バルクホルン「なに?宿題がまだ手付かずだと?」 シャーリー「…しょうがねぇな~」 (77)

 
― 某日 夜 ―


501JFWロマーニャ基地

宿舎


バルクホルン「…今日は少し疲れたな。 部屋に戻って早く寝るとしよう」スタスタ


『たすけてぇ、シャーリー!!!』


バルクホルン「…………またあのスチャラカコンビか。 まったく、もうすぐ消灯だというのに」

バルクホルン「本日最後の仕事だ、一喝してやる」スタスタ


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シャッキーニ部屋


シャーリー「自分が悪いんだろ? だからあたしは毎日ちゃんとやれよって言ったのに」

ルッキーニ「うぁ~~ん、なんとかしてぇシャーリー!」

シャーリー「無理。 残念だけどあきらめろ」

ルッキーニ「あ~~~ん! シャーリー!」ギュ

シャーリー「間に合うわけねぇだろ? 後でフォローしてやっから怒られて来い」

ルッキーニ「やだぁ~~~!」グイグイ

シャーリー「……はぁー、よわったなぁ。 今晩どこで寝りゃいいんだあたし…」


バタンッ


バルクホルン「お前達! もうすぐ消灯時間だ! 騒ぎは終わりにしてさっさと寝ろっ!!」
 

 
シャーリー「あ? ……なんだよいきなり、スクランブルか?」

バルクホルン「違う、寝言を吐く前に寝ろと言っている」

シャーリー「…だったら勝手に開けんなよな。 マナーがなってねぇ」

バルクホルン「問答無用だ! お前達の自主性に任せても無駄なことはもう知っている――」

シャーリー「……聞いたかルッキーニ? 自主性だ。 あいつと違ってあたしはお前を信用してたんだぞ?」

ルッキーニ「…ごめんなさぃ」

バルクホルン「――そもそもお前はマナーを説く立場になどない! 今現在を含め、日頃の自堕落な態度を省みろ!」

シャーリー「うるせぇなぁ、もうすぐ消灯だぞ? バルクホルン」

 
バルクホルン「~~ッ!! お前というやつは…!」ワナワナ

シャーリー「ふぁ~~、説教聞いてたらいい感じに眠くなってきたなぁ」

バルクホルン「…おのれぇー!!」

『……ぅぇえぇぇん』

バルクホルン「!?」

シャーリー「! おいルッキーニ!?」

ルッキーニ「ぅえ゛ぇぇぁん、どうじよぉ~~! おごりゃれ゛りゅ~っ!」

 
バルクホルン「……なんだ? お前達は今まさに私に叱られているが、泣くほどか…?」

シャーリー「そうじゃねぇよ。 こいつ、少佐達に怒られるのが怖いんだ」

バルクホルン「…今度はなにをやらかした?」ジト

シャーリー「んー、そんな期待されてもなぁ」ポリポリ

バルクホルン「さっさと言え、リベリアン」

ルッキーニ「うぇぇえ~ん」

シャーリー「……先月から宮藤とかリーネとか年少連中にさ、少佐達が一般教養の補修してるだろ?」

バルクホルン「ああ。 ウィッチでなければ本来、宮藤達はまだ学生だからな」

バルクホルン「いち社会人として遅れを取らないよう、ミーナ達が配慮したんだろ? 軍事と無関係なのはどうかと思うが、まぁ立派なことだ」

 
シャーリー「そりゃいいんだけどさ。 やり始めにまとめて出されてた課題を、こいつ今の今までサボってたんだよ」

バルクホルン「なに? 宿題がまだ手付かずだと?」

ルッキーニ「ぅ……っぐじゅ…」グスッ

バルクホルン「…いつ、提出だ?」チラ

シャーリー「……明日」

ルッキーニ「~っ、…ぇぅ……」グシグシ

バルクホルン「……ルッキーニ少尉。 勉強とはな、授業だけ受けていれば身につく程甘くはない。 生涯の血肉とするには知識も鍛錬が必要なんだ、わかるか?」

シャーリー「おいおい」

 
バルクホルン「少佐はお前のために宿題を出したんだ、失望されたくなければ今すぐ取り掛かれ」

ルッキーニ「ぅ…でも……」

バルクホルン「できるはずだ、授業でやった内容だ。 苦戦するなら板書の移しや授業ノートを見ろ」

シャーリー「無理だっつの」

バルクホルン「なに? まさか範囲外か? …ならばそれは予習の意味で出されたものだな。 心配いらない、それなら間違っていてもいい! 自分なりにやり通して、不明箇所と興味を蓄えることに意義がある」

