よつば「よつばは、ここにいちゃいけないのか?」とーちゃん「…すまんな」 (98)

~ある日の、小岩井家~

よつば「とーちゃん、これみて」

とーちゃん「なんだ、よつばが描いたのか?」

よつば「うん、とーちゃんとライオンとサメ!」

とーちゃん「なんか、すごく命の危険を感じる組み合わせだな」

よつば「よつば、絵うまいか?」グー

とーちゃん「ああ、うまいよ。って腹減ったのか?お腹鳴ってるぞ」

よつば「腹へったー」グーグー

とーちゃん「そうだな、もう昼だし飯にするか」

とーちゃん「何食いたいんだ?」

よつば「オムレツのライスのやつ!」

とーちゃん「オムライスな?」

よつば「そう、それ!オムレツライス!」

とーちゃん「あ、ちょっと待て。卵とケチャップはあるし、作れそうだな」

ピンポーン

よつば「とーちゃん、だれか来た!」

とーちゃん「たぶん、ジャンボだろう。よつば出てくれ、とーちゃんは作ってるから」

よつば「わかった!見てくる!」

よつば「こんにちわ!ジャンボ!」

ジャンボ「おう、こんにちは、ジャンボ。おまえ元気にしてたか?」

よつば「うん、今とーちゃんがオムレツライス作ってる!」

ジャンボ「オムライスな」

よつば「ジャンボのぶんはない!」

ジャンボ「ないのか」

とーちゃん「チキンライスを作って、そこに卵を溶いて、広げて、と」

ジャンボ「おお、いい匂いだな?」

とーちゃん「すまん、ジャンボ!今手が離せないんだ」ジュージュー

ジャンボ「おとりこみ中だったか」

よつば「そうだ、とーちゃんはおとりこみちゅうだ!」

とーちゃん「よし、できた。ちょっと卵が黒くなったけど、大丈夫だろ」

よつば「おお、やっぱりとーちゃんは天才だな!」

とーちゃん「天才か?」

よつば「うん、シェフの天才だ」

ジャンボ「俺にかまわず、食べてくれよ」

とーちゃん「ああ、そうさせてもらうよ」

よつば「いただきます!」

とーちゃん「いただきます」

ジャンボ「なかなか旨そうだなぁ」

とーちゃん「うん、まぁまぁうまくいった方だな!」パクパク

よつば「…とーちゃん!」

とーちゃん「よつば、どうした?」

よつば「とーちゃん、よつばちょっとおかしい…」

とーちゃん「おかしいって、どうした?食わないのか?」

よつば「よつば、ちょっとヘンだ」カチャ

とーちゃん「どういうことだ?」

よつば「オムライス食べても、味しない…」

ジャンボ「なんだ?風邪でも引いたのか、それで」

よつば「よつば、かぜひいてない!元気だ!でも、味しない」

とーちゃん「もしかして、それって!?」

ジャンボ「待て!言うな!」

とーちゃん「しかし!早すぎないか!?第一の兆候がでるのは少なくとも」

ジャンボ「待て!落ち着け、小岩井!よつばが聞いているぞ!」

とーちゃん「だって、そんな!そんなに急に?」

よつば「とーちゃん、ジャンボ、どうしたんだ?」

とーちゃん「よつば、二階に行って寝てなさい」

よつば「とーちゃん、今ひるだよ?」

とーちゃん「いいから早く!風邪を引いてるんだ!」

よつば「ジャンボ?」

ジャンボ「ああ、とーちゃんの言う通りにしなさい」

とーちゃん「寝かせてきた」

ジャンボ「大丈夫だったか?」

とーちゃん「すっかり拗ねてたけど、まぁ寝付くだろう。あいつ、寝付きはいいんだ」

ジャンボ「しかし、こんな早く始まるとはな」

とーちゃん「想定はしていた。でも、こんなに早くなんて…もっと時間があるかと思っていた」

ジャンボ「やんだには連絡した。すぐに本部から指示が来るだろう」

とーちゃん「しかし、本当に始まったのか?もしかしたら、ただの風邪か何かじゃ?」

ジャンボ「第一兆候が出るのは人間でいうところの10歳前後だが、個体差はある。なんにせよ、サンプルの数が足りないからな」

とーちゃん「やっぱり、間違いないのか」

ジャンボ「小岩井、お前もわかっているだろう?兆候は確実に出ていた」

とーちゃん「それでも、やっぱり受け入れられない。よつばが、そんな」

ジャンボ「お前、感情移入し過ぎなんじゃないか?」

とーちゃん「…そうかもな」

ジャンボ「ただの献体のひとつだろう。少し休んだ方がいいな?」

とーちゃん「献体のひとつって?そんな言い方はないだろう、お前!?」

ジャンボ「いいから、落ち着けって!やっぱりちょっとおかしいぞ」

とーちゃん「すまんな、混乱してるんだ」

ジャンボ「じきに本部から詳細な指示が来るだろう。俺たちはそれに従うだけだからな?」

