可など出来るはずがない

今もなお、絶望的な状況であることには変わりがないかもしれないけれど

しかし、天乃が命を賭してまで出るような場面かといえばそうではないと沙織は思う

沙織「勇者部がたとえ満開をすることになっても、精霊の誰かが消えてしまうとしても。久遠さんはそれを怒れないといけない。悲しめないといけない」

天乃「…………」

沙織「生きて、その結果報告をみんなからされなくちゃいけないんだよ」


何か別のものではなく、

何も出来ない自分自身への苛立ちを募らせ

ボロボロになっていくみんなを思って涙を零す優しい少女

その嘆きを包み込むように優しく抱きしめて、囁く

沙織「嫌だろうけど、辛いだろうけど……でも。みんながこんなに頑張ってる理由を考えてあげて」

天乃「っ……」

責任を取ると、夏凜の親に言った

それはきっと、他の親にも伝わっていくことで

そして、それは夏凜にも届いていて、みんなにも届いていて

だから……

強く、拳を握り締める

手の平に爪が食い込んでいくのを感じる

彼女の言葉が聞こえてくる

それで良いの? 本当に良いの? と

沙織「お願い……久遠さん」


天乃「あと少し、だけ」

誰かが死に掛けているかもしれない

誰かが満開を使うかもしれない

少しは見逃そう、少しは許そう

それはもう、自分がそうすると決めたことだから

けれど、何度も、何人も、

満開を必要とするのなら、九死に一生を得るような状況に陥ってしまうのなら

そのときは、と、天乃は沙織に告げる

沙織「うん……解った」

そうならないように祈るほかない

いまここで堪えてもらう以上、それ以上の望みは出来なくて

沙織「お願い……頑張って」

親しき精霊、愛しき勇者部

勇敢なる少女たちへと

神聖な巫女は、祈りをささげた

風→牡羊座封印判定 ↓2 01~90


安価ミス

>>766で進めます


樹→牡羊座 命中判定↓1  ゾロ目 01~10 CRI

風→牡羊座 命中判定↓2  ゾロ目 01~10 CRI

球子→牡羊 命中判定↓3  ゾロ目 CRI 

若葉→射手 命中判定↓4 01~51命中  ゾロ目 CRI 

千景→射手 命中判定↓5 01~51命中  ゾロ目 CRI 


射手→千景 命中判定↓1  01~95  ゾロ目カウンター 01~10切り払い

レオ→千景  命中判定↓2  01~95  ゾロ目カウンター 01~10  30~39切り払い

レオ→若葉  命中判定↓3  01~95  ゾロ目カウンター 01~10  81~90切り払い


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば昼頃から


6ターン目開始→http://i.imgur.com/zNf0Hte.png


射手座→千景にシフト
友奈チーム→夏凜チーム合流へ
風チーム→残り牡牛座

レオ→本格的行動開始


では、少しずつ


6ターン目ダメージ処理


風→牡羊座封印成功

樹→牡羊座 命中 802
風→牡羊座 命中 715
球子→牡羊 命中 836

若葉→射手 命中 1293
千景→射手 回避

射手→千景 命中 215

レオ→千景  回避
レオ→若葉  命中 350


牡羊座に2353ダメージ  討伐
射手座に1293ダメージ  1661/2954
千景に215ダメージ    386/1200
若葉に350ダメージ    350/1200


千景「三好さんは下がって」

夏凜「んな――」

千景「下がりなさい。そのままいられても邪魔よ」

何度もダメージを受けた夏凜は

勇者装束こそ、健在ではあるが

立っているのもやっとと言えるほどに限界が近く、

風が吹けばそのまま倒れてしまいそうな危うささえ、あって

千景の厳しい物言いも間違ってはいなかった

いや、むしろ正しい

夏凜「……解ったわ。すぐ、戻るから」

千景「心配しなくても良いわ。別に、私達がアレを倒せないわけではないのだから」

軽口をたたく

精霊になって、疲労感や怪我などによる影響は

人間と比べれば大分軽減されている

しかし、それは間違いなく、蓄積されてきていた

千景「……乃木さん」

若葉「……………」

千景「乃木さん」

若葉「ぁ、ああ。どうした。千景」

千景「貴女こそ、何かあるなら言って欲しいのだけど」


若葉「いや、何でもない」

千景「……そう」

なにか悩んでいるような

迷いを感じる表情で言われたその言葉は

流石に、完全に信じることは出来なかった

けれど、自分の知識で若葉を助けられるのかと言えば、そんな確証はない

むしろ余計悩ませるだけなのかもしれないと

千景は見えないところで怖気づいて、口を閉ざす

だから、かもしれない

若葉「千景、来るぞ!」

千景「!」

若葉の怒号が届いた瞬間に素早く鎌を身構えたが

射手座から放たれた一撃は重く、大鎌は大きく弾かれる

千景「……っ」

連射された2撃目が近づく

回避のための足は反動に浮いていて

防御のための鎌は後ろ手に弾き飛ばされたまま

若葉「千景!」

若葉の目の前で、人間にしては大きく太い殺意の矢が、千景の腹部を撃ち貫いた


若葉「くっ……この……異形共めッ!」

千景の元へ駆け寄りたい衝動

それを愚行と飲み込み、感情の全てを怒りへと上乗せして、若葉は地を駆ける

夏凜がやられた

千景がやられた

死んだわけじゃない、だが……瀕死に近い状況にまで追い込まれた

若葉「狙うなら私を狙えばいいだろう……ッ!」

折れてしまいそうなほどに刀を握る

柄の文様が手の平に刻まれていく

いつからかと舞った呼吸の息苦しさに体が脈打つ

しかし、若葉は動きを止めなかった

射手座を討つべく必殺の一撃を構えて肉薄

その瞬間――どこからともなく飛来した火炎球が炸裂する

若葉「――ぐっ」

痛みがある、炎に焼かれていく熱さがある

けれども、若葉はそこに佇んでいた

自身を焼き尽くさんとする熱を残したまま、若葉は刀を構え、抜刀

若葉「この程度で今の私が止められるものかァッ!」

怒りの一閃が射手座を叩き斬った


しかし、それでも。バーテックスは倒せない

西暦時代とは違うのだ

ただやみくもに攻撃すれば倒せるわけではないのだ

焼き尽くす火が消えるのと同時に

若葉は底知れない疲労感に膝をつく

体が重くなった

刀でさえ、持つのが辛いと感じるほどに

限界が近づいたのだと若葉は思う

自分が消えてもまたいずれ戻ることはできるだろう

だが、それは果たして許されることなのだろうか

精霊だからと死んで、良いのだろうか

若葉「……千景、お前はこれを間違っていると。言っていたな」

精霊なのだから、無理はすべきだ

無茶はすべきだ

生身である勇者の誰よりも、前線で体を張って傷つき

もしもの場合は死さえも受け入れるべきだと

若葉「精霊として、それは正しいのだろうな。きっと、そうあるべきなのだろうな……」

ふらつく足に力を込めて、ゆらりと立つ

若葉「だが、私は……私は天乃を泣かせたくはないんだ。愚かだろう。愚かだ。だから、生きるための無茶をする」

垂れ下がった手に力を込めて、取り零しそうな刀を改めて掴む

若葉「――私に力を貸せ、大天狗」

体の内側に宿った精霊の力、その最も大きな力を若葉は使う

負担をかける沙織や水都には後で謝罪すべきだろう。

若葉「せめて、目の前の敵くらいは片付けてやる」

体を包む重苦しく、強大な力それに身を委ねながら、若葉は小さく笑みを浮かべた


夏凜「っ……」

まだ射手座やレオの姿が見える距離だが

今の自分での限界の距離まで離れて、倒れ込む

夏凜「はぁ……くっ、痛」

ズリズリと体を引きずるようにもう少し進んで

斜めに伸びた樹海の根に体を預けて息をつく

夏凜「無様ね……ほんと」

リーダーっぽく周りに指示を出して

自分は平気だからと封印を行い、攻撃を受けていたらこの状況

もう少し攻撃を受けきれるようにならないとだめだと

夏凜は自分への課題を作りながら、自分の肩、満開の為の文様を一瞥する

夏凜「……使うか」

天乃はきっと怒るだろうけど

それでも、全部が駄目になるよりはずっといい

しかし、問題はまだレオ以前に射手座が健在なことだ

あれを叩かない限り、集中して迎撃すべきレオに集中できない

それどころか阻まれる可能性が非常に高い

夏凜「さっさと戻って、射手座倒して……痛……集合体のみになったら満開で全力」

果たして、それで倒しきれるのだろうか

犠牲なく終わらせることが出来るのだろうか

確証はない

けれど、何もしないままではジリ貧に終わるのだけは確実

夏凜「……千景にはあんなこと言った後だけど。しゃーない。一緒に謝るか。最悪、まぁ、エッチな事でもすれば黙らせられるでしょ」


どれだけ簡単に考えてるのか

なんてくだらない逃げ道を考えているのか

自分自身への嘲笑を込めて笑みを浮かべた夏凜は

追い込まれた現状に、自分の心が少し参っているのだと気づいていた

しかし、それでも手は緩めない

追い込まれているから何なのだと、

身も心も酷使する

夏凜「この程度でくたばんじゃないわよ、三好夏凜」

あんたが惚れた女はどれほどなのか

体をどれだけ酷使して

心をどれだけすり減らして生きてきたのか

それを隣にして、この程度で怖気づくなど夏凜自身が許せなかった

夏凜「……さて、行くか!」

傷ついた体に鞭を打ち

心を奮い立たせて、樹海を駆ける

紅蓮の勇者は――寄り添う死と絶望と向かい合う


6ターン目処理中
http://i.imgur.com/fjP3XVJ.png

7ターン目開始
http://i.imgur.com/CuEnpyw.png


夏凜→根性使用(30%回復)

