モバマス源氏物語 (80)
・このSSは、紫式部の「源氏物語」をベースにした作品です。
・原典とは大幅に内容が違います。また、少しだけ性的な描写もあるのでご注意ください。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1411908026
『桐壺(きりつぼ)』
~CGプロダクション~
社長「今から朝礼を始める。皆集まれ」
ゾロゾロ
社長「今日は皆にお知らせがある。今日から君たちの新しいプロデューサーが入社した。
源氏P君、挨拶を」
源氏P「皆さんはじめまして、源氏Pです。
まだまだ経験の浅い若輩者ですが、一生懸命頑張りますので、どうぞよろしくお願いします!」
一同「「「よろしくおねがいします!」」」
美嘉(おお! すっごいイケメン……!)
莉嘉(カ、カッコイイ!!)
凛(ふーん、この人が私のプロデューサー? すごく良いんじゃないかな?)
まゆ(これは運命を感じてしまいますねぇ)
穂乃香(爽やかで、真面目そうな人だな……)
やあ皆! 俺の名前は源氏P。
実は俺、帝の落胤なんだけど、今はプロデューサーをやっているんだ。
どうしてプロデューサーをやっているかというと……
これは自慢なんだが、俺は幼い頃からよくモテた。
幼稚園、小学校、中学校、高校、大学……そして社会人になってからも。
それこそ毎日告白されたし、下駄箱や机の中にはラブレターがどっさりさ!
しかし、学生時代はそれでよかったんだけど、
社会人になってからはそうもいかなくなってしまった。
職場の同僚の女性に手を出したり、女上司と逢瀬を重ねたり、
取引先の社長令嬢と密会したり……
でもなぜか、いつも女性関係が問題になってどの職場も長続きしない。
そんなある日、何の目的も職も無く町をぶらぶらしていた俺は、
壮年の紳士から声を掛けられたのだ。
曰く、
「君、プロデューサーをやってみないかね?」
~一ヵ月後~
源氏P「みんな聞いてくれ、今度ライブの仕事が入ったぞ!」
凛「へえ、駆け出しの私達にライブの仕事なんて来るんだ。
でも、そんなに大きなライブじゃないんでしょ?」
源氏P「そうだな。○×ホールでのライブで、客席はざっと2000人くらいか」
凛「え、そこそこ大きなホールだね。でも私達、いままでそんな規模のライブなんてやったことないよ。
路上ライブとか、どこぞ町内会の催しものに呼ばれるぐらいだし」
源氏P「あのなぁ、そんなんじゃいつまでたっても前に進めないぞ。
2000人規模のライブをこなしたら、次は4000人。
その次は8000人……と、どんどん挑戦していくべきだ!」
凛「それはそうだけど……」
源氏P「失敗を恐れるな。まだ見ぬ領域を怖がるな。
お前はトップアイドルになるんじゃなかったのか?
お前のやる気は、その程度のものだったのか?」
凛「……プロデューサー」
源氏P「なんだ?」
凛「ありがとう! いまのプロデューサーの言葉で火がついたよ!」
源氏P「さすがは俺の見込んだ凛だ! 安心しろ。
どんなことがあっても俺はお前の味方だし、
何があっても俺はお前をトップアイドルに導いてみせる!」
凛「プロデューサー」ギュッ
源氏P「おー、よしよし。凛は甘えん坊だなぁ。
俺なんかで良ければ、いつでも甘えてくれ!」ギュウウ
美嘉「新しいプロデューサー、この業界の経験皆無だって言ってたけど、
入社一ヶ月でいきなり仕事増えたね」
莉嘉「うん! P君の仕事は、どれも楽しいよ!」
まゆ「さすがPさん。まゆのために、こんなに大きなライブの仕事を取ってきてくれるなんて……」
穂乃香「えっと、まゆちゃん。今回のライブは、まゆちゃんだけのものじゃないからね?」
穂乃香「それにしても源氏Pさんは、私達一人ひとりに合った仕事を用意してくれているみたい……
この事務所、そんなに大きくないし知名度も低いのに……
どうして仕事が選べるのかな?」
源氏P(アイドルたちには口が裂けても言えないなぁ……)
源氏P(俺の“スペシャルテクニック”で、取引先の男も女もヒイヒイ言わせてるなんて言えない……)
源氏P(だが、その忍耐もそろそろ終わる。
この事務所のアイドル達は、俺に好意を持ち始めてるし)
源氏P(ふふふ……アイドルとしてだけではなく、オンナとしても育ててやるぜ!