とーちゃん「ああ、わかってるよ」

ジャンボ「本当にわかっているんだろうな?職務に従うのが俺たちの仕事だ」

とーちゃん「ああ」

ジャンボ「仕事なんだからなぁ…」

とーちゃん「おい、お前?」

ジャンボ「ん、なんだ?」

とーちゃん「オムライス食うか?」

ジャンボ「遠慮しとくよ」

とーちゃん「そうか、そうだよな」

ジャンボ「悪いな、とにかく指示が出るまでは待機だからな?」

とーちゃん「ああ、わかってる。マニュアル通りにすればいいんだろ?」

ピンポーン

ジャンボ「来客だな?」

とーちゃん「出るよ」

風香「すいませーん?よつばちゃん居ますか?」ガチャ

とーちゃん「あ、はいはーい。なんだ風香ちゃんか」

風香「なんだとは何ですか?って小岩井さん、すごい顔色ですよ?大丈夫ですか」

とーちゃん「ああ、少し仕事が立て込んでて、な」

風香「はぁ、お仕事大変そうですね?わたしも勉強しないとなー」

とーちゃん「で、何か用か?」

風香「あ、クッキー作ったんで、よつばちゃんにと思って」

とーちゃん「ああ、ありがとう貰うよ」

風香「あれ?あのよつばちゃんいないんですか?」

とーちゃん「ん、いるけど?」

風香「いつもだったら、ピンポーンってなった途端に飛び出して来るから、おかしいなーって思って」

とーちゃん「ああ、たしかに」

風香「えっとじゃあ、よつばちゃんは?」

とーちゃん「悪いな、今ちょっと風邪で寝てるんだ」

風香「あ、はぁ。それだったら、邪魔しちゃいましたね。すいません」

とーちゃん「いや、そんなことないけど、」

風香「昨日までよつばちゃん元気だったのになぁ、心配だなぁ」

とーちゃん「よつばは大丈夫だよ」

風香「それに小岩井さんも元気なさそうだし」

とーちゃん「風香ちゃん」

風香「はい、どうしたんです?」

とーちゃん「もしかしたら、これから風香ちゃんたちにとんでもない迷惑をかけるかもしれない」

風香「どういうことですか?」

とーちゃん「先に謝っておく、ごめん」

風香「はぁ?」

とーちゃん「ごめん」

ジャンボ「誰だったんだ?」

とーちゃん「風香ちゃん」

ジャンボ「隣の高校生か」

とーちゃん「ああ、よつばは良くなついていたよ」

ジャンボ「ああ、そうだったな。何も喋ってないだろうな?」

とーちゃん「当然だよ、心配するなよ」

ジャンボ「それは何だ?」

とーちゃん「クッキーだって、よつば食うかな?」

ジャンボ「いまの段階じゃ、食うことはできるだろうが、栄養にはならないだろうな。そのうちに食事も排泄も」

とーちゃん「わかってるよ、解説はいらない」

ジャンボ「問題は第二兆候までどれくらいあるかだな?」

とーちゃん「どのくらいだろうな」

ジャンボ「全く未知の領域だ。なんせ第一の兆候がこんなに早く来たんだ。もしかしたら」

とーちゃん「ちょっと、様子見てくる」

ジャンボ「気をつけろよ」

とーちゃん「何を、だ?」

とーちゃん「よつば、入るぞ」ガチャ

よつば「とーちゃん?」

とーちゃん「どうだ、様子は?」

よつば「よつば、どうしたの?びょーき?」

とーちゃん「大丈夫だよ、ただの風邪だ」

よつば「よつば、何かへんな気がする」

とーちゃん「へんな気って、どういうこと?」

よつば「なんか、よつばのあたまに何かぐるぐるしてる」

とーちゃん「ぐるぐる?」

よつば「うん、ぐるぐるっていろいろ見える」

とーちゃん「何が見えるのか?」

よつば「うみとか、やまとか、ひととかいっぱい」

とーちゃん「大丈夫だよ、気のせいだ」

よつば「ほんとに?」

とーちゃん「ほんとだよ、すぐらくになるから」

よつば「らくに?」

とーちゃん「うん、もうちょっと寝てようか」

とーちゃん「見てきた」

ジャンボ「どうだったんだ?」

とーちゃん「もう交信が始まっているようだった」

ジャンボ「本当か?それはかなりの進行スピードだぞ、さっき第一兆候が出たばかりじゃないか?」

とーちゃん「ぐるぐるが見えるっていってたな」

ジャンボ「他の感覚器はどうだったんだ?目とか耳は?」

とーちゃん「見た感じは正常だったよ、そこまで進んではない」

ジャンボ「やんだが今こっちに向かってるそうだ、詳しい指示を持ってな」

とーちゃん「だいぶかかってたじゃないか?」

ジャンボ「上も考えが別れてるらしいからな?利用できるものは利用しちゃえってのと、危険だからすぐ処理すべきだってのに」

とーちゃん「詳しいな?」

ジャンボ「ああ、俺はお前と違ってここに来てからも本部に顔は出してたからな?」

