久「あんたが三年生で良かった」京太郎「……お別れだな」 (650) 【現行スレ】

まず注意書き

・このスレは京太郎主人公の安価スレです

・いわゆる設定改変してるので上記の内容も含めて苦手な方は注意

・安価ですがバトルや成長要素はありません でも好感度はあるかも

・息抜き用のスレなので結構適当です

・ようやくエンディングに突入

・今までありがとうございました




過去スレ

京太郎「俺が三年生?」久「私が幼馴染じゃ不満?」
京太郎「俺が三年生?」久「私が幼馴染じゃ不満?」 - SSまとめ速報
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京太郎「俺が三年生?」照「私が幼馴染……二番目だけど」
京太郎「俺が三年生?」照「私が幼馴染……二番目だけど」 - SSまとめ速報
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京太郎「俺が三年生?」咲「私だって幼馴染だもん……一応」
京太郎「俺が三年生?」咲「私だって幼馴染だもん……一応」 - SSまとめ速報
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京太郎「俺が三年生?」小蒔「初めては私です!」
京太郎「俺が三年生?」小蒔「初めては私です!」 - SSまとめ速報
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京太郎「俺が三年生?」由暉子「ゆきみだいふく、食べませんか?」
京太郎「俺が三年生?」由暉子「ゆきみだいふく、食べませんか?」 - SSまとめ速報
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京太郎「俺が三年生?」咏「婿養子とかいいんじゃね? 知らんけど」
京太郎「俺が三年生?」咏「婿養子とかいいんじゃね? 知らんけど」 - SSまとめ速報
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京太郎「俺が三年生?」マホ「お兄さんと一緒です!」
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京太郎「俺が三年生?」美穂子「傍にいられるだけでいいんです」
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京太郎「俺が三年生?」玄「私の、育ててほしいな」
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京太郎「俺が三年生?」ネリー「手、つないでもいい?」
京太郎「俺が三年生?」ネリー「手、つないでもいい?」 - SSまとめ速報
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京太郎「俺が三年生?」恒子「ねぇねぇ、お姉さんの相方やってみない?」
京太郎「俺が三年生?」恒子「ねぇねぇ、お姉さんの相方やってみない?」 - SSまとめ速報
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京太郎「俺が三年生?」エイスリン「ツキ、キレイ……」
京太郎「俺が三年生?」エイスリン「ツキ、キレイ……」 - SSまとめ速報
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京太郎「俺が三年生?」誓子「えっちなこと……しても、いいよ?」
京太郎「俺が三年生?」誓子「えっちなこと……しても、いいよ?」 - SSまとめ速報
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京太郎「俺が三年生?」淡「えへへ、だーい好き!」
京太郎「俺が三年生?」淡「えへへ、だーい好き!」 - SSまとめ速報
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京太郎「俺が三年生?」初美「もっと傍にいてもいいですかー?」
京太郎「俺が三年生?」初美「もっと傍にいてもいいですかー?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1492788369/)


エピソードを時系列順にまとめたwiki
http://www62.atwiki.jp/kyo3nen/

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1511719827

日が変わったとこでこんばんは

安価取りたいんですけど、人いますかね?

それじゃ、この中からお好きなのをどうぞ
済がついてるのは選べません


個別

大星淡 済
天江衣 済
桧森誓子 済
姉帯豊音 済
三尋木咏 済
神代小蒔 済
ネリー・ヴィルサラーゼ 済
宮永照  済
エイスリン・ウィッシュアート 済
白水哩 済
竹井久
福路美穂子 済
松実玄 済
薄墨初美 済
滝見春 済
石戸霞
園城寺怜 済
真屋由暉子 済
清水谷竜華 済
鶴田姫子 済


特殊

久照
久美穂子
小蒔霞
哩姫
怜竜


16分まで

締め切り
割ってきます

コンマ判定

霞:1-36
久:37-63
哩姫:64-81
怜竜:82-90
久美穂子:91-00


直下

ヒッサで了解
個人で残る霞さんは間違いなく重い部類です

前スレ1000に関しては…まぁ、なんとかします
ともあれ、おそらくこのスレで終わるのでもう少しだけお付き合いください

したらば

おひさー

もう少ししたら始めます

んじゃあ、スタートします



久「番号あったー?」

京太郎「ちょっと待て……って人多くて全然近寄れねーなぁ!」

久「だから早く行こうって言ったのに」

京太郎「布団の魔力が俺を離さなかったんだ……」

久「はいはい、とりあえずちょっと離れるわよ」



久「ここらへんでいいかな?」

京太郎「こんなとこじゃなおさら見えないだろ」

久「じゃーん、双眼鏡」

京太郎「おお! って、それじゃ下の方が見えなくないか?」

久「とりあえず屈んで」

京太郎「……踏まれるのはやだからな?」

久「踏まないから、ほら」

京太郎「わかったよ」

久「それじゃ、失礼しますっと」

京太郎「うぐっ」

久「こら、苦しそうな声出すな!」

京太郎「んなこと言われたってさ……」

久「いいから立つ。スタンダップ」

京太郎「あーもう」



京太郎「……見えたか?」

久「ちょっと待ってよ。まだ右の方見てないから」

京太郎「わかった。もうちょっと太ももの感触を楽しんでる」

久「……もしスカートだったら絞め殺してたわね」

京太郎「それだったらそもそも、肩車なんてしようとしてないだろ」

久「まったくね……あ、あった」

京太郎「マジか、あっさり見つかったなぁ」


ゆみ「……なにをしてるんだ」



久「あら、ゆみも合格発表見に来たの?」

ゆみ「私も一般受験だからな」

京太郎「掲示板の周りすごいぞ。すごいというかヤバイ」

ゆみ「心配には及ばない。もう確認し終わったよ」

久「咲いた?」

ゆみ「咲いたな」

京太郎「俺も咲いたらしい」

ゆみ「そうか、おめでとう」

京太郎「こっちこそな」

久「おめでと」

ゆみ「ところで、いつまでそうしているんだ?」

久「あ、そうね。用は済ませたから……よいしょっと」

京太郎「ふぅ、急に首周りが寒くなったな」



智美「わはは、迎えに来たぞー」


ゆみ「蒲原、どうしてここに」

智美「ユミちんの合格を祝うために決まってるじゃないか」

ゆみ「まったく、もし不合格だったら……いや、ありがとう」

智美「わはは、礼には及ばないぞ」


京太郎「せっかくだし、一緒に昼飯どうだ?」

久「そうね、無事合格決めたことだし」

ゆみ「ああ、構わない」

智美「それじゃ、車回してくるからちょっと待ってて――」


「「ちょっと待てっ!」」



智美「なんだなんだ、ちょっと待っててほしいのはこっちだぞ」

京太郎「お前、今なんつった?」

智美「だからちょっと待っててって」

ゆみ「その前だ、その前!」

智美「礼には及ばない?」

京太郎「戻りすぎだ!」

ゆみ「ふざけているのか!」

智美「二人とも元気良すぎだぞ。ここはドライブで気分を――」


「「それだっ!!」」



久「ちょっとちょっと何事?」

智美「わはは、さっぱりだぞ」

京太郎「わかれよっ、むしろお前がわかってなきゃダメだろ!」

ゆみ「とりあえず近場で済ませよう。蒲原、車は?」

智美「もうあったまってるぞ」

ゆみ「できれば凍結させといて欲しいな……徒歩で向かうからどこかに駐車しておいてくれ」

智美「なるほど、それで食後のドライブに備えるんだな」

京太郎「お前は車内を頭文字Gで台無しにしたいのか……」

久「よくわかんないけど、集合場所は駅前ね。美穂子もこっち来てるみたいだし」

智美「わはは、了解」





智美「えーっと、それじゃあ二人の合格を祝して――乾杯っ!」


美穂子「おめでとうございます、二人とも」

ゆみ「ありがとう。受かっていて正直ホッとしたよ」

京太郎「俺みたいのが合格して、なんか申し訳ない気もするけどな」

久「もし落ちてたら私の苦労に見合わないでしょ」

京太郎「主に苦しんでたのは俺だから……」

智美「わはは、巻き添えで簀巻きにされたぞ」

ゆみ「簀巻きにされたのはちゃんと勉強しないからだな」

京太郎「むしろ簀巻きに関しては俺が巻き込まれた感ある」

久「結託して逃げ出そうとするからでしょ」

ゆみ「結局は足の引っ張り合いで自滅していたが」

美穂子「まぁまぁ、お料理も来ましたし、冷める前にいただきませんか?」





久「そういえば、卒業の方は大丈夫なの?」

京太郎「なに言ってるんだよ。そこまでヤバいことはしてないっての」

智美「わはは、女性関係はヤバイことになってたり」

京太郎「それと卒業は関係ないから!」

久「もはや否定すらしない……というより、できないってところね」

美穂子「……」

京太郎「うっ、非難がましい目と悲しい目……」

智美「モテる男は辛いなー」

ゆみ「いい加減にしておけ、蒲原。そもそも卒業が心配されてるのはお前だぞ」

智美「わはは、耳に痛い」

久「簀巻きにされるほど頑張ってたんだから、ねぇ?」

智美「頑張らされていたとも言う」

京太郎「まったくだよ……」


京太郎(てか、簀巻きにした側が言う事じゃねぇよ)



美穂子「でも、こうしてこの場を設けられたわけですし」

久「まあ、全滅したらしたで名目が慰める会になってただけなんだけど」

美穂子「もう、久ったら」

京太郎「気にすんな、みほっちゃん。久ちゃんの鬼畜っぷりはいつものことだから」

久「ほう?」

智美「ついでにユミちんの非道っぷりも」

ゆみ「……聞くに堪えないな」

久「じゃあ、あれね。この怒りは雀卓にぶつけましょう」

京太郎「雀卓は友達じゃないのかよ」

久「サッカーボール一色の部屋に住んでる人と一緒にしないでよ」

美穂子「なら、そろそろ出ます?」

久「いつものとこに行きますか」

京太郎「久ちゃんの暴れっぷりが見られるわけだ」

智美「わはは、応援してるから頑張れ」

久「なに言ってるの?」

ゆみ「お前たちもやるんだ」





京太郎「もう、もう麻雀は勘弁してください……」

智美「わはは……死ぬ……」

美穂子「だ、大丈夫ですか?」

久「なに言ってるのよ」

ゆみ「まだまだこれからじゃないか」


京太郎「……やばい」

智美「あれは相当根に持ってる……」

京太郎「ここはどうする?」

智美「素直に頭を下げよう」

京太郎「待て、ちょっと想像してみろ」


久『ダメ』

ゆみ『ダメだな』


智美「……殺られる」

京太郎「……殺られるな」

智美「もう逃げたいぞ……」

京太郎「よく見ろ、加治木がさりげなく退路を塞いでる」

智美「わはは、ノーフューチャー……」





まこ「……」


久「あ、まこおかえり」

ゆみ「お邪魔している」

美穂子「ごめんなさい、ちょっと騒がしくしちゃってるけれど」

まこ「まぁ、お客さんが増えるのは悪いことじゃあないがの……」


京太郎「」

智美「」


まこ「こがぁなとこに死体転がしとくのは迷惑じゃけぇ、はよ片付けんかい」

久「そうね」

ゆみ「ほら起きろ、蒲原」

智美「うぅ……」

美穂子「京太郎さん、起きてください」

京太郎「うっ……天使がいる……天国か」

久「まだ寝ぼけてるなら、もう半荘いっとく?」

京太郎「間違った……地獄だ……」





ゆみ「それじゃあ」

美穂子「また今度、呼んでください」

智美「したらなー」

久「まだ雪あるし気をつけてね」

美穂子「ええ、久たちも」

智美「わはは、帰りはドライブだなー」

ゆみ「それだけは絶対にない」

京太郎「……お前らホントに気をつけろよ」


久「さ、私たちも帰る?」

京太郎「だな」





久「送ってくれてありがと」

京太郎「いつものことだろ」

久「いつものこと、ね……そのいつもって、まだ続くの?」

京太郎「あん?」

久「その……大学、行く気あるのかなって」

京太郎「……まだ、どうしようか迷ってる」

久「そ、なら早めにね」

京太郎「ああ、そうだな」

久「明日はバイト?」

京太郎「まぁな。今度東京行かないといけないし」

久「……」





久「はぁ……」

まこ「部室まで来てため息かい」

咲「あの、京ちゃんは?」

久「さぁね。今頃東京じゃないの?」

咲「東京……」


優希「優希ちゃんのおかえりだじぇ!」


まこ「おかえり。買い物はバッチリかの」

優希「おう!」

和「私がいなかったら、お金を全部タコスに使ってましたよね?」

優希「た、タコスには私のコンディション維持という重要な役目が……」

まこ「ま、一個ぐらいなら大丈夫じゃけぇ」

久「もう部費の中からタコス代は分けといたほうがいいんじゃない?」

咲「今までも部費を使ってたんじゃないんですか?」

久「半分はね。あとはほとんどあいつの自腹よ」

咲「うわぁ……」



和「竹井先輩、お久しぶりです」

久「そんなにかしこまらないでよ。その方がこっちも楽だし」

優希「じゃあタコス代ちょーだい」

久「私にたかるんじゃないの」

優希「こうなったら頼みの綱は先輩! ……ってあれ、いないじぇ」

久「あいつは東京よ」

和「卒業旅行でしょうか?」

久「さぁ、むこうでやることがあるみたいだけど」

まこ「ほうか……で、半荘どうじゃ?」

久「そうね、せっかくここまで来たんだし」

優希「はいはーい! 私も打つじぇ」

咲「えっと、和ちゃんはどうするの?」

和「私は買ってきたものをしまいますから、咲さんが打ってください」

咲「うん、わかったよ」

久「いっちょ揉んでやりますか」





咲「それじゃ、また明日」

和「お先に失礼します」

優希「お疲れだじぇー」


まこ「で、あんたは?」

久「えー? もうちょっといちゃダメ?」

まこ「戸締りせんと帰れんじゃろが」

久「じゃあ鍵だけ置いてってよ。私がしとくから」

まこ「……まぁ、あんたなら大丈夫かの」

久「まだまだ顔利くしね」

まこ「悪用しないように」

久「わかってるってば」





久「……」


『……全国、行けるかな?』

『俺が、つれていくよ』


久「約束、守ってくれたのよね。それも二回も」


『知ったことじゃないな。俺は俺の好きなようにやるさ』

『バカみたい。強引でこっちの気持ちは考えないってわけ?』

『だけど、久ちゃんの隣にいる』


久「とか言ってたくせに、この前のインハイが終わってからは好き勝手しちゃって」

久「……そっか、その時にはもう、ちゃんと約束は果たしてたのよね」

久「だから私、受験勉強なんてさせてたんだ」

久「やだな、束縛ってやつだ」

久「……今頃、東京でなにしてるのやらね」

久「やっぱり、宮永照と……」



京太郎「ちわーっす」


久「……」

京太郎「なんだよ、微妙な顔して」

久「別に、東京にいると思ってたから」

京太郎「日帰りだよ、日帰り。さっきこっちに帰ってきたんだ」

久「やることってのは済ませてきたわけ?」

京太郎「まぁな」



照『……そっか、やな予感はしてたけど』

京太郎『照ちゃんには、最初に言わなきゃって』

照『それはそれで特別、なのかな』

京太郎『……一番キツいだろうから、後に回すとさ』

照『私が最初ってことは……そういうことだよね』

京太郎『ああ、多分それで正解だ』

照『よりにもよってあの女なんだ……』

京太郎『叩かれても殴られても……最悪刺されてもかまわないと思ってる』

照『そんなこと、しないよ。京ちゃんには幸せになってほしいから』

京太郎『照ちゃん……』

照『あ、でもあの女がイヤになったら、いつでも私のとこに来てもいいから』

京太郎『そうならないように気をつける』

照『私はいつでも待ってるから』



京太郎「……さすがにキツかったけどな」

久「なにやってきたかは、察するけど」


久(……向こうの気持ちがわかるってのも問題よね)

久(なんか、自分のことみたい)


久「それで、帰って来るなり学校に来てどうしたのよ」

京太郎「さっきまこっちゃんに会ってさ。久ちゃんがため息ついてるからなんとかしろって」

久「はぁ……そこ座って」

京太郎「なんだよ、いきなり」

久「いいからいいから」





久「重くない?」

京太郎「問答無用で座ってきて言うことかよ」

久「別にいいでしょ。いつだったかもこうしてたし」

京太郎「二年前だな。部長がいなくなったあとだっけ」

久「……あの時は二人だけだったのにね」

京太郎「幽霊部員はいたけどな」

久「いないも同然だから問題なし」

京太郎「つーか、俺たちもう麻雀部じゃないだろ」

久「あ、そういう寂しいこと言っちゃう?」

京太郎「寂しいことでも、前に進まなきゃな」

久「そうね、なら私も言っておかないと」

京太郎「このまんまでか?」

久「この状態なら顔見えないでしょ? 見られてたら恥ずかしいし」

京太郎「つまり恥ずかしいことを言うと」

久「いいから黙って聞く」



久「……一年の最初は、ずっとウザったく思ってた。でも、ちゃんとこっちに引き戻してくれて」

久「二年のときはまこが来てくれたけど、あんたがいなかったら個人戦にも出てなかったと思う」

久「それで、三年生になって、一年生が三人も来てくれて……」

久「……あんたが三年生で良かった」

久「だって、私一人だったら、あんなとこまで行けなかった」

久「京太郎がいなかったら、インハイで優勝なんて……」

久「だから、今までありがと」


京太郎「……きっと、俺が三年じゃなくても同じだったよ」

京太郎「仮に、俺が咲たちと同じ新入生で久ちゃんと面識がなくても、きっと麻雀部に入ってた」

京太郎「そんでもって、久ちゃんを支えてた」


久「……なんでそう言い切れるのよ」

京太郎「さぁ、そういう運命なんじゃないか?」

久「根拠ないし、適当なこと言ってるでしょ」

京太郎「たらればの話なんてみんな似たようなもんだろ。起こりようがないんだし」

久「夢ないこと言っちゃってさ」

京太郎「それに、俺はこれからもって言葉が聞きたいな。だから――」



京太郎「好きだよ、久ちゃん」


久「……遅い」

京太郎「ごめん」

久「信用できない」

京太郎「厳しいな」

久「でも……私も好き」

京太郎「久ちゃん……」

久「京太郎……」


「なんだ、まだ残ってた……ってお前ら!」


京太郎「げっ」

久「あーあ……」





久「すっごい怒られちゃったわね」

京太郎「当たり前だろ。あれでもまだ手加減されてた方だぞ」

久「顧問の先生で良かった」

京太郎「まったくだ」


久「……それでさ、これからどうするの?」

京太郎「そうだな……とりあえず大学に入るよ」

久「とりあえず?」

京太郎「そうしたら傍にいられるだろ」

久「動機が不純ね」

京太郎「入る理由なんてどうでもいいんだよ。問題はその後だろ」

久「そうかも。けど、聞きたかったのはそれじゃないのよね」

京太郎「つーと?」

久「さっきの続き、しないの?」

京太郎「ああ、それな……久ちゃん」

久「んっ……」



久「よろしくね、これからも」

京太郎「もちろん、こっちこそな」


久「ね、家にお邪魔してもいい?」

京太郎「うちの母さんのうざったさに我慢できるならな」

久「そんなのいつものことでしょ」

京太郎「それもそうか……そうだ、ついでに墓参りでもしてやってくれ」

久「そうね」

京太郎「あいつも久ちゃんと付き合い長いし、きっと喜ぶよ」

久「また泣きそうになったら胸貸してあげる」

京太郎「ああ、そうしてくれ」




『エンディング――今までと、これからも』

というわけで終了

安価取りたいけど、人いますかね?

それじゃ、この中からお好きなのをどうぞ
済がついてるのは選べません


個別

大星淡 済
天江衣 済
桧森誓子 済
姉帯豊音 済
三尋木咏 済
神代小蒔 済
ネリー・ヴィルサラーゼ 済
宮永照  済
エイスリン・ウィッシュアート 済
白水哩 済
竹井久 済
福路美穂子 済
松実玄 済
薄墨初美 済
滝見春 済
石戸霞
園城寺怜 済
真屋由暉子 済
清水谷竜華 済
鶴田姫子 済


特殊

久照
久美穂子
小蒔霞
哩姫
怜竜


39分まで

締切
割ってきます

コンマ判定

怜竜:1-13
霞:14-63
哩姫:64-00


直下

リザべコンビで了解
……哩姫かぁ

というわけで、朝一映画なんで寝ます
おやすみなさい



・どこかの未来、美女(メイド水着)と野獣


京太郎 「うわぁ、中間死んだー!」

久「こら、人の部屋来て騒がない」

京太郎「だってさ、スコアがレッドだったんだぞ」

久「赤点ね、赤点。また戒能プロみたいな言い方して」

京太郎「やばいって。なんか赤点だったらレポート提出とかいう恐ろしい噂があるんだよ」

久「それぐらいぱっぱとやっちゃえばいいじゃない」

京太郎「けっ、出来るやつはみんなそういうんだよ!」

久「なんかめんどくさい方向にシフトしてきたわねぇ」

京太郎「もうゴーストライターがやってくれないかな」

久「内木くんとか?」

京太郎「一太か……小学生の写真一枚でいけるか?」

久「やめなさい。先に事案であんたが捕まりかねないし」

京太郎「じゃあどうするんだよ! もう幼女の写真をエサにするしかないだろ!」

久「自分でやれ」

京太郎「ぐはっ」

久「私もちょっとは手伝ってあげるから」

京太郎「マジでか、久ちゃん!」

久「本当にちょっとだけだからね」

京太郎「それでも助かるって」

久「報酬は先払いね」

京太郎「金取るのかよ!」

久「ちょっとこっちも手伝ってもらいたいことがあるの。ちょっと待ってて、着替えてくるから」





久「お待たせ」

京太郎「……なにそのフリフリの水着」

久「メイド風の水着だって。まこが夏限定でこれで接客したらどうだろうかって」

京太郎「なんかもう、本当になりふり構わなくなってきたな……」

久「それよりもどうなのよ。グッとくる?」

京太郎「グッとくるっていうか……ムラっとしてきた」

久「ちょっと、マジメにやってよ。レポート手伝ってあげるんだから」

京太郎「悪い、無理っ」ガバッ

久「きゃっ」


京太郎「久ちゃん……いいよな?」

久「好きにしなさいよ、バカ……」





まこ「で、どうじゃった?」

久「どうもこうも、夏限定とはいえアレはまずいかもね。風営法に引っかかりかねないし」

まこ「ふぅむ、過激すぎたと」

久「まったくね……おかげでしばらく動けなかったし」

まこ「動けなかった?」

久「あ、それは聞き流して。男は大体野獣だって話だから」

まこ「つまり、一晩中サカってたと」

久「それプラス一日中ね。あー、酷い目にあった」

まこ「やれやれ……ほいじゃあアレはやるけぇ、よろしくどーぞ」

久「なに言うのよ、あんなのしょっちゅうやってたら身がもたないわよ」

まこ「ならうちで処分してーー」

久「ちょっと待って、いらないとは言ってないから」

まこ「はぁ?」

久「もらえるものはもらっておくにこしたことはないし……」


久「ああいうのもたまになら……ね?」



というわけでメイド水着実装記念
エンディング後の一幕でした

哩姫は明日か明後日になると思われます

したらば

こんばんはー

もう少ししたらやろうかと

んじゃあ始めます



姫子「次、こっち来っていつですか!」

京太郎『いきなりなんだよ。なんかいいことでもあったのか?』

姫子「先輩があっちこっちで女の子ばたぶらかしとーと思い出しました」

京太郎『言い方っ!』


京太郎『そりゃ、事実の一端を含んでないことも無きにしも非ずだけどな?』

姫子「大半真実やないですか。私とも哩先輩ともキスしたくせに」

京太郎『あ、やめて。それ持ち出されたら反論できなくなる』

姫子「ほら、やっぱし」

京太郎『……まぁ、自分でもそういうのはいい加減なんとかしようとは思ってるんだよ』

姫子「そいって、本命ば決めるってこつですか?」

京太郎『うわぁ、その言い方やだなぁ』

姫子「そがん言うても事実やないですか」

京太郎『うぐっ』

姫子「なら、今ここで返事を――あ、やっぱいいです」

京太郎『頼まれても言わねーよ。電話口でなんて失礼だしな』

姫子「――もしダメでも最悪鎖で縛って既成事実を……」ブツブツ

京太郎『うおーい、なんか不穏当な言葉が聞こえるんですけどっ』

姫子「とにかく、いつ来っかちゃんと教えてください」



姫子(きっとそん時、先輩は私に……)


京太郎『そうだな……ゴールデンウィークあたりにはそっちに行けそうだ』

姫子「なんですか、はっきいしませんね」

京太郎『無茶言うな、まだ一ヶ月以上先の話だろうが』

姫子「しょんなかですねぇ……とりあえずりょーかいです」

京太郎『お前の予定は?』

姫子「んー、前半は家で、後半は学校ですかね?」

京太郎『ん、それじゃあ佐賀だな』

姫子「うち来ます?」

京太郎『そっちが迷惑じゃなければな。そういや、あいつも帰ってくるんだよな?』

姫子「哩先輩ですか?」

京太郎『ああ、まあな』

姫子「……」



姫子(先輩ん言葉には、どっかいつもと違う響きがあって)

姫子(やけん、やな予感が頭ん中に浮かんで……)


姫子「いますよ」

京太郎『ん、そうか』

姫子「とにかくっ、デートとプレゼント楽しみにしてますから! そいぎっ」

京太郎『あ、おい――』ピッ


姫子「……うん、きっと大丈夫」


姫子(あん二人がくっつくなら、私的にもあり)

姫子(想像すっとちかっと……ホントにちかっとだけ痛いけど)

姫子(京太郎先輩にはビンタかひっかくかして、哩先輩にはおめでとうって)

姫子(ついでにしかともなかイタズラでもして……嘘泣きとか、ほっぺたにキスとか)

姫子(そいで完璧……)


姫子(――少なくともこん時は、そがん思ってた)





哩「京太郎……」

京太郎「哩――んっ」


姫子「あ……」


姫子(私には、大好きな先輩が二人)

姫子(深か絆で結ばれとる人と)

姫子(縛り付けてでも、つながりたい人)

姫子(ばってん、そん二人が、抱き合って、キスして……)


姫子「あ、れ……」


姫子(本当なら、二人ん前で涙でも見せて、嘘泣きですって舌出して)

姫子(女ったらしの先輩にはビンタん一つでもくらわして、不意打ちでほっぺたにキスして)

姫子(そいで、最後には二人におめでとうって……)

姫子(やけん――)



姫子「なんね、こい……」


姫子(想像してた、はずなのに……)

姫子(大丈夫って、思ったのに……)

姫子(心ん中でもこがん黒かもん、絶対ダメなのに)

姫子(どっかから際限なく溢れてきて……)


姫子「――っ」


姫子(私は、そん場からちん逃ぐった)





姫子「……」


姫子(二人は互いにすいとって……やけん抱き合って、キスして)

姫子(つまり、そいは――)


姫子「……ダメやね」


姫子(しかつか頭で考ゆっとも、いっちょんまとまらん……)

姫子(そいばってん、私ん中の黒か気持ちは澱のようにどんどん溜まって……)

姫子(口からひっと出たのは――)


姫子「――置いてかれちゃった」


姫子(そん一言は真実のように思えて)

姫子(そいがぐちゃぐちゃな心ん中にくるった答えはシンプル)


姫子「置いてかれるなら――」





京太郎「悪い、お前の気持ちに応えられなくて」

哩「……そう」


哩(そん言葉を予想してなかったとは言えん)

哩(そがんこつも十分あっと思ってた)

哩(やけん、表面上は冷静でいられた)

哩(……あくまでも、表面上は)


哩「もう顔上げてよかよ」

京太郎「……多分結構ひどい顔してるから、見せたくないんだよ」

哩「私は見たいかな」

京太郎「キツイ事言ってくれるな……」

哩「そいはこっちも同じやけん」

京太郎「まったくもってその通りだ」


哩(彼はそがん言うと、顔ば上げて――)



哩「……こすかね」

京太郎「もうなんとでも言ってくれ」

哩「そがん顔しよったらね……くらすっとも考ゆったけども」

京太郎「骨の一本ぐらいならくれてやる」

哩「やけん、よかて」


哩(そいでも、もやもやとした気持ちは残って)

哩(……後で泣こうかな)


哩「こん後は?」

京太郎「ん……あいつと会う約束してる」

哩「そう、姫子と」

京太郎「こっちに他の知り合いもいないしな」

哩「ならそん顔、どがんかすっとよかて思う」

京太郎「まじかぁ……まだ時間あるし、顔洗っとこうかな」

哩「そうやね」



哩(姫子と会う……そいはこっちに来よっけん、当然の流れ)

哩(ばってん、私は思かぶって)

哩(そいは、姫子にはどがん答えるか、ということで……)


京太郎「あいつ、今年もプレゼントよこせってうるさかったんだよな」

哩「……」

京太郎「今日渡すって言ったけど、まだなにも買ってないんだよなぁ」


哩(私にとっては、そいが答えになった)

哩(つまり、京太郎は姫子を――)


哩「――っ」


哩(心ん中にあったのは、祝福とちかっとした痛みと……)

哩(判別がつかん、黒か気持ち)


哩「……」ギュッ



哩(外側から胸ば抑えても、なんにんならんで)

哩(なんでか、姫子ん泣き顔が浮かびよって)


『まいるぜんばぁい、いがないで~』


哩(私が卒業すって時にいつも……ああ、そっか)

哩(――今度は、私が置いてかれる番か)


京太郎「おい、大丈夫かよ」

哩「……」

京太郎「哩、哩……!」

哩「あ……京、太郎」

京太郎「……悪い、いい気分なわけないよな」



哩(本当なら、抑えなきゃならん気持ち)

哩(やけん、どーろこーろせんといけなくて)

哩(……無理、無駄、なんにんならん)


哩「もう、ダメ……」


哩(スッと、距離ば詰める)

哩(いつもと同じ匂いと、温もり)

哩(ばってん、これからはもう……)


哩「京太郎……」


哩(私ん肩に京太郎ん手)

哩(引き離そうと――そん力はばってん、あくまでも優しくて)

哩(私は、京太郎の首筋に手ば回して――)



京太郎「哩――んっ」


哩(そこでようやく自分の気持ち、そん正体に気づいた)

哩(あいは――チリっとした嫉妬と、寂しさ)


哩「……ごめん」

京太郎「いや、俺も悪い……っつーか俺が悪い」

哩「やっぱイケメンやね」

京太郎「褒めてもなんも出ないぞ……さて、俺はもう行くかな」

哩「うん、頑張って」


哩(京太郎ん背中ば見送って、そこで気づいた)

哩(あん黒か気持ちが、いつんはじゃあこまかくなっとる……)

哩(……そいがどこに行ったかも知らんで)





京太郎「……遅いな、もう30分過ぎてるぞ」

京太郎「今まで多少遅れることはあっても、ここまでのはなかったよな」

京太郎「寝坊か時間の勘違いか……何かトラブったか」

京太郎「……とりあえず電話だな」プルルル


姫子『せん、ぱい……?』


京太郎「思ったよりあっさり出たなぁ、おい」

姫子『どがんしたとですか?』

京太郎「こっちのセリフだっての。まさか寝起きか?」

姫子『……あがん見せられて、そいこそ無理ですよ』ボソッ

京太郎「とにかく、なんもないなら早く来いよ。なんなら迎えに行くぞ」

姫子『……なして優しくすっとですか』

京太郎「なんでって、基本お前には甘くしてると思うけど」

姫子『……』

京太郎「姫子? おーい、大丈夫かー?」


姫子「大丈夫なわけ、ないやないですか……」



京太郎「うわっ、いたのかよ」

姫子「いました。先輩が来っ十分ぐらい前から」

京太郎「新手のイタズラかよ……」

姫子「ね、先輩?」

京太郎「なんだ? プレゼントならもうちょっと待ってくれよ」

姫子「先輩は、鎖ってどがん思います?」


姫子「すいとー人をつないで、つなぎとめて」

姫子「すいとー人とつながれて、つなぎあって」

姫子「どこにも行かないで、どこにも行かせない」

姫子「そがん関係、よかて思いません?」


京太郎「お前、なに言って――」

姫子「えいっ」バチッ

京太郎「――あがっ」ドサッ


姫子「思ったんです。置いてかれるなら、どこにも行けんようにすればって」

姫子「あ、こいですか? スタンガンですけど、命に別状はなかって聞きました」

姫子「まぁ、どっか障害残っかもですけど、大丈夫ですよ」

姫子「私がずーっと一緒にいてあげますからっ」





京太郎「うっ……」


京太郎(どこだ、ここ……)

京太郎(そもそも俺、なにしてたんだ?)

