京太郎「俺が三年生?」淡「えへへ、だーい好き!」 (1000)

まず注意書き

・このスレは京太郎主人公の安価スレです

・いわゆる設定改変してるので上記の内容も含めて苦手な方は注意

・安価ですがバトルや成長要素はありません でも好感度はあるかも

・息抜き用のスレなので結構適当です




過去スレ

京太郎「俺が三年生?」久「私が幼馴染じゃ不満?」
京太郎「俺が三年生?」久「私が幼馴染じゃ不満?」 - SSまとめ速報
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京太郎「俺が三年生?」照「私が幼馴染……二番目だけど」
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京太郎「俺が三年生?」咲「私だって幼馴染だもん……一応」
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京太郎「俺が三年生?」小蒔「初めては私です!」
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エピソードを時系列順にまとめたwiki
http://www62.atwiki.jp/kyo3nen/

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1483456545

こんばんはー
急な夜勤が入ったので今日はできません!
でも明日の午前中にやるかも

前スレ1000は……まぁ、できないこともないですかね?
どうせ書きながら投稿ですので

そういうわけで、じゃ

こんばんはー
昨日のリベンジっということでやります

んじゃ、もうちょっとしたら

それじゃあ、そろそろ始めます



・三年、冬、妥協と逃避と忍従と


初美「……はふぅ」

霞「あら、ため息なんて珍しい」

初美「だれが悩み事もない能天気ですかー?」

霞「そこまでは言ってないでしょ?」

初美「なんというか、そういう思いがひしひしと」

霞「ありません」

初美「ぶー、霞ちゃんはノリが悪すぎなのですよ」

霞「はいはい。ただ、みんな心配しちゃうじゃない」

初美「うーん、ムードメーカーたる私がこれじゃ、やっぱりいけませんか」

霞「うん、小蒔ちゃんだってね」

初美「もう、姫様第一すぎますね」

霞「そう言わないの」

初美「わかってますよーだ」





春「……ふぅ」ポリポリ

巴「食べながらため息なんて器用だね」

春「それほどでも……あ、もうない」ガサゴソ

巴「一日ひと袋だっけ?」

春「……姉さんが余計なことを言わなければ」

巴「あはは、戒能さんだって心配してくれてるんだと思うよ?」

春「ううん、姉さんは外道。悪魔を召喚したりするし」

巴「黒糖が食べられないのがため息の原因かな?」

春「……違うけど」

巴「姫様も心配してるから、はるるのこと」

春「それは……もうしわけない」

巴「あ、ごめんね。ただ本当に心配だっただけだから」

春「うん、わかってる」





初美「やっぱり、どうにかしないといけませんねー」

春「どうにかしないとなぁ」


「「ん?」」


初美「はるるは悩み事ですかー?」

春「はっちゃんこそ」

初美「ここは年長者の胸を貸すのですよ」

春「胸?」タユン

初美「うぐっ」


初美「ともかく、なにかお悩みなら私におまかせあれ! なのですよ」

春「その言い回しだとうまくいかなそう」

初美「なぜに!?」

春「あと、人の持ちネタを奪うのもどうかと思う」

初美「話が見えないのですよっ」



春「それではっちゃんの悩み事のことだけど」

初美「なんで私のことにシフトしているですか」

春「困ったときはお互い様」

初美「なるほど、一理ありますねー」

春「一理どころか千理ある」

初美「中途半端だから万理にしときましょうか」

春「また話が逸れた……はっちゃんはすぐふざけるから」

初美「逸れる原因は大体はるるなのですよ」


初美「そもそも、はるるには年上に対する敬意がちょーっと足りないと思いますねー」

春「大丈夫、そこらへんは霞さんに対するはっちゃんの態度を参考にしてる」

初美「霞ちゃんは同い年!」



春「敬意と言われても、どこを改善すればいいのかいまいち」

初美「うーん、わかりやすく呼び方とか?」

春「呼び方?」

初美「なにせ、私だけちゃん付けですからねー。ためしにさんを付けてみるのですよ」

春「しかたないなぁ……」


春「えーっと……はっさん?」


初美「いや、なんで名前を略しちゃうのですか」

春「私なりに親しみを込めて……ハッサン」

初美「ほら、やっぱり正拳突きをしそうな響きになっちゃったじゃないですか!」





初美「話がまったく進まないのですよ」

春「ハッサンが敬意がどうとか言い出すから」

初美「もうはっちゃんでいいのですよ」

春「そう?」

初美「やっぱりそのままのはるるが一番なのですよ」ウンウン

春「あれこれ文句をつけといて」

初美「さ、お話を戻しますよー」


初美「それでは、ぶっちゃけちゃうのですよ」

春「はぁ……というか、多分似たような内容だし。どうせあの人のこと」

初美「まさか、はるるも一緒にお風呂に……!?」

春「お風呂?」

初美「なーんだ、まだなのですか」フフン

春「……なんで勝ち誇ってるの?」

初美「いえー? 彼も私の魅力に気づいちゃったみたいですからねー」

春「……」イラッ



春「私は(黒糖を挟んで)キスした」


初美「なんですとっ!?」

春「お風呂なんてレベルは超越してるし」

初美「ぐ、ぐぬぬ……!」


春(というか、なんで張り合ってるんだろう)

春(……軌道修正しよ)


春「争いは無意味。私たちには共通の敵がいる」

初美「共通の敵……」

春「さしあたっては、あの人を篭絡する」

初美「姫様のために、ですか」

春「うん」


初美(はるるも素直じゃないのですよ)

初美(しょうがないですねぇ、ここは私が導いてあげないといけないのですよ)

初美(……事の真偽の確認も含めて)



小蒔「春に初美ちゃん?」


春「あ、姫様」

小蒔「二人とも、なにかお悩みがあるのなら是非私に相談してください!」

初美「ふーむ……実は私たち、自分の実力に不安があって」

小蒔「そんな、私は十分すぎると思いますっ」

春「姫様は優しい」

初美「だからこそ甘えるわけにはいかないのですよ」

小蒔「初美ちゃん……」


初美「というわけで、ちょっと修行に行ってきますね!」


初美「ほら、はるるも行きますよー」ガシッ

春「えっ」

小蒔「ちょっと寂しくなっちゃいますけど……頑張ってください、応援してますから!」





小蒔「行ってらっしゃ~い」フリフリ


霞「誰かが出かけたの?」

小蒔「はい、初美ちゃんと春が修行に」

霞「あの二人が?」

小蒔「とってもやる気がありました!」

霞「うーん……」


霞(初美ちゃんはともかく、春ちゃんは長くなるようなら戻ってこさせたほうがいいかしら?)

霞(来月の頭には試験があったと思うし)

霞(そもそも、いきなり真面目に修行だなんて言い出すこと自体おかしいのだけれど)

霞(せめて、二人の様子が把握できれば……)


良子「グッモーニン」


小蒔「あ、良子さん。おはようございます」

霞「ちょうどいいところに」

良子「むっ、これはバッドな予感……グッバイ」クルッ

霞「まぁまぁ、せっかくいらしたのですから」ガシッ

良子「くっ、エスケープ失敗……!」





良子「話はわかりました」

霞「では、なにとぞお願いいたします」

良子「オーケイ、二人の様子を探ればいいんですね?」

霞「ありがとうございます」

良子「それでは、今から準備に取り掛かりましょうか」

霞「準備、ですか?」

良子「ペイと言い方を変えましょうか」

霞「つまり、見返りということでしょうか?」

良子「ええ、ちょうどショッピングの相手がほしかったので。春がいれば誘おうと思っていたのですが」

霞「……わかりました、この身を捧げましょう」

良子「うーん、これではまるで私がヒールですね」





初美「ごめんくださーい」ピンポーン

春「くださーい」


「あら、今度は二人?」


初美「今日も遊びに……ではなくて、説得に来たのですよ」

「ちょうど暇だったし、入って入って」

春「お邪魔します」


「あ、そうだ。せっかくだし、あの子に顔見せてあげてもらえる?」


初美「あの子……はい、わかったのですよ」

春「黒糖、お供えします」

「うん……ありがとう、二人とも」





春「ところで、あの人は?」

「京太郎はお勉強しに外出しちゃってるの」

初美「うーん、またしてもですか」

春「本当に受験するんだ」

「あなたたちはしないの?」

初美「姫様がするならそれに合わせてすることになりそうですけど、そのつもりはないみたいですねー」

春「姫様は勉強というより花嫁修業に力を入れてるから」

「ふーん、姫様がねぇ」


(進学とかそこらへんは緩くなってるみたいね……)


初美「というわけで、私とはるるが京太郎さんの説得に来たのですよ」

春「それとリベンジ」

「リベンジ?」

春「色々としてやられてるから、そのお返しに」

「ごめんなさいね、あの子はデリカシーがないから」

春「あの人には本当に……」


春(できれば、今度は口移しで……)



