武内P「あだ名を考えてきました」 (1000)

未央「えっ?」

美嘉「はっ?」

凛「ふーん?」

武内P「昨夜、三時間程悩みましたが……」

武内P「皆さんのあだ名を考えてきました」

三人「……」

三人「!?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1510055875

未央「いやいやいや、どうしたの急に?」

美嘉「熱でもあるの? マジヤバくない?」

凛「エイプリルフールの時期じゃないよ、プロデューサー」

武内P「いえ、本当です」

未央「……えっ、ウソでしょ?」

武内P「本当に、考えてきました」

美嘉「またまたー★ アタシ達をからかってるんだよね?」

武内P「あの……本当に考えてきました」

凛「ふーん。そう」

武内P「……」

未央「いやー、プロデューサーも冗談を言うんだね!」

美嘉「ホント、アタシもビックリしちゃった★」

凛「まあ、私は最初から冗談だってわかってたけどね」

武内P「あの……本当に考えてきたんですが」

武内P「今西部長の命令で」

三人「……」

三人「!?」

未央「……どう思う?」

美嘉「美城常務……じゃなかった、専務の命令じゃない所が本当っぽい」

凛「待って。まだ本当かわからないから」

武内P「……」

武内P「以前より、今西部長から『あだ名位良いのではないか』と言われていました」

武内P「それで……あだ名で呼ぶのはともかく、考える位はしてみろ、と」

三人「……」

三人「!?」

未央「待って待って! コレ、ガチなやつだよ美嘉ねえ!?」

美嘉「ウソでしょ!? えっ……えっ!?」

凛「ふーん。まあ、私は最初から本当だってわかってたけど」

武内P「……それで、宜しければ、ですが」

三人「……」

武内P「私が考えてきたあだ名を聞いて、感想を頂けないでしょうか?」

三人「……」

三人「!?」

未央「ぷ、プロデューサー?」

美嘉「アタシ達に感想を聞くってことは……?」

凛「……もしかして」

武内P「……はい、皆さんのあだ名も考えてきています」

三人「!?」

武内P「あ、いえ、まだ全員分は考えていないのです」

三人「……」

三人「!?」

武内P「今、この場に居る中で考えてきているのは……」

三人「……」

武内P「本田さんと」

未央「うっし! うっし、きた! 未央ちゃんの時代がきた!」

凛「ふーん。ってことは、残りは私? 当然だよね、アンタ、私のプロデューサーだし」

美嘉「……」

武内P「あ、いえ……城ヶ崎さんです」

美嘉「!?」

凛「……」

凛「!?」

未央「美嘉ねえ……美嘉ねえ!」

美嘉「未央……未央!」

未央「燃やせ♪」

美嘉「友情パッションは♪」

未央・美嘉「ミツボシ!☆☆★★★★★★★」

未央「もー! 美嘉ねえったら、★多いよ!」

美嘉「ゴメンゴメン★ テンション上がっちゃってさー★」

武内P「……」

凛「……」

凛「……でもさ、プロデューサーが考えたあだ名なんだよね」

武内P「はい。あくまで私なりに……ですが」

未央「良いんだよ、プロデューサー」

美嘉「そうそう★ 頑張って考えてくれただけでも、ね★」

武内P「本田さん……城ヶ崎さんも……ありがとうございます」

凛「……」

凛「私の分は?」

武内P「その……企画検討中です」

凛「……」

未央「えっと、それじゃあ……聞かせて貰っちゃおうかな!」

美嘉「おっ、未央ったら積極的だねー★」

未央「おっと美嘉ねえ、もしかしたらだけど、ホント、もしかしたらだけどね?」

美嘉「ん?」

未央「私を次に呼ぶ時は、プロデューサーの考えたあだ名を要求するかもよ!?」

美嘉「……ヤバい★ えっ、それ、チョーヤバいんだけど!★」

武内P「……そこまで期待されると、その、緊張します」

凛「……」

凛「未央、あんまり期待しない方がいいよ」

未央「わかってるって! でも、楽しみなんだからしょうがないじゃん?」

凛「……」

武内P「それでは……その、考えてきた本田さんのあだ名ですが」

未央「……!」


武内P「みーちゃん、です」


未央「へっ!?」

美嘉「……ウソ★」

凛「……」

未央「プロデューサー、あの、ちょっと、もう一回言って?」

武内P「? すみません、緊張して声が小さかったかもしれません」

未央「ああまあ、うん、そんな感じ」


武内P「みーちゃん、です」


未央「……えっ? あっ、えっ?」

美嘉「普通に……えっ、普通にカワイイあだ名なんだけど!?」

凛「……」

未央「美嘉ねえ……美嘉ねえ!」

美嘉「未央……ううん★」


美嘉「みーちゃん!」


未央「お、おおおっ! 凄い、なんだか今物凄く私の時代な気がする!」

美嘉「もう完全にみーちゃんの時代★ いよっ、みーちゃん★」

未央「ちょ、ちょっともー! あんまり呼ばないでよー///」

武内P「……そこまで喜んでもらえるとは……考えた甲斐がありました」

凛「……」

未央「それで? プロデューサーは、いつ私をみーちゃんと呼ぶのかな? ん?」

武内P「それは……はい、善処します」

美嘉「ちょっとー、欲張りすぎ★」

未央「えへへっ、いっけね! みーちゃん焦っちゃった」テヘペロ

美嘉「……でもさ、この感じだと」

未央「美嘉ねえのあだ名も……期待出来ちゃいますなー!」

美嘉「やっぱり!? やっぱりみーちゃんもそう思う!?★」

凛「……」

未央「ほらほら! モタモタしてると気が変わっちゃうかもよ!」

美嘉「そ、そんなの有り得ないっしょ★ あだ名聞けないとかナイナイ★」

凛「……」

武内P「それでは……その、考えてきた城ヶ崎さんのあだ名ですが」

美嘉「……!」


武内P「みーちゃん、です」


美嘉「へっ!?」

未央「……ウソ、えっ、また可愛いあだ名じゃん!」

凛「……」


凛「……ん?」

美嘉「ヤダ……ウソ、ホントに……?」

未央「ホントだよ! ちゃんと、可愛いあだ名だよ!」

凛「ねえ、待って」

美嘉「夢じゃないよね? ねえ、これって夢じゃないよね?」

未央「現実だよ! 現実を受け入れて前に進もう!」

美嘉「~~っ!」


未央・美嘉「みーちゃん!」


未央・美嘉「!?」

凛「かぶってるんだけど」

未央・美嘉「……」

未央・美嘉「!?」

武内P「!?」

凛「なんでプロデューサーも驚いてるの」

未央「……あれ、おかしいな」

美嘉「……ちゃんと、見といてって言ったじゃん」

武内P「……!?……!?」

凛「ねえ、プロデューサー」

武内P「し、渋谷さん?」

凛「あだ名を考えてきたのって、この二人以外は誰?」

武内P「それは……新田さんと、前川さんですね」

凛「あだ名は?」


武内P「みーちゃん、です」


未央・美嘉「!?」

凛「みーちゃん、四人いるね」

凛「やっぱりさ、向いてないんだって」

武内P「……」

凛「変に考えるんじゃなくてさ、そのまま呼べば良いのに」

武内P「そのまま……ですか?」

凛「ちゃん付けとかは、頑張るとしてさ」

武内P「ちゃん付け……ですか」

凛「そう。ちゃん付け」



未央・美嘉「……」

未央・美嘉「!?」

凛「渋谷凛。し、ぶ、や、り、ん」

武内P「? 渋谷さん?」

凛「し、ぶ、や、り、ん。ほら、繰り返して」

武内P「……し、ぶ、や、り、ん」

凛「ちゃん付け」

武内P「……ちゃん付け」


未央「ねえ……あれ、名前をちゃん付けで呼ばせようとしてる!?」

美嘉「ウッソ……えっ? それズルくない!?」

凛「今、私が言った中にヒントがあるから。2……ゲフンゲフン」

武内P「2?……! わかりました」

凛「ふ、ふーん? 何がわかったの?」

武内P「渋谷さんの、可愛いあだ名です」

凛「か、可愛いんだ」

武内P「聞いて……いただけますか?」

凛「い、良いけど……」

武内P「それでは……今考えついた渋谷さんのあだ名ですが」

凛「……!」


武内P「ぶーちゃん、です」



おわり

HTML化依頼だしておきます

IDが変わる前に補足です
俺は全部即興で書いてるので予測レスでもなんでもオッケーです


「プロジェクトルームへ戻る所ですか?」


 少し、違和感のある微笑みを向け、千川さんが聞いてくる。
 その違和感がなんなのかはわからないが、気のせいかもしれない。
 今の私は、動揺しきった後で、まともな精神状態とは言えないだろうから。
 そんな私が、誰かの笑顔を疑うのは、あまりにも愚かだろう。


「はい。その予定です」


 戻って、やらなければならない事がある。
 誰にも気づかれないようにと、痕跡を消し去る事にだけ意識を割いていた。
 だが、向き合わなければいけない。


 ――かつて、私の元を――城を去っていった、彼女と。


「あっ、その前に……少し、屈んでもらえますか?」


 千川さんが、チョイチョイと、手で屈むようにと指示してくる。
 何、だろうか。
 身だしなみの確認は十分に行ったはずだが、見えていない所に、問題が?
 私が見なかった場所に、おかしな所があるのだろうか。


「はい。あの、何か問題でも――」



 バシンッ!



「……?」


 顔が、自分の意志とは関係なく、横を向いた。
 続いて、頬に、じんわりとした痛みが広がっていくのが、わかった。
 何が起こったのだろうか。
 あの、


「千川さん?」


 何故、私は、頬を叩かれたのでしょうか?


「何か? 問題でも?」


 千川さんの、こんな表情は初めて見た。
 目を大きく見開き、声は震え、片方の口の端だけ、釣り上がっている。
 向けられる視線は、強く、雄弁に物語っている。



「あるに決まってるじゃないですか!」



 バシリと、また、頬を張られた。
 それだけでは止まらず、手に持っていたクリップボードで頭を何度も叩かれる。
 たまらず立ち上がると、千川さんは手に持っていたものを投げ捨て、胸に拳をうちつけてくる。
 何度も、何度も……涙を流しながら。


「……」


 それを見つめながら、散らばった書類を片付けなくてはと、ボンヤリと考えていた。

  ・  ・  ・

「待ってください! 彼女は、また歩き出そうとしています!」


 千川さんとの一悶着は、ちょっとした騒ぎになった。
 しかし、それを見ていた人間はほんの数人で、それも、終わり際を見られただけ。
 ボンヤリと立ち尽くす私と、泣きじゃくる千川さん。
 私達二人は、すぐに専務に呼び出され、ここに居る。


「結構な事だ。だが、城の門は既に閉じている」


 専務は、パソコンの画面をつまらなさそうに見ながら、言った。
 そして、彼女のデスクに置かれている、私の携帯の画面を見て、フンと鼻で笑う。
 一体、何がおかしいというのか。
 夢を諦めきれずに、また、階段を登ろうとする事の、何が!


「しかし! 一時とは言え、彼女もまたここの人間でした!」
「それが、何か?」


 携帯の画面に映し出されているのは、一通のメールの画面。
 その内容は、


 また、私と――プロデューサーと一緒に階段を登りたい。


 ……そんな、願いだった。
 彼女は、私のせいで、一度はその道を諦める事になってしまった。
 だから……だから、私は――


「っ、うっ……!」


 頭から、血の気が引いていく。
 ソファーから浮き上がりかけた腰をおとし、ソファーに沈み込む。
 そんな私の様子を見つめる千川さんは、とても悲痛な表情をしている。
 専務は、ただ、無表情にそんな私を眺めている。


「彼女を346プロダクションで預かる事は、今後は絶対に無い」


 どこまでも冷たく、言葉は続く。


「逃げ出しておいて、戻りたい? 私がそれを許すと、君は思うか?」


 だが、それでも、


「シンデレラプロジェクトが成功しているのを見て、戻りたい……と」


 それでも――



「夢を見るのは結構だが、寝言を聞き入れる程、この城は甘くは無い」



 それでも、私は……!


「……」


 ……本当は、わかっているのだ。
 専務の言葉の方が、正しいという事を。


「君も、そう思っているのだろう。私よりも強く、そして、複雑だろうがな」


 専務は、私に言い聞かせるように、調子を少しやわらかくした。
 頬杖をつき、少し、面倒そうにしている理由は、わかる。
 彼女は、私の内心に気づいているのだ。
 そして、それをあえて言葉にする事により、ハッキリと認識させようとしている。


「降りた馬車が素晴らしいものだとわかっても、もう遅いのだよ」


 悔しいが、私は、何も反論出来ない。


「既に馬車は走り出し、遥か遠く、手の届かない所まで進んでいるのだから」


 したとしても、一笑に付されて終わりだろう。


「御者は、そのような者のために、馬車を止めるべきではない」


 だが、私は、諦められない。


「私には、城を守る義務がある」


 彼女の、あの、笑顔をもう一度――



「――その中には、君も含まれている」



 わかるね、と、とても優しい、諭すような口調。
 私はうなだれ、唇を強く噛み締めた。


「話は以上だ。この件は、私が預かる……下がりなさい」


  ・  ・  ・


「これで、彼が担当し、城を去っていった者達全員か?」


「はい。間違いありません」


「では、346プロダクションでは一切の関わりを持たぬよう、全部門に通達しよう」


「お願いします。それが、プロデューサーさんには、一番だと思います」


「他の馬車に乗り、彼の前に現れる可能性は?」


「有り得ません。だって、私も近くで見てたんですから」


「力があれば、今の彼女達の様に困難を乗り越え、輝いていただろうから、な」


「はい。それに、今更戻って来たいだなんて――」



「――虫唾が走ります」



おわり

地続きだから台本挟んで奈緒加蓮にします、メモったの忘れてました
寝ます
おやすみなさい

書きます


武内P「辞めてしまった三人、ですか」

未央「うん、やっぱり気になっちゃってさ」

卯月「はい。もし良かったらなんですけど、聞かせて貰えませんか?」

凛「無理にとは言わないけど、どう?」

武内P「……」


武内P「……わかりました、お話します」


未央・卯月・凛「!」

武内P「ですが、名前の方は伏せさせていただきます」

武内P「個人情報ですし、もう、一般の方なので」

未央「オッケーオッケー! 全然問題ないよ!」

卯月「でも、本当に良いんですか?」

凛「プロデューサー、まだ、気にしてるんだよね?」

武内P「……気にしていないと言えば、嘘になります」


武内P「……ですが、今は、貴女達が居ますから」


未央・卯月・凛「……!」ジーン!

武内P「そうですね……一人は、本田さんに似ていました」

未央「えっ、私に?」

武内P「とても明るく、快活で、周囲の人に活力を与えるような人でした」

未央「そ、そんな人が私と似てるって?」

卯月「ふふっ! 未央ちゃんって、そういう所ありますよ!」

凛「そうだね。うん、そうかも」

未央「いやー、ははは……照れますなー///」


武内P「私には、彼女の笑顔が……とても輝いて見えました」


未央・卯月・凛「……」

未央「それでそれで? 他には?」

武内P「そうですね……ある、トラブルがあった時です」

凛「あっ、なんだか覚えのある話だね」

未央「ちょっと、しぶりん!? あの時の話はもうやめよう!?」

卯月「そうですよ! だって、未央ちゃんは戻ってきたんですから」

未央「うん、プロデューサーのおかげでね!」


武内P「あの時は……彼女には随分と助けられました」


未央・卯月・凛「……」

未央・卯月・凛「ん?」

武内P「諦め、くじけそうになった時」

武内P「……その時、彼女は笑ったのです」

武内P「輝くような笑顔で……私が居るから大丈夫だ、と」


未央「お……おう、そっか」

卯月「……なんか、物凄く頼れるリーダーって感じですね」

凛「なんだろう、なんかこう……」

未央「……何? ねえ、どうして二人共、私を見てるの?」

卯月・凛「……」

未央「……」


武内P「彼女は、全てを照らす太陽のような、そんな存在でした」


未央・卯月・凛「……」

未央「そ、そっかぁ、す、スゴイネー、オヒサマハスゴイヨー」

卯月「みっ、未央ちゃん! しっかりしてください!」

凛「でもさ! ほら、もう辞めたんだから!」

武内P「そう……ですね」


武内P「月に二度程会う機会があるので、説得してはいるのですが」

武内P「アイドルのままだと、手に入らない欲しいものを見つけた、と」

武内P「……いつも、そう、笑って誤魔化されてしまっています」


未央・卯月・凛「……プロデューサー」

未央・卯月・凛「……」

未央・卯月・凛「えっ!? 今も会ってるの!?」


武内P「? はい」


未央・卯月・凛「……!?」

未央「月に二回!? 隔週じゃん!」

武内P「ああ、いえ、御実家に住まわれているので、泊まりの時は月一ですね」

卯月「もっとひどいですよ! じ、実家にお泊り!?」

武内P「はい。ご兄弟の方や、お父様も一緒に、飲みに付き合わされ……」

凛「家族公認なの!? えっ、何……何なの!?」

武内P「……彼女が辞めてしまったのは、私の責任ですから」


武内P「泣かせるなと、ご家族の方からも何度も言われてしまっています」


未央・卯月・凛「……!?」

卯月「……みっ、未央ちゃん! 頑張ってください!」

凛「……そうだよ、未央! 頑張って!」

未央「無理だよ! だって……なんか凄いもん!」


武内P「……必ず、彼女とまた、階段を」


未央「想像してた感じじゃないじゃん!」

卯月「ちょっと気になった程度で、聞かなければよかったです!」

凛「ね、ねえ! 欲しいものの、心当たりとかは!?」


武内P「私にも、わかりません」

武内P「聞いた時、一度、はにかみながら駐車場を指さしていたのですが……」

武内P「車ではないそうで――」


未央・卯月・凛「ぴいいいいいいいい!!?」

武内P「? あの、皆さん?」

武内P「! まさか、彼女が欲しいものが……わかったのですか?」


未央「わっかんないなぁ! ほんと、全っ然わかんない!」

卯月「車じゃないなら、バイクですかね! あっ、自転車かも!」

凛「そ、その人の話はもう良いから! 別の人の事教えてよ!」


武内P「……はぁ、わかりました」


未央・卯月・凛「……ふぅ」ホッ

武内P「そうですね……一人は、渋谷さんに似ていました」

凛「ふーん、そうなんだ」

武内P「凛とした佇まい、涼やかな空気の、夜風のような人でした」

凛「わ、私って、そんな感じ?」

未央「あー、わかるわかる。しぶりん、そんな感じだよ?」

卯月「はいっ♪ 凛ちゃんは、私の憧れのアイドルの一人です♪」

凛「も、もう……でも、悪くないかな」


武内P「私には、彼女の笑顔が……とても輝いて見えました」


未央・卯月・凛「……」

凛「それで? 他には?」

武内P「そうですね……これも、先程のトラブルの時です」

未央「おっ、しぶりんが怒鳴った時の事ですな」

凛「ちょっと未央! 仕返しのつもり?」

卯月「でっ、でも! それがきっかけで、何とかなったんですから!」

凛「まあ……そうかも知れないけど」


武内P「あの時は……彼女には随分と支えてもらいました」


未央・卯月・凛「……」

未央・卯月・凛「ん?」

武内P「立ち上がろうにも、力が入らない時」

武内P「……その時、彼女は笑ったのです」

武内P「輝くような笑顔で……私が支えるから安心して、と」


凛「何? ねえ、何?」

未央「まだ何も言ってないって!」

卯月「なんだか……なんだか、モヤモヤします」

凛「言いたいことがあるならハッキリ……待って、言わないで!」

未央・卯月「……」

凛「……」


武内P「彼女は、全てを優しく見守る月のような、そんな存在でした」


未央・卯月・凛「……」

凛「月だったら、満ち欠けするよね、うん、新月とか」

未央「しぶりーん! 気を確かにもって!」

卯月「でっ、でも! もう辞めちゃいましたから!」

武内P「そう……ですね」


武内P「彼女とも、月に二度ほど会う機会があるので、説得しています」

武内P「ですが、支えるためには、時に離れる必要もある、と」

武内P「……いつも、そう、笑って誤魔化されてしまっています」


未央・卯月・凛「……プロデューサー」

未央・卯月・凛「……」

未央・卯月・凛「もう一人の方とも、今も会ってるの!?」


武内P「? はい」


未央・卯月・凛「……!?」

凛「何なの!? 週ごとに、違う女と会ってるってこと!?」

武内P「彼女も御実家住まいなので、愛犬と遊ぶのも、はい、楽しみです」

卯月「また家族公認!? 愛犬って……まさか、お花関係も!?」

武内P「よく、わかりましたね。華道の家元だと、聞いています」

未央「これ、絶対犬はいっぱい居る! 私わかる! いっぱい居る!」

武内P「……彼女が辞めてしまったのは、私の責任ですから」


武内P「責任は取れと、ご家族の方からも何度も言われてしまっています」


未央・卯月・凛「……!?」

未央「……しっ、しぶりん! ファイト! 超ファイト!」

卯月「凛ちゃん! 死ぬ気で頑張ってください!」

凛「無理だよ! だって……華道だよ!? うち、花屋だよ!?」


武内P「……必ず、彼女とまた、階段を」


凛「ふ、フラワーアレンジメントでも始める!? ねえ!」

未央「歴史が違う感出ちゃうよ! 負け戦だよ!?」

卯月「さ、支えるって、御実家の事ですよね!?」


武内P「そう思ったのですが、違うらしいのです」

武内P「今は、何やら修行中との事ですが、その内容も教えて頂けません」

武内P「ですが、花には関係している、と」


未央・卯月・凛「はなああああああ!?」

武内P「? あの、皆さん?」

武内P「! まさか、彼女の言う花が何なのか……わかったのですか?」


凛「わかるわけない! 花屋の娘だけど、全然わからない!」

未央「花じゃなくて、鼻なんじゃない!? ノーズ!」


卯月「も、もうこの話はやめましょう! ねっ!?」


未央・凛「……」

卯月「なっ、何ですか? 未央ちゃん、凛ちゃん?」

未央「……しまむー?」

凛「……卯月?」

卯月「だ、だって……仕方ないじゃないですかー!?」

卯月「嫌な予感がするんですもん! わかりますよね!? ねっ!?」


未央・凛「あと一人の事も教えて!」

がしぃっ!

卯月「んーっ!? むぐーっ!?」ジタバタ!


武内P「……はぁ、わかりました」


卯月「んんーっ!? やめ、むぐぐーっ!?」ジタバタ!

武内P「そうですね……最後の方は、島村さんに似ていました」

卯月「ほらー! 言ったじゃないですか! ほらー!」

武内P「いつも笑顔を絶やさず、穏やかで、優しい人でした」

未央「そんな感じそんな感じ! まだ大丈夫だよ、しまむー!」

凛「うん、まだいけるよ卯月! まだ負けてない!」

卯月「まだ、って何ですか!?」

卯月「っていうか、どうして二人共ちょっとワクワクしてるんですか!?」


武内P「私には、彼女の笑顔が……とても悲しいものに見えました」


未央・卯月・凛「……」

未央・卯月・凛「悲しい?」

卯月「笑顔なのに悲しいって……ど、どういう事ですか?」


武内P「彼女の御実家は、日本でも有数の資産家だったのです」

武内P「そして、彼女は……政略結婚のために、育てられていました」


未央・凛「ぶっちぎりで普通じゃない感じきちゃった!」

卯月「もうイヤー! 聞きたくないです! 助けてママー!」

未央「日本でも有数って……島国vs島村ってこと!?」

凛「だ、大丈夫だよ卯月! 村でも、頑張れば国に勝てると思う!」

卯月「どれだけ頑張る必要があるんですか!?」


武内P「自分には笑顔しかないと言った時の……彼女の笑顔」

武内P「あの時は……はい、怒りを覚えました」


未央・卯月・凛「……」

武内P「そんな悲しげな表情は、笑顔とは言わない、と」

武内P「……その時、彼女は泣いたのです」

武内P「クシャクシャの顔で……私を見つけてくれてありがとう、と」


卯月「笑顔なんて、誰だって出来るもん!」

凛「卯月! このタイミングでそのセリフは違うよ!?」

未央「しまむー! 笑顔! 笑顔を忘れてるよ!?」

卯月「はい! 私、笑顔だけは自信があります!」

未央・凛「……」

卯月「何か言ってくださいよおおおお!」


武内P「彼女は、儚くも美しく煌めく星のような、そんな存在でした」


未央・卯月・凛「……」

卯月「星だったら、燃え尽きたり流れたりします!」

凛「卯月ー! 私達がそれを言っちゃ駄目だから!」

未央「ほっ、ほら! もう辞めたんだし!」

武内P「そう……ですね」


武内P「彼女は、月に一度開催されるパーティーの場で説得しています」

武内P「ですが、もう少しで願いが叶えられるようになるから、と」

武内P「……いつも、そう、笑って誤魔化されてしまいます」


未央・卯月・凛「……プロデューサー」

未央・卯月・凛「……」

未央・卯月・凛「…………パーティー?」


武内P「? はい」


未央・卯月・凛「…………パーティー?」

卯月「パーティーって……ほ、ホームパーリィー?」

武内P「かなり大規模なもので、各界の著名人も多数出席しています」

凛「アンタ、そんな所に顔を出してるの!? なんで!?」

武内P「主催の彼女に招かれるので……はい」

未央「主催!? それ、実家乗っ取ってない!?」

武内P「……彼女が辞めてしまったのは、私の責任ですから」


武内P「そう言えば、彼女のご家族には、お会いしたことがありませんね」


未央・卯月・凛「……!?」

駐車場の看板に、でっかく書いてある一文字は?

凛「……私、卯月の事、忘れないから」

未央「……しまむー、私達、友達だったよね」

卯月「なんで消される感じになってるんですかああ!?」


武内P「……必ず、彼女とまた、階段を」


卯月「頑張ります! 島村卯月、頑張ります!」

未央「いやー、その人のご家族もさ、最期まで頑張ったと思うよ?」

凛「だけどさ、その人の方が、笑顔でもっと頑張ったんだよ」


武内P「そう、ですね。彼女の笑顔には、深みが増した気がします」

武内P「今は、346プロダクションに興味があり、購入しているそうです」

武内P「野菜だとの話ですが、そんな部門はあったかと、疑問に思っています」


未央・卯月・凛「かぶうううううう!?」

武内P「? あの、皆さん?」

武内P「……かぶー、とは?」


卯月「違います! あの、か、かぶ……高木ブー!」

未央「いっ、良いよね! 高木ブー、良いよね!」

凛「そうだね! まあ、悪くないかな!? そう思うよね!?」


武内P「は、はぁ……」


未央・卯月・凛「ねっ!?」


武内P「私も、とても素敵な方だとは思いますが……」

武内P「芸能界では先輩にあたる方なので、年長者なので、さん付けをするべきかと」


未央・卯月・凛「はいっ! すみません、高木ブーさん!」

  ・  ・  ・

未央「……やばああ……やばああ……!」

凛「何なの……!? どういう事……!?」

卯月「……ママ……ママぁ……!」


ちひろ「どうしたの? 三人共」


未央・卯月・凛「ちひろさん!」

未央「なんか、気になって聞いたら、妙に重くて!」

凛「性能……そう! 性能が、なんだか違って!」

卯月「私、大丈夫ですよね!? 消されませんよね!?」


ちひろ「もしかして……辞めた三人の話、聞いたの?」


未央・卯月・凛「……!」コクコク


ちひろ「……あー」

ちひろ「まだプロデューサーさんも気にしてるんだし、駄目よ?」


未央「聞かなきゃ良かったって絶賛後悔中だよ!」

卯月「今日の記憶が消し飛ぶような、スタドリってありませんか? へへ」

凛「卯月、笑顔! 過去最高にまずい顔してるから!」


ちひろ「あの三人なら、そんなに気にしなくて大丈夫よ」

ちひろ「お互いライバル意識をもってて、牽制しあってたもの」

ちひろ「共通の敵を見つけたら協力するだろうけど、基本的に協力しないもの」

ちひろ「……うふふっ、だから、心配しなくても大丈夫よ♪」


未央・卯月・凛「……本当に?」


ちひろ「本当よ。隙を見せたらやられる、っていつも言ってたし」


未央・卯月・凛「……」

未央「……でも、ちょっと気が楽になったかも!」

卯月「はいっ♪ 私は、まだ笑っていられそうです♪」

凛「まだ、とかやめなよ。縁起でもない」

未央・卯月・凛「……」

未央・卯月・凛「あははははっ!」


ちひろ「プロデューサーさんは、貴女達のおかげで、立ち直れた」

ちひろ「それって、とっても凄い事なのよ」

ちひろ「だから皆、自分に自信を持って!」


未央・卯月・凛「はいっ!」ニコッ


ちひろ「ふふっ、いい笑顔です♪」


ちひろ「……貴女達の笑顔、忘れないわ」ボソッ



おわり

書きます


武内P「呼び方を変えたい?」

凛「うん。いつまでも、役職で呼ぶのはどうかなって思って」

美嘉「アタシ達さ、結構長い付き合いになるワケじゃん?」

武内P「そう、ですね」

凛「でも、プロデューサーはいつまでの呼び方変えないでしょ」

美嘉「なら、アタシ達の方から変えて歩み寄ろーって思ったの★」

武内P「……成る程、そういう事でしたか」

凛・美嘉「うん、そうなの」


凛・美嘉「……」グッ!

凛・美嘉(掴みはオッケー!)

武内P「渋谷さん、城ヶ崎さん、お心遣い、ありがとうございます」

凛「別に、気にしなくていいよ」

美嘉「こういう時は助け合いって言うじゃん★」

武内P「そう、ですね」


武内P「ですが、私は今の呼ばれ方のままでm」


凛「ふうううぅぅぅん!!」


武内P「っ!? し、渋谷さん!?」


凛「あ、ごめん。なんとなく、気合を入れたい気分だったんだ」

武内P「そ……そう、ですか」


美嘉(凛、ナイス!)

美嘉(……いや、ナイスじゃないでしょ今の!? どんな気分!?)

武内P「……話を戻させていただきます」

美嘉「そっ、そうだね! で、新しい呼び方なんだけどさ!」

凛「一応、考えては来たんだよね」

武内P「そう、なのですか」


武内P「しかし、私は今の呼ばれ方のm」


美嘉「カリスマァ――ッ!!★★★★★★★」


武内P「っ!? じょ、城ヶ崎さん!?」


美嘉「あっ、ゴメーン! ちょっと、カリスマが溢れちゃって★」

武内P「そ……そう、ですか」


凛(美嘉、ナイス!)

凛(……って、全然駄目だから! 溢れる程カリスマ無いでしょ!?)

凛「とにかく、話を元に戻すね」

美嘉「考えてきた新しい呼び方、知りたいでしょ?★」

武内P「……」


武内P「……そう、ですね」

武内P「私のために時間を割いていただいたのですから、はい」

武内P「私の、新しい呼び方を……教えて頂けますか?」


凛・美嘉「!」

凛「……ふーん。冷静そうに見えて、興味あったんだ」

美嘉「もー! 強がらないで、最初っから聞いとけば良いのに★」


武内P「……はぁ」


凛・美嘉(……よし! 後は――)

凛・美嘉(――打ち合わせ通りにするだけ!)

  ・  ・  ・

まゆ「――歳上の異性と仲良くなる方法?」


凛「うん。まゆなら、良い方法を知ってると思って」

美嘉「まゆちゃんって、担当とすっごく仲いいからさ★」


まゆ「うふ、そうですねぇ」

まゆ「だって、二人は、運命の紅い糸で結ばれてますから♪」


凛「……それでさ、何か良い方法って、ないかな?」

美嘉「……手軽に出来る方法だと、嬉しいなー」


まゆ「はい、まゆがあの人と仲良くなるのは、全てが手軽ですよ」

まゆ「運命の紅い糸が、そうなるように導いてくれてますから♪」


凛・美嘉「……」

まゆ「まゆと、あの人の小指には約束のリボンがかかってるんです」

まゆ「それをたぐり寄せるだけで、絆が深まっていく……♪」

まゆ「ねっ? とっても簡単でしょう?」


凛・美嘉「……」


まゆ「うふ、二人には見えますか? この紅いリボンが♪」

まゆ「血のように真っ赤で、とっても綺麗ですよねぇ」

まゆ「まゆと、あの人の心臓を繋げる、一本n」


凛「ふーん!」

――ヒュッ!


まゆ「? 凛ちゃん? 今、何を?……チョップ?」


凛「そのリボン、断ち切ったから」


まゆ「!?」

>>138
一番上に、


ちょっと前


を追加で

まゆ「断ち切った? 何を?」


凛「運命の紅いリボン」


まゆ「……そんなの、すぐに結び直せば良いんですよ♪」

まゆ「ほどけないように……きつく、きつく」

まゆ「うふ、前よりも、もっと強い絆が生まれちゃいますね♪」


美嘉「……カー……リー……スー……マー……!」

ぐぐっ……!


まゆ「? 美嘉ちゃん? あの、何を?」


美嘉「波あああぁぁぁ――――っ!!★★★★★★★」


美嘉「……ゴメンゴメン★ 跡形もなく消し飛ばしちゃった★」


まゆ「!?」

凛「美嘉、ナイスカリスマ」

美嘉「サンキュ★ 凛も、ナイスチョップだったよー★」

パンッ!


まゆ「……二人共、真面目な顔で何を言ってるんですか?」

まゆ「まゆ達の絆が、今のに負けるとでも?」

まゆ「……うふ、おふざけもいい加減にしてくださいね♪」


凛「ふざけてなんかない。私は、運命を断ち切るよ」

美嘉「確かに、アタシ達じゃ二人の間には割って入れない」


まゆ「そうです! まゆとあの人は、添い遂げる運命で――」


凛・美嘉「――でもっ! 地味な嫌がらせは出来るっ!」


まゆ「っ……!?」

まゆ「……何が望みですか?」


凛「良いね。さすが、話が早くて助かるよ」

美嘉「最初に言った、歳上の異性と仲良くなる方法が知りたいんだ★」

凛・美嘉「具体的に」


まゆ「質問しても、良いですか?」


凛「良いよ、何でも聞いて」

美嘉「協力して貰うんだし、その位しないとね★」


まゆ「具体的に、誰と仲良くなりたいんですか?」


凛・美嘉「……それは……えーっと……」

凛・美嘉「……………………今西部長?」


まゆ「……」

凛・美嘉「……」

まゆ「凛ちゃん、美嘉ちゃん?」

まゆ「まゆ、もう行っても良いですか?」


凛「待って。確かに、何でも聞いてとは言った」

美嘉「だけどさ、正直に答えるとは言ってないし★」


まゆ「うふ、確かにそうですねぇ」

まゆ「……それじゃあ、アドバイスしますね」


まゆ「裸になって、リボンを自分にかけてプレゼントすれば良いんです♪」


凛・美嘉「待って!」

凛・美嘉「……メモるから」

…ゴソゴソ


まゆ「!?」

まゆ「凛ちゃん!? 美嘉ちゃん!?」


凛「確かに、プレゼントしたら仲良くなれるね。うん、さすがまゆ」

美嘉「何をあげるかじゃなく、全部あげるって発想は無かった★」


まゆ「今のは、ちょっと意地悪を言っただけですから!」

まゆ「ひいい!? 本当にメモしてるぅ!?」

まゆ「『まゆ発案! 仲良し大作戦!』ってタイトルは何ですか!?」


凛「……ほら、失敗した時に、気まずくなるかもしれないし」

美嘉「こうしとけばさ、アタシ達が悪くないってなるでしょ?」


まゆ「まゆが悪くなるじゃないですかぁ!」


凛・美嘉「そうだよ?」


まゆ「……!?」

凛「ねえ、まゆ。真剣に答えて」

美嘉「でないとさ、困るっしょ★」


まゆ「……」

まゆ「……そんなに、仲良くなりたいんですか?」

まゆ「……シンデレラプロジェクトのプロデューサーさんと」


凛・美嘉「うん」

凛「もう少しだけでも良いから、近づきたいんだ」

美嘉「やっぱりさ、今のままじゃ駄目だと思ったんだ」

凛「……そうじゃないと、ずっと見ててくれるかわからないし」

美嘉「……アタシも、アイツに見て欲しいと思っちゃってさ」


まゆ「……」


凛・美嘉「………………今西部長!」


まゆ「……」

まゆ「……ふぅ、はじめから素直に相談してくれれば良いのに」

まゆ「そういう事なら、まゆだってちゃんと協力します」


凛・美嘉「!」


凛「ありがと……まゆ」

凛「お礼に、まゆのプロデューサーの浮気の可能性を全部潰しておくよ」


美嘉「アタシからもお礼を言わせて……まゆちゃん」

美嘉「お礼に、アタシの顔が効く所は全部外堀を埋めておくから★」


まゆ「やだ……なんて頼もしいの」

まゆ「まゆに出来るのなんて、精々作戦を立てる位なのに……」


凛・美嘉・まゆ「……」


凛・美嘉・まゆ「……!」

ガシイッ!

  ・  ・  ・

凛・美嘉「――呼び方を変える?」


まゆ「はい♪ 二人とも、あの人の事を何て呼んでるんですか?」


美嘉「えーっと……アンタ、とか」

凛「普通に、プロデューサー、とかだよね」


まゆ「うふ、それじゃあ、目を閉じて想像してください」

まゆ「まゆの声が、あの人のものだと思ってくださいねぇ」


凛・美嘉「……」


まゆ「――凛さん」

凛「!」

まゆ「――美嘉さん」

美嘉「!」

まゆ「……さあ、どう思いましたか?」


凛・美嘉「くぴぷ!!」


まゆ「? 何て?」

まゆ「……凛ちゃん?」

凛「いや、ちょっと……ふーん。まあ、悪くないかな」

凛「……うん、ふーん、ふ、ふふっ! ふんふーん♪ フゥー!」


まゆ「……美嘉ちゃん?」

美嘉「アタシも、ちょっと……チョーイイカンジだね★」

美嘉「……うん、イイカンジ★ マジ★ マジでヤバい★ チョー★ ヤバ★」


まゆ「……」

まゆ「はい、聞いてくださいねぇ」

パンパン!


凛・美嘉「!」


まゆ「今みたいに、呼び方一つでも大分違うんですよ」


凛・美嘉「はいっ! まゆ大明神!」


まゆ「はい、それはやめてくださいねぇ」

まゆ「今の感じを……相手にさせられたら?」


凛「……ねえ、レッスン料とか、払ったほうが良いよね?」

美嘉「あっ、ヤバ……アタシ、大きいお札しか無いや」

凛「良いよ美嘉、立て替えておくから」

美嘉「マジ? 凛、サンキュ★ すぐ返すから、ゴメンね!」

凛「謝らなくて良いよ。こういう時は、お互い様でしょ」

美嘉「アハハ、凛ってクールに見えて、かなり優しいよね★」


まゆ「はい、聞いてくださいねぇ」

パンパン!


凛・美嘉「はいっ! まゆ大権現!」


まゆ「どうして頑なに‘大’をつけるんですか?」

  ・  ・  ・

現在

凛・美嘉「……!」

武内P「……」


凛(……あれから、必死で考えた)

美嘉(……美容のために、夜はちゃんと寝て)

凛(まゆには、何度も相談したからね。きっと大丈夫)

美嘉(アタシ達の、努力の成果を見せてやるから★)


凛「急に、思い切り変えるのもなんだから、さ」

美嘉「呼び慣れてるやつをちょっとイジってみたんだよね★」


武内P「……なるほど、確かに」

武内P「突然、今までとまるで違う呼び方をしたら、邪推される可能性もありますから」

武内P「非常に良い発想だと、そう、思います」


凛・美嘉「……!」

武内P「お二人とも、同じ呼び方なのでしょうか?」


凛「うん。二人に呼ばれた方が、すぐ慣れるでしょ」

美嘉「別々よりはさ、その方が良いかなー、って★」


武内P「……なるほど、確かに」

武内P「それならば、私もそう時間をかけずに慣れると思います」

武内P「呼ばれた時に、すぐに反応出来なくては、いけませんから」

武内P「非常に良い企画だと、そう、思います」


凛・美嘉「……!」

凛「やっぱり、そう思うよね。うん、わかってた」

美嘉「ホント、チョー考えたんだから★ 感謝してよねー★」


武内P「それで……その、呼び方とは?」


凛・美嘉「アナタ」


武内P「……」

武内P「えっ?」

凛「聞こえなかった? アナタ、しっかりしてよ」

美嘉「アナタ、って呼ばれてどう思った? ねえ?」

凛「あ、それは私も聞きたいかな」

美嘉「でしょ? せっかく頑張って考えたんだし★」


凛・美嘉「ねえ、どうなのアナタ?」


武内P「……」

武内P「申し訳ありません、今回の件は、無かった事に」…フイッ


凛・美嘉「はぁ!?」

凛「納得出来ない! アナタ、さっきまで乗り気だったのに!」

美嘉「ちょっとアナタ! ちゃんとこっち見て話して!」


武内P「確かに! 確かに、アンタと呼ばれてはいましたが!」

武内P「それにしても……もっと、こう、他に!」

武内P「他に、何か案は出なかったのですか!?」


凛「出たけど、相談した結果これが一番だってなったの!」

美嘉「アンタよりも、断然ソフトな感じじゃん!」


武内P「ソフトですが! 確かに、アンタ呼びよりは断然ソフトですが!」

武内P「ですが、その……別の方面でハードになっています!」


凛「逃げないでよ! アナタ、私のアナタでしょ!?」

美嘉「アナタ! ねえ、アタシにアナタって呼ばれるのが嫌なの!?」


武内P「渋谷さん! 城ヶ崎さん! 落ち着いてください!」

武内P「お二人にそう呼ばれると、私は最低の人間だと思われますから!」

凛「何? 二人に呼ばれるのがダメって事?」

美嘉「どっちかしか、アナタって呼んじゃいけない?」


武内P「いえ、貴女達のどちらかという意味でもなく……!」


凛「アナタは、私達の事を‘アナタ’って呼ぶのに? 意味がわからない!」

美嘉「アナタが、アタシ達の事を‘アナタ’って呼ぶなら、良いじゃん!」

凛・美嘉「そうでしょ、アナタ!」


武内P「発音は同じですが……確かに、その通りなのですが……!」

武内P「その、非常に、まずい誤解を招いてしまいます!」

武内P「お願いします! どうか、考え直してください!」

武内P「誰かの耳に入る前に、とにかく――」


凛・美嘉「アナタ! 誤解って何!?」


武内P「呼び方を変えてください!」



おわり


「ふわあぁ……あ」


 大きなあくびが出た。
 いや、あたしだって、ちょっとは我慢しようとしたんだぞ。
 だけどさ、あんまり寝てないんだよ。
 寝なかったら眠い、そんなの当たり前だろ。


「深夜アニメ?」


 向かいの席に座る加蓮が呆れた様子で聞いてくる。
 その通りなんだけど、こういう時に素直に認めるのってどうにも癪なんだよなぁ。
 いままでの経験からして、ぜーったいからかってくるし!
 ……でもまあ、隠してもすぐバレるから、言うけど。


「新番組が、ホント面白いんだよ」


 春に始まった、新番組。
 内容については……あー、これは言っても聞かなそうな感じだ。
 なんだよなんだよ、本当に面白いんだからな!?
 おかげで、寝不足になっちゃうくらい!


「ふーん。何時にやってるの?」


 あんまりにもあたしが眠そうだからか、凛が放送時間を聞いてくる。
 言っても大丈夫か、これ。
 あたし的には、ギリギリセーフな放送時間だと思うんだけどなぁ。
 ……いや、そう何度もからかわれてたまるか!


