【艦これ】触ってねえよテキサスクローバーホールド極めるぞ -残穢- (85)

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エンド・オブ・オオアライのようです ※連載中のコラボ作品(◆vVnRDWXUNzh3作)


艦これ×天華百剣 編

川д川 ウホウホ!!鎮守府に颯爽と登場した貞子ゴリラ、トランスフォームウホ!!
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【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第一章【天華百剣】
【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第一章【天華百剣】 - SSまとめ速報
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【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第二章【天華百剣】
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『艦天って略すとカロリー低い食材みたい』 幕間
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【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第三章【天華百剣】

【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第四章【天華百剣】
【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第四章【天華百剣】 - SSまとめ速報
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【艦これ】『Last one week & Epilogue』【天華百剣】
【艦これ】『Last one week & Epilogue』【天華百剣】 - SSまとめ速報
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SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1609594020

あ け お め
五年目も経てばそりゃ設定も変わるってだって当初こんなに続ける気無かったもん
そんな感じのリメイク、始まります。今年も頭ヤバい連中をよろしくお願いします


・提督の表記は『( T)』になっています。マスク超人です
・提督はドウェイン・ジョンソン並みのマッスルです
・新感染 ファイナルエクスプレスから四年。待望の続編『新感染半島 ファイナル・ステージ』元旦から公開中(ノルマ)
・モンスター?知るか!!俺らはムエタイスターに会いに行くんだ!!トニー・ジャー出演『モンスターハンター』三月二十六日公開!!(ノルマ)

・劇 場 で ト ニ ー ・ ジ ャ ー と 握 手 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !

( T)「ん?」


首筋に、風とも氷ともつかないヒヤリとしたモノが触れた気がした


( T)「?」


春先のまだ冷える時期。執務室の窓は全て閉め切っており、暖房を緩く効かせているにも関わらず
まぁなんかそういう事って多々あるんじゃないかな知らんけどっていう気持ちで、俺は手元のキン肉マンのコミックスに視線を戻した
今日は鎮守府Yeah!めっちゃホリディ(あやや)の日だったんで結構ダラダラしてる。夏曲だろとか細かいこと言うな


( T)「金剛ちゃんはさぁ」

金剛「ハイ?」

( T)「超人の中ならやっぱロビン派?」

金剛「uhh……」


一緒に漫画読んでた金剛はソファーから身体を起こして暫し悩み


金剛「ペンタゴン……」


割と納得はいく答えに落ち着いた


金剛「シンプルにカッコいいデース……」

( T)「わかる」


首筋の違和感をやんわりと忘れていきそうになったその時


金剛「ウェイ!?」


急に金剛が素っ頓狂な声をあげて飛び跳ねた

( T)「どうした?背骨でも折れたか?」

金剛「……?」

( T)「肺が爆発したのか?」

金剛「今……Ankleを掴まれた気がしマス……え?へ、ヘーイテートクゥ……触ってもいいけどサー……」

( T)「いや遠い遠い金剛ちゃんひょっとして俺のことラバーメン(ゴム人間)か何かだと思ってたりする?」

金剛「時間と場所を弁えなヨー……」

( T)「最後まで言っちゃうか……」


普段なら『嘘松ゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』で済ます所ではあるが、先ほどの首に感じた冷たさが嫌な現実味となって襲いかかる
金剛は右脚のショートブーツと……なん……長い靴下……何……ソックス……長い靴下を脱ぎ、何者かに触られたと思しき個所を確認すると


金剛「ヒッ!?」


短く悲鳴を上げた


( T)「どうした?足首が溶け始めたか?」

金剛「スルーしてたけどさっきから発言が怖すぎマース!!Please look!!」


ちょっと引くくらいの剣幕で脚を上げて見せつけてくる金剛。もしかしたら後で怖いお兄さんとか出てくるのかもしれない
だがこんな小粋なジョークを言ってる場合ではない事態が彼女の身に起こっていた。掴まれたらしき足首にはくっきりと


(;T)そ「うわっ……」


『手の跡』が残されていたのだから

(;T)「オバケの仕業じゃん……」

金剛「ここゴースト出るんデース!?」

(;T)「出るけど?」

金剛「ええええええええええええ!!!!!?????」


確かに『出る』のは間違いない。そもそも我が鎮守府は『そういう曰くのある廃村』に設立しているし、俺がここに来た当初は教室の幾つかはえれえ呪われてた気がする(掃除した)
しかしこうもハッキリと……『霊障』っていうの?生きてるモンの身に何かが起こるって事は無かった。金縛りとかも特に無く、ラップ音なんかも聴かなかったはずだ。チェケラ


( T)「うーん……」

金剛「ソ……ソルトぶち撒けるネー?」

( T)「塩でなんとかなるなら廃村になってねえと思うんだよな……」

金剛「OMG!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


うるせえ金剛だなジョジョの奇妙な冒険黄金の遺産でKOされたジョセフかよ
だが今後このような冷やかしに一々おっかなびっくりしてたら此方の身が保たないしクソうぜえ。問題が発生したなら後回しにせず早々に解決すべし。それこそがスタイリッシュな男のタシナミ

( T)「まぁ見てろって金剛。何事も知恵と暴力で解決出来るってのを教えてやっからよ」

金剛「暴力は解決って言わないデース……」


まずは情報収集だ。この村に暮らしていた元住民に話を聞くべく、俺はスマホを手に取った


金剛「……やっぱりテートクが触ったんじゃないデスカー?」

( T)「触ってねえよテキサスクローバーホールド極めるぞ。もしもし?Gさん(寺生まれ)います?」


幽霊より俺の手が伸びる方が怖いだろ






艦隊これくしょん ~艦これ~ Original Story


地獄の血みどろマッスル鎮守府




.





『触ってねえよテキサスクローバーホールド極めるぞ -残穢-』




.

( T)「はいはい、うん、わかった。はーい……え?うん、そこから十五分動かなかったら隠しエンディング発生する。うん、それが一番いいエンディング。ゴールデン・パスはクソ」

金剛「何のトークデース?」


世間話を交えつつ、廃村の元住民である寺生まれのGさんに今回の件を相談した所、何やら鎮守府もといこの周辺が面倒な状態に陥っているようだ


( T)「ふむ……」

金剛「どうでしタ?」

( T)「最近になってテレビゲームにハマったのは良いけど3D酔いが大変だって」

金剛「Gさんの近況じゃなくテ」

( T)「なんかぁ、ここ数年でこの場所が活気付いてきたから、オバケの類も湧きやすくなったんじゃないかって」

金剛「逆じゃないデスか?」

( T)「認知された方が興奮するらしい」

金剛「oh……変態デース……」

( T)「俺もそう思う」


Gさんが言うには、静かに寝ていた所を騒がしくしたから怒って起きたようなもんなのだそうだ。俺もキレる
元を断つのは難しく、かつての村人が住処を隣村に移したように、この場所を棄てるのが一番手っ取り早い解決方法とのこと


( T)「だからって引っ越しも出来ねえからな……」

金剛「にっちもさっちも行きませんネー」

( T)「バルサンでなんとかなるかな?」

金剛「Cockroachと同じ扱いで済む問題じゃないデース!!」


そりゃ、ぶっ殺せるだけゴキブリの方が遥かにマシだ。だって幽霊は既に死んでいるのだから殺しようがない。悔しい
いやだが『除霊』なんて言葉があるのもまた事実だ。気合と根性、そして暴力で退治する事も可能なんじゃないだろうか

( T)「やるか……ゴースト・バスターズ……」


( T) ポチッ


スマンホホ<Ghostbusters!!!!! If there's something strange In you neighborhood Who you gonna call♪


( T)「ゴースト・バスターズ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

金剛「何のソングデース?」

( T)「嘘じゃん……知らんの……ゴースト・バスターズ……カッ……」

金剛「テートク?」


なんか息苦しい。いやなんか重い空気で息しづらいとかそういうのじゃなくて直接的なやつ


(;T)「グッ……ゴ、カッ……!!」


金剛「テートク!?首に何か浮かび上がってマース!!」

(;T)「ナニ……ネコチャンノシッポ……?」

金剛「そんなキュートなものじゃ無いデース!!」


確かに、背後から縄で首をギュウと締め付けられているかのような圧迫感がある
さしものマッスルを誇る俺もこれじゃ持って精々五時間程度だ。あれ?充分じゃね?


金剛「Rope markデース!!」

(;T)「ハサミデキレルヤツ……?」

金剛「Invisible!!」


見えないのねはいはい呪い的なやつねわかるわかる死んじゃうどうしよう

(#T)「フンうぜぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」ブチィッ!!!!!!!!!!!!!!!!!

金剛「!?」


首に力を加えると、千切れた音と共に息苦しさから解放される。案外大したこと無かった
さっきの冷たい感触はこれが原因と見ていいだろう。こうも殺意マシマシで襲い掛かってくるとは良い度胸してやがる


( T)「こりゃ悠長にしてる場合じゃなさそうだなオイ」

金剛「相変わらずのアイアンメンタル&ボディデース……」


まぁ俺が襲われる程度ならこの通り撃退も容易そうだが、艦娘もそうとは言い切れない。中には極端に臆病な子(夕立)もいる
怯えは竦みを産み、竦みは大きな隙を産み出す。こうして命を狙ってきた以上、放置するわけにはいかない


( T)「とりあえず叢雲と、幽霊事情に詳しそうな奴に連絡……」


音楽をかき鳴らすスマホを手に取ると、『お約束』が待っていた


( T)「んーーーーーーーーーーーーー……」

金剛「どうしましタ?」

( T)「圏外」

金剛「オーマイ……」


現代っ子特攻の電波障害まで発生してやがる。Gさんと連絡取れたのは幸運だったな。となるともう一つ懸念が発生する


( T)「ドア開く?」

金剛「まさかそこまデ……Jesus……」


いつもはすんなりと開くはずの扉が、まるで勇次郎がホテルの部屋から出ようとした時にドアノブ向こう側から抑え付けられているあのシーンのように固められているようだ。なんて握力だッ!!!!!!!!!


金剛「これが……SEXしないと出られないRoomデスか……?」

( T)「やめな??????」


確かにそんな感じやけども

( T)「まぁ窓も開かんわな……仕方ねえ」

金剛「プランがあるんデース?」

( T)「出口が無いなら作れば良いじゃん良いじゃんスゲーじゃん」

金剛「作……テートク!?ウェイt……」

(#T)「ダラァッ!!!!!!!!!!」


扉の隣の壁をクソ力一杯蹴り飛ばすと、なんと言う事でしょう。人二人余裕で通れるような大穴が出来たではありませんか。匠の技が光ります


( T)「幽霊が常識人で助かった」

金剛「テートクは非常識デース!!」

( T)「ヘヘッ……」

金剛「褒めてないデース!!」


兎にも角にも、これで外に出れるようになった。後で叢雲にしこたま怒られる以外は問題ない。こわい。金剛の所為にしよう


青葉「なーにやってんです?」


すると、開けた大穴から通りすがりであろう青葉がひょっこりと顔を覗かせる。あ!!!!!!!!!ひょっこりはんだ!!!!!!!!!!!!!


( T)「宮下 聡」※本名

青葉「青葉です。だーれがひょっこりはんですか」

金剛「今のよく拾えたネー……」

青葉「付き合い長いですからね。このような奇行は今だに理解できませんけど。頭?」

( T)「おかしくない。常時まとも」

青葉「それで」

( T)「幽霊に閉じ込められたから壁を蹴破った」

青葉「力技ぁ。ホラー映画の見過ぎで幻覚でも見えたんじゃないんですかぁ?」

( T)「馬鹿野郎おめぇそれならおめえオイアレだよ……ジェイソンやらマイケル・マイヤーズやらハイター博士やらの幻覚が視えるに決まってらぁ」

青葉「偏りがすごい。あれ?首どうしたんですか?痣……みたいなの付いてますけど」


あからさまに信じられないといった表情の青葉も、ようやく俺の身に起きた異常に気がついたようだ。アホは理解が遅い


( T)「だからついさっき幽霊に殺されかけたんだって」

青葉「またまたぁ。金剛さんと特殊なプレイに興じてたんじゃないんですかぁ?」

( T)「信じらんねぇ話に直面すると低俗な発想に到るんだな。恥って知ってる?」

青葉「勿論!!司令官の人生の大半を占めているモノですよね!!」


( T)「スゾ……」

青葉「ッテミロボケ……」


金剛「どーして喧嘩になるんデース!!!!Calm down!!!!」

―――――
―――



青葉「なるほど、事情は大体わかりました」

( T)「嘘松ぅーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

青葉「喧嘩なら買いますよ?」


その後、金剛の足首や鎮守府の過去、謎の電波障害やGさんの話を諸々説明し、一先ず理解を得られた
ここで五分も使ってしまったのでとんでもない時間のロスだ。アホは理解が遅い


青葉「Gさんに解決策は教えて貰えたんでしょ?」

( T)「引っ越せってさ」

青葉「なんの解決にもなってないですね」

( T)「ワハハ」

青葉「何ワロ」

( T)「もう今日は寝て明日には全部なんとかなってる可能性に賭けるか」

金剛「ポディシブシンキング過ぎマース!!ゴースト・バスターズはどうしたんデース!?」


せやった


( T)「とは言ってもよ、何から始めりゃいいのかもわかんねえじゃねえか」

金剛「ソ……ソルト盛るとカ……」

( T)「塩を過信し過ぎ」

青葉「とりあえず見回りだけでもしとくべきでは?青葉も久々に面白い記事が書けそうなんで付き合いますよ」

( T)「記者キャラ気取るのやめてください」

青葉「記者キャラですけど???????」


アホの戦闘狂の言う通り、やはり行動しなければ埒が明かない
叢雲とも対策案を講じたい所だ。携帯も通じない以上、迎えに行く他無いだろう


( T)「叢雲どこに居るか知ってる?」

青葉「青葉は見てないですねぇ。虱潰しに探すしかないんじゃないですか?」

( T)「虱潰しって言葉なんか嫌だよな。汚い」

青葉「ブチッ、ネチョッって感じしますよね」

金剛「関係ないトークしてる場合デスか!!」

<ビャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!


金剛の言う通り、どうでもいい話に興じている場合ではなかった
廊下に響く甲高い悲鳴に、意識は一気にケツの穴のように引き締まる


(#T)「そこかぁ!!!!!!!!!ブッッッッッッッッ殺してやる!!!!!!!!!」ダッ!!!!!!!!!!!!!

青葉「抜け駆けは許しませんよ司令官!!幽霊だろうと何だろうと、一番首はこの青葉が頂きます!!!!!!!!!!」ダッ!!!!!!!!!!

金剛「ムラクモは!?」

(#T)「知るかそんなもん!!!!!!!!!先に殺せば全部解決じゃい!!!!!!!!!!!!」

金剛「結局暴力なんデスか!?待ってくだサーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイ!!!!!!!!」


金剛を置き去りに、先に行こうとする青葉を肘で牽制しながら辿り着くは視聴覚室
『使用中』の札がぶら下がっている引き戸を勢いよく開けて飛び込んだ


(#T)「ここk青葉「邪魔ですよ司令官!!!!!!!!!!!」痛ぇな押すなクソ重巡!!!!!!!!!!!!!」ドンガラガッシャァン!!!!!!!!!


「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!??????」

「わぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!?????????」


金剛「うるさっ……どしたんデース!?」


耳を劈く悲鳴を上げたのは、青葉に続く高練度駆逐艦娘の二人。一人は鎮守府一のアホでもう一人は鎮守府一の臆病者(カーレッジくん)


夕立「何ーーーーーーーーーーー!!!!怖いっぽいーーーーーーーーーーーー!!!!!」

時雨「ふざけっ……喧嘩なら余所でやってよ!!」


何型だっけ……なんとかつゆ……つゆ……麺つゆ型駆逐艦の二番目と四番目だ

不知火「司令?どうなさったのですか?」

(#T)「どうなさったのですかだと!?俺どうなさったのだろう!?教えてくれ不知火!?俺どうしたの!?」

不知火「存じ上げません落ち着いてください」


なんで俺は青葉に押し倒されて視聴覚室の床を転がってんだろう?やだぁ歳取ると色んなこと覚えてらんない


金剛「ここからScreamが聞こえたから駆け付けたんデスけど……もしかしテ、あれデスカ?」


背中に乗っかる青葉を押しのけてスクリーンの方向を見ると、ティム・カリー演じるピエロがケタケタと笑いながら此方に手を振っている
俺も大好きなスティーブン・キング原作のホラー映画、『IT』だ。但し後編、テメーはダメだ


不知火「ええ。夕立が臆病を克服したいと仰ったので、訓練がてら上映会を」

( T)「良いチョイスじゃん」

不知火「でしょう?」ドヤヌイ

青葉「本題。司令官、本題」

( T)「夕立ちゃん臆病治った?」

夕立「怖いものは怖いっぽいぃ!!」

( T)「オーケー頑張ったな少しずつ慣れていけば優勝間違いなしだ」

青葉「そうじゃなくて」

( T)「叢雲いる?」

時雨「これ以上いらない」

( T)「俺も」

青葉「そうでもなくて」

金剛「テートク、アオバ!!ムラクモこっちで寝てマース!!」


悲鳴は幽霊騒ぎとは関係が無かったが、探していた人物は見つかった。なんでこんなところで寝てんだろうか。薄暗くしてるからだろうか

叢雲「うっ……さいわね……何……」

時雨「提督とアホ葉がくんずほぐれつしながら部屋に入って来た」

叢雲「アンタには訊いてない」

時雨「酷じゃん……僕、美少女だよ?」

叢雲「私もよ……」

( T)「やかましいわ。叢雲、お休みの所すまないが緊急事態だ」

叢雲「襲撃?それとも本土侵攻?」

( T)「幽霊が出た」

叢雲「……」


目つきが急激に悪くなったのは、不知火が点けた蛍光灯の明かりに眼が眩んだワケではなさそうだ


夕立「オ、オバケ……?」

時雨「またまた御冗談を。今何時だと思ってんのさ。白昼堂々現れる幽霊なんているもんか」

叢雲「そいつにやられたの?首」

時雨「え?」

夕立「ぽい?」

不知火「首……ッ、縄痣……ですか?」


賢くて付き合い長い相棒は察しが良くて助かる。アホ共も見習ってほしい。無理か。アホだもんな


( T)「軽くな」

金剛「ギチギチデース」

叢雲「そう……首を絞めた程度で殺せると思われてたなんて、随分甘く見られたものね」

( T)「ああ全く腹立たしい」

青葉「普通死にます」

( T)「とにかく、実害がある以上放置は出来……」


蛍光灯がチカチカと点滅を始める。初めは遅いテンポだったが、段々とテンポを上げていく
何より不気味なのが、部屋を照らすその全てがコンマ一秒のズレもなく明暗を繰り返している点だ


夕立「ヒッ……」

金剛「Hory Shit……」

( T)「不知火」


不知火がスイッチを何度か押し直しても結果は一緒のようだ。電気代とく子さんか?????? ※仲間由紀恵
テンポは最高潮へと達すると、蛍光灯の限界が来たのか一斉に『バツン』と音を立て鳴りを潜めた
スクリーンでは相変わらず、ペニーワイズが此方に手を振っている。影響が出たのは照明だけか


時雨「……」


時雨「カメラどこ?」

( T)「ドッキリじゃないんだな、これが」


表情こそ無色な真顔だが、怯えは態度になってハッキリと現れており、夕立と共に金剛に抱きつき小刻みに震えている
叢雲、不知火はそこまで過剰な反応は無いものの、突如訪れた異変に警戒を示している。青葉も同様だ。俺は尻を掻いた


( T)「尻かゆ」

青葉「尻よりもっと気になるとこあるでしょ?」

不知火「早霜が喜びそうなシチュエーションですね……」


不知火は明かりを取り込もうと閉め切ったカーテンに近づく


( T)「ッ!!不知火、待て!!」

不知火「はい?」


咄嗟に呼び止めたのは、長年培った危機に対する勘と、ホラー映画の知識が働いたからだ
彼女の意識が此方へと向いた瞬間、窓の外から


『どさっ』


不知火「っ!?」


まるで屋上から、重たい砂袋を落としたかのような音が聞こえた

不知火「っ……飛び……」


戦艦も裸足で逃げ出す眼光が自慢の不知火も、突然の『自殺』らしきアクションに動揺を隠せない


( T)「罠だ。気にすんな」

叢雲「結構な無茶を言うわね……」


彼女に代わって俺が窓へと近づき、カーテンを掴む。隙間からは部屋に蔓延する気味の悪さとは無縁の陽光が差し込む
こう言うのは躊躇ったら負けだ。それに、奴らが行動を起こすのは『このタイミング』じゃない


( T)そ「明るっ!!」


一息に開け放つ。今でこそ太陽が出ているが、海の向こう側から嫌な色の雲が近づいて来ている
地面も確認したが、特に異常は見当たらない。やはり『音』だけの驚かしだった


( T)「……」


ホラー映画に置いて、このような仕掛けは『ジャンプ・スケア』の前振りだ。異常を確認し、何も無かったと安心した時に意識外からギョッと驚かす
外には何もない。ありがちなのは『カーテンの裏』などの死角からの襲撃だが、特にそれも無い。オタク特有の深読みか?だが意味も無くこんな事……


(;T)そ「ッ!!」


『死角』!!クソが何がホラー映画の知識だ!!この場にいる全員の意識が『窓』に向いているなら、襲いかかってくるのは『ここ』じゃねえ!!


(;T)「後ろだッ!!」


俺らの背後、『視聴覚室内』からじゃねえか!!


叢雲「っつ!?」

(;T)「叢k……」


俺から見て最奥にいた叢雲の背後から、長い毛を伴った『異形』が両手を広げ、今まさに覆い被さろうとする。だが


時雨「わぁあ!?」


投擲の天才が反射的に放った『仕込みクナイ』が、その影を貫いた


( T)「かっこいい!!」

夕立「かっこいい!!」

金剛「Cool!!!!!!」

青葉「チクショウ出遅れた!!」

時雨「え!?何!?」


日本語わからなくなったの?

叢雲「ハッ、ハッ……」

不知火「叢雲さん!!此方に!!」

叢雲「え、ええ……ありがとう」


腰の抜けた叢雲を不知火が支え、息絶えたように見える異形から遠ざける
事実、貫通した箇所からなんか汚い汁がドクドクと流れ出ており、正直息があるとは思えない。そもそも息してんのかこれ


( T)「一体だけとは限らん。警戒を怠るな」

時雨「提督が先に言っといてくれたらさぁ!!こっちもビックリしないで済んだんだよ!!」

( T)「あんっ、ゴメ」

時雨「何で喘いだ!!!!!!!」


正体と生存を確かめに、ピクピクと痙攣する『それ』に近づく。実際IT
身長はそう大きくはなく、小柄な少女と同レベル。長い髪とワンピースと思わしき衣服は使い古した油のようなもので真っ黒に染まっている

( T)「時雨、もう一本」

時雨「ええー……勿体無い……捨ててよね」

( T)「洗って返す」

時雨「捨 て て よ ね ! ! ! ! ! ! !」


投げ渡されたクナイを掲げ、いつでも迎撃出来るように備える。お約束なら触れようとした瞬間襲いかかってくるが、はたして

( T)「……」


すると、触れるまでもなく『それ』は、死体を焼いた時のような臭いを放ちながら徐々に溶けていく
身体はコールタールのような液体になり、液体は気化して天井に昇ってすり抜けていく。やがて、汚ねえ髪と服を残して、異形は消滅した


( T)「……」

叢雲「……死んだ?」

( T)「っぽいな……」

夕立「夕立のセリフ……」

( T)「ごめん。って今はそんな事どうでもええやないけ」


フゥと大きく息を吐きたかったが、気を抜いた瞬間また襲われる可能性がそうさせてくれない
金剛とアホとビビりはめちゃくちゃ安堵してた。人の気も知らないでおめえらよぉ


( T)「叢雲、怪我は?」

叢雲「指一本触れられてないわ。ありがとう時雨。恩に着るわ」

時雨「ま、まぁね?そこのノロマより優秀ってところ見せつけちゃったかな?」

青葉「えらいえらい」

時雨「提督、それ返して。アホ葉にそいつの後を追わせる」

( T)「……」

時雨「提督?おーい聴こえてる?耳に筋肉詰まったの?」


ここは存分に時雨を褒めてやる所だったが、異変がもう一つ残っていたのに今更気がついた
スクリーンでは、ペニーワイズが俺らに向かって手を振っている。『一体いつから』?


( T)「不知火、一時停止押したか?」

不知火「……いえ」


例えば、円盤の傷で映像に乱れが生じて、数秒間を繰り返し再生しているってのなら、溜飲も下がる
しかしスクリーンに映る映像は、九十年代特有の味のある画質でありながら、『滑らか』にその動作を行っている。まるで親しい人間に挨拶でもするかのように、自然に


青葉「司令官!!リモコン押しても電源落ちません!!」

( T)「だろうな……電源抜こうが消えねーだろうぜ。全員下がれ。壁を背にしろ」

クナイを構え、慎重にスクリーンへと近づく。我が国が誇るホラー・モンスターは画面から這い出てくるが、奴はどうだろうか
もしそうなら実に都合がいい。今しがた『ぶっ殺せる』事は確認済みだ。探す手間が省けてちょうどいい


( T)「……」


『それ』は、近づいてくる俺の姿を目にすると、ピエロらしいコミカルな動きでバタバタと足踏みをする
そしてポケットから『チョーク』を取り出すと、壁に向かって文字を書き始めた


『REDRUM』『REDRUM』『REDRUM』と、絶え間なく、狂ったように、一心不乱に


( T)「……クク」


こいつ、よくわかってんな。相当なキングファンと見た
やがて、壁一面にその『言葉』を書き終えた奴は、此方に指を差してゲラゲラと笑って


青葉「あ」


映像が途切れ、スクリーンは青一色に染まった


青葉「えと……こういう映画なんですか?」

金剛「REDRUM……赤いラム酒?どういう意味なんデース?」


映画を余り嗜まない奴にはピンと来ないだろうが、不知火ならこの意味が解かるだろう


不知火「司令……」

( T)「ああ、明確な宣戦布告らしい」


プロジェクターの電源を消し、スクリーンを巻き上げる。その裏側の壁には


夕立「ヒィッ……!!」

時雨「何……これ……」


REDRUMを逆さに綴った文字、『MURDER』がビッシリと刻み込まれていた

夕立「な、何……金剛ちゃん、何て意味……?」

金剛「『殺人』、デース……」

夕立「ぽぃぃ!?」


ITと同じくスティーブン・キング原作の作品『シャイニング』で使われた手法だ。不覚にも良い演出って思っちまった


不知火「他に異常は?」

( T)「今の所、これだけみたいだな。クソが誰が修理すると思ってんだこれ」

青葉「そんな文句は終わった後でいいんですよ」


知らぬ間に怨みでも買っていたのか、それとも、愉悦を目的とした行為なのかは知らんが、連中はここが何処かご存じないらしい
『殺してやる』と言うのなら、良いだろう。その戦争、受けて立とうじゃあねえか


( T)「叢雲、鎮守府全域に放送……いや、電気機器は全部ジャックされるかも知れん。この場にいる人員を三班に分ける」

叢雲「内訳は?」

( T)「ぐっちょっぱで」

叢雲「悠長」


\ぐーっちょーぱ!!!!!!ぐっちょっぱ!!!!ぐっちょっぱ!!!!!/


( T)「はい」


・青葉、夕立、不知火
・叢雲、時雨
・筋肉、金剛


( T)「完璧か……?」

青葉「何を以て?」

不知火「司令、ご指示を」

( T)「よし、青葉、夕立、不知火チームは寮。叢雲、時雨は工廠、訓練場方面に緊急招集を呼びかけろ。待機場所は食堂だ」

時雨「LINE飛ばせば?」

( T)「圏外だパズドラも出来ねえよ」

時雨「え……パズドラだよ?唯一ホーム画面に戻ってもバックグラウンドでダウンロードしてくれるパズドラだよ?」

( T)「電波通ってねえっつってんだろガンホーは全能じゃねえんだよ」

( T)「異常があった場合はその場から速やかに離れろ。俺が後で対処する」

青葉「え?こっちで何とかしますけど?」

夕立「やだ!!!!!!!!!!」

青葉「臆病克服したいんでしょ?こんなチャンス滅多にないですよ!!さぁさぁレッツゴー!!」※爆走兄弟

夕立「やだ!!!!!!!やだぁああああああああああ!!!!!てーとくさん!!!!!!てーとくさぁああああああああん!!!!!!」


全身で拒否を示す夕立を脇に抱え上げ、青葉は颯爽と視聴覚室から退出した


(;T)「不知火、頼めるか?」

不知火「お任せを……と、言いたいところですが、青葉さんの手綱は少々荷が重いですね」

(;T)「ああもう最悪青葉は放っといていい。夕立が限界そうなら先に引き揚げろ」

不知火「畏まりました。では、不知火もこれで」


軽く敬礼を行い、不知火も二人の後を追う。『荷が重い』と言ってはいたが、いざとなったら頭どついて引きずり回すくらいしてくれるだろう。信頼できる


叢雲「アンタらは?」

( T)「鎮守府内を見回るついでに軽空母の連中を迎えに行く。多分『たくちゃん』で昼間っから飲んでんだろう」

金剛「Why?」

( T)「龍驤や隼鷹の艦載機の発艦方式は陰陽術をベースにしてる。多分こう、結!!滅!!ってやってくれるかもしれない」

時雨「それ陰陽師とは関係ないよね?」

( T)「似たようなもんやろ」

時雨「適当じゃないか……」

叢雲「いつもの事。行くわよ時雨」

時雨「ちょっと待ってよ!!提督、それ返して!!」

( T)「あー……ちゃんと見極めてから投げろよ?人によっちゃマジで一撃で死ぬからな?」

時雨「わかってるよ。幽霊と青葉以外には投げないってば」

( T)「お前は本当に青葉が嫌いだなぁ」

時雨はクナイを受け取ると、慌ただしく叢雲の後を追う。視聴覚室には俺と金剛、そして異形の汚い残骸が残った


金剛「大丈夫デスカネ~?」

( T)「死にはせんやろ……どれ、ちょっと調べてみるか」


足下に広がる湿り気のある残骸に触れてみる。金剛は『Oops……』と呟いた。俺が言いてえよ


( T)「油が染み込んでんな……」

金剛「Oil?」

( T)「それに、細かい金属の粒子が混じってる」


指を擦り合わせると、極小の金属片がラメのような煌めきと、滑りの中にザラリとした触感を伝えてくる
服を摘まみ上げようとしたが、劣化が激しく水に濡らしたトイレットペーパーのように自重で千切れていく


( T)「服も溶けて始めてんな。髪も……ああ、ダメっぽい」


髪を摘まんでみると、ネチャリと糸を引きながら溶け切れる。腐ってやがる早すぎたんだって感じ


金剛「よく触れるネ……」

( T)「いやめっっっっっっっちゃキッッッッッッッッツイどうしよう泣きそうだ」

金剛「ラフメイカー」


マジで冗談じゃねえよこんなもん呼んだ覚えはない

( T)「拭くもんある?」

金剛「ハンカチなら……」

( T)「洗って返す」

金剛「捨ててくだサイ」

( T)「勿体無いじゃん」

金剛「捨 て て く だ サ イ」


なんだよ時雨といい金剛といい物に執着がないな。この顔になってからシミ抜き得意になったのに


( T)「後でジョイくんぶち撒けて掃除だな……ついでに塩も撒くか」


金剛のハンカチで指を拭いて、そろそろ出ようとした時、不意に新しい発見をした
今尚液状化していく髪の中。腐った水溜りに湧くボウフラのように、鮮やかな『青色』をした塗料が所々混じっている


( T)「なんだ……?」

金剛「もう触るのやめとくネー……」

( T)「逆に意地張ってもっと触りたくなっちまったぜ」

金剛「ジョータロー」


摘んでみようと指を伸ばすと、すぐさま油と溶け合って見えなくなった

( T)「うん……」

金剛「何かわかりマシタ?」

( T)「……『髪色』」

金剛「Hair color?」

( T)「いや……行くか」


分析に時間を割くのは後回しでもいい。今は解決の為に動くのが先だろう

―――――
―――



金剛「今の所……大きなTroubleは無さそうデスネ」

( T)「俺はToLOVEるが嫌いだ」

金剛「そう言う意味じゃなくテ」


今の矢吹の画力でブラックキャット描いてくれねえかなとは思う


金剛「テートク、さっきのHair colorはどういう事だったんデース?」

( T)「あー……」


言っちゃって良いもんかな。こいつらにとっちゃかなり悍ましい話になっちゃうが


( T)「……」

金剛「テートク?」

( T)「……アアラアラァ」

金剛「え?」

( T)「予定調和蹴散らすノイズ射るようにカッと睨む眼光!!!!!!!!忍び込んだガレージで夢みたあの頃と変わらぬハート!!!!!!!!!」※爆走夢歌

金剛「!?」


やめとこう。不確定事項をベラベラ喋っても不安を煽るだけだ。歌って誤魔化そう


( T)「そう今日と同じ明日なんて来ねえぜ俺敏感(乳首の話では無い)に爆走!!!!!!!!!!歌う心臓奏でるビート生きてる確かな証を!!!!!!!!!!」

金剛「急にどしたんデース!?」

( T)「(手にしては)失って(手にしては)失って、移ろう時代の中で人知れず涙した夜も!!!!!!!!!」

金剛「誤魔化すにしてもだいぶ強引デスヨテートク!?」


俺もそう思う


( T)「(全ては)ここにあって(全てが)ただ自分で、そうさまだ!!!!!!!!!行けるはずだろ!!!!!!!!!!」デッデッデッデゥデッ♪

―――――
―――



金剛「今の所……大きなTroubleは無さそうデスネ」

( T)「俺はToLOVEるが嫌いだ」

金剛「そう言う意味じゃなくテ」


今の矢吹の画力でブラックキャット描いてくれねえかなとは思う


金剛「テートク、さっきのHair colorはどういう事だったんデース?」

( T)「あー……」


言っちゃって良いもんかな。こいつらにとっちゃかなり悍ましい話になっちゃうが


( T)「……」

金剛「テートク?」

( T)「……アアラアラァ」

金剛「え?」

( T)「予定調和蹴散らすノイズ射るようにカッと睨む眼光!!!!!!!!忍び込んだガレージで夢みたあの頃と変わらぬハート!!!!!!!!!」※爆走夢歌

金剛「!?」


やめとこう。不確定事項をベラベラ喋っても不安を煽るだけだ。歌って誤魔化そう


( T)「そう今日と同じ明日なんて来ねえぜ俺敏感(乳首の話では無い)に爆走!!!!!!!!!!歌う心臓奏でるビート生きてる確かな証を!!!!!!!!!!」

金剛「急にどしたんデース!?」

( T)「(手にしては)失って(手にしては)失って、移ろう時代の中で人知れず涙した夜も!!!!!!!!!」

金剛「誤魔化すにしてもだいぶ強引デスヨテートク!?」


俺もそう思う


( T)「(全ては)ここにあって(全てが)ただ自分で、そうさまだ!!!!!!!!!行けるはずだろ!!!!!!!!!!」デッデッデッデゥデッ♪





_人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> 那珂ちゃん「汚れ無き光が闇夜を貫いて!!!!!!!この時が永久だと今命が叫んでる!!!!!!」 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄




(;T)そ「わぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!????????」

金剛「WAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!????????」





急にどこから現れたこいつ

金剛「ワッタ……心臓飛び出るかと思いまシタ……」


突然の那珂ちゃんアンブッシュに金剛は腰を抜かしてしまった。俺は大人なので辛うじて持ちこたえた。えらい
彼女が現れたのは音楽室と言う名の鎮守府カラオケボックスだ。防音を施している筈だったがよく聴こえたな


( T)「大丈夫か金剛ちゃん」

金剛「I'm fine……サンクス……」


_人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> 那珂ちゃん「ほら心の奥にいつも君が映るよ!!!!!!守るべき真実をただ、抱いていくんだ!!!!!!!!!理由なんてないさ!!!!!!!!」 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄


( T)「那珂ちゃん」


_人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> 那珂ちゃん「震える!!!!!!!!魂よ!!!!!!!!嗚ァ呼ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!」 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄


( T)「歌うま……那珂ちゃん聞いて?」

那珂ちゃん「何?」

( T)そ「うわぁ急に歌い終わるな!!!!!!!!!」

那珂ちゃん「二番も歌っていいの?尺足りなくなるよ?」

( T)「何の尺???????」

金剛「折角ですが遠慮しマース」

( T)「え……二番も聴きたい……」※那珂ちゃんのファン

金剛「後デ!!ナカちゃん、Troubleはありまセンカ?」

那珂ちゃん「置いてないじゃん」

金剛「ToLOVEるじゃなくテ」

那珂ちゃん「んー、大したことは起こってないかなー」

金剛「それを聞いて安心……」

那珂ちゃん「カラオケ機がえげつないレベルでバグってるのを除けばね……」

金剛「出来ないデース……」

( T)「起っとるやんけ。ちょ、見せてみ?」

那珂ちゃん「てーとくに直せるのー?」

金剛「ただのBugじゃないかもしれないんデース」

那珂ちゃん「え?どゆこと?」


音楽室に踏み入ると、大井と北上、そして五十鈴がカラオケ機を弄っていた
スピーカーからは先ほどまで歌っていたであろうリンキン・パークの名曲『Faint』がノイズと共に飛び飛びで流れ出し
ディスプレイにはカラオケ特有の謎PVのワンシーンが繰り返し再生されていた。さっきのITの件もあって少々不気味だ。製作者は何を考えてレモンを皮ごと丸かじりする男のシーンを撮ったんだろうか


北上「あ、てーとく」

大井「げ、提督……」

五十鈴「ゲゲゲの提督?」

( T)「俺は水木しげる先生の何なんだよ。ありがとうって見つめたくて貴方を伝えるけど案件か?」

那珂ちゃん「それ逆」

( T)「金剛、出入り口確保」

金剛「OKデース」


金剛を出入口で待機させ、逃げ道の確保と死角のカバーをして貰う
物々しい雰囲気を察したのか、五十鈴の目つきが鋭くなった


五十鈴「敵襲?」

( T)「みたいなもんだ。ただ少し事情がな。これはどのタイミングでぶっ壊れた?」

五十鈴「そんなもの触ってる場合じゃ……」

( T)「関係してるかもしれねえんだよ」

北上「ちょっち待ちなよ。話が見えないよー?」

( T)「幽霊が出た」

大井「は?」

( T)「ほら!!!!!!!!!!!大井っちはすぐ突っかかる!!!!!!!!!!!!!!!」

大井「大井っちって呼ぶな。金剛さん、こんなのに付き合わされているの?」

金剛「今回ばかりはテートクも大マジデース……」

( T)「いつも大マジじゃい。なんなら絞め殺されかけたからな」

那珂ちゃん「首を絞めた程度で殺せると思われてたの!?」

( T)「びっくりだよなぁ」

北上「普通死ぬよ?」


プラグを引きぬくが、画面とスピーカーに変化はない


五十鈴「ちょっ……え?嘘でしょ?」


『電源』が断たれたにも関わらず、映像と音楽は流れ続ける。こりゃいるな完全に


(;T)「出……ッ!?」


部屋から出るように指示しようとした途端、スピーカーから流れ出す大音量の『ハウリング』が鼓膜の奥を痛めつける


那珂ちゃん「きゃあッ!?」


その場にいた全員が、思わず俯いて耳を塞ぐ


(;T)「っあ……」


聴覚を奪われ、身体は防御反応によって『硬直』。頼りになるのは視覚だが、『死角』から襲い掛かってくる以上期待は出来ない
いや、その為の『金剛』だ。耳の鋭い痛みで痙攣する瞼を見開き、彼女を確認する。すると


金剛「――――――ッ!!!!!」


俺ではなく『その奥』を、恐怖の形相で見つめていた

(;T)「っ……ワンパターンでッ」


妨害こそ場に合った方法を取っているが、『襲い来る場所』がわかれば大した脅威ではない


(#T)「助からァッ!!!!!!!!!!!」


トラース・キックで背後を蹴り上げる。手ごたえは


(;T)「くっ……!!」


『無い』。黒い影は身を翻し、俺の頭上を飛び越えた。向かう先は――――


北上「やば……」


あっ大丈夫だわ勝ったわ


大井「北上さんにィッ!!!!!!!!!!」


大親友の危機に、大井っちは俊敏な反応を見せる。その影が何かもロクに確認もせず鷲掴み


大井「近づくんじゃッ!!!!!!!!!!!!!!」


壁に叩き付け


大井「無いわよォッ!!!!!!!」


トドメと言わんばかりに膝蹴りを決めた


大井「蹴り殺してやるッ!!このド畜生がァーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!」

(;T)「やめろォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!ヴァニラ・アイスッ!!!!!!!!」


部屋どころか建物が壊れるからマジでこれ以上はやめて欲しい

那珂ちゃん「ストップストップストーーーーーップ!!!!!」

五十鈴「なんか汁漏らしてるわよ!!汚いから提督にバトンタッチしましょ!?ねっ!?」

( T)「どういうこと?汚かったら俺に丸投げすんの?」

五十鈴「今ので決めてたら大井もキレなくて済んだのよ!!!!!」

( T)「マジごめ。北上、聞くまでもないけど平気か?」

北上「お……おっけおっけ……大井っちのお陰でなんとか……ありがとね、大井っち」

大井「ハァー、ハァー……ご無事なら、何よりです……って」



大井「いやああああああああああ!!!!!何なのよこれえええええええええええええええ!!!!!?????」



那珂ちゃん「今!!!???」

( T)「何だかんだと言われたら!!!!!!!!!!!」

北上「答えてあげるが世の情けー」

五十鈴「ふざけてる場合じゃないでしょ!!ていうかくっさ!!!!!!無理!!!!!!早く出るわよ!!!!!!」


悪臭に耐え切れず、カラオケメンバーは次々と退散する。俺は一応最後まで残り、『それ』の原型が無くなるまで見届ける事にした
さっきのもそうだが、俊敏な割に耐久度は低いらしい。大井っちの蹴りがえげつねえ威力だったってのもあるだろうが、ウチの連中なら反撃も容易そうだ


金剛「ゴホッ、酷いスメルデース……」

( T)「これで廃油せっけんとか作れんもんかな」

金剛「クレイジー過ぎマース!!!!!どーいう神経してるネー!!!!!!!!!」

( T)「冗談だよ……ん?」


電源の繋がってないディスプレイとスピーカーは、『それ』の状態を表すかのように光と音を徐々に弱めていく。元に戻るのも時間の問題に見えたが
僅かに、微かに、『声』のようなノイズが混じっているのに気づいた。何かのメッセージかもしれないし、ひょっとしたらイタチの最後っ屁の可能性もある

( T)「……」


『豐医?縺?ス樞?ヲ 縺帙a縺ヲ譛?譛溘?窶ヲ譛ャ蠖薙?莠銀?ヲ』


( T)「……」


聞き取れ……聞き取れんわなんやこれ。男性とも女性とも取れない声色が、雑踏のざわめきのように入り混じって意味をかき消している
声は声だが、『言葉』ではない。折角見つけた変化だったが、『それ』の消失と共に事切れ、ただの電気の通ってない電化製品へと戻った


金剛「スペル……デスカ?」

( T)「どうだかな……どっちかって言うと、捨て台詞みてーなもんだと思うが」


何を吐き残したかは知らんが、死んでくれたのなら此方から言い返す言葉はない。『残滓』を一瞥し、部屋を出た
廊下では大井っちが吐きそうな顔して俯いている。まぁ得体の知れない半液状のバケモンに触れりゃ誰しもこうなるか


北上「大井っち大丈夫?飴ちゃん舐める?」

大井「い、い、今は、何も口に、したくないです……」

五十鈴「あんたよく頑張ったわよ。偉い偉い」

( T)「診せてみろ」


相手は『幽霊』。憑かれた可能性もある。オカルトは専門外だったが、幸いにもここには『変化』に目ざとい艦隊のアイドルがいる
脈は早いが呼吸は正常。青ざめた顔色も一時的なモノだろう。後は『彼女』に確認を取るだけだ


( T)「那珂ちゃん、見た感じどうだ?」

那珂ちゃん「見た感じ?」

( T)「パッと見でいいから」

那珂ちゃん「えーっと……珍しく疲弊した大井ちゃんって感じだけど……」

大井「珍しくないわよ……」

北上「そんなことないよ?」

大井「珍しいわよ……」

( T)「手首に油でも差したの??????」

金剛「このキタカミイズムは紛れも無くオオイっちデース」


那珂ちゃんが『変化なし』と判断を下したなら問題は無さそうだ
そもそも、取り憑くのなら絞め殺そうとする前にやってても可笑しくはない。杞憂のし過ぎか

( T)「とまぁ、こういう謎の気持ち悪いのが鎮守府に発生してるから、解決するまで食堂で待機しといてくれ」

北上「ほーい了解ー。大井っち、肩貸すよー」

大井「ああ……北上さんの優しさと温もりが五臓六腑に染み渡ります……」

北上「あたしゃ味噌汁かい?」

( T)「草」

五十鈴「手伝えることある?あっても手伝わないけど」

( T)「ほんなら言うなや」


まぁ食堂へ向かう途中に誰か見つけたら一緒に連れて行って欲しいが、一々指示しなくともそれくらいするだろう


金剛「ナカちゃん、スマホをチェックしといてくだサイ。電波が回復すれば、解決のサインデース」

那珂ちゃん「わかったよ。気をつけてね二人とも!!」

金剛「テートクがいるのでノープログレムネー!!」

( T)「まだ俺一体も退治してないけどな」

那珂ちゃん「そうだ!!塩持ってくるね!!」

( T)「名案じゃん!!やっぱり艦隊のアイドルなんだよなぁ!!」※那珂ちゃんのファン

金剛「ワタシの時と反応が違いマース!!」

那珂ちゃんの提案を丁重にお断りし、四人を見送って『たくちゃん』へと急ぐ俺たち特攻野郎Aチーム助けを借りたい時はいつでも呼んでくれ
途中、何人かと遭遇し、事情を話して食堂へと向かわせる。『それ』を目撃していない奴らは揃いも揃って『またこいつ頭おかしなったんか』みたいな目で見てきた。泣いた


( T)「ほんとだもん……トトロいたもん……」

曙「泣かないでよ気持ち悪い……クソ提督……」シネ

( T)「お前今死ねっつったか?」


ご覧の有り様だ


( T)「全くどいつもこいつも」プンスコ

金剛「テートクが逆の立場ならDoしてマス?」

( T)「たっぷり五分は腹抱えて爆笑する。たっぷり!!」

金剛「リンゴは木から遠い場所に落ちないネー……」

( T)「リンゴがどうした?」

金剛「『カエルの子は』って意味デスヨ」


俺はまた一つ賢くなった


( T)「さーてご到着っと」


『居酒屋たくちゃん』。鳳翔さんの趣味で不定期開店される小料理屋。名前の由来は適当だ
小さな厨房とカウンター席を設けたその一室は、呑兵衛達の憩いの場として親しまれている。俺は下戸なんでジュースかお茶飲んでる
まだ日は高いにも関わらず、中からは賑やかな声が響いてくる。昼間から呑む酒は格別と良く聞くが、俺からしてみれば朝だろうと夜だろうと毒は毒だ。酒呑みはみんな変態


金剛「ここまでの傾向だと立ち寄った場所で必ずエンカウントしてマスガ……」

( T)「探す手間が省けて結構じゃねえか」

金剛「ほーんと頼もしいネー」

( T)「照れる。お邪魔しまーす」ガラッ

引き戸を開けると、そこには衝撃の光景が広がっていた


天龍「ハハハハハ!!すげえぞ!!どんどん液体になっていきやがる!!面白えな!!ハハ!!」

龍驤「ファーーーーーーwwwwwなんやそのけったいな生きもんw」

隼鷹「ダハハハハハハハ!!!!!!ドロッドロっっっっっっっっw」


壁際で天龍に腹らしき部位をボコスカに蹴り飛ばされている『それ』の姿だった


( T)「ッスゥーーーーーーーーーーーーーーーーー……」

金剛「相手が……悪かったデスネ……」

( T)「行くか……」


嬲っていいならガキの姿をした深海棲艦ですら嬉々として命乞いするまで痛めつけるアレの前に現れるとは運のない。思わず同情してしまいそうになる
関わるのも嫌だしとっとと退散しようと戸を閉めようとした時、厨房から駆け寄ってきた軽空母に引き止められてしまう


鳳翔「まま、ままままま……」

( T)「落ち着け鳳翔さん。話す、話すから離して」


危うくまともなのを放っといてしまうところであった

鳳翔「い、い、いきなり冷蔵庫から、あ、あ、あれが……」

金剛「そ、それはかなりショッキングなサプライズネー……」

( T)「デーボかよ。天龍!!掃除が面倒だから止めろ!!」

天龍「あー?んだよ、支援艦隊ようやくご到着ってか?残念ながらこの通り、お愉しみは死にかけだぜ?」

( T)「フフッ、怖い。大井っちがどんだけまともかよく分かる」

龍驤「肝臓もオツムもイカレの天ちゃんやからなwwwwwww」

隼鷹「ヒャッ!!!!!ハッハッハッ……あー臭い」

天龍「喧嘩売ってんのか?」


天龍は顔に返り血のように飛び散った油をおしぼりで拭き、空のロックグラスにウィスキーをドボンドボンと注ぎ入れて喉を鳴らして呑み干す
俺それ飲んだこと一回も無いんだけど、そうやって一気に飲むもんとちゃうやろ


天龍「不味」


不味いなら呑むな


鳳翔「なな、なんですか……?」

( T)「オバケだ」

鳳翔「お盆はまだ先ですよ……?」

( T)「その筈なんだけどなぁ。はいはい飲み会お開きだ!!ちょっと手伝ってもらうぞ!!」

龍驤「場所変えるで!!」

隼鷹「よし来た!!」


酒クズ軽空母共は酒瓶とツマミを抱えると、酔ってるとは思えないくらい俊敏に逃げ出した。こいつらホンマ……


(;T)「あいつらホンマ……」

金剛「追わなくていいんデース?」

(;T)「大本命は残ってるからな」


カウンター席の奥で突っ伏して眠る揚陸艦。多分、俺らの中で最も怪異に明るい人物だ

( T)「あきつ、起きろ。目覚めた心で走り出せ」※未来を描く為

あきつ丸「んえ……う、おはよう……ございます……」


頬に涎と突っ伏した痕を残しながら、ボヤリとした眼で起き上がったあきつ丸は、俺の顔を見て咄嗟に口元を袖で拭った


あきつ丸「た、大変失礼致しました!!」

( T)「おう天龍、見習えやこの真面目さ。初対面でニヤニヤ小馬鹿にしてきたお前とは大違いだ」

天龍「オメーその後新人研修と称してボコボコにしやがっただろ」

( T)「まさか『打首』(笑)があそこまで弱いとは思ってなかったんでな」

天龍「なら今試すか?お?」

( T)「軽巡筆頭になってもビッグマウスは治らねえみたいだな?表出ろや」

金剛「テートク!!」

鳳翔「天龍!!」

天龍「今のはこいつが悪い」

( T)「ごめん」

あきつ丸「あ、あの、ご用件……うっ、臭い……誰か独特の嘔吐でもしたのでありますか?」

( T)「独特の嘔吐」

天龍「あー、それこれ」


あきつ丸は横たわる『それ』と、それの体液で汚れた天龍を交互に見比べ


あきつ丸「何食ったらこんなゲロ出せるのでありますか……?」


思わず笑っちゃうような返答をした

あきつ丸「殴ることないでありましょう……」

天龍「うるせえ」

(;T)「てめえ……なんで俺まで……」

天龍「そこに居たからだ」


あきつ丸は頭に拳骨、そして俺は理不尽な腹パンを受けた所で、金剛のジトっとした視線に気づき説明を始める
酔いと寝起きでボヤッとした頭で理解出来るか不安だったが、話を進めていく内に顔付きは神妙なものへと変わっていった


あきつ丸「なるほど……今まで何も無かったのが不思議なくらい妖気に満ちておりましたが、ここに来てようやくと言ったところでありますな……」

( T)「世界不思議発見って感じ」

天龍「じゃあ何だよ。これからこんなのがウジャウジャ湧いて出てくるってのか?」


天龍が親指で指す先には、既に残り滓程度にまで消失した『それ』の死骸
その問いかけに、あきつ丸は首を振って否定した


あきつ丸「いえ、恐らくこの異形は残り少ないと思われるのであります。一、二体が関の山でありましょう」

金剛「わかるんデース?」

あきつ丸「これほど『濃い』と、気配も感じ取れやすいのであります」

( T)「すげーなオイ。救世主じゃん。メシアって呼ぼう」

あきつ丸「救世主!?そ、そんな畏れ多いのでありますよ!!じ、自分のような新参の不肖者には勿体無いであります!!」

( T)「メーシーア!!メーシーア!!」

天龍「サタンみたいに呼ぶな」

あきつ丸「え、えへへ」


満更でもなさそう

鳳翔「では、残りを退治してしまえば解決なのでしょうか?」

あきつ丸「この異形に関してはそう言って差し支えないかと」

天龍「なんだ楽勝……他にもいんのか?」

あきつ丸「え?はい」


まるでここにいる全員が理解している前提で話をしていたかのように首を傾げる
他にもこんな存在がいるなんて聞いちゃいないし見ちゃいない筈……いや、聞こえないし見てもいないが、『体験』はしている


(;T)「『これ』は、別物か?」


『首の締め痕』を摩りながら訊くと、あきつ丸は頷いた


(;T)「参ったなこりゃ……倒せる?」

あきつ丸「うーん……自分も幽霊を相手取った前例はないでありますから……」


『それ』はともかく、司令室の幽霊は見えなかったし存在も気配も感じなかった
実体のある相手ならまだしも、霧や霞のように掴み所の無い奴なんてどうやって殺せばいいんだ


鳳翔「あの、それって『幽霊』ですよね?」

金剛「YES、姿形もありませんデシタ」

鳳翔「でしたら、艦載機の発現方法を応用できませんか?陰陽師タイプの空母は型紙を媒体に艦載機の『物体霊』を憑依させ、実体化させますので可能ではないかと」

( T)「は?天才じゃん。流石元ナイt」

鳳翔「ンンッ!!」


うっかり口が滑りそうになったのをわざとらしい咳払いで堰き止められる。危ない危ない
あきつ丸を窺うと、考える素振りを見せている。しばし頭を悩ませた後


あきつ丸「やって……みるであります。龍驤殿と隼鷹殿、そして雲龍殿にもご協力頂きましょう」


鳳翔さんの案は採用となった

( T)「決まりだな。よし、鳳翔さんと天龍は逃げ出したアホ二人を執務室まで半殺しにしてでも連れて行ってくれ」

鳳翔「畏まりました」

天龍「勢い余っちまうが良いか?」

( T)「良いワケねーだろアホかお前」

金剛「テートクが余計な事言うからネー」

あきつ丸「自分は?」

( T)「俺らと来い。とりあえず残りの『それ』を始末しつつ雲龍を迎えに行く」

あきつ丸「了解であります!!このあきつ丸、誠心誠意御勤めさせて頂く所存であります!!」

( T)「えらい!!!!!!!」

あきつ丸「ふんす!!」フンスゥ


やる気満々満足一本満足のあきつ丸を新たに加えた俺たち特攻野郎Aチーム。イニシャルもAなので実際エミー・アマンダ・アレン
たくちゃんを後にし、次なる異形が待つ場所へと足速に向かう。急がんでも勝手に殺してる可能性の方が高い気がするけど

( T)「決まりだな。よし、鳳翔さんと天龍は逃げ出したアホ二人を執務室まで半殺しにしてでも連れて行ってくれ」

鳳翔「畏まりました」

天龍「勢い余っちまうが良いか?」

( T)「良いワケねーだろアホかお前」

金剛「テートクが余計な事言うからネー」

あきつ丸「自分は?」

( T)「俺らと来い。とりあえず残りの『それ』を始末しつつ雲龍を迎えに行く」

あきつ丸「了解であります!!このあきつ丸、誠心誠意御勤めさせて頂く所存であります!!」

( T)「えらい!!!!!!!」

あきつ丸「ふんす!!」フンスゥ


やる気満々満足一本満足のあきつ丸を新たに加えた俺たち特攻野郎Aチーム。イニシャルもAなので実際エミー・アマンダ・アレン
たくちゃんを後にし、次なる異形が待つ場所へと足速に向かう。急がんでも勝手に殺してる可能性の方が高い気がするけど

―――――
―――



衣笠「あれ?珍しい組み合わせだね」

( T)「ヤニカス」

衣笠「出会い頭に言う事がそれ!?」


あきつの『センサー』に強く引っかかった娯楽室へと向かう道中、寝たばこでボヤを起こして我が鎮守府へと左遷された衣笠と出くわす
俺の言葉にこいつは憤慨したが、コンスタンティン並みの本数を吸う奴にはお似合いの呼び名だと思う。黙れ、何も違わない。私は何も間違えない


( T)「どうせ言っても実物見るまで信じねえだろうから詳細は省くが食堂で待機しろ。説明なら那珂ちゃんか誰かしてくれるだろうし」

衣笠「聞かせてよ怖いじゃん……」

( T)「幽霊が出た」

衣笠「怖がって損した」

( T)「もう全部金剛ちゃんが話して俺金輪際喋らない」

金剛「拗ねないノ」

あきつ丸「こればかりは目撃した方が手っ取り早いでありますな……」

衣笠「え?マジで言ってんの?大丈夫?疲れてなぁい?」

( T)「疲れてるよ……」

金剛「Bad Surpriseの連続デース……」

衣笠「ええ……元気が取り柄みたいな二人がこんな憔悴する事あんの……?」

あきつ丸「立て続けに怪異に見舞われれば誰しもこうなるでしょう。所で衣笠殿は今まで何方へ?」

衣笠「娯楽室で戦艦メンバーとダーツしてたよ。で、今さっきタバコ休憩してたとこ。提督、娯楽室も喫煙可能にしてよ」

( T)「残念ながら世界は愛煙家中心に回ってねえんだよ」

天龍は(頭ヤバいから)ともかく、比較的まともな大井っちでも撃退出来たのだから、戦艦連中が集まってる娯楽室もあまり心配せずとも良さそうだ
なんなら一服しても余裕じゃないだろうか。タバコを吸う、怪異も撃退する。両方しなくちゃあならないってのがヤニカスの辛い所だな。覚悟はいいか?俺はできてる


( T)「じゃあもうパッと行って確認して大丈夫そうならそのまま放置でいいか……」

金剛「どんどん警戒度が下がっていくネ……」

衣笠「ねぇねぇ、それって割と怖い?」

金剛「ニ、三日はナイトメアに悩まされそうなビジュアルしてマース」

衣笠「あー……そっかぁ……」

あきつ丸「何か問題でも?」

衣笠「いやね、ウチのご長女は結構そういうの苦手な方だからさ……」


のんびりしてる場合じゃなかった


(;T)「急ぐぞ!!鷹さんにキモいもん見せるわけにはいかねえ!!」

あきつ丸「ど、どうなるのでありますか!?」

衣笠「過保護な鎮守府最強重巡が全責任を提督に擦りつけて半殺しにする」

あきつ丸「理不尽が過ぎるのでは!?」

金剛「アオバはフルタカが関わるといつも以上に手が着けられないんデース!!」

(;T)「俺も腹を切る!!!!!!!!」

あきつ丸「提督殿も相当であります!!!!!」

今日一の危機感と焦燥に後押しされながら、娯楽室へと全速力で向かうが


<キャーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!


紛れもない鷹さんの甲高い悲鳴が、此方の耳に先に到達してしまった


衣笠「はい切腹!!!!!!!お疲れ様!!!!!」

あきつ丸「最高の笑顔で上官をスパッと切り捨てないで欲しいであります!!」

(#T)「よっしゃ見てろ俺の死に様!!!!!!!」

あきつ丸「潔すぎではありませんか!?」


脇差は無いが俺なら手刀で腹くらいかっ捌けるだろう。いや腹筋の方が強い可能性もある。これって矛盾の語源になりませんか?なりますよね?そうですね


(#T)「イーーーーーーーヤーーーーーーーサァーーーーーーーーサァーーーーーーーーー!!!!!!!!」ドッバァンイヤァン!!!!!!!!!

衣笠「島人」


自害する気満々で娯楽室の扉を蹴り開け、その場の光景に思わず拍子抜けしてしまう


古鷹「あ!!提督!!見てください!!」


悲鳴を上げたと思われていた鷹さんだったが、予想と反して興奮と喜びが入り混じった笑顔でとある方向を指差した。鷹さんは今日も可愛い
その先には、中古で購入したダーツライブの筐体。三本のダーツが20の一番小さな的に突き刺さっていた



古鷹「TON20です!!!!初めて取れました!!!!」



( T)「……」



( T)「すごぉ~~~~~~~~~~~~~~~~~い!!!!!!!!!かっこいい~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!」



.

あきつ丸「豚……?」

( T)「鷹さん興奮して間違えてるけど正しくはTON80な」

古鷹「そ、そうでした。えへへ」

( T)「ンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」※古鷹限界の民

衣笠「効くわぁ……」※古鷹限界の民

あきつ丸「それは何の呪文でありますか?」

金剛「ダーツの最高スコアデース」


20のトリプルに三本のダーツを当てると発生するアワードだ。決めれば最高得点の180を獲得出来る
ちなみに時雨は1ゲーム全部アレに叩き込むから一緒にやっても全然面白くない。アホの癖に物投げるのだけは天才


衣笠「しかもピッタリゼロにしてるじゃん。神プレイ見逃しちゃったなー」

霧島「参り……ました……」


対戦相手の霧島もこれには膝を着く大敗北だ。あそこだけコナン終盤のBGM流れてる


プリンツ「テーレレッレッレー♪」


お前かよ


ビスマルク「テーレレッレーレーレー♪」

プリンツ「テーレレー♪テーレレー♪」

( T)「……」

ビスプリンツ「「テーレー♪」」ファサァ……


霧島に上着を被せるんじゃないよ火サスのラストシーンみたいになってんじゃねえかたかがダーツでよぉ


<凄い凄い!!

<グレートデース

<ウフフッ、これが重巡洋艦なんですよ♪

<関係無くない?


周囲の艦娘がやいのやいのと褒めちぎる中、缶ジュース片手に黒髪ロン毛のタッパデカい女がそっと近づいて来る


長門「問題か?」

( T)「少しな。手を貸してくれ」

長門「勿論」

ここに長門がいるのは幸いだ。周りに悟られぬよう脅威を排除するのにこれほど適した人材も無い
サクッと要点を説明すると、解ける口元を缶を傾け隠しながら、喉奥でクツクツと心底面白そうに笑った。何ワロ


長門「これはこれは。お嬢様方の面倒に幽霊が上乗せか。退屈しないな提督殿?」

(;T)「冗談じゃねえよ……」

長門「ククッ、援護はしてやる。サッサと済ませてしまおうか」

(;T)「助かるぜ」


さて、何処から現れる?ダーツ台の前では鷹さんが20トリに突き刺さった三本の矢を記念に撮影し、衣笠とよう盛り上がっとる
金剛は落ち込んだ妹を励ましつつ、目敏く周囲を見回している。当の霧島はと言うと、励ましよりもドイツ産まれのお腐れ戦艦の煽りの方が効いている様で、額に青筋を浮かべていた。こわい
触らぬ神になんとやらと察したのか、プリンツはあきつ丸をやんわりと引っ張りながら、ダメな人用のクッションでイビキを立てる加古の方へと避難した


瑞鶴「クソッ……この、髭ぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!」

加賀「焼き鳥ね。無様だわ、五航戦」

瑞鶴「アアアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!!」


ゲームコーナーでは呉鎮守府からやって来たウチの主戦力空母共がタイマンスマブラと洒落込んでいる。絡みつくファイアボールでファルコが燃える燃える
ふと、ここで相違点に気づく。電子機器に異常が見当たらない。ダーツ台やゲーム機は正常に機能しているようだ。学習したか?それとも、既に移動したのだろうか


( T)「……」

長門「……提督」


長門が目配せであきつ丸を指す。彼女はプリンツのお喋りに付き合いながら、しきりに『首』を人差し指で叩いている
首?いや、喉?声か?言葉?既に誰かが取り憑かれている?いや、それなら多分もう少し焦りを見せる。だとすると……


長門「『飲み物』」

( T)「だな」


長門が持つ缶ジュースの他にも、テーブルにはそれぞれの缶飲料が置かれている。その中の一つに紛れ込んでいるのだろう
冷蔵庫にも潜める半液体の連中だ。サイズの大小を型に嵌めて捉えない方が良い。問題はこの中の『どれ』に紛れているかだ
幸いにもここにいる奴らの意識は缶には向いていない。しかし『飲み物を飲む』という行為自体、注意して行うものでもない
この中の誰かが『毒を盛る』なんて考えもしないだろう。ここに榛名(※)がいれば話は別だが


※ネットで買ったらしきクソ不味い媚薬を盛られた。しばき回した

( T)「……換気するから窓開けるぞ」

ビスマルク「寒いからやめて頂戴」

( T)「オメーもっと寒いとこ出身やろが」

ビスマルク「ドイツに居た事無いから知らないわ!!」

( T)「マジ何処から湧いて出たのお前とプリンツ」


ウチは国内でも屈指の海外艦所有鎮守府だが、ドイツ本国との契約で送られてきた奴らじゃない
なんか大井っちが拾って帰ってきた。ドイツ側にも確認を取ったが、艦娘ナンバーの紐付けもされておらず、特定海域で発生した『新造艦』ではないかという結論が返ってきた。フフッ、意味不明
理由はどうあれ、ドイツ側の戦力なら向こうに返すのが筋だが、いかんせんイレギュラーだった為、彼方さんも猜疑心を拭う事ができずなし崩し的にウチで面倒を見ることになったのだ


( T)「よっこらマッスル」ガラッ

瑞鶴「チッ」

( T)「舌打ちすんな」


窓から吹き込んだ冷風が気に障ったのか、不機嫌な瑞鶴に親の仇みたいな目で睨みつけられる。お前対戦ゲーム向いてないよ
さて、わざわざ換気名目で窓を開けたのには当然理由がある。缶に潜んだ異形を此処から投げ出す為だ


( T)「代われ代われ。俺のキャプテン・ファルコン(ピンク)でファルコン・ランチしてやる」

瑞鶴「……」

( T)「コントローラー放し……やだ力強っ。全然放さない。真っ赤な誓いって感じ」


瑞鶴とコントローラーを巡って悶着を起こしながら、彼女達の飲み物を視認する
動きは無い。炭酸の弾けるフツフツといった音にも異常はない。飲み口の縁に異物も付着していない


加賀「提督、でしたら私と交代してください。ちょうど連戦に辟易していたので」

瑞鶴「貴様ァァァーーーーーーーー!!!!!!逃げるなァァァーーーーーーーーーー!!!!!!!スマブラから逃げるなァァァーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」

( T)「落ち着け炭治郎」


こいつ本当に対戦ゲーム向いてねえよ

瑞鶴「私は戦うのが好きじゃないの……勝つのが好きなのよ……!!」

( T)「性格出る~~~~~~~~~~~~~~……」


長門をチラリと確認すると、ダーツ勢の飲み物は既に確かめたらしく、小さく首を振った
だとするとこの二つの内のどれかに絞られる。何とかして誤魔化して捨ててしまいたいが……


加賀「瑞鶴、貴方はじき入力の出し過ぎよ。先ずは%を溜める動きをなさい」

瑞鶴「黙れ……」

( T)「換気したのに空気悪くねここ」


加賀はやれやれと溜息を吐き、サイダーの缶を手に取った。マズいどうする叩き落とすか?だが刺激を与えて出てきてしまったらパニックは避けられない
ああチクショウ悩んでる暇なんてありゃしねえだろ!!出たとこ勝負でやるしかねえ!!


(;T)「加g」

長門「くしゅんっ」


デカい図体の割に控えめなくしゃみ。それと同時に、彼女から放たれた『飛翔物』が加賀の手に収まる缶を側面から撃ち抜き、手の内から解放した
缶はそのまま中身を僅かに撒き散らしながら、窓縁に衝突。クルクルと回転し、外へと投げ出された


長門「す、すまない加賀!!今のでボタンが弾け飛んだらしい!!」


長門のシャツは胸元のボタンが一つ失われている。くしゃみの勢いで胸筋がなんかアレしてボタンが飛んだという『シナリオ』か
俺も何度か経験がある。筋肉を持つ者はいつも衣服をダメにするんだ。そのボタンは誰が縫うんだい?


長門「怪我は無いか?」

加賀「え、ええ……少し……いえ、かなり驚きましたが……」

瑞鶴「嘘でしょ……」


とまぁ、即席で用意された『ミラクル』に誰もが目を丸くさせている。実際は指弾でボタンを撃ち出したのだろう
いい援護だ。『頭が真っ白』になったこの機を逃す手はない


( T)「あ、そうだ言い忘れてたわ。鎮守府に大規模な電波障害発生しててさぁ、もしかしたら某国の工作的なアレかもしれないからちょっと食堂で待機してて」

古鷹「えっ……嘘、気づかなかった!!提督、申し訳ありません!!遊んでいる場合じゃありませんでした!!この古鷹に出来る事があるなら、何なりとお申し付けください!!」

( T)「うん、食堂行って?」

古鷹「了解しました!!皆さん、移動しましょう!!」

プリンツ「加古、起きて起きてー。移動するってー」

加古「んがっ……んー……?」


鎮守府の風紀委員の号令に、艦娘共は重い腰を上げてゾロゾロと退室する
加古は起きる気配が無かったんで、ビスマルクが背負った。任務と訓練以外あのザマなのもうちょい気にした方が良いかもしれない


長門「始末は任せる」

( T)「ああ、ありがとよ」


去り際に短く言い残したウチの『諜報員』はやはり頼りになる。これで乳丸出しじゃなけりゃもうちょい様になったのに


金剛「ミラクルで上手く誤魔化せたネー……」

あきつ丸「そ、そうでありますな……何か作為めいた事故に見えましたが」

( T)「偶然偶然」

衣笠「ぐーぜんぐーぜん」


長門の『仕事』は、一部の艦娘を除いて共有されていない。出撃より出張が多いので、表向きは鎮守府運営のコンサルタントとして通してる
実際何やってるかって言うとアレだよアレ。口に出すのも憚られるいとも容易く行われるえげつない行為だよ。実質D4C
越権が許されているウチを好ましく思わない所は数多くある。好きにやってく為には少々の『調節』も必要なのだ。許せサスケ


( T)「よく知らせてくれたな。お手柄だぞあきつ丸」


瑞鶴の缶を持ち上げてみるが、中身が僅かな事を除いて特に異常は無い
やはり今しがた吹っ飛ばした加賀の物に潜んでいたと見て良さそうだ。あっぶねえこれ逆に引き運良いぞ


あきつ丸「いえ、提督殿の酌量あっての合図であります」

衣笠「普段からそんくらい周りに気ぃ使えばいいのに」

( T)「お前も火の不始末に気ぃ使えばよかったのにな」

衣笠「性格悪ぅ……」


どの口がほざきやがる

( T)「どれどれ、あれで死んだとは思えねえが……」


窓から頭をひょっこりはんして地面に落ちた缶を確かめる
が、これも特に異変はない。力なく横たわり、残った中身が小さな水溜りを広げているだけだ
異臭も無く、『死体』も見当たらない。今の一瞬で逃げ出したのだろうか


( T)「あk あきつ丸「提督殿!!」え?何?」


振り返った瞬間、襟をグンと強く引かれ、体重0.1トン越えの俺の身体が宙に浮き、窓縁を乗り越える
しまった油断した。奴は投げ出された瞬間、建物の『壁』に移って息を潜めて待っていたんだ!!
そしてもう一つ悪い情報だ。ここ二階じゃんフゥーーーーーーーー!!!!!!落ち方によっては死ーーーーーーーーーーーー!!!!!!!


衣笠「提督!?」

(#T)「触んな!!」


咄嗟に脚を掴もうとした衣笠の腕を、不躾ながら蹴り上げて拒否する。俺の身体を伝って乗り移られる可能性もあるからだ
これ以上面倒を増やされては堪らん。ならいっそ、『道連れ』にした方が後始末が楽だ


(#T)「この手を放すもんか……!!」※真っ赤な誓い


異形の身体を掴むと、液状のコンクリに手でも突っ込んだかのような重く不愉快な感触が広がる
俺を投げ飛ばすほどのパワーだ。窓縁にしがみついて抵抗するが


(#T)「往生際ァッ!!!!!!!!」


振り子の要領で壁を両足で蹴飛ばし、引き剥がす


『髮サ縺ョ譛ャ豌励r隕九k縺ョ縺ァ縺』


(#T)「からのォ!!!!!」


蹴った勢いを利用し、後転して互いの身体の上下位置を入れ替える
二階っつっても正直大した高さじゃねえ。ここからはスピード勝負だ


(#T)「こう!!こう!!そしてこう!!」


異形の足首を掴んで広げ、両足で腋の下を踏みホールド。奴の頭から落下する
皆様ご存知この技は、悪魔将軍を撃破したキン肉マンオリジナルフェイバリット。48の殺人技+1


(#T)「キン肉ドライバァァァーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!」


である

あきつ丸「き、決まったーーーーーー!!!!!」


(#T)「フゥン……」


サタンに憑依されていたとはいえ、完璧始祖・壱式を破った技だ。そこらの異形如きに耐えられるわけがない
パンパンに膨れ上がった水風船を針で突いたかのように、異形の身体は落下と同時に弾け、あの臭い油へと変化した


(#T)「……」


(#T)「くせえ!!!!!!!!!!」ドドッド!!!!!!


衣笠「ええー……一撃じゃん……」

金剛「怪我ないデース!?」

(#T)「ここに来た時に毛根ごと顔面丸焦げにされたからねえよ……」

金剛「Hairじゃなくテ!!」


ようやく小娘共に邪魔されずぶち殺す事が出来た。臭いは最悪だが、気分は悪くない


(;T)「オウェッくっさ!!!!!!!」


嘘。前言撤回。吐きそう

(;T)「あきつ!!これで最後か!?」

あきつ丸「はい、恐らく!!後は執務室の幽霊だけです!!」


なんだ楽勝じゃん。サッサと終わらせてキン肉マンの続き読も


( T)「じゃあ先に風呂……」

(;T)「あれ……?」


なんだ、この違和感。気にする程でも無いのだろうが、どうしても引っ掛かる


あきつ丸はあんな喋り方だったか?


(;T)「あ……」

あきつ丸「提督『さん』!!どうされましたか!?」


違う。喋り方ってのは直そうとしても中々直せない『癖』だ。一分にも満たないこの僅かな時間で、わざわざ意図時に変える必要も理由もねえ


『縺ェ繧九∋縺上↑繧峨?∵姶縺?◆縺上?縺ェ縺?〒縺吶?』


(;T)そ「ぐぅっ……!?」


俺の訝しみを察してか、短かな『呪詛』を合図に、思考と身体がズンと重くなる
下瞼から寄生虫のような黒い紐状の物体がうねりながら湧き上がり、視界を染めていく
酷い乗り物酔いの感覚に襲われ、吐き気と共に内臓の中身がグルグルとかき混ぜられているかのような感覚に襲われた


(;T)「げぇっ……」


『どこから?』『いつから?』。疑問は多々あったが、ハッキリとした一つの無念に塗り潰される。『してやられた』と
今までに出会った異形を容易く排除出来たのは、それが『ブラフ』だったから
俺が直接こいつらをぶっ殺す『機』を誘う為の囮。慢心した俺はまんまと引っかかってしまった
用意周到が過ぎるぜこんなもん。ふざけやがって俺が何したってんだよチクショウ


(;T)「クソが……」


どうしようプラーガ除去する椅子とかじゃないと取れないんじゃねえかこれ今からサラザール城行けってか
明石に頼んで似たようなもん作って貰うか?普通に電気椅子のヤバい版作られて死ぬ未来しか見えないが
いやあれ放射線治療だったわ。下手したらDr.マンハッタン化するわ。うっすら光るチンチン丸出し超人になるわ

「提督殿!!ご容赦を!!」


(;T)「……?」


これは『本物』か?判断する余地も余裕もねえ。何をする気か知らないが、世界最強の筋肉を持つ俺な……


(;T)・'.。゜「らムリんッ!?」ゲボッハァ!!!!!!!!!!!!!!!!


腹に重たいもんがブチ落とされ、穴という穴からドロリと濃厚な汁が噴き出す感覚に襲われる。尿道とケツは辛うじて引き締めた


「セイッ!!セイッ!!セイヤァ!!!!!!!!!!」


(;T)・'.。゜「トッド!?カラクサァ!?ペイズリー!!!!????」


続けざまに腹をドンドンと殴られる息できない死ぬゥ!!!!!!


「ストップストップストーーーーーーーーーップ!!!!!!」


:(;T): ビクンビクン


「今ので死んでないのヤバくない?」


俺何されたの?


あきつ丸「提督殿、大丈夫でありますか!?」

:(;T):「あ、ああ……憑き物が落ちた気分だ……」

あきつ丸「言い得て妙でありますな!!流石であります!!」


後頭部と腹がメチャクソ痛いのはともかく、思考と身体の異常はシャワーでも浴びたかのようにスッキリと取れている
あきつ丸に身体を起こされると、目の前では『異形』が溶けて死んでいく最中であった


(;T)「俺……」

あきつ丸「アレに取り憑かれ、地面に落下したのであります。荒療治ではありますが、自分が直接霊力を提督殿に叩き込んで追い出しました」

(;T)「……具体的には?」

あきつ丸「ひ、膝から腹に落下して、続けざまにグーを……」

(;T)「俺じゃなきゃ死ぬやつ」

金剛「テートクゥ!!Are you OK!?」

(;T)「おーよ」


二階から心配そうに身を乗り出す金剛と、明らかに引いてる表情の衣笠に手を掲げて無事を伝える。なんやねんあいつ
どうやら、窓から引きずり降ろされた辺りから幻覚に襲われてたらしい。キン肉ドライバー不発
幸いにも骨折や捻挫は無い。落ちた分には軽い打撲で済んでいるみたいだ。受け身はちゃんと取ったっぽいな


衣笠「相変わらずバケモンねー。ウチの姉とドッコイドッコイだわ」

(;T)「戦闘キチのアホと一緒にすんな」

衣笠「寸分の狂いなく当てはまってるけど?」


遺憾である


(;T)「とにかく……ハァー……助かったぜ。恩に着る」

あきつ丸「ご無事で何よりであります。後は我々に任せて、提督殿は怪我の手当てを」

(;T)「いや、動ける。大丈夫だ。売られた喧嘩は最後まできっちり締めねえと夜も寝れねえからな」


殺意のある存在が居据わっているこの鎮守府で、明確に命を狙われた俺が安らげる場所があるとも思えない
枕を高くして眠るために、愛しき我が家に居座る害虫は徹底的に叩き潰さねばならない
あきつ丸の額には冷や汗が滲んでいる。これ以上踏み込もうとする俺を案ずるかのように


(;T)「……今、相当『ヤバい』のか?」

あきつ丸「……」


ゴクリと嚥下すると、彼女は口元を結んでぎこちなく頷いた


(;T)「ハハッ……そいつぁ、腹が痛むほど面白ぇ」


先程、衣笠の言葉に『遺憾』を表した。しかし悔しいが、認めざるを得ない
俺もまた、あのアホと同じく未知の外敵と相見える瞬間が、愉しみで仕方がないのだから―――――

―――――
―――



それはそうと雲龍連れてこなと思い出し、自販機横のベンチでスマホ片手にお茶してた所を強襲。そして颯爽と拉致し執務室へと向かう俺達特攻野郎Aチームハッタリかましてブラジャーからミサイルまで何でも揃えてみせるぜ
衣笠はタバコを吸いに行った。あいつは多分鎮守府が空襲されてもまず一服を優先すると思う。これだからヤニカスは


雲龍「へぇ、幽霊。それでずっと待ってても動画が進まなかったのね」

( T)「気づけや」

金剛「何のムービーデース?」

雲龍「柴犬と猫」

( T)「一生観れるやつじゃん」

雲龍「そう……良い、ですよね……」

金剛「後でURL送って欲しいデース」

あきつ丸「緊張感どこに置いてきたのでありますか?」


最初からそんなもん無かったやろがい


金剛「ウンリューはゴーストの気配をサーチできないんデース?」

雲龍「言われてみれば……って、感じかしら。艦載機の物体霊ならともかく、人の霊なんて使う機会もありませんし」

( T)「地でバーニング・ダウン・ザ・ハウスみたいな能力使える奴の話はわからん」

雲龍「何それ?」

( T)「ジョジョ読め」

雲龍「ジョジョは絵が受け付けないわ」

( T)「ライン越えたなオメー」

金剛「もー、すぐ喧嘩……アキツ?What's the matter?」

あきつ丸「……」


あきつ丸の足取りが目に見えて重くなる。呼吸は浅く早く、掌を貫きそうなほど拳を握りしめている
雲龍も『行く先』の方面に意識を向けると、眉間に皺を寄せて口元を抑えた


雲龍「ああ……これはキツイでしょうね」

( T)「お前でその反応って事は、よっぽどか」

雲龍「ええ。鼻がよく利けば利くほど、悪臭が辛く苦しくなる。それと同じです」

( T)「なるほど。あきつ、今どんな気持ち?」

金剛「煽るナ!!!!!!!!!!!」

( T)「ちゃうがな……心理状況を聞いたんやんけ……」

金剛「訊き方!!!!!!!」

( T)「ごめんて」

雲龍「どうして?必要な情報なの?」

( T)「うんまぁ。もしかしたら俺しか対処できないかもしれんから」

雲龍「ふーん……私で良ければ、何となく感覚を教えてあげてもいいけれど」

( T)「ちゃんと具体的に説明できる~~~~~~~~~~~??????」

雲龍「失礼ね。ううんと……『拒絶』……『命令』、そうね……怒鳴り声で臆病を隠すような高圧さ……でしょうか」

( T)「なんかワインの味聞いてるみたい」

雲龍「もう少し近づけば、私でもハッキリわかるようになるかも」

( T)「ほほぉ~~~~~~~~~~~っ、では十分近づくとしようか」

金剛「DIO……じゃなくテ、アキツはRetreatさせるべきデース!!」

( T)「それもそうd……」


あれ、これってもしかして……いけるかもしれんな。男は度胸、なんでも試してみるもんだ

( T)「あきつ丸、来い」


短く、力強く。他の何者も寄せ付けないように『命じる』と


あきつ丸「ッ……ハァッ!!」


あきつ丸の緊張は一気に解けた。読み通りだ


( T)「やったぜ。明日はホームランだ」

金剛「How come!?」

雲龍「……なるほど、そういう事」

金剛「え!?わかってないのワタシだけなんデース!?」

( T)「まぁ効いてない分には全然問題無いし、個人差バチクソあるかも知れんから」

金剛「????????」


正体にアタリが付いてなきゃ、予想も難しいだろうな


あきつ丸「提督殿、これは……」

( T)「ん、道すがら説明すっか」


もう誤魔化すのも難しい段階まで踏み込んじまってる。ネタばらしをしても、ウチの連中なら耐えられると信じよう


( T)「まず最初に引っかかったのは異形の構成物質だ。『油』と『金属』が大部分を占める『ヒトガタ』。賢い金剛ちゃんならもう何を指しているのかわかるよな?」

金剛「????????????????????????」

( T)「ごめんオメーも時雨ほどじゃないがそこそこアホだった」

あきつ丸「……『艦娘』」

( T)「はいあきちゃん賢い」


確かに、『生きている間』は血や涙を流し、骨と肉を肌で包んだ『ヒト』と変わらぬ姿を持つ彼女達だが、その出生は大きく異なる
『鉄』『ボーキサイト』『弾薬』『燃料』。それに開発資材という謎の物質を加えて、巨大な『箱』にぶち込み数時間待てば『誕生』する
結論がどうあれ、『過程』にそれらの物質が含まれているなら、最初にアタリを付ける理由には充分だ

( T)「で、次に『髪色』だ。待たせたな金剛。ようやく気になってた事訊けるぞ」

金剛「え、アノ、もうシャットアウトしてしまいたいデース……」

雲龍「ええと……私はその異形を目にしていないからわからないけど、ヒトには生やせないような髪色だったのね?」

( T)「ああ、『青』だった。染めたって線も当然考えられるが、髪を青に染めるようなやんちゃくれ青春ボーイなんて万分の一レベルの存在だ。だったら最初からその髪色だった存在を疑った方が高確率だろうよ」

雲龍「ええ。筋は通ってますね」

金剛「で、デスガ!!モンスターが艦娘だったとして、アキツのParalysisとどう関係あるんデース!?」

( T)「『艦娘』がいるならもう一つオマケで付いてくるモンもあるだろーが。偉そうに部屋の奥でふんぞり返りながら指示出すだけで仕事した気になってるクソ野郎がよ」


金剛の顔色が見る見るうちに真っ青に色褪せていく。ここまで言えば流石にわかるか


( T)「オメーの足首を掴んで、俺の首を絞め、あきつ丸や雲龍に『来るな』と脅し、『異形』共に指示を出していたのは」










( T)「『提督』の幽霊だってこったよ」









.

あきつ丸「……だから、提督殿の一声で『命令』の上塗りができたのでありますな」

( T)「その通り。あきつが強く影響されたのは恐らく、霊感と真面目な性格が仇となったんだろう」


艦娘は、ヒトへの謀反を防止するために『刷り込み』による忠誠心を予め植え付けられている
ウチにいる連中はその枷から逃れた、もしくは最初からそんなクソみたいな処置などされてない者しかいないが
『艦娘』である以上、根っこの部分で『提督』というモノへの従属が定められているのかもしれない。いや無いか。アホ共にそんな御大層なもんあるワケねえもん


金剛「こ、心当たりって、ありマスカ?」

( T)「あるけど……」

金剛「自首してくだサイ!!!!!!!!!!!!!!」

( T)「金剛ちゃん俺のこと殺人鬼だと思ってたりする?ここが流刑地って呼ばれてた頃の話だよ」

雲龍「それも気になるけれど、先ずはリスクの話をしましょう。提督、貴方が死ねばひょっとして、私たちを乗っ取られたりするんじゃない?」

( T)「可能性はあるな。もっとも、俺以外の連中がお前らを従わせられるとはとても思えねえが」

あきつ丸「おお……頼もしいのであります!!」

( T)「まぁさっき大口叩いて取り憑かれかけたんだけどな!!!!!ガーッハッハッハッハッハ!!!!!!!!!!!マッスル!!!!!!!!」

金剛「笑いごとじゃありまセーン!!」


雲龍の言う通り、視野を広げれば奴らの目的は鎮守府の乗っ取りとも見て取れる


雲龍「なら、急いだ方がいいかも知れないわ。隼鷹や龍驤を先に待たせているのよね?」

( T)「あいつらの辞書に忠誠心って言葉が載ってると思うか?」

雲龍「おやつ食べた後でも間に合いそうね」

( T)「せやろ」

金剛「デンジャラスには変わりないでショウ!?」

雲龍「ピェッ」

( T)「怒んな」

あきつ丸「乗っ取りはともかく、物理干渉は今だ健在と見て良いでありましょう。早急に決着をつけるのであります」

雨粒が窓を叩き始め、やがて断続的に水滴を弾けさせる。執務室へ足を進める度に、床は過剰なほどに軋みを上げる
空気は湿り気を帯び、肌にジトリと纏わりつく。太陽を厚い雲が覆い隠し、蛍光灯の無機質な光はおどろおどろしさをより一層演出した


( T)「……」


そして執務室前に到着すると


金剛「穴が……無くなってマース……」

( T)「そんなワケなくない???????」


俺が蹴り開けた筈の大穴が、何者かの手によって埋められていた


金剛「親切なゴーストもいたもんデース……」

( T)「いやそういうのとちゃうんとちゃうかこれ?????」


叢雲に怒られずに済んだ


雲龍「隼鷹達はまだ来てないみたいね」

あきつ丸「え、ええ……もしや、既に敵の手中に落ちているのでは……?」


<お待たせしましたー!!


あきつ丸「忘れてほしいのであります」

( T)「タイミング良いのか悪いのか」


俺らとは逆方向から、気ぃ失った酒カス軽空母をそれぞれ背負いながら鳳翔さんと頭やべーやつが駆け寄ってくる
なんで勢い余るなっつったのにボロクソにしてから連れてくるんだあいつはアホか


( T)「お前さぁ……」

天龍「俺じゃねえよ鳳翔だ。道中いきなり向かうの嫌がったから殴って無理やり連れて来たんだよ」

鳳翔「も、申し訳ありません……」

( T)「いやナイス判断だ鳳翔さん。連れてきてくれてありがとう」

天龍「オイてめえ」

( T)「日頃の行い!!!!!!!!!!!!!!!!」

意外にもあきつ丸と同じ状態に陥ってたらしい。でも多分普通にヤバくて嫌だったパターンだと思う


金剛「二人がダウンしてもノープログレムなんデース?」

雲龍「出来れば万全で挑んだ方がいいけど……どうする?あきつ丸」

あきつ丸「うむむ……具現化だけなら自分と雲龍殿だけでも可能ではありましょうが……」

( T)「じゃあ行けるじゃん。悪いな鳳翔さん。無駄な手間掛けさせちまったわ」

鳳翔「え、あ、あの、それってどういう……?」

( T)「具現化させたら後は俺がやるから大丈夫って話」

金剛「どんだけファイトに飢えてるんデース!?」

( T)「へへっ、男の子だからよ」

あきつ丸「危険であります!!提督殿に万が一があれば、この鎮守府は総崩れでありますよ!?」

天龍「叢雲いるから大丈夫だろ」

金剛「違いマース!!『ゴースト』に乗っ取られるかも知れないんデース!!」

天龍「は?」


手早く説明をすると、鳳翔は神妙な、天龍は他人事みたいな表情を見せる


天龍「へー」

金剛「クッ……幹部クラスの艦娘は皆こんなんばっかネー!テートクゥ!!」

( T)「俺も常々頭抱えてる」

天龍「幹部に任命したのテメーだろ」

鳳翔「話はわかりました。その上で提督自ら買って出ると言う事は、納得できる理由が存在するのですよね?」

( T)「ああ。試しに天龍、ドア開けてみろ」

天龍「あ?なんで俺が……あれ?」

( T)「ドアノブも回せないのか?ザッコ」

天龍「殺すぞ。こりゃ一体どういうタネだよ」

( T)「俺が捻ればほれこの通り」


天龍が幾ら回そうとしても頑なに動かなかったドアノブは、すんなりと回った。壁が勝手に修理された理由もこれで納得がいく


( T)「奴らは脅威となる艦娘を『拒絶』する命令を放っていた。だが思いの外イケイケドンドンで来るもんだからやり方を『籠城』へと切り替えたんだ」

雲龍「だから壁も修理されていたのね。入口を減らすために」

( T)「そうだ。つまりこの中に入れるのは、唯一のヒトである俺だけだろう。なんなら真っ先に殺しに来たからな。今の天龍の反応で、その証明も出来た」


結果はお粗末なものだったが、それでも尚『俺だけ』を誘い入れるってことは、今度は確実に殺る自信があるようだ


( T)「あきつ、具現化の方法は?」

あきつ丸「はっ、はい!!この型紙で捕捉すれば可能であります!!」

雲龍「初めての試みだから、少し時間が掛かるかも」

( T)「だろうな。五時間くらい稼いでやるよ。備えろ」


指を三つ立て、突入までのカウントダウンを開始する。3、あきつ丸と雲龍がそれぞれ型紙を構えた
2、薬指を折る。鳳翔さんと金剛がクソ邪魔な酒クズ軽空母を引きずって退がる
1、中指を折る。天龍はスマホを取り出し操作し始めた。お前何しに来たの?


( T)「ッ!!」


ドアノブを回し切り、肩から扉を押し込んで突入。同時に、いくつもの『見えざる手』が身体を掴み、室内へと強く引っ張ってくる


(#T)「クッ……ソが!!」


首を絞めた時なんて比較にならねえほどの力だ。辛うじてドアから手を放さずに済んだが、正直五時間は無理


あきつ丸「提督殿、しばしのご辛抱を!!」

(;T)「急いでーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

天龍「ギャハハハハハハハ!!!!!!」ヒィーハライタイ

(#T)「てめえふざけんな後で覚えてろよ!!!!!!!!!」

型紙が『四つ』宙に舞い、つむじ風に乗るように部屋の隅々を駆け回る


雲龍「捉えた」

あきつ丸「此方も!!」


二人が拳をグッと握りしめると、『空間』に張り付いた型紙が青白い炎に包まれる
炎は『胸』からじりじりと燃え広がると、『ヒト』の輪郭を形成し始める。具現化に怯んだのか、引く力が弱まった


(#T)「よいしょぉッ!!」


身体を捻らせ振りほどき、構えを取る。ここからが本番だ


(#T)「おーおー、量産型って感じじゃねーか」


如何にもな軍服に身を包み、怨嗟の形相を浮かべる半透明の男の霊が四体。先に個性をあの世へ送っちまったらしい


『諤ィ繧√@縺!!!!!!』

『菴墓腐縺雁燕縺?縺代′!!!!!』

『濶ヲ螽倩ォク蜈ア豁サ縺ュ縺ー繧医°縺」縺溘?縺ォ!!!!!!』

『螂エ繧峨↓谿コ縺輔l繧後?繧医°縺」縺溘?縺ォ!!!!!!!!!』


金剛「オーマイガ……」


何言ってんのかわかんねえが、俺への文句は尽きないようだ。身に覚えがねえが、きっとうっかり漫画のネタバレとかしちゃったのかもしれない


あきつ丸「今なら物理攻撃が通る筈であります!!提督殿、急ぎ撃破を!!」

(#T)「おおよ!!!!!!!さぁ殺してみろ怨霊共ォ!!!!!俺に殴り勝てるなんて思わねえことだなァッ!!!!!」

♪AKINO from bless4 — 『海色』


(朝の光 眩しくて)


(#T)「行くぞオラァァァ!!!!!!!!」


(Weigh Anchor!)


誰だ曲流してる奴。これ権利大丈夫か?


鳳翔「天龍!?そのスマホは何の意味が!?」

天龍「面白ぇかなって」


あいつ後で半殺しにしてやる


『豁サ縺ュ!!!!!!』

『豁サ縺ュ!!!!!!』


真正面の二体が腕をラバーメン(ゴム人間)のように伸ばす。ピンと伸びた指先を見るに、串刺しにしようって算段らしい


(#T)「遅ぇッ!!!!!」 (言葉も無くて、ただ波の音聴いてた)


身体に触れる直前にそれぞれの手首を掴み、腕を交差させる。気ぃ散るなこの曲な


『ッ!?』

『縺ァ縺!?』


二体の身体が衝突し、それぞれの半身がめり込むように混ざり合って床を這いずる。この光景キッツ
すかさず追撃に走ろうとするが、左右に回り込む残り二体を見て、後ろへ飛びのいた


(#T)そ「チッ!!」 (記憶の意味試されているみたいに)


右の幽霊は浮遊して此方へと飛び掛かり、左は腕を鎌のように変形させ、大きく振るう


(#T)「せぇ……」 (闇の中でも思い出す)


仰向けに倒れ込み、回避と


(#T)「のォッ!!」 (前に進むの)


同時に、身体の上を通過した浮遊幽霊を真上に蹴り上げる。天井に衝突したそれは、輪郭を歪ませ青白い炎を飛び散らせた。打ち上げ花火下から見るかって感じ
そして上手いこと鎌の攻撃を躱したはいいが、矛先がマズかった

(#T)そ「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!!!!!?????????????」 (見ていてよ)


俺の漫画本棚が真一文字に大きく切り裂かれてしまう。俺の命の次に大切なコレクションがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


(#T)「てめええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!ブッッッッッッッ殺してやるううううううううううううううううううううう!!!!!!!!!!!!!!」 (So,repeatedly,we wom't regret to them)

金剛「今日一のAngerネー!?」

天龍「虎の尾踏んじまったな」


漏れそうな嗚咽を噛み殺し、タックルをブチかましてマウントに持ち込む。足首を取って股の間に挟み込み、膝裏を脛でロックする


(#T)「楽に逝けると思うなぁあああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!!!!」 (そんな風にも考えてたの)


そしてロックした脚を軸に回転。相手の膝と足首を破壊するこの技は皆さまご存じ(二回目)テリーマンのフェイバリット『スピニング・トゥ・ホールド』だ


(#T)「憧れ!!抜錨!!未来!!」 (憧れ 抜錨 未来)

『縺弱c縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺!!!!!!!!??????』


手ごたえあり。幽霊でも効くんだこれ。そうと分かればたっぷり苦痛を与えてから地獄に送ってやる。たっぷり!!


(#T)「絶望!!消失!!別離!!」 (絶望 消失 別離)

『縺舌o繝シ繝シ繝シ繝シ繝シ繝シ繝シ繝シ繝シ繝シ繝シ繝シ繝シ繝シ!!!!!!!!!!!!???????』

天龍「俺ら何見せられてんだろうな」

雲龍「その音楽の所為じゃない?」


六回目の回転(黄金長方形)で野郎の片足を完全に破壊する。暫くは動けまいて


『『縺?♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀!!!!!!!!!』』


重なる二つの雄叫びと共に、背後に影が差す


(#T)そ「ッ!!!!!」 (いくつもの哀しみと海を越え)


来客用のテーブルが、俺を押しつぶさんと飛来する。ぶっ壊して買い替えても経費で落ちるよなこれ


(#T)「しゃらくせえ!!!!!!!!!!!」 (たとえ)

『繝エ縺√▲!?』


足首を破壊した幽霊をそのまま振り回し、テーブルにぶち当てて軌道を強引に変える
半壊したテーブルは窓を突き破り部屋の外へ。霊体は木屑と共に青白い炎を散らし、型紙に淡く光る熱線の皹が奔る
その皹に沿って八方へと千切れると、断末魔を上げて消滅した。ちょっと待て早い早い弱すぎねえかこいつら

(#T)「てめええええええええええええええええええ!!!!!!!!!もっと苦しめてから殺す気だったのに邪魔しやがってえええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!」 (世界の全てが海色に溶けても)


あきつ丸「悪党の台詞でありますよ提督殿!?」

鳳翔「実際の悪党はもう少し理性的ですけどね……」

天龍「なんだ、心当たりでもあんのか?」

鳳翔「て、提督!!油断なさらないでください!!」


オメーだよ身バレしたくねえなら発言に気ぃ使え


『『諞弱>縲ゅ?ゅ?よ?縺?↓縺上>縺ォ縺上>縺ォ縺上>!!!!!!!!!!!!』』


(#T)「るせーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!グッホゴッホ!!!!!!!!!???????????アヘエ」 (きっと)


金剛「またRope markネー!!」


テーブルでの攻防の隙を突かれ、天井に蹴り飛ばしたやつに背後に憑かれたか。またもや息苦しさが襲い掛かる
今度は学習したらしく、首に力を入れても千切れそうにない。掴もうにも首にめり込み、指を入れる余裕がない。ブレーキだって遊びの部分があるのに


(#T)「ひるむ……と!!……思うのか……これしきの……これしきの事でよォォォオオオ……!!」 (貴方の声がする)

金剛「ナランチャ!!」

雲龍「何?」

金剛「JOJO読むネー!!」

雲龍「ジョジョは絵が……」


あいつ二回もライン越えやがった!!!!!!!!!!!!!!!

『『豁サ縺ュ縺?∴縺医∴縺医∴縺医∴縺医∴縺医∴縺!!!!!!!!!』』


分裂を諦め、融合した二体の幽霊は、腕を肥大化させて振り上げる
サイズを見余ったのか、拳は天井を突き破った。雨が入るやろがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!


(#T)「オ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 (大丈夫、還ろうって でも)


天龍「どっちがバケモンかわかんねえなもうwwwwwww」

鳳翔「はわわわわわ……」


咆哮に怯んだのか、首元が一瞬緩む。この機は逃さん


(#T)「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッ!!!!!!!!!!!!!!」 (世界が全て反転しているのなら)

『菴輔<!!!!???』


ロープと、そして背後の幽霊の胸倉辺りを掴み、背負い投げの要領で持ち上げる


『『縺オ繧!!!!!!!!!!!』』


(#T)「オラァッ!!!!!!!!!!!!!!!」 (それでもあなたと)


落ちてきた拳に合わせてそいつをぶん投げ、すかさず此方も拳を握り応戦


『縺オ繧!!!!!!!!!?????????』


挟み撃ちにされた幽霊は閃光を放ち爆発四散した。サヨナラ!!!!!!!


(#T)「クソザコナメクジがァッ!!!!!!!!!!!!」 (真っすぐに前を見てて)


立て続けに融合幽霊の拳と衝突。拳骨を通じて重く響く衝撃が身体を駆け巡る。だが俺の方が


生きている奴の方が『強い』


(#T)「く た ば れ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ え え え え え え え え ! ! ! ! ! ! ! !」 (今 願い込めた一撃)


競り負けた霊体は衝突部を中心にめり込み、そこから生じた亀裂が腕を這って身体へと到達。そして―――――





『『繝舌き縺ェ縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺!!!!!!!!!!!??????????』』




( T)「散滅すべしッ!!ディオッ!!」 (爆ぜた)





一番の終わりとピッタリのタイミングで、粉々に飛び散った




( T)「……」 (She was splendid like our flagship But it's all in the past)


金剛「フィ……フィニッシュでOK?」

あきつ丸「は、はい……提督殿の勝利であります!!」

雲龍「呆気なかったわね。意外と」

鳳翔「執務室メチャクチャなんですよ!?」

( T)「漫画……俺の……」 (She never gave up the hope even till the end Only the sea knows)

天龍「グフッwwwwドンマイドンマイwwwwwww」

金剛「ミュージック止めるネー……」






(;T)「俺の漫画ァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!」 (だから)






☆勝者無き勝利…… (塗りつぶされてもわすれない こじ開けるの 見ていてよ)

―――――
―――





【三日後】 クシャガラ



( T)「……」

叢雲「……」



良く晴れた春空の下、簡単な墓の前で線香の煙を見上げていた。あの異形やら幽霊のものではない。これは―――――



叢雲「ダメになった漫画を埋葬して線香上げるのやめなさいよ……」

( T)「耐えらんねえ……」

叢雲「頭ヤバいわよアンタ……」

( T)「漫画のお墓の前で泣かないでくださいとでも言いてえのか?」

叢雲「鬱陶しいわね……」




.

幽霊を残虐ファイトでぶっ殺した後、電波及び電子機器の調子はすっかり回復。鎮守府の大部分が霊障にも遭わずに済んだ
別動隊だった青葉や叢雲のチームも異形には遭遇しておらず、変わり果てた執務室の有様を見て叢雲は大きなため息を、青葉は分かり易く悔しがった。変態はこれだから
食堂に集う面々への説明より先にダメになった漫画を丁重に弔った為、かなりの時間を待たせてしまいえれえ非難を浴びたのは今だに納得してない。俺が間違ってんのか?お?
執務室は高級家具職人の妖精さんに依頼して現在修理中だ。今回はがっつり金を取られた。本部に修理費を申請したが何故か却下されてしまう始末だ。唯一の取り柄を自ら失くして名実共に役立たずの称号でも手に入れたいのだろうか?死ねよ


( T)「新しく買い替えて、尊敬する作家先生に貢ぐのはやぶさかじゃねえけどな」

叢雲「それは結構。で、結局『あの事』は秘密にするの?」

( T)「知ってもしょうがねえだろ」

叢雲「まぁねえ」


あの後、元艦娘の『異形』や提督の『幽霊』について若干の考察や議論があった
関わった奴らは正体を知ってると睨んだ俺に質問攻めをしたが、『ぷぇぇ、ぼくごさいだからわかんないよぉ』で誤魔化した結果、その後何も訊かれなくなった。舌打ちもされた
では何故、叢雲だけには打ち明けたか。この件は俺と彼女に深い関りがあるからだ


叢雲「……ほんと、運が良かったのね。私たち」

( T)「まーな」


『人体実験の被験者』と、それを監視する『艦娘』。俺らがここに来る以前に犠牲となった者達。それが俺が下した結論だった


叢雲「にしても、見当違いの矛先だと思うけどねぇ」

( T)「『恨めしや』なんて常套句があるくれーだ。怒りと嫉妬をぶつけるには十分なんだろうよ」

叢雲「……責めるのも、お門違いかしら?」

( T)「迷惑被ったのは事実だ。実際俺は殺意全開で送り出したぜ?」


異形に到っては遊び半分で殺された奴もおるからすげー不憫。天龍はあの後シメた


叢雲「良い性格してんのね。相変わらず」

( T)「せやろがい」

叢雲「褒めてないわ」


相棒は傷心の俺にもクソ厳しい

( T)「……やっぱキツいか?」

叢雲「若干ね」


もしかすると、俺らも彼らと同じく呪いを振りまく『残穢』になっていたのかもしれない。ゾッとして当然の結末だ
だが、幸運にも俺達は今日もこの場所で生きている。『提督』となったその時に掲げた目的を果たすまで、戦い生き続けている


( T)「『お気の毒』で済ませてしまえ。俺らはあんなもんになりゃしねえよ」

叢雲「わかってるわよ。少し、薄情ではあるけどね」

( T)「どうせこの先で、彼らの仇も討つだろうさ。成り行きだが、背負ってやろうじゃねえか」

叢雲「あら、らしくないじゃない。死んだ人なんてどうでも良いなんて言うものかと」

( T)「どうでも良いけどな」

叢雲「なら、線香なんて上げる必要もないと思うけど?」


お見通しか。副司令艦殿には頭が上がらねえよ


( T)「『二度と来んな』ってこったよ」

叢雲「フフ、そういう事にしといてあげるわ」


春風が身を冷やし、思わずぶるりと身震いする。直ったばかりの部屋に戻って、届いた漫画を並べ直そうと腰を上げた瞬間



<提督殿ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!



あきつ丸が慌てた様子で駆け寄って来た

( T)「どうしたメシア。金剛のフレンチクルーラーがベイブレードみたいに回転し始めたか?」

叢雲「想像したらジワジワくるようなこと言わないで」

あきつ丸「ハァッ、ハァッ……その、緊急のご用件が、一つ……」


めっちゃ嫌な予感がする。こういうのはよく当たるんだ


あきつ丸「視聴覚室で、御覧になられたとされる道化師の怪異でありますが……」

(;T)「あっ、うわぁ……」

叢雲「ちょっと待ってよ……」


叢雲は頭痛を抑えるかのように額に触れる。出たよこのパターン


あきつ丸「あれは前回の騒動と別問題だったらしく、現在鎮守府内を暴走中であります!!」

(;T)「マジかぁ……」


耳をすますと、確かに風音に紛れてギャーだのワーだのビャアアアアアアアアアアアアアだのと小娘共の騒ぎ声が聴こえてくる


<ハァーイ!!ジョォジィ!!!!!!!!


クソピエロの第一声まで飛び込んでくる始末だ。誰か排水溝に引きずり込まれちゃいねえだろうな?


(;T)「マジかぁ……」

叢雲「最っ悪……」

あきつ丸「即席の対応部隊が事態の収束に当たっていますが、何分未知の敵対怪異の為、難航しているのであります!!ここは提督殿の出番であります!!」

(;T)「ハァ~~~~~~……」


叢雲と同じく頭痛に襲われた俺は、面倒くささを飲み下すように空を見上げた
もうすぐ春も本番を迎えようとしている。日差しが目に眩しかった

(;T)「そんじゃ……」


『あの日』から、俺は何かに振り回されっぱなしだ。艦娘然り怪異然り、死ぬ直前まで弄ばれ続けるのだろう
でもまぁ、退屈よりは幾らかマシだ。そう思わなければやってられない


(;T)「一仕事しますかね……」


溜息と共に観念を済ませ、今日もまた、賑やかでとんでもねえ日常を送る覚悟を決めたのであった



おしまい

終わりです。お疲れさまでした


変更点
・( T)のAA追加。性格のグレードアップ
・鎮守府にいない艦娘の名前を削除
・一部艦娘の伏線追加
・怪異の追加

譲れなかった点
・海色をバックにスピニング・トゥ・ホールド極める所


リメイクにあたって第一話を読み返そうとしたんですが余りに酷い出来でまともに読み返せなかった結果がこれです。受け入れてください
次回は未定ですが、先に天華百剣SSを投下するかもしれません。宜しければ、其方もよろしくお願いします。寝ます

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