【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【二輪目】 (1000)
このスレは安価で
久遠天乃は勇者である
結城友奈は勇者である
鷲尾須美は勇者である
乃木若葉は勇者である
久遠陽乃は……である?
を遊ぶゲーム形式なスレです
目的
・バーテックスの殲滅
安価
・コンマと選択肢を組み合わせた選択肢制
・選択肢に関しては、単発・連取(選択肢安価を2連続)は禁止
・投下開始から30分ほどは単発云々は気にせず進行
・判定に関しては、常に単発云々は気にしない
・イベント判定の場合は、当たったキャラからの交流
・交流キャラを選択した場合は、自分からの交流となります
日数
一ヶ月=2週間で進めていきます
【平日5日、休日2日の週7日】×2
能力
HP MP SP 防御 素早 射撃 格闘 回避 命中
この9個の能力でステータスを設定
HP:体力。0になると死亡。1/10以下で瀕死状態になり、全ステータスが1/3減少
MP:満開するために必要なポイント。HP以外のステータスが倍になる
防御:防御力。攻撃を受けた際の被ダメージ計算に用いる
素早:素早さ。行動優先順位に用いる
射撃:射撃技量。射撃技のダメージ底上げ
格闘:格闘技量。格闘技のダメージ底上げ
回避:回避力。回避力計算に用いる
命中:命中率。技の命中精度に用いる
※HPに関しては鷲尾ストーリーでは0=死になります
戦闘の計算
格闘ダメージ:格闘技量+技威力+コンマ-相手の防御力
射撃ダメージ:射撃技量+技威力+コンマ-相手の防御力
回避率:自分の回避-相手の命中。相手の命中率を回避が超えていれば回避率75%
命中率:自分の命中-相手の回避。相手の回避率を命中が超えていれば命中率100%
wiki→【http://www46.atwiki.jp/anka_yuyuyu/】 不定期更新 ※前周はこちらに
前スレ
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【一輪目】
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【一輪目】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1464699221/)
剣道しに来ていた子
通称三好様は、運転手曰く、勇者候補生
だから、風が否定したうまい話に半分ほど該当しているのだが
残念ながら、東郷が言うように相性が宜しくない
主に、三好様から天乃への相性が。
天乃「だとすると。私が東郷か友奈をもらうか。風と樹をセットでもらうかという感じかしら」
東郷「そこは私か友奈ちゃんではなく、二人にしてもらわないと……」
友奈「あれっ。問題そこなのかな……」
風「というか、久遠の場合相方いらなそうだけどね」
二人一組での行動は
あくまで危険回避のために取る団体行動の一環
ひとりで一個師団の戦力と言っても過言ではない天乃の場合
そんな警戒は必要ない気がしたのだ
天乃「風、私のこと嫌いなの?」
風「え、いや。そういうことじゃないから。ほんと。そうじゃないから!」
寂しげな目のまま問われた風は
慌てて否定して、苦笑い
天乃が冗談でそう言ってきているとは分かっていても
今にも泣き出しそうな目で見られるのは、弱かったのだ
天乃「ふふっ。そんな焦らなくても」
風「あーうん。いや、まぁ、ね」
天乃の楽しげな笑みにどきりとして
目をそらしながら、頬を掻く
人差し指に、汗がくっついた
友奈「とりあえず、どうしたらいいんだろう」
樹「昨日と同じところで止まっちゃいましたね」
全員で天乃を見て
内二名は密かに目を合わせないようにと逸らす
最終兵器にも等しい天乃
正直な話、誰とも組ませる必要はないが
組ませた人は絶対に安全だという保障が付くのだ
天乃「でも、真剣な話。私は組む必要がないのも事実なのよね」
九尾がいる
死神がいる
そして、須佐之男だっている
彼か彼女か不確かな鎧に包まれた武士は
勇者のようなものなのだ
東郷「それはそうなんですが」
けれども、やはり
絶対安全な領域をみすみす逃すのも惜しい。と
東郷は考えて
同じことを考えたそれぞれが、口を開く
友奈「東郷さんと組むのはどうですか?」
東郷「友奈ちゃんと組んでは?」
風「樹と組んでくれない?」
樹「お姉ちゃんと組んでもらえませんか?」
天乃「え、えっと」
友奈「あっ」
樹「う」
互いを思う、勇者部らしい衝突だった
呼ばれた名の中に
当然ではあるのだが、自分がいないことに苦笑した天乃は
ちらりと横目で見渡す
どうして? 東郷さん
友奈ちゃんこそ
樹……
お姉ちゃんっ
喧嘩にも満たない視線のやり取り
それはとても日常らしく
そしてなにより、天乃にとって愛らしいものにほかならなかった
1、じゃぁ、友奈と東郷かな
2、なら。風と樹かしら
3、それぞれを守り合いなさい。私は大丈夫だから
↓2
天乃「答えは出たみたいね」
東郷「先ぱ……」
天乃「それぞれを守り合いなさい。私は大丈夫だから」
さっきまでのいたずらのような寂しげな表情ではなく
剣道女子のような慢心でもなく
天乃は普通の笑みを浮かべて、いう
天乃「ね?」
友奈「危なかったらちゃんと。言ってください。絶対駆けつけます」
天乃「貴女もね」
樹「私も……ですね」
樹はも同じ事を言おうとしたのだろうが
駆けつけても足でまといになりそうだという不安からか
そうは言えずに、俯く
天乃「じゃぁ、そういうことでいいわね?」
風「そう……ね。大事な者は自分の手で守りましょ」
天乃「……私は大事じゃな――」
風「大事だから。超大事だから! その顔やめてッ!」
天乃「ふふっ。慌てる風ちゃん可愛い」
風「久遠の方が可愛いわよ。茶化すなッ!」
では、此処までとさせて頂きます
一スレ二ヶ月ペースですね
作中はひと月も経っていないのに
あすもできれば似たような時間から
三好様が来ないと風先輩がおもちゃになる
では初めて行きます
天乃「え?」
意地悪でもなく、そう口にすると
風「ぁ……っ」
風は顔を赤くして
天乃「っ」
天乃も釣られて頬を染めると
風「て、照れないでよ」
困ったように呟いて、目をそらす
天乃「そ、そうね。なんか。色々あって」
可愛いとか、綺麗だとか
言われてもお世辞だと流すことの多かった天乃だが
男子生徒からの告白の一件があるからか
思わず、真に受けてしまったのだ
東郷「……………」
東郷達もいる前で
恋人未満のような初々しさを感じさせる二人
友奈と樹は困惑して
東郷だけははっきりとわかって、天乃の腕を掴む
東郷「先輩」
天乃「っ」
東郷「そんな顔してたら余計に……ですよ」
天乃「そ、そう?」
東郷の耳打ちにはにかんで
天乃は照れくさそうに、苦笑する
風「っ」
あぁ、やっぱり
ドキドキする
意味わからない
それくらいに唐突だけれど、でも
なんというかすごく……
湧き上がってきているというよりも
心の奥底から強引に引き出されているような感覚を覚えて拳を握り締める
ほんのりと、汗を感じた
友奈「風先輩?」
風「ん。大丈夫。大丈夫だから」
友奈に言うように、
自分に言うように
風はそう言って、首を振る
風が何を思っているのか
なぜそうなっているのか
どうしたいのか
天乃は知らず――
1、ごめんなさい。からかいすぎたわ
2、ありがとう。素直に嬉しいわ
3、友奈の方が可愛いわ
4、樹の方が可愛いわ
5、沙織の方が可愛いわ
6、東郷の方が可愛いわ
7、風の方が可愛いわ
8、何も言わない
↓2
天乃「ごめんなさい。からかいすぎたわ」
風「アタシこそ。変なこといっちゃって」
ごめん。とは言わない
あれは紛れもなく本心で
それを否定するのは失礼な気がしたから
だから、風は困った笑を浮かべる
風「友奈も樹も東郷も。みんな可愛いわ」
天乃「そうね」
みんな平等にそう思っている
そんな言葉で自分の中の何かに蓋をして、押し込んで
風は息をつく
まだ……それはそんなに強くない
天乃「風ばかり、いじってちゃダメよね」
風「ほどほどにしなさい」
天乃「わかってるわよ。ふふっ」
天乃は天乃で、どうするべきかわからなくて
とりあえずはいつもどおりを演じようと
口走って、笑って、ごまかす
けれど
好きと言われたこと、
可愛いと言われたこと
相手からの好意的な言葉が
いつものようにうまく躱せなくなっていることに
天乃は戸惑っていた
それはきっと、あの男の子からの告白のせい
どんなに頑張っても
恐れられて、嫌われて、敵視されての自分が
そんな風に思われるはずはないという否定的観念が
それによって打ち砕かれたせい
自分みたいな人を好きになってしまうもの好きがいることを、知ってしまったせいだった
短いですが、ここまでとなります
もしかしたら、明日はお休みするかもしれません
やれれば、通常時間から
行為に気づいた瞬間、反応が可愛らしくなる負のスパイラル
少ししたら初めて行きます
友奈「え、えーっと……」
樹「………」
収束したようにも思えたが
天乃の普段と違った反応に驚いてしまった勇者部の空気もまた
普段のそれとは違ってしまっていて
ほんの少しばかり気まずい空気に困った友奈と樹が顔を見合わせる
風も風で少し様子がおかしい。ようにも思える
けれども、樹の記憶の上では
今朝方、さほど問題なかったはずだ
多少、無理している可能性もあるのだが……
それを心配して、風に目を向ける
風「……………」
天乃に目を合わせようとはしていないし
何処か、居心地が悪そうにしているようにも見える
けれど体調が悪いようには、見えない
誰が可愛いだの、あれが可愛いだの
そういった話で恥ずかしく思うのは、樹も良く分かっていた
樹自身、褒められて嬉しいことは嬉しいが
同時に恥ずかしいとも思ってしまうから
その点に関しては理解できるのである
けれども、風の様子がおかしくなったのは
天乃が自分のことが嫌いなのかどうかを聞いたあたりからだ
樹「……………」
もしかして。と、風を見る
いやいや。ないない。と、首を振る
でももしかしたらと考えて、
いやいや、それはないよね。と、眉をひそめる
けれど、樹はやっぱり……と風を見ると
視線に気付いていたのか、風と目があった
風「そ、それじゃ。話し合いも終わったし。帰ろっか。樹」
樹「え、帰るの?」
風「ほら。樹なんか言ってたでしょ。なんか、アレ。えーっと。とりあえず、ほらっ」
あからさまに忙しない
姉がそんな風に追い込まれると変なことになるのは重々承知の樹でさえ
それにはさすがに違和感を覚えた
というのも、
チラチラと天乃を見ているからだ
樹「あー……」
今朝は何も言ってない
昨夜は、ちょっと勇者部のことに関して話をしてはいたけれども
ちらりと天乃を見ると
天乃「? どうかした?」
困惑した様子で、首をかしげる
天乃「…………」
風の様子がおかしいこと
明らかに嘘をついてこの場から立ち去ろうとしていることに
天乃は言われずとも気づいていた
というのも
人生相談に恋愛相談
そんな他人の悩みを聞く立場として、人間観察的な点に優れているからだ
それでも天乃が困惑しているのは
今の風からあの電話をしていた時の東郷と似たようなものを感じているからだ
何かに干渉された様子はないのに
明らかに、別種のものを感じる
大人しく帰すべきなのかもしれないが
帰さずに様子を見ておく必要もあるかもしれない
1、何かあるなら、帰ったら?
2、そうね。私もお暇しようかしら
3、あら。せっかくだしもう少しいてもいいんじゃない?
4、何を焦ってるのよ。風
5、何も言わない
↓2
天乃は下手なことは言うまいと口を閉ざして
ただ、苦笑する
様子がおかしいと指摘することは簡単だ
けれども、それが悪影響にならないとも限らない
だから、何も言わず
その代わりに友奈が口を開く
友奈「そうだったんだ。ごめんね、樹ちゃん」
樹「ぁ、はいっ」
東郷「風先輩もありがとうございました」
友奈の気遣いに上乗せして、
東郷は風に声をかける
風の異変の理由を知っているわけではないが
何か起きていることだけは気づいていたからだ
風「いや、大丈夫……ごめん」
東郷「いえ……あ、風先輩」
風「?」
風「ん……」
天乃「?」
天乃には聞こえないようにしているかのように
東郷は風に何かを耳打ちする
大事な話があった
昨日、天乃がいない間に話したこともそうだが
それ以外にも、大事な話
東郷はお願いします。というと
もう一度ありがとうございましたと見送る
樹「すみません。お先に失礼します」
樹と風が抜けて、三人になった東郷の部屋で
友奈のため息が変に大きく聞こえた
天乃「あら、友奈も何かあるの?」
友奈「あ、いえ。私は……えへへっ。ごめんなさい」
気まずかったから漏れたため息
だとは言えず、友奈は笑ってごまかす
もちろん、それは失敗していたが
天乃も東郷も、それを指摘することはなかった
東郷「先輩は、どうしますか?」
天乃「そうね……」
風がおかしくなった一方で
東郷の様子には変化が見られない
友奈にしても同じく問題なし
気になることはある
けれども、ここに長居して情報が得られるのかどうか……
こういう、超常的なこと
いわゆる九尾管轄なことに関しては
個人で闇雲に答えを探すよりも
彼女に聞いてしまったほうが早くはある
もちろん、彼女が答えてくれるのなら……だが
1、そういえば、東郷も電話の時になにかなかった?
2、ねぇ。友奈に聞きたいんだけど。勇者のことを知らない男の子と付き合うことはできると思う?
3、私も帰ろうかしら
4、風。どうかしたのかしら
5、東郷。風と何を隠してるの?
↓2
天乃「私も帰ろうかしら」
友奈「久遠先輩も、ですか?」
天乃「あら、今生の別れっていうわけでもないのに……」
声に寂しさを感じて
天乃はちょっとばかり困った顔で友奈を見ると
天乃「また明日は学校だから」
と、なだめるような優しい声を出す
友奈「それは、そうなんですけど……」
友奈は東郷と風が隠した一部に関して知ってはいるが
ほかの部分に関しては何も知らない
だから、自分にも聞こえないように耳打ちをしたのが、気になった
それを執拗に追求するような性格ではないし
そうすることが必要なんだろうと割り切るつもりではあるのだが
それでも
勇者部内においての隠し事が増えてきていることが、心配だった
天乃「?」
友奈「昨日は会えなくて、今日はあえて。なんだか。曜日感覚が狂っちゃったのかな……」
バレバレの嘘をついて
友奈は笑う
それが嘘だと東郷も天乃もわからないほど馬鹿ではない
けれども
それを信じてあげないほど、馬鹿でもなかった
天乃「今日は日曜日よ。友奈。手のひらにでも曜日書いておたら?」
冗談ぽくそう言って天乃は友奈の小さくやわらかい手を掴み
日曜日。と、指で書いて苦笑する
友奈「だ、大丈夫です」
天乃「あら。そう。じゃぁ毎日メールする?」
友奈「それも……あ、でも。メールは。したいかも知れないです」
照れくさそうに笑う友奈に、時間が作れたらねと答えて
東郷を一瞥して、天乃は部屋を出ていく
……気になること、ばかりだ
√ 4月8日目 夕(自宅) ※日曜日
九尾、友奈、死神、沙織、風、樹、東郷との交流が可能です
1、九尾
2、死神
3、風
4、樹
5、友奈
6、東郷
7、沙織
8、イベント判定
↓2
※3~7は電話
天乃「さて……」
自宅に戻って、夕方
樹達に用事があったのかなかったのか定かではないけれど
少なくとも、天乃に用事はなかった
もしも、あの男子生徒に連絡先を教えていたら
電話したり、メールしたり
もしかしたら再デートしてたりするのかな。と
雲のように消えやすい想像して、端末を手に取る
天乃「時間があったらねって、言っちゃったわけだし」
それがなくても
何があったわけでもないのに
あんな寂しそうな顔をされては
かまってあげるほかない
天乃「……子犬ね」
やわらかい手の感触を思い出して、苦笑する
強ち、それは間違いでもないかもしれない
友奈『は、はいっ』
天乃「大丈夫?」
友奈『大丈夫です。こんなに直ぐ。連絡してくれるとは思わなくて』
友奈の嬉しそうな声というか
舞い上がっちゃってるような声というか
憧れの先輩と連絡先交換して
帰宅後すぐに連絡来て慌ててるみたいな反応に
天乃は眉をひそめる
天乃「私たち、知り合いよね? 部の仲間で、二年の付き合いよね?」
友奈『そう、ですけど……』
天乃「じゃあ、なんでそんな初々しい反応してるのよ」
友奈『こ、これは。その。あははっ』
図星になると笑ってしまう
友奈の悪い癖だ
もちろん、常日頃から笑っているから
一概に図星を突かれた。とも言い切れないのだけれども
友奈『その……』
言葉に詰まる
そのつまり方から、天乃は言いたくても言えないというより
言うべきかどうか迷っているであろうことは、直ぐにわかった
電話に出た直後にへんな対応だったのも
こんなタイミングで来るなんて。と
驚いていたからかもしれないとまで想像して、ちらっと、外を見る
普段、夕焼けの空は
今はどんよりとした灰色
夜には雨が降るかどうか。といった不確かな感じだった
友奈『久遠先輩は、今の勇者部についてどう思いますか?』
天乃「ん?」
友奈『へ、変な意味じゃないんですけど……』
1、ちょっと、纏まりがないかな
2、貴女の嘘。風と樹の嘘、東郷と風の隠し事。色々とあるわよね
3、誰か退部するの? それとも、入部?
4、私は好きよ。良くも悪くも日常を感じられる場所だから
5、どうしたのよ。貴女がそんな悩みなんて
↓2
天乃「そうねぇ」
一息、置く
その数秒の合間にも友奈が緊張していることが
天乃には手に取るように分かった
目の前にいるわけではないけれど
電子的なノイズの聞こえる声だけれど
密かに聞こえる友奈の吐息が、それを伝えてくるから
けれど
天乃「貴女の嘘。風と樹の嘘、東郷と風の隠し事。色々とあるわよね」
はっきりと、言う
もっとも、自分の隠し事に関しては言わなかったが
友奈『全部、わかってたんですか?』
天乃「まぁ、内容はともかく。隠し事してるんだろうなっていうのはね」
伊達に相談役をやっているわけではないのだ
友奈『そう、ですよね』
ホッとしたような、声
それは天乃が思っていた通りの返答をくれたからなのか
それとも、その肩の荷が降りたのか
そこまではっきりとしたことは分からない
友奈『久遠先輩、だもんね……』
いつもの敬語とは違った口調は
安心感からくる独り言
嬉しそうなその声に反応しないで待っていると
友奈は端末の奥で何かをして
私は。と、切り出した
友奈『少し、怖いです』
天乃「というと?」
友奈『悩んだら相談。なのに……みんな。ばらばらで。隠し事してて。私も……隠し事しちゃってて』
ここでもしも天乃がああ言わなかったら
自分はこんなこと言わなかっただろうと思いながら、友奈は言う
友奈『纏まりが、ないような気がするんです』
では、此処までとさせて頂きます
明日はできればお昼頃からとなる予定です
風「勇者部の学校での日々……スクールデイズ。始まるわよ」
三好様「私の登場まであと少しのはずなんだけど……長くない?」
樹「隠しキャラですから」
三好様「えっ」
では、少しずつ初めて行きます
天乃「そっか。貴女はそう感じるのね」
友奈「……はい」
悩んでいるからと言って
必ず相談しなければいけないのかと言えば
別にそんなことはない
むしろ、そんな強制をするのは返って相手を苦しめるだけで、辛い思いをさせるだけで
なんで相談しないのか。という疑問を抱くことは多々あるが
それはやはり、相談しにくいことだったり
自分の知り合いは相談するに足る人物ではないことがある
学生である天乃に進路相談が回ってくるのはやはり、そういった理由もあってのことだ
夢見がちな学生にとって
現実を叩きつけてくる両親はもちろんのこと、身の丈にあったこと。を推奨してくる教師は
とてもではないが相談相手にならないからだ
もっとも
この勇者部に関しては、そういった理由があるとも言い難いのだが
天乃「貴女はみんなが嘘ついていたり、隠し事をしていることに気づいてるわけだ」
友奈『全部はわからないです。でも、東郷さんと風先輩。風先輩と樹ちゃん。何かあるんだろうな。とは……』
天乃「うん……」
まぁ、
あそこまであからさまな態度を取っておいて
気づかない方が無理があるだろう
友奈のあの場でのフォローはいい対応だった。と頷く
友奈『それに、私達も。久遠先輩に隠してることがあって』
天乃「私に?」
友奈『はい』
友奈達の隠し事
友奈個人ではなく、天乃を除いた勇者部全員の隠し事
それは、友奈の独断で話していいことなのだろうか……
1、待って。それはみんなに話していいか聞いてから教えてちょうだい
2、へぇ? 何を隠してるの?
3、それは置いておくとして。とりあえず、東郷に関して何か気づいた点はない?
4、友奈個人では、何もないの?
↓2
天乃「へぇ? 何を隠してるの?」
友奈『その。実は入部希望がありまして』
天乃「うん」
友奈『それが、その理由が風先輩曰く不純な純情だそうで』
要領を得ない優奈のしどろもどろな発言に
天野は小首をかしげる
入部希望があった時点で、副部長である自分が何も知らないことが気になったが
それを置いておいたにしても
不純かつ純情なその入部希望の理由というのが気になって仕方がない
というか、この問題において、そこは避けて通れないことだ
天乃「んー。女の子ばかりの部活だから、男の子が仲良くなりたくて希望してるとか?」
友奈『えっ?』
天乃「え?」
友奈『その……ほとんど正解です』
天乃「えっ」
女の子しかいない部活
不純な希望理由となれば
そこはやはり、男の子が希望者で
その理由はやっぱり、仲良くなりたいから。というのだろうという
かなり大雑把な推測しかしなかった天乃は
思わずオウム返しをして、咳払い
天乃「それなら断るでしょ。風が」
と、続ける
けれど
友奈『普通はそうなんですけど、なんでも。不特定多数が相手ではないので』
天乃「それが不純な純情ってわけね」
友奈『そうなんです。それで、久遠先輩だけに知らせてない理由がそれです』
天乃「それ?」
友奈『はい』
天乃「えっと……ん?」
友奈『仲良くなりたいのが、久遠先輩なんです』
ある程度予想はついていた
そんな理由があり、自分だけが知らされていない
それはつまり、その動機の対象には自分が含まれているんだろう。と
けれど、不特定多数の中の一人だと考えていた天乃は
それが自分ひとりということに、思わず思考を停止させた
天乃「なんで?」
友奈『なんでと言われても……』
天乃「だって、私――」
普段なら、他人に好きになってもらえるような人じゃない。と言っていただろう
けれど、つい先日
男子生徒から告白をされたことで、天乃は【好きになってもらえるのかもしれない】と思い始めていて
そんなことは言えなくて、言葉に詰まった
友奈『余りにも思いが強いので、風先輩は絶対にダメ。って強く言えないみたいなんです』
天乃「それを、みんなに相談したんでしょう?」
友奈『はい。その結果、久遠先輩に話すべきなんじゃないか。と検討中です』
もう、私が言っちゃったんですけど。と
友奈は苦笑した
天乃「私に聞いて何を言えって言うのよ……」
いたずらのような追求がアダになった。と
今更思っても遅く
どうすべきかと悩む天乃に
友奈はさらに言う
友奈『久遠先輩がその人と仲良くなれるのかどうか。です』
天乃「わ、私はなろうと思えばなれるだろうけど……」
十中八九
仲良くなりたいのは友人としてではなく
あの男子生徒のように恋人としてだ。と思っているせいか
僅かに、声が震える
友奈『久遠先輩?』
その異変に気がついたのか、
友奈は少し心配そうに呼ぶ
1、どうせ、恋人みたいな感じの仲良くなりたい。なんでしょう?
2、なんで……私、そんな他人に好かれるような人間じゃないわ
3、友奈も。私のこと好きなの?
4、友奈は、勇者のことを知らない普通の子と恋愛関係になれるの?
↓2
天乃「なんで……」
友奈『?』
天乃「だって。私、そんな他人に好かれるような人間じゃないわ」
首を横に振っている姿が、友奈には見えた
ただ、謙遜しているだけではないと
友奈には分かった
きっと、自分ではなくても分かると思い
けれども、今どうにかできるのは自分だけだと、息を呑む
一歩間違えれば大変なことになるかもしれない緊張感
それを胸の内に留めて、友奈は言う
友奈『そんなことないですよ。絶対にないです』
なぜそんな風に考えるようになったのか
友奈は知らない
だから、下手なことは、言えない
いや、いう必要なんてない
友奈「だって、私は好きです。みんなが好きです。久遠先輩のこと……大好きですから」
友奈「久遠先輩がどうして、そう考えるようになっちゃったのか。私は知らないです」
知らないで言うのは無責任かも知れない
けれど
今、自分を含めた周りが久遠天乃という人物に対して
どう思っているのかは言わなければいけないと、友奈は思った
友奈「でも、久遠先輩がそう考えるようになった時と、今では全然違うと思います」
恋愛相談、進路相談
それを難なくこなすことができる大人っぽさを持ちながら
風や樹をからかうような子供っぽさを併せ持つ天乃は
まだ子供である自分たちにとっては過程であり指標であり、目標だった
友奈「だから」
天乃が完璧な大人であるかどうかは不確かだけれども
こうなりたいという憧れがあった
強くて、明るくて、可愛い時もあれば、格好いい時もあって
とても優しいのに、厳しいことも言って。けれど、そのまま捨てずに、ちゃんとどうするべきかを教えてくれる久遠天乃という人は
先生よりも、先生で
両親と同じくらいには、頼りたいと思える人
友奈「私は好きです。きっと、みんなも。でも……」
天乃「…………」
友奈「そう思わない人が居るかも知れない。嫌いだって言う人がいるかも知れない」
でも、しかし、だけれども
少なくとも
友奈「私、結城友奈は久遠先輩のことが大好きです」
そう。なのだから
友奈「久遠先輩が好かれるような人間じゃないなんてことは――ないッ!」
言い切れるのだ
友奈『……です』
電話であることを今更思い出して
もしも言葉が全部届いてなかったらと思って息を飲む
全部本心で、大事なことではあるものの
聞こえなかったからもう一度と言われて言える程の自信はない
いや、勇気はない
今だってそう。恥ずかしくて顔が真っ赤なのだから
この気持ちが入部希望の男子生徒と同じような気持ちではないことはわかりきっている
けれども
恋愛上の好きを知ったばかりで
友人上の好きとの境目が存在しない友奈にとっては
照れくさかった
1、そっか……そうなのね
2、ありがとう。友奈
3、私も友奈のことが好きよ。みんなのことももちろん……そっか。私。好きになってもらえる人間なのね
4、そこまで強く否定してくれるなんて思わなかった。そこまで強く思って貰えるなんて。思わなかった
↓2
天乃「そこまで強く否定してくれるなんて思わなかった……」
友奈『?』
天乃「そこまで強く思って貰えるなんて。思わなかった」
友奈『ぁ……』
天乃は、友奈が目の前にいなくてよかったと思った
それは、自分が今まで見せたことがない表情をしているから
感情を晒してしまっているからだ
友奈『久遠先輩……』
友奈は、自分がそばにいられないことを悔やんだ
それは、声から感じ取れる感情に応えてあげられないから
その体に、心に身を持って示してあげることができないからだ
天乃「嬉しいわ。ほんと……うん。嬉しい」
友奈『っ』
普段聞くことのできない声は
普段見ることのできない姿の片鱗を友奈の脳裏に浮かばせる
けれども、靄のかかった映像は不鮮明すぎて
天乃「ありがと」
だからこそ
美化されているのかも分からない脳裏の久遠天乃はとても愛らしくて
抱きしめたいと思った。その目元の涙を拭ってあげたいと思った
本当に泣いているのかもわからないのに、友奈は強く。そう思った
この人が好きだと、この人を守りたいと。この人の助けになりたいと
心の奥底から、全身までその感情に満ち満ちていた
友奈『久遠先輩』
天乃「?」
友奈『その、私。本当に。好きですから』
何を言っているんだろうと、思う
けれど同時に、友奈は何もおかしくないと思う
好きな人に好きという
うどんが好きだからうどんが好きだという
そこに恥らいは必要か否か
どう考えても必要ない
だからそう、自分か天乃にそういうことにおいても
恥ずかしいことなんて何一つないと、
高鳴り続ける胸の鼓動を感じながら、思う
それを思うのは結城友奈ではないかもしれないが。
少なくとも、言っているのは結城友奈だった
友奈『だから。その。久遠先輩がもしあれなら。その相談は……私が乗ります』
天乃「え、あ、うん……あり、がとう?」
東郷や風に感じた何か
その一部を感じつつも、
乱された思考のまま、天乃はそう答えた
√ 4月8日目 夜(自宅) ※日曜日
九尾、友奈、死神、沙織、風、樹、東郷との交流が可能です
1、九尾
2、死神
3、風
4、樹
5、友奈
6、東郷
7、沙織
8、イベント判定
↓2
※3~7は電話
樹『はい、犬吠埼です』
天乃「こんばんは。こんな時間に悪いわね」
樹『久遠先輩』
良い子は寝る時間の少し前
けれでも、樹の声はまったく寝そうにない元気良さが感じられた
天乃「……用事は?」
樹『ぁ、えっと。それに関しては問題なく』
天乃「そう。良かった」
樹『は、はい』
天乃なら、そんな用事なんて嘘であろうことには気づいていると樹は信じて答える
用事=風の様子だと、思ったからだ
樹『あの、久遠先輩』
天乃「うん?」
樹『ここ最近、お姉ちゃんと何かありましたか?』
天乃「なにか?」
樹『はい。なんでもいいんですが……』
樹達がいるときにも色々と有りはしたけど
わざわざそう聞いてくるのだから
樹が知らないところで何かあったのかが聞きたいのだろうけど……
天乃「そうね。男の子が作ってる変なランキングの話をしたわ」
樹『あー……』
なんとなく知っている
そんな樹の反応にそれは違うのかと息をつく
天乃「それ以外は特にないわね」
あとは、樹が知ってるくらいしかない
樹『そうですか……』
考え込むような語尾の伸び
風の様子がおかしい理由を考えているのだろうが
樹が未だに原因を求めているあたり
普段の生活で
その原因となりそうなことはなかったのかもしれない
なら、どうして風の様子はおかしくなったのか
そう考えるよりも、
風と共通したものを感じた東郷と友奈について考えるべきだろう
二人にも同じものを感じた
その時、何があって、どうしていたのか。だ
天乃「…………」
そう考えてみると
どう考えても、原因は自分だ
天乃と話しているとき、話したあと
その時に様子がおかしくなったというか
東郷はなにやら危ないことを口走ったし
友奈は好きだと連呼していたし
風はなんだか乙女チックだったし
それとは少し違うけれど、そんな姿を見たことがある
それは決まって、恋愛相談の時だ
女の子が好きな男子について話すとき
男の子が好きな女子について話すとき
あのデートの時の、男子生徒
そう、誰か好きな人について話している時だったり
言うのは少し気はずかしいが、
好きな人と話している時の反応
天乃「…………」
それと、あの三人の反応は似ているのだ
友奈に至っては、
顔を見てはいないが、話してる内容に関しては
全くと言っていいほどに同じだ
つまり、
自分が原因なのではないか。と、天乃は行き着いた思考を手にとった
1、えっと。樹は私のこと。どういう意味で好き?
2、風は何か言ってた?
3、これ以上このことは考えるのやめましょ
4、ねぇ樹。樹は勇者と無関係な男の子と付き合えると思う?
↓2
天乃「風は何か言ってた?」
樹『えっと』
何か言っていたのかどうかだけ言えば
それはイエス。なのだが
はたしてそれは言ってもいいことなのかどうかと考えると
残念ながら
樹『気になるようなことは、特に』
言えるようなことではない
自分がよくわからないとか
すごいドキドキしたとか
女の子を好きになるとかありえないしとか
結構気になることを連発していたが
もちろん、言えない
天乃「そう……」
気になることは。という前置きが非常に気になったのだが
そこは、友奈の件でのヤブヘビがあったからか
手を出す気にはなれなかった
天乃「でも、今は落ち着いているのよね?」
樹『はい。今は大丈夫です』
天乃「そう。ならいいわ」
本当にいいのだろうか?
そう思う反面、東郷は時間を置いてあった時は普通だったから
きっと平気だろう。と、思う
天乃「…………」
友奈の想いは強かった
あれはきっと、友奈が宥める為に言ったことではない
そもそも、そんな器用な子でもない
なら、あれは本当のことなのだろうと受け止めて、
風達も同様に自分を好きでいてくれるのは嬉しいけれど
恋愛的な意味なら困るなぁ。と、
少しでも自体の緊迫感を薄れさせようと、苦笑した
1日のまとめ
・ 乃木園子:交流無()
・ 犬吠埼風:交流有(???、二人一組)
・ 犬吠埼樹:交流有(ふうについて、二人一組)
・ 結城友奈:交流有(???、二人一組、好かれる人間ではない)
・ 東郷美森:交流有(???、デートしたこと、体で?、二人一組)
・ 伊集院沙織:交流有()
・ 九尾:交流無()
・ 死神:交流無()
・ 稲狐:交流無()
・ 神樹:交流無()
4月8日目終了時点
乃木園子との絆 25(中々良い)
犬吠埼風との絆 36(中々良い)
犬吠埼樹との絆 28(中々良い)
結城友奈との絆 37(中々良い)
東郷三森との絆 35(中々良い)
三好様との絆 -5(とても低い)
沙織との絆 34(中々良い)
九尾との絆 29(中々良い)
死神との絆 29(中々良い)
稲狐との絆 27(中々良い)
神樹との絆 5(低い)
では、ここから5月の一日目に移行します
勇者部入部希望の男子生徒に関して、どうするかを決めます
√ 5月1日目 朝(自宅) ※月曜日
天乃「……はぁ」
あの日以降、友奈達が照れたり
若干距離を取るようなことは少しばかりあるものの
それ以上のことはないし、言葉もない
二人きりが極力避けられることは、あるのだけども
樹だけは、そんなことはない
あと、沙織も
けれども、天乃がため息をついたのはそれが理由と言うわけではない
というのも、
一週間ほど待ってもらっている入部希望者への答えの期限なのだ
天乃「どうするべきかのかしらね。ほんと」
九尾「普通に考えれば、断るべきじゃろうな」
天乃「それは」
九尾「理由が理由じゃ。断ることは容易いじゃろうて。そもそも、人手が欲しいのならば伊集院の小娘にしておけ。得はないが損もない」
得はないのね……
天乃「けど、やる事はちゃんとやってくれるらしいし、力仕事もあるから手があると嬉しいことも事実なの」
九尾「その褒美に、主様と近づくわけじゃな」
天乃「そんな言い方しないで」
九尾「事実じゃろう」
確かにそうなのだけども
改めてそう言われても困るのだ
正直に言わなくても、恥ずかしいから
九尾「もっとも、学校は人間関係を学ぶためにあるのも事実。小僧を招くというのならば、反対はせぬぞ」
天乃「………」
さて、時間はそうない
どうするべきか……
1、樹ちゃんのタロット占い
2、勇者部に相談
3、沙織に相談
4、運転手に相談
5、九尾にちゃんとした意見をもらう
6、入部を許可する
7、とりあえず、学校へ (イベント判定)
↓2
天乃「決めたわ」
九尾「ほう?」
天乃「入部を許可するわ」
九尾「二ヶ月後の夏祭りのためにかや?」
天乃「いや、付き合うとかではなく、必要なのは事実だから」
九尾の茶化す言葉に
天乃ははっきりと言って、困った笑みを浮かべる
男子生徒を加えたことで
部活がどうなるのかはわからないけれど
少なくとも、友奈達が無視したりなんだりと
排除しようとすることはないはずだ
九尾「まぁ、良いじゃろう。毒になりそうならば妾が排除するが」
天乃「一応、貴女顧問みたいな立場に居るものね」
九尾「くふふっ。妾にできぬことなどあるまいよ。主様への好意など、妾が喰ってやる」
天乃「あまりいじめないでね」
九尾の少し怖い言い方に不安を覚えつつ笑うと
九尾は小僧しだいじゃな。と、口にして姿を消す
天乃「本当に大丈夫かしら」
男子生徒の心配よりも
自分の心配をするべきなのだが……
そこで男子生徒を優先してしまうのが、天乃という人間だ
天乃「私を好きになってくれる人はいる……ね」
友奈のあの言葉は本当に嬉しかった
あれがなにかに惑わされていたがゆえの言葉でなければ。だけれども
それがどっちだったのかは
友奈に聞く勇気はない
天乃「とにかく、答えてあげるためにも、学校行かなきゃね」
「おはようございます。久遠様」
天乃「おはよう。いつも悪いわね」
「いえ、お気になさらず」
いつも家を出る時間
運転手である女性は通常通りに待っていて
天乃が出てくると、決まった挨拶をし
基本的に、車内では大赦からの連絡事項を伝えてくる
それが彼女の本来の仕事で
送り迎えはメインの仕事ではないらしい
それは
東郷の送り迎えがデイサービスという代謝の息が掛かっているとは言えど
しっかりとしたそれ専門のところであることから伺える
もっとも、彼女に聞くまで知らなかったのだが
「久遠様、本日ですが。結城様、東郷様のクラスメイトとして、三好様が転入致します」
天乃「三好様って、あの子よね? なんで?」
「仲が悪すぎるからです。あれではチームプレーはもちろん、仲間同士での小競り合いで重大なミスさえ起こりかねません」
強い口調でそう言うと、
と、言うのが大赦からの言葉です。と、付け加える
天乃「貴女のではなく?」
「はい」
天乃「結構力がこもっていたのに?」
「えっと……あはは。ここだけの話。三好様は私の妹みたいなものなので。仲良くしていただきたいんです」
運転手の女性――自称、夢路瞳は
そう言って笑うと、もちろん、本当の姉妹ではありませんが。と
前置きをした上で、続ける
「下手なんですよ。人と仲良くするのが。柔軟な対応をすることが」
天乃「……情状酌量の余地はあると?」
「三好様は熱する前の竹です。ただ押すだけでは折れるだけです。どうか、存分に熱してあげてください」
運転手はそう言って、つきましたよ。と、車を止める
別れ際にもう一度だけ、お願いしますねと、呟いた
√ 5月1日目 昼(学校) ※月曜日
男子生徒(二年生 友奈東郷と同クラス)と接触することが可能です。接触しますか?
1、する
2、しない
↓2
√ 5月1日目 昼(学校) ※月曜日
友奈、沙織、風、樹、東郷、三好様との交流が可能です
1、風
2、樹
3、友奈
4、東郷
5、沙織
6、三好様
7、イベント判定
8、勇者部部室
↓2
天乃「ねぇ」
「は、はい――ぁっ、ダメです先輩」
天乃「え、ちょっ」
教室に行き、
入口のそばにいた女の子に声をかける
女の子は天乃だと気づいた瞬間
教室の外へと押し出して、ドアを閉めた
天乃「なんなの?」
「い、今はちょっと……先輩は来ちゃダメかと」
天乃「?」
「その、転入生が来たんですけど。先輩に会いに行くと言って聞いてくれなくて」
天乃「それで?」
「今、友奈……ちゃんと東郷さんが話してるんです。その子と」
つまるところ、
今の教室は天乃が立ち入っていいような状態ではなく
残念なことに険悪な空気に包まれている。ということだ
運転手の女性には悪いが
とてもではないが
仲良くなれそうにはない
天乃ではなく。それ以外が
天乃「でも、困ったわ。私は東郷に用事があるのよ」
「後にはできませんか?」
天乃「んー」
友奈たちのクラスメイトも必死なのだろう
その表情には
天乃を足止めする申し訳なさと
いかせた時に起こる何かの心配と恐れを感じる
三好様は熱する前の竹だと言われていたが
果たしてその程度の柔らかさなのかどうか
あれだけ打ちのめしてあげたにも関わらず
めげずに立ち向かおうとするその精神力は称賛に値するのだが
しかし
その姿勢には反省の色が見えないのが痛い
教室の中からは
三好様と思しき声と、
友奈の久遠先輩の体を考えて。という制止が聞こえる
本当
体もだけれど、心も考えて欲しい
そう思いつつ、ため息をつく
……!
>>113からリスタートします
失礼しました
天乃「なるほど。それで私を追い出したのね」
友奈たちのクラスメイトは頼まれたわけではないが
大騒ぎになったりするかもしれないと心配して
気をきかせてくれたらしい
その気持ちは優しくていいことだと思うし
本来ならありがたいことなのだが
今回に関しては、
申し訳ないけれども、ありがた迷惑というものに分類されてしまう
というのも
天乃「けど、私もその子に用事があるのよ。三好さんに」
「三好さん……名前。知ってたんですか?」
天乃「うん。まぁね」
もちろん、
彼女から聞いたわけではないし
全くと言っていいほど近しい人間ではない
関係を示すので一番正しいのが、敵。というくらいには
「でも……」
教室から聞こえる声に、
女の子は不安そうな表情を浮かべながら
天乃へと視線を落とすと
心配そうに目をそらす
天乃の実力派知っている。体育館での戦いっぷりは見せてもらったから
けれども、ここは教室だ
あんな超人的な身体能力が発揮できるほど
いいフィールドではない
天乃「大丈夫よ。心配しないで」
「っ」
天乃の優しげな顔に、
女の子は小さく頷いて、ドアを開ける
騒がしかった声が止み、クラスの中の目が、二人に向く
教師である奇跡にかけた一部の少年少女の瞳が絶望に落ち
三好様に怯えていた一部の瞳には、三好様明日欠席かな。という心配が見えて
友奈と東郷にはどうして。という困惑の色が浮かぶ
そして
三好様は嬉しそうに、にやりと笑う
その瞳は歓喜に燃える炎が見えた
「はっ。いいタイミングでくるじゃない。さすが私。持ってるわ」
天乃「謝礼金を持ってきたって? ごめんなさい。要らないわ」
「んなこと言ってないわよ! 運がいいって言ったの!」
天乃「運が悪いから、私が来ちゃったんだけどね」
「ふんっ。あんたが来なきゃ私があんたの教室に行ってたわよ」
天乃「確かに、転入初日で迷子にならずに済んだのは運がいいわ。おめでとうっ」
「あんた、馬鹿にしてるでしょ」
天乃「うん」
「おい」
「ったく……」
天乃の挑発するような態度
一気に上がったボルテージを抑えるためにため息をつき、目を瞑る
今までも、落ち着くためにしてきたこと
夏凜「まだ名乗ってなかったわね。私は三好夏凜よ」
天乃「煮干夏凜?」
夏凜「あんたぶっとば――ってぇ、人の煮干食べてんじゃないわよっ!」
天乃「あっ」
夏凜「あっ。じゃないわよこの泥棒!」
近くの机に置いてあった煮干を食べていた天乃に怒鳴りつけて
夏凜は袋ごと奪い取ると、睨みつける
天乃「仲間を食べられて怒るなんて、やっぱりにぼ――」
夏凜「違うわよっ!」
天乃「忙しないわね。カルシウムとってる?」
夏凜「とってるわよ!」
天乃「共食いで?」
夏凜「ぬぁぁぁぁっ!」
落ち着くことなど、無理である
夏凜「み・よ・し・か・り・ん!!」
天乃「いっぱい区切る名前なのね。珍しい」
夏凜「あんたほんと、ふざけんなッ!」
天乃「一旦、落ち着いて深呼吸したら?」
夏凜「うっさい!」
本当に心配そうな天乃の表情を無視して怒鳴りつけ
結局、言われたとおり深呼吸
激しい動悸を抑えるために胸に手をあてがって、深く息を吐く
完全に天乃のペースだった
三好夏凜という存在への恐怖に囚われかけていた教室の空気は
完全に、取り壊されている
夏凜「改めて言うわよ。私は三好夏凜」
天乃「三好夏凜。ね……」
夏凜「そうよ。ちゃんとわか――」
天乃「にぼっしーって呼んでいい?」
夏凜「やめて」
天乃「結構いいあそ……あだ名だと思ったんだけど」
夏凜「聞こえてんだけど」
天乃「耳良し夏凜ちゃんの名は伊達じゃないわね」
夏凜「瞳ぃッ!」
頭を抱えて運転手の名前を叫ぶと
夏凜は激しく頭を振って
何度も何かをつぶやき、天乃に背を向けて
天を仰いで、大きく頷く
夏凜「おーけー、分かった。真面目な話。したい。いい?」
天乃「私、英語はちょっと」
夏凜「怒るわよ。ほんと」
天乃「かっかりん?」
夏凜「ほんと。勘弁して……」
1、にぼっしーって呼んでいいなら
2、わかったわ。場所を変えましょう
3、リベンジマッチなら受けないわよ。理由がないわ
4、貴女の話に興味はないわ。でも、あなたには興味がある。入部しなさい。勇者部に
5、私、女の子との交際はちょっと
↓2
では、此処までとさせて頂きます
あすもできればお昼頃から
三好様等も順次WIKIに入れていく予定です
夏凜「もういや!」ギュッ
瞳「どうしたんですか、一体」
夏凜「久遠天乃がほんっと、性格最悪なのよ!」グスッ
瞳(あぁ……玩具にされたんですね。でも、それは気に入られてる証拠ですよ。頑張ってください)ナデナデ
では、本日も少しずつ初めて行きます
天乃「わかったわ。場所を変えましょう」
夏凜「初めからそうしなさいよ」
呆れ混じりにいう夏凜に笑みを向け
ついてこようとしている二人に、向き直る
天乃「友奈、東郷」
友奈「は、はい」
東郷「先輩、危険です」
天乃「大丈夫よ。待ってなさい」
二人が聞いても平気な話なら
夏凜は二人を連れて教室に行こうとしたはずだ
けれど、そうしなかったから二人に止められていたと考えるのが妥当だし
それなら、ここで同行を許可できるはずがない
友奈「でも」
天乃「お願い友奈。おとなしくしてて」
友奈「……分かり、ました」
不安そうな二人を置いて
二人きりになれる勇者部の部室へと向かう
その間、夏凜は一言も話すことなく
天乃もとりあえずは。黙ってついていき
何事もなく、たどり着いた
夏凜「まずは、あんたに言っておくことがあるわ」
天乃「うん」
夏凜「油断はしたけど。したけど!」
強く、前置きをして
夏凜は嫌そうな顔になるのを押さえ込みながら
ぎゅっと握りこぶしを作る
夏凜「あれは……あんたの勝ち。だったわ。素直に負けを認めてあげる」
どう聞いても素直ではなく
認めているはずなのに、上から目線で
天乃「認め……てる? 素直……? えっ?」
天乃はわざとらしく目を見開いて、口元を手で覆うと
視線を泳がせて、口を開く
夏凜「そのムカつく顔やめて! 」
天乃「新しいおもちゃって色んな遊び方を試したくなるわよね」
夏凜「なんでそれを今言うのよ……いや。良い。言わなくていい。そのにやにやで想像つくから」
天乃「あら、そう。残念」
天乃「それで? 本題は?」
夏凜「あぁ、そう。あんたと私で選手交代。お疲れ様ってのが本題よ」
天乃「え?」
夏凜「だから、あんたは勇者として戦う必要はないって言ってんの」
今度こそ
おふざけでもなんでもなく、天乃の表情は驚きに歪む
夏凜と選手交代?