風チーム、友奈チーム
共に合流に向けて移動開始

若葉→大天狗使用



夏凜→射手座封印判定↓1 01~80  35~44 68~77 レオ妨害


若葉→射手座 CRT判定↓1  ゾロ目  01~10

千景→射手座 命中判定↓2  ゾロ目  01~10

夏凜→射手座 命中判定↓3 01~82命中  ゾロ目 01~10 40~43 45 CRI 


レオ→千景  命中判定↓1  01~95  ゾロ目カウンター 01~10  30~39切り払い

レオ→若葉  命中判定↓2  01~10  ゾロ目カウンター 01~05  切り払い

レオ→夏凜  命中判定↓3  01~85  ゾロ目カウンター 50~59切り払い

レオ→夏凜  命中判定↓4  01~90  ゾロ目カウンター 71~80切り払い



レオは二回行動(全体x2)
若葉、千景は直感使用で初回回避確定(判定無し)


ダメージ処理

夏凜→射手座封印 レオ妨害  159ダメージ

若葉→射手座 CRT 6768

千景→射手座 命中 1303

夏凜→射手座 命中 764

レオ→千景  命中 335

レオ→若葉  カウンター 1480

レオ→夏凜  命中 319

レオ→夏凜  命中 287


射手座封印失敗

夏凜に765ダメージ   -433/1105
若葉に0ダメージ     2156/3000
千景に335ダメージ    51/1200
射手座に8835ダメージ -7174/2954
レオに1480ダメージ   6793/8273


夏凜戦闘不能
千景瀕死
射手座オーバキルにより封印不要で破壊(条件HPの倍以上の一撃・達成)





01~10 
11~20 満開
21~30 
31~40 その他
41~50 
51~60 満開

61~70 
71~80 
81~90 満開

91~00 

↓1のコンマ 

ゾロ目、特殊


若葉自身にも、

そして、穢れを請け負う側にも大きな負担がかかる力、大天狗

その力を開放した若葉の動きは、凄まじかった

普段とは全く違う変質した勇者装束に身を包んだ若葉は、

飛躍的に上昇した脚力を持って地を駆け抜けていく

その速度は

接近する絶対的な脅威を前に照準を合わせようとする射手座を完全に翻弄して

若葉「時間はない――そこをどけッ!」

目にもとまらぬ速さで跳躍し、抜刀

光が瞬く

ほんの一瞬、その空間が断ち切られたかのように揺らぐ

そして、刃が鞘に擦れる金切りの音が響いた瞬間

射手座の体は真っ二つに引き裂けて、塵となって消滅する

若葉「次だッ!」

振り向かない、駆け抜ける

切り捨てた射手座の消滅に見向きもせず前方、レオ・スタークラスターを見据えた若葉は、

飛来する無数の火炎球を容易く躱す


走る速度を全く変えず、

迫る火炎球を回避し、その先に迫る火炎球を切り伏せて、進む

若葉「時間はない、出来るだけ。私は……っ」

若葉に対してはちっぽけな力では無意味だろうと判断したのか、

他の無数のものとは違う

一際大きな火炎球を生成しだしたレオに対し、

若葉はただ真っ直ぐ直進する

変に動けば、あれは後方への被害を拡大する

意図したものかどうかは別にしても、あれは一種の挑戦だ

来れるものなら来てみろ

受けきれるのなら受けてみろ

バーテックスからの挑戦

そして、自らが抱く、己の不甲斐なさ、弱さ

それを打ち抜くための挑戦

若葉「――良いだろう、受けてやるッ」

鞘に納めた刀の柄を力強く握りしめ、

差し迫る小粒、ただの飛沫を回避しながら、着実に近づく

そして――大きな火の玉が放たれた瞬間、地を滑空する

若葉「うおおおおおおおおおッ!」

衝突の瞬間、抜刀

相反する衝突の間隔はない、だが、圧倒的な質量を前に若葉は引かず刀を振り抜いた


その場に、若葉は残った

装束を黒く焼け焦げさせながらも

体にはダメージを一切感じさせず、抜刀した刀

握る手を振り抜いたままの姿で、レオの目の前に立ちふさがる

若葉「大切な者達が私の後ろにはいるんだ」

若葉の姿勢がゆっくりと正されていくのと同時に

レオのバーテックスを超える遥かな巨体の一部が、バキリと砕け、塵へと返っていく

若葉の気迫のこもった一撃は

ほんの一部であっても、確かに、届いたのだ

若葉「……泣かせてしまうかもしれないが、笑顔でいて欲しい人がいるんだ」

力を使った影響か、

体の重みが増していく

骨が軋み、内臓が圧迫されていくような、窮屈な感覚

そして、口の中に広がる鉄臭いなにか

それを若葉は飲み込んで、切っ先をレオへと向ける

若葉「私は帰るぞ。貴様を討って――彼女の元に帰らせてもらうッ!」


現状→http://i.imgur.com/zqnywVy.png


レオは全回復しています(自動回復4割・3309)

東郷以外のメンバーの合流が完了しました


勇者部→封印 判定↓1  01~00  30~39  50~59 妨害


レオの封印成功


レオの御霊は自動回復します
レオの御霊はカウンターおよび通常攻撃があります(全体)


