芳佳「ネヴィ?」 キトゥン「ネウロイ?」 (899)

“GRAVITY DAZE”のキトゥンちゃんがストパンにお邪魔します

見切り発車ですがスペース失礼します
※ゲームのネタバレは、核心部分などを伏せて最小限にしたいですが、拙文なので一応注意してください

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1399739496

 
―空中都市 ヘキサヴィル―


旧市街オルドノワ 下層

土管の家先


キトゥン「…ん~~っ! 今日はいい天気かな(ここ、あんまり光届かないけど)」ノビー

シアネア「……」ボケー

キトゥン「! …シアネア、おはよう。 今日は早いんだね?」

シアネア「……おはよう、キトゥン…」


ピョンッ


ダスティ「…ニャア!」トテ

キトゥン「あ、ダスティ! お前もか……おはよう。 今日は何かあったっけ?」

ダスティ「ニャア」

ゲイド「お前さんが寝坊助なんじゃよ」

キトゥン「……ゲイド、おはよう」

ゲイド「なんかついでっぽく挨拶されたな……。 お隣さんには優しくするべきじゃないか?」

 
キトゥン「(…朝から僻むなぁ)ごめんごめん。 おじいちゃん、朝ごはんは食べた?」

ゲイド「当たり前じゃ。 とっくに昼だぞ」

キトゥン「……うそ? …あれ??」

シアネア「……」ウトウト

ゲイド「…キトゥンよ。 今日はもう寝てろ。 嫌な予感がする」

キトゥン「何言ってるの? 今日もお昼から約束があるんだから、遅れる訳にはいかないよ!」

ゲイド「……またアレか。 今はまだ無理じゃと思うがなぁ。 …想像主の声も聞いたんじゃろ?」

キトゥン「うん。 でも放ってはおけないし、クロウも心配してるから」

ゲイド「………年寄りの言うことは素直に聞いておいた方がいいぞ?」

キトゥン「……そんなこと言われても、わたしもう眠くないし…」

 
キトゥン「! そうだ、もうお昼なんだっけ!? ……いま何時!?」バタバタ

ゲイド「……お前さんからも引き留めてくれんか?」チラ

シアネア「…zz」

ゲイド「………寝てるのか」

キトゥン「どうしよ~! 列車に乗っても間に合わない!(クロウ絶対怒るよ…!)」ガーン

ゲイド「そいつを連れてちゃ結局“中には”乗れんじゃろうが」

ダスティ「………」

キトゥン「……しょうがない。 駅までのつもりだったけど、直接行くしかないか…」

ゲイド「センタリアレまでか? 力を使い過ぎて落っこちるなよ?」

キトゥン「(感覚的にはすでに“落ちて行く”んだけどね…)大丈夫! 最初の頃に比べて重力の力もかなり強くなってるから!」

ゲイド「………今日はわしらの手にも負えない事が起こるかもしれん。 …気をつけろよ?」

キトゥン「う、うん…(前もこんなこと言ってたような…)」

 
シアネア「…キトゥン」パチ

キトゥン「? なに、シアネア?」

シアネア「……また、夢の中の誰かがキトゥンに…」

シアネア「“忘れるな”って、…“あなたが行く先はかつての忘河ではない、役目を果たすまで夢を外れるな”って言ってたよ……」

キトゥン「……どういうこと?」

シアネア「……あ、猫ちゃんにもね? “従者の役目を終えるまで違わず守護者でいるように”……だって」

ダスティ「…ニャア!」

ゲイド「……」

キトゥン「(…相変わらず分かりづらいなぁ)……う~ん、とりあえず怪我とかしないように気をつければいいよね?」

 
キトゥン「(…相変わらず分かりづらいなぁ)……う~ん、とりあえず怪我とかしないように気をつければいいよね?」

キトゥン「…それじゃあ、いってきまーす! ……行くよ、ダスティ?」ブワッ

ダスティ「ニャア」ピョン


ビュゥウンッ


ゲイド「……無事に帰ってくるんじゃぞ? キトゥン…」

シアネア「…zz」


――――
――

 
旧市街オルドノワ 表層

噴水広場


ビュゥウン

ズタンッ


街人「うわあっ!?」ドテッ

キトゥン「わっ! …ごめんなさい、大丈夫ですか!?(危ない、気づかなかった!)」

街人「…じゅ、重力姫か。 びっくりしたぁ。 気をつけてくれよ!」スク

キトゥン「ホントにごめんなさいっ! 怪我とかしてない!?」

街人「ああ、平気だよ。 …ビュンビュン飛び回るのは勝手だけど、ちゃんと足元も見てくれよ?」

キトゥン「はい…。 気をつけます」

街人「まったく――」スタスタ


キトゥン「………はぁ。 ビックリした」

キトゥン「…やっぱり急ぐのはよくないね?」チラ

ダスティ「……」

キトゥン「街を出ればとばせるし直接行くなら時間も余裕あるから、先に屋台でご飯買っていこう」スタスタ

 
キトゥン「(…ホットドッグか。 多分クロウもお昼まだだよね?)……ホットドッグふたつくださーい!」

オージン「まいど――…てなんだぃ、キトゥンじゃねぇか!」

キトゥン「オージン!? ……あれ、ここホットドッグの屋台だよね? アイスクリーム屋は!?」キョロキョロ

オージン「あれはセンタリアレの屋台だろ? こっちじゃとっくに在庫売り切って、次の商売始めたよ」

キトゥン「(そこでホットドッグなのはなぜ?)…屋台ふたつ持ってるなんて、儲かってるんだ?」

オージン「この前の大騒ぎの一件以来、ネヴィも重力嵐も全然見なくなっただろ? おかげで外出する人が増えて、店も大賑わいよ!」

キトゥン「へぇ…。 でも今は空いてるね?」キョロ

オージン「馬鹿いうなよ! 今だって大忙しだぜ! ユジが戻るまでに次の配達分大急ぎで作らなきゃなんねぇんだ!」

キトゥン「え、配達…!?(お客で賑わってるんじゃないの?)」

キトゥン「……そっかぁ、がんばってねー?(ユジも大変だなー…)」

 
オージン「…キトゥン、お前暇そうだな?」ジロ

キトゥン「……は?」

オージン「丁度いいや、これ配達してくれ! お前ならひとっ飛びだろ?」ガサ

キトゥン「え? 何でわたしが??」

オージン「ほら急げ!」ズイッ

キトゥン「いや、わたし予定あるから――」

オージン「家の弁償まだだろ?」

キトゥン「うっ……(それを言われると…)」

オージン「わざわざ紹介してやったバイトの給料もガキに盗られやがって!」

キトゥン「…アレは盗まれた訳じゃなくて、人助けであげたのっ!」ムッ

オージン「なんでもいいから、さっさと配達行ってこい! ちゃんと代金貰ってこいよ?」

オージン「それから、帰りのついでに何件かそこらの奴から注文とって来い」

キトゥン「(なんでわたしがこんな目に…)…いってきま~す…」

――――
――



夢魅の館


アキ「ご苦労様」

キトゥン「……まさかアキの所だったとはね」

アキ「今日は不吉な予感がして、…外は危ないから家でテレビ観てるの」

キトゥン「…あいかわらず出不精だなぁ(ていうか、どうやって注文したんだろ…?)」

アキ「キトゥンも一緒に観よう? 外は危険だから」

キトゥン「なに言ってるの。 今日は特に天気も良くて気持ちいいよ? アキもちゃんと外に出なきゃ、身体壊しちゃうよ?」

アキ「いいの。 今日は本当に無理なの」

キトゥン「(ダメだこりゃ)……わかった。 それじゃあ、代金ちょうだい?」スッ

 
アキ「…今は持ち合わせがないから、代わりに占ってあげる」

キトゥン「(…まさかとは思ったけどやっぱり!)……アキ、そういうのはいいから。 わたしがオージンに怒られるんだから」

アキ「……」ブツブツ

キトゥン「ちょっと待って! 勝手に占わないでー!?」

アキ「……そんな…! キトゥンの運命が見えない…!?」

キトゥン「?」

アキ「うそ……なんで…? 靄すらかかってない……こんなの始めて…」ワナワナ

キトゥン「…よくわかんないけど、占えないならちゃんとお金払ってよね♪」

アキ「……」


――――
――

 
都街 ヴァン・ダ・センタリアレ

時計台ビル 上部


クロウ「……」

『クローウッ!』

クロウ「……ようやくか」


ビュゥウン

ズダンッ


キトゥン「…はぁ…はぁっ……ぜぇ…っ」クタ

クロウ「この馬鹿でかい時計が見えたか? …遅刻だぞ」

キトゥン「ご…ごめん……っ…。 ちょっと…ぜぇ……御使いを頼まれて…」ゼーハー

クロウ「……まぁいい。 早速いくぞ」

 
キトゥン「(え? うそ…!)ま、まって! わたし疲れちゃって……少し休んでからにしようよ!?」

クロウ「……お前の都合など知るか。 私は十分休んだ」ジロ

キトゥン「で…でもお腹は減ってるんじゃない? ほら、ホットドッグ食べよう! クロウの分もあるよ?」ガサ

クロウ「……」

キトゥン「え、えへへ……」

クロウ「………少しだけだぞ?」


――――
――

 
キトゥン「…みんなの様子はどう?」

クロウ「相変わらずだ。 悔しいが私ひとりにはどうにもできそうにない」

キトゥン「そっか……」

クロウ「お前の方こそ何かわからないのか? “アレ”の入口を見つけたのはお前だろ?」

キトゥン「うん、そうなんだけど…。 わたしにも今は特に出入口みたいなものは見えない」

クロウ「………なら、今日もセンタリアレの復興作業か」

キトゥン「…いいの? まだお昼過ぎだし、わたしも協力するよ?」

クロウ「助けようにも手段がわからないのだから仕方ない。 ……できることをやる方が有意義だ」スク

キトゥン「(クロウ……)…そうだね! まだまだネヴィに壊された痕が残ってるし」

クロウ「……ほら、もういいだろ? いくぞ」

キトゥン「うん。 …ねえ、思ったんだけどさ? ネヴィに破壊された街の区画って、前みたいに“異世界”にないかな?」スク

クロウ「……区画って、あの“怪物”に壊されて落ちた街の部分か?」

 
クロウ「……区画って、あの“怪物”に壊されて落ちた街の部分か?」

キトゥン「そう! 下に落ちていったってことは重力嵐に呑まれたんだろうから、ゲイドに頼んでまた異世界に行けば戻せないかな?」

クロウ「……難しいな。以前ヘキサヴィルを襲った重力嵐はこの都市を覆っているそれとは異質だった可能性もある」

キトゥン「……え? なんで?」

クロウ「もしお前の言うように、下の重力嵐も異世界に繋がっているとすれば、今頃あの老人の腹の中は汚水まみれに違いない」

キトゥン「なるほど(クロウ頭いいな…)」

クロウ「……一度下を見に行ってみるか」

キトゥン「え?(……なんだろう? このパターンにいい想い出がない…)」

クロウ「もしかしたらあの村――…もう違うか。 …あそこに落ちているかもしれない」

キトゥン「……さ、流石にもうあんな所までは行けないんじゃないかな?(正直、行きたくないな…)」

 
クロウ「私とお前だけなら問題もない。 今ほどに重力嵐が落ち着いてる時に、私は行き来していたんだ」

キトゥン「そうなんだ…」

キトゥン(……でも確かに、あそこに落ちてても不思議じゃないよね…?)

クロウ「よし、じゃあいくぞ?」シュタ


ビュゥウン


キトゥン「……うーん。 まぁ危なくなったら引き返せばいいし…、平気だよね?」

ダスティ「…ニャア」


――――
――

まったり、つづく

まったり、つづく

 
世界の柱 下層付近


ビュゥウン

フワッ


キトゥン「……やっぱり、重力嵐でこれ以上は降りられないよ」

クロウ「…チッ。 ……仕方ない、柱の入口を探そう」

キトゥン「えっ、そこまでするの!? 危ないよ!」

クロウ「崩れた区画を探すと言い出したのはお前だろう?」

キトゥン「そ、そうだけど……でも危険だし…。 よく考えたら、見つけたところでどうにもできないかなーなんて…」アハハ…

クロウ「怖いならお前は引き返せ。 無理強いはしない」

キトゥン「(クロウったら……まさかあの子達を助ける手がかりを…?)…ちょっと待――」



『ハーッハッハッハッハァ!!』


 

 
キトゥン「っ! なに!? …何の声!?」ビク

クロウ「…みろっ! 重力嵐が!?」


ゴォォオォオオオ

…ワラッ


キトゥン「ネヴィ…!?(こいつの雰囲気、どこかで…?)」

クロウ「………1匹か。 すぐに消してやるっ!」ビュゥウン

キトゥン「あっ! 待ってクロウ!?」


クロウ「はあっ!!!」ズォオ

ネヴィ「ーっ」


バキィッ


クロウ「ぐぁあっ!!」

キトゥン「クロウ!?」ビュン

 
キトゥン「大丈夫、クロウ!?」ガシッ

クロウ「ぐっ……なんだこいつ? 普通の雑魚じゃない!」

キトゥン「…多分、希少種だよ」

クロウ「希少種…!?」

キトゥン「見た目は普通のネヴィなんだけど、何か変って言うか……すごく強いんだよね」

クロウ「……確かに、異様な寒気を感じるな」

キトゥン「異世界で何度か闘ったけど、技もほとんど効かなくてかなり厄介な奴だった」

クロウ「なんだってそんな奴が急に!」

キトゥン「わからないけど、こっちに出てきた以上は倒しておかないと…! 街のみんなが危険だよ!」

クロウ「……よし、私が奴の気を逸らす。 経験のあるお前がその隙に倒せ」ブワンッ

キトゥン「わかった! 無理しないでね?」


ビュゥウン


クロウ「こっちだ!」

ネヴィ「!」


ビュン ビュン



キトゥン「……全力でいくよ、ダスティ!」チラ

ダスティ「ニャア!」

 
ネヴィ「ーっ」ビュォオン

クロウ「くっ! こいつ、速い…!!」


キトゥン「……」

キトゥン「(よし、今だ! 重力キック!)…やぁあああっ!!!」グワン


ズォォオォオッ


ネヴィ「!!」



キトゥン(よし、決ま――)


『ハァーッハッハッハァ』


キトゥン「!?」

 
ネヴィ「ー!」ズズ…

…ニュッ


キトゥン「っ!?(え…、腕?)」


ガシッ


クロウ「キトゥンッ!!!」

キトゥン「ちょ――」ガクン


ブンッ



キトゥン「きゃああああー!!?」ヒューーン



クロウ「キトゥーーーン!!」

ダスティ「ッ……ニャア!」シュバッ



ゴォォオォオオオ……


ォオォオオ…


オォ…



 

(・×・)<舞台が変わるゾ

 
―西暦1965年 某日―


ガリア共和國


芳佳「…はい、もう大丈夫ですよ?」

患者「ありがとうございま…っ、うっ!!」ガクッ

芳佳「あぁ! 急には立てませんよ!? えーっと……」

リーネ「芳佳ちゃん、…これ」

芳佳「あ、それ使える! ありがとうリーネちゃん! ………これを杖にしてください」

患者「ありがとうございました…」ヨロヨロ


芳佳「……ふぅ~。 この辺で大きい怪我の人達は大体済んだかな?」

リーネ「お疲れ様、芳佳ちゃん」

芳佳「……全員魔法で治せれば良いんだけどなぁ…。 私もお婆ちゃんやお母さんみたいにもっと上手くできれば…」

 
リーネ「芳佳ちゃんも十分凄いよっ! 急患の人や危篤状態の人の命も助けたし、…全員に魔法使ってたら流石に倒れちゃうよ?」

芳佳「うん……でも…」ショボン

シャーリー「おーい! 宮藤、リーネ?」バサッ

リーネ「あ…!」

芳佳「…シャーリーさん」

シャーリー「どうだ調子は? 患者が途切れたみたいだから様子を見に来たんだけど」

芳佳「はい、重傷の患者さんは一先ず終わりました」

リーネ「…シャーリーさん達の方はどうですか?」

シャーリー「んー…片付いてはいるはずなんだけど、あまりに瓦礫が多くてなぁ」ポリポリ

芳佳「そうなんですか…」

シャーリー「元々ネウロイに荒らされた痕が残ってた所に、昨日の大嵐だからなぁ…。 ペリーヌがガリアの人達を鼓舞してるけど、復興に挫折を感じてる人も正直いるよ」

リーネ「ペリーヌさん……」

 
シャーリー「……ま! あたしらはとにかく、できる事をやっていくしかないよ! それが一番の支援だ」ニコ

芳佳「…はいっ! 元気だして頑張りましょう!」

シャーリー「あっははは! なんか少佐に似てきたな、宮藤?」

芳佳「えっ、そうですか!?」

リーネ「うん。 すっごく頼りになる所とか」

芳佳「えぇー!? そうかなぁ、リーネちゃんやシャーリーさんの方が絶対頼りになるよぉ!」

シャーリー「あはは、自覚ない所が宮藤らしいな!」

シャーリー「……そうだ! ふたりともキリがいいなら休憩しないか? さっき街の人達からリンゴを貰ったから食べよう!」スッ

芳佳「わぁー! 美味しそーぅ!」

リーネ「あ、それじゃあ私はペリーヌさんを呼んで来ますね?」ステテ
 

 

数時間後


モブ兵「大尉! 荷物の積み込み完了しました!」ビシッ

シャーリー「ありがと。 宮藤達が戻るまでもうちょい待機しててよ」

モブ兵「はっ! 了解しました!」

シャーリー「…ペリーヌ、忘れ物ないか?」チラ

ペリーヌ「……」

シャーリー「………そう思い詰めるなって」

ペリーヌ「ですが…」

シャーリー「なんとか物流のための道も戻せたし、宮藤や基地員達のおかげで救助や治療もだいぶ進んだよ」

シャーリー「中佐の協力で501が直接支援できるのも今日限りだ。…辛いだろうけど、あたしらにも役目がある」

ペリーヌ「……せっかくネウロイを追い出せましたのに…、なんっ…なんでガリアばかり……うっ…」ウル

 
シャーリー「局地的な暴風災害は稀にあるさ。 あたしの国なんかしょっちゅうだよ…」

ペリーヌ「うっ……でも、こ…っこれから復興という………時でした…のにっ…ひくっ…」ポロポロ

シャーリー「……大丈夫だよペリーヌ。 まだ人がいるんだ、必ず復興できるよ」ギュ

ペリーヌ「っ……ぅ…」

シャーリー「よしよし」サスサス

ペリーヌ「も…もうしわけ…っありま…」

シャーリー「いいよ。 落ち着くまで好きにしな?」

ペリーヌ「…っ……はぃ…」

シャーリー「……」

ペリーヌ「……//」

『ペリーヌさーん!!』

ペリーヌ「!!?」ガバッ

シャーリー「おわっ! どうした、急に!?」


タッタッタッ


芳佳「ペリーヌさんっ!」

リーネ「だ、大丈夫ですか…!?」

シャーリー「お前ら…」

 
芳佳「ペリーヌさんがシャーリーさんにもたれ掛かってたのが見えたから…!」

リーネ「どこか具合悪いんですか!?」

ペリーヌ「な、何を言っておりますの? わたくしは別に何ともないですわ!」ツン

芳佳「…そ、そうですか? 本当に――」

ペリーヌ「平気と言ってるでしょうっ!?」クワッ

シャーリー「あはは! マジで誤解だから、安心しな?」

シャーリー「…それより、ふたりとも準備はいいか? 忘れ物ないな?」

リーネ「はい。 ただ…」チラ

芳佳「町の皆さんからお礼にってリンゴを沢山もらっちゃいました!」ゴッソリ

シャーリー「おお! 昼間のやつか」

ペリーヌ「ちょっ!? …宮藤さん! あなた、被災地にとって果物ひとつがどれだけ大切かわかっていまして!?」

芳佳「で、でも…どうしてもお礼がしたいって…」

 
シャーリー「まあまあ、…向こうの人達の気持ちだよ。 有難く受け取っておこう」

シャーリー「宮藤、それは輸送機に積むからこっちへ…」スッ

芳佳「はい。 よいしょっと」ゴソ

芳佳「…あっ!」


ポテンッ

ゴロゴロゴロ…


シャーリー「やべっ、一個落ちた」

芳佳「……まってー!」ダッ


タッタッタッ


リーネ「芳佳ちゃん!?」テテッ

ペリーヌ「もう! 何をやっていますのっ!?」ダッ


タッタッタッ


シャーリー「あー……ごめん、これ頼む! すぐ戻るから!」ゴソ

モブ兵「え? …あ、はいっ! 了解でありますっ!」

シャーリー「飛べる準備だけお願いなー」ダッ


タッタッタッ

 

 

ゴロゴロ…


芳佳「ま、まってぇー!」

リーネ「はぁっ…よ、芳佳ちゃーん」

ペリーヌ「なんでこうも下り坂が…」

シャーリー「おーい、お前らー! 待てってぇー!」


ゴロゴロゴロ…

ゴロゴロ…コロ…


コロコロ…

コロ…



…コツン

???「…」


芳佳「ぜぇ……はぁ…。 や、やっと行き止まり…」ヨロ

リーネ「…っ…? ここは……公園…?」ゼェ ハァ

シャーリー「……随分寂れてるな? 被災ってより元々こんなだったって感じだ」

ペリーヌ「…こんな所に公園があったなんて…!」

 
芳佳「えっとリンゴは………っ! 誰か倒れてる!?」

シャーリー「!」クルッ

リーネ「えっ!?」

シャーリー「…おい! 大丈夫かっ?」ササッ

???「…」

シャーリー「…………やばい、呼吸してない!」

ペリーヌ「ど、どうしましょう!?」

芳佳「まってください!!」

リーネ「芳佳ちゃん…」

芳佳(……まだ体温もあって顔色も…多分悪くない。 硬直もしてないし…)テキパキ

芳佳「(死んでない!)…まだ助かりますっ!」

ペリーヌ「宮藤さん…!」

シャーリー「魔法力は大丈夫なのか!?」

芳佳「やれますっ!!」バッ

芳佳「…っ(お願いっ……!)」フィィイン

???「…」


――――
――

まったりつづく

 
(……ここは、どこ?)


(わたしはいったい…)


(………わたし? …わたしは……だれ?)


(…なにか…….忘れて――)


『忘れてはなりません』


(っ!)


『あなたは夢に戻るのです』


(…シアネ――)



キトゥン「――っ!!?」パチ

 
 

 
501JFWロマーニャ基地


ミーティング室


バルクホルン「なにっ!? 基地に入れたのか!?」ガタッ

シャーリー「うん、…まぁ…そうだよ。 今医務室に寝かせてる」

バルクホルン「一般人だぞ!? 軍の施設に連れ入れていいわけないだろっ!」

シャーリー「うん……。 一応、中佐達には先に許可とったけど…」

エイラ「…近くの病院へ預ければよかったじゃないか。 何でわざわざココに連れてきたんだ?」

バルクホルン「エイラの言う通りだ! お前は監督者としての役目もあったはずなのに何故止めなかった?」

シャーリー「違うんだ、聞けよ」

エーリカ「……ミーナが許可したって事は、なんか訳ありだね?」

シャーリー「そう。 ……宮藤の魔法で呼吸と脈は戻ったから、あたしらも病院で安静にさせようとしたんだ」

シャーリー「…けどパリの施設は殆どが半壊。 難民化した人達が少ない寝床を分け合ってるし――」

シャーリー「他、ガリア国内の病院もボランティアの野営も含めていっぱいなんだよ」

ペリーヌ「……」

 
エイラ「…そ、そっか……。 そんじゃしょうがねーよな?」

バルクホルン「ロマーニャの医療施設に預ける事は出来なかったのか? 帰路だろう?」フンス

シャーリー「……それもやったよ…。 でも、あまりいい顔されなかった」

エイラ「は? そうなのか?」

バルクホルン「……いくら異国民とはいえ、被災患者だぞ? 501のウィッチが連れていて、話を聞かないわけないだろ」

シャーリー「…………その子、褐色なんだよ」

バルクホルン「ッ!」ピクッ

エーリカ「……なるほど…」

エイラ「はぁ?? どーいうコトだ?」

 
バルクホルン「……これは歴史的に見て根深く複雑。 …語る上でも非常に慎重を要する問題だ、エイラ」

エイラ「…? ……つまりなんだよ?」

エーリカ「…差別だよ」

エイラ「ぇ…!」

ペリーヌ「……」

バルクホルン「我々の先祖が大昔に行っていた奴隷商売に端を発する、褐色系有色人種への差別だ」

エイラ「いや、でもさ? 何百年も前の話だろ?」

バルクホルン「勿論、ブリタニアを中心とした欧州での奴隷貿易はとっくに禁止されているし。 …輸出先だったリベリオン合衆国でも1世紀前に制度は廃止された」

バルクホルン「人身売買が日常にあった者などもう誰ひとりとして生きてはいない。 …だが、かつての人種偏見は僅かながらも人々に残り続けている」

エーリカ「…まぁ偏見なんてお互い様だし、誰かひとりを指して悪いなんて言えないけどね?」

エイラ「……」

 
バルクホルン「皮肉にもネウロイという人類共通の脅威が、私達のように異民族間の摩擦を緩和する助けになっているが。 目立たないだけで、やはり問題は根深いな…」

シャーリー「……ああ。 リベリオンもついこの間に公民権法ができたけど、それで全て綺麗になる感じはしないな…」

エイラ「……ロマーニャって“そういうやつ”多いのか? そんな感じしねーけど…」

シャーリー「…まぁ愛国心というか、ファミリー意識が高いらしいから…」

エイラ「ほぇー」

シャーリー「……ペリーヌには言ったけど、ルッキーニにはこの事言わないでいてくれないか? あいつ多分傷付くからさ」

エイラ「お、おう…」

バルクホルン「…了解した」

 
エーリカ「……話戻すけどさー、それでその女の子をここへ連れて来たの?」

シャーリー「まぁね。 ……宮藤がキレちゃってさ? “預けておけませんっ”て意地になって」

バルクホルン「まったくあいつは…」

エーリカ「宮藤は頑固だからね~?」

シャーリー「事情を話したら中佐達は快諾してくれたよ」

バルクホルン「それはそうだろう。 ふたりとも人格者だ」

エーリカ「だね。 見られて困るものも無いし!」

バルクホルン「適当なことを言うな、ハルトマン」

ペリーヌ「……ですけど、今日のガリアへの支援活動でも無理を聞いて頂いて…。 わたくしのせいで少佐と中佐のおふたりに苦労をかけてしまって…」ションボリ

エイラ「…気にすんなよ。 別にペリーヌのせいじゃネーだろ?」

ペリーヌ「……エイラさん…」

 
バルクホルン「そうだな。 …その少女が倒れていたのも、恐らくは昨日の嵐が原因の筈だ」

シャーリー「……まあ、この辺の暴風災害にしては随分局地的だったよなぁー?」

バルクホルン「気象予報にも全く予兆は見られなかったそうだ。 もしかしたらネウロイの影響による異常気象の可能性もある」

エーリカ「今はそんな事考えたってわかんないよ! …ねぇトゥルーデ、その女の子見に行こうよ?」ピョン

バルクホルン「必要ない。 宮藤達に任せておけ」

エーリカ「えぇ~! いこうよぉー?」グイグイ

バルクホルン「やめろ! 離せっ!」

エイラ「私はサーニャの様子を見に――…!」ピタッ

エイラ「……つ、ツンツンメガネも来るか? サーニャとサウナ行くけど」チラ

ペリーヌ「……お気づかいありがとうエイラさん。 …わたくしは大丈夫ですわ…」

エイラ「そ、そうか…」

シャーリー(ルッキーニにも知らせとかねぇと…。 あいつ何してんだ?)

 

医務室


キトゥン「……」ムク

キトゥン「………ここは…?」

キトゥン「…ベッドに布団?(すごいフカフカ…)」サワサワ

キトゥン「……わたし、確か…?」

キトゥン「…そうだ…! 変な腕に掴まれて重力嵐に――」

ルッキーニ「ねえ?」

キトゥン「ひゃっ!?」ビク

ルッキーニ「……」ジー

 
キトゥン「(…だ、だれ?)………ぁ、えっと…何か用かな…?」

ルッキーニ「…だれぇ??」

キトゥン「え…? ……わたしはキトゥン…だけど……」

ルッキーニ「……」ジー

キトゥン「ぅ……(なんなの、この空気?)」

ルッキーニ「……あたしはフランチェスカ・ルッキーニだよ」

キトゥン「あ、うん……そっか。 …よろしく」

ルッキーニ「ねえねえキトゥン?」

キトゥン「え? うん……な、なに?(いきなり呼び捨て…)」

 
ルッキーニ「ここでなにしてんのー?」

キトゥン「…えーっと、……わたしも知りたいんだよね? それ」

ルッキーニ「んにゃ?」ポカン

キトゥン「……」

ルッキーニ「……」

キトゥン「(うぅ…なんか気まずい)あ、あのさ? フラー……えと…ルッキーニちゃん? ここは何処だかわかるかな?」

ルッキーニ「うじゅ? ここ? …医務室だよ?」

キトゥン「(い、言われてみれば確かに病室っぽい…!)……センタリアレの病院かな?」

ルッキーニ「? せんたりあれ??」

 
キトゥン「あれ、違った? …えーっとじゃあ何処だろ? インダストリエかプレデューヌ?」

ルッキーニ「にゃ…? ……??」

キトゥン「……えっと、ルッキーニちゃん? お姉ちゃん迷子になっちゃったんだけど、ここは何処にある病院なのかな?」

ルッキーニ「……病院じゃないよ? ここはロマーニャの基地だよ」

キトゥン「……」キョトン

ルッキーニ「…あ、そだ! ねえねえキトゥン! 真っ黒でキラキラしたネコ知らない?」

キトゥン(ろまーにゃ? 基地…? どこそれ…何それ……!?)

ルッキーニ「? ねぇー、キートゥーン~! ねぇってばぁ?」ユサユサ

キトゥン「……」

 

ガチャ


リーネ「! る、ルッキーニちゃん!? 何してるの…!?」

芳佳「あ、起きてる! よかったぁー!」

キトゥン「!」

ルッキーニ「うにゃ? よしかぁー! りーねぇ! キトゥン起きてるよー?」

リーネ「…キトゥン……さん?」

芳佳「すごぉい! もう仲良くなったの!?」


キャイキャイ


キトゥン(……何がどうなってるの…?)
 

つづく

 
――――
――



キトゥン「えっ!? わたし死んでたの!?」

芳佳「あ、いえ! 呼吸はしてませんでしたけど大丈夫でした」

キトゥン「……(呼吸止まったんだ…)」

リーネ「芳佳ちゃんの魔法で……えと、…脈も弱かったんですけど戻す事ができました」オドオド

キトゥン「(魔法?)…よくわかんないけど、助けてくれたんだよね? ありがとう」

芳佳「元気になって良かったです! 特に悪い病気や怪我も無いみたいですし」

キトゥン「……ミヤフジヨシカちゃんって、結構若そうなのに医者なんだ? すごいね」

芳佳「えぇ? あ、そんな……私まだ勉強中でっ(何が何で治ったのかもわからないし)」ワタワタ

キトゥン「そうなんだ…(わたしより若そうなのに、偉いなぁ)」

 
芳佳「あと、それと……フルネームで呼ばなくても平気ですよ? 芳佳でいいです」

キトゥン「え!? …あ、ごめん。 わかった(フルネームだったのか…)」

キトゥン(うーん……ルッキーニちゃんの名前もやたら長かったから勘違いしちゃったな)チラ

リーネ「!」ビクッ

キトゥン「?」

リーネ「ぇと……あ、あのぉ…。 私もリーネで平気ですから…」

キトゥン「(人見知りってやつ…?)う、うん。 ありがとう」

ルッキーニ「あたしはルッキーニ! ここだとみんなそう呼ぶよぉ! ……とぁ!」ガバッ

キトゥン「きゃあ!?//」

リーネ「ルッキーニちゃん!?」

ルッキーニ「ん~……いまいち」モミモミ

 
キトゥン「なっ!(人の胸に抱きついといてその言い草!?)」

芳佳「そ、そうなんだ!」ゴクリ…

リーネ「芳佳ちゃん…」

ルッキーニ「でも芳佳よりはあるよー?」

芳佳「ちょっ! それは言わなくていいよぉ、ルッキーニちゃん!」


『貴女達。 医務室内では騒がないでね?』


芳佳「!」

ルッキーニ「ぎにゃ!?」

リーネ「……ミーナ中佐!」

ミーナ「特にルッキーニさん、いいわね?」スタスタ

ルッキーニ「ぁ、ぁぃ……」

キトゥン「……(今度は大人のひと?)」

 
ミーナ「ごめんなさい? 彼女に悪意は無いの」

キトゥン「あ、いえ! 気にしてないですから」

ミーナ「この軍事基地の責任者、第501統合戦闘航空団隊長のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐です」

キトゥン「(また長い名前!?)……キトゥンです」

ミーナ「あら、可愛いお名前ね」ウフフ

ミーナ「……事情はどこまで飲み込めていますか? この子達から何か聞いたかしら?」

キトゥン「えっと……倒れていたところを助けてもらって、ここに運ばれたのは聞きました」

ミーナ「それだけ?」

キトゥン「え? ……はい、そうです」

ミーナ「……」チラ

芳佳「!!(な、何も他の事はしゃべってませんよ~!?)」ブンブン

ミーナ「……体調の方はいかがかしら?」

 
キトゥン「あ、はい。 大丈夫です」

ミーナ「そう、よかったわ。 …治療自体は救護の際に宮藤さんの魔法で完了しているそうですから、明日以降に自宅までお送りします」

ミーナ「ただ、身体検査と身元の確認だけ一通りさせてもらいますので、それが終わるまでは此処にいてもらう事になります」

キトゥン「み、身元……(そういえばわたしって、そういう所どうなってるんだろ…?)」

ミーナ「ごめんなさい。 ここは軍事施設なので、念の為に必要なの。 ……個人情報の取り扱いには最新の注意を払います」

キトゥン「! そうだ! ここは基地だって……本当なんですか?」

ミーナ「ええ、そうですよ? パリの病院は被災の影響でどうしても態勢が調わなかったので、特別にここで受け入れました」

リーネ(ミーナ中佐、やっぱりロマーニャの事はわざと伏せてる…?)

芳佳「……」

 
キトゥン「ぱり? ……て、どの辺ですか?」

ミーナ「ガリアの首都です。貴女が倒れていた街ですよ?」

キトゥン「がりあ……?」

ミーナ「?」

キトゥン「……あの、皆さん軍人なんですよね?」

ミーナ「ええ。 そうですよ?」

キトゥン「ヴァン・ダ・センタリアレのユーリ・グノー司令官ならわたしのこと知ってる筈ですけど…?」

芳佳「……?」

リーネ「?」


>>56が改行失敗で歪になっちゃたので、一応修正


ミーナ「……体調の方はいかがかしら?」

キトゥン「あ、はい。 大丈夫です」

ミーナ「そう、よかったわ。 …治療自体は救護の際に宮藤さんの魔法で完了しているそうですから、明日以降に自宅までお送りします」

ミーナ「ただ、身体検査と身元の確認だけ一通りさせてもらいますので、それが終わるまでは此処にいてもらう事になります」

キトゥン「み、身元……(そういえばわたしって、そういう所どうなってるんだろ…?)」

ミーナ「ごめんなさい。 ここは軍事施設なので、念の為に必要なの。 ……個人情報の取り扱いには最新の注意を払います」

キトゥン「! そうだ! ここは基地だって……本当なんですか?」

ミーナ「ええ、そうですよ? パリの病院は被災の影響でどうしても態勢が調わなかったので、特別にここで受け入れました」

リーネ(ミーナ中佐、やっぱりロマーニャの事はわざと伏せてる…?)

芳佳「……」

 
ルッキーニ「ばんで……? なに??」

キトゥン「……ぇ? …えっと、わたし……シーキャット…です。 元だけど」

ミーナ「…………」

キトゥン「(あれ? 伝わってない?)……あ、そっか! ジュエルフィッシュはもう無いんだっけ?」

ミーナ「……リーネさん。 欧州周辺とガリア、それと世界地図を持ってきて頂戴」

リーネ「え?」

ミーナ「資料室か私の執務室に冊子になったものが有るから、持ってきてくれる?」チラ

リーネ「は、はい……」ステテ


ガチャ パタン

 

 
ミーナ「……」

芳佳「……ミーナ中佐?」

ルッキーニ「?」

ミーナ「キトゥンさん」

キトゥン「へ? は、はい…」

ミーナ「…………貴女はキトゥンさんで間違いはないのね?」

キトゥン「? …はい。 ヘキサヴィルではみんなそう呼びますけど(ちょっとは有名なつもりだったんだけどな…。なんか恥ずかしい)」

ミーナ「(偽名? いえ、それよりも…)……意識を失う前、貴女は何処にいましたか?」

キトゥン「……ヴァン・ダ・センタリアレ…の、下の方ですけど…?」

ミーナ「……」

 
キトゥン「(なんかまずかったかな?)その、……復旧作業の一環で行ったんです! 本当ですっ!」

ミーナ「(復旧?)貴女はそこで、嵐被災の復興作業をしていたのね?」

キトゥン「嵐……というか、あの“怪物”が壊した街の区画とか…探してて(重力嵐の被害はわたしが前に戻したし)」

ミーナ「……(怪物……ネウロイ被害の地? …ガリア国内の小さい町かしら?)」


ガチャ


リーネ「……失礼します…」イソイソ

リーネ「ミーナ中佐」スッ

ミーナ「ありがとう。 ご苦労様」

ミーナ「……」パラパラ

ミーナ「…………(やっぱり載ってない)」


リーネ「芳佳ちゃん、今どうなってるの?」ヒソヒソ

芳佳「私にもわからない」ヒソヒソ

 
ルッキーニ「?? ちゅーさ、どしたの?」

ミーナ「キトゥンさん。 地図は分かりますか?」

キトゥン「…はい」

ミーナ「……そのヴァン・ダ・センタリアレはどの辺にあるのか教えてくれますか?」バサ

キトゥン「えっと……」ジー

キトゥン「…………? んっ?(なにこれ…?)」

ミーナ「? 違ったかしら?」

ミーナ「(発見場所から考えて、少なくともガリア国内だと思ったけど)……じゃあ、この中のどの国かしら?」パラ

キトゥン「……??」ジー

ミーナ「…………なら、これは?」パラ

 
キトゥン「……あの、柱は何処ですか?」

ミーナ「柱?」

キトゥン「え? ……あの、真ん中の…」

ミーナ「(地軸のことかしら…?) 赤道がここ。 経度零がここで、……一応、地軸に当たる地点がこことここです」チョン チョン

キトゥン「えっ…? あの……すみません、よくわからないんですけど…?」

ミーナ「……!?」

ミーナ「(これはちょっと……。 参ったわね)……ありがとう。 質問責めにしてごめんなさいね? また後でお時間もらえるかしら?」パフン

キトゥン「は、はい。 まぁ…」

ミーナ「もう遅いですし、とりあえず今日はゆっくりしてください。 身体検査は明日行います」

ミーナ「それと、お腹が空いているようなら食事も用意できます。 お手洗いの際等と合わせて、何かあればドア越しに待機している者に言ってください」

キトゥン「(それって、見張りってこと?)……はい」

 
ミーナ「ごめんなさい、貴女を守る為でもあるの。 ……言ってくれれば散歩もできると思うから、窮屈でも我慢してね?」

キトゥン「(うっ、見透かされてた…)す、すみません」アセッ

ミーナ「うふふ、気にしないで? ここにいる間は楽にしていて平気よ」ニコ

キトゥン「はい…」

ミーナ「それじゃあ、私はこの辺で一度失礼します」

ミーナ「……貴女達にはちょっと話があるから、一緒にきて頂戴?」クル

芳佳「え? ……はい」

リーネ「ま、まさか…」

ルッキーニ「おこられるぅ……!?」ガーン

ゆっくり、つづく

 

執務室


ミーナ「……」

芳佳「っ……」

リーネ「……」

ルッキーニ「ぁわわわ……」ガタガタ

芳佳(……大丈夫だよルッキーニちゃん! 私達も一緒だよ)ニギ

ルッキーニ「!(芳佳…!)」

ミーナ「……宮藤さん」

芳佳「は、はいっ!」ビクッ

ミーナ「貴方の治癒魔法は怪我等の外傷だけでなく、病気の類も治せるのよね?」

芳佳「え? ……はい、まぁ…」キョトン

 
ミーナ「……それは所謂、心の病にも効くのかしら?」

芳佳「はい? こ、心の病気!?」

リーネ「?」

ルッキーニ「…にゃ? お説教じゃないの…?」

ミーナ「別を言うなら精神病とか…そういった患者は、御実家の診療所にはいなかったの?」

芳佳「ど、どうだろう!? そういうのは流石にうちはやってませんし…」

ミーナ「そうよね…」

芳佳「……あ! でも昔通院してた人がそういう相談もしてた事があった気がします!」

芳佳「確か……お婆ちゃんは、神経系がどうとか疲労と血管が何だとかって多分言ってて、結局その患者さんの悩みは魔法で解決できたみたいでした」

ミーナ「……」

 
芳佳「でもお婆ちゃん、“医者は気の病だけは治せない、だから医者が必要なんだ”ってよく言ってました」

ミーナ「うふふ、面白い言葉遊びね」

芳佳「え? どういう意味なんですか?」

ミーナ「“病は気から”ってことよ」

芳佳「あっ、なるほど…!」

ルッキーニ「?? ……リーネわかる?」クイ

リーネ「えっ? えーっとね、つまり――」

ミーナ「でも、なるほど。 やっぱり治癒魔法も人体科学…いえ、人体物理に起因する疾患でないと治せないのね」

 
ミーナ「……そうなると、ちょっと厄介な事になったわ…」

芳佳「…どうしたんですか?」

ミーナ「……」

芳佳「…?」

ミーナ「……3人とも、聞いて頂戴?」

リーネ「ぁ、はいっ! ルッキーニちゃん、後でね?」ヒソ

ルッキーニ「ん……(結局よくわかんなかった…)」

ミーナ「キトゥンさんの事だけど……彼女、精神病状態にある可能性が高いわ」

芳佳「えぇ!?」

ミーナ「医務室での話を聞いた限り、妄想幻覚症状が出ていると判断できます。 彼女の言っていた地名や、…恐らくグノー司令官なる人物も存在はしません」

リーネ「そ、そうなんですか…?」

ミーナ「もしかしたらという可能性も否定できないけど、信憑性はハッキリ言って無いに等しいわ」

 
ルッキーニ「なんで? キトゥン嘘ついてるの?」

ミーナ「いいえ。 洞察した感じ、特にそういった様子はなかったわ。 多分、本人は真面目に話していたわね」

ルッキーニ「うじゅ? じゃあホントなんじゃないの??」

ミーナ「彼女、言葉は通じたでしょ? みた目相応の知性や能力も、特に問題はない様子だった……」

芳佳「えっと…それはそうですよ。 普通の女の人でしたよ?」

ミーナ「なのに常識的な地理……というより世界図そのものにすら戸惑った様子で、話が噛み合わなかったわ」

ミーナ「素人の私の立場で断定はできないけど、恐らく妄想性痴呆の類ね」

ルッキーニ「ちほー? ……ボケちゃったの、キトゥン?」

芳佳「えぇ! そんなぁ!?」

 
ミーナ「戦地下の兵士や戦争の被害者、又はその遺族にも僅かに発症した例があるわ。 身体的、心理的に激しいショックやストレスを受けた際の精神的な防衛作用の結果だとも言われているの」

リーネ「しょ、ショックを……?」

芳佳「……まさか、昨日の嵐で!?」

ミーナ「あくまでも推論よ。 詳しくは身体検査と合わせて調べることになると思うわ」

ミーナ(……問題は、今の状態だと身元の確認も難しいということね。 それが分からない限り彼女を帰すどころか、解放もできないわ)

芳佳「そんな…キトゥンさん……。 私がもっと力に成れれば…」シュン

ルッキーニ「よしか……」

リーネ「芳佳ちゃん…」

ミーナ「魔法は万能じゃないわ。 徒らに自分を責めるのはやめなさい、宮藤さん」

芳佳「……はぃ」

 
ミーナ「…今後彼女に接する機会がある時は、さっき話した点を理解したうえでお願いね? 下手に傷つけない様に注意して頂戴」

ルッキーニ「あーい」

リーネ「…わかりました」

芳佳「…はい……」

ルッキーニ「そいじゃ、あたしはこれでぇ~!(助かったー♪)」クルッ

ミーナ「それからルッキーニさん? 次に医務室で騒いだら、“ご期待”に答えますからね?」ニコ

ルッキーニ「ぎにゃーー!!」

芳佳「……」

つづく

 

翌日


宿舎 医務室


キトゥン「はあー。 なんか色々やらされて疲れちゃったなぁ(身体検査ってもっと短いのかと思ってたのに)」

キトゥン「………。 それにしても…(…結局ここ、どこなんだろう?)」

キトゥン「……」

キトゥン「…ゲイドー? 聞こえる―? ゲイド―!!」


ガチャッ


バルクホルン「どうかしたか?」

街の名前間違えてた

>>48
誤:プレデューヌ → 正:プレジューヌ

に修正

 
キトゥン「あ……いや、なんでもないです。 すみません… //」

バルクホルン「……? いい気分ではないだろうが、身分証明が済むまでは監視体制だ。 悪く思わないでくれ」ススッ


パタン


キトゥン「…………ゲイドってば~?」ヒソヒソ

キトゥン「……」

キトゥン「やっぱ異世界じゃ無いよね…。 普通に人もいるし」


キトゥン「…………」


キトゥン「ダスティー? おいで~、餌やるよー?」キョロキョロ


キトゥン「……(反応なし…)」

 
キトゥン「…まさか」

キトゥン「……ッ!」フン


しぃ~~ん……


キトゥン「…力が使えない!」

キトゥン「……もしかして、全部夢? (わたし、自分の名前も知らないし。 倒れてたみたいだし…)」

キトゥン(どうしよう…! もしそうだったら、ものすごく恥ずかしい)


キトゥン「…え? じゃあ、わたしは誰なの…?」

キトゥン「…………あれ? わた…し……の――」クラァ


『私が付き添うので、お散歩に連れて行ってもいいですか?』


キトゥン「――!?」ビクン

 
『……まぁ、いいだろう。 基地中央には近づくんじゃないぞ?』

ガチャ


芳佳「こんにちは、キトゥンさん!」ヒョコ

キトゥン「……芳佳?」ヨロ

芳佳「! …どうかしたんですか? なんだか辛そうですよ!?」ステテ

キトゥン「う、うん……。 なんか今、一瞬目眩したけど……もう大丈夫」フゥ

芳佳「(心の病気のせいなのかな……)きっと、検査で疲れちゃったんですよ! 気分転換に外の空気を吸いに行きましょう?」

キトゥン「……そうだね。 うん、ありがとう芳佳。 行こう!」

 

宿舎 入口


芳佳「今日は風も出ていて気持ちいいですよ!」

キトゥン「…!」キョロキョロ

芳佳「お洗濯物すぐに乾いちゃうなぁ」

キトゥン「……。 はぁ~…(きれいな空…!)」ポケー

芳佳「少し歩きましょう! あっちは海も見えていい景色なんですよ!」

キトゥン「うみ……?」


――――
――

 
キトゥン「……わぁ…! なにこれ……!?」

芳佳「ここは基地の正面から先が一望できるんです! 私も初めて見た時はワクワクしました」

芳佳「ほら、すぐ下にあるのがハンガー出口と滑走路です!」ビッ

キトゥン「……先が見えない。 あれ全部塩水なの…!?」

芳佳「え? ……もしかしてキトゥンさん、海を見るの初めてですか?」

キトゥン「うん、初めて“知った”。 …すごいね?」

芳佳「(……これも妄想性なんとかなのかな…?)えーっと…これはアドリア海っていう海で、私達はこの上を渡ってくるネウロイを撃退してるんです」

キトゥン「ネウロイ?」

芳佳「はい。 ……し、知りませんか?」

 
キトゥン「(…ネヴィのことかな?) えっと~、黒くて危ない奴だよね? 飛んだり飛ばなかったり色々いるけど」

芳佳「あ、はいっ! そうです、そうです!」ウンウン

キトゥン「そっか……まぁ軍だもんね、そりゃそうか(名前はちょっと違うみたいだけど、ネヴィの記憶は合ってるんだ…)」

芳佳「あ、あの…。 その……?」オズオズ

キトゥン「ん? どうしたの?」

芳佳「…キトゥンさんがここへ来る前にいた所にも、ネウロイは出てたんですか?」

キトゥン「……うん、まぁ。 わたしはそう思ってるんだけどね…」

芳佳「え…?」

キトゥン「んー…なんか、自分の記憶に自信が無くなってきたというか(力も使えないし…)」

キトゥン「全部夢だったんじゃないかなぁ……って」

 
芳佳「…………(これって治ってきてるって事なのかな? それとも悪化してるのかな…?)」

キトゥン「キトゥンっていうのも本当の名前じゃないし。 そもそも昔の記憶が無いんだよね、わたし…」アハハ…

芳佳「キトゥンさん…(ど、どうしよう! 何て答えるのが良いんだろ? わかんないよぉー!?)」

芳佳「え、えーっとぉ……」アセアセ


『うりゃ!』

ギュッ


芳佳「ふわっ!?」ビクッ

キトゥン「?」

ルッキーニ「……ん~、やっぱ芳佳のがザンネン~」ペタペタ

 
芳佳「ルッキーニちゃん!?」

ルッキーニ「やっほー芳佳、キトゥン! なにしてんのー?」ピョン

キトゥン「芳佳が、散歩にって言って外へ出してくれたの」

芳佳「もぉールッキーニちゃん! 後ろから急にビックリしたよ~!(しかもまた残念って)」プンプン

ルッキーニ「にゃはは、ごめんごめーん♪」

芳佳「うぅ……でも助かったけど」ボソ

ルッキーニ「うじゅ?」

キトゥン「どうしたの、芳佳?」

芳佳「え!? あ、いや……なんでもない! なんでもないですっ!」ワタワタ

ルッキーニ「? 変なよしかー」

 
芳佳「そ、それより! ルッキーニちゃんはここで何してたの?」

ルッキーニ「あ、そだ! 芳佳たち、ネコ見なかった!?」

キトゥン「猫…?」

芳佳「…見てないけど、どんな猫?」

ルッキーニ「真っ黒でー、キラキラしてんのっ! 昨日から追いかけてるんだけど、すぐ逃げられちゃうんだよね」ムー

芳佳「へぇー、キラキラしてるんだ…?」

ルッキーニ「ちっちゃーく星みたいになってるんだよ? 珍しいから捕まえてみたい!」

キトゥン「でも野生だったら、ちょっと可哀想じゃない? そっとしておいてあげれば?」

ルッキーニ「だいじょーぶ! ちゃんと逃がすもん」

キトゥン(じゃあ何で捕まえるんだろ…?)

 
ルッキーニ「芳佳とキトゥンも一緒に探そ!」クイクイ

芳佳「え、えぇ!? でも…」チラ

キトゥン「わたしは別にいいよ? 病人でもないし、少し体動かしたいかな――」

キトゥン「あ、ごめん。 芳佳が良ければだけど…」

芳佳「え? えっと、私もキトゥンさんが嫌じゃなければ別にっ」ワタワタ

ルッキーニ「よーっし決まりぃー! それじゃ3人でさーがそー♪」

キトゥン「…でも、この広い中から探し出すのは大変そうだね?」

芳佳「近くにいるのかな? …ねえ、ルッキーニちゃ――」


ウゥゥゥウゥゥ――――!!

 

つづく

ごめんなさい、また名前間違えてました

>>59
誤:ジュエルフィッシュ → 正:ジェリーフィッシュ

に訂正

 
芳佳「!?」

ルッキーニ「!」

キトゥン「へっ、なに!? うるさっ!! …なんの音?」ビクッ

芳佳「……警報? 一昨日出たばっかりなのに!」

ルッキーニ「芳佳! いくよっ!」ダッ

芳佳「あっ、ルッキーニちゃん…!」


シュタタタタッ


キトゥン「えーっと、芳佳? これって――」

芳佳「…キトゥンさん、ごめんなさい!」

キトゥン「――え?」

 
芳佳「危ないので宿舎に戻っていてください!」ダッ

キトゥン「え? なに、どうしたの!? …芳佳―!!」


タッタッタッタ



キトゥン「…………」ポツーン


ウウゥウゥゥ――


キトゥン「~~っ(なんか不安になる音だなぁ…)」ウルサ…

キトゥン「……」

キトゥン(“危ない”って……ネヴィが出たのかな?)

キトゥン「…あ、違うか。 ネウロイ……だっけ?」


キトゥン「……(ネヴィなら私も行きたいけど…)」

キトゥン「フンッ…!」グッ


キトゥン「…………」


キトゥン「……やっぱり、なんにも起きないよね」ハァ

 
キトゥン「ん…っ!」ツネリー

キトゥン「………痛い(てことは、今の私はマトモなのかな…?)」

キトゥン「どうしよう……なんかもう、わからなくなってきた」


ウゥゥウゥウゥ――


キトゥン「(…ヘキサヴィル。 ……シドー、アキ、ゲイド、シアネア)みんな夢だったのかな…」


キトゥン「(“キトゥン”も、重力の力も――)……クロウ」




キトゥン「……。 ……ダスティ…」ボソ



『ニャア!』


 

 
キトゥン「!?」バッ


ダスティ「ニャアッ」ピョン


キトゥン「………………だ――」



キトゥン「ダスティッ!!?」



ダスティ「……」クシクシ

キトゥン「お、お前……ダスティだよね…?」ヒョイ

ダスティ「~…」クァ~

キトゥン「(このふてぶてしさ、ダスティだ!)やったぁ!」ギュー

ダスティ「ッ! ニャアー!」バタバタ

 
キトゥン「もー! どこ行ってたの? 心配したんだよ!」


ウゥゥゥウゥ――


ダスティ「……ニャア!」ガリ

キトゥン「痛っ!?」

ダスティ「……」ピョンッ スタ

キトゥン「~~っ! ちょっと、いきなりなにすんの!?」


ダスティ「……」キラァア


ピカァアー


キトゥン「!」ブワァン
 

 
キトゥン「……これって、まさか!(力が戻ってる…?)」

ダスティ「ニャア」

キトゥン「…もう、いったいなにが何だか」


――あなたが渡るのは忘河ではない、重力姫――


キトゥン「――ッ!?」ビクッ

ダスティ「……」クシクシ


キトゥン「……」


キトゥン「…………そっか。 わたし、キトゥンだ」ボソ

キトゥン「…そうだよね? 今までが全部妄想だったなんて、絶対そんなわけないよ!」

ダスティ「~…」ノビー

キトゥン「ありがとうダスティ! わたし、どうかしてたみたい」

 
キトゥン「……でも、まだ分からないことだらけなんだよね?(ここが何処なのか、とか…)」

ダスティ「…!」ピクッ

ダスティ「ニャア」

キトゥン「どうしたの、ダスティ? ……上?」チラ

キトゥン「! 誰か飛んでいった!? ……まさか芳佳達?」


『中佐! いました、あそこです!』


キトゥン「!」クル


――バタバタバタッ


モブ兵「拘束しますか!?」

ミーナ「やめなさいっ!! 民間人ですよ!?」ビッ

 
ミーナ「あなた達はスクランブル配置に戻りなさい。 協力ご苦労様」

モブ兵達「……はっ、失礼します」バタバタ

キトゥン「……?(えーっと、…名前の長い……確か隊長って言ってた――)」

ミーナ「キトゥンさん。 宮藤さんは?」

キトゥン「え? えーっと、うるさい音がしてすぐ何処かへ走って行っちゃいました…」

ミーナ「そう。 あなたを放置して……」ハァ

ミーナ(…おそらく、先行して出ていった中にいるわね)チラ

キトゥン「あの、今なにが起きてるんですか…?」

ミーナ「アドリア海域にネウロイが出現したのでスクランブルがかかりました。 今の所基地に危険はありませんが、民間人のあなたはすぐに避難してください」

キトゥン(やっぱりネヴィが…!)