「そういえば春ちゃんって、いつもあの人って呼んでるの?」

春「そうですけど」

初美「たしかに、ちょっと親しみが足りないのですよ」

「気軽に京太郎くん、なんて呼んじゃってもいいのよ?」

春「それは……そんな風に男の人を呼んだことがないし」

初美「えらーい人には大抵名字に様付けですからねー」

「あーわかるわかる。あそこにいたら出会いの機会もないのよねぇ」

春「……ふぅ」


春(良かった、話がそれてくれた)



初美「ならさん付けでFAなのですよ」

春「……すぐ戻ってきた」

初美「はるる的にはどう思います?」

春「それはなんかイヤ」

初美「わがままですか」

「んー……あ、わかっちゃった。呼び捨てにしたいのね」

春「……」

初美「呼び捨てですかー、わたし的にもその方が呼びやすいですけど……あ、なるほどなるほど」

春「そんな呼び方したら、姫様に悪いような気がするから」

「姫様ねぇ……」


(この子達も京太郎のことが好きなのは見え見えだけど、やっぱりどこかしら遠慮はしてるみたいね)

(うーん、もはや部外者の私が口出しするのもね……)





霞「あの、この格好は……」

良子「うん、中々グッドですね」

霞「戒能さん?」

良子「文句は聞きませんよ。ショッピングに付き合うということを承諾したのですから」

霞「それは構わないのですが……私が着せ替えられるというのは」

良子「ノープロブレムですよ、似合ってます」グッ

霞「サムズアップされても……」

良子「ああ、ここは私がトリートしますので」

霞「そういう問題でもありませんっ」

良子「それでは、次に行きましょうか」

霞「……我慢よ、力を貸してもらうんですから」


良子(こういうのも悪くありませんね)

良子(いつも私を連れ回そうとするはやりさんの気持ちがわかるような気がします)





良子「さて、そろそろ神境に帰りましょうか」

霞「……ふぅ」

良子「おや? お疲れのようですね」

霞「ええ、おかげさまで……あの件はよろしくお願いしますね」

良子「それなら……ふむ、二人は長野にいるようですね」

霞「早いですね、もしかして事前に?」

良子「イグザクトリー。出かける前に放っておきました」

霞「それならもっと早く……いえ、なんでもありません」


霞(それにしても、長野……あの子達、まさか)


霞「戻ってくるよう伝えることはできますか?」

良子「実は、私もこれから長野に向かう予定でして」

霞「それなら御手数ですが――」

良子「ええ、行きましょう」ガシッ

霞「はい?」



良子「あなたを送り届けるくらいなら、ピースオブケイクですね」

霞「あの、そういうことではなく」

良子「ああ、道中のエクスペンスも私持ちですよ」

霞「そういうことでもなくてですね」

良子「姫様になら今さっき連絡しておきました。ノープロブレムです」

霞「いつの間に……って、それも違いますっ」

良子「さぁ、行きましょう。早ければ早いほど良い、ですよ」グイグイ

霞「少しは人の話を……!」

良子「ふふ……」


良子(これは楽しいですね)





明星「姫様ー?」


小蒔「なんですか?」

明星「手紙が落ちてきました」

小蒔「不思議なこともあるんですねぇ」

明星「だれかが落としたんでしょうか?」

湧「こんな山の中でだれかが落としたって……しかも上から?」

巴「あの、誰宛か確認したほうが」

小蒔「そうですね! えっと……」


『姫様へ』



小蒔「姫様宛みたいですね。どこの姫様に送ったものなんでしょうか?」

湧「それってもしかしなくても姫様じゃ……」

巴「見せてください」

小蒔「どうぞ」

巴「……これ、戒能さんの字じゃありませんか?」

小蒔「言われてみれば……じゃあ、姫様は私のことですね」

明星「でも、今はお姉様と一緒にお買い物ですよね?」

湧「なにかあったのかな?」

小蒔「えーっと……初美ちゃんたちが心配だから、霞ちゃんもついていくことにしたみたいです」

明星「お姉様がいれば安心だと思うけど……」

湧「でも修行かぁ……初美さんたちでもまだ必要なんだね」

巴「大丈夫だよ、慌てることはないから」

小蒔「そうですね、私もまだまだ修行中ですし」

明星「一緒に頑張りましょうね」

湧「うん」

小蒔「それじゃ、まずはお昼ご飯の用意から始めましょうね」


巴(修行についていくのはいいんだけど……こっちに寄らずに行っちゃうなんて)

巴(はっちゃんたちが真面目に修行なんて言ってることも含めて、なんか変だな……)





京太郎「よぅし、終わり終わりー!」


京太郎「悪いな、付き合わせちゃって」

ゆみ「気にするな、蒲原のついでだ」

京太郎「んで、当の本人は死んでると」


智美「」


ゆみ「だが、そのおかげで今日の分は終わった」

京太郎「恐ろしいスパルタっぷりだったな……俺はテストやってるだけだったから良かったけど」

ゆみ「私の勉強も兼ねているんだ。人に教えるのには相当理解していないといけないからな」

京太郎「そうかぁ」


京太郎(もしかしたら、久ちゃんも裏で勉強してたりすんのかね)



智美「うぅ……ゆみちんの鬼」

京太郎「まぁ、これだけ言えれば大丈夫そうだな」

ゆみ「まったくだ。宿題を出しておこう」

智美「ひぃっ!」


京太郎「ところで、晩飯はどうすんだ?」

ゆみ「向こうでモモたちと約束してるが、君も来るか?」

京太郎「向こうかー、つーことは帰りが遅くなりそうだな」


京太郎「悪い、今日はおとなしく帰るわ」

ゆみ「そうか」

智美「どうしてもって言うなら私が車を出しても――」


「「それだけはやめろ」」


智美「わはは、息ピッタリじゃないか」

ゆみ「当たり前だ。お前の運転でどれだけ酷い目にあったことか」

京太郎「ましてや冬道走らせるとか怖すぎるわ」

智美「こ、これぐらいじゃへこたれないぞ……」





良子「では、わたしはこれで」

霞「あの、戒能さんは来ないのですか?」

良子「長野に着いてからまっすぐここにきましたからね。先にチェックインしてきます」

霞「……そうですか」

良子「それでは」


霞(こんな格好で彼の家に……着てた服は戒能さんに預かられたままだし)

霞(なんというか、その、勇気が……)


霞「ダメよ、しっかりしなきゃ。遊びに来たわけではないんだから」

霞「そう、ここに来たのは二人を連れ戻すため……彼がいようといまいと――」


「人の家の前でなにしてんだ?」





京太郎「まだ夕方は暗い……春は遠いか」

京太郎「早く雪なくなんねーかな」

京太郎「しかし、卒業したら今度は車の免許欲しいなぁ」

京太郎「まあ、その前に二次試験が待ってるんだけど」

京太郎「……さて、現実逃避は終わりにしよう」


「ダメよ、しっかりしなきゃ――」


京太郎(ん? 家の前にだれかが……あれってまさか、石戸か?)

京太郎(巫女服以外だと新鮮っていうか……あの格好は初めて見たな)


京太郎「人の家の前でなにしてんだ?」

霞「――っ!?」ビクン


京太郎「まさかそんなに驚かれるとは……とはいえ、久しぶり」

霞「あ……これはその、違うの」

京太郎「あん?」

霞「け、けしてあなたに会いに来たとかではなく……そう、ただ連れ戻しに来ただけでっ」

京太郎「んー、いいから落ち着け」ガシッ

霞「あっ……」

京太郎「落ち着いたか?」

霞「……ええ」





京太郎「つまり、薄墨と滝見を連れ戻しに来たと」

霞「少し勝手がすぎるから、ちゃんと言い聞かせないといけないわ」

京太郎「はは、まるっきり母親だな」

霞「老け込んでいるという意味かしら?」

京太郎「いいや、母性に溢れてるって意味」


京太郎(身体的特徴でもそうだしな)

京太郎(てか、コイツの胸で縦ニットのセーターは凶悪すぎる……)


京太郎「にしても、戒能さんは行っちゃったのか」

霞「スキーの時も思ったけれど、仲がいいのね」

京太郎「なんというかな、向こうも気安く声かけてくれるから付き合いやすいんだよ」

霞「そうなの?」

京太郎「ああ、一緒に滑ろうとかさ」

霞「じゃあ、彼女のことを意識してるわけではないのね?」

京太郎「特にそういう風に見たことはないけど……って、やけに突っ込んでくるな」

霞「なんのためかはわかるでしょう?」

京太郎「まぁ、な」



霞(これはあくまで小蒔ちゃんのため……それだけ)


京太郎「どうした、思いつめた顔して」

霞「そんな顔してないわ」

京太郎「まぁ、ならいいけどよ」

霞「……」


京太郎(なんとも説得力のない……こいつ、けっこうボロ出すよな)

京太郎(これは何気ない話題で方向転換だな)


京太郎「ところでその服、似合ってるな」

霞「……え?」

京太郎「そもそも私服自体あんま見たことないんだけど、なんかいつもと雰囲気違って良いと思う」

霞「あ……いえ、これは戒能さんが……」カァァ

京太郎「つっても着てるのは石戸だからな。素材の良さを生かしたコーディネートってやつ?」

霞「もうっ、いい加減にしてちょうだい!」

京太郎「はは、美人ってのは怒っても美人だな」

霞「~~~~~~っ」



霞(バカ、本当にバカ!)

