モバマス蘭陵王 (95)
・このSSは、中国南北朝時代を舞台にした作品です。
・史実とは異なる点があります。ご了承下さい。
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~金墉城~
兵「将軍、これ以上支えきれません!」
秦旭「くそっ! 周賊ども、和平を破って侵攻してくるとは!」
ヒュン ヒュン
兵「おっと!」
秦旭「敵の弓勢が衰えぬ。落城は必至か……」
秦旭「皆の者、この城が落ちるのは時間の問題だ。
このまま嬲り殺しにされるより、城から打って出ようぞ!」
兵「お待ち下さい!」
秦旭「どうした?」
兵「あれを御覧ください。
五百騎程の騎馬隊が、敵を掻き分けながらこちらに向かってきます」
?「皆、良く持ちこたえてくれたね。アタシが来たからには、もう安心だ! 開門!」
兵「あんな少数で、周の大軍を突破できるはずがない」
秦旭「うむ。敵の策かもしれんな……いや、待てよ」
?(あれ、おかしいな。門が開かないや)
?(あ、そうか! 仮面でアタシの顔が見えないのか)
ガバッ
秦旭「あ、あのお方は!」
兵「将軍。あの騎兵が、何者かご存知なのですか?」
秦旭「あの長髪、心に染み透るような声、凛々しい御顔、それに鬼の仮面……」
秦旭「間違いない、あのお方は……!」
高長恭(南条光)「皆、アタシの顔を良く見てくれ!」
光「我こそは、蘭陵王高長恭! 皆を救いに来た!」
兵「蘭陵王殿下……あんな少数の騎馬隊で、この大軍を突破してくるとは!」
秦旭「開門しろ! 急げ!」
~城内~
光「なんとか間に合ったね」
秦旭「殿下、かたじけのうございます」
光「秦旭将軍、良く持ちこたえてくれた」
光「皆聞いてくれ! 今、芒山に段韶(だんしょう)と斛律光(こくりつこう)の二人が来ている。
明日の夜明けに、周の包囲軍を外から突き崩す作戦なんだ」
「おお、あのお二人が……」
「我が国の双璧がいれば、負けることはない!」
秦旭「殿下、そのお話は真ですか?」
光「ああ。明日の朝、二人に呼応して城から打って出よう!」
光「だから皆、もう少しの辛抱だ!
今日一日を耐えれば、勝利は間違いない!」
「やったー! 助かった!」
「段韶将軍に斛律光将軍、それに蘭陵王殿下の三人がそろえば、
怖いもの無しだぜ!」
~翌朝~
光「……それじゃあ秦旭将軍、任せた!」
秦旭「はい……弓兵、火矢を放て!」
ヒュン ヒュン
ボオオオオ
周兵「うわっ! 火矢だ! 敵が攻めてきたぞ!」
周兵「奴ら、幕舎を狙ってきやがる! 急いで消火しろ!」
光「よし、開門しろ! 全軍、我に続け!」
~周軍・本陣~
ワー ヤー
伝令「宇文憲将軍! 斉の援軍が、芒山より出撃してきました!
『段』と『斛』の旗を掲げております!」
宇文憲(小関麗奈)「率いているのは……段韶と、斛律光の二人か……厄介ね」
側近「将軍、城からも敵軍が打って出てきましたぞ!」
麗奈「もう! 蝿が飛び回っているかのような鬱陶しさね。
でも、城内の兵は少数。前衛に対処させて……」
光「いくぞ! 必殺……」
光「陵王・突!」
周兵「ぐへっ!」
光「陵王・斬!」
周兵「ひでぶっ!」
「うわぁ。何て強さだ!」
「に、逃げろ~!」
側近「むぅ……前衛が破られつつありますな……」
麗奈「あの、鬼の仮面をつけた将は誰?」
側近「恐らく、蘭陵王高長恭と思われます。
斉の蘭陵王は、仮面をつけて戦場に出るという噂を聞いたことがあります」
麗奈「面白い。アタシが討ち取ってやるわッ!」
側近「斉国公たる貴方様が、御自ら敵と渡り合うなど……」
麗奈「いいじゃない。アタシは斉国公で、アイツは蘭陵王。
釣り合いが取れてるわよッ!」
光「周兵ども! 死にたくなければ速く逃げろ!
アタシは、無益な殺生は好まない!」
麗奈「アンタ。黙って聞いてれば、戦場で何を甘ちょろいこと言ってんの?」
光「誰だ! 悪の手先か!?」
麗奈「悪の手先って……アタシは、斉国公宇文憲。
アンタの首を貰いにきたのよ!」
光「周賊のくせに“斉”国公を名乗るなんて……
そもそも斉って、アタシたちのことじゃないか!」
麗奈「アンタこそ、斉賊のクセに蘭陵“王”だなんて、笑止千万!」
麗奈「それに、はなっからアタシ達は、斉を国だとは認めてませ~ん!」ベー
光「何だと!」
麗奈「やる気?」
光「うおおおっ!!」
麗奈「やあああっ!!」
ガキン!
