武内P「私にマーキングしたい?」 (33)

注意事項

・武内Pもの

・武内Pもの





カタ、カタカタカタ


武内P「……」


ガチャッ


李衣菜「プロデューサー、プロデューサー!」

武内P「多田さん? 何かありましたか」

李衣菜「ちょっとやってみたいことがあるんで、そこに立ってもらっていいですか」

武内P「……? こう、ですか?」

李衣菜「はい、では行きますね。えいっ」ゴツンッ

武内P「……」

李衣菜「どうですか?」

武内P(そう自信満々に訊いてくる多田さんの顔は、私からは見えません)

武内P(なぜなら彼女は可愛らしい掛け声をあげると、けっこうな勢いで私の胸へと頭突きをしてきたからです)

李衣菜「……っ」

武内P「多田さん、どうしましたか?」

李衣菜「クビ……痛い」

武内P「けっこうな勢いでしたからね」

李衣菜「おかしいな……プロデューサーの胸って弾力があるのに」

武内P「あの……突然どうしたんですか?」

李衣菜「あ、この前みくちゃんと猫カフェに行ったんですよ」

武内P(事情を話し始めてくれましたが、私からは多田さんの後頭部しか見えません。頭突きをした体勢のままだからです)





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李衣菜「そしたら猫がけっこうな力強さで私の足に頭突きをしてきてビックリしたら、みくちゃんが『猫はおでこからフェロモンが出てて、好きな人に頭突きをしてフェロモンを付けるんだよ。自分のものだって。マーキングってやつにゃ』って教えてくれたんです」

李衣菜「それがわかると頭突きしてくる猫が可愛く見えたんで、私もマネしてプロデューサーにマーキングしようと思ったんです」フンスッ

武内P「なるほど。しかし多田さん、遊びだとはわかりますが、女の子が男に対してマーキングをするのはどうかと」

李衣菜「ふーん? 本当に遊びでしょうかねえ?」グリグリ

武内P「……え?」

李衣菜「プロデューサーってば私たちのプロデューサーなのに、元担当だからって楓さんや美嘉ちゃんとしょっちゅう絡んでるし、仕事が一緒になることが多いからってクローネの皆とも仲良しですよねえ?」グリグリ

武内P「その……同じ事務所の仲間ですから」

李衣菜「……まあ私たち以外のアイドルに冷たいプロデューサーなんて見たくないからいいんですけど、ここらで自分の担当は誰なのかハッキリさせとこうと思いまして」

李衣菜「何せポプマスがリリースされて、さらに5月発売のスターリットシーズン(※)ではデレステだけじゃなくてミリオンとシャニマスも越境しますからね! 今のうちに他事務所にうつつを抜かさないように釘を刺しておかないと!」


 ※これを書いている時は5/27発売予定だったので、わりとタイムリーなネタだったんです


武内P「……何のことですか?」

李衣菜「猫は独占欲が強いという話です。みくちゃん見てたらわかるけど」グリグリ

武内P「は、はあ。ところでいつまで頭突きをするのですか」

李衣菜「んー? もう少し私の匂いがつくまででーす」グリグリ

武内P「しかし……これで私から多田さんの匂いがするとわかるのでしょうか?」

李衣菜「え、わかんないと思うよ。面白そうだからやってる、というのが正直な話だし」

武内P「そうですよね。わかるはずがありませんよね」

李衣菜「わかっちゃったら困るし、わかる人がいたら怖いじゃないですか。私が遊び半分というか、遊び九割でプロデューサーにマーキングしただなんて」

武内P「……それは大問題ですね」

李衣菜「まあまあ、わかるわけないから。アッハッハッハッハ」





――こうして惨劇の下地は、丁寧に敷き詰められたのであった。

※ ※ ※



幸子「ふふーん♪」

武内P(用事を終えて部屋に戻ると、そこには輿水さんが待ち構えていました)

武内P(――鞭を持って)

武内P「あの……輿水さん? その鞭は何でしょうか?」

幸子「これは子犬の躾用の鞭です」

武内P「子犬の……?」

幸子「はい。鞭が必要になったので財前さんに借りようと思ったんですけど、カワイくない上に痛そうな物しかなかったのでこれを用意しました」

武内P「そ、そうですか。それで、その鞭で何をするんですか」

幸子「叩くんです」

武内P「鞭ですからね」

幸子「プロデューサーさんを」

武内P「……ん?」

幸子「あんまり痛いとプロデューサーさんが可哀そうですから」

武内P「……すみません、輿水さん。話が見えないのですが」

幸子「そうですね、少し順を追って話しましょうか」

武内P「よろしくお願いします」

幸子「まずプロデューサーさんがボクのモノなのに浮気をしました」

武内P「……待ってください」

幸子「何ですか、まだ話し始めたばかりですよ?」

武内P「あの、浮気とは……?」

幸子「フンッ! ボク以外の匂いをあんなにさせて気づかないとでも思ったんですか? ボクも舐められたものですねぇ?」

武内P「気づいて……ッ? いや、そもそも浮気とは――」

幸子「何ですか何ですか!? あんなに他の女の匂いが付くってことは、泥棒ネコがボクのプロデューサーさんに無遠慮にベタベタ引っ付いたってことじゃないですか! こんなの許せませんッ」

武内P(確かに私と多田さんがしたことは、アイドルとプロデューサーとしては不適切なことですが……浮気とはいったい?)