京太郎(姫仔たちに会うために佐賀に来た……だよな?)

京太郎(約束の前に哩に会って、その後は……)ジャラ

京太郎(鎖……つながれてるのか?)


姫子「あ、先輩。やっと起きたとですか」

京太郎「ひめ、こ……」

姫子「はい、京太郎先輩の姫子です」

京太郎「こぇ、なん……」


京太郎(……舌が回らない)

京太郎(おまけに、足の感覚が鈍い……)

京太郎(たしか、最後にすごい痛みが走ったような)



姫子「まだダメージ残ってます?」

京太郎「おまぇ、なにしぇ……」

姫子「無理せんでも、私がしっかりお世話してあげますよぉ」


姫子「とりあえず、こい飲んでください」

京太郎「……」

姫子「やですか? しょんなかですね……んっ」

京太郎「――っ」ゴクッ

姫子「ん、心配いらんですよ。毒ってこつはありませんから」


京太郎(飲まされたけど、直ちに異常はなさそうだ)

京太郎(……そもそもなんなんだ、この状況は)

京太郎(こいつはなんで俺にこんなことを……)

京太郎(本当なら、デートしてプレゼントも買ってやって、その後――)



京太郎「くっ……!」

姫子「効いてきました?」


京太郎(なんだこれ、体が……!)


姫子「がば元気になっ薬、飲んでもらいました」

姫子「ホントはそがん抜きでしたかったですけど、哩先輩やないと乗り気になれんと思いまして」


京太郎(こいつ、なに言ってんだ……)

京太郎(ダメだ、体が熱くてなにも考えられないっ)


姫子「あはっ、先輩もすっかりやる気やないですか」

姫子「私も、んっ……準備はオーケーです」

姫子「いっぱい、いーっぱい気持ちよかこつしましょうね、せぇんぱい♪」





姫子「んっ……もうお腹ん中、タプタプです」

京太郎「はぁ、はぁ……ひ、姫子」

姫子「なんですか? あ、まだし足りんと?」

京太郎「お前、なんでこんなこと……!」

姫子「なしてって……私が先輩んこつがばすいとーからですけど」

京太郎「お前な、それだったらちゃんと――」


姫子「哩先輩ですよね?」


京太郎「……は?」

姫子「見ました。二人がキスしとっとこ」

京太郎「お前、まさかそれで……」

姫子「だって、やじゃなかとですか? 置いてかれるの」

京太郎「そんなわけないだろ、だって俺はお前に好きだって言うためにここまで来たんだぞ!」

姫子「あはは、うれしゅうばってん、無理せんでもよかとですよ?」

京太郎「バカ野郎! 俺の話ちゃんと聞いてんのかよ!?」

姫子「はい。やけん先輩が本心からそがん言ってくれるまで、待ってます」

京太郎「だからな――」



哩「姫子……!」


姫子「あ、哩先輩。遅かけん、先にいただいちゃいました」

哩「自分がなんばしょっとかわかっとっと!?」

姫子「しょんなかですよ。私、二人に置いてかれたくなかとですから」

哩「もうよか……京太郎ば解放しんしゃい」

姫子「そいで、二人して私ば置いてくんですよね?」

哩「やけん――」

京太郎「ダメだ、今のこいつには全然話が通じない」

姫子「京太郎先輩がウソ言いよっけん、私ばすいとーって」

京太郎「……こんな感じなんだよ」


姫子「あん時、キスしとっ二人ば見て、思いました」

姫子「おめでとうって言わんと、おめでとうって言わんとって」

姫子「ばってん、無理でした」

姫子「心ん中に黒か気持ちがどんどん広がって」

姫子「ああ、私は二人に置いてかれるんだって」



哩「……」


哩(ああ、そっか……)

哩(私ん中にあったはずの黒か感情は、姫子んところに……)

哩(今、流れてくっこん気持ちも元は私んもんで……)


哩「……京太郎」

京太郎「悪い、情けないけどお前の力を借りなきゃ――んむっ」

哩「んっ――ごめん、ばってん私も……」


哩(もし姫子が京太郎ん気持ちば受け入れれば、今度は私が置いてかれる)

哩(なら、いっそこんまま……)

哩(……ころか女やと自分でも思う)

哩(そいばってん、京太郎と……)



姫子「えへへ、こいで哩先輩も一緒ですね」

哩「姫子はそいでもよかと?」

姫子「当然です。こん前もあがん泣きよったやないですか」

哩「……そう」


哩(私たちん心はつながっとる)

哩(そいがどがん歪なもんでも……)


京太郎「お前ら……」

哩「大丈夫、大丈夫やけん」

姫子「待っててくださいね。今元気になっ薬、飲んでもらいますから」


哩(そして、私たちは――)





姫子「ん、今動きました」

哩「しばらくはおとなしくしとっとね、よか?」

姫子「大丈夫ですよ、産休取りましたし」

哩「私生活でって意味やけん」

姫子「そいぎ先輩も一緒です。まだ目立っとらんですけど」

哩「まぁ、そいは自分でわかっとっけん、大丈夫」

姫子「とか言ってますけど、哩先輩こそなんも言わんで無茶しません?」

哩「……まいるよ」

姫子「あはは、持ちネタ出た」


『哩姫コンビ、ダブル妊娠発覚――!!』


姫子「あ、すごい。見出しにデカデカと乗ってますよ」

哩「けっこう騒がれとっとね」

姫子「IPS細胞がどうとかで、お互いの遺伝子で受精したんじゃないか……とか書いてますね」

哩「なんね、そいは」

姫子「ホントですよね。私たちにはちゃーんと愛すっ旦那様がいるのに」

哩「そうやね」



京太郎「おかえり、二人とも」


姫子「ただいまです」

哩「ただいま」

京太郎「ちょうど晩飯できたんだ。冷めないうちに食おうぜ」

姫子「そいより帰ったらなんばすっか、忘れちゃいました?」

京太郎「バカ、忘れるわけないだろ。ほら……」

姫子「――んっ」

京太郎「哩も」

哩「――んっ」

京太郎「愛してるよ、哩、姫子」



姫子「今夜もいーっぱいしましょうね」

哩「こら、妊婦は安静にせんとダメやろ」

姫子「やけん、そい哩先輩にもちかっぱブーメランですよ?」

哩「うっ……」

姫子「しかも明日は産休前の最後の試合やけん、京太郎先輩ん愛をチャージせんと」

哩「そいは……」


京太郎「冷めるぞー」


姫子「はーい」

哩「すぐ来っけん、待っとって」




『エンディング――鎖という名の絆』

というわけで終了

言うのを忘れてましたけど
特殊エンドはものによってはかなり特殊な状況になるので注意してください
今回のは一応は姫子エンドからの分岐になります

安価は明日にぶん投げておやすみなさい

京太郎は一応自分の意思で二人と一緒にいます
ただ、心が二人に向いているかどうかは……

それはそうと、安価取りたいんですけど、人いますかね?

それじゃ、この中からお好きなのをどうぞ
済がついてるのは選べません


個別

大星淡 済
天江衣 済
桧森誓子 済
姉帯豊音 済
三尋木咏 済
神代小蒔 済
ネリー・ヴィルサラーゼ 済
宮永照  済
エイスリン・ウィッシュアート 済
白水哩 済
竹井久 済
福路美穂子 済
松実玄 済
薄墨初美 済
滝見春 済
石戸霞
園城寺怜 済
真屋由暉子 済
清水谷竜華 済
鶴田姫子 済


特殊

久照
久美穂子
小蒔霞
哩姫
怜竜


20分まで

満場一致なんで霞さんでいきます

それじゃあ、また今度



・二年、元日、眩いもの


京太郎「うぅ……さむっ」ブルッ

京太郎「ちょっと散歩のつもりで出たけど、普通に寒いな……」

京太郎「初日の出まで粘ろうと思ったけど、中入ってようかな」

京太郎「コタツに入りながらのんびりと……寝るな、このパターンは」

京太郎「ちょっと夜更かししてたからなぁ」


霞「あら、おはよう」


京太郎「早いな」

霞「色々と準備があるの」

京太郎「年末年始は大忙しか」

霞「もう慣れたわ。実は今も散歩しているだけだし」

京太郎「俺もそうなんだけど……寒くないか?」

霞「そうかしら?」タユン

京太郎「……あついしぼうで寒さ半減ってか」

霞「……どういう意味かしら?」

京太郎「気にするな! お前が唯一無二の財産を持ってるってだけだ」

霞「なにを言っているの?」

京太郎「いいからいいから。ほら、肩凝ってないかー?」モミモミ

霞「あ、ちょっと」



京太郎「お、こりゃ結構凝ってんな」

霞「もう……いきなりなにするのよ」

京太郎「うちのばあちゃんの鋼鉄の肩でならした俺の腕、見せてやるよ!」

霞「ちょっ――あっ、んんっ」ビクン

京太郎「おいおい、変な声出すなよ」

霞「だれのせいだと……んぁっ!」ビビクン

京太郎「……」


京太郎(やべ、変な気分になってきた)

京太郎(体動かすたびに凶悪なアレがプルプル震えてるし……)


京太郎「ひょっとしたら、追いつめられてるのは俺なのか……?」

霞「いいから、んっ……もう、許してぇ……」ビクンビクン





霞「それで、なにか申し開きは?」

京太郎「調子に乗りました」

霞「はぁ……あなたはいつもこんなことをしているの?」

京太郎「まぁ、たまたまだよ」

霞「ふんふむ、たまたまであんなことをするのね」

京太郎「あんなことって言うけどお前、肩揉んだだけだからな」

霞「それは……たしかにそうね」

京太郎「だろ?」

霞「だけど、セクハラに該当するという見方もできそうじゃない?」

京太郎「うっ、それはまぁ……」

霞「今回は許してあげるけれど。……肩が軽くなったのもたしかだし」

京太郎「うんうん、一目見たときから肩凝ってそうだとは思ったんだよ」

霞「……わかるものなの?」

京太郎「だってなぁ」


京太郎(そんな重そうなものぶら下げてりゃ、だれだってそう思うわ!)

京太郎(それと……)



京太郎「肩凝りそうな生き方してるなって」

霞「……」

京太郎「というのは、俺の勝手な印象だけどな」

霞「……そう」

京太郎「ま、人間生きてれば大なり小なりなにか背負ってるもんだ。多分な」

霞「あなたは、それを重いと思ったことはないの?」

京太郎「さぁね。そっちは?」

霞「自分はまともに答えないのに、人には平気で聞くのね」

京太郎「話し相手なんて、それぐらい無責任なのがいいんだよ」

霞「それは……いえ、そうなのかもしれないわね」

京太郎「ははっ、あとはせいぜい肩揉みぐらいだな」



京太郎「お、日ぃ出てきたんじゃないか?」


霞「……」

京太郎「どした?」

霞「少し、眩しくて」

京太郎「たしかに寝不足の目にはちょっと沁みるな」

霞「ええ、そうね」

京太郎「……昨日はありがとな」

霞「なにかしたかしら?」

京太郎「四人で結託して色々やってたろ」

霞「気づいていたの?」

京太郎「なんとなくな」



京太郎「そういや、ヤケド大丈夫か?」

霞「ヤケド?」

京太郎「飲み物、熱かったみたいだからさ」

霞「そ、それは……」カァァ


霞「むせただけ、むせただけなのっ」グイグイ

京太郎「ちょっ、落ち着け落ち着け」

霞「違うのっ、違うったら違うの――!」



というわけで二年の元旦のエピソードでした

哩姫は単に済の付け忘れです
申し訳ない

というわけで去ります

おひさしこんばんはー

もうちょっとしたら始めようかと

んじゃ、始めます



京太郎「……」


『お願いだから、黙ってて』

『あなたにそれを言われたら、私は……』


京太郎「……はぁ」


「出た、辛気臭いため息」

京太郎「なんだよ」

「かわいい息子が悩んでて、気にならない母親はいないの」

京太郎「なんか、ぞわってきた」

「ちょっとどういう意味よー!」

京太郎「冗談だよ、冗談」



京太郎「別に大したことじゃないから」

「わかった、恋の悩みね」

京太郎「なんでそうなるかなぁ」

「自前の恋愛センサーね」

京太郎「余計なものまで感知してそうだな」

「いいから、話しちゃいなさいよ」

京太郎「あーもう、うざったいな……」


京太郎「なんか色々抱え込むやつがいてさ」

京太郎「大丈夫じゃなさそうなのに大丈夫って言い張っててさ」

京太郎「そんでもって、すごい頑固なんだよ」


「ふんふむ……霞ちゃんね」

京太郎「なんなの、エスパーなの?」

「ズバリ、これぞお母さんの恋愛センサーなのよ」

京太郎「もう話打ち切っていいかな」

「ダメ、せっかくだから全部ゲロっちゃいなさい」



京太郎「……なんとかしてやりたいとは思ったんだよ」

京太郎「でも、自分にそんな資格とか覚悟があるのかって思ってさ」

京太郎「結局なにもできなかった」

京太郎「いや……大丈夫って言葉に甘えて、なんにもしなかったんだ」


「なるほどねぇ……それで、一つ確認していい?」

京太郎「なにさ」

「好きなの?」

京太郎「……それ、関係あるか?」

「大ありじゃない。だって、それって相手とどうなりたいのかに直結するし」

京太郎「どうなりたい……」


『今までどおりでいられるなら、なにも望まないわ』


京太郎「思い知らせてやりたい」

京太郎「閉じこもって出てこないなら、こじ開けて連れ出して、そして――」

京太郎「自分の幸せってやつと、向き合わせたい」



「うーん、青臭い!」

京太郎「あんたがしゃべらせたんだろ!」

「でも、それでいいんじゃない?」

京太郎「……青臭いうえに、独りよがりだ」

「恋ってそういうものじゃない?」

京太郎「恋……これって恋なのか?」

「なにを今更。要約したら、その子に夢中で、しかも幸せにしてやりたいってことじゃない」

京太郎「いや、そこまでは言ってないんだけど」

「だったらまずは自分が向き合って、伝えることは伝えちゃいなさい」

京太郎「聞いてねーし……」


京太郎(資格と、覚悟……どっちもまだ固まってない)

京太郎(だけど――)


京太郎「決めた。とりあえず会いに行く」

「その後は?」

京太郎「決めてない」

「あらら」

京太郎「そこらへんは道中どうにかするよ」

「そう……なら一つだけ」



「私のことは気にしなくてもいいから、好きなようにしてきなさい」


京太郎「いきなりなにさ」

「なんとなく」

京太郎「まぁ、普段からしてないけどさ」

「えー? ちょっとはしてよ」

京太郎「どっちなんだよ」

「ふとした時に思い出して」

京太郎「はいはい」


「……霞ちゃん、よろしくお願いね」

京太郎「なんかさ、いやに気にかけてない?」

「ちょっと昔の知り合いに似てるから」

京太郎「昔の知り合い?」

「うん……だから、きっといつか、幸せだって思えるようにしてあげてね」





霞「……」


『私では、ダメ?』

『私では、あなたを支えられない?』


霞(違う、違う違う……っ)

霞(これは、ただの気の迷い)

霞(こうして滝に打たれていれば、自然と消えていく雑念)


『ま、それでも不十分っていうんだったら俺に任せとけ。肩揉みぐらいだったらしてやるよ』


霞(だから、そんなに優しくしないで)


『はは、美人ってのは怒っても美人だな』


霞(だから、そんな風に笑わないで)

霞(そうすれば、私は……)





明星「お疲れ様です、お姉様」

湧「タオル、どうぞ。体冷えちゃいます」

霞「ありがとう、二人とも」

明星「すごい集中力でした」

湧「やっぱり霞さんってすごいなぁ」

霞「大したことじゃないわ。……ちょっとだけ我慢強いだけ」


初美「お三方ー、そろそろおやつなのですよ」


霞「もうそんな時間なのね」

初美「のめり込みすぎなのですよ」

霞「そうかしら」

初美「何事もほどほどが一番ですからねー。倒れられても困りますし」

湧「あの、私もそう思うというか……まだ水も冷たいですし」

明星「お姉様が倒れたら、みんな心配しちゃいます」

霞「そうね……ごめんなさい、これは私のわがままね」

初美「さ、反省したらちゃちゃっと着替えちゃうのですよ」

霞「ええ、そうするわ」

初美「……」


初美(どうしたものですかねー……)





巴「そうなんだ……」

初美「さすがにあのままじゃまずいといいますかねー」

巴「心配、だよね」

初美「というよりも、見るに堪えないのですよ」

巴「姫様もちょっと心配してるみたいだし」

初美「霞ちゃん、隠してるようで隠せてないですからねー」

巴「原因ってやっぱり……そうなのかな」

初美「それはもう、どうしようもないのですよ。ほら、恋は落ちるものと言いますし」

巴「落ちるものかぁ……うん、重力には逆らえないしね」

初美「そのうち霞ちゃんのにっくき脂肪の塊も重力に負けて……おっと、話がそれたのですよ」

巴「は、はっちゃん……」





小蒔「はふぅ……おやつ食べたら急に眠気が……」

春「眠そうにしてるのはわりといつものこと」

小蒔「そ、そうですか?」

春「疑いようもなく」

小蒔「むぅ……やっぱりここはその、いめーじの払拭にあたりたいと思いますっ」

春「具体策は?」

小蒔「ええっと……そうです! こーひーを飲むとか!」

春「なるほど、コーヒー……」


『に、にがいですっ。こんなの絶対飲めません!』


春(――ってなりそう)


春「悪いことは言わないから、やめておいたほうがいい」

小蒔「なんでですかっ」

春「コーヒーは大人の味だから」



霞「……」スタスタ


小蒔「あ、霞ちゃん」

霞「……あら、小蒔ちゃん?」

小蒔「大丈夫ですか? ぼうっとしてました」

霞「ちょっと、晩御飯の献立で悩んでいたの」

小蒔「食材が足りないなら、私お使い行きますよ?」

霞「ありがとう、小蒔ちゃん。でも、私が行くから大丈夫よ」

小蒔「でも――」

霞「ごめんなさい。本当のことを言うと、他にも用事があるの」

春「……」

霞「だから私が行った方が都合がいいの」

小蒔「そうですか……じゃあ、気を付けて行ってきてくださいね」

霞「ええ」


小蒔「……やっぱり、ちょっと変です」

春「私もそう思う」

小蒔「でも、私も意気地なしです」


小蒔「聞きたいことが、聞かなきゃいけないことがあるはずなのに……」





京太郎「……うーん、わからん!」

京太郎「あの石頭が素直に話聞いて頷くわけないよな……」

京太郎「最悪、無理矢理っていう手も――」


初美「悪巧みですかー?」


京太郎「なんだお前か」

初美「なんだとはなんですか」

京太郎「ほっとしたって意味だよ」

初美「むむっ、なにかやましいことがあると見ました」

京太郎「やましいことっていうか……誘拐?」

初美「犯罪者発見なのですよ!」

京太郎「冗談だ冗談……六割ぐらいは」

初美「わりと本気ということですねー……」

京太郎「そんなわけで石戸は元気か?」

初美「ダメダメですね」

京太郎「ダメダメか」

初美「……最近は、神境にいること自体が辛いんじゃないかって」

京太郎「……そうか」



京太郎(やっぱり、一筋縄じゃいかなさそうだな)


京太郎「なあ、小蒔と話したいことがあるんだけど」

初美「姫様なら神境ですねー」

京太郎「なら外に呼んできてもらえるか?」

初美「内緒話ですか?」

京太郎「ああ、ちょっとお前らの日常をぶっ壊すことになるかもしれないけど」

初美「それはまた、穏やかじゃないですねー」

京太郎「だから、先に謝っておきたい」

初美「……霞ちゃん、ですか?」

京太郎「ああ」

初美「ふぅ……なら仕方ないですねー」





霞「……」


霞(時間が解決してくれる、というけれど)

霞(この痛みはいつになったら消えてくれるのかしら)

霞(……いいえ、痛いなんてこと自体ありえない)

霞(だって、私は――)



京太郎「今、暇か?」

霞「……来ていたのね」

京太郎「ああ、先に手紙は送ったよな」

霞「そうね……」

京太郎「話がしたい」

霞「ごめんなさい、ちょっと忙しいの」

京太郎「そうか。じゃあいつならいい?」

霞「わからないわ。少したてこんでいるから」

京太郎「……もしかしなくても、避けようとしてるだろ」

霞「そんなこと――」

京太郎「ないとは言わせないぞ」

霞「……」

京太郎「小蒔たちも気づいてる。お前が辛そうだって」

霞「そんなこと、ないわ」

京太郎「薄墨も言ってた。ここにいるのがいやなんじゃないかって」

霞「そんなわけ……」

京太郎「ないって言えるなら、ちゃんとこっち見て話せよ」

霞「……いやよ」

京太郎「いいからっ」グイッ

霞「あっ……」



京太郎「……泣いてるじゃないか」

霞「どうして……どうしてこんなことするのよ」

京太郎「お前の本心が聞きたいから」

霞「話せば、離れてくれるの?」

京太郎「聞いてから決める」

霞「ふぅ……なら、話すわ」


霞「……望んでここに来たはずなの」

霞「初美ちゃんたちと一緒にいたくて、ここに来たはずなのに……」

霞「でも、怖いの……」

霞「お役目だからって、務めを果たさなきゃって……そう思ってたのに」

霞「でも、あの夏の……私が失敗して、小蒔ちゃんを危険な目にあわせたあの時から……怖くてたまらないの」

霞「またああなるんじゃないかって、私の失敗で全てを失うんじゃないかって……」

霞「だから、もっと……もっと心を強く持たなくちゃいけないの」

霞「たとえそれで、自分の心が押し殺されたとしても」



京太郎「それが、お前の本心か」

霞「……もう、いいでしょ。いつも通りでいさせて」

京太郎「悪いけど、無理だ。そもそも、俺が一番聞きたかったことがまだだから」

霞「……どういう意味かしら」


京太郎「あの時、俺はお前が大丈夫だって言ったから、その言葉に甘えた」

京太郎「結局のところ、踏み込む覚悟と勇気が足りなかったんだ」

京太郎「お前の言葉で決心がついたよ」

京太郎「お前が不幸ぶって自分を抑え込むなら、俺が無理やりにでも引きずり出してやろうって」

京太郎「他のだれでもない、俺がお前を幸せにしたい」

京太郎「俺はお前が好きだからさ、なんでもなくても笑ってるとこが見たいんだよ」


京太郎「ダメか?」

霞「……聞かなかったことにするわ」

京太郎「じゃあ何度だって言うよ……俺は――」

霞「……ダメ、やめて」

京太郎「お前が、石戸霞が――」

霞「やめてって、言ってるでしょ……!」

京太郎「――好きだ」

霞「言わないでって、言ったのに……」



霞(だってこんなの……応えられるわけがない)

霞(私が応えてしまったら……)

霞(でも、もう――)


霞「だってあなたにそれを言われたら、私はきっと抑えられなくなるから……」

霞「ずっと、ずっと蓋をしてようと思ったのに……」

霞「――好き、あなたのことが好きなの!」

霞「そうよ、初恋よ!」

霞「本当はなにもかも捨ててあなたといたい!」

霞「でも、私にはそれができないの……!」


京太郎「それがお役目だから、か」

霞「ええ、そうよ」

京太郎「先に謝っておく。俺はお前のこのままでいたいって願い、ぶっ壊すから」



小蒔「霞ちゃん」


霞「――っ!」

小蒔「全部、聞いてました」

霞「ち、違うの、今のは……」

小蒔「全部本心、なんですよね?」

霞「そんなことっ」

小蒔「私もずっと聞きたいことがあったんです」


小蒔「霞ちゃんは、私の身代りというお役目をどう思っていたのかを」


小蒔「今までずっとずっと聞けませんでした」

小蒔「霞ちゃんの優しさに甘えて……ううん、きっと怖かったんです」

小蒔「一緒にいたいから……それを聞けば、離れてしまうかもしれないから」

小蒔「でも、きっとそれがいけなかったんですね」

小蒔「だから聞かせてください」

小蒔「霞ちゃんは、私の身代りという立場でいいのかどうかを」



霞「……いいわけ、ない」

霞「うんざりしていたわ……」

霞「なにかを我慢して、なにかを諦めて」

霞「それがお役目だから、お役目だからって……」


小蒔「……そうですか」

霞「ごめんなさい……忘れて」

小蒔「ううん、忘れません」


小蒔「霞ちゃん、あなたをこの神境から追放します」


霞「……え?」

小蒔「お役目があなたの幸せを縛るというなら、解放します」

霞「ま、待って」

小蒔「今までありがとうございました……本当に」

霞「小蒔ちゃん、私は……!」



小蒔「それと、京太郎様」

京太郎「ああ」

小蒔「私の、大事なお姉さんをお願いします」

京太郎「もちろんだ」

小蒔「それと――えいっ」ペチッ


小蒔「これが私の心を弄んだ罰、ということで」


京太郎「……痛いな」

小蒔「じゃあ、これから霞ちゃんを大事にしてあげてください」

京太郎「わかってるよ」


霞「小蒔ちゃん、私は、私は……」

初美「いつまで呻いてるのですか」

霞「初美、ちゃん?」

初美「これ、最低限の荷物はまとめておいたのですよ」

霞「そんな、私本当に……」

初美「……自業自得なのですよ。無理に抑え込んでるから」

霞「だって、私はそうすることでしか……」

初美「ほら、さっさと行っちゃうのですよ」

霞「あっ……」



霞「それでも、私はみんなと……!」

初美「そんなの、私たちだって一緒なのですよ……!」


初美「でも、霞ちゃんは自分の幸せを見つけようとしないから!」

初美「だれかのため、だれかのためって……だれかのせいにしてるから!」

初美「だからっ、ここから離れて、いっぱいいっぱい幸せになってもらうのですよ!」


初美「だから、私からもおねがいするのですよ」

京太郎「当然だろ」

初美「憎たらしいですねー」

京太郎「……お前たちから大事なもの、奪ってくからな」


霞「あ、あぁ……」

小蒔「……いつか、あなたが心の底から幸せだと思えるようになるまで」

霞「小蒔、ちゃん……」

小蒔「それまで、お別れです」





霞「……」フラフラ

京太郎「ほら、転ぶぞ」

霞「……ついてこないで」

京太郎「俺が放っておくと思うのか?」

霞「……」

京太郎「なあ、どこ向かってるんだ?」

霞「……わからないわ」


霞「私には、もう帰れる場所なんて……」


京太郎「なら、俺と一緒に来るか?」

霞「……元はといえば、あなたがっ」パンッ

京太郎「――いって」



霞「あなたが、あんなことをするから!」パンッ

霞「あなたが、私なんかを選ぶから!」パンッ

霞「あなたが……私たちの前に現れたから!」パンッ


霞「あなたが、あなたがあなたが……!」グイッ

京太郎「ちょっ、叩きすぎ――んむっ」

霞「――あなたが、好き。それでも、好きなの……」

京太郎「……そうかよ」

霞「許さない、絶対に許さないわ……だから――」


霞「――ずっと、放さないで」





「……結局、親子ってことなのかしらね」

「京太郎か?」

「霞ちゃん、連れ出しちゃったって」

「そうか」

「心配じゃないの?」

「あいつならなんとかするだろ。それよりも、君は大丈夫なのか?」

「まぁ、これで直りかけてた実家との関係も悪化しちゃうけどね」


「でも、これで良かったんじゃないかしら?」

「ほら、私たち今、幸せじゃない?」





小蒔「……」


巴「姫様、考え事ですか?」

小蒔「ちょっと、空を見てました」

巴「空、ですか?」

小蒔「この空の下に、霞ちゃんもいるんだなって」

巴「……せめて私も見送りたかったですね」

小蒔「ごめんなさい、私の独断で」


春「まったくもってその通り」


春「おかげで黒糖を渡せなかった」

巴「あはは、はるるはブレないね」

春「明星たちはまだ落ち込んでるけど」

巴「……しかたないかな、私だって……」

小蒔「……」



小蒔(霞ちゃんがいなくなって、色んな変化がありました)

小蒔(たとえば御飯です)

小蒔(ほとんど霞ちゃんが受け持ってたのを、みんなで分担するようになりました)

小蒔(それと、私たち一人一人も……)

小蒔(初美ちゃんはみんなのお手本になろうと頑張ってます)

小蒔(巴ちゃんは明星と湧と一緒にいる時間が増えました)

小蒔(多分、二人が寂しくないようにだと思います)

小蒔(春は相変わらずのように見えて、黒糖の量がちょっぴり増えました)

小蒔(そして私は――)


小蒔「霞ちゃん……」


小蒔(こうして、時々空を見上げて祈っています)

小蒔(どこか遠い空の下で、あなたたちが幸せに暮らしていますように……と)




『エンディング――どこか遠い空の下で』

というわけで終了

眠いのでおやすみなさい
安価は多分明日で

昨日はぐっすりスヤスヤでしたね……

それはそうと、安価取りたいんですけど、人いますかね?