光(こいつ……!)
麗奈(なかなかやるな……!)
カーン カーン カーン
麗奈「この鉦の音は……退却の合図?」
側近「将軍!」
麗奈「何? 良いところなんだから、邪魔しないでよ!」
側近「斛律光が、側面から奇襲を仕掛けてきました!
後衛の部隊は壊滅しております。ここはお引きを」
麗奈「チッ。仕方ない……蘭陵王、覚えておけ!」
光「あ、待て!」
光「……逃げ足、速いな」
斉兵「いやぁ、助かったぁ」
斉兵「そうだな。これも、殿下が周軍を突破してくれたおかげだぜ」
斉兵「それにしても、殿下は強い。強い上に、敵を殺す姿まで美しい!」
斉兵「いっそのこと、殿下の主題歌でも作ろうぜ!」
斉兵「いいな、それ!」
~洛陽~
光「ただいま戻りました!」
高延宗(三好紗南)「おお、光! 無事に戻ってきたんだね!」
光「あれ、紗南、洛陽に来てたのか?」
紗南「うん。でも、あたしだけじゃないんだよ」
武成帝「蘭陵王よ、よくぞ周賊を撃破した」
光「陛下、鄴(ぎょう)の都にいらしたのでは?」
武成帝「いや、朕自ら周賊を撃滅してやろうと思ったのだが、
そなたに先を越されてしまったのだ」
武成帝「それにしても、蘭陵王は我が国の柱石と言うべきじゃ」
光「アタシ一人の力ではありません。
斛律光、段韶の両将軍の知勇と、陛下のご威光によるものです」
武成帝「うむ。大儀であった……ところで蘭陵王よ」
光「何でしょう、陛下?」
武成帝「わずか五百騎で周の大軍を突破したそうだが、恐ろしくなかったのか?」
光「別に、恐ろしくありませんでした。それがアタシの役目なのですから!」
武成帝「そうか……」
光「陛下、いかがしました?」
武成帝「いや、何でも無い……」
武成帝(……)
~宮殿~
武成帝「斛律光よ、汝の働き見事であった」
斛律光「恐れ入ります」
武成帝「そなたら三人には、褒美として……ん?」
ワイワイ ガヤガヤ
斛律光「おや、外が騒がしいようですな」
武成帝「うむ。軍営の方から、聞いたことの無い歌が聞こえるぞ」
斛律光「ああ、この歌は……」
迫る~ 周軍♪
地獄の軍団♪
我らを狙う 黒い影♪
祖国の平和を 守るため♪
行け 行け それ行け♪
輝く白馬~♪
陵王~ 「突!」♪
陵王~ 「斬!」♪
仮面の陵王 仮面の陵王♪
陵王~ 陵王~♪
斛律光「……この歌は、『蘭陵王入陣曲』でございます」
斛律光「誰が作ったのかはわかりませんが、蘭陵王殿下の戦ぶりはまことに華麗なものでして、
兵達の間にこの歌が流行っております」
武成帝「ほう……朕も若かりし頃、幾つかの武勲を立てたことがあったが、
誰も入陣曲なんぞ歌ってはくれなかった」
武成帝「蘭陵王の人気は、すでに朕を越えておるようじゃの」
斛律光「は、はぁ……」
光『芒山の戦からしばらくの間、斉・周・陳の三国の間で、
戦火が交わることはなかった』
光『周は芒山での敗退から立ち直るために、内政に国力を傾注せざるをえず、
陳は虎視眈々と、他の二国が疲弊するのを待っている。
そして我が斉といえば……』
光『……あまり、祖国の批判はしたくない。
でも、陛下にはもう少し、放蕩を抑えていただきたいのだけど……』
~長安~
木杆(もくかん)「……それで、斉国公にして皇妹たるあんたが、どうして俺達に同盟を持ちかけるのだ?」
麗奈「わかりきったことよ。悔しいけど、先の戦でアタシ達は手痛い打撃を受けた。
軍を立て直す間、斉を野放しにしちゃあ何をされるかわからない」
麗奈「でも、打撃を受けたのは向こうも一緒。
どう? 斉は西や南に兵力を集めざるをえず、北の防備は二の次になってるの。
いまなら斉を略奪し放題じゃない?」
麗奈「それに、昔に受けた侮辱に対して復讐する好機でしょ!」
木杆「確かにな。文宣帝(高洋)には、苦杯を舐めさせられた」
木杆「俺が昔と同じように、斉に金穀を要求したら、
文宣帝の奴は何と言ってきたと思う?」
麗奈「何?」
木杆「『欲しければ、奪りに来い』だとよ」
麗奈「それでアンタは当然、南進したんでしょ?」
木杆「当たり前だろう。しかし、忌々しいが、文宣帝は稀代の戦上手だった。
それに、両翼には段韶と斛律光の二人がいた」
麗奈「でも、文宣帝はもうこの世にいない。
斛律光も段韶も、すでに老いぼれている」
木杆「ああ、そうだとも! 帝位を継いだ武成帝は暗君だと評判だ。
これはまたとない好機だぜ!」
麗奈「アタシの方からは、物資の支援をしてあげるわ」
木杆「それにしてもお嬢ちゃん、アンタも相当悪知恵が働くなぁ!」
麗奈「いやいや、アンタほどでもないわよ」
二人「「グヘヘヘヘヘ!!」」
麗奈「グヘヘヘ……ゴホッゴホッ!」
木杆「おい、お嬢ちゃん、大丈夫か!」
麗奈「な、何でもないわよ!」
~鄴~
紗南「お~い! 光はいる!?」
光「どうしたんだ、紗南? 大きな声を出して」
紗南「突厥が攻めてきたんだよ! 白狼(はくろう)城が危ない!」
光「なんだって!?」
光「それで陛下は、何とおっしゃってるんだ?」
紗南「光とあたしの二人に、
軍を率いて突厥を討伐してこいとの、勅命が下ったの」
光「わかった。すぐに準備するよ」
光(この時機に突厥が攻めてくるなんて、まるで計ったみたいだな……)
光(あ、そうだ、宇文憲だ! あいつなら、これくらい考えるだろう……
あいつが突厥を指嗾したに違いない!)
