武内P「また、捕まってしまいました」 (89)
未央「あー……それなら仕方ないかー」
凛「正直、プロデューサーが職務質問されるのには慣れたよね」
卯月「も、もう! それで、大丈夫だったんですか?」
武内P「今回は、二人の内一人が以前、その……お世話になった方だったので」
未央「あはは! 警察の人の方も慣れて来てるじゃん、それ!」
凛「ふふ、警察にお世話になるのに慣れるって、物凄く人聞きが悪いよね」
卯月「ふ、二人共~! あんまり笑っちゃかわいそうですよ!」
武内P「……」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1509362547
未央「でも、珍しくプロデューサーが居ないからビックリしたよ」
凛「うん。この時間は、いつもデスクに座って怖い顔してるから」
武内P「怖い顔、ですか?」
卯月「し、真剣な顔って事ですよ! ね、凛ちゃん!」
凛「……うん、そうだね。ごめん、からかいすぎた」
武内P「いえ、渋谷さんの指摘ももっともですので……」
未央「あーあー! しぶりんがプロデューサーいじめたー!」
凛「ちょっと未央! 怒るよ!?」
卯月「私はプロデューサーさんの真剣な顔、その、カッコイイと思いますよ!」
武内P「島村さん……ありがとう、ございます」
二人「……」
未央「でもさ、しまむー」
卯月「え? なんですか?」
未央「プロデューサーが真剣な顔をしてると、警察に捕まるんだよ」
卯月「ええ~っ!? ど、どうしてそうなるんですか?」
凛「私達はもう慣れたけど、卯月も実は最初怖かったんじゃないの?」
卯月「それは……その……」チラリ
武内P「……」
卯月「ええと……はい……」
武内P「……」
武内P「そう、だったのですね」ションボリ
卯月「で、でも、警察に捕まる程じゃないと思うんです!」
未央「いいや、甘い! 甘いよしまむー!」
凛「卯月って、プロデューサーが捕まってるのそんなに見てないよね」
卯月「それは、そうですけど……」
未央「これはね、この前の休みにプロデューサーと買い物に行った時の話なんだけど」
凛「待って、その話は初耳なんだけど」
未央「あれ? 言ってなかったっけ?」
卯月「き、聞いてませんよー!」
未央「ゴホン! まあ、話は最後まで聞こうよ二人共」
凛「……ふーん、買い物ね」
卯月「休みに……ですか」
未央「そう! 休みに、買い物に行った時の事――」
武内P「あの、誤解の無い様に申し上げますと、ネットで公開する写真の撮影を兼ねてですので」
二人「ああ、成る程」
未央「――って、もうちょっと二人をからかわせてよプロデューサー!」
武内P「は、はぁ……」
凛「まあ、そんな事だろうとは思ったけど」
卯月「……」
未央「とにかく、プロデューサーと撮影がてら買い物に行ったんだけどさ」
凛「大丈夫、もう話のオチは読めたから」
未央「そりゃないよしぶりーん!」
凛「どうせ、ちょっと目を離した隙にプロデューサーが捕まってたんでしょ?」
武内P「……」
未央「まあ、そうなんだけどね。一日付き合ってもらうつもりが、午前中でお開きだよ」
武内P「……その節は、ご迷惑をおかけしました」
未央「ちょ、良いって良いって!」
未央「それにそのー、た、楽しかったからさ///」
武内P「はい。時間は短くなりましたが、十分、いい笑顔が撮れたと思います」
未央「え、えへへ///」
卯月「……」
凛「ふーん、未央の撮影の時は街中で捕まったんだ」
未央「うん。でも、『ああ、またか』って思うだけだった」
武内P「……そう言っていただけると助かりますが、複雑です」
卯月「……」
凛「私と公園に行った時も捕まったよね、プロデューサー」
未央「あれ? なにそれ初めて聞いた」
凛「うん。今、初めて言ったから」
卯月「……」
凛「私の時は、ハナコと一緒の撮影だったんだよね」
未央「へえ、それで公園まで散歩がてら?」
凛「そう。散歩コースじゃないんだけど、ね」
武内P「……」
凛「公園の中をハナコを連れて歩いてたらさ、後ろを見たらプロデューサーが居なくて」
武内P「……渋谷さんにも、度々ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
凛「別に良いよ、気にしてない」
凛「それに……休みの日にプロデューサーとハナコと三人で散歩なんて、思ってもなかったから」
武内P「はい。アイドルの時とは違った、渋谷さんの自然体の魅力が撮影出来ました」
凛「……も、もう///急にそういう事言うとビックリするから///」
卯月「……」
未央「でもさ、写真撮影ならスタジオでも出来るよね?」
凛「うん。それは私も気になってた」
武内P「今回の撮影のコンセプトは、皆さんのリラックスした、自然な姿です」
二人「リラックス?」
武内P「はい。ですので、お二人が趣味を楽しんでいる様子を撮影しようと」
未央「趣味って……前に、趣味がショッピングって言ったの覚えてたの?」
凛「私も、ハナコの散歩って言ったの大分前だと思うんだけど……」
武内P「勿論、覚えています。とても、大事な事だと思いますので」
二人「……」
二人「……///」
卯月「……」
未央「――よっし! 今日は、気合入れて頑張っちゃおうかな!」
凛「――だね。プロデューサーも休みの日に付き合ってくれたんだし、こっちも頑張らないと」
武内P「……お二人とも、今日のレッスン、頑張ってください」
未央「まっかせて! それじゃ、ボイスレッスンで美声に磨きをかけますか~!」
