ワイルド・ハニーは砕かない (456)
一話
静・ジョースターの奇妙な日常
静・ジョースターの奇妙な日常 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363790589/)
二話
仗助「静のやばい物を拾ったっス」
仗助「静のやばい物を拾ったっス」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1365094145/)
三話
静「ジャンケン教師がやって来た」
静「ジャンケン教師がやって来た」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1367669400/)
四話
静「引きこもりのうちへ遊びに行こう」
静「引きこもりのうちへ遊びに行こう」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1368951927/)
五話
静「泥棒をしよう」
静「泥棒をしよう」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1370177583/)
六話
静「ペーパー・バック・ライターは父親に憧れる」
静「ペーパー・バック・ライターは父親に憧れる」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373404472/)
七話
静「お見舞いへ行こう」
静「お見舞いへ行こう」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1379932767/)
八話
静「日本料理を食べに行こう」
静「日本料理を食べに行こう」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1383137249/)
九話
静「幽霊屋敷に住もう」
静「幽霊屋敷に住もう」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1386418852/)
十話
静「双葉双馬は静かに暮らしたい」
静「双葉双馬は静かに暮らしたい」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1391689545/)
十一話
静「吉岡純はお金が好き」
静「吉岡純はお金が好き」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1398837668/)
十二話
静「杜王町の人々」
静「杜王町の人々」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1404738764/)
十三話
静「静・ジョースターはキャンプをする」
静「静・ジョースターはキャンプをする」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408711275/)
十四話
静「町の背後霊」
静「町の背後霊」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1432295512/)
十五話
静「ぼくは未来人」
静「ぼくは未来人」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1445436858/)
十六話
静「彼の名はウォーケン」
静「彼の名はウォーケン」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1454598348/)
十七話
静「メイの世界」
静「メイの世界」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1468158253/)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1609502354
アハハ……ハハ……
静「待って……待ってよ、メイ。走るの、速いわ」
メイ「ふふ、ごめんなさい。それにしても、凄いわね。ジョースター邸のすぐ近くに、こんな大きな森があるなんて……」
バァァアア……
静「ええ。おじいちゃんがね、家は都会のゴミゴミした所じゃあなくって、こういう田舎で広い所がいいって言ってねェ――……あたしは都会の方が好きだったりするけど。まあおじいちゃんが好きな所だったら、どこでもいいのだけどね」
メイ「綺麗な所だわ……素晴らしい所よ、静」
サァァアア……
メイ「遊びましょう、静。妖精さんを探したり、虹色に輝く蝶を追いかけるの」
静「素敵ね、メイ……それは、とっても素敵だわ……」
サァ……ア……
静「あたし、貴女のようなお友達がいて、良かった……本当に、マジにそう思う……」
メイ「さあ、何をして遊ぶ?かくれんぼか……鬼ごっこ?」
…………
…………
『一日目』
…………
…………
杜王町――……
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
「……らーら、らー……らららら、らら……」
暗闇の中、有栖川メイは、外れた調子で子守唄を口ずさむ。
町の人々は……杜王町の全ては、眠ったままだ。
人も、町も、犬も猫も、虫さえも、深い深い眠りへと落ちている。
しいん、という音が聞こえるほど、静かな世界で。
メイの子守唄だけが、響き渡る。
空条承太郎や、東方仗助、
そして、静・ジョースター達が、死んだように眠る中心で。
有栖川メイは、チェスタの亡骸を抱いたまま、子守唄のメロディを口ずさむ。
それは、かつて自分を犬のように捨てた母が、まだ自分を愛していてくれた頃、与えてくれた『優しさ』なのかもしれない。
母の顔など覚えているはずも無いが……何故か、暖かい声が奏でるこのメロディを、メイはずうっと、覚えていた。
「……神は、七日間で『世界』を創った……」
「ならば私は、七日間で世界を創り変えよう」
「皆が手を取り合える世界へ……『素晴らしきこの世界』へと創り変える」
「それまでは……眠りなさい、世界よ。すぐに……全てが変わるから」
ペラリ、という音がした。
紙が、風で動く音であった。
よく見ると、周囲には大量の紙が落ちている。
……その紙は……まるで、静を守るかのように、静の身体を覆っていた。
「…………」
「……双葉双馬。貴方は……自分の命より、『友達』の命が大切だったの?」
「……自分を守るより、他人を守るほうが大切だったの?」
「…………私にも、わかるかしら。世界が少し、変わったなら……私にもその気持ちがわかるのかしら」
「……」
黒い膜の向こうに、太陽が見える。
西に傾きかけたそれは、もうすぐ一日目が終わる事を示していた。
「……『素晴らしきこの世界』まで、あと……六日」
…………
…………
『素晴らしきこの世界(ワンダフル・ワールド)』
人々は長い眠りの中、自分の人生を最初から『追体験』する。
それは自分の人生を、もう一度やり直すという事に等しい。
(現実のようにリアルな夢が、人の『記憶』となりそれが『過去』となる)
しかしその『夢』の中には、『有栖川メイ』が唯一無二の『友達』として存在する。
七日後、目を覚ました時……全世界の人間は『有栖川メイ』の『友達』となるのだ。
(記憶が作り変えられているので、それは『事実』であり誰にも疑えない)
有栖川メイの『完成』された能力。
人は『運命を切り開く』と考えられているが、
彼女は運命を必然のものとした。
…………
今回はここまでです
毎日夜9時頃更新予定です
…………
静「ハァ……」
メイ「どうしたの?静……なんだかスゴク辛そうだわ。調子でも悪い?」
静「違うわ……そろそろあたし達、ガッコーっていうのに、行かないといけない……年なんでしょ?」
メイ「ええ、そうね」
静「あたし、友達なんていないし……こんな顔立ちだから、みーんなにムシされちゃうからさ。それに、だれもあたしみたいな、すごい力を持ってない」
メイ「……」
静「だから……ガッコーなんて、行きたくないの。ずっと、おじいちゃんの側にいたい……」
メイ「案外、行ってみたら楽しいかもしれないわよ。静」
静「ウソぉ~~……?」
メイ「それに……『友達』なら、私がいる。……でしょう?静?何か問題でも……あるの?」
静「……ううん。無い」
メイ「フフッ、二人で学校に行くの、楽しみね?」
静「ええ。あたし……さ」
メイ「?」
静「……アンタっていう、『友達』がいて……良かった」
メイ「……私もよ。静」ニコッ
…………
…………
『二日目』
…………
…………
ザザザーッ……
「……こんにちは。ニュースの時間です……」
「ええ~~ッ……突如、M県S市上空を覆った、黒いドームのような『もの』……」
「……に、関する情報ですが……」
「……只今、現場と中継が繋がっています……現場の薫さァ~~ん?」
ザザッ……
『ええ、こちら現場の薫です……名字が薫です。カオル……ええと、ご覧ください、見えますでしょうか……?あのドームが……』
「ええ……ハッキリと映っていますね……」
『はいィ。アレが突如現れたのは、お昼の14時ごろだという事で……ええ、あのようにシッカリと……覆っております……』
ザザザッ……
「アレは一体、何なのでしょうか?」
『専門家は異常気象の……濃い霧が溜まったものだという見解ですが……』
「霧……にしては、シッカリと覆っているようですが……」
『そうなんですッ!』
……ザザザーッ……
『ええ、しかもですね、どうやらあの『膜』は、徐々に広がっているようでして……』
「広がって……という事は、M県全域が覆われるのも、時間の問題という事でしょうか?」
『そうですね……ですが、全く何も、なァ~~~~ンにもッ!心配はいりませんッ!』
「?……薫さん?ええと……スタジオの声、届いていますでしょうかァ~~……?」
『実は私は、S市杜王町の出身なのですが……ええ、ですから今回の現場に呼ばれたんですけど……どうやらあの『膜』の内側に入ると、『夢』を見るようなのです……幸せな『夢』を……』
「……薫さん?あー……少し、マイクの調子がおかしいようなんですが……オホン!……オイ、聞こえてんのか?」
『幸せな『夢』ですッ!私は『メイちゃん』からそう言われましたッ!あれこそが『天国』なのだとッ!天国へ到達するための『階段』なのだとッ!そう言われたんで……大丈夫です。エヘヘヘヘヘヘ……』
「お、オイ、カメラ止めろッ。放送中止だ……」
『私達はこの偽りの記憶を捨てて、新の『幸福』へと向かえるでしょう……この間実家に帰った時、そう言われたんでね……今はちょっと、メイちゃんとの記憶はアヤフヤですが、あのドームの中ならシッカリした記憶になると……』
「カメラを!止めろ!!と、言っとるんだァ――ッ!!放送中止ィィ――ッ!!!」
バタバタバタ!!
『視聴者の皆さん!私は一足先に、『天国』へと向かいます……『メイちゃん』を中心とした、皆が手を取り合える新しい世界へと……そこで、またお会いしましょう!!ウヘロヘロヘクケケケケケケケケケケケケ!!!』
ザザザザザ――ッ……
ピ――ッ……
ブツン!