 
ミーナ「宿舎に男性は入れないから、私が医務室まで――」

キトゥン「ごめんなさいっ! 私も行きます!」

ミーナ「――えっ?」

キトゥン「…ダスティ、行くよ!?」

ダスティ「ニャア」

ミーナ「ちょっと、何を言って――」


ブワァン


ミーナ「ッ!?」グラ

ミーナ「きゃ……!」ドテン

キトゥン「わっ! ごめんなさい!!」フワフワ

ミーナ「(……浮いてる!?) キトゥンさん、あなた…!」

 
キトゥン「えっと……い、行ってきます!」ブワッ

ダスティ「…」ピョンッ

ミーナ「あ、ちょっと! 待ちなさい!!」


ビュゥウーーン



ミーナ「…!?(嘘……何の装備も無しで…!??)」

ミーナ「ッ……」スク

ミーナ「…………まずいわ。 緊急事態よ!!」ダッ

こんな調子でどんどん読み難くなるけど、つづく

 

アドリア海上空



ビュゥウウンッ


キトゥン「うわぁー! すっごい!!」ビュゥウン

キトゥン「ずーっと先まで続いてるよ! どうなってるの、海って…?」

キトゥン「……(というか…)」キョロ

キトゥン「どうしよう、…地面が見えなくなっちゃった」

ダスティ「……」

キトゥン「…さっき見えた人達が飛んでいった方向を追って来たけど――」

キトゥン「ネヴィはどこにいるんだろ? 同じ景色ばかりで混乱しそう…」

※かなり今更ですけど、キトゥンの言う「異世界」は原作中の「異次元世界」のことです



「異次元」って言わせればよかった……

 
ダスティ「…ニャアー」

キトゥン「ん? ダスティ?」

ダスティ「……ニャア!」

キトゥン「…………なにお前、ひょっとして位置わかるの?」

ダスティ「ニャア」

キトゥン「……また落ちてるクッキー嗅ぎつけたんじゃないよね? こんな時にやめてよ?」

ダスティ「………」ビュゥン

キトゥン「あっこら、待て! …ダスティ!」


――――
――

 

アドリア海域

ネウロイ侵攻地点



――ブゥゥウン


美緒「っ……」フィィイン

美緒「…! 敵発見! X-12型、距離約2000」

バルクホルン「またあいつか。 厄介だな」

シャーリー「え゛っ、本当に2キロですか!? ……とすると、前よりかなりデカイですよ?」ジィー

ルッキーニ「シャーリー、あたしのミルスコープ返してぇ!」

バルクホルン「…リベリアンの目測に誤りが無いとすると少し厄介だな、少佐?」

美緒「むぅ……(即出の人数が揃った故に先行したが、迂闊だった)」

 
美緒(新型ネウロイの強化硬度に加え、奴はコアが移動する。 ……火力が足りないか)

美緒「(……仕方ない) 宮藤! お前はバルクホルンに付け」

芳佳「えっ!? でも、それじゃあ坂本さんのシールドは誰が――」

美緒「返事はどうした!!」

芳佳「ッ! は、はいぃ!」

美緒「シャーリー隊とバルクホルン隊は車掛で目標に波状攻撃! コアの逃げ道を減らせ」

美緒「私が烈風丸でコアを斬る」スラァ

「「了解!」」

美緒「回復の隙を与えるな? できるだけ奴の図体を削れ」

バルクホルン「了解した。 いくぞ宮藤、遅れるな?」ジャキ

芳佳「わ、はい!」

シャーリー「……この人数で簡単に言ってくれるよなぁ」ヤレヤレ

ルッキーニ「別にやっつけちゃってもいいんでしょ~?」

 
美緒「よし、各隊散開! 行動開――」


ガザザッ

『先行のウィッチ隊、応答してください! …坂本少佐!』ガザ


美緒「!?」

バルクホルン「ミーナ?」

美緒「……どうした中佐? 悪いが接敵寸前だ、手短に頼む」スッ

ミーナ『収容保護中だった民間人がそっちに向かっています!! ネウロイとの接触を阻止してくださいっ!』

シャーリー「え゛!?」

美緒「(民間人だと…?)何を言っている? ここは海上だ」

美緒「…! まさかウィッチなのか!? ストライカーを奪――」

ミーナ『違うわっ!! 生身よ!!!』

 
ミーナ『違うわっ!! 生身よ!!!』

芳佳(民間人って、まさか……?)

ルッキーニ「…しょーさー、ネウロイ来てるよー?」



ネウロイ「――」ゴォォォ



バルクホルン「少佐、どうする!?」

美緒「くっ…! 今は考えている暇はない。 問題が起きる前に、速やかにネウロイを撃破だ」

ミーナ『待って坂本少佐! 間に合わないわ!!』

シャーリー「ユニット無しのウィッチじゃ、ここに着く前に終わりますって中佐!」

ルッキーニ「てか、ここまで飛べるの? 途中で落っこちてんじゃない?」

シャーリー「……そっちのがやべぇな。 早いとこ終わらせて探しに行かねぇと」

芳佳「あ、あの! その民間人ってもしかして――」

バルクホルン「お前達ッ! 無駄話は終わってからにしろ! 敵が来る」

ミーナ『ちょっと、待ちなさい! 聞いて!!』

>>112の最初のミーナさん台詞はダブリです。すみません

 
美緒「すまない中佐、戦闘を開始する。 ……全機行動開始ッ! 今のうちに叩くぞ」

「「了解!」」

ミーナ『違うの、美緒!! あの速度ならもうそっちに――』

バルクホルン「…? 待ってくれ少佐。 何か――…いや、誰かがこちらに接近してくるぞ!?」

美緒「何っ? 後続か!」


バルクホルン「………違う。 通信がとれない」


シャーリー「おまっ…!! あれって……!?」


ルッキーニ「えぇええー!!?」ガビーン


美緒「……何だ…?」


芳佳「…………キトゥンさん!?」




ビュゥウウン



キトゥン「やぁぁあっ!!」ズォォオ


 

 

ガァンッッ


ネウロイ「!」


キトゥン「~~ッ!? いったぁー!」フワッ

キトゥン「……何、このネヴィ!? 硬いっていうか……なんか知ってるのと違う?」


ネウロイ「~~!」ビーム


キトゥン「きゃあっ!!? ……なに? ビックリした!」ヒュン


ネウロイ「~―!」ビー


キトゥン(あれだけ“距離”使ってキックしたのに…。 やっぱり弱点にあてないとダメか)ビュゥン

キトゥン「…………でも弱点どこ? こいつ、目玉ついてないよね?」

 
キトゥン(…ていうか、おっきいなぁ……!)


ネウロイ「~!!」ビビー


キトゥン「わぁっ!? あぶな! …ちょ、ちょっとま……っ!」ビュン ビュン

キトゥン(どうしよう……はやくも打つ手なしの予感…!)

キトゥン「…でもどこかに弱点があるはず。 探さなきゃ!」ビュゥゥン





シャーリー「……おいおい。 なにやってんだよ、あの子…!?」

美緒「一体どういうことだ……? あれは何者だ…??」

芳佳「き、キトゥンさんだ!! バルクホルンさん、あれ!」ビッ

バルクホルン「…リベリアンが連れ込んだ民間人だと? なぜこんな所で飛んでいる!?」

シャーリー「おい、聞こえてるぞバルクホルン! ……少佐どうします? あの子、ネウロイの標的になってますけど」

 
ルッキーニ「助けよっ! シャーリー!」チャキ

芳佳「バルクホルンさん、私達も行きましょう!」

美緒「…よせぇ! 撃つな!!」

ルッキーニ「なんでぇ!?」ムッ

バルクホルン「万一にでも民間人に中ったらどうする」

ルッキーニ「あてないよ!」

シャーリー「中てちまったら軍法会議だぞ? ていうか最悪殺しちまう」

ルッキーニ「あてないもんっ!!」

美緒(……宮藤の連れてきた被災者か。 自力で飛んでくるとは…!)フィィン

美緒「(見覚えのない魔法力発光…。 むしろネウロイに近いか?)……我々のように通信もしていないから話すことも出来んな」

バルクホルン「あれだけ動き回られたら、下手に攻撃はできないぞ」

芳佳「で、でも……!」

美緒「(そもそもストライカーも履かずに……あれはウィッチなのか?)…中佐が慌てるわけだ」

 
シャーリー「わからないことだらけですね…。 で、どうします? 早く手を打たないと」

美緒「……シャーリーは民間人を補足・保護し、戦線を離脱しろ」

シャーリー「へ?」

美緒「急げ、一刻を争う! ネウロイは我々と後続に任せろ」

シャーリー「(かなり無茶な動きしてるけど、捕まえられっか…?)……了解!」ブゥゥウン

美緒「…残りはネウロイの注意を引きつける! 近接時以外で銃火器は使うな、保護対象に中たる危険がある」

バルクホルン「少佐、“鈍器”の使用は?」フィィイン

美緒「許可する。 臨機応変に判断しろ」

バルクホルン「了解」

美緒「宮藤も保護対象を追え!」

芳佳「え?」

美緒「お前のシールドが必要だ(…その力は私でなく、皆を護るために使え)」

芳佳「……はい!」

美緒「よし、編隊解除! 各自散開!」ブゥゥン

ゆっくりつづく

乙。
ストパン知らないけどキトゥンちゃんが可愛いから読むぜ!

>>121
TVシリーズ通しても24話だけだから、女の娘動物園が嫌いじゃなければ是非観て欲しい

 

ネウロイ「~~!」ビー


キトゥン「…どうしよう。 ぜ~んぶまっくろ、弱点っぽいとこがないよ!」ビュゥゥン

キトゥン(どこか一箇所だけならスクラッチトルネードで決めちゃうんだけどな……)


ネウロイ「―!」ビー


キトゥン「う~! しつこいなぁ!」ビュン



ネウロイ「~~!!」ビビー



キトゥン「え…!?(うそっ、先を読まれて――)」




――ブゥウウンッ



芳佳「キトゥンさぁああんっ!!!」フィィイン



ッパァァアン


 
キトゥン「~~ッ! …………あれ?」パチ

芳佳「うぐ……。 大丈夫ですか…っ!?(ビームが、お…重い!)」パァァ

キトゥン「…芳佳……?」


シャーリー「――わりぃ宮藤! シールドが間に合ってよかった!」ブゥウン

キトゥン(だ、誰!?)

シャーリー「こんな言い方はアレだけど、止まってくれたおかげで追いつけた。 ここは危ないからあたしと戻ろう!」ガシ

キトゥン「え? …でもネヴィが!」

シャーリー「(ネヴィ?)悪いけど、あんたがいると戦闘が出来ないんだ。 怪我する前にはやく――」

芳佳「ぐぅ…っ!!」パァァ

キトゥン「芳佳っ!?」

シャーリー「敵はどういうわけかあんたを狙ってる! 宮藤を思うなら早く逃げるよ?」グイ

キトゥン「そんな……(わたしのせいで…?)」

 
シャーリー「ほら、早く! まだ飛べるんだろ!?」グイグイ

キトゥン「うぅ…」チラ


芳佳「ぁぐ…っ……はぁ…っ!」パァァ


キトゥン(……ダメだ、ほっとけないよ! このネヴィを倒さなきゃ!)

シャーリー「…しかたない、担いで行くぞ? ごめんな」ギュ

ダスティ「……」

キトゥン「え? ……ちょ!? や――」

シャーリー「少佐―! こちらイェーガー、対象を捕まえた。 これより離脱する!」

ダスティ「………ニャア!」キラァア

キトゥン「! ダスティ?」

シャーリー「うぉっ! 何だこいつ!? ……ね、猫ぉ!?」


ピカァァアアア――

 
  

 
――――
――



【???空間】



キトゥン(…!)ハッ


キトゥン(………)

キトゥン(…あれ? なに、ここ?)キョロ

キトゥン(……私さっきまでネヴィと――)


――目を開けなさい――


キトゥン(!?)


――夢を戻しなさい――


キトゥン(……またこの声!?)
 

 

――そして戻りなさい、夢へ――


キトゥン(なに言ってんの…?)


――混沌を祓い、秩序を……その力で――


キトゥン(……そうだ! ここって確か前に下端の村で…!)


――存在は気付き。あなたは再び眠れる力で、気付くのです――


キトゥン(ちょっと、シアネ――……! 声が出ない!?)パクパク


――さぁ、目覚めなさい。 夢の外れへ――


キトゥン(え、待って! 言ってることが全然――)



ピカァアアアアー



キトゥン(――ま、まぶしい! なんなの、さっきから!?)クラクラ

 

 

――
――――


キトゥン「――ッ!!」ハッ


シャーリー「~~! まっぶしっ…! なんだよ、いったい!?」グシグシ

キトゥン「……い、今の?」

ダスティ「ニャア」

キトゥン「…………お前が見せたの?」

ダスティ「……」クイクイ

キトゥン「…なに? 行けってこと?」

ダスティ「……」ビュゥン

キトゥン「あっ! ダスティ!?」

 
芳佳「くっ……キトゥンさん…、早く逃げて……!」パァァ

キトゥン「芳佳…!」


(『敵はあんたを狙ってる!』)


キトゥン「(……やってやる!)芳佳、ありがとう! 絶対やっつけるから」ビュゥン

芳佳「えぇ!? キトゥンさん…!」

シャーリー「しまった! ちっくしょ……おい!!」

牛歩でつづく

 

キトゥン「こっちだぞぉー!」ビュゥウン



ネウロイ「!」

ネウロイ「~~!」ゴゴゴ



キトゥン「……よし、芳佳への攻撃が止んだ」チラ

キトゥン「本当にわたしの事狙ってるんだ…(なんとか倒す方法を見つけないと――)」

キトゥン「――!」

キトゥン「…なんだろう、あれ?(ぼや~っと何か、赤いものが……?)」ジィー

キトゥン「ネヴィの……なか?(…あそこが弱点な気がする)」

キトゥン(というか、もうあそこ以外にそれっぽい所がないし)

 
キトゥン「…ダスティ!」

ダスティ「……」

キトゥン「“息つぎ”したら一気にきめるよっ!」

ダスティ「…ニャア」


――ブゥウウン

シャーリー「待てって! こらっ!」バッ



キトゥン「(上昇!) さすがに“呼吸”がしんどい……っ!」グン


ビュゥウウンッ



シャーリー「ッ!?」スカ

シャーリー「………マジかよ? 何だ今の軌道!?」

 

キトゥン「…この辺で(力を解かなきゃ…)」フワ



ヒューーーーン↓



キトゥン(……もう少し)





ネウロイ「―~!!」ビー



キトゥン「!」


パァァアン


シャーリー「ぐっ……やらせねぇぞ…!!(…何だ!? 重てぇっ!)」パァア

 
キトゥン「――よし、“戻った”!!」ブワァン

キトゥン(……でも、また助けられちゃったな)ビュゥウン





シャーリー「急上昇したり落ちたり……あの子、なに考えてんだ!?」


美緒「――シャーリー、急げっ! 敵の勢いが増してきた!」


シャーリー「わかってますけど、どうにも動きが読めないんです!」


美緒「…わかった。 私も娘を追う、お前は回り込め」

美緒「バルクホルン、宮藤、ルッキーニ!! お前たちは今しばらく敵を惹き付けろ!」

 
キトゥン「まず、あいつの弱点まで攻撃が届かなきゃいけないよね?」

キトゥン「(……お腹っぽいところが柔らかい、とかないかな?)下にまわって…!」ビュゥウン


キトゥン「やぁああ!!(重力キィック!)」ズォォオ


ガァンッ


キトゥン「……ダメだ! 硬くて中に届かない!」

キトゥン「…なら、横っぱらならどうだっ!」ビュゥウン





美緒「……あの娘の突撃線、まさかコアを狙っているのか?」フィィン

美緒(魔眼持ち…!? ……いやそんなことより、コアを狙っているならば――)

美緒「………」

>>137
すみません、しっくりしないんで訂正


『まさかコアを狙っているのか?』 → 『まさかコアが視えているのか?』

 
美緒「(やってみるか…)…シャーリー! 補足は中止だ!! 捕まえずに、万が一に備え対象の護衛に専念しろ」


シャーリー「はぁ!? なに言ってるんです、少佐!?」


美緒「私に案がある。 2分預けろ!」

美緒「……全機! ネウロイへの接近と保護対象の動きに注意だ!」ブゥゥウン





キトゥン「――どこを攻撃しても無理だ…!」

キトゥン「(……疲れるんだけど、こうなったら)スクラッチトルネードやるよ?」チラ

ダスティ「ニャア」

 

ネウロイ「~~!」ビビー



キトゥン「(あたるもんかっ!)……ダスティ!! いくよ!?」ヒラッ

ネウロイ「ッ…!」ブワァン



……ギュオォォオォオオォオ



キトゥン「たぁぁああーっ!!!」ギュオオ



ネウロイ「!」



バギィィ゛イィイ゛インッッ



ネウロイ「―ッーーー!!」


ネウロイ「~~…」


ネウロイ「 」
 

 
ビュゥウンッ


キトゥン「……っ…はぁっ…」フワ

キトゥン「…ぜぇ……っは…。 そ、そんな…!?」



ネウロイ「 」


ネウロイ「 …」ググ


ネウロイ「……~ーー!」




キトゥン「弱点が……移動…っ……ぜぇ…(呼吸がもう!)」

キトゥン(まずいっ…、今度こそやられる!)ゼーハー



ネウロイ「~――」ビ


『――烈風ぅうう斬っっ!!!』

 

 


ズォォオアアア




…パキィ


ネウロイ「」


バリィインッ


パラパラパラ……





キトゥン「…………え?」

美緒「……やれやれ、間一髪だったか」ブゥウン

キトゥン「…??」ポカーン

 
美緒「お前が攻撃してくれたおかげで、逃げるコアを先読みして討つことが出来た。 例を言うぞ?」

キトゥン「え……? えと…、はい。 …どういたしまして」

美緒「…しかしなんだ。 お前には色々と聞きたい――」

キトゥン「!?」ガクン

キトゥン(……あ、力が“切れた”!)


ヒューーーーン↓


美緒「!? …おい!」




ガシッ


シャーリー「…った~く! 変なウィッチだなぁ、あんた。 発作的に魔力切れ起こすのか?」ブゥゥウン

キトゥン「あ、ありがとうございます…(なにか柔らかいものがあたっている…!)」

シャーリー「少佐―? 今度こそ捕まえましたー」アハハ


美緒「……ああ、見えている。 よくやった」

つづく

VITA買うか…

>>147
未プレイなら是非やってみて欲しい
とてもユニークな作品なうえ、ついでに当ssも解りやすくなるかも

ちなみにVitaTVではなくPSvitaでのプレイがおすすめです

 
――――
――



『キトゥンさーんっ!』

『シャーリー!』


ブゥゥウン


芳佳「…キトゥンさん!」

シャーリー「ここにいるぞ?」ギュ

キトゥン(なんだろう…、何故か心も苦しい。 この格差…)ズーン

芳佳「!? (む、胸まくらーっ!!)」

ルッキーニ「ああ~~!? それあたしのーぉ!!」ムー

 
美緒「……ふぅ。 少々肝を冷やしたが、終わってみればいつも通りか」

バルクホルン「――少佐」ブゥウン

美緒「…バルクホルンか。 御苦労だったな、助かったぞ」

バルクホルン「それはいいのだが。 …今戦ったネウロイ、本当にX-12型なのか?」

美緒「どういう事だ…?」

バルクホルン「攻撃の威力もそうだが、装甲強度が従来のの比ではなかった。 アレは本当に私達の知っているネウロイだったんだろうか?」

美緒「………ふむ、確かに気になるところではある。 図体も3割ほど大きかったしな」

美緒「しかし奴は既にいない。 気にしすぎても逆に毒になるぞ?」

バルクホルン「確かにそうだが…!」

美緒「ミーナにはその点も含めて、私から報告しておくから心配するな。 その前に、今は……」チラ

バルクホルン「……あの戦闘介入した少女か」

美緒「ああ。 恐らくミーナが後続を率いて、そろそろ到着する頃合いだが…」

バルクホルン「状況と結果も合わせて、怪しいことこの上ないな」

美緒「……然るべき対応になるか」

バルクホルン「…準備しておこう」ブゥウン

>>143
例を言うぞ? → 礼を言うぞ

>>151
美緒「ミーナにはその点も → 美緒「中佐にはその点も

恐らくミーナが → 恐らく中佐が


にそれぞれ訂正。すみません

 

バルクホルン「シャーリー」ブゥウン

キトゥン(……あ、見張りの人!)

シャーリー「どした?」

バルクホルン「その少女の身柄を預かる。 お前は宮藤とルッキーニを連れて先に帰投しろ」

シャーリー「なんだそれ? やらしいな」ニヤニヤ

バルクホルン「黙れ、真面目な話だ!」

シャーリー「……なんで?」

バルクホルン「…察しろ。 面倒が起きる前に宮藤を連れて行け」ヒソヒソ

シャーリー「…………あー、そういうこと?」

バルクホルン「じきにミーナも来る」

 
シャーリー「…わかった。 ほいよ」ズイ

キトゥン「(…あれ? わたしモノ扱い!?)……あのぉ~?」

シャーリー「こいつ恐いけど、悪いやつじゃないから。 大丈夫だよ」ポンポン

バルクホルン「おい」

シャーリー「宮藤、ルッキーニ! あたしらは先に帰るぞー?」

ルッキーニ「あーい! お腹空いた~!」

宮藤「…え? あの、キトゥンさんは…?」

ルッキーニ「少佐たちと話した後で一緒に来るから。 あたしらは先に戻るよ?」

宮藤「……。 …はい」

バルクホルン「心配するな。 早くいけ」

シャーリー「……バルクホルン」

バルクホルン「何だ?」

シャーリー「宮藤のこと思ってやんなら、手荒にすんなよ?」ヒソヒソ

バルクホルン「…努力はする」

 
シャーリー「……うし! 帰るぞぉー」

ルッキーニ「シャーリー、芳佳―? 戻ったらお菓子食べよーよっ!」

宮藤「……」


ブゥゥウン




バルクホルン「…………」

キトゥン「…えーっと、あの…? わたし、もう大丈夫です。 離してください…?」モゾモゾ

バルクホルン「……ひとつだけ忠告しておこう。 抵抗はするな」

キトゥン「えっ…??(……早速恐いんだけど、この人!)」

美緒「――バルクホルン! 後続が到着した」ブゥゥン

ごめんなさい、寝ぼけて芳佳の名前表記間違えてました

>>154-155
宮藤「」 → 芳佳「」
に訂正

度々失礼しました

 

ブゥゥウン


エーリカ「お待たせー! …って、もう終わってるよね~」

ペリーヌ「少佐、お怪我はありませんか!?」

リーネ「………ぁ…! ほ、本当にキトゥンさんが…!?」

ミーナ「……バルクホルン大尉、そのまま彼女を離さないで」

バルクホルン「了解」

キトゥン「…?」


ミーナ「………キトゥンさん。 ゲリラ闘争による軍事への無断介入の疑いで、貴女を拘束します」


キトゥン「えっ…!?」
 

 
美緒「……」

リーネ「…!!」

ペリーヌ「そ、そんな…! ……ゲリラって…!? それじゃあまるでテロリス――」

エーリカ「しっ…! 今はやめといた方がいいよペリーヌ?」

キトゥン「……あの。 意味がわからないんですけど?」ムッ

ミーナ「……」

キトゥン「…帰してくれるんじゃないんですか?」ググ…

バルクホルン「おい、抵抗するな」グイィ

キトゥン「いたっ!!? …ちょっと!!」

美緒「……バルクホルン」

バルクホルン「わかっている」

 
キトゥン「~ッ……ん…!!(いったいなんなの! この人達!?)」グッグッ

ミーナ「残念ですが、貴女の正体と目的を確認するまでは自由にできません。 抵抗はやめなさい」

キトゥン(……も~~、あったまきた!!)ブワァン

バルクホルン「!??(何だ!?)」グン

リーネ「!」

美緒「!! …よせっ!」


ジャキッ


キトゥン「――っ!」ピタッ

ミーナ「……やめなさい」チャキ

エーリカ「ごめんね? トゥルーデは不器用なだけだからさ。 いじめないでよ?」チャキ

バルクホルン(くっ! 嬉しくないぞ、ハルトマンめ…!)ヨロ

 
ペリーヌ「…え、えぇ! ハルトマン中尉…、ミーナ中佐……!?」

美緒(……銃を向けたということはミーナの奴、本気だな。 宮藤を帰して正解だった)

ミーナ「手荒な事はしたくないの。 …お願いだから従って頂戴」

キトゥン「ぅ……!」タジ

リーネ「ッ…」ブルブル

美緒「(…やれやれ)キトゥン…と言ったか?」

キトゥン「?」

美緒「宮藤がお前を心配している」

キトゥン「……芳佳が?」

美緒「ああ。 …一先ずは我々と共に来て欲しい。 あいつも待っている」

キトゥン「…芳佳……」

美緒「……」

キトゥン「……わかりました」

つづく

 

ロマーニャ基地


執務室



ミーナ「……~」グッタリ

美緒「大丈夫か? 剣を振るったのは私なんだが?」

ミーナ「…ごめんなさい。 自分でも、少し状況について行けてなくて」ギシ

美緒「心配するな、私もだ。 ……思わぬ拾い物をしてしまったな?」

ミーナ「ええ……」

美緒「しかし、アレはやり過ぎだったのではないか? お前らしくない」

ミーナ「安全装置は入れてたわ。 ハルトマン中尉も唯の威嚇よ」

美緒「そういう事ではなくな…」

ミーナ「わかってるわ、美緒。 ………万が一悶着が起きたら、どうなるかわからない相手だったから」

ミーナ「……最悪、手に負えない事態にだって…」

 
美緒「んー……。 その事なんだが、ミーナはどう思う?」

美緒「正直私には、あの娘が我々と同じウィッチだとは思えんのだが?」

ミーナ「そうね……。 魔力増幅も無しで、基地からあの空域まで飛べるわけない筈なのに…」

美緒「どころか、あいつは我々顔負けの飛び回りをして強化ネウロイとまで討ち合った。 箒すら持たずにな」

ミーナ「…………」

美緒「それと戦闘も素人ではない。 空戦技術はわからんが、動きを見た限り恐らく命を張ってきた人間…」

美緒「――…もしくは人間ではないか」

ミーナ「……どういうこと?」ピク

美緒「いや、邪推だが…。 あいつが飛んでいる時の姿がどうもな…」

 
ミーナ「あれは過度の魔法力発光だと思うわ。 自前の魔法力であれだけ飛べるのだとしたら、その発散量や消費スピードもかなりのものな筈よ」

ミーナ「航空ユニットと同じで、大気中のエーテルと反応した高魔法が可視化しているんじゃないかしら?」

美緒「……」

ミーナ「…? 美緒?」

美緒「…………私には、ネウロイ化に見えた」

ミーナ「……変なことを言わないで」ガク

美緒「一年前の事件を忘れたか? ウォーロックがネウロイに染まった彩を思い出してみろ」

ミーナ「確かに似てるわね。 貴女が言うといやに説得力があるけど――」

ミーナ「でも大丈夫よ、確認したわ。 ネウロイの反応は終始ひとつだけ……貴女が斬った1機だけよ」

 
美緒「む、…そうか。 とちってしまったな、すまない」

ミーナ「いいえ、お互い様よ?」ウフフ

美緒「……一先ずは安心だが、そうなるとやはりあの娘の正体は謎だな」ムゥー

ミーナ「ドクターの検査報告を待つしかないけど…。 アフリカ地域の魔術式を持ったウィッチなんじゃないかと、私は考えてるわ」

美緒「…アフリカ?」

ミーナ「ええ。 私達の大多数が使うドルイド式やローマ式、扶桑式は共通するところが多いけど、アフリカの一部地域には特殊な方式の魔法術が存在しているじゃない?」

ミーナ「……それに、キトゥンさんの肌の色。 …地図に名前が記していない土地の出身なんだとしたら、有り得る筈よ?」

美緒「待て待て、ミーナ。 特異や例外で片付けるにしては規格外すぎる」

美緒「あれをウィッチと言うには少々無理がある。 さっきも言っただろう?」

ミーナ「そうね。 私もさっきはああ言ったけど、ウィッチ以外に考え様もないし…」

ミーナ「それに本来ユニットを使わなくても、一部のウィッチは訓練次第で自在飛行や身体強化は可能じゃない?」

>>167

『ミーナ「そうね。 私もさっきはああ言ったけど、』


『ミーナ「そうね。 ただ、私もさっきはああ言ったけど』
に訂正

 
美緒「程度を考えろ。 どれだけの素質と才能を持って、どれだけ血汗を流せばあそこまでに成るというんだ?」

ミーナ「あら? “ウィッチに不可能はない”んでしょ?」クス

美緒「あのなぁ…」

ミーナ「うふふ、ごめんなさい。 でも可能性は有ると思うの」

美緒「……では娘と一緒に飛んでいた黒猫が使い魔か何かで、そういった術式を使っていると…?」

ミーナ「使い魔を必要としない魔術式の記録もあるから、ああいった形で使役する方式もあるのかもしれないわ」

美緒「んー…しかしなぁ」ムムー

ミーナ「……まぁ、ここであれこれ言っても仕方ないわね」

美緒「………。 そうだな」


コンコンッ


『中佐、アレッシア・コルチです。 検診の報告をお持ちしました』
 

 
美緒「……来たか」

ミーナ「有難うございます、入ってください!」


ガチャ パタン


コルチ「失礼します」ツカツカ

ミーナ「急がせてしまってすみません、ドクター」

コルチ「いえ、構いません。 幸いなことに近頃は暇でしたし」ウフフ

美緒「ウィッチドクターに暇をさせようと、我々も日々鍛えていますから」ワッハッハ

ミーナ「……それでドクター。 例の子の検査結果を伺ってもよろしいですか?」

美緒「む、どうした? やけに急ぐな?」

ミーナ「ドクターに休暇をあげたいんでしょ?」

美緒「…意地の悪い」フム

 
コルチ「うふふ、恐れいります。 では先ず結果から簡単に――」

コルチ「……患者に現在目立った怪我病気はなく、健康状態は非常に良好です。 また、それを疑わしめるような病理的症状も見られません。 ウィルスなどを持ち込んだ可能性はないです」

ミーナ「わかりました」

美緒「…倒れていた原因は何だったのですか?」

コルチ「昨日も言いましたが、何らかの身体ダメージがあったのだとしても、発見時の宮藤さんの処置で既に完治しています」

コルチ「反って情報は取れなくなったので、それが何であったかは結局わかりません」

ミーナ「…宮藤さんもわからないのよね?」

美緒「そうだな。 宮藤の魔法は優秀だが、あいつ自身で診断・施術を施すわけではない。 あくまでも治癒を働きかける魔法だ」

コルチ「でも彼女。 昨日のガリア支援の野営診療で大活躍したそうですよ?」ウフフ

 
ミーナ「……せめて事件性さえ無い事が分かればよかったんだけど…」

美緒「何者かの仕業で倒れていたと?」

ミーナ「万が一よ(…もしくは自演によるものか)」

コルチ「発見時に目立った外傷が全くなかったというのも、被災害時の状態としては不自然と言えなくもないです」

ミーナ「……」

美緒「今考えても答えは出んな。 …次へ行くか、中佐?」

ミーナ「…ええ。 そうね」

コルチ「……では、魔法力診断の結果ですが――」

美緒「…!」

ミーナ「……」

 
コルチ「やはり彼女に魔法力はありません。 ごく普通の女の子です」

ミーナ「………えっ?」

美緒「ドクター、申し訳ないがここの判断は極めて重要です。 一切の間違いは許されません」

コルチ「私も中佐からお話を聞いて驚きましたし、再三の見直しをしましたけど…」

コルチ「……彼女は私の知る限り、ウィッチでは有り得ません」

ミーナ「そんな…!?」

美緒「あてが外れたな」

ミーナ「………信じられないわ…!」

美緒「いや。 たとえウィッチであったとしても、とても信じられたものでは無い」

ミーナ(……なら彼女のあの力は何だっていうの…?)

 
美緒「…ネウロイという線を考えることは可能ですか、ドクター?」

コルチ「それは専門外ですけど…。 リトヴャク中尉の固有魔法で判断はできるはずです」

コルチ「知っての通り、彼女の短波感知ならネウロイが出している波長を完璧に感じ分けますから」

美緒「ふむ……」

美緒「…ミーナ」チラ

ミーナ「ええ。 ……そっちはお願いするわ。 私は残りの報告を聞いておくから」グッタリ

美緒「……結論を出す前に一言頼むぞ?」

ミーナ「…お互いにね……」ハァ

 
美緒「……」チラ

コルチ「!」ピク

コルチ「ふふ…(必要なら診ておきますから)」ウィンク

美緒「…」コク

美緒「では中佐、後でな。 済み次第戻る」スタスタ


ガチャ パタン


コルチ「…中佐?」スッ

ミーナ「………私の心配はいいので、先へ進めましょう。 ドクター」

コルチ「あら!(…お見通しだったみたいですよ坂本少佐?)」ウフフ


――――
――

つづく

 

宿舎 空き部屋(仮監禁房)



サーニャ「……」フィィン

キトゥン「…………」

美緒「……」


ドンッ ドンドンッ


『少佐! ワタシも入れろ!! サーニャー!!』ドンドン

『さかもとさぁーん! キトゥンさーんっ!』

『えぇいっ! お前達、廊下で騒ぐな!!』

『あははは! お前もうるせーぞ?』

『なんであたしら入っちゃダメなのー? 中でなにしてんの?』

 

美緒「…………ふぅー…」イラ



美緒「……渇っっ!!!」カッ


サーニャ「!?」ビク

キトゥン「ひっ…!?」ビクッ



しーーん……



美緒「走りたければ後で監督してやる、名乗り出ろ」

 



しぃーーーん……


『……宮藤がうるさいからだぞー?』ヒソヒソ

『そ、そんなぁ…。 エイラさんだってドアを――』

『やめろ、もう喋るな。 …散れ、散れ』ヒソヒソ

『シャーリ~。 こわぃ…』グス

『おーおー、よしよし。 早いとこ逃げるぞ?』ヒソヒソ


バタバタバタ…



美緒「……5人全員だな? よし…」ボソ

キトゥン「っ……(ひぇ~! こ、恐い…!)」ドキドキ

サーニャ「……」

 
美緒「続けてくれ、サーニャ」

サーニャ「……はい」フィィィン

キトゥン「…?(……ていうか、さっきからいったい何やってるんだろ? これ)」

サーニャ「……」フィィン


キトゥン「……」

サーニャ「………」フィィン


キトゥン「(ず、ずーっと見つめられると緊張するなぁ…)//」

サーニャ「……」フィィン

 
キトゥン(……こうなったら、わたしも見つめ返してみよう。 退屈だし)ジー

サーニャ「!」フィン

キトゥン「…ん~~(綺麗な目してるなぁ…この子)」ジィー

サーニャ「………っ ///」チカチカ

キトゥン(あ、照れた? かわいい…!)

美緒「む! 何かわかったか!?」

サーニャ「ぁっ……ぃえ…。 な、なんでもありません…! //」

美緒「…集中しろよ?」

サーニャ「は、はぃ……すみません」フィィン

キトゥン(あちゃー、怒られちゃった。 ごめん…)

 
サーニャ「…………」シュルル

美緒「…どうだ?」

サーニャ「……違うと思います」

キトゥン(え、何が…!?)

美緒「そうか…。 ネウロイではないか」

サーニャ「はい」

キトゥン「……は? …えっ? ちょ、あの…!?」

美緒「ご苦労サーニャ、先に出ていろ。 この件に関しては中佐を除いて他言無用だ、いいな?」

サーニャ「はい…。 失礼します」スク

 
キトゥン「あっ…!(いかないで! この人とふたりきりは気まずい…!)」

サーニャ「…」チラ

サーニャ「……」

サーニャ「………」トテトテ


ガチャ パタン


美緒「ふむ……(違ったか。 …まぁその方が有難くはあるが)」ジロー

キトゥン「え…、えっと……」

美緒「ん? おっと、すまない。 不躾に眇めてしまった」

キトゥン「あの~、私がネヴ――…ネウロイだとかどうとかって…?(怒りたいけど、ちょっと恐い…)」

美緒「ああ、申し訳ない。 我々も命がけ故に、最悪も想定しなければならんのでな」

 
美緒「…とは言え、非礼に過ぎた疑いだ。 すまなかった」ペコ

キトゥン「……はい…、まぁ…(あれ? 恐いけど、やっぱりいい人なのかな?)」

美緒「いろいろ不満もあるだろう。 元々こちらの人間が一方的に巻き込んだのだから」

美緒「しかし今となっては、腑に落ちないのはこちらも同じだ。 今しばらくだけ時間を貸して欲しい」

キトゥン(……今わたしって捕虜?だか犯罪者だかなんだよね? やさしいなぁ…)

美緒「こちらから危害を加える意思は決して無い。 いいな?」

キトゥン「は、はぁ……。 わかりました」

美緒「…よしっ!!」ベシッ

キトゥン「あぃたっ!(あれぇー!? 今、危害加えないって――)」

美緒「わっはっは! それにしてもお前の戦い、中々の物だったぞ?」ワッハッハ

キトゥン「え、ええ。 はい、…どうも…」サスサス

 
美緒「…願わくば、見方であって欲しいものだ」ウム

キトゥン「?」

美緒「ついでに色々聞いてしまいたいんだが、疲れただろう? また改めて来ることにする(先にミーナと話をまとめる必要もある事だし)」

キトゥン「あの…、わたしここ出られないんですよね?」

美緒「……せめて食事は男飯でなく、こちらのを出そう。 宮藤の作る料理は基地内で最も美味いぞ?」

キトゥン「へぇー…!(はぐらかされた? でもおいしいご飯は嬉しい!)」

美緒「腕を振るうように言っておこう」スタスタ


ガチャ パタン


キトゥン「……芳佳、そんなに料理上手なんだ~!」フーン

キトゥン「…………」

キトゥン「男飯って、……朝食べたやつかな?(それなりに美味しかったけど)」ムムー

ゆっくり、つづく

 
 
執務室



ミーナ「――ええ。 私の憶えには無いんだけど、聞いたことないかしら?」

ミーナ「…………そう。 …なら、ひとつ目の質問はどうかしら?」

ミーナ「………」

ミーナ「…素人意見で申し訳ないけど、設計図じゃわからないの?」

ミーナ「………そう。 つまりは、わからないという事ね? ……いえ、責めている訳じゃないの。 ごめんなさい」

ミーナ「…………ええ。 例の物も貴方宛てですぐに送りますから、そっちはできる限り秘匿にして頂戴?」

ミーナ「ありがとう。 …それじゃあ、お願いするわね」

ミーナ「……」カチャ


ミーナ「……はぁ、我ながらおかしな考えよね…。 まるでガリレオだわ(…それとも“狼女”かしら)」

 
ミーナ(キトゥンさんを中心に話がややこしくなり始めている…、嫌な予感がするわ)


コンコンッ

『中佐、いるか? 坂本だ』


ミーナ「! …入って平気よ」


ガチャ


美緒「…む! ドクターは戻ったか。 報告は終わったんだな?」パタン

ミーナ「ええ」

美緒「……」スタスタ

ミーナ「…ネウロイはいた?」

美緒「すまん。 私の見当違いだった」

 
ミーナ「謝る事なんてないわ。 …私も多分、人の事言えないと思うから」

美緒「? …どうした?」

ミーナ「……」スッ

美緒「…これは?」ペラ

ミーナ「精神面の病理検査で行ったカウンセリング記録よ…」

美緒「体のいい調書か」

ミーナ「いいえ、それを取ったのは今朝。 …昨日聞いたキトゥンさんの話に妄想性障害の危険を感じたから、私がお願いしておいたの」

美緒「わっはっは! 今日は随分と言う事が大胆だな? あの若さで痴呆か!」ワハハ

美緒「――……ミーナ。 少し休め」ポン

 
ミーナ「違います! …とにかくそれを読んでみて頂戴」

美緒「…? ……」ペラ

ミーナ「彼女、ここで目覚める前は“そういう”生活だったそうよ?」

美緒「…………」ヨミヨミ

ミーナ「……」

美緒「………空中都市…? …重力嵐?」ペラ

美緒「…………。 ……成る程、大戦すら知らんときたか…」

美緒「…納得した」パサ

ミーナ「斜め読みよりも、出来れば熟読して欲しかったわ」

美緒「これを真面目に読んでどうする? なかなか凝った話なようだが、お前の疑い通り妄想だ」

ミーナ「半日前までなら、私もそう思っていたでしょうね…」

美緒「…………おい、まさか…?」

ミーナ「先に言っておくけど、私はいたって正気よ。 真面目に考えてるからね?」


美緒「……」

ミーナ「………」ハァ


美緒「…わかった。 聞こう」

ミーナ「ありがとう、美緒」ホッ

美緒「…お前がこれを――」ヒョイ

美緒「作り話ではないと言う根拠は何だ?」ヒラヒラ

 
ミーナ「……作り話にしては、出来過ぎているのよ」

美緒「………~?」ペラ

ミーナ「例えば、その辺りに書かれていること…。 あの子が住んでいるらしい街や、自分の家、生活での出来事なんかについて細かく聞いているけど」

ミーナ「内容そのものは聞き覚えのないファンタジーよ。 でもそれを語る本人の言葉はかなり明確で現実的じゃないかしら?」

美緒「むぅ……」ヨミヨミ

ミーナ「直接診問したドクターも、まるで体験してきたかのように詳しく答えるものだからって驚いたそうよ?」

ミーナ「本人が知っているつもりらしい事にも、逆に知らないつもりな事にも迷いなくそう答えたらしいわ」

美緒「成る程…。 確かに己を作っているのだとすれば、懲りすぎだ」

ミーナ「さらにそのお話の世界は、本人にとって特別都合のいい物という事でもないの」

美緒「……そうなのか?」ペラ

ミーナ「ひと通り読めばわかるわ」

 
ミーナ「妄想者自身の欲や願望、そういった意識・無意識の影響が露骨に表れるのが妄想や幻想よ? でも恐らく彼女はこれに逃避してるわけでもなければ、懺悔してるわけでもないの」

美緒「んー…、言いたい事はわかる――」

美緒「…が、類推を詰めても結局は同じだ。 あいつの正体が天才作家だと言いたいのでは無いのだろう?」

ミーナ「勿論よ。 これだけだったなら、彼女はただの奇特患者。 …私達が気にする所じゃないわ」

ミーナ「でも美緒? 彼女、今日飛んだのよ?」

美緒「……」

ミーナ「魔法力も持たないのにアドリア海の中央空域まで飛んで、ネウロイと戦ったのよ?」

ミーナ「元々、私達が今悩むべきなのはそれよね? でも正体を知るうえで彼女の話がポイントになるのだとしたら……」

美緒「飛躍してはいないか? 事実は確かにあるが、奇天烈な妄想を正当化する根拠にはならん」

美緒「あの力を持つ故の空想、と考える方が現実的だろう?」

 
ミーナ「いいえ。 さっき話した、妄想にしては特異性な部分と合わせて考えると――」

ミーナ「彼女の話は真実であり、そしてそれが彼女の能力にも繋がっている…と言えるんじゃないかしら?」

美緒「……ミーナ、落ち着け。 基本的なことを忘れているぞ? 言いたくはないが、我々ほどの年齢なら当たり前にわかる事だ」

美緒「この伽話のような世界など、存在しない」ヒラヒラ

ミーナ「…そうね。 私も子供じゃないから当然、そんな事はわかるわ」

美緒「しかしお前は矛盾している」

ミーナ「………」

美緒「……」

ミーナ「…ええ、確かにそう。 ……そうなんだけど…違うのよ、恐らく…」

 
美緒「……おい、しっかりしろミーナ? こっちも流石に不安に――」スス

ミーナ「美緒?」ジッ

美緒「な、なんだ…!?」

ミーナ「……お願いだから真面目に聞いてね? …キトゥンさん、彼女は――」

ミーナ「私たちの“知らない所”から来たんじゃないかしら?」

美緒「………何だと??」

ミーナ「……」

美緒「おいおい…。 あの虎は屏風から出てきたと言うのか?」

ミーナ「悪いけど、とんちを効かせたつもりはないわ」

美緒「…本気か?(というより本当に正気か…ミーナ?)」ピト

ミーナ「ちょっと! やめて ///」バッ

 
ミーナ「……記録の4枚目、読んでみて?」

美緒「ん?」

ミーナ「中辺りから、…プレシャスジェムという単語が出てくるでしょ?」

美緒「……うむ、ここか」ペラ

美緒「…………」ヨミヨミ

美緒「……燃料鉱石か何かか? この説明では要領を得んな」

ミーナ「はい、これ」ゴソ

美緒「む? 何だこれは?」

ミーナ「プレシャスジェムよ。 ……多分」

美緒「何っ!?」

 
ミーナ「収容時に彼女が所持していたものよ。 ちなみに他は財布と思われる巾着袋の中に、見慣れないコインが数枚」チャラ

ミーナ「それから買い物のメモらしき紙が一枚」ピラ

美緒「……“シャンプーと石けん(とくばい!)←帰り買いだめ”…?」

ミーナ「お風呂が好きみたいね?」

美緒「…まぁ、これはいい(普通のメモだろう)」

美緒「謎の硬貨も気になるが、この鉱石はいったい…!?」マジマジ

ミーナ「記録のキトゥンさんの話では、これを動力源にして街の生活機械を動かしたりするそうよ?」

美緒「こんなもの、見たことも聞いたこともないぞ?」

 
ミーナ「ええ。 私達のような素人目に見たって、装飾用の宝石にしか見えないわ」

ミーナ「……けど」フィィン ピョコ


キラァーン


美緒「!?」

ミーナ「触ってみて?」シュルル

美緒「……」ペタ

美緒「…温い」ペタペタ

ミーナ「魔法に反応して、エネルギーが発散しているみたい。 こんな宝石は流石に知らないわ」

ミーナ「彼女の居た、私たちの知らない世界の知らない物質が、ここにあるのよ!」


美緒「………つまり…!」


ミーナ「…キトゥンさんは、異世界からやって来ているわ!」

 

――――
――



宿舎 廊下


ミーナ「――だと思うの。 だからさっきの物質は信頼できる筋に送って、秘密裏に調べてもらうわ」ツカツカ

美緒「…………」スタスタ

ミーナ「…ちょっと、話聞いてた?」

美緒「ああ…」ドンヨリ

ミーナ「今更悩まないで。 馬鹿馬鹿しい話なのはわかってるけど、これ以外に辻褄が合う考えがないのよ」

美緒「……故に頭を痛めている」

ミーナ「らしくないわよ! とにかく本人の所へ行きましょう」ホラホラ





シャーリー「……なーんかいつもと逆な感じだな? 中佐達」ポカーン

ルッキーニ「シャーリー、早くお風呂いこー!」グイグイ

 
美緒「…むぅ、異世界人………異世界人とは…」ブツブツ

ミーナ「宇宙人よりましでしょ?」

美緒「……何を言っているんだお前は…。 どっちも大して変わらん…」

ミーナ「あら、そんなことないわよ?」

美緒「?」

ミーナ「案外、宇宙よりも私達の身近にあるんじゃないかしら? …異世界というより異空間だけど」

美緒「………その発想はなかったな。 考えたこともなかった」

ミーナ「さっき詳しそうな所に連絡して聞いてみたけど、結局わからなかったわ」

美緒「…あの鉱石もそこへ送るのか?」

ミーナ「(話聞いていたのね)ええ。 難しいとは思うけど」

美緒「……わかった。 部屋に着くまでに私も整理をつけよう…」スタスタ

ミーナ「…丁度着いたわ、坂本少佐」トマッテ

 

仮監禁房


キトゥン「……」

キトゥン「…………暇!」ガーン

キトゥン「…わたし、いつまで閉じ込められるんだろ?(ていうか解放されるの、これ?)」

キトゥン「……」

キトゥン(普通の部屋っぽいし、出られそうだな…。 当たり前のように窓もあるし)コンコン

キトゥン「………あ、でも芳佳の料理は食べてみたい!」


ダスティ「ニャア!」ヒョコ


キトゥン「……残念。 お前はキャットフードだよ」グリグリ

ダスティ「………」

 
キトゥン「ていうか、お前今まで何処にいたの? いつも突然いなくなって…」

ダスティ「……」ヘナ

キトゥン「…どうしたの? 疲れた?(力使い過ぎちゃったのかな…?)」コチョコチョ

ダスティ「~…」ゴロゴロ


『――念のため、他の人は入れないで?』


キトゥン「――?」グリ

ダスティ「ッ! ニャアーッ!」バッ

キトゥン「あっ! ごめんダスティ! 痛かった!?」

 

『何かあるのか?』

『…かなり仮定を含む話をする。 誤解があっては面倒だ』

『ウィッチーズの中から外に漏れる事はないと思うけど、一応よ。 トゥルーデも出来れば聞かないようにして?』

『……了解』


ガチャ パタン



ダスティ「…」プイ

キトゥン「あー、拗ねちゃった…。 デリケートな奴だなぁ」コイコイ

ミーナ「……キトゥンさん?」

キトゥン「えっ? …あ!?(いつの間に!?)」ビクッ

美緒「先刻の続きだ。 すまんが時間を貰うぞ?」

キトゥン「は、はい(見られてたよね、多分…!)」

 
ミーナ「……それじゃあ早速で悪いけど、また幾つか答えて欲しいわ」

キトゥン「…言っておきますけど。 わたし、ネヴィでもあなた達の言うネウロイとかでもありませんから!」ツン

美緒「すっかり嫌われたな、ミーナ?」チラ

ミーナ「貴女への皮肉まじりよ?」ニコ

キトゥン「あ、ごめんなさい…!」

美緒「ん?」

ミーナ「え?」

キトゥン「その、ケンカは…」オズオズ

美緒「! ……わっはっは! おかしなやつだ」

キトゥン「え…?」

ミーナ「うふふ、喧嘩してるわけじゃないから心配しなくても平気よ? ありがとう」

 
美緒「優しい奴だな!」ワッハッハ

キトゥン「ぅ…!//(は、恥ずかしい!)」

ミーナ「……さてと。 気持ちも解れた所で、改めて質問いいかしら?」

キトゥン「…。 ……はい(あまり気は乗らないなぁ)」

ミーナ「キトゥンさん、貴女はここが何処なのかわかりますか?」

キトゥン「? ……基地?」デショ?

ミーナ「いえ、そうではなくて。 この基地が在る場所は何処なのかわかりますか?」

キトゥン「…いいえ」

ミーナ「では、どの辺か検討はつきますか?」

キトゥン「……全然(朝もこんなことやったよ…)」

 
ミーナ「つまり、気付いたら全く見知らぬ所へいた……という事ね?」

キトゥン「まぁ…。 そんな感じです」

ミーナ「…正直に答えてください。 今、何をしたいですか?」

キトゥン「………えーっと、家に帰ってお風呂に入りたいんですけど…(いい加減に)」

キトゥン(…あれ? その前に、何か忘れているような――……芳佳のごはん? ………いや、違う)ウーン

ミーナ「……なるほどね(この子も私達と同じ、ということは…)」

美緒(これは、ますます言い辛いな)

ミーナ「…………」

ミーナ「(…ダメね。 ハッキリ言う以外に思いつかないわ)キトゥンさん、落ち着いて聞いて下さいね?」

キトゥン「はい(なんだろ?)」

 
美緒「……」

ミーナ「……多分、ここは貴女が居た世界とは違います」

キトゥン「!?」

ミーナ「所謂その……い、異世界というもの…かしら? //」

美緒(結局恥ずかしがっているじゃないか!)

キトゥン「…そっか、やっぱり異次元世界だったんだ!」

ミーナ「ええ。 ………えっ、えぇ!?」

美緒「…普通に受け入れたな?」

キトゥン「うーん、てことはやっぱりおじいちゃんの仕業かな…?」

キトゥン(でもちょっとおかしな感じだよね? 不可侵領域とかいうわりに人がいるし)

美緒「こちらへ来たことに心当たりがあるのか?」

 
キトゥン「えっと……自称神様の友達に何度か連れて行かれて…」

ミーナ(驚いた! 異世界を経験済みだなんて…!?)

美緒「何者だ、その友人とやらは?」

キトゥン「それが、自分のこと創造主とか言ってる変わったおじいちゃんなんですけど…。」

キトゥン「――あ! 一応、頭はハッキリしてます。 オムツもまだだし」

美緒「……(この娘、物証がなければ本当に保護施設行きなんだが…)」

ミーナ「…自分が何故こちらに来たか、理由はわかりますか?」

キトゥン「ぇ? …………なんでだろう? わかりません」

ミーナ「なら事故の可能性は? こちらに来る直前の記憶を思い出してみて?」

キトゥン「…~~………(確かクロウとごはん食べた後に…――)」ムゥ~

 
キトゥン「(――あ!!) そうだ! ネヴィと戦って…!」ピコーン

美緒「…ネヴィ?」

ミーナ(検診記録にもあった単語ね)

キトゥン「それで……変な腕に投げられて重力嵐の中に――」

ミーナ「嵐? ……と言うとまさかっ、昨日の災害!?」

美緒(もしそうなら、異世界の干渉でガリアの人々は死傷を負ったという事か)

キトゥン「!! そうだ、クロウ!? 街の人たちも皆……! 戻らなきゃ!!」バッ

美緒「おい!? 待てっ、落ち着け」ガシ

ミーナ「…戻るって言ったって貴女、帰り方はわかるの?」

キトゥン「う…っ!」ギクッ

 
ミーナ「……わからないのね(予想はしていたけど、困ったわ)」

ミーナ「結局、ここがキトゥンさんにとって何処であって、どうやって来たかもわからない…」

美緒「故に目的もなく、帰り方もわからん……か」ムゥ

美緒「…心底笑い飛ばしたいが、妄言でないことは確かだからな」

ミーナ「私だって、夢であって欲しいわよ」ハァ

キトゥン(……なんか、めちゃくちゃ言われてるような?)

ミーナ「………いいかしら? キトゥンさん」チラ

キトゥン「まぁ、…はい」

ミーナ「ネウロイと戦ってみせた貴女のその力は、いったい何?」

美緒「……」

 
キトゥン「え? …えーっと、重力です」

ミーナ「!?」

美緒「…何?」

ミーナ(やっぱり……! それならあの時の事や、聞いた話にも納得がいくわ)

ミーナ(けど、まさか本当にそんな事が…!? ウィッチならともかく、そんなことをすれば体が無事じゃ――)モヤモヤモヤ

キトゥン「あの…? も、もしも~し?」

美緒「……中佐」ツン

ミーナ「――えっ? …ああ、ごめんなさい」アタフタ

美緒「聞くより実だ。 実際に見せてもらおう」

ミーナ「え、ええ…。 そうね。 お願いできるかしら?」

 
キトゥン「ここで…ですか?」

美緒「無理か?」

キトゥン「いえ、まぁ……平気ですけど(見せるったって、何すればいいんだろ?)」

キトゥン「……ダスティー?」キョロ


ダスティ「zzz…」


キトゥン「……まぁいっか。 別にいなくてもできるし」

キトゥン「じゃあ、とりあえず――」ブワン

ミーナ「……」

美緒「……」

キトゥン「……」フワフワ

 
ミーナ「…あまりピンとこないわね?(一度見ているし…)」

美緒「ああ」

キトゥン「(えー…)…えぇっと、じゃあ」フッ… スタ

キトゥン「わたしの近くに寄ってくれますか?」

ミーナ「…?」ツカツカ

美緒「このぐらいか?」スタスタ

キトゥン「ぃよっと…」ブワァン


フワァッ


ミーナ「!!」

美緒「お!?」

 
キトゥン「一応…、こういうこともできます」

ミーナ「これは…! 重力を操って私達を持ち上げてるの!?」

美緒「無重力という奴だな? 初めて体験したぞ! わっはっは!」

ミーナ「飛んでいる時とは違う感じ――きゃっ!?」グルン

美緒「わっはっは! 何をしている中佐? ズボンが丸見えだぞ?」

キトゥン(……いや、ていうか“パンツ”が見えてるんですけど…!!?)