目指すはハーレムだ! グヘヘ)
~数日後~
源氏P「ちひろさん、すこし良いですか?」
ちひろ「あら源氏Pさん。どうしました?」
源氏P「初歩的なことなんですけど、実家が遠方にあるアイドル達って
どうやってこの事務所まで来てるんですか?」
ちひろ「え?」
源氏P「俺ここに来てから、アイドル達の送迎とかしたこと無いなぁと思いまして。
朝は時間通りにみんな来るし、帰るときもみんな事務所から自分達で帰って行きますし」
ちひろ「ああ、そういうことですか。
この事務所は、基本的に女子寮に住んでもらうことになっているんですよ」
源氏P「女子寮?」
ちひろ「はい。その窓から見えますよ……
ほら、あの少し大きめのアパートみたいな建物ありますよね?」
源氏P「あれが女子寮なんですか」
ちひろ「実家が遠方のアイドルはもちろん、凛ちゃんみたいに都内に住んでいる人も
原則は女子寮に住んでもらうことにしています」
源氏P「あれ、凛も女子寮に住んでいるんですか。それはどうして」
ちひろ「それは社長の方針です。アイドルたるもの、親に頼れば甘えが出てくる、と。
それに、いくら家が近いといっても通勤途中にトラブルに巻き込まれないように、
という配慮です」
源氏P(おいおい、この事務所そんなに儲かってないだろ。どこからそんな金出てるんだ?)
源氏P「そういうことだったんですか。そこまで社長がおっしゃるということは、
女子寮の警備は万全なんですね?」
ちひろ「ええ。オートロックですし、朝~夕方までとは言え管理人さんもいますしね」
源氏P(なるほどね……)
源氏P「ところでちひろさん。あなたに一つお願いがあるんですが」
ちひろ「なんですか?」
源氏P「女子寮のマスターキー、ありますよね?」
ちひろ「な! 源氏Pさん。駄目です。絶対に渡しません!」
源氏P「え~」
ちひろ「え~、じゃありません! 何を考えているんですか!?
アイドルに手は出さないでくださいよ!」
源氏P「……ならば仕方ない。これならどうです?」
ピカッ
ちひろ「それは……レアメダル!」
源氏P「良くご存知で。このメダルがあれば、いくらでもアパート(女子寮)を建てることができ、
なぜか事務所の規模(所属人数)も大きくなるという……
これにどれだけの価値があるのか、ちひろさんならご存知ですよね」
ちひろ「ゴクリ」
源氏P「このレアメダルのほかにも、この業界内で流通する“コイン”もあるんだけどな~」チラッ
ちひろ「むむむ……」
ちひろ「もう、しかたありませんね……」
源氏P(計画通り!!)
『空蝉(うつせみ)』
~数ヵ月後~
源氏P(ふはははは! ファンの皆には悪いけど、
この事務所のアイドルたちはもう俺の掌中に落ちているのさ!)
源氏P(考えてもみたまえ! 顔が良くて、御曹司で、
仕事もできる俺がもてないはずがないだろう?)
源氏P(そこで俺は、ちひろさんから貰ったマスターキーをフル活用して
夜な夜なアイドルたちと愉しんでいるってわけだ。そう、こんな風に……)
~女子寮~
源氏P「まったく、廊下の電球が切れてるじゃないか。
後で管理人に言っておかないと……え~っと、ここが美嘉の部屋だよな?
