※ 艦これに登場する艦娘、青葉が主役のSSになります。
※ 暴力表現や過度なエロはありません。
※ 長編になります。のんびり更新で2週間ぐらいかかると思います。さらっと短編が読みたい方には向いていませんのでご注意下さい。
※ キャラの性格や口調などは、筆者なりの解釈です。自分の好みと違うようであれば、そっとスレを閉じていただけると幸いです。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1440502992
隼鷹 「ぷはー、酔っ払ったら暑くなって来ちゃったよ。もう脱いじゃうよ、あたしは」(脱ぎっ)
飛鷹 「隼鷹! 人前でなんてはしたないっ 」
隼鷹 「なんだよー、どうせ身内しか居ないんだからいいだろー 」
那智 「むむ、わたしも負けていられないな。わたしも脱ぐぞ! 」(脱ぎっ)
妙高 「那智っ。あなた飲み過ぎよっ。ああ、脱がないで脱がないで! 」
隼鷹 「おお、那智もやるじゃないかっ。あたしも負けてらんないねー! 」(さらに脱ぎっ)
那智 「なに! 勝負となれば受けて立つぞっ」(さらに脱ぎっ)
妙高 「那智~~! 人前でなんて格好を! ほら、早く着て着てっ 」
青葉 (…………青葉見ちゃいました! )
―――――
知りたい! そして伝えたい! それがわたしの個性なんだと思います。
―――――
――――― 翌朝
那智 「ふ~、昨夜はさすがに飲み過ぎたようだ。頭が痛いとは不覚だ…… 」
足柄 「那智姉さん……。お酒はほどほどにね……。ほら、今朝の青葉の新聞……」
那智 「おはよう。なになに……な、なんだこれは!! 」
足柄 「やっぱり覚えてないんだ……。妙高姉さんも一緒に居て、必死に脱ぐのを止めたそうよ」
那智 「ば、ばかな……! 」
―――――
あの人は言います。
「船が転生して、どうしてこんな変な個性がつくんだろうな? 」
まったく失礼な話ですね。そういう風に生まれたんだからしかたありません!
―――――
那智 「ぐぬぬ……不覚だ……」
潮 「あ、那智さん、おはようございます 」
那智 「あ、ああ、おはよう」
曙 「那智さん、お酒は大丈夫? 昨日、すごく酔っ払って大変だったって?」
潮 「わたしはお酒は飲んだこと無いけれど、そんなに楽しい気持ちになるんですね。ちょっと羨ましいです」
那智 「が……う……。そ、そうだな……はは……お前たちも見かけ幼いが、艦娘である以上、飲酒をしても問題はない。響なぞ、ウォッカをがぶがぶ飲んでいるしな。興味があるなら一度付き合うぞ……ははは……」
曙 「そうねー。那智さんがあんな風になるぐらいだから、お酒ってきっと凄い楽しいのよね。うん、わたしも挑戦してみようかな」
潮 「わたし、辛いのや苦いのは苦手なのですが、大丈夫でしょうか? 」
那智 「ちゃんと、甘いのや飲みやすいのもたくさんある。ちゃんと見繕うから安心しろ」
潮 「うわぁ、お酒博士ですね! 」
曙 「那智さん、ほんとにお酒が好きなのね。クソ提督もお酒好きだし、やっぱあいつも脱いだりするのかな」
那智 「…………」
那智 「青葉……許さんっ! 」
―――――
とにかくスクープになりそうなネタを探して、それを記事にして。
あの頃は、それがわたしの日常でした。
―――――
青葉 「はぁはぁ……」
衣笠 「青葉、こんなところに隠れてどうしたの? 」
青葉 「ひゃぁ! しー! しー! 」
那智 「青葉ー! どこに隠れたっ! 」
衣笠 「あー……」
青葉 「いやー、予想通りですけど、やっぱり怒っちゃってますね」
衣笠 「捕まったら、すごいお説教されそうね。がんばって逃げるんだよ!」
青葉 「うう、でもここにいたらすぐ見つかっちゃいます。脱出するために協力してっ! 」
衣笠 「はいはい。じゃあ、少しだけ那智さんの気を引くから、隙を見てさっと逃げるんだよ」
青葉 「恐縮です! ありがとうっ」
―――――
でも、知りたいこと、伝えたいことは、もっとたくさんあった。
わたしはそれを学びました。
―――――
青葉 (うひゃー、何とか逃げ出せました。衣笠、ありがと! )
青葉 (でも、那智さんは侮れませんっ。気をつけないとすぐ見つかりそうです)
古鷹 「うんしょ、うんしょ」(ずるずる)
加古 「zzz...zzz... 」
青葉 「あれ、古鷹さん。また寝ちゃった加古さんを運んでるんですか? 」
古鷹 「そうなんですー。重たいよー 」
青葉 「いつものことすぎて、スクープにはならないですね……。お手伝いしたいのですが、今は那智さんから逃げているところなんです。ごめんなさいっ! 」
古鷹 「いいんですよー。がんばって逃げて下さいね」
那智 「アオバー、ドコダー 」
青葉 「むむ、那智さん接近! それではっ! 」
―――――
今日は、スクープではなく、わたしこと青葉の物語をお伝えします。
わたしの個性を認めて、許して、広げてくれた、あの人とわたしの物語です。
―――――
那智 「ここかっ! く……いないか。しかし、わたしの勘が、敵が近くにいると告げている……」
青葉 (敵ですって!? まずいです、本格的に怒ってます……。仕方がないです、かくまってくれそうな人のところに……)
青葉 (ていうかまぁ、最初からそのつもりで、こっちに向かってきてるんですけどね! )
―――――
でも、いざ自分のお話を書こうとすると、やっぱり恥ずかしいですね!
だから、これはあくまで「物語」。フィクションということで!
それでは、はじまりはじまりー!
―――――
プロローグは以上となります。今後、2~3日ごとに投下していく予定です。
ほどほど長くなると思いますが、イベントの疲労抜きや、掘りの休憩にでも、是非お越しください!
―――――― ある日 提督執務室 ――――――
提督 「のどかだな……」
ホーホケキョ
提督 (誰も沈むこと無く、無事作戦を終えられて良かった。がんばってくれた皆には、ゆっくり休んでもらいたいなぁ。遠征組は休みなしで可哀想だが……)
ダダダダ
ガチャ
青葉 「司令官! ちょっとかくまってください! 」
提督 「……短い静けさだった……。ほら、ソファー裏にでも隠れてろ 」
青葉 「恐縮ですっ 」
ダダダダ
ガチャ
那智 「ここかっ! ……いないか……」
提督 「那智、ノックもせずどうした。緊急事態か? 」
那智 「あ、いや、すまない。青葉を追っていてな。ここに来ていないか? 」
提督 「さあ、俺にはちょっとわからんな。何かあったのか? 」
提督 「い、いや、いいんだ! では、失礼するっ 」
バタン
青葉 「ふぅ~、司令官、ありがとうございました! 青葉、助かっちゃいました! 」
提督 「あーあ、これで俺も共犯だなぁ。で、那智にいったい何したんだ? 」
青葉 「いえいえ~。そんな、何をしただなんて。青葉はただ、いつも通りスクープを…… 」
提督 「うわぁ……。那智が怒り狂うタイプのスクープか」
青葉 「昨夜、作戦成功のお祝いで、隼鷹さんと那智さんが飲みまくってデスネ。最後は暑いから脱ぐ合戦に…… 」
提督 「で、その写真はどこに? 」
青葉 「やだなぁ、青葉新聞は全年齢対象の健全な新聞ですよ! そんな写真、載せるわけないじゃないですか」
提督 「そうか……残念だ……。ま、それなら冗談で済む範囲のスクープだな。那智が怒る気持ちはわかるけど」
青葉 「堅物の那智さんが酔っ払って……っていうのは、読んだみんなも喜んでましたよ! 」
提督 「まーなー。近寄りがたい感じがするから、これを機会に、みんなと距離が縮まるといいな。青葉の寿命も縮まりそうだけど 」
青葉 「あ、あははー (汗 」
提督 「あとで妙高にとりなしをお願いしておくさ。それまでは逃げまわることだな 」
青葉 「ありがとうですっ 」
バタン (←ドアの開く音)
青葉 「きゃー! 敵襲!? 」
提督 「敵襲ってなんだよ…… 」
那珂 「おっはよー! 今日もかわいいアイドル、那珂ちゃんだよー☆ 」
提督 「さっきまで、静けさを楽しんでたんだけどなぁ……短い幸せだったなぁ……」
那珂 「あー! せっかく那珂ちゃんに会えたのに、がっかりしてるなんて、罰当たりなんだっ! 」
青葉 「ほんと、ひどい司令官ですね! 那珂ちゃん、おはようございます! 」
那珂 「青葉さん、おっはよー! 今朝の新聞見たよっ。わたしも、脱いだ那智さん見たかった! 」
青葉 「読んで頂けましたかっ。あの人の意外な一面っていうやつです! 」
那珂 「うんうん、そうだよね! 」
提督 「あー、二人とも、ここは一応、司令室なんだよ。井戸端会議ならよそに行ってくれ 」
那珂 「もー、提督ってばお堅いんだからっ」
青葉 「ほんとですよね~ 」
提督 「俺が悪い流れなのか…… 」
那珂 「あ、そうそう。今日はね、提督にお願いがあって来たの。那珂ちゃん、近々、街のカフェでライブができるかもしれないんだ! 」
青葉 「おおー! ついに鎮守府外デビューですかっ! 」
提督 「ああ、鎮守府向けの小さい街が出来てきてるらしいな。カフェなんかもあるのか……」
那珂 「うん! でもね、ライブに必要な機材とかが何もないから、鎮守府の備品を借りられるかなって」
提督 「あー。戦闘に関わるもの以外なら大丈夫だと思うぞ。管理は大淀がやってるから、後で聞いてみてくれよ。俺の許可は出てるって言ってくれていいから」
那珂 「きゃー! 提督大好きっ。ありがとう~! 」
提督 「ほんと、こんな時だけ都合がいいよな、お前……。ほい、用事が終わったなら、行った行った」
那珂 「ぶー! 」
青葉 「ライブ、是非是非取材させてくださいね! 」
那珂 「もっちろーん! 青葉さんには、一番いいプレス席を用意しちゃうんだから☆ 」
青葉 「プレス席! 楽しみですっ 」
提督 「浮かれるのは良いが、何か大きなことをやろうとすると、準備が本当に大変だ。そもそも実現するためにクリアすべき実務が沢山あるぞ。手続きなんかもあるだろうから、ちゃんと、俺や大淀に相談しながら進めろよ」
那珂 「はーい! じゃあねー☆」
青葉 (司令官ってば、なんだかんだで応援しちゃうところが甘いですよねー)
提督 「ほれ、那智は演習に出てる時間だから、もう安全だぞ。青葉も行った行った」
青葉 「むー! 追い出されるみたいで、青葉ちょっと不満です! 」
提督 「俺は急いでやることがあるのっ」
青葉 「むーむー! 分かりました。青葉退散しますっ 」
ピンポンパンポン
大淀 「妙高さん、妙高さん、提督がお呼びです。司令官室までお越しください。繰り返します……」
青葉 (あ、急ぎでやることって、妙高さんに、那智さんをなだめるお願いをすることなんですね。もー、ほんと、面倒見が良いんですから、司令官は! )
――――― 夜 鳳翔さんのお店
衣笠 「青葉は、今日は天ぷらそばなんだ? 」
青葉 「ええ、夕張さんのおすすめだそうなので、食べてみようかなと! 」
羽黒 「あ、衣笠さん、青葉さん、こんばんは 」
青葉 「羽黒さん、こんばんは! 」
衣笠 「こんばんはー! 」
那智 「む、青葉か…… 」
衣笠 「あ」
青葉 「ひぃぃぃぃ」
那智 「怯えなくてもいい、もう怒っていない」
青葉 「ほっ……。良かったです……」
那智 「本当はまだ怒っているがな! 」
青葉 「ひいいぃぃ」
衣笠 (がたがた)
潮 「那智さん、こんばんは」(おどおど)
曙 「こんばんは。早速きたわよっ」
那智 「ああ。じゃあ、あっちのカウンターに行こう。鳳翔さんも一緒に、二人が飲みやすいお酒を考えてくれるそうだ」
潮 「はい、お世話になります! 」
曙 「潮、あんた気をつけて飲むのよ! 急に暴れたりしそうで心配だわ」
潮 「えー! 曙ちゃん、ひどいよー! 」
那智 「そういうわけで、わたしは移動する。青葉、冗談だ。本当にもう怒っていない。この程度のことで騒いで悪かったな 」
青葉 「へ……? あ、はい。こちらこそ」
衣笠 「那智さん、どうしたんだろう? 朝は烈火のごとく怒ってたのに 」
青葉 「司令官が、妙高さんに仲裁を頼んでくれたらしいんですけど……」
羽黒 「ふふ。そうなんです、那智姉さん、妙高姉さんに叱られて……。あれだけ止めたのに、飲み過ぎて脱いだのは自分でしょ!って」
青葉 「そういえば、必死に止めてましたねー 」
羽黒 「それからね、青葉さんの記事を見た、潮さんと曙さんから、お酒のことを聞かれて、一緒に飲むことになったって」
衣笠 「珍しい組み合わせだと思ったけど、そういうことなのね。あーあ、カルアミルクなんて飲んでるけど、大丈夫なのかなー 」
羽黒 「那智姉さん、厳しい人だから、小さい子たちから結構恐れられてるって、普段から気にしてるんです」
青葉 「小さな子じゃないわたしでも怖いですけどね」
羽黒 「あはは……。だから、懐かれたのが、すごく嬉しかったみたいです。記事にされて恥をかいたが、結果的には良かったなって言ってました」
青葉 「ほっ……。良かったです。妙高さんにもお礼を言っておきますね! 」
羽黒 「はい。それに、ここだけのお話ですけど、あの記事、わたしもすごく楽しかったです。そんな那智姉さん、普段は見られないから、わたしも見たかったです! 」
衣笠 「実を言うとわたしも見たかったの。きっと、みんな同じように思ってるんですね! 」
羽黒 「うふふ、そうかも! 」
青葉 「恐縮です! 青葉新聞、これからもがんばりますよっ! 」
―――――
こんな風に、記事を書いては、怒られて逃げまわったり、喜んでもらえたり。
でもね、正直に言えば、記事にされた人が怒っていたりすると、やっぱり心配になります。これは記事にしてはダメだったのか? 配慮が足りなかったか? そんな風に。
でも、わたしの個性が、立ち止まることを許さないのです。知りたい! そして伝えたい!
こうしてスクープを追う日々が続いていましたが……それが少しずつ変化し始めたのがこの頃。はじまりはやっぱり、あの人でした。
―――――
本日分は以上となります。次回は……出張先のホテルから投下できれば土曜日に。もしできなければ遅くなるかもです。
期待コメントや、筆者の過去作を読んでくださっているコメント、とても励みになります。期待に応えられるような面白いお話になると良いのですが……。がんばりますね。
乙、待ってた
>>27の最後のやつ提督じゃなくて那智のセリフだよな?
>>39
おおう、ミスりました。ご指摘の通りです。ありがとう
――――― 1週間後 司令室
那珂 「えっと、必要な物リストね……那珂ちゃんの笑顔があれば、他は何もいらないかな☆ 」
提督 「そんなわけないだろ…… 」
青葉 「くぅ~、ライブ実現に向けて前向きに頑張るアイドル! これは記事になりますねー! 」
提督 「いや、頑張ってないだろ……。ディレクターと、音響と照明の担当者は絶対必要だろ。カフェだから音響照明機材は一切無いだろうし……。そもそもステージも無いんじゃないか? 」
那珂 「うん、外のオープンテラスでやるから、あるのはテーブルと椅子だけだね! 」
提督 「……つまり何も無いのと同じだな……。鎮守府には音響機材は結構あるが照明は無いな……。探照灯の要領で明石に作ってもらうとして……ひな壇と……ぶつぶつ」
青葉 「あ、あれ? 司令官、ステージに妙に詳しいような……? 」
那珂 「うん、那珂ちゃんもびっくり。なんでー? 」
提督 「海軍に入りたての頃、セレモニーなんかを仕切る部門に回されてた事があるんだよ。ADみたいに雑用ばっかりやってたんだ」
那珂 「わかった! じゃあ、今度のステージのADは提督に決まりだね! 」
提督 「だーめだ。俺がここを離れるわけには行かないだろ。その辺は、出来そうな人を見つけて助けてもらうことだ。照明は綾波が、音響は霧島が得意だろう。俺も口添えしてやるから」
那珂 「わかったよー。準備をがんばるだけで許してあげるネ! 」
提督 「ていうか、俺はなんで、執務中に、司令室で、那珂のライブ準備を手伝ってるんだ…… 」
青葉 「こ、これは! 『司令官、執務中に軽巡Nちゃんと秘密の作戦会議!』 いい感じの記事になりそうです! 」
提督 「はいはい、青葉も手伝ってやってくれ。那珂の念願だからな」
青葉 「はーい、了解です! 」
提督 「はぁ……しっかしなぁ…… 」
青葉 「どうしました? 」
提督 「お前たち艦娘は、沈んだ船の魂が転生した姿なわけだろ? ちゃんと前世の記憶もあるし、すごい艤装で敵と戦うし」
那珂 「?? どうしたの、突然? 」
提督 「転生して、人の姿になって、個性がでるのは、まぁ、分からなくも無い。川内が夜戦大好きだったり、足柄が戦闘狂だったり」
青葉 「そんなこと言うと、また足柄さんに怒られますよっ」
提督 「でもな……アイドル街道を突き進む軽巡とか、日々スクープを探し求める重巡って……どんな船だよ! 」
那珂 「ぶー! なあに、那珂ちゃんに何か文句があるのっ? 」
提督 「文句はないけど……。暁のレディ願望とかも不思議だよなぁ」
青葉 「言われてみれば不思議ですね。球磨さんのクマーとか、多摩さんのニャーは名前に引っ張られたんでしょうか? 」
那珂 「三隈さんの、くまりんこっ! も、不思議だよね」
提督 「ほんとなぁ……。船が転生して、どうしてこんな変な個性がつくんだろうな? 」
那珂 「失礼なっ! 那珂ちゃんは変じゃないよ! アイドルだもんっ」
青葉 「わたしも変じゃ無いです! 好奇心が熱く燃えているだけですっ! 」
提督 「青葉の個性は、まぁ、乗っていた人の影響が出たのかもしれないな」
青葉 「??? 」
提督 「このへんの記憶はないのか? 確か、有名な作家さんが、従軍記者みたいな形でお前に乗って、その乗船日記みたいなのを書いてたはずだぞ」
青葉 「……言われてみれば、覚えがあるような……? 」
那珂 「えー! じゃあわたしには、すっごいアイドルが乗ってたのかな! 」
提督 「男しか乗ってなかったはずだしなぁ……。すごいアイドルオタクが乗ってたのかも……」
那珂 「ぇーーー! 」
――――― 翌日 司令室
衣笠 「提督、青葉から聞きましたけど、艦娘の個性について考察してるとか! 」
提督 「いや、別に考察っていうほどじゃ…… 」
青葉 「いやー、何気なく話したら、衣笠がすごい食いつきで、今日はついてきちゃいました」
衣笠 「それでそれで! わたしはどういうふうな個性なんですか! 」
提督 「うーん……。昨日話してたのは、前世が船なのに、何故か謎の個性がついてるという話だったからなぁ。那珂とか青葉とか暁とかの」
衣笠 「えー! じゃあ、わたしの個性は~? 」
青葉 「衣笠は意外に常識人だから、変とはいえないんじゃないかな? 」
提督 「だなぁ。俺としてはありがたいよ」
衣笠 「えー……。あ、そうだ、実はわたし、上官にとっても反抗的だった乗組員の心を受け継いでるんです! 」
提督 「初耳だな……」
衣笠 「でも上官を殴るわけに行かないから、かわりに……それっ! こしょこしょこしょこしょこしょ! 」
提督 「わはははははは、やめっ、やめろ、ははははははは」
衣笠 「どーだどーだ、衣笠さんも個性的でしょー? 」
提督 「わ、わはわは、や、やめろ、ほんと、やめろ、はぁはぁ」
青葉 「青葉見ちゃいました……。執務中の司令室で、激しいスキンシップを行なう司令官と重巡Kさん……。これはスクープです! 」
衣笠 「ふふーん。ちょっと気が済んたわ。わたしだって個性的なんだからっ」
提督 「何が気に入らなかったのかしらんが、悪かった……はぁはぁ。うん、衣笠は上官をくすぐる、とっても個性的な艦娘だ……。はぁ、なんでまたこんな個性になるんだろうなぁ……。てか、青葉はそれ自重しろ」
青葉 「えー」
衣笠 「青葉、最近はスクープが少なくて退屈なんですよ。那智さんの記事はひさしぶりのヒットだったもんね」
青葉 「そうなんですよ~。最近、良いネタが少なくて」
提督 「まー、限られたメンバーでずっと一緒にいる訳だしなぁ。目新しい事件とか、意外な一面とか、そうそうは出ないだろう」
青葉 「やっぱり……司令官を罠にはめて、スキャンダルを作るしか……! 」
提督 「いや、まじやめてね、ほんと。俺、首になっちゃうよ」
青葉 「むー。つまらないです! 」
衣笠 「まぁまぁ。甘いものでも食べて、気分を変えようよ」
青葉 「あ、いいですね! それじゃあ司令官、失礼しまーす! 」
提督 「ほいほい。ああ、これで仕事が進むよ……」
大淀 「はい、いい加減、仕事をしていただかないと困ります」(←秘書艦中)
提督 「はい、ほんとすんません……」
提督 (うーん、青葉の悩みか……。これは考えないといかんな)
――――― 夜 司令室
那珂 「失礼しまーす! 艦隊のアイドルぅ。那珂ちゃんだよー☆ 」
提督 「はぁ……。それ、いい加減飽きないか? 」
那珂 「アイドルに何言ってるの!? もー、提督はダメだなぁ。お仕置きしちゃうぞっ☆」
提督 「……」
那珂 「それで~、那珂ちゃんに何か用事? 」
提督 「ああ、那珂なら詳しいと思ってな。ライブをやろうとしてる、近くの街な。どんな感じで、どんなお店があってとか、そういうの、少し教えてくれないか? 」
那珂 「えー! いいけど……提督、自分で行けばいいじゃん。楽しいよ! 」
提督 「そういうわけにいかないんだよ。いいから、教えてくれよ。ライブの手伝いしてるだろ~」
那珂 「いいけど~。えっとねー、まず、ライブをやるカフェがねー」
提督 「ふむふむ、そういう店はたくさんあるのか? 」
那珂 「沢山とは言えないけど、お店と人がどんどん増えてるよ。行くたびに違ってて楽しいよー」
提督 「そうか……。商船の艦娘が次々生まれてるって話だから、その受け皿なんだな…… 」
那珂 「そうそう、食べるだけじゃなくて、お洋服とかー、ファンシーショップとかー…… 」
提督 「ふぁんしー? 」
那珂 「もー、そんなことも知らないの? ファンシーショップっていうのはぁ…… 」
提督 「勉強になったよ。なんだか凄いことになってるんだな」
那珂 「前は鎮守府以外なんにもなくて退屈だったから、みんな喜んでるよ! 」
提督 「ま、皆が楽しいなら良いことだ。なるほどなるほど……」
那珂 「それでー、どうして急に街のことを聞きたいってなったの? 」
提督 「……まぁ、いろいろとな。助かったよ、ありがとう」
那珂 (あ、これはまた誰かのお手伝いなんだ。きっと青葉さんかなー)
那珂 「貸しができちゃった!? わーい、ライブの手伝い、いっぱい頼んじゃお♪ 」
提督 「ちょっと話を聞くだけで、ずいぶん高く付いた気がするな…… 」
那珂 (わたしは無理やりお願いしないと手伝ってもらえないのに、青葉さんには、自分からお手伝いしちゃうんでしょ? このぐらいのいじわるはさせてよねっ。ふーんだ)
――――― 数日後 司令室
提督 「お、青葉。良い所に来てくれた。衣笠も一緒か」
衣笠 「どうせおまけですよーっだ。またくすぐっちゃうぞ~、ほれほれ~ 」
提督 「やめろ、まじやめろ…… 」
青葉 「青葉見ちゃいました……は、いいとして。司令官、青葉になにか御用ですか? 」
提督 「ああ、ちょっと特別な仕事を頼みたくてな。一人で大変なようなら、衣笠にも是非手伝ってもらってくれ」
衣笠 「あ、衣笠さん、すごく忙しいんだった。それじゃあ、失礼しま~す 」
提督 「あーあ、タダで色々食べたりできる仕事だったんだが…… 」
青葉 「ええ! そんなお仕事があるんですかっ!? 」
衣笠 「あ、衣笠さん勘違いしてた。やっぱり暇でしょうがなかった。それに~、大事な青葉のためだもん、お手伝いしないとね! 」
青葉 「わーい、うれしいなー……(棒) 」
衣笠 「あはは、ごめんて! で、どんな仕事なの? 」
提督 「えっとな。泊地に街ができただろ? 艦娘たちの福利厚生のために、買い物とか娯楽ができるようにってやつ」
青葉 「ええ! 那珂ちゃんのライブ会場もそこですよ! 」
衣笠 「わたしは1回しか行ったこと無いけど、お店が3軒ほどあっただけだよ」
青葉 「えー! 衣笠、知らないんですか? 次々とお店が集まって、今では本当に街になってるんですよ! 」
衣笠 「そうなんだ。たびたび街に行くーって出かけてる人がいるのは知ってたけど、そういうことなのね」
提督 「それでだ。俺は街に出られないから、実態がわからん。なので、どんな店があって、どんなものが売っていて、どんなものが食べられて、どこが美味しくて、みたいな情報を、青葉に集めてもらいたい」
青葉 「情報収集ですかー。面白そうですね! 」
提督 「青葉なら取材に慣れてるし、カメラも得意だろ? 頼むよ」
青葉 「良いですけど、どんな感じの報告をすれば良いのか、ちょっとわからないですね」
提督 「ああ、これを参考にしてくれ」
衣笠 「なになに、舞鶴ウォーカー? 雑誌なの? 」
提督 「ああ、これは本土の雑誌なんだけどな。こんな風に、その街にあるお店とか、観光名所とか、イベントとかを紹介する専門の雑誌なんだ」
青葉 (パラパラ)「へー! わたしの時代には新聞ばっかりでしたけど、今はこんなものもあるんですね。見てるだけでお腹が空いちゃいそうです! 」
衣笠 「うわ、こんな楽しそうな場所が……。提督、わたし舞鶴行きたい! 」
提督 「俺達のいる島からは、軽く数千キロ離れてるからな……諦めてくれ」
衣笠 「えー」
提督 「ま、堅苦しくせず、こういう感じでまとめてくれればいい。実態を知りたいだけだから、機密扱いでもない。お前の記事として自由に配布しても構わん」
青葉 「そっか、こういう記事を載せるというのは良いですね! わっかりました、青葉、このお仕事、バッチリがんばっちゃいます! 」
衣笠 「衣笠さんも、食べ歩きとか一緒に頑張るからね! 」
青葉 「早速計画を練らなきゃ! じゃあ提督、青葉失礼しますっ」
衣笠 「提督、またねー! 」
提督 「ああ、別に急いでいないから、好きなペースでがんばってくれ」
――――― 少し後 青葉と衣笠の部屋
衣笠 「美味しそうなパフェ。これは食べてみたいなぁ。やっぱり舞鶴行きたい! 」
青葉 「あ、そんな感じのパフェなら、街のカフェでも食べられますよ。なかなか美味しそうでした」
衣笠 「じゃあ、まずそこに行こう! すぐ行こう! 」
青葉 「衣笠、すっかり乗り気ですねー」
衣笠 「だって、街がそんな楽しいなんて知らなかったんだもん! 」
青葉 (そっか、街によく遊びに行ってる人はそんなに居ません。みんな、街が楽しいって知らないだけかもしれないですね)
衣笠 「あ、ガラス細工だって。こういうのが売ってるお店もある? 」
青葉 「うーん。心当たりないですね。でも、わたしも最後に街に行ってから結構たってますし、もしかしたらそういうお店も新しくできてるかもです。明日はまずゆっくり回ってみましょう! 」
衣笠 「さんせーい! あ、でもパフェは行くからね! 」
青葉 「もちろんです! ちゃんと食べないと報告できませんからね! 当然経費でっ」
衣笠 「経費でっ! 」
ワイワイ
―――――
わたしが知っているメディアって、船に持ち込まれていた新聞ぐらいでしたから、こういう情報誌なんていうものは、とっても新鮮で……。
知りたいこと、伝えたいことが、少しだけ広がりそうな、そんな予感がしていました。
―――――
本日分は以上となります。投下が1日遅れまして申し訳ないです。
次回は明後日火曜日の予定です。
今回こそは短くまとめる決意だったのですが、やはりどんどん長くなり……。やっぱり長編になってしまいそうですが、どうぞ気長にお付き合い下さい。
それではまた!
