上条「まきますか?まきませんか?」(559)

それはいつも通りのある日のことであった。
上条当麻はベランダに布団を干そうとすると、ある一通の封筒が置かれている事に気付いた。
最初は風で吹き飛ばされてきたのだろうと思ったが、封筒には”上条当麻様”と書かれており、その他には住所も差出人の情報すらも書かれてなかった。

上条「何だこれ?…別に自分の名前宛てなんだから開けてもいいよな…」
そんなことを思いつつ封筒を開けてみるとそこには一枚の紙が入っていた。

中身を読んでみると
「おめでとうございます上条様!!!貴方は54128人の中から厳正な抽選にて選ばれ、『幻想御手(レベルアッパー)』を獲得することができる幸運な学園都市の人です!!!
チェックをしたら、そこから外へこれを紙飛行機の形にして飛ばしてください。人口精霊ホーリエが異次元より貴方の手紙を回収に参ります。」

その手紙の最後には”まきますか まきませんか”と大きな文字で書かれていた。

上条「新手の詐欺か?全く、上条さんはこんな面倒な事に付き合ってる暇なんかないってのに…」

そんな独り言を呟きながらも、手紙に書いてある”幸運な学園都市の人”という文字列に思わず目を奪われてしまい、ふとした思いで”まきます”の方にチェックをして、紙飛行機の形に折り外へと投げた。

上条「こんな事で能力者になれたら上条さんは今頃不幸じゃないですよ…」

そんな事を思いながらも上条は心の奥底で何かを感じていた。
新たな何かを---

布団を干し終えた上条は、部屋に戻ると床の上に大きな鞄が置かれているのが見えた。

上条「何だよこれ、さっきの手紙といいこの鞄といい…不幸だ…」

しかし、上条も鞄の中身に興味があったのだろう。
中を開けると、そこには若干大きめの人形があった。




誰か続き頼んだ。

上条「この人形は…?」

バシュン

上条「」


めでたしめでたし

保守

上条「御坂の妹じゃねーか、何してんだ?」美琴「えっ?」
上条「御坂の妹じゃねーか、何してんだ?」美琴「えっ?」 - SSまとめ速報
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佐天「御坂さーん!」ミサカ「?」
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インディビジュアリスト「とうまー」上条「・・・。」
打ち止め「何このセーラー服?ってミサカはミサカは…」
打ち止め「何このセーラー服?ってミサカはミサカは…」 - SSまとめ速報
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ミサカ「貴方は私と似ていますねとミサカは返答します」
佐天「なんならわたしのパンツ見るぅ?」 上条「うん」
初春「ぱーそなるりありちwwwwwwwww」
美琴「ちょっとアンタ!!なんで無視すんのよ!!」 上条「・・・」
美琴「ちょっとアンタ!!なんで無視すんのよ!!」 上条「・・・」 - SSまとめ速報
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黒子「ミサカお姉様…ですの?」
上条「まきますか?まきませんか?」
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美琴「左手を掴めば……!」上条「しまった!」
サーシャ「第一の解答ですが、私は既に上条当麻と付き合っています」
サーシャ「第一の解答ですが、私は既に上条当麻と付き合っています」 - SSまとめ速報
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御坂「やだ・・・どうしよう、みんな男になってる・・・」
インデックス「黒豆サイダーならあるんだよ?」
最愛「だ、ダメです浜面・・・・・・ん・・・浜面ぁ・・・」
最愛「だ、ダメです浜面・・・・・・ん・・・浜面ぁ・・・」 - SSまとめ速報
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上条「なんだこれ?」

鞄を見下ろす上条。

ついさっきまで、こんなものはなかったはずである。ついでに、こんな鞄を持っていた覚えもない。

上条「インデックスが買ったのか?」

自分ではない以上、可能性があるのは同居人の私物ということ。

しかし彼の同居人である腹ペコシスターは、こんなもの持っていなかったはずだ。

いまでこそ多少の私物は上条家に増えたものの、生活用品くらいしかないはずである。

上条「高そうな鞄だし、それはないか。小萌先生からもらったのかもな」

インデックスにも、当の上条にもこういったものを購入する機会も財力もない。

ついでにこの町の半不正規滞在者であるインデックスには、バイトして稼ぐこともできないはずである。

可能性があるとするなら、誰かからのもらいもの、というところだろう。

上条「でもおかしいな。さっきまでこんなの置いてなかったはずだけど」

不思議そうに首を傾げる。

件のインデックスは、朝早くから小萌の家に出掛けている。

なんでも買い過ぎて賞味期限ギリギリの食材を一気に片付けるためにインデックスの力を借りたいとのことだった。
そういう話に食欲最優先の彼女が動かないわけがなく、今日は泊まり込みで食べてくるらしい。

いままで何度か泊まりに行っているが、そのたびに手ブラなのを気にして小萌が用意してくれた可能性は十分にあった。
おそらくお泊まりグッズを詰めて、しかし普段の習慣どおりに手ブラで出掛けたのだ。
ただでさえインデックスである。食事が用意されている状況下なら、その辺りが抜け落ちても不思議はない。

上条「せっかく用意してくれたのに忘れていってどうするんだよインデックス・・・」

呟く上条。

彼の中で納得のいく理由が思い付いたせいで、もう鞄が誰の物かということはほぼ決定状態になってしまっている。
床の上に置いてあることも、何らかの勘違いで気がつかなかったのかもしれない。
普通はこんなものが床においてあれば100%気がつくに違いないが、ここは学園都市だ。
誰かが外でおかしな能力を使って、その余波が出たのかもしれない。
場合によっては、高価な鞄をもらった鞄インデックスが後ろめたくて何かしらの魔術でも使って隠していたのかもしれない。

彼女は魔術は使えないと聞いているが、いままでも何度か戦闘でそれらしいことをしていた記憶がある。
純然たる魔術といえなくてもそれらしいことが出来ても不思議はなかった。

それが何かの拍子に、自分の右手に触れたのだろう。

上条「どうするか・・・っても、届けてやるべきだろうなこれは」

気がついた以上、それをそのまま放っておくのは性にあわなかったし、何より上条家の経済破綻をギリギリで回避していられるのは、小萌の食事会によるところが大きい。

上条「義理と人情を欠いては浮世は渡れないと思うのですよ上条さんは」

呟きながら、鞄の取っ手に左手をかけた。
かなり大きい鞄だが、力には多少自信がある。それに中に入っているのはおそらくタオル程度であろう。
上条は一気に持ち上げようとして、

上条「!?」


ズシリ、と予想外の重みが腕にかかった。

完全に軽いものと信じていた上条だ。持ち上げる勢いがあまって、踵に体重が一気にかかる。

上条「お、わ、たっ」

鞄に手をかけたままの彼の上半身が反射的にのけ反った。だが、腕は重みに引かれるように上体についていかない。

上条「っ」

左手が無意識に鞄を離す。僅かに浮いていた鞄は床に落ち、代わりに重量感の消えうせた彼は、堪えるどころか一気にバランスが崩れた。

上条「うわっ」

それでもなんとか体勢を立て直そうとして動かした脚が、いましがた干そうとして床に投げていた薄手の掛け布団を踏み付けた。

ずるり、と脚が滑り、視界が反転する。

上条「ふ、不幸だぁっ!」

彼の嘆きの声が響き、その一瞬後、床に頭が激突する音がこだました。


上条「いてててて」

湿布を貼って包帯でぐるぐる巻きにした右手で後頭部に保冷剤(上条家冷凍庫に入っている唯一のもの)を押し当ててながら、上条は鞄の前に腰を下ろした。

鞄を持ち上げようとした、ただそれだけで、彼は後頭部強打と右手首捻挫という負傷をしてしまっている。

負傷自体は悲しいことによくあることで、応急手当も慣れたものであった。

それよりも、いまの彼はもっと重要なことがあるのだ。

上条「まったく、なにが入ってるんだこれ?」

ポン、と左手で鞄を軽く叩く上条。

持って行こうと思ったが、予想外に重い。左手だけで持ち上げるのは、小萌の家までの距離を考えると、少々きつかった。

となると、残る方法は中身を見て、無用なものを出すしかない。

この段階に至って、持って行かないという選択肢が出てこないのは、彼の人の良さが伺えた。
ついでに、小萌の家に電話してインデックスに確認するという点に考えが及ばないあたりに、彼の単純さがわかる。
さらに言えば、そもそも女の鞄を開けようとするな、と言う点に考えが至らないところに、彼のデリカシーの無さと鈍感ぶりが計り知れよう。

