【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【六輪目】 (1000)

このスレは安価で

久遠天乃は勇者である
結城友奈は勇者である
鷲尾須美は勇者である
乃木若葉は勇者である
久遠陽乃は……である?

を遊ぶゲーム形式なスレです


目的

・恋から始める日常生活
・みんなで生き残る


安価

・コンマと選択肢を組み合わせた選択肢制
・選択肢に関しては、単発・連取(選択肢安価を2連続)は禁止
・投下開始から30分ほどは単発云々は気にせず進行
・判定に関しては、常に単発云々は気にしない
・イベント判定の場合は、当たったキャラからの交流
・交流キャラを選択した場合は、自分からの交流となります


日数
一ヶ月=2週間で進めていきます
【平日5日、休日2日の週7日】×2


能力
HP MP SP 防御 素早 射撃 格闘 回避 命中 
この9個の能力でステータスを設定

HP:体力。0になると死亡。1/10以下で瀕死状態になり、全ステータスが1/3減少
MP:満開するために必要なポイント。HP以外のステータスが倍になる
防御:防御力。攻撃を受けた際の被ダメージ計算に用いる
素早:素早さ。行動優先順位に用いる
射撃:射撃技量。射撃技のダメージ底上げ
格闘:格闘技量。格闘技のダメージ底上げ
回避:回避力。回避力計算に用いる
命中:命中率。技の命中精度に用いる

※HPに関しては鷲尾ストーリーでは0=死になります


戦闘の計算
格闘ダメージ:格闘技量+技威力+コンマ-相手の防御力
射撃ダメージ:射撃技量+技威力+コンマ-相手の防御力
回避率:自分の回避-相手の命中。相手の命中率を回避が超えていれば回避率75%
命中率:自分の命中-相手の回避。相手の回避率を命中が超えていれば命中率100%


wiki→【http://www46.atwiki.jp/anka_yuyuyu/】  不定期更新 ※前周はこちらに

前スレ
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【一輪目】
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【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【二輪目】
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【二輪目】 - SSまとめ速報
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【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【三輪目】
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【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【四輪目】
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【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【五輪目】
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【五輪目】 - SSまとめ速報
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死神「ヒサシブリ、ネ。クオンサン」

天乃「死神……?」

約一週間ぶりくらいに見る死神は

当然のことながら、姿に変わりはなく

ただ、声色だけが、少し悲し気に感じて

天乃「どうかした?」

死神「クオンサン、ホントウニ、タタカワナイ?」

天乃「? ええ、まぁ……必要ならあれだけど」

死神の問いに疑問符を浮かべながら、答える

体はもう限界が近いから

出来る限り戦うのをやめて

本当に危ない時にだけ手を貸すという形に変えた

だが、それは死神も知っているはずだ

なのに、なぜ今さらになって聞いてくるのか

それが、天乃の疑問だった


死神「デモ……タイヘン、ダヨ?」

天乃「え?」

死神「モウスグ、ハジマル」

死神は言う

戦いはこれから始まるのだと

それは、今までよりもずっと

大変な戦いであると

死神は淡々と語って、その赤い瞳を天乃へと向ける

死神「ワタシノチカラ、ナイト、タブン……アブナイ」

天乃「夏凜達はそんなに弱くはないわ」

死神「デモ、キット……ムコウモ、カワッテクル」

死神の声は

不安を感じるような声で

九尾のような、揶揄い交じりの余裕が感じられなくて

天乃は軽く息を飲んで、目を向ける

天乃「つまり、どうしろと?」

死神「……ケツダンヲ。ワタシヲチカゲトスルカ、セイゲンシツツ、タタカウカ」


1、どちらも嫌よ
2、千景にしたら、貴方は消えてしまうんでしょう?
3、それなら、戦うわ


↓2


天乃「死神さん」

死神「…………」

浮遊する小さな黒い戦友を両手で包むように捕らえた天乃は

そっと胸に抱き寄せて、小さな頭を撫でる

天乃「それなら、戦うわ」

死神「……ドウシテ?」

天乃「どうしてって……そうね」

死神の子供のような問いかけに

天乃は薄く笑みを浮かべると抱き寄せていたその体を離し

赤い瞳と真っ直ぐ視線を交わらせる

血のような赤色は、自分の左目のようにも思えて

天乃「貴方は私の戦友だから。若葉達のように。夏凜達のように。変わらず、友人だと私は思っているから」

だから。と、天乃は優しく続けて

天乃「私は貴方も失いたいとは思わない。貴方を犠牲にしてまで身を守ろうとは思えない」

死神「バカナノ?」

天乃「馬鹿……なんでしょうね。きっと、そう。私はどうしようもない、大馬鹿者かもしれない」


天乃は困ったように笑う

自分自身がそういうものだと理解してなお

そういう生き方をやめることが出来るとは思えないからだ

他人に対してもそうだが

知人から友人。そして親友にまでなってくると

どうしても、相手を守りたいと思ってしまう

しかしその一方で恋人とは別れたくない。一緒にいたい

そう思ってしまうのだから不思議なものだ

天乃はそんなことを考えて苦笑して、首を振る

今はそうじゃない

天乃「精霊である貴方にでさえこうなんだから……」

死神「クオンサン」

天乃「でも。誰も救えない愚か者にだけは。なりたくないの」

天乃の悲哀の入り混じった表情に

死神は言葉を閉ざして、そっと体をこすりつける

死神はしょせん、死神でしかなく

こういう時にかけてあげられる言葉が、見つけられなかったからだ



√ 6月13日目  夕(自宅) ※土曜日


1、九尾
2、死神  ※継続
3、若葉
4、球子
5、園子
6、夏凜
7、沙織
8、瞳
9、その他 精霊 ※再安価
0、勇者部の誰かに連絡 ※再安価
11、イベント判定

↓2



↓1コンマ一桁  +2


※1最低0最高
※後々使用


では、ここまでとさせていただきます
明日は出来れば少しは止め。出来なければ通常時間から


8+2=10
久遠さんと夏凜のひと時……そして


では、はじめていきます


九尾「ほう……そのようなことを」

天乃「ええ、しばらく姿を見せなかったから。何かあるかとは思っていたけど」

九尾「そうか」

きっと、考えていたのだろう

死神は以前、戦うことを良く思っていなかったのに

なのに、

戦うかどうかを、聞いてきたのだから

もっとも、このタイミングで来たということはつまり……

天乃「……見てたわね。破廉恥な子なんだから」

そっと自分の唇に指を触れた天乃は

ほんのりと恥ずかし気に呟いて、苦笑する

夏凜との交わりを見て天乃が生きたいと思い始めたと、

自分が無理をすれば夏凜が悲しむ。天乃はそれを快く思わ無くなっただろうと

そう、判断したからこそ死神はあれを言い出したのだ


九尾「死神の予定としては、己が若葉のように単独の戦闘員となることで、主様が戦わずとも問題なくなるようにしたかったのじゃろうな」

天乃「……私が、そんな自己犠牲的な展開を認めるとでも?」

九尾「そうしている主様から言われると、無性に手を出したくなるのう」

笑みを浮かべる天乃に、九尾もまた笑顔を返す

喜楽からのものではない両者の笑みは、空気を軋ませて

どこかでピシッっと、割れた気がした

九尾「悔いておるのか?」

天乃「何を?」

九尾「見えないようにしていたものを、見ることにしたこと。主様はそれを」

天乃「……正直、死神が言うように。絶対に戦わなければいけないのだと分かっていたら拒否していたと思う」

思う。ではなく

きっと、ごめんね? とでも言ってなかったことにしていたはずだ

他の女の子ならともかく、私。久遠天乃という女はそういう人間だから

だって、あの時は部屋に戻ってきた園子のせいで中断することになって

タイミングが悪いな。なんて思ったりもしたのに

話を聞いた今では【最後まで行かずに済んだ】有難う。なんて思ってさえいる


天乃「大丈夫よ。今はまだ、夏凜は片思いだから」

九尾「そうではなかろう……」

不安げな声。天乃はその耳を揺らす音を放つ九尾から目を背けると

薄く微笑んで、手元を見つめる

チクチクと胸が痛むのは罪悪感だろうかそれとも……恋心のデモ行進か

天乃「貴女だって、今度の戦いが厳しいものな事くらい分かっていたんじゃないの?」

九尾「…………」

天乃「それなのに、言わなかった」

九尾は大赦とは違う

知らせない方が良いと思った。なんて言う考え方はしていない

そんな九尾が言わなかったということは、つまり

天乃「この戦いで私が無理をすれば死ぬんでしょう?」

九尾「……死ぬ。とは言い切れぬが。その左目のように安く済むとは思えぬ」

何かへの確信があるからこそ、九尾はそういうことをする

だから、思えぬ。なんて若干濁してはいるが

本当は安く済まない。と、断言することさえできるはずだ


天乃「……そう。私のこの気持ちは。この記憶は、守って貰うことが出来るの?」

九尾「二兎を追っても得られはせん。守りたい、主様はそう思うておるのじゃろう?」

天乃「だったら、どうして……なんて。言うだけ無駄な話よね」

どうして夏凜との交わりを止めてくれなかったのか

そんなのは言うだけ無駄なこと

天乃自身がその接触を求めていたから、九尾は止めなかったのだ

もちろん、死神のような打算的な考えがなかったとは言えないが。

九尾「勇者部を守りたいならば、黄泉の……いや、死神くらい、捧げればよかろう」

天乃「本気で言ってる?」

九尾「当然じゃろう。妾も、きゃつらも所詮は精霊じゃ。使われるために存在しておる。妾自身がその立場でも、言葉は変わらぬ」

九尾の態度は変わることはくて

それが本心からの言葉だと判断した天乃は小さくため息をついて

天乃「道具だと私が思えるわけないじゃない。貴女達は。私の……」

記憶が無くなった天乃にとっての、とても大切な存在

それをただの精霊。ただの道具などと思えるはずがない

そんなことは、言われずとも分かっていて

九尾「正直、妾は東郷美森を羨んでおる」

天乃「え?」

九尾「なにせ、あやつは二年前の記憶がないからのう。主様がそうなってくれれば良かったと。今でも思う」


笑みを浮かべる九尾だが

そこに含まれている感情、思いはいたって本気で

驚きに目を向けた天乃に、九尾はくつくつと怪しく笑う

九尾「そうなれば、主様は晴れて普通の女子中学生として生きることも不可能ではなかった。そこまで、痛々しい姿になることもなかった」

天乃「……………」

なのに、世界はそんなことを許さないと言わんばかりに

天乃からは家族の記憶だけを奪い去った

友人を失った記憶、守れなかった記憶それらを残したうえでそうすることで、

躊躇うことなく身を捧げられるように。と、言っているかのようで

天乃「でも、そうなったら私は一人ぼっちになっていたかもしれない」

大赦から良い意味でも悪い意味でも目を懸けられるのは

天乃が勇者の力を持っていればこそであって

その力が無くなったとしたら、良くて家族のもとに送られるくらいだ

しかも、誰のことも覚えていない

天乃からすれば他人の輪の中に押し込められるような形で


だからと神樹様に感謝するつもりは一切ないが

天乃は全部奪われた方が良かったとは思わない

天乃「私、一人ぼっちは嫌よ」

九尾「乃木の娘にそれをさせておいて良く言う」

天乃「園子には瞳がいたし、沙織もいてくれたわ。ずっと。ではないだろうけど……」

それを強いた罪悪感を感じたのだろう

天乃は申し訳なさげに笑みを浮かべた

九尾「まぁ、良かろう。じゃが覚悟しておけ。今度は、安くないぞ」

天乃「ええ……解ってる」

何が起こるかわからない。けど、

もう、心は死んでも構わないとは思っていない

けれど、失いたくないとは今も思い続けている

だから、全力で頑張るのだ

失わないように、奪われないように。


1、ねぇ、どれだけ酷い戦いになるの?
2、ねぇ、陽乃さんは最初。どんな感じだったの?
3、貴女も実は先代勇者の一人だったりするんじゃないの?
4、私ね、恋を初めて知ったわ。みんな、あんなに辛くて苦しい思いをしていたのね
5、ねぇ、キス以外にも。することはあるの?


↓2


天乃「私ね、恋を初めて知ったわ」

九尾「ほう?」

天乃「みんな、あんなに辛くて苦しい思いをしていたのね」

辛いと、苦しいと

そう言いながら、どこか嬉しそうに胸元を抑える

恋をしているのだと

言葉にされなくても感じさせる天乃のそんな仕草に

九尾は先ほどまでの不安をかき消して、笑みを浮かべる

九尾「全くそう思えぬがな」

天乃「今はこの気持ちを知ることが出来たことが嬉しいの。まぁ、その分心苦しいのだけど」

九尾「ならば、退くか?」

天乃「ううん、それは出来ない」

好きな人がいる

その好きな人を悲しませるだろう、苦しませるだろう

それを分かっていながら戦いに身を投じる

そうしなければいけないから、心が苦しい

別れの可能性を考えなければいけないから、苦しい

それでも、天乃は首を振る

天乃「好きだからこそ、より守りたいと思う。出来るならば、生きて」


夏凜の言っていたどこからともなく沸いてくる活力というのは

こういうもののことを言うのだろうと

天乃は改めて認識して、瞳を輝かせて

天乃「どこまでも頑張れる。そんな気がする」

九尾「想いだけでは守れぬものがある。失わなければ得られぬものがある。万物の為に、時が失われているように」

天乃「……それは、分かっているわ」

天乃はふっと息を吐いて、深く、背もたれに体を預ける

私が頑張らなければ夏凜達が頑張って犠牲になり、先が得られる

私が頑張れば、夏凜達は犠牲にならずに済んで、先が得られる

いずれにしても誰かが頑張らなければいけない

きっと、犠牲にならなければならない。何かを失わなければいけない

それは、何かをなすためには必ず失われていく時のように

不条理でも理不尽でもなく、当たり前の対価として、持っていかれる

天乃「だから、私が頑張るの。古いものが朽ちていくのは不条理でも理不尽でもなく。当然だから」

九尾「……しかし」

天乃「ありがとう。でも、それでいい。それが良い。この想いを抱いたうえで叶わない願いなのだとしたら、諦めもつく」


悲しむべきことを、笑みを浮かべながら言う

そんな、呆れる事さえできない天乃に対して

九尾はため息をつくと、諦めたように首を振った

九尾「主様は、その恋を成就させようとは思わぬのか?」

天乃「まさか。そんなことしたら相手を付き合って早々悲しませることになるじゃない」

九尾「相手相手と、もう。そこは空白ではなかろうに」

鋭い指摘をする九尾に、天乃はただ笑みを返す

知っているのは当たり前だ。見ていたのだから

そのうえでも言うその意地悪な性格が

今は全く、嫌に思えない

それはきっと、九尾の指摘が間違いではなく

今抱いている想いが、まぎれもなく本物だからだろう

天乃「九尾は、進展して欲しいの?」

九尾「たまには、妾の酒を上手くしてくれても良かろう?」

天乃「そんな理由に付き合ってあげる優しさなんて、私にはないわよ」



1、この戦いが終わったら。ちゃんと伝えるつもりよ
2、こうなった以上、気持ちは伝えないわ
3、でも、そうね。伝えた方が良いわよね
4、陽乃さんはどうだったの? こういう戦いに身を投じる直前とか、どういう心構えだった?
5、人の交わりを盗み見しておいて。何言ってるんだか


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



夜はバーテックスとの戦闘、難易度は判定済み
ステ更新とマップ生成済み
久遠さんだけ軽く能力補正の安価を取る可能性があります
精神コマンド特殊技能


では、少しずつ進めていきます



天乃「でも、この戦いが終わったらちゃんと伝えるつもりよ」

九尾「この戦いが終わってから。それでよいのだな?」

天乃「……どういうこと?」

儚げな笑みに添えた天乃の言葉。九尾はそれを飲み込んで、訊ねる

この戦いは厳しいものになるといった

それでも、天乃は考えを変えることなくその後。という

もっとも、気持ちを伝えることを決めているという点では

大きく、成長を感じられなくも無いが……

天乃「九尾?」

九尾の悩まし気な表情に

天乃が不安を覚えて声をかけると

九尾は深く息を吐いて、天乃へと目を向ける

それはとても穏やかに、悲しさを抱いていた

九尾「その時にならねば分からぬ。が」

やはり、口ごもって

けれど九尾は意を決して、口を開く

憶測で語るのは好きではないが、言わなければ。きっと、いけないことだ

九尾「この戦いは連日になる可能性がある。つまり、主様の言うこの戦いが終わったら。という希望は叶わぬ可能性が非常に高い」


天乃「連日って、それじゃ……つまり」

一回目の戦いで

天乃が自分の能力の行使、あるいはバーテックスの攻撃によって

再起不能に陥った場合、二回目の戦いでは

控えとかではなく、完全に天乃のいない状態での戦いとなる

戦力差次第だとは思う

けれど、天乃がいなければ樹海の損害を引き受けることはできない

そして、きっと。夏凜達の満開を避けることは出来まい

天乃「どうにかして、両方参加することはできないの……?」

九尾「たわけ……死ぬぞ」

天乃「それは。絶対に?」

九尾「ただでさえ疲弊している体を酷使し、そのうえで酷使する。その意味が分からぬほど、幼子ではあるまい」

自分のことなど顧みず

みんなのことした頭の中にはない、救済対象にない

そんな深い瞳を見せる天乃から眼を逸らした九尾はそう言って

九尾「最初に出撃予定の園子は、戦力差を確認してから、出るかどうか見極めるそうじゃ」

天乃「……園子も変身だけでも負荷がかかるものね」


失礼しました。短いですが、ここまでとなります
明日は出来れば昼過ぎから


では、昨日やる予定だったところをとりあえず流していきます


園子と天乃が出撃して、二回戦に出てくることが出来なくなった場合、

普段通りならば若葉たちも含めて9人いる勇者チームは

天乃の離脱=若葉や球子の一時離脱であるなら、一気に半分近くが消えて

5人で対処しなければいけなくなってしまう

だから、最低でも園子は温存するべきというのが、大赦の考え

もちろん、天乃が温存できれば良いに越したことはないのだが

残念ながら戦いの厳しさを話して退いて貰えるわけがないわけで

天乃「初戦で勇者部を出来るだけ温存しろ」

そういう命令でも来てるんでしょう? と、

微笑み問う天乃に、九尾は頷く

隠す理由もない。そうしたところで、天乃は解っているのだから

天乃が初戦から出ると言った時点で破棄された作戦だが

大赦の予定としては、

一戦目に園子を宛がい、バックアップに天乃

二戦目に天乃を宛がい、バックアップは無し

というものだった


大赦は天乃の力を恐れているが

それゆえに天乃ならば勝利を確実に得られる信頼がある

だから、状態不安定な園子のバックアップならその分安心できるし

二戦目に天乃が参戦出来るなら開戦の時点で胸を撫で下ろせるからだ

天乃「こういうときだけお願いします。なんて、冗談も良いところだわ」

九尾「それが通用するのが主様じゃろ。どうせ、見限れまい」

九尾の呆れた物言いに

天乃は苦笑すると「確かにね」と、呟く

その点を下に見られている、甘く見られている

それが解っていても……私は切り捨てられない

だって、お人好しだもの

天乃「……そっか」

話が一区切りついたのか

静まり返った部屋で、天乃は小さく溢す

悲しげに、寂しげに、切なさを感じる声で

哀愁漂う表情を見せた天乃は、声無く笑う


天乃「そっか……この戦いの後。なんて余裕はないのね」

九尾「…………」

天乃「混合させた力を使っても平気?」

九尾「普通の力で満開するよりは問題なかろう」

それでも体への負担は大きく

一日二日の昏睡状態では済まない可能性さえある

それでも……

天乃「どうするかは攻めてきた戦力で決めるわ」

九尾「妾達には忠告は出来ても止めることは出来ぬ。選択を誤るでないぞ」

天乃「ええ」

戦わないという選択肢はない

それだけは絶対にありえない

誰かが犠牲になるくらいなら、自分が犠牲になる

そんな考えはみんな間違いだと言っていたけれど

あんなにも、話してくれたけれど

でも……やっぱり、大切な物を失いたくなんてないから

天乃は、やはり。戦いへと赴く


では、これから戦闘に移りますが
その前に、YP(1300)を振ってしまいたいと思います

↓久遠さんの各変身後ステータス

混合
HP:1510  格闘:415  回避:255  起動:9
SP:410  射撃:210  防御:100  命中:310

死神

HP:1020  格闘:275  回避:215 機動:8
SP:225   射撃:000  防御:205  命中:210


九尾

HP:1020  格闘:310  回避:180  機動:5
SP:225  射撃:000  防御:215  命中:210



所持コマンド

九尾・死神共通
・加速(8)  ・ド根性(35)  ・隠密(10)

混合
・隠密(30)   ・神速(8)  ・ど根性(35)
・覚醒(70)  ・直感(10)  ・魂(48)  ・勇気(48)


所持技能全員共通

・回復阻害  ・繁栄  ・幻惑
・隠密   ・カウンター  ・満開


まず初めにどちらに振り始めるか


1、特殊技能
2、精神


↓1~↓3



安価の仕様↓

現在所持しているYP1300分だけ複数選択可能ですが
範囲内のレスが選択したスキルをすべて習得するのではなく
範囲内で選択されたものを集計し、過半数以上が選択したもののみを習得します

片方で使いすぎるともう一方は習得できなくなる場合があります

では特殊技能からといたします

1、集中力(SP消費80%)          100
2、命中力(L1で命中+10 L2で+20)   Lx20
3、回避力(L1で回避+10 L2で+20)   Lx20
4、精神力(L1ごとにSP+5)         Lx30
5、クリティカル(CRI+20%)          50
6、援護攻撃(隣接するキャラに援護攻撃) Lx40
7、援護防御(隣接するキャラに援護防御) Lx40
8、カウンター(Lにつき5%で反撃) Lx20

9、インファイト(L1で格闘+15)   Lx25
10、ガンファイト(L1で射撃+15)  Lx25
11、ATKコンボ(隣接する敵にも攻撃) 150

12、撃ち落とし(Lにつき5%で攻撃弾く) Lx30
13、切り払い(Lにつき5%で攻撃弾く) Lx30
14、気力+(命中回避被弾で気力+2) 80
19、迅速(機動+1)              Lx50
20、体力(HP+80)              Lx40


↓1~5


※天乃は現在カウンターL1です


安価の仕様↓

現在所持しているYP1300分だけ複数選択可能ですが
範囲内のレスが選択したスキルをすべて習得するのではなく
範囲内で選択されたものを集計し、過半数以上が選択したもののみを習得します
安価数によっては、採用方法を変更します

【L×20】等のスキルは、最大5まで獲得可能です

精神コマンドの方も控えていますので、ここで使いすぎると精神コマンドは習得できなくなる場合があります
予めご了承ください


111
333
55
66
77
8888
111111
121212
131313
191919

こうなったので、3/4と4/4の

1、3(5)、8(5)、11、12(5)、13(5)、19(2)にします

()内は習得数。2/4がこの数なのでこの感じで

消費は850です


1、友情(味方のHP全回復)              150
2、  絆(全員のHP50%回復)             200
3、信念(特殊効果を無効化)               50
4、熱血(ダメージ2倍)                  100
5、闘志(ダメージ1.5倍)                  50
6、分析(相手のステータス把握+命中・回避-10%) 80
7、集中(命中・回避+15%)               50
8、必中(絶対命中)                    100
9、閃き(絶対回避 )                   100
0、不屈(ダメージを10に)                  80
11、予測(相手の命中・回避を半減)            100
12、気合(気力+10)                     60
13、気迫(気力+30)                     100
14、愛情(気力150 HP全快)                  150
15、取得しない


↓1~↓3


所持コマンド

九尾・死神共通
・加速(8)  ・ド根性(35)  ・隠密(10)

混合
・隠密(30)   ・神速(8)  ・ど根性(35)
・覚醒(70)  ・直感(10)  ・魂(48)  ・勇気(48)



安価の仕様↓

現在所持しているYP450分だけ複数選択可能ですが
範囲内のレスが選択したスキルをすべて習得するのではなく
範囲内で選択されたものを集計し、過半数以上が選択したもののみを習得します


22
4
9
1414

なので、絆と愛情を取得 計350
あと100残っています


1、熱血習得(YP消費100  4番)
2、閃き習得(YP消費100  9番)
3、残しておく


↓1~↓3


では、熱血を取得して
九尾:http://i.imgur.com/Xopr9TW.png
死神:http://i.imgur.com/2bsPw9R.png
混在:http://i.imgur.com/bBG4IBF.png

このような感じに


混合
HP:1510  格闘:415  回避:305  起動:11
SP:410  射撃:210  防御:100  命中:310

死神

HP:1020  格闘:275  回避:265 機動:10
SP:225   射撃:000  防御:205  命中:210


九尾

HP:1020  格闘:310  回避:230  機動:7
SP:225  射撃:000  防御:215  命中:210



所持コマンド

九尾・死神共通
加速(6) ド根性(28)  隠密(24)
熱血(28)   絆(48)  愛情(48)

混合
隠密(24) 神速(6) ど根性(28)
直感(8) 魂(38) 勇気(38)
熱血(28) 絆(48) 愛情(48) 覚醒(56)


所持技能全員共通

回復阻害  繁栄  幻惑  隠密  ATKコンボ  満開
カウンター
L5  回避L5  撃ち落とし
L5  切り払い
L5  迅速L2  集中力

エクセル精霊等修正忘れは後で修正しておきます

とりあえず、6月13日目夜
樹海化させていきます



√ 6月13日目  夜() ※土曜日


来ると分かっていても

来ないで欲しい。嘘であって欲しい

そう思ってしまうもので

強く振動し、けたたましい警告音を響かせる端末へと目を向けた天乃は

悲し気に、息をつく

天乃「せめて……夜は止めてほしいわね」

園子「バーテックスには、時間なんて関係ないからね~……」

銀のお葬式の時にさえ空気を読まずに来たからか

園子は普段通りの声色で呆れたように笑みを浮かべたけれど

樹海の状況を見た瞬間、その表情は曇ってしまった

夏凜「……あんた、戦う?」

天乃「……はっきり言って、この状況下では私の力の温存なんて、出来ないと思うわよ」

夏凜も同様に驚きをかみ殺したような表情を浮かべながら

マップを表示させた端末を片手に

天乃へと、目を向けた



状況→【http://i.imgur.com/Up8r1Y9.png


7体のバーテックスに1体の融合型バーテックス

沙織曰くレクター君、九尾曰く東郷さんのその大型バーテックスの姿は

はるか遠くにいるはずの天乃たちにも、はっきりと見える

その強大さ、その恐ろしさ

それらに直面した夏凜は一度は勝利したんだからと思ったが

しかし、園子はその心を察したように「それは違うよ」と、呟く

園子「確実に力を増して来てる」

天乃「……そうね。私が倒した時の倍までいかないかもしれないけど、強くなってる」

そんな相手を、園子に任せて良いのだろうか

夏凜達だけに委ねて良いのだろうか

そう考えだした天乃の隣で

沙織「考えたってらちが明かないよ。今やるか。やらないか。重要なのはそれだけだよ」

天乃「……沙織」

沙織は本来ならば、ただの巫女であり

樹海化した際に巻き込まれることはないが

今は、猿猴とくっついているために、巻き込まれてしまったのだ

沙織「心配しなくても、娘の体は守るよ」

天乃「じゃなければ困る」


夏凜「天乃、風と友奈から連絡」

天乃「なんだって?」

風と樹、友奈と東郷は

両端にいるバーテックスの警戒を行うために

それぞれ下がりつつ、中央に向かって行き

残念ながら、完全に集まるのは隙が出来てしまうために出来ないが

ギリギリ援護の範囲内目指していくようだ

夏凜「運が良いのか悪いのか、敵の主力は真ん中で私達の主力も真ん中」

天乃「私が戦う前提なの?」

夏凜「あんただろうが園子だろうが主力なのは変わらないし、人数的には私達が主力部隊でしょ」

天乃「そうね」

夏凜も余裕がないようで

冗談を言ったつもりもないのに

言葉には怒気が感じられて天乃は伏し目がちに頷く


1、九尾勇者
2、死神勇者
3、混在勇者
4、園子に委ねる


↓2


天乃「九尾、最初から全力で行くわよ」

九尾「……良いのか?」

天乃「あんなのがいる状況じゃ、出し惜しみなんてしてられない」

普通のバーテックスだけなら

数がいなければ園子でもなんとかやっていけるかもしれない

けれど、あの集合体だけは別格なのだ

ただただ力があるだけでは太刀打ちできない

普通の勇者はまず間違いなく、満開が必要な相手で

人数だって、一人や二人では難しいはずだ

それに加えて、多くのバーテックスともなれば

最低でもレオスタークラスターと一騎打ちが可能な状態での参戦が望ましい

覚悟を決めた天乃の傍らで

一人、夏凜だけは不満げに天乃の腕を掴んだ

夏凜「戦うな」

天乃「……駄目よ」

夏凜「その力は使っただけで辛いんじゃないの? 苦しいんじゃないの? 倒れるくらいに……負担なんじゃないの?」

天乃「それでも。誰かを失う痛みに比べたら。軽いものよ」


天乃「園子」

園子「うん」

天乃「出来る限り、みんなのことを温存する。出来るのなら、私自身も」

そう言った天乃は

自分の方は殆ど不可能に近いけどね? と

日常の出来事のように、

ほんの些細な、つまらない何かのように、苦笑して見せて

そのすぐ横で「ふざけんな」と、声を荒げる夏凜の頬に、手を宛がう

天乃「ごめんなさい……でも。これ以外に道はないわ」

夏凜「私達が満開すればいい! みんなできる。だれも嫌なんて言わない。その覚悟は――」

天乃「ふざけないで」

夏凜「っ!」

その冷えた声は、冷えた瞳は

あの時、自分がやらかしたことに対して

天乃が体育館で自分に放ったものに似ていて

だからこそ、思うがゆえの言葉だと夏凜は悟った

天乃「勇者部全員の満開と私一人の力。効率が悪いし被害も大きすぎる。バーテックスとの戦いはこれで終わるわけじゃないのよ。分かって頂戴」

夏凜「け、けど……だけどッ! だけど……」


言いたい言葉はたくさんあるのに

したいことがたくさんあるのに

どれもこれもが

今ここでは、天乃を止める力を持っていない

それが分かるから

それが悔しいから

夏凜は唇が切れるほどに強く歯噛みして、握りこぶしを軋ませる

球子「時間がない。良いんだな? 天乃」

天乃「諄いわ。球子」

沙織「久遠さんの覚悟は決まったみたいだね。あたしも全力で援護するよ。それも、契約だからね」

いつの間にか巫女装束に着替えなおしていた沙織は

構ったような笑顔でそう言って、鈴を一回鳴らす

園子「……神樹様の力が大きくなってる」

沙織「これは巫女の力だよ。あたしがここにいることで、勇者には劣るけど。精霊の力として巫女の力が行使できる」

天乃「沙織には影響ないのよね?」

沙織「巫女が巫女の力を使っても問題はないから安心して。久遠さん」


夏凜「……っ」

園子が沙織と後ろに下がったのを確認した後

マップを見てみると

バーテックスに関してはまだ様子を見ているようだが

友奈と東郷、風と樹は

もうすでに、移動を始めているようで

最初の一から少し、動いていた

若葉「向こうの四人に関しては予定通りみたいだが……」

球子「怖いのは動きを見せてないバーテックスか」

そう言った球子ははるか遠くにそびえる巨大な敵を睨んで、

天乃へと、視線を移す

球子「あれ、完全に様子見してると思う」

天乃「でしょうね。私達が動いてから……というよりは、私が動いてから。でしょうね」

九尾が言っていた通りなら、確実に狙いは天乃だ



1、移動する ※みんなついてきます
2、動かない
3、誰かに友奈、東郷の援護に向かわせる
4、誰かに風、樹の援護に向かわせる
5、私は一人で行くわ。みんなはそれぞれ、園子も含めたみんなの援護に回って頂戴


↓2


※1、3、4は再安価

http://i.imgur.com/E7sl2dJ.png


移動先をマップから選択してください

↓2


※天乃の移動距離はピンク(11マス)+黄色(神速使用+5)の16マスです
※黄色マスはSPの消費があります
※夏凜は最大機動8マスです
※若葉は最大機動8マスです
※球子は最大機動8マスです


蠍座→天乃 命中率-107  カウンター判定↓1 01~25

レオ→天乃 命中率-75   カウンター判定↓2 75~00

レオ→夏凜 命中判定↓3 01~66  61~65切り払い

レオ→若葉 命中判定↓4 01~80  71~80切り払い

レオ→球子 命中判定↓5 01~99


天乃→回避、回避
夏凜→回避 
若葉→命中 140ダメージ
球子→命中 50ダメージ


天乃「一応、ついてきて」

若葉「了解」

球子「防御は任せろ!」

夏凜「………」

各方面の戦力が、相手の戦力に対して極端に偏っていないと判断した天乃は

若葉達にそう指示して、先行する

天のならば、一回で肉薄することも可能だが

一人で突貫するのは、愚行の中の愚行だ

……ただでさえ、馬鹿なことしてるのに

味覚があれば口の中は血の味でいっぱいだろうな。と

喉が焼けただれていくような痛みを感じ、口元から零れていく赤い唾液を拭って

天乃はちらっと、夏凜に目を向ける

不服そうだ。納得がいかなそうだ

けれど……今更、後戻りはできない

天乃「こっちよ。ここで一旦止ま――」

全員に制止を呼び掛けた瞬間、天高くが赤い流星に覆われていき

真横からは天乃目がけて木々をなぎ倒しながら一直線に蠍座の尾先が迫ってきた


天乃「全員散開して! 今す――」

天乃がそう叫んだ瞬間、蠍座の針は天乃へと数メートルの距離にまで来ており

それを目ではなく音で判断した天乃は、一歩後ろに大きく跳躍する

けれど、針はそれを追うように鋭く角度を変えて天乃に向かったが

その時にはもう、天乃はもう一度蠍座の針が来た方向へと跳躍していて

天乃「ふ――っ!」

天乃の拳が振り下ろされる寸前、しっぽは勢い良く引き返し

その追撃を許さないと言わんばかりに、

レオスタークラスターの流星群が、地上へと降り注ぐ

天乃「っ!」

どれもこれも早い。けれども、天乃には遅く

難なく回避した天乃は、辺りを見渡して、被害状況を確認する

夏凜「天乃! 無事?」

天乃「ええ、若葉と球子も……無事そうね」

夏凜は少し離れたのだろう無傷で戻ってきており、

若葉と球子に関しても、多少かすってはいるようだが、ダメージ自体は大きくない

けれど……

天乃「色々厄介ね。あの集合体は基本的には全員を狙ってくる。そのうえ、今の蠍座との動きから察するに、向こうも連携してくるわ」


夏凜「偶然……なんて悠長には考えられないか」

若葉「そうだな、天乃への襲撃のタイミング、そのあとの流星のタイミング。確実に推し量っていた」

球子「尻尾も今までのバーテックスがやりそうな破壊覚悟の追撃はしてこなかったからな」

バーテックスが連携を取るとなると……厄介だ

風と樹側にいる山羊座は単独で、あれは完全に何人かを引き出す囮とみて良い

友奈達の方にいる牡羊座と双子座はどうだろうか

まだ戦闘に入っていないから判断しかねるが

向こうは向こうで、何かしらの連携をしてくるのは確実だ

球子「……これ、ここに人を集めるのはまずいかもしれない」

夏凜「なに言ってんのよ! ここが一番人が必要に決まってる!」

球子「人数的にはな。でも、戦力的には、友奈達に誰かを回す必要があるかもしれないぞ」

戦闘中だからか、

真面目な雰囲気で答える球子に目を向けた夏凜は

端末を強く握って、友奈達の方へと目を向ける

若葉「無駄話の時間はないぞ。急いで決めるべきだ」


1、このまま
2、友奈達へ誰か派遣する
3、友奈達と、園子達に誰か派遣する
4、友奈達と、風達に誰か派遣する
5、友奈達、風達、園子達それぞれに派遣する


↓2

現状→【http://i.imgur.com/lDjSUuH.png


友奈と東郷への派遣メンバー

1、球子
2、夏凜
3、若葉


↓2


※複数選択可。ただし二人まで
※一番近いのは球子 次点夏凜


風と樹への派遣メンバー

1、夏凜
2、若葉


↓2


※複数選択可。ただし二人まで
※一番近いのは若葉 次点夏凜


天乃「若葉は風と樹、球子は友奈と東郷。それぞれのカバーに向かって」

球子「分かった。二人はタマに任せタマえ」

若葉「無茶だけはするな。危なくなったらすぐに呼んでくれ」

自信をもって言う球子の一方

天乃のことを心配して不安そうな表情を見せる若葉に

天乃は「私を誰だと思ってるの?」と、微笑んで見せる

正直、そこまでの余裕はないが

でも、不安な顔、恐れている顔

そんなものを見せるわけにはいかない

夏凜「天乃、正気?」

天乃「本当は貴女だって園子達の護衛に送りたいくらいよ。でも、受け付けないでしょ?」

夏凜「……………」

味のない粘ついた吐き気を催す液体を飲み下しながら

天乃は努めて、笑顔を保つ

今回ばかりは、味覚を奪った神樹様に拝でもすべきかもしれない

夏凜「当たり前でしょ。あんたを一人になんて、出来るわけがない」

天乃「なら、出来る限り……無茶をしないでね」

夏凜「あんたには言われたくないっての」


天乃「っ……けほっ、けほっ」

若葉と球子を見送った天乃は

バーテックスを見上げて、一息つく

ため息一つ、空気が喉を通るだけでこれだ

もっとも、血を吐かずに済んだだけましかもしれないが

夏凜「平気?」

天乃「大丈夫」

近寄ってこようとした夏凜を手で制し

隙あらば狙って来ようとしている蠍座の尾を挑発するように動き回って

横目でその後ろの射手座、集合体をそれぞれ見る

大きく動けない以上、乙女座は確認できないが

どこも爆発しないのを見るに、まだ。攻撃はしてきていないとみていいだろう

夏凜「……………」

天乃「……………」

また様子見?

私が動かなかったらどうなる? 攻めてくる?

でも、そんな無駄な時間は使えない……けど



1、移動
2、様子を見る ※天乃と夏凜以外が動きます
3、精神コマンドを使う

↓2


http://i.imgur.com/wjvm4mV.png

移動先をマップから選択してください

↓2


※天乃の移動距離はピンク(11マス)+黄色(神速使用+5)の16マスです
※黄色マスはSPの消費があります
※夏凜は最大機動8マスです
※敵に囲まれているマスへは移動できません


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



・バーテックスは連携してきます
・バーテックスの一部は基本的に久遠さんを狙ってきます
・バーテックスとの戦闘難易度は10です
・久遠さんは夏凜がいれば、血反吐は吐かない程度の状態です


では、少しだけ


→天乃移動処理(I7)


天乃→レオスタークラスター 命中率255% CRI判定↓1 ぞろ目 または 01~25  71~79  


→ダメージ処理 レクターに2457ダメージ

→勇者部・バーテックス行動処理


樹→山羊座 命中判定↓1 率138%必中  ぞろ目でCRI

夏凜→蠍座 命中判定↓2 01~74で命中 ぞろ目CRI

射手→夏凜 命中判定↓3 01~67で命中

乙女→夏凜 命中判定↓4 01~55で命中

レオ→天乃 命中判定↓5 ぞろ目命中  01~25 カウンター  奇数ぞろ目切り払い


※コンマ判定なので連取可


一つ抜け


蠍座→夏凜 命中判定↓1  01~45で命中  


→ダメージ処理

→山羊 392ダメージ

→蠍座回避

→夏凜 224ダメージ

→天乃 回避


天乃「っ……」

目を外すのは憚られたが、天乃はバーテックスから眼を離し、

振り返って夏凜やその奥にいるであろう園子達へと思いを馳せる

バーテックスの狙いは自分だ

少なくとも、超大型の集合体バーテックスの狙いは、確実に

それが断定するに十分だと判断して、「ごめんなさい」と

小さく呟いてから、夏凜を置き去りにする形で、全力で地を蹴る

蠍座の尾先が天乃か夏凜かと彷徨い、

乙女座の殺意が半ばまで追いかけてきて

その横を一直線に駆け抜けた天乃は

レオスタークラスターの真後ろに回り込むと

ジャリジャリジャリっと、樹海の根を削るように足を滑らせ、方向転換

バーテックスがゆっくりと振り向きながら飛ばしてきた水球を横跳びに躱し、

右の手の拳を握ることなく、手の平の付け根のあたりに力を蓄え、肘を引く

そして――

天乃「ふッ!」

集合体の巨体の下部に肉薄した瞬間、下半身に急ブレーキをかけ、残った反動すべてを上乗せして、

その巨躯に掌底を捻じ込む

グッと押し込まれた体はポンプのように脈打ち、半ばまで上ったところで不意に、その体を弾けさせた


天乃「っ!」

集合体の下半身ともいえる大部分が消し飛び、

御霊が僅かにはみ出す

けれども、それを守るように集合体はさっきと同じく大量の流星群を天乃単体にのみ目がけて降り注がせる

しかし、体は回復しない

一つ一つ丁寧に回避しながら、

天乃は集合体の動き、その陰に隠れて見えないそれぞれのバーテックスの動きを音で聞く

天乃「!」

遥か遠方、無数の光に矢が降り注いだ瞬間

打ち上げられた赤い光が瞬いて、蠍座の尾がそれを打ち払う

天乃「かっ……っ……」

それが夏凜であると嫌でも分かった

容易に理解できた

あの程度ではまだ問題ない。それは解っているのに、とてつもない不安が押し寄せてきて

ぽたぽたと、口元から零れ落ちていく鮮血を拭って、天乃は拳を握りなおす

天乃「短期決戦……じゃないと。次の戦いが苦しくなる……ッ」


しかし、それはそうしなければいけないと分かっているだけで

どうすればいいのかが、まったく思い浮かばない

天乃「……………」

嘘だ。そうじゃない

どうするべきか分かっている。ここで何をすることが

最も早くこの戦いを終えられるのか

それは、良く分かっている

天乃「っ……」

体の内側、皮を抜け肉を抜け、骨を直接締め上げられているような

擦り潰されているような

そんな、激痛。という言葉でさえ生易しく思える痛みを感じる天乃は、強く唇を噛んで

けれど――その隙間からは狙いすましたかのように唾液と入り混じった血が溢れ出していく

喉が限界だった。体中が痛い。死んだ方がマシだと思えてしまいそうなほどに、苦痛だ

でも、天乃は強く体を抱きしめて、首を振る

天乃「……ダメ。ダメ。出来るだけ、出来る限り……」

満開を使えば、この戦いは最も少ない犠牲で終えられるはず

でも、それはきっと、試合に勝って勝負に負ける。みんなにとっては最善とは言えない選択肢かもしれない


1、移動する
2、レオに攻撃   ※ATKコンボは現在射程不足です
3、夏凜に電話を掛ける
4、満開を使う
5、一時待機 ※勇者部・バーテックスの行動処理を先に行います


↓2


残り1853なのでレオは問題なく倒せますが

念のため覚醒を使用しますか?


