静「ぼくは未来人」 (364)
※初めに
・このSSは「静・ジョースターの奇妙な日常」の続き・第十五話です。
ジョジョの奇妙な冒険のオリジナルSSです。
・オリジナルキャラやオリジナルスタンド等が登場します。ご了承下さい。
・投下速度は遅いです。ご勘弁をば。
・長くなりましたが、書かせていただいます。
一話
静・ジョースターの奇妙な日常
静・ジョースターの奇妙な日常 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363790589/)
二話
仗助「静のやばい物を拾ったっス」
仗助「静のやばい物を拾ったっス」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1365094145/)
三話
静「ジャンケン教師がやって来た」
静「ジャンケン教師がやって来た」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1367669400/)
四話
静「引きこもりのうちへ遊びに行こう」
静「引きこもりのうちへ遊びに行こう」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1368951927/)
五話
静「泥棒をしよう」
静「泥棒をしよう」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1370177583/)
六話
静「ペーパー・バック・ライターは父親に憧れる」
静「ペーパー・バック・ライターは父親に憧れる」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373404472/)
七話
静「お見舞いへ行こう」
静「お見舞いへ行こう」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1379932767/)
八話
静「日本料理を食べに行こう」
静「日本料理を食べに行こう」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1383137249/)
九話
静「幽霊屋敷に住もう」
静「幽霊屋敷に住もう」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1386418852/)
十話
静「双葉双馬は静かに暮らしたい」
静「双葉双馬は静かに暮らしたい」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1391689545/)
十一話
静「吉岡純はお金が好き」
静「吉岡純はお金が好き」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1398837668/)
十二話
静「杜王町の人々」
静「杜王町の人々」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1404738764/)
十三話
静「静・ジョースターはキャンプをする」
静「静・ジョースターはキャンプをする」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408711275/)
十四話
静「町の背後霊」
静「町の背後霊」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1432295512/)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1445436858
ピピーッ!ピピーッ!
ガガァン……ガァン……
静「……あれ、ここ空き地じゃあなかったっけ?何建てようとしてんの?」テクテク
双馬「……」テクテク
ピピピピーッ!
オッサン「ハイ、ご迷惑おかけしておりますゥ~ッ。ビルの建設工事中でして……鉄骨が危ないので近寄らないで下さいネェーッ」グルグル
静「ビルねえ……こんな所にビルなんか建ててどーするんだっての?新しい観光名所にでもすんのかよ。フルーツパーラーとか?」テクテク
双馬「……」テクテク
静「……」チラッ
双馬「……」テクテク
静「……双馬ァ~?聞いてる?」グイッ
双馬「聞いてない」
静「……」
双馬「……」
テクテク……
静「……何スネてんのよ。やれやれね」ハァー
双馬「『スネる』?『スネる』と言ったか?お前?」ギロ
静「何よ。事実じゃあないの」
双馬「……はぁ~~~~っ……いいか?」ズイッ
双馬「僕は『スネる』という言葉が嫌いだ。悪いのは機嫌を悪くさせた方だというのに、怒ってる方を『ガキが癇癪起こした』みたいに言う所が大ッ嫌いなんだ。お前が僕を怒らせたんだろう?何でこの僕がヒネくれてウジウジしているみたいな言い方をしたんだ?悪いのはこの僕だって言いたいのか?あのな……」
静「あーもうわかったわよッ!あたしが悪かったって言ってんでしょーッ?この前待ち合わせスッポかした事はさー!」
双馬「何だその言い方は。心がこもってないんだよ心がーッ」
静「本当に悪かったって思ってます!ゴメンナサイ!ほら、これでいいでしょ?仲良くしましょうよ仲良くさァ~~」
双馬「誰がお前なんかと……フン!」ツーン
ピピピーッ!
オッサン「近寄らないで下さいねェェ~~ッ。危ないですよ本当。鉄骨が落ちてきてグチャ!ってなったら困るでしょ?まあ~~そんな事はありませんが……あ、ちょっとキミ、近づかないでってばーッ」
少年「ううううあああ……次は、どこ……どこ……」ヨロヨロ……
オッサン「危ねェーからどっかいけって!このガキーッ!ほらシッシ!」ブンブン
静「?……何あの子。フラフラしてて危ないわね。どっか病気してんじゃあないの?」
双馬「おい静、工事現場なんてどうでもいいだろ。そんなにここにおっ立つビルが珍しいのかい?お前二階建てより大きい建物見たことないのか」
静「バカにすんなっての。あたしのおじいちゃん不動産王よ?こんなビルむしろ小っさいくらいよ」
双馬「ああそうか。じゃあ~~不動産王の娘でお金持ちの静サマには、この前の『詫び』もかねてアレを奢ってもらおうか。あげたてで、穴があいてるやつだよ。砂糖がまぶしてある、例のやつ」
静「……ハァ~~ッ……」ガックリ
双馬「……何だ、その反応は」ジロリ
静「……聞いてくれる?」
双馬「面倒な話だったら聞かない」プイッ
静「あのさ、奢ってやりたいのはヤマヤマなのよ。えらくマジにあたしはこの前の事反省してる。アンタの機嫌が直るんならいくらでもドーナツ、箱でプレゼントしてやっていい。それこそ一日三食七日で一週間ドーナツだけで過ごせるくらいにね」
双馬「そりゃあ景気の良い話だな」
静「けどさあ~~~~例のカネ……純から貰っちゃった100万円さあ~~~~。あ、アンタに本買ってやったから99万だっけ?」
双馬「……」
静「兄さんに見つかって『口座』封鎖されちゃったのよ。……兄さんだって高校ン頃大金せしめてたくせにあたしにはヒドいのよ!グス。『学費に回せ』とか『テメェーは昨日俺のニク食ったから食費が足りない』とか『ナプキンバカバカ使った』とか細かくてさァ~~」
双馬「お前の兄貴は妹の生理用品把握してんのか」
静「いや、一緒にカメユー行く時カゴに入れるからさ……ヘンな意味は無いわよ!」
双馬「ああそう……ともかく静。つまりはこういう事か?今のお前は『一文無しのオケラちゃん』……」
静「そうなのよッ!『メイ』や『ウォーケン』の事解決してない時だし、あたしだって別に『豪遊』しようなんて思ってないわよ。貯金してたし」
静「でも、ふら~っと買い食いするお小遣いすらないのはキツいわよォ~~……シクシク。あたしのセーシュン終わったわ」
双馬「そいつはザマアミロだな……(でもだからといって僕にたかるなよ、こいつ)」
静「なんかこう、手っ取り早く儲かる方法ないかしら。ジャラジャラーって」
双馬「……透明になって盗めばいいだろうが」
静「怒るわよ」
双馬「お前が『手っ取り早く儲かる方法』を聞いたんだろうが」
静「そういうのじゃあなくってさァ~~、もっと合法的で安全でかつ大金ガッポガッポ手に入るようなのを聞いてるのよ。パチンコとか当たるのかな、アレ」
双馬「やめておけって。あーいうのはどうやっても胴元が儲かるようになってるんだよ」
静「やっぱ、こういうの詳しいのは純かな……今バイト中?電話してみよっか」チャッ
双馬「あの賭け中毒(ジャンキー)か。どうだろうな……未だに貧乏やってるんだろ?そういうのが詳しいならもっと潤ってそうなもんだが」
静「今はもう悪い事やめて、綺麗なカネで生活したいって言ってた気がする。儲かる方法知ってるけど、やってないだけかもしんないわ……必勝法とかあったらゴキゲン取って教えてもらおうっと。ムフフ♡」トゥルルルル
双馬「……そんなモンあるのかね……」
静「……~~んん?出ないわね……やっぱ忙しいのかな……」
トゥルルルル……
「おいそこのお前ッ!危ねーぞッ!」
静「…………へ?」
少年「危ないと言ってるだろうがァ――ッ!!」バッ!
ドンッ!
静「うわっ!?何?ちょっと――……」
双馬「静 ・ ・ ・ ?」
ブヂン!
ドグワァァアア――z__ン
静「!?」
双馬「なッ――!?」
突如!空から工事現場の『鉄骨』が何本も落下し!
つい先程まで静が立っていた場所に大きな山を作った!!!
キャアアア――ッ!!
「う……うわあああああ!」
「『ワイヤー』だッ!鉄骨を吊っていた『ワイヤー』が千切れたんだッ!!」
「事故だ事故ォ――ッ!!」
アアアアア……!!
『ちょっと、静!?何、今の音……大丈夫なの?ねえ!』
静「……ハァ!ハァ!ハァ……!」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
オッサン「き、キミタチ大丈夫かァ~~ッ!?危ない!危険だッ!はるかに危険ンーッ!!」ブーンブーン!
双馬「静!怪我は……!?」ダッ!
静「あ、あたしは大丈夫。だけど……その……!」ガクガク
静「あたしを、助けてくれた『男の子』が……あたしの代わりに、鉄骨の……!」ガクガク
双馬「!!……」
ツゥゥー……!
静「……『下敷き』に……!」
……鉄骨の山の下から、
真っ赤な『血』が流れ出て、アスファルトを紅く染めていた……。
双馬「なんだっていうんだ、クソ!……とにかく鉄骨をどけるぞ静。手遅れだとしても……やるしかない」
静「わ、わかったわ。けど鉄骨って何トンもあるでしょ?……『ワイルド・ハニー』でも動かせられるかどうか……!」
双馬「人の命がかかっているんだ。少しずつズラすように動かすぞ。力を合わせろ……!」
静「……ええ。いくわよ。『ワイルド――……」
「……う」
少年「うわあああああああああ!!」
ガバアッ!!
静「……」
双馬「……」
少年「……ハア、ハア、ハア……」
……シ――ン……
鉄骨の山のすぐ近くに、その『少年』はいた。
まるで何もない空間から現れたように……。
ピンク色の髪をした少年は、荒い息をしながら、周囲をキョロキョロと見渡していた。
静「……え?嘘……無事?」
双馬「……の、ようだな……」
静「……ぼへェ~~ッ……何よ、驚かさないでよ!あたしてっきり『プチッ!』ってなったモンだと……はぁぁああ~~ッ!良かったァ~~ッ……」ヘナヘナ
少年「……ここは……」キョロキョロ
少年「ここは、どこですか?」
双馬「何処って……杜王町だが」
静「っていうかそれどころじゃあないでしょッ!今あたしの命助けてくれたのよね、アンタ。だ……大丈夫なのマジで。だって血が……あれ?」
キョロキョロ
静「……あれ?さっきまで真っ赤になってたのに…………あれ??」
双馬「?……(どういう事だ?)」
少年「あの……?」
静「え?ああ、ゴメンゴメン……っていうかさっきは本当ありがとうね。アンタがいないとあたしどうなってた事か!……怪我は無い?痛い所とかは?」
少年「……ここは」
静「?」
少年「ここは『西暦2015年』……ですか?」
静「…………」
双馬「…………」
少年「歩いている時に、『未来の貴女』が大変な目にあう事がわかったので思わず飛び出したんですけど……ぼく、どうやらそのまま気を失ったようで。どこかに時計無いですか?カレンダーは?日付、変わってない……ですよね?」キョロキョロ
静「……」
双馬「……」
シ――ン……
静「……双馬、どうしよう?」クルッ
双馬「僕に振るな、僕に。……僕だってサッパリなんだよ」
…………
…………
工事中のビルの上――
一人の長身の『男』が、静達を観察していた。
「外したか……悪運の強い奴だ。しかし、次は無い……標的(ターゲット)の運命は『事故死』だ」
――男の名は『イワン・オーリオ』!