シャーリー「そうじゃねぇよ」

バルクホルン「…さっきからなんだ、お前は?」ムッ

 
シャーリー「……」

バルクホルン「?」

シャーリー「……よいしょっと」ドサッ

バルクホルン「なんだこれは?」

シャーリー「宿題だよ。 …あ、あとこっちも――~っな!」ドササッ

バルクホルン「……なん…だと…?」ガーン

ルッキーニ「……」

バルクホルン「……こ、これを…?」チラ

シャーリー「明日まで」

ルッキーニ「ぅじゅ…」

 
バルクホルン「…どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!!」カッ

ルッキーニ「うじゃぁぁ…っ。 あぅ、後でやろうと思ってぇ…」ビクッ

バルクホルン「それは言い訳だっ!」

ルッキーニ「ぅ……ぅうぁぁあぁ~ん、ごめんなじゃあ~ぃ」ビェーン

バルクホルン「っ…!?」

シャーリー「おい、これ以上泣かすなよ」

バルクホルン「す、すまない。 わざとでは…」オロオロ

ルッキーニ「うぇぇえぁ~ん!」

 
シャーリー「……まぁいいや、こうなったらさっさと終わらせよう。 あたしは理数やるから文系は任せる」パサ

バルクホルン「…は? ……おい?」

シャーリー「ほらルッキーニ、もう泣き止め。 あたしらも手伝うから、朝までに終わらせるぞ?」

ルッキーニ「ぅぐ……シャーリーごめなしゃぃ…」

シャーリー「もういいって。 反省したろ?」ナデナデ

ルッキーニ「…ぅん」ギュ

シャーリー「次からは気をつけろよ。 ……うし! テーブルの上片すから、ルッキーニはとりあえず日記からやってくれ」

バルクホルン「おい! リベリアン!」

 
シャーリー「なんだよ? 英語ドリルならそこの2冊だから」

バルクホルン「なぜ私が手伝わねばならない!? …いや、それ以前に他人の宿題を肩代わりするやつがあるかっ!!」

シャーリー「えっ!? ………お前、そっか。 友達いなそうだもんな」

バルクホルン「…どういう意味だ貴様~!」グィイ

シャーリー「ミドルスクールの課題なんて皆テキトーだって。 …取引でランチのデザートが行ったり来たりするんだよなぁ~、懐かしい」アハハ

バルクホルン「ぐ……不良めっ!」

シャーリー「普通だよ。 トゥルーデちゃんが真面目なだ~け~♪」

バルクホルン「……次にふざけたら本気で怒るぞ?」グググ

シャーリー「へーい」

 
バルクホルン「フンッ!」バッ

バルクホルン「…とにかく、そんな不正に私は絶対手を貸さん! お前達ふたりで勝手にやればいい」プイ

ルッキーニ「……」

シャーリー「おい、ちょっと冷たいんじゃねぇのか?」

バルクホルン「なにがだ? 明らかにルッキーニ少尉の自業自得だろう」

ルッキーニ「ぅ…」シュン

シャーリー「そ、そうだけどよぉ。 少しくらい助けてやったって…」

バルクホルン「ならばお前が手伝ってやればいい。 親代わりの監督不行届でもあるんだ」

 
シャーリー「ちょっとまてよ! あたしはまだ子持ちの歳じゃねぇ! せいぜい姉だろ!?」

バルクホルン「っ!? …お前ごときが“姉”を語るなぁっ!!」

シャーリー「うぉわっ!? なんだよ??」ビク

バルクホルン「お前が母親。 ……私が姉だ」

シャーリー(なにいってんだこいつ…)