幸子「だ・か・ら! ここでプロデューサーさんにお仕置きと! ボクのモノである幸せがわかるご褒美と! これ以上泥棒ネコが近づかないようにボクのモノである印《しるし》をつけるんです!!!」

武内P「ま、待ってください! 色々と言いたいことがありすぎて……待ってください、本当に」

幸子「何ですか、早く言ってください! カワイイボクは本当は寛大なのに、今は怒りまくって気が短いんですからね!」

武内P「そ、それでは……お仕置きで鞭というのはわかるんですが、ご褒美と印《しるし》とは?」

幸子「それも鞭です」

武内P「……え?」

幸子「まあ叩かれたらわかりますよ。ていっ」ペシペシッ

武内P「これは……」

武内P(別に……痛くない)





輿水幸子
http://i.imgur.com/fYYf30l.jpg

幸子「子犬の躾用ですからね。強く叩かなければこんなもんです」

武内P「痛くないのは助かるのですが……これがなぜ、ご褒美や印になるのですか?」

幸子「ふふーん♪ ではこの鞭が、お仕置きとご褒美、さらには印にもなる理由を説明しましょう!」

幸子「この前親戚の家に行ったのですが、その家ではイタリアン・グレーハウンドというワンちゃんを飼っていたんです。散歩しているのをそこそこ見かけることがある、足が細長い小型犬なんですが知ってますか?」

武内P「あの足が折れないかと心配になる犬ですね」

幸子「高いところから飛び降りて足を折る、という事故が起こりやすいそうです。まあそのワンちゃんなんですけど、ボクがカワイイからって膝の上に飛び乗ってきたんです」

幸子「――と、ここであることが起きました」

武内P「あることとは?」

幸子「その細長い尻尾で、ビシバシとボクの脇腹を叩きまくるんです」

武内P「……フッ」

幸子「まるで鞭のようで、アレは痛かったですねぇ。止めようにもボクの膝の上でルンルンで、尻尾の勢いはまるで止まらずにボクを叩き続けるんです。痛いけど、ボクほどではないけどカワイイから嬉しくもありました」

幸子「それを見ていた親戚は笑いながら『夏場で薄着をしていると、尻尾で叩かれた跡が残ることもあるんだよ』と嬉しそうに話してくれました。親バカだなあと感じもしましたが、その気持ちはわからないでもありませんでした」

幸子「そしてプロデューサーさんの浮気に気づいた時、閃いたんです!」

幸子「ワンちゃんよりもカワイイボクが鞭でプロデューサーさんにお仕置きをしたら、カワイイボクに叩かれてプロデューサーさんは嬉しい! さらに鞭の跡も残って、ボクのモノである印が泥棒ネコたちを近寄らせない!」

幸子「完っ璧です! カワイイ上に完璧……ああ、天はなぜこのボクに二物を与えたのですか? カワイイからですね!」

武内P「あ、あの……」

幸子「大丈夫です! 鞭の跡が残る程度の、痛気持ちいい強さでやるから怖くありませんよ!」

武内P「ま、待って……」

幸子「ほら、早くスーツを脱いでワイシャツに! スーツの上からだと強く叩かないといけませんからね! 間違って素肌の部分に当たったら気持ちいいじゃすまない痛さになってしまいますよ!」

武内P「輿水さん……お願いですから」

幸子「さあ、早く」ピシッ

武内P「」




ペシペシペシッ、ペシペシペシペシペシペシッ、ペシペシペシペシペシペシペシペシペシ――

武内P「」

幸子「……ふうっ」ペカー

武内P(良い…笑顔です)

幸子「フフッ……ボクのカワイイ跡をたくさん残すことができましたね。痛くはなかったですか?」ナデナデ

武内P「少し痛かったですが……気になるほどでは」

幸子「それは良かったです。で、クセになりそうですか?」

武内P「……え?」

幸子「またボクに鞭で叩いてほしいと……カワイイボクのモノである証《あかし》を定期的につけてほしいと感じませんでしたか?」

武内P「い、いえそんなことは少しもっ!!」

幸子「……ふーん」

武内P「こ、輿水さん……?」

武内P(輿水さんは不満気な様子で、目を細めて私を見上げます)

武内P(鞭を振り続けた彼女はうっすらと汗をかき、肩を上下させながら漏れる吐息には、まだ十四歳の身には早すぎる情念が込められているかのように錯覚しました)

幸子「どうやら……まだ教育が足りないようですね?」

武内P「こ、輿水さん……? 落ち着いてください」ジリジリ

幸子「ボクは落ち着いていますよ。プロデューサーさんが自分に正直になれるように、ここでしっかり教育しておかないと、ボクにお仕置きされるためにまた浮気をしかねないと判断しただけです」ジリジリ

幸子「素直になりましょうプロデューサーさん。そうすれば、このカワイイボクだけのモノにちゃんとしてあげますから……っ」

武内P「ま、待ってくださ――」

武内P(輿水さんは鞭のグリップで私の顎をクイッと持ち上げると、熱のこもった瞳で見上げながらその手で――)





智絵里「幸子ちゃん……? 何を、してるの?」





武内P「緒方さん……っ!?」

幸子「智絵里さん!? 何って……アレ?」

幸子(プロデューサーさんが逃げるものだから、いつの間にか四隅に追い詰めていました)

幸子(四隅に追い詰められたプロデューサーさんと、息を荒げながら鞭を持って追い詰めているカワイイボク。これは――)

幸子「これは……」

太鼓の達人s『……』

幸子「純愛です」

智絵里「ならばこちらはチョップです」エイッ

幸子「あいたっ」





緒方智絵里
http://i.imgur.com/MMBEOMx.jpg

智絵里「だ、ダメですよ幸子ちゃん。プロデューサーさんをイジめたら」

幸子「イジめてなんかいませんよ。浮気したお仕置きと、ボクのモノである印をつけていただけです」

智絵里「浮気……? プロデューサーさんから李衣菜ちゃんの匂いがすることですか?」

幸子「それです!」

武内P(なぜ二人とも私から多田さんの匂いがすると、すぐに気づけるのでしょうか……?)