「……教えない」


 言ったら、からかわれるを通り越して、心配されるかもしれないし。
 だけどさ、お前ら、その視線ほんとやめろって!
 あたしだって、本当だったら早く寝たいんだよ! 眠いし!
 でも、面白いんだからしょうがないだろ!?


「なっ、なんだよ?」


 視線に対して、抗議の意味も込めて二人に問いただす。
 だけど、二人はあたしの質問に答えずに、携帯をいじりだした。
 って、お前ら、それメチャクチャ感じ悪いぞ!?
 ……いや、これは……何か企んでるな!?


「おい、携帯で……何、調べてるんだ?」


 あたしの質問に対する答えは、返ってこなかった。
 二人は、携帯とあたしの顔を交互に見て、ニヤニヤと笑い始めた。
 くっそ、何でだ!? 何で笑ってるんだ、お前ら!?


「この時間なら、見終わってから寝ても結構寝られない?」
「疲れてるんだと思うよ。でなきゃ、あんな大きなあくび出ない」


 ……あああもー、うるさいな!
 この季節は寝るのが気持ちいいから、いっぱい寝たくなるんだよ!


 二人の携帯画面には、アニメの公式サイトの画像が映っていた。

  ・  ・  ・

「ン~ンン~っ♪」


 先週の放送は、ちょっとした溜め回だったからなぁ。
 それが、今日の回で爆発すると思うと……くううっ! 楽しみすぎる!


 休憩スペースで、一人ジュースを飲みながら、期待に胸を躍らせる。
 その期待はあたしの口から飛び出て、うろ覚えの主題歌のメロディーを紡ぎ出す。
 わかる歌詞はそのままに、ハッキリとしない箇所は、ラ、とか、ア、とかだけど。
 調子が出てきた、もうすぐサビの部分!


「ラ~♪」


 先週は、二人にも見るように勧めて見たんだけど、あえなく断られた。
 あんなに面白いアニメを見ないなんて、人生損してるぞ!
 あー! あたしも、あんな大きな運命の大きな渦に巻き込まれたい!
 っと、サビサビぃ!


「あ――」


 と、サビの一文字目を口に出した所で、視線に気付いた。
 自販機の所で、ボタンに手をかけながら、ジッとこちらを見つめる視線に。
 大柄なその人は、無表情に、大声で歌っているあたしを見下ろしていた。
 距離は離れてるけど、大声で歌ってたから、絶対に聞かれてたろ、これ!?


「――いっ、いつから!? いつから聞いてた!?」


 慌てて、問いただす。
 ぐ……ぐああ! 頼む! せめて、すぐ来たばっかりって言ってくれ!
 ノリノリで、オリジナルの振り付けとかしてたぞ、あたし!
 うあああ、見られてたら、死ねる!



「……最初から、ですね」



 右手を首筋にやりながら、申し訳なさそうに言われた。
 そんな顔するなら、ずっと見てるなよなあああ!?
 いや、皆が使う場所で大声で歌ってたあたしが悪いんだけど!
 それにしたって……ほら! 武士の情けって、あるだろ!?


「あの、続きは……歌わないのでしょうか?」


 もうやめてくれえええ!
 あたしをからかってくるのなんて、あの二人で十分足りてるから!
 あんたって、そういうタイプじゃないだろ!?
 もしかして、あたしがからかわれて喜んでるとでも思ってるのか!?


「だっ、誰が歌うかって!」


 顔が熱く、赤くなってるのがわかる。
 この、やり場のない感情は――


「……サビが素晴らしい主題歌なので、残念です」


 ――悲しげなその声が混ざり、より一層、グチャグチャになった。


「えーっと……あー……あぁ、おー!?」


 この人、この曲の事知ってる……んだよな?
 って言うか、主題歌、って言った! 主題歌、って!
 つまりさ、あたしが歌ってたのが、アニメの主題歌だってわかってたって事だよな!?
 だから、その……うわああ、頭がこんがらがってきた!


「っ!? か、神谷さん!?」


 シンデレラプロジェクトの、プロデューサーさんの慌てた声。
 頭を抱えて叫びをあげるあたしを見て、ちょっとオロオロしてるのか、あれ。
 そして、どうしようもないと思ったのか、自販機のボタンを押した。


 ガコンッ!


 と、缶が取り出し口に落ち、大きな音が立つ。
 普段はあんまり気にしてないけど、割と大きい音がするんだな。


「すみません。私はもう行きますので……どうぞ、続きを」


 コーヒーの缶を手に持ち、そそくさと立ち去ろうとする、その背中。
 まるで、あたしが追い払ったみたいな形になっちゃって……るよな。
 なんだか、それって凄く感じが悪い。
 それに、なんだろう……何だか、変な違和感を感じるんだよ。


「ちょっと待って!」


 上手く、言葉に出来ないんだけどさ。
 だけど、この違和感を放置してたら、ずっと気になると思うんだ。
 それこそ、今晩の放送を素直に楽しめない位に。
 そんなの、あたしは絶対イヤだ!


「? はい、どうか……しましたか?」


 あっはっは!


 呼び止めたは良いけど、そのあとの事は考えてなかったあああ!


 どっど、どうしよう!?
 あたし、あんまりこの人と話したことないし……特に接点も無い!
 えーっと、歌ってるのを聞かれて、サビが素晴らしい主題歌って言ってたから……!
 っ! そうだ!


「サビの部分は、アニメーションも最高だよな!」


 って、何を言ってるんだあたしはあああ!?
 思わず笑顔で、親指まで立てて、言った台詞がこれ!?
 ちょっと今の無し! もう一回、言うことを考える時間をくれ! ください!


 そんな、大失敗とも思える発言に対して、返ってきたのは、


「――はい。有名な作画監督の方なので、当然の結果です」


 と、思ってもみない結果だった。

  ・  ・  ・

「……」


 深夜、テレビの画面を見つめながら、考える。
 垂れ流されるコマーシャルには、時折、ウチのアイドルが出ているものもある。
 廊下ですれ違ったりする人をテレビの画面で見ると、
あたしもアイドルになったんだな、って再度実感させられる。


「……って、そうじゃなくて」


 昼間、あの人とちょっとの時間だけど話をした。
 あの人が言うには――


 ――担当をしている方に、声のお仕事に興味を持たれている方が居るので。


 ……って、理由で、もうすぐ始まる番組を見ているらしい。
 だけどさ、それにしては、おかしい所がいくつもあるんだ。
 レッスンをしてる時や、色々やる事がある時は考える暇なんて無かったけどさ。
 この、好きなアニメが始まる前の、不思議と時間の流れがゆっくり感じる、今。


「あの人が、最初からずっと聞いてたのは――」


 色んな違和感の正体を明らかにする、絶好のタイミング。


 多分だけど……あの場からすぐに立ち去らなかったのって、あたしのせいだ。
 あたしが気持ち良く歌ってて、大きな音を出して邪魔しないように、待ってくれてたんだと思う。
 そうじゃなかったら、気にせずに買う物を買って、すぐに行くだろうし。


 それで……これは、もっと多分なんだけど、多分な? 多分!
 あたしが歌ってるのを聞いて、良いな、と思ってくれてた……んじゃないかな。
 なんか、自惚れてるみたいで、凄く恥ずかしいけど……だ、だから多分!


「それに……普通、作画監督とか気にするか?」


 あんなに自信満々に言うってことは、前から知ってたって事だろ?
 気になって調べてみたら、本当に有名な作品に関わってる人だったし。
 でも、だからって……気にするとは思えないんだよ。


 んで、知ってる理由を聞いた時の、あの‘間’!
 なんか、明らかに考えてから言いました、って感じだったぞ、あれ!
 確かに本当なのかも知れないけど、わざわざ深夜アニメを見るか!?


「まさかなぁ……」


 自分で出した答えなんだけど、あんまり自信がない。
 こういう時は、直接本人に聞くのが、一番手っ取り早いんだけど……。
 あーもー! また、わけわかんなくなってきた!


「くうう……!」


 あの人は、自分についてあまり語らないらしい。
 だけど、あたしは、チャンスを逃したくない。


「……もう、始まるな」


 だって、せっかくなんだから、語りたいだろ!?

  ・  ・  ・

「おはよう、ございます」


 休憩スペースで、今日は歌わずに座っていたら、来た。
 この人、いつもこの時間に休憩してるのかな。
 一か八かと思って、昨日と同じ時間を狙って待ち伏せして、正解だったな。


「おはようございます」


 座ったまま、姿勢を正して挨拶を返す。
 そして、そのまま、罠を仕掛ける。


「昨日の回は、ちょっと期待外れだったなー」


 大嘘だ。
 いやもう、昨日の回は超……超面白かった!
 前話で溜めた甲斐があったよなぁ、ホント!
 放送が終わった後、すぐにでも誰かと語りたい位だった!


「期待外れ、ですか?」


 あたしの言葉を聞いて、自販機のボタンにかかった指が一瞬止まった。
 すぐに、ガコンッ、と大きな音が休憩スペースに響いた。
 カチャリと、自販機から缶コーヒーを取り出し、
プロデューサーさんは、少し早足でこちらに近づいて来て、


「よろしければ、理由をお聞かせ願えますか」


 あたしの隣に座り、


「昨夜の放送が、神谷さんの期待に沿わなかった、その理由を」


 言った。


「私には……とても、満足のいく内容だったので」


 座りながら、缶コーヒーを手の中で弄んでいる、プロデューサーさん。
 そんな様子を見ながら、


 ――釣れたあああああっしゃああああああ!!


 と、心の中で、叫んだ。



「うん! 実は、あたしもそう思った!」



 満面の笑みを浮かべるあたしを見て、プロデューサーさんは手の動きを止めた。
 人生っていうのは、どんな経験が、どんな場面で役に立つかわからないな!
 普段、あいつらにからかわれてるのが、こんな風に役に立つなんて!


「……良い、笑顔ですね」


 パキャリと、缶コーヒーの蓋が開く音がした。

  ・  ・  ・

「ふわあぁ……あ」


 大きなあくびが出た。
 ここ数日は、いつもこんな感じなので、もう隠さない。
 だってさ、しょうがないだろ。
 メチャクチャ面白いアニメのDVD、シリーズで借りちゃったんだから。


「またアニメ?」


 向かいの席に座る加蓮が、あまり興味なさげに聞いてくる。
 あのなぁ、あたしだって深夜アニメばっかり見てるわけじゃないんだぞ。
 そりゃ、アニメを見て寝不足になってるのは、事実だけどさ。
 ……でもまあ、隠すようなことでも、ないか? ないよな?


「昔のやつだけど、ホント面白いんだよ」


 あたしが生まれる前にやってた、古い作品。
 内容については……お? なんだよ、ちょっと興味を持ってる感じだ。
 なんだよなんだよ、気になるならしょうがないな!
 おかげで、寝不足になっちゃうくらい面白いぞ!


「ふーん。何で昔のを見ようと思ったの?」


 あんまりにもあたしが眠そうだからか、凛がそれを見るに至った理由を聞いてくる。
 言っても大丈夫――


 ――じゃないだろ!


 まずいまずいまずい! あっと、えっと……!


「……教えない」


 言ったら、からかわれる所の騒ぎじゃなくなっちゃう!
 いや、お前ら、その視線ほんとやめろって!
 あたしだって、隠したいことの一つや二つはあるんだぞ!?
 それに、この隠し事は、あたしだけの話じゃないし!


「なっ、なんだよ?」


 視線に対して、あたしは負けじと視線を返す。
 ……おい、なんだよ凛、どうしてあたしの隣に移動してきたんだよ。
 やめろよ、四人がけの片側に三人で座るなんて、狭いだろ!?
 なあ、加蓮もそう思うだろ? なあ、ちょっと?


「おい、携帯いじってないで……って」


 待て待て待て待て!


「あたしの携帯じゃねーか!」


 慌てて加蓮の手から携帯を奪い返し、奪われないよう、胸に両手で抱え込む。
 ……だけどさ、ロックがかかってるんだから、そんな必要なかった、失敗したー!
 だ、だけど! 今回ばかりは、絶対にお前ら思い通りにはさせないからな!!


 あたしは何も語る気はないぞ!



おわり

書きます



武内P「顔です」

未央「んっ?」

卯月「へっ?」

凛「何て?」


武内P「顔が、可愛いからです」


未央・卯月・凛「!?」

未央「しぶりん、素直になるツボってこんな効くの!?」

卯月「素直って言うか……素直っていうか!」

凛「……うん、私も驚いてる」

未央「えーっと、もう一回聞くよ?」

武内P「はい」

未央「わ、私をメンバーに選んだ理由は?」

武内P「顔が、可愛いからです」

未央「笑顔じゃないの!?」


武内P「顔が可愛いと、笑顔はもっと可愛いですから」


未央「そ、そう……かな?///」

卯月「なんだか嫌です! あんなプロデューサーさん!」

凛「……でも、心の底では、ああ思ってたって事だよね」

未央・卯月・凛「……」

武内P「ですが、本田さん」

未央「な、何?」

武内P「本田さんがやめると言った時の、あの涙する姿」

未央「……うん」

武内P「貴女のあの姿を見て、思いました」


武内P「顔が可愛いと、泣いていても可愛い、と」


未央「へあっ!?///.」

武内P「ですが、やはり笑顔の方が可愛いと、そう、思います」

未央「お……うん、あ、ありがと///」

武内P「いえ、当然の結論です」


卯月・凛「……」

卯月「ぷっ、プロデューサーさん!」

武内P「はい」

卯月「わ、私をメンバーに選んだ理由は何ですか!?」

武内P「顔が、可愛いからです」

卯月「ふ……ふえぇ!?///」


武内P「島村さんの顔は、普通ではなく、可愛いです」


卯月「は……はいぃ///」

未央「しまむー、自分で聞いといて照れなさんなって!」

凛「でも、プロデューサーの言うことももっともだよね」

卯月「あっ、ありがとうございます……///」

武内P「付け加えるとですね、島村さん」

卯月「は、はい?」

武内P「笑顔なんて誰でも出来ると、道に迷っていた時の姿」

卯月「は……はい」

武内P「あの時、私は思っていました」


武内P「顔が可愛いと、悩んでいても可愛い、と」


卯月「ふえっ!?///」

武内P「ですが、やはり笑顔の方が可愛いと、そう、思います」

卯月「は……はい、笑顔を頑張ります///」

武内P「はい、頑張ってください」


未央「あっはっは! 顔真っ赤だよ、しまむー!」

卯月「み、未央ちゃん! からかわないでください~!」


凛「……」

未央「ほら、しぶりん!」

凛「……何」

卯月「今なら、プロデューサーさんの素直な気持ちが聞けますよ!」

凛「……」


凛「私は良いよ、やめとく」

凛「普段の時に、素直な思いを聞けるように頑張るから」


未央「しぶりん……」

卯月「凛ちゃん……」


凛「かっこつけすぎかな?」


未央「オッケー、それじゃあレッスンに行こうか!」

卯月「はいっ! 今日は、すっごく気合が入りますね♪」


凛「へー! 気合が入るなら、私も一応聞いておこうかな!」

凛「気になるとかじゃなく、気合を入れるため!」


未央・卯月「……」


凛「……」

凛「……ねえ、プロデューサー」

武内P「はい」

凛「そ、そんなに気になってはないんだけど、さ」

武内P「はい」

凛「私をシンデレラプロジェクトのメンバーにスカウトした理由は、何?」


武内P「オーラです」


凛「ふ……ふーん///」

凛「……」

凛「……オーラ?」


武内P「オーラです」


凛「!?」チラッ


未央「落ち着いてしぶりん! 続き! 続きがあるかもしれないから!」

卯月「そ、そうです凛ちゃん! 諦めないでください!」

凛「オーラ……オーラねぇ……ふーん」

武内P「はい」

凛「ちなみに……どんなオーラ?」


武内P「トップアイドルになれるだろう、という」

武内P「輝くような、オーラです」


凛「……」チラチラッ


未央「まだ! まだ諦めちゃ駄目だって!」

卯月「凛ちゃん、気をしっかりもってください!」

武内P「付け加えるとですね、渋谷さん」

凛「そう、それ! うん、かなり付け加えるのも、悪くないかな!」

武内P「輝くようなオーラを放つ貴女に、怒られてしまった時」


未央「いや、これはもう、あれしかないでしょ!?」

卯月「怒った顔も、ってやつですよ! 凛ちゃん!」


凛「そ……そうかな?///」

武内P「あの時、私は思いました」

凛「……どう、思ったの?」


武内P「殺される、と」


凛「……!?」ギロオッ


未央・卯月「殺される!」

凛「ねえ、おかしくない?」

武内P「何が、でしょうか?」

凛「未央をメンバーに選んだ理由は?」

武内P「顔が、可愛いからです」

凛「卯月をメンバーに選んだ理由は?」

武内P「顔が、可愛いからです」

凛「そして、私は?」

武内P「オーラです」

凛「……」


凛「ねえ、おかしくない?」ギロオッ


未央「しぶりいいいん! こっち睨まないでえええ!」

卯月「おかしいと思います! 思いますから、睨まないで凛ちゃん!」

未央「ぷっ、プロデューサー!」

武内P「はい」

未央「しぶりんもさ、可愛いよね!? ねっ!?」

未央「可愛いから、オーラ感じたんだよね!?」

未央「怒った顔も、思い返して見れば可愛かったりするよね!?」


卯月「未央ちゃん、ナイスです!」


武内P「いえ、そんな事はありません」

武内P「……あの時の渋谷さんの表情」

武内P「それを思い出したいと思ったことは、一度もありません」


凛「未央?」


未央「ごめんって! しぶりんごめんってぇ!」

卯月「ぷっ、プロデューサーさん!」

武内P「はい」

卯月「私、凛ちゃんって、とっても可愛いと思うんです!」

卯月「いつも格好良くて、凛としてて、何でも出来て……」

卯月「私の憧れ、尊敬する、可愛いアイドルなんです!」

卯月「プロデューサーさんも、そう思いますよね!?」


未央「しまむー、ナイス!」


武内P「島村さん、もっと自分に自信を持ってください」

武内P「貴女は、顔も可愛い上に、性格も可愛いです」


卯月「……えへへ///」ニコニコ


武内P「可愛い、良い笑顔です」


凛「卯月?」


卯月「あああごめんなさい! ごめんなさい、凛ちゃん!」

凛「ねえ、私、どうしたら良いかな?」

未央「待ってしぶりん! 今! 今、考えるから!」

卯月「えーっと……えーっと……!」

未央「! しぶりん、ちょっとそこに立って!」


凛「……」


未央「――まあ、なんて可愛い子なのかしら!」

未央「これはもう、可愛いと言ってあげるしかないわ!」

未央「――ねえ、貴女もそう思うでしょう?」ビシッ!

卯月「! は、はい! あー、可愛いーなー!」


凛「……」


未央「――そして、貴方も!」ビシッ!


武内P「可愛い本田さんは、演技をしていても可愛いと、そう思います」


凛「……」

凛「ねえ、もうそろそろ、良いかな?」

卯月「お願い凛ちゃん! もう少しだけ時間を!」

未央「考えて! 考えて、しまむー!」

卯月「は……はい……島村卯月、頑張ります……!」


凛「……」


卯月「――えっと、凛ちゃんはオーラが凄いんだから、えっと」

卯月「そのオーラを頑張って可愛いに……オーラを可愛いに?」

卯月「どうやって頑張れば……頑張る、頑張る? 可愛いを頑張る?」

卯月「何だろう、どうやったら可愛いんだろう……オーラ? 可愛い?」


凛「……」


卯月「わからない……! どうしよう、どうしよう……!?」


武内P「可愛い島村さんは、困っていても可愛いと、そう思います」


凛「……」

  ・  ・  ・

武内P「……」

武内P「!? 何故か、言ってはいけない事を言っていた気が……」

武内P「一体、何が――」


凛「プロデューサー」ニコニコ


武内P「……渋谷さん?」

凛「ねえ、私の顔を見て、どう思う?」ニコニコ

武内P「……良い、笑顔d」


凛「ううん、そうじゃなくて」ニコニコ


武内P「……渋谷さん?」

凛「未央ってさ、可愛いよね」ニコニコ

武内P「そう、ですね。はい、そう思います」

凛「卯月もさ、可愛いよね」ニコニコ

武内P「はい。おっしゃる通りだと、思います」

凛「それじゃあ、私は?」ニコニコ

武内P「とても素晴らしい、アイドルだと思い――」


凛「ふうううぅぅぅん!!」ジタバタ!


武内P「っ!? し、渋谷さん!?」

凛「……うん、ごめん。今のは忘れて」ニコニコ

武内P「……!?」

凛「顔が可愛い未央が笑うと、もっと可愛いよね」ニコニコ

武内P「そ、そう……ですね」

凛「顔が可愛い卯月が笑うと、もっと可愛いよね」ニコニコ

武内P「はい、そうだと思いますが……あの、渋谷!?」

凛「それじゃあ、私が笑うと?」ニコニコ

武内P「いえ、あの……!」

凛「……」ニコニコ


武内P「……!?」

武内P(渋谷さんは、何故、笑顔でそんな事を……!?)

武内P(こ、ここはとにかく、彼女を落ち着かせt)


凛「逃げないでよ。アンタ、私のプロデューサーでしょ」ニコニコ


武内P「っ……!?」

ガチャッ!


ちひろ「おはようござ――」


凛「ねえ、未央と卯月の事は可愛いと思ってるんだよね」ニコニコ

凛「なら、私は?」ニコニコ

武内P「し、渋谷さんも、凄いオーラだと……!」

凛「うん、それで? ねえ、プロデューサー?」ニコニコ

武内P「す、すみません! 私に至らない所があるようで……!」

凛「そういうんじゃないから。謝って欲しくなんかない」ニコニコ


ちひろ「――いま……す」


武内P「! 助けてください千川さん! 助けてください!」

凛「何それ?……おはようございます、ちひろさん」ニコニコ


ちひろ「……!?」

ちひろ「えっと、一体何をしてるんですか?」

凛「聞いてよ、ちひろさん」ニコニコ

ちひろ「え、ええ」


凛「プロデューサー、未央と卯月は可愛いって褒めるんだよ」ニコニコ

凛「それなのに、私の事は素晴らしいとしか言わないんだ」ニコニコ

凛「おかしいと思うでしょ? 同じメンバーなのに」ニコニコ


ちひろ「……」

ちひろ「それが本当なら、プロデューサーさんが悪いですよ」


武内P「……千川さん?」


凛「……」ニコニコ

ちひろ「メンバーで差をつけるなんて、いけない事です」

武内P「っ!」

ちひろ「かけてあげる言葉には、気を遣ってください!」

凛「ちひろさん……ありがとう」ニコニコ

ちひろ「良いですね、プロデューサーさん!」

武内P「……」


武内P「――はい、おっしゃる通りだと思います」


凛「!」

武内P「渋谷さん、申し訳ありません」

武内P「私が至らないせいで、貴女に迷惑をかけてしまったようです」

凛「……ううん、私も素直になるツボを押したし、お互い様かも」

凛「こっちこそ……その、ごめん」

ちひろ「素直になるツボ? えっ、それ何ですか?」

武内P「ありがとうございます。渋谷さん」

凛「お、お礼なんて良いから」

武内P「また一つ、貴女の魅力に気付くことが出来ました」

凛「そ……そう?///」

ちひろ「凛ちゃん? ツボってなんです? 凛ちゃん?」

武内P「やはり、貴女をスカウトしたのは、間違いではありませんでした」

凛「も、もう……いい加減にしてって///」

武内P「貴女は、こんなにも優しい一面を持っていたのですね」

凛「ちょっ、ちょっと……!///」


凛「……ん? 優しい?」


武内P「はい」

武内P「自分だけを素晴らしいと褒めるのはいけない、と」

武内P「本田さんも、島村さんも同じ様に、素晴らしいと褒めろ、と」

武内P「……そう、笑顔で気づかせてくれようと、してくれていました」


凛「!?」

凛「待って……ねえ、ちょっと待って?」

武内P「はい、何でしょうか?」

ちひろ「プロデューサーさん……本気で言ってるんですか?」

武内P「はい」


武内P「渋谷さんは、トップアイドルになれるオーラを持った……」

武内P「仲間を思いやる気持ちに溢れた、とても優しい方です」


凛「ふざけないでよ! そんな言葉が聞きたいんじゃない!」

凛「ねえ! アンタ、私の顔を見てどう思ってるの!?」


武内P「っ!? あ、あの、渋谷さん!?」


凛「アンタ、私のプロデューサーでしょ!?」

凛「正直に言って! いい加減なこと言ったら、承知しないから!」

凛「ほら! 早く! どう思ってるか、正直に言って!」


武内P「殺されると思っています!」



おわり

  ・  ・  ・

「……ふぅ」


 作業が一段落したので、少しだけ、一息入れよう。
 これ以上通して作業をしても、効率が落ちるだけだ。
 シンデレラプロジェクトのメンバー14人に加え、
先の件でサポートに回っていただいた方達へのフォロー。
 更に、346プロダクション内だけでなく、ファンの方達も大きな関心を寄せている、
シンデレラプロジェクトの、二期メンバーの選出。


「……」


 やるべき事は、山のようにある。
 本来ならば、私一人で担当するのは、間違いなのだろう。
 人気も出て、仕事も多く入るようになってきたシンデレラプロジェクトの一期生。
 新人にしては、多忙すぎるとも言える彼女達には、
ユニット毎に、それぞれマネージャーをつけるなりの措置は……当たり前の事だ。


「……」


 だが、私は、それをしようとは思わない。
 彼女達、シンデレラプロジェクトのメンバーは、今が一番大切な時期なのだ。
 新人として、一つ壁を乗り越え、成長した事は担当として、とても嬉しい。
 しかし、この先も階段を登り続けるには、やはりまだ不安定な部分もある。


「休憩スペースに……いや、よそう」


 彼女達から、目を離す訳にはいかない。
 私は、約束したのだから。


 ――ちゃんと見ててよね。


 彼女達の成長を見守り……輝き、階段を登り続ける姿を見続ける、と。
 プロデューサーとアイドル以前の、私の大人としての、意地。
 頼ってくれる少女との約束を破るまいと言う、男の意地だ。


「……」


 椅子にもたれかかり、光り続けるパソコンの画面に目を向ける。
 そこに映っているのは、シンデレラプロジェクトのメンバーの姿。
 彼女達のキラキラと輝く笑顔は、輝く星空に、勝るとも劣らない。


「良い、笑顔です」


 そう……本当に、いい笑顔だ。
 こんな笑顔から――彼女達から、目を離してなるものか。


「……」

 彼女達と交わした約束以上に、強い想いが私を突き動かす。
 そのためならば、無理だと思われる事も、やってのけよう。
 他の誰にも、この役目を任せるつもりは、無い。
 何故ならば、彼女達のプロデューサーは、私だからだ。



「……プロデューサー」



 唐突に、声をかけられた。


「っ!?」


 今まで、一人で此処に居たはずだ。
 いつの間に、部屋に入ってきたのだろうか。
 それに、この距離に居て、声をかけられるまで気付かなかったとは。


「おはようございます、渋谷さん」


 自分でも、思っている以上に疲れが溜まっているのかもしれない。
 だが、それを彼女達――アイドルに、悟られる訳にはいかない。
 心優しい彼女達は、きっと、私の事を心配してくれるだろう。
 そう思える程の信頼関係を私が築けるとは思わなかった分、余計に思う。


 ――それだけは、あってはならない。


 そう、彼女達は、私などを心配するべきでは無いのだ。
 私の事で悩み、その笑顔に陰りが出るのは、断じて許されない。
 私は、プロデューサーだ。
 彼女達、アイドルの魅力を引き出し、より、輝かせるための役目を負った者が、
階段を登る彼女達の足をどうして引っ張ることが出来ようか。



「――ふざけないでよ!」



 デスクに叩きつけられる、渋谷さんの……少女の、小さな手。
 この手で、部屋に響く程の音を出すには、どれだけの力で叩きつければ良いのだろう。
 きっと、彼女の手の平は、かなりの痛みを訴えているに違いない。
 しかし、その表情は微塵もそれを感じさせる事なく、


「ふざけないでよ……!」


 激しい感情によって、既に歪まされていた。
 前にもこのような事があったが、その時とは、似ているようでまるで違う表情。
 以前の渋谷さんの表情が燃え盛る炎だとすれば、今は、土砂降りの雨と暴風。
 私は、慌てて彼女に、


「どうぞ、使ってください」


 ハンカチを差し出した。


「渋谷さん」


 差し出したハンカチは、受け取られない。
 吹き荒れる風は止まることなく、雨はさらに大粒となり降り注ぐ。
 それを拭うこと無く、渋谷さんは、真っ直ぐに私を睨みつけている。
 それが、彼女が、今こうしている原因が私だと、雄弁に物語っている。


「アンタ……本気で、今のままで良いと思ってるの!?」


 渋谷さんの言葉に、息を呑む。
 やはり、私の考えていなかった部分で、彼女達に迷惑をかけてしまっていたのだろうか。
 それに対して、彼女は、こうして抗議をしているのだろうか。
 だとするならば、もっと、


「申し訳ありません。何か、至らない点がありましたか?」


 もっと、頑張らなくては。
 そのために、彼女には具体的に問題点を挙げて貰おう。
 私が忙しいからと、遠慮をして、言い出せなかったのかも知れない。
 今後のために、それについても改善していかなければ。



「そういう事を言ってるんじゃない!」



 響く、怒声。
 眉間に大きな皺を寄せ、唇を噛み締める、その渋谷さんの顔。
 本来ならば、歪んでいると評するべき表情なのだろうが、
私は今の彼女を――


 ――美しい。


 と……そう、思う。
 だが、アイドル活動をする上では、眉間に皺が残るようではいけない。
 それに、艶のある唇に歯型がつくなど、事だ。
 そして、このままでは……嗚呼、瞼が腫れてしまうのは、避けられないかも知れない。


「アンタ、今……自分がどんな顔してるかわかってる!?」


 はい、わかっています。
 クライアントが最初に会うのは私ですから、身だしなみには気をつけてはいるつもりです。
 ですが、はい、何とも……しようがなく。


「……」


 右手を首筋にやり、無言で渋谷さんを見る。
 彼女に出会った頃よりも、かなり悪くなった……私の人相。
 元からあまり関わりのない方からも、言われる程のそれは、
渋谷さんからしたら、とても、みっともなく見えるのかも知れない。


「申し訳、ありません」


 貴女のプロデューサーとして、努力不足でした。


「……もう良い」


 渋谷さんはデスクに乗せていた手をどけ、袖で、顔を拭いた。
 ハンカチを受け取る気はない、という意思を感じる。
 しかし、もう良い、とはどういう意図で放った言葉なのだろう。



「目を離したら承知しないって言葉、取り消す」



 ……今、何と?


「目を離しても良い。ずっと見てなくて良い」


 ……待ってください。


 待ってください! お願いします! 待ってください、渋谷さん!


「待ってください! 私は、まだ!」


 まだ、貴女を見続けていたいのです!
 だから、どうかそんな事を言わないでください!
 私は、階段を登り続ける貴女を見続けていたい!
 その役目は、決して、誰にも譲りたくはないのです!


 だから――!


「だからっ! だから……プロデューサー……」


 ……何てことだ。



「‘ちゃんと’見ててよぉ……!」



 私は、私の思いを優先するばかりに、彼女の思いやりを無にする所だったのか。
 

「う、えっ、ぐ! ふっ、ううう~っ!」


 先程までよりも、激しく溢れ出す――涙。
 大人びて見える彼女も、まだ、十五歳の少女なのだ。
 そんな渋谷さんに、泣きながら叱られてしまっている。
 これでは、大人失格だ。


「すみません……すみません、渋谷さん」


 泣きじゃくる渋谷さんの顔に、ハンカチを当てる。
 それを払われたらどうしようかと一瞬考えたが、無駄な心配だった。
 両手をダランと横に下げ、彼女はされるがままになっている。


「すみません……ありがとう、ございます」


 渋谷さんは、泣きながらコクリと頷いた。

  ・  ・  ・

「……ふぅ」


 休憩スペースに設置された椅子に座り、缶コーヒーを飲んで一息つく。
 座ったまま、姿勢を正して背筋を伸ばすと、大分筋肉が固まっていたのがわかる。
 しかし、この程度なら問題はない。
 この位の疲労なら、十分許容範囲内だろう。


「……」


 あの日から、私は行動を少し改めた。
 彼女達と接する時間は減ってしまいはしたが、
それにより、結果的に今までよりも密度の高い時間になるようになった……と、思う。
 理由は、笑顔。
 以前よりも、彼女達の笑顔の輝きが、より強くなったように見えるからだ。


「……」


 接する時間を減らすと、メンバー達に伝える時は、不安だった。
 しかし、起こったのは――歓声だったのだ。
 どうやら、私の体調を彼女達はとうの昔に心配してくれていたようなのだ。
 皆、口々に「良かった」と言っているのを見て、私は大いに反省した。


「……ふぅ」


 プロデューサーは、アイドルをより輝かせるための存在だ。
 だが、どんな言い訳をしようと、人には限界というものがある。
 その限界を越えた先にあるのは、破綻しかない。


「……」


 私は、彼女達を導き見守るどころか、迷わせ目をそらしていた。
 いや、目がくらんでいたのだ。
 彼女達の輝きと、それを見続けたいという己の欲望に。


「……よし」


 そろそろ戻り、仕事を再開しなくては。



 気をつけてはいるものの、未だ、時々「働きすぎだ」と叱られてしまう。
 しかし、その時は、大人しくそれを聞き入れ、休むようにしている。
 そうでなければ、私の……そして、彼女の望みを叶えられない。


 ‘ちゃんと’見る。


 そのためならば、何だって受け入れようではないか。
 私が、彼女達の担当であり続けるために。
 彼女達の、素晴らしい輝きを見続けるために。
 ……この役目は、誰にも譲れない。


 私は、とても強欲なプロデューサーだ。



おわり

書きます


武内P「褒められる、ですか」

アーニャ「……ダー」

武内P「あの、何をでしょうか?」

アーニャ「……ニィーペンの色、です」

武内P「ニィーペンの色? 肌の色、でしょうか?」


アーニャ「ニェート……乳首の色、です」


武内P「成る程。ニィーペンとは、乳首という意味なのですね」

武内P「……」

武内P「!?」

武内P「アナスタシアさん……アナスタシアさん!?」

アーニャ「……毎日、毎日、褒められます」

武内P「あの、アナスタシアさん!?」

アーニャ「きっと……今日も、明日も、明後日も!」

武内P「待ってください! その、落ち着いて話を!」


アーニャ「もう、ニィーペンを取っても、良いですか!?」


武内P「っ!?」

武内P「いけません! その、取り返しがつかなくなります!」

アーニャ「……ダメ、ですか?」

武内P「……取らない方が、よろしいかと」

アーニャ「……ダー。プロデューサーが、そう、言うなら」

武内P「……」

アーニャ「プロデューサー。私は、どうしたら良いですか?」


アーニャ「ニィーペン、乳首の色を……褒められ続けるしか、ありませんか?」


武内P「そ、れは……その、待ってください」

武内P「考えます……考えますので、その、時間をください」

武内P「その、乳首を見せないようにする事は、出来ませんか?」

アーニャ「……ニェート。それは、私も試しました」

武内P「失敗した、理由を聞いても?」

アーニャ「……LIVEの前は、アー、衣装に着替えますね?」

武内P「はい」


アーニャ「気付いたら、アー、ブラジャーが外されています」


武内P「ちょっとしたイジメではないですか!?」

武内P「しかし、毎日と仰っていたのは……?」

アーニャ「……私は、女子寮に住んでいます」

武内P「はい」

アーニャ「……女子寮のお風呂、大浴場、です」

武内P「はい。その様に、聞いています」


アーニャ「私が入る時、全員、集まってきます」


武内P「異常事態にも程がありませんか!?」

アーニャ「……そして、皆、私のニィーペンの色を褒めてきます」

武内P「……!?」

アーニャ「……とっても、綺麗で、可愛い!」

武内P「……アナスタシアさん」

アーニャ「ハラショー、ニィーペン! 素晴らしい乳首!」


アーニャ「頭が……乳首がどうにかなりそう、です!」


武内P「あ、頭はともかく! そちらの方は大丈夫です!」

武内P「その……触られたり、するのでしょうか?」

アーニャ「……ニェート。見て、褒めるだけ、です」

武内P「……それを聞いて、少し安心しました」

アーニャ「アー、安心、ですか?」

武内P「はい。身体的な接触は、さすがに」


アーニャ「美波は、こう、物凄く近くで見ます」


武内P「待ってください」

武内P「今、新田さんを呼び出しますので」

  ・  ・  ・

武内P「新田さん、お話があります」

美波「はい、何ですか?」

アーニャ「……」

美波「アーニャちゃんまで……何か、あったんですか?」

武内P「……」


武内P「アナスタシアさんの乳首に、関わらないでください」


美波「っ!? ど、どうしてですか!?」

美波「あのっ、えっ!? ちょっと待ってください……えっ!?」

美波「そんな……そんな事って……!?」

美波「お願いします! 理由を! 理由を聞かせてください!」


武内P「私も、貴女がそこまで慌てる理由を聞きたいです」

美波「アーニャちゃん……ねえ、アーニャちゃん!?」

アーニャ「イズヴィニーチェ……すみません、美波」

美波「お願いよ、アーニャちゃん! ねえ、アーニャちゃん!」

アーニャ「……美波」

美波「私、アーニャちゃんの乳首、とっても好きよ? だから、ねっ?」


美波「乳首に関わるななんて、そんな悲しい事言わないで!」


武内P「私は、それが悲しいことだとは、思えません」

美波「プロデューサーさんは、知らないからそんな事が言えるんです!」

武内P「……新田さん?」

美波「アーニャちゃんの乳首、すっごく綺麗なんですよ!?」

武内P「あの、落ち着いてください、新田さん!」

美波「綺麗って言うか……美しい。そう、美しい乳首なんです!」

武内P「新田さ――ん!?」


美波「アーニャちゃんの乳首は、本当に美しいんです!」

美波「……ほら! 私の携帯の待受、見てください!」


アーニャ「ニェ――ット!? 美波!? 美波、美波ィ!?」

武内P「見せようとしないでください! やめ……やめてください!」

  ・  ・  ・

ガチャッ

蘭子「煩わしい太陽ね……」


武内P「アナスタシアさん、今です! 画像を消してください!」

美波「あいっ、たたたた! おっ、おおっ!?」

武内P「私がロメロ・スペシャルを決めている内に、急いで!」

美波「で、でも、えっちな体勢っ♡ あぁん、抵抗出来ないっ♡」


アーニャ「ダー! プロデューサー!」

アーニャ「……ニェ――~~ット!? 何枚、撮ってますか!?」


武内P「っ!? 動画も確認してください、アナスタシアさん!」

美波「そんなっ♡ も、もう……美波、いきますっ♡」


蘭子「……!?」

蘭子「こ、この状況は一体……!?」


武内P「! 神崎さん、これは……誤解です!」

美波「ああんっ♡ 蘭子ちゃん、見ない……見てぇっ♡」

武内P「見てはいけません、神崎さん!」


蘭子「我が友よ!? 何故、このような宴が催されているのか!?」

アーニャ「蘭子! 美波が、こんな写真を撮っていました!」

蘭子「ふむ……っ!? こ、これは!?」

アーニャ「パジャールスタ、お願い、です!」


アーニャ「消すのを手伝って、ください!」


蘭子「――ゲート・オブ・バビロン!」


武内P「……! いけません、携帯を渡しては――!」

アーニャ「……プロデューサー?」

蘭子「これはまさしく、王の財宝!」たぷたぷ

アーニャ「蘭子? 自分の携帯を出して、何をしていますか?」

蘭子「財宝を我が物に! ふふふ、薄桃色の魔力が高まっていくわ」たぷたぷ

アーニャ「蘭子? 蘭子蘭子、蘭子?」


蘭子「――見よ! 我が使い魔は、数多の財を得た!」ビシッ!

蘭子「グリモワールに記された姿は、これで輝きをます!」ビシッ!


アーニャ「ニェ――ット! どうして、絵にしていますか!?」

武内P「データを移動させると思っていましたよ!」

美波「あっ♡ また、またいきますっ♡」

  ・  ・  ・

アーニャ「……これで、全部、だと思います」

武内P「お疲れ様でした、アナスタシアさん」


美波・蘭子「……」ションボリ

美波「二人とも……ひどい。本当に、全部消しちゃうなんて」ションボリ

蘭子「……我が得た財宝は、泡沫の夢と消えたか」ションボリ


武内P「神崎さん、スケッチブックを出してください」


蘭子「……我が友?」


武内P「黒く、塗りつぶさせていただきます」


蘭子「ぴっ!?」

蘭子「そ、それは……悪魔の所業に他ならない!」

武内P「神崎さん」

蘭子「グリモワールに記されたその姿に、漆黒の魔力を流すと!?」

武内P「神崎さん、スケッチブックを」

蘭子「そ、それは出来ない! せ……せっかく上手に塗れてるのに!」

武内P「だからです、神崎さん」


蘭子「我が友は、堕天を望むと!?」

蘭子「無垢なる白き妖精が、黒乳首になっても構わないと!?」


アーニャ「……そう、なのですか?」


武内P「待ってください! それは誤解です!」

武内P「……神崎さん」

蘭子「や……やーあー! 綺麗に描けたとー!」イヤイヤ

武内P「熊本弁で駄々をこねないでください、神崎さん!」

蘭子「ホント綺麗に描けたっちゃもん! ダメー!」イヤイヤ

武内P「それが駄目なのです、神崎さん!」

蘭子「自信あるとよ! 頑張って描いたとよ!」イヤイヤ

アーニャ「……」


アーニャ「プロデューサー、蘭子を……許してあげて、ください」


武内P「……アナスタシアさん?」

アーニャ「蘭子? 頑張って、描いてくれたのですね?」

蘭子「……うん」

アーニャ「私のニィーペン、乳首は、プリクラースヌイ……良い、ですか?」

蘭子「……うん、凄く綺麗」

アーニャ「スパシーバ♪ ありがとう、ございます♪」

蘭子「えっ?」


アーニャ「そんなに想ってくれて、嬉しい、です」ニコッ

蘭子「……我が友!」ニコッ

…ひしっ!