上条「えーと、留め金留め金っと・・・」

無事な左手で取っ手の脇にある留め金を外す。

って、うああああ、ここまで書いときながら、読み返したらもう鞄あけられてることになってた・・・吊ってくるごめん。

1や7じゃないんだけど、続き書いてもいいのかな・・・。
まるっと書き溜めしてなかったから、ちょっとずつでよかったらいまから書くけど・・・

おそれながら書いてみました。
進行遅くてもこらえてください。

パチリ、と存外に軽い音をたてて留め金は外れた。

上条「鍵、かかってなくてよかった」

かかっていたらお手上げだったに違いない。
流石の幻想殺しも錠前を壊すことなんか出来ないし、何よりいまは包帯で皮膚が完全に隠れるほどぐるぐる巻きである。

よかったよかった、等と呟きながら鞄を開ける。
ギギギ、と小さな軋みとともに開き、徐々に見えてくる中身を見た上条は、

上条「え」

カシッ、とその動きを止めた。

彼が予想していた中身は、連れていったスフィンクスのためのネコ缶や、小萌の家でするためのゲームソフト(蔵上条家)が大量に、というものだった。
だから、動きを止めるのも無理はない。
中に入っていたのは、それこそ美術館に飾られていそうなほどの、綺麗な人形だったのだから。

上条「な、なんだこれ。こんなの、先生んちに持って行くつもりだったのか?」

驚きと、人形の持つ息を呑むほどの美しさに、数呼吸。
再起動した上条は、左手を鞄の取っ手にかけたまま、眉を潜めた。

鞄の中には、本当に人形しか入っていない。予想していたネコ缶もゲームソフトもなく、ましてやタオルも着替えもなかった。

そもそも身を丸めるようにして入っている人形だけで、鞄はいっぱいいっぱいである。
これ以上何を入れるスペースはない。
鞄そのものの装飾や大きさ、そして人形の『収まり具合』から考えて、明らかにこの人形専用の鞄に思えた。

上条「西洋人形・・・ってやつだよなこれ」

鞄を完全に開けてしまい、つんつんと左人差し指で人形の頬をつつく。
陶器のような硬い、しかし人の肌に吸い付くような不思議な質感を指先に感じた。

上条「小萌先生がこんなのをインデックスに? いやでも、だったらこれ持って行く意味わからねぇし」

顔を上げ、腕を組む上条。

上条「だったらやっぱりインデックスの私物か・・・あいつ、いつのまにこんなもの」

正直、インデックスの趣味とは思えなかったが、こうなるとそれ以外の線が考えられない。
『記憶のあった上条』の私物という線もあったが、それはとりあえず否定することにした。

いやその趣味をどうこう言うつもりはないし、偏見もない。
以前に失った記憶を補完しようと、自分のアルバム等を探したときには、こんな鞄は見当たらなかったというだけである。

それに、インデックス自身はあまり快く思っていないようだが、彼女にも一応故郷があり、その知り合いがいる。あの炎の魔術師や破れジーンズの魔術師が持って来ることだってないとは言えないのだ。

上条「明日、帰ってきたら聞いてみるかな・・・」

いま、それを確認する方法はなさそうである。

上条はため息をつきながら、ふと、鞄の中で眠るような人形に目をやった。

上条「でも、インデックスはこういう色が好きなのか。あいつシスター服だから、白以外のイメージなかったけど・・・」

そしてもう一度、つん、と人形の頬をつつく。

上条「こんな、」

何色がいいでしょうか。
最初の構想では赤でしたが、上の方で安価がよろしいとかお言葉が。

保守してやんよ

 ∧_∧
( ・ω・)=つ≡つ
(っ ≡つ=つ
`/  ) ババババ
(ノ ̄∪

保守してやんよ

 ∧_∧
( ・ω・)=つ≡つ
(っ ≡つ=つ
`/  ) ババババ
(ノ ̄∪


上条「こんな赤色の人形を持ってるとはねぇ」

彼の言葉どおり、人形は全身で赤を纏っていた。

洋服は言うに及ばず、ヘッドドレス、襟元の薔薇、履いている黒色の靴も光の加減によっては赤みを帯びて見える。

異なる色と言えば、髪の金と肌の白くらいだろう。

上条「赤と白と金色でめでたしめでたしってところですか」

極めて日本人的発想を口にする上条。

いまだ日本の文化に馴染みの薄いインデックスにそれはないにしても、上条的には白い少女が赤い人形を抱いている情景は妙に縁起がよいように思えたのだった。


上条「あ、そういや大丈夫かな」

覗き込むようにして人形を見ていた彼の顔に、若干の緊張が浮かぶ。

彼が危惧しているのは、さきほどの開けようとして転ぶ事件を思い出したからだ。

この鞄、転ぶ直前に手を離した拍子に、けっこうな勢いで床に落ちたような気がする。

上条「まずい、どっか壊れてたら・・・」

これがそう安いものではないことはアンティークや芸術に疎い上条にも容易に想像できた。

たとえ安価なものであったとはいえ、インデックスのお気に入りには違いない。ほとんど食べ物以外をねだらない彼女にして、その何倍もしそうな装飾の一品である。

それに傷をつけてしまえば、彼女はどう思うだろう。

頭を噛まれるくらいならいいが、もし泣かれたりしたら切腹→火葬ものだ。いや、上条が自主的にしなくても、たぶん二人の魔術師が強制して来るに違いない。
それに上条的にもそんな心が痛い事象は避けたかった。


上条「ちょ、ちょっとだけ確認を」

頬に汗でも伝っているような感覚で、上条は人形に手を伸ばした。

もし傷がついていても治せたものではない。それでもこういうことは、気になりだしたら確認するまで止まれない。

傷がついていなければよし。傷ついてたら・・・土下座と高級料理フルコースで手を打ってもらいたい。

そんなことを考え、左手を人形の腋の下に入れる。

上条「わっ、と」

そのまま持ち上げようとするが、これが大きい。一抱え、というか、下手すれば幼児ほどもありそうだ。

反射的に右手も添えようとして―――

上条「って、大丈夫かこれ触って俺」

その右手をとめた。

いまのところどこからどうみてもただの人形だが、これはインデックス関係のもの。

魔術的な要素があれば、右手で触れるのは危ないかもしれなかった。

上条「・・・・・・」

じっと包帯の巻かれた右手を見る。

とはいえ、人形を調べるには片手じゃ無理だ。無理に持ち上げて床に直接落としたら、傷物まちがいなし。色々な意味で責任問題に発展するだろう。

上条「ま、包帯でびっしりだし、大丈夫だよな」

幻想殺しの効果は右手首から先で、直接触れたもの、という限定的なものだ。
完全に包帯で覆われた状態なら問題あるまい。

上条「よっと・・・って、でかいし、重いなこれ」

両手で『たかいたかい』でもするようにして持ち上げる。

ずしりと両腕にかかる重量感。身長に対応するように、その重みも人間の幼児並だ。

上条「しっかし、すごいなこれ。芸術は爆発というわけですかそうですか」

その顔を覗き込み、精巧さに思わずため息が漏れた。


人のような大きさ、人のような重み、人と見間違いそうな精巧な顔形。
そしてなにより、

上条「なんか色々な柔らかくて上条さんは大変ですよまったく」

指は、意外な柔らかさを上条に伝えてきていた。
なるほど、さきほど頬を突いたときの硬さや質感は、こうしてみると意外なほど人に近いものを思える。

人そのものよりもやや硬いが、その差が逆に『人を模そうとした』ことを感じさせることとなっていた。

ふわり、と上条の鼻先を、金色の髪が掠める。

上条「・・・・・・」

上条(って、いまなに考えてた俺そんな俺はその趣味はないないいやだってそんな土御門じゃあるまいし人形様にだってうわらばあばばばばば)