霞(なにを喜んでいるの、私は……!)


京太郎「さて、そろそろ入ろうぜ。雪降ってきたし」

霞「……ええ、そうね」

京太郎「そういや、今日は泊まっていくのか?」

霞「いえ、そのつもりはないわ」

京太郎「ふーん……ま、茶の一杯ぐらいは飲んでけよ」


京太郎(さて、うちの母親を押しきれるかな?)





京太郎「ただいまー」


初美「おかえりなのですよ」

春「おかえりなさい」


京太郎「お、今度は二人か」

初美「今日という今日はギャフンと言わせてやるのですよ」

春「うん、日頃のお返し」

京太郎「はいはい、また後でな」


初美「おかしいのですよ」ヒソヒソ

春「反応が小さい」ヒソヒソ

初美「もう慣れちゃったんですかね?」ヒソヒソ

春「それはありそう」ヒソヒソ



京太郎「さて、いきなりで悪いけど紹介したい奴がいる」

初美「本当にいきなりですねー」

春「なに? 黒糖屋さん?」

京太郎「お前らもよく知ってるやつだ。入ってきてくれ」


霞「こんばんは、二人とも」


初美「げっ、霞ちゃん!?」

春「これは、予想外」

霞「修行に行くと聞いていたから見に来てみれば……」

初美「しゅ、修行はちゃんとするのですよ!」

春「うん、(花嫁修行も)ちゃんとした修行だから」

霞「お話は帰ってからたーっぷり聞かせてもらうわ」ニコッ

初美「ひっ」ビクッ

春「――っ」ビクッ



「あら、いらっしゃい」


霞「お久しぶりです」

「今日は来客が多いわねぇ」

霞「お騒がせして申し訳ありません。用が済んだらすぐに――」

「ささっ、入って。御飯は大勢の方がいいんだから!」グイグイ

霞「あ、えっ」


初美「さすがなのですよ!」

春「霞さんのペースが乱されてる」グッ


「お風呂も用意するから、ゆっくりしていってね」

霞「あの、ですから――」


京太郎(やっぱりこうなった……石戸も結構押しに弱いな)

京太郎(このままお泊りコースか……さて、今日の寝床はソファだな)


ネ・ムイ

とかいうエストポリス風

これの二倍以上行くだろうな……
とか思いながらおやすみなさい

日曜の昼過ぎにこんにちは
夜勤続きなんで今からやります

それじゃ、もうちょっとしたら

んじゃ、始めます




霞「二人とも、いいかしら?」


初美「なんですか、あらたまって」

春「もしかしてお説教?」

霞「それもあるけれど」

春「あるんだ……」

初美「そんなんだと今から小じわが増えちゃいますよー?」

霞「……初美ちゃんとはあとでじっくり話すからいいとして」

初美「そ、それは遠慮しておくのですよ」


霞「私が聞きたいのは、あなたたちの意図」

霞「彼に不必要に近づいて、何がしたいのかよ」



春「……」

初美「そうきましたかー……」

霞「あなたたちは直接相対していないけれど、小蒔ちゃんが一昨年の夏にどうなったのかは知っているでしょ?」

春「……うん」

霞「その原因も、結果も」

初美「もちろんなのですよ」

霞「じゃあ、言いたいこともわかるわね?」

春「……わかってる」


春「でも、やめない」

春「私はあの人に姫様を選んで欲しいから、そうなるように精一杯頑張るだけ」


霞「……あまり褒められた手段ではないと思うわ。初美ちゃんも考えは同じ?」

初美「私は……そこまで考えてないのですよ」


初美「ただ、一緒にいると楽しくって、ずっとそうしていられたら……そう思っているだけで」



霞「それは、それだけはダメよ。いつかきっと取り返しのつかないことになるわ」

初美「それを霞ちゃんが言うのですか?」

霞「どういう意味かしら」

初美「勝手に一人で抱え込んで、それでこの前のインハイでどうなったか……」

霞「あれは私の力量が足りなかったから……それだけよ。他に理由なんてないわ」

初美「ウソですね、バレバレなのですよ」

霞「ウソなんかじゃ……!」


春「ストップ」


春「やめて、ここで喧嘩してもなんにもならない」

霞「……少し気が立っていたみたい。ごめんなさい」

初美「私も……少し無神経すぎたのですよ」

霞「そんなこと、ないわ。だって、なんにもないのは本当なんだから」

初美「霞ちゃん……」





京太郎「部屋を占拠されちゃったよ……」

「あら、追い出されちゃったの?」

京太郎「三人で話したいことあるからって。石戸が説教でもしてんじゃないかな」

「損な役回りねぇ」

京太郎「だよなぁ」


「ただいまー」


「おかえりなさーい」

「靴多いけど、またお客さんか?」

「今日は三人も来たんだから」

「それは賑やかになるなぁ」


京太郎「なんだってうちの親は来る者拒まずなんだか……」


「お父さんも帰ってきたし、そろそろご飯にする?」

京太郎「はいはい、呼んできますよー」





『ウソですね、バレバレなのですよ』

『ウソなんかじゃ……!』


京太郎「……なんとも入りづらい雰囲気だな」

京太郎「人んちに来てまで喧嘩すんなと言いたいとこだけど……」

京太郎「あんま割り込みたくねぇな」

京太郎「うーん、じゃあやばそうになったらってことで」


『やめて、ここで喧嘩してもなんにもならない』


京太郎「今の、滝見か?」

京太郎「あいつが仲裁に入るとは……」

京太郎「まいったな、これじゃ格好つかないな」

京太郎「……さっさと入るか」ガチャ


京太郎「よっす、話は終わったか?」


霞「……」

初美「……」


京太郎(え、空気重……そこまで深刻だったとは)


春「なにかあった?」

京太郎「そろそろ飯だから」

春「わかった、すぐ降りるから」

京太郎「じゃ、そういうことで」





霞「……」

初美「……」

春「……」


「……おい、あの子達あんなに無口だったか?」

京太郎「滝見はもともとあんな感じだけど……」


京太郎(石戸はともかく、薄墨までだんまりとは……)


「うーん……」


(これ、どうにかしなきゃいけないわね……)





京太郎「ふぅ……雪かき終了」

京太郎「思ってたより積もってたな」


良子「グッドイブニング」


京太郎「またこっちで仕事ですか」

良子「ええ、先にチェックインを済ませてきました」

京太郎「正直、もうちょっと早く来て欲しかったな……」

良子「トラフィックジャムに巻き込まれてしまいまして……なにかありましたか?」

京太郎「大アリですよ。おかげでこうして雪かきに逃げてます」

良子「春たちがトラブルでも起こしましたか?」

京太郎「直接の被害は来てないですけどね、なんか三人で話してて揉めたみたいで」

良子「ふむ……それがまだ尾を引いているということですか。またレアケースですね」



春「あ、姉さん」


良子「春、ケンカしたというのは本当ですか?」

春「え、いきなりなに?」

良子「彼が困っていたようなので」

春「困ってた? ……それはごめんなさい」

京太郎「だったらさっさと仲直りしろ……ってわけにもいかないんだろうな」

春「うん……」

良子「それであなたもエスケープしてきたというわけですか」

春「おつかい頼まれたから」

京太郎「あー、お前だけ手伝わないで黒糖食ってたもんな」

良子「ほう?」

春「こ、黒糖は出されたものだから……それに、霞さんたちが進んで手伝いして私のやることがないだけ」

良子「まあいいでしょう。では、私は挨拶をしてきます」

春「今日は?」

良子「少ししたらホテルに戻ります」

春「なんだ、すぐ帰っちゃうんだ」

良子「私にクッション役を期待しても無駄ですよ」

春「バレてた」



京太郎(実は俺も戒能さんに何とかしてもらおうと思ってたんだけど)


春「じゃあ、行ってきます」

京太郎「待てよ、俺もついてく。母さんも多分そのつもりだろうし」

春「本当?」

京太郎「まぁな、時間おいたらほとぼり冷めてるかもしれないし」

春「……」ジトッ

京太郎「冗談だ。行こうぜ」





京太郎「そういや、何頼まれたんだ?」

春「デザート。私は黒糖だけでよかったんだけど」

京太郎「お前は主食も黒糖で良いとか言い出しそうだしな」

春「さすがにそれは栄養が偏る」

京太郎「それがわかってるとは……褒めてやろうか?」

春「バカにしてるでしょ」

京太郎「黒糖馬鹿なのは本当だろうが」

春「違う。ただ黒糖をこよなく愛してるだけ」

京太郎「物は言いようってな」


京太郎(こいつはいつもの調子が戻ってきたな……)