美波「二人共……とっても、いい笑顔をしてますね」

武内P「……そう、ですね」

  ・  ・  ・

武内P「……それでは、絵は、セーフという事で」

アーニャ「ダー。問題ない、です」


蘭子「……ふふふ、我が魔力の高まりは、未だ留まる事を知らず!」

美波「ほんと、凄く描き込んであって、ビックリしちゃった!」

蘭子「これも、我が友の真実の姿を記すため」

美波「ねえ、蘭子ちゃん。写真に撮って、待受にしても良いかしら?」

蘭子「良かろう! 共に、愛でようではないか!」


武内P「……セーフですか?」

アーニャ「……アー……アー……わからない、です」

武内P「しかし、ここまで取り乱すような事……なのでしょうか?」


美波・蘭子「はいっ!」

美波「もう、本当にアーニャちゃんの乳首って綺麗なんですよ!」

蘭子「天界からこの世に権限した、美の結晶!」

美波「プロデューサーさんも、見たら絶対こうなります!」

蘭子「然り! あの美しさからは、逃れる術は無い!」


武内P「……いえ、結構です」

武内P「私は、アナスタシアさんの……を見ようとは思いません」


アーニャ「……」

美波「見たくない、って事ですか?」

武内P「はい。見たいとは、思いません」

アーニャ「……」

蘭子「真実の美! それを目にしたいと望まない、と?」

武内P「その通りです」

アーニャ「……」

美波・蘭子「少しも?」


武内P「少しもです」

武内P「私は、アナスタシアさんの……を見たいと思ったことは――」

武内P「一度もありません」


アーニャ「……」

武内P「皆さんが、夢中になるのは、仕方ないと諦めます」

武内P「ですが、私は――」


アーニャ「プロデューサー?」

スルスルッ…


武内P「っ!? アナスタシアさん!? 何故、服を!?」

武内P「待ってください! あの、何をするつもりですか!?」


アーニャ「イズヴィニーチェ、すみません、プロデューサー」

アーニャ「そこまで嫌がられるのは、とても、悲しい、です」

スルスルッ…


武内P「お、お二人とも! 彼女を止めてください!」


美波・蘭子「ふああ……めっちゃ綺麗な乳首……!」


武内P「ですよね!」

武内P「お願いします! 服を着てください!」

アーニャ「ダー、着ました♪ だから、目を開けても大丈夫ですよ?」

武内P「新田さん! 神崎さん!」


美波「もっと近くで見たい……! ああ、綺麗!」

蘭子「グリモワール! 描かなきゃ! 描かなきゃ!」


武内P「嘘じゃないですか!」

アーニャ「ダヴァイ♪ ダヴァイ♪」

グイグイッ!

武内P「手を離しっ……!? 待ってください! やめてください!」


アーニャ「アーニャは、プロデューサーにも、ニィーペンを褒められたい♪」

アーニャ「……そう思うのは、当たり前ですね?」ニコッ


武内P「……良い、笑顔をしているのでしょうね」


武内P「ですが、褒められた事ではありません!」



おわり

半年なので、今日は1レスだけ挨拶しようと思います
俺が書き続けていた目的には、


ルパン三世 美しき薔薇乙女/セブンドールズ
http://punpunpun.blog107.fc2.com/blog-entry-685.html

「ルパン三世 嵐を呼ぶ子供!」
http://elephant.2chblog.jp/archives/52071400.html

ドモン「お茶を淹れろ? おいおい」
https://slpy.blog.fc2.com/blog-entry-2143.html


この三つに並べても遜色のないものを書く、というのがありました
自分じゃイマイチわからないので、もしも達成出来ていたとしたら嬉しい限りです


半年という、長いようで短い間ですが、お付き合いくださっている読み手の方に、感謝を
いつ気まぐれで終了するかわかりませんが、今後ともよろしくお願いします


「ねえ、話があるんだけど」


 休憩スペースで、椅子に座り一人でコーヒーを飲んでる所を捕まえた。
 誰かが居たら聞きにくいことだから、ラッキーだったかな。
 だってさ、他に人が居たら、言えないって。


 ――最近、妙に奈緒と仲良くない?


 ……なんて。


「北条さん?……はい、少しの間でしたら」


 腕の時計に目をやり時間を確認する、シンデレラプロジェクトのプロデューサーさん。
 アタシ達、トライアドプリムスのメンバーの……凛の担当の人。
 直接的な関わりは無いんだけど、元から間接的には関わりがあったんだよね。
 だけど、最近はその距離感が……おかしい。


「隣、良い?」


 そう、担当である凛だけじゃなく、最近は奈緒とも仲が良さそうに見える。
 見える、っていうか、明らかに距離感が近くなってる。
 奈緒ったら、この人を見かけたら駆け寄って挨拶とかするんだよ?
 絶対、変、おかしい。


「はい、どうぞ」


 ちょっと刺々しい言い方になっちゃったけど、全然気にしてないみたい。
 アタシみたいな小娘がちょっとばかりすごんだ所で、何ともないってこと?
 ……ああ、でも、凛が前に怒鳴った時は、凄く驚いてたって言ってたっけ。
 ってことは、鈍感で、伝わってない?


「何か、飲み物を買ってきましょうか?」


 あー……これは、伝わってないな。
 ちょっとした雰囲気の変化には、動じないっていうか、気付かないタイプね。
 だから、奈緒みたいに感情表現が豊かなタイプとは相性が良いのかも。
 ……じゃなくて!


「ううん、大丈夫」


 ニッコリと笑って、拒絶する。
 アタシもアイドルとしての活動期間は短いけど、密度だけは高いつもり。
 だから、こうやって笑顔を作るのもお手の物、ってわけ。
 それなのに、


「……そう、ですか」


 この人は、右手を首筋にやって、困った顔をしている。
 ……いけないいけない。
 この人って、笑顔が口癖だって言われるくらい、笑顔には敏感なんだっけ。
 

「うん」


 でも、アタシは笑顔を向けるのをやめない。
 笑顔がこの人に対しての武器になるのなら、それをつきつけていよう。


 奈緒に――女子高生に手を出してる……かもしれない、この人に。


「だけど、気を遣ってくれて、ありがとうございます」


 最近、いい大人が自分よりも凄く歳下の女の子に手を出して……ってよく聞く。
 昔からそういうニュースとかは多かったけど、あんまり意識してなかった。
 だけど、この業界に入ってからは、嫌でも意識せざるを得ないんだよね。
 プロデューサーがアイドルに手を出す、なんて、本当にありそうな話じゃない?


「……それで、話……とは?」


 さすがにアタシの放つ空気を感じ取ったのか、それとも、
アイドルが話があるから真剣に聞こうとしてるのかは、わからない。
 ま、そのどっちでも、関係ないか。
 重要なのは、この人が奈緒によからぬ事をしてるか、そうでないか。
 そして、今後そういう事をする可能性があるか、ないか。


「ちょっと、気になってるんだけどさ」


 問い詰めて、正直に白状するとは思えない。
 嘘がつけないタイプだって凛に聞いてるけど、それも、
凛がこの人に良いように騙されてるだけ、って可能性もあるからね。
 凛って、ツンツンしてるように見えるけど、お人好しだから。
 奈緒なんか、からかってくださいって言わんばかりに騙されやすいし。


「はい」


 だから、ハッキリさせておかないと。
 そのために、しっかりとシミュレーションはしてきた。
 笑顔は絶やさず、淀みの無いように。
 この人から、本当の事を聞き出すために。


「プロデューサーさんって、歳下は恋愛対象になる?」


 隣に座り、下から覗き込むように、言う。
 元々身長差があるから、自然とそうなるんだけどね。
 シャツの胸元も少し開けての……色仕掛け、なんてね。
 前はヤバいくらい白かったけど、最近は動くようになって肌にツヤが出てきたんだよ。


「……」


 って、全然見てないし!?
 アタシ、スタイルは悪くないと思うんだけど、そんなのアリ?
 恥ずかしいのを我慢してやったのに、無反応だと、ムカっとするんだけど。
 ……っと、いけない、笑顔笑顔。


「……すみません。よく、わかりません」


 顎に手を当てて考えてると思ったら、また、右手を首筋にやって困った顔。
 そこには、質問にうまく答えられなかった、っていう申し訳無さしかない。


「……」


 その状態で、見つめ合う。
 ふーん……わからない、ねぇ。
 


「わからないって……年齢は関係ない、って事で良いのかな?」


 切り込む。
 そうだとするなら、危ないって思っても良いよね。
 流石に物凄く歳下を相手にする事は無いと思うけど。
 だけど、アタシが疑ってるのは、女子高生が対象かどうか。


「その、今は仕事が恋人といった感じで、その……ですね」


 少し、たどたどしく言葉を続けていく、プロデューサーさん。
 話す言葉を選んでいるその様子は、疑いを深めるには十分。
 逃さないように、視線でしっかりと捕まえておく。
 無理に話を切って逃げようと思われたら、アタシの力じゃ敵わないから。


「恋愛に関して考える事が全く無かったので、あの……すみません」


 わかりません、と、頭を下げられた。
 その姿が妙に可哀想に見えて、
物凄く悪いことしてるんじゃないかとすら思えてくる。


「へー、そうなんだ」


 だけど、ここで追及の手を休める訳にはいかないんだよね。
 アタシの大事な友達の、ピンチかもしれないんだから。


「アイドルのプロデューサーなんてしてるから、実は女好きかと思ってた」


 また、切り込む。
 冗談めかして言ってるけど、これ、当たってると思うんだよね。
 こういう、何を考えてるかわからないタイプの人ほど……、


「実は、あるでしょ? 可愛いアイドルに囲まれてるんだもん」


 切り込む。


「ちょっと位――手を出そうかな……って思ったり」


 切り込む。



「いえ、それは、一度もありません」



 誘導尋問とも言えるその会話をバッサリと切り捨てられた。
 さっきまでオドオドとしてた様子はまるでなく、
座ったまま姿勢を正し、真っ直ぐにこちらを見つめる、黒い瞳。
 どこまでも誠実なその視線に、アタシはちょっとだけ、たじろいだ。


「私は、プロデューサーですから」


 この言葉に、嘘は無い。
 少なくとも、アタシはそう感じたし……信じたいと、思った。
 だって、こんな真剣な顔で嘘をつける人間は居てほしくないと思う程度には、アタシは子供だから。


「へー、女好きじゃないんだ?」


 安心した。
 この人は、奈緒に手を出したりはしてないし、今後もその可能性は無い。
 奈緒が妙に懐いてるのは、片思い? それとも、まだそこまでいってない感じ?
 ……これは、直接本人に問いただしてみる必要がありそうかな。


「だったら、どうしてプロデューサーに?」


 張り詰めてた緊張の糸がほぐれて、自然と笑みが溢れる。
 アタシの感情の変化を流石に察したのか、プロデューサーさんも、
少しリラックスしてるように見える……けど、姿勢良いね。
 それにしても、下から覗き込むような体勢で座ってたから、疲れちゃった。
 体勢を変えて、背中を伸ばそっかな。


「笑顔です」


 あっ、ちょっと笑ってる?
 へー、プロデューサーさんって、そういう顔で笑うんだ。
 大柄で、顔が怖くて、聞いた話では不審者と間違われて何度も捕まってるのに。
 笑うと、案外可愛いじゃん。



「今の北条さんのような、輝く笑顔」



 ……今のアタシ?



「その笑顔の手助けが出来ればと思い、プロデューサーを志ざしました」



 そう言って、深くなる笑み。
 低く、優しい声が耳を通って、じんわりと胸の奥に届き、広がっていく。
 安堵して緊張から開放されたはずなのに、それとはまた別の、
今まで感じたことのない、なんとも言えない衝動が胸を突き抜ける。


 ……苦しい。


「……北条さん?」


 鼓動が早くなっていくのがわかる。
 貧血の時とは違う、頭に血が上っていく感覚に戸惑う。
 胸を抑えてみると、ドクリドクリと、心臓が早鐘を打つように動いてるのを感じる。


 ……もう、駄目。


 なんとか、うまい事椅子に横になろうと体を傾けるけど、失敗したかな。
 斜めになっちゃってて、椅子からずり落ちちゃう。



「北条さん!」



 ……そう思ってたのに、いつの間にか、アタシの体は支えられていた。
 しっかりと、強く。
 けれど、壊れないように、優しく。


「……あ、りがと」


 顔が、近い。
 間近で見ると、本当に怖い顔つきをしてると思う。
 心配なんだろうけど、アタシ、慣れてるから。
 そんな怖い顔しなくても、平気だよ?


「っ……!」


 そう言って、支えてる方とは反対の手が額に当てられる。
 さっきまで冷たい缶コーヒーを持っていたからか、ヒンヤリとして、気持ちいい。
 オデコ出してるから、手、当てやすかったでしょ?
 またこんな機会があったら、手が当てやすいように、オデコは出すようにしてよっかな。


「そんなに心配しないで……いつもの事だし」


 っていうか、あんまりくっついてると、駄目だと思う。
 さっきまで疑ってたアタシが言うのも何だけど、問題になるんじゃない?
 だからさ、早く離れて。


 ……でないと――


「北条さん」



 離れて欲しく……なくなっちゃうよ?



「――失礼します」


 浮遊感を感じたと思ったら、両の腕で抱え上げられていた。
 力強い腕の感触を背中と脚に感じながら、プロデューサーさんの顔を見る。
 そして、すぐに見るのをやめる。
 だって、今は、本当に駄目だから。


「このまま、医務室に」


 そう言うと、アタシを抱えたままプロデューサーさんは歩き出した。
 いくら力が強いと言っても、一歩踏み出す度に体は揺れ、不安になる。
 だからアタシは、落ちないように、腕を伸ばす。


「……うん」


 腕を輪のようにして、プロデューサーさんの右の首筋の上に、両手で結び目を作る。


 落ちないように。


 落ちているのに。


 このまま引っ張ったら――落とせるかな?


 ……なんてね。



おわり

セブンドールズと並んでるかと言われれば、それは無いと言わざるを得ない。

が、それはジャンルが違うからであって比較するもんじゃない。
あれや、秒速勇次郎や、メタルギアしんのすけは一品物だからこそ完成度が高いんだ。

しかし即興性、継続性、ジャンルの書き分けのトータル技術はこれらの作者に決して劣らないよ。自信持っていい。

大人気ない常務ください(直球)
ハスハス(というかLiPPS)との絡みも見てみたい
アニデレでは絡んでないから武内Pだとダメな人もいるかもしれないけど、この作者さんが書くとどうなるのか気になるんだ

>>280
昔の、全盛期の自分が書いたものに挑むという自己満足ですねw
劣らない所までブランクを取り戻せたなら、あとは伸ばすだけです


武内P「母さん、辞めてください」

CPアイドル達「えっ?」

ちひろ「はっ?」

武内P「あっ」

専務「……」

武内P「あ、あの……すみません、専務!」

専務「……」


専務「何か、言ったかね?」


一同「……!?」

武内P「いえ、あの……」

専務「……」

ちひろ「……」

CPアイドル達「……」

武内P「……かあs」


専務「あー! あー!」


一同「!?」


専務「何か、言ったかね?」


一同「……!」

専務「君達の耳には、何か聞こえたか?」

CPアイドル達「……!」フルフル

専務「君には?」

ちひろ「……いえ、何も」フルフル

専務「君は、何か、言ったかね?」

武内P「……」


武内P「いえ、何も」


専務「よろしい」


一同「……」

専務「……ネクタイを直すのに戻る」

武内P「あ、いえ、それは……」

専務「何か?」

武内P「……何でもありません」

専務「ならば、口を閉じていなさい」

武内P「……」

専務「っ……!」

ぐいいっ!

武内P「っ!? く、苦しっ!? う、おごっ!?」


一同「!?」

  ・  ・  ・

部長「……なるほど、そういう事があったのか」

専務「何か、問題でも?」

部長「……あるねぇ、沢山」

専務「何か、問題でも?」

部長「いや、あの……」

専務「何か、問題がありますか?」

部長「……」


部長「無いんじゃないかな、うん」

部長「しかしだね、首を絞めるのはやりすぎだと思うよ?」

専務「そうですね、私も少し反省しています」

部長「それじゃあ、今後はこういう事のないようにね?」

専務「彼が、母さん、と呼ばなければ」

部長「……もしも呼んだら、君はどうするね?」


専務「首を絞めます」


部長「……一体、何の反省をしたんだろうねぇ」

専務「反省したというのは、彼への接し方です」

部長「ふむ……例えば、何が問題だったと?」

専務「ハンカチとちり紙を持っているか、確認した事です」

部長「君、そんな事までしたのかね!?」

専務「ええ」

部長「……!?」

専務「それが、彼が私を母さんと呼んだ要因の一つと考えられます」

部長「……」

部長「一つ?」

部長「まさか……他にもあるのかね?」

専務「靴下が、スラックスの下でクルクルッとなっていないか確認を」

部長「……そうなってると、気持ち悪いからねぇ」

専務「私としては必要な確認だと思ったのですが」

部長「……クルクルッとなってないか、のかい」

専務「ええ。クルクルッとなってないか、です」

部長「……」

専務「少しクルクルッなりそうだったので、直しましたが」

部長「……なるほど、直したのか」

部長「……他にも、あるんじゃないかね?」

専務「何故、そう思うのですか?」

部長「なんとなく、かな」

専務「他には……そうですね」

部長「……」

専務「目の端に少し目ヤニがついていたので、取りました」

部長「……」

専務「しかし、指でちょちょっとすぐ取ったので、問題はないと思っています」

部長「……」

部長「……それだけかね?」

専務「目が少し充血していたので、目薬を」

部長「……貸してあげたのかい?」

専務「しようとしたら、膝枕は恥ずかしいと言われました」

部長「……」

専務「なので、その場でしゃがませ、目薬をさしました」

部長「……結局、君が目薬をさしてあげたのかい」

専務「膝枕程度を嫌がるなど……全く、彼は反抗期でしょうか?」

部長「……多分、違うねぇ」

部長「……他には?」

専務「爪が、綺麗に切れているかの確認を」

部長「……他には?」

専務「手が荒れていたので、ハンドクリームを」

部長「……もう、無いよね?」

専務「髪を手ぐしで整えて」

部長「……もう、やめてあげて?」

専務「クライアントに元気に挨拶出来るよう、訓練を少し」


部長「過保護! 君、過保護すぎるよ!?」


専務「過保護……? 私が?」

部長「そうだよ! 君だよ!」

部長「君だって、そこまで過保護に育てられてないだろうに!」

専務「当たり前です」

部長「なら、どうして彼にそこまでするんだね!?」

専務「彼が、優秀な人間だからですが」

部長「……」

専務「……」

部長「……それだけかね?」

専務「それ以外に、何か理由が必要ですか?」

部長「……!?」

専務「成果をあげた人間に報酬を与えるのは、上の人間として当然の事」

専務「そして彼は、それを受けるだけの成果を上げている」

部長「それ以外に、理由は無い、と?」

専務「当然でしょう。他に、何の理由があると?」

部長「その、異性として意識している……とか」

専務「私が、彼を? 有り得ませんね」

部長「……そう、かぁ」

部長「……」

部長「……どうしたものかねぇ」

部長「……しかし、君はいささかやりすぎだ」

専務「私には、そうは思えませんが」

部長「仮に、彼に恋人が居たとしたら、怒られてしまうと思うよ」

専務「その場合は、しっかりと言い聞かせます」

部長「彼の恋人に、説明を?」

専務「君にお付き合いはまだ早い」

部長「ん?」

専務「私に言われたからと、ごめんなさいして来なさい、と」

部長「……彼に言い聞かせるのかぁ」

部長「……君ね、それは、母さんと呼ばれても仕方ないと思うよ」

専務「何?」ギロリ

部長「……」

専務「何が、仕方ないと?」

部長「いやもう、ホント! 彼は仕方ない男だよねぇ!」

専務「ええ。優秀な人間にありがちな、どこか抜けている部分があります」

部長「……うん、そうだねぇ」

専務「何か?」

部長「……いや、何でも無いよ、うん」

コンコン


専務「このノックの音……ふむ、彼か」

部長「……そうかぁ、ノックの音でわかるのかぁ」

専務「入りたまえ」


「――失礼します」


ガチャッ!


武内P「……! 部長も、いらっしゃったのですか」


部長「あ、いや、うん」

部長「……いらっしゃっちゃったんだよ」

専務「それで、何の用だ」

武内P「その……今朝の事を正式に謝罪しに来ました」

専務「ほう?」

武内P「申し訳、ありませんでした」

専務「ふむ」


専務「君は、何が悪かったと思っている?」


武内P「何が、ですか?」

専務「ああ、そうだ」


部長「……完全に母親の怒り方だねぇ」

専務「君の言動の、何に問題があったと自覚している」

武内P「その……プロジェクトのメンバー達の前で、ですね」

武内P「膝枕しようとしないでくださいと、言った事です」


部長「そりゃあ言うよ」


専務「それで? もう、終わりかね?」

武内P「その……プロジェクトのメンバー達の前で、ですね」

武内P「シャツをズボンに綺麗に入れ直そうとしないでくださいと、言った事です」


部長「そんな事までしてたのかい?」

専務「それで? 他には?」

武内P「その……ですね」

専務「……」

武内P「……」

専務「泣いていたらわからないだろう」


部長「涙一つ零してないよ?」


武内P「っ……!」

武内P「母さん、と……呼んでしまった事です……!」

専務「……」ギロッ

武内P「……!」


部長「言わせておいて睨むのは、理不尽すぎやしないかい!?」

専務「君は、私に対して非常に反抗的な態度を取った」

武内P「待ってください!」

専務「私を……母さんと呼んだことが、その証明だ」

武内P「そんなつもりは、決して!」

専務「シンデレラプロジェクトの解体も有り得る」

武内P「待ってください! それは、あまりに強引すぎます!」


部長「本当にね!」

部長「何をそこまで怒っているんだい!?」


専務「それが嫌なら、私の言うことを聞きなさい」

武内P「……」

専務「返事はどうした? 私は、あまり気が長い方ではない」

武内P「……」


武内P「……はい、ママ」




おわり

書きます


武内P「連帯責任、ですか」

かな子「智絵里ちゃん、杏ちゃん……!?」

智絵里「と、止めなかった私も、わ、悪いので……!」

杏「杏もさ、一口ケーキ貰っちゃったしねー」

武内P「緒方さん、双葉さん……」

智絵里「だから、かな子ちゃんだけを怒らないで、ください……!」

杏「同じユニットだし、ま、しょうがないかな」

武内P「……わかりました」


武内P「では、連帯責任を実行します」


智絵里・杏「えっ?」

智絵里「じ、実行するって……?」

杏「杏達も叱る、って事? 面倒だなー」

かな子「ふ、二人を怒るのはやめてください!」

武内P「いえ、怒りはしません」

かな子・智絵里・杏「それじゃあ……?」


武内P「摂取したカロリーを三人で分け合って貰います」


かな子・智絵里・杏「……」

かな子・智絵里・杏「はい?」

かな子「分け合うって、どういう事ですか?」

武内P「例えば、三村さんがケーキを一つ食べたとします」

智絵里「……それで?」

武内P「三分の一のカロリーが、それぞれ緒方さんと双葉さんに分配されます」

杏「……何言ってるの?」

かな子「それじゃあ、三倍食べても平気って事ですか!?」

武内P「……」


武内P「……三村さんはこう言っていますが、よろしいですか?」

武内P「本当に、連帯責任の形をとっても」


智絵里・杏「……」

智絵里「……大丈夫、です!」

杏「ま、こっちが最初に言い出した事だしねー」

かな子「二人共……!」

智絵里「かな子ちゃんは、一緒のメンバーである前に……」

杏「……友達だから、ね」

かな子「智絵里ちゃん、杏ちゃん……!」


武内P「連帯責任で、よろしいですか?」


かな子・智絵里・杏「はいっ」ニコリ


武内P「……良い、笑顔です」

武内P「それでは――」


武内P「プロデュゥゥス!」

シャランラ~

  ・  ・  ・

智絵里「連帯責任って……良くないと思うんです」ムッチリ


武内P「まさか……わずか一日でこうなるとは」

智絵里「ちゃんと、止めてあげるのも、友達だと思いました」ムッチリ

武内P「わかって、いただけましたか?」

智絵里「……」ムッチリ


杏「まあまあ、そう焦る事も無いんじゃない?」ぽよんっ


智絵里「……」ムッチリ

杏「杏って、胸に栄養がいくタイプだとは思わなかったよー」ぽよんっ

智絵里「……私、顔とお腹にきてるよ?」ムッチリ

智絵里「ねえ、杏ちゃん?」ムッチリ

杏「んー? どしたの智絵里ちゃん?」ぽよんっ

智絵里「私達、友達だよね?」ムッチリ

杏「当たり前だよ。何言ってるの、智絵里ちゃん」ぽよんっ

智絵里「……」ムッチリ

杏「ねえ、このスタイルなら、稼ぎも増えるかな?」ぽよんっ

武内P「セクシーギルティwith双葉杏、などの企画が考えられますね」

杏「なるほどねー」ぽよんっ


智絵里「……」ムッチリ

智絵里「だけど、今までのお仕事が減っちゃうかもです」ムッチリ

武内P「初めは、戸惑うファンの方もおられると思います」

智絵里「そう、ですよね!」ムッチリ

武内P「ですが、私は問題ないと考えています」

智絵里「どうしてですか……!?」ムッチリ

武内P「笑顔です」


武内P「皆さんが今まで築いてきた、ファンの方達との絆」

武内P「私は、その強い絆で結ばれた笑顔は、とても強いものだと確信しています」

武内P「双葉さんも十七歳ですし、むしろ、さらなる需要が望めるかと」


杏「おー、なるほど。それは稼ぎが増えそうだねぇ」ぽよんっ

智絵里「……」ムッチリ

武内P「双葉さんの、可愛らしい容姿」

武内P「そこに、今のスタイルが加わることにより……」

杏「グラビア撮影とか、かなり稼げそうだねぇ」ぽよんっ

武内P「はい、その通りです」

杏「動き回るより、楽そうだなー」ぽよんっ

武内P「……そう、ですね」

杏「だってさ、智絵里ちゃん」ぽよんっ


智絵里「ま、待って杏ちゃん?」ムッチリ

智絵里「なんだか、このままでも良い、って流れにしてない……!?」ムッチリ


杏「ふわぁぁ……杏、なんだか眠くなってきちゃったよ」ぽよんっ

智絵里「……!?」ムッチリ

武内P「緒方さんに関しても、今の状態ならば問題は無いかと」

智絵里「えっ?」ムッチリ

武内P「緒方さんは、元々かなり痩せている方でしたから」

武内P「むしろ、今の方が健康的だと、言えるのではないでしょうか?」

智絵里「で、でも……」ムッチリ

武内P「確かに、手のひらサイズと言われても、そうは思えません」

智絵里「あ、それ……妖精の衣装の時の」


武内P「緒方さんのファンの方も、最初は戸惑うでしょう」

武内P「ですが、三村さんのファンの方と、少しばかりトレード」

武内P「……それで、ファンの方の数自体の減少は無いと思われます」


智絵里「か、変わらないんじゃなく! 増えて、減ってます、それ……!」ムッチリ

智絵里「か、数は変わらなくても……!」ムッチリ


ガチャッ!


かな子「おはようございまーす♪」ホッソリ


智絵里「……かな子ちゃん?」ムッチリ


杏「おはよう、かな子ちゃん」ぽよんっ

かな子「わあっ♪ 杏ちゃん、スタイルが良くなったねー!」ホッソリ

杏「そういうかな子ちゃんこそ、スレンダーになったよー」ぽよんっ

かな子「ありがとう♪ 二人のおかげだよー♪」ホッソリ

杏「こちらこそ、ありがとねー」ぽよんっ

智絵里「う……うん」ムッチリ


武内P「……」

かな子「これからも、三人で頑張ろうね♪」ホッソリ

杏「ま、テキトーにやろうよ、テキトーに」ぽよんっ

智絵里「……そ、うだね」ムッチリ


武内P「待ってください」


かな子・杏「?」

智絵里「……?」ムッチリ


武内P「先程、緒方さんは、連帯責任はやめようと仰っていました」

武内P「なので、この形は、今日限りにしようと思います」


かな子「そ、そうなの、智絵里ちゃん……?」ホッソリ

智絵里「そ、それは……」ムッチリ

智絵里「……」ムッチリ

かな子「連帯責任だと、ケーキをいくら食べても太らないんだよ?」ホッソリ

智絵里「そ、そう……なんだ」ムッチリ

かな子「お腹いっぱい食べても、どんどん痩せるの」ホッソリ

智絵里「う……うん」ムッチリ

かな子「美味しいから……美味しくて、本当に大丈夫なの」ホッソリ

智絵里「……」ムッチリ

かな子「……」ホッソリ


武内P「――私は、それが問題だと思っています」


かな子・智絵里「……えっ?」

武内P「皆さんの友情が、とても強いものだとは思っていました」

武内P「……しかし、緒方さんは、これを危惧していたのですね?」


智絵里「えっ……えっ?」ムッチリ


武内P「三村さん」


かな子「何……ですか?」ホッソリ


武内P「一日でそこまで痩せられるとは、思ってもみませんでした」

武内P「……申し訳ありません。貴女の、基礎代謝を見誤っていました」


かな子「えっと……何が、問題なんでしょうか?」ホッソリ


武内P「そのペースだと、一週間で骨と皮だけになって、死んでしまうかと」


かな子・智絵里「!?」

かな子「こ、このままだと……」ホッソリ

智絵里「かな子ちゃんの余命が、一週間……!?」ムッチリ


武内P「はい」

武内P「見た所、基礎代謝に対して、カロリー摂取がまるで足りていません」

武内P「……貴女の体には、神が宿っていたようです」


かな子「で、でも……痩せてた方が、良いですよね!?」ホッソリ


かな子「その方が……えっと、階段の上り下りが楽ですし!」ゲッソリ


武内P「っ!? 三村さん!? 落ち着いてください!」

武内P「興奮して、代謝が急激に上がっています!」

かな子「大丈夫です! もっと、食べますから!」ゲッソリ

かな子「美味しいから……美味しいから!」ゲッソリ


かな子「美味しいから、大丈夫です!」ガリガリ


武内P「いけません! このままでは、間に合わなくなってしまいます!」

武内P「しかし、プロデュース方針を変えたとしても……!?」


かな子「美味しいから、大丈夫ですよ~!」ガリガリ


智絵里・杏「かな子ちゃん!」


かな子「智絵里ちゃん……杏ちゃん……!?」ガリガリ


智絵里「ひとまず座って……」ムッチリ

杏「……皆でケーキを食べようよ―」ぽよんっ

  ・  ・  ・

ちひろ「……なるほど、三人でカロリーを分け合うから」

武内P「三人で大量のカロリーを摂取して、事なきを得ました」

ちひろ「智絵里ちゃんと、杏ちゃんもケーキを……ホールで?」

武内P「はい……ホールで」

ちひろ「あの子達、全然食べない方なのに、頑張ったんですね」

武内P「それもあって、三村さんが急激に痩せてしまったのだと思われます」

ちひろ「……凄い代謝能力ですね」

武内P「また、アイドルの方に、驚かされてしまいました」

ちひろ「皆の体型は、元に戻ったんですか?」

武内P「三村さんも、一日ですっかり元通りに」

武内P「双葉さんも、段々と胸が小さくなっていっているようです」

ちひろ「あら……杏ちゃんは、残念ですね?」

武内P「……下着を買う手間が省けて助かった、と仰っていました」

ちひろ「ふふっ、面倒くさがりなのか、前向きなのかわかりませんね!」

武内P「ええ、そうですね」

ちひろ「……」

武内P「……」

ちひろ「あの……智絵里ちゃんは?」

武内P「……」

武内P「……」

ちひろ「プロデューサーさん? あの、えっ?」

武内P「……」

ちひろ「智絵里ちゃんは、どうなったんですか?」

武内P「……」

ちひろ「プロデューサーさん!? どうして何も――」


コンコン

『……失礼します』


ちひろ「――この声……智絵里ちゃん?」


ガチャッ

智絵里「……おはようございます」デップリ


ちひろ「……!?」

武内P「……おはよう、ございます」

ちひろ「ち、智絵里ちゃん……?」


智絵里「おはようございます、ちひろさん」デップリ


ちひろ「お……おはよう、ございます」

智絵里「えへへ、階段を登るの、すっごく大変でした」デップリ

ちひろ「そ、そう……頑張ったのね」

智絵里「はいっ♪」デップリ


智絵里「大変だったんですよ……プロデューサーさん?」デップリ


武内P「……」

智絵里「えへへ、智絵里は、太りにくいけど――」デップリ

武内P「……」

智絵里「――痩せにくい体質だったみたいです♪」デップリ

智絵里「あの……どうしたら良いと思いますか?」デップリ

武内P「……頑張ってください」

智絵里「このまま、痩せなかったら、どうしますか?」デップリ

武内P「それ、は……」

智絵里「見捨てないで……くださいね?」デップリ

智絵里「だけど、もし、アイドルが続けられなくなったら……えへへ♪」デップリ


智絵里「責任、とってくださいね♪」デップリ


武内P「……自己責任で、お願いします」



おわり


 なんじゃ、次はうちか? 何、時計回り?
 まあええか、こういうのはスパッと終わらせるに限る。
 あぁ!? じょ、情熱を込めてじゃと!?
 こっ、こら、化け猫! つっつくなワレ!



「――村上巴。広島出身の十三歳じゃ」


 うちがあん人に最初に出会ったんは、オーディションの時じゃった。
 部屋ぁに入ったら、うちの若い衆にも劣らん男が居る思ったな。
 何が劣らんか、じゃと?
 そりゃまぁ……見た目、じゃな。


「……」


 何じゃ、コイツ。
 右手を首筋にやって、何にも喋りゃせん。
 親父に聞いとったが、このプロダクションは、かなりの大手ゆう話じゃったはず。
 なのに、うちが喋っただけで黙りこくるとは、どういう了見じゃ?


「……一つ、お聞きしても宜しいですか?」


 ドスの効いた、低ぅい声。
 それに、ちぃとばかし目を細め、真っ直ぐに目ぇを見る。
 ……ふん、ただ地声が低いだけ、か。
 見た目に惑わされるとは、うちもまだまだじゃのう。


「何じゃ? 聞きたいことがあるんだったら、遠慮はいらん」


 じゃが、ここで弱みを見せるゆうんはあり得ん。
 親父がどうしても受けてこいゆうけぇ、顔を立ててやるためにうちは来た。
 だのに、先にうちが動くゆうんは、親父の顔に泥を塗るも同じじゃ。
 どっしり構えて、女じゃからと、なめられんようせにゃならん。



「……後ろの方達は、一体?」



 そう言いながら、後ろに控える若い衆らに目ぇを向ける。
 何じゃ、見た目の割に、ちぃさい事を気にする奴じゃな。
 じゃが、まぁ、そうゆう男でも無い限り、
アイドルなんてチャラチャラしたもんのプロデュースをしよう思いはせんか。


「あぁ、気にせんでえぇ。家の若い衆じゃ」


 うちは要らんゆうたのに、親父が心配性で東京までついてこさせたモン達。
 コイツらも、親父の影響か知らんが、妙に心配性での。
 お嬢お嬢と、要らん世話まで焼きたがる……面倒で、有り難い奴らじゃ。
 フリフリやヒラヒラを着せたがるのだけは、心の底から面倒じゃがの!


「……」


 うちの言葉を聞いて、また、右手を首筋にやって黙りこくる。
 部屋には、何とも言えん空気が流れとったわ。


「……」


 右手を降ろした思うたら、そんまま立ち上がり、ドアの方へ。
 じゃが、うちは何もする気ぃは無かったし、
正直な話、家の若い衆に怖気づいて逃げ出すようなモンに、
プロデュースを任せる気ぃは微塵も無かったからの。


 ――じゃが、あん人は、


「今は、村上……巴さんの面接をする時間です」


 ドアを開けて、真っ直ぐに、


「外で、待っていていただけますか?」


 ゆうたんじゃ。


「っ……!」


 うちや、何を言われるかと身構えとった若い衆は、まぁ驚かされた!
 見た目ぇだけかと思いきや、見上げた胆力の持ち主じゃ、とな!
 色めきだつ若い衆の視線を一身に浴びても、微動だにせん佇まい。
 無表情に見えるゆうのに、うちは、怒った親父の顔を思い出した。


「……外で待っとれ」


 最初は、見た目で虎と思った。
 次に、張り子の虎で、中身は虎に食われる鯉だと思った。
 じゃが、あれは龍じゃ。
 迂闊に逆鱗に触れようものなら、どうなるにせよ、たたじゃ済まん。


「……」


 若い衆が不安気にうちを見るのがわかったが、構っとる暇は無い。
 目ぇ離したら、何をするかわからんのじゃ。
 プロデューサー……そして、アイドル。
 舐めてかかったら、知らん間に首を食いちぎられそうじゃのぉ。


「……」


 バタリとドアが閉められ、部屋にはうちと奴だけじゃ。
 後ろに控えとった若い衆には、うちが思っとった以上に助けられてたゆう事か。
 緊張。
 まさか、一人の男を前にして、こんな気持ちを抱く時が来るとは思わんかった。


「――それでは、面接を再開したいと思います」


 部屋に響く、低い声。
 それが、嫌にでっかく聞こえたもんじゃ。


「……その前に、一つだけ、聞かせてもらえるか?」


 コイツ……いや、こん人は、何を考えとるのか。
 家の若い衆を前にして、ちぃーとも表情を変えんかった。
 うちは……それが、不思議でならんのじゃ。


「はい。遠慮なさらず、仰ってください」


 手元の資料から目ぇを離し、うちを見る。
 その目から、何も伝わってこんのじゃ。
 だから、知りたい。
 アンタは――


「怖いとは、思わんかったんか?」


 芸能界ゆうんは、アンタみたいに肝が座っとるモン達ばっかりなんか?
 そうじゃとしたら、とんだ魔窟じゃ。
 プロデューサーでさえこうなら、アイドルはどこまでの……。


 そんなうちの質問に、あん人は、右手を首筋にやって、


「……申し訳、ありません」


 姿勢を正し、頭を下げて、


「ご家族の方だったのでしょうが……とても怖いと、思ってしまいました」


 謝ってきおったんじゃ!
 あの顔で!
 あんな、若頭とも呼ばれててもおかしくない顔でじゃぞ!
 怖い……とても怖い、て!


「……ぷっ」


 あん時は、笑った……いやぁ、笑ったなぁ。
 あそこまで笑わされたんは、初めてだったかも知れん。
 ワイシャツの背中が汗で……じゃぞ?
 耐えろゆうんは、うちには無理な話じゃったわ!


「あ、あはっはっは! そ、そうか! 怖……あっははは!」


 土手っ腹に鉛玉を貰った時は、こんな感じじゃろうなと思うた。
 抑えよう思ってないのに、手ぇが勝手に抑えとるんじゃ。
 中々どうして、とんだ鉄砲玉じゃ。
 ものの見事に、うちのタマを取っていったんじゃからな。


「……良い、笑顔です」


 言われた時、うちはあん人に惚れた。
 惚れ込んでしまったんじゃ……わかるじゃろ?


 ばっ……!? そ、そっちの意味じゃのうて!
 ん? 『LIVE』の『I』に、穴が開いて……『O』になる?
 『L』、『O』、『V』……しばくぞ化け猫ー!

  ・  ・  ・

「――ま、ハッキリ言えば、親父に言われたから、じゃな」


 こん人の前で、下手な強がりは意味が無い。
 強い、弱いの関係無しに、うちを見てくる。
 きばった所で、こっちが疲れるだけじゃ。


「……なるほど」


 うちの笑い声を聞いて、若い衆が殴り込もうとしてきた時は、焦った。
 いくらなんでも、うちが涙流してたら何するかわからんからのぅ。
 ……笑いすぎて涙を流したのは、不覚じゃったわ。


「貴女自身は、そこまでやる気があるわけではない、と?」


 そうじゃな……ついさっきまでは、ああ、そうじゃった。
 手ぇを抜く気は毛頭無かったが、うちの全部を賭けるつもりも無かった。


 ――でも、気ぃが変わった。



「そう、見えるか?」



 両腕を組んで、目の前の――プロデューサーを真っ直ぐに見る。
 女だからと、この村上巴をナメて貰っちゃあ困る。
 アンタも、わかっとるんじゃろ。
 うちの魂が、熱く、溶岩の様に煮えたぎってるのが!


「いえ、私には、そうは見えません」


 そうじゃろそうじゃろ、なぁ! つまらん事を聞いてくれるな!
 じゃが、チャラチャラしたアイドルには、うちはならんぞ!
 うちはうちのまま、大和魂を感じさせるアイドルに、なる!
 ……アンタとならそれが目指せる気がするんじゃ。


「それでは、村上さん」


 村上さん……のう。


「――待った」


 これから同じ花道を歩くゆうのに、他人行儀が過ぎる。


「うちの事は巴と。アンタは、うちの右腕になるんじゃからな」


 親父がよく言っとったな。
 人は見た目じゃない、と。
 見た目に反して、おとなしい奴のようじゃが……うちは認める。
 アンタなら――


「……待った無しで、お願いします」


 ――安心して……って――


「あぁ?」


 今、何て?


「アンタ……断るゆうんか?」


 うちの右腕になるのが、嫌じゃと?
 おう、おどれ! 何を今さら言うとんのじゃ!
 それが、うちをアイドルの道に引っ張り込もうとする奴の言葉か!?
 仁義を通さんかい、ワレコラァ!


「その……アイドルの方を名前で呼ぶのは、はい」


 そうゆうて、また、右手を首筋にやりおった。
 ……な、何じゃ、うちの右腕になるのが、嫌ゆう意味じゃなかったか。
 ええい! これからうちの面倒見ようゆうモンが、そんな情けない事でどうする!


「うちは気にせん! じゃけぇ、巴と呼べ!」


 待ったは、聞き入れさせる!
 将棋じゃったら「待った」は無いが、今は違うけぇの!


「ほら! 巴と呼べ!」


 プロデューサーの机の前まで詰めより……いや、殴り込みじゃ!
 なんとしてでも、うちの「待った」は通させる!


「ま、待ってください! 村上さん!」


 何を言っとるんじゃ!
 待ったをかけてるのはうちじゃぞ!
 逃げ場なんか与えるつもりは無い、詰みじゃ! 詰み!


「あ……た――」


 げに、往生際の悪い奴じゃのぉ。


「助けてください! ご家族の方、助けてくださーい!」



 これが、きっかけじゃ。


 あれからずうっと名前で呼ばせよう思っとるんじゃが。
 ふん、アイドルの天下を獲るまでには、呼ばせてみせる。
 ……天下を獲る方が、むしろ楽かも知れんがのぅ。


 うちは、アイドル道を歩み続ける。


 皆となら、もっと、その先の景色も見られる気がするんじゃ。
 大人しく手を引かれるだけじゃ、女が廃るってもんじゃろ?


 あぁ? 引かれるだけじゃなく、右腕だから隣に居る……?


 はっはっは!


 ……そこになおれ、化け猫! もう許さんけぇの!



おわり

なんちゃって広島弁+東方不敗になっちゃってますね、これ
寝ます
おやすみなさい

シンデレラプロジェクト二期生がちゃくちゃくと集まってるみたいだ
次は飛鳥あたりか

>>384
アニデレ未登場がレギュレーションだと思っています
なので個別に書きます


武内P「エクステ、ですか」

飛鳥「ああ、キミはシンデレラプロジェクトの」

武内P「……二宮さん」

飛鳥「ボクに、一体何の用があるのかな?」

武内P「……」


武内P「何故、女性用下着を頭からぶら下げているのでしょうか?」


飛鳥「何故か、って? ふむ、キミはおかしな事を気にするね」

武内P「それは私の台詞だと、そう、思います」

飛鳥「キミがおかしな質問をしたというのは、ボク自身の言葉さ」

飛鳥「それは誰にも譲れはしないし、また、誰にでも言える事」

武内P「何故、貴女のモミアゲは、ブラジャーなのでしょうか」

飛鳥「ボクのエクステが、そう見えると?」

武内P「はい」

飛鳥「……ふぅ、セカイの選択は、ボクにもわからない事だらけさ」


飛鳥「――さあ、行こうか」


武内P「待ってください! その格好で歩き回らないでください!」

飛鳥「ボクの前に、こうも現実というのは立ちはだかるのか」

飛鳥「……やれやれ、なんとも生きにくいね」

武内P「その様な格好をしていては、当然の結果です」

飛鳥「これは、ささやかな抵抗さ」

武内P「……抵抗というより、テロに近いかと」


飛鳥「蘭子……キミの存在が、ボクのチカラになる」

ぎゅっ!


