大淀「駆逐艦の子たちはわたしが守ります!」 (363)


※ 大淀さんが主役のSSになります。。

※ 暴力表現や過度なエロはありません。

※ 長編になります。のんびり更新で2週間以上かかると思います。さらっと短編が読みたい方には向いていませんのでご注意下さい。

※ キャラの性格や口調などは、筆者なりの解釈です。自分の好みと違うようであれば、そっとスレを閉じていただけると幸いです。

※ この鎮守府は筆者過去作のIF世界となっております。下記過去作をお読みいただくと、より楽しめるかもしれません。読まなくても全く問題ありません。

【艦これ】 工作艦 明石。がんばります!
【艦これ】 工作艦 明石。がんばります! - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1428241231/)




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1430662266



――――― ある日 提督執務室


大淀「それでは、明日の編成はこれで決定ということでよろしいですか? 」

提督「ああ、それで行こう。立案おつかれ」

大淀「次に兵装についてですが……」

提督「ああ、基本的には前回と同じだが、金剛の主砲を、明石が強化してくれた35.6cm連装砲に載せ替えて欲しい。試してみたいんだ」

大淀「承知しました。明石が来てくれた恩恵が早速ありそうですね」

提督「ああ、ありがたいことだよ」



はじめまして。軽巡洋艦 大淀です。前世では指揮統率用の船だったので、生まれ変わった今でも、提督の傍らで、参謀や秘書艦としてお仕事をさせて頂いています。




提督「ああそうだ。昨夜ちょっと思いついたんだが、例の海域の編成を…………」

大淀「なるほど……。確かにそのほうが効果的ですね。早速、具体的な編成作業に入ります」

提督「面倒をかけるが、頼む。これで、少しでも被弾が減ればいいんだが……」



今話している相手が、わたしの上官たる提督です。ほとばしる才能!っていう感じの方ではありませんが、冷静に考え、計算し、少しでも戦いを有利にするための苦労を厭わない人です。悪くない……いえ、とても優れた指揮官です。

ただ……2つほど大きな問題を抱えていて……それがわたしの悩みの種なのです。



大淀「さて、作戦周りはこれでよろしいですね」

提督「ああ、後は遠征の帰り待ちかな」




大淀「一段落ついたところで……提督? 」

提督「な、なんだ? (やばい空気だ) 」

大淀「午前中、わたしが不在の間、視察と称して、どこに行ってらしたのですか? 」(にっこり)

提督「あ、あっれー? どうして知ってるのかな~? 」

大淀「どうしてではありません。執務をサボって、どこに行ってらしたのですか? 」

提督「えーっと、あはは……工廠にちょっとね……」

大淀「やっぱりです! また何か無駄遣いしましたね? 」

提督「無駄遣いなんて……そんな……なぁ? ちゃんと開発の打ち合わせをな? 」

大淀「具体的にお話して頂けますか? 」(にっこり)

提督「えっとだな……、烈風が足りないからほしいよなーって思ってて」

大淀「はい、制空は大事ですから」

提督「でな、このレシピなら烈風と三式弾を同時に狙えるんじゃないか? ってのを思いついたから、その相談にな」

大淀「提督はお仕事熱心ですね。それで、どうされたんですか? 」

提督「えっとだな……明石と夕張も、それは良いんじゃないか!って言うんで……じゃあ、実験してみるか!って……」

提督(100回ほど回してきた)←小声




これです! これが悩みの種その1 提督の無駄遣い病です!
今は大規模な作戦に向けて資源を備蓄するってあれほど約束したのに……!


大淀「…………100回……ですって……? 」(ゴゴゴゴゴゴゴ)

提督(怖い!怖い!なんか擬音が見える!)

提督「い、いやぁ、そのくらい回さないと、良いレシピか判断つかないからなー……。でも、ほら、烈風4と三式弾3が出来たぞ。なかなかの確率だよな! 」

大淀「装備があっても、備蓄がないと出撃できません! 何のために苦労して遠征を……あああ、こんなに目減りして……」

提督「いやぁ……ほんとごめんな。ついつい勢いで」

大淀「いいえ、提督。謝る必要はありません。必要な開発だったのでしょうし、成果もあったようですから」(にっこり)

提督(え、笑顔がこえぇぇ)

提督「あ……うん、そうだな」

大淀「その代わり、1ヶ月分の前借りだった、ということで、今月は開発・建造は、デイリー以外一切禁止です! よろしいですね? 」

提督「えー……」

大淀「えー、じゃありません! このままでは作戦に支障が出ます! 」

提督「そうだよなぁ。わかった、そうしよう」

大淀「明石と夕張にもクギを刺してきます。遠征艦隊が帰ってくるはずですから、提督はお留守番をお願いします」

提督「了解。あ、でもな、俺がレシピの話を持ち込んだのが原因だから、明石と夕張を責めるのは無しだぞ」

大淀「きっかけはそうかもしれませんが、どうせ3人でノリノリで開発回してたのでしょう? かばうのは結構ですが、締めるところはしっかり締めさせていただきますっ! 」




――――― 鎮守府 工廠

無駄遣いの原因は、提督の開発好き。元々、レシピを工夫して、開発や建造を行なうのが大好きだったのですが……。2ヶ月前、工作艦の明石。兵装実験軽巡の夕張が同時に着任して……。この二人が提督に輪をかけた開発好き! 三人集まってはすぐに開発開発で、当鎮守府の備蓄は、あっという間に危機的状況になりました。



大淀「本当に困ったものですね……。明石が楽しそうなのは嬉しいけれど」



明石とは元々友人です。明石はここに着任してから、以前よりずっと楽しそうで、友人としてはとても嬉しいのですが……。わたしの立場では、備蓄をおいそれと減らすわけには参りません。



大淀「明石、居ますか? 」

明石「あ、やばいっ! やっぱり叱られる~ 」

夕張「ま、当然だよね。さすがにやり過ぎたもん」

大淀「はぁ……わかってるならどうしてやるんですか……」

明石「い、いやぁ……ほら、あと1回だけ、あと1回だけ!って」

夕張「100回くらいはやらないと、データとしては意味ないしさー」

大淀「はいはい。では、十分に気も済んだでしょうから、今月はもうデイリー以外の開発・建造は禁止です」

明石「ええー! そんなぁ。退屈しちゃいますよ~ 」

夕張「そうだそうだ―! 」

大淀「では、何故そうする必要があるか、1からきっちり説明しましょうか? 」(にっこり)

夕張「あ、いえ。開発禁止了解デス」(ぶるぶる)

明石「そっか、大規模作戦が近いから倹約モードでした。今日はほんとに使いすぎちゃったよね。反省します……」

大淀「はぁ……。提督にももうお話済みですから。開発が必要なのはわかりますし、研究も大切ですが、備蓄も本当に大切なんですから、今後はちゃんと相談してくださいね」

明石・夕張「はぁーい」




――――― 少し後 鎮守府 廊下

大淀「遠征は東京急行と北方鼠で……ぶつぶつ……」


大規模な作戦の際は、大量の物資を消費します。作戦の内示があってから作戦発動までの間に、必要なだけの備蓄ができるかどうか? これが参謀の腕の見せ所です……。何とか頑張って取り返さないといけません……。


大淀「まだ時間はあるから慌てることはないのですが……。提督もそのぐらいわかっておられますし……。でも、余裕を持って計画するのが大事なはずですから……ぶつぶつ……」


???「きゃぁぁぁぁ」


悲鳴!! 執務室の方からです……ま、まさか……!!


???(たったったったっ)


ドスン ←大淀にぶつかった


綾波「きゃっ」

大淀「きゃぁ。綾波、そんなに慌ててどうしました!? 」

綾波「あ、大淀さん! あ、あの……綾波、びっくりしてしまって……」




提督(たったったったったっ)


提督「綾波、ここに居たか。すまん、突然でびっくりさせた。ごめん、この通り(ぺこり)」

大淀「て、提督! あなたは、とうとう……」

綾波「い、いえ。その、綾波こそ大きな声出してしまって……。突然でびっくりしちゃいましたけど……その……嫌じゃなかったので……」

提督「そ、そうか……良かった……。ほんと、ごめんな、どうしても我慢できなくて……」



て、提督……本当に……ついにやってしまったのですか……?



大淀「いけませんっ。いたいけな駆逐艦に手を出すなんて! 綾波が許しても、この大淀が許しませんっ! 」

綾波「大淀さん、ほんとに良いんです。……考えてみたら、ほっぺたつんってしてもらえるのって、なんだか仲良しで素敵です……。なのに、頭に血が登ってしまったみたいで……」

大淀「…………ほっぺたつん? 」

提督「いやぁ。綾波のほっぺた、やわらかそうだなーって前から思ってたんだよ。でな、さっき、遠征大成功のご褒美に頭撫でてたら、どうしてもほっぺをつんしたくなって……つい、な」

大淀「…………」

綾波「その……綾波のほっぺで良ければいつでも、つんってして良いですよ……もう大丈夫ですから」

提督「あはは、じゃあ次からは、ちゃんと予告してからさせてもらうな。ありがとう、綾波」


なでなで


綾波「はい……その……次の機会、待ってます……(もじもじ)」

大淀「……………………」




――――― 少し後 提督執務室

大淀「…………わたしはついに、提督が憲兵さんのお世話になる日が来たかと思いました……」

提督「失礼な! 俺はそんなことはしないぞっ」

大淀「日々、ひたすら駆逐艦を可愛がっている提督が言っても、説得力ありません」



……そう、これが悩みの種その2です。提督が駆逐艦の子たちを可愛がりすぎていて……そのうち憲兵さんのお世話になってしまうのではないかと不安で仕方がありません。



提督「艦娘とはいえ、皆まだ子どもの年齢だからなぁ。大人がちゃんと愛情をもって接しないとだろ? 」

大淀「はぁ……提督らしいですけど……」



提督は女を甘く見過ぎです……。小さくてもれっきとした女の子。彼女たちがどう思っているかはまた別の話なのです……。



大淀「油断していて、そのうち間違いを起こさないで下さいね! 」

提督「そんなことないから大丈夫だよ。まったく、この件に関しては、大淀は心配しすぎだなぁ」

大淀「でしたら、少しは自重して下さいっ」



駆逐艦の子たちは……この大淀が守ります!



『…………でも、今思うと、可愛がられている駆逐艦の子たちに嫉妬してたのかなぁ』





本日分は以上となります。
最初に書きました通り、以前の明石さん鎮守府のIF世界となっておりまして
「明石さんと同時に夕張が着任していたら?(明石さん鎮守府に夕張は居ませんでした)」
という設定になっております。

さすがに毎日投下はもう限界でして、2~3日ごとに投下のゆったりとしたペースになります。ご容赦下さい。

それでは、また長編になりますが、よろしくお付き合い下さいませ(o_ _)oペコリ



――――― 1か月半後 提督執務室

大淀「提督、今日はカレーをご用意しました 」

提督「おお、ありがとう。秘書に旗艦、参謀までやらせてるのに、食事まで用意してもらって、いつもありがとな」

大淀「いいえ、これがわたしのお仕事ですから」(にこ)



提督は、わたしの仕事を高く評価してくれます。わたしは当然のことをしているだけなのですが、いつだって恐縮されてお礼を言われて……少しくすぐったいです。



提督「作戦も無事完遂。事前の資源備蓄から編成作業。そして、最前線への出撃と、大淀は大活躍だったな。ほんと、助かったよ」(もぐもぐ)

大淀「いえ……それが大淀の努めですから(にこにこ)」




提督「とはいえ、気は抜けないな。次の大規模作戦が早速決まったようだし」

大淀「わたしも噂は聞きました。戦いは終わりませんね……」

提督「そうだな……。まぁ、誰も失わないことが大事だ。その上で、戦果と作戦成功を目指していこう。当面は、練度上げと装備の充実とかかな」

大淀「そうは言っても、あまり無駄遣いなさらないで下さいね。また備蓄で苦労してしまいますよ」

提督「あーあ。正直言えば、ゆるーく練度を上げつつ、好きな開発に邁進する生活を送りたいんだけどなぁ」

大淀「くすっ。本音ですね。でもダメですよ。しっかりお仕事してくださらないと」

提督「そうだな、そういうのは深海棲艦の脅威が無くなってから、ゆっくりやるかぁ」



提督は、本質的には工作大好きな少年みたいな感じですよね。親友の明石がまさにそういうタイプだから、提督には最初からすごく親近感がわいていました。立場上、こうやってたしなめないといけないけれど……本当はそういう少年っぽいところ、すごく好きですよ。




コンコンコン


朝潮「朝潮、入ります」

荒潮「荒潮もはいりまーす! 」

提督「お、帰ったか。おつかれさん」

朝潮「遠征、無事終了いたしました」

大淀「大成功でしたね。お疲れ様でした」

提督「報告確かに受けた。ゆっくり休んでくれ」

朝潮「いえ、提督、同じ編成ですぐまた出発すれば、装備の移動も必要ありません。よろしければ、すぐ出発致しますが」

荒潮「えぇ~、ゆっくり休みたい~」

朝潮「荒潮っ。遠征はわたしたちの大事な仕事なんだから、そんなこと言わないの」

提督「いや、荒潮の言うとおりだよ。しっかり働いた後は、ゆっくり休むのも立派な仕事だ。さ、これ持って行ってくれ」

荒潮「やった~、間宮券! 提督、ありがとっ♪ 」

朝潮「そんな。当然のお仕事をしただけなのに、頂くわけには……」

提督「何を言っている。しっかり大成功してくれたじゃないか。一緒に行った妹達もみんなで、ゆっくり休んでくれ」

朝潮「…………はい……ありがとうございますっ」

荒潮「朝潮姉さん、行こ行こっ」

朝潮「こら荒潮、ひっぱらない~」

ワイワイ




大淀「…………」(じとーーーー)

提督「な、なんだよお」

大淀「またお給料全部、ご褒美用の間宮券にしちゃったんですね」

提督「いやぁ……まぁ、ほら。どうせ金の使い道なんてないからさ……あはは……」



本当に、駆逐艦の子たちには甘いです!



大淀「それに、なんだか朝潮には特に優しく見えるんですよね」



朝潮型はガチって言いますし……心配です……



提督「ああ、あの子はちょっと、気張りすぎていて、ほっとけない感じでなぁ」

大淀「そういうことですか。確かに、もう少し気を抜けたら良いのですけれど……」

提督「不知火なんかもそういうところがあるけど、朝潮はちょっと違うんだよなぁ。よく似た人を知っているだけに、なんかほっとけないんだよ。ま、荒潮がいい感じでゆるいから、良い姉妹なのかもな」

大淀「そうですね、あの子はまた掴みどころがないですから……」




バターン


島風「提督~、あそぼー! 」

大淀「島風。扉を開ける前にまずノックですよ」

島風「えー。ノックなんてしたら入るのが遅くなるよ~」

大淀「駄目ですっ」

島風「はぁーい」

提督「で、なんだって? 」

島風「今日の訓練終わったの。だから、提督とかけっこしようと思って」

大淀「提督は執務中ですよ」

島風「えぇ~(しゅん)」

提督「まぁいいじゃないか。ちょうど一段落ついてるし、運動がてら、ちょっと行ってくる」

大淀「もう、毎日そう言って遊びに行ってるじゃないですか」

島風「やった~! 行こ行こ! はやく~」

提督「わかったわかった。じゃあ、ちょっとだけ行ってくるよ。悪いけど留守番頼むよ」

大淀「はい。早く帰ってきて下さいね」




マケンゾー

マケナイモン

ワイワイ


窓から見下ろすと、中庭で駆けまわっている二人が見えます。いつの間にか鬼ごっこになっているみたいです。提督は、島風にもとっても甘いです。というより、最近特に甘やかしているというか、島風のために時間をとっているように見えます。何か意図があってのことなんでしょうか……?



提督「ふー、走った走った」

島風「提督、陸ではやっぱり速いね~」

提督「陸ではっていうか、俺は海の上は走れないからなぁ」

島風「残念だよね。提督が艦娘だったら、わたしのライバルになれたのになー」

提督「ははは、悪いな。ライバルは是非、艦娘から見つけてくれ」

島風「はぁーい。じゃあね~! 」

提督「ははは……。あの元気にはとてもかなわんな。俺はゆっくり歩いて帰るかね……」




提督「ただいま。留守番させてごめんな」

大淀「おかえりなさい。お疲れですね」

提督「ああ、あの元気には参るよ。あれだけ走ったのに、また元気に走っていったよ」

大淀「そう言いながら、提督も毎日毎日、良くお付き合いしてますね」

提督「まーなー。毎日執務ばっかりだと運動不足になるし、ちょうどいいさ」



提督は秘密主義というか……。無口では無いのですが、心のうちはなかなか話してくれません。この雰囲気だと、何か考えがありそうなのですが……。



大淀「うーん、なんだか気になりますけど……。まぁ良いです。さ、冷たい麦茶ですよ」

提督「ありがとう。ふー、美味いっ! 」

大淀「あ、そうそう提督。今夜は分室の方に行かれますか? 」

提督「そうだな、確か潜水艦の子たちがちょっと破損してたはずだ。今夜は分室行って、明石の小型ドックを使おう」

大淀「はい。では明石には連絡を入れておきますね」



修理するためのドックには限りがあって、破損している子が多い時はなかなか大変です。でも、明石が秘書艦になっている時に限り、明石の特殊な小型ドックを利用することが出来ます。ですので、そういう時は秘書艦を明石にバトンタッチして、小型ドックを使用します。




――――― 夜 工廠 提督執務室分室

明石「提督、ごーやさんとしおいさんが、無事小型ドック入りしました」

提督「ほい、おつかれさん。あの二人なら、そんなに時間かからず終わりそうだな」

大淀「では、それまでに執務を片付けてしまいましょう」



明石着任直後は、秘書艦を明石に引き継いで、わたしは帰ってしまっていました。でも、提督・明石・夕張を3人だけにしておくと、装備が増えて資材が減ることがわかったので、今ではこのように、執務室分室を作って、わたしも必ずついてくるようにしています。



明石「あ、そうだ、提督、大淀、執務しながらでいいから聞いて欲しいんですが」

大淀「どうしたの? 」

明石「えっとですね。島風さんのことで少し気になることがありまして……」

提督「なんだ、明石もなのか。どんな内容だ? 」

 ・
 ・
 ・
 
大淀「なるほど。島風はかけっこが大好きですが、誰よりも速いから、誰も相手をしてくれなくなってしまったわけですね」

明石「そうみたいです。すごく寂しそうで……ライバルが居てくれたらいいねって話していたんですが」

提督「あー、だから俺が艦娘だったらライバルになれたのに、って言ってたのか」



島風はマイペースで自由な子だけど……やっぱり、一人の寂しさなんかはあるんですね。そういえば、同室の子も居ないし、姉妹も居ないし、色んな意味で孤独なのかもしれないですね……。





大淀「何とかしてあげたいですね……」

提督「ああ。実は考えていることはあるんだが……。ちょっと大変だけど、やっぱり挑戦してみるかな」

明石「あ、わたしと夕張も、ちょっと相談してることがあるんです。夕張も呼んできますね」

大淀「アイディアがあるのですか」

提督「ああ。だが、資材を結構使っちゃうかもしれないから、それで躊躇してたんだよ。大淀に苦労かけるのも嫌だからなぁ」

大淀「……島風も大事な艦隊の一員です。わたしだって、できることなら元気づけて上げたいと思います」

提督「もちろんわかってるさ。だけど、同時に参謀として、目標の備蓄をすることとかの責任もあるだろ? 大淀が板挟みになるのは嫌だよ」



ぐぬぬ……。こうやってナチュラルにやさしい気遣いをするから困るんです、この人は。



提督「ま、明石や夕張だってそのへんはちゃんとわかってるから、ちゃんと相談して、できる事を考えようぜ」

大淀「そうですね、まずはお話を聞かないと」

明石「夕張を連れてきましたよー」

夕張「さてさて、開発開発~~♪ 」




提督「まず俺のアイディアは、天津風を迎えることなんだよ。ある海域の深海棲艦を倒すと、低確率で天津風の魂が出るらしいから、そこで頑張るってわけだ」

大淀「天津風といえば、島風のプロトタイプみたいな駆逐艦でしたね」

明石「そうですね、島風の姉妹ではないけど、いとこぐらいの関係かな? 」

提督「迎えることができたら同室になるし、きっと良い友達になれるんじゃないかと思う」

夕張「良いアイディアですね! 」

大淀「相当大変ではありますけれど……実現できたら素敵ですね」



寂しい子がいるから、鎮守府が全力で友達を探しに行くみたいな感じで……。ちょっと甘いかな? という気はします。でも……こういう家族的な雰囲気は、とっても素敵だと思います。



明石「わたしたちのアイディアは、速力が上がる装備を開発することです。駆逐艦の子がこれを装備すれば、島風さんにも負けない速度が出るはずですから」

夕張「具体的には、新型の缶とタービンの開発ね! 」

明石「実は、雪風さんから、島風さんにかけっこで負け続けて悔しいから、速くなる装備が欲しい!って相談されてるんですよ。だから、開発できれば、雪風さんも、島風さんの良いライバルになるかなって」

夕張「実戦でも、どうしても回避が必要な時なんかには役に立つと思います! 」

提督「そっか、装備なら、どの駆逐艦の子もライバルになれる可能性が出るわけか……それは良いアイディアだな! 」



明石と夕張らしいアイディアです。これが実現すれば、駆逐艦みんなで競争みたいな楽しいことになるかもしれません。でも、開発となると、これまた資材が心配ですけど……。




提督「うーん、どちらのアイディアも、問題点があるとすれば資材備蓄との兼ね合いだなぁ」

明石「そうですね。新装備も、おおまかなレシピ情報を元に試行錯誤するしかありませんし」

提督「天津風のほうも、運次第だからなぁ」

夕張「提督は運に関してはトホホですもんねー」

大淀「資材の方はやりくりしてみますから、まずはやってみましょう。備蓄が危なくなってきたら一旦休止すれば良いですから」



ああ、言ってしまいました。でも、ここは頑張りどころだと……思います。



提督「そうだな、大淀がそう言ってくれるなら、頑張ってチャレンジしよう」

明石「大淀、ありがとう! よっし、早速研究するね! 」

夕張「やっほー! 新装備だ~~」



今日の投下は。『島風編 前編』でした。続きはまた後日です。またぜひお越しください。

新スレを建てたとき、待ってた、楽しみ、と言ってくださる方が居るというのは本当に幸せなことです。未熟な筆者ではありますが、頑張りますのでどうぞまたお楽しみください(o_ _)oペコリ



――――― 数日後 提督執務室

天津風「天津風、着任しました。よろしくね! 」

島風「わーーーい、天津風、来るのおっそーーい! 」

天津風「うわぁ。島風はもう着任してたのね。抱きつかないでよ、もうっ」

大淀「お二人は同室になりますから、仲良くしてくださいね」

島風「やったー、早速案内するね! 行っくよ~! 」

天津風「ちょ、ちょっとまってよ。わたし挨拶もまだ……あーん、もうっ」

島風「天津風おっそーい! 」


バタバタバタ


大淀「島風、すごく嬉しそうでしたね。やっぱり……本当はすごく寂しかったのでしょうね」

提督「そうだな……。でも、これでもう大丈夫だろう。雪風のほうも準備万全らしいから」




――――― 少し後 島風と天津風の部屋

島風「ここがわたしたちの部屋だよー。そっちの空いてるベッドが天津風のね! 」

天津風「あーあ、島風と同室なんて、うるさくて大変そうね。ま、よろしくね 」

島風「えへへー、よろしくね! 」


バーン


雪風「た~の~もぉ~~~~」

天津風「雪風……あなた、なにしてるの……? 」

雪風「天津風! 着任おめでとうっ。島風と同室なんだねー! 」

島風「そうだよ~。で、たのもーってなあにー? 」

雪風「ふっふっふ! 島風にかけっこ勝負を挑みに来たのですっ」

島風「え……? だって、負けるからもうやりたくないって……」

雪風「じゃじゃーん! 新型タービンと強化缶ですっ。これでもう島風にも負けませんっ! 」

島風「すっごーい! いいよ、わたしも負けないよ! 天津風もいこー! 」

天津風「ちょ、ちょっと。わたしはまだ来たばかりで荷物もっ。あーもう、引っ張らないで! 」

イッチバーン エーモウイッカイ! ワイワイ




――――― 夜 工廠 提督執務室分室

提督「それじゃあ、かんぱーい! 」

みんな「乾杯っ! 」



作戦(?)の無事成功を祝って、ささやかですが乾杯です。



明石「新装備の方は、予想以上に効果があって、これから実戦でも活用の場面が結構ありそうです」

夕張「うんうん、砲もいいけど、こういうのも良いよね! 」

提督「天津風のほうは苦戦したけど、みんなの練度も上がったから、まぁ結果オーライでいいかな」

大淀「資材の方は許容範囲ギリギリという感じでしたから、開発と建造は、しばらくは自重してくださいね!」

提督「あはは、結局、最後に苦労するのは大淀だな」

大淀「あら、そう思うのでしたら、備蓄にもちゃんと協力してくださいね」

提督「だそうだよ、明石、夕張」

夕張「はぁ~い」

明石「あ、それならちょっとアイディアがあるんですよ。少ない消費資材で開発できるんですが……」

提督「ほうほう、ソナーと爆雷の集中開発ね」

夕張「確かに、これは資材消費が少ないですね……」

明石「ね、いいアイディアでしょ! 」

大淀「資材を使わないなら大歓迎ですよ」



開発になると、三人共すぐに目がキラキラして……困ったものですね。でも、とても楽しそうで、実はちょっとだけ羨ましいです。




――――― 翌朝 提督執務室

コンコンコン

大淀「おはようございます、提督」

提督「おはよう、今日も早いな」

大淀「それでも、提督よりは遅いです。提督は本当に朝が早いですね」

提督「年寄りだから朝が早いんだよ」

大淀「あら、じゃあわたしはもっと早起きしないとダメですね」



…………提督は、昼間に艦娘のみんなとの時間を取るために、早朝や夜に執務をしてるんですよね。夜にするとわたしも残ることになってしまうから、なるべく一人で早朝に。そのぐらいはわかっていますよ。本当なら、誘って欲しいけれど……こちらからお願いするのはシャクですから、お願いされるまではそのままです。