スタンド名――『ルスト・イン・ピース』
「仕事はきちんとやらせてもらう。『静・ジョースター』……まずはお前から、俺の能力で殺してやろう……!」
…………
今回はここまでです。
説明不足でしたが、工事現場のオッサンは誘導灯を振り回しています
…………
数日前、
M県内にあるS空港にて――……
国際線を有するこの空港は、一日の利用者数が8000人を超える。
休みなく鋼鉄で出来た塊が地上を離れ、また新たな塊が着陸する。
今まさに、国内都市部のN空港から来た大きな旅客機が、轟音をたてて大地へと降り立った所であった。
国内線という事で、客層は日本人が多い。
出張なのだろうか、くたびれたスーツを身にまとい、くたびれた顔つきで到着口を出る者が大半であった。
その中に、一際目立つ影が一つ……。
縮れた金色の髪を肩まで伸ばした、異国の男だ。
まだ秋口だというのに、男は到着口から出ると、さも寒そうに分厚い帽子をかぶり直した。
「グアムが良かったんだ。厚着する必要が無いからな。……せっかく寒くなってきたイタリアを出たというのに、日本で仕事じゃあ気温がほとんど変わらないじゃあないか。チイ……依頼料、少しフッかけてやるか」
そうぶつくさとつぶやく男に、近づく影があった。
同じく長身の、異国の男だ。黒いジャケットにズボンと一見目立たない服装をしているが、髪につけたハートの形をしたアクセサリが不気味に輝いている。
「イワン・オーリオだな」
事務的な口調で言う。
「そういうお前は、ええと……チェスタ・テスタロッサか?」
イワンはそんな口調を意に介さず、金色の縮れ毛を撫で付けた。
「依頼人(クライアント)がお出迎えとは、サービスがきいてるじゃあないか。ついでに、毛布の一枚でもよこしてくれたら良かったんだがな。バカに寒いぜ、ここ。……あ~~っと……?」
ちらりとチェスタの顔色を伺いつつ、言葉を続ける。
「……日本語で話した方が良かったか?おたく、英語通じる?」
「別に何語でも構わない。……それこそイタリア語でもな」
「『イタリア語』?」
「俺はお前と同じイタリア人だ」
その言葉を聞くと、イワンは短く口笛を鳴らした。
「成程、道理ではるばる日本から祖国イタリアまで依頼が来たって訳か。もっぱら仕事はイタリアマフィアの抗争なんかが多かったからな。……だが失礼。俺はロシア人だ。育ちはイタリアだがね……」
そこで言葉を切り、また顔色を伺う。
「……俺は依頼人(クライアント)と友好な関係を築きたいと考えているタチなんだが……おたくはそうじゃあないって訳か?テスタロッサさん?」
「……」
「俺は常々思うんだよ。仕事をやっていく上で一番くだらないのは『仲間割れ』だ。一番大事な所で裏切られるのがスッゲー腹立つしツマラネーッ。そんな理由で依頼人(クライアント)を殺すのは俺だって忍びないしな。……お互い良い人生を全うして『安らかなる眠り』につくためには、バカげた考えは捨てるべきだと思わないか?」
「……」
「そういう訳で、とりあえず温かい料理を出す店を紹介して欲しいものだ。勿論代金はそちら持ちで……頭金のようなモンだと思ってくれ。俺は日本の酒に興味があってね。日本人はウォッカみてェーにショウチュウというヤツをショッチュウ飲んでるって本当かい?」
外に停めてあるタクシーに向かって歩き出そうとするイワンに、チェスタは内ポケットから封筒を取り出し、それを押し付けた。
「……」
中を見てみると、写真が何枚か入っている。
一番上にあるものは女の子の顔写真だ。……頭の上にサングラスをかけている。
顔立ちはどこか幼くあどけないが、中々の美人だ。
「……これが標的(ターゲット)か?話はすでに聞いているが」
「ああ。滞り無く始末出来れば、約束の金を」
「ホオ~~。しかし、色々と仕事はこなしてきたが、組の女でも何でもない一般人のガキが標的(ターゲット)というのは初めてだな。……一体おたくとどういう関係で?」
興味深そうな目つきのイワンとは反対に、チェスタは長い溜息をついた。
「…………」
チェスタの世界において、この男はただの駒の一つに過ぎず、親しげに話すという行為に何の意味も無い。
彼にとって大切なものは、有栖川メイ……ただ一人だ。
つまり、その他の人やものというのは、どうだって良いのだ。彼にとって。
「何だ、とても人には言えない関係なのか?少しくらい教えてくれたって……」
「俺とこいつらとの関係を、洗いざらいブチまけるのも契約金のうちか?」
「……」
言葉に詰まる。
重い沈黙が二人の間に流れた。
「……殺し屋というやつは、依頼人(クライアント)についてとやかく言わないものだと思っていたが」
「……いや……済まない。ただの世間話だ」
自動扉が開き、この時期には珍しい冷たい風が室内へと吹き込む。
神経質に、イワンは帽子をかぶり直した。
「寒いな。……日本行き飛行機のフライトアテンダントの対応は、暖かかったんだが」
「車を回そう。依頼についての詳しい話は、そこで」
「必要無い。これだけあれば十分だ。……これ以上アンタの隣にいると凍傷になってしまうよ。……ところで、土産物屋は何処だ?」
ニヤリと笑う殺し屋に、チェスタは苦々しげな表情を見せる。
彼の持つトランクはどう見ても一泊二泊程度の荷物しか無く、『十分』のようには見えない。
「……そう心配そうな顔をするな。受けた依頼はキッチリとこなすさ、チェスタ・テスタロッサさん。決して標的(ターゲット)に『安らかなる眠り』なんて与えない。……安らかになんか眠らせてやらないさ」
「……本当に、大丈夫なのだろうな?しっかりと眠らせてやって欲しいものだが」
「ああ。荒々しく地獄に叩き込んでやるさ。それが俺の能力……『ルスト・イン・ピース』だ」
自動扉を通り抜ける彼の背中に、一瞬『スタンド』の像(ヴィジョン)が重なった。
チェスタが瞬きをする間に、彼の姿はその『スタンド』ごと、何処かへ消えていってしまった。
「……ううううぅぅ~~ッ……」
その頃、到着口から遅れて出てくる男がいた。
年の頃14、5歳といったくらいだろうか。そばかすだらけの顔を歪め、やつれた顔の上にさらに暗い影が乗っているものだから、歳よりも老けて見える。
おぼつかない足取りでゲートを通り、周囲をキョロキョロと見渡した。
「次はど……どこから……い……いつ『襲って』くるんだ?」
そう言い残し、少年はふらふらと自動扉を通りぬけ、冷たい風の吹く外の世界へ歩き出した。
…………
今回はここまでです。
…………
テクテク……
静「『アチェート』?」
アチェート「ハイ。それがぼくの名前です」
静「フーン……変な名前。何処の出身だっての?」
双馬「……」チラッ
ウーウーウーウー……
双馬「……」テクテク
静「……追ってきてないわよね?双馬?」
双馬「ああ、問題無い。……しかし静、良かったのか?コイツを連れて逃げて……」
アチェート「ぼ、ぼく?」
静「しょうがないでしょ。あのまんまだとこの子、警察やら救急車やらに囲まれて大変な事になってたわよ。ただでさえジョーチョフアンテーな感じなのにさァ~~、エラソーな奴らに質問攻めにあったら発狂するわよ」ポンッポンッ
アチェート「あ、あはははは……」
双馬「……」
静「それで、えーっと……」チラッ
アチェート「……な、なんでしょう?」
静「えー……あー……アンタ、その、見かけない顔だけど、観光者?珍しいわよね、こんな町に来るなんて。国際線の飛行機出てないから国内線か新幹線乗らないといけないのに」
双馬「別に珍しくもないだろ……お前だって外国人だ」
静「うっせェーわねーッ。あたしにツッコミ入れるんじゃあなくって、アンタも話題振りなさいよ。すぐだんまりキメやがってさーッ」
アチェート「あ、いやそんな……気を使わなくっても……」オドオド
アチェート「ぼくは……ついこの前までイタリアにいたんですけど」
静「『イタリア』?アンタ、イタリア人?へー、それにしては日本語上手ねーッ」
アチェート「けどその、代わり映えしない毎日というか……毎日毎日本当に辛くって、それから逃げ出したくって……さまよっているうちに、気付いたら日本にいた、って感じです。ハイ……日本語は14年の間に覚えました」
双馬「……さまようだけで日本に来れるもんかね……」
アチェート「本当、飛行機が墜落しなくって良かったです」
静「そりゃあ、あんなモンなかなか墜落しないわよ。車に轢かれる確率の方が遥かに高いってのーッ」
アチェート「ええ……荷物が頭に落ちてきて一回死んだだけで済んで、良かった……」ボソッ
双馬「?(何言ってるんだ、コイツ……?)」
アチェート「……」キョロキョロキョロ
静「えっと、それでさぁ……ちょっとアンタ、大丈夫?」
アチェート「え、あ、ハイ。何でしょう?」
静「……すっげェーキョロキョロしてっけど、どうかした?……そんな珍しい風景じゃあないと思うけど」
アチェート「……つ、次は……どこから『襲って』くるのかと……警戒していまして……うっうっ」
静「襲っ……?」
双馬「物騒だな……なんだそれは。イタリアンマフィアに命でも狙われているのか?」
アチェート「……うっうっ……ううーッ……!!」ポロポロポロ
双馬「!?」ギョッ
静「ちょ、アチェート?何泣いてんの?オナカ痛いの?」
アチェート「クソッ!クソッ!なんなんだ、チクショお~~っ……!」ガクガク
アチェート「なんでボスは全部ぼくに押し付けたんだ~~ッ!おかげでぼくはこうして、毎日怯えて……ヒイイイ……もうイヤだあああ~~っ……!!」ボロボロボロ……
双馬「……」
静「……」
双馬(おい静……コイツ相当ヤバいぜ。赤ちゃん人間だ。情緒不安定ってレベルじゃあないぞ)
静(あわてるなっての、双馬……きっと色々な家庭の事情があったのよ。もっとオトナな対応でいきましょう……)
静「あー……えっと、そういえばアンタさっき……『未来の貴女』とか……言ってたわよね?」
アチェート「……」ピタリ
双馬「……」
静「あれって、どういう意味なのかなァ~~……って……アハハ……」
双馬(おい、静……よりによってそこを掘り下げるのか?もっと他にあっただろうがァ~~ッ……!)
静(う、うるせーわよッ!だから文句言うならアンタが会話しろってのーッ!)
アチェート「……未来の貴女は……『未来の貴女』です」
静「……」
双馬「……」
アチェート「ぼくの唯一の『とりえ』で……ぼくには、『予知』する力がある……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
アチェート「『未来の貴女』が大変な目に合う……10秒ほど時間を飛ばした未来を見ただけです。それで、思わず助けてしまった……ただ、それだけなんです」
双馬「……」
静「……へ、へえ~~……」ヒクヒク
双馬「静……用事思い出した」クルッ
静「待って双馬。二人っきりにしないで」ガシッ
双馬「だから静ァ~~ッ!お前何でもかんでも首ィ突っ込むからこんなイカレたのまで拾うんだッ!コイツただのおバカな赤ちゃん人間かと思ってたが、予想以上にヤバいぞ。人間じゃあないかもしれない。プラネタリウム人間かも……」ヒソヒソ
静「だとしても二人っきりにさせないでよ!あたしもその、興味本位で連れだしたのはちょォ~~っとヤバかったかなァ~~とか思っちゃったけど!それでもさあ……なんか放っとけないでしょ?」ヒソヒソ
双馬「メイやチェスタ、ウォーケンの事がある。面倒事をいちいち拾ってられないんだよ」ヒソヒソ
静「だからって捨てまくってどうすんのよ。杜王町はあたし達の町でしょーっ!?」ヒッソォォ!
アチェート「……あ!あの、その……」
静「何よ?今ちょっと作戦会議中なんだけど」ギロリ
アチェート「ふ、踏んじゃダメです、それ」
静「へ?」
バギッ!
静「ぐえっ!?」ガクンッ!
双馬「?」ピタッ
アチェート「あ、ああああ~~っ……ダメって言ったのに」
静「いや遅いわよ!今絶対言うの遅かった!ぐ、イテテテテテテ!あだだ、もーっ何これっ!?」グイグイ
双馬「静、お前何やってるんだ?アホか?」
静「違ェーっての!『ミゾ蓋』が古くなってたみたいで、踏み抜いちゃって……魚捕まえる罠みてーに『かえし』になっちゃって、抜けないのよ右足。……無理に引き抜くと血だらけよ。足首から先が無くなるかも」グイグイ
双馬「……古くなってるからって踏み抜くか?普通?……お前、ちょっと太ったんじゃあないのか……?」シラケーッ
静「む、ムネが大きくなったのよ!アンタ次そーいう事言ったらぶっ飛ばすわよッ!?」グイグイ
アチェート「……あ」ピタリ
静「へ?」ピタッ
アチェート「……あ、ああ……ああああああ……!!!」ガタガタ
双馬「……今度は何だ」ハァー
アチェート「『逃げて』!早く、足を引き抜いてっ!!」バッ!
双馬「……何?」
アチェート「『車』が……突っ込んでくるんです、ここに!早く逃げないとっ!!」
双馬「……『車』?って……」
キョロキョロ
双馬「……この道路には一台も走っていないが?」
静「っていうか、引き抜けないっての。もうちょい時間かかるわ。ヒト事だと思ってさ……これメチャ痛いんだからね?」
アチェート「そんな……ああ、あーあーああーっ!!もう時間が無いんだよォオオオ!」バタバタ!