幸子「李衣菜さんといえども、ボクのモノであるプロデューサーさんにマーキングするなんて許せませんっ! こんな悲劇を二度と起こさないためにも、ボクは行動しなければならなかったんです。智絵里さんならわかってくれますよね?」

智絵里「それは……そうだけど」

武内P「そうなんですか!?」

智絵里「でも幸子ちゃんのやり方は間違っています!」

幸子「でもっ……これぐらい強引じゃないとプロデューサーさんは……っ」

智絵里「……そうなんですよね」

幸子「……そうなんですよ」

さちえり『……はぁ』

武内P「あの……二人とも?」

智絵里「やっぱりプロデューサーさんには、勇気を出して強めに行った方がいいのかな……?」

幸子「そうですよっ! きっと李衣菜さんも有無も言わせずマーキングしたはずです。違いますかプロデューサーさん?」

武内P「え、ええ。突然のことで止める間もなく」

幸子「クッ……こういう時パッションは強いですね。親しい相手には恥ずかしがることなくどんどん攻めることができる(※)」


 ※ただし美嘉ねぇを除く


智絵里「え……?」

武内P「パッションの皆さんのコミュニケーション――特にボディタッチについては再三注意しているのですが、どうにも聞き入れてもらえず」

智絵里「あの……」

幸子「普段は大人しい輝子さんも、一度火が付いたら止められ――どうしましたか智絵里さん?」

智絵里「……キュート」

幸子「ん?」

智絵里「李衣菜ちゃんの属性は、私たちと同じでキュートだよ」

武内P「な……っ?」

幸子「え……っ?」

智絵里「ほら、ØωØver!! もキュート曲ですよ」

武内P「言われてみれば確かに……」

幸子「同じキュート属性なのに、カワイイボクとしたことが……ん?」

幸子「キュートの李衣菜さんが強引にしていいのなら……ボクと智絵里さんも同じぐらい強引にしてもいいのでは?」

太鼓の達人s『……ッ!!?』

幸子「ふ、フフフフフフ……カワイイボクが大義名分まで得ました。これが俗にいう鬼に金棒というやつですね!」

武内P「ま、待ってください輿水さん。落ち着きましょう」

智絵里(……強引に? わたしにはそんなこと、できないよ……)

智絵里(――あ、でも。わたしも普段は優しいプロデューサーさんに、有無も言わさず抱きしめてほしいと思うこともあるから……プロデューサーさんも女の子に、強引にしてほしいと思うこともあるのかな?)

智絵里(わたしは幸子ちゃんみたいに可愛くないから、強引に何かをされても嬉しくないかもしれないけど……もしかしたら、喜んでくれるかもしれない)

智絵里(怖がってばかりだと……見えない景色があると思うから!)

武内P(ここは何としても逃げ――――――――――え?)

智絵里「あ、あの……その」

武内P(何とか逃げ出そうとした私の服の裾《すそ》を、緒方さんが震える指先でそっと掴んでいました)

武内P(振りほどこうと思えばあっさりと振り払えるそのか細い力は、しかし振り払ってしまえば彼女の精一杯の勇気を粉々にしてしまう未来がありありと見え、何よりも強い力で私をここに留めました)

幸子「ナイスアシストです智絵里さん!」ギュッ

武内P「!!?」

幸子「さあ智絵里さんも! 李衣菜さんがしていたように、たっぷりと自分の匂いをプロデューサーさんに付けてあげましょう!」

智絵里「……」

武内P「お、緒方さん。どうか輿水さんを止めてくださ――」

智絵里「い、嫌よ嫌よも好きのうち!」

武内P「!!?」

智絵里「し、失礼します」スウッ

武内P「あの……あの……お二人とも!?」

幸子「ふふーん♪ プロデューサーさんはカワイイボクのモノですからね。鞭の跡だけじゃ足りないから、しっかりと匂いも付けてマーキングしてあげます!」グリグリ

智絵里「プロデューサーさん……大きくて……あったかくて……心がポカポカしてきます」ギュウウッ

武内P「」

――

――――

――――――――



武内P「……大変な目に遭いました」

武内P(どうすれば離れてくれるだろうかと頭を悩ませていましたが、二人ともすぐにレッスンの時間だったため助かりました)

武内P「しかし多田さんが遊びでマーキングをしただけで、こんなことになろうとは」

武内P「仲間の一人が珍しいことをしたから、自分も試しにやってみようという流れができてしまったのでしょうか……?」

武内P「……とはいえ、これは素直に嬉しいものです」

武内P(レッスンに行く前に緒方さんが渡してくれた物を、曲がらないように、常に持っていられるようにと手帳カバーに挟みます)

武内P(四葉のクローバーの押し花です)

武内P(マーキング――私が自分のプロデューサーであると周りに示したいのなら、匂いをつけたり鞭の跡をつけるといった問題のある行為ではなく、こういう贈り物にしてほしいですね)

武内P「そういえば……?」

武内P(気のせいか押し花を渡す緒方さんを見て、輿水さんが気になる反応をしていたような……?)