若葉  判定↓1  01~00   01~10  41~50 カウンター

千景  判定↓2  01~00   11~20  51~60 カウンター

歌野  判定↓3  01~00   21~30  61~70 カウンター

球子  判定↓4  01~00   31~40  01~10 カウンター

友奈  判定↓5  01~00   41~50  91~00 カウンター

風    判定↓6  01~00   51~60  71~80 カウンター

樹    判定↓7  01~00   61~70  81~90 カウンター

232


若葉  命中 3330

千景  命中 1203

歌野  命中 1098

球子  命中 708

友奈  命中 728

風    命中 587

樹    命中 674


レオ・スタークラスターに8328ダメージ  0/8263


レオ討伐


若葉「これが、集合体の御霊か……」

先ほど露出させることの出来た山羊座の御霊と比べて

その大きさは遥か彼方まで続くほどのものだった

御霊を見上げれば、空を見上げることになる

球子「ごめん、待たせすぎたっ」

若葉「いや、気にするな」

球子「けど、若葉――」

若葉「天乃に怒られるだけでも、幸多いことだ」

球子「そっか……でも、ごめんな」

球子とて遊んでいたわけじゃない

一生懸命バーテックスと戦っていたのだ

そんなこと、責められるわけがない

なのに、申し訳ないと告げる球子に、若葉は御霊の件を問う

若葉「どうする?」

球子「どうするもこうするも、総攻撃しかないだろ」

風「封印もいつまでも持つわけじゃないから、一気にかたをつけないと」


友奈「千景さん、いけますか?」

千景「……ええ。貴女は無理しなくても良いわ」

友奈「いえ、私は大丈夫ですっ」

ぐっと拳を作って、自分の意思を示して見せる友奈を一瞥して

千景は小さく、息をつく

これだから、勇者は。というべきなのだろうか

それとも

これだから、勇者なのか。と、言うべきなのか

そんなどうでも良い事を考えて、痛む体から眼を逸らす

千景「精霊が守ってくれるのね?」

友奈「はいっ、牛鬼が」

千景「ならいいわ。死なない程度に頑張りなさい」

友奈「千景さんも、危なくなったら退いてください。精霊だとしても、やっぱり、嫌なので」

居なくなってしまうこと

それが嫌なのだと言う友奈に、千景はただ

今は誰かの手を借りない。そんな状況ではないのだと答えた


若葉「これで終わらせるぞ!」

大けがをして戦闘不能に陥ってしまった夏凜

満開の影響故、移動の間に合わない東郷

それ以外集まった全員にそう声をかける

球子の作り出した大きな旋盤

投げ放ったそれに全員が乗り込んで、最終決戦へと一直線に向かう

遥か高みから見下ろすように現れた御霊は

近づけばより、その大きさは明確になって――

千景「……何か、来るわ」

それは、無数の欠片

さながら流星群のような投石を無差別に行う

友奈「わわわわっ、この状況じゃ――」

球子「千景、若葉、歌野、出来るだろ!」

歌野「簡単に言ってくれるじゃない……やって見せるけど!」

若葉「千景、問題は?」

千景「ないわ」

若葉「よし、ならば行くぞ!」


夏凜「……悪いわね、頼んだわ」

皆が、高みへと昇っていき

そう間もなく光が何度も輝いては消えていく

戦いが始まったのだと夏凜は感じ取って、願う

本当は自分も行きたかった

自分も行くべきところだった

けれど、力不足だった

夏凜「……集合体にさえ、辿り着けないなんて」

皆は頑張ったと言うだろう

けれど、夏凜自身は力不足だと思う

勇者と名乗るにはまだまだ未熟だと思う

夏凜「……終わった?」

遥か遠く、高い場所で何かが爆発したような光が瞬く

今まで見えていた小粒のような光ではなく、大きな、光

そして、地上にあるレオの体が塵となって消えていくのを見て、

夏凜は深く、息をついた

夏凜「よかった」

ボロボロになった時点で怒られるのは避けられないだろうが

それでも、満開による後遺症の報告をしなくて良いのは

不幸中の幸いというべきか……

夏凜「んなこと、言えるわけないわよね……こんな、被害出して」

戦闘区域から多少離れてはいるが、

樹海の被害は夏凜のところにまで及んでおり、

被害が大きいのは目に見えて明らかだった


天乃「……………」

強く祈るように頭を下げていた天乃が、顔を上げる

遠く離れすぎた天乃には、天にまで消えた御霊との戦闘は見えていなかったが

それでも、終局を感じレオの体を見れば

それが粒子となって消えていくのが見えて

沙織「……終わったね」

天乃「ええ」

けれども、天乃の表情は不安で一杯だった

安堵の息さえなく、罪悪感と、不安と、恐怖と、悲しさ

色々なものが練り混ざった複雑な表情だった

天乃「樹海の被害は、どうするの?」

沙織「多少は抑えないとダメじゃないかな」

水都「直に影響が行くなら、死人が出ると思う」

天乃「……貴女達は平気なの?」

沙織「半分を半分で請け負えば大丈夫だよ。それでも多少は苦しいだろうけどね、まぁ、所謂純正じゃないからね」

仕方ないね、と、沙織は笑って見せた


1、私も、少しなら平気なはずよ
2、そう……ごめんなさい
3、よろしくね
4、いっそ、そのまま直に与えちゃうのも悪くはないかもね

↓2


天乃「そう……ごめんなさい」

自分が戦えたなら

もっとスムーズに戦いを終えることが出来ただろうし

樹海の被害だって、

天乃が一人で請け負ってしまうことができたはずだ

沙織「ううん、良いんだよ。あたしたちがそれで良いんだって決めたことなんだから」

天乃「それはそうだけど」

沙織「だから、良いんだよ。久遠さんはそんなに。抱えようとしなくても」

天乃「っ……」

沙織は努めて優しく声を変える

気にしないでほしいと

そんなに気負わないでほしいと

力はあるのだ

まだ、しようと思えば、天乃は何でもできてしまうのだ

それを、

辛い思い、苦しい思い、嫌な思いをさせながら

我慢させているのは自分たちだ

その心の苦しみ以上の苦しさを、この穢れを負うことで同じように感じるなんてことはないだろう

ならば、何も怖がることはない

沙織「任せてよ。心配なんかしないでさ」


沙織「……さて」

半分ほど補えば、

死人が出るほどの酷いことにはならないで済むはずだ

もっとも、それでも事故等が起きることは避けられないかもしれない

誰かが怪我することは避けられないかもしれない

けれど、それが、限界なのだ

水都と分担して請け負っても

そこの深くない器ではすぐに水を溢れさせてしまう

沙織「ごめんね、猿猴」

無理をし過ぎれば猿猴が消えてしまう可能性もある

それでも拒否をしない

受け入れてくれる天乃の精霊に声をかける

気にするなと、彼は言う

だから沙織は、小さく笑みを浮かべて

沙織「ありがとう」

力を使う

樹海の穢れを、その身に移すために

01~10 
11~20 有

21~30 
31~40 
41~50 
51~60 
61~70 
71~80 有

81~90 
91~00 

↓1のコンマ 

01~10 三好家
11~20 伊集院家
21~30 東郷家
31~40 結城家
41~50 久遠家
51~60 乃木家
61~70 夢路
71~80 クラスメイト
81~90 クラスメイト2
91~00 知り合い

↓1のコンマ 


√ 8月3日目 昼(病院) ※水曜日


戦闘が終わり、全員が病院へと運ばれた

精霊である若葉達はそのまま姿を隠したが、

それ以外の勇者、非戦闘員だった沙織や天乃も

例外なく病院に運ばれ、それぞれの病室へと移された

天乃「……私は問題ないのに」

「ですが、念のためです」

天乃「世界への被害は?」

「最小限に収まった……と、思います」

連絡を請け負っている大赦の女性は

少し、躊躇うように言葉を紡いだものの

いずれ解ることですね。と、観念したように息をつく

「軽傷ではありますが、東郷家の奥様が影響による地震で転倒されたようです」

天乃「何も問題はないのね? 本当に?」

「ええ、それ以外の報告は各地で同様の件はいくつか確認されてはいますが、大きなことの報告は上がっていません」

天乃「……そう」


「久遠様、とにかく今日一日だけでも安静にお願いします」

天乃「……解ってるわ。どうせ、家に帰っても仕方がないし」

夏凜と友奈は戦闘による負傷もあって

現在は治療に専念するように言い渡されており、

東郷や樹達も、二人ほどの激しい怪我こそなかったものの

やはり、戦闘の影響もあって治療を行われている

勇者の中で、自分だけが――何ともなかった

その罪悪感が、いらだちが、募る

そしてやはり、彼女は纏わりついてくる

大赦の人たちはきっと、こう思ってるわ

なぜ、貴女は何もしなかったの? なぜ、一人だけ何ともないの?

そうやって、戦わないでいたくせに

被害を抑える力がありながら使わなかったなんて、どうして?

最低ね、最悪ね、役立たずね、無能ね

天乃「っ」

なんでこんな人に敬意をはらうの? なんでこんな人を丁重に扱うの?