勇者として戦う必要がない?
何を言っているのか、まったくもって理解が追いつかないからだ
明らかに、悪手だ
明らかに、間違っている
けれど……
夏凜「端末出しなさい。久遠天乃。没収するわ」
彼女は仕返しのような不真面目さはない
本当に
そうするよう言われて、ここに来ていた
天乃「ちょっとまって夏凜。それ、本気で言ってるの?」
夏凜「本気よ。上っていうか、大赦からの命令」
夏凜はそう言うと
その指示が書かれたメールを表示させた端末を、
天乃に差し向ける
天乃「こんなのって」
そこには確かに、そうしろという指示が書かれていた
夏凜「悔しいけど、あんたの方が力が上なのは事実」
だから、自分ひとりで担うのではなく、
ほかの勇者と共闘しなければいけなくなった
完成形勇者には程遠いと評されてしまった
夏凜「でも、あんたをこのまま運用していくのは不安だから、退かせたいのよ」
大赦という存在は、どこまでも愚かだった
いや、もちろん。自己保身のためにそのような選択をしているわけではないけれど
しかしながら、
大赦が有する勇者の中で最強の能力を誇る乃木園子をもってして
【「量産品の束では、一級品に砕かれるだけ」】と、戦うのを拒むほどの能力を有する天乃を
人々を守る神樹様を守る役目から退けるのは得策ではない
けれども、彼らとて
それを理解していないわけではない――と、天乃は思いたかった
自分の力は神樹をも傷つける最強にして最凶
存続の要、終わりの導き手であることは重々承知しているし
それを恐れてであることは、理解に容易いからだ
天乃「貴女たちで、無事に勝つ事ができるの?」
夏凜「……まぁ、勝てるわよ」
天乃「無事に?」
神樹が無事であること
それは前提であり、絶対不動の勝利条件
ゆえに、その【無事に】という言葉に含まれているのは
それが隠しているのは、神樹様が。という言葉ではない
夏凜「……多少。被害が出る可能性は考えておいて欲しいわ」
その言葉が勇者であると考え、夏凜は答える
もちろん、極力無事に返すつもりだ
それは、天乃を退かせるにあたって、絶対になくてはならない条件だと
大赦ではさんざん言われたこと
けれど、絶対に無事という保証は無理だ
なにせ、自分は彼女よりも劣っているのだから
三好春信という兄に対してそうだったように
自分は、久遠天乃に劣った存在なのだから
だから、夏凜は引いて答えた
このくらいは妥協してもらいたいと
正直に、被害が出る可能性があると。答えた
天乃「……そう」
被害は出るかもしれないが
君がいるよりは安心して戦ってもらえるんだ。と
大赦の人間の言葉が透けて見えた
夏凜「久遠天乃。だから……」
天乃「そう……そうね。私は。そうよね」
好きになってくれる人が居るとしても
誰しもに好かれるわけではない
どれだけ頑張っても、尽くしても
大赦という組織は自分のことを好ましく思っていないのだと
天乃は改めて知って、苦笑する
夏凜「?」
天乃「端末……だったかしら」
夏凜「そう。私達もだけど。あんたもそれがなければ勇者にはなれないでしょ」
1、勇者として私に勝てれば渡してあげるわ
2、嫌よ。危ない時に助けてあげられないわ
3、じゃぁ。はい。まさか、代替の端末はくれるんでしょうね
4、そんなに私が嫌いなんて。ほんとう。嬉しい話だわ
5、ねぇ。貴女も私が嫌い?
↓2
天乃は端末を手にしながらも
夏凜に手渡すことはなかった
天乃「嫌よ。危ない時に助けてあげられないわ」
夏凜にとっては意地悪にも思えるが
そんなことは微塵もない
これは、久遠天乃という人間の優しさでしかない
何の企みもなく、ただ純粋に
濾過することもできないほどに澄んだ水のように、不純物のない言葉
時に子供、時に大人
つい先ほどまで子供だった彼女は、少なくとも今は。子供ではない
天乃「メールは、そう返しておいてくれるかしら」
夏凜「簡単に言ってくれるじゃない」
天乃「直接出向かず、人に言わせる命令よりは簡単には言ってないつもりだけど」
大赦への皮肉
彼女が浮かべる笑みは、害敵と認識している三好夏凜でさえ
口惜しいことに、高評価せざるを得ない
けれども、今浮かべている笑みは
とても悲しげで、とても遠くを見ているようで
彼女が年上であることを、思い出させるほどに大人びたものがあった
天乃「人の顔、そんなにまじまじと見ないでくれる?」
夏凜「ぁ、いや……ごめん」
彼女の言葉にハッとして、目をそらす
数秒間の記憶はないが
映像は脳裏にしっかりとこびりついている
それはまるで写真のように、鮮明で
天乃「素直に謝られると。調子が狂うのだけど」
夏凜「うっさいわね……文句が多いのよ。あんたは」
天乃が本当に害敵であるのかどうか
判断を鈍らせる一ページが、生まれた
三好夏凜にとって、久遠天乃という少女は
自分のプライドをもの凄く傷つけてくれた
とてもありがたいお人である
もちろん、それは本心で思っているわけではない
やじうまどもの目の前で組み伏せられ、大声でごめんなさいと言わされた屈辱
あれは言葉にできる程ちっぽけなものではないからだ
が、同居人から言われた
自業自得ですからね。という言葉には、悔しいけれども同意せざるを得ない
要するに、
天乃が夏凜を嫌っていい理由はあるが
夏凜が天乃を嫌っていい理由にはならない
それでも嫌うことはできるが、どれだけ心の小さい人なんですかと言われては
容易に嫌うこともできなかった
だからこそ、部室に来てそうそう、前回のことから話した
自分の中で、あの出来事を収めるために
自分の色眼鏡を取り外すために
そうして見えた彼女は子供だった
しかし同時に大人だった
夏凜「まぁ。説得なんか出来そうもないし、そう送るけど……」
夏凜は天乃から目を離して、
端末譲渡にかんして拒否されたことを綴る
それに付け加えるように改行二回
久遠天乃に関してと副題を入力する
夏凜「……………」
関わるのが不得手だったせいもあるのだが。
他人とさほど関わりを持たなかった夏凜には彼女をどう評価するべきかわからなかった
ただ
そう
ただたんに
今知っている彼女を言葉にするのであれば
あれは、なんだろうか
夏凜「……優しさ?」
いや、ちがう。それと似ているが、そうではない
夏凜は言葉とともに打ち込んだものを消し、副題も消して
任務の結果だけを、報告する
今はまだ、夏凜は知らなすぎたのだ
√ 5月1日目 昼(学校) ※月曜日
友奈、沙織、風、樹、東郷、夏凜との交流が可能です
1、風
2、樹
3、友奈
4、東郷
5、沙織
6、夏凜
7、男子生徒
8、イベント判定
9、勇者部部室
↓2
※友奈、風、樹、夏凜、東郷は部室です
※個人名を選択することで、単独交流が可能になります
失礼しました
>>109でお昼をやっていますので、今回は夕方の交流になります
夏凜「結城友奈達にはもう言ってあるけど、私も勇者として戦うわ」
風「んーそれはいいけど……」
風はそう言いながら、
ちらっと東郷へと目を向ける
彼女はもうすでに説明をされているはずなのだが
東郷「戦力が増えるのはありがたいことだけれど、敵が仲間になるのは遠慮したいわ」
不満たっぷりにそう言った
風のとなりに居る樹は
一体何が起きているのかと、天乃に視線を送る
東郷「そう、いったはずよ」
夏凜「私は有事に仲間割れ起こすほど、腐った性格ではないと思ってるんだけど」
東郷「友奈ちゃんを傷つけて、こんな状態の先輩を相手取って決闘したのに?」
夏凜「それに関しては、申し訳なかったと思ってるわよ……実力が知りたかったから。つい」
友奈「えっと、その。東郷さん」
東郷「友奈ちゃん。これはちゃんと言っておくべきことよ」
友奈「けど……」
さすがに言い過ぎだと、友奈は思った
けれど、自分の中にも【なぜか】燻る何かがあって
東郷の言葉に同意したい。
三好夏凜に向けて言いたい言葉がある。
それが引っ張り出されてしまいそうで
それゆえの痛みに胸元に手をあてがう
それはとても、不快な感覚だった
夏凜「もし仮に私がそんなクズなのなら。神樹様が勇者に選んでない」
東郷「……そうね。でも、貴女がしたことは変わらない。あれが、酷い事だったことに変わりはない」
夏凜「そうよ。その点は否定しない。認める」
三好夏凜は、バツが悪そうにそう言って軽く頭を下げる
大赦に言われたからでも、瞳に言われたからでもなく
この点に関して、非があることをちゃんと分かっているからだ
東郷美森が自分を敵だと認識していること
自分の加入に関して快く受け入れることができていないこと
それは全て自分の招いたことだし
自分のした行動はそうなっても仕方がないと思っている
夏凜「けど。それでも認めてもらわなきゃ困るのよ。最前線で戦うなら。騙し撃ちなんてできないでしょ?」
東郷「戦力の一つとして考えるのが嫌なの。三好さん。貴女に任せて貴女が裏切って離脱したりしたら、戦局が混乱するから」
夏凜「っ」
それは確かにそうだ
そうなのだけれども、
なぜ、そこまで言われなければいけないのかと。夏凜は俯く
確かに信頼に足る人間ではないことは承知している
けれど、自分でもあの行動はくいているし反省もしている
あの件に関しては教室でも何度か謝罪した
なのに、どうして
夏凜「そんな、私が嫌い?」
東郷「口にしないと、分からない?」
東郷の瞳はとても冷たかった
それははっきりと嫌いであることを物語り
三好夏凜という存在の拒絶であると、夏凜は気づいた
夏凜「風。あん……風は?」
風「正直、東郷の言い分には同意な部分もある。悪いけど、あんなことされたあとだからさ」
風は険悪な雰囲気全開の東郷に困惑していたが
軽く頭を掻くと、感情の不確かな迷いのある目を夏凜に向けそう言う
夏凜「そう……樹。だっけ?」
樹「は、はい」
夏凜「どう思う?」
悲しげな夏凜の雰囲気
以前見たときは力強かった瞳にも、弱々しさが見えて
疲れているようにも、見える
樹はそれをしっかりと視界に収めると、口を開いた
樹「正直に言えば、信頼はできないです……けど。拒絶するだけでは。何も変わらない。と、思います」
友奈を傷つけたこと
車椅子に乗っているような天乃と決闘したこと
そのあたりのせいで、さすがの樹にも
おいそれと信頼はできなかった
悲しそうな彼女には悪いのだけれども
その点は自業自得であることを理解して欲しいと思ったし、
三好夏凜がすでにそれを理解していることは、
先程から分かっていたから特に言わなかった
けれど、それならば。と、樹は考えたのだ
ただただ否定するだけでは何も変わらない
他人なんて最初から信頼できているわけではないのだから
とりあえずは警戒しながらでも受け入れて
少しずつ、見ていくべきではないか。と
夏凜「優しいわね。ぁ……樹は」
夏凜はそう言って微笑を浮かべると、
友奈へと、目を向けた
友奈「私はもう、言ったとおりかな。バーテックスと戦うために、力はいくらあってもいいと思う」
それに、
ここまで反省しているのだから
認めてあげてもいいのではないかと思っている
あの決闘に関してだって、一応は申し込まれて受けて行ったこと
天乃との決闘に関しても同様だ
要するに、夏凜一人の責任ではないと、友奈は考えているのだ
東郷「友奈ちゃんは、甘いわ」
友奈「でも、凄く反省してるのはわかるから……」
変わらず厳しい目を向ける東郷に
友奈は困った顔で、言う
天乃「じゃぁ、次は私の意見の番かしら?」
夏凜「まぁ……そうね」
1、人手は大いにこした事はないし、認めるわ
2、まず、勘違いしないで欲しいのだけど。夏凜がしたのは決闘であって不意打ちでも騙し討ちでもないわ
3、命を預けるのが怖いんでしょう? だったらまず、勇者部としてボランティアに励んでもらいましょう
4、正直、友奈を傷つけた点に関して、許せないのも事実よ
5、顧問の九尾先生。いかがでしょうか
↓2
夏凜の目が向けられ
全員の意識が向けられた天乃は
その橙色の瞳に幕を下ろして、深く息をつく
誰しもが自分の言葉に耳を傾けていること
それをしっかりと、留めて
天乃「まず勘違いしないで欲しいのだけど。夏凜がしたのは決闘であって不意打ちでも騙し討ちでもないわ」
それは。三好夏凜を信じるか否かでも
その処遇を決めることでもなく
どちらかと言えば、東郷たちに向けての言葉―説得―だった
天乃「信じるとか、信じないとか。それってちょっとおかしくない?」
裏切ったのなら、それは信じられない人だ
なんの前触れもなく襲いかかってきたのなら
それは背中を預けるに値しない人だ
けれども、三好夏凜はどちらでもなく
しっかりと決闘を申し込んで来ている
ちょっと変な言い方にはなるが、騎士道精神に通ずるものを、持っていると言えなくもない
天乃「それに。決闘して、負けて。仲間になりたいと申し込んできた人はライバルではあるかもしれないけれど。敵ではないと思うわ」
風「…………」
樹「っ」
友奈「そう、だよね……」
天乃の言葉は間違っていない
いや、それどころかとても正しい言葉だった
もちろん、ハンデ付きということもあったが
それでも、決闘を申請し受諾した時点で
そんなハンデは重々承知の上だったはずで
双方合意であるのならば、なんら不信感のない正々堂々としたものだったはずだ
信じる信じないという話は飛躍しすぎているが
もし、それを考えるのであれば
その正々堂々とした姿勢に敬意を評し、仲間にする程度には信頼してあげてもいいはずだ
天乃は、東郷を見る
東郷もまた、天乃を見る
天乃の瞳はとても優しく、表情は穏やかだった
天乃「と。思うのだけど。貴女はどこで夏凜を敵だと言いたいの?」
けれども、その声は間違いを正すほどには厳しいものだった
東郷「それ、は」
残念ながら、
本当に正しいと思っていない限り
あるいは、もはや言葉の通じない狂人でない限り
はたまた、恋愛の話題でない限り
久遠天乃という人間を説き伏せることは至難の業である
彼女は間違った言葉を受け止めた上で
しっかりと、曲がり道を作って正しい方向に導く
そう。要するに
彼女が自分の意見を行った上でどうしてそう思ったのかを聞いてきた時点で
久遠天乃にとって、東郷美森の考えは誤りなのだ
しかし、一概にそう決め付けず
なぜそう思うのか
どうしてそう思ったのかを理解しようとする
その始まりに立たされた時点で。東郷美森は敗北を悟った
なぜなら、天乃の考えが間違っていないと。すでに、認めてしまっていたからだ
東郷「友奈ちゃんを、傷つけたから……」
天乃「……あ。そうね。じゃぁ敵で」
夏凜「!」
天乃「なんて。まぁ……そこに関しては決闘だったし。制裁加えたし」
天乃はにやりと笑うと
もうしないわよね。と、夏凜に言う
夏凜「死にたくないし」
夏凜は本音をこぼす
不自由な体であの戦闘能力なのだ
目的が鎮圧だの殲滅だのだった場合、
確実に死んでいたとさえ思う夏凜は、総毛立った体を抱いて頷く
風「トラウマになってない?」
天乃「ふふんっ」
樹「ほ、誇るところ……なのかな」
風「ないない」
大人の意見から、子供の表情へと一転させた天乃の自慢げな表情に
風は困ったように笑って
樹も釣られてそうだよね。と、首をかしげる
場を支配していた陰鬱で重苦しくて仕方がない空気を取り払うような天乃の表情に、
友奈と夏凜は、揃って目を向けた
天乃「夢に出てくる?」
夏凜「来ないわよ」
天乃「あの時、私を組み伏せる夢くらいは見るでしょ」
夏凜「……まぁ。そう出来たらよかった。とは。思うけど」
天乃「叶わない夢を見るだけなのって。切ないわよね」
夏凜「叶えるわよ! 絶対、押し倒してやるんだから!」
かわいそうな人を見るような目と声に
夏凜は事実ゆえに顔を赤くして怒鳴る
夏凜「いつか……やってやるんだから」
いつ出来るのかは分からないが。
追い抜くことができなくとも
そう、せめて追いつくことくらいはしたい
夏凜の表情からそんな気持ちを受け取って
天乃は小さく笑う
風のない室内では髪は揺れず、胸だけが弾む
天乃「楽しみね」
夏凜「余裕そうなのが、ほんと……まったく」
いらつく。という言葉は封じ込めて、目を背ける
夏凜は天乃という人間を理解するほど情報を持っていない
けれど、今持っている情報から選ぶのであれば、
久遠天乃は三好夏凜にとってのライバルだった
かくして、三好夏凜は希望通りに勇者部への仮入部が認められ……
なんていう訳もなく
天乃によって半ば強引に入部させられた夏凜は、勇者部の一員となった
風「――あ、それで」
夏凜の件が片付いたそばから、問題は掘り起こされる
起こされるといっても
それは今日という日にそびえ立っていた問題なのだけれども。
風「男子部員の方はどうするのよ」
天乃「うん。入部させることにしたわ」
天乃はそんな問題を軽い口調で蹴り出した
東郷「なっ」
友奈「えっ?」
しれっという天乃を見つめ、二人は驚きを口にする
天乃ならそう言うかも知れないという可能性を考えていなかったわけではない
けれど
それでも驚かないことはできなかった
友奈「入部、させちゃうんですか?」
天乃「その口ぶりだと、入部させたくない。みたいに聞こえるんだけど」
もちろん、女の子だけの部活に
男の子を入部させるということに関しての抵抗が有るのは仕方がないことだ
今まで何気なく出来ていたことも
ちょっとばかり気を使う必要が出てくるし
なにより、それがなくとも勇者に関係することが話せなくなる
けrど、友奈が嫌そうに言うのが気になって目を向けると
友奈自身が自分の言葉に驚いているのが、見えた
天乃「友奈?」
友奈「あ、その……なんで。だろ」
分からない
なぜ、こんなにも新しく男子生徒が入部してくることが嫌なのか
友奈「ぁ」
――嫌だ
いやだ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
友奈「痛っ」
天乃「友奈……? ちょっと、ねぇ」
目の前で、赤色の髪が激しく揺れる
困惑し、狂ったように
理解の追いつかない何かが心の奥底から湧き上がってくる感覚に、友奈は
乱れることさえ厭わず、頭を振る
――奪われたくない
拒絶の中の言葉
自分のものか、何かのものか
不確かで、不鮮明な想い
それは激しく揺れる頭の中で微動だにすることなく、存在し続けた
友奈の動きが止まって
全員が困惑と驚きの中に静止している中で
小柄な体はその場に膝を打って、天乃のもとに倒れこむ
天乃「ちょっ……」
体の暖かさは損なわれていない
生きているが故の胸の動きも滞りない
けれど、友奈は気を失っていた
何が起きたのかとみなが互いに顔を見合わせる
そして
東郷「三好さんも入ったので、入部させる必要はないかと」
東郷美森は冷静に
されど、友奈と同様の思いを胸に、言う
東郷「先輩。考え直してはいただけませんか?」
天乃「いまはそれどころじゃ――」
東郷「友奈ちゃんは大丈夫です。ちゃんと、呼吸しているので」
東郷は友奈を一瞥すると
さほど関係がないような表情で言う
問題は友奈よりも男子生徒の一件だとでも。言うかのように
それにはさすがに
風と樹も違和感を禁じ得なかった
夏凜だけは知らずに困惑していたが
けれども、異様な気配
嫌な不快感を感じ、冷や汗を流す
天乃「貴女」
東郷「……先輩の件なので、先輩が決めてくださいとは言いましたが。やっぱり、再考願います」
天乃「なんなのよ……」
ついさっきまでの友奈からも感じていた嫌な感覚
それを東郷からも感じて、天乃は眉をひそめる
風、友奈、東郷
みんながおかしくなった際に感じたものと、それは嫌なことに。同じだった
1、貴女、どうしたの?
2、そんなことよりも友奈でしょう?
3、わかったわ。考える
4、分かった。人も増えたし取りやめにする……それでいいでしょう?
5、なにがそんなに気に入らないの?
↓2
天乃「分かった。人も増えたし取りやめにする……それでいいでしょう?」
それ以外に選択肢はなかった
まるで、何かに取り憑かれたかのような東郷は
その言葉を聞くと、安堵して胸をなで下ろす
嫌な雰囲気は、まだ消えない
東郷「はい。そうしていただけると助かります」
風「ちょっと、東郷大丈夫?」
東郷「? なにも問題はありません」
東郷は笑う
今の東郷にとって、友奈が気を失っていることなど
些細な問題でしかない
けれど
それがまだ、問題であるだけましなのかもしれない
腕の中に抱く少女が寝息を立てる中で
その大親友に位置する東郷を見つめて、天乃は思う
これは一体何ごとか。と
今までの軽い違和感とは全く違う
彼女は東郷であって東郷ではない
その評価が正しいかとさえ思うほどに
普段の雰囲気とはまるで違う禍々しさを感じる
しかし、それがいつ。どこから湧き出したのかが分からない
――私が関係しているのは確実なんだろうけど
そう思いながら、友奈の頭を撫でる
友奈も同様の状況に陥っていた
拒否反応を示したと言えるであろう乱れ方の後、気を失ってしまったが
その間、確かに似通った不快感を感じた
その発端はどちらも、【男子生徒の入部】であることも間違いはない
ならば、
友奈と東郷は生粋の男嫌いで
それはもう猛り狂うほどに男という存在を生理的に受け付けられないのだろうか
――それはないわ
それならそもそも、共学であるこの中学校に通うことはできない
園子達が通っていた神樹館
その別系列の女子中学校に通っているはずだし
今までさんざん、ボランティアで男の子と接してきている
では――
夏凜「久遠天乃」
天乃「ん?」
夏凜「とりあえず、解散したほうがいいんじゃないの?」
一理ある
けれど、ひとつ問題がある
1、風。悪いけれど男の子への返事お願いできる?
2、じゃぁ、解散しましょうか。私は男の子に直接返事するから。みんな先に帰っていいわよ
3、じゃぁ、夏凜ちゃんに最初の任務。男の子に入部お断りをお願いできる?
↓2
天乃「風。悪いけれど、男の子への返事お願いできる?」
風「ん。あぁ、うん。大丈夫。任せて。その代わり、友奈よろしく」
天乃「ええ」
風はなぜ自分に返事を委ねるのかを察して頷くと
任せられそうにない東郷を一瞥してから
困ったように、友奈のことを依頼する
残念ながら、今の東郷はダメだ
樹「お姉ちゃんが残るなら私も待ってる」
風「ありがと……じゃぁ、取る会えず今日は解散。いい?」
夏凜「異議なし」
東郷「はい」
二人が頷いたのを確認し、出口に背を向けてから
天乃はもう一度、風によろしく。と告げる
風「いいってことよ。そもそも、部長はアタシなんだから」
本当、部長を押し付けて良かった。と
天乃は意地悪ながら、思った
気を失ったままの友奈を抱き上げて
車椅子の上の自分の上で、赤子のように抱きとめながら息をつく
夏凜「ふたり分とか……なんで私が」
友奈をだくことで手一杯なために
車椅子を押してくれる心優しい部員の苦言に苦笑すると
夏凜は貸しにはしないでおくわ。と、呟く
天乃には今日、色々と迷惑をかけられたというか
嫌なことをされたが
十二分に助けてはもらった
もしも天乃が抜けていたら、あの場での説得はおそらく、できなかった
そう思っての、判断
夏凜「しかし、なんだったのよあれ」
天乃「東郷?」
夏凜「そ。不気味としか言いようがなかった」
夏凜「あの目、あんたも見たとは思うけど。ぐちゃぐちゃだった」
そう言って体が震えたのか
車椅子の微かな揺れが伝わって、けれど
天乃は振り向かずに、頷く
正確に見たわけではないが、言われてみれば確かにそうだったとは思う
異常性の方が強く
そちらばかりに気を取られていたけれど……
夏凜「何を考えてるのか良く解らないっていうか」
――あれはなんて言えばいいのか
階段の昇降機に天乃の車椅子を固定し、下ろしながら
夏凜は言葉を探す
天乃「――重ね塗りした絵の具。みたいな?」
夏凜「そう。そんな感じ」
天乃の助け舟に同意して
昇降機が順調に天乃を下ろしていくのを見て
階段を駆け下りる
人気のない学校は少々不気味ではあるが
彼女ほどではなかった
夏凜「あんた、どうせ瞳に送ってもらうんでしょ?」
天乃「うん」
夏凜「なら、最後まで付き合うわ。友奈はどうするの? 気を失ったまま家に返す?」
目を覚ましてくれれば助かるのだけど……
そこは疲れて寝てしまったと誤魔化すか
1、天乃のところで預かる
2、夏凜・瞳に預ける
3、結城家に帰す
↓2
では、此処までとさせて頂きます
明日はできれば通常時間から
友奈「すぅすぅ……」
友奈(先輩の家、先輩の家、先輩の家……)
天乃「起きてるでしょ。動悸が伝わってきてる」
友奈「!」ビクッ
では、初めて行きます
沙織に関しては身長等誤差がありますので、時間があるときに修正しますが
概要的には概ねあのとおりです。おそらく
靴を履き替えて合流するまでの間
どうするべきかと考える
自分の家で預かるのも吝かではないけれど
まず、自分で世話をしてあげられない点
次の、自分のせいでこうなっている可能性が高いことから、却下
では、次に夏凜の家はどうかと考えて
そこもやはり、煩わせるわけにはいかない
夏凜「おまた――」
天乃「夏凜。友奈は家に送りましょう」
致命傷を負っているわけではない
ならば、ただ寝ているのだと……偽ることにはなるが
そういうことにして送っておくのがいいかもしれない
そう考えた天乃の選択に、夏凜はならそれで。と
反論もせずに、頷く
天乃「貴女、なんでそんな忠実というか、従順というか……素直に従うの?」
純粋な疑問だった
正直、自覚した上であれだけ意地悪しているというのは
いささかどうかと思わないこともないのだが
天乃は夏凜に好かれているとは微塵も思っていない
もっとも、天乃の場合は友奈に告白されるまで
それよりも前に男子生徒からの告白を聞くまで
自分という人間が何をどうしたところで好かれるとは思っていなかったのだけれど。
それはさておいて
嫌いな相手の選択に反論せず、
ただお願いねと言っただけで車椅子を押してくれている夏凜には違和感があった
夏凜「別に、反抗する意味がなさそうってだけの話」
天乃「意味があればするの?」
夏凜「それが意にそぐわないなら。少なくとも。今ここであんたのことを車椅子から蹴落としたり、置き去りにする理由はない」
それに。と夏凜は付け加えると
夏凜「結城友奈の処遇に関しては同意せざるを得ない。あんたが原因だろうし、こっちは迷惑。だから異議なし」
口早にそう言って、校門の近くに居る運転手へと目を向けた
天乃「そう……」
夏凜は別に、何も考えていないわけではない
多少、反抗的な言葉遣いはあるにしても
だからといって、俗に言う脳筋とかいう存在ではない
魚の頭は偉大なのである
――のかは別にして
天乃「ありがとね」
天乃は穏やかな声でいう
夏凜「ん?」
唐突な礼に、夏凜は疑問符を浮かべる
つい数秒までの会話で感謝されるような言葉は身に覚えがなかったからだ
その言葉にしていない疑問に答えるように
天乃は友奈の頭を撫でる手を休めて、振り返る
天乃「部室で、貴女。空気読んでくれたじゃない」
夏凜「あぁ――いや、あれは別にそういうわけじゃない」
夕日を受ける鮮やかな桃色の髪
子供っぽさのある顔立ちながら
一年違いとは思えないほどの経験を感じさせる大人びた雰囲気
それらが織り成す一時の感謝の笑み
大嫌いな夏凜でも尊く思いかねないそれを前に
夏凜は少し言葉を間延びさせてから、否定する
嘘はついてない
けれど、否定したかったのは天乃の言葉だけではなく
僅かに目をそらして、夏凜は続ける
夏凜「話すことは話したと思ったからよ。他意はない」
東郷美森の様子がおかしかったからとか
結城友奈が気を失ったからとか
そんな、弱者を気にする精神は持ち合わせていないと
そう【偽って】夏凜はいつも出てくる建前を口にする
――悪い、癖だ
夏凜「だから別に、感謝とかいらない」
1、それでも助かったのは事実だし。今も助かってるのは事実だから
2、そう……そっか。うん。じゃぁ、そういうことにしておくわ
3、天邪鬼と天邪鬼って。仲良く出来そうね
4、そっか。ごめんね
↓2
頑張っても報われてこなかった天乃は、表情や声から本音を汲み取る技術を
好かれたいという思いゆえに自然と身につけた
本当の気持ちがわかれば、本当にして欲しいことが分かれば
好きになってくれるのかもしれないと。
三ノ輪銀が死ぬまで抱いていた、そんな子供らしい無自覚な思いで会得した力ゆえに
久遠天乃が、そんな夏凜の気持ちを察することができるのかどうか。といえば
答えは確実にイエスだ
けれども、だからと言って
その場では【そういうことにしておく】のが穏便な言葉だと分かっているからといって
天乃がその通りにするかと言えば、残念ながら効果率でノーとなる
天乃「それでも助かったのは事実だし。今も助かってるのは事実だから」
夏凜「っ」
彼女はそういう人間なのだ
空気が読めるはずで
人の気持ちや考えもある程度なら分かるはずなのに
時折、そうやって誤ちを犯す
夏凜「ば、バカじゃないのっ?」
もっとも、それがどのような意味で誤ちであるかは、語る意味もないかも知れないが。
車椅子に座っていなければ
きっと、夏凜の表情を見ることができたはずだ
茶化すカードを手に入れたとにやりと笑う天乃に対し
夕日のせいだ。と、ありふれた返しが返って来ていたはずだ
けれども。
天乃はそうできない
友奈を抱いているのも相まって、天乃には夏凜の感情を茶化すことで有耶無耶にすることはできない
ましてや、今ここで三好夏凜に植え付けた久遠天乃という人間を
やっぱりうざいやつ。などというものにすり替えることなど出来はしない
天乃「馬鹿でいいわよ。素直であることがそうなのならね」
夏凜「………ったく」
何も言えなかった
言えばボロが出る
言えば感情がこぼれ落ちる
多分きっと
――大嫌い
心の中で、建前を思う
今、口腔の弾薬庫にはその建前とは反対の本音が詰められている
だから夏凜は何も言わなかった
否、言えるわけがなかった
では、此処までとさせて頂きます
あすもできれば似たような時間から
穏便=関係平行
では、短いですが少しだけ
「結城様……?」
夏凜「ちょっと面倒なことがあったのよ。でも、寝てるだけだから」
「そう……じゃ、なくて。そうですか。では、まず結城様のご自宅に向かいますね」
運転手の夢路瞳は夏凜とそれだけ話すと
天乃の腕の中にやや強引に収められた友奈を受け取って、助手席に寝かせる
後部座席でも構わないのだけれども
二人が話しやすくするための配慮
もっとも、それが喜ばれるかどうかは勘定に入っていないが
夏凜「久遠天乃。あんた、どうなるのよ」
「私がサポートします。とりあえず、後ろからですよ。夏凜ちゃ……三好様。お手伝いお願いしますね」
夏凜「言いにくいならいつも通りでいいわよ。別に」
呆れ顔でそういった夏凜は、
少し渋い顔をしながら、瞳の言うとおりに、車椅子を車の後ろに回す
「スロープ出すのでもうちょっと後ろで」
夏凜「はいはい……あんた。いっつもこんな面倒事やってんのね」
天乃「面倒な女でごめんね?」
夏凜「変な意味に聞こえるからやめ……なくていいや。その通りだった」
天乃「えっ!?」
夏凜「驚かれると私が驚愕するっての」
そんな軽口を叩きながら、思う
今まで、そんな相手なんかいなかった
つくろうとも思わなかった……わけじゃない
自分をよそにわいわいと遊ぶ同い年の女の子や男の子を見て
バカみたい。と、揶揄しながら
本当は、自分も混ぜて欲しいとどこかで思っていた
でも、どうしても上手く行かなかったし
初手を失敗して、怖がられたり、変な目で見られたりで
会話にまで、たどり着くことも殆どなかった
それが、小学生
中学生に至っては、同級生なんて……
天乃「夏凜」
夏凜「ん?」
天乃「なんだかんだ面倒な女に付き合う貴女って。不幸になりそうね」
夏凜「車から降ろすわよ」
……あ。こいつ同級生じゃなかった
何はともあれ
自分が今まで見ていた立場――とはやはり異なるのだろうが
誰かと軽口を叩き合うことができるというのは
思った以上に、面白みはなくて
期待していたほど、幸福感もない
けれど、少なくとも
目の先が壁だったり、天井だったりするよりは
寂しくないなと。夏凜は苦笑する
天乃「?」
夏凜「何でもないわよ。別に」
天乃「急に笑うから、笑い茸でも食べたのかと」
夏凜「んなもの食べてないし機会もない。あったら小うるさいあんたの口に突っ込んでるわよ」
天乃「あ、ごめんなさい。それは許して」
夏凜「?」
天乃「何でもないわ。別に。うん」
夏凜「あ、そう」
きのこが嫌いなんじゃないかと思ったのだが
そこをつつくと、おそらく毒キノコの炎症だとかなんだとかが軽いと言いたくなるほど
酷い重症を負いそうな気がした夏凜は好奇心を押さえ込んで、素っ気無く返す
向こうがからかってくるからといって
自分が思うほど、仲がいいわけではないのだ
そう。少なくとも
結城友奈をひどく傷つけた自分と、
この年下に見える年上との関係は決して良くないのだと。夏凜はため息をつく
――良いわけがない
夏凜「……………」
夏凜が黙ると天乃も黙る
瞳は運転に集中しているふりをして、静聴を決め込んでいる
車内の空気は、ちょっとばかり重く感じた
天乃「……………」
危うくきのこ嫌いがバレるところだった。と
目を逸した天乃は窓の外を見る
いつも見る景色
これが、当たり前に見ている景色
たった一人で見る――
夏凜「…………」
いや、今日は違う
隣にはしかめっ面の下級生がいる
天乃はその視線がチラチラと自分に向けられていることに気づき
けれども目が合わないようにと、目を瞑る
――言いたいことがあるなら。言えばいいのに
今日は少しばかりからかい過ぎたから
怒っているのなら謝るからと。天乃の口は、空気だけを吐く
1、何か言いたいことがあるの?
2、今日は、悪かったわね。からかいすぎたわ
3、貴女がからかいやすいからいけないのよ
4、またいつか。本気を出し合いましょ。勇者の力を使って
5、……先輩って呼んでもいいのよ? フルネーム。面倒じゃない?
6、何も言わない
↓2
では、此処までとさせて頂きます
あすもできれば通常時間から
天乃「今日は、悪かったわね。からかいすぎたわ」
夏凜「あんた――」
天乃「まぁ多分。明日も同じことするかもしれないから前もってごめんねっ」
夏凜「……きのこ突っ込んでやるわ」
天乃「ちょ、それは。ほんと。嫌いなのっ! ごめんなさいっ」
では、初めて行きます
天乃「夏凜」
夏凜「ん?」
天乃「今日は、悪かったわね。からかいすぎたわ」
色々と柵もあったし
本当ならもっと真面目に対応すべきだったとは思う
けれど、天乃はそんな空気はあまり好きじゃない
いや、もちろん。真面目になれないわけではないが
なりたくない真面目な空気というものが、あった
もっとも
それがなければからかわなかったのかと聞かれると、少々困るけれど
天乃「貴女、凄く不機嫌な感じがしたわ」
夏凜「……感じててアレなの? あんた」
天乃「だから、悪かったって言ってるの」
悪いと思っている態度じゃない。と、思いつつ
傍から見れば自分もこんなものなのだろうかと、夏凜は思う
沈黙を保つ運転手から言われた「結構似た者同士かと……」という言葉を思い浮かべ、
天乃を見つめる
容姿はもちろん似ていない
雰囲気も似ていない
言葉遣いとかもあまり似ていない
でも、今のは少し、似ていた気がする
天乃「……結構、空気悪かったじゃない。あの時」
そんな視線を感じ、けれども目を向けることなく
天乃はそう切り出した
天乃「ああいうの、あまり好きじゃないから」
夏凜「私と結城友奈と東郷美森のこと?」
天乃「それと、クラス全体」
夏凜「ああ……」
気配が読めるから空気も読める。なんて自負はないが
それでも、自分が関わった場の雰囲気としては
これまで通りの険悪さだったと、夏凜には自覚があった
昼時だというのに、誰も喋ろうとしない
食事の箸さえ止まって
誰もが見ているのに、見ていないふりをする空間
腫れ物に触れるような
蜂とかの危険な生物におびえているかのような、緊張感と不安と、恐怖
夏凜「あれ……私の特技だって言ったらどうする?」
天乃「特技?」
疑問符を浮かべ、
夕日よりも綺麗な瞳を向けてきた天乃の問いに
夏凜は軽く、頷く
夏凜「三好夏凜の場の支配っていうか……圧迫とか威圧。みたいな」
自分で言ってて恥ずかしく
そしてなにより、惨めで
思わず笑いながら、紡ぐ
夏凜「昔っから……得意なのよ。家でも。そうだったし」
家では自分がなにかしたわけではなかった
いや、むしろ
何もしなかったから
何もできなかったから。ダメなのだろうか
夏凜「……だからまぁ。なんていうか。特技?」
感傷に浸りそうだった
弱音を吐いてしまいそうだった
だから、夏凜は誤魔化すように笑って、言う
夏凜「あんたがあれが嫌いだって言うなら」
言うなら……
――私とあんたは仲良くなれない
そう言いかけて、唇を噛み締める
天乃「?」
夏凜「同じ部活とか。やめたほうがいいんじゃないの?」
そんな女々しいことは、言いたくなかった
1、あら。そうかしら。私がいれば、教室みたいに中和できるじゃない
2、大丈夫よ。まだまだ時間はかかるかもしれないけれど。みんないい子だから
3、あら。結局それが目的? ダメよ。貴女はもう部員よ
4、あの空気は嫌いだけど。夏凜のことはそれなりに好きよ
↓2
では、短めですが此処までとさせて頂きます
あすもできれば似たような時間から
夏凜の交流が長すぎるというミス
参入日サービスということで
では、初めて行きます
天乃「………」
本当の言葉がなんだったのかまでは分からない
けれど
夏凜が一瞬息を呑み、言葉を呑み込んで
別の言葉と入れ替えたことに、天乃は気づいていた
嫌いだって言うのなら――
嫌いだって言うのなら、同じ部活とかやめた方が良いんじゃないの?