~白狼城~
紗南「……それで、光は突厥をどう迎え撃つつもりなの?」
光「突厥は、騎馬民族。全軍が騎兵だと考えなきゃだめだ」
紗南「それはわかってるよ。平野でぶつかったら、こっちの被害が増えちゃう」
光「だから、奇策って言うのかな。相手の想像しないような戦術を使わなきゃ」
紗南「なになに。聞かせて?」
光「かつて、前漢の時代。漢は、匈奴族の侵略に悩まされていた。
でも、武帝が見出した衛青(えいせい)と霍去病(かくきょへい)の二人は、
匈奴を打ち破って河南・河西回廊を奪取」
光「そして、匈奴が仕掛けてきた大漠での決戦も、突風と長槍を用いた奇策で勝利を収めた」
紗南「え~。長槍はともかく、神風なんて、そんな神頼みして勝つつもりなの?」
光「そうじゃないよ。この城の近くに、濡河(じゅが)っていう河があっただろ?
それを利用しようと思うんだ」
紗南「濡河ねえ……今の季節、あの河は凍ってるはずだけど」
光「それが肝なんだよ。具体的には……ゴニョゴニョ」
紗南「なるほど……ま、小難しい作戦は光にまかせるよ。
そんなのはあたしの柄じゃないし」
紗南「光には、ガンガンいくのか、いのちをだいじにするのか、
そんな感じで指示して欲しいな」
光(アタシがしたいのは、めいれいさせろ、なんだけどな……)
~濡河付近~
ドドドド
紗南「この馬蹄の響きは……光、敵が攻めてきたよ!」
光「紗南は、打ち合わせ通りの場所で待機。
アタシは突厥軍をそこに追い込む!」
紗南「よーし、まかせなさい!」
紗南「あ、でも……」
光「何だい?」
紗南「あんまり、光一人で敵を倒しすぎないでよ。
あたしの分も残しといてよ!」
光「わかってるって!」
木杆「あいつら、雪壕なんて築いてやがるのか……まあいい」
木杆「てめえら! 突厥の誇りにかけて、奴らを蹂躙しろ!
文宣帝から受けた屈辱、今日ここで晴らすぞ!」
突厥兵「おーう!……って、おわっ!」
馬「ヒヒーン」
ズドーン
木杆「ひ、卑怯な! 雪壕の前に落とし穴なんて掘ってやがったのか!」
光「計算どおり! 敵が雪壕の前で立ち往生してるぞ。
ありったけの矢を射掛けろ!」
ヒュン ヒュン
突厥兵「ぐえっ!」
馬「ヒヒーン」ドサリ
光「いまが好機! 逆撃だ! アタシに続け!」
木杆(こいつら何なんだ。強すぎる……宇文憲、話が違うじゃねえか!)
光「いくぞ! 必殺・陵王稲妻突き!」
ザクッ
突厥兵「がはっ!」
木杆(何が稲妻突きだ。ただの槍の刺突じゃねえか!)
木杆「って、そんなこと考えてる場合じゃねえ。総員、一度後退しろ!
奴らが深追いしてきたら態勢を立て直し、反撃するぞ!」
木杆「くそっ! それにしても、仮面なんてかぶってる気障野郎に負けるとは!」
光「敵が退きはじめたか……皆、追うな!
“今は”このまま逃がしてやるんだ!」
木杆(おかしい。なぜ奴らは追ってこない?)
