上条「まきますか?まきませんか?」(559)

それはいつも通りのある日のことであった。
上条当麻はベランダに布団を干そうとすると、ある一通の封筒が置かれている事に気付いた。
最初は風で吹き飛ばされてきたのだろうと思ったが、封筒には”上条当麻様”と書かれており、その他には住所も差出人の情報すらも書かれてなかった。

上条「何だこれ?…別に自分の名前宛てなんだから開けてもいいよな…」
そんなことを思いつつ封筒を開けてみるとそこには一枚の紙が入っていた。

中身を読んでみると
「おめでとうございます上条様!!!貴方は54128人の中から厳正な抽選にて選ばれ、『幻想御手(レベルアッパー)』を獲得することができる幸運な学園都市の人です!!!
チェックをしたら、そこから外へこれを紙飛行機の形にして飛ばしてください。人口精霊ホーリエが異次元より貴方の手紙を回収に参ります。」

その手紙の最後には”まきますか まきませんか”と大きな文字で書かれていた。

上条「新手の詐欺か?全く、上条さんはこんな面倒な事に付き合ってる暇なんかないってのに…」

そんな独り言を呟きながらも、手紙に書いてある”幸運な学園都市の人”という文字列に思わず目を奪われてしまい、ふとした思いで”まきます”の方にチェックをして、紙飛行機の形に折り外へと投げた。

上条「こんな事で能力者になれたら上条さんは今頃不幸じゃないですよ…」

そんな事を思いながらも上条は心の奥底で何かを感じていた。
新たな何かを---

ローゼンはキャラしかしらんわ

布団を干し終えた上条は、部屋に戻ると床の上に大きな鞄が置かれているのが見えた。

上条「何だよこれ、さっきの手紙といいこの鞄といい…不幸だ…」

しかし、上条も鞄の中身に興味があったのだろう。
中を開けると、そこには若干大きめの人形があった。




誰か続き頼んだ。

ドールに触れて大丈夫なのか

>>4
!!?
こりゃいかん、銀様を守らなくちゃ

ビリビリのところに真紅、レズのところに銀様がくれば……

おk!
続き書くけど今都合悪いからちょっと保守しといてくれ
そうだなとりあえず今月末ぐらいまで頼んだ
じゃあみんなおやすみ

上条「この人形は…?」

バシュン

上条「」


めでたしめでたし

保守

上条「御坂の妹じゃねーか、何してんだ?」美琴「えっ?」
上条「御坂の妹じゃねーか、何してんだ?」美琴「えっ?」 - SSまとめ速報
(http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1262836023/)
佐天「御坂さーん!」ミサカ「?」
佐天「御坂さーん!」ミサカ「?」 - SSまとめ速報
(http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1262670455/)
インディビジュアリスト「とうまー」上条「・・・。」
打ち止め「何このセーラー服?ってミサカはミサカは…」
打ち止め「何このセーラー服?ってミサカはミサカは…」 - SSまとめ速報
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ミサカ「貴方は私と似ていますねとミサカは返答します」
佐天「なんならわたしのパンツ見るぅ?」 上条「うん」
初春「ぱーそなるりありちwwwwwwwww」
美琴「ちょっとアンタ!!なんで無視すんのよ!!」 上条「・・・」
美琴「ちょっとアンタ!!なんで無視すんのよ!!」 上条「・・・」 - SSまとめ速報
(http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1262879796/)
黒子「ミサカお姉様…ですの?」
上条「まきますか?まきませんか?」
上条「まきますか?まきませんか?」 - SSまとめ速報
(http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1263058951/)
美琴「左手を掴めば……!」上条「しまった!」
サーシャ「第一の解答ですが、私は既に上条当麻と付き合っています」
サーシャ「第一の解答ですが、私は既に上条当麻と付き合っています」 - SSまとめ速報
(http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1262443152/)
御坂「やだ・・・どうしよう、みんな男になってる・・・」
インデックス「黒豆サイダーならあるんだよ?」
最愛「だ、ダメです浜面・・・・・・ん・・・浜面ぁ・・・」
最愛「だ、ダメです浜面・・・・・・ん・・・浜面ぁ・・・」 - SSまとめ速報
(http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1262790222/)

上条「なんだこれ?」

鞄を見下ろす上条。

ついさっきまで、こんなものはなかったはずである。ついでに、こんな鞄を持っていた覚えもない。

上条「インデックスが買ったのか?」

自分ではない以上、可能性があるのは同居人の私物ということ。

しかし彼の同居人である腹ペコシスターは、こんなもの持っていなかったはずだ。

いまでこそ多少の私物は上条家に増えたものの、生活用品くらいしかないはずである。

上条「高そうな鞄だし、それはないか。小萌先生からもらったのかもな」

インデックスにも、当の上条にもこういったものを購入する機会も財力もない。

ついでにこの町の半不正規滞在者であるインデックスには、バイトして稼ぐこともできないはずである。

可能性があるとするなら、誰かからのもらいもの、というところだろう。

上条「でもおかしいな。さっきまでこんなの置いてなかったはずだけど」

不思議そうに首を傾げる。

件のインデックスは、朝早くから小萌の家に出掛けている。

なんでも買い過ぎて賞味期限ギリギリの食材を一気に片付けるためにインデックスの力を借りたいとのことだった。
そういう話に食欲最優先の彼女が動かないわけがなく、今日は泊まり込みで食べてくるらしい。

いままで何度か泊まりに行っているが、そのたびに手ブラなのを気にして小萌が用意してくれた可能性は十分にあった。
おそらくお泊まりグッズを詰めて、しかし普段の習慣どおりに手ブラで出掛けたのだ。
ただでさえインデックスである。食事が用意されている状況下なら、その辺りが抜け落ちても不思議はない。

上条「せっかく用意してくれたのに忘れていってどうするんだよインデックス・・・」

呟く上条。

彼の中で納得のいく理由が思い付いたせいで、もう鞄が誰の物かということはほぼ決定状態になってしまっている。
床の上に置いてあることも、何らかの勘違いで気がつかなかったのかもしれない。
普通はこんなものが床においてあれば100%気がつくに違いないが、ここは学園都市だ。
誰かが外でおかしな能力を使って、その余波が出たのかもしれない。
場合によっては、高価な鞄をもらった鞄インデックスが後ろめたくて何かしらの魔術でも使って隠していたのかもしれない。

彼女は魔術は使えないと聞いているが、いままでも何度か戦闘でそれらしいことをしていた記憶がある。
純然たる魔術といえなくてもそれらしいことが出来ても不思議はなかった。

それが何かの拍子に、自分の右手に触れたのだろう。

上条「どうするか・・・っても、届けてやるべきだろうなこれは」

気がついた以上、それをそのまま放っておくのは性にあわなかったし、何より上条家の経済破綻をギリギリで回避していられるのは、小萌の食事会によるところが大きい。

上条「義理と人情を欠いては浮世は渡れないと思うのですよ上条さんは」

呟きながら、鞄の取っ手に左手をかけた。
かなり大きい鞄だが、力には多少自信がある。それに中に入っているのはおそらくタオル程度であろう。
上条は一気に持ち上げようとして、

上条「!?」


ズシリ、と予想外の重みが腕にかかった。

完全に軽いものと信じていた上条だ。持ち上げる勢いがあまって、踵に体重が一気にかかる。

上条「お、わ、たっ」

鞄に手をかけたままの彼の上半身が反射的にのけ反った。だが、腕は重みに引かれるように上体についていかない。

上条「っ」

左手が無意識に鞄を離す。僅かに浮いていた鞄は床に落ち、代わりに重量感の消えうせた彼は、堪えるどころか一気にバランスが崩れた。

上条「うわっ」

それでもなんとか体勢を立て直そうとして動かした脚が、いましがた干そうとして床に投げていた薄手の掛け布団を踏み付けた。

ずるり、と脚が滑り、視界が反転する。

上条「ふ、不幸だぁっ!」

彼の嘆きの声が響き、その一瞬後、床に頭が激突する音がこだました。


上条「いてててて」

湿布を貼って包帯でぐるぐる巻きにした右手で後頭部に保冷剤(上条家冷凍庫に入っている唯一のもの)を押し当ててながら、上条は鞄の前に腰を下ろした。

鞄を持ち上げようとした、ただそれだけで、彼は後頭部強打と右手首捻挫という負傷をしてしまっている。

負傷自体は悲しいことによくあることで、応急手当も慣れたものであった。

それよりも、いまの彼はもっと重要なことがあるのだ。

支援あげ

どのドールが出てくるは安価で決めるんですよね?

上条「まったく、なにが入ってるんだこれ?」

ポン、と左手で鞄を軽く叩く上条。

持って行こうと思ったが、予想外に重い。左手だけで持ち上げるのは、小萌の家までの距離を考えると、少々きつかった。

となると、残る方法は中身を見て、無用なものを出すしかない。

この段階に至って、持って行かないという選択肢が出てこないのは、彼の人の良さが伺えた。
ついでに、小萌の家に電話してインデックスに確認するという点に考えが及ばないあたりに、彼の単純さがわかる。
さらに言えば、そもそも女の鞄を開けようとするな、と言う点に考えが至らないところに、彼のデリカシーの無さと鈍感ぶりが計り知れよう。

上条「えーと、留め金留め金っと・・・」

無事な左手で取っ手の脇にある留め金を外す。

って、うああああ、ここまで書いときながら、読み返したらもう鞄あけられてることになってた・・・吊ってくるごめん。

>>19
こまけぇこたぁ良いんだよ!
続き書いてくださいお願いします

右手で触ったら終了じゃねぇの?ww

1や7じゃないんだけど、続き書いてもいいのかな・・・。
まるっと書き溜めしてなかったから、ちょっとずつでよかったらいまから書くけど・・・

かまうものか

>>22
期待してる

おそれながら書いてみました。
進行遅くてもこらえてください。

パチリ、と存外に軽い音をたてて留め金は外れた。

上条「鍵、かかってなくてよかった」

かかっていたらお手上げだったに違いない。
流石の幻想殺しも錠前を壊すことなんか出来ないし、何よりいまは包帯で皮膚が完全に隠れるほどぐるぐる巻きである。

よかったよかった、等と呟きながら鞄を開ける。
ギギギ、と小さな軋みとともに開き、徐々に見えてくる中身を見た上条は、

上条「え」

カシッ、とその動きを止めた。

彼が予想していた中身は、連れていったスフィンクスのためのネコ缶や、小萌の家でするためのゲームソフト(蔵上条家)が大量に、というものだった。
だから、動きを止めるのも無理はない。
中に入っていたのは、それこそ美術館に飾られていそうなほどの、綺麗な人形だったのだから。

上条「な、なんだこれ。こんなの、先生んちに持って行くつもりだったのか?」

驚きと、人形の持つ息を呑むほどの美しさに、数呼吸。
再起動した上条は、左手を鞄の取っ手にかけたまま、眉を潜めた。

鞄の中には、本当に人形しか入っていない。予想していたネコ缶もゲームソフトもなく、ましてやタオルも着替えもなかった。

そもそも身を丸めるようにして入っている人形だけで、鞄はいっぱいいっぱいである。
これ以上何を入れるスペースはない。
鞄そのものの装飾や大きさ、そして人形の『収まり具合』から考えて、明らかにこの人形専用の鞄に思えた。

上条「西洋人形・・・ってやつだよなこれ」

鞄を完全に開けてしまい、つんつんと左人差し指で人形の頬をつつく。
陶器のような硬い、しかし人の肌に吸い付くような不思議な質感を指先に感じた。

上条「小萌先生がこんなのをインデックスに? いやでも、だったらこれ持って行く意味わからねぇし」

顔を上げ、腕を組む上条。

上条「だったらやっぱりインデックスの私物か・・・あいつ、いつのまにこんなもの」

正直、インデックスの趣味とは思えなかったが、こうなるとそれ以外の線が考えられない。
『記憶のあった上条』の私物という線もあったが、それはとりあえず否定することにした。

いやその趣味をどうこう言うつもりはないし、偏見もない。
以前に失った記憶を補完しようと、自分のアルバム等を探したときには、こんな鞄は見当たらなかったというだけである。

それに、インデックス自身はあまり快く思っていないようだが、彼女にも一応故郷があり、その知り合いがいる。あの炎の魔術師や破れジーンズの魔術師が持って来ることだってないとは言えないのだ。

上条「明日、帰ってきたら聞いてみるかな・・・」

いま、それを確認する方法はなさそうである。

上条はため息をつきながら、ふと、鞄の中で眠るような人形に目をやった。

上条「でも、インデックスはこういう色が好きなのか。あいつシスター服だから、白以外のイメージなかったけど・・・」

そしてもう一度、つん、と人形の頬をつつく。

上条「こんな、」

何色がいいでしょうか。
最初の構想では赤でしたが、上の方で安価がよろしいとかお言葉が。

                       ヘ(^o^)ヘ いいぜ
                         |∧  
                     /  /

                 (^o^)/ てめえが子に時間に
                /(  )    人がいるっていうなら
       (^o^) 三  / / >

 \     (\\ 三
 (/o^)  < \ 三 
 ( /

 / く  まずはそのふざけた
       幻想をぶち壊す

赤がいい

赤は嫌いなので蒼

人いるのな黒で

蒼で頼む

蒼か翠が良いかしら

教会繋がりで銀様でいい

よ、予想外に人が・・・。
それでは45までの最多獲得数のおにんぎょうで進めようと思います。
その前にレスとまったら・・・まぁそのときはそのときで。

結果で展開が変わるかと思うので、次の書き込みは数時間の間が空くと思いますがご容赦ください。

黒だろ

赤 4

蒼 3

緑 1

黒 3

蒼と緑の重ねがあり、0.5とすれば、赤が4でトップです。

では赤で進めますが、前述のとおり書き溜めがまったくないのである程度書き溜めてから投下します。
ご容赦ください。
では、また数時間後に。

保守してやんよ

 ∧_∧
( ・ω・)=つ≡つ
(っ ≡つ=つ
`/  ) ババババ
(ノ ̄∪

「昨日はお楽しみでしたねぇ~上条君」

「な、なんだよこのロリコンエセ大阪人!」

「とぼけんなよぉ~、ワイはこの目ではっきりみたんや
お前が鞄の中の少女を…」

「おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! してねぇ! 俺は断じてしてねぇ!」

「まぁ大丈夫や、こう見えても大阪人人情に厚い、
人にはいわんといてやる、ただし…」

「なんだよ…」

「ワイにもさせてくれ!」

「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇ! 黙れ! お前にさせるぐらいなら
ばれたほうがマシじゃ!」

「なにを! 少女にさせてもらったくせに!」

とある~とか言うのって面白いの?
相棒より面白い?

ふぅ

>>49
まずジャンルが違うんだから比べ様が無いだろ

保守してやんよ

 ∧_∧
( ・ω・)=つ≡つ
(っ ≡つ=つ
`/  ) ババババ
(ノ ̄∪

>>49
いいから黙って相棒みてろよ

>>49
つまんないから相棒でも見とけ


俺はつまんなくても楽しめるから禁書を見るよ

これは面白そうだな
ローゼンが魔術師設定ならインデックスの10万3000冊にもあるし

イマブレで触ったらただの人形になっちまうんじゃ・・・

蟹味噌「私への投票が1票もないかしら~」

>>62
ん?誰だお前

他はただの人形になるとしてきらきー右手で触ったらどうなんの?