年下の役立たずなのに、使えないくせに勇者って肩書だけでそんなに偉いか

きっと、そう思ってる

彼女は囁く、嫌に艶かしく、悪意の籠った笑みを浮かべて。

√ 8月3日目  昼(病室) ※水曜日


01~10 風 
11~20 
21~30 樹

31~40 
41~50 九尾

51~60  千景
61~70 
71~80 球子

81~90 
91~00  歌野

↓1のコンマ 


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
次回は風との交流


クラスメイトだったら、怪我で大会に出られないレベルにまで重かった……かもしれませんが
20%程度の被害なら、一点に集中しなければ軽傷で済むこともあります


では、少しだけ


※√8月3日目 (病室)昼 ※水曜日


激しい戦闘を終えて、止まっていた時間の動き出した昼間

戦闘による怪我の治療と影響の調査を終えて病室へと戻る最中

風は横目に見えた久遠天乃という入院患者の名前を目にして、立ち止まる

風「…………」

心配させただろう、不安にさせただろう

それは、樹海から戻ってきたときにも、見えた

体は傷つかず、心だけが傷ついた

そんな表情を見せていたから

ボロボロになってしまった夏凜を見て、胸中に何を描いていたか

そこに自分と樹を当て嵌めてみても、想像なんてできない

いや、することを心が強く拒絶する

だから

以前の戦闘で吐血しながら倒れこんだ天乃の事を思い返す

心が痛かった

呼吸という動作を喪失してしまうほどに、痛く苦しく、辛かった

風「……夏凜の馬鹿」

それを、それ以上の気持ちを、きっと味わったのだ。天乃は

力が有りながら、戦わせてもらえなかったから

勇者部の願いで、抑圧してしまったから


扉の前にかざした手を強く握って、躊躇う

風「…………」

後ろを誰かが何度か通ったけれど

風はそれに目も意識も向けずに悩んで、思い切って扉を叩く

返事はない

風「入るわよー?」

返事はない

もしかしたら寝ているのかもしれない

そんなことを思いながら、そうっと扉を横にスライドさせていくと、

病室の奥、風に舞うカーテンに隠されるようにして、天乃がいた

上半身だけを起こして、窓の外眺めている姿は

どこか、危うげで

風「天乃?」

思わず抑制の解かれた声で名前を呼ぶと、首が動いた

天乃「ノックしてくれないと、着替え中だったらどうするの?」

風「……ちょっとラッキー」


茶化すように答えを返す

ノックはしたけど返事がなかった

それは蛇足な気がして。

風「体を拭くとかならもうちょっとラッキーだったわねぇ。惜しい。やったげようか?」

天乃「今は良いわ。大丈夫」

風「そか」

会話が続くようで続かない

いつもなら調子よく返してくれる言葉

悪乗りだってしてくれるかもしれない言葉

なのに。対する力を失った言葉を返された風は、小さく呟くように返して

天乃のベッドのすぐ近くの椅子に腰掛ける

風「……心配かけて、ごめん」

天乃「…………」

風「慢心はしてなかった。全力で戦いにいった。でも、全体的に力不足だった」

集合体含めた3体に立ち向かった夏凜達に対し、

自分達は3人で2体のバーテックスしか相手にしていなかった

それなのにも関わらず、一つ一つを倒すのに時間がかかりすぎた

もう少し早ければ。そう思わずにはいられなかった

風「あたし達がもっと強ければ、夏凜もあそこまで追い込まれなかったはずなのよ」


わびる気持ちを込めて、風は言葉を紡ぐ

天乃は黙って聞くだけで

最初は向けてくれていた目も、また外へと向かう

見ているのは空か、壁か、それとももっと別の何かなのか

不安を抱く風は、ベッドの上の手に、触れる

風「戦うとか、言わないで」

天乃「……まだ何も言ってないわ」

風「戦えばよかった。そう思ってる」

天乃「……………」

風「黙らないでよ……っ」

否定して欲しかった

けれど、天乃は否定することなく過ごして

泣いてしまいそうな風の手に、手を重ねた

天乃「約束を受け入れたのは私自身だから、誰かを恨むことはないし、罰する気も怒る気もないわ」

風「天乃……」

言葉を紡ぐ横顔は、

寂しげで、悲しげで、想いを馳せた綺麗なもので

しかし、薄い硝子細工のような繊細で危うい美しさのように、感じた


風「……自分のことも、責めないで」

天乃「それは、どうかしらね」

寂しく紡ぐ

もう責めている。責められている

何もしなかったこと、出来なかったこと

それに対して、彼女は厳しく言葉を並べ立ててくるから

天乃は薄く笑みを浮かべると、不安そうな風に目を向けた

胸中に浮かぶ言葉を述べるべきかと、迷う

風「天乃?」

天乃「…………」


1、私ね? 思うのよ。もっと早くに多少の犠牲は見逃すべきだったんじゃないかって
2、頑張ったご褒美は、何が良い?
3、樹は来れないの? 約束、ご褒美として果たすのも構わないわよ?
4、戦いたい……次は、もしピンチになるようなら。戦わせて貰う