武内P「……」

武内P「待ってください! それは、神崎さんのものなのですか!?」

飛鳥「彼女の言う所の……そうだね、黒い魔力さ」

武内P「……いえ、黒い下着です」

飛鳥「とても美しい刺繍が施された、黒い羽だろう?」

武内P「……いえ、黒いブラジャーです」

飛鳥「キミも強情だね。あぁ、だからこそ、人を導こうと足掻くのか」

武内P「……」


飛鳥「――さぁ、行こうか」


武内P「待ってください! 話は、まだ終わっていません!」

武内P「二宮さん……神崎さんは、この事をご存知で?」

飛鳥「逆に聞こうじゃないか。蘭子が、それを許すとキミは思うのかい?」

武内P「いえ、思いません」

飛鳥「即答とは、驚いたね。キミは、彼女をよく知っているようだ」

武内P「……」


飛鳥「しかし、それについてはボクも同じ意見さ」


武内P「……」

武内P「……下着泥棒、ですか……!?」

飛鳥「盗まれたのは、むしろボクの方さ」

武内P「……貴女が、盗まれた側だと?」

飛鳥「それも、ボクがボクである上で、重要なモノをね」

武内P「それは……一体、何でしょうか?」

飛鳥「セカイには、様々な思惑が入り乱れている」


飛鳥「その、思考の海を渡るのを躊躇う、そんな感情さ」

飛鳥「言い換えれば、ボクは、踏み出す勇気を貰った」


武内P「それは……理性や、常識とも、言えるのでは?」


飛鳥「そうとも言う」


武内P「……」

武内P「つまり貴女は……我慢が出来ずに」

飛鳥「そう、ボクは、抑圧から開放された。解き放たれたんだ」

武内P「……神崎さんの下着を盗み」

飛鳥「このセカイと、真っ向から向き合う、その時が来た」

武内P「……エクステとして、装着している、と」

飛鳥「ふふ、彼女の存在を近くに感じるのは、心地いいと表現しても良い」

武内P「……彼女に気づかれない内に、返却を」


飛鳥「――さあ、行こうか」


武内P「待ってください! 帰ろうとしないでください!」

飛鳥「……ふぅん、キミは、まだボクの前に立ちはだかる、と?」

武内P「神崎さんは、私の大切な担当アイドルですから」

飛鳥「そうだね。そして、ボクの親しい友人でもある」

武内P「……」

飛鳥「友人が普段身につけているモノを所持していたい」

飛鳥「そうする事すら罪ならば、間違っているのは、どちらだろうね」


飛鳥「ボクか――それとも、このセカイの方か」


武内P「今回は、貴女です」


飛鳥「……」

武内P「……」


飛鳥「――さあ、行こうか」


武内P「待ってください! あまりに強引すぎます!」

武内P「この事を知ったら、神崎さんが悲しみます!」

飛鳥「その心配は無用さ」

武内P「……はい?」

飛鳥「ボクも、蘭子を悲しませたいとは思わない」

武内P「ならば……何故、心配する必要が無い、と?」


飛鳥「同じモノ、未使用だけれどすり替えておいたんだよ」

飛鳥「フェイクには違いないが、限りなく、ホンモノに近い存在だ」

飛鳥「ならば、ホンモノとの違いとは?」

飛鳥「……そう、違わないのさ。彼女が、そうと気づかない限りはね」


武内P「偽物とすり替えておいたのですか!?」

武内P「二宮さん、あまりにも計画的な犯行過ぎます!」

飛鳥「キミは、フェイクがホンモノを超える事は無いと思うかい?」

飛鳥「ボクはね、抗い続ければ、それは叶うと思っている」

飛鳥「その方法の一つとして、ボクの下着も一緒に置いてきたんだ」

武内P「……はい?」

飛鳥「双翼と呼ぶには、ボクのそれは彼女に及ばない」

飛鳥「ならば、羽ばたきを増やさなければ、上手く翔べやしないんだ」

武内P「その……複数、置いてきた、と?」


飛鳥「ギッシリ、パンパンになる程ね」


武内P「……!?」

飛鳥「わかっただろう? セカイは、何も変わらないのさ」

武内P「……二宮さん。貴女が、新たな世界の扉を開いているのでは」

飛鳥「ははっ、そうきたか! 確かに、キミの言う通りだ!」

武内P「反省するつもりは……無い、と?」

飛鳥「ボクは、後ろを向いて飛ぶなんて、器用な真似は出来ない」

武内P「……わかりました」


飛鳥「――さあ、行こうか」


武内P「片桐さんに連絡し、しかるべき処置をお願いします」


飛鳥「!?」

飛鳥「そこは……蘭子にじゃなく、かい……!?」

武内P「私は、彼女を悲しませたくありません」

飛鳥「ら、蘭子だったら……許すという事も、有り得ると思わないかい?」

武内P「はい。なので、片桐さんにお願いします」

飛鳥「まぁ、待ってくれ。落ち着いて話をしようじゃないか」

武内P「その時間は、十分にとったかと」

飛鳥「……キミの考えは、よくわかったよ」


飛鳥「――ならば、ボクもそれ相応の決意を見せようじゃないか」

スッ…


武内P「まだ、パンツを隠し持っていたのですか!?」

武内P「やめてください! 差し出さないでください!」

飛鳥「さあ、ボクの手を取り、共に歩もうじゃないか」

武内P「お願いします! この様な場面を見られては……!」

飛鳥「その時は、ボクは涙を流し、こう言おう」


飛鳥「――この人の指示でやりました、とね」


武内P「っ……!?」


飛鳥「その時、人々は――セカイは、どんな決断を下すだろう」

武内P「それ、は……!」


飛鳥「さあ、選ぶと良い」

飛鳥「蘭子の黒いセクシーなパンツを受け取るか……否か」

飛鳥「願わくば、キミがボクの手を取ってくれると、信じているよ」ニヤリ


武内P「……腹の立つ、笑顔です……!」

飛鳥「どうしたんだい? 何を躊躇っているんだ」

武内P「……!」

飛鳥「……残念だよ。どうやら、時が満ちてしまったようだ」

武内P「何を……言って……!?」


??「プロデューサーさん……?」

??「それに、蘭子ちゃんのお友達の……二宮、飛鳥ちゃんよね……?」

??「えっと……下着を……えっ、えっ?」


飛鳥「チェックメイト、という事さ。ああ、本当に残念だ」

武内P「っ!? この声は――」


美波「あの……どういう事ですか?」


武内P「新田さん……!?」

飛鳥「……まあ、またチャンスは訪れるか」ボソッ

飛鳥「――彼が、どうしても下着が欲しいと言ってね」

武内P「待ってください! 誤解です!」


美波「そんな……どうして……!?」


飛鳥「ボクとしても不本意だけど、意思を変える気は無いみたいなんだ」

武内P「待ってください、新田さん!」


美波「どうして……プロデューサーさんっ!」


飛鳥「それが、彼の選択だからさ」

武内P「それは違います、新田さん!」


美波「下着くらい、私がいくらでもあげます!」

美波「色の指定や、好みの形、何でも言ってください!」


武内P「そういう話ではなく!」

飛鳥「……」

飛鳥「はい?」

飛鳥「待って欲しい……今、何て?」


武内P「落ち着いてください、新田さん!」

美波「私は、シンデレラプロジェクトのリーダーです!」

美波「だから、もっと私を頼ってください!」

美波「美波、精一杯頑張りますから!」

美波「出来るだけ、好みの下着にします、プロデューサーさんっ!」


飛鳥「……!?」


武内P「そういった面で頼るつもりは、全くありません!」

美波「どうしてですか!?」

美波「私は、そんなに頼りないリーダーですか!?」

武内P「切なくなるので、リーダーを連呼しないでください! お願いします!」


飛鳥「……これは、驚いたね」

飛鳥「ボクの知らないセカイが、こんなにも身近に存在していたなんて」

飛鳥「成る程……彼女が、統べる存在か」


美波「待っててください、すぐに!」

武内P「何をする気ですか、新田さん!?」

美波「下着をあげるに決まってるじゃないですか!」

武内P「その決定は取り下げてください!」


飛鳥「……やれやれ、ボクは、ちっぽけなヤツだったようだね」


美波「すぐ……すぐですから!」

武内P「待ってください! 本当にやめてください!」

美波「美波、いきます!」

武内P「新田さん、話を――」


美波「キャスト・オフ!!」

ズバァァァンッ!!

  ・  ・  ・

飛鳥「彼女がそう言った途端、服が全て弾け飛んだんだよ」

飛鳥「服に、意思があるかの様にね」

飛鳥「物質にも意思が宿ると聞くけど、アレは、彼女の意思だ」

飛鳥「彼女は、自らの意思で、セカイの法則に割り込んだのさ」


ちひろ「……はぁ」


飛鳥「その姿を見て、ボクは考えを改めたよ」

飛鳥「どんなに強い想いでも、叶えられない願いがあると」

飛鳥「……悔しいけれど、そう、思わされてしまった」


ちひろ「……どうしてですか?」


飛鳥「元々つけていない下着は、渡しようが無いだろう?」


ちひろ「……」

  ・  ・  ・

美波「――はい! これで、下着を渡せます!」

美波「脱ぎますか? それとも、脱がせますか?」

美波「指示を下さい、プロデューサーさんっ!」


武内P「……」


美波「……?」

美波「あの……あんまり、焦らさないでください」

美波「いくら私でも、下着姿は、その……照れちゃいますから///」


武内P「……」


美波「プロデューサーさん?」

美波「――あっ!? や、ヤダ……!///」

美波「すみませんっ! 今日は、ノー下着デーだって、忘れてました!///」

美波「どうしよう……これじゃ、パンツもブラもあげられないわ……!」

  ・  ・  ・

飛鳥「――そして、時は動き出した」

ちひろ「……はあ」

飛鳥「ボクが気付いた時には、彼女は倒れていたんだ」

ちひろ「……」

飛鳥「彼のスーツの上着を着せられ、ふふっ、尻を抑えて悶絶していたよ」

ちひろ「……悶絶?」

飛鳥「……とても、痛そうだった」

ちひろ「……」

飛鳥……

  ・  ・  ・

美波「取れた! お尻が! お尻が取れた!」ジタバタ!

武内P「いえ、ついています」

美波「気休めはよし――あああ、痛い痛い!」ジタバタ!

武内P「……しばらく、そうして反省してください」


武内P「――二宮さん」


飛鳥「な……何だい?」ビクッ!

武内P「神崎さんの下着を返却して、いただけますか?」

飛鳥「……ふふっ、ボクを脅そうと言うのかい?」

武内P「……もしもの時のために、私も同行しますので」


美波「あっ、でもなんだか……あっ♡ 美波、いきますっ♡」モゾモゾッ!


飛鳥「……」

飛鳥「――さあ、返しに行こうか」

  ・  ・  ・

飛鳥「――そして、セカイは何も変わらなかった」

飛鳥「ただ、それだけの話だよ」

ちひろ「なるほど、だから、飛鳥ちゃんが呼び出されたのね」

飛鳥「彼が、日を改めてボクと話したいと言ったからね」

ちひろ「……それじゃ、私はもう行くわね」

ちひろ「もうそろそろ、プロデューサーさんも来るでしょうし」

飛鳥「おっと、その必要は無いよ」

飛鳥「ボクは、キミにも居て欲しいと思っている」

飛鳥「ふぅ……キミはまさか、ボクに一人で怒られろと?」

飛鳥「あんな光景を見せられて? 本当に行くのかい?」



ちひろ「新しいセカイに目覚めないよう、気をつけてね」



おわり

乙々。
二宮さんは2期生じゃないかぁ。まぁアニメ出てたし仕方なし。
2期生って何人位になるんだろうな?
個人的には13人だと思ってるけど(キュート4人、クール4人、パッション5人。1期生と合わせると9.9.9で丁度いいし)。

>>414
では、それで


>>374つづき書きます


 おっと、こんな時間に失踪するのは、オススメしないな。
 どうしてもと言うなら、私も付き合おうじゃないか。
 走るには、丁度良い夜風が吹いて……なんだ、行かないのかい?


 ふむ、成る程……なんだ、そんな事か。
 猫にからかわれたと思っているのなら、笑い飛ばせば良いのさ。
 そう、その調子で、愛らしい笑顔を……愛らしいはやめてくれ?


 私が、アイドルになったきっかけ?
 仕事だよ、ビジネスさ。
 歌う仕事があれば、どこへでも行くつもりだし、そうしてきた。


 ただ、今のこの状況は、予想していなかったな――



「――……ふぅ」


 久々に来たが、やはりこのスタジオの音響性能は高いな。
 機材の更新もされているようで、私が居た時よりも環境が良くなっている。
 こういった仕事をする人間と、また仕事がしたいものだ。
 プロ意識の感じられる誰かと共に、最高の音を。


「……」


 しかし、それが難しいのも、また事実。
 世界は広く、歌の勉強のためにアメリカにまで足を運んだが、どこか満足が出来なかった。
 いい刺激になったし、力もついたが、結局は日本に戻ってきた。
 風の向くままとは言うが――


「――さて……アンタは?」


 いくら私でも、気になるというものさ。
 何せ、先程から私が歌う様子を、表情一つ変えずに見続けていたのだからね。
 ん? まさか、気付かれていないとでも思っていたのかな?
 気付いていたとも、始めからね。



「……申し訳ありません。私は、こういう者です」



 ほう、顔に似合わず、中々洒落た名刺入れを使っているじゃないか。
 日本人にしては、少々厳しいと言った風体だが、己の仕事に誇りを持っているようだ。
 自分を端的に表し、相手に伝えるための名刺を入れておくケースに、手を抜かない。
 それこそが、愛着をもって仕事をしているという証になる。


「芸能事務所のプロデューサーさんか」


 346プロダクション。
 ふむ、彼の様子から大手だとは思っていたが、予想以上に大手だったようだ。
 日本に戻って何をするか……歌う事しか決めていなかったが、
ここでコネクションを築いておいて、損は無いだろう。
 彼も、そのつもりで私に名刺を渡してきたのだろうし、ね。


「スタジオの見学とは、熱心なことだね」


 だが、急いで本題に入る必要も無い。
 単刀直入すぎるのも、スマートとは言えないからね。


「私は、木場真奈美という」


 そう自己紹介をして右手を差し出すと、彼に一瞬の躊躇いが見られた。
 こういった場面で握手をするのも、日本では無くは無い筈だが。
 まさか、私が女だからと、遠慮している訳でも無いだろう。
 彼のような年齢の男性が、そんな事を気にするとは考え難い。


「……」


 果たして、差し出した手は、握られた。
 彼の身長に見合った、大きな手。
 今後は、遠慮は一切しないで欲しいという意味も込めて、少し、強めに握る。
 それに応えるように、包み込むような握りから、しっかりとした握手になる。


「……フフッ」


 それでも表情を変えない彼は、不器用なだけなのだろう。
 さて、君は、その鉄面皮の下に、どんな感情を潜ませているのかな。
 ポーカーフェイス、というわけではなさそうだ。
 初対面で失礼だとは思うが、物事を器用にこなすタイプには、見えない。



「……良い、笑顔です」



 どうやら、私の観察眼は正解を導き出していたらしいな。
 ああ、君のプロフィール項目に、不器用だけでなく、誠実とも付け加えておくよ。
 悪い言い方をすれば、馬鹿正直となるが……それでも、誠実と。
 褒められているのに、相手を悪しざまに思える程、スレてはいないつもりさ。


「ありがとう」


 彼の言葉には、嘘偽りは感じられなかった。
 それは、彼が……とても、穏やかな表情で、私を見ていたからだね。
 無表情だと思ったばかりなのに、こんな表情もするのかと、ね。
 わかるだろう? 彼の笑顔は、愛らしいと評するようなものだと。


「……」


 真っ直ぐに、私を見つめる視線。
 どこまでも誠実で、真っ直ぐで――


「そろそろ、手を離しても?」


 ――そして、不器用。


「っ!? す、すみません……!」


 彼への印象は、まあ、今でもそう変わっていない。


「すまないね。私の笑顔が、君には魅力的すぎてしまったかな?」


 からかうと、右手を首筋にやって、困る。
 それが面白いと感じるのが、初対面の時よりも大きくはなりはしたがね。


「……はい」


 流されてしまう、普通は当たり障りの無い返答を返す、言葉。
 向こうでは、ジョークにもならないような軽口さ。
 場の仕切り直し、空気の緩和を狙っての発言だったが、
彼は詩的な表現に対しての理解はあるが、こういった機微には疎いからね。
 そうでなければ、


「とても魅力的な、良い、笑顔でした」


 二度目に、また改めて言い直そうとはしないだろう?
 彼にそんなつもりは無いのはわかっていたが、まるで、口説かれているようだったよ。
 ……うん? 何故、今のが口説いた事になるかだって?
 君達も、きっとわかるようになるさ。


「フフッ……私も大概だが、君も、変わっていると言われるだろう」


 思い当たる節が多々あるのか、彼は、
右手を首筋にやって少しばかりの苦笑を漏らした。
 少しばかりのトラブルもありはしたが、会話の滑り出しとしては順調。
 お互いその事を理解しているし、さて、ここから本題に入っていこうじゃないか。
 ここからは、仕事の話だ。


「以前、ここでスタジオボーカリストをしていてね」


 まずは、アピール。
 今、私が此処に居る理由や、簡単にだが経歴を話すと、彼はそれに耳を傾けた。
 彼が、私に――私の歌に興味を持ってくれていたのは、わかっていたからね。
 そうでなければ、名刺を渡しては来ないさ。
 一通り話し終えたので、一度言葉を切り、彼にターンを渡す。


「……これから、何を?」


 ふむ、そうやって切り出してくるのか。


「あぁ……まだ決めていないが……」


 ここで、ある程度の希望を出せ、という事か。
 そうだな、君はアイドルのプロデューサーをしているならば、
その方面の仕事もこなせると言っておく必要がある、か。
 オーケー、ボーカリストのレスんトレーナーの経験も、多少はあるからね。



「――アイドルに、興味はありませんか?」



 想定通りの、アイドルに関する仕事の話。
 だが、彼の発言が意味するものは、私の想定の外のものだった。
 最初は勘違いかとも思ったが、彼の目を見てすぐにわかったよ。


「私をアイドルにしようと――」


 口説き落とそうと――


「――……フフッ、本気で言っているようだね」


「……アイドル業界というのは、人材不足なのか?」


 日本に帰ってきて日も浅いが、そうは思えなかった。
 ふと見たテレビの画面に映るアイドルは、とても、輝いて見えた。
 それなのに、何故、わざわざ私をアイドルにしようとする?
 年若い、それこそ原石のような存在など、いくらでも居るだろうに。


「貴女だからです」


 それなのに、君は、私を選ぶというのか。
 真っ直ぐに、君は、私を求めるというのか。


「……」


 ……やれやれ、こんなにも情熱的なお誘いを受けるとは思わなかったな。
 歌に自信はあるが、ダンスに関しては、そこまでの経験があるわけでも無い。
 踊れないとは言わないが、歌いながら踊るのは、遊びや余興程度にしか。
 いや、それを言うのは、野暮というものか。


「オーケー、歌唱力には、聞いての通り自信がある」


 私のこの歌で、多くの人を魅了しようじゃないか。
 さらに歌を進化させるために、アイドルの道に踏み込んでみるのも悪くない。
 貪欲に、精力的に、何でもこなしてみせよう。


「君の、私の歌への評価が正しいものだったと……結果で証明しよう」


 そう言って、再度手を差し出し、握手を求める。
 未だ口約束の段階ではあるが、これからは、ビジネスパートナーだ。
 より良い仕事を――最高を目指して行こう。
 責任を持って、トップまで導いてもらおうじゃないか。


「……一つだけ、訂正をさせてください」


 彼は、私の手を取り、言った。
 手の平に込められた力は、最初よりも強く……ああ、力強かったな。



「笑顔です」



 視線も、手に込められたものとは比べ物にならない程の、力強い意思が込められていた。



「私が、貴女をスカウトした最大の理由は……笑顔です」



 これには、正直やられたね。
 むしろ、やられて当然じゃないか?


「笑顔……笑顔、か」


 目の前の彼――プロデューサーは、
歌唱力以外の、私の別の部分を一番評価しているらしい。
 それに関しては、文句のつけようもないさ、当然ね。


 だが、私にも、譲れないものがある。


「――なら、君に証明しなくてはな」


 今までの私の、生き方を。



「私の歌は、私の笑顔には劣らないという事を」



 その言葉を聞いて、彼は目を丸くしていたな。
 やられたままでいられるほど、私は大人しい性格では無いからね。
 これで、イーブン。
 ……さて、君は、これにどう返す?


「……ダンスの方も、よろしくお願いします」


 ははっ! なるほど、そうきたか!
 良いだろう、言うまでもないが……あえて言おう。


「こなしてみせるさ。存分に、期待に応えよう」




 これが、きっかけだね。


 私は彼の期待に応える事で、自らを高めているんだ。
 一人では気付かなかった、私の新たな可能性を模索しながら。
 だから、苦戦すらも私の中では楽しみの一つに過ぎないのさ。


 一度きりの人生だ。
 大いに楽しみ、経験し、挑戦していこうじゃないか。


 ……トップになる。
 そうすれば、彼はトッププロデューサーという事になるだろう?
 サプライズにはならないが、良いプレゼントになると思っているよ。


 フフッ、私は弱点は無いと思っていたが……それがあるのも、悪くない気分だ。


 私は君達の――仲間の、そんな表情にはとても弱い。




おわり

アニメ未登場、キュート@3、クール@3、パッション@4、それ以外は全部未定です
書きます


武内P「彼氏が欲しい、ですか」

美嘉「欲しいっていうかさ、おかしくない?」

武内P「何が、でしょうか?」

美嘉「アタシってさ、まぁ、ギャルで売ってるワケじゃん?」

武内P「そう、ですね」

美嘉「なのに、カレシが居ないって……おかしくない?」

武内P「……はあ」


未央「……アイドルだから、おかしくないよね?」

凛「おかしいのは、話の持って行き方だと思う」

美嘉「ギャルってさ、小悪魔的な魅力があるって事でしょ?」

武内P「そう、ですね。そういった面もあるかと」

美嘉「小悪魔ってコトはさ、たぶらかすよね★」

武内P「……はあ」

美嘉「誰をたぶらかすの?」

武内P「……ファンの方、でしょうか」

美嘉「アタシ、ファン多いよ? それじゃ、大悪魔じゃない?」

武内P「……」


未央「……まあ、確かにファンは多いよね」

凛「うん。あの姿を見せないだけ、十分たぶらかしてると思うけど」

美嘉「だからさ、考えたワケ★」

武内P「……」

美嘉「まずは、特定の男の人をたぶからそう、ってね★」

武内P「その結論が……彼氏、だと」

美嘉「どう? アタシ、間違ったこと言ってる?」

武内P「ですが……城ヶ崎さんは、アイドルですので」

美嘉「あー、タンマ。それはさ、ホラ、ちょっと置いとこ、ね?」

武内P「……」


未央「……なんか、もう話の前提が崩れてない?」

凛「未央、止めてあげて。あんな美嘉、見てられない」

美嘉「小悪魔ギャルが、男の人をたぶらかしました★」

武内P「……」

美嘉「その男の人、チョーメロメロになると思うっしょ? なるよね?」

武内P「そう……ですね」

美嘉「トーゼン、付き合いたいと思う。ここまでオッケー?」

武内P「……はあ」

美嘉「小悪魔だけどさ、願いは叶えるべきじゃん? 契約だし」

武内P「……」


未央「……いつ、契約の話した?」

凛「強引さが、ちょっと悪魔っぽくはあるけど」

美嘉「そうしたら、付き合うしかないの。良い?」

武内P「……」

美嘉「付き合ったら、アタシはカノジョ★ 男の人はカレシ★」

武内P「……」

美嘉「カレシ……か、彼ぴっぴ★」

武内P「……」

美嘉「ね? カリスマJKアイドルとしては、彼ぴっ……カレシが居て、トーゼン★」

武内P「……」


未央「……言い直した」

凛「あの呼び方、さすがに恥ずかしかったみたいだね」

美嘉「居てトーゼンなのに、居ないって変じゃない?」

武内P「……」

美嘉「あー、変なのは嫌だなー、カレシ欲しいなー★」チラッチラッ

武内P「……申し訳、ありません」


武内P「その願いは、私には叶える事が出来ません」


美嘉「……なんで?」

武内P「……」


未央「……やばい、見てらんないよ」

凛「プロデューサーの力を大きく越えた願いなら、しょうがないかな」

美嘉「ねえ……なんで?」

武内P「それは、貴女がアイドルだからです」

美嘉「で、でも……カリスマだよ!? ギャルJKだよ!?」

武内P「ですが、アイドルです」

美嘉「……!」

武内P「私は、貴女の担当ではありませんが――」


武内P「――交際の許可を出すことは、出来ません」


美嘉「……」

美嘉「ん?」


未央・凛「ん?」

美嘉「許可って……はっ? えっ?」

武内P「貴女は、とても素晴らしいアイドルです」

美嘉「えっ……あ、うん」

武内P「お付き合いをしたいという気持ちも、理解出来ないではありません」

美嘉「……」

武内P「ですが……申し訳ありませんが、お断りしてください」

美嘉「それって……どういう?」


武内P「――告白を……されたのでしょう?」


美嘉「……」

美嘉「……!?」チラッ


未央「……やめて、美嘉ねぇ。こっち見ないで」

凛「美嘉が告白されて迷ってるって……勘違いしてる?」

美嘉「えっ……と」オロオロ

武内P「その様子……当たっている、ようですね」

美嘉「当たってるっていうか……」

武内P「しかし、今は、貴女はアイドルとしてとても大事な時期です」

美嘉「……だから、カレシは作っちゃ駄目、って?」

武内P「差し出がましいとは思いますが……」

美嘉「……あ」


美嘉「アタシが……誰かと付き合うのが嫌、ってコト!?」


武内P「そうですね……はい、その通りです」


美嘉「……」

美嘉「そっかー★ アンタ、アタシが誰かと付き合うの嫌なんだー!★★★」


未央「美嘉ねぇ!? まさか、喜んでるの!?」

凛「……」

美嘉「そっかそっか……そっかー!★」

武内P「申し訳、ありません」

美嘉「独占欲ってヤツ?★ そういうコト?★」

武内P「……そう、なるでしょうか」

美嘉「はー★ へー★ ほー★」

武内P「……」

美嘉「そこまで言われちゃ、しょーがないかなー★」

武内P「……申し訳、ありません」

美嘉「良いって良いって!★ マジ、気にしないでオッケー!★」

武内P「……はあ」


未央「……うっわ、めっちゃ喜んでる」

凛「……」

美嘉「いやー!★ アタシカレシ作っちゃ駄目だってさー!★」

未央「いや、うん……思いっきり聞こえてたから」

美嘉「誰にも……渡したく、ありませんから……だって!★」

未央「美嘉ねぇ? 落ち着いて、そこまで言ってないよ?」

美嘉「アタシ、案外束縛されるのも、アリかも」

未央「美嘉ねぇ? 落ち着いて、そこまで行ってないよ?」

美嘉「小悪魔ってつらいな―★ ギャルってしんどいなー★」

未央「……あー……うん、そだね」


凛「ねえ、プロデューサー」


武内P「はい、何でしょうか?」


未央「……そうだよね、しぶりんは行くよね」

美嘉「ヤバイヤバーイ★ カリスマ溢れそうなんだケドー★★★」

凛「私、彼氏が欲しいんだけど」

武内P「……渋谷さん?」

凛「ほら、私って、二つのプロジェクトを掛け持ちしてるでしょ?」

武内P「そう、ですね」

凛「精神的に、結構キツかったりするんだよ、実は」

武内P「っ!? それは……申し訳ありません、気付きませんでした」

凛「良いよ、プロデューサーが鈍いのは、知ってたから」


武内P「スケジュールを調整し、こちらの仕事を……減らそうと思います」


凛「だから、精神的な支えが欲し――」

凛「……」

凛「えっ?」


未央・美嘉「あっ」

凛「待って。ねえ、どうしてそうなるの?」

武内P「渋谷さんは、アイドルとしてとても大事な時期です」

凛「うん」

武内P「ですが、まだ、十五歳の……高校生でもあります」

凛「うん」

武内P「貴女に、精神面で負担をかけていたとは、気付きませんでした」

凛「うん」

武内P「……申し訳、ありません」

凛「それで?」


武内P「これからは、クローネ中心の活動w」


凛「ふうううぅぅぅん!」ジタバタ!


武内P「っ!? 渋谷さん!?」


未央・美嘉「……あー」

武内P「一体何が……渋谷さん!?」

凛「……ごめん。今の、忘れて」

武内P「そこまで、貴女に精神的な負荷が……!?」

凛「……まあ、ある意味では、そうかな」

武内P「っ……!?」

凛「だから、その支えとして、彼氏が――」


武内P「――わかりました」

武内P「私としては非常に残念ですが……」


武内P「渋谷さんには、クローネの活動に専念していただきます」


凛「……よいしょ、っと」

…ゴロンッ


武内P「? 渋谷さん? あの、床に寝転んで……何を?」


凛「ふううううううぅぅぅぅぅんんんああああああああ!!!」ジタバタ!


武内P「っ!?」

  ・  ・  ・

ちひろ「――なるほど。それで、凛ちゃんがああなっちゃったんですね」

武内P「……はい」


凛「……」

ゴロンッ


武内P「あの様に、床に大の字に寝て動こうとせず……」

ちひろ「何か、言葉をかけたりは?」

武内P「その……大声を出し、暴れてしまうので……」

ちひろ「なるほど」


凛「……」

武内P「……彼女をあそこまで、追い詰めてしまっていたとは」

ちひろ「そうですね。ある意味では、その通りです」

武内P「……これも、全て私の責任です」

ちひろ「そうですね。ある意味では、その通りです」

武内P「ですが……渋谷さんは、とても素晴らしいアイドルです」


凛「……」ピクッ


ちひろ「だったら、貴方が言うべき言葉は、決まってますよね?」

武内P「はい。クローネに専念とは、甘い考えでした」


凛「……」ピクピクッ

…ムクリッ


武内P「クローネに専念して貰いつつ……」

武内P「――私に変わる、渋谷さんの専属のプロデューサーを立てます」


凛「ふううううううぅぅぅぅぅんんんああああああああ!!!」ジタバタ!

ゴロゴロゴロゴロッ!

武内P「っ!? これだけでは、まだ、足りないと!?」


凛「――全然違う! アンタ、何もわかってない!」ジタバタ!

ゴロゴロゴロゴロッ!


武内P「し、渋谷さん! 転がるのは! 転がるのはやめてください!」

武内P「……わかりました」

武内P「貴女をアイドルの道に引き入れたのは……私です」


凛「……だから?」

……ピタッ!


武内P「そして、貴女を追い詰めてしまったのも……私ならば」

武内P「その責任として、辞表を提出し――」


凛「ふざけないでよ! アンタ、私のプロデューサーでしょ!?」


武内P「っ!?」

ちひろ「凛ちゃんの言う通りですよ、プロデューサーさん」

武内P「千川さん……?」

ちひろ「二つのプロジェクトで、精神的な負担がかかってるのよね?」


凛「……」

…モゾリ


ちひろ「だったら、プロデューサーさんが、支えてあげれば良いんですよ」

武内P「……私が、ですか?」

ちひろ「プロダクションをあげての企画なので、クローネ優先もわかります」

ちひろ「……だけど、凛ちゃんは、どっちも続けたいのよね?」


凛「ちひろさん……」

モゾモゾッ……スッ


ちひろ「凛ちゃん? 一万円を差し出さなくても良いのよ?」

武内P「……私は、貴女の精神的な支えになれるでしょうか?」

凛「……」コクリ

武内P「! 申し訳、ありませんでした!」

凛「……うん、反省して」

武内P「はい。先程までの言葉は、全て、忘れて頂けますか?」

凛「……うん」

武内P「貴女が、精神的な負担を感じているならば――」

凛「……」

武内P「私は貴女を支え、これからも、貴女の姿を見続けていきたいと……」

武内P「……そう、思います」

凛「……ふーん」


凛「まあ、悪くないかな」ニコッ


武内P「良い、笑顔です」

ちひろ「ふふっ、これで一件落着ですね♪」

武内P「ありがとうございます、千川さん」

ちひろ「それにしても、精神的な支え……かぁ」チラッ

武内P「貴女には……いつも、助けられています」

ちひろ「うふふっ♪……あー、私も、なんだか彼氏が欲しくなっちゃったなー」チラッチラッ


武内P「……頑張って、ください」


ちひろ「……それだけですか?」

武内P「……」


武内P「笑顔で、頑張ってください」


ちひろ「……」


武内P「千川さん? あの……笑顔で……千川さん?」

武内P「その表情は……笑顔? あの、どうして何も仰って……千川さん?」

武内P「っ!? 待ってください! あの、千川さん!?」


武内P「千川さん!?」



おわり


「……プラヂューセル?」


 彼女にそう呼ばれたのは、いつ以来だろうか。
 すぐに呼び方は変わってしまったので、回数は数える程しかない。
 だが、彼女が初めて私をそう呼んだ時の事は、ハッキリと覚えている。


 街を歩く、彼女の後ろ姿。
 雪でも降ろうかという寒さの中、彼女を見つけた。
 その寒さを凝縮したかのような、白い雪の妖精。
 思わず声をかけ、振り返った時のあの無垢な表情は、とても、美しかった。


「――大丈夫ですか!?」


 透き通るような肌は、白を通り越し……蒼白となっている。
 黒い革のソファーに横になりながら、苦しげに呻くその様子は、
彼女に、異常が起きていると察するには十分だった。


「一体、何が……!?」


 慌てて駆け寄り、床に膝をついて極力視線を合わせる。
 間近で見てわかったが、彼女は、脂汗をかいていた。
 いつも微笑みを絶やさない彼女が、眉間に皺を寄せ……苦しんでいる。
 呼吸も不規則で、安定とは程遠い。


「っ、これは……」


 ソファーの前にある、テーブルに目を向ける。
 その上には、普段は見かけない、黒い粒が無数に置かれていた。
 その正体を見極めんと、一粒手に取り、確認する。


「……朝顔の種?」


 小学生の頃、観察日記をつけるために朝顔を育てた経験があるという人は多いだろう。
 私もその一人であり、種をつけるまで育てきった時は、非常に大きな達成感を得たものだ。


 思えば、私は、昔から何かが成長していくのを見守るのが、好きだったのかも知れない
 三つ子の魂百まで、という言葉があるが……ああ、昔から変わらない、
変わらなかった結果、シンデレラプロジェクトという、素晴らしいアイドルと出会えたのか。


 この気持ちは……決して、忘れずにいよう。


「……一つだけ確認させてください」


 私の言葉を聞いて、彼女は弱々しくも、こちらに目を向けた。
 だが、目を開けているのも辛いのか、
彼女の青く美しい瞳をいつものように見ることは叶わない。
 しかし、それでも、確認しなければならない。


「種を……飲んだのですか?」


 彼女は、小さくコクリと頷いた。


 朝顔の種には――毒がある。
 主な症状は、嘔吐、血圧低下……そして、非常に激しい腹痛と、下痢。

寝てました
書きます


武内P「イメージ、ですか」

文香「……はい。よろしければ、聞かせていただけますか?」

武内P「それは構いませんが……何故、それを私に?」

奏「貴方なら、正直に言ってくれると思ったのよ」

武内P「……」


奏・文香「私達が、どんなイメージか」


武内P「……」

奏「やっぱり、アイドルってイメージが大事でしょう?」

文香「それを意識するのも……必要かと、思いまして」

武内P「……成る程、わかりました」

武内P「貴女達が、アイドルとしてより輝くのに、必要だと思ったのでしたら――」


武内P「――喜んで、協力させていただきます」


文香「! ありがとう……ございます」

奏「ふふっ、お礼はキスで良いかしら?」

武内P「……いえ、結構です」

奏「あら、つれない人ね」

武内P「それでは……少々お待ち下さい」

ゴソゴソッ…

奏「? 机の中を漁って……何を探してるのかしら?」

武内P「……これを着用してください」

…コトッ

文香「これは……3Dメガネ、でしょうか……?」


武内P「着用して見た相手のイメージが、宙に浮かび上がります」


奏・文香「……」

奏・文香「はい?」

奏「ねえ……私達、本気で相談してるんだけど?」

武内P「? はい、なので、こちらを使用するのが一番かと」

文香「あの……どうして、3D……しかも、3D鼻メガネなのでしょうか?」

武内P「必要な事です。ご理解ください」

奏・文香「……」

武内P「? どうか、されましたか?」

奏「……そうね。余興だと思って、乗ってあげるわ」

文香「奏さん……?」


奏「男の人の嘘にあえて騙されるのも、いい女の条件だと思わない?」


文香「……よく、わかりません」

武内P「では、どうぞ」

奏「まさか、私がこういうのをつける日が来るとはね」

文香「最近の映画館では……こういったものを用いると聞きますが」

奏「そうね。でも、そこまでの大作って、期待はずれの場合が多いの」

スチャッ

奏「だから、私はあまり馴染みが――」


武内P「見えましたか?」

『チャーミング。真面目で、からかうと可愛い反応を見せる』


奏「!?」

奏「何……!? えっ、本物……!?」

奏「えっ?」

スッ

武内P「……」

奏「はっ?」

スチャッ


武内P「……」

『チャーミング。真面目で、からかうと可愛い反応を見せる』


奏「本物じゃないの! 何なの、これ!?」

武内P「アイドルの方には馴染みがないでしょうが……」


武内P「プロデューサーメガネです」


奏「……!?」

文香「あの……奏さん?」

奏「文香……どうやら、これは本物みたいよ」


文香「その……からかって、いるのでは……ないですよね?」

『エチエチの実の能力者。全身エッチ人間』


奏「あうぶっふ!?」

文香「!?」

奏「……ゴホッ! ゴホッ!」


文香「奏さん……大丈夫、ですか……!?」

『エチエチの実の能力者。全身エッチ人間』


奏「っ……!」

ポイッ!

奏「え、ええ……大丈夫よ!?」

文香「……?」

文香「あの……何が、見えたのでしょうか……?」

奏「えっ!? それは、ええと……」

文香「……言えないような、イメージだったのですか……?」

奏「そ、それは、その……」

文香「……」

奏「っ……エッ……セクシー……そう、セクシーよ! 文香!」

文香「? 今、エッ、と聞こえたような……」

奏「気のせいよ」

文香「そう……ですか」


文香「……私は、皆さんと比べたら明るくは、ありません」

文香「なので、暗い、というイメージを持たれていないかと……不安でした」

文香「想像していたのとは違いますが……悪いイメージでは、無かったのですね」


奏「そ、そうね!」

武内P「鷺沢さん」

文香「何……でしょうか?」

武内P「私は、貴女を暗いと思ったことは、一度もありません」

文香「……本当、ですか?」

武内P「はい」


武内P「普段の、読書をしている物静かな姿」

武内P「その時の横顔は、確かに太陽を直接見る明るさとは、違います」

武内P「ですが、陽だまりの優しさを感じる……良い、笑顔をされています」

武内P「……貴女のアイドルとしての魅力も、また、そういった部分にもあるかと」

武内P「……私は、そう思います」


文香「……!」

奏「そ、そうよ! 彼の言う通りよ、文香!」

文香「……陽だまりの優しさ、ですか」

武内P「本に直射日光を当てるのは、良くないかもしれませんが」

文香「ふふっ……そう、ですね」ニコリ

武内P「良い、笑顔です」

奏「そうね……本当に、そう思うわ」


武内P「……それでは」

スタスタ…

武内P「……次は、鷺沢さん」

…コトッ

武内P「どうぞ、着用して、見てみてください」


文香「はい、わかりました」

奏「……」

文香「……これをかけて、相手を見るのですよね」

スチャッ

文香「そうすれば、イメージが……」


武内P「見えましたか?」

『頼もしい。危機に駆けつけ、助けてくれる』


文香「っ!?///」

文香「あ、や……いえ、その……!///」


武内P「? 見えませんか?」

『物静かなようで、詩的で、情熱的な面もあり、また――』


文香「見え、ます……///」

奏「……ふふっ、何が見えてるのかしらね?」


武内P「?」

奏「文香ったら、顔が真っ赤よ?」

文香「か、奏さん……からかわないで、ください……///」


奏「本当、年上なのに可愛いわよね、文香は」

『二十代OL。上司と不倫中』


文香「……!?」サーッ

奏「? どうしたの? 顔が青く……文香?」

文香「……!?……!?」


奏「文香、大丈夫? 具合でも悪いの?」

『彼には奥さんも子供も居るけれど、キスしてる時だけは私の――』


文香「っ!」

ポイッ!

文香「書……! 早く、書を……書を……!」ワタワタ

奏「文香!? 落ち着いて、文香!?」

奏「ねえ!? 何が見えたの!?」

文香「早く……! 早く、剣と魔法の世界へ……!」ワタワタ

奏「待って! ファンタジーな世界へ逃げないで、文香!」

文香「ファンタジー……フィクション……フィクション……」

奏「……フィクション?」

文香「……」

…ペラリ

奏「……駄目ね。こうなったら、手に負えないわ」


奏「文香が逃げ出してしまう程のイメージ、ってことかしら」

奏「色っぽいとはよく言われるけれど、そこまで?」

奏「ふふっ……でも、逃げられたら追いかけたくなるタイプかも」


文香「……」ビクリッ

…ペラリ

武内P「速水さん」

奏「あら、何?」

武内P「確かに、貴女は年齢にそぐわない、誘惑するような魅力を持っています」

奏「そう? それにしては、貴方は平然としてるじゃない?」

武内P「……」


武内P「ですが……私は、貴女の面倒見の良さ、とでも言いますか」

武内P「周囲に気を配り、適切なフォローをする対応力」

武内P「これは、貴女が周囲を良く見て、行動しているからに他なりません」

武内P「……貴女のアイドルとしての、新たな魅力の可能性はそこにある、と」

武内P「……私は、そう思います」


奏「そ……そうかしら?」

文香「……」

…パタンッ

文香「はい……その通りだと、私も思います」

奏「……気配りが出来るのが、新たな魅力?」

文香「それは優しくなければ出来ない事なので奏さんはとても美しい心の持ち主なのだという証明です」

奏「文香!? 早口すぎて聞き取れな……文香!?」

文香「っ!?……ファンタジー……フィクション」

…ペラリ

奏「……ふふっ、本当、何が見えたのかしらね」ニコリ

武内P「良い、笑顔です」

奏「優しさが新しい魅力……そうね、悪くないと思うわ」


武内P「……それでは、もうメガネは必要ありませんね」


ガチャッ!


美波「おはようございます……って、奏さんに、文香さん?」


奏「あら、おはよう美波」

文香「美波さん……おはよう、ございます」

  ・  ・  ・

美波「――なるほど、イメージですか」

武内P「はい。お二人に、相談を受けていました」

美波「そうですか……でも、イメージかぁ」

美波「私って、どんなイメージなんでしょうか?」

美波「お話を聞いてたら、気になっちゃいました」


武内P「……」

…コトッ


奏「……メガネは二つ」

文香「……あったのですね」


武内P「どうぞ、着用して、見てみてください」


奏・文香「……」

美波「……なんだか、ドキドキしてきちゃった!」

奏・文香「……」

スチャッ


美波「……どう、かしら?」

『立てばドスケベ』


奏・文香「……」


美波「私って、どんなイメージ?」

『座ればエロス』


奏・文香「……」


美波「もうっ、焦らさないで、二人共!」

『歩く姿はマジセックス』


奏・文香「……」

美波「ねえ、二人と――」

奏・文香「……」

ポイッ!

