ヘルマ「特大先生ー!!」 ???「…うん、出来れば普通に呼んでね」 (81)

 

ヘルマ「――…番外? でありますか??」ポカーン


美緒「そうだ。 まあ、気まぐれと言う奴だろう」

ヘルマ「そうでありますかぁ…――」ホヘー

ヘルマ「…!! では、またあらすじを…!?」

美緒「いや、それは必要無い」

ヘルマ「!? なぜでありますか大先生!」

美緒「うむ、それはだな…――」

ヘルマ「……?」ゴクリ




美緒「面倒だからだ!」ワッハッハ

ヘルマ「なるほど!!」ムフー


※↓の内容を引き継いでるのであります

【ヘルマちゃんの501生活】~初日編~
ヘルマ「大先生!よろしくお願いします!」美緒「うむ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1409987503/)

【ヘルマちゃんの501生活】~2日目編~
ヘルマ「妹先生!よろしくお願いします!」 芳佳「ぅぇえ!?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1410609466/)

【ヘルマちゃんの501生活】~3日目編~
ヘルマ「先生代行、よろしくお願いします!」 シャーリー「お?なんだなんだ?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1413125722/)

【ヘルマちゃんの501生活】~4日、5日目編~
ヘルマ「夜間先生、よろしくお願いします!」 サーニャ「……」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1420200416/)

【ヘルマちゃんの501生活】~最終日編~
ヘルマ「先生!よろしくお願いします!!」バルクホルン「よし、私に続け!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1431155659/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1445430025

 
―1946年〈OVA時期〉―


ガリア共和國 西部都市ブレスト

とある一室


ヘルマ「~っ………っ…!」ガチガチ

ガランド「……」


ヘルマ「~る、るルる…ルフトヴァッフェいっいぃ131先行実けっ…験隊だだ第3飛行中たたたぃっ!!! ひぇるっ……ヘルマ・レンナルツ曹長ッ、さ参上いたいたいたしましたっ!!!!///」