ブンブンと頭を振る。

いま顔が熱いのは気のせいだ。気のせい。そうじゃないと困る。


思わず視線を逸らした上条。

そんな彼の目が、ひとつの金属片が捉えた。

ぱっと見て、ハート型のようにも見えるそれは、

上条「ゼンマイか、これ?」

内心の動揺を自らごまかすように呟きつつ、ゼンマイを右手で取り上げる。

包帯越しに金属の感触をかえしてくるソレは、なんの変哲もないゼンマイだ。

上条「・・・・・・」

視線を落とせば、背後から膝の上に抱えて支えている人形の背中。

そこに、差し込み口のようなものがある。

上条「駆動式? カラクリ人形?」

差し込み口とゼンマイの先端は同じ形だ。間違いなくそこに挿すものだろう。


上条「・・・・・・」

いくら不幸に塗れても、いくらこの学園都市の学生として見ても異常な事態に遭遇していると言っても、上条は男の子である。

こう言ったカラクリと言うたわいもない『おもちゃ』には心躍らされるものがある。

上条(ちょっとくらいなら、大丈夫、だよな)

好奇心が動き出す。

これだけ精巧な人形だ。駆動するとなれば、どこまで綺麗に動くのか見てみたい。

それにもし動かしてみて、異常がなければ内部機構にも問題がないという証明にもなるのだ。

上条(そう、これは確認、確認なんですよインデックスさん)

持ち主に無断で動かすという罪悪感を義務感という名目でごまかしながら、上条は手にしたゼンマイを、背中の穴に挿しこんだ。




その瞬間だった。




キリキリキリ・・・と軋むような音をたてて、ゼンマイがひとりでに動きはじめた。

上条「え・・・」

上条の口から驚きの声が漏れる。

反射的に右手を放すが、ひとりでにまかれていくゼンマイは止まらない。

そして、呆然とする彼の目の前で、

「・・・・・・」

ふわりっ、とさきほど鼻先を掠めた人形の髪のような軽やかさを持って、当の人形が空中に浮かび上がる。

上条「ちょっ、えっ、や、やっぱり魔術的なあれですか!?」

無意識のうちに右手を胸元に引き寄せながら、左手で床を掻いて後ろにさがる上条。

普通の人間なら、いや、この学園都市にひしめく能力者たちでも驚くような光景に、それでも素早く反応できるのは、いままでの経験ゆえ。

驚きと、若干の警戒を宿した彼の視線の先で、人形が鞄の上、その空中に直立する。

そのまま、まるで風になびくように、鞄の上から床に水平移動する人形。

上条はそれを見守ることしかできない。


「・・・・・・」

伏せられていた人形の目がゆっくりと開いていく。

その切れ長の目が、すい、と上条に向いた。

上条「な・・・」

上条が声を漏らしたのは、人形がこちらを向いたことにではなかった。

人形の瞳。

そこに篭められた、明確な敵意に対してである。


「・・・・・・」

トン、と人形の靴が床に着地する。しかし上条に向いた視線の色は、種類を変えないままだ。

赤い人形の左手が、ゆっくりと持ち上がる。

上条「くっ」

右コブシを握った。手首が痛むが、この際そんなこと言っていられない。

人形の視線―――その敵意は強くなる一方。

そして、人形が一歩、脚を踏み出した。

上条の、方に。

上条「お、お前っ」

上条が言葉を投げかける。


「・・・・・・」

だが人形は反応を見せないまま、ツカツカと歩をすすめてくる。

人の脚で数歩の距離。やや小さい人形では、もう少しかかる。

人形の手は持ち上げられているだけでいまのところなにも異常な様子はない。

だが油断はできない。相手は魔術の結晶に違いないのだ。上条の右手同様、触れた瞬間にだけ効果を発するのかもしれなかった。

上条「!?」

上条(まずいっ、右手・・・!)

息を呑む上条。

頼みの幻想殺しは、いまは包帯で完全に拘束されている。これではなんの意味もない。

左手で包帯を毟ろうとするが、

「・・・・・・」

上条「!」

もうその時には、人形は上条の目の前に立っていた。

上条(やべっ!)

さらに後ろに飛びすさろうとする。

だがそれよりも一瞬だけ早く。

「なんて起こし方をするの」

ぶん、と上条の右頬に、彼から見て右斜め上から小さな手が振り下ろされた。

上条「うべっ!?」

室内に、本日二回目のよい音が、響いた。

こうして、上条の一日は、いつものように悲鳴と不幸から始まって行ったのだった。


「まったく、いきなりレディを床に落とすなんて、いつになっても男というのは野蛮なものなのだわ」

上条「まことに申し訳ありませんでした・・・」

「その上、無遠慮に頬と言わず鼻と言わず突付いてくるし・・・いまの世界の挨拶は、顔をつつくことから始めるのかしら?」

上条「滅相もございません、すべてわたくしの不徳の致すところであります」

腰に手を当て、いかにも立腹してますという風情で見下ろしてくる人形に対し、上条がとった対応は男らしい土下座であった。

もっとも、小さな女の子に少年とは言え大人に近い男がそうしている情景には、男らしさの欠片もないのだが。


あの平手一閃から5分後の、上条家の情景である。

「・・・あなた、名前は?」

上条「不肖、わたくし上条当麻と申します」

「じゃあ当麻」

上条「なんでございましょうか」

「あなたの本朝式社畜土下座(キングス・スレイブ・アポロジャイス)はとても綺麗で見事なのだけれど、もう許してあげるから頭を上げて頂戴。そのままじゃ話しにくいわ」

上条「わ、わかりました」

「それと、敬語もいらないのだわ。あなたの普通がその敬語なら、別だけど」

上条「・・・わかった」

なんとかお許しをもらって、顔をあげる。

つい先ほど彼の左頬を張り飛ばした西洋人形は、まるでそこが定位置であるかのように、上条家のソファーに腰掛けていた。


ソファーに腰掛けているのに腰に手を当てる行動は妙に見えるが、気にした風はない。

インデックスが怒ると噛み付いてくるのと同様、この人形はそういう癖でもあるのかもしれなかった。

やっぱりペットと同じで魔術人形も持ち主の影響を受けるのか、等と考える上条であったが、それはともかく。

上条「でも、本当に大丈夫なのか、背中とか、腕とか・・・」

言いながら、上条は心配そうな目を向ける。

あの見事な張り手は、彼の頬に若干のダメージを与えたが、それ以上のことはなかった。
むしろ彼にして土下座という方法をとる原因になったのは、床に落とした拍子に背中を痛めただの、散々体を弄繰り回されただの、レディに対して重いと言うのはデリカシーなさすぎとか、そっちの方の文言である。


チクチクと心をわざわざえぐるようなその言葉の嵐に思わず土下座するしかなかったが、しかし上条には、それらがすべて悪意から来る言葉のようには感じなかった。

怒っていたのも本当だっただろうが、それよりもむしろ、インデックスや、とあるレールガンとの掛け合いのような感覚だったのである。

だからどうしても、その負傷が気になってしまう。


「・・・・・・」

人形は彼の言葉に軽く驚きの表情を浮かべ、ついで、ゆっくりと微笑んだ。まるで、何かを思い出したかのように。

「問題ないのだわ。あの程度で壊れてしまうほど、私は脆弱ではないもの」

上条「そうか、ならよかったよ」

上条は、ほっと胸を撫で下ろした。自分のせいで修復不可能な傷を与えたとあっては、持ち主だろうインデックスにも、人形である彼女(?)自身にも申し訳がたたない。

人形がしゃべるという状況に、彼はそれほど違和感を感じていなかった。そのくらいの大騒ぎは何度も経験済みである。ついでに言えば、これくらい小さい相手にお小言を言われるのも小萌相手で慣れている。