大淀「さ、ではわたしも執務にとりかかりますね」

提督「ああ、よろしく頼むよ」


コンコンコン バターン


島風「提督、おっはようございまーす! 」

大淀「島風。ノックしたのは良いですが、扉を開けるのが早すぎます」

島風「えー、いまのでもダメなのー? 」

提督「いや、ノックしただけ進歩だ。えらいえらい」

大淀「また甘やかして……。さて、こんな朝早くにどうしたのです? 」

島風「昨日提督から、明日暇な時でいいから執務室に来てくれーって言われてたから。早く来ちゃった! 」

提督「ほんと、何でも早いのな、島風は」

島風「いいでしょー♪ それで、どうしたの? 」




提督「ああ、来てもらった理由な。天津風が来てくれたり、雪風もかけっこ仲間になったりで、良かったな」

島風「うん! 提督ありがとう! 明石さん夕張さんにも、ちゃんとお礼言いに行ったよ、三人で! 」

提督「お、ちゃんとお礼言ったのか。偉いな」

島風「えへへ~」

提督「でな、天津風を迎えたり、雪風の装備作ったりしたのは、俺や明石や夕張がアイディアだしたり頑張ったのは確かなんだけど」

島風「うん♪ 」

提督「それで資材いっぱい使っちゃうと、大淀がすごく困るんだよ。でもな、大淀、島風のためにがんばっていいってOKしてくれたんだ」

島風「え……? 大淀さんが……? 」(チラッ)

大淀「え……」



提督、いきなり何を言い出すんですか! 確かにそのとおりですけど……そんな話を急に島風にするなんて……




島風「大淀さん、ほんとなの?」

大淀「え、ええ……」

島風「…………わたし、大淀さんには嫌われてると思ってた……」

大淀「嫌うなんて、そんなはずありません。自由奔放で困らされることが多いのは確かですけど……元気でかわいい、艦隊の大事な仲間だと思っていますよ」


島風「……そっか、そうだったんだ…………わーーーーい!」

たったったった 抱きつきっ

大淀「きゃっ! 」

島風「嫌われてると思ってたから、怖かったんだー。もう怖くないよ! 」



……抱きつかれちゃいました。こういう時どうしたらいいか、なんだか戸惑ってしまいます。



大淀「わたしは規律とかに厳しいですからね。怖がらせてごめんね」(なでなで)

島風「わたしが悪いんだもん、しょうが無いよ。でも嫌われてないならいいや! 」

大淀「大丈夫よ、大丈夫……」(なでなで)




島風「じゃあ、まったねー!」


大淀「……提督? 」(じろ)

提督「あれ、なんか怒ってる? 」

大淀「怒ってはいませんが、突然でびっくりしました」

提督「驚かせちゃったか、それはごめんな」

大淀「でも提督。本当にどうして島風にあんな話を……? 」

提督「んー……」



ごまかすかちゃんと話すか迷ってますね。そのくらいはわかるようになりました。



大淀「わたし、ほんとにびっくりしたんですよ。ですから、ちゃんとお話して下さい」

提督「うーん、まぁ大した理由じゃないんだけどな……」




提督「大淀はさ、俺が駆逐艦をえらく可愛がってるってよく言うけど」

大淀「はい、実際そうですから」

提督「あはは。でもさ、大淀もすごく、駆逐艦の子たちのことを気にしてるよな。いつも」

大淀「そんなことは無いですよ」

提督「そんなことあるよ。編成とか、遠征の計画とか……。なるべく傷つかないよう、なるべく辛く無いよう、すごく気を使ってるのはわかるよ」

大淀「…………」

提督「そういうことを、少しでもみんなにも知ってもらいたいと思ってな」

大淀「……わたしは……自分の当然の仕事をしているだけです……」

提督「そうかもしれない。でもそれは、とても優しい気持ちだし、素敵なことだと思うからさ。おせっかいだったかもしれないけど、勘弁してくれ。こういう性分なんだ 」



ちょっと……駄目です、自分を立て直す時間が必要です。ちょっと退却!



大淀「許しませんので、お詫びに間宮さんのところのおまんじゅうを頂きます。買ってきますので、間宮券を一枚下さい」

提督「あはは、そのぐらいで許してくれるなら安いもんだ。行っといで」

大淀「仕方がありませんから、これで許して差し上げます。行ってきますね」




――――― 鎮守府 廊下

コツコツコツコツ ←足音

大淀「はふぅ~」



駆逐艦の子たちに懐かれている提督。同じく懐かれている明石や夕張。わたしはどこか遠巻きにされている。それを……気にしなかったことが無かったといえば嘘になる。わたしだってあの子達のために頑張っているのにって思ったことも確かにある……。でも……そんな気持ちを見ぬかれたような……すごく恥ずかしい……。

そう、心のなかを覗かれてしまったような、そんな感じです。提督のスケベッ! 乙女の心を覗くなんて、デリカシーなさすぎですっ。

でも……同時に……。理解されていたこと。分かってもらえていたこと。それがすごく嬉しい。わたしのことをしっかり見ていてくれてるんだって……。どうしてこんな風に思うんでしょう……。




――――― 少し後 提督執務室

大淀「戻りました。おまんじゅういっぱい頂いてきましたよ」

提督「お帰り、お茶入れて待ってたよ。俺にも少しくれよな」

大淀「こんなに食べきれませんから、どうぞ」


大淀「提督、あの……」

提督「んー? 」

大淀「わたし……駆逐艦の子たちに感謝されたがっているように……そんなふうに見えましたか? 」

提督「ん? いいや、全然」

大淀「それじゃあ、どうして……」

提督「んー……」

大淀「……」

提督「んー…………」

大淀「ちゃんと話して下さい」

提督「………………………大淀の優しさを気づいてもらえて、分かり合えたらさ。その……大淀も笑顔になるかなって思ったんだよ。失敗しちゃったみたいだけどな……」

大淀「!!!」



提督……照れて俯いています。冗談でからかっているわけじゃ無いみたいですね……。うわぁ、わたしも照れて来てしまいます……赤くなるのはダメダメ!




大淀「……いいえ、成功してますよ」

提督「え、そうか?」

大淀「はい、確かにちょっとびっくりしましたけれど。これからは島風ともっと仲良く出来そうですし……とっても嬉しいです。提督、ありがとうございます」(にこっ)

提督「それならよかったよ……。ほんと、おせっかいだったかとヒヤヒヤしてたんだ」

大淀「あはは♪ 」



提督は……駆逐艦の子たちと同じように……ちゃんとわたしの事も見てくれている。ちゃんと……しゃくですけど……可愛がってくれている。そう思うと、自然と笑顔がこぼれてしまいました。



『今思うと……これが……提督のことが好きなんだって自覚した瞬間だったのかもしれません』



本日分は以上となります。続きはまた後日ということで、また是非お越しください(o_ _)oペコリ

大淀さん、時報ボイスとかケッコンボイスを聞いていると、クールに見えて、実は相当な提督ラブ勢だと思うんですよね。
そんな大淀さんを上手く書いていけたらいいなと思いつつがんばります。



――――― 春 提督執務室

提督「のどかだなぁ」

大淀「ええ、のどかですね」

提督「作戦が近いから、備蓄以外は特にやること無いしなぁ」

大淀「潜水艦と駆逐艦は忙しそうですけれど……」

提督「申し訳ないとは思うけど、俺がかわりにって訳にも行かないからなぁ……」


ホーホケキョ


提督「暇だなぁ……」

大淀「提督が忙しくされると、比例して備蓄が減りますから、のんびりして頂いているのが正解ですね」

提督「はぁ~。昨日さ、あまりにも暇だから、報告に来た蒼龍にさ、暇つぶしに艦載機の整備を一緒にやらせてくれって言ったらさー」

大淀「はいはい」

提督「一緒にいた飛龍が『蒼龍の九九艦爆に何をするつもりですか! 』って、なんか怒ってさー。蒼龍は真っ赤になって俯いちゃうし」

大淀「…………」

提督「結局、艦載機もさわらせてもらえずだったよ。やっぱり人にさわられるのは抵抗あるのかなー 」

大淀「……提督、暇だからと言って、犯罪やセクハラに勤しむのはやめてくださいね……」

提督「ええっ。なんで艦載機整備がセクハラなんだよー」




コンコンコン

暁「暁、帰還したわ」

大淀「遠征お疲れ様」

提督「遠いところおつかれさん」

暁「ほんとよ! ドラム缶いっぱい抱えてえっさほいさって。こんなの、一人前のレディの仕事じゃないわ」

提督「大変だとは思うけど、そのへんの遠征って駆逐艦じゃないとできないからなぁ」

大淀「鎮守府の備蓄を支える、大切なお仕事ですよ」

暁「でもー……。もっと『えれがんと』な仕事がしたいわ」

提督「ふーむ……参考までに聞きたいんだけど、暁が考える、一人前のレディの仕事ってどんなのだ? 」

暁「うーん……。ドレスを着て、ワイングラスを片手に持って……行けー! みたいな? 」

提督「……となると、うちの鎮守府にはレディは誰一人いないことになるな……。そんな奴見たこと無いぞ」

暁「あ、あれ……。変だな。えーっとえーっと」




……提督、暇つぶしに暁をからかうことにしたんですね……。まったく、困った人です。



提督「じゃあ、うちの鎮守府で、暁が『この人は一人前のレディだ!』って思う人は誰だ? 」

暁「そうねぇ……。金剛さん、榛名さん、妙高さん、熊野さん、三隈さん……あとは誰かしら……? 」

提督「大型艦ばっかりじゃないか。駆逐艦で同じ仕事をするのは難しいだろ? 」

暁「でーもー! もっと一人前のレディっぽい仕事がしたいの~~」(バタバタ)

提督「でも、その仕事のイメージが無いんだろ。困ったなぁ」

暁「司令官、なんとかしてよー」

提督「うーん…………、じゃあ、一人前のレディだと思う人の後をついてまわって、いろいろレディっぽいところを学んで来るっていうのはどうだ? 今はちょうど、出撃が全然ないから、みんな鎮守府内にいるぞ」

暁「なるほど……一人前のレディについて修行するっていうことね」

提督「そうそう。暁も遠征のローテーションは当分先だし、退屈しのぎにやってみたらどうだ? 」

暁「わかったわ。すぐに一人前のレディの仕事を見つけるんだからっ。そうしたら、ちゃんとその仕事をさせてよね! 」

提督「あはは。ちゃんと俺を納得させられたらな」

暁「いいわ、みてなさいっ」




大淀「提督。きっと名前が上がった皆さんから苦情が来ますよ」

提督「あはは、まぁいいじゃないか。どうせみんな退屈してるだろう。それに、名前が上がった連中は、みんな面倒見が良いだろ? なんだかんだで相手をしてくれるんじゃないかな」



……確かに、なんだかんだで、良くしてくれそうな顔ぶれでしたね。



提督「遠征で苦労をかけてるのは事実なんだ。ちょっとくらいは、好きなことをさせてやりたいじゃないか」

大淀「確かに、暁型の4人は、南方のきつい遠征で、ずっと苦労していますからね」

提督「だよなー。あとはまぁ……」

大淀「……? 」

提督「こういう機会に、自分のやっていることを見つめなおしてさ。やっている仕事とか自分自身に誇りを持ってもらえたらと思うんだが……そう上手くはいかないかな? 」



失礼。提督はてっきり暁をからかって遊んでるんだと思っていました。真面目にやっていたのですね。



大淀「そうですね。彼女たちにしかできない大事な仕事で、それで鎮守府を支えてくれているんですから。誇りをもってお仕事してもらえたらいいですね」

提督「ああ、そう思うよ」




――――― 2日後 提督執務室

提督「ああ、のどかだなぁ~」

大淀「のどかですね~」


ホーホケキョ


大淀「でも、『暇だな~』では無いのですね。昨日からずっと、何をされているんです? 」

提督「あー、これは、資料を元に、練度上げ編成の見直し。あと、練度上げといえばちょっと悩ましい問題とか出てきててな。その辺の検討だなぁ。そういう大淀も、昨日から熱心に何やってるんだ?」

大淀「わたしは、遠征の見直しです。駆逐艦の子たちも、練度が上がってきている子も多いですから、何とか負担が集中しないローテーションに組み直せないかと」

提督「そうだなぁ。難度が高い遠征は、どうしても古参駆逐艦の子たちに負担が行きがちだもんな」

大淀「第六駆逐隊は練度が高いですから……。暁の不満も分かりますし……」

提督「そうだなぁ……」




コンコンコン

暁「司令官、ごきげんようです」

提督「お、噂をすれば暁だ。どうした? 」

暁「しれいかーん! 難しくてわかんないよー」

大淀「あらあら。一人前のレディ計画は、早くも頓挫ですか? 」

提督「なんだ、レディの皆さんとは上手く行かなかったのか? 」

暁「ううん、みんな優しくしてくれたわ。でも、でも……」

提督「ん? 」

暁「一人ひとり、言うことが全然ちがうんだもーーーん! 」

大淀「ぷっ」

提督「あはは、まぁ、そうなるだろうなぁ」




――――― 暁の回想話より

金剛「一人前のレディ? それは、紅茶を優雅に飲めることデース! お仕事でデスか? そうデスねー……バーニングラーヴでMVPを取ることデース! 」


榛名「わたしがレディだなんてそんな……。レディのお仕事ですか……? うーん……やっぱり、提督の期待にお応えすることでしょうか……? 」


妙高「レディというのはわからないけれど……役割を果たして……あとは、暁ならわかるでしょう? 妹達を守ってこそだと思います」


熊野「レディの修行ですか? よろしくてよ。レディたるもの、まず美しさが大切です。まずは一緒にエステに行きますわ。それから、お肌の手入れもレディのたしなみ。良いですか、これが最初につかう化粧水で、その次にこの乳液を……。え、お仕事? そうですわね……華麗に成敗してMVPをとることですわね。あくまで華麗に」


三隈「そうですわね……。まず、決め台詞を決めてはいかがですか? くまりんこ♪みたいな感じで……。あかつきん♪ なんていかがかしら? あれ、暁さん、どうして逃げてしまいますの? 」




暁「とりあえずこんな感じだったわ。みんな綺麗で素敵だけど、言うことはバラバラで困っちゃうわ! 」

大淀「……妙高さんの常識人ぶりが光りますね……」

提督「榛名も普通でいいよな……」

暁「とりあえず、語尾に『ですわ』をつけてみたり、紅茶をたくさん飲んでみたりはしたんだけど、どうしてもピンとこないの。司令官、どうしたら良いと思う? 」

提督「あれだろ、レディであっても一人ひとりやり方が違うから、どれを真似したら良いかってことだろ」

暁「真似って言わないでよ、失礼ね! 参考にするのよ! 」

提督「じゃあ、誰が一番参考になった? 」

暁「……妙高さんの、妹を大事にするっていうのは、わかりやすかった」

提督「暁のところは、どっちかって言うと雷とか響のがお姉ちゃんっぽいからなぁ……。暁も、もっとお姉ちゃんらしくしようと思ったわけだ」

大淀「くすっ。そうですね、暁は三女で電の上って感じですよね」

暁「ちゃんとお姉ちゃんしてるもん! 」




提督「まー、そこを頑張るとして、仕事の方はどうなんだ? 」

暁「うーん……。どかーんってMVPというのは、素敵だと思うけれど、わたしは駆逐艦だし……。提督の期待に応えるとかピンと来ないし……」

提督「妙高の言っていたっていう『役割を果たす』ってういのはどうなんだ? 」

暁「うーん……」

大淀「ピンときませんか」

提督「そうだなぁ、じゃあ、俺からアドバイスしよう! これでバッチリだぞ」

暁「え、ほんと!? なになに!」

提督「司令官たる俺からみて、一番『一人前のレディ』っぽい仕事をしている人を教えてやる。その人について、どんな仕事をしてるかつぶさに勉強してみろ」

暁「それよ、それ! そういうのがいいのよ! 誰? 誰? 」




提督「大淀だよ。大淀の仕事ぶりは一人前のレディそのものだぞ。きっと勉強になる」

暁「大淀さんなのね! じゃあ、今から早速、横で勉強するね! 」



て、提督! なんてことをっ。横につかれてなんて……困ります!



大淀「あの、困ります……。提督?(じろり)」

提督「まぁまぁ、俺は嘘はついてない。いい機会だ、勉強させてやってくれよ」

暁「大淀さん、よろしくお願いします!(ぺこり)」

大淀「はぁ……まぁいいです。ちょうど遠征関連のお仕事をしてますから、暁とも関係ありますし」


また提督の無茶ぶりです……。でも、先日の島風の件もありましたし……。たまには、駆逐艦の子と仕事をするのも良いのかもしれないですね。



本日分は以上となります。暁のお話・前編 でした。後編は明日投下致します。
暁はかわいいんだけど、つい、からかいたくなって困ります。

それでは、よろしければまた明日お越しください(o_ _)oペコリ



暁「遠征に関するお仕事? どんなことをしているの? 」

大淀「えっと、そうですね。まずこの表を見て下さい」

暁「何この、数字だらけの……」

大淀「これは、先月からの備蓄の推移状況をまとめたものです。この一番右側の数字が、作戦開始時の目標備蓄数値。要は、作戦開始日には、備蓄がここまで増えていないといけないの」

暁「なんだか、すごく多いのね……こんなに必要なの? 」

提督「昨年夏の大規模作戦では、これだけ備蓄があっても作戦完遂出来なかったよ。覚えてるだろ? 」

暁「あの……最後は備蓄がゼロになって、みんなでお通夜みたいな雰囲気になっていた時……? 」

提督「そうそう。だから備蓄はちゃんとしておかないとな」

大淀「それで、ここが今日。これが現在の備蓄ね」

暁「まだ全然足りないのね……」

大淀「ええ。ですから、目的を達成するための計画がこちらです」




ばさっ (超でっかい紙を広げた)


暁「これは……すごく大きな表……? 」

大淀「ええ。毎日、誰がどこに遠征に行って備蓄を増やし、誰がどこで演習などで備蓄を減らすかを計算した表です。この表の通り進めれば、目標を達成できる、ということですね」

暁「……これ、全部計算して……大淀さんが作ったの? 」

大淀「? はい、そうですよ」

暁「すごい……こんなすごい仕事してるんだ……」

提督「ところがな、大淀は昨日から、この表を新しく作りなおすために、計算を全部やり直してるんだよ。それを一緒にやってみるといい」

大淀「もう今日には出来上がりますから、大丈夫ですけど……」

暁「わかったわ、やってみたい! 」




――――― 夕方

暁「ふぇー……、えっと、これで終わり? 」

大淀「はい、表の仮完成です。これから、すべての検算を二重に行いますので、順番にやっていきましょう」

暁「これを全部!? それも二回も!? ど、どうして? 」

提督「あ、俺も参加するわ。俺と大淀と暁で1回ずつで合わせればいいだろう」

大淀「お願いできますか? 助かります」

暁「計算し直しなんて、すごい量でしょ! それをどうしてそんなに~? 」

提督「暁、この計画を元に、鎮守府の全員が行動することになるんだぞ? 」

大淀「間違いがあったら、皆さんに迷惑がかかる上に、作戦失敗なんていうこともありえます。万が一の間違いも許されませんから、何度も確認するのは当然ですよ」

暁「そっか……わかった、頑張る」




――――― 2時間後

コテン

暁「すーすー」

大淀「あらあら、膝枕になってしまいました」

提督「さすがに限界か。でも、良く愚痴も言わず頑張ってたな。書類仕事なんて慣れてなくて大変だったろうに」

大淀「ええ。驚きました。もっとわがままばかりな子だと思っていましたが、がんばり屋さんですね」(なでなで)

暁「ん~~むにゅ~~~」

提督「さて、こっちは終わりだ。計算ミスゼロだ。さすがだな」

大淀「はい、こちらも完了しています。お疲れ様でした」

提督「さて、大淀は動けなさそうだから、お茶でも入れるよ」

大淀「ありがとうございます。この状況では、甘えるしかなさそうですね」(なでなで)




提督「はい、熱いから気をつけてな」

大淀「ありがとうございます。ふふ、たまにはお茶を入れていただくのもいいですね」

提督「何なら毎日入れるよ」

大淀「あら、わたしの仕事を取るおつもりですね。譲りませんよ」

提督「あはは、じゃあ、お任せするさ」


ずず~~~


提督「ま、これで明日から、新プランで動けるな」

大淀「そうですね、これで少しだけ、暁や高レベル駆逐艦の子たちが楽になると思います」

暁「むにゃ? 」

大淀「ごめんなさい、名前呼ばれて起きちゃいましたか……もう少し寝ていてもいいんですよ? 」

暁(ぼーーー)

暁「ふわっ。大淀さん、ごめんなさい」(がばっ)

大淀「ふふ、いいのよ。かわいい寝顔を楽しませてもらったから」(にこっ)

提督「俺も楽しませてもらったよ」

暁「あああ~~~/// 」

大淀「提督が言うとセクハラですよ」

提督「男女差別はんたーい! 」




暁「無事完成したのね。寝てしまってごめんなさい(しゅん)」

大淀「検算の最後で寝てしまっただけで、一日ずっと頑張ってくれましたからね。ありがとう」

提督「慣れない書類仕事をよく頑張ってくれたって話してたんだよ」

暁「そっか……。でも、何日もかけてやっと完成したんだよね。これで備蓄がもっともっと貯まるようになるの? 」

提督「うーん、新プランでも、備蓄量はほとんど変わらないな」

暁「え……? じゃあ、どうしてこんなに大変な思いをして、作りなおしたの? 」

提督「暁がこの間、遠征が大変だって言ってただろ? だから、少しでも負担が少なくなるように、遠征のローテーションを工夫出来ないかってな。ま、俺は何も言っていなくて、大淀が進んでやってくれたことだけどな」

暁「じゃあ……わたしが遠征嫌だなんて言ったから……こんなに大変なことを……? 」

大淀「実際、第六駆逐隊の皆さんに、きつい遠征が集中してしまっています。それはわたしの計画のせいですから、見直す良いきっかけになったの」

暁「でも……わたしがちゃんと、黙ってお仕事していれば……」

大淀「本当に気にしないで。わたしは編成や遠征を任されています。みんなが納得できる編成や遠征を組めるよう、最善を尽くすのがわたしの仕事なの。意見をもらって、修正するのは当然のことなのよ」

暁「…………」




提督「暁、これが『一人前のレディ』の仕事だよ。自分の果たすべき責任から逃げず、手を抜かず、最善を尽くして、みんなのために頑張る。前線で敵を打ち倒すのもそうだし、こうやって計画するのもそうだ」

大淀「/// て、提督。そんな風に持ち上げられては困ります」

暁「遠征も……。遠征も、手を抜かず、しっかり頑張ると、みんなのためになる? 」

提督「そりゃそうさ。一緒に計画作ってわかったと思うが、遠征に行くみんなが、誰一人サボったり、逃げたりしないことを前提に作ってある。みんなが、一生懸命やってくれるって信じてるから、こういう計画を作れるんだよ」

大淀「そうですね。そうして出来上がった備蓄があるからこそ、作戦を成功させたり、新しい仲間を生み出せたりします。すべての基本かもしれません」



暁が……とても良い顔をしています。まっすぐ決意した……そう、今までで一番『一人前のレディ』の表情です。



暁「わたし……遠征頑張る。妹達と一緒に、しっかりと遠征してくるね! 」

提督「ああ、明日からまた出発だよな。お前の頑張りに鎮守府の未来がかかってる。どうか、よろしく頼む」

暁「まかせてっ! 一人前のレディとして、きっちり遠征を成功させてくるわっ。大淀さん、ありがとう! 」

大淀「こちらこそ、遅くまでありがとう」(にこっ)




――――― 翌日 提督執務室

提督「それじゃあ、きつい遠征だが、頑張ってきてくれ」(敬礼)

暁「まかせてっ」(敬礼)

電「うう、またドラム缶満載で、重くて大変なのです……」

大淀「大変だと思いますが、がんばってください」

暁「電。大変だけど、わたしたちが頑張って資源を集めることで作戦が成功するのよ。文句を言わず、しっかりがんばろ? 」

雷「暁が急にやる気を出して、なんだか気持ちがわるいわ」

暁「なにー! 」

響「やる気があるのは良いことじゃないか。さ、がんばっていこう」

電「はい、がんばるのです! 」

暁「じゃあ、大淀さん、行ってきます」

大淀「はい、気をつけていってらっしゃい」(にこっ)


ゾロゾロ




大淀「……暁は、なんだか少しだけ大人になったみたいですね」

提督「ま、何日続くかわからないけどな」

大淀「くすっ。提督、ひどいこと言ってます」



こうしているとなんだか……娘の成長を見守る夫婦みたいですね……。って、何を考えているんでしょう。いけないいけない!