暗くてよく分からないけど」
源氏P「まあ良い。事前に連絡せずに来たけど、サプライズも込めて寝込みを襲うとするか。
ふひひ☆」
ガチャ
源氏P「失礼しま~す」ボソッ
源氏P「おや真っ暗だ、もう寝たのか。まあいい……
美嘉? 君の愛しのプロデューサーがやってきましたよ~」
「う、ううん……」
ゴソゴソ
源氏P「どうやらぐっすり眠っているようだな……
やっぱり女子高生くらいが一番良いよな。
子供でもなく、かといって大人にもなりきれていないところがなんとも言えん!」
ガチャ
源氏P「まずい! だれか入ってきた!」
カチッ パッ
源氏P「うわっ、まぶしっ! いきなり電気つけるなよ……」
美嘉「」ゴゴゴゴゴ
源氏P「あれ? なんで美嘉がいるんだ?」
莉嘉「う~ん……なにぃ?」
源氏P「あれ、ベッドにいるのが莉嘉? もしかして俺……」
美嘉「隣からゴソゴソ音がするから、何事だと思って見にきたけど……」
美嘉「ねえプロデューサー。アタシと莉嘉を間違えるなんて、どういうつもり!?」
源氏P(えー、怒るとこそこなの? って、そうじゃなくて)
源氏P「ち、ちがうんだ美嘉。俺はちゃんとおまえのところに夜這いに……」
莉嘉「ねえP君。今夜アタシの部屋に来てくれたのは、ウソだったの?」
源氏P「へ?」
莉嘉「アタシよりお姉ちゃんの方が良いんだ!」
源氏P「そんなこと無いぞ。俺は莉嘉のことが……」
美嘉「なるほどね。プロデューサーは、“ロリコン”だったんだ」
源氏P「え、あ、ちょっと……」
美嘉「この女たらし!」ドガッ
莉嘉「たらし!」ドガッ
源氏P「ひでぶ!」
源氏P(……とまあこんな風に、上手くいかない日もあるのだ)
『夕顔(ゆうがお)』
凛「すやすや……」
源氏P「まったく、可愛い寝顔してやがるぜ。
ま、俺のテクにかかれば十代の小娘なんてイチコロだけどな!
それにしても、今日だけで何回やったのか」
「Pさん……」
源氏P「ん、寝言かな? 可愛い奴だな。夢にまで俺のことを見てるのか」
「Pさん……」
源氏P「あれ? 凛の寝言じゃないな。声が違うし」
「Pさん……」
源氏P「おいおい、どこから声が聞こえてくるんだよ! 幽霊とかシャレにならんぞ?」
まゆ『Pさぁん。どうして他の女と寝るんですか?』
源氏P「ま、まゆ! どうしてここに!?」
まゆ『私はPさんのいるところ、どこにでも行きますよぉ。
たとえ地の果て海の果て、他の女の部屋でさえも……』
源氏P「ひい! すまん! つい、でき心だったんだ! 許してくれ!」
まゆ『本当に反省していますか?』
源氏P「も、もちろん反省しているとも!
二度と女子寮には侵入しないって誓うから……
いや、お前の部屋以外には入らないって約束するから」
まゆ『そこまでおっしゃるなら、今回だけ許してあげましょう……』スウ
源氏P「」ガタガタ ブルブル
源氏P「……」
源氏P「……消えた、のか?」
源氏P「俺の言葉を真に受けるなんて、やっぱり女子高生なんてまだ子供だな!
身近にこんなに美味しい果実があるのに、それを手放すわけないだろう。
はははは!」
凛「う~ん、むにゃむにゃ……プロデューサー?」
源氏P「おお、すまなかった。起きたか? 凛」
凛「う、うん……なんか騒がしかったけど、何があったの?」
源氏P「いや、なんでもないさ。強いて言うなら、
凛の寝顔が可愛すぎて、胸のドキドキが収まらなかったことかな?」
凛「クサイ台詞。プロデューサーったら……」
源氏P「凛……」
まゆ『二度としないって言った側から……!』ゴゴゴゴゴ
源氏P「ま、まゆ! もう消えたんじゃなかったのか!?」
凛「? プロデューサー。どうして部屋の隅に話かけてるの?」
源氏P「お、おい、凛には見えないのか?