京太郎(しかし、やっぱりちょっとは聞いとくべきだよな)



京太郎「それでさ、俺に力になれることってあるか?」

春「荷物持ち」

京太郎「そっちじゃない。お前らの問題のことだよ」

春「……じゃあ、神境に来て」

京太郎「それで解決するのか?」

春「少なくとも、私のは」

京太郎「まぁ、行くだけなら別に構わないけど」

春「そうじゃなくて、姫様と契って」

京太郎「……待て、話が見えない」

春「そもそも、私やはっちゃんが度々来てるのも、そうしてほしいからだし」

京太郎「んー……」


京太郎(その割には好き放題なんだよな、こいつらは)


京太郎「悪いな、俺がまだはっきりしたこと言えてないから」

春「本当にそう。早く、姫様を選んで」

京太郎「小蒔のために言ってるのはわかるけど、そういうのはほかのやつにどうこう言われて決めることじゃないと思うんだよ」

春「……」



春(姫様のため? ……それだけじゃない)


春「お願い、私に出来ることならなんでもするから」

京太郎「そこまで言うか……」

春「あなたが望むなら……」グイッ


春「こういう、ことだって」ムニュ


京太郎「いや……ちょっと待てよ、お前はそれでいいのか?」

春「良いも悪いもない。それで姫様を選んでもらえるなら――」

京太郎「悪いけど、そいつは無理だ」

春「どうして? ……私に興味がないから?」

京太郎「違う。お前を選ぶから、小蒔を選べなくなる」

春「え……」

京太郎「やっぱ初めての相手は特別というか、まだそういうのに幻想があるというか……って何恥ずかしいこと言ってんだ」

春「……ごめん、なさい」

京太郎「カミングアウトに謝られても……」

春「ウソ、ついちゃったから」



春「姫様のためじゃない……だって姫様を選んでもらえれば、私も傍にいられるから」

春「選んでもらえなくても、一緒にいられるから」

春「それでいいかなって思ってたのに……もう、無理だよ」

春「仕返しだとか、ああいうのは全部建前」

春「だって、私は……姫様がどうでもよくなるぐらい、あなたのことが……」


京太郎「もういい、十分伝わったよ」

春「うん……」

京太郎「悪かったな、無理に聞き出すような形になって」

春「構わない。すっきりしたから」

京太郎「それならいいんだけどよ……ま、なんかしてほしいことあったら言ってくれ」

春「なんか今日は優しい」

京太郎「いっつもわりかし甘くしてると思うんだけどな」

春「私のこと、好きになっちゃった?」

京太郎「黒糖を食べてるとこは嫌いじゃないな」

春「本当? なら姉さん打倒に協力して」

京太郎「するかよ」

春「意地悪……じゃあ」



春「名前で呼んじゃ、ダメ?」


京太郎「名前? そんなの好きにしろよ。なんだかんだで結構な付き合いだろ」

春「なら……京太郎?」

京太郎「……呼び捨てか。敬意が足りないな、さんをつけてみろ」

春「やだ」

京太郎「ったく……まぁいいか。さっさとデザート買いに行くぞ――春」

春「あ……うんっ」





良子「いつも従姉妹の春がお世話になっています」

「いえいえ、なんだか娘が増えたみたいで楽しいですから」

良子「お礼と言ってはなんですが、これを」

「あら、気にしなくてもいいのに」

良子「あくまでこちらの気持ちですよ」

「そういうことなら受け取っちゃいましょうか」


良子「しかし、息子さんはすっげーストームの目ですね」

「戒能さんもそう思う?」

良子「動向次第でカタストロフも起こりえますよ」

「それならきっと大丈夫。今までもなんだかんだでなんとかしてきたらしいし」

良子「大したトラストですね」

「当面の心配は……刺されないかどうかかしら?」

良子「なるほど、たしかに」


良子「それでは、私はこれで」

「もう帰っちゃうの? 春ちゃんたちが帰ってくるの待ってたら?」

良子「春たちとは家の前で話しましたから。それに、明日は早いもので」

「わかりました。お仕事、頑張ってね」

良子「ええ、お邪魔しました」





霞「洗い物、終わりました」

「あら、ありがとう霞ちゃん」

霞「……戒能さんは?」

「帰っちゃったわ。明日は朝早いみたい」

霞「そうですか……」


初美「お風呂はピカピカになりましたよー」


「まあ、ありがとう初美ちゃん」

初美「私の手にかかればちょちょいのちょいですからねー」

霞「他になにかお手伝いできることはないでしょうか?」

初美「お掃除でも洗濯でもなんでもやっちゃうのですよ」

「それじゃあ、少しお話しましょうか」

初美「お話ですか?」

霞「あの、なにか至らない点が?」

「そういうことじゃないの。ちょっと昔話を聞いてもらいたいだけ」





「昔、山の中にお姫様がいてね。特に不自由なく、平和に暮らしていたの」

「数人の付き人と、たまに家族と。関わりあう人は少なかったけれど、その生活に満足していた」

「でもある日、山の外の男性と出会って恋をしてしまったの」

「それはいわゆる許されない恋で、二人は当然の如く引き裂かれたわ」

「お姫様は泣いて、泣いて……結局それを受け入れて」

「でも、お姫様の傍にいた付き人の一人は思ったの……どうしてここには自由がないんだろうって」

「それからその付き人にとってそこは窮屈なものに感じられて」

「そして山の外で出会った男性と恋に落ちて、そのまま外に行ってしまったの」



「……以上です。どうだった?」

霞「どう、と言われても……」

初美「少し、反応に困っちゃいますねー」

「お姫様について、どう思ったかしら?」

霞「……仕方のないことだと思います」

初美「でも、そんなに泣くぐらいだったら付き人さんみたいに外に出てしまえば良かったのですよ」

霞「そうは思わないわ。しきたりや決まりごとは守らないといけないものなのよ?」

初美「なら当人の気持ちはどうでもいいのですか?」

霞「……そうせざるをえないのなら」

「それじゃあ、山を出て行った付き人は?」

初美「駆け落ちというやつですねー、ちょっとロマンチックなのですよ」

霞「正直に言って、無責任だと思います」

初美「そうかもしれないですけど、やっぱり幸せになれるのならそれにこしたことはないのですよ」

霞「いいえ、そんなことはないわ」



霞(だって、そうじゃないと……)


「ごめんなさいね、変な話に付き合わせちゃって」

初美「いえいえ、中々に興味深いお話だったのですよ」

霞「ええ……色々と考えさせられました」

「そう? じゃあ霞ちゃん、ちょっとお布団出すの手伝ってもらってもいい?」

霞「はい、かまいません」

初美「私もお手伝いしますよー?」

「初美ちゃんはお風呂をためてくれる?」

初美「はーい」





「よいしょ……これで寝床は完璧ね」


「ごめんなさいね、手伝わせちゃって」

霞「自分たちの寝具ですから」

「ここはあの子の部屋だけど、自由に使っちゃってもかまわないから」

霞「京太郎さんの……」


霞(そういえば、匂いもなんだか……)


「ベッドは男の子臭いけど、我慢してね?」

霞「そ、それは……仕方ないことですから」


霞「それより、さっきの話はもしかして」

「恥ずかしながら、あなたたちの一代前のお話よ」

霞「やっぱり……じゃあ、あの付き人は」

「うん、そうなの」

霞「ごめんなさい、無思慮なことを言ってしまいました」

「気にすることないわ。無責任だったのは事実だし」

霞「それでも、私にはやっぱり……」



「……石戸家、神代に最も近い血筋……禍神を引き受ける身代わり」

「あなたが背負ったものは大きい、だからこそ自分に厳しくあろうとする姿勢も理解できる」

「それでも、あなたはまだ十八の女の子なのよ?」


霞「年齢の多寡は、お役目を全うする上での問題にはならないと思います」

「それは狭い世界にいたのなら……じゃない?」

霞「……」


霞「一度目は、疲れていたとはいえ制御を完全に誤りました」

霞「二度目は、なんとかギリギリ抑え込みました」

霞「だから、三度目はないんです。もう、あんなことには……」


「そう……」


(この子、予想以上に固いわ……)

(本音はふとした拍子に漏れ出てるのに、踏み込もうとしたらこの調子)

(少しでもガス抜きさせてあげられればと思ったんだけど)

(もっと時間がいるみたいね……)





京太郎「ただいまー」


初美「おかえりなのですよ。ご飯にします? お風呂にします? それとも――あいたっ」

京太郎「はいはい、ご飯はさっき食べましたよ」

初美「むー、様式美というやつなのですよ」

京太郎「そういうのはもうちょっと育ってから言えよ」

初美「……私が上に乗ったら大きくしたくせに」

京太郎「あんだけ刺激されりゃ……って、まぎらわしい言い方すんな」


春「なにそれ詳しく」ヒョコ


初美「はるるも一緒でしたか」

春「うん、一緒におつかい行ってくれた」

京太郎「最近はコンビニスイーツもバカにできないもんだ」

初美「わぁ、デザートですか。取られないうちにキープしておきましょうか」

京太郎「ここにインハイチャンプはいないから安心しろ」

春「どういう意味?」

京太郎「お前の同類だって意味だよ」



京太郎(そうだよ、黒糖食ってる姿が照ちゃんに似てるんだよな)


春「ん、京太郎の熱い視線を感じる」

京太郎「生温いの間違いだな。寒かったから熱さに敏感になってるんだろ」

春「冷えてるから暖めて」ピトッ

京太郎「はいはい、ストーブにあたろうな」


初美(んー?)