幸子『押し花ですか。いいですね、智恵理さんらしいマーキングだと……四葉のクローバー? あれ? 確か花言葉は……』

智絵里『幸子ちゃん』

幸子『あ、はい』

智絵里『しーっ』

幸子『……まあ智絵里さんですから、見逃してあげましょう』



武内P「アレは何だったのでしょうか……?」


ウ…キ…モノ……オマ…ニハ……チャンガ


武内P「ん?」


――シーン


武内P(気のせい……でしょうか? 今何か聞こえたような気が)

武内P「――と、そういえば。服の下だから目立ちませんが、一応鞭の跡は確認しておきましょう」ヌギヌギ

武内P「……言われてみればわかる、程度の跡ですね。明日になったら消えているでしょう」

武内P「……消えたからまた付ける、と輿水さんが言い出さないといいのですが」

蘭子「寵愛の御子が何とした?(幸子ちゃんがどうかしましたか?)」ヒョッコリ

武内P「神崎さん?」

蘭子「我が来訪に気づかぬとは、何かに心奪われていたようだが……その軌跡は?(普通に入った来たんですけど、何かあったんですか? え、その跡は?)」

武内P「え、ええ。ちょっとしたことで跡が残ってしまったので、目立たないか確認していました」

蘭子「汝の鎧を傷つけたるとは何事か!? 安心せよ、我が癒しを与えたもうぞ(プロデューサーにそんな跡がつくなんて何があったんですか!? 大丈夫です、良い物がありますから)」スッ

武内P「ほ、包帯? それはいくらなんでも大げさでは」

蘭子「フフ、戯れよ。楽にするがいい(まあまあ、そう言わずに。いいからいいから)」

武内P「は、はあ」

武内P「……ん?」


シュルシュル、シュルシュル


蘭子「♪~♪~」

武内P「これは……!?」

蘭子「忌呪帯法《いじゅたいほう》なり!」ムフー


 ※忌呪帯法とは……幽遊白書(1990-1994年)に出てきた厨二心をくすぐる包帯の巻き方。


蘭子「そして……我もまた同じである」スッ

武内P「……よく自分で巻けましたね」

蘭子「我が盟友、飛鳥の助けがあればこそ」

蘭子「さあ、我が友よ!」

蘭子「漆黒のこの片翼が」スッ

武内P「は、白銀のこの片翼が」スッ

武蘭『終焉を渡る“誓いの翼”となる』

武蘭『双翼の独奏歌《アリア》』

蘭子「むふー♪」

武内P(神崎さんが楽しそうで……何よりです。しかし――)





神崎蘭子
http://i.imgur.com/iGa569Y.jpg

武内P「あの……神崎さん? さすがに包帯をつけたままでは仕事がしづらいですし、この巻き方では奇妙な目で見られるので外してもいいでしょうか」

蘭子「ほう? 我との絆を外すと? 業腹だが、汝の生業《なりわい》には渉外もある。それに理解を示さないほど、我は狭量ではない(ええっ!? 外しちゃうんですか!? せっかくマーキングできたのに……でもお仕事で色んな人と会うから仕方ないですよね)」

蘭子「た・だ・し! 言の葉を紡ぎながら外してもらおうか!(その代わり、例の言葉を言いながら外してください!)

武内P「言の葉を紡ぎながら……ハッ!?」

蘭子(やったぁ! プロデューサーも気づいてくれたみたい。あのセリフをプロデューサーが言ってくれるんだ。忌呪帯法を外す時の『もう後もどりはできんぞ。巻き方を忘れちまったからな』という飛影のセリフを!)

武内P「それでは……失礼します」ゴホンッ

蘭子「……ッ」ワクワク





武内P「オレがマヌケだと? バカ野郎がマヌケは貴様だ!! オレが何もしないで女を返すと思ったのか!? ボケがぁ!! その女の額を見てみろ! 面白いものがあるぞ! はははぁ!確かに身体は返したぞ! だがその女の運命はオレの手の中にあるのだ!! ははは!嬉しいか? その女はオレの部下の第一号にしてやるぞ。その目が開ききればその女は完全に妖怪の仲間入りだ――! さぁ楽しくなってきたな! 今度は追いかけっこをしようか! この剣の柄の中に解毒剤が入っている!! 女を助けるにはそれを飲ませるしかないぞ! 欲しければオレから取ってみろ!! 100年かかっても無理だろうがな! 舐めるな! このスピードについてこれるか! どうだ!? 貴様にはオレの残像すら捕えることができまい!」





蘭子「」

武内P「……ふぅ。神崎さん、いかがでしたか?」

蘭子「ひ……」

武内P「ひ?」

蘭子「飛影はそんなこと言わない!」ピイイイイイイイィィ

武内P「神崎さん!?」

――

――――

――――――――



武内P(多田さんの何気ない遊びから数日が経ちました)

武内P(私にマーキングをして遊ぶという流れは、未だに続いているようです)

武内P(そして――)


ウメ……ウメエエエエエェェ


武内P(この奇妙な幻聴も続いています)

武内P(いったいこれは……?)


コンコン


武内P「……っと、どうぞ」

武内P(奇妙な声への考えを振り払い、ノックに返答すると――)

奏「失礼するわ」

武内P「……ッ!?」ガタッ

奏「ちょっと、その反応は傷つくんだけど」

武内P「もも、申し訳ありません!」

奏「どうしたの? 私あなたに何かしてしまったかしら?」

武内P「そんなことは! 滅相もありません!」

奏「そう言いながら後ずさっているじゃない」

武内P「いえ、あの、これは……」

奏「これは?」

武内P「わ、私は速水さんをたいへん魅力的なアイドルだと思っています」

奏「あら?」

武内P「妖艶な遊び心で他者を翻弄し、男女問わずに翻弄されることに喜びを感じてしまう。たとえ貴女より十は年上の女性であっても、その領域にたどり着ける人は限られているでしょう。それでいて貴女が時折見せる年齢相応な少女としての姿は、自分を翻弄していたのがまだ年端もいかない少女だと思い起こさせ、ハッとさせられる。貴女だけに許された唯一無二の魅力です」

奏「ふ、フフフ。そこまで褒められたら照れてしまうじゃない。でも離れながら言われても信じていいかわからないわ。もっと近づいて、私の吐息がかかるぐらいの距離で囁いてくれないと」