大淀「そういえば、暁をいきなりわたしに押し付けるなんて……。やってくれましたねっ」

提督「あはは。まぁ、結果オーライだし許してくれよ」

大淀「もうっ」




提督「でもさ……」

大淀「?」

提督「一人前のレディの仕事って言って、本当に最初に思い浮かぶのは大淀だからな、俺は」

大淀「/// またっ! からかうと怒りますよ」

提督「本音だよ。今回の件もまさに言ったとおりさ。暁や一部の駆逐艦を少しだけ楽にするために、何日もかけて必死に計画を練り直す。戦場で仲間の盾になるのと同じように、仲間を守るために身を切る行為だ。しかも、これは誰にも見えない目立たない。でも……誰に言われなくてもやる。俺は、こんな仕事ができる人を、君以外に知らないよ」



真剣に、まっすぐに、こっちを見てる……。まさか、このまま……告白されちゃうんじゃ……



提督「だから、いつも本当に感謝している。これからも、この鎮守府を支えて欲しい」



がくっ。ま、当然です。わたしは何を勘違いしてるんだか……。恥ずかしい……。



大淀「……誰にも見えない仕事っていいますけど……提督が見てくれています。今回は暁も見てくれました。わたしはそれで十二分です。わたしの方こそ、どうぞよろしくお願いしますね」



『この時は、ほんとに告白されちゃうんじゃ!? ってドキドキしたんですよ』

『いや、実は勢いで言いそうになって、俺もちょっと慌てたんだよ。あーあ、ここで言ってしまっても良かったのかぁ』



本日分は以上となります。暁編・後編でした。お休みをはさみまして、次は日曜夜に投下予定です。
よろしければまた是非お越しください(o_ _)oペコリ




――――― 春 早朝 港

提督「たまには、朝の散歩もいいな」

大淀「そうですね。作戦が始まったら忙しくなりますし、こんな贅沢は今のうちだけですね」



案の定、早朝からお仕事をしていた提督ですが、今は仕事が少ない時期。あっという間にやることが終わってしまったので、散歩に来ています。こういう時間も素敵ですね。



ザザーン ザザーン


提督「提督なんて呼ばれては居るが、最近は海に出る機会なんて全くないなぁ。俺もみんなと一緒に前線に行けたらいいんだけどな」

大淀「くすっ。よろしければお姫様抱っこで戦場までお連れしますよ」

提督「凄まじく情けない絵面になりそうだなあ」

大淀「いいえ、きっと、みなさんニコニコしながら喜んでくれますよ」

提督「あはは。でも、ほんとにそれでもいいかもだ」

大淀「?」

提督「みんなを危険な場所に送り込んでおいて、俺はいつも鎮守府だろ? どんな情けない姿でも、みんなと前線に行けるならな……」

大淀「提督は、わたしたちと違って、直撃なんて受けようものなら死んでしまいますから。どうか大人しく鎮守府で待っていて下さい」

提督「ふぇーい」



提督だけが持っている寂しさとか苦悩みたいなもの……ちゃんとわかっているつもりです。でも……以前は、こういうのを一切表に出さなかったのに、最近、わたしの前では少しだけ油断してくれているみたいです。こういうのを嬉しく感じるなんて、わたしもずいぶん変わったものです。




大淀「あれは……しおい(伊401)でしょうか? 」



埠頭に、寂しそうに佇む人影が見えます。明るく元気な子なのに、何でしょう……とても儚げに、さみしげに見えます。




提督「おーい、めずらしいな、一人で」

伊401「あ、提督に大淀さん。おはようございます」

大淀「どうかしたの……? 」

伊401「ううん、どうもしないよ」

提督「なんか海を見ながら物思いに耽ってたみたいだな。何か悩み事か? 」

伊401「ううん、えっと、次の作戦のことを考えてた」

提督「なんだ、何か心配か? 」

伊401「心配じゃないけど……場所は南の島の方だよね? 」

大淀「はい、そうですね」

伊401「そっかー……」

大淀「大丈夫よ、準備も万全ですから。潜水艦のみなさんに出番が来るかは分かりませんが、必ず勝利できます」

伊401「……うん、ありがとう。じゃ、そろそろみんなのところに戻るね! 」


トテトテトテトテ




大淀「しおい、どうしたんでしょうね? 」

提督「ああ。そうだな、元気なかったな」



……また何か考えてます。話してくださればいいのに……



大淀「心当たりがありそうですね……? 」

提督「いや……そうだな、少し考えてみるよ。俺に何かできることがあればいいんだけどな」

大淀「?」


くるっ ←大淀の方に振り向いた


提督「大淀……。君にも……前世の…………」

大淀「えっ……? 」



な、なんで突然じっと見つめるんですか! こんな……ロマンチックな場所で二人きりで……



提督「…………」

提督「いや、すまない。俺の方でちょっと考えてみる、ありがとう」



むぅ……からかっている訳じゃないのは、その真面目な顔を見ればわかりますが……こっちの身にもなって下さい!



大淀「……肩透かしです。そのうち、ちゃんと教えて下さいね? 」

提督「うーん……まぁ、そうだな」




――――― 昼 提督執務室

提督(ぼーーーー)



暇だから良いのですが……提督、ずっとぼーーーっとしています。しおいのこと、そんなに気になるんでしょうか。提督は駆逐艦に甘い!のは口を酸っぱくしてお話して居ますが、実は潜水艦にも甘々なんです。要は小さい子に甘いんですよね……。



提督(じーーーー)



そして、度々、わたしのことをじーって見ています……。気がつかない振りをしていますが、そんなにじっと見られたら緊張してしまいます……。もう、なんなのですかっ。



大淀「提督……。言いたいことがあるなら、はっきりおっしゃって下さい」

提督「ああ、すまん、ぼーっとしちゃったな」

大淀「いえ、今日の執務は終わってしまっていますから、それは良いのですが……。何かお話したそうに見えて、わたしも気になってしまいます」



というより……たまには心の中を話して下さい……。




提督「あー、すまんな。ちょっと迷っていたんだ。……大淀……、君は……」

大淀「……はい」

提督「……いや、違うな。俺はもう決めていたはずだ。迷うことは無いな。大淀、しおいなんだが、現状、練度は足りているけれど改装は控えていたよな」



言いかけたことが気になります! でも、無理やり聞き出すような感じじゃ無いですし……



大淀「はい、改装による運用燃費悪化のデメリットを考え、大規模改装は控えています」

提督「潜水艦隊も充実したことだし、もう改装して大丈夫だろう。改装を実行して欲しい」

大淀「はい……それは結構ですが……。しおいが元気が無い理由はそれでしょうか? 」

提督「いや、それは違うと思う。が、まずは改装が必要だ」

大淀「分かりました、早速とりかかります」

提督「改装が終わったら、しおいを連れて戻ってきてくれ」

大淀「分かりました」



……いつもの提督に戻りました。迷うのはやめたみたいです。本当は迷っている時に相談して欲しいですけど……。でも、迷いなくまっすぐ進む提督は好きです。




――――― 夕方 提督執務室

大淀「無事終わりましたので、しおいを連れてきました」

伊401「しおい、改装終わりましたっ! 」

提督「おー、立派になったなー 」

伊401「ぶー! 見た目変わってないのに」

提督「あはは、まぁ、オーラが違うみたいな? そうそう、改装で、試製晴嵐もできただろ? 」

伊401「提督、よく知ってるね! ほら、これが晴嵐だよー! 」

提督「おお、立派なもんだ」

伊401「へへー! 」



しおい、やっぱり改装は嬉しかったみたいですね。朝のしょんぼりした様子とは違って、とても元気です。




提督「さて、せっかく改装出来たことだし、それを活かした特殊演習をやろうと思う。明後日の予定だ」

伊401「おおー! 」

提督「旗艦は大淀に努めてもらう。伊401と伊58、伊19という編成だ。敵地奥深くに侵攻して、重要拠点をピンポイントで攻撃する、という想定だ」

伊401「えっ……」

提督「明日一日かけて、詳細な計画を練ってもらう。作戦概要は後で大淀に渡しておくから、明日、艦隊全員で集まってきっちりミーティングしてくれ。なお、敵という想定で、警備哨戒の艦隊が2つほど出るから、まじめにやってくれよ」

大淀「そんな大掛かりな演習をするのですか……? それに、わたしが潜水艦隊の旗艦……? 」

提督「ああ、よろしく頼む」

伊401「了解です! じゃあ、ごーやとイクにはわたしの方から伝えておくね! 」

提督「ああ、よろしく頼むよ」




大淀「……提督、どういうおつもりなんですか? 」

提督「まぁ、全力を尽くしてくれよ。作戦が始まったら、こんな演習をする余裕は無くなっちゃうしな」

大淀「それは構いませんが……」

提督「ほい、作戦概要。準備はもう終わってるから」

大淀「拝見します……。えっ……!」



「パナマ運河攻撃作戦演習」




ちょっと短いですが、今日の投下は以上です。しおい編・前編でした。続きは明日また投下予定です。
よろしければまた是非お越しください(o_ _)oペコリ



――――― 翌朝 港

提督「さて、昨日簡単に話したとおり、お前たちは防衛側の哨戒艦隊だ。あの島にある重要拠点を奇襲しに来た艦隊を発見、迎撃して、攻撃を断念させれば勝ちだ」

睦月「ふふんっ。この睦月に任せるが良いぞ」

如月「睦月ちゃん、がんばりましょ♪ 」

曙「約束は本当なんでしょうね、クソ提督っ!」

潮「曙ちゃん、そんな呼び方ダメだよ~」

提督「あはは、大丈夫。撃退成功した隊には、全員分の間宮券プレゼント。ほら、ちゃんと用意してあるぞー」

漣「さっすがご主人様♪ 太っ腹~ 」

提督「ま、そんなわけだ。攻撃部隊の編成は明かせないが、お前たちの手が出ないような大型艦隊じゃないから、頑張ってくれ」

みんな「はーい! 」

提督「それじゃあ出撃」




――――― 同時刻 鎮守府の外れ 海岸

大淀「さ、そろそろ出発ね」

伊401「うう、緊張するね」



昨日、綿密にミーティングをして、満を持しての出発です……。潜水艦隊の指揮なんて初めてですが……何故でしょう、とても充実しています。



大淀「おさらいですが、索敵で、敵の哨戒部隊の位置をつかむこと、攻撃目標地点を見つけること、哨戒部隊が近づいてきたら、伊58と伊19がおとりになって、伊401に敵を近づけないことが大切です。がんばりましょう」

伊19「はいなのね! 成功させて、間宮券ゲットなのね!」

伊58「いっぱい食べるでち! 」

大淀「はいはい、成功したらね。では、抜錨! 」



さて、敵は警備哨戒のプロである駆逐艦隊のみんな。そう簡単には見逃してもらえませんね。




大淀「では索敵機を出します。伊19は西方向、伊58は東方向に。ただし、いったん陸まで飛ばしてから方向転換しての索敵を。索敵機の飛来方向からあたりを付けられないように」

伊19・伊58「了解なのね・でち」

大淀「伊401は静かに潜行。わたしの後方より追尾してね」

伊401「了解。潜行します」



わたしは……攻撃目標の発見を最優先……。でも、島周辺で、索敵機の飛来方向を見極めようとしているかもしれません。時間はかかりますが大回りで……。



伊19「敵艦隊発見なのね! 睦月他数名の駆逐艦隊なのね」

大淀「了解。では伊19は潜行して北方向へ。索敵機も北に向けて飛ばして下さい。敵と十分な距離があれば一旦回収。その後、できるようなら索敵機をまた飛ばして、伊401の位置を気取られないように撹乱してください」

伊19「了解なのね! 潜行っ」




伊58「!!! こちらも敵艦隊発見でち! 曙中心で、こっちに向かってるでち」

大淀「まずいですね……。よし、申し訳ないけれど、伊58は潜行して東方向に。万が一、伊401を見つけられる位置まで接近されそうなら、先制攻撃、すぐ離脱して、おとり役となって下さい」

伊58「了解でち! 急速潜行っ! 」



敵艦隊は、おそらくはこれで全部……気兼ねなく目標の捜索を…………見つけた!



大淀「目標発見! 敵艦隊の様子はどう? 」

伊19「逆方向に向かって誘導中なのね。でも発見されそうだから、早く終わらせてほしいのね~ 」

伊58「これから先制攻撃するでち。でも、追いかけられたら長くは持たないでち」

大淀「了解……いいわ、みんな上手よ……。さ、仕上げにかかるから、最後までがんばって! 伊401、出番よ! 」

伊401「急速浮上! 風上は……北! 北に向けて全速前進」



しおいの顔……。いつもの子どもっぽい顔とは違う……。強い想いを感じます。そうよ、それがあなたがずっと見ていた夢ですもの。今こそ果たしなさい……。



伊401「目標、パナマ運河。晴嵐、発進! 」



3機の晴嵐が飛び立っていきます。しおいは……じっと佇んで見送っていました。本当はすぐに潜行すべきところだけど……今は、見送らせてあげたい……。






伊19「みつかっちゃったのね! 怖いのね~~」

睦月「にひひ……見つけたにゃしぃ。ペイント爆雷、食らうがよいぞっ」

大淀「了解、応援に向かいます。しおい、行きましょう」

伊401(ごしごし)「はいっ! 」


大淀「目標補足。主砲、発射! 」(どーーーん)

睦月「みぎゃー、ロングレンジ攻撃は卑怯にゃし~」

伊19「良くも追い回してくれたのね! 反撃なのねっ 」

如月「きゃぁっ。よくもっ」

ギャーギャー




伊401(晴嵐の視界確認……目標は……)

伊401(見えた……あのコンクリートの壁……あれが目標…)

伊401(チャンスは一回だよ。よーく狙って……晴嵐……お願い! )


ひゅーーーーん ……… ドーーン


伊401「やった! 大淀さん、目標破壊です! やったやったー! 」


提督「えー、各艦に次ぐ。目標完全破壊。攻撃側の勝利とする」←全体通信です

睦月「うみゃー、負けたぁ」

曙「わたしの見せ場、まったく無かったじゃない、このクソ提督っ! 」

伊58「うう、わたしにさんざん爆雷落としたくせに、ひどいでち……」

潮「あはは……ごめんね、ごーやちゃん」




――――― 少し後 港

提督「はい、という訳で、勝利した大淀チームには全員分の間宮券な」

曙「敵チームの作戦が大淀さんなんてずるい! クソ提督の作戦で勝てるわけ無いじゃん! 」

睦月「うう、悔しいにゃぁぁ」

提督「あはは、まぁ、数でも相性でも、本来は圧倒的に駆逐艦隊有利だったんだから、このぐらいのハンデは無いとな」

如月「そうね。これは仕方無いわ」

伊58「うっしっし。そういうことでち。さ、間宮さんのところ行こ~」

伊19「すぐ行くのね! 」

大淀「はいはい、行きましょう」




伊401「その前に、あの提督……」

提督「ん? どうした? 」



しおいが、提督の目の前に行って……。うん、伝えたい気持ちがいっぱいあるんですよね。よく分かります。



伊401「なんて言っていいかわからないけど……。その……すごくすごくありがとう」(じわっ)

提督「あはは、よく頑張ったな。これが実戦になる日はいつかわからないけど……その時にはがんばってくれな」(なでなで)

伊401「ぐすっ……ぐすっ…………うん……うん……」

曙「なに女の子を泣かせてるのよ、クソ提督ーー! 」(げしっ)

提督「ぐあっ」

潮「あああ、曙ちゃん、提督を蹴っちゃダメだよ、だめーーー! 」(ドーン)

曙「ぐえぇぇぇ」




――――― 少し後 間宮さんのお店

伊58「ではでは、勝利を祝して、レッツパーティーでち! 」

伊19「あこがれのジャンボパフェなのね! 」

伊401「いただきまーす♪ 」

大淀「わたしも頂きます。買って帰ることは多いんだけど、ここでゆっくり食べるのは久し振りです」

伊401「大淀さんも、甘いもの好きなの? 」

大淀「ええ、大好きですよ! 提督がなにか悪さをした時は、間宮券を取り上げておまんじゅうを買って帰ってます」

伊19「うわぁ~。大淀さん、強いのね!」




伊58「あ、そうそう、しおいちゃん」

伊401「なーにー? 」

伊58「さっきの提督とのやりとりとか……すごく意味深だったでち。何か……二人の世界があるでちか? 」

伊19「うんうん、あれはいい感じだったのね! 提督も意外とロリコンなのね~ 」

大淀「ぶっ! なんてことを」

伊401「ああ、違う、違うの! わたしのね、夢というか、忘れ物みたいなの、提督が教えてくれたっていうか……」

伊58「???」

伊401「んとね、わたし、晴嵐を積んで、すごく遠くの敵の中枢とか運河を攻撃しに行くために作られた潜水空母だったの。だけど、建造された頃は、もう戦争も終わる頃で……。結局、どこも攻撃出来ないままに終わって……。実験で沈められて……それで艦生が終わってたんだ、前世では」




伊19「なんだか……寂しい前世だったのね……」

伊58「ひどい戦いに明け暮れてたのも嫌だけど、そういうのもさみしいでち……」

伊401「…………提督、わたしの前世のこと、ちゃんと知ってたみたい。今日はパナマ運河攻撃作戦演習だったでしょ? わたしが前世で攻撃する目標だった……すごく心残りがある場所の名前なんだ……」



やっぱりそうですよね……。先日の提督の様子……。突然の演習……。港で佇むしおいを見て、心残りのことで気落ちしてるって気づいたんでしょう。ほんと、小さな子には甘いんですから……。その優しさは素敵だと思いますけれど。



伊19「じゃあ、今日はしおいを元気づけるための演習だったのね……。うわぁ、愛されてるのね! 」

伊58「しおい、うらやましいでち! 」

伊401「えへへ~。そうかなぁ。愛されちゃってるかな! 」



ああ、駆逐艦だけじゃなく、いたいけな潜水艦まで提督の毒牙に……。うう、気苦労が絶えませんね……。





伊401「そういえば、大淀さん、潜水艦隊の指揮に手慣れてて、びっくりしました! 」

伊19「あんまり接点なかったから……もっと怖い人だと思ってたのね。でも、そんなこと無かったのね! 」

大淀「あはは……なんだか怖がられてるんですよね」

伊58「指揮してもらわなかったら、きっと上手く行かなかったでち。ありがとなのでち! 」

大淀「いいえ、感謝するのは、本当はわたしのほうなんですよ」

伊401「??」

大淀「わたしね、前世で、本当は潜水艦隊の旗艦をするために建造されたの。でも、完成した頃には情勢が変わっていてね……。輸送任務や連合艦隊旗艦なんかをバタバタと努めて……。でも、生まれた理由の、潜水艦隊の指揮をすることはなかった……」

伊19「活躍出来たとはいえ、それはちょっと寂しいのね」

大淀「それで今回、潜水艦隊の旗艦を努めて……、すごく充実してました。しおいと同じように……。そうですね、忘れ物を見つけたような……そんな気持ちになれました」




伊58「そっかぁ、じゃあ今日の作戦は大淀さんのためでもあったでちね」

大淀「えっ? 」

伊401「わたしの心残りだけじゃなく、大淀さんの心残りのための作戦だったんだぁ。大淀さんが旗艦だったのも、納得だね! 」

大淀「えっ??」

伊19「うわぁ、大淀さんも愛されてるのね! 」



そんな……確かに、わたしが急に旗艦なんて変だと思いましたけど……。わたしは、しおいみたいに、そんな様子見せてた訳じゃないのに……。わたしの前世を知っていて……それで、わたしのために……?


伊58「うわぁ、大淀さん、真っ赤になってかわいいでち! 」

伊401「大淀さん、もっと堅い人だと思ってたけど、かわいいんだね! 」

大淀「/// もう、からかわないのっ! 」

ワイワイ





――――― 翌朝 提督執務室

ガチャ

提督「ふぁーあ、ねむ……」

大淀「おはようございます、提督」

提督「うぉっ。大淀、もう来てたのか。ずいぶん早いな」

大淀「ええ。たまには提督の寝起き顔でも拝見しようと思いまして」

提督「ちゃんと身支度してから来てるよっ」

大淀「くすっ。ええ、そのようですね」



今日は、絶対に提督より早く来ようと、夜明け前から来てました。



大淀「提督……。昨日あの後、間宮さんのお店で祝勝会(?)をしましたけど……。しおいは、とっても晴れ晴れとした顔をしていましたよ。きっともう大丈夫です」

提督「そうか……。演習が意味があるか、正直自信が無かったんだが……。良かったよ」



また提督大好きな女の子が増えちゃったのが問題ですけれど……。




大淀「それから……提督? 」

提督「ん? 」

大淀「わたしを潜水艦隊旗艦にしたのって…………。いえ、お茶を入れますね」

提督「? あ、飲み物はコーヒーがいいな」

大淀「朝はコーヒーなのですね。分かりました」



…………確認するまでもありません。偶然のはずがない。提督はそういう人。その人のためになると思うことを自分で考えて、迷わず行動する。そういう、迷いのない優しい人……。わたしの好きな人……。






大淀「はい、コーヒーです」

提督「ありがと。ふぅ……やっぱ寝起きはコーヒーだな」

大淀「提督、明日からは朝のコーヒーを入れるのはわたしの仕事にします」

提督「ぇ」

大淀「早朝のお仕事、止めはしませんが、代わりにわたしも必ず来ます。よろしいですね? 」

提督「……うーん、俺のわがままに大淀を巻き込むのもなぁ」

大淀「わたしの見ていないところで執務をされる方が、よっぽど怖いですから」(にこっ)

提督「げー。信用ないのなー」

大淀「無駄遣い防止と、駆逐艦だけでなく潜水艦の子たちを、提督の毒牙から守らないといけませんからね♪ 」

提督「毒牙ってなんだよぉ……。まぁいいか。じゃあ、あんまり早くなりすぎないよう、ちゃんと時間を決めような」

大淀「はい、そうしましょう♪」



あーあ……提督に頼まれるまでは朝は来ないつもりでしたが……ついに折れてしまいました。でも仕方ありません。わたしが……一緒に居たいんですから……。



『いやぁ。俺はほんとに信用無いんだなーって、ちょっとがっかりしてたんだよ、この時』

『はぁ……ほんっと、女たらしのくせに、女心はまるでダメですね、提督は……』




本日分は以上となります。しおい編・後編でした。このエピソードは、しおいの放置ボイスを聞きながら考えました。いつかゲームでも彼女を運河に連れて行って上げたいですね。
NHKの伊400の番組、見た人多いんですねー。僕も先日見まして……。もう書き終わっていたしおい編を、いろいろ書き直したくなって大変でした。でも、あれは伊400でこっちは伊401!と割りきって、そのままにしました。晴嵐格納に苦労するとか書いても良かったかもですね。


予告を忘れてました。次は水曜日夜の投下予定です。よろしければまた是非お越しください(o_ _)oペコリ



――――― 初夏 提督執務室

漣「遠征より無事帰還しましたよ。ご主人様! 」

提督「おー、おつかれさん」

曙「超寒かったわよ、このクソ提督っ! 」

提督「すまんな、今回もきつかったろう。また間宮券やるから、これで暖かいおしるこでも食べてくれよ」

曙「ふ、ふんっ。そんなことで機嫌直したりしないんだからっ 」

潮「曙ちゃん、そんな提督を困らせたらだめだよ」

提督「大丈夫だよ、気にしてないから。でも、ありがとな、潮」(なでなで)

潮「/// ……あ、あの……きゃぁぁぁぁぁ」(バタバタバタバタ)

提督「あ、しまった、潮は撫でると恥ずかしがってしまうんだった」

曙「なに潮を泣かせてるのよ、このクソ提督っっ! 」(ゲシゲシ)

提督「ぐあぁぁぁ」

漣「潮~、まちなさーい! 」



……提督は、今日も今日とて駆逐艦と仲良くしています。……むぅ




大淀「……提督、駆逐艦へのセクハラはほんとに気をつけて下さいね」

提督「うかつだったよ。潮は撫でたらダメなんだった。でもなぁ」

大淀「?」

提督「潮は、たとえ曙に蹴られても、大淀からセクハラだと怒られても、やっぱりちゃんと撫でないとダメな気がするんだよなぁ」

大淀「?」

提督「駆逐艦だとかそういう問題じゃなくさ。あの子は、頑張って、それを褒められることを誇れるような、そんな自分になりたいんだと思う。そのためには、まず、頑張ったら俺が褒めないと、先に進まないだろ? 」



……けど、わたしが頑張った時は、褒めてくれても、頭を撫でてくれたことは無いですよね。それはやっぱり駆逐艦ひいきだと思います。




大淀「そうですね、頑張ったり結果を残した人は、ちゃんと、しっかり、本人が喜ぶ形で褒めていただかないといけないですよね! 」

提督「あ、ああ。そうだよな。まー、潮はもうちょっとだと思うんだよなぁ。最初の頃の、俺が一歩近づくだけで泣いて逃げ出した頃を思えば……」



そんな時期もあったんですね



大淀「くすっ。わたしはその時期は見ていませんが、提督がしょんぼりしている姿が目に浮かぶようです」

提督「そりゃまぁ、さすがにちょっと傷ついたけどさ……」




コンコンコン

提督「? はーい」


ガチャ


潮「あ、あの、潮です」

提督「ああ、戻ってきてくれたのか。ごめんな、うっかり撫でてしまって」

潮「いえ、わたしが、またびっくりしてしまって。ごめんなさい(ぺこり)」

提督「いや、謝るのは俺の方だ。潮が、撫でられると困るのわかってるのにうっかりしちゃったんだから。ほんと、ごめん。なるべく気をつけるからさ」

潮「はい……ごめんなさい……」



……潮、すごくしょんぼりしてますね。提督の言うとおり、撫でられるのが嫌なんじゃなくて、撫でられても素直に喜んだり甘えたり出来ない自分が嫌なのですね。……少し気持ちは分かります。




提督「うん、じゃあ、お互い謝ったということで良しとしよう。な? みんな心配して待ってるんだろ? 甘いものを食べて、元気を出すといい」

潮「はい、ありがとうございます(ぺこり)」


タッタッタッタ

オマタセー

クソテイトクブンナグッテキタ?

