モバマス枕草子 (66)
・このSSは、清少納言(せい しょうなごん)の「枕草子」をベースにしています。
・原典を全て網羅しているわけではありません。一部抜粋となります。
・作者独自の解釈、脚色が含まれます。ご了承下さい。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1404649529
清少納言(浅野風香)「ふぅ……少し疲れちゃったな……」
風香「宮中では、皆さんに気を遣うことが多いから、肩が凝っちゃう」
風香「そうだ、お仕事の合間に少しずつ何か書いてみよう!
息抜きになるだろうし……
あ、そうだ、誰かに読まれないように、隠しておかないと……」
『春は、曙』
春は、新春イベント・バレンタイン・ひな祭り。
年末年始とつながる新春イベントでは、主に茄子さんが活躍します。
これはもう、風物詩と言っても良いでしょう。
ガチャを引く時は、茄子さんをリーダーに設定したり、
茄子さんの肩書きを、装備したりするプロデューサーさんもいるそうです。
まさに幸運の女神ですね。
バレンタインは、はずすことのできないイベントです。
私の所属するプロダクションでは、アイドルがチョコを手作りし、
料理番組やファンとの交流会で披露する、という方式を採っています。
料理の不得意な方もいますが、Pさんの助力もあり、なんとかなっているようです。
以前のひな祭りでは、ひな祭りだから比奈さんを、ということがありました。
随分安直だと思ったものですが、
拓海さんの存在によって独創的(?)なイベントに仕上がっています。
見た目は雛人形でも、中身は鬼だ、とか……
“仏恥義理”に熱かったりするそうです……
夏は、ジューンブライド・水着。
「アイドルが結婚するなんて……」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、
その一方で「アイドルの花嫁衣裳が見たい!」という願望が湧き出てしまうのは、
しかたないことです。
アイドルのほうもノリノリの方が多いようで、
思わず「待てますか?」なんて口走ってしまう人もいるようですね。
水着は、アイドルの鉄板ネタでしょう。
水着抜きにして、アイドルは語れないと言っても過言ではありません。
ビーチバレーに興じてみたり、夕涼みに大人びた表情を浮かべてみたり……
そうそう、ビキニだけではなく、スクール水着に挑戦する方もいるようです。
秋はお月見。
この季節では、ウサギを模した衣装のアイドルが、多く登場します。
特にお月見は、菜々さんの独壇場ですね。
「永遠の17歳」というプロフィールに始まり、菜々さんは不思議なことだらけです。
私としては、ウサミン星に一度行ってみたいのですが……
電車で一時間ほどで行けるそうですよ。
青春18きっぷは使えるでしょうか?
冬はクリスマスイベント。
新春で茄子さんが活躍するのに対し、クリスマスではイヴさんが活躍します。
イヴさんはサンタクロースらしいのですが、クリスマス以外でも登場することがあり、
イヴさんの担当プロデューサーさんからすれば、気が抜けない存在なのかもしれません。
雪景色やクリスマスの電飾は、アイドルの背景としてはこれ以上無いものでしょう。
しかし世間では、このイベントを呪う男性もいらっしゃるようです……
『七日、雪間の若菜摘み』
いつもの朝と同じはずなのに、元旦の朝は何故、心が浮き立つのでしょうか?