同じ意味だけど、言葉が違うだけか
それとも、完全に違うものだったのか
どっちなのかはわからないけれど……
天乃「そうかしら」
夏凜が自分との関係をどう考えているのかまだ不明瞭で
私が変えた後の空気をどう思っているのかも、教えてくれてはいないけれど
天乃「私がいれば、教室みたいに中和できるじゃない」
少なくとも。
同じ部活じゃダメな理由にはならないと、思った
夏凜「中和って、あんたね……」
呆れ混じりに、夏凜は笑う
嫌なことだったとか、良かったことだったとか
そんな風にどちら側とも言えない中途半端な表情
少なくとも、悪くはなかった。みたいな表情
天乃「私一人でああしてたって。ボケしかないじゃない」
別にそんなつもりがあったわけではないが
あえてそう言ってみると、「私はツッコミじゃない」と、夏凜は言って
夏凜「自覚してんなら加減しなさいよ。ほんと」
もう一度、呆れて笑う
その瞳は、天乃を見ていない
窓の外を見ているようで
窓の外でもなく、何処か遠くを見ている
天乃「……嫌だった?」
なんとなく、目を向けずに聞いてみると
夏凜からの視線を感じ
夏凜「良いも悪いもないっての」
なんて、少しばかり楽しげな答えが天乃に返った
√ 5月1日目 夜(自宅) ※月曜日
九尾、友奈、死神、沙織、風、樹、東郷との交流が可能です
1、九尾
2、死神
3、風
4、樹
5、友奈
6、東郷
7、沙織
8、夏凜
9、イベント判定
↓2
※3~8は電話
天乃「九尾、ちょっと。いいかしら」
そう声をかけると
ベッドがガタガタと揺れて、下から黄金色の髪と紅い瞳が覗き
お呼びかえ? と、問う
天乃「そういう出かたしなくていいから……ベッドの下なんて掃除できてないんだし」
九尾「掃除できておらぬから。妾がこうして潜ってやってるのじゃぞ」
女性体の九尾は下から這い出ると
なぜか不釣合いな讃州中学の制服を着ていて
そのスカートのポケットから、キノコを取り出す
まだら模様の、見るからに毒有りきのこ
九尾「暗く湿気のある場所に自生するらしいからのう。主様の汗や尿が滴るベッド下は格好の生息場所じゃ」
天乃「汗はともかくもうひとつの方は……って、嘘。生えてるの!?」
九尾「生えぬようにと、妾が除去しておるのじゃ」
くすくすと悪戯っぽく笑い、きのこを消滅させた九尾は
近くの椅子に腰をかけると
相変わらずじゃな。と、苦笑する
きのこが生えやすいのは事実だが
一応、掃除はしていなくもないのだ。生えているわけがない
天乃「なら、いいけど……」
ホッと胸をなでおろして
安心したように笑みを浮かべる天乃を見て、九尾は何か言いかけたが
言わずに呑み込んで、目を瞑ると
自分の中の空気を入れ替えて、天乃を見つめ直す
九尾「それで。妾に問いたいことがあるのじゃろう?」
天乃「ええ。そうよ」
九尾「可能なことであれば答えようぞ」
1、東郷達がおかしくなったこと
2、男子生徒を入部させる件
3、夏凜について
4、バーテックスの襲撃について
5、九尾について
6、久遠陽乃について
7、須佐之男について
↓2
では、此処までとさせて頂きます
あすもできれば似たような時間。には
九尾「それはもちろん、主様には人を魅了する力があるからじゃな」
天乃「え?」
九尾「つまり、周りの人間から向けられる好意は全て紛い物じゃ。くかかっ」
天乃「な……え? 嘘……」
九尾「 ほ ん と 」
では、少ししたら初めていきます
天乃「貴女なら、多分わかるかなと思って」
九尾「うむ。聡明で、容姿端麗頭脳明晰な九尾ちゃんになんでも問うが良い」
冗談なのだろうが。
……冗談なのだろうが。
割と本気な自慢げな顔で九尾は言うと
えっへん。と、子供っぽく鼻を鳴らす
自分をちゃん付したのだから
冗談だとは、思うのだが
そんな九尾を見つめ、天乃は困った我が子を見るかのように微笑んで
それなんだけど。と、紡ぎ出す
天乃「東郷達の件よ」
九尾は表情を変えることなく天乃を見つめたままだったが
どこか居心地が悪そうに手を遊ばせて、息をつく
それは、何かを知っていて
しかも、天乃にとってあまり都合の良くないことだと
知っているが故の、仕草
天乃「知ってるのね?」
当然、食いついた天乃から目をそらすと
九尾は「うむ……」と、一人納得したような声を漏らす
けれど、それは納得したというよりも
どうすべきかと悩んでいるようだと、天乃は思って、言葉を止める
すると、九尾は「当然。頭脳明晰な妾は知っておるぞ」と言って
けれどもまた躊躇って頭を振る
九尾「自分のことならばともかく。小娘共のことじゃ。低きなど欠片もあるまい」
天乃「ええ」
九尾「ふむ」
即答を聞き、
わかっていたにも関わらずため息をつき
ならば仕方がないのう。と、残念そうにつぶやく
九尾「変に取り乱さぬと約束するかえ?」
天乃「なんか、嫌な前置きするわね……」
九尾「余計なことは聞いておらぬ。良いのか。と、聞いておる」
天乃「受け入れなきゃ教えてくれないんでしょう? だったら、受け入れる以外ないわ」
そうしなければいけないのなら、そうする
そんな答えは求めてはいなかったのだが
自分以外
特に、東郷美森こと鷲尾須美が被害……と言えるかは微妙なところだが
渦中に居るとなれば余計に首をつっ込もうとしてしまうのが目の前の
お人好しと描いて馬鹿と読む少女であることを知っている九尾は
やりづらそうに自分の髪を弄って、なれば。と、切り出す
九尾「娘共がおかしくなった原因は主様。もっと言えば、主様のちからの一端である魅了の能力に引き込まれたがゆえのものじゃ」
天乃「……魅了?」
相手の心を惹きつけて、夢中にさせる
そんな意味が付けられた能力が原因と言われては、嫌な予感しかしなかった
では。
今までの
そう。男の子や、友奈達の言葉は全て……そう言いかったのではなく
そう言わされていたのではないか。と
考えたくもないことを考えなければならなくなった
天乃「ねぇ。九尾」
九尾「?」
――考えたくはない
天乃「貴女は真面目な問いかけの時には真面目な対応をしてくれる人だと。思ってるわ」
けれど、九尾ははっきりと言ったのだ
その原因は天乃にあると
天乃の持つちからの一端である【魅了】の能力によるものだ。と
はっきりと、言ったのだ
天乃の言葉からか
それとも表情からか
言いたいことを先読みし、九尾は「少なくとも、ここで茶化す気はないぞ」と
普段の馬鹿にするような雰囲気なしに告げる
その瞳は赤く、どこまでも見通していた
九尾「じゃが、この魅了の力は好意がある人間でなければ基本的に効力が出ることはない」
故に少なくとも。
小娘共が好意を抱いていることには変わりあるまいよ。と
九尾は宥めるように、言う
九尾「東郷美森に顕著に効果が現れたのは、きゃつが鷲尾須美当人だからじゃな」
天乃「……というと?」
九尾「現状、小娘にはその当時の記憶はないが。脳が喪失しようとも、抱いたものは消えてはおらぬということじゃ」
それが憧れにせよ
嫉妬にせよ
恨み、憎しみ、怒り、後悔
そして……そういった想いであっても
それが強ければ、易々と消すことが出来るものではないのだと
九尾は雄弁に語って、天乃の髪を撫でる
ふわりと甘い匂いが広がるが
天乃の悲しげな表情は癒えない
天乃「でも、それでも。友達の好きを恋人の好きに変えてしまうことはあるんでしょう?」
九尾「ふむ……正確なことは言えぬが。二人でいると楽しい。というものから、二人でいられると幸せだ。のような形にはなるじゃろうな」
天乃「それ、そこまで意味は変わらないって言ってるように聞こえるけど」
九尾「そもそも、小娘共はその二つをひっくるめて、主様に好意を抱いておるからな」
友人としての好き
恋愛での好き
どちらも好きという言葉ではあるものの、そこにはやはり違いがある
といっても
人間がその思いを文字に書き起こし
これは友人としての好きで、あれは恋愛での好きだ。と
分け隔てたに過ぎないのだが
九尾「例えば、東郷美森が主様に好きだ。と言ったとしよう」
天乃「ええ」
九尾「主様はそれに対し、どう思う?」
1、素直に嬉しいと思う
2、友人としてよね。と、疑問に思う
3、もしかして恋人として? と、疑問に思う
↓2
天乃「そうね……今の状況で考えれば。恋人としてかなって疑問に思うと思う」
九尾「うむ。そうじゃろうな」
今の東郷の事を考えれば
男子生徒の件で執拗に迫ってきたりと
男の子が近づいてくることにひどく拒否反応を示しているのは事実で
それは
天乃が恋愛の対象としている性別である異性に対する嫉妬のようなものであると、
考えるのが妥当だ
同性の夏凜の入部は問題なく許可したことからも、それは伺える
九尾「では、普通の状態の東郷美森から同じことを告げられたらどう思う?」
天乃「それは、素直に嬉しいと……」
九尾「なぜ、恋愛方面であると疑わぬ」
天乃「そんなの。だって、普通の状態なら。女の子が女の子になんて……」
東郷に恋愛方面で好意的に思って貰えること自体は
間違っていることとは言え、
認めてもらえているようで嬉しいけれど。と、
天乃は気恥ずかしそうに笑う
けれど、やはり
天乃の考えとしては、それは間違ったことなのだ
もちろん、男性嫌いの女の子はいるだろうし
そういった特殊な子がそういう方面に言ってしまうような特例まで否定する気はないが
普通の状態で女の子に恋をする。というのは
天乃にはよくわからなかった
九尾「別におかしくはなかろう。男子のどこに惚れる?」
天乃「包容力だとか、格好良さとか、頭の良さとか。優しさだとか。色んな意味での温もり……とか。私は別に。容姿は省いちゃうけど」
自分の好きなタイプの男の子を言わされてるようで
恥ずかしそうに言う天乃の頬が髪に似た薄いピンク色に染まっていく
それを一瞥し「ケッ」とあからさまに馬鹿にした九尾は
睨まれるやいなや、口が滑った。と、悪びれる様子もなく続ける
九尾「そんなもの男子でなくともあるじゃろうて。つまり男にも女にも。恋愛感情を抱きかねない点は存在している」
九尾はそう、前置きをして
九尾「要は、友人か否かというのは、人間が性別という明確な基準を基に、不確かな線引きをしただけに過ぎぬ」
続きを語って、天乃を見つめる
九尾「女子の行いに格好いいと惚れても構わぬではないか。主様は、それが許せぬのか?」
許せるかどうか。ではない
その気持ちがよくわからないのだ
格好いいと思ったことは申し訳ないがない
だからなのかもしれないが
女の子が女の子に恋をするのが、分からない
男の子は女の子に対し、可愛いから、綺麗だから。優しいから。頭がいいから。料理上手だから
ほかにもあるけれど、そんな理由で恋愛感情を抱くという
女の子は男の子に対し、格好いいから。優しいから。力強いから。頼りになるから。頭がいいから。お金があるから
ほかにもあるけれど、そんな理由で恋愛感情を抱くという
では、女の子は女の子に対し、どんな理由で恋愛感情を抱くのか
可愛いから? 綺麗だから? 優しいから? 料理上手だから?
格好いいから? 頼りになるから?
天乃「……わからないのよ」
天乃が悩んだ末にそうこぼすと
九尾は「こればかりは感覚じゃからな」と、優しく言って天乃の頬に触れる
九尾「無理に理解する必要はあるまい。そんな恋もあると。そう思うておけば良い」
天乃「……うん」
穏やかな説得に、頷く以外の選択はなかった
では、此処までとさせて頂きます
あすはできればお昼頃から
東郷「女の子が女の子に恋をする理由。ですか?」
天乃「うん」
東郷「包まれたいからです。その人に。男性のような力強さではなく。優しい温もりで。包んで欲しいからです」
では、少ししたら初めて行きます
九尾「話を戻すが、その力が効力を発揮しだしたのは、お主が小僧に好意を伝えられてからじゃ」
天乃「え?」
今まで、自分が好かれることはない。と
自己否定、自己暗示
そういった状態にあったがために、
その【魅了】の力は封じ込められていたのだが
男子生徒の告白によって
その封は緩み、いまはゆっくりと力が漏れ出している。という状況にある
それでも、力の効果は確実に出る為、東郷達がおかしくなっているのだ
天乃「なんとかできないの?」
九尾「ふむぅ……溢れ出る魅惑の力は妾も持ち得る美しさゆえのもの」
例えるならば、炎は熱さを生まれた時から持っているようなもので
炎自身がそれをどうにか出来るかを考えれば、
天乃の疑問の答えに行き着く
九尾「その熱さをどう扱うか。他に委ねるほかあるまいな」
天乃「委ねるって……」
東郷達がおかしくなっている現状
誰かに委ねるなんて悠長な選択はできない
いや、できないのではなく
できたとしてもしたくはない
けれども、もしも天乃が炎ならば
自らが持つその熱は、自分ではどうすることもできないのは事実で
九尾「結城友奈のように、しっかりと抵抗する者はいる。ようは、信じてやれ。というところかや」
天乃「そんな適当に」
九尾「主様の場合、神や神の力の影響を受けている人間に影響力があると見える。一般人はさほど気にせずともよかろう」
東郷は鷲尾時代も加算されるがために特例とするにせよ
結城友奈や犬吠埼風が先んじて影響を受けたことからも、
それはなんとなくではあるが、推測できる
九尾「小娘どもには、予め。主様のその力について話しておくと良い。さすれば、熱いと解っているものには相応の対応をするじゃろうて」
天乃「本当に、どうしようもないのね?」
橙色の疑惑
その視線を真っ向に受け止めた九尾は
少なくとも、現状ではそれ以上のことはできぬ。と
明確でありながら不確かな答えを返す
――致し方のないこと
九尾は自分へ向けられる気持ちが
多少は本物であっても
一部は偽物であるという真実に、悲しさを抱いている
それは、自分への好意を
身勝手な力で乱してしまっているという罪悪感故のもの
九尾「そう、沈むな。友奈のあの言葉に関しても。思えど言えずの言葉が口から出たに過ぎぬじゃろう」
天乃「そんなこと……わからないじゃない」
九尾「少なくとも、意気消沈しているよりは、マシだと思うがのう」
一片ほどは違うと言えるが
その力の大部分は自分のものであるがために
九尾は慰める為の言葉を持ちながらも
それを使おうとはせずに、目の前を見る
すでに帳の落ち切った世界は
よく見れば黒に混じって灰色の影が空に蠢いている
そんな不安定な気分になりかねないものを見つめ続ける天乃の体に手を伸ばして
天乃「っ」
九尾はそっと、抱きしめる
精霊ゆえに重さはなく、けれどもそこには人肌と呼べるものがあって
天乃「九尾……?」
驚いた声に耳を傾けることなく
されど、反応したように抱くその腕に力を込める
――神を引きつける力。それはすなわち、奴らに対する撒き餌である
九尾「妾が守ってやる。案ずるな……きっと。大丈夫じゃ」
天乃「どうしたのよ。そんな」
九尾「主がそんな顔をしておるからじゃ。従者である妾も少し。釣られたのやも知れぬ」
天乃の問い掛けに九尾はごまかすようにわらって、姿を消した
夏凜の絆コンマ一桁 ゾロ目は関係なし
↓1
1日のまとめ
・ 乃木園子:交流無()
・ 犬吠埼風:交流有(男子生徒の件)
・ 犬吠埼樹:交流有(男子生徒の件)
・ 結城友奈:交流有(男子生徒の件)
・ 東郷美森:交流有(男子生徒の件)
・ 伊集院沙織:交流無()
・ 九尾:交流有(東郷達の件)
・ 死神:交流無()
・ 稲狐:交流無()
・ 神樹:交流無()
5月1日目終了時点
乃木園子との絆 25(中々良い)
犬吠埼風との絆 37(中々良い)
犬吠埼樹との絆 29(中々良い)
結城友奈との絆 37(中々良い)
東郷三森との絆 35(中々良い)
三好様との絆 10(普通)
沙織との絆 34(中々良い)
九尾との絆 30(中々良い)
死神との絆 29(中々良い)
稲狐との絆 27(中々良い)
神樹との絆 5(低い)
√ 5月2日目 朝(自宅) ※火曜日
九尾、友奈、死神、沙織、風、樹、東郷との交流が可能です
1、九尾
2、死神
3、風
4、樹
5、友奈
6、東郷
7、沙織
8、夏凜
9、イベント判定
0、勇者部部室
↓2
※3~8は電話
※9は朝一勇者部直行
朝早く。という時間でもないが
学生ならば起きてるかどうかという微妙な時間の電話にも関わらず、
夏凜は少し不機嫌そうに「なによ」と電話を受ける
おそらく、電話の主が天乃だとわかったからだ
天乃「こちら、三好夏凜ちゃんの電話ですか?」
夏凜『切るわよ? あんた』
子供っぽい声に呆れつつ
夏凜は言いながらも切らずにため息だけをつく
天乃がそういう人間だとわかっていれば
ふさわしい対応というのも、自ずとわかってくるのだ
もっとも、完全に制御するのは
多分、無理だろうが。
夏凜『それで、どうかしたわけ?』
1、能力について
2、登校。一緒にどうかなって
3、夏凜は私のこと好き?
4、夏凜は男の子と女の子。どっちと恋愛する?
5、ごめんね。特に用事は考えてなかった
↓2
天乃「貴女、瞳のところにいるんでしょう?」
昨日の下校時
友奈を家に送り届けたあと、
天乃を家に下ろして、二人はそのまま車に乗っていったが
その際に、今日の夕飯はどうだのこうだの言っていたし
それ以前に瞳が妹のようなもの。と、言っていたのだ
天乃「登校。一緒にどうかなって」
夏凜『一緒にって……私は自転車通学の予定だったんだけど』
夏凜の困惑気味な声は
それが嫌で嘘をつこうとしているわけではない。と示す
瞳が天乃の送迎があるために遠慮しようとしたのか
スポーツ少女ゆえのトレーニング精神でそれを選んだのかは分からないが
とにかく、本当にそのつもりだったらしい
夏凜『あんたと私ってそこまで仲がいいわけでもないと思うけど』
天乃「だからこそ。とか言ったら、夏凜は嫌?」
夏凜『嫌ってわけじゃないけど……』
これが電話で良かった。と
染まりつつある頬を指で掻き、
離れたところから嬉しそうに是非。ぜひ! と
ジェスチャーを示してくる瞳を一瞥する
運転手は乗り気だ
凄く。いや、とても。もっと言えば、際限なく。
あとは自分がどうするかという段階に来て、
夏凜は軽く息を飲む
夏凜『あんた、別に冗談で言ってるわけじゃないのよね?』
天乃「どうしてここで冗談を使うの?」
夏凜『いや、なぜか。とかどうして。じゃなくて。あんたの日頃の行いから私のあんたへの警戒心を考えなさいよ』
純粋無垢と言えなくもない疑問の声に
夏凜はちょっぴり笑う
困った人だと。楽しげに
夏凜『でも。まぁ、良いわ。一緒に登校してあげる』
天乃「なんで上から目線なのよ」
夏凜『頼んだのはあんたでしょ』
カリンの自信有り気な物言いに
天乃はそれはそうだけど。と不満を漏らす
頼んだのは頼んだけども
一応、天乃は上級生だからだ
――けど。良かった。変わらない夏凜だわ
険悪だった関係と比べれば
それは確かに進歩してはいる
けれども、東郷や友奈
風のように、異常な程好意的にはなっていない
その点に安堵して、天乃は笑う
天乃「夏凜のそういう、不器用なところ。好きよ」
夏凜『は、はぁっ!?』
天乃「茶化しやすくて」
夏凜『このっ……覚えてなさいよあんた。車で固定したあと、さんざんいたぶってやるんだから!』
一緒に登校するという点を破棄しないあたり
やっぱり優しいんだろうな。と、天乃は思った
「おはようございます。久遠様」
天乃「おはよう。ありがとね。いつも。でも、今度からは夏凜が全部やってくれると思うから」
夏凜「あんたと毎日登下校はさすがに骨が折れるわ」
嫌とは言わずにそういった夏凜は
天乃の車椅子を押し、
瞳の補助なく、車椅子を後ろに積み込んでいく
全部やってくれるというのは冗談だったが
この調子なら、本当にできる可能性ならあるらしい
天乃「昨日ので覚えたの?」
夏凜「まぁ、一応はね」
天乃「私のために?」
冗談っぽくそう言うと
夏凜は呆れたように息をついて、目を向ける
そして
天乃「ちょっ」
ぐっと顔を近づけて、吐息が触れ合うほどに密着して
夏凜「そう。あんたのため。あんたの力になりたいから。あんたと一緒にいたいから」
少し強く、手を握る
天乃「ちょ、ちょっと……かり」
急に迫られて、責められて
思わぬ展開にどきりとした心臓がそのまま早まっていく中で
天乃は自分の顔が赤くなっていっているのだと気づく
けれども、抵抗するための手は夏凜の手に囚われて
両足は全く動かせなくて
天乃「ゃ……ごめ……」
ごめんなさいと言いかけたところで
夏凜はポンッと、
気付けのためか少し力を込めた優しい拳で天乃の頭を突く
夏凜「変な反応すんじゃないわよ……馬鹿」
天乃「だ、だって」
夏凜「でも。分かったでしょ。あんたのそういう態度は誘いやすいって」
気恥ずかしそうに
気まずそうに
頬を掻いて目を逸した夏凜は
伝えたかったことを伝えると、息をつく
夏凜「………………」
やろうとしてやったこと
けれども恥ずかしかった
そして、なにより
驚きに戸惑いながら、羞恥を感じていた天乃の表情が
夏凜にとってはとても魅力的に見えてしまったのだ
そこに好意的なものを持ち出すと
まるで、自分がいじめるのが好きみたいだ。と
いつも控えている建前を用いて気持ちを飲み込む
夏凜「わかったら、気をつけること。返事は?」
天乃「う、うん……ごめんなさい」
天乃「っ」
思った以上に、ドキドキとした
そんなことをされると思っていなかったから
多分、その驚きのせいも……
ううん、きっと。それだけの話なんだろうけど
でも、あの子の目の色に似ていた
私が失った、親友と同じ瞳をしていた
天乃「……銀」
思わずつぶやいてしまった名前を追ってあたりを見ると
夏凜には聞こえなかったらしく
横目でチラチラと確認しながらも、外を見ていた
天乃「ごめんね、夏凜」
夏凜「別に」
天乃「私、変な顔してた?」
夏凜「そうでもないわよ。茶化しにくい顔だった」
そういう夏凜の頬は赤くて
自分は一体どんな顔をしていたのだろうかと気になった
けれど、夏凜は聞くと怒るかそっぽを向くかだろうし
知るすべはなく
天乃「かわ……こほん」
夏凜「?」
天乃「何でもない」
可愛い顔だった? なんて
自意識過剰すぎて聞けるはずがなく
よくよく考えてみれば
それはまさしく、夏凜がいうような誘い言葉だと思い至って
身振り手振りで有耶無耶に、笑ってみせる
夏凜「天乃」
天乃「うん?」
夏凜「……いや。がっこう見えてきた」
何かが言いたかったのかもしれない
けれど夏凜は、言わなかった
√ 5月2日目 昼(学校) ※火曜日
友奈、沙織、風、樹、東郷、夏凜との交流が可能です
1、風
2、樹
3、友奈
4、東郷
5、沙織
6、夏凜
7、イベント判定
8、勇者部部室
↓2
沙織「聞いたよ。久遠さん」
天乃「何を?」
沙織「転入生。を手篭めにして身の回りのお世話させてるんでしょ?」
天乃「なにそれ……」
冗談……というか
ひとり歩きした噂であることはまず間違いないのだが……
しかし、そんな噂が流れているのだとしたら
夏凜の方に被害が大きく出ているのではないかと、端末を取り出す
沙織「大丈夫だと思うよ」
天乃「けど」
沙織「そうじゃないっていうのはみんなわかってるだろうし。まぁ、一緒に登校してきたことに関しては問い詰められちゃうだろうけど」
沙織は苦笑して、天乃の手にある端末に手を被せて「ね?」と、言った
沙織「けど、良かったよね。結城さん」
天乃「?」
沙織「向こうの人たちはすごく警戒してたよ。久遠天乃が何かやったんじゃないかって」
沙織はさもそれが笑い話かのように語っているが
そんな話ではない
向こうの人たち。というのは大赦で
彼らが警戒していたというのはあまり良くはないことなのだ
天乃にとっては、特に
天乃「東郷に関しては?」
沙織「うーん……三好さんの定時連絡で伝わってるけど。いまは普通だし、東郷さん自身の問題だって考えてるみたい」
天乃「……そう」
東郷には申し訳ないが
どちらかといえば、彼女自身の問題となっていてくれたことに感謝すべきだ
というのも、あそこまで強く取り乱した原因ともなれば、隔離が免れえないのである
しかし、友奈も東郷も
どちらも天乃が原因なのも事実で
いっそ、隔離という名の監禁も視野に入れるべきかも知れない
沙織「東郷さんも、久遠さんのこと好きだからねぇ」
天乃「そんなこと」
沙織「あるよ。久遠さんも東郷さんも同じだから」
そう、同じだから
天乃の方がいくつかきつい障害持ちになってしまってはいるが
東郷からしてみれば、同じく不自由な身の上でも
泣き言を言うわけでもなく
あの三好の乱―名前発覚により改名―のような姿を見せてくれるのだ
尊敬するだろう
目指すだろう
そしてなにより、強くとも嫌らしく自尊心が強くなく
みんなの味方で、みんなに優しく慕われている姿には
例え、天乃が女の子であっても、格好いいと思うだろう
沙織「久遠さんが思う以上に、みんな。久遠さんが好きなんだ。それはあたしが保証する」
そんなことはない。と
天乃のいつもの否定を許さないと言いたげな笑みを浮かべる沙織に
困ったようにため息をついて、
机の上の自分の弁当を見る
驚くことに、九尾が作ってくれている弁当は
見た目良し、栄養良しなのだが
残念ながら、一度も味を感じたことはない
当人は自信作だと言い張るが、見た目だけ自信作の可能性があるのが何とも言えない
もっとも、つまみ食いした沙織たちは美味しいというのだから
その語りに偽りなし。なのだろうけど
沙織「それで?」
天乃「?」
沙織「いつも、あたしを一人ぼっちにする久遠さんがあたしと一緒に食べるんだから。それなりの理由はあるんでしょ?」
天乃「そんな言い方しなくても……」
沙織「あはは。嫌がらせです」
はっきりというお姫様に、天乃は苦笑して……
1、貴女は女の子同士の恋愛について。どう思う?
2、襲撃、最近来ないのはなんで?
3、私の魅了の能力。貴女、知ってた?
4、沙織は、さ。好きな人いるの?
5、実は私。男の子と付き合うことにしたの。と、悪戯返し
6、別に深い理由はないわ。たまには沙織とが良かっただけ
↓2
天乃「少し、あなたに聞きたいことがあって」
沙織「うんうん。なんでも聞いてくれていいよ。スリーサイズなら上から82、60――」
天乃「それはいいし、知ってる」
沙織「えっ、知ってるの? 嬉しいっ」
天乃「貴女が見せてきたんでしょ」
一人ではしゃぐ級友にため息一つ
それだけで、沙織は「ごめんね」と
乱した空気を整えて、頷く
この明るさからは想像できない元の暗さを思い、
そのギャップにまた笑って、天乃は頭を振る
天乃「えっと。貴女は女の子同士の恋愛について。どう思うのかな……と」
沙織「えっ?」
天乃「だから、女の子同士の恋愛。意見が聞きたいの」
沙織「え、えーっと。久遠さん、そっち側なの?」
驚きを隠せないといった表情の沙織に
そんなことはないんだけど。と前置きをした上で、続ける
天乃「九尾と色々話したの。その時に疑問に思って」
沙織はなーんだ。と
どこか残念さを感じる声で言い、頬を掻く
――すごい焦っちゃった
女の子が、女の子に対し
女の子同士での恋愛について聞いてくるのだ
もしかして。と
色々と考えてしまうのも無理はない
けれども
沙織は天乃に限ってそんなことはないだろうと、思っていた
沙織「それで興味を持ったんだね」
天乃「まぁ、うん」
沙織「白羽の矢が立ったあたしは、久遠さんにそっち側だって思われてたり?」
天乃「親しくない人に、触れる話題だとでも?」
沙織「親しくても……まぁ、そうだよね」
さて、どう説明すべきだろうか。と
沙織は、天乃から一端視線を外して俯き、考える
正直に、全然いいと思うよ。なんて答えは
きっと、求めている答えではないのだ
女の子同士の恋愛について理解ができていない
だから、それが聞きたい
沙織は天乃がそう考えているんだろうと考えて、息をつく
沙織「まぁ、正直な話。久遠さんみたいに男の子を好きになるのが普通って考えてるとおかしく思えるよね」
天乃「……ええ、そうなの。でも、九尾はおかしくないって」
沙織「うん。けどね。久遠さん。人を好きになるのは体じゃなくて。心だよ」
沙織のちょっと照れくさそうな顔が、天乃を見る
沙織「心には、性別なんてない。体が女の子だから。男の子だから。そう見てるだけで。性別なんて、ここにはない」
自分の胸元に手をあてがって
沙織は、誰かを想っているかのように優しい笑みを携えて、答える
沙織「だから、女の子同士の恋愛がおかしいだなんてことは。ないんだよ」
天乃「……心。ね」
それはわかっていたことだ
もちろん、胸が云々、顔が云々、筋肉が云々
恋をする理由の中に、体つきは含まれるが
そこに恋をしたのは体ではなく、心だ
天乃「そうね。一番、基本的なことを考えてなかったみたい」
心が恋をするのであれば
相手が男の子であろうと、女の子であろうと
してしまう時はしてしまうのだ
この人が好きだと、あの人が好きだと
だから、そう
確かにそれは、おかしいことではない
体に与えられた性別によって、
おかしいことだと思わされていたに、過ぎない
沙織「欲しい答え、あげられた?」
天乃の曇りかけていた表情が晴れてきたことに気づいて
沙織は嬉しそうに、笑う
1、ええ。ありがとう。貴女はやっぱり、頼れる親友だわ
2、うん。ところで。そんな貴女はどっちが好きなの?
3、うん、ありがとう。でも、すごいわね……まるで貴女が女の子に恋してるようだった
4、ええ、助かったわ。ありがとう
↓2
では、少し中断します
20時半頃に再開予定となります
再開します
天乃「うん。ところで、沙織」
沙織「うんうん」
天乃「そんな貴女はどっちが好きなの?」
沙織「う――えっ」
驚かずには、いられない
女の子の友達に
女の子を好きな女の子について聞かれたあと、
女の子が好きなのか、男の子が好きなのか
そんなことを聞かれて驚かないなら、それはどっちも好きではない人間だ
自分自身の心にそう力説した沙織は
胸に手をあてがって、息をつく
ここで女の子と言ったら、縁を切られるかもしれない
そんな不安があって
ここで男の子と言ったら、もう二度と。そういった目ではないと考えられてしまうかもしれない
そんな怖さがあって
沙織「な、なんで、そんなこと……聞くの。かな」
出てきた答えは答えではなく、問
こんな場面で
どうして、そんなことを問えるのか
そう思いながら
けれども憎めず、恨めず
沙織は天乃を見つめ、思う
――いっそ。やってしまおうか。と
他に生徒がいるだとかどうかはこの際気にせず
盛大にやらかしてしまおうかと
天乃「なんでって。それは、気になったから」
沙織「!」
天乃は照れくさそうに、そう言った
気になったから
沙織の好きな性別が気になったから
前後の会話をつなげれば、そうなる言葉を言いながら
目の前の女の子は、目をそらす
――え、これは。えっと。勘違いしちゃっていいのかな
そうされては、そんな思惑も芽を出し始める
天乃「別に、無理に答えなくてもいいんだけど……」
そっち側ではないと言っておきながら
女の子同士の恋愛について聞いてきて
ならどっちが好きなの? なんて聞いてきて
そんな、好きな人の好きなタイプを聞くような仕草をされては……
――あぁ、もう。可愛い
ぎゅっと握り締めた自分の手に汗を感じ
今まで感じたこともない緊張感を感じていることに気づいて
沙織は大きく息を吐く
沙織「う、うーんと。まぁ。えっと」
天乃「ええ」
沙織「あ、あたしは……好き。だよ。ど、どっちも」
天乃「どっちもって」
沙織「どっちもはどっちも! も~っ! 久遠さんのばかぁッ!」
天乃「あっ」
沙織は顔を真っ赤にして叫ぶと
椅子を蹴飛ばす勢いで立ち上がって走り去っていく
午後の授業に、沙織が戻ってくることはなかった
√ 5月2日目 夕(学校) ※火曜日
天乃「完全に、私のせいよね……」
食べかけの弁当箱がしまわれたカバンが置かれた机
その席に居るべき級友はお昼に逃げてから、戻ってきていない
あのあと、なんとか後を追ったけれど
教室を出たときにはもう、その姿はなかった
天乃「沙織……」
級友……親友である沙織が
一体どちらに恋をしているのか
それがどうしても、知りたかった
沙織がもしも女の子に恋をする子なら
もしも万が一、魅了の力で間違いを犯したとしても
その衝撃は少しは和らぐ可能性がある
けれど、もしも女の子はダメなのなら。男の子にしかそういうことはできないのなら
それはとても、残酷でひどいことをさせてしまったことになるから
だから、知りたいと思った
女の子同士の恋愛について聞いたあと
親友にどっちが好きか。なんて聞くのは
正直な話、すごく恥ずかしかったし
勘違いされそうで不安でもあった
それゆえに、ちょっと。なんというか
余計勘違いされそうな態度を取ってしまったのだと、後から気づいた
天乃「……でも。どっちも。か」
それなら
もしも万が一何かが起きてしまってもいいのだろうか
そう考えて、想像して
一瞬で頭が熱くなった天乃は頭を振って思考を投げ捨て、熱を払う
天乃「さ、沙織と何するって言うのよ。もう」
1、勇者部部室へ
2、告白してきた男の子の様子を見に行く
3、沙織の捜索
4、風のところ
5、樹のところ
6、夏凜たちのところ
↓2
まだ部室には行ってないであろう時間、
二年生のクラスに向かうと、
やっぱり、3人が教室にいた
「ねぇねぇ、三好さん。朝の――」
夏凜「だから、あの送迎車の運転手が知り合いなんだって言ってんでしょうが」
夏凜は近寄ってきた生徒にやや怒った様子でそう言うと
机に突っ伏す
もう疲れた。と、言いたげだ
友奈「お疲れ様。だね。夏凜ちゃん」
夏凜「冗談じゃないっての」
友奈「久遠先輩、人気だからね。夏凜ちゃんも転入生で注目されてたし。そーじょーこうかってやつだね」
夏凜「そんなこと知らないわよ」
東郷「その久遠先輩が、ドアの方から見てるわ」
天乃「あっ」
友奈「え?」
天乃を見つけた東郷の声に
友奈だけが顔を向ける
夏凜は疑わなかったのか
それとも、投げやりなのか
適当に手を挙げて、振る
手招きではなく、横に振られたそれはまさしく
さようなら。というもので
つまり、帰れ。と言いたいのだ
天乃「バイバイはないでしょ。バイバイは」
悪態をつきつつも夏凜の疲れ具合を見て、
それも仕方がないのか。と、息をつく
1、夏凜、部室行きましょ
2、みんな、部室行きましょ
3、夏凜。今日は帰りましょう
4、瞳さんを呼びましょう
5、先に、部室行くわね
↓2
天乃「みんな、部室行きましょ」
それでも、天乃はそう言って声をかけた
もちろん、夏凜単体ではなく
友奈達全員に。だ
そこで夏凜だけに声をかけて、
もうちょっと悪戯することも考えたが、
それはさすがにと、改めた
友奈「は、はい。夏凜ちゃんも……」
夏凜「私は後から行くから、先行って」
友奈「でも」
夏凜「いいから。ほんと、いまはちょっと休みたい」
机に伏せたままのカリンを、三人の目が見つめ
直ぐにそれらは向き合って、頷く
東郷「じゃぁ、夏凜ちゃん。ちゃんと部室来てね」
その言葉に、夏凜は手をあげただけだった
東郷と友奈から話を聞く限りでは
休み時間になるたびに、
一緒に登校してきた理由を際限なく、聞かれ続け
毎度毎度同じ言葉の繰り返しで、
だんだんと怒り気味になっても、
興味がある生徒は絶えることなく押し寄せてきたらしい
天乃「ご愁傷様ね」
風「久遠のせいなんだけどね」
天乃「私のせいって言われても。本当にただ。一緒に登校してきただけだし」
風のじとっとした目に
天乃はなんの迷いもなく、答える
それが真実なのだから
臆する理由はどこにもなかった
それにしても。と、天乃は小さく呟く
友奈は人気だから。と、言った
沙織もみんな好きだからと言った
そんなに自分が人気キャラクターなんだろうか。と
近くの窓に映る自分や
友奈たちを見つめて、首を振る
同じ髪色ではないが
近い髪色の友奈の方が可愛い。と、素直に思った
もちろん、体つきで言えば自分なのかもしれないが。と、付け加えて
あぁ、そういうことなのかと。東郷を見る
――否定された
そこでガラリとドアが開いて
夏凜「はぁ……来てやったわよ」
疲れた顔で
それでもちゃんと来た部員の鑑を友奈が支えながら、近くの椅子に座らせる
天乃「夏凜、平気?」
夏凜「別に、乱闘したわけでもないし。精神的に疲れたってだけよ」
天乃「あの剣道では精神が鍛えられなかったのね……もう一回やる?」
夏凜「ごめん、冗談に付き合う余裕はない」
天乃の冗談の切り出しをあっさりと切り捨てた夏凜は、
天乃を見るでもなく、机に伏せる
これは本当に、相当疲れたに違いない
と、天乃達も顔を見合わせて、首を振る
同じことの繰り返しというのは些か骨が折れることだ
慣れてしまえばただの作業。というのがあるが
むしろ、作業になるからこそ、つまらなくて退屈で、面倒くさく感じてしまう
それが休むべき休み時間に訪れるというのならば、尚更
東郷「ここんら休めるからと思ったけれど……返したほうがよかったかもしれないわね」
天乃「とはいえ、瞳は私を置いていくことは出来ないから……」
風「結局、二人で下校になるわけ……か」
ふむ。と、考え込む5人に顔を上げ、
夏凜はあれだけ言ったんだから平気でしょ。多分。と
自分から言い出しながら自信なさげにいう
聞いただけでも、面倒くさそうだったのだから
それが簡単に収束するとは思えないのも、仕方が無かった
夏凜「天乃」
天乃「うん?」
夏凜「とりあえず、今日は一緒に帰って」
天乃「う、うん……仕方がないわよね」
本来は自転車中学の予定だったのに
それを一緒に登校したいというお願いで崩し
挙句の果てにこうなっては……
1、夏凜。もう帰りましょうか
2、依頼チェック
3、魅了の力について話す
4、私って、そんなに人気があるの?
↓2
では、ここまでとさせていただきます
来週、再来週に関しては休みが多めになるかと思いますが
できれば通常時間からとなります
誤字と脱字が多い。失礼しました
では、少しだけ初めて行きます
瞳に通常通り迎えに来てもらうこと
今日はとりあえず夏凜も一緒に帰ることをメールし
精神的に疲れた夏凜
困った顔の他3人と
あっ、力の逆位置だ。と
なにやらまずそうな顔をしてカードをしまう樹
全員を見渡して、息をつく
天乃「ねぇ、みんな。ちょっといい?」
友奈「?」
東郷「なんでしょうか」
鶴の一声。というのは大げさかもしれないけれど
その一言で友奈達の目が向けられ、
夏凜も、頭だけは向きを変えてくれた
風「その声のトーンから察するに。真面目な話でしょ」
天乃「そんなことでわかるの?」
風「まぁ……付き合いはこの中で一番長いから」
とは言うけれど、本当は東郷の方が付き合いは長い
記憶があれば。の、話だけども
東郷「実際は、雰囲気が違うんです。なんと言うか。張り詰めるんです」
東郷は少し考えてそう言うと
今も少しだけ空気がぴしっとしているんです。と、敬礼する
冗談じみたことを出来るのなら
それはつまり張り詰めていないんじゃないか。と、思ったけれど
それは自分ゆえなのかと、苦笑する
何はともあれ
風の言うとおり、真面目な話なことは変わりないのだから
そう、気持ちを切り替え。見渡す
天乃「私には魅了の力があるの」
風「あー……いや。それは周知の事実だと思うけど」
天乃「え?」
友奈「先輩、さりげなくしてるんですよ。相談した人のほとんどはその力に当てられてるかと」
思った以上に驚きはなく
それどころか、被害者であるはずの友奈も
まるでそれが笑い話であるかのように、笑みを浮かべていた
天乃「え、いや。ちょっとまって。知ってたの?」
一人神妙な面持ちをしていたことがまるで馬鹿みたいだ
そう言いたくなるような場の空気の変動に、思わず恥ずかしくなって目をそらすと
ちょうど、夏凜と目があった
夏凜は視線の交わりに気づきつつも
しばらく何も言わず、おもむろに息をついて顔を上げると
なんか噛み合ってない気がするけど。と、つぶやく
夏凜「今朝の件から学んだって話ならそれでも良いけど。違うんじゃないの?」
東郷「今朝?」
友奈「話?」
興味津々な様子で言葉を割り込ませ、
夏凜へと目を向けた二人に対して何でもないから。と先制防御に打って出た夏凜の目が向く
そのとおり、今朝の件じゃない
あれはあれで。いろいろ思わされることは。あったんだけど……
天乃「えっと。普段の私の態度というか。言動は関係ないの」
樹「匂いですか?」
天乃「う、うーん……それもちょっと違うかしら」
おそらく、フェロモンと言いたかったのだろうけれど
いや、それなら間違いではないのかもしれないが
なんとなく認めたくはなくて苦笑で流す
天乃「なんて言えばいいのか。ちょっと難しいんだけど。変に私が魅力的に見えちゃったりするの」
風「聞く限りじゃ、いつもの天乃の言動から受ける印象と変わらない気がするんだけど」
東郷「そう。ですね……魅力的なのはいつも感じることですから」
樹「えっと……あの。フィルターを通して見てる。みたいな感じじゃないでしょうか」
恐る恐る
そんな様子で手を挙げた樹は、みんなの目が向けられて
少し気恥ずかしそうに頬を染めて言う
友奈「フィルターってなに?」
樹「その、漫画とかである。い、イケメンフィルターとか。そういう」
風「樹が読んでる少女漫画とかでごくたまーにあるやつか……」
ふむ。と、それについてなんとなくわかったかのような声を漏らして
風は、天乃を見つめる
それを天乃が見返し、見つめ合う状況になると
風は軽く咳払いをして目をそらす
風「ま、まぁ。うん。なるほど」
赤みがかった顔を覗くと
見るなみるなと風は拒否する
開けた窓から入り込んでくる風は
まるで、今の風の心境を表すかのように、暖かい
友奈「うーん」
そんな中、まじまじと天乃を見つめていた友奈は
困ったように首をかしげて
友奈「久遠先輩はいっつも格好良くて可愛いと思うけどなぁ」
と、漏らす
きっと紛れもない本心なのだろうが……
だからこそそれは、天乃にとって恥ずかしいことにほかならなかった
東郷「そうね。友奈ちゃんの言うとおり」
なのに、、東郷はあっさりと同意して
風や樹もそれに違いはないと言わんばかりに笑みを浮かべて、頷く
けれど、そうなのだ
天乃は基本的にいたずら好きで子供っぽい印象を受けるのだが
それがまた、愛らしくてたまらないという意見はあるし
それはとても明るくて、楽しそうで
周りを笑顔にできるという意見もあるし
一方で
相談を受けたときなどの大人っぽさ
厳しくも優しい。しっかりとした一面が高評価で
その両端を併せ持つ天乃はやっぱり、魅力的だと言わざるを得ない
そこに小さいながらも大きく
他称、身長が足りてれば安産型と言われるスタイルが足されているのだから
それはやはり。繰り返すが。魅力があると、言わざるを得なかった
天乃「あ、あのね。だからっ」
夏凜「褒められるとそうやって赤くなってんの? あんた」
天乃「え、ぁ……これは」
夏凜に口を挟まれて気づく、顔の熱
そこに手を触れると、当たり前だけれど熱くて
鏡を見るまでもなく、赤くなっているのが丸わかりで
目を合わせた先、
夏凜がにやりと笑うのが見えた
それはきっと
今日一日、精神的に疲れさせられた三好夏凜からの
最大級の八つ当たり。あるいは、仕返し
夏凜「今のあんた……すごく可愛いじゃない」
天乃「ぅ」
満面の笑みはやはり、
悪魔じみたいたずら心が垣間見える
けれども、その言葉は
男子生徒に告白され、今朝、あんなことをされ
少しずつ自分というものの評価を上げていっていた天乃にとっては、とても。効果のある言葉だった
1、うるさい馬鹿凜っ
2、みんなして……馬鹿にするんだからっ
3、そんなに褒めたって。何も出ないんだから
4、真面目な話なんだから。真面目な話なんだからねっ
5、そういう気持ちが増幅されて、私のことを……す。好きになっちゃったりするの!