ポルナレフ「……」
カラーバーが表示されるテレビのスイッチを、車椅子に乗った男……『ジャン・ピエール・ポルナレフ』が、リモコンを使って乱暴に消す。
亀の中の部屋に、沈黙が訪れた。
ポルナレフ「……これが昨日、日本で放送されたニュース番組だ。……今現在、M県全域はすでに『覆われている』」
ムーロロ「……専門家によると、あと四、五日でこの地球全てがあのドームに覆われるそうです」
ミスタ「……マジかよォ~~……」
「……」
亀の部屋にいるのは、四人の男だ。
一人は組織のナンバー2、ポルナレフ。
一人は組織のナンバー3、ミスタ。
そして、表向きはフーゴとシーラEの上司という役職に就き、その実……情報分析チームの長として、組織の『幹部』に名を連ねる、カンノーロ・ムーロロ。
最後に……もう一人。
金色の巻毛を長めに伸ばした、少年のように輝く瞳を持つ男が、そこに居た。
ムーロロ「『ご命令通り』……フーゴとシーラEの二人は、演技で話を伸ばして屋敷の中に入れず、外から『観察』させました。……屋敷が崩れ、中からあの黒い『スタンド』が飛び出すのを見ています」
ポルナレフ「……やはり、か」
ムーロロ「しかし……その後通信が途絶えました。二人の安否は不明……」
ミスタ「……」
ムーロロ「……二人に吸血鬼の始末を命じていれば、今頃、無事でいたのではないかと思うと……!!」
ポルナレフ「いや。フーッ……承太郎で無理だったのなら、他にスタンド使いが一人や二人いようが同じだ。それに……二人なら無事だろう。恐らくだが、な……」
ムーロロ「……」
ミスタ「他には?ムーロロ。というかだな……おれはここ最近仕事が忙しくてニュースもロクに見てねェー。世界は今どうなってやがる」
ムーロロ「……簡単に説明しますと……日本があのようになった事で、日本国外への逃亡者数……失礼、『旅行者数』が先月比でおよそ100倍に増えています。また日本に本社を置く企業の株価が大暴落……これにより、パッショーネも少なからず被害を受けています」
ミスタ「……他には?」
ムーロロ「日本のみならず、アジア全域で大混乱ですね。もちろん世界中混乱しておりますが……中には、先程の映像にあった情報を好意的に捉え、新しい宗教としてあのドームを崇める団体もいくつか出現しております。SNSや動画サイトには多数、ドームに突入した映像等が貼られていますが、どれもドームの内側に入った瞬間、映像が乱れて停止しています」
ミスタ「……」
ムーロロ「……撮影者の安否は不明。しかし、映像が途切れる瞬間に、『横たわっている』人の姿が確認されています。この事から、何らかの能力でドームの内側にいる人間は『眠らされている』と……考えられていますね。…日本の首相はオキナワという、日本の端まで移動し今後の方針について――……」
ミスタ「あ~~もういい。わかった!とにかく今日本は終わってるって事だな。で!今日寝て、起きて、メシ食って、また寝たら、今度はこの国が終わりって訳か!」
ポルナレフ「……」
ミスタ「……何なんだ、一体よォ~~……さっきテレビじゃあ『夢』だのなんだの言ってたな?っていうか、アレぁー『スタンド』だっつうのか?……」
「…………」
ミスタ「……おい、そろそろ何か言ったらどうなんだよ?疲れて寝てるっつ~~訳じゃあねえだろう?……『ジョルノ』!!」
「…………」
ジョルノ「…………」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
ミスタ「……ジョルノ、話聞いてたんだろ?……何が起こってやがる?」
ジョルノ「……ぼくの話には……ミスタ」
ミスタ「…………」
ジョルノ「……少なからず、『推測』が混じっています。だから、これから言う事が『絶対』という事ではありません。……いいですね?」
ミスタ「ああ、構わねえ……全く訳がわかってねェー今のおれよりマシだ」
ジョルノ「……あれは、情報にあった『彼女』――『有栖川メイ』の『スタンド』でしょう。そして……このままだと、世界は『破滅』……いえ、『支配』される」
ミスタ「……」
ムーロロ「……」タラリ
ポルナレフ「……わたしと同じ考えのようだな、ジョルノ。……やはり、アレは――……?」
ジョルノ「ええ。彼女の『レクイエム』と言えるでしょう。さらに先へと進化した――『イエスタデイ・ワンス・モア・レクイエム』ッ!!」
ミスタ「そッ……それがよォ――!なんだって聞いてんだよッ!見た所、みんなスヤスヤ寝てるだけじゃあ~~ねえかッ!!」
ジョルノ「……」
ポルナレフ「……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
ジョルノ「……ミスタ。貴方には…………」
ジョルノ「……貴方には、『友達』がいますか?」
ミスタ「……は?」
ムーロロ「……」
ポルナレフ「……」
シーン……
ミスタ「おっ、とっ……『友達』だァ?こーいう仕事だしよォ~~……最近は働き詰めだからな。ンな大したアレはねえよ……会うのは組織の奴らくらいだし……昨日も一人でピザ焼いて食ったな……」ポリポリ
No.2『悲シイ事言うなヨナォ~~ミスタッ!』
No.6『ソウだゼーッ!オレ達がイルっテーッ!!』
ミスタ「う、うっせえぞッピストルズッ!!」
ジョルノ「……そうですか。では……」
ジョルノ「ミスタ。貴方に『10人』の友達がいたとしましょう。……どうですか?」
ミスタ「おい、馬鹿にすんなよッジョルノ!いくらおれでも組織に入る前には友達の10人くれェ――……あ、アレ?そういや……色んな女の子と遊んだり、野郎からカネもらったりしたが……名前は知らなかったかな?」
No.5『ミスタ……うェェエエ~~ン!』
ミスタ「泣くんじゃあねーッ!!泣きてえのはおれだッ!!」
ジョルノ「……ともかく、『10人』です。貴方には友達が『10人』います。……どう、思いますか?」
ミスタ「……どう、って……そりゃあ~~その人数でメシ食ったりフットサルしたりすんのは楽しいんじゃあねえのか?時には女のコとかひっかけたりしてよォ~~うけけけけけ」
ジョルノ「……そうですか。では……」
ジョルノ「『50人』友達がいたら、どうですか?『50人』……ぼくの生まれ故郷、日本の学校なら、一クラスそのくらいの人数でしょうか」
ミスタ「『50』?そりゃあチと騒がしそうだな……その人数でメシ食ったりとかは難しいしよ……けど楽しいんじゃあねえか?ウン……楽しいよ。きっと楽しい」
ジョルノ「では……『100人』友達がいたらどうですか?日本では『友達100人出来るかな』という歌があります。その童話が現実になったら……どうですか?」
ミスタ「ひゃ、『100』?そんくらいになると全員で遊ぶのは無理だしよ~~……ああけど、遊ぶ相手にゃあ困らねえのはいいな。町歩いてたらだいたい友達に会えるって事だろ?」
ジョルノ「ええ、そうですね……」
ジョルノ「では、この町……『ナポリ』に住む人全員が……友達だったら、どうでしょう?誰もが貴方の顔を知っており、親しげに話しかけてくる……そんな世界は」
ミスタ「は、はあ?それってよォ~~……つまり、フラッと入ったアイスクリーム屋のジイサンがニッコリ笑顔投げかけてきたり、そこらをうろつく浮浪者がガッチリ肩組んできたりって……事か?」
ジョルノ「ええ、そうです」
ミスタ「……まあ、少し気味悪いかもだが……そんだけ親しいヤツがいたら、人生楽しいだろ。どこ行っても寂しくなんかねーもんなー……」
ジョルノ「……ちなみに、ナポリに住む人の数は『95万人』だと言われています」
ミスタ「…………」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
ジョルノ「では、貴方に『6000万人』の友達がいたら?……『6000万』とはイタリアの人口です。電話帳を見れば、初恋のあの子からイタリア大統領の名前まで書いています」
ミスタ「……」
ジョルノ「では、貴方に『二億人』の友達がいたら?……『二億』とはおよそ、イタリアと日本の人口を合わせた数です。貴方がニッコリ手を振ると、東の辺境にある島国の人間が全員手を振り返します」
ミスタ「……」ゴクリ
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
ジョルノ「……貴方に『5億人』の友達がいたら?……『二億』にアメリカの人口、『三億』を足した数が『五億』です。電話をすればハリウッドスターが駆けつけ、泣きべそをかいたらアメリカ大統領があやしにくる……そんな世界です」
ミスタ「……」
ジョルノ「……貴方に、『70億人』の友達がいたら?……もし、貴方が世界中の人間と友達だったら?」
ミスタ「……んな、の……」
ミスタ「……ありえる訳がねえ。世界が思い通りで……そんなの、まるで……!」
ジョルノ「『神』……そうです。『世界中全ての人に存在を認識される』というのは……『神』と同じなんです。キリストの名を知らない人間なんていない」
ミスタ「……」
ポルナレフ「……」
ムーロロ「……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
ミスタ「つまり……中で行われているのは、そういう事か?……『植え付けている』……『友達である』という事を」
ジョルノ「ええ。そして、あの膜が地球を覆うというのなら……」
ジョルノ「非常にマズい事となる。例えば……『彼女』の悪口を言った者がいれば、どこかの国が『核』を落としたとしても、おかしくはない……そんな事に」
ミスタ「う!……」タラリ
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
ポルナレフ「……ジョルノ。君ならもうわかっているだろうと思うが……スタンドの『先』へ行ったものと、対等に戦えるのは……同じく『先』へ行ったものだけだ」
ジョルノ「…………」
ポルナレフ「……君から預かっていたものを、返す時が来たな」ニコリ
ジョルノ「……ポルナレフさん」
ポルナレフ「……」スッ
ジョルノ「……」
ポルナレフ「……受け取ってくれ」
ポルナレフ「君が受け継ぎ、先へと進めた……『矢』だ」
ジョルノ「……」スッ
ガシッ!!
…………
今回はここまでです
…………
アメリカ
フロリダ州――
ドサッ!
男「……」
???「……」
一人の男が、手に持った分厚いファイルを、テーブルの上に放り投げる。
開かれた頁には、黒いドーム状の膜の写真が、いくつも貼り付けられており、小難しい説明等がこまごまと書かれている。
男「……今、世界で起こっている大事件について、ご存知ですか?ミス――……?」
???「知ってる……世界が終わるかもしんないんでしょ?あたしには関係ないけどォ――……こんなセマっ苦しい監獄の中で世界の終末迎えるなんて、思ってもみなかったって感じィ――」
男「……あながち、関係のない話でもないかもしれませんよ」
???「……どういう事?っていうかさ、アンタ誰?自己紹介もなしにこんなファイル突き付けられてもさ~~困るっつーか……うおっ、これすっげ。今こんなのなってんの?日本が?飛んでるゥークールだわ……CGとかじゃあねえの?」
男「……『スタンド』です。そのドームは、一人の少女の『スタンド』だという調べがついています」
???「……『スタンド』」
男「そして、その少女は……『DIO』と『プッチ』の意思を継ぎ、あろうことか……『天国』へ向かおうとしているのです」
???「…………」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
???「許される事じゃあないのは確かね。世界中の人々を踏みにじり、自分の都合の良い世界を創るなんて……ちっぽけな一人の人間が、行って良い事じゃあない」
男「そう。そして……ここからが大切な事なのですが……」
男「空条承太郎博士が、先日この『ドーム』の中で、消息不明となりました」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
???「…………何……ですって?」
男「貴女にとっては、世界の危機よりも大切な事なのではないですか?あァー……FE40536……『空条徐倫』様?」
徐倫「…………」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
徐倫「何なんだ?テメェー……あたしに何の用だ」
男「失礼。話が前後しましたが……」
男「この世界の危機と、空条承太郎博士の命を救えるのはッ!かつてプッチ神父の企みを阻止した、貴女しかいないと考えています。……そして、私はスピードワゴン財団の調査員(エージェント)です。貴女の力をお貸しして頂くよう、お願いに参りました」
徐倫「……考えるまでもねェー。答えは『YES』よ。父さんはかつて、命をかけてあたしを救おうとしてくれた。……今度は、あたしの番だ」
男「……ありがとうございます」ペコリ
徐倫「礼なんておかしいわよ。家族を助けるのは当然のこと……」
男「……ええ。それでも、礼を言わせて下さい」
徐倫「……フン」
男「すでに手続きは済んでおります。貴女は『仮釈放』という形で、これより『ある場所』まで飛んでもらいます」
男「そして……『ある人物』と協力し!作戦を遂行していただきます」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
男「目的は『標的(ターゲット)の完全沈黙』と『空条承太郎博士の救出』!および……『世界の救出』ッ!!」
男「命をかけて……作戦に挑んで下さい」
徐倫「……」
ガシャーン!
徐倫「……」
ミューミュー「……こっちだ、FE40536。付いてこい」
徐倫「……」
スタスタ……
ミューミュー「ハッ!こんな形でお別れとなるとはね。セーセーしたわ……せいぜい残り少ない人生、外で楽しく過ごしな」
徐倫「……また戻ってくるわ」
ミューミュー「あン?」
徐倫「元は無実の罪だけど、脱獄とかの罪は償ってない。全てが終わったら、罪を償いにまた戻るわ」
ミューミュー「……フン!ほら、さっさとゲートへ向かえ。仮釈放の最終手続きをする」
徐倫「……」
スタスタ……
エルメェス「ヘイッ徐倫!徐倫じゃあないか!何やってんの?ミューミューなんかと一緒に」
徐倫「エルメェス!」
ミューミュー「……」スタスタ……
エルメェス「おい待てよ!何なんだ?今度はどこへ行く気だ?」
ミューミュー「仮釈放よ。コイツは檻の外を出る。馬鹿みたいな事に……世界を救いにな」
エルメェス「……何だって?」
徐倫「覚悟は出来ている……エルメェス、アナスイに伝えて」
エルメェス「……」
徐倫「……もしあたしが無事に戻って来れたら……『結婚式』を挙げましょう、って」
エルメェス「……」
徐倫「これは暗闇なんかじゃあない。希望よ……希望の光があるから、あたしは前へ進める」
エルメェス「……お前何言ってんだ?徐倫?おい?」
徐倫「……」
ザッ
ザッ!