美波「? ねえ、何が見えたの?」


奏「――美波は、とっても凄いわ!」

文香「――花のように……その、可愛い……と!」


美波「え、ええっ!?///」

美波「花だなんて……や、ヤダもうっ……!///」

ウロウロ…グルグル…


奏・文香「……」

武内P「新田さん」

美波「は、はい///」

武内P「……」

美波「……?」

武内P「……」


武内P「頑張って、ください」


美波「? はいっ!」ニコリ

武内P「良い、笑顔です」

奏・文香「……!」コクコク

武内P「プロデューサーメガネは、お役に立ちましたか?」

美波「はいっ、とっても♪」

奏・文香「……」

武内P「この、プロデューサーメガネは――」


武内P「着用すると、見た相手に対しての心象が可視化される物です」


奏・文香「……」

奏・文香「!?」

奏「せ、世間一般の人が抱いてるイメージじゃなく!?」

文香「かけた人が、見た人に抱いているイメージ……なのですか……!?」

武内P「? はい、そこまで便利なものでは、ありません」

奏・文香「……!?」


武内P「イメージと違っていましたか?」



おわり

書きます


武内P「野生の日野さんです! 離れて!」

凛「は?」

武内P「渋谷さん、早く離れてください!」

ピョンピョンッ!

凛「……何言ってるの?」


茜「おはようございます!! ボンバー!!」


武内P「おはようございます!」

ピョンピョンッ!

凛「……どうしてジャンプしてるの?」

凛「ねえ、説明して。離れろって、何で?」

武内P「説明は、後で必ず! なので、今は――」

凛「意味がわからないから」

凛「……おはよう、茜」


茜「おはようございます!! ボンバー!!」


武内P「っ!? 待ってください! 挨拶をしては――」

ピョンピョンッ!

凛「?」

凛「どうして? 挨拶なんて、当たり前でしょ」

武内P「渋谷さん、逃げてください!」

ピョンピョンッ!

凛「だから! どうしてそんな事――」


茜「ボンバー!!」

ズドムッ!

凛「っぐうっ!? がっ――」

……ドシャァッ!


武内P「良い、タックルです」

ピョンピョンッ!

武内P「……渋谷さ――ん!」

ピョンピョンッ!

茜「どうですか!! 今のタックルは!!」


武内P「相手の真芯を捉える、良いタックルだと、私は思います」

ピョンピョンッ!

武内P「……今日も一日、頑張ってください」

ピョンピョンッ!


茜「ありがとうございます!! ボンバー!!」

ダダダダダッ!


武内P「……行った、ようですね」

凛「」

武内P「渋谷さん! しっかりしてください、渋谷さん!」

凛「」

凛「……何なの……!? どうしてタックルされたの……!?」ヨロッ…

武内P「何も持っていない相手にタックルするのは、反則です」

武内P「渋谷さんは……‘持っている’と、判断されたのでしょう」

凛「意味がわからない!」

武内P「挨拶をした事で、日野さんの注意を引いてしまったようです」

武内P「……恐らく、今後も狙われ続けると思います」

凛「はあっ!? ふざけないでよ!」

武内P「……笑顔です」

凛「ねえ、今それ関係無いでしょ?」

武内P「……すみません」

凛「何とかして! アンタ、私のプロデューサーでしょ!?」

武内P「空中に居る相手にタックルするのは、反則です」

武内P「なので……先程の様にジャンプし続ければ……」

凛「タックルしてこない、って事?」

武内P「はい、その通りです」

凛「ねえ、アンタが守ってくれれば良くない?」

武内P「その……アイドルの方との過度なスキンシップは……はい」

凛「……」

武内P「……」

凛「……良いよ、わかった」


凛「ジャンプすれば良いんでしょ、ジャンプすれば!」

  ・  ・  ・

茜「おはようございます!! ボンバー!!」


武内P「おはようございます!」

ピョンピョンッ!

凛「おはよう、茜!」

ピョンッ…ピョンッ…


茜「……!……!」


凛「! 本当に、タックルしてこない!」

ピョンッ…ピョンッ…

武内P「! 渋谷さん! もっとジャンプの感覚を!」

ピョンピョンッ!

凛「は!? もっと、ちゃんと喋って!」

ピョンッ…ピョンッ…

武内P「両脚を揃えて着地してはいけません、渋谷さん!」

ピョンピョンッ!

凛「意味がわからないから! 何な――」

ピョンッ…


茜「ボンバー!!」

ズドムッ!

凛「のおうっ!? がっ――」

……ドシャァッ!


武内P「良い、タックルです」

ピョンピョンッ!

武内P「……渋谷さ――ん!」

ピョンピョンッ!

茜「どうですか!! 今のタックルは!!」


武内P「着地の瞬間を捉える、良いタックルだと、私は思います」

ピョンピョンッ!

武内P「……今日も一日、頑張ってください」

ピョンピョンッ!


茜「ありがとうございます!! ボンバー!!」

ダダダダダッ!


武内P「……行った、ようですね」

凛「」

武内P「渋谷さん! 気をしっかり、渋谷さん!」

凛「」

凛「……何なの……!? ジャンプしてたのに……!?」ヨロッ…

武内P「空中にいる相手にタックルするのは、反則です」

武内P「しかし、両脚が地面に着いていれば、セーフです」

凛「意味がわか……いや、その理屈はわかるけど!」

武内P「着地の瞬間を狙われないよう、もっと間隔を短く跳びましょう」

武内P「……頑張って、ください」

凛「わかったよ! やれば良いんでしょ、やれば!」

武内P「……笑顔で、頑張ってください」

凛「笑顔になんてなれない!」

武内P「……すみません」

凛「ねえ、アンタが守るんじゃ本当に駄目なの!?」

武内P「私が、ですか?」

凛「私がタックルされても良いって事? ふざけないで!」

武内P「……」

凛「抱きとめるなり何なりして――……」

武内P「……」

凛「……待って。今の、無し」

武内P「渋谷さん?」

凛「……良いよ、わかった」


凛「ジャンプし続ければ良いんでしょ、ジャンプし続ければ!」

  ・  ・  ・

茜「おはようございます!! ボンバー!!」


武内P「おはようございます!」

ピョンピョンッ!

凛「おはよう!」

ピョンピョンッ!


茜「……!?……!?」オロオロ


凛「! 前と様子が違う!」

ピョンピョンッ!

武内P「渋谷さん! その調子で、行くまで跳び続けてください!」

ピョンピョンッ!

茜「……!?……!?」オロオロ


武内P・凛「……!」

ピョンピョンッ!


卯月「あっ、プロデューサーさんに、凛ちゃん!」

卯月「それに、茜ちゃんも!」

卯月「おはようございます♪」


茜「! おはようございます!! ボンバー!!」


武内P「島村さん、おはようございます!」

ピョンピョンッ!

凛「卯月!? 早く逃げて!」

ピョンピョンッ!


卯月「……はい?」

卯月「えっと、逃げろって……どうしてですか?」

卯月「それに、二人共ジャンプして……ふふっ、楽しそうですね♪」


茜「……!」


凛「卯月と茜の距離が近すぎる!」

ピョンピョンッ…

武内P「! 渋谷さん! ジャンプし続けてください!」

凛「でもっ! このままじゃ卯月が――」

ピョンッ…


茜「ボンバー!!」

ズドムッ!

凛「何でっ!? がっ――」

……ドシャァッ!


卯月「り、凛ちゃ――ん!?」

武内P「良い、タックルです」

ピョンピョンッ!

茜「どうですか!! 今のタックルは!!」


武内P「相手の意識の間隙を突く、良いタックルだと、私は思います」

ピョンピョンッ!

武内P「……今日も一日、頑張ってください」

ピョンピョンッ!


茜「ありがとうございます!! ボンバー!!」

ダダダダダッ!


武内P「……行った、ようですね」

凛「」

卯月「凛ちゃんっ! 目を開けてください、凛ちゃんっ!」

凛「」

凛「……何なの……!? 卯月の方が近かったのに……!?」ヨロッ…

武内P「何も持っていない相手にタックルするのは、反則です」

武内P「島村さんは……‘持っていない’と、判断されたのでしょう」

卯月「えっ!? あの……ええっ!?」

武内P「今後、日野さんに笑顔を向ける時は、注意してください」

武内P「島村さんの笑顔は……とても、輝いていますから」

卯月「ええっと……が、頑張りますっ!」

凛「……待って」

凛「それじゃあ……私は狙われ続けるって事?」

武内P「……貴女の笑顔が見たいと、そう、思います」

凛「ふざけないでよ!」

武内P「っ!?」

凛「過度なスキンシップとか、関係ない!」

武内P「いえ、ですが……!」

凛「タックルだと思えば、平気だから!」

武内P「しかし……!」

凛「……アンタ……私のプロデューサーでしょ?」

武内P「!」


武内P「……わかりました」

武内P「日野さんのタックルは――私が担当します」


卯月「が、頑張ってください!」

凛「言っておくけど、変な事したら承知しないから」

凛「タックルを何とかするだけだからね? 良い?」

武内P「はい。わかっています」

凛「……ふーん。なら、良いけど」

  ・  ・  ・

茜「おはようございます!! ボンバー!!」


凛「おはよう、茜!」

ピョンピョンッ!

武内P「日野さん、おはようございます」


茜「……!」

茜「ボンバ――ッ!!!」


凛「……プロデューサー相手だから、気合十分みたいだね」

ピョンピョンッ!

武内P「……」

凛「体格差があるから、力を溜めてるみたい」

ピョンピョンッ!

武内P「……渋谷さん。離れていてください」

武内P「うん。プロデューサー、気をつけて」


茜「ボンバー!!」

ドドドドドッ!

武内P「プロデューサー!!」

…ふわっ

茜「ボ……ボンバー……!?///」


凛「! 凄い……流れるように、お姫様抱っこで抱え上げた!」

凛「……」

凛「何それ!?」

武内P「体格差がある場合は、足元を狙わないと倒せません」

茜「ぼっ、ボンバー……///」コクコク

武内P「気合を入れすぎて、腰が高くなっていました」

茜「ボン……ボン……///」コクコク

武内P「悪い、タックルです」

茜「……ぼんばぁ///」コクコク

武内P「次からは、気をつけていきましょう」

…ストンッ


武内P「……今日も一日、頑張ってください」


茜「あ、ありがとうございます!!/// ボンバー!!///」

ダダダダダッ!


武内P「……行った、ようですね」

凛「ふざけないでよ! 納得出来ない!」

武内P「っ!?」

凛「もっと、ガツンと受け止めると思ってたのに!」

武内P「い、いえ! それでは、彼女に怪我をさせてしまいます!」

凛「だからって、お姫様だっこする!?」

武内P「しかし、他に方法が……!」

凛「アンタ、私のプロデューサーでしょ!?」

凛「茜をお姫様だっこするなら、こっちにも考えがあるから!」

武内P「……渋谷さん? あの、仰っている意味が、よく……」


凛「ボンバー!!」


武内P「っ!? お、お先に失礼します!」

ダッ!


凛「ほら! これで私も……って、どこ行くの!」

凛「この場合は!? どうするの!? ねえ、ちょっと!」


凛「逃げないでよ!!」



おわり

うお、失敬

>>544
>武内P「うん。プロデューサー、気をつけて」

>凛「うん。プロデューサー、気をつけて」

書きます


武内P「見方を変えて欲しい、ですか」

奏「ええ、お願いできるかしら?」

武内P「しかし……具体的には、どのようにでしょうか?」

奏「ほら、私って、年齢よりも上に見られる事が多いでしょう?」

武内P「そう、ですね」

奏「だからたまには――」


奏「17歳の女の子として見て欲しいな、って」


武内P「……」


卯月・美嘉「うんうん!」コクコク


武内P「……」

武内P「……速水さんのおっしゃる事は、わかりました」

武内P「ですが、その……」


卯月・美嘉「?」


武内P「……」

奏「とりあえず、今日一日だけでも試してみるのも良いんじゃない?」

武内P「……そう、ですね」


卯月「本当ですか!」

美嘉「アンタにしてはサービス良いじゃん★」


武内P「……」

武内P「速水さんは……はい、わかります」

奏「ええ、話が早くて助かるわ」

武内P「ですが……その、ですね……」


卯月・美嘉「?」


武内P「……」

武内P「何故、お二人も喜んでいるのでしょうか?」


卯月・美嘉「えっ?」


武内P「えっ?」

卯月・美嘉「……えっ?」

武内P「……」

美嘉「待って? 話が見えないんだケド?」

武内P「いえ、その……はい」

卯月「だって、プロデューサーさんって……」

武内P「私が、何でしょうか?」


美嘉「アタシ達のコトをさ」

卯月「物凄く、大人扱いしてくれてますよね?」


武内P「……」

武内P「えっ?」


美嘉・卯月「えっ?」


奏「……ちょっと、皆してこっちを見ないでくれない?」

美嘉「ホラ! だって、アタシってめっちゃ頼れるキャラじゃん?」

武内P「それは、その……は、はい」

卯月「私も、ニュージェネでは一番のお姉さんですし!」

武内P「そう、ですね……その通り、です」


美嘉「だけどさ……あんまり大人として扱われるのも、ね」

卯月「……ちょっとだけ、寂しいなぁ、って思う時があるんです」


武内P「……」

武内P「えっ?」


卯月・美嘉「えっ?」


奏「……ねえ、やめて。頼らないで」

美嘉「とにかくさ、アタシ達も17歳扱いすれば良いんだって★」

卯月「美嘉ちゃんの言う通りですっ♪ お願いします、プロデューサーさんっ!」

武内P「それ、は……えっと、ですね……」

卯月・美嘉「……!」

武内P「……」


武内P「……はい。努力、してみます」


美嘉「イエーイ★ 一日だけなら、ワガママ言っちゃおうかなー★」

卯月「あっ、美嘉ちゃんズルいです! だけど私も……えへへ♪」


武内P「……」


奏「……なんだか、妙な事になったわね」

武内P「……私は、皆さんの年齢に見合った対応をしてきたつもりです」

武内P「なので、どういった対応をすれば良いのか、よく……」

奏「年齢相応? 本当にそうかしら」

武内P「そうは、感じられませんでしたか?」

奏「私、27歳くらいの対応をされてるな、って思ってたわよ」

武内P「……そう、でしょうか」


卯月・美嘉「うんうん!」コクコク


武内P「えっ?」


卯月・美嘉「えっ?」


奏「……ほら、こういう時とか」

美嘉「だからさ、アタシ達が10歳若いと思って対応すれば良いんだって★」

卯月「そうすれば、17歳ピッタリの対応になります!」

武内P「いえ、ですがお二人は……その、ですね!」

卯月・美嘉「……?」

武内P「……」


武内P「……はい。努力、してみます」


卯月「はいっ♪ 今日は、17歳として甘えちゃます♪」

美嘉「奏はどうする? 子供っぽくって、いざやると困るよねー★」

奏「困ってる様には見えないわよ。むしろ、楽しそうだけど」


武内P「……」

武内P「そう……ですね。10歳若く、ですか」

卯月・美嘉・奏「……」

武内P「……では、一つ、お願いをしても良いでしょうか?」

卯月・美嘉・奏「お願い?」

武内P「……ボールペンのインクが切れてしまいそうなので」

ゴソゴソ…スッ


卯月・美嘉・奏「……1000円?」


武内P「三人で、買ってきて頂けますか?」


卯月・美嘉・奏「三人で……おつかい?」


武内P「お釣りでアイスを買っても良いので……どうでしょうか?」


卯月・美嘉・奏「……」

卯月・美嘉・奏「!?」

卯月「あ、あの……17歳というか、7歳扱いになってませんか!?」ボソボソ

美嘉「10歳若いと思って対応って言ったのに、どういうコト!?」ボソボソ

奏「いや、私はなんとなくこうなるかと思ってたわよ」ボソボソ


武内P「……皆さん?」


卯月「ここで違うって言ったら、やめちゃうかもしれませんよ!」ボソボソ

美嘉「どうする!? とりあえず、7歳扱いでいっとく!?」ボソボソ

奏「それはそれで、ちょっと面白そうじゃない?」ボソボソ


卯月・美嘉・奏「……」


卯月「はいっ! 島村卯月、おつかい頑張りますっ♪」

美嘉「アタシ達に任せといて★ チョー書きやすいの選んでくるから★」

奏「おつかいのご褒美がアイスっていうのも、悪くないわね」


武内P「はい。頑張ってください」


卯月・美嘉・奏「……」

  ・  ・  ・

ガチャッ!

卯月「――買ってきました、プロデューサーさんっ!」

美嘉「ゴメンゴメン★ アイス選んでたら、時間かかっちゃった★」

奏「だけど安心して。アイス、貴方の分も買ってきたから」


武内P「それは……はい、ありがとうございます」


卯月「プロデューサーさんのは……はいっ、チョコ味です♪」

美嘉「何が良いかわからなかったからねー。テキトー選んじゃった」

奏「ほら、貴方っていつも黒いスーツのイメージが強いから、黒系のにしたの」


武内P「それは……はい、ありがとうございます」

武内P「それで、あの……ボールペンは……?」


卯月・美嘉・奏「……」

卯月・美嘉・奏「!?」

武内P「……皆さん?」


卯月・美嘉・奏「――タイム!」


武内P「はい? あの……タイム、ですか?」

卯月・美嘉・奏「……!」コクコク

武内P「わ、かりました……タイム、ですね」

卯月・美嘉・奏「……」


卯月「どっ、どうしましょう!? ボールペン、買ってませんよ!?」ボソボソ

美嘉「アタシ達、7歳扱いに応えられないってヤバくない!?」ボソボソ

奏「逆に考えましょう。7歳だったら、忘れちゃうのもしょうがないわ」ボソボソ


武内P「あの……買ってくるのを忘れてしまいましたか?」


卯月・美嘉・奏「いや!?」ブンブン


武内P「それなら、安心ですね」


卯月・美嘉・奏「……」

卯月「とっさに嘘ついちゃって、どうするんですか~!?」ボソボソ

美嘉「そもそも、奏が変なコト言い出すから忘れたんじゃない!?」ボソボソ

奏「キスしたらアイスの味が混じって、ってやつ? えっ、私のせいなの!?」ボソボソ

美嘉「あれが無ければなー★ おつかい、カンペキだったのになー★」ボソボソ

奏「待って、それはズルくない? そういうのって良くないわよ?」ボソボソ

卯月「ふ、二人共! ケンカしてる場合じゃないですよ!」ボソボソ


武内P「あの……そろそろタイムを終わらせ……」


卯月・美嘉・奏「――作戦タイム!」


武内P「っ!? 作戦タイム、ですか!?」


卯月・美嘉・奏「……!」コクコク


武内P「……はい、わかりました」

卯月「素直に謝れば……きっと、許してくれます!」ボソボソ

美嘉「だけど、今後アタシ達への見方が変わる……よね」ボソボソ

奏「おつかい一つ出来ないと思われるのは、屈辱だわ」ボソボソ

卯月・美嘉・奏「……」

卯月「……誰かが、代表して謝れば」ボソッ

美嘉「……その人の印象が強く残って」ボソッ

奏「……他の二人は助かる、ってわけね」ボソッ

卯月・美嘉・奏「……」


武内P「皆さん? そろそろ……」


卯月・美嘉・奏「ジャーンケーン!」


武内P「!?」

卯月・美嘉・奏「ポンッ!……ふーっ」

武内P「何故、ジャンケンを……!?」

卯月・美嘉・奏「アーイコーで……しょっ!」

武内P「一体、何を決めて――」


卯月「――プロデューサーさんっ! お話があるんです!」

美嘉「悪いんだケドさ! ちょっと、聞いてあげてくれない!?」


武内P「は……はい?」

卯月・美嘉「ねっ!」


奏「……!」プルプル


武内P「速水さんが……お話がある、と?」

武内P「お話……とは?」

奏「そ……れは……」プルプル


卯月「やっぱり勝利のブイですね、美嘉ちゃんっ♪」

美嘉「ホント、マジでそれ!★ せーのっ――」

卯月・美嘉「ぶいっ♪」

卯月・美嘉「……か~ら~の~」

卯月・美嘉「いえーいっ♪」ニコッ

パンッ!


武内P「良い、笑顔です」

武内P「それで、速水さん? 話とは、一体?」


奏「……!」プルプル

奏「その……ね? 悪気があったわけじゃないの」

武内P「……? はい」

奏「忘れるつもりなんて無かったのよ? わかるでしょ?」

武内P「……はあ」

奏「でも、その……アイスを選んでる内に、楽しくなってきて……」

武内P「……」

奏「チョコは喜ぶかな、とか、考えてたら……その……」

武内P「……」

奏「……待って、少しだけ時間をちょうだい」

武内P「……」


卯月「ファイトです! 頑張って!」

美嘉「アタシ達がついてるよ、奏!」

奏「……ふぅ、続けるわね」

武内P「はい」

奏「アイスを選んでる内に……あぁ、これは言ったわよね」

奏「ごめんなさい……ええと、どこまで話したかしら」

奏「……そう、アイスを選んでたら……選んでる内に……」

武内P「はい」

奏「このアイスを食べたら、どんな顔をするかな……は、関係なくて」

奏「だから……その、おつかいの、ね……ボールペン」

奏「ボールペンを買ってくるのが、おつかいで……その」

奏「なのに、アイスを……アイスが……!」

武内P「……」


卯月・美嘉「頑張って!」

武内P「チョコ味のアイスを真剣に選んでくれたのですね」

奏「そう……そうなの! 貴方、チョコ味は好き?」

武内P「はい、とても」

奏「そう……それは、良かったわ」

奏「でも、だけど……ね、頼まれてたボールペン、は……」

奏「おつかいなのに……それが、目的なのに……ぐすっ!」ポロッ

武内P「っ!? 速水さん……!?」

奏「アイスを選ぶのに、うっく、夢中になっちゃって……ひっ」ポロポロッ

奏「貴方に頼まれ、ったボールペン……わすっ、忘れて……!」ポロポロッ

武内P「……はい」

奏「……ごめ゙んなさい゙」ポロポロッ

武内P「……」


卯月「うええっ……! ずみまぜん゙!」ポロポロッ

美嘉「なんで泣くのよ゙ぉ! ふうっ、ひっ、ひっく!」ポロポロッ

  ・  ・  ・

武内P「――なるほど。それで、あそこまで緊張されていたのですね」

卯月「はい……怒られるのが怖いというか」

美嘉「小さい子以下だと思われるのが、嫌だったんだよねー」

奏「……お願いだから、さっきのは忘れて。後生だから」


武内P「いえ、それは出来ません」


卯月・美嘉・奏「えっ?」

武内P「貴女達が私のアイスを選んでくれた、その想い」

武内P「それを知っているから……はい、このアイスは格別です」

卯月・美嘉・奏「……」

武内P「今回の件で、多少、貴女達への見方は変わりましたが……」

武内P「私が貴方達の味方である事に、変わりはありません」

卯月・美嘉・奏「! はいっ!」ニコッ

武内P「良い、笑顔です」

武内P「それと……アイスを食べ終わったらいいので」


武内P「おつかいをお願い出来ますか?」



おわり


「……」


 早朝。
 いくつものビルが立ち並ぶ、見慣れたオフィス街を歩く。
 目的地は、当然、346プロダクションだ。
 カツカツと、革靴が立てる音と、時折通り過ぎていく車の排気音が耳に届く。


「……」


 今日の午前中は、オーディションがある。
 既に、そのための準備は終わらせてあるのだが、直前に、もう一度だけ確認を。
 オーディションには、アイドルを志す、夢と希望を持った少女達が集う。
 それに際し、万が一にも、不備などがあってはならない。


「……」


 東京の、都会の只中とは言え、やはり、朝の空気は気持ちいが良い。
 昨夜に降った雨のおかげか、いつもよりも空気が澄んでいる。
 地方に比べると良いとは言えないのだろうが、それでも、私にとっては素晴らしいものだ。
 オーディションに来る方達にとって、少しでもプラスになる要素足り得るのだから。


「……」


 そう、考えている内に、大きな建物が――城が見えてきた。
 あの城は、果たして、誰を受け入れる事になるのだろうか。
 頭の中に、今日オーディションを受けに来る方達のプロフィールを思い浮かべる。
 ……やはり、彼女がメンバーの第一候補だろうか。


「……」


 一人の少女の顔を思い浮かべた時――風が吹いた。
 春のものとも、夏のものとも、どちらとも言えるその風は、私を予感させた。


 ――新しい出会い。


「……異臭?」


 そして――トラブルを。


「……」


 人差し指を少し舐めて湿らせ、風向きを確認する。
 風上を向いた私の視線の先には、敷地内の外周にある、
小さな林の様になっている植え込みがあった。


「……」


 異臭の原因が、敷地外からにあるのならば、まあ、問題は無い。
 しかし、もしも、その原因が内側にあるのだとしたら、無視は出来ない。
 プロダクションに所属するアイドルの方達の中には、好奇心旺盛な方も多く、
あの異臭の原因を突き止めようとしてしまうかもしれないからだ。


「……」


 アイドルを守るのは、プロデューサーの役目。
 ……そんな使命感と、何もないだろうが一応、という、楽観的な想いを胸に、私は歩を進めた。


「……」


 舗装されている歩道から外れ、芝生に脚を踏み入れる。
 雨水を吸っている、その、ふかふかとした感触が靴の裏側から伝わってくる。
 後で……靴の手入れをする必要がありますね。
 クライアントが最初に会うのは私なのだから、身だしなみにはきをつけろと、
常務――今は専務――に言われたのも、記憶に新しい。


「……」


 特に今日は、オーディションで、面接をする。
 足元を疎かにするような人間にプロデュースされたいと思う方が居るだろうか。
 それでも構わないと、そう、思うかもしれない。
 だが、それに甘えるのは、誠実さに欠けるというものだ。


「……」


 茂みの、水滴のついた葉に当たらないように、進んでいく。
 手入れのしやすいように、そして、年少のアイドルの方達が悪戯をしないようにと、
茂みに当たらずにどうなっているかの確認が出来るよう、計算された配置。
 尤も、悪戯をしないように、ではなく、悪戯をした場合すぐに見つけられるように、となってしまったが。
 今回も、もし異臭の原因が敷地内にあった場合……悪戯で済めば良い。


「……」


 だが、もしも第三者による悪意だとしたら――


「っ!?」


 異臭の原因を見つけた……見つけてしまった。


 そして……目が、合った。



「あっ、あのっ! これは、違……違うんですっ!」



 脳が、情報を処理しきれていない。
 想像の斜め上をいく展開に、頭がついていかない。
 だが、果たして何人の人間が、この状況に即座に対応出来るだろうか。
 残念なことに、私は口をきつく引き結ぶという、第一手を選択してしまった。


「……っ」


 口を閉じた事で、自然と、鼻でしか呼吸出来なくなる。


 そして――風が吹いた。


 春でも夏でも、正直、どうでも良い。
 彼女の方から私に向かって吹く風は、私に、届け物をした。


 異臭と……ぷりぷりという、異臭の原因が産み落とされている音を。


 草木のざわめきが、まるで、この状況を見ている悪魔の笑い声に感じられた。


「……」


 偶然が積み重なり、それが、やがて一つの大きな流れとなる。
 人は、それを運命と呼ぶが……私は、あまりその言葉が好きではない。
 何故ならば、彼女達が――アイドルの方達が輝いたのは、
運命などという、そのような不確かなものの結果ではないからだ。
 彼女達自身の努力、そして、友情が折り重なり、一つの物語を作り上げた。


「……」


 それは、運命などでは、無い。
 彼女達の、意思によって生まれた、輝きなのだから。


「……」


 ……しかし、私はこの状況を……あえて、運命という言葉を使おうと思います。
 無表情でいるしかない私にとっても、泣き顔とも笑い顔とも区別がつかない彼女にとっても。
 その、どちらにとっても悲劇でしかないこの状況は……運命だ、と。


 はい……運命などクソくらえ、と叫び出したい気分です。


「……貴女は――」


 そんな衝動に駆られながら、彼女に背を向け、言う。


「――オーディションに、来られた方ですね?」


 ――メンバーの第一候補として、思い浮かべていた方だったのだから。


 予め調べておいた、ジュニアモデル時代の仕事ぶり。
 年齢にしては高い、その身長。
 記憶していた数々の情報が浮かび、泡沫の夢のように、消えていく。


「は、はいっ!」


 彼女は……もう、オーディションを受けに来ないだろう。
 この様な姿を見られ、平然と会場に来られるような神経の持ち主は、居ない。


 ――また、アイドルを目指す少女の想いを駄目にしてしまった。


 そんな後悔が、胸の奥から湧き上がり、拳を震えさせる。


 ……しかし、


「私、アイドルになりたいんですっ!」



 ぷぅっ、という空砲の音と共に、


「陸上部に所属してて、ハードルが得意ですっ!」


 地獄のオーディションが、スタートした。


「そ、う……ですか」


 簡単な相槌を打つことしか、出来ない。
 既に走り出した彼女に、待ってください、と声をかけるのは簡単だ。
 こんな状況で、自己PRを開始するなど、前代未聞。
 まずは落ち着いて話せる環境を整えようとするのが、当然の考えだろう。


「それから……それからっ」


 ぷりぷり……ぷりぷりっ。


「……」


 彼女の、アイドルへの溢れ出るような想いに呼応し、便も出る。
 思わず右手を首筋にやり、心を落ち着かせようと、足掻く。


 笑っては、いけない。


 彼女は、必死に走り、この困難を乗り越えようとしているのだ。
 その、前を向く姿勢を笑う事は、決して許されない。


「えっとっ、周りに勧められて、ジュニアモデルをやった経験が――」


 ぽぷぅっ!


「――すこしだけありますっ」


 ――PRの最中に、放屁を挟まないでください!


「……」


 ……とは、言えない。
 私が、今の彼女の状態を責め立てるような真似をすれば、どうなるだろう。
 真っ直ぐに走っている状態で、横から突き飛ばされる。
 ……きっと、今よりも残酷な事態に陥るに、違いありませんから。


「あ、でも、それはただ背が高いからで……」


 背後から、視線を感じる。
 プロフィールにあった身長も高かったが、私の身長も成人男性の平均よりもかなり高い。
 しゃがんでいる今の体勢からだと、余計に大きく見えるだろう。
 早くその体勢を……コトを終わらせて欲しいと、そう、思います。


「背、高いですねっ!」


 ぽぅ~っ!


「プッ――」


 ――駄目だ、笑うな!


「――プロデューサー……ですから!」


 これで、誤魔化せると良いのだが。


「どうして、アイドルに?」


 彼女が違和感を感じる前に、質問する。
 その試みは……成功した。


「私、自分の背の高さがずっと、苦手だったんですっ」


 今までの人生で最大の危機に位置付けられてもおかしくない、この場面。
 そんな状況に於いても、彼女はハキハキと、PRを続けている。
 身長へのコンプレックス、そして、それを乗り越えるアイドルへの憧れ。


 彼女は、諦めずに、前を向いて、夢を掴もうと走り続けている。


 ――それを支えていくのが、プロデューサーの務めだと、そう、思います。


 彼女がどう答えるかは、予想がつく。
 ……しかし、あえて、問いかけよう。


 オーディションの結果を出すに相応しいかの、最終確認として――



「アイドルは、簡単ではありませんよ?」



 ――ぷっ!



 逆に、屁を出された。




 アイドルになるのは、とても難しい。
 しかし、彼女はとても大きなハードルを乗り越えた。
 あのハードルを飛び越えた彼女なら、きっと、この先幾多の困難が待ち受けようと、
それを飛び越え、夢を掴んで見せるだろう。


「……」


 彼女のプロフィールのページを手で軽くさすり、ファイルを閉じる。
 他のメンバー達も一緒ならば、もう、二度とあんな事態には陥らないだろう。
 もしもそんな事態に陥った場合の事は考えない……考えたくは、ありません。


「……」


 ファイルをデスクの引き出しにしまい、閉じる。


「……笑顔です」


 目を閉じ、自分に言い聞かせるように、言う。
 笑顔の力――パワー・オブ・スマイルで、私も乗り越えなければならない。
 運命の悪戯を飛び越えていかなければ、彼女達を導くことは出来ない。


 そのハードルは高く、常に向かい風が吹いている気がするが。



おわり

間違って危うく他所でウンコする所でした
寝ます
おやすみなさい


(ノ・∀・)ノ = ●ウンコー       (((●
画アニコ画アニコ画アニコ画アニコ画アニ
画アニコ画アニコ画アニコ画アニコ画アニ

                         目
        ●)))                  目
コニア画コニア画コニア画コニア画コニア

コニア画コニア画コニア画コニア画コニア

目        (((●             ミ
画アニコ画アニコ画アニコ画アニコ画アニ  ●
画アニコ画アニコ画アニコ画アニコ画アニ ヽ( `Д´)ノ

みりやちゃんが武内pにアタックし始めて本気で慌てるカリスマとか面白そう

>>597
書きます


武内P「スキンシップは、程々に」

みりあ「え~っ!? なんでなんで!?」

武内P「アイドルの方と、プロデューサーが、あまりそういった事は……はい」

みりあ「ダメなの? ねえねえ?」

武内P「……ファンの方には、嫌がられる方も居ますから」

みりあ「大丈夫だよー! みりあのファンの人なら、気にしないよ!」

みりあ「ねっ、美嘉ちゃん!」


美嘉「えっ!? アタシ!?」

美嘉「そ、そう……なのかな?」

みりあ「もしかして、プロデューサーは嫌なの……?」

武内P「いっ、いえ! そういう事では、決して!」

みりあ「えへへ、それなら良かった!」

武内P「……しかし、やめておくべきかと、私は思います」

みりあ「む~っ! プロデューサー、頑固なんだから!」

みりあ「お願い! 美嘉ちゃんからも何か言ってよー!」


美嘉「なっ、何かって!?」

美嘉「そ……そこまで気にする必要は、無い、んじゃ……ない?」

みりあ「ほらほら! 美嘉ちゃんもああ言ってるよ!」

武内P「いえ、しかし……」

みりあ「お願いお願い!」

武内P「……」

みりあ「みりあ、もっとプロデューサーと仲良くしたいの!」

みりあ「ねえねえ! 美嘉ちゃんもそうだよね?」


美嘉「えっ!? アタシ!?」

美嘉「ま、まあ……仲が悪いよりかは、良い方が……良い、よね?」

みりあ「みりあ、仲良くなりたいの~!」

武内P「その、具体的には……」

みりあ「えっ? えっとねえっとね、手をつないだり!」

武内P「手を繋ぐ……ですか」

みりあ「他にはね、えっと……えっと……う~ん」

みりあ「美嘉ちゃんは、どんな事がしたい?」


美嘉「どっ、どんな事!?」

美嘉「えっ、と……一緒にゴハン食べたり、かな……なんて」

みりあ「じゃあ、みりあもそれにする!」

武内P「食事を一緒に……ですか?」

みりあ「うんっ! 今日のお昼ご飯、一緒に食べようよ!」

武内P「……」

みりあ「誘うのランチあのメガネ男子……って、メガネじゃないね、えへへ♪」ニコッ

武内P「……良い、笑顔です」

武内P「しかし、まあ……それ位でしたら、はい」

みりあ「わーい! やったー!」


美嘉「――あ、もしもし唯?」

美嘉「ゴメーン! 今日の昼、予定入っちゃってさー★」

みりあ「ごっはんーごっはんー♪」

武内P「……そこまで喜んで頂けるとは、思いませんでした」

みりあ「えへへ、すっごく楽しみ!」

武内P「午後はレッスンがあるので、近場でもよろしいですか?」

みりあ「うんっ! どこでも大丈夫だよ!」

みりあ「プロデューサーとお昼ご飯を一緒に食べるのが、楽しみなんだもん♪」


美嘉「うん、うん……今度埋め合わせするから★」

美嘉「えっ、声が楽しそう? そんなコトないってば★★★」

みりあ「あとはね、あとは~」

武内P「あの……まだ、何か?」

みりあ「あっ、そうだ! 手! 手を繋ぐの!」

武内P「……」

みりあ「……やっぱり、ダメ?」

武内P「……事務所の、敷地内だけでしたら」

みりあ「いいのっ!? わーい! やったー!」


美嘉「って事で切るね!」

美嘉「ハンドクリーム……ハンドクリーム……!」

みりあ「あっ、そうだ! 事務所内のカフェ!」

武内P「そこで、良いのでしょうか?」

みりあ「うんっ! それなら、行きも帰りも手を繋いでられるでしょ?」

武内P「あっ……いえ、それは……!」

みりあ「……事務所の、敷地内だけなら……って言ったもん」

武内P「……わかりました」

みりあ「えへへっ♪ 男に二言はない、だねっ☆」


美嘉「痛いたたた痛い! 心臓痛い!」

美嘉「静まって! アタシのTOKIMEKI!」

みりあ「あのねあのね、ゴハンを食べる時にね!」

武内P「? はい」

みりあ「えっとね……あ~ん、して欲しいなー」

武内P「あっ……あーん……ですか!?」

みりあ「あのね、前はお家でたまに、あーん、ってしてもらってたの」

みりあ「だけど……妹が出来たから、みりあはお姉ちゃんになったでしょ?」

みりあ「だから、あのね……えへへっ、わかんなくなっちゃった!」

武内P「……」


美嘉「……わかる」

美嘉「そうだよね! 妹の前だと、甘えにくいよね!?」

みりあ「だから……あーん、して欲しいなぁって思ったの」

武内P「……」

みりあ「だけど……ダメ……だよ、ね」

武内P「……」

みりあ「……えへへっ! でも、しょうがないよね!」

みりあ「みりあ、アイドルだもん! それに、お姉ちゃんになったんだし!」

武内P「……」


武内P「その……一口だけ、でしたら」


みりあ・美嘉「……良いの?」


武内P「はい」


みりあ・美嘉「やったー!」

武内P「アイドルの方の要望に可能な限り応えるのも――」

武内P「――プロデューサーの、務めですから」


美嘉「いや、ホント、マジで!★★★」

美嘉「アンタって、そういう所ホントマジホント……マジ、あーん!?★」

美嘉「やっぱり、アンタって仕事出来るね!★」


みりあ「……」

みりあ「……なら、あーんしなくても良いもん」


武内P「……赤城さん?」


美嘉「みりあちゃん!? 何故!? なんで!? どうして!?」

美嘉「コイツが、あーん、だよ!? あーん!」


みりあ「……」

みりあ「……みりあ、プロデューサーと仲良くなりたいの」

みりあ「だから、お仕事であーんされても……嬉しくないもん」


武内P「っ!?」


美嘉「えっ? だって、コイツ、プロデューサーだし」

美嘉「はっ、えっ? な、何か違いが……!?」

美嘉「せっかくのチャンスを手放す、違いがあるの……!?」


武内P「……赤城さん、申し訳ありませんでした」


美嘉「えっ!? アンタ、わかったの!?」

美嘉「何々、何なの!?」

武内P「こういった事には不慣れなもので……」

武内P「……危うく、貴女の想いを無駄にしてしまう所でした」


みりあ「……ううん。みりあも、ワガママ言ってごめんなさい」

みりあ「アイドルと、プロデューサーだもんね!」

みりあ「だから……えへへ、お仕事だもん、しょうがないよね!」


武内P「……いえ、休憩時間は、勤務時間ではありません」

武内P「拘束時間ではあるので、プロデューサーではありますが」

武内P「――あーん……は、仕事ではなく、させていただきます」


みりあ「!」


美嘉「?」

みりあ「……良いの?」

武内P「はい」

みりあ「本当の、本当に?」


武内P「本当です。私を信じてください」

武内P「……私も、赤城さんと……仲良くなれれば良い、と」

武内P「そう、思っています」


みりあ「……! プロデューサーっ!」

ぎゅっ!

武内P「!? あ、赤城さん……その、さすがに抱き着くのは!」

みりあ「えへへっ♪ 聞こえないでーすっ☆」


美嘉「――あ、もしもし莉嘉? ちょっと聞きたいんだケドさ」

美嘉「アンタならどう考えるかなー、って思って」

美嘉「えっ? まあ、ちょっとしたカリスマ調査的な? みたいな?」

みりあ「ねえねえ、プロデューサーは何食べる?」

武内P「そう、ですね……特に決めていませんが」

みりあ「あっ、良い事思いついた!」

武内P「良い事、ですか?」

みりあ「あーんのお礼に、みりあも、プロデュサーにあーんしてあげるね!」

武内P「っ!? あ、いえ……それは……!?」

みりあ「プロデューサー、体大きいから、いっぱい食べないと元気出ないよ!」

武内P「……」


美嘉「あっ……あー! そういうコトね! はいはいはいはい!」

美嘉「さっすがアタシの妹★ マジ、チョーカリスマ溢れる回答だよー★」

武内P「では……私は二人分頼みますので」

みりあ「えーっ!? それじゃ、食べ過ぎになっちゃうよー!」

武内P「食には関心があります」

みりあ「それなら、みりあのも、一口食べたくなっちゃう?」

武内P「あっ、いえ! 決してそういう意味では!」

みりあ「……あーん、したいなー」

武内P「っ……!?」


美嘉「あーん、するの!? マジ!?」

美嘉「あっ、ゴメン莉嘉! 声大きかった? えっ、別に……何も?」

  ・  ・  ・

莉嘉「みりあちゃん! 抜け駆けはズルいよ!」

みりあ「……えへへっ、ゴメンね莉嘉ちゃん」

莉嘉「今度抜け駆けしたら……くすぐりの刑だっ、ガオーッ☆」

みりあ「――あはははっ! もうやってるよー!」

莉嘉「どうだ、参ったか――って、あははっ! やり返すの反則ー!」

みりあ・莉嘉「あははははっ!」キャッキャッ


美嘉「……ふふっ、ああしてると、二人共まだ子供だよね★」

武内P「ですが、とても良い笑顔をしています」

美嘉「……///」

武内P「? あの、何か?」

美嘉「うっ、ううん!?/// 別に、何でも無いよ!?///」

武内P「――それでは、そろそろお昼にしましょうか」

みりあ・莉嘉「はーいっ!」

美嘉「う……うん……そそっ、そろそろ良い時間だしね★」


みりあ「それじゃそれじゃあ、みりあは右手ー!」

ぎゅっ!

莉嘉「だったら、アタシはPの左手もーらいっ☆」

ぎゅっ!