1、使う
2、使わない


↓2


間違いなくレオは倒せます。覚醒を使用するということで処理します
では、短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



レオ「……計画通り」


では、はじめていきます


体中から感じる違和感、奥底から湧き上がる吐き気と痛み

それらを誤魔化すように、天乃はふっと息を吐く

目を閉じればそれはより鮮明で、不快感が増していくだけで

ちっとも、良くなる気配は無くて

天乃「……次は、無理かな」

この後に控えていると予想される第二戦

可能ならそれにまで出ようかと思っていた天乃は

それがほぼ確実に無理だと体の抗議を受けて、苦笑する

きっと、夏凜を怒らせるだろう

もしかしたら、この前みたいに目を覚ますまで付き合おうとするかもしれない

でも、今回はまだ続きがある。目の届かない場所、手の届かない場所で、もう一度

天乃「…………」

目を覚ましたときに何も無くなっているという恐怖、その不安

感じないと言えば嘘になるけれど、でも。きっと

それはみんなにも感じさせてしまうことだから

天乃「ただまっすぐに――倒す」

指の感覚を確かめるようにゆっくりと拳に変えて

地面を踏みしめて、弾力を感じ取り、蹴りだす


ほんの一瞬、瞬く間もなく距離をつめた天乃は集合体の真下で大きく跳躍

下半身が弾け跳び無残な姿を晒す集合体の傷をえぐるように拳をねじ込み、

天乃「たッ!」

浮遊する巨大な足のようなものを足場としてけり砕く

天乃「……っは」

逆流する血液が意図せず口から飛び出して

けれど、気にしない。

天乃「う゛……ぁ」

削られるような痛みを堪えながら息を呑み

緩みかけた拳に再び力を込めて、集合体の胸部に当たる部分を右拳で穿つと

左手に刀を具現化して突き刺し、

その勢いのままに後ろに一回転すると、伸びきった樹海の根を蹴って再び肉薄し、刀を蹴り貫く


天乃の力の一つ、死神の能力

それゆえに自慢の回復力も何も発揮することが出来なかった集合体は

その巨体、その威圧感に似合わず、当たり前のように砂と光となって消滅する

砕け散るまで攻めた天乃は、地面に足を付いた瞬間

天乃「!」

体を支えられずそのまま膝から崩れ落ち、

樹海の根を何層も転げ落ちて、倒れこむ

天乃「っ……ぁ」

死神と九尾両方の力を使っている天乃には

軽い攻撃だろうと思い攻撃だろうと、精霊の障壁は動作することは無く

耐久面で言えば一般の少女と変わらない天乃は

その痛みに呻き、麻痺したように動きの鈍った体

感覚の消えた足に目を向け、悲しげに笑う

天乃「もう限界? ううん……ばかなこと言わないで」

手で触れても熱さえ感じない足を無理矢理に動かして

強く拳を打ち付けて、痛みと共に感覚を引き起こす

天乃「まだ、いけるでしょう。まだ、やれるでしょう? せめて、この戦いだけは最後まで」

聳える木を頼りにふらふらと立ち上がった天乃は、そこに背中を預けて口元を拭う


攻撃を受けた覚えは無いのに勇者の装束はボロボロで、血だらけで

だからこそ、より強く自分の限界を感じる

それでも、天乃は笑みを浮かべる

天乃「けふ……ぁ……ふふっ」

まだまだ頑張れる。戦うことが出来る

体がどんなに痛くても苦しくても、みんなを護りたいと思う心が、体を動かしてくれるから

霞みそうな視界を正すように目を閉じ、深呼吸

不快な空気が肺に溜まって、吐き出して

天乃はゆっくりと目を開く

天乃「さぁ、まだもう少し」

……とはいえ、

集合体を倒してもバーテックスの数はまだ多い

どうするべきだろうか



1、移動
2、バーテックス・勇者部の行動後に動く(様子見)
3、精神コマンド

↓2


現状→【http://i.imgur.com/eS8hhX9.png


→移動処理(J12)

→戦闘選択


1、蠍座 【戦闘術改Ⅱ 威力2700】
2、蟹座 【死生剣  威力2200】
3、乙女 【死生剣  威力2200】 
4、射手 【射撃兵装 威力1200】


↓2


→蠍座攻撃

→蠍座確殺 判定無し

→勇者部行動処理

→山羊座封印

→牡羊座の封印には人数が足りません



樹→山羊座 命中判定↓1 率138%必中  ぞろ目でCRI

風→山羊座 命中判定↓2 率101%必中  ぞろ目でCRI

友奈→牡羊座 命中判定↓3 率78% 01~78命中  ぞろ目でCRI

夏凜→蟹座   命中判定↓4 率110%必中  ぞろ目でCRI


※コンマ判定なので連取可


→ダメージ処理

→蟹座も夏凜なので単独封印中

→山羊座は封印中、体力の半分1100以上のダメ―ジの為御霊破壊


山羊座→1511ダメージ

牡羊座→606ダメージ

蟹座→474ダメージ


追加

球子→牡羊座 命中判定↓1  01~74 命中  ぞろ目CRI


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
この戦闘は状況的に少し不味いかもしれません



牡羊座→回避
牡羊座→友奈の攻撃で増殖
→次回、バーテックスの行動処理


現状(バーテックス行動前)→【http://i.imgur.com/eA6zLSt.png



では、初めて行きます


銃の狙撃眼鏡を覗かなくても、その圧倒的な大きさゆえに見える

凶悪な威圧感を放っていたバーテックスが、砂となって崩れていく

端末で位置を確認しなくても、それを誰が行ってくれたのか

誰が出来たのかなんていうのは、火を見るよりも明らかで

しかし、その勝利に、東郷は笑みを浮かべるどころか険しい表情で唇を噛む

……無力だ

東郷は友奈達と違って、足が動かず補助機能によって支えられており

機動力は格段に低い

その為、遠距離の武装なのは良いが、遠すぎてはそれでさえ届かないこともある

かといって、下手に近づいて横を抜かれて神樹様に近づかれてしまう可能性があるのだ

東郷「違う……それは言い訳」

手元の銃を握り締める手に力が篭っていくのを感じた東郷は

目を見開いて、また。伏せる

迷子なのだ。自分は

戦闘においての自分の立ち位置を把握できていない

見つけることが出来ていない

遠距離武装だから。たったそれだけの理由で後ろに下がり

近づいてきた敵だけを攻撃する

友奈ちゃんが、風先輩が、夏凜ちゃんが、樹ちゃんが

そして、もう。目に見えずボロボロなはずの久遠先輩までもが

前線で戦っているというのに

後ろで、ただ。取りこぼしを待つ


援護人員なんていうのも、体の良い言い訳でしかない

久遠先輩がとても優秀で、取りこぼさないから自分が楽?

そうじゃない、【自分が何もしていないから】楽に思えるだけ

東郷「……久遠先輩」

だから、喜ぶことなんて出来やしない

勝てたとしても、自分だけが何もせず。みんなが傷ついていく

そんな戦いの勝利など、喜べるわけなんて無い

とはいえ、今回ばかりは東郷ではなくとも喜ぶことは出来ないだろう

こんな短時間で一番凶悪かつ強力な敵が消滅したということは

東郷の想像通り、それを可能とする人が頑張ってしまったということだからだ

東郷「自分に力があったら。なんて」

天乃程の力はない

機動力も、速度も、威力も、何もかも

優れている点といえば、武装補正による射程くらいで

それも

端末で見たあの驚異的な機動力もってすれば、優れているなどといえたものではない


戦いの最中だというのに

自分だけが無力という嫌な考えは瞬く間に広がっていく

東郷はそんな自分の思考回路を断ち切るために

深呼吸をして、端末を強く握る

東郷「自分に出来ることは……」

打ち漏らした敵の排除

それだけなのだろうか? 前線に居らず後ろに控えている人間は

ただ、指を咥えて見ているだけなのだろうか?

そんなわけが無い。そんなはずがない

だったら何をすべきか

東郷は考えをめぐらせ、マップを見つめる

その瞬間、停滞を選択していたはずの双子座が勢い良く東郷の下へ駆け出し

友奈によって分裂した牡羊座の片割れが夏凜へと向かい

乙女座、射手座それぞれが各方向に逃げ出す

東郷「なっ」

天乃が強すぎるからだろうか

それとも

天乃がリーダー格を倒してしまったからだろうか

いずれにしても、最悪の展開が近づいていることだけは確かだった


牡羊→友奈 命中判定↓1 01~82

牡羊→夏凜 命中判定↓2 カウンター 71~75

双子→東郷 命中判定↓3 01~98


→バーテックス移動処理

→戦闘処理

→東郷に120ダメージ

→友奈に86ダメージ


園子「……不味い。かな」

沙織「そうだね。バーテックスがどういう動きをするのか、あたしも調査不足だったみたい」

沙織はそういいながら、

自分の頭に手を当てて、残念そうに息をつく

猿候が知らなくても沙織が知っていれば解るが

当然だが、どちらも知らなければ解らない

ゆえに、バーテックスの今回の行動は完全に想定外だったのだ

園子「にぼっしーに牡羊座1、ゆーゆとまこりんに牡羊座2、かに座封印中、双子座がわっしー……」

沙織「射手座が左側、乙女座が右側に逃走……厄介だね」

まず、夏凜は蟹座の封印中のため、

その場から遠く離れて牡羊座を回避するなんて出来ないから、一方的な挟み撃ちになる

東郷に関しては双子座と一騎打ちのため、封印が行えないから時間稼ぎが出来るかどうかで

友奈か球子がその援護に回れれば良いが、そうなるとどちらかが牡羊座と一騎打ちになる

射手座と乙女座が各方向に逃げているが、フリーの若葉・風・樹では遠すぎるため

三人は回れても夏凜の援護が限界

そうなると、天乃が一人で乙女座と射手座を討伐しなくてはいけないことになってしまう


見逃せば、逃した方が次の戦闘に出てくる為

二回戦目の難易度がさらにあがってしまう

かといって、同時に神樹様へと向かっている双子座も逃せない

逃せば世界そのものが終わってしまう

だが……

園子「私が力を使ったら。次……出てこられないかもしれない」

わっしーの手助けがしたい……助けたいよ

でも、でも……っ

一時の感情で動けば、天乃から頼まれている次の戦いが大変なことになる

だから、園子は端末を操作してしまいそうな強い意志をなんとか押さえ込む

そんな、堪える園子を見つめる沙織は

遥か遠くへと目を向けて

沙織「……勇者部が満開を使うか。久遠さんが満開を使うか。それとも……根性で倒しに行くか」


園子「……今までの天さんなら、間違いなく。満開を選んでる」

沙織「今は?」

園子は答えない。答えられない

どうするだろか、我慢、してくれるだろうか

射手座や乙女座を見逃してしまうことを認められるだろうか?

きっと……

沙織「双子座だけは、あたしが止めてあげる」

園子「え?」

唐突な声に、園子は驚いて目を向けると

巫女装束に身を包んでいる沙織は困ったように笑みを浮かべる

沙織「東郷さんはまだ、満開できる状況じゃない。なら、誰かが手を貸すしかない」

園子「でも」

沙織「大丈夫。あたしはあたしに出来ることを全力でやるだけ。疲れるからやりたくないけど。契約だからね。仕方ない」

沙織の中身が猿猴だとわかっているが

それでも沙織らしい雰囲気に、たとえそれが沙織自身だったとしても

同じく行動しているのだろう。と、園子は思い、うなずく

手を貸したい。でも、貸せない

その罪悪感を抱きながら、しっかりと沙織を見送る

園子「……天さんは次をお願いって言ったんだ。みんなをよろしくって。だから、私がその場に居られないなんて絶対にダメ」


→侵食率増加

→封印につき侵食率上昇+

→バーテックス体力回復


ターン経過→【http://i.imgur.com/i9aqNVr.png


天乃「……っ!」

逃げ出すバーテックス、夏凜や友奈、東郷に迫っていくバーテックス

それらをマップや肉眼で確認した天乃はどうすべきかと、歯噛みする

夏凜の援護をしていたら射手座と乙女座に逃げられる

かといってこのまま離れれば、夏凜が追い詰められてしまう

天乃「私……」

満開を使えば一発で逆転が出来る

何一つ残すことなく、確実に葬り去ることが出来る

それをしなければ、誰かが、満開をしてしまうかもしれない

天乃「どうする……どうする」

満開を使うことなく、極限まで体を酷使して

それでなんとかなることを 祈るべきだろうか?

それとも、満開をしてしまうべきだろうか

天乃は、考えて……息を呑む



1、移動 ※再安価
2、精神コマンドを使う ※再安価
3、誰かに連絡 ※再安価
4、満開


↓2

※酷使するには精神コマンド 覚醒が必要です


天乃「満開を――」

悪五郎「正気か、女」

天乃「!」

満開を使おうと決意した瞬間

その考える時間を無駄にするように、少年の姿をした精霊の一人、

悪五郎が姿を現した

悪五郎「使うなと言われたのではないのか?」

天乃「……でも、使わないと」

使わないと、誰かが使わなければいけなくなる

もう一戦残っている現状、それだけは絶対に避けなければいけない

今までの経験上、

乙女座と射手座はここで見逃せば(あと1ターン)で結界の外に出てしまう

その程度の機動力はある

考えてみれば、そんな素早く離脱できる位置に陣取っている時点で

逃げること前提だったと気づくべきだったかもしれない

あるいは、近づいたから。素早く倒せてしまったから

急きょこうやって逃げるようにしたのか……

天乃「私一人犠牲になるならいい。でも、今ここで、私以外の誰かが犠牲になることなんて認められない」


悪五郎「だが、それでは――」

九尾「妾は言うたはずじゃぞ。誤るな。と」

天乃に力を貸しているためか

小さな女の子の姿で現れた九尾は天乃をまっすぐ見つめて、口を開く

それで良いのか、間違っていないのか

そう、訪ねているような言い方に

天乃は困ったように、笑みを浮かべる

天乃「私だって、叶うならしたくはないわよ。でも、次を考えて。九尾」

九尾「主様自身の先は考えぬのか?」

天乃「言ったでしょう。朽ちる定めの老いたモノこそが私だと」

まだ先の長い、綺麗な者達ではなく

老い先短い中古品である自分こそが力を使うべきだ

改めて主張する天乃の瞳には

躊躇いと、悲しさと、恐怖があって

それらを包み込む覚悟があった

悪五郎「おい女狐、こいつは使ったらどうなる」

九尾「何とも言えぬ。が、すくなくとも……軽くはない」


満開を使わず、二つの力を同時に使用しただけで

血を吐いて、激痛に呻くような状態だ

満開なんて考えるだけでショック死するかもしれない

そんなお茶らけたことを考えながら、

天乃は端末を握りしめる

怖くないと言えば嘘になる

悲しくないと言っても、嘘になる

体を延々と動かし続けてくれる胸の奥のとても熱いものが

じわじわと全身に広がっていく

だから。きっと、そのせいで何かは頬を伝って行くのだろう

天乃「…………」

九尾「良いのかや?」

天乃「…………」


1、満開を実行する
2、夏凜に連絡
3、覚醒を使って頑張ってみる ※酷使

↓1~↓3


※乙女座、射手座は次ターンには離脱済み


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


酷使無双


二回戦目操作は夏凜か若葉あるいは園子
若葉が参戦できるかは一戦目の内容次第


では、初めて行きます


天乃「……解ったわ」

体が最後まで持ってくれるのか

それさえも解らない状況ではあるが

天乃は唇を強く噛んで、九尾の問い、悪五郎の制止に応える

本当は、満開を使って不安を拭ってしまいたい

けれど、そう。まだ、自分は頑張りきっていないのではないかとも思う

もちろん、それだって体を酷使するようなことだし

次に目を開けるのは一ヵ月後、半年後、一年後そんな事だって起こり得る話だ

それでも、忘れたくないと思った

失いたくないと思った

どれだけ夢を見ることになっても良いから

絶対に助けることが出来る方法よりも

自分が生き残ることが出来るであろう方法を

誰かがでは無く、自分が失わなくて済むであろう方法を選択した


天乃「………」

本当に臆病になったと思う。弱くなってしまったと思う

自分自身が失われていくこと。それにはもう、慣れた筈なのに

久遠天乃という人間に絡み付いて離れようとしない

離れる事を拒絶するものが、心の中に出来てしまったせいだろうか

天乃「……忘れたくない? 失いたくない?」

そっと胸元に手を触れる。今はとても穏やか

こんな切迫した状況で、死にそうなのに

嵐の前のように、静か

天乃「そう……そうね」

自分はなぜ、こんなにも頑張っているのだろう

夏凜達を、勇者部を、みんなを、護るため

何を? 居場所を? 命を? 体を?

心は、護らなくても良いの?

こんな私を好きだと言ってくれたみんなや、夏凜

その気持ちは、どうなっても良いの?


良いわけが無い

それを護ってこそ、護れたというべきだ

それを、自分はどれだけ口にしたのかと

天乃は自分自身に問いかけて

九尾「失ったのなら、失った人の気持ちが解るはず」

天乃「え?」

九尾「それなのになぜ、味わわせることが間違いだと理解できないの?」

紡がれた聞きなじみのあるような、無いような不可思議な声に驚くと

その大元、九尾は真剣な眼差しを天乃へと向け、息をつく

九尾「陽乃がある時言った言葉じゃ。陽乃のときと状況は違うが、主様には合う言葉じゃろう?」

天乃「……確かに。ね」

反論することなく、苦笑して見せた天乃に

九尾はほんの僅かな変化への驚きを感じ、笑みを浮かべて目を閉じる

もうきっと、ここでは言葉は要らないはずだ

天乃「きっと心配させる。不安にさせる。怖い思いもさせる。でも、それでも。失わせないために」

強く、強く、拳を握る

頭は冷静、体も熱すぎないほどに熱く

どこからとも無く……ううん。心から湧き出てくる想いが力をくれる

天乃「付いてきて、九尾」

九尾「主様の望みのままに」


1、乙女座、射手座のみ倒す
2、乙女座、射手座、牡羊座(夏凜側)を倒す
3、乙女座、射手座、牡羊座(夏凜側)、蟹座を倒す
4、乙女座、射手座、牡羊座(夏凜側、友奈側)、蟹座を倒す
5、全滅させに行く


↓2


距離的に、射手座に対応できるのは天乃か夏凜

乙女座に関しては、夏凜、天乃、友奈、球子だが

夏凜は蟹座の封印を実行しているため、離れられないし

友奈と球子に関しては、一方が抜けるともう一人が孤立無援になってしまうため、

乙女座の対応に向かえない

だからこそ

天乃「あっちを私が片付ける」

悪五郎「それが正しいかもしれんな」

風や樹、若葉は射手座の対応には間に合わなくても

牡羊座の対応には当たることが出来る

そうすれば、夏凜は天乃が抜けても一人にならずに済むからだ

それに、バーテックス2体だけならば、無理をするのも最小限に抑えることが出来る

天乃「夏凜! こっちは任せる!」

夏凜「天――」

限りなく近く、限りなく遠い

そんな距離感の不明瞭な場所にいる夏凜に向けて叫んだ天乃は

夏凜の言葉を聞くことなく、一直線に射手座の方へと向かった


体が痛い、軋んで、揺れて

このまま走っているだけでばらばらに砕け散ってしまいそうなほど

体中が不快な違和感を発する

だけど……

天乃「ッ!」

音もなく射出された巨大な遠隔射撃用の矢を目で捉えた天乃は

左手に握った刀で鏃から削りあげるように軌道を逸らすと

半ばに差し掛かったあたりで拳で打ち抜き、矢をへし折ってそれを消滅させる

天乃「んっ」

だけど……大丈夫

一発目を粉砕した天乃は体を立たせることなく地面を転がっていく

その瞬間、二発目が背後の地面に突き刺さったが

目を向けることなく、前転

即座に立ち上がり、地面を蹴り飛ばして跳躍すると

追うように放たれた三発目が僅かな角度不足で天乃の体の下を抜けていく

天乃「……遅い」

四発目が射手座の射出口に出現するのと同時に

天乃は左の刀をそこに投げ込んで打ち消し、一回転

そして

天乃「たァッ!」

勢いそのままに、射出口の下部、出っ張った歯のような部分を踵で蹴り砕く


蹴り砕かれてバランスを崩した射手座が倒れかけたのと同時に

着地に入った天乃は、左足のつま先が地面に掠った時点で足を滑らせ

瞬時に右足を差し出して踏み込み、射手座へと肉薄する

瞬間、肘を打ち込みつつ裏拳

回復が出来ず、ビキビキと皹が入っていく射手座の体に、

天乃「ふ――っ!」

接触するためにかけたブレーキの反動を転用して、回し蹴りを決めると

その続きから逃れるように砂となって消滅していく

天乃「……次!」

けれども、安心しない。まだいるのだ

少しずつ移動していくバーテックスが

責めてきておきながら、逃げ出そうとしているバーテックスが

そんなもの

天乃「逃がすわけがな――ぁ……かふ」

方向を変えるための踏み込みで、口から血が溢れ出していく

けれど、拭わない。その手を動かす暇があるのなら、少しでも早く足を動かせ

天乃「ぐ……ぁ゛……」

閉じた口からごぷっっと赤い泡が漏れ出す。それでも、足を止めない手を動かさない

全力で樹海をかき分けた天乃は、飛来する炸裂弾を火明命によって顕現させた弓矢で打ち抜き、

一直線に乙女座の柔肌を拳で打ち貫く


天乃「かは……ん……ぅ゛」

乙女座を打ち抜いた勢いのまま地面に降りたった天乃は

そのまま数歩歩くと、膝をつき倒れ込む

腕を動かすことができず顔面を強打したが

痛いとも、何とも言えず、天乃は驚いたように目を見開いて

すぐ、笑みを浮かべる

天乃「ぁ………」

上手く声が出せない

手も足も動かせない

まだ頑張ろうと思えば頑張れるはずだが

体はすこし、休憩が欲しいようで

全身から伝わってくるねじ切られるような激痛と

絶え間ない熱を感じながら、願う

どうか、無理することなく

この戦いが勝利となりますように。と


→勇者部行動処理中

→天乃は必中かつ、確殺なので判定免除

→牡羊座A(夏凜側)封印

→牡羊座B(友奈側)封印

→双子座封印


→戦闘判定



夏凜→蟹座  CRI判定↓1  ぞろ目CRI  熱血使用中

若葉→牡羊座A  CRI判定↓2  ぞろ目

樹→牡羊座A  CRI判定↓3  ぞろ目

風→牡羊座A  CRI判定↓4  ぞろ目

球子→牡羊座B  CRI判定↓5  ぞろ目

友奈球子→牡羊座B  CRI判定↓6  ぞろ目  71~80

※コンマ判定なので連取可


追加ミス


東郷→双子座  CRI判定↓1  ぞろ目


→戦闘処理

→蟹座に1082ダメージ

→規定ダメージ突破の為撃破

→牡羊座Aに2495ダメージ

→牡羊座A討伐

→牡羊座Bに1692ダメージ

→牡羊座B討伐

→双子座に427ダメージ

→双子座健在

→ターン経過処理(侵食率、気力、MP)




→現状【http://i.imgur.com/XVGWFhU.png


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


この戦闘は勝てます。問題は二戦目
オートバトルも可能ですが、その場合はコンマ判定となるため
敗北の可能性もあるほか
満開が超高確率で使用されます


では、初めて行きます


夏凜「何が任せる……なのよ」

一人で突っ走って、

遠く離れた射手座が砂と化したかと思えば

もう一方に離れた乙女座が消え去ったのを端末で確認して、

夏凜は柄を握る手に力を強く込めて唸る

見えてないと思った?

気づいてないと思った?

土汚れた装束、赤黒く汚れた口元

昨日とは明らかに衰弱した表情

夏凜「ばかじゃないの?」

逃がしたって良いじゃない

次が大変になったって良い

そんなの、いくらだって頑張るから

頑張れば済む話だから……だから


夏凜「あぁぁぁぁぁぁあああああっもう!!」

戦闘中だというのに

天乃の事ばかり考えてしまう頭を柄で殴り

夏凜は高くほえて、空を見る。天を見る

夏凜「馬鹿じゃないの? 馬鹿じゃないの? 馬鹿じゃないの?」

天乃がそう言う人間であることは

友奈や樹たちでさえ解っていることだ

それなのにうじうじと考えるなんて無駄だ

はっきり言えば良いのだと、夏凜は刻一刻と時間の削れて行く封印

その中にある御霊を見つめ、息をつく

夏凜「自分が力不足なんでしょうが。あんたが、役立たずなんでしょうが……」

強くなりたい。

もっと強くなりたい

頑張る必要なんて無いほどに

こんな戦いになったって「頑張ってね」と、天乃が言ってしまえるくらいに


夏凜「…………っ」

まだまだ、あの背中は遠いのだ

あの日の戦いから距離はちっとも縮まっていない

はるか遠き理想として、待っていてくれているわけではないのだから

だったら、どうする

夏凜「そうじゃない」

考えを即座に否定して、息をつく

そんなことよりも、まず

今はどうするべきかと、刀を握りなおす

夏凜「目の前のことに集中しろ。凡才なら……一を追え」

騒がしい思考を静め、地を蹴る

一人勝手に全力を尽くす天乃への理不尽な怒りを消したからか

体は不思議なほどに軽かった

無駄を排除したその手は、力強さを増していた

夏凜「――ッ」

一直線に御霊に突っ込むのではなく

直前で体にブレーキをかけた夏凜は

勢いが死なないように体を回転させながら、

呼吸さえも止め、

右手に持つ刀に全てを集中させて御霊を穿つ


ガキッっという硬い反発を受けた刀は、

ほんの僅かに刀身を欠けさせたが、すでに入りかけていた皹を押し広げ

御霊全体に亀裂を走らせて――砕く

夏凜「っは」

砂と光になって消えていくのを見送った夏凜は

溜め込んだ息を吐いて、すぐに振り向く

まだ終わっていないのだ

後ろには――

夏凜「!」

樹「捕まえた――お姉ちゃん!」

遠くから全速力で先行してきた樹は

ワイヤーを伸ばして牡羊座を捉えると、一歩遅くやってきた若葉と協力して封印

飛び出した御霊に、呼ばれた風が大剣を叩きつける――が、

それはやはり硬く、砕けない


それを見た若葉が「風!」と叫ぶと風は目を向けることなくバックステップを踏み、

入れ替わるように肉薄した若葉は鞘に収めた刀を勢い良く振るう

……もう一歩か

ビシッっと皹が入っていくのを横目で確認すると

若葉「樹!」

若葉は樹に目を向けて

樹「行きます!」

答えた樹はワイヤーを引いて御霊を引き寄せ、

樹「ん……っ」

御霊が向かう方とは間逆に駆け、御霊を締め上げながら勢いのままに背負うように引き上げて

樹「やァッ!」

浮き上がった瞬間、もう一度強くワイヤーを引き締めて粉々に引き裂く

御霊が光と消え、体が砂と鳴っていくのを見送った樹はほっと息を吐いて

ふと、見えた夏凜に笑みを向ける

樹「大丈夫ですか?」

夏凜「……なんとかね」

バーテックスとの戦いの際は、切羽詰った表情だったが

やっていることのえぐさと樹の笑みを並べた夏凜は

笑顔でそれを実行する樹を思い浮かべ、思わず身震いする

正直に言わなくても、恐ろしい。そう思った

若葉「ひとまずこちらは問題ないか……球子のほうも――どうやら問題なかったようだ」

風「見えてるの?」

若葉「いや、そう感じるだけだ。球子と私は天乃を通して繋がっているからな。一応端末を確認してくれ」

そう言った若葉にしたがって夏凜が端末を確認すると

あれだけ沢山いたバーテックスは、東郷の近くにいる双子座のみで

動きが無いため、封印されているのかもしれない。と、樹が呟く

夏凜「もう一息……さっさと片付けるわよ」


球子→双子座  CRI判定↓1 ぞろ目

東郷→双子座  CRI判定↓2 ぞろ目


→戦闘処理

→双子座に1690ダメージ

→双子座討伐

→戦闘勝利


東郷「伊集院先輩、もう少し持ちますか?」

沙織「悠長に話しかけている暇があるなら、一発でも多く撃って欲しいかな」

双子座を囲むように展開する四人の沙織のうち一人に声をかけると

沙織は困ったように笑いながら、怒気のこもった声で返す

沙織は巫女の力を有しており、

バーテックスへの攻撃は出来ないが封印くらいならできる。と言っても

長々と継続するような力はもちろんないのだ

しかし、双子座の御霊も特殊で

次から次へと細々した御霊が湧き水のようにあふれ出してくる

撃っても撃っても減る気配がなくて

東郷「このま――」

球子「任せろー!」

僅かな不安、恐怖、絶望

それを感じた瞬間、それらを打ち砕くような明るい声と共に、轟音轟かせる円盤が飛来

次々に増えていく御霊を一気に壊滅させ

僅かに取り零した御霊を、東郷は咄嗟に的確に打ち抜いて、破壊する


それでも次の御霊があふれ出してくることを警戒する東郷の目の前で

双子座の体は砂となって消滅

封印の必要がなくなったと判断したのか

沙織は自分以外の3人の幻影を消して、一息つく

力を使えば使うほど、やはり疲れてしまうのだ

沙織「遅いよ、土居さん」

球子「仕方ないだろー、タマはタマで大変だったんだからな」

東郷「一応、倒すことは出来たようですね」

端末のマップを確認した東郷は

どこを見ても自分たち勇者部と天乃一行の名前しか残っていない安心感を覚えながら

警戒だけは怠らないようにと武器をしっかりと携えて

東郷「樹海への負荷が心配だわ……」

沙織「これは流石にあたし一人じゃ賄えないよ。娘が死んでもいいって言うなら話は別だけど」

冗談めかして言った沙織は

天乃の気持ちの大便をするつもりなのか

険しい表情を見せる球子に微笑みかけて首を振る

沙織「しないしない」

……とはいえ、久遠さんがどうするかにもよるよね

久遠さんの器なら、これでもまだ平気かもしれないけど、ね……


天乃「ぁ……終わった?」

まだ、全身が完全に動かせず激痛が治まらない天乃は

何とか動いた手に持つ端末を確認すると

聞こえないことは承知で、「お疲れ様」と微笑む

満開を使うことなく、努力と根性で何とかする

それを成し遂げることが出来た勇者部はきっと

以前よりは成長できているのかもしれない

……とはいえ

天乃「けほっ、けほ……っ」

飲み込むことの出来ない血を吐き出して

顔を苦痛に歪ませながら、薄く笑う

天乃「こんなに、樹海にダメージ与えてたら。まだまだ……ね」

でも、私がいてこれなのだから

人のことは言えた義理じゃないかもしれない


樹海がどれだけ侵食されてしまったのかは

数値化されているわけではないため、正確には分からないけれど

目測でも、そう。軽いものではないことだけは

天乃にも、わかって

九尾「……使うつもりかや?」

天乃「この被害、流石に許容できるわけ無いでしょう?」

九尾「じゃが、主様はもう限界じゃろう?」

満開を使わない選択をした分、体には酷使に酷使を重ねた

勿論、満開す津よりは軽微だったのかもしれないが

その結果が、今の全身麻痺に近い状態なのだ

そこにさらに穢れを溜め込むというのは、危険というレベルの話ではない

だが、目に見える樹海の穢れを現実世界に垂れ流すと言うのも

やはり、心配だった

天乃「満開を怠けた分って考えたらだめ?」

九尾「駄目とは言わぬが……良いとも言わぬ」


1、穢れを引き受ける
2、とりあえず、待機
3、仕方がなく、穢れは諦める


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



沙織「悩んだら相談、だね」

沙織(……戦い終わっても樹海化が解けない)

沙織(そこから導き出される結論は)


では、初めて行きます


天乃「……ふぅ」

空を見て、樹海の木々を見て

樹海化が一向に終わりそうもないことを確認した天乃は

少しは考える猶予をくれるみたいね。と

疲れ切ったため息をついて、考えをいったん止める

端末上のマップでは、

園子や沙織達も含めた勇者部が近づいてきていて

天乃「怒られるわよね。ふふっ、夏凜になんて言い分けするべきかしら」

冗談ぽく、笑ってみせる

それだけでも体に痛みが走って、思わず顔をしかめるが

そんな顔をしているわけにはいかないし

慣れないとね。と、心の中で苦笑する

それから少しして、勇者部全員が座り込む天乃の元に集合した


友奈「久遠先輩、大丈夫ですか……?」

天乃「足を滑らせてあの上から転げ落ちた程度だから平気よ」

風「いや、そんなレベルじゃ……」

転げ落ちたのも事実ということもあって

身にまとう装束、露出した手足のいたるところに擦り傷や汚れが付いているが

それ以上に目立つ胸元に滴った赤黒いシミに目を向けた風は

困ったように、指摘して

夏凜「あんたが転げ落ちた段階でおかしい話だっての」

天乃「猿も木から落ちるって言うし?」

夏凜「笑顔で言うことじゃないわよ」

どやっとした顔をする天乃に

何を言っても無駄なのかと夏凜はため息をついて

黙り込んでいた東郷が「すみません」と口を挟む

東郷「樹海化はいつまで続くのでしょうか」

樹「た、確かに中々戻らないですね……」


天乃の無茶に対して叱ろうとしたのを感じていたのか

樹は天乃達を気遣いながら東郷に答える

普段なら戦いが終われば樹海化が解けるが

今回はもう戦い終えているはずなのに、樹海は続いていて

それは確かに、異常なことだった

若葉「姿を隠せるバーテックスがいる。とか?」

球子「そんなのがいたら、もう、神樹様に取り付かれてるだろうな」

あげ足を取るようなしたり顔を見せる球子に

若葉は「解っている!」とやや緊張感の無い雰囲気で

沙織「バーテックスは倒した。それは間違いないよ」

夏凜「それは――」

沙織「あたし達としては間違いなく。という前置きが必要だけどね」

そんな中の沙織の一言は

和やかな空気を殺し、張り詰めさせ、恐怖を連れ込む

まさか。と、風が天乃を見て、押し黙っていた九尾が息をつく

気づかなければと、言うように


九尾「バーテックスと同様の穢れを溜め込んでいる主様がいるからじゃろうな」

天乃「……私の中に御霊でも出来ちゃった?」

九尾「そう言うわけではない。もちろん、しばらくすれば主様の中でその穢れも纏まって収まるじゃろうが……」

沙織「馴染むまでは久遠さんはバーテックス扱いされるかもね。けど、戦う必要はないから安心していいと思うよ。しばらくここにいることになるけどね」

繋ぐようにいった沙織は

他の誰かに口を挟ませること無く、続ける

沙織「それよりも今回の戦闘による樹海のダメージ、穢れはどうするの? あたし一人では体が持たないよ? 巫女とはいえ、人間だからね。死んでも良いなら話は別だけど」

友奈「そんなっ」

沙織「そもそもね。こんな穢れを一身に引き受けるなんていうこと事態おかしな話なんだ」

心配そうな声を上げた友奈に対して「ごめんね」と微笑みつつ

天乃を見つめた沙織は困ったように肩をすくめて

冗談じゃないよ。と、視線が語る

沙織「久遠さんなんて、今は叩けば気を失いそうな状態でしょ?」

天乃「試してみる?」

沙織「余裕が無い笑顔。あたし、その顔知ってるよ」


長年。というには短すぎる時間だけれど

それでも、その時間の間は長く見てきたつもりだ

もちろん、猿猴ではなく沙織が。

その記憶を共有しているからこそ

沙織である猿猴もまた、解る

沙織「九尾さんからなんで樹海化しているかについては聞いてないの?」

樹「それは、人々や世界を護るためだって」

沙織「うん。それでも間違ってないかな」

でもね? と

沙織は樹たち全員に問いかけるように切り出して

沙織「樹海化は被害を最小限に抑えるための防衛システムなんだよ」

風「というと?」

沙織「簡単に言えば、この木一つが1だとしたら簡単に死んじゃうけど。この樹海全体で1だとしたら死ににくいよね?」

そう言う感じだよ。と沙織は沙織らしい明るい声で言う

要するに、樹海化というのは

いかに防ぐかではなく、いかに分配し、被害を最小限に抑えるか。というシステムらしい

そして、だからこそ。それを一人でまかなうというのは

本来ではありえない話なのだ


沙織「そして分配されたことで小さくなった被害が現実の世界にばら撒かれるし、もし、その程度で補えない場合は」

とんとんっと、

沙織は自分の胸元をつついて、そのつついた手をぐっと握り締める

沙織「何かの命を持って補う。というか、命が失われる可能性があるんだよ」

もっとも、たとえコンクリートで作られたものであっても

それには命というものがあって、大抵はそう言ったものから持っていかれるんだけど

と、沙織は言って、天乃を見る

沙織「どうする? このレベルになると少し危険だよ。娘の力も使うのが得策だと思うけどね」

天乃「それで沙織には影響ないの?」

沙織「多少は倦怠感を感じると思う……でも、あたしはそのくらいなら我慢するって、言ってるよ」

沙織の口にする一瞬、首をひねりそうな言い回し

それが猿猴ではなく、沙織自身の言葉であると理解している天乃は

寂しそうに目を伏せる

沙織らしい

でも、迷惑。私としては……ありがたくない

でもきっと、自分がそう思うということは

沙織もまた、みんなもまた、そう思っているのだろうと、思って


1、沙織と一緒に穢れを押さえ込む(負担5割ずつ)
2、天乃が全て引き受ける
3、今回は、穢れを諦めることを提案する


↓2


本心を言えば、沙織に負担をかけたくはない

全部、自分が担ってしまいたい

けれど、体のことは良く分かっている

みんなの気持ちも、きっと。同じ立場だから。なんとなく想像がついて

それでも。と、天乃は唇を噛む

本当にそれで良いのか

本当にこんなことを言って良いのか

迷って、悩んで、迷って、苦しんで

手の感覚が戻りつつある一方、揺らぎ始める意識

それを感じた天乃は「ふっ」っと息を吐いて、沙織を見る

天乃「……ごめんなさい。手を、貸して貰える?」

夏凜「……………」

自分ひとりでやるのではなく

手を貸して。そう言った天乃にそれぞれが驚く中

沙織は優しく笑みを浮かべて、頷く

沙織「その言葉を、あたし達はいつも待ってる。今までも、これからも」

出来ないことが多々ある中で、きっと出来る事があるはずなのだと

そう思い続け、しかし、それが本当に必要なことかわからないから

その行動をする勇気が足りないから、求められる時を待っている

沙織「大丈夫。あたしはごめんなさいは要らないよ。としか、言っていないからね」

天乃「……そう。そっか、そう、なのね」

稲荷の力が働き、続々と流れ込む穢れに意識を飲み込まれていく天乃は

ほんの少し辛そうに、しかし、笑みを浮かべる

いつか、クラスメイトもそんなことを言っていたな。と、思い出していた


→最終戦闘処理

→満開無し

→久遠天乃、死神九尾共有

→穢れ40%引き受け

→天乃20% 沙織20%

→沙織が倒れました。

→天乃が倒れました。


1日のまとめ

・   乃木園子:交流有(戦闘、恋愛相談)
・   犬吠埼風:交流有(戦闘)
・   犬吠埼樹:交流有(戦闘)
・   結城友奈:交流有(戦闘)
・   東郷美森:交流有(戦闘)
・   三好夏凜:交流有(戦闘、恋と思ったか、する?)
・   乃木若葉:交流有(戦闘)
・   土居球子:交流有(戦闘)
・ 伊集院沙織:交流有(戦闘、手を貸して)