>>65
霧散するとしか思えねぇ

というか鏡触ったらnのフィールド消えるのか消えないのか。

nのフィールド入れなさそうだし話作るの厳しそうだな


上条「こんな赤色の人形を持ってるとはねぇ」

彼の言葉どおり、人形は全身で赤を纏っていた。

洋服は言うに及ばず、ヘッドドレス、襟元の薔薇、履いている黒色の靴も光の加減によっては赤みを帯びて見える。

異なる色と言えば、髪の金と肌の白くらいだろう。

上条「赤と白と金色でめでたしめでたしってところですか」

極めて日本人的発想を口にする上条。

いまだ日本の文化に馴染みの薄いインデックスにそれはないにしても、上条的には白い少女が赤い人形を抱いている情景は妙に縁起がよいように思えたのだった。


上条「あ、そういや大丈夫かな」

覗き込むようにして人形を見ていた彼の顔に、若干の緊張が浮かぶ。

彼が危惧しているのは、さきほどの開けようとして転ぶ事件を思い出したからだ。

この鞄、転ぶ直前に手を離した拍子に、けっこうな勢いで床に落ちたような気がする。

上条「まずい、どっか壊れてたら・・・」

これがそう安いものではないことはアンティークや芸術に疎い上条にも容易に想像できた。

たとえ安価なものであったとはいえ、インデックスのお気に入りには違いない。ほとんど食べ物以外をねだらない彼女にして、その何倍もしそうな装飾の一品である。

それに傷をつけてしまえば、彼女はどう思うだろう。

頭を噛まれるくらいならいいが、もし泣かれたりしたら切腹→火葬ものだ。いや、上条が自主的にしなくても、たぶん二人の魔術師が強制して来るに違いない。
それに上条的にもそんな心が痛い事象は避けたかった。


上条「ちょ、ちょっとだけ確認を」

頬に汗でも伝っているような感覚で、上条は人形に手を伸ばした。

もし傷がついていても治せたものではない。それでもこういうことは、気になりだしたら確認するまで止まれない。

傷がついていなければよし。傷ついてたら・・・土下座と高級料理フルコースで手を打ってもらいたい。

そんなことを考え、左手を人形の腋の下に入れる。

上条「わっ、と」

そのまま持ち上げようとするが、これが大きい。一抱え、というか、下手すれば幼児ほどもありそうだ。

反射的に右手も添えようとして―――

上条「って、大丈夫かこれ触って俺」

その右手をとめた。

いまのところどこからどうみてもただの人形だが、これはインデックス関係のもの。

魔術的な要素があれば、右手で触れるのは危ないかもしれなかった。

支援

上条「・・・・・・」

じっと包帯の巻かれた右手を見る。

とはいえ、人形を調べるには片手じゃ無理だ。無理に持ち上げて床に直接落としたら、傷物まちがいなし。色々な意味で責任問題に発展するだろう。

上条「ま、包帯でびっしりだし、大丈夫だよな」

幻想殺しの効果は右手首から先で、直接触れたもの、という限定的なものだ。
完全に包帯で覆われた状態なら問題あるまい。

上条「よっと・・・って、でかいし、重いなこれ」

両手で『たかいたかい』でもするようにして持ち上げる。

ずしりと両腕にかかる重量感。身長に対応するように、その重みも人間の幼児並だ。

上条「しっかし、すごいなこれ。芸術は爆発というわけですかそうですか」

その顔を覗き込み、精巧さに思わずため息が漏れた。


人のような大きさ、人のような重み、人と見間違いそうな精巧な顔形。
そしてなにより、

上条「なんか色々な柔らかくて上条さんは大変ですよまったく」

指は、意外な柔らかさを上条に伝えてきていた。
なるほど、さきほど頬を突いたときの硬さや質感は、こうしてみると意外なほど人に近いものを思える。

人そのものよりもやや硬いが、その差が逆に『人を模そうとした』ことを感じさせることとなっていた。

ふわり、と上条の鼻先を、金色の髪が掠める。

上条「・・・・・・」

上条(って、いまなに考えてた俺そんな俺はその趣味はないないいやだってそんな土御門じゃあるまいし人形様にだってうわらばあばばばばば)

ブンブンと頭を振る。

いま顔が熱いのは気のせいだ。気のせい。そうじゃないと困る。


思わず視線を逸らした上条。

そんな彼の目が、ひとつの金属片が捉えた。

ぱっと見て、ハート型のようにも見えるそれは、

上条「ゼンマイか、これ?」

内心の動揺を自らごまかすように呟きつつ、ゼンマイを右手で取り上げる。

包帯越しに金属の感触をかえしてくるソレは、なんの変哲もないゼンマイだ。

上条「・・・・・・」

視線を落とせば、背後から膝の上に抱えて支えている人形の背中。

そこに、差し込み口のようなものがある。

上条「駆動式? カラクリ人形?」

差し込み口とゼンマイの先端は同じ形だ。間違いなくそこに挿すものだろう。


上条「・・・・・・」

いくら不幸に塗れても、いくらこの学園都市の学生として見ても異常な事態に遭遇していると言っても、上条は男の子である。

こう言ったカラクリと言うたわいもない『おもちゃ』には心躍らされるものがある。

上条(ちょっとくらいなら、大丈夫、だよな)

好奇心が動き出す。

これだけ精巧な人形だ。駆動するとなれば、どこまで綺麗に動くのか見てみたい。

それにもし動かしてみて、異常がなければ内部機構にも問題がないという証明にもなるのだ。

上条(そう、これは確認、確認なんですよインデックスさん)

持ち主に無断で動かすという罪悪感を義務感という名目でごまかしながら、上条は手にしたゼンマイを、背中の穴に挿しこんだ。




その瞬間だった。




キリキリキリ・・・と軋むような音をたてて、ゼンマイがひとりでに動きはじめた。

上条「え・・・」

上条の口から驚きの声が漏れる。

反射的に右手を放すが、ひとりでにまかれていくゼンマイは止まらない。

そして、呆然とする彼の目の前で、

「・・・・・・」

ふわりっ、とさきほど鼻先を掠めた人形の髪のような軽やかさを持って、当の人形が空中に浮かび上がる。

上条「ちょっ、えっ、や、やっぱり魔術的なあれですか!?」

無意識のうちに右手を胸元に引き寄せながら、左手で床を掻いて後ろにさがる上条。

普通の人間なら、いや、この学園都市にひしめく能力者たちでも驚くような光景に、それでも素早く反応できるのは、いままでの経験ゆえ。

驚きと、若干の警戒を宿した彼の視線の先で、人形が鞄の上、その空中に直立する。

そのまま、まるで風になびくように、鞄の上から床に水平移動する人形。

上条はそれを見守ることしかできない。

しえん


「・・・・・・」

伏せられていた人形の目がゆっくりと開いていく。

その切れ長の目が、すい、と上条に向いた。

上条「な・・・」

上条が声を漏らしたのは、人形がこちらを向いたことにではなかった。

人形の瞳。

そこに篭められた、明確な敵意に対してである。


「・・・・・・」

トン、と人形の靴が床に着地する。しかし上条に向いた視線の色は、種類を変えないままだ。

赤い人形の左手が、ゆっくりと持ち上がる。

上条「くっ」

右コブシを握った。手首が痛むが、この際そんなこと言っていられない。

人形の視線―――その敵意は強くなる一方。

そして、人形が一歩、脚を踏み出した。

上条の、方に。

上条「お、お前っ」

上条が言葉を投げかける。


「・・・・・・」

だが人形は反応を見せないまま、ツカツカと歩をすすめてくる。

人の脚で数歩の距離。やや小さい人形では、もう少しかかる。

人形の手は持ち上げられているだけでいまのところなにも異常な様子はない。

だが油断はできない。相手は魔術の結晶に違いないのだ。上条の右手同様、触れた瞬間にだけ効果を発するのかもしれなかった。

上条「!?」

上条(まずいっ、右手・・・!)

息を呑む上条。

頼みの幻想殺しは、いまは包帯で完全に拘束されている。これではなんの意味もない。

シエンタ

左手で包帯を毟ろうとするが、

「・・・・・・」

上条「!」

もうその時には、人形は上条の目の前に立っていた。

上条(やべっ!)

さらに後ろに飛びすさろうとする。

だがそれよりも一瞬だけ早く。

「なんて起こし方をするの」

ぶん、と上条の右頬に、彼から見て右斜め上から小さな手が振り下ろされた。

上条「うべっ!?」

室内に、本日二回目のよい音が、響いた。

こうして、上条の一日は、いつものように悲鳴と不幸から始まって行ったのだった。


「まったく、いきなりレディを床に落とすなんて、いつになっても男というのは野蛮なものなのだわ」

上条「まことに申し訳ありませんでした・・・」

「その上、無遠慮に頬と言わず鼻と言わず突付いてくるし・・・いまの世界の挨拶は、顔をつつくことから始めるのかしら?」

上条「滅相もございません、すべてわたくしの不徳の致すところであります」

腰に手を当て、いかにも立腹してますという風情で見下ろしてくる人形に対し、上条がとった対応は男らしい土下座であった。

もっとも、小さな女の子に少年とは言え大人に近い男がそうしている情景には、男らしさの欠片もないのだが。


あの平手一閃から5分後の、上条家の情景である。

「・・・あなた、名前は?」

上条「不肖、わたくし上条当麻と申します」

「じゃあ当麻」

上条「なんでございましょうか」

「あなたの本朝式社畜土下座(キングス・スレイブ・アポロジャイス)はとても綺麗で見事なのだけれど、もう許してあげるから頭を上げて頂戴。そのままじゃ話しにくいわ」

上条「わ、わかりました」

「それと、敬語もいらないのだわ。あなたの普通がその敬語なら、別だけど」

上条「・・・わかった」

なんとかお許しをもらって、顔をあげる。

つい先ほど彼の左頬を張り飛ばした西洋人形は、まるでそこが定位置であるかのように、上条家のソファーに腰掛けていた。


ソファーに腰掛けているのに腰に手を当てる行動は妙に見えるが、気にした風はない。

インデックスが怒ると噛み付いてくるのと同様、この人形はそういう癖でもあるのかもしれなかった。

やっぱりペットと同じで魔術人形も持ち主の影響を受けるのか、等と考える上条であったが、それはともかく。

上条「でも、本当に大丈夫なのか、背中とか、腕とか・・・」

言いながら、上条は心配そうな目を向ける。

あの見事な張り手は、彼の頬に若干のダメージを与えたが、それ以上のことはなかった。
むしろ彼にして土下座という方法をとる原因になったのは、床に落とした拍子に背中を痛めただの、散々体を弄繰り回されただの、レディに対して重いと言うのはデリカシーなさすぎとか、そっちの方の文言である。


チクチクと心をわざわざえぐるようなその言葉の嵐に思わず土下座するしかなかったが、しかし上条には、それらがすべて悪意から来る言葉のようには感じなかった。

怒っていたのも本当だっただろうが、それよりもむしろ、インデックスや、とあるレールガンとの掛け合いのような感覚だったのである。

だからどうしても、その負傷が気になってしまう。


「・・・・・・」

人形は彼の言葉に軽く驚きの表情を浮かべ、ついで、ゆっくりと微笑んだ。まるで、何かを思い出したかのように。

「問題ないのだわ。あの程度で壊れてしまうほど、私は脆弱ではないもの」

上条「そうか、ならよかったよ」

上条は、ほっと胸を撫で下ろした。自分のせいで修復不可能な傷を与えたとあっては、持ち主だろうインデックスにも、人形である彼女(?)自身にも申し訳がたたない。

人形がしゃべるという状況に、彼はそれほど違和感を感じていなかった。そのくらいの大騒ぎは何度も経験済みである。ついでに言えば、これくらい小さい相手にお小言を言われるのも小萌相手で慣れている。


「・・・変わった人間なのだわ」

上条「? なにがだよ」

「私と初対面で、こんな風に普通に話をした人はいなかったのよ。みんな驚いて、何かの仕掛けか、と疑ってきていたのに」

上条「あー、それは、まぁ、慣れっつーか環境っつーか」

「慣れ? 環境?」

上条「ああ、それも説明しなくちゃな。インデックスより、あんたの方がしっかりしてそうだし」

「?」

上条「その前に、ひとつだけいいか?」

「なにかしら」

上条「その、あんたのことはなんて呼べばいいんだ? 人形とか、お前ってわけにもいかないだろうし」

「・・・・・・」

人形は再度、驚きの表情を浮かべる。

上条「?」

「ふふっ」

こちらの表情の意味がわからなかったのだろう。不思議そうな顔をしている上条に、思わず笑みが漏れた。

支援age


(・・・人形に名前があるのが当然と思っていて、それが普通な人間なのね)

(ジュンですら、最初はそんなこと思ってもいなかったと、思うのに・・・)

上条「どうしたんだよ? 俺、何か変なこと、言ったか?」

「いいえ、ごめんなさい。そういえば自己紹介もまだだったのだわね」

そう言って、その赤い人形は両の足で立ち、上条を正面から見つめる。

「私の名前は真紅」

「ローゼンが創りし薔薇乙女の、第5ドール」

そして人形―――真紅は、口元にやわらかい笑みを浮かべた。

「当麻。貴方の、お人形よ」








ローゼン知らんけど支援

とりあえず今回は以上です。

また書き溜めてから投下します。

でもこのペースじゃ、ずいぶん長いことかかりそうな気が・・・。
うむむ・・・。

なお、三点リーダーについては、わざと使っていません。
…よりも・・・の方が厚みがある気がして、沈黙っぽくて好きなんです。

お気に触る方もいうと思いますが、まぁ、趣味の領域ですので許していただければ、と思います。

いいよいいよー

まさかジュンも出てきたりすんのかね

上条さんNのフィールドには入れるのかね
三沢塾の結界には入れた前例があるからいけるかもしれないが

ジュンは最終的になにもできなかったのか・・・

ほっしゅ

期待wktkおもしろい

 、ゞヾ""ソμ

ヾ     彡
ミ  ・ д ・ ミ
彡 (゚Д゚) ミ

 /ソ(/ ヽ)ヾ
  "|""| ホッシュ!
   ∪∪

落とさせるわけねえだろ

ほほほ

コンビニ行くから誰か保守頼む

おk
補修

補習



コンビニ遠すぎだろ
どこの田舎だよ

しっかし、保守が当たり前のようになってんな

ほっしゅ

ほしゅ
悪いが他に見てる人いるなら続き頼んだ

こんびに遠すぎだろ

ほ、ほ、ほーたるこい

>>115
あと1時間は任せろ

保守時間の目安
00:00-02:00 60分以内
02:00-04:00 120分以内
04:00-09:00 210分以内
09:00-16:00 120分以内
16:00-19:00 60分以内
19:00-00:00 30分以内

そろそろ

まだ


真紅、と名乗った彼女が語った内容は、上条にして意外ではあったが、驚きにまで値するものではなかった。


ローゼンという人物に作られた人形であること。ローゼンは、上条が言うところの魔術師のような人物であるということ。

自分はローザミスティカと言うモノで動いており、それが人間で言うところの魂であるということ。

ローザミスティカは元々ひとつのものを分割したもので、自分以外に六人(六体?)の姉妹がいるということ。

そのローザミスティカを集めてアリスになることが目的であり使命であり、姉妹同士で戦っている、ということ。


真紅の要請によって淹れた紅茶が、上条のカップで冷めたしまったころに、何度か脱線を繰り返した彼女の話は終わった。

真紅「と、いうわけよ。わかってもらえたかしら」

カチャリ、と音をたてて、真紅はカップをソーサーの上に置いた。

カップは真紅の手でも扱える、小さなものだ。以前、インデックスと買い物に出かけた際に、彼女が面白がって購入したものである。

上条「いや、わかったけど・・・」

もう湯気を立てなくなった自分の紅茶に目を向けながら、上条は頬を掻いた。先ほど真紅にひっぱたかれた場所だが、もう痛みはない。



真紅「?」

言いよどむ彼の様子に、真紅が視線を向ける。

上条「なんつーか、結構にヘビーなお話で、上条さんとしてもなんとコメントしていいのかわからないのですよ、はい」

色々と覚えることがあったようだが、とりあえず上条の心に堪えたのは『姉妹で戦っている』という点だった。

ローザミスティカは真紅を含む姉妹たちの命である。集めるということは、結局、奪いあうということだ。

それは殺し合いに等しい。

なるべくなら争いごとをしたくない、話し合いですむならそれに越したことはない。

そんな思考が基本である上条にしてみれば、いくらそれが真紅たちの使命とはいえ、あまりにもあまりにもだと思う。

だが、そんな彼の思考を読んだかのように、真紅はふわりと、微笑みを浮かべた。


真紅「大丈夫よ、当麻」

上条「え?」

真紅「貴方の考えていることよ。きっと、姉妹で殺し合いをするなんて、とか、考えているのでしょう?」

上条「な、なんでわかったんだ?」

真紅「顔に書いてあったのだわ。話し合いや他の方法はないのだろうか、って」

上条「う」

完璧ピタリと言い当てられ、上条は若干狼狽した声を上げた。

それを見て、真紅がくすくすと笑う。そして、続けた。


真紅「安心しなさい。私は、戦って奪おうとか、そういうことはもう思っていないわ」

上条「そうなのか?」

真紅「ええ。私は私のやり方でアリスを目指しているの」

真紅「私たち姉妹の争い・・・アリスゲームと言うのだけれど、その結果で得られるのは、あくまでもローザミスティカよ」

上条「・・・・・・」

真紅「でもよく考えて当麻。もし私が他の姉妹を倒し、ローザミスティカをひとつに纏めたとして・・・それで本当にアリスになれるのかしら?」

上条「え? でもだって、真紅を作ったそのローゼンってのが、そう言ったんだろ? じゃあそうなんじゃないのか?」

真紅「そうかしら? 私が初めて目を覚ましたときには、もうお父様は傍におられなかったわ。直接聞いたわけじゃないの」


真紅「それに何より、もしローザミスティカをすべて集めてアリスになれるなら」

真紅はちらり、と上条を見る。

上条は真剣な瞳をこちらに向けてきていた。争いごとをしない、という真紅の言葉に、それだけの真剣さを持ってくれているのだろう。

真紅「・・・お父様は、私たちを創らずにアリスを作れば良かったのだもの」

上条「あ、なるほど」

得心したように、上条はうなずいた。

実際、そうだ。完璧なローザミスティカが手元にあるのに、わざわざそれを砕く必要はない。完全にすればアリスになれるのであれば、初めから完全なものでアリスという存在を作ればいいのだから。

真紅「そう。だから私はアリスゲームに依らない方法でアリスを目指す。それが正しいのかはわからないけれど、ね」

上条「・・・・・・」

真紅「・・・当麻? どうしたの?」

軽く目を見開き、驚いてますよー、という感じの表情を浮かべる上条に、真紅が眉をひそめた。

だが彼はそんな真紅の視線にかまうことなく、はー、と安堵のこもったため息をついた。

真紅「当麻?」

上条「あ、すまん。ちょっと力が抜けちまった」

真紅「・・・・・・」

そしていまだ眉をひそめたままの真紅を見て、パタパタと左手を振る。

上条「いや馬鹿にしたとかそういうんじゃなくて、よかったな、と思ったんだよ」

真紅「よかった?」

上条「ああ。だって真紅はわざわざ戦うつもりはないんだろう?」

真紅「ええ」

上条「俺もはっきりいって、誰かが誰かと揉めてるのなんか見たくないし、それが多少なりとも知ってるやつならなおさらだ」

真紅「・・・・・・」

上条「もし真紅がアリスゲーム? にノリノリで他の姉妹を探してデストローイってことを平気で言うやつだったら・・・インデックスには悪いけど、真紅とは笑って話をするのが難しそうだったからな」

そう言って、ああよかった、などと呟きながらカップに手を伸ばし、冷めた紅茶を飲む上条。

その様子にはまるっきりこちらの言葉を疑う風はなく、完璧に安心を楽しんでいるように見えた。

支援

待ってました!!