紗南「ねえ、そこの人。斉軍が追ってこないな~、なんて考えてない?」
木杆「貴様、何者だ!? いつの間に……」
紗南「我こそは、安徳王高延宗! その首もらった!」
突厥兵「木杆様、いつの間にか周囲に伏兵が!」
突厥兵「蘭陵王率いる本隊が、今頃になって追撃してきました!」
木杆「くそ、このままじゃ包囲されちまう。
西だ、敵が手薄な西に逃げるんだ!」
紗南「ほう、経験が生きたな」
紗南「でも、そのまま逃げると、病院で栄養食を食べるハメになる……」
木杆「ゼイゼイ……ハアハア……」
木杆「ここまで逃げれば、一安心だな……ん?」
ピシッ ピシッ
木杆「この音は……まさか……」
木杆「しまった! ここは凍った濡河の上だ!
いくら真冬とはいえ、こんなに大人数で乗ったら……」
バリーン
突厥兵「うわー!」
バッシャーン
「寒い……」ジャバジャバ
「誰か……助けてくれ!」バシャバシャ
「俺、泳げないんだぞ!」アップアップ
紗南「さすが光。生半可な武将には使えない戦術だったね。
3回連続見つめられちゃうよ」
光「ありがとう……でも、ちょっと可哀相になってきたな。
めちゃくちゃ寒そう……」
木杆「くそー。蘭陵王、それに安徳王、正々堂々勝負しろ!」バシャバシャ
紗南「何いきなり話かけて来てるわけ?
時既に時間切れ。もう勝負ついてるから」
紗南「黄金の鉄の塊で出来た斉軍が
皮装備の突厥に遅れをとるはずは無い」
木杆「うるせー!」バシャバシャ
光「う~ん……」
紗南「どうしたの、光?」
光「自分で仕掛けておいてなんだけど、やっぱり可哀相だよ。
助けてあげようかな?」
紗南「どちかというと大反対」
紗南「仏の顔を三度までという名セリフを知らないのかよ」
光(まだ三回も戦ってないんだけど……)
光「そ、それもそうだね……
おーい木杆、しばらく濡河で頭を冷やしたらどうかな?」
木杆「正面からぶつかったら、俺達の圧勝だったのに!」
木杆「お前ら、いつか必ず首を獲ってやる! 突厥の可汗の誇りにかけて!」
紗南「本当につよいやつは強さを口で説明したりはしないからな
口で説明するくらいならあたしは牙をむくだろうな
あたし戦場で首級百とか普通に挙げるし」
木杆「てめえは黙ってろ!」
~斉軍本営~
「やった! またしても蘭陵王殿下が敵を追い払ったぞ!」
「まさに軍神だ!」
「いやいや。安徳王殿下も、素晴らしいご活躍だったぞ」
「よし、一丁やるか!」
紗南「……ねえ、光。兵士達が歌ってるのは何?
光を讃える歌みたいだけど」
光「なんだか恥ずかしいな。前の戦での勝利で、誰かが作ってくれたんだよ。
蘭陵王入陣曲って言うらしい……」
紗南「恥ずかしがることはないって。カッコイイ歌じゃん!」
光「て、照れるな……」
誰だ! 誰だ! 誰だ~♪
軍馬の 波に 踊る影~♪
鬼の仮面の 陵王~♪
白馬に 乗って 駆け出せば♪
必殺戦法 鶴翼だ♪
押せ! 押せ押せ 陵王♪
行け! 行け行け 陵王♪
祖国は一つ 祖国は一つ♪
おお~ 陵王~♪
陵王~♪
紗南「良い歌だな~。いやぁ、これは士気上がるね!」
光(……って、あれ? こんな歌だっけ……?)
~長安~
麗奈「ムキーッ! またしても蘭陵王の奴にやられた!」
麗奈「ううん。他人頼みで戦をしたのが間違いだったのよ。
ここはアタシ自ら出陣して、蘭陵王の首を取る!」
麗奈「兄上!」
武帝「な、なんじゃ?」
麗奈「河東へ出陣する! ちょっくら斉を滅ぼしてくる!」
武帝「わ、わかった……」
武帝(あ、しまった。勢いに押されて、つい許可してしまった)
武帝「ま、まてまて!