6、顔を伏せて隠す
↓2
では、此処までとさせて頂きます
あすもできれば通常時間から
ここから一気に空気を壊して鬱屈とした雰囲気に
そして、戦闘へ……かはわかりませんが
バーテックスもそろそろ戦いたいようですので準備します
では、初めて行きます
天乃「いい加減してっ」
ふざけているようにも取れるみんなの発言
その雰囲気に
天乃は声を張り上げると
天乃「真面目な話なんだから。真面目な話なんだからねっ」
付け加えて、怒鳴る
それでも緊張感の足りなさそうな空気に
天乃は「九尾が真面目に言ってた話なんだから」と
さらに続けて言う
それには、さすがの風達も押し黙って、顔を見合わせる
風「その九尾の真面目さがどんなものか、あたしたちは知らないけど。本気でやばいやつなの?」
天乃「うどん好きの風がおそばを食べ始めるくらいの危険度」
樹「それは……大変では言葉が足りない気がします」
東郷「大問題」
友奈「天変地異」
風「あんたら、あたしをなんだと……」
夏凜「うどん大名」
風「乗るなっ!」
みんなで軽く笑いながらも
それは直ぐに集結して沈黙し、風がそれなら。と、口を開く
風「例えはともかく、ふざけてられないことだけど」
夏凜「正直、私はあんたを知らないから何とも言えないけど。まぁ、他を見れば察しはつく」
夏凜はそう言いながら、友奈と東郷
そして、樹へと目を向ける
東郷も友奈も風がそう言った状況になる危うさを知っているが
それ以上に知っているのは樹だ
その樹が、とても不安そうにし、恐れているのだから
それがどれほどのものなのかは語るまでもなかったのだ
東郷「それで。その魅了の力の本当の……具体的な効果はどういったものなんですか?」
天乃「貴女、昨日の夕方の男の子の件は覚えてる? 友奈も。覚えてない?」
友奈「私は……なんだかすごく。感じたこともないような嫌な気持ちがぶわーってなったのは覚えてます」
友奈が少し不安そうに答える中
東郷はひとり黙り込んで、眉を潜める
そしてその怪訝そうな顔のまま
東郷「言われてみれば……曖昧です。ただ、友奈ちゃんと違って。とても清々しい気分になったような気がします」
そう言った
あれがすがすがしい気分だったのか。と
驚く風と樹をよそに
真面目モードなのか、机に突っ伏すのをやめた夏凜が
天乃へと向き直って、息をつく
それは、自分の言葉を簡潔にまとめるための一息
そして、
夏凜「つまり、結城友奈も東郷美森も。あの異変はあんたのその力のせいってわけ?」
生真面目な整った声に、天乃は静かに頷く
その通りだ
二人に起こった気絶や、普段ありえないような言動は全て
天乃の魅了の力による影響
それを天乃当人が認めたことで
その【魅了】の恐ろしさがより、肥大化していく
樹「だ、だとしたら。魅了の力というより、錯乱とか。そういう類のじゃ……」
風「いや、あの時の二人から考えれば、久遠と男の子ってところに強く反応したっていうのが妥当だし」
夏凜「そう考えると、おもちゃの取り合いならぬ。天乃の取り合いが勝手に勃発したって考えるのが妥当ね」
風「うん。そう考えると久遠の魅力に当てられたというか。魅了された結果、邪魔者が来て欲しくなくて……って考えられる」
風と夏凜は互いに言葉をつなぎあうと
納得したように、頷く
実際、その推測は間違っていない
友奈や東郷にとって
新しく入部させようとしていた男の子は
――濁さず正確に言うと
新しく入部させそうになっていた【天乃に好意のある】男子生徒は
魅了された二人にとって、邪魔者でしかなかった
ゆえに、絶対に入部して欲しくなかったし、近づいて欲しくもなかった
だから、あんな酷いことになったのだ
もっとも、【天乃とお近づきになりたいから入部したい】という下心がある時点で
東郷はもちろん、友奈も歓迎しかねていたせいでもある
夏凜「けど、二人は天乃をどう見てんのよ」
友奈「え?」
東郷「どう見てるのか。と、言われても困るわね……」
突然の問いかけに驚く友奈と
考え込むようにつぶやく東郷と、反応はまちまちで
友奈は「尊敬できる先輩かな」と答えて
東郷は「幸せを感じられる人」と、少し照れくさそうにはにかむ
本当なら、好きか嫌いかを聞きたかったのだが
言葉を選び間違えたか。と、夏凜は深々と息をつき髪をわしわしと乱す
どうやら、疲れすぎたらしい
いや、そもそも。なぜ天乃のためにここまで頭を使う必要があるのか
そう思い至って思考を放棄しようと目を背けると、ちょうど天乃がいた
天乃「?」
夏凜「……あ、いや。偶然あんたがそこにいただけで。目を合わせるつもりはなかったから」
天乃「う、うん?」
風「今の、別に言い訳いらなくない?」
夏凜「この話の流れで天乃を見るとか。魅了されてるみたいでなんか嫌だし」
そう言って夏凜は目をそらす
それが本音なのか建前なのか
微妙なところではあるが、いずれにしろ天乃にとっては少しばかりショックで
けれど、夏凜が言うこともわからなくはないと、苦笑する
魅了されてるならもうちょっとおかしいはずだし
そもそも
魅了されるのは好意がある人限定だ
――だから、夏凜は多分。影響なんて受けない
天乃はそう思ったが、
けれども、なんの影響もないとは限らない
ほんの少しでも好意と取れるものがあるなら
それを引っ張り出して増幅してしまう可能性だって。あるのだから
1、現状。この力には対抗策はないの。だから、みんなは極力私がどう見えても力のせいだ。と、否定して欲しいの
2、言いたくなければ言わなくてもいいんだけど。みんなは私のこと……その。好き?
3、ねぇ。念のためなんだけど。女の子同士の恋愛について、賛成か反対か答えてもらえないかしら
4、基本的には神の力に触れた人たち対象らしいけど。一般人にも影響あるかもしれないから。怪しい人がいたら。教えて
↓2
では、此処までとさせて頂きます
あすもできれば似たような時間から
では、再開していきます
天乃「魅了のちからについては、言ったとおりなんだけど。これに関して問題があるの」
天乃がそう切り出すと
ただでさえ緊張感を感じていた全員の顔が
張り詰めていた糸をが弾かれたように天乃へと向く
その力だけでも大問題なのに
それに関してまだ問題があるのか。と
それらを感じ取ってから、天乃は軽く頷くと
天乃「現状この力には対抗策はないのよ」
そう言って全員が驚いて声を上げるよりも早く
天乃「だから、みんなは極力私がどう見えても力のせいだ。と、否定して欲しいの」
立て続けに言葉を投げ込んで、息をつく
要求はそれだ
自分が――自分で言うのは恥ずかしいのだが
もしも自分が魅力的に見えたとしても、それは勘違いだ。とか力のせいだとか
とにかく、考え直してほしい
それが、天乃からの要求だった
東郷「否定。ですか」
一番最初に口を開いたのは東郷だった
その要求に対する可否を悟らせないような声でそう言った東郷は
マウスを握っていた手に今度は自分の手を握らせると
それは賛成できかねますね。と、いつもの声で断った
天乃「な――」
東郷「もちろん、先輩が言う通り危険なことかもしれませんが。私は今ある自分の気持ちを否定したくはありません」
風「けどさ東郷。久遠は」
東郷「私は一度記憶を失っているんです。だからこそ、今あるものは失いたくないんです」
口を挟みかけた風に対して
東郷は聴き終えることなく反論して、「すみません」と、頭を下げる
東郷「これは私の我侭です……だから。この我儘を突き通す限り。その力には二度と負けないと誓います」
夏凜「そんなことできるわけ? 昨日、あんな醜態晒しておいて」
東郷「……それは。でも、カラクリが解ったのであれば気持ちを落ち着けることくらいは出来るわ」
夏凜の鋭い言葉に一瞬、眉を潜めた東郷だったが、
対する言葉をしっかりと考えて、口にする
友奈「私は、ちょっと怖いです……でも。それを否定すると久遠さんの行動を否定しちゃうような気がするんです」
その一方で友奈は困ったように笑いながら
何もしていない手で自分の手を固く握り締めて言う
――不安だし、怖いけど。でも、それはもっと嫌だ
先代の勇者として頑張ってきた人だ
あんな大事なことを
あんな辛い真実を
あんなに苦しい現実を
みんなのためにと自分の中に閉じ込めておいてくれた人
きっと、言うことができるまでの日常は
全て、偽物のようにしか思えなかったんだと思うから
だから。だからこそ
友奈「私は、久遠先輩の今までもこれからも嘘だと思いたくない。ずっと。本物だって思いたい。だから、私も否定しません」
天乃「貴女達ね……」
それは素直に嬉しい言葉だった
けれども、同時に嫌な言葉でもある
それはつまり、天乃から受ける魅了の力に対し真っ向から挑むということにほかならないからだ
純粋無垢で染まりやすい友奈はともかく。というといささか可愛そうではあるが
少なくとも抵抗力のありそうな東郷があんなにも乱され、友奈に至っては気絶するほど強力な力を
天乃を否定するという根本からの拒絶をせずに受けるというのは自殺行為以外の何ものでもない
友奈も東郷もそれは分かっているはずだ
にも関わらず、二人は……
夏凜「あんた達のその……なんていうか。そういう友情的なやつを恋愛?って言えば良いのか分かんないけど」
樹「?」
夏凜「とにかくそういうのを、男子相手の嫉妬に切り替えるほど悪質なやつなんでしょ?」
天乃「え、ええ。そう……だと思う」
夏凜「ってことは、そういう気持ちが強ければ強いほど厄介だから否定しろって言ってるんだと思うんだけど。それでも?」
疲れているからか、
それとも煮干等でキメていないからか
……実際は面倒事を避けたいがゆえに全力で考えているだけなのだが。
まっとうに物事を捉え、考えて
参謀のごとくしっかりとした発言を、夏凜は議論の席にたたき出して、東郷を見つめる
東郷「……」
夏凜「まぁ、私はあんた達の所に来て一日だし。何も知らないくせに言うなって感じかもしれないけど」
夏凜は誰も何も言わないのを見回してから
大きく体を伸ばして、端末を見る
夏凜「そろそろ瞳が来るわよ。天乃」
天乃「え、もう?」
夏凜「ん……そう言えば。私も魅了の力にやられないって確証はないし。やっぱり。今日はあんた一人で帰りなさい」
ふと思い出したどうでも良いことのような軽い口調で
夏凜はそう言った
1、そうしておく
2、みんなのこと信じてるし、夏凜のことも信じてるから……一人は寂しいわ
3、……そう言われるのは。なんだか複雑だけど、ありがとうって言っておくわね
↓2
夏凜の気遣いは嬉しい。けれども……
そう考えていまう天乃は
自分自身の優柔不断な一面
あるいは、意外と寂しがりやな一面に気づいて、苦笑する
――みんなが承諾したらしたで。ダメだったのかもしれないわね
当然、それを口にすることはなかったが
早く行きなさいよ。と、後押ししてくれる夏凜に振り返ってその手を掴む
天乃「みんなのこと信じてるし、夏凜のことも信じてるから……」
夏凜「あんた」
天乃「一人は寂しいわ」
そう言われ、唖然とすることもなく黙り込んだ夏凜だったが
少しして「あーもう」と計画が崩れて起こる寸前のような声を出し、髪をかき乱すと
夏凜「わかったわよ……だからそんな顔すんな」
そう言って頭をぐいっと押す
天乃は自分が原因だと分かっているはずで
自分には魅了の力があることも言ったのだから分かっているはずで
それに通ずることを今朝教えたはずなのに。と
夏凜は学習能力がないのか
それとも、もはや自制できないほど
天然素材100%なのかどちらかなのかと考えつつ、部室の出口まで天乃を押し出して、振り返る
夏凜「今まで通りでいいらしいけど。少しでも危うくなったら私が私の力で止める。天乃以外には。負ける気なんてしないし」
樹「友奈さんが勝てなかったなら、少なくても私はダメです」
東郷「私も久遠先輩のような動きは不可能なので」
そういう二人の横で
すごく痛かったもんね。と、昔のことのように思い出して笑う友奈は
自分の頭を軽く撫でる
風「あたしもやり合う気はない。けど。ほんと……悪いけど頼むわ。夏凜」
夏凜「サポートしろって上からの命令が来てるだけだから。変に信頼されても困るんだけど。まぁ、任せなさい」
風たちを部室に残して、一足先に二人で廊下を進む
放課後の校舎は部活の掛け声があれば賑やかにも思えるが
それがなくなれば、静まり返ってしまう
いまは静まり返ってしまった方で
キュルキュルと車輪が回る音
カッカッカっと夏凜の足音
その二つだけが変に大きな音に聞こえる
そんな中「ねぇ天乃」と、夏凜が口を開いた
夏凜「私のことを信じるのは勝手だけど。過信はしないで」
そんなことを言われてなぜなのか? という疑問を抱くのは至極当然で
天乃「どうして?」
天乃がそう聞き返すと
進む足は止めることなく、夏凜はため息をつく
夏凜「聞き返されると答えにくいんだけど……」
けれど
夏凜「さっき言ったとおり。その力を受けない保証が無いから」
夏凜は少し言葉を変えて繰り返し
天乃を連れて校舎を出て行く
では、此処までとさせて頂きます
あすもできれば通常時間から
では、本日もスタートしていきます
01~10 ばてくす
11~20
21~30
31~40 樹海化
41~50
51~60
61~70
71~80 ばてくす
81~90
91~00
√ 5月2日目 夜(自宅) ※火曜日
月明かりの下、懸命に明るくなろうとしている他所の家の明かりや街灯を眺めながら、息をつく
結局のところ、自分は寂しがり屋で間違いがないのかもしれない
ひとりでいる時間が寂しいわけではない
けれど、ふと。物足りなさを感じる
この家は広いのに
精霊である九尾と自分時々死神達と言ったメンバーしかいない
だから、無駄な広さがそう感じさせるだけかもしれないけれど
ポッカリと空いた空間から
時々、底知れない冷気といえばいいのか
そんなものを感じる
天乃「沙織、どうしたのかしら」
おもむろに端末を手につぶやく
一応、ちゃんと帰った? と、メールは送ったのだが……帰ってきていないのだ
別に無理に答えなくてもいいけれど。と
前置きはしたし、それでも答えてくれたのだから
沙織は言っても平気なことだったはず
とはいえ、
どっちも。と、グレーな答えを返された時に
どっちも? と聞き返したのは頂けなかったかもしれない
天乃「それがなければ、逃げ出すことはなかっただろうし」
希望する相手からの連絡のない端末は
規定の時間が経過してブラックアウトし、沈黙する
天乃「今更、そんなこと言っても仕方がないけど」
勇者部に行く必要があったことも確かだし
当初望んだ結果ではないにせよ、話すべきこと話せたし
その点で言えば放課後の行動にも間違いはなかった。と思う
けれど、正しいとも。言えないのかもしれない
天乃「探すべきだったのかも……」
九尾、友奈、死神、沙織、風、樹、東郷との交流が可能です
1、九尾
2、死神
3、風
4、樹
5、友奈
6、東郷
7、沙織
8、夏凜
9、イベント判定
↓2
※3~8は電話
01~10
11~20 出る
21~30 留守番電話サービス
31~40
41~50 出る
51~60 るすばんでんわサービス?
61~70
71~80 出る
81~90
91~00
空白は電源が切れているためかかりません
電話をかけた
けれど、電波の届かない所にあるか
電源が入っていないためかかりません。と、機械音声が流れてくる
天乃「……沙織」
本当に
ただ、本当に。電源が切れてしまっただけだったり
お昼のことでいまは話したくないと電源を切っているだけなのなら。それは構わない
けれど、もしもそうじゃないのだとしたら
そう考えてしまう頭を振って、ツーツーと鳴る端末を止める
天乃「別に……喧嘩するような内容でもなかったはずなのに」
しかし、喧嘩するような内容でなくとも
沙織が逃げ出してしまったことに変わりない
ちょっと怒ったように、恥ずかしそうに「馬鹿」と言って
天乃「心配……するじゃない」
体が不自由でなければ。家が、隣近所だったら
今すぐにでも家のドアを叩いていたかもしれない
頑張ってベランダから侵入して……は流石にしないけれども
天乃「無事、なのよね?」
今日はバーテックスが攻めてきていないし
自然災害や事故、事件が起きたということも聞いていない
もっとも、自分を通す可能性は極めて低いのだが
それでも、夏凜や瞳には連絡が行くだろうし、
どちらか片方に連絡が行けば必ず回ってくるはずだ
それがないということは、無事だと見ていいのだろうが……
天乃「神託関係で捕まってるのかしら」
悪い意味ではなく
巫女の仕事として、神託を受けるために神樹様と接触を試みているという意味で
しかし、だとしたら
その神託は間違いなくバーテックス関連で
とても。そう、とても嫌な……神託になる気がしてならない
けれどもその場合、
九尾や稲荷が事前に察知して報告をしてきてくれるはずなのだ
つまり、その線も薄い
九尾だけならば、わざと隠している。なんてことは多分しないだろうが
残念ながらそういった点も考慮しなければならない
……が
稲荷も。と、なると
ただ隠しているだけというのは考えづらい
だからこそ不安になるし、心配になってしまう
いや、そうでなくとも。心配にはなってしまう
天乃「誰かに相談しておくべきかしら……」
1、する
2、しないでおく
↓2
では、ここまでとなります
あすは日曜日の代わりに、可能であればお昼頃からの再開となります
のわゆのあらすじは確認しましたが……どうでしょうか
精霊開放に関しては、行っても須佐之男以外はランダムです
では、少ししたら再開いたします
天乃「相談。しましょう」
私事で、しかも少しばかり変な理由でけんかっぽくなってしまっているし
それは少し恥ずべきことかもしれないが
心配なことは心配なのだ
誰かに相談して、ちょっぴり恥ずかしい思いをする方が
相談せずに放置して悪い結果に終わるよりは断然ましだ。と、天乃は端末を取る
天乃「とはいえ……」
問題は誰に相談するか。なのだが
天乃「これに関しては、瞳も考慮すべきよね」
瞳。夢路瞳
彼女は沙織と同じく大赦に属している人間だ
だから、相談相手として考えるのは誤りではない
1、九尾
2、死神
3、風
4、樹
5、友奈
6、東郷
7、瞳
8、夏凜
↓2
ここはやっぱり、瞳にするべきだろう
同じ学校という意味では夏凜もふさわしいかもしれないけれど
夏凜と瞳
どちらの方が沙織に関して知ることが出来るのか
関われるのかといえば、それは瞳の方だ
天乃「……こんな時間にごめんなさい」
つぶやきながら、ダイヤルを押す
時間が時間なこともあってか
コールオンは30秒、一分、二分、三分と
だんだんと伸びていく
そして
瞳『はいっ! お待たせしました。夢路です』
焦りを感じる声が聞こえてきて
思わず、ホッと息を吐く
少なくとも、大赦職員全員が危険な状況というわけではなさそうだ
天乃「こんな時間にごめんなさい。私よ」
瞳『久遠様……? どうかされましたか?』
どうかしたのか。と、言われると
さほど大したことではないと言いそうになる
実際問題、大したことでは……
――いや、そういう問題じゃない
問題点は沙織と喧嘩別れのようなことをしたことではなく
沙織との連絡が一切不可能な音信不通な状態となっていることだ
その点だけ言えば、重要すぎるといってもいいが……
天乃「えっと」
初めから
どんな内容での別れとなったのかも含めて話すか
ただ、連絡が取れないことについて問うか
それとも、何も言わず、沙織がどうしているのかを聞くか
1、初めから話す
2、沙織と連絡が取れないことについて
3、沙織は大赦にいるのかどうか
↓2
重要な部分だけ話すと、
それは言葉通り重要で大問題に発展する可能性があると考え、
天乃は少し申し訳なさげに、事の顛末を話すことにした
天乃「沙織が、飛び出して行っちゃったの」
女の子同士の恋愛について話したあと、
では、沙織はどうなのかと問いただしてしまったことが原因だとは思うけど。と、
付け加えたりしながら話を進めていく
瞳はその間、黙って耳を傾けていてくれた
そして、
連絡がつかないこと、メールの返信がないこと
すべてを話し終えると「大丈夫ですよ」と、直ぐに答えた
天乃「どうして?」
瞳『伊集院様からの定時連絡がありませんでしたので、夕刻に私が向かいましたし。その際に理由は伺っておりますので』
天乃「会ったの?」
瞳『はい。しっかり。問題なくご自宅に居られました。ただ、端末を机の中に入れたままだそうで』
電源が入っていないと返されたのは、
充電が切れて電源が落ちたせいだと思いますよ。と、瞳は付け加えた
天乃「なら、無事……なのね?」
安堵に満ち満ちた声を漏らしながら
天乃は自分の体が軽くなったような気がして
初めて、気づかないうちに緊張していたのだと知って、苦笑する
蓋を開けてみれば、充電が切れた。机の中に忘れた
そんな、時々ありうる忘れ物だった
天乃「沙織は、家にいるのね?」
瞳『それは、はい。間違いなく』
瞳は特に焦ったりするような同様もなく
穏やかな口調のまま、答える
電話口からも、天乃の安心感は伝わって来るし
それまでの、不安もひしひしと感じていたからだ
瞳『伊集院様は、きっと、久遠様からの連絡が来てる。と、おっしゃっていました』
天乃「え?」
瞳『付け加えて、あんな質問するんだもん。少しくらい無視してやるんだから。とも』
はじめはなんのことだか全くわからなかったし
聞いても関係ないから。と、教えてはくれなかったのだが
なるほど。聞いて納得だと瞳は頷く
瞳『久遠様は、誰か心に思う方はおられますか?』
天乃「私は……」
――どうだろうか?
考えてすぐに首を振る
そんな相手はいない
瞳の言い方からして、それが恋愛においてのことだと判断した天乃は、
そんな相手はいない。と、答える
単純に好きな相手といえば、沙織たちが友人として好きではあるけれど。とも
瞳『そうですか……恋はいいですよ。学生時代もっとも楽しめることですから』
天乃「貴女は楽しめなかったの?」
瞳『そこを突かれると、弱いですね』
瞳は苦笑して流し、回答を避ける
正直、学生時代に恋愛の経験はないし
語るほど面白い過去でもないからだ
――してみたいと思わなかったわけではないんだけど。恵まれなかったからなぁ
瞳『大人になっていくと。結局。お金が絡んだ付き合いになりますから。本当に。心での交際ができるのは学生くらいなんですよ』
天乃「貴女、お金ないの?」
瞳『それはもう、たんまりとありますよ。申し訳ない話ですが。久遠様担当手当というものがありますので』
久遠様担当手当
別名……というか、むしろ職員の間ではこちらが普通の呼び方として使われているのだが
もうひとつの言い方としては【慰謝料】である
もちろん、天乃に対してそんな言い方はしない
天乃「手当?」
瞳『はい。まぁ、なんと言いますか。久遠様が害ある存在として名高い大赦では、中々久遠様に近づきたい人がいないのです』
天乃「あなたも?」
瞳『いえ、私としては害があるとかないとかどうでも良かったので。誰も担当にならないなら良いかなと』
瞳は語りつつ、苦笑する
本当に、就職してそうそう何なんだろう。と、思った
新人である私たちに、先輩は手当に目がくらんでもやらないほうがいい。と、言ってきたし
精神的苦痛で入院した人がいるとか、靴を舐めさせられるとか、足を舐めさせられるとか
なんだかよくわからない噂がくっついていたし
いや、まぁ、確かに
ほぼ無休という結構ハードな仕事ではあるけれど、わけのわからない噂はどれも噂でしかなかった
――正直なところ、私は久遠様が好きだ
瞳『だからといって、今更立候補者がいても。誰かに担当を変わる気はありません』
最初は、クール系な人なのかと思った
初めて車で迎えに行ったとき、よろしくお願いしますと挨拶をすると
ただ、静かに「悪いけれど、よろしくね」としか言わなかった
笑うこともなにもなく、ほとんど無表情な感じで
車に乗っても
こっちから話しかけなければ
端末をいじることもなく、窓から遠くを眺めているだけ
本当に。遠く遠く
きっと、私が見える以上に遠くを見ているんじゃないかと思うほどに遠い目をしていた
「よろしく」、「ありがとう」、「また帰りに」、「また明日」
反応もそっけなくて、どちらかといえばやり甲斐はなかった。と、思う
でも、次第に。そう、勇者部を作り上げて、部員を増やしてから
結城様たちの事を話すようになった
友奈はあれで、これで
風はああで、こうで
そうやって語る中、東郷様
元、鷲尾様に関しての時は少し悲しげな言い方だったけれど
でも、皆にできる限り日常を楽しませてあげたい。と言った時の……
おそらくは私に向けてではなく、独り言だったんだとは思うけれど
その時の表情は、とても優しくて
子供なのに、子供ではなさそうな。という矛盾はあったけれど
でも、私は久遠様が少なくとも、嫌われるような人ではないと感じたし、思った
犬吠埼様も同じく勇者で。けれども、彼女以上に深い現実を抱えている久遠様は
その全てを内に留め、日常が日常ではないと知りながら
みんなのために日常で有り続けようとするとても優しい人なんだと、思った
今日はあれをした。これをした
そう嬉しそうに語る反面で、明日もそうできるといいな。とつぶやく久遠様のその優しさが
私はとても、好きで
だから、私はこの仕事が必要なくなるまで
その優しさが、真実を抱え続けて体を残して成長してしまった心が
報われる日を、救われる日を
たった一人の特別席で見届けたいと。思うから
瞳『私は、今のこの仕事が気に入ってます。天職ですね。天乃様だけに』
――ここは誰にも譲れない
いつの間にか勝手に思いを馳せて言葉を紡いでいることに気づいた瞳は
天乃には見えないが、思わず赤面して
近くにいた夏凜ににやりと笑われて首を振る
瞳『ですので、私はむしろ。久遠様ともっとお近づきになれればとさえ。思っています』
天乃「……私と? いいことなんて、ないと思うけど」
瞳『そう卑屈にならないでください』
仲良くなればなるほど、天乃はいろいろな表情を見せてくれる
けれども、本当の意味で心を開きはしない
沙織はそれに気づいているだろうし
瞳も、その点に関しては薄々ではあるが感じている
だからこそ、もう少し仲良くなりたいと。思う
そうすれば、心の奥底に抱えている何かを、聞くことができる
そんな、気がするから
瞳『……なんの話をしていたのか、逸れてしまってますね』
その気持ちを押し隠して、瞳はそう言った
天乃「ほんと。一番聞きたかったことは最初に聞いちゃったものね」
瞳『そうですね』
沙織の事を聞こうとして電話して
沙織のことを答え終わったというのに
なんで、あんな話になったんだったか
思い出して、手当に行き着く
そこからどうしてああなるのか
瞳は小さく笑って、「久遠様」と、呼ぶ
天乃「うん?」
瞳『私、久遠様のこと好きですよ』
天乃「瞳……」
瞳『私は大赦の人間ですが。心から、久遠様が幸多き未来を歩めることを願っています』
1、……ありがと
2、私も好きよ。大赦の人間だとしても
3、罰当たりなこと言っちゃって。クビにされるわよ
4、その好きって、普通に恋愛じゃない方って考えていいのよね?
↓2
天乃「……私も好きよ」
瞳『え?』
天乃「貴女が、大赦の人間だとしても」
そこをしっかりと付け加えて
天乃は今の気持ちを素直に伝える
大赦の人間ですが。なんて前置きに
大赦の人間だとしても。と、叩き合わせて
そう、
自分には大赦であることなんて関係はないんだと
教えあうように
瞳『……………』
天乃「…………」
互いに言葉のない沈黙
けれども、気まずさはなかった
窓から見える月明かり
示し合わせたわけでもなく見る二人は
同じものを見れていたら嬉しいと。口には出すことなく、笑った
1日のまとめ
・ 乃木園子:交流無()
・ 犬吠埼風:交流有(魅了、否定)
・ 犬吠埼樹:交流有(魅了、否定)
・ 結城友奈:交流有(魅了、否定)
・ 東郷美森:交流有(魅了、否定)
・ 伊集院沙織:交流有(女の子同意の恋愛、貴女は)
・ 九尾:交流無()
・ 死神:交流無()
・ 稲狐:交流無()
・ 神樹:交流無()
5月2日目終了時点
乃木園子との絆 25(中々良い)
犬吠埼風との絆 38(中々良い)
犬吠埼樹との絆 30(中々良い)
結城友奈との絆 38(中々良い)
東郷三森との絆 36(中々良い)
三好夏凜との絆 13(普通)
沙織との絆 36(中々良い)
九尾との絆 30(中々良い)
死神との絆 29(中々良い)
稲狐との絆 27(中々良い)
神樹との絆 5(低い)
√ 5月3日目 朝(自宅) ※水曜日
01~10
11~20 樹海化
21~30
31~40
41~50 樹海化
51~60
61~70
71~80 樹海化
81~90
91~00
天乃「ほんと、攻めてこないなんて不気味だわ」
それはそれでとてもありがたいことではあるのだが
やはり、攻めて来ないのは攻めて来ないで少し不安が有る
連日連夜ではなくとも
攻めてきた場合は向こうの戦力が削られることになる
けれど、今のように攻めてこない場合
複数回分の戦力が一回に凝縮されてくる可能性がある
そうなると
いくら勇者部とは言え、大打撃は免れえない
被害が出る……なんて考えたくはないけれど
考えざるを得ない
九尾「実際、きゃつらは戦力を束ねてくるじゃろう」
天乃「……やっぱり」
九尾「主様がいることで、一体二体では無意味であると解っておる。主様を足止めしつつ、周りを叩く作戦を立ててくる可能性はある」
バーテックスにも知能はある
それは手痛いという言葉では足りないほどの喪失と引き換えに学んだことだ
向こうはこちら側と同じように
毎度毎度、何かしらの目的を持って攻めてくる
神樹様への到達という目標はもちろんのこと、それ以外にも……
天乃「最悪、精霊の守りを抜いてくる可能性も考慮しないといけないわ」
九尾「うむ……現状ではその打開策はなかろう。妾としてはいくつか案があるにはあるが」
九尾はそう言うと、これは憶測ではあるが。と前置きをして
九尾「致死性のあるものでなければ通る可能性が高い。例えば、今も妾達が聞いておる音。などじゃ」
天乃「……確かに。足止め目的なら。騒音以上のもの」
例えば、黒板を掻く音や
嫌いな人は嫌いな発泡スチロールの擦れる音
そういったものを用いての足止めは有効かも知れない
九尾「倒すことを念頭にはおかず。あくまで、妨害させないことを目的とすれば……大いにありえる」
天乃「次はそういう攻撃してくるのが出てくるかも知れないのね?」
九尾「主様にはきゃつらの存在が単一ではないことは知られておる。一体のみとは限らぬがな」
天乃「同一個体が複数出てくるっていうの?」
九尾「そうとは限らぬが……警戒はしておくべきじゃろう」
何かしらの手は打ってくる
そういう九尾に、天乃は軽く頷く
今日はまだ安心できない
明日も安心できない
明後日も……毎日が不安だ
天乃「早く、戦いを終わらせたいわ」
九尾「だからと壁の外には行くでないぞ。きゃつらが主様をおびき出そうとしているやも知れぬのじゃから」
天乃「うん……わかってる」
九尾、友奈、死神、風、樹、東郷との交流が可能です
1、九尾
2、死神
3、風
4、樹
5、友奈
6、東郷
7、夏凜
8、イベント判定
9、勇者部部室
↓2
※3~8は電話
※9は朝一勇者部直行
天乃「おはよう」
夏凜『この時間に電話が来ると、昨日の言葉が蘇ってくるんだけど』
夏凜は声だけでわかるくらいに困ったように言う
実際、昨日一緒に登校した程度で夏凜はほぼ一日中質問攻めだった
しかも、ほとんどが同じ質問で。だ
それは聞いた話でしかないが
天乃もそれならこの反応も仕方がないかな。と息をつく
夏凜『まぁ、さっき瞳にも言われたんだけど』
天乃「瞳に? なんて?」
夏凜『むしろ、一緒じゃなくなったらやましいことがあると思われるんじゃないですか? って』
夏凜は確かに一理ある。とは思った
さんざん、運んでくれる人が知り合いだからと言っておきながら
翌日からわざわざ自転車通学
怪しく思われる可能性は大いにあった
けれど、だからといって一緒に通学すると答えたわけではない
それが嫌だから。なのかどうかは別勘定するとして
ならもういっそ常に一緒に通学するか。と、言う気にはなれなかったのだ
本来そんな予定はなかったというのもあるが
必要以上に接したり
やはり、仲良くなってしまうと魅了の効果を受けてしまう可能性があり
それを受けてしまうと
いざという時に助ける側ではなく
むしろ襲いかかる側になってしまうかもしれないからだ
――それは、避けたい
だから、怪しく思われるとしても
夏凜は迷うことなく一緒に登校するという選択をできなかった
1、奇遇ね。私も一緒に登校しようって言おうと思ってたの
2、貴女は一緒じゃ不満?
3、期待してるところごめんね。バーテックスについてなの
↓2
天乃「あら、奇遇ね。私も一緒に登校しようって言おうと思ってたの」
その声の跳ね上がり具合に、
冗談か。と、すぐに判断しようとした頭を振る
ただ単に嬉しかっただけかもしれない
――なにそれ。バカみたい
夏凜は自分の希望的観測のような考えに悪態をつき、
苦笑する
もしも嬉しいのだとしたら、天乃は子供だ
自分も。だけれども
夏凜『あんたも瞳と同じこと考えてるわけ?』
天乃「ええ。まぁ……個人的に一緒がいいな。とも思ってるけど」
寂しいだなんて言ってしまった以上
天乃は隠さずにいう
それが嘘であると思うほど、夏凜は弄れてはいなくて
少しばかり、照れくさかった
夏凜『あんた、昨日の夕方の一件覚えてる?』
天乃「魅了のちからの話?」
天乃が疑問符をつけ返すと
夏凜はそうそれ。と、答えてため息をつく
忘れていなくてよかったという安堵は感じず
むしろ覚えてるならなんで言えるのか。というような
ちょっとした呆れを感じた
天乃「それがどうかしたの?」
夏凜『どうもこうもないわよ』
言ったはず。と、夏凜はやや怒り気味に前置きをして
夏凜『私もその力の影響を受けないとは限らないって』
天乃「それは聞いたけど……」
夏凜『車椅子とそれに固定されてるようなあんたは、私を退けることができるわけ?』
天乃「……自信がないの?」
夏凜『正直、東郷美森と結城友奈を見て、自信はないし自負もない』
天乃の問いに、夏凜は意地も張らずに答えた
無理もない話だ
夏凜よりもずっと親交があって
仲がよく、互いを思い合う気持ちが強いはずの二人が
あんな、悪く言えば壊れ方をしたのだから
そこまで親交もなく、思い合う気持ちなんてそれほどないと思っている夏凜が
自分が魅了の力に当てられた時に
耐え忍ぶことができる自信がなかったのだ
思い合う気持ちが強いからこそだ。と、言われればそれまでかもしれないが……
夏凜『……………』
正直、天乃が信じてくれることは嬉しいし、ありがたいとは思う
誰からも頼りにされず、あまつさえ役立たずの烙印を押されていたような状態だった夏凜としては
それが勘違いであるのだとしても
自分を信じて、そばに置いてくれようとしている天乃の気持ちは純粋に嬉しかった
けれども、だからこそ
――それを裏切りたくない
そんな思いが、夏凜にはあった
三好夏凜は、優しい少女だから
夏凜『もちろん、あんたに手を出さないように務めるつもりではある。けど』
天乃「自信がないから、できるだけ避けたい?」
夏凜『そう。部活とかには顔を出すわ。けど、登下校は……』
別にしたい。いや、すべきだ
と、夏凜は言う
部室とかならまだしも、車内のような場所はできれば避けるべきだと思ったからだ
天乃「……そう」
夏凜の言い分は間違っていない
いや、むしろそれは正しい
危機感がないのは自分だ
けれど……
1、どうしても?
2、ごめんなさい。わがまま言ったわ
3、夏凜はやっぱり嫌よね。女の子と変なことするなんて
↓2
天乃「夏凜はやっぱり嫌よね。女の子と変なことするなんて」
夏凜『は?』
天乃「え、ぁっ」
気づいても、遅い
大して考えた発言ではない
むしろ、だからこそ。その言葉が漏れてしまったのかもしれないが
夏凜の驚きに、天乃は慌てて口元を覆う
もちろん、電話中は意味はないしそうでなくとも、意味はない
言ってしまった言葉は、取り消せないのだから
――これじゃ、まるで私は
そう思って赤面しているとも知らず
電話先で唖然とする夏凜は、背後からの「夏凜ちゃん?」という声にハッとする
そうだ。独りじゃないのだ
瞳に少し電話するから。と、別の部屋へと移動して、息をつく
夏凜『あ、あんた何言ってんのよ。問題はそこじゃないでしょうが』
襲うか襲わないかが問題なのであって
女の子とどうこうするのが嫌か否かというのは関係ないこと
――いや待て。それもなにかおかし……あぁもう!
ガシガシと整えた髪を掻いて夏凜は心の中で唸る
なんて言えばいい
なにを言えばいい
この、なんというかあれな先輩に……と
夏凜は考えに考える
夏凜『私は襲いたくないの』
天乃「それは知ってる」
夏凜『なら、なんで女っていうか。あんたとそういうことがするのが嫌なのかって話になるのよ』
天乃「同性の恋愛が好めないから嫌なのかなって」
きっと、ションボリとしているだろうと
夏凜は声から想像していたけれど
夏凜『馬鹿か。あんたは』
言わずにはいられなかった
夏凜『仮に私が同性OKだったとしても』
天乃「うん」
夏凜『相手のこと襲いたくない。だって、それってつまり相手の信頼を裏切るってことでしょ?』
分からずやな天乃に
おそらくはわかっているけれど口が滑って天然素材に
夏凜は改めてわかりやすく告げて、首を振る
――ほんと。いい迷惑なやつだわ
けれども、心とは裏腹に、夏凜は笑みを浮かべる
夏凜『同性が平気なら、最悪襲っても問題ないと思ってるんだろうけど、むしろダメよ。それ』
天乃「え?」
夏凜『仮に私があんたを好きなら。好きな相手を傷つけたって罪悪感。後悔が一生残るから』
天乃はきっと許すだろう
いや、むしろ
襲わせてしまってごめんなさいと、
嫌なことをされた立場であるはずなのに
自分のせいだと言うのだろう
けれどもそんな姿を見せられて、そんなことを言われて
傷つかないほどのふざけた人間だと。思われているのだろうか
天乃「じゃぁ夏――」
夏凜『答えないわよ』
じゃぁ夏凜は。そのあとに何が続く予定だったのか
聞かなかった以上それは知ることはできないし、知りたくもないと夏凜は思う
どうせ、碌でもないことが続くだろうから。とも
同性の恋愛は平気なのかと言われても
恋愛自体未経験の夏凜には答えようがないし
天乃のことが好きなのかと聞かれても
そこまで素直になることはできないから答えられないし
夏凜『とにかく、登校はしない』
天乃「……そっか」
夏凜『……………』
寂しそうな声が聞こえて、夏凜は思わず今日くらいならと言いかけたが
魅了の力にやられてしまっているかもしれない。と、言葉を飲み込む
だから
夏凜『ごめん』
短くそれだけを言って、通話を切った
では、此処までとさせて頂きます
あすは通常時間か、もしくはなしになります
瞳さんは割と心強い人です
「……魅了されたことにすれば、襲っても合法? 乗るしかないな……この、流れにッ」
「乗ったら張り倒すわよ。お兄」
「妹に張り倒されるのなら。やるしかないな」ダッ
「あっ、ちょっと!」
少し早いですが、
少ししたら初めて行きます
√ 5月3日目 昼(学校) ※水曜日
友奈、沙織、風、樹、東郷、夏凜との交流が可能です
1、風
2、樹
3、友奈
4、東郷
5、沙織
6、夏凜
7、イベント判定
8、勇者部部室
↓2
朝、学校に来たときにはもう沙織は登校してきていて
電源の入らない端末片手にため息をついていた
私の姿を見るやいなや、
一瞬、申し訳なさそうにしつつも首を振って
フイッと顔をそらす
昨日の件、まだ許してくれていないようで
授業中
事あるごとに背中にチクチクと悪戯を感じ
振り向くと、慌てる彼女が目をそらす
そんなことを繰り返したあとのお昼休み
お弁当を取り出す彼女に、思い切って声をかけた
天乃「沙織、ちょっと待って」
沙織「……っ」
立ち上がろうかどうか迷った沙織の足がガタッと椅子を鳴らす
けれどもそれはすぐに、周りの喧騒にまぎれて消えた
昨日の質問はよくよく考えれば、配慮ができていなかったと思うし
だから、沙織がここまで避けようとする気持ちがわからないとは言えない
けれど……
天乃「そこまで、露骨にはしないで欲しいわ」
沙織「……久遠さんが、悪いもん」
沙織はすぐに総答えた
今日初めて聞いた声はは少し枯れていて
昨日、沙織が家でどんな状態だったのかをなんとなく、感じさせる
けれども
だからどうだということもない
だって、天乃だって不安だったのだから
心配していたのだから
もしかしたら何かにまき込まれたのかもしれないと
怖い思いをしていたのだから
昨日の会話に関しての非が天乃にはあるのかもしれない
けれども、それならば
沙にはそれ以降のことに関しての非があると言える
沙織「っ」
沙織は天乃が悪いとは言ったが
きっと、すごく心配をかけてしまっていただろうことは分かっていたし
それがあんな質問くらいでかけていい度合いの心配や不安ではないであろうことも分かっていた
だから、悪いと言いつつも、唇を噛み閉めて
天乃のことを直視できずにいる
――卑怯だとは思う。でも
もうしわけないと思うからこそ
沙織は天乃を避けようとしてしまう
それは、合わせる顔がないと、思ってしまっているからだ
1、ごめんなさい。失礼なことを聞いて
2、あれにはその……ちゃんとした理由があったの ※魅了について話す
3、無事で良かったわ。本当……ごめんね。沙織。言いたいのはそれだけ
↓2
天乃「あれには……」
沙織「?」
天乃「あれにはその……ちゃんとした理由があったの」
ちゃんとした理由
それは勇者部にも話した魅了のことだ
それさえなければ、そもそもこんな話なんて必要なかったのに。と
天乃は考えながら、魅了のことについて話した
沙織は勇者部の面々とは違って……といっても
予め九尾が言ってたんだけど。と切り出したおかげでもあるのだろうが
沙織は茶化したりすることなく、天乃の話を聞いて「そうだったんだ」と、息をつく
――久遠さんは真面目だったのに。変に期待したりなんだりして、あたしは
そのみっともなさに赤面しつつ、
沙織は天乃の目から下、口元を見ながら言う
沙織「そういう事情があるなら、そうだよね……久遠さんなら聞いてくるよね」
天乃「私なら?」
沙織「だって、相手がどっちかでそのあとの対応が大きく変わってくるもん。ううん、それまでの対応も。かな」
もしも相手が普通な恋愛を好むのなら
天乃とキスやそれ以上のことなどしてしまった場合
精神的に病んでしまうだろうし
天乃はその責任を取ろうとするのだろうが、なかなかどうしようもないことだってあるだろう
一方で
もしも相手が女の子同士全然平気なのであれば
天乃とキスやなんかをしてしまっても
精神的なダメージは少なく済む可能性があるし
最悪、体を捧げるという解決策も事前に用意しておく……覚悟しておくことができる
沙織「あたしが女の子同士ダメなら、遠ざけようとか考えてるんだよね?」
天乃「……ええ」
沙織「なら、あたしは嘘でも女の子全然オッケーって言うよ」
申し訳なさそうな天乃に
沙織はそう言いながら、笑顔を向けて
沙織「久遠さんと離れ離れなんて。そんなの、嫌だから」
はっきりと、気持ちを語った
天乃「それが嘘だと困るから……」
沙織「だから、最初に理由を話さなかったんだよね」
天乃が硫黄としていることを先読みして、問い返す
けれども、それの答えなどわかりきっているがゆえの問い
だから、沙織は天乃の答えを待たず、続ける
沙織「大丈夫だよ。あたしは」
――そう。全然平気だ
理由は言えない
詳しく語ることもできない
けれども沙織は「あたしは平気だから」と
もう一度告げる
沙織は天乃のことが大切で、大事で、好きなのだ
だから、一人にはしたくないし、されたくない
それは今回の端末を忘れたことでも……身にしみた
沙織「これからも、一緒にいよう?」
1、……責任。取れないわよ?
2、うん。ありがとう
3、なにか危なくなったら、すぐに言ってね?