部屋の隅にまゆがいるじゃないか。鬼の形相をした」
まゆ『誰が鬼ですって……?』
凛「何にも見えないよ?」
まゆ『Pさんには一度、私の“教育”を受けていただく必要があるみたいですねぇ』
源氏P「あわわ」
ドサッ ブクブクブク
凛「プロデューサー! しっかりして! 目を覚まして!」
『末摘花(すえつむはな)』
源氏P「前回と前々回はいろいろ邪魔が入ったけど、穂乃香なら大丈夫だろ……」
源氏P「ふふふ。今回も事前連絡無しで、サプライズ突撃しちゃいま~す!」
ガチャ
源氏P「部屋の中真っ暗だな。ま、この時間は真面目な穂乃香なら寝てるだろ。
明日も仕事あるし」
源氏P「ベッドが盛り上がっている。寝てるな、これは。
やっぱり夜這いをするときは、部屋の電気をつけるなんて無粋なことはしちゃだめだぜ!」
源氏P「よ~し。ベッドに侵入だ~!」
ゴソゴソ
「……ぴにゃ?」
~次の日~
凛「おはようございます……って、あれ」
源氏P「」ドヨ~ン
凛「プロデューサー、どうしたの? 今日は元気無いね」
源氏P「昨日、嫌な体験をしたんだ……」
凛「な、何があったの?」
源氏P「い……いや……体験したというよりは、まったく理解を超えていたのだが……
あ……ありのまま、昨夜起こった事を話すぜ!」
源氏P「俺は綾瀬穂乃香を抱いたと思ったら、ぴにゃこら太だった」
凛「!」
源氏P「な……何を言っているのかわからねーと思うが、
俺も何を抱いたのかわからなかった……」
源氏P「頭がどうにかなりそうだった……
獣姦だとか異種姦だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」
凛「プロデューサー……」
源氏P「なんだ?」
凛「プロデューサーは最近忙しすぎて、
現実と妄想の区別がつかなくなっているんだよ。少し休みなよ」
源氏P「なあ凛。そんな腐ったものを見るような目で、俺を見ないでくれ」
ガチャ
穂乃香「おはようございます」
源氏P「ほ、穂乃香!」
穂乃香「あれ、源氏Pさん。顔色悪いですよ。どうしたんですか?」
源氏P「どうしたも何もあるか! 昨日のあれは何だったんだ!?」
穂乃香「あれ、とは?」
源氏P「昨日俺は、お前の部屋に夜這いしたんだ」
凛(それって正々堂々と言うものじゃないよね)
源氏P「もちろん、お前を抱くためだ!
なのに、ベッドには正体不明の化け物がいた。
いや、正体は知ってるけど」
穂乃香「すみません。それって何時頃のことですか?」
源氏P「えっと、1時過ぎぐらいだったと思う」
穂乃香「ああ、その時間はコンビニに行ってたんですよ。
どうりで、部屋の中に源氏Pさんの匂いが残ってたんですね」
凛(あ~、穂乃香もプロデューサーの匂いを覚えちゃったか~)
源氏P「穂乃香はあの部屋で、一体何を飼ってるんだ?」
穂乃香「何って、ぴにゃこら太ですけど……」
源氏P「そもそも、ぴにゃこら太っていうのは、何なんだ?」
穂乃香「失礼ですね。いくら源氏Pさんでも怒りますよ。
ぴにゃこら太は、ぴにゃこら太じゃないですか!」プンスカ
源氏P「だめだ……穂乃香の部屋は、俺の理解が及ばない異空間になっているみたいだ……」
『若紫(わかむらさき)』
~事務所~
凛「……何言ってるの? プロデューサーは、私のものだよ?」
美嘉「いいや、違うね! プロデューサーはアタシのもの!」
莉嘉「お姉ちゃんより、リカの方が良いに決まってるでしょ? P君はロリコンなんだよ?」
まゆ「黙って聞いていれば、人のものを勝手に……
Pさんの赤い糸は、まゆとつながっているんです!」
穂乃香(源氏Pさんは私のものって確定しているんだけど、
皆につらい現実を見せちゃ駄目だよね。ここは黙っておこう……)
ギャーギャー ヤイヤイ
源氏P「はあ、疲れる……」
ちひろ「何を言ってるんですか。全部あなたが招いたことですよ」
源氏P「それはそうなんだけど……しかたない、俺が仲裁してこよう」
ちひろ「そうですよ。
火をつけたのは貴方なんですから、火消しぐらい自分でやってくださいよ」
源氏P「よ、よ~し!」
源氏P「皆、俺のために争わないでくれ!」
シーン
源氏P「皆は俺のものだし、俺は皆のものだ。だから仲良くしよう!