ルッキーニ「……シャーリーがマンマで、バルクホルンが…お姉ちゃん?」

バルクホルン「そうだぞ、少尉! ……もっと呼んでみろ!」ズイ


ルッキーニ「………シャーリー、なんかバルクホルンが変…」ギュ

シャーリー「よしよし。 真面目すぎるやつって変な歪み方するから怖いんだよなぁ」ナデナデ

 
シャーリー「……おっ、そうだ!」ピコン

ルッキーニ「?」

シャーリー「ルッキーニ、そんじゃこう言ってみろ――」ヒソヒソ



バルクホルン「さぁ! ロマーニャ語で呼んでみてくれ! “ソレーッラ”!!」

ルッキーニ「……ソレーッラ!」ダキ

バルクホルン「~~!///(こ、これは予想以上に……いいぞ!!)」ゾクゾク

ルッキーニ「ソレーッラ〈お姉ちゃん〉宿題手伝ってぇ~? おねがい、おねがーい!」ギュー

バルクホルン「なっ!? そ…それは――」

シャーリー「…人に講釈垂れる程の姉ちゃんが、まさか泣きつく妹の助けを無視しないよな~?」ニヤニヤ

バルクホルン「し、しかしだな…。 姉として、妹の怠惰を更生してやるのも……」

 
シャーリー「あははは! まぁ聞けよ。 これはお前にとっても練習になるんだぞ?」

バルクホルン「…なんだと? どういうことだ?」

シャーリー「入院してるお前の本当の妹だって、勉強が遅れてるはずだ。 確か宮藤と同じくらいなんだろ?」

バルクホルン「!! …クリスが!?」ガーン

シャーリー「退院して復学した後、いつこんな状況になってもおかしくない。 これはその予行演習だよ」

バルクホルン「ぐっ……馬鹿を言え! クリスは宿題をサボったりしない!!」

シャーリー「学力が追いつかないうちは真面目にやったって間に合わないかもしれないだろ? さらに、自分が入院していたという後ろめたさと問題が解けないストレスに追い詰められて~――」

バルクホルン「ぁ…あぁ……クリス…そんなっ…!」ワナワナ

 
シャーリー「それでもなお『これ以上大好きなお姉ちゃんに迷惑はかけられない…!(天使voice)』と独りで必死に頑張る妹」

バルクホルン「…流石だクリス。 お姉ちゃんは鼻が高いぞ……」ホッコリ

ルッキーニ「ねぇ~あたしの宿題は~?」クイクイ

シャーリー「だが奮闘も虚しくついに提出前日の夜を迎えてしまい、妹は焦りと無力さに泣きそうになる。 ていうか半泣き!」

バルクホルン「く、クリスゥ!! お姉ちゃんがついてるぞ!! 大丈夫だ!」ビクゥ

ルッキーニ「ねぇ~~!」グイグイ

シャーリー「…お前はそんな妹の助けを無下に突っぱねるのか? お?」

バルクホルン「ぁ……ぅぁ…」

 
シャーリー「まぁ真面目なお前のことだし、いきなり宿題の手伝いなんて出来ねぇだろうなぁ。 …妹がっかり」コツン

バルクホルン「……ど…どうすれば…」

シャーリー「だ~か~らっ! 練習すんだよ!」ビシッ


バルクホルン「!!」


シャーリー「語学と社会……頼むな?」ポン

バルクホルン「…………任せろ!! お姉ちゃんが手伝ってやる!」

ルッキーニ「やたー!」

シャーリー(ちょろい)

 
― 数十分後 ―


シャーリー「~♪ …お! この数式懐かしいな~」

バルクホルン「……」カリカリカリ

ルッキーニ「ねぇねぇ、バルクホルーン? この日の天気――」

バルクホルン「お姉ちゃんと呼べ、ルッキーニ。 これはそういう模擬訓練だ」カリカリカリカリ

ルッキーニ「……」

バルクホルン「……ソレーッラでも構わん」

ルッキーニ「…………ねぇシャーリー? この日の天気ってなんだったっけ?」スス


バルクホルン「…」
 

 
シャーリー「ん? …あー、この日は確か雨――…いや、ちげぇ。 ユニットのテストしたから晴だ」

ルッキーニ「ありがとー!」

バルクホルン「……ま、まぁいいだろう。 その気になったら呼んでくれれば…」





― 1時間後 ―


シャーリー「こっち(欧州)の問題って面白い出し方するなぁ。 へぇ~……ま、答えはこれだろ」カキカキ

ルッキーニ「うにゃ……もう書くことなぃ…」グデ

バルクホルン「ルッキーニ、お前は日記を書いているんだろ? その日あったことを報告すればいいだけじゃないか」

ルッキーニ「覚えてないよ~そんなのぉ…」

バルクホルン「何時に何の訓練をしたか、戦闘で何機撃墜したか記録するだけだ」

シャーリー「おい、それ日記じゃねぇよ」

 
ルッキーニ「シャ~リ~、助けてぇ?」スス

バルクホルン「ぐっ…またか!」ダン

シャーリー「しょうがねぇな、ほら見せてみろ。 どの辺だ?」

ルッキーニ「ここー」

シャーリー「……ああ、この日はあたしとハルトマンとビーチで遊んだだろ? それ書いとけ」

ルッキーニ「あ! そだった! ありがとシャーリー」

バルクホルン「……ハルトマンめ、訓練をサボってどこへ消えたかと思ったら…!」

ルッキーニ「しゃーりーと……はるとまんとー………うーみーへーいー…った!」カキカキ

 