・      九尾:交流有(戦闘、恋を知った、戦闘が終わったら伝える)

・       死神:交流有(戦闘、千景にしない)
・       稲狐:交流無()
・      神樹:交流無()



6月13日目 終了時点

  乃木園子との絆 54(高い)
  犬吠埼風との絆 44(少し高い)
  犬吠埼樹との絆 41(少し高い)
  結城友奈との絆 59(高い)
  東郷美森との絆 43(少し高い)
  三好夏凜との絆 63(高い)
  乃木若葉との絆 39(中々良い)
  土居球子との絆 27(中々良い)
     沙織との絆 53(高い)
     九尾との絆 45(少し高い)
      死神との絆 38(中々良い)
      稲狐との絆 30(中々良い)
      神樹との絆 9(低い)

 汚染度???% +???+20%

※夜の交流で稲荷と話せば、汚染度が判明します


特別操作キャラクターを選択してください
戦闘もありますが、通常行動もあります
操作キャラクターによって変化しますので、ご注意ください


乃木園子→【http://i.imgur.com/t3xRwD9.png

三好夏凜→【http://i.imgur.com/pUJUUH0.png

乃木若葉→【http://i.imgur.com/2kLDysO.png



1、園子
2、夏凜
3、若葉


↓1~↓3


では、操作キャラクターは三好夏凜でスタートするというところで、ここまでとさせていただきます
明日もできればお昼頃から
再開地点は再開時に判定します



今回のバーテックス

レオ→ただの囮。撃破前提
双子→あわよくばゴールイン
その他→程よく戦って出来れば退却し、天乃のいない二戦目出撃


では、初めて行きますが、夏凜のスタート位置を決めます



√ 6月14日目  朝() ※日曜日

01~10  園子のところ
11~20  天乃の病室
21~30  訓練場
31~40  部室
41~50  天乃の病室
51~60 園子のところ

61~70 大赦

71~80  訓練場
81~90  久遠家
91~00  大赦

↓1のコンマ  


√ 6月14日目  朝(病室) ※日曜日


戦いを終えて現実の世界に戻った後、天乃と沙織は意識を失った

沙織は穢れを引き受けたことによる一時的な疲労による気絶だったが

天乃はそれだけでなく、体の内側の喉や肺などの内臓の一部が酷く傷ついていたらしい

医療班曰く、

勇者の力によって回復してはいたが、それと同時に自身の能力によって体を蝕まれて

半永久的な自傷効果となって

そして、戦闘という激しい運動を行っていたことによって

体へのダメージはより深刻なものとなって、回復しきれず、吐血等をしてしまったということらしい

夏凜「……馬鹿ね」

それはどれほどの苦痛だったのだろうか

痛いだけじゃない、苦しいだけじゃない、辛いだけじゃない

きっと、それはとても重い……

夏凜「そこまでして……あんたは」

ベッドの上、医療器具をこれでもかと繋がれた天乃の髪を、軽く撫でる

生きている。生きているが、このまま目を覚ますことなく死ぬ可能性さえあると、医療班は言う

それほどまでに、天乃の体は負荷がかかっているのだ

それも、薬や手術などの現実的な治療ではどうにもできないような、負荷が


夏凜「大赦の巫女はまたすぐに来るって言ってた」

バーテックスの連日の襲来

これは、天乃を無力化してから攻める為であると仮定される

というか、そうとしか考えられない

九尾や風達だって、そう考えている

夏凜「今度は、あんたがいない」

常時主力というだけでなく

いざというときの切り札だった

戦って傷つく天乃を見るのは嫌だったし

それで勝利してしまうのも嬉しいとは言い切れないものだった

けれど、その存在がみんなにとって

安心できるものであるのは事実だった

天乃なら何とかなる。何とかしてくれる

そうしないでくれと口で言うくせに

心のどこかでは、そんなことを思っていた。頼っていた

それが、無くなって初めての戦闘

絶対に勝てると言う確証のない、戦い

夏凜「……はっ、ふざけんなっての」

勇者であるために鍛錬を続けてきた

そのはずなのに、戦いを前にして手が震える

それがあまりにも、みじめに思えた


風達だけでなく、自分も頼っていたのだ

その圧倒的に遠い背中に

近づこうとしながら、頼って、願って、祈って

夏凜「……そりゃ、いつまでも果てしないわ」

そんな風に頼り切って、いなくなっただけでこれなのだから

そんな自分を嘲笑するように笑った夏凜は、

目を瞑ったままの天乃の顔を、じっと覗く

夏凜「…………」

天乃は気づいていないかもしれないけれど

何度か、寝顔を見たことがあった

いや、それでは偶然見たようだし

しっかりと言えば、見せて貰ったことがある。無断で

夏凜「変わんないわね。あんたは」

寝ているときは、まるで常に同じ夢を見ているかのように

同じ顔をしている。同じ動きをしている。

もっとも、誰でもそう言うものなのかもしれないけれど


1、頑張ってくる。待ってて、天乃
2、ちゃんと、帰って来なさいよ
3、目覚めのキスは王子様の特権


↓2


夏凜「…………」

天乃単体の個室の為

他の誰かがいる訳はないのだが

なぜか、きょろきょろと辺りを見回した夏凜は

軽く咳払いをして、そっと天乃のほほを撫でると

夏凜「……少し、力を分けて貰うわよ」

天乃のほんの少し乾いた唇にキスをする

熱く激しいものではなく

本当に軽く、けれども想いの籠ったキスをして

夏凜「私も頑張る。だから、あんたも頑張って戻ってきなさい」

僅かな気恥ずかしさを持ちながら

天乃の耳元に囁いて、離れる

夏凜「……ま、目を覚ますわけはないか」

代替、

王子様なんて柄でもないし

と、夏凜はどこか残念そうに笑う

夏凜「それじゃ、行ってくるわ」



√ 6月14日目  朝() ※日曜日


※勇者部は園子のところに集まっています


1、大赦へ
2、久遠家へ
3、園子のところへ


↓2



園子「ごめんね~私が動けないから」

夏凜「良いっての。いずれにせよ、全員で集まることには変わらないんでしょ?」

風「すぐに戦闘があるって言うし、ばらばらなのは得策じゃないのよねぇ」

園子が動け無い為、必然的に全員がここに集まった

みんな言わない。でも、不安なのはわかる

天乃がいない。それだけで

誰かと一緒でなければ

みんなと一緒でなければ

恐怖に飲み込まれてしまいそうなのだ

樹「……あ、あの」

若葉「?」

樹「球子、さんは?」

若葉「球子は天乃の方にいる。次の戦いに呼ばれることは恐らくないが、それでも。いや、だからこそ一人にはできない」

そう言った若葉は

安心してくれ。私がしっかりと働くからな。と、胸を張る

友奈「一緒に頑張ろうね、乃木さん」

若葉「普通に呼び捨てで構わないぞ。なぜだか、友奈にそう呼ばれるのは困る」

友奈「そう……かな? じゃぁ、若葉ちゃん!」


東郷「友奈ちゃんったら……」

友奈の明るい声は、どんよりと沈みかけた私達の空気には不釣り合いで

けれど、それを持ち上げてくれるような力がある

不安げだった東郷も

まだ少しぎこちなさはあるけれど

小さく、笑う

夏凜「…………」

友奈がいるなら、一応は心配なさそうだ

これなら、ここに来ることなく

あの人に少し手合わせを願っても良かったかもしれない

私はまだ、弱いんだから

東郷「夏凜ちゃん?」

夏凜「ん?」

東郷「どうかした?」

夏凜「いや、流石友奈って、思っただけ」

友奈「えっ? 私?」

変わらずの明るい声

そこに、どこか天乃に似たものを感じた



1、作戦会議
2、友奈と交流
3、風と交流
4、樹と交流
5、東郷と交流
6、園子と交流
7、若葉と交流
8、九尾と交流
9、イベント判定

↓2


夏凜「さて、次の戦闘でどうするか考えましょ」

樹「でも、相手が分からないんじゃ対策が出来ないんじゃ……」

園子「ん~でも、ある程度の予測なら出来るんじゃないかな」

そう言った園子は隠れてないで出て来てよ。と

どこかに向けて言うと

どこからともなく、九尾が姿を現した

九尾「主様がいない以上、出ていく理由もなかったのでな」

そう言った九尾は

しかし。と続けて全員を見渡す

きっと、心の内で不安を感じているのだと、見抜いているだろう

九尾「ふむ。今回も、あの集合体で攻めてくるじゃろうな」

風「集合体? あれは天乃が倒したんじゃ」

九尾「あやつは集合体じゃぞ。その素材があれば生み出すことが出来る」

東郷「つまり、バーテックスは満を持して襲撃してきた。と」

東郷の言葉に九尾は軽く頷いて

樹が「そんな……」と怯えた声を漏らすと

園子「大丈夫だよ~」

園子が優しく声をかけて、近くにいた若葉が頭を撫でる

二人の乃木はやはり、似ている


友奈「集合体……直接戦ったのって」

若葉「天乃だけだ。私達は遠くから攻撃を受けたに過ぎないから、正確な動きは……」

風「でも、集合体ってことは、素材の攻撃方法の寄せ集めじゃないの?」

樹が怯えている反面

しっかりしていることを示そうとしているかのように

風は、冷汗を見せながらも、はっきりと、若葉に問う

若葉「そうだな……各々の特徴的な攻撃となるとかなり厄介だな」

東郷「それを、久遠先輩はたった一人で……」

友奈「だ、大丈夫だよ!」

友奈はチラリと東郷を見てから

元気よく、声を上げる

でも、きっと、友奈も不安だ

怖いって思っている

それでも、東郷が恐れているから、みんなが不安そうだから

だから、友奈は元気よく声を出す

友奈「一人で出来ないならみんなでやればいいんだよ。勇者部は、いつだってそうしてきたはずだから」

ね? 東郷さん

明るく言う友奈に、東郷は弱弱しい声を溢して

若葉は園子に目を向けて、頷く

若葉「九尾、集合体以外に敵は?」

九尾「恐らく、居らぬ。主様が馬鹿な真似をしおったからのう」


くつくつと、困ったように笑う

それはどこか悲し気で

けれども楽しんでいるような、複雑な笑い声

夏凜「けど、天乃がそうしてくれたから。次の私達の戦いはすこしは楽になったってわけだ」

そこから、眼を逸らす

じっと見ていると

目を合わされてしまいそうで

園子「そうだね~」

樹「けど、向こうも復活してくるんじゃないんですか?」

若葉「いや、その心配はいらないだろう」

樹に寄り添う若葉は

すぐにその言葉を否定して

若葉「時間が経てば天乃が戻ってくる可能性がある。そうすれば、向こうの負けは確定だ」

だから心配するな。と、樹に笑みを向けた若葉は

夏凜へと目を向ける

若葉「戦えるか?」

夏凜「……誰に向かって言ってんのよ」

若葉「ふっ、なら。さっきの事には目をつぶっておく」


若葉の満足げな表情が理解できなかったけれど

その隣、九尾が自分の唇に触れながらニヤついてるのが見えて

夏凜「は……なっ」

見られたのだと気づいて、思わず赤面する

けれど、思いなおせば、そうだ

別に恥ずかしがるようなことでもないんだと、深呼吸

そこらでしまくっているやつなど街を歩いていれば時々いる

そんな奴らと同列になるつもりはないけれど

でも、これから大きな戦いが控えているのだから

そのくらい、許されても良いはずだ

友奈「夏凜ちゃん?」

夏凜「ん……あーで、どうするわけ?」

風「そうねぇ、とりあえず……あたしと樹、友奈と東郷、乃木一族はまとまっておきましょ」

園子「仕組まれたように、遠距離と近距離だからね~」

思えば確かに……って

夏凜「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。私は?」


友奈「夏凜ちゃんは本来、久遠先輩と組んでるはずだから」

風「余った」

夏凜「おい」

友奈「あはは……だからね? どこかに入って貰おうかなって」

風の悪戯な笑顔に苦笑した友奈は

真っ直ぐ夏凜を見つめて、口を開く

友奈「私と東郷さん、風先輩と樹ちゃん。園子ちゃんと若葉ちゃん。夏凜ちゃんはどこなら戦いやすい?」

夏凜「どこならって、どこでも……」

東郷「一緒じゃないわ。一番、夏凜ちゃんが離れることなく行動しやすいのは風先輩の組。技を合わせやすいのが乃木さんの組」

東郷や園子は補助によって行動を可能としており

夏凜の機動力と比べると、著しく劣っているのだ

ゆえに、いち早く行動したいのなら、犬吠埼チームが望ましい

似通った武器を持っている分、連携が取りやすくダメージ効率が上がりそうなのが乃木チーム

一番速度は遅いが、接敵が遅い分相手のある程度の行動を把握することが出来るのが友奈チーム


若葉「それぞれ特性がある……しかし、夏凜が単独で行きたいと言うなら、止めない」

風「若葉!」

若葉「無理に止めたところで、戦闘の効率は下がるだけだ」

風「だとしても、単独は無理。させられない」

若葉「そのサポートはする。危なくなったら守る。だから、夏凜が求めるなら許してあげて欲しい」

若葉はそう言って夏凜へと目を向けると

真剣なまなざしを向けて、頷く

選んでくれ。望むように

そう言っているような瞳は、友奈も同じで

風と東郷、樹の不安げな目が、私へと向く

夏凜「単独なんて、遊撃部隊みたいね」

天乃だったら、どういうだろう

いや、あいつはそもそもそれで余裕か。何の心配もいらないか

そう考え、苦笑して


1、犬吠埼チーム
2、乃木チーム
3、友奈チーム
4、遊撃隊


↓2


夏凜「分かった、なら。若葉のチームに入るわ」

若葉「それで良いのか?」

夏凜「同じ刀同士、上手くやれそうだし」

どのチームでもきっと、上手くやることは出来ると思う

だって、友奈と特訓をしたし

樹とだって特訓をした

もしかしたら二人の癖が分かっている分

向こうとのほうがやりやすい可能性さえある

でも

夏凜「癖の強いチームリーダーと組んでた二人と組んでみたいって思ったのよ」

園子「天さんが聞いたら、大変ねって恍けそう」

夏凜「違いない」

園子の笑みに笑った夏凜は

すぐ隣から「宜しく頼む」と

手を差し伸べてきた若葉に目を向けて、その手を取る


夏凜「勝つわよ」

若葉「当然……天乃が守った世界。私達が失うわけにはいかない」

若葉が天乃の精霊だと言うことは知っている

けれど、それ以外はほとんど何も知らない

園子の知らない乃木の人間

しかし、どこか似ている二人

知らない学校の制服

けれども、上手くやっていくことが出来る

夏凜には、どこからかわからない自信があった

友奈「頑張ろう、夏凜ちゃん」

夏凜「当然……へますんじゃないわよ。友奈」

士気が上がっていく

少しずつ、恐怖を感じながらも、確かに

九尾「今回、主様の稲荷の力は借りられぬ。被害は最小限に抑えるのじゃぞ」

夏凜「了解」

九尾「若葉、最悪の場合は力を使うことを厭うでないぞ。守るべきものを、誤るな」

若葉「……解っている。いざというときは、使う」

九尾はその言葉を見届けると

何かに気づいたように天井を見上げて目を閉じる

九尾「来るぞ」

その一言に続いて、けたたましく端末が警告を轟かせる

世界は変わる。非日常に、天乃の日常に


→戦闘開始

→マップ展開【http://i.imgur.com/dQvQjja.png

→レオバーテックス

→天乃がいない為回復します

→封印するためには、最低三人で三方向から囲んでください


夏凜「きたわね……」

園子「なんだか、前よりも大きいような」

若葉「元々大きいバーテックスだ、気のせいじゃないのか?」

そうなのかな? と言う園子だが

その表情は不安げで

夏凜「園子が言うことなんだから、警戒しておくことに損はないんじゃないの?」

夏凜は若葉に目を向けて、頷く

園子が言えば必ず正しいわけではない

けれど、ずっと戦いを見ていた園子の言葉なのだ

きっと、間違いではない

友奈「私達は左側から行くね」

風「あたし達は右端から行く」

若葉「人数の多い私達が真ん中。だな」

それぞれの攻めて行く方向を決め、徐々に近づきつつある巨大な敵を見上げた若葉は

刀の柄を握り、一度落ちつけてから

さらに息をつく

若葉「やつは広範囲に火の玉を降らせる。各班、気を付けてくれ」

樹「分かりました」

東郷「夏凜ちゃん達も、風先輩たちも。気を付けて」


東郷の心配にそれぞれ声を出さずに頷く

木々を圧し潰すような音が段々と大きくなってきているし

見上げる角度も急になってきている

その分、緊張感は強く引き締められて

なぜだか、息苦しさを覚える

夏凜「………っ」

激しい鼓動を感じる

強い恐怖を感じる

怖い、怖い、怖い

そんな、震えが全身に駆け巡っていく

けれど今朝見た触れた唇の感触が

ふと、それを包み込んでくれる

怖いのは当たり前だ

でも、動けなくなるのは当たり前じゃない

夏凜「……守りたいものが、あるんでしょ?」

だったら動け、刀を握って奮い立て

夏凜「行くわよ。バーテックス!」


1、移動
2、精神コマンド
3、一時待機 ※バーテックス、他チームが先に行動


↓2

※移動、コマンドは再安価


→移動

→移動先選択

→確認【http://i.imgur.com/2GQBBVa.png


移動先をマップから選択してください


↓2


→移動処理

→I7には行けないので、K7

→勇者部移動処理

→攻撃が可能です


1、する
2、待機


↓2


夏凜→レオ  命中判定↓1 命中率173% ぞろ目CRI  25~34カウンター


→レオに308ダメージ

→レオ行動処理



レオ→夏凜 命中判定↓1 01~66  50~54切り払い

レオ→若葉 命中判定↓2 01~79  50~59切り払い

レオ→夏凜 命中判定↓3 01~66  23~27切り払い


→ダメージ処理

→夏凜に計318ダメージ

→若葉に197ダメージ


夏凜「……間近に行くとこの大きさか」

天高い大きさは、もはやただ見上げるだけではその視界に収まらない

こんな圧倒的な敵と

天乃はたった一人で対峙しそして、打ち勝ったのかと

夏凜は息を飲んで、刀を握る

だったらなんだ

だったらどうする

天乃に助けてと叫ぶか?

天乃に来てくれと願いを叫ぶか?

夏凜「そんなわけ、いくかっての!」

弱弱しい心の煽るような言葉に

夏凜は激しく怒鳴って、地面をける力、速度

全てを一段階速めていく

バーテックスが動いているのかどうか

その圧倒的大きさによって把握し辛いものを思考から切り離し

ただただ、感覚の手綱を手繰り寄せていく


一滴の雨を感じた

ほんの一瞬、掠るような

それは、ただの期のせいだと切り捨ててしまうほどの些細な感覚

けれど、

夏凜「来る!」

大きく後ろに跳躍した瞬間、ついさっきまでいた場所に水の塊が衝突して弾ける

集合素材の一つ、水瓶座の攻撃

夏凜「っ!」

止まるな、止まるな、止まるな!

強く強く歯を食いしばり

水たまりの横を駆け抜ける

もっと早く、もっと、もっと

夏凜「もっと速く!!」

足のつま先が地面に触れた瞬間には、蹴り出し、握った刀を前に突き出す

それでもまだ、遅い

夏凜「貫けぇ!」

背後から再び飛来する水の塊を横跳びに回避し

目の前に迫った集合体の体に刀を突きたてて、爆発させ、離脱

そして――世界が赤く染まった


夏凜「若葉!」

若葉「見えている!」

昨日も見た、紅き絶望の雨

集合体が持つ、広範囲攻撃

全身に迸ってくる昨日の痛みをかき消すように力を籠め、駆ける

空を見ず、樹海の中を縦横無尽に駆け巡る

止まれば当たる

止まらなくても当たる

追尾機能のある陰湿な火炎弾は

刀で切り裂くや否や、弾けて目をくらまし

すぐ背後から襲い来る

夏凜「このっ!」

一つ一つ切り伏せて

けれども、そのどれもがはじけて、次がやってくる

その無制限のような悪夢は――

若葉「くっ……この数――っ!」

立ち向かう勇者を覆うように降り注ぎ、打倒す


夏凜「ぐ……しまっ!」

数多の星を切り伏せ

それでも避けきれず、背後から飛来した火炎弾が直撃

精霊がガードしてくれたものの爆風に浮いた夏凜が

まだまだ迫りくる火炎弾を回避しようと着地に構えた時だった

背中に、おぞましい冷気を感じた

振り向いてはいけないような、そんな禍々しいものを感じ

そして

夏凜「っあ――かっ!?」

角のような何かが衝突し、精霊の障壁ごと夏凜を樹海の根に押し貫く

背中を強打した鈍痛、押し出された空気、混じる血の味

貫くことを試みる角が障壁と衝突するバチバチという音がはじけて

諦めたのか、角は引き返して、バーテックスの元へと戻っていく

夏凜「かは……はぁ……っ」

取られた空気を取り返すほどに強く息を吸い、吐いて

取り零した刀を強く握り、そして

夏凜「やっぱり……単発の一撃じゃ無意味か」

自分の与えた傷がもうすでに癒えてる絶望を、感じた


→ターン処理

→レオ、自動回復

→侵食率増加

→現状【http://i.imgur.com/TXfxNSK.png


若葉「夏凜! 無事か!」

夏凜「この程度なら、まだまだ」

天乃はもっと痛かったはずだ、苦しかったはずだ

バーテックスの攻撃なんかではなく

体の内側が腐り果てていくような

そんな鈍く、蝕む痛み

それを感じながら、もっと早く、もっと強く

もっと全力で駆け巡っていたはずだ

だから

若葉の心配そうな表情に、笑みを向ける

夏凜「このくらい、かすり傷」

若葉「……無理はするな。精霊の障壁があるとはいえ、下手すれば気絶する」

夏凜「若葉は消滅すんでしょうが。あんたは大事なメンバーなんだから。消えるんじゃないわよ?」

若葉「ああ、分かっている」


一戦交えてわかったのは

とにかく、単体でのちっぽけな攻撃力では

通ったとしても超回復力によって意味がなくなる

レオは全体への攻撃をしつつ、角のような足?でも攻撃してきたことから

同時攻撃を可能としてる

夏凜「んな、むちゃくちゃ……」

自分で言って悪態をついた夏凜は

自分の満開ゲージを一瞥して、息をつく

最悪、使うべきだ

夏凜「若葉、あんたも満開できる?」

若葉が九尾から言われていたことを思い出して聞くと

若葉は望ましくないと言う表情で首を横に振る

若葉「満開ではないが、使える力はある。だが、使えば天乃に大きな負担をかける」

夏凜「とすると……本当に必要な時以外は使えない。出来れば使いたくないってやつね」

若葉「……そう言うことだ」

どうするか……


1、移動
2、精神コマンド
3、一時待機 ※バーテックス、他チームが先に行動


↓2

※移動、コマンドは再安価


SP180/180

1、必中(10)  命中が100%
2、熱血(35)  ダメージ2倍
3、根性(30)  HP30%回復


↓2

SP145/180

1、必中(10)  命中が100%
2、根性(30)  HP30%回復
3、もう使わない

↓2

熱血を使用しました


→精神コマンド使用処理

→コマンド使用を終えます

→熱血がかかっているため、攻撃した場合効果が発揮され 効果が消えます

→カウンターには適用されません


→行動選択


1、移動
2、待機

↓2


→移動

→移動先選択

→確認【http://i.imgur.com/2TRl4l5.png


移動先をマップから選択してください


↓2

→移動処理

→G3

→レオ左

→勇者部移動処理

→友奈の行動が変更されました

→封印が可能です

→封印後は3ターン以内に撃破してください

→集合体の為、封印中でも回復能力は健在です



→封印の準備は出来ていますか?



1、はい
2、いいえ


↓2

※3ターン経過したら封印が出来なくなります


→若葉、園子、樹が戦闘に入ります

→夏凜も戦闘の参加が可能です

→熱血がかかっています

→現在の最大火力は400です

→次の最大火力(650)まで気力が13足りません


→攻撃しますか?


1、する
2、しない



↓2


夏凜→レオ  命中判定↓1 命中率173% ぞろ目CRI  51~60カウンター 【熱血】

若葉→レオ  命中判定↓2 命中率140% ぞろ目CRI  01~10カウンター

園子→レオ  命中判定↓3 命中率290% ぞろ目、01~10CRI  67~76カウンター

樹→レオ    命中判定↓5 01~74

レオ→樹 命中判定↓6 01~79  50~59切り払い

レオ→風 命中判定↓7  50~54切り払い それ以外命中

レオ→園子 命中判定↓8 01~69  54~63切り払い

レオ→若葉 命中判定↓9 01~79  01~10切り払い



※判定数多いので連取可


→戦闘処理

→レオに5298ダメージ

→風に175ダメージ

→園子に84ダメージ

→若葉に197ダメージ

→カウンター 夏凜に199ダメージ


では、本日はここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



園子が園子様と呼ばれる貫録を見せつける驚異の単機3400ダメージ(CRI有)


では、はじめていきます


夏凜「私は左側から攻める」

若葉「了解した」

夏凜の単独先行その提案を若葉は異議を述べることなく受け入れて

若葉「行け。夏凜」

促す。止めることなく、望むままに向かって背中を押す若葉に

夏凜は僅かに振り返ったが

若葉はただうなずいて、笑みを浮かべる

若葉「言っただろう? サポートはする。と、こっちは私達に任せておけ」

夏凜「平気?」

若葉「誰だと思っている。任せておけ」

同じ事を繰り返す、戦友に

夏凜は笑みを向け、背中を向けて駆け出す

バーテックスは動かず

さながら固定砲台のように仕掛けてくる

そのせいで、友奈たちが予想以上に間に合わない

だから、代わりのアタッカーが左側に必要だった


もちろん、バーテックスが動かないのは自分達が攻めてきているからで

違う行動をしていれば当然、違う行動をしてきていたはずだし

それなら、友奈たちが間に合う戦い方も出来たかもしれない

けれど、射程圏内に入ってしまった今、

全力で後退しようと一度は必ず撃たれる

だったらもう、攻めるしかないと、夏凜は集合体を見上げ――加速

夏凜「ふ――っ」

友奈と東郷はこのルート変更で多少動きを変えることになるだろうが

乃木チーム、犬吠埼チームに関しては動きは変わらないはず

だったら

夏凜「一気に攻める!」

夏凜を敵と認識した集合体の角が、動くたびに追尾して

その凶悪な切っ先を常時夏凜へと向ける

動いても、動いても、まるで糸で繋がっているかのように正確に追いかけてくる


夏凜「……ミサイルかっての」

冗談っぽく呟いた瞬間、背筋を舐めるような悪寒を感じ

自分の意思さえも置き去りに急ブレーキして身を翻すと

角がすぐ真横を通り抜け、大きさゆえに夏凜のとっさに出した刀を掠める

夏凜「っ!」

掠っただけだ。防御したわけでもない

なのに、刀身は欠け、ビリビリとした震えが右手に残る

そんな凶悪な武器を横目に、夏凜は一目散に駆け出す

逃げるため? 否、戦うために

樹海の寝に突き刺さった角が、地を揺らして抜け出し這うように向かってきている

それを示すようなバキバキと木々を砕く音が近づく

夏凜「…………っ、はっ、かっ……」

限界を超えようとする加速

その過負荷に堪えかねた体は

無意識に呼吸を諦めて、

意識的に無理矢理再開した途端、苦しみ呻く声が漏れる


その負担に体が軋む、痛いと悲鳴を上げ

止まっても守られるよと、悪魔が囁く

けれど、夏凜は歯を食いしばってさらに深く強く

しかしながら、素早く地を蹴り樹海をかけぬけていく

天乃のいる世界、それはこんなものではない

もっと早く、もっと強く、もっと恐ろしく、もっと苦しく、もっと痛い

夏凜「っ……たぁぁぁぁぁぁぁッ!」

雄たけびを上げ、空気を吐き出す

甘えるな、弱音を吐くな。そんなもの、終わるまでは堪え凌いで見せろ

鍛えたはずだ。頑張ってきたはずだ

未完成の出来損ないだって良い

必要なのは、大事なのは、今の自分がどれだけのことを成し遂げられるかだ

今すべきことを頭に、体に染み込ませ、地を踏む

その瞬間

夏凜「!」

強い意志に同調したかのように

何かが触れてきた気がした

ふと、からだが軽くなった気がした

けれども、その力はしっかりと全身に伝わっていく

夏凜「…………」

相変わらず追尾してくる角には目を向けず、上を向くと

再び真っ赤に染まった空が見えた

一度目よりもさらに多く、大きいその流星群は

樹たちや若葉たちめがけ放たれていく

そして、夏凜がさっき受けたような、

不可避の連続攻撃を仕掛けようとしているのが見えた

夏凜「こっちをみろ!」

ゆらゆらと揺らめくその角に向かって刀を投げ、炸裂

強く地面を蹴り跳んだ夏凜は

その両手に刀を出現させ、若葉たちから標的を変え迫る角を斬り弾く

硬い、重い、早い

面倒なそれは更に後ろからも迫る。だが――

夏凜「まだッ!」

夏凜は空中でぐるりと体を旋回させると

集合体の体を浅く、しかし強く切りつけて最後まで自分へとその意識を向けさせる

その刹那、ミシッっと体が軋んだ音がした

骨が砕けるような、鈍い衝撃を感じた

夏凜「ッ゛!?」

障壁ごとぶつかってきた角に弾き飛ばされ、樹海の根に衝突した夏凜は

受身を取ることが出来ず転がって、

遥かに見える集合体、そこに向かって三叉の煌く刃が突き刺さるのが見えた


園子「にぼっしーが引き付けてくれてる……」

無数の火の玉が向かってきているが

しかし、園子は微動だにすることなく、浮遊させた刃を三叉の槍に変え、見据える

目の前では若葉が切り込みに向かっている

右側からは犬吠埼姉妹が攻め込んでくれている

そのどちらにも火の玉は降り注いでいるし

若葉を狙っていた上空に見える角のようなものは、

一度、爆発すると夏凜のいる方向へと向きを変えた

園子は深く息を吸うと、目を閉じ、障壁が防ぐ火の玉には見向きもせずに神経を研ぎ澄ませる

園子「もう、天さんだけには背負わせない」

そのためにここにいる

あの時とは違う。それを証明するためにここにいる

自分も、並んで歩くことの出来る存在であることを示すためにここにいる

園子「いっけぇっ!」

浮遊する槍を僅かに下げ、開眼

後方に引いた手を勢い良く突き出し、射出する


衝突する火の玉などただの空気抵抗のように

真っ赤な空を切り開いていくそれは

集合体の体の中心部分に向かって一直線に進み、突き刺さる

若葉「きたか!」

それを確認した若葉は、ふっと息を吐いて踏み込み――一閃

目の前に差し迫っていた火の玉をなぎ払って

一部が焼け焦げたスカートを翻し、

赤く火傷した皮膚を庇うのをやめ、一気に駆け出す

降り注ぐ紅い雨をその身に受けながら

左腰の鞘を支える左手、その先にある柄を握る右手

まだかまだかと渇望するその煌きを押さえ込み、接敵

じゃりじゃりと樹海の根を靴底で削り、

一瞬の静止による風に髪を靡かせて

若葉「――しっ!」

鍔から切っ先までの70cm余りの刀身が煌き、刹那の斬撃を放つ

抜ききるまではコンマもかからない、人間であれば目視することさえ適わないであろう音速の刃は

集合体の体を横一文字に切り捨てて

園子の攻撃によって傾きかけていたその巨躯は

激しい音を轟かせて、ダメ押しのような緑色の光が右側面を打ちのめし、地に落ちる


樹「お姉ちゃん、私先に行く!」

そう決断したのは、早かった

大きな剣を持っているからというわけではないとは思うが

樹の方が軽装な分、素早く動けるからだ

風「樹、いけるの?」

樹「大丈夫だよ。お姉ちゃん」

心配そうな風に、樹は穏やかな笑みを浮かべて――

樹「お姉ちゃん避けて!」

風「ッ!?」

瞬間的に真っ赤になった空

気づいたときには降り注ぐ火の雨

夏凜との特訓とはやはり、格段に脅威度は違うが

しかし、樹は思った

……夏凜さんはもっと早い

降り注ぐ火の雨は無数で、夏凜のそれとは話が別だ

だが、その数を考えることなく

一つ一つのスピードで考えれば、夏凜のそれに圧倒的に劣る


樹「えいっ!」

ワイヤー一振りで複数の火の玉をかき消した樹は

そのままぐるりと回ってさらに迫り来る周囲の火球を完全に消滅させ――駆け抜ける

上下左右、全てを視界に納めながら、迫り来る脅威を全て弾き飛ばしながら

阻まれること無く、まっすぐに向かっていく

樹「二歩手前で、二歩先の自分の未来を見る」

夏凜さんが教えてくれたこと

今の私には、まだ。中途半端にしか出来ないこと

でも

【「貴女は良い武器を持ってる。一歩先しか見えないのなら、二歩目で零にしちゃいなさい」】

夏凜の居ない自主練習のとき

偶然知り合った女の人から教えてもらった戦い方

二歩目で旋回することでワイヤーを振り回し、周囲を零にする

それで全て打ち消せれば終わるし、

万が一打ち消せなければ、それを脅威として回避がしやすくなる

そしてまた、確かな一歩目を作っていく


その運動量は、実践になってくると計り知れない疲労感がある

けれど、怪我をするよりはましだ

誰かに心配をかけるよりはましだ

誰かの足手纏いになるよりはましだ

樹「はぁっ……はっ、見えたッ!」

荒々しい呼吸が自分の未熟さを肺の痛みとして鮮明に示してくる中

目の前にまで迫った巨大な塊が傾いていくのが見えた樹は

二歩目で大きく跳躍すると

習ったとおりにワイヤーをふるって周囲をかき消すと

樹「やぁっ!」

その反動のままにワイヤーを束ねて、巨躯を打つ

強い地震を起こし、木々を押しつぶしながら

バーテックスの体が倒れるのを見送った樹は、

警戒しつつ、後ろへと下がって一息つく

まだまだ下手だ。まだまだ伸び代はある……はず

樹「私にはやりたいことが有る。みんなともっと、したいことが有る。だから――負けない!」


→ターン処理

→レオ回復

→現状【http://i.imgur.com/d2M70Fp.png

→行動選択



1、攻撃(最大火力400)
2、精神コマンド
3、封印(侵食率が一気に増加します)


↓2

※2、3は最安価


夏凜→レオ  命中判定↓1 命中率173% ぞろ目CRI  51~60カウンター

若葉→レオ  命中判定↓2 命中率140% ぞろ目CRI  01~10カウンター

園子→レオ  命中判定↓3 命中率290% ぞろ目、01~25CRI  67~76カウンター

樹→レオ    命中判定↓4 命中率174%  ぞろ目CRI  51~60カウンター

風→レオ 命中判定↓5 命中率120% ぞろ目CRI  51~60カウンター

友奈→レオ  命中判定↓6 命中率123%  ぞろ目CRI  51~60カウンター



※判定数多いので連取可


では、寝落ちする前にここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から
今週の土日等は恐らくできないかもしれません。