同じ事務所で働く、仲間じゃないか!」
一同「「「プロデューサーは黙ってて!」」」
源氏P「はい……すみません……」
ちひろ「うわ~へたれ~」
源氏P「……」プルプル
ちひろ(おや、源氏Pさんの様子が)
源氏P「おかしい! 絶対におかしい!」
ちひろ「いきなりなんですか」
源氏P「今の社会の風潮や法律が間違っているんだ!」
ちひろ(いきなり語り始めた……)
源氏P「そもそも、俺みたいにもてるし女好きの奴は、
一夫一妻制度の中では生きられないんだ!
複数の女を同時に愛しても良いじゃないか。
複数の女と結婚しても良いじゃないか」
源氏P「この国は少子化が進んでいるんだろう? だったら、生めや増やせで何が悪い!
一夫一妻なんて制度を作った奴は、きっと女にもてないダサい男なんだ。
自分がもてないからこんな法律を作るなんて……
職権濫用なんてずるいぞ!」
ちひろ「ついに頭がおかしくなってしまったんですね。
ドリンクを精力剤として使うなと普段からあれほど言ってたのに……」
源氏P「もうこの事務所いるのやだ……ちひろさん、ちょっと外に出てきます」
ちひろ「え!? この修羅場を放ったらかしにして、自分は外に逃げるんですか?」
源氏P「留守お願いします!」
ちひろ「あ、ちょっと!」
~街中~
源氏P「やれやれ、もてるってのはつらいもんだぜ」
「あれ、ここどこだろう?」
源氏P(ん、迷子かな)
源氏P「君、どうしたの……って」
千枝「ええっと、お母さんやお父さんとはぐれちゃったんです……」
源氏P(そのとき、俺の脳内に電流が走った!)
源氏P(何て可愛い女の子なんだ! うちの事務所にはいないタイプじゃないか。
ぜひスカウトしたい!)
源氏P「わかった。お兄さんが一緒に探してあげよう」
千枝「本当ですか?」
源氏P「大丈夫、俺にまかせておけ!」イケメンスマイル
千枝(か、格好良くて、優しそうな人だな……)ポッ
~数日後~
源氏P「というわけで、今日からこの事務所で働くことになった、佐々木千枝ちゃんだ。
みんな、先輩としても年長者としてもよろしく頼むよ」
千枝「佐々木千枝です。わからないことばかりで
皆さんの足を引っ張ってしまうこともあると思いますが、
早く一人前のアイドルになるために努力しますので、ご指導よろしくお願いします」
パチパチパチパチ
美嘉「ところで千枝ちゃんはさ、どうしてアイドルになろうと思ったの?」
千枝「それは、源氏Pさんに“俺には君が必要なんだ”って言われて……」
ピキッ
ちひろ(事務所の空気が、一気に凍てついた!)
源氏P(俺、そんなこと一言も……)
千枝「他にも、“アイドルになるからには、俺の色に染めてやる”って……」
ピキピキッ
源氏P(あれー? そんな台詞言ったかなー?)
凛「プロデューサー、どういうこと?」
まゆ「まゆという者がいながら、これはどういうことですかねぇ……」
源氏P「こ、これはだな、深いわけが……」
千枝「そうですよね。源氏Pさんと千枝は、深い(一緒に両親を探す)仲ですよね」
美嘉「やっぱりプロデューサーはロリコン……!」
莉嘉「それもアタシと違うタイプの」
穂乃香「ぴにゃこら太との関係は、遊びだったんですか!?」
ちひろ(この人、一体どれだけ火薬を持ち込めば気が済むのかしら?)