ソンナコトスルワケナイヨー




――――― 少し後 提督執務室

提督(黙々と仕事中)

大淀(同じく仕事中)



……潮のこと、すごく気になります。わたしも提督の病気が伝染ったんでしょうか……なんとか出来ないかと、いろいろ考えて……。たまには仲間のために、迷わずできることをしてみても良いかもしれないなんて、そんなふうに思ってしまいます。



大淀「提督?」

提督「んー?」

大淀「潮のこと考えてますね?」

提督「……顔に出てたか? 」

大淀「いえ、わたしも潮のことを考えていたので、提督もきっとそうなんじゃないかなって思いました」

提督「大淀もか……。自分の力でゆっくり成長するのも良いけど、やっぱ身近な大人としては、何とかしたいよなぁ」




大淀「そうですね。思うんですけれど、潮も結構な練度です。もう一息で改二になれますから、集中的に練度上げをしてみてはどうでしょう? 改二になったら自信がつくかもですよ」

提督「そうだよなぁ。俺もそう思うんだけど……それだけだと、もう一つ足りない気がしないか? 」

大淀「足りないですか? 」

提督「ああ。確かに性能は上がるし、ひとつの自信にはなると思うんだけど……。潮の自信のなさって、戦闘のことより、性格とか心とかが要因に見えるんだよな」

大淀「なるほど、単純に練度を上げて能力だけが上がっても……って言うことですね」

提督「俺はそう思うんだよ。大淀はどう思う? 」

大淀「そうですね……性能が上がったことで自信を持っている潮は、確かに想像出来ないですね。潮がすこしでも自信が持てるようになっている姿というと……誰かの役に立てたとか、誰かと仲良く出来たとか、出来なかったことができるようになったとか……。そうですね、確かに心に関わる部分だと思います」

提督「大淀も同意見なら、おそらく間違って無いだろう。となるとなぁ」

大淀「そうですね。心が強くなるきっかけっというのは、なかなか」




提督「実はさ、一つアイディアがある。自信は無いんだけど、上手く行けば、潮だけじゃなくもう一人、前に進めるかもしれない」

大淀「お考えがあるのですか。でも、いつもなら、それを迷わず実行してるのに、今回はどうしたんですか? 」

提督「いやぁ。俺は一緒に戦場に行ける訳じゃないだろ? 今回は、状況さえ作れば、後はうまくいくかも?って楽観できるほどの自信は無いんだよ」

大淀「なんだ、それならわたしが行けばいいじゃないですか。わたしは提督の目であり耳でもあるのですから」

提督「……協力してくれるか? 」

大淀「今更ですよ。それに……」



それに……今回はやっと、最初からわたしに相談してくれました。あなたのその変化が……私達の関係の変化が……飛び上がるぐらい嬉しいんです。




提督「それに……? 」

大淀「それに……その……わたしも、駆逐艦や潜水艦の子たちがすごくかわいく見えてきて、提督に任せるのはもったいないです。わたしが仲良くします! 」

提督「おお! 大淀もようやく駆逐艦の良さが分かってくれたか! 」

大淀「……………………」

提督「……冗談だから、そのジト目は勘弁してくれ……」



大淀「冗談はさておき、アイディアというのを聞かせて頂けますか? 」

提督「ああ、実はな、潮の話ではないんだが……」

大淀「……確かに、彼女はそういう感じですね」

提督「それで、きっと気が合うというか……。それに潮は、駆逐艦以外とは交流があんまりないから……」

大淀「なるほど、大人になっても、同じように悩んだりということを知るのは良いきっかけかも……」





……


大淀「要点は理解しました。……提督は、本当にみんなのことをよく見ていますね。言われるととても納得しますが、よく気がつくものだと感心します」

提督「……戦いに出られない以上、俺にできることなんてそのくらいだからな」

大淀「くすっ。提督も艤装を付けられたらいいんですけどね」

提督「たとえ装備できても、俺はそもそも沈んじゃうしなぁ……」


大淀「では、明日から作戦開始で良いですか? 」

提督「ああ、すまんな。見守りつつ、場合によっては手助けをしてあげて欲しい」

大淀「はい、喜んで! 」



わたしと提督の、初めての共同作戦です。気合を入れて頑張ります。



本日分は以上となります。潮編・前編でした。
後編は、金曜日の投下予定です。ちょっと忙しくて一日開いてしまいますがご容赦ください。

それではまた是非お越しくださいませ(o_ _)oペコリ



――――― 2日後 提督執務室

コンコンコン

羽黒「は、羽黒、まいりました」

提督「おー、来てくれたか」

潮「こ、こんにちは」



さて、作戦開始です……



提督「さて、来てもらったのは他でもない。今、うちの鎮守府で最も改二への改装が近いのが君たち二人だ」

潮「は、はい……(おどおど)」

羽黒「わたしが……改二なんて……つとまるのでしょうか……? 」

大淀「羽黒さんはあと練度2、潮はあと練度3で改二に改装できる予定です」

提督「改二になってくれれば、我が鎮守府の戦力は目に見えてアップするはずだ。そこで、二人には是非頑張って改二になってもらいたい」

大淀「それで……。これから暫くの間、お二人にはペアを組んで頂いて、各地の練度上げ艦隊を転戦して、早急に練度を上げてもらいたいのです」




潮「わたしがですか……無理ですー! 」

提督「言いたいことはわかる。潮は普段は遠征が多いから実戦は少なめだしな。だからペアなんだ。羽黒は歴戦の猛者だから、二人で連携すれば、潮の経験不足も補えるはずだ。羽黒は、潮のお姉さんになったつもりで、しっかりと面倒を見て欲しい」

羽黒「えええ! 」

大淀「わたしもなるべく参加してサポートすることになっています。どうか、頑張ってください」

羽黒「……はい……ご命令とあれば……がんばります……」

潮「あ、あの! よ、よろしくお願いします(ぺこぺこ)」

羽黒「こ、こちらこそ! ふつつかものですが、どうぞよろしくお願いします(ぺこぺこ)」

提督(羽黒の嫁入りセリフ、破壊力あるなー。さすがお嫁さんにしたい艦娘No1だなぁ。新婚の羽黒かぁ……いいなぁ……)



うわ、緩んだ顔! どうせまたスケベなこと考えてますねっ!



ぎゅうぅぅぅ


提督「い、いてっ! なんでつねるんだよー」

大淀「さあ、何のことでしょう」

提督「うう……。とにかく、二人とも頑張ってくれ。明日からの出撃計画は、大淀が詳しく説明してくれるから。説明を聞いたら、間宮さんのところでミーティングでもしてきてくれ。はい、間宮券」



大淀「うーん……大丈夫でしょうか……」

提督「二人のミーティングで、きっと雰囲気変わると思うんだよな。さすがにさ、一対一になれば、羽黒もお姉さんにならざるを得ないだろう」

大淀「お姉さん風の羽黒さんって……あんまりイメージ出来ないですね」

提督「あはは、そうだな。でも、戦場では主力重巡として立派に戦ってるんだ。いざとなったら度胸あると思うぞ」

大淀「そうですね……。それに、あの姉妹の一員なんですから、実は、切れたらすごーく怖いかもしれませんよ……」

提督「ああ……怒らせたら、実は一番怖いんじゃないかなって思うよ……」




――――― 少し後 間宮さんのお店

羽黒「それじゃあ、頂きますっ」

潮「は、はいっ。頂きます! 」



しーーーん



潮「あ、あの……わ、わたし……人と話すの慣れてなくて……その……」

羽黒「ご、ごめんなさい! わたっ、わたしもっ、お話するの苦手で……」


羽黒(わ、わたしがお姉さんなんだから、リードして、何かお話しないとっ!)




羽黒「え、えっと……潮ちゃんは、間宮さんのお店はよく来るの? 」

潮「は、はいっ! えっと、遠征が終わると、提督が間宮券をくれることがあって……その時は、第七駆逐隊のみんなで来ています」

羽黒「第七っていうと、朧ちゃん、曙ちゃん、漣ちゃんね。……ちょっとその……個性的な子たちですね。曙さんが、司令官さんを……その……すごい呼び方をしていてびっくりしました」

潮「そ、そうなんです。曙ちゃん、提督にだけいっつもきついんです。でも提督は、にこにこしてて全然気にしていなくて、それで曙ちゃんもムキになってるみたいで……」

羽黒「あはは、お互い、個性的な姉妹を持つと苦労しちゃうね」

潮「羽黒さんは、強そうなお姉さんがいっぱいですよね。前に、足柄さんにカツレツをごちそうになったことがあります」

羽黒「そうそう、足柄姉さんはお肉が大好きでね……」


ワイワイ


潮(羽黒さん、わたしと同じで、すごく恥ずかしがり屋さんだって聞いていたけど……。がんばって優しくしてくれて……素敵なお姉さんです……)

羽黒(な、何とか仲良くなれたかな! 知らない人と話すのは苦手なんだけど~~。ペアが潮ちゃんで良かった。これが不知火ちゃんだったりしたら、どうなっていたか……)




――――― 翌日 某海域


潮「あわわ……もう敵の攻撃が……敵に戦艦が居るんでしょうか」

羽黒「旗艦のあなたはちゃんとガードしますから、落ち着いて回避してね」

潮「はいっ! 」



思ったより上手く連携しているみたいです。潮が旗艦で羽黒さんがガードなんて、いかにも羽黒さんらしい形だと思います。



大淀「敵艦隊見ゆ。戦艦1重巡3軽巡1駆逐3です」

雲龍「第一次攻撃隊発艦! 潜水艦がいないなら気楽です」

鳳翔「次は潜水艦だらけですけどね……。わたしも攻撃隊発艦! 」

大淀「!!! 敵重巡の砲撃、来ます」

羽黒「潮ちゃん、わたしの後ろに! 」

潮「は、はいぃぃ~~」


どーーん!


羽黒「くっ。被弾したものの損害軽微。撃ち返します、全門斉射! 」


どーーーーーん


大淀「敵重巡に命中。轟沈です」

潮「すごい……」




大淀「ソナーに感あり。近くに居ます。みなさんは下がって下さい」



対潜水艦戦闘は、軽巡と駆逐艦の仕事です。



潮「よし……敵潜水艦発見! 爆雷投下っ! 」



ドーンドーン


大淀「敵轟沈確認しました」

雲龍「潜水艦退治……えらい……」(なでなで)

羽黒「わたしも潜水艦には手も足も出ませんから、潮ちゃんありがとう」(なでなで)

潮「えへへ……は、恥ずかしいです ///」




――――― 数日後 提督執務室


大淀「というわけで、あと一歩です」

提督「意外にも、すごく順調に練度上がってるなぁ。連携も上手く行っているみたいだし……。大淀から見て、問題とか無いか? 」

大淀「戦闘に置いては全く問題ありません。どちらかと言うと、やっぱり心の問題というか……」

提督「ふむー、上手くいっててもそうなのか」

大淀「不思議なんですけれど、他の人ならもっと上手くできるんじゃないか? みたいに考えてしまうみたいです」

提督「なるほどなー。『自分が自分が!』みたな姉妹に囲まれてると、ああいう、どこか不安げでおっとりした子になるのかなぁ」

大淀「でも、男性は、ああいう儚げな感じの子が好きなんじゃないんですか? 」

提督「うーん、好み次第じゃないかな。俺はどっちかっていうと……っと、脱線したな。具体的に相談とか受けてるのか? 」



ちっ。相変わらずガードが堅いです。好みを聞き出すチャンスだと思ったんですが。



大淀「はい。相談というか、泣きつかれて、がんばれ!みたいな感じですけど……」




――――― 大淀の回想


……

羽黒「大淀さん、さっき潮ちゃんがわたしを見ていた目、絶対、頼りにならない重巡だなっていう目でしたよね? 」

大淀「……全然そんな風じゃありませんでしたよ。潮ちゃん、羽黒さんは普段から優しくしてくれるのに、戦場では凛々しくてかっこいいって言ってましたよ」

羽黒「そんな……うう、そんな幻想をもたれたら、かっこ悪いところは見せられないです……」

大淀「ええ! でも、すでに十分かっこいいみたいですから、どうか今のままで」

羽黒「わたしが……かっこいい……? 姉さん達じゃなくて……。なんでしょう、すごくくすぐったい、変な感じですね」



……

潮「大淀さん、羽黒さん絶対、こんなどんくさい駆逐艦の面倒見るの大変だって思ってますよね? 」

大淀「いいえ、おとなしい子なのに、戦場では勇敢で、とてもかわいくて頼りになるって言ってましたよ」

潮「/// そ、そんなの嘘ですーーー」

大淀「嘘をついてどうするんですか。本当ですよ。実際、練度も高くて、回避といい対潜水艦といい、しっかりできています。自信を持って下さい」

潮「ううう……恥ずかしいよ~~」




提督「……なんというか、いかにもって感じだよな、二人とも」

大淀「はい。でも、連日一緒に出撃して、お二人とも少しずつ仲良くなっているみたいです。性格も似ているし、姉妹に振り回されているところも含めて気が合うみたいですね」

提督「そうかぁ。練度が上がって、二人が友達になったなら、それだけでも十分な成果かもしれないなぁ」

大淀「提督は、二人が一緒に練度上げをすることで、刺激を受けあって良い効果があると思うっておっしゃってましたよね? 希望通りの効果が出ている感じですか? 」

提督「うーん、まぁ、思い通りって訳じゃないな。本当はあと一歩進めたいなー」

大淀「具体的には、どんな風に思ってらしたのですか? 」




提督「……最初に相談した時に話したこととかぶるけどさ 」

大淀「はい」

提督「羽黒は、姉たちに遜色ない能力を持ったすごい重巡だよな。でも、自分は姉たちに劣っていると考えていると思うんだよ」

大淀「そうですね……確かにそう思います」

提督「それはさ、多分、いろんな場面で、姉たちが、様々な決断をしたり、妹を守ろうと頑張ってる姿を見て、自分は守られてる、自分はそんなことは出来ない、みたいに感じることが多かったからなのかなって思ってな」

大淀「……」

提督「でもさ、羽黒も、お姉さんの立場になって、誰かを守ろうとしたら、同じようにできると思うんだよ。それだけの心と能力を持ってるからさ。そして、実際にできたら、それが自信となって、もっと前に進めるかなって」

大淀「確かに……はい、お姉さんとして、まだまだ不慣れな感じですが、強い心で潮を守ってると思います」




大淀「羽黒さんの自信につながるっていうのはなんとなく分かります。でも、潮にとっての良い効果っていうのが良くわからないんです」

提督「そうだなぁ。漠然とした話だし、あと大淀みたいなタイプだとピンと来ない話かもしれないけど……」

大淀「?」

提督「恥ずかしがりで自信の無い性格にコンプレックスを持ってるわけだよ、潮は」

大淀「はい、それは分かります」

提督「で、そういう自分をダメだと思って、しゅんとしちゃうわけだよな」

大淀「はい」

提督「じゃあ、自分と同じように、恥ずかしがりで自信が無い性格なのに、すごくかっこいい! っていうお姉さんがいたら、何か感じるところがあると思うんだよな 」

大淀「あ……なるほど……」




提督「恥ずかしがるな、自信を持て。こんなこと言われたってできるもんじゃない。持って生まれた性格だってあるし、自信なんて、自信を持てるような経験が無いとつかないんだし。でもさ、自分とよく似ているけどかっこいい大人とか見たらさ。自分の弱さとかコンプレックスを、許容したり、この性格でも立派に成長できるって感じたりできるかなってさ」

大淀「はぁ……確かにその通りかと思います。ほんっとに、よく見てますね」



今回は重巡の羽黒さんの事も含みますから……。駆逐艦だけじゃなく、みんなのことを、ほんとによく見てます。



提督「ま、お父さんみたいなものだからな、俺は……。っと、これは失言だ、すまん、聞かなかったことにしてくれ」

大淀「はい、お父さん♪ 」

提督「ぐぬぬ……。いや、俺みたいな若造に父親目線で見られてプライドが傷つく人も居ると思うから、ほんとに聞かなかったことにしてくれ」

大淀「はい、口止め料は考えておきますね♪ 」



……そう、分かっていました。駆逐艦を特に可愛がるのもそう……。この人は、艦娘みんなを、保護者のような、父親のような、そういう目線で見ています。100人以上の娘を抱えて……提督も気苦労が絶えませんね。




――――― 数日後 提督執務室

提督「羽黒、改二おめでとう」

羽黒「はい、ありがとうございます! 」

提督「潮も改二おめでとう」

潮「はい……ありがとうございます……うう、そんなに見ないでくださーい /// 」



お二人は無事改二になることが出来ました。服装も代わって、凛々しくなりましたね。



提督「さて、潮。羽黒は一緒に戦ってみてどうだった? 」

潮「え、えっと……。恥ずかしがり屋さんなのに、すごく強くてしっかりしてて……。凛々しい恥ずかしがり屋さんなんだなって」

提督「ぶっ……」

大淀「凛々しい恥ずかしがり屋ですか……。なんだかすごいですね」

羽黒「///」




大淀「わたしから見ても、羽黒さんは立派にお姉さんしてました 」

羽黒「うう、わたしなんて全然で……。潮ちゃんこそ、戦場では凛々しく前に立って、カッコ良かったです。あ、あと、わたしより大きかったです! 」

潮「そんなことないです! 本当に頼りになるお姉さんって感じで……。あとは、その、わたしも……すごく恥ずかしがり屋で、この性格を治さなきゃ治さなきゃって思ってたんですけど……。羽黒さんみたいになれるなら、恥ずかしがり屋でもいいかなって思いました」

羽黒「わたしも、この恥ずかしがり屋の性格がすごく嫌だなって思ってるんだけど……。そう言ってもらえると、ちょっと自信になります……えへへ、ありがとう」


提督「まぁ、今回は似たもの同士でペアを組んでもらった訳だが、お互いに刺激があったなら良かったよ。二人とも本当によく頑張ってくれた。ありがとう。ささやかだけど、これで打ち上げでもしてくれよ」っ間宮券




羽黒「ほら、潮ちゃん、今だよ今っ! 」

潮「は、はいぃぃ」

提督「?」

潮「あの……その、がんばったご褒美に……撫でてもらって……良いですか? 」



おお、あの潮が、自分から!



提督「……もちろんだとも。ほんとによく頑張ってくれた」(なでなで)

潮「/// え、えへへ……。ありがとうございます~~」

羽黒「よかったね潮ちゃん! 」

提督「じゃあ、不公平だし、羽黒も。よく頑張ってくれた」(なでなで)

羽黒「はわっ……、わ、わたしは…… ///」



………………(むかっ)






――――― 少し後 提督執務室

提督「うーん。無事目的達成で、めでたしめでたしなんだけど……」

大淀(黙々と仕事中)

提督「何故だろう、一緒にがんばった大淀が、とても不機嫌な気がするんだよなぁ」(ちらっ)

大淀「……」

提督「なんで怒ってるんだよー」

大淀「……別に怒っていません」

提督「怒ってるだろ~~」

大淀「……ちょっとだけ怒ってるかもしれません。提督のせいですけど」(ぷいっ)

提督「わかった、降参。ごめん、鈍くて、怒ってる理由がわからん。教えてくれ」




大淀「……がんばったご褒美になでなでしてましたね」

提督「? ああ、潮が自分から撫でてくれなんてなー。これでもう、逃げられて、曙に蹴られることも無いわけだ。大淀の協力のおかげだよ、ありがとう」

大淀「がんばった潮と、公平にって、羽黒さんもなでなでしてましたね」

提督「……あれ、まずかったか? セクハラになっちゃう? 」

大淀「そういう話ではありません。頑張った子には公平になでなでしてるのに……。わたしも頑張ったんですけどっ! 」



ああ、わたしはなんでこんなことでイライラしてるんでしょう。これじゃ八つ当たりです……。



提督「あ……、ああ。えっと……。その……、そっか、ごめんな気が付かなくて」

大淀「えっ……。あ、あの、提督……? 」




提督が目の前に……近いですよ、近いです!



提督「俺のわがままに付き合ってくれて、がんばってくれて、ありがとう。お陰で、ささやかではあるけれど、仲間の力になれたみたいだよ」

大淀「は、はい……。わたしも、仲間の力になれて嬉しかったです……」

提督「いつも……俺を支えてくれて、仲間たちの力になってくれて……ほんとうに、ありがとう」(なで……なで……なで……なで……)



やさしく、ゆっくりと……撫でられる……。提督、ちょっと緊張しているみたいです……。わたしも柄にもなくガチガチに固くなってますけど……。でも……やさしくて……わたし……わたし……。





提督「え……? お、大淀、すまん、嫌だったか!? 」

大淀「え……?」



あ、あれ……え! な、なんでわたし涙でてるの!?



大淀「い、いえ、ちょ、ちょっと気が抜けてしまったみたいで……。あ、あはは、ちょっとお手洗いに!」



だだだっ



わたし、いい歳して何やってるんでしょう……。撫でられたぐらいで泣いちゃうなんて……。わたし、こんなにも提督を……このままじゃ、気持ちを隠しきれなくなる……。わたしは、一体どうしたらいいんでしょう……。



だって提督は……



わたしのことだって、父親目線で……『娘』として見ているだけなのに……




本日分は以上となります。潮編・後編でした。
潮とペアを組む相手は羽黒さんでした。恥ずかしがり屋といえば彼女かなと!

次の投下はちょっと間があきまして18日(月)になる予定です。そろそろ終盤に入っていくかなーっていう感じですので、もうしばらくお付き合い下さいませ(o_ _)oペコリ



――――― 1週間後 夜 鳳翔さんのお店

大淀「足柄さん、お待たせしました」

明石「ついてきちゃいました、お邪魔します」

足柄「あら、明石さんも来るなんて珍しいわね。大歓迎よ」



今日はお友達の足柄さんと夕食です。同じ日に明石にも夕食に誘われたので、せっかくですから明石も連れてきてしまいました。



足柄「さ、まずは乾杯よ。鳳翔さーん、生3つお願いします」

明石「わたしはお酒はそんなに強くないですけど、こう暑いと、さすがにビールが飲みたくなりますね」

大淀「工廠は暑いからなおさらですね」


足柄「それじゃあ、かんぱーい!」

大淀「乾杯」

明石「かんぱーい!」




大淀「そういえば、明石と晩御飯は久し振りですね」

明石「そうだね、最近は夕張と、ご飯食べながら作業しちゃうことが多いし……」

足柄「明石さんはほんとに仕事好きねぇ」

明石「たはは、実は仕事じゃなく趣味がほとんどなんですけどね」

大淀「夕張っていう仲間を見つけて、最近はすっかり、怪しげな兵装開発とか改造に夢中みたいですよ」

明石「あと、夕張にバイクを教えてもらったらハマっちゃって、二人でバイクの整備改造したりツーリングしたりしてます」

足柄「なんだか……機械オタクがすっかり悪化しちゃったわね」

大淀「すごく楽しそうですからいいんですけどね」



……でもちょっと寂しいですけど




足柄「ま、明石さんも夕張も、姉妹艦居ないし、ちょっと特殊な船でもあるから、仲間が出来たなら何よりよね」

明石「あはは、そうですね。おかげさまで充実してます」

大淀「足柄さん、姉妹艦といえば、羽黒さんはその後いかがですか? 」

足柄「羽黒も楽しそうよ。すっかり潮と仲良くなっちゃって、あの子がお姉さん風ふかせてるのが面白いわ♪ 」

明石「そういえば羽黒さん、連装砲にかわいい顔書いてもらってましたね、潮ちゃんに。本当はそういうかわいいのが好きなんだけど、姉の手前、そういう趣味を言い出せなくて……とか言ってましたよ」

足柄「かわいいわよね、あれ。わたしも書いてもらいたいって言ったら、妙高姉さんや那智姉さんに必死に止められたのよ。そんなに似合わないかなぁ」

大淀「あ、あはは……どうでしょう」(似合いませんね)

足柄「それはともかく、羽黒はずいぶん大人になったわ。自信もついて、戦場でも安心感が出たわね。提督と大淀が、頑張って仕掛けたんでしょ? ありがとうね」

明石「そうだったんですか? 」

大淀「あはは……。まぁ、いつもの提督の病気です。潮に何とか自信を付けさせたいから、羽黒も一緒にがんばってみたいな……」

足柄「提督、相変わらずお父さんしてるわねぇ。羽黒も娘の範疇に入っちゃってたかぁ」

明石「工廠で機械いじってるときは、自分も子どもみたいなんですけどね、提督」

大淀「良い結果につながったから、まぁ良しとしましょう」




――――― 1時間後

足柄「さて、お酒も回ってきたところで、大淀にちょっと聞きたいんだけど」

大淀「なんでしょう? 」

足柄「ここのところ、なんだか元気ないじゃない? 話せることなら話してみてよ」

明石「あ、足柄さんも、それで食事のお誘いだったんですか。わたしも同じ。明らかに様子がおかしいよね。どうしちゃったのですか? 」



ぐぬぬ……さすが友人たちはお見通しでしたか……どうごまかしましょう。



大淀「えーっと。そうでしたか? 別に普通ですけど」

足柄「なるほどー。とぼけるっていうことは、やっぱり提督と何かあったんだ? 」

大淀「なっ! 」

明石「提督とのやりとりが、妙によそよそしいですもんね。大淀は知らないと思いますけど、すごい噂になってますよ。提督が大淀になにかしたんじゃないかって」



知りませんでした……。うわぁ……恥ずかしいです……。




大淀「くっ……。態度に出ていたとは不覚です。普通にしていたつもりなのですが」

足柄「大淀ががんばっても、提督があんなに挙動不審じゃあねぇ……」

明石「ですね。提督の態度が不審すぎて……」



確かに……。あれ以来、提督は妙に距離を取るというか、仕事の範囲から一歩も踏み込まないように、細心の注意を払って……というかビクビク怯えて……日々をすごしています。



大淀「やっぱり二人もそう思いますか! もう、あの態度にイライラしてしまって、わたしもついつい、冷たく接しちゃうんですよ」

足柄「で、更にビクビクされると。どうしてまた、そんなことになっちゃったの? 」

大淀「そ、それは……その……」

明石「ああ、やっぱり言いにくいような何かがあったんだ! 今のままじゃ良くないから、ちゃんと教えてよ~ 」



くっ……。あんまり人に言うようなことでは無いのでしょうが……わたしもイライラもやもやが限界です。友人になら話しても良いですよね。




大淀「うーん、実はですね」(ごくごくごく)