今年は、事務所の皆さんと初詣に行きましたが、振袖姿という気合の入った方もいました。
普段見れない格好ですので、なんだか新鮮です。
また、年少組の娘達が、お年玉をいくらもらったかということで自慢合戦をしている姿は、
すごく微笑ましいです。
『村上の御時に、宣燿殿の女御と聞こえけるは』
女性の教養として重要なものは、
一、習字
二、楽器
三、名文・名歌の暗記
の三つだそうです。
そういえばこの前、千秋さんとゆかりちゃんの二人が、
クラシック音楽早押しクイズをしていました。
バロックから古典派、ロマン派、果てはR.シュトラウスやリストなどの交響詩にいたるまで、
あらゆるジャンルで熾烈な戦いを繰り広げていたものです。
特に驚くべきは、その曲を演奏している楽団や、指揮者まで当てていたことでしょうか。
司会を務めていた晶葉ちゃんが、一番疲れていたように思います。
『生い先なく、まめやかに』
男尊女卑の傾向が強い、この日本の社会においても、
やはり女性は胸を張って生きるべきでしょう。
そのためには、教養や各種作法を学ぶことが良いと思います。
私の身の回りで言えば、桃華ちゃんでしょうか。
礼儀作法や立ち振る舞いに隙が無く、しかも私より年下のはずなのに、
なぜか母性に溢れています。
更にもう一人挙げるならば、やはりヘレンさんですね。
世界レベルのオーラに圧倒されて、礼儀作法や一般常識なんて関係なくなってしまいそうです。
私も、今度のライブの挨拶で「ヘーイ!」とか……
い、いや、やめておきましょう。
さすがに調子に乗りすぎましたね……
『すさまじきもの』
期待はずれなもの。
・SRを引いたと思ったら、お目当てのアイドルではなかったこと。
・溜め込んでいたSR○%チケットを使ったのに、全くSRが出ないこと。
・CD第○弾と発表された時、自分の好きなアイドルがCDデビューできなかったこと。
特に、比較的初期からいるアイドルであれば尚更。
・それ以前に、自分の好きなアイドルがなかなか再登場しないこと。
『にくきもの』
癪にさわるもの。
・新コストアイドルの登場により、今までの最高コストアイドルの価値が下落すること。
・フリートレードで、文字を必要最小限しか打たずに検索したら、
目的ではないアイドルが表示されてしまったこと。
・チーム、またはプロダクション対抗イベントで、自分以外誰も走ってくれないこと。
・ちひろさんに踊らされているとわかっているのに、ガチャガチャしてしまうこと。
『心ときめきするもの』
胸がドキドキすること。
・新ガチャ・イベントで、担当アイドルが登場したとき。
・いつもと違う、ガチャ演出。
・お目当てのアイドルを入手し、育成の途中で新しい台詞を見つけていくこと。
『過ぎしに方恋しきもの』
やるせなくなること。
・携帯決済限度額まで課金したのに、お目当てのアイドルを引けなかったこと。
・昔、必死の思いで入手したアイドルが、今ではバクメンにすら入れなくなったこと。
しかし、思い入れがあるので、編入しようか迷うこと。
・移籍、またはレッスンに使用するアイドルを間違えたとき。
『いとつややかなる板の端近う』
最近……いえ、今に始まったことではないのですが、
志乃さんは仕事終わりに(仕事中もですが)、よく事務所でお酒を飲んでいます。
仕事場にアルコールを持ち込むのはどうかと思うのですが、
志乃さんの飄々とした態度の前では、誰も何も言えません。
これはある日、Pさんが深夜まで残業していたときのことです。
事務所には、Pさんと志乃さんしか残っておらず、Pさんが仕事を片付けて帰ろうとしたのに、
志乃さんのお酒の相手をさせられてしまう、ということがありました。
二人とも事務所に泊まったそうですが、翌朝ちひろさんが出勤したとき、
二人ともあられもない姿だったそうです。
Pさんは必死に弁解していましたが、まゆちゃんは聞く耳を持っていません。
しかも志乃さんが、
「昨日はお楽しみだったわね(宴会的な意味で)」
と、火に油を注ぐ発言をしたため、Pさんはしばらくの間、
他のアイドルたちから白い眼で見られていました。
『木の花は、濃いも薄いも、紅梅』
アイドルには、様々な個性があります。
可愛い・美人・清楚・ギャル・スポーツタイプ……
しかし、ある特定の路線を走り続けるアイドルもいれば、
イベント限定などで路線変更するアイドルもいます。
Pさんに言わせれば
「ギャップ萌え」
というものなんだとか。
アイドルとは、奥の深いものですね。
『鳥は、異所のものなれど』
先ほど、アイドルの個性についての話をしましたが、
年少組の子達にも、いろんなタイプがあるようです。
年相応の娘・すこしませている娘・元気な娘・物静かな娘……
とあるイベントでは、上位報酬として年少の娘ばかり登場します。
この国の未来が心配ですね。
あれ? そういえば、Pさんの年少組の娘達を見る目が、最近おかしいような……
『七月ばかりに』
夏の暑い日に、吹き込む涼風に身を委ねながら、お昼寝。
これ以上の夏のすごし方があるでしょうか?