真紅「・・・ねえ、当麻」

上条「ん? なんだよ」

真紅「貴方、周囲の人からお人よし、とか、にぶちん、とか、単純、とか、馬鹿、って言われること、多いと思うのだけれど・・・どう?」

上条「ぐっ! な、なんでほとんど初対面の真紅がこの上条さんの被対人評価を的確に把握しているのでしょうか・・・!」

真紅「ふふっ、それはわからないほうがおかしいのだわ」

上条「だ、だからなんでだよっ?」

真紅「それは自分で考えなさいな。もっとも、私にこの言葉を言わせている時点で望み薄だと思うのだけれど」

上条「・・・・・・」

やけっぱち気味に紅茶を飲み干す彼を見ながら、真紅も自分のカップに手を伸ばした。

口元に持ってきた紅茶はもう冷めている。だがこれは、上条が他でもない自分に入れてくれたものだ。すべて飲んでから、温かいものを所望するのが礼儀というもの。

真紅(・・・私が紅茶で妥協を許すなんて、ジュンに会う前なら考えられないことなのだわ)

くすり、と笑う真紅。

その目の前で、上条が綺麗に空いたカップを下ろした。


上条「ところで」

真紅「? なに?」

上条「真紅はなんで今頃、こっちに寄越されたんだ? やっぱりインデックスがそっち側に頼んだからか?」

真紅「え?」

上条「ん?」

お互いに、変な顔。

やや沈黙があってから、真紅が首を傾げる。

真紅「ごめんなさい当麻。私には貴方が言っている意味がよくわからないのだわ」

上条「いやいやいや、だって真紅、いきなりここに着たじゃん。昨日、つーか今朝まで、こんなでかい鞄はうちになかったし」

真紅「それはそうだけれど・・・でも、インデックスというのは何かしら? 何かの目録?」

上条「は?」

真紅「え?」

上条「ちょ、ちょーっと待ってください。この上条さん、ちょっと混乱してきましたよ」

真紅「え、ええ」

真紅(・・・なんで敬語になるのかしら)


上条「えーと、真紅さん。貴女はインデックスさんの持ち物であり、そのインデックスさんが向こう側に送ってくれ、とか言って、こっちに寄越されたんではないのでせうか?」

真紅「違うわ。私を呼んだのは当麻、貴方の方だもの」

上条「俺ぇ!?」

真紅「そう。貴方はホーリエの問いに応えたでしょう。だから私がここに来たのよ」

上条「ほーりえ?」

真紅「ええ。巻くか巻かないか。貴方がそこで巻くことを選択したから、私はここにいるのだわ」

上条「・・・・・・」

上条の脳裏に、さきほどまでの自分の行動がリピートする。

朝起きて、顔を洗って、そんなことをしていたらインデックスが「ご飯食べに行って来る!」と泊まりにいくとは思えない言葉でスフィンクスを連れて出て行って、これ幸いと家事を片付けようと布団を干そうとして―――

上条「あ」

思い出した。あのときだ。

確かに自分は、あのうさんくさい手紙に書いてあったとおり『巻きます』に丸をして紙飛行機をした記憶がある。


真紅「心当たりがあるようね」

その表情を見て取って、真紅が言う。

上条「え、じゃあ真紅さん。もしかして真紅さんは・・・インデックスさんの関係者じゃない・・・?」

真紅「それはこちらが聞きたいことなのだわ。インデックス、というのは、貴方の口ぶりから察するに人名のようだけれど・・・」

問いかけの視線を向けてくる真紅を無視して、上条は頭を抱えた。

上条(またかーっ! またこんな感じで何かに巻き込まれたのか俺っ! いやでも巻きますに○したの俺だし、紙飛行機したのも俺・・・うあああ、お、俺が原因じゃんっ!)

上条(いやまてまて早まるな上条当麻! ここはしっかりと事実関係の確認をとらねば! またいつものように怒涛の面倒ごとコースにいくのはごめんですよっ!)

真紅「当麻? 大丈夫?」

心配そうな表情の真紅。

だが上条はその声色をとりあえず置いておいて、顔をぐっ、と振り上げた。

上条「真紅、ちょっと確認したいんだけど・・・」

と、上条が口を開く。


同時。

真紅「―――っ!」

真紅がいきなり、己の背後の窓に振り返った。

上条「!?」

突然の動きに上条が言葉を飲み込んだ。

真紅「危ないっ! 下がりなさい!」

真紅がソファーを蹴って上条に跳びついた。

上条「っ!?」

反射と、そしていままで幾多の修羅場をくぐってきた上条の経験が、彼の体を突き動かす。

上条の左腕が真紅の体に回り、その身を強く抱えた。同時に足で床を蹴り、背後に跳躍。

そしてその右手―――それが異能であるならば、あらゆるものを打ち消す力を宿した右手を握りこみ、己の目の前にかざす。

上条がさきほどまで座った位置から距離にして5歩分後ろに下がった、ちょうどそのとき。


破砕音!






上条家のベランダ。そこに面した窓が外からの衝撃に一気に砕け散った。





今回の書き溜めは以上、というところです。

しかし予想通りお話が進みません。
このままこの遅い投下で、しかもここで続けてもいいのか迷っています。

また、ちょっと上条さんや真紅さんのキャラが違っているような・・・。

とりあえず、今日はここまでとさせてください。
お目汚し、失礼しました。

乙かれー


続き期待

非常に面白いな


銀様はやはり一方さんか

おやすみほ

ho

なにこれおもしろい

違和感はそれほど
前回のアリスゲームで変わったとか言ってるし脳内補完余裕

ローゼンSS最近見ないから嬉しいわ

てす

クロスSS(笑)
劣化ジョジョとローゼンのクロスオーバー
誰でも思いつきそうな作品だなwwwww

 やけにあっけからんとした部屋の片隅で、黒縁の眼鏡を掛けた少年は、だらしなくもうつ伏せになり、ただただ物思いに耽っていた。
 「真紅……」
 彼は時折そう呟くと、目から一筋の涙を流した。今、彼の頭の中を支配しているのは、自身が信じ難い事実か、空想上のたれごとか。
 真紅が死んだ。否、正確には、体を奪われた。
 少年には、この事実が嘘か誠か、判断する術はない。それは何故か? 答えは簡単である。真紅どころか、他の全ての人形、さらには人工精霊もはたと姿を消したからだ。彼にはもう、何も残されてなどいなかった。

ID違うな

 「僕の…僕の所為だ」
 少年は自分を責めた。責め続けた。あの時、彼女たちの異変に気づいていたら。あの時、助けを呼ぶ声を聞いて聞かぬふりをしなかったら。
 「うあああああああ!」
 感情が爆発し、とめどなく涙が溢れ出た。拭えど拭えど、それは一向に留まるところを知らない。やがて少年は泣き疲れると、自然と夢の中へと落ちていった。深い深い、偽りの夢の中へと。

明らかに別人だろ、書き方が違う点で

書き方が違う点だけでは別人とは言い切れないだろ
ジュンサイドになったから急に書き方を変えたのかもしれないじゃないか

 「ハッ?」
 突然、少年は机の上から顔を上げた。表面には涙や涎のあとが世界地図を象っている。
 「僕はいつの間に寝てしまったんだ……」
 そう一人ごちて、くるりと頭を反転させる。床には見慣れた鞄が一つ。果たしてそれは空っぽの箱に過ぎない事は自明であった。
 「真紅……ごめん」
 左手の薬指にかつて填められていた指輪の痕を撫でながら、ゆっくりと鞄へと近づいた。そして無駄だと分かっていながらも、蓋に手を掛けた。
 「あ……れ?」
 おかしな事だ。これは悪い夢なのかもしれない。いや、ひょっとして、やはり僕の思い違いだったのか。いずれにせよ、構わない。
 「真紅ッ!」
 少年は感極まって、思わず横たわる人形を抱きかかえた。それ程日が経っていない筈の、どこか懐かしい肌触り。間違いない、これは真紅だ。
 「真紅、真紅! ごめん、僕が……僕が悪かった!」

一行がなげぇ

 暫く感涙に耽っていた少年だったが、真紅を離してみてようやくその異変に気づく。いつもならば、鉄拳制裁が来る筈なのに、彼女は未だぐったりとしたままだ。
 真紅が、目を覚まさない。
 「そ、そうだ、ゼンマイを巻けば……」
 慌てて鞄の中をまさぐる。しかし、何処にもゼンマイなど見当たらない。
 「ゼンマイッ……どこだ、どこにあるんだよっ!」

 その時、部屋のドアがギィ、という音を立てた。ゆっくりとドアが開き、誰かが入ってくる。少年はその方へと首を回し、虚ろな目でじっと見据えた。
 「姉ちゃん……?」
 「残念だけど、君の期待に添えないかもしれないよ」
 そこにいたのは、蒼星石だった。体に不釣り合いな大きなシルクハットと、これまた大きな鋏を携えた、オッドアイの第四ドール。
 「お前っ! 動かなくなった筈じゃ……?」
 「ローゼンメイデンは、ローザミスティカが無ければただの器と化す。もしそれ自体が、たれごとだとしたら?」
 蒼星石は無表情のまま、静かに少年へと詰め寄っていく。少年は思わずたじろき、真紅を抱えたのとは逆の手で制止しようとした。
 「くっ、来るな!」

 刹那、蒼星石は歩くのを止め、左手をすっと彼の前に差し出した。
 「君の捜し物はこれかい?」
 少年は目を見開き、風の如くそれをひったくると、真紅の背中に慎重に当てがった。
 「じゃあ、僕はもう行くよ」
 蒼星石の言葉を無視して、必死な目付きで真紅の起動を待つ。
 「真紅、目を覚ましてくれ!」

>>1マダー?

おそい!

ほしゅなんだよ

・・・

 バシーン。突如、頬に走った鋭い衝撃。少年は驚いて手中の少女を見つめた。
 「全く、人間の雄は想像以上に下劣ね」
 それが、彼女の発した最初の台詞だった。少年は動じる事なく、しかしぎゅっと力強く抱き締めた。
 「真紅、よかった……よかった!」
 「ちょっと、いい加減放しなさい!」
 真紅の猛攻を物ともせず、少年は決して放そうとはしなかった。業を煮やした彼女はひとまずとある作戦に打って出た。
 「人間、残念だけれど貴方はここで死ぬわ」
 「えっ」
 隙を見せた彼の鳩尾にそこ突きを繰り出し、何とか彼の拘束から抜け出すと、数歩間の距離を取って、
 「人間、名前は?」

 一瞬、彼女から投げ掛けられた質問の意味が分からなかった。これは愚問にも程がある。一体何の冗談なのか分からぬままに、
 「さ、桜田ジュン……」と受け答えた。
 「そう。早速だけどジュン、私は貴方に選択を迫るわ。死にたいのなら、私の事は放っておく事。死にたくなければ……」
 すっ、と指をジュンの左手に突き出した。
 「その指輪に誓いなさい。この真紅のローザミスティカを護ると」

 違う。これは真紅なんかじゃない。
 そう思うと同時に、部屋の窓ガラスが心地よい音を立てて粉砕され、床にくまのブーさん人形が降り立った。
 「あっ、あいつ、僕が直した……」
 言い終わるか終わらないかの内に、ビュッと音を立てて包丁が飛んできた。それはジュンの頬を掠め、後ろの壁に垂直に突き刺さった。
 「おい、何するんだよ! 僕を覚えてないのか? お前を直してやったんだぞ!」
 ブーさんは耳を貸さず、鼻息を荒く立てながら接近してくる。
 (だめだ。このままじゃ、殺される)

党員がいないと書きやすくてたまらんね
というほしゅ

ローゼンオンリーでやられても…


室内に撒き散らされたガラスが、幸いにも上条のいる位置までは飛び散ってこなかった。

曲がりなりにも能力者を預かっている学園寮だ。何かの災害、もしくは能力の暴発で窓が割れることは想定されている。車のフロントガラスのように、多少の衝撃ではヒビが入るだけ。砕けても、ばらばらにあって周囲に飛び散らない材質のものが使われている。

しかし、その代わりというわけでもないだろうが、飛び込んできたものは、そこにいた。

黒色のドレス、黒色のヘッドドレス、黒色の靴。そしてその背に生える黒色の翼。

真紅の赤に対してなお、その身に纏った黒が映えるのは、その透き通るような見事な銀髪のせいだ。

真紅と同じような小さな体、真紅と同じような白い肌、真紅と同じような、整った顔立ちのそのモノは、真紅とはまったく違う妖艶な微笑を口元に浮かべ、真紅が先ほどまで座っていたソファーの真上に浮遊していた。


真紅「・・・水銀燈!」

上条の腕の中で、赤が小さく、しかし鋭く囁いた。

それに応ずるように、黒がその目を真紅に向ける。

「お久しぶり、真紅」

口元に浮かぶ妖しい笑みは変えないままに、艶味を帯びた声がリビングに響いた。

上条「な・・・」

上条の口からあっけにとられたような声が漏れた。

いきなりの窓の破壊。それと同時に飛び込んできた影。

問答無用で、敵である。少なくとも上条には窓ガラスを突き破って訪問してくる知り合いはいない。

約一名、ベランダにひっかかっていたという訪問者も過去にはいたが、その訪問者はいまは同居人である。

その敵と思しき相手が、真紅と見た目は親しげに挨拶を交わしている。上条が一瞬だけ戸惑うのも無理はない。



真紅「・・・やっぱり、窓というのは不便なものだわ。こうして容易に侵入を許してしまう。英国で窓税があったのも頷けるのだわ」

真紅が散らばる破片と、黒―――水銀燈とを交互に見ながら言った。言葉はおそらく、ただの軽口なのだろう。しかしその内容とは裏腹に、口調には緊張感が満ちている。

水銀燈「ずいぶんお久しぶりねぇ真紅。その男が新しい主人なのぉ? ・・・ふふ、相変わらず男が好きなのね。いやらしい」

くすくすと笑うその仕草は真紅のそれに通ずるところを持ちながら、しかし、まったく異なった破滅的な色を帯びている。

真紅「大きなお世話よ水銀燈。当麻は私のマスター。それ以上侮辱するなら、許さないわ」

ぎゅっ、と上条のシャツを、その小さな手で握る真紅。

それは不安に駆られた行動のようにも見え―――逆に、上条を少しでも守ろうとするような、そんな仕草にも見えた。


水銀燈「うふふふふ・・・怒った顔も相変わらず、不細工なのね」

真紅「・・・・・・」

真紅は挑発に乗らない。ただ沈黙を返すのみだ。

何も言わない真紅に、水銀燈は、ふん、と詰まらなさそうに鼻を鳴らす。

水銀燈「・・・つまんなぁい。あなたなら絶対に乗ってくると思ったのに」

上条「・・・おい、真紅。こいつが、お前の言った『姉妹』なのか?」

上条はわずかに腰を落とし、油断なく水銀燈と呼ばれた人形を見ながら問うた。

相手の黒い翼は羽ばたいていない。それでもなお空中に浮かんでいるのは、何かしらの能力の作用に違いない。

それに、窓ガラスは相手が入ってくる前に割れ砕けたのだ。何か飛び道具のようなものをいきなり飛ばしてくることだってあり得る。

慎重すぎて困ることはない。

魔術師との戦いで身にしみた教訓が、上条の右手を下げさせなかった。

真紅「そう。彼女の名前は水銀燈。私と同じ、薔薇乙女よ」

水銀燈「いやだわぁ真紅。自己紹介くらい、自分でさせてほしいものねぇ」

そう言って、水銀燈は真紅から上条に視線を移した。


水銀燈「はじめまして、人間。わたしの名前は水銀燈。誇り高き薔薇乙女の第1ドール」

上条「・・・・・・」

水銀燈「よろしくねぇ。そして、」

その言葉に合わせ、ぶわっ、と音をたてて、黒い翼が持ち上がる。

上条「!」

水銀燈「さようなら」

水銀燈の翼から、数条の黒い羽が飛び出した。

その鋭利な根元を前に向け、一直線に上条に向かう。

上条「うおっ!」

床を左に蹴る上条。一瞬遅れて、いままで上条の頭があった場所を羽が凪いでいく。

マスターなんだ


水銀燈「あら残念。その不細工な顔を、もっと見れるようにしてあげようと思ったのに」

羽をかわされた水銀灯が、ばさり、と再び翼を羽ばたかせた。左側に移動した上条に正対し、まだカップが載ったままのテーブルに着地する。

真紅「やめなさい水銀燈!」

水銀燈「おばかさぁん。なんでやめる必要があるのぉ?」

翼がさらに大きく羽ばたいた。

水銀燈「もうアリスゲームは始まっているのよぉ? わたしと会えばこうなることくらい、わかってたでしょう」

真紅「水銀燈!」

再びの射撃。

上条「くっ!」

対する上条は崩した体制を床に手をつくことで整えると、再び床を蹴る。

リビングからキッチンに飛び込んだ。置かれている棚に手を突き、さらに跳躍。キッチン中央付近で体制を立て直すと、右手を構えながら真紅に視線だけ向けた。


上条「真紅っ! 大丈夫か!?」

相手の放ってくる羽は、とてもじゃないが目でおえる速度じゃない。上条は反射だけで羽をよけているのである。

飛んでくるシステムはわからないが、おそらく魔術によるものだ。もしくは、能力か。いずれにしても異能には間違いない。

だが、それが異能であり、打ち消すことができると言っても、それと上条の防御行動とは繋がらない。

レールガンを上条が防御できるのは、その電気的特性ゆえに、右腕を突き出せばそこに集まるようになっているからに過ぎない。黒い羽に、そんな特性を期待するほど楽天家ではなかった。
何より、右手はひとつだけだ。同時に複数飛んでくる羽には対処できないのである。