明石「お、いい飲みっぷり! さ、飲んで飲んで話して話して」

大淀「うう、前から話してますけど、提督は駆逐艦を可愛がりすぎてて……島風の時には………暁にもこんな感じで…………」

足柄「ほんっと、提督は駆逐艦に甘すぎよね」(ロリコンねっ)



……

大淀「で、潜水艦も……」(ごくごく)

明石「ああ、しおいさんの改修は、そんな意味があったのですか」

足柄「前世からの影響かぁ。わかる気はするわね」



……


大淀「それで、さっきも話に出ましたが、潮だけじゃなくて、羽黒さんまで……」(ごくごく)

明石「提督、ついに重巡まで守備範囲に……」

足柄「ま、提督は長門さんですら娘扱いなのかもねー」



……




足柄「それで、そういういろいろがあって、それでどうして今のギクシャクに繋がってるの? 」

明石「はい、肝心な部分がよく分からず……」(ていうか提督の愚痴をひたすら聞かされただけですね)

大淀「それはですね~~」(ごくごく)

明石(大淀、ノリノリで提督の愚痴こぼしつつ、すごい勢いで飲んでたけど、大丈夫でしょうか……)

足柄「ふんふん」

大淀「羽黒さんと潮をね、よく頑張ったなーってナデナデしてたんですよ。駆逐艦や潜水艦ならともかく、重巡の羽黒さんもですよ~」

明石「羽黒さんは、確かに撫でたくなりますね~」

足柄「姉のわたしが言うのもあれだけど、あの子は保護欲そそるからね」




大淀「それで~、わたしも頑張ったのに、わたしだけご褒美なしなんてずるいって提督に言ったらですね」

足柄「あっはっは、大淀も提督と二人の時はそんな風に甘えるんだ。かわいいところあるわねー」

大淀「だってずるいじゃないですか! 羽黒さんわたしより大きいのにっ! そしたら提督、ちゃんとまじめにお礼言ってくれて、ゆっくり撫でてくれて」

大淀「そしたら……なんだか、すごく切なくなって、わたし、泣いてしまって……。それで、提督すっごいオロオロしちゃって。それからずっとおかしいんですよ~」(ぐびぐび)

明石「あー……」

足柄「あー……」

大淀「セクハラじゃない、怒ってないって言ってるのに、なんだか妙によそよそしくして……もうあんな人は知りませんっ」(ぐびぐび)

明石(さすがに、あの鈍い提督でも、気がついたのかなぁ……。大淀の気持ちに)

足柄「まー、確かに提督が腰が引けてるのが悪いわ! さ、そんな嫌なことは忘れて、飲んで飲んで! 」




大淀「zzz……」

明石「やっぱり潰れちゃいましたね。ていうか、足柄さんが潰したんですけど……」

足柄「いやー、とりあえず飲んで騒いで、少し気持ちを切り替えたほうがいいでしょ」

明石「……確かに、大淀は自分の中に溜め込むタイプですから、たまにはいいかもですね」

足柄「そうよぉ。自分から挑むにしても、迎え撃つにしても、まずは気持ちがしっかりしてないとね!」

明石「足柄さんは、恋も攻撃あるのみ!って感じですよね。そういう人から見ると、提督や大淀は、すごくじれったいんじゃないですか? 」

足柄「じれったいわねー。好きならまっすぐ攻撃すればいいのにって思うわ」

明石「あはは。そうですよね、わたしですら、少しそう思いますもん」

足柄「ま、誰にでも性格ややり方はあるわよね。じれったいけど、静かに見守ることにするわ。ストレスたまってるみたいだったら、また飲ませるけどね! 」

明石「ええ。大淀はお友達も少ないですから、足柄さんの存在はすごく大きいと思います。是非飲ませてあげて下さい」

足柄「ええ、任せて♪ 」

明石「じゃあ、大淀は部屋に届けておきますね。よいしょっと」

足柄「ずいぶん軽くお姫様抱っこするのね……」

明石「あはは、ドックでは持ちあげるのとか当たり前ですからね。足柄さんだって軽々持ち上げますよ」

足柄「キュンとしちゃいそうだからやめてね……」




――――― 少し後 大淀の部屋

ガチャ


明石「大淀、悪いけど入るよ。大淀の部屋に入るの、すごく久し振り」

大淀「zzz……ぐにゅー……」

明石「大淀がこんなに酔っ払って動けなくなるなんて初めて見たよ。ほんとに、いろいろ溜め込んでたのですね。もっと相談してくれればいいのに……って、それができれば溜め込まないよね」



どさっ(←ベッドに寝かせた音)



明石「着替えさせるのはさすがにアレだから、靴だけ脱がせて……。ふふ、明日起きたら、まず自己嫌悪でズーンでなるでしょうね、大淀のことですから。でも、少しは気分転換になったよね」

明石(大淀の部屋、ほんとに久し振り。相変わらず、かわいいものや、おしゃれなものは何もない。机と、資料や軍事書籍でびっしりの本棚……。いつもいつも、秘書として提督を支えたり戦うことばっかり考えている大淀らしい部屋…………。あれ、本棚の一角が、前と明らかに違う……? )


明石「背表紙が明らかに他のと違う系の本が集まる一角。はて……? 」

明石「どれどれ……『気になる男を射止める10の方法』『男を釘付けにする愛されセックス』『男心を理解する本』『オタク男の落とし方』……。この一角、全部この手の本……うわ、結婚情報誌もある……」

明石「見なかったことにしよう……。見たと知られたら、きっと大淀は超怒りますね……。数年は根に持たれます……」(がくがく)



明石(大淀らしい……。まずしっかり勉強して作戦を立てて。そうしないとなかなか行動出来ないんですよね。でも、頑張って勉強してるなんて、大淀、偉いね……報われるといいね……)





本日の投下は以上となります。次は水曜日に投下予定です。
この世界の明石さんは、夕張とすっかり仲良くなって、バイク改造して遊んだりしてます。乗ってるバイクはカワサキです(どうでもいいですが)。

そろそろ終盤です。よろしければまた是非お越しください(o_ _)oペコリ


――――― 翌日 1000 大淀の部屋


がばっ!


大淀「あ、あれ、部屋にいる……? 明るい……? 」



確か……足柄さんと明石と鳳翔さんのお店で夕食を……なんでベッドに……



大淀「そっか、酔っぱらっちゃったのね……どうやって帰ってきたのかしら……」



太陽がずいぶん高いところにありますね…………



大淀「う、う、う、うわぁぁぁぁ! 大変です、大変!! 」



だ、大失態です! わたしとしたことが、飲み過ぎて寝坊!! とにかく急いで行かないとっ




大淀「着替え……って服を着たまま寝てしまったのね。もう仕方ない……軽く身支度だけしてすぐに……」



あれ、扉に手紙? が挟まっているのが見えます。遅刻のお叱りでしょうか……



大淀「なになに……『おはよう。きっと起きられないでしょうから、大淀は艤装検査のため工廠に寄ってから執務室に行きます、と提督に伝えてあります。だから、ゆっくりで大丈夫だよ。明石』



あああ! 持つべきものは友達です。明石、今度なんでもごちそうします! はぁぁぁ、良かった~~。


とは言え、失態です。取り返すためにも、早く執務室に行きましょう。うう、昨夜はうっかり飲み過ぎました……。提督の話をいろいろ聞いてもらったりしたような記憶がおぼろげに……




――――― 少し後 提督執務室前


ふう、何とかお昼前には辿りつけました。本当は明石に一言かけてから来たかったけど、時間優先です……。あれ、話し声が聞こえますね。誰か来ているのでしょうか。



提督「遠征お疲れだったな、今回もありがとう、綾波」(なでなで)

綾波「ありがとうございます。……あの、今日は大淀さんは? 」

提督「ああ、今日は艤装のチェックがあるそうで午後からなんだ」

綾波「そうなんですか……あの、司令官。その……お話があります。他に人がいるときにはできないお話なので……」

提督「ん? どうした? 」


ピタ




声が聞こえてしまいました。そういうことであれば、わたしはもう少し時間を潰してきましょうか……


綾波「司令官……綾波は……司令官のことが好きです! 愛してます! 」

提督「なっ! 」



!!! 前置きなしに一直線ストレート! これは間違いなく告白ですよね……



提督「あ、え……え? 」

綾波「大好きなんですっ! 」



…………だめだめ、これじゃ盗み聞きです。誰も近づかないように、聞こえないくらい離れた場所で見張りしていましょう……(しょんぼり)




――――― 少し後 提督執務室近く 中庭への玄関


大淀「はぁぁ……」



綾波……なんていう行動力……。二人っきりになったら伝えるって決めていたのね。何の迷いもなくまっすぐに……。

正直言えば羨ましい……。わたしもあんな強さがあれば……。

綾波はきっと泣いて出てくる……。彼女もきっと、分かっていたけど告白したんです。本当にすごい勇気です。尊敬します。



シツレイシマス アリガトウゴザイマシタ


たったったったった


どんっ(←綾波が大淀にぶつかった音)




綾波「きゃぁ」

大淀「綾波、前を見ないで走ると危ないですよ」

綾波「お、大淀さん……」(うるうる)

大淀「ごめんなさい、最初だけ聞こえちゃったから分かります。勇気を出して、よくがんばりましたね」(抱きっ)

綾波「ぐす……う、うう……大淀さん……うわぁぁぁん……」

大淀「あなたは素敵よ。自分に嘘をつかず、まっすぐ進む勇気。本当に……素敵……」(なでなでなでなで)

綾波「うわぁぁん……ぐすぐす……」




――――― 少し後 中庭 ベンチ

大淀「落ち着きましたか? 」

綾波「はい……ありがとうございます。落ち着きました」

大淀「そう……良かった。やっぱり、思いっきり泣いてスッキリしちゃうのが一番ですね」

綾波「あの……大淀さん……聞こえていたって」

大淀「ええ、ごめんなさい。執務室をノックしようとしたところで、綾波が二人きりで話したいって提督に言っているのが聞こえて、入室を躊躇していたらね……。その、最初の……告白を聞いて、慌てて離れて見張りをしていたんですけど……」

綾波「そうだったんですか……ありがとうございます。結果は……言わなくても分かりますよね」

大淀「ええ……。でも、綾波も最初から分かっていたんですよね」

綾波「はい……。もちろん、都合よく結ばれる夢も見ましたけれど……。やっぱりダメでした。てへへ(ぺろ)」




大淀「鎮守府によっては、大勢の艦娘とケッコンカッコカリして生活が大変な提督もいるらしいですけれど……。うちの提督は、本当に堅物で参ってしまいますね」

綾波「でも……そういうところが素敵です……。お父さんみたいです」

大淀「ほんと、お父さんですよね」

綾波「提督に言われちゃいました。綾波の『好き』は、きっと暖かな家族を求めての気持ちだと思う。俺は綾波の恋人にはなれないけど、家族にはなれる……というかもう家族なんだから、どうかもっと甘えて欲しいって」

大淀「あの人らしいです……」

綾波「でも……でも……もちろん、お父さん大好きっていう気持ちもあったけど……それだけじゃなかったんです……ぐす……ぐす……」

大淀「ええ、わかっているわ。本当に提督は、女心が分かってなくて困ってしまいますね」(なでなで)

綾波「ぐす……ぐす……」




大淀「でも……先程も言いましたが、綾波はすごい勇気の持ち主ですね。夜戦で単艦突撃するだけのことはあります」

綾波「/// そんな……」

大淀「わたしは、とてもそんな勇気はありません。正直言えば、羨ましいです……」

綾波「それじゃあ、大淀さんはまだ告白していないのですか? 」

大淀「えっ? 」

綾波「だって、大淀さんも司令官のことがお好きなんですよね? 告白してないのですか? 」



ど、どうしましょう……。でも……まっすぐがんばった綾波に嘘をつくのは……嫌ですね。



大淀「/// う、うん、まだです……。その、どうしてわたしが、提督が好きだってわかったのですか? 」

綾波「? うーん……ずっと前からそうだと思っていましたし、わたしだけでなくみんなそう思っていると思います」

大淀「そうなんですか……」




ずーん……。わたし、ポーカーフェイスのつもりだったんですけれど……。



綾波「くすっ……。大淀さん、すごく頭が良くて、何でもスマートにできる人だって思ってましたけど……。今、すごくかわいいです」



がーん!



大淀「くっ……。そうです、恋愛は全然経験が無いので、ダメなんです。オロオロしてしまって、綾波みたいな勇気も持てなくて、うじうじしてるんです……」

綾波「あは、よしよしですよ」(なでなで)



なっ! 駆逐艦の子になでなで慰められたっ!



綾波「先程、提督に言われたんですけれど……。提督は心に決めた人がいるそうですよ」

大淀「なっ!!!」



意外ですっ。そんな様子は全く……




綾波「綾波は思うのですが、その心に決めた人ってきっと……大淀さんです」

大淀「!! そ、そんなはず……ありません……。提督はきっと、わたしのことだって娘としてしか……」

綾波「綾波は司令官が大好きですので……ずっと司令官を目で追ってました。大淀さんもそうですよね」

大淀「ええ、提督は、駆逐艦の子たちに気を配って見ているか、あのスケベな人は、大きなおっぱいをいつも目で追ってますね! 」

綾波「大淀さんから見るとそうなんですね……。司令官と目があう時も多いんじゃありませんか? 」

大淀「ええ、ちらっとこっちを見ては、バツが悪そうに目をそらします。いたずらを見つかった子みたいです」

綾波「くすっ。違いますよ……。司令官は、大淀さんのことをすぐに目で追っちゃうんです。だから、大淀さんが司令官を見ると、目があっちゃうから、慌てて目をそらすんだと思います。大体、いつでも大淀さんを見ていますよ」



……うそ……そんなはずは……




綾波「わたしはダメだったけど……大淀さんならきっと成功します。そしたら……提督がお父さんだから……大淀さんはお母さんになっちゃいますね。楽しみです~」

大淀「/// そんなわけないですっ」

綾波「ふふふ。今日は、告白は上手く行かなかったけど、かわりに、大淀さんがすごくかわいいって分かって良かったです。応援していますから、告白がんばってくださいね! 」



え……あ、あれ……わたしも告白する流れ……?



大淀「うう、わたしにはそんな勇気は……。綾波みたいに強くないです……」

綾波「大丈夫ですよ。大淀さんならきっと上手くいきます。もし、ほんとうにもしも、ダメだったら、わたしがいっぱい慰めます……。大淀さんがしてくれたみたいに」(なでなで)



まっすぐな……この子は本当に迷いがない……こういうことろ、提督に似ています。本当の親子みたいですね……。わたしも……この子の勇気を借りて……頑張れるでしょうか。




大淀「……ええ、綾波、ありがとう。綾波みたいにまっすぐ飛び込む勇気は無いかもしれないけれど……わたし、頑張ってみます」

綾波「はい、がんばってください!」(にっこり)



自分が好きな人に告白する女を応援する……。まっすぐで勇気があってとても綺麗な心を持つ子。こんな素敵な子を振るなんて、提督はなんて罪な男なんでしょうか。この子を振ってまで大事に思う心に決めた相手というのは……。本当に……わたし……?



そ、そんなわけありません!!!



で、でも……もしかしたら……やっぱり、がんばってみようかな!



『これで綾波に勇気をもらって、それこそ死ぬ気でがんばったのに……提督の鈍さのせいで台無しでした!』

『……いや、あれは俺のせいじゃないよ……』





本日分は以上となります。綾波編でした。綾波はSSへの登場はイマイチ少なめな気がしますが、僕は大好きです。
時報もすごく癒やされますので、あまり使っていない方は是非この機会に!

あと、前回はたくさんコメント頂きましてありがとうございます。明石さんと夕張は、オイル漏れとかキャブ不調とか大好き系女子なので、当然KWSKなのです。

次は金曜日に投下予定です。そろそろ終わりが見えてきました。よろしければまた是非お越しください(o_ _)oペコリ



――――― 数日後 夕方 工廠


提督「遊びにきたぞー」

明石「提督、いらっしゃい。あれ、大淀も一緒なんですか? 」

夕張「大淀さんも一緒なんて珍しいですね」

大淀「ええ、たまには参加してみたいなと思いまして」



提督みたいな、趣味に夢中になる男性は、共通の趣味があると一気に二人の距離が縮まるらしいです(出典:オタク男の落とし方)。そう考えると、実は明石と夕張が一番提督に近いのでは……! わたしも各種開発や装備に関しての知識はしっかり勉強してありますから、提督に機械好き仲間と認めてもらうのですっ! という意気込みで、工廠に遊びに行く提督についてきた次第です。




提督「ほんじゃ、今日も昨日の続きと行くか」

夕張「あ、実は今日暇だったんで、オーバーホールまで済ませちゃいました」

明石「さっき試運転してきましたけど、バッチリでしたよ」

提督「えー! バラすの見たかったのになぁ。俺、バイクって全然いじったこと無いからさ」

明石「あ、もう一台、ジャンク品取り寄せたのが届いてますから、よかったらあっちをバラして見て下さい。部品取りにしか使えないかもなので」

提督「おお、じゃあ早速バラすよ。大淀、一緒にやろうぜ」

大淀「は、はい……」



ま、まずいです。わたしは艦娘の艤装や装備はひと通り勉強していますが、それ以外の機械は全くダメなんです……





……

提督「大淀、プラグとって」

大淀「プ、プラグですか……こ、これかな……? 」

提督「ありがとう……って、これモンキーレンチなんだけど……」

大淀「す、すみません、プラグってわからなくて……」

提督「工具の横に落ちてる、芋虫みたいな機械ってわかるか? 」

大淀「ありました! 」

提督「それそれ、サンキュー」




……

提督「よし、かかった! ちょっとアイドリング調整するから、タコメータみててくれる? 」

大淀「は、はい……(タコのメータ……? それらしいのは無いですけど……)」

提督「このぐらいか……今の回転数どのぐらい? 」

大淀「え、えっと、足なら八本だと思いますけれど……」

提督「……えっと、ハンドルの真ん中にある2個のメーターの左の方を見て、その数字×1000を教えてくれるか? 」

大淀「は、はい……えっと、およそ1600です」

提督「ありがと、じゃあちょっとずつ落とすから1200になったら教えてくれ」

大淀「は、はい 」


……




提督「明石ー、エンジンは大丈夫だったぞ。アイドリングもちゃんと安定してる」

明石「そうでしたか、いやー、良い買い物でした! 」

夕張「これが大丈夫なら3台になりますね。提督もツーリング一緒に行けますよ! 」

提督「あはは、まぁ、そのうちにな」

大淀(しょぼーん……)


提督「大淀、バイクとか車は全然なんだな。つまんなかったんじゃないか? 」

大淀「い、いえ、ちょっと戸惑いましたけど……。すみません、わたしは艦娘関係の機械にならそれなりに詳しいのですが……」

提督「仕事で覚えちゃうしなぁ」

夕張「大淀さんもバイク乗りたいならもう一台取り寄せますよ! 」

大淀「い、いえ……運転もできませんし……お気持ちだけで……」

提督「ま、今日は俺の趣味にわざわざ付き合ってくれて、ありがとな」



うう……大失敗です。機械にダメな子って思われましたよね。逆に距離がひらいてしまった気がします……。




――――― 翌日 昼 提督執務室


昨日は失敗してしまいましたが、今日は負けません!

男子を射止めるには、甘やかすのが一番! 「あーん」なんてとっても効果的。「一口ちょうだい」「しょうがないわね、はい、あーん」なんていう流れができたら、もう二人は恋人ね!(出典:気になる彼をゲットしちゃおう!)

これです! この分野では、雷や瑞鳳が圧倒的に進んでいます。わたしも負けてはいられません! 今日は執務室でお弁当ですから……チャンスですっ。


提督「今日は幕の内弁当か。鳳翔さんには感謝だなぁ」

大淀「そうですね。頂きます」


さて……作戦開始です……ドキドキ


大淀「うわぁ、この金時豆、おいしいなぁ」(ちらっ)

提督「そうなのか? どれどれ……うん、確かに美味いな」(もぐもぐ)



し、しまった! 同じお弁当ですから、『美味しい』『一口頂戴』の流れは無理ですっ。……落ち着くのよ大淀、戦場では予想外の出来事なんて当たり前……ここで冷静に対処しないと……




大淀「提督、確かエビフライお好きでしたよね? 」

提督「? ああ、好物だが」

大淀「では、わたしの分も食べて下さい」

提督「いやー、大淀のおかずを奪うほどじゃないよ。気持ちだけ受け取っておくよ」

大淀「まぁまぁまぁまぁ、そうおっしゃらず、わたしは食べないつもりなので、もったいないですから食べて下さい」

提督「うーん、そこまで言うなら頂こうかな」



かかりました!



提督「じゃあ、頂きます」(はしをのばしてきて……)

大淀「いけませんっ!」(ばしっ)

提督「いてっ。ど、どうした、やっぱり自分で食べることにしたのか? 」

大淀「提督、分かっていません! ここは、口を開けるところです! 」

提督「??? 口を……開ける? こうか……?」(ぱかっ)



い、いまです……ここで『はい、あーん』って言ってやさしく口に……




大淀「そ、そう。それでいいんです。そ、それでは……行きます! 」



ゆ、ゆっくり口に……だめ、恥ずかしくて出来ません!



大淀「と、とりゃーー!」



……エビフライが一直線に提督の口に飛び込んで行きます……



提督「もがっ!」(AA略)



ええ……わかります……これは違います。どこかで間違えました……



提督「もぐもぐ。確かに頂いた……。大淀、どうしたんだよ。何か怒らせるようなことしたか……? 」



ああもう、ひとの気もしらないでっ!



大淀「怒ってません! 知りませんっ! 」(ぷいっ)

提督(えー……ほんと、なんで怒ってるんだ……?)




――――― 翌日 朝 提督執務室前廊下


……昨日も大失敗でした。でも、しっかり勉強しなおして来ました。今日こそは大丈夫。



今、男子に最も人気があるのは、やっぱり「ツンデレ」。普段はツンツンと冷たく接して、でも、仲良く出来たり優しくされると、急に可愛くなっちゃう子が大人気!(出典:いまどきのモテ系女子)


大淀「よし……作戦開始。(ガチャ)おはようございます」

提督「お、おはよう」



……

提督「お、もう計画できたのか……ありがとう」

大淀「勘違いしないでくださいねっ。別に提督のためにやったわけではありませんからっ」

提督「あ、ああ……」



……

提督「さて、一段落ついたし、お茶にするか」

大淀「あら、そういえばお茶が出てくると思ってるのですか? 虫が良いですね」

提督「い、いえ。自分で入れますから、はい……」




――――― 夕方 提督執務室


提督「なー、大淀、ほんとに何を怒ってるんだよー。いろいろ考えたけど分からなくて、仕事が手に付かない。頼むから教えてくれ……な? 」



…………どうやら……失敗だったようです。



大淀「いえ、わたしも、いろいろ思うところがあったのですが……失敗したみたいで……ご迷惑をおかけしました」(ぺこり)

提督「いやー、失敗は別にいいんだけど、どうして怒ってるのかって」

大淀「ですから、怒っていません。本当です」

提督「だってなー……ここのところ明らかにおかしいし……どう見ても怒ってるだろ? 」

大淀「本当に怒っていません! では、今日はもう失礼しますっ! 」


バタン


提督「……どう見ても怒ってるよなぁ……一体どうしちゃったんだ?」



大淀「ああもう! ああもう! 戦闘はちゃんと作戦通りに行くのに、どうして恋は上手くいかないのっ! 」




その後も、毎日いろんな作戦を実行してみましたが……



……

『かわいい語尾を付けて、彼をキュンとさせちゃおう!』


大淀「大淀、今日もがんばるぴょんっ! 」

提督「お、大淀……? 」

大淀「/// わ、忘れてください~~! 」



……

『たまには髪型を変えて。堅物な彼なら子どもっぽい髪型のほうが喜ばれるかも』


提督「大淀、珍しいな。今日はおさげにしてるんだな」

大淀「は、はい……どうでしょうか? 」

提督「うーん……時雨を呼んでくれ! 」

大淀「? は、はぁ……」


時雨「提督、僕を呼んだかい? 」

提督「ああ、見てくれ、今日は大淀がお揃いなんだ」

時雨「本当だ。大淀さん、素敵だね」(にっこり)

大淀「あ、ありがとう……(提督に言って欲しいのに……)」

提督「うんうん、並ぶと姉妹のようだ」

時雨「そうかい? 大淀……お姉ちゃん……(ボソ)」



なんて破壊力……負けたわ……



大淀「時雨、かわいいわ」(抱きっ)

時雨「うう、ちょっと苦しいよ……その……お姉ちゃん」

提督「うんうん、素晴らしい……」





……

『今話題の例の紐!』


提督「大淀……。その紐はなんだ……? なんだか動きにくそうだけど……」

大淀「なんでもありませんっ! こんなものはこうですっ(びしっ)」

※筆者注)わからない人は「例の紐」でぐぐって下さい。





何故でしょう……しっかり情報を集め、作戦を立てて挑んでいるのに……上手く行きません……。


いいえ、諦めません! 自分の経験不足から躊躇していましたが……ここはやはり大人らしく…


 お 色 気 ♪


で攻めましょう。いえ、最初からそうすべきだったのです! ちょっと自信ない部分もありますけれど……大丈夫、自信を持って……大淀、がんばります!





本日分は以上となります。作戦立案に定評のある大淀さんの、華麗な戦いの回でした。
次は日曜日に投下予定です。予定ではあと3~4回で終わりです。よろしければまたお越しください(o_ _)oペコリ



――――― 2日後 1800 提督執務室

提督(書類仕事中)

大淀(書類仕事中)


大淀「さて、わたしのほうは、ほぼ終わりですね。提督はいかがですか?」

提督「うーん、あと1時間ぐらいかな」



計画通りっ! そうなるように仕事を割り振ったのですから。



大淀「そうですか。それでは、1時間後ぐらいにお夕食をお持ちしますので、ご一緒にいかがですか?」

提督「悪いな、助かるよ」

大淀「いいえ、お気になさらず。では、また1時間後に戻ってまいります」


提督(全面的に様子がおかしかった大淀だけど、昨日今日は結構普通だったなぁ。時折ブツブツ言ってるぐらいで……。食事を一緒になんて、やっと仲直り? なのか……?)