沙織「……陽乃さんの御記」

沙織「これは……だよね」

沙織「検閲済み……実は裏から見ればなんとなく読めるんだけどね」

http://i.imgur.com/9DqOoc1.jpg


では、少しだけ


→戦闘処理

→風気迫使用

→若葉気迫・魂使用

→園子魂使用

→レオに11439ダメージ

→超過ダメージにより戦闘勝利


風「樹ーっ!」

火の雨が降る中、僅かな痛みに堪えながら

樹の名前を叫ぶ。【樹「お姉ちゃん避けて!」】そういった樹は

私を突き放すようにして、爆炎の中に消えた

すぐに追いかけようとした、けれど

樹はもちろん、風に対しても降り注いだ火の玉は

二人の再会を遮り、降り注ぎ、風の肉体に確かなダメージを刻む

風「っ」

精霊の障壁が守ってくれているとはいえ、熱い

ドンっとぶつかってくる衝撃が重い

しかし

樹「やぁぁぁぁぁぁッ!」

樹の力強い声が聞こえた

緑色の、儚くも美しく、存在を確かなものと示す光が舞い、巨躯を打つのが見えた


風「あ……」

頑張っているのだ。努力を重ねてきているのだ

見ていないところで、誰かが見ているところで

一つずつ、確かな経験を。

それを姉に示す妹の光

見えた風の瞳には、驚きと喜びと

置いていかれている自分

甘く見ていた自分

そんな自分達へのばかばかしさが、揺らぐ

少し、走りに行くね。夏凜さんの所に行って来るね。凄いお姉さんがいたんだぁ

樹が常に笑顔で口にしていた言葉は、自分が通らなかった道の思い出

弱弱しく、守るべきだと思わせていた樹の

確かな成長の記録

風「ははっ……あたし、なにやってんだか」


大好きな妹だから

大切な妹だから

唯一残ったかけがえの無い血の繋がった存在だから

守ることは、そう思うことは、何も悪くは無い

間違っているわけでもない

風「でも」

大剣を持つ手に力を込めて

風「だけど」

横に構えたそれを、力強く振る。前も、後ろも

いままでの過去、その自分が考えた未来

それらをなぎ払うように全力で

風「いつまでも守られるような子じゃない。樹は、あたしの妹なんだから!」


駆け出す。迷う必要は無い。悩む必要だって無い

不安を抱き、心配し、どこへやらと気をやる必要だって無い

風「……勝手に背負ってた。勝手に義務だと思ってた」

重くは無い、負担じゃない

どこかで自分に言い聞かせていたものが、

一歩踏み出すごとに落ちていく、砕けていく

あたしはお姉ちゃんだから

そんな、自分を縛り付ける鎖が緩んでいく

風「樹ぃーっ!」

樹「!」

さっきまでとは違う声

不安と恐怖に切迫したものではなく

ただただ、その存在を確かめ合うような声

不安は無い、心配はない。

――大丈夫だよ。お姉ちゃん

声に振り向いた樹は何も言わなかった

ただ、笑みを向けてきた

でも、そう言われた気がして、風は笑みを向け、頷く


樹が動く。風を見ずに。しかし、その存在をしっかりと認識して

だから風はそのまま横なぎに大剣を振るう

バーテックスまではまだ遠い

でも、それで良いのだ

横に振るった大剣が近づくと、樹はその面の部分を足場に高く跳躍

その瞬間、駆け抜ける風の体に緑色の光が巻きつき

樹よりもさらに天高く、投げ飛ばす

装備する大剣は、その見た目に対して

専用のものだからか重さは無い

けれど、その威力は確かなもので

駆け抜ける勢い、もともとの腕力、そして、樹の手助けによって稼げた遥か空からの引力

それらを纏め上げるように、ぐるりと回ると

倒れこんだ集合体の治りかけの体に向かって逸れることなく落下し、

真上から大剣を突き――硬い表皮を打ち砕く


樹「お姉ちゃ――」

風「……樹」

バーテックスに突き立てたまま佇む風は

後ろからの声に答えながら、振り向く

風「これからも、一緒に来てくれる? あたしと」

心配だから、不安だから

ではなく

頼りになる戦友として、妹として

かけがえの無い、パートナーとして

そう望んでいるのだと、樹はなんとなく感じて

樹「もちろん。どこまでも着いていくよ」

風「よろしくね、樹」

答えに答えて答えられて

バーテックスの体から風が飛び降りた瞬間

若葉「――ふっ!」

ズドンっという強い衝撃が二人を、木々をなぎ倒す勢いで風を起こし、

バーテックスの体を真っ二つに引き裂く

靡く金髪、強く輝く抜き身の刀

それは見間違えることなく、乃木若葉だった


風「若葉!?」

若葉「二人とも下がれ! 夏凜と友奈が打ち込んだら園子が全力で叩く!」

樹「園子さんの……全力?」

ついさっき、確かに感じた強い力

あれが園子のものだと判断した樹は

それ以上のちからを想像し、思わず身震いして風の手を掴む

樹「巻き込まれるかもしれない」

風「そう……よね」

樹よりも後ろにいた風は火の雨で完全に見ることは出来なかったが

切り裂いていく力の一部を見ることは出来たのだ

だから、樹の手を握り返して、後ろに思いっきり後退していく

今の自分達に出来ることはした。だから、頼む。と、園子の力に願って


その一方、通りすがりの若葉から園子の件を聞いた友奈は

園子の攻撃で倒しきれるように、攻め込む

友奈「久遠先輩……」

いつも最前線で戦ってくれていた

どれだけ怖い敵だって

どれだけ大きな敵だって

どれだけ危険な敵だって

天乃がいるなら大丈夫だと、思っていた。頼っていた

天乃が傷つかないように、苦しまないように

そう考えながら、やはり頼っていたのだと

友奈は収まらない緊張を胸に感じながら、樹海を駆け抜けていく


天乃の存在が自分にとってとても大きいものだということは

流石の友奈にも、解っていた

バーテックスという敵、勇者という役目、満開という諸刃の剣

問題が次から次へと解決しないまま積み重なっていたが

しかし【久遠天乃という絶対的強者】がその不安を拭ってくれていたからだ

だからこそ、居ない今はとても不安になる

守りきれなかったらと、恐怖が押し寄せてくる

戦いの先の未来が、果てしなく恐ろしく、真っ暗闇にも思えてくる

友奈「……っ」

みんなが不安にならないように、みんなが怖くないように

笑顔でいよう、明るくいよう。そんな理不尽な義務感、正義感が湧き出してくる


久遠先輩はずっと、こんな気持ちだったのかな

ずっと、こんなに怖くて、不安で、それでも、笑っていたのかな……

友奈「…………」

よりいっそう痛みを増す胸に手をあてがった友奈は

足を止めて、目を瞑る

友奈「私は……」

きっと、久遠先輩の気持ちを理解することなんて出来ない

その痛み、苦しみ、辛さを解るだなんていうことは出来ない

勇者という憧れの言葉

それを体現してくれる小さくても大きな存在

それに比べて、友奈はあまりにも無力で、ちっぽけで

でも

……でも、そのままでいいわけがないんだって、思った

ずっと頼りっぱなしで、何も出来ないままで

その大きな存在が見えすらしない場所で座っていて良いわけが無いんだって


友奈「まだ怖い。まだ不安になる。まだ、辛い」

変わった。と、胸を張っていえるほどに

自分が強くなれたという自負は無い

久遠天乃という希望の輝きの一端すら、自分には見えていない

けれど、だからこそ友奈は地面を踏みしめていく

ゆっくりと、確実に

友奈「だから」

その地面が堅実な自分の努力であることを信じて

いつか、その隣に並べることを願って

いつか、その存在が孤独ではなくなることを求めて

友奈「一つ一つ、今あることに集中して――立ち向かうんだッ!」

願いと思いを胸に、痛みを乗り越え駆け出す

夏凜や風、樹、若葉、園子

みんなの総攻撃で倒れ、砕け散っていくバーテックス本体は

いまだに再生途中で、動くことが出来ていない

だが、浮遊する角のような部分や、水の塊は自律しているかのように揺らめいて、照準を合わせようとしてくる


そのたびに、友奈は跳躍し、木々の合間に隠れ、

空に飛び出しては、もぐり、かく乱する

友奈「――追いついた!」

だんだんと、巨体が近づく。でも、恐怖心は無かった、不安も無かった

天乃との距離に比べたら

あの、模擬戦に比べたら

この程度の戦いは、なんでもない

心に出来た余裕。けれど、隙を作らないように気を引き締めて――停止

友奈「はぁぁぁぁぁっ!」

真横から風を切って近づく角に真正面から拳で打ち合う

ガキンッっと鈍く思い衝撃が腕に伝わって

けれど、友奈はひるむことなく右足で角の横っ腹を蹴り砕くと

友奈「せやぁッ!」

追い討ちのように振り上げた左拳で打ち砕く

そして、右半身を後ろに引き、右手を強く強く握り締めて

砕けた角の破片を見据えて――穿つ


殴りつけた破片と拳は、集合体の装甲に一瞬で皹を作り上げ、風穴を開け、めり込む

慌てて回復しようとしている光がそのキズに集まっていく

けれど、

園子「――貫けぇぇぇぇぇッ!!」

珍しく聞くことの無い園子の気迫の叫び

それが聞こえた友奈は一目散に駆け出す

背後で、何かがチリッと光った気がして、振り向く

友奈「え?」

バーテックスの巨体には友奈が空けたものとは比べ物にならないほどに大きな穴が開き

それは回復することはなく、体は砂と光になって崩れ始めて

その瞬間――樹海を大きくとどろかせるほどの暴風が吹き荒れ、バーテックスの体が吹き飛んでいく

友奈「す、凄い」

これが、乃木園子の力

それも、天乃と同じく、力をセーブした状態での力


友奈は樹海が光となって現実世界に戻っていく間

ずっと、バーテックスがいた場所を見つめていた

弱い。まだまだ、弱い

樹ちゃんよりも、夏凜ちゃんよりも

風先輩よりも、東郷さんよりも

そのちゃんよりも、久遠先輩よりも。ずっと

その圧倒的な力量差を前にして

友奈は驚きと喜びを感じて、笑みを浮かべる

友奈「一つずつ、確実に。いつか、その隣に並べるのなら」

出来るのなら、誰の手も取りこぼすことなく。みんなで

友奈は確かな目標を胸に、現実世界、佇む戦友たちの元へと、かけていく


6月14日目 夕  (病院) 日曜日


※負傷・検査の為病院へと運ばれました


1、風
2、友奈
3、東郷
4、樹
5、園子
6、天乃
7、九尾
8、若葉
9、イベント判定


↓2


※交流先選択


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


友奈「一つ一つ、確実な一歩を」

樹「私達は進んでいく。あの人に、届くまで」


では、初めて行きます


天乃『…………』

夏凜「……どういうこと?」

室内を見ることの出来る大きな窓

その壁に阻まれながら天乃に目を向けたまま

夏凜はすぐ横の瞳に問う

瞳はとても朗報とはいえない情報を噛み砕こうとしているかのように

口元を動かし、唇を噛み締めた、悲しげな表情を浮かべていて

瞳「夏凜ちゃ……勇者一行が検査中、久遠様は吐血したんです」

いや、あれは吐血というには物凄く惨い

一度は塞がりかけた内臓の傷が開き、血が喉を詰まらせて……

体を傾けたことで、喉元に溜まっていた血が流れ出てきたにすぎない

それでもまだ、血は流れて、傷は塞がったり閉じたりで

だから、天乃は現在ICU。集中治療室に移されて、眠っている

瞳「医療班によれば、いまだに回復と同時に傷ついているようです」

夏凜「……穢れを背負いすぎたって事?」

瞳「断定はできませんが、恐らくそうではないかと見ています」


夏凜「その状態はいつまで?」

瞳「……………」

大赦から派遣されている専門の霊的医療班でさえ、

天乃の体に関しては、ほぼ素人のような状態で、解っておらず

正直な話、瞳にはどこまでなのか解らなかった

だから、答えを躊躇って

瞳「久遠様を信じるしかない……と」

夏凜「……そ」

瞳「……………」

目に見える夏凜の右手は、

自傷制限がされていないほどに強く握り締められ

赤どころか、血が止まってしまったように白くなっていく

でも、瞳にはそれを宥める言葉が、見つけられなかった


夏凜「…………」

穏やかに眠っているように見える。その中で

どれだけ傷つき苦しんでいるのだろう

考えてもわからないその悩み

自分ではどうすることも出来ない無力感

夏凜はガラスに叩きつけようとした手を止めて

悲しげな瞳を天乃へと向ける

夏凜「……騒いだら、ゆっくり休めないわよね」

救い続けたその代償の姿を前に

怒りに震える体を、ゆっくりと治めていく

瞳「夏凜ちゃん……」

夏凜「そりゃ……戦った被害を。今まで負担してたんだから。辛いって……」


今回の戦いでも、多少の被害が出たが

園子の協力があったのと、たった一体だったことが功を奏して

被害は軽傷者一名の事故で収まった

けれど、天乃と一緒に戦ってた時の敵の戦力は軽いものじゃなく

その分、天乃は身を削って力を使い、その上で被害を全て請け負った

それも戦いがあるたびに、毎回だ

夏凜「予想外じゃない……形は違うけど、解ってたのよ」

いつかはこんな日が来るんじゃないかと

だから、戦うなとみんなで願ったし

それを受け入れて、いざというときに控えてくれると言った時は

絶対にそうならないようにすると、友奈たちと鍛え始めた


それでも、覚悟だけはしていた

いざという時。それがこない保証なんて無いから

だから、それだけはしておこうと……

夏凜「でも……まさか、こんな早くなんて、思わなかった」

天乃が控えることを決めてから、間をおくことなく

こんなことになった。戦闘不可避な襲撃を受けてしまった

本当に……神も仏も運もないなと、夏凜は薄く笑う

ちっぽけな楽しさも、喜びも無く。ただただ、悲しさを携えて

瞳「……入りますか? ICUといっても、面会は可能ですよ」

夏凜「…………」

大人しく伺う声に、夏凜はゆっくりと目を向けた


1、入る
2、入らない


↓2


01~10 東郷
11~20 
21~30 沙織
31~40
41~50 樹
51~60 
61~70 友奈
71~80
81~90 風
91~00 九尾



↓1


医療班の許可を得て、念のために防止とか、靴用の履物とか

防菌だの滅菌だの、普通の面会とはひと手間ふた手間かけて室内に入っていく

医療用機器の小さな音、それよりも微かな天乃の呼吸

それだけの室内は、狭くて広い

そんな違和感が夏凜にはあった

夏凜「……………」

朝は、簡単に触れることが出来た

キスだって、見られていたのかもしれないが

それはともかくとして、することが出来た

けれど、今はもう出来ない

触れることですら、簡単ではなくなってしまった

夏凜「……どんだけ、辛い思いをしてたのよ」

勇者の力で、傷は素早く癒えていく

もちろん、満開の代償としてしまったものに関しては別だが

そのはずなのに、天乃の体は傷が塞がっては開くという

地獄のような状態に陥っている


それはつまり、勇者としての力よりも

貯め込んでしまった穢れの方が、質量というべきか

それが多いということなのかもしれない

だとしたら、このまま……

夏凜「……天乃」

天乃「……………」

そっと手に触れると、人間とは思えない冷たさを感じ

けれど、離すのが嫌で。優しく握る

いつもなら目を開けて「あら? 積極的」だとか

寝ぼけたふりして、握り返してきたリ、悪戯してきたリ

そう……してくれるはずなのに

夏凜「っ………」

戦うことで傷ついた体は

その疲労感よりも、その痛みよりも

何よりもまず、悲しみを引っ張り出して、体外に押し出そうとする


夏凜「やめ……やめろ……っ」

生きているのだから

目の前にまだ存在しているのだから

希望は潰えてはいないのだから

そう、頭では分かっているのに

夏凜「やめ……………」

真っ白な天井を見上げても

瞳からは雫が伝い落ち、流れを作ってしまう

考えるのが怖い

例え、それが杞憂に終わるものだとしても

そうなるかもしれないという流れそのものが恐ろしく、不安で

覚悟なんて、出来そうにもなくて

夏凜「っ……」

涙は、流れていってしまう


真っ白な肌。それを夏凜は、雪のようだと思っていた

しかし、触れればとても暖かく、優しいものだったのに

今はもう、雪のように

あるいは、氷のような冷たさで。生きているというのは難しくて

夏凜「ふざけんじゃ……ないわよ」

天乃「…………」

夏凜「天乃……」

不安になる

恐怖ばかりが募る

悲しみが押し寄せてくる

希望などみじんもなく、ただただ喪失という絶望だけがケタケタと笑いながら這いずってくる

ズルズルと、なぶり殺しにするような速度で

しかし確実に、蝕んでいく


救いはないのだろうか

もう、このまま終わってしまうのだろうか

夏凜「瞳は、あんたを信じるしかないって……言ってたけど」

信じている。頼っている

今までだって、これからだって

でも、だけど。だからこそ

そのとてつもなく大きな希望に走っていく皹が崩壊を思わせて

失った後の世界で生きていく事を考えさせようとしてくる

夏凜「……………」

こんなの、普通の人間なら死んでいる

普通よりちょっと優れている程度。そう、自分でも死んでいる

どこか冷静な自分が、すぐ横でそんなことを囁いてくる

お前は無力なのだから。役立たずなのだから

出来損ないなのだから

今からでも先のことを考えておけと

夏凜「……………」

天乃の死を前提として、語りかけてくる



1、手を強く握る
2、頬にキスを
3、唇にキスを
4、私も頑張る。だからお願い……あんたも。頑張って
5、天乃は死なない。だって、まだ……答えをくれていないんだから



↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から





沙織「【http://i.imgur.com/FUvw2y6.jpg】これ。貴女なら復元出来るんじゃない?」

九尾「不可能ではないが、しても良いものは見れぬ」

九尾「陽乃という人間が歩んできた記録は、人間という悪で描かれている」

九尾「それに今は、主様を救わねばならぬからな」


では、初めて行きます


夏凜「天乃は死なない。だって、まだ……答えをくれてないんだから」

手を、握る

冷たい手。死んでしまったような手

恐怖心を煽るようなその感覚を包み込むように

夏凜は手を両手で包み、祈るように天乃の顔を覗き込む

夏凜「……そうでしょ? 天乃」

無理矢理キスするような奴にだって

答えをどうするべきか真剣に悩んであげるくらいなんだから

ちゃんと……って

夏凜「それは私もか」

一人で言って、一人で笑う

孤独という寂しさがぶり返してくる中で

けれども、昔感じた孤独とは違うと。夏凜は笑みを浮かべる

昔は笑うことなんて無かった

冗談なんていうことも無かった

孤独を孤独だと思うことすら、無かった


けれど、夏凜はこの部屋から出さえすれば、同居してる瞳がいる

クラスメイトの東郷がいて、友奈がいて

弟子? の樹、その姉で先輩の風がいて、巫女の沙織がいて

勇者の園子がいて

一人になんて望んでもなれそうにない世界が待っている

夏凜「……仕方ない」

そうぼやきながら、夏凜は自分の髪を束ねる最後の赤いリボンを解くと

天乃の腕に優しく結ぶ

夏凜「苦しいのか辛いのか、痛いのか、悲しいのか。何も解らないけど」

でも。と、

夏凜はいつに無く優しい笑みを浮かべて

夏凜「あんたがいる世界で独りぼっちにはならないように。置いておいてあげるわ」

白い腕をなぞり、肩に触れ、頬に触れる

柔らかく冷たい頬、今は呼吸以外で動くことの無い、顔

じっと見つめる夏凜は、おもむろに息を付いて

目を閉じ、ゆっくりと離れていく


夏凜「…………」

気づけば機械の音、かすかな呼吸音が耳から入り込んできていて

夏凜は自分と天乃の二人きりではなかったことを

今更ながらに思い出して、でも

どこか清々しい笑みを浮かべた夏凜は、出口の扉の前で立ち止まる

夏凜「……別に、寂しいわけではないけど」

みんながいるから

必ず、誰かがいてくれるから

騒がしいと思ってしまうほどだけど。

けどさ。と、夏凜は呟いて、振り返る

夏凜「やっぱり物足りないから。早く戻ってきなさいよ。天乃」

それだけ告げて、病室を出て行く

次来たときには目を覚ましているように

それが無理なら普通の病室で会えるように

そんなことを、願いながら

瞳「全部、見えてましたよ?」

夏凜「変なことしたわけじゃないし、別に良いわよ」


茶化すような雰囲気もなく、優しく声をかけてきた瞳に

夏凜は手馴れた様子で言葉を返す

瞳は時々子供みたいなこともあるが、やはり。基本的には年上の女性なのだ

それは天乃にも言えてしまうことだが。

瞳「二つのリボン、解かれた髪に。意味は有りますか?」

夏凜「……さぁね。ま、少なからずあるんじゃないの?」

瞳「では、その想いが報われるよう、祈っていますね」

嬉しそうな声を背中に感じながら

夏凜はふっとため息をついて、病院の廊下を歩いていく

瞳は以前、夏凜の使う二つのリボンについて、持論を述べていたことがある

一つは家族、自分を縛り付ける存在であり、しかし、傍にいて欲しい存在

一つは自分、過去であり、未来であり、自分を追い込む存在

そして、それらを解いた髪についてもまた語った

自由になったことの証明であり、

また、今までのものと入れ替わって包み込んで欲しいと言う願いの目に見える証だと。


もちろん、それは瞳の勝手な持論だ

有名な学者の研究成果とか、世界中のツインテールにアンケートをした統計データでもなく

だからそんな意味はきっと、無いとは思う

けれど

リボンを渡したことに関しては、無意味ではなかったと思っている

夏凜「さっさと戻るわよ。友奈たちに心配かけるわけにもいかないし」

瞳「そうですね」

夏凜の本心に気づいたからか

それとも、初めから知っていたのか

瞳の声は少しだけ明るい感情を含んでいた

天乃の件はあるが、

しかし、不安ばかりではいられない。怯えてばかりではいられない

だからこそ、

悲しみながらも前をしっかりと見ている夏凜の姿を喜ばしく思う

確実に足を進めていくその勇ましさを嬉しく思う

瞳「…………」

そして、そんな夏凜の行く末が幸せなものであることを――願う


6月14日目 夜 (病院)  ※日曜日


1、友奈
2、風
3、東郷
4、樹
5、沙織
6、九尾
7、大赦
8、瞳
9、イベント判定

↓2


夏凜「……九尾、どうせ居るんでしょ」

夜の帳が下りた月明りだけの病室で

ふと感じた視線に声をかけると

どこからともなく、真っ白な女性が姿を現す

月光のみの部屋ゆえ、その白さはまるでそれ自体が発光しているのかと見紛うほどで

しかし、それはとても美しくて

夏凜は盗み見ていたことへの注意を飲み込んで、首を振る

夏凜「天乃の傍にはいなくていいわけ?」

九尾「その主様からの要望じゃ。夏凜のそばにいて。と」

夏凜「……ったく。天乃は――」

九尾「じゃないと浮気されるから。と」

夏凜「んなわけあるか」

九尾の挑発に乗ってツッコミを入れた夏凜は

くつくつと笑う九尾を横目に

困ったように笑って、息をつく

夏凜「で、実際は?」

九尾「前者。つまり、主様から頼まれた」


九尾の声色は相変わらず真偽の判断がし辛いが

けれども、天乃のことだ。嘘ではないだろうと、夏凜はたまらず呆れる

そう言う人間であることは重々承知しているのだが

やはり、天乃の人思いな性格には困ってしまう

九尾「それに、今の主様のそばにいたところで。役には立たぬ」

夏凜「……九尾にもどうしようもないの?」

九尾「うむ……今、主様は清浄な力と穢れの均衡が僅かに崩れておるからな。むしろ、余計な存在は居らぬが吉よ」

暗がりでよくは見えないが

九尾の表情はどこか悲しげなものとして、夏凜の瞳に映る

夏凜自身、九尾のことは良く知らないが

けれども、天乃のことを思っている精霊であることだけは解っている

決して優しくない、厳しい精霊

しかし、それらはすべて思うがゆえのものであると

時折見せる表情から、感じていたからだ


夏凜「次第に馴染んでいくんじゃないの?」

九尾「それは力の均衡が守られている。あるいは、穢れを抑え込む力が勝っている場合に限られる」

夏凜「……なら、天乃は」

九尾「あれは長引くじゃろうな。満開を使えば体の一部を代償として持っていかれるが、その部分に押し込むこともできたのじゃが」

夏凜「……使わせなかった」

夏凜の繋ぐ言葉に、九尾は軽く頷く

その表情は、

夏凜が考えていたのとまったく同じように、悲し気で

少しばかり、自分の選択を悔いているような

そんなものが、感じられる

九尾「それは失いたくないものを失いやすい。主様は特に。力が強い分想いのある部分を供物として奪われやすい」

家族の記憶、動くための足、声を聴くための耳、味わうための味覚、記憶するための視覚

今まで失ったものだって、決して無くなっていいものではなかった

自分の体の不具合よりも、友を守れず失った悲しみと苦しみ、怒り……それらが勝ったまま生きてきたから

そんなこと、ただただ。我慢して済ませてしまっているが。

とはいえ……


九尾「…………」

九尾は何かを言いたげに眉を顰め、夏凜を一瞥すると、首を横に振る

そのしぐさが気になった夏凜が目を向けると

伏せていた目を上げ視線を絡める

白の中の赤い瞳は、まるで闇に潜む白蛇の紅目のようで

そして。

九尾「お主はいかなる理由があろうと。主様を想えるか?」

夏凜「……意味の解らない前置きしてくれるじゃない」

答えによっては何かが終わってしまいそうで

しかしながら、何かが始まりそうな九尾の問い

だけれども、夏凜は強敵と相対した時のような余裕のある笑みを浮かべて見せる

何を隠した問いなのかは知らないが、関係ない

月明りを背中に浴びながら、夏凜は自分の胸を張って手を宛がう

夏凜「私の想いはもう告げた。後からなんて言われようと変える気なんかないわよ」

だって、

知っていれば好きにならなかった。なんて

ちっぽけな想いは抱いていないのだから

夏凜「どんな過去があろうが、どんな秘密があろうが。それをひっくるめて今の天乃だと私は思ってる。だから私の気持ちは変わらない」

九尾「……ならば、聞くか? 聞かなくても良い話を」



1、聞く
2、聞かない


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から少しだけ

明日以降は可能ならやりますが、7日夜までお休みいただくかもしれません




九尾「穢れを体外へ排出するための装置、言うなれば汚らわしきバベルの塔が主様に発現する」

夏凜(あれ? それってつまり、ヤれ――)

友奈「ずるいよ夏凜ちゃん! 私の時に欲しかった!」

樹「私の時にも欲しかったです!」

夏凜「どこから沸いたのよ!?」


では、少しだけ


夏凜「聞かせて」

天乃の過去に何かがあるのか

それとも

天乃を取り巻く環境に何かがあるのか

いずれにしても、夏凜は退く気などなかった

他の誰かにだって見せているかもしれない

でも、あの強さの内側に隠してきていた弱さを見てしまったから

義務感?

正義感?

そんな、殊勝な心構えなんて有りはしない

これは、ただの自己満足だ

自分よりも遥か高みにいる天乃を

ほんの些細なことでも構わないから、手助けしたい

そんな、ちっぽけで、大きな欲だ


九尾はそんなものであると理解しているのだろう

けれども、突っかかったりはすることなくその心構え、素直さを認めて

真剣みの薄れること無い笑みを浮かべて頷く

それはやはりどこか悲しげで、儚げではあったけれど

しかしながら、仄かな喜びを感じられる笑みだった

九尾「……人間の言う旧世紀。その時代の久遠家の長として久遠陽乃という娘がおった」

夏凜「陽乃……? あの人と名前似てるけど、何かある?」

九尾「晴海かや? きゃつは神樹の神託による理不尽な期待を背負わされ、身勝手に失望されただけじゃ」

夏凜「?」

九尾の言葉との繋がりが理解できず

なぜなのかと夏凜が疑問符を浮かべていると

九尾はふっと、悲しげな息をついて、目を伏せる

九尾「晴海。というのは、陽乃未満だったという名付け。この娘は違うという烙印のようなものじゃな」

その名前をつけたのは両親だが

それだって、別につけたくてつけたわけではない

理不尽な侮蔑から守るために、この子は違います。責めないでと、しようとしただけ

九尾「しかし、言葉通りではと、晴天を映す海のような輝かしく美しい人生であるように。という意味を込めて晴海となっただけじゃぞ」

夏凜「だけって……」

九尾「ゆえに子孫ではあるが、そこまで関係はない」


夏凜「……あの人にも色々とあったわけね」

生身の人間でありながら

限界まで鍛え、さらにその先の限界まで突き進んだような身体能力

そして、一般人には似つかわしくない技量

なぜそんな力があるのかと聞いたときに、晴海は言ったのだ

【晴海「私も苦しまなきゃ、辛い思いをしなきゃ。強くならなきゃいけないのよ」】

そのときは自分と似たようなものでもあるんだろうかと思っていたが

そんな生易しいものではなかったのだと、頭の中を改めて

……とはいえ、化け物クラスになるのはおかしいっての

天才が努力したって事なのかしらね

一息入れた夏凜は、口を止めた九尾を促す

夏凜「それで? その陽乃がなんなの?」

急かすその一言に、

九尾は少しばかり躊躇いの目をむけ、口を開く

九尾「主様と同様の症状が出た陽乃は19で死んだ」

夏凜「なっ……」

九尾「今は久遠の娘に耐性もつき、簡単には死なぬが……度を過ぎれば免れぬ」


何を言っているのか解らなくなった

とても簡単なことなのに、理解が出来なくなった

視界が揺れた

強く、激しく

そして、九尾の切なげな表情に、自分の瞳が見開かれていることに気づかされて、伏せる

天乃の体が大変なことになっていることも

力を使うことでそれがより深刻化することも

全部解っていたはずで

だから、夏凜は動悸を抑えるように胸元に手をあてがう

夏凜「……それは、どの程度なのよ」

九尾「主様がどれほどなのかは未知数じゃな。今も、少しずつではあるが確実に対応しておる」

九尾はそう話した上で、少し気になることがある。と

遠慮がちに続けた

九尾「陽乃は二人の子供を作ろうとしたが、一人目を産んだ17の時にはもうそんな余裕は無くてのう……」

夏凜「は……? 17?」

九尾「主様で解ると思うが陽乃の力は特殊でな。失くすのは惜しい。と、作らされたのじゃ」


夏凜「……まさか、天乃にもまたそれを強要しようってわけ?」

九尾「現状では無理じゃな。敵は強力になっておるゆえ、戦力が足らぬ。それ以前に、母体が疲弊しすぎておる」

そもそも陽乃の場合は、

そんな話が出た段階で思うことはいろいろあったがゆえに

行為自体に嫌悪感を示すことも無くすんなりと受け入れて子供を作ったが

天乃に関しては最初の段階で嫌悪感を示しているし、周りも拒絶している

しない、させない、させられない十分な理由がある以上

そんな話は今しばらく出てくることは無いはずだ

九尾「話を戻すぞ。二人欲しかった陽乃は一人しか子供を作れなかったが、一人の子を用意したのじゃ」

若葉達身近者の子では初めからつながりがあるからと

わざわざ、先の戦いの被害によって親を亡くしてしまった施設の子の中から選別して用意した

世界のために

未来のために

子供のために

あえて、無縁の子を。無関係な子を

九尾「そして選別した子供に陽乃は自分の欠片を与えた。ある一定の条件で力を発現させる欠片を」


夏凜「一定の条件ってなんなのよ」

九尾「陽乃の子孫そして、その欠片を持つ子の子孫が出会い、善き日が送れること」

それは、陽乃にとってとても特別なものだった

陽乃が唐突に奪われたものであり

再度得ることの出来なかったとても特別なもの

しかし、陽乃のことを対して知らない夏凜は

怪訝な表情を浮かべて

夏凜「なんでそんな周りくどいことをする必要があったのよ」

そんな特別な力を与えたというのなら

すぐ隣においておくべきだ

そして、いざという時に必ず行使できるようにしておくべきだ

そんな当たり前の考えに

九尾は「確かにのう」と苦笑する

九尾「じゃが、陽乃はそう考えなかった」


神樹の結界の限界が近くなる数百年後

子供たちが誰かに、何かに

意思とは無関係ななにかに強制されてしまうようなことなど無く

思うが侭に生きてきた結果近づき、紡がれているような

そんな穏やかで、優しい世界でないのなら

守る価値は無いと考えていたからだ

夏凜「で、その欠片を持ってるやつは今、いるの?」

九尾「さてのう」

夏凜「あんたね……っ!」

シリアスな空気をぶち壊しにするような

間の抜けた適当な声を漏らした九尾に、夏凜は思わず声を上げたが

しかし、九尾は変わらず「そういう約束じゃった」と、呟く

九尾「監視したりするのもまた、意思に反する干渉じゃからな。それはしないというのが陽乃の願い」


そう語った九尾は

どこか懐かしむように窓から見える月を眺めて、薄く笑う

それは、やはり美しく儚い

夏凜が覚えのある……女性の表情

九尾「陽乃はそんな世界になると信じていた。そんな世界になれる可能性を信じていた」

裏切られ、迫害され、

決して良い思い出の多い人生ではなかったはずなのに

なのに、久遠陽乃という愚者は人間を信じて、人間を愛していた

どこまでも、馬鹿な人間だった

九尾「まぁ、とにかく。もしもその子がいれば、少しは主様を楽にさせられるはずじゃ」

夏凜「なるほどね……で、九尾はそいつの所在が気になるわけだ」

天乃が回復する可能性

それを聞いたからか、少しばかり嬉しそうに言う夏凜に対して

九尾はふむ。と、頷く

九尾「今朝の接吻によって主様の体調が悪化したからのう。それがお主の可能性もあるぞ」

夏凜「それなら治るべきでしょ。悪化した時点で違うっての」

九尾「そうか……まぁ、案ずるでない。しばしの時を要するが時期に回復するはずじゃ」

夏凜「じゃなきゃ困るわよ」

そうぼやいた夏凜の前から

九尾はすでに姿を消していて

そっと、窓から見える月を眺めた夏凜は

夏凜「……ほんと、困る」

小さく呟いて、目を閉じた


では、ここまでとさせていただきます
可能であれば明日の夜にも行いますが、
出来ない場合もあります。最長で、再開は7日の夜になります





大地「そして俺は母なる大地のように妹だろうと分け隔てなく愛せと名付けられた……」

大地「だから俺は悪くない」コソッ

晴海「うん、分かったからICU夜這いは止めようね?」ガシッ


出先なので普段と違いますが、少しだけ


1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流無()
・   犬吠埼樹:交流無()
・   結城友奈:交流無()
・   東郷美森:交流無()
・   三好夏凜:交流有(キス、リボン)
・   乃木若葉:交流無()
・   土居球子:交流無()
・ 伊集院沙織:交流無()

・      九尾:交流無()

・       死神:交流無()
・       稲狐:交流無()
・      神樹:交流無()



6月14日目 終了時点

  乃木園子との絆 54(高い)
  犬吠埼風との絆 44(少し高い)
  犬吠埼樹との絆 41(少し高い)
  結城友奈との絆 59(高い)
  東郷美森との絆 43(少し高い)
  三好夏凜との絆 63(高い)
  乃木若葉との絆 39(中々良い)
  土居球子との絆 27(中々良い)
     沙織との絆 53(高い)
     九尾との絆 45(少し高い)
      死神との絆 38(中々良い)
      稲狐との絆 30(中々良い)
      神樹との絆 9(低い)

 汚染度???% +???+20%

※夜の交流で稲荷と話せば、汚染度が判明します


7月に入りますが、久遠さんがこの状態なので、判定
判定失敗だと、久遠さんはふつうに進めば7月7日目がお目覚めです


01~10 
11~20  お目覚め
21~30 
31~40 
41~50 
51~60 
61~70 お目覚め

71~80 
81~90 
91~00  お目覚め

↓1のコンマ  


操作キャラが戻ります
夏凜を操作していたので、久遠さんの所に夏凜を設置できます



1、夏凜がいる
2、夏凜はいない


↓2


√ 7月1日目  朝(病院) ※月曜日



水の底から引き上げられていくようなそんな重苦しさを感じる

目を覚ましているはずなのに、暗く、深く

けれど、無音ではなく

小さく電子音が聞こえて……

『……待…てる…ら……』

誰かの声が聞こえて、ハッと目を見開く

天乃「……………」

耳にうるさく聞こえる電子音

自由にならない体と、そこに繋がれたたくさんの医療機器

しばらく呆然としていた天乃は

見開いた目をゆっくりと通常の状態に戻して顔を傾ける

聞こえた気がした声は気のせいだったのか

まわりには誰も居らず

自分がいる居場所が以前にも世話になったICUだと気づいて、

苦笑すると、喉の渇きと不自然さに壊された声が零れて、せき込む

そしてまたその痛みに呻くと、

機械の一つが緊急性の高いアラートを響かせて、看護婦が駆けつけてきた


「安静にしていてくださいね」

天乃「……ん」

駆け付けた看護婦とそれに呼ばれてきた医師らの簡易な検査を受けた天乃は

看護婦の穏やかな声に頷く

喉の渇きは癒えたものの、まだ少し違和感があって

出来る限り話したくないと思ったからだ

「………………」

看護婦はそんな天乃を一目見てから立ち去ろうとしたが

ふと、思い出したように振り返って

「ご友人の三好様方にご連絡しても平気? 学校だとは思うんだけど……」

そう言いながら、看護婦は少し悲し気に目を伏せる

親兄弟の誰一人として見舞いに来ない

それは天乃からすれば他人だからかもしれないし、大赦から余計なことをされて止められているからかもしれないが

そんな状況の天乃を思ってだろう

夏凜達に連絡を入れて

こっちに呼ぼうとしてくれているらしい


1、呼ばなくて良いわ
2、なら、お願い
3、目を覚ましたことは良いけど、来なくて良いって付け加えてね?
4、なら……夏凜だけ
5、なら……友奈だけ
6、なら……東郷だけ
7、なら……風だけ
8、なら……樹だけ


↓2


天乃「なら、お願い」

「うん、分かった。天乃ちゃんは安静にしておくのよ? このまま回復に向かえばこの部屋から出られるんだから」

天乃「ええ、分かってます」

「よろしい。約束だからね? おとなしくしておくのよ?」

心配そうに何度も確認してくる看護婦が

部屋から出ても窓から確認するという面倒な事をやめるまで笑みを浮かべていた天乃は

完全に立ち去ったことを感じ取って、ふっと、息を吐く

天乃「あーうー」

まだ少し本調子には遠いが、最初ほどは酷くないだろう

あんな死にかけみたいな声はさすがに聴かせたくない

とはいえ、なんで呼ばなかったのかと叱られるのも嫌で……

もっとも、ICUに入るまでに陥っている時点で

叱られるのは確定したようなものだけど。と

天乃は声に出さずに笑みを浮かべた


しかし不思議なものだと、天乃は眉を顰める

長い夢を見た

自分が誰かとして動いている

言うなればゲームのような不思議な夢

そう言うものだった事は覚えているのに

そこで何をしていたのか、何があったのか

どんな夢だったのかが

濃い霧がかかったかのように、不鮮明でわからない

ただ、一つだけ

『ごめんね……ごめんね……許して、ごめんね……こうするしか、こうするしかなかった』

そんな、誰かの涙ながらの謝罪の言葉だけははっきりと覚えている

顔も何もわからない

誰かの言葉

天乃「誰か、寝てる間に私に何かしたとか?」

夏凜とか夏凜とか夏凜とか

そう考え、流石に違うわよね。と、すぐに否定して

天乃「……来て、くれるのかしら」

少しだけ。期待する


天乃「……きっと、そばにいてくれたから」

腕に結び付けられたリボン

それを優しく撫でる天乃は優しい笑みを浮かべて

平穏な鳥の声が、どこかから聞こえてくる

辛い戦いだっただろうか

簡単な戦いだったのだろうか

いずれにしても、勝利したことだけは、間違いない

満開を使っただろうか

園子がいたんだから平気だったかもしれない

不安と恐怖を織り交ぜて、信頼で優しく包み込む

誰かが来るか

誰も来ないか

電子音だけの時間は、

天乃を少しだけ、不安にさせる


01~10  夏凜
11~20  夏凜 風
21~30  風
31~40  友奈 樹
41~50  友奈
51~60 夏凜 樹

61~70 樹

71~80  風 東郷
81~90  東郷
91~00  夏凜 友奈

↓1のコンマ  

ぞろ目なら自由選択


樹単体が決定したところで、ここまでとさせて頂きます
明日もできれば通常時間付近から



天乃「あら、樹が来てくれたの?」

樹「……私じゃ不満ですか?」ドンッ

天乃「っ……い、樹?」

樹「私じゃ、駄目ですか?」ギュッ


樹(……なんて)