乙です
ここの鎮守府はパラオとかトラックとかその辺かな?
――――― 翌日 近くの街
衣笠 「いっただきまーす! うはぁ、甘くておいし~~ 」
青葉 「うわぁ、こっちのケーキも上品な甘さ! おいしいですっ」
衣笠 「いやー、こんなに立派な街になっていて、こんな美味しいものがいっぱいあるなんてね! 」
青葉 「ほんとですよー。一ヶ月前と比べても、すごい発展です! 道も立派な石畳になって…… 」
衣笠 「これ食べ終わったらさ、さっきのガラス細工のお店に行こうよ。綺麗だった~ 」
青葉 「あはは。良いですけど、まずは取材取材。えっと、お店の名前を書いて……レアチーズケーキはとっても上品な甘さで、こってりしたスイーツが苦手な人にもおすすめ……と。そっちのパフェの感想はどうですか? 」
衣笠 「えっと……お値段控えめなのにボリュームが凄くて、クリームがたっぷりで甘い! あと、間宮さんのところと違うのが、和風テイストがなくて、フルーツとウェハースがいっぱいで……」
青葉 「ふむふむ……。間宮さんのパフェとはまた違った美味しさ……と。ありがとです! 」
衣笠 「これは二人できて正解だったよね。一人だととても回りきれないし食べきれないよ」
青葉 「ですねー! でも、それを言ったら、二人でも全然無理ですよね」
衣笠 「うん、見た感じ、カフェだけでも10以上あるよね」
青葉 「ゆっくりで良いとはいえ、これは大変そうです! でも、楽しいから良いですけどね」
衣笠 「ほんとほんと。こんなお仕事ばっかりだといいんだけどねー」
青葉 「あはは、戦い方、忘れちゃいますよ! 」
――――― 翌日 司令室
青葉 「失礼しまーす! 司令官、早速情報ですよ~♪ 」
提督 「おお、早速か。すまんな、先客がいるから少し待っててくれるか? 」
青葉 「了解でーす! 」
那珂 「ごめんね、ライブの打ち合わせなの 」
鈴谷 「やっぱ、登場の時は、ゴンドラで降りてきて、ドライアイスの煙がぶわーっと! 」
那珂 「素敵だね! 」
提督 「あのなぁ……。全部、自分たちで用意して実行するんだぞ? ちゃんと現実的なプランで考えろよ」
鈴谷 「えー、ダメかなぁ」
提督 「大量のドライアイスを用意して、本番まで保管して、運んで、リハーサルして煙の量を確認して、とかできないだろ? 」
那珂 「そりゃそうかぁ。こうやって考えると、ライブって大変なんだね」
鈴谷 「派手なのが良かったけど、自分で準備することを考えると、確かに大変かぁ」
提督 「会場も小さいんだし、派手な演出はいらないさ。照明音響をしっかりして、あとは那珂が良い歌とトークができれば十分だろ」
那珂 「那珂ちゃんの魅力ですべて賄うんだね☆ 」
鈴谷 「じゃあわたしは何をすればいいのー? 」
提督 「ディレクターなんだから、ちゃんと進行台本とか作って、音響照明なんかを統括して、予定通りのステージが出来るように、トラブルが起きても対応できるように、そういうことするんだよ」
鈴谷 「もっと派手なお仕事かと思ってたけど……意外と地味なんだね……」
那珂 「でも、ライブとか見たことある人があんまりいないから、頼めそうなのは鈴谷さんぐらいなの。お願い! 」
提督 「がんばってくれ。俺も手伝うから」
鈴谷 「うん、大丈夫、やるから! 素敵なステージにするからね! 」
那珂 「きゃー、鈴谷さん、男前~♪ 」
鈴谷 「ふっ、わたしに惚れるなよ…… 」
提督 「はぁ、大丈夫かなぁ……」
飛鷹 「提督、来ましたけど」
提督 「お、来てくれたか、暁もすぐ来るから」
青葉 「司令官、お忙しそうですねー 」
大淀 「それなのに、仕事の方は全く進んでいないのですが…… 」
提督 「すまんすまん、どんどん終わらせていくから。じゃあ、那珂は明石のところに行って機材の打ち合わせしてこい。俺もすぐ追いかけるから」
那珂 「はぁーい! 鈴谷さん、行こ行こ! 」
鈴谷 「おっけー! 」
暁 「司令官、ごきげんようです! 」
提督 「お、来たか。じゃあ、今日のレディ先生は飛鷹な」
飛鷹 「ええっ! わたしが先生をやるの!? 」
提督 「飛鷹は、正式な晩餐会の作法とかよく知ってるだろ? テーブルマナーとか、ダンスとかさ」
暁 「す、すごい! かっこいい! 」
飛鷹 「それはまぁ…… 」
提督 「暁が一人前のレディになりたいっていうから、レディの技術をいろんな人に教わってるんだよ」
暁 「しつれいね! 暁はもう一人前のレディなんだからっ! ただ……もっともっとレディになるだけだもん! 」
飛鷹 「……くすっ。わかったわ。じゃあ、テーブルマナーからね。覚えることが多いから覚悟してね」
暁 「う゛……。で、でも、レディなんだから必要よね! がんばる! 」
提督 「じゃあ、すまんが頼むよ。飛鷹の授業が終わる頃には、次の先生を用意しておくから。暁、がんばれよ」
飛鷹 「ふふ、わたしも、正式なテーブルマナーなんてひさしぶり。ちょっと楽しくなってきたわ」
暁 「がんばる! 飛鷹さん、よろしくお願いします! 」
提督 「さて、次は明石のところに行かないとな…… 」
青葉 「……青葉、ずっと待ってるんだけどなー」
大淀 「わたしなんて、朝からずっと待っています」
提督 「ぐ……。二人ともすまん。青葉、報告書受け取っておく。まず読ませてもらうから、夕方か夜にでもまた来てくれるか? 」
青葉 「むーむー。青葉の扱いが雑な気がします! 」
提督 「そんなこと無いって。ごめんな、バタバタしてて。大淀、このへんが片付いたら、ちゃんと仕事するから、できるところだけ進めておいてくれ」
大淀 「そんなのとっくに終わっています。あとは提督の判断決済待ちばかりです。お待ちしていますので、後ほど、しっっかり働いて頂きますからね」
提督 「ぐは……。あ、しまった、時間すぎてる。とりあえず後でな! 」
青葉 「はー、大淀さんも大変ですねー 」
大淀 「わかって頂けますか…… 」
青葉 「面倒見が良すぎるのも困りものですねー 」
大淀 「ほんとですね」
青葉 「この間は、執務抜けだして、第六駆逐隊の子たちとピクニックでしょ。その前は潜水艦チームとケーキパーティーしてたし……。もうスクープにもならないですよ。微笑ましい鎮守府の日常です! 」
大淀 「提督は、何か頼まれると、文句を言いつつ断らないですから。お仕事はちゃんとしてくださるから別に良いのですが……ただ、わたし共々、後回しになるだけで……(はぁ) 」
青葉 「わたしも見事に後回しです! もっと大事にして欲しいですよねっ」
大淀 「あら、青葉さんは一番大事にされてるじゃないですか。それに比べてわたしときたら…… 」
青葉 「やだなぁ。この通り置いてけぼりですし、大事になんてとてもとても! 」
大淀 「あらあら。青葉さん、自分のことになると意外と情報が遅いですね。良いでしょう、青葉さんの情報集めに協力します」
青葉 「え! 良い情報ですかっ。おねがいしますっ! 」
大淀 「じゃあ、わたしの机の下に隠れて……。提督、もうすぐ帰ってきますから」
青葉 「お、潜入取材っぽい! 青葉、ばっちり隠れてます(ごそごそ) 」
提督 「ふー、すまんな、遅くなった」
大淀 「さ、では早速お仕事を! ……その前に、青葉さんから報告書と領収書を預かってます」
提督 「青葉は帰ってしまったか。悪いことしたなぁ。うげ、領収書すごい金額だな。食べ歩きしたか……。すまんが、ちょっと部屋に金をとりに行ってくる」
大淀 「いえ、これはちゃんと経費にしましょう」
提督 「いや、これは仕事じゃないし、俺が出すのが筋だ」
青葉 (え、仕事じゃない……? )
大淀 「いいえ。鎮守府周辺の情報収集は立派なお仕事です。鎮守府運用予算は大量に余っていますから、こういう機会に是非使っていただかないと」
提督 「うーん……でも、俺が勝手にやったことだからなぁ」
大淀 「提督……提督が自腹を切っていたと、もし知られたら、きっと青葉さん、悲しみますよ? 」
提督 「……わかった」
青葉 (どういうことなんでしょう……? )
提督 「うわぁ、1日でこんなに調べたのか。さすが青葉だなぁ。てか、良くこれだけ食べたな……。赤城の影響でも受けたのか……ふむふむ」
大淀 「急に街の情報を集めたり、本土からこっそり情報誌を仕入れたり、仕事のふりをして、青葉さんに街の調査を依頼したり……。苦労した結果はいかがですか?(くすっ) 」
提督 「……なんだよ」
大淀 「いえ、提督は青葉さんには特別に甘いなーって思いまして」
提督 「そういうわけじゃない……。ただあいつは、いつも元気そうにしてるけど、中身は繊細だからな。俺がちゃんと支えるべき部分があると思うだけさ」
大淀 「はい、大甘頂きました。ごちそうさまです」
提督 「な、なんだよ……」
青葉 (う、うわぁ……/// な、なんですか「俺が支える」って……。や、やだなぁ、もう! )
大淀 「あ、提督。そろそろ遠征組がかえってくる時間ですよ」
提督 「もうそんな時間か。ちょっと迎えに行ってくるよ。てか、青葉の報告書見たら腹が減った。食い物の話ばっかりだからな」
大淀 「はいはい、おやつを用意しておきますので、行ってきて下さい」
提督 「ああ、じゃあ行ってくる」
バタン
青葉 「よいしょっと」
大淀 「というわけです、青葉さん。良い情報でしたか? 」
青葉 「あ、あはは……。もー、司令官ったらしょうがないですねー」
大淀 「くすっ。青葉さん、首まで真っ赤ですよ。どうですか、青葉さん、ちゃんと大事にされてるでしょ? 」
青葉 「/// え、えっと……。ほんとですね! もー、司令官ってば、誰にでも甘くて面倒見が良くて困っちゃいますよねー……あははー…… 」
大淀 「はい、ではそういうことにしておきましょうか♪ あ、提督もう戻ってきちゃいますよ」
青葉 「じゃ、じゃあ、見つからないように、青葉、これで失礼しますねっ! 」
バタン
大淀 「やれやれ、やっぱり自分が大事にされてるっていうのは気がつかないものなんですね。……わたしもちゃんと大事にされているのでしょうか? 」
―――――
新しい記事づくり。衣笠と……誰かと一緒に取材したり記事を書く楽しさ。そして……司令官が、わたしのために一生懸命考えたり工夫してくれていること……。
そういういろんなことが、なんだか嬉しくて嬉しくて、浮かれまくっていました!
そのせいで……「何故司令官が、仕事のふりをして街の情報集めを依頼したのか」とか、司令官の言う「繊細だから支えないと」とか、そういうことの意味をまるで考えていませんでした。
今思えば、ふつーに気が付きそうなものなんですけどねー。青葉、よっぽど浮かれていたのかな。たはは……。
―――――
本日分は以上となります。次回更新は明後日木曜日の予定です。
>>66
はい、まさにパラオやトラックのイメージです。筆者のSSは全部同じ世界での別の鎮守府のお話なのですが、過去作沢山より少し後、前作の葛城の話とほぼ同時期、同じ泊地、という設定になっています。
具体的なつながりは無いですけど、何故街が急速に発展しているのかなんかは、一応、過去作との関連なんかがあります(全く必要のない設定ですが!)
それでは、次回もまた是非お越しください!