――――― 少し後 大淀の部屋


よしっ! よしっ! ここまでは完璧です。今日こそ……今日こそは……!


まずは着替えです……大至急で取り寄せた……白のノースリーブシャツ、かわいいミニスカ、メガネも細フレームのかわいい感じのにして……。


髪型は、おさげで失敗しましたから……思い切ってポニーテールで!


うう、なんか幼く見えるかなぁ。やっぱりもうちょっとアダルト向けファッション誌を参考にすればよかったでしょうか……。でも、こんなの誰かに見てチェックしてもらう訳にもいきませんし……。大丈夫、いつもと雰囲気を変えて、意識させればいいんです!



…………急に自信が無くなってきました……。どうしようどうしよう……。



あー! でももう時間です。迷ってる時間は無いです。行かないと行かないと!


しかも誰にも見つからないように! ルート設定は念入りに……


あせあせ





――――― 1900 提督執務室


提督「ふう、終わった。ちょうど1900か。待たせなくて済みそうだな」


コンコンコン


提督「ほーい、どうぞ」

大淀「お、大淀、入ります……」


ガチャ


おずおず


大淀「その……お約束どおり、お夕食をお持ちしました…… ///」

提督「おー、すまんな……………(だ、誰?)」





提督(私服! ポニーテール! メガネも違う! 女学生みたいな大淀だと……! イメージとしては……鈴谷と同じクラスの、でも地味で真面目な委員長が、デートでがんばって慣れないおしゃれをしたみたいな……って、我ながら例えが変態的だ)

提督(いや、でも、ほんとに……普段とイメージが全然違う。こうやって見ると、大淀も普通の女の子なんだなぁ)



提督……無言です……。ま、まさか引かれた!



大淀「わたっ、わたっ、わたしは、お仕事終わった後ですし、プライベートですし! 軍服を着ているのも変かなーって思ったんです。あと、暑いから髪もアップにしてみたりして! 」

提督「あ、あはは、そっか、暑いもんな。いや、びっくりしたけど、すごく可愛いよ」

提督(あ、うっかり変なこと口走った。またセクハラだって怒られるか……? せっかく機嫌直ったみたいなのに……)


大淀「/// い、いやですよ、提督、からかっては。さ、お夕食持ってきましたから!」



可愛いですって! これは……これはいけます! 今日こそ……勝利を!





大淀「せっかくですからお酒でもと思いまして、日本酒と、あとは、おつまみ風のお弁当をお持ちしました」

提督「お、いいね。それじゃあ、乾杯と行くか」

大淀「乾杯」


カチャン



提督「いや、でも、ほんとに驚いたよ。大淀の私服姿って初めてだったから」

大淀「わたしだって、私服ぐらい持っていますよ(あわてて買ったんですけど)」

提督「そりゃそうだよな。でもさ、いつも軍服だから、そうやって女の子らしい服着てると……。すごく失礼かもしれないけど、大淀も女の子なんだなって思うよ」


提督(とはいえ、あのスリットは軍服らしくなくて……女の子と言うより「女!」って目で見ちゃうけどな……見ないように努力してるけど)





大淀「くすくす……ほんとに失礼ですねっ。じゃあ普段は何に見えているんですか? 」

提督「あはは、そう聞かれると困るけど、軍服でイメージが固まっちゃってるっていうか。そうだなぁ、大淀もさ、俺が、いまどきの若者風のラフなかっこしてるの、あんまり想像つかないだろ? 」



…………確かにあまり想像つきません。提督はいつも軍服か、作業着……。



大淀「ぐぬぬ……反論できません。でも……提督にそういう服装は、あまりに似合わなそうです」

提督「俺もそう思うよ。でも、大淀は違うな。すごく似合ってる」

大淀「///」



考えてみたら……提督には、仕事ぶりや頑張りを褒めてもらったことはたくさんありますけど、女としての部分を褒められたのは初めてかもしれません。恥ずかしいですけど……やっぱり嬉しいです。



提督(なんというか、容姿とか女らしさ的な部分でなにか言うと、怒られるんじゃないか、嫌がられるんじゃないかと我慢してたけど……意外と普通に話せるものなんだなぁ)





提督「この日本酒は、飲みやすい感じだなぁ。たまにはこういうのもいいな」

大淀「わたしは、あんまり辛いのよりこのぐらいのほうが好みですね。これは加賀さんが大好きなお酒なので、鳳翔さんがいつも仕入れてくれているそうですよ」

提督「あはは、加賀だけに石川の地酒かぁ」

大淀「明石は灘のお酒が好きですし、やっぱりゆかりの土地に関係するのでしょうか」

提督「じゃあ、霧島は芋焼酎霧島が好きなのかな、やっぱ」

大淀「くすっ。どうでしょう」

提督「こうやって執務室で飲むのもいいな。いっそ、執務室にカウンターバー作って、みんなが好きなお酒でも揃えてみようか……」

大淀「提督、そんなことをしたら、毎晩、隼鷹さんを中心に酒盛りになってしまいますよ」

提督「……やめておこう」

大淀「くすくす、それがいいですね……」


提督(ポニーテールだから……酒が回ってきて、ほんのり赤くなったうなじがみえる……いかんいかんいかん! 俺は何を考えてるんだ……)




……こうやって二人でゆっくりお酒を飲むなんて……なんだか楽しいです。もっと早くこういう機会をつくればよかったですね……。


って、いけないいけない! わたしは作戦があるんです……もうちょっとタイミングを測ってから……。





提督「そういえばさ、もう大丈夫そうだから聞くけど……。一昨日ぐらいまで、すごく様子が変だっただろ? 良かったら理由を聞かせてもらえないか? 俺が原因なら、できれば気をつけたいんだよ」


……ぐぬぬ、相変わらず堅物です。なんか機嫌治ったみたいだからいいかーって済ませればいいのに、自分が原因だったら治さないと、みたいに気にするんですよね。



大淀「いえ、提督が悪いわけでは無いんです。ご迷惑をお掛けしました」



本当は、提督が鈍いのが悪いんですけど!



提督「うーん、そう言われてもなぁ」

大淀「えっとですね……。わたしも、わたしなりに挑戦していることというか……頑張りたいことがあります」

提督「うん」

大淀「それでその……わたしも器用なタイプではありませんので、なかなか上手く行かなかったり、提督にご心配をお掛けしたりしてしまったようです」

提督「そっか……詳細は聞かないけど、頑張っていたんだな。それなら、機嫌が悪くなるぐらいどうってことない。大淀の挑戦、できれば応援させてくれ」


なでなでなで





また子ども扱いして…………でも……提督……大好き……



大淀「提督……わ、わたし、ちょっと酔っちゃったみたいです。暑くなって来ちゃいました……」



ここでボタンを外してっ。このために買ったシャツなのですから! うう、でも恥ずかしい……



大淀「提督…………」(うるうる)



提督(ぐ、ぐおぉぉ。なんだよ、そんな、泣きそうな、すがるような目で、震える声で……。必死に誘惑してるのか!? でも、そんな痛々しい感じじゃ、『はいそうですか』なんてできるかっ。大淀、やっぱり本気で俺のこと……)

提督(てか、胸元が……だめだ、見るな俺! このまま流されちまう。俺はまだ決心してない。流される訳にはいかん! )





提督「あ、ああ。暑いな。窓あけよう、窓」


スタスタスタ


ガラガラ


提督「ふー、いい風だな」



大淀「…………」



提督……わたしを見もしない……第二ボタンまであけてるのに! 高雄さんや愛宕さんのおっぱいをいつも目で追ってるくせに! しかも……窓際から戻ってこない……距離を……取られた……?



提督(俺は……どうしたらいい? 大淀は本気だ……。初志貫徹するなら、今しっかりと断ればいい……。だが俺はそうしたくない……)


提督(認めるしか無い。俺も大淀を愛してる。でも……でも、こんな流されるように関係をもっていいのか……? 俺は艦娘のみんなとどんな関係を築くと決めていた? では、特別な存在になる大淀とどうやって向き合う……? だめだ、即答できるような問題じゃない! )





提督「さて、あんまり酔っ払うのもあれだし、今日はこのぐらいにするか」



やっぱり……わかっていて距離をおいてる……わたし……女としてそんなに魅力ないですか……?



大淀「……そうですね、では、今日は失礼します」


ぽろぽろぽろ


提督「大淀……(しまった、泣かせた!)」



また泣いてしまってます……でも、でももう知りません、もういいんです!



大淀「もう……もう知りません、提督のばかぁぁぁぁ! 」



バタン





本日分は以上となります。大淀さんがかわいそうなところで区切りになってしまいました。うう、仕方ないんだよぉ。
続きは火曜日に投下予定です。よろしければまた是非お越しください(o_ _)oペコリ

見せてるおっぱいは見ないほうが失礼って元帥が朝礼で言ってた



――――― 翌日 0900 工廠


明石「あれ、提督、おはようございます。どうしたんですか、朝から? 」

提督「おはよう。えっとだな……大淀、来てないか? 」

明石「いえ、来ていませんけれど……どうしたんですか? 」

提督「そっか、いや、もしかしたら明石のところかなと思ったんだけど……、違うんならいいんだ、ありがとう」

明石「……すごく気になるんですけど。大淀、今日も当然秘書艦ですよね? 出勤してないんですか? 」

提督「あっと……うん、まぁ……」

明石(明らかにお茶を濁してますね……これは、何かありましたね)





明石「提督~? そもそも、大淀が来ないことに、心当たりがありそうに見えますけど? 」

提督「うー……あー……まぁ、ちょっと昨夜、ケンカというか、行き違いみたいなことになってな……全面的に俺が悪くて、それで、怒ってるんだろうなと……」

明石「ふぅ~ん、行き違いですか。提督、大淀の部屋には行ったんですよね? 居なかったんですか? 」

提督「声はかけたんだけど返事が無くてな……それで、もしかしたら明石のところかと……。まさか勝手に部屋に入るわけにはいかないし……」


明石(この歯切れの悪さ! 明らかに恋愛がらみっ。やっと決心して前進した……訳ではなさそうですね……)


明石(じーーーー)


提督「ぐっ……。だめだ、事情は話せない。でも、すまん、お願いだから助けてくれ! 多分、部屋に居るけど、俺が行っても出てきてくれないから。明石なら合鍵も持ってるだろうし……頼むっ」


明石(土下座しそうな勢いですね……。事情は聞き出せそうにないし、仕方ない)


明石「分かりました。もしかしたら体調崩して返事も出来ないのかもですもんね。わたしが行ってきます。提督はちゃんと執務室に居てくださいね。今、無人なんでしょ? 」

提督「あ、ああ。すまんな。もし会えたら大淀に…………。いや、伝言するようなことじゃないな。すまん、大淀がとりあえず元気ならそれでいいんだ。確認頼んだ」

明石「はいはい。行ってきます」


明石(あーあ。提督がこんなに取り乱して必死になるなんて……。そんなの大淀だけなんだよ。わかってるのかなぁ)




――――― 少し後 大淀の部屋


コンコンコン


明石「大淀、いるの? 提督が心配してるよ。返事してー? 」



しーーーん



明石「もしかして倒れてるなんてことは無いよね? 悪いけど確認のため開けるよ」



ガチャ



明石「大淀~、いないの~?」


大淀「……………………」


明石(やっぱりいた! でも……ベッドの上で体育座りして……目がうつろです……ハイライトが無いよ! )

明石「大淀……? どうしちゃったの? 体調悪いの……? 」


テクテクテク




明石「ちょっとおでこ失礼。熱は……無いけど……ひゃっ」


わしっ わしっ


大淀「…………なるほど、見た目だけでなく触り心地もこんなに違うのですね」


もみもみもみ


明石「ちょ、ちょっと、大淀、やめてっ。何してるのっ」


大淀「今更かもしれませんが、しっかり研究しないと」


明石「えっ……? うわぁぁぁ」


押し倒しっ 馬乗りっ




明石「お、大淀……どうしたの? 目が怖いよ……?」(ビクビク)


大淀「…………」


めくりっ


明石「ひゃ、ひゃぁぁぁぁ」


大淀「なるほど、生だとなおさら大きさと柔らかさが際立ちますね……これは確かに大きな違いです……必要とされるのもうなずけます」


もみもみもみもみ こりこり もみもみもみもみ


明石「ひゃんっ。や、やぁ……。やめて、大淀……どうして……?」(うるうる)


大淀「そんな顔をされるともっと揉みたくなります……。やっぱり実践は大事ですね」


明石「い、いや……あ……いやぁぁ、誰かたすけてぇぇぇぇぇ」





――――― 数分後


大淀「失礼、ちょっと取り乱してしまいました」

明石「しくしく……しくしく……もうお嫁にいけない……しくしく……」

大淀「大丈夫ですよ。そんなに大きなおっぱいがあるんですもの」(にっこり)

明石「うわーん、大淀、どうしちゃったのー。いいから訳を話して! 昨日、提督と何かあったんでしょ? 」


大淀「昨日……提督と……? ……そう、昨日……」


どよーん


明石(あ、またどん底に……)

明石「提督も心配してたよ……? お願い、話して? 」




大淀「……少し前に、ちょっときっかけがあって……わたしも……提督にしっかり気持ちを伝えようって……そう思ったんです」

明石「うん。大淀が提督のこと大好きなの気づいてたよ。ちゃんと伝える決心したんだね」

大淀「それで……いろんな本で勉強して、作戦を練って……」



……

大淀「……という感じで失敗ばかりなのです……」

明石「がんばってるのに、なかなか上手く行かなかったんだね(大淀も、仕事はできるのにこういうのはダメなんだなぁ……)」

大淀「そうなんです。どうしても上手く行かなくて……。それで、もっと大人なアタックをしようと……」





……

大淀「という訳で、昨夜は、ここまでは上手く行ったんですよ! 」

明石「うん、すごいいい雰囲気だよね……それでそれで……? 」

大淀「『わたし、酔っちゃったみたいで、暑くなってきちゃいました……』 それで、シャツのボタンを第一、第二と外して……」

明石「うわ! 大淀エッチ! 大人の誘惑だぁ……それでそれでっ! 」

大淀「……それで……それなのに……胸元なんて見向きもせず、窓を開けに行って……。そのまま近づいてこないで、お開きです……」

明石(あれ……また大淀の目のハイライトが消えた……)


わしっ わしっ


大淀「そう、わたしもこんなおっぱいだったら、今頃は……」


もみもみもみもみ


明石「ひやぁぁぁ、もうやめてぇ~~」




大淀「失礼、ちょっと取り乱しました」

明石「しくしく……しくしく……」

大淀「というわけで、おっぱいが無くて振られたんですよ、ちくしょぉぉぉぉぉ」

明石「大淀、落ち着いて! 」

大淀「これが落ち着いていられますかっ! うわぁぁぁん」


明石「ああもうっ。落ち着いてわたしの話を聞いて! 大淀、わたしがもう、提督に告白して振られてるって知らないでしょ? 」


大淀「!!!」


告白……明石が……やっぱり……


大淀「知りませんでした……。そう、やっぱり明石も提督のこと……」

明石「うん……。その時の話をちゃんとするから、落ち着いて聞いて? 」

大淀「え、ええ……」




明石「わたし、先月ぐらいから、練度上げに少しずつ演習とか参加してるでしょ? 」

大淀「ええ、改になって、装備改修や修理を効果的にするためですよね」

明石「うん……。それで、みんなに守ってもらって、どうにか練度上げしてるわけですけど……。一回、相手が予想外の空母艦隊で、わたしが空爆受けて大破扱いになったことありますよね。覚えてます? 」

大淀「提督が血相を変えて『明石のところに行ってくるから留守番頼む』って飛んでいった時ですよね。演習だからペイント弾受けただけなのに、なんて過保護な! って思いました」

明石「うん、そうなんだけどね……。ただ……。わたし、その時はもう完全にパニックというか茫然自失だったの」

大淀「……? ペイント弾を受けただけなのに……? 」

明石「うん……。わたしさ、前世でも戦闘艦じゃないから、なんというか……戦闘そのものの恐怖心もすごく強くて……。その上ね、前世で沈んだ時……空襲の第一目標みたいになってたみたいで、すごい数の敵機が群がってきて次々と爆弾を落とされて……それを思い出しちゃったの」

大淀「そうだったんですか……」

明石「提督はね、その辺をちゃんと分かっていて、空母がいない相手を見繕って演習を組んでくれていたそうです。でも、直前で編成が変えられちゃうこともあるそうで……。それで、慌てて来てくれて……」



提督らしい……。本当に、ひとりひとりの前世や、気持ちや、想いを、すごく気にして……。





明石「提督に抱きしめてもらって……もう大丈夫って言ってもらって……。それで、わたし、安心して気が緩んじゃって……うっかり……好きですって言っちゃったの」

大淀「……」

明石「前からね、好きだったの。工廠で一緒に機械いじって……夕張と三人ですごく楽しくて。わたしが寂しく無いようにっていろいろ気を使ってくれて。夕張が一緒に着任したのもさ、わたしが一人にならないように、頑張って夕張を建造してくれたって聞いたし……」

大淀「そうですね……」

明石「でもね、ダメだった。わたしのことはとても好きだし大切だけど、家族として見ているって。家族として、うんと頼って甘えて欲しいけど、恋愛関係にはなれないって」

大淀「わたしも……提督に告白した子を知ってますけど、やっぱり同じような返事だったみたいです」

明石「うん、大淀は知らないかもですけど、提督に告白したり、告白っぽいことをした子は一人や二人じゃ無いんですよ。でも、みんな同じような返事だったみたいです。わたしもその一員ですね……たはは……」

大淀「……」




明石「その時ね、提督は好きな人はいないんですか?って聞いたの。そしたら、多分自分はこの人が好きなんだろうっていう相手は居るって。でも、自分には、その人と恋愛する資格はないから、これからもずっと今のままだと思うよって」

大淀「資格……。どういう……意味でしょう……? 」

明石「わたしにも分からなかった。でも、提督が言う『多分好きな人』は、大淀だって思ったよ。いつも提督のそばにいる人……提督が一番一緒に居たい人って言ったら、大淀しかいないですし」

大淀「違いますよ……違いました……」

明石「ううん。違わないよ。だって提督は、告白寸前みたいな事された時……あの堅物な人は……まじめに、すっごくまじめに、ごめんなさいしますから。でも、昨夜の大淀への反応はやっぱり違ったね」



……そうですね、提督はそういう人。





明石「きっとね、提督は大淀が好きなのに、なんだか知らないけど、大淀の恋人になる資格が無いって思い込んでるんだよ。だから……それを頑張って乗り越えてほしいな……」


ぽろぽろぽろ……


明石「だって、提督は孤独だよ。わたしが一人ぼっちにならないようにっていろいろ気を使って……でも、その提督は誰にも悩みを言えず、一人で抱え込んで……ぐす……。わたしはあの人が好き……できたら、あの人の悩みを共有したかった……わたしが支えたかった……でも、わたしには出来なかった……うう……ぐす……」

大淀「明石……」


ぎゅっ


明石「あの人を……孤独から救ってあげて……大淀……あなたにしか……ぐすっぐすっ……うわぁぁん」

大淀「ほんとに……あの人は……困った人ですね……ぐす……ぐすっ……」



明石と抱き合って、少しだけ二人で泣きました。恋の切なさと辛さを二人で噛み締めながら……。







本日分はここまでとなります。大淀&明石の話でした。
そうそう、>>235の名言は僕も心に刻みました。

次回は木曜日投下予定です。できたら今週中には終わらせたいですね。それでは、よろしければまた是非お越しください(o_ _)oペコリ



――――― 少し後 提督執務室


コンコンコン

明石「明石、はいります」

提督「待ってた。どうだった? 大淀居たか? 」

明石「はい、すごく落ち込んでましたけど、ちゃんと部屋にいました。今日はやっぱりお休みしたいとのことです」

提督「そうかぁ。よかった、出て行ってしまったとかじゃないならいいんだ。うん」


明石「……大淀から、事情詳しく聞きましたよ? 」

提督「ぅ……」

明石「提督、大淀の気持ちは、ずっと前からわかってるんですよね」

提督「あー……うん……」





明石「で、昨日の大淀とのやりとりですけど……。わたしの時には、すぐにちゃんとお断りされましたよね」

提督「ぐぬ……。ああ、あの時はほんと……期待に応えられなくてすまん……」

明石「あ、いえいえいえいえ! わたしの話は置いといて! 大淀にはしっかり断らずに、曖昧に応対されたみたいですね」

提督「うん……そうだな……」

明石「どうして? って聞かなくてもわかりますよね。前におっしゃっていた、提督が多分好きな相手って、大淀なんですね? 」

提督「ぐぬぬ…………。はぁ、そうだな、言い訳してもしょうがない。正解。そうだよ」

明石「わたしにはわかりません。自分が好きな相手と両思いだってわかってるのに、あえて距離を取ろうとするなんて……」

提督「まぁ、そうだろうなぁ」

明石「理由……前にお話されていた『資格が無い』っていう話、聞かせていただけませんか? 」

提督「うーん、これはすごく微妙な問題でなぁ。正直、話しにくい」

明石「大事な親友の一大事ですから。わたしも引き下がれません。大淀がどれほど落ち込んで泣いていたか、提督にもお見せしたかったです」

提督(ズキッ)





明石「……提督が何か悩んでいて、躊躇しているのはわかります。でも、その結果、大淀が泣いてます……。提督、どうしてなんですか……? 」

提督「ぐ……。そうだな、俺だって大淀を泣かせたくない……。だが、俺のこの一時の感情……大淀が好きだ、悲しませたくない……それを解決することで……将来、大きな後悔を背負ったり、みんなを悲しませたりするんじゃないか? そういう感じなんだよ」

明石「将来……? みんなを……? 」

提督「うん、そうなんだ。一人の男としての俺自身と、一人の女性としての大淀との関係なら、俺は何も迷わないんだけどな……」


明石「ふーむ……。提督としての役割とか責任との関係で、大淀と恋人にはなれないみたいな感じなんでしょうか? 」

提督「うーん……。すごく簡単に言ってしまえば、そういうことになるかな」

明石「じゃあ、提督は、お仕事のために大淀を不幸にするんだ~(チラ)」

提督「ぐ……。いや、恋人にならなくても、大淀が不幸になるわけじゃ……」

明石「あーあ、さっきの大淀の様子、提督に見せたかったなー。どう見ても不幸のどん底だったなぁー(チラ)」





提督「うぐ……。……なあ、明石。俺は女心には疎いんだが……。好きな相手と、家族として仲良くやっていくのはダメなのか? やっぱり恋人として結ばれないと幸せでは無いのか? 」

明石「えっ! え、えっと……。うー……。そうですね、ダメです。『好き』っていう気持ちが報われるには、やっぱり男女として結ばれないと……」

提督「うーん……。やっぱそうなのかぁ……。俺は公平でさえあればいいと思ってたんだけど……これはやっぱり男の考えなのかなぁ……」

明石「公平? 」

提督「うん。俺は提督で、この鎮守府でただ一人の男で、ここに所属する艦娘のみんなとは特別な絆がある、そういう関係だよな」

明石「はい」

提督「だから、全員と仲良く、等しく距離をとった状態がベストだと思ってたんだ」





明石「うわぁ……。いかにも提督らしいですねえ」

提督「これってダメだろうか?」

明石「ダメもいいところですね」

提督「そんなにダメか!?」

明石「そりゃそうですよー。もっとがんばったり、もっとおしゃれしたり、もっと可愛くなったり……。提督にもっと好きになってもらうために、いっぱい努力したとして……」

提督「…………」

明石「その努力とか関係なく『全員と等距離』って、頑張る意味が無いじゃないですか」

提督「そんな、俺なんかに好かれるためにがんばらなくても……」

明石「あちゃー。これは提督は頭の修理をしたほうがいいですね。好きになっちゃったら、がんばりたくなるのは当然じゃないですか」

提督「……」





明石「提督は、理屈で考え過ぎですよ。みんなとの関係も、大淀のことも。恋愛は気持ちですよ、気持ち! 」

提督「俺はまず考えてから行動するタイプだから、そういうのが一番苦手なんだよなぁ」

明石「そんなことも言ってられませんよ……。大淀の落ち込み方、本当にひどくて……このままじゃ、出て行ってしまいますね……(嘘ですけど)」

提督「……大淀、そんなこと言っていたのか? 」

明石「え、ええ、まぁ……(お、落ち込んでいたのは本当だよね)」

提督「もう迷う時間も無いってことか……」

明石「で、でも、そんな、確かに落ち込んでましたけど、すぐに居なくなっちゃうとかそういう感じじゃ……」

提督「……」

明石(ど、どうしよう……嘘だとか言えないし……。提督、なんか黙っちゃうし……)





提督「……大淀と恋人になったら……きっと後悔することになると思った。だから躊躇していたけれど……このまま大淀を失ったら、おそらくもっと後悔するな……」

明石(う、上手くまとまってくれるといいな……ドキドキ)

提督「よし、今は迷わず行動すべき時だ! 明石、感謝する! 」

明石(や、やった、結果オーライ!)