↓2
では、此処までとさせて頂きます
あすはできれば通常時間から
天乃「責任、取れないわよ?」
沙織「うん……」
沙織(むしろ取るつもりだから、全然いいかな)ニコッ
天乃「?」
では、初めて行きます
天乃「……責任。取れないわよ?」
天乃は冗談めかしたものではなく
けれども、困ったように笑みを浮かべながら答える
申し出は素直に嬉しかった
けれども、だからといって
それが心から喜べるものかと言えばそうでもない
沙織という友人とともにいられることが嬉しいが
魅了という力によってその関係が壊されない補償がないからだ
だから、責任が取れないかも知れないと仄めかしたのだが……
沙織はそれには関係ないとばかりに笑みを浮かべる
沙織「むしろ、その力に当てられたとは言え。襲うのがあたしなら。責任取るのはあたしなんじゃないかな?」
天乃「そんなことは」
ない。ないはずなのだが
沙織「ううん。そんな力に負けた自分の意思の弱さが許せないから。やっぱり取るのはあたしだよ」
と、天乃の言葉を否定して押し通す
車椅子に乗る親友が抱え込みやすい性格だから
それを知っているから
すでに、多くのものを抱えていることも知っているから
だから沙織は、言う
沙織「久遠さんが本気で好きなら。好きだからこそ、そんな力に負けない意志の強さがあるべきだって思うから」
本当に、心からそう思う
天乃が同性の恋愛に関して前向きに検討するというか
自分がその立場になってくれるのかどうかは分からないが
その可否に関わらず、【魅了の力にやられたという嘘で】有りもしない責任を取って貰えるのなら
それはとても嬉しいかなと考える悪い心を噛み砕き、
沙織は天乃を見る
――好きなら。やっぱり。責任がどうとか抜きで付き合いたいよね
今の沙織の気持ちは少なくとも自称・友人としてである
天乃という理想、夢、希望
辛い経験を経てもなお、明るく生き抜こうとしている強く見える弱さ
沙織はそんな天乃に羨望のまなざしを向ける一方で
献身を捧げたいと、思う
それは自分が勇者のための巫女だからというものもあるのかもしれない
けれども、やはり
伊集院沙織は、久遠天乃が好きなのだ
その理由が友人としてであろうと、恋慕に通ずる意味合いのものであったとしても
その【好意】は変わることのない、【想い】だからだ
天乃「……複雑ね」
自分の背負うべきものだと思っている
さっきまでもそう言ってきた
にも関わらず沙織はそれは違うと否定して
けれども、その言葉は天乃にとっては嬉しいものだった
周りの生徒の喧騒に紛れる世界の違う二人の会話は途切れ
視線を向け合い、苦笑する
互いに言いたいことは言った
その結果が否定し合うものであるのならば、もはや笑うしかない
思い合うからこその否定
だからこそ、
沙織は天乃が引いてはくれないと理解して
天乃は沙織が引いてはくれないと理解して
押し付けることは、無意味であると考える
けれども、沙織はそれで正しいと思った
そうでなければいけないのだと思った
すれ違うことがなければ、そこから絡み合っていくことがないから
平行線では絶対に成し得ないものがあるから
だから。沙織はこのまま絡み合っていけるのならと
今の互いに引くことなくすれ違う想い合うままでいいと思った
――久遠さんの気持ちは枝分かれしてるだろうけど
それでも
いくつもの枝の中で一番太く力強いものだったらいいなと、邪な思いを胸に
沙織は笑みを浮かべる
沙織「あたしもちょっと複雑だよ。魅了の力のせいかな?」
天乃「そう言えるのなら、違うわよ」
沙織「あはは……だよねっ」
冗談ぽく笑う沙織から目をそらして、天乃は小さく息をつく
どうかこの関係が壊れることだけはないですようにと
神樹様ではない何かに祈るように、天井を見上げる
掃除の手の届かないそこは少しばかり、汚れていた
√ 5月3日目 夕(学校) ※水曜日
友奈、沙織、風、樹、東郷、夏凜との交流が可能です
1、風
2、樹
3、友奈
4、東郷
5、沙織
6、夏凜
7、イベント判定
8、勇者部部室
↓2
では、此処までとさせて頂きます
あすもできれば通常時間から
では、はじめていきます
01~10 告白してきた3年
11~20
21~30 入部希望男子
31~40
41~50 2年女子
51~60
61~70
71~80 3年女子
81~90
91~00
夕方になって、部室へと向かう
まだ終業後間もないからか、キュルキュルという車椅子の音は
部活に向かう生徒の駆け足や話し声にかき消されていく
その普通の人にとっての日常のひとときを見つめて、笑う
何かが面白いわけではないけれど
何かに皮肉を言うつもりもないけれど
けれどもただ、
今はまだ守ることができていると。嬉しくて
天乃「頑張っている甲斐があるってものだわ」
もっとも、近頃は襲撃もないし
自分たちが守っている。なんていう実感も何もないのだけれど
そんないつ途絶えるのかもわからない日常の中を
噛み締めるようにゆっくりと進んでいくと
「先輩!」
聴き慣れた呼称が
聞き覚えのない声で飛んできて
天乃「……………」
自分ではないんじゃないかと聞き逃し
言葉を追って振り向くと誰もいなくて
前を見ると、ぺこりと頭を下げる栗毛色の女の子が視界に入った
天乃「……私?」
もしかしてと呟くと
聞こえたらしい女の子は顔を上げて、髪色に似た瞳を向ける
「はい。先輩です」
天乃「なにか、依頼?」
そう聞くと、女の子は頷いた
天乃「メールもなしに部室の前にこられても受けてあげられない可能性もあるのよ?」
実際のところは大抵問題ないのだけれど
しかし、メールでの依頼も受け付けている以上
急を要するものだったり、どこかの時間に予約を入れてくるものもある
もちろん、優先順位というものがある
例えば、犬や猫の保護や里親探しといった命が関わるものなど
そういったものに関しては部のルールとして原則優先される
けれどもそうでなければ、基本的には依頼が来た順番に依存する
「それは……はい」
天乃「直接来たってことは、貴女にとっては急を要するものなんだろうとは思うけどね」
しっかりと注意をして
けれども彼女の行動に理解も示して笑みを向けると
天乃はとりあえず入りなさい。と、部室に導く
天乃「話を聞かないと、考えることもできないからね」
「お、お願いしますっ」
どうしても、天乃は優しいからだ
天乃「適当に座っていいわよ」
「ありがとうございます」
立ったままキョロキョロとしていた女子生徒は
お礼を述べて、近くのパイプ椅子に腰掛けると
ふっと、息を吐く
天乃と二人きりだからか
それとも三年生と二人きりだからなのかはわからないが
女の子とはとても緊張しているらしい
座ってもなお、息を吐いてもなお
手持ち無沙汰に遊ばせながら、ぎゅっと、縮こまっているように見えた
天乃「依頼があるんでしょう?」
「はい……」
天乃「なら、そうやって黙っていないで話して貰いたいわ」
残念ながらお茶は出せないが
お茶菓子だけは「食べる?」と差し出して天乃が切り出す
「あの……気のせいだとは思うんです。思うんですが、最近誰かに見られてるような気がして……」
怖いんです
そういった女の子はそれが冗談でも演技でもないことを示すかのように
酷く体を震わせ、自分の両腕で抱いた
では、ここまでとさせていただきます
あすもできれば通常時間から
では、少しだけすすめていきます
天乃「それが貴女にとって重要な話というのは、わかったわ」
天乃はそこまで言いながら、
けれど。と、続けるのを躊躇い言葉を飲み込む
なぜ自分にいうのかと疑問があった
その相談は自分よりもまず、両親や警察にはしなかったのか。と
けれど、しなかったはずがないのだ
体を震わせるほどに怯えているのに
だれかの視線を感じることを、誰にも言わないなんてことは……
天乃「今日も感じる? 今は?」
だから、天乃は問う
依頼を受けるのか否か
それの応答よりもまず、女子生徒の気持ちを和らげるために
「今は、平気です……」
天乃「……そう」
視線は感じないけれど
精神的には全く平気ではなさそうだ。と
天乃は小さく息をつく
――しかも。今日も感じるか。という質問に『今は』なんて答えるんだから……
正直言って、名前もクラスも何も知らない無関係に等しい他人ではあるが
それでも、心配しないことは出来ないし
放っておくことも出来はしない
恐らくは、もうすでに放って置かれているからだ
天乃「…………」
慎重に聞いていかないと
女の子に嫌な記憶をフラッシュバックさせる危険性もある
……さて
1、手を握る
2、抱きしめる
3、ほかのみんなを待つ
4、ここに来るまではどうだった?
5、いつごろ感じるの?
↓2
天乃「結構深刻なことみたいだし、みんなを待ってから話を進めましょ」
「で、でも……私」
天乃「私はこんな有様だから。必要だとしてもボディガードはしてあげられないから」
女子生徒はほかの人にも聞かれる。というのがあまり好ましくなさそうではあったが
天乃の言い分は正しく、「そうですよね……」と、頷く
天乃以前の相談相手になんて言われたのかは分からない
けれども少なくとも、あまり気持ちのいい思いはしなかったのだろう
天乃「……ごめんね。こんな体じゃなければ。私だけで聞いてあげられるんだけど」
「いえ……」
女の子は悲しげに笑みを浮かべると
小さく首を振って、自分の手を握り締める
「真剣に聞いてくれるだけで、私はすごく嬉しいです」
天乃「前は真剣に聞いてもらえなかったの?」
「……道徳教育の行き届いてる現代で、そんな不気味な人がいるとは思えない。気のせいだよ。と」
気のせいだよ。というのは女の子が優しく言い直したもので
実際には……と言ってもそのままの言葉ではないけれども【自意識過剰なんじゃないか?】というのに近い言葉を返された
何の被害もないから。何も起きていないから
一緒にいた友人が何も感じてないといったから
だからかもしれない。けれど、それは少女にとって不快にほかならなかった
01~10 風
11~20 全員
21~30 友奈
31~40
41~50 樹
51~60 友奈・東郷・夏凜
61~70 夏凜
71~80
81~90 東郷
91~00 風・樹
↓1のコンマ
少し待ってみたものの
友奈「おはよございまー……あれっ?」
「ゆ、結城さん」
来たのは友奈一人だけだった
友奈「えーっと……隣のクラス。だよね?」
「うん。よく知ってるね」
友奈「えへへー、時々見かけてたからね」
じゃぁ見ていたのは友奈なのか
なるほど、ストーカーは友奈で決まりね。と
頭の中でふざけて、息をつく
そんな冗談を考えている場合ではないからだ
天乃「友奈、夏凜達は?」
友奈「ちょっと用事があって遅れるらしいです。風先輩と樹ちゃんもですか?」
天乃「二人はわからないけど、来てないのは確かだわ」
日直とかではなかったし
なにか用事があるとも聞いてない
とすると、樹を迎えに行った際に
保護者として呼ばれたと考えるのが妥当だとうだろうか
いずれにしても
天乃「困ったわね……」
友奈「何かあったんですか?」
天乃「ええ、まぁ」
ちらっと女子生徒に目を向ける
天乃の瞳に映った女の子は気まずそうに首を振るが
運良く、友奈にそれは見えていない
友奈「あっ、もしかして私。相談のお話の時に来ちゃった?」
「う、ううん。そうじゃないんだけど……」
1、友奈にも聞いてもらいましょ
2、どうやら、だれかの視線を感じるみたいなの
3、ねぇ友奈。今日はこの3人で帰らない?
4、大丈夫よ。特に話はないわ
5、あぁ、実は女の子同士の恋のお話をしていたのよ
↓2
では、ここまでとさせていただきます
あすもできれば似たような時間から
……その後、相談者の姿を見た者はいなかった
では、少しだけ進めていきます
天乃「…………」
友奈でも。というのは失礼な言い方だが、
少なくとも天乃よりはボディガードとして機能することができるはずだ
それは女の子もわかっているはずだ
けれど、その上で首を振るのだから……それなりの理由があるということなのだろうか
天乃「実はね、友奈」
友奈「はい?」
ニヤリと笑う。いつも通りでいい
変に誤魔化そうとするのではなく、純情無垢な友奈をからかうことだけを。念頭に
天乃「女の子同士の恋のお話をしていたのよ」
友奈「お、女の子同士……ですかっ?」
友奈は驚いて言うと、天乃と同級生の女の子を見て
顔を真っ赤にする
恋。という単語に憧れ、多少なりとも知識が備わってしまっていたからだ
というのも。言うまでもなく先日の魅了の件からより深く備えてしまったわけだが
「ち、違うよ結城さん。私と先輩がって話じゃないからねっ!」
友奈に触発されてか、顔を赤くした女子生徒は
いきり立って否定する。元々、そんな話なんていなかったのだけれど
ノリがいいのか、それとも本気で友奈が信じると困ると思ったのか……
天乃「友奈の意見も聞きたいわ」
友奈「わ、私の……意見……」
若干どもりつつも、友奈はじっと私を見る
私や東郷よりも健康的な肌は今や赤く
髪も瞳も赤いそれはまるでひとつの炎のようで
友奈「私は、そ、その人たちが良いならいいのかなー……なんて……」
他人任せの玉虫色
そんな答えを返した友奈の目はどこかを向く
「結城さんって、女の子同士でも平気なんだ……」
友奈「へ、えっ、うーん……実はまだそういうこと経験ないから。よくわからないんだよね」
女子生徒の不意をついた問いに慌てる友奈は
えへへ。と、笑いながら頭に手を当ててそう言った
「そっか、そうだよね」
友奈「安心されると、なんだか悲しいかも……」
女子生徒の安堵の息に、友奈はションボリとつぶやく
けれど実際、仕方がないことだとは思う
もちろん、友奈に恋愛感情を持って欲しくないとか
友奈には相手なんて居て欲しくないとか
そういう束縛感情があるわけではないけれど
「あはは。ごめんね」
友奈「ううん、東郷さんにもまだ早いって言われちゃったし。先を急ぎすぎた。みたいな感じになっちゃうのかも」
友奈はまだまだこのままでいてくれると嬉しいな。とは思う
恋を知ったら可愛げがなくなるなんてことは一切ないが。こういう方面でのからかいがしにくくなるから
――なんて。言えるわけがないのだけど
「でも、その点。久遠先輩は恋愛経験が豊富で付き合った男の人は星の数。なんですよね」
天乃「えっ?」
「え?」
天乃「私、どれだけ男の子との失恋繰り返してるのよ。それ」
驚きをすぐに飲み込み、冷静に一言
呆然とした表情からさーっと血の気が引いていく女子生徒を見つめるのをやめて
オレンジ色の外を見る
「ご、ごめんなさい!」
すると、すぐに謝罪が轟いた。耳に。頭に
誰から聞いたのかはわからないけれど
そもそも主題がこんな話ではなかったのだけれど
勘違いしていたことに対して私が本気で怒っているとでも思ったのかもしれない
「すみません……」
ちらりと目を向けると、女の子は頭を下げていた
そこまで気にする必要もないのに
そもそも、恋愛相談を請け負っている時点で
それなりに経験豊富な女として見られてしまうことくらいは想定済みだった
それでも、星の数というのはあまり穏やかではないけれど
それは普通の子は知らないことなのだから……目くじらを立てる理由にはなりえない
友奈「そんな噂聞いたことないけど……」
「結城さんは久遠先輩と近しい人だからじゃないかな」
そういった女の子は、割と有名な話なんだよ。と続けたが
すぐにそれでもすみませんでした。と、謝罪する
天乃「有名。ね」
なんの気もなく呟いただけだったのだが
女の子はびくりと体を震わせる
そこまで怖い思いをさせるつもりはないのだが……しかし
天乃「友奈」
友奈「へっ?」
天乃「その子の手を握ってあげて」
友奈「手を……?」
唐突な申し出ではあったが、友奈は震える女の子の手をぎゅっと握り締める
女子生徒は何も言わずに握ってきた手の主、友奈の腹部のあたりに頭を押し付けるように――否
それで目を隠すために、顔を押し付ける
天乃「……たしかに。これは不気味かも知れないわ」
おもむろにつぶやいて、辺りを見渡す
天乃「……………」
視線を感じる。けれど、見渡してもなんの姿も見えない
ただただ。視線だけを感じる
じーっと、何かがこちらを見ている気配だけを感じ――
九尾「ジーッ」
天乃「……なに、してるのよ」
壁際にある床に面した小さな引き戸の隙間から覗く精霊を睨みつけると
女性体のまま普通にドアから入ってきた九尾は
女の子の頭を軽く叩いて、目を向けさせると、笑みを浮かべる
「先生……」
九尾「案ずるな。妾はしかと聞いておったからな」
普段出入りする際の設定を活かして、九尾は女の子を抱いて私を見る
その瞳はいつもの茶化すものでも愉しむものでもなく
不愉快さの滲みでるものだった
九尾「少し。厄介やも知れぬぞ。主様」
彼女の……九尾のいう厄介なこと。というのは冗談か大問題かの二つに一つ
この場合は明らかに、後者だった
では、此処までとさせて頂きます
あすもできれば通常時間から
九尾「【ヤツ】が来た」
天乃「やつ?」
九尾「それは――」
「お兄ちゃんだぞーっ!」ダダダダダダダッ
天乃「きゃあぁぁぁぁぁぁっ」
1のおかげで描き始めた
わかりにくいけど,描きかけ久遠ttp://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira115196.jpg
では、本日も進めていきます
wikiに関しては随時更新していきます
>>543
ありがとうございます。励みになります
天乃「……そう」
九尾が抱きしめている女の子は
そのぬくもりに安心してしまったらしく、静かな寝息を立て始めて
友奈「厄介なこと。ですか?」
タイミングを見計らったように、友奈が口を開く
九尾「うむ……と言っても。友奈に出来ることはないと思うがのう」
天乃「でも。私にはできるって?」
そう問いかけると、九尾は少し複雑そうに頷く
私がなんの迷いもなくそう聞いたのが不服だったらしい
真面目なのか不真面目なのか。と悪態をつくと
九尾は腕の中の女子生徒を椅子に戻して
九尾「主様の言う通りじゃ。といっても樹海関係ではない」
天乃「違うの?」
九尾「うむ。この娘の関係じゃ」
九尾が言うには、女子生徒が言うように
彼女のことをずっと見ている存在がいるらしい
昼夜問わず、場所も問わず
朝起きてから、朝目を覚ますまで。つまり、一日中見ている何かが。
友奈がゴクリと息を呑む
嫌に大きく聞こえたそれを耳に受けて、九尾を見ると
九尾は私を見ていた
九尾「この娘、あまり良くないものに憑かれておる。何かやらかしおったのじゃろうが……」
天乃「良くないもの……詳しくはわからないの?」
九尾「近づく前に逃げられたからのう。なかなか手ごわいやつじゃ」
そう言いつつ、もっとも。と九尾は付け加えて
九尾「妾に気づく嗅覚といい、おそらくは動物関係じゃな」
現時点でわかっている事を告げる
あとは女の子に聞くしかなさそうだけれど……
天乃「貴女に気づくとなると、難しいんじゃない?」
九尾「黄泉の者の手を借りれば良い。やつならば、憑き物を導くことなど造作もあるまい」
とは言うものの
九尾に気づき、九尾が厄介と言ったり、良くないもの。という時点で
それが創刊帯に退治できるようなものでもなさそうだとは思う
外からの光がだんだんと傾き
影が伸び始める
すると、やはり。どこからともなく威嚇するような視線を感じた
まるで、そう
九尾「貴様の獲物ではない。とでも言いたげじゃな」
九尾の目はどこかを見る
追って目を向けた先、暗くなりつつ窓の付近に何かがいるのが見えたが
一瞬にして、霧散する
九尾「少なくとも、主様には叶わぬと判断したか」
天乃「あら。それって私のほうがあなたより強いってこと?」
九尾「くふふっ。寝ぼけたことを……そんなことは言うまでもなかろう」
九尾が見せた笑は
それがどちらの意味であるかをはっきりとさせることはなかった
しかし、問題はそこではない
友奈は椅子に座り込む女の子を心配そうに見つめて
友奈「大丈夫だよ」
優しく声をかけながら、手持ちのハンカチで汗を拭う
なるほど、友奈を巻き込みたくない理由がよくわかった気がする
というのも、
友奈があの話を聞けば絶対に心配する。心配しすぎる
それゆえにさらに酷く巻き込まれることを懸念したに違いない
それで私が白羽の矢をプレゼントされたのは少し気に食わないけれど。
そこは、解決できるという信頼があったから。と、しておく
友奈「久遠先輩」
友奈の目が向く
そこには不安と恐れがあり、根強い信頼の情が見て取れる
言葉が続かなくても、言いたいことはわかった
1、貴女は大人しくしてなさい
2、いいわ一緒に解決しましょうか
3、大丈夫よ。私一人のほうがやりやすいわ
4、私よりも、ちゃんとした専門の寺院とかに行くべきだと思うけど……
↓2
では、此処までとさせて頂きます
あすもできれば通常時間から
友奈「嫌です」
では、初めて行きます
だから天乃は先手を打って
天乃「貴女はおとなしくしてなさい」
と言ったのだが、友奈は意表を突かれたように目を見開きはしたものの
すぐに表情は悲しげなものへと転じて、首を振る
友奈「そんなことできません」
天乃「けれど」
貴女は役に立てない。そう言うよりも早く
友奈はわかってます。と、答えて。その上で天乃を見つめる瞳には
決して引かないというような頑固さが見て取れた
友奈「久遠先輩にだけなんて、そんなのは」
嫌だ。と、友奈は呟く
自分の力ではどうしようもないことだと分かっているのに
役に立つことができないと分かっているのに
その上で、友奈は嫌だという
関わりたいと、言っている
友奈のそれが優しさゆえのものであることは
天乃はもちろん、九尾もよく解っている
けれど。
九尾「主様を思うのであれば、それこそ。邪魔はせぬほうが良い」
九尾は珍しく神妙さを保ったまま友奈に告げる
本当に、友奈は役に立てないのだ
それどころか、九尾としては余計な懸念材料になると考えているのだろう
友奈がそれでもと言いたげな顔をすると
あからさまに嫌悪感を感じさせる表情を浮かべた
九尾「主様一人ではない。妾達もおる。案ずることはない」
友奈「っ」
友奈は返事を聞いてちらりと天乃を見る。が
その答えは先程と変わらないと示すように、首を振る
すると、友奈はやはり心配そうな顔をして
けれども口惜しそうに唇を噛み締めると、一旦は目をそらしながらも
もう一度天乃へと目を向けて、頷く
友奈「……ごめんなさい」
天乃「友奈……」
いろいろな意味のこもった一言だった
人工灯が消えたままの室内はうっすらと暗く
優奈の思いを含んだ重い空気が床を闊歩する中で
東郷たちが来ることがないまま、下校を促す鐘が鳴る
九尾「ふむ……」
グラウンドから集合! 声が響いてきたのを皮切りに
九尾は軽く唸って女子生徒を抱き上げる
九尾「行くぞ主様。友奈。お主も下校すると良い。しばらくすればぼた餅共がくるやも知れぬが……いや、端末に連絡が来るじゃろう」
友奈「!」
九尾が言ってすぐに端末がなり、友奈は「東郷さんからだ」と、メールを読んで頷く
おそらくは今どこにいるかの確認だろう
メールを打ちながら、友奈は九尾を見る
どうして連絡が来るのがわかったのか知りたかったのだろうが
九尾はくすくすと笑うと、人間観察の賜物じゃな。と、茶化す
それが九尾の普段の対応だと分かっているからか、友奈は「すごいです」とお世辞口調でつぶやく
本当にお世辞で言ったわけではないと思うけれども。
しかし、九尾はそう受け取ったらしくにやりと笑うとじゃろう? じゃろう? と子供みたいに燥いでみせる
夏凜だったら言い争ってそう
なんて考えつつ、天乃は息をつく
しかし、九尾がいう厄介な存在
目を向ければ逃げるような素早い何か
果たしてそれの相手が務まるのだろうかと、考えて
ふと気づく
天乃「その女の子はどこに連れて行くの?」
九尾「家に持ち帰る。その方が片付けやすかろう」
九尾が言うと物騒に聞こえるのだが……
1、そう。そうね。一緒にいるべきね
2、神社とかお寺に連れて行くほうがいいと思うけど
3、ここはホラーが苦手な犬吠埼家でしょう?
4、瞳に預けるべきじゃない? 一応、大赦管理のほうがいいわ
↓2
失礼しましした
終了報告がエラーでした
一旦ここまでで、お昼頃から勧めていく予定になります
では初めて行きます
天乃「神社とかお寺に連れて行く方がいいと思うけど」
その当たり前に浮かぶ疑問を口にすると
九尾は「それはそうじゃが」と難色を示す
たしかに、考えてみれば九尾が神社等に委ねる手を考えないはずがない
妖狐である九尾はそういうところがあまり好きじゃないと
前々から言っていたにしても、それでも。余りにも考えが抜けすぎてはいないだろうか
天乃「何かあるの?」
けれど
もしも考えていたのだとしたら
そう考えて聞くと、九尾は困ったように息をつく
嘘に長けた九尾にしては実にお粗末な【嘘】だった
天乃「何を隠しているのよ」
九尾「別に隠しておるわけではないが……」
むしろ守っているようなものなのじゃが。と
不服を漏らし、仕方があるまい。と、一人納得する
九尾「頃合やも知れぬ。神社に向かうとしよう」
天乃「……頃合?」
その気になった一点に九尾は行けばわかる。とだけ告げて
友奈を見るや、戸締りするんじゃぞといかにも教師らしく取り繕って部室を出ていく
それを目で追い、友奈へと振り向く
天乃「悪いけど、お願いね」
友奈「あ、はい……あ、久遠先輩」
罪悪感を感じる表情
それを、友奈は浮かべている
友奈は優しい子だ。だから、自分が何もできないことを悔やみながら
しかし、悔やむだけでなく責めようとしている危うさを感じる
友奈が悪いわけではないし
こればかりは努力でどうにかできることでもないのだが
それでも。自分の力不足であると……
友奈「無理は、しないでください」
ギュッと握り締められた友奈の手は少し赤く
けれども顔は、不安からかうっすらと青ざめている
もしかしたら、あの視線は友奈のことも見ていたのかもしれない
もしくは、友奈があの視線に気付いていたのかもしれない
天乃「うん。大丈夫」
だから、安心させるための笑とともに答える
それでも、友奈は不安そうに唇を噛み締める
すると「少し待ってください」と言ってポケットから小さな冊子を取り出すと、
その中の一枚を冊子を閉じたまま、抜き取って天乃に手渡す
天乃「押し花?」
友奈「その、栞です」
白い厚紙にピンク色の花びらが押さえ込まれた栞は上手く出来ているけれど
転々と入り込んでいる空気らしき粒が手作り感を感じさせる
けれども、それでダメだという理由にはならない
むしろ、だからこそ愛おしくも思う
天乃「この花、というか花びら? 花言葉とかってあるの?」
友奈「えっと、これは……」
友奈は見ずに選んだのだから
おそらくは大した意味があるものではないのかもしれない
そう思った天乃に反し、友奈は少し驚いた表情を浮かべて
友奈「こ、幸福……というか。幸せがきますように。みたいな感じです」
躊躇いがちに答える
本当にその意味なのか少し疑問には思った天乃だったが
九尾からの催促に仕方がなく息をついて「ありがとう。大切にする」とだけ返した
√ 5月3日目 夕(継続) ※水曜日
瞳「本当によろしいんですね?」
神社の駐車場に車を止めておきながら
瞳は道中何度も訊ねたことを今一度聞いて、九尾を見る
そのしつこさにやや不機嫌そうな九尾だったが
口調だけは相変わらず、「うむ」と答える
天乃「貴女もなにか知っているわけ?」
瞳「知っているかどうかと問われると、微妙なラインではありますが……」
含みのある返答
それに天乃が目を細めると、瞳は苦笑して誤魔化す
言えないのか、言わないのか
どちらにしても、このまま車内に留まっていても解決はしなさそうだが……
天乃「っ」
なぜか、外に出ないほうがいいんじゃないかと
体が震える
言い換えれば、悪寒を感じて鳥肌が立った
1、それでも行く
2、車内待機
↓2
天乃「瞳。私も行くわ」
たしかに、何か怖い感じはするのだが
しかし、こうしていても何も解決しないのは確実で
このまま留まっていても逃げるという解決しかできない
それなら。と、申し出た天乃を二人は見つめ、互の顔を見合わせると
瞳「ちゃんと、守ってあげてくださいね。私にはどうすることも出来ませんから」
と、瞳は明らかに不穏なことを九尾に言って、車から降ろす
瞳「申し訳ありませんが、久遠様」
天乃「?」
瞳「久遠様がこの先でどのような目に遭われても。私にはお助けできかねます」
不穏ではなく、不安だ。と
いずれにしても変わらない変更をしながら天乃は車の中からは見ることの出来なかった本殿を見上げる
その他の寺院の記憶はうっすらとではあるがあるのだが
しかし、ただしく比較できるほど鮮明ではない
けれども、記憶の中のものよりも立派ではありそうだと、目を見張って息を呑む
天乃「ねぇ、九尾」
九尾「なんじゃ。怖いのかや?」
天乃「ううん、私。ここに来たことはないはずなんだけど……知ってる。そんな気がするの」
不快感というべきか
なにやら良くない悪寒は未だに健在ではあるが
それと並行するように、覚えのない馴染みというべきか
安心感もひしひしと感じていた
天乃「ここ、私の記憶に関係あるの?」
つい、ひと月ほど前の話
沙織に自分の家について聞いたときに、天乃の両親は神社の神主と巫女をしている。と、言っていた
そして、ここに来て感じる記憶にはない安心感
とも来れば、自ずとこの場所もわかってくる
天乃「ううん。関係あるとかじゃない……私の家柄関係の神社。そうでしょう? 九尾」
九尾「ふむ。理解の早い主様が妾は好ましいぞ」
九尾は冗談めかして言いながらも
その表情に笑はなく、何かを警戒するように辺りを見渡す
九尾「あの化物がおらぬ内に終わらせるぞ。主様はぐれるでないぞ」
天乃「化物?」
その疑問に、九尾は会いたくないが会えば分かる。と答えた
本殿へと直接向かうと、箒を片手で扱う巫女装束に身を包んだ女性がいた
その箒が地面と接し、軽い土煙を起こしつつ落ち葉を掃き集めていれば
漫画などでよく見る巫女の女の子。だったかもしれない
天乃はそんなことを考えながら、巫女を見る
竹箒を自分の腰を軸に回転させ左手だけで柄を握り、そびえ立つ樹木に乱れ突く
柔らかい先端がポキポキと折れて反動に弾かれるのを利用し、
体を捻って樹木の横腹に芯の部分を叩きつけると
バキッ! と壊音とともに箒がまっぷたつにヘシ折れる
「んー力加減がうまくいかないなぁ」
箒が壊れての第一声を放った巫女は、
しなりが悪いのかな。と、やや不満気に呟く
そもそも、箒は掃くためのものであって
突くものでもなぎ払うものでもない。と、言いかけた天乃を制するように、九尾が首を振る
どうやら、話しかけてはいけないらしい
向こうも向こうで天乃たちには気づいていないようで
しかし、神社の関係者なんだから声をかけるべきなんじゃと思いつつ
先を急ぐ九尾に続いて先へと進む
体が不自由じゃなければ相手してみたいと思ったのは、秘密だ
「なる程。たしかにあまり良くないですね」
先ほどの戦巫女とは違うが、同じく巫女服に身を包んでいる女性は
寝息を立てる女子生徒の体に優しく触れると
危うさや危機感の感じられない穏やかな声で言う
彼女は天乃を見たが、それでも
平常心を保ち、特には触れず依頼主の立場に当たる九尾と向かい合う
「すぐに取り掛かることにしましょう」
九尾「うむ……しかし、お主はこれが憑いた理由が分からぬか?」
「憑いた理由。ですか」
女性……おそらくは天乃の母親であろう巫女は
九尾の問いに女子生徒を見て
どこかを見ると、困ったように顔をしかめる
「この子が、どこかで猫の死を目の当たりにしてしまっただけであることを願うばかりです」
九尾「と、言うと。この娘には何もなく、向こうから寄ってきた可能性もあるのかや?」
九尾の二度目の問い
それに対する巫女の答えは沈黙の肯定
何かを嘆くようなその表情は、不安を際立たせてきた
「急ぎましょう。それでも救われるかはわかりませんが、善処はすべきでしょう」
巫女はそう言うと、
慣れた手つきで様々な道具を用意すると【除霊】を行った
除霊にかかった時間は正確にはわからないけれど
外がすっかり暗くなっているあたり、二時間近くは行ったのだろう
瞳は「夏凜ちゃんにメールしなきゃ」と、端末をこっそりと弄る
「これでこちらが出来るのはここまでです」
九尾「ふむ……」
穏やかに言う巫女を天乃が見ると、ひと仕事を終えたあとだというのに
相変わらず緊張でもしているかのような硬さを感じ、息をつく
けれども
もしも本当に母親なのだとしたら
しばらく会えていなかった娘を抱いたりなんだりしたいのだろうし
けれども記憶喪失ゆえに、他人になってしまっているから
下手に接触はできないと身を引いているのなら、強張るのも無理はないと思った
天乃「結局、何が憑いていたの?」
「猫又と呼ばれる妖怪ですね。彼女の優しさに取り入ろうとしたか。あるいは……」
巫女はそこで区切ると「あるいは、彼女自身が猫に危害を加えてしまったのでしょう」と、言った
しかし、後者に関してはありえないだろう。というのがその場の総意だった
元々、この世界では道徳教育が行き届いていて
基本的には誰かや何かに危害を加えるような心の悪い人はいない
もちろん、それでも悪い人がいるから警察。という組織が現在も残っているのだが
それは置いておくとして。つまり
この女の子が猫に限らず動物に危害を加えるとは思えない
よって、その線はつゆと消えた
天乃「それで、この子はどうするの?」
九尾「ふむ。払い終えたことだし、家に帰してかまわぬが……」
問題は寝ているという点だ
ここに寝かせておいて、目を覚ましたら巫女から説明してもらうというのも良いかもしれないし
家に送るのもいいかもしれないが、それは両親に驚かれてしまいそうだ
眠ったままの娘が知らない人達に連れてこられるのだから
何事かと慌てるのは目に見えている
1、神社に任せる
2、家に送る
3、とりあえずは、天乃が自宅に連れて帰る
↓2
悩んだ末に、女の子は神社に預けることにした
天乃の家に連れ帰っても問題はないかもしれないが
やはり、別の問題があるからだ
「承りました。目を覚ましたら伝えておきましょう」
天乃「悪いけれど、よろしくお願いします」
母親に対し、他人のような言葉遣いで会釈をする
相手がそれを貫こうとしているならば
こちらも相応の態度で返してあげなければいけないと思ったからだ
そして、帰ろうとしたとき
母親と名乗らない母親は「これを」と、古ぼけた刀らしきものを天乃に差し出す
「貴女がいつかここに来たとき渡そうと考えていました。持って行きなさい」
天乃「……………」
何も言わず受け取って巫女を見上げると
複雑そうな表情の奥に、母親の感情が見えて
「願わくば、幸多からんことを」
女性は天乃の頬をさっと撫でると、深く一礼して、本殿の中へと消えていく
天乃「……九尾」
九尾「妾は何も言わぬ。あの者が言わぬのならば。妾の口が開く道理もない」
天乃「そうね……ごめんなさい。行きましょう」
懐かしき場所に背を向けて、夜の道を進む
いつか、あの人が笑顔になれるような言葉を嘘でもごまかしでもなく言うことができる日が来ることを願って
√ 5月3日目 深夜(自宅) ※水曜日
精霊との交流が可能です
1、九尾
2、死神
3、須佐之男
4、稲荷
5、火明命
6、獺
7、イベント判定
8、お休み
↓2
※夕方継続による時間経過により、勇者部との連絡は出来ません
猫又ではないが、妖怪と聞いて自分にもそれと同じく妖怪がいたことを思い出して
天乃はその名前「獺」を呼ぶ
彼なのか彼女なのかも分からない獺は
精霊として天乃に付くことになった時も、
何も姿を表さないことを疑問に思った天乃が九尾に聞いて初めて
そんな精霊がついたことを知ったくらいだ
だから
今まで呼ぶこともなかったし
ウソをつかずに言えば忘れていた名前を今更呼ぶ
すると
名前のとおり、獺そのものの姿でそれは現れた
それは見るからに小動物で
写真や映像でしか見たことはないが、たしかに獺で
唯一違和感を挙げるとすれば
それには左手がないことだ
天乃「貴女……で、いいのかしら。手はどうしたの?」
その疑問を即刻口にする
けれども、九尾達と違って話すことができなければ文通もできないのか
それ以前に人の言葉が理解できないのか
獺は首をかしげると、じっと天乃を見つめる
天乃「えっと……」
九尾や死神を基準としているわけではないけれど
しかし、それ以外でも名高く異能のある精霊を従えている天乃は
獺には申し訳ないが
本心を言えば拍子抜けだった
左手がないという異常こそあれ
それ以外は何の変哲もない小動物だったから
もっとも
それはそれで心配も不安もなく
ただただ愛くるしいので
天乃的には嬉しいのだが
天乃「こっちおいで」
声をかけつつ手招きすると、獺は死神のように浮遊してベッドに乗り
天乃の手元で立ち止まる
天乃「可愛い」
見れば見るほど、そのちょこんと佇む小さな体は愛らしくて
そっと手を差し出すと、獺は心なしか笑みを浮かべ多様な表情で天乃を見ると
指をペロッと舐める
ほんのりとざらつく感触が心地よくて
そのまま差し出しておくと
ぺろりぺろりと立て続けに舐めて、天乃を見る
天乃「ふふっ」
九尾も妖狐であり、動物ではあるのだが
基本的には人間体のためそれらしさがない
その一方でこのカワウソは
ある意味期待を裏切ったが、しかし。期待通りだった
1、頭を撫でる
2、そのままにしてみる
3、キスをする
4、一緒に寝ましょ。と誘う
5、姿を見せてくれてありがとう。と、言って帰す
↓2
天乃「ちょっと、触らせて」
びっくりしないようにと声をかけて、言葉は伝わらずとも
意識だけは自分に向かせてから手を動かすと
獺は意図を察してか、目をきゅっと瞑り天乃に向かって小さな頭を差し出す
天乃「ふふっ」
不思議なことに獺の外皮というべきか、硬い毛はしっとりと濡れているように感じる
けれども、撫でた手には水滴どころかテカリさえない
敷き詰められたレールをなでているようで
しかし、生き物特有の体温をしっかりと感じる。とはいえ、これは精霊なはずなのだが
天乃「ほんと、貴女がこんな姿でよかったかな」
撫でるたびに顔が動き、引っ張られるようにして釣り目になる愛らしさ
それに笑みを浮かべると
獺は黒い瞳を天乃に向けて、小さくしかし強靭な歯を見せる
天乃「ごめんなさい、痛かった?」
そう言って手を離すと、獺は天乃の胸元の近くにまで寄り添い、くるりと体を丸める
天乃「あら……」
姿を現さないかと思えば、普通に姿を現してくれて
それどころか消えようとしない
そんな獺の態度にくすりと笑って、天乃はベッドに横たわる
隣にいるのは精霊。けれども、やはり。生き物の温もりを感じた
1日のまとめ
・ 乃木園子:交流無()
・ 犬吠埼風:交流無()
・ 犬吠埼樹:交流無()
・ 結城友奈:交流有(女の子同士、大人しく→特殊イベ【押し花の栞】)
・ 東郷美森:交流無()
・ 伊集院沙織:交流有(魅了について、責任)
・ 九尾:交流無()
・ 死神:交流無()
・ 稲狐:交流無()
・ 神樹:交流無()
5月3日目終了時点
乃木園子との絆 25(中々良い)
犬吠埼風との絆 38(中々良い)
犬吠埼樹との絆 30(中々良い)
結城友奈との絆 42(少し高い)
東郷三森との絆 36(中々良い)
三好夏凜との絆 16(中々良い)
沙織との絆 39(中々良い)
九尾との絆 30(中々良い)
死神との絆 29(中々良い)
稲狐との絆 27(中々良い)
神樹との絆 5(低い)
01~10
11~20
21~30 継続
31~40
41~50
51~60 継続
61~70
71~80
81~90 継続
↓1のコンマ
√ 5月4日目 朝(自宅) ※木曜日
九尾、友奈、死神、沙織、風、樹、東郷との交流が可能です
1、九尾
2、死神
3、風
4、樹
5、友奈
6、東郷
7、沙織
8、夏凜
9、イベント判定
0、勇者部部室
↓2
※3~8は電話
※9は朝一勇者部直行
風『はいはーい』
天乃「風。おはよう」
風『おは……あ、昨日はごめん。ちょっと用事があって』
電話を受けてすぐ、風は昨日部活に行けなかったことを謝罪する
結局、あの後も部室には行けなかったらしい
と言っても、いてもいなくても特に変わらなかったのだけど。
天乃「別にいいわ。依頼はあったけど。私専門だったから」
風『……悪いわね。今日はちゃんと行けるから』
天乃「あくまでボランティア。自分の用事を優先すべきよ」
風『大丈夫大丈夫。わかってるから』
一応、注意しているはずなのだが風はおちゃらけた返事を返して
それはそうと。と、切り替える
風『そっちこそ平気だったわけ? 友奈から聞いたけど、昨日の依頼。ちょっと厄介そうだったんでしょ?』
天乃「んー……まぁ、解決はしたわ。本職に手伝ってもらっちゃったんだけどね」
風『本職?』
風のその疑問に対して隠す理由もなく
しかし【久遠家関係】であることだけは伏せて、話す
風『ふぅん。猫又ねぇ』
風はさして興味を持つことなくそう言うと
無事に終わったならそれでいいわ。と言った上で
風『友奈には連絡した?』
と、言う。天乃がしてないけど……と
少しばかり疑問符を付け加えると、あからさまなため息が聞こえた
風『ここで友奈に電話してれば、100点なんだけどなぁ』
天乃「なんの採点よ」
風『んーこっちの話。アタシが思うに、友奈は端末握しめて寝てるんじゃない?』
そんなよくわからない推測をした風は
それで。と、さらに繋げていく
風『可哀想なヒロインほったらかして、脇役のアタシに何用でしょうか』
天乃「怒ってる?」
風『ノリわるーい……料理の片手間だからちょっとふざけてるだけ。ニュース見てても面白いことないしね』
1、猫又について
2、片手の無い獺
3、友奈から貰った押し花の栞
4、昨日の用事
5、バーテックスの襲撃がこない件について
6、女の子同士の恋愛について
7、今日の登校
↓2
天乃「いくらなんでも、バーテックスがこなさすぎると思わない?」
一回目の襲撃から早くもひと月ほどが経過しようとしているのに
一向に襲撃がこない現状への不安
それを吐露する天乃の一方で、風は「んー」と唸って
風『そもそも。向こうは不定期で来るって話だし』
しかしそう言いつつも、「久遠の不安が解らないわけでもないわよ?」と付け加える
風自身、不安はあったのだ
襲撃が来ない=バーテックスの準備期間
それはおそらく考えとして間違いではない
だとすれば、ひと月後の戦い、二ヶ月後の戦い
間が開けば空くほど、相手側の準備は万全で、凶悪熾烈な戦いになってしまうのではないか。と
だから、考えた
風『今日の部活の時に話そうと思ってたんだけどさ』
天乃「ええ」
風『勇者同士で模擬戦っていうか、訓練するのはどう?』
自分たちができる準備
大赦による勇者システムの強化という可否のわからない希望に縋らない方のレベルアップ
風『放課後とか、休みの日とか。毎回ってわけじゃないけどさ。参加できる人だけで』
風『あたしはこの日常を守りたい』
勇者としての訓練、模擬戦
それは決して日常とは言えないのかもしれない
けれど、その数時間程度の非日常の積み重ねが
今後の日常の礎となるかもしれないのなら
風はその程度の遠回りは受け入れようと、考えていた
風『だから、少しでも強くなりたい。少しでも、生き残れる可能性をあげたい』
天乃「……風」
風『久遠には悪い言い方かもしれないけど。アタシは、勇者部からだれも欠けさせたくないから』
他にもいた
けれど、今はいないという先代の勇者
それが自分たちにも起こるかも知れない
それが、風は怖くて
風『アタシはもう、大切な誰かがいなくなるのは嫌だ……ッ』
その気持ちを、天乃に叩きつけた
もしも対面していたのなら
これが、電話での会話ではなかったのなら
風はそう思いながら、握り締めた調理用箸の軋む音を聞く
言うべきか、否か
考えて、歯を食い縛る
言ってどうなるのか。聞いてどうなるのか
ここでそれを選択してなんになるのか
風『……だからっ、アタシは。訓練を始めようと思った』
飲み込む。耐え忍ぶ
いつかは叫んでしまうであろう言葉を心に秘めて
息を吐く
風『久遠はどう? まぁ、あれだけ力があるならいらないかもしれないけど』
少し嫌味っぽくなったかなと自分でも思うと
電話の向こう、天乃からは「なんかトゲがあるわね」と、苦笑が返る
風『樹は賛成、夏凜はもちろん。友奈も東郷も。あとは久遠だけなんだけど』
1、参加
2、不参加
3、監督するだけなら
↓2
天乃「そうね。参加しない理由がないわ」
勇者としての特訓
懐かしいものを思い出しながら
しかし、欠けた部分がある寂しさゆえに悲しげな声色で天乃は言う
風『どうかした?』
天乃「ううん。別に」
風の問いに嘘を返して、ベッドへと倒れこむ
特訓の記憶
その中で破り取られたみたいに抜け落ちた記憶
家族との記憶
もしかしたら、あの戦巫女が先生だったのかもしれないと、苦笑する
風『……ほんとに平気? 休んだほうがいいんじゃないの?』
そのせいか、風は―冗談だとは思うけれど―そう言って笑う
天乃「何言ってるのよ。ここで休んだら友奈が押し掛けてくるでしょ」
風『あははっ、違いない』
まだ笑える。今は笑える
これでいい、このままがいい
そう思う気持ちなど――知る由もなく
風『んじゃ、樹起こしたりなんだりあるからまた学校でねー』
一方的に電話を切って
風「やばっ……焦げてる」
カリッカリになったベーコンを見つめて、ため息をついた
では、本日は此処までとさせて頂きます
あすもできれば通常時間からとなります
九尾「積み重なっていく……それぞれの関係も。星屑も」
では、初めて行きます
√ 5月4日目 昼(学校) ※木曜日
01~10
11~20 友奈
21~30
31~40 昨日の子
41~50
51~60
61~70 友奈
71~80
81~90
91~00
※コンマ一桁が4ならバーテックス
√ 5月4日目 昼(学校) ※木曜日
友奈、沙織、風、樹、東郷、夏凜との交流が可能です
1、風
2、樹
3、友奈
4、東郷
5、沙織
6、夏凜
7、イベント判定
8、勇者部部室
↓2
天乃「……悪いわね。抜け出してもらっちゃって」
夏凜「別にいいけど」
とは言いつつも、夏凜の顔は心なしか呆れているように見える
友奈たちには秘密にして抜け出してきてほしいと頼んだのだから
夏凜が呆れてしまうのも無理はないかも知れない
夏凜「友奈、結構心配してたわよ」
天乃「やっぱり?」
おちゃらけたわけではないのだけれど、夏凜にとってはそう感じてしまうものだったのか
ため息をつくと「登校してるのは分かってるみたいだけど」と、言う
天乃がこっそりと抜け出してくるようお願いしたのもそれが原因。というほどではないが
友奈がその理由の一部であることは間違いなかった
天乃「なんか、タイミング逃しちゃって」
ため息混じりに言う言葉
それが向く先は友奈じゃなければ夏凜でもなく
天乃自身だった
天乃「朝、電話しておけばよかったかな」
向こうが気づいているとは言え
こうして顔を見せない時間が長くなればなるほど、友奈の心配症な一面が悪化すると分かっているのに
いや、だからこそ。なのかもしれない
夏凜「あんたが聞きたいことなのか知らないけど、友奈は早く部活にならないかなって落ち着きがないわよ」
メールとか電話でもすればいいじゃない。と、言ったり
なんなら直接会いに行けばいいじゃない。と言ったのだが
天乃が会いに来なかったり連絡しないのはそれなりの理由があるかもしれない。と、
友奈は拒否していた
夏凜はその時の不安げな表情を思い出し、
やはり、呆れたような息をつくと「昨日、何があったのかは知らないけど」と前置きをして
夏凜「友奈は自分の行動があんたの邪魔になるんじゃないかって思ってるように思えたわ」
天乃「……そっか」
釘を刺したのは九尾だけれど
協力を拒んだのは天乃だ
友奈があの件に関しては無力であることを肯定した
友奈があの件に関しては足手纏になりうるのだと肯定した
なのに
無事に終えた報告をしていないのだから……
夏凜「私にこんなふうに密会なんて求めないで。先に友奈の相手をしてやればいいのに」
夏凜にとって友奈はペットかなにかなのかと言いたかったが、
それを言わずに苦笑を浮かべて、首を振る
たしかに。そうしてあげるべきだったかもしれないが……
夏凜「で?」
天乃が何かを言うよりも先に、夏凜は切り替えて、天乃を見る
友奈に対する態度の催促ではなく
なぜ、自分を求めたのか
そんな問がうっすらと見える、疑問符
天乃「あぁ、えっとね……」
1、猫又って妖怪は知ってる?