徐倫「……」
看守「バスに乗れ、FE40536!これより橋を渡り、グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所管理ジェイル外へ護送する!いいかァ――『仮釈放』とはいえ、外へ出るまで妙なマネはしない事だッ!我々には貴様を射殺する権利がある!」
徐倫「……」スタスタ
ドサッ
徐倫「……フーッ……」
男「……一先ずは、仮釈放おめでとう。と、言っておきましょうか。ミス・徐倫」
徐倫「……アンタ何?なんでバスに乗ってんの?」
男「私は案内役として、貴女を無事『目的地』まで送り届ける義務があります。ありえない話ですが――……逃げ出さないよう『監視』するのも、仕事の一つです」
徐倫「……」
男「堅苦しいでしょうが、ご容赦下さい。……バスに乗るのは少し多めにカネを包んだら黙認されました」
徐倫「フ――ン、それなら今渡しても問題無いわよね……ハイこれ」ガサッ
男「?……なんですか?メモ?」
徐倫「そこに書かれている住所に、一人の『少年』が住んでいる。……『目的地』へ行く前に、彼に会わせて欲しい」
男「!……この住所は、確か――……」
徐倫「ええ。スピードワゴン財団なら当然知ってるわよね……彼は今、財団からの支援を受けて、一人で暮らしているんだから」
男「……何故、彼に?……彼を連れて行く事は、出来ませんが」
徐倫「わかってる。連れていく訳じゃあない」
徐倫「彼の持っている物が……必要になるかもしれない」
男「?……」
ブロロロロロロロロ……
…………
…………
メイ「学校は楽しいわね、静!」
静「ええ……楽しいわ」
バァ――ッ……
静「本当……貴女がいて良かった。メイ……貴女がいなかったら、あたし、一人で――……」
メイ「そんな事はないわ。静……貴女が優しい人だって事、私、よく知っているもの……きっと、他の人たちは、静の良さがまだわかってないだけよ」ニコッ
静「そ、そんな事ないっての。ったくさァ~~メイったらいつも真顔で恥ずかしい事言って……」
メイ「フフ、ごめんなさい」
メイ「ねえ、静。見た?この学校、とっても広いお庭があるの。今度そこを二人で歩いてみましょう?」
静「ええ……ウン。そうね……メイ」
メイ「楽しみね。フフフ……お弁当持って、ピクニックなんかしたりして!」
静「……楽しそうだわ。ウン……」
……カサッ……
静「……」
メイ「?……どうかした?静?」
静「え?う、ううん。なんでも……」
メイ「……変な静。私、先へ行くわよ?」
静「……うん。わかった……」
テクテクテク……
静「…………」
静(……あたしには、『友達』がいる。メイっていう……素晴らしい、友達が)
静(もっともっと小さな頃からの幼馴染で、いつも一緒にいて……仲がいい)
静(彼女がいなかったら……あたし、学校でも一人っきりで、悲しい毎日を送ってた……)
静(……けど、何で?あたし……)
静(何か……大切な事、忘れてるような……)
カサッ……
静「……?」
静の足元に、紙が落ちていた。
しわくちゃで、破れそうな、みすぼらしい紙が。
その紙には、ただ一言……
『あたま』
……という文字が、書かれていた。
静「…………?」
ザァァアアアア……
…………
今回はここまでです
…………
ゴォォオオオオオ
「我々が近づけるのはここまでです……あとはよろしくお願いします」
「わかりました……行きますよ」
「ねえ待って。ここさ……上空何メートル?外との気圧の差は?」
「かなり低く飛んでもらっています。4000から……5000といった所でしょうか」
「そう……ところでパラシュートは?」
「……」
「スカイダイビングのパラシュートってさ~~『メインパラシュート』の他に『リサーブパラシュート』ってあんのよ。それに安全装置までついてて、開かなくっても自動的にパラシュートが作動するってワケ。やっぱさ、そのくらいしないと――……」
ガシイッ!
「時間がありません。……『行きますよ』」
「おっ、オイ!ちょっと待――……」
ゴバッ!!
…………
…………
『三日目』
…………
…………
『うえ~~ん……ええ……ん……』
『どうか……のかの?……しず……?』
『こわしちゃった……あたし、あたし……』
『静……ずか……落ち着……かや……』
『大切な……切だったのに……』
『……わしたものはの……もう戻……』
『……』
…………
…………
メイ「――……静?」
静「はッ!!」
バァァア――ッ……
静「……ハァ、ハァ……?……??」
メイ「どうかした?……ぼうっとしてたみたいだけど」
静「……わかんない。ハァ……疲れてるのかも、あたし」
メイ「……」
静「けど、なんだろう……何か……『何か』……忘れてるような、そんな気がしたの」
メイ「……所詮は『夢』……完全に再現する事は出来ないのかしら……」ボソッ
静「え?」キョトン
メイ「ううん、何でもないわ。静」ニコッ
静「……そーいうのさァ~~、何でもなかった試しが無いわよね。メイ、もしかしてアンタ……なんか隠し事してる?」
メイ「してない……本当よ、静。神に誓ってもいいわ」
静「……ふ~~ん、そう……まあ別に、いいけど」
メイ「……フフフ……」
メイ(あと『四日』……この夢の中ではもう何年も過ごしたけれど、現実の時間であと『四日』経てば、私はこの世界中の人々と『友達』になり、この世界に生きる『神』となる……)
メイ(『神』とは『私』よ、静……私は私に誓ってる。ええ、ええ。『隠し事』なんて無いわよ……どうせすぐに、『隠した事』なんてどうでも良くなる……)
メイ(夢が現実と繋がる時、貴女は私と一緒に生きるのよ……静)
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
静「……メイ?今度はアンタがぼーっとする番って訳?」
メイ「あら、ごめんなさい静。少し……考え事をね」
メイ「そんな事より見て、静!クローバーがいーっぱい!」
ザアァッ……
静「……すごいわね。学校にこんな所があるなんて」
メイ「ええ……さ、静。四つ葉のクローバーを探しましょう?押し花にして、貴女にプレゼントしてあげる!」
静「え?……あたしィ?」
メイ「私はね、今、とってもとっても、と~~っても幸せなの。この指の……」
スッ
メイ「……外側の世界、全てくらい幸せ。……だからね、私の幸せは、貴女におすそ分けしてあげたいの」
静「そ、そう言うならいいけどさァ~~……じゃあ代わりに、あたしが四つ葉を見つけたら、メイ……貴女にあげるわよ」
メイ「フフ……ありがとう、静」
クシャッ
静「…………え?」
メイ「?……どうかした?静?」
静「い、いや……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
メイ「ほら、早く!一緒に探しましょう?四つ葉の……クローバーを」
静「……え、ええ……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
メイ「――!!」ピクッ!
静「?……メイ?」
メイ「……何?」
静「え?」
メイ「……何か――……」
…………
…………
メイ「『近付いてくる』」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
メイ「……どういう事、かしら?我が『ワンダフル・ワールド』の中では皆、素晴らしきこの世界へと旅立つはずなのに」
ゴォォオオオオオ……!!
メイ「来る……来てるわ。……チェスタ、私に力を貸して……!」
オオオオオオオオ!!
メイ「『空』よッ!!『落ちてきている』ゥ――ッ!!」
ゴオオオオオオオオオオ!!!
徐倫「うおおおおおお!!!」
ジョルノ「おおおおおおおおお」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
メイ「なにィ~~~~ッ~~」
ジョルノ「無駄ァ!!」
徐倫「オラッ!!!」
メイ「URRRRYYYYYYY!!!!」
ドゴォォオオオ!!
…………
今回はここまでです
…………
その数時間前――……
ザッ!!
ジョルノ「空条……徐倫さん、ですね」
徐倫「……」キョロキョロ
バァ――ッ……
徐倫「……ええ、アンタは?」
ジョルノ「イタリアでギャングのボスをしています……ジョルノ・ジョバァーナです。貴女の……遠い親戚にあたります」
徐倫「……初めて聞くわ、そんな親戚」
ジョルノ「英語は少し苦手ですので、わかりにくい所があったらすみません」
徐倫「……あたしを牢屋から出したのは、アンタなの?」
ジョルノ「いえ。それはSPW財団の力です。ぼくはその点に関して一切知りません。……しかし、空条承太郎博士の娘さんなら……これからの『作戦』に不足はないでしょう」
徐倫「飛行機で行くのか?その……日本まで?」
ジョルノ「……」
徐倫「だってここ……『空港』でしょ?日本の航空機関は機能してんのかよ」
ジョルノ「していません。というより、全世界で混乱が起こって主要な機関はほとんど麻痺しています。……これから、我々が所有する飛行機に乗って日本上空まで向かいます……あの膜の上まで」
徐倫「……『上』」
ジョルノ「護送車の中で読みましたか?ぼくがまとめた、あの能力についての考察レポート」
徐倫「読んだ……だから『上』というのはわかる。入ったら終わりだからね……だけど、そこからどうするっていうの?」
ジョルノ「……これは、我々の組織の中でも極秘情報なのですが……」
ジョルノ「ぼくは、あの『黒いドーム』のスタンド使いと同じように……一歩『先』へと行ったスタンドを持っています」
徐倫「!!」
ジョルノ「初めてこのスタンドを手に入れた時、ぼく自身、自分の能力については何もわかりませんでした。しかし……この十数年間、ぼくは密かに自分の能力について研究し、知り得る事が出来ました」
ジョルノ「ぼくは、敵の『攻撃』の動作やその意思を、全て『ゼロ』にする事が出来る。……終わりがないのが『終わり』……それが『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』」
徐倫「……『ゼロ』?」
ジョルノ「つまり、敵の夢に囚える能力は、ぼくには通用しないという事ですよ。おそらく、ぼくの側にいる人にもその効果は発揮するでしょう」
徐倫「!!――……つまり……」
ジョルノ「ぼく達は『戦える』……これは重要なアドバンテージです」
ジョルノ「それに、貴女は――(『何故』なのか?という事はわからないが)――ぼくと同じように、『ジョースターの血統』を、感じる事が出来ますね?」
徐倫「!!……え、ええ。ここに来る時、護送車の中で……アンタの存在を感じてた」
ジョルノ「それがある限り、あのドームの中で何が起ころうと離れ離れになる事はないでしょうし、空条承太郎博士を探す事も容易でしょう。……そろそろ行きましょうか。ミス・空条」
徐倫「……徐倫でいい。あたしもアンタの事、ジョルノって呼ぶから」
ジョルノ「……それともう一つ。貴女は……『静・ジョースター』という女性について、知っていますか?」
徐倫「……『静』?」
徐倫「ええと……何年前だっけ?父さんに連れられてひいおじいちゃんの所行った時に……孫だっけ、ひいおじいちゃんの」
ジョルノ「……正確には娘ですね。養子ですが」
徐倫「ああそうだっけ。……その後から父さんとうまくいかなくなってきたから会ってないけど、覚えてるわ。でけーサングラスが印象的だった。……それが?」
ジョルノ「いえ……彼女も杜王町にいるようですので」
徐倫「……助けないといけない親戚が増えたって訳ね」
ジョルノ「……」カサッ
ジョルノ(……彼女の健康診断時の情報と、フーゴ達が調べ上げた、『有栖川メイ』の情報……彼女が通っていた病院から盗んだ情報)
ペラリ
ジョルノ(それによると彼女たちは……)
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
ジョルノ「……これは、彼女の戦い……なのかも、しれませんね」
徐倫「?」
…………
…………
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
徐倫「どうだッ!この吸血鬼野郎ッ!!」
ジョルノ「ぼくから離れないで徐倫!あまり前に出るんじゃあない」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
メイ「……」ムクリ
メイ「……おかしいわね。何故……私の『世界』で、自由にいるのかしら?」
ジョルノ「……」
メイ「ん?」
ブラーン
メイの首が、折れて変な方向へ曲がっている。
メイ「……あら、あら、あらら。大変……前が見えないわ。うえぇぇえ~~ン。どこにいるのォ?二人ともォ……?」
徐倫「……」
ジョルノ「……」
メイ「……ンン~~」ボキキッ
手でちょいと直すだけで、首は元通りになった……ッ!
メイ「……自己紹介が必要かしら?私の名前は有栖川メイ……これからこの地球に唯一人の存在となる者……それで?貴方達は?」
ジョルノ「……」
徐倫「吸血鬼に語るような名前なんか無ェーわ、このタコ」
メイ「……そう」ニッコォ
ヒュッ!
ドボオ!!
徐倫「!!」
ジョルノ「!?なッ……」
瞬間!!
メイの右腕が、徐倫の腹を貫いたッ!!
ジョルノ「何ィ~~ッ~~!!馬鹿なッ!!徐倫!!(見えなかったッ!!これが……『吸血鬼』の速さかッ!!)」
メイ「私を馬鹿にしているのかしらァァ~~ッ!!親切丁寧にこの私がッ……貴女と『友達』になりたいから自己紹介から始めたのに!!その優しさを後ろ足で蹴って土をかぶせるっていうのねッ!!私と友達になりたくないっていうのねッ!!な……泣きそうだわ……ううう……うええ……!!」ボロボロ
徐倫「……そうよ。まったく……やれやれだわ」
ジョルノ「!!」
メイ「!!」
ガシッ!!
メイ「こ!!(コイツ!!胴が空洞に……身体が『糸』になっているッ!!)」
徐倫「捕まえた。そして食らいな……父さんの分まで!!」
徐倫「オラアッ!!!!」
バギャア
メイ「RY!!」ガブウッ!
今回はここまでです。
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
メイ「……!!」グラアッ……
徐倫「たたみかけろジョルノ!!こいつはあたしが捕らえるッ!!」
ブワアアアア
メイ「……これは……」
『手錠』ッ!!
ガシィィ――ン
徐倫「屈服させるッ!!」
ジョルノ「『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』」
GER『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄』
ボッボッ
ボッ!!