ですが、いくら暑いからと言って、Tシャツ一枚で寝るのはどうかと思います。
いいえ、風邪を引いてしまうということではありません。
変な夢を見てうなされてしまい、ご家族の方がおかしな誤解をするかもしれませんから。
『にげなきもの』
似合わないもの。
・礼子さんが、フリルとリボンたっぷりの衣装を……
拡大版にあったはずですが……す、すみません、私の勘違いのようです。
『河は』
川は、なんといっても飛鳥川(あすかがわ)でしょう。
『世の中は 何か常なる 飛鳥川 昨日の淵ぞ 今日は瀬になる』
(昨日、川底になっていたところが、今日は川べりになっている。
同じように、この世に永遠に存在し続けるものは無い)
私は、飛鳥川を実際に見たことはありませんが、この古歌で詠まれているように、
飛鳥川は人生の無常の例えに用いられます。
他には、大井川、音無川、七瀬川、など、どんな由来があるのでしょうか?
他には、耳敏川(みみとがわ)。
耳が敏いとは、何を利口ぶって聞いたのだろうと思うと、なんだか可笑しくなります。
名取川(なとりがわ)。どんな名前を取ったのでしょう?
天の河原(あまのかわら)は、在原業平(ありわらの なりひら)が、
織姫に宿を借りようという意味で歌に詠んだということも、おもしろいです。
『狩り暮らし たなばたつめに 宿からむ 天の河原に われは来にけり』
(一日中狩りをして、日が暮れてしまった。
ふと気が付くと、私は天の川という場所に来てしまったようだ)
『人はなほ、暁のありさまこそ』
男性のセンスの良さは、女性との逢瀬の後の、別れ際にあるようです。
“後朝の別れ”というものですね。
【理想】
明け方の別れ際に、女性に急き立てられてしぶしぶと起きる姿は、
もっと一緒にいたいのだろうなと思わせる。
さらに、衣服を着込むときに、夕べの甘い記憶を女性の耳元で囁くのは、ポイントが高い。
【現実】
目が覚めたら、寝坊してしまったことに気づく。
急いで服を着ようとするのだが、
昨日枕元に置いてあったはずの小物(メガネ・携帯など)が散らばってしまい、あたふたと探しまくる。
そして、夕べの甘い記憶のことなんてお構いなしに、そそくさと出て行く。
あ、あの、これは私の実体験ではありません……
これはたまたま書店で目に留まった、恋愛の手引書に書いてあっただけで。
わ、私がどうしてそんな本を読んでいたか、なんて詮索しないでください!
『ありがたきもの』
滅多にないこと。
・メダルチャンスの一発目で、メダルアイドルが当たること。
・希望品が、鍵付きクローゼットのフリートレード。
数百~数千単位の取引であれば、なおさら。
・杏さんがやる気をだすこと。
・美羽ちゃんのダジャレが受けること。
『ただここもとに』
ある日、私が事務所で休憩していると、仁美さんからこんな質問をされました。
「白居易(はく きょい)の詩で、『蘭省の花の時、錦帳の下』の下の句はなんだっけ?」
私は答えを知っていました。『廬山の雨の夜、草庵の中』です。
ですが、私は意地悪をしたくなり、火鉢の炭で
「草の庵を誰か尋ねむ」
と書いてあげました。
しばらくの間、仁美さんは考え込んでいましたが、
「そういうことか!」と、私の答えの意味を察してくれました。
ですがその後、仁美さんが事あるごとに
「あばら家の少納言」
と呼んでくるようになったのは、少し辟易します。
※白居易の詩・解説
『蘭省の花の時、錦帳の下』
→あなた方が、宮中で派手な暮らしをしている時。
『廬山の雨の夜、草庵の中』
→私は、山中の庵で暮らしています。
という意味。
昔は、女性が漢字を使用することは小賢しく思われてしまうため、
清少納言はそれを誤魔化すために、火鉢の炭で返事を書いた。
『無名といふ琵琶の御琴を』
ある日、李衣菜ちゃんがギターの練習をしていたので、好奇心が湧き、
すこしギターを触らせてもらいました。
私が、
「ギターって、それぞれに名前とか付いているものなんですか?