凛「私はトライアドの方でダンスレッスンだ。……それじゃ、行ってくるね」
武内P「お二人とも……いい笑顔です」
二人「……」
二人「そればっか!」
ガチャッ……バタン
卯月「……」
卯月「……」
武内P「? 島村さん?」
卯月「へっ!? は、はい! 何でしょうか!?」
武内P「あの、今日は島村さんもレッスンの予定があったと」
卯月「そ、そうですね……」
武内P「……」
卯月「……」
武内P「あの……何か、悩みでも?」
卯月「えっ? ええと、別に、悩みという程の事では……」
武内P「……」
卯月「……」
武内P「島村さん、まだ、レッスンまでは時間があります」
卯月「そ、そうですね」
武内P「私で良ければ、話していただけませんか」
卯月「で、でもその……ちょっと、どうしようも無い事というか」
武内P「それでも、話してください」
卯月「ぷ、プロデューサーさん?」
武内P「はい。私は、貴女のプロデューサーですから」
卯月「……」
卯月「……わかりました」
卯月「……プロデューサーさんは、休みの日に二人と出かけたんですよね?」
武内P「はい。あくまで撮影のため、ですが」
卯月「も、勿論お仕事のためだってわかってるんですよ!?」
武内P「……すみません、続けてください」
卯月「え、ええと……お仕事だってわかってても、二人がちょっぴり羨ましいなぁ、って」
武内P「……それは」
卯月「プロデューサーさん、私の趣味って覚えてますか?」
武内P「それは……はい、覚えています」
卯月「――友達と長電話」
卯月「えへへ、これじゃあ、お休みの日に付き合って貰えないなぁ、って」
武内P「……島村さん」
卯月「だ、だけど、こればっかりはしょうがないですもんね!」
武内P「……島村さん」
卯月「って、もうこんな時間! 私も着替えて、レッスンに行かないと!」
武内P「ま、待ってください!」
卯月「我儘言っちゃってすみません! 私、二人よりお姉さんなんだからしっかりしないとですよね!」
武内P「……」
卯月「それじゃあ、島村卯月、今日もレッスン頑張ります!」
ガチャッ……バタンッ
武内P「……」
・ ・ ・
卯月「……プロデューサーさん、困った顔してたなぁ」
卯月「……」
卯月「ううん、今からレッスンなんだか、頑張らないと」
オーネガイ♪シーンデレラー♪
卯月「? 電話?」
卯月「誰から……って、ぷ、プロデューサーさん!?」
卯月「どうしたんだろう……も、もしもし?」
武内P『島村さん。少しだけ、宜しいでしょうか?』
卯月「え? は、はい」
武内P『島村さんの趣味にその、私が付き合うのは難しいです』
卯月「……はい。プロデューサーさん、忙しいですし」
武内P『……ですが』
卯月「?」
武内P『私はプロデューサーで、友達と、という訳ではないですが……それでも構わないでしょうか?』
卯月「へっ?」
武内P『長電話も、その……そもそも、長く会話をするのが得意でないもので』
卯月「……」
卯月「……ふふっ!」
武内P『島村さん?』
卯月「もう! そんな事を気にして、電話までかけてきてくれたんですか?」
武内P『それはその……』
武内P『……』
卯月「……プロデューサさん、ありがとうございます♪」
武内P『島村さん。貴女は、今、笑顔でいますか?』
卯月「はい♪」
卯月「あ、でも、お休みの日に付き合って貰ってる訳じゃないから、ふふっ、どうでしょう!」
武内P『いえ、それに関しては、その……』
卯月「えっ?」
ちひろ『ぷ、プロデューサーさん!? 休日出勤はやめてくださいって言ってるじゃないですか!』
武内P『……と、言うことですので』
ちひろ『専務になってからそういうのに物凄く厳しいんですから!』
武内P『れ、レッスン、頑張ってください』
卯月「――はいっ♪ 島村卯月、頑張ります♪」
武内P『……それにしても』
武内P『また、捕まってしまいました』
おわり
HTML化依頼出しておきます
10/28(日)まで、あと3日は書きます
前スレ
武内P「ムラムラ、ですか」
武内P「ムラムラ、ですか」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509540801/)
被ってるのもあるだろうけど結構書きましたなぁ
はい、終わります
んで、書き忘れそうなので書いておきます
俺が書いた中で使いたいのがあったら好きに使って良いよ
ネタでも形式でも遠慮なんかせずガンガン使って
どうやったらそんなガンガン質量書けるのか知りたいわ
まとめておきます
武内P「大人の魅力、ですか」
武内P「大人の魅力、ですか」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1510490903/)
武内P「便秘、ですか」
武内P「便秘、ですか」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1513243315/)
武内P「起きたらひどい事になっていました」
武内P「起きたらひどい事になっていました」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1510316855/)
武内P「結婚するなら、ですか」
武内P「結婚するなら、ですか」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1510232193/)
武内P「クローネの皆さんに挨拶を」