お疲れさまでした。
では、少しだけ進めていきます
公共回線を利用するので、もしかしたら被るかもしれません


樹「っ……久遠、先輩っ」

目を覚ましたとはいえ

いつ体調を崩すかわからない天乃を前に

滅菌装備を施された樹は逸る気持ちを一生懸命に押し殺して

天乃へと近づく

一歩一歩

傍から見ればどちらが不調なのかと疑問符を抱きそうな危なっかしさで

遠くからでも目に見える涙にぬれた表情で

天乃「……そんなに、泣かないの」

樹が来てくれた喜びもどこへやら

困ったように笑った天乃はそっと、手を伸ばし

樹の伸ばした手に触れる

樹「……待って、待ってて……怖くて……」

天乃「……うん」

樹「この部屋に移ったって……悪くなったって……っ」

天乃「うん」

樹「凄く……っ、凄くっ……わた、し……」


近くの椅子に座ること

涙を拭うこと

何もかもを忘れ、ただただ大粒の涙をこぼす樹を前に

天乃は拭ってあげられない申し訳なさを感じて

けれど、悲し気な顔を見せず

優しく微笑みかける

樹「うっ……うぅぅ……」

辛さと、怖さと

それから解放された喜びと

慌てたらいけないと言う緊張感に挟まれた樹の体は小刻みに震えていて

天乃「…………」

凄く、心配をかけたのだ

樹だけじゃない

夏凜にも、友奈にも、東郷にも、風にも、園子にも、沙織にも

みんなに、心配をかけて

本当なら全員で来たかっただろうに

気を使って、樹一人で来てくれて


夏凜も、泣いてくれるのだろうか

友奈は、東郷は、園子は、風は、沙織は

そんなことを考える自分に

それは駄目でしょ。と、苦笑して

いまだ嗚咽を溢す樹の顔を見上げる

せめて足が動くのなら、

簡単に拭ってあげることが出来るのに

天乃「樹……」

今の自分は何がしてあげられるだろうか

何で、かけた心配に償えるだろうか


1、キスとか……する?
2、頑張って涙を拭う
3、手を引く
4、心配かけてごめんね、怖い思いをさせてごめんね。ありがとう……ただいま
5、手を握る手に力を籠める

↓2


では、短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば似たような時間から



樹「謝罪するならキスをください」

天乃「さ、魚の?」

樹「……こういうやつです」グイッ

天乃「ちょっ――」


では、初めて行きます


天乃「心配かけてごめんね、怖い思いをさせてごめんね」

樹の震える手を優しく握りながら

目を合わせられない樹のことを

しっかりと、見つめながら

罪悪感をほんのりと忍ばせた、宥めるような声で

語りかける

本当は抱きしめてあげたい、拭ってあげたい

求める事ならば何でもしてあげたいとさえ思う

けれど、それで樹が許してくれるであろうことを分かっているからこそ

それはしたくない

樹から言うならいざ知らず、自分から許して貰えると確証していることをするなんて

最低なことだから

天乃「……ありがとう、ただいま」

樹「っ」

ぽろぽろと零れていた涙がより強くなって

瞳が大きく見開かれて

樹「久遠先輩……っ」

そして樹は天乃を見返すや否や、倒れ込むように抱き着いた


樹「おかえりなさい……おかえり、なさい……っ」

天乃「……………ん」

強く強く抱き着いてくる樹に

天乃はすこし、苦しさを感じながら

けれども、優しく抱きしめ返して、宥めるために背中をさする

いつか言えると信じて

でも、怖くて、不安で

頑張った後に聞いた体調の悪化

それはとても、心を揺さぶり傷つけてしまうものだったと思う

樹「うぅぅ……」

天乃「ただいま、樹」

耳元に当たる位置で心から優しく囁く

樹の想いがしっかりと伝わってくる

とても暖かい想いだ

天乃「……心配、かけたね」

樹「…………」

宥めたはずなのに

抱きしめる力はより、強くなっていく……


天乃「樹」

樹「っ」

天乃「えっと……」

抱き着いてきてから、どれくらいの時間が経ったのだろうか

体内時計は医療機器の電子音にかき乱されているし

普通の時計は天乃からは見えなくて

もうそろそろいいのではと思い始めるころ

樹は少しずつ、力を弱めていく

樹「……このまま」

天乃「なに?」

樹「このままずっと、こうしていたいです」

天乃「それは」

樹「分かってます……困り、ますよね」

名残惜しそうにそう言いながら

そっと、離れた樹は涙を抑え込んだ笑みを浮かべる



1、そんなことは、ないけど……
2、そうね。少し
3、何も言わない
4、良いわよ別に、迷惑かけた分、好きにして


↓2


天乃「そうね、少し」

困ったように笑みを浮かべて答える

正直に言えば苦しかったし、辛かった

普段の問題ない体調ならともかく

底抜けに弱り切った状態から持ち直したばかりの体は

意識を遠のかせてしまいそうな感覚さえあったのだ

樹「ごめんなさい」

天乃「樹にこうされるのが嫌ってわけではないの。ただ、やっぱり、ね?」

樹「はい……」

悲し気に俯いた樹だったけれど

でも、それは残念だからではなく

またつらい思いさせてしまったことが、申し訳ないからだ

天乃「そんな悲しそうな顔しないで良いのに」

樹「でも」

天乃「私はずっと暗い中にいたのよ?」

樹「…………」

天乃「それで、ようやく見られた貴女達の顔がそんな顔ばかりだなんて。また逃避したくなっちゃう」

樹「笑うのは難しいです。だって、嬉しくて……どうしても、泣いちゃうんです」


また泣いてしまいそうになった樹は

今度は自分の袖で目元を拭うと

少しの間をおいて、笑みを浮かべて見せる

眉を歪めた微妙な笑み、頑張っているとわかる笑み

天乃「何変顔してるの?」

樹「笑ってるんですっ」

天乃「てっきり喜怒の二面相の真似かと」

樹「もぅ……本当に……」

久遠先輩は酷いです。と

今度こそは

柔らかく嬉しそうな笑みを浮かべて見せた樹に

天乃もまた、笑顔を見せた

天乃「意地悪な先輩ですから」

樹「ほんとうに、とても意地悪で優しいです」

優しすぎるからこそ

時に、残酷なほどに意地悪に思えてくる

樹はそう思い、告げて、手を握る

天乃「?」

樹「……これだけは、させてください」

迷惑はかけられない、かけたくない。だから、手くらいは。と

天乃の手を握り、その温かさを感じた


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば似たようなじかんから





若葉「………」ウズウズ

球子「行きたいなら行けば良いじゃんか」

若葉「し、しかし……迷惑、だろうし」

球子「若葉はヘタレだなぁ」

若葉「な゛ぁっ」


では、すこしだけ


√ 7月1日目  昼(病院) ※月曜日

01~10 
11~20  大赦
21~30 
31~40 
41~50 
51~60 夏凜

61~70 
71~80 
81~90 大赦

91~00 

↓1のコンマ  


天乃「樹は今日、学校の方には戻らなくて平気なの?」

樹「もう早退しちゃったので、いまさらです」

天乃「そうよね、そうじゃなかったらどうしようかと」

正直に言えば、午後の授業は出ます。と、言われても駄目というつもりはなかった

会いに来てくれたことは嬉しい

それは間違いない

けれど、その分、樹の私生活に支障をきたしてしまっているからだ

いや、樹だけじゃない

心配をかけた全員の私生活に。だ

だから、出来るのなら学校に戻って欲しいと思う自分がいる

天乃「……………」

樹「あの」

天乃「? なに?」

樹「その……」

一旦は天乃を見つめたものの

すぐに眼を逸らした樹はきゅっと唇を噛んで

樹「やっぱり……夏凜さんの方が良かったですか?」

そう言った


天乃「は……え? 夏凜? なんで?」

樹「久遠先輩、なんだか帰って欲しそうだったから」

天乃「そんなつもりは……」

孵って欲しいなんて明確な考えを抱いたわけではないけれど

帰っても良いのに。と、思ったことに間違いはなくて

俯きがちに目を向けてきた樹と視線が合って、息を飲む

天乃「そんなつもりはないけど」

樹「でも、私よりは夏凜さんですよね?」

天乃「まず、なんでそんなに夏凜を押すのかが、気になるんだけど」

夏凜夏凜と言われるたびに、言うたびに

ほんの少しだけ、ドキリとする

樹「夏凜さんはもちろん、久遠先輩も夏凜さんといる時は幸せそうだなぁっておもうから……」

そう言った樹は

なら。と、続けて

樹「誰に来て欲しかったですか? 30秒で教えてください」


1、樹
2、風
3、夏凜
4、東郷
5、友奈
6、沙織
7、園子
8、若葉
9、球子
0、家族
11、答えない


↓2


では、本当に短いですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間付近、少し速め。くらいから



樹「二股じゃだめなんですか?」

天乃「駄目でしょ、普通に」

樹「八股してるのにですか?」

天乃「えっ?」

九尾(……八岐大蛇じゃからのう)


では、少しだけ


天乃「……まぁ夏凜。かな」

腕に巻かれた夏凜のリボン

それを見つめながら、静かに答える

前回だってそうだ

昏睡状態の期間こそ短く済んだが

その時には目が覚めるまで付き合ってくれたほどだ

その理由には、自分から気づいてあげるべきだったけど

天乃「樹が嫌なんてことは全くないけど、でも。怒られるのは後回しにしたくないから」

苦笑しつつ言う天乃を見つめた樹は

怒られるのはちょっと怖いですよね。と

天乃の意見に同意したうえで

樹「でも、そうじゃないですよね」

否定する

天乃「え?」

樹「今、久遠先輩は自分がどんな顔をしてるか分かってますか?」

鏡のない部屋

右目だけの視覚

それでは自分の顔の確認は難しく

それを察したからか、樹は嬉しそうに笑みを浮かべる

樹「とても優しい顔してるんですよ」


それは心から相手を想っている顔だ

怒られるのを後回しにしたくないなんて

それが全てではないと語る表情

樹「夏凜さんが、好きなんですね」

天乃「好き……なんて」

樹「もちろん。久遠先輩はみんなが好きだと思いますけど」

驚きつつも

どこか照れくささの見え隠れする天乃の表情を見つめ

樹は寂し気に

けれども、嬉しそうな笑みを浮かべたまま遠くを見る

やっぱり、夏凜さんが来るべきだったな。と、思って

樹「私も」

天乃「?」

樹「私もみんなも、久遠先輩のこと好きですよ」

何回言ったか言われたかは分からないけれど

でも、樹はあえて告げて

樹「だから少し、夏凜さんには嫉妬しちゃいます」


天乃「嫉妬って」

樹「もちろん、そんな危ないくらいにしてるわけじゃないですけど」

でも、少しばかりしてしまう

みんなのことを強く思ってくれていること

それは良く分かっていることだし、感じていること

でも、その中にはない想いが

夏凜の方向に向いていると分かってしまうと

それでも構わないと思う反面

悔しさも芽生えてくる

それは決して強くはないが、ないわけではなくて

樹「目の前にいる時くらい、見てくれてもいいじゃないですか」

天乃「見てるわよ?」

樹「……心も、見てくれてますか?」

不意に手と手が重なって

視線が合わさって、天乃は思わず息を飲む

心も見ているのか。とは、どういう意味か

分からないとは、言えない


1、それを一本に絞るなんてこと。今はちょっと難しいかな
2、それは、見てない。かも……今は、ちょっと
3、今日はえらく積極的じゃない。樹
4、ふふっ、見て欲しいの?
5、沈黙

↓2


そっと離れていく樹の手を

握ることもできなかった

樹「ごめんなさい、変な事。聞いちゃいました」

必要のない謝罪をする樹に

その必要はないということも、出来なかった

何も。出来なかった

天乃「……………」

樹「長居しすぎるのもあれなので、帰ります」

そう残して去っていく樹を見送って

天乃はただ、息をつく

答えられなかった

答えるには、時間がなさ過ぎた

ううん、そうじゃない

多分、怖かったんだと思う

樹の質問に答えたとき

その答え次第で樹との関係が

樹と夏凜あるいはみんなとの関係が

悪影響を受けてしまうのでは。と


では、ここまでとさせていただきます。
明日もできれば通常時間から



天乃「…………」

樹「そうですか、見て、くれてないんですね……」

樹(九尾さん曰く、キスをすればいい。だったよねっ?)


では、少しだけ


天乃「…………」

九尾「何を怯えておる」

天乃「別に、怯えているわけじゃないわ」

見透かした言葉を投げかけてくる看護師に化けた九尾に

天乃は目を向けることなく、答える

その瞳に映っているのは、腕に巻かれた夏凜のリボンだ

九尾「主様は覚えておらぬのか? 闇の中で見ていたものを」

天乃「……?」

闇の中で見ていたもの

そんな言い方をされても、「ああ、あれのこと」なんて

すぐに気づけるはずは無く

なんのことかと顔を上げた天乃を、九尾はじっと見つめて息をつく

覚えていないことへの呆れと言うよりは

覚えていなくて良かったと安堵したような、溜息だ


天乃「九尾は何か知っているの?」

九尾「主様がなぜ不安に思うか。その理由くらいはわかる」

しかし。と、九尾は続ける

その表情には嫌悪感が含まれていて

聞くべきではない。そんな思考回路が駆け巡る

九尾「それは陽乃が抱える闇の一端。陽乃を黒く穢した記憶」

天乃「陽乃……さん?」

自分のことか、勇者部のことか

そう思っていた天乃の思考に割り込んだ陽乃という先祖の名

戸惑う天乃は脈打つ自分の胸元に手をあてがう

違和感は無い。何か異物が紛れているような感覚もない

けれど、確かな不安が渦巻く

いや、これは不信感。だろうか

九尾「久遠陽乃という人間が勇者になる以前の欠片。恐らく、同質に穢れゆく主様に惹かれてきたのじゃろうな」


樹海化の被害を取り込んだときだろう

何がどうなったのかは解らないし

絶対という確証はないがそのときに紛れ込んだ可能性が高い。と

九尾は語って、目を伏せた

思案している表情

それは企みがあるというよりも

そうして問題は無いのかどうか

先の先を考えている大人のような表情で

天乃「九――」

九尾「夢にみたものを覚えておらぬならばそれでも良い。むしろ、主様にとってはそれが幸といえるやも知れぬ」

天乃「…………」

九尾「それでも、片鱗を知りたいかえ? その欠片が何故、主様に不信感を抱かせるのか」

久遠陽乃という少女の記憶

その一端

勇者部の友人、親友、戦友

固い絆で結ばれているはずの彼女たちへの不信感の元凶

それはきっと、知るべきではない闇の一部

九尾「望むならば答えようぞ。我が主。じゃが、主様がそれを認識することで悪影響がないとは言えぬ。心せよ」


1、知りたい
2、知りたくない
3、今は、止めておくわ


↓2


先祖、久遠陽乃

彼女がどのような人生を歩んできたのか

天乃はまだ、その片鱗しか知り得てはいない

それも、本当に本当の一部

確かに、二面性だのなんだのと言う話はちょっとだけ聞いたが

どれほどの闇があるのかというものまでは聞いていない

そしてこの九尾が、それは危険であると忠告している

天乃「……今は、止めておくわ」

唇を噛んで、拒否する

ただでさえ体が弱っている現状

胸の奥に渦巻く不信感、その悪しき感情に体を乗っ取られてしまう可能性さえあるからだ

そしてそれはきっと

意識不明の重体に陥るよりもみんなを傷つけることになる

九尾「良かろう……心優しき妾の主にはこれはあまりにも酷な事。じゃからな」

天乃「……………」

九尾「……………」

黙って頷いた天乃を見つめた九尾は

その頭に優しく手を乗せると、耳元に口を近づけて

九尾「案ずるな。勇者の娘共はみな良き人間の子。今は疑うことなど不要じゃ」

優しくささやく

それは、子をあやす母親のように

それは、子を見る父親のように

とても暖かく優しいものだった


√ 7月1日目  夕(病院) ※月曜日

01~10  風
11~20 
21~30  友奈
31~40  大赦
41~50 夏凜

51~60 
61~70 東郷

71~80 
81~90  沙織
91~00 

↓1のコンマ  

√ 7月1日目  夕(病院) ※月曜日

1、九尾
2、死神
3、若葉
4、獺
5、稲荷
6、悪五郎
7、勇者部の誰かに連絡 ※再安価
8、イベント判定

↓2


1、風
2、東郷
3、友奈
4、夏凜
5、沙織
6、東郷

↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



陽乃「ふふふっ、信じるものが救われる」

陽乃「それは間違いない事よ」

陽乃「だって私は、足をすくわれたんだから……ね?」

九尾「…………」

陽乃「みんな、死ねばいいのよ」


では、少しだけ


天乃「九尾、お願いがあるのだけど」

九尾「なんじゃ」

天乃「その……」

樹にあんなことを言われてしまったせいか

なぜだか気恥ずかしさを感じる天乃は

腕に巻かれたリボンを隠すように撫でて

天乃「夏凜を……呼んでくれない?」

夏凜が何を考えているのかわからないが

昼間は学校があるということもあるから

代表者一名のみという事でこれなかったこともわからなくはない

夕方に関しても

勇者部の活動だってあるだろうし

昼間同様に病み上がりの状態に全員で押しかけるというのは。と

やや遠慮しているのかもしれない

でも

九尾「夏凜が来ない事が、不満かや?」

天乃「……そんなことは」

九尾「動悸が激しくなっておるぞ」


茶化すというよりも呆れが先に来た九尾の面倒くさそうな視線を受ける天乃は

頬を赤く染めながら

自分の体を覆い隠すように傾けて、目を逸らす

天乃「本当に不満とかじゃ、ないわ」

九尾「ならば、ただただ会いたいだけかや?」

天乃「まぁ……顔を見たいのは。そう、かな」

怒っているのか、喜んでいるのか

樹のように激しく感情を昂ぶらせてくるかもしれない

でもきっと、そうだとしたら怒っている方に違いない。と

天乃は苦笑して

天乃「ほら、戦いが終わったら気持ちを伝えるって話。わすれた?」

九尾「覚えてはおるが、犬妹どもの件はよいのか?」

天乃「……それも含めて、答えを出すわ」

九尾「ふむ……」

見えていた笑みに影が差したのが見えた九尾は

しかし、考え込む仕草を見せるくらいで、何も言わない

これは天乃が解決すべきことだからだ

九尾「では、呼んできてやろう。待っておれ」


九尾がそういい残して姿を消してからしばらくすると

大きな窓を覆い隠すカーテンに影が揺らいで

夏凜「……入るわよ」

天乃「!」

確認の声から間髪いれずに夏凜は病室へと入ると

一歩目を躊躇ったが

踏み出してからは立ち止まることなく天乃の元へと近づく

夏凜「まさか九尾が呼びに来るとは思わなかったわよ」

天乃「ここから出して貰えないからね。そうするほかなかったのよ」

困惑の色を見せる夏凜に、

座ったら? と言いつつ答えて笑みを浮かべる

夏凜の気持ちに答えなきゃ

そう思う心は心音を少しずつ速めていく

夏凜のことを好きだと言えば

夏凜はもう気持ちを伝えてくれているのだから

断られることはない。はずだ

でも、もし仮に

樹からも似たような思いを感じているのだと言ったら……


夏凜「悪かったわね」

天乃「え?」

夏凜「放課後はわざと、来ようとしなかった」

どちらかと言えば

天乃には悪い言い方になるかもしれないが

夏凜は天乃にあいたくないと思った

夏凜「昼、じゃんけんで負けたときもさ……内心ホッとしてたのよ」

九尾に言われたことが気がかりで

キスをしなければ問題はないだろうと思ってはいたが

しかし、ただ触れ合うだけでもタブーだったら

考えは吐き出すたびにネガティブなものへと変わっていって

目を覚ましたと聞いた瞬間、自分だけは絶対に行くまいと願ったりもした

夏凜「私には何か特別なものがあって。それが天乃をさらに苦しめるんじゃないか。そんな感じがしてさ」

天乃「……どうしてそんなことを考えたの?」


寂し気に言う天乃を一瞥した夏凜は

少しばかり躊躇いがちに目を伏せると

自分の手元を見つめて

夏凜「あんたが寝てる時に、キス。させて貰ったのよ」

天乃「なんてこと……っ」

夏凜「や、やましい理由はなかったわよ!」

唇に手を宛がって驚愕に身を引きかけた天乃に対して

夏凜は頬を紅潮させながら声を張り上げると

ただ。と、続けた

夏凜「ただ、頑張る力が欲しかったのよ」

天乃「だから、したの?」

夏凜「……最高戦力を失った。チームの安定剤を失った。だから、不安だったし、怖かった」

過ぎてみれば園子が天乃に負けず劣らずの力を発揮してくれたおかげで

園子は一時的に昏睡状態に陥ったりはしたものの事なきを得ることは出来たが

しかし、始まるまでは不安だったのだ

夏凜「だから、して。そして戦いが終わった後に……あんたの体調が急激に悪化してICU行きになった」

天乃「だから夏凜は自分がキスしたせいだと思ったのね?」

本当は九尾に色々と言われてそう考えるようになってしまったのだが

しかし、夏凜は九尾のことは一切語らずに頷いて、天乃へと目を向ける

タイミングが悪かったのかもしれない

けれども、引き金になった可能性もあるが……


1、だったらキス。してみない?
2、それじゃ……貴女はもう。私のことを好きでいてはくれないの?
3、だとしても。私は貴女と一緒にいたいわ
4、……そんなんじゃ、樹の方に行っちゃうわよ?


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から





天乃「キス……煮干しの味がする」

夏凜「なっ、歯は磨いてきて――」

天乃「こうすること、期待してたなんて。えっちね」

夏凜「押し倒すぞ」


では、少しだけ


天乃「だったらキス、してみない?」

夏凜「嫌よ」

天乃「寝てるときに勝手にしたくせに?」

夏凜「う……」

はっきりと断って早々

痛いところを突かれた夏凜は気まずそうに声を漏らして目を逸らす

寝ているときに無許可でキスをしたのだ

それに関しては何を言われてもなにをされても

反論する権利は正直ないしする気はなかった

けれど、夏凜は膝上の手を握り締めると、

真剣な目を天乃へと向ける

夏凜「それでも、嫌」

天乃「九尾のおかげで清潔には出来てるから……」

夏凜「あ、あんたの問題じゃないわよ」

口元を指で押さえやや強引な笑みを作る天乃に

夏凜は照れくさそうに返す

天乃とするのが嫌なわけじゃない

そもそも、嫌な人間が寝ている時に自発的にするわけが無いわけで


天乃「じゃぁなんで……なんて。聞く方が失礼よね」

夏凜「………っ」

理解していない言葉を言わず

天乃は茶化すような素振りの無い表情を浮かべると

下から見上げるように、夏凜へと目を向けて

天乃「夏凜は心配してくれてるのね。私のこと」

夏凜「そ、そりゃ……する。わよ」

仕草こそ魅惑するようなものだが、天乃の瞳は真剣そのもので

喜ばしさがこもっているそれから逃れるように首を回す

自分のに向けられているというのが

夏凜はどうしても気恥ずかしさを抑え切れなかったからだ

天乃「さっきからずっと、そればかり。私のことを心配して、それで……」

僅かに体を動かしただけで骨が軋むような痛みを感じる

けれど、その痛みを顔に出さず、飲み込んで

天乃「私は心配かけた貴女の心が心配よ」

膝の上に留まったままの夏凜の手にそっと握る


やりたくてやったことなのかと聞かれると

正直なところ、微妙なラインではあるのだが

しかし、自分が目を覚ませなくなる可能性

長く昏睡状態になる可能性

それらを踏まえたうえで、天乃は少しだけ無茶をした

天乃に言わせれば、頑張った

だから、樹の心はもちろん

今目の前にいる夏凜の心だって、しっかりと癒してあげなければいけないと……

天乃「それは、酷い言い草だわ」

これは義務なのか

これは仕方がなくすることなのか

今心にあるのは、罪悪感と義務感と

どうしようもないお人よしゆえのものなのか



1、キスをする
2、好きよ
3、……樹に言われたのよ。心も見て欲しいって


↓2


違うでしょう?

そうではないでしょう?

貴女はどうして夏凜を求めたの?

天乃「……………」

自分の心の声が聞こえる

分かり切っているくせに

改めて問いただそうとしてくるのだから

意地が悪い

でも。そう

これがなければ、適当な言い分けを見繕って逃避していたかもしれない

だって

【人間なんて信用ならない。どれだけ親しい人だろうと。所詮は他人なのだから】

天乃「っ」

自分と同じ声

けれど、違う誰かの声が聞こえて、唇を噛む

そんなことは思ってない

そんな風に考えていない

なのに、心はどうしようもなく黒くなっていく

夏凜「天――」

救いを求めるように、手を伸ばす

夏凜の体に触れ、その瞳をしっかりと見据えて

天乃「好きよ」

気持ちを伝える

今しか言えない。今だけが、唯一のチャンス

そう、思えたから


夏凜「……っ」

差し出され、体に触れながらも

滑り落ちていく手を取った夏凜は

真っ直ぐ見据えてくる天乃の瞳を見返しながら、息を飲む

これ以上傷つけたくない

苦しい思いをして欲しくない

好きだと言われたことが嬉しいはずなのに

心は異常なほどに穏やかで、冷静で

天乃が何を求めているのか

それがはっきりとわかるからこそ

唇を噛み締める

夏凜「……私は」

どうしたい

なにがしたい

どうするべきだと思っているのか

傷つけないべきだ、苦しませないべきだ

もしも、天乃を苦しめる可能性が、その根源が自分にある可能性があるのなら

手を離して首を横に振るべきだ


でも、私が求めているのは

天乃が求めているのは

夏凜「……私はもう、気持ちを話してるのよね」

なんて浅はかだったんだろうかと

夏凜は自分自身に呆れたような笑みを浮かべて

天乃の手を離すことなく

それどころか少しだけ強く、握り返す

天乃「!」

夏凜「こんなことなら、気持ちを伝えなきゃよかった」

天乃「酷い事言――んっ」

言い返そうとする天乃の唇に唇を重ね

反論の言葉をせき止める


夏凜「責任とるとか、私……まだ経験ないから上手く出来ないし」

天乃「っ」

そっと離れつつ、ベッドへと押し倒す

集中治療室のベッド、無駄に布擦れを起こす服装

茶化すように音を出す医療機器

そのすべてを感覚から排除する

今見えるのは、天乃の顔

今聞こえるのは天乃の吐息

今感じるのは確かに温もりのある天乃の体温

夏凜「でも、あんたがそれでいいなら」

天乃「良いわよ。別に」

夏凜「天――」

天乃は夏凜の首に腕を回すと、開きかけの唇にそれを重ねる

何度もしたこと、感じたこと

その優しさと、温もりと、幸福感は

穢れた体、壊れかけの体に走る皹に少しずつ沁みこんでいく

それを感じた天乃はゆっくりと離れて

天乃「惚れた女が責任を取れないのなら。惚れさせた女が責任をとってあげるから」

不安に彩られた夏凜の瞳に、笑みを映した


では、ここまでとさせていただきます
明日は出来れば昼頃から




夏凜「好きなやつ相手では何でもかんでも上手くやりたいってのが……恋した女の意地ってやつよ」

天乃「だからって怖気づかないでよね。今更」

夏凜「し、ししししてないし!」

天乃「貴女が努力していることは私が良く知っているんだから。上手く出来ないくらいで。見限ったりしないから。ね?」

夏凜「ぅ……うん」


では、初めて行きます


夏凜「気持ちに勝てなかった」

天乃「なんの?」

夏凜「……天乃に対するやつ」

率直に言うかどうか

間を置いた夏凜はやや遠回しにそう言うと

恥ずかし気に眉を顰めて

夏凜「だから、責任は私が取る」

すべきではないと思ったのに、キスをしてしまった

こんなにも触れ合ってしまった

もしもこれで体調を崩したりすれば

確実に悪いのは自分だ

夏凜「天乃はどうせ、誘ったのは自分だから。なんて言うんだろうけど」

天乃「否定はできないわね」

夏凜「でも、危険性を理解したうえで抗いきれなかった私が悪い。だから。私が責任を取る」


天乃「……………」

夏凜はとてもまじめだと思う

戦闘訓練においてはもちろん

こういう対人関係にだって

しっかりと考えて、行動している

言葉はちょっと……選ぶのが苦手かもしれないが

けれど、天乃はすこしばかり不満そうに夏凜を見つめると

首に回した腕に力を込めて

夏凜「ちょっ」

強引に夏凜のことを引き倒す

頭のすぐ横に夏凜の手が付けられたが

驚くことなく、天乃は夏凜の抵抗を抑え込む

夏凜「っ、危ないから放……」

天乃「ねぇ、夏凜」

うまい具合に近づいた夏凜の耳元で

天乃は優しくささやく

誘うように、惑わすように

天乃「……体調崩さなきゃ、責任。取ってくれないの?」

甘える言葉を流し込む


夏凜「い、や……そ、そりゃ! と、取るけど……」

天乃「…………」

首を絞めるような腕がゆっくりと滑り

肩にそして背中に回って抱きしめる力を強くしていく

夏凜「っ……!」

目の前には天乃がいる。好きだと言った相手、好きだと言ってくれた相手

でも、つい数時間前に目を覚ましたばかりの病み上がりだ

無理をさせたくない、余計なことをしたくない

……したいけど

その自制心が籠っていく腕が段々と震えだす

夏凜「お、圧し潰すから、天乃……これ以上はっ」

何層にも重ね着ているせい……じゃなくて!

おかげで詳細な感覚は全く感じないが

それでも、自分の慎ましやかな部分が

天乃の豊満な部分を段々と圧し潰してきているのは解って

天乃「私の体は頑丈よ?」

夏凜「や、病み上がりが言えたことかッ」

あんたの体は良くてもこっちの心は頑丈じゃないっての!

なんて、心の中で悲鳴を上げた


天乃「……私、ずっと一人だったの」

夏凜「………………」

天乃「暗い中で……ううん。何かと一緒にいたんだとは思う。でも、一人だった」

惑わすような声は

寂し気な声に切り替わって

抵抗に反抗するように引き倒そうとしていた力も

少しずつ弱まっていく

けれど夏凜は体を近づけたまま、動けなかった

天乃「……」

白い布団の上では桜色の髪が花開き

橙色の瞳、白くて紅潮した顔は

夏凜の視線から逸れるように横向きで

夏凜「ん」

思わずごくりと息を飲む

瞳の所有する小説を良く読んでいる夏凜は

何というべきか

同年代と比べると、そう言った行為の描写? 想像? 妄想? いや、知識はやや多い

そして、ディープであり、背伸びした大人だ


集中治療室なんて特殊なシチュエーションこそ

夏凜の記憶にはどこを探そうと見当たらないが

ベッドの上で押し倒しているような状況というものは

見飽きたと言えるほどには見た

健全な小説である以上

やはり、場面はベッドか敷布の上だからだ

……キスはその限りじゃないけど

夏凜「あんたが一人だったのは解ってる。寂しかったから、こうして来てるんだろうなってのも」

天乃「……………」

夏凜「私だって、多少はそうだったわけだから」

理解はある

いや、むしろここで攻め入ってしまいたい気持ちはある

白い首筋に舌を這わせ、舐めるように齧り付いてキスをして

もう少し強く、キスをしたいと急く気持ちもある

だけど

夏凜「あんたには万全でいて欲しい。こんな場所から、病院から。さっさと戻ってきて欲しい」

天乃「夏凜……」

夏凜「だから、ちゃんと全快するまで我慢しなさいよ。それが出来たらあんたがしたい事、拒否せずやってあげるから」


1、約束よ?
2、……計画通り
3、ふふっ、そうね
4、やだ。今が良い


↓2


天乃「約束よ?」

夏凜「わかった」

抱きしめる力が完全になくなっても

夏凜はしばらくそのまま天乃と見つめ合う

キスはしない、触れ合いもしない

でも

相手の姿が映っていること

その瞳が開かれていること

それだけで、二人は満足だったから

天乃「何でも。だからね?」

夏凜「て、手加減しなさいよ?」

天乃「ふふっ、気が向いたらね?」

夏凜「うぐ……」

元気を出させるためとはいえ

またしても軽率な発言をしてしまったのではないかと

夏凜は少しばかり悔いて

けれども

夏凜「ま……いいか」

天乃が嬉しそうなら。と、苦笑した


√ 7月1日目  夜(病院) ※月曜日

01~10  九尾
11~20 
21~30 
31~40 大赦

41~50
51~60 闇

61~70 
71~80 
81~90  死神
91~00 

↓1のコンマ  


夏凜は帰った

それは夏凜にもどうしようもないことで

集中治療室に宿泊なんて出来るわけがないし

たとえできるのだとしても、大赦の人が許可をしないからだ

天乃「…………」

夏凜が帰った後の検査で

まだ完全な結果は出ていないものの

明日には一般病棟に戻っても差し支えないのでは。と医者に言われたが

それでも、完治には程遠いと言う

体の中は徐々に回復傾向にあるが

戦闘前と比べると酷く損傷していて

下手に運動なんてすれば集中治療室に逆戻りだと注意もされたわけで

天乃「ここには、戻ってきたくないわね」

一人ぼっちになってしまうと言うのもあるが

一番は医療機器の量

まだ完全に撤去は認められていないため

さまざまな電子音が、常に聞こえてくるのだ

それはつまり、中々寝れないのである


天乃「それにしても……」

そっと胸元に手を宛がった天乃は

少しためらいながら、ゆっくりと息を吸い込んでいく

1秒、2秒、3秒……最初のうちは何の問題もないが

10秒近く吸い込んだところで、ピリッっとした何かが切れる感覚が内側から流れ出す

天乃「深呼吸さえ、ままならないとは」

勢い良く吸い込んで、勢いよく吐く

そんなことをすれば、激痛さえ覚悟しなければいけないかもしれない

天乃「元々歩けないって言うのは、不幸中の幸いかもしれないわね」

そうつぶやいた天乃は思わず苦笑して、

天乃「ぁ、やっ……痛っ」

しまった。と、悔いる暇さえなく迸るずきずきとした痛みに胸を掴む

どこかをやらかした瞬間

連鎖的に体が壊れていくのだ

今はジェンガのように、壊れやすい

天乃「かは……ぁ……」

痛みに呻きつつも、呼吸を乱したら最後、血を吐くことになる

だからこそ、天乃は精神力のみで耐えしのいで、体の回復を待つ

天乃「これ……ほんと。死んでないのが奇跡だわ」

もっとも、基本的には死ねないのだが


1、九尾
2、死神
3、若葉
4、猿猴
5、稲荷
6、悪五郎
7、球子

↓2


天乃「五郎君、いる?」

悪五郎「どうした。俺で良いのか?」

天乃「呼んだ人に聞き返さないの」

頬を伝う冷汗を拭いながら

天乃は体を傷つけない程度のひきつった笑みを浮かべて

悪五郎へと目を向ける

天乃「主人の貧弱さに、愛想をつかしてないかなと思って」

悪五郎「あれだけのことをして生きてる主を貧弱というほど、落ちぶれてはいないな」

天乃「……私、意外と人望あったりする?」

悪五郎「からかうな」

痛々しい笑みを浮かべる天乃をまっすぐ見つめ

少年の姿にとどまる悪五郎は小さくため息をつく

悪五郎「俺は人外だ。が、少なくとも女。貴様は人外からは認められている。でなければ、すでに死んでいるだろう」

天乃「嬉しいこと言ってくれるじゃない」

悪五郎「……あまり口を開くな。傷が広がるぞ」


最初こそ中々掴みがたい精霊だった神野悪五郎

今でもそこまで理解できたわけではないが

少なくとも、敵対心は感じることはない

そして

天乃「優しいのね。五郎君」

悪五郎「一応は主だろう。従者が気遣わなくてどうすると言うのだ」

天乃の嬉しそうな笑みに

悪五郎は呆れたように返して近くの椅子に座る

本当は座る必要は皆無だが

来る人来る人が座っているため

そうするべきだと考えたのだろう

悪五郎「お前は失われるべきではない。それを理解していないわけではあるまい?」

天乃「……まぁ、ある程度は」

悪五郎「ある程度ではなく絶対にだ。乃木園子という娘は単純な力比べなら貴様より上かもしれんが、奴では力不足だ」

天乃「稲荷の力がないから?」

悪五郎「それだけではない。娘の戦い方を見ていたが、恐らく全力を出せば【3ターン】程度の戦闘が限度と見える」

それ以上は戦えない

無理に戦えば過負荷で死ぬ可能性もあり得る

それは、勇者の力であっても決して防ぎきれない領域の死だ


今回のような数の少ない戦闘ならば問題はないだろうが

最初のように大人数が相手では

活動限界のある園子では確実に勝利できるとは言えない

悪五郎「強者には強者なりの欠点が存在するというものだ。それは、お前自身が良く理解していることであろう?」

天乃「まぁ、ね」

腹部を軽く撫でながら、頷く

まだ完治していない体は

悪五郎の言葉をまさしく、その身に教え込んでくれている

悪五郎「しかし、人間を守るなど。お前には役不足ではないか?」

天乃「そんなことないわよ」

悪五郎「いいや。人間やこの世界の一部など。貴様の命に比べればあまりにも軽いものだ」

はっきり言ってしまえば

天乃さえ生きていればこの世界を守ることが出来る

それはつまり、極端に言ってしまえば天乃自身が世界なのだと、悪五郎は言う

悪五郎「もちろん、お前の価値観は違うのだろう。だが、俺たちはそう言う考えだ」

天乃「……………」


1、変わっても。貴方は妖怪ということなのね
2、なら、価値観の違う貴方は。夏凜達も守る価値はないと考えてるの?
3、だったら。価値観の違う貴方に聞きたいのだけど……樹のことは。どうするべきだと思う?
4、ええ。私は違う。みんなには悪いけれど。私にとっての私自身の価値は。その程度だから


↓2


天乃「……………」

妖怪と人間

価値観が違うのは当たり前で

妖怪にとって人間という存在が取るに足らないと言うのも

変える必要があるのかもしれないが

仕方がないことだと思う

天乃「……だったら」

それなら。と

天乃は考えを切り替えて、悪五郎を見つめる

天乃「だったら。価値観の違う貴方に聞きたいのだけど……樹のことは。どうするべきだと思う?」

話を聞いていたのなら

考え方、価値観

何もかもが違うのなら

悪五郎は思いつかない答えをくれるのではないか

それを期待して、問う


悪五郎「樹……?」

天乃「風の妹。犬吠埼家の妹の方」

悪五郎「あぁ、あの娘か」

樹では通じないのに、こういえば通じるようで

理解したように声を漏らした少年妖怪は

子供らしからぬ声で小さく呻いて、息をつく

混じっているのは呆れだ

天乃「自分で考えろって?」

悪五郎「それも思うが、だが。人間とは実に傲慢な生き物だと思ってな」

天乃「私? それとも樹?」

悪五郎の淡々とした言い方にも

天乃は関せずと明るい声で聴くと

悪五郎の視線はどこかへと移って

悪五郎「誰かと仲良くだの、誰かを愛せだの。人間は求めているのだろう?」

天乃「そうね」

悪五郎「しかし、こと。求愛行動においては一つを選出しろと言う。複数と繋がれ。だが、単数を選べ」

天乃「…………」

悪五郎「その両立を求めるなど、傲慢だとは思わないのか。お前は」


天乃「何が言いたいの?」

悪五郎「お前が理解できていないわけがないだろう」

天乃「…………」

悪五郎「なにせ、それはお前自身が求めていることだからな」

分かっているぞと言うように

見透かした笑みを浮かべる悪五郎は天乃の額に指を突きつける

この中で、それを考えているのだろう?と

悪五郎「俺はお前のその理想。嫌いではないぞ」

天乃「…………」

空気を乱しかねないような

誰か一人を特別扱いするのではなく

現状を維持したまま、関係の昇華を行う

それはとてもではないが。容易ではない

悪五郎「これは俺個人の言葉だが」

そう言った悪五郎は、天乃の額に突き付けていた指を引き

頬を撫でながら下顎を摘まむように持ち上げて、顔を近づける

悪五郎「その身を削った分だけ、欲深く生きる権利がお前にはある。好きに生きろ。死ぬ以外の道ならば。俺は阻まん」


天乃「貴方は、夏凜だけでなく樹のことも選んでいいってわけね」

悪五郎はその言葉に頷く

天乃が誰か一人しか無理だと言うのなら

無理強いするつもりはない

だが

もしも全員を選びたいと言うのならば

悪五郎はそれを、阻むことはしない

天乃はそんな我儘が許されるくらいには

世界に貢献しているはずだからだ

悪五郎「もっとも、小娘共がそれを良しとしているのかは知らないがな」

天乃「してなかったらどうするのよ」

悪五郎「お前なら篭絡できるだろう? この唇を合わせてやれば――」

そう言いながら、悪五郎は天乃の顔を固定して

そっと、近づけていく


1、拒む
2、拒まない


↓2


天乃「……だめ」

悪五郎「つれない女だな。お前は」

自分の胸元に宛がわれた拒絶

それに視線を下げた悪五郎は

しかし、それを喜ばしそうに笑って天乃を見る

強引に手を出すことはできる

周囲にいる従者はみな凶悪だが

それでも、悪五郎には天乃の唇を奪うこと

その体を弄ぶことは可能だ。だが

悪五郎「それでは面白みがない」

天乃「何言ってるのよ」

悪五郎「俺はお前の唇を奪った小僧とは違う。ということだ」

含みのある笑みを浮かべながら離れていく悪五郎を

天乃は目で追い、息を飲む

少年妖怪の瞳は、深淵のような危険を感じる

悪五郎「全てを愛したいと言うのなら、その輪に俺も含めてくれると。嬉しいのだがね」

天乃「……だったら、せめて愛される努力をして頂戴」

悪五郎「善処する」

そう言い残して、悪五郎は姿を消した


1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流無()
・   犬吠埼樹:交流有(再会、夏凜、沈黙)
・   結城友奈:交流無()
・   東郷美森:交流無()
・   三好夏凜:交流有(好き、キス、約束)
・   乃木若葉:交流無()
・   土居球子:交流無()
・ 伊集院沙織:交流無()

・      九尾:交流無()

・       死神:交流無()
・       稲狐:交流無()
・      神樹:交流無()



7月1日目 終了時点

  乃木園子との絆 54(高い)
  犬吠埼風との絆 44(少し高い)
  犬吠埼樹との絆 44(少し高い)
  結城友奈との絆 59(高い)
  東郷美森との絆 43(少し高い)
  三好夏凜との絆 68(高い)
  乃木若葉との絆 39(中々良い)
  土居球子との絆 27(中々良い)
     沙織との絆 53(高い)
     九尾との絆 45(少し高い)
      死神との絆 38(中々良い)
      稲狐との絆 30(中々良い)
      神樹との絆 9(低い)

 汚染度???% +???+20%

※夜の交流で稲荷と話せば、汚染度が判明します



01~10 
11~20 始まり 
21~30 
31~40 
41~50  絶望
51~60 
61~70 
71~80 裏切り

81~90 
91~00 

↓1のコンマ  


それは唐突な始まり

何かをする暇もなく

ただただ、一瞬にして日常は奪われ、踏みにじられた

悪いことをした?