ミーナ「ば、バランスが取れないのよっ!///」グルグル

美緒「体幹の鍛え方が甘いな?」フワフワ

ミーナ「貴女と一緒にしないでっ!!//」

キトゥン「(うーん、隊長さんの方が普通な気がする)えーっと、じゃあ……下ろしますよ?」

 

――フッ…


美緒「ふむ」スタ

ミーナ「ぁうっ!?」ドテッ

キトゥン「うわっ……ごめんなさい!(またやってしまった!)」

美緒「大丈夫か中佐?」

ミーナ「…ええ」イタタ

キトゥン「あの、…こんな感じでいいですか?」

美緒「んー……今一つ何かないか?」

ミーナ「で、出来れば安全なものでお願いできます…」ムクリ

 
キトゥン「(……偶にいるんだよね、見世物と勘違いする人)ええっと、じゃあー…」スタスタ

キトゥン「ふっ!」ピョン


ブワン

…スタッ


ミーナ「あらっ!?」

美緒「おお!」

キトゥン「…こんな感じで、壁とか天井とかも歩けます」スタスタ

美緒「……すごいな? どうなっているんだ?」ムムゥ

ミーナ「多分、足元の方向へ重力のベクトルを変えているのよ」

美緒「横方向へ引力をかけているのか?」

 
ミーナ「いいえ、それだと本来の重力の干渉を受けるわ。 彼女は間違いなく重力そのものを操ってる…!」

美緒「しかし、髪は下に垂れているぞ?」

ミーナ「恐らく効果範囲を自身の体表面ギリギリに留めているんじゃないかしら? スカーフや髪の毛は範囲外ということ…」

ミーナ(とんでもない力だわ! ウィッチが同じ事をやるとしたら、膨大なエネルギーと魔法技術が必要よ。 それにもし力学演算でもして制御してるのだとしたら、処理能力も人外レベル…!?)

ミーナ「(……とにかく私達には“ありえない”こと!)…確定ね。 キトゥンさんは異世界人よ」ボソ

美緒「さて、参ったな。 これからどうする?」

ミーナ「……」

キトゥン「…あのお~、もう降りていいですか?(ここにきて、定期的に放置されてる気がする)」


――――
――

こんな感じで他世界へやってきたキトゥン

彼女はどうして来てしまったのか、……はたして無事に帰ることができるのか



(・×・)<半月以降の中編へ、つづく

>>227

『キトゥン「…あのお~』 → 『キトゥン「…あの~』

に訂正

(・×・)<はじまるゾ

 

ミーティングルーム


芳佳「ん~……」パタパタ

リーネ「…芳佳ちゃん?」

芳佳「――ぇ? あっ、ごめんリーネちゃん! なにか言った?」

シャーリー「……あの子の事が気になるんだろ、宮藤?」

ルッキーニ「あのこ―って、キトゥンのこと?」

芳佳「はい……。 坂本さん真剣な顔だったから、なにかあったのかなって…」

芳佳「…バルクホルンさんも中に入れてくれないし」ショボン

リーネ「えっと…、それは……(軟禁されてるなんて、私の口からは言えない!)」ドギマギ

シャーリー「ん~。 そんな調子でもしっかり夕飯の準備は済ませるんだからすげぇよなー」

リーネ「あ、あの…シャーリーさん(フォローしてください!)」

 
ルッキーニ「…芳佳はキトゥンのとこに行きたいの?」

芳佳「え…? ……うん」

ルッキーニ「じゃあ行けばいいじゃん!」ムクリ

シャーリー「……なに言ってんだお前?」

ルッキーニ「にゃ!」ピョン


スタンッ


ルッキーニ「…いこっ!」グイ

芳佳「えぇ!? でも、ルッキーニちゃん!」ヨロ

シャーリー「また少佐に怒鳴られるぞー?」オーイ?

芳佳「そ、そうだよルッキーニちゃん! それにバルクホルンさんが――」

ルッキーニ「なんで? お風呂もダメなの?」

 
芳佳「…へ?」

リーネ「……お風呂にキトゥンさんがいるの…?」

ルッキーニ「キトゥンって昨日からまだお風呂入ってないよね? おっぱい触ったときなんか泥臭かったから、きっとお風呂だよ!」

シャーリー(~っ! ルッキーニ理論すぎる!)クスクス

芳佳「……そ、そうかな? 私はあんまり分からなかったけど…」

リーネ「…ルッキーニちゃん。 そういうの、本人の前では言っちゃだめだよ……?」オズオズ

ルッキーニ「シャーリーもいこー!」

シャーリー「え? あたしはもういいよ」

ルッキーニ「えぇ~~!?」

シャーリー「いや、ていうか…あたしらさっき行ってきたじゃん。 また入るのかよ?」

ルッキーニ「だって、今度は芳佳も一緒だよ?」

 
シャーリー「…まぁ、ルッキーニが良いなら別にいいけど。 あたしはパス」

ルッキーニ「む~~! ………じゃあリーネッ!」グイ

リーネ「えっ!?」ヨロ

ルッキーニ「いこーっ!!」グイグイー

芳佳「え、えぇ!? ルッキーニちゃん! 本当にキトゥンさんいるの?」

リーネ「お、お洋服が伸びちゃう…っ!」


バタバタバタ


シャーリー「……風呂なんか入れさせてもらえる状況じゃ無いよなぁ(ハルトマンから聞いた話じゃ)」

シャーリー(ん~…。 でもマジでいたら、あたしも一度ちゃんと話してみたいな)

 

宿舎 お風呂


キトゥン「……」カポーン

美緒「……ふぅ…。 随分と気をもんだせいか、湯が沁みるな」チャプ

キトゥン「………」


キトゥン(…な、なんでこんな事に……!?)


美緒「…どうした? もう泳がないのか?」

キトゥン「う゛っ! …すみません。 こんなに広くて気持ちいいお風呂は初めてで…//」ブクブク…

美緒「露天風呂も初めてだと言っていたな? なら、あれだけはしゃぐのも無理はないか」

美緒「……自負はあったが、素直に喜んでもらえると誘った甲斐が有るというものだ!」ウム

 
キトゥン(わたしん家のも半分野外みたいなものだけど、こんな解放感は全くないよ…!)ザバァ

キトゥン「…………」ペタペタ

キトゥン「……海ってすごいですね?」

美緒「ふふっ、わかるか?」

キトゥン「なんだか…訳もなく涙が出そうっていうか、……感動します!」

美緒「本当は日の出時の景色が格別なんだが、この時間も悪くはない」

美緒「…風情を楽しむのもひとつの嗜みだ。 大切にしろ?」チャプ

キトゥン「~………(すごいなぁ…!)」ボケー

美緒「あまり長く居ると湯冷めするぞ?」

キトゥン「――あ、はい(確かに、ちょっと寒い。 …戻ろう)」クル

 
キトゥン「……」ペタペタ

キトゥン「よいしょ…」チャプン

キトゥン「んぅ~~♪(きもちい~!)」

美緒「……本当に風呂好きの様だな」フフ

キトゥン「…え?」

美緒「いや、すまん。 実はお前の所持品を拝見した」

キトゥン「所持品…?」

美緒「こちらと同じ時間が流れていれば、石鹸の特売はもう終わってしまったか?」フゥー

キトゥン「え? ………あっ! わたしの…!?」バシャ

美緒「すまないな。 押収した所持品はひとつを除き、後で返却させる」

 
美緒「…もっとも、あの硬貨は使えんと思うがな」ワハハ

キトゥン「あ!? そういえば、お財布!!」ガーン

美緒「心配するな。 こっちでは価値のない銭だ、誰も盗らん」

キトゥン「(そういう問題…?)………そういえば、自分で言うのもアレですけど――」チャプ

キトゥン「わたしのこと、解放しちゃっていいんですか? なんかダメだったんですよね、わたし?」

美緒「あれはもう気にする必要はない。 何も無かったという事で処理するからな(ミーナが)」

キトゥン「えっ、そうなんですか?(やった!)」

美緒「お前の存在を記録に残すことはできん。 異世界の確かな証明など、今の我々には面倒なだけだ」

キトゥン「はあ……(事情はよくわかんないけど、やっぱり軍隊ってめんどくさそうだな)」

 
美緒「だが、完全に自由と言う訳にはいかない。 当面、私と中佐以外にお前の正体は丸秘だ」

美緒「中佐も言ったが、お前は引き続きここで我々の監督下に置かれるぞ?」

キトゥン「はい、まぁ……帰る所もないし」

美緒「…とはいえ、あれだけ派手に力を披露してしまったからな。 このまま身元不明の一般人を保護する名目では怪しまれるだろう」

美緒「今後の対応を決めるまでは“客人のウィッチ”として、ここで生活してもらう」

キトゥン「(つまり、なんだかんだで面倒みてくれるってことだよね?)…ありがとうございます」

美緒「ん? ……くっふふ、ここで礼を言うか!」ワッハッハ

キトゥン「?」

美緒「ま、そういうことで――」バシャ

美緒「お前も今日から、同じ釜の飯を食う同胞〈はらから〉だ!」ベシッ

>>249

『キトゥン「あ!? そういえば、お財布!!」』 → 『キトゥン「あ! お財布も…!!」』

に訂正

>>251
すみません、やっぱり

『キトゥン「しまった! お財布…っ!!」』

に訂正

 
キトゥン「あだっ!?(ま、またー!?)」

美緒「……扶桑海軍原隊少佐、ストライクウィッチーズの坂本美緒だ。 改めて、よろしく頼む!」ニッ

キトゥン「あ! えーっと……、キトゥンです! よろしくお願いします、ミオさん」

美緒「うむ。 …わっはっはっは!!」ザバァ

キトゥン「えっ…、えぇ!?(この人、すごくいい人なんだけど全然掴めないよっ!)」

美緒「いや、なに。 私を“美緒さん”などと呼ぶ者は久しぶりでな? 存外こそばゆい」フフ

キトゥン「え? あれ? ……すみません。 芳佳が同じ出身だって言ってたから、てっきり後が名前なのかと…!」

美緒「ああ、美緒が名前で合っている。 ただ、今は周りに私を名で呼ぶ者など僅かだ」チャプン

キトゥン「(そうなんだ…)……なんだか寂しいなぁ」

美緒「習慣の違いさ。 私とお前、“同じ”人間であってもな? 私は特に不満もないさ」

キトゥン「……」ブクブク

 
美緒「ウィッチという建前だが、お前は軍属ではない。 好きに呼んでくれて構わん」

キトゥン「…はい、美緒さん」

美緒「ふっ…」


『ほらぁー!! いたー!』

『ええぇぇ!? うそぉー!!』

『ま、まってぇ~!』


キトゥン「!」

美緒「……賑やかになってきたな。 続きはまたの機会にしよう」

 

――テテテテテッ


ルッキーニ「あたしサンジョー!! とぉ~~――」チラ


美緒「……」カポーン


ルッキーニ「――ッ!!? ぎじゅじゅ…!(少佐!?)」キキーッ

芳佳「――わ!? ルッキーニちゃん急にっ!!」ドン

ルッキーニ「うにゃあ!!?」ヨロ


ザッバーーン


キトゥン(……えぇー…!)

美緒「…正体がばれんように注意しろ?」ヒソ

キトゥン「! はいっ」ピク

 
リーネ「大丈夫!? 芳佳ちゃん、ルッキーニちゃん!」ペテテ


ザバァー


ルッキーニ「――っぶあ! ……うぇ゛~~、はな゛に゛入っだ~」ツーン

芳佳「うぅ……私も…」ツーン

美緒「ああいう時は止まる方が反って危険だ。 二度とするなルッキーニ?」

ルッキーニ「だ……だっでぇ…(少佐がいたんだもん)」ツーン

美緒「ばつが悪くなるような事なら始めからやるな。 今後飛び込みは禁止する」

ルッキーニ「……ぁ゛ぃ」

芳佳「ふが…」

リーネ「芳佳ちゃん、痛くない?」ザポン

芳佳「……い、痛い…」ツーン

 
キトゥン「芳佳、鼻から息を吹いてみたら?」

芳佳「あ、うん(…湯船じゃ汚いよね)」ザバァ



芳佳「……」ペタペタ

芳佳「…ふんっ! ふんんっ…っ!!」

芳佳「ふぐ…、ちょっとよくなったかも。 ありがとうキトゥンさ――」グシグシ


芳佳「――て、そうだ! キトゥンさんっ!?」バッ



キトゥン「ん?」ピュー

ルッキーニ「うぁっぷ!? うじゅあ~!」キャッキャ

美緒「ほぉー、水鉄砲か! 懐かしい」



芳佳「……」ツーン

リーネ「芳佳ちゃん、とりあえず風邪引いちゃうから浸かろう?」チョイチョイ

まったりつづく

 
――――
――



台所(食堂)


キトゥン「…ん! 食欲をそそるいい匂いが…」クンクン

美緒「……我々が一番乗りか」

芳佳「じゃあ坂本さん達の分、配膳しますから!」テテッ

リーネ「芳佳ちゃん、私も盛り付け手伝う…!」テテッ


キトゥン(どんな料理が出てくるんだろう)

美緒「…先に席へ着かせてもらおう。 好きなところへかけろ」

キトゥン「は~い(…この辺でいいや)」ガタ

美緒「…――」ガタ


美緒「!」ピタッ

 
美緒「……茶ぐらい私が淹れるか」

キトゥン「え?」

美緒「お前はそこで待っていろ」クル

キトゥン「はあ…」


スタスタスタ――


キトゥン「……」


『あれ? どうしたんですか、坂本さん? ……あっ、いいですよ! やりますから、そんな…!』


キトゥン(なんか予想通り…)


キトゥン「……! そういえばルッキーニがいつの間にかいないじゃん!(ダスティみたいな子だなー!)」キョロキョロ

ダスティ「ニャア」ヒョコ

キトゥン「…………呼んでないよ(いつの間にエスパーになったの、こいつは?)」

 
キトゥン「ていうか、お前もお風呂入ればよかったのに」

ダスティ「……」

キトゥン「…ご飯、わたしのちょっと食べる?」

ダスティ「…!」ピクッ

ダスティ「ッ…」ダッ

キトゥン「あ! ちょっと、どこ行くの!?」

キトゥン「……あんなに落ち着きなかったかな?(居候なんだから、あんまり荒らさないで――)」

『よぉ! 隣いいか?』ガタ

キトゥン「え? はい、空いてます…」チラ

シャーリー「よっと」トスン

キトゥン「…あ!」

 
シャーリー「なんか普通にいるからさ、びっくりしたよ。 部屋出られたんだ? よかったな~!」

シャーリー「――ん? 髪がしっとりしてる……、もしかしてホントに風呂入ってたのか!?」

キトゥン「えっと、昼間の……?(あの大っきくてやわらかい…)」

シャーリー「あたしはシャーロット・E・イェーガー。 シャーリーでいいよ!」

キトゥン「…はい。 よろしくお願いします」

シャーリー「あはは! そりゃ自分だけアウェイじゃ気使うよな! …あたしは気にしないから、フランクにいこうよ?」ポンポン

キトゥン「う…うん。 ありがとう(いい人!)」

シャーリー「あたしさ、キトゥンとちゃんと話してみたかったんだよね」

キトゥン「えっ?」

シャーリー「ガリアでキトゥンを見つけた時、あたしも居たんだよ」

 
キトゥン「…そうだったの!」

シャーリー「いろいろ落ち着いてから、軽く挨拶でもしようかと思ってたんだけど……なかなか面白いことになっちまったからさ?」

キトゥン「面白いって……、銃向けられて閉じ込められたんだけど!」ムッ

シャーリー「違う違う! そっちじゃなくて、お前さ! まさかウィッチだったなんて思わなかったからマジで驚いたよ」

シャーリー「しかもユニットなしであんだけ飛べるなんてな!」

キトゥン「え? ……えーっと、うん。 まぁね…(とりあえずそういう設定でいくんだよね?)」

シャーリー「なあ! どんな魔法使ってんだ? 魔術式はどこの?」ワクワク

キトゥン「へっ? ……それは~(そんなの知らないよ!?)」


スタスタスタ


美緒「詳しいことは夜のミーティングで説明がある。 今はまず食事だ」コト

キトゥン「! 美緒さん(助かった!)」

 
シャーリー(み、美緒さんて…!?)ズコ

美緒「緑茶は飲めるか?」コト

キトゥン「ありがとうございます(……う! このお茶、なんかすごい色…!)」

美緒「熱いからな、啜って飲むといい」トスン

美緒「ん……」ズズズ

キトゥン「…へぇー(真似してみよう。 ……こうかな?)」ズズ…

シャーリー「あたしも、いただきまーす」スッ

美緒「それは宮藤とリーネの分だぞ?」

シャーリー「え? じゃあ、あたしのは?」ピタ

美緒「少々遅かったな」

 
シャーリー「…贔屓はよくないですよ~少佐? あたしも後輩なんですから」ニヤニヤ

美緒「お前はとうに一人前だ。 安心していいぞ」ズズズ

シャーリー「………へーい」

キトゥン「(美緒さん、つよっ!)…シャーリー、これ飲む?」

シャーリー「いんや、大丈夫。 どっちかってと、あたしはライスでもミルク派だから」

シャーリー「……それに多分~」キョロ

『あーー! シャーリーいたぁー!!』

シャーリー「ほら来た」

キトゥン「…ルッキーニ!(声おっきぃ!)」

 

スタタタター


ルッキーニ「せっかく呼びに行ったのに~! なんで先に来てるのー!?」ムー

シャーリー「無茶言うなって! …でもありがとう、こっち空いてるぞ?」ガラ

ルッキーニ「うん♪」テテテ

シャーリー「――と、待ったルッキーニッ! あたしとお前の飲み物がない!」ビッ

ルッキーニ「うじゅ? オッケー、ジュース~~!」スタター

シャーリー「おーい! あたしはミルクなー?」


ドタドタ

『わぁっ!? ルッキーニちゃん!? ダメだよ摘み食いしちゃ! 今持って行くから………あっ違う、ジュースは昨日そっちに――』


シャーリー「どうです? 少佐」ニッコリ

美緒「私の言った通り、心配いらんな」

シャーリー「あれっ? そうなっちゃいます?」ガク

  
キトゥン(…うーん。 わたしにはよくわからないやり取りをしてる…?)ズズー

美緒「……キトゥン。 食事が済んだら預かっている物を返すから、私と共に来てくれ」

シャーリー「あれ? 紹介していかないんですか?」

美緒「食事の時間は皆疎らだ、付き合わすのは酷だろう。 改まった話はミーティングの際に中佐がやる」


テテテー


ルッキーニ「シャーリー! はーい!」コト

シャーリー「お! サンキュー」

リーネ「お待たせしましたー」イソイソ

芳佳「すみません、お刺身がなかなか綺麗に盛り付けできなくて…」ヨイショ

美緒「おお、刺身かっ! 気張れとは言ったが、まさか刺身が出るとは」

キトゥン「サシミ……?(なんだろこれ?)」

シャーリー(……この扶桑式の生魚肉って、未だにどんな感じで食っていいのかわかんねーんだよなぁ)

 
ルッキーニ「ほらっ! 見てシャーリー! タコもあるんだよ?」ワーイ

シャーリー「え゛!?」

芳佳「タコの刺身もあるって知ってからルッキーニちゃん、ずっと食べたいって言ってて」エヘヘ

ルッキーニ「やったー♪ たのしみ~!」

美緒「ほぅ…、筑前煮〈がめ煮〉の芋が里芋ではないな?」マジマジ

リーネ「あ、それはジャガイモです。 まだいっぱいあったので…」

芳佳「よーく煮込んだので、ジャガイモでもとろみはちゃんと出てますよ! それに野菜もやわらかくなりましたし」

シャーリー(う゛!? こっちにはあの木の枝のようなやつ〈ゴボウ〉が…!)ガーン

キトゥン「……わぁー、いい匂いがする!」

美緒「覚悟しろキトゥン? これは恐らくかなり美味い」フフフ

芳佳「さ、坂本さんっ! そんな、私自信ないですよぉ~!」

ルッキーニ「ねぇ~ライスまだー?」チンッ チン

リーネ「あ、うん。 今よそるね?」パタパタ

つづく

 

夕食後

ミーティングルーム



キトゥン「……」


ミーナ「――というわけで、事故のショックで少し混乱してはいましたが、とりあえずは大丈夫です」

ミーナ「でも、彼女の記憶はまだ完全に戻ってはいません。 先日の災害の被害者なので、ガリア住民だとは思いますが、ハッキリした身元はまだわかっていません」

ペリーヌ「まさかガリアにこのようなウィッチがいたなんて…!」

エーリカ「……名前わかってるじゃん?」

ミーナ「キトゥンさんの名は所謂、愛称……それも略称などの元の名前からとった類のものでないので、そこから調べることは無理です」

バルクホルン「しかしこのぐらいの歳のウィッチならば軍に――」

ミーナ「いいえ、彼女は軍人ではありません」

シャーリー「……へぇ~!」

バルクホルン「馬鹿な!? 今この時代の欧州で、あれだけ飛べるウィッチが放っておかれる訳がない!」ガタ

エーリカ「まー、そうだねぇー」

 
ミーナ「そこは偶々なのか、別の理由があったのかはわかりませんが、軍の目からは逃れていたと考えるべきです」

ミーナ「……考えてもみなさい、バルクホルン大尉? 生身でネウロイと戦えるほどのウィッチの話題がここにいる誰の耳にも届かず、メディアにすら載らないと思う?」

バルクホルン「………確かに、そうだが…」

ミーナ「但し民間人とは言っても、確かに彼女もウィッチです。 それも極めて特殊な」

ミーナ「…そういった点も考慮して地中海本部へ打診を求めた結果、具体的な対応を決めるまで引き続きうちで保護するよう指示が出ました」

美緒「……」

ミーナ「ただ、男性基地員への体裁を保つために……階級を持たないウィッチである彼女も私達ウィッチーズの下で生活してもらいます」


大尉以下一同「「!!」」

 

 
ミーナ「軍事行動時は別にしても、普段の生活はこの宿舎で共に過ごすことになります」

エイラ「……アレ、でもさ? その子、無断介入で拘束されてたんじゃないのか?」

ミーナ「それも地中海本部との協議の結果、キトゥンさんが色々と特別な例なので一時的に保留になりました」

エイラ「ふーん」

ミーナ「………質問はもういいかしら?」

シャーリー「…キトゥンの魔術式はなんですか? あたしらとやっぱ違うんですか?」ハーイ

キトゥン「……」

ミーナ「ええ、そうね。 魔方陣も展開しないし、一般的な魔術式でないことは間違いないと思います」

ミーナ「でも、これもハッキリしたことは本人の記憶と共に闇の中です」

ルッキーニ「…あたしも足出して飛んでみたいな~!」

シャーリー「箒使うか?」

 
ルッキーニ「そーじゃなくってぇ! こう、自由にバビューーンって」シュッ

キトゥン(ふふっ、ルッキーニっておもしろいなぁ。 明るく元気で、かわいいよね)クス

バルクホルン「……とにかく、その少女の使う魔法の詳細は謎という事か?」

ミーナ「概ねはね。 ……他に、今聞きたい事は?」キョロ


ミーナ「………では私からはもうひとつだけ――」

ミーナ「この件は軍組織にとっても非常に稀有な事態で、地中海本部を含む上層部も慎重に取り扱う方針でいます」

ミーナ「更に、彼女が公的に民間人であることと、また彼女個人の問題としても極めてデリケートな話です」

ミーナ「…なので、この件に関する必要以外での口外、情報漏洩は厳禁とします。 いいですね?」キリッ

一同「「了解」」


美緒「…………(もっともらしい嘘とはいえ、こうも毅然と捲し立てられると皆信じざるを得んな。 流石ミーナだ)」

キトゥン(わたしの事って美緒さんと隊長さんしか知らないんだよね? てことは軍の本部がどうとかってのは嘘か…! …わたしが信じそうになっちゃった!)ドキドキ

 
ミーナ「……はい! じゃあ、改めてキトゥンさんから自己紹介をしてもらいましょう」ウフフ

キトゥン(…わ!? この人、急に雰囲気変わっちゃった!)

ミーナ「キトゥンさん、簡単でいいのでお願いできる?」ニコ

キトゥン「は、はい……(どっちが本当なんだろう…? 銃向けられたし、複雑だな)」

ミーナ「あら? ……私の顔に何か付いているかしら?(もしかして、寝不足で隈が出てる…!?)」

キトゥン「うぁっ! い、いえ! なんでもないです…!」ステテ


キトゥン「……」スタ


キトゥン「………えっと…、キトゥンです。 …お邪魔かもしれませんが、よろしくお願いします」

 

 
バルクホルン「……~」

エーリカ「……(まーた気難しい顔しちゃって、トゥルーデったら)」チラ

エイラ「………(褐色って見るの初めてかもしれないぞ、……別に普通だよな? 何がそんなにダメなんだ??)」ジロー

サーニャ「……(お友達になれるかな…?)」

ペリーヌ「……っ(ガリア国民の方なら、わたくしが護って差し上げなくては…!)」


キトゥン(…うっ! やっぱり歓迎されてない空気が…――)タジ


芳佳「わぁーい! ようこそ、キトゥンさん!!」パチパチ

リーネ「~!」パチパチ


キトゥン「……芳佳! リーネ!」

 
シャーリー「これからよろしくな!」パチパチ

ルッキーニ「やたー! 暇なときあそぼー?」ピョンピョン


キトゥン「シャーリー、ルッキーニ…!」

美緒「心配するな、ここに悪い奴はいない」ポン

ミーナ「もう、美緒ったら。 そういう裏を返した言い回しは誤解を生むわよ?」

ミーナ「……皆いい子達だから安心してね? キトゥンさん」

キトゥン「美緒さん……、隊長さん」

ミーナ「ミーナでいいわ、よろしくね。 わからないことは遠慮なく聞いて頂戴?」ニコ

キトゥン「はい…。 ミーナさん(やっぱりいい人かも…)」ジーン

ミーナ「…あらあら(少しは打ち解けてもらえたかしら?)」ウフフ

 
美緒「よぉーし! これで我らストライクウィッチーズも12人だ!!」デーン

キトゥン「………はい??」

芳佳「わぁ~!」パチパチ

芳佳「――…て、ええぇえ!!?」ガビーン

ペリーヌ「そ、そんな少佐っ!?」

シャーリー「偶数はいいなー! 編隊が組みやすくなる」アハハ

ルッキーニ「ダメ! シャーリーはあたしとだよっ!?」

エーリカ「……えっ、本当に?」チラ

バルクホルン「そんなわけないだろ」キッパリ


ミーナ「…ちょっと“美緒さん”?」ジロ

美緒「わっはっは! 冗談だ」

キトゥン(こ、この人って……)ガク

 
ミーナ「はぁー……(さっさとお終いにしましょう)」

ミーナ「…はい、では皆聞いてください」パンパン


しぃーーん…


ミーナ「ありがとう」

キトゥン(……すごい…!)

ミーナ「本日の連絡は以上です。 繰り返しますが、ネウロイの出現周期が不規則かつ頻繁化してきています。 徒な休暇や外出の申請は自重してください」

一同「「了解」」

ミーナ「はい、では解散! ご苦労様」パン

 

ガヤガヤガヤ


キトゥン「……えーっと…、わたしはこれからどうすればいいんだろ?」キョロキョロ


ミーナ「――キトゥンさん、ちょっとこっちへいらっしゃい?」


キトゥン「? はーぃ…」スタタ


ミーナ「お疲れ様。 本当にいろいろあったけど、今日はもう休めるわよ」

キトゥン「(なんだ、よかった)…またお風呂に入ってもいいですか?」

ミーナ「うふふ、活動時間内なら自由に使っていいわ。 でもその前に、貴女の部屋についてだけど…」

キトゥン「…あっ、そっか!」

ミーナ「貴女は民間人だし、本当ならプライベートルームを用意してあげたいけど――」

キトゥン「あの…、べつに閉じ込められてた部屋でもいいですよ?(部屋としては、普通に悪くなかったし)」

 
ミーナ「……いえ、そうじゃなくてね?」キョロキョロ

キトゥン「?」

ミーナ「…さっき聞いていた通り、貴女は私と坂本少佐以外には秘密を抱えたまま、此処で異世界暮らしをしなくちゃいけないから――」ヒソヒソ

ミーナ「何かあった時や、秘匿事項に関する話を自然にできる環境を作る必要があるの」

キトゥン「? ……そうなんですか?」

ミーナ「私達としても、貴女をこのままにしておく訳にはいかないから……出来れば貴女を無事に帰すために、積極的に話し合う必要もあるわ」ヒソヒソ

キトゥン「!」

ミーナ「かと言って、キトゥンさんが私や坂本少佐と頻繁に姿を消してコソコソするのは難しいから…」ヒソヒソ

ミーナ「……そ・こ・で♪」ニコ

キトゥン「!?」

つ・づ・く

 

消灯前


坂本の部屋



キトゥン「………」

美緒「…寝床は、今日の所はこれで我慢してくれ」ヨイセッ


キトゥン「な、…なんでこんな事にっ!?」ガビーン


美緒「おい、もう遅い。 あまり騒ぐな」

キトゥン「あ……ごめんなさぃ」

ダスティ「ニャアー!」

美緒「……お前もだ」ヒョイ

ダスティ「ッ! ニャアッ!」ジタバタ

キトゥン(…お前は夜行性だもんね?)アハハ…

 
美緒「こら、静かにしないか」

ダスティ「~~!」ジタジタ

美緒「………うむ、そうか。 仕方ない」スタスタ

キトゥン「?(窓…?)」


美緒「……」カチャ

美緒「行って来い」ポーイ


『ニャアー……――』



美緒「…よし」パタム

キトゥン「……えー…(ダスティ……ごめん!)」

 
美緒「では寝るか」スタスタ

キトゥン「…あれ? 美緒さん、そっちで寝るんですか?」

美緒「ああ。 私はいつもここで寝ている」イソイソ

キトゥン「え…でも、じゃあこっちのお布団は…?」

美緒「私の話を聞いていなかったのか? お前の寝床だ」ヌギッ

キトゥン「あれ? えぇ?」ドギマギ

美緒「すまないな。 明日にはちゃんとベッドを借り入れる、…今日はそれで勘弁してほしい」シュル

キトゥン「あっ、あの…ごめんなさい。 そうじゃなくって――」アセ

キトゥン「美緒さん……そんな隅っこで寝るんですか? こっちいっぱい余ってますけど…(ていうか、なんか脱いでるし!)」

美緒「こちらの世界には“起きて半畳、寝て一畳”という言葉がある。 畳1枚あれば十分だ」ファサ

キトゥン(タタミ? ……て、この変な絨毯みたいなのかな? 美緒さんの所にも1枚だけ敷いてあるし)

 
美緒「お前も早く着替えろ。 寝間着も布団と共に用意してあるだろう?」クイ

キトゥン「え? あ、ホントだ」

キトゥン「(わたし、裸で寝ちゃう派だけど……流石に人前ではね) …じゃあ、お言葉に甘えて――」スッ…

美緒「まてっ、キトゥン。 止まれ」

キトゥン「――え?」ピタ

美緒「……床の間〈畳が敷いてある所〉に上がる際は、必ず靴を脱げ」キッ

キトゥン「あ…ぅ……、ごめん…なさぃ(急に怖くなる~っ!!)」

キトゥン「……よいしょ」ヌギ

美緒「…それでいい。 それから、掛け軸の下にある刀には決して触れるんじゃないぞ? いいな」

キトゥン「……はーぃ(ていうかこれ、どうやって着るんだろ…?)」ズーン


――――
――

 

消灯後



キトゥン「……」モゾ

美緒「……」

キトゥン「…あの、美緒さん……起きてますか?」

美緒「もう消灯だ。 寝ろ」

キトゥン「………急に相部屋になっちゃって、迷惑じゃないですか…?」

美緒「……」


キトゥン「……」

美緒「………」


キトゥン「……ごめんなさい。 寝ます…」モゾ

美緒「…私は別段、迷惑な事などない。 寧ろお前が心配だ」

 
キトゥン「へ…?」

美緒「私も中佐から話は聞いていた。 私か中佐の部屋の二択だったのだろう?」

美緒「……こんな殺風景な所で気が詰まるようなら、明日に中佐の元へ移るといい」

キトゥン「そ、そんな…」

美緒「……」

キトゥン「……わたし、自分で選んだんです。 美緒さんが平気なら、この部屋がいいですっ」ムッ

美緒「…そうか。 やはり中佐にもかなわんな」フッ

キトゥン「え、何がですか?」

美緒「……いい加減にお終いだ。寝るぞ?」モゾ

 
キトゥン「そんな~、気になるんですけどっ?」ムク

美緒「…私の部屋に来た以上、朝は誰よりも早いからな?」

キトゥン「えぇ゛!?」ガーン

美緒「静かにしろ。 ………私はもう眠る。 お休み、キトゥン」

キトゥン「…えぇっと……いつも何時に起きて…?」ヒソー

美緒「……」

キトゥン「あ、あのー……?」

美緒「………」

キトゥン「……」

美緒「…………」シーン

キトゥン「ぅ……(…ね、寝ようっ!)」バサッ


美緒「……」


美緒(…キトゥン。 ミーナはお前に“何か”を期待しているのだろう。 故に私の近くに置いたんだ)

美緒(自分と同室を選ばれたなら、それはそれでお前を御し易いという打算も有りながら……ミーナは恐らくお前が私を選ぶことをわかっていた)

美緒「………」ギュ…

美緒(……悟られてはいないつもりだったのだが、“色々”とバレているかもしれんな。 ミーナには…)

――――
――

 

翌朝



キトゥン「…zz」

キトゥン「えへへ……いやぁ~…お礼みゃん……て……zzz…」ムニャムニャ


――テテテッ


キトゥン「………こんにゃ……ん~……食べられにゃ…?」モゴモゴ


ボフンッ


キトゥン「zz……? …ッ…」モガ

キトゥン「……ッッ!? ~~ッ!!」

キトゥン「――っぶはぁ!!?」ガバッ


ダスティ「ニャア!」ポテ

 
キトゥン「……?? なに…!? え?」ゼーハー

キトゥン「………なんかすっごく苦しかった気がするんだけど…!」キョロ


チュンチュン…


キトゥン「…まぶしい? ……ぁれ…?」


キトゥン「…………?」ポケー

キトゥン「……そっか。 ここ、わたしの家じゃないんだった…」

キトゥン「……」

キトゥン「…………ん~…(まだ眠いぃ…)」グシグシ

ダスティ「……」トテトテ

キトゥン「…あ、ダスティ……おはよう」

 
キトゥン「……(…ん? というか――)」

キトゥン「――! さっき変な起こし方したのお前でしょっ!?」

ダスティ「…~」ゴロゴロ

キトゥン「まったく…(疲れは取れたみたいだから、いいけど)」

キトゥン「…お前は今から寝るの? 羨ましいね」

ダスティ「~~」スリスリ

キトゥン「お、タタミ気に入った? …でもここ美緒さんの部屋だから、昨日みたいに困らせてると居られないよ?」

ダスティ「……」ガリッ

キトゥン「あっ!! ちょっと、なにやってんのお前っ!?」バッ

ダスティ「…ニャア!」

 
キトゥン「……うっ! 傷になってる…!」

キトゥン「…これ、まずいよね? だって昨日靴で上がろうとしたら怒られたし…」サスサス

ダスティ「……」

キトゥン「ダスティー…、ホント頼むよ~。 わざわざ他所でヤンチャしなくていいからさ?」

キトゥン「……はぁー。 …布団空けるからこっちで寝て」ポフ

ダスティ「…」

キトゥン「お前のお陰で完全に目が覚めちゃったよ…」クツハキ

キトゥン「わたしちょっと部屋出るけど、もう爪研いじゃダメだからね! それとそこの刀――…は、あれ? 無いや」

キトゥン(美緒さんが持って行ったのかな? ……そもそもどこ行ったんだろ?)

キトゥン「…ま、いいか。 ……とにかく留守番頼んだよ、ダスティ?」ピシッ

ダスティ「…~」クァ~

つづく

サントロンの雷鳴、前売りかった

ミーナさんだった。かわいい

※キトゥンちゃんをウィッチーズと少し遊ばせたいので、本筋が鈍行になるかもしれません

 

宿舎 廊下


キトゥン「う~ん、気持ちいい朝だなぁ。 やっぱり人間はお日様浴びないとね」スタスタ

キトゥン「…わたしが寝坊するのも、家の日当りが悪いからだよきっと。 今度クロウにそう説明しよう!」

キトゥン(……それにしても、誰もいないなぁ…。 そういえば今何時なんだろう? 皆まだ寝てるのかな?)

キトゥン「――ん? あれは…!」


サーニャ「……」ヨロヨロ


キトゥン「…たしか、白くてアンテナの……サーニャちゃんって言ってたよね?(なんか足取りが不安な感じだけど…?)」

 
サーニャ「……!」ピク

キトゥン「あ…、おはよう!」

サーニャ「……ぉ………ぃま…」モニョモニョ

キトゥン「…ぇ? なに?」

サーニャ「……」ペコ

サーニャ「…」ヨロヨロ~


キトゥン「……行っちゃった…(瞼が半分閉じてたけど……徹夜明け?)」


――――
――

 
キトゥン「――ここだっ! ……やっと思い出した(セーフ!)」スタタ


ドンッ


キトゥン「きゃっ!?」ヨロ

バルクホルン「おっと! ………お前か、大丈夫か?」

キトゥン「あ、はい。 …すみません(げっ! 恐くてキツイ……ゲルトルー…なんとかさんっ!?)」ガーン

バルクホルン「朝からそそかっしい奴だな。 宿舎の廊下は不用意に走ってはいけない決まりだ、わかったか?」

キトゥン「……すみませーん…」シュン

バルクホルン(……? 何故怯える? …これでは私が民間人を糾弾している様ではないか!)

バルクホルン「…しかし起床前にちゃんと目覚めたのは感心だ。 その調子で励め!」デン

キトゥン「は、はあ…」

バルクホルン(…?? 褒めた筈だが……空振ったか? 何故だ!?)

>>309

そそかっしい → そそっかしい

に訂正

 

そんなこんなで 昼間



キトゥン「芳佳からお誘い受けたけど、一体なんだろう?」スタスタ

キトゥン「…ここかな?」コンコン


『……はーい、今開けまーす!』

ガチャ


リーネ「…ぁ!」

キトゥン「こんにちはぁ~…」

『リーネさん、どなたですのー?』

リーネ「あ、その……キトゥンさんです」

ペリーヌ「まぁ! いらっしゃい、どうぞお入りになってくださいな」ヒョコ

キトゥン「え? あ、はい」

 
――――
――


トリオの部屋


リーネ「はい、どうぞ」コト

キトゥン「ありがとう、リーネ」

ペリーヌ「調度紅茶を淹れていた所でしたの。 ローマンカモミールにフルーツを混ぜたものですけど、宜しければお試しくださいな」

キトゥン「…へー(全然わかんない)」

リーネ「アイスティーのストレートが一番美味しいから、そのままで飲んでくださいね?」

キトゥン「うん。 …いただきまーす」

キトゥン「……」チューチュー

キトゥン「…んー! 美味しい!?」

リーネ「やったね、ペリーヌさん?」ニコ

 
ペリーヌ「ええ。 わかっていたとはいえ、わたくし達以外の客観的な意見が聞けてよかったですわ」ウフフ

キトゥン「?」

リーネ「ペリーヌさんは紅茶にとっても詳しくて、自分でブレンドもするんです。 私も時々一緒にお手伝いしたりするんですよ?」

キトゥン「へぇー! なんか素敵…!(かっこいい!)」

ペリーヌ「お、おほほ! 別に褒められるほどのことでは……貴族の嗜みですわ!//」

キトゥン「え!? ペリーヌさんって貴族なの!?」

リーネ「はい。 ガリアの貴族、クロステルマン家のご令嬢さんです」

ペリーヌ「ふふ、見えませんでした?」

キトゥン「あっ! いや、そういう意味じゃ…っ!」

ペリーヌ「いいんですのよ。 既に落ちぶれた家ですもの」フフ

リーネ「そ、そんな。 ペリーヌさん…」

キトゥン「……」

 
ペリーヌ「い、いやですわ…ちょっと! 別に湿っぽくなる話でもないでしょっ!」アセアセ

キトゥン(いろんな人がいるんだなぁ…)

ペリーヌ「コホンッ! …と、ところで、キトゥンさんは何か用があってお越しになったのではなくて?」

リーネ「あ、そうですね!(すっかり遊びに来てくれたつもりでもてなしちゃった)」

キトゥン「……えっと、芳佳に“後で私の部屋に来てねー!”って言われて…。 ここでいいんだよね?」

リーネ「そっか…芳佳ちゃんのお客さんだったんだ」

ペリーヌ「まったく間の悪い……約束があるならひと言伝えておくのが礼儀という物ですのに。 あの子ったら…」

リーネ「し、仕方ないよ! いきなり連れて行かれちゃったし、そういう時間もなかったんだよ」

ペリーヌ「……お優しいですわね、リーネさんは」カチャ

キトゥン「…芳佳、なんか用事?」

 
ペリーヌ「昨日、貴女の部屋〈仮独房〉の前で騒いだ方々と一緒に、ランニングへ出かけましたわ」コクコク

キトゥン「……あ! あれかー!」

リーネ「調度キトゥンさんが来るちょっと前に、坂本少佐が連れて行っちゃいました…」

キトゥン「う~ん……美緒さんさすが、有無を言わさないなぁ」チュー

ペリーヌ「なっ…!!?」ポロ


カシャーーンッ


リーネ「ひゃっ! ペリーヌさん!?」

キトゥン「わっ!? ……大丈夫!?(高そうなカップがっ!)」

ペリーヌ「あ……あ、あっぁぁ貴女っ! …今、何とおっしゃいまして…?」ワナワナ

キトゥン「え…? ……“大丈夫?”って…」

ペリーヌ「そっちじゃありませんわっ!!」

キトゥン「ひぇっ!? (急にどうしたのー!?)」

 
ペリーヌ「あ、あなっあな…貴女は……っ!! さっ…坂本少佐のことを今……な、なんと…!?」

キトゥン「ぇ? ……あっ!(そっか! 皆より偉い人だから…!?)」

キトゥン「すみません。 昨日、美緒さんとお風呂入った時に“軍人じゃないからいいよー”って言われて――」

ペリーヌ「ふぁぁあ!?? ふたりきりで入浴ですってぇ!!?」ガーン

リーネ「あ、あのぉ…ペリーヌさん……とりあえず片付けを…。 お洋服もシミになる前に洗わないと…」

キトゥン「一応部屋も一緒だし、いいかなーって思ってたんですけど…――」

ペリーヌ「はぎゃあっ!?!!? い……いっし、いし……一緒のぉ!!?」ガシャーン

リーネ「ペリーヌさん!? あ、あの……気を確かに…!」サスサス

ペリーヌ「おっおお落ち着きなさいペリーヌ・クロステルマン…。 こ…この方はガリアの民、この方はガリアの民、この方は――」ブツブツ

キトゥン(?? ……不思議な人だなぁ)

ペリーヌ「わたくしが護るべき方です……取り乱しては――」ブツブツ

 
――――
――



基地 野外



美緒「どうしたー! まだまだ好きなだけ走っていいぞ!! 遠慮せずに声も出せーっ!!」

芳佳「はぁいぃいっ!! ……ふぁい、お~! ふぁい、お~!」フラフラ

エイラ「み、宮藤のやつ…慣れてやがる……ぐへぇ~…」ヨロヨロ

ルッキーニ「も疲れだぁ~~~!!」タッタ

シャーリー「まぁ、懲罰だからしかたねーな。 ……終わりを知らされないで走るのはしんどいけど」タッタッ

バルクホルン「………ぐぅぅ…、何故私まで…っ」タッタッ




キトゥン「…やっぱり軍人ってわたしには向かないな」ウン

 

『ほーらー! トゥルーデしっかりー!』


キトゥン「? ……あそこにいる子…!」




エーリカ「ダッシュだ~っしゅ! 宮藤のお尻ばっかり見てないで、本気だしてよぉ~?」

芳佳「えぇぇ!? ///」サッ

バルクホルン「だまれぇええ!!! ハルトマンッ!!」




キトゥン「えっと名前は……そうだ、エーリカちゃん!」

 
エーリカ「あー面白い! 危うく寝過ごす所だったよ」アハハー


キトゥン(ミーナさんと一緒に銃向けられたのが気まずくて、まだちゃんと話はできてないんだよね…。 自己紹介はされたけど)ススス…

キトゥン「(……せっかくだし、改めて挨拶しておこう)あ、あのー…」

エーリカ「――ん? …おお? 人気者の登場!」

キトゥン「…えっ! 人気…?」

エーリカ「みんな昨日からキトゥンの話で持ち切りだよ? ミーナはもちろん、トゥルーデやサーニャンも気にしてるみたいだし」

キトゥン「……トゥルーデ…?」

 
エーリカ「昨日、アドリア海でキトゥンのこと捕まえてた“優しいお姉ちゃん”だよー」アレアレ

キトゥン「…優しいお姉ちゃん?」チラ




芳佳「……ば、バルク…ホルンさんっ。 …ぜぇっ……その、私のお尻なんか見ても… ///」サササ

バルクホルン「ちっ、違う!! 誤解だ宮藤ぃ!!」

シャーリー「…お前、そんな元気なら宮藤の前走ればいいじゃん」

ルッキーニ「………しゃ~りぃ……まって…」ヨロヨロ

美緒「よぉーし、いい度胸だ! まだまだ余裕の様だなお前達っ! ペースを上げろぉー!!」ビシビシッ

エイラ「オイ! 大尉達が漫才やってる限りおわんねーぞぉ!」ヤメロー!




キトゥン「……シャーリー?(優しい&お姉さん…?)」

エーリカ「よりも胸は小さい方の、髪結んでる」

半端だけど、つづく

うわー。 ごっそり抜けている箇所ありました…

今から載せます。すみません!

 
>>309の後


キトゥン「あのぉ…、今ってまだ起きる時間じゃないんですか?」オズオズ

バルクホルン「ん? ああ、もうそろそろ起床のラッパが鳴るだろう。 それまでに起きていれば問題ない」

キトゥン「……ふーん、ラッパが…」

バルクホルン「ちなみに起床とは、直ちに活動できる状態を言う。 その恰好〈寝間着〉ではダメだぞ?」ビッ

キトゥン「あ、はーい…(また説教臭くなった)」

バルクホルン「起床時刻後間もなくで朝食だが、そのままで行くなよ? …さっさと“済ませて”着替えてこい」

キトゥン「……あっ! そうだった!(トイレ!!)」スタタタ

バルクホルン「おい、走るな!」


>>312



すみませんでした

 
キトゥン「あっ、ゲルトルー……さん?」ゴニョゴニョ

エーリカ「そうそう。 あと“ト”で完成だよ」

キトゥン「ゲルトルートさん…(言えた)」

エーリカ「…………あれ、なんの話だっけ?」

キトゥン「え?」

エーリカ「まぁ私の話はいいや! …で、なにか用?」

キトゥン「えっ? あ……えーっと、改めてよろしくと思って…」

エーリカ「うん、よろしくねー。 エーリカ・ハルトマンだよ」

 
エーリカ「…キトゥンは軍人じゃないし、ていうかそんなの関係ないけど、好きに呼んで!」

キトゥン「(……よかったぁ、全然仲良くなれそう)うん、よろしくね! エーリカちゃん!」マエカガミ

エーリカ「!」


エーリカ「…………」


キトゥン「(…あ、あれ?)……どうしたのかな…?」

エーリカ「…キトゥンさ? 私のこと、子供だと思ってない?」ジトー

キトゥン「……」


キトゥン「…………えっ!?(違うの!?)」
 

 
エーリカ「私、シャーリーと同い年なんだけど?」

キトゥン「っ! うそっ!?」ガビーン

エーリカ「どっちかというと、ルッキーニ寄りの扱いだったよね……今?」

キトゥン「うっ! …だ、だって色々と……大きさがっ!?」

エーリカ「あー! ひっどいなぁ~、シャーリーのは特別じゃん!」

キトゥン「いや、それだけかな……? …あっでも、わたしもそっちを信じたいかも…!」ペタペタ

エーリカ「キトゥンと比べれば、私もほとんど変わらないじゃん?」エッヘン

キトゥン(えっ!! そんな!?)ガーン

エーリカ「だから私の事も呼び捨てで……ね、キトゥン!」

 
キトゥン「……わかった。 ごめんね、エーリカ(好きに呼んでって言ったのに…)」

エーリカ「キトゥンは、サーニャンの所にはもう行った?」

キトゥン「え? サーニャン……サーニャちゃん?」

エーリカ「そうそう、サーニャン。 キトゥンと友達になりたいと思ってるから行ってあげてよ?」

キトゥン「…そうなの?」

エーリカ「多分ね」

キトゥン「(勘!?)そ、そう……。 じゃあ行こうかな…、芳佳もまだ終わらなそうだし」

エーリカ「部屋にいると思うけど、寝てたらごめんねー」

キトゥン「寝てるの!?」

 

エイラーニャの部屋前



キトゥン「……ここだよね? 可愛い名札が付いてる」コンコン


キトゥン「………」


しぃ~~ん…


キトゥン「…寝てるのかな?」コンコンッ


しぃ~ーーん…

 

 
キトゥン(……あんまり何度もやると迷惑だよね?)

キトゥン「……」

キトゥン「…行こう」クル


サーニャ「――ぁ…!」ピク

キトゥン「!」


サーニャ「……そこ、私とエイラの部屋…」

キトゥン「(いたー!)う、うぅんっ! ちょっと…」アハハ

サーニャ「…?」

まったりつづく

 

エイラーニャの部屋



サーニャ「……」

キトゥン「ということで、その……改めてよろしくお願いします…」

サーニャ「…はい」


キトゥン「……」

サーニャ「……」


キトゥン「~~っ!(大した用もないのに来たから、変な空気になってしまったっ!)」

サーニャ「…すみません。 ……お部屋、散らかってて…」

キトゥン「え? いや、平気平気! そんな事ないからっ(雰囲気似てるけど、アキん家の方が酷いし)」

 
キトゥン「……この部屋は、なんで閉め切ってるの?」クライ…

サーニャ「…私は、ナイトウィッチだから……」

キトゥン「(? どういう事だろ…? わかんない!)へぇー、そっかぁ…」

サーニャ「日の光が眩しいと、うまく寝付けないから….」

キトゥン「(…あ、夜勤ってことか! それで今朝あんな眠そうに)大変だね?」

サーニャ「ううん…。 独りの時も多いし、簡単じゃないけど……でも、皆が安心して眠る為だから…」

キトゥン「……」

サーニャ「それに…皆、優しくしてくれるから……私も力になりたいって…」

キトゥン「っ…(な、なんて健気! 偉いっ!)」ジーン

キトゥン「…サーニャ!」ニギ

サーニャ「!?」

 
キトゥン「わたしで力になれる事があれば、遠慮なく言ってね?」

サーニャ「…は――」

キトゥン「友達として!」

サーニャ「! ……ぅ、うん…!」

キトゥン「重い物とか運んだりするのは得意だから!」

サーニャ「……ありがとう…キトゥンさん」

キトゥン(暗い時間に飛ぶのって、結構大変なんだよね…)ウンウン

サーニャ「……」


バタムッ


エイラ「うなぁあ~~っ!! やってられるかぁー!」ヨロヨロ

キトゥン「! …あ、終わったんだ」

サーニャ「……エイラ、どうしたの?」

 
エイラ「~はぁ……ふぅ…っ…」

キトゥン「昨日、美緒さんが怒ってたでしょ? それでさっき走らされてたみたい」

エイラ「!?」ギラ

サーニャ「そっか、…おかえり」

エイラ「…オマエぇぇ! サーニャに手出すなぁ!!」ガバッ

キトゥン「きゃ!? なにっ!?」


ドタンッ


エイラ「はぁ……ぜぇっ…」グデー

キトゥン「あ、あの!? ちょっと……どいて…(うぅ…! すごい汗!)」

 
サーニャ「エイラ!? ……お客さ――」ピクッ


サーニャ「……」


サーニャ「……お友達に失礼よ?」

エイラ「んむぅ!? …ワタシの知らないうちに、…ぜぇ……親密…にっ!??」ガーン

サーニャ「…うん」

エイラ「“うん”~~っ!?」ガガーン

サーニャ「? ……うん」

キトゥン(なんか勘違いされてる気がする!)

 
エイラ「クッッソォ~~!! サーニャにちょっかい出すなー! コノコノーー!」グリグリ

キトゥン「や! ちょっ…!? ベトベトする!!」

エイラ「コノ~コノ~~!」ハァハァ

キトゥン「きゃーー!!」ジタバタ

サーニャ(すごい絵図…)


エイラ「――ン!?」ピタッ

キトゥン「……な、なに…!?」


エイラ「………案外ムネないな?」サワサワ


キトゥン「……大きなお世話っ!//」ベシベシッ
 

 
――――
――



サウナ室



キトゥン「……ここに水をかけるの?」

エイラ「そうそう。 かけ過ぎんなよ? 最初は3~4杯くらいでイイかんな?」

キトゥン「ふーん…」パシャ


ジュゥゥウゥウウ

モワモワァ~


キトゥン「わっ! 熱っ!?」

サーニャ「キトゥンさん…!」

エイラ「焼石近くの蒸気は熱いから気をつけろよ~?」

キトゥン「さ、先に言ってー!」

 
エイラ「……やっぱりキトゥンじゃダメだな。 ワタシがやってやる」ズイズイ

サーニャ「…火傷してない? 後で芳佳ちゃんに見せにいかないと…」

キトゥン「あ~、ビックリした…」

エイラ「はじめは皆ちょっとビックリするんだ。 でもそんだけで、実際は大したこと無いさ」ビシャ


ジュゥゥウウウゥ


キトゥン「……これが本当に気持ちいいの?」

エイラ「なんだよ、お前も風呂好きなのかー? サウナをバカにすんなよ?」ハラリ

サーニャ「エイラ、そうじゃなくて。 キトゥンさん、初めてだから…」

エイラ「ならそこに座ってろ? 今に気持ちよくなるから…っな!」バサッ

 
キトゥン「……」

エイラ「…フンッ! ……フッ!」バサバサ

キトゥン「……タオルで何やってるの、あれ?」

サーニャ「焼石から出た水蒸気を充満させてるの。 …もうすぐ暑くなってくるよ?」

キトゥン「へぇー……要するに、暑い部屋が気持ちいいってこと?」

サーニャ「うん…。 おもいっきり汗をかいてスッキリするの」

キトゥン(これ以上汗かいて干涸びないかな、エイラ?)