― 更に1時間後 ―


バルクホルン「……はぁ」コト

シャーリー「黙~ってやってたのにどうした? 苦戦か?」

バルクホルン「見てみろ…。 流石に頭痛がしてきた」バサ

シャーリー「…うげぇ! 漢字ドリルか」

バルクホルン「扶桑の漢字は果たして必須科目なのか? 私は習わなかったが」

シャーリー「うーん、少佐だしなぁ…」パラパラ

バルクホルン「確かに覚えて損はないが…、いきなりこんな量を書き殴らされるとは…」グッタリ

シャーリー「“10日で出来る! 地獄の扶桑漢字トレーニング”て書いてあるぞ?」

バルクホルン「出版社は悪のりで作ったに違いない。 そこの教材は絶対にクリスには与えん」

 
ルッキーニ「……ん~~、ねむぃ…」ウトウト

シャーリー「…ちょっと休憩するか。コーヒー淹れてくる」ガタ

バルクホルン「バレないように気をつけろよ」

シャーリー「プッ! あっははは!」

バルクホルン「……なんだ?」ムッ

シャーリー「~いや、なんでも?(こいつからこんな台詞を聞くとはなぁ)」クスクス

バルクホルン「フン! …私はエスプレッソだ」

シャーリー「めんどくせ、全員リベリアンコーヒーな」

バルクホルン「おい!」

ごめん、いっかい寝る

 

― 更に更に1時間後 ―


シャーリー「――自由研究って言われてもなぁー。 今からじゃなんにも出来ないし…」ンー

バルクホルン「これは……読書考察を書けばいいんだな?」ペラ

バルクホルン「シャーリー、この部屋になにか読めるものはないか?」

シャーリー「んー? ……そだな~」ヒョイ

シャーリー「…こんなんでいいか?」

バルクホルン「……“武器よさらば”。 確かヘミングウェイだったか…?」

シャーリー「戦争文学だぞ? お前にピッタリ」

 
バルクホルン「騙されんぞリベリアン。 色恋に主眼を置いた話だろう? 概要は知っている」

シャーリー「なんだよ。 それだけじゃねーぞ? 切ないんだ、すっごく」

バルクホルン「…どのみち、こんな長編小説を読む時間などない。 却下だ」

シャーリー「人が親切で出してやったのに偉そうだなぁ」

バルクホルン「宿題が間に合わなくなるぞ! 次だ!」

シャーリー「へいへい」ヒョイ

シャーリー「……そんじゃ、これはどうだ? ジョルジュ」

バルクホルン「ほう…ガリア文学か。 意外だな」

 
シャーリー「まぁ…去年501に配属になって、こっち来てから興味を持ち始めたんだけどさ」

バルクホルン「いいことじゃないか、少し見直したぞ。 ……しかしこれは」

シャーリー「なんだ? もしかしてジョルジュ・サンド読んだことないのか?」

バルクホルン「…私の趣味ではない」スッ

シャーリー「読んでみろよ、“愛の妖精”」

バルクホルン「趣味ではないと言ったぞ? 返す」

シャーリー「……おもしれぇのに」

バルクホルン「まったく、もっとマシなものは……ん?」チラ

バルクホルン「…お前のベッドの枕元に伏せてあるアレはなんだ?」

 
シャーリー「ああ、アレは今読んでるやつ。 コレットの“青い麦”」

バルクホルン「知らんな。 リベリオンの作家か?」

シャーリー「え? …ガリア小説だよ、有名だぞ?」

バルクホルン「そんなもの、知っている者の理屈だ」

シャーリー「んなこと言われてもなぁ」

バルクホルン「……ならば読もうじゃないか。 貸してくれ」

シャーリー「は? ダメだよ。 あたしが読んでるんだから! 今いいとこなんだよ」

バルクホルン「読書考察のためだ、すぐ返す。 知らないからと侮られたままでは気が済まない」

シャーリー「別に馬鹿にはしてないけど…?」

バルクホルン「いいから貸してくれ!」

 
シャーリー「……ったく。 なんだかんだ勝手だよなぁ、お前」ガタ スタスタ

バルクホルン「ぁ…………いや、すまない」

シャーリー「え? …あー、まぁ……別にいいけどさぁ」スタスタ

シャーリー「…ほら。 栞外すなよ?」スッ

バルクホルン「あ、あぁ」

シャーリー「さてっと! …あたしは自由研究、どうすっかな~?」ドカッ

バルクホルン「……ルッキーニは何も準備していないのか?」

シャーリー「んー。 虫とか観察してるし、記録とってねぇかな? ……なあルッキーニ?」チラ

ルッキーニ「…むにゃ……zz」

 
シャーリー「! あはは、寝てるよこいつ」

ルッキーニ「~っ……んじゃぅ…zz」

シャーリー「ふふ」クス

バルクホルン「……」

シャーリー「……姉ちゃん的にはこういう場合、どうすんだ? 起こすか?」

ルッキーニ「……んにゃ………しゃ…りぃ……ばるくほ…ん…、ぁりがと…zzz」ムニャ

バルクホルン「……いや、毛布をかけてやろう」

シャーリー「ん、サンキュ」

バルクホルン「…よし! 我々はもうひと頑張りだ」

 