明石「は、はいっ。提督、どうか大淀のことをよろしくお願いします」

提督「そうと決まれば、早速行動しないとな。部屋に引きこもってる大淀を引っ張りだして……ブツブツ」

明石(うん、提督はやっぱり迷わず前進するのが似合います。これでいいんですよね……これで……)




本日分は以上となります。明石さんが親友の大淀のために、ちょっと頑張るお話でした。明石さんのために大淀が頑張った時はあんなにバイオレンスだったのに、明石さんの頑張りはとても平和で。いえ、大淀さんが怖い人だとかそんなつもりは全然ありません、ハイ。

さて、今週末は多忙で書けないため、何とか明日更新……ダメなら月曜日更新となります。終盤に来て間が開いてしまうかもで申し訳ありませんが、また是非お越しください(o_ _)oペコリ

過去作修羅場スレからパンダ提督まで読ましてもらいましたじゃ
素敵な話をお書きになられる



―――――― 1600 大淀の部屋


ぐぅぅぅ~~~~



はぁ……アンニュイな気分が台無しですけど、こんな時でもやっぱりお腹は空いてしまうのですね。そういえば朝もお昼も食べていません。


でも……お腹が空いて、こそこそ出て行ったところを提督に見つかりでもしたら……。ぐぬぬ……想像しただけで泣きそうです。とは言え、部屋に食べられるようなものも無いです……とほほ。



ウ~~~~~~~



大淀「!!! 緊急警報! 」



霧島「緊急警報です。鎮守府内にて緊急事態発生。対策のため、秘書艦・大淀は大至急、鎮守府正面玄関に向かってください。繰り返します……」



緊急警報まで出して、鎮守府内にて緊急事態……! 資源備蓄庫で火災? 基地電探施設の故障? 灯台の破損……? と、とにかく行かないと! わたしが呼ばれるということは、やはり備蓄周りかしら……




―――――― 1610 鎮守府正門


タッタッタッタッタ



ふう、大至急で来たけれど、やっぱり正門は遠い……あれ、バイクが待っているんでしょうか。明石かしら? 何か施設の破損修理なのでしょうか


違う……あれは提督! どうして……でも、気まずいとか言っていられません!


大淀「大淀参りました。提督、何があったのですか? 」

提督「説明している時間が惜しい。とにかく後ろに乗ってくれ」

大淀「は、はいっ! 」


大淀「乗りました! 」

提督「飛ばすから、しっかりつかまってくれ」



つかまるって……バイクって乗ったこと無いですけど……映像で見たとおり運転者に……その……抱きつくんですよね…………うう……えいっ!



提督「OKだ。そのまましっかりつかまっててくれよ」



ぶおぉぉん、ぶおぉぉん


大淀「は、はいっ…………きゃぁぁぁ」





ぶぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん


怖い! こんな不安定な乗り物でこんなスピードを出すなんて!


ぶぉぉんぶぉぉん ぶぅぅぅぅん


提督「ここから未舗装の山道だ、ひどい揺れかたするから、ほんとにしっかりつかまっていてくれよ! 」(大声)

大淀「もうおろしてーーー! きゃ、きゃぁぁぁぁぁぁぁ」

提督「ひたすらカーブが続くけど、我慢してくれよ、もうすぐだから」

大淀「おろしてー、とめてーーー! きゃーーーー」





――――― 1630 鎮守府内の小山山頂 基地電探施設前


提督「ふう、到着だ。大淀~、大丈夫かー? 」

大淀「…………はい……大丈夫……です……」(ぐったり)

提督「立ち上がるのも無理そうだな。失礼して、ベンチまで運ばせてもらうぞ。よいしょっ」



……お姫様抱っこ……。うう、情けないやら……



提督「ほいお茶。大淀は高速艦だし、バイクの速度なんて、大淀の戦闘速度とほとんど変わらないのになぁ」

大淀「……自分で動くのと、あんな怖い乗り物に運ばれるのでは訳が違いますっ。それに、わたしは急旋回が苦手な艦ですから、あんな急カーブは怖いんですっ! 」

提督「あはは、ごめんな」

大淀「そ、そうでした! わたしのことはどうでもいいんですっ。緊急事態って電探施設の故障ですか!? 」

提督「ああ、違う違う」

大淀「え……? それじゃあ、どうしてここに? 」

提督「緊急事態っていうのは、秘書艦大淀の不調だよ。それで、引きこもった大淀を無理やり引っ張りだすのと、気分転換と、ゆっくり話す場所確保、などなどを考慮して、ここまで来てみた」



…………だまされたーー!





大淀「提督……覚悟はよろしいですね? 」

提督「覚悟ねぇ。ま、騙した訳じゃないぞ。なにせ、秘書艦の無断欠勤だ。緊急事態だろ?」

大淀「う゛……」

提督「それにさ、俺も大淀もいろいろ考え過ぎちゃうタイプだ。バイクですっ飛ばして、思いっきり叫んだりしたら、少しはスッキリして話ができるかもしれないと思ってな」

大淀「はぁ……。分かりました、わたしの負けです。確かに、思いっきり叫びましたし、バイクの後席も、慣れてきたらちょっと楽しかったですから」



あんなに叫んだのは、生まれてはじめてです。確かに……結構スッキリしました……



大淀「はぁ、なんだか気が抜けてしまいました……」



ぐぅ~~~~~~~



大淀「///」

提督「……ぷっ」



ばしっ、ばしっ、ばしっ、ばしっ





提督「あはは、叩きすぎ。笑って悪かったよ」

大淀「はぁはぁ、そもそも、全部提督が悪いんですからっ!」(ばしっばしっ)

提督「悪かったってば。ほら、おにぎり持ってきてるんだ。夕食にはちょっと早いけどどうぞ。部屋に閉じこもってたから、何も食べてないんだろ? 」



……何もかもお見通しみたいな言い方がムカつきます!



大淀「……頂きます」


もぐもぐ。ムカつきますけど美味しいです。



提督「このバイク、この間一緒に修理したやつだぞ。エンジンもかからなくて廃棄寸前のジャンク品として買ったらしいけど、ちょっと治しただけで、これだけちゃんと動くんだよな」

大淀「(もぐもぐ)そうでしたか。提督は本当に機械が好きですね」

提督「ああ。子供の頃から機械が大好きでな。最初は時計を分解したけど、元に戻せなくておやじにぶん殴られたなぁ」

大淀「くすっ」

提督「それで、一番心を惹かれるのが乗り物でさ。最初は自転車を徹底的にいじって……それから、トラクターとかトラックとか、家の乗り物をいろいろいじったよ」

大淀「今とあまり変わりませんね」





提督「あはは、そうかもな。でもさ、一つ一つの何ていうことのない部品をさ、技術を持って組み上げると、意思を持った生き物のように元気に走る。これがとても好きでな。本当なら、飛行機とか……そして……船もな。分解したりいじってみたかったんだよ」

大淀(ささっ)

提督「……なんで離れるんだよ。本物の船の方だよ。山のように大きな船。やっぱ憧れだったんだ」

大淀「……それならいいんですけど。分解したりいじられたりされると困りますから」

提督「あはは。だからさ、君たちの前世に心が踊る。大勢の努力で、技術の粋を集めて建造され。そして、すごい性能で国と人々を守っていた。実物をさわったりは出来ないけど、資料はずいぶんと読んだよ」

大淀「……」

提督「それなのにさ……。大きな目的を持って建造されながら、戦争の変化で全く活躍できなかったり、無茶な作戦の犠牲になったり……敗戦が決まっているような状況で、無謀な特攻に駆り出されたり……。そして、なんとか生き残っても、新兵器の実験標的にされたり……。結局、君たちの前世は、大体が悲しい結末で……ほとんどは、今でも一人海の底に沈んでるはずだ」

大淀「そう……なのですか……」





提督「それなのに……そんな寂しい結末を迎えたのに……君たちは、君たちの魂は、また国や人を守るために戦っている……艦娘という存在になって。その気持ちに、心からの感謝と……一人の軍人として、本当に申し訳なく思う」


大淀「そんな風に思われる必要はありません。わたしたちは戦うために生まれてきました。ですから、命令通り戦うことに、何の悲しみも迷いもありません」

提督「うん、それはわかってるよ」


なでなで


大淀「提督……。提督が、その……お父さんのようであろうとするのは……それが理由なのですか……? 」


提督「……うーん、そうだな。確かに、これも理由の一つだろう」

大淀「もっと大きな理由があるのですか? 」



知りたい……





提督「そうだなぁ。まず、俺はまだまだ若造だ。それなのに、駆逐艦みたいな子どもたちならともかく、大人の女性たちにまでお父さん風を吹かせるのは、おかしく見えるかもしれないな」

大淀「……いいえ。わたしは、司令官としての責任感の形みたいなものなのかな? と考えていました」

提督「そうだなー。ある意味ではそうなのかもな。でもさ、それ以前に何よりさ……。みんなさ、この世に艦娘として生まれて……建造されてというべきかな? 一番長い子でも数年っていうところだ。そういう意味では、みんな本当に子どもみたいなものだと思うんだよな」

大淀「お言葉ですが、艦娘は知識と前世の記憶を持って生まれてきます。ですから、生まれてからの年齢で判断されては困ります」

提督「あはは、もちろんわかってるよ。でもさ……みんな、船としての前世の記憶を持ってるよな。確かにそれはそうだ。船に乗っていた大勢の乗組員たち、建造に関わった人たち、設計者、そういういろんな人達の想いとかも受け継いでる。それはよくわかってる」

大淀「でしたら……」

提督「でもさ、『艦娘』という『人』としての存在の経験は、本当に数年分しか無いわけだ。だからさ、例えばさっきの大淀でいえば……。大淀ってさ、乗り物に乗ったこと、無かったんじゃないか? 」

大淀「……そのとおりです。クレーンに釣り上げられた記憶はありますけれど、何かに乗って移動したのは初めてです」

提督「そういうことだよ。前世の経験、そこからくる分別、艦娘として持ってきた知識、そういう色々なものはありつつも、人としての経験はとても少ない。俺から見ると、とてもアンバランスな感じだ」



提督……目がお父さんになってます……





提督「悲しい前世を持ちつつ、国と人を守るために、また戦ってくれている君たち……。その君たちに俺ができることは何か……。せっかく艦娘として、人として生まれ変わったんだ。人としての喜びや幸せをできるだけ味わって貰いたい。例えば、アイスの甘さ、例えばバイクに乗る楽しさ、例えば花のかおり……友達をつくるなんていうのもそうだな」

大淀「そう……ですね……。はい、確かにその通りです。艦娘として生まれてきたことで……前世では分からなかったこと、知らなかったことを、たくさん知りました」

提督「俺にできることなんて本当にささやかだけどな。だからまぁ、すぐに間宮券を渡しちゃうくらいは、勘弁して欲しい」

大淀「くすっ……ええ、あんまり叱っちゃだめですね」

提督「あとは、騙してバイクに乗せて、その楽しみを教えたりな」(にやっ)

大淀「……駆逐艦の子たちは間宮券、わたしは騙してバイク……。とっても不公平です。許しません」

提督「あはは、子ども扱いすると怒るくせに、困ったものだな」

大淀「うふふ。もちろん、楽しかったですよ、バイク。怖かったですけどね」

提督「きゃーきゃー叫ぶ大淀は新鮮で良かったよ」

大淀「やっぱり許しません」(ぷくっ)

提督「あははは」





提督「とはいえなぁ。正直言えば、最近はちょっと困ってるんだ」

大淀「といいますと? 」

提督「みんなにさ、できるだけ艦娘としての喜びや幸せを味わってもらいたいって思う気持ちは変わってないんだ。ただ、みんな女性だろ? 俺、女心ってほんとに全然わかんなくてな」

大淀「はいはい、ご自覚があるのは良いことだと思います」

提督「はぁ……。やっぱさ、女性は恋愛にすごく興味があるんだよな。それでもって、俺はここで唯一の男だろ? やっぱ、恋愛に憧れる子たちからアタックを受けたりするわけだ」

大淀「!!!」

提督「その子の喜びや幸せという点で言えば、俺はその申し出を受けて、恋人になるのが一番なのかもしれない。だけど、俺は、この鎮守府にいる艦娘みんなのものであるべきだ。そう思う」

大淀「提督……」

提督「それにさ、みんなが俺に向けてくれる感情は……。恋愛への憧れもあるだろうけど……。人という存在になって初めて感じること。近くに居たい、暖かさを感じたいっていく気持ち……家族のような絆を求めてのものなんじゃないかな? って思うんだよ。だから、恋人になるのではなく、暖かな家族として、みんなとともにあるのが一番かなって、ずっとそう思ってた」

大淀「……ほんと、女心分かってませんね」

提督「うげー、やっぱり大淀の意見もそうかぁ。明石にも強烈な駄目出しを食らったんだよなぁ」

大淀「ええ、どうしようもなくダメです」





提督「そうかぁ……。あとさ、何よりも大きな問題があるんだよ」

大淀「もっと問題があるんですか……」

提督「ああ。今の話って、艦娘の誰かから恋愛感情を向けられて、俺がそれにどういう距離感で対応するか、みたいな話だろ? 」

大淀「ええ、そうですね。ダメダメですけど」

提督「ぐぬぬ……。まぁ、それでだ、問題はさ、俺のほうが、距離をおかず、もっと近づきたい!って感じることもあるんだよ」

大淀「提督のほうが……ですか? 」

提督「うん。艦娘の誰かから『恋愛感情を向けられる』っていう話じゃなくて、俺のほうが『恋愛感情を向ける』っていうことだな」

大淀「回りくどく言ってますけど……それって……!」





提督「あはは、まぁ、俺も照れと緊張があるんだよ……。要するに、俺にも好きな子がいて、みんなと平等に距離を取るべきだと理屈では思ってるんだけど、もっと近づきたいという感情があるんだ」


じーーーー


ドッドッドッドッドッドッ(←大淀の心臓の鼓動)



提督……わたしを見てる……これって…………もしかして…………



提督「大淀。俺は君の事が好きだ。……君を愛してる」




……気が付くと、もう涙がこぼれていました。


……心からあふれる気持ちが自然と涙になる…………。これもまた……艦娘になったことで初めて知ったことです……涙も……すべて……提督が教えてくれました……。




本日分は以上となります。なんか思ったよりずっと進みが遅くて、終わるまでもうちょっとかかりそうです。
でも、ヘタレの提督がやっと決断したので、ほっとひといき……。

>>274
ありがとうございます。とっても励みになります。


次の更新は水曜日の予定です。よろしければまた是非お越しください(o_ _)oペコリ




涙を止めることができず……泣いたままでみっともないですけど……


大淀「ぐす……嬉しいです、提督……。わたしも……大好きです。愛しています」

提督「ああ、ありがとう。ずっと待たせて済まなかった」


ぎゅっ



……抱きしめられたら……きっと緊張するだろうと思っていました……でも、全然そんなことはありませんでした。あたたかな心が……愛情があふれているのが分かります。とても充実した気持ちです


ぎゅっ



わたしも……同じ気持ちでお返しです……





提督「ずっと我慢してたんだ。実は、ずっと前から好きだったんだ……」

大淀「わたしも……わたしもです……我慢なんてしないでほしかったです……」


ぎゅっ


提督「ごめんな……一度抱きしめてしまったら引き返せない。そんな気がしてたんだ。その予感はあたったみたいだ。この幸せな気持ちを失うなんて、もう無理だ……」

大淀「ぐすん……はい……はい……幸せです……」


提督「大淀も俺のことを好いてくれているって、なんとなくは感じてた。自信は無かったけどな……。どのくらい前からだったんだ? 」

大淀「提督も話してくださるなら、教えてもいいですよ」

提督「げー、自分の気持ちを話すのは恥ずかしいなぁ」

大淀「あら、お互い様ですよ」

提督「そうだよなぁ……良いよ、じゃあお互い話すということで」






……

大淀「提督が駆逐艦の子たちをかわいがっていて……今思えば嫉妬だったのかなって……」

提督「そんな前からだったのかぁ」



……

大淀「島風に、わたしが島風を大事に思ってるって話してくださって……それですごく懐かれて……」

提督「ああ、あったな、そういうこと」

大淀「あの時、わたしの頑張りとかを知ってもらって、分かり合えたら、わたしも笑顔になれるかと思ったって、そういうお話してくださったの、覚えてます? 」

提督「ああ、覚えてる」

大淀「今思うと……これが……提督のことが好きだって自覚した瞬間だったかもしれません」

提督「そっか……」

大淀「はい。心の中を覗かれたような恥ずかしさもありましたけど……わたしの秘めた望みとか悩みとかを気づいてもらったような……なんだかそんな感じで……」





……

大淀「暁が、遠征計画を手伝ってくれた時のこと、覚えてますか? 」

提督「懐かしいな。レディの仕事を見学するみたいな時だろ? 」

大淀「あの時、わたしの仕事ぶりを……仲間のために地道なことを黙って頑張ることを……まっすぐにわたしを見つめて、評価してくださって」

提督「ああ、よく覚えてる」

大淀「真剣にまっすぐ見つめられて……この時、ほんとに告白されちゃうんじ!? ってドキドキしたんですよ」

提督「いや、実は勢いで言いそうになって、俺もちょっと慌てたんだよ。あーあ、ここで言ってしまっても良かったのかなぁ」

大淀「あ、じゃあ、この時にはもう、わたしのことが好きだったんですね! 」

提督「ぐぬぬ……。認めるしか無い、そうだな、この頃にはもう、はっきり自覚するくらい好きだった……」

大淀「うふふ……提督も本当に随分前からだったんですね♪」





……

大淀「しおいを改装して、パナマ運河演習した時。あの時って、わたしに指揮を取らせましたよね? 」

提督「ああ」

大淀「あれは、わたしが前世で潜水艦隊の指揮をするために建造されたけれど、実際に指揮をとることはなかったって、ご存知だからだったのでしょう? しおいに前世の夢を果たさせるのと同時に、わたしにも……」

提督「気づいていたのか……。そうだな、しおいみたいに無念があるようには見えなかったけど、やっぱり心残りとかあるかもしれないなって思っててな。余計なおせっかいだったかもしれないけど……」

大淀「いいえ……わたしのことを気にして、できることをしようとしてくださったこと、すごく嬉しかったんですよ。だから……早朝執務のお手伝いを申し出たんですよ。本当は、シャクだから、提督が手伝ってって言うまで我慢しようと思ってたんですけど♪ 」

提督「一人で執務させると危なっかしいって思われてるのかと思ってさ。いやぁ、俺はほんとに信用ないんだなーってちょっとがっかりしてたんだよ、この時」

大淀「えー。わたし、嬉しくて……一緒にいたいから……申し出たのにー。はぁ……ほんっと、女たらしのくせに、女心はまるでダメですね、提督は……」






……

提督「そういえば、潮と羽黒でペアを組ませた時……。大淀に、わたしも撫でてって言われて……。撫でたら泣いちゃった時があったよな」

大淀「わーー! それは無しっ、無しですっ」

提督「今までの話からして、嫌だったわけじゃないよな……? 」

大淀「嫌なわけないじゃないですか。そうじゃなくて……あの時は……もう提督のことが大好きで……でも、提督は父親目線でしかわたしたちを見ていないことも分かっていて……それですごく切なくて……もうっ、提督が悪いんですよ! 」(ばしっばしっ)

提督「女心ってやっぱり謎だよ……」





……

大淀「……そういえば……綾波を振ったの、知ってますよ。あの時、扉の外にいたんです」

提督「げげっ! 」

大淀「あの後、泣く綾波を慰めて……ほんっと、女たらしなんですからっ!」

提督「そんなこと言われても……。ちゃんと断ったんだぞ。何より、綾波はまだ子どもだ。家族愛と恋愛がごっちゃになってたんだろうし、そのへんもちゃんと話したぞ」

大淀「提督はほんっっとにダメダメですね! ……綾波は、ちゃんと女として提督のことが好きだったんですよ。でも、提督の言葉を尊重して、しっかり身を引いたんです。提督よりずっと大人ですよ」

提督「……ぐぬぬ…………」

大淀「しかもですね……わたしも提督が好きなことをちゃんと気づいていて……。提督が好きな人って多分わたしだから、しっかりがんばってって応援されました」

提督「そんなことまで気づかれてたのか……綾波、あんなにほやっとしてるのに、鋭いなぁ……」

大淀「提督は女を甘く見過ぎですね」

提督「うう、怖いよぉ……」

大淀「綾波の頑張りを見て、わたしも……提督にちゃんと想いを伝えようって思ったんですよ」


提督「……まてよ。綾波に告白された直後……ははぁ、大淀が変なことをしだした時期だな」

大淀「変なことって何ですかっ! 綾波に勇気をもらって、それこそ死ぬ気で頑張ったのに……提督の鈍さで台無しでした! 」

提督「……いや、あれは俺のせいじゃないよ……」






……

大淀「それで……昨夜は、今日こそはって思って……ぐすん……」

提督「昨夜はほんとにやばかったよ……一瞬の油断で理性が飛びそうだった……」

大淀「えっ?」

提督「大淀に大人の誘惑をされただろ。胸元開けられたりしてさ」

大淀「///」

提督「その場の勢いでなし崩し的に抱いちゃうとか、俺はそういうのはどうしても嫌だった。かと言って、俺は大淀が好きだから……大淀を突き放す事もできなかった……。それで、情けないことに……保留して逃げちゃったのさ……」

大淀「……そう……だったのですか……」

提督「ほんと、すごい破壊力だったよ。最後、窓際に逃げたけど、追いかけられて抱きつかれたら、もう我慢できなかっただろうなぁ……」

大淀「わたし……おっぱい小さいですし……女としての魅力が足りなくて相手にされなかったんだと……」

提督「何言ってるんだよ。俺は心で血の涙を流して我慢してたんだぞー。許されるなら、いますぐ抱いてしまいたいくらい魅力的だよ、大淀は」

大淀「/// す、スケベっ!」

提督「あはははは」





提督「その前に……これから俺達がどうするか。大淀にも考えてもらわないといけないな。後悔しないために……」



……真剣な表情です。本当に話したかったことはここからですね……。



大淀「どういう……意味でしょう……。何を懸念されているんですか……? 」

提督「ちゃんと話すよ……。未来のことを」



未来……。提督が、みんなと等しく距離を置こうとした理由……。わたしを愛しているのに……うふふ……我慢していた理由……。



提督「俺が持っている情報を総合するとだが……。この戦いは当分は終わらない。深海棲艦を駆逐しつくす手段が無いからだ」

大淀「はい……。今のところは、湧き続ける深海棲艦から特定の海域を確保し続けるのがやっとです」





提督「仮に深海棲艦を滅ぼすことが出来たとしても……。はい解散とはいかないしな……」

大淀「……」

提督「深海棲艦がまた現れるかもしれない……外国が艦娘で攻撃してくるかもしれない……どこかの提督が艦娘を率いて反乱を起こすかもしれない……。結局、艦娘でないと対抗できない存在があるかぎり、軍としては艦娘をどうにかして維持したいはずだ」

大淀「そうですね……国家戦略上、そうなるのが当然かと思います……」

提督「そして、艦娘は、艦娘を率いる素質がある提督でないと率いることが出来ず、一度具現化した艦娘は、その提督の指示しか聞かず、転属などはできない。つまり、艦娘を維持し続けようとすれば、その艦娘を生み出した提督に率いさせ続けるしか無いのさ」

大淀「はい……艦娘は自分を生み出した提督の指示しか受け付けないのは知っています」

提督「でも、大淀もわかるだろう。特別な力を持つ艦娘。そして、その絶対の忠誠を受ける提督。軍の上層部からしたら、これは脅威だ。もし反乱を起こされたら……?という不安は消せないだろう」

大淀「……」





提督「とはいえ、俺達だって先手を打たれて粛清されるのは嫌だ。かといって、艦娘の力を使って上層部に成り代わるなんていう意思もない。結果、俺と俺の仲間たちが出した『良い戦後』の結論はこうだ。無事深海棲艦を倒すことができたら、提督と艦娘は全員、本土から遠く離れた泊地……トラックとかパラオとかな……に移動して、提督が死ぬまで、艦娘と一緒に静かに暮す……また敵が現れる日に備えて……な」

大淀「そんな……では提督はもう帰れないのですか…………」

提督「ああ、それでいいんだ。こんなに素敵な家族に恵まれてるんだ。これ以上望むものなんてないさ」

大淀「でも……悲しいことです……。提督はご両親もいらっしゃるのに……」

提督「いいんだよ。でも、ここからが問題なんだ」

大淀「……? 」

提督「これから何年も……もし俺が長生きしたら何十年も、俺と艦娘のみんなで生きていくんだ。だからこそ……一人を特別扱いしたりできない」

大淀「!!!」



理解しました。これが提督の我慢の理由……。とてもこの人らしい理由……。





提督「そう……思ってたんだよ……。でもさ、明石にも大淀にも言われたけど……。公平に接していたら、みんな幸せだ、という考えは間違っているのかもしれないな」

大淀「その……お気持ちはすごくよく分かります。わたしでもそう考えたかもしれません。でも……残念ですが、提督は男性で、わたしたちは女です。公平なだけでは、誰も幸せにはなれません……」

提督「そうかぁ……。なかなか簡単ではないな」



提督が……先のこと……というより『終わり』まで見据えていたなんて……。それで身動きが取れなかった理由……気持ち……すごく良く分かってしまいます。でも、人の気持ちは理屈ではないですね……いつも理詰めのわたしが言うのもなんですけど……。



提督「大淀がさ、いっそ……本当にもろくて弱くて、『この子は俺がそばにいないとダメだ!』なんて思ってしまうような感じの子だったら、こんなにも我慢しなかったと思うけどなぁ……」

大淀「あ、ひどいです。わたしも……本当に……。うーん、辛かったわけじゃないですけれど……すごく、その、切なかったんですよ。恋愛っていうのは本当に厄介なものです」

提督「あはは、大淀らしいな。でも、そんな大淀がさ、俺とのちょっとしたことで、泣いたり、バランスを崩したりしてるのを見て……。俺もどうしたら良いか分からなくなっちゃってな。ほんと、恋愛っていうのは厄介だ。自分は冷静なつもりなんだけど、後から振り返ってみると、すごいオロオロしてるのな」

大淀「あは。本当にそうです。思い出すだけで顔から火が出そうですよ……」





提督「それでな、大淀。説明したとおり、俺は、これからもずっとずっと続くみんなとの生活のことを考えた上で、君との関係をどうしたら良いか、もうわからないんだ。俺は君が好きだ。じゃあケッコンして二人でラブラブする。それで、本当にみんなとこれからもやっていけるんだろうか……」

大淀「それは……」



提督と仲良く夫婦になれるのは嬉しいです……でも……じゃあ他のみんなは……? わたしが提督を独占して……。みんなはそれで幸せなの……?