武内P「クローネの皆さんに挨拶を」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509970245/)
武内P「あだ名を考えてきました」
武内P「あだ名を考えてきました」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1510055875/)
武内P「アイドル達に慕われて困っている?」
武内P「アイドル達に慕われて困っている?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509802732/)
武内P「今日はぁ、ハピハピするにぃ☆」
武内P「今日はぁ、ハピハピするにぃ☆」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509708830/)
武内P「『次はお前だ』」
武内P「『次はお前だ』」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509609178/)
武内P「ムラムラ、ですか」
武内P「ムラムラ、ですか」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509540801/)
(9/3で速報落ちの間、↓2スレでムラムラに戻る)
武内P「担当Pの浮気に困っている?」
武内P「担当Pの浮気に困っている?」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1536074352/)
武内P「渋谷さんのお尻にマイクが!?」
武内P「渋谷さんのお尻にマイクが!?」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1538909260/)
単発
武内P「さいきっく・おいろけビーム」
武内P「さいきっく・おいろけビーム」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509196255/)
武内P「ドスケベボディです」
武内P「ドスケベボディです」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509290473/)
武内P「トイレに、行かせてください」
武内P「トイレに、行かせてください」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509882262/)
俺P「ちょっとヤダ、何よ!」市原仁奈「!?」
俺P「ちょっとヤダ、何よ!」市原仁奈「!?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1510144572/)
ルパン三世 Gifted Cinderella 魔法のトワレ
ルパン三世 Gifted Cinderella 魔法のトワレ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1512567189/)
興水幸子「腹パンしてやる」
興水幸子「腹パンしてやる」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1504344912/)
未央「明るい笑いを振りまいて♪」
未央「明るい笑いを振りまいて♪」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1512131825/)
ナターリア「安価で、高級事務所前ズシだゾ!」
ナターリア「安価で、高級事務所前ズシだゾ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1529889347/)
七海「ソイヤッ!」美波「チンポソイヤッ!」
七海「ソイヤッ!」美波「チンポソイヤッ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1523106969/)
市原仁奈「マンモスの気持ちになるでごぜーます!」
市原仁奈「マンモスの気持ちになるでごぜーます!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1519617184/)
市原仁奈「ゼブラの気持ちになるでごぜーます!」
その他
ドモン「シコる? 一体何の話だ」
ドモン「シコる? 一体何の話だ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1517798688/)
C.C.「復活したくない、だと?」
C.C.「復活したくない、だと?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1517661443/)
倉石「石澤! SからE! そしてXだ!」
倉石「石澤! SからE! そしてXだ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1535023266/)
華子「オリヴィア、ちょっと腋出して」
華子「オリヴィア、ちょっと腋出して」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1535986572/)
ワガハイに代わり、大王にならんか?