2、訓練について
3、どう? まだ二日だけど。私たちの件は沈静化してる?
4、貴女も風と同様に襲来についての情報はないの?
5、貴女、大赦での特訓時代。誰と稽古していたの?
↓2
では、ここまでとさせていただきます
あすもできれば通常時間から
もしかしたらお休みかもしれません
夏凜「あぁ……露骨に別になったから。やっぱりか。的な納得したみたいで。静かになったわ」
天乃「つまり?」
夏凜「静かになったけど。悪化した」
天乃「冷静ね」
夏凜「諦めたとも言えるけど」
天乃「コラっ」
では、非安価の部分だけ進めていこうかと思います
天乃「どう? まだ二日だけど。私たちの件は沈静化してる?」
ただ一緒に登校してきただけでのあの騒ぎ
その隠蔽……というのは変な話だけどこの数日一緒に登校するのは避けてきた
下校だって一緒にはしてこなかった
だからといってすぐに結果が出るとは思えないけれど
それでもあれだけ疲れているのを見ると
少しは和らいでいるのだろうかと、気にはなるもので
夏凜「まぁ、そこまで劇的な変化はないわね」
天乃「そうなの?」
夏凜は困ったようにため息をつくと
夏凜「いきなり別なのはあからさまだよね。って言われてるし」
天乃や瞳が考えていた通りだったらしい
しかし、全員が全員それで疑うわけでもなく
あからさまだからこそ、【何かある】と疑わせて翻弄しようとしているのでは
なんていう考え方をしている人もいるにはいるらしく
変化があるとは言えないかもしれないが
変化がないとも言えないらしい
夏凜「ま、要するに一進一退ってところよね」
そういう夏凜は呆れてはいるものの
どんな心境の変化があったのか
心なしかその表情には嬉しそうな感情を感じる
天乃「そのまま引き下がってくれそう?」
夏凜「一応、周りっが見てわかる程度にはその質問に対する不機嫌さを醸し出してみてるけど」
どうかしらね。と、夏凜は苦笑する
こればかりは他人がどう思うか。である以上
夏凜にも予想はできないらしく
その態度に「笑い事でいいの?」と笑みを浮かべる
夏凜「まぁ、なるようにしかならないわけだし」
天乃「そうかもしれないけど……」
先日の夏凜との違いに戸惑う天乃を見つめる夏凜は
少し黙り込むと、小さく息をついた
夏凜「瞳に言われたのよ」
天乃「なんて?」
天乃の問いに、瞳との会話を思い出す
くだらないことかもしれません。と、瞳は言った
面倒くさいことかもしれません。と、瞳は言った
けれど
そのくだらなくてつまらないものこそ、日常なんだと思いますよ。と
瞳は言った
夏凜はその瞳の言葉を天乃に言うと
夏凜「間違ってないと、思ったわけ」
そう言って苦笑する
勇者としての責務がある
けれども、学校にいる時はいち生徒
そう考えるのも悪くはないと思ったのだ
天乃「……そっか」
夏凜「だから、正直今の状況は結構楽しませてもらってる」
くだらないことだし
つまらないことではあるけれど
しかし、それこそが日常だから
天乃「そっか……楽しんでるのね」
被害者……いや
この場合はもはや被害者とは言えない夏凜の言葉に
天乃は笑みを浮かべる
――瞳が居て、よかったわ
一人ではないからこそ
彼女がいるからこそ
夏凜はそういう考え方が出来るようになっている
今ここで、こうして笑っていることができているんだと思うから
夏凜「だからって悪化するのは嫌だけどね」
天乃「ふふっ。そう言われるとさせたくなっちゃう」
――なんて。もちろん冗談なのだけれど
それは夏凜もわかっているのか
夏凜は「勘弁してよね」と、笑う
友達としての時間
魅了の力なんて全く無関係な時間
そんなことを考えなくていい夏凜との時間
それはとても、居心地が良かった
では、此処までとさせて頂きます
あすもできれば通常時間から
夏凜「何度言われても。天乃は友達でしかないわ」
では、少しだけ進めていきます
√ 5月4日目 夕(学校) ※木曜日
01~10
11~20 樹海化
21~30
31~40
41~50 樹海化
51~60
61~70
71~80 友奈
91~00 友奈
↓1のコンマ
天乃「ん……」
文芸部、運動部。そして帰宅部
それぞれの部活動が始まることを示すチャイムが途中で止まる
それだけでなく、
騒がしかったクラスメイトたちの喧騒も止み、
不自然な沈黙が広がっていく
それは、天乃達の【日常】が始まる合図
天乃たちの【非日常】が終わり、勇者としてのやるべきことをやらなければいけない時間
天乃「これは……また」
マップを見て、天乃は思わず驚きの声を上げる
これだけ時間が空いたのだから
戦いが厳しいものであることは明白だったといっても良い
しかし、これは余りにも……
いや
厳しいという言葉では余りあるほどの、過酷な戦いになりうるものだった
1、死神の勇者(移動距離重視)
2、九尾の勇者(火力重視)
3、混合の勇者(ハイブリット。ただし、精霊ガードなし)
↓2
http://i.imgur.com/bmFqDDq.png
では、何も出来ませんでしたが此処までとさせて頂きます
マップ作成に時間がかかりすぎましたね
場合によっては満開します
では、少しだけ始めていきます
天乃「九尾」
傍らに佇む妖狐に声をかけると
彼女は女性の姿へと切り替わって、頷く
天乃が自分の力を使って勇者になろうとしているのだと
最後まで言われなくとも気づいたからだ
九尾「うむ。じゃが、必要とあらば黄泉の者も呼ぶが良い。多少の犠牲は止むを得ん」
天乃「……そう。ね」
マップを見て、思う
これは前回の戦いとは比べものにならないし
あの最後の戦いとも同等……とは言い難い
というのも、似たような存在を見たことはあるが
それ自体の見覚えは無いバーテックスがいるからだ
九尾「ふむ……おそらくは集合体じゃろうな」
天乃「わかるの?」
九尾「形状を見ればわかる」
たしかに、よく見なくてもあれは寄せ集めだ
風「集合体って……」
慌てふためく様子もなく、話をする二人の間に声が割り込む
その主は不安そうにはるか遠方でありながら
その瞳に映ってしまう巨躯を見上げる
風だけではない
樹や友奈、東郷。そして集合体など聞いていなかった夏凜もまた、
動揺や恐怖を隠しきれてはいなかった
けれども
夏凜「予想外に強い奴なんて、人間に居るなら向こうにいてもおかしくないか」
大赦の情報不足に呆れているような声色で夏凜は鼻を鳴らす
腑抜けだと思っていた勇者の連中
その中の化物クラスの友人を一瞥し、
夏凜は「あんたのことだからね?」と、ため息をつく
それを皮切りに「違いありませんね」と、誰かが言う
相手がバーテックスであること、やることは変わらないこと
それを誰かが口にして
友奈「頑張って守ろう。私たちの帰る場所を!」
勇気に満ち満ちた声が、響いた
しかし、勇気だけでどうにかなることではないのも事実
好都合なことに……というよりは
恐ろしいことに。というべきかもしれないが
バーテックスは勇者が動くのを待っているのか
二人ひと組のように纏まっているバーテックスも
足の速さを活かしてくるバーテックスも
どちらもそのままにとどまったまま、動こうとしていない
風「これ、3組に別れないとまずくない?」
友奈「……たしかに」
マップを見る風の言葉に友奈は小さな声で同意する
左から迫るバーテックス
中央から迫るバーテックス
右から迫るバーテックス
どれも見逃していいものではない
天乃「うーん……」
1、右端のは足が速いのよね……
2、真ん中は私が相手するわ
3、指示は風に任せるわ
4、スサノオを右に向かわせる
5、スサノオを左に向かわせる
↓2
天乃「指示は風に任せるわ」
風「あ、あたし?」
夏凜「まっ、部長はあんただしね」
夏凜は天乃を見つつ、
しかし何も言わずに風を見る
本当なら天乃が指示を出すべきだ。と、言いたかったのかもしれない
敵の力が想定外のものである以上
少しでも安全な策を練るのであれば、そうするのが妥当だからだ
けれど
夏凜「あんただって、それなりの考えがあってのことなんでしょ?」
天乃「ええ、まぁね」
天乃がそれを理解していないとは思えなかった
こんな場面で悪ふざけするなんて思わなかった
夏凜は実力者であることを認めた上で
同じ勇者として、戦友として天乃を信じているからだ
天乃「風には経験を積んでおいて欲しいから」
――嘘だ
ただ、怖いだけだ
以前のように、守ることができずに失ってしまうのではないか。と
恐れているだけだ
けれど、それを表に出さない天乃に、風は息を飲んで「わかった」と、答えた
では、ここまでとさせていただきます
あすもできれば通常時間から
もしかしたらお休みかもしれません
では、少しだけ進めていきます
風「良い? ムチャだけはしないで」
風は全員に指示を出し、一息ついてそういった
けれども、樹は言葉にはしなかったが
一番無茶なのは風自身ではないか。と、目を向ける
というのも、作戦が作戦だからだ
力に自信のある夏凜を単独で双子座に向かわせて、
東郷はそれを後ろからサポート
樹と友奈のチームで水瓶座と天秤座にアタック
風、天乃、須佐之男の3人で、中央に鎮座する巨体を狙う
それが一任された風の作戦だ
友奈「夏凜ちゃん、ひとりでも平気?」
夏凜「あんた達も1対1であることには変わりないでしょ。自分の心配しなさい」
不安げな友奈に苦笑を浮かべると
夏凜はそう言って、一人先に勇者へと身をやつし
続けざまに全員が勇者へと変身する。そして……
東郷「久遠先輩……そのお姿。前回と変わっていませんか?」
東郷がその変化に気づいた
前回は黒を基調とした色合いの勇者服に身を包み
妖狐にまたがっていたはずなのに
今回は衣装の色合いがガラリと変わっているほか、
不自由なはずの両足で立っている
それは明らかに、別の勇者の力だった
天乃「ええ、詳しい事情を話す余裕はないから。後ででいいかしら」
ゆっくりと。しかし確実に動き始めているバーテックスを睨むように見つめ、
天乃は言い、東郷は「そうですね」と肯定した上で
東郷「終わったら、話してください。約束ですよ」
と、天乃が抱える秘密を求める
天乃「ええ」
見せてしまった以上は話す他ない
ゆえの肯定をすると
夏凜「悠長に話してる場合じゃないんだけど」
夏凜はそう言って単身、飛び出す
――気になることはあるけど
夏凜「今はまず。戦うことに集中しなきゃ」
友奈「私たちも行こう。樹ちゃん」
樹「はいっ!」
友奈の呼びかけに応じ、樹は風へと目を向けて、頷く
行ってきますと、頑張ってね。と
無理はしないで、無茶はしないで
無事に、終わろう。と願うように、祈るように
風「こっちは3人なんとか行けるわよ」
バーテックス側には未知の集合体がいる
けれども、こちら側には
まず間違いなく勇者部最高の戦力である天乃が居て
天乃が使役する戦力に加えられる精霊、須佐之男がいる
風「……大丈夫」
むしろ自分がいることが大丈夫ではないかも知れない
そう思い、息を呑んで首を振る
天乃「風?」
風「大丈夫、行くわよ。天乃」
1、須佐之男を先行させる
2、風を先行させる
3、並ぶように提案する
4、天乃が先行する
↓1
※機動力不足のため、4は加速を使用します
http://i.imgur.com/SQQCmSS.png
天乃「悪いけど、先行するわ」
風「ちょっ」
飛距離というべきか、移動距離というべきか
それが自分よりも上回っている風を追い越すために精霊の力を使い、
天乃は一気に跳躍し、追い越しざまに風へと一言告げる。事後報告
天乃「……あれの相手は私がしないといけない」
バーテックスの集合体であるレオ・スタークラスターという規格外の存在
あれの実力の程は不明だ
けれど、少なくとも通常のバーテックスのどの個体よりも強敵であろうことは明白だ
で、あるのならば
――もちろん、風を信じてないわけではないけど
けれど、あれはやはり自分が相手しなければいけないと思った
死神「クオンサン、キヲツケテ」
天乃「ええ」
すぐ横に姿を現した死神の言葉に頷く
少なからず犠牲が必要な戦いかも知れない
なら、それは――自分であるべきだと。天乃は踏み込む足に力を入れた
では、此処までとさせて頂きます
あすはお休みを頂くかもしれませんが、可能であれば通常時間から
少し前からですが
しばらくは都合上、22時半頃からになるかと思うので、前言なしにやらない場合もあります
では、初めて行こうかと思います
風「ちょっと、待ちなさいって!」
後ろから飛んでくる風の声に耳を傾けつつも
天乃は樹海を進んでいく
止まれば風合流することになる
合流すれば、狙いが絞られることはない
だから、一歩でも先に進まなければいけない
狙いが自分ひとりに絞られるように
そんなことをしたら風が怒る……というかすでに少し怒っているし
それが沙織の知れたりすればまた怒られるだろう
けれども
――怒って貰えるのなら。それでよかった
口無しとならないのなら、それで。十分だった
天乃「後で、いくらでも怒られるから……」
1、友奈達が動いてから動く
2、先に動く ※移動先を選択してください
↓1
http://i.imgur.com/Uw8JlsY.png
※黄色は加速使用です
双子→夏凜 命中判定↓1 01~55 ただし40~49で斬り払い・カウンター
夏凜→双子 命中判定↓2 01~60 ゾロ目CRI
レオ→天乃 命中判定↓3 01~50 40~49幻惑
※蠍座はレオ次第で行動変化
天乃「釣れた!」
先行する天乃の前に立ちはだかる、巨躯
それは山のように高く、崖のように分厚く、海のように広く
視界を完全に塞ぐほど
獅子座らしく、けれどもそのほかの一部分を受け継ぐ集合体が作り出すそれを覆う闇は
まるで、太陽を隠す月のごとく
天乃「……一人では少し、厳しいかしら」
遠くから見てわかる大きさ
近くから見て呆然とせざるを得ない大きさ
それを目の当たりにして――怖気づく
天乃「わけがない」
誰かに引かれたわけではなく
その目に見えていたわけでもなく。ただ、直感的に後ろへと跳躍する
天乃「……………」
目の前を通り過ぎていく青色
懐かしきあの日、始まりの日
あの子がソーダ味だと馬鹿げたことを言ったそれが、過ぎていく
まるで、過去のように
天乃「っ」
身長では遥かに劣る。火力でも遥かに劣る
けれども決して劣勢だとは言えない化物と怪物の対峙
しかし、化物だと崇められる少女の脳裏に、その集合体は嫌な記憶を引っ張り出す
天乃「……違うっ」
あれが原因ではない
あれだけが原因ではない
この大きな戦いを前にして
仲良くなってしまった勇者部の誰かが傷つき、【失われてしまうことを恐すぎている】から
だから、こんなにも余計なことを考えてしまう
余計な不安、無駄な心配に囚われてしまう
天乃「どうして、動かないの?」
考えを乱すそれを拭うために視線を巡らせ、接近するもう一体のバーテックスを睨む
本来ならば向かってきているはずのそれは
仕掛けることなく、手持ち無沙汰――尾持ち無沙汰に血の気が引きそうな鋭い尾先を揺らめかせる
天乃「なんで」
なぜ、せめて来なかったのか
戦うことが目的ではない?
それとも、集合体の攻撃が躱されたから?
不安は増し、不可解な点、疑問点もまた増える
先ほどの攻撃
それを行えるバーテックスはもう一つ。いるが……
レオ→風 命中判定↓1 01~85
レオ→天乃 命中判定↓2 01~50 01~10斬り払い
※レオ固有技能 無差別爆撃
死神「クオンサン!」
天乃「ッ!」
思考させる気はない
そう言うかのように、巨体の作り出す暗黒の中に
赤い光が降り注ぐ
それはまるで、そう
あれが獅子座であるのならば
天乃「獅子座流星群」
大して興味のない天体
そこまで深く勉強しているわけでもない
けれど、なぜか。誰かから【「凄いんだよっ」】と、教え込まれた気がして
思わずつぶやいた言葉
それがなぜかと思う暇さえ、ない
天乃「!」
樹海の中に身を潜めている勇者をあぶりだすつもりなのか
無差別な爆炎のいくつかが天乃めがけて飛来する
樹海が守ってくれているわけではないが
飛来するいくつかのうちのまた数玉は木の根に衝突して爆発する
けれど、それでもまだ残るものはある
天乃「このっ」
樹海が盾として機能することを期待していないし
そもそも、そんな戦術は守るべき立場である以上論外だ
しかし、それでも防ぎきれていない樹海に落胆しつつ、天乃は左腰の刀の柄を握る
天乃「……まだ」
高速で近づく火炎弾
けれども、天乃にとって。それは【遅すぎた】
天乃「もっと」
躱すことも容易だ
しかし、それでは樹海が燃える。なら、やることは一つ
天乃「太極剣術、一ノ型……」
前に突き出した右足に地面を踏み潰すほどの力を込め、
ゆっくりと姿勢を低く、そして――
天乃「シッ」
小さな声とともに、カチンッと刀が鞘に納まる
そして旋風が巻き起こり、天乃の瞳。その視界にはもう。驚異となっていた光はない
あたかも風が吹き消したかの如き神速の一閃が、切り払ったからだ
天乃の処理は完璧だったといってもいい
もしも、この集合体へと向かっているのが天乃と須佐之男だけであるのならば
きっと、これで問題なく終了していただろう
しかし、そうではない
風「っぅわぁぁっ!」
天乃「!」
守るために、対象から外すために
置き去りにしてきた彼女の悲鳴が鋭敏に聴覚を震わせる
天乃「風っ!」
並んでいれば、置き去りにしていなければ
守ることができたかもしれない
なのに……
天乃「っ」
焦る頭を振って、乱れ切った思考を一旦リセットする
今はもう、あの時とは違う
精霊がいる。精霊が守ってくれる
だからこの程度なら平気、大丈夫。風は無事
言い聞かせるために羅列し、心のエクセルに保存する
天乃「やるべきことを、やらないとッ!」
では、此処までとさせて頂きます
あすはできればお昼頃からとなります
戦闘はこれからが本番
戦況→http://i.imgur.com/CixjSOz.png
レオの固有技能は固定50ダメージ
双子座HP推移→ 800→300(夏凜の攻撃500ダメージ)→540(240回復)
では、初めて行きます
友奈・樹判定 ↓1
コンマ奇数 待ち構える
コンマ偶数 接近
樹、友奈→水瓶座封印開始→天秤座妨害行動
コンマ判定↓1 31~60で失敗 ※失敗の場合二人に50ダメージ
夏凜→双子座封印開始→妨害可能キャラなし→双子座回避行動
コンマ判定↓2 61~00で封印回避
ふたご座封印開始→双子座御霊固有技能(拡散)→0/100
対応キャラ:夏凜・東郷
コンマ判定↓1 コンマ×2.5
水瓶座→友奈 命中判定↓2 01~52以外で回避
双子座御霊 53/100 を撃破完了 残り47/100を撃破急いでください
※残り2ターンです。ターン終了後、御霊は10回復します
水瓶座→友奈への攻撃成功→水牢→友奈行動不可→友奈継続ダメージ30
※救出を急いでください
夏凜「……東郷は遠い。けど」
東郷の装備は近距離ではなく遠距離と中距離を担う狙撃型
なら、すぐ隣にいないことに不安はない。心配もない
それに、相手が一人なのだ
夏凜「行くわよッ!」
自分ひとりで十分だ
ほかの勇者にはない、自分だけが持つ力、単独での封印
それはあそこで巨体との戦いを繰り広げる天乃と比べれば
些細でつまらなく、弱い能力なのかもしれない
けれど、それでも。封印さえできればバーテックスを倒せるようになる
刀の柄を握り締め、大きく息を吐く
全力疾走の双子座に当てなくていい。当たらなくていい
それなら、話は単純で簡単
夏凜「そこだっ!」
双子座の進路上に刀を突き刺し、展開した印にふたご座が侵入
瞬間、封印の輝きが瞬き――
夏凜「これで――って、なによこれ!」
大量の御霊が溢れ出した
御霊にはそれぞれ固有の力がある。なんていう話を聞いたことはない
というのも、御霊が正式に姿を現したのはこれが初めてだからだ
二年前、前回の勇者が最終決戦にて見たとされる御霊
それ以外でバーテックスを撃破したのは、天乃が持つ解析転用不可能な固有の能力のみで
御霊の破壊記録はない
ゆえに、御霊さえ出せればバーテックスを倒せる
それさえできれば勝つことが出来ると聞いていた夏凜にとって
増殖し拡散していくその小さな御霊の軍勢は驚愕的だった
けれど
夏凜「――ざけんなッ!」
唇を噛み切り、痛みを持って乱れゆく思考を停止させる
夏凜「増えたら潰せばいい、増えただけ削ればいい、それ以上に削ればいいッ!」
削ることさえままならない【アレ】と比べれば
ただ増えるだけのこれなんて、ただのワカメだと、笑う
夏凜「東郷ーッ!」
東郷「!」
夏凜「全力で撃てえぇッ!」
大群の中に突撃、左の刀で一線を斬り払い、右の刀で一線を裂く
裂けば増え、生まれた隙間は埋められていく。絶望的とも言える中
傍らの御霊が一つ、また一つと撃ち抜かれて消えていく
夏凜「はっ……根比べと。いこうじゃないのッ!」
あの体育館でのたった一度の敗北、雪辱、屈辱
それらを知ったから、身に染み込まされたから
夏凜「このぉぉッ!」
三好夏凜は敗北を恐れる。恐るからこそ――戦への慢心を捨て、戦友への信頼を持って。勝利に貪欲に突き進む
その一方、樹は上を見上げていた
その目には、水瓶座が映る
正確には、水瓶座の持つ水球の中、必死にもがく友奈が映る
友奈「っっ!」
樹「友奈さんッ!」
精霊がいる
けれども、それの力が有効ではないのか、友奈は苦しそうで、辛そうで
樹「っ」
友奈を助けるために、自分はどうすればいいのか
何ができるのか
その考えを乱すように、焦らせるように
天秤座のバーテックスは【あえて】樹の目の前に巨大な皿を叩きつける
樹「ひっ」
砂塵が渦巻く中で、悲鳴が一つ
それは誰にも届かない
囲むバーテックスにかき消される
樹「お姉……ちゃん……っ」
――助けに期待など、できるはずもなく
天乃「……風は」
樹海の根を飛び回ってかく乱しながら
端末を取り出して状況を確認する
確認といっても、位置関係くらいしか分からないが
それでも、少しでも動いているのなら、
それは生きているということになる……
もっとも、動かなくてもどこかで立ち止まっているという可能性もあるが
天乃「………」
夏凜と東郷は動いている
友奈と樹は今頃近接戦闘中だろうか
風は……少しずつ動いてる
天乃「どうする……?」
少し下がって風と合流するか
あえて集合体を追い抜き、狙いが自分に向いて風から反転すること願うか
1、風と合流(天乃が下がります)
2、風を待つ
3、移動 ※移動先を選択してください
↓1
http://i.imgur.com/Xd6QojQ.png
天乃「……下がりましょう」
ここで待っても、風との合流はできるだろう
けれど、下がる方が早いし
接近してしまっては
集合体だけでなく蠍座の攻撃可能範囲にまで入ってしまう
それゆえの判断に、死神は頷き、須佐之男は刀の柄を握り、天乃を見る
仮面の奥、紫色であろうその瞳は行け。と、言うかのように瞬きをして
須佐之男は踵を返すと、バーテックスと向かい合う
天乃「あなた……」
誰かがいなければいけない
蠍座と、集合体
そのどちらもが野放しになっては下がる意味がない
風を近づけさせない意味がない
だから
死神「イケ、アルジサマ。ココハ、ワタシガ、アズカロウ」
死神が通した言葉、それに天乃は頷く
精霊が死ぬことはない
限界が来たら姿が消え、傷を癒してまた戻ってくる
だから別にいい。とは言うつもりはないが
天乃「ごめんなさい……お願い」
須佐之男「……」
天乃は須佐之男に壁役を任せ、一気に後退した
レオ→須佐之男 命中判定↓1 01~90以外で回避
※蠍座は攻撃の成否に依存
須佐之男「………」
来い、さあ……来い
姿勢を低くかがめ、腰元の刀の柄に手をかける
主様と呼ぶ彼女と似た姿勢、けれども流派というべきか
その剣技は全く異なる居合術
もっとも、天乃に関しては居合の方にも手を出しているのだが……
これに限っては、おそらく須佐之男が上だろう
紫の瞳に殺意を込め、左目に蠍座、右目に集合体を映す
目に見えることのない気を張り巡らせ、その一挙一動の欠片も見逃すまいと
薄く、広く、呼吸をし――
須佐之男「!」
ピリっとした不可思議な感覚を覚え、須佐之男は全力で駆け出す
背後の地面にバシャリと水球が衝突して弾け
そして
もう一つ、右側から迫る水球は――真っ二つに切り裂けて消し飛ぶ
ヒュンッと振り払った刀を鞘に収め、須佐之男はただ静かにバーテックスを見上げる
我ここに在りと。示すかのように
風「天乃!」
下がった瞬間
風は怒鳴りつけるように名前を呼ぶ
天乃「っ」
飛来した火炎弾に接触したのだろうが
大した怪我もなく、元気いっぱいにお怒りで
天乃はその声の大きさに顔をしかめ
けれども風の無事を嬉しそうに、笑って
風「笑い事じゃない!」
天乃「ごめんなさい」
風の心配からの怒りに苦笑する
それもやっぱり、怒られて
天乃「……………」
胸中に、抱く
――今度こそ、守る。ぜったいに誰も、失わない
抱き続けた願いを
深く抉られた、決して治ることのない傷口に押し当てる
天乃「ふふっ、ちゃんと気をつけるから、今は集中しましょ」
風「ったくもー……」
隠すのは、得意だ
戦況→http://i.imgur.com/8l0jMJV.png
風「久遠の精霊が今は防いでくれてるけど……」
天乃「?」
いつまでも持つとは思えない
天乃の精霊の力は絶大だ
それこそ、バーテックスに通ずるほどに
しかし、それでも
あの集合体とずっとやり合うことができるとは思えない
それは天乃の精霊が劣っていると思っているのではなく、
あの集合体が絶大すぎるがゆえの、不安
天乃「ねぇ、風」
風「?」
天乃「…………」
1、また、久遠ってなっちゃうの?
2、蠍座、あれ。どう思う?
3、集合体は私がやる。貴女は友奈達に加勢しに行って
↓1
天乃「また、久遠ってなっちゃうの?」
さっきは天乃と呼んでくれたのに
また久遠と呼ぶようになった風に、問う
樹と姉妹で同じく綺麗な翡翠の瞳
天乃へと向けられたそれには躊躇いがゆらめき、
天乃の視線から逃れるようにそれていく
風「……その方が。久遠の意識を向けられると思っただけ」
天乃「でも」
風「言いたい事は言ったから。また戻った。それだけの話よ」
目を合わせない
俯きがちなままに、答えて、頭を振る
そして、バーテックスを見上げる
風「戦いに集中、さっき久遠自身が言ってたじゃない」
天乃「そうだけど……」
風「行くわよ、久遠!」
風はそう言って、駆け出す
友奈達の方でも、夏凜の方でもなく
目の前の――集合体へと
天乃「っ――なんでそっちに!」
双子座対応→コンマ判定↓1 コンマ×2.5 残り63
風→蠍座 命中判定↓2 01~76で命中 ゾロ目CRI
レオ→風 命中判定↓3 ゾロ目回避 それ以外で命中
※蠍座はレオの攻撃成否に依存
レオの攻撃成功→水牢→さそり座行動開始
さそり座→風 回避不可(水牢)→須佐之男の妨害行動開始
須佐之男妨害成功率160%
樹→水瓶座 安価↓1 命中判定 01~75命中 ゾロ目CRI
天秤座→友奈→回避不可→ダメージ確定→115ダメージ
水瓶座→友奈 安価↓2 命中判定 01~86命中
風「っ」
天乃を天乃と呼んでしまった
あれだけ、毎日久遠と呼び続けてきたのに
ずっと、久遠と呼び続けようとしていたのに
風「……心配になったら、これだ」
単身……といっても
正確には須佐之男もいたけれど、
天乃ひとりであの巨体へと立ち向かって行ってしまったことの不安と心配
そのあとの、逆に心配して駆け寄ってくる姿を見せてくれた安堵
きっと、気が緩んだのだ
ううん、きっと、心配しすぎたのだ。本気で、本心で、心から
だから……
風「!」
首を振り、集中しようと息を吐き
手に感じる大剣らしくない重みをしっかりと支え、目の前にいる未だ動かない蠍座めがけて跳躍
そして
風「まずはひとつ!」
尾先のあからさまに危険な針を切り落す
風「次――」
そして次へと向かおうととした瞬間
ばしゃりと体に衝撃が走って、気づけば呼吸が出来なくなっていた
風「!」
視界が青く揺らめく中、蠍座が動き出すのが見えて
風は自分がどこにいるのか、どうなっているのか
うまく判断できないまま、ただ、追撃されることのみを悟る
自分を捕らえた水牢を破壊しようともがいても
大剣を振り回しても
水は切れてもまた塞がるだけで意味がない
泳ごうとしても水牢はあわせて動き、抜け出すことを許さない
風「っ!」
精霊が守ってくれる
けれど、それでも、怖かった
揺らぐ中で、切り壊したはずの針が再生を始めながら自分へと向かってきていることが
怖くて、死ぬかも知れないと、不安で
どうせなら、ちゃんと。もう一度、呼んであげればよかったと後悔をして目を瞑る
けれど――
風「!」
直前まで迫っていたはずの尾は再生したはずの針を失っていた
その一方で、水牢に囚われた友奈は回避の余地もなく
大きな挙動で振り回された分銅にたたき出され、
友奈「っあぁぁっ!」
地面へと衝突し、悲鳴が上がる
友奈「ぅ……ぁ」
精霊に守られたとは言え、
分銅の一撃、地面への衝突
勢いのあったそれらはたしかに、友奈の体へと響いていて
――痛い
友奈「げほっ、けほ……っ」
――苦しい
友奈「っ……かはっ」
吐き出した水牢の水に朱色が混じる
体が震える
けれど、友奈は勢いよく地面を蹴って、再度捕らえようとした水牢から逃れ、地面を転がる
友奈「はぁっはぁ……ぁ……っ」
樹海の根に体を預け、天を仰ぐ
友奈はすでに、満身創痍だった
天乃「っ!」
友奈の悲鳴が聞こえた
離れた場所で戦う友奈と樹
二人の戦況はマップを見るだけではわからない
ふたりを助けに行きたい
友奈が危ない以上、樹も同様に危険であることはまず間違いない
けれど
天乃「風……」
今、自分の目の前では風が危険なのだ
須佐之男がいるとは言え、
集合体と蠍座を相手にしながら風を助け出せる保証はない
天乃「この……無能っ」
リーダーを担っている風にではなく、
自分自身に、吐き捨てる
どこもかしこも危険だ
唯一、双子座を撃破できた夏凜と東郷だけが無事で
今、合流に向けて移動している最中
手詰まりだ……少なくとも
友奈と樹を見捨てるか、風を見捨てるか……どちらかを
天乃「いや」
それだけ、嫌だ
どちらかを、誰かを見捨てるのなんて
そんなのは――嫌だ
天乃「そんなの……ぜったいに許されないッ」
なぜ、今ここにいるのか
どうして、今もまだ生きているのか
勇者を守るためだ
勇者部のみんなを、守るためだ
天乃「そのために、ここにいるんだから」
死神「……クオンサン」
天乃「よくわかってるじゃない」
目の前の圧倒的な絶望を前にして、久遠天乃は笑みを浮かべる
バーテックスと比べずに九尾と比べても
遥かに小さな精霊の死神
その真紅の瞳を見据えて――
1、満開を使う ※不正により、樹海にもダメージが入ります
2、死神も勇者の力に転用する ※混合勇者へとシフト 精霊の壁がなくなります
↓1
天乃「行くわよ……私」
九尾の勇者ゆえの白き衣に身を包む天乃の声に
死神は頷き、漆黒の靄となって天乃を包み込んでいく
精霊による加護、即死を防ぐ最強の盾はなくなるが
その分、力は強くなる
天乃「攻撃こそ、最大の防御」
玉虫色、虹色
数多の色を持つ衣装へと変わった天乃は、忌々しいバーテックスを見上げる
天乃「……満開はまだ、使わない」
使える満開は二種類
一つは、正式な神樹の力を借りた満開
一つは、不正に穢れを転用した満開
今使えるのは後者のみ。ゆえに、天乃は避けた
天乃「私にこの力を使わせただけ、誇るといいわ」
さて……
天乃「風を返してもらうわよ。そこの大馬鹿者」
拳を握り締めて、勇者ではない勇者は地を蹴り飛ばす
天乃→レオ CRI判定↓1 ゾロ目または40~49 70~79
天乃「貴方が集合体なのなら、私も集合体で行くわ」
さっきまでよりもはるかに高く跳躍
集合体が作り出す炸裂弾を斬り払い、炸裂したその勢いをさらに上乗せし、肉薄
風を助けるにはどうするべきか
答えは簡単だ
天乃「あなたを屠ればいい」
バーテックスの集合体だろうがなんだろうが、関係ない
そこの実態としてあるのならば
それに限界というものがあるのならば
天乃はそれを打ち砕いて、破壊する
両手に握り締めた刀
一つは、草薙の剣
一つは、死の大鎌を変質させた刀
火明命の力によって変化した死刀はその力をさらにまとい、漆黒でありながら
赤き光を纏う、凶刃
天乃「はぁぁぁっ!」
左手が生み出した縦の斬撃が集合体の体を真っ二つに裂き
右手が生み出した横の斬撃が集合体の体を四つ裂きにする
天乃「単純に消えることなど、許さないッ!」
風を傷つけたのだ、苦しめたのだ
だから――
天乃は地面を蹴り、体を大きく捻って旋回
そして、生み出された無数の斬撃が集合体を余すことなく消し去った
レオに3900ダメージ 撃破完了
集合体自体が消えたことで
水牢から開放されて空から落ちてきた風を抱き抱えて、天乃は一息つく
天乃「良かった……まだ、無事」
風「っ……けほっ、けほっ」
須佐之男が追撃を防いだことで、致命傷に近いダメージを負うことのなかった風は
溺れかけた咳をすると、ゆっくりと目を開く
風「く……おん?」
天乃「ええ、私」
風「……なんか、変わった?」
天乃「少しね」
弱々しい風に笑みを向けて、
天乃はゆっくりと歩く
すぐそばにさそり座がいることなど、無視をする
須佐之男「……」
それの相手には、須佐之男がいるからだ
天乃「大丈夫よ、風」
風「久遠……」
天乃「私が守るから」
風「あのでかいの……ひとりで片付けるなんてね」
天乃「ふふっ、これが先輩勇者の実力よ」
天乃は笑って言うが、自分が強いとは思っていない
自分の実力が最高峰であるとも思っていない
もしもそうなのなら、
今、腕に抱く友人が苦悶の表情を浮かべていた時間なんてなかったはずなのだから
今、こうして抱いていることもなかったはずのなのだから
天乃「えっへん」
おちゃらけた笑顔
けれどその裏で、腕に感じる友人の重みを
己の罪として、抱え込んでいく
風「何笑ってんのよ。まだ、終わってないんだからね?」
天乃「ええ、わかって――!」
頷きかけ、気づく
蠍座のバーテックスは天乃達を標的から外し、
友奈達の方へと動き出していた
樹、友奈→水瓶座封印開始→天秤座妨害行動
コンマ判定↓1 01~30で失敗 ※失敗の場合二人に50ダメージ
友奈→水瓶座 命中判定↓1 01~74で命中 ゾロ目CRI
樹→水瓶座 命中判定↓2 01~75で命中 ゾロ目CRI
水瓶座に815ダメージ
水瓶座に460ダメージ
計:1275ダメージ
水瓶座討伐完了
天秤座→友奈 命中判定↓1 01~87で命中
天乃→蠍座 判定不要
友奈に135ダメージ
蠍座に3900ダメージ さそり座討伐完了
水瓶座の封印と討伐
その成功の喜びは天秤座の分銅によって弾き飛ばされていく
樹「友奈さんッ!」
水瓶座の封印
その時点ですでにふらついていた友奈は
その力を振り絞って、拳を振るって御霊を打ち砕いた
それを喜び、一息入れようとしたその瞬間を
友奈「…ぁ、ぁ」
天秤座は正確に打ち抜いたのだ
そう
正確に言えば、弾き飛ばされたのは友奈の矮躯だった
樹海の根に直撃いた友奈は
パラパラと降る藻屑を浴びながら、呻く
痛みに麻痺した体は震えて、まともに動かすことも出来そうにない
声も出ない、落ちたままの体は、四肢を投げ出したままだ
友奈は地面に手をついてゆっくりと、体を起こしていく
友奈「っ……ぅ、ぁ」
少しずつ、体の感覚が戻ってくる
それはきっと、勇者だから
勇者だから――まだ生きていることができる
友奈はその目に映る蠍座が爆散するのを見つめて……笑う
きっと、久遠先輩だ。久遠先輩が……こっちに来てくれているんだ
友奈「こんな姿見せたら、ダメだよね……」
きっと、すごく悲しい顔をする
すごく心配して、不安になって
友奈「抱きしめて、くれちゃったりして……えへへっ」
それはすごく嬉しいけれど
でも、悲しそうな顔でそうされるのは、ちょっと嫌かな
友奈「頑張れ、私。頑張ろう。私……久遠先輩がバーテックスに向かってくれることを祈ろう」
ぷはっと息を吐いて、地面に倒れこむ
体の痛みの酷さに立ち上がることができなかった友奈は
樹海の空を見つめ、口元を拭う
友奈「血まで……あははっこんなの、絶対見せられないなぁ」
体が回復するようにと、
友奈は動くのを諦め、目をつむった
PCご臨終(ブルスク)対応なので一旦終了します
再開できればしますが、しばらくできない可能性もあります
パソコンはお陀仏要新調
なので端末から進めていきます
復旧不可につき様々なデータが変わるかもしれませんがご了承下さい
天乃「っ」
蠍座のバーテックスの討伐も終わった
あとは天秤座のバーテックスだけ
スサノオがいる。風がいる
樹がいる。夏凜だっている
少し離れてしまってはいるが、東郷だっている
天乃「…………」
友奈のところに行きたい
天秤座のバーテックスなんて後回しにして
酷い怪我をしてしまっているかもしれない彼女の元に駆け寄って
安否の確認がしたい
バーテックスを倒さなければと思う反面
天乃は不安で仕方がなかった
1、バーテックス討伐
2、友奈に駆け寄る
↓1
天乃「須佐之男」
須佐之男「?」
天乃「悪いけど……お願い」
天乃がそう言うと、須佐之男は頷く
天乃はなにを。とは言わなかった
けれど、バーテックスの事を頼まれたのだと察するのは容易で
須佐之男は戦闘中にどこかへと向かう主を止めるつもりもなかった
不安そうな顔をしたまま危険な戦いに挑んでは欲しくなかったし
ここまでで十分、戦闘放棄の許される戦果をあげているからだ
天乃「ありがとう」
彼女の礼に須佐之男はまた、頷く
そして、須佐之男はバーテックスと対峙し
天乃は友奈のもとへと向かった
天乃「っ!」
マップを見ながら向かった先で
桃色であるはずの髪を赤くした友奈が倒れているのが、見えた
驚さないようにという建前
知るのが怖いという本音を胸に
ゆっくりと、近く
天乃「ゆ……」
そして、声をかけようとした時
友奈「……なんで、来ちゃうんですか」
友奈の少し、辛そうな声が聞こえた
天乃「なんでって……」
心配だったから
不安だったから
自分の目の届かないところで戦って
悲鳴をあげていた友奈の事が心配で不安で仕方がなかったから
だから、ここにいる
天乃「友奈が心配だったからよ」
友奈「……知ってます」
友奈は震えるからだに鞭を打ち
近くの樹海の根に体を預けて天乃を見る
友奈「こんな姿、見せたくなかったです……」
口許には赤黒い血を拭った痕があって
制服は土や木屑に汚れて、擦ったからか少し切れている
そんな友奈は天乃を見て、悲しそうな顔をする
ムリに笑ったところで意味がないと
友奈は分かっているからだ
友奈「久遠先輩絶対悲しむって、分かってたから」
でも、動けなかった
端末のマップが接近を知らせていても
どうすることもできなかった
友奈「……ごめんなさい。久遠先輩」
1、抱きしめる
2、ごめんなさい
3、貴女は悪くないわ
4、無理に話さないで
5、本当よ……なんで。なんでこうなるまで逃げなかったのよ……
↓1
ではここまでとさせていただきます
投下はできる限り行いますが、まともにできるまで一ヶ月程度かかるかもしれません
では、少しずつ進めていきます
天乃「ううん……」
友奈の謝罪に天乃は首を横に振る
友奈は自ら戦うことを選んだ
最初の窮地のあと、逃げられたにも変わらず
逃げずに戦いを挑んだ
ゆえに、心配させたこと
今こうして悲しませていることに関して謝るのは間違っていない
しかし、天乃としては誤りだった
天乃「私こそ……ごめんなさい」
友奈「久遠先輩は悪くないです」
天乃「ううん、私が悪いわ」
友奈「私が……っ」
友奈は言おうとしたにも関わらず
その言葉を認めたくはなくて、唇を噛む
乾いた唇は少し、血の味がする
友奈「……………」
けれど、友奈は自分の現状を再認識させるそれに
目を瞑って、口を開く
認めたくない。でも、認めざるを得ない
戦いの最中に晒しているこの醜態が証拠となること
友奈「私が弱いだけです……役に、立てなかっただけです」
友奈は天乃を見ずに、そう言った
天乃は悪くない
けれども勝手に責任を負ってくれようとする
そう察したがゆえの友奈の言葉
天乃「……………」
友奈「……………」
流れる沈黙。その気まずさを感じ
友奈はゆっくりと上を見上げて、天乃の方へ傾ける
友奈「そんな弱い私を戦わせたことを後悔しないで下さい」
天乃「っ」
そんなことは思っていない
なのに、友奈は言う
友奈「弱い私が、いけないんですから」
それは自虐に他ならなかった
心配させたのは自分なのに
ダメだったのは自分なのに
なのに、天乃が謝るから。謝ってくれるから
それが情けなくて、申し訳無くて……
天乃「…………」
1、抱き締める
2、私はもっと強い力があったのに使わなかっただから私が悪いのよ
3、そんなこと、言わないで。役立たずなんて言わないで
↓1
天乃「そんなこと、言わないで。役立たずなんて……言わないで」
友奈「でも」
役立たずだった
確かに御霊を破壊し、水瓶座を倒すことはできた
けれど、その結果がこれなのだ
ボロボロになるだけならよかったかもしれない
しかし、目の前で泣きそうな人がいる
心配させて、不安にさせて
背負う必要のないものを背負わせようとしている
それは……役に立てなかったも同じだと友奈は卑屈になる
天乃「友奈は頑張ったわ。凄く、頑張ったわ」
そばに近づいて、ゆっくりと膝をつき
友奈の頬を優しく撫でて、痛々しい血のあとをなぞる
天乃「貴女が頑張ったから。私は私で頑張れた」
友奈「…………」
天乃「樹が無事でいられている……特訓もしていないのに。それは立派だと私は思う」
その分、友奈は傷ついた
けれども生きている。今この手に温もりがある
天乃はそれだけで十分だった
口先の魔術師よろしく褒めはしたが
友奈に求めているのは戦果ではなく生存だ
ゆえに、生きているだけでなく戦果をあげた友奈は役立たずなどでは決してない
もっとも、生きているだけしか望んでないとは言えないが
天乃「だから、ね」
また失うかも知れなかった恐さが
不安が、拭い去られた安心が……鎧に隠した心を撫でる
天乃「…………」
1、ありがとう
2、役立たずなんかじゃない
3、抱き締める
↓1
友奈の頬を撫でて滑るように首筋、背中と手を回し
友奈「久遠先ぱ――」
抱き締める
友奈「いっ?」
鼻孔を擽る天乃の匂い
それは甘くて優しいデザートのような
魅惑的な匂い
友奈の鼓動が早くなる裏で、天乃はとても穏やかだった
天乃「良かった……生きててくれて」
安心したから
とても、嬉しかったから
だから
天乃「本当に……っ」
圧し殺した声で、涙が解らぬように
その腕に、その胸に、その体に
友奈を余すことなく感じる
友奈「……」
ばれないようにしているのだろう
けれど、解ってますよと友奈は笑う
嬉しそうにではなく、悲しそうに
――泣かせちゃったな
そう、感じて
だから、やっぱり。友奈は言う
友奈「ごめんなさい……無茶しちゃいました」
これは自分が悪いのだと、思ったから
天乃「私こそ、すぐに来てあげられなくてごめんね」
少し乾いてはいるが、友奈の髪が濡れていることに気づいたのだ
きっと、風のように囚われて
もがいただろう。苦しんだだろう
それを察しての言葉に、友奈は「平気です」と笑って
友奈「成せば大抵……なんとかなりますから」
少しずつ戻ってきたからだの感覚を確かめるように握りこぶしを作り、
そして友奈は天乃の体を抱き返す
天乃「友奈……?」
友奈「……こうしてると、体の治癒効果が高まるんです」
戦っているみんなには悪いと思いながら
実際に体が気力で持ち直そうとしているのを感じて
友奈「だから、少しだけ……」
そう言った
ではここまでとさせていただきます
端末が変わったのでペースがいつも以上に落ちています
戦闘は勝ち確定なので、問題は樹海の汚染率ですね
成功してれば少しずつ進めていきます
天乃「こうしてるとって……」
ただ、抱きしめてるだけなのに
胸に顔を埋めて、むしろ苦しいはずなのに
友奈はしがみ付いてきたままで
天乃「そんなことは――」
九尾「あながち誤りではあるまい」
天乃「え?」
疑問を抱いて否定しようとした瞬間
九尾が一言挟む
冗談ではなく、本当のことだ
もちろん、天乃自身に治癒能力を高める能力があるわけではなく、
天乃の精霊である稲荷の力だ
彼女――というべきかは定かではない神、稲荷の繁栄の能力は
神樹様の展開する結界などの強化等を行う、いわば神の力を強めるものでもある
ゆえに、
神樹様の力で向上している治癒能力が若干ではあれ、強化されるのだ
九尾「稲荷の力を使って主様が触れてやればもう少し効果もあるじゃろうが……そっちに回すよりもすべきことがあるじゃろうな」
九尾の言葉に、
彼女の視線を追って樹海に広がった浸食のような穢れの色を見つめる
手を抜いた結果の大惨事
けれど、もちろん
天乃だって慢心して手を抜いたわけでもない
今使っている力は強力な剣である分
精霊が守ってくれるという強力な盾がないのだ
できれば使わずに終えたいというのも無理はない
しかし、大赦はそんなことを考慮はしない
なぜ、最初から力を使わなかったのだと、天乃を叱ることだろう
天乃「……そうね」
九尾「そろそろ、残った天秤座も終わるようじゃな……また、穢れが広がっておる」
天乃「うん」
封印のきれいな光が広がる中
樹海の色が失われていく
それはまるで樹木のように、樹海の光が封印に吸い上げられているようにも、見える
九尾「して、主様や。稲荷の力を使うのか?」
天乃「そうね、使うべきかしらね」
九尾「いや、強制はせぬが……」
友奈を抱きしめながら、どこか遠くを見ていう天乃に
九尾は少し怪訝そうに答える
強制はしない
むしろ、推奨も何もしない
使わないのなら使わないでもいい。とさえ思う
なにせ、稲荷の力を使えば樹海や世界は救われるが
天乃の体には本来はたまるべきではない穢れが蓄積してしまうからだ
九尾「妾は主様に任せよう。これで世界が滅ぶわけでもあるまい。本当に必要な時に使うのこそ、正しいとも言えるからのう」
天乃「今回は正しくない?」
九尾「妾の主観でいえば、正しいとは言えぬな」
九尾の迷わない回答
それは迷わせるための悪戯ではないのだと
はっきりと、示していて……戦いの終わりを告げり光が瞬く中
天乃は――
1、稲荷の力を使った
2、使わなかった
↓1
天乃「悪いけれど――」
九尾「選択は主様に一任した。意に添わぬからとそれは不要じゃ」
九尾がしてほしいこととは違うだろう
そう思ったからこそ口にしようとしたことは筒抜けで
さえぎられて。
天乃は思わず苦笑し、九尾を見つめる
すると、妖狐ではなく女性体の九尾と目が合って
彼女は「時間がないぞ」と、促す
友奈「久遠先輩?」
流れに置き去りにされる友奈が不安そうに言う
けれど、天乃は「大丈夫よ」と
嘘であり本当のことでもある表裏一体の言葉を告げて、笑みを浮かべる
天乃「稲荷」
その静かな召喚に応じ、現れた稲荷神は
天乃を見て、何かを確かめるように見続けて頷くと世界が消えていく中で
ただ一人、舞を踊る
そして――すべての負荷は、天乃の体に押し付けられていく
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば少し早い時間かいつも通り
友奈「どうやったら、久遠先輩の穢れをなくせるんですか?」
九尾「なくすことはできぬが、接吻することで多少の肩代わりはできるぞ」
友奈「!」
では、本日も進めていきます
01~10
11~20 有
21~30
31~40 有
41~50
51~60
61~70 有
71~80
81~90
91~00 有
有なら付属品、友奈
戦いが終わり、樹海から元の世界に戻った天乃は
死神の力を用いて、ほかの勇者部達とは別の場所に戻ってきていた
天乃「……っ」
というのも、今の状態を知られるわけにはいかないからだ
戦闘による影響といっても騙せる可能性はあるだろうが
それでも、あまり見せたい姿ではない
39度を超える発熱、体の気怠さ、熱もあるがそれ以前に定まらない視点
呼吸も荒々しく乱れていて、不安にさせるし、心配させることは間違いないからだ
九尾「主様、少し日陰に移動するかや?」
天乃「ん……」
穢れをためたことによる、体調不良
これは一時的なものではあるが
ためればためるほど、症状は重くなっていくし
そして、ためすぎれば死に至る。と、九尾は言う
九尾「しかし……不運じゃな」
天乃「?」
友奈「……………」
九尾「一人、連れてきておる」
九尾の視線を追うようにして頭を動かす
それだけの動きでも、頭はずきずきと痛んで
零れ出していく吐息は不自然に熱っぽくなる
その不調な状態で、不安そうな友奈と目が合ってしまった
ここにはいないはずなのに
そう考えて「そういえば、ずっと抱いていたものね」と苦笑すると
ズキッと痛んだ目の奥に、思わず、顔をそむける
友奈「だ、大丈夫なんですか?」
九尾「この程度ならば、寝ればすぐに言えるじゃろう」
友奈「すぐに……」
今のつらそうな天乃が一日寝れば癒えるとは思えない
けれど、本当の病気ではなく
神樹様などの力による影響なのなら例外なのかもしれない
なんて考えながら天乃を見ると
橙色の瞳と目が合った
目を合わせては逸らして、また合わせて
天乃は瞬きをして、息をつく
本当は笑って見せたいところだけれど
そんな余力はなかった
天乃「今の九尾は嘘をつく九尾じゃないわ。事実よ」
穢れをため込んだのは今回が初めてだが
その話は九尾から聞いていたし
それによる症状も聞いていた。だから、少なくとも【今回は】一晩で済むというのは嘘ではないと、わかっている
友奈「でも……」
天乃「そう心配しなくていいわ。高熱を出したような程度だし」
額に浮かぶ汗、苦しげな声と表情
それで言われても説得力はないだろうが……
天乃「……ね?」
声に出さずに笑みを浮かべて見せる
しかし友奈は、ごくりと息をのみ、口を開く
友奈「心配しないなんて、そんなこと……できないですよ」
さんざんダメージを受けた自分がこうして無事なのに
攻撃にかすりもしなかった天乃が酷い状況になっている
それを心配するなと言われて心配しない
そんな優しいあるいは、人を見捨てることのできる性格ではない
だから、友奈は天乃を見る
明らかに苦しそうな呼吸
つらそうな表情
それらをしながら平気だという先輩に、友奈は
友奈「後でいろいろ話してくれるって、久遠先輩言いましたよね?」
天乃「ん……あぁ。あー……うん」
正直、あまり話したくもない
けだるさの残る声で返すと
友奈は「それなら、先輩の家に行きます。看病、させてください」
と、申し出てきた
1、駄目よ。移らないとも限らないし
2、……仕方がないわね
3、おかゆとか。あーんって、してくれる?