真紅「ええ、私は」

水銀燈「人のことの心配をしている余裕があるのぉ?」

水銀燈の声が、真紅の言葉をさえぎる。

あわてて視線をあげる上条。テーブルから飛び立つように、水銀燈がこちらに文字通り『飛び掛って』きていた。

上条「!?」

上条の顔が引きつる。いつのまに取り出したのか、どこに持っていたのか、その両手には大振りの剣が握られていた。




上条「ちょっ、どこからっ!」

そんな抗議の声を無視して、一飛びで間合いを詰めてきた水銀燈の手が、剣を振り下ろした。

上条「くうおおっ!」

全身全霊で身を捻り、真上からの一撃を回避する。左肩を引き、半身になった上条。その左頬、左肩、そして抱えた真紅のドレス裾ギリギリを通って、剣先が床に傷をつけた。

回避成功。だがその代償は大きい。

元々上条に格闘経験はないのだ。けんか慣れしているせいもあって下手な格闘家よりもずっと荒事には強いが、だからと言って技術的に卓越しているわけではない。

無理な方向転換。そのせいで、上条の脚がもつれる。疲労ではない。元々、回避できるタイミンや体勢ではなかったのである。

バランスが崩れ、右手を床についた。

上条「っ!」

捻挫した手首が痛み、上条の体がこわばった。

それを見逃す水銀燈ではない。



水銀燈「うふふ」

ぞっとするような笑みを浮かべ、黒い人形が剣を構えた。バッターのように肩に担ぐ構え。位置関係は、上条から見て左斜め上。

そのまま斜めに振り下ろせば、真紅ごと彼の体は両断される。
右手は床についてしまい、すぐには振り上げられない。左手は真紅をかかえている。まさか彼女を盾にするわけにはいかない。

振り上げられた剣が下ろされれるまでの一呼吸。

上条(くそっ! なんかないのか! あれを防げるような・・・!)

上条は諦めない。視線をめぐらせ、現状を打破できるものを探す。

だがその努力をあざ笑うかのように。

水銀燈「さようならぁ」

上条の耳に、剣が振り下ろされる、ぶん、と小気味よい音が響いた。

書き溜め分終了しました。
再び書きために戻ります。

あんまり見直してないので、多少の誤字は見逃してやってくだされば助かります。

おk
できればコテつけてくれ

まずは上げてやんよ

 バッと傍らの真紅を見やる。風前と立っているその出で立ちや見た目は、どう見ても真紅。セイント何とかではない。だが……何か、何かが違う。真紅以外の、偽物だ。
 (でも、今はこいつと契約するしかないんじゃないか)
 契約をしようがしまいが、いずれにせよきっと死ぬ。ならば、まだこの先生キノコる可能性に掛けてみようと思い立った。指輪に顔を近づけ、契りを結ぶ儀式を行った次の瞬間には、部屋に赤い薔薇の花弁が舞っていた。
 「いい子ね、ジュン」

 あれからというものの、どうも不可解な点が多い。というか多すぎる。どれも附に落ちない物ばかりである。
 まず、あのブーさん人形だが、僕が修繕した形跡は一切なかった。しかし、あれは確かにあの日のブーさんと同一の筈だ。僕には分かる、直接触れて直した者だから。
 そして何より、この真紅がまるで記憶をさらわれたかのように振る舞っている点だ。
 「……ちょっと! 届かないわ、開けて頂戴」
 真紅はドアのノブに手を届かせようともがいている。真紅専用台の存在を忘れているのか。
 「しょうがないな……」
 僕は指摘するのもアホらしく、率直に彼女を抱きかかえると、ノブを回して部屋を出た。

 「狭苦しい家ね。信じられないわ。どこかで紅茶が飲みたいわ」
 ジュンの腕の中で、真紅はぺちゃくちゃと喋り続ける。まるで、あの頃と同じだな、とジュンは脳の片隅で思った。
 「あらっ、この部屋はなにかしら、ジュン」
 真紅の指した部屋は、トイレだった。まさかーーー。
 「狭いけど、落ち着いた雰囲気ね。香水も好みだわ」真紅は便座を軽く叩きながら、「ここに紅茶を持ってきて頂戴」
 果たして、ジュンの予感は的中したのである。


 「まあっ、この子が真紅ちゃんっていうの? クレバーなのねぇー」
 「気安く触らないで」
 手を出し掛けたのりに、素早く通称巻き毛ウィップを繰り出している。このそっけない態度は、まさにあの頃の真紅そのものだ。
 「でもお姉ちゃん、びっくりしちゃったわよぅ! ジュンくんの事だからてっきりダッ……」
 「死ね!」
 こんな会話したの、凄く久々な気がする。実際には一月程度しか経っていないのにも関わらずだ。
 そうか。僕は勉強や復学のことで必死になりすぎて、こんなたわいもない会話をして来なかったんだ。だから真紅は……
 「ジュン、ダッ……って何かしら」
 「さ、さあ。それより、紅茶どうぞ」
 真紅は差し出された紅茶を受け取ると、そっと口へと運んだ。
 「……美味しいわ。凄く、美味しい」
 真紅はそう言って、僕の目をじっと見据えてきた。真紅のことだ、きっと紅茶に込められた真紅への想いを感じ取ったに違いない。
 「お前の為に何回もいれてきたんだ。美味しくて当たり前だろ」
 僕は自信満々にそう言ってやった。

 「あら……貴方、変なことを言うのね。貴方からいれられた紅茶はこれが最初じゃない」
 「ああ、まあ、そんな事どうだっていいだろ。お前さえいれば、どうだって……」
 ジュンの脳裏に、あの突如訪れた悲劇が蘇った。

 「真紅ッ!」
 ジュンの呼ぶ声も虚しく、真紅は薔薇を象った罠へと飲まれていく。
 「ジュン、私の事はいいから、早く逃げなさい!」
 真紅は枯れた声で必死に訴えるが、ジュンは首を横に振って、
 「僕がお前を助ける!」
 今はもう無き指輪のはめられた左手を握りしめ、蜘蛛の糸を模した白薔薇の上を慎重に渡っていく。
 「させませんわ……」
 白い人形の手から放たれた茨がジュンの体を捕らえ、拘束されてしまった。いくらもがいてもそれは窮屈に締め付けるばかりで、解けない。もはや、真紅の救出はおろか、自分の命の存続さえも絶望的だった。
 「真紅、真紅ーーーッ!」

 僕が、もっと早く気づいていれば、こんな事にはならなかったのに。ジュンの頭の中を、後悔の二文字だけが支配していた。

 「ちょっとジュン……ジュン?」
 呼び掛けられた声でハッと我に返った。真紅がズボンの裾をぐいぐいと引っ張っている。
 「何だ、何か用か?」
 「どうしてさっきから泣いているの、ジュン?」
 ジュンはハッとして顔に手をやった。頬が濡れている。僕は知らず知らずの内に涙を流していたらしい。
 「ああ、いや、何でもない」
 「そう。ならいいけど……」真紅は踵を返そうとして、「貴方、おかしな人間ね」

なんか書き手が二人いるみたいだけど片方禁書とクロスしてるのか?

なんでこのスレタイでローゼンオンリー書いちゃってるのかが理解できない

 「えっ」
 予想外の言葉に、思わず振り返る。
 「だって貴方、まるで私に会っていたかのような言動をしたり、そうやって一人泣いていたりするじゃない」
 「だから、言っただろ。僕はネットでお前達の事を知りすぎて、現実に生活してたような幻覚を見たりするって。今泣いてたのも、お前が、お前が……」
 再び、涙腺に溢れ出てきた。なんだこの汗は。
 「おっ、お前が……僕をかばって……!」
 もう、話を続けるのは無理だった。

>>191ただの保守だから気にしなくていいよ

>>193
邪魔な保守だと思うんだがどうよ?

とりあえず読んでるやつがいるとは思えない

>>194過去スレじゃ許容されてた奴もあるけど時代の流れか

きっと新時代(笑)が到来したんだよwww

せめてスレタイに沿わせようぜ

それかスレ立ててやるとか

このスレは下手に上げないほうがいいな

保守

ほっしゅ

ほしゅ

よいしょ

落ち


剣が振り下ろされる。

もしもここで戦っているのが上条だけだったならば、ここで彼の物語は終わっていただろう。

生身で刃を受け止める術はなく、剣が魔術の産物であったとしても右手を向ける暇はないのだ。

だが。

「させない!」

袈裟懸けが上条の体に到達する、その直前。

真紅が己の体に巻きついている上条の腕を掴み、その輪から滑り落ちるように下方に体を引っこ抜いた。

ちょうど逆上がりをするような形で、真紅の両足が弧を描く。

赤みを帯びた黒い靴。その裏側が、剣を握る水銀燈の両手部分を真下から蹴り上げた。


「!?」

まったく予想していなかった方向からの一撃に、腕ごと剣が持ち上がる。

「いまよ!」

「っだあああ!」

腕にぶらさがる真紅の声に応え、上条が右手で床を強く突いた。
床を押すその反作用を利用して、一瞬で腕を持ち上げる。動きは、そのまま右ストレートに変化した。

包帯を巻かれたコブシが、掬い上げるように水銀燈の左肩に突き刺さる。

「きゃあっ!」

大きな衝撃が走り、弾き飛ばされる水銀燈。真紅に不意を突かれたところに、さらなる一撃だ。

体勢制御をすることもできず、キッチンの壁に背中から叩きつけられる。

「くっ・・・!」

壁に寄りかかるように落下しかけ―――すぐにまた浮上する。

コブシはまともに受けたが、場所が良かった。ダメージはそう多くない。

それよりも『たかが人間』に一撃を受けたことの方が、よほどに彼女の精神にダメージを与えていた。

だが、精神的な動揺はむしろ、

(まだ動けるのかこいつっ!)

上条の方が大きい。

コブシは間違いなく当たったはずだ。剣の方はわからないが、水銀燈本人は間違いなく異能に属する存在だ。
幻想殺しをまともに受ければ良くて機能停止、悪ければ崩壊するはずである。

「くそっ!」

だが現実に相手は動き、戦闘は続いている。

上条は胸中の疑問を握りつぶし、再び右手を構え―――そして、気がついた。

右手には、いまだ包帯が巻かれていることに。

幻想殺しの大前提。直接触れること。それが、この状態ではできない。

さきほど真紅の平手のときに気がついていたはずなのに、完璧に失念していた。

しかしそれは無理もない。

平手の後は、真紅の存在にまつわる話を聞き、その直後にいきなりの戦闘である。おまけに相手は飛び道具を使ってくる存在だ。
敵から一瞬たりとも目が離せず、しかも飛ばしてくる羽は幻想殺しを試す気になれないほどの早さがある。

いまの今まで、右手に気を払う余裕などなかったのだから。


「当麻!?」

追撃、もしくは逃走のチャンスにいきなり硬直した上条に、真紅が焦りをたたえた瞳を向ける。

「くっ!」

上条は左手で再度真紅を抱えながら一瞬だけ包帯に目を向け―――そのまま、水銀燈に向けて突進した。

包帯の巻き方はかなりうまくなっている。結び目を適正に引っ張れば、片手でも、あるいは口ででも外す事が可能だ。
そして相手は間違いなく自分を殺そうとした相手。話し合いもほかの手段も、通じそうにない。

(でも、だからって、殺せるかよ・・・!)

それでも上条は、幻想殺しを振るいたくなかった。

相手が人格を持つ存在であること。そして何より、腕の中の真紅が姉妹と呼んだ相手だ。

さっきは余裕がなかったこと、左手がふさがっていたこと、利き腕が右だったことで殴りつけてしまったが、気がついてしまったいま、自らの意思でそれをするのは、やはり無理だ。

そういう意味では、包帯は巻かれていたのはむしろ幸運と言える。

今から倒そうとする相手が無事なことに内心で安堵する上条。

上条は痛む手首を無視して、コブシに更なる力を込めた。

まずは相手を戦闘不能にするしかない。その上で、真紅に説得してもらう。


キッチンは狭い。上条にして一足飛びで端から端まで移動できる。

水銀燈はまだ体勢を立て直しきっていない。構えたコブシを叩き込むだけの余裕は十分にあった。

しかし。

「このっ、人間めええええ!」

ギンッ、と音が聞こえるかと思うほどの鋭い視線を向け、水銀燈が吼えた。

同時に彼女の翼が、大量の羽を放つ。

「危ない!」

「!?」

真紅の声が響くが、突進している上条に回避の方法はない。

(―――っ!)

上条の目が、今朝掃除をしようとして壁に立てかけていたテーブルを捉えた。

折りたためない脚がこちらを向いており、それは左手側、ちょうど手の届く位置で―――

「うおおっ!」

踏み出した左足。そこを軸にして、上条は背面に体を回した。

突進の勢いがそのまま、回転の速度に変わる。

大きく弧を描いた彼の右手がテーブルの脚を掌握。回転の勢いを殺さず、引っこ抜くようにして正位置に回り戻る。

「!」

水銀燈と真紅の息を呑む音が同時に上条の耳に届いた。

視界を塞いでいるのは、テーブルの天板の内側。そこからいくつも羽の先端が突き出した。

だがそこまでだ。羽は分厚い板を貫通することまではできない。

「だあああっ!」

上条は止まらない。

素早くテーブルの脚を放し、床についた右足に体重移動。身代わりに浮き上がった左足で、天板裏の中央付近を真正面に蹴りつけた。

テーブルが真横に跳ね、いまだそこにいた水銀燈に叩きつけられる。

「きゃあああっ!」

バキン、とテーブルにヒビが入る音。それを聞きながら、上条は即座に身を翻した。

己の攻撃の結果がどうなったのか確認せず、キッチンからリビング、そのまま玄関に続く廊下に跳び出していく。

「当麻!? どこにいくの!?」

「部屋の中じゃ無理だ! 広いところに出ないと・・・!」

叫びながら廊下を抜け、脱ぎっぱなしにしていた靴に足を突っ込む。

そのまま蹴りあけるようにして玄関を出た。

人の気配はない。今日は連休初日。みんな街に出て遊んでいるのだ。こんな時間でも部屋にいるのは、インドア派か、街に出て遊ぶ金のない上条くらいのものだ。

だがそれは上条にとっても都合がいい。

相手は拡散する攻撃を使う。狭い室内でかわせたのは、運が良かったからにすぎない。もっとも上条の運は幻想殺しに遮断されているので、この場合は真紅の方の運なのかもしれないが。

そしてあの攻撃に晒されて、自分以外の誰かを護る余裕はないのだ。

「・・・・・・」

腕の中の真紅は上条の言葉に否と言わない。もう倒したのではないか、とも言わない。

彼女は知っている。

自分の知る水銀燈は、あの程度でなんとかなる相手ではないということに。

そしてその予想を裏付けるように。

「許さない! 許さないわ! 人間! 真紅っ!」

開け放したドアを、怒気に満ちた声が通り抜けた。

今回は以上です。
話進まない・・・というか戦闘終わらない・・・。

また書き溜めたら投下いたします。

あと、上の方でコテをつけろ、とのことでしたが、正直このペースなので、どうしたものか、とも思っています。
うむむ・・・。

常識外に遅いな・・・
保守する身も大変だから別板でやってくれないか?