ワガハイに代わり、大王にならんか? - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1538193967/)
ヒロ「ゼロツー、胸が触りたいんだ」
ヒロ「ゼロツー、胸が触りたいんだ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526476383/)
ヒロ「ゼロツーがちっちゃくなった?」
ヒロ「ゼロツーがちっちゃくなった?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526557913/)
ゼロツー「ダーリン、一緒に寝ようよ」
ゼロツー「ダーリン、一緒に寝ようよ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526639610/)
ゼロツー「味はミクが一番かな!」
ゼロツー「味はミクが一番かな!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526731188/)
ゼロツー「入れ替え? ボクは嫌だよ」
ゼロツー「入れ替え? ボクは嫌だよ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526823665/)
ゼロツー「記憶を操作されてる……!」
ゼロツー「記憶を操作されてる……!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526990540/)
ゼロツー「部屋替え?」
ゼロツー「部屋替え?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1527165200/)
ヒロ「そういえば、イチゴとも乗れた」
ヒロ「そういえば、イチゴとも乗れた」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1527491384/)
あとは10本位どこに書いたか思い出せないですが大丈夫です
昔もこれに近いペースで書いてたので極一部を除いてタイトル忘れました
この一年は後で自分で読み返す用にログをほぼ全て取ってるので安心ですね!
「「あっ」」
廊下の、丁度曲がり角。
重なった私の声と、とっても低い声。
もうちょっとで、ぶつかっちゃう所だったわ。
「お疲れ様です」
時刻は、もう夕方。
おはようございます……は、さすがに遅いものね。
ペコリと、両手を前で揃えて、笑顔で会釈。
「お疲れ様です」
それに、同じように彼も返してきた。
私と違って、両手は体の横で、気を付けの姿勢だけど。
……ふふっ!
両手を前で揃えてたら、可愛らしすぎますものね。
「今日も、まだお仕事ですか?」
目の前の彼は、お仕事が恋人の様な人。
勿論、私だってお仕事は好きですよ?
けれど、アイドルは恋愛禁止ですから。
両想いだとしても、公言は……ファンの方が、こう、げんなりしちゃいます……うふふっ!
「いえ……今日は、あがりです」
まあ、珍しい。
貴方が、こんな時間に恋人を置いて帰るだなんて。
……そう思ったのが、顔に出てしまったみたい。
彼が、右手を首筋にやって、何とも言えない顔をしてる。
「明後日から、忙しくなりますから」
言われて、ふと、思い至る。
シンデレラプロジェクトの、二期。
その企画が、いよいよ始まると噂で耳にしていた。
何にせよ、今度の子達も、
「ふふっ! 人気の、二期……うふふっ!」
に、なると思いますよ。
「……はあ」
だって、貴方がプロデュースするんですもの。
とってもキラキラした、良い笑顔のアイドルになると思うんです。
ねっ、そうでしょう?