とーちゃん「ああ、そうだな」

ジャンボ「全く役所じみた組織だから、どうしようもないよな。米軍の言いなりの癖にあれこれ策を巡らすから」

とーちゃん「そうだな」

ピンポーン

ジャンボ「やんだだな?」

とーちゃん「やっと来たか」

やんだ「ちーっす、よつばちゃん元気?」

ジャンボ「交信が始まっているそうだぞ」

やんだ「ええっ?それって進行早くない?本部の予想より全然早いじゃん!」

ジャンボ「で、本部からの指示はどうなんだ?」

やんだ「ちょっと待てよ、お湯借りるよ。昼飯まだなんだよ」

とーちゃん「お好きにどうぞ。お前ほんとにカップ麺好きだな」

やんだ「はい、これが本部からね?熟読後すぐに破棄されたし、コピー厳禁」バサッ

とーちゃん「投げるなよ、機密文書だろ?」

やんだ「あれ、小岩井さん今日ちょっと雰囲気ちがくね?」

ジャンボ「察せよ、やんだ。気が立ってるんだよ」

やんだ「ああ、あれすか?よつばちゃんに情が移ってー、みたいな」

ジャンボ「黙れ、やんだ!」

やんだ「起こることないだろ?いただきまーす」パチッ

とーちゃん「じゃあ、これ読ませてもらうぞ」ピラ

やんだ「はい、どーぞどーぞ」ズルズル

とーちゃん「…なるほど」パラリ

ジャンボ「どうだった?」

とーちゃん「だいたい予想通りだ」

ジャンボ「まぁ、上と俺たちでそう意見が違うわけでもないしな。俺にも読ませろ」

やんだ「おいおい!ちょっと大変なことが!」

ジャンボ「何だ?うるさいぞ、やんだ!」

とーちゃん「どうした、やんだ?」

やんだ「ちょっと、よつばちゃんの部屋覗いてみたんだけど」

とーちゃん「勝手に覗いたのか!」

やんだ「それは良いだろうよ!顔を見せてやろうと思ったんだよ、それよりさ」

ジャンボ「簡潔に話せ、やんだ!」

やんだ「よつばちゃん部屋にいないんだよ!これヤバくね?」

とーちゃん「何だって?」

ジャンボ「それは大事だな!」

とーちゃん「家の中を探そう!」

ジャンボ「しかし、どこにもいないみたいだな」

やんだ「おーい、よつばちゃん!どこいんのー!」

とーちゃん「まさか、よつば外に行ったんじゃ?」

ジャンボ「ドアの音はしなかったぞ?」

とーちゃん「よつばは窓から外に出られるんだ!」

ジャンボ「心当たりはあるか?」

とーちゃん「たぶん、お隣だ!綾瀬家だ!」

ジャンボ「大丈夫か?」

とーちゃん「ああ、行ってくる!」

ジャンボ「わかってるだろうな?」

とーちゃん「何がだよ?」

ジャンボ「隣の人間に一言も漏らすなよってことだ」

とーちゃん「そんなこと、言われなくてもわかってるよ!じゃあ、隣を見てくる!」ダッ

やんだ「小岩井さん、大丈夫ですかね?」

ジャンボ「ああ、あいつも昔はキレてるので有名だったんだがな」

ピンポーン

とーちゃん「ごめんください、すみません小岩井です!」ドンドン

かーちゃん「まぁ、小岩井さん。そんなに焦ってどうしたんですか?」ガチャ

とーちゃん「すみません、もしかしたらよつばがお邪魔してるんじゃないかと思いまして」

かーちゃん「ええ、よつばちゃん来てるわよ?どうかしたのかしら」

とーちゃん「失礼します!」

よつば「恵那ー、よつばぐるぐるーってみえるんだぞー」

恵那「えー?よつばちゃん、何ぐるぐるって?」

よつば「ぐるぐるっていろいろ見える!」

恵那「何それ?超能力?」

よつば「ちょうのうりょく?」

とーちゃん「よつば!」ダッ

よつば「あっ、とーちゃんだ」

恵那「あっ、こんばんわ」

とーちゃん「よつば!何で勝手に出ていったんだ!」ガッ

よつば「とーちゃん、なんで怒ってるんだ?」

とーちゃん「何でって、おまえ。部屋にいろって言ったじゃないか!」

恵那「小岩井さん、そんなによつばちゃんを叱らないでください。ただいつも通り遊んでただけですから」

とーちゃん「ああ、すまん。とりあえず家に帰るぞ」ガッ

よつば「やだ、もっと恵那と遊ぶ!」

風香「あっ!小岩井さん来てたんですか?」

とーちゃん「ああ、すまん。よつばが邪魔してたみたいだな?」

風香「いえいえ、それよりよつばちゃん元気でしたよ?風邪なんて引いてないみたいでしたけど」

とーちゃん「いや、まだ風邪気味なんだよコイツ、ほら帰るぞ」

よつば「恵那と遊ぶ!」ジタバタ

風香「ちょっとよつばちゃん、嫌がってるじゃないですか?小岩井さんの方こそちょっと大丈夫ですか?」

とーちゃん「わがまま言うな!よつば!お邪魔しました!」ギュッ