初美「お二人とも、なにかありましたか?」

京太郎「……特には」


春「……(告白)しちゃった」ポッ


初美「なんですと!?」

京太郎「省略はある意味日本の文化だけど時と場合を考えてっ」

春「(本心を)全部さらけ出しちゃった……」テレテレ

初美「そ、そんなまさか……」ワナワナ

京太郎「だから省略は用法用量を守ってだな――」

春「そういえば、上に乗られて大きくしてたって?」

京太郎「今更そこ戻るのかよ!?」





「デザート、買ってきてくれてありがとうね」

春「お邪魔させてもらってますから」

「ふふ……ね、なにかいいことあった?」

春「……」コク

「そう。あまり偉そうなことは言えないけれど、大事にしてね」


「さ、そろそろお風呂にしましょうか」


京太郎「俺は後でいいや。その方がトラブらないと思うし」

霞「一番風呂はさすがに……」

「あらそう? じゃあ春ちゃんと初美ちゃん、一緒に入らない?」

春「うん」

初美「んー、じゃあ私も後で入るのですよ。三人だとさすがに窮屈だといいますか」

「じゃあ私と春ちゃん、初美ちゃんと霞ちゃん、それから京太郎とお父さんね」

京太郎「ちょっと待った。なんで親父とペアなんだよ」

「あ、ごめんなさい。やっぱり女の子と一緒が良かった?」

京太郎「無理にペア組む必要あるかってことだって!」





京太郎「さて……風呂の時間まで自由にしてようかな」

京太郎「うん、今日はテストもやったし許されるはずだ」


初美「またお勉強の話なのですか?」


京太郎「たまには休んでもいいんじゃないかってお話だよ」

初美「なるほど、その調子で受験はやめちゃうといいのですよ」

京太郎「またそれか。もうすぐだし、ここまで来たら最後までやるっての」

初美「むー、強情ですねー」

京太郎「それより、もうケンカは大丈夫なんだろうな?」

初美「ケンカなんてしてないのですよ」

京太郎「ま、それならそれでいいけどよ……そういや石戸は?」

初美「お部屋ですね」

京太郎「ふーん」


京太郎(三人の中じゃ一番引きずってるってことか?)

京太郎(まぁ、そんな感じはするよな)



初美「そういえば、はるると外でいかがわしいことをしてたとか」

京太郎「お前も蒸し返してくるか……やましいことはしてないっての」

初美「天地神明に誓って?」

京太郎「はいはい、誓う誓う。でもまぁ、本音を聞けてよかったとは思うよ」

初美「……本音、ですか」


初美(そういえば、名前で呼んでましたね)


京太郎「で、お前はなんか言いたいことがあったりするか?」

初美「よく、わからないのですよ」


初美「ただ……自分の思う通りにして、無責任に逃げた人がいて、その人のことをどう思いますか?」



京太郎「さぁな……逃げるってことも時には必要だしな」

初美「そう思いますか?」

京太郎「ただなぁ、大抵の場合は後になってまた直面するもんなんだよ」

初美「……」

京太郎「死ぬほど逃げ出したくても、結局は逃げられなかったりな」

初美「そんなこと、わかっているのですよ」


初美「でも、あなたといるのは楽しくて、もっと傍に寄りたくて」

初美「それがいつか抑えきれなくなるのなんてわかってて」

初美「姫様に悪いから、姫様に悪いから、なんて考えてたらだれかさんみたいになるのは目に見えてて」

初美「じゃあ、なにも考えずにしていれば、今だけ楽しければって」

初美「それって、そんなにいけないことなのですか?」


京太郎「現実逃避かー、俺もしたいわー」

初美「もうっ、真面目に聞く気はなしですか!」

京太郎「さぁな……ってのはさっきも言ったか」



京太郎「たださ、どいつもこいつも小蒔を信じなさすぎだろ、とは思うよ」


初美「そんなこと……」

京太郎「どこぞの少女漫画かってぐらい気を使ってるよな」

初美「私的にはあんなドロドロしたのはゴメンなのですよ」

京太郎「俺も修羅場は遠慮しときたいとこだな」

初美「あなたがそれを言っちゃいますか」


京太郎「とにかく、逃げたきゃ逃げればいいさ」

京太郎「それで首が回らなくなったら、俺がなんとかしてやるよ」


初美「適当なことを言ってくれますねー」

京太郎「具体的にどうするかなんて、その時になんないとわからないからな」

初美「頼りにしていいか、いまいちわからないのですよ」

京太郎「ま、その時が来たらいやでも背中押してやるから覚悟しとけ」


京太郎「俺だって、そうされたからさ」



初美「もしかして、逃げた経験がアリアリですか?」

京太郎「なんだかんだでな……おかげであいつにお別れも言えないとこだった」

初美「あ……」

京太郎「うちの母親だって駆け落ちして逃げ出したくちだしな」

初美「そうだったんですか……」


初美(じゃあ、さっきのって)


京太郎「そういうわけだ。逃げたってなるようになるし、なるようにしかならない」

京太郎「それがいやだったら、ちょっと向かい合ってみればいいんじゃねーの?」


初美「ぶぅ、それを考えたくないって言ってるのに……」

京太郎「はは、そうだったか?」

初美「それに、せっかく勇気を出したカミングアウトは無視ですか!」

京太郎「カミングアウト? 現実逃避の話ならもうしたろ」

初美「そうじゃなくて! うぅ~、えいっ」ドン



京太郎「……マウントとってどうする気だよ」

初美「どうするかなんて、決まってるのですよ……んっ」


初美「……あんまり動じませんね」

京太郎「なんというかな、慣れてきたのかもな」

初美「経験豊富さんでしたか……」

京太郎「俺のことはともかく、随分と大胆だな」

初美「もうヤケっぱちなのですよ」

京太郎「でも逃げてないだろ? 偉いぞ」ナデナデ

初美「また子供扱いして!」バッ


初美「覚えてるのですよ!」


京太郎「……まぁ、変に落ち込んでるのよりはいいか」

京太郎「さて、母さん達が上がってくる前に俺も引っ込むかな」





「それでなんでここに来る」

京太郎「だって俺の部屋は女子部屋になってるし」

「女子と仲良くなるのが得意技みたいなもんだろ」

京太郎「どこのナンパ野郎だかな!?」


京太郎「よく言うよ。親父だってここに避難してるくせに。ずるいぞ」

「自分の部屋にいるだけで非難されるとはなぁ」

京太郎「というわけで、なんか映画見ていい?」

「デッキにRED入ってるからそれ見るか」



「で、なんで俺らが一緒に風呂に入ってるんだ?」

京太郎「流れ&時間短縮」

「ようするに母さんに押し切られたからだな」

京太郎「映画に夢中になってたのもいけないんじゃね?」

「まったくだ」





京太郎「ふぃー」

「あら、お上がり」

京太郎「あいつらは?」

「部屋にいるんじゃない? さっきアルバム渡しておいたから」

京太郎「それ絶対俺が恥ずかしいパターンじゃん……」

「あ、そういえばさっき初美ちゃんに、末永くよろしくお願いしますって言われたんだけど」

京太郎「……」

「なんかしちゃったの?」ニヤニヤ

京太郎「さぁね」

「大丈夫大丈夫、お母さんわかってるから」ウンウン

京太郎「うーん、このしたり顔」

「それにしても、ちょっと安心したわ」

京太郎「普段から悩み事なんてなさそうに見えるけど」

「だれが能天気で美人な母親ですって!?」

京太郎「言ってない言ってない、特に後半」


京太郎「それで、安心したって?」

「ふーんだ。お母さんのことを能天気呼ばわりする息子なんて知りませーん」

京太郎「めんどくさっ、年甲斐なさすぎだろ」

「ひどいっ、息子がひどいっ」





「……こほん、二人と話してくれたのよね?」

京太郎「まあ、空気悪くされても困るしな」

「そう……二人とも、笑顔が三割増しだったから」

京太郎「なにそれ、ニヤけてたってこと?」

「それはもう、恋する乙女感がひしひしとね」

京太郎「ま、また適当なことを」

「残念、言質はとってあるんだから」

京太郎「……あんまり考えたくなかったんだけどさ、喧嘩の原因ってやっぱり……」

「この、罪作りぃ!」グリグリ

京太郎「わかったからグリグリすんなって!」


京太郎「したら、説教をかました石戸に二人が反発して喧嘩になったってとこか」

「……それはどうかしらね」

京太郎「あれ、違うの?」

「それはそれでいいと思うけど……」



(それだけなら、あの頑なさは説明がつかない)

(やっぱり、霞ちゃんも……)


「あの子達が帰る前に一度、話してみてくれる?」

京太郎「話すって、石戸と?」

「なんだったら夜のプロレスになだれこんでもいいから」

京太郎「しないから」

「もう姫様とくっついてみんな抱え込んじゃえばいいんじゃない?」

京太郎「問題発言!」





京太郎「話せと言われてもな……」


京太郎(結局その機会もなく寝る時間になったわけだけど)

京太郎(というより、避けられてたのか?)