メイ「フン」
ヒラリ
徐倫「甘い」グイン
メイ「!!」
ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムの突き(ラッシュ)を紙一重で避けるメイは、
手錠により徐倫の元へ戻されるッ!!
グルゥオオオ
メイ(……戦い『慣れすぎている』……少し危ないわね。何よりこの『手錠』――……)
徐倫「オラッ――」ヒュ……
徐倫の蹴りが、メイの頭を捉えようとしていたッ!!
メイ「離してくれないかしら」プッ
ギ パ
徐倫「!!」
ジョルノ「な……あの『目』はッ!?」
メイの瞳孔が破れ、ただならぬ圧力(プレッシャー)をあたえるッ!!
ジョルノ「避けろ徐倫――ッ!!」
ドッゴオオ
徐倫「うおおおおおお!!」バッ
シュゴォ――ッ!!
ビビイッ
徐倫「い、今のはッ!!」
ガラガラガラ……
二人の背後にあった家が切断され、崩れ落ちるッ!!
ジョルノ(今のは体液……目から超高圧で体液を噴射した!?)
ジョルノ「――はッ!!」
メイが拳を振り上げるッ!!
メイ「『友達』である私を屈服だなんて……悪い子ね」
徐倫「くッ――」バッ
ドガァ!!
ジョルノ「な……徐倫――ッ!!」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
メイ「……ン……?」
グニ……
徐倫「……なかなかいいパンチね。ナイスパワー。……『その力があたしは欲しかった』……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
メイ(この感触……)
徐倫「自分で入れようとしても入らないのよね、『これ』……だから、力任せに『押し込む』には、あんたのようなのが最適……」
……ゴロ……
ゴロゴロゴロゴロ……
徐倫「『糸の手錠』で屈服させられないのなら……あんたを打ち破るためならば。あたしはとことん変わってやる」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
メイ「面白いわね……貴女、『スタンド』を2つ持っているの?それとも――……」
徐倫「これはあたしが受け取り!!エンポリオに託した……親友の『スタンド』だッ!!」
『ウェザー・リポート』ッ!!
ドヒュウウウウ!!
メイ「『風』……!!」ヨロリ
徐倫「そよ風はもう止んだのよ……あんたを捉える『突風』となるッ!!」
ゴオオオオ!!
ジョルノ「良い風だ……徐倫」
ウェザー・リポート『オラオラオラオラオラオラオラオラ!!』
GER『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!』
ド ド ド ド
メイ「WOOOOOOMMMMMM」
ドッドッドッ
ジョルノ「二人がかりで悪いがな……終わらせてもらう」
徐倫「こんな事、年下の女の子じゃあなく意中の男性に言うべきだけど……逃さないわよ。絶対に!!」
ゴオオオオオオオ
メイ「ええ、ええ!そうね……私もよ」
ピッキィーン
徐倫「!!」
ジョルノ「!?」ザッ
メイ「『雲』のスタンド……『ウェザー・リポート』と言ったかしら?良いスタンドだけれども……貴女、『吸血鬼』は初めて?」
徐倫「こ……これはッ!?」
バシ!
バシバシバシ!
メイ「私が貴女の初めての人のようね。……神・『DIO』については……信頼できる友・チェスタから聞いていた。……試すのは初めてだけどね。お互い初めて同士!……なんだかとっても、素敵ね?」
パキィーン!!
徐倫「う……おおおああああ!!こ、『凍る』ッ!?」
メイ「気化冷凍法」
バァ――ン
ジョルノ「くッ……!!」バッ
メイ「そう怒らないで……落ち着きましょう?ねえ……」
メイ「『ジョルノ』……『ジョルノ・ジョバァーナ』?」ニコリ
ジョルノ「!?……なんで、おまえ……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
ジョルノ「ぼくの、『名前』……を……」
グラリ
徐倫「う……!」クラッ
ジョルノ「……!?」ヨロッ
メイ「入らせてもらったわ。もう貴方たちは『夢の中』」
ジョルノ「……バカな……ぼくの『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』は……全ての『攻撃』を……!!」
メイ「『攻撃』?……確かに私、貴方たちにちょっぴり、乱暴しちゃったかもね。はしたないことだわ……神に懺悔して反省する」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
メイ「でもね、私……貴方たちと、『友達』になりたいの」
ニッコリ
ジョルノ「!!」
メイ「おやすみなさい、徐倫にジョルノ。……目が覚めたら、お互いケンカした事を謝って……一緒にお茶でもしましょう?」
ジョルノ「……攻撃ではない、ということ……か……」ズル……
ジョルノ(甘かった……読みが……!!)
ドサッ
メイ「…………」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
徐倫「……」スゥ……スゥ……
ジョルノ「……」スゥ……スゥ……
メイ「……『素晴らしきこの世界』まで、あと……四日。……とりあえず……手当してあげないとね」
…………
今回はここまでです
…………
『……本日のニュース、です。……ええ、日本から広がった例の『膜』は、世界の半分を包もうと……』
『…………く、うう……』
『世界は……世界はもう、終わりなのでしょうか!?わたくしは非常に、口惜しいッ!!……ああ……』
『神様……!!』
…………
…………
『四日目』
…………
…………
キャスター『半分!半分ですよ!!もう世界の半分を包み込もうとしているッ!』
コメンテーター『落ち着きたまえよ、キミぃ……』
キャスター『これが落ち着いていられますかッ!!我が国では核での攻撃も検討されているんですよ!?このままでは世界大戦に勃発する!!』
コメンテーター『しかしだね、あの膜はミサイルも効かないのだよ?大統領もわかっているだろう。その事は』
コメンテーター『それにだね、これは喜ばしい事じゃあないか』
キャスター『?……何を言ってるんだ?アンタ?』
コメンテーター『私達もやっと、メイと本当の友達になれるんだ。だからそう怖がることなく――……』
キャスター『しょ……正気かテメェーッ!いや正気じゃあねえ!テメェは例のアレか!新興宗教の信者か!!』
キャスター『あんなワケのわからんモンが神の裁きやら導きやらの訳ねェーだろ――が――ッ!』
コメンテーター『宗教?違うちがう……私はね、友達なんだよ。メイの――……』
キャスター『オメェーみたいなオッサンが日本の訳のわからん膜の中身と友達なのか!?そんな訳あるか!!オイ、しっかりしろ!!』
コメンテーター『……友達、では、ない?』
キャスター『当たり前だろうが!ニュースはなあ、しっかりとした情報を――……』
コメンテーター『……う、うう……』
コメンテーター『……なぜだ?なぜ私は……メイと友達に……?』
『……番組の途中ですが、ここで一旦CMです』
キャスター『おいちょっとまて……CM?今!そんなモン流してる場合か!!』
『しかし、彼の容態が――……』
『バカヤロー!!俺たちジャーナリストはこんな時だからこそ世界に正しい報――……』
…………
…………
バ ァ ァ ア ア ア ア
静「…………」
静「……ない……ない……ない。ない……ないや」
静・ジョースターは、原っぱにいた。
そこで、彼女は一生懸命、探し続ける……。
男「……何を探しているんだい?」
女「……」
ザッ
静「……」
そこに現れたのは――……一組の男女だった。
一人は金色の巻毛の男で、もう一人は団子にした髪を、三編みでまとめた女……。
静「……」
女「……ちっさ……高校生じゃあないの?今……」ボソ
男「なんでもありなんでしょう。ここでは……」
女「……」
静「…………」
女「……ねえ、何探してんの?ここで……さ」
静「……よ……」
男「……」
静「……四つ葉の、クローバー……探してるの。友達に……メイにあげるために」
女「……『メイ』」
男「…………手伝おうか?ぼくらも」
スッ
静「!!」
女「何年ぶりかな、こんなことすんの……ていうか、したことあったかな……」
静「……」ジーッ
男「……どうしたんだい?」
静「!」
男「ぼくらが……どうかした?」
静「いえ!あの……」
静「……踏まないんだ、って……思って」
女「……?」
男「?……!……ああ、そうだね」
女「?……??」
男「……あ、これ……四つ葉なんじゃあないか?」
静「!……あ……」
プツッ
男「ほら……」スッ
静「あ……ありがとう。これで、これを……メイに、友達にプレゼント出来る」
女「……」
男「……これは……ぼくらが……」
静「?……」
男「ぼくらが、言うことではないのかもしれない。君にとっては、部外者のぼくらが……」
静「……」
男「だけど――……」
女「……静、アンタのそのクローバーは……『メイに渡すものなの?』」
静「……え……」
男「静、きみの『友』は――……」
バシュウ
静「……え?」
キョロキョロ
突如、男女の姿は消えた。
そして――……
メイ「……ハア、ハア!ハア……ハァ……」
ザッ
静「……メイ?」
メイ「ハァ、ハァ……ハァ……」
静「メイ、ちょっと……大丈夫?」
メイ「ええ、ええ……大丈夫……大丈夫よ……静」
メイ(まさか……私の『ワンダフル・ワールド』の中で自由に動くとは!……『矢』の力かしら。ジョルノに、徐倫……あなどれないわね)
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
メイ(しかし……これでもうおわり。私のワンダフル・ワールドは無敵なの。誰にも……邪魔されない。全ての生き物は眠り、夢を見て……世界中みんなが、『友達』に……ふふ……)
メイ「ふふ……ウフフフフ……フハハ……」ユラリ
静「ちょ、待……メイ、あの――……『四つ葉』――……」
メイ「なあに?」クルリ
静「……い、いえ……なんでもないわ。なんでも……」
メイ「?……おかしな静。ふふっ」
静「……」
静(メイ……見たこと無いわ。今まで、そんな『顔』……)
静(あたし……あたしは、ただ……メイに、『四つ葉』が……綺麗な顔に、四つ葉がきっと、合うと思って……)
静(なのに……あたし、何で?……『恐怖』?……メイに……?)
ガサッ
静「……え?」
静が右手で握っていた『クローバー』は……
いつの間にか……『紙』に変わっていた。
静「こ、『これ』は……(何年前?もうずっと、ずっと、ずう~~っと昔に、同じようなのを見た。……なのに、何でだろう……)」
静(つい昨日か、一昨日のように新鮮で……懐かしくて……)
静「……『暖かい』」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
静「……」ガサリ
『つかえ』
静「……(覚えてる……確か、前に書いてあったのは……)」
静「……『あたま』……」
静「……」
静(『あたま』……『つかえ』?)
静「どういう――……」
ド ヒ ュ ゥ ウ ウ
静「う……」
…………
『いつまで寝てるんだ?お前は』
…………
風で目を閉じた静の瞼の裏に
知らない男の姿が、映る。
学生服で、眼鏡をかけた――……。
静「……誰?」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ……
…………
今回はここまでです
レスありがとうございます。励みになります
…………
ブクブクブクブク……
静「……ガボ……ゴボ!……ガボボ!!……く……」
ボコボコボコ
静「……助け……けえ……ボコ……」
ボココ
――『水の中から見る太陽って――……』
……『ユラユラしてて、案外面白いのね』
静・ジョースターは、水底に沈みながら、ノン気にそんな事を考えた。
どうして、あたしは溺れてるんだろう?
どうして、あたしは悲しいんだろう?
どうして、あたしは……なんだか心がカラッポになっちゃった、って、考えてるんだろお?