エイラ「オイ、こっち向け! サービスしてやるぞ!」

 
キトゥン「え?」

エイラ「ソラッ!」バサッ

キトゥン「…っ!(熱い空気が!?)」

エイラ「どーだ? 気持ちイイだろ!」バサバサ

サーニャ「エイラは扇ぐのが凄く上手なの」

エイラ「っ! まっ、ま~なぁ~! ウヘヘ~//」バサバサバサ

キトゥン「わぁー! ちょっと、熱い! 熱い!!」


――――
――

つづく

 
エイラ「…ふーん。 重力の固有魔法か、なんか凄そうだな?」

サーニャ「それで昨日も…?」

キトゥン「……まぁーね…。 結局美緒さん達に助けられちゃったけど」

エイラ「てゆうか、その“美緒さん”ってのなんだよ? ペリーヌ辺りがヒステリー起こすぞ?」

サーニャ「……」

キトゥン「え、ペリーヌさん? …………ああ、大丈夫! ちゃんと誤解は解いたから」

エイラ「解けたのか……スゲーな…」

サーニャ「エイラ、ペリーヌさんだって立派な人なんだから……そんな…」

エイラ「んー、まぁサーニャに嫌味言ってた頃に比べりゃ格段にマトモになったな」

キトゥン(…すごい言われ様)

 
サーニャ「あれはっ………確かに、少し意地悪だっけど…」

サーニャ「でもそれは、ガリアがネウロイに進行されてて…!」

エイラ「サーニャ……なんて優しいんだ~!」デレー

サーニャ「エイラ、ちゃんと聞いて…」

キトゥン「……ガリアって、わたしが倒れてた所だっけ? あの黒い奴に襲われてるの?」

エイラ「去年まではな。 ワタシ達が解放したから今はネウロイなんていないぞ? …ていうかお前そんな事も知らないのか!?」

サーニャ「……キトゥンさん、記憶が…?」

キトゥン「えっ!? ………そ、そうなの~! 困っちゃうよね~ほんとっ!」アハハ

サーニャ「…?」

エイラ「記憶喪失してんのになんか明るいな…?」

 
キトゥン「……そっか。 ペリーヌさん、確かガリアって国の貴族だから…」

エイラ「あん時はかなり追い詰められてたなー。 サーニャをいじめて良い理由には絶対なんねーけど」

サーニャ「エイラ!」

キトゥン「…でも、そのネウロイは追い出せたんでしょ? よかったじゃん!」

エイラ「……まぁワタシらは、そりゃそーなんだけどな」パタパタ

キトゥン「?」

サーニャ「ネウロイを追い出す事は出来たけど、ガリアの国内は殆ど荒らされて……人や動物も沢山亡くなったの」

キトゥン「ぇ…」ドキ

エイラ「ワタシらは救国の英雄扱いでイイけど、そこでこれから暮らしていかなきゃなんない人にとっては素直に喜べる事でもないんだよなー。 死んだ奴も生き返んないし」

 
サーニャ「ペリーヌさんは自分の国や被災した人々の為に、私財を投げうって復興活動を支援してるの…」

エイラ「キトゥンを見つけたのも、ウチの部隊で瓦礫処理を手伝った帰りだったんだぞ? ワタシ達は行ってないけどな」

キトゥン「……」

エイラ「ま、ペリーヌの中じゃガリアの戦いはまだ終わってねー……ていうか、これから本番だな」

サーニャ「エイラ! 他人事じゃないわ!」ムー

エイラ「ご、ごめんサーニャっ! その……そういうつもりで言ったんじゃ――」

キトゥン(…同じだ。 ヘキサヴィルと……ネヴィや重力嵐に襲われた街と!)

キトゥン「っ……」

エイラ「…オ、なんだ? 下向いちゃって。 もう限界か?」

サーニャ「……無理しない方がいいよ、キトゥンさん?」

キトゥン「う、うぅん……大丈夫…っ」グシグシ

 
キトゥン「でも…そうだね。 そろそろ出ようかな…、喉乾いちゃった」

エイラ「なんだよぉ〜、こっから更に暑くすんのに…」チャポ

エイラ「…ソレ!」ジュゥウ

サーニャ「エイラ、私もそろそろ…」

エイラ「えっ! ウソだろサーニャ!?」

サーニャ「私達に気を使わないで、エイラはゆっくりしていて平気よ」

エイラ「ソンナァーー!!」

キトゥン「それじゃあエイラ、お先に」トテトテ

サーニャ「飲み物、エイラの分も用意しておくから」トテトテ

エイラ「まっ! 待ってくれワタシも――」ズル

エイラ「ァヴッ!?(と、トントに後髪を引っ張られている気がする…!)」ドテ

 

更衣室


キトゥン「…サウナって出た後がすごく気持ちいいね! なんか不思議!」フキフキ

サーニャ「うん…」

エイラ「はぁ……トントの“せい”で忘れてたランニングの疲れが…(“精”霊だけに…)」


キトゥン「…!」チラ

サーニャ「……」フキフキ


キトゥン「…………サーニャってさ、なんか色々と綺麗だよね?(いいなぁ)」マジマジ

サーニャ「ぇ…!」ビクッ

エイラ「あ? あたりまえだろ、サーニャだぞ?」

キトゥン「昨日、見つめ返した時は眼も綺麗だったし…」

エイラ「オィィイィイッ!!! ナニやってたんだよぉ!!?」ウガー

 
キトゥン「髪とか肌も、こうやって見るとビックリするよ」

サーニャ「…… ///」

エイラ「サーニャが…照れてる……ダト…?」

エイラ「キトゥン~~~ッ!!」ムムムー

キトゥン「えっ! なに!? 別に、ただそう思ったってだけなんだけど…!?」


エイラ「……ナンダト…?」


キトゥン「……エイラ?」

エイラ「…ナンテコッタ。 思ったことを素直に言えば、サーニャはこんなに可愛くなるのか!?」

キトゥン「……なに言ってるの?」

エイラ「(よ、よぉし…)サーニャっ! 可愛いぞ!!」ズイ

サーニャ「え、エイラまで…っ!? やめて//」

 
エイラ「やめるもんか! わ、ワタシはサーニャが――」

エイラ「…サーニャの事がっ! す……すす、すぅっ……っ!!///」ワナワナ

キトゥン「……」

キトゥン「…!(えっ!? なに、急に? …告白!?)」


エイラ「~~~////」

キトゥン「…」ゴクリ


エイラ「………~~っ……ダメだっ!! うわぁぁあん!!」

キトゥン(あちゃー! 諦めちゃったー!!)

サーニャ「…? エイラ? //」

エイラ「………きっとまだ時じゃないんだ、ウン。 そうだ、言えないんじゃないぞ?」ブツブツ

キトゥン(言い訳を始めた…)

 
サーニャ「…エイラ、よくわからないけど大丈夫?」サスサス

エイラ「ごめんサーニャ、今のは気にすんな」


キトゥン「(急になんだったんだろ、今の?)…エイラ、早く着替えないと風邪ひくよ?」

エイラ「あ! 待った、キトゥン!」

キトゥン「え?」

エイラ「ワタシは服を着るけど、オマエは着ちゃダメだ!」

キトゥン「……なんで?」ジト

エイラ「ちょっと素っ裸が見たい」ハシッ

キトゥン「はぁ!?(なに言い出すのこのひと―!?)」

サーニャ「……」

 
エイラ「ワタシ、褐色肌のヤツって見るの初めてだからさ? ちょっとよーく見せてくれよ、ナ?」グイグイー

キトゥン「やっ、ちょっと!? タオル剥ぎ取らないでよ!?」

エイラ「イイじゃん、イイじゃ〜ん。 チ○ビとかワタシらと同じなのかなー?」

キトゥン「変態ー!!///」キャー

サーニャ「……」ジー

キトゥン「さ、サーニャも見てないで助けてくれると嬉しいんだけど…//」

サーニャ「……綺麗…」

キトゥン「え!? な、なにっ!//」

エイラ「ンー、わかる! …なんていうか、白より体のラインがこう……エロいよな?」

キトゥン「…………エイラって中身おっさんでしょ?」サイテー

つづく

 

宿舎 空き部屋


美緒「……んー、やはりひとりでは無理か」

美緒「仕方ない、誰か手の空いている者を――…む!」


『部屋に戻ってタロットやらないか? ワタシが占ってやるよ』

『う〜ん、占いは間に合ってるかなぁ』

『ナンダトー!』

『…ふふ』


美緒「おい、キトゥン!」


キトゥン「! …美緒さん?」

エイラ「ん? なんだ?」

サーニャ「?」

 
キトゥン「…はい、なんですか?」スタスタ

美緒「悪いが少し手伝ってくれ」

キトゥン「いいですよ」

美緒「お前達も手が空いているなら手伝って欲しい」

サーニャ「…はい」トテトテ

エイラ「なにすんだ?」スタスタ

美緒「キトゥン。 このベッドをお前専用に借用するから、私の部屋まで運ぶぞ?」

キトゥン「え? あ、そっか!」

エイラ「……は? キトゥンって少佐の部屋に泊まってんのか?」

サーニャ「…!」

キトゥン「うん、そうだよ?」

 
美緒「男手が欲しい所なんだが、ここでは私達でやる他ない。 骨は折れるが、自分で使う物だ……私と一緒に運ぶぞ?」

キトゥン「……」

美緒「そら、そっちを持て。 …4人で隅を持ち上げる」

エイラ「力仕事かよぉ〜、サーニャは勘弁してくれ少佐」

サーニャ「エイラ…私は別に……」

キトゥン「……いいですよ美緒さん。 わたし、ひとりで持っていきますから」

美緒「…気概は買うが、よせ。 怪我をする」

キトゥン「大丈夫ですよ! 危ないから皆下がっててね」

美緒「! おい、まさか――」

キトゥン「それっ」ブワン


グンッ


 
エイラ「オオ!? なんだ!?」

サーニャ「……ベッドが浮いてる…!」

美緒「成る程な、本当に便利な力だ。 …だが――」

キトゥン「それじゃ持っていきまーす」スタスタ

美緒「こら、待てっ! そのままでは…!」


ガツンッ


キトゥン「…ぁ」

エイラ「出入口狭いから、気をつけないとぶつけるぞ?」

キトゥン「……エイラ、先に言ってぇ…」

 



坂本の部屋


美緒「――さて。 少し早いが、寝支度をするか」スク

キトゥン「……」

ダスティ「~…」スリスリ

美緒「…お前も今夜は静かだな。 結構なことだが、床の間に上がる時は泥を落とせ」

ダスティ「……」ゴロゴロ

キトゥン「……ダスティ、やめて」グイ

ダスティ「ニャアー」

 
キトゥン「…美緒さん、あの…」

美緒「ん?」

キトゥン「………実は…その、タタミの事なんですけど…」

美緒「……ほぉー。 面白そうな話だな? 聞こう」トスン


キトゥン「……」

美緒「……」ジッ


キトゥン「っ……。 そ、その…ごめんなさいっ!!」バッ

美緒「……」

キトゥン「~~っ」

美緒「…要領を得んな。 何を詫びるかちゃんと言え」クス

 
キトゥン「…………そこの、タタミの引っ掻きキズ…」

美緒「ああ、これか? 昼に気づいたんだが、いつの間につけてしまっのか……まったく残念だ。 泣けてくる」サスサス

キトゥン「ぅ…っ!」

美緒「…で、これがどうかしたのか?」チラ

キトゥン「……ぁの、実はそれ…今朝うちのダスティがつけちゃったんです」

ダスティ「…~」クァ~

美緒「……ほ~ぅ…」

キトゥン「本当にごめんなさいっ!! すぐに謝りたかったんですけど、その……タイミングが無くて…!」

ダスティ「……」ゴロゴロ

キトゥン「お前も謝るのっ!」ムギュ

ダスティ「っ! ニャア~!」ジタジタ

 
美緒「……そうか、お前達が」ジロ

キトゥン「っ……」

ダスティ「……」


美緒「…………ふっ――」ニヤ


美緒「はっはっはっは! …よし、許す!!」

キトゥン「……え?」

ダスティ「…ニャア」ダッ

美緒「よくぞ言ったなキトゥン。 私はお前を……いや、お前の相棒の悪戯を許そう」

キトゥン「……よかったぁ~…(絶対怒られると思った)」ヘナヘナ

 
美緒「友の為に自身が正面から責任を負う事は、思ってもそう簡単に出来はしない。 お前は他を思いやり、己に誠実でいられる人間だ」

キトゥン「(そ、そんな大げさな事かな…?)……ありがとうございます」ポカーン

美緒「部屋を共にする仲だ、信用に足る相手か確認はしておきたかったのでな。 改めてお前を友として迎えよう!」ウム

キトゥン「はあ……(もしかして最初からタタミの事知ってたの?)」

美緒「ふふっ、しかし…。 思った通り、キトゥンは他を護れる素質を持つ者だな。 ……どこか宮藤と似ている」フフフ

キトゥン「へ? な、なんですか急に?」

美緒「ドクターとの問診記録を読んだ。 お前も我々と同じように、人々や街を護っていたのだろう?」

キトゥン「……まぁ、はい。 一応」

 
美緒「謙遜するな。 お前が素人でないことなど、私にはひと目でわかる」

キトゥン(この人が言うと、冗談に聞こえないんだよねぇ…)

美緒「……」

美緒「あまり自覚は無いか。 ……だが、お前が含蓄するものから学べることもあるかもしれん」スク

キトゥン「……はい?(なんの話?)」

美緒「…消灯までまだ時間があるな、茶を淹れよう。 少し話を聞かせてくれ」スタスタ


――――
――

中弛みしても、つづく

芳佳ルートにしたかったのに、書いてるうちにもっさんルートに向かっていて困ったゾ(・×・;)

芳佳ルート、というか扶桑魔女ルートに軌道修正予定。
もっさん関連で未回収になるフラグが出てしまうかもしれません。ごめんね美緒さん

ちょっとずつ本筋も進みます

 
美緒「…呼吸?」

キトゥン「自分の中でそう例えてるだけなんですけどね。 実際に息が苦しくなることはないです」

キトゥン「重力の力を使い続けてると途中で切れちゃうので、そうなる前に一度使うのを止めて“息つぎ”をするんです」

美緒「そうか、それで昨日の戦闘も時折能力を断っていたんだな」

キトゥン「はい。 ……そこを狙われてちゃって、結局シャーリーに助けられたんですけど」

美緒「…息つぎをせずに、力が切れたらどうなる?」

キトゥン「少しの間、休む必要があります」

美緒「……それだけか?」

キトゥン「え? はい…。 …あ、あと結構疲れます」

 
美緒「……息つぎさえ出来ていれば、力は永続的に使えるのか?」

キトゥン「…どうなんだろう? 今の所は……はい…」

美緒「……」

キトゥン「……あっでも! わたしが疲れるのでやっぱり無理ですっ!」

美緒「…お前の飛び回りを見たが、あれだけの飛行に対して息つぎの時間があんな僅かでいいのか?」

キトゥン「少し前までは全然でした。 ちょっと力使ったらすぐ切れちゃったし――」

キトゥン「息つぎで余力が“戻る”のも遅くて……今と違って空中で切れたら絶望的でした」

美緒「成る程、元々はその程度の運用効率だったという訳か。 …能力の出鱈目さを考えれば当然だろう」

美緒「しかしお前は鍛錬を積み、ここまで能力を昇華させた……と」

キトゥン「(特に修行をしたわけじゃないんだけど)……えっと、…そんな感じ…です。 多分」ポリポリ

 
ダスティ「……」トテトテ

美緒「……大した奴だ」ヒョイ

キトゥン(あ…!)

ダスティ「! ニャア!」ジタジタ

美緒「私もキトゥンを見習わねばな」フキフキ

キトゥン「(ダスティの足拭いてる…!)そ、そうですか…?」

美緒「…ふふ、あやかりたい程だ」ポイ

ダスティ「ニャアー」ゴロン

キトゥン「……」

美緒「もうひとつ、気になっていた事があるんだが……いいか?」

キトゥン「あ、はい。 …なんですか?」

 
ダスティ「~…」スリスリ


美緒「お前はネウロイのコアが視えるのか?」

キトゥン「コア…?」

美緒「ネウロイの弱点だ。 昨日お前が討ち損じ、私が斬った赤い結晶がそれだ」

キトゥン「……あーっ、やっぱりあそこが弱点だったんですね!?」

美緒「ネウロイの体内にあるアレが、お前には視えていたのか?」

キトゥン「んー…ぼんやりと、赤いのがあるなぁってぐらいで。 ハッキリとは…」

キトゥン「でもなんとなく“あるんだろうな”っていう……感じというか、確信みたいのはあったかも」

美緒「…それもお前の能力なのか?」

キトゥン「うーん……前にも似たような事があったんですけど、わたしが操った訳じゃないし――」

キトゥン「昨日も、こいつが変なもの見せてから勝手に視えるようになったみたいで…」クリクリ

ダスティ「~~」ゴロゴロ

 
美緒「ふむ、私の魔眼とは違うようだな。 眼で視えるより前……何か別の力で知覚し、その結果視界に捉えているのかもしれん」

キトゥン「……そういえばあの時の声が…」ウーン

美緒「何だ?」

キトゥン「……“存在は気づき”?」ダッケ?

美緒「!」

キトゥン「私にはよくわかんないですけど。 夢に戻れーとか」

キトゥン「……てこんな事、美緒さんに言ってもしょうがないですよね?」アハハ

美緒(存在は気づき……か。 どこかで聞いた覚えが…)ムゥ

キトゥン「?」

美緒「………」

キトゥン「(どうしよう、美緒さん考え込んじゃった!)…あの――」


『消灯時間だ! 部屋に戻れー!』


キトゥン「!」

 
『えー、今日はアッチの木で寝たいのに~』

『ならばさっさと行け! そして寝ろ! ……お前達もだ』

『は、はいっ! …ルッキーニちゃんまたね? 行こうリーネちゃん』

『うん、おやすみなさいっ!』

『あーん! 続きが気になる~!』

『ルッキーニ少尉っ!!』




キトゥン(…廊下が楽しそう。 わたしも混ざればよかった)ポケー

美緒「……我々も寝よう。 消灯だ」スク

美緒「湯呑は盆の上に置いておけ。 明日起きたら片す」

キトゥン「そんな、自分で洗いますよ?」

 
美緒「ふっ……私より早く起きれたならば、やらせてやろう」スタスタ

キトゥン「……美緒さん、いったい何時に起きてるんですか…?」

美緒「そうだな。 …今朝、お前は寝坊はしなかったようだが――」

美緒「私は2時間ほど早くには起きていたと思うぞ?」

キトゥン(む、無理!)ガーン

美緒「どうした?」フフフ

キトゥン「…あのぉ~、そんなに早く起きて……いったい何するんですか…?」

美緒「知りたければ、お前も日の出と共に起きることだ」

キトゥン「……」ドヨーン

美緒「手洗いが不要なら、寝床へ行け。 明かりを消すぞ?」

まったりつづく

すみません、やっぱりもうちょっとだけ

 

早朝


キトゥン「zzz…」

キトゥン「…ん~……も~…シドーってばドジすぎぃ………へへ……zz」ムニャ


???「……計算外だな」ユラ…


キトゥン「………っ、~~?」

???「まさか記憶を維持しているとは…」

キトゥン「…ん……なに…?」ムクリ

???「お姫様には再び一から楽しんでもらいたかったのだが、飼猫まで付いて来てしまったか。 …つくづく私の期待を裏切る」

キトゥン「ぇ…? …………はぃ…??」グシグシ

キトゥン「――…わっ!!?」ビクゥ

???「お目覚めかな?」

 
キトゥン「ちょ……なんであんたがっ!?」

???「お前は時を逸り過ぎた。 結局、またも自分の都合で行動した…」

キトゥン「はぁ…? な、なにそれ?」

???「お前は箱の時を待てなかったんだよ、重力姫。 ……それが善だなどと、可愛いのいい正義に酔ってな」

キトゥン「……よくわかんない事ごちゃごちゃ言ってるけど、つまりケンカ売ってる?」ムカ

???「フォーマットには失敗したが、仕方が無い。 異世界の郷に従わぬのなら、私もお前に倣うとしよう…」

???「――踊ってもらおうか、……夢の外で…!」スゥ

キトゥン「っ!? なにす――」


コォォオォ

 

 
キトゥン「…や――」


『ニャアーッ!』シュダ


???「っ!? ぐっ…!」



ピカァァアアア――


 

 

――
――――


坂本の部屋


キトゥン「――っ!!」ガバッ

キトゥン「…………」

キトゥン「……ゆ、夢…?」


キトゥン「……」


モソ…


キトゥン「!」ビクッ


ダスティ「……」ヒョコ

 
キトゥン「……おはよう、ダスティ」ホッ

ダスティ「ニャア」

キトゥン「…はぁ~~ぁ(夢見最悪……なんであいつが出てくるの?)」

ダスティ「……」

キトゥン「…ていうか、外があんまり明るくないなぁ(たしか時計は…)」モソ

キトゥン「………うそっ、すごい!? わたしこんな早起きした事ないよ!」


キトゥン「……」チラ


キトゥン「っ!!(でも美緒さん、もういないしっ!)」ガーン

 
キトゥン「……早過ぎでしょ。 いったい何やってるの??」


(『知りたければ、お前も日の出と共に起きることだ』フッ)


キトゥン「…気になる。 まだ眠いけど見に行こう!」バサッ

ダスティ「…~」クテ

キトゥン「お前はわたしの代わりに二度寝を頼むよ?」

ダスティ「……」

つづくゾ

 

宿舎 廊下


キトゥン「……と、部屋を出たものの――」スタスタ

キトゥン「…美緒さん、どこにいるのか知らないや」

キトゥン「この宿の外とか、あんまり勝手に歩くと怒られそうだなぁ」

『あら、…キトゥンさん! どうしたの?』

キトゥン「! ……ミーナさん!」クル


――ツカツカツカ


ミーナ「随分早いわねぇ。 まだ6時前よ?」

キトゥン「あはは…そのぉ~、目が覚めちゃって」

 
ミーナ「慣れない環境だとそうよね……体調を崩さないように気を付けた方がいいわ」

キトゥン「あ、ありがとうございます…(基本的には優しいんだよね、ミーナさん)」

ミーナ「それにしても……うふふ」クス

キトゥン「?」

ミーナ「美緒の寝間着よねそれ? 似合ってるわ、素敵よ」ウフフ

キトゥン「…そ、そうですか! ……えへへ」クイクイ

ミーナ「でもそれだと逆ね。 右前になってるわ」グィ

キトゥン「えっ?」

ミーナ「ごめんなさい、いいかしら?」シュル

キトゥン「きゃ!?//」

ミーナ「大丈夫よ、こんな時間に起きているのなんて私と美緒くらいだから。 誰も見てないわ」テキパキ

キトゥン(いや、でも半分外だし……なんだか照れくさい//)

 
ミーナ「うふふ、起きたまま出てきたわね? 皺だらけ…」ピシピシ

キトゥン「……」

ミーナ「帯締めるから、腕を上げて?」

キトゥン「…はい」バンザーイ

ミーナ「…よいしょ」クイッ

ミーナ「……」ギュッ

キトゥン「ぅ…!?」

ミーナ「どう? きつくないかしら?」

キトゥン「す、すこし…」

ミーナ「あらっ、ごめんなさい!」シュル

キトゥン「…ふぅ」

 
ミーナ「………」

ミーナ「…このぐらいかしらね?」ギュ

ミーナ「帯まわりの皺を両脇に寄せて、…前後ろをピッチリさせるといいわ」ピシッピシ

ミーナ「……はい、どうかしら?」ポン

キトゥン「…わぁ、きれい! 美緒さんより速いかも!」

ミーナ「そんなことないわよ? 私だって坂本少佐に教わったんだから……本格的な扶桑服の着付けは無理だし」ウフフ


キトゥン「……(なんか締め付けが強いとシャキっとする!)」クイクイ

ミーナ「…」


ミーナ「………髪もグシャグシャね?」

 
キトゥン「あはは~、本当に起きたままなんで //」ポリポリ

ミーナ「触ってもいいかしら?」

キトゥン「え? …はい、まぁ」

ミーナ「手櫛でわるいんだけど、簡単に……ね?」サワ

キトゥン「…あのっ、別に平気ですよ!?」アワアワ

ミーナ「ダメよ? 女の子なんだから。 外を出歩くなら、それなりの身だしなみにしないと」クシクシ

ミーナ「うふふ、可愛く結っちゃって…。 意識は出来てるんだから、怠けちゃダメよ?」

キトゥン「は、はい…(ちょっと歩くだけなのに)」

ミーナ「……」スッスッ

ミーナ「………(前髪の分け目はこの辺りかしら?)」チョイチョイ

キトゥン(すごく真剣だ…!)

 
ミーナ「…はい! とりあえずはこれで、恥ずかしくないわ」ニコ

キトゥン「……ありがとうございます(ちょっと鏡みたい…)」

ミーナ「こんな所で少しお行儀が悪かったかしらね?」

ミーナ「キトゥンさん、暇なら私の部屋でゆっくりして行く? お茶でも淹れようかしら」

キトゥン「あ、いえ…。 実は、美緒さんを探してて…」

ミーナ「美緒を?」

キトゥン「毎日こんなに朝早く起きて何してるのかなぁと思って」

ミーナ「……多分、今日も自主訓練でしょうね」

キトゥン「うわ…!?」ガーン

ミーナ「彼女の習慣なのよ。 宮藤さんを連れて指導している時もあるわ」

キトゥン(芳佳も大変だなぁ)

 
ミーナ「さっき見てきたら宮藤さんも起きてるみたいだから、今朝はとりあえず安心ね」ハァー

キトゥン「? 安心ってどういうことですか?」

ミーナ「……」

キトゥン「…?」

ミーナ「…私達ウィッチには、ウィッチでいられる寿命があってね? 二十歳を過ぎるころには殆どが魔法力を失うの」

キトゥン「そうなんですか(という事は、皆20歳以下なんだ?)」

ミーナ「坂本少佐はもう二十歳を迎えていて、魔法力の減衰も始まっているわ。 シールドも張れないし、ネウロイと戦うなんて本当なら到底無茶なのよ」

キトゥン「……え? でも、この間だってやっつけたじゃないですか?」

ミーナ「少佐は抗っているのよ。 ウィッチである自分に抗って、ウィッチであり続けようと必死なの」

ミーナ「烈風丸も、そんな彼女の想いが生んだひとつの答えなのかもしれないわね」

 
ミーナ「……でもその矛盾が、余計に彼女の首を絞めてもいるから…」ギュ

キトゥン(ミーナさん? …なんだか辛そう)

ミーナ「ここだけの話、私達に隠れてかなり無茶な特訓もしているわ」

キトゥン「この時間にですか?」

ミーナ「ええ、独りの時はね。 宮藤さんが寝ていれば、いつも私がこっそり様子を見に行くのよ」

キトゥン(それでミーナさんもこんな早くに…!)

ミーナ「キトゥンさんが同室になれば少しは気にするかと思ったけど、昨日も結局……」

キトゥン「……」

ミーナ「ごめんなさい、こんなこと聞かされても困るわね?」ニコ

キトゥン「あ、いえ…」

ミーナ「いつもの場所にいると思うけど、見てくる?」

 

浜辺


芳佳「えぃ! やぁ!」ブンブン

美緒「宮藤、振りが雑になっているぞ? 引き戻しも甘い! ひと振りずつ丁寧にだっ!」ペシッ

芳佳「はいっ!」ブン

美緒「これは剣術の修練ではない! その意味を考えろ」

芳佳「はい! …………よくわかりません!」ブン

美緒「ならば振り続けろ!」

芳佳「はいぃ!」ブンブン

美緒「足も動かせ」




キトゥン「……すごいね。 朝から」ノゾキ

 
美緒「! 誰だ?」チラ


キトゥン「!?」ドキッ


美緒「……キトゥンか?」

芳佳「――ぇ? キトゥンさん!?」ピタ

美緒「そんな所でどうした? こっちへ来い」


キトゥン(ばれちゃった…!)ガサ


キトゥン「おはようございまぁーす…」スタスタ

芳佳「おはようごさいます、キトゥンさん!」

美緒「本当に起きてくるとはな、驚いたぞ? わっはっは!」

キトゥン「あはは、偶々です」ポリポリ

 
美緒「だが寝巻きのまま外をうろつくのは感心できんな」

キトゥン「ぁ、すみません…」

芳佳「でも浴衣の着方上手ですね! 綺麗に着直してありますよ!?」

美緒「宮藤、あれは襦袢だ」

キトゥン「…これはさっきミーナさんにやってもらったの」エヘヘ

芳佳「へぇー! ミーナ中佐上手―!」

美緒「肌襦袢ではないから、みてくれは問題ないが……一応下着の一種だぞ?」

キトゥン「え゛っ!?」

芳佳「え? でも、襦袢は“見せ下着”だっておばあちゃんが言ってましたよ!?」

美緒「まぁな。 中佐も浴衣だと思ったのだろうし、黙っていれば平気か」

キトゥン「………」

 
美緒「…しかしそうか、此処も中佐から聞いたんだな?」

キトゥン「…は、はい」

美緒「ミーナも早起きだな。 多忙なのだから睡眠ぐらいしっかり取ればいいものを」

キトゥン「……(余計なことは言わないでおこう)」

芳佳「坂本さん! 私も昨日の疲れが抜けてません!」ハイ!

美緒「…そうか。 よし、更に汗をかいて活を入れるぞ!」

芳佳「えぇー! なんでそうなるんですかぁ!?」ガーン

美緒「今寝たら、お前は起きられないだろう?」

芳佳「そんなぁ~」ヘナヘナ

キトゥン(そりゃ昨日あんなに走ってたもんね?)

 
美緒「だらしのない奴だ。 ……まあいい、宮藤は少し休んでいろ」

芳佳「えぇ!? いいんですか!!」

美緒「……何を驚いている?」

キトゥン「やったね、芳佳」

美緒「…キトゥン! せっかくだ、お前も少し体を動かしていけ」

キトゥン「え?」

美緒「私と立ち合いだ、付き合え」

芳佳「坂本さん!?」

キトゥン「えっ! そんな……こんな格好で嫌です(どっちみち嫌だけど)」

美緒「ほんの軽くだ。 裾と袖は私が縛ってやろう」

キトゥン「えー…」


――――
――

つづく

 
キトゥン(なんでこんなことに…)


芳佳「キトゥンさん! 頑張ってくださーい!」

美緒「剣術の心得は無いだろう? 武器は使わん」ポイ

美緒「素手空拳で試合う。 勝ちも負けもない、互いに攻撃を避け、防ぎ、中てるを行う」

キトゥン「…い、いつ終わるんですかそれ?」

美緒「程のいい時点で私が止める。 参ったなら降参してもいいが――」グッグッ

キトゥン「……」

美緒「下手な手抜きはするな。 軽くとは言ったが、手刀も中々に痛いぞ?」スッ

キトゥン(まるで罰ゲーム…)

 
美緒「準備はいいか? 構えていない様だが」

キトゥン(……え~い、もうっ! さっさと終わらせよう!)グッ

美緒「…宮藤! 合図を頼む」

芳佳「あ、はい!」



美緒「……」


キトゥン「……」ゴクリ



芳佳「はじめーっ!」



美緒「――っ…」ダッ

キトゥン「わっ!?」

 
美緒「ふぅっ――」シュッ

キトゥン「ッッ!」バッ


スカッ


美緒「!」

キトゥン「~ッ、…ビックリした!」ザザッ

美緒「……いい反応と身のこなしだ。 やはり私の見立て通り」

キトゥン(速いとか、そういうの以上になんか……怖いっ!)

美緒「どうした? お前も打ってこい」チョイチョイ

キトゥン「ぇ……でも…」

美緒「わっはっは! 心配するな、中る事などまずない」

キトゥン「!」ムッ

 
美緒「(ふふっ…)私を掠めでもすれば、終わりにしてやる。 なんなら勝ちをつけてやってもいいぞ?」ワハハ

キトゥン「………わかりました! 怪我しても知りませんからねっ!!」ダッ

美緒「よし、来いっ!」


キトゥン「やぁ!」シュッ

美緒「!(蹴りか!)」スカ

キトゥン「ふん! やぁっ!」シュシュッ

美緒(多段蹴りが速いな、やはり戦い慣れている。 ここは返さず引――)ササッ

キトゥン「…っ」

美緒「(――! 呼吸が空いた)…は!!」シュッッ

キトゥン「ッ!」バッ

 
美緒「……」

キトゥン「っ……はぁ…」フゥー


美緒(……間合いが甘かったか。 手刀と蹴りでリーチの差が出ているな)

キトゥン(どうしよう…、本当にあたらない!)




芳佳「…キトゥンさんすごい! 坂本さんと互角だ!」

芳佳(バック転で避けるなんて、漫画だけかと思ってた…!)ドキドキ

『ニャアー』

芳佳「?」チラ

ダスティ「……」トテ

芳佳「あ、猫だ(かわいい)」

 
美緒「……」

キトゥン「っ……はぁ…」フゥー


美緒(……間合いが甘かったか。 手刀と蹴りでリーチの差が出ているな)

キトゥン(どうしよう…、本当にあたらない!)




芳佳「…キトゥンさんすごい! 坂本さんと互角だ!」

芳佳(バック転で避けるなんて、漫画だけかと思ってた…!)ドキドキ

『ニャアー』

芳佳「?」チラ

ダスティ「……」トテ

芳佳「あ、猫だ(かわいい)」

 

キトゥン「たっ! やぁ!」シュシュッ

美緒「攻撃のリズムがワンパターンだぞ、キトゥン!」サッ

美緒「…それでは簡単に割り込めるっ!」シュッ

キトゥン「ぅ…!?」カスッ

美緒(…とは言え、長襦袢にハイヒールにも拘らず砂地でこれだけできるのは予想以上だ)

美緒「(よし、だいたいわかった。 一度決めてから〆るか)……未熟ながら講導館剣術門下の腕前、そろそろ披露しよう!」シュダ

キトゥン「!!」

美緒「シッッ!!」ヒュッ

キトゥン「ひゃ!?」サッ

美緒「はぁっ!!」シュシュッ

 
キトゥン「くっ…!」


美緒「――!」


美緒「甘い!!」ガッ

キトゥン(足を…!?)グラ


美緒「(悪いな、少し痛いぞ?)ッ――」シ

キトゥン「っ!!」ブワン


シュンッ


美緒「――!? (外した!?)」スカッ

キトゥン「やぁっ!」

美緒「な…!?(後ろ!!?)」

>>421
投稿ミス

 

ビュッ――


キトゥン「っ…」ザザッ


美緒「……」



キトゥン(…う~、やっぱり外した。 もうどうしようもないんだけど!?)ゼェー

美緒「……終了だ、キトゥン」スッ

キトゥン「…………へ?」

美緒「僅かだが、今のは頬を掠めた。 避けきれなかったようだ」ツンツン

キトゥン「うそ!? やった!」

 
美緒「しかし能力を使っただろう? …残念だが、勝ちはやれんな」

キトゥン「ぁ……バレてました?」ギク

美緒「体制が崩れたあの状態から、急に体が横に流れるわけないだろう」

美緒「そのまま急旋回して後ろをとる所まで含めて常人業ではない。 おまけにいつの間にか跳躍して中段から顔めがけて蹴り下ろすとは」フッ

キトゥン「す、すみませんでした。 つい、うっかり……なんというか」

美緒「わかっている、体が動いてしまったのだろう? 熟練者にはある事だ、気にするな」ワッハッハ

『坂本さぁーん! キトゥンさぁーん!』


タッタッタッ


芳佳「終わったんですか? すごかったですね!」ステテ

美緒「ああ。 キトゥンは空戦だけでなく地上戦にも長けていたな」ウム

キトゥン「!? ……ちょっと芳佳、その抱えてるやつ…!」

 
芳佳「はい! 猫です!」

ダスティ「ニャア」

芳佳「えへへ~」スリスリ

ダスティ「……」

キトゥン(ダスティ!)ガビーン

美緒「…よし、感謝するキトゥン。 いい刺激になった」

キトゥン「あ、いえ。 どういたしまして」

美緒「今日からまた、私もお前に倣って更に精進するとしよう!」ワハハ

キトゥン「……」


(『ウィッチである自分に抗って、ウィッチであり続けようと必死なの』)
(『…でもその矛盾が、余計に彼女の首を絞めてもいるから』)


キトゥン(……あまり張り切りすぎないで欲しいなぁ)

 

昼間

トリオの部屋


キトゥン「ん~~…」モゴモゴ

ペリーヌ「ちょっとキトゥンさん? スプーンを咥えたままそのようにするのは行儀が悪いですわ」

ペリーヌ「そもそも、ティースプーンは口に含むものではありません。 貴女もガリアの淑女なら――」

キトゥン「~~(美緒さん、大丈夫かなぁ?)」モゴモゴ

ペリーヌ「聞こえていましてっ!」

リーネ「ぺ、ペリーヌさん。 大きな声を出すのもあまりお行儀よくは…」

ペリーヌ「なんですか! リーネさん!?」キッ

リーネ「ぁ、その……ごめんなさぃ」

 
芳佳「…キトゥンさん、どうかしたんですか?」ユサユサ

キトゥン「ぇ? …あ、なに? ごめん、聞いてなかった!」

芳佳「なにか悩み事ですか?」

キトゥン「あーっと、悩みってわけじゃないんだけどね。 ちょっと考え事してて、あはは~」

芳佳「力になれないかもしれないけど、私でよければ聞きますから!」

キトゥン「そっ、そんなんじゃないってば!」ワタワタ

ペリーヌ「宮藤さんも相変わらずですわね。 今朝までは自分の悩み事の話をしていたのに」ハァー

リーネ「その悩みもガリアの人達の事だもんね?」

芳佳「…だって、私は皆に……ペリーヌさんにも笑顔でいて欲しいですから!」

ペリーヌ「そっ、そういう恥ずかしい台詞はよしなさいっ! //」プイ

 
キトゥン「……なんの話?」

リーネ「芳佳ちゃんの提案で、近いうちにもう一度ガリアに行けないかなって。 昨日から3人で話していたんです」

芳佳「治療した人達の容体も気になりますし、その……キトゥンさんも何か思い出すかもしれないと思って」

キトゥン「へ? わたしも!?」

ペリーヌ「ええ。 貴女を見つけたあの日、例の公園の近くにいた方を見つければ何かわかるかもしれませんし」

リーネ「復興のお手伝いもまた少し協力出来たらなって…」

キトゥン「そ、そっか。 あはは、そうだね…(記憶はバッチリあるんだけど)」

キトゥン(……でも確かに、記憶はともかく、色々謎なことやヘキサヴィルへ帰る手掛かりが見つかるかも!)

キトゥン「(ネウロイに襲われた国の人達もほっとけないし!)…その考え、わたしも賛成!」

芳佳「ほんとですか! やったー!」

リーネ「よかったね、芳佳ちゃん」ニコニコ

 
ペリーヌ「“やった~”は結構ですけどっ! 実行するにはまだ問題がありますわ」

ペリーヌ「外出申請は控えるよう言われて早速、わたくし達が4人もガリアに行くことが許可されるわけありませんわ」

ペリーヌ「加えて言えば、キトゥンさんを連れ出してよろしいのかどうかも不明ですし」

芳佳「…またガリアの復興支援で行けばいいよね?」

リーネ「芳佳ちゃん、それは無理だと思う…」

芳佳「えぇ? どうして?」

ペリーヌ「先日の派兵だってかなりの無理をして頂いたのに、“またお願いします”なんて言えるわけないでしょう!」

ペリーヌ「501からの正式な支援はすぐには難しいですわ。 わたくし達が個人的に出向くしかありません」

芳佳「で、でもガリアまで外出なんてミーナ中佐は…」

リーネ「……許可してくれないよね…」

ペリーヌ「ロマーニャを護る役目も、決して疎かにはできませんもの。 仕方がありませんわ」

 
キトゥン「…んー、ちゃんと理由はあるんだし、言うだけ言ってみない? ミーナさんならしっかり聞いてくれそう」

ペリーヌ「た、確かにそうでしょうけど……」

芳佳「そうだね! うんっ!!」ガタッ

リーネ「きゃ! 芳佳ちゃん?」

芳佳「それじゃあ、早速言いに行こう!」

キトゥン「よし!」ガタッ

リーネ「え? あの……今から?」


芳佳&キトゥン「そうだよ!」


ペリーヌ(困りましたわ、キトゥンさんも宮藤さんタイプのようですわね)ガク

 

執務室


ミーナ「気持ちはわかるけど……そうねぇ…」

芳佳「お願いします!」

ミーナ「そういう場合、貴女達だけで行かせる訳にもいかなくなるわ。 士官クラスの上官を付けてウィッチが4人も留守にするのは駄目よ」

リーネ「……」

ペリーヌ「……」

芳佳「でも、この前は…!」

ミーナ「宮藤さん? 私は意地悪で言っている訳じゃないの。 わかるわよね?」

芳佳「……はい」

 
キトゥン「ミーナさん、わたしからもお願いします! 帰る方法の手がかりが見つかるかもしれないし」

ペリーヌ「方法?」

ミーナ(キトゥンさん、それ以上はやめなさい)ジロ

キトゥン「!?」

ペリーヌ「?」

ミーナ(…このまま食い下がられたらキトゥンさんがボロを出しかねないわね…。 それに――)

ミーナ「……確かに、貴女の記憶の手掛かりにはなるかもしれないわ?」ンー

ミーナ「上からの指示もあるけど、出来るならキトゥンさんは早く家に返してあげるべきだし…」

 
芳佳「! じゃあ…!?」

ミーナ「………」

ミーナ「…宮藤さんとキトゥンさんの動機はわかったわ。 それで、リーネさんとペリーヌさんだけど――」

リーネ「わ、わたしはその……芳佳ちゃんのお手伝いとか…」

ペリーヌ「はい、ガリア復旧活動の支援です!」

ミーナ「……私も貴女達の志には共感するわ。 だからこそ、また改めて派兵する機会を作ります」

ペリーヌ「えっ! しかしそんなこと…?」

ミーナ「必ず作ります」

ミーナ「…だから、今回は自重できないかしら?」

リーネ「ぅ…」

 
ペリーヌ「…リーネさん、わたくしも残念ですがこう言われてしまっては――」

リーネ「で、でもっ! 野営の診療テントとか……だ、誰が設置するんですか!?」

ペリーヌ「ちょっとリーネさん!?」

ミーナ「輸送機の操縦者を含めて幾人かの基地員が随行します。 補助は彼らに任せなさい」

リーネ「……」

芳佳「リーネちゃん…」

キトゥン「……」

ミーナ「宮藤さんとキトゥンさんに監督者の士官を加えた3人で行ってもらいます。 いいですね?」

リーネ「……了解」

ミーナ「監督者と日程は私の方で指定しますから、ふたりは指示を待って頂戴」

芳佳「…はい」

キトゥン「はーぃ」

またりとつづく

 

宿舎 廊下


キトゥン「一応目的は果たせたけど、なんか後味悪くなっちゃったね?」スタスタ

芳佳「うん…」スタスタ

キトゥン「…仕方ないよ芳佳。 ふたりの分もガリアの人達助けてあげよう?」

芳佳「…………そうだよね。 うん!」

キトゥン「たしか瓦礫の片付けとかあるんでしょ? そういうのわたし得意だから!」

芳佳「はい! 頑張りましょう!」

『なんの話してーんのっ?』


ムギュ


キトゥン「ひゃっ!?//」ビクッ

芳佳「ルッキーニちゃん!」

 
ルッキーニ「ん~♪ 今日はいい匂いだ~」スンスン

キトゥン「(今日は?)…ルッキーニ、ビックリするからそれやめてよ」

ルッキーニ「ねーねー、お風呂入ったの?」

芳佳「朝ごはんの前に坂本さんと一緒に入ったよ。 危うく行水になっちゃうところでしたよね?」

キトゥン「…あー、ホント危なかったね…アレは」

ルッキーニ「……ふーん、だから今日はにお――」

『おーい、ルッキーニ! 何やってんだよお前ー!!』

ルッキーニ「にゃ! シャーリー!」


タッタッタッ


シャーリー「お前さぁ……人に手伝わせといてサボるなよ…」ガク

ルッキーニ「ちがうよぉ~! 今から聞き込みしようと思ってたんだもーん!」

 
キトゥン「聞き込み?」

芳佳「なにかあったんですか?」

シャーリー「いや、別に事件とかじゃないから。 …ちょっとルッキーニの探し物をさ?」

芳佳「何探してるの、ルッキーニちゃん?」

キトゥン「……(…あれ? これってなんか前にも――)」

ルッキーニ「あのねーぇ、こないだの黒猫! さっき見つけて追いかけてたの!」

芳佳「えぇ! まだ追いかけてたの!?」

キトゥン(やっぱり!)

シャーリー「ていうかあの猫、キトゥンの使い魔だろ? この前一緒に飛んでたじゃん。 あたしにフラッシュかました奴」

キトゥン「あ、それは……ごめん!」

シャーリー「ん? あはは! 別にキトゥンのせいじゃないよ」

 
シャーリー「でも当事者には仕返ししないとなぁ~。 ……肉球フニフニしてやるか!」

キトゥン(ダスティも大変だ…)

芳佳「キトゥンさんの猫って……朝の、あの猫?」

キトゥン「そうそう、気儘でなまいきな奴。 一応ダスティって言うんだけど」

芳佳「キトゥンさんの使い魔だったんだ!?」

キトゥン「使い魔? ……まぁ、確かにそんな感じなのかな?(ちょっとかっこいいかも!)」

シャーリー「おもしろいよなぁ、体外で使役するなんてさ?」

芳佳「なんか本当に使い魔って感じがしていいですね!」

キトゥン「…芳佳達にもいるの、使い魔?」

芳佳「はい! いますよ」

 
シャーリー「…本当になんにも知らないんだな?」フィィン ピョコ

キトゥン「!?」

シャーリー「これだよ」チョイチョイ

キトゥン「そっ、それ〈獣耳〉本物だったんだ!? てっきりかわいい衣装かなんかかと――」

シャーリー「あははは! そんなふざけたことはしねぇよ」シュルル

キトゥン「ぇ…」


シャーリー「でもいいな、それ?」

ルッキーニ「あたしはパンサー!」ガオー

シャーリー「…宮藤は犬の格好してさ?」クスクス

芳佳「えぇ! は、恥ずかしいですよぉ!」

キトゥン「……(わたしは近いことした経験あるよ、芳佳)」

 
ルッキーニ「よしかー! ワンっていってぇ? ワンッ!」

芳佳「え、えぇ? ……わん」

ルッキーニ「ガオー!!」ダキ

芳佳「えぇぇ!? どういう事っ!?」

ルッキーニ「よしか~! ワンだってばぁー?」

芳佳「わ、わん!?」

ルッキーニ「ガオー!」ギュー


キトゥン(和むなぁ…)


シャーリー「……そんじゃあたしは用があるから、またな?」ポン

キトゥン「あ、うん」

 
ルッキーニ「――あっ! 待ってシャーリー、猫まだ捕まえてないよ!?」

シャーリー「ちぇ、覚えてたか…。 あたしユニット弄りに戻りたいんだけど?」

ルッキーニ「ん~~~やだ~~!」グリグリ

芳佳「る、ルッキーニちゃん! 私はシャーリーさんじゃな……くすぐったいっ//」

シャーリー「駄々こねんなって」

ルッキーニ「~……」

シャーリー「明日また付き合ってやるよ?」

ルッキーニ「……芳佳のムネ、かたぃ…」ギュ

芳佳「ルッキーニちゃん!??」

 
キトゥン「(ん~…ここはひとつ、ダスティ呼んでみるか)…ねぇ、誰かビスケット持ってない?」

シャーリー「? なんだよ急に……腹減ったのか?」

ルッキーニ「………あたしも食べたぃ…」ギュー

芳佳「ルッキーニちゃん。 私、動けないから…そろそろ…」モゾモゾ

キトゥン「えっと、そうじゃなくて。 ダスティ――使い魔呼ぶからさ?」

シャーリー「…? クラッカーならあるけど――」ゴソ

ルッキーニ「!」ピク


ルッキーニ「…ちょうだーい!」ピョン

シャーリー「おいおい」

ダスティ「ニャア」ピョン

シャーリー「うぉあ!? ビックリした!」

 
キトゥン「ほら来た。 こいつ、いやしんぼだから」

芳佳「あはは(ルッキーニちゃんみたい)」

ダスティ「……」

キトゥン「なに? 不服? 間違ってないでしょ?」ジト

ダスティ「……」

シャーリー「ほら、ルッキーニ。 今チャンスだぞ?」ポイ


ダスティ「…………」プイ


シャーリー「あれ? 食わねぇ!」

キトゥン(ダスティもこういう所、人間くさいよね…)

ルッキーニ「捕まえたー!!」ウジュー

ダスティ「!」

 
ルッキーニ「やたー!」ギュ

ダスティ「~!」ジタジタ

ルッキーニ「ほら、見て! キラキラカッチョイイ~!」

シャーリー「ホントだな? 改めて見ると結構かわいいじゃん」ニギ

シャーリー「…肉球もやわらかい」フニフニ

ダスティ「ニャアー!」ジタジタ

芳佳「あの、ふたりとも! あまり乱暴しちゃ駄目ですよ!?」

キトゥン(うーん…、ダスティがかつてないほど人気!)

 

ダスティ「…っ――」フッ

ルッキーニ「にゃ?」

シャーリー「! 消えた!?」


ダスティ「――……」ユラ…

芳佳「わぁ!? え?」

ダスティ「……」ヨジヨジ

芳佳「わわっ! あの…?」

キトゥン「……芳佳のこと気に入ったの?」

ダスティ「ニャア」

芳佳「そ、そうなの? ……えへへ」ナデナデ

 
ルッキーニ「あ~、芳佳! かえしてー!」

シャーリー「宮藤、そいつを渡してくれ? まだフニフニし足りねぇ!」

芳佳「ぅ、えっと…」

ダスティ「……」

ルッキーニ「うじゅじゅ~~…」ジリ

シャーリー「ぐへへ~~…」ジリジリ

芳佳「に、逃げよう! ダスティちゃん!!」ダッ

ルッキーニ「うじゃ! 逃げたっ!」

シャーリー「くそっ! 待てぇー!」


バタバタバタ――


キトゥン「……」

キトゥン「あの調子なら夜は寝そうだね(よかった、よかった)」チラ


キトゥン「――!」


キトゥン「…ん? なんだろう、あんな所に誰かいる…?」ジー

 

???「…」



キトゥン「……芳佳達を見てる…? ていうか、あれ…男の人だよね?」

キトゥン(兵隊の人? でもそれっぽくないし……それにここ、確か女の子しか――)

キトゥン「!!」ハッ

キトゥン「…ま、まさか覗き!! ストーカーとか!?」



???「…」



キトゥン(やっぱり向こうの方を見てる! …芳佳達以外、特に眺めるような物もないよね!?)キョロ

キトゥン「…よーし! わたしが捕まえて問い質してみよう!」チラ

キトゥン「――…!?」


……


キトゥン「…………あ、あれ? いない…!?」

キトゥン「…うそ! あれっ?」キョロキョロ

キトゥン「……」

キトゥン(見間違いだったかな…??)

つづく

 

執務室


ミーナ「ふぅ……」ギシ

ミーナ「……」

ミーナ(ガリアの件、やっぱり美緒に付いてもらうしかないわね。 私が行くわけにもいかないし)

ミーナ「…なんとかキトゥンさんに関する情報が見つかればいいけど」ガサ

ミーナ「……」ペラ

ミーナ(美緒が留守にするとなると、日程決めはミスできないわね…)

ミーナ(予報だと1週間以上は余裕があるはずだけど、1日置きでの敵襲が続いているから……判断に困るわ)ムー

ミーナ「………明日まで様子を見て、何も無ければ直ぐに――」


コンコンッ

 

 
ミーナ「! …誰?」

『私だ、ミーナ。 バルクホルンだ、入るぞ?』

ミーナ「(……何かしら?)どうぞ」


ガチャ


バルクホルン「失礼する」パタン

ミーナ「何か記録書類でも頼んでいたかしら?」

バルクホルン「いや、違う。 ついさっきに、ペテルブルグ基地のロスマン曹長から連絡が来た」

ミーナ「ペテルブルグ……? 502の前進基地から?」

 
バルクホルン「元々ハルトマンへの連絡だったようだが、あいつは寝ているので私が受けた」

ミーナ「……ロスマン曹長からだって言えば、あの子もすぐ起きたんじゃない?」アラアラ

バルクホルン「知らん。 自業自得だ」フン

バルクホルン「…そんな事よりミーナ。 大変なことが起きたかもしれないぞ?」

ミーナ「!」


ミーナ「………聞かせて頂戴」キリ

バルクホルン「今朝、ロマーニャ北部防衛戦線の中枢がネウロイ群の急襲を受けた」

ミーナ「!? …まさか、オラーシャの防衛線が!?」

バルクホルン「心配はいらない。 どちらも502のウィッチが窓際で食い止めて、防衛ラインそのものは無事だったらしい――」

バルクホルン「…の、だが」

 
ミーナ「……“どちらも”って、まさか…」

バルクホルン「……突破された可能性がある」

ミーナ「っ…!!」

バルクホルン「例によってクルピンスキーの奴が後援に補充のユニットを調達しに行った、その折にネウロイと遭遇したそうだ」

ミーナ「……いったいどこから、どうやって…!」

バルクホルン「侵攻させまいと死守していた筈のオラーシャ北部からネウロイが出現して、現場もかなり荒れたそうだが、クルピンスキ―がその場で殲滅したらしい」

ミーナ「独りで、…“群”を!?」

バルクホルン「すべて小型で2桁もいなかったそうだが、まぁ流石だな。 新調したばかりのストライカーは駄目にしてしまったらしいが」

ミーナ(なるほど……噂の“ブレイクウィッチーズ”の1角ね)

 
バルクホルン「最終的に残弾も打ち尽くしたからと、ストライカーを振り飛ばして残敵のコアを爆散させたらしい」

ミーナ「こ、細かいレポートね?」

バルクホルン「また聞きだがな。 ロスマン曹長も慣れた様子だった」

ミーナ(502の隊長に同情するわ…)

バルクホルン「それともうひとつある、ミーナ」

ミーナ「?」

バルクホルン「こちらの方が我々にも関係があるかもしれないのだが――」

バルクホルン「そのロマーニャ北部のネウロイ出現とほぼ同時に、ペテルブルグ基地も南から襲われたそうだ」

ミーナ「でしょうね。 どちらもということは、信じられないけど、挟撃されたんでしょうから」

バルクホルン「それだけじゃない。 南からのネウロイは今までと大分様子が違っていたらしい」

ミーナ「……様子が違う?」

“オラーシャ”と“ロマーニャ”がごっちゃになって意味不明なので
>>462から投稿しなおします、すみません

>>462-464 ※訂正




バルクホルン「元々ハルトマンへの連絡だったようだが、あいつは寝ているので私が受けた」

ミーナ「……ロスマン曹長からだって言えば、あの子もすぐ起きたんじゃない?」アラアラ

バルクホルン「知らん。 自業自得だ」フン

バルクホルン「…そんな事よりミーナ。 大変なことが起きたかもしれないぞ?」

ミーナ「!」


ミーナ「………聞かせて頂戴」キリ

バルクホルン「今朝、オラーシャ北部防衛戦線の中枢がネウロイ群の急襲を受けた」

ミーナ「!? …まさか、オラーシャの防衛線が!?」

バルクホルン「心配はいらない。 どちらも502のウィッチが窓際で食い止めて、防衛ラインそのものは無事だったらしい――」

バルクホルン「…の、だが」

ミーナ「……“どちらも”って、まさか…」

バルクホルン「……突破された可能性がある」

ミーナ「っ…!!」

バルクホルン「例によってクルピンスキーの奴が後援に補充のユニットを調達しに行った、その折にネウロイと遭遇したそうだ」

ミーナ「……いったいどこから、どうやって…!」

バルクホルン「侵攻させまいと死守していた筈のオラーシャ北部からネウロイが出現して、現場もかなり荒れたそうだが、クルピンスキ―がその場で殲滅したらしい」

ミーナ「独りで、…“群”を!?」

バルクホルン「すべて小型で2桁もいなかったそうだが、まぁ流石だな。 新調したばかりのストライカーは駄目にしてしまったらしいが」

ミーナ(なるほど……噂の“ブレイクウィッチーズ”の1角ね)

バルクホルン「最終的に残弾も打ち尽くしたからと、ストライカーを振り飛ばして残敵のコアを爆散させたらしい」

ミーナ「こ、細かいレポートね?」

バルクホルン「また聞きだがな。 ロスマン曹長も慣れた様子だった」

ミーナ(502の隊長に同情するわ…)

バルクホルン「それともうひとつある、ミーナ」

ミーナ「?」

バルクホルン「こちらの方が我々にも関係があるかもしれないのだが――」

バルクホルン「そのオラーシャ北部のネウロイ出現とほぼ同時に、ペテルブルグ基地も南から襲われたそうだ」

ミーナ「でしょうね。 どちらもということは、信じられないけど、挟撃されたんでしょうから」

バルクホルン「それだけじゃない。 南からのネウロイは今までと大分様子が違っていたらしい」

ミーナ「……様子が違う?」

↑つまりロマーニャは関係なくて、オラーシャの話をしています。

打ち間違いで紛らわしくなってしまいました。すみません

 
バルクホルン「ああ。 ベネツィア上空から来る新型とはまた違う、新たなネウロイとの事だ」

ミーナ「……参ったわね、今度は何角形に進化したのかしら…?」ギリ

バルクホルン「いや、それが。 ロスマン曹長いわく“軟体型ネウロイ”とかなんとか…」

ミーナ「軟体型……? 昔みたいに、有機的な擬態傾向を持っているの?」

バルクホルン「私も詳しいことはわからないが曹長の話によれば、行動パターンから攻撃法などあらゆる面で異質らしい」

バルクホルン「比較的サイズは小さく、撃破も容易だったそうだが……念のためハルトマンを通じて我々にも情報を共有しようとしてくれたのだろう」

ミーナ(…………何かしら、このタイミング。 胸騒ぎがするわ)

ミーナ「……じきに私達にも上から情報が回ってくるでしょうけど…」

ミーナ「そうね…。 私から直接、詳しい話を――」


ジリリリリッ


 
ミーナ「……ごめんなさい、トゥルーデ? 少し待って」

バルクホルン「ああ」

ミーナ「…どうしたの?」カチャ

『失礼いたします中佐ッ! 第504から緊急の増援要請が来ております!!』

ミーナ「え…?」

『数時刻前にヴェネツィアから南東、アドリア西海域からネウロイが大群にて襲来! 現在ロマーニャ北部に侵攻中!!』

ミーナ「!! (西海域から!? そんなまさか…!?)」ザワッ

『アルダーウィッチーズがこれに応戦中ですが、アルプス南方に突如現れたネウロイとの多面戦に戦力を分断され苦戦! 一部の地域に甚大な被害が出ているため救援を求む、とのことでありますっ!!』

ミーナ「…わかりました。 直ちに援軍を送ると伝えて、整備班と管制に対地対応装備とストライカー数機発進の準備を急がせなさい!!」

ミーナ「私もすぐそっちに行きますから、それまで詳しい戦況を聞いておいて!」

『了解ッ!!』

 
ミーナ「…トゥルーデ! 急いで皆を集めて!!」カチャン

バルクホルン「どうした? まさか陸戦か?」

ミーナ「今、ロマーニャにもネウロイが――」


ウゥゥゥウゥゥ――――!!


