敏恵「あたし達って何ウィッチーズ?」 ハイデマリー「ぇ、えっと……」 (359)

某スレ内の安価でできたオリキャラ設定を拝借した、ストライクウィッチーズ世界の3次妄想ssの続きです
もう少しで終わりますがスペース失礼致します


※舞台は45年時(アニメ2期頃)、501ではありません

※主要登場人物の殆どが創作キャラ、また一部に独自の解釈・設定があるので注意



↓【前スレ(既読推奨・wiki有り)】

敏恵「ストライクウィッチーズ……じゃないの?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1447492531/)

↓【ネタバレ情報まとめ】

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1472955154

 
  ■すごく大雑把なあらすじ■(※世界設定等は省く。原作シリーズを参照してください)


西暦1945年の春、扶桑皇国の大陸領土で夜間専従生活を送っていたナイトウィッチ“工藤敏恵”は援戦武官として欧州ベルギガ領のサン・トロンに転任させられる。
そこはかつて人類の敵ネウロイに領土を奪われた帝政カールスラントの夜間飛行隊が駐留する基地であり、隊長を務めるハイデマリー・シュナウファー大尉や他隊員達との共同生活が始まった。

個性的な面々に囲まれながらも敏恵は持ち前の能天気で仲間達と打ち解けていき、欧州では“夜の女王〈ヘリン・ディア・ナハト〉”の異名を得たその実力で幾度と襲来する強敵ネウロイも次々倒していく……。
ハイデマリー達と苦楽を共に過ごしながら、敏恵は日々に居心地の良さを感じていた。


しかしそんな折、カールスラント空軍本部からホルテン姉妹が突然来訪。
謎の特異型ネウロイ“リーパー”撃墜命令を言い渡され戸惑う自分達に対して、事情も語らず横柄を繰り返す姉妹に敏恵は我慢できずに突っかかってしまい、機嫌を損ねたヴァルトラウト・ホルテンから意外な秘密を明かされる。
それは、敏恵の突出した夜間戦闘能力は麻薬の覚醒作用に類するものであり、その身体は魔導麻薬症という奇病に毒されているに過ぎなかったということ――……そして全てが上官の小園里葉大佐によるものであり、催眠で作られた信頼によって自分は操られ利用されているに過ぎないという内容であった。

ショックと混乱によってその場から逃げ出してしまった敏恵は必死にヴァルトラウトの言葉を否定するが、催眠によって誤魔化されていた記憶が夢でフラッシュバックしていた事を悟り、かつて自分の身に起こった事情と感情を完全に思い出した。
トラウマを取り戻した敏恵は「自分には命まで賭して戦う動機など無い」と項垂れ、魔導麻薬症の中毒に侵され続けていた憐れに絶望してしまう。


戸惑と混乱に紛糾するサン・トロン基地。

だがその余所には、死神の影無き陰もまた迫っているのであった――――
 

 

ストライクウィッチーズ ~月影の構え太刀、終編~

 

 
【第十二話 利他】



サン・トロン基地

格納庫出口



敏恵「……」ポツーン


敏恵(あたし、なんでこんな目にあって……。何の為に、どうしてあたしが…っ)


――…スタスタスタ


敏恵「!」


ルーツィア「ん……。少し陽も高くなってきてるなぁ」

敏恵「……」

 
ルーツィア「よぉ大尉、ミーティング抜けといて暇か?」

敏恵「…………」

ルーツィア「まあ、実は私もそうだよ。あの女やっぱイラつくしさ、する事ねぇけどフケてやった」ゴソゴソ

敏恵「…ごめんなさいルーツィアさん。今は……あたしに構わないでください」

ルーツィア「あ? 何言ってんだお前、私は一服しに来ただけだよ。いい加減ハンガーの中で吸ってると少佐が厳しいんだ」シュボ

敏恵「……」

ルーツィア「ん……~~、フゥー…。さてと、むくんで義足がキツくなってきやがった。いてて…」ヨッコイショ


ルーツィア「――…っと、……~」

敏恵「……」

ルーツィア「フゥ~ー……」プカ

敏恵「…? ぁ……なんか…(いつもと違う匂い)」チラ

ルーツィア「いいだろこいつ? マヤ産のシガリロ、しかもリベリッシュじゃ珍しいノンフレーバーだ」

 
敏恵「はあ…? まぁ……葉巻って香料とか入れないんですよね、確か」

ルーツィア「へぇ、意外に知ってんだな? そうだよ、ブリティッシュは好みじゃないけどこいつは別さ。…~――」

ルーツィア「フゥー……、この濃い香りは結構落ち着く。…今日みたいな、嫌なことが有る時は吹かすのさ」

敏恵「……」

ルーツィア「どうだ? 大尉もやる?」クイ

敏恵「!」


ルーツィア「…フッ、なんてな」

敏恵「…………。じゃあ…」オズ

ルーツィア「! ん、そう来なくっちゃな」ス

敏恵「ど、どうも…」ゴソ

 
ルーツィア「やっぱりお前、初めてじゃないんだろ? そんな気がしてた」

敏恵「えぇと、まぁ……はい… //」パク

ルーツィア「ほら、火」シュボ

敏恵「んみゅ……~」

ルーツィア「あ、おい。あんまり強く吸うと――」

敏恵「~~……、ッ!?」ビクッ


敏恵「ッ~えっふ! ゴホッ…」

ルーツィア「……。辛いよ」



敏恵「ゴホゴホッ…。こ、これキツイ…」

ルーツィア「つうか肺に入れ過ぎ。葉巻は炙れ、香りを吸うんだよ」

敏恵「はあっ…ひぃ~……。ぁ、でも凄い効く…」ヘニャリ

 
ルーツィア「ったく、がっつき過ぎだろ。どんだけ禁煙してたんだ?」

敏恵「いや、ぅん…。その――」

ルーツィア「……」

敏恵「扶桑で……園さんといた始めの頃、偶にどうしても“抑えられない”時があって…。そうすると園さんが持って来てくれたんです。これで我慢しろって」

ルーツィア「我慢って何を?」



敏恵「……。…………ネウロイ」ボソ

ルーツィア「……」



敏恵「あたしの、…諸刃〈まほう〉でネウロイと殺し合うんです。紙一重でビームを避けて、刀を刺して、ネウロイを殺す――」ギュ

敏恵「それがもう、なんか気持ちよかったんですかね……。凄くぞくぞくしてたっていうか、…とにかくあれが無いと時々凄く辛くなるんです。喉が渇いたみたいに」

ルーツィア(スリルと快楽か…? つまり魔法のヤク打ってチキンゲームでラリってた訳か、あの時も)

 
敏恵「……知ってますかルーツィアさん? ネウロイのビームって、当たったらウィッチでも消し飛んじゃうんですよ。一瞬で…」

ルーツィア「……。ああ、残念ながらよく知ってるよ」

敏恵「ネウロイなんて怖くて、恐ろしくてたまらないのに…っ 」

ルーツィア「…~」プカ

敏恵「なのに、あんな頭のおかしい事をあたしは……やりたくないんですっ…!」

ルーツィア「フゥ~ー……。なるほど、でもお前のクソ上司に騙されて操られてたってか?」

敏恵「……。もぅ、あたしは何もしたくない――」


敏恵「何もできません、扶桑に帰ります…」

ルーツィア「……」

 
ルーツィア「はぁ…。まあ酷ぇ話だな、解るよ。そいつは後でぶっ飛ばした方がいい」クシャ

敏恵「……」

ルーツィア「…けどちょっとアレだな。お前、結論を急ぎすぎてないか?」ポイ

敏恵「ぇ…?」

ルーツィア「昔の事を思い出して解った気でいるんだろうけど――」ゴソ

ルーツィア「多分、自分の事たいして見えてないと思うよ。ん…~」シュボ

敏恵「……。そんな事、ないです…」


ルーツィア「~…、フゥ~ー……。まあ、本人には解らないもんさ」プカ

敏恵「っ…じゃあ、ルーツィアさんには解るんですか? たった数カ月しか一緒にいなかったくせに、本当のあたしの何が解るっていうんですか!? #」

ルーツィア「知るかよ。…ったく、ほら吸え。それ1本でもくそ高いんだぞ?」

敏恵「ぐぬ……っ、ぁむ…~」チュ~

 
ルーツィア「…確かに大尉の言う通り、私等はたかだか数カ月の仲だ。ガキの頃どうだったとかお前の本心なんて知った事じゃないね」

敏恵「~…」プカ

ルーツィア「けど“たかだか数カ月”、ここへ来てからの大尉は知ってる。…多分今のお前よりはよく解ってるよ」

敏恵「…………」

ルーツィア「ん…~~、フゥ……。まぁけど、ホルテンの言う様に大尉も私等を騙してたってんなら、意味ないけどな?」チラ

敏恵「…!? そ、そんな事ない! 何にも知らなかっただけであたしは、そのっ……素っていうか、べつに偽ってた訳じゃ――」

ルーツィア「そう? なら良かったよ、危うく私も“グーパン”する所だった」スッ

敏恵「ひっ…!?」ビクッ

ルーツィア「昨日と違って体重乗るぞ? エステルの何倍も痛いぜ…?」ニヤ

敏恵「ごごご、ごめんなさい! 本当に誤解ですっ、やめてぇ…!?」

 
ルーツィア「あっはは! やんねぇよ、お前がそんな器用じゃないのは誰だって分かるっての」ケラケラ

敏恵「ぅ…ぅぐぐ……。酷い…、はむ゛~~」スパスパスパ~

ルーツィア「はは、悪い悪い! ほら、吸いたいならまだ有るぞ?」

敏恵「ゴフッ…ケホ……もういいです、ご馳走さま #」クシャ ポイ


ルーツィア「――まあ、つまりさ? 私が言いたいのはそういう事だ」

敏恵「むぅ…、全然意味わかんないですけど」ムス

ルーツィア「~、フゥー…。…んだから、大尉が今思ってる自分ってのは唯の過去だろ。私と同じで、お前だってもうガキじゃねえんだよ」

敏恵「……」

ルーツィア「大尉、前に私に言ったよな? “何を経てどうなってようが自分は自分、別人にはならない”…みたいなこと」

敏恵「それは……まぁ…」

ルーツィア「だったら大尉もそうなんじゃねえの? …自分だけが可愛くて戦いたくなかったガキも、騙されて昨日まで戦ってた“夜の女王”もお前だったなら、こうして私の横に座ってる奴だってそうだろ?」

敏恵「…?」

ルーツィア「ガキも女王も経験した工藤敏恵って奴が、本物の……“今の”お前だよ」

敏恵(!!)

 
敏恵「ぃ、今の……あたし…!?」

ルーツィア「ああ。リリーとルーツィアの替え玉を経て変わっちまった私が今でも私だっつうなら、お前だってそうだろよ」

ルーツィア「大尉はパニクっててそいつが見えてなかったんだよ。ヘリン・ディア・ナハトを辞めるんだとしても、過去に戻るって訳じゃない。お前が言ってた“別人にはならない”つうのはそうじゃないんだろ?」

敏恵「……」

ルーツィア「なら今のお前ってどんな奴? エステルに言い捨てた通り、本当に魔法力を持っちまっただけの卑屈な工藤敏恵か?」

敏恵「あたし、は……」モヤ

ルーツィア「まあ時間はあるだろうし、その辺踏まえてゆっくり考え直してみな。……っしょ」ノソリ


ルーツィア「…私やシュナウファー達とやってきた数ヶ月、忘れてくれんな?」

敏恵「(ルーツィアさん…!)っ……ぁ、あの――」

ルーツィア「悪い、大尉。迎えが来たから話は終わるよ」

敏恵「えっ…?」



――スタスタスタ


オクタヴィア「曹長、集合よ。対リーパーの“ブリーフィング”を始めるわ」

ハイデマリー「……」


敏恵(うっ、マリ!?)タジ

 
ルーツィア「ん…。なに、すぐ出撃るんすか?」

オクタヴィア「あの人の性格だと恐らくそうなる可能性があるわ。場合によっては今夜中」

ルーツィア「……。そうすか」

オクタヴィア「彼女達が昨日今日ここへ来ているのは偶然じゃなく、何か機があると思うわ。とにかく――」チラ

敏恵「!」

オクタヴィア「…工藤大尉を除いてウィッチーズ全員徴収。少尉達を作戦室に連れて来て」

ルーツィア「了解。すぐ見つかるだろうけど、一応急ぎます」

オクタヴィア「お願いね。あたし達は先に行ってホルテン姉妹の様子を伺っておくから」

ルーツィア「ああ、少佐も頼みますよ? あのババァの減らず口、私には無理だ」


敏恵「……」


ルーツィア「――…んじゃ、またな大尉? 葉巻〈これ〉置いてくから取っとけ」ポサ

敏恵「ぇ? ぁ……でもこれ…」


スタスタスタ――

 
敏恵「……」

オクタヴィア「(あらあら、まさか吸わせたの? 悪い先輩だわ)…それじゃ、あたし達も行きましょうか」クル

ハイデマリー「…………」

オクタヴィア「――…? ちょっと隊長?」チラ


敏恵(ま、マリ…?)

ハイデマリー(工藤さん…)ギュ…


敏恵「…………そ、その…――」

オクタヴィア「マリーちゃん、言ったでしょ? 取り敢えず今は」クイ

ハイデマリー「……っ、はい…」プイ

敏恵「ぁ!」



オクタヴィア「切り替えて、集中しなさい?」サス

ハイデマリー「……」


スタスタスタ――




敏恵「……。マリ…」





――タッタッタッ


敏恵「…?」

オクタヴィア「あらあら、やっぱり落としてたわ。大事なペンなのよ」ササ

 
敏恵「ぇ??(なに…? 何も落ちてないけど――)」キョロキョロ

オクタヴィア「……元々、自己表現に臆病だったマリーちゃんがあんなに頑張れるようになったのは貴方のおかげもあるのよ? 敏恵ちゃん」ヒソヒソ

敏恵「!?」

オクタヴィア「貴方と同じに、大切な人の為になってあげたかっただけよ? うふふ」ニコ

敏恵「タヴィアさん…?」

オクタヴィア「ホルテン姉妹が帰るまで大尉は休んでなさい。もう接触しなくていいから、貴方が抱えている問題は後で一緒に考えましょう。……~ん」チュ

敏恵「んむっ!?///」


オクタヴィア「じゃあね♡」ヒラ


タッタッタッ――



『さあ、急ぎましょう隊長。……え? いいえ、なんでもないわよ? 本当に落とし物しただけ』スタスタ




敏恵「~~ // (ま、またあの人はいきなり口にぃ…!?)」サッ

敏恵「~……。ていうか、さっき…――」


敏恵(マリが、あたしと……あたしがマリと同じ??)モヤ


敏恵「……」
 

 

敏恵「“大切な人の為に”?? あたしが…? あたしはそんなのべつに、何も…」


敏恵「……あたしはただ、やらされてただけ…っ! そんなのもう嫌……だって、あたしは――」





~~~~~~~~~~~~~~~~


『なら今のお前ってどんな奴?』


~~~~~~~~~~~~~~~~






敏恵「!」ドキッ



敏恵「…あたしは、誰かの為になんて…… ち、違うよ…?」


敏恵(だって……自分が嫌な思いしてまでなんて、あたし…)モヤモヤモヤ




――ズキンッッ




敏恵「ッ…!? ぅ…ぐ――」フィィィン ピョコ
 

 
~~



~~~~



~~~~~~~~~~~~~~~~



『ほら、ぼーっとしてないで! 行きますよ大尉!?』



『よお大尉。…またそのうち出掛けるか?』



『大尉さん♪ 美味しいケーキが出来ましたよ?』



『敏恵ちゃ~ん♡』






『――――…ずっとこのまま続いて欲しいですね、工藤さん?』




~~~~~~~~~~~~~~~~



~~~~



~~

 
敏恵「――づはッ……はぁ…!?//」フィィン フィン


敏恵(マリ、みんな??)



敏恵「~はぁっ……ふは…」シュルル


敏恵「…………」



敏恵(そっか。いつの間にか、あたしってこんな気持ちに…――)ノソ

敏恵「ッ…痛っ……~、ぅぅ…」スク



敏恵「……すぅ~~、はぁ~ー……。ふぅー………」クテ

敏恵(なるほど、そっか。こういうのが本当のウィッチ……今の、あたしだっ!)




敏恵「……。うん、だったらあたしも――」グ


敏恵「…この第一夜空四隊はあたしが、守らなきゃ!!」
  

一旦ここまでです…

 

作戦司令室


ヴァルトラウト「それじゃあ始めようかしらね。もうわたくしが進めるから貴方は控えていなさい?」

レベッカ「…はい」スス



ヴァルトラウト「さてと、今度は余計なお喋りを禁じなさい? 我々がこんな所まで足を運んだのはリーパー撃墜の為――」バン

ヴァルトラウト「今の貴方達に必要な考え事もただそれだけよ。身分も弁えず詰まらない邪推をしないで、与えられたシンプルな任務の達成にだけ注力しなさい」

オクタヴィア「……」

ヴァルトラウト「いいわねぇ?」

ルーツィア「……」

エステル「……」

ハルテ「……」

ハイデマリー「でゅ、デュッケ少佐…」チラ

オクタヴィア「分かっております中佐、第四飛行隊了解です」

 
ヴァルトラウト「よろしいわ。ようやく真面に話ができそうねぇ?」


ルーツィア「チッ、ふざけやがって…(てめぇのせいだろが)」

エステル「そうよそうよ、偉そうに」

ハルテ「エステルさん、一応私達より偉い方々ですけど…?」

オクタヴィア「……。貴方達、お願いだから少しくらい我慢して」


ハイデマリー「ぁ、あのっ…これはなんでもないですから! その、先に進めましょう中佐!?」オロオロ

ヴァルトラウト「…? まぁいいわ、それじゃあ指示を出すからよく聞きなさい」

ハイデマリー「は、はい…」ホッ

 
ヴァルトラウト「具体的な対策と戦略はこれからだけど、とりあえず作戦の決行は今晩。遅くとも23時には始めてもらうわよ」

ハイデマリー「!」

エステル「は? ちょっと、そんなに急なの?」

ヴァルトラウト「そうよ。今逃がすとまた厄介になるから、早いに越したことはないわ」

ルーツィア「…? “逃がす”っておい、そもそもそいつが今この辺にいる保証はあるのかよ?」

ヴァルトラウト「いるわよぉ。捉まえた訳じゃないけど、まず間違いなく貴方達の管轄内で誘えば“また”来る筈」

ルーツィア「……根拠は?」ジト

ヴァルトラウト「そういうのは貴方のお仕事じゃないわよね、曹長? 手足にも思考が必要かしら? 貴方達が働く動機は脳からの指令で十分、それが組織遂行の理想よ」

ルーツィア「…あんたの命令で動くってならそれなりの理由がいる。私等が本気になれなきゃそっちだって都合が悪いだろ?」


ヴァルトラウト「ふぅん…? なるほど、一応の理屈は用意したのねぇ。進歩したじゃない?」

ルーツィア「うるせぇよ。私等を動かしたいなら最低限納得させろって言ってんだ」

エステル「確かに、ホントそれ。失敗したってしらないわよ?」

ハルテ「お、おふたりとも…」ハラハラ

 
ヴァルトラウト「フン、べつに貴方達おまけのやる気なんてどうでもいいけど――」チラ

ハイデマリー「!」ドキ

ヴァルトラウト「…シュナウファー大尉、貴方も同意見なのかしら?」

ハイデマリー「ぁ…、……はい」

ヴァルトラウト「ん~、なら仕方ないわねぇ。面倒だけど説明してあげる」ファサ

レベッカ「……」


ヴァルトラウト「わたくしのチームはかれこれ半年間XX-1を追っているのだけど、アレの出現するパターンは基本的に一貫しているのよ」

ヴァルトラウト「一つは夜間であること。そもそも視認すら難しいから何とも言えないけど、明るいうちに被害が出た事はないわ」

オクタヴィア(夜行性質…。現状のXXナンバーズがカールスラント領内からのネウロイだと信じるとして、簡単な手が打てないのは確かね)モヤ

ヴァルトラウト「二つ目に、XX-1は必ず先手で仕掛けて来るわ。それで初めてリーパーの出現に気づくのが大抵よ」

オクタヴィア「!?」

エステル「ふーん……ていうか、偉そうに言われなくたってそんなの分かるし。夜間視にもレーダーにも見つからないなら当然じゃん」

ハイデマリー「…いえ、多分そういう単純な意味ではないです」

エステル「えっ」

ハルテ「?」

ルーツィア(……なるほど、敵も“そういう腹積もり”ってことかよ)

 
ヴァルトラウト「そして三つ目、交戦をする傾向は殆ど無し。…わたくしの知る限りではねぇ?」

エステル「は?? なにそれ、意味わかんないし」

ヴァルトラウト「……はぁ~本当に、ゲルマン人種も穢れつつあるわね。知能指数に差があり過ぎてやり難いわ」ヤレヤレ

エステル「なっ!? なによちょっと!! #」バンバンッ

ルーツィア「よせエステル、もう相手すんな」

エステル「で、でも先輩!? 私だって、真面目に勉強してるのにっ!」

オクタヴィア「――…中佐。リーパーが交戦状態を避けるという事はつまり、一方的な“狩り”だと?」

ヴァルトラウト「そうそう、貴方は流石に解っているわねぇ?」

エステル「ぐぬぬ…。ど、どういうこと副隊長?」ムス

オクタヴィア「自分が仕掛けられる様な被戦闘状況じゃないって事よ…。リーパーはあくまでも一方的な優位パターンを持って現れるんだわ」

ハイデマリー「……」

 
ヴァルトラウト「まあ、これらは結果的な行動方針と言う方が正しいかしら。つまりXX-1はそれ程警戒心が強いの」

オクタヴィア(ある意味ではそれだけ“狡猾”って事ね。……想像以上に危険な存在だわ)

ヴァルトラウト「――…だから狙った獲物にはまず囮で様子を見てくるのよねぇ? ちょっと前から覚えたみたいなのだけれど、要するにそういう事よ」

ルーツィア「あ?」

オクタヴィア「過剰な用心が敵の仇になっている訳ですか。それで昨晩の三番哨戒に付いて行かれたと…」

ヴァルトラウト「ん~…あの東洋娘も使えそうか判断する為でもあったのだけど、まぁそんな所かしら」

ハイデマリー「っ…」


ハルテ「?? じゅ、准佐さんすみません。翻訳して頂いても…?」コソ

オクタヴィア「…曹長達を襲ったネウロイはその囮だった可能性があるわ。中佐はそれを根拠に、少なくとも昨晩はリーパーが来ていたと判断しているのよ」

ルーツィア「!」

ヴァルトラウト「ちょっと、そぉんな雑に考えている訳ないでしょう? 元々出現場所の傾向は把握して追いかけてたのだから当然間違いないわよぉ?」

 
ヴァルトラウト「色々とついでだったから一応確認しただけ。本当はあの場でXX-1が出て来てもおかしくなかった筈だけど、貴方達は運が良かったわねぇ?」

ハルテ「ぇ…? それって…」

ルーツィア「(私と大尉は生餌で、どっちかは死んでたってか)……吐き気がするよ、まったく」チッ

ハイデマリー「っ! #」ガタ

エステル「! 隊長…!?」

ルーツィア「あー、いいよ隊長」ハシ

ハイデマリー「で、ですが…!?」

ルーツィア「今更やめとけって、話進まないし。気持ちだけ貰っときます」

ハイデマリー「…………分かりました」トス

 
ヴァルトラウト「どう、納得できた? とにかくXX-1が確実に来る事がわかっている今がチャンス。他へ目移りする前に始末しないと駄目なのよ」

オクタヴィア「…いえ、お待ちください中佐。それなら確かに最も早い今晩出撃するのは道理ですが、空振らない保証は有るのですか?」

オクタヴィア「それだけ用心深いリーパーが昨晩囮を放って出てこなかったという事は、その時点でもう見限っていると考えるのが妥当なのでは?」

ヴァルトラウト「それは無いのよねぇ…。XX-1が貴方達を狙うのは二度目なのだから、相当拘ってる筈よぉ?」

ハイデマリー「“拘る”……とは、私達に?」

エステル「た、確かに私と大尉は前にも襲われかかったけど。なんで私達が…」

オクタヴィア「(まさか…――)……他の特異型ネウロイを倒したからかしら?」

ヴァルトラウト「あら正解。その通りよ」

レベッカ「…!」


ルーツィア「おいおい、適当言うんじゃねえよ。同類潰してるって認識なら天敵だろ? 慎重な兎がライオンを狩る訳ないし、…敵討ちなんて人間クサい真似でもすんのかよ」

ヴァルトラウト「さあどうかしらねぇ? わたくしは専門外だから興味無いのだけど、人間臭いと言えば案外そうなんじゃなあい? 賢しい割に欲深いみたいだし」クス

オクタヴィア(――!!)