京太郎(……今日はからかいすぎたかな)


――カチャ


京太郎(ん?)


霞「……」


京太郎(石戸? まだ寝てなかったのか)

京太郎(……いいタイミングかもな)


京太郎「寝れないのか?」

霞「――っ」ビクッ


霞「誰かと思ったら……ごめんなさい、起こしてしまったかしら?」

京太郎「そもそも寝てなかったから気にすんな」

霞「そう……」

京太郎「水でも飲むか?」

霞「ええ、いただくわ」





京太郎「うちの母さん、強引だったろ」

霞「押しが強い方だとは思うわ」

京太郎「来るもの拒まずどころか、むしろ引きずり込んでる感じだからな」

霞「突然押しかけて、申し訳ないと思ってるわ。部屋も貸してもらってるし」

京太郎「まあ、俺はいいよ。そもそもあの二人が来た時点でこうなるのは確定だからな」

霞「……二人と話したの?」

京太郎「まぁな。喧嘩してたみたいだし」

霞「私が悪いの。余計なことさえ言わなければ……」

京太郎「ホント、損な役回りだな」

霞「あなただって、背負い込むじゃない」

京太郎「ま、そうかもな……でも、そういうのは余裕がある奴がすることだ」

霞「私にはないと、そう言いたいのかしら?」

京太郎「率直に言えばな。一番思いつめた顔してたの、お前だぞ?」

霞「……」

京太郎「……まあいいや、ちょっと付き合ってくれ」

霞「どこか行くの?」

京太郎「小腹が空いたから、ちょっとそこまでな」





京太郎「滑りやすいから注意しろよ?」

霞「……ええ」


霞(誘われるままついてきてしまったわ……)

霞(母が強引だといったけれど、あれは自分のことを棚に上げて言ってるのね)

霞(……断ってしまえばよかったのに)

霞(彼がそれくらいで悪く思ったり……いえ、悪く思われたとしても別に問題はないはずよ)

霞(だって、私は――)


霞「あっ――」ツルッ


京太郎「っと、言ったそばから」

霞「ごめんなさい、考え事をしていて」

京太郎「はは、謝ってばっかだな」

霞「そうね……」

京太郎「冗談だって、立てるか?」

霞「……」ギュッ

京太郎「石戸?」



霞(いや、いやいやいやっ)

霞(どうして我慢しなければいけないの!?)

霞(私だって、彼と……)

霞(小蒔ちゃんの、身代わりだなんて……!)


霞「――っ!」ゾゾッ


霞(ダメ、違う、そうじゃない……!)

霞(私の、私の役目は……!)ググッ


京太郎「石戸っ」

霞「だ、大丈夫よ……立てるわ」ヨロッ


霞(ほら、抑え込めた……)

霞(大丈夫、私はやっていける)

霞(だから……)

唐突にコンマ判定

高ければ高いほど(ry


直下

ギリギリ……コンマ41以上 京太郎、気づく


京太郎「……」


『私では、ダメ?』

『私では、あなたを支えられない?』


京太郎(今更ながらに思えば、あれがそう言う意味なら)

京太郎(……結局は全部、俺が悪いってことになるな)

京太郎(でも、それでこんなに苦しんでいるなら……)


京太郎「すごいうぬぼれたこと言うけど、もしかして――」


霞「やめてっ!!」


霞「お願いだから、黙ってて」

霞「あなたにそれを言われたら、私は……」



京太郎「それでいいのか?」

霞「今までどおりでいられるなら、なにも望まないわ」

京太郎「……大丈夫なのか?」

霞「大丈夫よ。さっきだって抑え込んで見せたでしょ?」

京太郎「……」


京太郎(本当の意味で大丈夫なやつは、自分で大丈夫なんて言わないんだよな)


京太郎「わかった、今はお前の言うとおりにしといてやるよ」

霞「ありがとう……感謝するわ」

京太郎「ああ」


京太郎(多分、これ以上進むなら覚悟がいる)

京太郎(他の全てを投げ出してもいい……そんな覚悟が)

京太郎(まだ答えを出してない俺に、それは……)





霞「お世話になりました」

「また来てね? 今度はきちんとおもてなししちゃうから」

霞「ええ、次は事前に連絡します」


京太郎「……」


春「ボーッとしてる」

京太郎「ああ、昨日はちょっと夜更かししてたからさ」

春「夜這いしたかったなら来ればよかったのに」

京太郎「お前以外にも寝てる奴がいるだろうが」

初美「まったくなのですよ。ここはむしろ逆に攻めるべきですねー」

春「つまり、寝てる隙にやりたい放題?」

京太郎「やめんか」


霞「二人とも、行くわよ」


初美「はーい」

春「それじゃ」

京太郎「ああ、気をつけて帰れよ」





霞「……」


霞(痛みも苦しみも、慣れてしまえばそれが当たり前になる)

霞(だから、時間が経てばきっと……)


初美「霞ちゃんはお疲れですか?」

霞「ちょっと眠れなかったの」

春「二人して寝不足……まさか」

霞「邪推よ。そんなことあるわけないじゃない」


霞(彼は何も言っていないし、私も何も言っていない)

霞(だから、なにもなかった。ただそれだけ)


霞「さ、帰ったらお説教の続きよ?」

初美「鬼っ」

春「悪魔っ」


霞(損な役回り……それでいいじゃない)

霞(それが他ならぬ私のお役目なんだから)



というわけで終了
なんか今回もシリアス風味

これで一気に三人ED確定という恐ろしい事態に……
ゾロ目連発&前スレ1000は恐ろしい

安価は何事もなければ日が変わる頃で
それじゃ一旦失礼します

こんばんはー

そろそろ安価取りたいんですけど、人いますかね?

それじゃ、一応何らかの表です
一番上のグループはほぼエンディングが確定
あとは数字が高い順にエンディングに近いです
同じ数字でも上の方がエンディングに近いです
基本的に数値が低い人のほうが上がり幅がでかいです


久照:達成
久美穂子:達成
宮永姉妹:未
松実姉妹:未
はとこ二人:未 もうちょい
小蒔霞:達成
哩姫:未 もうちょい
怜竜:未

ED確定
大星淡
天江衣
桧森誓子
姉帯豊音
三尋木咏
神代小蒔
ネリー・ヴィルサラーゼ
宮永照
エイスリン・ウィッシュアート
白水哩
竹井久
福路美穂子
松実玄
薄墨初美
滝見春
石戸霞


真屋由暉子2


宮永咲5
清水谷竜華3
原村和
杉乃歩


小瀬川白望5
瑞原はやり
鶴田姫子


園城寺怜5
片岡優希4
龍門渕透華4
妹尾佳織3
小鍛冶健夜
染谷まこ
小走やえ
獅子原爽
国広一
石戸明星
松実宥


本内成香5
臼澤塞5
上重漫5
岩館揺杏5
雀明華5
狩宿巴5
花田煌5
ハギヨシ5
東横桃子4
弘世菫3
辻垣内智葉3
高鴨穏乃3
蒲原智美3
鷺森灼2
新子憧2
津山睦月2
針生えり2
郝慧宇2
加治木ゆみ2
内木一太2
高久田誠2
部長
メイド
井上純
荒川憩
愛宕絹恵
熊倉トシ
佐々野いちご
原村恵
夢乃マホ
南浦聡
久保貴子
メガン・ダヴァン
野依理沙
赤坂郁乃
福世恒子
アレクサンドラ・ヴィントハイム
戒能良子
鹿倉胡桃
十曽湧
宮永界


愛宕洋榎2
江口セーラ
藤田靖子
池田華菜
末原恭子
沢村智紀
吉留未春
文堂星夏
深堀純代
南浦数絵
二条泉
赤土晴絵
真瀬由子
村吉みさき
渋谷尭深
亦野誠子

んじゃ、お好きなキャラを一人どうぞ

あ、四九分までで

締切

うーん……とりあえず割ってきます

コンマ

怜:1-8
由暉子:9-76
姫子:77-84
誓子:偶数ゾロ目
マホ:85-92
一:93-00

ゾロ目:?