河東には蘭陵王のほかに、段韶や斛律光もいるという情報が……」
武帝「あれ……?」
従者「陛下……斉国公様は、すでに出陣されましたが」
武帝「仕方ない。あやつも、一度くらい痛い目を見たほうが良いじゃろう……」
~河東・周軍本陣~
麗奈「これは、芒山の戦の雪辱よ!」
麗奈「さて、この地方を攻略するにはまず、定陽城を拠点に
斉の栢谷城を攻略して……」
伝令「宇文憲将軍、栢谷城から蘭陵王率いる軍勢が出撃してきました!」
麗奈「ぐぬぬ、先手を取られたか……ならば、先鋒の若干顕宝に相手をさせなさい。
その間に、別働軍で蘭陵王の側面を……」
伝令「申し上げます! 若干顕宝将軍が、蘭陵王に捕縛されました!」
麗奈「早っ! 何してるの、あいつは!」
伝令「将軍! 栢谷城に向かった別働軍が、段韶率いる伏兵に迎撃され、
壊滅しました!」
麗奈「あ……ち、ちょっと……」
伝令「大変です!」
麗奈「今度は何!?」
伝令「斛律光が戦場を迂回し、我らの退路を扼さんとしております!」
麗奈「も~ッ! どうなってんのよ!」
~栢谷城~
光「周軍、引き上げていくね」
斛律光「宇文憲も、懲りませんな。
芒山で、我ら三人に敗北したことを覚えていないのか」
段韶「これも、殿下の采配の賜物です……ゴホッゴホッ」
光「大丈夫? 段韶将軍?」
段韶「むぅ……わしも年です。このような大戦は、老骨にこたえます」
斛律光「何を言っている、段韶。天下に戦乱は治まらず、
我らの戦働きはまだまだこれからではないか」
光「そうだよ。
お二人がいればこそ、この国は周や陳に侵略されてないようなものなんだから」
段韶「殿下も人使いが荒い。もっと老人を労わるべきですぞ!」
三人「ははははは!!!」
紗南「あれ、なんだか盛り上がってるね?」
光「あれ、紗南。都にいたはずじゃなかったの?」
紗南「それがさ、陛下が斛律光将軍を
至急呼び戻して来いっておっしゃったから」
斛律光「それがしを、ですか?
周軍はまだ完全に撤退したわけではありますまいに……」
斛律光「ですが、陛下がお呼びとあらば」
光(敵が目の前にいるっていうのに、陛下は何をお考えなんだろう……?)
~長安~
麗奈「あ~っ、もう! どうして斉に勝てないの!?」
武帝「毗賀突よ、少し頭を冷やせ」
麗奈「兄上……」
麗奈「でも! 蘭陵王の首だけは、アタシがとらなきゃ気がすまないの!」
※毗賀突(ひがとつ)……宇文憲の字(あざな)
武帝「そなたの気持ちも分かる。しかし、戦をするだけが能ではあるまい」
麗奈「何か良い考えでもあるの?」
武帝「斉には、蘭陵王の他に、段韶、斛律光といった名将達がおる。
それに近頃は、安徳王なる者も頭角を現しておるそうじゃ」
武帝「いかにそなたでも、戦でこやつらを斃すのは至難。
策謀を用いるしかあるまい」
麗奈「策謀? 例えば?」
武帝「朕が既に術を打っておる。それはな……カクカクシカジカ」
麗奈「……なるほど、そんな術があったのか!
さっすが兄上! よくそんな悪知恵を思いつくわね!」
武帝(それは褒めておるのか、貶しておるのか……)
~鄴・宮殿~
武成帝「う~む……」
宦官「いかがなさいました。陛下?」
武成帝「いや、蘭陵王のことじゃ」
宦官「蘭陵王殿下、ですか?」
武成帝「あやつは、できすぎる。
周や突厥の戦でも、もう少し苦戦すればよかろうに……」
宦官「まことに、可愛げの無い御仁です……
時に陛下は、『蘭陵王入陣曲』なるものをお聞きになりましたか?」
武成帝「ああ。なんとも殺伐とした曲じゃ。
しかし、兵どもが朕ではなく蘭陵王を讃える曲を作るなど……」
宦官「陛下のおっしゃる通りでございます。
そもそも殿下は先帝の御息女でありますから、兵権を握ればいつ陛下に対して謀反を起こすか、
知れたものではありませんぞ!」
武成帝「そなたの申す通りじゃ。謀反の芽は、早急に摘み取っておかねば!」
宦官「……そのことでございますが、近頃、
城下でこのような歌が流行っているのを、陛下はご存知ですか?」
武成帝「どんな歌じゃ?」
『百升飛上天 明月照長安
高山不推自崩 槲樹不扶自豎』
武成帝「……その歌の意味は?」
宦官「明月とは、斛律光将軍の字(あざな)です。
それが長安を照らすということですから、
斛律光将軍が、周に寝返るということでございます」
武成帝「なんと! 斛律光が朕に背くというのか!?」
宦官「斛律光将軍は、天下に武名轟く名将です。
将軍が周に寝返ることになれば、陛下のお命は危のうございます」
宦官「その証拠に、斛律光将軍は、長安に近い栢谷城の前線におりますぞ!」
武成帝「さもありなん。前線から斛律光を呼び戻し、処断してしまえ!」
武成帝「そうじゃ。この際、蘭陵王の奴も殺してしまうのじゃ!……
とは言うものの、蘭陵王は、日頃は慎ましく生活しており、隙が無い。
これといった罪も無いしな……」
宦官「ならば陛下、わたくしめに良い考えがございます」
武成帝「おお、そうか! よし、そちらはお主にまかせる」
~栢谷城~
段韶「ゼイゼイ……」
光「大丈夫? 段韶将軍?」
段韶「年ですかな……私はすでに、齢六十になろうとしています。
これ以上、戦働きはできませぬ」
光「何を弱気なことを言ってるんだ!