それじゃ、この中からお好きなのをどうぞ
済がついてるのは選べません


個別

大星淡 済
天江衣 済
桧森誓子 済
姉帯豊音 済
三尋木咏 済
神代小蒔 済
ネリー・ヴィルサラーゼ 済
宮永照  済
エイスリン・ウィッシュアート 済
白水哩 済
竹井久 済
福路美穂子 済
松実玄 済
薄墨初美 済
滝見春 済
石戸霞 済
園城寺怜 済
真屋由暉子 済
清水谷竜華 済
鶴田姫子 済


特殊

久照
久美穂子
小蒔霞
哩姫 済
怜竜


32分まで

締切
とりあえず割ってきます

コンマ判定

小蒔霞:3の倍数以外
久照:3の倍数、かつ奇数
怜竜:6の倍数


直下

3の倍数じゃないので姫様と霞さんで
……またシリアスなんですけど

今日はこれで失礼します

お久ー

顔とか洗ったら始めます

んじゃ、そろそろ始めます

多分これまでのエンディングの中で最長じゃないかと



『お名前と連絡先、教えていただけませんかっ』


京太郎「うっ……」


『愛しています、京太郎様』


京太郎「こ、まき……」


『好き、好きなの……あなたが好きなの』


京太郎「うぁ……」


『お願い、今だけだから……明日からはいつもの私に戻るから……』


京太郎「お、れは……」


京太郎「――っ」ガバッ

京太郎「……はぁ、なんつー夢見てんだ」



霞「おはよう、今日は遅いのね」


京太郎「なんだよ、また勝手に入ってたのか」

霞「だってあなた、私が作らないとちゃんと朝ご飯食べないじゃない」

京太郎「ちょっとぐらいなら食べなくっても大丈夫だって」

霞「いいから食べて。もうできてるわ」

京太郎「ああ、いい匂いすんな……」グゥ

霞「お腹は正直なのね」クスクス

京太郎「別に食べたくないわけじゃないから」

霞「じゃあ用意しちゃうわね」





京太郎「ごちそうさま」

霞「おそまつさま」


霞「ねえ、今日は?」

京太郎「珍しいことに暇。たまにはごろごろしてようかな」

霞「そうね、ゆっくり休んで。家事は私がやっておくから」

京太郎「お前だって仕事あるだろ。いいよ、別に」

霞「今日はお休みなの」

京太郎「……あー、そうだったか」

霞「だから気にしなくてもいいの」

京太郎「じゃあちょっと出かけるわ」

霞「なら掃除しておくわ」

京太郎「だから、お前がそこまでする必要ないって」

霞「いいえ、だって私は――」


京太郎「ただのお隣さん、そうだろ?」



京太郎「だからさ、俺のことなんて気にしなくてもいいんだよ」

霞「……どうして、そんなことを言うの?」

京太郎「もう十分だってことだよ。いつまでも引きずってないで前を向かないとな」

霞「――いやっ!」


霞「あなたの口からそんな言葉聞きたくない!」

霞「あんなことになっても私を引き留めたのにっ、傍に置いたくせに……!」

霞「突き放すなら最初から突き放してよ!」

霞「それなら、私もあなたを……」フラッ


京太郎「おい、霞っ」ガシッ

霞「あなたを……諦められたのに」

京太郎「……もういいから。寝てろよ、顔色悪いぞ」

霞「……部屋に戻るわ」ヨロヨロ

京太郎「どうせ隣に戻るだけだったらここで休んでろ。俺はなんか買ってくる」

霞「あ、待って――」


京太郎「んじゃ、おとなしくしてろよー」バタン


霞「……ただのお隣さんだったら放っておけばいいじゃない」





小蒔「葉桜……」


『――っと、ギリセーフ……大丈夫か? お転婆姫さんよ』


小蒔「もう、随分前のことみたいです」

小蒔「そのころの私はまだなにも知らなくて」

小蒔「大好きな人たちと会えなくなるなんて思いもしないで……」


春「姫様、そろそろ」


小蒔「わかりました、今行きます」

春「……大丈夫?」

小蒔「春が心配するようなことはありませんよ」

春「そう……」


『関節キスは好きな人と、本当のキスは契りを結んだ殿方と』


小蒔「今なら、お母様の言葉の意味が分かる気がします」

小蒔「……本当に好きな人とは結ばれないから、なんですね」

小蒔「京太郎様、霞ちゃん……」


小蒔(小蒔は今日、夫婦となる殿方と顔を合わせます)

小蒔(……京太郎様以外の男性と)





巴「姫様の様子、どうだった?」

春「いつも通りに見えた」

巴「そう……」

春「でも、平気なはずない」

巴「……どうしてこうなっちゃったんだろうね」

春「そんな決まってる。……全部、あの人のせい」

巴「はるる、それは――」

春「私は絶対許さない……許せない」

巴「……」


巴(はるるがこんなに怒るなんて……)

巴(そっか、好きだったんだもんね)

巴(私も……)



初美「はいはいはーい、暇ならこっちを手伝うのですよー」


初美「ほら、はるるは向こう。明星たちがテンパってるのですよ」

春「ん、わかった」タタタ


巴「ごめんね、ちょっと姫様が心配で」

初美「それは無理もないのですよ」

巴「でも、はっちゃんは変わらないね」

初美「私まで沈んでたら、暗くてどうしようもないですからねー」

巴「……うん、そうだね」

初美「ささ、巴ちゃんは表のお掃除を手伝うのですよ」

巴「えっと、ちょっと難しいかな」

初美「まぁまぁ、サボりたい気持ちはわかりますがねー」

巴「そうじゃなくて、はるるが向こう行っちゃったから私が姫様についてないと」

初美「うげっ、じゃあ広い境内をひとりきりで掃除ですかー!?」





京太郎「引きずってないで前を向け、ね」

京太郎「……まぁ、自分のこと棚に上げないと何も言えなくなるよな」


「あら? たしかあなた石戸さんの……」


京太郎「えーっと、どちらさまでしたっけ?」

「やだもう、忘れちゃったの!?」

京太郎「んー……」


京太郎(いや、本当にだれだっけ?)

京太郎(というかこのおばさん、なんとなくうちの母親と同じにおいがする……)

京太郎(……母さん、元気かな)


京太郎「……そうだ、たしか霞の職場の先輩でしたっけ」

「そうそう、やっと思い出してくれた?」

京太郎「すいません、ど忘れしちゃってたみたいで」


京太郎(てか、一度ちらっと顔合わせただけだよな、たしか)



「霞ちゃん、無理しないようにちゃんと見ててあげてね。昨日だって大変だったんだから」

京太郎「昨日? なにかあったんですか?」

「フラフラしてたし、吐き気で食欲もなかったみたいなの」

京太郎「そんなに具合悪かったのか……」

「だからカレシのあなたがしっかり看病してあげること。いい?」

京太郎「彼氏じゃないです」

「そうなの? 時々一緒に帰ってるみたいだし、てっきり同棲してるものだと思ってた」

京太郎「昔からの知り合いで、今はただのお隣りさんですよ。親切にしてもらってますけど」

「えー? 霞ちゃんはあなたにラブだと思うんだけど」

京太郎「ははは、そんなまさか」

「さてはあなた……朴念仁で唐変木ね!」

京太郎「そんなわけ……」


京太郎(……ないわけないよなぁ)


「とにかく、霞ちゃんの気持ちにしっかり応えてあげること! それとも、カノジョさんいたりするの?」

京太郎「いない、ですね」

「じゃあなんも問題ないわね!」



京太郎(あるよ、ありありだよ)

京太郎(そもそも俺は……)


『……俺は小蒔と一緒に生きていくことにした』


京太郎(一回断ったようなもんだろ)

京太郎(そんな都合よくいってたまるか)


京太郎「すいません、買い物あるんでそろそろ」

「あ、もしかして霞ちゃんのお見舞い?」

京太郎「今朝も具合悪そうにしてましたから」

「やっぱり? じゃあお大事にって伝えておいてくれる?」

京太郎「もちろん」

「それと、風邪だったら誰かに移せばって言うし……ね?」

京太郎「……」



京太郎(ね? じゃねーよ)

京太郎(ホントこういう手合いは……)


「じゃあ、うちの本屋のアイドルをよろしくね」

京太郎「アイドル?」

「知らない? 霞ちゃん目当てのお客さん、結構いるんだけど」

京太郎「初耳ですね」

「うかうかしてたら取られちゃうかも……じゃあね~」


京太郎「……ま、その方が全然いいよな、今よりは」

京太郎「あいつにとっても、俺にとっても」

京太郎「だけど……もう半年か」

京太郎「潮時ってやつなのかもな」





『……俺は小蒔と一緒に生きていくことにした』


霞(わかってる。彼は小蒔ちゃんを選んだ)


『お前にだけは言っとかなきゃいけないと思ったから』


霞(やめて……そんなこと聞きたくもない)


『……さぁ、ここでサービスタイムだ。恨み言でも罵倒でも、なんだったら包丁まではギリオーケーだ』


霞(だけど、私は我慢して……)

霞(我慢して我慢して我慢して我慢して我慢して――)


『お願い、今だけだから……明日からはいつもの私に戻るから……』


霞(――取り返しのつかない間違いを一つ、犯してしまった)





霞「んっ……」


霞(……寝ちゃってたのね)

霞(それにしても……)


霞「なんて、ひどい夢なの……」

霞「すごい寝汗……着替えたいわ」


京太郎「ほら、サイズ合わないだろうけど」


霞「どうしてここに……」

京太郎「自分の部屋にいるのは当然だろ」

霞「そう、だったわね」

京太郎「具合は?」

霞「平気よ」

京太郎「本当か? お前の先輩に昨日も具合悪かったって聞いたけど」

霞「……だから今日はお休みになったの」

京太郎「なるほど、休まされたのか。お前の平気、大丈夫は信用できないからな」

霞「あなたも人のことは言えないじゃない」

京太郎「自分のことは棚上げしなきゃ、なんにも言えないからな」

霞「呆れた開き直り……」

京太郎「それよりも飯とシャワー、どっちにする?」





霞「ごちそうさまでした」

京太郎「おそまつさまでした」


京太郎「はは、今朝とは逆だな」

霞「ごめんなさい、あなたの手をわずらわせてしまって」

京太郎「いいって。普段世話になってるし、それに料理も久しぶりで楽しかったし」

霞「でも私は……」

京太郎「はい、ここでデザートの登場だ」

霞「あなたに対してもとても償いきれない――むぐっ」

京太郎「いいからオレンジ食え」

霞「……しゃべらせてくれてもいいじゃない」

京太郎「今日のお前は辛気臭いことばっかだしな。……それに、そもそも悪いのは俺だから」

霞「それは――むぐっ」

京太郎「はいもう一個ぉ」





初美「うへぇ……やっと終わったのですよ」

初美「まったく……こーんな広いところを一人で掃除しろとか、罰ゲーム以外の何物でもないですねー」


久「やっほー、元気してた?」


初美「あれれ、お久しぶりなのですよ」

久「久しぶり。他の人たちは?」

初美「中ですね」

久「じゃあちょっと上がらせて……って、いきなりアポなしで来ちゃったけど大丈夫?」

初美「思いっきり来客予定があるのですよ」

久「あらら、我ながらバッドタイミングね……それじゃ、手短に挨拶だけにしようかな」

初美「えーっと、それは、なんといいますか……」

久「京太郎たち、いるんじゃないの?」

初美「……もういないのですよ」

久「もしかして出かけちゃった? あちゃー、本当にタイミング悪いわねぇ」

初美「……」



初美「もう帰っては来ない、という意味なのですよ」


久「えーっと、浮気でもして追い出されたとか?」

初美「……」

久「え、やだ、黙らないでよ。本当にそうなの?」

初美「それは……」

久「はぁ……まぁいいや。じゃあ神代さんに聞いてくる」

初美「ダメなのですよ」

久「しょうがない……じゃあ大人しく帰って――」


久「――やるわけないでしょっ」ダッ


初美「あっ、待つのですよ!」

久「そう言われて待つ奴なんているわけないでしょ!」

初美「たしかに!」





『ごめん、俺にはもうここにいる資格がないんだよ』

『それでもっ、私は京太郎様と……!』

『……ホントごめんな、小蒔』


小蒔(あの時、無理にでもついていけたら)

小蒔(お母様の言いつけを破ってでも、外に出ていっていれば)

小蒔(私は、今も京太郎様と……)


『霞ちゃん……』

『みんなのこと、お願いね』

『……はい』


小蒔(一人で背負いこんでいることには気づいていたはずなのに)

小蒔(聞きたいことがあったはずなのに)

小蒔(それとずっと向き合わないまま、私は……)





『こらー! 観念するのですよっ』

『あーもう、しつっこいわねぇ!』


巴「あれ? はっちゃんと……だれ?」

小蒔「だれか、来客でしょうか?」

巴「なんだか聞き覚えのある声のような」


久「お邪魔します!」


巴「た、竹井さん!?」

久「京太郎、どこ行った――うわっ」

初美「やーっと捕まえたのですよ!」

久「ちょっと、放してよ……!」

初美「放せと言われて放す奴はいないのですよ!」

久「さっきの意趣返しかっ」

初美「その通り!」



巴「えっと、何事なのかな?」

初美「不法侵入なのですよ!」

久「そっちがはっきりしたこと教えないからでしょ!」


久「一体京太郎に何があったっていうのよ!」


巴「えっと、それは……」

久「ほら、口つぐむ」

初美「とにかく、今日はお客さんが来るからもう帰るのですよっ」


小蒔「二人とも、下がってください」


巴「……わかりました」

初美「むぅ、姫様がそういうなら」





久「それで、なにがあったの?」

小蒔「あの二人……京太郎様と霞ちゃんは、問題を起こして追放された……それだけです」

久「問題って?」

小蒔「お答えできません」

久「あのバカが石戸さんと浮気したとか?」

小蒔「お答えできません」

久「……しばらく会わないうちにすっかり他人行儀ね」

小蒔「……今までがおかしかったんだと思います」


小蒔「あの夏の日に、あなたたちを迎え入れなければ」

小蒔「私は恋も嫉妬も……なにも知らないままでいられた」


小蒔「……お引き取りください。もう話すことはありません」

久「そうね……だけど一個だけ言わせて」


久「悲劇のヒロイン気取り?」

久「自分からはなにもしようとしないで被害者面?」

久「要するに諦めたんでしょ。あいつのことも石戸さんのことも」

久「アホらしい……こんな女に取られたなんてね」


久「それじゃ、さようなら。なんにもできないかわいそうなお姫様」

小蒔「帰って! 帰ってください!」

久「言われなくても!」





久「あーもう、むしゃくしゃする……!」

久「信じて送り出した幼馴染が行方不明って? しかも破局してるし!」

久「こんなことならもっと……」


初美「ちょっと待つのですよー」


久「なに、お礼参り?」

初美「どこの不良ですか」

久「違うの?」

初美「ちょっと姫様のフォローをと」

久「……まあ、こっちも多少八つ当たりは混じってたけどね」

初美「やっぱり。フラれた女の未練は――いひゃいいひゃい!」

久「喧嘩なら買うわよ?」ギリギリ





霞「……」ムスッ

京太郎「まだ怒ってるのかよ……悪かったよ。たしかにあのオレンジはちょっと酸っぱかった」

霞「……オレンジはおいしかったわ」

京太郎「じゃあなに、問答無用で口に突っ込んだことか?」

霞「……」

京太郎「やっぱそれかぁ。無理やりはよくないよな、うん」


霞(違う、そうじゃない)

霞(私が何よりも許せないのは、自分)


『自分のしたことの意味、わかっていますね?』

『……はい。どのような罰も甘んじて受け入れます』

『ならば、ここを去りなさい。それがあなたに与える罰です』

『わかり、ました』


霞(現状に、幸せを感じてしまっている自分が許せない)

霞(私のせいでなにもかも壊れてしまったのに)

霞(それなのに、どうしてこの人は……)



霞「どうして、あの時私を引き留めたの? 私なんてほうっておけばよかったのに」

京太郎「あのなぁ、あんな糸の切れた凧みたいなやつ、放っておけるわけないだろ」

霞「……そうね、あなたはそんな理由で無茶をする人だったわね」

京太郎「……あとはさ、居場所がほしかったんだよ」


京太郎「あそこにいられなくなって、今更帰るわけにもいかなくてさ」

京太郎「じゃあ俺はどこに行ったらいいんだろうって」

京太郎「そしたらお前が隣にいて……よし、こいつのために頑張ってみようって」

京太郎「……いや、結局は自分のためだな」


霞「自分のため……」

京太郎「ああ、思えば強引につき合わせちゃってたよな」

霞「それで、あんな倒れるまで無理して働いて……」

京太郎「……二部屋分の家賃はさすがに失敗したと思ってるよ」

霞「同じ部屋でも構わなかったわ」

京太郎「それでも線引きはいるだろ、やっぱり」

霞「今は、必要?」

京太郎「……霞」



『それでもっ、私は京太郎様と……!』


京太郎「悪い、まだ……」

霞「……でも、あなたは私を傍に置いた」

京太郎「ああ」

霞「私を、必要としてくれたのよね?」

京太郎「そうだよ」

霞「そう……」


霞「今日は帰るわ……また明日」





『あなたは、あの子の傍にいる資格を失った』

『……』

『その意味はわかりますね?』

『……はい』

『それならば、早いうちに去ることです。……これ以上辛くなる前に』

『お世話に、なりました……』

『……結局、こうなってしまうのですね』


京太郎「……俺は、もうあそこには戻れない」

京太郎「小蒔と一緒にいる資格も、ない」

京太郎「ここが俺の今の居場所」

京太郎「そしてここにはあいつが、霞がいる」

京太郎「それなら、このままあいつと……」


『私も……愛しています、京太郎様』


京太郎「――っ」ダンッ

京太郎「どんだけ未練ったらしいんだ、俺はっ……!」





『そしたらお前が隣にいて……よし、こいつのために頑張ってみようって』


霞(……もし、許されるならこのまま)

霞(過去を全部捨てて、彼と一緒にいられるなら……)


――ピンポーン


霞(来客? こんな朝早くに)

霞(彼は仕事に行ったし……)


『あれ、こっちも留守?』


霞(この、声は……)





久「えーっと、ここかな?」

久「……うん、住所も建物の名前もあってる」

久「201は……あった」ピンポーン


久「……出ない」

久「まぁ、働いてるならしょうがないか」

久「じゃあ次は隣ね」ピンポーン


久「あれ、こっちも留守?」

久「まいったわねぇ……」

久「んー、場所はわかったし、また夕方にでも――」


霞「やっぱり、竹井さん」



久「あら、いたんだ」

霞「どうしてここが……」

久「まぁ、色々伝手があって、調べてもらったの」

霞「……何の用?」

久「元気にしてるかの確認。神境では色々とあったみたいだし」

霞「そう……小蒔ちゃんたちに会ったのね」

久「色々とわけわからなくてさ、みんな口つぐんじゃうし」

霞「無理もないわ。……いい思い出とはとても言えないもの」

久「それで、当事者のあなたならどうかなって」

霞「悪趣味ね」

久「だってそれであいつが苦しんでるんだったら、なんとかしたいし」

霞「……そう、彼のために」

久「あ、本人には言わないでよ。恥ずかしいから」

霞「わかっているわ」

久「それで、話す気ある?」

霞「……」





久「……大体わかったわ。それでここに来たわけ」

霞「ええ……神境を出た後は、彼がこの部屋を見つけてくれて……私の分の家賃まで賄って」

久「はぁ? そんな無茶してたの?」

霞「一度、倒れたわ」

久「あのバカ……」

霞「……彼は悪くないわ。私が精神的にまいっていたせいよ」

久「それなら意地張らないで、一部屋だけにしちゃえばよかったじゃない」

霞「線引き、なんだって」

久「はぁ……そういう関係じゃないからってことでしょ」

霞「……ええ」

久「ありがと……それとごめんなさい」

霞「悪かったのは私よ。あなたが気にすることはないわ」

久「それでも、辛くなかったわけじゃないでしょ?」

霞「……どうかしら」

久「思うに、それが一番悪いのよ。我慢しすぎ」

霞「初美ちゃんにも、同じことを言われたわ」

久「じゃあ2対1ね」


久「それじゃ、そろそろお暇するわ」


霞「これからどうするの?」

久「あいつの顔見てから決める」





京太郎「デネブ、アルタイル、ベガ……夏の大三角か」

京太郎「今頃インハイか……なつかしいな」

京太郎「ん?」ガチャ


京太郎(鍵、開いてる?)

京太郎(また霞が上がってるのか)


久「あ、おっかえりー」


京太郎「……久ちゃん? なんで?」

久「鍵だったら石戸さんにちょっと貸してもらったから」

京太郎「いやいや、そこじゃなくて」

久「大学なら休みだから。ほら、夏休み」

京太郎「そこでもないから……どうしてここにいるってわかったんだよ」

久「龍門渕さんとか智葉とか、あと獅子原さんのカムイ? とか色々協力してもらったのよ」

京太郎「なにそれこわい」

久「とりあえず、体は大丈夫そうで安心した」

京太郎「ま、丈夫なのが取り柄だしな」

久「でも一回倒れたんだって?」

京太郎「うぐっ」

久「それも変な意地張って」

京太郎「ま、まあ……もうそれは過去の話だから」

久「そうね……じゃあ本題」



久「神代さんと別れたんだって?」


京太郎「……」

久「……はぁ、やっぱりそうなるか」

京太郎「もう終わったことだって」

久「って口で言ってるだけでしょ」

京太郎「そんなこと――」

久「全部聞いたから」

京太郎「……霞からか?」

久「ちょっと気の毒なことしたけど」

京太郎「できるならそっとしておいてほしいんだけど」

久「あんたがさ、もう振り切って幸せそうにしてるなら、それでもいいと思った」

京太郎「幸せだよ、十分にさ」

久「そうそう、薄墨さんから聞いたんだけどね」



久「神代さん、新しい婿を取るんだって」


京太郎「……そりゃそうなるだろ」

久「それで、感想は?」

京太郎「別に」

久「その割には辛そうな顔してるじゃない」

京太郎「俺にはもう関係ない」

久「なんでそう思うのよ」

京太郎「だから、もう終わったことだって――」

久「ウソつくな」


久「私があんたのウソを見抜けないわけないでしょ」


久「終わったなんて思えてない」

京太郎「……やめろ」

久「関係ないなんて思えてない」

京太郎「やめろ」

久「あんたはまだ、神代さんのことが――」



京太郎「――やめろって言ってるんだよ!!」


京太郎「未練なんてあるに決まってんだろ!」

京太郎「今でも夢に見る! 起きたら隣にいないことがたまらなく辛い!」

京太郎「だけど俺になにができる!?」

京太郎「俺はもうあそこにいる資格がないんだよ!」


京太郎「はぁ、はぁ……」

久「……」

京太郎「だから、もう……ほっといてくれ」

久「資格ってなに?」

京太郎「それは――」


久「あんた、要するに逃げたんでしょ」

久「俺には幸せにする自信がないからって」

久「それでこんなところで腐って……」

久「いい加減にしろ、この種無し野郎っ!!」



京太郎「このっ、ピンポイントでデリケートゾーン抉りやがって!」

久「相手のことを考えて? そうしたほうが幸せだから?」

京太郎「ああ、そうだよ!」

久「大人になったつもりかこの朴念仁!」


久「ストーカーまでして私を麻雀に引き戻したあんたはどこ行った!」

久「好きなら、愛してるなら、自分の手で幸せにしてみせなさいよ!」

久「それであんたも幸せになってさ……私を、安心させてよ」

久「この女と一緒になって、良かったんだって」


京太郎「……結局、自分のためかよ」

久「そうよ、悪い?」

京太郎「いや、わかりやすくていい」

久「それで、どうするのよ」

京太郎「あの日、伝えられなかったことを伝えに行く」

久「向こうの都合は?」

京太郎「知るかよ、そんなの」

久「……それでいいのよ」





『未練なんてあるに決まってんだろ!』

『今でも夢に見る! 起きたら隣にいないことがたまらなく辛い!』

『だけど俺になにができる!?』

『俺はもうあそこにいる資格がないんだよ!』


霞「……」


霞(わかってる……いえ、わかってた)

霞(だって、朝起こそうとしたら寝言で呟いてるし)

霞(彼は今でも小蒔ちゃんを愛しているんだって)

霞(まだ半年しか経ってないのに……忘れられるわけないじゃない)

霞(私なんて、一年経っても無理だったんだから……)


霞「だれかのため、自分のため……」


霞(私は……)





久「せいぜいフラれないようにね」

京太郎「そうしたらまた日本一周でもして、それからまたアタックするよ」

久「なにそれ、すっごい迷惑」

京太郎「焚き付けたのは久ちゃんだからな」


京太郎「じゃ、ちょっと行ってくる」


久「……やっぱり人間、そうそう変わらないわよね」

霞「あなたの気持ちも?」

久「さぁ、どうかな」

霞「……私も行くわ」

久「我慢はやめるの?」

霞「さぁ、どうかしら」

久「……なんにしても、後悔だけはしないようにね」

霞「大丈夫よ、もうそれには慣れっこだから」


霞「それに……もう一人じゃないから」





小蒔「……」

巴「姫様、もうお休みになったほうが――」

小蒔「もう少し、星を見ていたいんです」

巴「……わかりました。それじゃあ、お茶とお茶請け、持ってきますね」

小蒔「はい、お願いします」


小蒔(……ダメですね。まだみんなを心配させちゃってます)

小蒔(霞ちゃんもこんな気持ちだったんでしょうか?)