双馬「……見せてみろ、静」スッ
アチェート「早く!急いでっ!もうあと5秒も……『無い』……!」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
静「……どう思う?双馬。……車なんて影も形も見えないけど……?」ヒソヒソ
双馬「……無視してやってもいいが、さっきの事もあるしな。……一応、ここは従ってやるか」ヒソヒソ
紙人間『ペラッ……』スッ
パラパラパラッ
双馬「『ペーパー・バック・ライター』……『ミゾ蓋』を紙にした。これなら痛くないだろ」
静「ほいっと。うわ、けどちょっぴり血出てるわね。あーこの靴下ミスター・ジュンコなのに、汚れちゃった。……安物だけど」
アチェート「うわあああああ!!!そんな事はいいからっ!こっちへ走れェ――ッ!!」グイッ!!
双馬「うおっ!?」
静「ちょっと、引っ張らないでよアチェート――……」
ドゴォォオオオオオ!!!
双馬「!!」
静「きゃっ……!?」
アチェート「……」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
……先程まで静達がいた場所の……
後ろにあった『家』をブチ抜いて!!
大型のトラックが突っ込んできた。
ギャギャギャギャギャギャギャ!!
静「なッ……え?え??」
双馬「……『ブレーキ』が……!!」
ブォォォオオオオオ!!
双馬「『壊れている』のかッ!!?」バッ!
ドゴォオオオン!!!
ギギギギギギギィ……!!
双馬「……」
静「……」
……シュウウウウウ……
……トラックは、付近の家を数軒なぎ倒して、横に傾きつつ、止まった。
コンクリートブロックに引っかかり浮いたタイヤは、まだグルグルと回転していた。
静「……ねえ双馬。あたし生きてる?」
双馬「……憎たらしい事にな」
……ウーウーウーウー……
双馬「……さっき近くで事故があったばかりだ。すぐに人は集まるだろう。……今日は平日だから家には誰も居ないようだし」
静「い、生きてるかな?トラックの運転手」ソォーッ……
双馬「放っておけ。メンテナンス怠るのが悪いんだよ。イネムリ運転の可能性だってあるしな」
静「……」
双馬「それより、今『問題』なのは……」クルッ
アチェート「……あ、あれ?」
バ ン
双馬「……」
静「……」
アチェート「い、『生きてる』……ぼく、死んでないぞっ!?やったー!!ばんざぁ――い!!ぼくはついに!『ついに』ッ!呪縛から解き放たれたんだァ――!!」ウオオオオ!
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
双馬「……あいつは、影も形も見えなかったトラックが、ここに突っ込んでくる事を『予知』した……!」
静「……」
双馬「……『普通』じゃあないぞ。ヤマカンとか、推理とかじゃあ断じて無い。ここにトラックが来る事を『知っていたんだ』……敵、じゃあ無いようだが……」
静「……も、もしかして……ゴクリ」
静「あいつ……『未来人』なんじゃあないの?」
双馬「……」
静「……」
シーン……
アチェート「……え?な、なんでしょう?」オドオド
双馬「……すまない静。もう一度言ってくれるか?」クルッ
静「……プラネタリウム人間よりかは現実的だと思うんだけど」ムスッ
今回はここまでです。
ss書いてみた^^♪ のび太の先生「 悪いことをするしずかちゃんにはお仕置きだ」
ss書いてみた^^♪ のび太の先生「 悪いことをするしずかちゃんにはお仕置きだ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1448255984/)
902 ◆eUwxvhsdPM saga sage 2015/12/04(金) 21:40:51.36 ID:ZiZrYml+0
兄「うんまあだいたいわかった。初心者が特に何も考えずスレ立てたという事だな」
妹「ところがどっこい>>1はどうやら一年ほどこの掲示板にいるらしいです」
兄「一年間何見てたのコイツ?ベジータの顔?」
妹「あのトップ画像結構種類少ないよねー」
兄「一年どころか一分もいた事無いだろ……一分他のスレ見たらだいたいわかるだろ……」
妹「けどほら、SS作者って自分の書くのに夢中で、他のスレ見ない人とか多くない?」
兄「そういう作者は書き方しっかりわかってんだよ」
バァァアアアァ……
静「確認するわよ……『アチェート』」
双馬「……」
アチェート「……」キョロキョロ、オドオド……
静「……もしもぉ~~し?聞いてんのかコラッ。ちょっとアチェート?」コツンッ
アチェート「あ、ぼくですか?」キョトン
双馬「お前以外に誰がいるんだよ……」
静「……よし」スゥーッ……
静「アチェート。アンタは……未来に何が起こるのか完璧に『知っている』……ここまではいい?合ってるわよね?」
アチェート「えーっと、まあ、そういう事になりますね」
双馬「……」
静「双馬、あからさまにゲンナリすんのやめて」
双馬「改めて言葉にすると頭が痛くなるんだよ」
静「頭痛薬でも飲んでて。……でさ、アチェート?アンタは、そのォ~~」チラッ
アチェート「は、はい。何でしょう?」
静「……未来の出来事を知ってるって事は……もしかしェ~~……『未来から来た』……とか?」
双馬「……」ゲンナリ
アチェート「……へ?」ポカン
静「……炭鉱かどっかに『デロリアン』でも隠してるの?この時代に来たのは生ゴミで燃料補給するため?あ、それともネコドラくん方式かな。あたしあれ好きなのよね。どこだかドアとか……」
双馬「静、少し黙ってろ」
静「何よ、アンタまで『2015年の現在になってもホバーボードの一つすら実用化に至ってない』とか言うつもり?言っとくけど、10月21日まであと一週間はあるんだからね。その頃にはナイキの靴が大流行してるわよ」
アチェート「えっと、アハハ……ぼ、ぼくのはそういうのじゃあなくって、ボスの……あ!」
双馬「?……『ボス』?」
アチェート「い、いえその!何でもないです!この能力はぼくのじゃあなくって借り物……とかでも無くて!」ブンブン!
双馬「??……よくわからんが」
静「え、能力なの?『予知する』のがアンタのスタンド能力?」
アチェート「え!?なんで貴女、スタンドを知って……いや!違います!全然ぼくは関係無いんです!こんな事、ボスに知られたら……」ゴニョゴニョ
静「フーン、スタンド能力か……だったら不思議でもないかもね」
アチェート「ち、違うんですってぇ……」
双馬「おい静、僕はまだ納得していないぞ」
静「え?」
双馬「『普通じゃあない』……それはよくわかる。だが、これが『能力』だとは信じられないな。未来なんて不確かなもの、スタンド能力で知る事が出来るのか?」
静「そーいう能力なんだったら納得でしょ。たとえ不確かだとしても、数十秒先くらいの未来ならある程度決まってるんじゃあないの?」
双馬「……スタンド能力は精神のパワーだ。こんな情緒不安定な少年が、そんな強大なパワーを持っているとでも?」
静「……」
双馬「そんな能力がもしあったとしたら……そいつは『帝王』になれるほどの能力だ。頂点に立てる、強大な能力なんだ。……偶然出会っただけの少年が、そんな能力の持ち主だなんて……僕にはにわかには信じがたい」
静「ハァ~~ッ、わかったわよ。アンタって本当疑り深いわよね。……じゃあさ、そんなに気になるなら……軽ーく『テスト』してみたらいいでしょ?」
双馬「……『テスト』?」
アチェート「え?……え?」
静「ふっふっふ……」ゴソゴソ
>>122
コピペミスです
双馬「そんな能力がもしあったとしたら……そいつは『帝王』になれるほどの能力だ。頂点に立てる、強大な能力なんだ。……偶然出会っただけの少年が、そんな能力の持ち主だなんて……僕にはにわかには信じがたい」
静「ハァ~~ッ、わかったわよ。アンタって本当疑り深いわよね。……じゃあさ、そんなに気になるなら……軽ーく『テスト』してみたらいいでしょ?」
双馬「……『テスト』?」
アチェート「え?……え?」
静「ふっふっふ……」ゴソゴソ
静「ジャン!」コロンッ!
双馬「……」
アチェート「……」
コロ……コロッ
双馬「……『サイコロ』、か?」
静「この前純があたしん家遊びに来た時、忘れていったのよ。サイコロ2つ。会ったら返そうと思って持ち歩いてたんだけど……丁度良いわ。アチェート」
アチェート「えっ……何でしょう?」
静「今からこのサイコロを振って……出る目を当てて欲しいの」
コロリ……
双馬「……」
静「未来がわかるのなら簡単でしょう?」
アチェート「そんな……ダメですよ。ぼくの能力はそういう下らない事に使うものじゃあ……」
静「何よ、自信無いって訳?」ジロッ
アチェート「自信が無い訳じゃあ……あ!けど、待ってください!…………ぼくが今さっき死ななかったのは、もしかしたらこの人達のおかげかも。……そうだとしたら、少しくらい付き合ってあげても……いいですよね?ボス?……ね?ね?」ゴニョゴニョ
双馬「お前……そうやって一人でしゃべるの、やめろ」
アチェート「……わかりました。少しだけ……付き合います」スッ
静「グッド。……まあハズしたからって何かある訳じゃあないけどね。で?サイコロの目は何が出る?ピタリ!と当ててみてよ」カラコロ
アチェート「……」
バサッ!
双馬「?(こいつ……『髪』が……?)」
アチェート「…………」
バサバサバサ……
アチェート「……『5』……」
ボソリ
双馬「……」
静「……『5』?それって、『2』と『3』が出るって事?合計が『5』になるって事でいいの?」カランッ
アチェート「いえ」
アチェート「……『5回連続で『6』と『6』の『ゾロ目』が』……『出ます』」
バ ン
双馬「!?」
静「!?……んなッ……!」タラリ
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
静「……お、オホホホホホ……アンタって見かけによらず中々のバクチ打ちなのね。……ええっと、自慢じゃあないけど……あたしそんな運は良くないわよ?」
アチェート「……」
静「純とボードゲームやった時も、1とかばっかり出てさァ~。結局純の圧勝だったしィ?『6』と『6』なんて……普通の『6』すらあんまし出した事無いわよ?」
アチェート「……」
静「……う」タラリ
静「……えっと、双馬?」
双馬「何だ」
静「どのくらいか、聞きたいんだけどなァ~~?……『6』と『6』の『ゾロ目』が『5回』……出る確率っていうのは?」
双馬「……普通の『6』が出る確率が『1/6』……それが2つで『1/36』……それが『5回』だから……『1/60466176』……かな」
静「……」
双馬「静……宝くじ買え。一等が当たる確率は1000万分の1だそうだ。6回当たるぞ」
静「……これでその出目ならそうするわよッ!」
バッ!!!
コロコロォ――z__ン
静「さあ……どうなのッ!?」バッ!
双馬「……」ジッ
アチェート「……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
コロッ……
『6』
『6』
バ ン
静「!!!バッ……!?」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
双馬「何……!」
静「馬鹿なッ!そんなはずがッ!?」
アチェート「今……『1回目』ですよね?でしたらまだそんな、驚く事じゃあないと、思いますけど……」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
アチェート「……ぼく、何か間違っています?」
ズン
静「……そんなはず、ある訳ねェ――でしょうがッコラァ――!!」バッ!
コロコロォ――ッ!!
コロッ……
『6』
『6』
ド ン
静「……」タラリ
双馬「?……おい、静」
静「ちょっと待って!まだ2回目よ……だったら!まだ『1296分の1』よ……まだ!まだよッ!」
カラコロォ――ッ……
『6』 『6』
バ ン
『6』 『6』
バ ン
『6』 『6』
バ バ ン
静「…………」ガクリ
アチェート「……」バサバサバサ……
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
双馬「……」スッ
カチャッ
双馬「……静」コロコロコロ……
静「……何?双馬……あたし今、こんな下らない事で一生分の運を使い果たして死ぬ所だから。喋りかけないでよ」
双馬「……このサイコロ、たしか……『吉岡純』のものなんだよな?」コロコロ
静「?……そうだけど?」
双馬「……フン、なるほど。……静、気付かなかったのか?」
静「??……な、なにが?」キョトン
双馬「このサイコロ、『6』の裏側の『1』の方が、ほんのちょっぴり『重く』なっている」
静「……――!!?」バッ!
双馬「『グラサイ』だよ。手の中で振って出すと絶対に『6』が出るようになっている。……あの女、普段からなんて物を持ち歩いているんだ」
ド ン !
静「お、お、お……OH MY GOOoooOD!!!純がボードゲームで圧勝してたのは、これにすり替えて振ってたからなのね――ッ!!?」ヒーン!