何にもしていない

自分で言うのはすこし憚られるかもしれないけれど

誰とでも分け隔てなく接していたし、特別さはなくとも好意をもって相手をしていた

それゆえに、もちろん。何事もないなんてことはなかった

調子に乗っていると野次られることがあったし

真面目に生きていてもふざけるなと追い回されることだってあったけれど

比較的、正しく生きてきたと思う

それでもなお、私はすべてを持っていかれた

奪ったのは、化物

捧げたのは、人間

どちらも……化け物だ


その日の始まりは奇妙なものだった

もっとも、星降る夢を見た程度で

お母さん達に話してもそこまで気にされることのない

本当に些細な違和感でしかなかったけれど

でも、その夜に。世界が終わった

数多の星が降り注いで人々を食い荒し、日常を崩壊させたから

そして、ある人が言った

「久遠家は、こういう時の為にいる一族だ」

誰かの言葉は瞬く間に広がって

久遠家に繋がりのある人はすべてが連れていかれた

子供も、赤ちゃんも例外なく

当然、私も

みんなが、化け物が進行してきている四国の端、瀬戸大橋の岡山県側に捧げられた

そして

「……陽乃ちゃん。貴女だけでも。生きて」

私以外の全てが目の前で――食い殺された


√ 7月2日目  朝(病院) ※火曜日


天乃「っ!」

全身を覆う濡れた不快感に目を見開いた天乃は

呼吸の荒々しさ、内側の鈍い痛み、むずがゆさを感じて胸元を鷲掴む

痛くて、痒い

掻きむしっても解消されず、痛みも治まらなくて

無理矢理に体を起越した途端、

口元から血が流れ落ちていく

天乃「っ……ぅ……」

もう必要ないからと

一部の医療機器を止めていたせいか

医者には気づかれていないようで

天乃「けほっ、けほっ……ぅ」

寝ている間に溜まった血を吐き出して

胸の奥の痛みを抑えるように、軽く息を吸って、吐く

天乃「集中治療室での生活が長引くのは……嫌だからね」

それに

こんなことになったなんて知れたら

夏凜が二度と、関わってくれなくなる

それは……もっと嫌だ


天乃「夢……陽乃さんの」

久遠陽乃という少女の記憶

少女の闇の一端

けれど、これはまだ序の口だ

目の前で家族が、親戚が

従妹も生まれたばかりの赤ん坊も

みんなが食い殺されていく

それ以上の闇が、陽乃にはある

天乃「本当に、夏凜のせいなのかしら」

この心が蝕まれていくのは

キスあるいは接触。それによるものなのだろうか

防ぐには……

天乃「そんなの、我慢したくないし」

僅かなむずがゆさの残る胸に手を宛がった天乃は

速く治れ。と、残念そうにつぶやいた

√ 7月2日目  朝(病院) ※火曜日

1、九尾
2、死神
3、若葉
4、獺
5、稲荷
6、悪五郎
7、勇者部の誰かに連絡 ※再安価
8、イベント判定

↓2


01~10  大赦
11~20  夏凜
21~30  風
31~40  友奈
41~50  樹
51~60 東郷

61~70 九尾

71~80  女子生徒
81~90  男子生徒
91~00  若葉

↓1のコンマ  


風「おはよう、調子はどう?」

一日の時間の経過があったからか

風は樹たちのような動揺もなく

普段通りの声色で病室に入ってきた

天乃「貴女……学校は平気なの?」

風「天乃が心配しなくても、あたしはサボったりはしないわよ」

天乃「それもそうね。でも、HRには間に合わないんじゃない?」

風「それは言ってあるから」

授業にはちゃんと出るけど。と付け加えた風は

落ち着かせるようなため息をつくと

やっぱり、椅子に座って天乃を見つめる

風「天乃、また体調崩した?」

天乃「どうして?」

風「少し顔色が悪い」

いつも白いから

少しでも変わると良く分かる

恥ずかしがっていたりするのも

体調が悪いと言うのも


そうはいったものの、風はでもね。と切り出す

風「実を言うと。夏凜に頼まれてきたのよねぇ」

天乃「夏凜に?」

風「そ、夏凜に」

天乃の驚いた表情に

風は満足そうな笑みを浮かべながら、繰り返す

電話があったのは昨夜のことだ

本当は昨日のうちに言って欲しかったそうだが

面会する時間は与えられていない

だから、朝市で様子を見てきて欲しい。というのが

夏凜からのお願いだった

風「もしかしたら体調崩してるかもしれないから。ってね」

天乃「まったく……」

夏凜の心配症は

多分、勇者部の中でもかなり上位に食い込むだろう

と言っても、園子含めても七人しかいないのだけど

風「で……今は顔色こそあれだけど。平気そうにも見える。実際はどうなの?」


1、ちょっと、崩したわ
2、血を吐く程度でとどまったわ
3、ううん、大丈夫。心配しないで


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



風(まぁ、樹のことも聞きに来たんだけどね)

風「……弱ってる天乃は、えろかわ系か」

天乃「え?」

風「あ、あはは」

風(声に出てた)


では、初めて行きます


天乃「ちょっとだけね」

風「…………」

天乃「……なに?」

風「いや、あっさり答えてくれたなと思って」

正直……ではないかもしれないが

崩していないという嘘をつかなかった

夏凜が心配していることをあえて教えたのに

なのに、体調を崩したのだと認めたことが

風には喜ばしくも驚きで

風「今までなら、大丈夫だからって笑ってたじゃない? 今回はしなかったなーって」

天乃「……そうだったかしら」

風「そうだったでしょー? 自覚なしとか勘弁して」

とぼけた言葉に、風は困ったように笑う

あれが無自覚だったわけが無い

考えた末に、

そうするべきだと思ってやってきていることだというのは

みんながわかっていることだ

そして、みんなが解っていることを、天乃は解っているはずだ


風「でも、良かった。ちょっとだけなんでしょ?」

天乃「ええ。そうじゃなかったら、貴女と面会なんて出来てないと思うわ」

そう考えれば、ちょっとだけ。というのは正しいかもしれない

はたから見ればあれはちょっとだけとは言えない様なものだったのだろうが。

風「ここからは出られそう?」

天乃「胴かしらね、ちょっととはいえ崩しちゃったから……少し伸びるかもしれないわ」

風「そっか……」

出来るだけ早く戻ってきて欲しい

自分はいないが、あの家に

そして、学校に

みんながいる、部室に

でも、無理強いをすることは出来ない

風「出来るだけ早く。でも、ゆっくりしっかり治すのよ?」

天乃「ええ」


風の声は姉のように優しく

浮かべる笑みに対して、天乃も柔らかく笑みを浮かべる

けれど、治りきる自信が無い

今もゆっくりと治ってくれているのを教えるように

胸の奥ではむず痒さがあって

気を抜けば吐きそうな感覚さえあるが

あんな夢一つでぶり返す現状、回復の見込みは無いといっても過言ではないだろうと

天乃は考えて

天乃「出来る限り安静にしておくわ」

風「ほんとよ。天乃ってばやんちゃすぎる」

天乃「やんちゃって……」

風「でも、そう言うところが可愛いのよねぇ」

そう言った風は「もちろんまじめな時も良いけどね」と

付け足すように言うと、天乃の頬を覆うように手を当て、指で拭う


風「少し汚れてる」

天乃「…………」

風「……やんちゃは良いけど、無茶はやめて」

一端終わった話

まだなにも終わっていなかった話

静かに続けた風は

天乃の頬に手を当てたまま目元を拭うように指を動かして

その手に、天乃は自分の手を重ねる

天乃「風……」

風「言ったでしょ。天乃は親代わりの家族のようなもの。いなくなったら、凄く嫌なのよ」

お願い。と、続く

閉じれば涙を零してしまいそうな瞳

絡み合う視線から逃れることなく

天乃は「心配かけたわね」と、囁いて

天乃「解ってるわ。風が、みんながそう思ってくれてること」

だから、戦いから退くことも考えて

戦況によっては戦わないことまで決めたのだから。と

宥めるようにやさしく言う


天乃「結果的にこうなっちゃったけど。死ぬつもりは無かった。こんなに長引かせるつもりも無かった」

長引く可能性は理解していたが

それでも、出来る限り早い復帰を願った

天乃「……したいことも。あったし」

風「したいこと?」

天乃「こっちの話」

笑って誤魔化す

夏凜に告白したかった。なんて

風ではなくても中々いえることじゃない

目を逸らしたのを怪訝に思った風だったが

悪いことではないと判断したのだろう

苦笑すると「そっか」と察したように零す

風「そういえば、樹の……」

天乃「?」

風「………っ」

不意に天乃の頬をもにゅっと揉んだ風は

不思議そうにする天乃を見つめて赤面すると

そろそろ放して。と、手を引く


天乃「風が最初にしてきたのに」

人肌を感じたかったのになーと

からかうようにぼやく天乃から目を逸らして

風は自分の手を見つめる

生きていることを確かに感じた

温かかった。柔らかかった

出来るのなら――

風「いやいや」

考えれば考えるほどど壷にはまっていきそうだと首を振り

落ち着くために深呼吸をして、天乃へと目を向ける

天乃「なにがいやいや。なのよ」

風「いや、こっちの話」

天乃「……まったくもう」

わざと繰り返したことを察してか

困ったように息をつく天乃をまじまじと見つめ

開きかけの口をきゅっと結び、

風「樹がさ」

天乃「…………」

風「樹が昨日、帰ってから空元気な気がするんだけど。知らない?」


これはまじめな話

ついさっきまでの和やかといえる空気を取り囲んで沈めるような

ほんのりと重い、話

天乃「樹は何か言ってたの?」

風「いや、何も。だからちょっと心配でね……」

天乃が何かしたってことはないんだろうけど。と

予め先手をうって、苦笑いを浮かべる

困った子供だと、母親が子供を見つめるような表情だ

風「昨日、樹だけ行かせたでしょ?」

天乃「ええ」

風「そのときに話したこと、問題なければ教えてくれない?」

妹が心配だけれど

それがもしも、二人だけのものなら干渉すべきではない

そんな葛藤を感じる言葉と視線を、感じて


1、樹に心を向けて欲しいって言われたの
2、風は樹の好きな人、知ってる?
3、ごめんなさい。いえないわ
4、ねぇ、風は複数の人との交際ってどう思う?
5、沈黙

↓2


天乃「…………」

問題は、きっとある

から元気だったから疑問を抱いたと言うだけで

樹自身が口にしなかった事なのだから

無関係な人間とは言えない立場ではあるが

しかし伝えて良い立場でも、恐らくはない

けれど

天乃「……ねぇ、風」

教えて欲しい

考えを聞かせて欲しい

少しでも最良な道に進むことが出来るように

天乃「風は複数の人との交際ってどう思う?」

風「え……?」

天乃「極端に言えば、一夫多妻? 二股、的な」


風「……えっと」

天乃「それをどう思うか、風の意見を聞きたいの」

呑み込めていなそうな表情

間の抜けた声に

天乃がもう一度問いかけると

風は「それはつまり」と、呟いて

風「樹を含めた誰かと付き合おうとしてるって……こと?」

天乃「その可能性は否定できない」

風「樹が、求めたの?」

天乃「直接は求められてないわ……でも。私はもう、気づくことのできない人間ではないから」

曖昧な道

それが出来るような飄々とした姿勢はもう、見せられない

誰かからの好意を受け

誰かを愛してしまったから

その気持ちを理解、出来てしまうから

天乃「ふざけるな。と、思っているのならそう言ってくれて構わない」

風「…………」

天乃「私の疑問が正しい事なのか。誤りなのか。それだけの答えでもいい。私は、知りたい」

それを知る必要がある


風「天乃が二股してるわけじゃないのよね?」

天乃「……どうだろ」

夏凜には正式に告白したが、考えてみれば

樹からの半分告白

樹と同級生の女子生徒からの告白

同級生の男子生徒からの告白

友奈と同級生の男子生徒からの告白

天乃「私、半分二股以上のことしてるし」

風「自覚あるのは最悪なんじゃ」

天乃「……自覚したのよ」

とはいえ、それ以降ろくに学校いけていないし

それに加えて……というよりこれのせいだが

ほぼほぼ昏睡状態となっては解決のしようもない

天乃「というわけで、風はそう言うのどう思う?」

風「世界の常識的に考えれば憚れること。認められたことじゃないってのは確かね」


では、中途半端ですがここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から




風「というわけで、あたしを篭絡してはみないか?」

天乃「……結構。愛せと言う人は好みじゃないわ。ふふっ、誘い文句が弱いのよ」

風「……なら」グイッ

天乃「!」

風「一つだけ。強い刺激を教えてあげる」


では、少しだけ


天乃「まぁ、それは間違いないわよね」

悪五郎も言っていたことだが

人間の尺度……というか

人間で考えればそれは正しい事とは言えない

むしろ、はっきり言って間違ったことだと思う

けれど、多くの知り合いがいて

図らずもそう言う関係を求め合うようになってしまったとき

今ある関係が変わることは避けられないにせよ

誰かを切り離したくないというのは、傲慢なのだろうか

……まず間違いなく、我侭だろうが。

天乃「ならやっぱり、風も同じように思う?」

風「道徳的に考えて、一人が複数の人って言うのは間違いだとは思うわよ」

それに。と付け加えて

その全員、その子供。全て養える経済力があるのかって問題もあるし。と

続けて語る

風「ただまぁ、そういう生々しい話を置いて考えるなら良いんじゃないの?」


天乃「良いの?」

風「そりゃ、出来るなら好きな相手と一緒に居たいって思うし」

多妻? 天乃の場合は多夫かもしれないけど。と続けた風は

困ったように掌を上に向け、息をつく

風「その多夫あるいは多妻の関係がぎすぎすしたり、何かが起こる事がない。そんな自信があるなら良いと思う」

天乃「…………」

風「天乃自身、誰かを選ぶことでそうなるのが嫌だから複数を選びたいんでしょ?」

風のいうとおり、ギスギスしたり、何か事件的なものが起きたり

あるいはそうならなくても、他所他所しくなってしまうのが嫌なのだ

もちろん、勇者部の関係がそう簡単に悪化してしまうとは限らないし

常識的に考えれば、それはやってはいけないことで……

風「ここでの問題は、天乃がどうこうじゃなくて、相手がどう思うのか。よねぇ」

相手は天乃を好きなのだから

天乃と一緒にいること事態に抵抗があるのは100%あり得ない

ならなにを気にするのかというと

自分以外の妻あるいは夫同士だ


風「相手がそれで構わないっていうなら、諸問題を置いておけば一夫多妻がオッケーになる」

その諸問題というのが色々と厄介ではあるのだが

まぁ、それを言い出すと話が纏まらないし

面倒くさいので、置いておこう。と、苦笑する

天乃「樹のことなのに、そんなで良いの?」

風「あたしとしては、一人をちゃんと選んで欲しいとは思うわ。でもさ……」

だれかを選ぶということは

だれかを選ばないということになる

それはつまり、失恋をしてしまうわけで

いつか代わりになる人が現れるとしても

その人に対して、今回以上の恋が出来るかどうかわからないわけで

風「失恋して欲しくないな。とも思うわけよ。辛いだろうし、苦しいだろうし……」

そう言う風は、

まるで自分に失恋の経験があるかのように

儚げな笑みを携えて、胸元に手をあてがう

その姿には確かに。哀愁を感じた


天乃「養えるかどうかだけど、私は一応お金だけはあるのよ」

風「へぇ……玉の輿に乗れる?」

天乃「さぁ?」

満開による後遺症

それによる下半身不随のため

色々な補佐をつけてくれているが

それ以外にも、結構な金額の補助金が支給されている

加えて、

ファッションだの娯楽だの

そう言ったものに興味を示すことなく

ほぼほぼ手をつけなかったが為に二年前から今までの分が貯金されているため

中学生が持っている資産ではないのは、確かだ

天乃「ただ、言い方は悪いけれど生産性が無いのよね」

風「生産性って……」

天乃「ほら。樹で考えた場合私も樹も女の子だから。子供を作れないでしょ?」

風「……そういう生々しいのは考えない方が良いってば」

天乃「男の子からも告白されてるから、その子なら――っ」

風「しーっ」


言いかけの唇に人差し指を当てた風は

困ったような顔をしていて

風「天乃がその相手を好きかどうかも大事」

天乃「…………」

風「天乃は誰が好きなの?」

唇を押すようにしながら離した風は

少しばかり気恥ずかしそうな表情をしながらも

天乃をまっすぐ見つめて、たずねる

樹が天乃を好きだから

それもあるが

天乃が誰を想っているのかで

その一夫多妻、一妻多妻が云々の話も

大きく変わってしまうから……という建前で


1、夏凜よ
2、みんなよ
3、それは……秘密
4、風が好きな人を教えてくれたら、教えてあげる


↓2


天乃「みんなよ」

風「友達。という意味で聞いたわけじゃないのは分かってんのよね?」

天乃「流れ的に友達って言うのは無理があるわ」

風「そっ。ならいいけど」

天乃があんな話をしてきた時点で

そうだろうなということは解っていたこと

それでも聞かなければいけなかったのは

誰か一人の名前を言った場合、何が何でも止めなければいけないからだ

他よりも抜きんでて好意を抱いている相手がいる場合

他の人からしてみれば不平等になる

意識してなかったとしても

自然と不平等になる。恋愛なんて言うのはそんなものだ

……あたしは付き合った経験ないけど。

風「天乃。あんたは大変な道を選択しようとしてるわ」

簡単なことじゃない

一歩間違えれば崩壊さえある茨の道だ

見える花々は美しい事だろう

だが、その身には鋭い棘が無数に生えている

風「本当に出来るの?」


天乃が包容力のある女性であることは解っている

齢不相応な考え方や言動もあり

大人びて見えたり子供っぽく見えたりもする

風や夏凜の関係する大赦に言わせればカメレオン―猫かぶりとも言われるが―だ

しかし、それをもってしても複数人の相手というのは容易なことではない

自分から手を出せないのならなおのこと

受け身でしかいられない以上

天乃はその複数人分のスタミナを要する

風「……いや」

そもそも、一夫多妻的な話をしているが

一体、何人と付き合うつもりなのか

そして、最たる問題はもう一つある


風「天乃、追加で聞いておきたいことがあるんだけど、良い?」

天乃「答えると断言はできないけど、なに?」

天乃は色々な経験を経て、捻じ曲がった性格をしていた

だけれど、勇者部や学校のクラスメイトや後輩

精霊や大赦職員である瞳、巫女である沙織達との交流によって

そこからまた少し変化が生じた

しかし、風には疑問があった

元々恋愛相談や人生相談など

客観的な立場にたっての相談事をやや得意としていた天乃は

好意を向けられるようになって多少なりと意識するようになったとは思うのだが

樹の直接ではない言葉でその気持ちを察したと言ったのが風は気になったのだ

あの朴念仁がその程度で名誉挽回するはずがない。と

そしてそもそも

樹がそんな想いを見せた後に

から元気だったという時点で、天乃には特別な誰かがいることに気づいた可能性が高い

そしてそれは、複数人ではなく……

風「天乃、誰か一人に告白とかしてないでしょうね」

天乃「え?」

風「してるなら正直に言って。その特定の子を落胆させることになるから」

基本的には、一夫一妻のこの世の中で

想いの実った子に改めて一夫多妻を告げて認めさせるのは

恐らくは非情に困難なことだからだ


1、し、しししてない
2、したわ
3、夏凜にしたわ
4、してないわ
5、今から貴女にしようと思ってたわ
6、眼を逸らす


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



風「夏凜かぁ……」

風(夏凜だと天乃がそれで幸せならって認めそうっていうか、ほかのメンツってもしかして勇者部? ならなおさら……)

風「あたしにも告白しないの?」

天乃「え、なんで?」

風「脈無し!?」


では、はじめていきます


天乃「……夏凜にしたわ」

風「………そう」

想像以上に優しい声だった

妹の恋敵というべき相手で

話をややこしくしかねない相手のことなのに

風は波風を立てるような素振りも無く

穏やかに目を伏せた

夏凜。三好夏凜

園子を除けば一番遅い入部だった勇者

多少難のある性格―天乃はそれ以上―だが

実際はかなりやさしい性格で

口ではいろいろと言いながらも

求めたことに手を貸してくれたり、成し遂げるために努力をするなど

悪い印象は最初の暴力事件くらいだ


天乃が戦闘後に意識不明の昏睡状態に陥った時だってそう

人一倍気遣っていたし

他の人に向けるものとは違うなにか―恋愛感情だとは思っていなかったけれど―があるとは思っていた

天乃のも夏凜といるときは本当に幸せそうだった

からかう相手として好条件だったのかもしれない

けれど、いつからだったが

夏凜と一緒にいることが多くなった。頼ることが多くなった

だから

風「なんとなく、そうなんじゃないかって、思ってた」

風はどこか懐かしむように切り出すと

うっすらと笑みを浮かべて、天乃へと目を向ける

風「夏凜は解りやすいし、天乃は自覚してないだけなんだろうなーってさ」

天乃「私、も?」

風「だって楽しそうだったじゃない」


風「みんなといると大体そうだけど。夏凜といるときは増し増しでね」

天乃は「そうだったかしら」と、悩ましげに眉を潜める

風が言うように頼っていたことがあった

楽しんでいたことがあった

けれど、それが他の人といるとき以上。というのは自覚が無い

だから、風は自覚が無いだけだろう。と言ったのかもしれないが

天乃「でも、そうね」

部長である風が言うのだ

そして、樹でさえも似たようなことを言っていたのだから

きっと、そうだったのだろう。と、天乃は微笑む

天乃「私は夏凜が好きよ」

風「それでも、天乃は複数の人と関係を持つことを望むの?」

そう言った風は、難しいなら逆に考えてみれば良い。と呟く

天乃が複数の人間と付き合うのではなく

夏凜が、複数の人間と付き合う

そう、自分に告白してきた後

やっぱり関係を壊したくないから、他の人とも付き合う。と

優柔不断などではない。確信犯だ

薄氷が脆いと解っていながら踏み入るようなもの


天乃「私は……夏凜が幸せならって言うかもね」

ほんの少ししか考えていない回答に風は驚く素振りも無く苦笑する

それはそうだろう。それが久遠天乃という女の子――いや、女性だ

だが、しかし

風「我慢することなくそう言える?」

天乃「え?」

風「本当はいやだけど。とか、思わずに」

それは、どうだろうか

いつもいつも相手のことを優先させるような―大赦は例外だが―考え方ばかりで

自分のことは捨て置いた考え方ばかりだった

だから、風の言葉で天乃は迷う

自分の気持ち云々を投げ捨てずにそれを認められるのかどうか

それが解らないからだ

風「そういうこと。難しい問題でしょ?」

天乃「…………」

風「あたしとしては、大事な妹の件もあるから。私情のみで言えば一妻多妻は歓迎って言いたいところだけどさ」


でも、部長として

犬吠埼風ではなく、夏凜の友人として考えたとき

一妻多妻は容易に認めて良いことではないと思う

風「自分と夏凜、その他交際予定の相手。それぞれが納得できて初めて天乃のそれは成し遂げられる」

天乃「……難しい話ね」

風「そ。だから天乃が本当に望んでるなら。一番目の夏凜が望んでるなら。よ」

そう言った風は

大人びた様子で笑みを零すと椅子を立ち

天乃を見下ろして、うなずく

風「だからこの相談、するべきなのはあたしよりも夏凜だって。思うわけ」

天乃「…………」


1、お昼に夏凜を呼んでくれない?
2、夕方に夏凜を呼んでくれない?
3、一応、貴女もその候補の一人よ
4、そうね。でも、相談したのは間違いじゃなかったわ。ありがとう


↓2


普段、矢面に立つのが天乃だったがために

それはからかい程度に弄ばれるものとなっていたのだが……

自称恋愛マスターという

風自身が勝手に作り上げたその肩書は

別に間違ってはいなかったのだ

天乃「それはそうかもしれないけれど」

そんなことを考えながら

天乃は立ち去りかけた風の手を掴んで、目線を上へと持ち上げていく

ICUゆえの共通した防菌服

そこからさらに上にある風の瞳は

樹よりも少しだけ明るい緑色

風「な、なに?」

ピクリと、体が揺れた

風の瞳は動揺に揺れ動いて頬が僅かに赤く染まっていくが

天乃はそこまで見ることなく、笑みを浮かべる

天乃「一応、貴女もその候補の一人よ」

風「!」

天乃「もちろん、貴女が良ければ。だけどね」


風「あたしも……」

天乃「そう」

風の手を一度だけ強く握り、そのまま手放す

だが、手は動かさない

あくまで放すだけ

それだけで風の手はなめらかな体つきを隠す白いベールに並んで垂れ下がる

そして、視線もまた、下がったまま

天乃「そこまで唖然とされると、嬉しい限りだわ」

風「だ……ちょ、ちょっと待った!」

くすくすと笑う天乃を前に

隠しきれない戸惑いを吐露した風は

左手で顔を覆い、右手を天乃にむけて待て。と願う

正直想像もしていなかった

みんなが好きだと言ったとき

期待しなかったと言えば嘘になるかもしれないが

だが、今この場で、こんな誘いを受けるなんて想像は全くしていなかったのだ



では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



沙織「あたしはー?」

若葉「私は?」

球子「タマは?」

大地「俺は?」

晴海「帰れ」


では、すこしだけ


風「マジで……言ってる?」

それが嘘か真か定めかねている戸惑いの声色に

告げた側の天乃は余裕の笑みを保ったまま、首を縦に振る

あの話の流れだ

そして、天乃のことだ

冗談も大いにありえるのだろう。が、冗談ではない

すでに告げた通り【みんな】を対象としたこの恋物語は

当然ながら、樹の姉である風も対象として選別されている

もちろん、風自身がそれをよしとするのなら

そして、風が天乃に対してそう言う感情があるという前提での話であり

もしもそれが無いのであれば、候補からは大人しく外す

全員が欲しいという常識はずれな我侭ではあるが

無理強いをするような強欲さは、これに限っては今のところ持ち合わせてはいない


風「あたしが勇者部だから、誘ってくれてるの?」

天乃「それもあるけど、もちろん。それだけの話でもないわよ」

ただ部員というだけなら、こんな信頼性というか絆というべきか

色々なものが必要不可欠かつ最重要な繋がりなど要求できるわけが無い

したとしても断られるか、断られて身を引かれるか、悪評として広められるかくらいだ

相手が心酔してくれているというのなら、話は別だが。

……その力もあるにはあるけれど

天乃「敵対しているような関係のときもあった。でも、それでも私は貴女といられてよかったと思ってる」

瞳は意思を示すように光り、意志を示すように揺るぐことなく

橙色の、琥珀のようなそれはまっすぐ風の姿を映す

天乃「それに貴女の大胆さもその裏に隠した繊細さも、男勝りながら。ちょっとした事で女の子らしさが出てくる姿も。好みだから」

悪戯の対照的な意味も含むけど。

風「なっ……なぁ……ぁ」

かぁっと染まっていく風の顔から目線を下げた天乃は

もう一度、風の手を握る

二度目の握手は一度目よりも微かに熱い


普段、女子力について語りながら男勝りな言動でどうしようもない部長だが

こうなると、とても愛らしいのだと天乃は笑みを浮かべる

人並みに恋多き少女なのだ

その想いが自分に向けられているとは限らないけれど

でも、褒められたり。好意を向けられたりして照れるくらいには

天乃「ふふっ」

もちろん、普段の風も悪くは無いのだが。

風「ぅ……」

右手を握る天乃の左手が動く

ただ握手するのではなく、這うように滑らかな動きで

指と指の間に指を挟みこんで握るのではなく掴むようにしめる

俗に言われる恋人繋ぎであると、風は瞬時に察したが

視線は焦点を合わせることが出来ないままさ迷い、ごくりと喉を鳴らす

視界に映ったのは天乃の表情

感触を確かめるように手を握り、嬉しそうな少女の笑み

風は心の中で断言する。この握り方の意味を理解していない。と


風「あ、天乃!」

天乃「ん?」

風「と、とりあえず夏凜と話しなさい。で、それまでこういうの禁止!」

惜しさを感じる心を押しのけて振り払う

これ以上は拙い。誘惑されたくなる

それ以前に――遅刻する

風「い、一応考えておくから」

天乃「……うん」

振り払われた手を下ろした天乃は自分のその手を見ながらうなずく

目は風へと向いていない

何を考えているのかわからないが

少なくとも、追撃―ある意味追い剥ぎ―をする気はないと見て

風は軽く息をつくと、一歩引く

天乃に背を向けずに

だが、それに目を向けた天乃は困ったように笑みを浮かべて

天乃「引き止めてごめんね。遅刻しない?」

風「それはまだ、平気」


多分。と心の中で付け加えながら

苦笑と共に身を翻して「またね」と部屋の扉に手をかける

天乃一人を病室に残していくのにはいささか申しわけなさを感じる

大赦の職員だったり、看護師だったりが来るだろうが

心から話し合うことが出来る人は恐らく、そうそう来ないからだ

天乃「風!」

風「?」

天乃「いってらっしゃい。みんなにもよろしくね」

あんまり大きく体を動かすことは出来ないからか

かしこまった様に手を振る姿は淑女のように品を感じて

思わず目を見開いた風は胸が高鳴るのを感じて歯噛みし、頬を掻く

指には緊張の汗が吸い付く

風「そーいうの。控えた方が良いわよ」

天乃「え?」

言うだけ言って、今度こそ「またね」と部屋を出て行く

時間を確認すると、遅刻はまだせずに済みそうだったが

風「……授業、まともに受けられる気がしない」

夏凜がどう思うかで決まるこの誘い、自分はどうすべきか悩んでしまうからだ


√ 7月2日目  昼(病院) ※火曜日

01~10 
11~20  大赦
21~30 
31~40  悪化
41~50 
51~60 大赦

61~70 
71~80 
81~90  瞳
91~00 

↓1のコンマ  


√ 7月2日目  昼(病院) ※火曜日

1、九尾
2、死神
3、若葉
4、獺
5、稲荷
6、悪五郎
7、球子
8、、イベント判定

↓2



01~10  九尾
11~20  大赦
21~30  瞳
31~40  女性
41~50  沙織(猿猴)
51~60 大赦

61~70 樹海化
71~80  死神
81~90 稲荷
91~00  女性

↓1のコンマ  


ではここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から




沙織「忘れてないよね? 久遠さん」ギュッ

天乃「…………」

沙織「契約によってこの体はあたしのもの」

沙織「……そう、久遠さん自身が望んだんだから」グイッ

天乃「ええ……解ってるわ」


では、少しだけ


天乃がいる集中治療室の機械は

休暇を終えた社員が戻ってきたかのように規則正しい機械音を響かせ始めていた

というのも、その理由は想像に難くない

体調を崩したことがバレたのだ

いや、ばらされた。と、言うべきか

天乃「……風の馬鹿」

正直に話してあげたのに。と天乃は思ったが

自分が同じ立場に立っていたらと思うと

責めることは出来ないだろう。と、息をつく

心配だから、不安だから

出来る限り早く戻ってきて欲しいという気持ちはあるが

だからといって、不調を見逃せないのだ

天乃「長引いちゃうじゃない」

とはいえ、文句はどうしても出てきてしまうもので

安静にしていてくださいね。

絶対に安静にしていてくださいね

絶対に、ぜーったいに、無理に動いたりしないで下さいね

絶対ですからね、久遠さん

などと捲くし立てるように注意してきた若い看護師を思い出して、苦笑する

あれはどちら側の人間なのだろう

大赦側の、関係者か

病院側の、無関係者か


そんなことを考えていると、気配が近づいてくるのを感じた

殺意だの敵意だの、強烈な不快感を覚えるものではなく

ただ、その存在が近づいてきている。という感覚

天乃「………」

無理するなとは言われたが、体を起こすことくらいは構わないだろう。と

看護師に適当な言い分けを思いながら、出入り口に目を向ける

存在感は部屋の外からまっすぐ天乃のもとへと向かってきている

相手もまた、天乃のことを感じているように

天乃「……繋がりを感じる」

そっと胸元に手を宛がう天乃は、ゆっくりと瞳を閉じて

その感覚に意識を集中させていく

体の奥底に感じるつながりは一つではなく、複数に分かれていて

いくつかは大分近くにあるが、居場所までは把握できない

だが、近づいてきているそれははっきりと解る

そしてそれが――

天乃「猿猴、何しにきたの?」

沙織「……あたしのことを感じ取れるくらいには、穢れたか」

天乃は見るよりも前に感じて察し、目を開くと

扉を開けること無く中に入り込んできた沙織は少し不安げな表情で呟く


天乃「沙織は学生なのよ? サボるのはやめて」

沙織「これはあたし自身の要望だよ。あたしはその要望を叶えてここにきただけ。もっとも、あたしだけでなく、あたしの目的もあるけど」

天乃「沙織の……?」

相変わらず解りにくい言い方だが

要するに、沙織の希望に答えて、猿猴が抜け出してきた。ということだ

もちろん、猿猴自身にも用事があるようだが。

沙織「体の調子はどう――っていうのは、聞くまでもなさそうだね」

天乃「ええ」

沙織「しかし、穢れた分あたしや他の精霊も今まで以上に強く感じられるようになったみたいだね」

まるで導かれるように椅子に座った沙織は一息つくこともなく、切り出す

沙織が言っているのは、さっき感じたことだろう

離れていても、姿が見えなくても、壁などの隔たりがあっても

存在を感じ、それが何者なのかを感じとる。そんな、感覚

天乃「私が穢れたからってどういうこと?」

沙織「そのままの意味だよ。簡単に言えば、あたし達は人じゃないわけだけど。久遠さんは穢れた結果、こちら側に足を踏み入れたんだ」

要約するならこうだろう。

天乃は穢れた結果、妖怪などの精霊に近づいた。関わりが強くなった


沙織「あたしや悪五郎なんかは穢れの類といっても良いからね。より感じやすかったはずだよ」

天乃「それは……言われてみれば」

沙織「ちなみに、悪五郎なんかはね? 久遠さんの精霊として出てきたのは。久遠さんの穢れに惹きつけられたからでもあったりする」

天乃「そういうのも関係あるのね……」

シリアスな暗い雰囲気を纏う天乃に対して、沙織は「うんうん」と飄々とした笑みを浮かべながら頷く

本物の沙織ならば、同じく感傷に浸ることもあるのだろうが

今現在、目の前にいるのは沙織ではなく猿猴だ

猿候は沙織に憑依することで、様々なものを経験し、記憶し、学習しており

沙織が元々覚えているものも、少しずつ吸収している

だから、感情がまったく無いということはないが、やはり、まだ【物真似】でしかない

現状の口調、言動がそうであるように。

天乃「沙織の用事はなんなの?」

深く掘り下げるのを避け、話題を逸らすように切り出す

穢れについてはまだまだ謎が多いし

このまま吸収していった成れの果ては不穏だが

それは沙織に聞いても解ることではないからだ

それよりも、沙織の用件が天乃は気になっていた


沙織「久遠さんが目を覚ましたというので、様子が見たかっただけだよ。ついでに、あたしは平気だよって言いたかった」

余裕を見せるものではなく、沙織らしい笑みを浮かべて言う

猿候が扮しているはずだが、しかし、それはまさしく伊集院沙織そのもの

内側に、あるいは表側に何を憑依させていようと

沙織自身の本質に変化は無い。ということか

それとも、順応し、共存という形を上手く築き始めているのか……

天乃「……そう。本当に平気なの? 猿候」

沙織「心配の必要は無いよ。あたしは確かに気だるさはあったけどね。すぐに目を覚ますことも出来たし、体にも異常は無いから」

多少なりと体は穢れた

いや、寿命が削られたのは間違いないのかもしれないが

一生で考えれば、擦り傷にも満たないほんの些細なことだと沙織は答える

沙織「だけどね、そう何度も行えることじゃない。穢れを補えば補うほどその反動は大きくなる。いや、違うかな。体が脆くなってるというのが正しいかも」

天乃「脆く……?」

穢れを一度蓄積した段階で、弱い人は即死する

もちろん、それは穢れを蓄えるほどの容量がないということでもあるのだが

容量があるとしても、体には多大な負担がかかり、体調を崩す

酷ければやはり即死する。少し酷いなら意識消失、錯乱、記憶障害、吐血で

軽ければ気だるさを感じる程度で済む場合もある

問題は容量が十分あり、蓄積を堪えしのいだ場合だ


沙織「穢れに関して言えば、完全な回復は無い。それは久遠さん自身が良く解ってるはずだよね?」

天乃「…………」

左手で左目を覆った天乃は右目を逸らして、沈黙する

良く、解っていることだ。現在進行形で溜め込みすぎたが故の

体の崩壊を感じている

快復はしているが、回復はしない。穢れは様々な形で体に残り続け

頃合を見て破裂する。今だって、大分治ってきてはいるが、激しく動けば良くて吐血する。というレベルだ

沙織「だから、穢れの修復はあたし達巫女でも禁忌とされてる。人道に反するからね。酷く叱られたよ」

でも、天乃が行うことに関しては禁忌とされていない

それは、天乃が忌み子として扱われており、穢れを取り込んだとしても己の力として取り込むことが出来るだろう。という考えゆえに

もちろん、それが大赦の総意では無いが。

沙織「けど、久遠さんの現状を考えて。大赦の面倒な連t――」

不意にはっとした沙織は、こほんっと咳払いをする

沙織「そういう考え方の人たちも、流石に考え方を改めてくれると思ったんだけどね。以降も激しくなっていく戦いで被害0に抑えられるのか。という問題が出てきた」

天乃「確かに敵は強くなる一方だわ。樹海を無傷というのはほぼ不可能よ」

そう言った天乃は、緊張感を肌に感じながら一息つく

天乃「で、そういう考え方の人たちはどんな面倒ごとを?」


沙織「あはは」

誤魔化すように笑っているが、無意味だ

天乃はそう言う人たちがまた【余計なことを考えた】ということに気づいている

そもそも、それを言ったときの沙織ないし猿候の表情が嫌悪感を滲み出していた

沙織「久遠天乃は戦うことでも穢れるのだろう? なら、戦わせず、必要なときに引き受けてもらおう。と」

天乃「なるほど、良い考え方だわ。その人たちは相当、久遠家に恨みがあるようで」

沙織「まぁ、久遠家の人が巫女の家系風情で大きな顔をしているのを好まない人たちはいるよ。人間なんて、そう言うものだからね」

天乃「辛辣ね」

沙織「あたしはあたしだけど、あたしではないからね。でも、彼らの一番の理由は、久遠さんが恐ろしいんだと思うよ。野放しにするのが。ね」

だから、何か指示を与えて、それに従ってもらおうとする

天乃がいやだといえないような理由を添えて。

そのカモフラージュを解いて、言葉を真実に切り替えれば、見える言葉は【首輪】だ

天乃「なら、変なことしないで普通に来てくれれば――」

沙織「彼らにそれが出来ればね。弁えている人もいる。けれど、勇者だからと言って少女なんかに。という自尊心がある者もいる」

それが、人間というものなのだ

どうしても捨てられないもの、抑えられないもの

沙織「醜いね。愚かだね。全てではないとはいえ、嘆かわしく思えるよ」


沙織は悲し気な表情でそう溢すと

どちら側の意思か、拳を握りしめて、天乃へと向ける

その所作は人間らしく、猿猴がただ真似ているようには見えないが……

しかし、今の沙織は猿猴だ

ならば、猿猴がまた一つ、人間を理解したということなのかもしれない

天乃「……それが、貴女の用事?」

一息ついた沙織と視線を交わらせながら、問いかける

話を続けたい気もしたが

そのまま続けていくと穢れに飲み込まれてしまいそうな気がしたからだ

少しでも空気を入れ替えるのは重要だ。

沙織「んー実はというと。久遠さんにお願いがあってきたんだよね」

天乃「お願い?」

沙織「うん」


満面の笑みに隠された願い。それが契約に関するものなのだとしたら

そう思考した体は意図せずびくりと震えて

沙織は驚いたように手を振って「違う違う」と否定する

沙織「契約を利用して強制的に何かをする気はないよ。それは約束する」

そうしてもつまらなかった。いい気はしなかった

得られるものは喜ばしいものではなかった

先日の経験を思い返した沙織は、まっすぐ。天乃を見据えて

沙織「というわけで、久遠さんが良いって思うなら。あたしとしよ。キス」

笑みを浮かべた

天乃「……へ?」

沙織からのお願いと言われ緊張した心は

続けて言われた強制的にはしない。という言葉に不安と疑いの目を向けていたが

半分は想像していたが、あまりにも軽い言葉遣いと表情に間の抜けた声を漏らした天乃は

ハッとしたように口を閉じ、見据える


沙織「?」

嘘でも冗談でもハッタリでもない

沙織は、猿猴は

それを心から望んでいるのだ

強制するのではなく、受け入れたうえでの、接吻を

沙織「どうかな」

天乃「どうって……」

沙織「少し気になることがあってね。多分、この口づけでそれが解決できる。そんな気がするんだ」

それでも無理強いはしないよ。と沙織は言う

それでは意味がないよと、付け加えて

その表情は儚げだ。何かに思いを馳せている。そんな寂しさを感じる表情

沙織「……少しだけ。待つよ」

沙織はそう言うと

ベッドの上の天乃の手に手を重ね

少しだけ顔を近づけると、瞳を閉じる

自分から攻めはしない。待っている。ということだろう


1、する
2、しない
3、沙織が望んでいるの?
4、理由を教えて


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


天乃「良いわ」

沙織「じゃぁ――」

夏凜「まてぇーい!」バンッ

沙織「……チッ」

夏凜「まずは私としろーっ!」


では、少しだけ


天乃「…………」

瞳を閉じると、機械の音が聞こえてくる

けれど、寝るときとは違う。心臓の音が強いのだ

……緊張してる

この前、沙織と契約したときにも少しばかり感じたが

これは少し異質な緊張だった

天乃「っ」

瞳を閉じる沙織に顔を近づけていく。気配を殺すことが出来ていないし

この距離だ、感付かれているだろう

それでも天乃は息を殺して

沙織「……っ」

唇を重ね合わせる。熱の篭った接吻ではない

唇を重ね合わせるだけ。感触を確かめるだけ

手に重なる沙織の手に少しだけ力が篭るのを感じて

天乃は数瞬の重なりを止めて離れると目を開く

沙織の瞳が天乃を捉え、天乃の瞳が沙織を捉える


熱っぽい視線を絡め合わせた二人は、どちらとも無く、

もう一度唇を重ね合わせる

陶酔することは無い。だが、逃しがたい心地よさを感じるのだ

天乃「んっ」

沙織「っ」

あの時とは違う。求め、求められ、求め合う唇の重なりは

心の痛みを生み出さない。心地よい温もりを激しく、だが、穏やかに体に染み込ませていく

体を動かすことの出来ない天乃の代わりに

沙織はゆっくりと首の角度を変えていく

時間を確かめるように、われを忘れることが無いように

そう、自分自身を制しているかのような秒刻みの動きは

天乃の唇、沙織の唇を歪ませてパズルのように組み合わせる

沙織「っは……」

機械の音が聞こえなくなった。視野が限りある広さとなった

感覚が少しずつ閉ざされていくというのに

沙織は一片の不安さえ感じない

自分の唇の端から、忘却された唾液が零れ落ちていく


沙織「ふふっ……あはは」

天乃「?」

沙織「体が熱っぽい……高揚感を感じる。果てない快感。内側から……広がる」

恍惚とした笑みを浮かべる沙織は言いながら自分の胸に始まり、

下腹部へと手を撫で下ろして、身を縮める

天乃の瞳に映るその姿は淫魔にでも取り憑かれた少女のようだ

沙織「久遠さん……もう少し、もう少しだけ」

天乃の手に重なっていた手は自然と動き出し、

手首を上り、腕を上り、肩にたどり着くと

押さえ込むような力が加わって

天乃の体がベッドへと押し倒されるのと同時に沙織は立ち上がる

沙織「……抵抗、しないの?」

天乃「……今の沙織は、怖くない」

瞳には悲しみではなく涙が溜まり、雪のように白い肌はほんのりと朱に染まって

呼吸の為に動く唇は艶やかに潤んでいる

沙織「良く、そんなことが言えるね」

先日のことを忘れたわけがない。なのに、そう言う

淫靡さを含んだ妖艶な表情で、誘うように。

沙織は驚愕の表情こそ浮かべなかったが

自分自身を嘲笑するように笑みを浮かべた


契約なんて必要は無かったのだ

もちろん、ここに来るまでに自分が変化する必要があったが

それさえ出来さえすれば、契約など

あんな、契約に縛られたものなど

沙織「っ」

天乃「…………」

天乃は室内にも関わらず顔に落ちる雨粒を避けずに、受け止める

何があったのかは解らない

けれど、天乃が目を覚ますことの出来なかった期間

あるいはそうなったことが、契約したときの猿猴に変化をもたらした

悪い方向にではなく、良い方向に。

だからこそ沙織は、その体を奪った猿猴は

押し倒して、誘われながらも行動に移すことができていない

それどころか――涙を零してしまっている

沙織「っ……あ、あたしは……」

紡がれる言葉は謝罪。悔恨の句

沙織ならば見せて欲しくはないものだが、見せることもあるだろう

けれど、沙織ではない沙織だからこそ天乃は言動にも顔にも出してはいないが、驚いていた

けれど、今はそれを表に出すべきではないと、沙織に目を向けて




1、……良いのよ。泣かないで
2、黙っておく
3、涙を拭う
4、しなくて良いの?