ほし

でも保守

それでも保守

ho

保守する

じょ

ほしゆ

流石にこの遅さは困るほ

一区切り付いたらパー速でやらないか

書き溜めがないうえに遅筆。なのに、なぜこのスレを建てたのですか。生き急いでいるのですか。

怒声を背中に受けながら上条は走る。目指すのは廊下先にあるエレベーターだ。

確かに外に出た。だが状況はそれほど好転したわけではない。廊下にいたんでは、部屋の中とそれほど変わ

らない。いや、遮蔽物がないだけ、室内よりもまずい可能性がある。

上条が目指すのは屋上だ。あそこなら十分に動き回れるスペースがあり、落下防止用のフェンスがある。出

入り自由で誰か来るかもしれないが、何もないコンクリート打ちっぱなしに好んで人が来ることはまずない



走る上条。10秒もあればエレベーターに到着できる。

「と、当麻。少しで、いいから、ちょっと、話を・・・」

「ごめんわりぃすまんちょっと待ってエレベーターに乗るまでは!」

揺れているせいできれぎれに真紅がなにやら言ってくるが、残念だがいまは構っていられない。

小さく「左手の指輪・・・」とか聞こえた気がしたが、左手は真紅自身を抱えている。確認するのは無理だ


そして遠く見えていたエレベーターが近づいてくる。一度中に入れば水銀燈も追ってこれまい。何らかの力

で破壊するにしても、そこは能力者用の寮。耐久性も折り紙つきだ。

『魔女狩りの王』級の攻撃力でもなければ、すぐには突破できないだろう。

「よし!」

エレベーターの前に到達する上条。背後ではまだ水銀燈は出てきていない。テーブルサンドイッチが余程に

聞いたのか、それとも、室内を探していたのか。

ともあれ、上条は殴りつけるようにして上昇ボタンを押し―――

「!?」

上条は驚愕に目を見開いた。

上条の視線の先。なんの変哲もないエレベーターのボタン。
普段であれば何も意識せずとも押しこむことのできるボタンが、まったく動かない。

それは機械的に反応しないと言うわけではない。本気に近い力で押したにも関わらず、ボタンが1ミリたり

とも押し込まれていかないのだ。

(なっ・・・! こいつはっ・・・!)

その光景に、上条は覚えがある。ちょうどいまのように、エレベーターが使えなかったときと同じ状況。


三沢塾。


「ちくしょうっ!」

バン、とボタンを本当に殴りつける上条。だが帰ってくるのは、硬い硬い感触と、捻挫に響く衝撃だけ。

「どうしたというの?」

真紅が上条の顔を見上げてくる。彼女からしてみれば、エレベーターまで来たというのにボタンに八つ当たりをしているように見えるのだ。

「結界が張られてやがる!」

「結界?」

「ああ、コインの表と裏で―――」

言葉は途中で遮られる。

ドゴッと鈍い音が背後から響き、

「しぃんくゥゥゥ・・・にんげェん・・・!」

ゆらり、と黒い影が、上条の部屋のドアから姿を現した。

「・・・おいおい、ちょっと見ないうちにずいぶん派手になってますねぇ、あの人」

振り返った上条が口元に虚勢の笑みを浮かべ、歯を噛み締める。

「水銀燈・・・!」

その腕の中で、真紅が強張った声を出した。

黒い人形は、さらにその色を増していた。

背の羽は大きく開き、その面積を3倍ほどに膨らませている。さらに周囲には、彼女を護るように、無数の羽が散らばり、渦を巻いていた。

少し離れてみれば、黒い渦巻きのようにも見えただろう。

だが何より真紅の危機感を煽ったのは、

(人工精霊!)

水銀燈の目の前に浮いている紫色の光球の存在。

あれを出してきたということは、もはや水銀燈に遊ぶつもりがないと言うことだ。


「当麻、もう時間がないわ」

「ああ、わかってますよ真紅さん。あんな熱い目で見られたら、もうかなりテッペン入ってんだろうなぁ、ってことぐらいは」

軽口をたたく上条だが、内心はそんな余裕はまったくなかった。

状況は最悪だ。遮蔽物のない直線廊下の、完全な端。さらにやっかいなことに、コインの結界によって脱出口はなくなっている。

目の前には大層ご立腹な様子のクールビューティー。しかも、下手をすれば水銀燈とは別に魔術師だか錬金術師だかがいる。

仮に水銀燈がこの結界の主だとしても、核そのものが近くにあるとは限らない。水銀燈自身が核だったとしても、上条には彼女を破壊することはできないのだ。

だが真紅の言葉は、上条の軽口に応えるものではなかった。

「そうじゃないの。お願い、聞いてちょうだい」

「真紅?」

穏やかだが切迫した口調に、上条はつい、水銀燈から視線を外して真紅を見た。

真紅は上条をじっと見上げたあと、代わりとでも言うように、水銀燈に視線を移す。そのまま、続けた。

しえん


「水銀燈は本気よ。さっきまでは私が契約してなかったことと貴方がただの人間だったから、油断もあったようだけれど・・・もう完全に力を振るうつもりでいるわ」

「・・・・・・」

さっきまでのは本気じゃなかったのか、と上条は口元をさらに引きつらせた。

「このままじゃ私も、貴方も助からない。だから当麻。もしも貴方が自分と私を護りたいと思うのなら」

すっ、と真紅は、自分を抱える上条の左手に、小さな手を這わせた。

「えっ、なんだこれ」

上条は状況も忘れて、自分の指を見た。左手薬指に嵌っている、小さな指輪。

もちろん上条にこんなものをつける趣味はない。趣味はないどころか、買うようなお金もない。その上、こんな位置に指輪をつけるような相手もいないのだ。

つけた覚えのない指輪。それが、自分の指に嵌っている。

「誓いなさい。薔薇の指輪と、貴方の誇りにかけて。私のローザミスティカと、私の意志と、私自身を護ると」

「誓い?」

まるで場にそぐわない、厳粛な言葉が上条の耳に届く。

だが真紅は上条の疑問に近い声に応えず、

「そうすれば私は私の意思と誇りを持って、貴方を護るわ」

と、告げた。

すみません、上条&真紅を書いているものです。
基本的に筆が遅いことや表現が回りくどいこともあって、進行速度はこれ以上あがりそうもありません。

保守していただける方々の負担もありますし、板そのものの迷惑にもなりかねませんので、正直継続を迷っ

ています。
すべて書いてから投下すればよかったのですが・・・当初は落とすのに任せて無くなってしまえば仕方ないかな

、くらいで、しかもスレッドを見てから思いつきで書き始めたためにこのようなことになってしまいました。
申し訳ありません。

個人的にはスピードは遅くとも書いていきたい気持ちもあるのですが、どのようにするかは状況しだいかと

思っています。
この板は私物でもなく、そもそも私が立てたものでもないので。

案としては

・このまま落ちるのに任せてさらば。

・パー速行きでちょこっとずつ投下。

・くじけずここで

くらいかと思います。

ちょっとだけ様子を見て、もっとも多い意見の案でいこうと思います。
イライラとさせて申し訳ありませんでした。

案4:落として書き溜めて完結させてから改めて立てる

パー速でやるのが一番だと思うが

>>238
あんたが立てたスレじゃないんだから好きなようにすればいいお

でも完結だけはしてくれ

くじけずここで

パー速で終わらせる覚悟があるのならばそれがいいと思う
パー速は失踪する人が多いからな

くじけずここで

くじけずここで

くじけずここで

ズコーのAA

くじけずここで

作者がここでやるのはかまわないけど
ここでやってほしいっていうなら
保守するやつもちゃんと昼間やってくれよ

パー速行くと見るのめんどい

というか量産禁書目録のスレ落ちた?完結した?

>>250
量産型禁書スレは落ちた

>>251
そうなのか……ありがとう

くじけずここで

くじけずここで

挫けずにやればいい

たまーに見に来て保守します

がんばってここで書いてくれ

くじけずここで

落ち込むのはそこまでだ

現行

五和「しばらく泊まりこみで護衛します」上条「えっ?」
五和「しばらく泊まりこみで護衛します」上条「えっ?」 - SSまとめ速報
(http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1263173784/)
佐天「無能力者…?」」
佐天「無能力者…?」」 - SSまとめ速報
(http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1263183831/)
佐天「無能力者…?」」
佐天「なんならわたしのパンツ見るぅ?」  上条「うん」 - SSまとめ速報
(http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1263121241/)
最愛「だ、ダメです浜面・・・・・・ん・・・浜面ぁ・・・」
最愛「だ、ダメです浜面・・・・・・ん・・・浜面ぁ・・・」 - SSまとめ速報
(http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1262790222/)
サーシャ「第一の解答ですが、私は既に上条当麻と付き合っています」

クロス

湯川「御坂美琴…君は実に面白い」
上条「まきますか?まきませんか?」
上条「まきますか?まきませんか?」 - SSまとめ速報
(http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1263058951/)
リュウ「この学園都市にはオレより強い奴はいるだろうか……」
唯「暇人殺し・・?」上条「イマジンだよ!イマジン!」

佐天「無能力者…?」」
の2つ目が
佐天「なんならわたしのパンツ見るぅ?」
ですよね

>>260
おおミスッてた各自で補完しといてくれ…
全部のスレで同じの貼ってるとか…orz

あげ

保守

「あはははははっ!」

「!」

真紅の言葉に上条が何か反応するその前に、廊下に大きく哄笑が響いた。

視線を転じれば、大きく広がった翼をはためかせ、水銀燈が空中をすべるようにしてこっちに向かってきている。

彼女の手の中の剣は魔術の作用か、彼女の怒りに反応したのかさらに一回り大きくなっており、周囲に滞空していた羽は、残らずこちらに先端を向けていた。

さらに彼女の目の前に浮かぶ光球が見るからに強力な光を纏ってそれに続く。

「やべえっ!」

上条が真紅を抱く腕に力を込めた。

どこに逃げる?

完全に直線コース。こっちは廊下の端。背後のエレベーターは開かない。剣と羽すべてを幻想殺しで受けるのは不可能。

飛び降りることはできない。真横にある別室のドアもドアノブに触れることすらできない。

この場所で回避しきれるほど弱い相手じゃない。光球の正体がわからない。

どうする?

どうする!?

どうするっ!?

クジケナーイ


「当麻、どうするの?」

「―――」

真紅に目を転じる上条。

見上げてくる彼女の瞳は、真摯で、まっすぐなものだ。

「貴方が私の言葉を信じてくれるのなら、この指輪に口付けなさい。それが誓い。私と貴方を結ぶ、糸となるわ」

「・・・・・・」

言葉と、視線。それを受けた上条の頬が、場違いに緩んだ。

(やっぱりお前、インデックスの持ち物なんじゃねえ?)

そう言いたくなるほど、真紅の瞳は白い少女のそれと通ずるものがある。

あの、全幅の信頼を寄せてくる、瞳に。

「・・・・・・」

上条は真紅から目を逸らし、水銀燈に向き直った。

黒衣の人形はあと数呼吸で上条にその剣を振り下ろせる位置に到達するだろう。
彼女の周囲を渦巻く羽は、すぐにでも射出されそうな気配がある。

だがそれでもなお、上条の動きは緩やかだった。


「・・・・・・」

真紅は何も言わない。ただ、上条は自分の腕を掴む彼女の力が強くなったのを感じる。

「いいぜ、真紅」

上条の左手から力が抜ける。下げられた彼の腕から解放され、真紅がひらりと廊下に飛び降りた。

その代わりに上条は、左手を己が口元に近づけた。

「この誓いが、お前とお前の意志を護ることになるってんなら」

視線の先では、水銀燈が剣を真上に掲げている。あれで斬りかかると同時に、羽を打ち出すつもりなのかもしれない。光球で、何かの攻撃をするつもりなのかもしれない。

前に出ても、後ろに飛んでも羽。横には逃げられない。その場にいれば剣の餌食。目に見えるそれらをなんとかしたとしても光球の攻撃はいまだ何かわからない。

詰みだ。

そしてついに、水銀灯がその剣の間合いに上条と真紅を捉えた。

「死になさぁい!」

腕が振り下ろされ、羽が弾かれたように上条と真紅に向かった。

だがそれが上条を割り、真紅を蜂の巣にするほんの数瞬の間に、上条の唇が指輪に触れた。

「俺が、その礎になってやる!」


変化は一瞬で、効果は絶大だった。

「うわっ!?」

足元にいる真紅。彼女の体が、口付けと同時に眩い赤光を放ったのだ。

そのあまりの光量に、上条は思わず顔を腕で隠してしまう。

それは愚か極まりない行為。ただでさえ敵が正面にいる状態で、さらに必殺の攻撃が今まさに彼らに降りかかろうとしているのだ。

少しでも目を見開いて、防御に努めなければならない。

だが上条の心には、なぜか不安も焦りも存在しなかった。それどころかその赤い光は安心感すら与えてくれる。

「・・・ありがとう当麻。私を信じてくれて」

光の中、真紅の声が上条の耳に響く。


薄く目を開ければ、いつの間に前に出たのか、自分を護るように両手を拡げて立つ真紅の背が見えた。

真紅の体から溢れる光は、バリヤーよろしく彼女を中心に球形に展開している。その直径は廊下を天井まで覆う、大きなものだ。

殺到していた黒羽は、どういう理論なのか赤い光が展開している領域に侵入したところで推進力を失い、それだけではなくボロボロと崩れ落ちていっている。

剣は光の珠に阻まれて、まったく動いていない。紫の光球が赤い光を嫌うように、水銀燈の影に隠れた。

「真紅、あなた・・・!」

光の向こう側。剣を打ち下ろした姿勢で空に浮かぶ水銀燈が、驚きと憎しみのこもった表情を浮かべた。

「・・・水銀燈」

真紅が右手を水銀燈にかざす。

「っ!」

水銀燈は剣を引き、それを盾にするように顔の前に構えた。一瞬遅れて飛来した何かが、ギンッ、と音を立てて剣に弾かれていく。

「くっ」

歯を噛み締め、距離をとる水銀燈。

対する真紅はゆっくりと両手を下ろした。その腕が角度を失うに従って、彼女の体から放たれていた光が収まっていく。

だがそれは消えていっているのではない。外に出すのではなく、内に、内に。

光が集まってその光量を増すように、真紅から感じられる力はむしろ上がっていっている。

「真紅、大丈夫なのか?」

上条には何がなんだかわからない。変わったこと言えばただひとつ、左手の指輪が一回り大きくなったという、それだけだ。

「ふふっ、心配性なのね、当麻」

真紅が首を少しだけ巡らせ、視線を向ける。さきほどまでとまったく同じ、平静な横顔。

しかし上条にはなぜか、真紅がどこか喜んでいるようにも見えた。

「安心しなさい。大丈夫だから」

それだけ言って、真紅は目を正面―――水銀燈の方に戻した。

「ふ、ん・・・間一髪、契約したってわけねぇ」

目を細める水銀燈。その表情を彩っていた怒りが消えていく。

契約者を得た真紅は、感情に任せて相手ができる存在ではない。

だらり、と剣を下げた水銀燈。

相対する赤は、そんな黒に静かな瞳を向けた。

支援

中途半端な位置ですが、書けたところまで投下しました。今夜はここまでです。

続きについては見る限り、くじけずここで 、の意見が多いようなので、罪悪感にかられながらもここで書いていこうと思います。

ただ保守については、もう気が向いたらでお願いします。
連休の終了にともない、書くスピードも落ちると思いますし。

板の流れで落ちてしまったら、そのときはそのときで、完結させてから新たにたてるなり、パー速にいくなりいたします。

混乱を招くような文言を残したこと、謝罪いたします。

では。

支援してやんよ

パー速でやると保守する必要がない分、活気がなくなって書き手の意欲が削がれるんだよ。
あとは保守してもらっているっていうある種のギブアンドテイクみたいな面もVIPにはあるから
見る側も頑張るし書き手も頑張る。バランスがいいんだよ。

見てて気持ちよくないからあまりそう卑屈になるもんじゃない
あと板をどうするかというのはオーディエンスにまかせるより自分でスパッと決めた方が荒れないと思うよ
このままVIPでやるのがいいって人とパー速行った方がありがたいって人と両方いるわけでふたつ両立させるのは不可能なんだからもういっそ>>1が都合いいほうにきめちゃった方が遺恨がなくていい

ho

早いけどほ

ずっと包帯巻いてないと指輪やら本体やらあぼーんしそうだなww

そこはかみやん。不幸中の幸いがずっと続くんだろう・・・・

ばかめ

めんとしゅ

保守

これまで書いていたのは>>1ではなかったのですね。
早とちりして書き手をそしってしまいました。すみませんでした。

保守保守

保温

美琴の出番マダー?