小蒔「今日会った殿方……私は、あの方と」グッ

小蒔「ふぅ……いけませんね、ちょっと気晴らし……また木に登ってみましょうか」

小蒔「その方が、星もよく見えますよね」





小蒔「んしょ、よいしょ……登れました!」


『あーもう、気ぃつけろよー』


小蒔「……心配しなくても、もう慣れちゃいました」

小蒔「あなたがいない、日常にも……」

小蒔「だから、私は……」ポロッ

小蒔「あれ、おかしいです……悲しくなんて、ないのに」

小蒔「……ウソです」

小蒔「全部全部ウソです」

小蒔「好きです、傍にいてほしいです、愛しています」

小蒔「京太郎様……!」


京太郎「呼んだかー?」


小蒔「え……きゃっ――」ガサッ



京太郎「――っと、ギリセーフ……大丈夫か? 小蒔」

小蒔「どう、して……」

京太郎「あの日さ、やり残したこと思い出して」

小蒔「……お引き取りください、あなたはもう」

京太郎「知らねーよ。しきたりとか立場とかお役目とか、そういうのはもううんざりだ」


京太郎「資格がないって、お前はダメだって言われて諦めてた」

京太郎「そんで、その方がお前のためになるって決めつけて逃げてた」

京太郎「でも、それでいいわけないんだよ」

京太郎「だって俺は、あの時全部伝えてなかったんだから」

京太郎「俺がどうしたいか、俺がなにをしたくないか」

京太郎「そんな当たり前なことを、伝えられなかったんだ」


『それでもっ、私は京太郎様と……!』


京太郎「お前は、ちゃんと言おうとしてくれたのにな」

小蒔「……」

京太郎「だから言うよ」



京太郎「小蒔、お前と一緒にいたい。離れたくない」

京太郎「資格なんて知らないし、いらない」

京太郎「お前に人並みの幸せをやることはできないかもしれないけど、俺なりに幸せにする」

京太郎「だから、ずっと俺の傍にいてくれないか」


小蒔「どうして……どうして今更そんなこと言うんですか」

小蒔「二人がいなくても頑張ろうって、みんなを支えていこうって思ってたのに……」

小蒔「全部、全部ダメになっちゃいました……!」ポロポロ


京太郎「じゃあ俺の目論見通りだ」

小蒔「ひどいですっ、最低ですっ、人非人ですっ」

京太郎「それぐらいで一緒にいられるなら安いもんだよな」

小蒔「京太郎様なんて、京太郎様なんて……」



巴「……姫様」


小蒔「と、巴ちゃん」

巴「正直になってください」

小蒔「そんな、私はっ」

巴「寝言で自分がなんて言っているか、わかってます?」

小蒔「うっ……」

巴「そんな夢に見るぐらいなのに、大丈夫なわけないじゃないですか」

小蒔「でも、私は霞ちゃんからみんなのことを……!」



春「よろしくされる側の姫様がよく言う」


小蒔「春まで!」

春「姫様が頑張ったらむしろ空回るし」

小蒔「ひどいです!」

春「大丈夫大丈夫って言って余計心配させてるし」

小蒔「そんなことないですっ」

春「知らぬは当人ばかりとはこのこと」

小蒔「あうっ」



初美「まぁ、努力だけは花丸ですけどねー」


小蒔「初美ちゃん!」

初美「中身が伴ってないので結局ダメダメなのですよ」

小蒔「ダメダメじゃないです!」

初美「それはそうとですね」

小蒔「わきに置かないでください!」

初美「特別ゲスト、つれてきたのですよ」



霞「……久しぶりね」


小蒔「え……」

巴「霞、さん」

春「……」

京太郎「……お前もついてきてたのか」

初美「入り口でうろうろしてたのを確保したのですよ」

霞「……ちょっと、入りづらくて」

京太郎「まぁ、気持ちはわかるよ」

初美「何を言うのですか。ずけずけと入ってきたくせに」

京太郎「それで遠慮するかどうかは別問題だろ」


小蒔「ちょっと待ってください!」


小蒔「正直に言います……私は、また二人に会えて嬉しいです。でも……」

霞「……ええ、もう元には戻れない」

小蒔「――っ」

霞「みんな、少し小蒔ちゃんと二人きりにしてもらってもいいかしら?」



初美「好きにするのですよ」

巴「……姫様がいいなら」

春「……知らない」

霞「ありがとう、みんな」


京太郎「じゃあ、待ってる間お茶でももらうか」

初美「どんだけ図々しいのですかっ」

京太郎「まぁまぁ、来客だと思ってひとつ」

春「黒糖、用意する」

巴「お茶、冷めちゃったから淹れなおしてきますね」

初美「それでなんで歓迎ムードですか!」





小蒔「……霞ちゃん」

霞「半年ね、あれから」

小蒔「はい、半年ぶりです」

霞「……実は、ここに来る途中、小蒔ちゃんのお母様と連絡を取ってきたの」

小蒔「お母様と、ですか?」

霞「ええ……」





『それが、どういう意味か分かっているのですか?』

霞「はい、重々承知しています」

『あなたの役目はたしかにあの子の身代わり……しかし、それが神代に成り代わるなど』

霞「私は神代にはなれません……でも、この子なら」

『まさか……』

霞「ええ、彼の子供です」

『ありえません……だからこそ彼は居場所を失ったというのに』

霞「可能性はゼロではなかったはずです」

『それでも、限りなく低い。なぜなら――』

霞「はい、それは他ならぬ私が一番よくわかっています」


霞(もう大丈夫だと思ってた)

霞(でも、抑えきれなかった)

霞(私はあの日――)


『好き、好きなの……あなたが好きなの』

『お願い、今だけだから……明日からはいつもの私に戻るから……』



霞(彼は、私をやさしく引き離して、首を横に振った)

霞(そして我に返った私は、その場を逃れようと走り出して……)


『霞っ』


霞(私をかばった彼は、交通事故で生殖機能をほぼ失った)

霞(神代の婿の役目は、子をなすこと)

霞(それを果たせないのであれば、その資格を失う)


霞「彼はきっと小蒔ちゃんを連れ出します。そうなったら、代わりが必要かと思われます」

『……』

霞「それとも、ウソだと疑いますか?」

『……いいえ、あなたはそんなつまらないことはしないはず』

霞「……」


霞(彼は何も知らない)

霞(この子のことも、私を抱いたことも)

霞(いいえ、あれは私が彼を術で眠らせて……)



『いいでしょう……あなたの覚悟をくみ取ります』

霞「ありがとうございます」

『……これで小蒔は幸せになれると思いますか?』

霞「ええ、彼とならきっと」

『私は、あなたにも幸せになってほしかった』

霞「私に、ですか?」

『あなたは、昔の私に似ていたから……』

霞「……」


『なんだよ、また勝手に入ってたのか』

『だってあなた、私が作らないとちゃんと朝ご飯食べないじゃない』

『ちょっとぐらいなら食べなくっても大丈夫だって』

『いいから食べて。もうできてるわ』

『ああ、いい匂いすんな……』グゥ

『お腹は正直なのね』クスクス

『別に食べたくないわけじゃないから』

『じゃあ用意しちゃうわね』


霞「私は幸せでした……だから、きっと大丈夫です」





小蒔「霞ちゃんたちが戻ってこられるようになった……そうですよね?」

霞「……戻るのは私だけよ」

小蒔「え、じゃあ京太郎様は……」

霞「それはもう、どうしようもないの」

小蒔「そんな……」

霞「だから、あなたが一緒に行ってあげて」

小蒔「……え?」

霞「私があなたの代わりになる……だから」

小蒔「そ、そんなのダメですっ」

霞「どうして?」


小蒔「……ずっと、怖くて聞けませんでした」

小蒔「霞ちゃんはずっとお役目のために我慢してて……」

小蒔「それはとても辛いことだったんじゃないかって」

小蒔「私の、身代わりという立場が」



霞「……よかったのよ」

霞「辛かった、苦しかった、うんざりしてた」

霞「でも、みんなと一緒にいられた」

霞「離れてようやく、私の居場所はあそこだったんだって気づいた」

霞「それに……ねえ、触ってみて?」


小蒔「えっと……」オズオズ

霞「ここにもう一人いるの」

小蒔「霞ちゃん、それって」

霞「彼は小蒔ちゃんにあげるけど、彼の子は私がもらうわ」

小蒔「そんな、もうダメだって言ってました」

霞「ゼロとゼロに近いでは、大きな違いがあるということね」

小蒔「羨ましいです……でも、霞ちゃんはお母さんになるんですね」

霞「ええ」

小蒔「……決めました」



小蒔「私もお母さんになります」

小蒔「それはとっても大変で、時間のかかることかもしれません」

小蒔「けど、いつかきっと、京太郎様の子供を産みます」

小蒔「霞ちゃんだけに独り占めはさせません!」


霞「……欲張りなのね」

小蒔「ズルした霞ちゃんに言われたくないですっ」

霞「やってみるといいわ……できるなら」

小蒔「やります、やってみせます……それでいつか」


小蒔「また、みんなで……」

霞「ええ、そうね」





小蒔「お待たせしました」

京太郎「話、終わったか?」

小蒔「はい」

京太郎「それじゃあ、これからだけど――」

小蒔「ついていきます」

京太郎「……いやまあ、連れ出す予定ではあったけど、こうもすんなりいくとは」


春「そんなこともあろうかと」

初美「荷物は用意しているのですよ」

京太郎「いや、お前らも準備よすぎだろ」

巴「いつか、こんな風になるんじゃないかなって」

京太郎「どこをどうしたらそんな予想が――って、うちの母親か」



霞「小蒔ちゃんをおねがいね」

京太郎「心配すんな。返せって言われても返さないから」

霞「……今までありがとう。あなたがいなければ、私は……」

京太郎「俺こそ、今まで傍にいてくれてありがとう、だよ」

霞「あなたと過ごした半年、楽しかったわ」

京太郎「ああ、悪くなかった」

霞「それに、かけがえのないものももらえた」

京太郎「なんだそりゃ?」

霞「ふふ、ナイショ」


小蒔「みんな、今までお世話になりました」

春「うん、実際その通り」

初美「ですねー」

巴「あはは……」

小蒔「うぅ~、みんなひどいですっ」


小蒔「とにかくっ、お別れですけどさようならは言いません!」

小蒔「だってまた会えますから」

小蒔「だからみんな、またいつかです」





初美「……行っちゃいましたねー」

巴「姫様、幸せになれるかな」

春「京太郎が一緒だし、問題ない」

初美「それよりも……」


霞「……」


初美(問題はこっちなのですよ)


春「……忘れないで」

霞「なにかしら」

春「私は、あなたを許したわけじゃない」

霞「……わかってるわ」


初美(あちゃ~、はるるはキレッキレ)


巴「……ごめんなさい、心の整理がまだ」

霞「構わないわ。それだけのことを私はしてしまったのだから」

巴「すみません……」


初美(巴ちゃんも……)

初美(やれやれ、ですねー)





霞「やっぱり、うまくいかないものね」

初美「ま、しょうがないのですよ」

霞「初美ちゃんはいつも通りなのね」

初美「一人ぐらい味方がいないと、霞ちゃんもまいってしまいそうですからねー」

霞「……ありがとう、初美ちゃん」

初美「お礼はしっかり関係修復してから言うのですよ。まだ明星たちもいるのですよ」





京太郎「小蒔」

小蒔「なんでしょうか?」ギュッ

京太郎「いやにくっつくなって思って」

小蒔「えっと、ダメでしょうか?」

京太郎「……いや、半年分には足りないな」

小蒔「それなら……んっ」


小蒔「ずっと、私を離さないでください」


小蒔「愛してます、京太郎様」

京太郎「ああ、俺も愛してる」





「ん~……こっちはあったかいな」

「いててて、ずっと座りっぱなしだったからなぁ」

「ここが鹿児島……」


(中学の卒業旅行……という名目で訪れたこの地)

(ここで僕の父さんと母さんは出会ったらしい)

(両親はいわゆる駆け落ちで一緒になったらしく、そのためかあまり昔のことを語らない)

(隠されると余計気になるというやつだろうか)

(母さんの故郷、海が綺麗だというその場所が見てみたい――僕はその一心でここにいる)

(……卒業旅行でほぼ日本一周したという父さんの影響もないとはいえない)


「えっと、霧島だっけ?」


(あまり多くを語らない僕の両親だが、調べればそれなりに情報は出てきた)

(そもそも母さんは二十年ぐらい前に、女子麻雀のインターハイで大暴れしたらしい)

(その時の所属校の名は、永水女子)

(なんでもみんなして巫女服姿で試合に出たりと、中々のインパクトだったとか)



「このバスでいいのかな?」


(そしてバスに揺られること数十分)

(僕は――)


「やべ、ここどこだよ……」


(――見事に降り過ごした)

(海沿いのガードレールにもたれ、ちょっと途方に暮れる)


「……しょうがない、ちょっと歩くか」





(結果的に言えば、バスを降り過ごしたのは正解だったと思う)

(海沿いの道をのんびり歩くのは散歩コースと考えれば、悪くない)

(加えて、今の時期だと満開とはいかないがちらほら桜が咲いている)

(これを考えれば、悪くないどころかおつりまでくる)


「これが霧島の海かぁ」


(一応、これで旅の目的を果たしてしまったことになる)

(それはそれでいいのだが、すぐに帰ってしまうのはもったいない)

(だけど……)


「……なにしようか」


(ここで計画性のなさが露呈した)

(というより、ほとんど行き当たりばったりで、決めていたのは飛行機の予定ぐらいだ)

(当然宿もとっていないし、帰りの便もとっていない)

(……参考にしたのが父さんの話だったのがいけなかったかもしれない)



「ま、いーや」


(観光ガイドはなくても、携帯という心強いツールがある)

(これでいろいろ調べれば……)


「あ、電池3パーセント……」


(携帯の命は風前の灯だった)

(まずは充電しないことには調べ物もおぼつかない)

(とりあえずはコンビニを――)


「やめたやめた」


(――探すのはやめて、また歩き出す)

(行き当たりばったりだからこそ面白い)

(父さんのそんな言葉を思い出したからだ)

(それに、そんな状況でこそあるのかもしれない)

(父さんと母さんのような、運命の出会いというやつが)



――ドンッ


「きゃっ」


(柔らかい衝撃と、女の人の声)

(よそ見しながら歩いていたらぶつかってしまったらしい)


「すいません、大丈夫ですか?」

「いいえ、こちらこそ」

「立てますか?」スッ

「あ、すみません」


(その人は、巫女服を着ていた)

(年は多分、僕よりもちょっと上で……胸がものすごく大きい)

(胸が、ものすごく、大きい)


「どうかなさいましたか?」

「あ、ああ……あはははは」

「?」


(もう笑うしかなかった)

(顔はやたらと熱いし、変な汗まで出てくる始末)

(だって、この人はそれほど綺麗で……あ、そうか)

(もしかしたら、あれか。これはあれなのか)

(これが俗にいう……一目惚れというやつなのか)



「お揃い、ですね」

「おっ、おおお、お揃い?」


(どもった……どもった上にうわずって裏返った)


「髪の色、そっくりじゃありません?」

「た、たしかに」


(言われてみればその通りだった)

(僕の髪は、父親譲りの金髪)

(良くも悪くも目立つこの地毛だが、この人との共通点になるならば悪い気はしない)

(とりあえず、どうにかして話題を……!)


「あああ、ああののっ」

「はい?」


「お名前と連絡先、教えていただけませんかっ」




『エンディング――それを運命と呼ぶならば』

ようやっと終わり……クソ長かった
もう当社比300%です

このエンディングは姫様のエンディングからの分岐になります
分岐点は、ある場面で霞さんが我慢できるかできないか
ちなみに最後の少女の見た目は金髪バージョンの霞さんってことで

安価は後日にぶん投げておやすみなさい

こんばんはー

安価取りたいんですけど、人いますかね

それじゃ、この中からお好きなのをどうぞ
済がついてるのは選べません


個別

大星淡 済
天江衣 済
桧森誓子 済
姉帯豊音 済
三尋木咏 済
神代小蒔 済
ネリー・ヴィルサラーゼ 済
宮永照  済
エイスリン・ウィッシュアート 済
白水哩 済
竹井久 済
福路美穂子 済
松実玄 済
薄墨初美 済
滝見春 済
石戸霞 済
園城寺怜 済
真屋由暉子 済
清水谷竜華 済
鶴田姫子 済


特殊

久照
久美穂子
小蒔霞
哩姫 済
怜竜


4分まで

締切
割ってきます

あ、霞さんと姫様のに済付け忘れた
申し訳ないんですけど無効で

というわけでコンマ判定


久美穂子:1-70
怜竜:71-85
久照:86-00


直下

久美穂子で了解

それじゃ、明日に備えて寝ます

前回が長すぎたからこんなに間が……

嘘です。単純に暇がなかっただけです

そんなわけで、もうちょっとしたら始めます

んじゃ、始めます



京太郎「……あのさぁ」

久「なに?」

美穂子「なんですか?」

京太郎「動けない」

久「あんたが悪い」

美穂子「そうですね」

京太郎「……」


京太郎(八月の中旬、大学一年の夏休みが始まって間もなく)

京太郎(俺は明確にピンチを迎えていた)

京太郎(場所は自宅……賃貸のマンション)

京太郎(状況は挟み撃ち……腕を両サイドからガッチリホールドされてる)

京太郎(原因は……自業自得としか言い様がない)


久「――ちょっと」グイッ

美穂子「――こっち向いてください」グイッ

京太郎「いでででででっ! 人間の首は左右同時には向けないんだよ!」


京太郎(つまり俺は、一方と関係を持ちながら)


久「いい加減はっきりさせなさいよね」


京太郎(また別の女性に手を出した、とんだクズ野郎ということだ)


美穂子「私もはっきりと聞きたいです」


京太郎(……絶賛、修羅場中)


「「どっち(ですか)!?」」





京太郎「いやぁ、爆釣爆釣」

一太「何だよ、そのチラシの山」

京太郎「新入生歓迎の煽り」

一太「勧誘の嵐に自分から飛び込んでいったのか……」

京太郎「でもなんでもかんでも面白そうに見えてさ、ほら」

一太「ヒゲ部、万事屋銀ちゃん、スケット団、ヒーロー協会、ゲーム制作部(仮)……わけがわからないのばかりじゃないか」

京太郎「面白そうだろ?」

一太「面白いをヤバイに置き換えたら賛成するよ」

京太郎「お前なぁ、せっかくの大学生活なのにつまんないこと言うなよ」

一太「君が変なのばかり持ってくるからだろ」

京太郎「だから面白そうなんだろ。てか、そっちはなんか目ぇつけたとこあんのかよ」

一太「そうだなぁ……バスケ、作曲、将棋……とか?」

京太郎「また予想外な……お前、そんな趣味あったっけ?」

一太「全く新しいことに挑戦してみるのもいいんじゃないかってね」

京太郎「一理あるな」

一太「それに、思いがけない出会いもあるかもしれないだろ?」


一太「バスケをやってたら、ひょんなことから小学校の女子バスケ部のコーチを任されたり」

一太「ネットで公開した曲が女子小学生バンドの耳にとまって、プロデュースをお願いされたり」

一太「将棋で頭角を現して上り詰めれば、才能あふれる女子小学生が弟子入りしてきたり!」


一太「とまぁ、こんな感じで色々あるかもしれないじゃないか」

京太郎「ねーよ」





一太「くそっ、くそぉ……」ダンッ


久「お待たせーって、内木くんどうしたわけ?」

京太郎「ああ、ちょっと現実の非情さを教えてやってた」

久「生暖かく見守ってあげてればいいのに」

京太郎「いや、つい……」


ゆみ「というか、君たちのテーブルにものすごく近寄りがたいんだが」

美穂子「あの、良かったらお水飲みます?」

一太「あ、ありがとう」

京太郎「一杯百円な」

一太「そんなバカなっ!」

京太郎「なんたってみほっちゃんの水だからな」

一太「そ、そうか……お金を出して買った水か」

美穂子「そこのウォーダーサーバーでタダでもらえますよ?」

京太郎「一杯百二十円な」

一太「なんで値上がりしてるんだ!? 今タダって言ってたじゃないか!」


ゆみ「……入学早々、騒がしいな」

久「春だもん、しかたないんじゃない?」

ゆみ「春か……それで、決着は?」

久「……延長戦」





京太郎「ふぃー、ただいまぁ」

京太郎「……」シーン

京太郎「ってだれもいないわな、一人暮らしだし」

京太郎「早いとこ慣れなきゃなぁ」グゥ

京太郎「……よし、まずは晩飯だ」ガラッ


京太郎(うーわ、冷蔵庫の中なんもない)

京太郎(しゃあないな、買いに行くか)


――ピンポーン


京太郎「……」


京太郎(この時間の来客に覚えは……あった)

京太郎(この場合はどっちか、もしくはどっちもか)

京太郎(いっそのこと食事は外で済ませてこれば良かったかもしれない)


『いないのかしら?』

『うーん……あれ、鍵は開いてるわね』ガチャ


久「京太郎ー? 起きて――るわね」

美穂子「晩御飯、一緒にどうですか?」


京太郎(俺の右隣の部屋に久ちゃん、左隣の部屋にみほっちゃん)

京太郎(つまり、俺に逃げ場はないということになる)





京太郎「……」


京太郎(高校を出て、大学に行くことを選択して……だけど俺は誰かを選ぶことができなかった)

京太郎(結局、誰にも答えを出さないままここに至るというわけだ)

京太郎(今思えば、進学を決めたのも猶予が欲しかったからかもしれない)

京太郎(大学に通うのならば、少なくとも夏休みまではまとまった暇がない)

京太郎(それまでにバイトをして、旅費を稼いで……それで、どうする?)

京太郎(一度、答えを出すことから逃げた俺に、決めることができるのか?)

京太郎(こんな……優柔不断野郎に)



美穂子「おいしくないですか?」

京太郎「ん、ああ、おいしい。さすがだよ」

久「上の空って感じ。珍しく考え事?」

京太郎「昼間すっごい勧誘受けてさ」

久「それなら私たちも」

美穂子「先輩たちからも誘われちゃいました」

京太郎「風越からの入学者も結構いんの?」

美穂子「私が知ってる人はそんなにいないんですけど、高校一年の時の先輩が声をかけてくれて」

京太郎「そういうのもあるのか」

久「上下のつながりはあんまりなかったのよね、私たち」

京太郎「麻雀部の先輩と呼べるのは、それこそ一人だけだったしな」

久「部長、元気かな?」

京太郎「外国に高飛びしたんだっけ」

美穂子「えっ、高飛びって……」

久「はいはい、留学の間違いだから」

美穂子「あ……またからかわれちゃいましたね」

京太郎「悪い悪い、みほっちゃんが――」



京太郎(その先の言葉は、出てこなかった)

京太郎(いつも通りのはずだ。でも、それがすごく難しい)


久「京太郎?」

京太郎「ごちそうさん。ちょっと散歩いってくる」

美穂子「あ、ちょっと待ってください」クイッ

京太郎「――っ」

美穂子「はい、これでご飯粒取れました」

京太郎「あ、ああ……」


美穂子「いってらっしゃい」

久「……はぁ」


眠い……沈みます

こんばんはー

もうちょっとしたらやろうかと

んじゃ、はじめます




京太郎「まずい、この状況はまずい」

京太郎「なんか半同棲みたいになってるし……」

京太郎「なにより一番まずいのは……俺の態度だよな」

京太郎「いつも通りにすりゃいいのによ……」


京太郎(現状維持を選んだはずなのになぁ)

京太郎(これじゃ全然維持できてないな)


京太郎「ホント、いやになるな」

京太郎「あーあ、帰りづらいわ」


「あれあれ、もしかして須賀くんじゃね?」


「こんなとこでなにしてんのよ?」

京太郎「散歩だって、散歩」

「あらら、もしかしてひとり寂しく系?」

京太郎「そんな感じ」



京太郎(てか、こいつだれだっけ?)

京太郎(……たしか、同じ組だったか?)


「それマジやばいっしょ。春先からそれじゃぼっち確定っしょ」

京太郎「や、やめろって……ぼっちとかじゃないからっ」

「んじゃ、いっちょ行ってみちゃう?」

京太郎「行ってみちゃわない」

「まぁまぁ、ゆーてもうちら新入生だし? まずは同クラで親睦的な?」

京太郎「なるほどなぁ、結構楽しそうだ」

「でっしょー? とりま参加でFAっしょ」

京太郎「んー……」


京太郎(たしかに、このまま二人に辛気臭い顔見せてもな……)


京太郎「よし、いっちょ行ってみちゃいますか!」

「はいはーい、お一人様ごあんな~い」

京太郎「って、お前キャッチかよ」

「それな。高校時代の経験みたいな?」





久「おっそいわねぇ」

美穂子「なにかあったのかしら?」

久「無きにしも非ずだけど……」


久(やっぱり、帰りづらいのかしらね)


『ごめん……やっぱりまだ、答えられない』


久(あの時、許したのがいけなかったのかな……)

久(許さないで突き放してたら……)


久「……はぁ」

美穂子「またため息」

久「わかる?」

美穂子「久も悩み事?」

久「も、というと?」

美穂子「……私たち、やっぱり迷惑になっているのかしら」

久「さぁ……でも、こっちがいつも通りじゃなかったら、それはそれで気にすると思うのよ」

美穂子「久、あなたは……」


美穂子(彼に、なんて言われたの……?)

美穂子(私は何も言ってもらえなかった……)


久「なに? ……あ、メール」

美穂子「もしかして、京太郎さん?」

久「キャッチに捕まって遅くなるってさ」





京太郎「んなのよー、選べるわけないじゃんかよー」

「はいはいはいはい、そーなのね」

京太郎「んでよー、どいっつもこいつもかわいいくていいやつだしよー」

「はいはいはいはい、そりゃ困っちゃうねー」

京太郎「ちゃんと聞いてんのかよー、こらー!」

「俺が連れてきたんだけどさぁ、須賀ちゃん酒弱すぎね?」

京太郎「だから酔ってねーっての!」

「はいはいはいはい、酔っぱらいはみんなそー言うのね」


「そんでさぁ、何人といたしちゃったわけ?」

京太郎「はぁ?」

「いやいや、そんだけ数いるんだから、何人かは食っちゃったんでしょ?」

京太郎「……」

「……あれ? 須賀ちゃんもしかして――」

京太郎「どどどど童貞ちゃうわ!」

「うーわー……」



「ま、まぁ? 麻雀女子って男できないってジンクスあるみたいだし? そんなのに囲まれてちゃね?」

京太郎「……そうだよ、俺が変な意地張ってたせいだよ」

「そんじゃ、まずはその意地もろとも捨てちゃうしかないっしょ」

京太郎「……素人童貞はまだ嫌だ」

「いやいや、風俗じゃなくてさ。ほら、向こうの端に座ってる子……超かわいくね?」

京太郎「んー、たしかに」

「ちょっと声かけてきちゃおうZE☆」

京太郎「いやいやいやいや」

「須賀ちゃん見てくれいいし、ワンチャンあるっしょ」

京太郎「だからさ、今の俺の状況でそれは――んぐっ」

「まぁ飲もうぜ。難しいこと考えんのやめてさ、フィーリングでいっちゃえよ」

京太郎「こ、このやろ……」

「はい、いってらっしゃーい」ドン

京太郎「うわっ」


京太郎(……そこから先の記憶はない)





――ブー、ブー


京太郎「うっ……るせぇな……」ピッ

京太郎「……zzz」


「んんっ」モゾッ


京太郎「……ん?」モニュ

「もー、触んないでってばぁ」

京太郎「……あれ?」


京太郎(目覚めてみれば見知らぬ部屋)

京太郎(だけど、ここがどんな場所かは知っていた……ラブホだ)

京太郎(そして俺は全裸で、隣で寝ている子も多分……)

京太郎(いいや、まだ状況証拠だけだ。とりあえず話を聞いてみないと……!)


京太郎「なぁ……おーい、もしもーし」ユサユサ

「んんぅ……昨日あんだけしたじゃん……須賀くんってばさかりすぎ……」

京太郎「え……」





京太郎「ほんっとごめん!」

「え、なにが?」

京太郎「なにって……軽はずみにこんなことしちゃったしさ」

「いいよ、別に。うちも須賀くんのことちょっといいかもって思ったし」

京太郎「そう、か」

「あ、でも付き合うとかそういうのはいいから」

京太郎「へ?」

「だってそういうのめんどくさいじゃん」

京太郎「だけど、責任ってかさ」

「ちゃんとゴムしてたし問題なくない?」

京太郎「いや、でもさ――」

「それに、うちこういうの慣れてるしさ」


「それじゃ、シャワー浴びてくるねー」


京太郎(言われてみれば当たり前のことだった)

京太郎(俺にとっての特別が、他の誰かにとっての特別とは限らない)

京太郎(……でも、相手のそっけない態度に、俺もそんなものかと思ってしまう)

京太郎(俺の中の特別が、特別じゃなくなった瞬間だった)





京太郎「頭いてぇ……これが二日酔い」ズキズキ

京太郎「た、ただいまぁ……」


美穂子「あ、おかえりなさい」

久「遅くなるって、まさか朝帰りとはね」


京太郎「……どうしてここに」

久「あんたが鍵持ったまま出てくから、帰るに帰れなかったの」

美穂子「朝ご飯食べます? 勝手に台所借りちゃいましたけど」

京太郎「あ、ああ……うぷっ」

久「ちょっ、酒臭っ」

美穂子「よ、酔い止めは……」アタフタ

京太郎「と、トイレ行かせてくれ……」





京太郎「うぁ……」グッタリ


久「見事にダウンしてるわね」

美穂子「今日が休みで良かった……」

久「まったくね……酔い止めとか買ってくるから、ちょっと看てて」

美穂子「わかったわ」





美穂子「……京太郎さん」


美穂子(あなたは、私のことをどう思っているの?)

美穂子(久に見せる姿と私に見せる姿は、多分全然違う)

美穂子(それに、最近私を見るとき、とても辛そうな顔をする)

美穂子(傍にいられるだけでいい……そう思っていたのに)


京太郎「う……みほっちゃん?」

美穂子「吐き気、どうですか?」

京太郎「――なんで、泣いてんだよ」

美穂子「あ、れ……?」

京太郎「俺、またなんかやらかしたっけ?」

美穂子「朝帰り、しました」

京太郎「はは、そうだったな」

美穂子「本当に心配したんですよ?」

京太郎「だよな……悪かった」

美穂子「……迷惑、ですか?」

京太郎「そんなことないって」

美穂子「でもあなたは、本音を私に聞かせてくれません」

京太郎「……」

美穂子「傍にいられるだけでいいと思ってました……でも、あなたは辛そうな顔をする」

京太郎「それは……」

美穂子「それなら私は――」



京太郎(これ以上涙混じりの声は聞きたくなくて、これ以上泣き顔は見たくなくて)

京太郎(こうなった原因が誰にあるのかも蹴飛ばして……腕を引いて、強く抱きしめる)


『難しいこと考えんのやめてさ、フィーリングでいっちゃえよ』


京太郎(まだ少し頭がぼんやりしていたのもあるかもしれない)

京太郎(難しく考えるのをやめて、俺は感情に従った)


京太郎「みほっちゃん……」

美穂子「京太郎、さん……」



久「はぁ……するんならせめて鍵かけなさいよ」

久「……バーカ」





京太郎「……」

美穂子「……」


京太郎(き、気まずい……)

京太郎(なにも考えずに……とまではいかないけど、ほぼ衝動的にやっちまった)


美穂子「嬉しかったです、私をあんな風に求めてくれて」

京太郎「……ごめん、はっきりしたことも言ってないのに」

美穂子「いいんです。……私だけこんな形で答えをもらったら不公平ですから」

京太郎「そう、か」


京太郎(……なに安心してんだよ、俺は)


京太郎「そういや、久ちゃんは自分の部屋戻ったのか?」

美穂子「酔い止めを買ってくるって。だいぶ時間がかかってるみたいですけど……」

京太郎「どっかのだれかみたいに迷子になったわけじゃあるまいし」



『ただいまー』


京太郎「噂をすればってか」

久「ちょっと、いるんなら返事くらいしてよ」

京太郎「それよりただいまってなんだよ。ここ俺の部屋な」

久「もうとっくに溜まり場になってるじゃない。はい、酔い止め」

京太郎「サンキュ」

美穂子「久、遅かったみたいだけれど……」

久「ちょっと寄り道。おかげで飲み物ぬるくなっちゃった」

京太郎「お、スポドリはありがたいな……ぬるっ」

久「文句言うな」

京太郎「はいはい、どーもありがとさん」

久「けっこう具合良さそうだけど、そんな美穂子の看病が良かったわけ?」

美穂子「あ、えっと……」

京太郎「そりゃあな、みほっちゃんに看病されて元気にならない男はいないんじゃないか?」

久「一家に一人ほしいわね。家事に関しては完敗だし」

京太郎「むしろお嫁さんにほしいよな」

美穂子「もう、二人してからかわないでください」

京太郎「はは、悪いな」

久「……」



久「京太郎、適当に外ぶらついてきて」

京太郎「え、なんで?」

久「酔い止めと飲み物のお代ってことでお願いね」

京太郎「それを言われたら……わかったよ。でも部屋の中漁るなよ?」

久「見られて困るものでもあるわけ?」

京太郎「ない」


京太郎(……とは言えない)


久「なら平気でしょ。はい、ゴー!」

京太郎「はいはい、じゃあ一時間ぐらい時間潰してきますよ」





久「それで、どう思う?」

美穂子「えっと、何の話?」

久「見られて困るものの隠し場所」

美穂子「そうね……そういえば、机の方に視線を動かしていたわ」

久「なるほどね。さすがによく見てるじゃない」

美穂子「でも、こういうのは良くないと思うわ」

久「あいつがどんな趣味か気にならない?」

美穂子「それは……気になるけれど」

久「それじゃ早速」ガラッ

美穂子「あ、久!」

久「んー……グラビア写真集発見」

美穂子「これが京太郎さんの……」

久「ま、フェイクってところね」

美穂子「フェイク?」

久「多少上にものは置いてあったけど、場所がわかりやすすぎるのよ。それに――」カタッ

美穂子「あら、二重底になっていたのね」

久「これが本命……って瑞原プロのサイン入り写真集じゃない」

美穂子「燃やしちゃいましょうか」

久「……え?」

美穂子「なにかおかしなこと言ったかしら?」

久「さ、さすがにそこまでしたら、京太郎もしばらく立ち直れなさそうだから……」

美穂子「そう……」



久(美穂子ってもしかして、瑞原プロのこと嫌いだったりするの?)