武内P「き、企画検討中です」

奏「……ねえ、本当にどうしたの?」





速水奏
http://i.imgur.com/ZJG0Squ.jpg

武内P「あの……先ほども言いました通り、私はたいへん速水さんを魅力的だと、好意的に見ています」

奏「警戒しているようにしか見えないのだけど」

武内P「ただ、今は時期が悪いと言いますか……しばらく速水さんの手の届く範囲に近づくのは危険だと忠告を受けまして」

奏「……ふーん」

奏「何? もしかして今みんながやっていること――マーキングを私がプロデューサーさんにするかもって?」

武内P「……ッ」

奏「私がプロデューサーさんにマーキングするとして、いったい何をすると思う?」ズイッ

武内P「あの……なぜ近づいてくるのですか?」

奏「近づかないとお話も、それにプロデューサーさんが期待してくれていることもできないじゃない」

武内P「き、期待などしていません」

奏「期待じゃなくて予想、それとも不安なのかしら? 不安だったらとても悲しくて――興奮するわ」

武内P「~~~~~っっっ」

武内P(そう告げる速水さんの表情は、十代の少女が浮かべて良いモノではありませんでした。思い通りにならない男への怒りと、それを今から屈服させることができる歓喜に満ち満ちているのです)

奏「ねえ、答えてよ。私があなたにマーキングをするとして、いったいどんな方法をとるのかしら?」

武内P「そ、それは……」

奏「答えは出ているようね。なら、答え合わせの時間といきましょう」

武内P「ま、待ってください!」

奏「みんながマーキングしてるのに私だけがダメだなんて、いけずな人。そんな人にはいたずらが必要ね」クスッ

武内P(後ずさろうにも気がつけば壁際。肩をつかんで止めようにも、今日の速水さんは肩を露出させたトップスを着ている。私が触れるわけにはいかない――ッ!!)

奏「……ん?」

武内P「……?」

武内P(あと一歩の距離にまで迫った速水さんは、眉をひそめて立ち止まってくれました)

奏「この匂いは……プロデューサーさんの香水?」

武内P「え、ええ」

奏「……へえ。珍しいわね、香水をつけるだなんて」

武内P「周りに若い子が多いので、臭いと思われないよう気をつける必要がありますから」

奏「――で、誰からもらったの?」

武内P「え?」

奏「自分の贈り物で匂いをつける。私を近づけるなって忠告した人と同一人物かしら?」

武内P「……ッ」

奏「図星みたいね」

武内P「そ、そういうわけでは……」

奏「美嘉?」

武内P「なぜ……っ!?」

奏「あ、その反応。やっぱり美嘉なのね。当てずっぽで言っただけなのに、わかりやすい反応をするんだから」

武内P「」

奏「ちょっとこれは許せないわね。自分はマーキングしておいて、友人にはそれをさせないだなんて」

武内P「あの……城ヶ崎さんは私を心配してくれただけで……」

奏「ダメよプロデューサーさん。女の前で、他の女をかばったりしたら。ところで美嘉からもらった香水だけど、手首につけているの?」

武内P「はい」

奏「ふぅん。失礼するわね」

武内P(そう断ると速水さんは何気ない所作で私の手首をつかみ上げると、香水をつけた内側に唇を近づけ――)

奏「chu💛」

武内P「……ッ!!?」

奏「フフッ。プロデューサーさんはキスマークを期待していたみたいだけど、残念でした。口紅でのキスマークよ」

武内P(手首を見れば、強く吸い付くことで残る跡ではなく、赤い口紅が速水さんの痕跡を主張していた)

奏「それじゃあ私は友人にイジワルした女に、イジワルしに行くから」

武内P「あの……お手柔らかに」

奏「それは難しいわね。あの子ったらプロデューサーさんと同じでからかい甲斐があるんだもの」


ガチャ、バタン


武内P(城ヶ崎さんが不安ですね。あとで様子を見に行きますか)