周の宇文憲が、また大軍を催してきたっていうのに……
段韶将軍には、まだまだ働いてもらわないと」
段韶「なあに、私が死んでも斛律光がおりますよ。
殿下と彼がいる限り、この国は安泰でしょう……ゴホッゴホッ」
光「段韶将軍!」
段韶「殿下、一つお願いがあるのですが……」
光「何? 何でも言って!」
段韶「私が死んだ後、私の軍は殿下が率いて下され。
自分で言うのも何ですが、精鋭であると自負しております。
我が軍を任せられるのは、殿下を置いて他におりません」
光「そんな……そんな事を言うなよ……まるで遺言じゃないか……」
段韶「殿下……この国を、お頼みします……」
光「段韶将軍……?」
光「段韶! 起きろ! 起きろってば!」
光「……」
光「そ、そんな……」
~陣屋~
紗南「ねえ、光。段韶将軍の具合は……」
光「……」
紗南「まさか……」
光「これも天命だよ。
段韶将軍の軍は、一時的にアタシが引き継ぐことにするから」
紗南「段韶将軍がいたからこそ、周とは互角以上に渡り合えたのに……」
伝令「蘭陵王殿下は! 殿下はいずこに!?」
光「ここにいるぞ!」
伝令「殿下、陛下から勅命でございます。至急都に戻るようにと」
光「え、この時機に?」
紗南「目の前に周軍が迫っているんだよ? それなのに都に戻ってこいだなんて。
斛律光将軍も、先日から都に留められたままだし……
陛下は何を考えているの!?」
光「いや、陛下の、それも勅命とあらば仕方ない。行ってくるよ」
紗南「そんな……」
光「留守は任せたよ。
大丈夫、紗南なら宇文憲相手に遅れをとることはないって!」
紗南「わかった。早く帰ってきてね」
光「うん!」
紗南「あ……」
紗南「光、鬼の仮面を置いて行っちゃったのか……」
~鄴・宮殿~
光「それで、陛下。どのようなご用件で?」
武成帝「ああ。蘭陵王よ、日頃の忠勤を讃え、今日はお主に褒美があってな」
光「何でしょうか?」
武成帝「これじゃ」コトッ
光「この酒瓶は?」
武成帝「お主には、鴆毒を授けよう」
光「な、何故ですか!?
アタシは、微力ながらこの国の為に戦い続けてきました!」
武成帝「おや、お主は己の罪を自覚しておらぬのか。
それ自体が罪なのだがな……よろしい。無知蒙昧なお主に思い出させてやろう」
武成帝「芒山の戦から帰還したとき、朕はこう問いかけたな?
“わずか五百騎で周の大軍を突破したそうだが、恐ろしくなかったのか”と」
武成帝「それに対して、汝は朕を侮辱するかのような答えを返した」
武成帝「“別に恐ろしくありませんでした”と」
光(そんなこと、あったような、なかったような……)
武成帝「恐ろしいと思わなかった。これはつまり朕にたいして言外に
“お前は恐ろしいのか”と侮辱していることになる」
武成帝「ここまで説明すれば、お主がどのような大罪を犯したのか分かっただろう。
さあ、潔く自決するがよい。さもなくば、類は三族にまで及ぼうぞ」
光「三族なんて……陛下も含まれるではありませんか」
武成帝「何を申すか! 貴様、これ以上罪を重ねるつもりか!」
光「ときに陛下、斛律光将軍はどうなりました?
アタシが死ぬのは、まあ、良しとしましょう。しかし今、周の大軍が迫っております」
武成帝「斛律光なら、処刑したぞ」
光「な……! 今、何と!?」
武成帝「何度も言わせるな。斛律光は処刑した。
あ奴は、長年斉に恩を受けておきながら、周へ寝返るつもりでおったのじゃ」
光「なんてことを……もう……この国はお終いだ……」
武成帝「何を言っておる。お主がおらずとも、西方の守りには段韶と、
あの生意気な安徳王がいるではないか」
光「……段韶将軍は、アタシが出立する直前に亡くなりました」
武成帝「なんじゃと!?」
宦官「陛下」ヒソヒソ
武成帝「何じゃ?」
宦官「斛律光、段韶の両将軍を失った今、周に太刀打ちできるのは蘭陵王殿下しかおりません。
安徳王殿下も、“気力絶異”と称される勇将であられますが、
流石にお一人では……」
宦官「蘭陵王殿下を、此度の戦で使い捨ててしまうのです。
戦場で、名誉の戦死をさせれば良いのです」
武成帝「言われてみれば、そうじゃな……」
光(斛律光将軍も、段韶将軍もいない……
そのうえ、いままで国家のために尽くしてきたアタシも、
死を賜ることになった……)
武成帝「蘭陵王よ、今一度貴様に贖罪の機会をやろう。周軍を打ち払って参れ」
光(もう疲れた……この国のために働くのは……)
武成帝「おい、蘭陵王よ、聞いておるのか!」
光(こんな国……滅びてしまえば良いんだ……)スッ
武成帝「待て、早まるな!」
光「」ゴクゴク
武成帝「何をしておる! 早く吐き出せ!」
光「」ドサッ
光(ああ……なんだか体の感覚がなくなってきた……
陛下が何かおっしゃっているみたいだけど、もう何も聞こえないや……)
光(紗南……逃げるんだ……
こんな国のために、命を投げ出す必要は無い……)
光(君だけは必ず……生き延びてくれ……)
~栢谷城~
紗南「何だって!?」
側近「確かな情報です。都にて、斛律光将軍と蘭陵王殿下が処刑されました」
紗南「我が主君ながら、何て馬鹿なんだろう!