― 朝 ―


チュンチュン…


バルクホルン「……おわった…」ドヨーン

シャーリー「ねみぃ……」ガクー


ルッキーニ「……っ…。 …ん」モゾ


ルッキーニ「――…んじぁ……、ん~…」グシグシ

バルクホルン「起きたか…」

シャーリー「…はは…。 結局ルッキーニのやつ、日記書いただけだったな…?」ヘヘ…

バルクホルン「……もう叱る気にもならん…」

 
ルッキーニ「ん~~っ!」ノビー

ルッキーニ「~~っんにゃぁ…! ……おはよ、シャーリー! バルクホルン!」

バルクホルン「………ああ。 …いい朝だな…」

シャーリー「……ほら、できたぞルッキーニ…。 持っていくの忘れんなよ…」

ルッキーニ「うじゃー!? おわってるー!! ありがとぉー!」

シャーリー「ぉぉ。 ……あたしはもう寝るからな…? …バルクホルンにもちゃんと礼言えよぉ~……」ガク

ルッキーニ「うんっ!」

バルクホルン「……おい、シャーリー…。 もうすぐ起床だ……っ…今から寝るなど……許さ…」

シャーリー「…ぁと10分くらいあるだろぉ~………10分だけ……」モゴモゴ

 
バルクホルン「……よ、よせぇ…っ! ……その台詞は絶対に起きない者の…ぉ……」ウトウト

シャーリー「………zz」スヤァ

ルッキーニ「バルクホルンありがとー! だーいすきっ、ソレーッラ!」ギュ

バルクホルン「っ…(あぁ……クリスの…温もりがする…)」クラクラ

ルッキーニ「~♪」スリスリ

バルクホルン(…クリス……お姉ちゃん、もうゴールしてもいいよね…?)

バルクホルン「……おやすみ…クリ…ス………zz」



ルッキーニ「――…あ!」ピク
 

 
ルッキーニ「昨日の日記つけてない!?」

ルッキーニ「うじゅー、…なに書こう?」ウロウロ


シャーリー「……zz」

バルクホルン「…zz」


ルッキーニ「! そだっ――」
 

 

― その翌日 ―


宿舎


芳佳「リーネちゃん! 自由研究で作った竹とんぼと水鉄砲試しに行こうよ!」

リーネ「うん、いいよ。 どこでやるの?」

芳佳「えーっと~……滑走路なんてどうかな? 広いし、日がさしてるから気持ちいいよきっと!」

リーネ「………ハンガー付近は……今はやめておいた方がいいと思う…」

芳佳「え? どうして?」

リーネ「……坂本少佐とミーナ中佐がお説教してるから、近づかない方がいいよ?」

芳佳「そっかぁ。 じゃあ折角だから浜辺の方まで行ってみない? 今日は訓練も授業もお休みだし」

リーネ「うん」

 

ハンガー出口


バルクホルン「…………なぜ、こうなる」ズシ

シャーリー「そりゃバレたからだろ?」ズッシリ

ルッキーニ「ごめなしゃぃ……」ショボーン

ミーナ「はい、貴女達。 お喋りしない」

美緒「……まったく。 まさかバルクホルンまで手を貸していたとはな?」

バルクホルン「……誤解だ少佐」

 
シャーリー「いや、あたしもお前もまっ黒だから」

バルクホルン「ぐっ…! なぜ私はこいつの口車なんかに――」

ミーナ「黙りなさい!」

バルクホルン「っ…」ビクッ

シャーリー「……」

ミーナ「…だいたいね貴女達? あんな内容で騙し通せると思ったのかしら?」

美緒「そうだな。 基本的に問題集は全問正解、回答法も正確……“提出明けの抜き打ちテスト”も何ら心配ないであろう程の見事な出来だった。 にも拘らず――」

ミーナ「……ルッキーニさん? どうして抜き打ちテストの点がこうなのかしら?」ペラ

 
ルッキーニ「ひ…っ!」ビクッ

ミーナ「お腹でも壊してたの…?」ゴゴゴゴ

ルッキーニ「…ぃ………ぁ…ぃ…」ガクガク

ミーナ「あらあら、恐くて漏れちゃうかしら? でもダメです。 貴女達はしばらくバケツを置いてはいけません♪」ウフフ…

ルッキーニ「ひぃぃ…ぃ……っ…えぅ…」ポロポロ

シャーリー(た、耐えろルッキーニ…!)