ガランド「フフフ、そんなに緊張するな。 …図らずも、自分は偉くなってしまったんだと痛感する」フゥ

モブ秘書「いえ、お願いですから御自覚してください少将」

ヘルマ「…!!!! もももも申し訳ありませんっっ!!!」

ガランド「クスッ…、随分と真面目だな君は」

モブ秘書「折角ですからあやかってみては如何でしょうか?」

ガランド「……少し黙っていてくれ」ジト

ヘルマ「あぁあアイマムッ!!」ビッ

ガランド「いや、君じゃない」

 
ヘルマ「もも申し訳ありませんっ!!!」ベコー

モブ秘書「…これでは埒があきませんね?」

ガランド「……仕方ない、ハーブティーでも淹れてやってくれ。 私はコーヒー」チョイ

モブ秘書「かしこまりました」スタスタ

ヘルマ「~~っ /////」ガチガチガチ


――――
――



ガランド「…少しは落ち着いたかな?」

ヘルマ「ぁ、アイマム…! 誠に申し訳ありませんでした」

ガランド「いやいやそれはもういい。 …それより急に呼び寄せてすまなかったね、この広いガリアの極端まで」

ヘルマ「ぃいいえ! わ…我々カールスラントウィッチ憧れであります将軍閣下殿にご指名いただいたことっ、光栄至極の極みでありますっ!!!」シャキィッ

モブ秘書「…2重に極まっていますね?」

ガランド「君は茶化すな」

モブ秘書「かしこまりました」

 
ガランド「……さて。 まだ何も聞いてないかと思うが、我が国空軍ウィッチの総監として君に少しお願いしたい事があってね。 忙しい所悪いが召還させてもらった」

ヘルマ「……お、お願い?? でありますか…?」

ガランド「そうだ。 …ちなみに君は何だと思ったかな?」ジー

ヘルマ「っ…! ぃいえあの…自分はなにも……」オド

モブ秘書「少将はお戯れているだけですから答える必要はありませんよ、レンナルツ曹長」

ガランド「おい君」ジト


ヘルマ「…ただ、その……ぉ…怒られたらどうしようかと…」モニョモニョ

ガランド「ん?」

モブ秘書「……?」

 
ヘルマ「じ、自分はその……ぁの…カールスラント軍人としてまだまだ役に立ててないでありますし…。 …ですから……もしかしてと…」

ガランド「…クッフフ、君はなかなか面白い考え方をするな?」クスクス

ヘルマ「ぇ…?」

ガランド「そんな事で総監自らが叱りに呼びつけると思うかい? 悪いが私は君の母親ではないよ」

ヘルマ「ぅ…! ////」カァァ

ガランド「むしろ、君の働きと成果には一目置いていると言ってもいい。 今回の事で君を選んだのも実はこの私だ」フフ

ヘルマ「??」


ヘルマ「………………ぁ! き、恐縮至極でありますっ!!」ペコー



モブ秘書「…本当にこの子で大丈夫でしょうか?」ヒソ

ガランド「才人が垢抜けない頃というのはこんなものだよ。 私もそうだった」ヒソヒソ

モブ秘書「でしたら余計に不安です」

ガランド「……君は本当に可愛くないな」

 
モブ秘書「それよりも少将、レンナルツ曹長が尻尾を振って話の続きをお待ちですよ」

ガランド「ああそうだった。 えっと…どこまで話したかな?」

モブ秘書「まだ何も」

ガランド「そうか、それはすまない。 …曹長、私が推し進めてきた新型ストライカーのテストウィッチとして結果を持つ君に頼みがある。 聞いてくれるか?」

ヘルマ「はっ!! ネウロイの巣に裸で飛び込めとあらば……粉骨砕身の念で飛び込むであります!!」シャキッ

モブ秘書「そんな事はやらなくていいです」

ヘルマ「アイマムッ!!」ビシィ

モブ秘書「……」

 
ガランド「フフ…。 実は君達のおかげもあってジェットストライカーの開発段階も、完璧とまではいかなくもかなりの前進を果たした」

ヘルマ「お褒めに預かり光栄でありますっ!//」

ガランド「…先日もベルギガのサン・トロンからのテスト報告が上がって来たが、上々の結果だったそうだぞ?」

ヘルマ「サン・トロン基地!? ま、まさか試験飛行されたのは…?」

モブ秘書「ヴィルケ中佐の率いる航空歩兵分隊所属、ゲルトルート・バルクホルン大尉です」

ヘルマ「!!」

 
ガランド「バルクホルン大尉には前から色々とテスト機のデータ収集に協力をしてもらっていてね。 失敗もあったが、ジェットの扱いにも習熟している――」

ガランド「しかし我が軍ウィッチ中核を担う一員である彼女を、今この欧州から離す訳にもいかない」

ヘルマ「……?」


ガランド「…と言う訳で、君には今からジェットストライカーと共に扶桑皇国へ出張してもらいたい」

ヘルマ「えっ」

ガランド「当然空路は危険だから、海路を通って行くといい」

ヘルマ「えっ」

 
モブ秘書「少将、既に扶桑海軍の空母が港に到着済みだと先程連絡がありました。“ジェット・レフォルム”の搬入も完了し、日が出ている間に出港させて欲しいとの事です」

ガランド「そうか。 流石、北郷の弟子は手際がいいな」


ヘルマ「……ぁ、あの…? 少将閣下…?」オズオズ

ガランド「申し訳ないな曹長、どうやら時間が押してしまったらしい。 急いで港に向かってくれ」

ヘルマ「えっ」

ガランド「扶桑海軍に君を待たせている。任務の詳細についてはそこで待つ人間に聞くといい」

ヘルマ「えっ」

モブ秘書「何をしているのですかレンナルツ曹長、急いでください。 閣下の御命令です、拒否権はありませんよ」

ヘルマ「ふぇっ!? は、はいっ! 了解でありますっ…!!?」ビクッ

ガランド「ああ、そうだ! …向こうの担当者に会ったら、よろしく伝えておいてくれ」

 
ブレスト市内 軍港



ヘルマ「……」ポツーン



ヘルマ「…えっと……あれ? 私は誰に会って、どの軍隻に乗ればいいのでありますか…??」キョロキョロ


『――お! 来たな曹長、待っていたぞ!』


ヘルマ「!」クル

美緒「…まだ早いが1年ほど経つか? 元気そうだな、うむ!」スタスタ

ヘルマ「…!! だ、大先生っ!?」ガビーン

美緒「はっはっは! そう呼ばれるのも久方ぶりだな!」

 
ヘルマ「どうしてこちらに!?」

美緒「どうしても何も、お前を待っていたんだ。 ジェットストライカーの披露で扶桑へ行くのだろう?」

ヘルマ「え…! そうなのでありますか!?」

美緒「ん? なんだ違うのか?」

ヘルマ「あっ、あぁいえ! 恐らくそうであります! アイマムッ!」ビシ

美緒「? ……何やら要領を得ていない様だが、とにかく出航用意を指示してくる。 話が必要ならばその後だ」


――――
――



ヘルマ「扶桑皇国で、ジェットストライカーの公開飛行でありますか!?」

美緒「そうだ。 とどのつまりは両国間の技術と資金の一部共有だな」

ヘルマ「おぉ~…!」ムフー

美緒「カールスラントはかつて我々扶桑の空母と同型艦の建造を行う等、元々に軍部での友好関係は取り分け強かったからな」

 
ヘルマ「大先生! それはもしかしてグラーフツェッペリンの事でありますか?」ハイッ

美緒「ほぅ、詳しいな? その通りだ」ウム

ヘルマ「えへへ //」

美緒「…その関係を頼り、ガランド少将が今度の話を成立させたと私は聞いている」

ヘルマ「少将閣下御自ら…!?」

美緒「ガランド少将は常に前進を続ける方だからな。 統合戦闘航空団しかり、ジェットストライカー開発の推進しかりといった具合に……まるで引退など関係無いと言わんばかりだ」

ヘルマ「…凄いであります!」オー

美緒「ああ、私も見習わねばな」


ヘルマ(……ぁ、そうでした!! 大先生はもう眼帯を着けては…)

 
ヘルマ「…も、申し訳ありません大先生っ!!」ペコッ

美緒「わっはっは! 何を謝る必要がある曹長! 私は後悔など微塵もしていないぞ?」

ヘルマ「大先生…」

美緒「空にはお前達がいるからな。 私は私で、やるべき事にまた邁進するだけだ」

ヘルマ「ぅぅ……っ…。 もぅしわげありまぜん…~っ」ウルルッ

美緒「おいおいまたか。 懐かしくはあるが、泣くなレンナルツ曹長!」ベシ

ヘルマ「ぅぐ……はい…っ」グシグシ


美緒「とにかくそういった事情故に、少将から扶桑へ資源や資金協力への打診があったらしくてな。 結果私はとある恩人を通じて、派遣されるウィッチの送り役を頼まれたという訳だ」

ヘルマ「そ、そうでありましたか…」

 
美緒「恐らくガランド少将は、欧州ネウロイの巣を連年排除しているこの機をカールスラント奪還に繋げるつもりだろう。 ここへきて新型ストライカーの開発を更に促進させる動きも、その為に違いない」

ヘルマ「……!」

美緒「故にお前がこれから背負う役目も、必然と大きな物となる」

ヘルマ「お、大きな役目…!」ドキリ


美緒「……気負うなヘルマ。 たとえ何があろうとも、1人のウィッチとして己の意思を守り通せばいい」

ヘルマ「!」

美緒「そうすればお前は…一人前の魔女だ!」

ヘルマ「大先生…!」ジーン

 
美緒「ふっ…、受け売りだがな?」

ヘルマ「…イエスマムッ!! ヘルマ・レンナルツ、自分の意思を必ず守り通すであります!!」ビシィッ

美緒「うむ、行ってこい」

ヘルマ「アイマムッ! …迅速出撃ーっ!」ダッ


タッタッタッ――



美緒「……さて、先生に一報入れておくか」


美緒「…それから、あいつにも――」

 



 ~ ヘルマ 渡海 ⚓ ~



 