静「…………ゴボ……」
ゴボゴボゴボ……
…………
…………
『五日目』
…………
…………
ジョセフ『『静』、じゃ。この娘の名前は、『静・ジョースター』』
承太郎『…………』
ジョセフ『どうじゃ?承太郎。ピッタリの名前だと思わんか?ン?』
承太郎『まだアメリカの地を踏んでねえのに、気の早いジジイだぜ……』
ジョセフ『知ってるモン、わし。日本では『善は急げ』って言葉があるんだもんのーッ。かわいらしい名前だと思わんか?昔見た日本のアニメキャラも同じ名前だったかのーっ。まあそれは関係ない話じゃが』
赤子『きゃっ♡きゃっ♡』
ジョセフ『お、ほれ見ろ承太郎!喜んどるぞこの娘!うーん、かわいいのーっ』
承太郎『……』
承太郎『……『おしとやか』にでも育ってほしいのか?この娘に』
ジョセフ『ん?』
赤子『あばーっ?』
承太郎『いや……日本の名前ってのは漢字に意味があってな……静って名前は、『おしとやか』だとか『穏やか』だとか……そんな意味合いがあるってだけの話だぜ』
赤子『……ういー……』
ジョセフ『うーむ、難しい事を言うのう。『意味』か……確かに、おしとやかな大人のレディーに育つと良いかもしれんのう……』
ジョセフ『しかし、そうじゃあのう……『穏やか』という意味があるのなら、わしはこの娘に……『穏やかな人生』を送ってもらいたいもんじゃ』
承太郎『……』
ジョセフ『わしらが命をかけて作った、安全な世界で……何者にも害されず、穏やかにのう』
赤子『ぶーっ……』
承太郎『……そうか』
ジョセフ『しかしの、承太郎。……わしはこうも思うのじゃ』
ジョセフ『名前とは重要じゃ。この世で唯一無二を表す記号。皆それをつけられて産まれてくる。……だがのう、『名前の意味を決めるのは、その子自身なんじゃ』』
承太郎『……』
ジョセフ『『静』という名前を聞いて、おしとやかな大人のレディーや、穏やかな人生を送っている娘を思い浮かべるかもしれん。……だが、この娘が大きくなった時……『静』という名前に、活発元気でハツラツな娘や、危険を承知で誰かのために動ける娘という意味が、イメージとしてついているかもしれん』
承太郎『……』
ジョセフ『わしはな、この娘……『静・ジョースター』の『名前』が……どう『成長』していくか、今からとても楽しみなんじゃ。『静・ジョースター』と聞いて、皆が何を思い浮かべるようになるかを、な……』
赤子『……アハハ♡』
ジョセフ『……』ニコリ
『だから、わしは名付けるんじゃよ。この娘の名前は――……』
『……静・ジョースター』
…………
…………
静「!!――……ガボ……」
朦朧とした意識の中で見た、今の光景は――……ただの『夢』なのかもしれない。
赤子であった自分が名付けられた時など、誰も覚えていないだろう。
しかし――……
静(なぜあたしは……泣いてるんだろう?)
ブクブクブク……
静(満たされない……満たされない。メイが……『友達』がいるのに)
ボコボコボコ……
静(そう。あたしは……一人ぼっち。溺れても、だあれも助けてくれない……)
ボコボコボコ……
静(あたしは――……『一人』だ……)
――ガッ!
ザパアッ!!
静「!!――……ゲホ!ゴホ!ゲェーホ!……おえ……!」ハァハァ
メイ「静……静!ねえ、大丈夫?……な、なんで溺れて……!」ハァハァ
静「……め、メイ……?」
メイ「ええ、ええ!私よ……静!」
静「……たすけて……くれたの?」
メイ「当たり前じゃあないの!『友達』……なんだから!」
チャプチャプ……
静「……『友達』……」
メイ「……な……(何故……?)」
メイ(ここは『ワンダフル・ワールド』……私の幸せの世界なのにッ!何故静が……こんなひどい目にッ!?)
静「……ごめん、ね。……メイ」
メイ「?」
静「あたし、さ……アンタみたいな、最高の『友達』がいるのに……なんでだろう?……『悲しい』の」
メイ「……」
静「心にドーナツみたいな穴が、ポッカリ空いたみたいで、さ……」
メイ「!!……」
静「……幸せよ。アンタといると。だけど……あたし、なんだか……弱くなった感じがする。……『元気』じゃあなく、『おしとやか』に、さ」
メイ「静……静……!」
メイ「……いいじゃあないの。『おしとやか』で……貴女はもう、戦わなくて良いんだから……」
静「……」
メイ「私が……私が、守るわ。静……わかったの。私は……貴女なしではいられない」
静「……」
メイ「なんでだろう……そう思うの。世界中のみんなも好きだけど、それでも貴女は……私と同じにおいがする」
静「……」
メイ「……大切なの。貴女が」
静「…………ごめん。メイ……あたし、アンタのこと……疑ってた。本当に……ごめん」
静「今の言葉……本心だって、わかるわ。こんなあたしにも、ね……」
メイ「……」
静「きっと、この海は……あたしなのよ」
メイ「……『あたし』?」
静「『あたし』なの。あたしの……『心』……あたしの弱さが生んだ、『心の闇』なの……」
グシャ……
メイ「?……!!……し、静……その、ポケットに入っている……チラリと覗く、その……『紙』は?」
静「え?……」
静「……これ……なんだろう。わからない。拾ったんだけど、なぜか……捨てられなくて」
メイ「……これは……この『紙』はッ!!」
…………
…………
メイ「……『双葉双馬』……」
ビ ュ ゥ ウ ウ ウ ゥ ウ
カサカサ……パラパラ……
杜王町の、闇の中。
有栖川メイは、数多の紙と対峙した。
地面をふきすさぶ、ボロボロの紙切れに……。
メイ「『執念』とでも言うの?……貴方の『執念』が……私の天国を壊そうとしているの?……ちっぽけな!!」
ゥ ゥ ゥ……
メイ「……いえ、『ちっぽけ』ではないわ。貴方の能力は恐ろしい。文字通り、人を超えた私の世界に、死んだ貴方が……いえ、死んだからこそ、貴方が介入するなんて……」
ペラペラ……ペラ……
メイ「……けれど、もう……おしまいよ。貴方は」
ペラ……ペラ……
メイ「スタンドパワーなんて、ノミの足先の毛ほどにしか感じない。たとえ貴方が何か出来たとしても……彼女に送れるのは、たったの『一文字』程度のはずよ」
……ペラペラ……
メイ「……貴方は、偉大だったわ。私は……正直、貴方が怖い」
……ペラ……
メイ「……けれど……わかったわ。私にも。……自分より誰かを優先する、その心。……すなわち、『愛』」
……バサバサ……
メイ「私は、愛する。……世界中全ての人を。そして……静・ジョースターを」
……
メイ「私は……彼女を、そしてこの世界を……失うわけにはいかないの」
バササッ
メイ「…………」
メイの足元に、風に吹かれ、数枚の紙が飛んだ。
ミミズののったくったような文字が、書かれている……。
『ほ』
『んし』
『ん』
『か』
『?』
メイ「…………『本心か?』ですって?……見ていなさい。双葉双馬……もうすぐ夜は終わり、朝が来る。……六回目の朝よ」
メイ「その太陽が沈み、月が出て、その月が沈み……また太陽が出た時。……見せてあげるわ。双葉双馬。私の……思い描いた幸せな世界を」
……
メイ「もう、私も、静も、世界中の誰も!……傷つかない世界を……本当の天国にいる、貴方に」
……
メイ「『素晴らしきこの世界』は、近い……!!」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
…………
今回はここまでです
…………
その日――……
世界は『闇』に包まれ、完全に『沈黙』した――……。
…………
…………
『六日目』
………
…………
「メイ」
「メイちゃん」
「有栖川くん」
「メイさん」
「メイちん」
「有栖川さん」
「メイ」
「アリスっちぃ」
「メイくん」
「メイちゃん」
「メイ」
「「「有栖川……メイ!」」」
……沈黙した世界の中。
人々は……『夢の中』で、口々にその名を呼ぶ。
メイ「……ありがとう。わたしは、あなたの……『あなた達』の、『友達』よ」
ニコ
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
メイ「これが『世界』……『素晴らしきこの世界』」
ゴ ォ ォ オ オ ァ ァ ア ア
「メイ」
メイ「あなたは、『タケシ』……子供の頃、虫取りをしたわね。……夏の暑い日、あなたが熱中症で倒れた時はびっくりしちゃったわ」
「メイちゃん」
メイ「あなたは……『ナンシー』……父親と仲が悪くて、よくわたしの家に泊まりに来たわね。今は仲良くしてるみたいだけど……いつでも頼っていいのよ?」
「アリスガワ」
メイ「『リン』……妹の事大切にしてる?あなたの可愛がりっぷりといったら、わたしがうらやむくらいだわ……フフ……」
「メイ」
「メイちゃん」
「メイさん」
「メイ」
メイ「たった……たった70億、よ。70億人の人生に、わたしが立った。それだけ……それだけの事よ。愛してるわ。みんな……」ハァ、ハァ……
「……メイ、くん……」
メイ「……」
しわがれた声が聞こえた。
そこにいたのは、枯れ木のような老人であった。
メイ「…………」
「…………」
うめき声が聞こえた。
銃弾を受けた兵士が、腹から血を流していた。
「~~~~」
つぶやき声が聞こえた。
少女は薬を大量に飲んで、口から泡をふいていた。
「――――」
泣き声が聞こえた。
赤ん坊が、汚らしい部屋の中で、最後の声をふり絞っていた。
メイ「……わたしは……もう、奪わない。諦めない……切り捨てない」
今にも折れそうな手を
力なく落ちた手を
世界に絶望した手を
小さな小さな手を
有栖川メイは……
優しく、そして、強く握った。
メイ「『カルロス』……あなたと出会えて、良かったわ。あなたが長い間歩んできた道は……素晴らしかった」
メイ「『キース』……辛かったわね。祖国のために、戦ってくれて……ありがとう」
メイ「『ソユン』……あなたのその行動を、止められなかった自分を恨むわ。もっと早く会いたかった……」
メイ「そして……名前のない、終わりゆく未来。……あなたのことは、忘れない」
バ ァ ァ ア ア ア
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
メイ「――『神』とはッ!!」
ギラ
メイ「『ここ』にいるのよッ!今、この『地上』に立つのよ!!」
バァ――
メイ「人々が懸命に手を合わせて!必死に祈る先――『天』にッ!!『神』はいるの!?それは……本当に人を救ってくれるというのッ!?『神』とは――……」
バ ン
メイ「それほどまでに偉いのかッ!!天上でふんぞり返り、苦しむ少女一人助けてくれないッ!!信じるものをたった一人でも、本当の意味で救えたのか!お前は――ッ!!」
ゴ オ ッ
メイ「……わたしは『ここ』に立つ。人の死を……苦しみを!悲しみを消すことは出来ない。……それでも!!」
……男の姿があった。
彼は……口元に軽く笑みを浮かべ、背を向けて、有栖川メイから去っていった。
メイ(……これで、良いのよね?……『チェスタ』)
バッ
メイ「わたしが人々の記憶にいることで……人々がわたしを愛し、わたしが人々を愛することでッ!!……わたしは、みんなの『マイナス』をやわらげる事ができる!!」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
メイ「……もう、わたしや……チェスタのような、この世界から必要とされていない人間なんて……生み出させない」
メイ「それが、『天国』……『素晴らしきこの世界』ッ!!」
ド ン
メイ「だから……静」
メイ「あなたを、愛させて?」
ドヒュゥ――ゥゥ……
…………
…………
メイ「…………」
有栖川メイは、森にいた。
アメリカだろうか?静の生まれ故郷の、近くの森に似ていた。
メイ(……わたしの事を知らない、地球の裏側のみんなとは……すぐに仲良くなれるわ)
メイ(それこそ一日あれば、新しい人生を追体験出来る)
メイ(だけど、わたしに近い人ほど、じっくり新しい世界となじまなくてはならない……時間をかけて『友達』となる必要がある)
メイ(そして……静。あなたは……わたしを知りすぎている)
メイ(……潜在意識でわたしの世界を拒否している……と、いうところかしらね。……難しい話だわ)
ヒ ュ ウ ウ ウ
メイ(だけど……『七日』ッ!太古の傲慢な神が出来て、新しい神であるわたしが出来ない道理はないッ!!わたしは――作るのよ、世界をッ!)