落ちたかと

興味部会

規制解除記念

がんばってくだひゃい

緒とさせん

hoshu


「水銀燈。貴女はまだ、アリスゲームを続けるつもりなの?」

右手を下ろし、真紅は水銀燈に問うた。

「・・・貴女、ながく眠りすぎて頭のネジでも錆びたんじゃない? アリスになってお父様に会う。それ以外に何の目的があるって言うのぉ?」

応える声は冷たい声。
何を当たり前のことを。そう言っているように、水銀燈は口の端に嘲笑を浮かべる。

「そうじゃないわ」

真紅は首を横に振り、

「アリスになる。それについては何も言うつもりはない。だけど、姉妹で争うことをやめるつもりはないのか、と聞いているの」

キタワア

「・・・・・・」

「水銀燈?」

「・・・真紅、貴女正気ぃ? お父様のお言葉に背いて、それで本当にお父様が喜んでくださると思ってるわけぇ?」

「背くわけじゃないわ。私はアリスを目指す。ただ、アリスゲームに依らない方法で、というだけよ」

「・・・あっきれたぁ。お父様に疑問を持つなんて」

「そうじゃないわ、私は」

「黙りなさいっ」

それまでの、嘲りの響きはあっても穏やかだった水銀燈の声が一転、厳しい怒りを帯びたものに変わった。

「・・・・・・」

叩きつけるような言葉と視線に沈黙する真紅。

水銀燈は続ける。

「お父様を愚弄するなんて・・・真紅、貴女には薔薇乙女の資格なんかない。いいえ、貴女が薔薇乙女であることそれ自体が、お父様に恥をかかせているのよ」

「・・・・・・」

「決めたわ真紅。貴女は手足をもいで殺してあげる。顔をぐしゃぐしゃに潰して首を落としてあげる。貴女のローザミスティカは、かみ砕いてから飲み下してあげる」

「・・・・・・」

「どんなに泣き叫んでも手を緩めたりしないわ。貴女をがらくたにしてアリスになり、お父様には貴女という失敗作を忘れるよう、お願いすることにするわ」

「そう・・・なら、仕方ないわね」

「だったらなぁに? どうするっていうのぉ?」

「こうするのよ。・・・ホーリエ!」

真紅の声が無人の廊下を叩き、一拍の間を置いて上条の部屋の中から、バン!と音が響いた。

「!」

真紅の背後にいた上条が驚いた様子で自分の部屋に目を向ける。

開け放たれた玄関。ドアを撃ち抜こうかと言う勢いで、赤色の光球が飛び出した。

水銀燈を避けるように大きく楕円の軌道を描き、下げた真紅の左腕に、寄り添うように纏わり付いた。

それは大きさ、光量ともに、水銀燈の背後に浮くモノと比肩する。

何のために呼び出したのか、そんなことは考えるまでもない。

「真紅」

呼び掛けたのは上条。

「お前、戦うつもりなのか?」

姉妹同士で殺しあわない。彼女は確かに、そう言ったはず。

だが真紅は振り返らない。

「当麻。貴方もわかっているのでしょう? 話し合いだけですべてを解決するのは無理だということくらい」

「それは、」

事実だ。

いままで上条自身、何かを護るために多くの者にそのコブシを振るい、様々なモノを破壊してきている。

誰かを護るために戦ったという言葉は、裏を返せば護るために誰かを傷つけたということなのだから。

「・・・・・・」

上条は口をつぐむしかない。

「当麻」

真紅は肩越しに振り向き、上条に向けていた微笑んだ。まるで信じてほしい、とでも言うように。

「・・・・・・」

そうだ。

リビングで聞いた言葉と、ここで投げ掛けられた言葉。

上条はそのどちらも信じたから、指輪の誓いを結んだのだ。

ならば自分がいま出来ることは、たったひとつしかない。

軽く頷き、右手を握る上条。

そのコブシからは、包帯はとられなかった。

お猿さんしっし


「・・・人工精霊を出されたら面倒ね」

対する水銀燈は、上条と真紅の様子に顔をしかめながら、右掌を上に向ける。

「おいで、メイメイ」

それに応じたメイメイが、ふわりとその掌の上に移動する。

続いて水銀燈の右手の剣が、先端からひび割れ―――羽毛に変わって砕け始めた。ハラハラと落ちるその羽毛を、大きく羽ばたいた翼の風が吹き飛ばす。

舞い上がり、意思持つように真紅と上条に群がりかけたその羽毛は、しかしホーリエが音なく放った光の矢に射抜かれて、一瞬で燃え尽きた。

その間に、水銀燈は距離にして大人数歩く分、距離をとっている。


「逃げるつもり?」と、真紅。

どこか挑発的にも聞こえるその声に、

「そうよぉ?」

水銀燈はニヤリと笑みを浮かべた。

「いまの貴女を相手にするには、ちょっと手駒が足りないわ。そっちの人間に邪魔されても不愉快だし・・・今日はここまでにしておいてあげる」

再び翼をはためかせ、ふわり、と浮き上がる水銀燈。

「じゃあねぇ、真紅。次に会ったときはジャンクにしてあげるわ。人間も、あのテーブルの借りは必ず返すから楽しみにしていなさい」

「・・・待てよ」

だが黒衣の人形が飛び去ろうとするその直前に、それをとめる声があった。

真紅ではない。その背後に立つ、上条だ。

「・・・・・・」

水銀燈の動きがピタリと止まり、視界の端で真紅が見上げてくるのが見える。

それに構わず、上条は続けた。

彼には聞くべきことがあるのだ。

「この結界は誰の仕業だ?」

ダン、とエレベーターのボタンを叩く。コブシに押しつぶされたボタン。それでもやはり、微動だにしないボタン。

「結界? 何の話ぃ?」

「と、とぼけるなよ! お前か、お前でなけりゃ仲間の魔術師がいるはずだろ!」

「・・・ねぇ真紅。この男、何を言っているの? 結界? 魔術師? ふふっ、おかしいんじゃないのぉ貴方」

上条の言葉を鼻で笑いとばしてから、水銀燈は真紅を見た。

「真紅、狂った貴女にぴったりの契約者だと思うわ。あはははは、とんだ人間を選んだものねぇ」

視線には嘲りの色。

「でもそうねぇ、人間、貴方が可哀相だから一応教えてあげるわぁ」

その色のままの声で、水銀燈は上条に目を向けた。

「わたしには仲間なんかいないわよぉ。わたし、おばかさんも足手まといも大嫌いだからぁ」

そしてそれ以上話をするつもりはないと言うように、翼を羽ばたかせ、身を翻す。

「くそっ、待ちやがれ!」

上条は手摺りに駆け寄って手を伸ばすが、届くわけがない。離れていく背中を見送るだけだ。

黒い背中は瞬く間に小さくなり、すぐに視界から消えた。

「・・・行ったようね」

真紅が軽く息を吐き、体から力を抜いた。感じていた水銀燈の気配が消えたのだ。
どこか手近なところからNのフィールドに入ったのだろう。


「・・・・・・」

「・・・当麻?」

何も言わない上条を見上げる真紅。

だが上条は応えない。視線さえ向けず、水銀燈が飛び去った方向を凝視している。

もう、水銀燈の翼は見えない。戻ってくる気配もない。

戦いは終わっている。

しかし上条は、左手を手摺りに叩きつけた。

「っ」

返ってくる感触がいつもよりもずっと硬い、つまりいまでも結界が機能していることを確認してから、真紅に目を向ける。

さるよけ


「真紅、教えてくれ。お前やお前の姉妹に、魔術を使えるやつはいないのか?」

「・・・当麻の言っている魔術がどういうものなのかは、私にはわからない。だけどもし、この廊下にその『魔術』がかかっていて、それが人の出入りを限定するような種類なのだとしたら・・・」

真紅は一度言葉を切り、

「私たちには、そんな力はないのだわ」

「・・・・・・」

(力が、ない)

どういうことだ?

水銀燈が自分たちを逃がさないために結界を張ったわけではないのか?

いやそもそも・・・彼女はこの結界の存在を知らないのか?

しえん

もちろん水銀燈が嘘をついていない保証はない。

水銀燈自身が魔術を行使できないのなら、別の第三者が介入する以外にないではないか。

単に仲間というカテゴリーに属さないだけで、利害が一致する『敵ではない』相手がいる可能性も十分にある。

だが、上条の目に映った水銀燈という存在は、そういったくだらない言葉遊びをするタイプではないように思えた。

仮に協力者がいるとしても、おそらく今回の戦いに参加させただろう。

「だったら、」

魔術師は、水銀燈と繋がりがない?

いやそもそも、この戦いと『結界が張られていること』自体に関係がなかったとしたら・・・

「!」

上条は目を見開いた。

インデックス。

朝から出掛け、上条の傍にいない少女。

禁書目録と呼ばれ、全世界の魔術師が恐れ、欲している存在。

出掛けた先は、比較的訪れる頻度が高い場所だ。

上条がいないため、待ち伏せの魔術を仕掛けることが容易な場所だ。

その先にいるのは魔術師でも能力者でもない一般人と、特定種族以外には一切効果を発揮しない能力者だけだ。

「そっちかよっ!」

上条が奥歯を噛み締め、再び手摺りを殴り付けた。

ガンッと音が響く。

結界の中。

返ってくる感触は、いつもよりずっと、硬い。

本日はここまでとなります。
次の投下は、明日の昼以降になると思います。
それまで残っていればですが。

読んでくださった方、ありがとうございました。

では。

おもしろい、期待してる

保守ついでに質問
この話で禁書ネタバレするのはアニメ板(原作6巻)まで?
それ以降のネタバレ含む予定なら直ちに去ります

おつかれ

原作準拠でいいんじゃん?
ってゆーか書きたいように書けないと楽しくないじゃん?

ほおお

ちょっと原作買ってくる


     ___    お前みたいなゴミが翠星石の姉のはずないですぅ!
   く/',二二ヽ> 翠星石の姉は水銀燈一人だけですぅ!!
   |l |ノノイハ)) 
   |l |リ゚∀゚ノl|     バリバリバリバリバリ                   ,∵;,'゚; ̄`ヽ
   ノl/l_介」 Lr○ュ"_ l_ ___,.,;:''''""`'';;;...,,            - ̄‐― _,';;ノ '\@
 ト--l∪r=tl[((三三((三((=(;;'',       '',.:;,,,. '" .,.  .,,..; "'`,.,,  ‐―  ,';;,,';.゚'Д゚ノ かしらー!
 ヒ[冊冊冊ツヽ ̄ ̄!! ̄; ̄ll ̄||'':;:,..  ,...;:''"           - ̄‐―   ;;';kOi∞iミつ
   ミく二二二〉ミ                                       (,,( ),,)
                                                 じ'ノ'



         ___ #ミ   まだ生きてるですか?
       く/',二二ヽ>#  さっさと息の根を止めやがれですぅ!

       |l |ノノイハ))  ミ
       |l |リ ゚ヮ゚ノl|   ヾ ヽ ∵:  ガスッ
       ノl_||  ]]つつ++#####.゚;・.,'`ヽ:, ゴスッ
       ≦ノ`ヽノヘ≧    _';;;∵\@v                       (,,( ),,)
       ミく二二二〉ミ   'ヾ(i.゚'Д;;。;∵ か…し…   ,;;∵;;,i∞iミつ   じ'ノ'



         ___    トドメですぅ!!!
       く/',二二ヽ>
       |l |ノノイハ))ミ      ,,-----、 グチャッ!!
       |l |リ ゚ヮ゚ノl| ヾ. ヽ. |;::::  ::::|

       ノl_||  ]]つつ二二二|;::::  ::::|⊃', ',・.,'`
        ≦ノ`ヽノヘ≧ ヽ.∴;;..|;::::  ::::|;* @';;;∵                (,,( ),,)
      .ミく二二二〉ミ `.:,゙;~ヽ.''-----'';。,・';;;         ,;;∵;;,i∞iミつ   じ'ノ

え?

>>346
ネタバレ注意

>>348
マジで?

あぶね

>>343
いや好きに書いてもらって良いんだよ
ただ禁書はアニメと原作の巻数かけ離れてるからSS読む時注意が必要過ぎる


ho

なんかずいぶん長い事続いてるような気がしてるけど実は3日しか経ってないんだな

ほっ

おもしれーな

保守
ってなんかの略だっけ?

ho

保守は保守だろ?

保守

ho


上条は街を走っていた。

学園都市の道路。学生の利便性第一に創られたこの街は、歩道が広く設定されている。

だがそうは言っても今日は連休初日だ。道行く人の数は多く、その方向も点でばらばらである。こんな中を全力疾走すれば、50メートルも進まないうちに誰かに衝突してしまう。

そのため、いま上条が駆けているのは、表通りから一本裏手に入ったいわゆる裏路地だ。

登校時には各地区に点在している学園に向かうため、ある意味にぎわうこの小さな路地も、いまは上条以外に走るものはいない。

表通りから微かに届く有線と宣伝の音。いつもの日常が続くその僅か隣の道で、上条の非日常は刻まれていく。

(くそ! 間に合えよこんちくしょう!)

整っているとは言いがたい彼の顔に浮かんでいるのは、紛れもない焦りだ。

学生寮からの脱出に予想以上の時間をとられた。

彼の脳裏に、この夏に出会った錬金術師との戦いが思い起こされる。

いまはもう記憶を失い、顔も名も変わっているだろうその男は、十分に準備された結界の中であれば文字通り何でもできる男だった。

あのときと同じ術を―――少なくとも上条には同じにしか思えない―――使うものが、この都市の中にいる。

それだけでも焦燥感が募るというのに、今回はさらにやっかいだ。上条の足止めという先手を打たれている。

こちらから乗り込み、向こうが受ける側だったときと、明らかに状況が違う。

捕獲用の魔術でも仕掛けられていたら、朝、インデックスがエレベーターに乗った時点で、勝負がついている可能性だってあるのだ。


悪いことは重なる。

結界が張られたのはおそらく、上条が水銀燈と戦い、廊下に出たその直後。それまでは室内のものに普通に触れている。テーブルサンドイッチが、何よりあの段階では結界は張られていなかった証明である。

あの後、上条は部屋の中の物に何も触れることができなかった。ドア自体は開放状態だったので問題なかったが、中にある荷物はすべて『コインの表』だ。

(せめて携帯があれば、電話もできるっていうのによ!)

歯噛みする上条。

床に落ちた家具の破片すら拾えない上条。発見した携帯電話は幸いにも何かの下ではなく、床に落ちていたのだが、その端末には黒い羽がしっかりと突き立っていたのである。

携帯電話は壊れ、財布は残骸に埋もれて見つからなかった。小萌の家に電話して安否を確かめることもできないのだ。

すぐに駆けつけようとした上条であったが、それも叶わなかった。

エレベーターが使えないのは証明済み。その上、非常階段に通じる扉が、閉じられていたのである。

避難通路になるその階段の扉は通常閉じたりしない。設置義務でもあるのかいたずら防止のためなのか、一応設けられているその扉は少なくとも上条が入寮して―――いや『いまの上条』になってからこっち、閉じられているのを見たことがない。

誰かが閉めたのかはわからない。魔術師かもしれないし、寮生のだれかが異様な片付け魔で閉じていないのがいやだったのかもしれない。どちらにしても、その段階で上条は脱出の手段を奪われてしまっていた。

そんな八方塞の彼を助けたのは、

「当麻、少し落ち着くのだわ」

上条の耳に、静かな声が響く。

真紅だ。

魔術師が水銀燈と関係がない―――つまり、真紅も結界適用範囲外であることを指摘したのは、結界がどういうものなのかを把握していない真紅の方だったのだ。

エレベーターが危険なのは三沢塾で知っていたので、彼女の手で非常階段の扉ドアノブを開けてもらったのである。

人の多さに危険を感じたことと、左腕に座る真紅の存在が異様に目立つこともあって、裏路地に入ったのは正解だった。学生寮からの全力疾走は止まることなく続いていた。

上条の左腕に腰掛けて首に手を回した姿勢の彼女が、彼の顔をじっと見ている。

「落ち着いてなんかいられるか! こうしてる間にも、あいつらがやべぇかもしれねーんだ!」

全力疾走で荒れた息そのままで言い返す上条。

インデックス、小萌、姫神。

自分が大事だと思う人が危険に晒されているかもしれない。そう思うと―――八つ当たりだとはわかっているが―――冷静そのものの真紅の声が苛立ちを生んでしまう。

だが怒鳴り返された真紅は、

「落ち着きなさい、と言っているの」

「っ!?」

同じ言葉を繰り返し、上条の耳を右手で引っ張った。

支援
しえん

「いてえっ!? 真紅何してっ、いててていってえ千切れる千切れる!」

くい、という可愛らしいレベルではない。耳たぶを引っこ抜こうかというほどの力で引っ張られて、上条は痛みに脚を止めた。

反射的に右手を真紅に伸ばそうとして―――あわててその手を止める。包帯で巻いていても、もし緩んでいて素肌が真紅に触れれば彼女を殺してしまう。

さきほど脱出の際に上条の『幻想殺し』について説明を受けた真紅だ。理解力と応用力はインデックス以上に思える彼女は、左手のふさがった彼は自分に抵抗できないことを承知でしているのだ。

「いいこと、当麻」

ぱっ、と耳たぶを放し、真紅が上条の顔を覗き込む。

「貴方が焦ることで走る速さがあがるのなら、私は止めない。でも、そうではないのでしょう?」

「そ、そりゃそうだけどだからって落ち着いてなんか・・・」と、上条。

だが真紅は、いいえ、と首を振った。

「自分では気がついていないでしょうけれど、いまの貴方は倒れる寸前よ。生身で水銀燈と戦い、契約した私が力を振るった。その上で、今までずっと走ってきている。このままじゃ先に貴方が倒れてしまうのだわ」

「・・・・・・」

上条は荒く息を吐きながらも沈黙を返した。

そんなことはない。

彼はそう思う。もっともっと体力を失った状況で戦ったこともある。

だが真紅の瞳に浮かぶ光が、その反論を喉元で押しとめていた。自分を真摯に心配してくれる相手の言葉を、大きなお世話だ、と切り捨てられるような人間ではないのだ。

真紅は言葉を続ける。

「お願い当麻。無理を言っているのはわかる。だけど、少しでいいから冷静になってちょうだい。貴方がここで気を失っても、私にはどうすることもできない。私には行き先がわからないし、迂闊に人前に出ればそれどころじゃなくなってしまうのだわ」