アチェート「えっと……どうですか?しっかり……当たったと思いますけど?」
静「こーんなモン、無効よムコーッ!絶対『6』しか出ないじゃんかさーッ!」
双馬「そうかな?逆に僕は信用したくなってきた。……ぱっと見ただけではわかりっこないぞ、このグラサイ。それをピタリと言い当てるとは……本当に未来が視えるの か も」
静「む、ムググギギギ……!」ギリギリ
アチェート「……あの、なんで彼女、悔しそうなんですか?ぼく、しっかり当てましたよね?」オドオド
双馬「気にするな。コイツ、人を馬鹿にするのは好きなくせに馬鹿にされるのが大ッ嫌いなんだよ……」
静「フン!いいわ、認めたげる!アンタはどーやら未来がわかる。かなりマジに……グレートな能力を持っているってね」
アチェート「ど、どうも……あ、いやその、これはぼくの能力じゃあなくってですね……」
静「そして!だとするならば!……そんなアンタを見込んで一つ『お願い』があるの」
アチェート「……え?」
双馬「……『お願い』?」
静「ちょぉ~~っとだけ、さっきみたいにピタリ!と当ててくれたらいいのよ。少しだけ未来を見てくれたらいい。そしたらみんなハッピーになれるのよ。……やってくれない?」ヒソヒソ
アチェート「え?……一体、何を……?」
静「ホラ!アンタもイタリアからはるばる来てさァ~~、おサイフがさびチィーんじゃあないのォ~~?ちょーっとだけあたしに協力してくれたらガッポガッポよ!ね、いい話だと思わない?」ヒソヒソ
双馬「静、お前……何を考えている?」
静「大丈夫よ、双馬。別に危ない橋わたる訳じゃあない。ただ、合法的に……この子に『お金が出てくる場所』を教えてもらうだけよ」
双馬「!!……まさか、お前……!!」
チ――ン!!
ジャラジャラジャラジャラ……
双馬「……」
アチェート「……」
『パチンコ&スロット じゃいろ ぶどうヶ丘店』
バ――ン
双馬「……なあ、おい……」
ガヤガヤガヤ……
ジャラジャラジャラ……
双馬「……静。……本当に入る気か?」
静「当然!つかむわよォ~~、一攫千金ッ!!」
ババン!
今回はここまでです。
途中ミスすみませんでした
ジャラジャラジャラァ――z__ッ……
双馬「静、僕は反対だ。日本の法律知ってるか?18歳未満は入店を禁止されているんだぜ」
静「河川敷に落ちてるさァ~~ッ……『イケナイ本』とか、見た事ない子供っているのかしらね?」
アチェート「……」
双馬「……」
ドギュンドギュン!チーン!
静「まあ近頃は携帯電話が普及しててさ、簡単に『そういうの』見る事出来るもんだから、本の売上なんかは落ちてるらしい。そういう意味……物理的に『無い』って意味では、『いない』かもしれないけど」
双馬「……」
静「つまりそれってェェー、『そういうの』が簡単に見れるようになったって事でしょう?本が落ちてなかったり携帯持ってなかったとしても、パソコンくらいなら家にあるんだからさァ。あ!こりゃあー日本エロ化計画ってヤツね」
双馬「……」
静「アンタも興味本位でさァ~~、『イケナイ画像』を検索しちゃった経験無い?そういう思春期の思い出。R-18の『YES/NO』に『YES!YES!YES!』って答えた経験無い?一度も?……アンタってマジにカタブツちゃん?」
双馬「……何が言いたい」
静「20歳未満の飲酒だとか喫煙だとか、エロ本のチラ見だとか、完璧に守ってる健全なヤツなんて『スカイフィッシュ』探すより難しいっての。兄さんだって高校生の頃とかパチンコやってたらしいしィ――」
双馬「それとこれとは話が別だ」
静「年齢でやっていい事と悪い事が決められるなんて不公平よ。あたし達は大人が考えてるよりもずーっと大人なんだっての。『赤ん坊(ベイビー)』を可愛いって言ったとしても、頭パープリンって言う資格なんて神様にだって無いわ!」
ザッ!
アチェート「あっ!ちょ、ちょっと待って!止まって!」
静「何よ、アチェート。アンタまで止めるって言うの?」ザッザッ
アチェート「そうじゃあなくってェ――」
ドンッ!
静「きゃっ!?」ヨロッ
???「…………」
アチェート「よ、よそ見して歩いていると、前から来る人にぶつかるって言いたくて……」
静「いっ、タタタタ……ちょっとアンタ!あたしにぶつかってんじゃあないわよッ!一体どこに目ェつけて――……」クルッ
承太郎「……静、か」
ドォォン
静「……て、じょ!じょじょじょ……承太郎さんッ!?」
承太郎「……」
ズォォオオ……
双馬「くっ……(『空条承太郎』!まさかこんな所で出来わすとはな……!)」タラリ
承太郎「悪かった、静。地図を見ていたもんでな。……15年前から町並みが大きく変わってしまっていけねーぜ」スマホスッスッ
静「どっどっどッ……、どこに目ェつけてんでしょうねェ~~ッ、『あたし』ッ!承太郎さんにぶつかっちゃうなんて、キャーッ♡プーよね!」
承太郎「……」
双馬(携帯に夢中でそんなに気づかないものなのか?)ジトッ
静「そ、それにしても承太郎さんが外出してるなんて、メズらしいかも。なんかいっつも部屋こもって調べ物してるイメージでさ……あ、写メ撮っちゃお」パシャ
承太郎「人を珍獣みてえに言うんじゃあねえぜ、静。少し用事があってな。待ち合わせ場所に向かっていた所だ」
静「待ち合わせ?」
承太郎「何でも無い、こっちの話だ。……ところで」チラッ
双馬「……」
アチェート「ヒッ!」ビクッ
承太郎「……君は双葉双馬、だな。仗助が入院した時、一度会った事があったか」
双馬「ええ。あの時病室には入りませんでしたけどね……」
静「ああ、そういや双馬お見舞いの時に承太郎さんと会ったんだっけ。チェスタについての情報提供をするためにさ。……説明する手間はぶけて良かったわ」
承太郎「ウム……そして、君は……?」
アチェート「あ、どうも……ぼくはアチェート、って言います。静さんとはさっき会いまして、今から一緒にパチン――」
静「ど――ん!!!」
アチェート「!!」ビクッ
承太郎「?……」
静「は、は……はじけるキャンディー、ドン!パッチィィ~~ッ!……あれ好きだったのにいつの間にか『ワタパチ』に変わったわよね。刺激が減ったっていうかさァ~~ッ……やっぱりドンパッチが一番よねッ!ここでドンパッチを食べてるのは誰だッ!?ってねェ~~ッ」
双馬「?……どん、何だ?」
承太郎「……静、そいつは昭和の菓子だぜ……」
静「あっれえ?そうでしたっけぇぇ~~?あたしってば時代を逆行してんのかな……実は過去から来たのかも」
承太郎「……」
静「そ、そういう訳でッ!あたし達『ドンパッチ』を探す旅に行ってきまぁーッす!古くせー駄菓子屋なんかに行ったら置いてるかもね!さ、行こ行こ二人ともッ!」グイグイ
双馬「おい静、ドンパッチって何だ?ジャンプの漫画かーッそれは?」
アチェート「あの、ちょ、痛い。痛いですってそんなに押すと……」
静「いいからッ!ほら、行くわよー二人とも!」グイグイッ
承太郎「……」
静「さーて!どこにドンパッチはあるのかなァ~~?イチパチニパチサンパチヨンパチ、ゴパチロクパチナナパチィィ~~♪」
承太郎「……ちょいと待ちな、静」
静「!!」ドキッ!
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
静「……」ゴクリ
承太郎「……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
静「……」ドキドキドキドキ
承太郎「……静……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ……
承太郎「……あんまり遅くまで遊ぶんじゃあねえぜ。仗助が心配するからな」
静「……は、はァ~~い!ルンルンッ♪」
承太郎「……やれやれだぜ」クルッ
スタスタスタ……
静「……ぷはあッ!焦ったァ~~ッ……マジ、マジッ!グレートにヘビィだわ。寿命が5年くらい縮んだっての」ドキドキ
双馬「なあ、静……お前本当にパチンコする気か?空条承太郎一人でこんなにあたふたしているのに?まだ店に入ってすらいないんだぞ」
静「それとこれとは話が別よ。承太郎さん怒ると本気で怖いんだからね。っていうか怒らなくっても怖いわよ。謎の迫力があるっつーかさーッ……とにかく、知り合いにだけは知られたく無いわ」
アチェート「えっと、結局パチンコ店なんですか?それともその、どんぱっち?とかいうお菓子を探す流れで……?」
静「計画に変更は無いわ。入るわよーパチンコ店ッ!」ザッ
双馬「やめとけって……店員だって、ただ突っ立ってるだけでカネをもらってる訳じゃあない。僕たちみたいなのが入ったら一発で追い出されるぜ」
静「まあそうかもね。あたし達今ガクセーらしくガクセー服だし。けどさ、双馬……アンタあたしの事忘れてない?」ポンッ
双馬「何がだ。……おい、頭をなでるな。何様のつもりだ?」
静「何様って……『ワイルド・ハニー』」
双馬「!!なっ、待……!」
スウウ――ッ!!
双馬「……ってって、お前ーッ!何て事を……うお、何だこれはッ!」
アチェート「え?……え!?そ、双馬さんが……『消えた』ッ!?」
バン!
静「これなら店員に追い出される事は無いわよねーッ。なんせ、見つかる事が無い訳だし」ニシシ
双馬「き、気持ち悪いな……自分の身体や手が見えないっていうのは精神的にクるぞ。これ、メガネも透明になっているのか?……なんで透明になってもメガネが使えるんだ?光の屈折とかどうなってる?」
静「あんま難しい事言わないでよ、双馬。ほら、アチェートもこっち来て。アンタも透明にしたげるから」
アチェート「え?……え?」
スウウ~~ッ……
…………
…………
ジャラジャラジャラ……
店員「……」ボケーッ……
ウィィ――ン
店員「……いらっしゃいマッ、せェェ~~ッ……」
・ ・ ・
店員「……ン?」
……ィィン……
店員「……(今、入口の自動ドアが開いた気がしたが……?……まあ、どうでもいいか)」ブラブラ……
静「……オッケー、バレてないわね。……ちょっとアチェート、アンタ何やってんの?」
アチェート「あの、その、透明で何がなんだかわかんないんですよ!みんなどこにいるんですか!?ぼ、ぼく一人ぼっちじゃあないですよね?」
双馬「大丈夫だ、ここにいる。……なんだか目玉だけが空中に浮いてるようで気分が悪いな。おい静、お前はどこにいるんだ?」
静「すぐそばにいるっての。そんな心配しなくっても、あたしにはアンタ達の姿見えてるから安心して。……アチェート、あんま動きまわらないでよ。オッサンの後頭部に腕当たるわよ」
アチェート「ここが……パチンコ店、ですか。日本独自の娯楽施設だと聞いていますが……」
ドギュンドギューン!