段韶将軍は天命だったと諦められるけど、光と斛律光将軍の二人なくして、
どうやってこの国を護れって言うの!?」
伝令「申し上げます! 周軍が攻めて来ました! その数、およそ二十万!」
紗南「二十万!? 周も、そんな大軍を率いてくるなんて……」
伝令「此度の周軍は、宇文邕による親征とのことです」
紗南「周主みずからお出ましってわけか……」
側近「殿下、この国はもうお終いです。この城は放棄しましょう。
これ以上、我らが陛下に忠を尽くす必要がありますか?」
紗南「いや、まだ負けたわけじゃない」
側近「何と?」
紗南「周は大軍。でも、敵の国主自ら戦場に出てきてるってことは、
これを討てば逆転できる!」
側近「無謀です!」
紗南「やってみなきゃわかんないよ!」
側近「仕方ありません……殿下は、一度決めたら何を言っても曲げませんからね」
紗南「ゴメン……でも、これが最後の好機なんだよ。この国を救う、最後の……」
紗南(そうだ、光の置いていった仮面がある)
紗南(光、一度だけで良い。あたしに力を貸して!)
~周軍・本営~
武帝「毗賀突よ、此度の戦、勝てるだろうな?」
麗奈「兄上がお考えになった、あの歌。あれが効いたわね。
あんな歌を根拠に、国家の功臣を処刑するだなんて、
武成帝の程度が知れるわ」
麗奈「これも、兄上の悪知恵あればこそよ」
武帝(だから、それは褒めてないだろう……)
麗奈「段韶は病で、斛律光と蘭陵王は処刑されて……
あの三人さえいなければ、斉軍なんて弱卒の集まりにすぎないわ」
麗奈(できれば、蘭陵王はこの手で討ちたかったけど……)
武帝「最早、恐れることは無いということじゃな。このまま斉を攻め潰してしまえ!」
伝令「申し上げます! 敵が城より打って出ました!」
麗奈「自殺行為ね……前衛の中央を下げて、両翼は前進。翼包囲するのよ!」
部将「敵が強すぎます! 前衛が突破されました!」
麗奈「馬鹿な! 斉軍に、まだそれほどの武将がいたなんて!」
麗奈「それで、突出してきている奴は何者なの?」
部将「それが……白馬に跨り、白銀の鎧を纏い、そして……」
麗奈「まさか……」
部将「鬼の仮面をつけております!」
麗奈「そんな! 蘭陵王は死んだはずじゃ……!」
ワー ワー
麗奈「って、そこまで来てるじゃない!」
紗南「見つけたぞ! 斉国公宇文憲に、武帝宇文邕だな!」
麗奈「くっ! アンタ、処刑されたんじゃなかったの!?」
紗南「やっぱり、あの変な流行り歌は、お前の策略だったのか!」
麗奈「げえっ! バレた!」
麗奈(でも、考えたのは兄上だし……)
紗南「あたしの怒りが有頂天になった!」
麗奈「何を訳わかんないことを。言葉は正しく喋れ!」
麗奈(あれ? 前と雰囲気が違うような……)
紗南「戦いの最中に、何考え事してるんだ?
あまり調子に乗ってると裏世界でひっそり幕を閉じることになるぞ!」
麗奈「また意味不明なことを! これでもくらえ!」
ブンッ
紗南「おっと!」カカッ
麗奈「くそっ! 素早い奴……」
麗奈(でも、これでわかった……蘭陵王なら、まともに打ち合おうとするはず。
こいつは攻撃を避けてる。やっぱり偽物だ)
麗奈「偽物の蘭陵王に、このアタシが討てるとでも思ってんの!」
紗南(な! どうして偽物だって分かったんだろう……?)
麗奈「隙あり!」
ズバッ
紗南「しまった!」
ピシッ
紗南(仮面が……)
カラン カラン
紗南(真っ二つに、割られた……)
麗奈「皆、恐れることはない! 見なさい、こいつは偽物よ!
蘭陵王じゃない!」
シーン
麗奈「ちょっと! なんで皆反応しないのよ!」
周兵「だって……ねえ?」
周兵「偽物だっていわれても……」
周兵「俺達、蘭陵王の仮面しか見たことないし……」
周兵「いや、充分強いでしょ……」
麗奈(あ、そうか、蘭陵王はいつも仮面をつけてたから、
逆に素顔がわからないのか)
麗奈(……って、良く考えたら、アタシもアイツの素顔知らない!)