――――― 1週間後 司令室
提督 「報告おつかれさん。これはまた美味そうだなぁ…… 」
青葉 「はいっ! ちょー美味しかったですよ! 」
提督 「満喫してるなぁ。しかし、これだけ報告もらっても、まだまだ先は長そうだな」
青葉 「ええ、いつのまにか、すごく大きな街になっていて、青葉びっくりでした」
提督 「今のところ、食い物系の報告ばっかりだけど、店はそれだけじゃ無いんだろ? 」
青葉 「そうですね~。お洋服系は意外と少なくて、生活雑貨とか小物のお店が多いですねっ」
提督 「ふむ……。女の街だから、服屋は多そうなイメージだけどなぁ」
青葉 「ほら、常夏の島ですから、夏物しか必要無いんですよ! 」
提督 「そっか、なるほどなぁ」
提督 「時間はいくらかかってもいいが、他に何か困っていることとかはないか? 」
青葉 「そうですねー。時間がかかる以外でというと……うーん……やっぱり趣味が偏っちゃわないか心配ですね」
提督 「ほう。それは新聞に載せる部分での話だよな」
青葉 「そうですっ。わたしと衣笠が興味をもったものを取材してるわけですが、やっぱり趣味は人それぞれですからねー」
提督 「そうだよなぁ。青葉としては、解決策とかのイメージあるのか? 」
青葉 「うーん、興味があるところを調べつくしたら、少しずつ幅を広げていこうかな……? 」
提督 「なるほどなぁ(これはまた考えないといけないな) 」
コンコン バタン
雷 「しれーかん、遊びにきたわよっ! 」
電 「きたのです! 」
大淀 「あなた達、今は執務中ですよ」
提督 「まあいいじゃないか。おう、昨日は遠征お疲れ」
響 「ありがとう。最近は街に行く楽しみがあるから、お休みが楽しいよ」
暁 「さっきも街に行っていたのよ。あ、そうそう、青葉さん、新聞で紹介してくれていたレストラン、行ってきたわよ! 」
青葉 「いいですねー! 美味しかったですか? 」
雷 「ええ、とっても美味しかったわ! 」
電 「暁ちゃんから、テーブルマナーを教えてもらいながら食べたのです。フォークとナイフって難しかったのです…… 」
暁 「ふふーん。一人前のレディたるもの、テーブルマナーなんて常識よ、常識!」
提督 「お、早速修行の成果が出たのか。飛鷹が、暁はすごくがんばり屋だって言ってたけど、お世辞じゃ無かったんだな」
暁 「失礼ね! ぷんぷん」
電 「暁ちゃん、優雅にフォークとナイフをつかってて、かっこよかったのです! 」
雷 「お店の人にも感心されてたわ! わたしも鼻が高いわね! 」
暁 「でも、あのお店の人はちょっと失礼だったわ。『お嬢ちゃん、マナーがしっかりしていて偉いね』って。子どもを相手にしたような言い方だったわ! 」
響 「まぁ……食べていたのがお子様ハンバーグセットだったからね……」
暁 「だって、普通のハンバーグセットはゼリーがついてなかったんだもん! 」
青葉 「ほうほう、お子様ハンバーグセットだとゼリーがつくんですか(メモメモ) 」
電 「ゼリーかプリンが選べるのです! 」
響 「ハンバーグの方も、一口もらったけれど、普通のと比べて、少しソースが甘く作ってあったね」
青葉 「なるほどなるほど。これはまた紹介できるメニューが増えそうです! 」
提督 「頼んでいるメニューはともかく、暁のレディ修行は順調だな。そろそろ次の先生を見つけないといけないなぁ」
暁 「飛鷹さんにはこれからもいろいろ教わるつもりだけど、新しい先生も大歓迎よ! 」
電 「ちょっと羨ましいのです。電も立派なレディを目指してみたいのです」
雷 「先生にいろいろ教えてもらうのは羨ましいわね。わたしもやってみたい! 」
提督 「まー、先生役の人が良いって言ってくれたら、みんなで教わるのもいいんじゃないか? そのうち役に立つかもだし」
響 「そうだね。テーブルマナーなんかは、必ず役に立ちそうだね」
暁 「ふふんっ。みんなもやっと、レディの素晴らしさが分かってきたみたいね。わたしがレディの先輩として、いろいろ教えてあげるわ! 」
大淀 「提督、そろそろお時間ですよ」
提督 「お、もうそんな時間か。すまんな、これから工廠に行く用事があるから」
暁 「はーい。じゃあみんな、早速だけど、飛鷹さんから教わった、大人のダンスを教えてあげるわ! 」
響 「晩餐会で踊るやつだね」
電 「晩餐会! お、大人なのです! 」
雷 「いいわね! じゃあ、電とはわたしが踊ってあげる! 」
ワイワイ
青葉 「司令官、工廠っていうことは、那珂ちゃんがらみですか? 」
提督 「ああ、今、工廠のすみっこに、リハーサル用の仮セットを組んでるんだ。そのアドバイスにな」
青葉 「おお、ではわたしも密着取材に! 」
大淀 「提督……ご存知かと思いますが、本日の業務はまっっっったく進んでおりません。戻られましたら、しっかりお仕事していただきますので」
提督 「わ、わかってるよ。すぐ帰ってくるから、よろしく! 」
青葉 「大淀さんは今日も大変ですねー」
大淀 「全くです……」
提督 「なんか、その……すまんっ」
――――― 中庭
青葉 「青葉新聞で紹介したお店、早速行ってみたってお話がたくさんあって、うれしいですねー 」
提督 「好評みたいでよかったなぁ」
青葉 「スクープがなくても、喜んでもらえる記事ができて、ほんっと、良かったですよ」
提督 「そうだなぁ。スクープといえば、さっきの暁のレディ修行とかは、記事にしないのか? 」
青葉 「暁ちゃんの『一人前のレディ』はいつものことですけど、修行して成長してるというのは記事になりますねー。うーん…………。でも、今回はやめておきます、街の取材も忙しいですからっ」
提督 「ふふ……。そうだな、やっぱり青葉らしい。俺もそれで賛成だ」
青葉 「むー? なんか含みがありますねー! 」
古鷹 「あら、お二人でお散歩ですか? 」
加古 「zzz...zzz... 」
青葉 「あ、古鷹さん、こんにちは! 」
提督 「いや、工廠に行く近道なんだよ、ここ。古鷹は、また寝ちゃった加古の付き添いか? 」
古鷹 「ええ、そうなんですー。わたしも眠くなっちゃって……いいお天気ですから」
青葉 「素敵な陽気ですよね~ 」
古鷹 「そうそう、青葉さんが紹介していた○△カフェ、行ってきましたよ~。チェリーパイがすごく美味しかったです~ 」
青葉 「そうですか! わたしは食べたこと無いから、今度食べてみますっ。ありがとうございます! 」
提督 「それじゃあ、またなー 」
古鷹 「はーい、いってらっしゃーい」
青葉 「うーん、今日は本当に良いお天気ですねー 」
提督 「青葉、お前はやっぱり難儀なやつだなぁ 」
青葉 「??? なにがです?」
提督 「さて、那珂たちはちゃんと準備してるかな」
青葉 「むー……気になりますが……。あ、那珂ちゃんの歌、聞こえますね」
――――― 工廠のすみっこ
那珂 「ふー、歌った歌った! マイクどうでした? 」
霧島 「ばっちりよ! 」
綾波 「照明は、ちゃんとできていたでしょうか……? 」
鈴谷 「良かったよ! さすが、探照灯のプロだね! 」
綾波 「/// そ、そんなぁ…… 」
提督 「よっ。設営、バッチリできてるじゃないか」
青葉 「密着取材、きましたよー 」
那珂 「あ、二人ともいらっしゃい! 早速、一曲歌ってたところだよ! 」
提督 「おっけーだ。じゃあ、今日からここで台本作りだな」
鈴谷 「台本なんて、必要なの? 」
那珂 「那珂ちゃん、鎮守府内で何度もライブやってるけど、台を置いて、その上に立って、歌ってただけだよ? 台本なんて作ったことなーい! 」
提督 「別にそれでも良いのかもしれないけど……。今回は、鎮守府外のお客さんも来て、少しはお金もらうんだろ? 」
那珂 「うん、そうだよー! 」
提督 「となると、お前は、はじめてプロとしてステージに立つことになるわけだ」
那珂 「プロ…… 」
霧島 「確かに、それを仕事にしてお金をもらってこそ、プロですね」
提督 「那珂次第だけど……。鎮守府内でやっていたような、自分が楽しむためのステージなら、そんなに準備は必要ない。だけど、プロらしいステージを作りたいなら、それに見合ったアドバイスができると思う。どうする? 」
那珂 「……那珂ちゃんはみんなのアイドルだもん! 来てくれた人が喜ぶステージにしたい! 」
提督 「オッケーだ。じゃあ、どんな感じで作っていくのかを教えるから、それを元に頑張ってみるといい」
鈴谷 「提督……なんか凄く……いいね! 鈴谷もがんばるよ~! 」
青葉 「うう、泣かせます……。これは立派な記事にしないと……」
提督 「じゃあ、まず曲はこれで。みんな歌詞は持ったな。じゃあ那珂、この曲の盛り上げるサビの部分はどこだ? 」
那珂 「えっとねー、このへんで、わーって 」
提督 「了解だ。じゃあ、音響の霧島は、那珂が曲紹介したら、オープニングBGMを切って曲入り。そして、このサビ部分に入ったら、少しだけマイク音量を上げる」
霧島 「了解です! 」
提督 「綾波は忙しいぞ。スポットライトで那珂を追いながら、サビに入ったら、この装置で、曲のスピードに合わせて背景照明の色を順番に変えていくんだ。細かくは、やってみてから相談だな」
綾波 「がんばります! 」
鈴谷 「わたしは何をすればいいのー? 」
提督 「俺が鈴谷の仕事をやってるんだ。俺がやっていることを見て覚えて、次からは鈴谷が考えて、今みたいに指示をだすんだ」
鈴谷 「うわ、なんか偉い人みたい! 」
提督 「ディレクターなんだから、当然偉いんだぞ。じゃあ、那珂以外は、これ付けてくれ」
霧島 「これはインカムですね」
提督 「ああ。ディレクターがこれで指示を出すから」
提督 「那珂、準備いいな? じゃあ、本番10秒前……5秒前……4,3、2,1、キュー」
那珂 「みなさん、こんばんはー! 今日は来てくれてありがとー! 」
提督 「霧島、オープニングBGMボリューム絞って」
霧島 「はいっ」
提督 「綾波、曲もうすぐだぞ。照明アップ準備」
綾波 「はいっ」
那珂 「それでは、早速聞いていただきまーす! 」
提督 「曲開始5秒前……3、2、1…」
那珂 「♪~♪~~ 」
提督 「サビ10秒前…5秒前……3、2、1…」
那珂 「一曲目、恋の2-4-11でした! 」
青葉 「パチパチパチパチパチ」
提督 「ほい、おっけー。おつかれ! こんな感じで、曲順、MC、それぞれの曲や場面ごとの音響照明、そういうのを決めていって、それを落としこんで台本にするんだ」
那珂 「なんだろう……本格的っぽい! プロっぽい! 提督が、リハーサル用のステージを作れって言った意味、やっと分かってきた! 」
鈴谷 「うん……そっか、ステージってこんな風に作るんだね」
提督 「全員プロが集まるなら、前日に設営して、当日にバシッとリハで決めて、本番っていうのもできるけど、今回はみんなはじめてだからな。ここで時間をかけて練習するといい。出撃にも、なるべく入れないようにするから、できるだけ頑張ってみろ」
綾波 「はい! 綾波、なんだかとっても楽しいです。那珂さん、素敵なステージにしましょうね」
霧島 「わたしも、好きなマイクをこれだけ扱えるのははじめてです。出撃するみんなには悪いですけど、こっちを頑張りますね」
那珂 「みんなありがとう! がんばるね! 」
青葉 「……こうして、みんなで団結して……と。素敵な記事になりそうです! 」
提督 「じゃあ、俺は執務があるから戻る。鈴谷、俺の真似して仕切ってみろ。がんばれよ」
鈴谷 「鈴谷におまかせっ! まっかせなさーい! 」
提督 「……大丈夫かなぁ……」
――――― 廊下
青葉 「司令官、那珂ちゃんのライブ、上手く行くといいですね」
提督 「そうだな……。上手くいくといいんだが…… 」
青葉 「なんだか、那珂ちゃんのライブ応援は、すっごく力が入っているように見えますねー。やっぱり、昔の血が騒ぐんですか!? 」
提督 「そういう訳じゃない。ただ、経験がないと、何を準備すれば分からない分野だからな。でしゃばるしか無いだろう」
青葉 「そうですねー。あんな風に準備するんだって、はじめて知りました」
提督 「それに……今回の件は、那珂にとって大きな転機になるかもしれないなって気がするんだよ。だから、応援する価値はあると思ってな」
青葉 「応援する価値もなにも、手伝って!って言われたら、何でも応援してるくせに~ 」
提督 「それで仕事が遅れて大淀に怒られるまでがテンプレだな」
青葉 「もー、わかってるなら、ちゃーんとお仕事してくださいね! 」
提督 「青葉にまで言われるとは……俺も終わりだな…… 」
青葉 「あ! 失礼しちゃいますっ! 」
探照灯は綾波がやってんのか
神通川内はバックダンサーでもやんのかね
―――――
こんな軽口を叩きながらも……。
司令官が那珂ちゃんをすごく応援していることに、もやもやとした不安を感じていました。嫉妬しちゃってたんですよねー。
でもまー、この頃は自覚なかったので、嫉妬だっていうのも当然気が付かず。
うー、なんだろう、なんかモヤモヤするー! って、悶々としてました。我ながら青いですねー。青葉だけに!
―――――
本日分は以上となります。次回は明後日土曜日に投下予定です。
青葉のお話のはずなのに、驚きの那珂ちゃん率! さすが、みんなのアイドル☆
>>105
神通川内の二人は……ライブ準備で全然出撃しない那珂ちゃんの代わりに、出撃と遠征を頑張っています……。
それでは、よろしければまた次回、お越しください。
――――― 数日後 鳳翔さんのお店
青葉 「今日はどこを回りましょうか」
衣笠 「うーん。これまで行ったお店でも、ほんのちょっとしか紹介できてないし、美味しかったお店にもう一回行って、違うものを食べてみるとか? 」
青葉 「そうですねー。紹介するお店を増やすのも良いけれど、良いお店を深く紹介するのも良いですね」
衣笠 「……もう一回パフェ食べていい? 」
青葉 「だめですよ~。紹介済みのメニューを食べているような余裕はありませんっ。紹介すべきものはまだまだいくらでもあるんですからっ! 」
衣笠 「うー……。そうだよね、しょうがないかぁ」
今日は二人とも出撃予定がないので、朝から一日、街で食べ歩く予定なのです。艦娘はどれだけ食べても太らないから、食べ歩きには最適ですよね!
飛龍 「お、いたいた。青葉~、やほー 」
蒼龍 「青葉さん、おはよう」
青葉 「おはようございます。朝から青葉をお探しですか!? スクープですかっ! 」
飛龍 「ううん、違う違う! 最近さ、街の紹介を新聞に載せてるでしょ? あれに興味があってさー」
蒼龍 「わたしたちも、街に通ってるからね! 」
青葉 「そうでしたか! 今日もこれから食べ歩きですよ~ 」
飛龍 「噂で聞いたんだけど……青葉の場合、街の情報収集で、費用がすべて経費が落ちているって……ほんと? 」
青葉 「ふっふっふ……。ここだけの話ですが、本当です。そのかわり、お仕事として、ちゃんと報告書を出さないとなんですけどね」
蒼龍 「本当だったんだ! それでね、青葉さん、ものは相談なんだけど……わたしたちも仲間に入れてもらえないかな? 」
飛龍 「わたしたちは洋服とかアクセとかが大好きなんだけど、さすがにこれだけ種類があると、お給料だけじゃ全然賄えなくて…… 」
青葉 「わたしは構わないんですけど……。あんまり取材内容が多すぎても、記事にするのがおっつかないなぁ」
飛龍 「あ、それなら、記事にするところまで自分たちでやるよ! 最後に青葉がチェックだけするっていうのはどう? 」
青葉 「あ、それなら良いですね~! わたしが記事を書かなくても、紙面が充実します! 」
飛龍 「やった! じゃあ、いろいろ買い物して、しっかり記事を書くね! ……蒼龍が! 」
蒼龍 「おいおいっ」(びしっ)
鳳翔 「お話は聞かせていただきましたが、それは耳寄りな情報ですね」
青葉 「うわっ。鳳翔さん! 」
鳳翔 「実はですね……。わたしと間宮さんも、たまには人の作ったものを食べたり、参考にしたりしたいなって言っていたんです……。和食と和菓子系、わたしたちにお任せ頂けませんか? 」
青葉 「その辺は、わたしと衣笠では全然手が回っていなかったから助かります! いいんですか? 」
鳳翔 「いいも何も、簡単な記事を書くだけで、全部タダになるんでしょ?(にっこり) 」
青葉 「え、ええ、まぁ」
鳳翔 「素敵ですね! 是非、応援させて下さい(にっこり) 」
衣笠 (鳳翔さんが……主婦の目をしている! )
青葉 「そ、それじゃあ、お任せします。えっとですね、記事のほうはわたしの新聞と同じような感じで、お店と商品の情報、それから感想を簡単にまとめて紹介する感じです。必ず領収書をもらってくださいね! 」
飛龍 「おっけー! 今日、さっそく行ってくるね! 」
鳳翔 「わたしも、お昼を食べに行ってみますね」
青葉 「よろしくおねがいしまぁ~す! じゃあ、夕食後に、ここに集合しましょうか? 」
蒼龍 「りょうかーい! 」
衣笠 「青葉、これはわたしたちも負けていられないね! 早速行こうっ」
――
――――
飛龍 「よし、じゃあこれを色違いのペアで買っちゃおうよ! 」
蒼龍 「えー。素敵だけど、同じのをセットでなんて、経費で落ちないんじゃ……? 」
飛龍 「ダメかなぁ。あ、そうだ、じゃあ、仲良し姉妹でお揃いに! みたいな記事にしちゃえばいいんだよ。それならペアで必要じゃん? ちゃんとペアで写真とってさ! 」
蒼龍 「そっか。お揃いで着たい子たちも多いだろうから、いいかも! 」
飛龍 「写真も乗っける前提なら、もうちょっとひねったほうが面白いかな~ 」
蒼龍 「ぷっ。じゃあ、これも買ってつけようよ」
飛龍 「あはは! あやしぃ~。でも、面白いね、買っちゃお買っちゃお! 」
蒼龍 「よーし、じゃあ、青葉さんに写真、取ってもらわなきゃね! 」
――
――――
間宮 「南国のフルーツを使った和菓子とはびっくりですね!」
鳳翔 「ええ、いちご大福みたいですけど、程よい甘さで……なかなか工夫していますね」
間宮 「本土の食材が十分に手に入らないからだそうですけど……何事も工夫ですね」
鳳翔 「お昼を食べた和食店も、本土の食材が手に入りにくいからこその工夫だとおっしゃっていましたけど……トロピカルな魚のお刺身が、あんなに美味しいとは思いませんでした」
間宮 「そうですね、あれはびっくりしました! 」
鳳翔 「わたしも、本土からの材料であれこれやりくりしていましたけど、新鮮さを求めるなら、地元の食材をもっと使っても良さそうですね。これは研究のやりがいがありそうです」
間宮 「でも、こういう機会もいいですね。いろいろ発見がありますし」
鳳翔 「なにより、座っているだけで御飯やデザートが出てくるっていうのが素晴らしいですね」
間宮 「くすくす。そうですね。わたしの場合、伊良湖ちゃんに作ってもらうこともありますけど、鳳翔さんの場合、いつもご自分でですもんね」
鳳翔 「ええ。嫌なわけではありませんが、たまには、ね♪ 」
――――― 夜 鳳翔さんのお店
青葉 「なるほど、そういう理由で、二人とも変なサングラスなんですか。青葉、びっくりしましたよ! 」
蒼龍 「なんか、素顔で写真ばーんって乗っけるのも恥ずかしいしね」
衣笠 「すっごい楽しそうだよ。これは真似したくなる、良い記事だね! 」
飛龍 「でしょ~♪ 」
青葉 「鳳翔さんの記事は意外でした。そういえば、鳳翔さんのお店は、お刺身とかお寿司はないですもんね。ちゃんと理由があったんですねー 」
鳳翔 「ええ。鮮魚は本土から送られてこないですから。でも、わたしも知らなかったのですが、この島には漁船の艦娘さんまで居て、ちゃんと魚が取れるようになっているそうです。良い勉強になりました」
間宮 「フルーツ屋さんも見つけたから、これからはトロピカルフルーツを使ってみるつもりよ」
青葉 「単純なお店の紹介というより、泊地の食糧事情みたいな記事は新しいですね。楽しいです! 」
こんな感じで、早速記事まで出してもらって、大収穫です!
青葉新聞に、わたし以外の人が書いた記事が載るのははじめて。こんな日が来るなんてびっくりですね! もちろん……仕掛け人が居ることぐらい分かりますけど!
青葉 「みなさん、記事はこれでOKです! 領収書も頂戴しました。早速、明日の青葉新聞に載せますので、楽しみにしててくださいね! 」
蒼龍 「自分の書いた記事をみんなが読むって、ちょっと緊張するね。ちょっと青葉さんの気持ちが分かるかな」
青葉 「へへー。それがすぐ快感になりますよ! 」
間宮 「みなさんが読むんですもんね。もっと宣伝入れたほうがよかったかな……」
青葉 「いえいえ、十分ですよ! ところでみなさん、司令官には、どんな風に手伝いを頼まれたんですか? 」
蒼龍 (ぎくっ)
飛龍 「え、提督? な、なんのことかなー?(棒) 」
鳳翔 「くすくす。青葉さん、なかなか鋭いですね。ご想像にお任せします(にっこり)」
間宮 「あは、あはは」
やっぱりね。司令官に「人手が足りない」とか「記事が偏らないか心配」なんて相談した数日後に、突然救世主がやってくるなんて、都合が良すぎます。もー、青葉が気が付かないとでも思っているんでしょうか、あの司令官はっ!
衣笠 「え、なになに? 提督がどうしたの? 」
青葉 「ううん、なんでもないよ。この領収書の山を、司令官に認めてもらわないとねって」
衣笠 「1日ですごい量になっちゃったもんね。青葉、がんばってよ~ 」
青葉 「青葉におっまかせー♪ あ、でもその前に、那珂ちゃんに差し入れ持っていかなきゃ! 鳳翔さん、冷蔵庫にお預けしていたアレ、持っていきますね! 」
鳳翔 「はい、良い感じに冷えていると思いますよ」
間宮 「あれは美味しかったですね。うちのお店でも、早速出してみようかしら」
――――― 少し後 工廠のすみっこ
那珂 「♪~~♪~~~」
鈴谷 「おっけー! 今のはいい感じだったよね! 熊野、どうだった? 」
熊野 「わたくしはライブというのは良く分かりませんが、なんでしょう、とてもウキウキした気持ちになりましたわ」
那珂 「おお! それそれ、そういうのが大事なの☆ 」
霧島 「音がうるさくありませんでしたか? 」
熊野 「うーん、最初は音の大きさにびっくりいたしましたが、少しすると、それが当たり前というか、その迫力が楽しくなったような……」
霧島 「なるほどなるほど。うーん、でも普通の人は、わたしたちほど大音量になれていませんから、もう少し絞りましょうか……」
綾波 「照明はじゃまになったりしませんでしたか? 」
熊野 「大丈夫でしたよ。ノリノリになるところで、カラフルに色が変わるのが素敵でしたわ。つい、踊りたくなってしまいましたわ」
綾波 「よかったですー! 」
青葉 「こんばんはー。差し入れもってきましたー! 街で買ったジュースです!」
那珂 「わぁ、うれしいな! 青葉さんありがとう! 」
熊野 「あら、青葉さん。ごきげんよう」
青葉 「およ、熊野さん。こんばんは! 応援ですか!? 」
熊野 「ええ、鈴谷に頼まれまして。お客さん役ですわ」
鈴谷 「自分たちだけだと、お客さんの感覚がわかんなくてさー! やっぱり来てもらって正解だったね。熊野、悪いけどまた来てね」
熊野 「ええ、わたくしでよろしければ。もうすぐ本番ですものね」
霧島 「ジュースおいしいですね」
綾波 「マンゴージュースですかー。綾波、はじめて飲みました」
青葉 「今日、街に行ったら、新しく屋台で売っていたんです。行くたびにお店が増えていて、取材がおっつきませんね。あはは」
鈴谷 「すごいよねー(ごくごく)。街がおっきくなったら、お客さんもいっぱいきてくれるかなー」
那珂 「楽しみだね♪ 」
青葉 「では、わたしは司令官に報告行ってきます! みなさん、がんばってくださいねー! 」
鈴谷 「ありがとっ! 」
――――― 少し後 司令室
コンコン
青葉 「青葉、はいりまぁ~す! 」
提督 「あいよ。まったく、返事があってから開けろよなー 」
青葉 「なんですなんです!? 開けられたら困るようないかがわしいことでもっ」
提督 「見ての通り、一人で残業だよ。また街の報告だよな? 早速見せてくれ」
青葉 「はい、こちらですっ」
提督 「ふむふむ。こっちとこっちは、青葉が書いたんじゃないな? 」
青葉 「ええ、蒼龍さんと鳳翔さん、間宮さんが書いてくれました」
提督 「飛龍は写真だけか……一人だけ楽しやがって…… 」
青葉 「協力してもらって、調査の幅も広がりそうです。今後もお手伝いをお願いしちゃいました」
提督 「そうか。あー、青葉? 」
青葉 「なんでしょう? 」
提督 「その、青葉はずっと一人で新聞を作ってきただろ? こんな風に誰かに記事を書いてもらうのは、はじめてのはずだ」
青葉 「ええ、そうですね! 」
提督 「その……お前のこだわりとか価値観的に、それは大丈夫か? 俺的には、みんなで記事を寄せあって新聞を作るのは楽しそうに思えるが、お前がどう感じるかは分からないからな」
真剣な、ちょっと困ったような、探るような目をしちゃって……。自分で仕掛けたけど、わたしが喜ぶか自信がなかった……ってところなのかなぁ。喜ばないわけないのに、もー、困った人ですね!
いじわるしたくなるけど、ここはちゃんとお礼をしようかな。ほんとに嬉しかったですから!