 
扶桑皇国

横須賀港


ヘルマ「…………」ポツーン



プォォオーー~ーンッ


『曹長殿ー!』

『いってらっしゃいませー!』

『お気をつけてー!』

『転ばないでくださーい!』



ヘルマ「ぁ、はいっ! ありがとうございましたー、いってまいりまーす!」ブンブン

 
ヘルマ「……はぁ~! ここが扶桑でありますか…!」キョロキョロ

ヘルマ「…大先生や妹先生もこの国で過ごされていたのですね」

ヘルマ(それにしても少し暑いですね……ヒスパニオみたいですけど、ここはなんだか身体がペタペタします…)モジ


ヘルマ「……くんくん、そして磯の香り…」

ヘルマ「……」グゥー


ヘルマ「…金曜日のカレー、美味しかったなぁ」モヤモヤ

 
ヘルマ「――はっ!? い、いけませんヘルマ! 自分はなにをしに来たのですか!?」パシパシ

ヘルマ「任務です、任務!! 少将閣下の御命令でありますからっ!」グゥー

ヘルマ「…ぁっ…しかしお腹が…//」


『ぁ、あのー?』


ヘルマ「ふぇ…?」チラ

???「…人違いでしたら申し訳有りませんが、もしかして貴方がカールスラント空軍のウィッチの方でしょうか?」

ヘルマ「…? ぁ、はい。 そうでありますが」

 
???「やっぱりそうだった…、こんなに小さな御人とは…」

ヘルマ「?」

???「い、いえ! 失礼致しました! 自分は扶桑海軍兵学校一号生、服部静夏でありますっ!」ピシッ

ヘルマ「はあ…? これはご丁寧にありがとうごさいます、私はカールスラント空軍のヘルマ・レンナルツ曹長です」ペコリ

静夏「こ…この度は自分が坂本少佐より扶桑国案内員の命を受け参上いたしましたっ!//」ドキドキ

ヘルマ「あ、大先生が仰っていた方ですね? という事はここからはあなたが案内をしてくれるのでありますか」

静夏「はい! 本日はまず市内の海軍基地にご案内いたします!」

ヘルマ「了解しました。よろしくお願いします」

静夏「は、はい! …こちらの車両にあるのがお荷物ですよね? では自分が運転いたします!」スタタ

 
――――
――



ブゥーーン…


静夏「……」チラ

ヘルマ「……ほぁ~ー…」

静夏「……//」キンチョー

ヘルマ「…鉄道が多いですね!?」

静夏「ぇっええ、はい! あれは国鉄です。3年程前に久里浜まで延伸開通したばかりです」

ヘルマ「おぉ…、よくわかりませんが凄いであります…!」

 
静夏「…ぁあの! 曹長殿は、扶桑に来られるのは初めてですか?」

ヘルマ「はい! あ、でも鉄道ならカールスラントにだってありますからね!? そこまで世間知らずではありませんよ!?」

静夏「は、はいっ!! 申し訳ありません!」

ヘルマ「へ…?」

静夏「っ…ぇ、えと……その――」ドギマギ

ヘルマ「??」

静夏「~……ぃぇ、なんでもありません」

ヘルマ「はあ…?(もしかして、私を相手に恐縮してるのでしょうか?)」


ヘルマ「……」


ヘルマ「…ムッフフ♪(私の軍人としての貫禄も、ついに先輩方に追いついたということですありますかぁ?)」ニマリ

 
静夏「…すみません。こういった大任をまかされるのは、初めてでして…」

ヘルマ「(ムフフ!)いえいえ、誰でも最初は緊張するものでありますから」

静夏「それに…英雄的なウィッチが数多いカールスラントで、最新鋭機を任されるほど“優秀な人”の任務に随行できるなんて――」

ヘルマ「!!?」

静夏「ぉ、思ってもみませんでした!」

ヘルマ「…ま、まぁ~それ程でもありませんけど~?///」ムフーン

ヘルマ「服部殿も見る目があるようですから、頑張ればいずれ活躍できますよ~」

静夏「は、はい! ありがとうございます!」ジーン

 
ヘルマ「オホンッ! …君も精進して、私の様な1人前のウィッチになるでありますよ?(なんて言ってみたりっ!)」ドヤァ

静夏「はいっ! 頑張ります!」

ヘルマ(ん~! なんだか気分がいいであります! 扶桑は良い国ですね!?)ニマニマ


静夏「……あ、見えてきました! あちらが横須賀海軍基地です」

ヘルマ「!」

静夏「曹長殿にはこれからあちらで担当の方にお会いして頂きます」

ヘルマ「…そういえば、現地で担当される方と少将閣下はお知り合いのように仰ってた気がします」

静夏「…! 少将閣下って…カールスラント空軍ウィッチ総監のアドルフィーネ・ガランド少将ですか!?」ギョッ

ヘルマ(閣下の御盟友にあたる方かも知れません、緊張します。 …ですが今の私ならへっちゃらですよ! なんと言っても、今の私には軍人の貫禄が――)

 

――




 

 
扶桑海軍

横須賀基地


ヘルマ「~っ……っ…!!」ガタガタガタ


???「ようこそ曹長殿、この度は遠路を遥々お疲れ様です」

ヘルマ(…ここ、この威圧感! この方はもしや…っ!?)