「・・・変わった人間なのだわ」

上条「? なにがだよ」

「私と初対面で、こんな風に普通に話をした人はいなかったのよ。みんな驚いて、何かの仕掛けか、と疑ってきていたのに」

上条「あー、それは、まぁ、慣れっつーか環境っつーか」

「慣れ? 環境?」

上条「ああ、それも説明しなくちゃな。インデックスより、あんたの方がしっかりしてそうだし」

「?」

上条「その前に、ひとつだけいいか?」

「なにかしら」

上条「その、あんたのことはなんて呼べばいいんだ? 人形とか、お前ってわけにもいかないだろうし」

「・・・・・・」

人形は再度、驚きの表情を浮かべる。

上条「?」

「ふふっ」

こちらの表情の意味がわからなかったのだろう。不思議そうな顔をしている上条に、思わず笑みが漏れた。


(・・・人形に名前があるのが当然と思っていて、それが普通な人間なのね)

(ジュンですら、最初はそんなこと思ってもいなかったと、思うのに・・・)

上条「どうしたんだよ? 俺、何か変なこと、言ったか?」

「いいえ、ごめんなさい。そういえば自己紹介もまだだったのだわね」

そう言って、その赤い人形は両の足で立ち、上条を正面から見つめる。

「私の名前は真紅」

「ローゼンが創りし薔薇乙女の、第5ドール」

そして人形―――真紅は、口元にやわらかい笑みを浮かべた。

「当麻。貴方の、お人形よ」








とりあえず今回は以上です。

また書き溜めてから投下します。

でもこのペースじゃ、ずいぶん長いことかかりそうな気が・・・。
うむむ・・・。

なお、三点リーダーについては、わざと使っていません。
…よりも・・・の方が厚みがある気がして、沈黙っぽくて好きなんです。

お気に触る方もいうと思いますが、まぁ、趣味の領域ですので許していただければ、と思います。

 、ゞヾ""ソμ

ヾ     彡
ミ  ・ д ・ ミ
彡 (゚Д゚) ミ

 /ソ(/ ヽ)ヾ
  "|""| ホッシュ!
   ∪∪



真紅、と名乗った彼女が語った内容は、上条にして意外ではあったが、驚きにまで値するものではなかった。


ローゼンという人物に作られた人形であること。ローゼンは、上条が言うところの魔術師のような人物であるということ。

自分はローザミスティカと言うモノで動いており、それが人間で言うところの魂であるということ。

ローザミスティカは元々ひとつのものを分割したもので、自分以外に六人(六体?)の姉妹がいるということ。

そのローザミスティカを集めてアリスになることが目的であり使命であり、姉妹同士で戦っている、ということ。


真紅の要請によって淹れた紅茶が、上条のカップで冷めたしまったころに、何度か脱線を繰り返した彼女の話は終わった。

真紅「と、いうわけよ。わかってもらえたかしら」

カチャリ、と音をたてて、真紅はカップをソーサーの上に置いた。

カップは真紅の手でも扱える、小さなものだ。以前、インデックスと買い物に出かけた際に、彼女が面白がって購入したものである。

上条「いや、わかったけど・・・」

もう湯気を立てなくなった自分の紅茶に目を向けながら、上条は頬を掻いた。先ほど真紅にひっぱたかれた場所だが、もう痛みはない。



真紅「?」

言いよどむ彼の様子に、真紅が視線を向ける。

上条「なんつーか、結構にヘビーなお話で、上条さんとしてもなんとコメントしていいのかわからないのですよ、はい」

色々と覚えることがあったようだが、とりあえず上条の心に堪えたのは『姉妹で戦っている』という点だった。

ローザミスティカは真紅を含む姉妹たちの命である。集めるということは、結局、奪いあうということだ。

それは殺し合いに等しい。

なるべくなら争いごとをしたくない、話し合いですむならそれに越したことはない。

そんな思考が基本である上条にしてみれば、いくらそれが真紅たちの使命とはいえ、あまりにもあまりにもだと思う。

だが、そんな彼の思考を読んだかのように、真紅はふわりと、微笑みを浮かべた。


真紅「大丈夫よ、当麻」

上条「え?」

真紅「貴方の考えていることよ。きっと、姉妹で殺し合いをするなんて、とか、考えているのでしょう?」

上条「な、なんでわかったんだ?」

真紅「顔に書いてあったのだわ。話し合いや他の方法はないのだろうか、って」

上条「う」

完璧ピタリと言い当てられ、上条は若干狼狽した声を上げた。

それを見て、真紅がくすくすと笑う。そして、続けた。


真紅「安心しなさい。私は、戦って奪おうとか、そういうことはもう思っていないわ」

上条「そうなのか?」

真紅「ええ。私は私のやり方でアリスを目指しているの」

真紅「私たち姉妹の争い・・・アリスゲームと言うのだけれど、その結果で得られるのは、あくまでもローザミスティカよ」

上条「・・・・・・」

真紅「でもよく考えて当麻。もし私が他の姉妹を倒し、ローザミスティカをひとつに纏めたとして・・・それで本当にアリスになれるのかしら?」

上条「え? でもだって、真紅を作ったそのローゼンってのが、そう言ったんだろ? じゃあそうなんじゃないのか?」

真紅「そうかしら? 私が初めて目を覚ましたときには、もうお父様は傍におられなかったわ。直接聞いたわけじゃないの」


真紅「それに何より、もしローザミスティカをすべて集めてアリスになれるなら」

真紅はちらり、と上条を見る。

上条は真剣な瞳をこちらに向けてきていた。争いごとをしない、という真紅の言葉に、それだけの真剣さを持ってくれているのだろう。

真紅「・・・お父様は、私たちを創らずにアリスを作れば良かったのだもの」

上条「あ、なるほど」

得心したように、上条はうなずいた。

実際、そうだ。完璧なローザミスティカが手元にあるのに、わざわざそれを砕く必要はない。完全にすればアリスになれるのであれば、初めから完全なものでアリスという存在を作ればいいのだから。

真紅「そう。だから私はアリスゲームに依らない方法でアリスを目指す。それが正しいのかはわからないけれど、ね」

上条「・・・・・・」

真紅「・・・当麻? どうしたの?」

軽く目を見開き、驚いてますよー、という感じの表情を浮かべる上条に、真紅が眉をひそめた。

だが彼はそんな真紅の視線にかまうことなく、はー、と安堵のこもったため息をついた。

真紅「当麻?」

上条「あ、すまん。ちょっと力が抜けちまった」

真紅「・・・・・・」

そしていまだ眉をひそめたままの真紅を見て、パタパタと左手を振る。

上条「いや馬鹿にしたとかそういうんじゃなくて、よかったな、と思ったんだよ」

真紅「よかった?」

上条「ああ。だって真紅はわざわざ戦うつもりはないんだろう?」

真紅「ええ」

上条「俺もはっきりいって、誰かが誰かと揉めてるのなんか見たくないし、それが多少なりとも知ってるやつならなおさらだ」

真紅「・・・・・・」

上条「もし真紅がアリスゲーム? にノリノリで他の姉妹を探してデストローイってことを平気で言うやつだったら・・・インデックスには悪いけど、真紅とは笑って話をするのが難しそうだったからな」