久(……あまり触れない方が良さそうね)


久「これは机の上に置いといて……美穂子。なんで京太郎を追い出したか、わかるでしょ?」

美穂子「……やっぱり。寄り道なんて不自然だもの」

久「認めるのね」

美穂子「ええ、京太郎さんに抱かれました」

久「……そっか」

美穂子「でも、それだけなの」

久「それだけ? それで十分すぎるじゃない」

美穂子「私は答えを求めていないし、京太郎さんも答えてはいないの」

久「……」

美穂子「だってあんな迫り方……卑怯だわ」

久「美穂子、あいつを甘やかし過ぎじゃない?」

美穂子「辛そうな人に辛く当たるなんて、私にはできません」

久「そうされて当然のことをあいつはしてるの。普通なら問い詰められて、追い詰められて当然なの」

美穂子「なら、どうしてあなたはそうしないの?」

久「……」

ご明察、寝落ちです
最近朝が早くて……

というわけでもう少ししたら始めます

んじゃ、スタートします



久(たしかに、あの時に許した私が言えることじゃないかもね)


久「わかったわよ……とりあえず様子見ね」

美穂子「ありがとう、久」

久「お礼を言われる相手が間違ってる気がするけど」


久(こんなの、いつまでも続けられるわけないのよね……)

久(私が……美穂子だって、いつ我慢できなくなることやら)

久(見事に先越されたし……)ギリッ


久「ところで、美穂子?」

美穂子「なに?」

久「……どうだった?」

美穂子「ど、どうだったって……」

久「痛かったとか気持ちよかったとか」

美穂子「えぇっと……言わなくちゃ、ダメ?」

久「ダメに決まってるでしょ」





京太郎「時間潰せってな……加治木か一太のとこ行くか?」

京太郎「……」


『……私だけこんな形で答えをもらったら不公平ですから』


京太郎「もしかして、気を遣われたのかもな」

京太郎「まったく……情けないにも程があるよな」

京太郎「って、それは今更か」


「あれあれ、須賀ちゃんじゃん」


「どーよ、どうだったよ、ヤっちゃった?」

京太郎「昨日の今日でよく会うな」

「ゆーて俺ん家近いし」

京太郎「ご近所さんかよ」

「てかさー、あの後どうなったのか超気になってるんだけど」


京太郎(……この際こいつでもいいか)


「なぁなぁ、教えてちょ」

京太郎「ならちょっと暇つぶしに付き合えよ」

「おっけ」





「はーはー、お遊びのワンナイトラブねぇ」

京太郎「付き合うとかそういうのは別にいいって言われてさ」

「ま、そーゆーのもあるっしょ」

京太郎「そういうもんかぁ」

「そもそも、なんとなーくで始まるのが多いんじゃねっていうね」

京太郎「告白からのお付き合いってパターンは逆に珍しいってか」

「だから、須賀ちゃんは難しく考えすぎだって」


「無理に答えようとするからダメなんだって」

「もうちょっと肩の力を抜いて気楽にいこーぜ」

「ほら、何を選んでも後悔するなら、今が楽な方を選べって言うっしょ」


京太郎「お前、さてはダメ人間だろ」

「相談乗ってやったのにそれかよぉ!」





京太郎(無理に答えようとするから、か)

京太郎(たしかに、無駄に肩に力入ってたのかもしれない)

京太郎(……あんな風に泣かれるのはごめんだよな)


京太郎「ただいまー」ガチャ


久「ちょっと、おとなしくしてよ……!」

美穂子「そんなとこ触っちゃ……んんっ」


京太郎(帰ってきたら、俺の部屋は百合の園になっていた)


久「はぁ、はぁ……あれ、京太郎」

京太郎「……ごめん、あと一時間ぐらい彷徨ってくるから」

久「こらっ、誤解するな!」





京太郎「それで、話は終わったのか?」

久「大体はね」

京太郎「なら朝飯もらってもいいか? 食う暇なかったし」

美穂子「今用意しますね」

京太郎「ああ、頼むわ」


久「……」ジトッ

京太郎「なんだよ」

久「別に」

京太郎「別にって顔じゃないよな……まさか!」


京太郎「な、なんでしまっておいたのが出てんだよっ」

久「さぁ?」

京太郎「漁るなって言ってなかったかなぁ!?」





京太郎(こうしてようやく、俺たちの間にいつも通りが戻ってきた)

京太郎(様々な問題を先送りにしたとは言え、大学生活は楽しい)


一太「やっぱり小学生は最高だな!」

京太郎「おまわりさんこいつです」

「ちょっと向こうで話を聞かせてもらおうか」

一太「ちょっ、ぼくはやましいことなんて――」


京太郎(一太が贔屓にしてるJSバスケチームの応援に行ったり)



京太郎「だからよー……って聞いてんのかよこらぁ」

「須賀ちゃんあいっかわらず酒弱いよなぁ」

京太郎「うっせー、酔ってねーから!」

「はいはい、酔ってるやつは以下略」


京太郎(同じクラスのやつと飲みに行ったり)


京太郎「か、カジえもーん!」

ゆみ「帰れ」

京太郎「中間がヤバイんだよ!」

ゆみ「やれやれ……」


京太郎(テスト勉強で加治木に泣きついたり)



京太郎「ごちそうさん」

美穂子「お粗末さまです」

京太郎「久ちゃん遅いんだっけ?」

美穂子「だから晩御飯は済ませてくるって――んんっ」

京太郎「悪い……また、いいか?」

美穂子「……」コクッ


京太郎(……みほっちゃんの優しさに甘えてしまったり)

京太郎(それでも、水面下ではどうなっているかには気づかず)

京太郎(いや、目をそらしていたってのが正しい)

京太郎(そうだ。こんなのが長続きするはずないというのは、俺が一番わかってたんだ)





久「ゆみ、今帰り?」

ゆみ「ああ、二人は?」

久「学祭の準備だって」

ゆみ「もうそんな時期か」

久「やる気あるとこはスタートが早いってところね」

ゆみ「私のところは、まだ何をするかも決まっていないな」

久「いっそのこと自分で仕切ればいいのに」

ゆみ「よしてくれ、そんな器じゃない」

久「というより面倒なんでしょ」

ゆみ「それもある」


ゆみ「……久」

久「なに?」

ゆみ「いや、なんでもない」

久「そこで止められると気になるんですけど」

ゆみ「よく考えたら大したことじゃなくてな」

久「……まぁ、私に対して言いよどむ話題といえば、限られてくるんだけど」



久「あの二人、最近距離が近いと思わない?」

ゆみ「気づいていたのか」

久「気づかないわけないでしょ」

ゆみ「……すまない、こんな時にはどういう言葉をかければいいんだろうな」

久「ちょっと、勝手に人を敗者扱いしないでよ」

ゆみ「勝負が決してもか……往生際が悪いのも君の強さだったな」

久「だから、あの二人はまだ付き合ってないの! ……だからこそ問題なんだけど」

ゆみ「どういう意味なんだ?」

久「さぁ?」

ゆみ「……さっきの仕返しか」

久「そういうこと。それじゃ」





久(京太郎も美穂子も……気づかれてないとでも思ってるわけ?)

久(そんなの、ちょっとゴミ箱覗いたらわかるのにね)


「もしかして竹井さん?」


久「はい?」

「やっぱり。けっこう須賀くんと一緒にいるよね」

久「京太郎が、どうかしたんですか?」

「あ、うち同じクラスなんだ」

久「……学祭の準備って聞いてるけど」

「ちょっとダルいから休ませてもらったんだよねー」

久「ああ、周囲のやる気についていけないみたいな?」

「それそれ。男連中がテンション高くてさ」

久「わかる。あいつも一緒になって騒いでたでしょ」

「へぇ、良く知ってるんだ」

久「昔からの腐れ縁だし」

「付き合ってるわけじゃないんだ。じゃあ彼女とかもいないのかな?」

久「まあ」

あれ、中間じみたものはあったと思ったんですけど……
でもまぁ、そういうことならそこはレポートに差し替えということで

もうちょっとしたら始めます
今日で終わらせたい所存

んじゃ、始めます



久(もしかして、この人もあいつに気があったりするわけ?)

久(……ちょっと釘刺しておいたほうがいいかな?)


「良かったー。この前寝ちゃったし、彼女いたらめんどいことになるもんね」

久「……え?」

「まぁ、一ヶ月以上前の話だし? 正直もう時効かなーとは思うんだけど」

久「……」

「イケメンだし面白いけど、ちょっと重そうっていうかさ」

久「……ざけないで」

「一回寝たぐらいで責任取るとか言われるのはちょっとねー」


久「――ふざけないでっ!」


久「そんな、そんな軽い気持ちであいつと……!」グイッ

「ちょっ、はなしてよ……!」

久「あんたみたいなのに……!」

「はなせってば!」バッ


「――わけわかんないし……うざっ」

久「……」


久(京太郎……)

久(私、もう無理そう)





京太郎「……久ちゃん?」

久「……おかえり」

京太郎「どうしたんだよ、部屋の前で」

久「あんたを待ってたの」

京太郎「俺を?」

久「私の部屋来て」

京太郎「あぁ、荷物置いたら――」

久「いいから!」グイッ

京太郎「わかった、わかったから引っ張るなよ」


美穂子「あら、帰ってたんですか、二人とも」


京太郎「ああ、おかえり」

美穂子「京太郎さん、また久に怒られるようなことしたんですね」

京太郎「え、俺のせいなの確定?」

久「美穂子、今度は私の番だから」

美穂子「……」

久「いいでしょ?」

美穂子「……ええ。そうじゃないと不公平さもの」

京太郎「いや、俺は話が見えないんだけど」

久「いいからあんたはこっち来なさいよ」

京太郎「あーもう、わかったよ!」





久「……私になにか言うことない?」

京太郎「そんなのいきなり言われてもなぁ……思いつかないわ」

久「じゃあ、あの日はどこでなにしてたわけ?」

京太郎「あの日?」

久「あんたが朝帰りした日」

京太郎「普通に朝まで飲んでただけだよ」

久「同じクラスの女と一緒にいたそうじゃない」

京太郎「……だれに聞いたんだよ」

久「本人」

京太郎「マジかよ……本当になんとも思ってないんだな」

久「あんたと寝たって聞かされて、私がどんな気分だったかわかる?」

京太郎「いい気分……なわけないよな」

久「最悪よ……あの女を思わず殴りそうになったぐらいね」

京太郎「久ちゃん、ごめん……」

久「もちろんあんたも許せないし……でも、一番後悔したのは――」ギシッ



久「どうして、もっと早くあんたと済ませておかなかったんだろうって」


久「おかげで美穂子にも先越されちゃった」

京太郎「知って、たのか」

久「気づかないわけないでしょ……最初から知ってた」

京太郎「……」

久「あんたが美穂子を選んだなら、もう私は口を出さない。でも、そうじゃないなら……私を抱いてよ」

京太郎「久ちゃん……それ卑怯だよ」

久「あんたに言われたくない」

京太郎「俺が断れないの知ってるだろ」

久「うん、だからこうしてる」





美穂子「京太郎さん……」


美穂子(これでいい……私は久に対して不義理を重ねていたんだから)

美穂子(だけど、胸の奥がこんなにも痛い)

美穂子(今、あの人と抱きあっているのが私じゃないと思うだけで……)ギュッ


美穂子「……きっと、久もこんな気持ちだったのね」





京太郎「……」ゲッソリ

一太「……生きてるか?」

京太郎「死にそう……」

一太「巻き込まれたくないから聞きたくないけど……どうした?」

京太郎「二人のアプローチが、激しくなってきた」

一太「なんだ、いつものことじゃないか」

京太郎「バカ野郎! おかげでまともに家に帰れないんだぞ!?」

一太「まぁ、帰ったら逃げ場がなくなるしね」

京太郎「うっかり帰ろうものなら最後……逃げ場はないし、他に誰もいないから絶対なりふり構わなくなるよな」

一太「前まではもうちょっと穏やかだった気がするけど……なにかしたのか?」

京太郎「……」

一太「したんだな、したんだろ」

京太郎「ああしたよしたとも! 二人に手を出しました!」

一太「とうとうやったか……」

京太郎「なんだその、いつかやると思ってた、みたいな言い方」

一太「実際時間の問題だと思ってたしね」

京太郎「畜生っ、わかったようなこと言いやがって」

一太「しかしこうなると、刺されるのも現実味を帯びてきたんじゃないか?」

京太郎「そんなことはない……はず」



久「お昼、一緒にいい?」

美穂子「隣、失礼しますね」


京太郎「わ、わざわざ二人して俺の隣に陣取る必要はないんじゃないか?」

久「だってさ美穂子。どいたら?」

美穂子「久はトレイで場所を取るから、対面に座ったほうがいいと思うわ」

京太郎「あわわわわわ」


一太(あ、ダメそうだねこれ)


京太郎「きゅ、急用思い出した! それじゃっ」ガタッ


久「もう、また逃げた」

美穂子「ちょっと強引すぎたかしら?」

久「次は泣き落としで行ってみる?」

美穂子「騙しているみたいでそれはちょっと……」

久「涙は女の武器って言うんだけどね」



一太「君たち、なんというか……仲いいね」

久「なによあらたまって。別に喧嘩してるわけじゃないし」

一太「対立しているようには見えたけどね」

美穂子「それは本当ですから」

一太「うーん?」

久「へたな遠慮はやめたってこと」

美穂子「今までお互いに引け目を感じるところがあって、それで躊躇してたんだと思います」

久「あいつ自身も引き気味だったしね」

一太「……正々堂々戦おうってことでいいのかな?」

久「そんな潔いものじゃないけどね」

美穂子「でも、気持ちは同じですから」


「「京太郎(さん)は渡したくないって」」


一太「うん、二人の事情はわかったよ」

久「そう?」

一太「どうしてぼくにそこまで話すのかはわからないけど……あれ、嫌な予感がしてきたぞ」

久「さぁ、ここまで聞いたからには協力してもらうわよ!」

一太「やっぱりか!」



一太「待て待て待て! いくらなんでも強引すぎやしないか!?」

久「タダ聞きして帰るつもり?」

一太「後払いなんて聞いてないんだけどなっ」

美穂子「お願いします、他に頼れる人がいなくて……」

一太「うぐっ」


一太(たしかに、福路さんのお願いには断りづらいものがある……)


一太「わかった、わかったよ」

美穂子「ありがとうございますっ」

一太「でも、一回だけにしてくれ。それでいいだろ?」

久「ええ、十分すぎるわ」





「須賀ちゃんさぁ、ここ最近けっこう遊んでるよな」

京太郎「そっかぁ?」

「ヤリ捨てした女から逃げてるとか言われてるけど、そのへんどーなん?」

京太郎「うわ、人聞き悪いどころじゃねぇな」


京太郎(とはいえ、完全には否定しきれない……)


「はぁ、この前まで童貞だった須賀ちゃんがもうヤリチンに……」シミジミ

京太郎「そこまで節操なくないからな!」

「おっけ、今夜はその武勇伝を披露な!」

京太郎「いやいや、しないしない」

「かーらーのー?」

京太郎「ありません」

「うわっ、ノリ悪」

京太郎「お前なぁ……」

「ま、もう夏休みだしどっか遊びにいこーぜ。武勇伝はその時に聞かせてちょ」


――ブー、ブー


「わり、俺だわ――もしもし?」


京太郎(結局、急にシフトが入ったとかでこの場は解散)

京太郎(俺は程なく連絡してきた一太に付き合うことにした)





一太「悪いね、手伝ってもらっちゃって」

京太郎「まったくだ。バイト代請求していいか?」

一太「ラーメン一杯」

京太郎「ま、妥当だな」

一太「その前に、この前貸したアレ、返してもらいたいんだけど」

京太郎「ああ、ロリ巨乳のグラビアな」

一太「しー! 大声で言うなよっ」

京太郎「でも、アレを取りに行くなら部屋戻んなきゃいけないんだよな……」

一太「貸したぼくが言うのもなんだけど、その手の本があの二人に見つかったらまた面倒なことにならないか?」

京太郎「別に何も言ってこないだろ」

一太「そうなのか」

京太郎「お前から借りたやつを隠れ蓑にして、もっと奥に隠してたはずのはやりんの写真集がなぜか机の上に置かれてたけどな!」

一太「それ精神的に一番キツイやつじゃないか!」

京太郎「くそっ、くそぉ……!」

一太「飲みに行こうか、今日は僕がおごるから」

京太郎「ああ……!」


京太郎(考えてみれば、この時点で怪しむべきだったんだ)

京太郎(真面目くさった一太が、飲みに行こうなんて言い出すこと自体がおかしかったんだから)





京太郎「いちたぁ、このロリペドやろう」

一太「酔ってるとはいえとんでもない暴言だな!」

京太郎「おまえものめよぉ!」

一太「はいはい飲んでるよ。……ウーロン茶だけど」ボソッ

京太郎「おねーさん、この火がつくウーロン茶ってのおねがい」

「はーい、かしこまりました」


京太郎「らいたいよぉ、初めてってもっとすごいもんだって思うじゃん」

一太「いきなり何の話なんだよ」

京太郎「酔ってたおかげでじぇんぶまっしろ! 気づけばラブホではだかだよ!」

一太「うわぁ……下世話な話だけど、初めてはどっちだったのかな?」

京太郎「……ほぼ初対面の子」

一太「あの二人がいるのに別の子に手を出したのか!?」

京太郎「らから酔ってたっていってんだろぉ!」

一太「本当に君はどうしようもないな……」

京太郎「そのあとはもうあれらよ……いろいろゆるくなったせいか、みほっちゃんにも久ちゃんにも手ぇだしちゃうしよぉ」

一太「ろくでなし街道一直線じゃないか」

「お待たせしました、火がつくウーロン茶でーす」



京太郎「いちたぁ、ライターもってねぇの?」

一太「持ってるわけないだろ……」

京太郎「しょうがねえな……ぶほっ、なんらこれ!?」

一太「そりゃまあ、火が作ってことはそれだけ度数が高いってことだからね」

京太郎「……やる」

一太「飲めるか!」

京太郎「じゃああれら、じゃんけんで負けたほうがいっきのみな」

一太「なんでそうなる!?」

京太郎「ほら、じゃーんけーん……!」

一太「強引かっ!」


京太郎「……」グー

一太「……僕の勝ちだぞ」パー

京太郎「うるへぇ! だれが一回勝負なんれ言ったよ! 三回だ三回!」

一太「これ、そのうち十回勝負とか言い出すパターンじゃないか?」

京太郎「いくぞ! じゃーんけーん――」



京太郎「ほいっ」パー

一太「……」チョキ


京太郎「ほいっ!」チョキ

一太「……」グー


京太郎「……」

一太「まだやるのかい?」

京太郎「くそぉっ!」グビッ

一太「本当に一気にいったか……!」

京太郎「――ぐふっ」パタッ

一太「京太郎? 大丈夫か?」

京太郎「……zzz」

一太「寝てるだけか」


一太「……さて、連絡するか」





久「悪いわね、内木くん」

一太「次はしないからな」

久「この一回で何とかしてみせるから」

美穂子「……久、話が違うわ」

久「そう?」

美穂子「内木さんに説得してもらうんじゃなかったの?」

久「説得途中で京太郎は寝てしまって、私たちはそれを引き取りに来ただけよ」


一太(よく言うよ……最初から酔い潰せって言ってきたくせに)


久「よいしょ……美穂子、そっち持って」

美穂子「ええ……んっ」

久「それじゃ、お代はここ置いておくから」

一太「いや、いいよ。僕は友達と飲みに来ただけだからね」

久「じゃあ、うちの男が迷惑かけましたってことで」

美穂子「本当に、ありがとうございました」

一太「……うん、そういうことなら受け取っておくよ」





久「……酒臭いわね」

美穂子「相当飲んでいたのね……」

久「大学に入るまでは全然手を付けなかったのに……なにやってんだか」

美穂子「きっと、それほど逃げ出したいことがあるんじゃないかしら」

久「……耳が痛い」

美穂子「……やっぱり、私たちが負担になっているのね」

久「自業自得と言ってしまえばそれまでだけどね」

美穂子「久、私は……」

久「諦める?」

美穂子「……もし、京太郎さんが私を嫌いになったのなら」

久「じゃあ、それを手っ取り早く確かめちゃいましょうか」

美穂子「なにをするの?」

久「今夜は三人で寝るってこと。もちろん性的な意味でね」

美穂子「そう……ええっ!?」





『ひ、久……本当にするの?』

『だからさっき説明した通りだってば』

『でも……京太郎さんが目を覚ましてないのに』


京太郎(ん……なんか頭がふわふわする)

京太郎(俺、なにしてたんだっけ……?)


『あ、起きたみたいね』

『京太郎さん、いきなりこんな……ごめんなさい』


京太郎(なんで二人が……)


『それじゃお先――んっ』

『久っ! ……私も――んっ』


京太郎(キス、された?)

京太郎(それも二人共になんて……)


『あ、大きくなってきた』

『失礼します……』カチャカチャ


京太郎(あ、そうか。これは夢だ)

京太郎(そうじゃなきゃ、こんな状況ありえないよな)

京太郎(なら――)


『きゃっ』

『やっとやる気になったってわけ』


京太郎(いただきます……)





京太郎「……zzz」


久「……美穂子、起きてる?」

美穂子「……ええ」

久「すごかったわね……美穂子があんなに乱れて」

美穂子「もう、久こそあんなに声出していたじゃない」

久「……お互い様ってことで」

美穂子「……そうね」

久「動ける?」

美穂子「なんとか」

久「それじゃ、早速確かめましょうか」

美穂子「でも、どうするの? 人数が足りないわ」

久「二人でもできることはあるでしょ。覚えてない?」

美穂子「二人で……もしかして」

久「多分それで正解」

美穂子「私の部屋から麻雀牌、持ってくるわね」

久「じゃあ私はマットね」





久「ルールはいい?」

美穂子「ええ……親はなしで最初にサイコロ振って先に牌を引く方を決める。先攻後攻は交代で連荘はなし」

久「自風はなしで全部役牌扱い」

美穂子「副露ありで、聴牌したらそれを宣言。その時点で宣言した方は牌を引けなくなる」

久「追っかけで聴牌宣言をしたら、どっちも上がるまでツモ切りしかできなくなる」

美穂子「聴牌してるしていないに関わらず、どちらかの捨て牌が18に達したら流局。ノーテン罰符は3000」

久「持ち点は30000点で、それがなくなるまでの殴り合い」


久「……懐かしくない?」

美穂子「もう三年も前になるのね……」

久「大分状況は変わっちゃったけどね」

美穂子「あの時、私はあなたの幻想を追うのをやめて」

久「あの時、私はあんたを敵として認識した」

美穂子「……私は京太郎さんが好き」

久「私も京太郎が好き……だから、確かめなきゃね」

美穂子「そうね」



久『京太郎はね、両想いの相手から運気とかを吸い取っちゃうの』

美穂子『……京太郎さんもそういう手合いだったのね』

久『男子には少ないらしいけどね。ちなみに、吸われた心当たりある?』

美穂子『……何回か』

久『ま、そうよね。あれホント麻雀勝てなくなるから』

美穂子『でも、今はなんともないわ』

久『あいつ、普段は抑えてるみたいだからね』

美穂子『それをどうやって……まさか』

久『我慢できなくすればいいのよ。そしたらわかるでしょ?』

美穂子『京太郎さんが、私たちをどう思っているのか……』


美穂子「負けたいけど、負けたくない……なんだか不思議だわ」

久「ホントね」

美穂子「何回勝負にするの?」

久「納得がいくまでじゃない?」

美穂子「ふふ……そうね」





久「……ノーテン」

美穂子「……ノーテン」


久「これ、何回目だっけ?」

美穂子「三十回……から先は数えていないわ」

久「まさか聴牌すらできないとはね……」

美穂子「まだするの?」

久「もうさすがにね……これ以上打っても同じ結果になりそうだし」

美穂子「そうね……あ、もう昼前なのね」

久「あいつはまだ寝てるし……」

美穂子「お腹空かない?」

久「そういえば」クゥ

美穂子「待ってて、今作るから」

久「テーブルの上、片付けとくね」

美穂子「おねがい」





京太郎「んん……」


京太郎(頭いてぇ……また飲みすぎたか?)

京太郎(しかし昨日は……なにしてたんだっけ?)

京太郎(一太と飲んでたことは覚えてるんだけど)

京太郎(なんだかすごい夢を見たような……)

京太郎(久ちゃんとみほっちゃんとまさかの3Pとかいう)

京太郎(ははっ、あるわけないよな)


京太郎「ふわぁ……もう昼前か」

久「あ、おはよ」

京太郎「……んん?」

美穂子「ご飯、できてますよ?」

京太郎「……んんん?」


京太郎(あれ……夢だよな?)


京太郎「ふ、二人とも……こんな昼早くからどうしたんだよ」

久「昼って時点で早くないけどね」

美穂子「覚えてないんですか?」

久「相当酔ってたしね」

京太郎「あー……」


京太郎(俺、またやらかしたのか?)


久「とりあえずご飯食べちゃいなさいよ」

美穂子「酔い止めとかも用意してありますから」


京太郎(この優しさがたまらなく恐ろしい……!)