???「私は扶桑皇国第12航空隊監督兼任部隊長の、北郷章香中佐です」

ヘルマ「――ー!!!(やっぱりそうでしたぁーーッ!!)」ガビーーン

章香「今回の新型ストライカー披露飛行の国内担当者として、これから貴嬢を監督させてもらいます。 …どうぞよろしく」

 
ヘルマ「あ、あばばば…っ……あわわ…!!(やっぱりアノ方であります! 軍神でありますーーッ!!)」ガクガクガク

章香「(あれ? …なんかすごい取り乱してる?)えぇーっと、そんなに怯えなくていいよ? 取って食べたりしないから」

ヘルマ「っ…」




~~~~~~~~~~~~

※ある日の回想


先輩ウィッチ『…なあヘル子、お前“軍神”って知ってるか?』プカァ~

ヘルマ『ですから! 自分の名はヘル子ではありませんっ!!』プンスカ

先輩ウィッチ『…………フゥー~』

ヘルマ『わっぶ!? ケホケホッ…! な、なにをするでありますか!?』

先輩ウィッチ『…扶桑でそう呼ばれるウィッチがいたんだとー?』

ヘルマ『そうですか…っ…。それは随分大げさなあだ名ですね…ゴホッ』ケホケホッ   

先輩ウィッチ『なんでもウチの少将とは戦友で、実際かなり凄かったみたいだぜぇ? まんざら大袈裟でもないかもな』プカ~

ヘルマ『ぇ、そうなのですか…!? 少将閣下ほどのお方が扶桑にも!?』

 
先輩ウィッチ『なんつってたかな…? たしか~……キタゴウ? うん、北郷だ』

ヘルマ『キタゴウ殿…』

先輩ウィッチ『まー、あたしは“リバウの三羽烏”くらいしか扶桑のウィッチは知らねぇけどな。 8年前の扶桑海事変でその辺の連中を率いてたとかどうとか…』

ヘルマ『…!! 大先生をでありますか!?』ガタッ

先輩ウィッチ『聞いた話じゃ、軍刀両手に持って逆らった味方の戦艦片っ端から粉微塵にしたとか』

ヘルマ『!?』

先輩ウィッチ『ついでに海も真っ二つにしたこともあるとか、モーゼみたいに』

ヘルマ『!?!?』

先輩ウィッチ『しかも、その軍神に目を付けられた奴は手製の毒を口から盛られて修正されるらしい。生き残った部下は半数もいないらしいぞ? 怖えよなぁー…』

ヘルマ『~~ッ!!?』


先輩ウィッチ『……』チラ

ヘルマ『なっ……なんて恐ろしい…!?』ゾワワ

先輩ウィッチ『……(おぉ、すっかり信じてる。ヘル子はやっぱ飽きないわ)』プカァ~


~~~~~~~~~~




ヘルマ(こ、この方が鬼の軍神…北郷中佐殿!!)ガタガタ

 
章香「…? おーい……私の声、聞こえてる?」

ヘルマ「!? あぁああいまむッ!!」ワタタ

章香「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ。本番はまだ明後日なんだから」

ヘルマ「ぅ…」

章香「ほら、お茶でも飲んで落ち着いて?」ス


ヘルマ「!!? (さ、さっそく毒でありますかっ…!?)」ビクッッ


章香「? ……あ、大丈夫。これ私はまだ手を付けてないから」

ヘルマ「ひ、ひぃ…!?」




~~~~~~~~~~~~

※ヘルマヴィジョン

章香「吾輩の話を聞かんとは生きのいいクソガキだ……特製の毒を飲ませて修正してやるぅ…」

章香「お前の大先生は生きて帰ったがさぁ~て、こいつはどうかなぁ…?」グヘヘ

~~~~~~~~~~~~




ヘルマ(こっここ、殺されるッ…!!)ダッ

章香「あっ! ちょっと待って! どうしたの!?」

 
ヘルマ「おぉお許しくださぁーーいっ!!」ピューンッ


――バダムッ



章香「……」


章香「……えぇー…(聞いてた話と大分違うぞ、坂本…)」

 
廊下


ヘルマ「~…ぜぇっ……はぁ…、…はぁっ…!」ドッキンドッキン

静夏「…ど、どうされたのですかレンナルツ曹長!??」

ヘルマ「……はぁふ、…か…貫禄だなどと……っぜぇ…奢りの極みで……ありましたっ…!!」ゼェゼェ

静夏「ぇ…?」

ヘルマ「……鬼の軍神に恐れをなして、自分の命惜しさに…っ!」ヘニャリ

ヘルマ「…自分は軍人失格で…っ……ありまぁ…~」ガク

静夏「へ?? ちょ…、曹長殿!?」


ヘルマ「 」チーン


静夏(…い、意気消沈されている!?)

 

―数十分後―


ヘルマ「誠にっ! 誠に申し訳有りません!!!」ペコペコ

章香「もういいから、ほら顔上げて?」

静夏「……まさかあの軍神と名高い北郷中佐にお会いできるなんて…」


章香「はは…、それは昔の話。君達みたいな今のウィッチの方が潜在的には優秀だよ」

静夏「い、いぃえっ! そんなことは…!」

ヘルマ「服部1号生の言う通りであります! ガランド少将閣下の御戦友であられる軍神殿は尊敬に値されるべき方であります!!」ビシィ

静夏(…曹長殿、立ち直り早いが早いですね)

章香「いや、彼女と同列にされても」ハハハ…

ヘルマ「そのような偉大な方へ誤解を抱き、あまつさえ命令に背くなど……自分はカールスラント軍人の恥ですっ!!!」ギュッ

章香「命令無視って……お茶勧めただけだからね?」

ヘルマ「自分には勿体無いでありますっ!!」

章香「……(んー…まだ会話がいまいち成立してないかなぁ?)」モヤ

>>35訂正

静夏(…曹長殿、立ち直りが早いですね)

 
章香「…まあ、誤解させちゃった私も悪いか。 だから気にしちゃ駄目だよ?」ポン

ヘルマ「~っ!(な、なんて慈悲深い…!!)」ジーーン

静夏(いえ、それは流石にレンナルツ曹長の一方的な勘違いの様な…)


章香「よし。それじゃあ挨拶も済ませた事だし、取り敢えず移動しようか!」

ヘルマ「…? 移動、でありますか?」

章香「あれ、もしかして聞いてない? 曹長の下宿先はうちの道場だよ。ストライカーとかの機材はこっちに預けて行くから」

ヘルマ「……ドウジョウ??」

静夏「す、すごく凄いですっ! あの北郷中佐が師範を務める講導館剣術道場の敷居をまたげるなんて…!!」

 
章香「貴方も来なさい?」チラ

静夏「えっ!? わ、私も…!?」ドキッ

章香「君を呼んだ元教官から、2人纏めて面倒見る様に頼まれてるの。 …学校には連絡が行ってるから安心していいよ」

静夏「(そ、そんな!? まさか私まで御一緒出来るなんて!)……は、服部静夏と申します! よろしくお願いしますっ!」

章香「はい、よろしく」ニコ

ヘルマ(ドウジョウ…? 下宿先ということは、館かなにかでしょうか??)