青葉 「……ほんとうに、すっごく楽しいですよ。みんなで取材して、記事を書いて……。記事を書く、新聞を作ることの楽しさを分かってもらえて」
提督 「そうか…… 」
青葉 「記事を書いたり新聞を作ることが楽しいなんて思うのは、青葉だけなんだって思ってました。でも、そうじゃなかった。同じように楽しめる仲間ができるんだっていうのが、一番の発見であり、びっくりでした! 」
提督 「そっか……そうか。それなら良かったよ(にっこり) 」
もー、嬉しそうな顔しちゃって! わたしに内緒で仕掛けておいて……。すこし仕返ししちゃおっと。
青葉 「えいっ」←座ってる提督の後ろから抱きついた
提督 「うわっ、どうしたっ」
青葉 「ほんとに楽しいんですよ。だからちょっとはしゃいでます! ほら、ぎゅー! 」
提督 「/// う、うわ……。こ、こら、じゃれすぎだ」
青葉 「あー。駆逐艦のみんなには、よく抱きつかれてるのに、青葉だと拒否するんだー?(くすくす) 」
提督 「おまっ。お前は子どもじゃないだろ」
青葉 「えー。大人だと何がいけないんですかぁ~(によによ) 」
ガチャ
大淀 「大淀、戻りました 」
青葉 「あ」
提督 「あ」
青葉 「/// う、うわぁ。こ、これはですね、ちょっと司令官に仕返しをですね」
大淀 「……くすくす。大淀、見ちゃいました。これはスクープです」
提督 「お、大淀~ 」
青葉 「/// うわぁー。大淀さん、内緒ですよ内緒! これは事故なんです! 」
大淀 「えー、どうしようかなぁ~。明日の大淀新聞のトップに最高なんですけどねー」
青葉 「大淀新聞なんて作ってないじゃないですか! 勘弁してくださーい! 」
ワイワイ
―――――
司令官がわたしのために頑張ってくれること。それで日々が楽しくなること。
それが嬉しくて、思い出すと恥ずかしいぐらい、浮かれて、はしゃいで……。今思えば、調子に乗りすぎでした、ほんと。
まー、すぐに浮かれ過ぎの報いを受けることになるんですけどねー。たははー。
―――――
本日分は以上となります。次は、明後日月曜日に投下の予定です。
次回は、いよいよ那珂ちゃんのライブ開催予定です。那珂ちゃんのファンのみなさんは、是非また次回もお越しください!
――――― 数日後 川内型三姉妹の部屋
川内 「ふぁ~、ねむ~~。さ、行ってくるかな! 」
神通 「姉さん、そんなに眠そうで大丈夫? 」
川内 「わたしは近場の遠征だもん、大丈夫大丈夫! 神通は出撃でしょ? 気をつけなよ」
那珂 「二人ともごめんね、最近、遠征も出撃も全部代わってもらって…… 」
川内 「いいってことよ。せっかくの晴れ舞台だもん。がんばりなよっ。今日は夜戦は我慢して、見に行くからさ! 」
神通 「いよいよ今日ですもんね。那珂ちゃん、しっかりね! 」
那珂 「うん……。がんばるよ! 今日のライブが終わったら、代わってもらった分、ちゃんとわたしが行くから! 」
神通 「いいんですよ。今回のライブは特別ですもの。ささやかな応援ということにさせて下さい」
川内 「そーそー。姉ちゃんにもっと頼っていいんだよ。雷みたいだけどさ! 」
那珂 「でもー……」
神通 「那珂ちゃんが、アイドル!ライブ!って言うのはいつものことですけど……。今回が特別なのは見ていて分かります。一生懸命考えて、必死に練習して……。なにより、仲間と一緒に頑張っているのが嬉しくて…… 」
川内 「姉ちゃんたちとしてはさ、那珂が一人でアイドルアイドル!って空回りしてるのが、ちょーっっと心配だったからね。今回はほんとに真剣でさ。他のみんなも、那珂を見なおしたって言ってたよ」
那珂 「ぶー! 川内ちゃんだって、夜戦夜戦!って空回りしてるくせに~ 」
神通 「あはは……。でもでも、那珂ちゃんだって、すごく充実してるでしょ? 他のことはわたしたちに任せて、どうぞがんばってきてね。今夜は、わたしもしっかり応援に行きますから! 」
那珂 「うん……ありがとう……ありがとう! 」
――――― 午後 工廠
明石 「それじゃあ、持ち込む機材は、夕方にトラックで現地に届けますね」
鈴谷 「ありがとー。明石さんが届けてくれるの? 」
明石 「いえー、わたしは運転できますけど、肝心の免許が無いので。ちゃんとドライバーさんがいますのでご安心を」
那珂 「明石さん、いっぱい協力してくれてありがとね! 素敵なライブにするからっ」
明石 「はい、がんばってくださいね! わたしも行きますからっ」
綾波 「綾波……もう緊張してきました……」
霧島 「大丈夫よ。あんなに練習したんですから」
鈴谷 「そーそー。名ディレクターであるわたしがいるんだから、成功まちがいなしだよ! 」
那珂 「みんなのアイドル、那珂ちゃんがいるんだもん☆ 絶対、だいじょーぶ! 」
ワイワイ
――――― 少し後 工廠
提督 「これが例のものだ。明石、ちゃんと揃えてくれてありがとな」
明石 「いいえ! これは作っていて楽しかったです! 」
野分 「これは凄いですね! わたしの方も準備万端です。配布用の資料も用意済みです」
提督 「ありがとう、さすがはのわっち」
野分 「のわっちと呼ばないでください! 」
青葉 「そっちは、のわっちにお任せでOKとして、わたしは何をすればいいの? 」
野分 「…… 」
提督 「えっとな、必要かどうかわからないけど、念のため用意したものがこの辺にまとめてある」
青葉 「何に使うかわからないものがたくさんですねー。これは電源の延長ドラムコード……? これは……パラソルと傘…………ああ! 外のテラス席ですもんね! 」
提督 「ああ、万が一雨が降った時の対策とかだ。本当はこの辺も自分たちで用意させるつもりだったんだけど、ステージ準備で手一杯っぽかったからな。こっちで内緒で用意したんだ。順番に説明するから、必要になったら助手になってくれ」
野分 「わたしもお手伝いいたしましょうか? 」
提督 「いや、のわっちのほうが大変なんだ。もしたくさんお客さんが来てくれたら、対応が大変だぞ。俺はそっちを手伝えないから、どうか頑張ってくれ」
野分 「はいっ! 那珂さんのために、がんばります! 」
提督 「大体わかったか? 」
青葉 「おっけーですよ! 随分いろいろと準備してるんですねー。青葉びっくりしました! 」
提督 「なにせ一発勝負だからな。万が一に備えないと……。」
青葉 「大丈夫ですよ! あんなに熱心に練習してたんですから! 上手くいきますよ~ 」
提督 「そうだな……そうだといいな」
青葉 「はいっ! 」
先日はもやもやした思いはありましたけど……それでもやっぱり、仲間がこんなに一生懸命がんばっていることですもん。絶対に上手く行ってほしい。笑顔で終わってほしいです。
よぉ~し! お手伝い、がんばりますよ~!
提督 「さて、この辺が終わったから最後に……青葉には俺の着替えを手伝ってもらわないとな」
青葉 「え゛ 」
――――― 夕方 ライブ会場
青葉 「おーらい、おーらい、おーらい、おっけーでーす! 」
那珂 「待ってたー! 青葉さんも来てくれたんだ! 」
青葉 「ええ! トラックに便乗してきちゃいました! 」
鈴谷 「あれ、運転席の……黒髪ロングの、あの2本角のヘッドギア……長門さんじゃん! 」
那珂 「うそっ! 長門さんがドライバーさんなの!? うわー、なんて恐れ多い…… 」
青葉 「ぷっ……ぷぷっ…… 」
ガチャ バタン
のしのしのし
綾波 「いえ……あれは、綾波の知ってる長門さんじゃありません(がくがく) 」
霧島 「ていうか、そもそも長門さんじゃありませんね…… 」
那珂 「て、ていとk(もがもが) 」
長門?「ばか、何のために変装してると思ってるんだ。いいから長門扱いしろって」
鈴谷 「そ、そんな趣味があったんだ……(ひきっ) 」
提督 「俺は街にきちゃいけない身なのっ。で、俺が変装できそうなのは、かろうじて身長が近い長門ぐらいだったんだよ。いいから、長門ということにしておけっ 」
霧島 「これ、長門さんが見たら怒りますね…… 」
綾波 「怒るより泣くかもです…… 」
提督 「俺のことはいいから、早速設営するぞっ。ほら、時間無いんだから急げ急げっ 」
一同 「は、はい! 」
……
………
霧島 「ダメです、これ、同時に使うとブレーカーが落ちてしまうようです」
提督 「だから回路図をちゃんともらっとけと言ったのに……。多分、あっちのコンセントは別回路だ。このドラムで引っ張ってきてみろ」
霧島 「はいっ」
……
………
綾波 「だめです、工廠と違って後ろに壁がないから、照明が全然目立ちません」
提督 「やっぱそうか。青葉、ポール立ててジョーゼットたらすぞー 」
青葉 「はい、了解しました~ 」
提督 「綾波、少し待ってくれ」
綾波 「な、なるほど! カーテンみたいな布を壁代わりに背面に……。これでいけます! 」
提督 「おっけーだ。強風だと照明の感じが変わっちゃうから気をつけてな」
那珂 「提督……ありがと……。来てくれて、いろいろ手配してくれてて……」
鈴谷 「いやー、やっぱ実際の準備だと、いろいろ問題あるんだねー 」
提督 「そういうものなんだよ。何とかなりそうで良かった。さ、リハやる時間ほとんど無いぞ。急げよ」
那珂 「はーい! 」
霧島 「マイク音量大丈夫よっ 」
綾波 「照明も準備OKです! 」
鈴谷 「じゃあ、リハーサル一回で決めるよー! 那珂ちゃんは、歌は省略して、開始からすぐサビに飛んでね」
那珂 「おっけー☆ 」
鈴谷 「じゃあ、最終リハ10秒前……5秒前……4,3,2,1… 」
――――― ライブ開始 直前
鈴谷 「ど、どうしよう……何百人とかいるんじゃない……? 」
那珂 「会場から溢れちゃってる…… 」
霧島 「こんなに集まるなんて、想定外です」
綾波 「し、しっぱいしたら……どうしましょう…… 」
提督 「青葉と野分が会場整理を仕切ってくれてる。他にも、仲間が沢山来てくれてるから、手伝いもしてくれてるみたいだ。客席のことは心配しなくていい」
鈴谷 「そういう問題じゃなくて! だって……こんな大勢…… 」
那珂 「ど、どうしよう。わたし、震えてきちゃった…… 」
提督 「ぶはは。なんだよー、いつも強気なのに、案外小心なのな」
鈴谷 「な、なんだとー! 」
那珂 「なによー! 」
提督 「みんな、那珂の笑顔を見に、歌を聞きに来たんだよ。それは、数人相手のライブとなんも変わらないだろ? いつも通り、自信持って、みんなのアイドル☆ってやればいいんだよ」
那珂 「…… 」
提督 「それに、あれだけ準備したんだ。ちゃんと見てたよ。だから大丈夫だ。トラブルあったらちゃんと俺がフォローするから、練習通り、自信持って行ってこい 」
那珂 「……わかった……行ってくる! みんなに、那珂ちゃんの最高の笑顔を見せちゃうよ☆ 」
提督 「そうそう。それでいい 」
鈴谷 「うっし、わたしたちも腹をくくるよ! 霧島さん、綾波ちゃん、練習通りがんばろう! 」
霧島 「ええ、任せてちょうだい」
綾波 「はいっ! 綾波、夜戦モードで頑張ります! 」
ガヤガヤガヤ
鈴谷 「那珂ちゃん、行くよ」
那珂 「うん、準備おっけー☆ 」
鈴谷 「ふふ、大丈夫そうだね。じゃあ、本番10秒前……5秒前…… 」
パッ (暗転)
シーン
♪ ~~ ♪ ~~~~
那珂 「みんなー! 今日は来てくれてありがとー! みんなのアイドル☆ 那珂ちゃんでーす!! 」
野分 「那珂さーーーーーん!!!! 」
わーーーーわーーーーー
……
………
那珂 「それじゃあ、まず最初の曲は…… 」
那珂 「♪~~~♪~~~~~」
那珂 「♪♪~~♪♪♪!!! 」
那珂 (え……みんな、サイリウムもって……結構ばらばらだけど……曲ごとに色も揃えて……)
綾波 (お客さんがお揃いのライトを……? すごく綺麗です)
鈴谷 (こんなの聞いてないけど! 盛り上がっていいねぇ~)
那珂 「……みんな、本当にありがとう! みんなでお揃いのサイリウムで盛り上げてくれて、とっても素敵なライブになりました。那珂ちゃんは本当に幸せものです! 」
野分 「那珂さーーーーん!!! 」
神通 「那珂ちゃん、最高でーーーす!! 」
川内 「那珂、かっこいいよー! 」
那珂 「では、最後の曲です…… 」
ワーワー
………
……
…
――――― 夜遅く 鳳翔さんのお店
那珂 「それじゃあ、ライブの大成功を祝して! かんぱーーい! 」
一同 「かんぱーい! 」
鈴谷 「いやーでも、あんなに沢山集まるなんてねー 」
提督 「鎮守府のみんなも、ほとんど全員が応援行ってたからな。考えてみたら、それだけで100人超えるわけだし」
青葉 「町の人もいっぱい来てました。インタビューしたところ、街は、お店とかは多いけど、イベントなんかは全然無くて、ライブとかすごく嬉しい、楽しかった! とのことでしたよっ」
霧島 「喜んでもらえたのは嬉しいですけど、緊張しました! 戦場のほうがよっぽど気楽ですよ」
綾波 「ほんとですよねー。でも、綾波たちですらこんなに緊張したのに、那珂さんはすごいですよね。ステージであんなに元気に! 」
那珂 「実はねー、最初の挨拶の時は、足が震えて大変だったんだよ。さすがの那珂ちゃんも緊張しちゃったみたい☆ 」
鈴谷 「うん、確かにちょっと緊張してたよね」
那珂 「でも、歌がはじまって、お客さんがサイリウムで応援してくれて……なんかどんどん楽しくなってきちゃって! 」
青葉 「ステージの緊張すら楽しめた……お客さんと一体に……これは良い記事になります! 」
鈴谷 「確かに、あの応援、嬉しかったよねー! お客さんもノリノリになってくれて。あのサイリウムは……聞くまでもないか。提督の差金だよね? 」
提督 「差金って人聞きの悪い……。野分から、ライブの応援について相談されたから、用意したんだよ。野分と、実際に作ってくれた明石の手柄だ。ちゃんとお礼言ってくれよな」
那珂 「はー、野分ちゃんは最高のファンだよ! さすが那珂ちゃんファンクラブリーダー! 」
鈴谷 「いやー、でもこれだけ好評だと、次が期待されちゃうよね。名ディレクターたる鈴谷は、期待に応えなきゃだよねぇ~ 」
那珂 「次は武道館だね! 」
綾波 「武道……? 」
提督 「飛躍しすぎだから! 」
青葉 「おおー! 次は武道館ライブ密着取材ですか、楽しみです! 」
霧島 「冗談はさておき、またやって欲しいという声はでるでしょう。わたしも是非やりたいですね」
那珂 「もちろんだよー! このチームで、また素敵なライブをやろっ☆ 」
鈴谷 「鈴谷におっまかせー♪ 」
提督 「あの……お前たち、ライブもいいけど、本業も忘れないでくれよ……? 」
那珂 「那珂ちゃんの本業は、アイドルで~す☆ 」
鈴谷 「ディレクターでーす! 」
霧島 「音響ですっ! 」
綾波 「あの、あ、あやなみは……その……」
青葉 「青葉新聞編集長です! 」
提督 「おまえらなぁ。ああ、綾波はいい子だなぁ(なでなで) 」
綾波 「あ、あのっ……あのっ…… 」
ワイワイ
―――――
こんなわけで、那珂ちゃんのライブは大成功! みんなで楽しく打ち上げが出来ました!
みんなで協力してチームになって……っていうのがすごく羨ましく感じて……。青葉新聞も、この間みたいに、チームで作れたら、きっとこんな風に楽しくできるかな。そんな風に考えていました。
何はともあれ、めでたしめでたし!
……なんて思ってたんですけど…………
―――――
――――― お開きになった後
青葉 (あれ、那珂ちゃん、どこへ……? )
打ち上げも無事終わったあと……那珂ちゃんに一言インタビューをもらおうと思ったら、こっそりと中庭の方に……。どうしたんでしょう?
那珂 (きょろきょろ、こそこそ)
青葉 (なんだか気になります。インタビューもできれば今日したいし、ちょっとついていっちゃおうかな~ )
――――― 少し後 中庭
那珂 「あ、提督……。おまたせ」
提督 「おお、来たか 」
!!! まさか、こんな場所で提督と那珂ちゃんが密会!
提督 「それで、二人で話したいなんて、どうしたんだ、急に? 」
那珂 「遅い時間なのに、わがまま聞いてもらってごめんなさい。えっとね、那珂ちゃんは……ううん……わたしは、どうしても今日、提督に伝えたいことがあるの」
提督 「なんだ、しおらしく改まって…… 」
那珂 「…… 」
こ、これは……これは……この雰囲気は絶対……どうしよう……どうしよう……
つづく!
今日は長くなってしまいました。本日分は以上となります。次回は、明後日水曜日の予定です。
那珂ちゃんはライブがんばりました。那珂ちゃんのファンになります。
つづく! な終わりであれですが、たまには良いかなと! それではまた是非お越しください!