~数日後~
千枝「源氏Pさん!」
源氏P「どうした、千枝」
千枝「どーん☆」
ボフッ
源氏P「おっと」
千枝「お仕事中すみません。でも、前から源氏Pさんの膝の上に座ってみたいなって思ってたんです」
源氏P「そうかそうか」ナデナデ
千枝「えへへ」
源氏P(くっそ、可愛い!)
千枝「千枝、思うんです。このまま源氏Pさんにプロデュースされていると、駄目かもしれないって」
源氏P「どういうことだ!? 何か不満があるのか?」
千枝「お、落ち着いて下さい。そういうことじゃないんです……ただ」
源氏P「ただ?」
千枝「このまま源氏Pさんにプロデュースされてると、
“イケナイ女の子”になっちゃうんじゃないかと思って」ウルウル
源氏P(潤んだ目で、上目遣いやばい!)
源氏P(むほほーっ! 千枝をイケナイ女の子にしちゃいた~い!)グネグネ
ちひろ「小学生を膝に乗せて悶絶するなんて……
そろそろ警察に通報しようかな?」
『賢木(さかき)』
「……最近CGプロダクションって事務所が、随分と幅を利かせているみたいじゃねえか。
この前も、うちの事務所の仕事を向こうに持って行かれたしな」
「まあ、私にまかせてくださいよ」
「なんだ? 何か上手い術があるのか?」
「躍進を続けているCGプロダクションにも、一つ弱点があります」
「もったいぶらずに話せ」
「まあまあ、そんなに急かさないでくださいよ……
良いですか、実はあのプロダクションの源氏Pって奴は、事務所のアイドル達とできているんですよ」
「おい、本当か?」
「間違いありません。私は前から、CGプロの女子寮の前で張り込みしてたんですから」
「あいつら、自分達が芸能人であるって自覚がないのか、女子寮の前で抱き合ったりキスしたり」
「おいおい、わざわざ外でする必要ねえだろ。部屋の中でしろよな!」
(突っ込むとこそこじゃないでしょ……)
「と、とにかく、写真も何枚か撮っているんで、これを使えば……」
「ふははは! でかした! これで奴らもお終いよ!」
『須磨(すま)』
~CGプロダクション~
源氏P「おはようございます」
社長「おお、源氏P君おはよう」
源氏P「おはようございます。社長」
社長「すまないが、すこし来てくれないか?」
源氏P「は、はい」
社長「源氏P君、これは一体何だね?」
バサッ
源氏P「こ、これは!」
社長「これはどういうことかね?
この写真に写っているのは、君とうちのアイドル達に見えるのだが」
源氏P「この写真はどこから?」
社長「○×プロダクションのプロデューサーだ」
源氏P「それで、向こうは何と言ってきているのですか?」
社長「君が取ってきたライブの仕事があるだろう? それを寄越せと」
源氏P「そんな! あれはうちからすれば大きな仕事です。それを寄越せだなんて!」
社長「でなければ、この写真をネット上にばら撒くと」
源氏P「なんてことだ……全部、俺の責任です。申し訳ございません!」
社長「謝れば済むと思っているのかね? 今回だけではすまないだろう。
これはこの事務所の死活問題だ!