直下

すげぇ……チカセン引き当てた

ゾロ目の条件も満たしてるんで、もっかい判定をば


コンマ

怜:1-8
由暉子:9-76
姫子:77-84
マホ:85-92
一:93-00

ゾロ目:?


直下

一ちゃんになるのかチカセンか?

そんじゃ、大阪のおっさん女子高生で

ということで今日は失礼します

>>154

エンディングの人がいたらそっち優先です

ようやっとFF15とダンロンV3をクリア!
どっちも面白いよ!

という宣伝は置いておいて

エンディングはどちらにしても変わりはないと思われます
安価は完全に先に見たい人向けです

それじゃ、相変わらず夜勤続きなんで今のうちにチカセンのエンディングだけでも



誓子「うーん……」

成香「どうでした、爽さん?」

誓子「ほら、見ての通り」


爽「」チーン


由暉子「散ってしまいましたか……残念です」

揺杏「なんて声かけりゃいーんだかね」

成香「どうしましょう……」オロオロ

揺杏「とりあえず成香は落ち着けっての」

誓子「そうだね……でもあのまま放置しておくわけにもいかないし」

由暉子「じゃあどこか入りましょうか。私、呼んできますね」スタスタ

誓子「あ、ちょっと――」



成香「ユキちゃん、すごい行動力ですっ」

揺杏「だね、須賀のにーさんの影響だったりして」

誓子「うーん、須賀くんならしばらくそっとしておいて、いきなり後ろからホットドリンク渡してきそうだけど」

揺杏「……」

成香「……」

誓子「え、どうしたの?」

揺杏「こりゃあれだね」

成香「き、きっと経験談ですよっ」

誓子「ち、違うわよ」


誓子(そういえば、飲み物買ってくれたっけ)

誓子(機嫌悪いとこばっかり見せちゃってたけど……)


『俺はさ、桧森の笑ってるとこがさ……なんというか、すごく綺麗だなって思ってるんだよ』


誓子(……須賀くん、なにしてるんだろ)



爽「ふ、ふふ……チカよ、行ってしまうんだね」


揺杏「お、もう復活?」

由暉子「動かないのでほっぺたをツンツンしてたらいけました。ちなみに左手で」

成香「さすがユキちゃんの左手、素敵ですっ」

揺杏「やっべーな、なんだかよくわからないパワーがあるね。略してNYP」

由暉子「MPみたいなものでしょうか?」


爽「うぅ……置いていかれるこの悲しみ」

誓子「ご、ごめん。そういうつもりで言ったんじゃないんだけど」

爽「いいよいいよ、結局は実力が足りなかったってことだしね」

誓子「もうちょっとスパルタ気味にしたほうが良かったかなぁ?」

爽「ま、まあ……チカはよくやってくれたよ、うん」


爽「さ、気を取り直してこれからは三人で頑張ろう!」



揺杏「ニヤニヤしてどしたの?」

誓子「えっ、私ニヤニヤしてた?」

揺杏「してたっしょ。なぁ?」

成香「恋する乙女の顔でしたっ」

誓子「してませんっ。あれはそう……四月から大学生なんだなぁって思ってただけで」


爽「ふ、ふふ……チカよ、行ってしまうんだね」


揺杏「お、もう復活?」

由暉子「動かないのでほっぺたをツンツンしてたらいけました。ちなみに左手で」

成香「さすがユキちゃんの左手、素敵ですっ」

揺杏「やっべーな、なんだかよくわからないパワーがあるね。略してNYP」

由暉子「MPみたいなものでしょうか?」


爽「うぅ……置いていかれるこの悲しみ」

誓子「ご、ごめん。そういうつもりで言ったんじゃないんだけど」

爽「いいよいいよ、結局は実力が足りなかったってことだしね」

誓子「もうちょっとスパルタ気味にしたほうが良かったかなぁ?」

爽「ま、まあ……チカはよくやってくれたよ、うん」


爽「さ、気を取り直してこれからは三人で頑張ろう!」



誓子「三人?」

爽「私と彼と、お腹の子供で……」ポッ

成香「そんなっ、いつの間に!?」

揺杏「ちなみに名付け親は私ね」

由暉子「ズバリ、出会いは?」

爽「えっとー、彼とはインハイ途中に出会って――いたっ」

誓子「はいはい、二人共騙されないの。揺杏は悪乗りしない」

揺杏「チカセン、ネタばらし早すぎっしょ」

成香「えっ」

由暉子「中々にロマンチックだと思ったんですけど……」

爽「ちょっとは乗ってくれたっていいのにさー」

誓子「揺杏と成香と三人で頑張ってね、受験勉強」

揺杏「うわー……そっか、もう受験生じゃん」

成香「あ、三人ってそういうことだったんですね」

由暉子「困りました……私だけ仲間外れじゃないですか?」

爽「じゃ、受験生予備軍ということで。三人改め四人だね」


爽「力を合わせてチカを倒そう!」

誓子「わたしを打倒してどうするのよ……」ハァ


誓子(でも、落ち込んでるのよりはいいよね)



爽「それより卒業旅行のことなんだけど」

誓子「そんな計画してたっけ?」

揺杏「さぁ、聞いてないよ?」

由暉子「今からだと予約を取るのも大変じゃないですか?」

成香「泊まる場所を選ばなければ大丈夫だと思いますけど……ほら、去年みたいに」

爽「そこらへんは問題ないよ。だいぶ前から予約しといたからね!」

誓子「へぇ、受験勉強の最中に?」

爽「た、楽しみがあった方がいいかなってさ。それに、試験終わってからじゃ遅いしね」

誓子「ん、たしかに」


爽「さて、チカを論破したとこで」

揺杏「今度どこ行くわけ? 勝手に決めたんだろ?」

爽「んー、去年のリベンジかな?」

誓子「というと?」

爽「長野に行こう!」





誓子(幸いみんなこれといった予定もなく、長野に行くことになった)

誓子(多分、爽は気を使ってくれたんだと思う)

誓子(須賀くんに会えば、答えを聞けるから)

誓子(……それは私が欲しい答えじゃないかもしれないけど)

誓子(それで、それなりに覚悟を決めて赴いたわけなんだけど――)



久「あら、久しぶり」

誓子「うん……須賀くん、いる?」

久「あー、あいつね。なんとも間の悪い……」

誓子「え、いないの?」

久「ちょっと前にさ、一人旅だって」

誓子「そう、なんだ」



誓子(盛大に空振り)

誓子(結局会えないまま、私は大学生になっちゃいました)





誓子「なによ、一人旅って」

誓子「大学も蹴って就職もいないで、なにしてるのよ……」

誓子「バカみたい……むー」

誓子「あーあ、会いたかったんだけどなぁ」

誓子「もう四月も終わっちゃうよ……ホント、なにしてるんだろ」


誓子(でも、あれはなんだったんだろう?)

誓子(あの時の、竹井さんの……)


久『ちょっと顔見せて』

誓子『え?』

久『いいからいいから』

誓子『えっと、どうぞ?』

久『……えいっ』ゴツッ

誓子『いったぁ……え、頭突き? なんで?』

久『まぁ、色々言いたいことあるけど、これでチャラにしとく』


誓子(結局、理由も聞けずじまいだったけど……何かしたっけ、私?)