麗奈「そんなこと考えてる場合じゃな~い! 今すぐこいつを捕らえろ!」
周兵「お、そうだった! 皆、畳み掛けろ!」
ワーワー
紗南「くっそ~! あと一歩だったのに!」
~周軍・本営~
麗奈「ねえアンタ、この数日間何も食べてないそうじゃない」
紗南「……」
麗奈「人が話しかけてるんだから、何か言いなさいよ」
紗南「もう……疲れた」
紗南「結局、周軍の進むところ、斉の城の殆ど戦わずして開城してる。
斉の人心は、とっくの昔に陛下から離れていたんだ。
一体あたしは、何の為に戦ってきたんだろう……」
麗奈「……ねえ、一つ聞いても良い?」
紗南「何?」
麗奈「蘭陵王のヤツ、天下統一するとかいう野望は持ってなかったの?」
紗南「は……?」
麗奈「アタシが言うのも変な話だけど、もし蘭陵王が生きていて、
十全にその能力を活かせていれば、斉がこの国を統べることもできたんじゃないの?」
紗南「天下統一か……光には、似合わないな」
麗奈「どういうこと?」
紗南「光はね、常に民のことを考えていたんだ。
天下統一の為に戦を起こせば、それこそ何十年も戦いが続くだろうし、
その間、民は重税と戦火に苦しむことになる」
紗南「それよりもむしろ、天下が斉・周・陳の三国に分かれている状態なら、
軍事的な均衡が取れ、逆に戦が少なくなる。
三国がそれぞれに、国を治めていれば良い」
麗奈「フン……蘭陵王って、随分小さい器だったのね」
紗南「なんだと!」
麗奈「蘭陵王は、もう死んじゃったから、アイツと雌雄を決する機会はもう無い……
それって、なんだか悔しいでしょ? 勝ち逃げされたみたいで」
麗奈「だからアタシは斉国公として、周の武帝の皇妹として、この国を統べてみせる!」
紗南「宇文憲……あんた、本当は悪い人じゃないのかもね」
麗奈「ちょっと、アタシは周国でも令名轟くワルなのよ!
甘っちょろい理想を抱いていた蘭陵王とは、格が違うのよ!」
麗奈「ま、アンタは指を咥えて見てなさい!
天下の名将宇文憲が、アンタの祖国を滅ぼす軌跡を」
麗奈「そして宇文憲の名が、周の天下統一の功臣として、
歴史に永久不滅に刻まれる様をね!」
麗奈「アーッハッハッハ……ゲホゲホ」
紗南「だ、大丈夫?」
麗奈「う、うっさい!」
紗南(とても、“智勇、世に冠し、攻戦すること神の如し”
なんて謳われている名将には見えないんだけどな……)
紗南(こんな奴に率いられて、本当に周は天下統一なんてできるのかなぁ?)
麗奈「アンタ、いま失礼なことを考えていたでしょ!」
紗南「そ、そんなことないって!」
紗南(ま、好きにすれば良い。どのみち、天下の形勢は覆りようがないんだから……)
麗奈「……で、アンタはどうするの?」
紗南「どうするって?」
麗奈「アンタ、いつまでもウチの捕虜になっているタマじゃないでしょ」
紗南「さて、どうかな?」
麗奈「まったく……」
麗奈「コホン……今からアタシが言うのは、独り言だから!」
紗南「は?」
麗奈「あー、そういえば、北方の晋陽って城が空いてるなー。
北に寄りすぎているから、軍事上何の意味も無いなー」
紗南(それって……)
麗奈「しまった。関門の手形を落としてしまったなー。
誰かに拾われたら大変だー」
ポイッ
紗南「……」
麗奈「……何してるのよ。さっさと行きなさいよ」
紗南「ありがとう、宇文憲。この借りは、いつか必ず返すから!」
タッタッタ…
麗奈「……」
麗奈「フン。精々長生きすることね、安徳王……」
おわり
・読んで下さった方、ありがとうございました。
・蘭陵王(高長恭)は、中国南北朝時代の斉の王族です。
金墉城に援軍として駆けつけた際、味方が敵の罠だと勘違いして開門してくれなかったので、
冑を脱いで素顔を晒したことから、「美貌を隠すために、仮面をつけて戦場を往来した」という逸話が生まれました。
史書にわざわざ「音容兼美」と記されているので、よほどの美男子だったのでしょう。
・周、陳、突厥などの外敵を打ち払い、帝の放蕩によって崩壊していく斉を支え続けましたが、
あまりにも武功を立てすぎたために、後主に嫌疑をかけられ、死を賜りました。
・蘭陵王の死後、彼の遺志は弟の安徳王(高延宗)に継がれました。
平陽の戦いにおいて、安徳王は周の武帝(宇文邕)を追い詰めましたが、後一歩届かず、
以後斉は滅亡へと突き進んでいくことになります。
以下は作者の過去作です。
歴史・古典ものですが、興味のある方はどうぞ。
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乙
中国の将軍は末路哀れな人が多いよな
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