ルーツィア「は…?」

 
レベッカ「…お姉様、御戯れは程々になさった方が」ボソ

ヴァルトラウト「フフ、分かっているわよレベッカ」チラ

ヴァルトラウト「心配ないわ。さっき釘は刺したじゃない――」クイ



オクタヴィア「……。…………」



ヴァルトラウト「…ねぇ? この中で探偵ごっこに興味あるのはあの女くらいよ」

レベッカ「は、はあ。それはそうですが…」

ヴァルトラウト「心配ないわよ。どの道あの女は本部へ引き渡すのだから、どうせなら“処分”される程度に色々勘付かせておくのが得じゃあないかしら?」クス

 
オクタヴィア(…やっぱりそうなのね。プラナリアンの撃墜者を直後に襲って、バウアーの件もあっての今回なんだわ! 恐らくリーパーの目的は常に同じ、エルヴィーラの時も――)モヤモヤ

ヴァルトラウト「はいはぁい! もういいかしら、時間切れ。愚図った所で命令違反は許さないから、さっさと納得しなさい」バンッ

エステル「……先輩。私、出世してもあんな高慢ちきには絶対なりません」

ルーツィア「ああ、そうしろ」


ヴァルトラウト「忠告してあげるけど、あまり下らない話よりも貴方達は考えなきゃならない事が差し迫っているのだから、そっちの心配をしなさい。さもないと冗談抜きで死ぬわよぉ…?」

ハルテ「っ…!」ゴクリ

ハイデマリー「……確かにそうですね。中佐の仰る、その視認も探知も出来ないネウロイにどう対抗すれば良いのか…」

ルーツィア「…チッ、肝心な所はこっち任せか。脳たる指揮官様が聞いて呆れるな?」

ヴァルトラウト「戦略的な指示は出来るけど、そのための戦術は貴方達次第よ? だから現役最優秀のナイトウィッチを使うんじゃない。ねぇシュナウファー大尉、頼りにしてるわよぉ?」ジ

ハイデマリー「……」

オクタヴィア「(それだけこの人達も、本心では必死なのね)…その戦略とは具体的にどのような作戦でしょうか?」

ヴァルトラウト「まあ単純な事よ。今のXX-1だったら“視えてしまえば”多分苦戦しないでしょうねぇ。無敵の装甲で姿を隠す必要もないのだし――」

ヴァルトラウト「…わたくしの予想では結構脆くて、攻撃が当たってしまえば一時的に透明化も不完全に出来ると思うのよねぇ?」

 
エステル「あ~、そういえば! 前に襲われかけた時は大尉の撃った徹甲弾が偶然当たって、確かに一瞬だけ姿を見せてた!!」ガタ

レベッカ(偶然? “アレ”が…?)モヤ


ハルテ「で、ですがそんな当てずっぽうでは危険だと思いますけど…?」

ルーツィア「…だろうな。そりゃ視えれば簡単だけど、それが無理だから奴は“XX”なんだろ?」

エステル「うっ……そ、そうですね…。夜間だったにしたってホントに透明だったし、あんなのを見つけろっていうのは流石に無理ですよね…」トス

ヴァルトラウト「そうでも無いわよぉ、おチビさん?」

エステル「は?# ちょっと、今“チビ”って――…むぐ!?」モゴ

オクタヴィア「どういう事でしょうか、中佐?」グイ

ヴァルトラウト「言ったでしょう? XX-1の光学ステルスはカメレオン型で保護色の投影に過ぎない疑似透明、程度の低い欺瞞なの」

ハイデマリー「疑似透明…?」

 
ヴァルトラウト「光が透過している訳じゃあないのよ。つまり紛らわしく視えているだけで、実際は背景の光を遮るし、影だって作るわ」

ハイデマリー「…! 成る程、それじゃあ天候によっては多少の視認性も…」

オクタヴィア「いいえ駄目よ。高度を上げられたら無意味だし、そもそも今日は雲すら殆どないわ」

ヴァルトラウト「だから頭数がいた方がいいのよ。主だって撃墜するのはシュナウファー大尉の仕事、…おまけの貴方達にはXX-1を炙り出す役目をやって貰うのがいいかしらねぇ?」

ハルテ「?」

エステル「何しろって言うのよ…? #」

ヴァルトラウト「背景汚しよ。弾幕でも、身体を使ってもいいけど、流動的な背景環境を構築してXX-1の擬態を浮き出させなさい」

オクタヴィア「…確かに名案、寧ろそれ以外に打つ手は無さそうですね」


ルーツィア「……了解。けど私等の数じゃ相当きついぞ?」

エステル「そ、そうですよ! 空だって広いし、屋内じゃないんだから!?」

オクタヴィア「照明弾――…いえ、曳光弾が使えればやり易いけど。それだと反って不味いわよね?」チラ

ハイデマリー「ぁ、……はい。すみません、あまり強い光源があると夜間視の精度が…」

 
ヴァルトラウト「――まあ…その辺の事情も織り込み済みよ、闇雲にやりなさいって言ってるんじゃないの。敵のいる方角と距離、大よその位置に最低限あたりをつけないと駄目ねぇ」スタスタ


ヴァルトラウト「そもそもXX-1の先手を看破しないと先ず始まらないから、制度に関わらず索敵は必須よ? シュナウファー大尉」ズイ

ハイデマリー「!?」ビク

ヴァルトラウト「だからこれはもう、貴方くらいにしか出来ない事なのよ。失敗したらわたくしも遂にお手上げ……荷物抱えて無様に逃げさせてもらうわ」ジロ

レベッカ(お姉様…)


ハイデマリー「…で、ですが。その……」オド

ヴァルトラウト「いいかしら大尉、よぉく聞きなさい? XX-1のステルスは完璧じゃないの、高出力の魔導波なら吸収しきれない筈よ――」

ヴァルトラウト「…僅かでも反射した短波を必ず拾いなさい。いいわね?」ジー

ハイデマリー「っ…」ゴクリ

 
ヴァルトラウト「はぁ~……作戦は与えたから、は貴方達の戦術次第よ。辞退は重罰だから考えないことね」プイ

オクタヴィア「……。第四飛行隊、作戦了解しました。…成功率を上げる為、隊内でも綿密なミーティングを実施致します」


ヴァルトラウト「精々知恵を絞りなさい、無事に終われば我々は帰ってあげるわ。ブリーフィング終わり……行くわよレベッカ?」スタスタ

レベッカ「はい」


オクタヴィア「……」




ヴァルトラウト「――…ああ、そうそう。特別准佐?」ピタ


オクタヴィア「!」


ヴァルトラウト「命令は憶えているわよねぇ? 余計な口は滑らせちゃあ駄目よぉ…?」


オクタヴィア「…承知、しております」



ヴァルトラウト「フン、よろしい」ガチャ

レベッカ「……」スタスタ


――バタムッ
 

 
ルーツィア「チッ……ったく、しんどかったな」ゴソゴソ

ハルテ「あ、ルーツィアさん! 灰皿これ使ってください?」

ルーツィア「ん、悪い。…~」シュボ

エステル「ていうかマジでどうすんの? こんな事言いたくないですけど、あのネウロイはホントに探知できませんよ隊長? 私ちゃんと魔導針使いましたけど全く何も感じなかったんだから」

ハイデマリー「そう、ですね…。ホルテン中佐の言う通りであれば、私の魔法力でどうにか出来れば――」


オクタヴィア「……。全員聞いてくれない?」

ハイデマリー「! は、はい?」

エステル「?」

 
ハルテ「ぁ、はい准佐さん。何でしょうか?」

ルーツィア「……」プカ~

オクタヴィア「リーパー対策についてだけど、RAMステルスの効果が魔法に対して完璧じゃないっていうホルテン中佐の意見自体は本当よ。かなり高出力の魔導波でレーダー探査が出来れば望みはあるかもしれないわ」

エステル「ほ、ホントにそうなの? なんか私にはちょっと、そんな風には感じませんでしたけど…」

ルーツィア「…フゥ~……。高出力って、どれくらい? シュナウファーでいけるの?」

ハイデマリー「……」

オクタヴィア「あたしは魔導針を使えないし、感覚的な事も含めてそこまでは分からないわ。でも貴方達全員の力を合わせればバウアーの電波吸収効率を上回れるかもしれない」

ハルテ「!」

ルーツィア「私等の力を…?」

エステル「合わせる??」

 
オクタヴィア「同じ魔法ならそういう応用は出来ないかしら? 特に魔導針は才能よりも訓練で身に着ける“技術”な筈だから、お互い感覚やルールは共通してるんじゃない?」

ハイデマリー「……えぇと、確かに…やれなくはないかもしれませんが」

ルーツィア「無茶振りだな? 私等4人でひとつの魔法をやれってか?」

ハルテ「い、今からでは練習する時間も無いですよね…?」

エステル「そんな、なんとなくでやった事も無い方法をぶつけ本番って――…そもそもホントに皆同じ波長なの? 私けっこう勘で覚えたんだけど」

オクタヴィア「そうなのね…。それじゃあ、とりあえず闇雲だけどバラバラでもとにかく4人全員で探査魔法を試みるしかないかしら」


ハイデマリー「…………いえ、分かりました。やってみましょう」

エステル「えっ!?」

ルーツィア「! …本気かよ隊長?」

 
ハイデマリー「はい、短波長は私に合わせてください。コントロールと受信感知は私がやってみますから、感覚的な部分は出撃前に一度合わせてみましょう」コク

ハルテ「え? は、はい!」

オクタヴィア「マリーちゃん…!?」

エステル「あ~もう! 隊長が乗り気なら、嫌なんて言えないじゃない!」

ルーツィア「……フゥ~ー…。仕方ない、だったら本気でやってみるか」

ハイデマリー「ありがとうございます、皆さん」

なかなか捗らない…
歯切れ悪いですが一旦ここまでです

 
エステル「んじゃ、これでなんとかなるんですよね副隊長?」

オクタヴィア「…そうね。リーパーが、こっちが把握している情報の“まま”なら決して悪くないわ」

ハイデマリー「ぇ?」

エステル「…? なによ、まだ何かあるんですか?」


オクタヴィア「……」


エステル「ちょっと聞いてますか?」

ルーツィア「なんだよ少佐、あのババァの真似すか? はっきり言ってくださいよ」

オクタヴィア「…ごめんね皆、実はここから本題なの。なかなか大変な事だから全員の気持ちを確認しておくわ」

ハイデマリー「デュッケ少佐…?」

ハルテ「??」

 
オクタヴィア「いい皆? 件のネウロイ・リーパーが“XX”に指定されたその特異な能力はステルスの事じゃないわ。もっと危険で根本的なものなの」

エステル「え?」

ルーツィア「……」

オクタヴィア「半年前、一人のウィッチがリーパーに襲われて死んだわ。そして彼女の履いていたストライカーユニットの片方は今も行方不明」

オクタヴィア「――…その時点でのリーパーにはまだ電波ステルスなんて無かった筈なの、当時の内部記録にもレーダーで敵影を捉えた記述があるわ。ただの夜間試験飛行で彼女はナイトウィッチではなかったから、単純に姿が見えなかっただけのリーパーにも不覚を取られてしまったのよ」

ルーツィア(…やっぱりな。恋人が死んじまった件、ずっと調べてたのか)


オクタヴィア「そして彼女を襲ったそのネウロイが特異型一号として定義された。……食事会であたしが聞き出した話が正しければ、リーパーはこの時既に電波ステルス性を持ち始めているわ」

ハイデマリー「ま、待ってください!? ではやはり、その“RAMステルス”というのは元々――」

オクタヴィア「そうよマリーちゃん、でもそれ以上は口に出しちゃ駄目。察してくれるだけでいいから」ジッ

ハイデマリー「っ…」

 
オクタヴィア「…“リーパー”なんて呼ばれる程の戦闘スペックは、あのネウロイが持つ特異〈ちから〉の結果でしかないの。もしかすれば、あたし達がこれから立ち向かう敵はそれを遥かに上回る……手の打ち様のない相手かもしれないわ」

ルーツィア「?」

ハルテ「そ、それはどういう…??」

ハイデマリー「……“自己成長”する、という事ですか? 襲い奪取した技術を模倣するだけではなく、ネウロイ自身でその発展をすると」

オクタヴィア「ええ、空軍本部の調べではそういう見解らしいわ。そもそも光学的なステルスだって人類の技術ではまだまだ不完全なのよ、完璧に擬態化できる人口装置なんて有りっこないでしょうし」

エステル「そりゃそうですけど、案外その辺の爬虫類でも食べたんじゃないですかぁ?」

ハルテ「それで変身できてしまうのも怖いですね…」

オクタヴィア「ネウロイが金属構造物以外を取り込んでしまう例は今の所無いわ。仮にそうだとしても、本物のカメレオンだって自由自在に変色できる訳じゃないし、ホルテン姉妹が言う様な“完全”は到底無理よ」

ルーツィア「…なら結局、そいつは自分で進化したっつうんすか?」

オクタヴィア「あくまで机上の推論だけど、そうね。取得した物を理解して更に考察する程の“知能”とそれに伴って尽く変質してしまえる常軌を逸した“適応力”」


オクタヴィア「――…それこそがXX-1、特異型ネウロイ・リーパーだと……そうあたしは聞いたわ」
 

 
ルーツィア「~…、フゥー……。なるほど、こうしてる間にも敵はますます化け物じみてる可能性が有るのか。つまりそれが言いたかったんだろ少佐?」

オクタヴィア「ええ。だからリーパーのRAMステルスが“今も”不完全な保証は実の所無くて、あたし達の戦略は破城するかもしれないし、それ以外のイレギュラーだって起こりうるわ」

ハルテ「!?」

エステル「ま、マジなのそれ…? 話が違うじゃん!?」

オクタヴィア「あたし達には敢えて言わなかった様だけど、この任務……皆が考えてるよりずっと危険よ。やるなら最悪に身を投じる覚悟が要るわ」

ハイデマリー「……」

ルーツィア「…~」プカ

オクタヴィア「だから皆の気持ちを確認させて? 副隊長としては失格かもしれないけど、あたしは何より貴方達を尊重したいの」

※ちょっと訂正

>>39
制度 → 精度

>>40
は貴方達 → 後は貴方達

 
ハルテ「ぅ…!」タジ

エステル「そ、そんな風にビビらされちゃうとちょっと……。~~せ、先輩っ!?」

ルーツィア「なにたじろいでんだよお前等。聞かれた通り、自分の好きに答えればいんだよ」プカ

オクタヴィア「ルーちゃんはどう?」

ルーツィア「フゥ~ー……。私はそうだな、正直どっちでもいいけど――」チラ


ハイデマリー「……」


ルーツィア「誰かしら出撃るなら加勢するよ。二言は無い」

オクタヴィア「分かったわ。……マリーちゃんは、どう?」

ハイデマリー「私は…――」

オクタヴィア「待って? 今だけは気を使わなくていいから。 よく考えて、正直に言ってみて」

ルーツィア「……」

 

ハイデマリー「…………。私は、やります」キリ


エステル「!」

ハルテ(隊長さん!?)

オクタヴィア「……いいのね?」

ハイデマリー「はい。そんなネウロイを放っておけば本当に誰の手にも負えなくなってしまいます。……より多くのものを壊して、奪って、謂れも無い誰かを悲しませます」

エステル「……」

ルーツィア「……」

ハイデマリー「ですからどれだけ危険でも私は挑みます。…ウィッチとして自分にできる事は、それ以外にありませんから」

ハルテ「……」

オクタヴィア「……」


ハイデマリー「――! ぁ…、ぃぇ今のはそのっ…… 個人的な意味です! だから皆さんはどうか、無理しないでください!?」オド
 

 
ルーツィア「……フッ、駄目だな」

ハイデマリー「!」

ルーツィア「言ったろ隊長? 私は付き合うよ」

ハイデマリー「ルーツィア曹長…」


ハルテ「っ……エステルさん!」グ

エステル「分かってるハルテちゃん。…私だってウィッチなんだから、やってやるわよ!!」ビシッ

ハルテ「はい!」

エステル「そういう事だから、副隊長。このエステル・バルシュミーデは逃げないわ!」ドヤ

オクタヴィア「……お菓子ちゃんも同じ?」

ハルテ「勿論です、私も皆さんと同じです!」フンス

ハイデマリー「エステル少尉、ハルテ少尉…」

 
オクタヴィア「…皆の気持ちは分かったわ。苦しくなるかもしれないけど、必ずリーパーを倒すわよ? そして全員で帰って来ましょう」

エステル「あったりまえよ!」

ハルテ「頑張りましょう、隊長さん!」

ハイデマリー「……はい、有難うごさいます」



オクタヴィア「じゃあ少し時間を置いてから出撃しましょう。2130時にハンガーへ集合してライン付近まで飛行、2200時には――」

ルーツィア「ん…、ちょっと待った少佐」

オクタヴィア「…なにルーちゃん?」

ルーツィア「まだ全員は確認してないすけど、大尉はどうします?」

ハイデマリー(――!)

 
オクタヴィア「…さっきの今で、流石に無理よ。聞くまでもないと思うわ」

ルーツィア「いや、大尉も私等の一員だろ? 意思を確認しないのは“仲間外れ”って事ですけど」

エステル「せ、先輩…」




ハイデマリー「……工藤大尉の作戦参加は認めません」


ルーツィア「ん?」

オクタヴィア(マリーちゃん…!)

ハイデマリー「工藤さんはネウロイとは戦えません、もう解放されたんです。…これ以上は可哀想です」

ルーツィア「~~、フゥー……。どうすかね、あいつはそんなにヤワな奴じゃないっつうか――」クシャ

ルーツィア「なんか、期待しちまうんだよなぁ」グリグリ

ハイデマリー「ッ……~わ、私達まで無理強いしたら!! 誰が工藤さんを救うんですかっ!? #」バンッ

ハルテ「きゃ!?」ビク

エステル「ちょっ!? た、隊長…?」ポカーン

 
ハイデマリー「~~っ」

ルーツィア「ぃ、いやまあ……“無理強い”て、そういうこと言ったつもりじゃないすけど…(ヤバいな、ヒステリックなシュナウファーなんて初めてだ)」タジ


オクタヴィア「マリーちゃん、あたし達だって解ってるから落ち着きなさい? ちょっとだけ感情的になり過ぎよ」クイ

ハイデマリー「ぁ…! ……す、すみません…」シュン


エステル「ひぃ~…(今日一番ビビったかも、あの隊長がぶち切れるなんて!? しかもルーツィア先輩に!)」

ハイデマリー「その…、申し訳ありません。ルーツィア曹長」ショボン

ルーツィア「あ、いや…。べつに構わないけど、なんかすみません」

オクタヴィア「……工藤大尉に関してはホルテン中佐からもこの作戦から外す様に言われているし、どの道議論する余地はないわ。それにリーパが相手だと魔導針を使えない彼女には何もできないわ、こうして指揮する能も無かったならあたしだってただの足手纏いよ?」

 
オクタヴィア「敏恵ちゃんの事はこの作戦が済んで、それからにしましょう。全員いいわね?」

エステル「……」

ハルテ「…はい」

ルーツィア「了解」

ハイデマリー「…………」コク




オクタヴィア「はい、じゃあ後は時間まで各自休みましょう。張りつめたままでもいけないわ」ニコ

ハルテ「あ、えっと…! そ、そうですね? でしたらお茶を淹れますから…!」アセアセ

オクタヴィア「あらいいわね~♪ だったら景気付けに、お茶請けは可愛い女のがいいわ♡」ナデリ

ハルテ「あぅ!? じゅ、准佐さん! ///」

オクタヴィア「うふふ、いいお尻」ナデナデ

ルーツィア「……ったく、止めろ」

 
エステル「副隊長からシリアスな話にしたくせに、切り替え速いわね…」ジト

オクタヴィア「あらあら、エステルちゃん♪ いい仕事の秘訣は限られたオフタイムを楽しむことよ?」サワサワ

エステル「なっ!? ちょ、やめ…っ!」ゾワ

ルーツィア「…勝手にレズコンパニオンにされる側はどう楽しめっつうんだよ」

オクタヴィア「違うわよルーちゃん、あたしはバイセクシュアル。さあ皆で食堂に行きましょうか」

ハルテ「は、はぃ…」


ハイデマリー「……。すみません、私は少し遠慮させてください…」スタスタ


ガチャ

――パタン




オクタヴィア「あらあら…、仕方ないわね」サワサワサワ

エステル「んのぉ~~、やめれぇー!」グイィ

ルーツィア「……」

 

執務室前廊下



ハイデマリー「……」トボトボ



ハイデマリー「――! ぁ…」ピタ


敏恵「……」


ハイデマリー「工藤さん…?」



敏恵「待ってたよ、マリ。話があるんだけどいいかな?」スタスタ

ハイデマリー「……」

敏恵「……」

ハイデマリー「…はい」


敏恵「うん。その――」

ハイデマリー(っ…)ギュ




敏恵「さっきはごめんっ!!」ペコ

ハイデマリー「ぇ…?」

 

 
敏恵「あたし自分の事ばっかりで、マリに酷い言い方した! あたしの為に……あたしの事考えてくれてたのに、八つ当たりして傷つけたから」

ハイデマリー「!」

敏恵「…だから本当に、ごめんなさい!!」

ハイデマリー「ぁ……ぃ、いえそんな…!?」オロオロ


ハイデマリー「わ…私は気にしてないですし、えぇと……私の方こそ… //」モジ

敏恵「――あたし、今更だけど解った! マリ達がどんな気持ちでウィッチをやってるのか、今のあたしが何なのかもっ!!」ガシ

ハイデマリー「…!? ///」ドキッ

敏恵「ただ魔法力があるからじゃないんだね? 誰かの為に、あたし以外の何かの為にできるのがっ……それがウィッチなんだよね!?」

ハイデマリー「く、工藤さん…」

 
敏恵「あたしは……ずっとずっと自分勝手に生きて、嫌なことはやっぱり嫌だし、人類の為になんて命賭けられないかもしれないけど――」

敏恵「…でもっ、大好きになった人達が傷つくのはもっと嫌だ! 自分だけ良くたって、きっともう耐えられないっ!」


ハイデマリー「ッ! ///」


敏恵「だからあたしは帰らない、帰りたくないっ! 今度こそ皆と仲間に、友達になってみせるから!!」

ハイデマリー(ぁ…――)

敏恵「それで、マリともまたやり直したい! また楽しく一緒に、だからっ――」


敏恵「あたしと、友達になってもいいかな? マリ…」




ハイデマリ「……」

敏恵「……」




ハイデマリー「~~っ……はぃ、工藤さん…っ!」ウル
 

 
敏恵「……ありがとう!!」ヒシ

ハイデマリー「!」


敏恵「嫌われちゃったかと思った」ギュ…

ハイデマリー「そ、そんな事は無いですから… //」モジ

敏恵「…うん。よかった」

ハイデマリー「っ……わ、私にとっても…その……。私も…工藤さんのこと…―― ///」ドキドキドキ



敏恵「ぇへへ…。急に抱きしめちゃって、びっくりするよね」スス

ハイデマリー「ぁ…」


敏恵「? どうしたのマリ、ごめん苦しかった!?」

ハイデマリー「ぃ、いえ! あのっ……な、なんでもないです… //」

敏恵(…でも顔が赤いなぁ、また困った顔してるし。暑いのかな?)

 
敏恵「よっし! じゃあ“出撃”までまだ時間あるよね、監視塔に涼みに行かない?」


ハイデマリー(――ぇ…?)ピク


敏恵「ほらほら、ね?」クイ

ハイデマリー「あ、あの……ちょっと待ってください工藤さんっ!?」

敏恵「えっ! なに、どうしたの?」

ハイデマリー「…どうして出撃がある事を知っているんですか?」

敏恵「あ、うん。実はブリーフィングしてるのちょっとだけ聞こえたからさ? マリに謝ろうと思って作戦室に行ったんだけど、丁度始まった所みたいだったし――」

敏恵「…あの中佐もいてちょっと入り辛かったから、ここで待ってたんだよね」エヘヘ

ハイデマリー「……」

 
敏恵「えーっと確か、23時までには出撃るんだよね? 夜食どうするのかな? あれ、というか夕食もまだの様な…??」

ハイデマリー「工藤さん」

敏恵「ん?」

ハイデマリー「……まさか、出撃するつもりなんですか…?」

敏恵「! …うん、心配かけちゃったけどもう大丈夫。あたしだって昔のままじゃないから、なんとかやってみせるよ!」グッ!



ハイデマリー「…………。…め、…す」ボソ



敏恵「へ? なに??」

ハイデマリー「っ……駄目です!」

敏恵「えっ」

 
ハイデマリー「工藤さんは、この作戦に参加してはいけません…」

敏恵「えぇ、あれ…? な、なんで??」ポカーン


ハイデマリー「工藤さんの気持ちはとても嬉しいです。ですが私もこれ以上、貴方に無理をして欲しくない…」

敏恵「いやいや、無理なんかしてないよ!? 確かにネウロイは怖いけど、今までの慣れっていうか…多分戦えると思うし、本当にやる気満々だから!」

ハイデマリー「で、でもっ! 工藤さんは魔導麻薬症を患っているんですよ!? それを解決しないうちに、また出撃するなんて…!」

敏恵「ぅ…! それは、まぁ……なんとかするよ。“諸刃”を使わない訓練は園さんにみっちりやらされたし、魔法力抑えればストライカー履くぐらいは――」

ハイデマリー「駄目ですそんなの、危険過ぎますっ! 薬理作用が無ければ工藤さんは夜目が効かないのに…! そんな条件であのネウロイと戦うなんて!?」

 
敏恵「あー…はは、まあ確かにそうだね? じゃあ仕方ない時は使っちゃおうかな」

ハイデマリー「く、工藤さんッ!!」

敏恵「……。ねえマリ、聞いて?」ニギ

ハイデマリー「!」

敏恵「…あたしだってこんな身体嫌だよ。でもさっき言った通り、あたしもマリ達と此処を護りたいの」

敏恵「この能力で大切なものを守れるなら、それができるなら、あたしは使うよ。それで苦しむかもしれない覚悟は出来てる。それが今のあたし、“ウィッチ”の工藤敏恵」

ハイデマリー「で、でも…」

敏恵「お願いマリ、あたしも一緒に戦わせて?」

 
ハイデマリー「……」

敏恵「ね? もう大丈夫だから」

ハイデマリー「っ……、それでも……駄目ですっ…!」

敏恵「!?」


ハイデマリー「…リーパーは普通のネウロイではありません。今夜の作戦参加は、許可できません」

敏恵「ちょ、待って!? だから、あたし――」

ハイデマリー「絶対に駄目ですッ!!」

敏恵「…!」タジ

ハイデマリー「…こ、これは命令です。貴方は来ないで」プイ

 
敏恵「……なんで? せっかく仲直りしたのに…、なんでそんな事言うの?」

ハイデマリー「~っ……すみません…。でも、命令です…っ!」ダッ


敏恵「あっ! ちょっと、マリ!?」ガシ

ハイデマリー「ぐ…――」バッ

敏恵「わ!?」ヨロ


敏恵「――あづっ!?」ドテンッ



ハイデマリー「ぁ…!」



敏恵「~~、痛た…」




ハイデマリー「ぅ……、っ…!!」ガチャ


バタムッ


――カチャ




敏恵「え? …あっ、マリ!?」ノソ


敏恵「――マリ、ちょっと待ってってば!?」ガチャガチャ

 

執務室



『か、鍵掛かってるし! …ねえマリ、開けてよ? どうしたの急に!?』ドンドン


ハイデマリー「っ…」


『聞こえてるよね!? 命令ってどうして、何で駄目なのか説明してよ!?』


ハイデマリー「……ごめんなさい、工藤さん…」



『マリってばー!?』ドンドンッ
 

 

基地内 一室



ヴァルトラウト「ぇ、ええ……解っておりますとも、覚悟はしておりますわ。それよりも、閣下の御様子はいかがでして?」


レベッカ「……」


ヴァルトラウト「――…そう、分かりましたわ。とにかく明日中には御報告致しますから、安心なさってくださいな」

ヴァルトラウト「……。ええ、了解です。…ごきげんよう」ブツ

レベッカ「…あの、お姉様。少しよろしいでしょうか」

ヴァルトラウト「はぁ~~、参ったわねぇ…」カチャカチャ

レベッカ「? お姉様…?」


ヴァルトラウト「…………。ああ、わたくしよ。例の手配なのだけど、多分必要になりそう……明日までになんとかならないかしら?」

 
ヴァルトラウト「……。そんな心配しなくていいわよ、欲しいだけ払うわ。その代り足だけは絶対につかせないで頂戴、いいわね?」


レベッカ「?」


ヴァルトラウト「まったく…。屈辱的だけど、潮時かしらね――」ブツ

ヴァルトラウト「レベッカ、荷物を纏めておきなさい? 作戦の様子をちょっと窺ってから直ぐ出るわよ」

レベッカ「え、はい? …あの、今の通信はどちらに??」

ヴァルトラウト「逃げる準備に決まっているでしょう? これで駄目だったら次は無いんですって――」スタスタ


ヴァルトラウト「完全に責任とらされちゃうわ。…閣下の御正気もネウロイ戦争が終わるまで持たないでしょうし、あの画家崩れの方はわたくし生理的に嫌いなのよ」イソイソ

レベッカ「!? しかしまだ、そう決まった訳では…」

ヴァルトラウト「何言ってるの、7割がた死ぬわよ。近頃の索敵率推移を考えればXX-1のRAMはもう進化しちゃっているでしょうから、魔導波でも無理なのは濃厚じゃない?」

レベッカ「…確かにそうですが、しかし――」

ヴァルトラウト「らしくないわねぇ、レベッカ? 愚図みたいな口答えして、わたくしの妹の癖に目が曇っているわよ」ジロ

レベッカ「も、申し訳ありません…」

 
ヴァルトラウト「まぁ…どうせ貴方の言いたい事も分かるけど、あの“フュルスティン”に情報を与えたら結局危ういわよぉ?」ゴソゴソ

レベッカ「……。いえ、私の提言したい事はそうではありません」

ヴァルトラウト「あらそう? でもチャンスなんてもう無いわよ、諦めてさっさと支度なさい」

レベッカ「…………恐縮ながら、お姉様はまだ御考慮されていない可能性が一つだけあります」


ヴァルトラウト「!?」

レベッカ「っ…!」ゴクリ


ヴァルトラウト「…ふぅん、こんな事態でやけに強気じゃなぁい? 本当にどうかしちゃったのかしらぁ? #」

レベッカ「い、いえ違います! 工藤敏恵扶桑海軍大尉について少し気になる点があるので…」

ヴァルトラウト「はぁ? あの猿娘ですって?」

レベッカ「あの東洋人が“夜の女王〈ヘリン・ディア・ナハト〉”に成れたのは恐らく、メタンフェタミン由来のマギードジングによる覚醒作用だけではありません」

ヴァルトラウト「……? …まあよろしい、聞かせてみなさい」

レベッカ「はい。実は、バルシュミーデ少尉に行った尋問の中で――」






――――最後の夜が更けていく。

再びすれ違ってしまった友人の想いも、これから迎える結末も知らないまま。


ようやくウィッチになれたあたしの……最初の夜は更けていった……
 

 

最終話:鎌鼬 に続く

 

 
【最終話 鎌鼬】



サン・トロン基地

執務室



???『――私達が離れた間に、そんな事態になっていたのね…』


ハイデマリー「はい。…申し訳ありません、ミーナ中佐」

ミーナ『なにも貴方が謝る事じゃないわ、ハイデマリーさん。ネウロイが来ることは誰の責任でもないわよ?』

ハイデマリー「……」

ミーナ『確かに短期間でそれだけの事が起こっているなら何かしらの傾向を疑うのはしょうがないけど、それを自責の材料にしたらいけないわ』

ミーナ『付いてくれている隊員の為にも、誰より客観的で冷静に努めないと駄目。 …厳しい事を言う様だけど、司令官の狼狽えは隊全体に波及してしまうのよ?』

ハイデマリー「はい…」

あれ、飛行機とばしてないのにID変わってる…?