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


天乃「ご褒美として果たすのも構わな――」

グイッ

天乃「んっ……」

風「っは……調子に乗る口は、塞いじゃうわよ」

天乃「してから言わ」グイッ

風「……塞ぐって言ったわよ」


では、少しずつ


心の中に浮かんでいた言葉は飲み込んで、

ゆるりと風へと目を向けた天乃は「そういえば」と、切り出す

天乃「樹は来れないの? 約束、ご褒美として果たすのも構わないわよ?」

風「樹は疲れて、休んでるのよ」

夏凜達ほどの怪我などはなかった樹だが

その分、上手くやろうと張り続けていた気疲れが出たのか、

検査が終了する間際にはもう、眠ってしまいそうで

病室に着くや否や、そのまま眠ってしまったらしい

困ったように

けれど嬉しそうに語る風に、天乃は「そっか」と

ほんの少しだけ明るく答えて笑みを見せる

天乃「せっかくしてあげてもいいかなって気分だったのに」

風「なーに言ってんのよ。するよりされる側でしょ。天乃は」

天乃「あら、そうとも限らないわよ?」

風「責め慣れてないことくらい、みんな知ってるって」

悪戯っぽく笑いながら自信あり気に言う天乃に、

風は苦笑いを浮かべながら否定する


天乃は元々性的なことへの関心が皆無で

授業で習う程度の性知識くらいしか持っていなかったことは、周知の事実

風自身もなれているなんて事はないが、

多少知識のある自分でも組み伏せることは出来るだろうと、風は思う

夏凜が出来たのだから、なおさら

風「それに、予行練習だってしてるし」

天乃「……樹が可哀想」

風「ん――って、いやいや樹の体借りてるわけじゃないからっ!」

天乃「じゃぁ、夏凜? 友奈? 東郷?」

風「じ、実体験はない……のよ」

言わなければ良かったと、後悔と羞恥に塗れた答えを返す

頭の中で、ちょっとだけ

こんな感じかと考えながら、ほんの少し

見る見るうちに顔を真っ赤にして、風は顔を背ける

相手のいない予行練習

それはつまり、そういうことをしたということで。

風「あ、あたしだって……人並みには。そういう気持ちとか、あるの」


リアルを描いているようで描いていない、

漫画やアニメのキャラクターであるのならば、

それは誰かの幻想ゆえに、そう言った気持ちなんて抱いたりしない

破廉恥なことを考えたり行ったりはしないと、抱いた夢を抱かされるからだ

気恥ずかしそうに語った風は、

小さな敗北感を味わった表情で天乃を見ると、息をつく

風「そんな幻想が、身近にいたのよねぇ」

天乃「一クラスに一人くらいはいるでしょ。そういうのって」

風「どーだか――ねっ!」

天乃「っ!」

思い切って不意をつき、天乃の体をベッドへと押し倒す

シャンプーの清潔感の薄れた匂いがした

天乃「もう……危ないわ」

色の違ってしまった二つの瞳が驚きに揺れながらも笑みを形作って、

柔さを知ってしまった唇が動く

無造作に散らばった桃色の髪は、視界を華々しく彩る

強引なことはしたくはないと

所謂一人での淫らな行為では、そんな妄想劇など考えることはしなかった

だが、悪戯心が勝ってやってしまった現実

見えるものは、現実味のない夢のようなものだった

聞こえるものは隔絶された空間のように、限定的だった

虜になるとはこういうことかと風は思う

顔が近い、そう気づく頃には唇が優しさに触れている

自分の一挙手一投足が、まるで自分のものではないような浮き上がった感覚


唇を重ねただけのキスだった

けれどもそれはみんなが初めにするような一瞬の接触ではなく、数秒間の長い密着

このまま深くまで入ってしまおうか

そんなことさえ考えてしまいそうなキス

柔らかさが、優しさが唇を通して伝わってくる

久遠天乃という少女の匂いが、キスの距離感では色濃く感じられる

離れることの惜しさが滲み出て

布団の上に手を這わせて天乃の手を握る

天乃「っは……ん……犬神にでも、取り憑かれたの?」

風「……さぁ? 解らないけど、したくなった」

美しさと愛らしさ

入り乱れる恋人の姿に魅惑的なものを感じながら、

風は精一杯に本来の心で答える

離れる寸前の小さな吐息が、

本当に微かなちゅぷりという音が、異様に艶かしくて

瞳は唇へと向かう

風「あと、何回か」

天乃「……それが貴女の心なら」

風「じゃぁ」

天乃「んっ」


握るだけだった手が握り返されて、風はその力を上回った力で握り返す

柔らかくて、力強い

妹の樹と同じか、もしかしたらもう少し小さな手

重ねた唇から、小さな呻きが入り込む。

天乃の閉じた瞼が、目の前に見えると

キスをしているという実感が後れて沸いてきた

天乃「っ……んっ」

風「んっ……ふ……」

自分がどれだけの好意を抱いているのか

いつもなら気恥ずかしさに包まれて消えてしまうそれが、今は開放的だった

長々とキスをしていると

どちらのものかも解らない震えが来る

力を込めて押し付けあっているわけではないけれど、

不思議と、力が入ってしまうから


ゆっくりと、離れる

出港する船の甲板で手を振るわが子を見送る母親のような名残惜しさが、

唇同士の離別に紛れていく

もう一度、もう一回

そんな気持ちが燻って、また。キスをする

何度でもしてしまいそうだと、風は思う

いつまでだって出来そうだと、思う

触れるたび、押し合うたび、感じるたびに

少しずつ体が昂ぶっていく

一人で想いを馳せるそれとは比べることさえできない昂ぶり

風「……クセになりそう」

天乃「もう、なってるでしょ」

風「言われてみれば」

天乃の体にも触れたい

お風呂の時などで、何度か見たことはあるし触ったこともある

けれど、そのときに抱くのとは別の俗に言えば疚しい感情で触れたいと思う


下腹部が疼く

触れたい、触れて欲しい。そんな欲求が渦巻いて

風はごくりと域を飲んで、首を振る

天乃「……どうか、した?」

風「樹と一緒にする……約束。なんだけどさ」

天乃「ええ」

風「このまま凄くつまみ食いしたい気分になってきちゃったのよね」

天乃「私は良いわよ? それでも」

風「こういうときにそう言われると効果大きいんだけど……」

もう一度唇を重ねて、そのまま空いた左手で腹部をまさぐり、

脱がすことなく服の中、胸元にまで手を忍び込ませて

触れて感じる天乃の事を見てみたい、

生の感触、生の反応

妄想では絶対に得られることのない悦楽を感じたいと風は思う

だけれど、風は離れた

物欲しそうにしながら、固く目を瞑って「うぐぐっ」と、抑圧する


風「我慢我慢」

ベッドの上で、押し倒されたままの天乃を見れば、

きっと欲望は再燃することだろう

ほんのりと上気した頬、熱っぽい吐息、

普通なはずなのに、淫らに感じる匂い

その全てに当てられては、きっと我慢は出来なくなる

風「天乃って……えっちよね」

天乃「否定は出来ないかも、ね……最近自分が淫らなことに染まってる自覚はあるし」

風「でも一人ではしないと」

天乃「後片付けが大変だもの」

そう言って笑った天乃は、

仮にだけど。と、風へと目を向けながら、問いかける

天乃「なんとなく会いに来たとき、私からそういう、えっちな匂いがしてきたらどうする?」

風「……………」

天乃「真剣に悩まなくて良いからね?」

黙り込んで考え込む雰囲気を感じさせた風に対して

天乃が困ったように先んじて告げると、

風は照れくささのある表情で、はにかんだ

風「そりゃまぁ……襲うかも」


布団を引っぺがして、動かない足を開かせて

指で触れて、「やったでしょ」と、問いかけて……

風「……………」

天乃「…………」

風「……あたし」

天乃「うん」

風「一ヶ月うどん禁止にする」

天乃「うん、落ち着いて考え直そう?」

驚きはなかったものの

きわめて大人しく、優しい声をかけてきた天乃を見ていられなくて、

風は頭を抱えながら、口を開いた

風「だって……襲うって何、襲うって、あぁ具体的な妄想が捗る……っ、いけないって解ってるのに」

天乃「まぁまぁ」

風「まぁまぁじゃないって、そんな。優しくしてくれてるのに」

盛りに盛った男子かあたしは。と

風は自分自身を強く叱責して、抱えた頭を手放す


風「人並みには性欲あるって言ったでしょ? さっき」

天乃「ええ、言ってたわね」

風「あたしが男子だったらきっと、もう歯止めなんて利かなかった気がする」

女の子同士だから

まだ自分の体を代用すれば、何とか抑えが利くことは利く

けれど、自分が男子で、女の子の体を知らない身であったのだとすれば

好意と、性欲と、つみあがった好奇心に理性は押し流されて

たとえ嫌がられていようと、強引に手を出していたかもしれない

以前、天乃に告白をして、キスをした男子がいたが

その男子の気持ちがわかったと、風は勝手に思う

風「天乃って、なんか性的に襲いたくなるフェロモン出てるんじゃないの?」

天乃「まさか」

風「ほら、魅了の力? あれが性的な方に作用してるとか」

天乃「……そういわれると反論できないけど」



落ち込んだように零した天乃に

風は近くにいなくてもアレだから。と取り繕うように笑って、言う

そんなフェロモンがあるにせよ、ないにせよ

会わなかった日でも自室で手を出すのだから、

そんなことはもはや関係ないのだ

風「前にも言ったっけ。もう経験したって言うみんながなんとなく羨ましいのよね」

嫉妬しているわけではない。と、思うが

羨ましいと思う、寂しいと思う、自分はと、思う

なんとなく、おいていかれているような気がする

友奈ですらもう経験済みなのに、自分はまだなのかと

風「って、それが嫉妬か」