※ ※ ※



奏「みぃ~かぁ~……ってあなたどうしたのよ?」

美嘉「あ……う……」

奏「まるでCPのプロデューサーさんに振られたみたいな顔ね」

美嘉「まだ……まだ振られてないもん」

奏「まだってあなた、いつかは振られるみたいな言い方しないの」

美嘉「だって……だってぇ」グス

奏「ほらほら泣かないの。いったい何があったの?」

美嘉「……あのね、アタシね。昨日アイツに香水をプレゼントしたの。ユニセックスなやつだから、アタシも同じやつをつけて今日来たの」

奏「うん、それについてはあとで話し合うとして、それで?」

美嘉「それでアイツがちゃんと香水をつけてくれているか確認しようと思って、午前中に顔を出したの」

奏「……? 彼はちゃんと香水をつけてくれていたじゃない。何で落ち込んでいるの?」

美嘉「……奏は気が付かなかった? 別の匂いもしたの」

奏「別の匂い……?」

美嘉「アイツのシャンプーの匂い……文香さんと同じだった」

奏「……は?」

美嘉「シャンプーが同じ匂いをするって……それって……それって!」

奏「ままままままま、待ちなさい美嘉!」

美嘉「セッ……」

奏「まだセッ……したと決まったわけじゃないわ!」


 ※言えない


美嘉「でも……男女が同じシャンプーの匂いをさせるなんてそんなの……一夜を共に明かしたとしか……っ」





ありす「その通りです」





みかなで『!!?』

ありす「普段から接点のある年頃の男女が、ある日突然同じシャンプーの匂いをさせる。それ、すなわち」

ありす「 セ ッ ク ス 」


 ※言える





城ヶ崎美嘉
http://i.imgur.com/8rMnSCz.jpg

橘ありす
http://i.imgur.com/Wlz5uEc.jpg

美嘉「なっ……なっ……」

奏「……」

美嘉「だ、ダメだよありすちゃん。セッ……なんて口にしたら。年頃の乙女なんだから、もう少し婉曲的な言い回しができるでしょ?」

美嘉「契るって言い方にしない!?」

ありす「そちらの方がいかがわしい感じがしますが、別に良いですよ」

ありす「……ともあれ、CPのプロデューサーさんは複数の女性に手を出す性格ではないことは、お二人もご存じでしょう。そして文香さんも体を許す相手は一人だけです」

ありす「くれぐれも、仲睦まじい二人の関係をかき乱すようなことがないように」

美嘉「しょんな……しょんな……」

奏「……」


ガチャ


文香「ありすちゃん……あ、ここにいたのですね」

ありす「ふ、文香さん!?」

文香「……? 今度のライブのことでお話ししたいことがあったのですが……また別の機会にした方がいいでしょうか?」

ありす「いえ、問題ありません! ただ場所は変えましょう!」

文香「……? それでは――」

奏「ねえ文香。あなた最近CPのプロデューサーさんに贈り物をしたかしら?」

ありす「……ッ!」

文香「兄さま(※)への贈り物ですか? 智絵里さんが押し花を、蘭子さんが包帯を贈ったと聞いて私もと考えてはいるのですが、なかなか考えがまとまらず……ありすちゃんにも相談に乗ってもらったんですが」


 ※ふみふみは武内Pの妹です。いいね?

 武内P「姉を望んだ末路」
 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1563177051

 武内P「ホモのショックで記憶が」
 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1593212226

 武内P「魔神が生まれた日」
 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1597086263

 武内P「ノンケの証明」
 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1602379126

 武内P「神崎さんが反抗期になってしまいました……」
 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1608413995
 




鷺沢文香
http://i.imgur.com/CcdZyIR.jpg

ありす「……」

奏「へえ、そうなの。ありすちゃんならもう贈り物をしたから、あなたも急いだ方がいいんじゃないかしら?」

文香「え……?」

ありす「……何のことですか」

奏「あら、違ったかしら? ああ、文香からと偽って渡したから、自分からではないと言いたいのね」

ありす「くっ……」

美嘉「……え、どういうこと?」

文香「あの……話が見えないのですが」

奏「ありすちゃんったらあなたを応援したいがあまりに、あなたに内緒であなたからと言って贈り物をしたのよ」

奏「あなたが使っているのと同じシャンプーを」

美嘉「あ、それでか!」

文香「……ありすちゃん、そうなんですか?」

ありす「はい……すみません、勝手をしてしまって」

文香「謝らないでください。驚きはしましたが、怒ってなどいませんから」

ありす「でも……」

文香「ありすちゃんは悪いことなんかしないって、私は知ってますから」ニッコリ

ありす「ふ、文香さん……っ!」

文香「……ところでなぜシャンプーを贈ったのですか? 毎日使う物だから兄さまも困らないでしょうけど、私が使っている物と同じであることには何の意味があるのですか?」

ありす「え、えっと、その……」

文香「あ、なるほど。使い心地が良いから、これを機会に兄さまにも使ってほしかったという説明ができますね。さすがはありすちゃんです」

ありす「そ、その通りです! 智絵里さんや蘭子さんがCPのプロデューサーさんに贈り物をした流れに自然に乗るには、文香さんが普段から使っているシャンプーが適切であると判断したんです」

文香「ふふ。ありすちゃんは賢いですね」

奏「……ふぅん。まあ二人がそういう意図で贈った、ということにしてあげるわ。けど周りはどう思うかしら?」

文香「え?」

奏「普段から接点のある年頃の男女が、ある日突然同じシャンプーの匂いがするようになる。自然と勘ぐってしまうじゃない」

文香「……勘ぐる? いったい何をですか?」

奏「二人が一夜を共に明かしたんじゃないか……ってね」

文香「一夜を共に……一夜を共に!?」

文香「そそ、そんな! そんな風に考えるわけが!」

奏「考えちゃうわよ。美嘉ですらね」

美嘉「アタシですらって……」

文香「美嘉さんまで……っ!?」

美嘉「ねえ……アタシってどういう風に思われてんの?」

ありす「悪いようには思われていないので、落ち込まないでください」

美嘉「カリスマギャルなのに……」

ありす「カリスマギャルなら契るではなく、セックスと言ってくださいよ」

美嘉「うぐ」

奏「まあ周りがどう思おうが重要じゃないわ。問題は文香のお兄様ね」

文香「に、兄さまが……?」

奏「だってそうでしょ? 自分を“兄さま”って慕ってくれる妹のような可愛い子が、周りに一夜を共に明かしたと勘違いされかねない物を贈ってきたのよ」

文香「ああ、ありすちゃん?」

奏「これってつまり『私はあなたと男女の関係であると周りに思われたいです』って言っているようなもの、とどのつまり告白よね」

文香「ありすちゃん!?」

ありす「……ええ、まあそういう解釈もできなくはないですね」

文香「だだ、大丈夫ですよねありすちゃん!? ふしだらな女だと、兄さまに思われていませんよね!?」

ありす「大丈夫です文香さん。文香さんが貞淑で聡明な女性であることは、CPのプロデューサーさんはよくご存じです」

文香「貞淑で聡明かはおいておきまして……良かった、兄さまにふしだらだと思われてはこれから先、生きていけません」

ありす「……まあ、でも」

文香「?」

ありす「男性は貞淑な女性が、自分にだけは積極的に求めてくるのが好きらしいですね」

文香「」

美嘉「そうなのっ!?」

奏「ええ、そうよ」

ふみみか『……ッ!!?』

奏「そういえばCPのプロデューサーさんはもらったシャンプーを使っていたわね。これはどう意味かしら?」

美嘉「どど、どういう意味って……せっかくもらったんだから、使わないと失礼じゃない」

奏「そうね、そう思って使ったのかもしれない。でもね、可愛い妹分からのエッチな告白に、シャンプーを使用することで答えたかもしれないわね」

奏「私は鷺沢さんと一夜を共に明かしたと、周囲に勘違いされても構いませんって」

ふみみか『なっ……』

奏「フフ、大丈夫なの文香? 彼って女性には優しいけど、その分吐き出せてない欲望をどれだけ溜め込んでいるのかわからないわよ。そんな彼に、こんなエッチな告白をしたと勘違いされちゃったら……次に顔を合わせた時、どんなことをされちゃうかしら?」