「……」
もう、困った顔をしてないで、何か言ってくださいな。
・ ・ ・
「「……」」
二人で、エレベーターが来るのを待つ。
私も彼も、あまりお喋りな方じゃない。
だから、無言。
無言で、チラリと横を見る……あ、寝癖。
「……どうか、されましたか?」
私の視線に気付いて、彼がこちらを見た。
背の高いこの人は、同じく背の高い私でも、ちょっと見上げる。
……っとと、いけない、いけない。
「明日も、お仕事ですか?」
寝癖が立ってますよ、とは言わない。
だって、今日一日、寝癖がついてたって事でしょう?
お仕事は終わりなのに、最後の最後で言うのも可哀想じゃないですか。
「いえ、明日は休みですね」
まあ、珍しい。
貴方が、明日一日恋人を放って置くだなんて。
……また、思っていることが、顔に出てしまったみたい。
彼が、右手を首筋にやって、何か言いたげな顔をしてる。
「明後日から、忙しくなりますから」
言われて、ふと、思いつく。
「フレッシュな子達を迎える前に……リフレッシュ?」
――チーンッ。
「……」
エレベーターの、到着音。
まるで、今のダジャレが失敗だったと言ってるみたいなタイミング。
だから、思わず真顔でそっちを見たら、
「……っふ」
横から、空気が漏れるような、笑い声が。
「……」
スタスタとエレベーターに乗り込み、ボタンに指をかける。
彼は、慌ててエレベーターに乗り込んできた。
ムッとしたけど、今ので、スッとしました。
・ ・ ・
「「……」」
二人で、エレベーター内で、無言。
無言のまま、一階まで降りて行く。
彼は、どこかソワソワしてて。
私は、それがちょっぴり楽しい。
「あ……あの」
私の背後から、意を決した声。
とっても緊張してるみたいじゃないですか。
そんな声を出されたら、ちょっぴり意地悪したくなっても、ね?
ふふっ、仕方ないと思うんです。
「はい、何ですか?」
彼を見ずに、ツンッとすまし声。
言い終わった後、思わず笑いそうに。
だから、コホンと咳払い。
それで、何を仰るつもりですか?
「……すみません」
なんて、消え入りそうな声。
可哀想になっちゃったのと、モヤッとした気持ちが、半々。
また、無言。
早く……エレベーター、着かないかしら。
「あっ……明日の、ご予定は?」
少しトーンの高い、焦った声。
私がさっき聞いたから、話題に選んだのかしら。
だとしたら、少し、手抜きだと思うんです。
答えますけど、その続きはどうなさるつもりですか?
「明日は」
――チーンッ。
「……」
エレベーターの、到着音。
開いていく、ドア。
言葉を遮られて、何も言えずに居たら、
「……っくく」
後ろから、押し殺したような、笑い声が。
「……」
ポチリと、ボタンを押す。
目的の階に着いたエレベーターのドアが、私達を乗せたまま閉まっていく。
彼は、慌ててドアの間に手を滑り込ませた。
・ ・ ・
「カンパーイ♪」
「……乾杯」
居酒屋で、向かい合って、乾杯。
私はハイボール、彼はビール。
二つのジョッキが、カチンッと音を立てる。
……ああ、美味しい。
「まさか、お誘い頂けるなんて」
思ってもみませんでした。
しかも、奢り。
自分のお給金で飲むのとは、また、味わいが違いますね。
ふふっ! 味わいは違っても、どっちも味は良い……うふふっ!
「私も……自分でも、そう思います」
ジョッキが、トンッと置かれた。
琥珀色の液体は、もう、残り半分になっている。
良い飲みっぷりじゃないですか。
これは、私も負けてられませんね。
「ですが、思えば……良いタイミングでした」
良いタイミング?
お通しの、小さな小鉢に入った煮物を口に入れたタイミングでの、一言。
だから、少しだけ首を傾けて、何言わずに質問する。
どういう事ですか?
「……以前のお礼も、出来ていませんでしたから」
お礼?