バルクホルン「!」

ミーナ「――ッ!! 警報!? そんな指示は…」


バタンッ


美緒「ミーナッ!! 敵襲だ!!!」

バルクホルン「少佐!」

ミーナ「……なんですって!?」ガタッ

 
――――
――



ブリーフィングルーム


ミーナ「ネウロイ群の発見位置はこのポイント。 中型2体と無数の小型アンノウンの群れがまっすぐこの基地目がけて西進中です」

シャーリー「どうしてこんなに接近さちまったんだ!?」

エーリカ「しかもこんな大群でね」

美緒「観測班のレーダーがこの距離でいきなり捉えた。 それまで索敵範囲に一切の異常はなかったらしい」

バルクホルン「馬鹿な…!? 奴らは突然現れたというのかっ!?」

エイラ「サーニャだって気付けなかったんだ。 間違いないぞ」

サーニャ「……うん」

 
芳佳「坂本さん! あの、アンノウンって…?」

美緒「無数の中小型反応が2体のネウロイと共に群れを成しているようだが、波長がネウロイのそれとは違っている」

エーリカ「…サーニャン、どう?」チラ

サーニャ「はい……今までのネウロイの反応ではありません」フィィィン

美緒「正体は直接確認する以外にない。 我々の全勢力をもって、万全の態勢で挑む!」

ミーナ「待って坂本少佐」

美緒「――む?」ピク


ミーナ「全員よく聞いてっ! ………基地防衛とは別に、数名は至急ロマーニャ北部へ援軍に行ってもらいます!」


一同「「!」」
 

 
バルクホルン「ミーナ、先程の連絡はまさか…!?」

ミーナ「アルプス近郊を中心にロマーニャ北部も今、北と東からネウロイの挟侵攻を受けています」

ルッキーニ「ぇ…!!?」ドキッ

美緒「何っ!?」

バルクホルン「東からだと!? アドリア海を渡らずにどうやって来たんだ!」

ミーナ「……アドリア西海域からよ」

バルクホルン「そんなはずはないっ!!」バンッ

エーリカ「…んー、私達がうっかり通しちゃった?」

美緒「それこそ有り得ん筈だが…」

 
ミーナ「時間が無いわ! いいから全員聞きなさい!」

ミーナ「…今は504のウィッチーズが分隊してそれぞれ死守していますが、東部の防衛は市街地を巻き込む戦場になってしまって非常に厳しい状況です」

ルッキーニ「そ、そんな……ロマーニャが…ぁ……」

シャーリー「ルッキーニ落ち着け。 大丈夫、…大丈夫っ」ギュ

ミーナ「敵の数は飛行型と……どういう訳か地上型も大量にいて、住民避難と合わせて人手が足りていないわ」

ミーナ「そういうことで私達501に緊急支援の要請が来ています」

美緒「……しかしミーナ。 こちらもそう戦力は割けないぞ?」

ミーナ「わかっています! …だから2名。 私達からは至急ふたりのウィッチに北へ飛んでもらいます」

バルクホルン「……」

エイラ「……」

芳佳「…ミーナ中佐! 私が――」


ルッキーニ「あだしがい゛ぐっ!!!」

 

 
芳佳「!」

ミーナ「……覚悟はあるの? ルッキーニさん」

ルッキーニ「あだしが…っ……ろま゛…にゃ゛を………ぅぐっ…」ポロポロ

ミーナ「……」

ルッキーニ「あだ……あだし…のぉ゛……っ~、…ぅぇぇえ~」

シャーリー「…ああ。 わかってるよ、ルッキーニ。 よしよし」ナデナデ

美緒「泣くな、ルッキーニ」

芳佳「ルッキーニちゃん…」

ルッキーニ「うぇえ~~ぅ…っ、……ぅあぁ~」エグエグ

 
ミーナ(困ったわね。 これじゃあルッキーニさんはどちらにも出せそうにないわ…)チラ

美緒(駄目だ、現状でルッキーニの穴は大きすぎる。 どうにか持ち直させるしかない)フルフル

ミーナ「……美緒…」

シャーリー「中佐、…援軍にはあたしとルッキーニで行きます!」

ルッキーニ「~~…っ! しゃぁ…りぃ……?」グス

シャーリー「心配すんなよ、あたしも一緒だから。 ネウロイぶっ倒しにいこう」ニコ

ルッキーニ「! ……ぅん…、う゛んっ!!」ギュ

美緒「大丈夫か、シャーリー?」

シャーリー「任せてください。 こいつに無茶はさせません」ナデナデ

美緒「ふむ、わかった。 ……中佐?」チラ

ミーナ(…確かに、それ以外に選択肢はないわね)コク

 
ミーナ「ではシャーリーさんとルッキーニさんの2名はハンガーへ急ぎ、装備を整えて504の支援に向かいなさい!」

シャーリー「了解! …立てるか、ルッキーニ? 走るぞ」スク

ルッキーニ「~グスッ……。 だ、だいじょぶ…」ヨロ


ダッタッタッ――


芳佳「ルッキーニちゃん…」

リーネ「大丈夫だよ、芳佳ちゃん。 シャーリーさんがついてるもん」ニギ

芳佳「…うん」

 
ペリーヌ「……ルッキーニさんの為にも、これ以上ネウロイに好き勝手を許すわけにはいきませんわ!」

サーニャ「ペリーヌさん…」

エイラ「……」

バルクホルン「お前達!! 感傷に浸っている暇などないぞ!」

ミーナ「その通りよ。 敵の情報は少ないけど、もう間近まで迫られています!」

ミーナ「私達は坂本少佐の率いる先行と、私の指揮する後続部隊に分かれて目標へ向かいます!」

美緒「よし! 直ぐに出撃だ!!」


――――
――

 
宿舎 廊下


バタバタバタ――


キトゥン「美緒さん! ミーナさん!」バッ

美緒「――!」タッ

ミーナ「……キトゥンさん!?」

キトゥン「わたしも手伝います!」

美緒「お前、…ここで聞いていたのか?」

キトゥン「シャーリー達の行き先を教えてください!」

ミーナ「駄目です」

美緒「……口で言ってわかる程の土地鑑は、お前には無いだろ」

キトゥン「なら――」

美緒「詳しく教える時間も今は無い。 お前も聞いていたならわかる筈だ」

ブリーフィングルームが宿舎にあるのはおかしい気がするので、↑はただの廊下ということで

度々すみません

 
キトゥン「ぅ……でも、わたしも…!」

ミーナ「そもそも、貴女を独りで基地の外に出す訳にはいきません。 ましてや戦地になんて」

キトゥン「そんなこと言ってる場合じゃないですよ!」

ミーナ「貴女は軍人でもなければウィッチでもないの。 直ぐに部屋へ避難しなさい」

美緒「…いや、それは待ってくれ中佐」スッ

ミーナ「えっ?」

美緒「………キトゥン。 ネウロイと戦う気なのか?」

キトゥン「もちろんっ! みんな酷い目にあってるんですよね!? なら助けなくちゃ!」

美緒「…命を捨てる覚悟はあるか?」

キトゥン「え!? ……ぇっと…、いちいちそんな事は…」タジ

 
ミーナ「ちょ、ちょっと坂本少佐!」

美緒「……ならば“生きて帰る覚悟”はあるか?」

ミーナ「!」

キトゥン「! ………はい! 望むところっ!」ムッ

美緒「……よし、付いて来い。 派兵には出せんが、ここで共にネウロイを迎撃するぞ!」

ミーナ「何言ってるのよ美緒っ!?」

キトゥン「でも、シャーリー達は――」

美緒「お前のスピードでは追いつけん。 向こうはあいつ等に任せろ」

キトゥン「…………わ、わかりました。 なら私も美緒さん達と一緒に行きます!」グ

美緒「うむ! もう時間も無い、行くぞ!」

ミーナ「やめなさい!!」グイッ

 
美緒「……中佐、今は戦力が欲しい時だ」

ミーナ「無茶言わないで! よりにもよって、こんな不確定要素の多い危険な戦場にキトゥンさんを連れていくなんて!!」

美緒「いや、この状況……むしろキトゥンなら何か視えるかもしれん」

ミーナ「ッ! そんなまさか…!?」

美緒「それに、こいつは必ず戦力になる! 我々の一員としての覚悟も、今聞いた通りだ」

キトゥン「……ごめんなさいミーナさん! わたし、行きます!!」ダッ

ミーナ「キトゥンさん!? 待ちなさい!」

美緒「私を信じろミーナ! …急ぐぞ!」ダダッ

ミーナ「あっ、美緒!?」

つづく

 
ロマーニャ北部


――ビゥゥウン


シャーリー「……市街地区に入ったし、そろそろ見えてくるころだな…」ブゥゥン

ルッキーニ「まだ人がたくさんいる……」ブゥゥン

シャーリー(…にしても、風が強いな。 この辺の夏にこんな気流が出るなんて聞いたことないけど)

ルッキーニ「……ねぇシャーリー?」

シャーリー「どうしたルッキーニ? もうちょい飛ばすか?」

ルッキーニ「…なんでキトゥン、一緒に来ちゃ駄目だったの?」

シャーリー「……」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

キトゥン『シャーリー! 待って!』グイ

シャーリー『あだっ! …なんだキトゥン? 今急いでるから――』

キトゥン『わたしも行く! 街の人たちを助けなきゃ!』

シャーリー『――…。 お前…!』

キトゥン『っ…』ジ

シャーリー『……わるいけど、ダメだ』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


シャーリー「……あいつのスピードに合わせてたら援軍が間に合わなくなるかもしれないだろ? それに、勝手に連れて行く訳にもいかねぇし」

 
ルッキーニ「意地悪じゃないの?」

シャーリー「ちげぇよ。 キトゥンは本気っぽかったし、実際ネウロイとも戦えるから、個人的には協力してやりたかったさ」

ルッキーニ「キトゥンもロマーニャを…?」

シャーリー「ああ。 だからあいつにガッカリされない様に、守らなくちゃな! あたし等で」

ルッキーニ「うん! 絶対ロマーニャはあたしが守るんだからっ!!」

シャーリー「………見えたぞ! あそこだ!!」

ルッキーニ「!? なんか変なのが飛んでる!?」

シャーリー(ネウロイ? …ウィッチが戦闘中っぽいけど、他のウィッチはどうしたんだ?)ジー

シャーリー「……こちら、501のシャーロット・E・イェーガー大尉! 要請を受けて援軍に来ました! …聞こえますかっ!?」

シャーリー「………だめだ、やっぱり周波数が合ってねぇ!」

ルッキーニ「シャーリー!」

シャーリー「…うし、ならこのまま突っ込むぞルッキーニ! 例の新技だ」

 
――――
――



某市街 上空


醇子「…っ……コアはあとひとつ…!」ブゥウン

醇子(こんな所で時間を使うわけには……)


ネウロイ?「…」ズズズ


ボッボボボッ


醇子「くっ、また…!」

醇子(……回避じゃ駄目! 遅さに惑わされないで)パァア


ボボッボボボボ


醇子「うっ……ぐ! (しまった! こんなに攻撃が厚いなんて!?)」パァァ

 
ネウロイ?「…」


醇子(シールドを解く隙が……身動きが取れない…っ)


ネウロイ?「……」ズズ


ボボボッボ――



『音速! 神風アタァーーーーック!!!』

『くぅらぇえーーーー!!』



ヒュゴォォオオォオ


バキィイイィン


ネウロイ?「ッ…」

 

ネウロイ?「」シュゥゥ…



醇子「……えっ!?」


ブゥゥウン


シャーリー「ちっくしょー…、やっぱりルッキーニだき抱えたままじゃ音速は出ねぇか」

ルッキーニ「でも出てたら、ジュンジュンもやっつけちゃうとこだったよ?」


醇子「シャーリーさんに……ルッキーニさん!!」


シャーリー「ども! 援軍ですよ、竹井大尉?」ピシ

ルッキーニ「ジュンジュ~~ン! ひっさしぶりぃー!」ダキ

醇子「こ、こんなに早く来てくれるなんて…!」

シャーリー「これでも抑えた方ですよ!」ドヤ

 
ルッキーニ「ジュンジュンひとりなの? ニッキーは!?」

醇子「中島さんはアルプス方面へ行っているわ。 こっちは私と赤ズボン隊の皆でなんとかしてるけど…」

醇子「民間人の避難誘導や、敵の数が多すぎて皆散り散りになってしまったわ」

シャーリー「…でも殆ど片付いてるみたいですね? 地上型のネウロイもいないし」

ルッキーニ「やった! ロマーニャ守れたんだ! ありがとージュンジュン!」ギュー

醇子「……いいえ、まだ油断できないわ。 これで4度目だもの」

シャーリー「え?」

醇子「こちら竹井、皆無事!? 501から援軍のウィッチが到着したわ!“次”が来る前に一度集合して、体制を立て直すわよ!」

『大尉~! 街の人の避難がまだだよぉー!』ガザ

醇子「ならマルチナさんはそのまま避難誘導を続けて! フェルナンディアさん、ルチアナさん、アンジェラさん! 残存敵機の数は?」

『な、な~んとか掃除は完了したわ~。 でも、これ以上はもう御免よぉ……っぜぇ』

『隊長、しっかり! ……こちらは3人全員無事です。 地上の敵も掃討完了しました』

 
醇子「了解。 それじゃあ急いでポイント零に集合」

『了解!』ガザ

シャーリー「どういうことです? 敵がまだ来るんですか?」

ルッキーニ「えぇっ!?」

醇子「ハッキリとはわからないけど、恐らく続くわ。 だからこそ、あなた達を呼んだの」

シャーリー「わからないって……アドリア海を渡って西から来る事はもうないですよ。 今、あっちも戦闘中ですから」

醇子「501も!?」

シャーリー「地上型がどうやって海を渡ったか不思議ですけど、坂本少佐たちが食い止めてますから。 あたし等も住民の救助手伝いますよ」

醇子「…いえ、待ってシャーリーさん! 西海域から侵入したのは“ネウロイだけ”で、アレは違うの」

シャーリー「?」

ルッキーニ「“アレ”ってなにー?」

 
醇子「……ネウロイのようなもの。 もしかしたらネウロイなのかもしれないけれど…」

シャーリー「! …まさか波長が違う、アンノウンじゃ?」

醇子「そうよ。 あなた達がさっき最後のコアを破壊して倒したのもそ――」


……ゴォォォオオオオォオオ


醇子「!」

シャーリー「!? なんだいったい!? ……空に…渦?」

ルッキーニ「にゃっ!? なにあれ!??」

醇子「……やっぱり、まだ来るのね。 さっきより間隔が早いわ」


ゴォォオオォオ

 

 
醇子「ふたりとも、暴風に流されないように注意して!」

シャーリー「ぐっ!! 異常な気流の原因はこいつかよっ!」ブゥゥン

ルッキーニ「うじゃっ!? しゃ、シャーリーー!!」グラ

醇子「ルッキーニさん!?」

シャーリー「…掴まれっ!! ルッキーニ!」ガシッ


シャーリー「っ……んのぉ…!!」フィィイン

ルッキーニ「~ぅ…」


醇子(魔法念動力でルッキーニさんごと持ち堪えてる!? すごい…!)

 

ゴォオォオオォ……


シャーリー「…お、収まったか。 ふぅー…久々やったけど、キトゥンのおかげでイメージし易かったな」

ルッキーニ「ありがと…しゃーりぃ……」ギュ

シャーリー「おしおし」ナデナデ

醇子「危なかったわね…―― っ!」

醇子「……シャーリーさん、ルッキーニさん、ごめんなさい。 やっぱりあなた達の協力が必要みたい」

シャーリー「!」


もぞ…


…わらわらわらわら――



シャーリー「……なっ、なんだこいつら!!?」


 

 
一方

アドリア海 上空


美緒「……」ブゥゥン

キトゥン「美緒さん、あの……大丈夫ですか?」ビュゥウン

美緒「何がだ?」

キトゥン「え……あ、いやあの~…」

美緒「何を心配しているのか知らんが、いらぬ世話だ。 お前こそ“息切れ”に注意しろ?」

キトゥン「あ、はい。 というか…――」

美緒「そろそろか? 掴まれ」スッ

キトゥン「……すみません。 こんなに速いと、すぐ切れてきちゃって」ニギ

 
キトゥン「っ…」フッ…

芳佳「だ、大丈夫ですかキトゥンさん!?」ブゥゥン

キトゥン「うん、平気。 もう少しで回復するから…」

エーリカ「回復しちゃうんだ!? すごい!」ブゥゥン

バルクホルン「いや、こんな頻繁に魔力切れを起こしていたら意味ないぞ」ブゥゥン

エーリカ「キトゥンはストライカー履いてないんだから、無茶言わないでよトゥルーデ~」

バルクホルン「私は、こんな様で戦場に出るなと言っているんだ!!」

ペリーヌ「わたくしも大尉のご意見に同感ですわ! すぐにお戻りなさいっ!」ブゥゥン

キトゥン「……あ、回復しました」ブワァン

エーリカ「はやっ!?」

美緒「よし、離すぞ?」

 
バルクホルン「少佐ッ! 部外者を巻き込んで、責任は取れないぞ!?」

キトゥン「……」

芳佳「ば、バルクホルンさん!」

美緒「…キトゥンはお前達が思っている以上に戦闘慣れしている。 余計な気を使うな」

美緒「こいつの手綱は私が握っているから、お前たちは戦闘に集中しろ!」

キトゥン(わたし、犬!?)

美緒「宮藤はバルクホルン、ペリーヌはハルトマンの2番にそれぞれ付け!」

芳佳「は、はい!」

ペリーヌ「……」

美緒「ペリーヌ! 聞こえなかったか!!」

キトゥン「…ペリーヌさん、ごめんなさい。 でもわたし、皆が辛い思いをしてるのに見てるだけなんて我慢できないから…」

ペリーヌ「………了解ですわ。 少しでも危なくなったらすぐに逃げなさい?」

キトゥン「はい!」

 
美緒「よし。 …だがキトゥン、ペリーヌの言ったことも重要だ」

美緒「お前は航空ウィッチの戦闘訓練は全く積んでいない。 下手に出張ると邪魔にしかならんことを肝に銘じろ! 私のそばに付き、指示があれば直ぐに離脱しろ! いいな?」

キトゥン「ぇ…?」

美緒「返事っ!!」

キトゥン「ひぇっ!? …ぅぅあ、はいっ!」


ガザザッ


ミーナ『先行部隊坂本少佐、聞こえる?』ガザ

美緒「こちら坂本。 …そろそろか?」

ミーナ『ええ。 観測班の情報通り、中型のネウロイがもう貴女の眼でも確認できるはずよ』

美緒「了解」フィィイン

キトゥン(通信機って久しぶりだな…。 あの時は一応わたしも軍人だったっけ)

 
サーニャ『その他、数十のアンノウンもネウロイと一緒にいます』ガザッ

バルクホルン「……ミーナ、このアンノウンだが。 ロスマン曹長の言っていた…」

ミーナ『例の軟体型ね、…可能性はあるわ』

エーリカ「えっ!? ロスマン曹長から連絡あったの!!」

ペリーヌ「な、軟体型…?」

芳佳「なんですか、それ?」

美緒「…中佐、こちらも確認した! 見た事の無い連中だ」

美緒(――ん!? なんだこいつら…、まさか?)

エーリカ「私達にも見えて来たよー!」

芳佳「黒いですね?」

ペリーヌ「なにを当たり前のことを…。 貴女はもっと緊張感を持ちなさい」ハァ

 
バルクホルン「…おかしいぞ? 少佐の魔眼で捕捉できる距離からいくらもなく、我々の眼に見えるなんて――」

キトゥン「……なんか動いてない、あの影?」

美緒「当たり前だ、あれは群の影だ。 …空が不気味なほど黒くなっている」

エーリカ「うわ……蜂の大群みたい」

バルクホルン「くっ!! ダイナモ作戦を思い出す悪夢だ…!」ジャキッ

美緒「接敵が近い!! 全員戦闘態勢を取れ!」

芳佳「はいっ!」

キトゥン「……(またあの硬い奴と戦うんだ…、それも2体)」ゴクリ

ダスティ「…ニャア」ビュゥン

キトゥン「うん、わかってるよダスティ。 やるって決めたんだから…!」

 

ペリーヌ「ハッキリ見えてきましたわね」


エーリカ「…小さいやつらは初めて見るタイプだね?」


キトゥン「………ぇ、うそ…?(まさか――)」ドキッ


芳佳「えぇっ…!? さ、坂本さん! あれって…??」


バルクホルン「なっ! コアが向き出ている!?」


美緒(……やはりか)




キトゥン「――ネヴィッ!!?」


 

501をも巻き込み、各地に来襲する不可解な怪異。

ウィッチーズの面々と徐々に打ち解けながらもキトゥンは、自分の世界へ帰るあても無いまま戦場へ身を投じていく…。

はたしてこの話はまとまるのか!?



(・×・)<来月以降の後編へ、つづく

>>509 誤字

誤: バルクホルン「なっ! コアが向き出ている!?」

正: バルクホルン「なっ! コアが剥き出ている!?」


【おまけ】

>>197にて、某人に連絡を取っていたミーナの会話内容↓ ~



『――重力魔法……ですか…?』

ミーナ「ええ。 私の憶えには無いんだけど、聞いたことないかしら?」

『……すみません。 私もそれは聞いたことがありません』

ミーナ「そう。 …なら、ひとつ目の質問はどうかしら?」

『…それも、正直なんとも申し上げにくいです。 異空間構成論の核心は宮藤博士の研究チームと共に消えてしまっていますから――』

『博士が唯一残された“宮藤理論”も、ブリタニア政府に提出されていたいくつかの資料と、ユニットの基礎構想を記したもの以外は不明なんです』

ミーナ「……素人意見で申し訳ないけど、設計図じゃわからないの?」

『確かに発生条件はわかります。 “ストライカーユニットを反証する”ことはできますが、異空間の詳しい性質……大げさに言ってしまえば、その正体は不確かなままなんです』

ミーナ「…そう。 つまりは、わからないという事ね?」

『すみません…』

ミーナ「いえ、責めている訳じゃないの。 ごめんなさい」

『重力を操る魔法も合わせて、こちらでも少し調べてみます』

ミーナ「ええ。 例の物も貴方宛てですぐに送りますから、そっちはできる限り秘匿にして頂戴?」

『了解しました。 楽しみにしています』

ミーナ「ありがとう。 …それじゃあ、お願いするわね」

ミーナ「……」カチャ


ミーナ「……はぁ、我ながらおかしな考えよね…。 まるでガリレオだわ(…それとも“狼女”かしら)」




(・×・)<以上、待て後半ダナ


(・×・)<雑にあらすじダナ


 遥かなる柱そびえ立つ世界に浮かぶ空中都市ヘキサヴィル…。
その危機を救いちょっぴり評判の重力使い“キトゥン”は、害敵ネヴィの急襲を受けて異世界へ飛ばされてしまう。
彼女が目覚めたそこは、ウィッチと呼ばれる魔法力を持った少女たちが人類の先頭に立ち、侵略者ネウロイと日夜戦い続けている世界であった…。

 ロマーニャ南部を護る第501統合戦闘航空団(ストライクウィッチーズ)の戦闘に介入し、一度は拘束されてしまうキトゥンであったが、501の戦闘隊長“坂本美緒少佐”や同じく扶桑出身のウィッチ“宮藤芳佳軍曹”の助けもあり、徐々にウィッチーズと打ち解けていくことができた。

 宮藤軍曹の提案で共にガリアへ行く事になったキトゥンは、自分の世界へ帰る手掛かりを探ろうと考える。
がその直後、ロマーニャ南北を大量の敵が襲い、キトゥンとウィッチーズは空を翔け戦地へと向かった。

 怪異舞う戦地へ赴いたキトゥンが見たものは、2体のネウロイと……あろうことか無数のネヴィであった。

 
アドリア海上空


キトゥン「……ネヴィ!」フワッ

美緒「なに? ネヴィだと…!?」

キトゥン(なんでこんな所に…? ……でも異次元世界だし、出ないこともないか)

美緒「……キトゥン。 ネヴィとはまさか、お前の国に出たという…?」

キトゥン「…はい、そうです!」

美緒「そうか、あれが……やはり…」

芳佳「さ、坂本さん! あの小さいネウロイ、コアみたいなのがいっぱい付いてますよっ!?」

ペリーヌ「き、気持ち悪いですわ…!」

バルクホルン「……ロスマン曹長の報告通りだ、間違いない! 奴がペテルブルグに出た新型ネウロイだ!」

エーリカ「えっ!? なにそれ!?」

キトゥン(……そうだった。 ここの世界にはネヴィなんて出たことなかったんだ! じゃあどうして急に…!?)

 

美緒「全員静まれ!!」


芳佳・ペリーヌ「!」

バルクホルン「…少佐?」

美緒「敵の正体は掴んでいる。 落ち着いて話を聞いてくれ」

バルクホルン「なんだと? 本当か少佐?」

美緒「ああ。 今説明する」

芳佳「で、でも坂本さん! ネウロイがもうすぐそこまで…!」アワワ

エーリカ「大丈夫だよ宮藤。 少佐の話を聞こう?」

美緒「後続部隊、応答してくれ! こちら坂本、緊急だ! アンノウンの正体がわかった」

 
ミーナ『なんですって!?』ガザ

美緒「敵の正体は“ネヴィ”、…キトゥンの世界の怪異だ」

ミーナ『!? 待ちなさい坂本少佐、こんな所で…!』

美緒「こうなってしまってはもう無理だ中佐。 隠す方がデメリットになる」

キトゥン「…美緒さん」

バルクホルン「……隠す? 一体なんの話だ少佐?」

エーリカ「キトゥンの世界ってなに?」

美緒「質問は後だ、今は黙って聞け」

ミーナ『…………そうね、わかったわ。 続けて頂戴』

美緒「奴らの体表面に点在する目玉のようなものは、厳密にはコアではないが弱点だ! すべて破壊すれば、その個体は消える」

美緒「…そうだったな、キトゥン?」

キトゥン「はいっ! …それからネヴィの攻撃は遅いですけど、こっちを追ってくるので気をつけてください!」

 
美緒「と言うことだ。 2体のネウロイと合わせて、我々は先に打って出る! この数では討ち漏らしが出るだろう――」

美緒「ネウロイは引き受ける! 抜かれた分は任せていいな?」

ミーナ『了解。 …情報があるとはいえ、初めて戦う敵よ? 油断しないで!』

美緒「承知した」

美緒(……しかし想像以上に数が多い! 各個撃破で挑みたいが、ネヴィが例え雑魚であったとしても弱点の全破壊には恐らく一定以上の手間がかかる)

美緒(ミーナの言うように油断もできん。 勢力数も向こうが倍以上となると……個別で当たるのは駄目だっ!)

美緒「……いくぞお前達! 各ロッテで散会!! 突っ込みすぎず、撃型シグマでとにかく数を減らす!」

美緒「但し、2体のネウロイだけは絶対に抜かせるな!!」


「「「了解」」」


美緒「ストライクウィッチーズ、戦闘開始ッ!!」


ブゥゥウン――

"(つ×・)<ゴメン、いっかい寝る

 
美緒「キトゥンッ! ネウロイのコアは視えているか!?」ブゥゥン

キトゥン「はい! ぼんやりとなら」

美緒「よし! 我々はネウロイを討つ! 左の奴からだ、後に続け!!」

キトゥン「わかりました!」ビュゥウン

ダスティ「ニャア」ビュゥン


虫っぽい雑魚ネヴィ「~!」スィー


美緒「……邪魔だッ!!」スラッ


シュパッ――


虫ネヴィ「~」ヒラ

美緒「!! なにっ!?(躱された!?)」

 

キトゥン「――美緒さん!」ズォォオ


バキィン


虫ネヴィ「」シュゥゥ…


美緒「…よくやったキトゥン(……なんという運動性、まるで虫だ!)」

キトゥン「この前のお返しですよ! 美緒さんが追いやってくれたから狙えました」

美緒「ふっ…貸した覚えはないが、そうか。 ……よぉし! 急ぐぞ!?」ブゥゥン

キトゥン「はい!」ビュン

 

雑魚ネヴィ「「~~!」」ウジャ


美緒「2度も外しはしない! はぁあっ!!」スパパァン


雑魚ネヴィ「「」」シュゥゥ…



キトゥン(すごい…!)ガビーン

美緒「ひとつ眼の雑魚共は止まらずに切り捨てるぞ!! 遅れるな!」

キトゥン「い、急ぐよダスティ!」

ダスティ「……」

 

――ブゥゥウン



ネウロイ「…―」



キトゥン「よかった、この前よりは全然小さい」

美緒「油断するなよ?」

美緒(…キトゥンも私もシールドが張れないうえに近接戦闘型だ。 私には烈風丸があるが、こいつにはビームを防ぐ手立てがない)

美緒「……キトゥン、能力はまだ続くか?」

キトゥン「はい! 行きましょう美緒さん!」

美緒「よし、ならばお前は私の真後ろに付け。 いいな?」

キトゥン「え?」

美緒「懐へ入る。 絶対に外れず遅れずに、私の軌道に沿って来い!!」ブゥゥウン

キトゥン「ら、ラジャーっ!」アセアセ

美緒(コアが視える我々ふたりでネウロイを圧倒するのが理想! ……命懸けだが、キトゥンにはこの場でビーム回避に習熟させるっ!)クイ

 

ネウロイ「!」


美緒「来るぞっ!!」フィィイン

キトゥン「っ…!」


ネウロイ「~~!」ビーム


美緒「――っ!」ヒラ

キトゥン「きゃっ!?」ビュン

ダスティ「……」ヒョイ


ネウロイ「~! ~~!!」ビビビー


美緒(よし、この程度なら問題ない!)ヒラヒラ

キトゥン「わっ! ひゃっ!? あ、あぶっ…!!」ビュンビュン

美緒「止まるなぁ!! キトゥン!」

キトゥン「む、無茶言わないで~っ!(死んじゃうーー!!)」

 

芳佳「――…キトゥンさん!?」チラ


虫ネヴィ「~!」スィー


ボボッボッ


バルクホルン「宮藤ッ!!」


芳佳「ぇ? …あっ、わぁ!? 変な黒いのが…!?」ブゥゥン


バルクホルン「下手に避けるな! シールドを張れぇ!!」


芳佳「……あわわっ!」パァア

 
虫ネヴィ「「~~」」ウジャジャ

他 雑魚ネヴィ「「…~」」ワラワラ


ボボボボッ


芳佳「わっ! わぁ!? いっぱい来るぅ!?」パァア


バルクホルン「ッ! ぐぉぉおおぉ!!」ダダダダッ


バキッ バギィイン


虫ネヴィ「「」」シュゥゥ…

雑魚ネヴィ「「」」シュゥゥ…


バルクホルン「よそ見をするな、宮藤!」ブゥゥン

芳佳「す、すみません…!」

バルクホルン「向こうは少佐に任せろ。 ネウロイには私も目を光らせておくから、お前は自分の役目に集中するんだ」

芳佳「は、はいっ!」

 
バルクホルン「…しかしこいつら、存外厄介な敵だ。 追尾性の鈍行弾幕を中距離以上から“置かれ”続けたらまずい」


雑魚ネヴィ「~」


バルクホルン「個々は脆弱だが数が多い…、群がられたら退路はないな」ダダダッ

芳佳「でも、バルクホルンさん!?」ダダダ

バルクホルン「わかっている!(…近接戦で潰していくのは厳しい。 私独りならまだしも、宮藤の戦術レベルでは効率が悪すぎる)」

バルクホルン(……この調子では殆どミーナたちの所へ行ってしまう!)


ガザザッ


エーリカ『トゥルーデー! 射撃で落とすなら攻守分担した方がいいよ?』ガザ

バルクホルン「ハルトマン!? ……余裕だな、こんな状況でこっちまで気を回すとは」ダダダッ


雑魚ネヴィ「「「」」」シュゥゥ…

 
エーリカ『私はめんどくさいから魔法で特攻しちゃうけどね! 次行くよペリーヌ~♪』

ペリーヌ『ちょ、ちょっと中尉! 速過ぎますわ!?』

エーリカ『宮藤を上手に使いなよ~? ……シュトルムー!!』

ペリーヌ『中尉――!!』ガザ

バルクホルン「……相変わらず話を聞かない奴め!(しかし、なるほど…)」

芳佳「ハルトマンさん達すごい…! 消しゴムみたいにどんどん空がきれいになっていきます!!」

バルクホルン「ああ、ペリーヌとならば私もああするだろう」

芳佳「ご、ごめんなさい……私が足手まといに…」

バルクホルン「戦場で泣き言をいうな。 各々に出来る事が必ずある、お前――…いや“私達”はそれをするまでだっ!」

芳佳「バルクホルンさん…!」ジーン

バルクホルン「っ! //」ドキッ

 
バルクホルン「……わ、私の顔より敵を見ろっ! ///」

芳佳「あぁぅっ、すみません!」ワタタ

バルクホルン「……コホン! …宮藤、お前のシールドを使って敵群に接近する」

芳佳「え?」


虫ネヴィ「~…」フラ~


バルクホルン「多少強引になるが、あの追尾弾幕を掻い潜るより反って安全な筈だ――」ダダ


虫ネヴィ「」シュゥゥ…


バルクホルン「…宮藤のシールドならな?」キリ

芳佳「で、でも……あんなにいっぱいいる所に出たら囲まれちゃいますよ!?」

バルクホルン「心配ない。 接近したら私の火力で即殲滅する」

 
芳佳「ぅ…でも…」

バルクホルン「私は仲間を信じている! …宮藤、お前はどうだ?」

芳佳「!(バルクホルンさん…!)」

芳佳「………はいっ、私もバルクホルンさんを信じます!!」グッ

バルクホルン「よし、行くぞ!」ブゥゥン

芳佳「はい!」ブゥゥン

つづく

乙したー
ちな虫っぽいのはモウスイMosui、雑魚の弾とばすくらげっぽいのはジウJiuって名前があるんだぜ
飛行でコア複数のは羽があるならバトウユBatouyue、ボゥトヌのならヌカゴNucago

>>539
情報ありがとうございます。
恥ずかしながら今改めてスペシャルファンブックなどを見直して、設定段階から各ネヴィの名称があったことなど初めて知りました
是非自分でも確認したいので、ご迷惑でなければ情報元を教えていただけるとありがたいです!


※ネヴィの個体名称に関しては、必要に応じて上手く使う努力をしたいと思います。
 が、基本的には今の表記の仕方で書かせていただく方針です。読み辛かったらごめんなさい

「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動 ザ・コンプリートガイド」のP41~48ですなー
今のところコアの数とか動きで把握できてるからDAZEユーザーには問題ないんじゃないかな?

>>542
DAZEのムック本は未チェックでした。ありがとうございます

 

――ビュゴォオオァァ

バキバキバキィィインッッ!!


ネヴィ「「「」」」シュゥゥ…



エーリカ「ふぅ~…っと。 ちょっと休憩」ブゥゥン

エーリカ「…あっちの方はトゥルーデに任せて大丈夫だから、ペリーヌと合流したら少佐たちの方に――」キョロ

エーリカ「――! (あのネウロイ……一体だけ止まったままだ?)」

エーリカ「…………」

エーリカ「(ちょっと突いてみよっか)……ペリーヌ大丈夫―? 遅れてるけど」

『中尉! 後ろですわっ!!』ガザッ

エーリカ「ん?」クル


ネヴィ「「…~~」」ザワザワ


エーリカ「お!」

 
『トネーールッ!!』フィィイン

バリバリバギャァアッ


ネヴィ「「」」シュゥゥ…


エーリカ「……あちゃ~、コア潰しきれなかったのがいたかー」

ペリーヌ「ハルトマン中尉! お怪我はありませんこと!?」ブゥゥウン

エーリカ「ありがとー、ペリーヌ!」

ペリーヌ「…え、ええ。 でも、もう少し緊張感を持ってくださいな……やられる所でしたわ!?」

エーリカ「へーき! 頼りになるペリーヌが助けてくれたからさ?」

ペリーヌ「そっ、そういうことを言っているのではありませんわ! //」

エーリカ「それより、ほら! …次はあっち行くよ?」ビッ

ペリーヌ「え?」チラ

エーリカ「少佐たちがネウロイの相手してるけど、もう片方の様子が変だから!」ブゥゥン

ペリーヌ「あっ、ちょっと中尉!? ………もう! 心強いどころか、付いて行くのがこんなに大変だなんて…!」ブゥゥン

 


変なネウロイ「……」



エーリカ「ペリーヌ! 合わせてー!」

ペリーヌ「了解ですわ!」

エーリカ「それっ! 起きろ!」ダダダッ

ペリーヌ「…どうせなら、そのままやられてしまいなさい!」ダダン



キンキンッ チュンッ


変ネウロイ「……」



エーリカ「!? ……うっそ」

ペリーヌ「んなっ! …銃が全く効きませんわ!?」

エーリカ「…めんどくさいなぁ~」

 

変ネウロイ「……」



エーリカ(おかしいな、反撃もしてこない…?)



変ネウロイ「…―!」ググ…


変ネウロイ「~……、~~っ」ニョキニョキ



ペリーヌ「ひぃっっ!!? な、なんですの!?」ゾク

エーリカ「なんか生えた!? ……気をつけて、ペリーヌ!」



変ネウロイ「~……」

 
変ネウロイ「……――」



エーリカ「……? (こっちに来ない?)」

ペリーヌ「っ…」ゴクリ



変ネウロイ「――…………ッッ!」ギュワァ


ギュンッーー



エーリカ「ぅ…!?」

ペリーヌ「なっ!? ………速い!?」

エーリカ「……私達無視して、なにかする気だ!!」ブゥゥン

 

ネウロイ「~―」ビュゥン


美緒「……くっ! なかなか背中を見せんな、…コアを守っているつもりか!?」ブゥゥン

キトゥン「…美緒さん、わたしそろそろ“息が切れます”!」ビュウン

美緒「今止まれば的だ! 踏ん張れっ!!」


ネウロイ「~~!」ビー


キトゥン「わっ!?」ヒラ

美緒「キトゥン…!」

 
美緒「(仕方ない……まだ温存しておきたかったが)四の五の言っていられないか――」

美緒「…行くぞ、烈風丸」キキッ


キトゥン「ぇ…! 美緒さん!? 止まったら的ですってば!」



美緒「坂本美緒…――」スッ



ネウロイ「―! ~―!」ビビー



美緒「――推して参るっ!!」ビュゥゥンッ



キトゥン「っ!! 美緒さん、危ない…!?」




ビビィィイー――


 

 
美緒「……斬り裂けぇ!! 烈風斬っ!!」フィィイン


ズォオォオオオッ



キトゥン「…え、えぇー!? ビーム切ってるっ!!」ガーン



ズオォオオ――


ネウロイ「ッ!!? ~!」ビュン


美緒「逃がさん! このまま押し切る――」ズォォオ


美緒「 一 刀 両 断 ッ ! ! 」シュバァア


――オオォオァァ


ネウロイ「」パキィ


バリィインッ

パラパラパラ……

 

 
美緒「…はぁ……ふぅ…っ。 …よし」ブゥゥン

キトゥン「す、すご…(赤い弱点まで、正面からまっすぐごり押し…!)」

ダスティ「……」

美緒「…ふぅ」キョロ

美緒(この周辺からネヴィは殆ど消えたか…。 残るネウロイを片付けて、ミーナ達の加勢に急がなければ)

キトゥン「……もう美緒さんひとりいれば解決したりして…?」ムムー

ダスティ「…ニャア」

キトゥン「お! ダスティもそう思う?」

ダスティ「……」フルフル

美緒「…なにをしているキトゥン、今のうちに余力を回復し――」


ガザッ


『少佐ー、キトゥンッ! 危ない!!』

 
美緒「!」ピク

キトゥン「…エーリカ!?」

エーリカ『変なネウロイが高速でそっちに――』ザザ


…ゴゴォォオォ


美緒「――! 2体目かっ!」チャキ

キトゥン「ぅ…!? さっきのやつより大きい!」



変ネウロイ「ー!!」ビュォオ



美緒(…初めて見る型だ、コアはどこだ――)フィィイン

美緒「っ!!(馬鹿な、なんだこいつは…!?)」

 

変ネウロイ「―~!!」モジャモジャ



キトゥン「なっ! なにあれ!?」ギョ

美緒「……この方向、通せば基地に一直線だ。 なんとしても止めるっ!」スッ

美緒「キトゥン! あのネウロイは何か不気味だ、お前は一度距離を取れ!」

キトゥン「は、はいっ(なんかもう、わたしがいた方が邪魔になりそうだし…!)」ワタワタ


キトゥン(……美緒さんなら、また一撃でやっつけちゃうよね?)ビュゥウン

ダスティ「…」

 

美緒(奴のコア……なにか妙だが、残る大物はこいつだけだ。 もう一度烈風斬で――)フィィ

美緒「――っ!」ゾク

美緒「……くっ…、ふざけるな…! 一度放ったくらいで…っ!」ヨロ


変ネウロイ「―~~」


美緒(くそっ、何故だ…! 力が入らない)


変ネウロイ「~~――」チカチカ


美緒「(ビームが来る!)…れ、烈風丸ぅ!!」サッ


変ネウロイ「――…」グル


美緒(なにぃ! 向きを変えた!?)



変ネウロイ「…~~」



美緒「……まさかっ!!(奴の狙いは――)」


美緒「――…キトゥゥウウンッ!!! 避けろぉお!!」

 

まったりつづく

すっごく今更なんですけど、>>27の西暦おかしいです

正しくは『1945年』です。失礼しました

……そうなると、公民権法云々の歴史がおかしなことになってしまいますが、ご愛嬌ということで

 
キトゥン「…あっちの方、よく見えないけど芳佳達がまだネヴィと戦ってるよね。 手伝いに行っちゃ駄目かな?」ビュゥウン

ダスティ「!」ピク

ダスティ「ニャアッ!!」

キトゥン「ん? どうしたのダスティ? ……あ、そろそろ息つぎしろって――」


チカッ…


ダスティ「-ッ!」ガブ

ダスティ「ーーッ!!」グィイー

キトゥン「きゃ!? ちょっと引っ張らないで!」ガク


ビビィィイーー


ヒュンッ


キトゥン「……ぇ…?」

 
ダスティ「ニャア!」

キトゥン「………なに、今の!?」クル



変ネウロイ「~~!」ビュゥウン



キトゥン「げっ、ネウロイ! こっちに来てる!? …美緒さんはっ!?」

ダスティ「ニャア!」

キトゥン「わ、わかってるよ! こうなったらやるしか――」フッ


キトゥン「!」


キトゥン「…………しまった。 能力が切れちゃった!」ガクン


ヒューーーーン↓
 

 
キトゥン(また肝心な時に…っ!! どうしよう、どうしようっ!?)

キトゥン「……ダスティ! お前は逃げて!」

ダスティ「ッ……」グイグイ

キトゥン「ダスティ、やめて!」


変ネウロイ「…ーー!」チカッ


キトゥン「!」


変ネウロイ「~~!!」ビビー


キトゥン(……ごめんっ、みんな…!)ギュ



――ブゥゥウウン

ガシッ

 

 
エイラ「…よっと」ヒョイ


ビュゥンッ↑


キトゥン「…………あれ…?」パチ

エイラ「まったく、お前死ぬトコだったじゃねーか」

キトゥン「ぇ…、エイラ!?」

エイラ「未来が変わってよかったな、ワタシのおかげだぞ?」

キトゥン「???」

エイラ「ところでキトゥン、お前飛べないのか?」ムリナノ?

キトゥン「え? あ、ぅうん……今は力が抜けちゃって…。 もうちょっとかかる…」

エイラ「なんだよソレ? よくそんなんで戦いに来たな~?」ヤレヤレダナ

エイラ「助けてやっから、しっかり捕まってろよ?」

キトゥン「うん…、ごめん」ギュゥ

エイラ「……お前もついて来るんだぞ?」チラ

ダスティ「ニャア」

 

変ネウロイ「~~! ~!!」ビービビー


エイラ「そりゃ!」ヒラ


変ネウロイ「~ー! ーーッ!」ビーム


エイラ「ホホイのホイ~っとぉ!」ヒョイヒョイ


キトゥン「こっここ、怖いぃ!」

エイラ「心配すんなって。 ギリギリだ~けどあたらない~♪」ビュゥゥン


変ネウロイ「~!」ビー


エイラ「~♪」


ジュッ……

 
キトゥン「きゃー! 髪が…!!」

エイラ「うるせーなぁ、髪ぐらいどうだっていいだろー?」

キトゥン「ひどいっ!」ガーン

エイラ「ちょっと先っぽ無くなっただけだろ?」

キトゥン「女の子の髪だよっ!?」

エイラ「(めんどくさいなぁ)………サーニャー、まだかー?」

サーニャ『……丁度よ。 離れて、エイラ』ガザ



バシュゥゥウウゥ


ドガァァアァアアン


変ネウロイ「ッ!!」

 

バシュゥン バシュゥウゥゥ


バゴォオォオン

ドガァアァアアァアン




キトゥン「! 今度はなに!?」

エイラ「サーニャのフリガーハマーだ。 …勝ったナ」

キトゥン「サーニャがやったの!? あの爆発を!?」

エイラ「そうだぞ、スゴイダロ!」ムフフ-


『エイラさん!』

ブゥゥウン
 

 
ミーナ「…大丈夫?」

リーネ「……キトゥンさん!」ブゥゥン

キトゥン「リーネ!?」

エイラ「なんてことないぞ中佐」

ミーナ「……よかったわ」ホッ


美緒「キトゥン!」

エーリカ「ミーナー!」ブゥゥン

ペリーヌ「キトゥンさんっ!」ブゥゥン


キトゥン「……美緒さん!」

 
ミーナ「っ! 美緒! どうしたのっ!?」

美緒「心配するな……少し肩を借りただけだ。 …もういい、すまない」スッ

ペリーヌ「少佐、ご無理は…」

美緒「平気だ、有難う」フワ

エーリカ「……」

ミーナ「美緒…」

美緒「そんなことより……そっちは片付いたのか?」

ミーナ「ええ。 貴女達のお陰で難なく掃討出来たわ……けど――」チラ

ミーナ「…キトゥンさん、後で話を聞かせてもらってもいいかしら?」

キトゥン「は、はい…」

 

ガザッ


バルクホルン『皆ブレイクしろ!! ネウロイは無傷だ! 狙われる!』

芳佳『……私が守ります!!』

バルクホルン『あ、待て宮藤!? お前まで集まってどうする!』ガザザ

キトゥン「無傷って……! あんなに大爆発してたんだよ!?」

エイラ「おっかしーなぁ。 サーニャの攻撃なのに」

美緒「超々速回復か…!?」

ハルトマン「多分違うよ。 超々硬いんだと思う」

ペリーヌ「魔法力を込めた弾丸をはじきましたものね」

リーネ「そ、そんな……」

ミーナ「貴女達、ゆっくり話す時間は無いわ! 散会します!」

つづく

>>568

フリガーハマー → フリーガーハマー

 

変ネウロイ「…~~!」ビー



サーニャ『……みんなッ! 逃げて…!』ガザッ

キトゥン「!」


ブゥゥウン


芳佳「させるもんかぁー!!」バッ


美緒「宮藤っ…!」

キトゥン「芳佳!?」

リーネ「……芳佳ちゃん!!」


芳佳「やぁああ!」パァァア

 

ビィイーー


芳佳「ふんっ……ぐ…!」パァァア

芳佳「……な、なにこれ…!? あぐ……ぅ…っ!」ヨロ


エーリカ「…まずくない!? 宮藤のシールドが押されてる!」

ミーナ「全員で手を貸すわよ!?」

エイラ「リョーカイ! ……キトゥン、もうイイだろ?」

キトゥン「あ、ごめん! ありがとう、もう回復した」

キトゥン「…わたしも芳佳の助けに――」ブワァン

エイラ「お前はワタシと違ってシールド出せないからムリダナ」

ペリーヌ「エイラさん! お急ぎなさいなっ!!」

 

芳佳「っ…」ググ…


――ブゥゥウン


ミーナ「しっかり、宮藤さん」パァア

芳佳「! ……ミーナ中佐!」

リーネ「頑張って、芳佳ちゃん!!」パァア

芳佳「リーネちゃん!」

エーリカ「しっかしとんでもないネウロイだね? 宮藤のシールドを押すなんて」パァア

ペリーヌ「エイラさん、ちゃんとシールドを出さないと承知しませんわよ?」パァア

エイラ「心配すんな。 ツンツンメガネ以外ならヤル気出るから」パァァ

芳佳「ハルトマンさん! ペリーヌさん、エイラさん!」

 
バルクホルン『…わ、私も忘れるなよっ! 宮藤!』ガザ

エーリカ「なに言ってんのトゥルーデ……」パァァ

サーニャ『……芳佳ちゃん待ってて、もう一度ネウロイの動きを止めるから』ガザザ

芳佳「サーニャちゃん!?」



バシュゥウウウゥ

ドガァアアアァアン



変ネウロイ「ッ…」ピタ



バシュ バシュウウウァ

ドガガァァアアァン

 

 
芳佳「ビームが止んだ……はふぅ…」

リーネ「芳佳ちゃん、大丈夫?」

芳佳「うん。 ありがとう、みんな…」

ミーナ「フリガーハマーの破壊力には流石に怯むということね」

エーリカ「…でも怯むだけじゃね~」


ビュゥゥン


キトゥン「サーニャってば、かわいい顔してワイルドキャットだ……!」

ダスティ「……」

美緒「ああ見えて、ミーナの懐刀だからな。 この状況下でも単独遂行を任せられる腹心のひとりだ」ブゥゥン

芳佳「坂本さん! キトゥンさん!」

ミーナ「ちょ、ちょっと美緒。 恥ずかしいからやめて」

エイラ「サーニャをソンナメデミンナー!」

ペリーヌ「“そんな目”で見ているのはエイラさんだけですわ」

 
キトゥン「…ありがとう芳佳、また助けられちゃったね?」

芳佳「いえ、そんな! 私これしか出来ませんし」エヘヘ

『いいや、謙遜する必要はない。 宮藤』


ブゥゥウン


芳佳「バルクホルンさん!」

バルクホルン「まったく、ひとりで飛び出して……心配させる」

芳佳「ご、ごめんなさい…」

バルクホルン「だがよくやった!」

キトゥン(…へぇー! ゲルトルートさん、こんな顔もするんだ)

エーリカ「トゥルーデ、そっちは終わったの?」

バルクホルン「ああ、遅くなったが残らず消した。 ……掃討完了だミーナ」

ミーナ「ええ、後はあのネウロイだけね?」

 
美緒「…むぅ……」

ペリーヌ「? …少佐、いかがされましたか?」

美緒「……サーニャ、そのまま残り全弾撃ち込め!」

サーニャ『……了解…』ガザ



バシュゥゥウゥ

ドゴォォアァン


変ネウロイ「ッ……ッ…」


ドゴォォオォゴゴゴ……



…もくもくもく――

 

 
キトゥン「ホントすごいね、あのロケット弾!」

エイラ「ソウダロ? ソウダロ~!」ドヤァ

芳佳「…勝っちゃいましたかね?」

美緒「無理だろう、時間稼ぎにしかならん」

芳佳「ぇ、坂本さん? じゃあなんで…??」

美緒「……皆今のうちに聞け。 あのネウロイについて、幾つかわかったことがある」

芳佳「えぇ! 本当ですか!?」

ペリーヌ「流石少佐ですわ!」

ミーナ「……聞かせて?」

 
美緒「まず奴の狙いだが、恐らくキトゥンで間違いない」

キトゥン「…………えっ、わたし!?」

バルクホルン「……」

美緒「あのネウロイは、目の前で恰好の的だった私を無視してキトゥンを追い撃った……確実に目標を定めて行動している」

リーネ「も、目標……」

芳佳「…どうしてキトゥンさんを狙うんですか?」

美緒「そこまではわからん。 しかしその他は眼中にない程の徹底ぶりだ」

エーリカ「なるほど。 私とペリーヌを無視したあの時も、基地じゃなくてキトゥンの所へ向かったんだね」

ミーナ「…………」

バルクホルン「…やはりミーナも変だと思うか?」チラ

ミーナ「ええ。 ……色々とね」

 
美緒「それから、奴と対峙した際に魔眼でコアを探ったのだが――」

美緒「ネウロイの体表に……何か別な者が取り付いているかもしれん」

ペリーヌ「あ、あの気味の悪い触手ですわ…」

エーリカ「少佐、あれ生えてきたんだよ?」

ミーナ「……あれが別の何かである根拠は?」

美緒「奴の体表で蠢いてるひとつひとつの“殻の中”に、僅かにコアの光が視えた」

キトゥン「うそ!? ……わたし気付かなかった!」

美緒「ほんの僅かだ。 私も始めは見間違いだと思ったが、奴は普通のネウロイではない様なのでな」

ミーナ「まさかネヴィ…?」

美緒「問題はそこなんだが、ネヴィのコアは私の魔眼で透視はできない。 ……筈だ」

 
芳佳「じゃあ、ネウロイですか!?」

美緒「…しかしネウロイと言うにはどうも違う気がする」

エイラ「ハッキリしないなー」

ペリーヌ「お黙りなさい!」ムカッ

バルクホルン「今まで倒したその……ネヴィとやらは、我々でも目視できる位置に弱点があったが?」

ミーナ「…キトゥンさん、なにか知らないかしら?」

キトゥン(触手っていうか…あの蛇みたいな部分、見覚えがあるなぁ)ドヨーン

キトゥン「………あの先っぽの殻の中に、すっごく目玉がありそうなんですけど…」

ミーナ「経験則ね」


エーリカ(……さっきからちょこちょこ置いてけぼり食らうけど。 ミーナと少佐、キトゥンの事で私達に隠しごとしてるな?)