 
ミーナ『……。それにしても、あのホルテン中佐のチームが討伐指揮を執っているのが気になるわね。それから領土奪還計画との関連も何だか…』

ハイデマリー「…私も、それには違和感がありました。ヴァルトラウト中佐の仰った通りであれば欧州全体の動きに関わる話の筈ですが、情報の認知度が低すぎると思います」

ミーナ『そうね。だけどネウロックの一件がカールスラント奪還を慎重にさせたのは間違いないわ』

ハイデマリー「そうなんですか…?」

ミーナ『ええ。ガリアを解放した当初は勢いに任せて欧州連合が攻勢に転じる話もあったのよ? 501を解隊する是非についてガランド少将と私も上の会議に出席したけど、司令本部にはそれなりに強気な雰囲気もあったわ』

ミーナ『――…でもドーバーの人型ネウロイやウォーロックが暴走した件もあって、一度様子を見る方向で落ち着いていたわ』

ハイデマリー「……。そこへ、更にネウロックが…」

ミーナ『まさかついこの前のウォーロックそっくりの姿で、おまけに予想もしない能力を持ったネウロイが現れたのだから、本部は相当面食らったでしょうね。勿論私達も戸惑ったけど』

 
ハイデマリー「…結局そのネウロイはカールスラント領に巣を持っていたネウロイだったんですよね?」

ミーナ『そうよ。それでライン川を越える計画は延期、再検討する間の前線西側防衛と拠点構築の役目を貴方達が担っているのよ? セダンに統合戦闘航空団がいるのもその為』

ハイデマリー「はい、それについては理解しています。…準備が整い次第に号令がかけられると」

ミーナ『その準備が上手くいかないんでしょうね。各国の軍上層部での意思統一で揉めてるらしいわ』

ハイデマリー「そ、そうなんですか…」

ミーナ『結局、これまでの事で慎重に考える立場もあるんだと思うわ。だからその“リーパー”や“特異型”という不可解の出現が、ネウロックの時と同じ様にカールスラント奪還を躊躇わせているというのは解る話よ』

ハイデマリー「……」


ミーナ『…ただし私も、貴方の感じるきな臭さは最もだと思うわ。ハイデマリーさん』

ハイデマリー「!」

ミーナ『こうやって考えてみれば確かに公開しない程の理由も無いわ。…私も“XX-1”については独自の情報網で噂程度にしか知り得ていなかったし、敢えて内々に留めていた様な意図を感じるわね』

 
ハイデマリー「では、その理由について言及してしまったから。それでデュッケ少佐は…?」

ミーナ『恐らくそういう事だと思うわ。あの元帥傘下の派閥だからというのもそうでしょうし、ホルテン中佐の性格を考えると妥当だわ』

ハイデマリー「……。ミーナ中佐は、その詳しい理由について何かご存知ですか?」

ミーナ『いいえ、流石にわからないわ。今はこっちの事で忙しいし』


ハイデマリー「…………」


ミーナ『……止しなさいハイデマリー大尉、デュッケ准佐もきっと詮索しないよう言った筈。そうでしょ?』

ハイデマリー「ち、違いますミーナ中佐。私はその…好奇心とかではなく、仲間のことが心配なんです」

ミーナ『! あなた…』

ハイデマリー「どうしてデュッケ少佐があんな仕打ちを受けるのか、何も知らないままで私は……何も出来ません…」

 
ミーナ『…………。実を言うと、私も大凡の見当はつくわ。けど今ここで貴方に言うべき話ではないと思うの、ごめんなさい』

ハイデマリー「っ…」ギュ

ミーナ『准佐は賢明な方だから、余計な危機から貴方を守るために釘を刺したのよ。分かってあげて?』

ハイデマリー「……はぃ」


ミーナ『…大丈夫よ大尉。そこまで不安なら、私の方でも何とかできないか考えてみるから』

ハイデマリー「えっ!?」

ミーナ『だから貴方は変に無茶しようとは思わないで? いいかしら』

ハイデマリー「そ、そんな…! ミーナ中佐まで巻き込むなんて、そんな訳には――」

ミーナ『うふふ、心配しないで? 頼りにできそうな人を知っているから安全よ』

ハイデマリー「ですが…」

 
ミーナ『何事もお互いさまじゃない? 困った時は遠慮なんて要らないわ』

ハイデマリー「……すみません、ミーナ中佐。私は貴方に助けて頂いてばかりで…」

ミーナ『いいのよハイデマリーさん。それよりもお互いまた無事で顔を合わせられれば、私はそれだけで十分なんだから』

ミーナ『…だから今夜の任務、気を付けて? 絶対にまた連絡して頂戴』

ハイデマリー「……はい、必ず」

ミーナ『頑張ってね』

ハイデマリー「はい」


ミーナ『……』

ハイデマリー「…………」




ミーナ『…? ハイデマリーさん?』

ハイデマリー「ぇ…、あ……は、はい」ギクッ

 
ミーナ『どうかした? あまり長電話してしまう場合でもないと思うけど、まだ何かある?』

ハイデマリー「ぁ、ぃぇ……。その…っ……」オド

ミーナ『……』

ハイデマリー「~……な、なんでもありません。失礼します…」

ミーナ『待って、やっぱり切らないで』

ハイデマリー「…!」


ミーナ『貴方、本当はさっきの話で連絡してきた訳じゃないのね?』

ハイデマリー「それは……えっと…」

ミーナ『…なあに? 何か聞き難い事なの?』

 
ハイデマリー「……わ、私の…個人的なことですから。こんな事を話しても、その…ご迷惑になるだけです……」

ミーナ『そんな事ないわ。私はもう少しだけ時間取れるから、言ってくれる?』

ハイデマリー「ぅ…」

ミーナ『遠慮しないで』

ハイデマリー「…っ」モジ


ミーナ『……。貴方がそんなに困る程の不得手という事は、もしかして人間関係の類?』

ハイデマリー「ぁぅ!? //」ギクッ


ミーナ『ふふ、当たりかしら?』

ハイデマリー「~… //」

ミーナ『ほら、もう言ってしまって平気よ。せっかく連絡したんだから』

ハイデマリー「…っ……じ、実は…――」

 
――――
――



ミーナ『そう。そんな事まであったのね』

ハイデマリー「……工藤さんは、本当はネウロイと戦うなんて嫌だったんです。それが本心だと思ったから、だからせめて、その力にはなってあげたかったのに…」


ミーナ『…でも、そんな彼女が戦う決意をしたのは貴方や仲間の為なのよね?』

ハイデマリー「工藤さんの気持ちは本当に、本当に嬉しいです……でも私はっ…」

ハイデマリー「――私は工藤さんが……っ、工藤さんに無事でいて欲しいのに…!」

ミーナ『!』

ハイデマリー「これ以上夜間の出撃なんてしたら、魔導麻薬症の副作用で壊れてしまうかもしれないのに…! それにこの任務は……今夜の出撃だけは本当に、危険…なのに……っ」ギュ

ミーナ『……確かに、そうね。客観的にも貴方の判断は当然よ、私が指揮官でもそうするわ』

ハイデマリー「~っ……だから、…だから私は………」ウル

 
ミーナ『ハイデマリーさん落ち着いて、ゆっくりでいいのよ』

ハイデマリー「…っ……す、すみませっ…。こんな話…」グス

ミーナ『気にしないで。あんまり溜め込み過ぎちゃうとそのうち本人にぶつけちゃうんだから、誰かに話した方がいいわ』




ミーナ『…それにしても、何というか他人事に思えないわね。まさか貴方まで扶桑海軍のウィッチに悩まされるなんて』

ハイデマリー「?」

ミーナ『あの人達って純粋ではあるけど頑固というか……鈍感だし、こうと決めたらそれしか見えなくなるのよね…』

ハイデマリー「……それは、501の方ですか?」

ミーナ『ええ、2人もいるのよ。特に美緒なんて、宮藤さんが来てから無茶ばかり……こっちがどれだけ心配してるかなんて――』

ハイデマリー「…………」


ミーナ『――…! あ、ごめんなさい!? つい私の方が愚痴っちゃったわね…』

ハイデマリー「ぃ、いえ…」

 
ミーナ『オホンッ…! と、とにかくハイデマリーさんの気持ちは私もよく解るわ。出撃禁止命令も隊員を守る指揮官として間違ってないから、そこは自信を持っていいのよ?』

ハイデマリー「……」

ミーナ『……。後ろめたい?』

ハイデマリー「えっ」

ミーナ『隊長としてじゃなく、自分の我儘を通している気がして落ち着かないのね?』

ハイデマリー「……はい」

ミーナ『だったら私が保証してあげる、貴方の判断は正しいわ』


ミーナ『――ただね、ハイデマリーさん? …彼女が本当に覚悟を決めたのなら、貴方もそれを尊重して、護ってあげるべきかもしれないわね』

ハイデマリー「……」

 
登場人物メモ


 ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ(Minna-Dietlinde Wilcke)

※原作キャラクター※
(アニメ“ストライクウィッチーズ”シリーズ、他)

カールスラント空軍第3戦闘航空団司令中佐であり、連合軍第501統合戦闘航空団“ストライクウィッチーズ”隊長。19歳のウィッチ。
気品と柔らかな物腰をした、カールスラント勢スーパーエースの一角。
しかしながらその航空戦技能以上に、対人折衝や指揮手腕において現役ウィッチの中では最高峰の存在感を示している。
“ピース・アク”や“フュルスティン”など、愛通称の類も沢山ある御様子。

昨年の第一次501解散後に、彼女の率いる独立飛行隊がサン・トロン基地に駐留し“幽霊ウィッチ騒動”を経てハイデマリーと知り合った。
以来、ミーナ中佐はハイデマリーにとって指揮官を務める先輩で、信頼を寄せる相手になっている。

 
―同日 21:30―


格納庫



ハルテ「~~っ //」フィィィン

エステル「……」フィィン

ルーツィア「……どう、隊長?」フィィン

ハイデマリー「…………」チカチカ


ハイデマリー「はい。…多分、できていると思います」シュルル

ルーツィア「ん、じゃこれで行くか」シュル

エステル「ふぅ…、本当にこんな事できるんですね。私達が初じゃないですか?」シュルル

ハルテ「っぷは! ひゅぁ~~…… ///」シュルンッ

エステル「ていうかハルテちゃん、大丈夫?」

ルーツィア「…力み過ぎだろ」

ハルテ「はふっ……す、すみません…。なんだか緊張してしまって、つい息を止めていました…!」

ルーツィア「な、なんでだ…?」



――スタスタスタ


ヴァルトラウト「へぇ、面白いことやっているじゃなぁい。悪くはないわねぇ?」

レベッカ「成る程。単純に出力の4倍増幅ですか」

オクタヴィア「…マリーちゃん、なんとかなりそう?」

 
ハイデマリー「あ、はい。…予定通りの事はできそうです。やってみます」

ヴァルトラウト「頼んだわよぉシュナウファー大尉? 貴方が処理してくれるのが何より一番なのだから、頑張りなさい」

ハイデマリー「…? は、はい」

ルーツィア「出しゃばり中佐殿も来るか? 守ってやんねえけど」ゴソ

ヴァルトラウト「あら、相変わらず威勢のいい愚図ねぇ? 精々役にたってから死になさい」

ルーツィア「…フッ、なら死んじまう前にここであんたの前歯でも折っておくか? ん……~」シュボ

ハルテ「!」

ハイデマリー「る、ルーツィア曹長!?」

ヴァルトラウト「はぁ? …貴方って本当に生産性皆無のゴミなのね。やれるものならやってみなさい?」ファサ

レベッカ「蛮行は慎みなさい曹長、お姉様は喧嘩〈チンピラ〉の貴方とはレベルが違います。白兵戦術も体得しておられるプロでいらっしゃいますから」

エステル「え゛、マジ!?」ガーン


ルーツィア「……。ほーん」スタスタ

オクタヴィア「曹長、やめなさい」

 
ルーツィア「……~」ズイ

ヴァルトラウト「クス…、まさか本気?」ニヤ



ルーツィア「――…フゥ~~ーッ!」

ヴァルトラウト「!? ぶあッ……ゲホゲホッ!!」ヨタタ


レベッカ「なっ…!? お姉様!」

ルーツィア「ばーか、やるわけねえだろ」

ヴァルトラウト「ゴホッ……~く、くっさぃ…」パタパタ

ルーツィア「リーパー倒したら私等は普通に帰って来るぜ? …それまでに消えな“糞ババァ”」ニヤ

 
ヴァルトラウト「~コホッ……調子に乗るんじゃないわよ? このわたくしに向かって #」

レベッカ「貴様! 下士官が中佐へ対するこの無礼、ただ事で済むと思うなっ!?」

ルーツィア「腰巾着が、うるせえよメガネ」ジロ

レベッカ「!?」




ルーツィア「~…、フゥー……。じゃ、そろそろ出撃ますか?」スタスタ

エステル「よっしゃー、流石ルーツィア先輩! やってやりましたね♪」スタタッ

オクタヴィア「…ちょっとルーちゃん、貴方あれはやり過ぎよ?」スタスタ

ハルテ「ぁ…あのそれよりも、隊長さんもいらっしゃったのに“メガネ”と罵倒するのは少しどうかと…」ステテ

 
『ん? ああ、シュナウファーはまぁ……似合ってるし』

『そうよハルテちゃん、隊長は他の雑魚とは違うんだから!』

『えぇ…』

『あ、ルーちゃんポイ捨て駄目! というよりハンガーでタバコは禁止って言ってるじゃない』




ハイデマリー「ぁ……ぇ、えっと…――」オドオド

ハイデマリー「す、すみませんでした。あの……し、失礼します!」ペコ


――スタタタッ



ヴァルトラウト「~っ……成る程、不敵なレベルの馬鹿ってむしろ扱い難いのね? コホッ…参考になったわ」

レベッカ「ルーツィア・ピッケンハーゲンめ…ッ! お姉様、粛清すべきです!! #」

ヴァルトラウト「貴方、わたくしにアレと同じ土俵に立てと言うの? 冗談じゃないわぁ」

レベッカ「ですがお姉様――」

ヴァルトラウト「ムキに相手するんじゃあないの。…どうせ生きて帰って来なさそうなのだし、ちょっとした授業料よこんなもの」コホコホ

レベッカ「……」

ヴァルトラウト「そんな事より、さっさとプランBの準備にかかるわよ。餌が食い尽くされないうちにねぇ?」

 

敏恵の部屋



敏恵「あー……」ゴロン



敏恵「……。はぁ~…なんでこうなっちゃったんだか…」

敏恵(結局マリは引きこもって返事もしてくれなかったし、本当よくわかんな――)


敏恵「――…ぁや、解んなくは…ないか」ムクリ



敏恵「……」スッ

敏恵(確かに“諸刃”を使えないあたしじゃ暗がりも視えないし、この辺のネウロイに勝てるかも微妙――)ニギニギ


敏恵(…それに、こんな所に居続けたら多分我慢できなくなる)ギュ




敏恵「あたしの身体、どうなっちゃうんだろ…? 魔法力が抜けたら戻れるのかな?」


敏恵「……」


敏恵「…いや、違う違う! あたしは本当の“ウィッチ”になるって決めたんだから!」ペシペシ

敏恵(とにかく、もう一度マリと話し合ってみよう!)

 

執務室



『――ぁ、あれ? なんだ開いてる?』ガチャガチャ


『マリ? …マリー! 鍵開いてるけどいいのー? もう入っちゃうよー?』


ガチャ――


敏恵「…? なんだ、やっぱりいないのか」パタン

敏恵「いや、でもおかしいなぁ? 食堂にもいなかったし、ていうか誰もいなかったし…」

敏恵「むー……まだ23時じゃないけど、もう出撃ちゃったのかな?」チラ

 
敏恵「…結局、なんとか型ネウロイの撃墜作戦には参加できなかったか。……しょうがない、戻って来るの待とう」スタスタ


敏恵「よっこらしょ、マリ隊長の席にすわっちゃえ」ガタ

敏恵「はぁー……。今日はもう、色々あって疲れたぁー…」ギシ…


敏恵「…………。それにしても、綺麗にしてるなぁマリは。真面目というか質素というか」




敏恵「――ん、おやおや? しかして机に出しっぱなしの紙とペンが、何だろ~?」カサ

敏恵「…? “工藤さんへ”って、あたし宛??」ピラ


敏恵「何これ、書くつもりで止めたのかな?? 躊躇い跡っぽい点だけで、その他には何もない…?」

敏恵(やっぱさっきのことマリも気にしてるのかも。あたしを突き飛ばしちゃった時、凄い悲しい顔してたし)モヤ


敏恵「……嫌だなぁ、早くまた仲直りしなきゃ…。今日は一回もマリの笑顔を見てない気がする」パサ

 
敏恵「はぁ……。ていうか、なんか写真立て全部倒れてるし。直しといてあげよ」カタ

敏恵「――! ありゃ、写真入ってないじゃん…?」


敏恵「……こっちの写真立てもだ。中身抜いたから伏せてたのかな??」


敏恵(ろくに仕舞ってもいないって事はついさっきやったばっかだよね? あの手紙も多分…――)モヤ



敏恵「……。なんか、やけに片付いてる部屋…」キョロ


敏恵「書置きっぽい紙…」チラ


敏恵「で、写真は無し――」ジー





~~~~~~~~~~~~~~~~

ハイデマリー『リーパーは普通のネウロイではありません、今夜の作戦は――』


ハイデマリー『絶対に駄目ですっ…、貴方は来ないで』

~~~~~~~~~~~~~~~~





敏恵「…なんだろう、なんか胸騒ぎがする」ザワ…


敏恵「……」


敏恵(もしかして、マリ達ってば…!?)ガタッ

すみません、一旦ここまでです

 

格納庫


ヴァルトラウト「――…まぁ、ざっとこんな程度かしら」ファサ

整備兵「な、なんてことだ…。援戦武官殿の……扶桑軍から預り物のストライカーが…」ワナワナ


レベッカ「このストライカー、存外よく作られていましたね」

ヴァルトラウト「旧世代のレシプロ機にしてはねぇ? 前に見た設計よりは洗練されているけど、まだ細部が甘いわ」

レベッカ「無駄と思われる構成部はバイパスしてすべて取り外しましたので、エネルギーフローの効率は上がったと思われます。重量もいくらかは減ったでしょう」

ヴァルトラウト「はぁ~…。ワンオフで履き手を限定する様な物は、本来わたくしの主義に反するのだけど」

レベッカ「今一時の必要措置です、お姉様。XX-1を処理する為に」

 
ヴァルトラウト「まあいいわ、今回は特別よ。けど肝心の女王さまは動けるのかしら?」

レベッカ「それは……判りかねますが、取り敢えず私がここまで連れて参りましょうか。どの様な状態であれ、逃亡はしていない筈ですから」

ヴァルトラウト「そうねぇ…。まったく、壊してしまったのは失敗だったわ。泣きつかれた時の話を鵜呑みにしたわたくしも迂闊だったけど、コゾノも本当に見る目が無かったのねぇ?」ハァ


整備兵「ぅぅ……こんな勝手を許してしまって、隊長や副隊長になんて報告すれば…」ガク

ヴァルトラウト「…ちょっと貴方、さっきから煩いわよ? 本司令幹部代行者のわたくしが良いと言っているのだから問題なんて無いの。もう用済みだからあっちへ行きなさい」ジト

整備兵「勝手は許すなと我々が隊長達に任されていたのに……ぁぁ…申し訳ありません特別准佐殿ぉ…」メソメソ

 
ヴァルトラウト「男子の癖に気持ち悪いわねぇ? どうせその指示の責任者は帰って来ないわよ。あの隊長も賢くはあるみたいだから多少は覚悟のうえなのでしょう?」

レベッカ「……そういう訳です。貴方が叱責される可能性は5割以下ですから、安心しなさい」

整備兵「ぅぅ…そういうことではなく、権力に屈した自分の不甲斐なさがぁ…」

ヴァルトラウト「女々しい上に無駄にお喋りする男ね…。こんなモノまで同種なのだから、ゲルマンの穢れも深刻だわ」

レベッカ「はい、まったくです」




――ザッ


「ちょっと待って!! 今のどういう意味!?」




ヴァルトラウト「…? あらいやだ」

レベッカ「工藤扶桑海軍大尉!?」


敏恵「はぁ……ぜぇ…。マリ達が帰って来ないって、どういう事ですかっ!?」

 
ヴァルトラウト「ふぅん、なぁに? 壊れたのかと思ったら案外元気じゃないの」

レベッカ「…これは僥倖ですね、お姉様」

ヴァルトラウト「フフッ、いいわよぉ! 我々にもようやく運が向いてきたんじゃあないかしら?」ニヤ

敏恵「意味わかんないこと言ってないで教えてください!! さっきのは、マリが覚悟のうえだとかって…!?」

ヴァルトラウト「教えるも何も、聞いていたのだったらそのままの意味よぉ? カマイタチの女王さま」

レベッカ「…我々が知るXX-1の成長速度と状況情報から考えて、ネウロイ・リーパーは自身の備えるRAMステルスを恐らく、ほぼ完全な電波吸収を行える程までに発展させてしまいました。その高次な知能を鑑みるに、構造の根元を理解して更に類する幾つかの進化を成している可能性があるという事です」


敏恵「……? …??」


ヴァルトラウト「はぁ~…少し見直そうかと思ったのだけれど、やっぱりお猿さんね? つまりXX-1はあのシュナウファー大尉でも如何しようもない存在になっているから、大方作戦は上手くいかずに“死ぬんじゃなぁい?”ってことよ」

敏恵「!!」

 
ヴァルトラウト「ブリーフィングの後に5人でコソコソしていたみたいだけど、決起集会でもやっていたんじゃないかしらねぇ? あの曹長もやけに生意気だったし」

レベッカ「“どうせ最期”な強がり、でありましょうか?」

ヴァルトラウト「ああ、そうそう。それよ」ピシ



敏恵「ゃ、やっぱり…! ……~ッ!!」ダッ


ヴァルトラウト「――あらいやだお猿さん、お待ちなさいな?」グイィ

敏恵「ぇぐっ!? ちょ、放して…ッ!」

ヴァルトラウト「一応確認するのだけど、何をするつもりかしらぁ?」

敏恵「な、何ってそんなのっ! 助けに行くんですよ!! 放してください!?」

 
ヴァルトラウト「ん~それは結構な事ねぇ、自分からやる気になってくれるなら手間が省けて助かるわ」ニコ

敏恵「は…?」

ヴァルトラウト「けど闇雲にやっても上手に勝てないわよ。…フフ、わたくしが助力して差し上げましょうかぁ?」

敏恵「……ぇ、何?? 邪魔するんじゃないの?」

ヴァルトラウト「いいえとんでもない。わたくし、貴方の評価を見誤っていたみたいだわ。ごめんなさいねぇ?」ニコニコ


敏恵(な、なんか気味悪いんだけど…)タジ

 
ヴァルトラウト「あらいやだそんな顔して、一応本心よぉ? …あんなに怯えて兵士適正皆無だった筈の貴方が、この僅か数時間で“本物”になっているのだもの」

敏恵「ぇ…?(まさかあの時の……やっぱりこの人が園さんと一緒にいた――)」

ヴァルトラウト「フフッ、はっきり言って不条理〈ミラクル〉。いったい何がおこったのかしら」スッ

敏恵「!」

ヴァルトラウト「流石に興味あるわ、…ねぇ?」サワ

敏恵「……」




敏恵「っ…。あなた達が酷い事したせいで、友達のおかげで、自分と向き合えただけです」

ヴァルトラウト「ふぅん…?」

敏恵「あたしは“ウィッチになっただけ”の、ごく普通の女の子。救世なんて…大儀なんて知らない――」


敏恵「…だからこの魔法力〈ちから〉で、好きなものを守るんです! ただそれだけっ!!」バシッ


ヴァルトラウト「!?」

レベッカ「お姉様!」

 
ヴァルトラウト「…あらそう。シンプルで悪くないんじゃない?」サスサス

レベッカ「だ、大丈夫ですか?」

ヴァルトラウト「平気よ、少し強く払われただけ。…それにしても――」クス


敏恵「~っ……」グヌヌ


ヴァルトラウト「若さって案外面白いものなのねぇ? デバイサーにこれだけ関心を持つのは初めてだわ」

敏恵「…?」

ヴァルトラウト「貴方、これが済んだらわたくしの元にいらっしゃいな。まともでいられる残り数年間くらいは有意義にしてあげるわよ?」ゴソ

敏恵「えっ」

レベッカ(お姉様? まさか…)

ヴァルトラウト「フフ、魔法力があるうちならいつでも歓迎だから。是非ここへ連絡しなさい?」スッ

 
敏恵「……遠慮します。絶対嫌だ…」

ヴァルトラウト「あらまぁ、嫌われたわねぇ…。なんなら衣食住とお金くらいなら不自由させないけど?」

敏恵「!!」ピクッ


ヴァルトラウト「決まりかしら?」

敏恵「あっ…!? ぃ、いらないっ! 結構です!! ///」ブンブン

レベッカ「今、一瞬揺らぎましたね」クイ

ヴァルトラウト「そうね」クス

敏恵「うぐっ…! そ、そんなことないから!? //」

 
レベッカ「それよりもお姉様。デバイサー調達も宜しいかと思いますが、あまり御時間を使い過ぎるのは…」

ヴァルトラウト「あらいけない、少し興に乗り過ぎたかしら。悠長にしていると餌役の大尉達が死ぬわねぇ?」

敏恵「ッ!? …そうだった、皆が!!」ダッ

ヴァルトラウト「あ、だからちょっと貴方? お待ちなさ――」


敏恵「こんな馬鹿話してる場合じゃないんですっ!!」タッタッタッ




シュダッ


――スポ




敏恵「いくよ、月光ッ!!」フィィン ピョコ



ゴォン…~――


……ガゴォォオオオオッッ



敏恵「!? ぇ……?」


ビリリッッ


敏恵「ぎゅづぅッ!!?」ビク
 

 
ヴァルトラウト「はぁ~…だから、待ちなさいと言ったでしょう?」スタスタ

レベッカ「……大尉殿、そのストライカーユニットは我々の手でカスタム済みです。安定機構と他回路内の無駄を除去したうえで魔導エンジンを再調整してあります」スタスタ


敏恵「~~っ! な、なに…? //」ピリピリ

ヴァルトラウト「まぁ、ちょっとした手直しよ。昨晩見た戦闘を参考にして、貴方向けのピーキーな仕上がりにしてあげたから」

ヴァルトラウト「普通ならとても扱える仕様ではないのだけど、魔導投薬で集中力諸々を覚醒させた貴方なら多分いけるわよ?」

敏恵「いや違…っ、なんかこの……お尻にビリッっときてるの何!?」

レベッカ「それは過増幅によるフィードバックでしょう。魔導出力が許容量を超えてしまうのは想定外でしたが、ウィッチの身体に害はないので気にせずとも良いです」

ヴァルトラウト「ちょっとやり過ぎたかしらねぇ? このユニットの強度だとぉ……2時間持たないでしょうから、早めに片付けなさい」

敏恵「えぇ……」

 
ヴァルトラウト「まぁとにかく、魔導麻薬の作用と貴方の“固有魔法”なら十分に戦える筈よ」

敏恵「! ……はい?」

レベッカ「貴殿の固有魔法を最適に活用する戦略も授けますので、長期戦になる可能性も削減できます」

敏恵「へ?? 固有魔法って……あたしの夜間視力は麻薬の力だって…?」

ヴァルトラウト「違うわよ。確かに散瞳による夜目も効いているでしょうけど――」


ヴァルトラウト「貴方、コアの位置がわかるのでしょう?」ジロ

敏恵「…? そりゃあ……はい。勿論」


レベッカ「……」

ヴァルトラウト「……。“勿論”ですってレベッカ? 本当に馬鹿みたいな話ねぇ?」ハァ

レベッカ「はい」

 
敏恵「?? な、何が…? だってそんなの、普通に見えるんじゃ――」

ヴァルトラウト「そぉんな訳ないのよお間抜けさん!? ……まったく、本当に自覚も無いなんて。コゾノが“箱入れ管理”した弊害だとしても有り得ないわ」

レベッカ「工藤扶桑海軍大尉。貴殿がプラナリアンを撃墜した時の様な真似など、普通には出来るものではありません」

敏恵「ぇ……な、なんであの時のこと知ってるの…?」

ヴァルトラウト「そんな問題はどうだっていいのよ」


ヴァルトラウト「貴方は魔眼も持っていないから……ふざけた様な話なのだけど、とにかく本当の“超夜間視力”は一応存在しているわよ。本人も含めて誰一人も理解していなかっただけでねぇ?」