――――― 中庭
青葉 (那珂ちゃんのあの雰囲気……絶対告白なんですけど……ど、どうしよう、止めなきゃ! って、止めるわけに行かないじゃないですか……)
提督 「話って、どうした、改まって? 」
那珂 「えっとね……まずは、改めてちゃんとお礼を言わせて。提督、ライブの応援、本当にありがとう。提督が居なかったら、絶対に成功できなかった……。それどころか……提督じゃなかったら、そもそも鎮守府外でライブなんて認めてくれないよ」
提督 「なーに、俺は大したことしてないよ」
那珂 「こっそりアイドルのライブビデオを取り寄せて勉強したり……軍律違反してまで手伝いに来てくれたのに?(くすくす) 」
提督 「ぐっ……。大淀、裏切ったな…… 」
那珂 「うん、大淀さんにぜーんぶ聞いちゃった。ほんと、いろいろね…… 」
青葉 (…… )
那珂 「ね、提督。前に言ってたよね。なんで軽巡が、アイドル街道まっしぐらなんだよ!って」
提督 「ああ、不思議だよな」
那珂 「うん。わたしも、自分のことなのに、すっごい不思議。でもね、仕方ないんだぁ。魂がね、素敵なアイドルになって、みんなを楽しませるんだ!って、そう求めてくる感じなの」
提督 「俺はそういう衝動は無いけど……。そういうものなのか」
那珂 「でも、全然イヤじゃないんだよ。はっきりとした夢があって、迷わずそれを追いかけるんだもん! 」
提督 「そうか…… 」
那珂 「でもね……わたしだって馬鹿じゃないもん。そんなわたしを、周りがどう見てるか、どう感じてるか、そのぐらいは分かるよ」
提督 「…… 」
那珂 「みんな優しいから、ひどいことを言ったりしないけど……。しょうが無いやつだ、困ったやつだ、って思ってることくらい分かる。艦娘としてのお仕事もちゃんとしてるから許してもらってるだけだって」
提督 「そうだな…… 」
那珂 「でもね、わたしは迷わない! どう思われようとも、魂の声にしたがって、素敵なアイドルでいるんだ!って。そう決めてるんだぁ」
提督 「那珂らしいな。それでいいと思うぞ」
那珂 「でもね、わたし、全然分かってなかったみたい。アイドルっぽい言動したり、廊下で歌を歌ったり……そんなのアイドルごっこだよね」
提督 「…… 」
那珂 「今回のライブで、それがはっきりわかったよ。ちゃんとみんなを楽しませて、喜んでもらって、キラキラして……。それでこそアイドルだよね」
提督 「そうだな。今日の那珂は、立派なアイドルだったぞ」
那珂 「うん! わたしが目指すべきだったのは、今日みたいな姿だったんだよね。はっきりわかった! 」
提督 「そうか(にっこり)」
那珂 「今日のために準備してきて……。鈴谷さん、霧島さん、綾波ちゃん……みんなで毎日一生懸命練習して……。周りのみんなもね、暖かく応援してくれた……。アイドルごっこじゃなくて、真剣にアイドルとしての活動だったからこそだよね」
提督 「そうだな……。うちの連中に、真剣に頑張る仲間を笑う奴は居ないさ」
那珂 「提督は……わかってたんでしょ? 」
提督 「というと? 」
那珂 「わたしがやっているのがアイドルごっこだったこととか……ちゃんとしたライブをやることで意識が変わるだろうってこととか……」
提督 「……そんな偉そうなつもりは無いけどな。ただ、那珂が本当に求めてるのは、今日のライブみたいな、お客さんに本当に喜んでもらえるようなアイドル活動なんだろうなっていうのは思ってた」
那珂 「そっか……。くやしいなぁ。自分ではいろいろ考えて、決意して、がんばってたつもりなのに……。提督のほうが、わたしのこと、良く分かってたなんて」
提督 「人生経験の差だよキミ。わずか2歳の艦娘よりは、俺のほうがいろいろ見えるさ」
那珂 「2歳ってひっどーい! いいもん、提督はおじさんだから、いろいろ見えたっていうことで」
提督 「俺はおじさんって歳じゃなーい! 」
那珂 「おっとっと。さて、これからが本題ですっ! 」
提督 「これからが本題なのか。艦娘をやめてアイドルに専念します!とかはダメだぞー」
那珂 「ぶー! そんなこと言わないもん! 」
提督 「あははは」
那珂 「あのね……提督……」
青葉 (!! 空気が変わった……やっぱりなんだ……)
那珂 「アイドルごっこで騒いで……みんなに困ったやつだと思われて」
那珂 「そんなわたしなのに……文句言いながらも、いっつも笑顔で助けてくれて……」
那珂 「手伝ってくれるだけじゃない。わたしがどうすれば幸せになれるか……そういうことを考えて、必死で頑張ってくれる」
那珂 「提督は……あなたは……わたしにとってそういう人」
提督 「那珂……おまえ…… 」
那珂 「/// あのね……あの……わたしは……提督……あなたのことが……好きです」
クルッ
ダダダダダダダダダダ
青葉 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
ダダダダダダダダダダ
青葉 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
もうダメ……聞いていられません……
背を向けて、一心不乱に走って……。気がつけば海に来ていました。
――――― 少し後 港
ザザーン ザザーン
青葉 「はぁ……」
とぼとぼ
那珂ちゃんは……わたしと……同じだ……同じだったんだ。
何故か、戦うこととは全然関係ない個性を持って生まれて……。那珂ちゃんはアイドル、わたしはスクープ……。
周りから、困ったやつだって思われて……。でも、自分の魂の声に従う!と決めて……。
でも、わたしは那珂ちゃんほど強くなかった……
……なんでこんな個性をもって生まれちゃったんだろう……どうしてみんなと同じように出来ないんだろう……そんな気持ちもあって……。
でも那珂ちゃんは、前を向いて、ずっと走り続けてたんだ……
そして、那珂ちゃんは……自分を見てくれる、助けてくれる人……そう、司令官の事もしっかり考えてた。
それが、どれほど大切か、どれほど暖かいか……どれほど代え難い存在か……。
だから、迷わず好きになって、迷わず告白して……。
すごい勇気だよ……
それに比べてわたしは……。
司令官が自分を応援してくれることに浮かれて……その意味や価値を全然見てなかった……。それが他の人に向いてしまうこと……それを考えないように、見ないように……
あは……あはは…………かなうわけ無いよ……同じスタートなのに、強く、迷わず、前を向いて飛び込んだ那珂ちゃん……怖いことや不安から逃げてきたわたし……。
そもそも……司令官への気持ちを見つめることからも逃げてたんだもの……。
そう、わたしはいっつも逃げてばっかり……
青葉 「う、うぇ……うぇぇぇん……」
わたしは……司令官のことを……こんなにも好きだったんだ……いつも、ぶつくさ文句を言いながら、いつもわたしのことを支えて応援してくれるあの人を……こんなにも……好きだったんだ……
青葉 「う、うぐ……うぇぇぇん、うわぁぁっぁぁん」
無くしてから泣く……。わたしってば全然成長してないですね……あははは…………
――――― 深夜 青葉と衣笠の部屋前
とぼとぼとぼ
散々泣いて……。泣いても何もならなくて……とぼとぼと部屋に帰ってきました。
はぁ……
明かりが漏れてます……。こんな時間なのに、衣笠はまだ起きてるんですね。
ガチャ
青葉 「ただいま…… 」
衣笠 「おかえり、遅かったね……って!! 青葉、どうしたの、その顔! 」
青葉 「へ? 」
衣笠 「真っ赤な目で、そんなに腫らして……どんだけ泣いたの!? 何があったの!? 」
しまった……そんなひどい顔になってたなんて……
青葉 「い、いやぁ、何でもないですよ、あはは…… 」
衣笠 「なんでもないわけないでしょ! 別に怪我してるわけじゃないみたいね…… 」
青葉 「はいっ、青葉元気ですよ元気! ほらほらっ 」
衣笠 「……あほっ! 」
抱きっ
青葉 「え…… 」
衣笠 「強がって心を隠すのはいつものことだけど……そんだけ泣いたんだもん、ほんとに辛いことがあったんでしょ? 今日ぐらいは意地はらず、衣笠さんに話しなさーい! 」
青葉 「そんなこと……ぐす……無いですよ……ほんとになんでも……ぐず………ぐず……う……うぇぇぇん」
衣笠 「よしよし、気が済むまで泣いていいから」(ぽんぽん)
――――― 少し後
衣笠 「そっか……那珂ちゃんの告白を聞いちゃって……かなわないって思っちゃったんだ…… 」
青葉 「……ぐす」
衣笠 「わたしはさ、青葉が提督のこと好きだって、ずっと前から気がついてたよ」
青葉 「ほんとですか……? 」
衣笠 「そりゃねー。青葉、わたしといるときより、提督といる時のほうが、ずっと楽しそうなんだもん。ふくざつ~な気持ちでしたよ、衣笠さんは! 」
青葉 「そんな……うそです、そんなこと無いですよ、ほんとにっ! 」
衣笠 「あ~り~ま~す~。でね、提督も青葉にすっごい甘いでしょ? だから提督も青葉のこと好きなんだろうって思ってたんだよね…… 」
青葉 「そんなことは……ぐすん……無いです…… 」
衣笠 「でもさ、提督が那珂ちゃんになんてお返事したのかは、聞いてないんでしょ? 」
青葉 「それは……そうですけど…… 」
衣笠 「今日は、那珂ちゃんと青葉が、ふたりとも提督が好き! っていうことがわかって、提督がどう思っているかはわからない! ここまででいいんじゃない? 」
青葉 「……いいんでしょうか」
衣笠 「それにさ、青葉。那珂ちゃんが提督を好きでも、提督が誰を好きでも……。青葉が提督を好きな気持ちは、変わらないでしょ? 」
青葉 「……うん」
衣笠 「だったら、その気持をどうするか。それを考えたらいいよ。もし恋がかなわなくても、衣笠さんがちゃんと慰めて、元気にしてあげるから、ドーンとぶつかったっていいよ」
青葉 「うん……正直、どうしたらいいのか全然わからないですけど……ちゃんと考えてみます……衣笠、ほんとにありがとう」
衣笠 「姉妹なんだから遠慮する必要なんかないよ。さ、今日はもう寝よ」
青葉 「うん……ごめんね、夜遅くまでつきあわせちゃいました」
衣笠 「いいってことよ! おやすみなさい」
パチン ←電気を消した音
衣笠のおかげで……どん底だった気持ちは少し晴れて……。
わたしは那珂ちゃんにかなわない……。その思いは変わらないけど……。そうだよね、でも、わたしは司令官が……あのいじわるでとっても優しい人が……好き……。
この気持ちを大事にしよう……。
きゅっ ←衣笠に手を握られた
衣笠 「大丈夫。わたしは青葉のことが大好きだよ。だから、自信持って前向きにね! 」
青葉 「衣笠……。うん、ありがとう。ほんとに…… 」
考えてみたら……スクープだ取材だと夜遅くまで徘徊してることが多いわたしですが……どんなに遅くなっても、衣笠は必ず起きて待っててくれていました……今日みたいに。
わたし、実はずっと支えられてたのかな……衣笠……わたしもあなたのこと大好きですよ!
―――――
ぐはぁ……この時期の情けない青葉は、思い出すだけで恥ずかしいぃぃぃ。
この青葉はフィクションということで……よろしくです!
あ、でも……。かっこいい那珂ちゃんと、優しい優しい衣笠はほんとです。
青葉もがんばらないとですね!
―――――
本日分は以上となります。
金土と更新が出来そうにないので、次回はできれば明日に! 無理なら日曜日になります。
お話の展開上、いつも元気な青葉がしょんぼり落ち込み気味です。早く元気になるといいんですけど……。
それでは、またぜひお越しください!
――――― 数日後 鎮守府廊下
那珂 「それでねー、新曲はちょっとイメージを変えてもいいかなーって」
鈴谷 「そうだねー、アイドルらしい曲もいいけど、たまにはシリアスとか、思い切ってバラードとかもいいかもね」
那珂 「そうなの! やっぱライブではアクセントがほしいかなって」
ふむふむ……二人で相談しているのは、どうやら新曲のようですね。熱心ですねー!
鈴谷 「あとさ、バックダンサーとかも欲しくない? 」
那珂 「それそれ! この間はステージが小さくて無理だったけど、やっぱり歌って踊れるアイドルがいいよね! 」
鈴谷 「だよねー! 早速だけど、舞風ちゃんに声かけてみようよっ。きっと喜んで仲間になってくれるよ」
那珂 「うんうん、適任だよね! 早速行ってみよっ! 」
鈴谷 「おー! 」
ふむふむ、お二人はこれから舞風さんのところに……。那珂ちゃんのほうはこのぐらいにして、そろそろ司令官の方に行きましょうか。
――――― 少し後 司令室
さて、窓の外から覗くときは、この専用潜望鏡をつかって……と……
え! 司令官と飛鷹さんが抱き合ってる!! うそ!!!
提督 「うおっと、すまん、踏みそうになった」
飛鷹 「いえいえ、お上手ですよ、はいここでターン」
提督 「うおっと……ほっ、何とかなったな。いやー、ダンスなんて何年ぶりだ」
飛鷹 「その割にはとってもお上手ですね。驚きました」
暁 「わたしも驚いたわ! 司令官、どうしてダンスできるの!? 」
提督 「士官学校で習うんだよ。駐在武官とかで外国に行くこともあるから、一通りな」
響 「軍の学校で習うなんて、驚きだよ」
提督 「ただな、士官学校って男しかいないだろ……。俺は小柄だったから、いつも女役でな……。正直、男のステップはいまいちなんだ」
なんだ……ダンスの練習ですか。それでも、くっつきすぎです!!
雷 「ぷ……ぷぷ……こんなにごっつい提督が女役なんて、なんだかおかしいわ」
電 「雷ちゃん、笑ったら失礼なのです……ぷぷ……」
飛鷹 「あら、では男女入れ替えて踊ってみますか?(くすくす) 」
提督 「勘弁してくれ……。ま、実際のダンスはこんな感じだ。見ての通り、身長差がある前提になってるから、お前たちがペア組んで練習するのとは感じが違うんだ」
暁 「なるほどねー。だから、飛鷹さんと練習してる時みたいに上手く行かなかったんだ」
飛鷹 「みんなも覚えたいなら、直接ちゃんと教えてあげるわよ。これから練習しに行く? 」
一同 「おねがいしまーす! 」
飛鷹 「はい、じゃあ行きましょう! 」
提督 「がんばれよー」
大淀 「提督はお仕事をがんばりましょう」
提督 「……はい」
青葉 (むかむか)
――――― 夜 青葉と衣笠の部屋
青葉 「それでですね、今日も司令官と那珂ちゃんが二人で会っている感じはなかったです」
衣笠 「はぁ…… 」
青葉 「それと、司令官が、飛鷹さんと妙にくっついてダンスしていたのが問題です! しかも執務中にですよ! もー、何をやってるんですかっ。ぷんぷん」
衣笠 「あのさー、青葉~ 」
青葉 「??? 」
衣笠 「あれから数日。なんで、司令官と那珂ちゃんのストーカーをしてるの? 」
青葉 「ストーカーって失礼ですねっ! 情報収集です、情報収集! 」
衣笠 「何の情報をあつめてるの……? 」
青葉 「それはですね、そのぉ……。司令官と那珂ちゃんの関係がどう変化したかとか……司令官の気持ちはどうなのかとか……そういうことをですね……」
衣笠 「青葉、ちょっとここに正座しなさい」
青葉 「……やっぱり、お説教? 」
衣笠 「あたりまえだよ! 」
衣笠 「青葉、百歩譲って、ストーカーじゃなくて情報収集だとして」
青葉 「はい…… 」
衣笠 「提督と那珂ちゃんがお付き合いしてたら、どうするの? 」
青葉 (びくっ)
青葉 「そ、そんなの、決まってるじゃないですか! 二人を祝福して……そうそう、スクープですよそれは! ぜひぜひ記事にしないと!! 」
衣笠 「……それじゃあ、青葉の、提督が好きっていう気持ちは、どうするの? 」
青葉 「そんなの、諦めますよ! 那珂ちゃんと司令官はお似合いですしねー。司令官には、那珂ちゃんを……大事にするように……ひっく…………しっかり言い聞かせて……ひっく…… 」
衣笠 「よしよし……。泣きながら言ってるようじゃぁ、説得力がないわね」
青葉 「ひっく……う゛わぁぁぁん」
衣笠 「ほんと、難儀な子だわ、青葉は」
衣笠 「ね、青葉。衣笠さんも恋愛経験豊富な訳じゃないけど」
青葉 「ぐす……うん」
衣笠 「コソコソ調べて、自分の心を伝えずに、愛想笑いしてやり過ごしちゃったら、絶対に後悔するよ? 」
青葉 (ズキッ)
うん……そうなんですよね……わかってる……わかっててまた同じことを……
衣笠 「泣くほど人を好きになるなんて機会、なかなか無いよ。だから、後悔しないように、ちゃんと伝えるべきだよ! 」
青葉 「衣笠……うん……ありがとう……勇気を出してみます……ただもうちょっとだけ心の準備を……」
衣笠 「はいはい。別に急かすつもりはないけど、しっかりね! 」
青葉 「うん…… 」
衣笠は、やっぱり、青葉のそういう弱いところを見抜いてるのかな……。
――――― 夜 司令室
衣笠 「で、これが、ここ数日分の新しい報告書ね」
提督 「なあ衣笠。毎日ここに来てた青葉が、一切顔を見せなくなって、報告まで衣笠が代わりに来て。これ、どう見てもおかしいよな? 」
衣笠 「うーん、やっぱりもう、誤魔化せないよね~ 」
提督 「そりゃそうだ。食べ過ぎで動けないとか、スクープ追いかけて行っちゃったとか、そんな言い訳で何日もやり過ごすのは無理だろ…… 」
衣笠 「そうだよね~ 」
提督 「一応確認だけど、ひどい損傷を受けてるとか、病気だとか、そういう訳じゃ無いんだよな? 」
衣笠 「うん、それは絶対ないない! 」
提督 「どこか遠くに取材に行っちゃって行方不明とかでも無いんだな? 」
衣笠 「うん、それもないよ! 今も部屋に居るもん」
提督 「なんだ、部屋にいるのか」
衣笠 「あ゛。で、でもダメだからね! 青葉がちゃんと考えて、自分から来るまでは! 」
提督 「うーん……心配だけど、プライベートに土足で踏み込むわけには行かないからな…… 」
衣笠 「ご、ごめんね、ほんと! 青葉には、心配かけないようにって、ちゃーんと伝えるからさ! 」
那珂 「衣笠さん、青葉さんの様子がおかしくなったのって、わたしのライブ翌日からだよね」
提督 「そういえば、最後にあったのはライブの打ち上げだな」
衣笠 「(ぎくっ) そ、そのぐらいかな……あはは……(目そらし) 」
那珂 「わたしのライブが原因なの……? 」
衣笠 「そんな訳無いじゃないですか! 大成功すごく喜んでたよ! 」
那珂 「そっか……じゃあやっぱりなんだ(ぼそっ)」
提督 「なんだ。那珂、心当たりあるのか? 」
那珂 「ううん、もしかしたら位だから、那珂ちゃんも、もうちょっと考えてみるよ! 」
提督 「うーん……でも、あんまり続くようなら、俺も強硬手段に出るからな」
衣笠 「大丈夫だって! 衣笠さんにまかせておいてよっ 」
――――― 少し後 司令室前廊下
那珂 「衣笠さん、待って」
衣笠 「那珂ちゃん、どうしたの? 」
那珂 「あのね、那珂ちゃん、青葉さんと二人でゆっくりお話したいの」
衣笠 「えー……それは……」
那珂 「わたし、青葉さんが元気なくしてる理由、ちゃんとわかってるつもりだよ。青葉さん……聞いちゃったんだよね? 」
衣笠 (ぎくぎくっ)
那珂 「だから、ちゃんとお話したほうがいいと思うんだ。駄目……かな? 」
衣笠 「……はぁー……。そうですね。青葉はああ見えて思い切りが悪いから……。那珂ちゃんに助けてもらったほうがいいかもです」
那珂 「大丈夫、ちゃんとお話するよ! 」
衣笠 「青葉は部屋に居ます。わたしは鳳翔さんのお店で時間を潰していますので……。お話が終わったら声をかけて頂けますか? 」
那珂 「うん、わかった。衣笠さん、ありがとね! 」
衣笠 「青葉のことお願いね。ほんっとに、手のかかる姉ですけど! 」
――――― 少し後 青葉と衣笠の部屋
はぁ……。那珂ちゃんや司令官の情報収集(ストーキングじゃないよ! )が駄目となると、何をしていいか分からず……今日も部屋でゴロゴロしてしまいました。
コンコンコン
青葉 「?? はーい」
那珂 「那珂ちゃんです。青葉さんにお話があって来ました」
青葉 「!!!」
えええ、那珂ちゃんですよ! ど、どうしよう、ストーキングがバレちゃったとか……
青葉 「ど、ど、ど、ど、どうしました、那珂ちゃん。青葉のところに来るなんて…… 」
那珂 「青葉さん、ここ数日、提督とわたしを避けてるでしょ? だから、ちゃんとお話しなきゃって」
ど、ど、どうしましょう……
ガチャ
青葉 「と、とりあえず、立ち話もなんですから……どうぞ。もうすぐ衣笠が帰ってきちゃうかもですけど」
那珂 「衣笠さんには話を付けてあるから、わたしが呼びに行くまで帰ってこないよ」
青葉 「え゛」
なんでしょう……那珂ちゃんがちょっと怖いです。なんかオーラががが
青葉 「えっと、それで……話って…… 」
那珂 「さっきも言ったけど、青葉さん。提督とわたしのこと、避けてるよね? 」
青葉 「え、えっと……や、やだなぁ……全然そんなことないですよ。ちょっとバタバタしてて」
那珂 「ごまかしても駄目! ……ライブの夜、中庭で、わたしと提督が話してて……。そこから走って逃げた人、青葉さんでしょ? 」
青葉 (ぎくぎくぎくっ)
那珂 「やっぱり……。あーあ、一番聞かれちゃいけない人に聞かれちゃたんだぁ。那珂ちゃんもあの時はいっぱいいっぱいで、周りに気を配る余裕とかなかったしなー 」
青葉 「その……ごめんなさい……那珂ちゃんにインタビューしたくて、後をついていっちゃって…… 」
那珂 「……逃げたタイミングからいって……わたしが提督に告白するところまで聞いてたの? 」
青葉 「あぅ……そうです……」
那珂 「そっか……。どうして……結果を聞かずに逃げちゃったの? 」
青葉 「え……そ、それは…… 」
那珂 「青葉さんは好奇心の塊だよね。なのに、どうして? 」
那珂ちゃん……すごく真剣な目……これが本気の時の那珂ちゃんなんですね……。悪いのはこっそり立ち聞きしたわたし……。言い逃れはやめます
青葉 「その……ちょっと長くなっちゃいますけど」
那珂 「ちゃんとお話してくれるんだ。うん、しっかり聞くよ! 」
青葉 「那珂ちゃんが提督にしていたお話……。あれは、わたしも同じなんです。変な個性をもって生まれてきて、周りから困ったやつだって扱われて」
那珂 「うん……わたしも、青葉さんは仲間だって感じてた」
青葉 「それなのに……わたしは迷ったり逃げたりしてるのに……那珂ちゃんは、迷わずまっすぐに進んで……それから……」
那珂 「……それから? 」
青葉 「こんな風なわたしたちを、優しく支えてくれてる……あの人に……しっかりと告白していて…… 」
那珂 「…… 」
青葉 「わたしじゃかなわないって……! わたしもあの人のことが好きなのに、那珂ちゃんに勝てないって……そう感じたら、もう聞いてられなくて……ぐす…… 」
那珂 「そっかー、青葉さんはそういう感じなんだ」
青葉 「ごめんなさい、ごめんなさい…… 」
那珂 「いいよー、偶然聞いちゃっただけだもん。でもさ……じゃあ、その後どうなったか、聞きたくない? 」
青葉 「正直に言えば、聞きたいような、聞きたくないような……」
那珂 「そっか。青葉さん、思っていたよりずっと怖がりさんなんだね。かわいいっ」
青葉 「うう、怖がりなのかなぁ」
那珂 「かわいいから勝手に話しちゃう! ……わたし、振られちゃったよ、提督に」
!!!!!
青葉 「え、そんな……うそ……? 」
那珂 「振られた理由は……悔しいから内緒」
こんなに頑張ったのに……那珂ちゃん……。きっと、わたしよりずっと泣きたいはずなのに……
青葉 「その……びっくりしました。わたし、提督と那珂ちゃんが、もうお付き合いしてるとばかり思って…… 」
那珂 「わたしもそうしたかったんだけどなー。でもね、実は告白する前から、振られるだろうって分かってたんだ。でも、言わずに引き下がるのは悔しいから、きちんとアタックしようって」
青葉 「那珂ちゃんは、本当に強いですね! 青葉には真似できないなー」
那珂 「何言ってるの青葉さん。次は青葉さんの番だよ? 」
青葉 「へ……? 」
那珂 「だって、青葉さんも提督が好きなんでしょ? で、わたしは振られたの。次は青葉さんの番。おーけー? 」
青葉 「む、無理です無理無理! だって、青葉じゃ全然望みがないですし」
那珂 「……青葉さん、逃げちゃうの? 」
!!!
わたし、また逃げるの……? 自分だけ……?
……嫌だ、それはもう嫌だよ…………
那珂 「逃げたら、絶対に後悔すると思うよ」
青葉 「……衣笠にも言われました。そうですよね、青葉、逃げようとしてますよね……。青葉、逃げたくないです」
那珂 「うん、だいじょーぶ! 言っちゃえば、すっきりするよ! 経験者が保証しますっ」
青葉 「ありがとう那珂ちゃん。青葉……頑張ります! 」
――――― 少し後 鳳翔さんのお店
那珂 「衣笠さん、お待たせしましたー! 那珂ちゃん、ミッションコンプリートです! 」
衣笠 「おつかれさま! 」
鈴谷 「おっつかれ~。衣笠さんから話は聞いたよ。どうだったの? 」
那珂 「青葉さん、きっと頑張るよ! 」
鈴谷 「おー! それは応援しなきゃだねっ」
衣笠 「いやぁ~、それはどうかなー」
那珂 「えー? ちゃんとお話して、頑張るって言ってたよ」
衣笠 「青葉はね……実はすっごいヘタレだから……。もうしばらく応援が必要かもね~ 」
鈴谷 「えー! 意外~! 」
―――――
那珂ちゃん、本当にありがとです!
望み薄だと思っても、果敢に挑戦する那珂ちゃんの勇気……。青葉も、その勇気を分けてもらってがんばる!
なーんてね、意気込んで居たんですけどね……てへへー
―――――
更新大変遅くなりました! 本日分は以上となります。次回は明後日火曜日に投下予定です。
そういえばゲームの方では秋の素敵な浴衣グラとかボイスとかが実装されてますね。青葉はそういうのに全然縁がなくて寂しい……。せめて追加ボイスがもっと欲しいですね!
ではでは、また是非お越しください!