↓2


天乃「しなくて、良いの?」

他にかけることのできる言葉はあっただろう

何かしら出来る事があっただろう

けれど、天乃は問いかける

猿猴が求めてきたことを

彼、あるいは彼女が求めている何かしらへの答えとなるように。

沙織「っ」

天乃「……………」

天乃の見せる笑みがあまりにも優しいから

沙織はより深く、心を痛めていく

天乃の琥珀のような瞳、赤く穢れた瞳さえも、美しいから

自分の行動一つでは決して穢れきる事はないことを思い知らされ

そして、汚してしまうことに恐怖させられる

沙織「あたしは……」

天乃「知ってる」

沙織「あたしは……ッ」

天乃「解ってる」

沙織「あたし――」

天乃「……うん。分かってるわ。猿猴」


沙織「!」

すでに表情の崩れた沙織は、大きく目を見開く

元々天乃が自分のことを沙織であり、猿猴であると認識していることは分かっていることだった

それでも、この行為をするにあたって

この行為の最中にあって

沙織と呼んでいた天乃が【猿猴】と呼んだことが、驚きだった

沙織「久遠さん……っ」

言い切ることを許してくれなかった

言うまでもなく分かっていると。そう、ほほ笑んでくれることが

久遠天乃の精霊、猿猴にとってはなによりも温かみのあるものだった

酷いことをしたんだよ?

嫌なことをさせたんだよ?

無理矢理、言うことを聞かせたんだよ?

沙織「あたし……出来ない」

天乃「良いの?」

沙織「だって、だって……っ!」


沙織「だって……」

受け容れて貰うべきではない

そうされるべきではない

天乃が優しければ優しいほど

包まれたいと思ってしまうほどの温もりがあるからこそ

沙織は、その体を借りている猿猴は、自分自身が許せなくなっていく

沙織「……………」

天乃「だって?」

沙織「だって、あたしは……」

天乃は解っていると言った

だから、言う必要はないのだと分かっている

けれど、猿猴はどうしても。と

拳を震わせながら目を見開き、天乃をまっすぐ見つめる

罪悪感を、宿した瞳だ

沙織「だって、あたしは久遠さんを傷つけたんだ。あたしがそれは駄目だと言っていたのに。なのに、あたしは……」


1、キスをする
2、貴方はまだ子供だったのよ
3、あれは私自身の願いを叶えてもらうお礼。それで、終わりにしましょう
4、抱きしめる


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば昼頃から


猿猴さん和平条約(契約)


では、少しずつ


目の前で悔やみ、懺悔する精霊を宿した少女の頬に、優しく触れる

包み込むように、指で涙を拭って

抵抗力の感じない体を、少しずつ、自分の方へと抱き寄せていく

天乃「……猿猴」

あの出来事はどうしても消すことはできない

あの痛み、あの苦しさ、あの辛さ

それはもう、どうしようもなく深く刻まれた過去

沙織「!」

近づけた沙織の唇に唇を重ねて

ほんの些細な抵抗を抑え込んで、より密着させ、唇を絡めていく

受け容れるように、抱き支えるように。伊集院沙織を、猿猴を。迎え入れるように。

過去に何かがあったのかもしれない。だけれども、今は、今だ

過去に何かがあったとして、今、その自分を悔いることが出来ているのなら

間違ったことを間違っていたと、思う心が生まれてくれたのならば

あの痛みは無意味ではなかったのだと。そう、思わせてくれるのならば

天乃「……貴方のことを、責めはしないわ」

沙織「っ……ぅ……」

唇を離した天乃は、見開かれた瞳に笑みを映させる

際限なく零れ落ちてくる涙を何度も、何度も拭って

沙織「んっ……」

唇を重ねる。その罪悪感を。悲しみを。受け止めることを示すように


沙織「…………」

二度、三度と唇を重ねた二人

沙織は天乃の顔のすぐ横に手をついて離れると、

自分の唇に触れて、切なげに笑う

沙織「どれだけしても、満たされることのない……だからこそ。繋がりを求めるのかもしれない」

医療機器の電子音が聞こえるようになって

ベッドの上の天乃の姿がより明確になっていく中で

沙織は乱れた服を直し、天乃の患者衣に手を伸ばす

患者衣は真っ白で、天乃の体も比較的白い

良く見なければ裸にも思えるかもしれないと

沙織は良く分からないことを考え、ドキリとする

天乃「? 大丈夫よ。手は動かせるから」

沙織「え、ぁ、うん……そう。だね」

猿猴には幻覚の力があるが、それを扱えばよりリアルな想像をすることもできるはずだ

たとえば今、もぞもぞと動いて身だしなみを整えている姿を

そういったことをしている姿だと思い込むことも。

沙織「!」

いやいやいやと激しく首を振る

そういうのは、夜に一人でいる時だけで充分だ


天乃「この後、貴方はどうするの?」

沙織「その話は退院してからにしよう」

天乃の貴方という言葉が沙織ではなく自分に向いているのだと察した猿猴は

逡巡したが、すぐに首を横に振る

天乃「貴方が知りたい事。まだ不十分?」

沙織「不十分というか、満足は出来てないんだ。でも、きっと。これは永遠に満足してはいけないことだと思う」

沙織は自分の胸に手を宛がって、俯く

満足していないからこそ、相手を求めることが出来る

相手のそばにいたいと思うことが出来る

その思いがあるからこそ、相手に対して尽くすことが出来る

猿猴はそう考え、天乃へと再び目を向ける。瞳に宿るのは切なさだ

沙織「この心が満足してしまうと。愛することが出来なくなる。あたしは、そう思うから」

天乃「……………」

沙織「不憫だね……満たされるために愛するのに。満たされてしまうと愛せなくなってしまう」

天乃「それが、貴方の恋愛に対する答えなのね」

沙織「そうだね。この求めてやまない心こそが、恋愛というものだと、あたしは思ったから」


知りたかったことは知ることは出来た

相変わらず、求めてしまう心は健在だが

それこそが濃いというものなのだと考える猿猴にとっては

それは満たされるべきではないし

沙織との契約はもう終えたと言っても良い

けれど、猿猴が沙織の体から出ていく気配がまったくなかった

天乃「沙織を、解放はしないの?」

沙織「するつもりだよ。でも………」

悩まし気に目を伏せる。せっかく手に入れた優良な体が惜しいのか

それとも、また別の知りたいことがあるのか

沙織「この話は、また今度にしよう。久遠さん。悪さはしないと誓うから。とりあえずは、体を治すことに集中して欲しい」

天乃「……契約?」

沙織「望むのなら」

沙織の誓うと言う言葉が絶対的な効力を持つ契約なのかどうか

それを問う天乃の感情を感じさせない瞳に真正面から向かい合い、答える


1、良いわ。貴方の言葉を信じる
2、なら、契約


↓2


天乃「良いわ、貴方の言葉を信じる」

沙織「信じる。か………あはは」

天乃「何か面白い?」

沙織「面白くない、全然っ、面白くなんかないよ」

笑みを浮かべながらの否定

そこには全くと言っていいほど説得力が存在していなかったが

沙織が目元を拭ったのが見えて、天乃は茶化す言葉を飲み込んで、ほほ笑む

天乃「そう」

優しい声だった

穏やかな感情を感じる。信じると言う言葉を裏付けるような声

だから、沙織は笑みを浮かべたまま、天乃を見ることなく身を翻す

沙織「………………」

天乃「またね」

沙織が小さく言葉を紡いだ

それが、はっきりと聞こえたにもかかわらず、天乃は当たり障りのない答えを返す

きっと、聞こえて欲しい反面聞こえて欲しくなかった言葉だから

沙織「うん、また。今度ね」

振り向かない。ただ、まっすぐ歩き扉に触れる

それは病室と廊下の隔たりの扉

けれどもきっと、猿猴にとっては。

沙織「……また」

何かが変わっていく、世界の扉


天乃「…………」

沙織が去っていった病室は静けさが戻り

医療機器の忙しない音と天乃の体が動くことによる僅かな布擦れの音だけしか聞こえない

真っ白な天井、黒と白に赤や黄色などが少しだけ入っている医療機器

自由のない病室は、人がいなくなった瞬間単純化される

天乃「……有難う。ね」

そんなある意味考え事に適した部屋で

天乃は沙織が呟いた言葉を繰り返す

猿猴はこれからどうするつもりなのだろうか

もちろん、精霊であるのだから、戦闘の際には力を貸して貰いたいものだが

それ以外で。

沙織の体を返して欲しい。沙織を返して欲しい

それに関して話して貰うためにも。体を治さなければいけない

天乃「……これ以上は長引かないようにしないと」

そのためにも。と

天乃はベッドに横になると、目を瞑った


√ 7月2日目  夕(病院) ※火曜日

01~10 友奈
11~20 夏凜
21~30 東郷
31~40 大赦
41~50 夏凜
51~60 大赦
61~70 若葉
71~80 九尾
81~90 死神
91~00 大赦

↓1のコンマ  


「お体の具合は……さほどよろしくはないようですね」

天乃「嫌味でも言いに来たの?」

「いえ。ただ、こちらの部屋からの移動が延期になった。と、伺ったもので」

夕方になって病室に来たのは大赦の所属する男性

装いこそ、ICUの面会用のものだが

それでも、仮面をつけているような神官に位置する存在ではない事だけは確かだ

嘲笑するような笑みには余裕がある

天乃の体がまだまともには動くべきではないと言う制限を知ったからか

安堵さえ感じる。無理してでも動けば一時だけでも強気で返してくるだろうが

相手の予測行動可能時間よりも無理して動けば、追い返すこともできるかもしれない

もっとも、本当にそうすべきことが無い限りは

おとなしくしているつもりだが。

天乃「私の検査結果、全部見たの?」

「当然です。久遠天乃。貴女の体に関してのデータにはすべて目を通させて頂いていますよ」

天乃「体についてだけ? なら、プライベートは覗いてないと明言できる?」

「伺っている。と、お答えすれば満足いただけますか?」


天乃「酷い人ね。私は一応、思春期の女の子なのに」

茶化すように笑って見せた天乃だが

その瞳には怒りが込められている

だが、やはり、男性は動揺することなく余裕の笑みを携えて、

失礼しました。と、頭を下げる

まったく、心がこもっていない

謝罪しようとする意志が感じられない

普通に見れば通用する処世術の謝罪だろうが

人間観察に長けた天乃には、逆効果でしかない

天乃「……それで? どうしてここに来たの」

「貴女のことは一目見ておこうと思いましてね」

天乃「何か得るものでもあるの?」

「いえ、ここから連れ出そうとする者がいないとも限りませんので」

天乃「私の体に障るようなこと、みんなはしないわよ」

触ることは、その限りではないのだが。


「そうですか、それは何よりです」

ふと息をついた男性を、天乃は見逃すことなく目を向ける

瞬き一つしたところで

何かを見逃させられるほど卓越した人間ではないのだが

天乃からしてみれば、信用に値しない

言ってしまえば、嘘くさい人間にしか見えないのだ

相変わらず浮かべている笑みは、仮面だ

その裏で何を考えているのか、想像もしたくはない

だが、再度追求すれば、本当の要件を話してくれるはずだ

見透かされていることを知れば

下手に隠すこともないはずだから


1、聞いたわよ。私に首輪をつけたいんだって?
2、友好的な関係、私と築きたいなら下手なことはしないで
3、それで? 本当は何しに来たの?
4、言っておくけれど。私、貴方の事好きにはなれないわ


↓2


天乃「聞いたわよ。私に首輪をつけたいんだって?」

「首輪とはまた。どなたかは存じませんが、曲解をされたようで」

天乃「あら、曲解と言って平気なの?」

「………………」

余裕を見せていた瞳に影が差したのが見えた天乃は

ここぞとばかりに追撃して、笑みを浮かべる

沈黙する男性は視線を彷徨わせるのを避ける為か、瞼を閉じる

ここで下手に泳がせたりしない辺り

ただの子供、ただの大人ではなさそうだ

「首輪。というのはあまりにも極論です」

天乃「でも、極端に言えばそう言うこと。なのでしょう?」

「……貴女の存在を管理したい。というのは間違いではありません。極論だと。改めて前置きしますが、そう捉えることもできるでしょう」

天乃「言い逃れはしないの?」

「貴女のような人に、言い逃れの意味があると? 認めてしまう方が、存命に繋がるでしょう?」


降参と言わんばかりに手を上げる男性に

天乃はやはり、拭えない嫌悪感をもってため息をつく

あくまで、自分が上という立場は崩さないらしい

天乃は別に交渉事を行うつもりはないし

そう言うのがない限りは

上の立場だの下の立場だの。面倒ごとは正直に言えば嫌いな人間だが

この人に限って言えば、上に居座られるのはいい気分ではなかった

天乃「存命って、まるで私が殺そうとしているみたいでいやなんだけど」

「気分を害したなら、申し訳ない。ですが、貴女がその気になれば私どころか世界を葬れるのは事実では?」

天乃「……はぁ」

それは極論という以前に暴論ではあるが

天乃も同じく極論でモノを言ったのだから、言い返すことはできない

だからこそのため息に、男性は笑みを浮かべる

「貴女はその歳でだいぶ、大人になりすぎているようですね。普通なら、反論するはずですから」

天乃「お褒めに預かり光栄です。なんて、喜べばいいの?」

「いえいえ、貴女はどうぞ。そのままで」


皮肉しか感じない言葉

嘘で作られた表情

何一つ信じられない男性と視線が合って

天乃は目を細めていく

「そう、睨まないで頂けると助かります。もっとも、貴女はそうしていると男勝りな強さが感じられるので、素敵ですよ」

天乃「っ」

そっと伸ばしてきた右手を払い除け、より強く睨む

それでも、男性は余裕を見せたまま、自分の右手を優しく撫でる

良くないことを考えていることだけは確かなのだろう

しかし、それが何なのかまでは掴みにくい

「個人的に貴女に興味がある。ゆえに私としては貴女と友好的でいたいと思っているのですが」

天乃「だったら、その表の顔を止めるべきだわ。正直、大赦の人間というだけでマイナス評価は免れないから」

「三好夏凜や乃木園子、犬吠埼風とは年代的に妥当かもしれませんが、夢路瞳。彼女とも友好的ではありませんか」

天乃「瞳は特別よ。貴方とは、過ごしてきた時間が違う」

友好的でいたいと言う言葉に嘘は感じられない

だからと言って、それが本当にそれだけなのかという確信も持てない

「……そうですか」

天乃「………………」

嫌な人に、目を付けられてしまったらしい


「では、これからも時々様子を見に来ることにしましょう」

天乃「は……本気?」

「ええ、もちろんです」

椅子から立ち上がった男性は

服のしわを伸ばすように体に触れると

天乃をまっすぐ見下ろして、笑みを浮かべる

時間が違う。なら、その埋め合わせをしよう。という

短絡的だが至極まっとうな挑み方を、彼は選択した

だからと言って、認めるわけではないが。

「ICUということもあり、お見舞いの品を用意することは叶いませんでしたから。次回こそは、お喜び頂ける品をお持ちしますよ」

天乃「私は物で釣られる女ではないわよ」

「ええ、存じております。久遠天乃に関する様々なデータは、拝見しておりますので」

だからこそ、絶対に喜ばれるものを。と

男性は繰り返し言うと、踵を返して病室から出ていく

しかし、すぐそばにある病室内を見ることのできる窓からもう一度顔を覗かせ、一礼

そしてようやく、帰っていく

天乃「……はぐらかして帰ったわね。そんなだから、良い印象なんて持てないのよ。馬鹿な人」

なぜここに来たのか。彼が言った言葉が真実だとは限らない

管理したいという大赦の策。それに関してもはぐらかして逃げた

深々とため息をつくと、ずきりと、胸が痛んだ

√ 7月2日目  夕(病院) ※火曜日

1、九尾
2、死神
3、若葉
4、獺
5、稲荷
6、悪五郎
7、球子
8、、イベント判定

↓2


天乃「九尾、いるんでしょう?」

九尾「うむ」

呼ばれてから間もなく姿を現した九尾は

出入り口の扉を一瞥すると

すぐそばの大窓、そこにある滅多に使われていないであろうカーテンを閉める

今のままでは、覗かれるからだ

九尾「面倒な輩に目を付けられたのう」

天乃「全くよ。これからもくるって話、聞いた?」

九尾「うむ。邪魔ならば、消すが」

脈絡はないことはないのだが

唐突に、表情を変える事すらせずその言葉を口にする

そんな九尾に目をむけると、天乃は体を気遣いながら、呆れたように息をつく

天乃「これ以上面倒な人がつくのは嫌よ」

九尾「ふむ……それを望んだわけではないのか」

天乃「当たり前でしょう」


ならば仕方がないと言わんばかりに不機嫌そうな顔を見せた九尾は

すぐそばにある椅子には座らず、天乃を見下ろす

九尾「大分傷は癒えたようじゃな。このまま順調にゆけば、翌々日にはここから出ることも出来るはずじゃ」

天乃「まだ、かかるのね」

九尾「順調にゆけば。じゃがな」

残念そうな声に、九尾は追い打ちをかける

また夢を見ただのなんだので体調を崩せば

さらにこの病室での生活は長引くことになるだろう

問題なのは、動くことを我慢していても

あのような夢一つで体調を崩してしまうことだ

といっても、夢によって体が異常に動くことで

内臓が傷ついてしまっているだけなのだが。いや、それでも充分問題か

九尾「では、主様よ」

天乃「?」

九尾「あやつを殺して欲しいのではなくば、何用じゃ」



1、彼の本当の目的、貴女は見抜けた?
2、猿猴は、どうするつもりだと思う?
3、誰かを呼んでもらう
4、誰かの様子を聞く
5、これ以上穢れたら。私、死ぬのよね?
6、陽乃さんの夢を、見たわ。目の前でみんなが食い殺される夢。そのあと、どうなるの?


↓2

1、風
2、東郷
3、友奈
4、夏凜
5、樹
6、クラスメイト
7、三年生の男子生徒
8、一年生の女子生徒
9、瞳


↓2


東郷さんを呼び出すことが決定したところで、いったん中断します
21時頃には再開予定です


天乃「東郷を呼んできて欲しいの」

九尾「夏凜ではなくてよいのか?」

天乃「……ええ。東郷で構わないわ」

夏凜が来たいのなら、自ら来るはずだ

来ないのには来ないなりの理由がある

そう、信じて。天乃は九尾の問いに首を横に振る

九尾「お主が求めていると知れば。全て投げ打ってでも来るであろうに」

天乃「ふふっ。そうだと嬉しいけれど、複雑ね」

自分のことを第一に考えてくれているのは素直に喜ばしいことだ

だが、それはつまり、命さえ投げ捨てられるようなもの

それでは、困るから

九尾「了解した。だが、妾が責任をもって、連れて来よう」

そう言った九尾はそのまま姿を消す

天乃「……………」

それから一時間もかからずに

九尾は東郷を連れてきた

東郷「っ……久遠先輩」

いや、正しく言えば

車椅子を放置して、東郷の体だけを持ってきた


天乃「なに……してるの?」

九尾「主様の要望通り、連れてきただけじゃぞ」

天乃「それは連れてきたじゃなくて持ってきた。よ」

酷い言い方をすれば誘拐だ

この時間、制服姿と鞄から察するに

校舎内だったのだろう

九尾のことだ、人に見られるような誘拐はしていないはずだが……

九尾「ふむ……まぁよいではないか。良いではないか」

天乃「良くないわよ……悪いわね。東郷」

東郷「い、いえ」

椅子に下ろされた東郷は

真後ろの九尾が消えたのを見て息をつくと

申し訳なさそうに笑みを浮かべる天乃に、首を振る

東郷「急に体が浮いて何かと驚きましたが、久遠先輩のところで安心しました」

天乃「九尾だって解らなかったの?」

東郷「お手洗いの個室に入ったところを狙われてしまって……その。猿猴の件もあるので」

天乃「……ああ、なるほど」


つまり、色々な意味で襲われるかもしれない。と不安だったわけだ

それは天乃も思う所で

お手洗いの個室に入った瞬間、体が浮き上がれば不安しかないし、怖い

とはいえ、猿猴はもうそんなことはしないだろう

だから、もう不安はないと言えば、ない。はずだ

東郷「でも、久遠先輩が呼んだというのは少し驚きました」

天乃「そう?」

東郷「はい。てっきり、夏凜ちゃんが行ってるものかと」

天乃「?」

東郷「来て、ませんか? いつも、部活の活動がなければすぐに下校するので。てっきり……」

来ているものかと。

そう言った東郷の表情は、天乃の事を観察するような瞳を向けながら

悩まし気に、息をつく

東郷は嘘を言っていない。そう信じていたものが

そうではなかったということに、一抹の不安を感じている

そんな感じがする。と、天乃は眼を逸らす


東郷「なら、夏凜ちゃんは一体……」

天乃「東郷たちも聞いていないの?」

東郷「はい。用事がある。とだけしか言わなくて」

だから、天乃のところへ向かっていると思った

今日だってそう、すぐに下校してしまうものだから

天乃のところへ向かっていると東郷たちは思って

だから、邪魔にはならないように。と、自分たちは行くのを止めていたのだ

天乃「そう……」

東郷「……でもきっと。夏凜ちゃんのことだから。平気ですよ」

宥めるような優しさのある東郷の声

不安を感じさせてしまったのかもしれない

気遣っているような、表情が見える

天乃「平気って、何が?」

東郷「そ、それは……」


何がどう平気なのか

言葉にし難い東郷は顔を伏せて

損な反応を一目見た天乃はクスクスと笑って

ごめんね。と、声をかける

天乃「東郷の言葉の意味は解ってる。言わなくて良いから」

東郷「分かって、いるんですか?」

天乃「ええ」

驚きに満ちた東郷に対して、天乃は余裕の笑みを浮かべると

つい先日のことを思い出しながら、優しく、ほほ笑む

天乃「色々とあったからね」

東郷「そう。ですか」

嬉しいような、悲しいような

そんな複雑な表情を浮かべた東郷は

不意に首を横に振ると、天乃にむけて笑みを浮かべる

東郷「それは、良かったです」

天乃「……………」


1、ところで。東郷は一夫多妻はどう思う?
2、でもね? 私は我儘だからみんなが欲しいと思ってるの。貴女のことも。欲しいと思ってるの
3、ほかに、学校で変わったことないの?
4、東郷は、私とキスをしたいと思う?


↓2


天乃「他に、学校で変わったことはなかった?」

東郷「変わったこと……ですか?」

天乃「ええ」

夏凜の行動が変わったことに属するのかどうかは別にして

急に男性職員が接触してきたこともある

だから他でも、何か変わったことが起きているのではないか。と

天乃はすこしばかり不安だった

東郷は「そうですね」と、悩みながら溢すと

天乃へと不安に満ちた瞳を向け、逡巡して、頷く代わりとして、瞬きする

東郷「久遠先輩のクラスメイトの方が、久遠先輩に関して教師だけでなく、大赦に対して訊ね回っていたというのは、ご存知ですか?」

天乃「……知らない」

東郷「久遠先輩が昏睡状態になった際、学校では大赦のお役目。という理由で休学になりました」

天乃「いつもの事ね」

天乃が言うと、東郷は「はい」とつないだが

それが問題だったんです。と、眉を顰めて

東郷「また久遠先輩が傷ついたのではないか。先輩方はそう考え先生に訊ねたそうですが、お役目だと返されたらしく……」

それで納得できるわけもなく、今度は大赦に直々に問い質し、

どこか怪我して帰ってきたら二度とお役目をやらせない。と、声を上げたのだ

東郷「それでいまだに復学していないので……」

天乃「なに?」

東郷「大赦と一部学生の関係は非常に悪いです」


天乃「……あの子達ね」

東郷「知っているんですか?」

天乃「ええ、まぁ」

やりそうな人達くらいなら、天乃も知っている

実際にやるとまでは、思っていなかったが。

左目が穢れによって見えなくなった後、

こっそりと向かった学校で出会ったクラスメイトが似たようなことを言っていたのだ

危ないお役目に行かせる大赦に抗議することだって厭わない。確か、こうだったと

天乃は思い返して、息をつく

天乃「まさか本気だったなんて」

東郷「左目が見えなくなったこともありますし、一年生のころを知っているなら。両足のこともありますから」

天乃「そうなのよね……」

一度や二度ならば

大赦に対して悪い感情を抱くと言うのはあまり起こることではないかもしれない

だが、天乃はこれで長期的なお役目は三度目だ

流石に堪忍袋の緒が切れたのだろう

天乃「それで、大赦は?」

東郷「勇者のことを話すわけにもいきませんし、疲労による入院中だと」

天乃「燃料を投下したわけだ」

東郷「……お察しの通りです」

はぁ。と、ため息をついて苦笑いを浮かべた天乃に続いて

東郷もまた困ったように、ぼやいた


大赦のあの男性も

あとどれくらいで戻ってくることが出来るのか

学生との険悪な状態がこれ以上長引くことを恐れて

わざわざ、見に来たということだろうか

……いや、彼に関してはそれだけではないだろう。

天乃「私、このまま戻らなければ大赦壊れるかな?」

東郷「目を輝かせて言わないでください」

天乃「ふふっ、冗談よ」

流石にその程度で崩壊するほど大赦も脆くはないはず。

別に大赦の為ではないが

出来る限り早く、体を治すことに努めるべきだ

東郷「私達も、暴動をおこしますよ?」

天乃「こらこら」



1、なら、夏凜は尚更どこに言ってるのかしらね
2、引き倒す
3、暴動を起こすような悪い子は、候補に入れてあげないわよ
4、そう言えば、風からは何か聞いてない?
5、なら、私の写真を撮ることを許可するから。みんなに見せてあげて


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


久遠さんに会いたくても会うことが出来ない学生集団による
大赦のお役目という不安要素への暴動


では、少しだけ


天乃「まったくもう……」

暴動を起こすほどの想いは素直に嬉しく思う。が。

その扱い方を間違えては欲しくは無い

それは、冗談だとは思うのだが、目の前で宣言した東郷に関しても同じだ

しかも、東郷にいたっては天乃程の力が無いとはいえ

世界に影響を及ぼすほどの力は十分に所持しているのだから。

冗談だろうと、それを聞いた大赦が良い顔をするわけが無いし

それによって監視対象となってしまう可能性が大いにある

天乃「あぁ……なるほど」

あの男性職員の行動もなんとなく解った気がした天乃は

困ったように笑みを浮かべ、彼の手をはじいた手を握り締める

学生の抗議、暴動は天乃が原因で起きている。ゆえに

天乃と強くかかわりのある勇者部はより警戒する必要がある

だから、監視もかねて、ここにくることにしたのかもしれない

東郷「何かあったんですか?」

天乃「ん~……まぁ」

悩むように語尾を延ばし、悪戯な笑みを浮かべる

東郷の不安が見える。困惑が感じられる

だが、天乃は東郷が動くよりも素早く、その手を取って力強く引く


東郷「なっ!?」

ガタンッと椅子が大きな音を立てる

普段なら、車椅子に座っている東郷はその癖もあって、その肘掛けの部分に手を伸ばして堪えようとした

だが。肘掛けなどない

頭ではわかっていた東郷だが、やはり、衝撃に備える際に習慣として行っていた行動はどうしてもしてしまうものなのだ

ゆえに、容易く引き込まれた東郷は、とっさの判断でベッド脇に手を付くが

天乃の力はぽっと出の抵抗力で抗えるほど弱くは無く

しかし、影響を与えるくらいには強いその抵抗は、

一直線に引き倒されるはずだった体を僅かに上方へと持ち上げる

その瞬間、柔らかい衝撃が顔面を覆った

東郷「っ」

押せば沈み込む、体温を感じるそのクッションに

東郷は大方の想像をしながらも、触れる

それがなんなのか解っているのだが

ここに至ってなお、「すみません」の一言で身を引くというのは

なんだかもったいない気がしたのだ

煩悩にまみれていると言われれば、それまで。

だが、自分が持っていても良く思えないそれを、風たちが羨ましがる気持ち

それが解るのではないか。という、淡い期待も少しあった


天乃「ちょ、東郷、平気?」

ぎゅっと強く。だが、繊細に握ってみると

天乃はほんの僅かに身を強張らせたが、それよりも。というように東郷の事を気遣う

本当に、優しい人だと思う

本当に、温かい人だと思う

検めてそう思うと、自分がしていることが途端に恥ずかしく思えた東郷は

大丈夫です。と答えながら、天乃の胸元に埋めていた顔を離して、目を逸らす

普段と比べると清潔な匂い。とはいえない

けれども、嫌悪感を持たせるような醜悪さは微塵も無かった

それどころか、普段は清潔に保ってしまうが故、

これこそが久遠天乃という存在が本来持つものだと思うと、少しだけ特別な感じさえ、ある

東郷「!」

ばしんっと張り手を打つように顔を覆った東郷は

何を考えているのかと内心で自分を叱責し、手に感じる熱が収まってくれることを、願う


天乃「だ、大丈夫?」

東郷「だい……じょうぶです」

顔は痛いが大した問題じゃない。それよりも頭が大変なことになっている。と、東郷は思う

髪に寝癖が付いているならまだ良い。中がおかしくなっている

落ち着かせるために息をつくが、

視線は目の前で困惑し、不安そうな表情を見せる天乃の顔――は直視できないので胸元に行く

そのせいか、触れていた手にはその感触が蘇り、感情が再沸する

これは俗に言う悪循環というものでは、と振り返った東郷は

倒れた椅子に気づき、顔を伏せる

ただでさえ足が動かないというのに、戻る場所が無い

東郷「久遠先輩こそ……大丈夫ですか?」

天乃「ええ、私は特に」

声だけを聞く。目を見るのは無理だと、東郷は唇を噛み締めるが

激しく高鳴る鼓動は深呼吸さえ許さず、息を吐き出させる

天乃「ごめんなさい、ほんのちょっとの悪戯のつもりだったんだけど」

東郷「いえ」

天乃が急にこんなことした理由を東郷はなんとなくだが、わかっていた

だから、寧ろ役得――ばしんっ

もう一度顔を叩いて、ため息をつく。夢のような心地だった

包み込んでくれる感触もだが、鼻腔をつく匂いが誤魔化しの利かない本物なのだから、格別だった

……そうじゃなくて。


考えを改めるように首を振った東郷は、やっとの気持ちで天乃へと目を向けると

照れくささを隠し切れない表情を向けて、苦笑する

東郷「私も、冗談のつもりでした」

天乃「それは解ってたわ。解ってたから、つい、ね」

東郷「……はい」

引っ張ったせいでぶつかった。そのせいで触ることになった

そう考えている天乃にとっては、東郷がどこかぎこちなくなった理由が少し不思議で

自分のせいだと口にすると、東郷は「それは大丈夫ですから」と、否定する

頬はほんのりと紅い、視線は上下左右と縦横無尽に彷徨う

それをはっきりと見てようやく、気づく

天乃「……ふふっ」

東郷「っ」

天乃は【鈍感】を貫くことは出来ない

前は素で通ってきたその道を意識的に避けることにしたからだ

そう、自覚すると東郷の反応がより愛らしく思えてくる


1、もっと触れたい?
2、自分にもあるのに、他人のもののほうが良いの? それとも……私?
3、東郷の方に触れる
4、抱き寄せる
5、お風呂には入れてないから、臭わなかった?
6、ねぇ、東郷。東郷は私の一夫多妻計画に加わる気はない?


↓2


触ったことへの罪悪感だろう

おどおどしい仕草を見せる東郷に、天乃は笑みを浮かべて

そっと、東郷の体を抱き寄せる

東郷「!」

天乃「良いのよ。これは」

ビクッと震えた東郷の体を、逃れられないように少しだけ力を込めながら囁く

東郷の表情が見えなくなってなお

腕に、体に。感じる東郷の体温がとても温かいものであることを噛み締める天乃は

東郷には見えないが、優しく微笑み、後頭部に手を回す

完全に同じ気持ちなのかどうかは、不確かだ

けれど、ただ少し触れただけであんな愛らしい姿を見せてくる

それゆえに、天乃は東郷が胸に抱かれることを嫌がっていない事だけは、理解していた

天乃「触りたいなら、触っても。ね」

東郷「そ、そんなことは……」

天乃「しない?」

東郷「……出来ません」


そう答えながらも、東郷は抱き寄せられた力への抵抗をやめて

天乃の体へと、少しだけ体を預けていく

頭が柔らかく沈み込んでいく感触

自分の望むままに形を変えてくれるぬくもりのある枕に

東郷は言葉にし難いものを感じて、

東郷「っ……」

なぜだか、涙がこぼれた

天乃「東郷?」

東郷「すみません……っ」

ただ抱きしめただけの天乃はもちろん

涙を流す東郷自身が、その涙の理由が分からず、困惑する

とても懐かしい感じがする

とても切なく、悲しく、嫌な感覚が湧き上がってくる

東郷「私……」

自分が天乃と同期だったことは聞いている。だから、

その時の記憶が、思い出せない感覚が、

体の内側から湧き上がって来ているのかもしれない。と、東郷は天乃の胸元の服をぎゅっと握りしめて、顔を埋める

東郷「もう少し……久遠先輩を感じたい」


これで記憶が戻ってくれるのならば万々歳だが

そんなことはないと、はっきりと理解している

けれど、東郷はそれを求めずにはいられなかった

この沸き立つものの根源。それはきっと、天乃への想いだ

とても大切な人だから

友奈とほぼ同時期からつながりのある人だから

いや……それだけではない

東郷は自分の逃れようとする思考を止め、ただ、縋る

東郷「……不安でした。ずっと。もう、目を覚まさないのでは。と」

天乃「……………」

東郷「戦いに勝つことが出来たのに、素直に喜ぶことが出来ないほどに」

戦いに勝てたとしても

天乃が目を覚まさない限り、勝利を声高に言うことはおろか、認める事すら

東郷は出来ていなかったのだ

それほど、東郷にとって、天乃という存在は重要だったのだ


1、キスをする
2、ごめんね、心配かけて
3、抱きしめる
4、……ねぇ。東郷。東郷は、私の事、好き?