敏恵「!」

ヴァルトラウト「まぁ、最適かどうかは微妙でしょうけど? 確かにその固有魔法、超夜間視力と呼称しても差し支えは無いかしら」

 
敏恵「……な、なんかよく解んないけど。とにかくXXなんとかのネウロイを倒して、マリ達を守れるんですね?」

ヴァルトラウト「そうよ、使い方次第で少なくとも戦いにはなる筈だわ」

敏恵「よし、なら何でもいいです!!」


ヴァルトラウト「全然よくないわよぉ? XX-1相手に命の保証なんて無理なのだから、ちゃんと理解して使わないとお仲間を助けるどころじゃあないわよ」

敏恵「ぐ…! だ、だったら早く教えてください!?」

ヴァルトラウト「はいはい、だから今から説明する所よ」

敏恵(っ……負けないでねマリ、あたしが今行くから!!)ギュッ

ヴァルトラウト「フフッ。今このわたくしの為にある様な……貴方に相応しい能力よぉ? ヘリン・ディア・ナハト」ニヤ

>>119訂正



敏恵「……な、なんかよく解んないけど。とにかくXXなんとかのネウロイを倒して、マリ達を守れるんですね?」

ヴァルトラウト「使い方次第でねぇ? 少なくとも戦いにはなる筈」

敏恵「よし、なら何でもいいです!!」フィィィ


ヴァルトラウト「全然よくないから待ちなさい。XX-1相手に命の保証なんて無理なのだから、ちゃんと理解して使わないとお仲間を助けるどころじゃあないわよ」

敏恵「ぐ…! だ、だったら早く教えてよっ!? #」

ヴァルトラウト「はいはい、だから今説明する所じゃないの」

敏恵(っ……負けないでねマリ、あたしが今行くから!!)ギュッ

ヴァルトラウト「フフッ。今このわたくしの為にある様な……貴方に相応しい能力よぉ? ヘリン・ディア・ナハト」ニヤ

すみませんが一旦ここまで、週明けまでに残りを更新して完結予定です

ブレイブウィッチーズ放送に間に合わなかったナ……(・×・)


焦らなくていいからまだ続けてほしいな、小話とか

結局まだ最後まで書き溜まっていないんですけど、起きたら更新頑張ってみます
wikiの編集も後回し、というかスレ終わった後にのんびりやります……

のんびり小ネタとかやってもいいのよ
普通に面白いからまだ終わらないでほしい
むりはしないでな

 

ライン川沿岸 上空



――ブゥゥウン…


ルーツィア「結局ここまで来ちまったな…」フワ

ハルテ「今の所は何も、でませんね?」

ルーツィア「……少佐」チラ

オクタヴィア「いないなら寧ろそれが一番いいけど、明けるまで油断はできないわ」ブゥゥン

オクタヴィア「実際、エルヴィーラはそれで殺られてしまった。今は常識を疑うくらいでないと駄目よ」

ハルテ「准佐さん…」

 

ハイデマリー「…………」ブゥゥン~


エステル「―…? ちょっと隊長、どこまで行く気ですか」ムンズ

ハイデマリー「! ぇ…?」

エステル「そっちはもうライン川越えちゃいますよ?」

ハイデマリー「あっ……ぃ、いえ…! すみません…」

エステル「隊長が任務中にうっかりするなんて、どうかしたんですか?」

ハイデマリー「……」

エステル「もしかして――…ていうかもしかしなくても、あの大尉の事ですよね」ハァ

ハイデマリー「!?」ギク

 
エステル「はぁ~もう、隊長はホント優し過ぎ。あんな風に突っぱねられたらんだから、偶にはガツンと言ってやれば良いんですよ」

ハイデマリー「いえ、それについてはもう解決したんですが…」

エステル「えっ、そうなんですか!?(なんだ大尉、立ち直ったんだ…。よかった)」


ハイデマリー「はい。ですが…」

エステル「…? “ですが”??」

ハイデマリー「その……この作戦に、自分も戦うと――」

エステル「!」

ハイデマリー「それで私は無理矢理、工藤さんに出撃禁止命令を…」

エステル「……。あー、なるほど」ニヤ

 
ハイデマリー「!? ど、どうして嬉しそうなんですかエステル少尉…?」

エステル「ふふん♪ だってあの人はやっぱり、私の目指すウィッチのひとりで間違いないみたいですから!」ムフフン

ハイデマリー「そんな! 確かに考え自体は立派ですが、工藤さんの身体はっ…!」

エステル「んー…でもルーツィア先輩だって現役だし、ウィッチなんだからそこは自分で決められると思いますけど――」

エステル「ただ、まあ隊長の気持ちは勿論分かりますよ? あのボケた大尉のことだから、どうせまた隊長を守るとか私達の為に戦うとか、そういうナンパなお節介を言ったんでしょ?」

ハイデマリー「ぅ…は、はぃ…」

エステル「やっぱり。まったく、私達もウィッチなんだから大きなお世話だっつうんですよ。ね、隊長?」

ハイデマリー「ぇ…? わ、私はなにもそこまでハッキリとは…」

エステル「――む! だから駄目なんですってば!」ビシッ

ハイデマリー「えっ」

 
エステル「隊長は強いのに、そうやって一見頼りなさそうな顔してるから大尉も護りたくなっちゃうんです!」

エステル「一発ビシッと笑って“大丈夫だ”って言ってやれば説得力もありますから。ああいう鈍感にはしっかりぶつけてやんなきゃ伝わんないですよ?」

ハイデマリー「……! 笑顔…」

エステル「そうですよ。私はカッコいいのも好きですけど、隊長は超美人なんだし!」

ハイデマリー「ぇ…そんなことは ///」


――…ブゥゥン


オクタヴィア「貴方達? それ以上は行き過ぎだわ」フワ

ハルテ「どうかされましたか?」

ルーツィア「…エステル、シュナウファーの邪魔すんな」

 
エステル「ちょっ! 違いますって、どうしたらそう見えるんですか!?」

ルーツィア「ん? …いや悪い、確率的に」

エステル「酷っ!? 後輩をもっと信頼して!」ガーン


ハルテ「…隊長さん?」オズオズ

ハイデマリー「ぁ、いえ大丈夫ですハルテ少尉。何でもありません」

オクタヴィア「……。とにかくこの辺りでもう一度やってみましょ? 国境も直ぐそこだから他のネウロイの出現にも警戒してね?」

ハイデマリー「そうですね、…では皆さん」ス

ルーツィア「ん、了解」ニギ

ハルテ「このポイントで4度目…。本当にこの辺りの空域にいるんでしょうか?」ギュ

エステル「ていうかこの索敵がちゃんと効いてるか分かんないし。まさかこれ、見つけるまで毎日やるハメになるの…?」

ルーツィア「ほら、愚痴ってないで手貸しな」

エステル「……はーい」ニギ

 
オクタヴィア「少し辛抱強く待った方がいいのかもしれないわね。リーパーがこっちを狙っているなら、向こうだって接近して来る筈だから」

エステル「でも、もしそれに私達が気づけなかったら――」

ハルテ「っ…」

ルーツィア「集中しろエステル。…隊長の気が散る」フィィン

エステル「むぅ~、了解です」フィィン

ハルテ「ぉ、お願いします。隊長さん…」フィィン

ハイデマリー「はい」フィィィン






――……




………………




ハイデマリー(やっぱり何もいない、これだけの出力と感度で全く反応は無し…。そう、感じる…)
 

 



――…………




ハイデマリー「っ……(気を抜いたら駄目! もっと、もっと集中して…!!)」




――…………~……



ハイデマリー(…?)チカッ




……~゛…




ハイデマリー「――! ぃ、いた…?」

オクタヴィア「!? 流石よマリーちゃん! 方角と距離は?」

ハイデマリー「ぁ、いえ待ってください!? まだっ…(今のは、ノイズ?? それとも…――)」フィィィン




――…………




ハイデマリー「っ……お願い、もう一度分かれば…!」






…~………~~~゛



ハイデマリー「!!」

 
ハイデマリー「いましたッ! 西北西の距離1249の挙上18度から――」バッッ

エステル「んなっ!?」

ハルテ「ち、近く…!?」ドキ


ハイデマリー「こちらに突進して来ますっ!!」ジャギッ


ドォオンッッ――






ゴゴォ オ゛ン ッ


『ッ……、~~ー!!』






オクタヴィア「!」

ルーツィア「なんだ!?」

ハイデマリー(あ、危なかった…!)

 

――ビュォオオンッ


リーパー「 ・ ・ ……~」シュゥゥ…




エステル「で、でたっ!!? あの時と同じ!!」

オクタヴィア「…エステルちゃん以外は全員初対面だけど、間違いなさそうね」

ハルテ「あれが…!?」

ルーツィア「……マジかよ? 本当に消えてやがった…!」

ハイデマリー「はい、今まさに狙われていました」

オクタヴィア(闇からの初撃はなんとか凌げた訳ね。…問題はここから――)ゴクリ




リーパー「~~」ピカッ




エステル「あっ!! やば、あいつまた…!!」
 

 

リーパー「…… ・ ・ ・  」スゥ…






オクタヴィア「…!? いけないっ、思ったよりも再生が速いわ!!」

ハイデマリー「――…っ!」ドガァン




ヒュウン…




オクタヴィア「消えたわ!」

ルーツィア「…チッ、逃げる気か!?」

ハイデマリー「くっ…!!」ブゥウンッ

ハルテ「あっ、隊長さん!?」

 

ハイデマリー(間に合わなかった! でもさっきと条件は違う――)ジャキ


ハイデマリー「なら、少しは…ッ!!」フィィィン





  「   ~ …  」ボヤ





ハイデマリー「!(いた…!)」ドォンッ






バギィィンッ


リーパー「~ッ……ッ!?」シュゥゥ

 

ハイデマリー「…よし(元に戻らせないっ、もう一度!)」




リーパー「~~ー!」


ビュンッッッ





ハイデマリー「…!(速い! 加速した…!?)」


――ガザッ

オクタヴィア『マリーちゃん! 貴方、今のは…!?』

ハイデマリー「相手もこちらも動いているので僅かに景色との歪みが見えました。消えて直ぐなら大凡の場所を判断して注視できますが、…それよりも皆さんっ!!」

オクタヴィア『…了解よ! 全員隊長に続きなさい!』

ハルテ『り、了解です!』

ルーツィア『本当に無傷じゃないと消えないんだな。……うし!』

 
――






ダダダッダンッ――



リーパー「……~」ヒュ ヒュン






ルーツィア「…チッ、やたら素早い」

エステル「こんのぉ!! ちょっとは中たってんのに!」ダダダッ

オクタヴィア「くっ……このダメージ率だと相手の再生速度が上回るわ」






リーパー「… ・ ・ ・  」スゥ…






ハルテ「あぁ! また消えてしまいました!?」

ルーツィア「!? ……駄目だ、全然見えねぇ…!」ギリ

ハイデマリー「バラバラで攻撃しないでください! 私が怯ませるので、そこに続いて、作戦通りにっ!!」ブゥゥウン

エステル「ぇ? りょ、了解!」

オクタヴィア「…曹長、弾倉交換急いで!!」

ルーツィア「…! 了解、任せろ」

 
ハイデマリー(一度見慣れてしまえば、なんとか判別もつく! ……そこ!!)ドガァン




リーパー「  ・ …~~ッ!!」ゴガァァッ




ルーツィア「……。流石っつうか…(これは敵わないな、私らには歪みなんて全然見分けがつかねぇよ)」ガショッ

ハイデマリー「エステル少尉! 直ぐです!」

エステル「了解! まっかせて!!」ダダダッ




リーパー「ッ……~ッ…」ベキベギンッ




ハイデマリー「ハルテ少尉! デュッケ少佐!」

ハルテ「はいっ!」ダダダッ

オクタヴィア「了解! ルーちゃん、換装は――」ダダッ ダァン

ルーツィア「…今完了、狙う時間くれ」チャキ






リーパー「~ー!! …ッ」ベギベキンッ






ルーツィア「……食らいやがれ!」ダンッ ダダッ






リーパー「…!??」ベチャベチャベチャ

 

 
リーパー「~~…。……」ヨロ






オクタヴィア(――! …?)ザワ


ルーツィア「…ん、ペイント弾命中」

ハルテ「ゃ、やりました!」

ハイデマリー「流石です曹長」

ルーツィア「フッ…、見えない奴を撃つよりかは簡単だぜ?」

 
ハイデマリー「……古典的ですがこれで光学ステルスは無効化しました。デュッケ少佐の作戦勝ちです」

エステル「よっしゃー! 後は全員でフクロね!!」ブゥゥゥン



オクタヴィア「――待ちなさいっ!? まだ接近しちゃ駄目!!」

エステル「えっ」フヨ

ハイデマリー「?」


オクタヴィア「…どうも様子がおかしいわ。リーパーはどうして急に停止したの?」

エステル「いや、だからチャンスじゃないですか。とどめ差しに行くんでしょ?」

オクタヴィア「いえ不気味過ぎるわ。考えてみれば最初の急襲から反撃もしてこないし、ビームの様な射撃手段を持たないなら敢えて誘ってるのかもしれない」

エステル「か、考えすぎじゃない副隊長…?」

 
オクタヴィア「ペイントが見えてるならここからでも十分狙える。この位置から撃ち潰した方がいいわ」

オクタヴィア「――大尉、MGの集中砲火でお願い。やれる?」チラ

ハイデマリー「あ、はい。停まっていますし、勿論いけますが…」

ルーツィア「……? まぁいいか、コアが出てきたら私らも撃つぞ」

エステル「む~仕方ない、じゃあ私が貰っちゃいますから」

ハルテ(准佐さん…?)


オクタヴィア「……」

 
オクタヴィア(なにか……都合が良すぎて不自然だわ。出鼻を挫かれて攻勢を諦めたのなら、何故川向うへ逃げないの? これまでの傾向とホルテン中佐の話でもネウロイ・リーパーは相当慎重な行動方針の筈――)モヤモヤ


ハイデマリー「……撃ちます」

ルーツィア「ん…ぁ、弾倉戻しとくか」ガショ


オクタヴィア(あれが本当に常識外の存在〈XX〉なら、それこそ普通のネウロイと同じに考えるのは迂闊…。XX-1が高次知能の可能性……私達人間並みに状況判断ができるとすれば…?)

オクタヴィア(…リーパーの“狩り”行動はあくまで客観的な優位性が有る限り成り立つ。つまりまだ――)






リーパー「……」




リーパー「!」ペカッ


リーパー「…~~~~」サァァ






ハイデマリー「!?」

エステル「…! ちょ、なによアレ? あいつ急に白くなったけど??」

 
 
オクタヴィア「(!! やっぱり罠!?)っ…全員気を付けなさい!! リーパーにはまだ何かあるわッ!!!」


ハルテ「ぇ…?」




リーパー「~~…………」シュゥゥ…




ルーツィア「……。も、戻った…?」

エステル「はあ…? ん、あれ??」

ハルテ「あっ!? み、皆さん! ペイントが消えてしまってます!?」

ハイデマリー「!!」

オクタヴィア「ぐッ、まさか水媒体の合成染料も取り込んだの…!?(…いえ待って、それは大した事じゃない! 恐らく致命的な何かがまだ――)」ザワザワ…

ルーツィア「おいこれ、ヤバいんじゃないか…?」

ハイデマリー「ッ…、とにかく撃ちます! 私が注視していますからもう一度――」ジャキンッ





リーパー「……~…」ユラ


    「    」フッ…




ハイデマリー(えっ!? ……ぇ、そんな…??)

 
オクタヴィア「ぅ…!?」

エステル「んがぁ~!! まっった消えたし!!#」ムガー

ルーツィア「チッ、うぜぇ…」

エステル「~~っ、もう! 副隊長が変な事言って時間取るから!!」

オクタヴィア「ご、ごめんなさい…。けど、つい…」

ハルテ「ぇ、エステルさん!? 今は喧嘩している場合じゃないですよ!」

ルーツィア「ああ、後にしとけ。……隊長ッ! また見つけられるか!?」チラ


ハイデマリー「っ…」


ルーツィア「…? おい、シュナウファー?」

ハイデマリー「ろ、ロストしました……一瞬で。……完全に“消えた”…?」

オクタヴィア(――!?)

 
ルーツィア「なっ…、見失ったのか?」

エステル「ちょ!? た、隊長まで“つい”うっかりですか…?」

オクタヴィア(……違うわ、マリーちゃんに限って今そんな凡ミスはあり得ない。つまり視覚的な欺瞞は一切無く本当に“見えなくなった”?)モヤ

ハルテ「今度こそ、逃げられてしまったのでしょうか…?」オド

ハイデマリー「っ゛…!! も、もう一度見つけますっ! 視界にさえ入れば見分けが――」キョロキョロ






ヒュォ ォ ン 


…ォ ォ ン




ルーツィア「…! ちょっと待て、なんか変に風切り音がしてないか?」ブゥゥン


オクタヴィア「!? いけないっ、やっぱり接近されてる…!」

ハルテ「ぇ?」

オクタヴィア「皆直ぐに動いてっ!!? 嵌められたわ!! 私達はこれから狙われ――」バッ




フ… ォ ォ ォオ オンッ ッ



ルーツィア「…?」



――バグンッ゛



ルーツィア「んッ゛!!?」ヨロ


エステル「えっ」

ハイデマリー「!?」

オクタヴィア「…ルーちゃんッ!!」

 

ルーツィア(んな!?? ストライカーが捥がれ――)


ルーツィア「――ッッ!! ゃ、やばいっ…!? くっそがぁ!!」ブンッッ



シュボン――……ボゴォオンッ





ハルテ「きゃあーーっ!?」

エステル「せ、先輩ッッ!!!」

 

ルーツィア「~~っ…、危なかった…」フヨフヨ



エステル「ぃいやだ、そんなっ……先輩!! ルーツィア先輩ッ!?」ブゥゥン

オクタヴィア「ルーちゃん!? 足が!!」

ルーツィア「ぜはぁ…。よく見ろ、右脚だっつうの…。最初からねぇよ」

エステル「ぇぐ…っ……~、ぇ…?」グス


ハルテ「そそそ、曹長さっ!?」ブゥゥン

ハイデマリー「お怪我は!!」ブゥゥン

ルーツィア「あつつぅ…、生憎と二度目なんで平気だ。脱ぎ棄てなきゃ今度は大事な膝も消えるとこだったけどな…」

エステル「~ぅう、ぁぅ……わたっ…し…! ま、またやっちゃったかと思っ~゛…」ポロポロ

ルーツィア「ぅ…おい、勘違いして泣いてんなエステル!? それより今のは何だよ??」

ハイデマリー「そ、それが私にも……何も見えなくて…――」

オクタヴィア「っ……説明は後よ!? とにかく今直ぐ全員ブレイク!! エステル少尉は曹長を守って!」

ルーツィア「は?」

オクタヴィア「“最悪”どころじゃないわ、このままだと命の賭け様すら無いのよ! 皆早くッ!!」バッ

 
――




ハイデマリー(なんで、どうして直ぐ周りにいた筈のリーパーが見えなかったの?? ほんの少しでも、もう見抜くことだってできる筈なのに…!?)ブゥゥウンッ


ルーツィア『おいどういう事だよ少佐!? 最悪どころじゃないってのは』ガザザ

オクタヴィア『あのネウロイの光学ステルスはさっきまでの投影型じゃないわ! 恐らく可視光域の完全透過か回析か、とにかくあたし達にはもう何処をどう見たって視認できないのよ!』


ハイデマリー「ッ!?」


ハルテ『そんな…!!』

エステル『ま、まさかホントに化物になってるわけ!?』

オクタヴィア『RAMと投影擬態を看破したところで、あたし達はまだ敵の想定内だったのよ! リーパーは既に光学ステルスの概念すら理解して、少なくとも人間〈あたし達〉が特定範囲波長の電磁波〈可視光〉によってものを認知して〈見て〉いる事を熟知してるんだわ! だから絶対に視認されない装甲になってみせたのよ!!』

ルーツィア『あんな数分でか!? くっ、冗談じゃねえぞ!!』

オクタヴィア『甘く見過ぎていたけど、それが特異型XX-1のネウロイよ! とにかく敵はまた“狩り”を再開したわ、バウアーやプラナリアンを倒してきたあたし達の金属装備〈ストライカーユニット〉を狙ってる!』

 
[解説メモ]


・XX-1の特異性

古代より存在する怪異、そして現代にてネウロイと呼ばれるもの達の身体は人類の技術と理解からは外れた代物であるが、ネウロイ・リーパーの特有するそれは更に突出したものと言わざるを得ない。
リーパーの外殻装甲は、古代からの怪異がネウロイへと進化したかの如き変質を僅かな時間で自在に行う事が可能とされている。

加えて、リーパーは通常のネウロイ以上に知的な能を有しているという見方もあるらしい。
実際ネウロイの例に漏れず金属摂取に執着する傾向も確認されているが、奪った人工機械・兵器等からその意思や概念を読み取り模倣や応用を繰り返している節があるとも見られ、寧ろその“自己進化”を目的に軍を襲うのではという説もある。


・究極の光学ステルス

実現の能否を考えなければ、人類の視覚認知から逃れる最も確実な方法は光を与えないことである。

投影型の迷彩を攻略されたリーパーは、装甲質改変によって人間の可視光線域の電磁波を屈折させ受け流すちからを編み出した。
人間は物体から反射した可視光線を受け取ることでそれを視認するので、その存在はあったとしても実質的な完全透明であり、ハイデマリーの優れた夜間視能力も無意味にされてしまった。

本当、毎度すみませんが次の更新でキリをつけます
やっとこクライマックスとエピローグを残すのみ……φ(・×・;)オタノシミ ダナ

>>122>>125
脳内では色々無くはないですが、とりあえず本編を締めたいので
本編終わって余るレス分もありますから、終了にするかはその時まで保留です

 
エステル『ちっくしょッッ…!! 先輩のストライカー食い千切って、よくもまたあんな光景を……~絶対にブチ墜としてやるッ!!##』

ハルテ『で、ですがどうやって戦えば…!? また4人合わせの探査魔法を――』

オクタヴィア『それは駄目!! あんな無防備じゃ完全に的だわ!? あたし独りじゃ守ってあげられない…!』

エステル『ぐっ、でも飛びながらだって手繋いでやれば! ね、隊長!?』

ハイデマリー「それは……無理ですっ。完全に集中しても一瞬捉えるのがやっとなので…!」ギリ

ルーツィア『チッ、このまま蠅みたいに闇雲飛び回ってるだけなら意味ない。最悪こっちがバテるのを静観してるかもしれねぇし、そのうち捕まるぞ? どうする少佐!?』

オクタヴィア『~~ッ……と、取り敢えず牽制しながら停まらず飛ぶしかないわ!! 無駄撃ちを避けながら、襲われない様に周りを撃って!』

エステル『な、なに無茶苦茶言ってんのよっ!!?』

 

ハイデマリー「っ…(どうしよう、私がなんとかしないと…! 隊長の私がなんとかこの状況を、仲間を守らないと――)」ザワザワザワ

ハイデマリー(で、でもいったいどうすれば!? ……分からないっ、わからない…!!)




ハイデマリー(誰かっ……! 誰でもいいから力を貸して…ッ!)




ハイデマリー「っ……、工藤…さんッ!!」










『 マリィーーーーッッ ! ! 』








ハイデマリー「――!? ……ぇ…?」チラ
 

 
ハイデマリー「……ひ、人影…?? ……まさか、そんな…」フワッ

オクタヴィア『マリーちゃん何してるのッ!? 停まったら危険よ!!!』ガザッ




…グュゥゥウウオンッ



ハイデマリー「ぇ――」






――ビュゥゥウウウン



バギィィイインッッツ



リーパー「~ッ……ッー!?」

敏恵「でぃゃあっ…!!」フィィィン


ハイデマリー「!?」
 

 

リーパー「~~ッ、~ー…!!」ビュゥゥン




敏恵「んあ、逃げられた!? …つぅ~、上手く刺さらなかったぁ」フワ


ハイデマリー「…? な……??」

ハルテ『た、大尉さん!?』ガザザ

ヴァルトラウト『ちょっと待って! どういう事…!?』

エステル『先輩! あぁ、あれ!!』

ルーツィア『…ああ。流石、こういう時には間に合う奴だ』


ハイデマリー「ぁ……く、工藤さ…?」

 
敏恵「――マリ、大丈夫!? 危なかったね、本当に見えてなかった?」

ハイデマリー「なんっ…?? ……ど、どうして…!?」

敏恵「そんなのマリ達と同じだよ! 言ったよね、あたしももうウィッチだって」ガシ

敏恵「…絶対どこにも逝かせないよ。書置きなんかじゃなくて、マリとは一緒で話したいんだから!」

ハイデマリー「ッ!? ///」

敏恵「だからネウロイ倒してさっさと帰ろう! それ、ちょっと貸りるね?」グイグイ

ハイデマリー「ぇ、あのっ――」モゾ


敏恵「ふんっ…!!」ジャギン






リーパー「~……」ビュゥゥン






敏恵(相変わらずコアが動いてる…。やっぱり銃砲で打ち抜くのは無理かな?)フィィィン

敏恵(…まいいや、とにかく撃ってみる!!)ガァンッ




ヒュウンッ




リーパー「……」スカ


    「  」フッ

 

 
ハイデマリー「ま、また消え…――」

敏恵「んー…このカノン砲、意外と弾道ブレるね? だったらもういっちょ」グ

ハイデマリー「えっ」


敏恵「むむ、速くて見失いそうだなぁ。……よし今だ!」ガァン ガァン






ヒュゥゥンッ



リーパー「 ッ~!!? ッ…ッ??」バギィン






ハイデマリー「!? あ、中てた…??」

敏恵「よっし!! まだまだ!」



ドガァン ガァンッ ドンッ ドォンッッ――




リーパー「~~…!! ッ!!!」バゴベ゙ギバオォォォッ
 

 

敏恵「――ん? ぁ…!」カチカチカチ


敏恵「…ご、ごめんマリ。弾無くなっちゃった」

ハイデマリー「工藤さん……貴方は、いったい…??」


――ブゥゥウンッ


ハルテ「大尉さーん!!」

オクタヴィア「敏恵ちゃん!」

敏恵「あ…タヴィアさん、ハルテちゃん!」

ハルテ「大尉さん、元気になられたんですね!?」

敏恵「うん、まあね」


――ブゥゥウン


エステル「大尉! 待ってたわよ!?」

ルーツィア「……遅ぇよ馬鹿」

 
敏恵「エステルちゃん、ルーツィアさ――…て!? ルーツィアさんその脚ぃ!!」ビク

ルーツィア「右のストライカー持ってかれただけだよ。相変わらずボケてんな」

敏恵「ぁ……あぁ、そっか。びっくりした…」ホッ

ルーツィア「フッ、けどまぁ…お前はそうでなくちゃな?」ニヤ


オクタヴィア「……。敏恵ちゃん、これを着けなさい」ス

敏恵「ぇ…? あインカム、忘れてました」ヒョイ

ハイデマリー「でゅ、デュッケ少佐? なにを――」

オクタヴィア「……」サッ

ハイデマリー「…!」

 
オクタヴィア「この際細かい事はいいから教えて。貴方がここへ来た事は、もしかしかしてホルテン中佐も知ってるの?」

敏恵「…そうです。あたしにあのネウロイを倒せって」

ハイデマリー「えっ!?」

オクタヴィア「なるほどね…。という事は、貴方にもまだ何かあるのね?」

敏恵「はい。説明されても難しくてよく解んなかったけど、あたしは固有魔法で“視えてる”みたいです」

ハイデマリー「こ、固有魔法…? でも工藤さんは…」

敏恵「だから一応、タヴィアさんが生きてたら伝えろって。…えっと、ネウロイがまだRAM構造?を持ってたら“黒体放射”を利用して支援させろとかなんとか」

オクタヴィア「!!?」

エステル「…?」

 
敏恵「全然意味はわかんないですけど、とにかくあたしがアイツを倒しますから。皆は離れてて!」

ハイデマリー「そんなの駄目です工藤さん!?」グイッ


敏恵「…マリ、大丈夫だよ。あたしを信じて」スス

ハイデマリー「く、工藤さん…」

敏恵「ここまで来たらもう止まる気ないから。だから、勝手かもしれないけど、マリには応援して欲しい!」


ハイデマリー「ぅ…、っ……――」ギュ

敏恵「……」


ハイデマリー「…わかりました。それが工藤さんの覚悟なら、信じます」ス

敏恵「うん、ありがとう」

オクタヴィア「――…全員聞いて! 直ぐにもリーパーは再生してまた動き出すわ!」

ルーツィア「!」






リーパー「ッ」シュゥゥ…


 