女「お願い……あと千円貸して。あと一回!千円ありゃあ絶対に勝てる!もう少しだッ!千円あれば絶対に出るんだよォオ」ガンッ
ジャラジャラジャラ
男「来い来い……こいこいこいこいッ」ガッコガッコガッコ
アチェート「……」ゴクリ
静「こんだけうるさいなら、あんましコソコソしなくって大丈夫よね。……双馬、何その顔」
双馬「……話には聞いていたが、すさまじいな……これが日本のクズどもの寄せ集めか」
静「普段は仕事ガンバってて、休日の息抜きにここに来てるのかもしんないでしょォ~~?」
双馬「今日は平日だ、静」
静「ま。そんな事どうでもいいわ……あたしもちょっと、この音とタバコのニオイは結構キツいかもだし。さっさと目的果たして出ましょう。さ、アチェート」
アチェート「え……ぼく?」キョトン
静「そうよ。アンタの能力でさ――……」
ウィィ――ン
静「……ん?」ピタッ
店員「あ、いらっしゃいマ、せーェェ……」ダルッ
シーラE「……」ドン
フーゴ「……」ドドン
静「ゲッ!(な、なんでこんな所に……!?)」ドキリ
双馬「……あの二人は……たしか」
静「知ってるの?双馬」ヒソヒソ
双馬「よくドゥ・マゴでイチャついてる外人のバカップルだ。名前だけは地面から読んだな……シーラEとフーゴ、だったか?」
静「……あの二人、イタリアのギャングよ」ボソッ
双馬「……」
ジャラジャラジャラ……
フーゴ「シーラE、本当にこんな店を調べるつもりかい?」
シーラE「吸血鬼はともかく、まだ人間であるはずのチェスタ・テスタロッサは生きていくのに金が必要なはずだわ。資金源に賭博場を活用している可能性もある。……可能性は徹底的に叩くわよ。この一、二ヶ月ほど、ろくな手がかり得てないんだから」
フーゴ「とはいってもね……スタンド使いならこんな所来なくとも、他に色々と手段はあると思うけど?」
シーラE「それともう一つ。こういう賭博場に出入りしている人間なら、裏の世界に詳しいと思わない?」
フーゴ「……」
ドギュンドギュン
フーゴ「……シーラE、パチンコ店は確かに日本のカジノといっていい所だが……一応合法だ。君の考えているようなアンダーグラウンドなギャンブル場とは違うよ」
シーラE「うるさいわよ、フーゴ。ほら、さっさと聞き込みするわよ」
双馬「おい、静……お前までアチェートの妄想癖に毒されたのか?イタリアギャングに命狙われてるって?」
アチェート「ぼ、ぼくを悪く言うのはやめてくださいよ……」ビクビク
静「違うっての双馬。えらくマジよ……なんでもギャングのボスが、あたしの遠い親戚らしくってさ。……それに元をたどれば、メイを吸血鬼にした石仮面はイタリア人が発掘したもんだとかなんだとか言って、色々手助けしてくれてんの」
双馬「……味方か?」
静「一応ね。シーラEさんとはLINE交換したわよ。……けどマズいわね。こんな所にいるなんて知り合いに知られたくないし、何より――……」
シーラE「……ん?」クンクン
静「シーラEさんは……恐ろしく鼻が良いッ!」タラリ
双馬「!……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
フーゴ「?……どうかしたかい、シーラE。タバコのにおいが気になるかい?」
シーラE「違うわよ。いや、確かにそれも気になるけど、そうじゃあない。……クンクン、色々なにおいが混じっててわかりにくいが……」クンクン
双馬「おい、静。どうするんだ。気づかれてるぞ……あいつはお前の能力を知ってるんだろう?透明になっていてもバレるんじゃあないか?」
静「……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
シーラE「この『におい』……かすかにニオうわ。確か、これは――……」
静「『ワイルド・ハニー』」
スッ……
「うおおおおおお!!ふざけんなァァアア!!」
ガアン!
シーラE「!?」ビクッ
フーゴ「……」
男「おい店員ン!今ッ!これ『当たった』よな?大当たりだッ!この演出俺は忘れた事ねェーぞォーッ!けどどういう事だァ?音は出てるのに……『玉が出ない』ぞ!!」
ジャラジャラジャラ……
店員「え?……いや、そんな事は――……」
女「きゃああああああああ!!!あ、あ、あ……あたしの『サイフ』がッ!『消えた』わッ!!?……テメェーもしや『ギリ』やがったなゴラッ!」ガシッ!
オッサン「おっおっ!おれじゃあねェーよおッ!そんな事言うならおれのタバコッ!そこに置いてたのに無くなってるぜッ!隣に座ってるお前がアヤシイじゃあねーかあッ!」
青年「お、おいィ!?俺のカバンどこに消えたァ!?誰かァァ――ッ!この店に泥棒がいるぞッ!店員テメェーどこに目ェつけて店内歩いてんだオラアッ!」
ギャーギャー!
双馬「……」
静「ちょっぴり『色々と』透明にさせてもらったわよォ~~ッ。すぐに戻してあげるから我慢してね」
ワーワー!
ギャーギャー!
シーラE「……イタリアのスラムを思い出すわね。この喧騒」
フーゴ「どうする?シーラE。日を改めるかい?」
シーラE「……その方がいいかもね。話出来る雰囲気じゃあないし」
ドタンバタン!
ジャラジャラジャラ……
静「さ、今のうちに店の奥に行きましょう。ほら、アチェートこっちよ……どこ見てんのよ。やらしぃー演出眺めてんじゃあないわよ」
アチェート「べ、別にそんなの見てた訳じゃあ……!」
静「ここからはアンタが頼りなのよ……アンタの能力で見てほしいの。……どの台が玉を出すのか?をね……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
アチェート「……」
双馬「……おい、無理なら無理と言っていいんだぞ。お前にそんな事する義理は無いんだからな」
アチェート「いえ、やります……やらせてください。ぼくは……ぼくが、『生まれた』のは……」
双馬「……」
アチェート「全ての『やっかい事』を押し付けられるためだった。ぼくは生まれながらに死んでいた……いや、『死に続ける運命にあった』んだ……そんなぼくでも、この借り物の力で出来る事があるなら……」
バサッ
アチェート「……精一杯、やってみたい。……ぼくは、自分の『未来』に抗いたいんです」
バサバサバサバサ……
静「……」
双馬「……」
アチェート「……『グ……』……『ムゾ……』……『エ……タフ』……」
フワァアアアァァア……
アチェート「……あれです」
ピタッ
静「!」
双馬「……」
パチンコ台『……』
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
アチェート「見……見えました。未来の映像が……あの台が……静さん、あなたの求めている台です」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
本日はここまでです。
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
パチンコ台『……』
静「……アンタに頼んどいてなんだけどさァ~~……」
アチェート「……」
静「こういうのって、あらかじめ『出る』台っていうのが決まっててさ、『出るまで回す』って考えで他の人が場所取りしてんじゃあないの?……誰も座ってねーわよ?」
双馬「……」ガタゴト
静「……双馬、何してんの?」
双馬「確認してる……皿に玉が入っていたりタバコが置いてたりする台は、もう他の人が確保してるって事だからな。それの確認……」
静「……」ポカーン
静「アンタ、パチンコ初めてよね?」
双馬「当たり前だ」
静「どこでそーいう事習うの?学校?」
双馬「アホか。平穏な生活したけりゃあな、やっかい事に巻き込まれない方法を知るのが大切なんだよ。この世界は想像を絶するアホばっかだからな……」
静「フーン、じゃあー双馬くん?やっかい事に巻き込まれないようにさ……パチンコってどうやってやるか、教えてくんない?」
双馬「……」
アチェート「……」
アチェート「知……知ってて入ったんじゃあないんですか?その、この店がどーいうお店か!?」
静「大きな声出さないでよアチェート。店内が騒がしいとはいえ、誰もいない所から声がしたら怪しまれるわ」
双馬「もう透明化は解除してもいいんじゃあないか?透明のままパチンコ打つ訳にはいかないだろ」
静「それもそうね。で、どうやってやんの?これ」
双馬「……」
ジャラジャラジャラ……
双馬「……賭博だっていう事は知ってるんだよな?」
静「当然。日本独自のアミューズメント施設で、外国人にも人気のギャンブル場なんでしょ。アメリカのテレビ番組で見た事あるわ」
双馬「そこの横に機械があるだろ?『サンド』って言うんだが」
静「これ?……ほへー、なるほど。パチンコ台に挟まれてるから『サンド』って訳ね?」
静「そこに紙幣を入れて、玉を借りるんだ。入れてみろ、上皿に玉が出てくるはずだ」
静「……紙幣って、お札?紙のお金?」
双馬「……そうだが。……?」
静「…………」タラリ
双馬「……もしかして、お前……マジか?マジなのか?信じられないな……お前普段どうやって生きてるんだ?」
静「だから毎日イッパイイッパイだっての。ルドルフがビックリするくらいイッパイイッパイよ」
アチェート「あの、それって『イッパイアッテナ』だと思うんですけど」
静「……」ギロリ
双馬「おい静、お前ひょっとして今睨んでるのか?透明だから見えないぞ」
静「……仕方ないわね。双馬、千円貸して」
双馬「嫌に決まってるだろ。パチンコをするって言ったのは静、お前だ」
静「……」キョロキョロ
静「……ねえ双馬。……実際パチンコ打つのはあたしで、出る台を見抜いてくれるのはアチェートな訳なんだけど」
双馬「……」
静「……『分け前』貰いたいならさァ~~……ちょーっとくらいは、一緒に危険な橋渡るべきなんじゃあないの?」
双馬「……そういう理由で、お前は年下に金をたかるって訳か?」
静「違うっての。こういう時だけ年下って事出すな。そうじゃあなくってさ~~ほら!……向こうのオジサンさ」チラッ
双馬「……」チラッ
ジャラジャラジャラ……
オジサン「うー……もっと、もっと、もっと……もう一回くらいくるだろ、なあ?」ガチャコガチャコ
静「見てよほら、席の後ろに箱いっぱいのパチンコ玉があるじゃん」
双馬「……お前、まさか……本気か?人間性を疑うぞ」
静「借りるだけ!借りるだけだっての!当たりが出たら倍にして返すわよッ!だからさァ~~……箱一つ、いや!一掴みだけでいいから!……ちょっと借りてきてよ。透明だからバレっこないって!」
双馬「……マジか……マジなのか……」
ヨロヨロ……
双馬「……」ソロ~リ……
オジサン「……チクショー、この演出は見飽きたっつーの。違うの出せよォ~~クソ……」
ジャラジャラジャラ……
双馬「…………ゴクリ」
ドキドキドキドキ……!!
双馬「……落ち着け、僕は今透明だ……見える事が無いんだ……」ブツブツ
ドキドキドキドキ……!!
オジサン「……」
双馬「…………」ソーッ……
……カチャッ……!
オジサン「……むッ!?」ガタッ!
双馬「!!」ビクウッ!
ドキュンドキューン!
チャーンス!チャンスチャーンス!
オジサン「うおおおぉぉおおお来たァ――ッ!出せっ!出せっ!全部吐き出しやがれッ!こうか!?こうかッ!?中にたっぷり詰まってる銀玉全部吐き出しやがれッこのボゲがァあああ――ッ」
ガッコガッコガッコガッコ!
双馬「……フーッ……」
ソロリ……
双馬「……取ってきたぞ。ほら」ジャラッ
静「やるう、双馬!さっすがあたしの親友ねっ」
双馬「おべっかはいい。ほら、さっさと玉吐き出させろ。そしてとっとと店を出るぞ」
静「ええと、この玉をここに入れたらいいのよね?……それで、その後は?このボタン?」ポチポチ
双馬「それは演出を切り替えるボタンだ。それじゃあなく、右手にあるハンドルをひねるんだ。……目一杯ヒネる必要は無いぞ」
静「こう?」クイッ
ジャラジャラジャラ……!
アチェート「……なんか、すごい勢いで玉が減っていきますけど……」
静「……ねえ双馬、これ何処狙ったらいいの?」
双馬「最終的に、下に開いてる穴の所に入ればいいんだ。もっと回す力弱めろ、それだと飛びすぎだ」
静「こう?……で、この後は?」
双馬「……この後とは?」
静「ほら!こう……ボタン押して絵柄揃えるとか!的があってそこ狙わないといけないとか!そういうのは……」
双馬「……この機体には無いな。そのまま右手維持してろ」
静「……」
ジャラジャラジャラ……
静「なッ……何が楽しいの?これ?座ってずーっと減っていく玉見てるだけ?マジに?……これがパチンコって遊びなの……?」
双馬「……お前、何でここに来たんだ」
ビカー!
グルグルグルグル……!
アチェート「あッ!見てください、画面の表示が……!」
静「スロットみてェーにグルグル回り始めたわね……で、タイミングよくボタン押せって訳?」
双馬「……これはただの演出だ。回り始めた時にはもうすでに、当たりかハズレかは決まってる」
静「……じゃあなんでグルグル意味もなく回ってんの?さっさと結果教えろよ」
双馬「ちょっとでもドキドキさせたいんだろ、たぶん。……おい、全然穴に入ってないぞ。もう少し右に回せ」
静「言っとくけどさァ~これ結構ムズいのよ?全然思い通りになんないしさァ~~」ググッ
バァーン!
ザーンネーン!
静「……」
アチェート「あっ、ほ、ほら!またルーレット回ってますよ!チャンスあるかも……!」
静「……これって一玉4円だっけ?……パチンってやるだけで4円消えていくのね……」
双馬「お前の金じゃあないくせに、よく言うぜ……フンッ」
カッ!
ババーン!ドーン!パーン!
静「うおっ、なんか派手な画面になったわね……花火?もう派手すぎて何がなんだかわかんねーわよ」
双馬「!……もしかしてこれは……『きた』んじゃあないか?」
アチェート「へっ?」キョトン
バシーン!
『7』
バシーン!
『7』
静「えっ?……えっ?」
グルグルグルグル……!