章香「はいそれじゃあ! いい時間だし、近くで食事でもしてから行こうか?」

 
横須賀 某所


章香「…あれ、閉まってる?」

ヘルマ「ここはなんのお店でありますか?」

章香「知り合いがやってる喫茶店なんだけど、…今日は休みみたいね」

静夏「如何致しましょう?」

章香「うーん……それじゃあ何か食べたい物とかある? 連れて行くよ」

静夏「わ、私はなんでも結構です!」

ヘルマ「!! …中佐殿っ!」ハイッ

章香「ん?」

ヘルマ「自分はテンピラを食べてみたいであります!」ムフー

 
静夏「……曹長、もしかして“テンプラ”の事でしょうか?」

ヘルマ「!? //」

章香「天麩羅か…。よし、それじゃあ蕎麦屋に行こうか」

静夏「了解です」

ヘルマ「――! …テンプラはソバの店にあるのですかっ!?」

章香「専門でやってる所もあるけど、この辺なら蕎麦屋の方が近いからね。美味しい所へ行くから安心していいよ?」


ヘルマ(なんと…!? ソバも食べられるなんて! 一石二鳥であります!!)ワクワク

 
そば処


――ガラララッ

女将「あい、いらっしゃーい! …あらっ、ふみちゃん?」

章香「お久しぶりです、おばさん」

女将「やだ本当、久しぶりじゃないの~! すっかり見ないから大陸に行っちゃったのかと思ったわ! 足はもう大丈夫なの?」

章香「はい、おかげさまで。…3人なんですけど、お座敷空いてます?」

女将「ええ、ええ! 空いてますよ、どうぞ好きに座ってね? すぐお水持ってくるから」パタパタ

章香「ありがとうございます」


『…お父さーん! ふみちゃん来てるわ、ふみちゃん!』


静夏「…ここは良く来られていたんですか?」

章香「横須賀まで出た時はね? さっきの喫茶店ができる前は独りで来てた秘密の場所」フフッ

ヘルマ「…おぉ~(これがソバ屋…!)」キョロキョロ

章香「さ、座ろうか」

 
――――
――



ヘルマ「ふむふむ……キノコ、なす、海老。たくさん種類があります…」ジー

章香「食べたい物決まったら言ってね? 注文するから」

静夏「あ、はい! (…蕎麦よりご飯ものを食べようかな?)」

ヘルマ「かき揚げ…? かき揚げとはなんでしょう? カキフライでありますか??」

章香「かき揚げは野菜とか魚介が小さく切ってある天麩羅の事よ」

ヘルマ「おー…」フムー

 
静夏「天麩羅の中では最も無難な選択かと思われます」

ヘルマ「王道でありますか…むむむ…」モンモン

章香「確かに無難だけど、王道が良いなら海老はどう?」

ヘルマ「えび……海老…」モンモンモン

静夏「恐縮ながら私はレンコンがお勧めです、曹長殿」

ヘルマ「レンコン……。…レンコン??」

章香「…取り敢えずその辺を頼んでみようか?」

ヘルマ「……はい、是非っ!」

 
――――
――



ヘルマ「おぉぉ…! これがテンプラ!」

章香「このお塩をちょっと付けて食べるといいよ」

ヘルマ「…? 塩だけでありますか?」

章香「大丈夫、きっと美味しいから」ニコ

ヘルマ「……了解です。では…――」ニギ

章香「あっ」

静夏(…曹長殿、おもいっきり箸を握りしめてる!)

 
ヘルマ「……」ブスッ

章香(そっか、箸なんて初めてだもんね?)