 
オクタヴィア「MGを撃ち尽くしても無理なら、どの道あたし達の銃火力じゃもう倒せないわ! だから工藤大尉に託します!!」

オクタヴィア「……リエージュで見せた、アレをやる気なのよね?」チラ

ハルテ「!」

敏恵「はい。あのネウロイは中でコアも自由に動くし、再生も速くて20ミリ銃程度じゃ仕留められません――」


敏恵「…だからこの扶桑刀で、あたしの魔法力をおもいっきり叩き込みます! それならコアも壊せる!!」キリ


オクタヴィア「(かなり冷静で思考も冴えてるみたいね。やっぱり固有魔法と一緒に魔導投薬も併発してるんだわ)……くれぐれも気を付けなさい大尉。“支援”はあたし達に任せて」

敏恵「了解。……行ってきますっ!」バッ


ビュゥウウン――




ハイデマリー「……」

ルーツィア「おい、いいのか…? こんな状態で言うのもアレだけど、私らも加勢すべきなんじゃ?」

ハルテ「そ、そうですよね?」

オクタヴィア「いいえ、貴方達には大尉の戦闘を支援する為にやってもらう事があるわ」

エステル「はい?」

オクタヴィア「…貴方達4人で、もう一度探査魔法よ」

 
――





敏恵「さっきは失敗したけど、今度こそ…!」ビュゥウンッ






リーパー「~~」シュウゥ


リーパー「……」

    「  」フッ






敏恵「…!(もう復帰した、やっぱり速い。突撃角左、予想進路に修正!)」フィィィン




ビュゥウ――


    「  ! 」


敏恵「づあぁああっ!!!」ズォオ



――ゥウウンッ




    「 ?  」






敏恵「…!? ぐぅっ、またタイミング速すぎた!! この戦闘脚ったら…!」

 

    「  ?? ! 」

    「  。~ 」ボヤァ





敏恵「ん…! えっ」





    「  」ユラ

        フッ





敏恵「ちょ?? あれ、なんか薄ーくなった気が――」ジー





        ビュンッッ





敏恵「あっ、しまった!?」


敏恵「~~…く、くっそぉ! 素早いし……薄くて視え難いしっ、どこ行った!?」キョロキョロ


――ガザッ


オクタヴィア『大丈夫よ大尉、こっちに任せなさい!』

敏恵「! タヴィアさん?」

オクタヴィア『時間が経てばまた良く見える様になる筈よ。それまでしっかり自分の身を守って』

 

敏恵『どういう事ですか!?』ガザザ

オクタヴィア「今説明したって解らないでしょ? とにかく周りをよく視てなさい。リーパーはまだ逃げてない、あわよくば貴方を狩るわ」


オクタヴィア「……予想通り、三度目だけあって敵も敏恵ちゃんの超夜間視力に順応してきたわ。4人とも頑張って!」

ルーツィア「分かってるけど、…いったい何だってんすか少佐??」フィィィン

エステル「これって助けになってるの!? 魔導波なんて飛ばして」フィィン

ハルテ「そもそも私達には先程から何も見えていませんし…」フィィン

ハイデマリー「デュッケ少佐、工藤さんに何が起こっているのですか…?」フィィィイン


オクタヴィア「…ならそのまま聞いて。あの子が持つ本当の超夜間視力、それは恐らく赤外線を捉える固有魔法よ」

ハイデマリー「!」

オクタヴィア「黒体放射と言って、物質からは反射するものとは別に或る一定波長の電磁波が出ているの。工藤大尉はそれと夜空の極僅かな明かりに反射する赤外線情報を敏感に知覚できるんだと思うわ」

ルーツィア「……だからあのネウロイもずっと視えてたって訳すか?」

オクタヴィア「その筈よ。今までリーパーが含蓄してきた常識の外に大尉はいた、だから“可視光”を誤魔化したって通じないのは当然だわ」

エステル「そ、それであの時も…!?」

 
オクタヴィア「けど少尉達を襲った時と昨晩に、そして今明らかに捉えられた事でリーパーもその可能性に多分気づいた! 回析波長を可視光域の外まで広げる様にまた進化してしまった」

ハルテ「じゃあ、大尉さんが“薄くなった”と仰っていたのはそれで…??」

ハイデマリー「ぐっ……工藤さ――」

オクタヴィア「止めなさいマリーちゃん!! 今は魔導短波の発信に全力を使うのよ!?」

ハイデマリー「で、ですが!?」

オクタヴィア「敵を視えないあたし達が行っても邪魔になるだけ! それに弾切れのMGで何をする気?」

ハイデマリー「ぅ…、ッ!」ギリ

ハルテ「隊長さん…」

オクタヴィア「敏恵ちゃんは大丈夫、あの子なら必ずリーパーを捕まえるわ。あたし達が加勢をするのはその時よ」

 
エステル「で、でもその赤外線だって薄くなってんでしょ!? ホントに大丈夫なの!? こんな訳わかんない事やってて!?」

オクタヴィア「言ったでしょ、いまにまた見えるって? いくら光を浴びずに反射を消しても、自ら放つ電磁波は如何しようもない筈――」

オクタヴィア「黒体放射の赤外線量はその物体のエネルギーないし熱量と正相関するらしいから、貴方達ナイトウィッチの魔法が“今のリーパー”を追い詰めるわ」

エステル「はぁ!!? だから解るように言ってくださいよ!? #」イラ

オクタヴィア「…リーパーが獲得したRAMステルスは“誘電性質”の電波吸収。ホルテン中佐が言ったのなら間違いないわ。あれだけ完璧に誘電損失を利用するなら、貴方達4人の魔法力はリーパーの中で熱エネルギーに変換される」

ハイデマリー「!? という事は…!」

オクタヴィア「そうよ隊長、後はあの子次第。……“あたし達”第一夜空四隊は勝てるわ!」

 
[解説メモ]


・敏恵の魔法技術(其の実 ~本当の固有魔法~)

偶然か必然か、工藤敏恵は魔導麻薬症に陥ると同時に固有魔法能力を発現していた。
その能力は物質から放出する赤外線をも知覚して暗中を見通す、皮肉にも小園が魔導麻薬症に偽名付けた“超夜間視力”と呼ぶに相応しいものだった。

この固有魔法の特徴として、ネウロイ内部のコアの存在を確認できてしまうのだが(※詳細下記)ビフレスト作戦での初戦以降、小園の情報管理下で単独戦闘のみだった敏恵は「ネウロイのコアは透けて見えるもの」と勝手に思い込んでいた。


・真の超夜間視力

ナイトウィッチ工藤敏恵が持つ真の能力は“赤外線域まで拡張した超暗所視”である。
桿体細胞の反応波長域に魔法作用を起こしているのか、昼間などの一定以上に明るい環境下(※明所視)では全く発動しない。
そのため色感覚が発達する訳でもなく知覚する赤外線は敏恵にとってモノクロに視えるようだが、感度がはるかに高まる。

黒体放射によって放たれる赤外線量で十分に環境を判別できるため光源を必要とせず、また高エネルギー体とみられるネウロイのコアが放つ熱差などによって、被殻外からでも間接的にコアの有無や動きなども分かる。

※五話(前スレ>>385)にて敏恵がバウアーの子機ネウロイにコアは無いと納得していたが、実際には夕刻で明るいためにそもそも見通せていなかった。

 
――




敏恵(…? あっ!!)






    「~~… !」ボヤァ






敏恵「見つけたっ! ばっちり!!」バッ




――ブゥウウンッ


    「 !?   ???」



敏恵「待てッッ!! 絶対捕まえる!!」ビュォォ




    「 !! ~ !」ギュゥウン




敏恵(逃がさない、逃がすもんか!)フィィィン

敏恵「ッ゛……こ、この月光の速度ならっ!!」ビリビリビッ


ヒュゴォォオオオッ――



敏恵「んぬぁあっ! 届けッッ!!」


 

 

――ギンッッッ



敏恵「!??」


リーパー「 … ~ッ!! ーー!」

    「        」フッ


ビュンッ――






敏恵「……く、くっそぉ! 刀がちゃんと刺さらない!?」ブゥゥン…

敏恵(追い付くだけじゃ駄目だ、回り込むか降下の勢いで突撃しないと…!)


敏恵(もっと鋭く、正確に、完全に集中を――)



~~~~~~~~~~~~~~~~

『なッ…!? き、菊井ぃいーーッ!!!』

『ひぃぃ…っ……ゃ、…死に……死にたくないっ…!! 死にたくないぃぃいぃっ!!』

~~~~~~~~~~~~~~~~



敏恵「…!!」ゾワ


敏恵「ぅ、やっぱりまだ怖いってことッ…!?」ギリ



敏恵「~、っ…!(だったら――)」シュバッッ
 

 

ビュゥウウウウンッ ↑↑


敏恵(――…だったらそれでも構わない!!)フワッ

敏恵「(今度は自分の意志で、あたしを賭けるっ!)…すぅ、はぁ……すぅー…」


敏恵「ふん~~ッ! 魔法の薬、もっと出ろっ…!」フィィィィイン


――ゾクゾクゾクッ


敏恵「びぅゅ゛゛!? ッッ゛――」ビククッ


敏恵「あぴゅッ……はぅ…~ ////」


敏恵「~~……。ふぅーー…………(よし、一発で決める)」ス



敏恵(ネウロイ――…殺す!!!)」チャ
 

 



ヒュン  ヒュオォォ…ン…






敏恵(速度、距離、風、感触…――)



敏恵「……。お前なんか…」フラッ





    「  」ビュゥン





敏恵「…死ねッッ!!!!」ビュオッッ




――ギュオォオオオオオッ




敏恵「づぁ゛ああぁあぁぁああ゛ああ゛゛!!!」グォオオ


    「 !!?」


ヅグ゛ンッッッ


リーパー「ッ…!! ーーッ…ッ!?」

 
リーパー「ッ…!! ーーッ…ッ!?」

敏恵「っ…、もう誰も!! あたしの好きな人は襲わせないッ!!! くらえぇええええ!!!!」フィィィイイイン

リーパー「~~!?!?! ッ゛ッ~ッ゛゛!!!」ベギベギィ

敏恵「ェぁアあ゛あぁあああ!!!」フィィィィィンッッ



リーパー「ッ…ツッ…、~~゛!!」ベキベキベキ

敏恵(ぐ、何こいつ!!? こんなに魔法力を叩きこんでるのにっ、なかなか――)




リーパー「――~ーッ!!!! #」



ビガカッッ



敏恵「!?? づぅ゛ッ……!!(め、眼がぁ!?)」タジ

リーパー「…~~」メキョ ボリ

敏恵「!」


リーパー「~…。ーー!!!」ニュッ




 ―― ズブリッ




敏恵「ぇ……?」

 

 
リーパー「~ー! ーー!!」ズブズブ

敏恵「…ぅ、ぅそで…しょ……?? こいつ…――」ヨロ

リーパー「~~~~!!」ボリボキ

敏恵「…ぁたしの刀た……っ、たべ…??」

リーパー「ーーッッ!」ズズズ

敏恵「ッごぎゅ!? ゥぅ゛…!!」ビクッ


敏恵「っ…!! こ、この…ぉ……! #」フィィィ…

リーパー「ー~、~~ッ」

敏恵(まずい……上手く力が入らなぃ! 血が…、血が出ちゃって……魔法力も多分…足りなっ……――)


リーパー「ッッ!! ーー!!」ズズ グリィィ

敏恵「ぎじゅ゛ッッ…!」
 

 

敏恵「ぅ…ぇぅ゛……」ガク




敏恵「…ご、ごめ……マリ…(あたし達このまま、お別れなんて…――)」














――ブゥゥンッ

 

 







 『 工 藤 さ ん ッ ッ !! 』





 

 

敏恵「~゛! ぁ……ぇ…!?」


ハイデマリー「――諦めないでください!! もう少しですからっ!!!」ブゥゥン

敏恵「ま、マリ…?」

ハイデマリー「私の魔法力も込めます! 頑張ってください!!」ニギ


ハイデマリー「…くッ、~~!!」フィィィイインッ


リーパー「ッッ!!! ~ッ~~゛!!」ベキギ ベギ



敏恵「な、なんでマ…リ…? ぁぶ…なぃから……」

ハイデマリー「~…貴方は私達の一員です! だからっ、一緒に帰ります!!」フィィィンッ

敏恵「!」

ハイデマリー「工藤さんだって私の……大切な人なんですッ!!!」

敏恵(マリ…!)

 
ハイデマリー「ッ~、ぐぐ…!」フィィィン

敏恵「……わかった。じゃぁ…っ……一緒に帰って、ご…ご飯食べょ」グ

ハイデマリー「!」

敏恵「ぃ、いくよ…マリ?」チラ

ハイデマリー「ぁ…! …はい、工藤さん!」コク




敏恵「ッ…だぁあ゛ぁあああ!!!!!」フィィィイン

ハイデマリー「んんっ…!!」フィィイイィイン


リーパー「ッッ…!?!!?」バギィン



バギメギベギギギギッ――



リーパー「fjkんbfヴいえgっうぇq~~……xtッ!!!」ペカ





――パリン…



リーパー「 」




バ ァ ァアア ン ッ ッ





パラパラパラ…

 

 

――ブゥゥウンッ


ルーツィア「…あいつ、やりやがった」

エステル「ぜはぁ~…。あの無茶苦茶な攻撃方法だけは真似したくないですけど、やっぱり流石ですね」フワッ

オクタヴィア「それどころじゃないわ2人とも!? 通信に漏れてた様子だと工藤大尉は負傷してる!」ブゥゥン

エステル「えっ」

ルーツィア「……確かに。シュナウファーも発散したネウロイの破片をもろ受けしたかもしれねぇ」

エステル「えっ゛」

ハルテ「大尉さん! 隊長さぁん!!」ブゥゥン


ルーツィア「チッ…。このユニットが両方あれば、私もお前もシュナウファーに遅れず駆けつけられたんだが」

 
――




敏恵「…」

ハイデマリー「工藤さんっ、しっかりしてください!? 工藤さん!!」グイグイ


――ブゥゥウン


オクタヴィア「敏恵ちゃん!!」フワ

ハルテ「隊長さん! そのっ、大尉さんは!?」

ハイデマリー「で、デュッケ少佐! 工藤さんが腹部に…!」

オクタヴィア「――!! これは、刺されたのね!?」

ハイデマリー「血が…! 血がまだ止まらないんですッ!! どうすれば――」


――ブゥゥウン


エステル「ちょ…!!? た、大尉!?」フワッ

ルーツィア「ぐ…、くそッ! かなりヤバそうじゃねぇか」

オクタヴィア「とにかく一秒でも早く治療すべきよ! ルーちゃん、基地に連絡して!!」

ルーツィア「了解、魔法で今直ぐやる!」フィィン

ハイデマリー「工藤さん! 返事をしてください、工藤さん!!」

 
エステル「ッ……~~!! ハルテちゃん、私の代わりに先輩支えて!?」クワッ

ハルテ「ぇ…!? あぁの――」オロオロ

エステル「お願い早く!!!」

ハルテ「ひっ!? ははぃ…!」ワタワタ

ルーツィア「むぉ!? お、おい何する気だ?」

エステル「悠長に救護待ってないんかいられないですよっ!! 私が直ぐ連れて来る!!」

ハルテ「エステルさん!? つ、連れてくるっていったい何方を――」


エステル「誰でもいいッ!!! とにかく医者よ!!」ビュゥウンッ




ハイデマリー「工藤さん…! 工藤さん!?」グイグイグイ

オクタヴィア「落ち着きなさい隊長! 怪我人を感情任せで扱ったら駄目、とにかく出来るだけ注意しながらあたし達も敏恵ちゃんを運ぶわよ?」

ハイデマリー「く…、ぅッ……!」ギュ

 
 
敏恵「――…ぅぅ……ま、マリ…。泣かな…ぃで…」



ハイデマリー「!! く、工藤さん!?」

オクタヴィア「敏恵ちゃん!? しっかりするのよ大尉、直ぐに基地まで運ぶから頑張って!」

敏恵「ご……ごめん、ね…? あたし…けっきょくマリ……に、しんぱぃ…しゃせ…」

ハイデマリー「いいんですっ…! もういいんですそんな事! だから眠らないでください!?」

ハイデマリー「私達と一緒に……~ッ、一緒に帰りましょう!!」

敏恵「そぅ…だね。……いっしょにごは…ん、…ゃくそ……した…し」

ハイデマリー「はいそうですッ! また皆さんで食堂に集まって話をしたり、シフト決めをしたり…エグッ~」

ハイデマリー「――それから工藤さんの病気も治して、また2人で哨戒にだって行くん…ですっ……ぅぐ……ぅぅ…ッ…」ポロポロ

敏恵「ぁは…は…。マリは……ほんと、まじ…め…。あたしはか、かいも…のほぅがぃぃ…な」

 
敏恵「……。ねぇ…マリ……なかない…で? …ぁたしの、せいで……そんなの…」

ハイデマリー「ぇぐ…、だって工藤さっ……工藤さんが…!! わ、わたしは……~っ…!」グス

敏恵「ぁ、ありがとぅ…マリ――」


敏恵「……でも、…た…し……。…ぇが…ぉ……のマ…リ………ぅ…が…――」


ハイデマリー「!? く、工藤さん…?」

オクタヴィア「敏恵ちゃん止めなさい!! 分かったから、今は無理しないで!?」

敏恵「………す…ぅ…――」パクパク

ハイデマリー「ゃ、やだそんな…! 待って!? 待ってください工藤さんっ!!」

敏恵「だ……ら…、わ………わら……ぁ」

ハイデマリー「工藤さん、しっかり言ってください工藤さん!? それでは聞き取れませんッ!!!」




敏恵「……ま………り…――」


ダラン



敏恵「」

ハイデマリー「ッ…!!!」










『――――く…、工藤さぁあんっ!!!!』

 

 

―3カ月後―


ベルギガ領 サン・トロン基地

食堂



ミーナ「――…なんだか懐かしく感じるわね? 実際は1年も空けてない筈なのに」スタスタ

エーリカ「まぁロマーニャでも色々あって賑やかだったしね~」

バルクホルン「……ん? しかしなんだか、煙草臭くなっていないか…?」キョロキョロ


ハイデマリー「すみません、バルクホルン大尉。以前にいた隊員の方が吸っていまして、その……私の責任です」

 
バルクホルン「あいや、べつに少し気がついたというだけの話だ。謝る必要など――」

エーリカ「あーっ、トゥルーデがハイデマリー苛めてる~!?」

バルクホルン「なっ!? ち・が・う!!」

ハイデマリー「…!?」ビクッ


ミーナ「ちょっとトゥルーデ、どうしたの大きな声出して?」

バルクホルン「いや…すまないミーナ」

エーリカ「あーあ、怒られた」

バルクホルン「お前がまた性懲りも無く茶化すからだろ、まったく! そもそも何処をどう見ればそうなるんだ…」

ミーナ「はぁ…、貴方達2人だけでも十分賑やかよ?」

ハイデマリー「……」

 
エーリカ「――あ、ねぇそれよりさ? さっき見たら台所になんか変な装置が有るんだけど」

ミーナ「あら、何かしら?」

バルクホルン「なに! …まさかハルトマン、貴様キッチンに侵入したのか!?」


エーリカ「あれ何? 前は無かったよね」

ハイデマリー「ぁ、はい。中尉が発見したのは恐らくバウムクーヘン用の焼き機だと思います」

エーリカ「えっ、あれでケーキ焼くの!? 大きくない?」

バルクホルン「ほぉ…? バウムクーヘンオーブンなんか置いたのか」

ミーナ「ほ、本格的ね? まさかハイデマリーさんが買ったの?」

ハイデマリー「いえ、その……それもまた別の方が以前購入した物なのですが、転属先への持ち込み許可が下りなかった様なので…」

ミーナ「……まぁ、そうよね」

ハイデマリー「はい。すみません…」

 

バルクホルン「――いいや、謝る必要など無いぞハイデマリー少佐!」デンッ


ハイデマリー「?」

バルクホルン「そのオーブン、我々が使用しても問題は無いか?」

ハイデマリー「ぇ、えっと……はい。それは構わない筈ですけど」

ミーナ「トゥルーデ、まさか作る気なの?」

バルクホルン「ああ。クリスへの見舞い品にもう少し食べ物のバリエーションが欲しかった所だ、せっかくだから試してみたい」

エーリカ「おぉ、いいねー? ちょっと面白そう!」

バルクホルン「…お前は駄目だぞハルトマン? 生涯キッチンには立ち入り禁止だと言った筈だ」ジト

エーリカ「えー、見るだけだって。めんどくさい事はやんないよ」

バルクホルン「それでもだ。味見はさせてやるから、大人しく待っていろ」

 
ミーナ「…大丈夫? バウムクーヘンって素人には結構難しって聞くけど」

バルクホルン「問題ない、菓子作りは科学だ! レシピ通り遂行すれば必ず上手くいく」キリッ



バルクホルン「…よし、早速実物を見て来るとしよう。材料庫も一度チェックしておかなくては――」スタスタ

エーリカ「あ、じゃあ私も。お菓子探す」ステテ


『こらエーリカ。ここから先には入るな』

『も~大丈夫だよ、邪魔なんてしないから』





ハイデマリー「……」

ミーナ「ごめんなさいね、ハイデマリーさん」

ハイデマリー「ぇ…?」

ミーナ「突然お邪魔して、貴方の部隊まで吸収してしまって」

ハイデマリー「……いえ、もうこの第四飛行隊に残っているのは私だけですから」

ミーナ「……」

 
ハイデマリー「どの道、昇進すれば私の立ち位置も変えられると。そうデュッケ“さん”からも言われていましたし」

ミーナ「…仲間の子達が先に辞めて行ってしまうのは、少し寂しいわよね」

ハイデマリー「はぃ…。ですが御本人達の決めた事ですから、私は隊長としてそれを理解する事に努めました」

ミーナ「そう。立派だわ、少佐」

ハイデマリー「そんなことは…。デュッケさんの件に関してはミーナ中佐のおかげですし、私は何も」

ミーナ「私も直接手を出した訳じゃないから偉そうなことは言えないわよ? また少将に借を作っただけ」ウフフ


ミーナ「――…それより、その事について彼女からは何か聞いた?」

ハイデマリー「!」


ミーナ「……」ジー

ハイデマリー「……ぃ、いぇ…」キョド

ミーナ「そう」

ハイデマリー「っ…」

 
ミーナ「……うふふ、そうね。貴方は心の中に仕舞っておくのが賢明だわ」ニコ

ハイデマリー「!?」ギクッ

ミーナ「けどもう少し、ポーカーフェイスの練習をしておきましょうか。少佐としてそういう場面もこれから増えてくるわよ?」

ハイデマリー「…はい //」



――ステテテ


エーリカ「ミーナ大変だよ」

ミーナ「あら、どうしたの?」

エーリカ「食料があんまり無い。お菓子も材料ばっかで全然なかった」

バルクホルン「――…お前には必然的に“作る”という選択肢が存在できないからな」スタスタ

 
バルクホルン「しかし流石に問題だ。主食〈イモと肉類〉の備蓄も少し心許ない様子だったぞ?」

ハイデマリー「ぁ、すみません。数日前からはもう私独りでしたので…」

ミーナ「んー、困ったわね? 私達も移動時の分しか食料は持っていなかったし」

エーリカ「まあ、なんか“ミネラルウォーター”は大量にあるみたいだから直ぐには死ななと思うけど」

ハイデマリー(…!)


バルクホルン「何を言っているんだハルトマン。買出しを済ませればいい話だろう?」

ミーナ「そうね。とにかく荷解きを終えたら直ぐ出かけて、今日は外食で済ませましょう」

エーリカ「はーい」

バルクホルン「…いや、“奴”の荷物整理を待っていればそれこそ餓死するぞミーナ?」ジト

エーリカ「あー…というかさハイデマリー少佐」

ハイデマリー「ぇ? あ、はい」

バルクホルン「こら、お前の事だぞハルトマン!? 都合の悪い話を聞き流すな!」

 
エーリカ「なんであんな大量の水があるの? あれも誰かの置き土産?」

ミーナ「そ、そんなに沢山なの…?」

エーリカ「うん。何ガロンくらいかな……とにかく瓶が山積み」


ハイデマリー「…………。それは、私の大切な友人の物です」

バルクホルン「? そうなのか。随分と飲むんだな」

ハイデマリー「はい。…その方は本当に、水が大好きで沢山飲んでいました」

エーリカ「へぇ…? 私は無理だ、味気なくて飽きちゃうよ」

バルクホルン「そんな偏食思考だから身体も成長しないんじゃないのか?」

エーリカ「む! もー、酷いなぁ。ミーナの味覚よりは健全じゃん」

ミーナ「えっ」

 
バルクホルン「――…いやそんな事よりもだハルトマン、さっきの話はまだ終わっていないぞ?」ガシッ

エーリカ「?」

バルクホルン「さっさと買出しを遂行するためにも部屋の荷解きをするぞ? 私も手伝ってやる」グイ

エーリカ「えー、いいよぉ。そんなのバサーっと放して終わるし」

バルクホルン「終わるものか!? ちゃんと整頓をしろ、さあ来い!」グイグイ-

エーリカ「わっ待ってトゥルーデ!? …うわーん、助けてミーナ! 誘拐監禁される~!」

ミーナ「……フラウ、どうせだったら部屋の中も“健全”にしてもらいなさい?」ニコ

エーリカ「ちょ…!? まさかさっき言った事気にしてるでしょ!?」

ミーナ「うふふ、何の話かしら?」ニコニコ


エーリカ「ごめんってばー! 助けて~!?」

バルクホルン「観念しろ」スタスタ


ズルズルズル――



ハイデマリー「……」ポカーン

 
ミーナ「…さてと、私も先に手続きに必要な書類整理をしておこうかしら」


ハイデマリー「ぁ…! あの、私も手伝います」

ミーナ「え? ああ、有難う少佐。でも大丈夫だから貴方は休んでいて頂戴?」

ハイデマリー「はい…」

ミーナ「貴方の執務室、取っちゃってごめんなさいね?」

ハイデマリー「そ、そんなことは…!? 是非使ってください! //」オド

ミーナ「うふふ。……あ、そういえば!」

ハイデマリー「?」

ミーナ「荷下ろしの時にデスクの中を見たら、まだ貴方の物が少しだけ残っていたわ」

ハイデマリー(ぁ…――)

ミーナ「書きかけの手紙もあったみたいだし勝手に悪いかとも思ったけど、ハイデマリーさんの部屋に移しておいたから。確認してみて?」

ハイデマリー「……はい、分かりました」

 
 
ハイデマリーの部屋




ハイデマリー「……」スタスタ



ハイデマリー「……」カサ

ハイデマリー(“工藤さんへ”か…)



ハイデマリー「…………」




ハイデマリー「……。よし…!」ガタ



ハイデマリー「……――」カキカキカキ…
 

 