武内P「……」


美嘉「じゃ、じゃあ、アタシは……」

美嘉「……」

美嘉「!? アタシは!?」


武内P・みりあ・莉嘉「?」

>莉嘉「だったら、アタシはPの左手もーらいっ☆」

>莉嘉「だったら、アタシはPくんの左手もーらいっ☆」


みりあ「美嘉ちゃんは……みりあの応援をしてくれてたんだよね?」

美嘉「えっ?」

莉嘉「お姉ちゃんは、上手くいったからアタシを呼んでくれたんだよね?」

美嘉「えっ?」

武内P「えっ? あの……違う、のでしょうか?」

美嘉「……あー……まぁ、その、ね」


美嘉「……アタシのカリスマのなせる業な所は、あるよね」


みりあ「うんうんっ! さすが美嘉ちゃんだと思ったよ!」

莉嘉「やっぱり、お姉ちゃんはカリスマJKアイドルだよね!☆」


美嘉「……は、ははは」

美嘉「……ウン、ソウダネ」

美嘉「……まあ、なんとなくこんな流れかなとは、思ったケドさ」


みりあ「――そうだっ! 美嘉ちゃんも、一緒にゴハン行こうよ!」


美嘉「!?」


莉嘉「ねえねえ、お姉ちゃん! 行こうよー!☆」


美嘉「!!?」


みりあ「それでね、あのねあのねっ……ねっ、莉嘉ちゃん!」

莉嘉「ニヒヒッ☆ みりあちゃんと、アタシと、お姉ちゃんの――」


みりあ・莉嘉「――三人で、あーんしちゃおうっ!」


美嘉「!!!?」


武内P「……」

武内P「!!!!?」

美嘉「えっ? マジ?」

みりあ・莉嘉「マジマジ♪」

美嘉「……」

美嘉「って、話になってるケド?★」


武内P「待ってください! あの、それは流石に――!?」


美嘉「……って、言ってるケド?」

みりあ「美嘉ちゃんだけ仲間はずれはかわいそうだよー!」

莉嘉「カリスマJKのあーんだよ、Pくん! チョーレアなんだから☆」

美嘉「……」

美嘉「観念して、あーん、されとけば?★★★★★★★」


武内P「で、ですが!」


美嘉「みりあちゃん、莉嘉! もっと言ってやって!」

みりあ・莉嘉「はーいっ!」


武内P「待ってください! あまりに強引すぎます!」

武内P「こんな所で……しかも、こんな事で――」


武内P「リーダーシップを発揮しないでください!」



おわり

書きます


武内P「ペットを飼いたいですね」

ちひろ「ペット、ですか?」

武内P「はい」

ちひろ「でも、今の生活サイクルじゃ難しいですよねぇ」

武内P「……はい。なので、諦めています」

ちひろ「ふふっ、でも、動物が好きだとは意外でした」

武内P「あまり、好かれはしないですが」


武内P「ペットが居れば……その、癒やされると思うので」


美波「……」

  ・  ・  ・

未央「ぺっ、ぺ、ペッティングがしたい!?」

美波「ええ、そうみたいなの」

未央「ほっ、本当にプロデューサーが言ってたの!?」

美波「通りがかった時に、少し聞こえただけだから……」

未央「そう、なんだぁ……あ、あはは」


美波「癒やされる、みたいんだけど……」


未央「……」

  ・  ・  ・

かな子「まっ、マッサージがしたい!?」

未央「あいや、わかんないよ!? わかんないけど……多分」

かな子「そんな……本当に?」

未央「しかも……ちょっとエッチなやつ」

かな子「それは……どの位なの、かな~?」


未央「……かなり際どい所まで触っちゃう感じ」


かな子「……」

  ・  ・  ・

李衣菜「げっ、限界まで攻めたい!?」

かな子「こっ、声が大きいよ李衣菜ちゃん!」

李衣菜「それ……本当に、プロデューサーが言ったの?」

かな子「私も、人に聞いた話だから何とも……」

李衣菜「で、でも……本当なら、ロック……だねー、あはは!」


かな子「ロック……ファッ……あ、ごめん! なんでもないの!」


李衣菜「……」

  ・  ・  ・

蘭子「たっ、魂の叫びに従い、己を開放する!?」

李衣菜「しかも……その、ハードな感じみたいだよ」

蘭子「魔王の行進!」

李衣菜「……多分、謝っても許してくれないやつ」

蘭子「果てしなく続く責め苦!? いけないわ! そんな事をしては――」


李衣菜「……ど、どうなっちゃうんだろう、ねー」


蘭子「……」

  ・  ・  ・

きらり「ぴっ、Pちゃんが奴隷を欲しがってる!?」

蘭子「……然り。それも、せっせ、せ、性的な///」

きらり「にょ、にょわー!? きっと、何かの間違いだと思うゆ!」

蘭子「だが! それが我が友の望みならば!」

きらり「ダメダメぇ! えちぃのは、メッ、だゆ!」


蘭子「己を抑圧し苦しむ我が友を……放っては置けないわ」


きらり「……」

  ・  ・  ・

杏「……性欲を抑えられない?」

きらり「……うん。どうしよう、杏ちゃん」

杏「まー、ほら、プロデューサーも男の人だからさ」

きらり「でもでもぉ、Pちゃんはきらり達のために頑張ってくれてるにぃ」

杏「あー……それで色々時間が取れないとかはあるかもね」


きらり「きらり、Pちゃんの苦しみを受け止めたいにぃ!」


杏「……」

  ・  ・  ・

アーニャ「プロデューサーは、攻められたい、ですか?」

杏「みたいだよ? 杏も、詳しくは知らないんだけどさ」

アーニャ「……イズヴィニーチェ、よく、わからない、です」

杏「世の中にはさ、いやらしく攻められたいって人も居るんだよ」

アーニャ「ダー! それは、アー、わかります!」


杏「そういう相性ってさ、大事だって聞くよね」


アーニャ「……」

  ・  ・  ・

智絵里「ぷっ、プロデューサーが、どっど、ドM!?」

アーニャ「ダー。チエリは、どっちですか?」

智絵里「わ、わたしは……その……///」

アーニャ「……とても、難しい問題ですね?」

智絵里「でもっ、プロデューサーが望むなら、わたし……頑張ってみようかな」


アーニャ「ハラショー! 笑顔で、頑張りましょう♪」


智絵里「……」

  ・  ・  ・

莉嘉「笑顔でグイグイ来られるのが弱点!?」

智絵里「うっ、うん……そうみたい」

莉嘉「イエーイ☆ アタシ、そういうの得意だよ☆」

智絵里「ちょっと、痛くしたりとか……」

莉嘉「痛く!? えっ、どういうコト!?」


智絵里「えっと、噛んだり……は、さすがにダメ、なのかなぁ」


莉嘉「……」

  ・  ・  ・

卯月「はっ、歯を立てないように!?」

莉嘉「アイスで練習してるんだけど、イマイチわかんないんだよね」

卯月「さっ、最近の中学生って進んでるんですね、あ、あははは!」

莉嘉「トーゼン☆ アタシ、カリスマJCだしっ☆」

卯月「り、莉嘉ちゃん、凄いです……///」


莉嘉「Pくんに喜んでもらいたいし、やるっきゃ無いでしょ☆」


卯月「……」

  ・  ・  ・

みりあ「ねえねえ、ご奉仕って何するの?」

卯月「えーっと……みりあちゃんにはまだ早いかなぁ」

みりあ「えーっ!? 教えて教えてー!」

卯月「えっと、その、喜んでもらえるように、色々する……とか?」

みりあ「色々?」


卯月「おっ、お手伝い! そう、お手伝いです!」


みりあ「……」

  ・  ・  ・

みく「めっ、メイドが欲しい!?」

みりあ「うんっ! お手伝いするなら、メイドさんだよね♪」

みく「う~ん……それは、確かにそうかも知れない、けど……」

みりあ「ねえねえ、お手伝いって、どこまでするの?」

みく「どこまで……?」


みりあ「みりあの歳だと、まだ早いお手伝いって何かな~?」


みく「……」

  ・  ・  ・

凛「えっ、えっちなお手伝い!?」

みく「しーっ! 凛チャン、声が大きいにゃ!」

凛「アイツ、そんな趣味があったの……!?」

みく「Pチャンも、所詮は男……オスってことだよ」

凛「オスって! いや、確かにそうかも知れないけど、でも!」


みく「オスがメスを求めるのは、本能にゃ……仕方ないんだよ、凛チャン」


凛「……」

  ・  ・  ・

武内P「待ってください!」

凛「色々悩んだけど、これが私の答えだから」

スッ…

武内P「首輪のリードを渡そうとしないでください!」

凛「うん。わかった」

武内P「……素直……!?」

凛「これから、躾もちゃんとしてよね」

武内P「な、なら! 首輪も外してください、渋谷さん!」

凛「それはダメ」


凛「ペットを飼うなら、首輪をしないと」ニコッ


武内P「……良い、笑顔です――が、全く癒やされません!」

武内P「お願いします! どうか……どうか!」


武内P「ペットを飼いたいとは、もう二度と言いませんから!」



おわり

書きます


武内P「甘い言葉を囁いて欲しい、ですか」

アイドル達「はいっ!」

武内P「いえ、あの……良い返事をされましても」

アイドル達「はいっ!!」

武内P「み、皆さん!? 落ち着いてください!」

アイドル達「はいっ!!!」

武内P「っ……!?」


武内P「わ、わかりました! わ、私に出来る範囲でしたらしますので!」


アイドル達「はいっ!!!!」

武内P「とにかく、大声を出さないでください! お願いします!」

未央「やー! まさかやってくれるとは!」

武内P「……まずは、本田さんからですか」

未央「うんっ! 頼むよ、プロデューサー!」

武内P「それで、あの……どういった言葉を言えば?」

未央「耳元で、可愛いよ」

武内P「っ!?」


武内P「待ってください! まさか、皆さんも同じ様な……!?」


アイドル達「はいっ!!!!!」


武内P「っ……!?」

未央「これくらいは出来る範囲だよねっ、プロデューサー♪」

武内P「いえ、あの……しかし……!」

未央「えっ、まさか、さっきの言葉は嘘だったの?」

武内P「待ってください! そういう訳では!」

未央「……私、馬鹿みたいじゃん!」

武内P「っ!?」

未央「うっ……馬鹿、みたいじゃん……ぐすっ!」

武内P「……っ」


武内P「……わかり、ました。やります」


未央「オッケー! 録音した? した?」

アイドル達「バッチリ!」


武内P「……良い、演技です」

武内P「それでは……失礼します」

未央「カモーン!」

武内P「……」

スッ…

未央「う……これ、結構ドキドキするかも」


アイドル達「……どうぞ」


武内P「……本田さん、可愛いですよ」ボソッ

未央「!?」ゾクリッ

未央「う、うう、うわひゃああああ!?」

ダダダダダッ!


武内P「っ!? 本田さん!? あの、何か問題でも!?」


未央「妊娠した! 三つ子! 三つ子を妊娠した!」


武内P「何故!?」

武内P「待ってください! あの、軽く囁いただけですよ!?」


アイドル達「早く、こっちに座って!」

未央「うん……うん……!」

未央「いや、あれやばいって……本当、やばいって……!」

アイドル達「……!」ゴクリッ


武内P「その……やはり、問題があったようですね」

武内P「なので、これでもう終わりに――」


アイドル達「はあっ!!!!!!?」


武内P「――っ!? すっ、すみません!?」

武内P「……」

武内P「……やるしか……無いようですね」

卯月「つっ、次は私でお願いしますっ!」

武内P「……本当に、やるのですか?」

卯月「はいっ!」

武内P「……それで、どういった言葉を言えば?」

卯月「耳元で、頑張ってて偉い、って言ってください!」

武内P「……また、耳元なのですね」

卯月「はい♪」

武内P「……わかり、ました」


アイドル達「ファイトー!」


卯月「はいっ! 島村卯月、頑張ります♪」


武内P「……」

武内P「それでは……失礼します」

卯月「うぅ、やっぱり……ちょっと緊張しますね」

武内P「……」

スッ…

卯月「あ、あぅ……///」


アイドル達「……どうぞ」


武内P「……島村さんは、頑張っていて偉いですね」

卯月「!?」ゾクリッ

卯月「へっ、へううううううっ!?///」

ダダダダダッ!


卯月「耳が!/// ニュー・ニュージェネレーションズが!///」


武内P「島村さんも三つ子なのですか!?」

凛「卯月、大丈夫?」

卯月「ぱ……パパとママに報告しないと……///」

武内P「っ!? 待ってください!」

凛「うん、大丈夫そう」

武内P「大丈夫な点が見当たりませんが!?」

凛「良いから。次、行くよ」

武内P「……次は、渋谷さんですか」

凛「うん。私はあんまり興味ないけどね」

武内P「! なら、渋谷さんは飛ばし――」


凛「でも、こういうのを全員でやるって大事だと思う」

凛「プロジェクト全体の意思統一、っていうのかな」

凛「まあ、だから私もやるよ。やるから」


武内P「……」

武内P「それで、あの……何と言えば、良いのでしょうか?」

凛「うーん……ちょっと、思いつかないかも」

武内P「では、可愛い、や、頑張って偉い、のどちらかで――」


凛「ふざけないでよ!」


武内P「っ!?」


凛「他の女に言った言葉をそのまま言うつもり!?」

凛「有り得ない! 何考えてるか、サッパリわからないから!」

凛「アンタ、私のプロデューサーでしょ!?」

凛「もっと真剣に考えて! でないと、承知しないから!」


武内P「し、渋谷さん……!?」


凛「何? ほら、考えてよプロデューサー」


武内P「……!?」

武内P「みっ、皆さん! どうか知恵を貸して――」

アイドル達「……」フルフル

武内P「わ、私が考えろと……!?」

アイドル達「はいっ!」

武内P「……!?」

凛「どうしたの? ほら、早くしてよ」

武内P「ま、待ってください! せめて、考える時間を!」

凛「何? そんなにすぐに思いつかない程度なの?」

武内P「っ……あ……いえ……」


武内P「し、渋谷さんの期待に応えられるよう、ですね」

武内P「時間をかけて、ゆっくりと考えたいと……そう、思います」


凛「……ふーん。まあ、悪くないかな」

凛「それじゃ、期待して待ってるから」


武内P「……」

  ・  ・  ・

武内P「……良い、反応です」ボソッ

美波「いきますっ♡」ゾクリッ

武内P「何故!?」


  ・  ・  ・

武内P「このメモを……読めば良いのですね」

アーニャ「ダー! ダヴァイ♪ ダヴァイ♪」

武内P「……モイ リュボーフィ フシェグダー ス タボイ」ボソッ

アーニャ「!」ゾクリッ

武内P「アナスタシアさん、あの、これはどういった意味で……」

アーニャ「は……は……」ブルブルッ

武内P「アナスタシアさん? あの、体が震えて――」

アーニャ「……ハラショー」

…ドサッ!

武内P「アナスタシアさん!? どういう意味で……アナスタシアさん!?」


訳)私の愛はいつも貴女の傍にあります

  ・  ・  ・

武内P「……我が闇に、飲まれるが良い」ボソッ

蘭子「!?」ゾクリッ

武内P「これで……よろしいでしょうか?」

蘭子「魂がよね! もう、震えてたまらんのよ!」

武内P「神崎さん!? あの、言葉遣いが!」

蘭子「我が友と、我が闇が一つとなる時、闇の御子が産声をあげる! あげてるの!」

武内P「あげていません! 生まれていません、神崎さん!」

蘭子「っ!?/// 闇は更に深さを増すと!?///」

武内P「何故、顔を赤らめ……神崎さん!?」

  ・  ・  ・

武内P「……私は、貴女を見捨てません」ボソッ

智絵里「!?」ゾクリッ

智絵里「ほ……本当、ですか?」

武内P「? はい」

智絵里「わたしを……智絵里を見てて、くれますか?」

武内P「はい」

武内P「……むしろ、私が貴女に見捨てられないか、心配です」

智絵里「……」


智絵里「……」

スッ…

武内P「お、緒方さん……?」

智絵里「……智絵里は、絶対に見捨てたりしませんよ」ボソッ

武内P「っ!?」ゾクリッ


智絵里「……えへへっ///」ニコッ


武内P「……良い、笑顔です」

  ・  ・  ・

武内P「あの……本当に、先程の言葉で良いのでしょうか?」

かな子「はいっ♪ お願いします」

武内P「……」

スッ…

武内P「……好きなだけ、食べてもいいですよ」ボソッ

かな子「っ!?」ゾクリッ

かな子「はいっ! 美味しいから、大丈夫ですよね♪」

武内P「いや、駄目ですよ!? 三村さん……三村さん!?」


  ・  ・  ・

武内P「……」

杏「ほらほら~、いい加減覚悟を決めなって~」

武内P「……わかりました」

スッ…

武内P「……働かなくても、良いですよ」ボソッ

杏「っ!?」ゾクリッ

杏「……それじゃ、おやすみなさ~い」

武内P「……お仕事は、してくださいね」

  ・  ・  ・

武内P「城ヶ崎さんと、赤城さんは……?」

きらり「うぇへへ、二人にはぁ、ちょ~っと早いかなぁと思って☆」

武内P「! ありがとう、ございます」

きらり「ううん、だって、Pちゃんも困っちゃうもんねぇ」

武内P「そう、ですね」

きらり「だけどぉ、二人には、あとでちゃ~んと何かしてあげてね!」

武内P「はい。約束します」

きらり「うんうん! これで、みぃ~んなで、ハピハピ出来るにぃ☆」

武内P「……」


武内P「……」

スッ…

きらり「にょわっ!? ぴ、Pちゃ――」

武内P「いつも、ありがとうございます」ボソッ

きらり「っ!?///」ゾクリッ


きらり「う……うっきゃ~っ!/// はずかすぃー!///」テレテレ


武内P「……」

  ・  ・  ・

みく「ぜ~ったい! ぜ~ったい、みくだけに聞こえるようにね!?」

武内P「……はあ」

みく「良い!? Pチャン、ぜ~ったいだからね!?」

武内P「はい。わかりました」

みく「……よし、Pチャン! かかってくるにゃ!」


武内P「……」

スッ…

武内P「……ありのままで、魅力的ですよ」ボソッ

みく「っ!?」ゾクリッ

みく「ま……前川です! 前川みくです! 猫は可愛いから好きです!」

武内P「まっ、前川さん!? あの、語尾は!?」


みく「前川みく! 前川みくを宜しくお願いします!」


武内P「選挙はもう終わっています、前川さん! 落ち着いてください! 前川さん!」

  ・  ・  ・

武内P「多田さんも、ご希望が無いという事で……」

李衣菜「うーん、よくわからないんですよね、こういうの」

武内P「……はい、私も同じ気持ちです」

李衣菜「あ、あははは……まあ、とりあえず、お任せで!」

武内P「お任せ、ですか」

李衣菜「ロックなのを期待してますよ、プロデューサー!」

武内P「……」


武内P「……」

スッ…

武内P「……ネコミミも、似合っていますよ」ボソッ

李衣菜「っ!?」ゾクリッ

李衣菜「なっ、何を言ってるにゃ!?/// 似合ってなんかないにゃ!///」

武内P「すっ、すみません……しかし、その、語尾が」


李衣菜「語尾がどうにゃしたんですか!?/// プロデューサーにゃん!?///」


武内P「っ!? 多田さん、にわか感が! にわかネコキャラ感が凄いです!」

  ・  ・  ・

武内P「……」

凛「そろそろ、私の番かな」

武内P「そ、う……ですね」

凛「もう、大分待ったから」

武内P「……はい」

凛「さすがにここまで待たされたらさ、期待するのは当然だよね?」

武内P「……そう、でしょうか」

凛「うん」

武内P「……」


凛「まさかとは思うけど、考えてないって事は無いよね?」


武内P「……」

武内P「……すみません」

凛「……」

武内P「……」

凛「……はあ、だと思った」

武内P「……」

凛「良いよ、気にしてない」

武内P「……申し訳、ありません」


武内P「それでは、解散し――」


凛「ふーん! ふーん!?」


武内P「……」

凛「良いよ、気にしてない」


アイドル達「……ループ入った」


武内P「……」

武内P「待ってください……今、考えます」

凛「良いよ、気にしてない」ムスッ

武内P「……」

凛「良いから! 気にしてないから!」ムスッ

武内P「……」


武内P「……」

スッ…

凛「今更、何? あっ、顔近――」

武内P「……貴女の笑顔が見たいと、そう、思います」ボソッ

凛「っ!?」ゾクリッ

凛「……」


凛「……///」ニヘラッ


武内P「良い……あ、いえ……はい、そう、ですね」

武内P「はい、笑顔です」

  ・  ・  ・

武内P「……――と、言うような事がありまして」

ちひろ「お疲れ様でした、プロデューサーさん」

武内P「……はい、とても、疲れました」

ちひろ「でも、皆やる気を出してお仕事頑張ってくれてるじゃないですか♪」

武内P「城ヶ崎さんと、赤城さんの埋め合わせも……はい、大変でした」

ちひろ「うふふっ♪」


ちひろ「思った通り、プロデューサーさんは押しに弱いですね♪」


武内P「……まさか、千川さんが彼女達を焚き付けたのですか?」


ちひろ「もうっ! 焚き付けただなんて!」

ちひろ「私は、ちょっとあの子達に囁いただけです」


武内P「……まるで――いえ……何でもありません」


ちひろ「うふふっ、事務員の囁きは、とっても甘いんですよ♪」



おわり

なんか似たようなの書いた気がします
寝ます
おやすみなさい

申し訳ない、今日は寝ます
おやすみなさい

書きます


武内P「新田さんについていけない、ですか」

アーニャ「……ダー」

武内P「何か……問題でも、起こったのでしょうか?」

アーニャ「……」

武内P「アナスタシアさん、私に話して……くださいませんか?」

アーニャ「……」


アーニャ「……美波は、すぐにいきますね?」


武内P「……」

武内P「えっ?」

アーニャ「美波は、可愛い。美波は、凄い、です」

武内P「アナスタシアさん? アナスタシアさん?」

アーニャ「美波は、いつも、いきますと……いっています」

武内P「待ってください。あの、それは……」


アーニャ「……美波の、いきますという言葉が……わかりません」


武内P「……」

武内P「……それ、は……はい、そう……ですか」

アーニャ「日本語は、難しい、です」

武内P「……は、はい」

アーニャ「プロデューサー、いきます、とは?」

武内P「そ、れは……」


アーニャ「美波は、どこにいっているのですか?」


武内P「……!」

武内P「ど、どこ……なのでしょうか、はい」

アーニャ「私は、わからない、です」

武内P「その……新田さん御本人には、聞かれたのでしょうか?」

アーニャ「ダー。もちろん、です」

武内P「! そ、それで……何と?」

アーニャ「それは――」

  ・  ・  ・

美波「それは自分で、んっ♡ 見つけるの♡」

美波「私と、アーニャちゃんのいきかたは、違うかもしれないものっ♡」

美波「あっ、またいきますっ♡」


  ・  ・  ・

アーニャ「――と、テレビの収録前の、アー、楽屋で言われました」

武内P「わかりました。新田さんを全力で説教しようと、そう、思います」

アーニャ「ニェート! 美波を怒らないで、ください!」

武内P「……アナスタシアさん?」

アーニャ「イズヴィニーチェ……すみません、大きな声を出して、しまいました」

武内P「いえ……それは、問題無いのですが」

アーニャ「プロデューサー、教えて、ください」


アーニャ「どうすれば、私も……美波のようにいけますか?」


武内P「いけません! アナスタシアさん!」

アーニャ「っ!? 私には、いけませんか!?」

武内P「あ、いえ! そういう意味ではなく……待ってください!」

武内P「とにかく、一度待ってください!」

  ・  ・  ・

奏「――ふぅん? それで、私が呼ばれたのね」

武内P「……ご足労頂き、ありがとうございます」

アーニャ「カナデ。カナデは、美波がどこにいっているか、知っていますか?」

奏「そうねぇ……教えたら、ご褒美のキスは貰えるのかしら?」

武内P「……」

奏「……ふふっ、冗談よ。それに、残念だけど――」


奏「――私も、美波がどこにいっているか……わからないのよ」


アーニャ「……アー、カナデもわからないのですね?」

奏「ええ、ごめんなさいね、ご期待に添えなくて」

武内P「……」


武内P「えっ?」

奏「私にわかるのは、いきます、の言葉の後に――」

武内P「速水さん? 速水さん?」

奏「――美波の、セクシーさ……色気が増してる事だけ」

アーニャ「ダー! カナデも、わかりますか?」

奏「勿論よ。同性なのに、私もドキリとさせられちゃうもの」


奏「……美波は、どこにいっているのかしら」


武内P「っ……!?」

武内P「あの、速水さん? 冗談を言われている訳では……」


奏「?」キョトン


武内P「……」

武内P「……ああ、嘘だと言ってください……!」

奏「! その様子だと……やっぱり、貴方は知ってるみたいね」

武内P「あっ、いえ、それは……!」

アーニャ「プロデューサー! 教えて、ください!」

武内P「いけません、アナスタシアさん!」

アーニャ「っ!? やっぱり、私は、いけませんか!?」

奏「あら、だったら私ならどう?」

武内P「そ、それも無理です! いけません!」

奏「……ふふっ、ハッキリ言ってくれるじゃない」


武内P「……と、とにかく、待ってください! お願いします!」

武内P「私の口からは説明出来ませんので、どうか!」

武内P「助けを呼ぼうと、そう、思います!」

  ・  ・  ・

文香「――ファンタジーな世界、でしょうか」

アーニャ「ファンタジーな……」

奏「……世界?」


武内P「……助けてください……誰か助けてください……!」


文香「私も、美波さんに……聞いてみたことがあります」

文香「美波さんは……どこに、いっているのかを――」


  ・  ・  ・


美波「光を抜けた先みたい、だったりっ♡ あっ♡」

美波「闇の底に、んんっ♡ 沈んでいき、いきますっ♡」

美波「……ふぅ。だったりよ、文香さん、ありすちゃん」


  ・  ・  ・


文香「――こう、言っていました」

アーニャ・奏「……なるほど」


武内P「詩的に何を……というか、橘さんが居る前で、ですか!?」

文香「す、すみません……何か、問題が、あったのでしょうか……?」

武内P「あると言うか……その、大問題と言いますか」


アーニャ「ハラショー! アー、大問題なら、答えも大きいですね?」

奏「美波の色っぽさの答え……ふふっ、大正解が気になるわね」

文香「その答えを求める事が、女性として、アイドルとしての成長に……繋がるかと」


武内P「お願いします、アイドルを巻き込まないでください!」

武内P「……鷺沢さん。それは、一体どんな状況での事ですか?」

文香「は、はい……確か……歌番組の収録前の……楽屋での事です」

武内P「わかりました。今度から、新田さんの楽屋には誰も近づけさせません」

文香「あ、あの……私達から、質問に行ったのです」

アーニャ「フミカとアリスが、アー、自分から、質問しに?」

奏「本番前に、美波のセクシーさの秘訣を聞こうとしたのかしら」

文香「……はい。美波さんは、同い年ではありますが……とても、素敵ですから」


武内P「お願いします……彼女を参考にするのは、どうか……!」


アーニャ「そう言えば……美波が、気になることを言っていました」

奏「気になること? ねえ、アーニャ……それは、一体何かしら?」

文香「美波さんがいっている事と……魅力に、何か関係が……?」

アーニャ「ニェート……それは、わからない、です」


アーニャ「ただ……アー、女性ホルモンと、言っていました」


奏・文香「……なるほど」


武内P「彼女は何を言っているんですか!?」

アーニャ・奏・文香「!」ピクリ

武内P「あ、いえ、今のは違います! 期待した目で見ないでください!」

奏「でも……少しわかったわ」

アーニャ「ハラショー! さすが、カナデ、です!」

文香「教えてください……奏さん」

奏「ふふっ、美波も口を滑らせる事があるのね」


奏「……美波は、ただ闇雲にいってるわけじゃないのよ」

奏「ある目的――女性ホルモンを取りにいっているの」

奏「それを持ち帰る事を目的として……美波はいっている」

奏「――どう、違う?」キリッ


武内P「違います」


奏「……」

アーニャ「ニエ ラスットライヴァイシャ! 落ち込まないでください、カナデ!」

文香「私も……もしかしてと、思いましたから……! 大丈夫……大丈夫です……!」

奏「……良いわ。なら、どう違うのか説明して貰える?」

アーニャ「ダー! プロデューサー、教えて、ください!」

文香「私からもお願いします……アイドルとして――」


アーニャ・奏・文香「――輝くために……!」


武内P「っ! 皆さん……!」

武内P「……皆さんの想いがそれほど強いとは、思っていませんでした」

武内P「貴女達は……より、輝こうとしていただけなのですね」


アーニャ・奏・文香「――はいっ!」ニコッ


武内P「……良い、笑顔です」

武内P「貴女達のその想いに応えるため、私の口から説明――」


アーニャ・奏・文香「……」


武内P「――……っ!? しません! しませんよ、皆さん!?」

武内P「先程も申し上げた通り、私から説明は出来ません……!」

アーニャ「パジャールスタ……プロデューサー、教えて、ください!」

奏「こんなに焦らすなんて……貴方って、意地悪な人ね」

武内P「私は、お答えするつもりは……ありません」

アーニャ・奏「……!」

武内P「……」


文香「……私達には、言えないような事、なのでしょうか……?」

文香「いきます……の、意味を知ること自体が……問題なのではなく」

文香「……プロデューサーさんの口からは、説明にしくい事柄」

文香「あの……合って、いますか?」


武内P「! そうです、その通りです!」


奏「……」ムスッ

アーニャ「カナデ? なんだか、怒っていますか?」

奏「いいえ、別に?」ムスッ

文香「ですが……それなら、無理に聞くべきでは無いのでしょうね」

奏「まあ、そうね。困り顔を見るのも悪くないけれど、無理はさせたくないもの」

アーニャ「……プラスチーチェ、ごめんなさい。ワガママを……言ってしまいました」


武内P「……皆さん」

武内P「申し訳ありません……私の、力不足です」

武内P「今後、新田さんには余計な事を言わないよう、指導を徹底していきます」


アーニャ・奏・文香「いきます?」


武内P「……違います」

武内P「皆さんの……その、性方面に対する」


アーニャ・奏・文香「西方面?」

アーニャ・奏・文香「……いきます……西に……!?」


武内P「すみません。一旦、最後まで話を聞いてもらっても、良いでしょうか?」

武内P「……皆さんの有している知識」

武内P「それに対しての、認識が甘かったと、そう、思います」

武内P「これは、シンデレラプロジェクトだけの問題ではありません」


アーニャ「……」


武内P「アイドルの方達の、交流」

武内P「それにより、プロジェクトクローネにも――」


奏・文香「……」


武内P「――今後のために、指導が必要だと、わかりました」

武内P「大きな問題になる前にわかったのが……幸いです」


アーニャ・奏・文香「……」

アーニャ「つまり……アー、指導……教えて貰えますか?」

奏「そうね。いきます……この言葉が、何を示しているのかを」

文香「やはり……書に記されている事だけでは、知りえない事もあるのですね」


武内P「…………」

武内P「はい、そうですね」


アーニャ「……プロデューサー」


武内P「? はい、どうかしましたか、アナスタシアさん」

アーニャ「一つだけ、アー、ワガママを……聞いてくれますか?」

武内P「ワガママ、ですか?」

アーニャ「……ダー」

武内P「……はあ、私に、出来ることでしたら」


アーニャ「私は……アーニャは、プロデューサーに……教えて欲しい、です!」


武内P「!?」

アーニャ「プロデューサーは、アーニャのプロデューサー、です」

アーニャ「アーニャは、プロデューサーの、アイドル、です」

アーニャ「……だから、アーニャは、プロデューサーに教えて欲しい、です!」


武内P「……すみません。それは、出来ません」


アーニャ「ニェート! 美波は、言っていました!」

アーニャ「プロデューサーに聞くのが、一番!」

アーニャ「一番、いけると! とっても、いきます、と!」


武内P「……わかりました。新田さんにはゲンコツをします」


奏「――あら。もしそうなら、私も貴方に教えて貰いたいわ」

文香「――私も……お二人と、同じ想いです」


武内P「!?」

武内P「待ってください! 皆さん、落ち着いてください!」

武内P「先程は、気遣ってくれていたではないですか!」


アーニャ・奏・文香「……」ジッ


武内P「む、無理です! その様な目で見られても、困ります!」

武内P「いけません! どうか、お願いします!」


アーニャ・奏・文香「……いきます」

ジリジリ…


武内P「っ!? わ、私は、その、専務とこの件に関して相談してきます!」

武内P「なので、皆さんはここで待っていてください!」


アーニャ・奏・文香「……」

ジリジリ…


武内P「……っ!? 皆さん、お願いします! お願いしますから!」


武内P「私についてこないでください!」



おわり


「最近、お疲れみたいですね」


 シンデレラプロジェクトの朝のミーティングが終わり、解散した後。
 私は、一人だけ残り、プロデューサーさんに声をかけた。
 それと言うのも、プロデューサーさんったら、とっても疲れた顔をしてるんだもの。
 最初の頃は、無表情だと思ってたけれど、最近では、些細な変化にも気付くようになっていた。


「そう……見えるでしょうか?」


 右手を首筋にやって、キョトンとした顔で聞き返された。
 感情、そして、表情がわかるようになって思ったんだけど、
プロデューサーさんって、しっかりしてるように見えて抜けてる所もあるのよね。
 リーダーとして、そういう部分にも気をつけていきたい。


「はい。顔が、二割増でこわ~く見えちゃいます」


 冗談交じりに、指摘していく。
 こんな風に話せる日が来るなんて、考えもしなかった。
 プロデューサーとアイドルと言っても、お仕事だけの関係。
 歳だって、私はまだ成人してもいない、十九歳。
 プロデューサーさんとは、一つ、二つ……ええ、考えてみると、大分違うもの。


「それは……困りましたね」


 だけど、プロジェクトのメンバーの中では、私がこの人に一番近い。
 年齢だけじゃなく、プロデューサーと、プロジェクトのリーダーという立場も。
 だからこそ、私が、しっかりしなくちゃいけないと思うの。
 ……って、そう思って、大きな失敗をしちゃったんだけれど、ね。


「今日の午前中は、私のお仕事に同行してくれる予定でしたよね?」


 あの時は、本当に悔しかった。
 今でも、ああしていれば、こうしていればと、思い出すと後悔が溢れてくる。
 けれど、あの時流した涙の分だけ、他の子達じゃ気づけ無い部分も見えると思うの。
 その一つが、誰か無理をしてないか、って事。


「私は大丈夫ですから、午前中はゆっくりしててください!」


 人差し指を立てて、プロデューサーさんに言う。
 目をつぶってて表情は見えないけれど、声の調子が焦ってるから、わかる。
 自分は大丈夫だ、貴女の仕事を見るのが務めだ、って、色々言ってるわね。
 ふふっ、まるで、言い訳をしてる時のウチの弟にそっくりですよ?


「ダーメーでーすっ!」


 今度は、ビシリと指をつきつける。
 人を指で指すのはちょっと行儀が悪いけれど、この場合は仕方ないわよね。
 だって、ワガママを言って聞き分けのないプロデューサーさんは、
こうでもしないと、無理をし続けちゃうもの。


「良いですね?」


 ニッコリと笑って、確認する。


「……はい」


 うなだれた大型犬みたいで、ふふっ、ちょっと可愛いかも。

  ・  ・  ・

「う~ん……ちょっと買いすぎちゃったかも」


 右手に下げたビニール袋は、大きく膨れていた。
 中身の数々は全て、お疲れのプロデューサーさんへの差し入れ。
 余計なお世話かも知れないけれど、何もしないのもスッキリしないものね。
 これで、プロデューサーさんが元気になれば良いんだけど。


「……」


 プロデューサーさんは、すぐ、無理をしてしまう。
 私は、そんなあの人の姿を見ていられない。
 無表情な仮面の下に、その無理を隠して、誰にも見せようとしないから。
 自分では気付いているのに、それを無視しようとするんだもの。


「……」


 私は、それがちょっぴり許せない。
 わかっていうのなら、どうして、自分の声なのに聞き入れようとしないのか。
 もしも、あの時、私も熱を出して倒れてしまうと自分でわかっていれば……。
 そんな風に、思ってしまうから。


「……」


 私とプロデューサーさんは、似ている。
 他の誰かに言ったら笑われちゃうかもしれないけど、私は、自分ではそう思っている。
 だからこそ、思うの。


 誰かのために頑張るのは、とっても素敵な事。


 だけど、そのために無理をして、取り返しのつかない事になったら?


 ……その後悔は、きっと、消えない傷跡になって残ってしまう。
 それをバネにして頑張れるだけのモノが、私にはあった。
 支えてくれるアーニャちゃんに、シンデレラプロジェクトの皆。
 ちひろさんに、それに、他の部署のお友達に、勿論家族に……プロデューサーさんも。


「……」


 だけど、やっぱり傷は消えないの。
 ずっと自分の中に残り続けて、その傷は、叫び続ける。


 ――どうして、あの時。


 ……って。


「……」


 だから私は、その叫び声に、大きな声で歌い返してあげるんです。
 もう、あんな悲しい涙を流さないために。


 プロデューサーがさんが倒れたら、泣く人は、大勢居るんですよ?


 その中に、私も含まれてるんですから。


「……」


 シンデレラプロジェクトは、若い、十代の女の子たちで構成されている。
 だからかも知れないけれど、プロデューサーさんをとっても信頼している。
 私のその内の一人だけど、皆とは、少し違う。
 それは、メンバーの中で、私があの人に一番年齢が近いから、思えること。


 ――プロデューサーさんも、普通の男の人。


 小さい頃って、大人はとっても凄くて、大きく見えたわ。
 些細なことじゃ泣かないし、怒らないし、早く自分も大人になりたいと憧れた。
 そんな、皆から見て大人な、プロデューサーさん。


「……」


 コンコン、と、ドアをノックする。
 返事が無いけれど……どこかに出かけてるのかしら?


「……」


 背が大きくて、顔がちょっぴり怖くて、無口で、そして、とても誠実。
 プロデューサーさんは、そんな、普通の男の人なのだ。
 無理をしすぎれば、それは当然のように自分に跳ね返ってくる。
 それに耐えられるような、スーパーマンじゃない。


「――失礼します」


 ガチャリ、と、ドアを開ける。
 居た。
 デスクに座って……なるほど、ヘッドホンで何かを聞いてたから、気付かなかったのね。
 邪魔にならないように、テーブルの上に差し入れだけ置いて出たほうが良いかな。


「……」


 大人になるって、年齢を重ねるって、何でも出来るようになる事じゃない。
 色々な経験をして、それを積み重ねて、出来る事を増やしていくだけ。
 だから、当然出来ない事もあるし、経験を活かせない場合もある。
 プロデューサーさんは、なまじ体が丈夫だから、無理をして倒れた事が無いのかも。


「……」


 だけど、私にはその経験が、ある。
 自分の限界を越えて、ベッドの上で涙を流した事が、ある。
 立つべき……立ちたいステージに上がれなかった事が、ある。


 ――プロデューサーさんには、あんな思いはさせませんから。


 そう思える程度には、私は、大人ですから。


「……」


 テーブルに置いた袋が、ガサリと音をたてる。
 けれど、プロデューサーさんはそれにも気付かないほど、耳元に集中してるみたい。
 目をつむり、少しうつむき加減で、聞き入っているように見える。
 もう! それじゃあ、一緒に来なくて良いって言った意味が無いじゃないですか!


「……もう」


 小さな声でつぶやき、苦笑する。
 本当に、大きな子供みたいなんですから。
 そう言ったら……ふふっ、どんな反応をするのかしら。
 やっぱり、右手を首筋にやって、困った顔を――



「――良い、笑顔です」



 ――するのかしら……って。


「気付いてたんですか?」


 てっきり、目をつぶったままで、まるで反応しないから気付いてないとばっかり思ってました。
 プロデューサーさん、気付いてたんなら何か言ってくれれば良かったのに。
 私、一人でお仕事に行って、差し入れも持ってきたんですよ?
 それなのに、今の今まで何も言わないのって、あんまり褒められた事じゃないと思います。


「……プロデューサーさん?」


 問いかけに対して、返事が……反応が無い。
 プロデューサーさんなら、聞けば何かしらの反応を返してくれるのが普通なのに。
 見ても、部屋に入った時と同じ姿勢で、微動だにしていない。
 あの……もしかして今の、


「寝言、ですか?」


 反応は……やっぱり無い。
 もしかして私、とっても珍しい場面に遭遇してるんじゃないかしら。
 だって、プロデューサーさんがうたた寝をしてる所なんて、想像すらしてなかったもの。
 ふふっ、だけど……寝てても、やっぱり‘笑顔’なんですね。


「……」


 寝ているとわかり、改めてプロデューサーさんを見る。
 そうやって意識すると、いつもよりも表情が穏やかで……うん、安らかな寝顔に見えるわ。


「……」


 プロデューサーさんを起こさないように、そっと近づいていく。
 だって、気になるんです。
 プロデューサーさんは、どんな音楽を聞いて、そんなに安らいでいるのか。
 何を思い描いて、いい笑顔です、と、言葉を零してしまったのか。


 大人だったら、そのまま立ち去るべき?


「……ふふっ」


 そうしない程度の好奇心を忘れない程度には、私って子供なんです。

  ・  ・  ・

「――新田さん」


 午後のダンスレッスンが終わり、プロジェクトルームへ向かう途中、声をかけられた。
 その、低い声に、クールダウンも完全に終わり、落ち着いたはずの心臓が、跳ねる。
 この鼓動の高鳴りは、突然声をかけられて驚いたからじゃ、無い。
 胸に手を当てて確認してみると、ドクリドクリと、自分でも驚く位。


「はい」


 振り返り、声の主を見る。
 無表情に見えるその顔を見て、また一つ、鼓動のテンポが上がった気がする。


 私、今、ちゃんと笑顔が出来てるかしら?


「午前中の仕事、そして、レッスン、お疲れ様でした」


 他愛のないやり取りをしてるだけなのに、ドキドキしちゃう。
 胸が苦しいと思うのに、嬉しくて、心地良い。


 こんな経験、初めて。


「差し入れまでしていただいて……ありがとう、ございます」


 笑顔。


 プロデューサーさんが、笑顔を見せた。
 その笑顔の力はとっても強くて、抗いがたい衝動を突き動かされそうになる。


「はいっ♪ しっかり栄養を取って、元気になってくださいね?」


 だけど、私はアイドルで、この人はプロデューサー。
 衝動のままに行動するのがいけない事だとわかってしまう程度には、私は子供じゃない。
 シンデレラプロジェクトのリーダーとしての、責任もある。
 何よりも、皆と一緒に歩んでいる今が……とても大切だから。


「……はい」


 だから、私は、しっかりしなくちゃいけない。
 信頼されるリーダーとして、お姉さんとして、時には我慢をしなければいけない。
 大切な今を守るために。
 けれど、この思いを簡単に捨ててしまえる程度には、私は大人じゃない。


 この思いの結末がどうなるかは、わからない。
 けれど、後悔しないように、然るべき時には、一歩を踏み出そう。


 思い出した時に、穏やかで、安らかな笑顔が出来る――『Memories』になるように。


「しかし、その……ですね」


 そのために、これからも――



「中身が、あの、精力剤や……その類のサプリばかりと言うのは、あの……」



 美波、いきますっ♪



おわり

書きます


武内P「乙倉さんの良い所、ですか」

悠貴「はいっ! 私っ、ずっと聞きたいなって思っててっ!」

武内P「それは構わないのですが……」

悠貴「やったっ! ありがとうございますっ!」

武内P「誰かの指示で、という事はありませんか?」

悠貴「はいっ!……いいえっ!」

武内P「……」


楓「……」ジッ


武内P「……」

武内P「本当に、誰かの指示ではありませんか?」

悠貴「はいっ! もちろんですっ!」

武内P「……」

悠貴「教えてくださいっ! 私の良い所って何ですかっ?」

武内P「……」


楓「……」ジッ


武内P「……」

武内P「……まず、他の方には無い部分から」

悠貴「はいっ!」


武内P「モデルの経験もあるというのは、大きな強みです」

武内P「撮影中も堂々としていて、乙倉さん本来の魅力が十分に出せています」

武内P「今後、活動していく上で、大きなメリットとなるはずです」


悠貴「本当ですかっ!」

悠貴「えへへっ! 改めて言われると、嬉しいですっ!」

悠貴「……あっ、ちょっと待っててくださいっ!」


楓「……」ソワソワ


武内P「……はい、わかりました」

  ・  ・  ・

悠貴「――っ! ――っ!」

楓「――?……?」ビシッ!