ここは学園都市だ。精巧な人形も自立駆動する機械も珍しくない。それでも真紅はそれとは別格だ。彼女が他の誰かに見つかれば、騒ぎにならないわけがなかった。

魔術を理解しないこの都市において、彼女は研究材料として格好の的になるだろう。

「・・・・・・」

上条は真紅から目を逸らし、大きく息を吸った。腹に息を呑み、ゆっくりと吐き出す。それを数回繰り返した。

いままで魔術師や能力者との戦いで、いつの間にか身についた腹式呼吸だ。バクバクと動く心臓が着実に酸素を全身にめぐらせ、代わりに本当に不要な分の二酸化炭素を排出していった。

荒い呼吸は容易に過呼吸を引き起こす。息が切れるような状況ほど、的確な呼吸が大切なのである。

そうしてわかるのが、予想以上の自分の疲労だった。上条は体力と打たれづよさ、回復力には自信がある。

その彼にして、体の芯にねばりつくような疲労を明確に感じた。

「ごめんなさい当麻」と、その表情を見て取った真紅が言った。「・・・契約は私の力を引き出すために必要な手続きに過ぎないのだわ。私が力を振るうには、どうしても、貴方の体力を奪ってしまう」

「そうなのか?」

「ええ」

平静だがどこか申し訳なさそうな響きを持つ声の真紅。

だが上条は、そんな彼女にちらり、と笑みを浮かべてみせた。

「んなもん、気にするこたぁないさ。必要ならどんどん使ってくれりゃいい」

彼の口調は先ほどよりもずっと落ち着いている。呼吸はまだ乱れているが、荒いわけではない。

「でも・・・」

「それにさっき、真紅は俺を助けてくれただろ? この程度で文句言ってたら、バチが当たっちまうよ」

ぐっ、と右手を握る上条。先ほどよりも力が入る。重かった脚も、幾分軽くなったようだ。

「・・・よし」

それを確認し、上条は前を見る。

路地の隙間から見える表通りの風景で、現在位置を確認。改めて小萌の家まで距離とルートを再検索した。

やや遠い。だが回復したいまの体力なら、途中数回の呼吸調整でたどり着けない距離ではなかった。逆に言えば、さっきまでの体調では途中で動けなくなっていた可能性のある距離だ。

「真紅、しっかり掴まってくれ。ここからなら一気にいけると思う」

「わかったのだわ」

真紅がうなずき、上条の首に手を回した。

「・・・真紅」

「?」

駆け出すと思ったところで名前を呼ばれて、真紅は上条の方に目を向けた。

彼は横目で彼女を見ながら、

「さんきゅ、助かった」

「え・・・」

それだけ言って、上条は地面を蹴った。

もう彼は真紅を見ない。前だけを見て、路地を疾走する。

「・・・・・・」

再びゆれ始めた視界。

真紅は振り落とされないよう、両手に力を込めながら、

「まったく、世話のやけるマスターを持つと苦労するのだわ・・・」

と、言った。

投下終了しました。
昼過ぎといいながら夜になってしまいました。すみません。

キーボードの進み具合にもよりますが、次はまた明日になるかと思います。

あと341さんが言っているネタバレについてですが、原作6巻までということでしたらネタバレも出てくることを付け加えておきます。
なるべくそういうのは避けるつもりですが、閲覧の際は考慮にいれておいてください。二次創作でネタバレなしはきつすぎるので。
では。

おつ。丁寧に書いてるのが好感持てる

おもしれーな
ローゼンクロスではGガン以来の衝撃

ローゼンのクロスはルパンとかハルヒとかなかなか良作が多い。

しえん

いい保守をするなこのスレは

上条さんと真紅がこんなに合うコンビだとは思わなかった

上条さんと組んで合わないドールってどいつだろ

実体の無い子は消されちゃうんじゃ…

初春の頭に健やかに伸びやかにしたらエライ事になるな

翠と銀は、上条さんとは正反対の性格じゃね?。

イマジンブレ

恐怖とは呼吸の乱れッ!呼吸を制するということは恐怖を制すると言うことッッッ!

>>384
把握した
注意して読むことにするわ
面白いから頑張ってくれい

ほすほす

がんばってください

ああ、3時だな

もう4時か

はにゃーん

ほすーん

なんだ、もう6時か

落とすわけないじゃない

もう7時か

もう30分か

落としてなるものか

 

→左を見たまえ→

>>416
Mr.BRAINであったな
文字よりも色とか形を先に考えちゃうって


「・・・見えた!」

ビルの密集によって迷路のように張り巡らされた路地を疾駆し続け、もういくつかわからないほどの路地角を曲がった先。

頬といわず額といわずに大粒の汗を浮かべた彼の目が、ついに目的地を視界に納めた。

真正面。大通りに面した路地の切れ目。

その大通りの向こう側に、築何十年かわからない二階建てアパートが見えた。

アパートをはじめとする賃貸住宅が並ぶ、この住宅街。人口のほとんどを学生に占められているこの都市において、大人といえば教師と研究者がほとんどで、それ以外には商店デパートの従業員と言った所だ。

家族と同居している学生は、せいぜいそれらの家族である場合のみでほとんど皆無である。ここはそんな比率的に圧倒的少数である大人たちの一角だった。


昼時ということもあって、商店街と異なり往来はほとんどない。

これなら上条の左腕に腰掛けた真紅も、そう目撃されることもあるまい。仮に見えたとしても、せいぜい学生が何かの悪乗りをしていると思われるだけだろう。

「すまんっ、このままっ、行くぞっ!」

機関銃のように呼吸を繰り返しながら―――もう腹式呼吸をするだけの体力もない―――上条が真紅に告げる。

「ええ」

対する真紅は必要最低限の返事だけを返した。

上条の言う目的地の場所はわからない。だが彼の視線と表情から、もうそれが程近いのだろうということが伺えた。そこまでわかれば十分だ。

真紅は上条を見る。

いくら冷静さを取り戻し、幾たびか呼吸調整をしたとは言っても、彼は人間だ。連続して動き続ければ疲労の蓄積は早くなり、回復は遅くなる。

顔色は赤をとっくに通り越して青くなっている。迂闊に話しかければ、この男は律儀に質問に答えようとするだろう。これ以上負担はかけたくなかった。


(インデックス、姫神、小萌先生、頼む無事でいてくれ!)

三人の無事を強く祈りながら、大通りに飛び出す上条。

歩道を行く幾人かの主婦らしき人影が、赤色の人形を抱えて路地から出てきた少年を見て、ぎょっとした顔を浮かべる。

それを視界の端に収めながらも、上条は無視。走る勢いそのままに、車のいない車道をつっきるためにガードレールを跳び越えた。

平日の朝であってもラッシュとは無縁の車道を一息に走りぬけ、上条はアパートの敷地内に入った。

小萌の部屋はアパートの二階だと、インデックスから聞いていた。

視線を巡らし、階段を探す。

kita


それはすぐに見つかった。長方形型のアパートの角にへばりつくように、鉄製の外階段が設置されていた。

一直線にそれに向かい、今にも崩れ落ちそうな階段を二段飛ばしで駆け上がる。

一歩踏みしめるごとにギシギシと音が鳴り、それが4回響いたところで階段が終わった。

(―――っ!)

外階段から続く外廊下。洗濯機が並ぶその廊下の先に顔を向けた上条が息を呑んだ。

ドアの開けっ放しになった部屋がある―――小萌の部屋だ。

ドアは小さく揺れている。つい先ほど開け、そのまま放りだしたかのように。

きたー!?


(ちっくしょう!)

かっ、と頭に血が昇るのを感じる。全身に力が入った。

「当麻?」

それを感じとった真紅が上条の顔を見た。

犬歯をむき出し、歯噛みする上条。その形相で事態を悟ったのか、真紅の表情にも緊張が走った。

そこに―――

びゅうっ、と一陣の風が吹いた。

大通り向こうのビル。その隙間から来る、ビル風だ。

「っ!」

上条の見ている前で、風に吹かれたドアが動きはじめる。一度完全に開き、反対側の壁に当たって、今度は収まるべき枠組みの方に戻り始めた。

もしもいま、このアパートに結界が張ってあったら、ドアが閉まった段階で開けることができなくなる。

学生寮では真紅が効果範囲外だったが、今回もそうだと言う保証はない。

「―――っ!」

もつれる脚を無理やり動かし、ボロボロの鉄筋の廊下を踏み抜こうかと言う勢いで走り出す。

だが。

(ちょっと待てこのやろうっ!)

駄目だ。上条がドアの前に立つより、ドアが閉まってしまう方が早い。

このままのスピードでは、文字通り一歩だけ間に合わない。

「扉が!」

真紅が叫ぶ。

結界の何たるかは知らずとも、どういうものかの察知はついていた。

あの扉が閉まれば、やっかいなことになる。

真紅は左手を持ち上げ、ホーリエに命じようとして、

「・・・っ!」

その腕が、凍りついたように止まった。

上条だ。

もう限界に近い彼の体にこれ以上の負担をかければ、それこそ命がどうなるかわからない。

迷いが真紅の心を縛り、それ以上彼女は動けない。


「このっ、ふざけんっなぁっ!」

しかし上条は一瞬たりとも迷わなかった。

彼は右足を一歩として踏み出す代わりに、体を限界まで捻って蹴りを放った。

ドアは動いている。結界内ではほかのものに影響を与えることはできない。だが、今現在動いているものに触れることができれば、三沢塾で経験したように『引っ張られる』こともある。

うまくいけば中に入ることができるかもしれない。

それは諸刃の刃どころか、あまりにも無謀な賭けだ。もしも挟まれれば、まるで卵のように上条の足は押しつぶされてしまうだろう。

だが―――だがそれでも、僅かでも開いてさえいれば。


もしこの中に、いままさに攫われようとするインデックスたちがいたら。

インデックスが連れ去られていても、小萌が、姫神がいたら。

残された彼女たちが、怪我でもしていたら。

上条にはわかっている。結界が張られていたら、その怪我をした彼女たちにすら触れることができない。

そうだとしても、上条には外から見ているだけしかできない自分など、認められない。

そして。

放物線を描いて戸枠に戻るドアの側面。そこに上条の靴が突き刺さる―――その直前。


「あ、ドアが開いてる」

ひょい、とその部屋の中から、見覚えのありすぎる白装束が顔を出した。


「はあっ!?」

上条が自分の目を疑い、

「へっ?」

白装束―――インデックスが上条の方を見た。

「ちゃんと閉まってなかったんだよ閉めないといけないんだよ」とでも言うように平和な顔を向ける白装束の左手には、ちょうど当麻が真紅を抱えているように、スフィンクスが納まっている。

彼女はそのスフィンクスが出て行かないようにドアをきちんと閉めようとしたのだろう。彼女の右手は内側から、まさにいま上条の靴が突き刺さろうとしているドアのドアノブを握っていた。

不幸にも、インデックスはドアをそのまま閉めるのではなく、勢いをつけようとして少しだけ前に押し出していたようだ。

上条の狙い通りなら、ドアの側面―――鍵等の機構がある部分に突き刺さるはずだった彼の右足は、タイミングよく、僅かに開いたドアの内側に突き刺さった。


「うひゃあっ!?」

インデックスの可愛らしくも間抜けな悲鳴があがる。

彼女にしてみれば、閉めようとしていたドアが、いきなり開いたのである。それも閉める勢いをつけるため、僅かに押し出したまさにそのタイミングで。

人間の反射行動として強くドアノブを握ってしまうインデックス。それが災いし、白い少女は大きく前につんのめった。

一方、上条は疲労していた。水銀燈と戦い、真紅が能力を発揮したことで体力を使い、その上の全力疾走。いくら途中で多少の休憩を挟もうとも、体力はともかく筋力はそんな短期間では回復しない。

脚がもつれ、正直に言って、いま走っている勢いを殺すこともできそうになかったのだ。ドアを蹴ろうとしたのは間に合わないということももちろんだが、反作用で自分を制動しようと言う意図もあった。

通常、開き戸のドアノブは、ドアの外周から僅かに内側にずらして設置されており、その外周とドアノブの間には僅かな隙間がある。

上条のつま先はその隙間を上から下に綺麗に滑り、鉄製廊下をダァン!と踏みしめた。

ビリビリと廊下どころかアパート全体が揺れ、小萌の部屋の天井からパラパラとなにやら砂のようなものが落ちる。

それだけで事態は終わらない。上条が先ほど学生寮で実感したように、悪いこととは重なるものだ。

勢いよく振り下ろされた上条の脚は、元々の蹴り位置の高さもあって彼女には当たらなかったのだが、

「ひゃあああっ!?」

前につんのめったインデックスの脚が、思いっきり上条の足に引っかかった。

某牛丼超人のようにインデックスが前に倒れこみ、僅かに遅れて右左の順に脚が浮く。

結果として空中で水平状態になったインデックス。


だが上条の蹴りの慣性力を得たドアは、まだ開く方向に動いている。

ドア自体に引っ張られるようにして、インデックスは空を舞う。

上条の目には、その光景が異様なほどスローモーションで見えた。

インデックスの体が描いた華麗な放物線は、上昇最高点でちょうど外廊下の手すりを跳び越え、そのまま下降に転じる。

野生の勘で危機を感じ取ったのか、スフィンクスは手すりを跳び越えるまさにその瞬間にインデックスの腕から脱出した。

廊下の手すりの向こうには、約5メートルほど下方に地面があるのみだ。

後日、それを室内から見ていた姫神は、

「びっくりした。人が空を飛ぶのなんか。初めて見た。綺麗だった」

と、述懐したという。


そんな風に、インデックスがアパート二階から強制紐なしバンジージャンプをしていたころ。

見た目十二歳趣味嗜好は三十歳レベルの女教師小萌先生は商店街を歩いていた。

彼女の両手には、スーパーの買い物袋が左右でひとつずつ。中身は、左は缶ジュースやらウーロン茶のペットボトル。右は各種ビールと、煙草が1カートン。

今日は朝からインデックスと姫神との三人で様々な食材をやっつける作業に勤しんでいたのだが、飲み物が切れてしまったのだ。

いくら食べ物が美味しかろうと、飲み物がぬるい水道水ではそれも半減と言うもの。

そんな理由で、小萌は軽い運動も兼ねて、商店街まで脚を伸ばしたのである。

インデックスも姫神も自分が買いにいく、と言っていたのだが、

(シスターちゃんに任せたら迎えにいく手間が増えるだけですしー、姫神ちゃんは何を買ってくるのかわかりませんからねー)

はふー、とため息をついた。


その吐息はすでに若干の酒精が混じっているが、それを咎める者はいない。この界隈で、小萌は有名人なのだ。当然、見た目どおりの理由でだが。

小萌は両手にかかる飲み物の重さを安心の代償と考えることにして、いつも『趣味』で使う路地に入ろうと、手近なビルの角をひょいと曲がった。

普段から家出少女を探して歩く身だ。ビルの乱立で複雑化した路地の中でも、彼女は完璧に把握している。どこが危険でどこがそうでないかのさじ加減はよくわかっていた。

(今日は連休初日ですからねー。もしかしたらその辺りにいるかもしれませんし)

家までの近道を選択しながらも、一応周囲を気にしながら歩く小萌。

その様は客観的に見たら、初めてのお買い物で迷子になった少女、という風情。間違っても家出少女を保護しようとしている教師には見えない。

そんな妙と言えば妙、教師らしいといえばそうも言える『趣味』に勤しんでいた小萌が脚を止めたのは、ちょうど次に角を曲がれば大通りと彼女のアパートが見えてくる、というところだった。

ぽてぽてと歩いていた小萌は、自分の呼吸を細く緩やかにして、右手側の細い細い路地の方に耳を傾けた。

ビルの間の隙間が細すぎるため、昼にも関わらずかなり薄暗い路地。

高い音をたてて吹く隙間風に混ざって、

「ン・・・スン・・・ゥェ・・・」

聞こえた。

小さな、ほんとうに小さな泣き声。

それは、小萌が『そういう声』がしないかどうか注意していたゆえに聞こえたと言っていいほど、か細いものだ。

彼女の表情が一瞬にして教師のそれになる。そしてそっとその場に買い物袋を置くと、じっ、と路地に目をやった。

「・・・・・・」

しばらくそうしていると、目が慣れてきて、路地の奥がうすぼんやりと見えるようになってくる。

「グス、スン、ウエェン・・・」

それと同期するように、風にまぎれてはっきりしなかった声が、幾分はっきりと聞こえた。


「誰かいますかー? どうしたんですかー?」

そう声をかけながら、小萌は路地の中に脚を踏み入れる。

小柄すぎる小萌にして、ギリギリの狭さ。そして、

「ひうっ!?」

幼さのある声が、驚きを乗せて耳に響いた。

(あらら、どうも迷子っぽいですね)