――――― 翌日 司令室
提督 「青葉! ひさしぶりだな、もう大丈夫なのか? 」
青葉 「いやー、大丈夫もなにも、ちょっと忙しかっただけですよ! 」
大淀 「数日来なかっただけとはいえ、青葉さんは毎日来てましたからね。提督が寂しそうで大変でしたよ」
那珂 「提督ってば、心配性だからねー」
青葉 「あ、あははー。もー、司令官ってば、青葉がいないとダメなんですね~ 」
提督 「デマだデマ! まぁ、でもちょっと心配しちまったよ。元気なのであればよかったよかった」
大淀 「では、わたしは少し工廠へ行ってきますね」
那珂 「那珂ちゃんも、そろそろ遠征の準備に行かなきゃ」
青葉 「え゛! ふたりとも行っちゃうんですか? 」
大淀 「はい、大事なお仕事ですので。お留守番おねがいしますね」
那珂 「パチッ」 ←ウィンク
うう、那珂ちゃんから「お膳立てしたんだからがんばって」というプレッシャーが……
提督 「おう、ふたりとも気をつけてな」
提督 「さて、幸い二人きりになった。これなら誰にも聞かれないだろう」
青葉 「ふ、二人っきり……/// 」
提督 「いったい、何があったんだ? 良かったら話してくれないか」
青葉 「あ、あの……ですね……」
提督 「ぶっちゃけていいぞー。愚痴でも何でもいいぞー」
青葉 「そ、その……/// 」
提督 「そんなに言い難いことなのか? 那珂のライブの日からだよな、様子がおかしいの。何かあったのか? 」
青葉 「何かあったというか……見ちゃいましたというか……」
提督 「??? 」
青葉 「あ、青葉、司令官に伝えたい事があるんです!! 」
提督 「お、おう。だから聞くって。何でも話してくれ」
青葉 「じゃ、じゃあ、お話しますよ……/// }
提督 「ああ」
青葉 「そ、その……ですね……/// 」
提督 (青葉、首まで真っ赤だ。何をそんなに興奮してるんだ…… )
青葉 「ああー! 窓の外にカ号観測機が飛んでます! 」
提督 「なにっ。うちにはあきつ丸はいないのに、一体誰が! (くるっ) 」
提督 「……いないぞ? 」
バタバタバタバタバタ
バタン
しーーーーん
提督 「…………なんで逃げるんだ、あいつは! 」
――――― 昼 鳳翔さんのお店
青葉 「はぁ…… 」
がんばろうって決めたのに逃げてしまいました……。
告白って本当に勇気がいりますねー。やっぱ那珂ちゃんはすごいです。
提督 「お、見つけた、青葉 」
!!!!
青葉 「し、司令官! め、めずらしいですね、お昼にここに来るなんて……あはは」
提督 「いやー、誰かさんが逃げちゃったからさ。必ずここに来るだろうと張ってたんだ」
青葉 「お仕事ほっぽって、何やってるんですか…… 」
提督 「いや、今は仕事より青葉のことが大事だ」
青葉 「/// な、何を言ってるんですか……もう…… 」
提督 「いや、青葉の様子があまりにもおかしすぎる。流石に放っておけない」
司令官、そんなに青葉のこと心配してくれてるの……?
提督 「話せることだけでいい、どうか相談してくれ……な? 」
青葉 「/// 司令官……。あの、あのですね……青葉……」
提督 「うん、何でも話してくれ(にっこり) 」
青葉 「///// あ、あの……あああ! 工廠から龍驤さん似の装甲空母が出てきました! 」
提督 「ば、ばかな、大鳳だと! (くるっ) 」
提督 「なんだ、ただの龍驤じゃないか……」
龍驤 「なんや、失礼やな! 」
ドタドタドタドタ
しーん
提督 「…………だから、なんで逃げるんだ!! 」
――――― 夜 司令室
提督 「えー、集まってもらったのは他でもない。様子がおかしい青葉について意見を聞きたい」
衣笠 「それはいいけど…… 」
那珂 「那珂ちゃんに相談されてもね~ 」
鈴谷 「てか、わたしが一番部外者なんですけど~ 」
大淀 「珍しくお仕事が終わっていますので、わたしは構いませんが」
提督 「青葉がここ数日様子がおかしい。その理由に関してだが…… 」
大淀 「提督、お待ち下さい。彼女のプライベートに関わることは、知っていてもお話できませんよ? 」
提督 「それはわかるんだが……。直接聞こうにも、逃げられちゃったからなぁ」
那珂 「青葉さん、今日は走って逃げちゃったらしいね。もー、せっかくのチャンスだったのに~ 」
衣笠 「……確かに、提督がいくら青葉と話そうとしても、すぐ逃げちゃうでしょうね。まったくあの子は…… 」
提督 「それで……だ。お前らから根掘り葉掘り聞くのもあれだから、俺の意見を客観的に聞いて欲しいんだが」
鈴谷 「あ、だからわたしも呼ばれたんだ」
提督 「そーゆーこと。鈴谷が得意そうな話だから」
衣笠 「航空巡洋艦系? 」
提督 「ちがうわっ! えっとな、青葉の様子をみるに……。あれは恋愛絡みなんじゃないか? 自惚れてるみたいでイヤだが、俺のことが……みたいな」
衣笠 「提督、気づいてたの!? 」
那珂 「あ」
大淀 「あ」
衣笠 「あ……しまった、ひっかかった!? 」
鈴谷 「まー、ふつー気づくっしょ。知らなかったけど、わたしもそうだと思ってたもん」
提督 「だよなぁ。あんなに真っ赤になってもじもじされたら、いくら俺でも、もしかして?って思っちゃうよ」
那珂 「そっか、提督も気づいたんだ……ふーん」
大淀 「それで、どうなさるんですか? 」
提督 「ああ、すまんな。これで解散でいい。俺の自意識過剰なのかどうか、それだけ確認したかったんだよ」
鈴谷 「ぶー! それだけで集められたの~ 」
提督 「だってよ! 俺だってそんな自信家じゃないっての! 自分が愛されてるなんて、気軽に確信できねーって! 」
鈴谷 「鈴谷は、愛されまくりだよ~♪ 」
那珂 「那珂ちゃんは、みんなに愛されてるけどね☆ 」
提督 「そっか……お前たちは……那珂は強いな……。そういうところ、まぶしいよ」
鈴谷 「えー、ちょっと、ボケを褒めるなんて、きもいよっ! 」
那珂 「うん……ありがと♪ 」
衣笠 「うぐぐ、引っかかってしまった責任がありますのでお聞きしますけど、青葉の気持ちがわかったところで、提督はどうするんです? 」
提督 「あーっと……まずは話をして……。どーしてもやりたいことがあるから、それからだな」
大淀 「やりたいことですか……? 」
提督 「ああ……。ま、とりあえず青葉を捕まえて、少し話をするよ。皆、集まってもらってありがとう」
――――― 夜 司令室
コンコンコン
青葉 「青葉、はいりまーす…… 」
提督 「お、逃げずにちゃんと来たな」
青葉 「あ、あはは、逃げるなんて、そんな、ねぇ」
提督 「まぁいいさ。座ってくれ。お茶入れるから」
青葉 「はい…… 」
うう、怒られるんでしょうか……
提督 「さて……」
青葉 (びくびく)
提督 「ここ数日、青葉の様子がおかしい……ていうより、俺のことを避けてる件だが」
青葉 「…… 」
提督 「理由をちゃんと知りたいんだが」
青葉 「ああ、我が鎮守府にもついに、大和さんと武蔵さんがペアで! 」
提督 「なにっ!」
がしっ ←提督が青葉の手首を掴んだ
青葉 「え……は、はなしてっ」
提督 「はぁ……いいから聞いてくれ」
青葉 「う、うう……はい…… 」
提督 「なんで突然、俺のことを避け始めたのかはわからんけど……それは、お前が俺のことを好きだ……っていうことに関係してるのか? 」
………え?
青葉 「えっと、司令官、青葉、よく聞こえなかったなー 」
提督 「俺は、お前が俺のことを好きで、それでバランスを崩してるのかと思ったんだが、違うか? 」
……はぅぅぅ
青葉 「/// そ、それは……それは…… 」
提督 「慌てなくていい、呼吸を落ち着けて…… 」
青葉 「/// ……それはその……そのとおりです…… /// 」
うはぁぁ、気づかれてた! ど、どうしよう!
提督 「そっか、俺の勘違いじゃなかったんだな。それじゃあもしかして……ライブの夜、那珂と俺の話を聞いちゃったのか? 」
青葉 (こくん)
提督 「ぐはぁ……それで様子がおかしかったわけか。あれを聞かれたか……。じゃあまぁ、俺のことはもうよくわかってると思うが…… 」
青葉 「? 」
提督 「話を進める前に、一つ頼みがある」
青葉 「……良くわからないですけど……何でしょう? 」
提督 「俺は、一つだけ、どーしても青葉に『したいこと』があるんだよ」
青葉 「したいこと??? 」
提督 「ああ。それで、もしかしたら青葉の気持ちなんてすっかり変わって、俺のことを嫌うかもしれん」
青葉 「……そんな! 」
提督 「それだけひどいことなんだよ。それでも……俺はどうしてもしたいんだ。だから、まずはそれに付き合ってもらえないか? 」
司令官、真剣な目……。きっと大事なこと……
そんなに見つめられたら、恥ずかしいじゃないですかっ!
青葉 「/// わかりました」
――――― 少し後 鳳翔さんのお店
青葉 「もー、扉を開けたら、みんなで聞き耳立ててて、びっくりしましたよ! 」
大淀 「くすくす。たまには、盗み聞きされる気分を味わうのもいいですよ」
衣笠 「ごめんねー。実はこのメンバーでさ。さっき提督に呼び出されて、青葉が提督のこと好きなんじゃないかって聞かれたりしてたからさー 」
鈴谷 「そーそー。早速青葉を呼び出してたから、結果が気になっちゃって! 」
那珂 「でも、よくわからなかったね。したいことってなんだろう? 」
青葉 「青葉も、全然心当たりが無いんです。なんでしょうね? 」
衣笠 「ひどいことって言ってたし、なにか改造とか実験とかかも…… 」
大淀 「まさか! でも、他に思い至りませんね…… 」
鈴谷 「えー! 絶対エッチなことに決まってるじゃん! きっと、提督は結構変態的な趣味で、それに耐えられる恋人を探してるんだよ! 」
那珂 「へ、変態的って……提督はそんな人じゃない……と、思うけど……」
衣笠 「え、SMとか……? 」
鈴谷 「衣笠さん詳しいじゃーん! そうそう、きっとそういう感じの趣向だよ! 青葉さん、耐えられそう? 」
青葉 「/// そ、そんなぁ…… 」
大淀 「絶対違いますよ……。きっと、もっと真面目なお話です。内容までは想像つきませんが…… 」
衣笠 「明日の夜、時間を開けておいてくれって言ってたから……どちらにしろ明日の夜にはわかるんだ」
鈴谷 「わたしは絶対エッチなことだと思うよ! 青葉、ちゃんと勝負下着つけてかなきゃだよ! 」
青葉 「/// 」
―――――
結局、この日はあれこれ考えて眠れませんでしたよ! 生殺しです生殺し!
鈴谷さんが変なこと言ったせいで、変なことも想像しちゃうし……。
ま、実際は……ほんと、全く想像もしていないことだったわけですけど!
―――――
本日分は以上となります。次は明後日木曜日に投下予定です。
ほんとにね、今回こそは短くサラッと、っていう予定だったんですよ。もうとっくに終わってるはずだったんですよ。
しかし、予定通りには全く進まず、まだしばらく続きます。長くなってしまって申し訳ないですけれど、どうぞお付き合い下さい。
――――― 翌日 鳳翔さんのお店
瑞鳳 「それでですねー、やっとリクエストしていた1/48の九九艦爆プラモが入荷してたんです! 細部に不満はありますけどコクピットと脚の造形はすごく良くてですねー 」
日向 「わたしは瑞雲12型のプラモが欲しかったのだが、11型しか無かった。しかし、11型もまた良い瑞雲でな…… 」
青葉 「えっとですね、お二人の記事は、お店の記事じゃなくてプラモの評価になっていまして……これはこれで面白いんですけど、経費で落ちるかなぁ…… 」
衣笠 「飛龍さん、なんと、お店とのコラボ記事ですか! すごいですね~ 」
飛龍 「うん、代わり映えのしない夏物ばかりからの脱却を目指してさ。すごく涼しいんだけど見た目秋物!っていうのを作れないかって」
蒼龍 「まだアイディア段階なんですけどねー。これで少しでもバリエーションが…… 」
司令官のストーキングをしたり部屋で落ち込んだりばかりもしていられません。みんながどんどん、街の取材記事を書いてくれるようになって、その受付だけでも大忙しなんです!
忙しいと、余計なことを考えずにすみますから、それはそれで嬉しいのですが!
衣笠 「でもさ、そろそろ記事が多くなりすぎたかなーって思うよ」
蒼龍 「あ、それはわたしも思いました」
飛龍 「えー。たくさんあるのは良いことじゃないの? 」
衣笠 「そうなんですけど、いざおやつを食べに行こう!って思った時に、前に新聞で載ってた店ってなんだっけ……とか」
飛龍 「あー、そういうことかー。わたしもこの間、新聞で読んだ料理を食べたくて、確かここだーってレストランに入ったら、違うお店だったりしたもんね」
青葉 「そうなんですよねー。新聞に紹介記事を載せるだけじゃなくて、それをまとめた街の情報誌みたいなのも作らないとかなって思うんです」
瑞鳳 「そっかー。それなら、持ち歩きやすい小さいサイズの冊子にするといいかもですね! 」
日向 「模型屋は一つしか無いから迷わないんだが…… 」
衣笠 「みんなプラモ買いに行くだけじゃないから! 」
鳳翔 「それから、そろそろ青葉新聞の編集部屋を用意してもらったほうが良いかもしれませんね」
青葉 「あ、鳳翔さん。ごめんなさい、お店使わせてもらっちゃって」
鳳翔 「それは全く構いませんが、ちゃんと過去記事をファイルしておいたり、パソコンや印刷機も置いたりできたら便利じゃありませんか」
衣笠 「そうねー。わたしたちの部屋、だんだん資料が積み上がってきてるもんね」
蒼龍 「私室が資料で溢れちゃうのは困るよね」
飛龍 「わたしたちのクローゼットもやばいことになってきてるけどね」
鳳翔 「提督にお願いすれば、ちゃんと用意してくださると思いますよ」
青葉 「あ、あははー。そうですね、司令官におねだりかぁ」
瑞鳳 「提督は青葉さんに甘々ですから、すぐOKしてくれますよ! 」
飛龍 「同感~。青葉が頼めば、すぐ聞いてくれると思うよ」
青葉 「そ、そんなこと無いですよ! でも、とりあえず頼んでみようかな~ 」
鳳翔 「ええ、きっと手をつくして下さいますよ」
――――― 少し後 青葉と衣笠の部屋
青葉 「……よしっと。明日の青葉新聞はこれで完成! でも、最近はスクープも無くて、ほんとに街の紹介紙みたいになってますねー 」
衣笠 「そうだねー。でも、すごく良かったんじゃない? 」
青葉 「そうですかねー 」
衣笠 「だってさ、スクープ無くても、青葉、新聞作りすごく楽しそうだもん。やっぱり青葉は、スクープが好きなんじゃなくて、知ったことを新聞にして伝えるのが好きなんだね」
青葉 「/// そ、そうなんですかねー。でも、確かに、こうやって毎日記事が集まって、新聞を発行して、感想を言ってもらえるのが、すごく楽しいですよ! 」
衣笠 「でもって、そうなるきっかけは提督だよね。提督、やっぱり分かってて仕掛けたのかな? 」
青葉 「うん……そうだと思います。わたしが喜ぶように……楽しいように…… 」
衣笠 「……提督、やっぱり素敵な人だね」
青葉 「……うん……そう思います……ぐす……」
衣笠 「今夜、上手くいくといいね。でも、したいことってなんなんだろうねー 」
青葉 「考えて見たけど、やっぱりわからないですね~ 」
衣笠 「ま、鈴谷さんのアドバイス通り、勝負下着だけはきっちりとね! 」
青葉 「/// もうっ!衣笠のばかっ」
――――― 夜 司令室
結局……心当たりも何も無いままに……時間が来てしまいました。
一応、ほんっっっとに念のため、下着もちゃんとしたのに変えてきました。期待なんてしてないですけどね、ほんとに!
コンコンコン
提督 「青葉か? どうぞ」
青葉 「あ、青葉、はいりまーす……」
提督 「すまんな、来てもらって。では早速行くか」
青葉 「行くって、どちらへ? 」
提督 「屋上」
屋上……! ま、まさか、いきなり外でなんて……こ、心の準備が!
いやいやいやいや、そんな、外でそんなことをしちゃう司令官なんて居るわけありません! きっと、何か違う理由……違う理由……
――――― 少し後 屋上
なんとなく無言で一緒に屋上まで……着いちゃいました!
提督 「ここは常に施錠してるから、青葉も入ったことないだろ? 」
青葉 「は、はいぃぃ。はじめてです! 」
提督 「ぷっ。そんな緊張しないでくれ。別に取って食おうって訳じゃないんだから」
青葉 「あ、あはは…… 」
提督 「さて、もう来てくれているはずだけど……」
え、誰かが来てるんですか……そういえば、誰かわからないけど、人影が……
提督 「来てくれてたか。待たせたかな」
?? 「いえいえー。大丈夫ですよ」
…………待っていたのは……古鷹さんでした
提督 「さて、じゃあ始めるか」
古鷹 「はいー」
青葉 「あの、始めるってなにを……? 」
提督 「青葉には、これから、古鷹と前世の話をしてもらう」
青葉 「!!! 」
古鷹 「青葉さん、よろしくね~ 」
くるっ
ダダダダダダ
ガチャガチャガチャ
開かない!
提督 「入り口は施錠してある」
ひ、ひどいです!
ガチャガチャガチャ
提督 「青葉…… 」
ぎゅっ ←背後から抱きしめた
青葉 「!! あ、あのっ…… 」
提督 「大丈夫、俺がついてる。古鷹の方を見ないで、このまま話してもいい。挑戦してみてくれ」
怖い……怖いけど……あったかい…………。
青葉 「わかり……ました…… 」
古鷹 「青葉さんが気にしてるのは、前世でわたしが沈んだことですよね? 」
青葉 「………………そう……です……。わたしの……せいで………… 」(ガタガタガタ)
古鷹 「あーあ、やっぱりですか。青葉さん……ううん、青葉は、ちょっと誤解してますね」
青葉 「誤解……ですか……? 」
古鷹 「だって、そんなに怯えるっていうことは、わたしが、青葉のことを恨んだり、憎んだり、そういう気持ちを持っているって思っているからでしょ? 」
青葉 「だ、だって…… 」
古鷹 「そうですねー。例え話ですけど……青葉の妹、衣笠が、戦場でミスをして大破しました。その時、青葉はきっと、衣笠がちゃんと逃げられるようにかばいますよね? 」
青葉 「それ……は………… 」
衣笠……大切な友達みたいな妹……衣笠を轟沈なんてさせない……
青葉 「はい、それは……かばうと思います」
古鷹 「ですよねー」(にっこり)
古鷹 「わたしはね、青葉。一番古い重巡として……そうですねー、空母のなかの鳳翔さんみたいに……重巡みんなのお姉ちゃんのつもりでいるんです」
青葉 「はい…… 」
古鷹 「まして、青葉は改古鷹型ですから。間違いなく、わたしの妹なの」
古鷹 「わたしが艦娘として転生して、落ち着いてから最初にやったことはね……わたしが沈んだあの戦いで、青葉がどうなったか、調べることでしたよ」
青葉 「…… 」
古鷹 「わたしは沈んでしまったけど……何とか青葉が生き延びてくれたこと。すっごく嬉しかったよ。ちゃんと妹を守れたんだって! 」
青葉 「……ぐす……ひっく…………」
古鷹 「その後も青葉は活躍して……戦争が終わるまで戦い抜いたと知って……。すごく誇らしかったよ。こんなに頑張った妹を守ったのはわたしなんだって」
青葉 「ひぐ……うぐ……うぇぇぇん」
古鷹 「青葉という妹を守れたこと……それがね、わたしのささやかな誇りなの。転生して、せっかくその妹と再会できたのに……わたしが沈んだことを気にしてか、距離を置かれていて……ちょっとさみしかったな」
青葉 「ひぐっ……ごべ……ごべんなさい……うぐ……」
ぱっ ←提督が青葉を離した
古鷹 「ほら、おいで」
だだだ
抱きつきっ
青葉 「うわぁぁぁん、ごめんなさい、ごめんなさい…… 」
古鷹 「もー、わたしの話、ちゃんと聞いてたの? 言うことはごめんなさいじゃないでしょ」
青葉 「うぇぇぇん、あり……あり……ありがとう、お姉ちゃん……守ってくれて………… 」
古鷹 「うんうん……こちらこそありがとう。その後もずっと頑張ってくれて。青葉はお姉ちゃんの誇りだよ」
青葉 「えぐ……えぐ……うぇぇぇぇん」
―――――
司令官の「ひどいこと」は全然ひどいことじゃなくて……
わたしがずっと逃げていたことと、向きあわせてくれました。
ずっと謝りたかったんですけど……どの面を下げて……みたいな気がしてですね。表面上は何事もなかったように振る舞って……。あはは……今思えば、恥ずかしい逃げ方ですよねー。
この日、転生してからずっとずっと心にのしかかっていた重りが……ようやく取り払われたのでした。もー、どこが「ひどいこと」なんだか! 青葉騙されましたっ!
―――――
本日分は以上となります。次は明後日土曜日に投下予定です。
今日はやっと古鷹さんのところまで来たので、これでもう終わりが見えました。多分、あと3回くらいで終了です。
古鷹さんはマジ天使だと思います。
前回のコメントは嬉しかったです。長くなってくると、読み続けてくれている人も減ってしまっていると思いますが、長くても大丈夫!と言ってくださる方がいると、本当に救われます。
もう少しだけお付き合い下さい!
――――― 少し後 屋上
古鷹 「それでは、わたしは失礼しますね。青葉、また明日! 」
青葉 「/// はい、おやすみなさい」
しがみついて、さんざん泣いて……わたしも大人なのに……恥ずかしいです!
提督 「古鷹、ありがとな。おつかれさま」
古鷹 「いいえ、こういう機会を作って頂けて、とても感謝していますよ、提督」
古鷹さんに「ばいばい」って手を振って……こんな日が来るなんて思わなかった……
提督 「青葉も、いっぱい泣いて疲れただろ。ごめんな、突然ひどいことして」
青葉 「な・に・が・! ひどいことですかっ」
提督 「いや、だって、プライベートに土足で踏み込むような真似しちゃったしな」
青葉 「むーむー。いろいろわかってるくせに、駄目なところはとことん駄目ですね! ……とっても感謝ですよ」
提督 「そっか……。ま、古鷹がしっかりお姉ちゃんしてくれたからな。感謝しないとな」
もー、この人はほんと、分かってくれませんね!