一体、何の……あっ。
この、ひじきとお豆の煮物、美味しい。
……ええと、お礼……お礼……。
「お礼をされる様な事をした覚えが……」
思い出そうとしても、覚えがありません。
けれど、何か良いことをしたんですよね。
それで、美味しく、楽しく、お酒が飲めるなら。
「ふふっ! ちくわを、ただちに食わねば……うふふっ!」
小さな、可愛らしい磯辺揚げ。
それを口に放り込むと、
「私は、たこわさを……たこはさっと、食べます」
なんて、下手っぴなダジャレが聞こえてきた。
流れる、沈黙。
彼は、ビールのジョッキをグイと煽ると、
「……頑張ります」
なんて、顔を赤くしながら言った。
・ ・ ・
「……ふぅ」
ベッドの中でコロリと寝返りをうって、息を吐く。
私は、アイドル。
彼は、プロデューサー。
解散したのは、とっても早い時間。
「……」
二人で飲むのなら、仕方がないけれど。
それにしても、飲み足りませんでした。
シンデレラだって、ギリギリまで遊んでたのに。
あの人ってば、魔法使いよりも時間に厳しいんだもの。
「……」
コロリ。
ベッドの中で、また寝返り。
「……」
ガバリ。
ベッドの上で、上半身を起こす。
「……」
チラリ。
ベッドの横の、携帯に目をやる。
「……」
ピカリ。
光った。
「……」
光に向けて、手を伸ばす。
つい、と指を滑らせて、メッセージの詳細を確認。
彼らしい、真面目な文面。
……何て返そうかしら。
「……」
――『是非、また誘ってください』
この一文を入れるかどうか。
ほんのちょっとだけ考えて、消した。
「……ふふっ!」
――『次は、今日のお礼に私が奢りますね』
こう言われたら、逃げられないでしょう?
おわり
貼り
天羽斬々「手作り弁当だ、食べるが良い」
天羽斬々「手作り弁当だ、食べるが良い」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1540613779/)
>>35
こうやって、思いついたら我慢せず書いて忘れるのが大事だと思ってます
出来の良し悪しはそんなに気にしてません
覚えてるのを一部
ハルヒ
古泉「射精が止まらなくなりました」
http://punpunpun.blog107.fc2.com/blog-entry-1070.html
東方不敗「えらい美人がそこに居おったわ」
http://minnanohimatubushi.2chblog.jp/archives/1364907.html
ローゼン
水銀燈「お腹の空洞でキノコを栽培してみたわ」
http://punpunpun.blog107.fc2.com/blog-entry-942.html
この二作品と、金時にある古いギアスはいっぱい書きました
あとは、
明久「姉さんと? 一緒に寝てるけど」
http://blog.livedoor.jp/date_o/archives/51016212.html
光太郎「萌? 最近よく聞くなぁ」
https://slpy.blog.fc2.com/blog-entry-2085.html
こんな感じで、数本だけ書いた作品が沢山です
コテ酉はつけない主義なので、ここまで過去作晒したのは初めてです
この一年の俺は、昔の俺と張り合えてると思います
前に過去作晒して質問した時は微妙でしたが、今は断言出来ます
『アイドルマスターシンデレラガールズ』は、数年ぶりに書くきっかけになった作品です
その作品に対して、昔の俺に劣ったまま終わるのでは申し訳が立ちませんでした
なので、これがモチベーションの一つですね!
加えて、本当にスレ住民の方に恵まれたのが非常に大きいです
こんな書き方、いつだって簡単に荒らしてスレを潰せる状態です
それだけじゃなく、板が落ちて一ヶ月以上別板に行ったりもしました
なのに、一年保った
多分、これは物凄い事なんじゃないかと思ってます
ネタ振りや、何でもないと思われてる様なレスにも本当に助けられてたんですよ
書き手としては、最高の環境で書けた一年でした
本当に、ありがとう
コピペブログの管理人さん達も、ありがとう
中には、懐かしい奴だと覚えてたり、思い出したのも居るんじゃないかな?