その予測を裏付けるように、少しだけ進んだ奥に浮かび上がった人影は、小萌よりもなお小さい。

何か箱のようなものの傍で、両手を顔に当てて蹲っている。

襟元までだが軽くウェーブした髪に、薄暗闇でもわかるひらひらとした服。間違いなく女の子だろう。


もう少し近くに寄ろうと踏み出した小萌の足が、ざっ、と音をたてた。

ビクッ、と震える少女。

「あ、ごめんなさい、驚かしちゃいましたね。大丈夫ですよー怖くないですよー」

そう言いながら、小萌はひょい、としゃがみこんだ。相手と目線を合わせたのは、上から見下ろして不安がらせないための措置である。

それが功を奏したのか、少女がそろそろと顔を上げた。

「グス・・・だぁれ・・・?」

予想通り。ずいぶんと、幼い声だった。

「わたしですかー? わたしはねー、先生ですよー」

「先生・・・?」

「そうですー。小萌先生って言いますー。よろしくですお嬢ちゃんー」

「う、うぃ」

小萌の方が路地入り口側にいるせいで、こっちの顔がよく見えないのだろう。どこかビクビクとした口調で返事をする少女。

なるべく刺激しないよう、無駄だとはわかっているが小萌はにこりと笑顔を浮かべる。

「でー、小萌先生はー、お嬢ちゃんに教えてほしいことがあるんですー。いいですかー?」

「う・・・? なぁに・・・?」

反応があり、小萌は内心で手を打った。ここまでくれば、とりあえずは大丈夫だろう。後は、ゆっくりゆっくりと聞きたいことを言えるように誘導してやればいい。

「お嬢ちゃんのお名前ですー。小萌先生、お嬢ちゃんのお名前が知りたいですよー」

とりあえずは名前だ。子供の安心を得るには、きちんと名前を呼んであげる必要がある。きちんと自分のフルネームでなくても問題ない。その娘が言った名前で呼んであげればいいのである。

すると、少女はある程度警戒を解いたのか、目元に当てていた両手のうち片方を、胸元に下ろした。

「うゆ・・・名前・・・」

「そうですー。お嬢ちゃんとっても可愛いですからねー。小萌先生はお嬢ちゃんのお名前も聞いてみたいのですよー。きっと可愛らしいんでしょうねー」

「うぃ・・・」

ぐすっ、と涙を引き上げる音。続いてゴシゴシと少女は目元を擦った。


「名前・・・」

「はい、名前ですー」

「ヒナは・・・ヒナの名前は・・・」

「はい、ヒナちゃんのお名前はー」

「ヒナは・・・雛苺・・・」

ひくっ、としゃっくりに似た音が響き、少女が顔を上げる。

「ヒナの名前は・・・雛苺なの」

薄暗闇の中。

涙で濡れた少女の翡翠の瞳に、小萌の姿が映し出された。

今日の投下は以上です。

あまりの進行の遅さに自分でもまずいと思い2場面ほど進めようとしたら、一両日中には完成しませんでした。

しかしやはり急ぐと雑になりますね・・・投下してから、こうしたほうがよかったかな、と思う箇所がちらほら・・・。

ともあれ、読んでくださった方、保守してくださったかた、ありがとうございました。

では。

穀潰しが…

苺キター

それはともかく描写が細かすぎるとかえって分かりにくくなるぜ!ケースバイケースだけどね!
>>1頑張れ!

面白い

ヤッホー

眠いな

よーしパパ保守しちゃうぞ!

よろしい、ならば保守だ。

ほすほすHOS

これかなりの大作になりそうだな
このスレ終わったらパー速ででもゆっくりでいいから最後まで書き上げて欲しいな

まだ残ってたか
と言うことで保守

ほしゆ

こんばんは、上条と真紅を執筆している者です。

大変申し訳ありませんが、所用のために今日明日は投下できません。
二日ほど間が空いてしまうこととなりますので、続きは残っていれば書き込みします。

また、落ちた場合はある程度書き溜めた上でパー速にて投下しようと考えています。
内容的にこのスレッドでの完結は不可能ですので、どちらにしてもパー速への移行を考えていますゆえ、無理に保守する必要はありません。

それでは。

マジですか
落とすべきかな?

良い子が寝る時間まではもしもし保守人の俺に任せろ!

ほし

流石に2日も保守するのはVIP的にまずいだろ
荒れる前にパー速移行が一番無難

それなら誰かパー速に立ててくれないかな

あげ

>>475
自分で立てるって言ってるし俺らが立てる必要ねーだろ

ていってもいつ立てられるかわからんしココ残ってたらきっと報告してくれるだろ
って事で保守

基本パー速行かない俺にとっては致命的だから保守

パー速行くのはいいけどここにリンク張るのはやめてほしい

追いついてしまった

ぼくぼぶ

ho

h

保守なのだわ

ほしゅですう

ほしゅかしらー

ほしゅなのー

保守するよ

保守よぉん

保守なんだよ?

保守してあげるわぁ

不幸だ・・・保守

禁書スレ一気に減ったね
みんな受験生だったのかな

h

せい

しぶといな

やっと読んだ。
保守。

「どうぞ」

コトリ、と小さな音をたててテーブルの上に、小さめのカップが置かれた。

「あ、ありがとうなのだわ」

若干戸惑い気味に礼を言いながら、真紅は取っ手のない俗に『湯飲み』と称されるそのカップを小さな両手で包んだ。

彼女がらしくなく居心地悪そうにしているのは、目の前にいる和装の少女の、文節ごとに切るような話し言葉のせいでも、湯のみの中に紅茶が満たされているというアンバランスさによるものでもない。

部屋の出入り口であるドア。部屋の一角でもあるドア内側玄関部分で起こっている凄惨な状況が原因だった。

「あの・・・」

と、遠慮がちに口を開く真紅。

だが彼女が続きの言葉を言う前に、

「姫神秋沙」

と、真向かいに腰掛けた和装の少女が言った。

「え?」

「私の名前。姫神秋沙」

「あ、私は真紅なのだわ」

「そう。わかった」

「・・・・・・」

それで会話が終了してしまう。

真紅が目覚めて2番目に話をした人間は、これまた彼女の姿かたちになんの疑問も持っていないようで、驚いた様子もあれこれと聞いてくることもない。

真紅にしてみれば説明する手間が省けて助かるのだが、逆にこうもリアクションがないと、それはそれで落ち着かなかった。

だがこのまま黙っているわけにはいかない。

「それでその、秋沙」

意を決して、真正面に座りなおした姫神に話しかける真紅。

「なに」

「彼女、そろそろとめた方がいいと思うのだけれど・・・」

玄関付近に視線を向けながら、真紅が言う。

だが姫神は、ちらり、とそちらの方に目をやってから、

「問題ない。むしろ。足りないと思う」

それだけ言って、自分用に淹れた湯のみ(紅茶入り)を傾けた。

「・・・・・・」

真紅の手の中の湯飲みは温かかったが、にべもない彼女の言葉と視線に寒気を覚えざる得ない。

どこか引きつった表情を浮かべながら、真紅は視界の端ギリギリに見えるその『惨状』から、目をそむけた。

もうかなりの時間、上条は責め苦を受けている。

真紅の目の前にある紅茶は、香りでわかるほど丁寧に淹れられたもの。上条が噛み付かれると同時に、姫神が淹れ始めたところをとっても、20分以上は硬い。

あの見事な放物線を目撃してから、上条のとった行動は迅速だった。

即座に手すりから下を覗き込み、シスターが大の字で心持ち平べったくなっているのを確認。その後真紅を中に入れ、巫女装束の姫神に「説明は後でするからお茶を出してやってくれ」と告げた。

その後、玄関ドアの目の前で正座をすると、それはそれは見事な土下座をしたのである。

上条が頭を下げたと同時に、勢いよくドアを開けて入ってきたのは白色―――いや、土色のシスターは、一応シスターらしくすべてを許すような慈愛の笑みを浮かべていたが、真紅にはそれが悪魔の形相に見えたものだ。

その後の光景は、正直思い出したくない。

「で、でも当麻はもう動いていないのだわ。これ以上はいくら彼でも危険だと思うのだけれど」

「止めたいならば。あの間に割ってはいるといい。貴女がそうするのを。私は止めようとは思わない」

察するに姫神も上条が心配していた相手の一人だと思うのだが、当の彼女はいまの彼の有様を心配している様子はなかった。

いや、シスター―――髪の色や瞳の色から考えて彼女がインデックスだろう―――が落下して、上条が部屋の中に入った当初は―――おそらくこの未来を予測していたのだろうが―――多少は心配していそうな顔をしていたのだ。

しかし真紅が上条の首に手を回していたことと、彼がその真紅を丁寧に地面に下ろすのを目撃してから、やけに視線と雰囲気が厳しい。

もちろんそれは真紅に向いたものではないのだが。

「・・・・・・」

そう姫神に言われ、真紅はもう一度、上条の方を見た。

噛み付かれ始めてから5分ほどは大声で謝罪の言葉を口にしていたし、それが聞こえなくなってもまだビクビクと小さく痙攣していたように思う。

しかしつい先ほどからもうそれもなくなり、完全にされるがままだ。通常であれば痛みのために握り締められるはずのコブシも、力なく半ば開いている。

(・・・ごめんなさい当麻。私は誇り高き薔薇乙女。お父様に頂いたこの体に歯型をつけるわけにはいかないのだわ)

自分の誇りと意思により護ると誓っていても、流石にあの光景に割ってはいる度胸はない。

真紅は目を閉じると、震える両手で湯飲みを持ち上げ、ゆっくりと口を付けた。

雛苺という少女が泣き止むまで、都合30分が必要だった。

「はい、よくできましたねー。いいこいいこ」

いまだぐずっている雛苺の頭を撫でながら、小萌は内心で安堵の吐息を吐いた。

名前を聞き出すところまでは順調だったが、その後が苦労した。

どうしてここにいるのか、何をしているのか、親御さんはどこにいるのか。

とりあえず必要な情報を聞き出そうとしたのだが、その度に少女はグスグスと泣き出してしまったのだ。

それをイライラすることなく宥めすかすことができたのは、小萌が根っからの教育者であったからであろう。

「・・・ヒナ、いいこ?」

「はいー。とってもいいこですよー」

「・・・えへへ」

にぱっ、と笑う少女。まだ瞳は涙に濡れているが、先ほどまでのように不安に彩られてはいない。頭を撫でる小萌の手に幾ばくかの安心感を得ているようだった。

(うんうん、これなら大丈夫そうですね)

それだけで苦労が報われたような気持ちになり、小萌も嬉しそうな笑みを浮かべた。

その笑顔のまま、

「それで、ヒナちゃん。小萌せんせーに教えてくれますか?」

頭を撫でながら、雛苺と目の高さを合わせる。

「う?」

「ヒナちゃんは、どうしてこんなところにいたんです?」

どう見ても、雛苺は10歳にもなっていない。どんなに贔屓目に見ても5歳か6歳といったところだろう。そんな年代の少女が、そもそもこんなところにいること自体が不自然だった。

それに小萌は、伊達にこの界隈で『趣味』をしていない。これだけ目立つ少女が入れば、見覚えくらいはあるはずである。

だが雛苺は小首を傾げ、

「ヒナ、言われたのよ」

と、言った。

「言われたの、ですか?」

鸚鵡返しに問う小萌。

「うい」

雛苺はこくりと頷き、続ける。

「ヒナ、目が覚めたらここにいたの。それで、待ってるように言われて、待ってたら、小萌に会ったのよ。で、で、こもえに会ったから、ヒナはこもえと行かなくちゃいけないのよ」

「う、うーん」

たらりと汗をかく小萌。

雛苺の言うことは、年齢を考えたら仕方ないのかもしれないが、要領を得ない。

(目が覚めたらってことは、ここに来るまでは寝ていたってことですよね。でも、待っているように言われてったことは、わざわざここに置いていった事になってしまいます)

そんなことをするメリットがどこにあるというのだろうか。というか、こんな小さな娘をこんなところに置いていくなんて、あり得ない神経である。

(それに、行かなくちゃいけない、って言いましたか。それじゃどこかで待ち合わせを? でもこんな小さな子に一人で? ・・・なんだかよくわかりませんねー)

「・・・ヒナちゃんにここで待っているように言ったのは、ヒナちゃんのお母さんなんですかー?」

「ノン」

「え、じゃあお父さん?」

「ノン」

「え、ええーと・・・じゃあ、誰なんですかー?」

「大きくて細くて硬い人みたいなのー」

「・・・・・・」

「お?」

沈黙する小萌に、雛苺は再度首をかしげた。

見上げてくる少女の視線は、まるっきり純粋なものだ。わざと小萌を困らせてやろうとか、そういう意図があるようにはまったく見えない。

いやそもそも、この少女は先ほどまでここで泣いていたのだ。不安を覚えていたこの娘がわざわざ嘘を言う可能性など皆無であると言えた。

しかし、大きくて細くて硬い・・・?

この地区のことであれば大抵のことがわかる小萌であるが、流石にこの条件が何を意味しているのかまではわからない。

その条件だけならば、背の高い筋肉質の男性や女性がそうであるし、全自動の清掃マシンもスリム系の機体なら該当するだろう。もっと言えば電柱だった『大きくて細くて硬い』と言えないわけではないのだ。

しゃべる電柱はないにしても、この街の清掃マシンは下手にしゃべる機種もあるので油断ならない。

そもそも、父母の可能性を否定しているのがよくわからなかった。

「・・・・・・」

「?」

改めて雛苺に目をやる小萌。

少女は純粋そのものの瞳で見上げてきており、先ほどの怯えたようなものからは考えられないほど柔らかな表情を浮かべている。

このまま然るべき機関に預けるのが、実際問題もっとも早い解決策だろう。

小萌的な意味のみならず、やはり個人の力と組織の力の差は大きい。捜索願いでも出されていれば、すぐにでも保護者の元に戻れるはずだ。

しかし、今回の場合はどうも様子がおかしかった。彼女の話す内容から、保護者らしき人物の影も見えないのである。

そしてそれ以上に―――自分を純粋に信じてくれている雛苺をひょいと別の人間に預けるのは、正直気が引けた。それこそ彼女は、自分が置いていかれたように感じてしまうかもしれない。

この時期の少女にそういう意識を持たせるのは、小萌としては避けたいのである。

(・・・仕方ないですねー。シスターちゃんと姫神ちゃんには電話することにしましょう)

ちらりと自分の背後に置いてある買い物袋を見る小萌。自分のアパートはすぐ近くであったが、事態が事態だ。こっちのことを優先させることにする。

「じゃあヒナちゃん」

「うょ?」

「ヒナちゃんは、どこかに行かなくちゃ行けないんですよね?」

「そうなの。こもえといっしょに行くのよ」

「ん、じゃあ小萌せんせーを、いまからヒナちゃんが言われた場所に連れて行ってくれますか? ヒナちゃんは、それがどこだかわかりますか?」

「わかるの。ベリーベルがそこにいるのよ」

「べりーべる?」

「うい。ヒナの人工精霊なのよ」

「人口政令? う、うぅーん・・・とりあえず、行き先はわかるんですね? じゃあヒナちゃん、小萌せんせーと一緒に行きましょう」

そう言って、小萌は立ち上がり、雛苺に向けて手を差し出した。

「うゆ?」

「せんせーとお手手を繋ぎましょうかヒナちゃん。せんせーはどこに行けばいいのかわからないので、迷子にならないようにヒナちゃんが手を繋いでください」

「・・・・・・」

雛苺は驚いたような表情を浮かべた後、

「えへへー」

にぱっ、と笑い、小萌の手を取った。

「じゃあ行くの! こもえ、迷子になっちゃだめなのよ?」

「はい、じゃあ小萌せんせーを連れて行ってくださいね?」

歩き出す雛苺。

スキップするような少女の歩調に脚を合わせ、小萌も脚を踏み出した。

そして、二人が歩き去ってから。

つい先ほどまで、雛苺が蹲っていたその僅か一歩奥。

そこにあるのは大きな鞄。雛苺自身がすっぽり入りそうな、高価そうな鞄だ。

薄暗いため、小萌が気に留めなかったそれの蓋が、

ギィ

とひとりでに開いた。

そしてその中から、ふわり、と桃色の光球が浮かび上がる。

光球は周囲の薄暗闇を払うように一度大きく光った後、逆にその光量を落とした。

薄暗い路地の中でさえぼんやりとしか見えなくなった光球。

それは音もなく、しかし弾かれたような勢いで上昇し、陽光の中に身を晒す。

午後真っ只中の光の中、人の目にほとんど映らなくなった光球は、一気に加速してその場から離れ、飛び去った。

その光球が描いた軌跡の下に。

小萌が、一人の少女とともに、歩いている。

まさか残っているとは思っていませんでしたが、続きを投下しました。
本日分は以上です。

なおこのスレッドが落ちるor1000に達した段階で、続きはパー速で書いていこうと考えています。
少し書きため&修正、追加をしてから投下を再開するつもりですので、落ちた後から少し間が開くかもしれませんが、ご容赦を。

それでは。

ローゼンやる夫板でもいいと思うけどね
いずれにせよここでやるには投下量に対して保守の労力が割に合ってないのは確か

把握した、乙

>>555
VIPは軽いノリの物にはレスが付きやすいし
パー速やらは作りこまれた物の方がレスが付きやすい感じがする

つまりはこのSSはゆっくり進行する板向きということだろうよ

ho

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