天乃「風?」

風「なんでもない。とりあえず、樹が大丈夫な日によろしく頼むわ」

天乃「……うん」

風「普段見せないえっちな姿、見せてよね」

天乃「それは風と樹の実力次第、かな」

ほんの少しだけ、気の晴れる会話

けれども、本当に言おうとした言葉は胸中に沈み

なにかが解決したわけでは、なかった

√ 8月3日目  夕(病室) ※水曜日


01~10 千景

11~20 悪五郎 
21~30 
31~40 九尾

41~50
51~60 歌野
61~70 
71~80 友奈
81~90 
91~00 球子

↓1のコンマ 


√ 8月3日目  夕(病室) ※水曜日


久しぶりに見る病室からの景色を眺めながら

天乃は小さく息をついて、唇に触れる

風とのキス

その感触の名残が、まだ少しだけ感じられた

心のこもったものだから

自分自身が嫌ではなかったことだから

けれど。

キスは気持ちを伝えるものだと思ったのに、

伝えることが出来なかった

それが少し、残念で

天乃「……夏凜、もう意識は戻ったのかしら」


1、精霊組 ※再安価
2、勇者組 ※再安価
3、イベント判定

↓2

※沙織や若葉達は精霊組

01~10 樹
11~20 東郷
21~30 友奈
31~40 九尾
41~50 悪五郎
51~60  千景
61~70 球子
71~80 歌野

81~90  夏凜
91~00  若葉

↓1のコンマ

ゾロ目特殊 


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



樹「……………」スンスン

天乃「あら、樹。どうしたの?」

樹「……お姉ちゃんの匂いがします」

天乃「? 良く分かったわね。さっき来て――んっ!」グイッ

樹「………っは。唇からも、お姉ちゃんの気配を感じました」

天乃「えっと」

樹「抜け駆けしたお姉ちゃんも悪いですけど。させた久遠先輩も悪いので……オシオキですっ」

天乃「ちょっ、待――……」


では、少しだけ


こんこんっと、小さく微かなノックが聞こえて、

どうぞ。と、声をかける

樹「お邪魔、します」

恐る恐るといった、弱弱しい声で呟きながら入ってきたのは、樹だった

入院患者が着るような衣に、薄い羽織を身に纏って

容易く折ることができそうな細腕には、枕が抱えられている

天乃「どうしたの?」

樹「その……」

天乃「とりあえず、おいで」

ここにきた理由

それを言いにくそうに詰まった樹を手招いて、

天乃は優しく「お疲れ様」と、声をかける

本当はもっと色々言いたいことはあった

心配したとか、無茶しないでとか、不安だったとか、色々。

けれど、樹たちが頑張ったことを知っているから

それでもあんなにもボロボロになってしまって

ただでさえ心が疲れてしまっているだろうと

天乃は解るから

頑張ったね。とも言わない。ただお疲れ様と労うのだ


樹「久遠先輩は、体に問題はないですか?」

天乃「私は何もしなかったからね、大丈夫よ」

樹「……良かったです」

頑張って、頑張って、中々上手くいかなくて、被害を完全にゼロには出来なかった負い目があって

それでも、一番に守りたかったものが守れたことが、きっと嬉しかったのだろう

樹は嬉しそうに笑っていて。

天乃も、優しく微笑んでみせる

何も良くなかった。そう思う心

嘘つきねと嗤う彼女から目を逸らして。

天乃「樹こそ、体は大丈夫なの?」

樹「は、はい。私は、お姉ちゃんがいてくれたから」

風と球子

そして樹の三人構成だった左側の勇者チーム

バランス的には遠中近全距離をそろえた感じで

偏っていない分、戦いやすかったのかもしれない


樹「それに、球子先輩達も」

申し訳なさそうにそう言った樹

その膝上に置かれていた手が、悔しさを握り締めるのが見えて、

天乃はそこからすっと、目を逸らす

見ていると、気づいていると

言ったところで、樹はなんと言うだろうか

天乃「…………」

結果だけを言えば、戦いは勇者部の勝利だった

けれども、樹としては

いや、若葉たちを含まない現代勇者部のみんなとしては

この勝利は手放しでは喜べないのかもしれない

満開を使わない

そんな制約を半分くらい課した戦闘だったとはいえ、

精霊である若葉たちが一緒に戦ってくれなければ

満開を使わないということは不可能だった

だから、思うのだ

これは辛勝だったと。


樹「久遠先輩」

天乃「なに?」

樹「一緒に居て良いですか? 一緒に寝て、良いですか?」

恐怖と寂しさを感じる瞳が揺らぐ

風は樹が休んでいると言っていたけれど

きっと、心が休まることはなかったのだ

だから、枕を持ってここにいた

天乃がいると、

夢でも幻でもなく、触れる場所にいるのだと

そう、実感するために

天乃「まるで、怖い夢でも見た子供のよう」

樹「っ……」

天乃「……………」

力不足を感じてしまったままの状態で見た夢に

若葉たちはいたのだろうか



1、おいで
2、それだけで良いの?
3、お疲れ様。ありがとね


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


天乃「おいで」

樹「はい――っ」ビクッ

友奈「じーっ」

風「じーっ」

沙織「じーっ」

東郷「ぎるてぃ」

夏凜「慣れない言葉やめろ」




では、少しずつ


ホラー映画でも見た子供

そんな印象を受ける樹の姿

でも現実はそれよりも凄惨で、心が打ちのめされてしまうようなものだった

事実は時に創作よりも奇なものだから

天乃「…………」

天乃はふっと息をつくと、そっと樹の手に触れて視線の誘導をする

怯えた瞳、その裏。

夢の中で、久遠天乃という存在は生き残れたのだろうか

天乃「おいで」

優しく引くと、樹は泣きそうな顔で従い天乃の胸の中に沈む

抱きしめれば、樹の手も天乃の背中へと回って抱きしめ返してくる

しがみついてくる

その存在が離れてしまわないようにと、

その存在が現実のものでありますようにと

天乃「……一緒に居るわ。貴女が寝ても、起きても。すぐ隣に」

樹「っ……ぅ……」


頑張った、頑張りすぎた勇者の嗚咽を、天乃は包み込む

まだ、中学1年生

その背中には重すぎるものを、背負っている

若葉たちがいなければ、満開が必要だったはずだ

満開を使っても、確実に勝てるという保障もなかったはずだ

それで勝てたとしても、樹達は何かを失っていたはずで

天乃「休みなさい、今は。ね」

心も体も疲れているはずなのに、

罪悪感が、ネガティブな思考を働かせてしまう

そんな樹の体を抱き、頭を優しく撫でながら、囁く

樹を飲み込もうとしてる負の感情、染まった心の声を覆い尽くすように

耳元で、囁きかける

樹「久遠先輩……っ」

天乃「ん」

抱きしめながら体を横にして、ポンポンッと

少し後ろよりの頭をリズム良く、優しく叩く


樹「怖かっ……たです……」

天乃「うん」

樹「みんな、バラバラで検査して、病室も、バラバラで、みんな……それで……」

天乃「うん」

大赦としても、病院としても

悪気があったわけではないだろうし、優しさだってそこにはあったかもしれない

夏凜は確実に同室には出来ない

沙織だって、同様に

そんな中、それ以外で部屋をまとめたら

それこそ、みんなの不安を大きく煽っていたかもしれないからだ

けれど、今回ばかりはそれが仇になってしまったのだ

もっとも、大赦の為すことが仇になっていない記憶はそれほどないのだが。

天乃「でももう大丈夫」

樹「んっ」

本当は、現実から夢へと入っていくためのもの

けれども、今回ばかりは現実へと引き戻すために、天乃は軽く唇を合わせる

涙に濡れた瞳が、驚きに戸惑って天乃を見る

柔らかな頬が赤く染まっていって

天乃は小さく笑みを浮かべながら、その頬を指でつつく


天乃「前みたいに逃げられないわよ」

樹「ぅ……」

天乃「ふふっ、色々。現実味を帯びてきたんじゃない?」

樹「…………」

自分がどんな状況で、なにをされたのか

そして、どこに顔を埋めているのか。とか

色々なものを実感して、気づいて

樹「わ、私っ」

天乃「良いのよ。良いの。あなたも私の可愛い奥さんだもの」

離れようとしたのを先んじて封じた天乃は

逆に抱きしめて、密着させて、ベッドの上で見詰め合う

風との時のように、キスを続けることはない

淫らな温もりも何もない

天乃「一緒に寝ましょ。そのために、枕も持ち込んだんだから」

樹「すみません」

天乃「気にしない気にしない」


自分よりも年齢的には小さく、身長的には同じ樹の体を抱きしめて

病院の、ただのシングルベッドの狭い範囲に二人で収まる

樹は少しだけ落ち着きを取り戻した様子ではあったけれど

その分、仮眠では癒せなかった疲れが出てきたのだろう

しがみつくようにしながら、樹はゆっくりと目を閉じて小さな寝息を立て始める

天乃「……お休み」

たとえ結果が、若葉たちのおかげでの勝利という

納得がいかないものであったのだとしても、

世界への被害は軽く、夏凜や精霊である若葉たちは無茶したけれど

それ以上の問題がなかったのだから。と

天乃は自分の中で燻っているものからは目を逸らして、思う

夏場の暑さは少し気になる

けれど、これくらいはと天乃は樹の体を抱きしめて、

撫でるように、頭をリズム良く叩いて揺らしながら

天乃もまた、少しずつ睡魔に誘われていく


※√8月3日目 (病室)夜 ※水曜日

01~10 風
11~20 樹継続
21~30 友奈
31~40 
41~50 東郷
51~60
61~70 千景
71~80
81~90  九尾
91~00 悪五郎