美嘉「ど、どんなって!?」

文香「ま、まま、まさか……口づけを!?」

ありす「……その程度ではすみませんし、すませてはいけませんよ文香さん」

ふみみか『……え?』

ありす「CPのプロデューサーさんの××な××を×の××××へ××に×××で、さんざん××××されたあげく――」

ありす「 ム リ ヤ リ 凸 凹 × 」ロンパァ!!

ふみみか『』

奏「フフ。未成年のアイドルを、そういう目で見たらいけないと必死になって自制していた彼をその気にさせちゃったんだもの。責任はとらないとね?」

文香「責任……その気にさせた責任。に、兄さまが私で満足してくれるのなら」ガタガタ

美嘉「ちょっ、文香さん顔青いよ!」

文香「いつかはと夢見ていましたが、それが突然来るとなると……ろくに準備もしていないのに、今から東京ドームで歌えと言われた気分です」

美嘉「かか、代わってあげようか!?」

文香「それは駄目です」ピシャリ

美嘉「アッハイ」

奏(なんて煽ったけど、文香と同じシャンプーとは気づかずに使っただけでしょうね)

ありす(文香さんをからかう姿勢は許せませんが、これで文香さんが覚悟を決めて積極的になってくれるのならばいいです)

ありす(文香さんに足りないのは積極性のみ……! この世で最も美しく、優しさと聡明さまでもつ文香さんが本気で迫れば、CPのプロデューサーさんがどれだけ未成年のアイドルだからと自分に言い聞かせても無駄です! 論破です!)


コンコン


武内P『失礼します』

ふみみか『……っ!!?』

武内P『入ってもよろしいでしょうか?』

文香「あ……あ……あ……」ガタガタ

美嘉「だだ、ダメ! 今着替え! 着替え中だから!」

武内P『それは失礼しまし――』


ガチャ


ありす「どうぞお入りください」

ふみみか『ありすちゃん!?』

武内P「あの……着替え中なのでは」

奏「美嘉の悪ふざけだから気にしないで。さ、中へ」

美嘉「ダメダメダメダメ! あ、でもアタシが代われるのなら――一週間……いややっぱり一ヵ月……んん、一年覚悟する時間をくれたら、アタシが代わってあげるよ文香さん!」

文香「だ……駄目です。に、兄さまのお相手は……わわ、私が……責任をもって」ガタガタ

武内P「鷺沢さん!? 大丈夫ですか!?」

文香「――――――――――あ」

文香(兄さまは私を見るや否や、普段とは違う慌てた様子で駆け寄ってきました)

文香(緊張のあまり音が止まった世界で、兄さまは私に顔を寄せながら必死な様子で語りかけます。兄さまがこんなにも想いを込めて話しかけてくれているのに、それを拾ってくれない自分の耳が憎らしい)

文香(答えることができない私に業を煮やしたのか、兄さまが私の肩を掴みます。絶対に普段ならしないこと――してはくれないことで、悟りました)

文香(嗚呼――――――――――手折《たお》られる)

文香(願いが叶う実感で顔に熱がこもり、それでいて初めての恐怖で全身から血が抜けていくように寒気が襲う)

文香(やがて音が止まった世界に、幕が下り始めました)

文香(世界が真っ黒に染まっていくなかで、兄さまが支えてくれている肩の温もりだけが確かな感触でした――)





武内P「鷺沢さん? 鷺沢さんしっかり!?」

文香「」

美嘉「意識!? 意識ないよこれ!?」

ありす「そ、そんな……」

奏「どういう考えだったのか何となくわかるけれど……文香にはちょっと早かったわね」


――こうしてふみふみは医務室に運ばれたのでした。

――

――――

――――――――



武内P(多田さんの何気ない遊びから一週間が経ちました)

武内P(私にマーキングをして遊ぶという流れは、未だに続いているようです)

武内P(そして――)


ウメ……ウメエエエエエェェ


武内P(この奇妙な幻聴もまた続いています)

武内P(いったいこれは……?)