よつば「とーちゃん、ちょっとヘンだぞ」

風香「何だったのかな、小岩井さん?」

あさぎ「ん?デカイ声聞こえたけどどうしたの?」

風香「ちょっと小岩井さん来てたんだけど、様子がヘンだったのよ」

あさぎ「はぁー、それはおかしいかなー?」

恵那「小岩井さん、どうしたんだろ?」

かーちゃん「もしかしたら、コレかもしれないわね」

風香「これって?」

かーちゃん「小岩井さんに、新しいお相手ができて、それがよつばちゃんに嫌われてるとか」

あさぎ「あー、それは面白いかもしれない!」

風香「新しいお相手って、そんな感じには見えなかったけどなぁ」

あさぎ「まぁ、風香的にはライバル出現ってこと」

風香「ちょっと、それどういうことよ?」

恵那「でも、かなり深刻そうな顔だったけど」

あさぎ「とりあえずミステリーってことね」

~小岩井家~

とーちゃん「ただいま」ガチャ

ジャンボ「おう、お帰り。大丈夫だったか?」

とーちゃん「ああ、大丈夫だよ」

ジャンボ「よつばは?」

よつば「」ムッ

とーちゃん「すっかり拗ねてる」

ジャンボ「まぁ、仕方ないな。見つかって良かった」

やんだ「おう、よつばちゃん、こんにちは!」

よつば「」ムスッ

やんだ「ちょっと、無視は無いんじゃないかなぁ」

とーちゃん「とにかく、よつば!部屋から出たらダメだからな?」

よつば「とーちゃん、ちょっとおかしい!よつば恵那と遊ぶ!」

とーちゃん「よつば、そんな駄々をこねるなよ!」

よつば「よつばは元気だ!とーちゃんもジャンボもちょっとおかしい!」

とーちゃん「そんなことないよ、よつばは風邪なんだから寝てないとダメなんだよ」

ジャンボ「そうだよ、とーちゃんの言うこと聞け、な?」

よつば「もう、とーちゃんもきらいだ、よつば恵那んち…」バタッ

とーちゃん「よつば!」

ジャンボ「眼球の反応が無いな、第二兆候が出たんだ!」

とーちゃん「よつば!よつば!しっかりしろ!大丈夫か?」

ジャンボ「二階に運ぼう、やんだは機材一式を準備してくれ」

やんだ「あ、ああ。そうするよ」

とーちゃん「しかし、早すぎないか!おい、よつば!頼むから起きてくれ!」

ジャンボ「小岩井、第二次兆候が出たんだ。もうそう呼ぶのはやめにしないか?」

とーちゃん「なんだよ」

ジャンボ「こいつは、もうよつばじゃない。献体No.004だ!こいつはこれからどんどん人間らしさを失っていくことになる」

ジャンボ「第二次兆候からは完全に未知の世界だ、俺たちにはNo.004の状態をモニターし、記録することしかできない」

やんだ「機材全部セット完了ッス」

ジャンボ「心電図、脈拍、脳波測定異常なし。観測を開始する」

よつば「」スー

ジャンボ「もう視覚聴覚も失っているようだな、肉体にも変異が始まっている」

とーちゃん「カメラの方も大丈夫だ、記録開始する」

ジャンボ「おまえ、本当に大丈夫か?」

とーちゃん「ああ、ずっとこうなることはわかってたんだ」

ジャンボ「ムリはするなよ、俺だって平気なわけじゃないんだ」

とーちゃん「第三の兆候まではどれくらいだろう?」

ジャンボ「これだけは、予想もできないな」

とーちゃん「よつば、オムライスが最後になるなんてな」

ジャンボ「よせ、No.004だ。よつばじゃない」

とーちゃん「もっと思い出作りたかったな?」

ジャンボ「やめろよ…」

とーちゃん「小学校にも行きたいって言ってたのにな?」

ジャンボ「やめろって…」

とーちゃん「また海に行きたかったな?雪積もるの楽しみにしてたけど見れなかったな?」

ジャンボ「おい!もうやめろよ!わかってるだろう!」

ガシャン

風香「な…なにこれ?」

とーちゃん「風香!」

ジャンボ「おまえ、何で入って来た!?」

風香「玄関空いてたから…よつばちゃんが心配で…」

ジャンボ「これは、困ったことになったな」

風香「よつばちゃんは…これが、よつばちゃん?」

とーちゃん「見ないでくれ」

ジャンボ「ここで見たものは全部忘れてもらおうか?」

あさぎ「忘れられるわけないじゃない!」

ジャンボ「あさぎさん!?」

あさぎ「よつばちゃんのこと何でしょ?私たちだって他人じゃないわよ」

ジャンボ「これはまいったな、いや」

あさぎ「説明して貰えないかしら?」

風香「わたしも知りたいです、お願いします」

とーちゃん「いいだろう、全部話そう」

やんだ「いいんすか?」

ジャンボ「ごまかしきれるものじゃないだろう」

あさぎ「聞かせてもらおうかしら」