京太郎(そして……)


京太郎「……あのさぁ」

久「なに?」

美穂子「なんですか?」

京太郎「動けない」

久「あんたが悪い」

美穂子「そうですね」

京太郎「……」

久「――ちょっと」グイッ

美穂子「――こっち向いてください」グイッ

京太郎「いでででででっ! 人間の首は左右同時には向けないんだよ!」


久「いい加減はっきりさせなさいよね」

美穂子「私もはっきりと聞きたいです」


「「どっち(ですか)!?」」


京太郎(……この状況に至ります、と)





久「ふふっ、見た? 昨日のあいつの困った顔」

美穂子「ちょっと気の毒だったけれど……」

久「スッキリしたでしょ?」

美穂子「そう、ね」

久「でも、これでわかったじゃない」

美穂子「京太郎さんは、どちらかを選べないほど私たちが好きなのね」

久「……自分で言って恥ずかしくない?」

美穂子「――っ、意地悪なこと言わないで」カァァ


久「しょうがないから、もうちょっとだけ待ってあげましょうか」

美穂子「それで、また答えが出なかったら?」

久「また今回みたいにたしかめる」

美穂子「結果が同じだったら?」

久「そしたらまた猶予期間ね」

美穂子「……ずっと決着がつかなかったら?」

久「その時は……三人一緒っていうのも悪くないかもね」


ゆみ「なんだ、また悪だくみか?」

久「人聞き悪いわねぇ。私たちは被害者の会よ」

ゆみ「被害者? ……ああ、そういうことか」

美穂子「加治木さんはこれからお昼ですか?」

ゆみ「この前先輩からおすすめの店を教えてもらったんだ」

久「あ、一緒に行ってもいい?」

ゆみ「かまわない。ちょうど一緒に行く相手を探していたところだ」





京太郎「……」グッタリ

一太「……今日はいつにも増して生気がないな」

京太郎「うるせぇ、このロリペド裏切り者野郎が」

一太「わ、悪かったって言ってるだろ」

京太郎「悪かったって思ってるなら昼飯おごれ」

一太「それぐらいでいいならね……はぁ」


「あれあれ、須賀ちゃんじゃん」


「おハロー……ってどうしたよ?」

京太郎「ちょっと修羅場ってな……」

「うはっ、ついに修羅場っちゃった?」

京太郎「喜んでんじゃねえっての」

一太「京太郎、こちらは?」

京太郎「同じクラスのやつだよ」

「どもー」

一太「どうも」

「須賀ちゃんから聞いてるよ。ロリでペドなやつだって」

一太「君は一体なにを吹き込んだっ!」ギリギリ

京太郎「首絞めんのはやめろっ!」


「まぁまぁ、とりあえずお近づきの印に飲みにいこーぜ。いい店知ってっからさ」

一太「あ、いや僕は……」

京太郎「もちろん来るよなぁ? この前俺を嵌めたんだから」

一太「ぐっ……行くよ、行けばいいんだろ」

京太郎「覚悟しとけ。今度はお前を潰してやるからよ……!」





京太郎「うぐぁ……」グッタリ


「あはは、須賀ちゃんの方が先に潰れちゃいそーじゃん」

一太「……君、本当に弱いんだな」

京太郎「う、うるへー」


「にしてもさぁ、いい加減どっちかに決めないとniceboatじゃね?」

一太「ありえないとも言い切れないのが恐ろしいね」

「ん? でもそーいやさ、須賀ちゃんって、手を出した二人以外にも告られてるんだっけ?」

京太郎「……」

一太「まさか……まだ誰にも返事してないとか?」

「うーわ、こりゃ鮮血の結末まっしぐらっしょ」

一太「本当に最低だな……」

京太郎「て、てめぇら好き勝手言いやがって……!」バンッ



京太郎「決めた! 俺は総理大臣になる!」


「そのこころは?」

京太郎「ハーレム王に、俺はなる!」

「重婚できるように法律変えるみたいな?」

一太「というかね、恥ずかしいから大声で騒がないでくれよ……」

京太郎「あははははっ、もう明るい未来しか見えねーな!」


久「へぇ、明るい未来がなんだって?」


京太郎「あは、あはは……ひ、久ちゃん?」


美穂子「京太郎さん……」ジトッ


京太郎「み、みほっちゃん?」



久「こんな昼間から飲んじゃってさ」

美穂子「もっと体を大事にしてください!」

京太郎「ああ、これはその……」

久「詳しい話は後で聞くから」グイッ

京太郎「ちょっ」

美穂子「ええ、帰りましょうか」

久「内木くん、これお代ね」

一太「あ、うん」


「い、今のが例の?」

一太「……今日こそダメかもしれないな」

ゆみ「まったくだな」

一太「あれ、加治木さん。もしかして、あの二人と昼ご飯に?」

ゆみ「来て早々これだよ」

一太「ご愁傷様」

「んじゃさ、ご一緒にどう?」

ゆみ「せっかくここまで来たからな……迷惑じゃなければ」



「それじゃあ、乾杯いっちゃう?」

ゆみ「なにに乾杯するんだ?」

「そりゃあ……須賀ちゃんの生還にとか?」

ゆみ「まだ帰ってきていないな」

「なら祈ってってことで」

一太「よし、それでいこう」

「じゃあ、須賀ちゃんの生還を祈って――」


「「「――乾杯っ」」」




『エンディング――Never-ending triangle』

というわけで終了

今回は誰も選べず、答えも出せなかったらというエンディングです
大学に進んで一番身近になるのはあの二人だと思うので

そんじゃま、安価は後日で寝ます

>>445
哩姫次元は普通にプロとして活躍してたよな・・・

>>447
哩姫コンビは京太郎の能力のことを知りません
哩姫エンドの京太郎は外部とほとんど接触がありません
それなのに二人がプロとしてやっていけてるということは……

という感じです

それはそうと、安価取りたいんですけど人いますかね?

それじゃ、この中からお好きなのをどうぞ
済がついてるのは選べません


個別

大星淡 済
天江衣 済
桧森誓子 済
姉帯豊音 済
三尋木咏 済
神代小蒔 済
ネリー・ヴィルサラーゼ 済
宮永照  済
エイスリン・ウィッシュアート 済
白水哩 済
竹井久 済
福路美穂子 済
松実玄 済
薄墨初美 済
滝見春 済
石戸霞 済
園城寺怜 済
真屋由暉子 済
清水谷竜華 済
鶴田姫子 済


特殊

久照
久美穂子 済
小蒔霞 済
哩姫 済
怜竜


4分まで

締切
割ってきます

コンマ判定

怜竜:4の倍数以外
久照:4の倍数


直下

4の倍数なので幼馴染二人ということで
そんで最後は千里山の二人ですね

それじゃ、おやすみなさい

久しぶりにこんばんはー
春休みが到来したので今日はやろうかと

もうちょっとしたら始めます

んじゃ、スタートします



『決勝戦開始まで10分を切りました。既にほとんどの選手が集まっていますね』

『はい。決勝や五決では試合前に全員集合で挨拶するんですよ』

『懐かしいですねー』


まこ「ただいまー」


「おう、おかえりまこちゃん」

まこ「なんですか、今日休みですよ?」

「インハイの決勝だからって親父さんが場所貸してくれたんだよ」

「そうそう、みんなで盛り上がろうって話になってね」

まこ「はぁ、なるほど」

「それよりほら、あの二人今日も出てるよ」


『――白糸台ではパンケーキが食べ放題で、それが進学を決める決定打になったとか』

『あはは……どこで聞いたんでしょうかね、その話』

『情報元は、元SSSさんからとしか』

『……菫のバカ』ボソッ

『おや? なにか言いましたか?』ニヤニヤ

『いいえ。それよりも、そろそろ試合開始ですね』



「しかし、この二人も例によってセットで扱われるようになってきたねぇ」

「かたや学生の時の勢いそのままに躍進し続けるトッププロ」

「かたやインハイ、インカレで猛威を振るった若手アナウンサー」

「まこちゃんも鼻が高いんじゃないか?」

まこ「それはまぁ……」


久『それでは実況は私、竹井久と』

照『解説は私、宮永照でお送りします』


まこ「……微妙な気分ですね」





久「なんであそこで打ち合わせ通りにしないのよ」

照「知らない」プイッ

久「はぁ? あの外面の良さをちょっとはこっちに向けたらどうなの」

照「そっちこそ、あんな話は打ち合わせになかった」

久「あんなの別に本筋には関係ないでしょ」

照「そもそも、あなたはお菓子のチョイスがダメ」

久「人が買ってきたのを勝手につまんどいてよく言うわよね」

照「具体的に言うと、おせんべいよりチョコレートがいい」

久「残念、私はしょっぱいやつの方が好きだから」

照「むっ」


照「……チョコパイ」

久「ハッピーターン」

照「コロン」

久「えびせん」

照「キッドカット!」

久「ポテチ!」


照「でも、ポッキーだけは認める」

久「まぁ、あいつもちょくちょく食べてたから」

照「そう……」

久「……ご飯、食べに行かない?」

照「……うん」





京太郎「……あ~、鼻詰まる」

京太郎「こういうとこは最悪だよな……」


「ヘイ、キョウ! もう一回打たねぇか?」

京太郎「もう弾切れだ。今日はやめとく」

「じゃあまずは飲めよ!」

京太郎「飲まない。頭ブッ飛んだとこをむしられちゃたまんねーよ」

「そんなこと言うなって。奢るぜ?」

京太郎「じゃあな」


「クソッ、今日もアイツの一人勝ちかよっ!」ダン

「放っておけよ。噂通りならその内いなくなる」

「取られた分を取り返さないとオレの気がすまねぇんだよ!」

「なんにしても今日はもう諦めろよ」

「チッ、あの女喰い野郎が……!」





京太郎「……」

「ねえ、なに見てるの?」

京太郎「なにも」

「じゃあ、私を見て……んっ」

京太郎「……甘い」

「あなたはタバコの臭い」

京太郎「周りの連中が吸っててさ。鼻は詰まるし最悪だよ」

「それなら行かなければいいのよ」

京太郎「女に養われる男なんてカッコ悪いだろ?」

「真っ当に働けばいいじゃない。ほら、パパに頼めば――」

京太郎「ストップ。ご飯にしないか? お腹減ったし」

「もう、またはぐらかして」

京太郎「はは、それはちょっとまだ早いかなって」


京太郎(もう全然流れてこないな……)

京太郎(そろそろ潮時ってことか)



「キョウは日本の生まれなのよね?」

京太郎「ん、ああ……」

「それならいずれ一緒に行きましょうね。キョウの故郷って見てみたいし」

京太郎「まあ、いつか……な」

「ひょっとして帰りたくないの?」

京太郎「正直に言うとな」

「ごめんなさい、無神経だったわ」

京太郎「気にしないでくれ。日本が嫌いなわけでも、嫌な思い出があるわけでもないんだ」

「そう?」

京太郎「楽しかったよ。特に、あの三年間の思い出は宝物みたいに輝いてる」


京太郎(……だからこそ、帰れないんだけどな)


「それ、ちょっと興味あるわ。あまり昔のこと話してくれないし」

京太郎「そうか? じゃあ続きはむこうでしようか」

「ベッドで? もう、ご飯にするんじゃないの?」

京太郎「終わる頃にはちょうどいい感じにお腹が空いてるさ」

「じゃあこの前の大会のこと、忘れさせてね……」

京太郎「おいで」


京太郎(次、どこ行くかな……)





菫「すまない、遅くなった」

久「じゃあ今日は奢りで」

智葉「さっき来たばかりの奴が言うことじゃないな」

久「いいじゃない。僅差とはいえ早かったのは事実だし」

智葉「なら私が一番だな。潔く割り勘といこう」

菫「いいから詰めてくれ。座れないじゃないか」


智葉「久しぶりだな、二人とも」

久「前に会ったのって、大学卒業する時だったっけ?」

菫「一年以上前か……さすがに帰らなさすぎだ。ご両親は心配していないのか?」

智葉「もうそんな年じゃない……と言っても聞いてくれなくてな。だから帰ってきた」

久「親孝行ってことにしとけばいいんじゃない?」

菫「そういえば、この前照にいきなり怒られたんだが」

智葉「あの宮永照が?」

久「弱点を突けば意外とすぐ感情的になるわよ」

智葉「弱点か……あまり想像ができないな」

久「お菓子ね。特に甘いもの」

菫「ああ、パンケーキ欲しさに白糸台に入ったと言われていたぐらいだからな」

久「……」



久(こう、ポロっと漏らしちゃうところが原因なんだけどね)


智葉「それはそうと竹井アナ」

久「ちょっとやめてよ、こんなとこで」

智葉「最近、宮永照と組まされているそうじゃないか」

久「針生アナの苦労がよくわかるのよねぇ……」

菫「どっちかと言うと、福与アナに似たものを感じるが」

智葉「今ではプロとアナが組むのは定番だからな」

久「話持ちかけられた時に断ったはずなんだけど」

菫「案外お似合いに見えるがな」

久「冗談でもやめて」

菫「照にも言われたよ」

智葉「喧嘩するほど、というやつか?」

久「だから冗談じゃないってば」

菫「当人たちはこう言うが、中々人気なんだよ」

智葉「インハイの時を思えば信じられないが……いや、だからこそか」

昨日はスヤスヤでしたね……

今日はやるのでもうちょっとしたら始めます

んじゃあ、スタートします



久「まったく……この前も勝手に酔いつぶれて、しかも部屋まで送らせるし」


菫「ん?」

智葉「は?」

久「なによ」

菫「酔いつぶれたということは、一緒に飲んでいたということか?」

久「それは、まあ」

智葉「加えて、部屋まで送ったと」

久「曲がりなりにも仕事相手だし、打ち合わせのついでにご飯食べたりもするし? それだけ、それだけだから」

菫「なるほど」

智葉「なるほどなるほど」

久「だから誤解しないでってば」

菫「いいや、正しく理解した」

智葉「これをネタにあの鉄面皮を剥がすのも面白そうだ」

久「もう……とりあえずあんたらお昼は奢りなさいよね」





照「うーん、うーん……」

照「頭が痛い……」ズキズキ


――ピンポーン


照「だれ……?」フラフラ


――ピンポンピンポンピンポーン


照「……」イラッ


――ガチャッ


照「なんでしょうか――」


淡「今日は休みだと聞いて淡ちゃんが来たよ!」


照「……」パタン


淡『あわっ!? なんで閉めるのさー!』ドンドン


照「……はぁ」ズキズキ


『淡ちゃん、お姉ちゃんいないの?』

淡『あ、聞いてよサキー!』


照「咲も来てるんだ……」





淡「もうっ、お昼なのに寝ちゃってどーしたのさ?」

照「具合悪いから」

咲「風邪? お薬買ってこようか?」

照「大丈夫、部屋に置いてあるから」


照「それより二人とも、世界大会はどうだった?」

淡「あ、聞きたい? 私の活躍聞きたいっ?」

照「うん」

淡「ふふーん、なんと私たち――」

照「優勝したんでしょ?」

淡「あわっ!? どーして知ってるの!?」

咲「それはテレビ中継されてたからだと思うけど」

淡「あ、そっか」

照「でも、二人の感想が聞きたいな」

咲「感想かぁ……」

淡「ラクショー?」

咲「あれ、初戦で大失点してなかったっけ?」

照「うん、それも見てた」

淡「あわっ」

咲「あとね――」





淡「うぅ……私悪くないもん。ちゃんと次で挽回したもん……」


照「淡がすねちゃった」

咲「あ、あはは……ちょっと言いすぎたかも」

照「咲は天然だよね」

咲「そ、そうかな?」

照「天然で、外道」

咲「え……」

照「だから魔王なんて呼ばれるんだと思うけど」

咲「お、お姉ちゃんだって大魔王って言われてるよねっ?」

照「……知らない」プイッ

咲「自分のことは棚上げ!?」

照「とにかく、楽しそうでよかった」

咲「えっと、無理やり話終わらせようとしてない?」

照「……違うから」メソラシ

咲「もう……」

照「頑張ったね」

咲「……うんっ」


淡「でもさ、アメリカの代表で一人だけすっごい弱いのいたよね」


咲「わ、復活した」

淡「立ち直りが早いのはこの淡ちゃんの長所の一つだよ!」

照「淡も頑張ったね」

淡「ほめてほめてー」

照「えらいえらい」





智葉「そういえば、向こうで妙な噂を耳にしたな」

久「向こうってどこの国よ。色んなとこ渡り歩いていたんでしょ?」

菫「たしか、最近はアメリカにいたんだったな」

智葉「ああ、メグにあった時に聞いた話なんだがな」

久「アメリカでおいしいラーメン屋を発見したとか?」

智葉「いや、日本に帰りたいと嘆いていた」

菫「留学先に帰りたいときたか」

智葉「カップ麺の詰め合わせをよこせと泣きつかれたよ」

久「まさかそれで帰ってきたんじゃないでしょうね?」

智葉「……それで、妙な噂についてだが」

久「あ、誤魔化そうとしてる」





咲「淡ちゃんと当たった先鋒の人なんだけど、なんていうか……」

淡「うん、すっごいツキがないって感じだったよね」

咲「傍目から見てて、すごい技術の持ち主なのはわかるんだ」

淡「そーそー。よくそれで流局まで持ち込めたよねって時もあったし」

咲「酷い時なんか、手牌全部がだれかの和了牌ってことも……」

淡「欲しいのは来ないのに、まずいのばかり来るってやつかな?」

咲「あれはまるで……」


『あー、くっそ! 全然こねぇ!』

『どれ切っても直撃とか無理ゲーじゃんか!』


咲「……」

照「……」

淡「どしたの?」





智葉「ラックイーター……そいつはそう呼ばれてるらしい」

菫「和訳すると『運喰らい』といったところか」

久「読んで字のごとくってことでいいのかしら?」

智葉「ああ、それでいい」

菫「運を喰らうか……私たちにとってはまさしく天敵だな」

久「ツキを操作するプレイヤーだったらいるじゃない。ねぇ?」

智葉「ネリーは自分の波を調整するだけだ。他の奴のツキを見ることはできるが、干渉はできない」

久「この前の世界大会では、そんなのはいなかったと思うけど」

菫「そのまさに逆のならいたな。たしか、淡と打った相手だったな」

久「あ、そういえば。なんかあれ見てると、懐かしい気分になっちゃったのよね」

智葉「過去のデータを洗ったが、公式戦であそこまで酷い戦績はあれだけだった」

菫「つまり、そのプレイヤーがラックイーターの被害にあったと?」

智葉「その可能性はある」

久「喰われたなら、喰ったやつもいるってことよね?」

智葉「そうだろうが……少なくともあの卓にはいないな」

菫「それは、他のプレイヤーのデータも見た上でか?」

智葉「もちろんだ」

久「……わからないんだけど、それってそこまで気にすること?」

智葉「メグが悔しがっていたからというのもあるが……あいつを思い出した」

菫「あいつ……? ああ、あのツキのなさはたしかに」

久「……」





淡「でもさ、なーんか幸せそうだったよね、あの人」

照「幸せそう?」

淡「ぽわぽわってしてるというか……うん、あれは恋だね!」

咲「さすがに試合の後は落ち込んでたけど」

淡「すぐ誰かに電話してたよね。恋人かな?」

照「恋人……」


照「咲はどう思う?」

咲「えっ? お、お相手はいないよ?」

照「そうじゃなくて、そのアメリカの代表について」

淡「テルの鏡では見えなかったの?」

照「さすがにテレビ越しじゃ何も見えないかな」

咲「……何もなかったと思う」

照「特におかしなことはなかった?」

咲「そうじゃなくて……本当に何もなかった」

淡「うーん、なんというかさ、オーラみたいなのも見えなかったかな? 強い人だとびかびかーって見えるんだけど」

咲「それがツキがないって状態なのかもね」

淡「あとはあれだね。変な糸みたいなの」

咲「そんなのあった?」

淡「近くでよーく見てみないとわからないけど……なんか、なつかしかったかも」





久「ラックイーター、運喰らい……どこかで聞いたような話ね」


智葉『ラックイーターの被害者とされているのは、全て女性だ』

智葉『……そしてラックイーター本人は、男の可能性が高い』


久「……智葉ったらどれだけ勘がいいのよ」

久「女の運を喰らう男……」

久「そこまで並び立てられたら、もう――」


――プルルル


久「……だれよ」


『宮永照』


久「随分タイムリーね……もしもし」

照『話したいことがある』

久「ちょうどいいじゃない。今そっち向かってる途中だから」

照『何の用?』

久「わかってるでしょ?」

照『……わかった。待ってるから』





照「運喰らい……」

久「アメリカの代表がそれにやられたんじゃないかって」

照「咲たちもその話をしてた」

久「運喰らいの?」

照「そこまでは。ただ、その選手だけ異様にツキがなかったって」

久「ちょっと待って、まさかそれだけで?」

照「なによりも、咲が似てるって言ってたから」

久「なるほどね……」


照「それで、どうするの?」

久「どうするもなにも……もう終わった話じゃない」

照「私はそうは思わない」

久「あいつは全員振ってどこぞに消えた。そうでしょ?」

照「なら、どうしてここに来たの?」

久「ただの答え合わせ」

照「でも、運を喰われたってことは……」

久「……もう五年も経ってるんだし、そういうこともあるでしょ」

照「あなたはそれでいいの?」

久「良いも悪いもない。終わったんだってば」



照「……糸が見える」

久「はぁ?」

照「私の指とあなたの指から、すごく細い糸みたいなのが伸びている」

久「……なにもないけど?」

照「普通は目に見えないし、触れもしない。でも、これはまだ繋がってる」

久「まさか、あいつがまだ私たちを……?」

照「あなたの分は余計だと思うけど」

久「……なら、どうしてあいつは帰ってこないのよ」

照「それは……」

久「どんな理由があるにせよ、あいつは帰ってこようとしない……それが事実で、答えでしょ」



久「帰る。お邪魔したわね」

照「私はまだ諦めない」

久「勝手にして……あ、待った。やっぱり明日の収録は気にして」

照「そんなこと……!」

久「そんなことでも大事なことでしょ。社会人なんだから」

照「もういい、あなたを説得しようとしたのが間違いだった」

久「説得しようとしてたんだ。なら人前みたいに愛想よくすればいいのに」


久「それに私たち、そんな関係でもないでしょ」

照「……」

久「それじゃ、お願いだから馬鹿なことはしないでね」





『ホントよね……でも、待ってることにする』

『悪い状況で待ち続けるのは、今に始まったことじゃないしね』


『そんなこと、しないよ。京ちゃんには幸せになってほしいから』

『私はいつでも待ってるから』


京太郎「……」


京太郎(あれからどれぐらい経ったっけ?)

京太郎(もう遠い昔のように思えるな)

京太郎(……あの二人は今も俺を待ってるのかな)

京太郎(それとも――)



「もう、ちゃんと気ぃ入れてよ」

京太郎「ん? 悪い悪い」

「なに考えてたの? 昔の女?」

京太郎「君のこと」

「じゃあワタシのこと、どう思ってる?」

京太郎「女神、とか?」

「ぷっ、あははっ……な、なにそれ?」

京太郎「ほら、女の人の方が幸運だって言われてるだろ?」

「だから幸運の女神?」

京太郎「ああ、御利益ありますようにって」

「それ、今まで何人に言ってきたの?」

京太郎「今は君だけだよ」

「んっ……もう、上手いんだから」



京太郎(この前は代表選手に手を出しちゃったからな……)

京太郎(今度からは気を付けないと)


「あ、悪い顔してる」

京太郎「どうやって虐めてやろうかって考えてる」

「ひどーい」

京太郎「はは、正解。酷い奴なんだ、俺って」


京太郎(金のために女を誑し込んで利用して)

京太郎(挙げ句の果てに人殺しまでやらかして……)

京太郎(……これじゃ帰れなくて当然だ)





『私はまだ諦めない』


久「どれだけ往生際が悪いんだか……」

久「……でも、そういうのって私の領分だったはずよね」

久「あ~あ……ホントにもう」


咲「あ、部長……!」


久「咲? どうしたの、こんなところで」

咲「よかった……実は、部長の家に行こうとしたらちょっと道がわからなくて」

久「駅から歩いてきたの?」

咲「はい」

久「残念、うちは駅を挟んで反対側よ」

咲「えぇ……」

久「でも、降りる駅を間違えないなんて進歩したじゃない」

咲「……それ、褒めてます?」

久「褒めてる褒めてる。さ、うちまで歩きましょうか」





『説得しようとしてたんだ。なら人前みたいに愛想よくすればいいのに』


照「それこそ余計なお世話」

照「……でも、私はどうしてあの女を」

照「ふぅ……まだちょっと体が重いな」


――ピンポーン


照「今日は多いな……はーい」ガチャ


菫「久しぶり」

照「菫?」

菫「メール、見てないのか?」

照「ごめん、ちょっと忙しくて」

菫「忙しい? 淡から具合が悪いとは聞いていたが」

照「それはただの二日酔い……それよりも重要なことがあるから」

菫「とりあえずお見舞いのケーキを買ってきた」

照「――! お茶用意するから中に入って」イソイソ





久「はい、粗茶ですが」

咲「ありがとうございます」

久「それで、急にどうしたの?」

咲「別に用事があったわけじゃないんですけど」

久「それなら遊びに来たって言えばいいの。他人じゃないんだし」

咲「あ、そっか」

久「そっか、じゃないわよもう。その分だと、人付き合いはまだまだ苦手ってとこね」

咲「ま、麻雀する相手とは結構仲良く話してますっ」

久「それってあれでしょ。川原で殴り合って友情が芽生えるみたいな」

咲「どうしてそうなるんですかっ」

久「まぁ、咲みたいなのはそれでいいのかもね」


久「で、私の家に来る前は宮永照のとこにいたんでしょ?」

咲「あれ、どうしてそのことを」

久「あーあ、私あっちより優先順位低いんだぁ」

咲「あ、いや、それは……」

久「なーんて、冗談よ」

咲「……もう、意地悪ですよ」



咲「なんでお姉ちゃんのとこにいたってわかったんですか?」

久「私もさっきまでお邪魔してたから」

咲「じゃあ、入れ替わりだったのかな?」

久「そういうこと」

咲「それにしても、なんだかんだで仲良くなったんですね」

久「バカ言わないで。用事がなければ行くわけ無いでしょ」

咲「でも、よく一緒にテレビに出てるし」

久「上の都合よ。当人たちの意思は関係なし」

咲「そうなんですか?」

久「大体、打ち合わせをニコニコ愛想笑いのまま平気で無視してくるしね」

咲「え、えぇと……」

久「だから時々昔話を掘り返して仕返ししてるのよ」

咲「……」


咲(うわぁ、大人気ない……)





照「ごちそうさまでした」

菫「満足してくれたようでなによりだ」

照「この前のことは水に流しておくから」

菫「そもそも、なんで怒っていたかもわからないよ」

照「私はパンケーキ目当てで白糸台に行ったわけじゃない」


照「パンケーキ目当てで白糸台に行ったわけじゃない」

菫「なんで繰り返す」

照「重要なことだから」

菫「そうか?」

照「菫、なんで私が怒ってたかわかってるの?」

菫「いや、いまいちまだピンと来ない」

照「……はぁ」

菫「待て、なんでため息をつく」

照「菫は親切だけど、抜けてるところもあるよね」

菫「お前にそういうことを言われるのはいまいち納得がいかないな……」



菫「それよりも、実は竹井と辻垣内と一緒に昼を食べていたんだが」

照「知ってる」

菫「もしかして竹井から聞いたのか?」

照「さっきまでうちにいたから」

菫「そうか……そうかそうか」ウンウン

照「……勝手に納得しないで」

菫「口ではなんだかんだ言っていても、やっぱり仲が良いんだな」

照「そんなことない。皮肉や嫌味なんて日常茶飯事だし、どこからかネタを拾ってきてぶちまけるし」

菫「どこからか、の部分に妙に力がこもってないか?」

照「だから、私も打ち合わせを無視した進行で仕返ししてるんだけど」

菫「そ、そうか……喧嘩するほど、というやつだな」

照「……菫は親切だけどちょっと抜けてて、おまけに空気読めないとこもあるよね」

菫「なんで私が残念な人みたいになってるんだ!」





咲「お姉ちゃんとはなにを話してたんですか?」

久「ちょっと世間話」

咲「さ、さすがにそれは苦しいというか……」

久「……たしかにね」

咲「私と淡ちゃんはアメリカ代表の話をしたんですけど」

久「それがどこかの誰かの対局を見てるようだった、とか?」

咲「やっぱり……お姉ちゃんとはその話をしてたんだ」

久「私も別のとこからその代表について情報をもらってさ。ちょっとお互いに確認したかったの」

咲「それでなにかわかったんですか?」

久「……はっきりしたことはなにも」

咲「そうですか……」

久「でも、向こうはすぐにでもアメリカに行くって息巻いてるから、咲からも釘刺しておいて」

咲「……部長は気にならないんですか?」

久「アメリカにいるって確証もないし……それに、もういいのよ」

咲「え、もういいって……」

久「なんかさ、疲れちゃったのよ」

咲「……なんで、諦めちゃうんですか」


咲「もう五年……五年以上も行方不明なのに」

咲「みんなみんな、口には出さないだけで心配してるのに……」

咲「なんで部長がそんなことを言っちゃうんですか……!」


久「咲……」

咲「ごめんなさい……もう帰ります」

久「……」





菫「しかし、前に来た時より散らかったか?」

照「荷造り中だから」

菫「旅行か? 珍しいじゃないか」

照「京ちゃんが、アメリカにいるかもしれない」

菫「……運喰らいにあいつが関与していると言いたいのか?」

照「うん」

菫「そうか……」

照「止めないの?」

菫「私の知る限り、お前が一番執着しているのがそれだからな」


菫「もちろん竹井も行くんだろう? お前一人なら心配だが、あいつも一緒なら安心だよ」

照「……あの女は来ない」

菫「ちょっと待て、それは本当か?」

照「もう終わったことだからって」

菫「……そういうこともあるんだろうな」

照「私だったら絶対に諦めたりしないのに……」ギリッ

菫「竹井が諦めたことが許せないのか?」

照「違う、私は……」

菫「それとも、一人で須賀の前に立つのが怖いのか?」

照「――っ」

菫「照、やっぱりもう少し考えてみないか? 今の生活だってあるじゃないか」

照「ごめん、菫……帰って」

菫「そうか……邪魔したな」

照「ケーキ、ありがとう」





久「うぅ……ちょっと飲みすぎた」

久「明日は……あ~、もうダメ。だるすぎ」

久「はぁ……そもそも相方が来るかどうかもわかんないっての」

久「咲だって好き放題言ってくれちゃってさぁ」


『なんで部長がそんなことを言っちゃうんですか……!』


久「……そんなの、そうでも言わないとやってられないからに決まってるでしょ」

久「それでも……」


美穂子『本当によかったの?』

ゆみ『色んなチームから誘われていたじゃないか』

久『いいのよ。もうプレイヤーとしては散々やった気分だし』

ゆみ『そうか……しかしアナウンサーとは考えもしなかったな』

美穂子『そうかしら? 様になると思うわ』

久『美穂子に言われるとちょっと敗北感ね……』

ゆみ『そういった方面に興味があるとは思っていなかったよ』

久『まぁ、ちょっと別の視点から麻雀に触れたかったのかもね』


久「別の視点……打たなくてもいい立場」

久「そっか……だからプロにならなかったんだ、私」





照「……別に一人だって大丈夫」

照「だれかの助けがなくたって……」


『それとも、一人で須賀の前に立つのが怖いのか?』


照「……」


『――京ちゃん京ちゃんってうるっせぇんだよっ!!』


照「そんなの……」


『なんで、俺を一人にしたんだよ……!』


照「そん、なの……」


『ごめん、俺は照ちゃんと一緒にいられない』


照「そんなの、怖いに決まってる……!」

照「だって私は三回も拒絶されてる!」

照「もし会いに行ったら、また拒絶されたら、この細いつながりさえも切れてしまうんじゃないかって……」

照「怖い、怖いよ……」

照「京ちゃん京ちゃん京ちゃん……!」

照「会いたいよ……京ちゃん」


照「……用意、しなきゃ」





京太郎「ロン……これで終局だ」


「チッ……またテメェの一人勝ちかよ」

京太郎「悪いな、俺みたいなジャップが稼いじまって」

「聞いたぜ、また女を乗り換えたんだってな」

京太郎「あんたには関係ないだろ」

「この女喰い野郎が」

京太郎「悔しいなら、あんたもいい女を引っ掛けたらどうだ」

「ヘッ、せいぜい刺されねぇように気をつけな」

京太郎「どうだろうな……俺みたいのは別れるのが上手くなきゃやっていけないからな」

「それよりもう一回だ! 今日こそはテメェから毟り取ってやるよ……!」

京太郎「今日は本音を隠さないんだな」

「もうこりごりだ。前から気に食わなかったが、一度ぶちのめさなきゃ気がすまねぇ」

京太郎「いいぜ、来いよ。遊んでやる」





『――ロサンゼルス行5157便はただいま、ご搭乗の最終案内をしております』


照「行か、ないと……」


照(でも、踏み出せない)