ヘルマ「塩を少し…」チョン


ヘルマ「――……はぐっ」サクッ



ヘルマ「~~…」モグモグ



ヘルマ「――!!?」






―数時間後―


舞浜 某所


ヘルマ「~♪」

静夏「…レンナルツ曹長、ご機嫌ですね」

章香「相当気に入ったみたいだし、案内した身としては一安心かな」フフフ

 
ヘルマ「は~、ファンタジックな料理でありました…テンプラ! 海老を揚げたのにエビフライと全然違います!」ルンル~ン

章香「…………あぁ、確かに!」スタスタ

静夏「言われてみれば、そうですよね?」スタスタ

ヘルマ「塩だけで美味しいなんて、不思議であります!! 帰ったら先輩達に自慢しますっ!」ムフー

章香「……きっと衣が違うのかな? …そっか、衣を色々変えると美味しくなるのかぁ。今度私も挑戦してみようかな?」

静夏「…中佐殿は料理御得意なのですか?」

章香「ん? 得意って程じゃないけど、好きだよ。昔はよく道場の教え子達に作ってあげた事もあったかな」

静夏「わぁ…! すごく凄いです! 尊敬いたします!」

 
章香「手慰み程度なんだけどね? まあ…だけど今日の晩御飯くらいは作れるから、大した物は出来ないけど任せて」

静夏「は、はい! 光栄です!」


ヘルマ「お二人共なんの話でありますか?」ステテ

静夏「あ、曹長! 今日の夕食は北郷中佐がご馳走してくださるそうですよ!?」

ヘルマ「なんと!」

章香「あまり期待しないで? 普通の物しか出せないからさ」

ヘルマ「そんな! 恐縮の極みであります!!」

 
静夏「曹長殿は扶桑の家庭料理は初めてですよね?」

ヘルマ「いえ、実は何度か頂いた事があって……結構好きであります!納豆以外であれば!!」

章香「あ、そうなの?」

静夏「納豆まで召し上がったことがあるんですか!?」

ヘルマ「妹先生のニクジャガには大変感動しましたっ! それから魚の切り身を生で食べたり…!」フンフンッ

静夏「外国の方でお刺身を気に入られるのは…流石に珍しいですね」

ヘルマ「ぁ…! で、ですがワサビは…ちょっと……無理でしたが…」

 
静夏「山葵まで経験されたのですか。私は好きですが、やはり馴染みがなさすぎる味なんでしょうかね?」

ヘルマ「味…。味といいますか、こう……つーんと…っつーーんと痛くて!」キュー

静夏「もしかして付け過ぎたのでは…?」

ヘルマ「しかし大先生が、最低でもこのくらい“乗せ”なければ美味しくないと!」

静夏「……恐らくですが、それは普通ではないと思います」

ヘルマ「!?」ガーン



章香「…うーん、予想外に盛り上がっちゃった。これは今晩私も気合入れる必要があるかな?」

 
舞鶴

講導館剣術道場 宿舎


章香「とりあえずここに荷物は置いてね」

静夏「はい!」

ヘルマ「…ぉ~(これは…? なにやら草っぽい匂いがします)」クンクン


章香「合宿とかで門下生が泊まる部屋だから、広いだけで何もないんだけどいいかな? 畳だけは変えたんだけど」

ヘルマ「……おぉ~!(これがタタミ……不思議な感触であります!)」スリスリスリ

静夏「はい十分です! ありがとうございます!」

 
章香「それじゃあ荷物下ろしたら少しくつろいでて? 何かわからない事があったら遠慮しなくていいから」

ヘルマ「――ぁ、はいっ! 御心遣い恐縮であります!」ビクッ

章香「ふふ…」スー


ピシャ

<スタスタスタ…


ヘルマ「……」

静夏「しょっと…。曹長、お荷物は一度こちらに置きますので」トサ

ヘルマ「え? ぁ、了解です」

静夏「ふぅー…」




ヘルマ(北郷中佐殿…。貫禄を漂わせながらもお優しい方であります!)ムムー


静夏「……(浮かれて付いて来てしまったけど、私…凄いすごく優秀なウィッチの方と寝食を御一緒するんですよね!?)」ゴクリ

 
静夏「(失礼のないように、改めて挨拶しなきゃ…!)…あのっ、ヘルマ・レンナルツ曹長!」キリッ




ヘルマ「~~…!(私も早く大人のウィッチになって、憧れのバルクホルン大尉の様な――)」モヤモヤ~




静夏「……ぁ、あの…? 曹長殿…?」ソー

ヘルマ「(その為にも、先ずは閣下から仰せつかった任務を完遂しなければ!)…よぉしっ! やるであります!!」ブンッ

静夏「ひゃっ!?」


ドテンッ


ヘルマ「?」チラ

静夏「ぃたた…」

ヘルマ「…! 大丈夫でありますか!?」ササッ

静夏「ぁ…はぃ…。だ、大丈夫…です」ヨロ

ヘルマ「なにもないところで尻餅をついてしまうとは…、服部一号生はなかなかお転婆でありますね?」

静夏「は、はぁ… //(父上、静夏はまだまだ横着者です…)」

 
――――
――



静夏「……」←正座

ヘルマ「……」←つられて正座もどき


静夏「という訳なので、あの……いま一度御挨拶させて頂こうかと」キリ

ヘルマ「…わかりました。御遠慮なくどうぞであります(一号生殿は礼儀正しいですね、大変好感が持てます)」キリリ

静夏「で、では…。…改めて、よろしくお願い致します!」バッ

ヘルマ「はい、こちらこそよろしくお願いします!」

静夏「……」ピタ

ヘルマ「……」


静夏「……」


ヘルマ「…………?」

 
静夏「……」シーン

ヘルマ(服部一号生が前のめりの姿勢から動きません…、お腹が痛いのでしょうか??)

静夏「……」

ヘルマ「――!(まさか……これが噂に聞くドゲザという、扶桑の挨拶スタイル!?)」ガーン…


静夏「……(そろそろ上げても大丈夫かな? これくらいなら失礼はない筈…)」


ヘルマ(…これはきっと、互いにドゲザをしないといけないってことですね!? だから一号生殿は上官の私がやるのを黙って待ち続けているのでありますかっ!!)

ヘルマ「ッ…!(ならば私もっ! 見様見真似ですが、先輩として服部一号生の誠意に答えなければ!! …これも異文化交流であります!)」バッ




静夏(…よし、流石にもう大丈夫だ――)ムク

静夏「!!?」ビクッ


ヘルマ「……」


静夏「…!? ……??(ぇ…あれっ!? どうしてレンナルツ曹長まで頭を下げてるの!?)」ガガーン

 
ヘルマ「……(…しかしこれは…、いつまで続けていれば良いのでしょうか??)」ムズ

静夏「…っ!(とと、とりあえずっ! 私が先に頭を上げるなんて失礼だ!!)」バッ


ヘルマ「…~?(一号生殿は…?)」チラ

静夏「……」

ヘルマ(…まだ前のめりでありますか。 結構長い挨拶なんですね? …さてはこれが扶桑のワビサビ!?)プルプル


静夏「っ…(も、もういい筈…?)」チラ

ヘルマ「……」

静夏「…!!(まだ駄目なの!? き、厳しいっ!)」プルプル


静夏(…しかし父上、静夏は負けません!! 軍家の名に恥じない立派なウィッチになると決めたんだから――――)








―30分後―


<…スタスタスタ


章香「二人共ちょっといい? 夕飯まで時間があるから道場に――」カラッ


章香「…ぇ?」




ヘルマ「ッ…」プルプル

静夏「…っ」プルプル



章香「……えぇっと。何…してるの??」

 
――――
――



道場室


章香「…よし、こんなものかな?」ポン

ヘルマ「おぉ…!(これがサムライスタイルでありますか!)」←道着ポニテ

静夏「あの北郷中佐、これはいったい…?」

章香「坂本から君達二人を鍛える様に頼まれちゃってるから――」

静夏「!」

ヘルマ「ぇ、大先生…?」ピク

 
章香「ほんの少しの時間だけど指導させてもらうよ、いいかな?」

静夏「(す、すごく凄い!! 北郷中佐に訓練していただけるなんて!)はい! ありがとうございます!」

ヘルマ「軍神殿!」ハイ

章香「はい、ヘルマ曹長。何? それとその呼び方は勘弁してね?」

ヘルマ「アイマム! 中佐殿は坂本大先生とどの様なお知り合いなのでありますかっ!?」

章香「…大先生?」

ヘルマ「はいっ、大先生です! 北郷中佐はかの扶桑海事変にて大先生を率いたと聞きました!」

 
章香「……。えっと…坂本は元々ここの門下生で、それからちょっと私の飛行分隊員としても教えてたよ」

ヘルマ「! …やはりそうでありましたか、という事は大先生の先生でありますから~――」モヤモヤ

静夏「?」



ヘルマ「…!! 特大先生でありますかっ!?」ピコーーン!