扶桑皇国 某所



小園「…………」ソワソワ


小園「…チッ、落ち着かんな。自業自得とは言え私の精神も細くなったものだ」


――コンコンッ


小園「!」ピク

小園「っ……。入ってくれ」


ガチャ――




小園「…久しぶりだな、工藤」


敏恵「……」

 
小園「報告はカールスランと司令部から聞いた。特異型と刺し違えた傷も、奇跡的に大事までは至らなかった様だな」

敏恵「……その前日にも怪我したから、要請してもらってた医療ウィッチが偶々基地に来てたんです。それでも3カ月入院でしたけど」

小園「そうか」

敏恵「……」


小園「…なあ、工藤。お前は全てを知っているのか?」

敏恵「うん、全部解ってますよ。あたしの身体は壊れてる」

小園「そう、か…」

敏恵「……」

>>200訂正、失礼

カールスランと → カールスラント


小園「私もずっと、お前の事を見誤っていたな? ……工藤敏恵には才能があった。薬の力などではない、本当に魔法の才能が――」

小園「…フッ、その芽を私が摘んでしまった。お前の人生諸共」クル


敏恵「……」


スタスタ…


小園「……」ザッ

敏恵「!」

小園「好きにしろ」

敏恵「……」

 
小園「遠慮するな、ここで起きる事は誰にも知り得ん」



敏恵「……」グ…

小園「……」



敏恵「――…、……」ス

小園「!」

敏恵「はぁ~……。もういいですよ」

小園「!?」

 
敏恵「殴られるのって凄い痛いんですよねぇ? ちょっと気が引けるというか~」ニギニギ

小園「なっ……お前…??」

敏恵「…ねえ園さん、もう嘘つくの止めません?」

小園「!」


敏恵「“全部”解ってますから。だから責めないですよ」

小園「……」

敏恵「ていうか、あたしが聞きたかった台詞はそうじゃないんですけど?」

小園「…………すまない…」

 
敏恵「そうそう、それです! まずそっちが先で――」

小園「ッ……本当に、申し訳なかった…!!」ガバッ

敏恵「んぁ…、いや1回でいいですよ? もう気済みましたから」ドウドウ


小園「…………。お前に、伝手を用意した」

敏恵「へ?」

小園「…此処を訪ねてみろ。私の先輩が足の治療で頼った凄腕の魔法治療師がいる」スッ

敏恵「はあ…?」ピラ

小園「以前、ヴァルトラウト・ホルテンが言っていた。軽度の魔導麻薬症ならば魔法で治すことも可能だと――」

小園「…その御人であれば、お前の重篤度であっても何某か希望はあるかもしれん」

敏恵「!」

小園「方々の地べたに額を擦り付け、住み込みで診て頂ける様に手を尽くした。行ってこい」

敏恵「園さん…!」

 
小園「……私如きに出来るせめてもの繕いだ。もう、軍〈ここ〉へは戻るな」クル

敏恵「えっ」

小園「今更かもしれんが、お前はもう自由だ“いたち”。…これからは好きに生きてくれ」


敏恵「……」

小園「……」


敏恵「…了解」スタタ



小園「……」






敏恵「ふふん♪」ヒョコ

小園「!」

 
敏恵「なら早く治して、また月光のテストに付き合ってあげますから!」ニッ

小園「は!? …お前、私の言った意味が――」

敏恵「解ってますよ? だから、あたしの好きにやらせてもらいます♪」

小園「なっ…」

敏恵「あたし、本当のウィッチに気づいたんです。それで…もう一度挑戦して、また空で会いたい友達がいるんです」

小園「……」

 
敏恵「だから園さんも、ちゃんと待っててくださいね?」

小園「…………」

敏恵「ね?」


小園「…~~ッ、阿呆が!!」

敏恵「わ!?」

小園「ふざけた事を!! 貴様のウィッチ寿命などあと2年も無いッ!! この馬鹿がっ!!!」

敏恵「ぅ…」タジ




小園「くっ…! ………だから、さっさと帰って来い…」

敏恵「!!」

小園「…もう勝手にしろ」


敏恵「えへへ、了解っ!!」

小園「ふん、阿呆が…… //」ボソ

 
敏恵「いよっし! じゃあ早速ここの住所まで送ってください!」グイグイ

小園「は? 何を言い出す、独りで行け」

敏恵「嫌ですよー? 車で送ってくださーい!?」クイクイ

小園「ぁ、阿呆!? ここから明石までどれ程距離があると思っている!」


敏恵「えっ、明石ってこの辺じゃないの…!?」

小園「違う、よく読め。鎌倉の明石だ」

敏恵「え、えぇ……神奈川…」ズーン

小園「さっさと鉄道を使って行け、それから手も放せ」

 
敏恵「むぐぅ……、じゃあ駅まで送ってください」

小園「すまんが無理だ。私はこれから出かける用が有る、もう向かわないと間に合わん」

敏恵「えー? 平気ですってちょっとくらい」グイグイ

小園「大切な用だ、絶対に遅刻は出来ん」


敏恵「む! なんですか、可愛い教え子の見送りより大事なことってぇ…?」ムス

小園「……。“迎え盆”だ」

 
敏恵「お盆?? ぇ、お墓行くの?」

小園「ああ。……菊井の墓が御実家近くの墓地にあるらしい…」

敏恵「!?」

小園「本当に、今更だがな…」


敏恵「……。あたしも行きたい!!」

小園「は?」


敏恵「あたしも菊さんに会いたい会いたい! お線香あげたい!」ダキッ

小園「ぐっ、おい止めろ!? 他も色々とあるんだ! お前はさっさと療養に行かんか!?」ベシベシッ

敏恵「いーーやーーだ~~!!」ギューー

 
――――

――





鎌倉 明石


ジージー… ジー…


ミン゛ミン ミ゛~



敏恵「ぅ、うへぇ……ひぃ…」トボトボ



敏恵「――…つ、疲れた。駅降りてからずっと歩いてるのに……ぃ、いったい何処まで行けばいいのぉ~…?」

敏恵「っ……喉乾いたし、お店はおろか畑しかないし、キュウリを盗む訳にはいかないし…。これじゃ療養する前に死ぬと――」


敏恵「ん! …なんか素朴な看板がある? あれかもっ…!?」ダッ

 
――



敏恵「明石の、番地がきゅうきゅ~……やった此処だ! 着いたぁ!!」

敏恵「はぁ~~、やっとだぁ…」ヘナ


敏恵「――ぁ…? あれ、でも名前が違う??」


敏恵「…えぇっと? 確かぁ……“秋元”さん、だよね?」ゴソソ

敏恵「ん~…?」ジー



敏恵「……。まいいや、違ってたら聞いてみよう。ご近所だと思うし」スタスタ





――――人類の脅威とか、世界を救うとか





敏恵「あの、すみませーんっ! こんにはー!!」ガンガンッ




そういうのにまだ興味は無いけど、護りたいものが有るって気づいて


あの夜から、あたしはウィッチになれたんだ……




???『――…あ、はーい! ちょっと待ってくださーい?』トタタ

敏恵「ん、よかった。留守じゃないみたい」




でもそれが遅かったのかどうか、あたしの妖怪退治の顛末は――




芳佳「……? えっと、診療ですか?」ガララ

敏恵「あ、うん。秋元芳子さんってここの人?」




――――また別の話なんだけどね



 【最終話 鎌鼬、終】

うひょー間違えた!!!!!!

>>213訂正
こんにはー → こんにちはー

まだちょっとだけ有るんですけど、一先ずここで区切りにさせてください
とりあえず、有難うございました

ブレイブウィッチーズ2話で雁淵姉の魔眼演出でサーモグラフィー的なカットが入ったのを見て正直焦りました
パクリじゃないのよ!?

エピローグ更新予定ですが半月以上空いてしまうと思います
気になっていただけた方はまた読んでみてください(・×・)

 
【エピローグ】


―1945年8月―


扶桑皇国


鎌倉市内 某家




敏恵「くわぁ……ぁ~…」



敏恵「~~ぁふ…。……ん~、いい陽気だぁ!」ノビー


『――…敏恵さーん』トテテ


敏恵「ん? はいはい、なんでしょう芳佳ちゃん?」


芳佳「お疲れさまです、今日の分はもう終わったんですか?」

敏恵「ううん、休憩だってさ? 予約の患者さん達が早く来たみたいで、清佳さんも芳子さんもそっちに行ったよ」

芳佳「あ、そうなんですか」

敏恵「うん。今日は午後と寝る前にまた魔法かけるらしいんだけど、…こう毎日やられるとしんどいね? ん~~っ!」ノビビ~

敏恵「――~づはぁ…! 治癒魔法ってなんか気持ちいいし、じっとしてて眠くなっちゃう……ふわぁ~」

 
芳佳「あはは…。でも敏恵さん、大分良くなったんじゃないですか? 昨日から食欲も凄く出てきてるみたいですし」

敏恵「んー、あたしも今日辺り帰れちゃうんじゃないって思ったけど“5日じゃ治る訳ないよ”ってさ? とほほ…」

芳佳「そ、そうですか? その……敏恵さんの珍しい病気って私にはまだよく解りませんけど、なんと言うか、ごく普通の健康な人に見えます」

敏恵「いや、あたしも自分では“渇き”も無いし大丈夫かなって感じるんだけど。今治療止めちゃうとまた直ぐ戻るんだって?」

芳佳「へぇ…。……そっか、治癒魔法だと病気とかの場合って…怪我みたいに見かけだけ良くなってもまだ治った訳じゃ――」ブツブツ


敏恵「…まあ難しい事はよくわかんないけど、まだ暫く御厄介になるみたいだからごめんね?」

芳佳「――へ? あっ、いぃえ! べつに私はいいですけど…!?」アセ

敏恵「そっか、ありがとう(…園さん、ちゃんとお金払ってくれてるよね? そこだけ不安だなぁ)」

 
敏恵「……ん? というか芳佳ちゃん、あたしに何か用事あったんじゃない?」

芳佳「あっ、そうだった! えぇっと、さっき郵便受けに…」ガササ

敏恵「郵便??」

芳佳「はい、どうぞ。敏恵さん宛にお手紙が来てますよ?」ス

敏恵「あー…、うん? ありがとう」ハシ


敏恵「本当だ。あたし宛だけど…“此処”の住所には宛ててないみたい??」

芳佳「蘭語〈ネーデルランド〉みたいな感じですけど、欧州からですかね?」ソロリ

敏恵「……? 検印が有るってことは横須賀の海軍基地経由かな、何だろ…?」ペラ



敏恵「――! あーっ!!」

 

 
芳佳「!? ど、どうしたんですか??」ビク

敏恵「“Saint-Trond Basis”……マリからだ!!」

芳佳「ぇ、真里さん? …扶桑の人ですか?」

敏恵「ううん、カールスラント人の友達!」

芳佳「??」

敏恵「うわぁ、びっくり! わざわざ手紙なんて嬉しいなぁ…!」ジーン

芳佳「…えぇっと、とりあえず……よかったですね?」

敏恵「えへへ! そうだ、芳佳ちゃんも一緒に読む?」

芳佳「へ? あ、いえ。丁度私にも手紙が来てて、先にこっちを読みますから」

敏恵「ん、そっか。それじゃ早速開けてみよう…」ペリペリ

芳佳「あのー、私は部屋に戻って読みますね?」

敏恵「あ、うん。ありがとね芳佳ちゃん」


芳佳「はーい」スタスタ

 
敏恵「……さてと、どれどれ~?」ゴソソ

敏恵(何書いてあるんだろう? 楽しみ!)


敏恵「……――」カサ

敏恵「ぅう!? 筆記体(みみず)文字だ……こんなに読めるかなぁ?」グヌ


敏恵「ぇ~なになに? …“拝啓、工藤敏恵様”」



敏恵「“貴方と初めて哨戒へ出たあの夜からいつの間にか季節も移ろいてしまいましたが、暑中いかがお過ごしでしょうか”……はは、マリったら相変わらずだなぁ! 暑中見舞いみたいに真面目だし」クス



 “――突然の手紙が御迷惑になっていたらすみません。あの作戦以来、工藤さんに会えず仕舞いになってしまったのが心残りでしたので、ようやく落ち着いた今ペンを取らせて頂きます。”



敏恵「……。そっか…(うろ憶えだったけど、こっちの病院に移るまでずっと救命治療で隔離されてたっぽいし――)」モヤ

敏恵「(マリを泣かせちゃったあの時が、本当に最後だったんだ)……あたしのど阿呆。一番心配させたまま帰って来ちゃって」


敏恵「…………」


敏恵「(まあでも、とりあえず先を読もう…)えぇっと~」



 “仕方のない事ですが、工藤さんの援戦武官任務が解かれて会えなくなってしまったのはとても残念です。第四飛行隊も実質上解隊してしまい、サン・トロン基地に残るナイトウィッチは私だけになってしま――”


敏恵「ぇ…?」



敏恵「えぇっ、“解隊”!?」

敏恵「な、なんでそんな!? 他の皆はっ…??」ヨミヨミ

 

 “デュッケ特別准佐はあの作戦後に明けて直ぐ、撤収するヴァルトラウト中佐達に連れて行かれてしまいましたが、結局その場で除隊なさったようです”


敏恵「ちょ!?」ガビーン


敏恵「えぇ……いや、唐突過ぎるってば…」



 “基地へは荷物引き取りの為に一度だけ戻って来られたので、残っていた私はどうにか挨拶することができまし――……

 

~~




~~~~




~~~~~~~~

 

 

サン・トロン基地



――ズシッ゛…


オクタヴィア「ふぅ~、どうにか全部“括り付けた”けど…これエンジン大丈夫かしら? やっぱり大型トラックを借りるべきだったわ」




ハイデマリー「(…どう見ても積載量を超えてる)……あの、これ等の殆どが本当に…?」

オクタヴィア「ええ、あたしが10年かけて収集したブロマイドコレクションその他生写真と全詳細情報をデータベース化した資料よ。質も量も世界一の自負があるわ♪」

ハイデマリー「そ、そうですか…」

オクタヴィア「生きていて本当によかったわ、これが入るサイズの棺桶なんて流石にまだ用意してないもの」ウフフ


オクタヴィア「――…恩にきるわ、隊長」チラ

ハイデマリー「えっ」

 
オクタヴィア「貴方なんでしょ? 上層幹部に釘を刺せる程の“伝手の伝手”に口利きしてくれたのは」

ハイデマリー「ぁ、ぇと……それは…」オド

オクタヴィア「おかげで懲戒は不名誉除隊だけで済んだし、奥向きの処分も非公式で通信監視される程度だと思うわ」

ハイデマリー「……。すみません…」


オクタヴィア「ぁ、あらあら…べつに皮肉とかじゃないのよ? 本当にあたしにとっては大した事じゃないんだから!」アセアセ

ハイデマリー「ですが、デュッケ少佐が懲戒処分を受けるような事など何も……RAMステルスなんて技術のストライカーを作――」

オクタヴィア「…! 止めなさいマリーちゃん」ピト

ハイデマリー「ぅムっ…!? //」ムグ

 
オクタヴィア「いい、よく聞いて? ホルテン中佐も多分貴方は見逃してるんだと思うけど、その話は不要に口にしちゃ駄目。そんな秘密を知った事実なんて、貴方にとって今の所は不利益にしかならないわ」

ハイデマリー「……」

オクタヴィア「それから、万が一にもその企みの“根本”には絶対触れないで。少なくともネウロイと戦っている間はただの妄想でしかないんだから」

ハイデマリー「…??」ムグ



オクタヴィア「……。気づいてないならいいわ、でも約束してね?」スス

ハイデマリー「は、はい。それは分かりましたが……なにもこの様な処分を受けるなんて…」

オクタヴィア「だから気にしなくていいのよ? この歳まで魔法力が健全なのは有難いけど、あたし程度の実力だといい加減限界だわ。能書以外に何も役立てなかったリーパーとの戦いでそれは実感していたし」

ハイデマリー「ぇ? いえ、そんなことは…!」

 
オクタヴィア「うふふ♪ どの道マリーちゃんが“100機目”を撃墜したら、次の配属からはもう戦闘任務を外してもらおうと思っていたのよ?」ニコ

ハイデマリー「……。デュッケ少佐…」

オクタヴィア「もう少佐相当でも特別准佐官でもないわ。…マリーちゃんにならそうねぇ? あたしのエルヴィーラ〈愛人〉みたいに“ヴィオラ”って呼んで欲しいわ♡」

ハイデマリー「…………はい、デュッケさん」

オクタヴィア「やだ、本当に強かになったのねこの子」ウフフフ

ハイデマリー「……」

 
オクタヴィア「うふふ! まあ、それはともかくとして――」


オクタヴィア「…仕官昇格おめでとう、ハイデマリー少佐」

ハイデマリー「!」


オクタヴィア「これからは民間の一個人として、貴方を応援するわ」

ハイデマリー「……有難うございます。でも、あれは皆さんで成し遂げた撃墜です」

オクタヴィア「いいのよ。直接撃破したのは貴方と敏恵ちゃんだし、エステルちゃんが駄々こねちゃうから受け入れておきなさい?」

ハイデマリー「は、はぃ…」

 
オクタヴィア「…さてと、名残惜しいけど、そろそろ出ないと間に合わないかしら」クイ

ハイデマリー「――! ぁ…」

オクタヴィア「ん? どうしたの?」チラ

ハイデマリー「っ…! ぃ、いえ。なんでもありません…」シュン


オクタヴィア「……。もう、そんな顔で誘惑しないでマリーちゃん? 抱きしめたくなっちゃうじゃない♡」

ハイデマリー「…っ……」ビク

オクタヴィア「うふふ、なんて♪ 冗談よ?」

ハイデマリー「ぃ……いいですょ…」




オクタヴィア「えっ??」
 

 
ハイデマリー「最後ですし……普通の抱擁であれば、その…。デュッケさんの好きにして頂いて――」

オクタヴィア「!!?」

ハイデマリー「……ど、どうぞ…? //」ギュ


オクタヴィア「~~!! ほ、ほ本当にいいの?? 今の可愛さだと手加減しないけど本当にいいのね…!? ///」ゴクリ…

ハイデマリー「ぇ、…あの? ふ、普通の抱擁ですよね?」オド

オクタヴィア「うっ!?」ドッキーーーンッ♡




オクタヴィア「ゃ……やっぱり、止めておくわ。欲望を制御する自身が…!」サッ

ハイデマリー「?」

 
オクタヴィア「~~ぉ、オホン! まぁでも、えぇと…そうね? 独り残されるのは寂しくて当然だわ! こ、今後の身振りについて辞令は来てるの? //」サッ

ハイデマリー「あ、はい。ミーナ中佐の独立部隊が駐在の為こちらに来るそうなので、合流を待って一先ず中佐の指揮下に入ります」

オクタヴィア「! あら本当に?」

ハイデマリー「はい。一時的な部隊合併だと」

オクタヴィア「……そう(彼女が来てくれるなら、心強いわね。安心したわ)」


オクタヴィア「それならマリーちゃん、悪いけどヴィルケ中佐にもあたしからのお礼を伝えておいてくれないかしら?」

ハイデマリー「ぇ? あ、はい」

オクタヴィア「“身内”以外の協力が必要な時は必ず恩返しすると伝えて」

ハイデマリー「分かりました。……あの、デュッケさんはこれからどうされるんですか?」

オクタヴィア「あたし? …そうね~、これからノイエに行って、取り敢えず婚約者〈かれ〉とその御両親に怒られるかしら? 二十歳過ぎたら戻るって約束だったから」

オクタヴィア「可愛い女の子〈ウィッチ〉達に囲まれた暮らしが心地好すぎて、そんな事もすっかり忘れてたけど♪」ウフフ

ハイデマリー「そ、そうですか…」

 
オクタヴィア「まあ、取り敢えず人妻になってみて、リベリオンか扶桑にでも旅行〈ハネムーン〉しながらその後をゆっくり考えるわ」

ハイデマリー「……、ふふ」クス

オクタヴィア「ん、なに?」

ハイデマリー「いえ。…私達の中で最も忙しかったデュッケさんが、実は一番奔放な方でしたね」

オクタヴィア「あらあら、すっかり人を見る目も肥えてるわね。そうよ? 生き方の本質って環境じゃなくて振る舞いなんだから――」

オクタヴィア「その気になればいつどこでも、あたし達は自由なのよ♡」

ハイデマリー「…はい」コク


オクタヴィア「うふふ。それじゃ…荷物も安全運転で運びたいし、もう本当に行くわね?」クル

ハイデマリー「……今まで、大変お世話になりました」

オクタヴィア「こちらこそ、会えてよかったわ。頑張って」ガチャ

ハイデマリー「はい…!」


オクタヴィア「――~んしょ、っと」バタム ガッ


ガホホッ ブルルン…



オクタヴィア「Tsuhüs♡ マリーちゃん」ニコ

ハイデマリー「Ja. …有難うございました」ペコ


ブォオン ブグゥーーーーンッ――




ハイデマリー「……」

ハイデマリー(さようならデュッケ少佐。それから――)


ハイデマリー「…………。ちゃんと安全運転、してください…」

 

~~~~~~~~




~~~~




~~

 

 

 ……――現在基地に駐在されているミーナ中佐のお話によれば、デュッケさんは母親方が弦楽に明るい家系らしく、チェロ奏者の大器になるとの期待を呼んだ事もあったそうです”



敏恵「…へぇ~カッコイイ! タヴィアさん、まともな趣味も持ってたんだ?」



 “しかし中佐が仰るにはブランクを抱えてプロになるのは難しいらしく、本人は奏者よりパトロンになって資金で文化支援をする方がいいのだそうです”



敏恵「あはは! でもやっぱりタヴィアさんだなぁ」


敏恵「……。というか、パトロンってなんだろ?」ゴロン

 
敏恵「~……お! 今度はルーツィアさんの事が書いてある!」



 “――それから、ルーツィアさんもあの作戦任務の後に軍を辞めてしまわれました”



敏恵「? …えっ、また!?」ガーン


敏恵「な、なんでルーツィアさんまで…?」



 “私達も引き止めたのですが、魔法力が減衰し始める前に引退して御友人の孤児院を手伝いたいのだそうです”



敏恵(ルーツィアさん、皆にも話したんだ!?)
 

 

~~




~~~~




~~~~~~~~

 

 

ベルギガ領 郊外

フローラ孤児院



ルーツィア「……~…」モゴモゴ


ルーツィア「……。っ… #」モゴモゴモゴモゴ



『おい、リリー!』スタタタッ



ルーツィア「あ…? #」

「おれにも飴くれよー」

「あたしもー?」トテテ

 
ルーツィア「……チッ、勘弁しろよお前ら…。こいつまで無くなったら私は死ぬ」ガク

「んだよ~、まだいっぱいあんじゃん?」

「あたしもアメちゃんほしー…」

ルーツィア「無理。 …飴ちゃんは自分の小遣いで買――」


「すきありっ!」バッ

ルーツィア「だ、おい!? てめ――」



「もーらった~!」スタタタッ



ルーツィア「んのやろ…、ざけんなクソガキ―!? フローラに言うぞてめぇー! #」クワッ



「へっへ~~ん♪」

 
ルーツィア「……ったく。あいつ掴み取りして行きやがった、……虫歯になっちまえ #」チッ


「リリお姉ちゃん…」


ルーツィア「――ん?」チラ

「…ぁぅ、ぁ…あたしも…」オズオズ

ルーツィア「……」

「アメちゃん…」

ルーツィア「…………。いいよ、持って行きな」

「!」

ルーツィア「ほら、大人しく舐めろ? 窒息したら笑えないから」ヒョイ


「うん! ありがとー!」ステテテ

 
ルーツィア「……はぁ、金はあるのに…。つれぇ…」ガク



――スタスタ


フローラ「やっぱり、吸いたくなる?」


ルーツィア「……ああ、こんな菓子じゃ全然駄目だ。甘ったるいだけ」ガリッ

フローラ「…でも、リリーは甘いお菓子好きだったよね? “向こう”でもよく食べてたんじゃない?」

ルーツィア「ハルテのは砂糖控えてあるんだよ。もうアレに慣れちまったし、…つうか煙草は別」

フローラ「……。一応預かった分はまだ捨ててないけど、どうする?」

ルーツィア「ん……いや、いい。もう捨ててくれ」

フローラ「でもそんなに辛いなら…」

ルーツィア「まぁ…これも慣れるよ。もうウィッチの高給は無いけど、私の義足〈あし〉も金食うからな」

フローラ「……」

 
ルーツィア「ピッケンハーゲンには頼りたくねえし、節制するよ。……ガキ達も臭がるしな」

フローラ「…正直言えば、貴方がここへ来てくれて私は本当に嬉しいけど、“退役”してからでも良かったのよ?」

ルーツィア「フッ…べつに関係ないよ、私はウィッチに興味あった訳じゃないから」

フローラ「え、そうなの??」

ルーツィア「ああ。……訳あってちょっと放っておけない、まぁ…妹分みたいな奴がいて――」

ルーツィア「…そいつが大丈夫そうになったから、それでスッパリ辞めた」

フローラ「そうだったの…」


ルーツィア「まあ、夜空四隊〈あそこ〉は居心地良かったけど世話焼けたからな。…いい加減に私も“姉”が恋しくなったよ」

フローラ「!」

ルーツィア「……やっぱ“家〈うち〉”は楽だな、姉さん?」ニッ

フローラ「リリー… //」ウル

 

~~~~~~~~




~~~~




~~

 

 

“――きっと他にも大きな理由がある様な気がしたのですが、その後説得に出たエステル少尉が納得して戻って来たので、私もそれ以上は何も言いませんでした”



敏恵「んー…でもエステルちゃんは絶対泣いたんだろうなぁ。…本当、“夜の女王”なんかよりずっと立派だよ」クス


敏恵「えっと、それで~…」ヨミヨミ



“――それから二カ月程の間はエステル少尉とハルテ少尉と3人で隊を維持していましたが、空軍総司令部からの辞令で私が正式に夜間航空団司令少佐になり、2人はオストマルク方面の統合部隊に配属される事になりました”



敏恵「……ほうほう?」
 

 

~~




~~~~




~~~~~~~~

 

 

ガリア共和國


――ブロロロロロ~…


エステル「ふわぁ……ぁふ…」

ハルテ「やっぱり昼間は少し眠いですね?」


エステル「んん……ていうか、いい加減飽きてきた…」

ハルテ「あ、でしたら運転代わりましょうか?」

エステル「…いいわよ、どうせハンドル握ってなくたってこの永遠続く景色は変わんないし」

ハルテ「はは…。でもこの街道を抜ければ国境は直ぐですよ? そちらで食事をしたら交代してください」

 
エステル「はぁ~、これ明るいうちには着かないわね…。ヘルウェティア連邦を過ぎたら次ミラノ?」

ハルテ「ぁ、いえ。そっちは遠回りになるので、えっと――」バサ


ハルテ「北部の……ブレシア市を経由するのがいいと思います」ヨミヨミ

エステル「えっ、危なくない?」

ハルテ「“天然要害”が続いていますから、大丈夫な筈です。そのままアルプス山脈に沿って行けば今夜中にはどうにか到着出来そうですよ?」

エステル「…てことはまーたずっと田舎道なのね、了解」ハァ~

ハルテ「まだネウロイの巣が消滅したばかりですし、被害の大きかった中央部は街道の状況がわかりませんから」

エステル「まあ、言われてみれば仕方ないわね…。ていうかそもそも遠すぎなのよ、輸送機も手配しないくせに! ナイトウィッチの私達に日がな昼間運転させんじゃないわよ!?」ムス

ハルテ「ま、まあまあエステルさん…。一応は栄転というお話みたいですし」

 
エステル「フン、ならいっそ“アルダーウィッチーズ”にでも入れなさいよね!? あそこって立直し中でナイトウィッチもいないらしいじゃない」

ハルテ「それは流石に……第504は確か防衛部隊ですし、私達に課せられた御役目からは少し――」

エステル「ぬぐっ…わ、分かってるわよ。ちょっと言ってみただけ」

ハルテ「ぁ、そうですよね? すみません」

エステル「……絶対に私達の故郷を取り返す、その為にこのエステル・バルシュミーデがオストマルクの戦線を押し上げて拠点を築いてやるんだからっ…!」

ハルテ「エステルさん…」

エステル「大尉達や、先輩がいなくたって大丈夫! 私はもう独りでも戦える――」


エステル「今度こそ、私がやってやるのよっ…!!」


ハルテ「……。それは、少し違いますよ」

エステル「――!? は?」チラ

ハルテ「エステルさんは独りじゃありませんよ? 私も一緒に戦いますし、…皆さんから頂いたものは私達の中にずっと残りますから」

エステル「……」

ハルテ「ですから心配いりません。私も寂しくなんてないです!」ニコ

 
エステル「…~~~~ッ ///」ジワ…

ハルテ「?」


エステル「も…“も”ってなによ!? “私達も”って、私はべつに寂しいなんて言ってないっつの!! ///」

ハルテ「あ、すみません。そうですよね?」

エステル「あーーもう!! なんで先輩の私がハルテちゃんに諭されたみたいになんのよ!? 悔しい~~っ!!! #」ミシミシミシ

ハルテ「あぁ! え、エステルさん!? ハンドルが壊れたら危ないです…!」

 
エステル「ぐぬぬ……ま、まぁでもいいわ。そこの所は新しい部隊でばっちりアピールするし」フンス

ハルテ「…え? でも、私達が配属されたのは統合編成のウィッチ隊ですよ? 外国の方は苦手と仰っていませんでしたか?」

エステル「今更そんなの、あのヘンテコ大尉でもう慣れたわよ」

ハルテ「えぇ……」

エステル「フフン♪ 見てなさいハルテちゃん? 夜空四隊の“デキる女”ことエステル・バルシュミーデ様のリーダーシップで、皆引っ張ってやるんだから!」

ハルテ(その前にむしろ私の同期か後輩かと勘違いされる恐れがありますけど…)モヤ


エステル「先ずは軽く模擬訓練でもやって全員ビビらせてもいいわね~? 先輩が除隊した後の2カ月間で隊長に“みっちり”指導してもらった実力を試すには丁度いいし!」ニヤリ