↓1のコンマ

※ゾロ特殊 


※√8月3日目 (病室)夜 ※水曜日


夜になって、天乃は一人眠れない目を開いて、窓の外を見る

明るくなったり暗くなったりはするけれど

代り映えのない外は、なんだかつまらない

もちろん、それこそが日常なのだが。

天乃「樹も連れ戻されちゃったし」

樹はお医者さんの意向もあって

自分の病室へと連れ戻されてしまったのだ

向こうには向こうの都合があるのだろうし

やっぱり、仕方がないことなのかもしれないけれど

一人は少し……心細く思う

端末も病院の中

特に、病室では使えない

だから、勇者部のみんなとの連絡も、出来そうにはない

だれか、来てくれるだろうか


1、九尾
2、千景
3、球子
4、若葉
5、歌野
6、悪五郎
7、水都
8、イベント判定

↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から




「寂しい?」

「そんな貴女の心のスキマ、お埋めします」

天乃「え? ぁ……」

天乃「な、なんで私の下着被って……」

「お兄ちゃん。だからさ」バサッ

天乃「いやぁぁぁぁぁっ」

夏凜「っ……確実に退治するには……満開ッ!」

九尾「これこれ。やりすぎじゃ」


では、少しずつ

√8月3日目 (病室)夜 ※水曜日

天乃「若葉、いる?」

先の戦いにおいて、もっとも功績を挙げたといっても良い精霊

けれどもその分。いや、それ以上に無茶を重ねた

消滅することこそなかったが、その疲労感はまだ残っているかもしれない

そんなことを思いながら、呼ぶと

若葉は揺らめく影のように音もなく姿を現した

……気配が薄い

天乃「大丈夫?」

若葉「……ああ、少し気だるさはあるが問題はさほどない」

天乃「精霊の力を使ったんでしょう? その程度で済むとは思えないわ」

若葉「それは、沙織たちに負担がかかったからだ。だから、私はこんな軽度で済んだ」

その被害者。というべきだろうか

沙織たちは、そうなることを理解したうえで、若葉がいざという時は力を使うことを容認した

保身のために力を使うなといえば、それは結局自分達の身を滅ぼすことになりかねないからだ

しかしそれでも、若葉は心が痛む

なんとか力を使わずに済ませることは出来なかったのだろうか。と

そうだ、結局

誰一人として、この勝利は望みの叶った勝利などではなかったのだ


若葉「辛勝だった……西暦時代の勇者だからと、慢心をしたつもりはなかったんだが」

若葉は自分の右手を見つめながら、切なさを感じる笑みを浮かべると

嘲ったようにも思える吐息を零して、天乃へと目を向ける

若葉「最高峰の戦力を保険として残したままの勝利を望むなど、傲慢なのだろうか」

天乃「何もかもを救いたいだなんて、傲慢以外のなんだと言えば良いの?」

若葉「……辛辣だな」

天乃自身もそんな無謀なことを望んでいると言うのに

自分はそれが傲慢であると言う

傲慢であること、理想論であること、夢物語であること

それを理解していながら、それを追いかけている

ただ、違うことと言えば

自分自身の体に関してだけは見限っているという点だろう

もっともそれが一番の違いで、重要な点だ

天乃「見捨ててしまうべきなのよ。本当は」

若葉「私達の誰も、そんなこと出来るはずがない」

天乃「……………」

若葉「夏凜には言うな。体に障る」


天乃は具体的に何を見捨ててしまうべきかを言葉にしていない

けれど、若葉には分かった

きっと、勇者部の誰でも分かってしまう

拒絶をされた天乃の表情は、困り果て、呆れてしまった母親のような

静かな風に揺らされる桜木のようで

若葉「天乃」

若葉は、声をかけた

天乃「?」

若葉「その……なんて言えば良いのか分からないんだが」

下手な前置きをする

別に呼ぶ必要はなかったのに

無理に声をかける必要はなかったのに

これは無意識だったかもしれないけれど。


自分から声をかけておきながら、

言葉に詰まって間をあけた若葉に目を向ける

何を言いたいのだろう

困った顔、恥じらった顔

それはいつか見た、少女たちの見せた表情

もしかしてと、思う

まさか、と思う

千景が言っていたのはそう言うことなのかと、思う

若葉「……正直、怒られると思っていた」

天乃「…………」

若葉「無茶したからな」

天乃「怒られたいの?」

若葉「それも、悪くないかもしれない」

怒られると言うのに

なぜだか、若葉は嬉しそうな笑みを浮かべながら言う

怒られることが出来る事

怒ってくれる天乃がいてくれる事

それが、嬉しいからだろう

若葉「ふふっ、なんてな」



1、千景は精霊と仲良くなりすぎるなって言ってたわ
2、ねぇ。今夜だけは一緒にいてくれない?
3、そんなこと、上里さんにすら頼んでなかった気がするけど?
4、若葉は、私のこと好きなのね
5、……勝手に消えたら、許さないわよ


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



天乃「若葉は、私のこと好きなのね」

若葉「……ふふっ」カチャッ

天乃「若葉?」

若葉「ああ、そうだ。好きだ」

若葉「独り占め、したいほどに」グイッ

天乃「っ」

若葉「私と、【久遠】になってくれ」


杏「はい、オッケーです」

杏「これはちょっと、ボツですけど」


では少しずつ


楽しそうに話す若葉の姿は、

天乃にとっても、嬉しいものだった

夏凜達に対して抱くのと同様に

天乃は、若葉達が精霊であるのだとしても

幸せでいて欲しいし、楽しく過ごして欲しいと思っている

でも、だから千景のことが引っかかった

冗談めかして誘った夜は受け入れられなかった

それどころか、そう言うことはすべきではないと

精霊は切り捨てるべきものだと、言われた

けれど……

天乃「……若葉は、私が好きなのね」

若葉「…………」

目を合わせることなく、天乃は言った


川のせせらぎにも似た、夜だからこそ聞こえた囁き

ゆっくりと、天乃の瞳が若葉へと向く

若葉「ああ……好きだ」

感嘆の句を揺らめかせながら、想いを馳せて若葉は答える

以前、そう言った

けれどもきっと、今天乃が言ったのはその意味ではない

見透かされていると、感じた

そうなるだろうと、解っていた

若葉「好きだよ」

二回目。

水面に落ちた、木の葉のように

静かに、穏やかに、優しく。

そして、若葉は天乃に目を向ける

燃え盛るような恥ずかしさは、なかった

若葉「私は……君に恋をした」

三回目。

なんて愚かなことだと困り果た笑みを浮かべながら、若葉は告げる

今度は、誤魔化さない


若葉「精霊だというのに、いや、そもそも私は300年前の老婆だというのにな」

自虐するように笑う若葉は、握り合う自分の両手へと視線を落とす

女だということは、この際気にするべきではないと、思った

沙織が言ったのだ

人はなんにだって恋をする。男も女も犬も猫も物も。全部。

その想いは抑圧されて良いものじゃない

誰かがそれを愚かだというのなら、あたしはその誰かを哀れむよ

鳥篭の中でだって、鳥は羽を伸ばしたいものだから。

若葉「私の中には、記憶には薄いが、別の精霊だった頃の何かがあって。それもあるのかもしれない」

天乃「……だから、今貴女が抱いてるものは違うって?」

若葉「そんなことは言わないさ。いえない……いや、言いたくない。か」

自分の胸元に手を宛がった若葉は、儚げな笑みを浮かべる

自分の心は、正直を望む

千景は言った。それは誤りだと。

それは間違っていない、正しい。だが【精霊として】は。

若葉「私は天乃の優しさに、切なさに、儚さに。そして、浮かべる尊さに、恋をした」

性的な魅力など、気にしたことはない

勇者部のみんながそう言った行為に及んでいるのを見て、思うことはあったけれど

それは、【繋がり】でしかない

みんなだってそうだ。触れ合うことがそこに繋がっただけであって

好意を抱いたのは艶かしさ、淫らさと言った制的な魅力に対してではない


若葉「……天乃」

名前を呼ぶ。名前を呼べる。

そして、それを受け取ってくれる人がいる

ごくありふれた、そんなつまらないことが

誰も気にしないようなことが若葉は尊く、儚く、嬉しく思う

そっと、天乃の頬に手を宛がう

散々見てきた

夏凜がどうするのか、東郷がどうするのか、沙織がどうするのか

どれも結果は同じでも過程が違う

だから、きっと。通り道に正解はないのだろうと若葉は思い、

見つめ返してくる天乃に対して、笑みをこぼす

若葉「天乃は隙だらけだな」

天乃「貴女達に対して警戒する気はないから」

若葉「……私が唇を重ねたらどうするつもりだ」

若葉は精霊だ。命は賭すべきもので、誰よりも死に近い

それはきっと、天乃を苦しませる

それはきっと、天乃を悲しませる

それはきっと、辛い思いをさせる

そんな存在からの好意を体に示されて、どうするのかと、若葉は問う


1、受け入れるわよ
2、私の言うことを一つだけ絶対に実行してもらうわ
3、それは、させないわ
4、……大胆ね


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日は出来ればお昼頃から

久遠さんのこの【いうこと】は
勇者部の誰もが分かる久遠さんが絶対に言う御願いです



園子(違う、違うよ~)

杏(ここは先にキスをした方が……)

ひなた(そもそもまずはベッドに押し倒すべきです)

ひなた(その強引さに驚いた久遠さんに手を出すべきですよ)

杏(陽乃さんにやられた仕返し……?)

ひなた(陽乃さんはキスまではしませんでしたけどね)