バルクホルン「…ハルトマン、疑問は基地に戻ってから糾弾すればいい」

エーリカ「わかってるよ」

芳佳「?」

キトゥン「……」

 
美緒「ネウロイのコアは超々硬度装甲の中にあって手が出せん。 が仮に、あの異常性が取り付いた者の仕業であれば、先にそっちを叩いて勝機を作れる!」

ミーナ「それで、それがもしネヴィであるなら…」

美緒「ああ。 キトゥンの予感は」チラ




――もくもくもく…


変ネウロイ「…」

変ネウロイ「……」モジャモジャ

蛇ネヴィ「「~!」」ウネ




美緒「……当たったな。 目玉だ」

またりとつづく

 
キトゥン「やっぱりネヴィ…。 エコルの時と似た感じだ!」

ミーナ「…教えて頂戴、キトゥンさん?」

キトゥン「もしかしたらあれ、ネヴィに操られているかもしれません」

ミーナ「………まさか本当に、そんな事が…!?」

美緒「その場合、ネヴィを倒すとどうなる?」

キトゥン「……一応“元に戻る”と思いますけど…。 たぶん」ゴニョゴニョ

ミーナ「弱体化するとは限らない訳ね」

美緒「だがやる価値はある!」

バルクホルン「……つまりあの触手の目玉を全て潰すという事でいいんだな?」

エイラ「うぇー…」ジトー

エーリカ「めんどくさ~」グデー

 
リーネ「あ、あれと戦うの…?」オド

芳佳「が、頑張ろう!!」

ペリーヌ「ぐ……わたくし、あの物体だけは生理的に無理ですわ」


ガザ


サーニャ『坂本少佐……全弾命中しました。 ですが、一部の装甲〈殻〉を除きネウロイ依然健在…。 現在は衝撃で沈黙中です』

ミーナ「サーニャさん、そちらから破壊した装甲の再生は確認できる?」

サーニャ『……いえ、いまの所は…』

美緒「やはりあの箇所はネウロイとは別か…!」

ミーナ「わかったわ。 …貴女は一度帰投して頂戴。 その後は指示があるまで周囲の索敵と基地の護りをお願い」

 
サーニャ『……』

ミーナ「残弾が無ければ戦えないわ。 後は私達に任せなさい」

サーニャ『で、でも……』

キトゥン「…サーニャ! 終わったら今度は一緒にお風呂行こう?」

エイラ「おい! ズルいぞキトゥン!!」

芳佳「あぁっ私も! 私も、サーニャちゃん!」

リーネ「芳佳ちゃんが入るなら…私も…」

ペリーヌ「…も~貴女達、いい加減になさいっ!!」


ミーナ「大丈夫よ、サーニャさん。 ちゃんと全員揃って帰るから」ウフフ

エーリカ「…あんまり言いすぎると逆に縁起悪くない?」

サーニャ『……了解しました…。 …戦線離脱します』ガザ

 


ミーナ「さてと――」フィィィン

ミーナ「……敵の触手は9本。 各先端部にコアがひとつずつあるわ」

美緒「さしずめ九岐大蛇〈クマタノオロチ〉といったところか」

芳佳「い、イソギンチャクにしか見えません…!」

バルクホルン「9本か……ひとり1殺だな」

エイラ「大尉、それってキトゥンも数に入れてないか?」

バルクホルン「仕方ない。 帰したところでアレがキトゥンを追って基地まで行ってしまうんだ」

エイラ「……そうだったな」

エーリカ「だからって独り狙われるキトゥンを放っておくのもおかしいよね?」

バルクホルン「わかっている。 囮になどしない」

キトゥン(おとりって…!?)ガーン

 
美緒「……キトゥンには守備役が必要だ。 となれば――」チラ

美緒「宮藤、お前はキトゥンに付け」

芳佳「うぇ!? は、はいっ!」

ミーナ「ちょっと! 大丈夫なの、坂本少佐!?」

美緒「あふれた1本も私が斬る」

ミーナ「そうじゃなくて…!!」

美緒「どっちも似たもの同士だ、ぶつけでもきっとかみ合う」

キトゥン「……わたし達、似てるんだって?」チラ

ペリーヌ「確かに。 そっくりですわね」ハァ

芳佳「そ、そうですか? えへへ」

キトゥン(あれ、照れるとこ…!?)

 
美緒「心配するな! お前達ならやれる!」ワッハッハ

リーネ「……あ、あの……ネウロイがすぐそこにいるんですけど…」オズオズ

エーリカ「緊張感無いね」

バルクホルン「お前のが移ったんだろ?」ジト


ミーナ「(心配なのは貴女もよ、美緒)……トゥルーデ、エーリカ?」コソ

バルクホルン「ん?」

エーリカ「どうしたのミーナ?」

ミーナ「少佐のフォローをお願いできる?」ヒソ

バルクホルン「…了解」

エーリカ「あ! じゃあトゥルーデ、ついでに私のもお願―い」

バルクホルン「ふざけるな。 我々で2本ずつやるぞ?」

エーリカ「えー……魔法力もう無いよぉ」

 
ミーナ「全員聞きなさい! ネウロイ本体が沈黙しているうちに、あの触手のコアを破壊します!」

ミーナ「今ならビームは来ないと思うけど、宮藤さんはキトゥンさんの護衛に付きなさい! 他は各自散会で各個撃破を目指します!」


「「「了解」」」


ミーナ「キトゥンさん、宮藤さん。 絶対に無理はしないで!」

キトゥン「は、はーぃ…」キョロ

芳佳「わかりましたっ!」キリ

ミーナ「……」


エイラ(ウソくせー)

ペリーヌ(嘘っぽいですわ)

エーリカ(嘘だねぇ~)


――――
――

ツヅク

 
キトゥン「やぁ!」ズォォオ


バキィン


蛇ネヴィ「」シュゥゥ…


キトゥン「よし、こっちも1体倒した!」フワッ

芳佳「はぁ……ふぅ…」

キトゥン「…芳佳、大丈夫? 肩で息してるけど…」

芳佳「は、はい……ちょっと魔法力を使い過ぎたけど…平気です!」ゼェー

キトゥン「そうは見えないけど…」


ガザザッ


ミーナ『皆、残りの触手は2本よ! 本体がいつ動き出すかわからないから注意して』ガザ

キトゥン「ミーナさん、芳佳が――」

芳佳「だ、大丈夫です!! わー、わー!!」

キトゥン「ちょっと芳佳!?」

 
ダスティ「……」



変ネウロイ「……-ッ…」



ダスティ「…!」ピク





……コォォ…



ダスティ「……」

ダスティ「ニャア!」カプ

キトゥン「ひゃっ!? ……ダスティなに? 太もも噛まないで!」ペシ

 
ダスティ「……」クイ

キトゥン「…なにったら?」チラ


ゴォォオォオオォオオ


キトゥン「…ぇ……、重力嵐…!?」

芳佳「!? なに、あの渦!?」

ミーナ『全員上空に注意してっ! なにか巨大な影が――』ガザ

美緒『なんだこれは!?』


ゴォオオォオォォォオ


リーネ『きゃぁあー!!』

エイラ『リーネ! あぶない!!』

芳佳「リーネちゃん!? どうしたの! 大丈夫!?」

キトゥン「…みんなっ、重力嵐だ! 吸い込まれないように気を付けて!!」

 
バルクホルン『嵐だとっ!? これが――…ぐっ!』

エーリカ『も、もう踏ん張りがきかないよ……っ』

ペリーヌ『魔法力が…』

美緒『ぐ………踏ん張れぇ!!』


芳佳「み、みんな――…わっ!??」グラ

キトゥン「――!! 芳佳ぁー!」


芳佳「わぁぁっ!」ヒュゥ~


キトゥン「ッッ!(重力グラブ……届けぇ!!)」ブワァン



芳佳「!?」フワッ


 
キトゥン「……と、届いた。 よし!」

ダスティ「ッ……ニャア!」

キトゥン「わかってるよ! わたしが吸い込まれたら意味ないことくらい」ビュゥン

芳佳「なっ! なんですかこれ!?」フワフワ

キトゥン「えっと、無重力ってやつ? 重力嵐が止むまで私が芳佳を“掴んで”るからね!」

芳佳「えっ!? えぇぇ!?」



ゴオオォオォ…………


オォォ……


……


 
キトゥン「……止んだ」ホッ

ミーナ『皆大丈夫!?』ガザザ

美緒『なんとか無事だ』

エイラ『ワタシとリーネも平気だぞ』

バルクホルン『こちらも生きている』

エーリカ『し、しんど……』

ペリーヌ『…ですわ……』

キトゥン「私達も大丈夫です! ……芳佳“離す”よ?」

芳佳「え? あぁ、待ってくださいっ! さ、逆さまのままで――」グルグル


バルクホルン『ッ!? …待て! なんだこいつらは!!?』

キトゥン「!?」
 

 

雑魚ネヴィ「「「「…~」」」」ウジャウジャ

ネヴィ「「~~」」ワラワラ



芳佳「…ね、ネヴィ!! なんでっ?? どこから!?」

キトゥン「……重力嵐だ…(やっぱり、ここでもこうなっちゃうの?)」

エイラ『おい! 冗談じゃないぞ!? モッカイ最初からやれってのか!?』

リーネ『そんな……だって、あんなネウロイもいるのにどうやって…?』

バルクホルン『流石に、弾も魔法力も持たないぞ…!』

ミーナ『皆落ち着いて、撤退か応戦か判断するわ!』

美緒『いや。 ……この最悪なネウロイを残して、引く訳にはいかない』

ミーナ『坂本少佐…!』

キトゥン(美緒さん?)ピク

 

変ネウロイ「……~」ググ

変ネウロイ「~~…、……!」グググ



美緒『……奴が動き出した』

芳佳「えぇぇ! ど、どうしよう!? ネヴィもいっぱいいるのに!」

エーリカ『またあのとんでもないビームが来るわけ!?』

ミーナ『っ……キトゥンさん!! 貴女は早く逃げなさい! 狙われるわ!!』

キトゥン「えっ!? でも…」



変ネウロイ「~~ッ!」ニョキニョキ

蛇ネヴィ「「「――…」」」ウネ



美緒『ッ!!! 馬鹿なっ!?』

芳佳「……触手が、再生したぁ!?」ガーン

エイラ『フザケンナーッ!!』

バルクホルン『待て! あれはネウロイでは無いんじゃないのか!? コアも破壊した筈だ!』

ペリーヌ『中佐…! わたくしたち、どうすれば――』

ミーナ『っ……!!』

 
キトゥン(…ネウロイだけでもなんとかしなきゃ!)

キトゥン「……もう、こうなったらマイクロブラックホールで――…それであの親玉はイチかバチかダスティと合体すれば…」

芳佳「(や、やっとバランスが取れそう!)キトゥンさん、もう離して平気で――」フワフワ


ガザッ


美緒『こうなれば本丸を討つ!! 私の真・烈風斬でっ!!』

キトゥン「!」

芳佳「ぇ? 坂本さん!?」

ミーナ『や、やめなさいっ! 坂本少佐!!』

バルクホルン『独りで突っ込むなんて無茶だぞ少佐!』

 
美緒『ぉおぉおおおおっ!!』

キトゥン(美緒さんが敵群の中に…!?)

ミーナ『やめてぇ!! 美緒―ッ!!!』


キトゥン「っ!!」キッ


キトゥン「美緒さん!」ビュゥウン

芳佳「うあぅ!?」グン


ビュゥゥウウン


芳佳「き、キトゥンさん??」

キトゥン「芳佳、シールド出して! 今から突っ込む!」ビュゥウン

芳佳「えぇぇ!? あ、あのっ…! 私、このまま運ばれちゃうんですか!?」

キトゥン「お願い! 美緒さんを助けなきゃ!」

芳佳「!」

芳佳「…わかりました! やりましょう!!」

キトゥン「……いくよぉー!」ビュゥン

つづく

 

ネヴィ「「~~」」

変ネウロイ「~…」


美緒(たとえどんな硬度だろうと、真・烈風斬さえ撃てれば!)ブゥゥウン

美緒「烈風丸……力を貸せぇ!!」フィィイン

美緒「――ッ…! ぅぐ…!?(くそっ、…また身体が――)」ゾク


――ビュゥゥウゥン


芳佳「坂本さぁーん!」パァア

キトゥン「まったぁー!」ビュゥゥン


美緒「!?」


芳佳「キトゥンさん、これからどうするんですか?」パァア

キトゥン「任せて! 捕まえる」ビュゥン


美緒「来るなっ! お前達!!」


キトゥン「ミーナさんが、無茶するって心配してますから!」ブワァン

美緒「なっ!!? …おい、やめろ!」フワッ

キトゥン「交代しましょう! 今度はわたしがやりますっ」

美緒「離せ、キトゥン!」フワフワ


ネヴィ「!」

変ネウロイ「!」


キトゥン「(ぅ、囲まれる)……芳佳、美緒さん。 “投げる”から逃げてください!」

芳佳「えっ??」

美緒「なにを――」

キトゥン「ごめんなさい!」バシュン

 

芳佳&美緒「「――っ!?」」グン


ヒュゥーーーーン……


芳佳『わぁぁあぁあっ!!?』




キトゥン(ごめんね、芳佳)

ダスティ「……ニャア」


変ネウロイ「~~-!!」ビーム


キトゥン「! …こいつ!」ヒラ


雑魚ネヴィ「「「~~」」」ウジャー

ネヴィ「「―!」」


ボボッボッ
 


キトゥン「街を襲った大群に比べれば、こんなの!」バッ

ミーナ『キトゥンさん! 貴女までなにをしているの!? 速く逃げなさいっ!』ガザ

キトゥン「…わたし、やってみせます! みんなは離れてください!」

ミーナ『なにを言っているの! 死んでしまうわ!?』

キトゥン「……ほらほら! わたしはここだよー、こっちにこーい!」ビュゥン

ミーナ『やめなさい、キトゥンさん!!』


蛇ネヴィ「「「~~」」」ウヨウヨ

ネヴィ「「~ー!」」ワラワラ


キトゥン「(よし!)…マイクロブラックホール、いくよっ!」

ダスティ「……」ブワァン

キトゥン「はぁあっ……!!!」グッ



シュゥゥウゥウッ……


…カッッ――



――シュバァゥッ

 

バキバキバキィィイィン

蛇ネヴィ「「」」シュゥゥ…





エイラ「ワッ!? なんだっ!?」グラ

バルクホルン「っ…、すごい衝撃波だ。 あいつ、一体なにをした!?」

ミーナ「キトゥンさん…!?」

リーネ「あ、あれ見てください! 空が歪んで…!?」

ペリーヌ「……!? 真っ黒い穴も空いてますわ…!」

エーリカ「わ、すご…! 敵が全部吸われてる」

ミーナ(最初の衝撃に、真黒の穴…? ……いえ、あれは“黒色”なんかじゃないわ!)

ミーナ(キトゥンさんの力は重力……とういことは、敵の数を無視したあの吸い込みは恐らく圧縮で――)

ミーナ「――!」ビク

ミーナ「…うそ、まさか……重力崩壊っ!?〈※ブラックホールの命名は22年後の1967年〉」

 


グォォオォオォン


ネヴィ「「ッ~…!」」ズズ

触手ネヴィ「「ッッ…!」」ズルー


グシャ

バギャッ バギパキィィイン


ネヴィ「「「」」」

触手ネヴィ「「」」シュゥゥ…


変ネウロイ「……!」メキメキィ


キトゥン(くっ……もう無理…!)

キトゥン「――――ったぁ! ……はぁ…っぁふ…」ビュゥン

 
雑魚ネヴィ「「「」」」

ネヴィ「「」」シュゥゥ…


キトゥン(よし、ネヴィは倒した! …ネウロイは!?)キョロ


変ネウロイ「ッ…ッ~……ッ…」


キトゥン「(蛇は全部消えたけど、まだ本体が…!)半分削れて止まってる! 今がチャンス!」

キトゥン「……力を貸してっ、ダスティ!!」

ダスティ「ッ~~――」


ダスティ・フェリン「…グワァウ!!」
 

 
キトゥン「黒豹〈フェリン〉にパワーアップしたダスティとグラビティ・キトゥンちゃんの最強コンビなら、ただのネウロイなんてもう楽勝だよっ!」ビシ

ダスティ・フェリン「…………」

キトゥン「……ごめん、嘘。 本当はもう吐きそう」

ダスティ・フェリン「……」



変ネウロイ「 …」ググ



キトゥン「しまった、再生し始めてる! ……こっちも死にそうだけど今しかない! いくよっ!?」ビュゥウン

ダスティ・フェリン「……」ビュン

 

変ネウロイ「…。 …ッ」グググ



キトゥン「やぁぁあーーっ!!」


ギュワァァアァアン


変ネウロイ「!」


ガリガリガリィッッ――


変ネウロイ「 」


キトゥン「(あった、コア!)…ダスティパーンチッ!!!」



パキィン…

 

 
変ネウロイ「」


バリィィインッ

パラパラ……




――ビュゥゥン


キトゥン「……っだ! …ふぅ……」フワッ

キトゥン「ぜぇ……はぁ…。 …っ……ぅ(まずい、無理し過ぎた)」オエ

キトゥン「…ダスティ、ちょっと…もう……だるいから身体から出て」

ダスティ「ニャア」ユラ

キトゥン「ぅぅ…、本当に戻しそう……。 やっぱりブラックホールと黒豹はギリギリで使うの控えよぅ…」


ガザッ


美緒『――おい返事をしろ、キトゥン!』

芳佳『キトゥンさぁーん!』

キトゥン「……み…美緒さん、芳佳…」

 
美緒『無事か!? 一体なにをした!?』

キトゥン「…ネウロイ……やっつけま…し……」フラッ

キトゥン「――………っ」


ヒューーン↓


美緒『おいっ! キトゥン!!』

芳佳『わぁ!! えぇぇ!?』



ヒューーン↓



ボチャーンッ
 

つづくゾ

 
――――
――



基地 医務室


キトゥン「……ぅ…」パチ

キトゥン「……」

芳佳「キトゥンさん!」

キトゥン「…………芳佳」チラ

キトゥン「……ぁれ、ここ…?」

美緒「医務室だ」

ミーナ「貴女はネウロイとネヴィを独りで倒した後、海に落ちたのよ? キトゥンさん」

キトゥン「…ミーナさん、美緒さん」

美緒「お前の消耗もそうだが、なによりネウロイの破片による裂傷が酷かった」

キトゥン「え…?」

 
ミーナ「崩壊したネウロイの破片と一緒に海へ落ちたこと、覚えていない?」

キトゥン「??」

美緒「既に意識も途切れていたのだろう。 間一髪だったな? 運よく急所は外れていたが、宮藤の治療が遅れていれば参事だった」

キトゥン(……うそ!? えっでも、怪我の後なんて全然ない…!)モゾモゾ

芳佳「坂本さんと一緒に飛ばされちゃった後はどうなるかと思いましたけど、無事でよかったです!」

キトゥン「…芳佳、ごめんね。 わたし芳佳にはホントに頭が上がらないよ」

芳佳「な、なに言ってるんですか!? そんなことないですっ!」ワタワタ

ミーナ「貴女には先に色々聞きたいことがあるけど……そうねぇ。 援軍へ出たシャーリーさん達の報告もあるし、シャワーにでも行って来てもらおうかしら」

美緒「濡れタオルで拭っただけでは塩気が残っているだろうしな」

 
キトゥン「…シャーリー達、帰って来てるの?」

ミーナ「いいえ。 戦闘は無事に終了したらしいけど、色々と込み入っていてまだ向こうにいるわ。 …こっちに戻れるのは明日以降になるかもしれないわね」

芳佳「えぇ! もしかして怪我してるんですか!?」

美緒「……まぁ、多少な」

ミーナ「ちょっと、美緒!」

美緒「嘘をついてどうする?」

芳佳「…私、助けに行きます!!」

美緒「おいおい。 今のお前では治癒魔法どころか、10分と飛べんぞ?」グイ

芳佳「ぅ、…でもっ」

キトゥン(芳佳…?)

 
ミーナ「……ほら、こうなるから言ったのに」ハァ

美緒「む、すまん…。 しかしこれが宮藤の持ち味だ」

ミーナ「なに言ってるのよもぅ…」ガク

芳佳「ご、ごめんなさい。 でも、心配で」

ミーナ「…宮藤さん? 軽傷を負っただけで、ふたりは無事だからおとなしく待ちましょう?」

芳佳「はい…」

キトゥン「そっか。 シャーリーとルッキーニ、無事で帰ってくるんだ。 よかったぁ」

美緒「全員揃ったら、改めてお前のことを皆に話そうと思う」

ミーナ「……そうね。 今回のことを含めて、キトゥンさんも交えたミーティングが必要ね」

キトゥン「…いいんですか?(わたしは別にいいけど)」

美緒「ネヴィが出たんだ。 もうお前も部外者ではあるまい」

ミーナ(というより、可能性としてはむしろ…――)

 
美緒「少なくとも、我々ウィッチーズに対してはお前の秘密は解禁だ。 必要であれば、お前の口から話してもいいぞ」

芳佳「……なんの話ですか?」

キトゥン「えーっと………あとで説明~…でもいい? なんか、肌がヒリヒリしてきちゃって」モソ

ミーナ「あら、デリケートなのね? 早く洗い流した方がいいわ」

美緒「…そうだな。 宮藤、話は後にしてやれ」

芳佳「あ、はい! それじゃお風呂に急ぎましょう、キトゥンさん?」

キトゥン「うん――」ムク


ハラリッ~


キトゥン「……てぇ、なにこれ!? そういえばわたし裸じゃん!!」ガビーン
 

 
美緒「当たり前だ、海水塗れの服など、とうに脱がせてある。 お前は着替えの持ち合わせも無いから必然的に裸だ」

キトゥン「ぱ、パジャマがあるじゃないですかーっ!?///」バサッ

美緒「あれは私の物を貸し出しているだけだろう?」

ミーナ「…美緒? 多分、そういう意味じゃないと思うわよ」

芳佳「ご、ごめんなさい! 体中傷だらけだったので……その――」アワワ

ミーナ「……トゥルーデの時もこうだったから、私もついうっかりしていたわ」アラアラ

キトゥン「(なんかミーナさんも軽いし…!)うぅ…、とりあえずこのシーツ借りて行きます//」マキマキ

美緒「わっはっは! そうだな、流石に素っ裸では歩けんっ! 空でもなければ誰かに見られるしな!」

キトゥン(空でも嫌!!)

芳佳「あ、あのキトゥンさんっ? 入るかわかりませんけど、私のでよければ着替えを…!」

ミーナ「……ほら美緒? 笑ってないで浴衣用意してあげなさい」ウフフ

美緒「違うぞミーナ、あれは襦袢だ!」ワッハッハ

 

廊下


――バタン


キトゥン「はぁ、もう。 なんで私が遊ばれるの…? さっきまで命懸けで戦ってたのに」ガク

芳佳「きっと坂本さんもミーナ中佐も、キトゥンさんが無事で嬉しいんですよ!」

キトゥン「う、う~ん…。 あのふたりに限って、そんな可愛げ――」

『ぁ……キトゥンさん…!』

キトゥン「?」

芳佳「サーニャちゃん!」

サーニャ「…おかえりなさい。 身体はもう大丈夫…?」

キトゥン「ただいま、もう平気だよ。 ……というかサーニャ、ずっとここにいたの?」

サーニャ「うん…、約束したから。 ……お風呂行きましょう?」

 
キトゥン「あ、そうだったね? うんうん、行こう行こう!」

サーニャ「うん」

キトゥン(サーニャ、お風呂セット抱えちゃって……健気でかわいいなぁ)

芳佳「わぁい、サーニャちゃんも一緒だ!」

サーニャ「うん。 私も嬉しい、芳佳ちゃん」

キトゥン「……あれ? そういえばエイラは一緒じゃないんだ?」

サーニャ「…エイラは部屋で休んでる。 少し疲れたみたいだから」

キトゥン「そっか(余裕そうに見えてたけど、やっぱりエイラも大変だったんだ。 …後でお礼言っておかなきゃ)

サーニャ「……ところで、ぁの……キトゥンさん? その格好、どうしたの??」オズオズ

キトゥン「へ!? ……あーこれは、えっと――」モゾ

キトゥン「…気にしないで、お願いっ!」

芳佳「あ、あはは…」

サーニャ「ぇ…………うん(気になる)」

 

ダスティ「…」ヨロ


芳佳「あ! ダスティちゃん」

ダスティ「……」ヘナヘナ

芳佳「…どうかしたの?」

ダスティ「……」

キトゥン「なにしてるの芳佳?」

芳佳「キトゥンさん。 ダスティちゃん、なんだか元気がなさそうですよ?」

サーニャ「黒猫……(かわいい)」

ダスティ「……」

 
ダスティ「……」

キトゥン「こいつは普段から黙りっぱなしだけど、流石に疲れちゃったかな?」

キトゥン「――ん、でも…? ………ぁ!!」ハッ


(『間一髪だったな? 運よく急所は外れていたが――』)


キトゥン「お前まさか!?」

ダスティ「…」グデー

キトゥン「……ありがとう、ダスティ。 お前は偉い!」

芳佳「キトゥンさん?」

サーニャ「?」

キトゥン「おいで? お礼にわたしが洗ってあげるから!」ヒョイ

ダスティ「っ…ニャァ……!」ジタジタ

キトゥン「ふふ、照れなくてもいいのに。 綺麗にしてあげるよ!」

ダスティ「っ…。 …~!」ガク


――――
――

まったりつづく

 

宿舎 お風呂


――…チャプ


キトゥン「い゛っ……!?」ビクゥ

サーニャ「…どうしたの?」

キトゥン「な、なんでもない! ちょっとお湯が熱くてビックリしただけ(ヒリヒリな肌に沁みる~~!!)」

サーニャ「……キトゥンさん、ぬるめが好きなのね?」

キトゥン「う、うん…そう。 長湯にはいいよね…」アハハ


芳佳「ダスティちゃん、湯船は大丈夫? 溺れない?」

ダスティ「……」チャプ

ダスティ「……」スイー

芳佳「わぁ!? すごい!」

 
キトゥン「ふぅー…(一度浸かれば痛みもないや)」

キトゥン「……あぁ~、力が抜けていく…」グデ

サーニャ「お疲れさま」

キトゥン「サーニャもね? …すごかったよあれ」

サーニャ「う、うん…//」

芳佳「はぁー……気持ちいぃー」チャプ

サーニャ「芳佳ちゃんもお疲れさま」

芳佳「えへへ、魔法力空っぽになっちゃった。 キトゥンさんとお揃いです」

キトゥン「芳佳……」

 
サーニャ「ふたりとも無事に戻ってきて本当に良かった…」

キトゥン(私は傷だらけで帰ったらしいけど)

サーニャ「……あのネウロイはなんだか、その…変だったから」

芳佳「サーニャちゃん?」

サーニャ「今までのネウロイよりもっと冷たくて……少し怖かった…、ような気がして」

キトゥン「?」

サーニャ「…また、大切な人に合えなくなるのは……嫌だから」チャプ…

キトゥン「!」

芳佳「……大丈夫だよ、サーニャちゃん? サーニャちゃんのお父さんとお母さん、絶対どこかで生きてる。 きっと見つかるよ!」

キトゥン「ぇ!?」

 
サーニャ「芳佳ちゃん…」

芳佳「私のお父さんみたいに死亡通知が来たわけじゃないからきっと大丈夫っ!」

キトゥン「!!(芳佳のお父さんが…!?)」

サーニャ「ぁ…! ……ごめんなさい、私…」シュン

芳佳「えっ!? あぁ、いやその…。 そういう意味じゃないよっ? 謝らないでぇ~!」オロオロ

キトゥン(…そっか。 芳佳のなんか異常なくらいの正義感って、もしかしてお父さんを亡くしたから…?)

キトゥン(ペリーヌさんにサーニャに芳佳……みんな戦争のせいで悲しい思いをしてるんだ)

 

翌日

ミーティングルーム


ミーナ「……皆揃ってるわね?」

シャーリー「帰って早々、ミーティングとはねぇ~」ポリポリ

ルッキーニ「お腹すいた…」クテ

美緒「すまんな、ふたりとも。 急いで戻って来てもらって悪いが、のんびり構えている訳にもいかん」

ミーナ「ええ、そうね。 シャーリーさん達の報告もまだ細かく考査してないけど、ここ最近から欧州各地を急襲している新型ネウロイ“らしきもの”について、貴女達にいくつか話しておかなきゃいけない事があるわ」

ハルトマン「……」

バルクホルン「昨日の一件から、私やハルトマンも色々と気になっていた。 ミーナと少佐は私達の知らない情報を予め持っていたんじゃないか?」

エイラ「そ、そうだワタシも! あのネヴィとかいう変なのはなんなんだ? なんで少佐達は知ってたんだよ?」

ミーナ「落ち着いて。 順番に話すから……どうか真剣に聞いて頂戴ね?」

美緒「……」

 
ミーナ「…まず皆気づいてると思うけど、今日のミーティングにはキトゥンさんも参加しています」

ペリーヌ「……確かに、そうですわね? あまりにも自然にいたものですから驚きませんでしたわ」

キトゥン「よ、よろしくどうもー…」

バルクホルン「やはりキトゥンも今回の件に関係しているんだな?」

美緒「急ぐな、バルクホルン」

ミーナ「ええ。 キトゥンさんについての話で、まず私から皆に謝らなければならないことが――」

ハルトマン「…あんまり回りくどいのはやめてよミーナ?」

ミーナ「……そうね、わかったわ。 じゃあ直入に事実を言うから、いいわね?」

キトゥン「……」



ミーナ「実は…キトゥンさんは私達とは別の世界からやって来た、異世界人よ」

 

 
バルクホルン「……」

ハルトマン「……」

エイラ「ハ…?」

サーニャ「…!」

シャーリー「……」

ルッキーニ「?」

ペリーヌ「……」

リーネ「……」

芳佳「えぇぇぇ!!? そうなんですかぁ!?」ガーン



キトゥン(芳佳だけいいリアクション)

美緒(まぁ、こうなるだろうな)

なんだかエーリカの名表記が時々ハルトマンになっていてごめんなさい

>>648-650
ハルトマン「」 → エーリカ「」

に訂正します。 失礼しました



進行遅いですが、なんとか1000までに終わらせたいです

 
ミーナ「貴女達の言いたいことはわかるわ。 げどこれは事実。 いくつか裏付けになる状況証拠も、私と坂本少佐で確認済みです」

シャーリー「……あのー、本人はそう言ってるんですか?」

ルッキーニ「ねぇねぇ、つまりどゆこと?」クイクイ

ミーナ「……キトゥンさん?」

キトゥン「ぇ? は、はいっ」ドキ

ミーナ「貴女はどこから来たか、皆のいる前で教えて頂戴」

キトゥン「……」チラ

美緒「いい。 正直に話せ」コク

キトゥン「…えーっと。 ヘキサヴィルのヴァン・ダ・センタリアレから……。 家はオルドノワの土管に、自分で家具とかおいてー…その。 だから住所とかは……わかりませぇん…」

 
エイラ「うぇ~、ドカンに住んでんのかよ~!?」

サーニャ「素敵じゃないエイラ。 楽しそうだわ」

エイラ「そうだなっ! 私もそう思ってたぞ!」

ペリーヌ「…貴女達、もっと不思議な点がありましたでしょう?」

リーネ「芳佳ちゃん、ヘキサヴィルって確か…?」

芳佳「キトゥンさんがここで最初に目を覚ました時に言ってた名前だ!」

芳佳「――あれ? でも、それは妄想性の痴呆症だったんじゃ…?」ウーン

キトゥン(えっ!? なにそれ!?)ガーン

ミーナ「……あの時点では私も本気でそう思っていたわ」

キトゥン「ちょっ!?」ガガーン

 
ミーナ「けど常識外れの力で戦闘介入した事を皮切りに、キトゥンさんの言葉を支持し得る情報が出てきたの」

ミーナ「ただ、異世界がどうのこうのだなんて……皆が思うように私も簡単には信じられない話よ? …どう扱うべきか悩んだ結果、貴女達に嘘をついてしまったの。 ごめんなさい…」

美緒「私も同罪だ。 すまない」

キトゥン(わたしにも謝ろうよ!?)


エーリカ「……え、あのさ? 本気で言ってるの…?」

ミーナ「ええ、勿論。 キトゥンさんがウィッチであるという事も出鱈目よ。 魔法力診断の結果でも彼女が魔法を一切使えない事がはっきりと出ているわ」

シャーリー「は…? 魔法力が無い!? …それじゃ生身でレシプロ並に飛んだり、ネウロイ蹴り崩したりして
たアレはなんなんですか?」

エイラ「“重力操作”の固有魔法だろ? ワタシらは本人から聞いたぞ。 なぁ、サーニャ?」

サーニャ「え…、えぇ……」

>>655
シャーリー謎の改行はミスです。 毎度すみません





キトゥン「…ごめんエイラ。 実はわたしも口裏合わせてて……重力の能力は本当だけど、魔法とかじゃないの」

エイラ「ハ…? 重力操れるんだろ? 魔法じゃん」

シャーリー「エイラ、それあたしと同じ質問になってる」

ルッキーニ「……??? …つまりなにー??」クイクイ

ミーナ「…そうね。 当然の疑問だけど、彼女の能力を私達の持ちうる文明・科学で説明するのは難しいでしょう」

美緒「無理にでも言葉にするならば超能力……とでも言うか? 眉に唾して聞くような話には変わりないが」

ミーナ「でも、その御伽のような事がここに実在している。 それは彼女が異世界人だからに他ならないの」


芳佳「すごぉい! 違う世界だってリーネちゃん!?」ワァ

リーネ「う、うん……」

ペリーヌ「……」

 
サーニャ「どんな所なのかしら……?」

エイラ「えー…、サーニャ信じるのか?」


エーリカ「どう思う、トルゥーデ?」

バルクホルン「……んー…。 ミーナからまさかこんな話を真面目に聞かされるとは…」


ルッキーニ「? ……??」キョロキョロ

シャーリー「あとで説明してやるよ。 お前は喜びそうな話だ」




美緒「参ったな。 皆信じられん気持ちは解るが、これでは一向に本題へ入れん」ムゥ

キトゥン「……なんか、ごめんなさい」

 
ミーナ「…いいわ。 キトゥンさんの素性に関して納得のいかない人は、後で個別に私が話を聞きます」

美緒「うむ、私も受け付けよう。 我々には説明責任があるからな」

ミーナ「だから今はとにかく“そういうこと”として受け入れて、先の話を聞いてくれないかしら?」

バルクホルン「……了解」

エーリカ「オッケー」

エイラ「…まー、ワタシも別に不満がある訳じゃないし」

ミーナ「ありがとう。 それじゃあ改めて、昨日ロマーニャ公國を襲った敵についてだけど――」チラ

美緒「……そうだな、私が説明しよう」


美緒「シャーリーとルッキーニ以外の者は2度目になるが、件のアンノウンはキトゥンの世界の怪異だ」

シャーリー「えぇ!? マジかよっ!」

ルッキーニ「? あたしらのとこにも出たやつ?」

キトゥン(…ルッキーニたちの所にも出たの!?)

 
美緒「そうだ。 お前達の話を聞く限り、ネヴィとみて間違いない」

シャーリー「ネヴィ?」

ミーナ「キトゥンさんの居た世界でそう呼ばれているらしいの。 キトゥンさんは私達と同じように、人々や街を護るためネヴィと戦っていたそうよ?」

シャーリー「……名前もどことなく似てるし、なんだか皮肉だな…」

芳佳「そっか! この前ネウロイが出たとき、キトゥンさんは逆にネウロイのことをネヴィだと思って…!?」

キトゥン「う、うん……そんな感じ」アハハ

美緒「基本的に弱点を討つという撃墜法は変わらないからな。 ネヴィとの空中戦闘の経験もあってあの時は助けになった訳だが――」

美緒「しかし、ネウロイと異なる点もある! ネヴィは個体によってコアを複数持つタイプも存在し、その場合は全てのコアを破壊する意外に倒す方法は無いようだ。 その他胴体部への攻撃は一切通じない」

エイラ「……サーニャのフリーガーハマーくらっても平気だったぞ。 チクショ~」

美緒「…また、体験した通りコア自体もネウロイの物より頑丈だ。 色の異なるコアは耐久性が高く、赤味を帯びてゆく程壊し易いという事だ」

シャーリー「あー…そういうことだったのかアレ」

 
ルッキーニ「オレンジの目がいっぱい付いたあいつ、めんどくさかったね?」

シャーリー「あの巨人か……掴まれた時は流石に死ぬかと思ったなぁ」アハハ

芳佳「えぇ!? ひ、人型もいるんですか!!」

キトゥン「ああ、あいつか…」

美緒「我々の方では見なかったな」

ミーナ「地上型も出てるって話だから、恐らくそれね。 飛べないタイプだったのよね、シャーリーさん?」

シャーリー「ええ。 パンチしかしてこないんで楽勝かと思ったら、急に腕が伸びてビビりましたよ」

バルクホルン「油断するからそうなる」

シャーリー「ちげぇよ。 他にも沢山いたんだよ、ウニみてぇなやつとか」

ルッキーニ「タコみたいなのとか~~!」

シャーリー「う゛っ! ……それの話はやめてくよ…」オエ

 
リーネ「い、生き物の真似してるのかな…?」

ペリーヌ「どんな格好をしていようと敵は敵っ! 話し合えるような相手ではないことは、確かですわね?」ジト

芳佳「ぅ……そ、そんなぁ」


キトゥン「……とりあえずさシャーリー? 壊したコアは再生とかもしないし、あのネヴィは意外と鈍いから落ち着いて一個ずつ攻撃すればやりやすいよ?」

シャーリー「いや、それ以前にタイマン勝負はしたくないんだけど…」ポリポリ

バルクホルン「――待て! 今、ネヴィは再生しないと言ったな?」

キトゥン「ぇ? は、はい…。 いいましたけど」

美緒「……」

ミーナ「……」

バルクホルン「ミーナ」

ミーナ「ええ、私も確かに見たわ。 あの時……キトゥンさんの言う“重力嵐”が起こってすぐ、ネウロイにとり付いていたネヴィが再生したわね」

 
エーリカ「そもそもアレはネウロイだったのかな? ネヴィ?」

サーニャ「……」

ルッキーニ「あらし!? そっちも出たのー!?」

シャーリー「“おかわり”来たのか、やっぱり。 こっちはあたしとルッキーニが着く前を入れると6回はあってさ、参っちまったよ」

エイラ「アレなんだったんだよー少佐~?」

美緒「わかっている。 落ち着け」ウム


美緒「……あの妙なネウロイだが。 まず私の魔眼で視たところ、本体にネウロイのコアがひとつ。 ネヴィと思しき触手部に怪しい輝きを視はしたが、そこにネウロイのコアは無かった。 間違いない」

ミーナ「つまりあの触手が独立してネウロイである事は無いわ。 可能性があるとすればネウロイの一部…」

美緒「だが目玉を持つ事から、ネヴィと考えるのが妥当だ。 キトゥンも同じ物をかつて見た経験があると言っている」

キトゥン「…はい。 でも再生はしなかったと思います。 9体もいなかったし」

エイラ「スッキリしねーな」

 
ミーナ「……皆、ここでひとつ思い出して欲しいの。 普通と違ったのはネヴィだけだったかしら?」

バルクホルン「…いや違う、ネウロイも明らかに異常だった。 昨日のは新型というのもあるが、その前のX-12型も別種かのように強かった」

バルクホルン「そしてなにより、その2機ともがキトゥンだけを狙っていた」

キトゥン「……」

ダスティ「……」

ミーナ「…キトゥンさんが狙われる理由はまだわからないけど、あの強化ネウロイと触手の再生ついての検討はできてるわ」

バルクホルン「本当か!?」

ペリーヌ「……あのネウロイの正体はなんだったんでしょうか?」ゴクリ

美緒「これはキトゥンから聞いた情報を元に、私とミーナで推理した話に過ぎんが――」


美緒「恐らく秘密は“ネウロイ化”と“ネヴィ化”だ」

 

つづく

>>663

触手の再生ついて → 触手の再生について

に訂正

 
芳佳「えっ…!?」

リーネ「ネウロイ化って……ウォーロック事件の…?」

シャーリー「?? …あたしはそいつ見てないからよく知りませんけど、ネウロイがネウロイ化するんですか?」

エーリカ「というかネヴィ化ってなに?」

ミーナ「…キトゥンさんの話によると、ネヴィの中には人に取り付いてネヴィ化させてしまうものもいるらしいの」

リーネ「ぇぇ……」ゾワゾワ

サーニャ「……」

エーリカ「うわ、なにそれ。 こわっ!」

美緒「私とミーナはそれが起きた例の話を聞いたんだが…。 推察するに、ネヴィ化の過程で対象はネヴィ同等に強化され、自身のコントロールを失ってゆくのだろう」

シャーリー「…乗っ取られるってことですか?」

エーリカ「なんか言ってたね、そういえば」

 
バルクホルン「……という事は、つまり…」

ミーナ「昨日のネウロイは、ネヴィ化が進行していた可能性があるわ」

キトゥン「………ぇ? う、うそっ!?」ガビーン

エイラ「でもさ? ネウロイだったんだろ、少佐?」

美緒「ああ。 例えネヴィ化の影響を受けていたとしても、あれはまだネウロイだった。 それは間違いない」

ミーナ「侵略源はあの触手……つまりアレは、やっぱりネヴィだったと言えるわ」

バルクホルン「しかしネヴィならばどうして再生を――……っ!!」ハッ

美緒「そう、ネウロイ化だ。 ネヴィと同じく、ネウロイも取り付いてきた相手を乗っ取ろうとしたに違いない」

美緒「その結果、互いにネウロイでありネヴィである個体が誕生してしまったのだろう。 ネヴィのコアにネウロイのコアの輝きが宿り、私の魔眼で捉えることができたのは恐らくそういうカラクリだ」

ミーナ「あのネヴィが再生したのも、つまりはそういうことだと思うわ」

 
バルクホルン「くっ…、互いに影響し合い昇華してしまったということか。 厄介な…!」ギリ

ミーナ「これっきりにして欲しいけどね」ハァ

ミーナ「念の為……今後また出現した時の便宜を考えて、同化した個体はとりあえず“ネヴィロイ”と呼ぶ事します!」

美緒「むぅ…、私はやはり“邪気郎”の方がいいと思うのだが」

ペリーヌ「少佐。 大変素晴らしい名前ですけど、敵の呼称ですので…」

美緒「そうか。 ……そうだな」

エイラ(どっちもどっちだぞ?)


キトゥン「…ネヴィロイ(なんか、すごいことになってきちゃった…!)」

 
エーリカ「んー、そのネヴィロイのことはわかったけどさ? 重力嵐……だっけ、途中で出てきた黒い渦はなんだったの?」

ミーナ「……それについては、貴女の妹から説明があるわ」

エーリカ「…へ?」

ミーナ「入って来て頂戴、ウルスラ・ハルトマン中尉!」


…………。


一同「……」


…――スタスタスタ


ウルスラ「こんにちは、皆さん」

エーリカ「ウルスラ?」

ウルスラ「はい。 ご無沙汰してます、姉さま」

 
ウルスラ「…リトヴャク中尉、後で少しお時間をいただけますか?」チラ

サーニャ「……はい」

エイラ「ダメだー!! ……じゃなくってだ。 重力嵐とかいうヤツの説明してくれんだろー?」

ウルスラ「はい。 説明と言うよりは考察ですが、では――」クイ


ウルスラ「…昨日、オラーシャとロマーニャの防衛ラインが“内外”から挟襲を受けたことは皆さんご存知だと思います。 安全圏である筈の内側と、外のライン際にネウロイ及びネヴィが急に現れたそうです」

サーニャ「……」

ルッキーニ「……」

バルクホルン「私達が戦った連中も、ここからかなり近い位置で捕捉されたな。 なぜ接近を許してしまったのか…」ムム

ウルスラ「今朝そちらのキトゥンさんに伺いました話とイェーガー大尉達の報告から考えて、恐らく敵はその重力嵐を使って空間移動をしたのではと思われます」

リーネ「…?」

ペリーヌ「……またややこしい話を…」ガク

 
美緒「どういうことだ中尉?」

ウルスラ「重力嵐という事象はネヴィと同じく、元々キトゥンさんの世界で観測されていたものです。 また、キトゥンさんの存在自体もこちらの世界には――」

エーリカ「待ってウルスラ! …異世界とか信じるの?」

ウルスラ「? はい」

バルクホルン「そ、そうか…」

ウルスラ「……続けます。 それらのものがこちら側に“来た”ということは異空間――…異次元と言ってもいいかもしれませんね、…異次元を渡る術もしくは渡す術が向こうの世界に存在する筈です」

キトゥン「…う~~ん、ごめんね妹さん? でもわたし、どうやってここに来たのか解らないんだよね」

ウルスラ「はい。 しかしお伺いした話によると、キトゥンさんの向こうでの記憶の最後は重力嵐に飲み込まれる所…。 そして急襲があった戦闘域周辺ではそれぞれ重力嵐らしい現象や、不可解な気流が確認されています」

シャーリー「確かに、あたしらの所にもあったよ。 敵を片付けたかと思うとあの渦が出てきて、気付いたらまたネヴィとかいうのが湧いてくるんだ」

ルッキーニ「おかわり多すぎだった~~」ウジュー

 
ウルスラ「これらの事を踏まえると、キトゥンさんもネヴィも重力嵐をゲートにして異空間移動を行ったと考えるのが妥当です」

キトゥン(見てもいないのに、そんなにわかっちゃうんだ…!?)ガビン

美緒「…そうか。 それで昨日もああなったわけか」

エイラ「ナルホドナー」

サーニャ「…エイラ、今の話わかったの?」

エイラ「……ゴメン、あんまり」

芳佳「えーっと…?」チラ

リーネ「キトゥンさんの世界からネヴィがどんどんやってくるってこと……かな?」タブン

 
バルクホルン「――いや、待ってくれ! それではネウロイにまで急接近を許した理由がわからないぞ?」

ミーナ「………そうね?」

ウルスラ「同じ時間、場所、群で現れた訳ですからネウロイもやはり重力嵐を潜ってきた筈です」

バルクホルン「一緒にか!? しかしキトゥンの世界とやらにネウロイは…」

ウルスラ「はい。 ですからネウロイと共に現れたネヴィは向こう側ではなく、こちらの世界のどこかから移動してきたのかもしれません。 もしくは異空間の出口が同じだったのか」

キトゥン(えっ……それってつまり…!?)

ウルスラ「…いづれにしても、重力嵐に吸い込まれた行く先が突然こちらの世界になった事まで考えると――」


ウルスラ「キトゥンさんも、ネヴィやネウロイも“誰かが恣意的に送った”可能性があります」


バルクホルン「なっ…!?」

キトゥン「!!」

>>671>>672の間抜けてました

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>>671


芳佳「わぁー! ウルスラさんだぁ!」

キトゥン(朝に会ったときは本当にビックリしたけど……やっぱりそっくり!!)

エーリカ「遊びに来たの?」

バルクホルン「そんなわけあるか。 お前じゃないんだぞ?」

ミーナ「ウルスラ中尉には私から少し頼んでいることがあったから、その用事で丁度今朝こっちへ到着したの」

ウルスラ「フリーガーハマーのデータもまたフィードバックしておきたかったので」


>>672
-----------------------------------------------------

 
美緒「……もしそうだとすれば、とんでもない事になったな」

ミーナ「そうね。 私達の戦争に、初めて明確な対立意思がぶつかった事になるわ」

美緒「ましてやそれが人であった場合…」

芳佳「…えっ?」ドキ

バルクホルン「よしてくれ少佐。 ミーナも、あまり憶測で皆の不安を煽るのは得策ではないと思うが?」

ウルスラ「はい、全ては状況からの推察です。 確たる証拠はありません」

ミーナ「……ごめんなさい、少し軽率だったわね」

美緒「しかしこの状況、偶然で起きるなどまず有り得ない。 私は中尉の推理を支持する。 何か思惑によってキトゥンの世界から我々は一連の干渉を受けているのだろう」

芳佳「え……さ、坂本さん? それって誰かが大勢の人を――」

バルクホルン「やめろ宮藤! まだそう決まった訳ではない!」

リーネ「芳佳ちゃん…」

キトゥン「……」

 
エーリカ「…とりあえずさ、休憩しない? これ以上考えたって答えは出ないよ。 ウルスラも疲れたでしょ?」

ウルスラ「姉さま?」

エーリカ「ねー?」

ウルスラ「…………はい、そうですね。 少し」

エーリカ「よーっし、休憩~!」

バルクホルン「こら、勝手になにを言っているお前は!!」

ミーナ「…いえ、ハルトマン中尉の言う通りね。 今日の所はこの辺にしておきましょう。 皆も昨日の疲れがまだ抜けてないと思うから、ゆっくり休んで頂戴」

ミーナ「ウルスラ中尉、一息入れたら私の所で例の件について――」

ウルスラ「はい」

美緒「…その時は私も加わろう」

ミーナ「ええ。 私達はまだ打ち合わせておきたいことがあるから、この後ね。 ……それじゃあミーティングは解散します」

 

基地野外 巨大像の上


――ビュゥウン


キトゥン「…肩、失礼しまーす」シュタ

キトゥン「……ん~高い! 風が気持ちいい」

ダスティ「……」

キトゥン「なに? …わたしは別に馬鹿じゃないからね」ジト

ダスティ「……」

キトゥン「ヘキサヴィルの景色がさ、少し懐かしくなっただけだよ…」

ダスティ「……」

キトゥン「オージンのホットドッグ、結構おいしかったなぁ。 今度ダスティの分も買ってあげるよ」

ダスティ「…ニャア!」

 
キトゥン「…………ねえダスティ? 会議でミーナさん達が言ってたこと、お前はどう思う…? 」

ダスティ「……」

キトゥン「重力嵐に飛び込めば、わたし達帰れちゃうのかな?」

ダスティ「…!」チョイ

ダスティ「~~」グイグイ

キトゥン「……そうだね、危ないよね。 こっち来たとき、わたし死にかけてたみたいだったし…」

ダスティ「~………」

キトゥン「それに、このままネヴィを放ったらかしじゃ帰れない――」

キトゥン「…お前はどう? やっぱり帰りたい?」

 
ダスティ「……」ピョン

キトゥン「あっ! ちょっと、どこ行くの!? …ダスティ!」


ダスティ「…――」ビュン


キトゥン「……もう! 気分屋なんだから」ムス

『――…その声、まさかキトゥンくんか!?』

キトゥン「! え…?」チラ

???「やっぱりそうだ! まさかまた君に合えるなんて…! ぼ、僕の声が聞こえるか!?」

キトゥン「わっ!! ……えっ!? し、シングラさん!!?」

シングラ「そうだとも! やっぱり君には僕の声が、姿が認識できるんだね!?」

 
キトゥン「お、お久しぶりですっ! …でもどうしてこんな所に? だってここは別の世界の筈じゃ…?」

シングラ「それはこちらの台詞でもある。 以前キトゥンくんと会った時、丁度アレが来て僕は別の時空へジャンプした筈だ。 ……もしや君が今いるそこはヘキサヴィル…?」

キトゥン「いえ、ちがいます! えっと…前に異次元空間でも会ったりしましたけど、ここはなんか……けっこう普通っていうか、そのぉ…人がいて! ……あの~~――」アセアセ

シングラ「……落ち着いてくれキトゥンくん!」


――――
――



シングラ「なるほど異世界か……どうりで…」

キトゥン「わ、わかるんですか!? シングラさん…!」

シングラ「……君は、世界の柱が1本しか無いと思うかい?」

キトゥン「え…? なんですか急に?」

シングラ「長い間、僕は様々な時空をさまよい続けてわかったんだが――」

シングラ「僕達が世界の柱と呼んでいたものは唯一ではない。 別の柱が存在し、別の世界で暮らす人々がいるんだ!」

キトゥン(……あれ? 前にもこんな話…?)