バルクホルン(…悪夢だ)

 
美緒「……それから、一応これも突っ込んでおくが――」ピラ

美緒「自由研究の内容が完全にお前のものだったぞ、シャーリー?」

シャーリー「……」

美緒「“レシプロ式航空ユニットにおける特定魔法力比値とエンジン馬力の相関による飛行速度の考察”。 ……こんなものをルッキーニが書いてきたら私はきっとシールドで茶が沸かせてしまう」

シャーリー「(いろいろ笑えないです、少佐)……すみません…」


美緒「…そして、この読書感想文もだが――」ピラ

バルクホルン「!!」
 

 
美緒「かなり気持ちの込もった感想文で、まぁ……そこは単純に評価できよう。 筆者が作品を大好きなことは伝わった」

バルクホルン「ッ… ///」

シャーリー(気に入ったのかよ、恋愛小説)

美緒「………ああ、あった。 特にここだ“事の全てを知りつつも、じっと堪えた幼馴染ヴァンカの気持ちを思うと私は――”」ヨミヨミ

バルクホルン「わあぁあぁあああ!!! やめてくれぇ!!! /////」ウガー

シャーリー「ちょっ!? 待ってください! ネタバレはやめ――」ギャー


ミーナ「口を閉じなさいっ!!!」

 

 
シャーリー「…………」

バルクホルン「~~ //」


美緒「――とまぁ大変よくできているのだが……やはりルッキーニの書いたそれではないな。 文体がまるで別人だ」

ミーナ「…ちなみに、中途半端に筆跡は変えている所に大変悪意を感じます」ニコ

バルクホルン「ぅ……!」

シャーリー(お前…)

美緒「先程の反応で決着はついているが、まさかバルクホルンだったとはな…。 てっきり、これもシャーリーかと始めは思ったが」

ミーナ「私はまたリーネさん辺りの子が断りきれずにやったのかと思ったけど…」

 
バルクホルン「……な、なぜバレた…」グヌヌ

ミーナ「決め手はこれよ」バサ

ルッキーニ「! ……あたしの日記…」

ミーナ「ここに開いて置いておくから、ふたりは読んでみるといいわ。 そして自分の良心と向き合って反省しなさい」

美緒「ルッキーニ、お前もしっかり反省しろ。 ……唯一こなしたその日記に免じて、追加の宿題は出さん」

美緒「いくら時間がかかってもいい。 人に教えを乞うてもいい。 サボった分を自分でやって再提出しろ」

ルッキーニ「……ぁぃ」

ミーナ「行きましょう、坂本少佐」ツカツカ

美緒「うむ…」クル


スタスタスタ――

 

 
ルッキーニ「…ぅじゅ……」

シャーリー「……小火で済むと思ったんだけどなぁ。 甘かったか」

バルクホルン「同年に叱られる迫力ではないぞ……あんなもの」

シャーリー「ま、これも経験さ。 そのうち慣れるよ」

バルクホルン「私は不良ではない」ジト

シャーリー「なんだよ、こういうのもいい思い出になるんだぞ?」

バルクホルン「……たとえ欧州の大地が吹き飛んだとしても、リベリオンにだけは絶対にクリスを転校させん!」フン

 
シャーリー「あ~、それにしてもあっという間にバレちまったなー」オモテー

バルクホルン「…日記を読めと言っていたが…?」ジー

シャーリー「んー? ……一昨日の日付だな」


----------------------------------------

○月×日 はれ

きょうはシャーリーとバルクホルンがあたしの宿だい
を手伝ってくれて、3人で朝まで夜ふかしした。

さい初は少しおこられたけど、でもシャーリーもバル
クホルンもとってもやさしくて、お姉ちゃんができた
みたいでとっても楽しかった。 また宿だいが出たら
いっしょにやりたいな。