照(私、こんなに弱かったんだ……)ギュッ


久「なにボーッとしてるのよ」


照「竹井久……どうしてここに」

久「なんでこの道に進んだのか、その理由を思い出しちゃってさ」

照「……プロなら私にかなわないと思ったから?」

久「張っ倒すわよ」



久「ほら、アナウンサーになってプロと組むようになれば、打たなくても麻雀にかかわれるし」

久「あいつがなにか困ったときに、いつでも力を貸してあげられるようにって思ってたんだけどね」

久「だけど、すっかり忘れてた」

久「忙しかったのもあるけど……忘れて諦めて、もうどうしようもないんだって思ってた」


照「私だったら絶対忘れない」

久「でも、足は竦んでるみたいね」

照「……」


照「京ちゃんへの気持ちはずっと変わらない」

照「だけど……会うのがどうしようもなく怖い」

照「中学二年の三月と最後のインハイ、そして高校の終わり……私は三回も拒絶されたから」

照「会いに行ってまた拒絶されたら、今度こそつながりが切れてしまうんじゃないかって」


久「大魔王とは思えない弱腰じゃない」

照「その呼ばれ方、認めてるわけじゃないから」

久「弱腰といえば、インハイの時もそう。進歩がないんじゃない?」

照「ほっといて」



久「だからあの時と同じように手助けしてあげる……ほら」グイッ

照「あっ……」

久「いい加減搭乗しないと間に合わないでしょ」

照「待って、あなたも来るの?」

久「もちろん。同じ便の席は……離れてるとは思うけど」

照「放して」

久「ちゃんと歩けるの?」

照「バカにしないで」

久「そう……じゃあ、行きましょうか」





『――Good afternoon Ladies and Gentlemen』


久「……」

照「……」


『Please secure all your baggage in the overhead compartments or under your seat』


久「まさか隣同士とはね……」

照「まったくもって不本意」

久「ところで、目的地は決めてる?」

照「件のアメリカ代表の先鋒」

久「ま、今のとこそれしか手がかりないしね」



久「ところでさ、黙って来たの?」

照「電話で、今までお世話になりました、とだけ」

久「……絶対大騒ぎになってるやつじゃない」

照「そっちは?」

久「退職届だけ出して来た」

照「なにも言われなかったの?」

久「言われる前にさっさと退散したから」

照「……全然人のこと言えないと思う」

久「携帯は?」

照「着信がうるさいから捨てた」

久「あー……私も」

照「バカなの?」

久「あんたに言われたくない」


久「もう一つ。大事なことなんだけど……英語、喋れるの?」

照「人並みには。海外の大会にも結構出てたし」

久「なんだ、もし喋れなかったら大きな貸しを作るチャンスだったのに」

照「……やっぱりあなたなんて嫌い」





「どうしたの、このお金?」

京太郎「厄介になってるしさ。家賃ってとこ」

「多すぎ。これ私の給料よりあるよ?」

京太郎「今日は君のおかげで調子が良かったから」

「キョウってすごいプレイヤーなのね」

京太郎「ははっ、今は幸運の女神がいるからな」

「あ、それって私?」

京太郎「君以外いないよ」

「ホント上手いよね」

京太郎「それより、今日なにかあったのか?」

「どうしてそう思うの?」

京太郎「慰めてほしそうな顔してる」

「……お見通しなんだ」

京太郎「なんでも話してくれよ。君のことならなんでも知りたい」

「うん、実はね……」





久「ついた、ここね」

照「本当にあってる?」

久「あってるわよ」

照「思ったより時間がかかった」

久「私一人ならもっと早くついたんだけどね」

照「……どういう意味」

久「あんたら姉妹はフラフラせずにはいられないのかって話よ!」


「あなたたち、私の家になにか用?」


照「こんにちは」

「……あなた、もしかしてミヤナガテル?」

照「この前は後輩たちがお世話になりました」

「やめて、あの大会のことはできれば思い出したくないの」



「それで、あのミヤナガテルが私に何の用?」

久「あなたに聞きたいことがあるの」

「……あなたは?」

久「竹井久。この女の……」

照「他人です」

久「……まぁ、こういう関係ね」

「悪いけれど、さっぱりわからないわ」


「でも……二人とも、きっとキョウの故郷から来たのね」


照「――っ」

久「その、キョウというのは?」

「あなたたちと同じ日本の人で、フルネームは……スガキョウタロウ」

久「……詳しく聞かせてもらえますか?」





「そう、キョウの知り合いだったのね」

久「行方不明になった彼を探してるの」

照「どこっ、京ちゃんはどこにいるの……!」

久「落ち着きなさい。ここで慌てたってどうにもならないでしょ」

照「……たしかに、あなたの言うとおり」

「……きっと、彼はあなたたちの大切な人なのね」

久「ええ、だから居場所を知っているなら教えて欲しいの」

「残念ながら、私にはわからないわ」

照「本当に?」

「彼とはもう終わってしまったの」

久「……それは、そういう関係にあったということでいいの?」

「ええ」

照「でも、今は……」

「そうね……悲しいことだけど」





『悲しいけれど、恨んではいないの』

『キョウは最後まで優しかったから』

『……皮肉ね。彼がいなくなってから、また成績が持ち直すなんて』


久「あれじゃちょっと言えないわよね……自分の運が取られてたなんて」

照「でも、それは京ちゃんとあの人が……」

久「本気で好き合ってたってことよね……」

照「……どこにいるのかな」

久「さぁね……大きな手がかりが空振っちゃったし、情報収集するしかないんじゃない?」

照「あの人はたしか、京ちゃんは麻雀で稼いでたって」

久「それね。とりあえず近くの雀荘らしき場所をあたってみましょうか」





「……おい、あの野郎は来てねぇのかよ」

「今日は来てないよ。今頃女といちゃついてるんだろうさ」

「チッ……」

「あいつに拘りすぎだな。いいカモにされてるって気づけよ」

「それがなおさら気に食わねぇんだよ!」ダンッ


『もうこれで何軒目よ……明日にしない?』

『ダメ。少しでも手がかりを掴むまでは休めない』

『あーもう、来る前はあんなに怯えてたくせに』


「……日本語か?」

「さぁな。キョウが似たような言葉を話してるのは聞いたことあるがね」

「ちょうどいいじゃねぇか」

「おい、店の迷惑になるようなことはするなよ」

「ちょっとあのジャップたちと遊ぶだけだ」





久「もうこれで何軒目よ……明日にしない?」

照「ダメ。少しでも手がかりを掴むまでは休めない」

久「あーもう、来る前はあんなに怯えてたくせに」


「ヘイ、アンタたちここは初めてかい?」


「とりあえず座れよ。一局打とうぜ」

久「ごめんなさい、ここには人を探しに来ただけなの」

「麻雀の気分じゃねぇってんなら他のゲームもあるぜ。おすすめはダーツだ」

久「……悪いけど帰らせてもらうわ」

「おっと」ガシッ

久「なんのつもり?」

「冷やかしは勘弁だって話だよ」

久「はぁ……言わないとわからない? あなたと遊ぶことには興味がないって言ってるの」

「なっ……!」



照「いいですよ、打ちましょうか」


久「あんた、目的忘れたわけ?」

照「そうじゃないけど、たしかに雀荘で打たないのも失礼」

久「それはそうだけど……はぁ、まあいいや」

照「手加減はする」

久「当然の配慮ね」


久「ごめんなさい、やっぱり打たせてもらってもいいかしら?」

「どういう心境の変化だい? オレと遊ぶ気はないんじゃなかったって言ってたような気がするがよ」

久「遊び相手には不足だけど、小遣い稼ぎにはちょうどいいかなって」

「ぐっ、このアマ……!」

久「やるの? やらないの?」

「ああ、やってやるよ!」





久「そこそこ稼げたわね」

照「あそこまでムキになってる相手なら当然」

久「これであんたが本気出してたら大惨事ね」

照「あなたは煽り過ぎ」

久「あれは……ちょっとイライラしてたせいかもね」

照「さっきの人に絡まれて?」

久「そうね」


久「それより、聞いた?」

照「おすすめのデザート?」

久「全然違う。あの男の捨て台詞」

照「……興味なかったから」

久「かなり気になること言ってたわよ」


『クソッ、ジャップってのはどいつもこいつも……!』


久「って」

照「ジャップ?」

久「日本人のこと。明らかに見下した言い方だけど」

照「ジャップ、日本人……それがどいつもこいつもってことは」

久「そ、他にもあそこに通ってる日本人がいるってことね」

照「……明日もあそこに行ってみる?」

久「当然」





京太郎「よう、今日はいつにも増して景気悪いツラしてんな」

「チッ、テメェか……」

「ほっといてやれ。そいつ、昨日日本人の二人組にこっぴどく毟られたんだよ」

京太郎「日本人の二人組?」

「もしかすると、キョウの知り合いかもな」

京太郎「まさか。それより打たないか?」

「ダメだ。コイツがこの調子じゃあんたの相手をしようってやつはいないよ」

京太郎「そう、か」


京太郎(いい加減、稼ぎ場所を変えるべきか)


京太郎「邪魔したな……それじゃあ――」


「眠い……」

「朝も一回覗きに行こうっていったのはあんたでしょうが」


京太郎「――っ」


京太郎(ウソだろ、この声は……)

京太郎(なんだって、どうしてあの二人がここに!)


京太郎「悪い、トイレ借りるぜ」

「ん、ああ」


京太郎(とりあえず、二人がいなくなるまでやり過ごすしかない)





久「とりあえずはいない、と」

照「……」クン

久「どうかしたの?」

照「ううん、でも外に出てた方がいいと思う」

久「そうね。また時間をあらためて来るとしますか」

照「多分、その必要はない」

久「どういうこと?」

照「外で説明する」

久「……わかった。出ましょうか」





京太郎「……」ソロー


京太郎(二人は……帰ったか)


「……おい」

京太郎「なんだ、俺はもう帰るぞ」

「あの二人組、テメェの知り合いなのか?」

京太郎「知らねぇよ。無関係の他人だ」

「そうかよ」

京太郎「じゃあな」


「……無関係、ねぇ」





京太郎「さて……どこ行くか」

京太郎「……いっそ別の国に移るか?」

京太郎「となると、また別れ話か……」


「行き先なら日本がおすすめよ」


京太郎「――っ!」

久「全然帰ってこないと思ったら、こんなとこでなにしてるのよ」

京太郎「くそっ」ダッ


「京ちゃん!」ガシッ


京太郎「はなせっ……!」

照「イヤ、絶対離さない……!」ギュウウ

久「いいからおとなしくお縄につきなさいっての!」

京太郎「俺は犯罪者か!」





京太郎「……で、二人して何しに来たんだよ」

照「京ちゃんに会いに」

久「いい加減、待ってるのにも飽きちゃったから」

京太郎「待ってるもなにも、俺ははっきりと答えを出した。違うか?」

久「そうね……でも、良くない噂を耳にしたから」

京太郎「噂?」

久「ラックイーターだってさ。アメリカ代表もその被害にあったんじゃないかって」

京太郎「……やっぱり代表選手に手を出したのは間違いだったな」

久「あんたやっぱり……」

京太郎「ああ、そうだよ。俺は自分が勝つために女を食い物にしてるクズだよ」

照「そんなの関係ない……だから帰ろ? 京ちゃん」

京太郎「……帰れねぇよ」ボソッ



京太郎「ここまで来た二人には悪いけど、俺は帰らない」

久「……それはどうして?」

京太郎「言わなきゃわかんねぇか? 女がいるからだよ」

久「食い物にしてる女でしょ? そんなのやめて帰ればいいじゃない」

京太郎「俺の能力が効くってことはどういうことか、わからないわけじゃないよな?」

照「……京ちゃんは、その人のことが本気で好きなの?」

京太郎「この気持ちに嘘はない」

照「……そう、なんだ」

久「……わかった。今日のところはホテルに帰る」

京太郎「できればそのまま日本に帰ってくれ」

久「京太郎、あんた――」





『――本当に変わっちゃったのね……』


京太郎「……ああ、そうだ。変わったよ」

京太郎「あれだけあって変わらないわけないだろ……」

京太郎「そうだ、俺はクズだ。本気で好きになった女さえ食い物にするクズだ」

京太郎「……もう潮時だ。ここにはいられない」

京太郎「少し急すぎるけどしかたない、か……」


「あ、おかえり」


「もう、朝からどこ行ってたの? せっかくのお休みなのに」

京太郎「ちょっと散歩」

「私も一緒に行きたかったなぁ」

京太郎「……話があるんだけど、いいかな」





照「……」

久「どうする?」

照「……」

久「あいつの言ってた通り帰る?」

照「あなたは、どうするつもりなの?」

久「私は……まだ帰らない」

照「どうして?」

久「いなくなってる間になにがあったのか、まったく聞いてない」

照「私は……まだ帰りたくない」

久「どうして?」

照「京ちゃんが私をどう思ってるのか、はっきりと聞きたい」

久「……あんなに怖がってたくせに」

照「誰かみたいにすぐ諦めたりしないから」

久「言ってくれるじゃない……なら、とにもかくにも行動ね」

照「京ちゃんを探すの?」

久「逃げられる前にね」





京太郎「くそっ、痛ぇな……!」

京太郎「まさかあそこでナイフを出してくるとは……」


『なんでそんなこと言うの……?』

『私は……あなたといられるだけでいいのに!』


京太郎「だから急すぎるとダメなんだよ……」

京太郎「あぁもう……女なんて懲り懲りだ!」

京太郎「……なんて言っても、その女の力がなきゃなんにもできないんだけどな」

京太郎「とりあえず、この切り傷をなんとかしないとな」

京太郎「シャツも切れちまったし、移動費と宿代も考えると……」

京太郎「……マズイな、手持ちじゃ全然足りねぇ」



久「私たちの部屋ならタダで泊まれるわよ」


京太郎「……まだ来るのかよ」

照「京ちゃん、その怪我……」

京太郎「たいしたことない。血が出てるから酷く見えるだけだ」

久「そんな格好でうろつくのはどうかと思うんだけど、どうする?」

京太郎「……帰れ」

照「イヤ」

久「少なくとも、納得がいくまでは帰れないわよ」

京太郎「俺が何言っても納得なんてしないだろ」

久「でも、話をしなきゃ納得のしようがない」

京太郎「……」

照「私は、京ちゃんの本当の気持ちが聞きたい」

京太郎「……わかった。今日だけ場所を貸してくれ」





久「はい、おしまい。まだ血が滲む?」

京太郎「……無理に動かさなきゃ大丈夫そうだ」

久「腕で良かったじゃない」

京太郎「腹刺されてたら、さすがにどうしようもなかったかもな」

久「それよりあんた」

照「なに?」

久「いい加減離れなさいよ。手当するときも徹頭徹尾邪魔だったし」

照「イヤ」

久「駄々っ子か!」グイグイ

照「イヤ!」

京太郎「傷に響くからやめてくれ、マジで」


京太郎「……それで、なにが聞きたい?」

久「聞けるだけ」

照「そもそも私の聞きたいことは一つだけ」

京太郎「……二人は、どこまで俺を許せる?」

久「聞いてみなきゃわからないわよ」

照「私なら全部許してあげるから」

京太郎「それは、俺が人を殺したって言ってもか?」

照「――っ」

久「……聞かせて」





京太郎「高校の三年間、色々あって、色々やらかして、結果いつの間にやら色んなやつから好意を向けられて」

京太郎「でも、俺にはそれが途方もなく重く感じた……感じてしまった」

京太郎「答えを出さなきゃと焦って自分を追い詰め……それでなにもかもがいやになった」

京太郎「だから全部断った。そうやってしがらみを断てば、楽になれるんじゃないかって」

京太郎「物理的にも離れたくて……だから日本を出た」

京太郎「だれも自分のことを知らない中で自由に歩き回るのは結構楽しかった」

京太郎「そして身勝手にも誰かを好きになったりして……そしてその子は死んだ」

京太郎「不運にも、交通事故に巻き込まれて、だ」

京太郎「わかるよな? ……俺が、殺したんだ」

京太郎「そうじゃないって思うか? だけど違うんだよ」

京太郎「だって、彼女の不幸の原因は俺だ」

京太郎「俺が、なにも考えずに好きになって、運を奪って……死なせた」

京太郎「……そんなのは俺が殺したも同然だ」

京太郎「要するにさ、今の生き方は罰なんだよ」

京太郎「一番楽じゃない生き方を選ばないと、俺は自分を許せそうになかった」

京太郎「自分が生きてることをさ」

京太郎「死ぬのは簡単だ。すぐ楽になれるしな。でもそんなのはダメだ」

京太郎「そんな逃げが許されるはずがない」

京太郎「だから、俺はこの身勝手な生き方を続けてるんだよ」



京太郎「……以上だ」

久「……」

照「……」

京太郎「他に聞きたいことはあるか? ないなら俺はもう行く」

久「……なんで、話さないの?」

京太郎「今全部話したよ」

久「そうじゃない。なんで自分の生き方に巻き込む人に、何の説明もないのかって話よ」


久「だってそれ、全然フェアじゃない。何も知らないで巻き込まれた人はたまったものじゃない」

久「あんたがこれからもそうやって色んな人に迷惑をかけ続けていく気なら、私はあんたを止める」


京太郎「止める? どうやってだよ」

久「無理やり連れ帰るか、そうじゃなきゃ――」


照「待って、勝手に盛り上がらないで」



久「……そういう横槍、やめてもらえる?」

照「だって、私は聞きたいこと聞けてないし」

京太郎「俺のことは大体話したはずだけどな」

照「ううん、京ちゃんは大事なことを言ってない」


照「京ちゃんは、私のことをどう思ってるの?」


京太郎「……今更どうとも思ってなんか――」

照「ウソだよね? 京ちゃんはその気になれば私と……その女からも奪っていけた」

京太郎「自意識過剰かよ」

照「とても細いけど、まだ切れてない。このつながりが京ちゃんの気持ちを表してる」

京太郎「……」


照「どうして? なんで私たちからは奪っていかないの?」

照「一番辛い生き方を選んでいるなら、どうして私たちに手を出さないの?」



京太郎「……るせぇ」

京太郎「うるせぇうるせぇうるせぇ!」

京太郎「どうしてこんなとこまで来るんだよ! ずっと日本にいればいいのによ!」

京太郎「綺麗で輝いてるんだよ! 日本での思い出は! だから汚したくないし帰れないんだよ!」

京太郎「それなのにわざわざ俺のとこまで来やがって……!」グイッ


久「ちょっ、なにするのよ……!」

照「京ちゃん、痛い」

京太郎「そこまで言うんだったら二人まとめて食い物にしてやるよ」


京太郎「――だから、蹴るなり殴るなり刺すなり抵抗してくれよ」

京太郎「お願いだからさ……」


久「京太郎……」

照「京ちゃん……」





久「ん……」

照「きょう、ちゃん……」


京太郎「バカだよ、二人とも」

京太郎「なんで抵抗しなかったんだよ」

京太郎「怪我人に二人がかりで勝てないはずないだろ」

京太郎「なんで俺に、一番辛いことやらせるんだよ……」

京太郎「……ダメだ。この二人と一緒にいたら」

京太郎「あの頃の自分に、どうしようもなく戻りたくなる」

京太郎「もう戻れやしないのに……」


京太郎「だから……今度こそさよならだ」





久「んんっ……あれ、京太郎?」

照「クリームは植物性より動物性の方が……」ムニャムニャ

久「起きろっ!」グニィ

照「痛いっ」

久「京太郎がいない!」

照「京ちゃんならさっきまでケーキを……」

久「それはあんたの夢の中!」





久「あーもう、あいつどこ行ったのよ……!」

照「……匂いもわからない」クンクン

久「あんたは犬か!」

照「とりあえず、手分けして探したほうが――」


「よう、探しものかい?」


照「あなたは……」

久「ごめんなさい、今日は本当に付き合ってる時間がないの」

「その前に、アンタらはキョウの知り合いってことでいいのかい?」

久「そうよ、だから探してるの。これ以上時間を取らせないで」

照「……待って、何か知ってるの?」

「ああ、キョウとはそれなりの付き合いだからな」

照「教えて」

「案内してやるよ。車に乗りな」

照「わかった」

久「ちょっと待った、これって――」



――カチッ


「リボルバーだ。古いが、当たれば痛いどころじゃないってのはわかるだろ?」

久「これだから銃社会は……!」

「乗るのか? 乗らねぇのか?」

照「……この場で私たちを撃ったら、それこそあなたもただでは済まない」

「そう、オレはお縄について、下手すりゃ死刑であの世行きだ」


「だけどよ、それがどうした?」


「アンタらが死ねば、あの野郎への最高のプレゼントになるってもんだ」

「オレの第一希望はもちろん、自分の手でアイツをぶちのめすことだけどよ」


久「……ダメね、こっちの話は通じそうにない」

照「……わかった」


「もう一度聞くぜ……乗るのか? 乗らねぇのか?」





京太郎「シャツと飯代でほとんど消えたな……」

京太郎「まぁ、移動は最悪ヒッチハイクでなんとかなるか」

京太郎「……怒ってるだろうな」

京太郎「いや、俺にはもう関係ない」

京太郎「今は少しでも遠くに――」


「よう、乗ってくかい?」


京太郎「あんたは……」

「ただし代金はいただくぜ」

京太郎「あいにく持ち合わせがないんだよ」

「そうか……なら、こんなのに興味はねぇか?」ピラッ

京太郎「……趣味が悪い写真だな」

「今はまだ縛られてるだけだ。時間が経てばどうなるかは保証できないけどよ」

京太郎「赤の他人がどうなろうと関係ない」

「……そうかい。気が変わったんならいつものとこに遊びに来な」



京太郎「……」


京太郎(俺はもうどのみちあの二人と会うことはない)

京太郎(だからどうなろうと関係ない……そうだろ)

京太郎(だけど、考えれば考えるほど……)


『京太郎』

『京ちゃん』


京太郎「ダメだこりゃ」

京太郎「来るなって思ってるのに流れ込んでくる」

京太郎「まったく、ホントにあの二人はどうしようもないな……」

京太郎「……一番どうしようもないのは俺だけどな」





久「いたたたた……絶対これ跡残る」

照「んっ……全然解けない」

久「あんた、あのギュルギュルってやつでどうにかならないの?」

照「無理。こんな状況じゃ使えない」

久「……こんな状況じゃなかったら使えるってことが驚きね」


久「あいつ、来ると思う?」

照「あなたはどう思うの?」

久「そうねぇ……あ、せっかくだし賭けてみない?」

照「京ちゃんが来るか来ないか?」

久「負けた方は大人しく身を引くってことで」

照「うん、それで構わない」

久「じゃあ、同時に言うわよ」

照「わかった」


久「京太郎は――」

照「京ちゃんは――」


「「――絶対来る!」」


久「……不成立じゃない」

照「あなたが変えればいい」

久「変えるわけないでしょ」





「……来ねぇ」

「せっかく舞台を整えてやったってのに……来やがらねぇ」

「~~っ、舐めやがってクソがぁっ!!」ガンッ


京太郎「お邪魔するぜ」


「はぁ、はぁ……遅いお出ましじゃねェか」

京太郎「ああ、別にあんたと遊ぶ気はない。忘れ物を取りに来ただけだ」

「……そうかよ。じゃああのジャップの女どもは好きにさせてもらうぜ」

京太郎「待てよ」

「なんだぁ? さっきは関係ねぇって言ってたよな?」

京太郎「ああ、さっきはな……だけど今は違う」


京太郎「二人とも俺の女だ。手を出すっていうなら覚悟しとけ」



「ほぉ? ……言うじゃねえか、このクソジャップがよぉっ!」

京太郎「騒ぐなよ。おとなしく返すなら俺もおとなしく帰る」

「テメェをぶちのめすか、あの女どもをいたぶってやんなきゃコッチの気がすまねぇんだよ!!」

京太郎「だったらどうする? 怪我人相手に殴り合いか?」

「ハッ、そんな結果が見えた勝負はしねぇよ……これだ」ゴトッ

京太郎「リボルバー……ロシアンルーレットか?」

「六発入りで一発だけ実弾だ。先にくたばった方が負けっていうわかりやすいルールだ」

京太郎「……ちょっといいか?」

「あぁ? 平和ボケしたジャップにはヘヴィか?」

京太郎「いいや、軽すぎる」


京太郎「俺が先に五回引く」


「……正気か、テメェ」

京太郎「俺の勝ち筋は一本、あんたの勝ち筋は五本。有利なのはどっちかは考えなくてもわかるよな?」

「……」

京太郎「それとも、俺がビビって逃げるのに期待してたのか?」

「――ッ、いいじゃねぇか、乗ってやるよ!」

京太郎「じゃあ、行くぜ」カラカラカラ



――カチッ


「チッ、ハズレか」

京太郎「慌てんなよ。まだ一発目だ」


――カチッ


「運の良い野郎だぜ」

京太郎「あんたも知ってるだろ。今の俺の取り柄はそれぐらいだってな」


――カチッ


「お、おい……もう引けねぇってんなら、そこでやめてもいいんだぜ?」

京太郎「やめる? 冗談だろ」


――カチッ


「やめろ、やめろやめろやめろぉ……!」

京太郎「今の俺には――」


――カチッ


京太郎「――幸運の女神が、二人もついてるんだから」



京太郎「さぁ、今度はあんたの番だ」ゴトッ

「あ、ああ……」カタカタ

京太郎「どうした、震えてるぞ? 引く度胸がないなら、ここで終わりにしたっていいんだけどな」

「――っ、ふざけるなっ!!」グイッ


京太郎「……結果の見えた勝負はしないんじゃないのか?」

「今はテメェをブチのめせればそれで十分なんだよぉ!」ブンッ

京太郎「――っ」


――ドサッ


「あ、が……な、なんで」

京太郎「たしかに結果の見えた勝負だったな」

「な、なにしやがった……」

京太郎「あんたみたいな力任せが、たとえ怪我してようが執事殺法に勝てるわけないだろ」

「なんだそりゃ……」

京太郎「せめて岩を素手で砕けるようになってから出直してこい」

「ふざけたことぬかしやがって――がっ」

京太郎「ほら、二人はどこだ」

「……奥の部屋だ」

京太郎「どーも」

「……」



(チクショウ……!)

(あんな、ちょっとツイてるだけのクソジャップに!)

(許せねぇ、ぶっ殺してやる……!)