ジャンボ「わかった、話すがこれからのことは全て他言無用だからな?」

ジャンボ「これは今から6年前、ある南の孤島の話だ」

とーちゃん「いいところだった。海が綺麗な島で、小さい島だったが満ち足りていた」

ジャンボ「小岩井は旅行者として、島に来てたんだ…そして、巻き込まれた」

あさぎ「巻き込まれたって、何に?」

ジャンボ「隕石だ、小さな隕石が島に落ちたんだ」

風香「隕石…」

ジャンボ「隕石の被害事態はそこまでたいしたことはなかった。だが問題はそれがただの隕石じゃなかったってことだ」

とーちゃん「ここから、話がオカルト臭くなるが信じてくれよ」

あさぎ「ええ、信じるけど」

ジャンボ「その隕石は強いエネルギーを放っていたんだ、その石に触ったものは皆すぐに死んでしまった」

風香「放射能みたいなもの?」

ジャンボ「まぁ、そう考えてもらって大して違いはない。石の力は人体に働きかけ人体を作り替えてしまうんだ」

とーちゃん「20人…」

あさぎ「20人?」

ジャンボ「ああ、対応に当たった役人、島の漁師、鉱物学者、全部で20人の人間が石の力に触れて死んだ」

とーちゃん「異形へ姿を変えてな」

風香「そんなこと…」

あさぎ「それが、よつばちゃんにどう関係が?」

ジャンボ「大人はみんなすぐに死んだ。問題は胎児だ、そのとき島には5人の妊婦がいた」

とーちゃん「その中の一人がよつばだ」

風香「よつばちゃん…」

ジャンボ「島に調査のために来た鉱物学者だった、石に触れたときにはもう妊娠してたんだ」

とーちゃん「彼女は、よつばを産んですぐに死んだんだ、俺はそれを引き取って育てた」

ジャンボ「当局の監視の下でな」

あさぎ「当局?じゃなあなたは何者なの?」

ジャンボ「おっと、ここからは詮索してもらっちゃあ困るな!」

あさぎ「胡散臭い組織の人間っていうわけね?」

風香「それで、よつばちゃんはどうなるんです?」

とーちゃん「なんとも言えない。前例がないんだ」

ジャンボ「俺たちはここで記録をとって見守るしかないってことだ」

風香「そんな…」

ジャンボ「説明は以上だ、もう帰ってくれ。いいな?」

あさぎ「わかったわ、帰りましょう風香」

風香「…でも」

あさぎ「しょうがないわよ」

とーちゃん「送っていくよ」

やんだ「おう、うまく確信に触れずに帰らせられましたね?」

ジャンボ「そう悪くいうなよ、仕方ないんだ」

やんだ「よつばちゃんがエイリアンだってことも触れず、それに小岩井さんが旅行者だったなんて」

ジャンボ「間違ったことはいってないだろう?」

やんだ「いや、でも小岩井さんは当事者じゃないですか?巻き込まれたなんて、そんな」ハハハ

~夜道~

風香「小岩井さん」

とーちゃん「なんだ?」

風香「よつばちゃんが助かる方法はないんですか?」

とーちゃん「まだ、わからないとしか言えないな」

風香「でも、ずっとよつばちゃんを育ててきたんでしょ?」

とーちゃん「ああ、そうだな」

風香「悲しくないんですか?よつばちゃんがああいう風になって!」

あさぎ「風香!ちょっとやめなよ!」

とーちゃん「いつかこうなるだろうとは、わかっていたから、覚悟はできてた」

風香「そんな、それじゃ、よつばちゃんがあんなになっても大丈夫なんですか?小岩井さんは!」

あさぎ「やめなさい、風香!そんなふうに小岩井さんを攻めないで!」

とーちゃん「ありがとう」

風香「えっ?」

とーちゃん「ありがとう、よつばをそんな風に心配してくれて」

風香「小岩井…さん?」

とーちゃん「ごめんな、俺にはよつばをまともに心配することもできないんだ」

あさぎ「小岩井さん、風香…」

とーちゃん「ごめんな…」

とーちゃん「ただいま」

ジャンボ「おう、小岩井たいへんだぞ、No.004が意識を取り戻したぞ!」

とーちゃん「本当か!」

ジャンボ「ああ、ずっとお前のことを読んでるぞ」

とーちゃん「よつば!」

よつば「…とーちゃん?」

とーちゃん「よつば、大丈夫か?」

よつば「よつば、なんかすごいヘンな…かんじ」

とーちゃん「心配するなよ、すぐ良くなるからな?」

よつば「よつば、見えない。とーちゃん見えない」

とーちゃん「とーちゃんはここにいるぞ!ここだぞ!」

よつば「見えないのに、とーちゃんの顔わかる…ふしぎ」

とーちゃん「ああ、よつば、手を握ってやるから、わかるか?」

よつば「とーちゃん、ごめん」

とーちゃん「なんだ?よつば」

よつば「とーちゃんきらいっていって、ごめん」