メイ(そのためには、静――……)
シン……
メイ「……?……静?」キョロキョロ
サァァア……
メイ(……静が、いない?……まさか!また――……)ドキリ
……ァァア……
メイ「!!……ン……」
…………サァァァ……
メイ「…………静?」
メイ「そこの……木の陰……」
「……」
メイ「見えないけれど……静よね?静……そこに、いるの?」
「……」
メイ「……静?」
「…………クッ、ククク……」
メイ「……?ねえ、静……」
「……クク……ふふ……」
スゥーッ
静「アーッハッハッハッハ!驚いた?メイ!」
メイ「……ふふ……ハハ!ああ、驚いたわ、静!透明になってるなんて!」
静「アーッハッハッハッハッハ!メイ!」
メイ「フフ、ハハハハハハハハ!静!」
静・メイ「「アハハハハハハハハ!」」
……二人は14歳の姿となって、夢の中にいた。
一年後、静・ジョースターは、杜王町へと旅立つ。
『六日目』にして、『最後の一年』……。
有栖川メイのスタンドは、静・ジョースターの『人生』を……。
ほとんど全て、変えていた……。
メイ「静、あまりわたしを驚かせないで……心配したわ。本当に。あなたが消えていなくなっちゃったんじゃあないかと……」
静「大丈夫よ、メイ。いなくなったりしないわよ……あたし」
メイ「そう」ニコッ
静「それにしても、メイ!驚いたのは、あたしもよ!」
メイ「え?」
静「『アクトン・ベイビー』で透明になったあたしを見つけるなんて……かくれんぼ、うまくなったんじゃあないのォ?」
メイ「……ふふ!あなたがどこに消えたって、見つけてみせるわ!だって、わたしたち……」
静「……『友達』?」
メイ「そう、『友達』」ニコッ
静「……そうね!あたし達、『友達』だものね!」
メイ「そうよ!フフフ……かけ替えのない、『友達』ッ!!」
静「『メイ』……アンタっていう、かけ替えのない『友達』……」
メイ「『静』……あなたは、かけ替えのない『友達』……!!」
静「……フッフッフ」
メイ「……フフフ!」
静・メイ「「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」」
静「……ハァー……」
静「……『友達』……かあ……」
ボソリ
メイ「!!……静……もしかして、あなた……また……」
静「大丈夫……大丈夫よ、メイ」
メイ「静……」
そっと、メイは静を抱き寄せた。
胸に手をあてて、かるく、擦る。
メイ「まだ、あなたの心には……『穴』が空いてるの?正体不明の『穴』が……」
静「……」
メイ「わたしでは、埋められない?」
静「……ううん。たぶん……『気のせい』なのよ。穴が空いてる『かも』って……それだけ」
静「なにか、ね……大切なものを失ったような……」
メイ「……」
静「おかしいわよね?あたし、何も失ってないのに。……失ったのは、『一つだけ』なのに」
メイ「……」
メイ「…………『一つ』?」
ォ ォ ォ ォ ……
静「知ってるでしょう?メイ」
メイ「え、あ……そ、それは……」
静「……」
メイ「……も、もちろ――…………」
静「……」ジッ
メイ「……う、ううッ!……なッ……な――……」タラリ
メイ「…………『何』?その……『一つ』って……」ボソリ
静「……」
メイ「……」ゴクリ
静「――……森の奥に――……」
――……『崖』があった。
そこまで高くない崖だが……落ちたら大怪我では済まないだろう。
その切り立った崖を覗き込むと、少し下に……『花』が咲いていた。
名もない、小さな、綺麗な花だ。……(なんという名前だろう?)……。
静・ジョースターと有栖川メイは、二人でその花を見た。
静「……子供のころの話よ」
メイ「……」
静「綺麗よね、あの花。……とても、綺麗で……おじいちゃんに、あげたかったのよ。……あの花を」
14歳の静・ジョースターにとっては、多少の危機はあるだろうが、難なく花を採ることは出来るだろう。
しかし、幼い頃であれば……その危険は計り知れない。
メイ(何?……し……『知らない』……)
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
メイ(わたしが共に歩んだ人生に、その『記憶』はない……こ、これは……?)
手を伸ばし、静は花を手にした。
黄色い花弁が、凛として美しい花だった。
静「……『花』を採ろうとして、落ちかけたの。……『冒険ごっこ』をしている時」
メイ「……『冒険』……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
メイ(『冒険』なんて『していない』……『危険』はわたしが守ったのに!何故、その『記憶』が――……?)
静「その時、落としちゃって……壊したの。……『サングラス』」
メイ「……『サン――』……」ハッ
静「…………」
ウェェエン……
エエン……
…………
…………
『うえ~~ん!ええーん……!』
『どうかしたのかの?……静や……?』
『こわしちゃった……あたし、あたし……こわしちゃったの。大切な……サングラスを……!』
『静……静や。……落ち着くんじゃ。……静や』
『大切な!……大切だったのに!……』
『……壊したものはのう……もう戻らないのじゃ』
『……』
『だから、これから先、同じことがあったらのう……もう、壊さないように。しっかり守るんじゃぞ、静や……』
『……うえええええん……』
…………
静「……その時、おじいちゃんは泣き止まないあたしを見かねて……新しいサングラスをくれた。おじいちゃんのお母さんが愛用していた、サングラスを……」
メイ(こ――『これ』は……この『記憶』はッ!)
静「単純だった子供のころのあたしは、その時すぐに泣き止んだ。……ジョースター家のものをもらって、嬉しかった……ん、だと思う」
静「だけど……だけどね。あたしは……壊したサングラスが欲しかった。……とても、とても後悔しているわ」
メイ「……」
静「冒険したことも、おじいちゃんに花を贈ろうとしたことも……後悔していない。あたしは、自分の行動に後悔はしない」
メイ(これは……『ルーツ』……!)
静「あたしの後悔は、大切なものを守れなかった事。だから――……あたしは二度と。大切なものは失わないって……決めたの」
・ ・ ・ ┣¨ ┣¨ ┣¨
メイ「……し……静、その『記憶』はッ!」
メイ(『静・ジョースター』を作る根本にして『信念』ッ!!それは、精神の奥そこに刻まれた『魂の記憶』ッ!!わ、わたしは……)
静「……ねえ、メイ……」
ス ッ ……
静「……なんであたし……『子供のころのサングラスをまだつけてるのかしら?』」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
メイ(わたしは、静を『冒険』という危ないものから遠ざけたのにッ!!彼女の魂は!それを叫んでいる!!わたしの『素晴らしきこの世界』が――……『素晴らしくない』!!と!!……言っている……静は!!声高らかにッ!!)
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
静「メイ……あたし……なんだか、『あたしじゃあないみたいだわ』……」
メイ「静……ハァ、ハァ!わ……わたしを……」
メイ「信じて……わたしを――……ハッ!!」
静「?……え?」
……静・ジョースターの握っていた『花』が……
いつの間にか、『紙』に変わっていた……。
くしゃくしゃの『紙』に……!!
メイ「わ……わたしは……わたしは!!……わたしを……!!」
ハァーハァー
メイ(負けない……負ける訳がないッ!わたしは、『神』なのよ!世界はすでにわたしのもので、あとは彼女……静だけッ!!彼女を危険から遠ざけて、しっかり守って愛したのに!!……それを、こんな……ちっぽけなウスら汚い『紙』がッ!!わたしと静の甘美なる、神聖な時を……完全な世界を!!……壊せるわけがないッ!!)
ハァー!ハァー!
メイ(あと一歩……もう『一歩』なのよッ!『信じて』って……『あなたの勘違いよ』って!!……『そんなボロい紙がなんだっていうの?』って鼻で笑うだけで!わたしは……静と『友達』になれるッ!真の『友達』にッ!!い……今さら……)
ギリッ!
メイ(しぼりカスみたいなスタンドパワーが、今さらになって何だっていうの!?わたしが過ごした静との追体験はッ!70億人の追体験はッ!!貴方と静の一年にも満たない世界よりも、遥かに広大で!!強大でッ!!壮大なのよ……負けるはずが――負けるはずが――……)
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
静「……この『紙』は――……」
ペラ――……
メイ「その『紙』を見るんじゃあないッ!!静ァァア――ッ!!」
バァ――ン
静「…………」
有栖川メイが叫んだ時には……すでに静は、くしゃくしゃの『紙』を開いていた。
そこに書かれていたのは、ただ『一文字』……。
『に』
静「…………あ」
ゴォォォオオォオォオ……
風が頬をなぜる。
静・ジョースターは……
……涙を流した。
…………
今回はここまでです
…………
静「うええ……うう……ええ……」
静・ジョースターは……泣いていた。
暖炉の前だ……『思い出』の……。
(『思い出』?何故そう思ったのだろう?静・ジョースターは訝しむ)
ジョセフ「おお、よしよし……泣くのはおよし、静や……静」
静・ジョースターは、ロッキングチェアに座るジョセフ・ジョースターの膝にすがりついて泣いていた。
もうすぐ九十にもなろうというジョセフは、やさしく、彼女の頭を撫でる。
ジョセフ「静や、静……何故泣いておるんじゃ?」
静「わからない……わからないの。ただ……あたし、何か……」
静「何か、大切なものを……『忘れた』気がして……」
ジョセフ「忘れた、のう……」
……パチパチ……
ジョセフ「それでも静、お前には『友達』がおるじゃあないか。『メイ』という……」
静「『友達』……」
ジョセフ「忘れたとしても、『友達』がおれば、安心なんじゃあないかのう」
静「……うん。……だけど、ううん」
ジョセフ「?」
静「あたしが忘れたものは……もっと、大切なものだと思うの」
ジョセフ「……ふむ。『メイ』よりもかの?」
静「うん。……なぜだか、わからないけど……」
ジョセフ「……大切な『友達』よりも?」
静「……うん。大切な……『友達』よりも」
ジョセフ「……そうか……」
ジョセフ「わしにはの、『友達』がおらんからの」
静「…………」
静・ジョースターは顔を上げた。
今までしっかりと目を見れていなかった事に気付く。
ジョセフ・ジョースターの目は、少年のように輝いていた。
『さっきまでおじいちゃんの目は、こんなに輝いていたかな』
頭の中にかかっているモヤが、だんだんと晴れていく感覚がする。
ジョセフ「不動産業に手をつけてからは、会う人み~~んな商売敵と金狙いのヤツばっかりのようなもんでの~~ッ。あの頃は辛かったもんじゃ!ガッハッハッハッハー」
静「うそだあ。だって、おじいちゃんは……」
ジョセフ「うむ?」
静「いるじゃん。『友達』ィ~~。ほら!よく聞かせてもらった!冒険、していた頃の……」
ジョセフ「ああ……」
ジョセフ「あいつはのォ……良き友であった。付き合った時間は短いが、共に修行に励み、共に戦い、共に怒り、共に笑い……そして、わしは、涙を流した」
静「…………」
ジョセフ「今でも大切な『友』じゃよ。しかし……そうじゃのう。あいつは……『親友』じゃからのう」
静「……」
静「……『しんゆう』……」ズキリ
ジョセフ「口に出して確認したことはないが、全てが終わった今……心からそう思う。どこかに遊びに行ったことも、盃をかわして飲みあったことも、女性の趣味について語ったこともないヤツじゃ」
静「……」
ジョセフ「それでも、言葉にしなくとも……伝わるものはある」
静「……」
ジョセフ「わしにはの、夢があるんじゃよ。天国に行ったらのー、思いっきりあいつの顔ぶん殴ってやるんじゃ!『カッコつけて去りやがって、バカヤロー!お陰でこっちに来るまでウン十年もかかっちまったわい!』っての……ガハハ!ちょっぴり不謹慎かの〜〜ッ」
静「……」
ジョセフ「……静には、おるのかの?そんな人が……」
静「……あたし……あたしは……」
……パチパチ……
静「あたしは、メイが『友達』で……」
ジョセフ「…………」
静「なんでかって言うと、メイは『友達』だって、何度も言ってくれて……優しいし、守ってくれるし、本当に良い『友達』……」
ジョセフ「…………」
静「…………『だけど』……」
静「あたしの頭の中に……まるでイカスミパスタのソースが、水の入ったコップの中に飛んだみたいな……ボンヤリした色で……」
ジョセフ「……『姿』が見えるの。そいつは……口が悪くていつもあたしをバカにして、まったくもって優しくなくて、エラソーで……」
ジョセフ「……」
静「……だけど……」
ポロッ……
静「……いざって時には、守ってくれて……じ、実は……結構やさしくて……さ、さみしがりやで……」
ポロポロ……ポロ……
静「あたし……あたし、なんも出来ない、子供なのに……あたしの力を、信頼してくれる……」
ポロポロ……
静「すごく、腹立つヤツなのに……い、いっしょにいると、心が……落ちついた。二人で、足りないところを支え合ってるみたいで……あたし……あたしは……!」
静「なんで……忘れてたんだろう」
ポロポロ……
ジョセフ「…………大切な人、なんじゃのう」
静「……うん……うん。大切よ。アイツは、そう思ってないかもしれないけど……グレートに、さ」
ジョセフ「……静よ。決まったのかのう?心は……」
静「……うん。……大丈夫……大丈夫。決まってるの。あたし……あたし……」
静「戦うから……戦って、言いに行かないと。一言……たった『一言』だけ……」
ポロポロ……
ジョセフ「……そうか。……なら――……」
ジョセフ「――いつまでもメソメソ泣いてんじゃあねーぜっ!おれの娘がよ――ッ!!」
バ ン
静「――!?」
……そこには、年老いたジョセフ・ジョースターの姿は無かった。
筋骨隆々で、若々しく、生命のエネルギーに溢れる……。
全盛期、18歳のジョセフ・ジョースターがそこにいた。
静「……え?」
ザッ
……『魂の全盛期』は『エネルギー』となる。
そう。これは『夢』……。
『ワンダフル・ワールド』という『夢の世界』……。
静から漏れ出した『全盛期のエネルギー』は……。
この世界に漂う『全盛期の魂』を呼び集めた。
『空条承太郎』!