双馬「……いや、まさか……そんな、すぐに……?」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
『7』
バッシィ――ン!!
静「!……うおっ……!?」
『7 7 7』
ビカビカビカビカー!!
ドォォオ――ン!!!
双馬「静!右手はそのままだッ!そのままを維持しろッ!」
静「えっ?ちょっ」
双馬「あ、違う。右打ちだッ!右に目一杯回すんだッ!」
静「いや何が何だかわかんねーっての!」グイッ!
ガシャーン!
ジャラジャラジャラ!!
静「!!……お、おおおおおッ!?」
双馬「……嘘、だろ~~……本当に、『出る』とは……!」
アチェート「……」
ジャラジャラジャラジャラジャラジャラ!!
静「う……うははははははははは!!スッゲェーいっぱい出てるわッ!何これすっごい!どういう事ッ!?キャアー♡皿がいっぱいになっちゃうわーッ!」
ジャラジャラジャラ!
双馬「おいおいおいおい……当たりとはいえ出過ぎじゃあないのか。箱はどこだ?」キョロキョロ
静「店員さーん!あたしん所もーイッパイイッパイよッ!箱の交換お願いしまーす!キャハハハハ!笑いが止まんねーわッ!グレート!アチェート、アンタのおかげよッ!」
アチェート「別に、ぼくは……ただ、出る所を見ただけで。そこに座ったのは、静さん……貴女の行動ですよ」
静「んー、まあそういう事にしとこうかしらね~~。双馬、キッチリ三等分でいいかしら?」スッ
双馬「……お前に任せるよ」ピシガシグッグッ
ガシ!
店員1「……」
店員2「……」
静「あ」
双馬「あ」
アチェート「えっ」
店員1「君たち……年齢はいくつだ!?」
静「……」
双馬「……」
アチェート「……」
今回はここまでです
…………
その頃、店の外では……
イワン「クッチャ!クッチャ!クッチャ!クッチャクッチャ」クッチャクッチャ
……殺し屋、イワン・オーリオは、
ハンバーガーをかじりながら双眼鏡を覗いていた。
イワン「……店に入ってから結構経つなあ……ジュルジュバ~ー……『2回』も俺の能力を避けるとは、中々悪運の強い標的(ターゲット)だ。……しかし、次は無い。『事故死』という運命からは逃げられないぜ~~『静・ジョースター』……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
…………
…………
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
店員1「君たちィ、見たところ中学生くらいだよなァ~~……最近のガキは『マせてる』というが、そんな年頃からパチンコだァ?……社会ナメてんのかコラッ!」
アチェート「ヒッ、ヒイイイィィ~~……!」ガタガタ
静「ツーン。……あたし、中学生じゃあないしィ。オトナのレディーだしィ~~ッ」シレッ
双馬「静ぁ……だから僕は嫌だったんだよ。バレてるじゃあないか。エエッ?」
静「何よ、あたし一人の責任にする気?バレちゃったもんは仕方ないでしょーッ」
双馬「よく考えたら、パチンコの玉を大量にせしめたとしても、換金までは出来る訳が無かったんだ。絶対に人に出会うからな、クソォ~~……もっと考えてから行動するべきだった。軽率だぞ双葉双馬。隣のバカ女みたいになるぞ」ブツブツ
静「うるせーってのバカメガネ。ノリノリだったじゃん。右打ちだーっとか言ってさ。何?右打ちって」
双馬「ただ右に寄せて打つってだけだよ。あの台は大当たりになったら穴の位置が――……」
店員2「おいッ!お前ら捕まってるって自覚あんのかッコラァ――ッ!」ゴオッ!
双馬「……うるさいな。これから捕まるのはお前の方だろ」
店員2「えっ?」
双馬「……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
店員1「……!?……お、おい?お前……どうしたんだ?いっ……たい……?」
店員2「え?……こ、これは……?」
双馬「フーッ……『ペーパー・バック・ライター』」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
紙人間『お前の着ている『服』を、『紙』に変えて『脱がした』……ちょいとお下品だったかな?』
「「「きゃあああああああ――z__!!」」」
ド――ン!
「ハダカよォ――ッ!あの人ッ!店の中で『全裸』になってるわーッ!変態よォ~~ッ!!」
ザワザワザワ……!
店員2「なっ、なっ、なァ~~ッ!?なんじゃっこりゃあああ――ッ!?」
店員1「うおおおお!おいっ隠せ!ズボンを穿けっこの野郎――ッ!!」
「変態だ!」
「露出狂だ!」
パシャッ!パシャパシャッ!
「Twitterに上げてやるぜ……ゲヒヒ!」
「もしもしィ?俺オレッ!パチンコ店んにさ~~変態がいるんだよッ!写メ見た?拡散しようぜ!」
ザワザワザワ……!
店員2「ふっ、服だ!服を貸せっお前ーッ!」
店員1「『お前』だァ?俺は先輩だろうがこのタゴサクがァ――ッ!!」
ギャーギャー!
静「ナーイス双馬。ほらこの隙に逃げるわよッアチェート」タッ!
アチェート「えっ?あっ、置いてかないでェ~~ッ!」
ダダダダダダダッ!
店員2「あっ!逃げたッ!」
店員1「うおおおおああ!逃がすかこのクソガキィ――ッ!」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
双馬「ハァ、ハァ!おい、あいつ結構速いぞ」タタタッ
静「追いかけるのはいいけどさァ~~、ちょーっと、足元注意するべきなんじゃあないのォ?だってここ『パチンコ店』なんだし」
アチェート「?」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
静「『ワイルド・ハニー』はすでにッ!」
ズルウ!
店員1「ゲッ!」
ズッデェ――ン!!!
店員1「うっぎゃあ――ス!」
ドンガラガッシャーンンン!!
静「……『パチンコ玉』を透明にして地面にブチまけてるわ。足元注意しないとすっ転ぶわよ。……って!もう遅いか♡」
タッタッタッタ!
店員1「うぐぐ……ギギ!」ギリギリ
店員2「お、おいッ!誰か捕まえてくれェ――ッ!誰でもいい!礼ならたっぷりくれてやるぞォ――!!」
店員1「ふざけるなァッ!俺が捕まえてやるァ――ッ!!」ガバッ!
客「!?……お、おいアンタ……だ、大丈夫か?」
店員1「ア゛あ!?」ギロッ!
店員2「……?」
客「そ、その『頬』……さっきスッ転んだ時に切ったのか?大きく……『裂けて』いるように見える……いや!違うぞ……!?」
店員1「?……??」
店員「……!!……せ、先輩……?」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
客「頬に……『唇』が……あるぞ?アンタ……?」
店員1「……は?」
グパッ!
唇『はぁ~~あっやってられねえなッ!社会のゴミカス共を相手にする仕事なんかクソみてェ~~だぜ、ケッ!いい歳こいた大人が真っ昼間からチンチンジャラジャラよォ~~。まっ!そんな馬鹿どものお陰で俺様は儲かっちゃってますけどねェェーッ。ケケケッ!ゴミはゴミらしくもっともっと金を落としていけってんだ!』パカパカ!
「……」
「……」
「……」
シーン……
店員1「んなっ……ち、違うッ!俺はそんな事、全くもって思って……ひ、ヒイッ!思ってないんだよォ~~ッ!お客様は神様ですう!誠心誠意こめてサービスしております!だから、そのォ~~……」チラッ
怖い客「……兄ちゃん」ズイッ
刺青のある客「客をナメとったら」ズズイッ
指が無い客「アカンのォ。オオ~~ッ?」ギロリ!
ドヤドヤドヤ!
「ヒッ……ヒイイイイ――ッ!!!…………」
・ ・ ・
フーゴ「……」スッ
シーラE「……ったく」
ザッ!
シーラE「『ヴードゥー・チャイルド』は人の深層心理を言葉にする能力を持つ」
ド――ン!
シーラE「……思わず助けちゃったけど、何であの子達こんな所にいるのよ」
フーゴ「……」ジッ
シーラE「ホンット、あいつら悪ガキね……パチンコ店にいたって事、あのリーゼントのお兄さんに言っちゃおうかしら。あの子も少しは反省――……フーゴ?」
フーゴ「ん、何だい?シーラE」
シーラE「……今何か考え事してたでしょ。何?あの子達がどうかした?」
フーゴ「……あの子達、というか……」
フーゴ(今……静・ジョースターと一緒にいた『ピンクの髪の少年』……ジョジョから聞いた事がある。『ディアボロ』にはただ一人、忠実なる腹心の部下が……もう一人の人格である少年がいたと。……その少年に、背格好が似ている……?)
シーラE「……ちょっと、フーゴ?」
フーゴ(……いや、考えすぎか。その少年の人格も、ディアボロも、『死亡』したんだ。……それに、もうあれから14年経つ。……常識的に考えて、今も少年であるはずが無い……)
ゴツン!
フーゴ「痛……何をするんだ、シーラE」ヒリヒリ
シーラE「一人で勝手に難しい顔してる罰よ!……で、一体どうしたの?」
フーゴ「……」
ジャラジャラジャラ……
フーゴ「……いや……何でもないさ」
シーラE「……なら、いいわよ」
…………
…………
……タッタッタ……
静「……ふう、ふう……ここまで逃げたら安心かしら」ザッ
双馬「ハァ、ハァ……」
アチェート「ゼヒーッ!ゼヒーッ!……ゲホッ!ガッハゴッホォ!」ゼハゼハ
静「二人とも、遅いわよ」シレッ
双馬「あのな、静。僕たちは普通の人間で、お前みたいな謎呼吸法なんて使えない一般ピーポーなんだよ。僕達が遅いみたいなツラしてるがな、自慢じゃあないが僕はこれでも50メートル走7秒2なんだぞ」
静「勝った。あたし本気出したら5秒きるわ」
双馬「だから!僕達に合わせて走れと言っとるんだこの野郎!」ハァハァ
静「難しい事言うわねー」
アチェート「ハヒー!ハヒー!ちょ……ちょっと休憩、させ……ハァハァ!」ガクッ
静「さーて、これからどうしようかしら?パチンコが駄目だったし……馬券とかどうかな?」
双馬「またお前はそんな事言ってるのか……少しは懲りろ」
静「ええー……だって未来の出来事知ってるなんて、有効活用しないともったいないじゃあないの。なんでも出来るわよ~~。競輪、競艇、トトカルチョ!」
双馬「ハァ~~……」ガックリ
アチェート「……ハァ、ハァ……あ……?」ピタッ
ズ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ・ ・ ・
アチェート「あっ、あっ!……はひ、しず、ハヒーッ!」ハァハァ!
双馬「思うんだがな、静。……お前金が欲しいんなら、そのバケモノじみた身体能力で稼いだらいいんじゃあないか?」
静「何?オリンピックにでも出ろっつーの?」
双馬「50メートル5秒きるとか、日本どころか世界記録だぞ。ちなみに女子の日本記録は小西恵美子の6秒47だ。1985年から破られてない」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
アチェート「ふたり、と……も、ハヒーッ!ゲッホゴッホ!」
静「けどさぁ、なんていうか……あたしは身体を鍛えてるって訳じゃあなくって、呼吸法でちょっぴり身体を強くしてる訳だから、やっぱりそれってズルくない?」
双馬「未来見て賭けするのも十分ズルいと思うぞ」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
アチェート「しず……ゴッホ!かさ……そうま、さ……ゲホゴホ!」
静「うーん、でもさ……やっぱりこの能力は、おじいちゃん……父ジョセフ・ジョースターから受け継いだ能力な訳だから、そーいう事に使いたくないの。……この能力は、あたしがあたしらしく生きるために使うべきだわ」
双馬「なんだかそれも勿体ない話だな……せめて部活にでも入ったらどうだ?」
静「嫌よ。先輩にヘーコラすんの苦手だし~~」
アチェート「きい、て……しずか、さ……ヒーッ!ヒーッ!」
静「……さっきから何よアチェート。どうしたの?水でも飲む?」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
双馬「……待て。……何だこの音は?」
アチェート「に……にげてへッ!『倒れて』……ヒーッ!ヒィィ~~ッ!」
静「!!」
双馬「!!なッ……」
ズ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ! !
なんと!アパートの隣に設置されている『非常階段』……
それが、アパートの壁からベリベリと離れてッ!根本からポッキリ折れ!
静達を押しつぶすように倒れてきているではないかッ!!!
ズ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ! !