それとも自分で名づけるものなんですか?」
と聞くと、李衣菜さんは
「な、名前なんて無いよ(タブン)。必要ない!
し、強いて言うなら、無名であることが名前かな?(シラナイケド)」
と、格好良く説明してくれたので、ロッカーとはかくあるべきなのかと、
感心してしまいました。
その後、蘭子ちゃんに
「いつも、スケッチブックに何を書いてるの?」
と聞くと、
「我がグリモワールに触れるでない!」
(見ちゃだめ!)
と怒られてしまいました。
ですが、飛鳥ちゃんがやってきて、
「それは『グリモワール』じゃなくて、『ルルイエ異本』だろう?」
と言ったので、二人の言い合いが始まってしまいました。
何のことだか私には理解できませんでしたが、なにやらSAN値が下がりそうです。
『かたはらいたきもの』
はらはらするもの
・イベント最終日における、他のプロデューサーさんの追い上げ。
・巴ちゃんが、ありすちゃんの苺パスタを食べようとしているところに、
偶然遭遇してしまったとき。
・雫さんと765プロの如月千早さんが、同じお仕事で共演しているとき。
『あさましきもの』
呆然としてしまうこと。
・貯め込んだチケットを投入しても、SR一つ出なかったとき。
・フェスのとき、何度仕掛けても弾かれてしまい、全く歯が立たなかったとき。
・イベント限定アイドルが、ぎりぎりのところで二枚取りできなかったとき。
『絵に描き劣りするもの』
絵に描くと、つまらなくなるもの。
・ナデシコ
・ショウブ
・サクラ
・物語中で、すばらしいと絶賛されている男女の姿かたち。
『描きまさりするもの』
絵に描くと、実物より美しく見えるもの。
・松の木
・秋の野原
・山里
・田舎の舗装されていない道
『二月晦日、三月朔日ころ』
最近仕事が忙しくなってきましたが、この前皆の都合を合わせて、
ピクニックに行きました。
響子ちゃんとまゆちゃんが、お弁当を作ってきてくれて、
かな子さんと愛梨さんは、お菓子を作ってきてくれました。
そして裕子ちゃんは手品道具(本人はサイキックアイテムと言っていました)を、
茄子さんは隠し芸道具を用意していました。
この日ほど、時間の流れが早く感じられた日はありません。
以前は、あまり他人と接することのない私でしたが、
皆で一緒に何かをするということは、とても楽しいものです。
それを教えてくれた皆さんや、もちろんPさんにも、感謝しなければなりませんね。
……え? わ、私も一応、お弁当作りを手伝ったんですよ?