青葉 「司令官にもですよ。ほんとに、ありがとうございました」
提督 「きょーしゅくです! 」
青葉 「真似しないで下さいっ (くすっ) 」
この人は照れ屋なんですね、結局。真正面から感謝されるのが苦手で、それで影でこっそり仕掛けるんですよねー。
青葉 「ね、司令官。どうしてわたしが、前世のことで足踏みしてるって知ってたんですか……? 」
提督 「知ってたというか、見ててそうなんじゃないかって思った? 」
青葉 「そんな風に見えてたのかなぁ」
提督 「まーな。最初から説明するとだな」
青葉 「はいっ」
提督 「お前さ、明るくマイペースな元気キャラって感じだろ。取材のためなら、明るくなりふり構わずっていう感じで」
青葉 「実際そうですよ! 」
提督 「俺も最初はそう思ってたけどな。なんていうかなー、ところどころ、気弱さとか、繊細さとか、そういうのを感じさせる場面があってな」
青葉 「そんな馬鹿なっ! 」
提督 「例えば戦闘中、被弾すると途端に弱気になるだろ? 」
青葉 (ギクッ)
提督 「後はそうだなー。取材している量に対して、実際に新聞に載る件数が少なすぎるだろ? あれは、誰かが傷ついたり悲しんだりしそうな記事は載せてないからだよな? 」
青葉 「そ、そんなぁ。青葉は真実の報道者ですから! 選別なんて……そんな…… 」
提督 「そういうのを見ててな。青葉は本音を隠して生きてるから、俺がしっかり見なきゃって思うようになって……。で、よく見てたら、ちょっとおかしいなっていうのに気がついたんだよ」
青葉 「/// むぅ、そんなにジロジロ見られてたなんてっ」
提督 「何人か、特定の相手と接するときだけ、サラッと会話を切り上げようとしてるなーって」
青葉 (ぎくっ)
提督 「で、そいつらの共通点といえば、前世で青葉と深い関係が……特に悲しい過去でな。古鷹がその筆頭だな」
ここまでお見通しだったんだぁ……。青葉のこと、すごくすごくしっかり見てくれてたのは嬉しいけど……。こんなに見られてたって思うと恥ずかしいじゃないですか……。
青葉 「/// あうう……司令官のスケべ…………そんな心の奥深くまで見てたなんて……」
提督 「スケベってなんだよ……」
青葉 「乙女心を覗きこむのスケベなのですっ! 」
提督 「自分のために誰かが死んだとして……。その相手が転生して、記憶を持って近くにいる。考えてみれば、なかなかヘビーな状況だよな」
青葉 「はい…… 」
提督 「だけどさ。それは過去の……前世のことだ。せっかく転生したんだから、水に流して前に進めたらいいなって。俺はそう思ったんだ。何より、青葉が苦しそうでな……その重荷を取り除きたかった」
青葉 「……はい、確かに……ずっと逃げてて、苦しかったです」
提督 「でもさ、ほんとにヘビーなことだから。前世と向き合うことで、青葉がもっと元気をなくしてしまうかもしれない。もっと苦しむかもしれない。そんな風に悩んでてな。古鷹も同じような感じで、どうしても踏み込めなかったらしい」
青葉 「…… 」
提督 「だけど、無事乗り越えた。もちろん、古鷹のおかげでもあるんだけど……よく頑張ったな」
青葉 「……司令官や古鷹さん……衣笠や仲間たち……わたしよりずっと頑張ってる人……みんなのお陰です」
提督 「それで……だ」
青葉 「はい? 」
提督 「その、青葉の俺に対する気持ちは……変わってしまっただろうか」
ぷっ。何この不安そうな顔……。思い切ったことをする割には自信なさそーにするんだから……。あ、でもこれは、わたしがスクープを載せた時と同じなのかな。
青葉 「そうですねー、変わってしまいました! 」
提督 「そうか……辛いことをさせたからな……ほんとにすまない」(しょんぼり)
青葉 「あはは、違います、逆です逆! 」
提督 「逆……? 」
今なら那珂ちゃんの気持ちがよく分かります。この人が大好き!っていう気持ちがいっぱいで……伝えずにはいられない! わたしもやっと、那珂ちゃんに追いつけたかな!
青葉 「今回の件で……もっともっと好きになりました! 司令官……わたし、あなたのことが……大好きです! 」
言っちゃいました! でも、返事がなんだって構いません……どうしても伝えたい! そういう気持ちなんです!
提督 「そっか……そうか……。うん、ありがとう! 」
青葉 「はいっ!(にっこり) 」
提督 「じゃあまぁ……これからひとつ、よろしくということで…… 」
は!?
青葉 「何ですかその返事は! ちゃんとお返事して下さいっ」
提督 「だって、青葉はもう俺の気持ち、知ってるんだろ? だったらまぁ、改めて言うのもなぁと…… 」
青葉 「??? いえ、知りませんけど……? 」
提督 「へ? 那珂との話、聞いてたんじゃないのか? 」
青葉 「……聞いてましたけど……那珂ちゃんが告白したところで、走って逃げちゃったから…… 」
提督 「なん……だと……? ぐあぁぁ、そうか、そうだったのか! だからなんか噛みあってなかったのか……」
青葉 「……司令官、那珂ちゃんにどんなお話をしたんですか……? 」
提督 「ぐぬぬ……詳しくは勘弁してほしいが……俺は青葉が好きだから、那珂の気持ちには応えられないってな…… 」
!!!!
青葉 「うそ……ほんとに!? 」
提督 「冗談でこんなこと言えるか! 」
青葉 「……駄目です……ぐすん…………ちゃんと言ってくれないと信用しません」
提督 「ぐぬぬ…… 」
提督 「あの……な。お前がさ、キラキラと目を輝かせながら、何にでも興味を示して……。それでいて、どこか不安で気弱なところが見え隠れして……。そういうお前から、どんどん目が離せなくなっていってな…… 」
青葉 「……ぐすん……はい…… 」
提督 「まぁ……その……なんだ。俺が支えたい、守りたいとか、そんなこと思うようになってな」
青葉 「ぐす……それから……? 」
提督 「ぐぬ……。もちろん、他のみんなも俺のかわいい娘達だが……お前はやっぱり特別で……その…………好きだっ! 」
がばっ ←青葉が抱きついた
青葉 「ぐす……嬉しいです……嬉しいです………… 」
提督 「俺も……嬉しいよ……青葉…… 」
ぎゅっ
抱き合って、少しだけ泣かせてもらって……。今は並んで空を見ています。これだけのことすら、とっても特別なことに思えます。
提督 「青葉、ポニーテールがほどけかかってるぞ」
青葉 「さっきから、走ったり泣いたりでバタバタしましたからねー。よいしょっと」(しゅる)
提督 「……髪下ろすと、衣笠にそっくりだな。やっぱ姉妹だなー 」
青葉 「そうですか? 」
提督 「ああ。でも、外見はあんまり似ていなくても、古鷹も加古も、姉妹なんだよな」
青葉 「はいっ! でも、お姉ちゃんって呼ぶのは今更かなーと思いますけど……」
提督 「同型艦でも、姉妹というより友達って関係だったりすることも多いし、不思議なものだなぁ」
青葉 「ですね! 川内型三姉妹とか仲良しですし! 」
提督 「2人姉妹だと、百合百合してることも多いけど、青葉はそうじゃなさそうで良かったよ」
青葉 「ふふーん。司令官と衣笠に取り合いされるのも、悪くなさそうですけどね! 」
青葉 「川内型といえば……司令官、那珂ちゃんのことなんですが」
提督 「うん? 」
青葉 「那珂ちゃん、青葉が、提督と那珂ちゃんのお話を聞いていたこと、途中で逃げ出したこと、全部分かってたんです」
提督 「あー、そういえば心当たりがあるって言ってたな」
青葉 「それと……青葉が司令官のことが好きだっていうことも分かっていて……。全部分かっていて、青葉のこと、後押ししてくれたんです」
提督 「……あいつらしいな」
青葉 「那珂ちゃんは、本当に強くて優しいです。どれだけ感謝してもしたりないです」
提督 「そっか……。じゃあ、あいつの夢を応援してやるといい。俺もそうするけどな。それが、一番の恩返しだと思うぞ」
青葉 「そう……ですね! はい、青葉がんばっちゃいます! 」
那珂ちゃん、本当にありがとう。わたしは、もっともっと強くなって、きっと那珂ちゃんに恩返ししてみせます!
――――― 同日 夜 川内型の部屋
神通 「そっか、青葉さんは今夜、提督とお話されてるんですね」
那珂 「うん、両想いなんだもん、きっとうまくいくよ! 」
川内 「那珂、がんばってお膳立てしたもんな。えらいえらいっ(わしゃわしゃ)」
那珂 「わー、せっかく綺麗にブラッシングしたのにー 」
神通 「でも那珂ちゃん。本当にこれで良かったの? ……あんなに提督のことが好きだったのに」
那珂 「うん……これで良かったよ! 確かに、ちょっと悲しくて悔しいけど……」
川内 「そうだよな……(わしゃわしゃ) 」
那珂 「もー! でもね……提督は、わたしの恋には応えてくれなかったけど、代わりに、わたしに夢への道を作ってくれたもん。だから、わたしは立派なアイドルへの道をどんどん歩くんだ! 」
神通 「那珂ちゃん……とても立派です」
那珂 「へっへー! それにね、そりゃ提督だけのアイドルになりたい気持ちもあったけど……那珂ちゃんはみんなのアイドルだもん☆ いつも笑顔でがんばりまーす♪ 」
川内 「そっか、那珂は本当にえらいな。さ、今日はもう寝るか! 」
那珂 「あれ、川内ちゃん、今日は夜戦に行かないの? 」
川内 「たまには、ね。三人で寝ようよ」
那珂 「三人で川の字になって寝るのもひさしぶりだねー。大体いつも川内ちゃんが居ないから」
神通 「毎晩毎晩お出かけするのは感心しませんけど…… 」
川内 「仕方ないじゃないか! わたしの魂がそうさせるのさっ! 」
那珂 「まー、その気持はわかるから、仕方ないかな~ 」
神通 「ところで那珂ちゃん。アイドルっていうのは、お布団にはいると、もうお休みになるの? 」
那珂 「へ? うん、流石にアイドルも、お布団の中ではオフかなー 」
神通 「そうですか。それじゃあ」
きゅっ (那珂の手を握った)
川内 「それじゃあわたしも」
きゅっ (同じく握った)
那珂 「なあに、二人ともどうしちゃったの? 」
川内 「かわいい妹が、気丈にも泣くのを我慢してるからさ」
神通 「今はアイドルじゃないんでしょ? 暗くて顔も見えません。心の力を抜いて大丈夫ですよ? 」
那珂 「や、やだなぁ二人とも……そんな……そんなこと言われたら……」
川内 「よしよし、那珂は本当に良くがんばったよ。いつの間にか、大人になったね」
神通 「ほんとです。あなたのおかげで、提督もきっと幸せですよ」
那珂 「……ぐす……ぐす……そんなことない……那珂ちゃん悪い子だよ…………ほんとはね、提督が幸せじゃなくても……わたしを選んで……ほしくて…………うわぁっぁあぁん」
川内 「そうそう、悲しい気持ちは、心に溜めるんじゃなくて、涙にして出しちゃうのが一番だよ」
神通 「今日まで、よく泣かずにがんばったね。よしよし…… 」
那珂 「うぇぇぇん、うぇぇぇぇぇぇん……ぐす……… 」
―――――
こうして、青葉は司令官の恋人になったのでした!
弱気な青葉はおろおろしていただけだったけど……多くの支えと後押しで……。
みんなへの……特に那珂ちゃんへの感謝の気持ちで心がいっぱいです。
改めて、那珂ちゃんのファンになります! アイドルとしてだけじゃない、自分の夢から逃げず前に進む、そんな那珂ちゃんのファンです!
―――――
本日分は以上となります。次回は、明後日月曜日の投下予定です。
ようやく終わりが見えまして、多分次回か、その次で終わりになります。
艦これは仲の良い姉妹が多く、きっと辛いことも支えあってるんだろうなーっていう印象がありまして、登場人物が辛い時には、大体姉妹ががんばって励ましています。川内型とか特に仲良しそうでいいですよねー。
それでは、もうすぐ終わりです。あと少しだけお付き合い下さいませ!
――――― 深夜 青葉と衣笠の部屋
青葉 「ただいまー、もうこんな時間でしたか! 」
衣笠 「青葉!! おかえり、大丈夫? 怪我はない? 」
青葉 「いやだなー、出撃してたわけじゃないですよっ」
衣笠 「ほっ……。怪我はないみたいだね……ひとまず安心かぁ」
青葉 「もー、どうしちゃったんですか」
衣笠 「じゃあ、その……シャワーとか行く? 一人で大変なら付き合うけど…… 」
青葉 「??? ほんとに、どうしちゃったんです? 」
衣笠 「だ、だぁってさ、こんな時間まで……その……提督とさ……いろいろしてたんでしょ? ひどいことするって話だったし、大丈夫なのかなって」
ああああ!! そうでした、そんな話になってたんでした!
青葉 「/// き、き、衣笠のえっち! そんなことしてませんっ! 」
……
………
衣笠 「そっか……古鷹さんが……。そういう事だったんだね。うん、大丈夫、衣笠さんは提督のこと信じてたから! 」
青葉 (じとー )
衣笠 「だぁってさ、鈴谷さんもあんなこと言ってたし、もしかしたらって、ねー。青葉だって、そう思ってたわけでしょ? 」
青葉 「うー、そりゃまぁ…… 」
衣笠 「でもそうかぁ。わたしもなんとなく、青葉の重荷は感じてたけど……。良かったね、青葉」
青葉 「うん、本当に感謝ですよ~ 」
衣笠 「ところで、提督の『したいこと』は分かったけど……じゃあ、恋の方はどうなったの? ちゃんと返事はもらえた!? 」
青葉 「あ、あははは…………恋人にナッチャッタ」
衣笠 「おおおお!! おめでとう~~ 」
ぎゅー
青葉 「ちょ、抱きつきすぎ~。でも、ありがと……えへへ」
衣笠 「なるほど、それでこんなに遅かったのね。愛を確かめ合っちゃったかぁ」
青葉 「/// な!! そんなわけないですっ! 屋上で、お礼とか、お互いの気持ちとか、そういうのをゆっくり話してただけだもん! 」
衣笠 「えーでも、唇にキスの跡がついてるよ」
青葉 「えっ! うそっ! 」(ごしごし)
衣笠 「うん、うそだよ。だけど、間抜けは見つかったみたいね……(くすくす) 」
青葉 「あ゛」
衣笠 「ちゃんと恋人らしいことをしてきたなら結構結構♪ 」
青葉 「くぅ~~、ひっかかりました! 」
衣笠 「じゃあ、電気消すよー、おやすみ! 」
青葉 「はーい、おやすみなさい! 」
パチン
衣笠 「とか言いつつ、まだ寝ないけどね! 」
青葉 「青葉も、なんか興奮しちゃって寝付けそうにないよ~ 」
【5分後】
青葉 「zzz...zzz... 」
衣笠 「やっぱり疲れてたんだ……。速攻で落ちちゃったね」(なでなで)
衣笠 (いつも一緒だから分かるけれど……。青葉は、前世をほんとに重荷にしてた……。うなされてる事もあったし……あれはきっと、その重荷からくる夢だったんだよね)
衣笠 (先に沈んだわたしに対してもどこか負い目を感じてるみたいで……わたしからは何も言えなかった)
衣笠 (でも、この寝顔なら、もう安心かな。あーあ、にやけて、よだれたらして……提督とラブラブしてる夢でもみてるのかな)
衣笠 (ほんとに良かった……提督、ありがとね)
――――― 翌日 工廠のすみっこ
那珂 「♪~~♪~~ 」
那珂 「ふぅ」
パチパチパチパチ
青葉 「新曲の準備ですか! はい、差し入れジュースどうぞー! 」
那珂 「ありがと♪ うん、新曲はちょっと切ない失恋の曲にしてみたんだっ」
青葉 「おおー! 新境地ですね! 」
那珂 「うん! 那珂ちゃんは転んでもタダでは起きないのだ! 」
青葉 「那珂ちゃんは、やっぱり強いなぁ~ 」
……
………
那珂 「そっかぁ……『したいこと』ってそういうことだったんだ」
青葉 「はい……わたしがずっと抱えていた重荷だったんです」
那珂 「提督、やっぱり青葉さんのこと、よく見てるね……やっぱくやしいなー 」
青葉 「そうなんですか? 青葉は全然気づいてなかったのになー…… 」
那珂 「大淀さんも言ってたよ~。提督は頼まれると大体何でも手伝っちゃうでしょ? でも、青葉さんには、頼まれる前にいろいろ世話を焼いてるように見えるって」
青葉 「うわぁ……そっか、あの時はそういうことを見せたかったのかぁ……青葉も鈍いなぁ」
那珂 「じゃあ……提督のしたいことを乗り越えて……結ばれたんだ、二人は? 」
青葉 「う……はい……。那珂ちゃん……いっぱい応援してくれて……その…… 」
那珂 「あー、だめだめ! ちゃんと分かっていて、自分で決めてやったことなんだから、謝られても困るからね! なにより、まずはおめでとう、青葉さん! 」
青葉 「うん……ありがとう……ほんとに……ありがとう……ございます……ぐす…… 」
那珂 「那珂ちゃんはみんなのアイドルだもん! でも、青葉さんは、ちゃんと、提督だけの青葉さんになってあげてね」
青葉 「はい! それで、わたしとしては、応援してくれた那珂ちゃんに、今後の決意を伝えたいなと! 」
那珂 「おお、是非聞きたいっ! 」
青葉 「まず、青葉は那珂ちゃんの大ファンです! これからもずっと応援させて下さいっ! 」
那珂 「あは☆ もちろんだよ! 青葉さんに応援してもらえるよう、これからも頑張るね! 」
青葉 「それで……司令官には…………こんな計画が………… 」
那珂 「なるほどなるほど…………それは考えたことなかったなー………… }
那珂 「うん、やっぱり提督と青葉さんはお似合いだと思う。そっか、そんなこと考えてたんだぁ」
青葉 「はい! というのもですね……青葉は……青葉の魂の声は『知ること伝えること』だと思ってました」
那珂 「うん。那珂ちゃんで言うところの『アイドルとして輝く』みたいなやつだね」
青葉 「でも、ほんとは『知ること伝えること……そして喜んでもらうこと』だったみたいです。最近のいろいろで、そんな風に思うようになりまして」
那珂 「あ……それは……那珂ちゃんもそうだよ。ライブでそれを強く思ったの。くすっ……こんなところも同じだね」
青葉 「あは♪ そうですね! それで、司令官にも……あの人にも……わたしの、この魂のあり方そのもので、恩返しをしたい、喜んでもらいたい……そして、幸せにしたいです」
那珂 「なるほどー。それでさっきの計画に繋がるんだね。そっか……うん! 応援してるから! 絶対うまくいくよ! 」
青葉 「那珂ちゃん、本当にいろいろありがとうございました。がんばります! 」
――――― 午後 鎮守府内訓練場
熊野 「よろしいですか、日本のレディは、おしとやかなだけではありません。いざ合戦となったら、薙刀を手にお家を守るものなのです」
響 「なるほど、戦う女であるわたしたちにぴったりだね」
暁 「みんなを守るために戦うわたしたちは、立派なレディってことね! 」
熊野 「戦いの参考になりますし、なにより心の鍛錬にもなります。ですので薙刀の特訓はレディのたしなみですわ」
電 「心の鍛錬……強い心がほしいのです! 」
雷 「それは素敵ね。わたしもがんばるわ! 」
熊野 「それでは行きますわよ。みなさん、わたしと同じように構えて…… 」
一同 「はいっ 」
熊野 「ここで、大きく振り下ろします。とお↑おぉぉぉ↓ 」
一同 「とお↑おぉぉぉ↓ 」
……暁ちゃんのレディ修行は、またおかしな方向に向かってるみたいです……
熊野 「それでは、今日はここまでにしましょう」
一同 「ありがとうございました! 」
青葉 「おつかれさま~。はい、冷たいお茶ですよー 」
暁 「ありがとう! 青葉さん、どうして? 」
青葉 「熊野さんに用事がありまして、終わるの待ってたんですよ~ 」
熊野 「あら、わたくしにですか? 」
響 「それなら、わたしたちはもう行くよ。熊野さん、お稽古ありがとう」
青葉 「急かしてしまってごめんね! 熊野さん、お時間は大丈夫ですか? 」
熊野 「はい、大丈夫ですわ。なんでしょう? 」
……
………
青葉 「と、そういうわけで……前世でのことを謝りたかったんです。あのとき……仕方が無かったとはいえ、置き去りにしてしまって、本当にごめんなさい」
熊野 「そんなことを気にしていらしたの? 青葉さんは真面目すぎますわね。わたくしは、全く気にしていませんでしたわ」
青葉 「そうなんですか…… 」
熊野 「でも! 勇気を出してお話に来たことは、とても素敵だと思います。ですので、謝罪、確かに受け取りました。どうかこれからは気にしないで下さいまし」
青葉 「はい! ありがとうございますっ! 」
熊野 「まぁでも、本当に気にすることは無かったんですのよ? 衝突して仲間を沈めてしまった子もいますし、衝突して自分が沈んだのに、転生しても衝突したがる子も居るくらいですし…… 」
青葉 「あ、あはは……いますね…… 」
熊野 「それを気にしていたら、一緒に戦っていくのは難しいですから、みなさん、前世のことは水に流すか、気にせず笑い話にするぐらいで良いと思いますわ」
青葉 「そうですよねー……。青葉も、もっと早く、そういう風に大人な割り切りができていれば良かったんですけど…… 」
熊野 「でも、克服できたなら、よろしいじゃありませんか」
青葉 「はい、ありがとうございます! 」
熊野 「ああ、そうですわ。これを機会に青葉さんに相談があります」
青葉 「なんでしょう?? 」
熊野 「青葉さんが新聞に載せておられる、街の様々な紹介ですが、わたくしも参加させて頂けませんか? 」
青葉 「おお、大歓迎ですよー! 分野はどの辺をされますかっ」
熊野 「お化粧品とかですわ。個別に聞かれることが多いので、いっそ街で売っているものを紹介させていただければ、後はみなさん、好みのものを自分で買えますし」
青葉 「おお、それは素晴らしい! 今のところ、化粧品なんかは得意な人が蒼龍さんぐらいだったから、とっても助かります! 青葉も苦手ですし…… 」
熊野 「青葉さんも、もっとお化粧なさればいいのに。提督も、きっとびっくりされますわ」
青葉 「青葉がお化粧とか、似合わないって笑われますよ! 」
熊野 「甘いですわ! 元気な子がある時突然色っぽくなる! これにこそ意味があるのです」
青葉 「な、なるほど! 勉強になります! 」
熊野 「近々、暁さんたちにお化粧を教える約束になっておりますので、青葉さんも是非、生徒として参加して下さいな」
青葉 「そこに交じるのはちょっと恥ずかしいですけど……是非! 」
――――― 夜 司令室
コンコンコン
青葉 「青葉、はいりまーす! 」
提督 「こら、返事の前に入っちゃ駄目だって言っただろ」
青葉 「あれ~、見られたら困るような事してたんですか~? 」
提督 「見ての通り、一人で残業だよ……って、このやり取り、前にもやったな」
青葉 「そういえばそうですね! 今日はまだお仕事ですかっ? 」
提督 「いや、もう終わるよ」
青葉 「よかったー! 街に出られない司令官のために、美味しいピザを買ってきました! 」
提督 「お、それはいいなー。じゃあ、早速頂くか」
青葉 「はーい、どうぞー! 」
青葉 「……そんな感じで、那珂ちゃんには無事話ができました」
提督 「そっか、ちゃんと報告できたなら良かったよ。しかし、那珂もああ見えて大人だな…… 」
青葉 「全くです! あ、それから……今日は熊野さんとも、ちゃんとお話してきました……前世の」
提督 「そうか、ちゃんと自分で行ったのか。青葉、えらいな」
青葉 「全然偉くないですよ!? 昨日いっぱい背中押してもらったからですよ。でも、全然気にしてなかったそうで、やっぱり青葉の空回りだったなって。あはは~ 」
提督 「熊野はそうだろうな。と言うより、この問題は気にしないようにするのが正解なんだろうと思うぞ」
青葉 「はい、熊野さんにも言われちゃいました。あーあ、青葉も、もうちょっと気にせずにいたらよかったなー」
提督 「ま、そこは性格もあるし……。あとはな、生き残ってしまったことの後ろめたさっていうのは、先に逝ってしまった人にはわからないものなんだろうな」
青葉 「そうですね……うん、そう思います。さっすが司令官、わかってる~。年の功ですね! 」
提督 「俺、そんなおじさんじゃないんだけどな…… 」
青葉 「そうそう、街の情報集めに熊野さんも参加してくれることになったんですよー 」
提督 「ほほー。熊野はお嬢様用品担当か? 」
青葉 「お嬢様用品ってなんですか……。お化粧品ですよ! 」
提督 「ああ、向いてるな。そっか、良かったな、青葉」
青葉 「はい……。古鷹さんに元気におはようして、熊野さんと一緒に新聞つくって……。こんな日が来るなんて、夢にも思ってなかったです……」
提督 「そっか……。そうだな。ほんとに良かった」
青葉 「もー、ほんとに嬉しいんですよ! ほんとに司令官のお陰です……だから、恩返ししたいんですけど…… 」
提督 「そんなもん、いらないよ」
青葉 「そういうわけにはいかないですよ! でもね、提督にどんな恩返しが良いですか?って聞いたら、きっとエッチなことを要求されるよ!って鈴谷さんが言うので…… 」
提督 「なっ! く、鈴谷め……。この紳士に向かってなんということを……」
青葉 「紳……士…………? 」
提督 「なんで青葉まで、きょとんってするんだよ! 」
青葉 「あはは、冗談です、冗談! 」
提督 「ほんとかよ…… 」
青葉 「ま、エッチなことはともかく、恩返しはね、やっぱり、自分で考えたいなって思ってるんです。だから、もうしばらくお待ち下さいね! 」
提督 「恩返しなんてほんとにいらん。ていうかだな」
青葉 「ていうか……? 」
提督 「お前が元気で居てくれれば、それで十分恩返しだ。だから、いつも元気でいてくれ ///」
青葉 「/// う、うわぁー、恥ずかしいこと言ってます! 」
提督 「悪かったな! 」
ぎゅっ ←座ってる提督の後ろから抱きついた
青葉 「/// 全然悪く無いです……とっても……とっても嬉しいですよ! 」
提督 「お、おうっ」
―――――
一度前に進み始めたら、ウソのように……あんなにウジウジしていた日々がほんとにウソのように……。
心の重荷はもうすっかり取れて……仮面じゃない、本当に明るく元気な青葉になりました!