とーちゃん「そんなこと気にするな!とーちゃんはわかってるから、よつば、よつば!」

よつば「よつば、とーちゃん好き…ジャンボ好き…風香好き…恵那好き…あさぎ好き…やんだ好き…みうら好き」

とーちゃん「ああ、わかった!わかったから!」

ジャンボ「また、寝付いたようだな」

とーちゃん「ああ」

ジャンボ「次は意識を取り戻すかはわからないぞ」

とーちゃん「そうだな」

ジャンボ「もうテレパスも始まっているみたいじゃないか、第三段階に進むのも確定的じゃないか?」

とーちゃん「ああ」

ジャンボ「手遅れになる前に手を打ったほうがいいんじゃないか?」

とーちゃん「まだだ、まだギリギリまで粘るんだ」

ジャンボ「お前、わかってるんだろうな?結局最後は俺たちでケリをつけるしかないんだぞ?」

とーちゃん「ああ、俺が始めた計画だ」

ジャンボ「ああ、お前が始めた計画だ、覚悟はできているんだろうな?」

とーちゃん「当然だ、最後は俺が…この手で…」

ジャンボ「No.003とNo.005がどうなったか忘れたわけじゃないよな?」

とーちゃん「しつこいぞ、最後はマニュアル通りだ」カチャ

やんだ「計器に乱れが出始めたんすなけど?」

ジャンボ「そろそろ潮時だな、記録も十分すぎるくらい溜まったしな、小岩井?」

とーちゃん「ああ、わかってるよ」スッ

ジャンボ「今のうちにトドメをさしてやるのが情けだぞ、小岩井?まだ人間らしさを残しているうちにな」

とーちゃん「よつば」

ジャンボ「早くしろ、小岩井」

とーちゃん「よつば」プルプル

ジャンボ「早く引き金を引け、小岩井!」

とーちゃん「く、くそっ…」

ジャンボ「わかってるんだよな、小岩井?こいつが第三段階に進んだら、俺もお前もこいつに殺されるんだぞ?」

とーちゃん「ああ、しかし…」

ジャンボ「こいつらは第三段階に進んだら、ただの化け物になるんだ!今のうちに殺らないと!」

とーちゃん「だめだ…できない…」

ジャンボ「なんだと?」

とーちゃん「俺には引き金を引くことはできない!」

ジャンボ「何を言ってるんだ?お前
?」

とーちゃん「俺にはよつばを殺すことなんて、できないんだ」

ジャンボ「お前が始めたんだぞ?お前はあの隕石が宇宙人の卵だと知っていて触れさせたんだ!」

とーちゃん「ああ、そうだな」

ジャンボ「お前はあの卵の仕組みを解析するために人体実験をしたんじゃないのか、それを今さら…」

とーちゃん「すまなかった、ここまで付き合わせて…こんな」

ジャンボ「…小岩井」

とーちゃん「だが、もうやめにしよう…こんな」

ジャンボ「いまさら、そんなことできると思ってるのか?」

とーちゃん「ジャンボ、たしか…お前の妻と子どももあの隕石で」

ジャンボ「ああ、そうだ。だから俺もお前に協力したんだ」

とーちゃん「…ジャンボ、お前は自分の子どもを手にかけることが出来るか?」

ジャンボ「そんな」

ジャンボ「No.004…いや、よつば」

とーちゃん「ジャンボ?」

ジャンボ「わかったよ、お前に協力するよ」

とーちゃん「本当か!」

ジャンボ「ああ、組織の古い研究所が近くにある。ひとまず、そこに移そう!」

とーちゃん「ああ、悪いな」

ジャンボ「畜生、これは首確実だなぁ」

やんだ「おい、どういうことだよ!」

ジャンボ「やんだ?どうした?」

やんだ「どうした?は、こっちのセリフだよ!お前らよつばちゃんをどうする気だよ?」

とーちゃん「やんだ、やめろ!落ち着け、とりあえず銃を置け?」

やんだ「置くわけないっしょ?組織裏切ろうとしてるのはお二人さんのほうなんすから、とばっちりで始末されるのはごめんなんすよ!」

ジャンボ「やめるんだ、やんだ?銃を下ろせ、な?」

やんだ「よつばちゃんを渡すまで下ろしませんよ、当然っしょ?」

とーちゃん「おい、ばか!やめろよ!」

やんだ「頼むから、そんな目で見ないでくださいよ!小岩井さん」

とーちゃん「やんだ?」

やんだ「悪いのは全部小岩井さんのほうなんすから」バキン

ジャンボ「小岩井!」

やんだ「」バタッ

とーちゃん「え?」

風香「すみません、お邪魔しました!」

ジャンボ「風香!」

とーちゃん「風香ちゃん、ええー?」

やんだ「」

風香「すいません、隣からすごい声が聞こえてきたんで、来てみたら修羅場ってたんで、つい」

ジャンボ「しかし、背後から後頭部を一撃っていうのは、どうかと思うぞ?」

あさぎ「我が妹ながら、恐ろしい…」

風香「あれ?なんか皆さん引いてません?」

とーちゃん「いや、そんなことないけど」