こんな写真を握られたということは、今後うちの事務所は永久に○×プロの下風に立たねばならん!」
源氏P「……」
社長「わかっているね?」
源氏P「はい。辞職します……」
社長「君は仕事も良く出来て、非常に優秀な人材だと思ったのだが……
まあ、こうなっては仕方ないな」
源氏P「失礼します……短い間でしたが、いままでお世話になりました」
凛「ね、ねえプロデューサー。本当に辞めるの?」
美嘉「そうだよ、まだ何か方法があるんじゃないの?」
莉嘉「P君と離れるなんて嫌だよ~」
まゆ「源氏Pさんはまゆの運命の人なんです。こんなところでお別れなんて、あんまりです!」
穂乃香「ぴにゃこら太が原因だったのかな……」
千枝「千枝は、どうすれば……」
源氏P「皆すまない。全て俺の責任だ。
こんなことで、君たちの人生を台無しにしたくはないんだ。わかってくれ」
凛「プロデューサー……」
源氏P「凛、お前は……いや、ここにいるみんなはトップアイドルになれる資質がある。
今回の事件で挫けてはいけない。そして、いつまでも俺のことを引きずってはだめだ!」
一同「……」
源氏P「皆はいつまでも、俺の誇りだ!」
凛「プロデューサー。私、プロデューサーの分まで頑張るよ」
美嘉「いつかきっと、トップアイドルになってみせるから!」
莉嘉「もちろん、アタシも一緒だよ!」
まゆ「離れていても、思いは届きます」
穂乃香「源氏Pさんが教えてくれたこと、いつまでも忘れません!」
千枝「あと5年経ったら、迎えに来てくださいね!」
ワーワーワーワー
ちひろ(……)
ちひろ(いやいやいやいや)
ちひろ(あれ? どうして良い話みたいになってるの?
もしかして、私の頭がおかしいだけ?)
ちひろ(っていうか皆、そのプロデューサーは
皆の仕事とか将来を台無しにした人なんだよ? わかってる?)
源氏P「じゃあな、皆! また会う日まで!」グッ!
ちひろ(しかも源氏Pさん、ガッツポーズしてる……
懲戒処分みたいなものだったのに……
それにしても、あの自信はどこから湧いてくるのかなぁ?)
『明石(あかし)』
~数日後~
源氏P「……とは言うものの、次は何の仕事をしようかな?
そこらの女を捕まえて、ヒモ生活ってのも悪くないけど……」
源氏P「何だ? このポスター……『理由(わけ)あって、アイドル』……
ふ~ん、最近は男性アイドルも流行っているのか」
源氏P「へえ、いろんな人がいるんだなぁ。
前職が弁護士、医者、パイロット……年齢、学歴、職歴一切不問か」
源氏P「……ちょっと待てよ。これはいけるかもしれない!」
源氏P「プロデューサーとして失敗したなら、今度はアイドルになればいいんだ!
どうして俺は今まで気づかなかったんだろう?」
源氏P「よーし、早速応募だ! ……っと、履歴書買わなきゃ」
【履歴書】
氏名:光 源氏(ヒカル ゲンジ)
○月×日生(○○才)星座:○○座
血液型:×型
利き手:右利き
出身地:京
趣味:歌を詠むこと。
特技:女性を口説くこと。
座右の銘:
みをつくし 恋ふるしるしに ここまでも めぐり逢ひける 縁は深しな
未来に向けた決意コメント:
世界中の女達を幸せにしたい……かな。……え、ダメ? でも、素直な気持ちですよ?
……正直、こうなりたいって目標は特にないんです。
頭の中将(とうのちゅうじょう)達とは女漁りを続けていきたいんですが。
~数ヵ月後・とあるライブにて~
「それではご紹介しましょう! 期待の新星“光源氏”です!」
キャーキャー ヒカルサーン コッチムイテー
源氏「みなさん、ようこそお越し下さいました。
今日は皆さんのために、精一杯歌って踊っていきたいと思います!」
源氏「大和魂を込めて歌います。聞いて下さい。曲は、
『遥かなる王朝恋物語(ネバー・エンディング・ラヴ・ストーリー)』……」
その後、光源氏は持ち前のルックスと歌唱力と教養から、一躍人気アイドルとなった。
しかし女性関係のトラブルは絶えず、それが後に彼の身を滅ぼしていくことになるだが……
それはまた、別のお話。
おわり
・読んで下さった方、ありがとうございました。
・源氏物語は誰もがその名を知っている古典であるにも関わらず、読破した人が殆どいないという謎の小説です。
このSSも所謂、“須磨源氏”ですね。
・興味と根気と時間のある人は是非、全54巻、登場人物500人以上、
物語内時間70年の「源氏物語」に挑戦してみてください。
以下は作者の過去作です。興味のある方はどうぞ。
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