そう言って、ああよかった、などと呟きながらカップに手を伸ばし、冷めた紅茶を飲む上条。

その様子にはまるっきりこちらの言葉を疑う風はなく、完璧に安心を楽しんでいるように見えた。


真紅「・・・ねえ、当麻」

上条「ん? なんだよ」

真紅「貴方、周囲の人からお人よし、とか、にぶちん、とか、単純、とか、馬鹿、って言われること、多いと思うのだけれど・・・どう?」

上条「ぐっ! な、なんでほとんど初対面の真紅がこの上条さんの被対人評価を的確に把握しているのでしょうか・・・!」

真紅「ふふっ、それはわからないほうがおかしいのだわ」

上条「だ、だからなんでだよっ?」

真紅「それは自分で考えなさいな。もっとも、私にこの言葉を言わせている時点で望み薄だと思うのだけれど」

上条「・・・・・・」

やけっぱち気味に紅茶を飲み干す彼を見ながら、真紅も自分のカップに手を伸ばした。

口元に持ってきた紅茶はもう冷めている。だがこれは、上条が他でもない自分に入れてくれたものだ。すべて飲んでから、温かいものを所望するのが礼儀というもの。

真紅(・・・私が紅茶で妥協を許すなんて、ジュンに会う前なら考えられないことなのだわ)

くすり、と笑う真紅。

その目の前で、上条が綺麗に空いたカップを下ろした。


上条「ところで」

真紅「? なに?」

上条「真紅はなんで今頃、こっちに寄越されたんだ? やっぱりインデックスがそっち側に頼んだからか?」

真紅「え?」

上条「ん?」

お互いに、変な顔。

やや沈黙があってから、真紅が首を傾げる。

真紅「ごめんなさい当麻。私には貴方が言っている意味がよくわからないのだわ」

上条「いやいやいや、だって真紅、いきなりここに着たじゃん。昨日、つーか今朝まで、こんなでかい鞄はうちになかったし」

真紅「それはそうだけれど・・・でも、インデックスというのは何かしら? 何かの目録?」

上条「は?」

真紅「え?」

上条「ちょ、ちょーっと待ってください。この上条さん、ちょっと混乱してきましたよ」

真紅「え、ええ」

真紅(・・・なんで敬語になるのかしら)


上条「えーと、真紅さん。貴女はインデックスさんの持ち物であり、そのインデックスさんが向こう側に送ってくれ、とか言って、こっちに寄越されたんではないのでせうか?」

真紅「違うわ。私を呼んだのは当麻、貴方の方だもの」

上条「俺ぇ!?」

真紅「そう。貴方はホーリエの問いに応えたでしょう。だから私がここに来たのよ」

上条「ほーりえ?」

真紅「ええ。巻くか巻かないか。貴方がそこで巻くことを選択したから、私はここにいるのだわ」

上条「・・・・・・」

上条の脳裏に、さきほどまでの自分の行動がリピートする。

朝起きて、顔を洗って、そんなことをしていたらインデックスが「ご飯食べに行って来る!」と泊まりにいくとは思えない言葉でスフィンクスを連れて出て行って、これ幸いと家事を片付けようと布団を干そうとして―――

上条「あ」

思い出した。あのときだ。

確かに自分は、あのうさんくさい手紙に書いてあったとおり『巻きます』に丸をして紙飛行機をした記憶がある。


真紅「心当たりがあるようね」

その表情を見て取って、真紅が言う。

上条「え、じゃあ真紅さん。もしかして真紅さんは・・・インデックスさんの関係者じゃない・・・?」

真紅「それはこちらが聞きたいことなのだわ。インデックス、というのは、貴方の口ぶりから察するに人名のようだけれど・・・」

問いかけの視線を向けてくる真紅を無視して、上条は頭を抱えた。

上条(またかーっ! またこんな感じで何かに巻き込まれたのか俺っ! いやでも巻きますに○したの俺だし、紙飛行機したのも俺・・・うあああ、お、俺が原因じゃんっ!)

上条(いやまてまて早まるな上条当麻! ここはしっかりと事実関係の確認をとらねば! またいつものように怒涛の面倒ごとコースにいくのはごめんですよっ!)

真紅「当麻? 大丈夫?」

心配そうな表情の真紅。

だが上条はその声色をとりあえず置いておいて、顔をぐっ、と振り上げた。

上条「真紅、ちょっと確認したいんだけど・・・」

と、上条が口を開く。


同時。

真紅「―――っ!」

真紅がいきなり、己の背後の窓に振り返った。

上条「!?」

突然の動きに上条が言葉を飲み込んだ。

真紅「危ないっ! 下がりなさい!」

真紅がソファーを蹴って上条に跳びついた。

上条「っ!?」

反射と、そしていままで幾多の修羅場をくぐってきた上条の経験が、彼の体を突き動かす。

上条の左腕が真紅の体に回り、その身を強く抱えた。同時に足で床を蹴り、背後に跳躍。

そしてその右手―――それが異能であるならば、あらゆるものを打ち消す力を宿した右手を握りこみ、己の目の前にかざす。

上条がさきほどまで座った位置から距離にして5歩分後ろに下がった、ちょうどそのとき。


破砕音!






上条家のベランダ。そこに面した窓が外からの衝撃に一気に砕け散った。





今回の書き溜めは以上、というところです。

しかし予想通りお話が進みません。
このままこの遅い投下で、しかもここで続けてもいいのか迷っています。

また、ちょっと上条さんや真紅さんのキャラが違っているような・・・。

とりあえず、今日はここまでとさせてください。
お目汚し、失礼しました。


室内に撒き散らされたガラスが、幸いにも上条のいる位置までは飛び散ってこなかった。

曲がりなりにも能力者を預かっている学園寮だ。何かの災害、もしくは能力の暴発で窓が割れることは想定されている。車のフロントガラスのように、多少の衝撃ではヒビが入るだけ。砕けても、ばらばらにあって周囲に飛び散らない材質のものが使われている。

しかし、その代わりというわけでもないだろうが、飛び込んできたものは、そこにいた。

黒色のドレス、黒色のヘッドドレス、黒色の靴。そしてその背に生える黒色の翼。

真紅の赤に対してなお、その身に纏った黒が映えるのは、その透き通るような見事な銀髪のせいだ。

真紅と同じような小さな体、真紅と同じような白い肌、真紅と同じような、整った顔立ちのそのモノは、真紅とはまったく違う妖艶な微笑を口元に浮かべ、真紅が先ほどまで座っていたソファーの真上に浮遊していた。