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



天乃「東郷」

東郷「久遠せんぱ――」

夏凜「だーもう!!」バンッ

夏凜「一気に突き進むなーっ!」

天乃「ヤキモチ?」

夏凜「ただの嫉妬よ! 悪いか!」


では、少しだけ


天乃「…………」

東郷の心の中にある想いに、天乃は気づいている

目を逸らそうと思えば出来ることだろう

だが、天乃が望むこれからの生き方は、逸らすことを拒む

東郷が望まないのなら、道を逸れることも必要だ

だが、そうではないのなら、取りこぼすことなく連れて行かなければいけない

いや、それは強制されたものではないのだから、少し違う――

頭の中であれやこれやと考える天乃は

東郷の意識の外でふっと息を吐くと

天乃「東郷……」

悲しげな顔を見せる少女の名前を呼びながら

俯きかけの下顎に手を添えた天乃は、持ち上げるのではなく

あくまで支えるだけのように上を向かせる

東郷の頬はほんのりと紅く、

瞳は天乃から懸命に逃れるように逸れる

愛らしい仕草だ。目もあわせられないほどの羞恥を感じている姿

見ているだけでもどきりとさせられるそれが、今、自分に向けられていると思うと

より一層、高揚感が強まる


心のどこかで、「悪魔め」と野次を飛ばす自分がいるが

天乃はそれさえも糧にやさしく微笑み、東郷の下顎から頬へと手を滑らせる

東郷「!」

天乃「怯える必要は無いわ」

東郷「でも」

天乃「大丈夫」

ビクッと体を震わせ、目を見開いた東郷の恐怖心を感じた天乃は

穏やかに声をかけ、心を撫でるように右手で頬を撫で

空いた左手を東郷の右手に重ねると、顔を近づけていく

なにをされるのか解っていないわけではない

だが、東郷は初めて行われるそれに緊張を隠すことが出来ず

ぎゅっと目を瞑って――

天乃「ん……」

東郷「だ、だめ……です」

しかしそのつながりを、重なりを、拒絶した

したくないといえば嘘になる。だが、それでもダメなのだと東郷は思ったからだ


東郷「な、慰めるつもりなら――」

天乃「そのつもりが無いわけでは無いけれど」

自分の胸元に突き出された―ある意味突き刺さった―東郷の左腕に目線を下げた天乃は

途絶えさせた言葉を一端飲み込んで、わざとらしく大きく息を吸い込む

抵抗力のあるその手がより深く自分の胸にうずまるのを感じ

そして「あっ」と気づいた声が聞こえたのを見計らって、再び視線を戻すと

東郷はただでさえ赤くなっていた顔をさらに深く色付けて、手を引く

天乃「――無いけれど。でも、私がしたい。それでは、ダメ?」

東郷「っ」

東郷の瞳には蠱惑的な笑みを浮かべる天乃が映って

どきりと胸が強く高鳴るのを感じて、息を詰まらせた

呼吸の止まった唇を、頬に触れる天乃の親指が押し伸ばすようになぞり

逃げるべきだと、理性が警笛を鳴らす中で東郷の喉はごくりと鳴る

……してしまいたい

慰めるなんてなし崩し的な理由ではないのなら

久遠先輩がそう望んでいるのなら

そう思いながら、しかし、東郷は唇を噛んで天乃を見る

その瞳には迷いが感じられた


東郷「か、夏凜ちゃんが」

夏凜ちゃんがいるんじゃないですか? 最後まで言えればそうなった言葉は

歯切れ悪く消えうせ、東郷は目を逸らす

心のどこかでは、「気にしなくて良い」という感情が湧き出しているが

それでも、夏凜とも親しい東郷は想いを同じくしているからこそそれを振り切って問おうと

もう一度意を決した瞬間、「ねぇ東郷」という誘う声に口を閉ざした

天乃「夏凜がいたら、ダメなの? 東郷は、一人だけであるべきだって、思うの?」

東郷「そ、れは……」

みんながみんな、望んでいる人と添い遂げられるのだとしたら

それはとても魅力的なことだと東郷は思う

実際、東郷としては天乃と同じくらいに友奈への好意もある

だけれどそれは――

天乃「わがままだって、思う? 傲慢だって、手を突く?」

東郷「っ」

天乃「東郷……」

天乃は言葉に悲しみを織り込み、哀愁感じる表情で東郷の手を取ると、自分の胸元に宛がう

目は東郷を見ていない。見れないわけではない。見ないのだ

天乃「私をこんなにしたのは……貴女達なのに」

ぷつりと、東郷の中で何かが途切れた


ここまでを求めたわけではないかもしれないが

自分のことを少しは……。そう望んでいたのは事実だ。それを求めたのだって事実だ

だから――いや、だから。ではなく

これでもまだ良いわけを求める自分に、東郷は内心で困りながら

自分の右手に重なる天乃の左手に自分の手を絡めて行く

それを、答えとして。

さっきは天乃からだったから、今度は東郷から顔を近づけ不慣れなキスをする

長くは無い、ほんの一瞬の接触のような口付け

それでも、思いは伝わった

後でどう弁解しようかと思考しようとする頭を心で押さえ、ただ思うがままに目を向ける

自分は今、どんな顔をしているのだろう

琥珀色の瞳には、ぼやけた自分が映る。きっと、見たくないのだ。恥ずかしいから

そう判断した東郷の絡まる手にやり返すように指を動かしながら

天乃は東郷におおいかぶさられるような体勢ながら、劣らずに唇を重ねる

緊張と、渇望

乾くことを忘れた口腔の豊かな潤みが口元から伝い落ちる

普段ならすぐにでも拭う。いや、零すことすらしないそれを東郷は意識的に無視する

それを拭う時間が惜しい。それに取られる気が惜しい


離れる唇が潤い余ってぬちゅりと艶かしく音を立てる

けっして、深くはない交わり。だが、深くに至ってもおかしくは無い接吻

だが、二人は唇を絡める以上のことは求めない

いつしか体と体が、二人共に秀でた胸部が触れ合うほどに近く、熱が入っても

一線の先にある一線には、踏み入ることは無かった

天乃「んっ……」

東郷「んぅ……んちゅ……」

熱の篭った艶やかな交わり。今は、それが―不満足ではあるが―満足のいく行いだった

満足するのが怖かった。満たされきるのが怖かった

不満だからこそ、まだまだ先を求める気持ちが沸いてくる

もう十分だから。と、悪い意味での覚悟を互いにさせることなく済むから

だから、東郷も、天乃も、それで良いのだと離れ、潤む瞳で見詰め合う

東郷「はぁ……っ、ん」

後一度だけ。

際限なく続けてしまいそうな魅惑の契り

東郷はその一言を心に強く刻み、唇を重ねる

天乃から一度。東郷から一度。結局――二回だった。


東郷「うぅぅ~っ」

天乃「まぁまぁまぁ」

本当の意味でわれに返った東郷は

すぐさま沸騰する勢いで真っ赤に染まると

顔を布団に埋めて、うめき声を上げる

一方の天乃と言えば、火に油を注ぐような笑みで宥めの言葉をかける

東郷「まぁまぁじゃないです……」

天乃「あら、私とのキスがそんなに良かったの?」

東郷「違っ」

天乃「違う……の?」

東郷「えっ」

天乃「そっか、そう。よね……ごめんなさい。舞い上がっちゃって……」

嬉しそうな表情は一転して愕然としたものに変わり

流れるように悲しみを携え、沈没する船のように顔を伏せた天乃は

薄く浮かべた笑みを、東郷へと向ける

東郷「よ、良かったです!」

善悪はそっちのけで良し悪しでモノを語るのなら

それは間違いなく心地よかった

理性など捨て置いて没頭してしまうほどに、思い返して身もだえてしまうほどに

味覚的甘味があったわけではない。だが、確かに感じた沁み込むような甘美な味わいは凝り固まった筋肉を解す以上に心地よかった


東郷「良かった……です」

言いながら、唇に触れる

刻一刻と感覚や味わったものが薄れていく中で

しかし、どれだけ上書きされようとも決して薄れることが無いものを刻まれた気がした

触れるほどに、熱がこもっていく

思考に霞がかかって、求めてしまいそうになる

今なら鮮明に分かる天乃の匂いに、東郷は縋りたい気持ちを覚え、首を振る

……一刻も早くここを出ないと

どちらも半ば望んでいる行為ではあるのだろう

だが、没頭しすぎれば帰ってこられない気がした東郷は

自分自身を認識できるうちに、天乃へと目を向ける

照れくささを抑え込んだ、強固な意志を宿した瞳で。

東郷「今日、泊ま――違うわ!」

ばしんっと頬に張り手一回

元々赤い顔をさらに赤くする東郷に、天乃はすこしばかり困った笑みを向ける


何を考え、どうしてそうなっているのか

今なら分かってしまう天乃は、ほんの少しの罪悪感を抱きながら

微笑ましく、東郷を見つめて。

天乃「集中治療室に宿泊はちょっと」

東郷「し、しませんっ!」

固く結ぼうとした緊張の糸を断ち切る

緊張は適度で良いのだ

東郷「……こほん。その、夏凜ちゃんとしっかりお話ししてください。私も、話しますが……やっぱり。久遠先輩も話すべきだと思いますから」

天乃「認めるの?」

東郷「はい。久遠先輩がそれを望むのでしたら」

成就させるのはさほど難しいことではない

それは、皆と想いを同じくする東郷にとってはほぼほぼ断言できること

第一、一番大変なことになるのは自分たちではなく、天乃だ

我儘を通すのだから、そのあたりは自業自得と諦めてもらうしかない

そこまで考えた東郷はクスリと笑って

東郷「では、九尾さん。送り返していただけますか?」

呼び声に応じて現れた九尾の力を借りで、病室から去っていった


√ 7月2日目  夜(病院) ※火曜日


01~10  九尾
11~20 
21~30 大赦

31~40  若葉
41~50 
51~60 
61~70 死神

71~80 
81~90 
91~00  球子

↓1のコンマ 


√ 7月2日目  夜(病院) ※火曜日

1、九尾
2、死神
3、若葉
4、獺
5、稲荷
6、悪五郎
7、球子
8、、イベント判定

↓2


01~10  九尾
11~20  死神
21~30 大赦

31~40  若葉
41~50  夢
51~60  稲荷
61~70 死神

71~80  夢
81~90  夏凜
91~00  球子

↓1のコンマ 


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


ほぼ非安価……東郷さんのあたりはもう少し薄味にすべきでしたね
失礼しました


では、少しだけ


院内はもちろん、外の世界も寝静まったような時間

消灯時間はとっくに過ぎているのだが

まだ、寝つけていなかった天乃は天井を見つめて、息をつく

真っ白だ

集中治療室という場所もあって、清掃もきっちりと行われているし

シーツも何もかもが、純白に保たれる

だからこその虚無感を、天乃は感じていた

数時間前まではあったぬくもりは、傍にない

思い返すことでしか蘇らない温もりと優しさ

それを感じる腕が、心が、寂しさを訴える

そんな天乃の視線には入らないほどに小さな白い塊が

不意に病室へと姿を現して

天乃「……ひゃぁっ!」

投げ出された天乃乃手をぺろりと舐める

天乃「な、なに……って、貴方……」

舐められた手を庇うようにしながら体を起こした天乃の視線の先には

白くふわふわとした体毛に身を包み、月明かりを受けているわけでもなく光ってみえる狐が小首をかしげる


天乃に仕える精霊、稲荷。その使いとして存在する狐

悩むまでも無く正体を見破った天乃は、一瞬抱いた警戒心を紐解きつつ

舐められた左手で、その愛くるしい頭を撫でる

くぅっと可愛らしく鳴き、撫で易いようにとより距離をつめた稲狐は

ベッドの上に頭を乗せる。その口には、手紙が咥えられていて

天乃「稲荷から、通知?」

ベッドの上に置かれた頭では頷くことが出来ず、瞳を見せた稲狐は口を開いて手紙を差し出す

天乃「……なんとなく想像は付く」

めったに交流を持とうとしない稲荷の神自らが、率先して手紙をよこしてくる

それはつまり、天乃に何らかの問題があるか、世界になんらかの問題があるかの二つに一つ、あるいは両方

要するにどっちも悪いことでしかない

とはいえ見ないわけにもいかない天乃は、「ごめんね」と稲狐に告げてから手を離し、手紙を開く

相変わらず、神様の言葉というものは難しくて全てを理解するのはやや難しいが、要約すれば

1つ、体内の穢れ率は155%

2つ、これ以上穢れを溜め込むのは非推奨

そして

天乃「……稲荷が、死神と同じ?」

稲荷神が、死神と同じく勇者の魂を強く結び付けられた精霊である。ということだった


天乃「そして、貴方も」

稲狐「……………」

稲荷の狐は何も言わないが、その言葉を肯定するかのようにしっかりと天乃を捉えている

しかし、正確に言えば稲狐は勇者ではない

勇者の魂が結び付けられたのは稲荷のみで

稲狐にはその勇者と最期を共にした巫女の魂が結び付けられているのだという

死神と同様に、力を解放というべきか

稲荷と稲狐を代償に勇者と、そして、そのサポート役を担っていた巫女を呼び出すことが出来る

そして、そうすることで今後、樹海の被害を請け負うのを天乃ではなく

巫女やその勇者に移行することが出来る

天乃「……この状態になると知ってて、私がそんなことできるとでも?」

思わず、神からの手紙を握り潰しかけたが、

不安げに鼻を摺り寄せてくる稲狐が視界に入って、息をつく

稲荷からの手紙には、包み隠さず書かれているのだ

移行したことによって、精霊と鳴る二人にどんな影響があるのか

それぞれにも許容量というものがあり、

巫女はその限界を超えれば消滅する

勇者は天乃や他の勇者同様にペナリティが追加される

そんなものを、天乃が認められるわけが無かった


だが、天乃自身、稲荷神の心配、心遣いが解らないわけではなかった

むしろ、自分にも大切な存在がいるからこそ、痛いほどに気持ちはわかってしまう

稲荷神と同様のことを、それも強く申請してきた死神の事だって、そう

だから、答えが決まっているといえば決まってしまっている

しかし……

稲狐「…………」

天乃「それでも、望むのね。私と死神のやり取りを知りながら、そうしてくれと。望んでいるのね」

悲痛な感情を感じる稲狐の瞳。見つめ返す天乃は稲狐の柔らかい体毛ごと優しく頭を撫でる

撫でられることの心地よさに身を寄せながら

しかし瞳はしっかりと天乃を捉えている。強く意志を固めている。ということだろう

稲狐だけでなく、稲荷神もまた、同様に。

天乃「勇者になることさえも厳禁だなんて、厳しいことまで言い出して」

くすりと笑うと、愛らしいペットのような使いの耳がピンッと立つ

心配ないからねと抑えるように撫でながら、手紙の一文に目を通す

稲荷が言うには、穢れに押し負けている現状では、勇者になっただけでも想像を絶する負荷が体にかかるらしい

もっとも、それに関しては夢を見た程度で吐血するほど弱っているのを考えれば妥当だと、天乃は思う


天乃「ねぇ」

稲狐「?」

天乃「貴方達ではなく、貴方達と入れ替わる子は、犠牲になる覚悟を決めているの?」

名前は、勇者が白鳥歌野、巫女が藤森水都という

その両者は穢れを背負い、傷ついていくことを許容しているのかどうか

それを問うと、稲狐はベッドから少しばかり離れて、頷く

今はここにはいない。だが、魂が結びついた稲狐の答えこそ、その少女達の答え。ということだろうか

天乃「…………」

どうするか

これ以上は戦うだけで多大な負荷がかかる

それでもなお、意地を貫くか

それとも、少しは頼ってしまうべきか

頼るにせよ、頼らないにせよ

戦うこと自体が負担になることは変わらないが……


1、私の穢れはどうにかできないの?
2、……ダメよ。それは出来ないわ
3、穢れを背負わせるなんて出来ない。戦力増強なら……死神を選ぶわ
4、解った……貴方達から魂を引き出す。でも、穢れを背負わせるのはお断りよ
5、……考えさせて。お願い


↓2


天乃「私の……穢れはどうにかならないの?」

稲狐「……………」

稲狐は首を横に振る

感情はあるが、死神や九尾と違って嘘や偽りを利用しないのだ

真実のみを告げる。それゆえの白き狐は悲し気に天乃を見つめて

きっと、言いたいことがあるのだろう。ただ、言葉を扱うことが出来ないがゆえに

瞳を向ける事しかできない

しかしそれでも、感情の一端くらいは天乃にも分かる

天乃「悔しいのね。どうにもできないのが。どうしようもないことが」

それが、自分あるいは自分の主の力を扱うことによって生じていることだからこそ

稲狐や稲荷はより一層の悲しみを、悔いを、抱く

だから、これほどまでに尽くすことを考えているのだろう

天乃「だから、貴女達を犠牲にしろと進言するのね?」

稲狐は頷く。お願いしますと、懇願するように


ふっと息を吐いて稲狐から眼を離した瞬間

注視しなければ見逃すほどの刹那の輝きの中に稲狐は姿を消し

その代わり―こちらが本体だが―稲荷神が姿を現す

狐のお面を付けた、女性の体つきの神

この体は白鳥歌野という勇者の体を模したものなのか

それとも、稲荷神そのものの体なのか

真実を知ると、普段は気にも留めないようなことを、気にしてしまう

……東郷の方が扱いやすそうね

天乃「違う違う」

唐突に再燃してきた夕方の交わりをかき消しつつ

神に向かって苦笑を見せた天乃は受け取った手紙を差し出し、

稲荷もまた、新たな紙を提示する


天乃「……本気?」

稲荷「……」

頷く。それ以外の行動は必要ないと言わんばかりに毅然とした態度で

稲荷は天乃を仮面の奥にある瞳で見据えていて

天乃は新しく提示された紙を受け取って、目線を下げる

紙、というのは、それが手紙にも満たないほど簡潔な一言のみしか記されていないがゆえのもの

天乃「……………」

書き記されているのは【生きろ】という言葉

これは願いだろうか

これは祈りだろうか

これは命令……だろうか

たった一つの言葉でも、込められた意味は複数あって

だからこそ、天乃はすぐには顔を上げられずに、唇を噛み締める

生きるために精霊を、自分たちを、犠牲にしろという

天乃「私は……」

そんな我儘を、通したいとは思いたくない。だが……


1、お断りよ
2、どちらも嫌。みんなを犠牲にするのも、自分が死ぬのも。みんな嫌
3、分かった……でも、背負わせることは約束しないわよ
4、考えさせて
5、何も言わない


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から



陽乃(貴女達は共に生きていたかったはず……守れなかった悔しさと辛さ、痛みと苦しみを振り払うための、祈りを)ギュッ

千景「なに、してるの?」

陽乃「役目を果たせなかった愚か者に、呪いをかけてあげたのよ」

千景「……最低ね」

陽乃「自覚してるわ。死ねと言われて生き延びているくらいには、クズだもの」ニコッ


では、少しだけ


天乃「…………っ」

強く強く拳を握り締め、噛み千切るほどに唇を噛む

なにが足りないのだろうか

なにがダメだったのだろうか

自分が不甲斐ないからだろうか

自分が力不足だったのだろうか

自分が愚かだったのだろうか

犠牲にすることなく、今のままで進んでいくこと

そんな、不変的な未来は、そんなにも難しいことだったのだろうか

そのどれかが答えなのか、あるいは、それ以外の何かなのか

答えを知る術はあるのかもしれないが、ここにはない

しかし、そうせざるを得ないという結果だけが普遍的なものとして存在する

天乃「分かった……分かったわ」

稲荷を見ない。見たくない

彼女はいつだって仮面をつけている。だけれども、感情が分かってしまう

だから、見たくない


稲荷はきっと微笑んでいる。喜んでいる

犠牲になってくれという命令を受けてなお、喜びをあらわにしている

それはつまり、犠牲になれという命令その罪を許しているということだ

普通の人間ならば、相手がそう言うのならばと折れることが出来るのかもしれない

だが、天乃は許されたくない。認められたくない

だから、稲荷の喜びを受け止められない

天乃「でも、背負わせることは約束しない。それは、譲れない」

こういえば引いてくれるかもしれない

そんなありもしないことに希望を抱きながら顔を上げると

稲荷神はそよ風のような優しさで、ふわりと天乃の体を抱きしめる

稲荷「…………」

稲荷神は言葉を話さない。仮面の奥ゆえ、表情も分からない

だが数瞬の薄い抱擁は何よりも濃く、そして【ありがとう】という感謝の心を感じる

稲荷「…………」

離れた稲荷は、予め用意してあったのだろう

新しく手紙をどこからか取り出して、天乃へと差し出す


天乃「稲荷……」

その呼び声に稲荷はこくりと頷く

手紙の内容への肯定。迷いの無い瞳は天乃をしっかりと見つめていた

天乃「それでも、尽くしてくれるのね」

稲荷自身はあくまで【久遠陽乃】の精霊で

死神も、九尾も、天乃の精霊として存在しているが、しかし、稲荷同様に彼女の精霊なのだと。

稲荷は語って、付け加えて告げる

言葉ではなく、文字だが、確かな感情を含ませて【新たな精霊こそが、貴女の友だ】と。

勇者部や沙織が友達ではないから、友だ。と言ったのではない

陽乃が未来の子孫には友達がいないだろうから。などと

意地悪なことを考えていたからでもなく。

天乃「陽乃さんにとって、精霊は友達だったのね」

稲荷「………」

稲荷の肯定。しかし、悲しげな空気に天乃はさらに疑問を投げかけようとしたが

これ以上は、と、言葉を飲み込んで、稲荷を見つめる

なにがあったのか、まだまだ真相を知ることは出来ていない

だが、きっと、陽乃にとって友達という言葉は決して軽いものではない

天乃はそんな気がして。

天乃「……若葉に私がああ言ったのも。ある意味必然だったのかな」

彼女は、陽乃は

世界のどこまでを見通していたのだろうか

その力の強さを思いながら、稲荷の手を取る


これが最後になる。稲荷の存在は白鳥歌野となり、稲狐の存在は藤森水都となる

回帰不可能の一本道。だからこその惜しさを――

天乃「っ」

噛み締める。許させない。もって行かせない

この痛み、この悲しみは稲荷と稲狐がいたからこそのもの

そう――思い出なのだから

天乃「最期までありがとう。陽乃さんにもよろしくね?」

稲荷神は頷いて、その姿をまばゆい光が包み込んでいく

天乃の手に触れる稲荷神の感覚が、存在感が、確かな温もりが

少しずつ薄れていく。握り締めた砂の山が少しずつ風に奪われていくような

ゆっくりとした喪失感

瞼を閉じ、目をそらしたい。心の要求を抑え込んで、別れと向かい合う

そして、彼女達は姿を現す――


01~10 有
11~20 無
21~30 有
31~40 有
41~50 無
51~60 有
61~70 有
71~80 無
81~90 有
91~00 無

↓1のコンマ 


※二人同時記憶判定


天乃「…………」

稲荷神と稲狐の二人を代償として姿を現した二人の少女

勇者、白鳥歌野

巫女、藤森水都

二人は姿を現すや否や、ハッとしたようにあたりを見渡して

互いの姿を確認すると

不安そうな顔を一転させ、安堵したように息をつく

しかし、すぐそばの天乃へと目を向けた瞬間、その表情はやはり、不安を感じるものだった

歌野「……誰?」

水都「……………」

本能からか、それとももともとそう言う関係なのか

歌野は水都を庇うように前に進み出て、天乃を見下ろす

そこから導き出される結論に

天乃は複雑な思いを抱き、手元へと視線を下げる

天乃「貴女達。自分たちの名前以外に覚えていること……ある?」

水都「それは――」

歌野「覚えてるって、言ったら?」


威嚇するような警戒心の強い瞳

それを見返す天乃は対照的に穏やかな瞳で、ほほ笑む

勇敢と称えるには、少し残念だ

だが、見知らぬ人への強い警戒とその判断は

賞賛しても良いのかもしれない。なんて

適当なことを考えて、気持ちを落ち着ける

天乃「そう。無いのね? 記憶」

歌野「……………」

天乃「そんなに警戒しなくてもいいわ。私は別に、貴女達に手を出すつもりはないから」

記憶がない。ということは

勇者や巫女として巻き込まなくてもいいと言うこと

若葉の時のように術式のほころびか

はたまた、稲荷が選択を許してくれたのかは、分からないが。

歌野「……私は、白鳥歌野。こっちは、藤森水都」

天乃「私は久遠天乃よ」


1、貴女達のお姉ちゃんよ
2、貴女達の友達よ
3、貴女達の主人よ。貴女達は、私に使える精霊だから
4、九尾、二人にある程度の記憶を与えることはできないの?
5、貴女達のお母さんよ


↓2


では、ここまでとさせていただきます
明日もできれば通常時間から


いつからか消えた判定時のぞろ目ボーナス……



天乃「お母さんよ」

歌野「……人は見かけによらないものね」

水都「うん。そしてまた弟か妹ができるっぽい……お母さん若い」

天乃「えっ……ちょ、え、待って、信じるの!?」


では、初めて行きます


天乃「実は、私は貴女達のお母さんなのよ」

歌野「…………」

水都「…………」

シン……っと、病室が静まり返る

二人からしてみれば明らかな大嘘で

見た目からしても嘘。血の繋がりだってもちろん、無い

だが、ある意味では母親のようなものというのなら、

あながち嘘とも言い切れなくもある

しかし、天乃の浮かべる無垢さを感じる微笑には「冗談」と大きく書かれているのだろう

歌野と水都の二人は呆然とした後、互いに顔を見合わせて

歌野「いや、ないって」

水都「そうだよ。流石にそれは」

天乃「なによっ、養子縁組かもしれないじゃない!」

水都「かもの時点で違うでしょ」

天乃「まぁ、違うけど」

歌野「あっさり折れたわね……」


深くため息をついた歌野は計り知れない天乃という人物を前にして

自分の警戒心が多少なりと薄れていることに気づき、

困惑の色を浮かべる水都を前にニコニコと笑みを浮かべる天乃を遠巻きに見つめる

見知らぬ場所、見知らぬ人、何もわからない状態の二人にとっては

一つ一つに警戒しなければいけない

名前は覚えているが、それ以上の何も分からないからだ

自分が何者で、どう生きてきたのか。その全てを

なのに、天乃には不安を感じない

心臓が激しく踊ることも無い

わけの分からない冗談を唐突に振ってきたことも関係があるのかもしれないが……

進学して出会ったクラスメイトのような他人ではあるが、他人ではなくなったばかりのような感覚

それを感じる歌野は水都を困らせて遊ぶ天乃の目が自分へと向いたのが見えて、一歩退く

天乃「そんな怯えなくたって良いじゃない。私、見ての通りだから派手なことは出来ないわ」

歌野「それは――」

天乃「地味なことはするけどね」

歌野「…………」


歌野は自分が、相手の観察に長けているとは思わないし

感覚に鋭敏だと自負しているわけでもない

だが、目の前で楽しげに笑う人が

実は内側であくどい事を考えている。なんて警戒心ゆえの可能性を考慮することが出来ない

それどころか、本当に嬉しいのだと、楽しいのだと、信じてしまいそうになる

天乃「どうかした?」

歌野「えっと……」

本当は何者なのだろうか

母親――は、絶対にありえないとして。

窓に映る自分の姿と見比べて姉妹という線も捨てる。あって義姉義妹だ

ただの友人。もしくは……いや、他人はありえない。いや、ありえなくは無いはず……

考えれば考えるほど惑わされていく

そもそも、不自然なのだ

何も分からない自分の意識を手にしたのが、彼女の目の前ということが。

だから、歌野は迷い、同じく水都も迷う


何らかの関係者、仮に部活仲間だとして

部活などの合宿あるいはその移動中に事故にあって入院

久遠天乃という少女は体が不自由になり、自分達は記憶を失ってしまった

歌野「……ありえる」

ファンタジックというべきか、いささか信じがたいものではあるのだが

歌野はその自分の考えを僅かながら、認める

なにせ、それがもっともつじつまが合うからだ

歌野が現時点で持つ情報では、という制約付きではあるけれども。

歌野「それで、実際のところはどうなのさ。私達と久遠……さん? の関係は」

天乃「そんなに気になる? お母さんっていうのじゃ、だめ?」

歌野「……いや、無いって。久遠さん何歳よ。見た目で言えば同年代でしょ」

水都「それに、さっき否定してたよ」

天乃「ふふっ、ばれたら仕方が無いわね」

歌野「なぜにラスボス感醸し出すかな……」

ふふふふっと悪巧みした子供のような笑い方に

まじめな空気だったはずの歌野は呆れたようにぼやいて肩をすくめる

もはや、諦めるしかないのかもしれない。と



1、友達よ
2、家族よ。私が義姉ね
3、……恋人、だったのよ
4、貴女達は精霊よ
5、本当に、何も思い出せない? 欠片も?


↓2


天乃「正直なことを言うとね。貴女達は精霊よ」

歌野「精霊……?」

天乃「これも嘘だと思う? でもね、本当の事よ」

先を見透かしたような言葉に、歌野は目を見開く

さっきの母親という言葉と同じくらいに信憑性のない言葉だった

だから、嘘だ。と、歌野は否定しようとしていたのだ

だからこその驚愕

その表情を横から見る水都は天乃への恐怖心をより強くして

けれど、それが分かっていながら、天乃はほほ笑む

天乃「遠ざけることも考えた。でも、きっと、逃れることなんて出来はしないから」

水都「……なに、から?」

天乃「戦いから。よ」

歌野「………………」

戦い。そう言う天乃の悲しげな表情には嘘は感じない

歌野は別の事を言いかけた唇を噛み、天乃を見下ろす

歌野「本当に、私達は精霊なの? 久遠さんに仕える精霊?」

天乃「ええ。貴女達自身がそれを認識することで正しく機能するはずよ」

若葉の時もそうだった

誤魔化している間は力を使うことが出来なかったけれど

真実を話してからはすぐに、精霊としての力を発揮できるようになった


そう見越しての天乃の言葉を、二人は信じかねて沈黙が長引く

自分たちの中で、それを信じるか否かを考え込んでいるかのような空白

そして

歌野「分かったよ。私は久遠さんを信じてみることにする」

水都「へ、平気?」

歌野「分からない事だらけだから不安になる。でも、だからこそ、私は目の前にいる久遠さんを信じたい」

何もかもに怯えて、不安になって、疑心暗鬼になるなんてまっぴらごめんだ

勇敢に。というべきか、威勢よく言う歌野の影にいる水都はそれでも不安そうで

歌野「大丈夫! なんとかなるって!」

水都「………っ」

その体を抱きしめるように引き寄せた歌野は

天乃の前に立ちはだかるように

水都を守るように佇んで、胸を張る

歌野「久遠さんの精霊だって言うなら久遠さんは私が守る。みっちゃんが不安だって言うなら、私が守る。今までだってこれからだって」

天乃「……?」

水都「う、うん……」


水都「私も……出来る事はやる」

歌野「そう。出来る事で良い……よね? 久遠さん」

天乃「……………」

歌野「久遠さん?」

天乃「え? あ、ええ……よろしくお願いするわ」

思考の波にのまれていた天乃は、

歌野からの問いかけにやや慌てながら答えて、息をつく

ついさっき、歌野はこういったのだ。【私が守る。今までだってこれからだって】と

もちろん、無意識的な言葉だろうし

それが常套句として持ち出された可能性も否めない

けれど、もしかしたら記憶は完全に消えたのではなく

何らかの形で封印、あるいは一時的な記憶障害にあるのかもしれない

だとすれば……

天乃「力の使い方は――」

歌野「大丈夫。なんとなく、なんとなくだけど……解る気がする」

目を瞑る歌野はそう言うと姿を消して、それに続いて「待って!」と声を上げた水都も姿を消す

どこからともなく、とりあえずはこうしておけばいいんだよね。という、声が聞こえた


では、ここまでとさせていただきます
明日は可能であればお昼過ぎから


歌野と水都の口調……


能力値はまだ未作成ですが
歌野は戦闘系、水都が支援系になる予定です


では、すこしずつ


歌野と水都の絆値は記憶が無い為リセットします(有りの場合は稲荷・稲狐依存)


初期補正、歌野15(普通) 水都10(普通)


↓1コンマ一桁 歌野絆値補正(ぞろ目なら二倍)

↓2コンマ一桁 水都絆値補正(ぞろ目補正無し、補正値÷2)


1日のまとめ

・   乃木園子:交流無()
・   犬吠埼風:交流有(お見舞い、正直に、一夫多妻、みんな、夏凜と。、候補)
・   犬吠埼樹:交流無()
・   結城友奈:交流無()
・   東郷美森:交流有(お見舞い、煩悩と天女の誘いの円舞曲)
・   三好夏凜:交流無()
・   乃木若葉:交流無()
・   土居球子:交流無()
・   白鳥歌野:交流有(精霊化)
・   藤森水都:交流有(精霊化)
・ 伊集院沙織:交流有(キス、信じる、誘う)

・      九尾:交流無()

・       死神:交流無()
・       稲狐:交流有(昇華)
・      神樹:交流無()



7月2日目 終了時点

  乃木園子との絆 54(高い)
  犬吠埼風との絆 49(少し高い)
  犬吠埼樹との絆 44(少し高い)
  結城友奈との絆 59(高い)
  東郷美森との絆 47(少し高い)
  三好夏凜との絆 68(とても高い)
  乃木若葉との絆 39(中々良い)
  土居球子との絆 27(中々良い)
  白鳥歌野との絆 21(中々良い)
  藤森水都との絆 12(普通)
     沙織との絆 57(高い)
     九尾との絆 45(少し高い)
      死神との絆 38(中々良い)
      神樹との絆 9(低い)

 汚染度155%


√ 7月3日目  朝(病院) ※水曜日


01~10 友奈
11~20 夢

21~30 
31~40 
41~50 夏凜

51~60 
61~70 
71~80 夢

81~90 
91~00 大赦

↓1のコンマ  


01~10 伊予島杏
11~20 深淵

21~30  上里ひなた
31~40  梅田駅地下にて
41~50 郡千景

51~60  人々
61~70  深淵
71~80 乃木若葉

81~90 諏訪にて
91~00 土居球子

↓1のコンマ  


これはまだ、みんながいる時の話だ

苦戦はしていたが、しかし誰一人欠けることなく、闘いの日々を生きていた時の話

杏「久遠先輩、また……そんな所に」

天守の屋根に座って読書をする陽乃に、そんな声がかけられた

高低差も手伝ってそれは小さな声に過ぎなかったが

陽乃の耳には届いたらしく、浅くため息をつく。本からは、目を離さない

陽乃「……私がどこにいたとしても、杏には関係のない話でしょう?」

杏「……そう、だけど」

陽乃「ここがあなたのお気に入りの場所だって言うのなら、考えるけれど」

伊予島杏は陽乃と同じく……というのは少しばかり語弊があるが勇者として選ばれた少女の一人だ

そんな仲間であるはずの杏には目もくれず言葉を放り投げてくる陽乃から、眼を逸らして

杏は辺りを見渡す。もう日が落ち始めており、空は茜色に染まっている

明るいと言えば明るいが、暗いと言えば、暗い

杏「そこにいると、危ないですよ」

陽乃「私がここから滑り落ちて死ぬとでも? そんな貧弱な人間なら、苦労しないわ」

杏「久遠先輩……」

少し冷たい声で言い返してくる陽乃だが、

二人の関係が悪いなんて言うことはない

なにせ、陽乃と杏は元同級生であり、クラスメイトの時期もある。幼いころからの知り合いという点で言えば

両者は幼馴染と言ってもいいくらいなのだから


杏「……一人でいる時は、いつもそうですよね」

陽乃「私だって、息抜きしたいのよ」

街に出向くことはできない

それは、許可されていないことだからだ

大社にではなく、街に住む人々に。

そんなことは関係ないと押し通すこともできる

守ってあげているのにと訴えることもできる

けれども、それは何も解決しない。それどころか、火種にしかならない

だから、陽乃はいつも、息抜きと称して天守に登り、本を読む

誰かと居ることを好みながら、外的なものすべてを排除しようとする

陽乃「杏だって、その気持ちが少しは解ると思ってるけど……まぁ、意味が違うから分からなくても仕方ないわね」

杏「なにがあったんですか? ……私達がいないところで、何が」

街へ出たときに、杏は陽乃の性格が歪んだ件を調べようとした

だが、陽乃の―久遠家の―親類縁者は誰一人として生存者は居らず

陽乃の自宅、所持していた神社は火事で焼け崩れており、周囲の人々はそのことについて口を閉ざすばかりで

陽乃が一番親しかった友人も、家族含め亡くなっていたため、何も知ることが出来なかった

唯一知ることが出来たと言うのなら、それは【陽乃の関係するすべてが消滅している】ということだけだ


しかし、だからこそ陽乃を見逃せなかった

陽乃には何もないのだ

今は力を持つものとして協力関係にある勇者とでさえ

仮面をかぶったような付き合いばかりで、本心から触れ合おうとしている気配がまるで感じられない

そう言ったことに聡い杏ではないが、それでも、陽乃を知る人間としては違和感が絶えなかった

杏「乃木さんも、心配してます」

陽乃「私の事なんて気にすると若い内に禿げるかもしれないのに」

くすくすと笑う声が、また不気味で

思わず一歩退いた杏の前に、陽乃は飛び降りて

驚く杏に笑みを浮かべ、その肩を軽く小突く

陽乃「貴女も禿げたくなければ、私のことは気にしない方が良いわよ」

杏「でも――」

陽乃「触らぬ神に祟りなしっていうじゃない? 消えちゃうわよ。全部」

杏「…………」

それは笑顔だった。間違いなく、笑みだった

けれど、間違いなく、寂しげだった。悲しげだった

陽乃「私は今の関係のままが良いの。親しみなんて要らない」


杏「でも、久遠先輩は郡せん――さんには」

陽乃「言いにくいなら統一しちゃえば良いのに。さんでもちゃんでも呼び捨てでも私は一向に構わないわよ」

杏「…………」

誰のせいでいまだにチームワークがばらばらなのか、馴染み切れていないのか

それを口に仕掛けた杏だったが、その言葉を飲み込んで

杏「郡さんには積極的じゃないですか」

方法は酷いが、積極的という点において変わりはない

陽乃「……千景は特別よ。あの子は人間というものを分かっていなさすぎる。人間からの愛なんて、紙きれに印字しただけの紙幣と一緒」

最重要な資源になることもあれば、ただの燃えるゴミにもなる

誰かがこういうものだと言う価値を与えただけの、紙屑

陽乃「つまりね、愛なんて、信頼なんて、絆なんて、ただの幻想でしかないの」

杏「そんなこと――」

陽乃「無いのでしょうね。貴女達は……それはとても幸せな事よ。でも、それに浸かりすぎないで。苦しみたくないなら」

杏「っ!」

そう言い残して天守から飛び降りた陽乃は、どこからともなく姿を現した九尾の背中に乗って

そのままどこかへと消えていく

杏「……………」

何があったのか。自分には何ができるのか

杏には何一つ分からないままだった



√ 7月3日目  朝(病院) ※水曜日


01~10 友奈
11~20 樹

21~30 
31~40 
41~50 夏凜

51~60 風
61~70 
71~80 沙織
81~90 歌野
91~00 

↓1のコンマ  


√ 7月3日目  朝(病院) ※水曜日


患者衣がべったりと張り付く不快感に目を覚ました天乃は

汗に濡れた前髪を指で払い除け、ゆっくりと上体を起こす

以前よりは軽い夢だったのだろう

呼吸の乱れはないし、痛みもない

けれども、決していい夢とは言えなかった

天乃「……伊予島杏」

以前、男子生徒と向かったお店で手に入れた写真の写真

そこに映っていた先代勇者の一人を思い浮かべて、息をつく

彼女は陽乃のことを心配していたなのに、それを無下にするような態度を、陽乃はとっていた

その理由は以前の夢……なのだろうか

それだけなのだろうか

天乃「………」

不安を感じる天乃は、肌に密着する患者衣を軽く剥がして、胸元を見つめる

濡れそぼった体は光を受けることなく、妙なてかり方をしていて

体が乗っていた敷布にまで、汗は染み込んでいる

天乃「やっちゃいけない事をやっちゃった気分になるわね……これ」

とはいえどうしようもなく、天乃はひとまずナースコールを押した


「……ふう」

天乃「ありがとう」

「いえ、これも私のお仕事ですし……それに」

天乃「それに?」

「あ、いえ! な、なんでも」

背中を拭き終えたため息にお礼を述べると

看護師は少し疲れ、僅かに熱っぽさを感じる表情を遮るようにパタパタと手を振る

天乃の体を拭いたタオルを握りしめる看護師は

ちらりと、天乃の背中を見つめる

雪のような白さのある肌

足が動かないとは思えないほどに無駄な脂肪のない引き締まったわき腹に、二の腕

わき腹はともかく、動ける自分のぷにぷにとした二の腕が恥ずかしくさえ、思う

天乃「ゃっ!?」

「あっ、ご、ごめんなさい!」

そんな思考に紛れた脳神経は身勝手に指令を出していたようで

天乃の悲鳴でハッとした看護師は天乃の背中に触れていた手を引いて、頭を下げる

天乃「疲れてるの?」

「そ、その……それも少しは、あるんですが……」


当直で担当していた看護師は、確かに疲れている

前に垂らしていた髪を後ろに戻した天乃は

ファサッと軽く空気を含ませながら振り向き、その顔色を確認する

疲れは見える。けれど、寝ぼけ眼というわけでもなく、

意識はしっかりとしているようにも見える

そして……

「く、久遠さん、前。前を隠してください」

天乃「あぁ、ごめんなさい」

無自覚に戻さなかった服を戻した天乃は、

見たいけど見ない。けど実は見ている

そんな男子生徒がしそうなことをしている看護師を微笑ましく一瞥する

彼女は違うだろう。だが、夏凜達だってきっと、初めは違っていたはずだ

それが、色々なことを経て、今のようなことになったのだ

異性は当然のこと、同性であろうと気を使ってあげるべきなのだろう

特に、今のような状態の相手には


1、私の体に触りたいの?
2、私の体、どう思った?
3、貴女は、恋人いるの?
4、ねぇ、この感じなら、もうここを出られるの?
5、黙って見つめる


↓2


看護師を黙って見つめていると

女性は困ったようにはにかんで、天乃をちらりと見て、眼を逸らす

天乃「……………」

恋心を抱かれたわけではないことは、分かる

邪念ではないが、そう言った感情とは別のものを天乃は感じて、ほほ笑む

見られて恥ずかしいことはない

むしろ、見て照れくさそうにしているのは相手だ

もっとも、恥じていると言うよりは……きっと

綺麗だと思ってくれたのだ

穢れゆえに汚れのない体を。

外面だけは良い、体を。

「……その」

天乃「なにかしら」

「なんというか、ありがうございました」

天乃「………ふふっ、良く分からないけれど。どういたしまして」


天乃に触れた手を抱きしめるようにお礼を言った看護師は

そのまま足早に病室を去っていく

神……というのは誇張かもしれない

けれど、とても神聖なものに触れたかのような

彼女の嬉しそうな表情に、天乃はすこしばかりの罪悪感を抱く

天乃「私の体には何の加護も祝福もないのに」

触れたければ好きなだけ触れて貰っても構わなかった

見たければ好きなだけ見てくれて構わなかった

それで、気が済むのなら。疲れが癒されるのなら。その意味があるのなら

天乃「……………」

天乃のことを嫌っている人物は多い

けれど、天乃は思う。それは陽乃にとっては、マシなレベルなのだろう。と

親類縁者に、親友を失って、家までも火事で焼失した同い年の先祖

それと比べること自体がきっと、烏滸がましい

天乃「貴女はどれだけのものを、背負っていたの? 陽乃さん」

その問いかけに応えてくれる人は、いない


√ 7月3日目  朝(病院) ※水曜日

1、九尾
2、死神
3、若葉
4、球子
5、歌野
6、水都
7、悪五郎
8、イベント判定

↓2



01~10 友奈
11~20 大赦
21~30 瞳
31~40 夏凜
41~50 風
51~60 沙織
61~70 九尾
71~80 死神
81~90 歌野
91~00 水都

↓1のコンマ  


では、ここまでとさせていただきます
明日は所用で再開は19時頃を見込んでいます



風「なんで来たか、分かってる?」

天乃「……………」

風「…………」

天乃「……手が出ちゃう。だって、女の子だもんっ」

風「ほぅ?」イラッ

【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【七輪目】
【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である2nd【七輪目】 - SSまとめ速報
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では、初めて行こうかと思いますが

次スレはこちらになります

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