ありがとう、あたしのお姉ちゃん。大好き

----------------------------------------


シャーリー「……」

バルクホルン「……」

ルッキーニ「シャーリー、バルクホルン……ごめんなさぃ…」

 
シャーリー「…あたしこそ、ごめんな。 本当の意味でルッキーニのためにできること、あったかもしれない」

バルクホルン「そうだな。 わかっていた筈だったが、姉として妹との時間につい甘えてしまったようだ」

シャーリー「あはは、お前も楽しんでたのかよ~?」ケラケラ


バルクホルン「まあな」

シャーリー「――ぇ…!?」


ルッキーニ「……バルクホルン…!」

バルクホルン「“お姉ちゃん”だ、ルッキーニ!」ニッ

ルッキーニ「うん! ソレーッラ!」

 
シャーリー「あっははは! マジかよ! 驚いたなー!」

ルッキーニ「シャーリーも、だーいすきだよっ!」

シャーリー「ん、知ってる♪ ……あたしも大好きだぞ、ルッキーニ?」

ルッキーニ「シャーリー!」ギュー

シャーリー「おいおい、バケツ置いてるの見られたらやばいぞ?」アハハ

ルッキーニ「ん~だって我慢できないんだもーん♪」スリスリ


バルクホルン「…………」ウズウズ
 

 
シャーリー「お? どうした?」

バルクホルン「……いや、なんでも」

シャーリー(…はは~ん)ニヤリ

バルクホルン「……」

シャーリー「…ついでだルッキーニ、行ってこい!」クイ

バルクホルン「つ、ついでだと!?」ガーン

ルッキーニ「ソレーッラ!」ギュー

バルクホルン「ふぉっ!!?(この温もり…ッ!!)」ゾクゾク

 
ルッキーニ「……ね? また一緒にやろ?」ギュ

バルクホルン「し、仕方ない…! だが今度は教えるだけだぞっ! それから時間は昼間だ! ///」

ルッキーニ「え~~、夜が楽しいのに~」

バルクホルン「なにを言っている! お前は早々に寝ただろうが! そもそも消灯時間を過ぎてだな――」

ルッキーニ「ん~~~~!!」グリグリ

バルクホルン「あ、甘えたって駄目だっ!! ////」


シャーリー「……」


ルッキーニ「それぇ~ら~」グリグリ

バルクホルン「ッ~~!! ///」


シャーリー「……んー、ちょっと寂しいな。 こうなったら、あたしも混ぜろ!」ゴト

 
シャーリー「とりゃ!」バフ

ルッキーニ「うにゃあ♪ シャーリーもきたぁ!」キャッキャ

シャーリー「ぎゅーっと!」ギュー

バルクホルン「お、おい! お前は来なくていい!!」

シャーリー「む! あたしだって年下だぞ?」

バルクホルン「お前がいつ私を敬った!!」

シャーリー「今だよ~姉ちゃーん!」ギュー

 
バルクホルン「やめろっ! 水が零れる!! …というかお前たちは何故バケツを置いている!? //」

シャーリー「姉ちゃんも置いてよぉ~~?」アハハ

ルッキーニ「にゃははー! たのしー!」ウジュー

バルクホルン「ぐぅ~~、か…関わるんじゃなかったぁー!!」





サーニャ「……」ジー

エイラ「サーニャどうした――…てナンダヨ、いつものスチャラカトリオじゃねーか」

サーニャ「……ルッキーニちゃん、テストの点数よくなかったみたいだから怒られちゃったのかしら…?」

エイラ「楽しそうにしてるじゃん、ほっとけよー。 ……そ、それよりテストの復習とかってもうやったかっ?? ま、まだならワタシが~…」

サーニャ「ありがとうエイラ。 でも私、満点だったから」ムリヨ

エイラ「…………」



(T×T)<おわりだナ
 

 
エーリカ「……ミーナ、私とペリーヌの出番は?」

ミーナ「わかったから、そういう発言はやめて頂戴」

ミーナ「…エイラさん? お願いね」

エイラ「キョウダケダカンナーモー」カタカタ

 

【おまけ】 ~親友と先生と、時々、お姉ちゃん~



芳佳「う~~……」

ペリーヌ「……」

芳佳「……う~~んっ!」

リーネ「……」カリカリ

芳佳「…わかりません! ペリーヌさん!!」

ペリーヌ「胸を張って言うんじゃありません!」ペシ

芳佳「あぅっ!?」

 
芳佳「あぅっ!?」

ペリーヌ「……だいたい、ここはさっき教えた問題と同じですわ! どうして解けないの!?」

芳佳「え? でも、さっきと数字が違――」

ペリーヌ「そういう事じゃ あ・り・ま・せ・ん・わっ!!」パシパシ

芳佳「うぇぇ!?」

リーネ「……」カリカリ

ペリーヌ「まったく! …わたくしも暇じゃありませんから、ふざけているのなら教えませんわよ」プイ

芳佳「えぇぇ!? そんな、私真剣です! 真剣にわかりません!!」

 
ペリーヌ「……だ~か~らー!!」ムキー

リーネ「ぁ…! ……ペリーヌさん、ごめんなさい。 ここなんですけど…?」スス

ペリーヌ「! どうしましたのリーネさん? ……ああ、ここでしたら先ずこっちの値を――」


芳佳「……む~。 ペリーヌさん、私の時と全然態度が違う」ムスー

芳佳(でも困ったなぁ。 リーネちゃんに教えてもらおうにも、あんまり邪魔はできないし)