真紅「・・・水銀燈!」

上条の腕の中で、赤が小さく、しかし鋭く囁いた。

それに応ずるように、黒がその目を真紅に向ける。

「お久しぶり、真紅」

口元に浮かぶ妖しい笑みは変えないままに、艶味を帯びた声がリビングに響いた。

上条「な・・・」

上条の口からあっけにとられたような声が漏れた。

いきなりの窓の破壊。それと同時に飛び込んできた影。

問答無用で、敵である。少なくとも上条には窓ガラスを突き破って訪問してくる知り合いはいない。

約一名、ベランダにひっかかっていたという訪問者も過去にはいたが、その訪問者はいまは同居人である。

その敵と思しき相手が、真紅と見た目は親しげに挨拶を交わしている。上条が一瞬だけ戸惑うのも無理はない。



真紅「・・・やっぱり、窓というのは不便なものだわ。こうして容易に侵入を許してしまう。英国で窓税があったのも頷けるのだわ」

真紅が散らばる破片と、黒―――水銀燈とを交互に見ながら言った。言葉はおそらく、ただの軽口なのだろう。しかしその内容とは裏腹に、口調には緊張感が満ちている。

水銀燈「ずいぶんお久しぶりねぇ真紅。その男が新しい主人なのぉ? ・・・ふふ、相変わらず男が好きなのね。いやらしい」

くすくすと笑うその仕草は真紅のそれに通ずるところを持ちながら、しかし、まったく異なった破滅的な色を帯びている。

真紅「大きなお世話よ水銀燈。当麻は私のマスター。それ以上侮辱するなら、許さないわ」

ぎゅっ、と上条のシャツを、その小さな手で握る真紅。

それは不安に駆られた行動のようにも見え―――逆に、上条を少しでも守ろうとするような、そんな仕草にも見えた。


水銀燈「うふふふふ・・・怒った顔も相変わらず、不細工なのね」

真紅「・・・・・・」

真紅は挑発に乗らない。ただ沈黙を返すのみだ。

何も言わない真紅に、水銀燈は、ふん、と詰まらなさそうに鼻を鳴らす。

水銀燈「・・・つまんなぁい。あなたなら絶対に乗ってくると思ったのに」

上条「・・・おい、真紅。こいつが、お前の言った『姉妹』なのか?」

上条はわずかに腰を落とし、油断なく水銀燈と呼ばれた人形を見ながら問うた。

相手の黒い翼は羽ばたいていない。それでもなお空中に浮かんでいるのは、何かしらの能力の作用に違いない。

それに、窓ガラスは相手が入ってくる前に割れ砕けたのだ。何か飛び道具のようなものをいきなり飛ばしてくることだってあり得る。

慎重すぎて困ることはない。

魔術師との戦いで身にしみた教訓が、上条の右手を下げさせなかった。

真紅「そう。彼女の名前は水銀燈。私と同じ、薔薇乙女よ」

水銀燈「いやだわぁ真紅。自己紹介くらい、自分でさせてほしいものねぇ」

そう言って、水銀燈は真紅から上条に視線を移した。


水銀燈「はじめまして、人間。わたしの名前は水銀燈。誇り高き薔薇乙女の第1ドール」

上条「・・・・・・」

水銀燈「よろしくねぇ。そして、」

その言葉に合わせ、ぶわっ、と音をたてて、黒い翼が持ち上がる。

上条「!」

水銀燈「さようなら」

水銀燈の翼から、数条の黒い羽が飛び出した。

その鋭利な根元を前に向け、一直線に上条に向かう。

上条「うおっ!」

床を左に蹴る上条。一瞬遅れて、いままで上条の頭があった場所を羽が凪いでいく。


水銀燈「あら残念。その不細工な顔を、もっと見れるようにしてあげようと思ったのに」

羽をかわされた水銀灯が、ばさり、と再び翼を羽ばたかせた。左側に移動した上条に正対し、まだカップが載ったままのテーブルに着地する。

真紅「やめなさい水銀燈!」

水銀燈「おばかさぁん。なんでやめる必要があるのぉ?」

翼がさらに大きく羽ばたいた。

水銀燈「もうアリスゲームは始まっているのよぉ? わたしと会えばこうなることくらい、わかってたでしょう」

真紅「水銀燈!」

再びの射撃。

上条「くっ!」

対する上条は崩した体制を床に手をつくことで整えると、再び床を蹴る。

リビングからキッチンに飛び込んだ。置かれている棚に手を突き、さらに跳躍。キッチン中央付近で体制を立て直すと、右手を構えながら真紅に視線だけ向けた。


上条「真紅っ! 大丈夫か!?」

相手の放ってくる羽は、とてもじゃないが目でおえる速度じゃない。上条は反射だけで羽をよけているのである。

飛んでくるシステムはわからないが、おそらく魔術によるものだ。もしくは、能力か。いずれにしても異能には間違いない。

だが、それが異能であり、打ち消すことができると言っても、それと上条の防御行動とは繋がらない。

レールガンを上条が防御できるのは、その電気的特性ゆえに、右腕を突き出せばそこに集まるようになっているからに過ぎない。黒い羽に、そんな特性を期待するほど楽天家ではなかった。
何より、右手はひとつだけだ。同時に複数飛んでくる羽には対処できないのである。

真紅「ええ、私は」

水銀燈「人のことの心配をしている余裕があるのぉ?」

水銀燈の声が、真紅の言葉をさえぎる。

あわてて視線をあげる上条。テーブルから飛び立つように、水銀燈がこちらに文字通り『飛び掛って』きていた。

上条「!?」

上条の顔が引きつる。いつのまに取り出したのか、どこに持っていたのか、その両手には大振りの剣が握られていた。




上条「ちょっ、どこからっ!」

そんな抗議の声を無視して、一飛びで間合いを詰めてきた水銀燈の手が、剣を振り下ろした。

上条「くうおおっ!」

全身全霊で身を捻り、真上からの一撃を回避する。左肩を引き、半身になった上条。その左頬、左肩、そして抱えた真紅のドレス裾ギリギリを通って、剣先が床に傷をつけた。

回避成功。だがその代償は大きい。

元々上条に格闘経験はないのだ。けんか慣れしているせいもあって下手な格闘家よりもずっと荒事には強いが、だからと言って技術的に卓越しているわけではない。

無理な方向転換。そのせいで、上条の脚がもつれる。疲労ではない。元々、回避できるタイミンや体勢ではなかったのである。

バランスが崩れ、右手を床についた。

上条「っ!」

捻挫した手首が痛み、上条の体がこわばった。

それを見逃す水銀燈ではない。



水銀燈「うふふ」

ぞっとするような笑みを浮かべ、黒い人形が剣を構えた。バッターのように肩に担ぐ構え。位置関係は、上条から見て左斜め上。

そのまま斜めに振り下ろせば、真紅ごと彼の体は両断される。
右手は床についてしまい、すぐには振り上げられない。左手は真紅をかかえている。まさか彼女を盾にするわけにはいかない。

振り上げられた剣が下ろされれるまでの一呼吸。

上条(くそっ! なんかないのか! あれを防げるような・・・!)

上条は諦めない。視線をめぐらせ、現状を打破できるものを探す。

だがその努力をあざ笑うかのように。

水銀燈「さようならぁ」

上条の耳に、剣が振り下ろされる、ぶん、と小気味よい音が響いた。

書き溜め分終了しました。
再び書きために戻ります。

あんまり見直してないので、多少の誤字は見逃してやってくだされば助かります。

きっと新時代(笑)が到来したんだよwww


剣が振り下ろされる。

もしもここで戦っているのが上条だけだったならば、ここで彼の物語は終わっていただろう。

生身で刃を受け止める術はなく、剣が魔術の産物であったとしても右手を向ける暇はないのだ。

だが。

「させない!」

袈裟懸けが上条の体に到達する、その直前。

真紅が己の体に巻きついている上条の腕を掴み、その輪から滑り落ちるように下方に体を引っこ抜いた。

ちょうど逆上がりをするような形で、真紅の両足が弧を描く。

赤みを帯びた黒い靴。その裏側が、剣を握る水銀燈の両手部分を真下から蹴り上げた。


「!?」

まったく予想していなかった方向からの一撃に、腕ごと剣が持ち上がる。

「いまよ!」

「っだあああ!」

腕にぶらさがる真紅の声に応え、上条が右手で床を強く突いた。
床を押すその反作用を利用して、一瞬で腕を持ち上げる。動きは、そのまま右ストレートに変化した。

包帯を巻かれたコブシが、掬い上げるように水銀燈の左肩に突き刺さる。

「きゃあっ!」

大きな衝撃が走り、弾き飛ばされる水銀燈。真紅に不意を突かれたところに、さらなる一撃だ。

体勢制御をすることもできず、キッチンの壁に背中から叩きつけられる。

「くっ・・・!」

壁に寄りかかるように落下しかけ―――すぐにまた浮上する。

コブシはまともに受けたが、場所が良かった。ダメージはそう多くない。

それよりも『たかが人間』に一撃を受けたことの方が、よほどに彼女の精神にダメージを与えていた。

だが、精神的な動揺はむしろ、

(まだ動けるのかこいつっ!)