『東方仗助』!
『ジョルノ・ジョバァーナ』!
『空条徐倫』!
……『ジョジョ』が、そこにいた。
ジョセフ「このJOJOの娘なら、ムツカシーッこと考えんじゃあねーッ!悪ィーヤツはブン殴ってからでいいのよブン殴ってからで!ウシシ!」
静「え?おじい……え?え??」
承太郎「……やれやれだぜ。夢の中とはいえ……若いじじいを見ることになるとはな……うっとーしいのは苦手だぜ」
仗助「……あれじじいかよ……グレートっスねぇ〜〜」
静「じょ、承太郎さん……兄さん……!」
承太郎「……静。……泣き虫で、守ってやる立場だと思っていたが……成長したな」
静「!……」
承太郎「お前がジョースター家で、本当に良かった……」
静「……あ、ありがとう。……あ、ございます」
仗助「やかましい妹がいきなり出来た時は『正気か!?承太郎さんはよ〜〜ッ!?』って思ったが……今じゃあ静。お前のいねぇー生活は、考えらんねえから……よ」
静「……」
仗助「戦って!勝って!あの生活をよ……取り戻してくれ。な?静」
静「……うん。任せて」
ジョルノ「……なんだがぼくらは部外者みたいで、居心地が悪いですが……」
徐倫「ぼく『ら』って何だ、『ら』って。バリバリ身内だ、あたしは」
静「……あなた達は……幼い時、いや、さっき……あれ?いつだっけ?出会ったような……」
ジョルノ「すみません。静・ジョースター。ぼくらはこの、ちっぽけな世界を守ろうとして……敗れてしまいました」
静「……」
ジョルノ「全盛期の姿をした魂の欠片は喋れても、本当の魂は未だ、敵スタンドの支配下にあります」
静「?……??」
ジョルノ「託します。貴女に、全てを。……だからといってヘンに肩に力入れたりしないで下さいね?ただ、いつも通り……」
静「……」
ジョルノ「……貴女は貴女の『世界』を愛して下さい。……いいですね?」
静「……うん。よく、わからないけど……」
徐倫「あー……さっきはバリバリ身内って言ったけどさ、よく考えたらキチーンと顔合わせたことは無かったか〜〜ッ……」
静「……ええと……?」
徐倫「ま!深く気にしないで。アンタはアンタの思う通りにすりゃあいいのよ。女は強く……ね!」
静「……」
徐倫「女『だって』メソメソ泣いていいし、女『らしく』敵をブン殴りゃあいいのよ。結局はモノサシなんて自分で決めな」
静「……」
徐倫「『自分らしく』前に進むのよ。一番大事なんだから。それがさァー」
静「……『自分らしく』……」
静「……ありがとう」
もう、頭にかかっていた『モヤ』は無い。
静は理解していた。
ジョースターの血統を……『ジョジョ』の名を。
心で……『魂』で理解していた。
静「皆……みんな……ありがとう。あたし……」
静「行ってきます」ニコッ
笑って、静は駆け出した。
もう、振り返らないと決めた。
ちょっと前まで、自分が欲しくて欲しくてたまらなかった、『ジョースターの血統』……。
なんで、あんなに欲しかったんだろう。
血液や、肌の色や、身長や、顔の形や……。
なんで、あんなにもまぶしかったんだろう。
自分の全てが、おじいちゃんと違うかった。
自分の全てが、承太郎さんと違うかった。
自分の全てが、兄さんと違うかった。
とてもうらやましかった。
だけど……。
今はただ……そんなことより。
『有栖川メイ』と、話したいな。
静・ジョースターは、そう考えて、笑った。
静「……そっか。あたしって……『静・ジョースター』なんだ……」
ザッ
「うぇ……うええええええん……ええん……うわああああああん……ああん……!」
静「!!……」
赤ん坊がダダをこねるような泣き声だった。
いつの間にか、静の目の前に、有栖川メイが立っている……。
静「…………」
メイ「うええん…………ひっく、ひっく……!」
静「……『メイ』……」
メイ「……やめてよ、静……!」
静「……」
メイ「『友達』でいいじゃあないの。あなたも……私もッ!『友達』なんて、いなかったんだから……!!」
静「……」
メイ「こうして、私とあなたは子供の頃、『友達』だったッ!一緒に遊んで、かくれんぼや鬼ごっこをしてッ!」
静「……」
メイ「一緒に笑って、泣いて、怒って、暮らしてッ!!」
静「……」
メイ「ふたりとも、『友達』だったッ!!それで……それでいいじゃあないの……」
静「……」
メイ「うう……お願い、静……!」
静「……」
メイ「私を一人ぼっちにしないで……あああ……うう……」
ヒック……ヒック……
静「……メイ、あたし……」
静「知れて良かった、って思うの」
メイ「……」
ヒック……ヒック
静「寂しかったのよね。アンタは……あたしと同じよ」
メイ「……」
静「だから、『友達』になろうとした。みんなと……みんなと『幸せ』になりたかったのよね」
メイ「……」
静「あたしが透明になって見えなくなって、世界中の誰もがあたしを見失っても……」
メイ「……」
静「アンタはあたしを見つけてくれる。……そのくらい、アンタは『優しい』人」
メイ「……ええ。ええッ!そうよ!私は――……!!」
静「だけどね、メイ」
メイ「!!……」
静「自分の『幸せ』をつかむために……他人を踏みにじっちゃあいけないのよ」
メイ「!――……」
チラリ
二人は、一面のクローバー畑にいた。
静は地面の上に立ち、
メイは……三つ葉のクローバーを踏んでいた。
メイ「……静……」
静「……」
メイ「……静……静ッ!わたしは、わたしは――……!!」
静「日常を守るの」
メイ「ッ!……」
静「……アンタが作ろうとした眩しい世界と比べたら、ちっぽけで、きたなくて、こわくて、危ない……そんな、世界なんだけど」
メイ「……」
静「それが、あたしにとっての『日常』なの。とってもひどい世界だけど……」
静「四つ葉のクローバーが、綺麗だからさ」
メイ「……」
静「だから……あたし、行かなきゃ」
メイ「……うう……ああ……やめて……やめてよ、静……!!」
静「……会いに行くわ。あなたに」
メイ「……」
グス……ヒック……
静「……」クルリ
泣きじゃくるメイに背をむける。
静は、自分の手のひらを見つめた。
静「……『アクトン・――』……」
静「……」
自分のスタンド、『アクトン・ベイビー』の名を呼ぼうとして……。
首を振る。
『違う』
『そうじゃあない』
『あたしは――』
『今のあたしの力は――……』
静「……『ワイルド・ハニー』」
カ ッ
…………
…………
『あたま』
『つかえ』
使おうとして、考えた。
結果、何も出なかった。
最後の1ピースが足りなかったのだ。
『に』
……脳の中で、パズルがピタリとはまる。
『あたま』
『つかえ』
『に』……
『あたま』
『に』
『つかえ』……!!!
ゴウッ
世界が、溶けていく。
全てが白い光となり、静・ジョースターは落ちていった。
消えていく。
消えていく。
世界が、どんどん、消えていく……。
静「……さようなら、おじいちゃん……さようなら、メイ……さようなら……みんな」
ゴ オ オ
オ オ オ
オ オ オ
静(消えていく……あたしの世界が、消えていく……)
『……静……おい、静……!』
静「……!!」
『……っ、たく……起きるのが遅いんだよ、お前は、さ……』
静「……あ、ああ……!!」
『……お前が決めたんなら……それで良い。……曲げるなよ。僕は……僕は、さ。……満足、してるんだ』
ゴ オ
オ オ
オ オ
『静。僕は……お前に会えて、良かった。本当に……本当に!そう思ってる。心からそう思ってるんだ』
静「ま――待って!!」
『……』
静「……あ……」
静「……――……」
ゴ オ
オ オ
オ
『……同じことを、言おうと思っていた。……』
『君の未来に、幸せがあらんことを。願っている。静。……心から、本当に!……願っているよ』
静「……」
『……さよならだ。……『親友』』
ゴ
オ オ オ
オ オ オ オ
静は……『双葉双馬』が、
よく似た背格好の男と一緒に……
……草原にいる二頭の馬の所へ。
向かっている光景を見た。
『……ありがとう』
静「……さようなら。双馬。……あたしの大切な……『親友』」
ゴ
オ
オ
オ
オ
オ……
……「……『ありがとう』」
バァアアァァア――……
…
……
…………
…………
「……やはり……ふたりでひとり、だったのかも……しれないな」
「――……幸……わせ、に…………」
…………
…………
杜王町の空に、光が差す。
七回目の、朝日だ。
有栖川メイは……黒いドーム越しに、その光を見た。
メイ「……変わるわ。世界が」
・ ・ ・
メイ「静、それに……世界中の人間が」
・ ・ ・
メイ「……『友達』になるの。唯一無二の」
・ ・ ・
メイ「あは、あはははははははははは」
・ ・ ・
メイ「あは、あは、あは……」
メイ「……なんでかしらね、静」
・ ・ ・
メイ「どうしてこんなにも……むなしいのかしら」
・ ・ ・
メイ「ここが……私の『天国』なのに」
ズリッ
ズリッ
「……長い……長い道のりだったわ」
メイ「……」
ズリッ
「皆に支えてもらわなければ……」
ズリッ
「あたしは……ここに立つことは出来なかった……」
メイ「……」
ズリッ
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
「あたしは……ここで、アンタと向かい合う事が出来なかった」
メイ「…………」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
メイ「……」クルリ
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
静「…………」ズリッ!!
メイ「なッ!!」
静「『ワイルド・ハニー』……自分の『記憶』を『透明』に……『クリア』にしたッ!!!」
ド ン
メイ「なッ……な、な……!!」タラリ
静「アンタに書き加えられた『記憶』は……『もう無い』ッ!!!」
バ ン
メイ「な――な――……!!」
メイ「なんですってええええええええええええエエエエエッッ!!?」
ド ラ
ド ラ
ド ラ ド ラ
ド ラ ド ラ ド ラ
静「ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ!!!」
ワイルド・ハニー『ドラドラドラドラドラドラドドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ!!!』
静「ドォぉぉおおおおオオラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラァァァアアアあああッ!!!!」
メイ「イイイイイイイイイイイイあああああああああああああああ!!!!!!!」
ドォ――z__ン!!!
バ キ ィ ン
……『ワンダフル・ワールド』が……
杜王町を覆う『ドーム』が――……
――破壊されたッ!!!