アチェート「ヒィィイイイイ!もう駄目だァ!今度こそ!ペチャンコになって死んだァ――ッ!」
『……ククク……!』
双馬「!!(今、一瞬――……!?)」
静「……双馬ぁ~~……これで『何度目』だ?」
双馬「……何?」
静「確かさァ……『鉄骨に潰されそうに』なって……『トラックに潰されそうに』なって……で!今……『非常階段に潰されそうに』なってる……こんな日ある?一日に3回も死にかけるなんてさァ」
双馬「……」
ズ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ! !
静「偶然で片付けるには殺意ビンビンすぎるわよ、グレートね。どんな攻撃かはわからないけど……これは『スタンド攻撃』だわ」
双馬「……」
アチェート「そ、そんな事よりッ!早く逃げ……も、もう間に合わないいいいヒイイイイ!!!」
ズ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ! !
双馬「……静、お前占い好きだろ?朝の情報番組で言ってなかったか?『今日は物事に押し潰されないように注意!』って」
静「さあねーッ。言ってたかもしれないわ。……けどたとえ、言っていたとしても……」
ズ ギ ャ ン !
静「あたしはそれを――」
ワイルド・ハニー『――ブッ潰す!!!』
静&ワイルド・ハニー「『ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラァァァアアあああ!!!』」
ドグシャァ――z__ン!!!
「ッ!?何……!」
ンンン……
静「……フーッ……やれやれね」
双馬「……」
・ ・ ・
「……おいおいおいおいおいおいおいおい……聞いてないぞ。あの小娘『スタンド使い』なのかよ?それに、中々のパワーを持ったスタンドだ。……マズいな、一旦退くか?……いや、あのパワーなら射程距離は短いはずだ。ここは……」スッ
「バレないように、攻撃を続け――」
ガシッ!!
イワン「!?」
グググ……
紙人間『……ペラペラ……迂闊だったな。近寄りすぎだ。アパートの屋上にいる所がチラリと見えたぜ。……お前が僕達を攻撃していたのか?』
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
イワン(何だ?この紙の塊で出来た人間は……あのメガネの方のスタンドか?クソ、気づかれた……)ググッ
紙人間『逃がさないぞ。お前はメイから司令を受けて動いたのか?まあそれは置いといて……お前の能力について話してもらおうか』
イワン「いいや。……『離す』のはお前だな。……『ルスト・イン・ピース』!」
紙人間『!!』
バシュウッ!
双馬「!?ぐッ……!」ガクッ
静「双馬!?」
双馬「も、問題無い!あいつのスタンド攻撃が右腕をかすっただけだ!痛ゥ……」
アチェート「あわ、あわわ!すぐに手当を――……」
静「いいえ!ガンガン行く!……でしょう?双馬!」
双馬「……ああ」
イワン「……ッフー!よし、とりあえずこの場を離れるか……顔を見られたかもしれんが、問題無い。……体制を整えて、今度こそ事故死させてやる」ザッ!
タッタッタッタ……
紙『……ペラペラ……』ピタッ
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
双馬「『ペーパー・バック・ライター』の紙を、一枚!……敵の背中に貼り付けた!」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
アチェート「!!……ご、ゴクリ!」
双馬「これであいつが何処に逃げよーがバッチリだ」
静「絶対逃がさないわよォ――ッ!教えてやるわ!お金の恨み!」
双馬「……そりゃあ関係無いだろうがよ~~……フン!」
静「やつは完ペキ!この静・双馬コンビを敵にまわした……!」
ド ン
今回はここまでです。
あと1回か2回でこの話終わりの予定です
…………
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
タッ!
静「あの野郎~~何処まで逃げる気よ?っていうか、足場が不安定で危ないっての」ザッ
アチェート「……ここは……」
ヒョォオオオオォォォオ……
双馬「……ビルだぜ、静……建設中のビルだ。お前が今日一番最初に死にかけた所だ」
静「それがどうかした?」
双馬「場所が『出来過ぎている』……ヤツは、『逃げている』んじゃあなく、『誘い込んでいる』可能性もあるって話だ」
静「……」チラリ
イワン「……」ペラペラッ
ドン
静「たとえそうでも、逃げる訳にはいかないわ。あたしを殺そうってんなら逆にブチ消してやるッ!」
双馬「よく言った。しかし気をつけろ……あいつの能力はわからんが……」
シュウウ……!
双馬「破壊力は本物だ。チイ……しばらく右腕は動きそうに無いな」
アチェート「あの、ぼくはどうすれば……?」
双馬「落っこちないように大人しくしてろ。あいつが未来でどんな攻撃をするか、逐一教えてくれるってのなら話は別だが」
アチェート「…………」
アチェート「その……ぼくは未来に『起こったこと』しか見えないんです。さっきはパチンコ台から玉が出る未来を見ただけ。そこに座ったから玉を手に入れる事が出来ました。……けど、『攻撃が当たった未来』を見ちゃったら、それは絶対に起こるんです。だから、それを予知して『避ける』事は出来ない……」
双馬「ぐだぐだとうるさいな。ここまでついてきたガッツは認めてやるが、お前が役に立つ事は無いんだ」
アチェート「けど、そのッ!あの……ぼくは、あなた達が心配で……!」
双馬「……」ジロリ
静「心配してくれんのは嬉しいわ。けどね、こっから先はあたし達の問題なの。荒っぽい事はあたし達がやるッ!」
ザッ!
イワン「……」ペラペラッ
静「ヘイベイビー!そんな不安定なところで戦うつもり?」
双馬「いつまで紙の束眺めてるんだ。そんなに面白い事でも書いてるのか?」
イワン「いや!……やっと今見つけた所だ。お前らがずーっと付いてくるのが不思議でね。しかしキチンと『書いていた』……依頼書は目を通さないと駄目だな。えーっと!……『双葉双馬』……『物質を紙や本にする能力を持つ』……『スタンドヴィジョンも紙をかき集めたような外観』……へえ?」
双馬「!」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
静「……何?メイから聞いてきたって訳?」
イワン「依頼人(クライアント)についての質問は一切答えられない……まあしかし、自分が恨みを買ってる相手なんてだいたい想像はつくか。さて……」
トッ
イワン「遅ればせながら、自己紹介させていただく。……俺の名前は『イワン・オーリオ』。イタリアから来た雇われの『殺し屋』だ。名刺はいるか?お前らからの依頼なら特別に三割引で受けてやってもいいぜ。……どうせ今ここで死ぬしな」
ドン
双馬「ほーお……ついにあいつら『殺し屋』まで雇うようになったか」
静「……正直、アタマがついてってないわ……吸血鬼だのマフィアだの殺し屋だのがウロチョロしてさーッ、杜王町っていつからこんな『世紀末』になっちゃった訳?」
双馬「『世紀末』?モヒカンが火炎放射器振り回したりすんのか」
静「それで、ナントカ神拳の伝承者とかが殴りあったりすんのね。プッ!」
静・双馬「「アハハハハハハハハハ!」」
イワン「おいおい……命狙われてる時にのん気なもんだな。死ぬのが怖くないのか?」
静「フン!死ぬ事なんかより、あたしがあたしじゃあなくなる事の方が怖いわ。ここでアンタをおめおめと逃がしちゃう事の方が怖いわッ!」
イワン「……ここまで来たら、逃げる気はさらさら無いがな。俺の正体を知ってしまった者は殺す」
静「それで?アンタの言う『殺す』っていうのは、鉄骨落としたり非常階段落としたりって事を言うの?そんな下らないモンであたし達が死ぬかッ!」
イワン「……『下らない』?」ギロリ
イワン「いいか……俺は自分の行う殺しに『誇り』を持っているッ!貴様らにわかるか?俺の殺しの狂おしいまでの悲惨さをッ!!」
双馬「わかるかよ……知りたくもない」
イワン「お前は……いや、お前じゃあなくてもいい。……今日の朝起きて、学校に遅れまいと必死に朝飯かっ込んで、走って学校に行き……下らない授業を死にそうな目で受けて、昼飯食って、授業中イネムリこいて……」
静「……」
イワン「好きな人と少しお喋り出来ただけでウキウキして、休み時間に友達とバカ笑いして、買い食いしながら家に帰って、腹いっぱい晩メシ食ってクソして寝る……そんな平穏な日常。誰でも送る平凡な日々……毎日、これから先も続くと思っていた日々が、だ……!!」
イワン「『不幸な事故』で……いいか!『事故』でだッ!病気や自殺じゃあ断じて無いッ!ただ、毎日決まった時間に歩く通学路で、車が突っ込んで来て死ぬ……ほんの少し寝坊していたら防げていたかもしれない事故でだッ!そんな『事故』で死ぬなんて……悔やんでも悔やみきれないと思わないか?」
ニタリ……
静「……」
双馬「……」
イワン「誰も恨む事なんて出来ないんだ……ただ恨むは自分の不運ッ!それで、自分がこれから先続いていた幸せな日々がプッツリと途絶える。……最高じゃあないか。そいつは墓場に行っても自分の不運を恨み、そいつの家族は恨むべき相手が見えず途方に暮れる。……ただ殺されただけならば、殺した相手を恨めばいい。病気で死ぬならある程度心の準備は出来よう。しかし!事故は違うッ!なんの心構えもクソも無い状態でッ!明日も読む事が出来たであろう漫画の続きすら読めなくなるッ!……」
イワン「決して、安らかになんか眠れないだろう……それがッ!それこそが俺の『幸せ』……覚悟もクソも無い奴らが荒々しく地獄へ叩き込まれるその顔がッ!そいつの家族の悲惨な泣き顔がッ!俺の心を満たしてくれるんだ……!」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
双馬「……頭おかしいぜ、コイツ」ハァー
静「あのさ、アンタの性的嗜好とかどうでもいいけど……あたしら死んでないからね。どうやってこの状況で事故死とかさせんの?空中に車でも出すのかーっ?」
イワン「そうだな……お前らのシナリオは……」
イワン「友達とふざけて入った建設中のビルから落っこちて転落死……って所か。フム、ありえない話じゃあないな。新聞の片隅に載りそうな事故死だ」
ドン
静「やれるもんならやってみなさいよ、このイタ公ーッ!」ザッ!
双馬「……気をつけろよ静。ヤツの能力はまだよくわかっていないんだ」スッ
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
アチェート「ふ、二人とも……どうか気をつけて……!」
イワン「……」
静「……どうする、双馬?二人で回りこんで殴りつけようか?」
双馬「いや、足場が不安定だしな……ここは……」
バギッ!
双馬「!?何ッ!」
静「なッ!!」
二人の立っていた足場が『折れた』ッ!
地上まで数十メートルはあるッ!転落すれば『事故死』は確実ッ!!
イワン「良し(ベネ)。そのまま頭から地面にキスをしな……」
アチェート「ああああああッ!!静さんッ!双馬さァ――んッ!!」
ドォオアァアァァアア
双馬「静ッ!『何処』だッ!?『このまま』でいいのかッ!?」
静「ええ!何も問題無いわ……場所はこのままッ!!」
イワン「?……何を――……」
スタッ!
イワン「!!……!!?……????なッ……!!」
二人の身体が、空中で止まった……。
まるで、『見えない足場』があるように……否!!
『ある』のだッ!『見えない足場』がッ!!!
静「アンタ、ちょーっとあたしの事について勉強不足なんじゃあないの?……『ワイルド・ハニー』はとっくの昔にッ!鉄骨を何本か『透明』にしているわッ!アンタがあたしらの不意を突いたとしても、あたしはさらにその上の不意を突いてやるッ!」
ド――ン
イワン「くッ……(奴にしか見えない足場があるのなら、ここから落とすという考えは不可能に近い!どうする……ここはどうすれば……!)」
双馬「考えてる所悪いが……余裕で射程距離内だッ!」
ドン!
紙人間『おおおおおおおッ!!』ギャン!
イワン「はッ!」
紙人間『ペラペラペラァあ!!!』
ドシュ!ドシュ!ドシュウ!!
イワン「くっ!」バッ!
ドガッ!
紙人間『!!』
イワン「……フーッ」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
アチェート「ああっ!よ……避けられたッ!双馬さんのスタンドによる攻撃がッ!」
バサバサバサッ……
イワン「お前のスタンド……物を紙にする能力だったな?近づけばそれなりの破壊力もあるみたいだが……遅いんだよ。致命的になあァァ……!」
双馬「……」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
双馬「何を勘違いしている?」
ドン
イワン「……は?」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
双馬「僕が狙ったのは、『お前』じゃあない……お前の背後にあった『鉄骨』だッ!」
イワン「!!しまッ――」
双馬「『ペーパー・バック・ライター』!!」
紙人間『紙に変えた鉄骨を……元に戻すッ!!』
バッ!
ズドォ――!!