芳佳(サーニャちゃんは起こせないし、ルッキーニちゃんは宿題って言うと逃げるし…)ヒョイ

芳佳「……みんなで宿題やりたかったんだけどなぁ。 あむっ…」モグモグ

 
ペリーヌ「…宮藤さん? 貴女、休んでる暇がありまして?」

芳佳「ふぇ? ふぁぁ! ほ、ほへまぁ!?」モガ

ペリーヌ「飲み込んでから喋りなさいな!!」

リーネ「……」カリカリカリカリ


――――
――



芳佳「ふぅ~~、やっと終わったぁ…」グデ

ペリーヌ「とりあえず、貴女は今日の分だけですけど。 リーネさんはその間に明日の予習も終わっていますわよ?」

リーネ「ありがとうございました、ペリーヌさん。 やっぱり教えるの上手ですね?」

芳佳「うんうん! 流石ペリーヌさん!」

ペリーヌ「ふ、ふん! 少佐に面倒を頼まれていなければこんなこと……! ///」

 
芳佳「でもペリーヌさん、なんでそんなに勉強できるの? いいなぁ」

ペリーヌ「……貴女、それでも医学を志す者の端くれでして…?」

芳佳「えへへ、一応そうです」

ペリーヌ「この程度の教養に、出来るも出来ないもありませんわ。 ちゃんとやれば、やった分だけ身に付きますから」ファサ

リーネ「…やっぱりペリーヌさんも家庭教師とかいたんですか?」〈←名家の娘〉

ペリーヌ「これも貴族の嗜み、持てる者の義務ですわ」〈←お嬢様〉

芳佳「えぇぇ!? なにそれ? ふたりとも習い事でも勉強してたの!?」〈←田舎娘〉

 
リーネ「う、うん…。 うちはお父さんが張り切っちゃって…」

芳佳「で、でもそれってお金かかるんだよね!? リーネちゃんの家ってたしか大家族じゃなかった!?」

ペリーヌ「宮藤さん……リーネさんは今、この3人の誰よりも富をお持ちなのよ?」〈←没落&散財中〉

リーネ「あ、あの…! そんなことは――」アセアセ

芳佳「え…!? リーネちゃんってお姫様だったの!?」

ペリーヌ「それではお金持ちの度を越してますわ!! それを言うならお嬢様!」

リーネ「そ、それも違います! ///」

 
リーネ「……別に私の家は普通です。 特別お金も無いですから…」

ペリーヌ「あら? でも長女のウィルマさんからずっと姉弟お受けになられてるんでしょう?」

リーネ「えっと……お姉ちゃんはその、そんなには…。 お稽古事はそこそこでいつも辞めちゃいますし。 よく出掛けて、家にじっとしていませんでしたから」

ペリーヌ「あの方らしいですわね。 なんとなく想像がつきますわ」

芳佳「…リーネちゃんのお姉さん?」

リーネ「うん。 でも勉強は私よりできたんだよ? よく教えてもらったかな」

ペリーヌ「要領もよさそうですものね。 勉強ができるというより、頭が良いというタイプですわ」

芳佳「へぇ~! 自慢のお姉さんなんだね!」

リーネ「……うん //」

 
芳佳「いいなー。 …私も欲しいなぁ“お姉ちゃん”」ナンチャッテ

ペリーヌ「ちょっと宮藤さん、…貴女はあまりめったな事は言わ――」


――ドタドタドタドタ

…コンコンッ


『宮藤! 今、私の事を呼ばなかったか?』


芳佳「え? ……バルクホルンさん?(…の声だよね?)」

ペリーヌ「ほら、来てしまったじゃない」

リーネ「あはは…」

 
芳佳「えーっと、別に呼んでませんけど…?」


『…………』


芳佳「?」


『…おかしいな……そうか。 いやすまない、邪魔をしたな』


芳佳「は、はい。 …?」


『……んん…確かに聞こえたのだが――』スタスタ


芳佳「??」

ペリーヌ「宮藤さん、上官相手に失礼ですわよ。 せめてドアを開けてお答えなさい」

芳佳「あ、そうですね! ごめんなさい!」

 
リーネ「でも、入れちゃったら多分…長いよ…?」

ペリーヌ(り、リーネさん…)

芳佳「……なんの話だったっけ? …あっ、そうだ“お姉ちゃん”の――」


ドンドンッ

『どうした宮藤!? 呼んだか!!』


ペリーヌ「…」

リーネ「…」

芳佳「え?? よ、呼んでませんけど……今開けまーす」ヨイショ




(・×・)<くぅ疲、おしまいダ
 

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