上条の方が大きい。

コブシは間違いなく当たったはずだ。剣の方はわからないが、水銀燈本人は間違いなく異能に属する存在だ。
幻想殺しをまともに受ければ良くて機能停止、悪ければ崩壊するはずである。

「くそっ!」

だが現実に相手は動き、戦闘は続いている。

上条は胸中の疑問を握りつぶし、再び右手を構え―――そして、気がついた。

右手には、いまだ包帯が巻かれていることに。

幻想殺しの大前提。直接触れること。それが、この状態ではできない。

さきほど真紅の平手のときに気がついていたはずなのに、完璧に失念していた。

しかしそれは無理もない。

平手の後は、真紅の存在にまつわる話を聞き、その直後にいきなりの戦闘である。おまけに相手は飛び道具を使ってくる存在だ。
敵から一瞬たりとも目が離せず、しかも飛ばしてくる羽は幻想殺しを試す気になれないほどの早さがある。

いまの今まで、右手に気を払う余裕などなかったのだから。


「当麻!?」

追撃、もしくは逃走のチャンスにいきなり硬直した上条に、真紅が焦りをたたえた瞳を向ける。

「くっ!」

上条は左手で再度真紅を抱えながら一瞬だけ包帯に目を向け―――そのまま、水銀燈に向けて突進した。

包帯の巻き方はかなりうまくなっている。結び目を適正に引っ張れば、片手でも、あるいは口ででも外す事が可能だ。
そして相手は間違いなく自分を殺そうとした相手。話し合いもほかの手段も、通じそうにない。

(でも、だからって、殺せるかよ・・・!)

それでも上条は、幻想殺しを振るいたくなかった。

相手が人格を持つ存在であること。そして何より、腕の中の真紅が姉妹と呼んだ相手だ。

さっきは余裕がなかったこと、左手がふさがっていたこと、利き腕が右だったことで殴りつけてしまったが、気がついてしまったいま、自らの意思でそれをするのは、やはり無理だ。

そういう意味では、包帯は巻かれていたのはむしろ幸運と言える。

今から倒そうとする相手が無事なことに内心で安堵する上条。

上条は痛む手首を無視して、コブシに更なる力を込めた。

まずは相手を戦闘不能にするしかない。その上で、真紅に説得してもらう。


キッチンは狭い。上条にして一足飛びで端から端まで移動できる。

水銀燈はまだ体勢を立て直しきっていない。構えたコブシを叩き込むだけの余裕は十分にあった。

しかし。

「このっ、人間めええええ!」

ギンッ、と音が聞こえるかと思うほどの鋭い視線を向け、水銀燈が吼えた。

同時に彼女の翼が、大量の羽を放つ。

「危ない!」

「!?」

真紅の声が響くが、突進している上条に回避の方法はない。

(―――っ!)

上条の目が、今朝掃除をしようとして壁に立てかけていたテーブルを捉えた。

折りたためない脚がこちらを向いており、それは左手側、ちょうど手の届く位置で―――

「うおおっ!」

踏み出した左足。そこを軸にして、上条は背面に体を回した。

突進の勢いがそのまま、回転の速度に変わる。

大きく弧を描いた彼の右手がテーブルの脚を掌握。回転の勢いを殺さず、引っこ抜くようにして正位置に回り戻る。

「!」

水銀燈と真紅の息を呑む音が同時に上条の耳に届いた。

視界を塞いでいるのは、テーブルの天板の内側。そこからいくつも羽の先端が突き出した。

だがそこまでだ。羽は分厚い板を貫通することまではできない。

「だあああっ!」

上条は止まらない。

素早くテーブルの脚を放し、床についた右足に体重移動。身代わりに浮き上がった左足で、天板裏の中央付近を真正面に蹴りつけた。

テーブルが真横に跳ね、いまだそこにいた水銀燈に叩きつけられる。

「きゃあああっ!」

バキン、とテーブルにヒビが入る音。それを聞きながら、上条は即座に身を翻した。

己の攻撃の結果がどうなったのか確認せず、キッチンからリビング、そのまま玄関に続く廊下に跳び出していく。

「当麻!? どこにいくの!?」

「部屋の中じゃ無理だ! 広いところに出ないと・・・!」

叫びながら廊下を抜け、脱ぎっぱなしにしていた靴に足を突っ込む。

そのまま蹴りあけるようにして玄関を出た。

人の気配はない。今日は連休初日。みんな街に出て遊んでいるのだ。こんな時間でも部屋にいるのは、インドア派か、街に出て遊ぶ金のない上条くらいのものだ。

だがそれは上条にとっても都合がいい。

相手は拡散する攻撃を使う。狭い室内でかわせたのは、運が良かったからにすぎない。もっとも上条の運は幻想殺しに遮断されているので、この場合は真紅の方の運なのかもしれないが。

そしてあの攻撃に晒されて、自分以外の誰かを護る余裕はないのだ。

「・・・・・・」

腕の中の真紅は上条の言葉に否と言わない。もう倒したのではないか、とも言わない。

彼女は知っている。

自分の知る水銀燈は、あの程度でなんとかなる相手ではないということに。

そしてその予想を裏付けるように。

「許さない! 許さないわ! 人間! 真紅っ!」

開け放したドアを、怒気に満ちた声が通り抜けた。

今回は以上です。
話進まない・・・というか戦闘終わらない・・・。

また書き溜めたら投下いたします。

あと、上の方でコテをつけろ、とのことでしたが、正直このペースなので、どうしたものか、とも思っています。
うむむ・・・。

怒声を背中に受けながら上条は走る。目指すのは廊下先にあるエレベーターだ。

確かに外に出た。だが状況はそれほど好転したわけではない。廊下にいたんでは、部屋の中とそれほど変わ

らない。いや、遮蔽物がないだけ、室内よりもまずい可能性がある。

上条が目指すのは屋上だ。あそこなら十分に動き回れるスペースがあり、落下防止用のフェンスがある。出

入り自由で誰か来るかもしれないが、何もないコンクリート打ちっぱなしに好んで人が来ることはまずない



走る上条。10秒もあればエレベーターに到着できる。

「と、当麻。少しで、いいから、ちょっと、話を・・・」

「ごめんわりぃすまんちょっと待ってエレベーターに乗るまでは!」

揺れているせいできれぎれに真紅がなにやら言ってくるが、残念だがいまは構っていられない。

小さく「左手の指輪・・・」とか聞こえた気がしたが、左手は真紅自身を抱えている。確認するのは無理だ


そして遠く見えていたエレベーターが近づいてくる。一度中に入れば水銀燈も追ってこれまい。何らかの力

で破壊するにしても、そこは能力者用の寮。耐久性も折り紙つきだ。

『魔女狩りの王』級の攻撃力でもなければ、すぐには突破できないだろう。

「よし!」

エレベーターの前に到達する上条。背後ではまだ水銀燈は出てきていない。テーブルサンドイッチが余程に

聞いたのか、それとも、室内を探していたのか。

ともあれ、上条は殴りつけるようにして上昇ボタンを押し―――

「!?」

上条は驚愕に目を見開いた。

上条の視線の先。なんの変哲もないエレベーターのボタン。
普段であれば何も意識せずとも押しこむことのできるボタンが、まったく動かない。

それは機械的に反応しないと言うわけではない。本気に近い力で押したにも関わらず、ボタンが1ミリたり

とも押し込まれていかないのだ。

(なっ・・・! こいつはっ・・・!)