大淀「……。わたしは、提督にちゃんと女として愛していただかないと幸せではないです……」

提督「そうか……」

大淀「でも……それは他のみんなも同じだと思います。もちろん、駆逐艦の子と、大人の女性では内容は違うと思いますが……提督に愛してもらわないと幸せでないっていうのは同じだと思います」

提督「ぐぬぬ……」

大淀「ですから、提督は平等に距離を取るのではなく……平等にみんなを、女として、愛して下さい」

提督「えええ! それって、ハーレムみたいじゃないか! 」

大淀「でも、子どもには手を出しちゃダメですよ! 」

提督「……でもさ、大淀はそれでいいのか……? 」

大淀「良くありません! わたしはヤキモチ妬きですからねっ。でも……だからといって……みんなから提督を取り上げるのは嫌です……」

提督「大淀……」

大淀「た・だ・し! わたしと居るときは、わたしだけを見ることっ。いいですね! 」

提督「うーん、俺のほうがそんなにハーレムの王様みたいな行動ができるかどうか自信無いけど……大淀と居るときに、君だけを見るのは自信あるよ」

大淀「……もうっ。歯が浮くようなこと言って! ///」




提督「本当だよ。やっぱり君は本当に素敵だ……」


ちゅっ



え……! ええええーー! キスされましたキス!


大淀「///」


提督「自分の気持ちだけじゃなく……みんなの気持ちを考えて答えを出す。すごく大淀らしいし、とても素敵だ。そんな君だからこそ、俺は好きになった……」


ぎゅっ


大淀「提督……ぐすん……わたしもです……いつもみんなの幸せを考えて、自分のことは後回しで……そんなあなただから……わたしは…………」



……抱きしめて、抱きしめられて、キスして、キスされて、手をつないで、寄り添って……。これもまた、前世では味わえなかったこと。今日のこの瞬間だけで、艦娘に転生した幸せのすべてを味わえたような……そんな気持ちでした。





本日分は以上となります。もうすぐ終わると言いながら、どんどん長くなって終わりません……。
あと2回くらいで……多分……きっと……終わります。

長くなってしまって恐縮ですが、あと少し、お付き合い下さいませ(o_ _)oペコリ

次回は金曜日投下予定です。よろしければまた是非お越しください



――――― 1800 鎮守府内の小山山頂 ベンチ


提督「夕日、綺麗だな。ここからだと、海に沈む夕日がしっかり見えるんだよ」

大淀「……そういえば、提督は海に沈む夕日、なかなか見る機会が無いんですね」

提督「艦娘のみんなは良く見てるんだろうけどな。川内なら『待ちに待った夜戦だぁ!』って喜ぶ時間だよな」

大淀「うふふ、まさにそんな感じです。あと、夜戦はともかく、海で見る月もすごく綺麗ですよ」

提督「月も星も綺麗そうだよな。俺も艦娘だったらなぁ。南方に遠征して、夜の星空とか見たいよ」

大淀「ここからでも綺麗に見えると思いますよ。せっかくですから見て行きましょうか」

提督「そうだな。大淀、寒くないか? 」

大淀「え、真夏ですから暑いくらいですけど……」

提督「ほら、寒いだろうから膝においで」

大淀「はい……真夏なのになぜか寒いのでおじゃますることにします……」



……

提督「今日はちょうど満月だったか。綺麗だなぁ」

大淀「ええ、本当に……」



二人で見上げる月は、なんだか特別です。





提督「やっぱり、大淀は大人だよなぁ。駆逐艦が膝に乗ることは結構あるけど、やっぱりぜんぜん違う……」

大淀「重くて悪かったですね(怒)」

提督「違う違う……。すごくこう、嬉しいというか興奮するというか……そういう感じで」


ぎゅっ


大淀「/// も、もう……」



あ、あれ……このおしりに当たる感触は……もしかして……


大淀「て、提督……その……あたってます……」

提督「ぐ…。す、すまん。駆逐艦を膝に乗っけても、こんなことにはまずならないんだけど……やっぱ大淀だとやばいみたいだ……」

大淀「/// あ、あやまらないでください……。わたしで……その……興奮していただけるのは、女としてとても嬉しいというか……」

提督「あ、あははは。いや、いやいや、さすがになぁ……そんなこと言われちゃうとなぁ……俺も男だし、いろいろ盛り上がってしまうというか」

大淀「あ、あははは……。いえその……わたしとしましても……いろいろ心がいっぱいでもっと一緒に居たいというか……」

提督「……俺の部屋、来る? 」

大淀「/// お、お邪魔します……」

提督「よ、よし、帰るか、うん、もう遅いしな! 」

大淀「は、はいっ。もう遅いですし! 」



きゅ、急展開です……。ま、まさか今夜このまま……。うう、まずお風呂入って着替えたいですけど、そんなこと言い出せるでしょうか……。ああ、今日の下着どんなのでしたっけ……うう、どうしよう……。





ぶろろろぉぉぉぉ……どっどっどっどっどっど…………


提督「し、しまった……」

大淀「どうされました?」

提督「ライトが付かない……そこまでチェックしてなかった……。おそらく球切れだ」

大淀「え……この暗い山道をライト無しでは……」

提督「ああ、さすがに自殺行為だ。とは言え歩いて帰れる距離でもないし……」

大淀「……」

提督「仕方ない、明るくなるまでここにいよう」

大淀「はい。仕方ないですね」



ほっ……セーフです! ちょっと残念ですけど……明日ちゃんとコンディションを整えてから……



提督「大淀……」


ぎゅっ


大淀「あ……提督……」

提督「すまんが、我慢できん……」

大淀「え……」






……

大淀「そ、そんな……外でこんな格好……」

提督「誰も見てないよ……」




……

大淀「……! ……ぅ! 」

提督「大淀、そんなに声を抑えなくても大丈夫……誰もいないから」

大淀「で、でも……外でなんて……恥ずかしくて……(うるうる)」

提督「ぐっ……そんな目でそんな事言われると、意地でも声を聞きたくなるな……」

大淀「そんな……提督、いじわるです……ぁ……」





――――― 翌早朝


ん……明るい……朝ですね……


提督「zzz...zzzz...」


ふふ、腕枕してくれてたんですね。でも、そんなことじゃ許しません。提督がこんなにケダモノだったなんて! わたし、初めてだったのに、外でなんて! しかもあんなに激しく!


つんつん


提督「んぐ……zzz...」


うふふ……でも、やっぱり許してあげます。あんなに激しく求められるなんて……愛されてるって実感出来ました。あーあ、でもシャワーが無いのはきついですね。確かこの場所、井戸があったはずですから、せめて少し身だしなみを……


提督「zzz...zzz...」


はぁ、男の人は気楽でいいですね……





大淀「提督、そろそろ起きて下さい。朝ですよ。早く戻らないとみんなが心配してしまいます」


提督「う……うん……朝か……大淀、おはよう」(にっこり)

大淀「/// お、おはようございます」



うう、昨夜のことを思い出すと恥ずかしくて顔が見られません……



ぎゅっ


大淀「きゃっ」

提督「昨夜はかわいかったよ」

大淀「/// な、何を言うんですか、もうっ!」(ばしっばしっ)

提督「あはは、改めておはよう。さ、帰ろうか」

大淀「そうです、みんなが心配しますよっ! 」





――――― 0600 鎮守府入り口


ぶるるるるるるるる


大淀「無断外泊してしまって、皆さん心配していないと良いのですが。捜索隊とか出ていたらどうしましょう……」

提督「一応、何人かには事情を説明して出てきているから大丈夫だと思うけど……」

大淀「……説明って、どんな……? 」

提督「いや、大淀を引っ張りだして、ちゃんと二人で話がしたいから協力してくれって」

大淀「……それって……事情を知っている人から見たら……二人で鎮守府を抜けだして、朝帰りしたって見えますよね、これ……」

提督「ぁ……言われてみれば……」

大淀「言われてみれば、じゃないです! どうするんですかぁぁぁ」

提督「どうするって言ってもなぁ……まんまその通りだし……」

大淀「う、うう……」



確かにその通りなのですが……言い訳しようがないじゃないですか!



提督「って、あれ、入り口、なんか人がいるぞ」

大淀「……嫌な予感しかしません……」





足柄「おかえりなさい、提督、大淀。まずはおめでとう! 」

明石「大淀、おめでとう! 」

夕張「おめでとうございます! 」



何ですか、みんなしてニヤニヤして! 何もかもお見通し見たいな顔してっ! ここは冷静にごまかさないと……



大淀「全然おめでたく無いです。バイクのライトが壊れていて、夜道を帰って来られなかったんです。ひどい目にあいました」

提督「そうなんだよー。エンジンばっかり見てて、ライトまでは気が回らなかったよ……ははは」



足柄「まーでも、結果的にねぇ」(にやにや)

夕張「刺激的でいいよねー」(にやにや)

明石「///」



……何か知られてる!!





青葉「大淀さん、ごめんなさい。二人が帰ってこないのが心配だから偵察して欲しいって頼まれて……特製の夜偵を飛ばしてしまいまして……あ、青葉……み、みちゃいました ///」

大淀「えっ! え~~~~!! 」



昨夜の……もろもろを……見られた…………



足柄「プライバシーだからねぇ。詳しくは聞いてないわよ」(にやにや)

夕張「ただ、お二人が激しく夜戦してるってだけで」(にやにや)

明石「大淀、すごい大胆だよね……」

青葉「わたしには刺激が強すぎました……見ちゃいましたけど……」

大淀「う……う……うわぁぁぁん……」


だだだだだっ





足柄「あはは、さすがにからかいすぎたかな」

提督「おいおい、悪いのは俺なんだから、大淀をいじめないでくれよ……」

夕張「そうですよね、提督がケダモノだったんですよね。青葉、早速記事にしなきゃ! 」

青葉「わたしの新聞はR18じゃないですから……そういうのは……」

明石「ちょっと読んでみたいなぁ……」





大淀「うわーーーん」


うう、恥ずかしくて死にそうです! あんな場所でするからっ、誰も見てないって言ったのにっ、提督のバカバカバカバカ!


うう……でも……死ぬほど恥ずかしかったですけど……これもまた幸せの形…………なの……かなぁ?




本日分は以上となります。ただただ、提督と大淀さんがいちゃいちゃする話でした。爆発しろっ。
大淀さんは、とっても真面目かわいいので、ついつい、いじわるしたくなるんですよね。なので、大淀さんが困ってることが多いのは、ひとえに自分の趣味です。大淀さんごめんなさい。

さて、あとはエピローグで終わりです。1回で終わるか2回にわかれるかまだ不明ですが、次回は日曜日に投下予定です。あと少し、お付き合い下さい(o_ _)oペコリ



――――― 一週間後 朝 提督執務室


……提督とわたしの関係は変わりました。でも、日々の業務が変わるわけではありません。何も変わらず、提督と秘書艦として、毎日忙しく働いています。



暁「わたしが遠征から外れるっ!? どうして! しっかり頑張っているのにっ」

提督「うん、いつもきつい遠征を、文句も言わずしっかりこなしてくれていて、本当に感謝してる。いつもありがとな」(なでなで)

暁「こ、子ども扱いしないでってば! それなら、どうして! 」

提督「まず、暁たちの代わりに、南方の遠征をこなせる練度に達した駆逐艦が増えてきたんだよ」

暁「そうね、それでローテーションもすごく楽になってるけど……」

提督「だから、そろそろ第六駆逐隊のみんなは遠征から外れてもらって……危険だが、最前線の出撃に回ってもらいたい」

響「ハラショー」

雷「わたしたちがっ」

電「前線なのですっ!」





大淀「最近の大規模な作戦は、多方面同時展開が多くなってきています。今後もこのような作戦が続くようでは、前線の駆逐艦がとても足りないのです」

提督「現状、最前線勤務の駆逐艦たちに続く練度を持っているのは君たち第六駆逐隊だ。危険だが……どうだ、やってくれないか」


暁「……もちろん……やるわ! 」

提督「ありがとう、さすが暁だ」

大淀「それでね、暁。あなたに更なる改装。つまり、改二への改装が準備出来たみたいなの」

暁「ほ、ほんとに! やった、わたしももっと成長できる時が来たのねっ」

雷「うわぁ、うらやましい! おめでとう!」

電「暁ちゃん、おめでとうなのです!」

響「ハラショー! こいつはめでたいね」





提督「ただ、高練度が必要だから、今のままではまだ足りない。響も、もう一息で更なる改装だし、前線で是非頑張ってくれ! 」

大淀「前線での駆逐艦の役割や注意点などは、前線勤務の駆逐艦たちから直接聞くのが良いと思います」

島風「おまかせだよ! 早く一緒に艦隊組もうね!」

夕立「暁ちゃんも改二かぁ。一緒に、最高に素敵なパーティーするっぽい! 」

暁「うん、わたしも、夕立みたいに、改装で背が伸びてスタイルが良くなって……楽しみだわ! 」

吹雪「…………(暁ちゃんも、きっと体型は変わらない気がする……ぐすん)」

綾波「わたしみたいに、すごく髪が伸びちゃうかもですよ!」

提督「うんうん、みんなで仲良く、前線勤務を乗り切ってくれな」

駆逐艦たち「はーーい! 」





――――― 午後 工廠


提督「うーん、41cm砲が足りん! やっぱ開発で集中的にやるしかないか……」

夕張「でも、レシピ通りやっても、そうそうできるものでは無いですよ? 」

明石「装備改修で必要な量は膨大です。開発で賄おうとしたら、資源消費が大変なことに……」

提督「うーん、でもなぁ」

大淀「て・い・と・く・? 装備改修は慌てずにやる、無理はしない……って、あれほど約束されましたよね……? 」

提督「ぎくっ」

大淀「そもそも……現状、どうしても改修が必要なわけでもないですし……」

提督「そこに……強化できる装備がある。理由はそれだけで十分さっ」

夕張「あ、分かります。そうですよね、それ以上の理由は何もいらないですね」

明石「そっか、そういうことなら早速……」

大淀「良くありません!! 」

提督「えー……」





大淀「提督……。大和さんや武蔵さん、大鳳さんをお迎えするために、大型建造を頑張りたいんですよね? でしたら、ここはちゃんと我慢して下さい」

提督「そっか、そうだよな。わかった……ありがとう、大淀。やっぱり俺は、君が支えてくれないとダメだ」(じーー)

大淀「いえ、わたしこそ、うるさく言ってしまって……。でも、提督の夢のために、場合によってはこの大淀、鬼にならなくては……」(じーー)

提督「大淀っ」(だきっ)

大淀「提督っ」(だきっ)


明石「…………置いてけぼり?」

夕張「……二人で仕事してよっか」

明石「うん……。大淀、すっかりメロメロになっちゃって……喜んでいいのかなぁ」





――――― 夕方 間宮さんのお店


伊401「あ、大淀さーん」

大淀「あら、しおいさん。出撃から戻られたのですね、おかえりなさい」

伊58「今日も大変だったでち~」

伊19「でも、しっかり資源をあつめてきたのね!」

伊168「しっかり魚雷当ててきたわっ」

大淀「潜水艦の皆さんは、ほとんど毎日出撃で、本当にお疲れ様です」

伊401「あはは、提督も全く同じこと言って、間宮券くれたんですよっ」

伊58「ふっふっふっ、今日もあんみつパフェにするでちっ」

大淀「提督も相変わらず甘いですね。困ったものです……ふふ」





伊19「大淀から正妻の貫禄を感じるのねっ。すっかり尻に敷いてるのねっ」

伊401「そうなの!? 提督と大淀さんの夫婦生活って、あんまり想像出来ないんですよねー」

大淀「/// 別に、いつもと変わりませんよっ」

伊19「そんなこと言って~~、毎晩夜戦で大変なのねっ」

伊401「えー、せっかく夫婦になったのに、夜戦なんかしてるのー? 川内さんじゃあるまいしっ。せっかくだから二人仲良くすればいいのに」

伊19「しおいはお子様なのねっ。この夜戦っていうのは……」

大淀「わーわー! それじゃあ、わたしは戻りますっ。イクさん、変な話はしないこと、いいですね!?」(キラーン)

伊19(殺気!?) 「わ、わかったのね。大人しくしてるのね……」

伊401「えー、わたしにも教えてよー」





――――― 同時刻 提督執務室


提督「出撃報告ありがとう……ところで、足柄……それがすごく気になるんだが……」

足柄「え、これ? 」 ←連装砲に貼られたうさぎさんシールを指さして

羽黒「わたしも貼ってますよ、ほらっ! 」

潮「第七駆逐隊のトレードマーク? なんです! 」

提督「あ、うん。漣が連れてるうさぎのシールだよな。うん、それは知ってるんだ。なんか最近流行ってるなぁ」

羽黒「へっへっへ~」

潮「わたしたちでシールを配ってるんです。こういうことをきっかけに、もっと皆さんと仲良くできたらいいなって」

羽黒「ねー!」

足柄「それで、わたしももらったっていうわけ。かわいくていいわよね~」

提督「あ、うん……。長門も連装砲に貼ってたよ……。うん、かわいいよな……」

足柄「なあに、何か言いたげね?」(じろっ)

提督「い、いや、別に。そうそう、大淀もさー、見えるところに貼るのは恥ずかしいのか、格納庫の内側にこっそり貼ってあったぞ」





羽黒「大淀さんにも、先日差し上げたんです。嫌だったんじゃないかって心配だったのですが、気に入って頂けたなら良かったです」

潮「良かったですー! でも、格納庫の内側なんて……提督、良く見つけましたね?」

提督「い、いやぁ。まあな……」

足柄「潮、二人はもう恋人だから、提督は大淀の隅々まで整備してるのよ……二人っきりで……(にやり)」

潮「うわぁ……恋人になると……そんなことまで……(ドキドキ)」

羽黒「司令官さん…………」

提督「いや、たまたま見つけただけだから、ほんとにっ! 」





――――― 1900 提督執務室


提督「よし、今日はこんなところかな。今日もお疲れ! 」

大淀「はい、お疲れ様です。今日はいろいろありましたね」

提督「うちも大所帯になってきたしなぁ。ま、とりあえず晩飯にしよう。遅くなったし、鳳翔さんのところで食べて帰ろうぜ」

大淀「はい、そうしましょう」



以前と違うのは、勤務の後、必ず夕食をご一緒するようになったこと。そして……





――――― 2000 提督私室


提督「ふー、食った食った。ただいまー」

大淀「た、ただいま……」



こうして、提督のお部屋にご一緒するようになったこと……



提督「まだ余所余所しいなぁ。慣れないか? 」

大淀「はい、なんとなく落ち着きません」

提督「まー、一人用の殺風景な部屋だしなぁ。そのうち、二人部屋に引っ越すかね」

大淀「……でも、そうすると……わたしと提督が同居しているってことになってしまいます……」

提督「今もほとんどそうじゃないか。なんだ、それは困るのか? 」

大淀「うーん……そうですね、いろいろ考えていることがありまして……」

提督「ふむ、その考えも気になるが……」


抱きっ


大淀「あ……提督……」


ぎゅっ


提督「まずは抱きしめさせてくれ……。1日一緒にいるのに、ずっと我慢してたから……」

大淀「わたしも……です……」


ぎゅ~~





大淀「……提督……あの日から、わたしたちの関係は変わりました……。でも、日々の業務が変わるわけではありません。何も変わらず、提督と秘書艦として、毎日忙しく働いていますよね……」

提督「? ああ、そうだな」


大淀「それなのに……提督との関係が変わっただけなのに……。白黒だった世界がカラーになったような……。真冬から南国になったような……。何もかもが違うんです……」

提督「そうか……そうだな、俺もそう感じる……」

大淀「わたし……こんなに幸せで……ぐすっ……どうして……」


ぎゅ~~~~


提督「俺の好きな人が……俺と居ることで幸せだと感じてくれる。それはとても嬉しいんだ……。ありがとう。ありがとう……」

大淀「提督……提督っ! 」


ぎゅ~~



本当は同棲みたいなことはダメだって思っているのですが……毎晩こうして……朝まで……。





――――― さらに一週間後


大淀「結局……ずるずると同棲状態です……」

提督「そうだなぁ。毎晩俺の横で寝てるわけで……これは間違いなく同棲だよなぁ」

大淀「……提督を独占しちゃダメですから、ちゃんと節度をもって距離を取ろうと思っているんです……」

提督「でもなぁ、俺の膝の上でお茶飲みながら言っても説得力がなぁ」(なでなで)

大淀「でも……わたしたちは、そういう関係を目指さないといけません。違いますか? 」

提督「違わない」

大淀「だったら……! 」

提督「でもさ、大淀も、理屈ではそうすべきだと思っていても、そうできないでいるわけだろ? 」

大淀「ぐぬぬ……恥ずかしながらそうです……」

提督「そうだよな。だからさ、今はこのままでいいと思う」

大淀「でもっ……」





提督「俺達が考えるべき未来はずっと続いている。鎮守府のみんなと、何年……十何年……もしかしたら数十年……。俺達がいるのは、ほんの入口だ」

大淀「はい……」

提督「考える時間も……克服すべき時間も……いくらでもある。二人でゆっくり考えていこう」

大淀「そう……ですね……でも……。でも、わたし……。わたしだけ、提督を独占してすごく幸せで……。みんなに……申し訳なくて……」

提督「大淀らしいな。でも、みんなちゃんとした大人だ。それぞれ考えてくれるよ。ただ、子どもたち……駆逐艦とかな。彼女たちの幸せは、俺達でしっかり作っていこう。俺が鎮守府のお父さんなら、大淀はほら……もうすぐお母さんってことになるわけだし……」(ぽりぽり)



提督……考えてくれてるんだ……ケッコン…………まだ練度が足りないけど……



大淀「はいっ。わたしは提督の本妻ですからっ。駆逐艦の子たちはわたしが守りますっ。……提督と一緒に……」

提督「うん、君となら一緒にやっていける。かけがえのない……俺の……奥さん ///」

大淀「て、提督っ。気が早いですっ ///」





艦娘として生まれて……。連合艦隊旗艦としての前世から、膨大な情報や戦闘知識を持っていました。



それを活かして、作戦参謀、情報将校、着任後は秘書艦など、専門的な仕事をして……。



能力に誇りと自信を持っていましたし、それに見合う成果もあげました。だから……何もかも分かっている、そんな風に感じていたのかもしれません。



でも……今なら分かります。提督の言うとおり、わたしは『ひととして生きる』ことに関しては何も分かっていなかった。喜びも悲しみも、切なさも痛みも……そして、信じられないような幸せも……。



大淀「提督……これからもわたしに、いろいろなことを教えて下さい……」


提督「わかった。じゃあ今日はもっとエッチな事を……」


大淀「だ、台無しです! ばかぁぁぁ」(ぽかぽか)



……でも……エッチな事も教えて……下さいね……?





おしまい





以上で完結です。長い間お付き合い頂きましてありがとうございました(o_ _)oペコリ

先日も書きましたが、真面目委員長系の大淀さんが、フリーダムな人たちに振り回されたり困ったり叱ったりするのが、僕的にはとてもしっくりくるので、大淀さんにはとても苦労をかけてしまいました。

そんな風に苦労をかけてしまいましたので……終わりの部分、本当はもう少し哀愁ある感じだったのですが、悩んだ末、全面的に書き直しまして、大淀さんがよりハッピーな感じにしました。そのため投下が遅くなりまして申し訳ないです。


なお、自分の過去作品は以下のような感じです。もし興味がありましたら是非。一応、同じ時代の、同じ世界の提督たちで、お互い知り合いであるという設定になっています。

また、最初に書きましたとおり、この鎮守府は「工作艦 明石。がんばります!」のスレのIFとなっております。

それではまた、次のお話でお会いできることを楽しみにしております(o_ _)oペコリ


【艦これ】俺の鎮守府が修羅場…?
【艦これ】俺の鎮守府が修羅場…? - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1425881502/)

【艦これ】俺の鎮守府が修羅場…? 龍驤END
【艦これ】俺の鎮守府が修羅場…? 龍驤END - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1426422790/)

【艦これ】加賀「最近、皆との距離が近い」
【艦これ】加賀「最近、皆との距離が近い」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1426947844/)

【艦これ】 工作艦 明石。がんばります!
【艦これ】 工作艦 明石。がんばります! - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1428241231/)

【艦これ】 五月雨「パンダ提督とわたし」
【艦これ】 五月雨「パンダ提督とわたし」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1429113386/)




おつおつ
暁とかのエピソードも好きだったから最後チラッと出てきて嬉しいのぜ
振られた子のことも気になったけど・・想像で我慢しよう。


乙ありがとうございます(o_ _)oペコリ
結局1ヶ月以上かけてしまいましたが、こんな長くなってしまっても読んでくださる方がいるのは幸せです。

>>355さん
う、そのとおりです。自分も心残りではあるのですが(特に綾波スキーな自分としてはもっと綾波をっ)、そのへんの話を書くと、大淀さんの新婚の幸せに影が落ちちゃうんですよね。それで残念ながら書き直しでカットされてしまいました。
どうか是非想像で補って下さい(o_ _)oペコリ


新作をはじめました。よろしければ是非ご訪問下さいませ(o_ _)oペコリ

【艦これ】 葛城 「立派な正規空母になるんだからっ!」
【艦これ】 葛城 「立派な正規空母になるんだからっ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1434466157/)

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年04月14日 (木) 03:45:30   ID: 9QCX-nZM

後にも先にもこれ以上の大淀SSは無いだろう
確かに大淀さんはおっぱいに欠けるが、中破したときの太ももからお尻へのラインを見てほしい
貴方が追い求めていた「希望」がそこにあるはずだ

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