……もちろん、ここまで単純にはいかないけどね! でも、前に進めた喜び、応援してくれる人がいる嬉しさ……そして、司令官が横にいてくれること。
この気持ちを、ずっとずっと大事にしていきたい……なんて、ガラにもなく乙女チックに思ってしまう青葉さんなのでした!
―――――
本日分は以上となります。
次回が最終回です。明後日水曜日に投下予定です。
本当に長くなってしまって、ここまでずっと読んでコメントしてくださってる方には感謝の言葉もありません。
ここまで来ましたので、よろしければ最後まで是非お付き合い下さい。
――――― 1週間後 朝 青葉新聞編集室
青葉 「じゃあ、タイトルは『お店コレクション 店これ』でけってーい! 」
飛龍 「わー、ぱちぱちぱち」
青葉 「これまで新聞に載せてきた、街とお店の情報を分類整理して、一冊にまとめる形になりますけど、情報の更新はしたいし、コラムとかも載せたいですねー 」
衣笠 「飲食はわたしと青葉で担当だね。情報更新のために、載せるお店はもっかい回ろうよ! 」
蒼龍 「衣類はわたしと飛龍だね。秋物のコラボ企画も間に合えば載せたいなー 」
飛龍 「最悪さ、こんなことやってます!って記事は載せようよ~ 」
日向 「模型は任せてくれ」
青葉 「瑞鳳ちゃんには、模型だけじゃなくて、雑貨とか小物もお願いしていい? 」
瑞鳳 「まっかせてくださーい! 祥鳳にも手伝ってもらうつもりですからっ! 」
―――――
司令官の応援で広がった青葉の世界。
大勢の仲間と一緒に、楽しく、新聞を作っています。
一人で、呆れられながらスクープスクープ!ってしてたのが嘘みたいです。
―――――
――――― 昼 鳳翔さんのお店
青葉 「古鷹さんみーっけ! 」(ぎゅー)
古鷹 「あーおーばー! 急に抱きつくと危ないよ~ 」
加古 「青葉、最近古鷹に懐きすぎ! どうしたんだよ、いったい! 」
青葉 「あ、大丈夫ですよー。加古さんもお姉さんですから! ほら、ぎゅ~ 」
加古 「うわぁ、そういう意味じゃない! 」
古鷹 「もう、困った妹ですね~ 」
衣笠 (むっ)
衣笠 「ほら、青葉、せっかく衣笠さんが一緒に来てあげてるんだから、注文しにいくよっ! 」
青葉 「えー、しょうがないなあ。古鷹さん、またねー! 」
古鷹 「はーい」
加古 「……青葉、最近はどうしちゃったんだ? 」
古鷹 「うふふ……やっと、わたしたちのことを『お姉ちゃん』って思うようになってくれたんですよ」
加古 「確かに妹だけどさ……しゃーない、今度一緒に遊んでやるかっ。眠くない時に…… 」
―――――
古鷹さんを見かけるたびに緊張していたのが嘘みたいな日々。心の重荷はもうすっかり取れちゃいました。
―――――
衣笠 「青葉ってば、最近、古鷹さんに甘え過ぎっ」
青葉 「そうですかねー……あ、もしかしてヤキモチやいてます!? 大丈夫だよー、衣笠は大事な大事な妹だもん、大好きだよ~ (ぎゅー) 」
衣笠 「ああもう! 並んでる時にじゃれつかないっ。お、青葉はおさしみ定食なんだね」
青葉 「うん、これ、すっごい美味しいですよ! 」
鳳翔 「これも取材の成果ですよ。新鮮なお魚がいっぱい手に入るようになったから、お料理の幅が広がって、とっても助かってます」
衣笠 「おー。じゃあわたしもおさしみ定食! 」
青葉 「ふむふむ、仕入れとかどうされてるんですか? 」
鳳翔 「それはね……潜水艦の子たちにアルバイトしてもらってね……ちょっと魚雷で……うふふ、やっぱりなんでもありません」
衣笠 「あ、あはは、聞かなかったことにしておこっと! 衣笠さんは何も聞いてないよ! 」
青葉 「ま、まぁ、美味しければ良いよね、うん! 」
―――――
新聞づくりが変わって……
いろんな情報を載せたり、みんなで取材する中で、以前よりもっと喜ばれる新聞になったこと。みんなの生活が変わるような影響が出ていること。そういうことが本当に嬉しくて……
もちろん、スクープも喜ばれるから、青葉はいつだって目を光らせてます!
―――――
――――― 午後 鈴谷と熊野の部屋
熊野 「今日のお化粧教室は、青葉さんも参加されますわ」
青葉 「よ、よろしくお願いします…… 」
鈴谷 「提督のためにおしゃれしようなんて、青葉、健気じゃーん! 」
響 「かわいらしい乙女心だね」
暁 「ちゃんとお化粧して恋人の前にでるなんて、レディなら当然よ! 」
雷 「大人の恋愛、うらやましいわ」
電 「素敵なのです! 」
青葉 「/// あわわ……お手柔らかに」
熊野 「じゃあ、青葉さんははじめてですので、わたくしが基礎から教えますわ。鈴谷は他の子達のお化粧を見てあげてくださる? 」
鈴谷 「りょうかーい! 」
青葉 「青葉、お化粧ってほんとにしたことなくて…… 」
熊野 「最初ですから、すごく簡単に……そうですわね、眉とアイメイク、あとは口紅ぐらいでよろしいかしら」
青葉 「よ、よろしくお願いしますっ 」
熊野 「この程度なら簡単ですわよ。最初はわたくしがしますので、じっとしていてくださいまし」
青葉 「はい…… 」
……
………
青葉 「おお! すごい、こんな短時間で、雰囲気が全然変わりました! 」
熊野 「お化粧も楽しいでしょう? さ、では一度落として、次はご自身でやってみましょう」
青葉 「うう、難しそうでしたが」
熊野 「慣れれば簡単ですのよ」
青葉 「ふぅふぅ、なんとかまともにできるようになりました」
熊野 「十分ですわ。今のメイクに慣れてきたら、次の段階に行きましょう」
青葉 「はい、先生! 」
暁 「青葉さん、素敵じゃない! わたしたちと同じようなメイクなのね」
熊野 「青葉さんも、肌がとっても綺麗ですので、皆さん同様、ファンデは必要なさそうですから」
鈴谷 「ほんっと、この子たちはファンデいらずだよね。何この、つるつるピカピカのほっぺ! 」
むにゅ
電 「ひーたーひーのーでーすー 」
青葉 (鏡を見ながら)「でも、本当にちょっとしたお化粧で全然ちがいますねー。びっくりびっくりです…… 」
鈴谷 (提督の声真似で)「青葉、今日は一段と綺麗だね……よく見せてごらん…… 」
暁 「きゃー! 大人だわ! 」
青葉 「/// あの人がそんなこと言うわけないじゃないですかっ」
雷 「『あの人』ですって。もうすっかり恋人ね。うらやましいわー 」
響 「そうだね。最近、二人はすっかり恋人らしくなったよ」
青葉 「/// お願い~からかうのやめて下さい~~ 」
電 「青葉さん、首まで真っ赤なのです。かわいいのです~ 」
―――――
こういうのもまた広がる世界。あの人が直接仕掛けたものだけでなく、仲間たちから広がる世界です。これからも、きっと沢山、こういうことがあるでしょうねー。
……お化粧、喜んでもらえるかな
―――――
――――― 夕方 会議室
青葉 「……というわけで、街の中央広場にできるステージは、この図面みたいになるそうでーす」
那珂 「席数は多くないけど、ちゃんとした野外ステージで、これならライブはやりやすそうだね! 」
青葉 「はい、立ち見でよければ、数百人は軽く収容出来ますし、音響照明の設置場所も用意されてます。完成が楽しみですね~ 」
鈴谷 「ほんとだね! でも青葉、まだ工事すら始まってないのに、良くこんな情報ゲット出来たね」
青葉 「ふふーん。今度出す街の情報誌に、大きく取り上げたいって言ったら、大喜びで教えてくれましたよ! 」
那珂 「取材活動が実を結んでる感じなんだぁ。さっすが青葉さん、頼りになる~♪ 」
青葉 「それでですね……このステージの落成記念イベントで、那珂ちゃんのライブができないかって打診がありました。どうです? 」
鈴谷 「それって……主役じゃん! すごいよ那珂ちゃん」
那珂 「やるやる! もちろんやるよ! 鈴谷さんもいいよね? 」
鈴谷 「モチのロンだよ! 早速準備はじめなきゃね! 」
那珂 「あ、でも、提督には事前に相談しないとね。出撃とバッティングしちゃうとまずいし」
青葉 「とか言いつつ、絶対許してもらえると思ってますね! 」
那珂 「あは☆ わかっちゃった? 」
青葉 「ま、青葉も絶対にお許しが出ると思いますけどね! 楽しみですね~ 」
鈴谷 「早速、他のみんなにも集まってもらって、準備はじめよっ」
那珂 「いえーい! ライブチーム再始動だね! 」
ワイワイ
―――――
世界が広がったのは青葉だけじゃなく……那珂ちゃんをはじめ、多くの人たちが、戦いだけじゃない、新しいことに挑戦してます。
みんなで、いっぱいいっぱい、世界を広げていきましょうね!
―――――
――――― 夜 司令室
青葉 「今日の晩ごはんはお寿司でーす! 」
提督 「おお、なんと豪勢な! いつも買ってきてもらってすまんなぁ」
青葉 「だって……司令官と一緒に食べたいですから/// モジモジ 」
提督 「う……そ、そうだな、ありがとう/// 」
青葉 (それにどうせ経費ですから! )
提督 「なんだろう、何か不吉な言葉が聞こえたような……? 」
青葉 「ま、まぁまぁ、食べましょ食べましょ! いっただきまーす! 」
提督 「もぐもぐ。そういえば青葉。今日、なんか雰囲気違わないか? 」
青葉 「え! そ、そうですかねぇ……/// 」
提督 「ああ、最初はなんか怒ってるのかと思ったんだけど…… 」
青葉 (むっ)
提督 「いやさ、目とか眉が、なんかいつもよりキリッとしてて凛々しいからさ。もしかして、化粧してるのか」
青葉 「そうですよ! ま、見る目がない司令官には意味無かったみたいですけど! 」
提督 「いや、凛々しくて素敵だと思うぞ。ちょっとこっち向いて、近くでよく見せてくれ」
青葉 「え、ええええ! ///」
提督 「こら、目を閉じたらわかんないだろ」
青葉 「/// だって、こんな目の前で真正面から見られたら、恥ずかしいじゃないですか! 」
提督 「ちょっとだけ我慢しろって。……うん、とても綺麗だ。そっか、いつもより大人っぽく見えたんだな」
青葉 「/// あ、あううぅぅ」
提督 「さ、今度は目を閉じて」
青葉 「/// はい……あ………… 」
青葉 「うー、お醤油味! やっぱり食事中は駄目です! 」
提督 「あはは、まぁ、流れでな」
青葉 「とまぁ、今日はそんな感じのことがありまして」
提督 「そうかぁ。化粧は熊野に習ったのか。もうすっかり仲良しだな」
青葉 「あはは……ほんと、びっくりですよ! 」
提督 「那珂のライブの件は、また相談に来るだろうな。ま、今度は経験があるから、ほとんど任せて大丈夫だろうけど」
青葉 「あはは! 過保護な司令官が放っておけるとは思えませんけど! 」
提督 「ぐ……。まぁ、程々に手伝うさ」
青葉 「青葉も、渉外や広報でバッチリお手伝いしますよ! 素敵なライブにしたいですよね! 」
提督 「ああ、そうだな。街にとっても良い効果があるだろう」
提督 「青葉の、街の情報誌、店これだっけ? の方は大丈夫なのか? 」
青葉 「はい、みんながお手伝いしてくれるのでバッチリです! 」
提督 「そっか……それなら安心だ(にっこり) 」
あ、また保護者の微笑みです。もー、過保護ですね!
青葉 「そうそう、青葉新聞の別冊で、もう一個企画がありまして」
提督 「ほう、精力的だな。何を出すんだ? 」
青葉 「えっとですね……今、青葉がみんなに伝えたい喜んでもらいたいことで…… 」
提督 「青葉らしいな。なんだろう? 」
青葉 「えっとですね……ここしばらくの青葉の体験を……あなたに応援してもらって世界が広がったこととか、那珂ちゃんや衣笠や、多くの仲間たちの事……。そして、わたしの恋のこと……。そういうことを小説というか物語というかにしてですね…… 」
提督 「……ちょっとまて、青葉の恋愛とかって、モロに俺とか出てくるじゃないか! 」
青葉 「あはは~。ま、あくまでフィクションってことにするので! 司令官もちゃんと実名は出しませんから大丈夫ですよ! 」
提督 「ちなみに、物語の中では、俺はどう呼ばれるんだ? 」
青葉 「名前は出せないので、ただ『提督』とか『司令官』とか呼ばれますねー」
提督 「どうみても俺のことじゃないか! 」
青葉 「ま、まぁいいじゃないですか! 実はですね、会う人会う人みんなから、司令官と恋人になるまでの経緯を根掘り葉掘り聞かれるので、いっそ物語にして読んでもらったほうが楽というのもあってですね」
提督 「恥ずかしいわ! 駄目だぞ、絶対駄目! 」
青葉 「……那珂ちゃんは、実現したいことのために何でも司令官に許してもらってるのに……青葉はだめなんだ……(うるうる) 」
提督 「ぐ……ぐぬぬ……。わ、分かった……でも、あくまでフィクションだぞ! 俺の言動とかそのまま書いたら駄目だぞ! あと、ラブシーンとかは全面禁止な!絶対だぞ! 」
青葉 (もう手遅れですけど)「わっかりましたー! 善処します! 」
提督 「ああああ……俺、なんか恥ずかしいこととか変なこととか言ってないよな……ぐぁぁぁ」
青葉 「実はもう、お話は完成してるんです! お許しも出たことですし、近々配布しますので、お楽しみに~♪ 」
―――――
さてっ! そんなわけで、青葉と司令官の物語はこれにておしまい!
司令官から、きっつくきっつく念を押されてしまったので、ラブシーンは全然書けませんでしたけど……。まぁ、司令官が可哀想だから、それは許してあげることにしました。言っておきますけど、鈴谷さんが想像したような変な性癖はありませんでしたよ!
そして……ここからは…………
―――――
青葉 「そうそう、もうひとつ! 」
提督 「まだ何かあるのか……(ぐったり) 」
青葉 「青葉新聞の新連載企画なんです! 資料として取り寄せた、この本土の新聞記事を参考に!」
提督 「なになに……『わたしの履歴書』? 」
青葉 「はい! 著名な人に、出生から今に至るまでの、細かなエピソードとかを語ってもらって、それを連載してるんです。意外な子供時代とか、学生時代はやんちゃだったとか…… 」
提督 「ほほー。それはなかなか面白そうだな」
青葉 「でしょー! では、記念すべき最初の人は、司令官に決定してまーす! ぱちぱちぱち! 」
提督 「ちょ! 俺かよ! 」
青葉 「ここで一番偉い人なんですから、当然じゃないですかー! 」
―――――
あなたは、わたしの前世、過去、そして今を、いっぱいいっぱい知って、見て、考えて……わたしを幸せにしてくれました。
―――――
提督 「俺の過去なんて、知ったところでつまらんだろ! 」
青葉 「いえいえー! ていうかですね」
提督 「……」
青葉 「みんなの過去っていうか前世って、大体記録に残ってるから、みんな知ってるわけですよ! 」
提督 「まぁ……そうだな…… 」
青葉 「つまり、この鎮守府で、過去を知られてない人って、司令官だけなんですよっ」
提督 「ぐ、ぐぬぬ……それはそうだな…… 」
青葉 「だーかーらー! この連載は、司令官の過去が目玉なのです! 楽しみですね~ 」
提督 「げー、俺の子供時代とか、みんな読んでも楽しくないぞ! 」
―――――
わたしは、そんなあなたに恩返しがしたいんです!
そのためには、まずわたしも、あなたの過去を知るところから始めようかなって思ったんです。だから、この連載は……あなただけのものなんですよ!
―――――
青葉 「いえいえー、子供時代のエピソードってきっと楽しいですよ! 」
提督 「ぐぬぬ…… 」
青葉 「士官学校でダンスのときに女役だった話なんて、きっと大爆笑ですよ! 」
提督 「……おまえ、なんでその話、知ってるんだ? 」
青葉 (ぎくっ) 「あ、あっれー、いつ聞いたんでしたっけ」
提督 「また覗いてたのか……まったくお前は」
青葉 「そういう司令官だって、飛鷹さんとくっついてデレデレしてたくせにっ! 」
提督 「デレデレなんてしてないだろっ」
青葉 「べーだ! 」
提督 「まったく……覗きやストーカーされるぐらいなら、ちゃんと取材してくれ」
青葉 「やった! じゃあ、すぐにはじめましょう! 」
―――――
あなたのことがもっと知りたい。あなたの素敵なところをみんなに伝えたい。
知って考えて行動して、あなたを幸せにしたい。
わたしの……大好きな、大好きなあなたを……
そのために、ここからは、あなたのことを書いていきます……
―――――
提督 「ええ、今からかぁ? 」
青葉 「もっちろんです! さぁ、いっきますよーー! 」
青葉 「あなたを取材しちゃいます! 」
艦!
以上で完結となります。
結局、一ヶ月もかかってしまった長い長いお話にお付き合い頂きまして、ありがとうございました!
このお話は、青葉と那珂ちゃんのお話です。
沢山の艦娘が登場する艦これですが、戦いとは一切関係がない部分で強烈な主張を持っている子っていうのは意外と少ないですよね。
あくまでゲームですから詳細な言及はないですけど、実際に彼女らが存在したら、やっぱり、周りとの兼ね合いやコンプレックス、いろんな思いがあるだろうなって思います。それを克服して、自信をもって自分らしく行動できるようになるまでの日々を書きたかった感じです。
このお話では、青葉がゲームのキャラと違ってちょっと気弱で元気がない描写が多かったですが、お話の中で克服して、無事みなさんが知っている青葉になっていった、そんな感じで読んでいただけると幸いです。
とりあえず、読んでくださった皆さん、ありがとうございます、お疲れ様でした!
そうそう、設定に関する部分などは、長くなってしまうので本編中でほぼ解説がありません。このお話上の設定で疑問点などありましたら、レス頂けましたらお答えできると思います。
乙ありがとうございました!
次こそは……短いドタバタコメディとかを書きたいなーと思いつつ、毎回長編ですがどうなることやらです。
また次回作でお会いいたしましょう!
最後に、恒例の過去SSです。どれもこれも長編ですが、よろしければ是非御覧ください。
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このSSまとめへのコメント
不覚にも泣いてしまった
乙です!
すばらっ!
上々ねっ!
青葉好きなオレにはたまらない話だった