悠貴「――!」ビシッ!

楓・悠貴「……」ビシィッ!

楓・悠貴「……」

楓・悠貴「!」キャッキャッ!


武内P「……」

  ・  ・  ・

悠貴「――お待たせしましたっ!」

武内P「乙倉さん、本当に誰かの指示ではありませんか?」

悠貴「はいっ!……いいえっ!」

武内P「……」

悠貴「他に、良い所ってなんでしょうかっ?」


楓「……」ジッ


武内P「……」

武内P「……それでは、二つ目の点をお話します」

悠貴「はいっ!」


武内P「コンプレックスに思われているかもしれませんが、その身長です」

武内P「長い手足によって動きが大きいという事は、ダンスがより映えるという事」

武内P「これは、レッスンでは伸ばせない、大きな長所と言えます」


悠貴「本当ですかっ!」

悠貴「そっかっ……そういう考え方もあるんですねっ!」

悠貴「……あっ、ちょっと待っててくださいっ!」


楓「……」ソワソワ


武内P「……はい、わかりました」

  ・  ・  ・

悠貴「――っ!――っ!」

楓「――?……?」スイッ

悠貴「――!」スイッ

楓・悠貴「……」スイスイッ

楓・悠貴「……」

楓・悠貴「!」キャッキャッ!


武内P「……」

  ・  ・  ・

悠貴「――お待たせしましたっ!」

武内P「乙倉さん、正直に仰ってください」

悠貴「はいっ! 何ですかっ?」

武内P「高垣さんが、何か関わっていますね?」

悠貴「はいっ!……っ!? はいいえっ! はいいえっ!」

武内P「……」


楓「!」サッ


武内P「……あれで、隠れたつもりなのでしょうか」

悠貴「はいっ! きっとそうだと思い……いいえっ! いいえっ!」

武内P「……」

悠貴「あのっ、他に何かありますかっ!?」

武内P「……」

悠貴「私、もっと知りたいですっ! 教えてくださいっ!」

武内P「……わかりました」

悠貴「はいっ! ありがとうございますっ!」

武内P「……」


楓「……」チラッ


武内P「……」

武内P「……それでは、続けていきます」

悠貴「はいっ!」


武内P「お酒を飲まない事です」

武内P「まだ未成年なので、当然ではありますが」

武内P「飲み過ぎは、体調にも、喉にも良くありませんから」


悠貴「はいっ!」

悠貴「私も、大人になったら注意しないといけませんねっ!」

悠貴「……あっ、ちょっと待っててくださいっ!」


楓「……」ソワソワ


武内P「……はい、わかりました」

  ・  ・  ・

悠貴「――っ!――っ!」

楓「――」オチョコデ、チョコット

悠貴「――っ?――っ?」

楓「――」オチョコデ、チョコット

楓・悠貴「――」ユービキーリゲーンマーン

楓・悠貴「……」

楓・悠貴「!」キャッキャッ!


武内P「ああっ!? 大人になったら、一緒に飲む約束をしている!?」

武内P「騙されないでください、乙倉さん! 嘘です、その量は嘘ですから!」

武内P「少しなら体に良い、という量ではありませんから!」

  ・  ・  ・

悠貴「――お待たせしましたっ!」

武内P「乙倉さん、誘いに乗ってはいけません」

悠貴「はいっ!……はいっ?」

武内P「まだまだ先の事とは言え、あの方なら本当に……」

悠貴「はいっ! 楽しみですっ!……あっ、今のは忘れてくださいっ!」

武内P「いえ、しかし……!?」


楓「……!」ワクワク


武内P「……」

悠貴「あのっ、他に何かありますかっ?」

武内P「……」

悠貴「私、どんどん自信が出てきましたっ!」

武内P「……そう、ですか」

悠貴「はいっ! えへへっ、とっても嬉しいですっ!」

武内P「……」


楓「……」ジッ


武内P「……」

武内P「……他には、そうですね」

悠貴「はいっ!」


武内P「乙倉さんは、陸上でハードル競技をやっていますね」

武内P「華奢な見た目とは裏腹な、ステップ時の安定感があります」

武内P「……踊りながら歌うという、アイドルとしての難しい部分」

武内P「その難しさに対する、大きな武器を持っていると言えます」


悠貴「はいっ! ありがとうございますっ!」

悠貴「えへへっ、モデル以外にも、アイドルのためになる経験があったなんてっ!」

悠貴「……あっ、ちょっと待っててくださいっ!」


楓「……」ソワソワ


武内P「……はい、わかりました」

  ・  ・  ・

悠貴「――っ!――っ!」

楓「――?……?」ヨロヨロッ…

悠貴「――!」トントンッ!

楓・悠貴「……」ゴチャゴチャッ…

楓・悠貴「……」

楓・悠貴「!」キャッキャッ!


武内P「待ってください! 高垣さんのそれは、千鳥足です!」

武内P「何故、二人でうまく踊れた感を出しているのですか!?」

  ・  ・  ・

悠貴「――お待たせしましたっ!」

武内P「……ふぅ、それでは、次にいこうと思います」

悠貴「はいっ! って、なんだか疲れてませんかっ?」

武内P「……いえ、お気になさらず」


武内P「大人びているようで、少女のような面をしっかりと持ち合わせている」

武内P「方向性の違う、二つの輝きを持ち合わせているのは、とても魅力的です」

武内P「私には、それがとてもまぶしく……輝いて見えます」


悠貴「そっ、そうでしょうかっ?」

悠貴「……えへへっ、なんだか照れちゃいますっ!///」

悠貴「……あっ、ちょっと待っててくださいっ!」


楓「……」ソワソワ


武内P「……はい、わかりました」

  ・  ・  ・

悠貴「――っ!――っ!」

楓「……?……?」ムスッ!

悠貴「――っ!?――っ!?」オロオロッ

楓「……」…シュン

楓・悠貴「……」

楓・悠貴「……」ションボリ


武内P「っ!? 待ってください!」

武内P「一体、何が伝わらなかったのでしょうか!?」

  ・  ・  ・

悠貴「……お待たせしました」ションボリ

武内P「お、乙倉さん……?」

悠貴「……私には……大人と子供の、二つの魅力があるんですよね……」ションボリ

武内P「は、はい……その通り、です」

悠貴「……大人っぽいだけじゃ、駄目ですよね……」ションボリ

武内P「っ?」


楓「……」ションボリ


武内P「……あの……まさか、自覚が無かったのですか……!?」


楓「……」ションボリ


武内P「あれだけ他の方に言われているにも、関わらず……!?」

悠貴「……ありがとうございました」ションボリ

悠貴「私、これでもっともーっと、元気いっぱいで……頑張れます」ションボリ

武内P「その様には、まるで思えません!」

悠貴「はい……はい」ションボリ


楓「……」ションボリ


武内P「っ!? え、笑顔です!」

武内P「落ち込んでいる姿よりも、笑っている姿が見たいと……!」

武内P「笑顔でいるのが、一番輝いていると……!」

武内P「私は、そう、思います……!」


悠貴「……はい」ションボリ

悠貴「……ちょっと、待っててください」ションボリ


楓「……」ションボリ


武内P「……!」

  ・  ・  ・

悠貴「――」ションボリ

楓「……!」ピクッ

悠貴「……?」ションボリ

楓「……――」ココハ、ライトガ、ク、ライトオモウワ

悠貴「……?」

楓「――……――」ダカラ、ワタシガ、カガヤカナキャネ

悠貴「!」

楓・悠貴「……」

楓・悠貴「!」ニコッ

楓・悠貴「……」

楓・悠貴「!」キャッキャッ!


武内P「……良い、笑顔です」

武内P「しかし、こうやって甘やかしすぎてしまうのも――」


武内P「私の悪い所、ですね」



おわり

書きます


武内P「もっと知ってほしい、ですか」

卯月「はいっ!」

武内P「しかし、その……具体的には、どのような事をでしょうか?」

卯月「えっ? えーっと、それは……」

武内P「島村さん?」

卯月「とにかく、色々ですっ!」

武内P「……はぁ」

武内P「あの、何故そのように思われたのでしょうか?」

卯月「ふえっ!?」

武内P「……」

卯月「あの……もっと、プロデューサーさんに……ですね」

武内P「はい」

卯月「……私の事を知って貰えたら、嬉しいなぁ、って……」

武内P「……」

卯月「あ、あははは! な、何言ってるんでしょうね、私ったら!」

武内P「……」

武内P「……わかりました」

卯月「……プロデューサーさん?」

武内P「私に、島村さんの事を教えてくださいますか?」

武内P「その……色々と」

卯月「いっ、良いんですかっ?」

武内P「勿論です」

卯月「……えへへっ///」ニコニコッ

武内P「……良い、笑顔です」

卯月「えっと……何から話したら良いんだろう」

武内P「ちなみにですが……」

卯月「はい?」

武内P「島村さんの基本的なプロフィールは、全て記憶しています」

卯月「すっ、全てですか!?」

武内P「はい、全て」

卯月「えっと……じゃあ、血液型は――」

武内P「O型です」

卯月「そ……即答」

武内P「私は、貴女のプロデューサーですから」

卯月「じゃ、じゃあ、趣味は何でしょうか?」

武内P「ご友人との、長電話ですね」

卯月「あっ、いけない……プロフィールに、書いてあるやつですもんね」

武内P「ここ数週間の傾向では、小日向さんとの通話が多く見られます」

卯月「そんな事まで!?」

武内P「? はい」

卯月「……!?」

武内P「年齢、学年が同じで、共通の話題が多いから、でしょうか」

武内P「勿論、ピンクチェックスクールの関係もあるでしょう」

武内P「プロジェクト外のアイドルの方達とも、交流が多くあるようですね」

武内P「良い、傾向だと思います」

卯月「す、ストップ! 待ってください、プロデューサーさん!」

武内P「? はい、何でしょうか?」

卯月「どうして、そこまで知ってるんですか!?」

武内P「島村さんのお母様からの報告で、ですが……」

卯月「ママから!?」

武内P「あの……何か、問題がありましたか?」

卯月「問題だらけです~っ!」

武内P「す……すみません。まさか、ご存じなかったのですか?」

卯月「初耳です! ママがそんな報告をしてたなんて!」

武内P「っ!? そんな……!?」

卯月「もう……! ママ、どうしてそんな事を……!?」

武内P「その……以前、島村さんのご自宅にお邪魔した時に、ですね」

卯月「それって……私が風邪を引いた時、ですか?」

武内P「その時から……その、ですね……」

卯月「……プロデューサーさん?」


武内P「……毎日、メールで報告を受けています」


卯月「!?」

卯月「毎日って……毎日ですか!?」

武内P「は、はい」

卯月「どっどど、どうして!?」

武内P「その、先程の島村さんと、同じ様に……ですね」


武内P「娘の――島村さんの事をよく知ってもらいたい、と」

武内P「……そう、申し出があったのです」


卯月「そう、なんですか……?」

武内P「はい」

卯月「……なるほど」

武内P「あまりにも詳細なので、島村さん自身も協力されているのかと」

卯月「……そんなに詳しいんですか?」

武内P「島村さん」

卯月「はい?」

武内P「もう、この話は……やめにしましょう」

卯月「へっ?」

武内P「……」


武内P「私も……何とかして、記憶を消そうと、そう、思います」


卯月「!?」

卯月「プロデューサーさん!? どこまで詳しい報告を受けてたんですか!?」

卯月「あっ、あのっ! どんな報告を!?」

武内P「……申し訳、ありません」

卯月「そっ、そうじゃなくてですね!? どんな内容なんですか!?」

武内P「……申し訳、ありません」

卯月「……」


卯月「私の、今日のパンツはどんなやつですか?」


武内P「ピンクのフリルがついた、お気に入りのものですね」


卯月「ママ――っ!?」

卯月「まっ、ママはそんな事まで報告してるんですか!?」

武内P「っ!? いえ、あの、それは……!?」

卯月「答えてくださいっ、プロデューサーさん!」

武内P「……すみません、私の口からは」

卯月「……」


卯月「私の、今日のブラはどんなやつですか?」


武内P「ワコールの、頑張る女性の『頑張らない』がコンセプトの――」


卯月「ママ――ッ!!」

卯月「物凄く詳細な報告じゃないですかぁ!?」

武内P「……申し訳、ありません」

卯月「プロデューサーさん、おかしいと思わなかったんですか!?」

武内P「いえ、私は、そうは思いません」

卯月「へっ?」


武内P「島村さんは、いつも、頑張っていますから」

武内P「その……下着位は、頑張らなくても問題は無い、と」

武内P「……そう、思いました」


卯月「そっちじゃなく!」

卯月「しっ、下着の内容が報告されてくるの、変ですよね!?」

武内P「それは……はい、思いました」

卯月「おかしいと、思いますよね!?」

武内P「……はい、その通りです」

卯月「だったら、どうして!?」


武内P「その……私は、島村さん自身も協力していると思っていたので」

武内P「島村さんは、何かがおかしいのだろう、と」

武内P「何か、大きな闇を抱えている……普通の少女ではないのだろう、と」

武内P「……そう、思っていました」


卯月「……!?」

卯月「そっ……そんな風に思ってたんですか!?」

武内P「し、しかしっ! 闇が濃いと言う事は、光もまた強いと言うことです!」

卯月「あの、ちょっとポエムは……今は」

武内P「……申し訳、ありません」

卯月「……」

武内P「……」


卯月「先週の、ですね……わ、私が一人でその、しちゃった回数は!?」


武内P「八回です。完全オフの休日の時に、二回されていますね」


卯月「!」

卯月「それ、間違ってますっ!」

武内P「……島村さん?」

卯月「確かに、お家でしたのは八回です!」

武内P「いえ、あの……」

卯月「それ以外は、ママも知らなかったみたいですね♪」

武内P「島村さん? あの……島村さん?」


卯月「私、ここでも一人になった時にしちゃいました!」

卯月「木曜日、プロデューサーさんが外に出てる隙にですっ!」


武内P「そ……そう、ですか」

卯月「えへへっ♪ ぶいっ♪」

武内P「……」

卯月「私自身の事ですもん、ママには負けません!」

武内P「そ、う……ですね」

卯月「島村卯月、頑張りますっ♪」

武内P「……やはり、闇が」ボソリ

卯月「? プロデューサーさん?」

武内P「い、いえ……何でも、ありません」

卯月「?」

武内P「……」

卯月「……」


卯月「っ!?」

卯月「いっ、今の! 今の、無しでお願いします!」

卯月「頑張ります! 頑張りますから、お願いしますっ!」


武内P「は……はい、わかりました」

武内P「と、とにかく……報告のメールは、今後は無しにしましょう」

卯月「は……はい///」

武内P「……申し訳ありません、島村さん」

卯月「は……はい?」

武内P「私は、貴女の事を誤解していました」

卯月「い、良いんです! 誤解の原因はママですし――」


武内P「島村さん、貴女は普通などではありません」

武内P「貴女は、とても……とても……」

武内P「……」

武内P「……すみません、今のは、無かったことに」


卯月「なりませんよ!?」

卯月「とても、何ですか!? プロデューサーさん!?」

武内P「……申し訳、ありません」

卯月「いっ、今のは口が滑ったというか、そのですね!?」

武内P「しかし、その……ここで、そういった事をするのは、ですね」

卯月「そっ、それは手が滑ったというか、そのですね!?」

武内P「……島村さん」

卯月「は、はいっ」


武内P「――笑顔です」


卯月「笑顔……?」

武内P「私は、貴女の頑張る姿と、笑顔を」

卯月「あの、誤魔化されませんよ?」

武内P「……」

武内P「……やはり、記憶を消そうと、そう、思います」

卯月「プロデューサーさん?」

武内P「島村さん、申し訳ありませんでした」

卯月「……」

武内P「誤解とは言え、私は、知ってはいけない事を知ってしまいました」

卯月「だけど……記憶を消す、って」

武内P「……幸い、346プロダクションには、そういった事に詳しい方が」

武内P「その……複数、在籍していますから」

卯月「……」


武内P「――本当に、申し訳ありませんでした」


卯月「……」

  ・  ・  ・

ガチャッ!

武内P「――お待たせしました、島村さん」

卯月「大丈夫です! 待ってる間、することがありましたから♪」ニコッ

武内P「……良い、笑顔です」

卯月「それで、あの……今、時間は大丈夫ですか?」

武内P「はい、問題ありません」

卯月「えっと、それじゃあ……LINEでお話した……」

武内P「はい」

武内P「島村さんのことを――」


武内P「もっと知ってほしい、ですか」



おわり

書きます


武内P「今週末の予定、ですか」

未央「うん、空いてる?」

武内P「確認してみます……はい、土曜日の夜でしたら」

未央「オッケー。今度は、中華料理だっけ?」

武内P「はい……とても、楽しみです」フッ

未央「……良い、笑顔です――なーんてね!」

武内P「……」


凛「ねえ、卯月……何、あれ……!?」

卯月「わかりません……わかりません……!」

未央「――お待たせ、二人共っ!」

凛「未央、説明して」

未央「へっ? 何が?」

卯月「さっきの、プロデューサーさんとのやり取りです!」

未央「あー、あれ?」


未央「週末の予定を確認してただけだよ?」


凛・卯月「!?」

凛「週末の予定って……ねえ、本当なの、それ」

未央「えっ? しぶりんも、しまむーも見てたよね?」

卯月「みっ、見てましたけど……で、でもっ!」

未央「中華良いよねぇ、中華! たまに食べたくなるよね!」

凛「未央っ! 何考えてるの!?」

卯月「しゅ、週末、プロデューサーさんと行くんですか!?」


未央「行かないよ?」


凛・卯月「……」

凛・卯月「えっ?」

凛「……ねえ、どういう事? なんで、予定を聞いたの?」

未央「えっ、知りたい? 知りたいの?」

卯月「しっ、知りたいです! 教えてください、未央ちゃん!」

未央「本当に? 本当に、知りたいって言うの?」

凛・卯月「……!」コクリ

未央「いやまぁ、大した話じゃないんだけどね?」


未央「プロデューサーが、うちの兄貴と弟と出かけるからさ」

未央「へへっ! 予定を聞いてくれって頼まれたんだ!」


凛・卯月「……」

凛・卯月「えっ?」

凛「……どういう事? 四人で出かけるって事?」

未央「四人?」

卯月「プロデューサーさんと、お兄さんと、弟くんと、未央ちゃんの……」

未央「ブッブー! しまむー、はっずれー!」

凛「? どっちか片方とだけ、って事?」

卯月「どういう事なんですか、未央ちゃん!」


未央「私は、そのお出かけメンバーに含まれませーん! イエーイ!」


凛・卯月「……」

凛・卯月「えっ?」

凛「えっ、ちょっと待って……何が何だか」

卯月「お兄さんと、弟くんと、プロデューサーさんの……三人?」

未央「三人」

凛「……未央は?」

未央「家でゴハンを食べますよ?」

卯月「あの、一緒に……行かないんですか?」

未央「行きたいよ?」

未央・卯月・凛「……」


卯月・凛「……さあ、レッスンに――」


未央「聞いてよ!! 最初の勢いで、根掘り葉掘り聞いてよ!」


卯月・凛「……」

凛「未央、とりあえずレッスンが終わってからにしよう」

未央「しぶりんさんよぉ! 今日はレッスン無いよねぇ!?」

卯月「あっ! そろそろお仕事の時間じゃないですか?」

未央「しまむーさんよぉ! 午後はフリーですね、って言ってたよねぇ!?」

卯月・凛「……」

未央「聞いて?」

卯月「い……嫌です……絶対悲しい気持ちになりますもん!」

凛「ねえ、話す必要があるとは思えないんだけど、未央?」


未央「あれはねぇ、私が辞めるって言った時からの話でさ」


卯月・凛「止まる気が無い!?」

未央「雨の中、傘も差さずにプロデューサーが来てくれてさ」

未央「だから、もう全身ずぶ濡れだったんだよね」

凛「……」

未央「そんな状態でさ、はい帰ってくださーい、って訳にいかないじゃん?」

未央「家に寄ってって、ってなるよね? ね?」

卯月「……」

未央「それでね、ちょっと目を離した隙にさ」


未央「……なんか、弟がプロデューサーの事‘兄貴’って呼ぶようになってた」


卯月・凛「!?」

凛「なんで!? ちょっと目を離した隙に、どうしてそうなるの!?」

未央「あはは、私にもわかりませーん! ぷいーん!」

卯月「未央ちゃん!? あの、しっかりしてください、未央ちゃん!」

未央「私が辞めるってー、言った時ー、家族全員心配してくれてー」

未央「弟もー、なんかプロデューサーに対して怒っててー」

未央「生意気だけど、ああ、私のために怒ってくれるんだなー、って思ってー」


未央「――たのに! 急展開がすぎるよ! ちょろすぎだよ、家の弟!」

ダンッ!


卯月・凛「……」

未央「はーい、未央ちゃん劇場始まりまーす!」

凛「い、いや……良いよ、やめて」

未央「――姉ちゃん。兄っ、プロデューサーさんを困らすなよな」

卯月「やめてください! やめてください!」

未央「――次に困らせたら、俺が代わりにアイドルになるから」

卯月・凛「なんで!?」


未央「――そうすれば、へへっ、一緒に居られ……いやっ、なんでもない!」


卯月・凛「とんでもない!」


凛「どうしてそうなったの!?」

未央「わかりませーん! ぷいーん!」

卯月「未央ちゃん、しっかり!」

凛「まあ、でも……その程度なら、まだ」

未央「それがさ、最近は私の化粧品がちょっと減ってるんだよね」

卯月「みっ、未央ちゃんの勘違いですよ! きっと!」

未央「あはは、そうかな?……本当に、そう思う?」

卯月・凛「……」

未央「ねえねえ? 勘違いかな? ねえねえねえねえ?」

卯月・凛「……!」コクリ

未央「そっか! 勘違いか!」


未央「はい、それじゃあ次は家の兄貴の話に移ります」


卯月・凛「!?」

凛「そっ、その前に場所を移さない!?」

卯月「はいっ! 凛ちゃん、ナイスアイディアです!」

未央「なんで?」

凛「ほっ、ほら! プロデューサーの仕事の邪魔になるし!」

未央「ヘッドホンしてるし、LIVEの映像確認してるから平気だよ」

卯月「っ! で、でもっ! とにかく、違う所に行きましょう!」

未央「なんで?」

卯月・凛「……」


未央「……聞いて?」


卯月・凛「……」

未央「……まあ、兄貴の方はそんなに詳しく知らないんだけどねっ!」

卯月・凛「……ほっ」

未央「聞いても、大事な思い出だから話したくないって言われちゃってさ☆」

卯月・凛「ほあっ!?」

未央「どう思う? ねえねえ、どう思う?」

凛「ど、どう、って……」

卯月「……!」ブルブル

凛「う、卯月? どうしたの? 震えてるけど――」


卯月「おっ、お先に失礼し――」

ガシッ!

未央「しまむー? どこ行くの?」

卯月「は、離し……ママ――ッ! 助けてママ――ッ!」


未央「私の兄弟は、どこへ行こうとしているの?」

  ・  ・  ・

未央「――まっ、そんな感じで、仲が良いみたいなんだよね!」

凛「……ふ、ふーん。まあ、悪くない……んじゃない、の」

卯月「は、はい……仲良しなのは、良い事ですよ……ね」

未央「そうだよねっ! 私達みたいにさっ!」ニコッ!

凛「う、うん……そうだね」…ニコ

卯月「は……はいっ!」…ニコ


未央「――それで、ここからが本題なんだけどね?」


卯月・凛「!?」

凛「もう良いって、未央! わかったから、もう十分だから!」

未央「なんかさ、兄弟間でルールが作られてるみたいでさ」

卯月「み、耳……! 耳を塞がなきゃ……!」

バッ!

未央「うん、それでね?」

グググッ…!

卯月「す、凄い力……!?」


未央「プロデューサーと会う時は、二人っきりじゃ駄目なんだってさ」

未央「あっはは! なんでだろうね?」


卯月・凛「……!?」

未央「なんで?」

卯月・凛「……」

未央「……」

未央「ねえ、しまむー。うちの兄弟、何を考えてるのかな?」

卯月「わ、私……一人っ子なので……わっ、わかりません!」

未央「ねえ、しぶりん。うちの兄弟、何を考えてるのかな?」

凛「わ、私も……ハナコは犬だし……その、メスだし」

未央「メス顔?」

卯月・凛「言ってない言ってない!」

未央「……」

卯月・凛「……」


未央「――まっ! そんなわけで、三人で出かけてるみたいなんだ!」


卯月・凛「……」

凛「……ふーん……そう、なんだ」

未央「私も行きたいって言っても、断られちゃってさー!」

卯月「アイドルだからって……プロデューサーさんに、ですよね?」

未央「どっちだと思う?」

ガシッ!

卯月「えっ!? あの、なんで手を掴んで……!?」

未央「しまむー、どっちが断ってると思う?」

卯月「あっ、が……頑張ります! 頑張ります!」

凛「っ! 卯月、落ち着いて! 頑張っても何にも解決しないから!」

卯月「頑張ります! 頑張ります! 島村卯月、頑張りますっ!」

凛「未央っ! 手を離してっ!」

未央「……」

…パッ


未央・卯月・凛「……」

未央「……まあ、そんな感じ」

凛「ねえ……どうして未央が予定を聞いてるの」

未央「……自分で聞くのは、迷惑かもだし照れくさいって言ってた」

卯月「えうぅ……ママ……ママぁ……!」グスグス!

凛「……ねえ、未央」

未央「何? しぶりん」


凛「プロデューサーって、週末の予定……空いてるのかな?」


未央「? さっき、土曜日の夜は空いてるって……」


凛「未央、もう一度聞くよ」

凛「プロデューサーの週末の予定、空いてるの?」


未央「しぶりん……何を言って――」

未央「――っ!?」

凛「確認するよ? 予定調整は、未央がしてるんだよね?」

未央「うん……うんっ!」

凛「つまり、まだ週末の予定は伝わってないんだよね?」

未央「そう……そうだよ、しぶりん!」

凛「……最後にもう一度だけ聞くけどさ」


凛「プロデューサーの、週末の予定は?」


未央「――確認してみないと、わからないなぁ!」

凛「そうだよね。‘ちゃんと’確認しないと」


卯月「……?」

卯月「はい?」

凛「とりあえず、私から聞くよ」

未央「オッケー! 任せたよ、しぶりん!」

卯月「へっ? あの、どういう事ですか?」

凛「大丈夫、卯月は心配しなくていいから」

卯月「は……はい……?」

未央「しぶりん! 健闘を祈る!」

凛「……うん」


凛「行くよ――蒼い風が、駆け抜けるように」


凛「……」

未央・卯月「……」

凛「……」

未央・卯月・凛「……」

未央「あの……行かないの?」


凛「……」

凛「……うん、行くから……ちょっと待って」

卯月「凛ちゃん?」

未央「あの……もしかしてだけど、しぶりん……」

凛「何? 週末空いてるか聞くだけでしょ? だから? それが?」

未央「……ビビってる?」

凛「えっ? どうしてそう思うの? なんで? は? 意味がわからない」

未央「完全にビビってるじゃん! どうした!? しぶりん、どうした!?」

凛「別に? ただ、ちょっと思ったんだけど」


凛「週末空いてるか聞くって……なんか、意味深じゃない?」


未央「ヘタレ!!!!!!!!!」

未央「今更何言って……しぶりん!?」

凛「だ、だってしょうがないでしょ!」

凛「聞いたら迷惑かもだし、その……なんだか照れくさいな、って」

未央「その言い訳、家の兄弟と一緒だからね!?」

卯月「えっと……凛ちゃん、可愛いですっ♪」

凛「も、もう! からかわないで!」

未央「~~っ! しまむー! しまむーは、聞けるよね!?」

未央「聞いた上で、いい感じにこう……予定をスッと入れたり!」

卯月「ふえっ!? ど、どうしてですか!?」

卯月「私の予定とプロデューサーさんの予定に、どんな関係が……?」


未央「……!?」

未央「……プロデューサー! プロデューサー!」

武内P「っ!? は、はい!」

未央「週末の予定、ちょっとキャンセルで!」

武内P「えっ?」

未央「しぶりんとしまむー、ヤバいよ!? 良いの!?」

武内P「や、ヤバい……ですか?」

未央「家の兄弟と遊んでる場合じゃないよ! マジで!」

武内P「あの……そう、なのですか?」


凛・卯月「……?」


未央「ほら! ヤバさがわかってないもん!」

未央「今週末は、二人のために使って! 良い!?」

武内P「は……はい!」

凛「えっ? プロデューサー……良いの?」

卯月「どこかに連れて行って……貰えるんですか?」

武内P「はい……本田さんが、ここまで仰るのでしたら」

武内P「本当に必要なことなのだと、そう、思います」

凛・卯月「……!」パアァ!

未央「家の兄貴達も、仕事関係だって言えば納得するから」

武内P「そう……ですね」


武内P「本田さんの、ご家庭での様子を聞くのも……楽しみだったのですが」


未央「――ふえっ?」

未央「プロデューサー? ねえ、それって……ど、どういう意味?///」

武内P「? そのままの意味ですが……」

未央「……あ、はい///」

未央「そ、そっか……私の話とか、してるんだ」

武内P「はい。共通の、話題ですので」

未央「ふっ……ふーん……へー」

武内P「とても、楽しいご家庭だと、聞いています」

未央「じゃ、じゃあさ! 私からも、話してあげるよ!」

武内P「本田さんからも、ですか?」

未央「うんっ! 週末に! ゆっくり、ね!」

武内P「……はい、わかりました」


武内P「来週末の予定を確認してみます」


未央「……うんっ///」

未央「……」


未央「今週末の予定に私も入れてよ!」



おわり

ダリフラと交互に書くだけでクッソ新鮮な気分で書けますね!
寝ます
おやすみなさい

書きます


武内P「男手が欲しい、ですか」

凛「うん。お父さんだけじゃ、手が足りないみたいで」

武内P「力仕事、でしょうか?」

凛「そうだね。結構大きな鉢もあるみたい」

武内P「……」

凛「それでさ、力仕事が得意な人のツテとか……無い?」


武内P「その……私で、よろしければ」


凛「……」

凛「プロデューサーが?」

  ・  ・  ・

凛「――って、なってね?」ニマニマ


未央「しまむー、今日はこの後予定ある?」

卯月「あっ、ちょっと買いたい物があったんです!」

未央「おっ、何々?」

卯月「えっとですね」


凛「ふうううぅぅぅん!」ジタバタ!


未央・卯月「……」

未央「……ねえ、しぶりん」

凛「何? どうしたの、残念なものを見る目してるけど」

卯月「……あのですね、凛ちゃん」

凛「ちょっと、卯月までどうしたの?」


未央・卯月「その話、何回目!?」


凛「……」

凛「…………何回目?」


未央「私達だけでも、もう二桁は聞いてるからね!?」

卯月「最初から最後まで、かなり正確に覚えちゃいましたもん!」


凛「そう?……なんか、うん、照れるね///」


未央・卯月「……!」

凛「でもさ、印象に残った事って、何度も話したくならない?」

未央「聞かされる方の身にもなっておくれ!」

凛「……楽しい、かな」

卯月「考えた結果の結論がそれですか、凛ちゃん!?」

凛「うん」


凛「今でも……ハッキリ思い出せるよ」

凛「あの時の――」


未央「はいはい、ストップストップ!」

卯月「いつも、そうやって流れで話し始めるんですから、もう!」


凛「……」

凛「……ちょっと位良いでしょ、別に」

未央「ちょっとじゃないんだって! わかって!?」

凛「……納得出来ない」

卯月「このやり取りも、五回目位でしましたからね!?」


凛「うん。八回目でもしたと思う」


未央「話した時の事まで覚えてるじゃん!」

卯月「いい思い出なのは! いい思い出なのは十分伝わりましたから!」


凛「そう? まだ、全部伝えてない気がするんだけど」

凛「だから、また最初から――」


未央・卯月「やめてぇ!」

未央「力仕事してる姿に、キュンとしたって話でしょ!?」

凛「ちょっと……キュンとか、そんなんじゃないから」テレテレ

卯月「袖まくりした時に見えた腕に、ドキッとしたんですよね!?」

凛「ドキッとなんて……別に、してないってば」テレテレ

未央「――あれ? なんだろ、この感じ――……とか言ってたじゃん!」

凛「言ってないよ、そんなの」

卯月「言ってました! この耳で聞きましたから!」


凛「――あれ? なんだろう、この感じ――だから」


未央・卯月「誤差!」

未央「お母さんに、その時からかわれたんだよね!」

凛「そうなんだよね。別に、そんなんじゃないのに」テレテレ

卯月「お父さんとちょっと似てるわね、って言われたんですよね!?」

凛「私は、プロデューサーの方が……って、何言わせるの!///」テレテレ


凛「……初めてに言っておくけどね」

凛「プロデューサーは、その……そんなんじゃないから///」


未央「じゃあ、どんなんなのさ!?」

卯月「わかりません……! 私、もうわかりません……!」

未央「そりゃね!? 最初に聞いた時は盛り上がったよ!」

卯月「私達だって、アイドルの前に女の子ですもん!」

未央「だけどさ、二回目、三回目って聞いてってさ!?」

卯月「凛ちゃん、この話を全部で何回したんですか!?」

凛「何回って……どうだろ」


凛「多分、三桁いくかいかないか位じゃない?」


未央・卯月「狂気!」

凛「えっ?……そんなに、嬉しそうに話してた?」

未央・卯月「……」


未央・卯月「ノー、狂喜! イエス、狂気!」

未央「あのさ、しぶりん! 自分が何してるかわかってる!?」

凛「何って……何だろ? おすそ分け……かな?」

卯月「幸せを分けて回ってるつもりだったんですか!?」

凛「幸せって……ちょっと、やめてよ///」


凛「あっ、プロデューサーとお父さんが一緒に飲みに行ったみたいでさ」

凛「それで、お父さんもプロデューサーを気に入ったみたいなんだよね」

凛「ねえ、どんな話をしたと思う?」

凛「二人共あんまり喋る方じゃないから、想像がつかなくて」


未央「本人に聞いて!?」

卯月「しかも、この話ももう五回目ですからね!?」

凛「……なんだか、二人共冷たくない?」

未央「逆だよ! 物凄くあったかい反応してるからね!?」

凛「そんな事無い。文香は、何度も聞いてくれてる」

卯月「何度もって……あの、何回話したんですか?」


凛「……」

凛「……四十回ちょっと?」


未央「えぐい! それはえぐいよ、しぶりん!」


凛「……あ、五十回いってるかも」


卯月「最大の被害者じゃないですかぁ!」

凛「こう、本を読みながら、ずっと聞いてくれるんだよ」

未央「……しぶりん、それ、聞いてn」

卯月「しーっ! 未央ちゃん、しーっ、です!」ヒソヒソ

未央「あ、うん、そうだね」

凛「そういえば、文香は最近――」


凛「力仕事をする姿も、素敵なのですね」

凛「――とか、言うようになったんだよ」


未央「……いやあの、しぶりん?」

卯月「凛ちゃん? あの……良いんですか?」


凛「? 何が?」


未央・卯月「何が!?」 

未央「えっとね? しぶりんが、プロデューサーの話をするでしょ?」

凛「うん」

卯月「格好良かったとか、そういう話ですよね?」

凛「……ま、まあ? 悪くは……うん、無かったかな」

未央「それだけ話されたらさ……見てみたくなるとは、思わない?」

凛「何言ってるの? 見てみたく?」

卯月「……目をキラキラさせて語られるモノって、気になりませんか?」


凛「それは……うん、なるかも」

凛「……」

凛「文香が、力仕事をしてるプロデューサーを見たくなるって事!?」


未央・卯月「……」コクリ


凛「……!?」

凛「そんな……そんなつもりじゃなかったのに!」

未央「そうだよね、おすそ分け気分だったんだもんね」

凛「で、でも! 力仕事の機会なんて、ある!?」

卯月「本を運ぶの……特に、古書店なんかはあると思います」

凛「どうしよう……!?」


凛「このままじゃ、文香がプロデューサーにメロメロになっちゃう!」


未央「落ち着いてしぶりん! 聞いてるこっちが恥ずかしくなる!」


凛「落ち着いてなんかられない! キュンキュンするんだよ!?」


卯月「お願いです、凛ちゃん! あのっ、本当に落ち着いてください!」

凛「無理! だって、本当に格好良かったんだから!」

凛「見て、ホラ!/// ちょっと気を抜くと、顔が真っ赤になるんだから!///」

未央「待って待って!/// いや、ホント……待ってって!///」

卯月「えうぅ/// 照れが移って……な、なな……///」


卯月「――生!」


未央「――ハム!」


未央・卯月・凛「メローン!!」


未央・卯月・凛「……」

未央「しまむー、ナイス! おかげで、ちょっと冷静になれた!」

凛「……うん。ごめん、取り乱しちゃって」

卯月「島村卯月、頑張りました♪」

未央「……まあ、そんな感じでさ。しぶりんみたいに……ね?」

卯月「その……好きになっちゃう人が出るかもしれませんよ?」

凛「ちょっ、ちょっと待って! 別に、そんなんじゃないから!」

未央・卯月「……」

凛「何?」

未央「えっと……じゃあ、ふーみんがさ」

卯月「もしもですよ? プロデューサーさんの事を好きになっちゃったら?」


凛「足で撹乱して、ボディー狙いかな」

凛「……うん、大丈夫そう」


未央・卯月「何が!?」

未央「いやあの、しぶりん? 大丈夫って、何が?」

凛「安心して。大丈夫だから」

卯月「だから、何が大丈夫なんですか!?」

凛「あっ、卯月のステップを教えて貰ったら、回避もバッチリだと思う」

卯月「回避!? あの、回避って何をするつもりなんですか!?」

未央「しまむー! 聞いちゃ駄目!」


凛「私、家の手伝いもするから、案外力あるんだよ?」


未央・卯月「……!」ゴクリ

未央「……とっ、とにかく! そんなわけでさ!」

卯月「はっ、はい! もう、あんまり話すのは良くないと思います!」

凛「……うん。確かに、二人の言う通りかも」

凛「プロデューサーを困らせちゃうかもしれないから」

未央「そうそう! 思い出は、大事に胸にしまっておかなきゃ!」

卯月「あっ、それ素敵ですね! それが良いですよ、凛ちゃん!」

凛「はいはい、もうわかったから」


凛「未央と卯月も、力仕事してる姿見たくなっちゃうかもしれないしね」


未央・卯月「えっ? とっくに見たくなってるけど?」


凛「えっ?」

未央・卯月「あっ」

凛「……ねえ、今の、本当?」

…ユラァ


未央「いっ、いや……何て言うかさ! ねっ、しまむー!?」

卯月「がっ……頑張りまステップ! 頑張りまステップ!」ガクガク!

未央「ちょっと!? 一人で回避を始めないで!?」

卯月「頑張りまステップ! 頑張りまステップ!」ガクガク!

未央「足が震えてるだけじゃん! 何の効果も無いからそれ!」


凛「……ふーん。先に、未央からかな」


未央「効果抜群なの!? わ、私もステップを……」

未央「やっ……辞めまステップ! 辞めまステップ!」ガクガク!

卯月「頑張りまステップ! 頑張りまステップ!」ガクガク!


凛「……行くよ」

凛「蒼い風が――駆け抜けるように」

   ・  ・  ・

武内P「――私に、個人的な頼み、ですか」

文香「……はい。聞いて……いただけますでしょうか?」

武内P「そう、ですね。私に、出来る範囲の事でしたら」

文香「……!」パァッ!