4、九尾がいるから大丈夫よ
↓1
天乃「おかゆとか。あーんって、してくれる?」
友奈「えっ?」
苦しいから、辛いから
だから適当なことを言ったわけではない
むしろこれこそいつも通りだ
けれど、真に受けた友奈はほほを赤らめると
いじらしく目をそらして――頷く
友奈「か、看病の一環。ということなら」
天乃「ほんとに?」
友奈「はい」
本気でやるつもりなのか。という問いだったのだけれども
意を決した真剣そのものの表情で言われては冗談だからともいえず
天乃は「なら、お願いしちゃうかな」と、苦笑する
そしてまた激しい痛みを覚えて、支えようとした友奈の腕の中で意識が真っ暗になる
友奈「ぁ……」
九尾「案ずるな。眠る必要があるのじゃ……今の主様にはな。じゃから、連れ帰るぞ。結城の友奈」
そういう九尾に、友奈は不安をぬぐえないままついていくことにした
では、少し早いですがここまでとさせていただきます
明日はできれば通常時間から
友奈「ふーふーもオプションしますか?」
天乃「添い寝付きで」
友奈「代金は久遠先輩の隠している秘密。ですよ」
では、初めて行きます
√ 5月4日目 夜(天乃宅) ※木曜日
友奈「ここが先輩のおうちなんですね」
九尾「うむ。殺風景じゃろう?」
友奈「……少し、寂しいな。とは思います」
天乃を寝室に寝かせた後、
約束通りおかゆを用意しようとリビングに来ていた友奈は
手伝ってもらう九尾の質問に、素直に答えた
家具は必要最低限で、ゲーム機などは見当たらないし
カーテンの色もグレー一色と、あまり良い色とは言えず
やんわりと言いはしたものの
きつく言うのなら九尾と同じく【殺風景】という他なかった
九尾「主様は自由に動けぬからな。自室以外には特にこれと言って関心がないのじゃ」
友奈「じゃぁ、リビングのテレビとかって、誰が?」
九尾「妾が使う。それ以外では朝や夕餉の際につける程度じゃな」
友奈「そう……なんですね」
九尾「部屋は余っておるからな。ここに住みたければ、住んでも構わぬぞ?」
友奈「す、住むなんてそんな……」
友奈は拒否しようとしたが
最後まで言い切れず、言葉を止め、手を止め、九尾を見る
視線に気づいているであろう九尾は
焦げないようにと鍋を混ぜながら。口を開く
九尾「主様はああ見えて、寂しがり屋じゃからな。泊まるだけでも喜ぶじゃろう」
友奈「帰ったほうがいいって。いいそうです」
九尾「本当は泊まって欲しいくせにな。くふふっ、ほんと。難儀なことじゃ」
九尾は普段、一人でこの場にいる
テレビをつけても面白いと思えるものは限りがあって
基本的には、自分が動かなければ静寂に包まれてしまうリビング
それが、今日という日は黙ることはできないし
テレビをつけていなくても声がする
ゆえに、九尾は少しだけ気分が良かった
だから、笑う。悪戯にではなく、楽し気に
友奈「家事とかは全部、九尾さんが?」
九尾「うむ。主様は自分もすると言ったが、移動に関して手を貸さねばならぬからな。足手纏いにほかならん」
友奈「……………」
九尾「そういう意味でも、妾以外の人間が欲しいとは思う。正直、精霊だからと炊事洗濯するのは妾だけじゃぞ」
ちょっぴり不満そうに言う九尾の声が
溜まりに溜まったうっぷんを晴らすというよりも
自慢できることを語るような空気感であることに友奈は気づいて
けれど、笑い話ではないと、俯く
そうだ。天乃にはほとんど何もできないのだ
何でもできるはずなのに
両足の障害のせいで、ほとんど何もできなくなっている
――東郷さんもそうだけど。久遠先輩はそれ以上に……
いろいろと抱えて生きてきた
今も、何かを抱えて生きている
意識を失うほどの何かを、抱えて生きている
だから、きっと。障害のこともあるのだろうが、それ以外にも
こうした殺風景な部屋になってしまっている理由があるのだろう。と、友奈は思う
九尾「結城友奈」
友奈「ぁ、はい」
九尾「粥を持っていけ。そして、主様が抱える一片をその目で、その耳で確かめて来るがよい」
自分の分、天乃の分
二人分の器とスプーン、そして鍋
それらの乗ったお盆を受け取った友奈は
真剣そのもののまなざしを向けてくる九尾と視線を交わす
九尾の言葉は、明らかに何かがあることを示していたからだ
友奈「九尾さ――」
九尾「お前は知りたいと言った。ならば、知れ。しかし、知ることは責任を負うに同じ。それを、努々忘れるでないぞ」
九尾は友奈の言葉を遮る
それは、それ以上話すことはないという拒絶、遮断
その意志を感じた友奈はごくりと息をのみ、湯気の立つおかゆを一瞥して、踵を返す
友奈「わかりました」
それが九尾に聞こえたのかどうか
それを確認することなく、友奈は天乃の部屋に向かった
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば似たような時間から
遅くなってしまいましたが、少しだけ進めていきます
友奈が天乃の部屋に行くと
天乃はすでに目を覚ましていて、寝たままではあるが
窓の方から友奈へと首を動かす
天乃「あら。本当に作ってくれたの?」
友奈「少し、九尾さんに手伝ってもらっちゃいました」
全部自分でやった
そんな見栄を張りたいとも思ったけれど
小さな嘘でも嘘は嫌だと、正直に話して笑う
――いつか、一人で料理できるようになれたらいいな
なんて、思いながら
天乃「そう……九尾はああ見えて。というか、精霊なのに料理が上手なのよね」
友奈「確かに、手際が良かった気がします」
友奈は自分の精霊、牛鬼と比べてはるかに多才な九尾のことを考え、頷く
優秀な先輩には優秀な精霊
そう考える一方で、反動が大きいからこその高性能な補助とも考えられてしまう
そんな頭を振って近くの椅子に座る
友奈「体、起こせますか?」
天乃「ん……なんとか」
寝たまま食べさせるわけにもいかず
友奈自身の手も貸しながら、天乃の上半身を起こさせると
天乃はごめんね、と、笑みを浮かべる
友奈「ごめんね、なんて……」
あれもこれもと助けて貰わなければいけない状態に
罪悪感を抱いた天乃の謝罪に、友奈は繰り返し呟いて首を振る
友奈「私が好きでやってることですから」
天乃「……物好きね」
友奈「えへへっ、こういう人助けが主な活動の勇者部部員ですからっ」
自慢気に笑う友奈は
久遠先輩はその部活の創設者メンバーの一人ですけどね。と、皮肉なのか、呟いて
友奈「むしろ嬉しいです。先輩の力になれることって。基本的には殆どないから」
少し寂しそうな、笑顔を見せた
天乃「そっか」
天乃からしてみれば
こういう、迷惑になるようなことで力を借りるというのは
あまり望ましいことではない
けれども、友奈がうれしいと本心でいうのであれば
その気持ちを否定するわけにもいかなくて
天乃「じゃぁ、お粥食べましょうか」
さらりと話を流す
そのうえで、気絶する前の冗談もなかったことにしようと目論んだのだが
二つある器の一つ、スプーン一つ」を持ったまま
友奈は天乃を見ていた
天乃「友奈?」
友奈「や、約束。したので」
照れくさそうに言いながら、
少し時間を置いたにもかかわらず湯気の立つお粥に2、3息を吹きかけると
友奈「あ、あ~ん……してください」
と、言った
1、素直に応じる
2、友奈、あれは冗談よ
3、今ので友奈の愛情が含まれたわね
↓1
天乃「ぅ……」
自分で言い出しておいてあれだが、いざやられてみると気恥ずかしい
けれど、乗り気というべきか
覚悟を決めた友奈に今更冗談だとは言えないし
自業自得だと考えた天乃は
天乃「ぁ、あ~ん……」
素直に応じることにした
美味しそうな匂いはするが、味はしない
ぐちゅりとつぶれて飲み下すだけの簡単な補給
文字通り味気のない食事
けれども、友奈の愛情が込められていると考えてみると
普段つまらなく思っているそれも、なんとなくではあるが楽しかった
友奈「しょっぱかったりしないですか?」
天乃「ううん。平気。ちょうど良い塩加減だと思う」
友奈がしょっぱくないかと聞いたから
お粥はそういうものだと思っていたから
そう、【嘘をついた】天乃によかったです。と純粋な答えを返した友奈は
自分も一口。と、お粥を口含んで
友奈「!!?」
予想だにしていなかった【激甘】のお粥に思わず口を手でふさぐ
――九尾さんだっ、絶対、九尾さんが仕込んだんだっ
その犯人を突き止めるのは、容易だった
では、ここまでとさせていただきます
明日はできればお昼頃から
味覚がないことがバレます。安価なし、確定事項
では、進めていきます
天乃「友奈?」
友奈「っ」
正直、牡丹餅に慣れ親しんだ味覚でも
甘すぎて危険域に達しかねない
しかし、目の前の天乃は平然としていて
友奈「く、久遠先輩は……」
最初は毎日こういう悪戯をされていたりして
自分が牡丹餅に慣れたように、この甘さに慣れているのかと思った
けれどもすぐに、それは違うと気づいた
ついさっき、天乃は何を言った。なんて言った?
この甘さに対して【丁度良い塩加減】と言った
――ふつう、良い甘さって、言うのに
だからこそ、友奈は思った
それは最悪の想像。考えたくもないこと
もしも真実であれば、自分たちはずっと、天乃を苦しめてきたことになる現実
けれども、だからこそ友奈は。天乃を見る
友奈「……もしかして、味覚。ないんですか?」
天乃「……………」
天乃は黙り込んで、友奈を見る
目をそらして濁すのではなく、ちゃんと見返してきた
けれど、その瞳には悲しさがある
天乃「……九尾が何か仕込んだのね?」
友奈「はい」
嘘はつかない
それは、天乃にも嘘をついてほしくないという思い
天乃は「そう」と悲しげに言いつつ、笑う
天乃の得になることだと考えたのかもしれないし
終わったら話す。といったから、その架け橋を作ってくれたのかもしれないが
どちらにしても。天乃にとっては余計だった
天乃「塩加減でごまかせなかったのなら、きっと。それはすごく甘いのね」
友奈「砂糖たっぷりです」
意地悪に挙手するように湯気を揺らめかせるお粥を一瞥すると
天乃は笑う。笑って
天乃「そうよ、私には味覚がないわ。ずっと、貴女と出会うよりも前から」
真実を語る
友奈「なら、うどんも」
天乃「ええ、味はわからない」
友奈「東郷さんの牡丹餅も」
天乃「うん。わからない」
天乃はこの二年間、口にしてきたすべての食事の味を感じなかったのだ
二人きりではなかったが、部活メンバーで何度も外食したことがあった
依頼を請け負った老人ホームや、商栄会の人たちから貰った差し入れもあった
どれもこれも美味しかった。楽しかった。その時に、表情一つ曇らせることなく
目の前の先輩は【嘘をつき続けていた】のだ
天乃「九尾も酷いことをしてくれるわね。こんなこと、教えなくたってよかったのに」
真実を語るにあたって
味覚の有無まで教える必要はなかったはず
それを隠しても、語るに問題はなかったにもかかわらず、九尾は双方が傷つくだけの真実を知らしめた
しかし、友奈は握りこぶしを作ると「そんなことないです」と、割って入って
友奈「大事なことじゃないですか……凄くっ、大切なことじゃないですかっ!」
泣くべきは自分じゃないと気持ちを抑え込みながら、言い放つ
友奈には味覚がある
だから、味覚がない苦しさも、辛さも
何も知ることはできないし分からない
けれども、その優しさゆえに、同情する
友奈「味がわからないなんて、そんなの……」
してしまうから、我慢しようとしたものも零れ落ちていく
自分のことであれば我慢できることも
誰かのためとなると強くも弱い。それが、結城友奈という少女だからだ
天乃「………………」
まるで自分のことであるかのように
ぽろぽろと涙をこぼす友奈を見つめ
天乃は内心「仕方がない子ね」と、思いつつ、声にはならない笑みを浮かべる
1、だから、辛い物が好き
2、私はみんなが美味しそうに食べているのを見るのが好き。それを見るのが私の幸せだった
3、抱き寄せる
4、味はわからなくても、食感で楽しめるわ
↓1
天乃「私はね。友奈。みんなが美味しそうに食べているのを見るのが好きなの」
辛かったはずだ
苦しかったはずだ
たった一人何もわからなくて悲しかったはずだ
なのに
天乃「それを見るのが、私の幸せだったのよ。だから、そんな、泣くようなことでもないわ」
むしろ、味覚がないことが知れ渡って
そういったことに遠慮し、見れなくなることこそ、
悲しいことだと天乃は笑う
天乃にとって、それは自分ではかなえることのできないもの
自分が失ってしまった日常
今は亡き友人たちと、ずっと過ごし続けたいと願っていた日常
けれど、それはもう叶わなくなった。居なくなってしまった人がいる。変わってしまった人がいる
だからこそ、新しい友人である友奈たちには、そんな日常を大切にしてほしかったし
そういうのを見ていることが、見られていることが、幸せだった
そこに、久遠天乃が得意とする【嘘】はない
友奈「久遠先輩……」
天乃「ほらほら、泣かない泣かない」
まだ瞳に涙をため込む友奈に対して
天乃はそう言って笑うと頭を優しくなでる
泣いている顔も可愛いと言えば可愛いが
笑顔も可愛いし、天乃はそっちのほうが断然好きだった
友奈「っ……はい」
ぐすっと鼻をすすって笑おうとする
天乃はまだまだ隠していることがある
まだまだ、悩みを抱えている
それでも笑顔を見せる力強さ
けれども、天乃は決して強くはない
友奈が強くも弱いように、天乃もまた、弱いのだ
けれども、それを覆うものが多いから。隠れるのが得意だから
友奈でさえも、今はまだ。それには気づかない
九尾「さっきのは塩と砂糖を間違えておったようじゃ。くかかっ」
話が終わるころ
完全にタイミングを見計らった九尾の登場に
天乃は「何もかも仕組んでる癖に」と悪態をついてにらむ
けれど、九尾は平然とにやにやと笑う
そんなしてやったりな笑顔に天乃はまた、ため息をつく
怒っても何しても意味はない
正直、九尾との件に関しては泣き寝入りするしかないことのほうが多いのだ
というか、そうしたほうが安く済むことのほうが多い
九尾「して、結城友奈」
友奈「ぁ、はい」
九尾「宿泊はしていくのかや?」
天乃「明日も学校なのよ?」
九尾「ここから向かえばよい」
困った一人と、うれしそうな一人を交互に見て
友奈は「久遠先輩がいいならいっしょがいいです」と、手を挙げた
1、……助けて貰ったし。友奈がそうしたいのなら。特別に許可するわ
2、駄目よ。帰ったほうがいいわ
↓1
友奈の少し遠慮がちな挙手
それを見る天乃は困ったように息をつく
天乃「助けて貰ったし。友奈がそうしたいのなら。特別に許可するわ」
折れた。
というよりは、本心でいえば自分を除き、九尾や素戔嗚などの精霊以外で
誰かがこの家にいるというのがうれしかったのだ
明日も学校があるという拒む理由も乗り越えられるのなら
拒否する理由もなかった
しかし……
天乃「一緒ってどういうこと? 一緒に寝るの?」
友奈「駄目、ですか?」
天乃「ダメっていうか……九尾。予備の布団ないっけ?」
九尾「ふむ……一応。主様が粗相した時用の予備がある」
天乃「その理由まで言わなくていいから。あるなら出して……友奈も。それでいいかしら」
本当ならべッドを貸すべきなのかもしれないが、
ベッドから出なければ車いすに移動しづらい以上、貸すわけにもいかなかった
友奈「は、はいっ」
一緒のベッドが良かった。そう考える頭を振る
――これがきっと、魅了の力による影響。なんだよね
耐えなきゃ。と、心に強く、思った
√ 5月4日目 継続(天乃宅) ※木曜日
1、少し夜更かしして友奈と話す
2、夜更かしせずに寝ることにする
↓1
1日のまとめ
・ 乃木園子:交流無()
・ 犬吠埼風:交流有(特訓、戦闘)
・ 犬吠埼樹:交流有(戦闘)
・ 結城友奈:交流有(戦闘、看病、お泊り、味覚)
・ 東郷美森:交流有(戦闘)
・ 伊集院沙織:交流無()
・ 九尾:交流有(戦闘)
・ 死神:交流有(戦闘)
・ 稲狐:交流有(戦闘)
・ 神樹:交流有(穢れの肩代わり)
5月4日目終了時点
乃木園子との絆 25(中々良い)
犬吠埼風との絆 39(中々良い)
犬吠埼樹との絆 31(中々良い)
結城友奈との絆 48(少し高い)
東郷三森との絆 37(中々良い)
三好夏凜との絆 18(中々良い)
沙織との絆 39(中々良い)
九尾との絆 31(中々良い)
死神との絆 30(中々良い)
稲狐との絆 28(中々良い)
神樹との絆 7(低い)
友奈「みんなには、話さないつもりです」
九尾「ほう?」
友奈「話すと、きっと。久遠先輩が言うように遠慮しちゃうと思うから」
それでいいのかどうかわからない
けれど、今はそれが正しいのだと、友奈は信じていた
その覚悟を決めた友奈を横目で見て、九尾はくすっと笑うと
目をそらし、空に見える月を見る
九尾「おぬしに、だまし続けることができるのかや?」
友奈「だますわけじゃないです。ただ、久遠先輩に幸せになって欲しいだけです」
これまで苦しんできた、辛い思いをしてきた
なのに
まだまだそんな思いをし続けることになりそうな天乃の未来を
考えたくないと思いながら、考えて。友奈は言う
手持無沙汰な手は、少し汗ばんでいた
友奈「それに、久遠先輩が言わないのなら。私が言っちゃダメかなーって」
九尾「ふむ……おぬしがそう決めたのならば。そうするのもよかろう」
友奈「……………」
九尾「……………」
気になることはたくさんある
しかし、それを聞いていいのかと悩み、黙り込むと
もともと喋らない九尾と二人のせいか、リビングは静寂に包まれてしまう
そんな気まずさを感じながら、友奈はごくりと息をのみ、九尾を見る
友奈「久遠先輩の……」
九尾「?」
友奈「久遠先輩が熱を出した理由は何なんですか? 穢れが、関係してるんですか?」
来るとわかっていた疑問
それがついぞやってきて、けれども笑わず、目を向けず
九尾「それを知っても、おぬしにも何もできまい」
そう、結城友奈【も】何もできることはない
九尾「ゆえに、その解を述べるつもりはない。真実というものは特に優しく残酷なものじゃからな」
友奈「……私にとって、残酷なこと。何ですか?」
九尾「くふふっ、極端な例を述べるのならば。目の前で死にゆく主様をお前はただ見ているしか出来ないことに耐えきれるのかや?」
九尾は極端な例といった
だから、それが現実に起こりえないことだとは思うが、しかし
そんな想像などしたくもないと友奈は首を振る
目の前で天乃が死ぬ。それを黙ってみていることなんて友奈にはできない
それがはっきりとわかる応え
九尾「じゃろうな」
友奈は何も言わなかったが、応えを見せた
だから九尾はそう言って、友奈に目を向ける
九尾「主の得意とする迂回では何も変えられぬ」
友奈「私は……」
九尾「それは正解じゃ。しかし、どうあがいても。大正解にはなり得ない。二重丸は、決してつかない」
それでは駄目なのだと
九尾は俯く友奈に告げて、頭をたたく
九尾「こっそり、主様の布団の中に忍び込むとよい。そんな心境では安眠も難しかろう」
友奈「……………」
顔を上げると、そこにはもう。九尾の姿はなく
一人、寝室へと戻った友奈は静かな寝息を立てる天乃のベッドわきに佇んで……寝顔を見る
友奈「……久遠先輩」
囁くように名前を呼んで、起こしてしまわないように布団を捲ると
身長に似合わず成長した二つの実りが上下するのが目に入った
1日のまとめ
・ 乃木園子:交流無()
・ 犬吠埼風:交流無()
・ 犬吠埼樹:交流無()
・ 結城友奈:交流有(秘密、一緒に)
・ 東郷美森:交流無()
・ 伊集院沙織:交流無()
・ 九尾:交流無()
・ 死神:交流無()
・ 稲狐:交流無()
・ 神樹:交流無()
5月4日目 継続 終了時点
乃木園子との絆 25(中々良い)
犬吠埼風との絆 39(中々良い)
犬吠埼樹との絆 31(中々良い)
結城友奈との絆 49(少し高い)
東郷三森との絆 37(中々良い)
三好夏凜との絆 18(中々良い)
沙織との絆 39(中々良い)
九尾との絆 31(中々良い)
死神との絆 30(中々良い)
稲狐との絆 28(中々良い)
神樹との絆 7(低い)
では、5日目
√ 5月5日目 朝(自宅) ※金曜日
天乃「あら……」
普段通りの時間よりも少し早い時間
少し暑いなと目を覚ますと、「すーすー」っと
のんきな寝息を立てる女の子が、すぐ横にいた
天乃「どうして」
間違えて布団に入ってきた可能性もなくはないけれど……
天乃「ふふっ」
普段見ることのできない友奈の寝顔
それはどちらかといえば非日常なのだが
しかし、その穏やかな寝顔はとても愛らしくて
彼女たちの日常というものより強く教えてくれる
それが嬉しくて、天乃はくすっと笑う
1、見つめる
2、抱きしめる
3、頭をなでる
4、唇に指をあてる
5、好きよ。と、囁いてみる
↓1
友奈「すーすー……んっ、えへへ」
もぞもぞと動いて
離れるどころか友奈は天乃へと身を寄せる
その幸せそうな寝顔に
天乃は「人の気も知らないで」と苦笑しながら
ほんの悪戯心で、人差し指を友奈の唇に当てる
友奈「んっ」
すると、友奈の唇は指の第一関節の腹の部分を咥えるように口を開き
そのまま
天乃「ひゃっ」
パクッと咥える
友奈「んっ……ぅ、んっ」
口の中に異物感を感じているはずだが、
友奈はそんなそぶりもなく、飴でもなめるように舌で舐める
天乃「ちょっ……ゃっ」
ほんの少しざらりとした感触、ねっとりとした熱
それを指先に感じる天乃は思わず、そんな声を上げて指を引く……けれど
引こうとした手は友奈につかまって、抜ききることはできなかった
天乃「ほ、ほんとは起きっ……っやっ」
くすぐったくも心地のいい感覚に天乃は思わず身震いする
しかし、そんなことは関係ないと言いたげに
友奈は口の中で天乃の指をたっぷり弄ぶ
吸ったり、なめたり、なぞったり
友奈の気が済むころには人差し指は唾液にまみれて
手のひらのあたりにまで、それは伝い落ちてきていた
天乃「あらら……」
ベッドわきのティッシュでそれを拭おうと目を離した瞬間
弄ばれた右手はもう一度つかまれて、そして――
天乃「っ」
ちゅっ。と、音がした
夢の中で友奈と誰かはキスでもしたのだろうかと、
恥ずかしげに笑う友奈の寝顔を見つめて、息をつく
天乃「その誰かが早く、貴女の前に現れるといいわね」
天乃自身も、友奈の指へのキスに
ほんの少し赤くなりながら、そう言って
左手で友奈の頭をなでる
もぞもぞと動いた友奈は、やっぱり、天乃のほうへと近づいた
九尾「起きるのが遅いぞ、結城友奈」
友奈「ぁ……ごめんなさい」
天乃的には時間はまだまだ余裕があるのだが
九尾は気に食わなかったのだろう
まだ寝坊助の友奈を一喝する。しかし、
にもかかわらず、その顔は怒っているようなものではない
九尾「よく眠れたようじゃな」
友奈「はい、寝すぎちゃいましたけど……」
さっき怒られたからか、申し訳なさそうにいう
本当に、心地よかったのだ
最初の数分こそ、暑くさせちゃわないだろうかとか
そういった罪悪感もあったが、包み込んでくれる優しさに身をゆだねてしまい、
気づけばついさっきの一喝
九尾「寝すぎるのは良くないぞ。早起き三文、早寝で九文。私は久遠っていう諺を肝に銘じるがいい」
天乃「九尾、嘘を教えないの」
九尾「くふふっ、すまぬすまぬ」
まったくもった謝る気のない声でいう九尾は
そそくさと台所に戻って、朝食の支度に戻っていく
友奈は手伝うべきかと後を追ったが
朝は時間との勝負だから邪魔はするなと、追い出され
リビングのソファに座る天乃の隣……ではなく
対面……の隣に座ることにした
友奈「…………」
天乃「……?」
テレビを見ていた天乃だったが、
テレビを見ることもなく、黙りこくっている友奈に気づき、目を向ける
何か話しかけてほしいのだろうか
それとも、何かあったのだろうか……
1、何かあった?
2、そういえば、この前の押し花。花の名前ってなんなの?
3、どうして私のベッドで寝ていたの?
4、友奈、寝ぼけてキスしたの覚えてる?
5、味覚について、みんなに話すの?
↓1
天乃「何かあった?」
友奈「その……先輩の味覚の件について考えてたんです」
この件に関して
東郷たちにいうか言わないかの判断はすでに終えている
しかし、それを決めたのは自分であって天乃ではない
だから、天乃から話すつもりなのなら
それも仕方がないかも知れないと思う反面
やっぱり、話すべきではないという思いもあった
そのことを話そうと思っていたのだが……
なかなかどうして、切り出しにくかったのだ
天乃「? 何かあったっけ」
友奈「あります。みんなに話すかどうか……その、大事なこと。ですよね」
天乃「あぁ……そっか。そうね、確かに」
言われるまで覚えてなかったとでも言いたげな反応だった
天乃「友奈はそれを考えてくれてたのね」
この件に関して
友奈が悩むであろうことは分かりきっていたことだ
他のみんなに話すかどうか。というのは
友奈が一番悩み、考えることだというのも分かっていた
そっと、目を向けると
友奈の表情は思った通り、曇っている
外は快晴なのだが……心晴れ晴れとはいかないらしい
友奈「久遠先輩の望みをかなえるためには、黙っているべきだって、思います」
天乃「うん」
友奈「でも、苦しめないためには話すべきだとも思うんです」
友奈はそういうと、
自分は話さない側であることを提示したうえで、天乃を見返す
友奈「話しますか? 話しませんか?」
1、話す
2、話さない
↓1
天乃「そうね、その考えはうれしいけど……」
けど。
天乃がそれを口にした時点で
友奈は自分の決めたこととは違う選択をしようとしているのだと、理解して、目を瞑る
天乃「みんなにも話すとしましょうか。私が二つの変身ができる理由。だったかしら。それも話さないとだしね」
友奈「いいんですか? 遠慮、するかもしれないのに」
天乃「……まぁ、仕方がないわよね」
天乃はそう言って笑う
仕方がないとは思っていない
友奈が言うように黙っていることも考えなかったわけではない
しかし、
黙っているということは友奈に嘘をつかせることになる
みんなに後ろめたいことをさせるということになる
その時点で、天乃の望みは叶わない
だから、そう決めた
友奈「……………」
友奈は黙り込み、
どこか申し訳なさそうに天乃を見て
友奈「夏凜ちゃんは平気で食べてくれそうですね」
そういうと、テレビへと目を移す
流れていく天気予報は一日中晴れているというものだったが
友奈の気分は晴れることはない
二人きりの秘密ではなくなった。なんて言うことは関係なく
ただ、そう
友奈は【自分がここに来なければよかったのかも知れない】と思ってしまったのだ
そうすれば、自分は知らないままで終えられる
それはつまり、今までと何も変わらないまま今日という日を迎えることができたからだ
しかし、ごめんなさいということもできない
それは、さらに天乃を悩ませるだけ、苦しませるだけだとわかっているから
だから友奈は
友奈「今日の九尾さんの料理には悪戯がないといいですね」
なんて、いつも通りを装って見せた
√ 5月5日目 朝(自宅) ※金曜日
継続判定
01~10
11~20 あり
21~30
31~40
41~50
51~60 あり
61~70
71~80
81~90 あり
91~00
ナシなら昼へ
√ 5月5日目 昼(学校) ※金曜日
友奈、沙織、風、樹、東郷、夏凜との交流が可能です
1、風
2、樹
3、友奈
4、東郷
5、沙織
6、夏凜
7、イベント判定
8、勇者部部室
↓2
夏凜「あんた、平気そうね」
天乃「ええ、この通り元気よ」
なんの約束もなく、教室の前に呼び出したのに
夏凜の第一声は文句でもなく、体調のことだった
天乃から言っていないため、
おそらくは友奈から伝わったのだろう
しかし、やっぱり。夏凜も優しい子のようだ
夏凜「友奈と二人きりだったって話だけど、変なことにはなってないんでしょうね。まさか」
天乃「ふふっ、やきもち?」
夏凜「んなわけないでしょ。自分の力のこと忘れたわけ?」
本の冗談のつもりだったのだが
夏凜は呆れたようにそう返して、「友奈が普通だから平気だろうけど」と
付け加える
夏凜「簡単に気を抜いたらダメだってわかってんでしょうね、あんた」
天乃「分かってるわよ」
朝起きた時に同じベッドで寝ていたことを思い出して、
天乃のその声からは少しだけ、自信が抜け出す
あれがもしも魅了の力のせいで
布団に潜り込んできていたのだとしたら……
夏凜「なんか不安なことでも?」
天乃「ぁ、ううん。全然」
考えにふけるうちに
まじまじと視線を注がれていたことに気づき、思わず目をそらす
そんな態度に怪訝そうな表情を見せた夏凜だったが
深く追及することもなく、
夏凜「で? わざわざ私に何の用事があるのよ」
そう言ってきた
1、昨日の戦闘による被害は?
2、心配かけたかなと思ったから、顔を見せようかと
3、特訓。今日から?
4、昨日のバーテックスについて
5、別に、用事はないけど……
↓1
天乃「心配かけたかなと思ったから、顔を見せようかと」
夏凜は少し驚いたような顔をすると
困惑したように顔をしかめて、自分の額に指を押し当てる
夏凜「あと一、二時間で部活の時間なのに?」
天乃「……言われてみれば」
確かにそうだ
わざわざこうして顔を見せなくても
放課後になれば全員に会うことができる
しかし
天乃「できるだけ早いほうがいいじゃない?」
夏凜「それなら樹とか風にしてやればいいのに。なんで私なんだか」
天乃「貴女じゃ、駄目だった?」
純粋な疑問
悪戯心のない、問いかけ
しかしながら、夏凜はその言葉に心なしかドキリとして
ごまかすように目をそらす
夏凜「よ、良し悪しじゃなくて。私たちは友奈から話が聞けるけど。二人は聞けないからよ」
天乃「なに照れてるのよ」
夏凜「は、はぁ? って、照れてないわよっ」
大げさな反応に、
何人かの生徒の目が夏凜へと向き、
夏凜は何よ。と怒ったように言って生徒を睨む
睨まれた子達はそそくさと教室へと戻っていったが
そこに恐怖を感じなかった天乃は
きっと、愛でられてるんだろうなぁ。と、夏凜を見る
夏凜「なににやにやしてんのよっ」
天乃「あら、してる?」
夏凜「挑発的過ぎて決闘したいくらいよっ!」
熱のある夏凜の声に
天乃はくすくすと、笑う。夏凜は夏凜で、友奈とは違う幸福感があるからだ
1、あら? じゃぁ夕方の訓練でやる?