イワン「!」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
双馬「僕は別にお前に恨みなんざ無いが……潰されて再起不能になってしまえ」
静「グレートよ……双馬!」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
イワン「……ハァ~~ッ……」
ス ッ ・ ・ ・
イワン「『ルスト・イン・ピース』」
ドジュウ!
双馬「!!」
静「!?」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
アチェート「えッ!?なッ……て、鉄骨がッ!敵の頭上にあった鉄骨が……!?」
鉄骨が『消えた』ッ!!?
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
ルスト・イン・ピース『フシュォオオオオオOOO……!!』
イワン「……」
双馬「……わかったぞ。あいつの『能力』……鉄骨落としたり、トラック突っ込ませたり、非常階段倒したりした能力の正体」
静「何?」クルッ
双馬「『錆び』だ……『物質を錆びさせる能力』!!奴は金属を酸化させて、ボロボロに壊す事が出来る……!」
静「『錆び』……」
双馬「鉄骨が消えたように見えたのは、錆びさせて粉々にしたって訳だ」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
ルスト・イン・ピース『……』
イワン「……知ったな……俺の能力を……!」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
今回はここまでです。
次回でこの話は完結です
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
静「『物質を錆びさせる能力』ッ!!」
イワン「……」
双馬「それでワイヤーをモロくして切断したり、ブレーキペダルぶっ壊してトラック突進させたりしたって訳か……」
静「わかっちまえばどーって事無いわ。錆びるモンに気をつけりゃあいいってだけよ」
ザッ!
アチェート「うう……!」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
イワン「……貴様ら……!」ピグッ!ピググッ!
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
イワン「……俺の姿だけでなく、能力まで知ってしまうとはなァ~~……こんな奴とは生まれて初めて出会うぜ。それは褒めてやる。しかし……!」
双馬「?……何をブツブツ言っている」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
イワン「――そこまで知っちまったら!『事故』なんかでは殺せねえだろうがこのクソガキ共ッ!!わかってんのかア゛ァ――!!?」
ルスト・イン・ピース『シャオォオOOOOOO――!!』
ドバアッ!
静「!!」
静「スタンドを戻せ双馬ァ――!!!」
ドボオ!!!
紙人間『ぐッ……!』
双馬「うげェ――ッ!!」メリメリメリ!
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
静「そッ……」
アチェート「双馬さァ――ん!!!」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
イワン「『錆び』とは、物質が『酸素』と化合し酸化する事を言う……」
イワン「そして純度の高い酸素は、生物にとって有毒なのだッ!触れれば……一瞬で細胞を破壊しつくすほどのなァ――ッ!!」
ドドド!
双馬「ガブゥ!!」
ボドボドッ!
静「双馬!スタンドを戻しなさいッ!このままじゃあアンタ……!」
双馬「それが出来りゃあ、ガフッ!とっくにやってる!『バック・ライター』の首を掴まれてるんだッ!ハァハァ!」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
イワン「公衆便所の大便器に吐き捨てられた痰カスよりも汚らしい……生意気なクソガキ共め……低俗な『他殺』で殺すしかないこの俺の無念を細胞一片一片で味わい……死ィィィイイイに腐れェェ――!!」
ルスト・イン・ピース『ウオOOOOOONNN!!!』
ドギョドボドボォ!
双馬「うおおおおおおおあああああああ!!!か、身体がッ!破壊されるッ!!!」
バリ!バリ!バリ!
静「やめろォ――イワン!テメェ――ッ!!」
ダッ!
バギン!
静「ぐっ!?」ズザザッ!
バギバギバギ……!
静「S・H・I・T!まーたあたしの立ってる鉄骨を錆びさせてぶっ壊してんのかテメェッ!戦い方が姑息なのよッ!堂々と――……」
イワン「『堂々と』……何だ?『この程度』じゃあ物足りないって訳か?」
静「……!?」
バギバギバギバギ……!!
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
静「なッ……!」
静達の立つ建設中のビル、そのほぼ全てがッ!
『錆び』てボロボロになり!崩れ去ろうとしているッ!!!
アチェート「何だってえェ――ッ!?静さん!双馬さァ――ん!!」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
静「くっ……!」クルッ!
ダダダッ!
静「双馬!手を――……!」バッ!
双馬「静……!」ググッ……
ガシッ!
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
静「しっかりつかまりなさいよッ!ジャンプして、まだ崩れてない向こう側まで飛ぶしかないッ!」
双馬「ハァ、ハァ……!む、無茶だ……僕を置いていけ!僕はもうボロボロで、戦えやしないんだ……!」
静「次ィんな泣き言いったら、アンタぶっ飛ばすわよ!」
ダッ!
静「コォォオオオ――ッ!!波紋の呼吸全開よッ!練り上げるは生命のエネルギーッ!行くわよ、双――……」
ダッ……
アチェート「『そっちに飛んじゃあ駄目だッ!!静さんッ!!!』」
静「!?」
ァン!!
イワン「よォ。……決死の大ジャンプ、見事じゃあないか」
ド ン !
静「『イワン・オーリオ』ッ!!!」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
イワン「そうだよな……足場が急に無くなっちまえば、お前らはこっちに飛ぶしかない。……飛ぶ方向を予想するくらいなら簡単だ。さあ……」
スッ……
イワン「死ね」
ルスト・イン・ピース『シュウウウオオオOOOO……!』
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
アチェート「静さァ――ん!!避けろッ!避けるんだァ――ッ!!」
静「わ、『ワイルド・――……」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨……
静(『出し遅れた』……!双馬を担いだのが仇となった……そんな……『親友』を助けたのが、駄目だって言うの?そんな事……絶対無いわよ。……け、けど……!)
┣¨ ┣¨
アチェート「うわああああああああああああああああああああ!!!!!」
┣¨ ┣¨
静(『避けられない』……二人とも、『死』――……)
┣¨ ┣¨
ルスト・イン・ピース『OOOOOOOOOOOOOO!!!!』
ドバ!ドバ!ドバ!!!
アチェート「ああああああ!!……と、と……と……!!!」
┣¨ ┣¨……
アチェート「とぉるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる」
「『キング・クリムゾン』ッ!!!!」
ドォ――z__ン
…………
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
「……まさかこのわたしが……子供二人を助けるために……能力を使うとはな……」
グオオオオオオオオォォオオ
フォン!フォン!フォン!
「しかし……これも、悪くない。……無限に死に続けるこの『運命』の中……誰かに『生』を与えるというのも……」
バァアアアアァァ……
「代わりに、このわたしが『死』という運命を受け取るのも、な……」
ァァァア……
「わたしは今……」
「永遠の絶頂の中にいる」
…………
ドバ!ドバ!ドバ!!!
「がふぅううううううう!!!」
ドッバァ――!!
イワン「!?何……ッ!?」
ビシャアッ!
静「!?」
イワン「今のは、『違う』ッ!静・ジョースターでは無かったッ!完璧に捉えたはずなのにッ!まるで『消し飛んだ』ように……くっ!」
ベドオッ!
イワン「目が……血で、前がッ!」
ザッ!
イワン「――はっ!!!」
静「ドラアッ!!!」
ドゴォ――ン!!
イワン「がッ!!?」グルンッ
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
静「おおおおおおおおおおおお!!!」
イワン「が……あああああアアアアアア!!!ふざけるなァァァアアアアッッ静・ジョォォオオオスタァァアアアアア――!!!!」
ルスト・イン・ピース『AAAAAAAAAAAAAAA!!!!』
ワイルド・ハニー『オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』
ワイルド・ハニー『ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラ
ドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラドラぁ――ッ!!!!!!』
ドッボォ――ン!!!
イワン「GYAAAAAAAAAAAOOOOOOOOOOOOOUUUU!!!!」
ドグシァァアッ
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
双馬「……勝っ……た?」
静「……ハァ、ハァ、ハァ……!」
双馬「……一体、今……何が……?」キョロキョロ
静「双馬……アチェートは!?」バッ!
双馬「!」
静「アチェートは……一体、何処に?」
・ ・ ・
静「……い、『いない』……!?」
ォォォォォ……
双馬「……」
静「……一体……何だったのかしら、彼……」
双馬「……さあな」
静「……」
オオオオ……
双馬「もしかしたら……」
静「……」
双馬「本当に、未来人で……未来に帰ったのかも、な」
静「……」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
…………
…………
カフェ・ドゥ・マゴ――
パァァアアーッ……
承太郎「……」パサッ
……スタスタ……
老人「……『空条』……『承太郎』さんですね……」ザッ
承太郎「……」
老人「……16年ぶり、といった所でしょうか。SPW財団のものです」
承太郎「……」
老人「あなたから頼まれていた『データ』を渡しにきました。一応、少々非合法な手を使って集めたものですので……手渡しで失礼させていただきます」
スッ
承太郎「……」
老人「この一年の行方不明者・失踪者の詳しいデータです。警察のデータを少々拝借しました」
承太郎「後で拝見しよう。それで……」
老人「……」
承太郎「……結果は?」
老人「ええ……」
老人「この一ヶ月ほど……杜王町での失踪者は『0人』でした」
承太郎「……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
老人「完全なる『0』……迷子の一人すらおりません。明らかに『異質』です。こんな事……全国的に見てもそうあることじゃあない」
承太郎「……」
老人「願わくば、これが……『嵐前の静けさ』で無い事を」
承太郎「……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
…………
…………
その日の夜
杜王町、工事現場近くの路地にて――
「ぐ、ぐぐぐぐ……ががががが……ち、畜生~~ッ……!!」
ズル、ズルッ……!
イワン「ヒィ、ヒィ……クソ!あのガキめェェエエ……この俺をッ!あんな訳のわからん方法でッ!倒すとはァァア……!」
ズル、ズル……
イワン「許さねェ……この俺の『殺し』に失敗なんて、今まで一つたりとも無かったんだ!殺すぅ~~殺してやるぜェ~~静・ジョースター……双葉双馬ァぁあ……!」
ズル、ズル……
イワン「一先ず、身体の傷を癒やさなければ……あ、足の骨が折れてやがる……足どころじゃあねえ、全身バッキバキだ、クソォ~~!」
「ハァ~~……」
「全く……イワンのばかめ。殺しの専門が、殺しの一つすら満足に出来ないって訳か?」
ザッ
イワン「……何だ?ガキぃ……こんな夜遅くに出歩いてんじゃあねえぜ。さっさとお家に帰りな」
「そうはいかないさ。最後の最後に出てきたお前が、こんなにも不甲斐ないんだからな……」
イワン「……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
イワン「……何?」
「もうそろそろ……僕が出るしかないだろう?」
イワン「……おま」
「え゛」
ズバオ
ウォーケン「……物質は全て塵に帰る……」
シュウウゥゥウウ……
ウォーケン「静……お前もだ」ニタリ
…………
――イワン・オーリオ……死亡――
――アチェート・ドッピオ……死亡――
⇐To be continued=・・・?
スタンド名― ルスト・イン・ピース
本体―イワン・オーリオ
破壊力―D スピード―B 射程距離―B
持続力―C 精密動作性―D 成長性―C
物体を、高濃度の酸素によって一瞬にして錆びさせるスタンド。
スタンド本体の攻撃力は低いが、その能力によって生物の細胞を破壊する事が出来る。
名前元ネタはメガデスのアルバム『Rust In Peace』
(Rust……錆び)(Rest in peace……安らかなる眠り)
本体名元ネタは筋肉少女帯の楽曲『イワンのばか』と、油のイタリア語olioから。
アチェート・ドッピオ
……死に続ける運命にあるディアボロが、その痛みと恐怖から逃げ出すために生み出した別人格。ヴィネガー・ドッピオの弟にあたる。
結局の所、運命から逃げ出す事は出来ず、彼ら……アチェート・ドッピオとディアボロは、死に続ける苦しみを二人で味わう事となった。
アチェート……イタリア語で『酢』(ヴィネガー)を意味するAcetoから。
という訳で、十五話完結です。
長々と続いてきた静ジョですが……あと3話でシリーズ完結の予定です。
最後までよろしくお願いします。
次の話は
静「彼の名はウォーケン」
でいく予定です。
また次スレ立てた時には誘導します。それでは……
よく見たら>>12で既にとぅるるるって言って二人を身を呈してまもってるな。
ボスはブチャのように誰かのために死ぬと言う人生の絶頂を繰り返すことに決めたのか,,,,
ボスの死、という真実から生まれた誠の行動は決して滅びはしない
次スレです。
静「彼の名はウォーケン」
静「彼の名はウォーケン」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1454598348/)
もう2016年になってしまいましたが、作中は2015年11月です。
ここからラストスパートです。どうか応援をば……
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