コンコン


武内P「……っと、どうぞ」

小梅「プロデューサーさん……一週間ぶり」

武内P「白坂さん。番組の撮影お疲れさまでした」

小梅「色んなスポットに行けて楽しかったけど……プロデューサーさん、どうしたの?」

武内P「どう、とは?」

小梅「何で……部屋の中なのに、キャッツのキャップをかぶってるの?」

武内P「……」



友紀『ねーねー、プロデューサーの贔屓球団はキャッツだったよね?』

友紀『ああ、みなまで言わなくてもいいから! 担当にきらりちゃんがいるから、大っぴらにできないだけでプロデューサーはキャッツファンだもんね!」』

友紀『はい、というわけでコレ!』

友紀『あと定期的にヤクルトの差し入れをするから。ヤクルトを飲みながらだったら、きらりちゃんもきっと許してくれるよ!』

友紀『目指せ今年こそ日本一! そして頑張れ西部と楽天! 頼むからCSでホークスを倒して! 何でも……何でも幸子ちゃんがするから!』



小梅「それにその湯呑……新しいのにしたの?」

武内P「……」



肇『プロデューサーさん、この湯呑を受け取ってもらっていいでしょうか』

肇『はい。今の期間はCPのプロデューサーさんに何でも渡し放題だと耳にして、ぜひ受け取ってもらいたいと思ったんです』

肇『ただ己の研鑽のためにのみろくろに向かう。それはそれで大切なことなのですが、誰かに受け取ってもらうことを忘れてしまえば、本末転倒になります』

肇『私の勝手ではありますが、この湯呑はプロデューサーさんのことを考えながら作ったものです』

肇『使っていただければ嬉しいです』



武内P「実は……多田さんの遊び心から始まったのですが――」


カクカク、シカジカ


小梅「そ…そんなことが……あったんだね」



白坂小梅
http://i.imgur.com/JWrmn9E.jpg

武内P「ええ。困ることもありますが、湯呑や押し花など受け取って嬉しいものもあり、怒るに怒れない状況です」

小梅「でも……これは、いけないよね」

武内P「これ……とは?」

小梅「ありがとう……私のために、してくれたんだよね? でも…プロデューサーさんが疲れちゃうから……ね?」

武内P(そう諭すように語りかける白坂さんの視線は私にではなく、私の肩を――私の背後に向けられていた)

武内P(私の後ろに何があるのか。白坂さんの視線に吸い寄せられ、深く考えるでもなく振り向くとそこには――)





浮気者オオオオオォォォ!! オマエニハ、小梅チャンガイルデショウガアアアアアアアアアァァァ!!!

抱ケエッ!!

抱ケッ!!

抱ケーッ!!

抱ケーッ!!

小梅チャント子ヲ産メエエエエエェェェッ!!!





武内P「」

武内P(……長く黒い髪を……振り乱した……白装束の女性たちが……私の肩に手をかけながら……糾弾していました)


 ※特級仮想怨霊――気ぶり婆。自分が尊いと感じたCPをひたすら押す。その邪魔をした者は「ガッ…………ガイアッッッ」になる。
  

小梅「よしよし……怖かったよね。もう大丈夫だから」ナデナデ

武内P「」

小梅「私がいない間……他の女が近づかないように、マーキングしてくれていたみたい……ごめんね、注意しとくから」

武内P「」

小梅「……プロデューサーさん?」

武内P「」

小梅「……」キョロキョロ

武内P「」

小梅「ウフフ」chu

武内P(薄れゆく意識の中で……頬にひんやりとした柔らかな感触がしましたが……果たしてそれは、夢の中の幻なのか……?)





~おしまい~

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今回はpixivのリクエスト機能を利用して、CHeF氏に挿絵を依頼しました。
好きな絵師さんにお金を渡せる上に、ただで絵まで描いてもらえる。
3,000円払えば無料で10連まわせるようなもんですよ。

ところで……今月末のフェスブランで小梅ちゃんが有力候補にあがっていますよね?
そして4月中旬のフェスノワールで、ふみふみが来る可能性もけっこうありますよね?
あの……私……死んでしまうんですか?




それと前回鬼滅のSSを投稿しました。

冨岡義勇「俺はガチホモじゃない」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1612651765

次の機会があれば、縁壱が兄上の巌勝を黒死牟したせいで時透君の無一郎がインフィニティしてしまうお話を書きたいと思います。

これまでのおきてがみ(黒歴史)デース!


【モバマスSS】凛「プロデューサーにセクハラしたい」
【モバマスSS】凛「プロデューサーにセクハラしたい」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1446375146/)

加蓮「CPのプロデューサーってかっこいいよね」凛「」
加蓮「CPのプロデューサーってかっこいいよね」凛「」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1447574640/)

未央「貴方の視線」
未央「貴方の視線」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1448895601/)

楓「私たちも」美嘉「プロデューサーに」小梅「…セクハラしたい」
楓「私たちも」美嘉「プロデューサーに」小梅「…セクハラしたい」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1449474797/)

莉嘉「Pくんってかっこいいよね!」美嘉「」【※武内Pもの】
莉嘉「Pくんってかっこいいよね!」美嘉「」【※武内Pもの】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1454068376/)

武内P「襲われました…」卯月「へそ下辺りが満たされました♪」
武内P「襲われました…」卯月「へそ下辺りが満たされました♪」 - SSまとめ速報
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早苗「CPのプロデューサー君(武内P)ってかっこいいじゃない」楓「どやぁ」
早苗「CPのプロデューサー君(武内P)ってかっこいいじゃない」楓「どやぁ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1458041208/)

凛(五体投地)「お願いだからやらせてください」武内P「」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1461585627

島村卯月の性教育【※武内Pもの】
島村卯月の性教育【※武内Pもの】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1471173660/)

武内P「これは……私の抱き枕?」
武内P「これは……私の抱き枕?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1474714761/)

藍子「CPのプロデューサーさん(武内P)ってかっこいいですね」未央「」
藍子「CPのプロデューサーさん(武内P)ってかっこいいですね」未央「」 - SSまとめ速報
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武内P「女性は誰もがこわ……強いですから」
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幸子「孕まされてお腹がパンパンです♪」武内P「」

武内P「私が童貞ではなかったせいで」

武内P「私の愛が重い?」
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武内P「姉を望んだ末路」
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武内P「桃太郎」
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武内P「ノンケの証明」
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仁奈「ノンケの気持ちになるですよ!」武内P「!?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1605324279

武内P「神崎さんが反抗期になってしまいました……」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1608413995

楓「恋と呼ぶのでしょう」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1611959574

このSSまとめへのコメント

1 :  MilitaryGirl   2022年04月21日 (木) 04:23:00   ID: S:47h4kC

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