文香「叔父が経営している古書店の、本の整理……なのですが」

文香「私もお手伝いしているのですが……力仕事が、とても多いのです」

文香「女性では……やはり難しいとは、思うのですが……」

文香「……何か、いい考えは……ありますか?」


武内P「……なるほど。つまり――」


武内P「男手が欲しい、ですか」



おわり

あっちゃこっちゃ思考が飛んでくフレちゃんかわいい


山田孝之が今日やったみたいな武内Pがバスト測定話とかどうでしょう

>>874書きます


武内P「バスト測定、ですか」

アイドル達「はいっ!」

武内P「はい……ではなく、ですね」

アイドル達「はいっ?」

武内P「あの、何故……疑問に思われるのでしょうか」


武内P「私は、貴女達のバスト測定は、しません」


アイドル達「えっ?」

武内P「えっ?」

未央「いやいやいやいや、ちょっと待ってよ」

武内P「本田さん?」

未央「話が違うじゃん、プロデューサー」

武内P「あの……何の話ですか?」

未央「アンダーだけでしたら、はい……って言ったじゃん!」

武内P「言っていませんよ!?」

未央「皆も聞いてたよね!? ねっ!?」


アイドル達「えっ?」

アイドル達「……」

アイドル達「う……うん、聞いてた」


武内P「連携が、まるで取れていないではないですか!」

卯月「測ってくれないんですか? プロデューサーさん」

武内P「島村さん?」

卯月「わ、私……恥ずかしいけど、頑張ります!」

武内P「いえ……あの、測りませんよ」

卯月「笑顔で! 笑顔で、頑張りますから!」

武内P「島村さん、笑顔は! 笑顔は関係ありませんから!」

卯月「島村卯月、頑張ります! 島村卯月、頑張ります!」


アイドル達「ファイトォォ……」

アイドル達「オ――ッ!!」


武内P「ノーです! いくら何でも、こればかりは聞けません!」

凛「ねえ、プロデューサー。測らないの?」

武内P「渋谷さん?」

凛「納得出来ない。アンタ、私のプロデューサーでしょ?」

武内P「はい。ですが、バスト測定は私の仕事ではありません」

凛「逃げないでよ!! そんなんじゃ納得出来ない!!」

武内P「大声を出せばいつも私がひるむと思ったら大間違いです」

凛「……こんなんじゃ、笑顔になんてなれない」


アイドル達「……うん」


武内P「あの……笑顔を人質に取るのは、やめていただけますか」

美波「あの、本当に駄目ですか? プロデューサーさん」

武内P「新田さん?」

美波「プロフィール作成に、必要だと思うんです」

武内P「それは、その通りですが……測定するのは私でなくとも」

美波「男の人からの感想って、大事だと思うんです」

武内P「……感想、ですか?」

美波「揉み心地のです! ねっ、皆!」


アイドル達「えっ!?」

アイドル達「……」

アイドル達「……///」


美波「ほらっ! 皆もこう言っています!」

武内P「むしろ、何も言えなくなっていますが!?」

アーニャ「パジャールスタ……プロデューサー、お願い、です」

武内P「アナスタシアさん?」

アーニャ「バストの、アー、揉み心地は、とても大事ですね?」

武内P「待ってください! 話が違ってきています!」

アーニャ「ヴァプロース、質問、です」

武内P「……何、でしょうか」

アーニャ「プロデューサーは、胸が好き? それとも、お尻?」


アイドル達「……どっち?」

凛「どっちでも良いでしょ。プロデューサーは、ふともも派だから」


武内P「まるで違う話になっています!」

武内P「……」

武内P「渋谷さん! 無断で私を派閥に入れないでください!」

蘭子「――我が友よ!」

武内P「神崎さん?」

蘭子「魔力は高まり、漆黒の衣は次の段階へ進もうとしている!」

武内P「……そう、ですか」

蘭子「フフフ……! これも全て、我が友の助けがあってこそ!」

武内P「……待ってください。あの、その表現は誤解を――」

蘭子「我が友は、我が肉体に変化を及ぼす程の魔力を与えてくれた!」


アイドル達「ずるい!」


武内P「私は何も! 何もしていませんから!」

智絵里「あ、あのっ……どうしても、駄目ですか……?」

武内P「緒方さん?」

智絵里「わたし……プロデューサーに、測ってもらいたいな……って」

武内P「……申し訳ありません。それは、出来ません」

智絵里「え、えへへ……そうですよね……」

武内P「わかって頂けましたか?」

智絵里「……智絵里……見捨てられちゃうんですね」


アイドル達「……ひどい」


武内P「待ってください! 違います!」

武内P「その……そこまで深刻な問題ですか!?」

かな子「プロデューサーさんっ! どうしても駄目ですか!?」

武内P「三村さん?」

かな子「バストって言っても、アンダーだけだから大丈夫ですよ!」

武内P「いえ、しかし……!?」

かな子「スリーサイズ、全部測るわけじゃないんですよ!?」

武内P「……三村さんは、ウェストの計測もしましょうか?」

かな子「皆っ! プロデューサーさん、困ってるから!」


アイドル達「っ! かな子ちゃん!?」


武内P「……三村さんは、後でお話が」

かな子「美味しいから! 美味しから大丈夫です!」

武内P「何がですか?」

杏「まあ、でもさ? 考えてもみてよ」

武内P「双葉さん?」

杏「杏達が、他の人に胸を揉まれても良いの?」

武内P「すみません。思考誘導は、やめていただけますか?」

杏「ほら、測る時にさ、触れちゃうかも知れないじゃんか」

武内P「それは……仕方のない事かと」

杏「えー? 男の人に胸を触れても、仕方ないのー?」


アイドル達「……」ジッ


武内P「……女性の方に測ってもらえば良いのでは?」

武内P「……待ってください」

武内P「皆さん、どうして私を睨んでいるのですか!? 皆さん!?」

莉嘉「ハーイ! アタシ、Pくんなら全然オッケーだよ☆」

武内P「城ヶ崎さん?」

莉嘉「だ・か・ら~! もー、トボけちゃって、コノコノー!」

武内P「あの……何が、でしょうか」

莉嘉「Pくんならぁ、アタシの胸……好きにして良いよ☆」

武内P「では……私以外の方に、測って貰って頂けますか?」

莉嘉「えー!? アタシ、Pくんにして貰いたいんだけどー!」

武内P「……」


アイドル達「……凄い」キラキラッ


武内P「あの……こういった事で、尊敬の目で見るのはどうかと」

みりあ「ねえねえ、どうして測ってくれないの?」

武内P「赤城さん?」

みりあ「だって、必要な事じゃないの?」

武内P「しかし、それは……」

みりあ「あっ! もしかして、えっちな事考えちゃうから?」

武内P「いっ、いえ! 決して、そのような事は!」

みりあ「えへへっ、だったら大丈夫だね!」

武内P「……」


アイドル達「……本当に凄い」キラキラッ


武内P「……まずい……このままでは……!」

美嘉「ホラホラ★ アンタもそろそろ観念しなって★」

武内P「城ヶ崎さん!」ホッ

美嘉「ん? ちょっと……なんか今、ホッとしなかった?」

武内P「いえ、そんな事はありません」

美嘉「とりあえずさ、チャチャッと始めよっ★」

武内P「何をですか?」

美嘉「えっ? 何をって……」

武内P「城ヶ崎さんは、私に、何をして欲しいのでしょうか?」

美嘉「そ、それは……その……!?///」

武内P「……」

美嘉「なっ、何だっけ!/// あ、アハハハハ!///」


アイドル達「……」


武内P「……城ヶ崎さんには、いつも助けられます」

きらり「にょわー☆ Pちゃん、美嘉ちゃんをいじめちゃメッ、だゆ!」

武内P「諸星さん?」

きらり「皆ねぇ、Pちゃんに、測ってもらいたいと思ってるの」

武内P「……ですが」

きらり「Pちゃんの気持ちもす~っごくわかるゆ!」

武内P「……」

きらり「でもでもぉ、きらり達の気持ちもわかってくれると、と~ってもハピハピ☆」

武内P「皆さんの気持ち……ですか?」

きらり「そうだゆ! 皆の気持ち、Pちゃんに届けっ!」

きらり「それっ、きらりんパワー!☆」


アイドル達「揉んで欲しい!」


武内P「測って欲しい、という建前が吹き飛んでいるじゃないですか!?」

李衣菜「プロデューサー、別に揉むくらい良くないですか?」

武内P「多田さん?」

李衣菜「ほら、ロックのLIVEだったらそういうのあるって聞きますし」

武内P「……完全に、聞きかじりの知識ですね」

李衣菜「大丈夫です! バレなきゃオッケーですよ!」

武内P「バレたらどう、という話ではありません」

李衣菜「バレたらまずいけど胸を揉む……最高にロックですね!」

武内P「まずいのは、私の方なのですが!……揉みませんよ!?」

李衣菜「あっ、でも……ハードロックじゃなくて……そ、ソフトにお願いします///」


アイドル達「……///」


武内P「お願いします! 話を聞いてください!」

みく「んっふっふ! Pチャン、良い加減覚悟を決めるにゃ!」

武内P「前川さん?」

みく「今日のみく達は、簡単には引き下がらないよ! 本気にゃ!」

武内P「……わかりました」


武内P「本気には……本気で応えます」


みく「えっ?」

武内P「それでも宜しいのでしたら……どうぞ、続けてください」

みく「おっ、脅しには屈しないにゃ! みくは自分を曲げないよ!」

武内P「前川さんには、魚関係の仕事を大量に入れます」

みく「はーい皆ー、真面目に仕事するよー」


アイドル達「……!?」


武内P「……」

武内P「皆さんの希望には、応じることが出来ません」

武内P「それは、皆さんが私の担当する、大切なアイドルであり……」


アイドル達「……」


武内P「……私は、貴女達のプロデューサーだからです」

美嘉「あっ! それなら、アタシはセーフじゃない!?★」

武内P「何か、ご希望ですか?」

美嘉「…………何でもないです」


武内P「なので……バスト計測は、諦めてください」


楓「――その話……お受け出来ません」


一同「!?」

武内P「!!?」

楓「私は、皆と一緒に階段を登りたいんです」

武内P「高垣さん!?」

楓「一緒に――笑顔で!」ニコッ


アイドル達「! はいっ!」ニコッ


楓「それが私にとって……一番大事な事です」ニコッ

武内P「……良い、笑顔です」

武内P「ですが、待ってください! 何故、ここに!?」

楓「胸に、大きいも小さいもありません」

武内P「高垣さん!? 何の答えにもなっていませんよ!?」


アイドル達「……いや……あるよね?」ボソボソ

アイドル達「だから、計測……」ボソボソ


武内P「見てください! 皆さん、混乱しているじゃないですか!」

武内P「とにかく……あの、高垣さん!?」

楓「ふふっ、胸を測る、旨を……うふふっ、耳にしたものですから」

武内P「いえ……計測は、軽率な行動かと」

楓「!?」

バシバシ!

武内P「あの……はい、すみません」

楓「……」


楓「……バストを計測するのが、ベストな計画、うふふっ!」ニコッ!

アイドル達「――はいっ!」ニコッ!


武内P「待ってください! ダジャレと笑顔でも誤魔化されませんよ!?」

武内P「皆さんも、ここぞとばかりに……!」

武内P「お願いします! どうか、そんな計画は――」


武内P「胸にしまっておいてください!」



おわり


 パァンッ、と大きな音がした。


 それは、合宿所の襖が開かれた音。


 現れたのは、本能のままに躍動する、一匹の美しき獣。


「……!?」


 その、何の前触れも無い登場に、シンデレラプロジェクトの二期生達は息を飲む。
 これから、一体何が始まると言うのか。
 誰も、一言も発さない……――いや、発せない。
 落ちる静寂、集まる視線。
 それらを一身に浴び、女は――



「ヘーイ!」



 ――世界は、産声を上げた。


 本来ならば、布団に入って眠る時間。
 にも関わらず、この所業。
 迷惑……ただただ、迷惑。


「フフ……揃いも揃って時差ボケかしら!」


 しかし、女は――世界は、止まる事なく動き続ける。
 部屋の中央こそが私に相応しいと、そこが私のステージだと言うように。


 一歩一歩が、リズミカル。


 女を前にしては、全てがオーディエンスと成り果てる。


「アーハン?」


 呆然とする少女の顎を女の指が――世界の風が駆け抜ける。
 呆けているなど、許されない。
 何故ならば、これから……ここから始まるのだから。


 最高峰の――世界レベルのステージが。


「――カモンッ!」


 漆黒の髪が、舞う。
 美しき肢体が、舞う。
 ミュージックは、無い。


 だが、ここには全てが――世界が、在る。


「……!」


 その姿、あまりにもリズミカル。


 その女、あまりにもダンサブル。


「フフッ……!」


 激しい。
 激しすぎる、腰の動き。
 女は、荒れ狂うタイフーンと化している。


 世界は、最初に破壊を望んだ。


「フウウウゥゥゥ……!」


 女は、一体何を壊そうと言うのか。
 己を見る、シンデレラ達の常識か。
 はたまた、限界という名の防波堤か。


 踊る、踊る、女は踊る。


 軽やかな動き? 否。
 鮮やかな動き? 否。


 世界とは、そのような生易しいものでは、断じて無い。


「ハッ! フッ、ハッ!」


 女は両手を――羽を広げる。
 大空を駆ける鳥のような、その姿。


 ――いや、違う。


「ミュージック、スタート!」


 女は、世界の空を飛んだのだ。
 当然、ミュージックが流れるはずもない。
 時刻は夜、音楽など、流せるはずもない。


 なのに……嗚呼、なのに――!


「聞こえるからしら、陽気なリズムが!」


 シンデレラ達の耳には、届いてくる。


「感じるかしら、世界レベルの熱気を!」


 女は、踊る。
 女は、魅せる。


 此処は、ブラジル。


 リオの、カーニバル。


「フゥ! 熱すぎる? もっとHOTになるわよ!」


 その女、あまりにもダンサブル。


「カモン……カモンカモンカモンカモンッ!」


 女は、激しく踊りながら、言葉をかける
 女と同じ、世界レベルのステージに来いと。
 女の居る、ブラジルまで飛んで来いと。


「……!」


 年若い少女達は、その誘惑に抗えない。
 それは、悲しきアイドルの性。
 だが、少女たちの顔には、恐れも、後悔も、何一つ存在しない。
 目の前のカーニバルに参加する事しか、頭に無い。


 心臓の鼓動が、リズムを刻む!


 美しき獣に、世界に魅入られたように!


 誰も、彼女達を責められまい。
 誰も、彼女達を止められまい。


 世界レベルを前にして、少女達は止まれない!


 だって、滅茶苦茶楽しそう!



「――ヘーイ!」



 しかし!
 嗚呼、だが、しかし!


 女もまた、止まらない!


 両腕が軌跡を描き、カーニバルから離脱する。


「フフ……一つの国には、長く留まらないわよ?」


 何という言い草!
 しかし、嗚呼、それも仕方のない事。
 誰も、女を――世界を待たせるなど、出来はしないのだ。


「それが、この私!」


 先程までの、激しい動きでは無い。
 エレガント……優雅すぎる程、エレガント。
 指の先から、つま先に至るまで。
 兎にも角にも、エレガント。


「次の国は――」


 少女達が、息を飲む。
 女は、どこの国へ向かったと言うのか。
 ただ、それを聞くために、耳を傾ける。


「――ヨーロッパよ!」


 体が、傾く。
 国では無い――地方だという、ふわっとした答えに!


「……!」


 シンデレラ達は、顔を歪める。
 一体、女はどこの国へと飛んだのか。
 世界は、一体どこへ向かっているのか。


「フフ……! 良い顔つきだわ!」


 挑戦的な、その言葉。
 しかし、女の踊りは、優美で、儚い。
 触れれば手折れてしまいそうな、繊細さ。


 流れるは――ワルツ。


 敷かれた布団の海を三拍子が支配する。
 時に大胆に跳ぶ、寝ている人を踏まない配慮。
 優しい、とても優しい世界。


「欧州の風……肌で感じるわ!」


 そんな訳がない。


 ……そう、頭では思っているのに。
 布団の海上を飛ぶ女から、風が吹き付けてくるのだ。


 ヨーロッパの――世界の風が!


 先程までとは、まるで異なる女の踊り。
 女は、いくつの顔を持っているのか。
 いや、女だからこそ、いくつもの顔を持っているのか。


「フフ……!」


 慈愛に満ちた、聖母の様な微笑み。


 している事は、安眠妨害だと言うのに。
 物凄く、はた迷惑な行動だと言うのに。


 誰も、女を咎めない。
 世界を咎める者など、居はしない。
 それが、世界レベル。



「ヘーイ!」



 それが、この女。
 世界を知り、世界を求め、世界に求められる、この女。
 再び広げたその翼で、次はどこへ向かおうと言うのか。


「次は――北米、メキシコにしようかしら!」


 南米から欧州、そして、次は北米という、あまりにも非効率なそのルート。
 それを躊躇いなく実行に移せるのが、世界レベル。


 嗚呼……あまりにも……ダンサブル!


「フフ……!」


 女が、笑う。
 その妖艶な笑みに、魅了されぬ者など居ない。


 女は、世界はどこまでも広がっていく。
 次は、メキシコ。
 聞こえるか、マラカスの音が――!


「だけど……今日はここまでにしておこうかしら!」


 何故。


 女に、メンバー達が視線で問いかける。
 嗚呼、しかし、本当にマラカスの音が聞こえない。
 スパイシーな、サルサの香りが漂ってこない。


 代わりに聞こえるのは――彼女達の、曲。


 女は、踊っている。
 彼女達が、舞踏会で披露する曲の振り付けで。


「……!」


 それが、何を意味するのか。
 世界は――女は、語らない。


 だが、女の踊りを見たメンバー達の瞳に、光が宿る。
 隣に目をやると、同じ目をした、仲間達が居る。


 女は――世界は、一つにしたのだ。
 一見バラバラで、まとまりのない、個性達を包み込んで。


 ……その事実が、ただ一つの、真実!



「眠くなったわ!」



 でも無かった。


 女は、何事もなかったかのように自分の布団に入り、目を閉じた。
 世界は、止まらない。
 だが、世界も眠るのだ。


「お先に、夢を見させて貰うわ!」


 その女、あまりにもフリーダム!


「世界を掴む、その時の夢をね!」


 そして、あまりにもダンサブル!


 ミュージックは、寝息とため息……レッツ・スタート!



おわり

メモ
一ノ瀬、乙倉
村上
木場、ヘレン

寝ます
おやすみなさい

久々に居酒屋シリーズを読みたい

>>941
書きます
まゆPのCVは適当に


武内P「シンデレラガール、おめでとうございます」

菜々「あっ、ありがとうございます!」

武内P「安部さんの輝きは、とても、素晴らしいものでした」

菜々「は……はい」


まゆP「ああもう、長い長い! 校長先生のお話じゃねえんだから」

まゆP「ホラ、見てみろよこれ」

まゆP「せっかくのビールの泡が無くなってきちゃってるから」

まゆP「校長先生のお話が長すぎて、泡吹いて倒れちゃってるから」


武内P「泡が出るのなら……良いのでは?」


まゆP「ああもう、うるせえなぁ! 良いんだよ細かい事は!」

まゆP「っつーことで、代打だ代打!」


友紀「……」

友紀「えっ、あたし?」

まゆP「野球用語使ったんだから、そりゃユッキしか居ねえだろ」

まゆP「それとも何か? 手にマメで欠場か? あぁん?」


友紀「オッケー! やってやろうじゃんっ!」


まゆP「いよっ、待ってました! 代打の切り札!」

まゆP「いっちょかましてくれよ!」

まゆP「いかした飲みの挨拶ってやつをよ!」


友紀「いっ、いかしたやつ……って言われても」

友紀「えーっと……あー……」

友紀「……」

友紀「今日は暑いぜビールが美味い! カンパーイ!」


一同「カンパーイ!」


友紀「……っぷはー! 左中間真っ二つ、って感じだったよね!?」

まゆP「いや、ヘッドスライディングでギリッギリセーフって所だろありゃ」

武内P「私は、姫川さんらしい、とても元気ないい挨拶だったと思います」

友紀「おっ、やっぱり!?」


まゆP「はい出た。出ましたよコレ」

まゆP「お前ホントすーぐそうやって甘やかすんだから」

まゆP「このお通しの豆くらい甘い……いや、これしょっぱい味付けなのかよ」


友紀「お通しだから、しょっぱい味付けじゃない?」


まゆP「あのな、豆の味付けは甘いものだって相場で決まってるんだよ」

まゆP「なんなら、この三つの小鉢の内一つがつぶあんでも良いくらいだ」

まゆP「ってわけで、ユッキ、ダッシュでおはぎ買ってきてくれ」


友紀「あっ、サラダ取ってあげるよ! お皿貸してー」

武内P「ありがとう、ございます」


まゆP「あっ、俺はサラダいらないからね。ほら、プロデューサーだもの」

まゆP「草を食べたらプロじゃなくなっちゃうから、草野球になっちゃうから」

友紀「? 野菜嫌いだったの?」


まゆP「野菜には、食物繊維が多く含まれてるだろ?」

まゆP「ってことはホラ、アレだよアレ、な?」

まゆP「食物が繊維して……っあー! ビールうめえェェェェェ!!」


友紀「……まあ、良いけどさ」

友紀「はいっ、どーぞ!」

武内P「ありがとう、ございます」


まゆP「っつーか、何でこんな男島に居るわけ?」

まゆP「俺たちみたいなむさくるしーいのが肩寄せ合ってる所だよ?」

まゆP「あっ! 勘違いはしないでよね!」

まゆP「大人数の飲み会で、女子ばっかりで気まずいからじゃないから!」

まゆP「ホラ……あっ、端っこ! 端っこが好きなだけだから!」


武内P・友紀「……」

友紀「あー、ホラ、まだ総選挙の熱が冷めてなくてさー」

友紀「普通の飲み会なのに、やらかしちゃいそうで」


まゆP「なんでぇなんでぇ、変に気を使うもんじゃねえぞ」

まゆP「そんな事言ったらアレだからね」

まゆP「俺だって、まだまだ興奮冷めやらぬ状態だから」

まゆP「でもな、かな子がスィンデレラグァールになるまで止まる気はねえよ」


武内P「……そう、ですね」


まゆP「だろ? お前もそう思うよな?」

まゆP「ってことでくれよォォォォォ! いい加減にかな子をよォォォォォ!」

まゆP「先っちょだけ! 先っちょだけだから! 本当だよ!? ねえ!」


武内P「あげません」

武内P「……ピッチャーで、頼んでしまいましょうか」


まゆP・友紀「ペースはええ!」

まゆP「……それにしても、やらかすって何をだよ?」

まゆP「スィンデレラグァールは、バット振ってもなれないからね?」

まゆP「いくらホームランを打っても無理だから」

まゆP「お日様の下を歩けなくなるなるだけだから」

まゆP「ちょっと長めのキャンプ期間に入っちゃうだけだから」


友紀「そんなやらかし方しないよ!?」

友紀「ちょっと、おめでとうって気持ちが出ちゃうだけだよ!」


武内P「それは……とても、素晴らしいことだと思うのですが」

まゆP「コイツの言う通りだ。それに、何の問題があるってんだ?」


友紀「その……酔っ払ったら、テンション上がっちゃってさ」

友紀「ビールが目の前にあると、ね?」


まゆP「……おい、なんだかその言い方だと」

武内P「あの……そのやらかし方をした経験が、あるように……」


友紀「……アハー!」ペカー!

まゆP「おい、絶対コイツから目を離すなよ」

まゆP「七代目がビールまみれになっちまう」

武内P「ええ……さすがにそれは、見過ごせませんから」


友紀「いやいや! 今日はそこまで飲まないよ!?」


武内P・まゆP「えっ?」


友紀「えっ? ホラ、だってさ?」

友紀「飲みすぎて迷惑かけても悪いじゃん?」


武内P・まゆP「……」

まゆP「なーにくだらねぇ事気にしてんだ」

武内P「姫川さん。どうぞ、遠慮なさらず飲んでください」


友紀「えっ?」


まゆP「あのな、二十歳のガキがそんなん気にする必要はねえんだよ」

まゆP「飲みたいように飲む! そんで、吐きたいように吐く!」

まゆP「それが若者の飲み方ってもんだろ、なぁ?」

武内P「……吐かない程度で、お願いします」

友紀「いや……でもさー」


まゆP「他人に遠慮して酒を控えるなんて、もっと歳取ってからで良いんだよ」

まゆP「それに安心しろ。ここにゃ、酔った女に手を出す馬鹿はいねえから」

まゆP「あ、かな子は別枠ね。俺は――アイツに酔ってるから」

武内P「……」

まゆP「ちょっとォォォ! 俺のキープしてた卵焼き食べないでくれるゥゥゥ!?」

まゆP「だし巻きじゃなく、珍しく甘い味付けの卵焼きだったのに!」


武内P「姫川さん、確かに飲み過ぎはよくありません」

武内P「ですが、これは飲み会です」

武内P「貴女が笑顔で、楽しくお酒を飲めること」

武内P「これが……私は、とても大切な事だと、そう、思います」


まゆP「……っつーことだ」

まゆP「ここにゃ、プロデューサーが二人も揃ってんだ」

まゆP「多少やらかした所で、何とかならぁな」


友紀「二人共……!」

  ・  ・  ・

まゆP「……と、思っていた時期が僕にもありましたー!」


友紀「あっはっは! 四番、ピッチャーあたし!」

友紀「第一球……飲みました!」

ゴッ…ゴッ…ゴッ…!


武内P「待ってください! その量は、あまりにも!」

武内P「今までもかなリ飲んでいますし……姫川さん!」


友紀「……っぷはぁー!」

友紀「……」

友紀「ゲフゥ! あっはは! ピッチャー返し! あっははは!」ケラケラ!


まゆP「球場で酔っ払ってるオッサンじゃねえか!」

まゆP「ねえ、大丈夫なのこれ!? 中継されてないよね!?」

まゆP「お茶の間が微妙な空気になっちゃうやつだよ!?」

まゆP「洋画見てたら、急に色っぽいシーンが流れて気まずくなる位微妙になるよ!?」

まゆP「とりあえず水飲めって! なっ!?」

まゆP「水分補給大事だよ!? 高校球児だって知ってるよ!?」

武内P「姫川さん……! どうぞ、水です……!」


友紀「んぇー?」

友紀「シーガイアが……何だってぇ?」ケラケラ!


まゆP「誰もそんな事言ってねえェェェェェ!」


武内P「シーガイアは、今はセガサミーホールディングス関連です!」

武内P「バンダイナムコエンターテインメント関連の私達には、危険過ぎます!」


まゆP「お前も酔ってんの!? ツッコミおかしいぞ!?」

まゆP「どんだけ飲んで……良いからお前も水飲め! なっ!?」


友紀「――キャッツに!」

武内P「――笑顔に」

武内P・友紀「カンパイ!」


まゆP「してんじゃねェェェェェ!!」

アイドル達「……」ジッ


まゆP「ほら、完全に浮いてるもの! 浮き上がっちゃってるもの!」

まゆP「浮いた球はアレだよ、かっとばされちゃうからね!?」

まゆP「だからお願い! もっと低目! 低目に集めてこ! ねっ!?」


友紀「うぁー……お箸持てないー、えへぁー!」ケラケラ!

武内P「何か、食べたいものが?」

友紀「唐揚げ! ほい、あーん♪」

武内P「……あーん」

友紀「んーっ! 美味しー♪」


アイドル達「……」ジッ


まゆP「何してんのォォォォォ!? お前らこの視線に気付かないの!?」

まゆP「……えっ、ちょっと待って」

まゆP「なんで俺が睨まれてるの!? 嘘でしょ!?」

まゆP「――嘘だと言ってよ、バーニィ!」

「――盛り上がってますねぇ」


まゆP「っ!? このキュートなプレッシャー……まゆか!?」

まゆP「いや、まゆがこの場に居るはずが無い!」

まゆP「それに、飲み会だって言ったし! 土下座して許可とったし!」

まゆP「ちいっ! 土下座するか!? ええい、どうする!?」

まゆP「じゅっ……十六歳が、飲み会は早いと僕は思う、なぁ~?」


菜々「ナナは十七歳なので、問題ないですよ」


まゆP「……あ、はい」


友紀「それじゃあ、今度はあたしがお礼に食べさせたげるっ!」

武内P「それでは……私も、唐揚げを」

友紀「オッケー! あ、手づかみでも良い?」

武内P「お箸が使えないのでしたら、当然の結果です」


菜々「……盛り上がってますねぇ」


まゆP「……」

まゆP(イヤアアアァァァァァ!!)


アイドル達「……」ジッ


まゆP(イヤアアアァァァァァ!!)

菜々「キャハッ! ウサミン星人の登場ですよ☆」


武内P「安倍さん」

友紀「おーっ! いらっしゃーい!」


まゆP「……あっ、じゃあ僕はちょっと向こうの席に行きますね」

まゆP「ちょっとここの席じゃ狭すぎるっていうか何て言うか」

まゆP「心が狭い感じの視線で、息苦しいって言うか……苦しい」

まゆP「あっ、駄目! 苦しい! 助けて! お願い、シンデレラ!」


アイドル達「……」ジッ


まゆP「……あ、元気になった! アイドルの視線で元気になっちゃった!」

まゆP「いやー! シンデレラって、本当に良いものですね!」

まゆP(……駄目なの!? 俺もここに居なきゃ駄目なの!?)

まゆP(……かな子! 助けてかな子ォォォォォ!!)

菜々「それじゃ、ちょっと隣失礼します!」

武内P「はい」

友紀「おっ、両手に花だね! 二刀流だね!」

武内P「そう、ですね……はい」

武内P「とても魅力的な、輝く花だと、そう、思います」


アイドル達「……」ジッ


まゆP「いや、あの……皆さん?」

まゆP「飲み会ですよー、コレ。楽しーい飲み会ね、うん」

まゆP「だけど、おかしいなぁ~、静かだなぁ~」

まゆP「あっ、わかったー! サイレントトリートメントだ、そっかー!」

まゆP「なんでぇなんでぇ、そういう事か! あは、あはははは! あはっ!」


アイドル達「違います」


まゆP「……」

まゆP「……うん……うん」

友紀「それじゃ、とりあえず……あーん♪」

武内P「あー」

菜々「あーん! あーんですよ、あーんっ!」

友紀「おっ? 食べる?」

菜々「! はいっ!」


アイドル達「……」ホッ


まゆP「!」

まゆP(すげえェェェェェ!! 七代目すげえェェェェェ!!)

まゆP(流れをいい感じにぶった切る、絶妙なパスカット!)

まゆP(野球の流れを強引に違う競技にもっていきやがった!)

まゆP(空気が和らいだ……ああっ、空気美味しい!)


友紀「あーんっ♪」

菜々「……むぐむぐ」


友紀「それじゃあ次は、あたしの代わりに食べさせたげてよっ♪」


菜々「むぐっ!?」


アイドル達「っ……!?」


まゆP「……」

まゆP(……中継だったァァァァァ!!)

菜々「ゴホッ!……な、ナナがですか!?」

友紀「そだよ?」ペカー!

菜々「あっ、あーん!? あーんしろと!?」

友紀「そだよ?」ペカー!

武内P「安倍さんに食べさせて頂けるとは……はい、光栄です」

菜々「いやあのでも……ええっ……?///」


アイドル達「……」ジッ


まゆP「……うわぁ、すっごく見られてるやぁ」

まゆP「電波を受信っていうか……ビーム」

まゆP「レーザービームが突き刺さって穴だらけだぁ」

まゆP「穴だらけだし、チーズ餃子頼もー! 餃子食べたくなっちゃったー!」


菜々「あっ……あーん、します……?///」

武内P「お願い、出来ますか?」

菜々「おっ、お願いされちゃ……シンデレラ的には、こっ、断れないですね!///」


アイドル達「……」ジッ


まゆP「……わぁったよ、わぁったわぁった」

まゆP「天さん……ありがとう……」

菜々「それじゃあ……その……///」

武内P「……」

菜々「あっ、あーん……///」

武内P「あっ」

菜々「……あっ?」


まゆP「……いやー、危なかった。マジで危なかったわ―」

まゆP「この歳になって飲みすぎるとは、俺もまだまだだわ」

まゆP「本当、失敗した! はい、ごめんなさーい! すみませんでしたー!」


菜々「あの……何が――」


まゆP「悪い悪い、ちょっとポジション間違えちゃったわ」

まゆP「でもさ、誰にだって間違う事くらいあるよな? うん、あるある」

まゆP「……まあ、ちょっと」


まゆP「ピッチャーが、キャッチャーになった」

…たぷんっ!


一同「……」


まゆP「……」


全員「……」

  ・  ・  ・

武内P「……本当に、すみませんでした」

まゆP「なぁに、良いってことよ」

武内P「ですが……」

まゆP「ちょっと吐いた所で、態度を変えるようなアイドルはウチにゃあいねえよ」

まゆP「むしろ、俺としちゃ吐き足りない位だぜ。主に愚痴とか」

武内P「……」

まゆP「ま、怪我の功名か、飲み会から離脱出来たし万々歳だろ」

まゆP「別に、お前は戻っても良いんだぜ? 俺は帰るけどね!」

武内P「いえ……私も、今日は帰ります」

まゆP「そうかい」


まゆP「綺麗な花に囲まれるのも悪くねえが、過ぎたるは及ばざるが如し、ってな」

まゆP「あーんなに花に囲まれてちゃ、花粉症になっちまう」

まゆP「――ブェックション!」

まゆP「……ああ、クソ! マジでクシャミが出やがった!」


武内P「……」

まゆP「……気が変わった」


武内P「えっ?」

まゆP「飲み直しだ、飲み直し! 腹ん中が空っぽなんだよ、こっちは!」

武内P「いえ、しかし……」

まゆP「あん? 男二人じゃ不満ってか?」

まゆP「だったらお前……綺麗なお姉ちゃん達に囲まれに行くか?」

まゆP「気分よく飲ませてくれて、愚痴も聞いてくれるプロのお姉ちゃん達の所によ」

武内P「……」


武内P「……キャバクラ、ですか」


まゆP「……どうだい、悪くねえ提案だろ?」ニヤァッ


武内P「……」

まゆP「うし! 決まりだ決まり! まゆには絶対言うなよ!?」

まゆP「言ったらどうなるかわかってんだろうな!? 俺が!」

武内P「……恐らく、k」

まゆP「言うんじゃねえよ馬鹿ヤロォォォ!」

  ・  ・  ・

まゆP「ウェーイ! カンパーイ!」

武内P「……カンパイ」

まゆP「はっはっは! おいおいどうした、テンション低いぞ!?」

まゆP「笑え笑え! 不器用でも何でも良いから、笑えって!」

まゆP「笑顔です! 俺は、お前の笑顔が見たいと、そう思いまーす!」

武内P「……」

まゆP「笑えつってんだろうがァァァァァ!! クソがァァァァァ!!」

武内P「……すみません」

まゆP「……まあ、そうだよな。笑顔なんて、無理に作るもんじゃねえからな」

武内P「……はい」

武内P・まゆP「……」


アイドル達「……」ニコリ


まゆP「……うん、知ってた。こうなることはわかってた」

まゆP「なあ、どんな表情してる? 花粉症で目が痒くて見れねえんだ」

武内P「……笑顔です」


アイドル達「……」ニコリ


武内P「その……ですね。何と言いますか……」

武内P「……笑顔です」



おわり

書きます


武内P「えこひいき、ですか」

武内P「しているつもりは……無いのですが」

凛「してるよ。プロデューサーが気付いてないだけ」

武内P「渋谷さん……?」

アーニャ「ニェート! そんな事は無い、です!」

アーニャ「プロデューサーは、いつも、アー、公平です!」


武内P「……アナスタシアさん」


凛「ほら、やっぱりしてる」

武内P「えっ?」

アーニャ「シトー?」

凛「私の事を呼ぶ時は、何て呼んでる?」

武内P「渋谷さん、です」

凛「アーニャの事を呼ぶ時は?」

武内P「アナスタシアさん、です」

武内P「……」


武内P「っ!?」


凛「……」

凛「……えっ? もしかして、今気づいたの!?」

武内P「私が……担当するアイドルの方を名前で……!?」

凛「そうだよ。他の皆は、名前で呼ぶのをあれだけ拒否してるのに」

武内P「そ、それは……!?」

凛「なのにさ、アーニャの事だけ名前で呼んでる」

武内P「で、ですが……!」

凛「納得できない。こんなえこひいき、認められない」


アーニャ「ニェート。リン、えこひいき、違いますね?」

アーニャ「プロデューサーは、アーニャが、特別♪」

アーニャ「ただの、ひいき、です」


凛「……は?」

武内P「待ってください! それは、大きな誤解を招きます!」

凛「ねえ、それってどういう意味」

アーニャ「シトー?」

凛「アーニャは黙ってて。今、プロデューサーに聞いてるから」

武内P「いっ、いえ! ひいきなどは、決して!」

凛「……こう言ってるけど?」


アーニャ「プロデューサーは、皆を導くズヴィズダー……星、です」

アーニャ「とっても、とっても眩しい!」

アーニャ「アーニャは、その横で、輝いていきたい、です♪」ニコッ


武内P「……良い、笑顔です」

凛「……」

  ・  ・  ・

凛「……という訳なんだけど、どう思う?」


奏「とりあえず、先にこっちの質問に答えてほしいかな」

文香「あの……何故、それを私達に聞くのでしょうか?」

ありす「私達、クローネのメンバーなんですけど」


凛「別に、深い意味は無いよ」

凛「別に、他の人に聞いたら変な誤解されて面倒そうなんて思ってないから」

凛「別に、三人なら口が固そうだからなんて思ってないから」


奏・文香・ありす「……はあ」

奏「信頼してくれてる、って事かしら。ふーん、悪くないかな」

凛「……ねえ、からかうつもり?」

奏「ふふっ、それは今ので満足したわ」

凛「……」

文香「その……アナスタシアさんが、本当に特別、なのでは……?」

凛「ごめん、文香。真剣な話なの」

文香「いえ……あの……すみません」

凛「良いよ。でも、次から気をつけて」

ありす「名字で呼ぶのは、一人前の大人として扱ってるという事です!」

凛「……ふーん。なら、ちょっと考えてみてよ」


ありす「……えっ?」

  ・  ・  ・

武内P『橘さん』

ありす『はい、何ですか?』

武内P『ここは……少し、人通りが多いので』

…スッ

ありす『……あの、その手は何ですか?』

武内P『手を繋いでおかないと、はぐれてしまう恐れが』

ありす『なっ!? 子供扱いしないでください!』

武内P『大人同士でも、手を繋ぐ事はありますが……』

ありす『っ!?///』


ありす『い、意味がわからないですけど……手くらい、良いですよ///』

ぎゅっ


ありす『それと、その……ありすで、良いです///』

武内P『……はい――』

  ・  ・  ・

凛「――橘さん」

ありす「ちょっと! このタイミングなら、名前で呼ぶべきじゃないですか!?」

凛「呼ばないよ」

ありす「何で!? とっても素敵な雰囲気だったのに!」

凛「プロデューサーは、名前では呼ばないから」


凛「……アーニャ以外は」


ありす「ずっ、ずるい! えこひいきです、そんなの!」

ありす「ちゃんと平等に、皆名前で呼ぶべきだと思います!」

凛「だよね?」

ありす「はい! 誰か一人だけなんて、おかしいです!」

凛「やっぱり、そうだよね」


奏・文香「……」

ありす「文香さんも、そう思いませんか!?」

文香「あ……ありすちゃん、落ち着いて……」

ありす「あっ、す、すみません……大声を出すなんて、私……」

凛「謝ること無いよ。だって、怒るのが当然だから」

ありす「……怒るのが、当然?」

凛「誰だって、ありすと同じように思うから、さ」

ありす「そう、ですか……? それと、橘です」

文香「あ、あの……ありすちゃん?」

凛「ねえ、文香も考えてみてよ」


文香「……えっ?」

  ・  ・  ・

武内P『鷺沢さん』

文香『? どうか……されましたか?』

武内P『こちらの本は、どこへ移動させれば良いのでしょうか?』

文香『あっ、それは……はい、ここへ、お願いします』

武内P『はい、わかりました』

文香『……本の整理を手伝っていただいて、何とお礼を言えばいいか……』

武内P『いえ、アイドルの方の手助けをするのは、当然の事です』

文香『……』

武内P『……それに……私は、とても大切な物だと思うからです』

文香『えっ?』

武内P『数々の文章を紡ぐインクと、優しい紙の香りが』

武内P『とても静かですが……はい、とても穏やかで、落ち着きます』


文香『……文章……文の、香り……』

武内P『……はい――』

  ・  ・  ・

凛「――鷺沢さん」

文香「? あの……ページが、戻ってしまったのですが」

凛「戻ってないよ」

文香「いえ、ですが……次の台詞は、文香……もしくは、文香さんでは?」

凛「プロデューサーは、名前では呼ばないから」


凛「……アーニャ以外は」


文香「それは……どこに抗議すれば、良いのでしょうか?」

凛「どこだと思う?」

文香「……タウンページ……タウンページは、どこに……」オロオロ

凛「直接抗議するのが、一番じゃないかな」

文香「……抗議文を作る必要が、あるかも知れませんね」

凛「うん、そういうのも良いと思う」


奏「……」

文香「ありすちゃんも……一緒に考えてくれる?」

ありす「! はいっ、勿論です! どんな反論も、論破してみせます!」

凛「頼もしいね」

文香「はい……私だけでは、難しいでしょうが」

ありす「文香さんとだったら、何だって出来ます!」

凛「うん、期待してる」

奏「……凄いわね、もう二人も仲間を作るなんて」

凛「何言ってるの。元々、同じクローネのメンバーでしょ」

奏「……まあ、それもそうだけど」

凛「ねえ、奏も考えてみてよ」

奏「……私はやめておk」

凛「逃げないでよ」


奏「……」

  ・  ・  ・

武内P『速水さん』

奏『……ねえ、ご褒美にキスしてくれる?』

武内P『いっ、いえ……それは、出来ません』

奏『あら、つれない人』

武内P『……申し訳、ありません』

奏『ふふっ、貴方って困った顔もチャーミングよね』

武内P『……』

奏『嫌がってるのに、変な事を言ってごめんなさい』

武内P『その……嫌がっている、わけでは』

奏『貴方はプロデューサーだもの、キスは無理よね』

武内P『……』

奏『それじゃあ、代わりに……二人っきりの時は……ね?』


奏『その……名前で呼んでくれる、っていうのは……どう、かな?』

武内P『……はい――』

  ・  ・  ・

凛「――速水さん」

奏「うーん……ちょっと、難しいわね」

凛「何が?」

奏「私が、健気な感じでお願いしたのよ?」

凛「うん」

奏「なのに、そのお願いすら聞かないって、どう許すの?」

凛「プロデューサーは、名前では呼ばないから」


凛「……アーニャ以外は」


奏「えぇ、でも……だからこそ、燃えるわよね」

凛「何が?」

奏「熱い何かが。熱すぎて……やけちゃうわ」

凛「ふーん。良いんじゃない、そういうのも」


奏・文香・ありす「……!」


凛「……」

  ・  ・  ・

凛「……――って感じで、仲間を増やしてるから」

アーニャ「ハラショー♪ 数で対抗、ですね?」


武内P「待ってください! 何故、そんな大事に!?」


凛「プロデューサーは黙ってて」

アーニャ「ダー。プロデューサーは、アーニャの名前だけ、呼んでください」

凛「そういう意味で言ったんじゃない」

アーニャ「どういう意味ですか? アー……渋谷さん?」

凛「っ……!?」


武内P「お願いします! ケンカは! ケンカはやめてください!」

ちひろ「皆、特別っていうのに憧れてるだけなんです」

武内P「……千川さん」

ちひろ「ちょっと、他と違う事に気付かせてあげれば良いんですよ」

武内P「あの、それは……どういう……?」

ちひろ「ふふっ!」

武内P「……?」


ちひろ「凛ちゃん!」


凛「……何? ちひろさん」


ちひろ「凛ちゃんって、皆には何て呼ばれてる?」


凛「えっ? 凛とか、凛ちゃんとか……あとは、未央が、しぶりんって」


ちひろ「渋谷さん、って呼ぶ人の方が……珍しくない?」


凛「……」

凛「!?」

ちひろ「それって、ちょっとした特別感が無い?」

凛「えっ、いや……だけど、名字だよ!?」

ちひろ「ええ、そうよ」

凛「納得できない! 距離が遠い気がする!」

アーニャ「リン。気のせいじゃない、ですね?」

凛「ふうううぅぅぅん!」ジタバタ!

ちひろ「ねえ、考えてみて?」

凛「何を!?」

ちひろ「凛ちゃんは十五歳だから、早くて一年後かな?」

凛「だから、何が!?」

ちひろ「ねえ、考えてみて?」


凛「……!?」

  ・  ・  ・

武内P『渋谷さん』

凛『えっ?』

武内P『あっ……す、すみません、つい』

凛『ふふっ……うん、私もそっちの方が、まだしっくりするかな』

武内P『……』

凛『私も、プロデューサーって呼ぼうか?』

武内P『……いえ、それは』

凛『冗談だよ。でも、もう渋谷さんはやめてよね?』

武内P『……はい、そうですね』

凛『……ずっと見ててよね』

武内P『ええ……約束です』


凛『誰かさんのおかげで、渋谷さんじゃなくなったんだから』


武内P『……はい――』

  ・  ・  ・

ちひろ「……」

凛「……」

ちひろ「……つまり、渋谷さん、って呼んでもらえるのは?」

凛「今だけ」

ちひろ「期間限定も?」

凛「悪くないかな!?」

武内P「えっ、あ……はい」

ちひろ「ねえ、これは皆に伝えるべきだと思わない?」

凛「思う……思うよ、ちひろさん!」


アーニャ「……」

  ・  ・  ・

武内P「――ありがとう、ございます」

ちひろ「いえいえ、お安い御用です」

武内P「お陰で……助かりました」

ちひろ「とんでもない!」


ちひろ「まだ、助かってないですよ」


武内P「えっ?」


アーニャ「プロデューサー?」


武内P「あっ」

アーニャ「皆の呼び方は、アー、期間限定、ですね?」

武内P「その……よう、ですね」

アーニャ「私は……アーニャは、違いますね?」

武内P「……はい」

アーニャ「プロデューサー。アーニャは、悲しい、です」

武内P「……はい」

アーニャ「アーニャも、今だけの呼び方、されたいです」

武内P「それは……すみません、出来ません」


アーニャ「ニェート! どうして、ですか!?」

アーニャ「皆は、名字! アーニャも、名字で呼んでください!」


武内P「……」

武内P「……まさか、名前で呼んでいたことが、こんな形で――」


アーニャ「プロデューサー!」


武内P「あだになるとは考えませんでした」



おわり

こんなくだらないもん最後まで読んでくれてありがとう


次スレ

武内P「アイドル達に慕われて困っている?」
武内P「アイドル達に慕われて困っている?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509802732/)

埋め

埋め

埋め

埋め

埋め

1000!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年06月09日 (土) 12:08:11   ID: EIdLlBAh

良かった。

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom