熊野「裏世界ハンティング」 (81)

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夕立「ボ、ボコフェス連れてってっぽい!!!!!!!」
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エンド・オブ・オオアライのようです ※連載中のコラボ作品(◆vVnRDWXUNzh3作)


艦これ×天華百剣 編

川д川 ウホウホ!!鎮守府に颯爽と登場した貞子ゴリラ、トランスフォームウホ!!
川д川 ウホウホ!!鎮守府に颯爽と登場した貞子ゴリラ、トランスフォームウホ!! - SSまとめ速報
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【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第一章【天華百剣】
【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第一章【天華百剣】 - SSまとめ速報
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【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第二章【天華百剣】
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『艦天って略すとカロリー低い食材みたい』 幕間
『艦天って略すとカロリー低い食材みたい』 幕間 - SSまとめ速報
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【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第三章【天華百剣】

【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第四章【天華百剣】
【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第四章【天華百剣】 - SSまとめ速報
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【艦これ】『Last one week & Epilogue』【天華百剣】
【艦これ】『Last one week & Epilogue』【天華百剣】 - SSまとめ速報
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SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1574681916

ア ナ 雪 2 を 観 ろ
十一月は怒涛の映画ラッシュで嬉しい悲鳴が上がり放題ですね。スティーブン・キング原作を一月で二本上映するとか正気かお前??????


・提督の表記は『( T)』になっています。マスク超人です
・提督はドウェイン・ジョンソン並みのマッスルです
・IT、ターミネーター、エンド・オブ・ステイツ、アナ雪2、ゾンビランド ダブルタップ大ヒット上映中(ノルマ)
・シャイニングから四十年後、呪われたホテルが帰ってくる。『ドクター・スリープ』十一月二十九日公開(ノルマ)
・ウェルカム・トゥ・ジュマンジ!!!!!!!!!!!!!!!!!劇場でドウェイン・ジョンソン分を摂取だ!!!!!!!!!!!!『ジュマンジ ネクスト・レベル』十二月十三日公開(ノルマ)
・エンドクレジットの後に次回予告がございます。最後までお楽しみください

( T)「……」


熊野「……」


( T)「お前さぁ……何やってんの……?」


熊野「シッ!!獲物が掛かりませんわ!!」


( T)「……」


熊野が廊下で、紐結び付けた棒をザルに引っ掛けて餌に食い付いた小鳥を捕まえる罠を仕掛けてた





熊野「裏世界ハンティング」




.

( T)「……」

( T)「グスッ」

熊野「提督、風邪でもお召しになられて?」

( T)「泣いてんだよ……」

熊野「気味が悪いので自室で泣いてくださらないかしら?」

( T)「原因はお前だけどな……」


こんなアホがウチの五本指に入る武勲艦だと考えだけで男泣き不可避ですよ
男の子でも涙が出ちゃう。だって人間だもの


( T)「お前……時雨よりアホだぞ……」

熊野「殺しますわよ?」

( T)「俺はまっっっっっったく間違ったこと言ってねえけどな……」

熊野「このスマートかつ機能美に溢れた罠の何処に文句の付けどころがあって?」

( T)「本気で言ってんなら正気を疑う。先ずお前何を捕まえようとしてんだよこんな室内で」


曲がり角に身を潜ませながら、熊野はアホな罠を真剣に見つめている
因みに餌は大阪土産でお馴染みのミルク饅頭『月化粧』だった。そこはお前神戸のお菓子にしろよ


熊野「これをお読みになりまして?」

( T)「あん?漫画か?」


熊野が差し出したのは『美味しい妖』というタイトルの漫画本 ※全二巻
パラパラと流し読みしてみると、妖怪を捕まえて美味しく調理して食べる異色のグルメ漫画だった
発想は面白いが、生憎俺の三大グルメ漫画はクッキングパパ、紺田照の合法レシピ、そしてマッチョグルメと決まっている

熊野「私、思いましたの。鹿や猪などのジビエも、神戸牛に勝るとも劣らない美味。それを狩る醍醐味や、解体することによって尊べる命。そう、狩猟こそ至高の娯楽」

( T)「他所の熊野が聞いたら発狂しそうなほどワイルドなセリフだな。いつのまにかタイプ:ワイルド」

熊野「ですが、この漫画は新たな可能性を提示してくれましたの。それが『妖』!!」

( T)「ちょっと待てお前まさか……」

熊野「魑魅魍魎が頻繁に出没するこの鎮守府は、正に未知の美食の狩場……狩人の血が沸き立ちますわ……!!」

( T)「沸き立ってんのはテメーの頭だ」


確かに、確かに過去には巨大オマール海老やら巨大タコやらに襲われたりしたし美味しく食べたが
アレは生物の範囲内のバケモンであって、妖怪やら何やらとはカテゴリーが違う気がする
つーか室内で出てきた妖系のバケモンってクソ提督の幽霊とか妖怪乳首相撲とかなんだが……うーん、食えたもんじゃねえわ


( T)「……首尾は?」

熊野「二時間張ってもウンともスンとも言いませんわね。時間が悪いのかしら?」

( T)「悪いのはテメーの頭d 熊野「掛かりましたわ!!」 ウッソだろ」


<きゃあ!?


熊野「さぁ、手早くシメて!!」ジャキッ!!

( T)「ベアークロー仕舞え」

熊野「から揚げにしますわよォォォ!!」ダッ!!


熊野専属装備、明石特製の手甲『完全再現ベアークロー』の爪を剥き出し、目を爛々と輝かせ引っかかった獲物へと飛び掛かろうとする


( T)「待てって」ガッシ!!

熊野「ぐえっ、何をなさるんですの!!」

( T)「アホか。よく見ろ」


それを襟首を掴んで引き留めた。聞き覚えのある悲鳴だったからだ

熊野「あ、あら……?」


熊野も、罠に引っかかった獲物を見て冷静さを取り戻す


「たっ、たた……」



_人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> 秋月「食べないでくださーーーーい!!!!」 <  アキヅキィ!!!!
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄



久々の登場、ぶっ壊れた防空火力を誇る秋月だ。かばんちゃんじゃないぞ


熊野「し、失礼……二時間も待ち続けていたものですから、冷静さを欠いていましたわ……」ジャコッ


明石特製のベアークローのギミックはいつ見ても惚れ惚れするな


秋月「あのっ、これ……食べちゃダメな物でしたか?」モグモグ

( T)「落ちてるモンを、それもあからさまに罠張ってあるモノを……」

( T)「拾って食うなよ……グスッ」

秋月「し、司令?どうかしたのですか?お腹が痛いのですか?」モグモグ

( T)「強いて言うなら頭……」

熊野「実は、かくかくしかじかでして」

秋月「……?」

熊野「……?」

( T)「いや、『どうして伝わらないのかしら?』みてーな顔でこっち見んな。そういう人も居るから」

ポーラ(完璧・無量大数軍)「日本のアウトゥンノは寒いですねぇ~……」ウロウロ

( T)「鷹さーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!まーーーーーーたポーラが全裸で歩き回ってっぞーーーーーーーーー!!!!!」


<すぐ向かいますゥ!!


ポーラ「ヒッ!?やだやだやだ!!」ダッ!!

( T)「で、この漫画に影響されたんだとよ」

秋月「あっ、はい……『美味しい妖』、ですか……」

熊野「慣れたとは言え、提督の女性に対する謎の耐性はやはり不気味ですわ」

( T)「あえて深く触れなかった俺の心情を察して」


怒涛のアホラッシュに心が挫けそうだ


秋月「……熊野さん」ペラ

熊野「はい?」

秋月「まさか、これを?」

熊野「ええ、狩人の新境地ですわ!!」

( T)「これで素面なんだぜ?笑うよな」

秋月「……す……」


熊野「巣……?」

( T)「酢……?」


_人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> 秋月「素晴らしいです!!!!!」 < アキヅキィ!!!!!
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄


熊野「!!」

熊野「!!」バッ!!

( T)「『そーら見たか』みてーな顔やめろ腹立つ」

秋月「未知の食材への探求心!!新しい味覚の開花!!それに……」

( T)「それに?」

秋月「狩れば、無料!!」ヒョイモグモグ

( T)「二個目~~~~~~~~~~~????」

熊野「貴女なら理解ってくれると信じていましたわ……!!」ガッシ

秋月「モグモグくまほsンッグゴッホ!!」

( T)「俺はどこから突っ込めばいいの~~~~~~~~~~~~?????」

秋月「ングッ……お、お騒がせしました……」

熊野「さぁ、参りましょう!!美味しい妖狩りへ!!」

秋月「はい!!それで、何をすれば?」

熊野「えっ……と……そのぉ……」チラッ

( T)「……」

熊野「……」ジィッ

( T)「いや俺に答えを求めんなよ……」

熊野「提督ほどの殿方なら妖の一つや二つ召し上がったことがあるでしょう?」

( T)「めっちゃ真剣な顔で聞いてくるけど完ッ全に頭可笑しい奴の発言だからな?」

秋月「あるんですか?」

( T)「……」


( T)「あるよ……」


熊野「やっぱり。人が悪いですわね」

秋月「ど、どうでした!?量は、味は!?」

(;T)「待て待て、あんなもん危険犯してまで獲りにいくような……」


熊野「……」ジィッ……

秋月「……」アキヅキィ……


(;T)「……」


ああ、こりゃダメだ。何言っても諦めねえ奴だわ


(;T)「ハァ~~~~~……オーケー、俺の負けだ。次の非番に食えそうなバケモンがいる場所に連れてってやる」

熊野「やりましたわ!!」パァン!!

秋月「粘り勝ちですね!!」パァン!!


ハイタッチを決めてキャッキャと喜ぶ未来のゲテモノ食いガチ勢候補共。どこで育て方を間違えたんだ俺は
だが……まぁ、考えようによってはちょうど良かったか……済まさなきゃならない依頼もあったしな


( T)「……」


熊野 キャッキャ!!

秋月 ウフフ!!


( T)「……」


死なねえよな……大丈夫だよな……?

【次の非番】 ベルモンドヒバンデラス!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


早朝五時


( T)「ちゃんと寝たか?」

熊野「ええ、しっかりと」

秋月「はい……いただきますぅ……」

( T)「半分寝てる奴~~~~~~~~……」


軍属とは思えないこのグダグダ感。出だしから不安になりますよ


熊野「秋月さん、しっかり」

秋月「へっ、ま、朝ごはん?」

( T)「食っただろ……」

秋月「そ、そうでした。えへへ、楽しみで中々寝付けなくって」

熊野「それで、本当に罠は必要無いのですの?」

( T)「罠張ったら回収しなきゃならねえだろうが。あんなとこ年に二回も三回も立ち入る場所じゃねえぞ」


熊野は艦娘の中では珍しく(というか他に見たことが無い)狩猟免許と猟銃免許を取得している
毎年シーズンになるとオフの日には上下二連式散弾銃を引っ提げて罠を仕掛けたり確認しに行ったり
時にはテントを張り泊りがけで狩りをするほどのめり込んでいる。どの口が神戸生まれのお洒落な重巡を名乗ってんだろうな
今回も肩掛けのガンケースに入った愛銃を引っ提げている。服装はオレンジを基調とした迷彩服とキャップ。スパイクブーツ
そして弾薬やナイフが差し込まれている弾帯と、重要かつ最低限のアイテムが入ったリュックサック
どこからどう見ても狩猟ガチ勢の恰好であった。これで中身がオッサンだったら完璧だった

対して秋月は山入りも初めての艦娘。とりあえず動きやすく、汚れてもいい服装ということでジャージとウィンドブレーカーを着用している
ただし、靴だけは熊野の私物である底貫き防止用の鉄板入りの長靴を履かせている。スニーカーで山に入ると死ぬってお婆ちゃん言ってた

( T)「よっしゃ、車乗れ。出発するぞ」


この鎮守府に元々置いてあった中古のハイエースに乗り、エンジンを掛ける
何故か全面スモークガラスなのは気にするな。天井やシーツに引っかき傷みたいなモノがあるのも気にするな。少なくとも俺は心当たりがない


熊野「遠いんですの?」

( T)「車だと二十分もありゃ着くかな。そこからちょい歩くが」

秋月「司令、後部座席にあるバッグから柄……みたいな物がはみ出しているのですが……?」

( T)「触んなよ怪我するぞ」

秋月「は、はい……」

( T)「ぶっちゃけ銃効くかどうかわからんからなぁ」ブロロン

熊野「へっ?」

( T)「しゅっぱーつ」ブロロロロ

熊野「ちょっとぉ!?」



【狩猟豆知識】


複数で行う巻き狩りの際は、他の猟師からの誤射を避けるため視認性の高いオレンジ等の狩猟服の着用が義務付けられる
猪や鹿等の狩猟鳥獣は青色以外識別できない色盲なので狩りには影響がない
逆に、カモフラージュ率の高い服装を選ぶと他の漁師に誤射される危険性があるので避けるべきだとネットに書いてた


【狩猟豆知識】

―――――
―――



( T)「よし、ここからは歩くぞ」キキッ ギィッ

秋月「ふぁっ、も、ご馳走?」

( T)「食い気が先行しすぎてんぞ」


道路脇、ガードレールが派手に損壊してる場所に車を止める
正直二車線分の広さも無いクソッタレな道路だが、こんな場所通る車なんかほぼいないので問題は無い
いるとすれば自殺志願者か業者の不法投棄か、それか死体を処理しにきた連中くらいだろう。いい迷惑だ全く


( T)「熊野、ライト」

熊野「はいはい」


東の空からはうっすらと太陽の気配があるものの、空を覆い隠す木々によって恩恵はほとんど感じられない


秋月「ふ、雰囲気が……ありますね……」


流石に秋月もこの不気味さに多少怖気づいたようだ


( T)「ワクワクするだろ?ほれ、これお前の荷物」ポィッ

秋月「っとと、中身は?」

( T)「昼飯。あとロープとかなんかグロい色の煙出す発煙筒」スチャッ

秋月「へぇ、それはたのしm……司令!?」

( T)「何?」

秋月「何ですかその……装備!?」

( T)「装備も何も……マチェット、手斧、ナイフ三本に……あと聖水とか塩とか?」

秋月「重装備過ぎませんか!?」

熊野「控えめなダニー・トレホの様ですわよ?」

( T)「スパイ・キッズで良い役貰ってたよな」


バッグも担いで、俺の装備はこれで揃った。まぁ殴れば殺せるけど、備えあればと言うしな

( T)「よーし、そんじゃ、作戦概要を説明するぞ」

熊野「あら、任務ですの?」

( T)「そうだよ、地元の猟友会からの依頼でな。お前らも知っての通りウチの鎮守府はバケモノの宝庫だ」

熊野「遺憾な事にね」

秋月「オマール海老やタコみたいに美味しいハプニングもありました!!」

( T)「ああ……うん、美味しかったね……」


もう巨大生物シリーズは無いと思いたい。流石にゴジラまで登場されたら打つ手がない


( T)「まぁウチの鎮守府は、バケモノ出現エリアのほんの一部なんだがな」

( T)「で、今から向かう先が、その中心地だ。はっきり言うが鎮守府なんて比較にならないレベルでバケモンが出現する」

( T)「例えるなら、ウチの鎮守府でパズドラレーダーを起動したら一回につき10ドロップ手に入るが」

( T)「この先で起動させたら一回につき30ドロップ+虹ドロップが三割占めている感じだ」

熊野「微妙にわかり辛い例えやめて下さらない?」

秋月「つまり、鎮守府の三倍のオバケが現れて、その内三割が極上のご馳走だってことですね!!」

( T)「前向き」

熊野「説明が悪いですわ」

( T)「はい」

( T)「そんで、ウチに限らず他所様の村町でも悪さする奴がいてな。悪戯で済めば良いんだが、稀に洒落怖レベルの被害に遭う場合もある」

( T)「そこで年に一度、こうして『怪異より人間の方が恐ろしい』と奴らに知らしめて、人里に降りてこさせないようにするのさ」

熊野「それって提督以外のお方に成し遂げられますの?」

( T)「俺が着任するまで寺生まれのGさんが何とかしてたらしいんだが、歳でな……」

熊野「ああ、あの和尚さん……人外って意外と多かったんですのね」

秋月「でも司令、今までそんな話……それこそ、あきつ丸さんや雲龍さんからも聞いたことが無かったのですが……?」

( T)「ああ、それな。あきつは一度連れてきたんだが、入り口付近でいきなり白目剥いて吐いちまってな」

秋月「えっ?」

( T)「いやあの時めっちゃビビったよ。痙攣は止まらないし泡吹くし失k」

熊野「これ以上は彼女の尊厳に関わるのでやめましょうね提督?」

( T)「はい。それ以来、毎年俺一人で何とかしてんだよ」

秋月「あ、あの、憑りつかれたり……するのですか……?」

( T)「さ!!この先に鳥居がある!!そこを通り抜けたら今日の狩場だ!!気合い入れてイクゾォ!!!」デッデッデデデデッ カーンッ

秋月「司令!?しれーい!?」

熊野「秋月さん」ポン

秋月「く、熊野さん……」

熊野「美味しいご飯の前に、困難は付き物……乗り越えたからこそ、食はもっと輝くんですのよ!!」

( T)「気概が凄い」

秋月「うう……遺書を書いてくるべきでした……」

獣道を歩きぬけ、蔦やら枝やらをマチェットで切り払いながら凡そ三十分の道のり
普段鍛えてるだけあって、二人は軽く息切れする程度で遅れず着いてきている


( T)「ご到着っと」


腐食が進んだ木の鳥居と、苔に覆われた頭の無い地蔵がお出迎えだ


秋月「こ……怖いです!!」

( T)「正直」

熊野「ふぅん、如何にもって感じですわね」

( T)「秋月見ろ。心臓に毛が生えてるってのはこういう奴の事を言うんだ」

熊野「貴方に言われたくはありませんわね。そもそも、鎮守府が既にお化け屋敷ですわ」スッ

( T)「おーっと待て待て、まだ入るな」

熊野「まだ何か諸注意が?そういうのはまとめて言ってくださらない?」

( T)「えっ、ごめ……いや言ってねえ諸注意言ってねえ。流れで謝りそうになったじゃねーか」

熊野「情けの無い殿方ですわ……」

( T)「やめろ心に刺さる。いいか、ここから先は携帯は勿論、無線やGPSも機能しない。万が一逸れた時はむやみやたらと動かずその場で発煙筒を炊け」

( T)「それと、この先で出会う全ての動物は、例え小動物であろうと何かしらの怪異を抱えてる可能性がある。見つけても絶対に構うな」

熊野「熊などの猛獣に出会った場合は?抵抗しても宜しいのでしょう?」

( T)「……熊ならまだマシな部類だな……よし、許可する」

秋月「熊がマシな部類……?」

( T)「あ、あと秋月これ」

秋月「はい?これは……」

熊野「スリングショットですわね」


『スリングショット』。解りやすい呼び方をすれば『パチンコ』だ。パチンコによる猟は法廷猟法(罠、猟銃など)に該当しない為、狩猟免許を必要としない(自由狩猟)
当然、秋月は今回が初めての狩りだ。免許など持っていない。しかし丸腰も心もとないので、こいつを用意したってワケだ


秋月「上手く扱えるでしょうか……?」

( T)「銃弾と違って山なりに飛ぶからな。お前なら数発撃てばコツ掴むだろうよ」

熊野「猟銃が効くかどうかもわからない相手に有効かどうかはさて置いて」

秋月「う……」

( T)「なんでそんな意地悪言うの?」

熊野「あら、先ほど貴方も似たような事を仰ったのでは無くて?」

( T)「まぁ……俺から離れなきゃ使う機会もねえだろ……」

秋月「知ってます……それ、フラグって言うんですよね……」

( T)「……」

秋月「……」

熊野「さ、幸先が不安ですわ……せめて明るく努めて頂けません?」

( T)「頑張るぞ……おー……」

秋月「おー……」

熊野「もう何かの呪いが掛けられていらっしゃるのかしら……?」


冗談はここまでにして、いよいよ呪われた樹海に足を踏み入れる


( T)「おじゃましマッスル」ザンッ!!

熊野「よっと」ザッ

秋月「おじゃましまーす……」ソッ……

熊野「ひぃ!!」

秋月「いやっ!!」


一歩踏み入れると同時に、背筋を濡らした刷毛でなぞられたかのような得体のしれない気持ち悪さに襲われる
俺はもう慣れたが、初めての二人は情けない悲鳴を上げた。いやごめん無理もないわ俺も最初はチビるかと


熊野「な、なななな……」

( T)「落ち着け。洗礼だ」

熊野「お……驚かせやがって、ですわ……」

( T)「言葉遣いガタガタだぞお前。秋月、お前は……」


秋月「」


あっやっべ


秋月「ハ……」


秋月「はいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれた」


早速憑りつかれたわ。入って三十秒も経ってねえぞ暫く顔出さねえ内に調子乗りやがって殺す


(#T)「マッスル指パッチン!!!!!」バチコォン!!!!!!!!

秋月「ピッ!?」フワァ


燃える闘魂も腰を抜かす音量の指パッチンで秋月に憑りついたクソ霊を追い出し


(#T)「はい捕まえてぇ!!!!!握殺ッ!!!!!!!!」グワッシャア!!!!!!

<ンアアアアアアアアアアアア……


いつも通り握り潰す。散々言うが概念を掴む感覚に慣れたら誰でも(ry

秋月「ん……はっ、し、司令?秋月、一体……?」

( T)「ヤマノケに憑りつかれただけだ。もうぶっ殺したから大丈夫だ」

熊野「……それって洒落怖の怪談かしら?」

( T)「良く知ってるな」

熊野「鈴谷が好きですのよ。自分が怪異みたいな物だって自覚は無いのかしらね?」

( T)「大丈夫、お前も突然変異種だ」

熊野「失礼では無くって!?」

( T)「妖怪食いたいとかほざく奴がまともなワケねえだろ。秋月、歩けるか?」

秋月「も、問題ありません……ヤマノケとは?」

( T)「簡単に言えば女にとり憑く悪霊だな。四十九日間憑かれたままだと一生正気に戻らねえ」

秋月「ヒッ……」

熊野「味は?」

( T)「えっ?今握りつぶしたの見たよね?食えると思った?」

熊野「ゲテモノ好きの貴方の事ですから、味見くらいしたのかと」

( T)「俺一度でもゲテモノ好きって言った?」

秋月「し、しれ……気分が……うっ」


取り憑かれた時のおぞましさがフラッシュバックしたのだろう。秋月は俯いて嘔吐く
クソ、俺の落ち度だ。まさか初っ端からブチかましてくるとはな


( T)「相当キツかっただろ。我慢せず吐け」

秋月「い、いえ……大丈夫です……すみません……」

( T)「にゃんちゅうの物まねして気分を和やかにしてやろうか?」

秋月「お、お気遣いなく……」

( T)「お゙お゙ん゙!!!!!!!!!!!!」

秋月「大丈夫ですってば!!」


よし、気は紛れたようだな

熊野「あら……提督、鳥居が」

( T)「ああ」


振り返ると、『入口』である鳥居はなく、ただ鬱蒼とした森が広がるばかり
踏み入れたが最後、後戻りは出来ないという『奴ら』の歓迎方法だ


( T)「この場所……俺らは『裏世界』と呼んでいるが、基本的に一方通行だ。退けば最後、二度と戻れない」

秋月「で、出口は……?」

( T)「勿論あるさ。決められたルートを通りつつ、各ポイントで怪異をボコボコのグッチャグチャにすれば自ずと向こうから出口を開く」

熊野「まるでホラーゲームですわね」

( T)「馬鹿野郎ヌル過ぎてゲームにもならねえよ」

秋月「今ほど司令がいて本当に良かったと心から安心できた瞬間はありません……」


〖 ぽ 〗


秋月「っ……!!」

( T)「シィッ」


背後からいきなり耳元で囁かれたように聞こえた低い女の声の半濁音
悲鳴を上げようとした秋月の口を抑え、茂みに身を隠す。熊野は愛用の二連式散弾銃にスラッグ弾を込めた


熊野「これも……有名な怪異ですわね」

秋月「ど、ど、どこから……?」

( T)「クソみてえなASMR聞かせやがって……いたぞ、あそこだ」


白いワンピースは、並び立つ木々と比べると不自然なまでに映えている
ぬめりとした長い黒髪とつば広帽子が表情を隠しているが、隙間からは『ぽ、ぽ、ぽ』と鳴き声が漏れていた
二メートルを超える身長から、その化け物女はこう呼ばれている


( T)「尺八様。成人前の男を狙って取り殺すクソビッチだ」

秋月「え……エッチな広告でよく見る妖怪ですか……?」

( T)「そう……え?いや、広k……え?」

熊野「殿方ってのは節操がありませんわね……」

( T)「え?」


そんなんあるんだ……いや、いくら溜まっててもあんなの相手にするのなんて絶対に御免だが
そして何故熊野は俺を蔑んだ目で見るのだろうか。男=性犯罪者の方程式を絶対にしてるフェミ女かよ


( T)「じゃあちょっとぶっ殺して来るから待ってろ。絶対に動くなよ」

秋月「スナック感覚で倒せるものなんですか!?」


〖 ぽ 〗


秋月「しまっ……」


秋月のツッコミに反応し、どす黒い瞳が俺たちを捉える。そして―――


〖 やっべ 〗


その青白い顔を更に青ざめさせ、背中を向けた


熊野「やっべ?」

( T)「覚えてやがったか。あれだけ痛い目に遭えばそりゃあ……」


尺八クソビッチの脅威は『スピード』にある。自動車と並走できる脚力を持っているのだ
だがそれは遮蔽物のない『道路』に限る。森などの直線で走ることの出来ない場所ではご自慢の俊足も半減だ
隠れた理由がお分かりいただけただろうか?『餌』の音につられてノコノコやってきたクソビッチを


(#T)「逃がすかァッ!!!!!!!」


確実にぶち殺すためだ

一歩、二歩、三歩目で跳躍


〖 ひぃぃ!!! 〗


三角飛びの要領で木の幹を蹴り、奴の頭を両手でしっかりと掴む
そのまま慣性と重力と筋力を使い降り下ろし――――


(#T)「完武・兜砕き!!!!!!!!!!」ドゴッシャア!!!!!!!!


着地と同時に俺の右大腿部に叩きつけ、ココナッツの如くぶち割った


〖 ポプラッ!!!!!!!!! 〗


(#T)「そのタッパで種島ぽぷらちゃん自称する気かてめぇ~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!お望み通り低身長にしたらぁ~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!」ガッガッガッ!!!!!!!

秋月「も、もう勝負は着きましたから!!」

熊野「これじゃどちらが怪異かわかりませんわね……」


スゴイシツレイである。とにかく、これで二つ目の怪異は撃破した
しかしぶっ殺しても来年になったらまた出てくるのだ。相変わらず羽虫みたいに鬱陶しい連中であった


秋月「司令の顔を見た途端、一目散に逃げましたね……」

( T)「まぁ、こいつは年一で確実にぶっ殺す対象だからな」

秋月「恐怖の対象が恐怖する司令って一体……?」

熊野「これは食べr ( T)「食えるわけねーだろせめて人型は避けろよ」ですわよね」


亡骸は黒い瘴気になって徐々に溶けていく。寺生まれのGさん曰く、この状態は『原子の結びつきを解いた』ようなものらしい
傍目には消滅したように見えるが、恐怖を集めることでまた結びつき、『存在』として顕現する
記憶に新しいものだと、一騒動起こした貞子(川д川←こいつ)などいい例だ。いや、悪い例だ


熊野「ちゃんと形として残るものはありますわよね?」

( T)「無かったら連れてこねーよ。長い一日になる、根気よく行こうぜ」

熊野「楽しみにしてますわよ?」

秋月「強いですね……秋月は既に挫けそうです……」

熊野「猟は根気と忍耐ですのよ?この程度でへこたれてはいられませんわ!!」


頭おかしい奴はすぐに適応してくれるから助かる

―――――
―――



熊野「これからどちらへ?」

( T)「駅を目指す」

秋月「こんな森の中で駅ですか?」


第一チェックポイントのキーワードに、秋月は首を傾げた
当然だろう。鎮守府周辺どころか一番近い村でさえ鉄道は通っていない
せいぜい、一日二本のワンマンバス程度だ。田舎のアクセスの悪さを考えれば、どの家庭でも車は所持して当然だが
村民の高齢化によって利用者は一定数いる為、廃線になることは無いらしい


( T)「聞いたことねえか?『きさらぎ駅』」

熊野「ああー……確か、これもネット発の怪談ですわね」

秋月「ど、どのようなお話で……?」

熊野「簡単に言えば、電車で寝過ごして終点に到着した先が、見覚えのない無人駅だった……という、体験談ですわ」

( T)「まぁその無人駅がこの先にあるんだよ」

秋月「えと……この辺りに駅が建っていたという過去は……?」

( T)「こんな木と山と海しかない限界集落に鉄道引く物好きがいたなんて話は今んとこ聞いたことねえな」

熊野「高速道路建設は予定されていたのでは無くて?」

( T)「うんまぁそれも事故と不審死続出でオジャンになったんだけど」

秋月「鎮守府に『地獄』だなんて物騒な名前が付けられている理由がわかった気がします……」

熊野「大よその察しはつきますが、あの鳥居以外でもこの場所へ迷い込む方法がありまして?」

( T)「うん。今のとこ確実に入れるのがあの鳥居で、それ以外は天文学レベルの確率で乗り物や扉……後は夢の中とかかな」

秋月「今夜は安心して眠れなくなりました……」

( T)「それを防ぐ為にこうしてグチャグチャにしに行くんだからダイジョブダッテ!!」


秋月のテンションが低い。歌でも歌った方が良いのかもしれない
ロッキー4の挿入歌『ハーツ・オン・ファイアー』でも歌おうか


( T)「秋月、ロッキー4の挿入歌……」

秋月「司令!!」

( T)そ「えっ、嫌だった?やっぱり『アイ・オブ・ザ・タイガー』の方が好み?」

秋月「熊野さんが立ち止まりました!!」


振り返ると、最後尾を歩いていた熊野が右を向きながらぼんやりと立ち尽くしている
瞬き一つせず、ブツブツと何かを呟きながら


( T)「あー、アレだな。幸先が良い」

秋月「幸先?ま、またヤマノケに取り憑かれたのでは……?」

( T)「違う違う。アレ見……いや、見んな」


熊野が見る先を向こうとした秋月の顔を掴んで止める
正確には『見てはいけない』のではなく『理解してはいけない』怪異だ


秋月「ふぐぐ……ひれい?」

( T)「『くねくね』だ」

熊野の見る先には、白く細長い物体が奇怪な踊りを披露している
視神経を通って脳に直接触手をぶち込まれたかのような不快感と浮遊感が襲ってきた


( T)「……」


そのまま突っ込んでぶち殺すのは容易だが、問題は魅せられている熊野だ
あいつの手には猟銃が握られている。トチ狂った彼女が俺の背中をズドン、なんてこともあり得る


( T)「いいか、絶対に向こうを見るな。その上で頼みがある」

秋月「ふぇ……はずは、ふぇを放ひふぇくだふぁい……」

( T)「あ、ごめ。目ぇ瞑っといて?」


瞼を閉じた秋月の顔から手を放し、代わりに腕を取る
視線はくねくねから離せないが、躓かないように慎重に熊野へと近づき、背後へ回る


( T)「ちょいとごめん……よっと!!」


猟銃を叩き落とし、熊野の腕を背中へ回して地面へと押し倒す。事案とか言うな


熊野「ひぁあっ!?」

( T)「よし秋月!!抑えてろ!!」

秋月「はっ、はい!!こうですか!?」

( T)そ「ふぐぅそれ俺の顔!!こっち!!」

秋月「し、失礼しました!!」


暴れ出さないように秋月に熊野を任せ、俺はくねくねへと近づく
距離が縮まるごとに踊りは激しさを増し、不快感は痛みへと変わるが


(#T)「キモいもん見せてんじゃねえラバーメン(ゴム人間)!!!!!」


お陰様で怪異耐性EXまで昇華した俺にはそれ以上の効力はなく


(#T)「死ねオラァ!!!!!!」


脚に当たる部分を掴み、その辺の木に叩きつけて手早く『〆た』

( T)「やれやれ……」


<しれー!!ご無事ですかー!!

<あ、秋月さん!?極まっ、極まってますわーーーーーー!!!!!


熊野も無事、元通りになったらしい。俺が直々に指導した関節技は暴れた所で外せはしない


( T)「ちょっと待ってろー!!収穫するからー!!」

<収k……何ですって!?


さて、どの辺りが良いだろうか。まぁどうせどの部位でも味は一緒だから、腹回りでいいか
ナイフを引き抜き、三十センチ大の肉を切り取る。内臓は存在せず、豆腐のように白く味気のない断面図が御目見だ


( T)「今度は調理方法を変えるか……」


後処理に聖水を適当にぶち撒けて処置は完了だ。これで暫くは復活できまい
別の怪異に食わしちまう手もあるが、何らかの強化でもされたら堪らん。めんどくせえ


( T)「おつかれ。もう目を開けていいぞ」

秋月「はい……えっ、それは?」

( T)「くねくね」

秋月「えっ?」

( T)「えっ?」

熊野「いたたたたた痛い痛い痛いですわ!!先にどいて下さらない!?」

熊野「ワケもわからぬまま酷い目に遭いましたわ……」

( T)「いやお前あのままだったら廃人化してたぞ」

秋月「どうなったか覚えていらっしゃいますか?」

熊野「いえ……ただ、とてつもなく気持ちの悪い物を目にした実感だけはありますわ……」

( T)「まぁこれがその正体なんだけどな」

熊野「くねくね……と、仰ったかしら?」

秋月「この白いのが……?」

( T)「食えるぞ」

熊野「はぁ!?」

( T)「なんだお前お目当ての食材だぞ」

熊野「く、くねくねって食べられるんですの!?」

( T)「尺八様食おうとした奴が今更何言ってんだ」

秋月「な、名前は可愛らしいですが……どういった怪異なのですか?」

( T)「田んぼとかに出没するキモい生き物だ。踊りと共に念を飛ばして気を狂わせ、廃人にする」

秋月「さっきの尺八様と違って、消えないんですね……」

( T)「まぁ、こういう実体があるタイプもいるって事だよ。まぁ、無くても殺せるが」

熊野「不覚ですわ……よもや、狩猟対象に脅かされるとは……」

( T)「猟犬の役割は果たしてたから結果オーライってことで」

熊野「あんなスポット勘弁願いたいですわよ!!」 ※猟犬が獲物を見つけて待ち構える仕草

秋月「た……食べても、大丈夫なんですか?」

( T)「俺と叢雲は問題なかった」

秋月「叢雲さんも口にしたんですか!!!????」

( T)「いや、大本営からの嫌がらせで補給届かない時があってさぁ。そん時こうして狩りで食いつないでいた時あったから」

秋月「た、タフなワケですね……」

熊野「肝心なのは味ですわよ。で、どうですの?」

( T)「調理次第、かなぁ……食感は味のないはんぺんみたいな感じ」

熊野「はんぺん……当時はどうやって食しましたの?」

( T)「塩振って焼いた」

熊野「でしたら、今度はおでんの具などにしては如何かしら?」

( T)「いや揚げる。イカフライみたいになるかもしれん」

秋月「秋月、とんでもない行為に足を突っ込んでしまった気しかしません……」


ようやく気がついたようで何よりだ。秋月は頭が賢い
目的と収穫がいっぺんに片付いたところで先を急ぐとするか

―――――
―――



くねくね遭遇から歩く事十五分。第一チェックポイントである『きらさぎ駅』に到着した


秋月「本当に、駅が……」

熊野「ご丁寧に鉄道まで敷いていますわね。この先は何処へ通じていますの?」

( T)「進んでも戻っても同じく駅にたどり着く。無限ループだ」

秋月「踏み入れて大丈夫なのですか?」

( T)「燃やす分には問題ない」

秋月「発言が既に問題しかないですが……」

( T)「ふむ……七時前か。ちょっと休憩しよう。ベンチもあるし」

秋月「正気ですか!!!???」

熊野「秋月さん、提督が正気だった時など一度もありませんわよ?」

秋月「だとしても限度があるでしょう!?」

( T)「いや、どっちにしろ電車待たないといけないし……」

秋月「来るワケ……来るんですか?」

( T)「え?うん」


秋月は白目剥きそうな顔をした。面白いのでやめてほしいと思った


熊野「まぁまぁ、お茶でも致しましょう。狩りの最中に飲むコーヒーは格別でしてよ」

( T)「紅茶じゃないんだ……」

渋る秋月を宥めながら、苔むした階段を昇ってホームへと踏み入る
錆びついた看板には旧書体で『きさらぎ駅』の文字。隣接駅に『かたす』と『やみ』が並ぶ。かたすってなんだよクリニックか
古び、何らかの染みで汚れているベンチにアナ雪のピクニックシートを敷き、束の間のティータイムが始まった


( T)「ジャイロの淹れるイタリアン・コーヒーはこんな旅において格別の楽しみだ」

( T)「コールタールみたいにまっ黒でドロドロで同じ量の砂糖を入れて飲む」

熊野「お望みなら手持ちのお砂糖全部入れて差し上げましょうか?」

( T)「やめて」


いつか飲んでみたいものだが、今は熊野が淹れたスティックタイプのインスタントコーヒーで良しとしよう
って、おいおいこんな所にコトリバコ落ちてんじゃねえこっそり潰しとこ


( T)「オサラバシイナ!!」クシャッ

<アアアアアアアアアアアアアアアアス!!!!!!!!!


ハッカイか。呪いのキックバックも大したことねえな


熊野「何か仰りましてー?」

( T)「目覚めた心が走り出した音」※未来を描くため

熊野「相変わらずワケのわからぬ事を……コーヒー、出来上がりましたわよ」


あまりヘタな事を言えばタダでさえ消耗している秋月が滅入ってしまう
細々したものなら秘密裏に処理してしまおう


秋月「ふぅ、美味しい……落ち着きます……」

( T)「この一杯と一服の為に生きているよなぁ」シュボッ

熊野「それは何より。提督、この後の行程は?」

( T)「27年間隔でピエロの幻覚見せてくるデカい蜘蛛を駆除したり人妻と子供の悪霊がいる家焼き払ったり早歩きくらいの速度で追っかけてくるブラクラ素材みたいな白塗りのデカい顔面でスイカ割りしたりとかかな……」

秋月「全部聞き覚えがあるんですが!?」

熊野「食べられる物があるとは思えませんわね……」

( T)「結構ガチなやつは大体食えねえな……比較的マシなレベルなら調理次第で……どうにか……無理か……感染症が……」

熊野「肩透かしだけはご勘弁願いたいものですわね」

秋月「食べても病気や呪いに掛からない物に限定してください……お願い……お願いです……」

( T)「ハハ、悪い悪い。ちょいと脅しが過ぎたな。ちゃんと美味いもんにはありつけるから心配っ……!!」


カンカンと踏切が鳴る音で秋月が耳を塞いで短い悲鳴を上げる。熊野は瞬時に猟銃を手に取った
線路の向こうからは元気のない前照灯の明かりと警笛の音が、『ガタンゴトン』のリズムに乗って近づいていた


『まもなく、電車が来ます。その電車に乗るとあなたは恐い目に遇いますよ~』


覇気のないアナウンスが流れる。叢雲より恐い存在なんていない


( T)「来た来た。さーて、皆殺しにするか」

秋月「な、何が乗ってるんですか……?」

( T)「夢の中でグロい殺し方してくるちっさいオッサンが大量に」

熊野「猿夢?」

( T)「正解。まぁお前らはゆっくりしとけよ。俺一人で楽し……楽しんでくるから」

秋月「アトラクション感覚!?」


マチェットを鞘から抜き、白線の内側で電車が止まるのを待つ
遊園地なんかでよく見るような、猿のラッピング電車だ。イラストの目の下が錆び、血涙のような柄が出来ている。キモい
扉が大きく息を吐いて開くと、車内アナウンスが流れた。そして


『次は~挽肉~挽肉~』


中で待ち構えていたボロ衣を纏ったちっさいオッサン達の血走った目が、一斉に此方を向いた


(#T)「挽肉になるのはお前らの方だァ!!!!!!!!!!!!!!」


そして、蜘蛛の子を散らすかのように、逃げ場のない車内の奥へとダッシュで逃げ込んだ


(#T)「逃げんじゃねえ!!!!!!殺すぞ!!!!!!!!逃げなくても殺す!!!!!!!!」


散々人様に迷惑かけといていざテメーらの番になったらこれだ。クズ極まりない連中だな全く

―――――
―――



( T)「お待たせ。タイムは?」

熊野「二分十五秒」

( T)「猿夢攻略RTA更新だな。秋月、アルコールジェル取って」

秋月「は、は、は、はいぃ……」

( T)「寒いの?」

秋月「し、司令が恐いですぅ……」

( T)「泣きそう」


電車の中を小さいオッサンの血肉で染め上げ、文字通り地獄の血みどろマッスルになった俺だ ※シリーズタイトル回収
これでしばらくは日本国民の安眠は保たれる。良いことした後は気分が良いな


熊野「有名な怪談の割に大して強くもありませんのね?」

( T)「普通の人なら車内に入った途端眠りに入るからヤバいっちゃヤバいぞ」

秋月「じゃあどうして司令は平気なんですかぁ……」

( T)「昨日いっぱい寝たからかな。食えるもんもないし、そろそろ移動しようか。秋月、焼夷手榴弾取って」

秋月「焼夷手榴弾!?」

( T)「燃やすっつったじゃん……」

熊野「山火事まで発展しますわよ?」

( T)「不思議な力で守られてるから駅以外燃えねえよ安心しろ。なんならマシュマロでも焼くか?」

熊野「やはり正気ではありませんわね」

簡単に後片付けして、クソ駅のホームを降りる
なんかアナウンスで「二度と来ないで」って言われたけど爆笑しながら「生き返ったら殺しに行くから待ってろ」っつったら啜り泣く音しか聞こえなくなった。草


(#T)「燃えろーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!」


仕上げに焼夷手榴弾をポイしてきさらぎ駅の処置は完了だ
これでしばらくは終電で寝落ちして意味不明な駅に迷い込んで困る人はいなくなる。良いことした後は気分が良いな


秋月「これ……元通りにならないですよね?」


焼け落ちていく駅を見ながら秋月がポツリと呟いたが


( T)「数年で元通りになる。無限に燃やせるぞ」


残念ながら怪異っつーものは常識が通用しなかった


熊野「やれやれ、そろそろ有意義な食材に辿り着きたいものですわ」

( T)「地道に探すしかねえなぁ。三分の一の確率でマンドラゴラが引き抜ける松茸の群生地にでも向かうか?」

秋月「松た……マンドラゴラを引いた場合どうなるのですか?」

( T)「俺は気づいたら全裸で山の中駆け回ってたよ」

秋月「……」

熊野「一応、悩むんですのね……」

秋月「幸運に賭け……でも全裸はちょっと……」

( T)「きのこ全般嫌いだから行かないけど」


秋月は安心したような、それでいて少し残念といった複雑な表情をした


熊野「一度収穫に出向いた理由は?」

( T)「松茸は高く売れる」

熊野「悪役トレジャーハンター結末のようですわね」

( T)「スカラベに皮膚の下潜りこまれるよりマシだったがな」


ハムナプトラ2は今やハリウッドで一番稼ぐドウェイン・ジョンソンの俳優初出演作だ

( T)「じゃあ今から山の中にポツンと一軒家が建ってるからそこに向かってバケモノ母子をぶっ殺すけど、その前に良いも……良くはねえけど、傍目から見れば綺麗なもん見に行くか」

秋月「良いものって言い切って欲しかったです……」

( T)「まぁバカにとっちゃ是が非でも欲しいもんじゃねぇかな……」

熊野「エロ本?」

( T)「うーん、バカ!!!!!!!!」


燃えてすら尚、黒煙という有害物質しか吐き出さないクソ害悪駅を後にして
傾斜の緩めな山をせっせこ登る。途中、半分白骨化した首吊り死体とかあったけど二人には言わずにこっそり線香だけ上げといた


秋月「ハッ、ハッ……」

( T)「頑張れ、もうちょっとだ」

熊野「……」

( T)「熊野ちゃん沼田のチェック後にして。置いてくぞ」 ※猪が泥浴びする所

熊野「罠だけ仕掛けても……」

( T)「置いてきただろうが。よしんば仕掛けたとしてもチェックすんの来年だぞ」


名残惜しげな熊野を引っ張りながら、山の天辺へと到達する
果てしなく森しか見えないが、一箇所だけポカリと穴が開いていた


秋月「ふぅー……司令、ここで何が?」

( T)「あの穴のとこ見とけ」

秋月「……オバケとか」

( T)「でねぇって」


まぁある意味オバケより厄介な存在だが、見る分には問題無い


熊野「あら……あそこも燃え……でも、煙は上がってない……?」

( T)「いいタイミングだな。見てろ」


穴の底から、勢いよくごうと炎が巻き上がる。二人が驚きで息を飲んだ
炎は空へ続くように一直線に伸び、その中心では燃える翼を携えて


秋月「綺麗……」


『火の鳥』が、天へと飛び立った

熊野「あ、あ、あ、あれって!?」

( T)「不死鳥」

秋月「そ、そんなものまで……?」

熊野「た、食べると不老不死になれるんですのよね!?仕留めない手はありませんわ!!」

( T)「やめとけって」


構えた猟銃を手で抑える。どうせ撃っても死なない奴だし


熊野「どうして邪魔しますの!?」

( T)「関わったら無限地獄味わう目に遭う。ぶっ殺してくれる怪異の方がなんぼかまともだ」

秋月「不老不死って、死ねないって事ですもんね……」


秋月の言葉に正気を取り戻したのか。熊野は猟銃を降ろした
手塚先生の漫画にあるように、死ねなくなった人間の末路は想像を絶する地獄だ


( T)「花火だって触れば火傷する。あんなもん遠くで見て良い思い出にするのが一番だ」

熊野「それも……そうですわね。見苦しい所をお見せしました」

秋月「でも……本当に綺麗……」


不死鳥が空に消えると、火の柱もゆっくりと細くなり、そこには何事も無かったかのように穴だけが残る
転生を繰り返すあの存在が、孵化するための巣だ。人気のないここは絶好のポイントなんだろう


( T)「世界ってのは不思議に溢れてんなぁ」

秋月「……」


秋月「世界も司令にだけは言われたくないと思いますけど……」

( T)「俺ってそんな規模のデカい存在???????」


俺は世界規模の筋肉だった

( T)「そんじゃあ引き続き色んなところ燃やしに行くか」

熊野「趣旨が変わってますわよ?」

秋月「あれ……?」

熊野「どうかしまして?」

秋月「戻ってきてませんか?不死鳥」


マジかよクソめんどくせえな末代に至るまで呪い掛けてくるようなクソ鳥だぞ死ねよ
どうやって追い返そうか思案しながら空を見上げる。空を見上げる(恋空)。いや、アレは―――


( T)「火の鳥じゃねえな……黒い……人?」

熊野「ブラック・スーパーマンかしら?」

( T)「ブリクストンか~~~~~~~~~……」

秋月「うーん……原始人みたいな恰好をしていますね……」

熊野「あらホント。見覚えは?」

( T)「無い……と……いやでもどっかで……」


右手を前にスーッと飛んでくる南国系のオッサン。長い髪と髭に、腰布だけを身に着けている
直接目にした事はない筈だが、どうしてか見覚えがある気がする。なんだ……どこで……?

(;T)そ「あっ!!やべえ伏せろ!!」


オッサンは腰布を両手で広げる。股座にはサオが『三つ』並んでいた


「妖怪ちんぽ」


小学生もドン引きの低俗な自己紹介と共に、先端からバルカン砲の様に『弾』が放たれる


熊野「きゃあっ!?」

秋月「わわっ!?」

(;T)「クッソ、マジかよ!!怪我は?」

熊野「あ、ありませんわ!!なんですの!?あの変態オヤジは!?」

(;T)「水木しげる先生のオリジナル妖怪だよ!!ガキの頃アニメ映画で観てたわ!!」

熊野「もっとマシな妖怪だっているでしょうに!!どうしてあんな低俗妖怪が!?」

(;T)「知るかよそんなもん!!秋月、大丈夫か!?」


秋月「ふ、ふふ」


熊野「あ、秋月さん?」


秋月がバグった

秋月「ふ、ふ、素晴らしいモノを見せて頂いてすぐさまこれですか……」

熊野「ショックなのは承知ですが早く立ち上がってください!!次が来ますわよ!!」


妖怪ちんぽは空中で大きく旋回し、二射目を放とうと股間の汚い三本のサオをおっ広げる


(;T)「熊野、迎g」

秋月「シッ!!」


熊野が猟銃を持ち上げるよりも早く、秋月が『スリングショット』を放つ
銀色の放物線は秋の乾いた空気を鋭く切り裂き、そして――――


「ッッッッッ!!!!!!!!???????」


妖怪ちんぽの真ん中のちんぽを、ドンピシャで撃ちぬいた。パチンコでチンコを撃ちぬいた


( T)「ひえっ……」


身体から千切れ跳んだちんぽ。急所を一つ失った妖怪ちんぽは、残った二本のちんぽを両手で抑えながら墜落し、木々に飲み込まれていった


熊野「お、お見事ですわ……」

秋月「大きな艦載機と思えば、造作もありません。五十鈴さんや衣笠さんなら一射で全部千切ります」


目が据わった秋月は、妖怪ちんぽが墜ちていった場所を今にも唾を吐きかけんばかりの表情で見下す
防空駆逐艦の名は伊達じゃない。俺は軽い気持ちでこの子にとんでもない武器を渡してしまったんじゃなかろうか


秋月「邪魔が入りましたが、引き続き食材探しに勤しみましょうか!!」


と、明るく俺らへと向き直った彼女は一転して清々しいまでの笑顔だったが、目だけは据わったままだった

―――――
―――



(#T)「燃えろーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」


民家を燃やし ※呪怨のアレ


(#T)「割れろーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」


白い顔面を割り ※恐怖の森のアレ


(#T)「ピエローーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!」


27年間隔でピエロの幻覚見せてくるデカい蜘蛛を討伐した ※IT ~THE END~公開中(ノルマ)
一々描写するのも面倒なくらい秒殺だったのでダイジェストでお送りした。ダイジェストってなんだ


( T)「チェックポイントはあらかた回ったし、残りの時間は探索に回せるな……」

秋月「今日絶対怖い夢見ます……」

( T)「お昼ご飯にするかぁ!!!!!!!!」

秋月「はい!!!!!」

熊野「切り替え」


大本命が残っていたが、先ずは腹ごしらえと行こう。小川の辺りで早起きして拵えたお弁当とカップみそ汁を取り出す
山で食うおにぎりは最強だ。よつばいまさいきょうって感じ

熊野「提督はいつからこのお仕事を?」

( T)「んー……四年目くらいか?寺生まれのGさんの後継者が育ってなくてよ、俺に話が回ってきたんだよ」

秋月「その……管理?になるんでしょうか。行き届かなければどうなるんですか?」

( T)「行方不明者が増える。つっても、誤差の範囲内かも知れねえけどな」

秋月「……司令が管理できなくなったら」

( T)「何十年後の話?」

熊野「終戦後は霊能者にでもなるおつもり?」

(;T)「ええ~……どうかな……胡散臭いじゃん……自営業扱いになんの?確定申告自分でしなきゃならないじゃん……」

熊野「そもそも、このお仕事に報酬は出るんですの?」

( T)「山ほど野菜とか米とか貰える」

秋月「えっ?毎年この時期になると近隣の村から大量に送られてくるのって」

( T)「ああうん、これ」

秋月「もう司令に足を向けて寝れません……」

(;T)「え?なんで?」

熊野「珍しくそれなりの甲斐性を見……ッ!?」


川辺から聞こえた足音に、熊野は反射的に猟銃を手に取った


秋月「あっ、新手!?」

( T)「違う違う。顔見知りだ。熊野」

熊野「……人の足音でしたわよ?」

( T)「だーからそれで良いんだって」

「……」


摺り足で砂利を擦りながら、ビーサンとツギハギだらけのジャージ姿の爺さんが現れる
肩には大袋を担ぎ上げているが、足取りに難儀の色は見えなかった


( T)「よぅ爺さん。調子は?」

「ん……うん……」


皺だらけの唇をモゴモゴと動かすと、大袋を下ろして二人に目を向けた


( T)「ああ、ウチの連中だ。どうしても来てえって言ってたからな」

「さよけ……変わっとるの……」

( T)「草。熊野と秋月だ」

秋月「こ、こんにちわ……」

熊野「どうも……」

「ん……」


訝しげな挨拶に軽い会釈で返す
長居する気は無いらしく、物欲しげにバッグを指さした


( T)「わーってるって。はいよこれ」

「ん……ンッフフ」


持ってきた大吟醸の瓶を渡すと、喉の奥からくぐもった笑い声を上げた
大袋の代わりに瓶を担ぎ上げると、最後に


「気ぃつけえよ……今年のは余計にデカなっとるからな……」

( T)「マジ?まぁなんとかなるやろ。そんじゃ、また来年」

「ん……」


爺さんはもう一度会釈をすると、再び摺り足で川辺を歩いて行った

秋月「ど、どなたですか?」

( T)「あずき洗い」

熊野「あずき……あら、これ」


置いて行った大袋の中にはギッシリと小豆が詰まっている
今年もいい艶をしている。市場に持っていけばそこそこの値が付くだろう


( T)「まぁ、あの爺さんみたく害のない怪異もいるんだよ」

熊野「あら、例外なく皆殺しにするのではなくて?」

( T)「そんなんヤバい奴じゃん」

熊野「まるで自分は違うとでも仰りたいようですわね?」

( T)「えっ?俺ヤバい奴なの?」

秋月「司令、これってもしかして……」

( T)「ああ、お前らの目当ての一つだ。まぁ、想像してたのとは少し違うだろうが」

秋月「い、いえ!!ただちょっと意外というか何というか……」

熊野「くねくねと比べたらまとも極まりない食材ですわね」

( T)「不満~~~~~~~~~~~~??????????」


こうして、また一つ裏世界の食材を手に入れたのであった

秋月「ごちそうさまでした!!」

熊野「お粗末様でした」

( T)「それお弁当作った俺のセリフ」スゴイシツレイ


昼食を終え、行動再開だ。裏世界であろうともゴミは持ち帰る。それこそがスタイリッシュなオトコのタシナミ


( T)「さて、デザートが欲しくないか?」

秋月「あるんですか!?」

( T)「ちょっと行った先にな。秋月ちゃん食い物になると食いつきが凄い」

熊野「臓物が甘い獣がいるんですの?」

( T)「いや発想怖ァッ。普通に柿だけど」

熊野「拍子抜けですわね……」


小馬鹿にするかのように鼻で笑う熊野だが、そんな態度が取れるのも今の内だ


( T)「イマノウチダ……」

秋月「ふ、普通の柿ですよね……?」


やべっ声に出てた

川辺から歩くこと二十分、ポツンと一本の柿の木がたわわな実をつけておっ立っている
皮の色合いから見ても食い頃だろう。ただし、一つだけ変化があった


熊野「オッサンの顔!!!!!!!!!!!」

( T)「もう一回拍子抜けっつってみろよ」

熊野「私が浅はかでしたわ!!この変態が普通に柿を食べさせてくれるワケが無かったのに!!」

( T)「堪忍袋の緒って知ってる?」

秋月「な……司令、これは?」

( T)「宮城県の妖怪、『タンタンコロリン』だ。熟した柿がオッサンの顔になっただけ」

秋月「目が動いてるんですけど!?」

( T)「食っても問題は無い。美味い」

秋月「食べづらいです!!」

( T)「大丈夫だってほら毒とかは無いし叫ばないし」


試しに一つもいで齧ってみる。柿は固めの方が好みだが、柔らかく甘味が強いのも悪くない
断面図はもう形容し難いグロさだけど味だけはしっかり柿だ。大丈夫、頭可笑しくない


秋月「じゃ、じゃあ秋月も一つ……」

( T)「おー食え食え。神戸産まれ、お前は?」

熊野「戴きますわよ!!毒を喰らえば皿までですわ!!」

( T)「お洒落な重巡のセリフじゃない」


二人もそれぞれ柿を?ぎ取り口にする
なんかタンタンコロリンの顔が興奮してるように見えるけど黙ってよう。気持ち悪いな


秋月「んー!!美味しいです!!」

熊野「味だけは確かに絶品ですわね……見た目はともかく……」


食った事ねえけど、バロット初めて食う時ってこんなリアクションするんだろうな……

( T)「柿の妖怪ってのは他にもいてな。ある寺の小僧の元に男がやって来て、自分の糞をすり鉢で擦ったものを食えと迫るんだ」

秋月「っ、ゲホッ!!ゴホッ!!」

熊野「急にご自身の性癖の話をしないでくださる!?」

( T)「死ね。で、小僧が仕方なくそれを食うと、とても甘い柿の味がした」

熊野「登場人物全員変態じゃないですの!?」

( T)「杉元と同じ事言うな。で、その男の後を追うとそこには柿の木が立ってて、大量に実がなっていた」

( T)「それを持ち帰ると、男は二度と現れることはなかったそうだ」

秋月「柿の妖精……のようなものでしょうか?」

熊野「にしても、他にやり方はあったでしょうに……」

( T)「俺もそう思う。他にも尻をほじって舐めろとか言う柿男の話も」

熊野「どこでそんな話を仕入れてくるんですの!?」

( T)「インターネット」

秋月「あの、司令?ひょっとしてこの柿も、秋月達が食べに来なかったら……」

( T)「鎮守府に変態がやって来る、かも」

秋月「……なんか、顔に変化するだけならマシなんだなって……」

熊野「何ならインスタ映えしますしね……」

( T)「現代っ子」


柿の風評被害が高まった瞬間である

―――――
―――



秋月「よいしょっと……これで三つ目ですね」


鎮守府に変態が現れないよう幾つか収穫し、裏世界の収穫も肩にズシリとのし掛かるほどの重みになった
俺が食った事のある食材は残り一つだが、どうせなら新しい物にも挑戦したい所だ


( T)「んー……他に何かあったっけなぁ」

熊野「当てはこれでおしまいですの?」

( T)「いや、もう一つあるんだが……」

秋月「そう言えば、あずき洗いのおじいさんが『余計に大きくなった』とか何とか……」

( T)「それは最後だな。持って帰るのに苦労する」

熊野「大物は大歓迎ですわ」

( T)「頼もしいな。まぁ死ななきゃそれで良いが」

秋月「司令がいるなら大抵は大丈夫な気もするんですが……」

( T)「いや俺でもしんどいもんはしんどいぞ?」

熊野「どの口が仰るのかしら?」

( T)「そりゃお前、呪い系の奴なら近づいてぶっ殺せるけどよ。単純に物理でぶん殴ってくる奴は結構厄介だからな」

秋月「確かに、オマール海老は防戦一方でしたね」

( T)「人間はな、生身で怪獣と戦えない」

熊野「青葉さんの異質さが際立ちますわね……あら?」

秋月「どうかされました?」

熊野「歌声、かしら……?」


木々の合間を縫うように、聴き心地の良い女性の歌声が耳へ流れ込んでくる
俺を除く二人の足が、自然とその方へと向かっていった


秋月「誰が……でも……気持ちいい……」

熊野「ええ、本当に……蕩けそうですわ……」

( T)「スゥーーーーーーーー……」


『歌で誘う』。そんな怪異は数多いが、その中でも最も有名なのは


(#T)「歌うのやめねえと刺身にすんぞクソアマァァァ!!!!!!!!!!!!!!」

秋月「ひゃっ!?」

熊野「どぉおっ!?」


『セイレーン』、別名を『人魚』だろう


熊野「もう!!驚かせないでくださる!?」

( T)「怒んな。俺が居なかったら結構危なかったぞ。虜にされてた」

秋月「っ……秋月達、勝手に向かって……」

熊野「た、確かに……警戒すべき事態なのに、安心しきってましたわ……」

( T)「怖いねえ。まぁ顔見知りだからそのまま行っても大丈夫だったんだけどな」

秋月「どなたですか?」

( T)「アリエル」

熊野「あり得る……?」

秋月「洗剤……?」

( T)「嘘だろ……お前らリトルマーメイド観た事……ええ……?」

『人魚』という名の通り、奴らは水辺にいるものだ
それがこんな山と森にいるか?なんて疑問はご尤もだが、川や『泉』に生息していても可笑しくはない


熊野「RPGの回復ポイントのような場所ですわね……」

秋月「はい。絵になる、泉です……」

( T)「毒でも流すかぁ」


「やめてよぅ……」


ほら、出やがった。泉の縁からひょっこりと顔を覗かせた黒髪の生臭い女が


「ちょっと歌ってただけじゃないのぉ……」

( T)「声帯潰すぞ」

「ひぃぃ……」

秋月「何もそこまで怒らなくても良いのではないでしょうか……?」

熊野「そうですわよ。人魚さん泣いてるではありませんの」


見た目がまともだと情が湧くらしい。まぁ、顔しか見えてねえからな今のところ


「其方は……?」

熊野「初めまして。私は重巡、熊野と申しますわ」

秋月「秋月です!!よろしくお願いします!!」

「あ、あらあら……良い子達じゃないぃ……」

熊野「私達、人魚を見るのは初めてですの。宜しければ、立派な尾鰭を見せて下さらない?」

秋月「はい!!秋月も気になります!!」


リトルマーメイド観た事ない癖に、一応ファンタジーな生命体には興味があるらしい
男の子が超生命体トランスフォーマーにロマンを感じるようなもんだろうか

「ふぅん……お披露目、しちゃうぅ?」

秋月「是非!!」

熊野「ええ!!」


人魚(名前しらん)はチラリと此方を窺う。ご多分に漏れずツラだけは良いのが腹立つ
悪戯っぽく細められた目に向けて、好きにしろと手を振って許可した


「ふふー……じゃぁ~ん!!」


『見えないモノ』は想像と好奇心を掻き立てるスパイスになり得るが、その全てが素晴らしいモノとは限らない
想像と好奇心だけで済ませた方が良い事だってある。例えば、目の前の人魚のように


秋月「」

熊野「」


首から下はブヨブヨとした土左衛門の人面で覆われ、股に当たる部分には鋭い歯が生えた女性器らしき切り込みがあり
三又に分かれた尾鰭には、縋り付くように数々の腕が張っている。そんな場合だってある
気絶ロールに失敗した二人は、白目を剥いてゆっくりと後ろへと倒れる。予想出来てた事態なので、サッと支えて寝転がした


「あらあら、気を失ってしまったわぁ」

( T)「SANチェック案件」

「失礼しちゃうわねぇ……」


俺か?SAN値無限だから正気度ロールしなくても大丈夫

「普通の子……とは違うようだけど、他の人間を連れてくるなんて珍しいわねぇ……」

( T)「来てえっつったからな。ちょいと聞きてえんだが、ここらで食えそうな妖怪か何かが出てないか?」

「私、とかぁ?」

( T)「生ゴミなんて食えるか」

「最低ねぇ……」


そもそも、人魚の肉には不老不死の力が宿ると聞く。そんなもん食えって言われてもお断りだ


「そーうねーぇ……ああ、最近、『ぬっぺふほふ』を見かけたりしたかしらぁ……」

( T)「あー……んー……」

「ご不満ん?」

( T)「食った後に身体に影響が出るもんはなぁ……まぁ、候補に入れとくか」

「妖怪グルメにでも目覚めたのぉ?」

( T)「そこの二人がな。理想と現実のギャップにやられっぱなしだが」

「ふふ……頭、ヤバイんじゃなぁい……?」

( T)「俺もそう思う」


秋月「ん……うう……」

熊野「ですわ……ですわ……」


「あらあら、おめざのようだし、バケモノは退散するわねぇ……」

( T)「遠慮すんなぶっ殺してやる」

「二度も殺されるのは御免よぉ……そうそう、今年のは特に狂暴ってぇ……」

( T)「もうあずき洗いの爺さんから聞いた」

「そうなのぉ……死にかけたら教えてねぇ……アンタの肉で数か月は食いつなげそうだからぁ……」


やっぱり今年はぶっ殺しとこうとマチェットに手を掛けると、高笑いと共に人魚は水中へと消えた
こんな事もあろうかと清めの塩を一袋(お徳用)持ってきて良かった

熊野「う、うぅ……提督?」

( T)「おはよう」

秋月「な、何かとても恐ろしいモノを見たような……」

( T)「気のせいだ。それより、朗報だぞ。美味い肉にありつけるかもしれん」

熊野「そう……人魚さんは?」

( T)「今日はカラテの稽古があるって……よっ!!!!!!!!!」バッ!!!!!!!

秋月「ちょ……泉に何をばら撒いたんですか!?」

( T)「塩」

秋月「どうして!?」

( T)「いや……あいつ食塩水好きだし……」

秋月「ああ、それなら良かっ……」


<ぎゃああああああああああああ!!!!!!!!!


秋月「……ないですよね!?苦しんでますよね!?」

熊野「細かい泡も浮いてきましたわね……」

( T)「大喜びじゃねえか!!!!!!!!!持ってきた甲斐があったわ!!!!!!!!!あー良かった良かった!!!!!!!!!行こっか!!!!!!!!!」

秋月「司令が時たま、本物の悪魔に見えることがあります……」

熊野「味見だけさせて欲しかったですわ……」

秋月「熊野さん?」


やっぱり頭ヤバいと思った

―――――
―――



秋月「ぬっぺふほふ?熊野さん、聞き覚えは?」

熊野「ございませんわね。有名ですの?」

( T)「ぬ~べ~にも出てたんだけど……知らんのか」


裏世界のゴミ掃除もいよいよ終盤。出口へと向かう道すがら、人魚(溶けた)から聞いた妖怪の話を伝える
熊野は鈴谷繋がりで近代怪異にはそこそこ詳しかったが、マイナー妖怪に関してはさっぱりらしい


( T)「こう……肉の塊が歩いてる感じの妖怪なんだがな。食うと力が漲る仙薬とも言われている」

熊野「リビドですの?」

( T)「あー……多分それほどグロくはない……お前らリビドーズ好きだな」

秋月「凶暴になっているのが、その妖怪なんですか?」

( T)「違うんだなこれが。俺も見たことねえけど、伝承じゃそんなに害のある奴じゃねえ。ただ……」

秋月「ただ?」

(;T)「腐った死体みたいな臭いがするって話もあるから、美味いかどうかは賭けになるな……」

熊野「先程『美味い肉にありつける』と仰ったではありませんか!!」

(;T)「いやだから俺も見たことねえんだって!!ぬ~べ~基準だと美味いって書いてあったし!!」

秋月「漫画が情報源なのも信憑性に欠けますね……では、凶暴な方はどうなんですか?」

( T)「ああ、それは普通に美味いから心配すんな。ただマジで強いから気をつけろよ」

熊野「そろそろ勿体ぶらずに教えて欲しいものですわね。その怪異が何者なのか」

( T)「そうだな……割とお前の名前に縁のある妖怪でな」

熊野「私の?」

( T)「『一本だたら』って聞いたことねえか?」

熊野「う、うーん……うらたろうで見たことあるような……」

( T)「ひでぇ打ち切られ方されたよな。まぁ、想像してるそいつで合ってる」

秋月「どんな特徴の妖怪なんです?」

( T)「一本足で一つ目のデカい猪で、『果ての二十日』、十二月二十日限定で現れる」

秋月「今十一月なんですけど……」

( T)「お前この裏世界でも同じこと言えんの?」

秋月「なんでもアリなんですね……」

熊野「一つ足、ですか……三本足の猪の話ならよく耳にしますが……」

秋月「三本足?」

熊野「罠に掛かった猪が自力で抜け出した際、足を一つ失う場合があるんですの。特に力強い個体の特徴とも言えますわね」

秋月「はぁー……」

( T)「一本だたらに関する伝承の一つに、狩人に殺された猪が化けて出たっつーのがあるし、あながち間違っちゃいねえかもな」

熊野「三度も罠に掛かった間抜けな猪?」

( T)「草」

秋月「念の為に聞いておきたいんですが、猪って草食ですよね?」

( T)「いや雑食」

熊野「虫や爬虫類、場合によっては小動物も食べますわね」

秋月「……食べられませんよね?」

( T)「あははははは。秋月ちゃんは今まで俺が何をぶっ殺してきたか見てなかったんだなぁ」

熊野「過度な自信は身を滅ぼしますわよ?」

( T)「わーってるよ。深海棲艦に比べりゃまだマシだ。上手く立ち回りゃ問題……ッ!!」


ハンドシグナルで、二人に立ち止まるように伝える。すぐさま口を黙み、その場でピタリと止まった


秋月「……」

熊野「……」

( T)「……いるな」


足下の腐葉土に、五十センチほどの『蹄跡』と、何かを引き摺ったような跡が右手に向かい横断している。まだ新しい
移動の最中、身体を擦ったであろう木の幹には、太い毛もくっ付いている。間違い無いだろう


( T)「行くぞ」


二人が頷くのを確認し、枝葉を踏まないよう慎重に痕跡を辿った

( T)「……」


風上から、嫌な臭いが漂ってくる。身を伏せ、更に慎重に進む
『ぐちゃぐちゃ』といった咀嚼音。そして時折、鼻を鳴らす音が聞こえる


熊野「食事中……かしら」

( T)「らしいな……見えたぞ、止まれ」


声を潜め、その場で屈む。視線の先には二メートル級の『けむくじゃら』が何かを貪っている
見えるのは背中で、食っているものの正体は掴めない。彼方は食事に夢中で気づいていないようだ
しかし臭う。死体でも食ってんのだろうか……死体?


(;T)「あっ、うわぁ……」

秋月「司令?」

(;T)「あー……やべえな……そういうことか……」


死体であるならまだ良いだろう。俺はさっきこう言った。『ぬっぺふほふは死臭を放つかもしれない』と
そしてその肉は、食った物に力を与える。恐らく、妖怪だろうと例外無く


「ブッ、フゴッ……フーッ、フーッ!!」


野生の勘が研ぎ澄まされたのか。それとも、宿敵の臭いが届いたのか
凡そ動物の物とは思えない『肉の塊』から顔を上げた一本だたらは、拳代の大きな一つ目を此方へと向け、一つ足で立ち上がる
体長は四メートルほど、両手は蹄では無く鋭い鉤爪のついた五本指。太い牙には『食い跡』がぶら下がり、豚鼻からは鼻水と共に荒い息が噴出する


「フゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!!」


秋月「ッ!?」

熊野「仕掛けますわ!!」


落ちた木葉が震えるほどの咆哮に、秋月は耳を塞ぐ。熊野は構えていた猟銃を放った

スラッグ弾は胴に命中するが、分厚い毛皮に塞がれポトリと落ちる。読んで字の如く『痛くも痒くも』ないのだろう
しかし気には障ったようで、先ほどまで貪っていた『ぬっぺふほふ』を鷲掴みにすると


「ブギィッ!!!!!!」


大きく振りかぶり、投げつけてきた


(;T)「くっ、そが!!」

秋月「ひゃっ!?」


バッグを手放し、反応が遅れた秋月を抱え、臭い肉の飛来物を避ける。木の幹にぶつかった亡骸は、真っ二つに千切れ飛んだ


「フゴォッ!!!!!!!」

(;T)「狙いはお前だ熊野ォ!!」


狩猟対象獣としての本能か、奴の標的になったのは『猟銃』を持つ熊野だ
ケンケンの要領で素早く距離を詰め、鋭い爪で切り裂こうと腕を振るう


熊野「承知しておりまして……よっ!!」


前転で攻撃を躱し、うなじに向けてもう一発猟銃を撃つ
今度は近い分威力があったのか、弾は毛皮の中へと埋め込まれた


熊野「やっぱり効かな……きゃあっ!?」


一本だたらは地面を抉り、落ち葉と土の目眩しを熊野へと放った
そして身体を回転させ、怯んだ彼女へと次の爪を振り下ろす

(#T)「悪質タックル!!!!!!!」


四メートルあろうと筋肉の方が強いので、腕に飛びかかり軌道を逸らす
爪は熊野の身体の代わりにジャケットの端を切り裂くに留まった


「ブゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!」

(;T)そ「うおおおお!?」


FF外から失礼した男に、一本だたらは更に憤る。ショルダータックルの体勢で、一歩二歩と運ばれ


(;T)「ぐおっはぁ!?」


背中から木の幹に強く押し付けられてしまった
普通の人間ならこの段階でお釈迦だが、筋肉が幸いして全身の骨と内臓がそらぁもうエラい軋みを上げるに済んだ。済んでない


(;T)「ぐっ……これキツ……」


そのまま押し潰さんと四メートルの巨体がグイグイと押し付けられる。いくら筋肉があっても一分も持たない
幸いにも腕は動く。ホルスターからナイフを抜き、獣臭い身体を滅多刺しにする


「ブゴガアガガッガアアアアアアアアア!!!!!!!!」


芯まで届かずとも、皮膚や肉が斬り付けられればそりゃ痛い
俺を仕留めるのを諦めた一本だたらは、激しく身体をのたうち回らせ俺を振り落とした


(;T)「っがぁッ!!」

秋月「司令!!」


駆け寄ろうとした秋月に手を向けて制する。彼女は近づいてはいけない
しかし……クソ、毎年手を焼くが一撃でこの始末とは。嫌な場所に現れたもんだぜぬっぺふほふさんよ


「ブゴッ、ブゴッ……」

(;T)「この野郎……余程『痛い目』に遭いたいようだな……」

秋月「司令……ッ!!」

熊野「……」


弱った獲物を嘲笑うかのように鼻を鳴らしている。力をつけて調子に乗っているようだ。DIOかオメーは
残念ながら今年も例外なく『ご馳走』になってもらう。幸いにも今回は『同行者』がいるのだ


(#T)「餌になるのはテメーの方だァ!!!!!!!」


「ブゴガアガガッガアアアアアアアアア!!!!!!」

互いに突進、すると見せ掛けて


(#T)「そらよっ!!」

「ブゴッ!?」


落ち葉を蹴り上げて真横へと跳躍。これで奴の視界は一瞬暗む


秋月「これでッ!!」


そしてちゃんと『俺の指示』を汲み取った秋月は、スラッグショットを発射する
舞い上がった落ち葉を貫きながら、銀の弾は



「ブギィィイイイイイイイイイイイイイ!!!!!?????」


分かり易い弱点である『一つ目』に突き刺さった。言っただろ?『痛い目』に遭うってな


「ブゴゴッ!?」


更に嬉しい連鎖は続く。足下が疎かになっていた一本だたらは木の根に躓いて転倒した
この機を逃す手はない。マチェットを引き抜き、助走をして跳躍。首筋目掛けて


(#T)「くたばれェッ!!」


突き立てた

「ビギィィィ!!!!」

(#T)「クソッ、ダメか!!」


が、刃は五センチほどの位置で止まり、押し込む前に払い退けられる
刃物じゃ決定打にならない。かと言って、銃火器も効果がない。死ぬまで殴った方がマシかもしれない


「ブゴォ!!」

(;T)「うおっととと!?」


右肩を支えに腰を捻った踵の蹴りが迫り、咄嗟に身を引いて躱す
不幸にも『逃げられなかった』木が真面に喰らってしまい、発破でもされたかのように幹が粉砕する


熊野「倒れますわよ!!」


背の高い広葉樹は、他の木々の枝を巻き込みながらゆっくりと倒れていく
衝撃を受けた箇所は無惨にも刺々しい杭となってその場へと残った


( T)「ん……?」


杭?そうか、あれは使える!!

(;T)「後は……っ、これだ!!」


奴の食い残しである『ぬっぺふほふ』の肉片を拾い、服に擦りつけrくっせ!!!!!!!!!!!オウェッ!!!!!!!
だがこれで奴が使える器官を最大限に惹きつけられる。『臭い』と『音』で誘うのだ


「ブゴッ!!ブゴッ!!」


(#T)「さあこっちだ!!来い!!」


必要なのは『高さ』だ。声で誘き寄せながら、手頃な木に手足を掛けて登る


(#T)「来いオラ!!豚も煽てりゃ木に登るんだろ!?ええ!?」

「ブゴゴゴゴゴゴゴォ!!」


猪ならともかく、なまじ器用な妖怪だ。発達した両手で木にだって登れるだろう
狙い通り、樹皮をバリバリと剥がしながら俺の後を追ってくる。この光景映画になりそう
後はタイミングだが、あまり悠長に待ってはいられない。実際、木は重量に耐えきれず折れ曲がり始めている


(#T)「熊野!!合図で撃て!!」


頷いた彼女は、リロードを済ませた猟銃を一本だたらへと向ける
確実に仕留める為にはもう少し、奴の爪が届かないギリギリのラインまで―――

「ブギィィイイイイイイイイイイイイイ!!」

(#T)「今ッ!!」


『メシッ』と幹が軋むと同時に、合図を送る。銃声が轟き、奴の背中の毛が跳ねた


「ブギィィ!?」

(#T)「ここだァァァァーーーーーーーーーッ!!!!!!」


一本だたらが死角からの攻撃に気を取られた瞬間、木から手を離し顔に馬乗りになる
そのまま体重を一気に真下へと乗せて引き摺り落とした
落下地点はご想像の通り、先ほど奴が蹴り倒した『木の幹』だ


(#T)「オッッ……ラよっと!!」


「ブブブゴォォ!?」


鋭い尖端が、奴の背中を串刺しにする。俺は落下の衝撃で地面を転がった


(#T)「やったか!?」

秋月「司令それ言っちゃダメなセリフです!!」


いっけね

熊野「いえ、どうやら……『やった』ようですわね」


熊野の言う通り、木の杭は奴の腹を突き破り、中の物をあっぴろげにしている
綺麗な仕留め方とは言えないが、木っ端微塵よりかはマシだろう


「フゴ……ブゴォ……」


( T)「インスタ用の写真撮るなら今だぞ」

熊野「凍結しますわ」


「……」


秋月「死に……ましたよね?」

( T)「どうだかな。確認してくる」


息を引き取ったかのように見えるが、相手は怪異だ。油断は出来ない
わざとしっかりと足を踏みしめ、音を立てながら近く


( T)「……」


「……」


( T)「よう」


「ッ!!ブゴォォォ!!!!!」


やっぱりな

( T)「はいはい狸寝入り狸寝入り」


イタチの最後っ屁らしく振り下ろされた腕を軽く避け


(#T)「サッサと死ねやクソザコナメクジ!!」


奴の『痛い所』付近に肘打ちを落とす
更に深く突き刺さった杭に、最後の断末魔を上げると


「ブ……ギ……」


今度こそ、一本だたらは舌をダラリと伸ばして死に絶えた


( T)「ハァーーーーーー……」


その場でドカリと腰を下ろす。血とぬっぺふほふの臭いで鼻がひん曲がりそうだ


熊野「酷い臭いですわ……」

( T)「やめろ泣くぞ」

秋月「司令、水をどうぞ」

( T)「ああ、ありがとよ……」


差し出された水筒を受け取り、二口ほど飲んでからぬっぺふほふの肉汁が付いた服を流す
やだ……パンツまでグショグショになった…… ※抜きどころ


熊野「毎年こんな猪と喧嘩をなさっているのかしら?」

( T)「概ねな……秋月、一応そこのぬっぺふほふの死骸にも聖水振りまいといてくれ」

秋月「了解しました。司令、お疲れ様です!!」


『お疲れ様』。労いの言葉に苦笑いが溢れる
だってそうだろ?なんせ、お疲れするのはこれからなんだから


熊野「……持ち帰れますの?これ」

( T)「嫌な予感するか?」

熊野「的中して欲しくはありませんが……まぁ、少々」

( T)「頑張って運ぶぞー」

熊野「ハァ……日が暮れそうですわね」


一休みしたら、作業を始めるとしよう
苦労を報いるだけの褒美となってくれれば御の字だがな―――

―――――
―――



(;T)「筋肉が……喜びに満ち溢れてぇぇぇ……!!!!!!」

秋月「司令……まだっ、着かないんですか!?」

(;T)「もうちょい……そこの、鳥居を抜けたらぁぁぁ!!」

熊野「レディの……仕事では……ありませんわっ、よぉぉぉ!!」


俺が四メートル級の猪を背負い、後ろから二人に押し抱えて貰いながら牛歩の速度で出口へと向かう
フィジカル面で人間越えの艦娘と、そもそも人間越えてる俺だからこそできる芸当だが、こんなもん普通にクレーン案件だわチクショウ


(;T)「よっ、こら、せぇっ!!」

秋月「司令、司令!!鳥居に挟まって動きません!!」

熊野「これ押し込んで大丈夫なんですの!?ぶっ壊れますわよ!?」

(;T)「知るかそんなもん!!せーのでイクゾッイクゾッ!!」※二回攻撃アルベール

秋月「はい!!せー……」

熊野「のっ!!」


息を合わせて狭い鳥居から一本だたらを引き抜く。勢い余って俺の足が絡れ


(;T)そ「重っすぁぁぁああああああああ!!!!!!」


肉の下敷きになってしまった


<わぁあああああああああああああああ!!!!!!


熊野「!?」

秋月「わぁ!?」


そして大勢の歓声に迎え入れられる。事情を知らない二人は戸惑っているようだ


熊野「って、村長さん!?」

「おーおー熊野ちゃん!!ご苦労やったのぉ!!」

秋月「村長さん?」

熊野「猟友会の会長さんも兼ねていまして、お友達ですの。ここは村、ですのね?」

(;T)「説明したるから先に助けろやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!」

村人の手を借りて下敷きから抜け出す。今日一で酷い目に遭った


「ほぉー、今年のはよぉ肥えとるのぉ」

(;T)「餌が良かったんでしょうね……手こずりましたよ」

秋月「あの、皆さん……驚かれないんですね?」

「ん、まぁの。毎年の恒例じゃして」


村人達はわいのわいのと騒ぎながら、一本だたらの解体を始めている
この村だけの風習で、猪、またはそれに準ずる『妖怪』を奉納しているのだ


「アンタらが出てきた鳥居見てみぃ。ちょい違ぅやろ?」

秋月「鳥居……あっ!!」

熊野「森が……ありませんわね」


鳥居の先には、苔むした石祠が祀られている。これが裏世界の出口だ。原理は知らん


「ワシらぁ、アンタらの居る鎮守府の元住人での。あの世界からバケモンださん為にこうして管理しとる立場やったんや」

熊野「漁村だった頃の、ですのね」

「言うても、ワシがジャリの頃の話や。その頃から過疎化が進んでなぁ、居られへんようなったんや」

「そんで、ちょい離れたこの村と吸収合併してな、ここで管理するようなったんや」

秋月「それで皆さん理解があるんですね……」

熊野「そんな逸話がお有りなら、話してくれても良かったではないですの」

「いやぁ、てっきりそこのニイちゃんから聞いとるもんや思て黙っとったんや。老いぼれの長話なんか若い子には退屈やろ思ってな」

熊野「何を仰いますの。私と村長さんの仲ではありませんか」

「ほんまええ子やの……孫の嫁にもろてええか?」

(;T)「お孫さん四つでしょうが……」

「せやったせやった!!ワハハハハ!!よっしゃ、疲れたやろ!!風呂とメシの用意出来とるから、ゆっくりしてき!!」

秋月「ご飯!!はい、ご馳走になります!!」

熊野「私はお風呂を先に頂きたいですわ……」

(;T)「俺も……」

熊野「お湯が汚れるので後にしてくださる?」

(;T)「お前俺のナリ見てなんとも思わねーのかよ」

熊野「臭くて汚いからそう申し上げていますのよ」

(;T)「オッサンが言われてキツい言葉を容赦なく浴びせやがって……」


もう少しだけ、身体に染み付いた腐臭と血の臭いに耐えないといけないらしい
とにかく、今年も裏世界の掃除は完了だ。これに免じて、多少の我慢は許容してやるか

―――――
―――



その日は夕食をご馳走になった後、ハイエースを停めた場所まで送って貰い、深夜に帰宅した
一本だたらの肉は村と鎮守府で折半し、後日『報酬』と共に配達される
近くに大きな街もない我がアジトだ。近隣住民との繋がりは今後とも大切にしていきたいもんだな

そして時は経ち三日後くらい


( T)「出来た」


鎮守府にて裏世界グルメの大試食会を開催した


( T)「くねくねのフライ、一本だたらの牡丹鍋、あずき洗いから貰った小豆の赤飯、普通に剥いたけどやっぱグロかったから諦めてゼリーにしたオッサンの顔した柿」

熊野「後半の情報量の多さ」

秋月「凄い……全部普通の料理にしか見えません!!」

( T)「普通の料理だけど?」

熊野「毒味は致しましたの?」

( T)「すげー失礼なこと聞いてる自覚ある?」

熊野「?」

( T)「キョトンとすんな」

秋月「あ、秋月もう待ちきれません!!戴いても宜しいでしょうか!?」

( T)「おい熊野見ろこの素直で可愛い反応を。見習え」

熊野「耐えきれますの?」

( T)「寒気がするな」

熊野「自分から撒いた種とは言え若干腹立たしいですわね……」

( T)「はい、そんじゃあ……全ての食材に感s 秋月「いただきまーす!!」トリコならキレてる」


最初に箸を付けたのはくねくねのフライだ。これだけ不安が残る
たれに漬け込んで下味はつけたが、果たして……


( T)「ん、んー?」

熊野「……」

秋月「……」

( T)「……上っ面の味しかしねえな」

秋月「い、いえ!!と、とても……美味しい……はい……」

( T)「良い子レベル高い秋月が上辺だけ飾るのを諦めるレベル」

熊野「でも食感は新しいですわよ。モキモキしますわ」

( T)「ヨルルが魔法かけた卵料理かよ」※スライムライフ ジャンププラスで大好評連載中

秋月「食感のある『無』と言えば良いのでしょうか……確かにつけだれの味はするんですが、素材からは何もありませんね……」

熊野「肉でも魚でも、下味が無くとも旨味はありますものね」

( T)「得体の知れないバケモノならこれが限界か……人様に迷惑かけてんだからせめて食いごたえくらい残しとけよ使えねえゴミだな次は生きたまま八つ裂きにして燃やすか」

秋月「そこまで怒るほどでは無いですけど……」

熊野「ま、懸念はこれで終わりましたわね。提督、お鍋よそってくださる?」

( T)「はいよ」

牡丹鍋、これは間違いがない。戴いた野菜と共に醤油味で仕立てた。キノコは嫌いなんで抜いた
餌にしてたぬっぺふほふの臭いもついていない。狂暴になった分、旨味も上がっていればいいが


( T)「ズズッあっヤバいクソ美味い」

秋月「んー♪ハフ、ほいひいです!!」

熊野「ちょ……銀色のやつ取ってきますわ」※アサヒィスゥパードゥラァイ


例年の物よりも遥かに美味い。ぬっぺふほふは直接食うより餌に混ぜて質を良くする方が有効に活用出来るらしい
来年見かけたら持ち帰って家畜の餌にしてみても良さそうだな。結構デカかったから一本だたらに加えて手間二倍だが


熊野「七対三ですわ……」

( T)「きまぐれクック好きだろお前」

秋月「司令、司令!!このお赤飯、甘いです!!」

( T)「砂糖使ってないぞ。甘いっつっても控えめで、おかずの味を邪魔しないだろ?」

秋月「はい!!お鍋にも合います!!」


あずき洗い爺さんの小豆も好評だ。これで蒸気アイマスクとか作ってもバチクソ眠れるが、この分だと全部平らげてしまいそうだな

( T)「と、まぁ、これが食える『妖』の一部だ。満足したか?」

秋月「はい!!大満足です!!」

( T)「来年も行く?」

秋月「嫌です!!!!!!!!!」

(;T)「あっ、そう……嫌なんだ……」

熊野「来週行きます?」

(;T)「えっ……そんな頻繁に……?」

熊野「私は一匹も仕留められていませんのよ?リベンジですわ!!」

(;T)「来年な、来年……お前マジ一人で踏み込むなよ死ぬぞ」


鎮守府も裏世界も、深海棲艦と同じくらい厄介なバケモンが出てくる面倒な場所だが
こういう恩恵に預かれるのなら、もう暫く付き合ってやってもいいのかもしれない


熊野「提督、秋月さん!!次はもっと大きな獲物を狙いますわよ!!えいえいおー!!」

秋月「え、あの、お、おー……」

(;T)「ハァー……」


連中が俺らに怯え切って、一切合切姿を見せなくなる日は、そう遠くなさそうだけどな





おわり


























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次回予告




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齢二十と余年。まだまだ若輩な我が身ではあるが、誰よりも劇的な人生を送った自負がある
誰が信じる?海の底から現れた深海棲艦とかいうバケモン相手にほぼ生身で戦って、生き残ったなんてよ
ああ、命がけの負け戦だった。友人も上官もほっとんど殺されちまったよ。だが、それでも俺含む人類は奴らを『退けた』。国民栄誉賞に値する戦働きだった筈だ
だが実際はどうだ?程なくして登場した『艦娘』とかいうソシャゲのキャラみたいな小娘によって、俺たちの戦いは呆気なく忘れ去られた
女のケツを追っかけるのに忙しいお偉いさん方は、雀の涙ほどの報酬と艦娘のケツ持ちという新しい職を用意してくれただけだ

何人かは文句も言わず従ったよ。御大層な大義名分ぶら下げてな。だが俺は御免だった
理由は多々あるが……正直、疲れていたのと、艦娘とかいうクソ巫山戯た連中とお付き合いなんてしたくなかったからだ。何が那賀ちゃんスマイルだ関節逆方向にねじ曲げるぞ
とにかく……まぁ、これも一つの転換期と思って、戦いの場以外で何か出来ることはないかと全国を放浪した。いや、大それたもんじゃねえ。旅行も兼ねてる
何処に行ってもあいつらの活躍は目に耳にと飛び込んでくる。絶望ルート真っ只中だったこの国も、活気を取り戻していってた
俺だって死にたかねえし、あのクソ共が一匹残らず消えてくれんなら御の字だ。若干のモヤモヤはあったが、このまま元の生活に戻っていくのかなって期待もあった



俺の人生のクライマックスは、恐らくもう終わったのだろうと、タカを括るほどに



(;T)「……」

叢雲「……」


だが、これまでの日々は、ほんの『前置き』に過ぎなかった
手足を投げ出し、虚ろな目で興味なさげに俺を見る『艦娘』の姿を見て、そう確信した
『劇的』と自惚れていた人生を塗り替えるような戦いが始まるのだとも


さて、退屈な時間があるならお付き合い頂こう。これは、俺が『提督』になるまでの
『地獄』と呼ばれた場所が『我が家』になるまでの
『艦娘』が頼もしき『家族』になるまでの


『叢雲』が、唯一無二の『相棒』になるまでのお話





叢雲「地獄の鎮守府」



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終わりです。お疲れ様でした

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