でも、響子ちゃんとまゆちゃんの手際の良さの前では、役に立たず……
『わびしげに見ゆるもの』
つらそうに見えるもの。
・イベントやガチャで、本命のアイドルが登場したので、
課金しようかどうか迷っている無課金のプロデューサーさん。
・イベントやガチャで、ほとんど間隔をあけずに再登場したアイドルの、
担当プロデューサーさん。
・大量に課金してしまったせいで、むこう一ヶ月間、
極貧生活が確定してしまったプロデューサーさん。
・そんな時に限って、期間限定グッズが発売されたり、
ライブなどのイベントがあること。
『恥づかしきもの』
気後れしてしまうもの。
・きらりさんや茜さんの、テンションの高さ。
・トランプで勝負をしている時のレナさん。
・留美さんの、Pさんを見つめる眼差し。
・試着した衣装が、実は自分のものではなかったことを知り、安堵する夏美さんの気迫。
『無徳なるもの』
さまにならないもの。
・楓さんのオヤジギャグ。
・幸子ちゃんの謎の自信。
・麗奈ちゃんが皆をびっくりさせようとして、大掛かりなイタズラを仕掛けたものの、
やっぱり失敗してしまい、すごすごと引き下がる様。
『はしたなきもの』
体裁が悪いもの。
・他の人が呼ばれたのに、自分が呼ばれたのだと勘違いして、返事をしてしまうこと。
・Pさんを、思わず「お父さん」と呼んでしまったこと。
・奏さんや伊吹さんから薦められた、感動する映画を観ても、まったく共感できなかった時。
『九月ばかり』
秋ごろの雨上がりは、とっても素敵です。
花や草に、雨露が陽光に反射しているのが美しいですね。
雨に打たれたのに、蜘蛛の巣が形をとどめていて、
その糸に水滴が連なっている様子は、まるで真珠のようです。
また、木の垂れ下がった枝の先に、少しずつ水滴が集まり、
誰も触れていないのに勝手に露が落ちるのが、不思議に思います。
ですが、誰かにこの話をしても、きっと理解されないだろうということが、
一番面白いでしょうか。
『つれづれなるもの』
退屈なこと。
・現場で撮影や収録をするときに、何かトラブルがあって長時間待たされること。
・長編小説を読み進めていくと、伏線らしきものが次々と登場するが、
終わりまで特に意味は無かったこと。
・スタミナ、攻コスト回復待ち時間。
『つれづれ慰むもの』
退屈しのぎになるもの。
・囲碁
・双六
・読書
・次に書く小説の内容を考えること。
『恐ろしげなるもの』
恐ろしそうに見えるもの。
・Pさんが、他の女性と楽しくおしゃべりしているときの、まゆちゃん。
・怪しげな薬を開発しているときの志希さん。
・クラリスさんの目。
『うつくしきもの』
可愛らしいもの。
・千佳ちゃんが、鼻歌を交えながら変身ポーズをとる姿。
・薫ちゃんが、何かをPさんに見せびらかしている様子。
・こずえちゃんの、キョトンとした表情。
・舞ちゃんが新しい衣装を試着して、緊張した様子で歩いている時。
・仁奈ちゃんの、遊び疲れて眠っているときの寝顔。
・恐ろしさに耐え切れず、お化け屋敷から飛び出してきた珠美ちゃん。
『女の一人住む所は』
女性の一人暮らしは、あまり部屋の整理がされていない場合が多く、
見苦しいものです。
しかし、かえって生活感があるから良い、という男性もいるのだとか。
男性からすれば、部屋の中が整理整頓され、自分で家事全般を完璧にこなし、
折り目正しく生活している姿は、かえって息苦しく感じてしまうようです。
『宮に初めて参りたるころ』
私が、アイドルとして仕事を始めたばかりの頃、緊張の連続でした。
いえ、今は緊張していないということではありません。
初めて出社したとき、社長やちひろさんの説明を受けていたのですが、
事務所が思いのほか寒く、手先が凍えてしまったのです。
そのとき、Pさんが、「すこし寒いですね。暖房入れても良いですか?」
とフォローしてくれたので、とても助かりました。
また、初めの頃、他の業者の方や、取引先の方と仕事の打ち合わせをしたときも、
緊張しすぎて内容が全く頭に入ってきませんでした。
『病は、胸。物の怪に取り憑かれたの』
不謹慎だと思うのですが、風邪で弱っている人って、なんだかとっても風情がありませんか?