章香「……」

静夏「……」



ヘルマ「特大先生ー! 御指導よろしくお願いします!!」ペコー

章香「…うん、出来れば普通に呼んでね?」

静夏(レンナルツ曹長って品行方正というか実直な方だとは思うけど、……変わった人だ)

溜まりましたので続きを失礼します

 
章香「まあいいや、とにかく始めるよ? …指導って言っても戦闘脚は履かないし、ちょっとした基本的な事なんだけどね――」

章香「…でも大事なことだから確認していくよ。いい?」

静夏「はい!」

ヘルマ「アイマムッ!」


章香「…それじゃあ先ずはどうしようかな」

静夏「……」

ヘルマ「……」

章香「服部はやった事あるかもしれないから、ぐ――」

ヘルマ「! 自分でありますね!?」シュピッ

章香「……元気いっぱいでよろしい」

ヘルマ「恐縮であります!」

 
章香「じゃあ、こっちに来てくれる?」チョイチョイ

ヘルマ「アイマム!」ステテ

章香「……」

ヘルマ「……」ドキドキ

章香「今から私の言う指示通りに動いてみなさい」

ヘルマ「了解であります!」



章香「…手を上げる」

ヘルマ「アイマム!」ビッ



章香「下げて」

ヘルマ「アイマム!!」サッ



章香「……じゃあ両手を上げて」

ヘルマ「アイマムッ!!」バッ



章香「下げて」

ヘルマ「…? ぁ、アイマム」スス


章香「それじゃあ、歩け」

ヘルマ「…? ……??」

章香「どうしたの? 足が動かない?」

ヘルマ「い、いえ!? …これでよろしいですか?」ペタペタ

章香「うん、今の所は」

ヘルマ「…???」

 
章香「…それじゃあちょっと、戻って来て?」

ヘルマ「はあ…?」トボトボ

章香「じっとしてね、目隠しするから」シュル

ヘルマ「?」

章香「……」マキマキ

ヘルマ「ぁ、あの中佐殿? 恐縮ですが、手を上げたり歩いたり等……基本とは仰いましたがこれはいったい…?」

章香「ん? 簡単すぎる?」

ヘルマ「…は、はぃ。流石にこの程度の挙動くらいは」

章香「そっか、自信有りって事だね?」

ヘルマ「いえ、まぁ……はい」

 
章香「…よしと。どう、見えてない?」

ヘルマ「…はい。視界はありませんが」ポツーン

章香「うん、じゃあそのまま正面に進んでごらん?」

ヘルマ「……歩けばいいのですか?」

章香「ぶつかりそうになる前に止めるから心配しなくていいよ。始め!」

ヘルマ「…?」


ペタペタペタ――


ヘルマ「……」


章香「はいもっと、どんどん歩く」



ヘルマ「……?」ペタペタ



章香「まだまだ! 真っ直ぐ歩いてー」



ヘルマ「…アイマム」


――ペタペタ…

  
章香「はい止まって、その場から動かない!」


ヘルマ「!」ピタッ


章香「目隠し外してー?」


ヘルマ「……」グイグイ


章香「そしたら回れ右! しっかり真後ろ向く」


ヘルマ「…? はい」クル


章香「……ん~惜しい。ちょっとずれちゃった」


ヘルマ「……??」


章香「曹長、私は真っ直ぐ歩きなさいって言ったよね?」


ヘルマ「はい。………ぁ! …えっ?」


章香「ふふ、残念」ニコ


ヘルマ「おかしいでありますっ! 確かに自分はご指示通りにしましたよ!?」アワアワ


章香「…服部、見ていてどうだった?」チラ

静夏「ぁ、はい。 ……少しずつですが曲がってました」


ヘルマ「!?」ガーン

 
――――
――



ヘルマ「…運動神経でありますか?」

章香「そう。自分の体を動かす事、それをコントロールするのがあらゆる行為の先ず基本だよね?」

ヘルマ「それは、そうでありますね…」ウンウン

章香「例えば武器を上手く扱うには、姿勢制御をするためには、あのマニューバを習得するコツは――…手や足をこう使う、こう身体を動かす。みたいにね?」

ヘルマ「…。はい」

章香「けどね? そもそも身体のコントロール自体にブレがあると、最終的な行動そのものまで歪んでくるのよ? “言うほど簡単じゃない”みたいに」

 
ヘルマ「……? それはいったいどういう…?」

章香「ピンとこない? んー、それじゃあ今度はもっと単純に――」


章香「…曹長。顔はそのまま、腕を真横に伸ばしてみなさい!」ピシ

ヘルマ「! アイマムッ!」シャキーンッ

章香「駄目っ、出来てない!」

ヘルマ「!??」ガーーンッ


章香「……ちょっとだけ上がりすぎてて、実はこの辺が真っ直ぐ」グイ

ヘルマ「…こ、ここが真っ直ぐなのでありますか?」

章香「そう。覚えた?」

ヘルマ「は、はい」

 
章香「なら、もう下ろして」

ヘルマ「……」スス

章香「…はい、もう一回やって。あとシャキってやらなくてもいいよ、ゆっくりでね?」

ヘルマ「……」スッ


ヘルマ「……ど、どうでありますか?」


章香「うん、ほぼ完璧! 下ろしていいよ」

ヘルマ「ほぅ…」ヘナ

 
章香「つまり、自分の身体だからって思うままに動かしてるつもりでいても…実はそうじゃない。普通はこんな事ですら、自分の意思と動きにはブレが生じるものなの」

ヘルマ「!!(そ、そうだったのでありますかーっ!?)」ガガーン

章香「…服部はこれ知ってた?」

静夏「あ、はい! 一応は、坂本教官に習いました」

章香「やっぱりそうか。…まあけど、折角だから復習のつもりで付き合ってもらえる?」

静夏「はっ!」


ヘルマ「…先生っ! 自分もようやく仰りたい事を理解したであります!! つまりはこのレベルから訓練すべしという事ですね!?」

章香「うん、かなり極端に言えばそうだね。…別に目隠しして真っ直ぐ歩けたり腕を真横に伸ばせる事が重要ではなくて、それがブレる事実を知るのが目的だよ?」

ヘルマ「イエスマムッ!」シャキッ

 
章香「これを知っておく事で常に正確な身体運動を意識できるの。自分の身体を操る何事においても応用できるから、それだけで色々変わってくるよ」

章香「…ちなみに君達の坂本先生はこれがかなり優秀だったかな? あの子は常に意識してたから、多分自分の技術に自信もあると思う」