ハルテ「(隊長さん、断れない方ですからね…)……あ! でも今回徴収されたウィッチの中にとても実力の有る方がいらっしゃるらしいですよ?」

エステル「! え、それマジ?」

ハルテ「はい。えぇと、どこかで聞いた事のあるお名前が構成名簿に載ってましたから――」ゴソゴソ

エステル「へぇ、上等じゃない? 先ずはそいつで腕試しよ!」


ハルテ「…何方だったでしょうか? 確か、設立時の第501に所属されていた程お強いらしいんですけど……~」パラパラ

エステル「ふーん。501に――」




エステル「――……。えっ」
 

 

~~~~~~~~




~~~~




~~

 

 

 “……――皆さんそれぞれの場所に行ってしまいましたが、第一夜間航空団第四飛行隊は形式的には残っています。少尉達も、ミーナ中佐の指揮下に入った私も原隊所属は工藤さん達と過ごした夜間第四飛行隊です。”



敏恵「……なるほどぉ、皆ばらばらになっちゃったんだ」

敏恵(一抜けしといてなんだけど、寂しいなぁ…)



 “工藤さんが基地に来てからの数カ月余りは大変な事も色々ありましたが、同じくらいに素敵な時間も過ごせました。私には新鮮で、とても思い出深い記憶です。”



敏恵(マリ…)ジーン

 

 “――個人的には直接会いたい気持ちではあるのですが、流石に扶桑へ伺うのは難しいので、拙文ながらこの手紙と写真を送ります。工藤さんは文書よりも話す方がいいと言っていたのに、すみません”



敏恵(そんなことない、すっごく嬉しいよ。ごめん…)



 “いつの日か欧州が平和を取り戻したら、その時はまた工藤さんの炊いたライスを食べて一緒に歓談しましょう”



敏恵「…うん、待ってて。そに前にあたしが、きっと会いに行くよ」



 “この便りが扶桑にいる工藤さんへ無事届くように、どうか元気でこの手紙を呼んでいますように、心を込めて――”



 “ ――貴方の友人より Liebe Grüße. ”
 

 
敏恵「…………。この手紙、宝物にしよう」ギュ…


敏恵「…そして決めたっ! 早く身体を治して、また遣欧行くぞー!」ガバッ


~ ヒラッ


敏恵「――ん? おっとと…!」パシ

敏恵「あ、この写真!? マイバウムの時に皆で撮ったやつだ!」ペラ



敏恵「……」



敏恵(待っててね? きっとじゃなくて、あたし……絶対にそっちへ“還る”から)



 ストライクウィッチーズ ~月影の構え太刀~ 【完】

                 |i    |i       / /    / i!       i!
                 li!   .|i!     /  /    / .i        i!
                 i!i!   i!i!   /   /    /  i        ii!
                 i!i    i!i_./    ./    ∧   .|       ii!
                 i!i!_, -  i!i/     / "' 、 /     .i      i!i
              /  |ii!   |ii!     /      ヽ   |      ii!i
             // , ' i!i    ii!              │ 斗-==|ii!
             // /    |i    .|i   /          ∧    |ii!
            // ,'    .i!    i!   / /   i       ∧    |ii!
            // /             i__/___/  i      |ii!
           ∨              {ニニニ   ヾ/    } i!i
            ∨        i!    irテ气ミ、_   "' 、  i |i
             .∨    i!   ii!    i{ri_ ,j::}   ヽ_,,.-- ._/
            │∨   |i   .ii!i    i!≧=    ,ィ. `(  〉   ii!   < おしまい……です
             i!  ゞ≧i!i!i!i!i!i!i!    ∧///  ̄     ヽ. ′  i!i
            ∧     |i  |ii!     ゞゝ       ///   i!i!
            /     i!  i!i!     |    `  ´   -=≡三≧ュ、.
          /      i!|  i!i∧     i        , ' i   i!i!
         /     /  i!  i!i! ∧     i ≧ュ、.   / i!   i!i!
      _ ィ      ,.  ─ニi!i!` ∧   ,'   '    ´   i!   i!i!
≧=-          -ニニニ.i!i!  ∧  l∧ く        i!   i!i!
_           /ニニニニi!ニニニ∧  i/i::ii   /i   i!   i!i!
/            /ニニニニニニニニニ  i\i::i!∧/ /  i!   i!i!
   /,′      iニニニニニニニニニニ:i  i□∧∨∨  ,′  i!i!
 //        /ニニニニニニニニニ. /ヽ/ニ∧ニi  /    i!
//          ./ニノヽ≦ニニニニiニニ/ /ニニ∧ニiニi/
/      ,ィ  /ニ/MM /ニニニ}../ /ニニニ∧∧

     / ///ニ/ .i〃ミ/ニニニ,.'/ /ニヽ`ヽニ∧∧

    /  /  /ニニ ○ ,x ----    >´ニニニニニ∧∧
./i /      /ニニゝ/≧ュ、.ー―ニニニニニニ}ニ.∧.∧
, .|i      /ニニニニニニニ/ニニニニニニニニニ∧∧

 ゞ     /ニニニニニニニ,'ニニニニニニニニニニ }.∧
  ヽ.   /ニニニニニニニニ/ニニニニニニニニニニニ/ニ.:}
...-=≡ニンニニニニニニ.,ニ'ニニニニニニニニニニニ>ニ>'
ニニニ/ニニニニニニ./ニニニニニニニニ,.ニ´ニ>''´
ニニ/ニニニニニニニ/ニニニニニニニニニニニ>''´
/ニニニニニニニニ/ニニニニニニ/ニ,'ニニ/
ニニニニニニニニニニニ/ニニニニニ/ニ/ニ∨
ニニニニニニニニニ/ニニニニニ/ニ./ニニ∨
ニニニニニニニニニ./ニニニニ/ニ/ニニニ∨

ようやく終えたゾ (・×・)!

ここまで読んでくれた人に感謝、よくもこんな1年近くやってたなと感じます……。
思いついた時はあっという間だったので、正直2カ月くらいでさっと済む気でいました

※今後はのんびりとwikiを弄ったり、一応レスも余っているので気ままにオマケ程度のものを書き足そうかと考えています

しかしながらここで書きたかった事は終わりました、完結です
更新も遅い中ありがとうございました。シャーリー万歳

|×・) ……ヨシ、ダレモイナイナ?

いるわ

 
【おまけ小譚 ~シャワールームの想い出~】


扶桑皇国


鎌倉 明石の某山中



敏恵「んん~! なんだか調子がよくなった気がする!」ノビビ~


芳佳「あ、本当ですか?」

敏恵「うん! お腹ごろごろしてたのも全然なくなったし、この山って本当に凄いんだね!?」

芳佳「そうみたいですね。坂本さんも去年この山で修行したような事言ってましたし」

敏恵「へぇー。……修験道って実在するんだ?」

芳佳「私もよくは知らないんですけど、この辺りの山間には霊脈?みたいな物があるらしくて、土地とか自然の中にも魔法力が流れているみたいです」

>>263
Σφ(・×・;)ファ!?

 
敏恵「はへぇ…? 取り敢えずなんか凄そうだけど、じゃあ芳子さんが患者のあたしを薪集めに行かせるのは、お山様の癒しパワーに肖らせるため??」

芳佳「え? えぇっと…はい。多分、きっとそうですよ」

敏恵「そっか。なんだぁ、お金払ってるとはいえプー太郎な居候だから使いっぱしられてるんだと思ってた! ……戻ったら芳子さんに肩叩きしてあげよう」

芳佳「あはは…」

敏恵「でも本当にこの土地に来てから“渇き”も少ないし、微妙にだけど日毎に調子よくなってる気がする」ニギニギ

芳佳「…そんなに違うんですか?」

敏恵「うん。芳子さん達の治療もあるけど、なんかこう……朝起きた時の空気が他とは別なんだよね? あたしの実家も田舎な所だけど、そういうのとはなんか違う感じがする」

芳佳「そうなんですか…? う~ん、私にはあんまり実感無いのに」

敏恵「いやぁ~、そう言いつつ! 枯れちゃったっていう芳佳ちゃんの魔法力もさ、案外元に戻っちゃったりして?」ムフフ

芳佳「え? あはは、それは無いですよぉ! 魔法力診断でも完全に無くなったって言われちゃいましたし」

敏恵「むむ、そっか。それは残念だね…」

 
芳佳「いいんです、べつに私は後悔してませんし。…それより薬草も大分採れたのでそろそろ戻りましょう敏恵さん」

敏恵「ん、了解しました。芳佳先生」ヨイショット

芳佳「帰り道は転び易いので気をつけてくださいね? 来た時と変わって下りますから、前につんのめっちゃうと止まら――」

敏恵「っ…!? のわッ!!」ヨタタッ


ドカッ


芳佳「んぐっ!? 」ガクン


ドジャ



ガッ



ザシャシャーー

 

 
宮藤家


清佳「ど、どうしたの貴方達? 何があったの!?」

芳佳「えへへ、帰りにちょっと転んじゃって…」ボロ

敏恵「……申し開きもございません、あたしの所為です…」ショボーン

清佳「2人とも怪我はしてない?」

芳佳「う、うん。ちょっと擦りむいただけだよ、自分で手当てするから」

清佳「そう。…工藤さんは、大丈夫?」

敏恵「娘さんの服は弁償します…」ショボボーン

清佳「えっ?」

 
芳佳「えぇと、敏恵さんも大丈夫だよお母さん!? ちゃんと私が診たからっ!」

清佳「そ、そうなの? ……じゃあ、とにかく汚れた身体洗い流しちゃいなさい」

芳佳「うん」

敏恵「本当すみません…」

清佳「お母さん水張ってくるから、悪いけど焚いてきてくれる?」

芳佳「はーい!」


敏恵(文句ひとつ言われなかった。清佳さん、やっぱりやさしい…)ジーン




――――

――





 カポーン ♨



敏恵「あぁ、あんなに集めたのにもう殆ど燃やしちゃったなんて。肉体労働は世知辛いなぁ」チャプ

芳佳「……」
 

 
敏恵「魔法力使っていいならもっと沢山運べるんだけど、芳子さんに禁止されてるし」

芳佳「…………」ジーー

敏恵「ふぃ~~、いつ頃復帰できるかなぁ?(…あ、なんか胸の裏かゆい)」ザパァ グイー

芳佳「!?」


タユ~ン


敏恵「んん…」ポリポリ

芳佳「おぉ……これは…!」ズイ

敏恵「――んぇ、何? どうかした芳佳ちゃん?」

芳佳「!! あ、いえっ!? べつに見てるだけですから! //」バシャバシャ

敏恵「…?」

芳佳「っ…」ゴクリ

 
敏恵「…………。ふむ、どれどれ」ニギ グイ

芳佳「へ?」


フニュ


芳佳「!!」

敏恵「これでいいかな?」

芳佳「っ…!? ぃ、いいんですか!?」

敏恵「ぇ…? あ、うん。まあ女の子同士だし、ちょっと触るくらいなら」

芳佳「や、やった…! ありがとうございます!」

敏恵「あはは(…エステルちゃんもそうだったけど、大きい胸とかに憧れてる感じって微笑ましくて可愛いなぁ)」


敏恵(芳佳ちゃん素直でいい子だし、ちょっとお姉さんしたくなっちゃうね)フフ

 
芳佳「わぁ……思った通りだ、やっぱり同じくらい大きい…! でもこの手触りは――」モミモミモミン

敏恵(……あ、あれ? なんか思ってたのと違う?? 凄い存分に揉んでくるんだけど)

芳佳「シャーリーさんとはまたちょっと……、おぉ…! 指がこんな簡単に埋まる…!?」モミモミモニュインモミモミモミ

敏恵「!? ちょっ…ちょっと待って芳佳ちゃん!? なんか違う、これなんか違うから!! ///」


芳佳「――え? …あっ! ごめんなさい、つい」ハッ

敏恵「~~ぃ、ぃゃうん…。自分で触らせておいて申し訳ないけど、なんか“目”がちょっと……男子のそれだったし… ///」ササッ

芳佳「あ、あはは…そんなことないですよ? えーっと、そのぉ~……――」

芳佳「…あ! ウィッチの人達と一緒にお風呂入るのが久しぶりなのでっ、それでつい燥いじゃったんです!」

敏恵(いや、違う気がする。だってなんかタヴィアさんのセクハラを思い出したもん…)チャプ

 
敏恵「というか、芳佳ちゃんも欧州にいたんでしょ? あっちの基地に大浴場なんて本当にある…?」ジト

芳佳「あ、ありましたよぉ!? そんなに怪しまないでくださぁい! //」

敏恵「む…、……そっか。ごめん」

 
敏恵「…んでも、いいなぁ。ベルギガにいた時はあたしシャワーしか出来なかったし」

芳佳「え、湯船は無かったんですか?」

敏恵「うん。まあ確かに身体は洗えるから問題ない事もないんだけどさぁ、やっぱり扶桑人はお湯に浸かってこそじゃん?」

芳佳「そうですね。坂本さんなんかそれで基地に立派な露天風呂作っちゃいましたし」

敏恵「――えっ、露天風呂だったの!?」バシャッ

芳佳「はい。アドリア海が見渡せてとても気持ちいい感じでした」

敏恵「……ぃ、いいな。楽しそうだなぁ…」ヘニャ

芳佳「あはは…。でももう、ほら? 終わった事ですから、元気出しましょう敏恵さん!」

敏恵「ぅぅ…、あたしの所なんて全部仕切り分けてあったし。…~」ブクブク


芳佳「あ、でも声は聞こえるじゃないですか。基地の人達とお喋りしたり、楽しいと思いますけど?」

敏恵「あ~……うん。まあそうなんだけど、あそこの皆は色々あってさぁ…――」

 
~~


~~~~


~~~~~~~~
 

 

※回想


サン・トロン基地



ハイデマリー「――…今週の連絡事項は以上ですが、皆さんからは何かありますか?」


エステル「……」

ルーツィア「フゥ~…」プカ

ハルテ「……」

ハイデマリー「…。えぇと…」キョロキョロ

オクタヴィア「あたしも、今は特にないわ」

 
敏恵「ん、じゃあはいっ! あたしあたし!」

エステル「じゃあって何よ、“じゃあ”って。またしょうもない事なら付き合いませんよ?」ジト

ルーツィア(……なんか長引きそうだな)プカ

ハイデマリー「あ、はい工藤さん。何ですか?」

敏恵「うん。実はちょっと、気になってる事があって――」ガタ

ハイデマリー「?」


敏恵「……皆いい加減さ、“お風呂”に入らなくて平気なのっ!?」

ハイデマリー「えっ」




し~~ん…




エステル「……。は?」

ハルテ「??」

 
オクタヴィア「“お風呂〈バーツ:Bad〉に入らなくて”って…?」チラ

ルーツィア「バスルームならあるだろ。使ってるし」

エステル「あーあ、遂に頭がイカれたのね」ハァ

敏恵「違うっ! そういう意味じゃなくて!? 浴槽〈Badewanne〉が無いじゃん!」ビシッ

ハイデマリー「ぇ…? ぁ、はい。そうですけど…」

敏恵「肝心な物が無いのに、皆は平気なの? 何か物足りないって感じない!?」


オクタヴィア「……ああ、そういうことね」ウフフ

ハルテ「はい?」

エステル「何? あのスチャラカ大尉の言ってる意味解ったんですか副隊長?」

 
オクタヴィア「扶桑人の敏恵ちゃんは身体を洗う時お湯に長く浸かるのが当たり前なのよ。習慣の違いってことじゃないかしら?」

エステル「…あー」

ルーツィア「なるほど」

敏恵「ちょ、ちょっと待って!? 何、欧州〈こっち〉ってまさか湯船に浸からないの!?」

ハイデマリー「あ、いえ。そんな事はないですが、そんなに頻繁には…」

敏恵「……冗談だよね? あんなに気持ちいいのに、何故に…??」


ハルテ「大尉さん」チョンチョン

敏恵「!」

ハルテ「恐らく扶桑のご事情とはまた違っているんだと思いますが、カールスラントは水道使用量あたりのお金が結構高かったんです」

敏恵「んぉ…?」

ハルテ「お身体を洗う度に湯船いっぱいの水を張るのはその……あまり経済的ではないので。私達は大尉さんほど習慣的には感じていないと思います」

 
エステル「そうそう。家で無駄遣いしたら凄い怒られるのよねぇー?」

オクタヴィア「あたしの家では使いたければ自由に使えたけど、面倒だったし、べつにシャワーしてすぐ済ませていたわ」

ルーツィア「相変わらずサラッと金持ってんな、少佐のとこは」プカ~

エステル「お金どころか育ち方まで自由にしちゃったのはどうかと思いますけどね」

オクタヴィア「うふふ。エステルちゃんをこんなに愛らしく育ててくれたご両親も立派よ♡」

エステル「いや褒めてないんですけどっ!? …でもまぁ、ありがとう」


敏恵「……」ポツーン

 
ハイデマリー「ぇと……? とりあえず工藤さんのご意見について、この場での着地はどうしましょうか…?」

ルーツィア「どうって言われてもな…。無いもんは無いんだからしょうがないだろ」

オクタヴィア「まあ、それはそうかしらね。べつにお湯に浸かったリラクゼーションは皆賛成でしょうけど、この基地に浴槽設備がないのはどうしようもないわ」

敏恵「ぐぅぅ…。悲しい…」

ハイデマリー「工藤さん…」

エステル「悲しい時に“ぐー、悲しい”なんてまんま言う人初めて見たわ」


敏恵「…あたしだけなんて、なんか腑に落ちない! 皆はお風呂の時間をもっと大事にしないの!? どうなのマリ!?」

ハイデマリー「えっ、私ですか…?? ぃぇ、あの……べつに大切にしていない訳ではないと思いますが…」

敏恵「本当に? でも哨戒一緒だった後はいつも不自然に時間ずらすし、それで後から来たと思えば10分くらいですぐ出て行っちゃうじゃん!?」

ハイデマリー「!! そ、それは……その…。恥ずか…ぃです…ら… //」モゴモゴ

敏恵「?」

 
エステル「あのねぇ、だからそれは習慣だって言ってるじゃない。身体洗って流すだけだし、わざわざ誰かと一緒に行く意味も解んないですよ」ジト

オクタヴィア「社会的…というか集団心理ってことかしら? 扶桑では同性がお手洗いで交流する素晴らしい文化が盛んだって聞いた事あるわ」

ルーツィア「“ツレション”ってやつか」プカ

ハルテ「連れ? …“ション”とは何でしょう?」

エステル「はぁ?? 誰かとトイレ行ってどうすんのよ、一緒の個室入るわけ? 変態じゃない」

オクタヴィア「うふふ♪」

ハルテ「え、えぇ…」


敏恵「違うよっ!? 勿論用足しは別だから!! そういうのはだから…行ったついでに男子に内緒の話とかっ、情報交換とかするの! えっちな事とか無いから!! ///」バンッ

オクタヴィア「あらあら、べつに触り合ったり愛し合ったりするなんて言ってないのに。何考えてるのかしら♡」ウフフ

ルーツィア「…そこまで考えてんのあんただけだよ」

 
ハイデマリー「あのぉ…? ぉ、御手洗いの話になるんでしたら…一先ずミーティングは終了してもいいですか?」

敏恵「ち、違う! 待ってマリ!? トイレの話はどうでもいいの!」

ハイデマリー「は、はあ…? はい」

敏恵「え~っとだから、結局あたしが言いたい事は~…………何だっけ??」アセアセ

ルーツィア「浴槽だろ? 諦めな」

敏恵「ぅぅ~っ……で、でも湯船がなくたってもっとこぅ…~」グヌヌ

ルーツィア「あ?」

エステル「…?? いい加減なんなのよ大尉」


オクタヴィア「――……。解ったわ敏恵ちゃん」キリ


敏恵「えっ」

ハルテ「?」

 
オクタヴィア「貴方、つまりこう言いたいんじゃない? 自国の文化に倣ってお風呂そのものをもっと有意義に過ごさないかって、あたし達にそう訴えたいんでしょ?」

敏恵「!」

オクタヴィア「確かに湯船にも浸かりたいんでしょうけど、きっと敏恵ちゃんが欲しかったのは“大浴場”よね? 扶桑の公衆お風呂みたいな、本質的に貴方が望んでいるのはそういう交流環境だと思うわ」

敏恵「は、はい! 多分そんな感じ!」



ハルテ「…凄いですね准佐さん。名推理です」

エステル「変人だけど社交と政治スキルは高いのよね、副隊長は」

ルーツィア「……いや、多分そういうことじゃないな(猛烈に面倒な予感がする)」

 
オクタヴィア「了解したわ。異国の生活文化で独り戸惑い苦しむその気持ち、貴方を受け入れた以上は我々も推し量ってあげなくちゃいけないわよね。そうでしょ隊長?」キリリッ

ハイデマリー「えっ? ぁ、はい。そう…ですね」

敏恵「ん?」

ハイデマリー「…私達の協力で工藤さんの生活負担が減るのなら、幾分かのそれは必要な事だと思います」

ルーツィア(そんな重い話か、これ?)




オクタヴィア「――はい! じゃあ隊長指示も出たから、早速全員で“身体を洗い合い”ましょう♪」ニコ




ハイデマリー「…………。はい?」

ルーツィア「……」

エステル「……」

ハルテ「ぇ、えぇと…?」ポカーン

 
オクタヴィア「ほぉら皆、立って立って♪ さ、敏恵ちゃんも急ぎましょう?」ガシッ

敏恵「んえぇ!? あ、あのタヴィアさん? なんかいきなり過ぎて、よく分からないんですけど??」

オクタヴィア「何言ってるのよ今更? これから敏恵ちゃんの為に有意義なお風呂タイムを実践するのよ…♡」ウフフフ

敏恵「い、いやあの……うん。多分タヴィアさんが考えている様な感じじゃなくて、あたしが言ってるのはもっと普通に楽しく――」

オクタヴィア「勿論楽しいわよ~? 病みつきになっちゃうかもね、うふふふ…♡」ニッコリ

敏恵「ひぇ!?」ゾワ

オクタヴィア「さあ行きましょ! …マリーちゃんも言質取ったから逃げちゃダメよ? ちゃんと全員で協力してあげなくちゃ♪」グイグイ

敏恵「ちょっと待ってタヴィアさん!? な、何か違う気がする! 伝わってない気がするーっ!!」

オクタヴィア「うふふ、心配しなくてもいいのよ? あたしが有意義なひとときにしてあげるから♡」スタスタ

敏恵「うわーん! 何これッ、なんか凄い腕力~!?」ヨタタッ


――バタンッ



ハイデマリー「……。…………」

ルーツィア「私アレだ、あー…腹痛いからパス」

ハルテ「ぉ、御独りだけ逃げるのはずるいです…」

エステル「あの人もホントしょうもないわね。隊長どうします?」チラ

ハイデマリー「と…取り敢えず、工藤さんを助けに行きましょう」

エステル「はぁ~、ほっとけばいいのに。結局はのせられる訳ね…」

 
――――

――



 
シャワー室



敏恵(なんだかんだ、皆でお風呂的な事にはなったけど…――)チラ


オクタヴィア「さあ、どこから洗ってほしいの?」

敏恵「全然違うよこれッ!? 恐怖しかない!!」

オクタヴィア「ふふ、怖がることないじゃない? 優しくしてあげるから、気持ちいいわよ」サワサワ

敏恵「ひゃひ!? お、お腹撫でないでください!? ///」

 
オクタヴィア「あら、ここ弱いの? じゃあ……この豊満なお肉から頂いちゃおうかしら♡」フニュ

敏恵「ちょ!! いいです、自分で洗いま――っ…! んぁ…~ぁふ!? ///」ヘナ

オクタヴィア「うふふ、ここの弄り方にはコツがあるのよ? 酪農の搾乳に少し似てるんだけど、乳腺がある所をこう――」

敏恵「い、いいですってばっ!? ///」

オクタヴィア「乳首に向かって揉んで――」ムニ

敏恵「ぁひん…! ゃ…やめぇ…///」


オクタヴィア「――で、最後にちょっと摘んでサービス♡」キュッ

敏恵「~~!!? ///」ビクゥッ

 
オクタヴィア「ほぉら、気持ちいいでしょ♪ 可愛い声出しちゃって」ウフフ


敏恵「む……~~むわぁああっ!!! /////」バッ

オクタヴィア「!」



敏恵「た、たすっ、助けてぇえぇええー!? ///」トタタタッ




オクタヴィア「あらあら……あたしとしたことが、ちょっと計算違いしたわね? まさかここまで初心だったなんて」

オクタヴィア「…ん~、敏恵ちゃんにはちょっと早かったみたいだわ。仕方ないから他の子を周ろうかしら?」

 
――

 

敏恵「ひぃ…はぁっ……~~ //」トタタ


エステル「副隊長から逃げたのは正解だけど、走ると転びますよ? 床濡れてるんだから」シャワワ~~

敏恵「~…ぁ、エステルちゃん。…よかった、ここは安全だ」

エステル「まったく、あの人がいるのに“風呂場で交流”なんて言い出すから悪いんですよ」クイ

敏恵「ぅ…うん、ごめん。でもあたしが言った訳じゃない気がするんだけど…?」

エステル「話題提供したんだから同じよ。隙あらばセクハラして来るんだから、副隊長は」フキフキ

敏恵「あはは…、そうだね。気を付ける」

 
エステル「ふぅー……とりあえず私は洗い終わったんでもう出ますけど、大尉もさっさとし――」クル

敏恵「わ!」

エステル「にょぶ!?」




ニュムン…




エステル「~ぷぁ! ちょっと大尉、狭いんだから退い――」ガバ


エステル「てぇ…? ……ッ!!」

敏恵「ごめん、急にだったから! はいどうぞ、お通りくださいお嬢様~」タユン



エステル「……」
 

 
敏恵「…? あれ、エステルちゃん?」

エステル「でか過ぎ…」ジロー

敏恵「えっ」



エステル「~~っ……ち、ちくしょーーッ!!! ##」ベチーン!!