これは凛ちゃんから聞いた話ですが、加蓮ちゃんが急病でレッスンをお休みしたとき、
Pさんが一人でお見舞いに行ったことがありました。
事務所に戻ってきたPさんは、平静を装っていましたが、
「良いものを見た」という表情を隠しきれていなかったそうです。
『ふと心劣りとかするものは』
老若男女問わず、下品な言葉遣いをするのは残念に思います。
ですが、女の子が方言丸出しでしゃべるのは、とても新鮮で可愛く見えますよね?
特に広島弁は……こんなことを言うと失礼ですが、少し怖そうに聞こえます。
しかし巴ちゃんが使うと、照れ隠しのように聞こえませんか?
私も葵ちゃんを見習って、語尾に「~っちゃ」とかつけてみようかな……
あ……いまの独り言、誰も聞いてませんよね?
『風は、嵐』
私は存外、悪天候は嫌いではありません。
台風のとき、雨粒が窓に叩きつけられる音がしたり、
遠くでいきなり力強い風の音が鳴ったりする時、なんだかワクワクします。
そして、外の様子を見ようとして、窓を少しだけ開けただけで、
顔に雨粒や風が当たるのは、奇妙な爽快感があります。
『野分のまたの日こそ』
台風が過ぎ去ったあとも、別の趣があります。
道路に落ち葉が大量に散らかっていたり、
どこから飛ばされてきたのか、わからないものを見ると、
いつも見ている景色も新鮮に思えます。
『九月二十日余りのほど』
この前お仕事で、宿まりで遠方に行ったのですが、
旅館に着いた途端、部屋で倒れこむように眠ってしまいました。
いつもより早く就寝したからでしょうか、夜中に目が覚めてしまい、
ふと見た窓の外の月が、美しく輝いていたことを覚えています。
昔の歌人は、こんな時にこそ歌を詠んだのでしょう。
『月のいと明かきに』
月が明るい夜に水しぶきを見ると、まるで水晶が砕かれたかのように、
美しく見えます。
『大きにてよきもの』
大きい方が良いもの。
・家
・弁当箱
・果物
・ヤマブキの花
・愛海ちゃんが言うところの、おや……
……そ、そうですか。大きさではありませんか。
すみません、私の勉強不足のようです……
『ただ過ぎに過ぐるもの』
すぐに過ぎ去ってしまうもの。
・春
・夏
・秋
・冬
・人の年齢
あれ? 誰かの視線を感じたような……
『うれしきこと』
嬉しいこと。
・他人が「あれなんだっけ?」と言ったときに、即答してあげた時。
・勝負事に勝つこと。
・探し物を見つけだした時。
ちなみに、Pさんに今までで嬉しかったことを聞いたら、
「ちひろさんの目の前で、プラチケでお目当てのアイドルを引いた時かな?
ちひろさんの顔が、コマ送りでもしたかのように変化していったのは、見ものだったよ」
とのことでした。
ちなみにその日、Pさんはちひろさんから、いつもの2倍以上の書類仕事を押し付けられたそうです。
『この草子、目に見え、心に思ふことを』
この草子は、誰にも読まれることは無いと思って書いたものでした。
そのため、かなり書きすぎてしまったところや、
落書き同然の部分が多々あります。
まあ実際、世間では評判のものを紙に書き出してみても、
そんなに優れたものはあまりありません。
私はただ、自分の趣味として書いていたのですが、Pさんに見つかってしまい、
「へえ、よく書けているじゃないか」ということで、
発表されることになったのです。
こんなものを公表したら、色んな人から非難されるのでは、
と思っていたのですが、意外に好評でした。
……べ、別に、駄洒落ではありませんよ?
と、とにかく、私の意思とは関係無いところで、この草子が一人歩きしてしまったのです!
おわり
・読んで下さった方、ありがとうございました。
・かなり好き放題に書いていますが、原典も概ねこんな調子です。
以下は作者の過去作です。
歴史・古典ものですが、興味のある方はどうぞ。
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