ヘルマ「おぉぉ…!(すごい話を聞いてしまいました! 流石は特大先生であります!!)」ムフー

章香「去年はシールド無しの接近戦をしてたって聞いたけど、ネウロイの攻撃に正面から突っ込めるのは結果的に坂本の練度の質が高いからだ」

ヘルマ「! では北郷先生も新型ネウロイのビームは避けまくりでありますか!?」

章香「いやいや。私はとっくにアガってるし、飛べても流石にもう動けるイメージは出来ないなぁ」ハハ…

章香「…けど自分を知っていれば、そうやって無理な事もちゃんと分かる。無理が分かれば課題も見える――」


章香「君達2人はまだまだこれから、無理な事なんてない。…いい? だから前を向いて、頑張ってね?」


静夏「は、はいっ! 頑張ります!! ///」

章香「ん、服部いい返事♪」ニコ

 
ヘルマ「~~~ッ!」フルフル

章香「…? 曹長、どうしたの?」

静夏「…曹長殿?」

ヘルマ「~~…か、感動しましたっ!!!」クワッ

章香「おぉっと、びっくりした…!」

ヘルマ「自分は北郷先生殿の激励に大変感激したでありますっ…!! 自分も必ず先生方の様な立派なウィッチになるため奮闘努力いたします…~っ!!」ジーーン

章香「……ぅ、うん(この話で泣かれたのは初めてだなぁ…)」


静夏「っ… //(曹長に釣られてなんだか私もつい、目頭が熱くなりかけてしまった)」ササッ

 
―そして夜―

宿舎


章香「――はい、お待たせ!」コト

静夏「…………」

ヘルマ「おぉ! こちらはなんと言う料理でありますか!?」

章香「これは舞鶴特産かまぼこを使ったポン酢煮込み」

ヘルマ「カマボコ…! ……特産品でありますか!?」ウキウキ

静夏(………ぁ、あれ…? ひたひたになった“なにか”とポン酢の海しか見えない…??)モヤ

章香「えのき茸が少なかったから、あり物だけど少し工夫もしてみたよ」

ヘルマ「さすが北郷先生殿はやりくり上手でありますっ!」

静夏(えっ、待って…? なにを……なにが入ってるの…?? この紫色はなに…???)モヤモヤ

 
章香「…それからこっちが、磯辺揚げにしたかまぼこ! 天婦羅が気に入ったみたいだからこれもきっと食べられるかなと思って」コト

ヘルマ「おお~!! ……ぉ…?」

静夏(あれ? 磯辺揚げって、確かもっとこぅ……? …あれ??)モヤモヤモヤ

章香「こっちはお昼に食べたのを参考にして衣をちょっと変えてみたの」

ヘルマ「そういう事でしたか! さすが先生殿はアイディアウーマンであります!!」ムフー

静夏(衣になにがあったの…? どうして糸を引いてるの…??)

章香「後お味噌汁もあるからちょっと待ってて? 温め直してくるから」

ヘルマ「はい! ありがとうございます!」

章香「~♪」スタスタ

静夏「……」

 
静夏(……やっぱりおかしい! 料理を知らない私にも流石にわかる、多分これって…)

静夏「……どうしよぅ」チラ


ヘルマ(扶桑の料理は美味しい物ばかりなのでわくわくします!)ウキウキ


静夏「(……取り敢えず、曹長にも教えないと。このままでは危険が危ない!)…ぁ、あのレンナルツ曹長?」

ヘルマ「一号生殿の期待通り、ご馳走でありますね!」

静夏「……ぃぇ、その…。恐らくこれは…非常に大変な状況です」

ヘルマ「? …はい?」

 
静夏「えっと……大変言いにくいのですが、もしかしたらこれらの料理は…その……。…ぁ、あまりお口に合わない可能性があります」

ヘルマ「ああ、大丈夫ですよ? 自分は扶桑の味にも親しんでいる自信がありますから! 妹先生のお料理も大好きでした!」

静夏「いえ! あのっ…そ、そういう意味ではなく…」

ヘルマ「?」

静夏「っ…!(でもよく考えたら、まだ口にしてもいないのに想像だけで悪く言うなんてあまりに失礼過ぎる!? …でも多分これ、間違いなく――)」ダラダラ

ヘルマ「??」

静夏「……ぃ、いえ…。…万が一、合わない可能性もあり得ますので。始めは…一応、少しずつ召し上がってみることを……お勧めします」

ヘルマ「そうでありますか? んん…、でしたら念のためそうしましょう」

静夏「……はぃ」

 

――スタスタ


章香「ごめんね横着しちゃって?」コト

ヘルマ「いえ! 御手伝いも出来ずに申し訳ありませんっ!」

章香「私は先に台所片付けておかないといけないから、遠慮なく先食べてて?」

ヘルマ「はっ! 恐縮であります!」

章香「一応、お代わりもまだあるから」スタスタ


ヘルマ「では服部一号生。 先生の御好意に甘えさせてもらい、いただきましょう!」

静夏「……はい(味噌汁は見慣れた感じ…!? ならせめてこれから口に…)」

  
ヘルマ「いただきますっ!」

静夏「ぃ、…いただきます」




ヘルマ「…~」アーン

静夏「……」ソォ~



――パクッ


ヘルマ「もぐもく…………? ギュ…!?!?」ビクッ

静夏「む゛っ…!?!」ゾクッ



その瞬間、二人の思考は凍りついた。

ヘルマの期待も静夏の不安も全て掻き消える程の衝撃が脳を蝕み始める――

……しかし若き二人は思ったのだ、『残すわけにはいかない、せめて出されたものは平らげなければ』と。

薄れゆく意識の中でヘルマ・レンナルツは己の未熟さと、世界の広さを痛感するのであった。



ヘルマ(…あぁ、なるほど……ライスが黄色いのはターメリックではなく…オレンジだからなの……です…ね……)フラ…

静夏(父上……申し訳…ありま……せ…ん……)ガク

  
――――

――




章香「二人共おかわりは――」スタスタ

章香「…って、あら?」



ヘルマ「 」チーン

静夏「 」チーン



章香「……」


章香「…んー。 綺麗に食べてくれたのは嬉しいけど、満腹で寝ちゃうなんて……困ったなぁ」ヤレヤレ



【ヘルマちゃんの扶桑出張】~初日編~

   完であります!
 

全てにおいてブレてしまった感

いつかまた、気がむいたら続くかも

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