カ ッ
メイ「!!!――……」
ジュッ
……朝の日差しが、杜王町を照らす。
有栖川メイは、光に抱かれた。
メイ(……ああ、なぁんて……)
メイ(…………温かい光……)
メイ(……私が、最後に……)
メイ(……見る光……)
サァァアア――ッ……
…………
…………
バァァ――ッ……
静「――ハア!……ハァ、ハア!……」
「……」
……アア……
静「……ハァ、はぁ……ハァ~~ッ……まだ、頭がガンガンする……」
「……」
静「一生分殴った気分よ。ああ……しんどォ……」
「……」
静「…………」
「……」
静「……けど!杜王町に光が戻って良かったわ。ホント。にしても……光の中では生きられないってェーのに、これからどうするつもりだったの?」
「……」
静「ず~~ッと暗い世界にするつもりだったのかよ?ねえ?……」
静「……『メイ』」
「…………」
ム ク ッ ・ ・ ・
メイ「…………どうして……わ、私は……太陽に……?……??」
バン
静「『ワイルド・ハニー』……気付いてないの?アンタの身体、『透明』にさせてもらったわよ」
ド ン
メイ「!!」
静「『透明』ってのは光が当たらないってことだからさ~~ッ。けどあれ、全身透明にしても目はキチーンと見えてんの、どういうことなのかしらね?アイツも言ってたけど、目ってのは光が当たって……あんま深く考えるとアタマいたくなんのよね。この能力」
メイ「……何を……してるのよ……」
静「ン?」
メイ「私は……人を何人も殺したッ!世界をムチャクチャにして……世界を、自分のものにしようとしたのよッ!?」
静「……」
メイ「それなのに、貴女は何故……!?こ……殺しなさいよ……能力を破られ、全てを失った私に……もう……」
静「……」
メイ「……生きる価値も、生きる目的もないわ……!!」
静「……ハァ~~ッ……」コキコキ
静「人を何人も殺して、世界をムチャクチャにして……あたしの親友も殺しといて、さ」
メイ「……」
静「……『ごめんなさい』の一言もなく、自分は勝手に消える気?」
メイ「……」
静「バカバカバカ、よ。ほんとバカ。許せる訳、ないじゃあないの」
メイ「…………」
静「……だけど、貴女は本当に……『幸せ』になりたくて、そして……」
メイ「……」
静「『幸せ』に『したかった』んだって……アンタの世界にいて、知ったわ」
メイ「……」
メイ「……けど、許されないわよね。……私は」
静「ええ。……世界はたぶんムチャクチャだし、アタマを下げりゃあいい訳ではない、わよね」
メイ「……」
静「だけど、それをあたし個人が、始末つけていいモンじゃあ、ないわ」
メイ「……」
静「生きて償いなよ。あたしは、アンタを殺せない。……甘チャンだからさ。あたしは」
メイ「……」
静「生きるのが辛くとも、死にたくなっても、アンタは、生き続けるべきよ。そして……アンタは、優しいから」
メイ「……」
静「別の方法で、みんなを幸せにしてあげなよ。……みんなを不幸にさせた、分ね」
メイ「……」
メイ「……また、間違うかもしれないわ」
静「かもね~~ッ」
メイ「また……別の道へ進むかもしれないわ」
静「ええ、そうね。アンタけっこー思い込むと、こう!な所、あるっぽいし」
メイ「……」
静「だけどさ、それでもアンタが、進もうとするのなら……」
メイ「……」
静「…………」
ス ッ
静「……今日から始まる新しい世界で……最初の『親友』になってあげてもいいわよ」
メイ「…………は?」
静「『は?』じゃあねーわよ。……言っとくけど、こっちはかなりマジなんだから……さ」
メイ「…………」
メイ「…………バカ」
静「……」
メイ「……バカ、バカ、バカよ。貴女……本当、バカだわ」
静「……」
メイ「……人殺しの吸血鬼を!世界を支配しようとした吸血鬼をッ!!」
静「……」
メイ「『友達』ではなく、『親友』?アハハ……バ~~カ……」
静「……」
メイ「……」
静「……」
メイ「……バカ……」
ポロポロ……ポロ……
静「…………」
バ ァ ァ ア ア ア ァ ァ ア ・ ・ ・
…………
……
…
今回はここまでです
次回、最終回です
…
……
…………
季節は春、新生活シーズン真っ盛り。
桜の木が立ち並ぶ川岸を、物凄い速度で走る車があった。
運転席に座るのは、凄まじく見事なリーゼントをした30代の男、『東方仗助』
助手席に座るのは、学校の制服を身にまとい、何故か奇妙にも似合うサングラスを額の上に掛けた、16歳の少女……
『静・ジョースター』
車内――
静「……あのさ、前にも同じことあったよね?丁度一年前だったかな……同じこと言いたくないなあ」
仗助「なんだよ静、カワイクねーぞその顔……まだ十分間に合うぜ。最近のスマホのナビ便利だよな~~。車にナビついてなくても良いルート教えてくれる」
ブゥゥゥゥーン!!!
静「なんで寝坊してんのよ、またッ!今日から『二年生』よ、あたしッ!クラス替え早く見てェ――のにさあー!!」
仗助「静……おれも寝坊したくてしてるワケじゃあねえんだぜ?しかし那由他ちゃんが小学校に入学となるとよォ、おれもなんか買ってやってお祝いしてえし。その『ついで』で億泰と酒飲むのは普通だよな……あ、ここまっすぐのが近いのか」
ブゥゥウーン……
静「あたしにはなーんも買ってくれないくせに!靴欲しいって言ったじゃん!見てよこれェー超カワイイの!スニーカーとサンダルのいいとこ取りでさ……お気に入りリストに入れてず~~っと見てんのよ?あたしッ!」
仗助「オメーは別に入学でもなんでもねえ進級じゃあねーか。それに昨日肉食ったろ、牛肉。高かったんだぜ?あれ」
静「兄さんが億泰んとこ行くから『二人』でサビシクねッ!ガッチガチにコゲた上に中がナマだったわ!せめて焼いてから行け、焼いてからッ!」
仗助「少しは料理の腕磨きやがれ!なーんにでもオニーサマに頼んじゃあねーッ!!」
ギャーギャー!
「……ねえ……」
メイ「ケンカはやめましょう?静……仗助。仲良くしないとわたし、つらいわ……」
……後部座席にいた『有栖川メイ』が、口を開いた。
静「別にケンカしてるワケじゃあないわよ、メイ。こんなんいつものことよ……アンタってホント、心配性よねえ」
メイ「あら、ごめんなさい。そうだったのね……わたしったら、てっきり」
仗助「……ケッ!おい、静……オメーよお~~」ヒソヒソ
静「何?」
仗助「ホントぉ~~にコイツ、学校連れてく気かよ?正気か?オメーッ」ヒソヒソ
静「?……ガクセーはガッコー行くもんでしょ。クラス替えあるから不登校が急に学校来ても目立ちにくいし、良いタイミングだと思うけど?」
仗助「そういう事じゃあねえよ。それに……太陽どうする気だ?当たったらヤベーんじゃあねえのかよ?」
静「全部避けるってさ。ね?メイ」
メイ「ええ。影から影へ移動すればなんとかなるわ。練習したもの……ふふ」
静「それに、いざってなったらあたしが透明にするから。まあ問題ないんじゃあないの?」
仗助「……そう言うんなら、いいけどよォ~~」
仗助(って、おれはなんで吸血鬼の心配なんかしてんだ?調子狂うぜ……ケエ~~ッ!)
静「……あ、兄さんそこの桜の木の影でいいわ。止めて止めて」
仗助「ん……いいのか?まだちょっと距離あるぜ?」
静「影じゃあないとメイが車から降りられないし……ちょっと歩きたい気分だし」
メイ「仗助が送ってくれたから、時間は少し余裕あるわね……ありがとう。仗助」
仗助「仗助『さん』だ、『さん』」
キキッ
バタン
静「ん~~~~ッ!いい天気ねえ……気持ちがいいわ」ノビ~ッ
メイ「ええ、本当に……」
仗助「……おい、メイ」
メイ「?」
仗助「……いいか……」ヒソッ
仗助「おれはテメェを信用してねえからよ~~……おれの監視の目から外れるからって、好き勝手やんじゃあねえぞ、コラ。もし静を危険な目にあわせるような事があったら、絶対許さねえからな。この仗助くんは~~……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
メイ「…………」
仗助「それと……ホイ」
グイッ
メイ「?……何?これは」
仗助「弁当だよ、ベントーッ。静の血を少し飲んでるだけじゃあ足りねえだろ?普段は遠慮してんのかそこまで食わねえみてーだが、これからは作ってやっから」
メイ「…………」
仗助「いらねえのか?……っていうか吸血鬼ってメシ食えんのか?昨日も肉食ってなかったみてーだが、ガリガリがさらにガリガリになってぶっ倒れんぞ、オメー」
メイ「食べる……食べるわ。……あ、ありがとう」
仗助「……フン!……車とか気ィつけろよ、静。メイ」
静「はーい」
メイ「……」
ブゥゥーン……
静「んじゃ、行こっか?メイ」
メイ「……」
静「……メイ?」
メイ「いえ、大丈夫……けど、少し……」
ガクガク
メイ「足……震えちゃって」
静「…………」
メイ「……あなたのお兄さんは良い人ね。わたしを許さないっていう敵意も感じるけれど……同じくらい、優しさも感じる」
静「……」
メイ「だけど、ちょっとの敵意で、わたし、怖がって……ダメね。本当」
メイ「これから、どれだけの敵意がわたしを襲ってくるのか……考えると、怖いわ」
静「……メイ」
メイ「……」
静「一歩、進みなさい」
メイ「…………」
静「アンタが一歩、進むなら……あたしは、二歩目から、歩いてやるわよ」
メイ「……」
静「アンタが決めるのよ。これまで無茶苦茶やった分を、前に進んで、帳消しにするため生きるのか。……ここでクルッと後ろ向いて、全てから逃げ出すのか」
メイ「…………」
ザ ッ
メイ「……逃げないわ」
静「……」
メイ「決めたもの。どれだけ泥にまみれても……わたしは、進む」
静「……そう」
メイ「……けど、まだ……震えてるから……」
静「……」
メイ「手……握ってくれる?」
静「……しょうがないなあ、もう」
ギュッ
サ ァ ァ ア ア ア ァ ァ ア ・ ・ ・
静「……風が気持ちいいわね、メイ」
メイ「ええ。……静」
静「んー?」
メイ「わたし……あなたに会えて、良かったわ」
静「……そうね。……なんか、あたし達……」
メイ「?……」
静「……こうして出会うために、産まれてきたのかもね」
メイ「……ふふっ!それは……素敵ね。とっても……とっても、素敵」
静「……なんからしくねー事、言っちゃったわね……あはは」
サ ァ ァ ア ア ァ ァ ・ ・ ・
風が、二人の髪を、なびかせる。
彼女たちの、左の首の付け根には――……
『星』の形に見えなくもない、奇妙な『アザ』が、光っていた。
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨……
…………
…………
静・ジョースターの奇妙な日常――『ワイルド・ハニーは砕かない』
――『完』
…………
スタンド名―ワイルド・ハニー
本体―静・ジョースター
破壊力― A スピード―A 射程距離―C
持続力―C 精密動作性―C 成長性―完成
『ワンダフル・ワールド』が人々の魂に記憶を書き込む『鉛筆』のようなものだとしたら、
『ワイルド・ハニー』はそれを消す『消しゴム』のようなものである。
物質を透明にする能力は、有栖川メイの矢の力に呼応し、魂に作用するようになった。
しかし、彼女はそちらの能力は、もう二度と使う事はないだろう……。
……………………
……………………
……………………
…………
……
…
「……らーら、らー……らららら、らら……」
「ちょっと、変な歌うたわないでくれません?……ネムくなってくるんですよ、それ聞くと」
「そうかしら?素晴らしい歌だと思わない?」
「歌の良し悪しじゃあないですから。ハア……なんであたしがあなたなんかと……」
「不平不満を言ったって何もかわらないと思うわよ?それより、頑張ってお仕事しないと」
「うるさいですね。今、財団からの任務を確認してるんですから。黙ってください」
「……らーら、らー……」
「うたわないでッ!」
「あら、この歌には意味があるのよ?今回のお仕事内容……読んでみなさいな」
「ええと……『アメリカ、N州の○○○町にある教会で、神父に懺悔した者が』……『その日から眠れなくなった』?」
「だから、よ~~く眠れるように、わたしは歌をうたうの。らららー」
「……神父がスタンド使いなのか、それともスタンド使いに作られた物が、悪さをしているのか……何にせよとりあえず、神父に聞いてみることにしましょう」
「また能力使うの?ヒドい人ね、あなたって。神父様になんの罪もなかったらどうするの?ねえ……」
メイ「『虹村那由他』?」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
那由他(16歳)「その時は謝ります。もしもあたしに何かあったら、全力であたしを守りなさい。吸血鬼」
メイ「はいはい……ふふっ!」
メイ「退屈しないわね。……この『奇妙な日常』は」
⇐To be continued=・・・?
8年近くもの間、応援と閲覧、ありがとうございました。
長年積もった言いたいことが山というほどありますが、
長くなるとイタいのでこのへんで。
これにて『静』の物語は終わりですが、双馬の話や10年後の話など、もう少し書いていくつもりです。
(10年後の話は本当に書くかはわかりませんが)
しかし、そこまで行くとジョジョの二次創作ではなく完全なオリジナルとなるので、掲示板では書かず、Twitterやpixivでやっていこうと思いますので。
興味のある方は是非に。
それでは。
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