 
シングラ「ここもそんな別の世界のひとつなのかもしれない…。 なんということだ、別の時空を流れるだけの筈の僕が異世界に来てしまうとは!」

キトゥン「…それってなにか違うんですか?」

シングラ「大きく違う。 時空間移動と異世界移動とではそもそも移動の“軸”が全く別なんだ。 どういう訳か、僕もキトゥンくんも同じベクトルで世界軸がズレてしまったようだ」

キトゥン「え? それじゃあシングラさんって今わたしと同じ所にいるんですか! …じゃあ、ある意味これが初対面? は、はじめましてっ!」

シングラ「いや、残念だがそれも少し違う。 今の僕とキトゥンくんは世界間軸上の座標は一致しているが、時空間軸上の座標は相変わらずズレている。 僕にとっては前となんら変わりはない」

キトゥン「そうなんですか…」

シングラ「僕の時空から見たら、やはり君はずっと僕の目の前にいるのだが……君はこの間にもまた別の時間を…?」

キトゥン「あ、それはまだ大丈夫です! わたしもさっきお会いしてから、ずっとお話してますよ?」

シングラ「むむ…そうなのか。 理の違う異世界で偶然また時空の重なりを共有しているから、かなり不安定な状態になっているかと思ったが……逆に安定しているようだ」

キトゥン「はい。 シングラさんがいつも以上にくっきりしてる気がします! …相変わらずとんでもない場所に現れるけど」

 
シングラ「…しかしそうか、ううむ……」

キトゥン「?」

シングラ「……キトゥンくん、君、大丈夫だったかい?」

キトゥン「はい? えっと、なにがですか?」

シングラ「僕は事故の影響で多次元の移動に適応する存在になってしまったが、君はそうじゃない。 元の世界軸で会った時も、不安定な時空の歪みで記憶と時間の感覚に影響があったのだから」

シングラ「ましてや今度はその無防備な体で世界軸をズラしてしまったんだ、どんな異常が起きてもおかしくはない」

キトゥン「え? ……別になんともないですけど…」

シングラ「本当かい? 僕の予想では記憶や体質等のフォーマットや改ざんが起こると思ったのだが…」

キトゥン「フォーマット…ですか?」

シングラ「存在世界を変えてしまう弊害とも言えるだろう。 この世界軸以外での経験や記憶が認知できなくなってしまって、真っ白な状態になる可能性があるという事だ」

 
キトゥン「……つまり記憶が無くなっちゃうってことですか?」

シングラ「厳密には消えないのだけど、結果は同じになるね。 私と会った事を覚えているという事は、キトゥンくんはフォーマットされていないようだが…」


キトゥン「なんか怖いなぁ――」


(『…力が使えない!』)
(『全部夢だったんじゃないかなぁ……って』)
(『…………あれ? わた…し……の――』クラァ)

( ――忘れてはなりません―― )



キトゥン「あっ!! …よく考えたら、わたし、されそうになりました! フォーマット!」ガーン

シングラ「なんだって、“されそうになった”…!?」ギョ

シングラ「……君は本当に不思議だ、いったいどうやって世界の理から逃れたんだい!?」

 
キトゥン「えーっと…最初は、こっちで目が覚める前に“忘れないで”って声が聞こえて…」

シングラ「声…?」

キトゥン「はい。 あまりよく覚えてないんですけど、そんな夢を見ていたような気がします」

シングラ「ふむ……」

キトゥン「それとダス――…うちの飼猫を見つけて、思い出したと言いますか……自分の記憶に自信が持てたと言いますか」

シングラ「飼猫か……一緒に世界軸を移動してきたんだね? …なるほど、そうか」

キトゥン「?」

シングラ「…もしかしたら、その猫が君と元の世界とを紐づける役割を果たしたのかもしれない。 とても賢い忠猫だね?」

キトゥン「(ちゅ、忠猫! ダスティが!?)あはは、シングラさんが冗談言うの初めて聞きました!」

シングラ「……一緒にいるうちは、大事にしてやりなさい」

 

キトゥン「それにしても全然消えないですね、今回のシングラさん。 …こんなに長くお喋りできたの初めてだと思います」

シングラ「そうかい? 僕からすれば君に会うのはこれでまだ2度目なんだが、だいたいこれぐらい話していたような気がするな」

キトゥン「なら調子良いついでにもう少し聞いちゃいます!」

シングラ「いいとも、人と話しが出来るなんて僕にとっては大歓迎だ」

キトゥン「……あの、なんでこの世界に来ちゃったんでしょうか? わたしだけじゃなくて、シングラさんや他のも来たりしてるみたいですし…(ネヴィとか)」

シングラ「なに、そうなのかい?」

キトゥン「ええっと、はい…。 なんか迷惑かけてるし、なんとかしたいなぁと思ってるんですけど――」

キトゥン「わたしがこっちに来ちゃったのと同じくらいに現れたらしくて、……もしかしたらわたしのせいなのかなとか思ったり…」オズオズ

シングラ「ううむ…確かに、誰かが通った後が道となってしまって次々と流れてしまう可能性は有りそうだ。 ましてや君は元の世界と未だに繋がっているから、君が丁度蛇口のようになっているのかもしれない」

 
キトゥン「う……やっぱりわたしのせい…!?」

シングラ「いや、待ちたまえ! 仮にそうだとしても、キトゥンくんが突然異世界へ飛ぶことなど考えにくい」

シングラ「……時空が違うから自身は無いが、多分僕の方が君より先にこの世界軸に来ていると思う」

キトゥン「え…! それってつまり、シングラさんが道を作っちゃったってことですか?」

シングラ「その可能性も充分にある。 しかし僕と君達は別の時空に存在しているし、道があるからといってキトゥンくん達の世界軸が簡単にズレることなどないだろう。 世界の理が不安定に流れる事は絶対に無いからね」

キトゥン(……それじゃあ、エーリカの妹さんが言ったとおり、本当に誰かに飛ばされてきちゃったってこと!?)

シングラ「それに僕が今更世界軸上を移動したのもよくわからない。 事故のせいで別時空へと弾き飛ばされてしまった身だが、今まで世界軸の座標がずれる事などなかった」

 
キトゥン「…………結局、どういうことなんでしょうか?(質問ばかりでごめんなさい)」

シングラ「……僕が思うに、この世界にも僕と同じ事をしてしまった者がいたんじゃないかな?」

キトゥン「シングラさんと同じ…!? 重力エネルギーの実験で空間がどうとかってことですか!?」

シングラ「そこまで同じではないだろうが、……つまりは何某かの原因で不用意に次元の端を歪めてしまったということさ」

キトゥン「それって事故……なんですか?」

シングラ「さあね、これは僕の想像だよ。 だが万が一に、次元を歪めて僕の漂う時空やキトゥンくんの元の世界へ穴を通してしまった人がいるなら……恐らくそれは事故か、失敗によるものだろう」

キトゥン「ど、どうしてですか?」

シングラ「もしコントロール出来ているのなら、少なくともこんな事態にはなっていないからさ」

シングラ「…当事者は多分無事ではない。 別の世界か時空か他の何処かへ弾かれたか、少なくとも君が今いる次元座標には存在しないだろう」

 
キトゥン「……その人、なにをしようとしたんだろう…?」

シングラ「…きっと僕と同じく、災厄から世界を救うためだったのかもしれないね。 僕はそう信じたい」

シングラ「異世界にも同じ志を持つ者がいてくれるなら、少しは慰めにもなる。 ……たとえ過ちすら似ようとも」

キトゥン「シングラさん…」

シングラ「………妻も、この世界 に来て しまっ…のだろ …か」ボソ

キトゥン「…! (そうだナラさん!!)」

シングラ「僕 のせ…で 彼 女は…… …も…何 度後 悔 し…… と か … 」ユラ…

キトゥン「(まずい! また消えかかってる!)シングラさんっ、違うんです! ナラさんはシングラさんの事が――」


シングラ「…  」フッ



キトゥン「――消えちゃった! …今度はナラさんのこと、伝えそびれちゃったよ」ガク

キトゥン「……でも、この世界にもシングラさんみたいな人がいるかもしれないんだ…?(話が難しかったけど、そういうことだよね?)」

キトゥン(もしその人に会えたら、帰り方も、ネヴィの追い出し方もわかるのかな?)

 

執務室


美緒「……」


(『くそっ、何故だ…! 力が入らない』)


美緒「……(私はもう、飛べなくなってしまうのか…?)」

『…坂本少佐? ……ねぇちょっと――』

美緒「っ…(こんな中途半端な所で終わってしまうのか…!)」

ミーナ「――美緒! 聞いてるの!?」

美緒「ん!? ……あ、ああ。 すまない」

ミーナ「…大丈夫? 少し休む? 貴女、ネヴィロイに独りで対峙したそうじゃない」

 
美緒「……あんな横着しなければ、私が討てた。 余計なリスクは負わずに済んだ筈だ」

ミーナ「いいじゃない。 全員無事で帰って来られたんだから」

美緒「…そうだが……っ」

ミーナ「それより美緒、再生したネヴィロイと敵の増援に特攻したのはどういうつもり? あんな無謀な真似、貴女らしくないわ」

美緒「………無謀、か」フッ

ミーナ「美緒、貴女……」

美緒「……」


コンコンッ


ミーナ「!」

『ミーナ中佐、ウルスラ・ハルトマンです』

ミーナ「あら、早いわね? ……どうぞ、入って!」

 

ガチャ


ウルスラ「失礼します」パタン

ミーナ「もう少しゆっくりしてからでも良かったのよ?」

ウルスラ「お取り込み中でしたか?」

ミーナ「い、いいえ! 別に大丈夫よ」

美緒「……」


ミーナ「じゃあ早速、この前連絡した件だけど…」

ウルスラ「はい。 まず重力を操る固有魔法に関してですが……これはキトゥンさんが異世界人であり、異文明の超能力ということなので、割愛してよろしいですか?」

ミーナ「ええ。 一応、また今度時間がある時にでも聞かせてもらえるかしら?」

ウルスラ「……結局前例は見つからなかったというだけの話ですが、わかりました」

ウルスラ「それからユニット構成に使われる異空間について頂いていたご質問ですが、やはり私ひとりの手には余る問題でした」

ミーナ「そう。 ごめんなさい、無理を言ってしまって」

 
ウルスラ「ただ、私見で言わせて頂きますと、宮藤理論における異空間を通じて…俗に言う異世界との通信がとれるかは非常に難しいと思います」

美緒「……そんな事を考えていたのか?」チラ

ミーナ「可能性のひとつとしてよ。 本当に別の世界と繋がりを持つなら、その辺が怪しいと思っただけ」

ウルスラ「可能性の有無を述べる以前の問題ですが、私の知る限りでは異世界通信の技術が起きた話などは聞いた事がありません」

美緒「…やはり“むこう”の仕業か? そうなると我々ではどうしようもなくなるが」

ミーナ「……これに関してはもう少し情報が必要かしらね? こんな事にでもならなければ、ガリアでの情報収集に期待したかったけど…」

美緒「なんだそれは? 派兵でもする予定だったのか?」

ミーナ「一昨日に宮藤さん達がガリア被災地の支援に行きたいって嘆願してきたから、即事的に監督者を付ける条件で宮藤さんとキトゥンさんの派遣を許可したのよ」

美緒「ミーナが行くつもりだったのか?」

ミーナ「まさか。 …あのふたりだし、よっぽどそうしたかったけど私が席を立つのも難しいから、本当は貴女に引率してもらうつもりだったわ」

 
美緒「私が?」

ミーナ「宮藤さんをコントロールするなら美緒かシャーリーさんが適任だけど、キトゥンさんの謎に関する情報収集も狙っていたから美緒しかいないと考えていたのよ。 その矢先に警報が鳴ったの」

美緒「…そうか。 よしわかった、いつ出ればいい?」

ミーナ「え? ……ちょ、ちょっと待って! なにを言っているの?」

美緒「いや、だから私が宮藤とキトゥンを引率すると――」

ミーナ「こんな状況じゃ外出どころじゃないわ、わかるでしょ? 仮に行くとしても、キトゥンさんの秘密を明かしたんだからシャーリーさんやバルクホルン大尉でも…!」

美緒「しかし、あいつらもキトゥンの素性に100パーセント納得できてはいまい。 細かい話も聞いている私が行くべきだ」

ミーナ「……でも貴女、身体は大丈夫なの…?」

美緒「っ! …………ああ」

ミーナ「強がらないで。 今はいつどこにネウロイやネヴィが現れるかわからない状況なのよ? 出先でまたネヴィロイに襲われでもしたら危ないわ」

美緒「……」

ミーナ「……」

 

ウルスラ「…お取込み中恐縮ですが、よろしいですか?」ズイ


美緒「!」

ミーナ「あっ、あら…! ごめんなさいウルスラさん、なにかしら?」アセアセ

美緒「……中尉、今聞いた話は忘れてくれ」

ウルスラ「いいえ、そうはいきません。 私がお持ちしたものが、坂本少佐のお役に立つかもしれませんから」

美緒「なに?」

ミーナ「…どういうことかしら?」

ウルスラ「先日ミーナ中佐から送っていただきましたプレシャスジェムという鉱石ですが。 調べた結果、中佐のおっしゃる通り、特殊なエネルギーの結晶体でした」

ウルスラ「キトゥンさんの世界でどういった方法のエネルギー抽出を行っているのかは解りませんが、魔法力と大気中のエーテルとの反応時にエネルギーが放出されるのは確認できました」

ミーナ「魔法力に反応している訳じゃなくて、魔法発光現象に反応していたのね!」

 
ウルスラ「更にこの結晶から発生するエネルギーもエーテルに対して、少し弱いですが魔法力と同じ反応をするようです」ゴソゴソ

ウルスラ「…これを利用して少々面白いものを試作してみたので、本日はそのご紹介も兼ねてお持ちしました」スッ

美緒「……これは…?」

ウルスラ「魔動機運転補助装置です」

ミーナ「運転補助装置…?」

ウルスラ「運転補助と銘打ちましたが、つまりは補助バッテリーです。 航空ウィッチにおいて、魔動機で増幅された魔法力の使用率はユニットないし魔導エンジンの稼働が殆どを占めます」

ウルスラ「なので飛行機構の要である魔法呪符の構築と維持をこの装置で行うことにより、使用者の魔法力残量に大幅な余裕を生み出すことが可能となります」

美緒「……つまり、戦闘に使える魔法力が増えるということか?」

ウルスラ「はい。 他にも航空時間の延長や緊急離脱用の補助ストックとして温存するなど、幾つか効果は期待できます」

ウルスラ「本来はジェットストライカーの高燃費解消課題の為の案を用いたのですが、この結晶はこれ以外に手に入らないでしょうし、そもそも押収した私物だと言うので持て余していました」

 
ウルスラ「私からはここまでで、一度そちらにお返しいたします。 結晶は簡単に取り外せるので扱いについてはお任せしますが、不要であれば装置部は返却ください」

美緒「う、うむ……」ジー

ミーナ「美緒、貴女まさかそれを使う気じゃ…?」

美緒「……いずれにしても、これはキトゥンの物だ。 だがこれがあれば万一の備えとして、ガリアへ出ても平気なのではないか?」

ミーナ「そ、そんなことっ!」

ウルスラ「試作装置なので、もしユニットに装着されたい場合は私におっしゃってください。 それから減衰した魔法力の補助にはなるかと思いますが、シールドが出せることはありませんので」


美緒「……」

 

ミーティングルーム


ペリーヌ「……」カチャ

ペリーヌ「……」

ペリーヌ「はぁ…」カタン


キトゥン「――あ、見つけた」


ペリーヌ「…!」

キトゥン「ペリーヌさん」スタスタ

ペリーヌ「……ごきげんよう、キトゥンさん」

 
キトゥン「…お茶ですか?」

ペリーヌ「ええ」

キトゥン「……座ってもいいですか?」

ペリーヌ「……」

キトゥン「……」

ペリーヌ「…お好きにどうぞ」

キトゥン「し、しつれいします…」トスン

ペリーヌ「……」カチャ

キトゥン「…」

 
ペリーヌ「……」
 

キトゥン「……」


ペリーヌ「…なにか用があるのではなくて?」

キトゥン「ぅ……」

ペリーヌ「言い辛いことなんてありませんわ、言ってしまいなさいな」カタン

キトゥン「……ペリーヌさん、その…騙してごめんなさい」

ペリーヌ「それを、わたくしにだけ謝りに来たのかしら?」

キトゥン「…それと、ガリアの重力嵐のことも――」

ペリーヌ「……」

キトゥン「わたしのせいで…」

ペリーヌ「よしなさい」

キトゥン「ぇ…?」

 
ペリーヌ「そっちは謝る必要なんてないのではなくて? 別に貴女が犯してしまったことでもないのだから」

キトゥン「…ペリーヌさん」

ペリーヌ「別に素性を偽っていたことだって、事情があったのですから。 ……ご機嫌取りなんかで謝るのは失礼ですわ」

キトゥン「(うっ…、やっぱり怒ってる)……ごめんなさい」

ペリーヌ「……」

キトゥン「……」


――スタスタ


美緒「む、キトゥン! こんな所にいたか」

キトゥン「!」

ペリーヌ「少佐…!」

 
美緒「……なんだ、どうしたふたりとも? なにかあったか?」

ペリーヌ「い、いえ。 別に……お茶をしていただけですわ」カチャ

美緒「そうか。 …それでだな、キトゥン?」

キトゥン「あ、はい」

美緒「明日、私とお前と宮藤の3人でガリアへ行く事になった」

キトゥン「え! 明日ですか!?」

ペリーヌ「……」

キトゥン「…というか、行っていい状況なんですか?」

美緒「お前がこちらの世界に降り立った地だ、やはり何か手がかりがあると思う。 今の状況にネヴィが関わっている以上、必要な情報収集活動だ」

キトゥン「は、はあ…」

美緒「明日の午前には発つから、そのつもりでいろ。 いいな?」

キトゥン「…わかりました」

 
美緒「うむ。 では私は宮藤にも伝達しなくてはならんのでな、失礼する」クル

美緒「……それからペリーヌ」

ペリーヌ「?」

美緒「キトゥンに悪気はない。 出来る事ならば許してやってくれ」ヒソ

ペリーヌ「ご、誤解ですわ少佐…」コホン

美緒「…そうか」スタスタ



ペリーヌ「……」チラ

キトゥン「…ッ」ビク

ペリーヌ「………せ、せっかくですから…貴女の分も淹れて差し上げますわ。 よろしければ飲んでいきなさいな」カタ

キトゥン「…! うん、ありがとうペリーヌさん!」

 

宿舎 廊下


キトゥン「不安だったけど、ペリーヌさんと話が出来てよかった…」スタスタ

『キトゥンさーん、ちょっと待って頂戴』

キトゥン「? ミーナさん」


――ツカツカツカ


ミーナ「…ごめんなさいね? 呼び止めちゃって」

キトゥン「いえ、部屋に戻ろうとしてただけですから」

ミーナ「ガリアへ行くこと、美緒から聞いたかしら?」

キトゥン「あ、はい」

ミーナ「私はあまり賛成できないのだけど、あの人が…」ハァ

キトゥン「…なんとなくわかります(美緒さんのことだし)」

 
ミーナ「……美緒のこと、頼んでいいかしら?」

キトゥン「はい。 そんなに自信ないですけど、やってみます」

ミーナ「ありがとう、お願いね。 ……それから現地でのことなんだけど、貴女の世界の――」

『オーイ!! キトゥーン!』

キトゥン「!」


バタバタバタ


ミーナ「…エイラさん、サーニャさん。 廊下を走らないで頂戴」

エイラ「うぇっ! 中佐…!」

サーニャ「……すみません」

キトゥン「どうしたの、ふたりとも?」

エイラ「おいキトゥン、少佐から聞いたぞ! 明日ガリアに行くんだろ!?」

キトゥン「え? うん、そうだけど…」

 
エイラ「ホラ! やっぱり行っちまうんだ!」

キトゥン「…行っちゃうっていうか、別に戻って来るけど」

ミーナ「なにを慌てているの、貴女達?」

サーニャ「実は、エイラの占いで…」

エイラ「キトゥンが消えるって出たんだよ!」


キトゥン「………プフッ! エイラ、わたしが占い断ったからって」クスクス

エイラ「ホントなんだよぉ!」ムー

キトゥン「も~、わかったわかった! いいよ、今から部屋行くから占ってよ」

エイラ「ち、違うんだって~っ!」

ミーナ「……でもこう言ったらアレだけど、エイラさんの占いでしょう?」

サーニャ「はい。 …そうなんですけど、エイラの占いって悪いことだけは当たりますから」

エイラ「サーニャ!?」ガーン

 
サーニャ「キトゥンさん…」

キトゥン「サーニャまで、どうしたの?」

サーニャ「せっかくお友達になれたのに…」

キトゥン「大丈夫だよ。 別に芳佳の手伝いして帰ってくるだけなんだから」

サーニャ「……」ウルッ

キトゥン「えっ!? …ちょっとサーニャ!?」

ミーナ「あらあら…」

サーニャ「ごめ…なさぃ………寂しく…て……っ」グシグシ

エイラ「サーニャを泣かすなー!!」

キトゥン「わたしじゃないっ、わたしじゃないよ!?」アワアワ

ミーナ「……結局なんなの、貴女達」

 
――――
――



キトゥン「あー、ビックリしたなぁ。 サーニャったら急に涙ぐんじゃうんだもん」スタスタ

キトゥン(サーニャに泣かれちゃうと、なんかものすごい罪悪感だよ…)

『いたいたー! キトゥーン!!』

『おーい!』

キトゥン「……今度は誰?」クル


バタバタバタ


ルッキーニ「にゃっ!」バフッ

キトゥン「わっ!? …ルッキーニ!」

シャーリー「あたしと、リーネもいるよ」

 
リーネ「キトゥンさん…」

キトゥン「どうしたの? リーネまで不安そうな顔して」

ルッキーニ「キトゥン行かないで~!」ギュー

キトゥン「えっ!? ちょっと、それって…」

シャーリー「さっきエイラに聞いてさ、キトゥンがどっか行っちまうって」

キトゥン「やっぱりー!!」ガーン

リーネ「あの、元の世界に帰っちゃうんですか…?」

ルッキーニ「や~~だ~~!」

キトゥン「ま、待って待って! わたしはそんなこと一言もいってないってば!?」

シャーリー「え? そうなのか?」

 
ルッキーニ「やたー! キトゥンはあたしの~♪」スリスリ

リーネ「でもエイラさんが…」

キトゥン「リーネ落ち着いて、エイラの占いだよ? エイラが勝手に言い出しただけで、芳佳とガリアに行ってくるだけだから」

リーネ「あ、…この前の?」

キトゥン「そうそう」

シャーリー「……なーんだよ、エイラの占いか」ガク

ルッキーニ「じゃ当たんないね~?」グリグリ

キトゥン「る、ルッキーニ…ちょっとだけくすぐったいよ//」

ルッキーニ「大きくな~れ~、大きくな~れ~♪」モミモミ

キトゥン「ちょ…!!?」ビク

 

シャーリー「…つうか、なんでまたガリアに行くんだ? 帰るためじゃないのか?」

キトゥン「えっ? えーっと、それは……」

リーネ「元々は私と芳佳ちゃんが言い出したことなんです。 被災地の人達の容体が心配で…」

シャーリー「そっか…。 で、キトゥンが手伝いに?」

キトゥン「う、うん。 最終的にはわたしも元の場所へ帰るつもりだけど、明日はそのための手掛かりとか探す感じかな」

ルッキーニ「えー!? 結局帰っちゃうの!?」

キトゥン「……うん、流石にね。 ごめんね、ルッキーニ?」

ルッキーニ「や~! まだおっきくなってないのにーーっ!!」

キトゥン「なにそれっ!?」

 
シャーリー「胸が大きいキトゥンに抱きついてみたいんだってさ? 気に入られてんだよ」

キトゥン「いや、そんなこと言われても……(意味がよくわかんないよ)」

ルッキーニ「キトゥンはいい感じだから~、あとはココだけなんだよね~」モミモミ

キトゥン「や、やめて//」グイ

リーネ「あはは…」

シャーリー「…ま! 胸が大きくなるまでってのは難しいだろうけど、もう暫くはここにいるってことだよな?」

キトゥン「……んー、そうだね?」

シャーリー「あたしもさ、もうちょっとキトゥンとお喋りしたかったからさ~。 異世界の話も聞きたいし」

ルッキーニ「あっ、あたしもー!」ピョンピョン

キトゥン「…シャーリー、信じるんだ?」

シャーリー「いや、そりゃイキナリは無理だけどさ? そっちの方が楽しそうじゃん!」

 
キトゥン「う、うーん…。 わたしは当事者だからよくわかんないけど、案外そんなものなのかな?」

ルッキーニ「ねぇねぇ、あたしも異世界行けるかなー?」

シャーリー「ん? ……ムリダナー」バッテン

ルッキーニ「なにそれ~? エイラじゃーん!」

シャーリー「あははは!」

ルッキーニ「うじゅじゅ~~!」


キャイキャイ



キトゥン「ホント……賑やかなふたりだよね」

リーネ「ふふ、そうですね?」ニコ

キトゥン「リーネ? わたし、リーネの分も頑張ってくるからね」

リーネ「…うん、ありがとうキトゥンさん。 ペリーヌさんと美味しいスコーンを焼いて待ってますから」

次回更新、少し遅れるかもしれません

つづく

 
翌朝


美緒「忘れ物は無いな、ふたりとも? 問題なければ輸送機に乗り込め」

芳佳「はい!」ステテ

キトゥン(…うぅ、午前っていうか早朝じゃん。 なんでこんな時間に…)ボケー

ダスティ「zz…」

美緒「どうしたキトゥン。 舟を漕ぎたければお前だけ海路にするか?」

キトゥン「す、すみませぇん……」トボトボ

ダスティ「……zz」

キトゥン「…人の腕の中で熟睡しちゃってさ、猫はいいよね」

美緒「急げ」

キトゥン「は、はーい! 今いきますっ」スタタ


???『…』ユラ


キトゥン「――ん?」ピタ

 
キトゥン「…今見えた人影って」クル


???『……』


キトゥン(この間宿舎で見たノゾキ…!?)

美緒「何をしている? 早く乗れ」

キトゥン「美緒さん! あ、あれっ…!!」ビシ

美緒「…どうした?」チラ


……


美緒「あそこがどうかしたのか?」

キトゥン「……あれ? またいない…」

美緒「しっかりしろ、キトゥン」ヤレヤレ

キトゥン「み、美緒さん! さっきまでそこに男の人が――」

美緒「こんな時間に見送りに来る奴などいない。 あの辺はさっきから誰もいなかった」

キトゥン「うそっ、そんなこと…!」

美緒「……寝ぼけるのも大概にしろ。 行くぞ?」グイ

キトゥン「あぅ!? ちょ、まってくださ――」ヨロ

 
数時間後

ガリア共和國


美緒「2名は医療テントの設置、1名は供給資材の準備だ。 日帰りのためあまり時間も無い、迅速に動け!」

モブ兵達「「了解であります!!」」ビシ

美緒「土方、この辺一帯のボランティアや民間救助を指揮している者に連絡を取れ」

土方「了解しました、…ガリアの復興軍部には?」

美緒「そっちはいい。 ミーナが話を付けている筈だ」

美緒「私もキトゥンと直ぐに復興作業に入るから、供給支援等の段取りはお前に任せる。 終わり次第こちらの支援に戻れ」

土方「はっ! 了解しました」

美緒「うむ。 頼んだぞ」


キトゥン「……ここがパリ…? ずいぶん荒れちゃってるね…」キョロキョロ

美緒「元々ネウロイに破壊されていたという面もあったが、先日の嵐でそこら中の大きな瓦礫が舞ってしまったのだろう。 ひどい有様だ…」

芳佳「…そんな、前来たときからほとんど変わってない…!」

 
美緒「圧倒的に人手不足の様だな。 特定のウィッチの力でも借りない限り、そう数日で変わるものでもない」

芳佳「どうしてみんな助けないんですか!?」

キトゥン「芳佳…」

美緒「お前と想いを同じくする者は多い。 だがペリーヌがここに来れなかった様に、そこには必ずしがらみも有る」

芳佳「……でも、それじゃ…」

美緒「だから我々が来たのだろう? なあキトゥン!」

キトゥン「え? あ、はい! うんうん、そうだよ芳佳?」

美緒「お前達がミーナに直談判したそうだな、流石だ! お前達のその行動力と意志力が、いつか導となる日が来るぞ?」ワッハッハ

キトゥン「……ミーナさんも苦労してるんだなぁ(ていうか、わたしも入れられてるし)」

美緒「何がだ?」

キトゥン「…なんでもないです」アハハ

芳佳「……」


『なあ、お姉ちゃん』
 

 
芳佳「ぇ…?」チラ

キトゥン「?」

美緒「む、子供か」

少年「……お姉ちゃん達、軍人…?」ジロ

芳佳「ぁ、うん。 そうだよ?」

キトゥン(わたしは違う)


少年「…やっぱり」ギリ


芳佳「?」

少年「…………なにしに来たんだよ」

芳佳「ぇ…?」

 
少年「………父さんがネウロイに殺されて……母さんも妹もこの前の嵐でいなくなっちまって――」


少年「今更なにしに来たんだよ!!」


芳佳「……!!」ビクッ

キトゥン「!」

美緒「……」

少年「っ…、なんでさっさとネウロイ倒さないんだよ!! なんで誰も母さん達を助けてくれないんだよ!!!」グスッ

美緒「……」

芳佳「……ご、ごめん。 …ごめんね……私…」

少年「今更救急箱なんか持ってなにしに来たんだよ!! 父さん達を返せよ! 死んだ人はどうでもいいのかよ!!!」

芳佳「ッッ」ドキ


キトゥン(~~!!)ムカ


キトゥン「ちょっと君さ、いくら子供だからってそんな言い方はないよっ!?」ズイ

美緒「…よせキトゥン」

 
少年「……うるさい、俺の気持ちなんか…わかるもんか」

キトゥン「男の子が拗ねて女の子に八つ当たりなんてサイテーだよ!? そもそも芳佳にあんなこと言うのも筋違いっていうか――」

美緒「待て」

キトゥン「…君が今傷つけたこのお姉さん達が、ガリアからネウロイを追い出してくれたんだよ!!」プンプン

美緒「もういい、キトゥン!」

キトゥン「よくないです!! 確かに可哀想ですけど、あそこまで言われて――」

芳佳「……」

少年「~~っ………だったら…さっさと追い出せよっ!!!」ダッ

芳佳「ぁ…!」

キトゥン「――こら!! 逃げるな!」タッ

美緒「追うな!」グイ

 
キトゥン「いたっ!? ……美緒さんはなんとも思わないんですか!」

美緒「…………」

キトゥン「~~!」ムスー

美緒「……」

キトゥン「…? ……ぁ…あれ、美緒さん…?(もしかして怒らせちゃった!?)」

美緒「…宮藤、大丈夫か?」チラ

芳佳「……は、…はぃ…」

美緒「辛いだろうが、これも避けられない一面だぞ。 お前が……私達が目指す道にはな」

芳佳「……はぃ…」

美緒「今お前に出来ること、それを見失うなよ?」

芳佳「……」

美緒「私とキトゥンは少し離れる。 何かあれば連絡しろ」

芳佳「はい…」

 
美緒「……お前達、宮藤軍曹を頼むぞ? それの設置が終わったら器具の搬入を急げ」クイ

モブ兵「りょ、了解であります!」

キトゥン「あのー…?」オズオズ

美緒「…キトゥン、ついて来い」スタスタ

キトゥン「え? あぁ……はい!」


――――
――



美緒「……ふむ、この辺りはまだ手付かずだな」

キトゥン(さっきの話はどうなったんだろ……蒸し返したらマズイかな…?)スタスタ

美緒「キトゥン」

キトゥン「あっ、はい! なんですか?」ドキィ

美緒「お前の能力を借りて瓦礫を片づける。 この辺りはウィッチの私でも苦戦するサイズの物ばかりで、撤去が進んでいない」

キトゥン「わ、わかりました…(とりあえず手伝い頑張ろう)」

美緒「先に日が暮れても困るが、だからと言ってあまり一度に運び過ぎるなよ? まず、お前は上にある巨大な瓦礫からひとつかふたつずつ持っていけ」

キトゥン「…5個ぐらい持てちゃいますけど?」

美緒「あまり大雑把な扱いはよせ。 これは唯の瓦礫撤去作業ではない」

キトゥン「え…?」

美緒「……すぐにわかる」

 
――――
――



キトゥン「それ」フッ


ゴゴン…


キトゥン(……う~ん、これってただ瓦礫の山をあっちからこっちに移してるだけなんじゃないかな?)

キトゥン「……」シュダ


ビュゥゥン

スタッ


キトゥン「ここの山はあとこれを入れて3つくらいか」

キトゥン「…よっ――」ブワァン


キトゥン「ッ!!?(えっ!?)」ビクッ
 

 
キトゥン「……ぁ……ぅ…こ、これって!?」

ダスティ「…」トテトテ

キトゥン「!? だ、ダスティ! 触っちゃだめっ!!」

ダスティ「……」

キトゥン「………み、美緒さーーんっ!!!」


――タッタッタッ


美緒「どうしたキトゥン!?」ザッ

キトゥン「…あ、あぁ……あれ…!」

美緒「…! …………出たか」

キトゥン「で、出たかって…!?」ガーン

美緒「……」スッ

美緒「土方、応答しろ。 こちら坂本だ」

土方『はい、いかがされましたか?』ガザザ

 
美緒「輸送機を下ろした西の教会跡付近の瓦礫の中から、遺体を発見した。 損傷は中程度だが、なんとか身元はわかるかもしれん……現場指揮者に伝えて対応の要請を頼む」

土方『了解しました。 ご遺体はその方のみですか?』

美緒「いや、残念ながらまだ出るかもしれんと伝えてくれ」

土方『……了解しました』

キトゥン「……っ…」ドキドキ

美緒「…あまりこういう経験はないか? 目を背けたくなるのは私も常だが」

キトゥン「……ヘキサヴィルでわたしが目を覚ました時は、大きな被害は起きた後で…――うっ…!?」オエッ

美緒「とりあえず瓦礫を下ろせ。 ……ほら、水だ」

キトゥン「す……すみません…」フッ


ズズン…


キトゥン「……グジュグジュ……ぺっ! …はぁ~…」ガク

美緒「…先程の子供も――」

キトゥン(…!)

美緒「こんな光景を見たに違いない。 異臭が漂いこの何倍も凄惨な中で、家族を無くしたんだ」

キトゥン「……」

 
美緒「…儘ならない話だ。 正しい事をしたとしても、そこで得る全てが賞賛とは限らん」

キトゥン(確かに。 …わたしも誤解とか、街の人に文句言われたりすること多かった気がする)

美緒「何のために戦おうともこれは避けられない、仕方の無い事――」

美緒「…とはいえ、我々も人間だ。 お前の憤りは十分に解る、それもまた大切な事だと私は思う」

キトゥン「…………」

美緒「納得いかないか。 だが当の宮藤はお前の心配と全く別の事を気にしているぞ?」

キトゥン「ぇ…別?」

美緒「多分あいつは自分が傷ついた云々以上に、あの少年の無念に気を落としている」

美緒「……もし省みているとすれば、恐らくそれは救えなかった自分に対してだろうな」

キトゥン「い、いやいや! 確かに気の毒ですし、心は痛むというか…アレですけど。 ……それは芳佳のせいじゃないですって! 全く関係ないですよ!?」

美緒「だが宮藤芳佳とはそういうやつなんだ。 …あいつはそもそも戦争が嫌いでな、他を傷つけるのも他に傷つかれるのも好まん」

 
キトゥン「……それって、戦争で自分のお父さんに死なれちゃったからですか?」

美緒「む、詳しいな。 …どこで聞いた?」

キトゥン「あ、ごめんなさいっ! えっと前に芳佳が話の流れでポロッと口にして…」

美緒「………確かに宮藤博士の失踪が与えた影響も大きいだろうな。 しかしあいつは憎しみでは戦わん」

キトゥン「…ネウロイを許すってことですか?」

美緒「それは有り得ん。 だが互に戦い、排除するという解決法に独り疑問を投じた事もあった」

キトゥン「でもそれって、なんか…」

美緒「勿論、話にもならんさ。 ネウロイは敵だ、奴等が人類を侵すならば倒す! …この惨状が答えだ」

キトゥン「……」


『フフフ……一方的な正義だな。 実にわかりやすい』


美緒「っ!? 誰だ!?」バッ

キトゥン「なっ、アイツ……!?」

???「屍の前で正義を語るとは素晴らしいが、うちのお姫様の情操教育上よくないのでその辺で止めてもらいたい」

 
美緒(こいつ、こんな足場で気配も無くいつの間に…!?)

キトゥン「だ、誰があんたのお姫様よっ…エイリアス!」

美緒「知り合いか?」

キトゥン「頭おかしくて迷惑な泥棒です! 言っておきますけどわたしあいつ大キライですから!!」

美緒「なるほど、“むこう”の者か」

エイリアス「フフフ…玄関が開けっぱなしだったのでね、お邪魔させて頂きました次第」

美緒「……真面目に話さんタイプか、やれやれ」

キトゥン「相手にしない方がいいですよ、美緒さん」

エイリアス「フフフ、ならば代わりの相手を用意しよう」パチン


ゴゴォォオォオオ


美緒「!!」

キトゥン「重力嵐!? …こいつっ!!」

 
キトゥン「ニャア!」ピョン

キトゥン「(このパターンだと多分出てくる)ダスティ、気をつけて!」

ダスティ「…!」ダッ

キトゥン「ちょっと!! どこ行くの!? …ダスティ!」

美緒「キトゥン、物陰に隠れろ!! 瓦礫が飛んで来るぞ!?」

キトゥン「くっ…、折角片付けたのに!」


エイリアス「ハーハハハッ!! 先ずは舞台を整えなければなぁ!」


オォオオォ…


ォォ…


……



ネヴィ「「「…~」」」ワラワラ



美緒「…くっ、最悪だ。 ミーナの心配が的中した! ……こちら坂本、土方っ、応答しろ!!」

キトゥン「やっぱり出た…」

>>740
キトゥン「ニャア!」→ダスティ「ニャア!」

に訂正

 
エイリアス「さて……舞台衣装はそれで平気かな、重力姫? 穴だらけでいささか痴女的だが」

キトゥン「た、戦ってついちゃったの!! これ一着しかないんだから、ほっといてっ! ///」

エイリアス「なるほど、…怪異の破片は痛かったかな?」

キトゥン「…!! なんでアンタがそんなこと知ってるの!?」

エイリアス「フフフ…」

キトゥン「もしかして、今までのは全部…!」

エイリアス「……種明かしをしよう」パチン


ゴォオォオ――


キトゥン「! またっ!?」

エイリアス「慌てるな、これはすぐ消える」



ネヴィ「「「…!」」」グラ

ビュゥゥゥ
 

 
キトゥン(ネウロイが吸い込まれた!)

エイリアス「フフフ、送ってやったのさ。 便利だろう?」

キトゥン「!?」


――ォオォ…


キトゥン「っ…??」

エイリアス「…今頃お前のお友達はランチタイムかな?」

キトゥン「ぇ…? ……うそ、まさか!!」

エイリアス「ククク、…ネウロイとやらも送ってやろうか? 少々手はかかるが」

キトゥン「え、エイリアス!!!」

 
ヒュン――

チャキッ


エイリアス「!」ピク

キトゥン「美緒さん!」

エイリアス「……合挽き通信はもういいのか、エクスウィッチ〈元魔女〉?」

美緒「その巫山戯た口を閉じなければ両足が消えるぞ、下郎」

エイリアス「ククク、出来るかな?」

美緒「やれんと思うか? だが貴様が我々の“敵”ならば、人間だろうと容赦はしない」グイ

キトゥン「えっ…み、美緒さん本気ですか!?」

美緒「殺しはせん。 だが捕らえるために四肢から1~2本は奪ってもいいぞ? 刃を手にした時からその覚悟はある」

エイリアス「それは困るな、血が出てしまう」

美緒「安心しろ、私の弟子が死なない程度に止血してやる。 ……さあ、ロマーニャの基地に送ったネヴィを戻せっ!!」

 
エイリアス「……もはや力の無い者が、玩具を手にして勘違いか。 偉そうに――」ククク


シュパッ


エイリアス「ぐっ…!?」ヨロ

キトゥン「わっ!! 美緒さん!?」

美緒「烈風丸は私の片腕だ。 ……口が減らんのなら次は本当に斬り落す」ブン

エイリアス「…っ……フッ、その烈風丸ちゃんは…はたしてそう思っているかな?」

美緒「っ! 黙れ!! さっさと言われた通りにしろ!」

エイリアス「………やれやれ、遊び相手が欲しいのなら慌てなくとも用意してやる」パチン


巨人ネヴィ「…~~」グググ

美緒「!」


キトゥン「!? 美緒さん、うしろ!」

 
巨人ネヴィ「ー!」ブンッ

美緒「!?」ダッ


バゴォッ


美緒「…くそ! どこから現れた!?」ザシャッ

エイリアス「注文通りに戻してやっただけだが?」

キトゥン「うそつけ! あのネヴィはさっきいなかったでしょ!?」

エイリアス「ユーモアだよ。 楽しめ」クク

美緒「……貴様を野放しには出来んな」チャキ

エイリアス「ジャカゴはお気に召さないか……だがそいつは特別だぞ? 踊ってみたまえ」

キトゥン(…特別?)

美緒「舐めるな!」ダッ

 
美緒(このネヴィはシャーリーから聞いた奴だ。 …足元から回り込んで、後ろに5つと頭に1つあるコアを一息で討つ!!)


シュタタタッ


巨人ネヴィ「…! …!?」ワタワタ

美緒「やはり遅い」シュダ


キトゥン「――ぁ!(あのネヴィの雰囲気、もしかして…)」


美緒「はぁっ!!!」シュッ


シュピピピーッ


巨人ネヴィ「……!」



美緒「――…」スタ

巨人ネヴィ「ッ…  」ガク

美緒「……多少図体はでかいが、届かん距離ではない」

 
エイリアス「クク…」

美緒「次はお前を捕らえて、この騒動の顛末を聞――」

巨人ネヴィ「 ……~~ー!!」グググ

キトゥン「美緒さん!! そいつまだ生きてます!」

美緒「!?」

巨人ネヴィ「ーーーッ!!」ブンッ

美緒(な――)



『坂本さぁーーんっ!!』


ダダダダッ

バキィィイン


巨人ネヴィ「ッ…!?」ビクッ

キトゥン「! …芳佳!」

美緒「宮藤!?」

 
――ブゥゥウン


芳佳「坂本さん、キトゥンさん! 大丈夫ですか!?」フワ

美緒「すまない、助かった! …しかし、よくこんな早くに駆けつけたな?」

ダスティ「…ニャア!」ヒョコ

キトゥン「あ! ダスティ、どこ行ってたの!? お前がいなきゃ能力ちゃんと出せないじゃない!」

芳佳「ダスティちゃんが知らせてくれたんです! それから土方さんも直ぐそこまで来てます」

美緒「…よしわかった! すまんが、一時だけ時間を稼いでくれ!」

芳佳「はい! すぐにやっつけます!」ブゥゥウン

キトゥン「あっ、待って芳佳!? そのネヴィは多分希少種!」


芳佳「やぁーー!」ダダダ


バキバキィン

巨人ネヴィ「ッ…ッ……!」


キトゥン「ぇ……うそ、意外にもろい?」

 
エイリアス「ほぅ、さっきの攻撃でコアがここまで弱ったとは……あの刀、唯のおもちゃではないのか」

キトゥン「…! そうだ、エイリアス!」ハッ

キトゥン「アイツをとっ捕まえるよ、ダスティ!?」

ダスティ「ニャア」

エイリアス「…お誘いは嬉しいが、子犬ちゃんが危ないぞ?」ククク

キトゥン(!? 芳佳!)チラ


キトゥン「……芳佳、近づきすぎっ! そいつの正面は――」



巨人ネヴィ「ーー!」ブゥンッ

芳佳「わっ!?(シールド…!)」パァア


バゴォオッ


芳佳「っーー!?」


ヒューーーン→



エイリアス「……ホームラン」ククク

キトゥン「芳佳ぁーー!」


――――
――

 

『少佐ーー!!』


美緒「……土方ぁー!」タッタッタッ


土方「紫電改、お持ちしましたぁ!」ゼェ ハァ


美緒「よくやった!! そのまま脇にしっかり担いでいろっ!?」

美緒「ふっ…!!」ダッ


スポッ


美緒「ッ…おっと!」ヨロ


バフ…


土方「モガッ!?」

美緒「む、すまん。 勢い余ってしまった」フィィイン ピョコ

土方「い、いえ……失礼しました//」ササッ

美緒「今更言う必要も無いだろうが、つまらん気を起こすなよ? お前がいないと何かと困るからな」ブゥゥン

土方「ご、ご冗談を…」

 
美緒「はっはっは! お前は近隣の軍拠点へ連絡をとった後、一般人の避難誘導を指揮しろ!」

土方「了解しました」

美緒「私は敵の怪人を捕らえに行く、奴を放っておけば欧州の被害は無限に広がりかねん!」

土方「少佐、くれぐれもご無理は――」


美緒「…」ビッ

土方「――っ!」ピタ


美緒「………土方。 せめてお前だけは黙って私の我儘を許してくれ」

土方「少佐…」

美緒「心配するな、今回ばかりは備えもある。 とっておきだ!」

土方「……ご武運を!」

美緒「お前もしっかり頼むぞ」フワ

土方「はっ!」


ブゥゥウン


――――
――

よく考えたら土方に指揮させるとかおかしい気がするけど緊急時だしいいや

 

巨人ネヴィ「」シュゥゥ…


キトゥン「ふぅ……はぁ…。 ほ、ほら! 落ち着いてやれば…っ……こんなヤツ楽勝!」ゼェ ゼェ

ダスティ「……」

芳佳「う、うん。 キトゥンさん大丈夫ですか?」

キトゥン「……ごめん、ちょっと一息つく」


エイリアス「…モノ・ジャカゴを倒すか。 犬猫の躾も楽ではないな」



――ブゥゥウンッ


美緒「宮藤! キトゥン!」

芳佳「坂本さん!」


エイリアス「フフ、これはまた…」

 
美緒「エイリアス…と言ったか? お前を拘束する、覚悟しろ」

エイリアス「それはガラスの靴ですよシンデレラ。 0時はとっくに過ぎている」

美緒「悪いが私は魔女なのでな、最後まで泥臭く足掻かせてもらおう」スラァ

エイリアス「…………おもしろい。 では主役を出さねばな」パチン


ゴォォオオォ


???「……」ゴゴゴ



キトゥン「! …なにあれ!? ネウロイ?」

芳佳「!! さ、坂本さん…アレって…!?」

エイリアス「ククク、見覚えがあるかな?」

美緒「…奴め、カールスラントから連れて来たな?」ギリ


芳佳「……ネウロック…!!」

 

 
キトゥン「ネウロック?」

美緒「いや、よく見るとネヴィが既に取り憑いてネヴィロイと化している。 さしずめ“ネヴィロック”と言うところか」

キトゥン「ね、ネヴィロック??(ややこしい!)」

芳佳「で、でもネウロックは前に私達が…!?」

美緒「他の巣でも出たのか居たのか――……ネウロイ共の関係図は分からんが、争う所もあれば、一部で情報共有をするような面もあるからな」



エイリアス「さて――」スタ

エイリアス「…工業都市以来の再戦だ、重力姫」ズズズ…


ネヴィロック「ッ…ー!」ギラッ



キトゥン「あっ! アイツ、またネヴィとくっついて…!!(いつの間にあっちへ!?)」ムッ

美緒「“ネヴィロック”だ、キトゥン」

芳佳「え、え?? どうなっちゃうんですか!?」オロオロ

美緒「…取り込まれたようにも見えるが、奴は食われないのか?」

キトゥン「はい、多分逆です。 ……めんどくさいことになったなぁ、もう」

ダスティ「…」

 
エイリアス「ハーッハッハッハァ! 宿敵の登場だ、悪い魔女達よ!」



美緒「……キトゥン、宮藤も気を抜くな? 相手はあのネウロック以上だ」

芳佳「ぅ…」

キトゥン「そ、そんなすごいの?」

美緒「……私の想像通りなら、はっきり言って勝ちの目は薄い」

キトゥン「…!?(あの美緒さんがこんなこというなんて!)」

芳佳「なら援軍を呼びに行きましょう!」

美緒「ここから離脱できればそうしたいが、振り切るのは無理だ。 ここで討ち果たすしかない!」チャキ

美緒「宮藤、キトゥンを頼んだぞ! お前たちは一組で当たれ」

芳佳「え、…坂本さん!?」

美緒「攻めの要は私がやるっ!」ブゥゥン

キトゥン「ちょ…!? 美緒さーん!」

 

エイリアス「ククク…、王子様発進」

ネヴィロック「――!」ビーム


ビビィーー


美緒「ッ…」ヒュン


ビービビーー


美緒(相変わらず厄介な弾幕だ、戦艦と戦っている気になる!)ヒュン ヒュン


エイリアス「…素晴らしい、最高じゃないか」ククク

ネヴィロック「ー!!」ビー


美緒(……避け続けるのがやっとだ、近づけん!?)ブゥゥウン


エイリアス「そうか。 お前は魔法の盾は出せないんだったな、エクスウィッチ」

エイリアス「………熟れきった果実は甘過ぎる。 腐って落ちる前にジャムにしてしまおうか」

ネヴィロック「~ー!」


ボボッボ


美緒「! …ネヴィの鈍行追尾弾か!」ブゥゥン


ビビィーー


美緒「――ぐっ!? …くそ! ビームが邪魔だ!」

 
エイリアス「早く逃げないと摘まれるぞ?」ククク

ネヴィロック「~!」ビー


美緒「っ…!」ブゥゥン

エイリアス「……さぁ、当たるかな?」

美緒「!!(追尾弾が目前に…っ!? 逃げられないか!)」

エイリアス「ククク」


美緒「…烈風丸!!」バッ


ギィィインッ


エイリアス「なにっ!? ……刀でいなしただと!?」


美緒(今だ!)ビュゥンッ

エイリアス「――な!!?」

美緒「……シッッ!!!」ヒュッ


ザシュゥッ


エイリアス「っ!! …グゥッツッ…ッ!!?」

ネヴィロック「…」ピタ

 
エイリアス「~……ッッ…」

美緒「…言っただろう? 次はその腕を斬り落とすと」

エイリアス「…………クク…」ヨロ

美緒「まだ笑うか。 気がふれているのか知らんが、ある意味天晴だな」

エイリアス「…フハッハァ! お前はからかい甲斐のあるやつだ」ニョキニョキ

美緒「!!(腕が再生している!?)」

エイリアス「これは実に楽しいな」

美緒(こいつ、さっきからネヴィロックを操っているのか? まさか本当に同化をして…!?)

エイリアス「…しかし痛いのは適わないな、サービスはこの辺にしておこう」

美緒「…ちぃっ!」ギリ


『坂本さぁーーん!!』

 

 
エイリアス「……来たな」

美緒「! 宮藤、キトゥン!? …お前達何をする気だ!」


――ビュゥウゥン


キトゥン「いくよ、芳佳! おもいっきりやるからね?」

芳佳「はいっ!」パァァ

キトゥン「…重力スロー!!」バシュンッ


ビュォォオォ


エイリアス「!」

芳佳「シールドストライクー!」ゴォォ


ッゴガァアン


ネヴィロック「!!」

エイリアス「ッ!?」

ヒューーーン→



美緒「……ネヴィロックを弾き飛ばした!?」

すみません、ちょっと煮詰まってます。次の更新は遅くなると思います
最終的には必ず、できれば今年中には終わらせますので

つづく

 
キトゥン「――やった、芳佳! いいかんじ♪」

芳佳「…ぁあ~、手が…ビリビリするぅ」ジンジン

美緒「お前達」

キトゥン「美緒さん! 急にひとりで飛んで行っちゃわないでくださいよ?」

美緒「いや、それより今の攻撃は…?」

キトゥン「この前美緒さんを助けに入ったときに思いついたんです、“重力スロー・シールドストライク”!」

芳佳「実はシャーリーさんとルッキーニちゃんの真似なんですけどね」

美緒「むぅ、そうか。 しかし中身はともかく、名はシャーリー達の“音速☆神風アタック”の方が良いと思うぞ?」

キトゥン「うそ!? 絶対こっちの方がいいですよ! なにするのか分かりやすいし」

芳佳「投げられた私がシールドで突進するだけですもんね」

 
ダスティ「……」ピク

美緒「む、どうした麻畳〈またたみ〉?」

キトゥン「…あの、うちの猫に勝手に変な名前つけないでくださいよぉ」

ダスティ「~!」

美緒「わかっている麻畳、油断などない。 もうすぐ敵も戻ってくるだろうからな」

ダスティ「ニャア」

キトゥン「……ちょっとダスティ、なに普通に受け入れてんのよ? わたしのつけた名前があるでしょ?」

ダスティ「…………」

キトゥン「……いいよ、わかった! あっちに帰れたら家にタタミ入れてあげるから!」

ダスティ「!」

芳佳「よかったね、ダスティちゃん?」

美緒「人に注意したそばから己の気を崩してどうする麻畳」

 
美緒「…お前達も! ネヴィロックはおそらく無傷で戻ってくるぞ?」

芳佳「あ、そうだった! どうしよう!?」

キトゥン「戦うしかないよ、芳佳!」

美緒「その通りだ! だが、ネヴィロイ化した装甲に生半可な攻撃では太刀打ちできん」

キトゥン「じゃあ先にネヴィのコアを壊しましょう!」

美緒「アレをひとつずつ消すのは厳しい。 今まで奴は木偶の坊だったが、足を使ってきたらとても我々の余力のあるうちには無理だろう」

キトゥン「……そ、そんなにすごいの?」チラ

芳佳「はい…。 とっても速いですよ」

美緒「ましてやネヴィロイは超速再生までするからな」

キトゥン「…どうしよう……」

 
美緒「……狙うは1点だ、そこを一撃で仕留める!」

芳佳「ぇ?」

キトゥン「! なにか弱点とかがあるんですか!?」

美緒「…奴の急所はふたつ。 まず、今のネヴィロックは恐らくエイリアスが操っている状態になっている。 つまりエイリアスを討てば――」

芳佳「まっ、待ってください坂本さん!! そんなこと出来ません!!」

美緒「落ち着け宮藤、私も人殺しは御免だ」

キトゥン(うーん……でも人外じみてるんだよねぇ、アイツだけは)

美緒「キトゥンや我々のためにも、奴は捕らえる必要がある。 故に敵のもうひとつの弱点を狙う」

芳佳「…もうひとつの弱点ですか?」

 
美緒「言うまでもない、ネウロイのコアだ。 ネウロイとしての力を先に奪ってしまえば、残りは何とかなる」

芳佳「で、でもどうやって…!?」

美緒「だから言っただろう、一撃で仕留める! 私の烈風斬でな」チャキ

美緒「…宮藤、お前はキトゥンを守れ。 キトゥンは私と同様、ネウロイのコアを狙うぞ?」

キトゥン「わたしが!?」

美緒「先日のネヴィロイを倒したアレなら、ネヴィロックの装甲も突破できるかもしれん。 コアの位置は視えるな?」

キトゥン「…はい。 一応、ぼんやり」

美緒「よし! 私とお前達の二手で撹乱し、チャンスを得た方が全力突破だ」

芳佳「え、それじゃあ坂本さんは…!」

 
美緒「私は独りでいい。 互いの動きにはこちらで注意を払うから、お前達は他を気にせず全力で当たれ」

キトゥン(……大丈夫かな、美緒さん?)

芳佳「でも!」

美緒「かたまれば火力差であっという間に負ける。 こうする他ない」


ゴォォ…ォ…


ダスティ「…!」

美緒「来たか。 行くぞ宮藤、キトゥン!!」ブゥゥン

芳佳「坂本さん!?」

キトゥン「…芳佳、もうやるしかないよ! 美緒さんを信じよう?」

 

エイリアス「……さぁ続きだ」

ネヴィロック「ー!」ビー



美緒「ふっ!」ブゥゥン

美緒「(先ずは当たるか、小手調べ)……はぁ!!」シュバッ

ネヴィロック「……!」ゴゥン


――スカッ



美緒「…やはり動いたか」


エイリアス「ククク、サービスはここまでだ。 本気でいくぞ?」

 
ネヴィロック「…!」ビュゥウン


美緒「!?」


エイリアス「ハーハハッハ! 素晴らしい動きだ、これはいいぞ!」


美緒(…おかしい。 ……こいつ、まさか)

美緒「……ならば今のうちに決めるっ!!」ブゥウン


エイリアス「!?」


美緒「宮藤ぃ、キトゥン! 牽制しろぉー!! 今の奴はノロマだっ!!」

芳佳『は、はい!』

キトゥン『なら芳佳、わたしがちょっかい出してみるから援護して!』

 
――



ダダダダダッ

ビュゥウウン

ヒュン ヒュン


ネヴィロック「ッ…」

エイリアス「クッ、小賢しい!」キョロキョロ


美緒(…目を離したな? チャンスだ)

美緒「勝負っ!!」


ブゥゥウン――
 

 
ネヴィロック「……!?」ピクッ

エイリアス「グッ!? おい、どうした! 何を――……ぐぉ!?」ガクンッ


美緒(やはりエイリアスが足を引っ張っている、ネヴィロック自身が先に気付いた)

美緒「だがもう遅い! 懐に入った!!」


ネヴィロック「…~!」

美緒「逃がさん!!」


ブゥゥウン



キトゥン「美緒さん…! すごい!?」

芳佳『小回りと接近戦で坂本さんに勝てる人はいませんよ!』

キトゥン「へぇ…(なんだか嬉しそうじゃん、芳佳)」

 
美緒「読めた!」チャキ


エイリアス「なっ…! いつの間に!?」

美緒「必中のチャンス、はぁあっ!!!」フィィィイン


美緒「烈風斬ッッ!!」ズォオオ


ネヴィロック「ッーーーッー」ベキベキベキ

エイリアス「ぐぉあ゛っ!!?」

美緒「ぉおおおお!!」


ズァアァアアアーー

 

 
――――
――



ネヴィロック「…………」

美緒「……くっ! 馬鹿な!?」

美緒(全力の烈風斬でも装甲を破るのがやっとだとは…!?)