敏恵「痛っ゛!! 急に何するの!??」



エステル「巨乳なんて全部叩かれて落ちちゃえばいいのよっ! 馬鹿~!!」トタタタ


敏恵「えぇ?? ……そんな、無茶な…」

 
――



ルーツィア「……」シャワワ~



『ルーツィアさ~ん?』


ルーツィア「?」


敏恵「お、いたいた」ヒョコ

ルーツィア「…どうした大尉?」クイ

敏恵「いやぁ、実はさっき――…!? あっ!」ギクッ

ルーツィア「あ? なんだよ?」

 
敏恵「ぇ!? あぁいや、ちょっとその……改めて見るとビックリしちゃって…」タジ

ルーツィア「…? ああ右脚〈こいつ〉な、義足つけたままは流石にねえよ」

敏恵「…よくここまで辿り着きましたね?? 滑りそうなのに」

ルーツィア「その辺適当に捕まれば伝って来れるよ。慣れれば余裕」

敏恵「ほぉ…? 凄い」

ルーツィア「まあ、この椅子が無いと何にも出来ないけどな? 悪いけどここは私専用だ」フッ

敏恵「あ、はい。だろうなーとは思ってました」


ルーツィア「……で、何の用? エステルの事か?」

敏恵「! なんで分かるんですか!?」

ルーツィア「いや、すぐ隣だし。聞こえてたっつうの」

敏恵「…そうでした //」エヘヘ

 
ルーツィア「どれ、見せてみな。…痛かったか?」チョイチョイ

敏恵「あ、はい。結構痛かったです…」ドウゾ


ルーツィア「ん……? …プッ」

敏恵「へ?」


ルーツィア「クッハハ、手形になってやがる! あいつ、景気よく引っ叩いたな!?」ケラケラ

敏恵「んぇえ、嘘!?」ガバッ

敏恵「…あっ本当だ! 赤くなってるし!?」ガーン

ルーツィア「アッハハハ! 最高だろ、おい」

敏恵「わ、笑い事じゃないですよ!? なんで皆してあたしの胸を虐めるの! ///」

ルーツィア「プクク…いや、フフッ……確かに大尉のそれはでか過ぎだ、仕方ない。クッフフ…」

敏恵「む、むぐぅ…(駄目だ、ルーツィアさんご機嫌なのは良いけど完全に揶揄われてる!!)」ムスー

 
オクタヴィア「――あらあら、楽しそうな声がすると思ったら! 敏恵ちゃんもルーちゃんも酷いじゃない? あたしを拒否しておいて2人でプレイなんて」バンッ

ハルテ「ぅぅ……助けてくださぃ…」ダラーン



敏恵「!? げっ、タヴィアさん!!」

ルーツィア「! …クソ、来やがったか」チッ


オクタヴィア「あたし達も混ぜなさい! 4人でおしくらまんじゅうしましょ♪」

敏恵「ひぃぃ! また意味わかんないこと言ってる!?」

ルーツィア「…なあ少佐、いい加減にしませんか? あとハルテを放してやってくれ」

オクタヴィア「いいえ駄目ね。お菓子ちゃんとは少し休んだ後にまた“トロットロ”にしてあげる約束なのよ」

ハルテ「しょ、それは准佐さんが……そう言わないと止めてくれなかったから…でぇ……~」グッタリ

敏恵「ハルテちゃん、いったい何されたの…っ!?」

オクタヴィア「うふふ、この子のポイントは耳と鎖骨♡」

ルーツィア「聞いてねえよ、放してやれ #」イラ

 
オクタヴィア「んもぅ、そう怒らないでルーちゃん? 貴方もちゃんと可愛がるから♪」

ルーツィア「……。少佐、私も今は無防備だから手加減しないぜ…?」ス

オクタヴィア「あらいいわねぇ~♡ ならあたしも本気になっちゃおうかしら? …確かルーちゃんの感じる所は――」

ルーツィア「ッ!! ##」ブンッ


ドゴォッッ


オクタヴィア「ぁぎゅ゛!!? ぅ゛っ……~」ガク

ルーツィア「…それ以上喋んじゃねぇ #」





オクタヴィア「 」チーン

敏恵「ルーツィアさんお見事、シャワーヘッドが正確に鳩尾直撃…(しかも凄い音したよ)」

ルーツィア「ん…、素人は真似すんなよ?」

ハルテ「……ぅぅ、何方か助けてくらさぃ…」グデ

敏恵「? おわっ、ハルテちゃんもタヴィアさんの下でバテてる!」

ルーツィア「チッ……ったく調子に乗り過ぎだぜ少佐」ヨッコラセ


ルーツィア「大尉、あがるから脱衣所までこいつら運んできてくれ。その先は私がやっとく」

敏恵「あ、はい! 了解です」

 
――



敏恵「うーん、結局あたし独りになってしまった…」

敏恵(ここの設備で……というかタヴィアさんがいる以上、皆でお風呂は無理だったかぁ。もう余計な事は言うのやめよう)


カラララ――


敏恵「ん?」


ハイデマリー「……工藤さん、無事ですか…?」ソー

敏恵「お、マリ!」

ハイデマリー「すみません、その……デュッケ少佐を止めに廊下まで来てはいたんですけど、あまりにも危険な気がしたので…」オズオズ

敏恵「あはは…、ありがとね。でもマリまで来てたら危なかったよ? かなり混沌としてたし」

ハイデマリー「はい。…廊下まで聞こえてました」

敏恵「“敵”はルーツィアさんがやっつけてくれたから、今はもう安全だよ」

ハイデマリー「は、はい。それも先程廊下で見ました…」

 
敏恵「なんかごめんねマリ? あたしが変な事言い出したせいで乱痴気騒ぎしちゃって」

ハイデマリー「いえ、そんな…」

敏恵「やっぱり、あたしが此処の暮らしに慣れてみる事にするよ。住めば都とかって言うしね?」

ハイデマリー「……。そうですか」

敏恵「うん。あんまり我儘言ってるのがバレると園さんにも怒られるし、マリの事も困らせたくないもんね?」

ハイデマリー「工藤さん…! すみません」

敏恵「む!? 謝っちゃ駄目だよマリ、あたしがいいって言ってるんだから恐縮しなくていいの!」

ハイデマリー「はい、すみま――……。はい」


敏恵(マリ、相変わらず硬いなぁ? …なんか、今一つ打ち解けて貰ってない気がする)モヤ

 
敏恵「ん~…郷に従うと決めたばっかりだけど、これはやっぱりどうにかしたいなぁ」ムムゥ

ハイデマリー「ぇ?」


敏恵「――……よし! だったらマリ、一緒にシャワーしよっか!」

ハイデマリー「はい!? な、なんですか…?? ///」タジ

敏恵「今こそ扶桑伝来“裸の付き合い”を活かすべしだ、うん!」ニギ

ハイデマリー「え、そんなっ……ま待ってください!? 私、あのっ… ///」

敏恵「あ、大丈夫だよ? 背中流してあげるってだけだから。タヴィアさん的なスケベは絶対ないから」

ハイデマリー「ぅ…で、ですが……(誰かと一緒の時点でとても恥ずかしいのに…)」

敏恵「取り敢えずあそこ入ろっか? さあさ、行こうマリ!」

 
――



ハイデマリー「…… //」


敏恵「本当はもっと多人数で連なってやるんだけどね? しかも立ってないで座るんだけどさ、まあ臨機応変にってことで」アワアワ~

ハイデマリー「そ、そう……ですか ///」

敏恵「はい、それじゃあタオル取って? 先にあたしが洗って進ぜよう!」

ハイデマリー「っ… ///」モジ

敏恵「…?? マリどうしたの? 身体に巻いてあるタオル、取ってくれなきゃ背中洗えないと思うけど…?」

ハイデマリー「ぁ…ぁの、工藤さん… ///」

敏恵「?? はい、なに?」

 
ハイデマリー「っ…そ、その……私…。恥ずかしぃ…~です ///」

敏恵「えっ? あ、いやいやっ! 本当に何も変な事しないよ!?」アセアセ

ハイデマリー「……違うんです…。そうではなくて…っ ///」

敏恵「…? んん??」

ハイデマリー「ひ、人前で……裸になるのはやっぱり、抵抗が…! ////」

敏恵「!! あっ、そっちなの!?」

ハイデマリー「~~っ… ///」コク


敏恵(そ、そうだったんだ!? そもそもソレで、だからシャワーする時間ずらしてたんだね…?)

 
ハイデマリー「あの、工藤さん? 出来ればこのままで何とかやって頂けませんか…? //」チラ

敏恵「いや、それは流石に無理だけど」

ハイデマリー「ぅ… //」

敏恵「(これは何というか、繊細過ぎるなぁ)…ねえマリ、あたし達女の子同士なんだから身体見られるくらい平気じゃない? ここそういう場所なんだしさ」

ハイデマリー「そ、そう言われても… ///」

敏恵「あー……じゃあこっち向いてない間だけ。あたしが背中流してあげる時だけでいいから、ね? それならどうかな?」



ハイデマリー「…っ ///」

敏恵「……」



ハイデマリー「~………わ、分かりました… //」

敏恵「よかったぁ、ありがとう」ホッ

 
ハイデマリー「工藤さん、タオルは脱ぎますから…出来ればその……後ろを向いていてください //」

敏恵「ぃ、いやいや…マリ背を向けてるじゃん? どっちにしろそっち見なきゃ背中流せないよ」

ハイデマリー「ぅぅ… //」モソモソ


~ハラリ


敏恵「おぉ、やっぱ色白だね? ていうか括れきれいだなぁ」

ハイデマリー「~… ///」


敏恵「じゃあちょっと触るよ?」

ハイデマリー「えっ!? ど、どうしてですか!?」ビクッ

敏恵「いやだって、背中洗うから」

ハイデマリー「ぁ…そ、そうですね? はぃ… //」

敏恵(マリったら、恐がり過ぎでしょ? あたし若干落ち込むんだけど…)ガク



~~~~~~~~


~~~~


~~

 

敏恵「――という感じで、全く上手くいかなかったよ」チャパ


芳佳「はあ……? そうだったんですか。私の所は比較的みんな抵抗無さそうでしたけど」

敏恵「本当に!? やっぱり扶桑人が戦闘隊長〈仕切れる人〉だと違うのか? もっさん凄い…」

芳佳「あはは…、確かにそうかもしれません。501の隊長もとてもしっかりした人なんですけど、何だかんだで坂本さんの意向がよく通っていた気がします」

敏恵「うーん、推しが強そう……ていうか笑い飛ばして誤魔化されそうだもんね。あの快活さじゃあ」

芳佳「そんなこと無いですよぉ。…多分」ボソ

 
敏恵「いや、でもさ? 昨日の晩御飯で一緒だった時に最後残ってたお新香っ、あたしも狙ってたのに食べちゃった件も笑って誤魔化されたし!!」バシャッ

芳佳「敏恵さんまだ気にしてたんですね…。それは何と言うか、早い者勝ちでいいんじゃないですか?」

敏恵「そ、そうだけど…! よく考えたら、あの人はお邪魔してた訳なんだし、そこはちょっと遠慮する感じとか――」

芳佳(それを言ったら敏恵さんも居候だから同じになっちゃうよ)アハハ…


敏恵「はぁー…もう、考えたらお腹減ってきた。芳佳ちゃん、お風呂あがったらおにぎり作って食べない?」

芳佳「え? 私はいいですけど、台所空いてるかなぁ? それに、具に使っていいもの何か余ってたっけ??」

敏恵「大丈夫、それならあたしに考えがあるから」

芳佳「あ、そうなんですか?」

敏恵「うん。あのね、“蜜柑”ってのはどうかな?」

芳佳「!??」

敏恵「前に夢に見た事があるんだけどさ、実際には美味しいのかどうかちょっと気に足るんだよね!?」

芳佳「……。ゃ、やめませんか? そういう“粗末”な事すると叱られますよ…」



【シャワールームの想い出、終】

>>310訂正

気に足る → 気になる


(・×・)<もうちょっとなんか書くゾ、たぶん

やった!楽しみだった
1がブレイブウィッチーズ見てるのか気になる

>>312
観てますよ

雁淵ひかり「下原さんの手、温かかったなぁ…」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1479032810/)
これ書こうとしたけど挫折しました。ここと間違えてるし…

 
【おまけ小譚 ~不祥の師~】



宮藤家


敏恵「――…はむ!」バクッ


敏恵「~~♪ うまうまぁ!」

敏恵(羊羹とカステラを一度に…、これを考えた人は天才だ!)モグモグ



< ジリリンッ ジリリリン !



敏恵「ふゅも!? でんふぁ? ……もぉ、こんぁほきにぃ」ノソノソ

 

ジリリリリリ――


敏恵「ふぁいふぁーい、~~…」ガチャ

敏恵「もひもひ?」



小園『?? …そのすっ呆けた声、まさか工藤か?』

敏恵「んー! ぞのひゃん?」


小園『ああ、そうだが……お前何か食ってるな?』

敏恵「~~ングッ! はい、シベリアを」

小園『……。療養しろとは言ったが、いい気なものだな…』

 
敏恵「昨日、芳佳ちゃんの上官が来た時にお土産で持って来たんですよ。横浜の“コテイべぇかりぃ”のやつ」

小園『知るか。それよりどうしてお前がその家の電話に出る? 秋元先生や宮藤夫人はどうした?』

敏恵「2人とも今は他の診察中ですよー。芳佳ちゃんも部屋で一生懸命勉強してるし」

小園『…で、お前独りだけ昼間から菓子食ってるのか』

敏恵「し、仕方ないじゃないですか!? あたし魔法治療を受けてない時はやる事ないし! ///」

小園『戦線復帰をする気なんだろう? だったら身体を訛らすな、せめてだらけず運動でもしろ』

敏恵「うぐぐ…。“言うは易し”です…」

小園『阿呆』

 
敏恵「そっ、それより!! いったい何の用事で電話してきたんですかっ?」アセ

小園『ん? ああ、実は少し気になる事項があってな。お前に聞いてみようかと連絡したんだ』

敏恵「…なぁんだ? じゃあべつにあたしが出て良かったんじゃないですかー」

小園『いや、不詳の部下に世話を焼いて頂いている家の方に挨拶しなければならん』

敏恵「またそういうこと言う…。あなた様の部下は欧州で大活躍した“夜の女王”ちゃんですよ~?」ヘラ


小園『…………』


敏恵「…! ぁ、園さんごめんなさい……今のは悪ふざけが過ぎました…」

小園『ぃゃ…いい、お前は気にするな。それより本題に移ろう』

敏恵「は、はい」

 
小園『いたち、宮藤一郎博士は知っているな?』

敏恵「…? いいえ、知りません」

小園「!? お前と言う奴は…、我々にとって常識以前だぞ? 宮藤博士は“ストライカーユニットの父”であり、お前が今いる一家の主人だぞ」

敏恵「へぇ~! 清佳さんの旦那さん!?」

小園「まあ、故人だそうだがな。とにかく魔導エンジンやストライカーについて最もの権威だったひとりだ」


敏恵「(あれ? でも仏壇は特に見当たらないけどなぁ?)…それで、その旦那さんがどうかしたんですか?」

小園「うむ、宮藤一郎氏の研究については軍の情報でも詳細が少なくてな。博士自身も中々に秘密の少なくない人物だったらしいのだが――」

敏恵「はあ…?」

小園「…工藤よ、その家に一郎氏の書斎等はないか?」

 
敏恵「はい??」

小園「せっかくの状況だ。それらしき場所や、博士の秘蔵した資料でもあれば是非ともお前に探ってもらいたい」

敏恵「……。嫌です」

小園「こっそりでいい。月光の後継機になるストライカーユニットを開発検討中なんだが、何某か有益になりそうな情報を――」

敏恵「失礼しまーす」


小園「な…!? おい待て、いたち! 気が引けると言うなら聞き込みの調査でも――」

敏恵「あらよっと」ガチャン




敏恵「……さてと。シベリア食べよ~♪」スタスタ



【不祥の師、終】

寝ますん

以下、今回最後のお話になるかも

 
【おまけ小譚 ~彗星の先触れ~】



扶桑皇国


兵庫加西郡 某所



トクトクトク~――


小園「…どうだ美味いか? 山田錦の一級酒だそうだ、御先祖と分け合ってくれ」



小園「……。では、乾杯」グッ

小園「~~」グビ


小園「~ふぅ……此処の地酒は美味いな。以前私に愚痴っていたが、お前の父上が呑兵衛になるのもこれでは無理ないと思うぞ? //」フフ






[ 菊井家之墓 ]


小園「…………」

 
小園「…なあ菊井? お前がそちらへ逝って以降、何時しか私も酒をしこたま嗜む様になってしまったよ」

小園「お前が私に付きまとっていた頃は、そんな事など考えもしなかったんだがな…」


小園「この5年余りは酷くしんどかった。お前が側にた事実がこうも重いものだったかと、今更ながら身に染みる」



小園「っ…、……」ギュ



小園「菊井よ、またお前に聞いて欲しい事が多数ある。こんな私にお前がどんな軽口を言ってくれるか聞きたい――」

小園「だから……私がそちらへ渡る際は、迎えに来てくれ。その時まで、お前と同じ天国〈ばしょ〉へ行けるよう努力してみるからな」

 



『…あれ、小園?』




小園「?」ピク



――…スタスタスタ



小園「ぇ…!? き、北郷さん??」

章香「驚いた、まさか鉢合わせるとは…」スタスタ

 
小園「ど、どうして貴方が!? 佐世保の養成校はどうされたんですか??」

章香「いやいや、私は校長だからね。毎日教壇に立つ身じゃないから」ゴト

小園「それはまあ、勿論解りますが。何故此処に…?」

章香「それは決まっているじゃないか、菊井に挨拶しに来たんだよ。丁度盆の時期でもある事だし」クイ

小園「……!」

章香「しかし、これではもう供花を挿すのは難しいかな? お菊は相変わらず慕われているね」

小園「…ええ」

 
章香「フフ、私も“そっち”を持参するべきだったかな?」クス

小園「!! っ… //」サッ

章香「君達がお酒を飲むなんてな? あの頃には想像しなかったけど、もう10年近く経っているんだから当然か」

小園「ぃ、いえこれは……まぁ、はい…」

章香「私も、そこまで好きとは言えないけど少しは飲む事もあるよ。…さて、じゃあ取り敢えずお線香を――」


小園(すみません北郷さん、今の私は“少し”どころではないんです…)

 
章香「ん…――」スッ


章香「…………」オガミ

小園「……」



章香「――……。ふぅ…、よしと」スス

小園「北郷さん」

章香「ん? なんだい?」

小園「何故加西群まで来られたのです? …忙しい身の上な貴方が、よもや本当にこの為だけに遥々足を運べた筈はないと思いますが」

章香「……まあね。どっちがついでという訳では無いけど、これから姫路へ向かう」

 
小園「姫路!? まさか下里の工場に?」

章香「ああ、そうだ。壊れて払い下げになった紫電を幾つかうちの訓練機用に改修してもらうから、その最終確認の立ち合いだよ」

小園「…そうか、あの一角で忙しくやっていた作業はそれか……」ブツブツ


章香「――それに、丁度君にも会わなきゃならない用事があったからね? 小園」

小園「は? 私に…?」

章香「今はあそこを借りて“開発している”んだろ?」

小園「!!?」ギクッ

章香「まさか先に此処で会うとは思わなかったけど、良ければ一緒に行こうか? あの小園がどんなストライカーを造るのか、私も結構興味ある」

 
小園「…申し訳ないですが北郷さん。それはまだ、軍機に触れますので」

章香「! …そうか、すまない迂闊だったよ大佐。つい昔の心地で上官面してしまった」

小園「っ……いえ、どうか気に為さらないで下さい。…それよりも、私への用向きの件を伺います」

章香「ん、ああ…。そうだな」


章香「――…先ずこれ。君から預かった刀だけど一応はどうにかなったから、渡しておくよ」ス

小園「本当ですか! 有難う御座います、無理を頼んで申し訳ありませんでした」ハシ

章香「べつにいい、知人の伝手を少し頼っただけだから」

小園「こんな立派な拵まで、…おぉ!」スラァ

章香「それは鍛師さんが一緒に発注してくれたみたい。当然だけど無くなった刃先は戻らないから、見ての通り小太刀に打ち直してある」

小園「刃の仕上がりも見事だ…!」マジマジ

 
章香「――…それからもう一つ、これも渡しておく」ピラ

小園「ん?」

章香「先日私の所に秋本先生から連絡があった。工藤大尉の診断について詳しい見解が書かれてる」

小園「秋本療師が? …私の所へは来ていませんが、どうして北郷さんへ??」カサ

章香「まあ、元々私が紹介した訳だからね。君への詳しい宛先が解らないって文句が書いてあるよ」

小園「はあ…? しかし私の居所など、工藤に聞けば解決した筈ですが」

章香「……。とにかく要点にだけでも今目を通してくれ、それで解る」

小園「?」

 

小園「…………」ヨミヨミ

章香「……」



小園「――……!? そんな、これでは…!」


章香「そう。残念だけど“復帰”は難しいだろう」

小園「ッ! くっ…!」クシャ

章香「どうにか出来て本土防衛部隊のウィッチとしてなら可能かもしれないが、それでも定期的に鎌倉の診療所に通う必要はある。一番近い横須賀軍施設の駐在がいいと思うよ」

小園「っ…駄目だ、それでは駄目なんです! 工藤はもう空さえ飛べればいい訳でなく、欧州へ戻り戦う志なのです…!」

章香「気持ちは解る、小園。しかしどうやったって欧州は物理的に無理だよ」

小園「あいつが望んだ、今度は己で決めた選択なんだ。…これではあいつに合わせる顔など、有るものか」

章香「小園…」

 
小園「……有難うございました北郷さん、しかしまだ諦めません。私は犯した過ちを償うと、今しがた菊井〈こいつ〉の前で誓ったんです」チラ

小園「そのうち機が訪れるとも限らない。私はこれまで通り、あいつの望みに応じる備えを続けます」

章香「“機運”か。…そうか、分かった」






――――

――








鎌倉 明石


宮藤家



敏恵「――んぐ……~っ゛… ////」プルプル



敏恵「~~っ…、ぶぁあ!! もう駄目、上がんなぃ……腹筋が死んじゃう //」グデ

敏恵「ぜぇ……ふぅ…、はぁー…(困ったなぁ、体力も筋力も落ちてそう。園さんの言った通りだ)」


敏恵「いつつ…、でも今日はこのくらいにしておこう。お腹も空いてきたし」ノソリ

 
敏恵「よっこいしょっと。…それにしても芳子さん達、まだ帰ってこないのかな?」

敏恵(やっぱり寂しくなって芳佳ちゃんの留学、土壇場で引き止めてたりして? ヘルなんとか連邦って確かカールスラントに隣接してる国でしょ? 清佳さん心配だろうなぁ)モヤ



敏恵「……」



敏恵「でもいいなぁ~…。あたしも欧州行きたい、ベルギガチョコやリエージュワッフルが恋しい――」


敏恵「せめてあの服部さんって子にお土産とかお願いすればよかったかも。…自分で行くまで待てなぃ」ジュルリ

 

――――――――




――――




――

 

 

―1945年9月某日―


ガリア共和国東部 上空



ハイデマリー「…ミーナ中佐、今、カールスラント国境付近に新たなネウロイの兆しありと報告を受けました」


ミーナ「聞いたわね皆。新たな脅威に対し、我々がなすべきことはただひとつ――」




ミーナ「ここに501統合戦闘航空団ストライクウィッチーズを再結成します!」




【彗星の先触れ、終】

 








 
 ――――そして、機は訪れる

 

 

『えっ!! じ、自分がでありますか!?』


『それならば……私にひとつ考えがある』


『およそ一月半。お前は一切魔法禁止だ』


『いやぁ、なんだかわくわくする!』




 遂に開始する、カールスラント本土攻略――




『オラーシャ、オストマルク、そしてガリアの私達。これは東部戦線最大規模の反攻になるわ』


『…つまり我々が進軍及び制圧の後、そこに拠点を築くという訳だな?』


『そうだね。あたしもマリの好きだった街を歩いてみたい』


『おいおいどうなってんだこれ、ヤバいんじゃないか?』




 かつて夜の女王と呼ばれたウィッチを待っていたのは出会いと、再開と、試練だった――




『いいかい? 自分の意志でなんとか出来るなんて決して軽く考えないことだよ』


『うじゅあー! おっきぃー♪』


『く、工藤……さん…?』


『素質も技量も確かにある。だが今のお前は新参であり、到底未熟者だ』


『うっ…なんで、こんなに。あたし、こんな筈じゃ…!?』




 工藤敏恵の物語は再び、三度目の欧州へ――




『――…今度こそ、ストライクウィッチーズ!』






 ストライクウィッチーズ the 3rd like ~彗撃の明かり~

  次スレで公開!!










_人人人人人人人_
> なんちゃって <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

(・×・)……。

(・×・)<もう軽はずみには書かないんダナ

オマケも含めてこれでおしまいです

>>339は冗談ですが、やっぱり501が楽しそうですよね…
億万が一にその気になったらいつかスレが立つかもしれません

このスレの残りは使い道を検討中なのでHTML化せずにまだ少し残しておきます、自由に埋めて構いませんので
お疲れ様でした。有難うございました

 |×・) …。

 

 
敏恵「……」

小園「……」


敏恵「…園さん、明けましておめでとうございます」ペコ-

小園「ん、おめでとう」

敏恵「……。新年ですね?」チラ

小園「ああ」

敏恵「つまり今日は正月、今まさに元旦の真っ只中な訳ですよ」

小園「そうだな」


敏恵「……」

小園「……」


敏恵「…あのぉ、園さん? お正月ですよ、ね? ほら!」

小園「……。まったく、仕方のない奴だな」ヤレヤレ

敏恵「!! やった!」

小園「酒と升は隣にある。今日だけは特別だ、一杯呑んだら早く寝ろよ?」

敏恵「うわーんっ!! ちがう、そうじゃないぃ~!」

 
小園「なんだ飯か? 汁粉なら台所だ、餅は三つまでだぞ」

敏恵「それもあるけど、その前にほら! 惚けないで!? “お年玉”ください!」ズイ

小園「……」

敏恵「えへへ♪ …ね?」




小園「さてと、そろそろ日の出でも拝みに行くか」ノソリ

敏恵「んぬ~~!! 無視しないでくださいってばぁ!? あたし去年までずーっと頑張ってたじゃないですか~!」ヒシッ

小園「おい放せ」

敏恵「園さんに言われたことは全部ちゃんとやってるんですから~! お年玉くらい奮発したってバチ当たらないですよぉ!?」

 
小園「…………。なら今年もやれるか?」

敏恵「! は、はい! やれますやれます、やっちゃいます!」

小園「私の言う事に従って、頑張れるか?」

敏恵「うんうん!」コクコク

小園「……分かった、いいだろう」

敏恵「!! 本当に!?」

小園「だが今は手持ちが無い。夕方までに包んでおく」

敏恵「ゃ…やった!! 言ってみるもんだ!?」

小園「あまり期待はするなよ」

残念ですが書き溜め及び投稿の目処が全く立たないので申し訳ないですが終了します。伴いこのスレッドもhtml申請します
アニメ新期も終わりましたが、ストパンssがまた盛り上がれば良いですね

以下、>>1のss



シャーリー「ルッキーニの特別訓練をしよう」
シャーリー「ルッキーニの特別訓練をしよう」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1385118825/)

ミーナ「サーニャさんへチェック!」サーニャ「……///」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1388586208

ルッキーニ「シャーリーどこぉ…」 ???「ねぇ、あなた?」
ルッキーニ「シャーリーどこぉ…」 ???「ねぇ、あなた?」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1389428489/l50)

ミーナ「変質者の出現に注意してください」
ミーナ「変質者の出現に注意してください」 【ストパン】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1394249221/)

バルクホルン「我が国こそ1番!」 ミーナ「巻き込まないで…」
バルクホルン「我が国こそ1番!」 ミーナ「巻き込まないで…」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1398498857/)

バルクホルン「なに?宿題がまだ手付かずだと?」シャーリー「…しょうがねぇな~」
バルクホルン「なに?宿題がまだ手付かずだと?」 シャーリー「…しょうがねぇな~」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408806084/)

もっちゃん「ストライクウィッチーズ…?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1406424927

シャーリー「はぁ……はぁ… (やばい、またか…)」
シャーリー「はぁ……はぁ…(やばい、またか…)」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1415526306/)

ロボエイラ「サーニャ、サーニャ」 サーニャ「……」
ロボエイラ「サーニャ、サーニャ」 サーニャ「……」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1423398078/)

エーリカ「叩いて被って~」 バルクホルン「ジャン…ケンッ」
エーリカ「叩いて被って~」 バルクホルン「ジャン…ケンッ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1428730306/)

ルッキーニ「……そだ! みんなに抱きついてみよー」
ルッキーニ「……そだ! みんなに抱きついてみよー」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1429345839/)

バルクホルン「……何をしているんだ?」ルッキーニ「ソリティアだよ」
バルクホルン「……何をしているんだ?」 ルッキーニ「ソリティアだよ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1430795653/)

ルッキーニ「あそびいこ!」 サーニャ「……うん」
ルッキーニ「あそびいこ!」 サーニャ「……うん」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1434715136/)

土方「……」 芳佳「よろしくお願いします」
土方「……」 芳佳「よろしくお願いします」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1437312749/)


 【ヘルマちゃんの501生活】シリーズ

ヘルマ「大先生!よろしくお願いします!」 美緒「うむ」
ヘルマ「大先生!よろしくお願いします!」美緒「うむ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1409987503/)

ヘルマ「妹先生!よろしくお願いします!」 芳佳「ぅぇえ!?」
ヘルマ「妹先生!よろしくお願いします!」 芳佳「ぅぇえ!?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1410609466/)

ヘルマ「先生代行、よろしくお願いします!」シャーリー「お? なんだなんだ?」
ヘルマ「先生代行、よろしくお願いします!」 シャーリー「お?なんだなんだ?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1413125722/)

ヘルマ「夜間先生、よろしくお願いします!」サーニャ「……」
ヘルマ「夜間先生、よろしくお願いします!」 サーニャ「……」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1420200416/)

ヘルマ「先生!よろしくお願いします!!」バルクホルン「よし、私に続け!」
ヘルマ「先生!よろしくお願いします!!」バルクホルン「よし、私に続け!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1431155659/)

ヘルマ「特大先生!!」 ???「...うん、出来れば普通に呼んでね」
ヘルマ「特大先生ー!!」 ???「…うん、出来れば普通に呼んでね」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1445430025/)


 【クロス、長編】

芳佳「ネヴィ?」 キトゥン「ネウロイ?」
芳佳「ネヴィ?」 キトゥン「ネウロイ?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1399739496/)

サーニャ「...ストライクウィッチーズ」 エイラ「怪異ノ魔女」
サーニャ「…ストライクウィッチーズ」 エイラ「怪異ノ魔女」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1424266121/)



以上、有難うございました(・×・)

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