兎にも角にも、まとめないでくれと頼んで、そうしてくれた事に感謝を
載らなくても良い、って思って良い……ってのを見せたかった
載らないメリットは、この一年の流れを見ればなんとなくわかるかな、と
コピペブログ的には迷惑だろうけどさw
あとはまー、色々あるけどこの辺にしときます
あんまり長くなってもアレですしね
俺はこの板に書きに来たし、皆さんは読みに来たんですから
次がラストです
「……」
シンデレラプロジェクトのプロデュースをして、一年。
この一年は、本当に色々な事があった。
そう……本当に、色々な事が。
「……」
オーディションとスカウトで集められたメンバー。
誰もが個性的で、それぞれ、全く違う輝きを放つアイドル達。
その、眩い光に照らされて、私にも変化があった。
貴女達に変えられてしまった、と言ったら、彼女達はどんな表情をするだろうか。
「……」
やはり、笑顔だろう。
14人が、別々の想いを込めた笑顔を向けてくるに違いない。
私は、プロデューサーだ。
アイドルの方にプロデュースされてしまうとは、とんだ笑い話だと、そう、思う。
「……」
デスクの上の資料ファイルに指を滑らせる。
タイトルは『シンデレラプロジェクト』。
この中には、この一年の、彼女達が歩いてきた軌跡が詰まっている。
勿論、全てではないし、一冊のファイルに収まり切る程、
彼女達は容易く、軽快に階段を登ってきた訳ではないが。
「……」
時に挫折し、苦悩し、涙を流した時もあった。
すれ違いも、衝突も、危機も無かったとは言えない。
だが、それがあったからからこそ、今の彼女達があるのではないか。
「……」
何の壁にもぶつからず、ただ、決められたレールの上を走る。
そこに、本人の意志は存在せず、強引に道を歩ませていく。
……昔の私は、そういった面があったかも知れない。
かつて、私の元を離れていってしまった彼女達は、それを嫌ったのだろう。
「……」
椅子に、深く座り直す。
そして、もう一冊のファイルに、手を伸ばす。
タイトルは『第二期、シンデレラプロジェクト』。
表紙を開き、中のプロフィールを順に見ていく。
「……」
今度は、決して手を離さないと、心に誓う。
見つけて、見失い……そして、また探し出した、シンデレラ達の手を。
・ ・ ・
「――おや」
「部長」
プロダクション内にある、休憩スペース。
その、自販機の前で、今西部長と出会った。
――カタンッ。
缶が落ち、音を立てた。
恐らくだが、缶コーヒーで、喫煙所に煙草の供として持っていくつもりだろう。
喫煙所の設置に関して、部長は本当に努力されていたので。
「缶コーヒーで良いかい?」
「いえ、部長、それは……」
「なあに、遠慮するな」
部長は、鼻歌を歌いながら小銭を投入し、自販機のボタンを押した。
「ちょっと、小銭がいっぱいになってしまってね」
そう言いながら、こちらにコーヒーの缶を差し出してくる。
一瞬躊躇ったが、先の物と合わせてコーヒーの缶は二つ。
受け取らないわけにもいかず、ここは、お言葉に甘えておこう。
「ありがとうございます」
感謝の言葉。
言うべき場面、当たり前の事にも関わらず、何故か部長は少し驚いた顔をしていた。
私の反応は、驚くようなものだっただろうか。
気が付かない内に、私の知り得ない何かをしてしまったのだろうか。
「……ああいや、すまんすまん」
口を開きかけた所を部長に制止された。
その顔には――笑顔が。
ニコニコと、人の良さそうな笑みが浮かんでいた。
一体、どういう事だろうか。
「すみません、ではなく……ありがとうございます、が来るとは思わなくてね」
「えっ?」
言われて、ふと、気付く。
以前の私だったならば、部長の言う通りの反応をしていただろう。
それが、意識せずに、似ているようでまるで違う言葉が口から出た。
小さいようで、とても、大きな変化。
「……」
何と言っていいかわからず、右手を首筋にやり、言葉を探す。
思えば、この癖も部長と接する内に、いつのまにか染み付いていた。
先程の変化も、恐らくは、彼女達の影響だろうと思う。
しかし……どう、返したものか。
「きっと、彼女達の影響だろうねぇ」
自分の中で思い至った結論を言い当てられ、より一層、返しに困る。
部長は、そうなるとわかっていて、先の発言をしたのだろう。
この人は、私を試し、からかうような事を時折する。