エイリアス「こ、この魔女がぁ!」ギリ

美緒「ぐ……(コアに刃を突き立てているのに、もう力が入らん)」

美緒「…つ、使うか。 アレを――」

ネヴィロック「ーー!!」ギロ

美緒「!?」


ビカァアッッ





芳佳「!? 坂本さぁーーんっ!!」

キトゥン「美緒さんっ!? う、うそ!!」

ダスティ「……」

 

――ブゥゥウン


美緒「……むぅ、危なかった…」

芳佳『坂本さん! よかったあ、無事ですか!?』ガザ

キトゥン『やられちゃったのかと思いましたよ!』

美緒「すまない、ウルスラ中尉の補助ユニットでなんとか逃れた(あと1秒でもあれば先に討てたのだが…)」

美緒「それより、一度合流しよう。 ネヴィロックの様子が変だ」

 
――――
――



美緒「……」


芳佳「坂本さーん!」ブゥゥン

キトゥン「ふぅ……芳佳そろそろ肩借りてもいい? 息継ぎを…」

芳佳「あ、うん。 いいですよ」

美緒「…お前達、アレを見ろ」

芳佳「?」

キトゥン「…!」





ネヴィロック「ーー! ~!!」グググ

エイリアス「ッ…どうした怪物!? 私の命令に通りに……!」ジタバタ

ネヴィロック「ー~!」





キトゥン「…エイリアスのやつ、どうしちゃったの!?」

美緒「恐らくエイリアスとネヴィロック……いや、ネウロックとの間で摩擦が生じている」

 
キトゥン「摩擦…ですか?」

美緒「ああ。 今奴の中はネヴィ、ネウロック、エイリアスの三つ巴……それらの力や意思関係がどうなっているかは知らんが、どこかしらで衝突が起きている」

芳佳「どうしてわかるんですか!?」

美緒「どんなに優秀な者同士の二人三脚であろうと、息が合わなければ互いの足を引っ張り合うだけだ」

美緒「奴らがもし噛み合っているか何れかの意志の下に統制されているなら、少なくとももっと動きはいい筈。 ネヴィロイ化した装甲は無敵かもしれんが、その他に関して今の奴はネウロック以下だ」

キトゥン(そういえばこの前のネヴィロイもサーニャの攻撃を受けて不自然に硬直してた…!)

美緒「そもそも変形飛行すらしない時点で、完全に実力を発揮できていまい。 そしてそれをエイリアスは知らん」

キトゥン「……そ、そうなんだ。 じゃあ今がチャンスですね!」

芳佳「でも坂本さん、あの…烈風斬は効かなかったし……攻撃が通じないんじゃどうやって倒せばいいか…」

美緒「そうだな。 結局ネヴィロックである以上、奴のコアを破壊するのは絶望的と言っていい(烈風斬は効かなかったわけではないんだがな…)」

芳佳「えぇ!?」

キトゥン「……それじゃあどうするんですか!?」

美緒「…私に考えがある。 少し時間を稼ごう」

 

エイリアス「くっ……黙れぇ!!」ギィィン

ネヴィロック「ッッ……~…」ヨロ

エイリアス「っ…、よし」


美緒「――随分手こずっている様だな?」ブゥゥン

エイリアス「……! …これはこれは、恥ずかしいところを見られてしまった」

キトゥン「今さらカッコつけたって遅いよ」

エイリアス「……」

美緒「貴様にひとつ聞きたい」

エイリアス「…なんだと?」ピク

美緒「何故こんな事をする? 目的は何だ?」

芳佳「そ、そうですよ! 同じ人間じゃないですか!?」

キトゥン「ていうか、アンタって人間なの?(わたしの中ではそろそろネヴィと同列になるんだけど)」

 
エイリアス「……ククク、時間稼ぎか? 何を待っている?」

芳佳・キトゥン「!?」ギクッ

美緒「質問に質問で返すとは無粋な奴だな、得意の戯言はどうした?」

エイリアス「…まぁいいだろう。 だがお前達にとってまるで意味のない問いだな? 時間稼ぎの為なのだから当然だが」

キトゥン「バレバレっぽいですね、美緒さん?」チラ

美緒「いや、しかし実際こいつが何のつもりでこんな馬鹿をするのか気にはなる」

芳佳「わ、私も!」

キトゥン「どうせまた訳わかんないこと言うだけですって」

 
エイリアス「気になるだと? …ククク、それを知っていったいどうする。 納得がいけば協力でもするのか?」

美緒「……」

エイリアス「お前達は全員、己が儘で動く“盲者”」

エイリアス「自分が正しい、自分が正義、自分が救い……ククク。 本当にそうかな?」

芳佳「そ、それってどういう…?」

美緒「宮藤。 これは時間稼ぎだ、聞き流せ。 奴の話に呑まれるな」

エイリアス「どんなに繕ってもやることは殺戮に変わりない。 銃が癒しをもたらすことは無いぞ?」

芳佳「っ…!」ドキッ

キトゥン「殺戮ってアンタ……それをやってるのはそっちでしょ!?」ビシッ

エイリアス「ククク、こいつらとお前達にどんな差がある?」

キトゥン「はぁ??」

 
エイリアス「…同種以外は死んでも構わないのだろう?」

芳佳「そんなこと…!」

エイリアス「だが鳥や熊…畜生は助けるか? ならば何故“総て”にそうしない? その手にある物は必要か?」ジロ

芳佳「!」ビク

キトゥン(……あれ、いつの間にか芳佳と話してる感じになってる?)

美緒「(これは…!? いかん!)宮藤、聞くなっ!」バッ

エイリアス「怪異に命はないか、それとも死んでもいい命なのか…」ジー

芳佳「…それは……」


エイリアス「お前のやっていることは自己満足の殺しだ」

芳佳「!!!」ゾワッ


エイリアス「ククク……綺麗な綺麗な殺し」

芳佳「ぅ……ぁ…」ワナワナ

美緒「詭弁だ、宮藤!! ネウロイは敵だ!!」

 
エイリアス「もう遅い。 仔犬は迷いの園に堕ちた」ククク

美緒「くっ…! 舌戦にしたのが裏目に出たか」

キトゥン「ぇ? あの、どういうことですか!?」

美緒「宮藤を誑かされた」

キトゥン「へ…?」

美緒「震電の件で吹っ切れているかと思ったが、やはり甘かったか。 …私の責任だ!」

キトゥン「どういうことですか? 芳佳はいったい…?」

美緒「言っただろう、宮藤は元々戦争に反対だった。 だが自分が戦うことに迷えば、ここでは命取りになる」

キトゥン「!?」

 
芳佳「…わ、私……」

美緒「しっかりしろ宮藤! 奴の屁理屈に惑わされるな!!」

キトゥン「芳佳!」

芳佳「…っ」


エイリアス「フッ、盲者などこんなもの」

エイリアス「さて、何が始まるか楽しみだったが…そろそろお喋りは終わりにしよう」ズズズ


キトゥン「! 美緒さん! エイリアスがまた来る気ですよ!?」

美緒「ちぃっ、上手くいかんか…!」

芳佳「……」

 
エイリアス「閉幕にしよう。 そして重力姫、お前を――」スッ

ネヴィロック「…………」

エイリアス「――…? おい、どうした?」

ネヴィロック「………………」シーン

エイリアス「チッ、またか。 御し難い奴め、動け!!」ギィィン

ネヴィロック「…」


ネヴィロック「!!」ビカッ



ペキペキ…
 

 
エイリアス「――!!? な、なんだこれはっ!?」ギョ

ネヴィロック「…~~」


ペキペキペキ――


エイリアス「私の身体が…!!? こ、こいつ!!」

ネヴィロック「――!」

エイリアス「やめろぉお!!」





キトゥン「……な、なに? 急にどうしたの?」

芳佳「坂本さん! あれって…!?」

美緒「うむ、ギリギリ間に合ったか」

 
キトゥン「え? え?? なんですか、なにが起きてるんですか!?」

美緒「ネウロイ化だ」

キトゥン「ネウロイ化!?」

芳佳「やっぱり……、でもどうして」

美緒「奴の中は三つ巴になっていると言ったのは覚えているか?」

キトゥン「はい。 たしかエイリアスとネヴィとネウロイでって…」

美緒「そもそもネヴィロイというものは、互いに浸食し合った結果生まれた者だ。 つまりは身体の取り合い」

芳佳「そ、それじゃあ…!?」

美緒「普通のネウロイ相手では支配力は拮抗できていたかもしれんが、ネウロックは特別だ」

芳佳「やっぱりカールスラントで戦った時にいろんな兵器やネウロイと合体したみたいに…?」

美緒「うむ、あれの融合能力はかなり強力だ。 更に他のネウロイを従える力すら持っている。 恐らくエイリアスとネヴィはネウロックに取り込まれるだろう」

 
キトゥン「うーん……エイリアスってば、ドジだなぁ(自分でくっついたのに)」

ダスティ「……」

美緒「ネヴィロックとしての均衡が崩れてネウロックになってしまえば、手強くはなるが超硬度装甲は消える筈だ。 我々に勝の目が出てくる!」

キトゥン「美緒さん達はやっつけたことある相手ですもんね!」

美緒「まあな。 辛勝と言えなくもなかったが、あの時も3対1で討てた」

キトゥン「ならダスティも入れて4対1ですね! 勝てます勝てます!」

ダスティ「……」

美緒「…あの時は宮藤がベストコンディションだったが」チラ

芳佳「……」

キトゥン「な、なに言ってるんですかぁ!? さっきの話ですよね? 大丈夫ですって!」

美緒「なら、いいがな」

 
キトゥン「エイリアスの言ってることなんて基本的に意味わからないですから! ね、芳佳?」

芳佳「ぅ…うん…」

キトゥン「……芳佳?」

芳佳「……」

美緒「宮藤、今更迷うな。 お前は既に1人のウィッチとしてネウロイと戦ってきているんだぞ?」

芳佳「……でも、それなら私はもしかして取り返しのつかないことを…」

キトゥン「芳佳? なにを言って――」

芳佳「お父さんを奪ったことと同じことを、私……っ!!」

美緒「違うっ!! お前のやっていることは正しい!」

芳佳「戦争で……、戦争で殺し合うのが正しいことなんですか!!!」

キトゥン「ちょ、ちょっと! こんなときに喧嘩はやめてー!」

 
美緒「……お前だけじゃない、我々だってウィッチだ。 お前は私達を…501の仲間を否定するのか?」

芳佳「っ! そ、それは…………いいえ」シュン

美緒「……」

芳佳「…ごめんなさい、坂本さん」

美緒「私達はお前の力が必要だ宮藤。 やれるな?」

芳佳「……はぃ」

美緒「うむ、やるぞ!」


キトゥン「…だ、大丈夫なんですか美緒さん?」ヒソヒソ

美緒「わからん、あいつは他が言った所で簡単に聞くようなやつではない」

キトゥン「えっ!? まずいじゃないですか!(ちょっとわかるけど…)」ヒソヒソ

美緒「だが今はやるしかない。 ネウロック相手に手は抜けん」


芳佳「……」
 

 
――――
――



エイリアス「ぅぅ……あ゛ぁ…っが…!?」

ネヴィロック「――」

エイリアス「な゛……なぜ…っ…!?」


バキィンッ ベキ



美緒「ネウロックのコアの輝きが増している」フィィン

キトゥン「取り付いてるネヴィの目玉がどんどん砕けてますね…」

美緒「ということは、ネウロックは合体ではなく“異物”を取り潰す気だ」

キトゥン「なんで!?」

美緒「ネウロイは基本的に金属を好む傾向にある。 我々人類を含め、それ以外は敵なのかもしれん」

芳佳「……」

 
エイリアス「ぁあ゛あ゛あぁ゛ああ゛あ!!?!?」ペキペキ

ネヴィ「ッ…!? ~…!」

ネウロック「――! ――――!!」


カッ――



美緒「!」

芳佳「わっ!?」

キトゥン「きゃ!? まぶしっ…!」






ネウロック「~………」

 

 
美緒「予想していたとはいえ、なんてやつだ……ネウロック」

キトゥン「…本当にエイリアスとネヴィやられちゃったの?」

芳佳「あ、あのマスクの人は…?」

キトゥン(マスクの人!?)ガビーン

美緒「ネウロイ化……というよりネウロイに食われたんだ、生きてはいまい」

芳佳「そんな…」

キトゥン「……」

美緒「気を付けろキトゥン、ネウロックのスピードは今までと桁が違う。 飛行形態に変形したら注意しろ」

キトゥン「りょ、リョーカイ!」

美緒「宮藤!」

芳佳「…はい」

美緒「やれるか? どうしてもと言うなら、お前は避難民の護りに移れ」

芳佳「……」

キトゥン「芳佳…」

 
芳佳「や…やります坂本さん! 私、戦います!」

美緒「…よしわかった。 奴を倒して、基地の救援に向かうぞ?」

芳佳「はい!」

キトゥン「――! 美緒さん、ネウロックが!?」

美緒「!」


ネウロック「……~――!」


美緒「…来るぞっ! 戦術を変える、三人一組で波状攻撃だ! 全火力で突破する!!」

キトゥン「ラジャー! 行こう芳佳、ダスティ!」

芳佳「う、うん!」

ダスティ「……」

 
ネウロック「――!」ビーム


美緒「ネヴィの追尾弾が消えたな、いける! 2人とも止まるなっ! 突っ込むぞ!!」ブゥゥン


キトゥン「む、無茶言ってるー!! …きゃあ! あぶなっ!?」ワタワタ

芳佳「キトゥンさん、私の後ろに!」パァア



ネウロック「―! ~―!!」ビビー



美緒「っ…!(ネウロックの動きがまだ鈍い!? …腹でも下したか)」ヒュン

美緒「(ならば今討つしかない!)宮藤、キトゥン! 好機だっ!」

キトゥン『えぇ!? なんですか!?』ガザッ

美緒「私が道を開く! コア目掛けてまっすぐ行く、続けぇ!!」フィィイン



ネウロック「―~~ッ!」ギラッ


ビビィィイイーー


美緒「(持ってくれよ、私の魔法力…!)うぉぉお!! れっぷうざぁああん!!!」シュバァッ


ズァォアアアアッ――

 

 
芳佳「さ、坂本さぁんっ!」

キトゥン(またビームを…!)

美緒『っ……ぃ、今だぁ!! 討てぇ!!!』


キトゥン「! …ダスティ!! スクラッチトルネードッ!」バッ

ダスティ「ッ!」ブワァン


……ギュオォォオォオオォオ



キトゥン「たぁぁああーっ!!!」ギュオオ



ネウロック「!?」



ギャリギャリリメ゛ギャァッッ



ネウロック「ッ――~ッッ……」

 
ビュゥンッ


キトゥン「――っぜは……ぐ…(ギリギリコアまで届かなかった…!)」フワ

キトゥン「(でも――)…よしかぁー!」

美緒『宮藤ぃ! 撃てぇ!!』






――ブゥゥウン


芳佳「っ……!」チャキ


ネウロック「…~ッ……っッ…」


芳佳「ぅ…」

美緒『何をしているっ宮藤!? 敵はすぐ再生するぞ!』

 
ネウロック「……~~」ヨロヨロ



芳佳「……」カタカタ


(『私達はこの上を渡ってくるネウロイを撃退してるんです』)
(『これ以上ネウロイに好き勝手を許すわけにはいきませんわ!』)
(『敵は敵っ! 話し合えるような相手ではないことは、確かですわね?』)
(『今お前に出来ること、それを見失うなよ?』)


芳佳「……う、撃たなきゃ…私…」


(『こいつらとお前達にどんな差がある?』)
(『父さん達を返せよ! さっさと追い出せよっ!!』)
(『同種以外は死んでも構わないのだろう?』)


芳佳「っ…」


(『銃が癒しをもたらすことは無いぞ? その手にある物は必要か?』)
(『死んだらどうでもいいのかよっ!!』)
(『辛いだろうが、これも避けられない』)


芳佳「…わ、私は……ただ…」カタカタ



――『自己満足の殺しだ』――



芳佳「ち、違う…! そんな……つもりじゃ――」

キトゥン『芳佳―! 危ないっ!!』ガザッ

美緒『反撃されるぞ!!? シールドをだせぇ!!』

 
芳佳「ぇ…?」ハッ


ネウロイ「~……!」ギラ


ビィイィイイイーー


芳佳「ぁ――」
















美緒「ぐぉおおあ! 間に合えぇぇえええ!!」ビュゥンッッ



ガィィイイィッ――
 

 
芳佳「……さ、さかもとさん…!?」

美緒「ぜぇ……はぁ…っ、呆けている場合か…ばっ……馬鹿者…」ゼェ ハァ

芳佳「ぁ……ぁの…すみません、私…」オロオロ


ネウロック「……~」ゴゴゴ


美緒「ぐっ…!(もう烈風斬どころか、飛んでいるのがやっとだ…)」ガク

芳佳「さ、坂本さん!?」

美緒「み……宮藤、迷うな…我々の……戦いは…っ」ゼェ ゼェ

芳佳「無理に喋らないでください!」


ネウロック「―!」ギラッ

 
芳佳「! や、やめてぇ!!」パァァ


ネウロック「~――」



キトゥン『やぁぁあっ!! 重力キーック』ガザザ

芳佳「――! キトゥンさん!?」



ネウロック「!! ……~―!」ガシィン


キトゥン(変形した!?)ズォォオ


ネウロック「――」ギュゥウン


――スカッ
 

 
キトゥン「…速い! ど、どこにいっちゃった!?」フワッ

ダスティ「……っ」ピク

ダスティ「ニャアッ!」

キトゥン「!(上からく――)」チラ

ネウロック「――――!」ゴォオオ


ドゴォッッ


キトゥン「おぶっっ!!?」



ヒューーーーン↓






\ドガシャーン/

 
芳佳「!!」

美緒「キトゥンッ!!」

芳佳「ぅ…、わ…私のせいで…」ワナワナ



ネウロック「…」

ネウロック「……」クル



美緒「い…いかん、奴がこっちに来る(これではもう勝てないか…!)」ゼェ ハァ

芳佳「!」

美緒「(…ならばせめて)宮藤、キトゥンを救出して逃げろ」グイ

芳佳「えっ…、坂本さん?」

美緒「私が残った魔法力で時間を稼……うっ…!」フラ

芳佳「だ、ダメですよそんなっ! こんな状態の坂本さんを置いてなんて…!」

美緒「……片道覚悟ならば、お前達を逃がすくらいはできる…っ!」チャキ

芳佳「坂本さん!!」

 
ネウロック「ッーー!」ガシィィイン

ネウロック「~~」ギラ


美緒「グズグズするな、早くいけぇ!」

芳佳「嫌です!! 私、坂本さんを見捨てるなんて出来ません!」パァア

美緒「み、宮藤…!」


ネウロック「―――ッ~」ビィー



――――
――

 

 
キトゥン「…………」


『――――――さぃ』


キトゥン「…………」


『――きて――――ぃ」


キトゥン「……ぅ…」

???「起きてください」

キトゥン「…っ……~~」

キトゥン「……あれ、わたし…」

???「……」

キトゥン「(そっか、確かネウロックにぶっとばされ――)……ん?」ペト

キトゥン「わっ!? …どうしよ、なんか血とか出てるし…!!」

???「…いいや、見た目程酷くはないよ」

キトゥン「ぇ…?」チラ

???「……」

キトゥン(!?)

 
???「君はその力に護られてるんだね。 傷は負ってるけど、診たところ致命傷は無さそうだ」

ダスティ「……」

キトゥン「ぇ…、ていうか――」ムク

キトゥン「ぅぐっ!?」ズキッ

???「ゆっくり動いた方がいい。 あの勢いで瓦礫の山に落ちたんだ、流石に身体が軋んで痛い筈だよ」

キトゥン「いたた……。 あの…そうじゃなくて、アナタは確か基地でなん回か見た…?(ノゾキの人!!)」

???「やはり君には見えていた様だね。 居場所がズレてしまった者同士だから、何か干渉しうるのか……もしくは君も特別なのか」

キトゥン「えっ!?(もしかして、シングラさんの言ってた…!?)」

???「いずれにしても、君にも謝らなければならない。 申し訳なかった」

キトゥン「?」

 
???「“ここ”からできる範囲で責任はとろう。 …私はまた何処かへ行ってしまうかもしれないが」スッ


グゥォォォ~ォ


キトゥン「んなっ…! 重力嵐!?」

???「ある意味で似ているかもしれないけど、違うものだよ」

キトゥン「! …違う?」

???「……それより、君に頼みがある。 あの子に伝えて欲しい」

キトゥン「へっ!? た、頼み??」



ゴォォオォ――




???「――――、――」ボソ

キトゥン「…!」

 

 

――ォオォォ…


???「……彼女達に、よろ…く…」ユラ…

キトゥン「(うそ、消えちゃう!?)あの、ちょっと!? 今のって誰に伝えれば!」

???「…さ… な…。…し… か… …」

キトゥン「えっ!?」

???「… ……」

キトゥン「あーっ、待って!!! あなたってもしかして――」バッ


???「… 」フッ





キトゥン「……消えちゃった」


『キトゥンッ!』


キトゥン「!?」

 
ビュゥゥウン――

シュダッ


キトゥン「……!」

クロウ「ひどい格好だな、お前」ファサ

キトゥン「…………あれ…クロウ…?」

シアネア「クロウ、この混沌に長居は禁物。 夢の修正が起こる前に終わらせます」ギュー

クロウ「訳の分からないことを言ってないで、もう降りろ。 いつまでも抱き着かないでくれ」

キトゥン「…シアネアも……??」ポカーン

シアネア「キトゥン。 どうやら忘河は渡っていない様ですね」

キトゥン「ぇ、ええっ!? なんで? なんでここに!??」

クロウ「私にもわからないが、突然こいつがお前を助けに行けと……妙な扉を通って」チラ

シアネア「私がこれ以上夢への干渉を行うことは避けるべきでしたが、“あの”エイリアスが予想以上に混沌を生んだため止むを得ません。 今一度私が手を加えましょう」

 
クロウ「……こんな調子だ。 急に人が変わった様に」

キトゥン「ま、まさか…あっちのシアネア?」

クロウ「あっち?」

シアネア「禁忌に触れし人が、夢を結ぶ通路を再び広げました。 急いで決着を付けねばなりません」

キトゥン「……ごめん、もう少し解りやすくお願い」

クロウ「…とりあえず、向こうのアレを倒せばいいのか?」チラ

シアネア「その通り。 しかしこれ以上こ――」

キトゥン「!! そうだ、ネウロックは!?」バッ

キトゥン「…うっ!!」ズキッ

クロウ「お前は来るな、私が行く」

キトゥン「ぃたた……でもクロウ、わたしも…!」

 
クロウ「地の利を生かせ、周りをよく見ろ」

キトゥン「え? ……あっ、そっか!」

クロウ「私が動きを止める。 その隙にお前は“撃ち落とせ”」

キトゥン「クロウ! あいつ強いから気をつけて!」

クロウ「ああ」ブワァン


ビュゥウウン


シアネア「……キトゥン、聞きなさい」

キトゥン「ごめんシアネア! ちょっとあとでね?」

キトゥン「ダスティ! グラビティ・タイフォン! ここの瓦礫全部アイツにぶつけてやるから!」

ダスティ「ニャア」

シアネア「……」

 


ネウロック「~~―」ビー


芳佳「ふぅ…っ! ぐ…!!」パァ

美緒「宮藤、このままではいくらお前のシールドでも持たん! 私を捨てて逃げろ!」

芳佳「……っ…」パァァ

美緒「宮藤…!!」


ネウロック「―~……、!」ピタッ

ネウロック「ッーー」ビュン


芳佳「!?」

美緒「…な、なんだ?」


――ビュゥウン


クロウ「……チッ、勘のいい奴だ。 逃げられた」フワ

芳佳「!??」

美緒「誰だ…?」

 
クロウ「……」チラ

クロウ「お前達は邪魔だ」

芳佳「え、あの…!?」

クロウ「降りて避難でもしていろ」ビュゥウン


芳佳「あっ!」

美緒「……あれは、キトゥンと同じ能力…!?」

 
クロウ「まて! ネヴィもどき」ビュゥン


ネウロック「ー!」ビー


クロウ「!? ……速い、光線か?」ヒュン


ネウロック「―! ―~!!」ビビー


クロウ「忙しい攻撃だな。 あいつが言うくらいだ、まだ何かありそうだが…」ヒュン ヒュン


ネウロック「……」

ネウロック「ッ!!」ガシィイン


クロウ「! 変形した!?」

 
ネウロック「…――ッ」ゴォォオ


ヒュォオンッ


クロウ「なにっ!? 速い!」


ネウロック「―!」ビー


クロウ「く…っ!」サッ

クロウ「なんて怪物だ、あんな図体で!」

クロウ(…こいつを捕まえるには――)


――ヒュゥン


ネウロック「―…!?」ガゴッ


クロウ「! …これは、キトゥン!?」

 
ヒュゥン ビュン


ネウロック「!」ゴォオ

ネウロック「ー―~―」ヒュン ヒュン

ネウロック「―ッ…?……!」バコォ ゴン








キトゥン「てやぁーー! それそれー!」ビュン ビュン ビュビュン

キトゥン「ガリアの人達の怒り、くらえー!」

シアネア「……キトゥン、待ちなさい」

キトゥン「それから昨日やられたロマーニャとかの人達と、ルッキーニを泣かした分ー!!」ビュン

キトゥン「ペリーヌさんを悲しませた分―! 芳佳と美緒さんを襲った分ーー!!」ビュン ビュン

シアネア「……」

 
クロウ「しめた! 投礫で敵の動きが鈍ってる」ビュゥウン


ネウロック「ッ…――」ゴォォ


クロウ「……くそ、まだ追いつけない!」


――ヒュゥンッ


ネウロック「―ッッ!」ボガッ


クロウ「! …今だっ!」


ネウロック「~~…」ヨロ


ビュゥウンッ


ネウロック「!」

クロウ「……捕まえたぞ」ピト

 
クロウ「はぁっ!!!!」グワァァン

ネウロック「ッっーッ!? …~」ズズン


ネウロック「…~ッ……!」


クロウ「無駄だ。 私が今お前の中心に何倍も重力をかけてる、自分の質量に縛られろ」

クロウ「…よし、今だキトゥン!」


ヒュゥン ヒュンッ――


ネウロック「ッ……!!」ベキィ ボコッ ドゴン

ネウロック「…-……っ~…!?!」バギン バゴォ ゴギャッ

ネウロック「――――!」ゴンッ バギャ ベキィ


クロウ「…! なんだ、赤い光が……これがこいつの弱点か?」

 
ダスティ「…ニャア」

キトゥン「ぜぇ……っはぁ…。 コアがみえた…はぁっ……よ、よぉ~し」ヘト

キトゥン「最後にいっぱつ~~! これはわたしの――」

シアネア「止めなさい、重力姫!」スッ


キトゥン「…!!?」ゾク

ダスティ「ッ!」ピクッ


キトゥン「……な、なに今の?」ヨロ

キトゥン「…あれ? …………あれ、なんで?? 能力がでない!?」

シアネア「聞きなさい、キトゥン」

キトゥン「ちょ、シアネア! これアンタがやったの!?」

シアネア「もはや重力姫だけの手でこの夢は戻りません。 彼女が混沌に飲まれかかっています」

キトゥン「彼女? …だれ?」

シアネア「あなたがとどめを刺せば、英雄の灯にとって代わってしまう」

キトゥン「……??」

 
シアネア「続けるべき夢のため、私は彼女に干渉します。 キトゥン、あなたも彼との約束を果たしなさい」

キトゥン「だから彼とか彼女とか、誰なの!? 約束って…??」

シアネア「伝言を伝えるのです」

キトゥン「伝言? ………………あっ!!」

シアネア「私ではなく、彼の言葉で彼女を救いなさい。 それがこの夢の混沌を祓います」

キトゥン「ま、まってよ! でもあれ、誰に伝えるのか聞いてなくて――」

シアネア「耳を澄ましていなさい……」フッ…

キトゥン「ちょ!? 消えたっ!! …シアネア!?」

ダスティ「……」

キトゥン「……耳をすますって」ス

キトゥン「! …まさか通信機のこと?」

 
芳佳「ネウロックが…!」

美緒「っ……いったい何がどうなっている? …ぅ!」ヨロ

芳佳「坂本さん、大丈夫ですか!?」

美緒「あ、ああ。 宮藤、とにかくお前は――」

シアネア「怪異を倒しなさい」ユラ…

美緒「!?」ビク

芳佳「わっ!! うぇ、えぇ!? 急に人が……お化けっ!?」

シアネア「こちら側の責任として助力はしました。 しかし、この夢を戻すのはあなた達でなければなりません」

芳佳「???」

美緒「お、お前は?」

 
シアネア「……」チラ

美緒「……何者だ? エイリアスやキトゥンと同じ世界の者なのか…?」

シアネア「今のあなたでは無理の様ですね」

美緒「何…?」

シアネア「ならばやはり……宮藤芳佳」ギョロ

芳佳「うぇ!? は、はい!」ビク

シアネア「あなたが怪異のコアを砕きなさい」

芳佳「っ…!」ドキッ

シアネア「クロウが怪異を止めていられる間にこの混沌の決着をつけるのです。 それが人の身で夢を繋げた咎を、縁を持って償う事にもなるでしょう」

美緒「た、確かに今なら奴を倒せる。 私はもう銃弾に魔法力を込めることすらままならないが……宮藤」

芳佳「で、でも私……もうこれ以上…戦争なんて…」

シアネア「……」

芳佳「戦うなんて……わたし…ぅ…」

 
シアネア「…ある面において、生とは争い。 憎しみと無意味な淘汰が戦いとするのは人の奢り」

芳佳「ぇ…」

シアネア「この夢において、あなたの光にも意味はあるのです」

芳佳「私の…意味?」

シアネア「…キトゥン、約束を果たしなさい」

芳佳「ぇ…?」


ガザッ


キトゥン『やっぱり芳佳のことだったんだ!』ガザザ

芳佳「…!」

 
キトゥン『芳佳、聞いてっ! 芳佳の力は多くの人を守るためのものだよ!!』

芳佳「!?」

キトゥン『約束、思い出してぇー!!』

芳佳「……約束…」



――その力で、みんなを守る様な立派な人になりなさい――



芳佳「ぉ……お父…さん?」

美緒「なに?」

シアネア「……」


芳佳「……」

芳佳(その力を、多くの人を守るために……)

 
芳佳「…っ!」グッ

芳佳「……うん…、私にできること…。 みんなを……守るために!」チャキ


ネウロック「~~…ッ!」



芳佳「…………」




芳佳「…ごめんね……」ボソ



ダダダダダッ



ネウロック「ーーーー!」


ネウロック「」



バギィィイィン

 

 

――――

――





美緒「……本当に帰れるのか?」

キトゥン「なんかシアネア…この子が言うには、すぐに帰らないとダメみたいで」

芳佳「そんな…」

シアネア「エイリアスが消滅した事で私達以外の干渉源はなくなりました。 これ以上この夢が荒れる前に元へと戻り、繋がった扉を完全に閉じます」

シアネア「そうすれば夢の改変により、ネヴィは消えるでしょう」

キトゥン「基地のみんなや他にエイリアスがばら撒いたネヴィに襲われてる人達を助けるためには、こうするしかないから…」

美緒「そうか。 …すまないな」

キトゥン「いえ、そんな…元々わたし達のせいっぽいですし」ワタタ

 
芳佳「キトゥンさんっ! 私、キトゥンさんのこと絶対に忘れませんから!」

キトゥン「芳佳………うん、わたしも絶対忘れないよ!」ニコ

シアネア「それは無理です、キトゥン」

キトゥン「ちょ!? 変なこと言って水ささないでよシアネア!」

シアネア「混沌の繋がりは消え、存在の寄る辺のない異物は全て修正されます」

キトゥン「な、なにそれ……まさかフォーマット? ネヴィどころか、わたし達に関係する記憶も消えちゃうの!?」

美緒「なんだと?」

芳佳「そ、そんなぁ!?」ガーン

シアネア「厳密には消滅しませんが、これ以上の会話も意味を成すことはありません。 一刻も早く戻りなさいキトゥン」

ダスティ「……」

 
キトゥン「意味があるとかないとか、そういうことじゃないよ。 友達とか大事な人に挨拶するのに理由なんているの?」

芳佳「キトゥンさん!」

シアネア「……」

美緒「ふっ、そうだな」クス

キトゥン「ね?」

シアネア「……わかりました、私はクロウと共にあちらで先に待ちます」

シアネア「しかし彼が広げた通路は既に元に戻り始めている、急ぎなさい」

キトゥン「うん、わかった」

シアネア「……」スタスタ

 
キトゥン「…えっと。 ということらしいので、ごめんなさい、わたし元いた世界に帰ります」

美緒「……ああ、世話になったな」

キトゥン「えへへ、なに言ってるんですか美緒さん! 逆ですってば」

キトゥン「美緒さんのおかげで基地でもよくしてもらえたし……叱らもしたけど、わたしの為に色々してくれて感謝してます!」

美緒「…そうか」フフ

キトゥン「もぉ~! そんな遠慮しないで、いつもみたいに元気に笑ってくださいよ!」

美緒「! ……そうだな、湿っぽくした所で意味などないか」ウム

美緒「わっはっはっは!」

キトゥン「うんうん」ニコ

 
美緒「キトゥン、お前は私の友であり仲間だ…とこしえにな? 住む世界など関係ない、我々の空はきっと繋がっている!」

キトゥン「はい!」

ダスティ「……」ヒョコ

美緒「お前もだ、麻畳。 私の代わりにキトゥンを頼んだぞ?」

ダスティ「…~」クァ~

美緒「はっはっは、相変わらずだな」

キトゥン(ダスティだってば!)

 
芳佳「…キトゥンさん」オズオズ

キトゥン「芳佳も色々とありがとう、また怪我も治してもらっちゃったし」

芳佳「いえ、私の方こそ…」

美緒「宮藤、友との別れ際だ。 胸を張れ」

芳佳「で、でも……これでお別れなんて、寂しいですよぉ…」シュン

美緒「やれやれ」

キトゥン「…うん、正直言うとわたしも。 短かったけど、芳佳はわたしの大切な友達だもん!」

芳佳「!」

キトゥン「あ、ごめん。 実はそんなでもなかった…?」

芳佳「いえっ!! 私も、キトゥンさんとはずっと友達でいたいです!!」

キトゥン「あはは、なんかハッキリ言われると照れちゃう//(…ホントありがとう、芳佳)」


『おい! なにしてるキトゥン! 戻れなくなるぞ、急げ!!』

 
キトゥン「あ、うん! もうちょっとだけ待ってー!?(クロウは相変わらずせっかち!)」

美緒「いよいよ行くのか」

芳佳「…あっ! そうだ!!」ハッ

美緒「ん?」

キトゥン「?」

芳佳「ちょっと待ってください! えっと…」ゴソゴソ

芳佳「これ、どうぞ!」スッ

キトゥン「…リンゴ?」

美緒「土産か?」

芳佳「キトゥンさんを最初に見つけた時も林檎を追いかけてたんです。 目を覚ました時に剥いてあげようと思ってたんですけど、忘れてて――」

芳佳「本当は今日のお昼にでも3人で食べようと、持って来たんですけど…」

キトゥン「…そっか」

芳佳「この町の人達がお返しにってくれた林檎です! とってもおいしいので、向こうで食べてください!」

 
美緒「そうだな。 共に街を護ったお前にはその権利がある、貰っておけ」

キトゥン「……うん、ありがとう!」パシ

ダスティ「……」スス

キトゥン「あ、こら! 盗っちゃダメだからね!?」サッ

ダスティ「ニャア」


――ビュゥウウン

シュタッ


クロウ「いい加減にしろ! 時間が無い!!」

シアネア「キトゥン、あと1分で帰路を失います」スタ

キトゥン「え!? あ、ごめん!」

シアネア「…間に合いません、強制的に連れて行きます。 クロウも私に触れなさい」ガシ

クロウ「ああ」ポン

ダスティ「……」ピト

キトゥン「ちょ、ちょっと! わたし、まだちゃんと――」

シアネア「いきます…」ユラッ~

キトゥン「ま、待ってーー!!」

 
美緒「キトゥン!!」

芳佳「キトゥンさんっ!!」

キトゥン「!」

美緒「…達者でな」

芳佳「絶対にまた会いましょうねー!」ブンブン

キトゥン「……うん、またね! みんなにもよろ…く… …」ユラ~

芳佳「さようならぁー!!」


キトゥン「……… 」スゥー










芳佳「…………」

美緒「……行ってしまったか」

芳佳「はぃ…」

 
美緒「…ああは言ったが……少しだけ、寂しくなるかもな」

芳佳「ぇ…!?」

美緒「ん? なんだ?」

芳佳「ぁ、あぁ…なんでもないですっ!(坂本さん…)」

美緒「ふむ…。 それにしても、随分と忙しかった」

芳佳「……そうですね」


美緒「…………」

芳佳「…………」

美緒「……」

芳佳「…~――」クラァ

 
芳佳「~っ! ぉっと…と…!?」ヨロ

美緒「! どうした宮藤、大丈夫か?」

芳佳「す、すみません。 なんだか急に力が抜けちゃって//」エヘヘ

美緒「緊張の糸が切れたのだろう。 無理もない」

美緒「…だが、まだ我々にはやる事がある! 気張るぞ!?」

芳佳「はいっ!」

美緒「まずは急いで基地に連絡だ! いつ消えるのかわからんが、未だネヴィと交戦中ならばすぐ援軍に戻るぞ」

芳佳(…ネヴィ?)ポケ

美緒「……なんだ宮藤、へばって返事もできんか?」

芳佳「あ、いえ! すみません坂本さんっ!」ワタワタ

美緒「?」

 
芳佳「…そのぉ、あの。 今の“ネヴィ”ってなんでしたっけ…?」

美緒「!? …お、おい宮藤。 何を言って…」

芳佳「ネウロイ…じゃ、ないんですか??」

美緒「……!?」


美緒「…………これは、まさか――」





西暦1945年某日。 オラーシャ帝国への急襲から始まり、ガリア共和国、ロマーニャ公国をネウロイが襲った一連の騒動は、ウィッチの活躍によって親玉ネウロイの撃破で治まりを得た――…と一時囁かれた。

しかし、この事件が歴史や記録に語られることは一切として無く。ウィッチと共に空を舞った少女の活躍もまた、ただ一人を除いて思い出す者はいなかった。

(・×・)<もちょっと続くゾ!

 

【エピローグ】 ~グラビティ・ウィッチに忘却なし~



―空中都市 ヘキサヴィル―


旧市街オルドノワ 下層

土管の家先


キトゥン「ちょっと出掛けてくる」ヒラ

ダスティ「……」トテトテ

ゲイド「…またセンタリアレに行くのか?」

キトゥン「ん、今日はお散歩。 ちょっとゆっくりしたい気分なの♪」

ゲイド「だったら家にいればいいじゃろ」

キトゥン「……さすがに一日中ここにいたら気持ちも暗くなっちゃうじゃん」

他スレに誤爆してしまいました。
念の為ここでも謝罪レスさせていただきます。
ご迷惑かけまして申し訳ありませんでした

すみませんが少しだけ自粛します

 
ゲイド「偶にはわしが話し相手になってやるぞ?」

キトゥン「それはまた今度ね? それじゃあ、いってきま――」

シアネア「…キトゥン」パチ

キトゥン「わっ…!? お、おはようシアネア。 なに?(うぅ…あっちのシアネアだ)」

シアネア「まさか、まだ憶えているのではありませんか?」

キトゥン「えっ!!」ギクッ

シアネア「……」

キトゥン「な、なにが?」
 

シアネア「…………」

キトゥン「っ…」


シアネア「……そうですか」

キトゥン「…はぁ」ホッ

 
キトゥン「そ、それじゃわたし急ぐからっ! …ダスティ、行くよ!」ブワッ

ダスティ「ニャア」ピョン


ビュゥウンッ


シアネア「……」

ゲイド「…あいつ、嘘が下手だな」

シアネア「……」

ゲイド「お前さんにそんな茶目っ気があったとはな。 わざわざ聞かなくたってわかってるんじゃろ?」

シアネア「…重力姫の精神は夢の修正に耐性を持ちつつあります」

ゲイド「あっちの世界でそうだった様にか?」

シアネア「向こうでそうだったからこそ……です」

 
ゲイド「けど完全じゃないじゃろ? さすがに」

シアネア「ええ。 人は神になれません。 彼女は“導”を所持しています」

ゲイド「ダスティか?」

シアネア「いえ、守護者はこちらの導となる者。 重力姫の記憶を繋いでいるのは、彼女が持ち込んだ“証”」

ゲイド「……いいのか?」

シアネア「私がこれ以上この夢に干渉することはまだ出来ません」

ゲイド「修正は干渉にならないと思うがな。 お前さんなら一瞬じゃろ?」

シアネア「…今私が可能な範囲で、アレを消すことは無理でした。 恐らく楔と繋がっているのでしょう」

ゲイド「!! ……たしか扉はもう閉じてるんじゃったな? てことは…」

シアネア「はい、無理です」

 
ゲイド「…なんてこった。 でもまぁ…いいか、わしにはどうしようも出来んし」

シアネア「……創造主よ、この歪みの端はあなたが――」

ゲイド「いや待て、そもそもあんな奴が入って来ることなんぞ解りようがない。 平行世界はわしの畑違いじゃ」

シアネア「……」

ゲイド「キトゥンにどんな恨みがあって来たのか解らんが、あいつのせいじゃろ」

シアネア「……」

シアネア「…………zz」

ゲイド「……」

 

旧市街オルドノワ 表層

街道 路地


キトゥン「はぁー…」スタスタ

ダスティ「……」トテトテ

キトゥン「昨日まではあんなに賑やかだったのに、なんだか2人暮らしが寂しくなっちゃったかも。 シアネアはおとなしいし」

ダスティ「ニャア」

キトゥン「あ、そっか。 ごめん、お前もいるよね? 2人と1匹暮らし」

ダスティ「……」

キトゥン「朝早くに体動かしてたり、大勢で賑やかに食事したり楽しかったなぁ! …みんないい人たちだったね?」

ダスティ「……」

キトゥン「…こらダスティ、お前も憶えてるんでしょ? なんとなくわかるよ」

ダスティ「…~」クァ~

 
キトゥン「もぅ…」ゴソゴソ

ダスティ「!」

キトゥン「これなーんだ?」

ダスティ「ニャア!」ピョン

キトゥン「ほら憶えてる! ダメだよ、このリンゴはわたしの!」サッ

ダスティ「……」

キトゥン「そ、そんなにしょげないでよ…。 約束どおりホットドッグ買ってあげるから」

ダスティ「…ニャア」カリカリ

キトゥン「え? ……あ、あー。 うんうん、タタミもね(どこに売ってるんだろう…?)」

ダスティ「~…」

 
キトゥン「……でもさぁ? こうしてフラフラしてると、ちょっと期待しちゃうよね――」

キトゥン「また後ろから抱き着かれちゃうんじゃないかなーって」

ダスティ「……」

キトゥン「“うじゃ~~”ってさ♪」

ダスティ「…ゥニャー」

キトゥン「あはは、似てる似てる! うじゃ~!」


――そ~っ


キトゥン「――!?(後ろに気配!)」

キトゥン(……まさかっ!?)バッ

シドー「うわあっ!! な、なんだよ…バレてたのか」ギク

キトゥン「あ、シドーか(なんだ…)」

 
シドー「やぁ、キトゥン! 見つけたからちょっと脅かしてやろうと思ってさ?」

キトゥン「……まぁ、そうだよね。 いるわけないもん」ハァー

ダスティ「ゥニャ~」

シドー「おいおい、なんだよ? 誰かと間違えたのか?」

キトゥン「…もしシドーが胸触ったらひっぱたくから」ジト

シドー「いや、なんの話だよ…。 ていうか俺は敏腕の警務官だぞ? ちゃんと胸は大きくないと何とも思わ――」

キトゥン「なっ!!? なにそれ? ひどい! ちかんっ!」ムッ

シドー「えぇ!?」ガビーン

ダスティ「……」

 
キトゥン「…というか、制服着てるってことは仕事中でしょ? こんなことしてていいの、敏腕警務官さーん?」ジト

シドー「あ、そうそう! そのことでこの数日ずっとキトゥンを探してたんだよ!」

キトゥン(うわぁ、いやな予感…)

シドー「また手伝ってくれないかな? 今回の事件は結構大きくてさ! 最近手柄をあげてないから、ここいらで一発どうしても欲しいんだよ」ヘラ

キトゥン「…たまには自分で手柄をあげてみるのもいいんじゃないの、敏腕なら(わたしを探し回ってる間に何かできたでしょ)」

シドー「そうは言っても相手はあのエイリアスだし…」

キトゥン「えっ! うそ!?」ガーン

シドー「あ、いや…多分また成りすましの嘘予告だと思うんだけどさ。 前の偽物騒動の一件以来、愉快犯が増えてるみたいで」

キトゥン「……なんだ。 もぅ、驚かさないでよ!」

シドー「でも本物の可能性も無いわけじゃないからさ…一応キトゥンにも協力してもらおうかと思って」

 
キトゥン「あのねぇ、そんなわけないじゃん! あいつはもう2回も死んでるんだよ?」

シドー「2回…?」

キトゥン「そうっ! もぉ~こっちは大変だったんだから!」

シドー「?」


ダスティ「……」ウズウズ


ダスティ「ニャア」ピョン

キトゥン「あ! こらダスティ! このリンゴは駄目だってば!?」

ダスティ「~~」ベシ

キトゥン「きゃっ!」


ポテンッ

ゴロゴロゴロ…

 
キトゥン「…あーっ!」

ダスティ「……」

シドー「あらら、転がって行っちゃった。 ここの傾斜って確か広場の近くまで続いてたような…」

キトゥン「重力スライドで追っかけるよダスティ!」バッ

ダスティ「…………」

キトゥン「…タタミ、いらないの?」ボソ

ダスティ「ニャア!」ブワァン

シドー「え、拾いに行くのか!? それくらい俺が奢るから、捜査の手伝いを――」


ビュゥウウン


シドー「っておーーい!」


――――
――

 
少女「…………」ヨロヨロ


コロコロ…


少女「……?」


コロ…


少女「………たべも……の…」

少女「……」ヨロヨロ

少女「……」ヒョイ


少女「…………」


――ビュゥウウン

ザザザァッ


キトゥン「ちょっと待ってぇー!」

ダスティ「~…」シュタ

 
少女「……」

キトゥン「あの…。 そのリンゴ、お姉さんが落としちゃったんだ」

少女「……」

キトゥン「だから返してくれないかな?」ネ?

少女「……」


キトゥン「……」

少女「…………」


キトゥン「………えぇ~とぉ…」ポリポリ

少女「……」グゥー

キトゥン「!」

 
少女「……」

キトゥン「…君、ご飯食べてないの?」

少女「……」コク

キトゥン「……」

少女「……」グゥー

キトゥン「お腹空いてるならいいよ、食べて」

少女「……」コク

ダスティ「! ニャア!」ペシ

キトゥン「お前は我慢しなさい!」

ダスティ「……」

少女「はぐっ…、…~っ…」シャクシャク

キトゥン「あっ! ちょっと待って、そのままだと汚いよ!?」

 
少女「んぐ……ぁぐ…」ムシャムシャ

キトゥン「…す、すごい勢いで食べてる!(そんなにお腹が空いてたの?)」

少女「~~」モグモグ

キトゥン「……君、こんな所でなにしてたの? お父さんとお母さんは?」

少女「…んぐ……パパもママも、まだ帰ってこない」

キトゥン「お仕事?」

少女「ううん、お買いもの」

キトゥン「ふぅーん。 子供を外に置いて買い物なんて無責任だなぁ」

少女「…ルゥはおうちにいたよ」

キトゥン「? ルゥちゃんって…君のこと?」

少女「うん。 ……ルゥはおうちでお留守番してたよ」

キトゥン「え? じゃあルゥちゃん、お家から出てきちゃったの?」

少女「うん。 だっておうち壊されちゃったんだもん」

キトゥン「??」


タッタッタッ


シドー「おーいっ、キトゥン!」

 
シドー「ぜぇ……はぁ…! ま、待ってくれよ…っ!」ガク

キトゥン「ねぇシドー、この女の子迷子かも。 なんとかできないかな?」

シドー「ぇ…? ……なんだこの子? お前のリンゴ食ってるじゃないか」

少女「……」シャクシャク

キトゥン「すっごくお腹が空いてたみたいで…。 両親は買い物中で、家は壊されたんだって……どういうことかわかる?」

シドー「それって、……この汚れた格好は多分…」

キトゥン「なに? わかるのシドー!?」

シドー「そりゃ……この女の子の親も家も、重力嵐で亡くなったんだろ」

キトゥン「ぇ…!」

 
シドー「お嬢ちゃん、お父さん達を待ってどれくらい経つんだい?」

少女「……」モグモグ

シドー「…………あれ?」

キトゥン「ルゥちゃん、パパとママいつから帰ってこないの?」

少女「わからない、…ずっとまえ。 ルゥのたんじょう日のケーキを買いにいったの」

キトゥン「……ルゥちゃん、今何日かとかってわかる?」

少女「……」フルフル

キトゥン「……」

シドー「重力嵐の大災害でスラム化したのは大人だけじゃないんだよな…。 むしろ身寄りも何もかも無くした子供の方が気づかれにくいし」

キトゥン「そ、そうなの…?」

シドー「ああ。 社会的な繋がりもある大人と違って、親や親戚がいなければ小さな子供なんかは誰にも探されないよ」

シドー「消えた区画と一緒に大半の行方不明者も戻ってきたけど、全員じゃないし……その子と同じことになってる人も多分まだそこそこいると思うぞ」

キトゥン「そんな…」

少女「……」ムシャムシャ

 
シドー「あの重力嵐の件からだとしたら、少なくとも1年以上はこんな生活してたってことだよな…。 正直よく生きてたと思うよ」

キトゥン「……シドー。 偽物の捜査手伝う代わりに、頼みがあるんだけど」キリ

シドー「わかってるって。 俺だってこんな子ほっとけないし、…管轄外なんだけど保護してもらえるようになんとかやってみるよ」

キトゥン「うん、ありがと! さすが敏腕お巡りさん!」

シドー「警務官!」

キトゥン「…ルゥちゃん、もう大丈夫だよ! このオジサンがなんとかしてくれるからね?」ニコ

シドー「お、おじさん…」ガーン

少女「……パパとママは?」

シドー「ぅ…! そ…それはね、お嬢ちゃん――」アセアセ

キトゥン「パパとママはお姉さんが探してみるから、ちょっと待っててね?」

 
シドー「!? おいキトゥン、そんな事言って大丈夫かよ? この子の親は多分もう…」

キトゥン「わかってる! でも確認もしてないのに諦めろなんて、そんなの酷いよ。 わたしが一度探してみる」

シドー「探すって……エイリアスの件はどうするんだよ?」

キトゥン「そっちも探すから大丈夫、ちゃんとやるから」

シドー「できれば先に俺の方をやって欲しいんだけど…」

キトゥン「……ねぇ、シドー? わたしのこの能力ってさ、護るためにあると思わない?」

シドー「え…?」

キトゥン「いたずらの犯人を懲らしめるのも大事だと思うけど、みんなを悲しいことから護りたいよ! この能力で」

キトゥン「あの子なら、きっとそうする!」ムン

ダスティ「ニャア」

シドー「あの子…?」

 
少女「……ごちそうさま…でした」ペコ

シドー「お、偉いね……て、ぅわっ! 芯まで食べたのか!?」ギョッ

少女「…おねいちゃん……ありがとぅ」

キトゥン「うん、すっごくおいしかったでしょ?」

少女「……」コク

ダスティ「……」

少女「……これ、埋めればまた食べれる…かな?」スッ

シドー(あ、種は残したんだ)

キトゥン「そうだね、ルゥちゃんが大きくなるころにはきっといっぱいリンゴができるよ!(リンゴの木とか全然詳しくないけど)」

少女「~…」ギュ

キトゥン「…これから一生懸命生きて、頑張って育てて行こうよ!」ニコ

少女「……」コク

シドー「フッ」ニコ

 
キトゥン「……ねぇルゥちゃん? その種、ひとつだけお姉さんにくれないかな?」

シドー「?」

少女「…うん。 ……はぃ」スッ

キトゥン「ありがとう!」ヒョイ

シドー「そんなの、貰ってどうするんだ? まさか本当に埋めるのか?」

キトゥン「ふふん、これは お・ま・も・り ♪ 大事な友達のおもいでなの!」パシ

シドー「おもいでぇ? ……林檎の種が?」

キトゥン「それよりさシドー、わたしもお腹空いちゃった!」ニマ

シドー「はい…?」

キトゥン「いつも仕事手伝ってるんだからさぁ、ホットドッグ奢ってよ?」

ダスティ「!」ピク

 
シドー「ぇ…なんで俺が」

キトゥン「さっき奢るって言ったじゃん!」

ダスティ「ニャア!」

シドー「げっ、中途半端に聞かれてた…」

少女「…?」

キトゥン「ルゥちゃんも一緒に食べよ? オジサンが奢ってくれるって!」

少女「……」コクコク

ダスティ「…ニャア!」ペシペシ

キトゥン「わかってるよ、お前の分も買ってもらうから」

ダスティ「~~!」ピョン

シドー「あの、いや――」

キトゥン「ほらほら! 広場で売ってるから、行こう行こう!」グイー

シドー「ちょ、勘弁してくれぇ!?」ヨロ




  おしまい

更新も遅く、最初から最後まで横着してしまってすみませんでした
そんな中でも見てくれた方、レスをくれた方々に感謝します

以降書きたいものは沢山ありますが、クロス無しでキトゥンの話もやってみたくなりました

おつでした
キトゥンの事を思い出せるのって結局誰だったの?坂本さん?

>>895
坂本さんです。出涸らしになったプレシャスジェムを持っていたので

芳佳があげたリンゴと紐づいてしまって消え難くなってます。シアネアが言った導と楔はこの2つのアイテムの関係のこと

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年08月28日 (木) 09:36:57   ID: _KJkl6t4

なんか訂正個所多すぎだと思いますよ
落ち着いて打って下さい・・・

2 :  SS好きの774さん   2014年09月13日 (土) 09:33:14   ID: BuK8tWyQ

本当にマジでおちついてね

3 :  SS好きの774さん   2017年01月06日 (金) 02:33:30   ID: _A257L1L

楽しかったぜぇ

4 :  SS好きの774さん   2018年05月30日 (水) 02:05:32   ID: uyLBP6cn

楽しかった

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