「ヘイ、キョウ!」

京太郎「あん?」

「最後の一発、受け取りやがれ……!」


――カチッ


「ふ、不発……?」

京太郎「言ったろ、幸運の女神が二人もいるって……よぉ!」ゴスッ

「ぐぁっ……」

京太郎「しばらく寝てろ」





京太郎「大丈夫だったか、二人とも」

照「平気、京ちゃんが助けてくれたから」

久「縛られてた腕が痛いくらいかな」

京太郎「言っておくけど、自業自得だ。俺は帰れって言ったんだからな」

久「でも、ちゃんと来てくれた……違う?」

京太郎「……これっきりだ」

照「うん、それはウソだって私にはわかってるから」

京太郎「チッ……途中まで送ってくから、後は勝手にしてくれ」





京太郎「……」


照「すごい広い」

久「見渡す限りの荒野って、日本じゃまず見られないんじゃない?」

京太郎「……どこまでついてくるんだよ」

照「どこまでも」

久「あんたが諦めるまで」

京太郎「ついてくるなよ」

照「イヤ」

久「それより車ないの? 絶対徒歩で移動する距離じゃないでしょ」

京太郎「知るかよ。疲れたんならいい加減日本に帰れ」

照「帰れだって。帰ったら?」

久「それよりお菓子の備蓄尽きてるんじゃないの?」

照「あ……」

久「どこかで補充してきたら? 待たないけど」

照「むっ」



京太郎「やかましいな……帰れよもう」

照「京ちゃんが帰るなら」

久「というかさ、そう言って帰ると本当に思ってるの?」

京太郎「俺とは違って向こうでの生活があるだろ」

照「そんなの知らない」

京太郎「知らないってな……」

久「わからない? 全部かなぐり捨ててきたって言ってるの」

京太郎「……バカだよ、二人とも」


京太郎「俺は、きっと地獄に落ちるぞ」

照「じゃあ私もついてく」

久「しかたないから付き合ってあげるわよ」

京太郎「……勝手にしろよ」



久「ねぇ、どこ向かってるの?」

京太郎「どこだっていいだろ」

照「うん、京ちゃんがいれば」

久「それであんたがいなければ最高ね」

照「それはこっちのセリフ」

久「良く言うわね。一人で来るの怖がってたくせに」

照「全部諦めようとしてた人に言われたくない」

京太郎「……二人とも、見ない間にちょっと仲良くなったか?」


「「そんなわけない(でしょ)!」」


京太郎「はいはい、そーかい」




『エンディング――追い風と太陽と、幸運の女神』

長い、というか長すぎる……!
下手したら今までで最長の可能性すらありますね
長すぎてもはや眠気とかを超越してしまいました

ともあれ次の怜竜でひとまず最後です
今回ほどは長くならないと思いますが

それでは、これから朝ごはんを食べるので失礼します

約三週間ぶりにこんばんはー
久しぶりにやろうかと

それじゃあ、もうちょっとしたら始めます

んじゃ、そろそろスタートします



京太郎「ん~……太陽が眩しいぜ」


「夜勤おつかれさん」

京太郎「お、今日は早いね」

「ちょっと早起きしちまっただけだ」

京太郎「はは、それで出勤早めるなんて真面目だな」

「どうせやることもないつまらない人間だよ」

京太郎「そう言うなよ。恋人とかいねーの?」

「生憎、遠距離だよ」

京太郎「おいそれと会いにも行けないな」

「お前は?」

京太郎「毎日会ってるよ」

「チッ、自慢かよ」

京太郎「まぁ、毎回病院じゃムードもへったくれもないけどな」

「病院?」

京太郎「ああ……俺のツレ、ちょっと体悪いんだ」





京太郎「おはようさん」

怜「んー、おそーい」

京太郎「そう言うなって。こちとら夜勤明けだ」

怜「今日のおみやげは?」

京太郎「べったら漬」

怜「なんでやねん」

京太郎「いや、近所のおばさんから東京土産だからってもらって」

怜「浮気?」

京太郎「うちの母親より年上だぞ。どんだけストライクゾーンが広いんだよ」

怜「はやりんは?」

京太郎「全然いける」

怜「ふんふん……ギルティやな」

京太郎「夢を見るだけならタダだろっ」



京太郎「……それで、具合は?」

怜「可もなく不可もなく?」

京太郎「なんで疑問系よ」

怜「見解の相違みたいな?」

京太郎「つまりあれか、大丈夫って言ってるのは自分だけと」

怜「や、実際問題あらへんし」

京太郎「やっぱり自己申告は信用ならねーな」

怜「じゃあ確かめて、どうぞ」

京太郎「えー、悪いのはここですかー?」モミモミ

怜「やーん、すけべー」



――コンコン


竜華「そろそろええかな?」

怜「もうちょい」

京太郎「おしまいだ」

怜「えー?」

京太郎「おとなしくしとけ。入院中だろ」

怜「む~」プクー

竜華「あはは、フグみたい。突っついてもいい?」

怜「ハリセンボンやねん。触ると怪我するで」

竜華「はいはい、お土産持ってきたから機嫌直してなー」

怜「待ってました! ――って、なんでべったら漬やねん!」

竜華「近所のおばちゃんにもらって」

怜「ネタ被り!」


京太郎(というか、出処が同じなんだよなぁ)



怜「2セットももらってどないせいっちゅーねん」

京太郎「そりゃあ、ご飯のお供だよ。朝昼晩って」

怜「まさかのべったら漬漬けかい」

京太郎「ズケズケと言ってくれるな」

怜「んー、あんまおもろくないなぁ……やり直しで」

京太郎「なにぃ?」

竜華「……」プルプル

怜「竜華、お花摘みなら我慢せぇへんほうがええで?」

竜華「ち、ちがっ……」

怜「ならトイレ?」

京太郎「それどっちも同じな」

怜「言わぬが花」

京太郎「お花摘みだけに?」

怜「う~ん……座布団一枚っ」

京太郎「よっしゃ」



竜華「ごめん、診察あるからそろそろ」

京太郎「ん、そうか」

怜「次は甘いのがええな」

京太郎「リクエストとは生意気な」

竜華「あはは……うん、次はケーキ買ってくる」

怜「おおっ、じゃあ楽しみにしとる」

竜華「先生の言うこと、ちゃんと聞いておとなしくしとること……ええ?」

怜「べったら漬を食べるぐらいならええやんな」

竜華「多分、それぐらいなら」

京太郎「それじゃ俺も……」

怜「えー? もう帰るん?」

京太郎「いや、お花摘み」

怜「その隠語はレディース専用やねん」

京太郎「んー……山へ芝刈りに、とか?」

怜「はい座布団没収ー」


竜華「……」





京太郎「しかし医者かぁ……あらためてすごいよな」

竜華「うん、頑張ったから」

京太郎「勉強も運動も麻雀も強くてすごい……というかやばいってのはよく聞いたけどな」

竜華「やばいって」

京太郎「安心しろ。やばいやつならなんでか知り合いによくいるから」

竜華「……須賀くん、トイレは?」

京太郎「お前を送ってからでもいいだろ」

竜華「別にうちは……」

京太郎「さっき、泣きそうだったろ」

竜華「――っ」

京太郎「勘違いだったら悪いけどな……俺には辛そうに見えた」

竜華「うっ、うぅ……」ポロポロ

京太郎「……もしあいつのことなら、話してくれないか?」





京太郎「……」


『……もうダメかもしれへんって』

『治療で進行を遅らせることはできても、改善はしてへんって……』

『入院も長いし、このままやったら……』


怜「大丈夫? 胸揉む?」

京太郎「それよりもギュってしていいか?」

怜「もち。スキンシップならウェルカム」

京太郎「ああ……」ギュッ

怜「んっ」


京太郎(俺になにができる?)

京太郎(もう先が長くないかもしれないこいつに、なにをしてやれる?)

京太郎(……いや、まだダメだって決まったわけじゃない)



怜「今日は情熱的やん」

京太郎「いつも心の中ではこんなもんだよ」

怜「やぁん、もしかしてケダモノになっちゃう?」

京太郎「ここが病室じゃなきゃな」

怜「じゃあお持ち帰りしてもよし」

京太郎「良くなったらな」

怜「はよ良くなれー、はよ良くなれー」

京太郎「よし、その意気だ」

怜「うーん、ニケツしたい!」

京太郎「退院したらな」

怜「じゃあ……結婚したい」

京太郎「……退院したら、盛大に式挙げようぜ」

怜「指輪は?」

京太郎「頑張って用意する」

怜「ならうちも頑張って治す」

京太郎「ちょっと飲み物買ってくるわ」

怜「ん……ふわぁ、うちはもう一眠りしとこかな」

京太郎「ああ、おやすみ」





京太郎「……くそっ」ガンッ


京太郎(何が退院したらだ……!)

京太郎(あんな言葉、ただの逃げじゃねぇかよ!)

京太郎(でもダメだ……あんなに辛いなんて)

京太郎(……泣けるなら俺が泣きてぇよ)


「あら、京太郎さん」


京太郎「……どうも、園城寺さん」

「そんな他人行儀な呼び方しなくてもいいんですよ?」

京太郎「はは……お義母さんはまだ早いですから」

「そんなことない……だってあなたは、もう何年もあの子の傍にいてくれたじゃない」

京太郎「俺は……なにもできないですから」

「いてくれるだけで十分ですよ」

京太郎「……」


京太郎(それでも、俺は……!)


京太郎「すみません、夜勤明けなんで失礼します」

「ごめんなさい、眠いところを引き止めてしまって」

京太郎「いえ。それよりも、今は寝てるんでそっとしといてやってください」





「よう、お疲れか?」

京太郎「ん、ああ……」

「今日も見舞い行ってたんだろ?」

京太郎「まあな……」


京太郎(ここ最近、あいつの前でちゃんと笑えてるか怪しい)

京太郎(ぎこちなくないだろうか……あいつに、心配をかけてないだろうか)

京太郎(知らないのなら、気取られるわけには……)


「ほら、飲めよ」

京太郎「悪いな……えっと」

「リュージでいい」

京太郎「あれ、そんな名前だったっけ?」

リュージ「昔から仲がいいやつからはそう呼ばれてんだよ」

京太郎「……ああ、苗字と名前から取ってるのか」


京太郎(なんか、ハギヨシさんみたいだな)



京太郎「じゃあ俺のことも京ちゃんでいいぜ」

リュージ「いや、気持ち悪い」

京太郎「当たり前だ。俺も男からそんな呼び方されたら気持ち悪い」

リュージ「はっ、今日も夜勤だろ? 居眠りしないようにな」

京太郎「そっちこそ、早起きしすぎて夜中に出勤するなよ」

リュージ「言ってろよ」


京太郎(……こういうの、なんか久しぶりだな)

京太郎(こっちに来てから、同年代のやつと付き合う機会が減ったしな)


「須賀くん、ちょっといいかい?」

京太郎「はい」

「……彼に、なにかされなかったか?」

京太郎「なにかって……コーヒーもらったぐらいですよ」

「そうか、ならいいんだ」

京太郎「なにかあるんですか?」

「その、あまり大きな声では言えないんだけどね……」





京太郎「暴力団、ね」


『あくまで噂なんだけど……暴力団と付き合いがあるって』

『もちろん噂は噂だけどね。ほら、なにか問題があった時に困るじゃないか』


京太郎「……だからなんだってんだよ」

京太郎「それだったら俺だって、極道の娘と友人関係だっての」

京太郎「まったく、つまんねーこと言いやがってよ」


怜「んん……もう昼?」


京太郎「なんだ、せっかく寝顔見てたのに」

怜「あかんなぁ、女子のすっぴんのぞくとか犯罪行為やで?」

京太郎「アホ、何回一緒に寝たと思ってるんだよ」

怜「はい、セクハラ発言いただきましたー」

京太郎「おっと、これは迂闊だったな」

怜「ふふん、出るとこ出たら大変なことになるやろな?」

京太郎「マジか……見逃してくれっ、なんでもするから!」

怜「ん? 今なんでもするって――けほっ、けほっ」

京太郎「おい、大丈夫かよ」

怜「けほっ……ちょい休めば――げほっ、げほっ!」

京太郎「明らかに酷くなってるだろ! 看護師さん呼ぶからなっ」





京太郎「……まだか」


『治療で進行を遅らせることはできても、改善はしてへんって……』


京太郎(あれじゃあ、改善するどころか……)


――ガラッ


京太郎「――っ、先生、あいつはっ?」

「容態は落ち着いて、今は寝ています」

京太郎「そうですか……」

「ただ、徐々にですが病状は悪化の傾向にあります」

京太郎「……やっぱり、そうなんですね」

「……清水谷先生から聞いていましたか」

京太郎「俺が無理に聞き出したんです」

「彼女は園城寺さんのために医師を志したそうですね……気の毒な話だ」

京太郎「なんで、もうダメみたいに言うんですか」

「入院してもう数年……投薬を続けていますが、病は徐々に進行している」

京太郎「じゃあ打つ手はないって言うんですか!?」

「ゼロとは言えません。しかし……」

京太郎「お金の問題だったらなんとかするし、俺にできることならなんだって……!」

「……金銭の問題でも、あなたにどうにかできることでもないんです」


「病気の完治の芽があるとすれば、それは……心臓の移植しかないんですよ」





京太郎「……なあ、清水谷」

竜華「なに?」

京太郎「心臓の移植って、難しいのか?」

竜華「……先生から聞いたんやね」

京太郎「まるで、移植には期待できないみたいな言い方だった」

竜華「正直、難しいと思う」

京太郎「難しい手術なのか?」

竜華「技術的にもやけど、まずドナーが見つからへん」

京太郎「誰でもいいってわけじゃ、ないんだよな」

竜華「うん……合わん臓器を移植しても、ダメになるだけやから」

京太郎「そうか……」フラッ

竜華「帰るん?」

京太郎「悪い、一人にしてくれ」


眠し……沈みます

こんばんはー
昨日はぐっすり寝たので今晩はやろうかと

もう少ししたら始めます

危うく寝るとこだった……

んじゃ、始めます




『……金銭の問題でも、あなたにどうにかできることでもないんです』

『病気の完治の芽があるとすれば、それは……心臓の移植しかないんですよ』


京太郎「はは……本当に、俺にできることってないんだな」

京太郎「カピの時で慣れたつもりだったんだけどな……」ドンッ


「おい、兄ちゃん。ぶつかったっちゅーのに挨拶もなしか?」


京太郎「ああ……悪いね」

「誠意、足らんとちゃうか?」

京太郎「なんだよ……金欲しいなら最初からそう言えよな」

「なに言うとんのや。わいは金なんてせびらん。あくまで兄ちゃんから渡してくるんや」

京太郎「……チッ、小悪党が」

「あぁ? 今なんつった!?」



「そこまでにしとけよ」


「邪魔すんなや! 今はこのボケと――」

「いいから、黙って、引け」グイッ

「――っ、あんたは」

「上の方にもよろしく言っといてくれ」

「……しゃあないわな。入院はごめんや」


「おい、もう行ったぞ」

京太郎「ああ……助かったよ」

「えらく不景気なツラだな。パチスロでスったか?」

京太郎「俺に構うのはよして……リュージ?」

リュージ「なんだよ、気づいてなかったのか」





リュージ「コーヒーでいいか?」

京太郎「できればスポドリがいい」

リュージ「はっ、奢ってもらう上にリクエストってか」ガコン


リュージ「ほらよ」

京太郎「……ちゃんと聞き入れてくれるお前もたいがいだな」

リュージ「そんな死人みたいなツラされたらな」

京太郎「……」

リュージ「……恋人に、なにかあったのか?」

京太郎「もうダメだって言われたよ」

リュージ「……無神経だったな」

京太郎「いい。別に何かが変わるわけじゃない」

リュージ「もう危ないのか?」

京太郎「いいや、そうは言われてない」

リュージ「なら、できることもあるだろうさ」

京太郎「わかんねぇよ……どうすればいい?」

リュージ「そんなの、俺にわかるわけないだろ」

京太郎「……だよな」

リュージ「噛み付く気力もなしか……仕方ねぇな」



リュージ「ほら」

京太郎「あん?」

リュージ「番号ぐらい交換しても、損はないだろ?」

京太郎「ナンパかよ。気持ち悪いな」

リュージ「言ってろ」


リュージ「ったく……休みの日に辛気臭いツラ見せんなよな」

京太郎「休み? そうだったっけ」

リュージ「おいおい、そこまでかよ……お前もう帰って休んどけ」





京太郎「……できること、か」

京太郎「こんなにも心が折れそうなのに、なにしろって言うんだよ……」


――ピンポーン


京太郎(こんな時間に……)

京太郎(面倒だし、居留守だな)

京太郎(……今はまともに対応できなさそうだし)


――ガチャ


京太郎「……あん?」

寝落ちを繰り返す今日この頃

もうちょっとしたら始めます

まだ寝てないのに……

んじゃ、スタートします



京太郎(カギを開けられた?)

京太郎(待て、合鍵を持ってる奴なんて――)


竜華「あ、やっぱり居留守してた!」


京太郎「お前、どうして」

竜華「結構前に、怜から秘密の合鍵だって渡されて」

京太郎「あいつ、人の家の鍵を勝手に」

竜華「……それだけ、須賀くんのことが心配ってことやん」

京太郎「……」

竜華「ご飯食べた?」

京太郎「食欲、わかなくてさ」

竜華「じゃあ待っとって。材料買うてきたから、台所借りるな」





京太郎「ごちそうさま」

竜華「完食やん。お腹すいとったんやね」

京太郎「それか、コックの腕が良かったのかもな」

竜華「おだてたってなにも出ぇへんからね?」

京太郎「そりゃ残念」

竜華「洗い物するから、テレビでも見ててなー」

京太郎「……どうして、来たんだよ」

竜華「須賀くん、まいっとるんやないかなって」

京太郎「お前もそうだろ」

竜華「うん、だから……どない辛いかわかる」

京太郎「……」


竜華「さ、湿っぽい話は終わり終わり。食器片付けたらお茶入れるから」

京太郎「手伝うよ」

竜華「ええから座ってて」

京太郎「客に全部やらせるのはさすがにな。ま、今更だけど」

竜華「ふふ、ホンマにな」





竜華「それじゃあ、うちそろそろ帰るな」

京太郎「ありがとな」

竜華「少しは元気出た?」

京太郎「ああ、食べた飯の分は」

竜華「それなら作った甲斐あるわぁ」

京太郎「……」ガシッ

竜華「……え? 須賀くん?」

京太郎「悪い、もう少しいてくれないか? 今は一人になるのが、怖いんだ」

竜華「……うん」





竜華(はっきり言うと、それは未練でした)

竜華(もう大分前に終わったと思っていた初恋の火は、未だに燻っていて)

竜華(それを自覚した頃には、もう手遅れで)


竜華「今だけでええから、竜華って呼んで……?」

京太郎「ああ……竜華」

竜華「京くん……京くん京くんっ」


竜華(うちと、須賀くんは……)





竜華「――」スゥスゥ


京太郎「なにやってんだ、俺は……」


京太郎(ずっと長い間ご無沙汰だったってのはある)

京太郎(不安で不安で誰かに傍にいて欲しかったってのもそうだ)

京太郎(だけど……こんなのあいつに対する裏切りじゃねぇかよ)


竜華「ん、んん……あれ、知らん天井」

京太郎「清水谷……」

竜華「須賀くん……?」

京太郎「昨日の夜は、すまなかった」

竜華「ああ、そか……うち、須賀くんと」

京太郎「俺は、自分の不安を紛らわすために、お前を……」

竜華「……うん、せやったらお互い様」


竜華「昨日の夜のことは、ただの夢……それでええやんな?」

京太郎「……お前がそう言ってくれるなら」


京太郎(……なんて言ったが、割り切ることはできそうにない)

京太郎(あいつへの罪悪感が、突き刺さったままだからだ)





怜「むぅ、なんか今日は不景気顔」

京太郎「世相ってのが顔に出ちゃうタイプなんだ」

怜「なんやそれ新しい」

京太郎「ここで名言……人の顔は世相を映す鏡である」

怜「んー、自分で名言とかないわぁ。座布団没収」

京太郎「くっ……どうせ椅子だから痛くも痒くもないけどなっ」

怜「じゃあ椅子没収」

京太郎「おいおい、お上の横暴にはさすがの農民も黙っちゃいないぜ?」

怜「せやったらお城に招待やで」ポンポン

京太郎「お邪魔しますよー」

怜「農民ちょろっ」

京太郎「農民たるものお上の暮らしに憧れ抱いてるんだよ」

怜「しかしここでトラップカード発動!」

京太郎「罠だったのかよっ」

怜「毒を盛られて身動き取れへん農民は、あわれ城主の抱き枕に……!」

京太郎「なんだ、そんな罠だったら――」


『今だけでええから、竜華って呼んで……?』



京太郎「――っ」ビクッ

怜「え……どないしたん? 手と手が触れても恥ずかしい年頃?」

京太郎「悪い、実は下痢してて」

怜「うーわー」

京太郎「実はいつ切り出そうか迷ってたんだけど」

怜「もうええから、はよトイレ行かんかい」

京太郎「アイルビーバック!」


怜「はぁ……まぁ、しゃあないわな」





怜「っちゅーことがさっきあって」

竜華「あー……」

怜「一瞬また顔出したら、すぐ帰ってもうたし」

竜華「そればっかりは、須賀くんも仕事あるから」

怜「いちゃいちゃできんかった分、竜華の膝枕で埋め合わせてや」

竜華「はいはい、どうぞ」ポンポン

怜「あー、これやこれ」


怜「竜華が主治医やったら、きっと毎日が膝枕やな」

竜華「それで良くなったら万々歳なんやけど」

怜「これやったら京太郎もきっとイチコロやん」

竜華「あはは……うち、一回振られてもうたし」

怜「合い鍵、有効活用しとる?」

竜華「正直あんま使っとらんなぁ」

怜「ほほう、一度は使ったと?」

竜華「……怜、須賀くんとうちはなんにも――」

怜「あらへん、とは言わへんよね?」

竜華「――っ」

怜「……竜華、正直すぎとちゃう?」

竜華「……ごめん」

怜「まぁ、京太郎も不景気なツラしとったし……触ろうとしたら逃げたし」



怜「せやけど……よかったぁ」


竜華「……え?」

怜「これなら、うちがいなくなっても安心やなって」

竜華「なんで、そない……」

怜「みんなわかりやすすぎやねん。お母さんは妙に優しいし」

竜華「ううん、まだ……まだわからへんからっ」

怜「……ありがとう」

竜華「お礼なんてええから!」

怜「せやけど……うん、竜華なら京太郎のこと頼めるし、京太郎なら竜華のこと任せられる」

竜華「なんでそない……諦めたようなこと、言うん……?」ポロポロ

怜「……実を言うと、もう未来が視えへん」


怜「せやから、お先真っ暗なんやなーって……あはは」


ご飯のあとにこんばんはー

今日は夜勤があるので今のうちにちょっと進めとこうと思います




京太郎「はぁ……」

リュージ「今日はため息か。最近はなにかと暗いな」

京太郎「色々あるからな」

リュージ「……やっぱり悪いのか?」

京太郎「それはそうなんだけど……実は、浮気しちゃったんだよ」

リュージ「お前……冗談か?」

京太郎「それならため息も出てねぇよ……」

リュージ「バカじゃねぇのか?」

京太郎「いっそ死にたい……」

リュージ「そう言うなって。同じバカ野郎がここにもいる」

京太郎「お前も?」

リュージ「まぁ、今はそんな相手いないけどな」

京太郎「おい浮気野郎」

リュージ「てめぇが言うな!」


リュージ「……でも、あれだ。そのぐらいの間違い、みんなやらかしてるんだよ」

京太郎「お前さ、もしかして元気づけようとしてくれてたりするのか?」

リュージ「勝手に言ってろよ」





京太郎「みんなやらかしてる、か」


京太郎(だからって、許されるわけじゃないよな……)

京太郎(なら、やることは一つか)

京太郎(間違えたなら、正さないとな)

京太郎(……悪い、清水谷)コンコン


『はーい、どうぞー』


京太郎「おはよう、よく寝られたか?」

怜「もうバッチリ」

京太郎「そうか……話あるんだけど、いいか?」

怜「なに? 竜華と浮気したって話?」

京太郎「そうなんだ……って、知ってたのかよ!」

怜「昨日本人から聞いて」

京太郎「あ、ああ……先越されたな」



京太郎「ごめん……謝って済む問題じゃないけど」

怜「まぁ、別にええんやない?」

京太郎「お前、軽すぎだろ……」

怜「これが他の誰かなら許さへんけど」


怜「それに……もう死ぬ人間が出しゃばっても、ろくなことあらへんよ」


京太郎「……今なんつった?」

怜「隠そうとせんでもええよ。もう知っとるから」

京太郎「……気をつけてたんだけどな」

怜「せやから、うちのことは気にせぇへんように。存分竜華といちゃいちゃしてやー」

京太郎「……ダメだ」



京太郎「お前がそう言ってるのは、諦めてるからだろ」

京太郎「怒って突き放されるならいい。浮気者って詰られるのも納得がいく」

京太郎「でも、諦めたからって許されるのは、認められない」

京太郎「お前の親友に手を出したクズだけど……お前のことが好きなんだよ」

京太郎「だから、諦めを抜いたお前の本音が聞きたい」


怜「……またきっついことを」

京太郎「言いたくないか?」

怜「別に、さっきのが本音やし」

京太郎「そうか……わかった」





竜華「……これからどんな顔して合えばええんやろ」

竜華「怜と……須賀くんにも」

竜華「あ~! 全然仕事に手ぇつかんわぁ」


京太郎「清水谷!」


竜華「ひゃいっ」

京太郎「俺は決めたぞ」

竜華「な、なにを?」

京太郎「あいつの病気を治す」

竜華「……本気なん?」

京太郎「当たり前だろ」

竜華「どれだけ難しいか、わからへんわけやないよね?」

京太郎「それでもだよ。だから、力貸してくれ」

竜華「……須賀くんは、まだ諦めてないんやな」

京太郎「もう鬱々してるのには飽きたしな」

竜華「うん……わかった」





京太郎「まず第一に、あいつの病気を治すには移植しかないんだな?」

竜華「この数年、色々と処置を施してみたんやけど、どれも決定打にはならずや」

京太郎「たしか、手術も一回したよな」

竜華「せやけどすぐ再発した」

京太郎「……病気がわからないってわけでもないんだよな?」

竜華「うん……うちも色々な論文読んで調べてみたけど……治療法に関してはまだわからへん事も多いみたいで」

京太郎「今の投薬は効いてないんだったか」

竜華「軽いのなら、それで良くなってくはずなんやけど……」

京太郎「あいつのは特別重いやつだってか……」

竜華「……うん」

京太郎「……じゃあ、まずあれからいってみるか」

竜華「どないするん?」

京太郎「コネを使う」





透華『まったく……久しぶりに連絡してきたかと思えば』

京太郎「なぁ、頼むよ。とりあえず一回診てくれるだけでいいからさ」

透華『あなた、もう少し頼み方というものがあるのではなくて?』

京太郎「悪い、ふざけてる時間も惜しいんだ」

透華『ふぅ……わかりましたわ。最高のスタッフをそちらへ向かわせます』

京太郎「サンキューな!」

透華『お礼を言うぐらいなら、たまにはこちらへ帰ってきなさいな』





竜華「どうやった?」

京太郎「最高のスタッフを送ってくれるってよ」

竜華「あの龍門渕の……須賀くんて、もしかして人脈すごない?」

京太郎「やばいやつなら知り合いにたくさんいるって言ったろ?」

竜華「なんか、どうにかなりそうな気ぃしてきた」

京太郎「その調子だ」


竜華(せやけど、世界的にも有名な龍門渕でもダメやったら……)


京太郎「そういえば、こっちに来るってことは病院の設備を使うってことだよな? 病院的にそれ大丈夫なのか?」

竜華「うーん……ここも龍門渕グループの病院やから、多分」

京太郎「マジか、初めて知ったぞおい」





怜「ほぉほぉ、あの龍門渕が」

京太郎「最高のスタッフを連れてくるってよ」

怜「ドクターK? それともX? もしくはBJか、意表をついてお家とか?」

京太郎「どいつもこいつもフィクションじゃねぇか」

怜「それぐらいのインパクトがあるとええなってことやん」

京太郎「インパクトはないけど腕は最高峰だ」

怜「せやろか?」

京太郎「そうなんだよ」

怜「遭難?」

京太郎「病院で遭難ってありえないぐらい珍事だな」

怜「ところで、あれってそうなん?」

京太郎「だから遭難ネタはもういいっての」

怜「や、あそこのヘリ。龍門渕っぽいマーク」

京太郎「んー?」



『おーほっほっほ!』


京太郎「……うわぁ」

怜「どしたん?」

京太郎「ちょっと幻聴」


京太郎(まさか自ら乗り込んでくるってことはないよな?)


怜「そういえば、この病院ってヘリポートあったん?」

京太郎「……どうだったっけ?」





透華「着陸しますわよ!」

ハギヨシ「お嬢様、この病院にはヘリポートがないようです」

透華「んなっ、我がグループの経営する病院がなんたることですのっ!」

ハギヨシ「直近の着陸可能ポイントへ向かいます」

透華「ぐぬぬ……ヘリでインパクト満点な登場をするつもりが……!」



怜「あ、なんか向こうに飛んでいった」

京太郎「やっぱヘリポートなかったんだな」





透華「来ましたわ!」

京太郎「なんでお前が来ちゃったんだよ……」

透華「当然ですわ。話を受けた当人がいないのはおかしいでしょう?」

京太郎「なんにしても、来てくれてありがとな」

透華「……ふんっ」


透華「それで、あなたが……清水谷竜華さんですわね?」

竜華「はじめまして……怜をよろしくお願いします」ペコッ

透華「ええ、もちろんですわ。しかし、これだけは言っておかなければなりません」

竜華「……」

透華「医者であるあなたならばわかっているとは思いますが……絶対に治るという保障はありませんわ」

竜華「それでも……少しでも可能性があるのなら」

透華「……結構」





京太郎「いやぁ、久しぶりに長野にいた時のこと思い出したよ」

竜華「執事さんと話しとったけど、友達だったん?」

京太郎「色々お世話になった人だよ」

竜華「須賀くんがお世話に? なんか新鮮」

京太郎「そうでもないよ。今だって色んな人の世話になってる」

竜華「そうなん?」

京太郎「飯作ってもらったりとかな」

竜華「……」


竜華(ただの夢……そう言ったのは自分自身)

竜華(せやけど、あの夜のことを忘れることなんてできなくて……)

竜華(うちの頭によぎったのは――)



京太郎「清水谷?」

竜華「――な、なに?」

京太郎「疲れてるのか?」

竜華「あー……ちょい寝不足かも。色々調べ物してたし」

京太郎「ありがとうな、あいつのために」

竜華「ううん、うちも諦められへんし」


竜華(その言葉にはどこか空虚な響きがあって)

竜華(ホンマに諦めきれへんのは、なんなのか)


『――彼の隣に、誰もいなくなれば』


竜華(あの時よぎった言葉は、それをなによりも示していて)

竜華(せやから……きっと、天罰が下ったんやと思います)





怜「そかー……ダメやったかぁ」

竜華「ごめん……変に期待させて」

怜「まぁ、だれもうちの病気にはかなわんっちゅー話やな。マジ強」

竜華「ごめん、ごめん……」

怜「せやからもうええっちゅーねん」

竜華「だって、うち……」

怜「……竜華が泣いとるの、見る方が辛いわ」

竜華「ま、待っとって……今泣き止むから」ゴシゴシ


竜華「……うぅ」グスッ


竜華「ごめん、無理ぃ……」

怜「しゃあないなぁ……ほら、うちのふとももで思う存分泣くとええで」ポンポn

竜華「怜がおかしくなったぁ!」

怜「なんでやねん」





京太郎「……うまくいかないもんだな」

竜華「……うん」

京太郎「龍門渕でも、もう移植しかないって?」

竜華「それが見つかるか見つからへんかは……」

京太郎「運次第、か」

竜華「うちのせいやろか」

京太郎「だれのせいでもない。でも、もしあいつが運悪くこの病気にかかったなら……」


京太郎(それは、俺のせいなのかもしれない)


京太郎「でもまだだ。まだ見つからないって決まったわけじゃない」

竜華「うん……」





京太郎(だけど、見つからないまま時は過ぎ)

京太郎(決定的な一言が告げられた)



「もって、あと半年でしょう」

京太郎「……冗談じゃない、ですよね」

「……残念ながら」

京太郎「そう、ですか……」



京太郎(清水谷も、怜の両親も泣いていた)

京太郎(それでも俺は泣けなかった)

京太郎(泣いてしまったら、その事実を容認してしまうような気がして)

京太郎(無性に怜に会いたくなった)

京太郎(まだそこにいることを、抱きしめて確認したかった)


というわけで、中途半端だけど仕事に行ってきます

前回よりは短いとか言ったけど、あれは嘘です
最長記録更新します

それじゃ

こんばんはー

今日で終わるかどうか……

もうちょっとしたら始めます

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