・ ・ ・
「――おや」
「部長」
プロダクション内にある、休憩スペース。
その、自販機の前で、今西部長と出会った。
――カタンッ。
缶が落ち、音を立てた。
恐らくだが、缶コーヒーで、喫煙所に煙草の供として持っていくつもりだろう。
喫煙所の設置に関して、部長は本当に努力されていたので。
「缶コーヒーで良いかい?」
「いえ、部長、それは……」
「なあに、遠慮するな」
部長は、鼻歌を歌いながら小銭を投入し、自販機のボタンを押した。
「ちょっと、小銭がいっぱいになってしまってね」
そう言いながら、こちらにコーヒーの缶を差し出してくる。
一瞬躊躇ったが、先の物と合わせてコーヒーの缶は二つ。
受け取らないわけにもいかず、ここは、お言葉に甘えておこう。
「ありがとうございます」
感謝の言葉。
言うべき場面、当たり前の事にも関わらず、何故か部長は少し驚いた顔をしていた。
私の反応は、驚くようなものだっただろうか。
気が付かない内に、私の知り得ない何かをしてしまったのだろうか。
「……ああいや、すまんすまん」
口を開きかけた所を部長に制止された。
その顔には――笑顔が。
ニコニコと、人の良さそうな笑みが浮かんでいた。
一体、どういう事だろうか。
「すみません、ではなく……ありがとうございます、が来るとは思わなくてね」
「えっ?」
言われて、ふと、気付く。
以前の私だったならば、部長の言う通りの反応をしていただろう。
それが、意識せずに、似ているようでまるで違う言葉が口から出た。
小さいようで、とても、大きな変化。
「……」
何と言っていいかわからず、右手を首筋にやり、言葉を探す。
思えば、この癖も部長と接する内に、いつのまにか染み付いていた。
先程の変化も、恐らくは、彼女達の影響だろうと思う。
しかし……どう、返したものか。
「きっと、彼女達の影響だろうねぇ」
自分の中で思い至った結論を言い当てられ、より一層、返しに困る。
部長は、そうなるとわかっていて、先の発言をしたのだろう。
この人は、私を試し、からかうような事を時折する。
・ ・ ・
「……」
廊下を歩いていると、前方から長身の女性――美城専務が。
彼女とは、何度も衝突した。
アイドルのプロデュース方針で……何度も。
その方針の違いは今でも変わらず、しばしば、軽い口論のようにもなる。
「……」
美城専務の改革は、成功したと言えるだろう。
経営者としての彼女は、非常に優秀だ。
強引な手法を取りながらも、寛容さも持ち合わせている。
ロマンチシズムとリアリズムが、同居している方だ。
「……」
彼女のプロデュース方針は、間違っているとは言えない。
経営者としては当然の選択であるし、
多くのファンの方を得るという事に関しては、最短のルートとも言える。
利益を出す、という点に関しては、正しい。
時に、それがアイドルの方の意思を蔑ろにしてしまうのが難点だが。
「……」
だからこそ、私達が――プロデューサーがいる。
会社のために動く経営者ではなく。
アイドルの方のために動く存在として。
……会社人として間違った考え方だろうが。
「……」
それらを理解した上で、美城専務は経営に携わっている。
彼女からしたら、私が一番問題のある人間なのかも知れない。
しかし、その問題をこそ、彼女は望んでいるのでは無いかと思う節もあるのだ。
そうでなければ、今、私はこの廊下を歩いては居ないだろう。
「おはようございます」
距離が近づき、挨拶をした。
「ああ、おはよう」
専務もまた、それに返した。
すれ違いざま、チラリと私の首元に目をやったのは、身だしなみの確認か。
――クライアントに最初に会うのは、アイドルではなく君だ。
かつて言われたあの言葉に従い、注意を払うようにしている。
口元が微笑んでいた様に見えたのは、満足して頂けたからか、
それとも、彼女の態度が丸くなったと、そういう理由だからかは、わからない。
「……」
私達は平行線ではあるが、彼女から学ぶ事は、多い。
特に、その平行線を超えてくる、アイドルの方に関する事は。
だが、意識してお互いあまり話さないようにはしている。
ポエムバトルと言われるのは、私も専務も御免だからだ。
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