2、照れ隠し可愛いわね。真っ赤凜ちゃん
3、私的には、夏凜を一番先に安心させてあげたいなって、思っただけなんだけどね
4、ふふっ、ごめんなさいね
↓1
また酉リセットされてますね
では、ここまでとさせていただきます
明日はできれば通常時間から
諸事情でできない日が増えるかもしれませんが、できる限りやっていきます
天乃「私的には、夏凜を一番先に安心させてあげたいなって、思っただけなんだけどね」
夏凜「ふんっ」
天乃「何怒ってるのよ……」
夏凜「別に」
夏凜(だったら、登校しようって誘ってきなさいよ……バカ)
では、少しだけ進めていきます
天乃「それは残念ね」
夏凜「はぁ?」
天乃「私的には、夏凜を一番先に安心させてあげたいなって、思っただけだから」
その点に関しては嘘ではなく、
だからこそ現実味のある雰囲気を醸し出す天乃に
夏凜は困ったように目をそらす
時々。本当に時々ではあるが
嘘に隠した本心というべきものを感じることがある
しかし、まだ付き合いが短く自分の直感に自身が持てなかった夏凜は
それを冗談だと受け取ろうかと考え、首を振る
夏凜「ば、ばっかじゃないの? 別に……心配なんてしてないし」
夏凜は自分らしさを貫こうと決めた
しかし、かといって天乃のその真偽不明な雰囲気を余計に刺激しないように気を遣う
そう考えれば、瞳によく苦手だと言われる対人の対応も
いい感じのアバウトな逃げ道だと思う
向こうが本気でそう思っていてもいなくても
天乃からしてみれば、夏凜の答えは【いつも通り】だからだ
とはいうものの
夏凜自身は気づいていないのかもしれないが
ほんのりと染まった頬が本心を露にしていて
天乃はそれを横目にくすりと笑うと夏凜に「なによ」と、睨まれたが
何でもないのと言いつつ、また笑う
天乃「いつも通りで、安心したわ」
魅了の力に負けていなさそうで
コミュニケーション能力がちょっぴりと苦手で
そんないつも通りを見せてくれることがうれしいからこその笑みだった
対して、夏凜は「ふんっ」と唸る
少し、バカにされたように感じたに違いない
天乃としてはそんなつもりなど全くなかったのだが
夏凜「まっ、あんたが無事ってならそれはそれでいいわ」
大事な話もしないといけないしね。と、夏凜は付け加える
そう、大事な話、大切な話がある
夏凜「なんであんたには二つの姿があるのか。無傷のあんたがどうして倒れたのか」
そして――
夏凜「あんたが体調不良になった代わりのように、何事もなかった世界」
あれだけの汚染、浸食
それでも被害がないなどありえない話だった
けれども、そのありえないことが現実に起こり、大赦は黙秘を貫いている
であるのならば、本人に問うしかない
夏凜「ちゃんと、話してもらうから」
責める様子もない声色で夏凜は言うと
別に特訓は無理しなくても良いからと言い残して教室へと戻っていく
天乃「……ふふっ」
夏凜なりの気づかいなのだろうか
考えるまでもないと、天乃は笑みをこぼして教室の入り口を見る
そこに、彼女の姿は見えない
しかし、その薄い壁の向こうでそれに寄りかかっている姿があるのではないかと、思う
その表情は想像上では赤みがかっているが、現実ではどうだろうか
天乃「そこには誰もいない」
そう、それが現実だと天乃は車いすを動かす
見せたかった顔は見せられた
非日常という日常を感じることができた
それだけで、天乃は満足だったのだ
天乃「……ちゃんと、話すからね」
なぜ、二つの変身先があるのか
なぜ、無傷である自分が苦しんだのか
そして、それだけでなく
今まで隠してきた障害。味覚のことについても
天乃「いつも通りが壊れてしまうとしても……私は」
いつか話さなければならないこと。だから
√ 5月5日目 夕(学校) ※金曜日
01~10 大赦
11~20
21~30
31~40 大赦
41~50
51~60
61~70 沙織
71~80
81~90
91~00 侵入者
では、ここまでとさせていただきます
明日はできればもう少し早くから
二つの変身、味覚、天乃の体調不良について、勇者部と
では、少しだけ進めていきます
風「それじゃ、久遠。説明してもらってもいい?」
放課後の勇者部の部室
部活動の掛け声が多方面から聞こえてくる中で
風は静かに切り出す
一度は天乃と呼んだが、やはり。久遠という呼び方を変えるつもりはないらしい
そのことをちょっぴり残念に思いながら
天乃はふっと息を吐く
緊張はない
不安は少しある。けれど、いまさら言わないなんて言うことはしない
そっと友奈を見ると
目があった友奈は何にも言わずに、頷く
天乃「さて、何から話そうかしらね。何がいい?」
東郷「気になることは多々ありますが。とりあえず、今回出てきた順で解決したほうがいいかと」
夏凜「天乃の二つの変身、天乃の体調不良と樹海。なら……まずは変身のほうからね」
二人の言葉に「そっか」と答えて
風と樹に「それでいい?」と聞くと、二人は揃って任せる。と言う
その一方、友奈だけが首をかしげる
というのも、近くにいたが事態が事態だったために正しく目視できなかった風、そのほか勇者を除いて
友奈だけが、3つ目の変身をしっかりと確認していたからだ
天乃「じゃぁ、一つ目。私がいくつかの精霊を従えていることはもうわかってるわね?」
樹「えっと、6体。ですよね?」
天乃「正解」
樹に笑みを向けて頷く
一度か二度しか話していないのに
よく覚えているものだと、感心して
さて、天乃の精霊についてだけれども
普段から姿を現している九尾、死神のほか
稲荷、素戔嗚、獺、火明命の6体がいる
天乃「その中の九尾、死神。この二人は特別で私は別々の勇者になることができるの」
夏凜「その別々ってのが良く分からないんだけど。なんで分かれてるわけ?」
天乃「そこに関しては、死神の能力が神をも殺める死の力であることから理解してもらいたいわ」
夏凜の疑問に即座に答える
すると、友奈がすっと手をあげ、天乃を見る
友奈「つまり、死神さんは神樹様とは別ということでいいんですか?」
天乃「おおむね間違いないわ」
東郷「なるほど……」
ふむ……と、
どこか九尾を感じさせるような様子で、東郷は考え込む
そこから何かがわかる。というのは、少し難しいはずなのだが
風「死神が別。確かに、言われてみれば神樹様由来ではなさそうだけど」
だとしたら何の由来なのか
そう考えたとき、もっとも行きつきやすいのが敵対する存在であるバーテックスだ
ゆえに、風は「もしかして」と、口にする
風「久遠、まさか。バーテックスの子供……?」
夏凜「んなばかなことあるかっ」
もちろん冗談なのだろうけれど
律儀にツッコミを入れた夏凜は、はぁ。と、ため息をつく
夏凜「次から次に質問してても切りないし、次行きましょ」
夏凜はそういうが……
1、それとね。二つの力を混ぜ合わせた第三の勇者姿もあるの
2、言われた通り次へ
↓1
天乃「それとね? 二つの力を混ぜ合わせた第三の勇者姿もあるのよ」
東郷「第三の勇者姿?」
樹「なんだか格好良さそうですっ」
一人楽しそうな樹に、格好いいのよ。と、言う
真剣な話の最中ではあるのだけれども
こういったユーモアな部分。というべきか
つま先程度の脱線くらいはしておかなければ息が詰まってしまう
友奈「先輩が私を助けに来てくれた時のが、その第三の姿ですよね?」
天乃「ん? うん、ええ。そうよ」
東郷「では、それが体調不良の引き金になったのでは?」
すかさず疑問を口にした東郷は耳を研ぎ澄ませて、待機する
重要な情報だから。聞き逃すわけにはいかない
天乃「残念ながら、直接的な関りはないわ」
死神の力、九尾の力
相反する二つの力の行使というものは確かに同じなのだけれども
体調不良になったのはそれが原因ではない。あくまで、似ている。というだけだ
夏凜「でしょうね、樹海の汚染……の方が分かりやすいか。それが完全に消えてた理由が出てない」
夏凜は険しい表情で話を進める
九尾の勇者
死神の勇者
それらを合わせた勇者
三つの変身方法を持っているのだと知って
初めて、大赦が体の不自由な少女一人に強い警戒心を抱いているのかを正しく理解したからだ
前は強いからだと思っていたが、そうではない
天乃はただ強いだけでなく、特別すぎるのだ
良くも、悪くも。それゆえに、天乃は……
先を思う首を振って、夏凜は天乃に問う
夏凜「何をしたのよ」
天乃「その汚染を浄化したのよ。言い換えれば肩代わりとか吸収。かしら」
精霊、稲荷の力を借りた浄化は
天乃の体にその穢れを取り込むという一時的なものでしかない
天乃「そうやって汚染――穢れを取り込んだことで。私の体の中の死神と九尾の力の均衡が崩れて、体調不良になったの」
そして、それこそが天乃が体調不良になった原因だった
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば似たような時間から
記憶があれば、久遠家のほうに話が発展
では、遅くなりましたが少しだけ進めていきます
友奈「力の均衡……」
東郷「今は、平気なんですか?」
神妙な面持ちで呟いた友奈を一目見た東郷は
その心を代弁するように天乃へと目を向け、問う
見る限りでは異常はないが……しかし
天乃ゆえ、嘘をついているかもしれないという心配があったからだ
天乃「あの程度なら一日寝れば治るわ」
風「あれ以上の場合は?」
天乃「経験したことないから、何とも。推測でいうなら二、三日寝込むかもね」
冗談めかして苦笑すると
樹や東郷は「冗談じゃありません」と口を揃える
さすがの天乃も「ごめんね」と、返す
けれども
今回ほどの被害を出すには今回以上の戦力が必要になる
そう考えれば、そう易々と進行してくることはないだろうし
とすれば、まずそんな事態には陥らないと考えてもよさそうではあるが……
友奈「でもっ、今回以上の大きな戦いはないんじゃないかな……」
友奈はその点を拾い集めて、言った
友奈の前向き……ともとれる発言に
天乃以外の全員が頷いて、夏凜が天乃に目を向ける
夏凜「確かに、あれ以上とか。ちょっとさすがに考えたくないわね」
とはいえ、考えなければならないのが現状だ
敵が人間にしろ、人工の超生物にしろ、自然の驚異にしろ
想像以上だからありえない。なんて言う否定はもはや慢心であると夏凜は思う
実際、対天乃戦で痛い目を見ている夏凜は
少し、プライドの傷つくことではあるが、自分のそれに絶対的な自信があった
樹「あの、一ついいですか?」
天乃「? なに?」
いったんは収まりかけた会話の尾を掴み
樹は発言者らしく挙手をしつつ、
樹「今も、久遠先輩の体の中ではその二つの力が入り混じっているってことですか? それとも、変身した時だけ。何ですか?」
自分なりに考えた疑問を述べた
これは重要な問いだ
もしも、これが常に渦巻いていることなのであれば致し方ないことなのだが
万が一にも、変身した時だけ。というのであれば
最高戦力を失うという大きな痛手ではあるが
参戦は辞退してもらおう。と、樹は考えたからだ
しかし、残念ながら天乃がかかわることに関しての現実は基本的に冷酷なのがこの世界で
天乃「残念ながら、今も。よ」
天乃は樹の優しさを察してか
けれども謝ることなく、しかし申し訳なさげに答える
だが、変身した時だけだとしても、天乃は退く気などなかったのだが。
東郷「極力、その吸収や浄化は行わないでください。と、言えないのも歯痒いわ」
夏凜「まっ、そこら辺はあんた――いや、私たちの努力次第ってところでしょうね」
言い換える。
自分は力不足ではない。なんて見栄は張らない
当初、完成型勇者とでもいうつもりではあったのだが
そんな見栄も慢心も自信も全部打ち砕かれた
風「そのための特訓、ってわけだしね」
友奈「私達が久遠さんや樹海に被害が出ないように頑張らなきゃ。だよね」
樹「そう、ですねっ」
ぐっと意気込む友奈と樹
落ち着いた様子でその二人を見る東郷
どこか遠くを見ているような、穏やかな表情の風と
特訓に備えてか、険しい顔つきの夏凜
天乃「…………」
話がようやく終わりそうなところで……
食事の〆のあとにもう一品。という
いささか困ることをするのには気が引けたが
友奈との約束である以上
天乃は「それでね」と前置きをする
天乃「みんなに黙っていたことがあるの」
全員の目が向く
これ以上何を隠しているんだか。なんてあきれた様子はなく
ただただ、不安の感じる4人の瞳に、
天乃「私ね。実は味覚がないの」
偽ることなく、そう言った
短いですが、ここまでとなります
明日はできれば通常時間から
風「辛い物の食べ過ぎでおかしくなったんでしょ? 知ってた」
天乃「いや、そういう冗談ではなく……」
東郷「人を魅了している自覚がない。略して魅覚ですか?」
天乃「うん。違うから話聞いてね」
では、初めて行きます
風や樹、東郷が天乃の言葉を疑うように沈黙する中で
予め知っていた友奈は不安そうな顔をして
知らなかったはずの夏凜が閉じていた目を開けて、息をつく
夏凜「で、ほかには何を隠してんのよ」
天乃「?」
夏凜「なんで驚かないのかって言いたげだけど。逆に驚く要素なんかある?」
別に、強がりではない
瞳たちからあらかじめ聞いていたわけでもない
しかし、夏凜は天乃が何かを抱えているであろうことを
知らなかったが、考えていた
もともと、死神だの九尾だのなんだの規格外で常識外れ
マニュアルをあざ笑うイレギュラーの塊なのだ、構えないほうがおかしいとさえ思うわけで
夏凜「実はバーテックスから産まれて来ましたとか言われても驚けないっての」
風「いや、それはさすがに驚くでしょ」
夏凜「どーだか。二種類の力って時点でそれは考慮すべきだし」
死神の力と九尾の力
そのあたりのややこしい分け方は置いておくにしても
体内での調和というのが聊か気になるのだ
久遠家は割と長い一族だ
それこそ、乃木とさえ並ぶほどの
いや、もしかしたらそれ以上に。
であれば、その長い年月の中で
バーテックスの何らかの干渉によって
久遠家は二種類の力を持つようになってしまった。とも考えられるわけだ
夏凜「我ながらファンタジーな内容だと悩みたくはなるんだけど」
瞳との生活で彼女が読んでいる小説に触れることもあるからか
少々毒されてしまったのだろう。と、夏凜は頭を振る
東郷「納得はいかないけれど……」
夏凜「でしょうね」
東郷「一理はあるかもしれないわ」
夏凜はファンタジーだと言ったが
バーテックス、勇者、樹海、結界、神樹様。等々
それらの要素がある自分たちの知る非日常はファンタジーではないのだろうか?
いや、なくはない
樹「あ、あのっ」
力の話へと戻りつつあった流れをぶった切る樹の声
全員の目が向けられた樹は内心「失敗した失敗した失敗した失敗した……」と思いながら
常日頃起こりうる恥ずかしさゆえの萎縮を飲み込もうと息をのむ
これはとても大切なことなのだ
これを今言わなくて、いつ言えるのかと、
弱気な自分の背中を罪悪感がたたく
風「どうしたの? 樹」
樹「久遠先輩の味覚がないのは、なぜ。ですか?」
ううん、そうじゃない
聞きたいことはそれじゃない
踵を返す自身の心を捕まえるように手を握り締める
樹「いつから、なんですか?」
天乃「……ん」
ちらりと友奈を見る
昨日知った友奈にはそれがいつからであるかを教えた
で、あるのなら
天乃「貴女達と出会った時にはもうすでに」
隠す意味も理由もなかった
東郷「私たちと……?」
そこでようやく、東郷は何かに気づき呟く
頭の中では何かがつながりそうなのに
まったくもって忌々しいほどに繋がらない
手に入れた情報が進もうとした道は
わずらわしい記憶の靄に阻まれてしまう
風「って、ことはもしかして今までずっと……我慢しててくれたってこと?」
天乃「我慢はしてないわよ。断ろうと思えばできたことをしなかっただけだし」
正直に言えば、
味がしない食感だけの食事というのは言葉通りに味気がなくて
あまり楽しいものではないのだけれど
天乃「友奈にも言ったけど。私はみんなの日常が見ていたかったの。それを見るのが私の幸せだったの」
できなくなってしまったこと。だから
風「………………」
風はさっと目をそらし、
それに気づきつつも、夏凜は風に何も言わずに「じゃぁ」と、切り出す
夏凜「私達は今まで通りやってあげれば良いんじゃないの?」
樹「け、けどっ」
夏凜「さんざんからかってくるこいつに対して、なんの気兼ねもなく、厭味ったらしく美味しいの食べて仕返しとか最高じゃない」
夏凜はそういって、にやりと笑って見せたが
しかし、天乃は「その通り」と、どことなくうれしそうな笑みを返す
夏凜は本心でそんなことを言ってはいない
いや、ある意味では本心なのだけれども
つまるところ
同情するくらいなら、望み通りにしてあげよう。と言いたいのだ
友奈「か、夏凜ちゃんの言うようなことじゃないけど。でも、久遠先輩には少しでも幸せになって欲しいから」
東郷「でも……」
友奈の明るい声が響いたけれど
東郷は暗い面持ちで声をこぼし、天乃を見る
目の前でただ食事をしていただけでも申し訳ないという気持ちがこみ上げてくる
しかし、東郷は違うのだ
東郷「私は、先輩に牡丹餅をふるまってしまったわ……あんな、触感だけが延々と残ってしまうようなものを」
作りたての温もりは感じられたかもしれない
しかし、時には冷たかっただろうし
やはり、一番はあのねっとり、ぐにゅりとした食感
簡単には飲み込めないあの重量感
それを感じさせてしまった後悔があった
1、知らなかったんだから、仕方がないわ
2、味は感じなくても、愛は感じたわ
3、頭を撫でる
4、ほほに触れる
5、むしろ、振舞ってくれなかったらそれはそれで傷つくのだけど
↓2
天乃「むしろ、振舞ってくれなかったらそれはそれで傷つくのだけど」
そう言って悪戯に笑って見せる
けれど、東郷は「そうかもしれませんが」と
少し納得がいかない様子で呟く
東郷「……申し訳ありませんでした」
知らなかったことだとはいえ
さんざん苦しい思いをさせてしまったことは事実で
善意だったとはいえ、謝罪がないままが許せずに東郷はそれを口にする
天乃「謝る必要は……」
東郷「いえ、これはすべきこと。ですから」
暗さの拭えなかった東郷
そのせいでとは言いたくないが
それに導かれたように暗くなった天乃を一瞥し、
俯いたままの部長を睨む夏凜はパンッと手をたたく
夏凜「重大発表はこれで終わりなら、さっさと特訓に移るわよ」
友奈「そ、そうだねっ。昨日も戦いがあったし。備えあれば幽霊いないっ。だもんねっ!」
天乃「憂いなし。よ。友奈」
友奈「そうでしたーあはは……ぁはは」
友奈の可愛らしい誤り
しかし、それになごむ笑い声が上がることはなかった
では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば似たような時間から
諸事情で昨日のようにできない場合もありますが極力進めていきます
特訓は参加不参加の選択が可能です
誰かを特訓する。というのも可能ですが、大体誰かからお願いされます
では遅くなりましたが進めていきます
夏凜「得手不得手以前にできる出来ないがあるから、全員まとめてはちょっと無理ね」
特訓をするにあたって
前々から問題視されていた点を挙げ、夏凜は天乃を見やる
もっとも、現状の勇者部を見る限りでは
特訓に参加しようなんて言う気概のある部員は限られているし
気に留める必要もないのかもしれないが
夏凜「で、どうする?」
天乃「というと?」
夏凜「予定では、同じ剣術使い。と、言いたくもないけれど風と組むつもりだったんだけど。まともな相手になりそうもないし」
夏凜は呆れたようにそうこぼし
降参だとでも言いたげに両手を上げる
けれども、心なしかうれしそうな表情だ
夏凜「けど。そのおかげで私もお手隙。あんたもお手隙。どう。一手組まない?」
友奈「え、えーっと。できれば私も久遠先輩と……」
夏凜「はっ」
友奈「っ」
唐突な割り込みに驚きはしたものの、
夏凜はすぐに鼻で笑うと、友奈を見つめてにやりと笑う
夏凜「あんたはまず基礎から身に付けるべきね。かじった程度の武術でどうこうできるとか。考えがど素人」
天乃「……私も正直かじった程度。だと思うんだけどね」
夏凜の余裕に天乃は横槍を入れる
もっとも、それが確実なものであるのかどうかは
穴の開いた記憶では何とも言えない
しかし、体に染みついた強い衝撃はしっかりと感じる
天乃「そのど素人な私に負けた夏凜ちゃんはトーシロー? それとも、私はやっぱり完成型勇者なのかしら」
あえて天才。という言葉は使わない
冗談でも、自分を天才だとは言い難いからだ
もちろん、完成型。というのも自分への皮肉でしかない
――本当に完成型なのなら。失うことなんてありえないんだから
夏凜「んで? どうする? 私もあんたに劣ることは素直に認めてあげるし、いっそ。二人係で叩くのもやぶさかじゃないんだけど」
天乃「あら、卑怯な提案ね」
1、友奈の特訓
2、夏凜と戦闘
3、夏凜、友奈と戦闘
↓1
天乃「夏凜は十分強いでしょう」
夏凜「止めてよね。あんたに負けた以上は不十分よ」
互いに見つめあう。いや、認め合う
けれども己の力にはまだまだ満足してはいない
だからこそ、撃ち合いたいという気持ちはあるのだが
昨日の今日という現実を見逃せない
夏凜「あんたの後継者に、なれるといいわね」
天乃「私の後は追われても困るんだけどね」
それは師匠という意味で
誰もがそうとらえるであろう冗談めいた口調
しかし、天乃の心中に浮かぶのはやはり強い後悔だった
守り切れないような愚かな背中など、追わずにいてほしいという願いを持ちながら
天乃は友奈に目を向ける
天乃「さて、九尾」
九尾「良かろう。妾の力を使うがよい」
天乃「ありがと」
応じた九尾の力を身に纏い、白い装束を纏う
そして、砂場ではなく砂利の敷き詰められた場に誘うと
じゃりっ、じゃりっと小石を蹴とばす
動けなければ、特訓できないわけでもない
しかし、出来る限り早く。仕上げるためには
天乃「友奈、目を閉じなさい」
友奈「え?」
天乃「貴女には攻撃の基礎がある。だから今度は私が回避の基礎を教えてあげる」
結城友奈という全力の攻めの姿勢は
戦いにとって重要であるのと同時に、最も危険なものである
だからこそ、友奈には細かく言えば攻撃の回避
広義的には気配の察知能力が必要不可欠となる
それはもちろん、戦ううえで誰しもが持ち合わせていなければならないものではあるのだが
素人で持っていることはほぼ、ない
そして、いきなりそれを習得するというのも無理な話だ
だから
天乃「私の足音をしっかりと聞いて、どこから来るのかを的確に判断して防御しなさい」
友奈「か、回避じゃないんですか?」
天乃「目を瞑った状態でどこが狙われるのか分かるのなら回避を試みてもいいけれど。失敗すると今日は夕飯食べれなくなるわよ」
冗談めかしながらも、本気で言う
臨むのは命がけの戦いなのだから
で、あれば特訓もまた。何かを懸けねばならない
天乃「防御の姿勢が取れたら攻撃はしないで止まってあげる。音をよく聞きなさい。まずは目ではなく耳で状況の把握をして見せて」
ゆえに天乃はそういって砂利の足場を駆け出した
では、ここまでとさせていただきます
明日は出来ればお昼頃からとなります
では、本日も進めていきます
天乃「今回、貴女が聞き分けるべき音は二つ。走る音。止まる音この二つよ」
友奈「走る音と、止まる音ですか?」
天乃「そう」
天乃は軽く頷くと、砂利の上で右足を強く踏み込ませてけり出すと
ジャリッと削れる音がして
その上がった右足で踏み止まるとズギャッっと、若干ではあるが違う音がする
天乃「立ち止まった音がする方向に私はいるわ。逆に、走り抜けた音がしたらそこにはもう私はいないということになる」
もちろん、初級編だから
走るだけじゃなく、跳んだり止まった瞬間さらに早く駆け抜けたりと
フェイント等は挟まない
まずは基本の音を聞き分けられるようになってからだ
天乃「走ると、当然小石は蹴とばされるし互いに削れあう。止まった場合は削れあうのは同じだけど蹴とばされることはない」
変わらず削れる音がする。けれどもその音にも違いがある
それが分かりやすいのがこの砂利道
砂場ではまず判断できない。コンクリートの足場でも
タッタッタッタッ……タンッと、ほぼ変わらない音ばかりで初級編にはあまり向かないのだ
天乃「その区別を耳でするの」
そう、頭で考えることなく耳で。だ
耳で聞き、頭で考えてから行動するのと
耳で聞き分け行動する。そのわずかな差に生死が左右される。それが、戦うということだから
天乃「頑張りなさい。友奈。自分のために、みんなのために」
どのくらい、特訓しただろうか
本気どころか手加減の又手加減
そのまた手加減された腹部への打撃は
何度もかさねて打たれたからか、ジンジンと痛む
友奈「はぁっ、はぁ……はぁ……」
走ったどころか大して動いてもいないのに
激しい運動の後のように呼吸が乱れる
その一方で、動き続けていた教導官は汗一つ書かず、にっこりと笑みを浮かべる
天乃「まぁ、最初はそんなものよ。一日二日で会得できるのなら苦労はしないわ」
友奈「久遠先輩も、最初は駄目だったんですか?」
天乃「ん……」
どうだろうか
家族に教えてもらっていたせいなのだろうけれど
特訓していたころの記憶は大体が曖昧なのだ
自分が誰とどんな特訓をして、自分がどうだったのか。というのは覚えていないに等しい
それでも教えることや戦うことができるのは、習ったことが体に染みついているからだ
天乃「そうね。私にもそんな時期があったわ。だから、友奈も頑張りなさい」
友奈「はいっ」
嘘をつく
家族の記憶がないことはまだ――誰にも話していない
√ 5月5日目 夜(自宅) ※金曜日
01~10 大赦
11~20
21~30
31~40 大赦
41~50
51~60 夏凜
61~70 沙織
71~80
81~90
91~00 侵入者
「昨日の一件、有難うございます」
天乃「別に、お礼を言われるようなことをした覚えはないわ」
穢れを肩代わりしたのは別に大赦のためではない
自分や友奈たちの為であって、それ以上でも以下でもない
天乃「第一、どうしてこんな時間に来るのよ」
「久遠様が避けておられるからです。それに、この時間ならば、貴女も早々に切り上げるために話を聞いてくれると思いまして」
担当の大赦職員は悪意のなさそうな笑みを浮かべる
あくまでなさそうな。というだけだけれども
しかし、この時間に来るというのはあながち間違った選択でもない
朝や昼は学校、夕方は部活で門前払いはほぼ確実
その一方、この時間帯なら門前払いの理由はないに等しいし、
粘られたら困るから聞くしかない
天乃「それで? 貴女達がただお礼を言うためだけに来たとは考えられないのだけど?」
「はい。今回はご相談があって参りました」
天乃「相談?」
「三好様より、一度お話があったかと思いますが、戦いから退いて頂きたいのです」
天乃「その話なら、断ったはずよ?」
「ですから、今一度こうしてお願いに来たのです」
しかし、天乃は首を横に振ると
女性職員を見ることなく、「帰って」と告げる
そんな話なら、聞くつもりはない、受け入れるつもりもない
「久遠様には浄化の力があります。それに専念していただきたいのです。はっきり申します。満開を使用されては困るのです」
天乃の満開は樹海をひどく傷つける悪夢の力
もちろん、それすらも浄化の力は穢れとして引き受けられるのだから
最たる問題はそれではない
「久遠様が満開を繰り返し、機能不全に陥った場合、樹海のリカバリーは出来ません」
それだけでなく
「最悪、久遠家の持つ最強であり最悪のその力が失われる可能性もあり得る。我々はそれを望みません」
久遠家の力は、大赦にとって、神樹様にとって
諸刃の剣と言っても過言ではない
しかしながら、その力があるのとないのとではまったくもって戦いの感覚が変わってくる
旧世紀に存在した負の遺産と呼ばれる兵器と言うわけではないが
使えば戦況をひっくり返せる最終兵器というものはやはり、あるべきなのだ
「久遠様、お考え直しを。貴女は失われるには惜しい」
天乃「私ではなく、私の力が。でしょう?」
「いえ、力だけではあまりにも暴力的過ぎる。ゆえに、久遠様も。です」
天乃の鋭い指摘と視線を受けながら
女性は冷静に答える
天乃に嘘をついても無意味であると聞かされているから
そもそも、ここにきて嘘をつくつもりなんてなかったから
そんな本心からの言葉に、天乃は思わず、目を見開く
「久遠様は荒々しい方ですが人を救おうという心をお持ちです。その心あってこそ、その力は私達にとって救いになる」
もしも人を救おうという考えのない人がいたら
そんな人でなくても、自己中心的だった李なんだりする人が力を持っていたら
それこそ、力だけが失われるのは惜しい。と思うに違いない
けれど、天乃に厳しくも優しく力を扱ってくれる人はいない。だから、天乃と力その二つをひっくるめて失うわけにはいかない
「それに久遠様がいなければ、私達はきっと。勇者ならバーテックスに勝利できるという慢心に魅入られてしまう」
天乃「………………」
「希望は力であるがゆえに、人を腐らせるものである」
天乃「なんのこと?」
「意味は分かりませんが、その言葉は常に覚えておくように。と。おそらくは希望を見出したからと安心するなというものだと思います」
「さて、久遠様。お話に来たのはそこではありません。戦いから退き見守っていただけませんか?」
天乃「友奈たちが傷つくのを黙ってみてろと?」
「いえ、もちろん。本当に緊急の場合には介入も承諾いたします。ですが、今のままではすべて久遠様頼りになりかねません」
思わず「うっ」と声を漏らす
狙ってやっているわけではないが
確かに、今までの戦闘における手柄は
殆どが自分のものだったと自覚はしている
みんなが何もしなかったわけではなく、自分がやりすぎていた。と
「そう遠くないうちに久遠様は引退しなければなりません。本日のような特訓も重要ですが、やはり実戦経験こそ最も重要かと」
天乃「……それを言われると。少し弱いわ」
天乃がそういうと、女性職員はそうですね。と笑みを浮かべて
久遠様も学生なんですから。と、切り出す
「戦いのことを委ね。園子様の分も学生生活を送ってはいかがですか?」
1、園子……そういえば、園子には会えないの?
2、考えさせて頂戴
3、確かに。経験は重要よね……分かったわ
↓2
天乃「園子……そういえば、園子には会えないの?」
「園子様には現状、お会いすることは叶いません」
女性は少し申し訳なさそうに言うと
天乃を見つめて、首を振る
「今回、久遠様は園子様といることではなく、鷲尾……いえ、東郷美森様と共におられることを選ばれましたから」
女性としては合わせてあげることもやぶさかではないのだが
それは大赦が認めてはくれないだろう
園子もまた、鷲尾須美に似た存在を樹海化した際に感じ取っていて
会いたいと言ってはいるのだが
その出会いの影響を考えると、どうも。合わせるわけにはいかないという答えが出てきてしまう
「本来であれば、久遠様も合流させるわけにはいかなかったのですよ」
天乃「満開の件。よね?」
「はい。しかし、満開の代償がある絶望を知られる可能性よりも、それを使用されることを防ぐことを優先するために許可しました」
できることならば
満開なんて使わずにバーテックスを撃退し、そのままでいてほしいという願いがあるからだ
それでもなお、ここで戦いから退くべきだというのには理由がある
一つ、天乃が穢れをため込む頻度が増えていること
一つ、敵が強くなる一方、実戦経験がなかなか積めていないこと
一つ、天乃がもうすぐ15歳になってしまうこと
「久遠様はご存じないかと思いますが、久遠様のお母様はまだ、33歳です。言葉の意味がお分かりになりますか?」
天乃「……久遠家って不純異性交遊が盛んなの?」
「茶化さないでください」
自分が第一子だと考えても、18歳とか19歳で子供生んだことになる母親のことを考えて
天乃は少し困ったように笑う
少し前の天乃なら、大丈夫。こんな不自由な私を好きになる人なんていないから。と
そう答えていたかもしれないが、
そんなことはないとわかった以上はそんなこと言えなかった
けれども、女性職員は少しむっとして言う
「良いですか? 久遠家の祖母は現在50歳です。子供を産んだのは17の時。要するに、久遠様の家系は総じて早く子をなしています」
そう、久遠家は代々早死にする家系。というのはいささか不適切なので改めるが
長生きのできない家系なのだ
理由、原因は分かっていないが、病気でも事故でも事件でもなく
前日の夜までは元気でも、唐突に朝目覚めなくなり老衰のように亡くなる
それが分かっていて確定してるから、かなり早い段階で子を産み母となる
「そして、久遠様もまた久遠家のしきたりに従えば来月。婚約者を宛がわれることになるでしょう」
天乃「そんな急な話ッ」
「はい……ですが戦いから退いてほしい本当の理由は、久遠様が機能不全によって子をなせなくなることを避けたいからです」
つまり
このまま戦い続けることを選択した場合、
子孫を残せなくなることを恐れ、通常よりも早く何かが宛がわれてしまう可能性があるのだ
「少しでも、普通の学生としての生活を送ってほしい。引退とは、久遠大地様。久遠晴海様。久遠様のご家族の願いです」
天乃「そんなこと急に言われたって」
「来月の誕生日に言われるよりはましでしょう。だから、先日の件のお礼という名目でここにきているのです」
女性職員はそういうと
椅子から立ち上がり、自分のスカートのしわを軽く伸ばす
「ですから、どうかお考え下さい。【5月14日目】にまた来ます。それよりも前にお電話をくださってもかまいません」
自分の名刺を差し出した女性は
それでは失礼いたします。と、頭を下げる
一人取り残された天乃は
窓から見える妖艶な月明りを遠く眺めて、名刺を見る
天乃「戦いから退くか、退かないか」
友奈たちを危険な目に遭わせるか
自分の人生を棒に振ってでもみんなのために戦うか
天乃「前回、満開しておけば。良かったかな」
そんな冗談にもならないことを呟いてみる
誰も聞いていない言葉に返しはなくて
天乃はベッドに横になって、目を瞑る
久遠大地と久遠晴海。兄と姉の願いに――天乃は
1日のまとめ
・ 乃木園子:交流無()
・ 犬吠埼風:交流有(味覚について)
・ 犬吠埼樹:交流有(味覚について)
・ 結城友奈:交流有(味覚について①、味覚について②、特訓)
・ 東郷美森:交流有(味覚について、振舞ってくれないと)
・ 伊集院沙織:交流無()
・ 九尾:交流無()
・ 死神:交流無()
・ 稲狐:交流無()
・ 神樹:交流無()
5月5日目 継続 終了時点
乃木園子との絆 25(中々良い)
犬吠埼風との絆 40(中々良い)
犬吠埼樹との絆 32(中々良い)
結城友奈との絆 51(少し高い)
東郷三森との絆 38(中々良い)
三好夏凜との絆 21(中々良い)
沙織との絆 39(中々良い)
九尾との絆 31(中々良い)
死神との絆 30(中々良い)
稲狐との絆 28(中々良い)
神樹との絆 7(低い)
では、いったん休憩を挟みます
20時半までには再開予定になります
では、はじめていきます
√ 5月6日目 朝(自宅) ※土曜日
1、九尾
2、死神
3、素戔嗚
4、獺
5、稲荷
6、イベント判定
7、勇者部の誰かに連絡 ※再安価
8、勇者部部室
↓2
※7は電話
※8は勇者部直行
1、友奈
2、風
3、夏凜
4、樹
5、東郷
6、沙織 ※部員ではないけれど
↓2
天乃「…………」
せっかくの休みの日
まだ寝ているのかなと思いながら電話のコール音を聞く
つもりだったのだが
コール音は数秒と持たずに切れて
沙織『おはよう、久遠さん。どうしたの? お出かけ? いいよ? どこ行く?』
一人で突っ走った言葉が跳び出していく
朝から元気な沙織を尊敬すべきか呆れるべきか
少し迷いながらため息をつくと
沙織はごめんね。冗談冗談と笑う
もっとも、出かけたいというのは冗談ではないのかもしれないが。
沙織『休みの日だし、部活言ってるんじゃないの?』
天乃「ううん、今日はまだ」
沙織『そっか、午前中の貴重な時間をあたしにくれるんだね。なんかうれしい』
天乃「別に貴重ってほどでも。それに、時間をもらうのは私の方だと思うけど」
沙織『あたしは別に朝でも昼でも夕方でも夜でも暇だから』
天乃「勉強いっぱいできるわね」
沙織『……してないから暇なんだけどね』
天乃「今年のテストは助けないからね? 3年生は自力って、約束したものね」
意地悪でもなく
二年生最後のテストの際に約束したことを繰り返す
あの時にはもう、友奈たちと出会っていて
だいぶ落ち着いていたころだと思う
もっとも、自分が何とかしなければ。という思いは今も昔も変わらないままだ
沙織『うーん……久遠先輩って呼ぶ時期が近づいてきたかなぁ』
天乃「ちょっと、沙織?」
沙織『あははっ、冗談だよ。久遠さんとはずっと同級生でいたいからね』
その気持ちはありがたいけれど
中学生なのだから、普通の成績で卒業できるし留年しない
そんなイージーなことで言われてもドキリとはしない
沙織『それで? 久遠さん。どうかした?』
1、私、来年になったら婚約しないといけないのかな
2、久遠家って、なんで早く子供を作ってるの?
3、私、戦いから退くべきだって言われたわ
4、これから会えない?
5、園子に会いたいわ
↓2
天乃「昨日ね、大赦の人が来て話をしたのよ」
沙織『話したって、何を?』
天乃「ん……それなんだけどね」
無意識にぎゅっと布団を握り締めて少し、間を置く
あれをどう飲み込むべきか
眠った数時間では全然受け止めることすらできていない
けれど、だからこそ沙織に電話を掛けた。それなら
天乃「来月、相手を連れてくるって……」
沙織『なんの?』
天乃「……来年になったら婚約しないといけないのかな」
沙織の問いに答えているようで答えていない言葉
そのことに気づきながら、あえて突き進むことなく
沙織は一度、深呼吸する
自分たちはまだ中学生だ。急にそんな話をされても困る
けれども、今こうして電話している相手が当事者であるのなら、話を変えるなんてことはできない
むしろ、しっかりと話すべきかもしれない
沙織『そうだね。その可能性はあると思う。というより、久遠家はもともと一部を除いて短命なんだ。だから、そういうことになってるの』
沙織『これに関しては、久遠さんの知ってる体内の力の調和が関係してるんだよね』
死神の力と九尾の力
年を重ねていくことで、その調和をとるのが難しくなっていく
その結果、一般に知られている平均寿命よりも
久遠家の平均寿命はものすごく短い
だから、早期に子供云々結婚云々という話になるわけだ
沙織『子供を作ることによって次の世代への継承が確約されるからね。死んだらどうしようもないし』
そういうことであきらめて言った久遠家の人間は決して少なくない
というよりもそればかり
沙織『とはいえ、今回に限ってそうすればいいなんて簡単な話でもないんだ』
天乃「というと?」
沙織『二年前までは襲撃のお告げは一度もなかった。だから安心して次の世代に任せることができたってこと』
そう、二年前までは襲撃のお告げはなく
とにかく子供を作り結婚し、次の世代を完成させていくという余裕があった
そうしても平気だという安心があった
けれども、今期に限ってはそうはいかない
度重なる襲撃、力を増していくバーテックス、天乃頼りの戦闘
はっきり言って、久遠天乃という戦闘力を次世代に継承している余裕がない
沙織『久遠家は早く子供を作ってほしいと思う。いつ死ぬか分らないからね。でも、世界はそれを待つことはできない』
次の世代の子供が戦えるようになるまで、この世界が残っている保証はない
沙織『だから、久遠さんには悪いけど。婚約とか子供とか。そんなうつつを抜かしている余裕はないよ』
天乃「現を抜かしてる余裕はないって……貴女」
沙織『久遠さんにとっての現実、日常は普通の女の子が見ているものとは違う。そうでしょ?』
沙織の声は優しく、穏やかだ
天乃が婚約云々のことを言ったことに関して
怒っているような様子も感情も微塵も感じられない
天乃がそれを嫌がっていると知っているから
天乃が今、どうしていたいのかを理解しているから
けれども天乃は優しすぎて、強いくせに弱いから
すぐに迷いだすことを知っているから、あえて厳しさをもって言う
天乃「沙織……」
沙織『久遠さんは久遠さん自身の手で守りたいものがあるって、あたしは知ってるから。だから、その邪魔は誰にもさせないよ』
目上の人間だろうと、それだけは絶対だ
久遠天乃という人間の強さに隠された脆さを見たとき
崩れ去った彼女がいびつながら積み上げたものを見たとき
それが崩れることがないように支えるものでありたいと自分は思った
勇者のための巫女のように、久遠天乃のための伊集院沙織でありたいと思った
だから
沙織『久遠さんは久遠さんのやりたいようにやるといいと思う。もちろん、間違ってると思ったら止めるけどね』
天乃「けれど、問題になっちゃわない?」
沙織『そうやって周りばかり気にしちゃだめだよ。久遠さん』
本当は自分のいやなことだったりするのに
人のことばかり気にして、自分を後回しにして……
沙織『だからね。あたしじゃなくても良いから。何かあったらちゃんと話そう?』
天乃「……………」
沙織『みんなもちゃんと考えてくれると思うから。どうすべきかのヒントを出してくれると思うから』
ね? と、問いかけるように言う沙織の声を聴く
自分のことばかり……確かにそうかもしれない
けれど、どうしてもそうなってしまう
根付いた自分の性格を見つめなおして
ごめんね。と口にはせず思う
もしかしたら、天乃にとって自分というものはピラミッドの最底辺なのかもしれない
天乃「うん、悩んだら相談は勇者部の五か条の一つだからね」
沙織『あはは、そうだったね』
沙織はそう笑うと
とにかく、気にしなくていいからね。と、電話を切った
√ 5月6日目 昼 ※土曜日
1、勇者部に行く
2、勇者部に行かず誰かと交流
↓2
01~10 猫の里親探し
11~20
21~30 商店街のお手伝い
31~40
41~50 海岸のゴミ拾い
51~60
61~70 剣道部・夏凜
71~80
81~90 演劇部・ランダム
91~00
風「……さて、今日は猫の里親探しするわよ」
夏凜「それならいい方法があるわ。全部天乃の家に押し付けましょ」
天乃「はぁ……」
もちろん本気ではなく冗談で言ったのだが
そんな風にため息をつかれると何とも言えず
夏凜は「何とかいいなさいよ」と、慣れないジョークに照れくさそうに目をそらす
そんな愛らしさに苦笑すると
友奈は「どうしますか? いつも通り分かれますか?」と言う
いつも五人で3人と二人で分かれていたが
今回は二人で三組での行動ができる
問題は誰が誰と組むか。という問題だ
東郷と天乃は問題があるから組むことができない
夏凜「まぁ、別に私が組んでやってもいいけどね」
天乃「えー夏凜ちゃんかぁ」
夏凜「何よその反応」
天乃と夏凜はいつもと変わらない
けれど
友奈たちほかのみんなは、昨日の今日ということもあってか
やっぱり、【いつも通りでいなきゃ】と、
いつも通りを装うべきだという緊迫感があるような気がする
もっとも、ほかのみんなと比べれば
友奈は少しましだと言えるかもしれないが
夏凜「なにしけた顔してんのよ。あんたたちは」
東郷「……そう、ね」
夏凜「ったく」
天乃を傷つけていたこと
それは一日で受け入れて普通に過ごせ。というのは
やっぱり少し、難しいことなのかもしれない
ここは夏凜と組んでおくべきか
それとも、それ以外の誰かと組んで深く話をするべきか……
1、風
2、友奈
3、夏凜
4、東郷
5、樹
6、みんな。無理していつも通りじゃなくていいわ。ただ、同情とか気にしすぎたりしないでほしいの
↓2
では、ここまでとさせていただきます
次スレは時間がないので明日にでも立てます
明日もできれば通常時間から
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【三輪目】
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