その光景に、上条は覚えがある。ちょうどいまのように、エレベーターが使えなかったときと同じ状況。


三沢塾。


「ちくしょうっ!」

バン、とボタンを本当に殴りつける上条。だが帰ってくるのは、硬い硬い感触と、捻挫に響く衝撃だけ。

「どうしたというの?」

真紅が上条の顔を見上げてくる。彼女からしてみれば、エレベーターまで来たというのにボタンに八つ当たりをしているように見えるのだ。

「結界が張られてやがる!」

「結界?」

「ああ、コインの表と裏で―――」

言葉は途中で遮られる。

ドゴッと鈍い音が背後から響き、

「しぃんくゥゥゥ・・・にんげェん・・・!」

ゆらり、と黒い影が、上条の部屋のドアから姿を現した。

「・・・おいおい、ちょっと見ないうちにずいぶん派手になってますねぇ、あの人」

振り返った上条が口元に虚勢の笑みを浮かべ、歯を噛み締める。

「水銀燈・・・!」

その腕の中で、真紅が強張った声を出した。

黒い人形は、さらにその色を増していた。

背の羽は大きく開き、その面積を3倍ほどに膨らませている。さらに周囲には、彼女を護るように、無数の羽が散らばり、渦を巻いていた。

少し離れてみれば、黒い渦巻きのようにも見えただろう。

だが何より真紅の危機感を煽ったのは、

(人工精霊!)

水銀燈の目の前に浮いている紫色の光球の存在。

あれを出してきたということは、もはや水銀燈に遊ぶつもりがないと言うことだ。


「当麻、もう時間がないわ」

「ああ、わかってますよ真紅さん。あんな熱い目で見られたら、もうかなりテッペン入ってんだろうなぁ、ってことぐらいは」

軽口をたたく上条だが、内心はそんな余裕はまったくなかった。

状況は最悪だ。遮蔽物のない直線廊下の、完全な端。さらにやっかいなことに、コインの結界によって脱出口はなくなっている。

目の前には大層ご立腹な様子のクールビューティー。しかも、下手をすれば水銀燈とは別に魔術師だか錬金術師だかがいる。

仮に水銀燈がこの結界の主だとしても、核そのものが近くにあるとは限らない。水銀燈自身が核だったとしても、上条には彼女を破壊することはできないのだ。

だが真紅の言葉は、上条の軽口に応えるものではなかった。

「そうじゃないの。お願い、聞いてちょうだい」

「真紅?」

穏やかだが切迫した口調に、上条はつい、水銀燈から視線を外して真紅を見た。

真紅は上条をじっと見上げたあと、代わりとでも言うように、水銀燈に視線を移す。そのまま、続けた。


「水銀燈は本気よ。さっきまでは私が契約してなかったことと貴方がただの人間だったから、油断もあったようだけれど・・・もう完全に力を振るうつもりでいるわ」

「・・・・・・」

さっきまでのは本気じゃなかったのか、と上条は口元をさらに引きつらせた。

「このままじゃ私も、貴方も助からない。だから当麻。もしも貴方が自分と私を護りたいと思うのなら」

すっ、と真紅は、自分を抱える上条の左手に、小さな手を這わせた。

「えっ、なんだこれ」

上条は状況も忘れて、自分の指を見た。左手薬指に嵌っている、小さな指輪。

もちろん上条にこんなものをつける趣味はない。趣味はないどころか、買うようなお金もない。その上、こんな位置に指輪をつけるような相手もいないのだ。

つけた覚えのない指輪。それが、自分の指に嵌っている。

「誓いなさい。薔薇の指輪と、貴方の誇りにかけて。私のローザミスティカと、私の意志と、私自身を護ると」

「誓い?」

まるで場にそぐわない、厳粛な言葉が上条の耳に届く。

だが真紅は上条の疑問に近い声に応えず、

「そうすれば私は私の意思と誇りを持って、貴方を護るわ」

と、告げた。

すみません、上条&真紅を書いているものです。
基本的に筆が遅いことや表現が回りくどいこともあって、進行速度はこれ以上あがりそうもありません。

保守していただける方々の負担もありますし、板そのものの迷惑にもなりかねませんので、正直継続を迷っ

ています。
すべて書いてから投下すればよかったのですが・・・当初は落とすのに任せて無くなってしまえば仕方ないかな

、くらいで、しかもスレッドを見てから思いつきで書き始めたためにこのようなことになってしまいました。
申し訳ありません。

個人的にはスピードは遅くとも書いていきたい気持ちもあるのですが、どのようにするかは状況しだいかと

思っています。
この板は私物でもなく、そもそも私が立てたものでもないので。

案としては

・このまま落ちるのに任せてさらば。

・パー速行きでちょこっとずつ投下。

・くじけずここで

くらいかと思います。

ちょっとだけ様子を見て、もっとも多い意見の案でいこうと思います。
イライラとさせて申し訳ありませんでした。

案4:落として書き溜めて完結させてから改めて立てる

パー速行くと見るのめんどい

というか量産禁書目録のスレ落ちた?完結した?

>>250
量産型禁書スレは落ちた

現行

五和「しばらく泊まりこみで護衛します」上条「えっ?」
五和「しばらく泊まりこみで護衛します」上条「えっ?」 - SSまとめ速報
(http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1263173784/)
佐天「無能力者…?」」
佐天「無能力者…?」」 - SSまとめ速報
(http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1263183831/)
佐天「無能力者…?」」
佐天「なんならわたしのパンツ見るぅ?」  上条「うん」 - SSまとめ速報
(http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1263121241/)
最愛「だ、ダメです浜面・・・・・・ん・・・浜面ぁ・・・」
最愛「だ、ダメです浜面・・・・・・ん・・・浜面ぁ・・・」 - SSまとめ速報
(http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1262790222/)
サーシャ「第一の解答ですが、私は既に上条当麻と付き合っています」

クロス

湯川「御坂美琴…君は実に面白い」
上条「まきますか?まきませんか?」
上条「まきますか?まきませんか?」 - SSまとめ速報
(http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1263058951/)
リュウ「この学園都市にはオレより強い奴はいるだろうか……」
唯「暇人殺し・・?」上条「イマジンだよ!イマジン!」

佐天「無能力者…?」」
の2つ目が
佐天「なんならわたしのパンツ見るぅ?」
ですよね


     ___    お前みたいなゴミが翠星石の姉のはずないですぅ!
   く/',二二ヽ> 翠星石の姉は水銀燈一人だけですぅ!!
   |l |ノノイハ)) 
   |l |リ゚∀゚ノl|     バリバリバリバリバリ                   ,∵;,'゚; ̄`ヽ
   ノl/l_介」 Lr○ュ"_ l_ ___,.,;:''''""`'';;;...,,            - ̄‐― _,';;ノ '\@
 ト--l∪r=tl[((三三((三((=(;;'',       '',.:;,,,. '" .,.  .,,..; "'`,.,,  ‐―  ,';;,,';.゚'Д゚ノ かしらー!
 ヒ[冊冊冊ツヽ ̄ ̄!! ̄; ̄ll ̄||'':;:,..  ,...;:''"           - ̄‐―   ;;';kOi∞iミつ
   ミく二二二〉ミ                                       (,,( ),,)
                                                 じ'ノ'



         ___ #ミ   まだ生きてるですか?
       く/',二二ヽ>#  さっさと息の根を止めやがれですぅ!

       |l |ノノイハ))  ミ
       |l |リ ゚ヮ゚ノl|   ヾ ヽ ∵:  ガスッ
       ノl_||  ]]つつ++#####.゚;・.,'`ヽ:, ゴスッ
       ≦ノ`ヽノヘ≧    _';;;∵\@v                       (,,( ),,)
       ミく二二二〉ミ   'ヾ(i.゚'Д;;。;∵ か…し…   ,;;∵;;,i∞iミつ   じ'ノ'



         ___    トドメですぅ!!!
       く/',二二ヽ>
       |l |ノノイハ))ミ      ,,-----、 グチャッ!!
       |l |リ ゚ヮ゚ノl| ヾ. ヽ. |;::::  ::::|

       ノl_||  ]]つつ二二二|;::::  ::::|⊃', ',・.,'`
        ≦ノ`ヽノヘ≧ ヽ.∴;;..|;::::  ::::|;* @';;;∵                (,,( ),,)
      .ミく二二二〉ミ `.:,゙;~ヽ.''-----'';。,・';;;         ,;;∵;;,i∞iミつ   じ'ノ

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