風香「いちおう命の恩人なんですけど?」

ジャンボ「ありがたかったよ、とりあえずよつばを運ぼう」

あさぎ「よつばちゃん、どうするのよ?」

ジャンボ「近くに古い研究所があるんだ、一旦そこに移す」

あさぎ「そこに着いてからは?」

ジャンボ「そこからは、これから考える」

あさぎ「無計画だなぁ、OK!協力する」

とーちゃん「ありがとう、巻き込んでしまってすまない」

風香「よつばちゃんのためでしょ、当然ですよ!」

とーちゃん「よつば、大丈夫か?動かすぞ!」

よつば「…とーちゃん?」

ジャンボ「意識が戻ったのか」

とーちゃん「よつば、大丈夫だぞ。ちょっと動かすけど、心配いらないからな?」

よつば「…とーちゃん」

とーちゃん「ほら、風香ちゃんとあさぎさんも来てるぞ!」

あさぎ「よつばちゃん、しっかり!」

風香「よつばちゃん、大丈夫だからね!」

よつば「…あさぎ…風香」

とーちゃん「ほら、みんなついてるからな?ほら、行くぞ」

よつば「…とーちゃん」

とーちゃん「ん、どうした?」

よつば「よつば、どこかいくの?」

とーちゃん「ああ、そうだよ」

よつば「よつば、ここにいちゃいけないのか?」

とーちゃん「…すまん、よつば」

ジャンボ「小岩井」

とーちゃん「でも、少しの辛抱だから、すぐ帰ってこれるから、な?」

あさぎ「私の車出そうか?」

ジャンボ「いや、俺の車のほうが広いし、ほら後ろの席外せるから」

風香「小岩井さん、それ持っていくんですか?」

とーちゃん「それって?」

風香「それ、その銃!」

とーちゃん「ああ、これか、まぁ御守りみたいなもんだよ。もしかしたら、組織の奴に会うかもしれないし、念のため」

風香「それよりも、これを持っていってくださいよ!」

とーちゃん「これは」

風香「よつばちゃんが描いたんでしょ、それ。いったい何描いたんだろう?」

とーちゃん「ああ、これは俺とライオンとサメらしい」

風香「はぁ、小岩井さんとライオンとサメねぇ」

とーちゃん「そうだな、こっちのほうが御守りになりそうだな?」

ジャンボ「よし、行くぞ!」ブーン

虎子「待ちなさい!そこの車!」バッ

虎子「そこの車、止まりなさい!」

あさぎ「ちょっと、トラ?どうして」

虎子「検体はこちらに渡して貰うわ」

ジャンボ「知っているのか!君はいったい?」

とーちゃん「組織の人間か?」

虎子「ああ、貴様らとは別の組織だがな、ずっとそるを狙っていたんだ!」

ジャンボ「これが何かわかるのか?」

虎子「ああ、小岩井よつば、だったもの、宇宙人の幼生だろ?」

とーちゃん「知ってるみたいだな」

ジャンボ「くそ、困ったことになった」

虎子「早く渡して貰おうか!」

あさぎ「トラ!やめてよ、トラ!」

虎子「大人しく小岩井よつばを渡せ!」

とーちゃん「俺の可愛い家族だ!渡すわけがないだろう!」

虎子「家族だと?怪物じゃないか、もう可愛いよつばちゃんはいないんだよ!」

ジャンボ「煽ったところで無駄だ!よつばは渡さない!」

虎子「なるほど、なら実力行使に移らせてもらおう!」ガッ

風香「きゃっ!」

とーちゃん「何をする!風香を離せ」

虎子「この可愛い顔が吹き飛んでもいいのか?この娘をとるか、その怪物をとるか、二択だ!」

とーちゃん「く、くそっ!」

あさぎ「あっ、よつばちゃんが!」

よつば「…風香…風香」パァァ

ジャンボ「よつばが光っている?」

虎子「な、なんだ!これは!」

風香「よつばちゃん!」

よつば「…風香…風香」パァァ

とーちゃん「これは、いったい?」

虎子「う、うわぁぁぁ!!」バサッ

風香「きゃっ!」スイッ

あさぎ「大丈夫、風香?」

風香「わたしは大丈夫だけど、これは?」

ジャンボ「よつばの念力みたいだな、もうこんなに強くなっているなんて」

とーちゃん「よつば、風香を助けてくれたのか、ありがとう」

ジャンボ「かなり進行してるみたいだぞ?時間がない!」

虎子「くそっ!なかなかやるなぁ」

とーちゃん「あんたに構っている暇はない!」

あさぎ「ちょっと待って?何か聴こえない?」

風香「これは、耳鳴り?」キーン

ジャンボ「本当だ、なんだこれは?」キーン

とーちゃん「空が明るい…もしかしてこれは?」キーン

虎子「く、くる!」キーン

ジャンボ「来るって何が?」キーン

虎子「わからないけど、何か来てるんだよ!」キーン

とーちゃん「光が強くなってきた」キーン

あさぎ「もしかして、これは?」キーン

ドドドドドドドドッ

ドッスーン!!