では、少しずつ


返答に期待しているかのような若葉の表情に

天乃は眉を顰めて、小さく笑う

若葉もそういうことを言うのかと、ちょっと、嬉しく思って。

天乃「そうね……私の言うことを一つだけ絶対に実行してもらうわ」

若葉「ほう」

天乃「私の唇が高価なものだと言うつもりはないけれど。貴女の願いを受けるんだから、当然よね」

悪戯な笑みだった

ある意味子供のようで

けれども大人びたものを感じさせる

それはそう、妖艶だと若葉は思う

若葉「以外に、それは高価なものかもしれないぞ」

天乃「あら、どうして?」

若葉「価値観は人それぞれだからだ」

キスに金額を付けると言うのは

聊か公序良俗に反するような気がするので

明言することはないのだが、あえて言えば無料のそれにも

付加価値というものがある

例えば、そう

若葉「重ねる側が恋をしているのなら、人生で一番の価値ある瞬間だろう?」


若葉「…………」

若葉は自分で語ってから、気恥ずかしそうに頬を染めてはにかむ

自分の発言が恥ずべきものだと思ったわけではない

むしろ、それはそれで自信を持って言えるかもしれない

けれど、それを自分の想い人に面と向かって言うと言うのは

どうにも、気恥ずかしさがあるのだ

若葉「ふふっ」

天乃「ん?」

若葉「いや……特に意味はないが」

音が消えていた

大海原に浮かぶ、船のように

まるで、世界に取り残されたかのような感覚

若葉「二人きり。だな」

天乃「ええ。九尾達はいるけれど、でも。今は【二人】」

距離が近づく。キスをしようという意識はないが

間近に迫った唇を目にすると、どうしても動く

恋とは磁場なのか、人は磁石なのか

若葉「……駄目だ」

天乃「ん」

けれど、若葉は天乃に手を出すことは出来なかった

唇を奪う。という行為は出来なかった


天乃「しないの?」

若葉「天乃の出した条件は私にとってなんの損にもならない不公平なものだった」

天乃「……だから?」

若葉「こういうことは、そんな不平な契りの上ですべきことではないだろう」

天乃「それは、私にとって若葉とのキスが損害に値すると思ってるってことになるけれど。訂正はしなくて大丈夫?」

心が捻くれてしまっているからか、言葉は酷く意地悪な疑問だった

笑みも浮かべていない、真剣そのものの疑問

一歩謝れば試験に不合格する。そんな緊張感を若葉は感じて、息を飲む

なにが試験だ

そんな疑問をぶつけられた時点で

いや、こんなチャンスを与えられた時点で、

自分の回答が間違っているのはもはや前提なのだ

若葉「では、教えてくれ」

天乃「うん」

若葉「君にとっての私は、接吻を交わすに足る存在なのかどうか」

天乃「………」


1、する
2、少なくとも、ずっとそばにいて欲しい存在よ
3、意気地なし
4、そうじゃないなら、ここまでも許さないわよ


↓2


天乃「そう、ねぇ」

若葉の切実な疑問

不真面目な子だと言うつもりはないが

殆ど子の場合はああいった時点でそれならとキスをしてくるだろう

夏凜はどうだか分からないけれど

少なくとも沙織ならしてくるだろうし、東郷ももしかしたら沙織よりかもしれない

そう考えて、

思えばそんなに積極的な子はいないんだ。と、考えて

天乃は小さく笑みを浮かべて、首を横に振る

天乃「私は」

真っ直ぐ、目を向ける

気を抜けば逃れてしまいそうな、若葉のきれいな瞳を、整った顔立ちを

一つ一つを紡ぐたびに、それらは緊張に揺らぐ

そこにいるのは、まさしく恋した人だった

天乃「少なくとも、ずっとそばにいて欲しい存在だと思っているわよ」

若葉「っ」

天乃「……それでは、不満かしら?」


若葉「………っ」

若葉の表情は形容し難く変化する

わけのわからないものでもなく、

複雑怪奇なものでもなく、

毒沼染みたものでもなく、

誰もが経験したことはあるはずのもの

しかしながらそれは多くの人が語ることのできない表情

若葉「なん……」

天乃「馬鹿ね」

天乃はそっと若葉の頬に手を宛がって

動揺と安堵の湧き水に揺らぐ瞳を見つめる

天乃「千景の言葉が怖かった? 自分と私の違いが大きく見えた?」

語りかける。

答えは聞かない、そもそもこれは疑問ではなく

遺跡に記されたただの壁画と似たもので。

迷える子羊に、鈴の音を。

悩み多き人々に、灯の温もりを。

若葉「んっ……」

それと似た導きを若葉に与える

ほんの一瞬、ほんの少し、ほんの軽い感覚で。

十人十色の想いを繋ぐ

天乃「……私のことをもう少し理解しなさい」

若葉「あ、天乃……」

天乃「後は貴女の心のままに。ね。若葉」


明るい笑みだった

守りたいと思う大切な温もりだった

幸せそうな表情だった

失いたくないと思う時間だった

若葉「………っ」

千景の言葉を深く、思う

生半可な気持ちで千景は語っていないのだ

本当に、本気で

言葉はありのままに思いを紡いでいたのだ

どうなるのかを紡いでいたのだ

若葉「そう、か」

理解する。

改めて、辿り着く

久遠天乃という少女の世界に、乃木若葉という精霊はいないのだという真実に。


そこにいるのは乃木若葉という少女

それは、決して欠けてはいけない存在

若葉「……私はいつか、悲しませるだろう。苦しませるだろう、辛い思いをさせるだろう」

天乃「それは駄目よ」

若葉「薄氷の上でスキップするような感覚だな」

冗談めかして零し、若葉は笑みを浮かべると首を振る

若葉「だが、信じて待っていてくれないか。私は必ず戻る。必ず君の前に姿を見せる。君の想うすべてと共に」

天乃「っ」

天乃の左手を引き、余った左手を天乃の後頭部に添えて――キスをする

それは誓い

それは願い

それは呪い

それは勇気

それは……何よりも人を強くする。誰もが使える優しい魔法

若葉「私は天乃の幸福に恋をした。だから私はその幸せのために私の全てを尽くす」

天乃「…………」

若葉「それは無論、私自身の命に対してもだ。潰えたら、悲しませてしまうからな」

待ち続けるだけだった過去の親友、拠り所だったひなたの吐露した思いを思う

あの心の辛さ、痛み、苦しみ、それをまた愛しい人に味わわせてしまう罪悪感を抱き

しかし、その心労が報われるように努めると、【勇者】は誓う


1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流有(戦闘、ご褒美、キス)
・   犬吠埼樹:交流有(戦闘、一緒の休息)
・   結城友奈:交流有(戦闘)
・   東郷美森:交流有(戦闘)
・   三好夏凜:交流有(戦闘)
・   乃木若葉:交流有(戦闘、好きなのね、絶対命令、傍にいて欲しい存在、キス)
・   土居球子:交流有(戦闘)
・   白鳥歌野:交流有(戦闘)
・   藤森水都:交流有(戦闘)
・     郡千景:交流有(戦闘)
・ 伊集院沙織:交流有(戦闘、我慢)

・      九尾:交流無()
・      神樹:交流無()



8月3日目 終了時点

乃木園子との絆 54(高い)
犬吠埼風との絆 66(とても高い)
犬吠埼樹との絆 56(とても高い)
結城友奈との絆 70(かなり高い)
東郷美森との絆 56(とても高い)
三好夏凜との絆 94(かなり高い)
乃木若葉との絆 60(とても高い)
土居球子との絆 31(中々良い)
白鳥歌野との絆 26(中々良い)
藤森水都との絆 17(中々良い)
  郡千景との絆 20(中々良い)
   沙織との絆 78(かなり高い)
   九尾との絆 48(少し高い)
    神樹との絆 9(低い)

汚染度???%+有り


では、諸事情で中断しましたが、
キリが良いので改めて中断します

問題がなければ21時前には再開しますが
問題があればこのまま終了で、明日の通常時間からとなります

失礼しました





天乃「あ、夏凜――」

壁ドンッ!

天乃「っ」ビクッ

夏凜「私と若葉……どっちが良いわけ?」

天乃「それは……っ!?」グイッ

夏凜「悩むんだ……? なら悩まなくて良いように、身体に教えてやるわ」

天乃「やっ、こんな――」


杏「はいオッケーでーす!」パンパンッ

夏凜「ふぅ……ってぇ、何やらせんのよぉ!」ガンッ


では、もう少しだけ


√ 8月4日目 朝(病院) ※木曜日

01~10 若葉
11~20 
21~30 大赦
31~40 
41~50 友奈
51~60 
61~70 悪五郎
71~80 
81~90 若葉
91~00 九尾

↓1のコンマ  


※ぞろ目  若葉 特殊


√ 8月4日目 朝(病院) ※木曜日


夏の日差しの暑さを肌に感じて目を覚ますと、すでに若葉の姿はなかった

けれど、すぐ横のくぼみを撫でてみると

自分のものではなく、ほんの少し冷めた温もりを感じて、天乃は笑みを浮かべる

若葉が早起きなのか、自分が遅起きなのか

時計の針が、左開きで急角度に曲がっているのが見えて

考えを放棄する

やはり、【今まで通り】はもう出来ないのだと、認めてしまいそうで。

ぐっと体を起こそうとして気だるさを感じた天乃は

半身を起こすことすら諦めてベッドへと体を横倒して

額に手の甲を宛がう

見慣れてしまった白い天井が、嫌味のようにも思えた

天乃「歳をとると疲れが抜けにくくなるって聞くけど……まさにそれね」

早寝早起きが出来てしまうと言う

長所なのかどうか激しく論争繰り広げられそうなことすらできないのだから

老人以下ではないかと、天乃は笑う


天乃「穢れが薄れると言うよりも、どんどん蓄積していってる気さえする」

穢れが体を蝕んで、その結果体の動きが鈍っている

ともなれば、このまま進行すればもはや自分ひとりでは何一つできなくなるだろう

そんな自分でも、みんなは変わらずにいてくれるだろうか

今まで通りに

いや、今まで以上に親身になって力を貸してくれるだろうか

呼吸することしか出来なくなっても、ただ、生きているだけの【何か】になっても……

天乃「…………」

瞳を覆う手の甲がじんわりと熱を持つ

発熱しているのは、目頭か、手か……きっと、前者

彼女は言う

皆はきっと離れていくと

彼女が言う

皆はそんな【物】には興味はないと

だから思う

いっそ盛大に力を使って有意義に死んでしまえばいいと。

天乃「……ふざけないでよ」

誰にも届かない枯れた声が病室の中、寂しく溶けていく


1、精霊組 ※再安価
2、勇者組 ※再安価
3、イベント判定

↓2

※沙織や若葉達は精霊組


1、風
2、東郷
3、友奈
4、夏凜
5、樹

↓2


※夏凜のみ判定


01~10 許可 
11~20 不許可
21~30 許可
31~40 不許可
41~50 許可
51~60 不許可
61~70 許可
71~80 不許可
81~90 許可
91~00 不許可

↓1のコンマ  


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から

不許可進行、穢れ進行、バーテックス侵


夏凜は戦闘の影響で会えません

【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十輪目】
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【十輪目】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1499086961/l50)


では、次スレで再開していきます

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