あさぎ「これって、もしかして…」

風香「宇宙船?」

ジャンボ「そんなベタな!未知との遭遇じゃないんだぞ?」

よつば「…とーちゃん」パァァ

とーちゃん「よつばがまた、光っている…そうか、迎えに来たんだ」

風香「迎えにって、どういうことよ?」

とーちゃん「よつばのことを、迎えに来たんだよ」

ジャンボ「まさか、そんな?」

あさぎ「あっ、宇宙船が開いたわ!」

風香「何か出てくる?」

バタッ

ジャンボ「なんだこりゃあ?」

風香「びっくりした…」

あさぎ「これが?」

?「やぁ、諸君!これが記念すべきファーストコンタクトといったところかな?」

ジャンボ「君は何なんだ?」

?「まぁ、宇宙人、エイリアン、異星人、ET、好きに呼びなさい。君たちが想像するところのものとそう違いはないよ」

とーちゃん「あなたがよつばちゃんの?」

?「そうだ、父とでも呼ぼうかな?まぁ我々にその様な概念はないが」

あさぎ「あなた、もしかしてよつばちゃを連れ去りに来たわけ?」

?「連れ去るとは人聞きのわるい、私は預けものをもらいに来ただけだよ」

風香「じゃあやっぱり、よつばちゃんを」

?「ああ、でもここまで育ててくれたのには感謝する。だからこうしてわざわざ迎えに来たんだ」

ジャンボ「なるほど、かぐや姫でいうところの月からの使者ってわけだな?」

?「そのとおり」

?「私は、君たちの言うところのケンタウルス座、プロキシマケンタウリから来た」

あさぎ「遠いところどうも、わざわざ」

?「私たちは、子宮を持たないんだ。だから他の生命のいる惑星に種を落とす」

ジャンボ「そうして、その種に近付いた他の生命を自分の仲間に作り替えるってことか?」

?「まぁ、そういうところだ。私がこの星に種を落として、そしてよつばちゃんが産まれた」

とーちゃん「まるでカッコウだな」

あさぎ「あまり効率的でない、出産方法ね?」

?「我々は君たちよりもずっと数が少ないんだ。何倍も複雑な作りをしてるからね?」

とーちゃん「それで、よつばを連れていくのか?」

?「ああ、我々の仲間だからね」

風香「あんたなんかに、よつばちゃんは渡さないわよ!」

?「何を言う!この子は我々の仲間だ、我々と一緒に来たほうが幸せだ!」

ジャンボ「そんなわけあるか!よつばはここにいるほうがずっと幸せだ!」

?「私たちは君たちよりも、ずっと優れた存在なのだよ?それが私と来ることが幸せではないというのか?」

あさぎ「ええ、そうよ!ここには私たちがいるもの!」

?「ふっ、馬鹿馬鹿しい!君たちの存在など我々からしたら全くとるに足らんものだというのに!」

風香「おねがいよつばちゃんを連れていかないで!」

?「君たちのことなど、どうせすぐに忘れるんだ!んっ?なんだこれは?」パラッ

風香「あっ、それはよつばちゃんの…」

?「何だ、ゴミか!下らない」ポイッ

とーちゃん「おい!」

?「なんだ?」

とーちゃん「これを今捨てたな?」ピラッ

?「ああ、それが何だ?」

とーちゃん「これは、俺の…よつばの宝物だ!」

?「そんな紙切れが、か?」

とーちゃん「ああ、そうだ。ただの紙切れだ!だがな、これは俺とよつばの大切なものなんだ!」

?「これが、こんな下手くそな絵が?」

とーちゃん「下手くそじゃない!俺とライオンとサメだ!うまく描けている」

?「わからない、そんなもの何の価値もないだろう?」

とーちゃん「こいつの価値がわからないやつに絶対によつばは幸せに出来ない!」

?「なんだって?そんなこと…わからない!わからない!」

とーちゃん「じゃあ、よつばはおいていって貰おうか?」

?「わかったよ、わかった!根負けした、この子は諦めよう」

風香「ほんと?」

?「ああ、種の力も消そう。すぐに全く元通りになるはずだ」

ジャンボ「やったな!そんなことができるのか!」

とーちゃん「本当に良いのか?」

?「いいよ、もう諦めた。言っておくが説得されたわけじゃないぞ?こんな不確定要素を取り込むデメリットを危惧しただけだ」

風香「宇宙人さん、ありがとうございます!」

ジャンボ「感謝するなよ、もとは全部こいつのせいだぜ?」

あさぎ「でもあの宇宙人がいなければ私たちはよつばちゃんに会えなかったわよ?」

とーちゃん「そうだな」

風香「あっ、宇宙船が飛んでいっちゃった」

あさぎ「もうあんなに遠くに」

とーちゃん「あの宇宙人も寂しそうにしていたな」

よつば「ううん…とーちゃん?」ムクッ

とーちゃん「おい、よつば!大丈夫か?何ともないか?」

よつば「うん、よつばすごいヘンな夢見てた」

ジャンボ「どんな夢だ?」

よつば「とーちゃんがライオンとサメと闘う夢!」

とーちゃん「それは勝ち目ないなぁ」

風香「そんなことないよ、小岩井さん強いもの!」

とーちゃん「強いかぁ?」

風香「少なくとも宇宙人よりは強いわ!」

よつば「とーちゃん!星いっぱい出てる!」

とーちゃん「本当だなぁ」

あさぎ「絶景、絶景」

~ある日~

ピンポーン

とーちゃん「おっ?だれか来たみたいだぞ?」

よつば「恵那だ!」

恵那「よつばちゃーん!遊ぼー」

よつば「ほんとに恵那だった!遊んでくる!」

とーちゃん「おう、暗くなる前に帰るんだぞ?」

よつば「うん、わかった!」

みうら「よう、よつば。久しぶりだな」

よつば「みうらもいた!」

恵那「今日は何して遊ぶ?」

よつば「そうだなー、うちゅうじんごっこ」

みうら「なんだよそれ?」

とーちゃん「まったく、すっかり元通りだな。俺は仕事失っちゃったから、就活しなきゃなー、グヌヌ」





~end~

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