「あれ、桧森さんもこれから帰り?」


誓子「あ、うん。そっちも?」

「いや、これからみんなで遊びに行くんだ。桧森さんもどう?」

誓子「ごめん、明日実家の方に帰るから用意しないといけないの」

「黄金週間だもんね。そういうことなら邪魔しちゃ悪いか」

誓子「うん、また誘ってね」

「でもまいったなぁ、桧森さん来ないんだ」

誓子「もしかしてまずいことしちゃった?」

「そういうわけじゃないけど、男子数人は桧森さん目当てだったからさ」

誓子「あはは……そ、そうなんだ」

「けっこう人気あるからね。さっきも知らない奴にどこいるかって聞かれたし」

誓子「知らない人に? やだ、なんか怖いな……」

「ストーカーだったりして……あれ、でもどこかで見たことあるような」

誓子「あ、もうこんな時間」

「悪いね、引き止めちゃって」

誓子「ううん、いいよ別に。それじゃ、連休明けにね」





誓子「今日のごはんどうしよ」

誓子「忙しいから買って済ませようかなぁ」


「あーくそっ、どこいるんだよ」


誓子「うーん、あんまり楽しちゃったら後が辛いし……」

誓子「……なんだろ、もう一人暮らしに慣れてきたのかな?」


「こりゃ適当なこと言われたな……つっても携帯にかけたら意味ないし」


誓子「爽が頑張ってれば……って、これは言ってもしかたないか」

誓子「でもちょっと……寂しいかも」


「どっかそのへん歩いてりゃ話は早い……あん?」


誓子「こっちで新しい友達だってできたけど……」

誓子「これもそのうち慣れちゃうのかな?」


「おーい! ……こりゃ聞こえてないな」


誓子「あーあ、どこでなにしてるんだか」

誓子「……須賀くん」


京太郎「呼んだか?」



誓子「え……」

京太郎「固まっちまったか……キスしたら動くかな」ガシッ

誓子「ちょ、ちょっと待って!」グイッ

京太郎「おっと」

誓子「須賀くん? 須賀くんだよね? どうしてここに……」

京太郎「気ままに一人旅。北海道に来てみましたってね」

誓子「あ、そっか……」

京太郎「ちょうど俺が出てったあとに長野に来るなんてな……なんとも間の悪い」

誓子「竹井さんから聞いたんだ」

京太郎「まぁな……お前らが帰ったあとに知らされたよ。まったく……ま、そんぐらいならまだいいか」

誓子「そういえば、会うなり頭突きされたんだけど、そっちに心当たり無い?」

京太郎「頭突きか……きっとそれで済ませたんだな。俺が言うのもアレだけどさ」

誓子「何か知ってるの?」

京太郎「推測だけどな。でも、これ言う前に一つ言っておくことがあるんだよな」

誓子「むー、なんかさっきからはっきりしないね」

京太郎「……初めてなんだからしかたないだろ」

誓子「だから、何の話なのよっ」

京太郎「……怒ってる?」

誓子「怒ってません。人がどんな思いしてたかもわからない須賀くんだけど怒ってないんだから」

京太郎「つまり怒ってると……とりあえず場所変えてなんか飲もうか」





京太郎「悪いな、飲み物どころかご飯までいただいちゃって」

誓子「別にいいけど……出来合いのものだし。それよりなんで家知ってたの? 明らかに須賀くんが先導してたよね?」

京太郎「獅子原から教えられてたからな。先にこっち来たんだけど、その時はいなかったし」

誓子「今日は休みじゃなかったからね」

京太郎「はは、俺は毎日が日曜みたいなもんだからな」

誓子「お気楽なんだから」


誓子「それで、私に話があるんだっけ?」

京太郎「つーか、こっちにはそのために来たようなもんだし」

誓子「私に、会いに?」

京太郎「そうなるな」

誓子「……」


誓子(言いたいことがあるって言ってたっけ)

誓子(それって多分……)

誓子(どうしよう、なんの準備もしてないのに)

誓子(二つに一つ。ただそれだけなのに、すごく、怖い……)ブルッ



京太郎「俺は、桧森と色々したいことがある」

京太郎「一緒に出かけたり、料理したり、二人乗りしてどこか行ったりさ」

京太郎「傍にいてほしいし、なるべくなら笑っててほしい」

京太郎「だからもし、おまえもそう思ってくれてるなら……」


誓子「……須賀くん」

京太郎「……なんだよ」

誓子「私の、パクった?」

京太郎「さ、参考にしただけだから」

誓子「もう……でも――」


誓子「すごく、嬉しいかな……」ギュッ



京太郎「……泣くなよ、大げさだな」

誓子「誰のせいだと思ってるのよ……バカ」

京太郎「わかってるよ……だからさ、埋め合わせさせてくれ」

誓子「……じゃあ、私に貸しあるの、覚えてる?」

京太郎「ああ」

誓子「それ、今ここで使ってくれる?」

京太郎「つってもな、いきなりじゃなんも思いつかないぞ?」

誓子「……」ギュウウ

京太郎「痛い痛いっ、つねるな――んむっ」


誓子「――んっ、ここまでしたら、わかるよね?」

京太郎「……いやだって言ってもやめないからな」

誓子「いいよ、私、逆らえないし」





誓子「んん……」

誓子「あれ……もう、朝?」


京太郎「おはよう」


誓子「須賀くん……? あ、そっか」

京太郎「まぁ、そういうことだな」

誓子「なんか、恥ずかしいね」

京太郎「んー、お互い裸だからかもな」

誓子「え、あ……見ないでよ」サッ

京太郎「なにを今更。とりあえずなんか着ようぜ」





誓子「ごちそうさま。朝ごはんありがとね」

京太郎「朝って時間でもないけどな。まぁ、寝床の礼ってとこだ」

誓子「そんなの気にしなくてもいいのに」

京太郎「したいからしてるんだよ」

誓子「そっか……ね、これからどうするの?」

京太郎「桧森に会うって目的は果たしたし……そうだな、一回長野に帰ろうかな」

誓子「そうなんだ、実家に……あー!」

京太郎「うお、いきなり大声出すなよ」

誓子「今何時っ?」

京太郎「そうねだいたいね」

誓子「もう、ふざけないで!」

京太郎「悪かったって……十時半だな」

誓子「十時半……どうしよ、寝過ごしちゃった」

京太郎「なんかあったのか?」

誓子「向こうに帰るからバスの予約してたんだけど……」

京太郎「ああ、なるほど」

誓子「須賀くんが来たから全然用意してないし」

京太郎「うーん……よし、わかった」


京太郎「俺が送ってってやるよ」





誓子「わ、バイク。もしかしてこれで旅してたの?」

京太郎「徒歩じゃさすがに時間かかるからな」

誓子「だから荷物はコンパクトにしろって言ったんだ……」

京太郎「そういうこと。さ、乗れよ」

誓子「う、うん……」オズオズ

京太郎「自転車より危ないから、しっかりつかまってろよ」

誓子「……」ギュッ


誓子(やっぱり、背中広いなぁ)



京太郎「そうだ、向こう着いたら両親に挨拶しに行くかな」

誓子「もしかして、私の家に?」

京太郎「他に誰がいるんだよ」

誓子「そうなんだ、そういうのめんどくさがりそうだと思ってた」

京太郎「待たせた分、ちゃんとしときたいしな」

誓子「あ、めんどくさがってることは否定しないんだ」

京太郎「そりゃあな、だって緊張するし」

誓子「なんか新鮮」

京太郎「カッコ悪いとこ見せるかもしれないけど、大目に見てくれ」

誓子「うん、いいよ。なんか楽しみだし」

京太郎「……面白がってるだろ」

誓子「だって、それも須賀くんなんでしょ?」

京太郎「ま、そうだな」

誓子「じゃあ問題なしだね」



京太郎「じゃ、行くか」

誓子「どのくらいかかりそう?」

京太郎「んー、二時間三時間ってとこじゃないか?」

誓子「じゃあお昼は向こう着いてからかな?」

京太郎「そうなりそうだな」

誓子「ね、須賀くん」

京太郎「ん?」

誓子「ずっとこうしていられたらな……」

京太郎「さすがに腰が痛くなるだろ」

誓子「むー……えいっ」ギュウウ

京太郎「いって! つねんなって」

誓子「後で飲み物奢ってくれないと許さないんだから」

京太郎「つまり怒ってんのな……ま、サービスエリアに着いたらだな」

誓子「うん……」クスッ

京太郎「なんだよ、怒るのか笑うのかどっちかにしてくれ」

誓子「……笑ってないよ?」

京太郎「いいや、笑ってた。わからないわけないだろ」

誓子「もう、だから――」




『エンディング――二人乗り』

というわけでチカセンのエンディングでした

なんだろう、想定より四割増しになった……

んじゃ、もうすぐ出勤なんで失礼します

お久!
急に配置替えされると忙しくて死ぬよね!

というわけでもう少ししたら始めます

んじゃ、始めます



・三年、冬、転ばぬ先のなんとやら


『お願いだから、黙ってて』

『あなたにそれを言われたら、私は……』


京太郎「確かになぁ……」

京太郎「問い詰めてどうするんだって話だし」

京太郎「それでもし、小蒔の時みたいなことになったとして」

京太郎「……俺にどうにかすることができるのか?」


京太郎「……やめだ、やめ」

京太郎「んなこと考えたってな」

京太郎「そうだ、勉強だ勉強」

京太郎「集中してりゃ他のことも考えないしな」

京太郎「……なんつーか、弱腰っつーか及び腰というか」

京太郎「インハイ途中だったらどうしてただろうな……」





京太郎「……腹減った」グゥ

京太郎「いくら集中してても三大欲求には勝てなかったよ……」

京太郎「しかし、まだ晩飯前だよな。正直微妙な時間だ」

京太郎「うーむ……」プルルル

京太郎「あん?」


『園城寺怜』


京太郎「電話なんて珍しいな」ピッ


怜『なんとかしてよキョウえも~ん!』

京太郎「しょうがないなぁ、とき太くんは」

怜『ありがとうキョウえもん!』


怜『ダメ、やり直し』

京太郎「いきなり始まったコントに対応してやってんのにダメ出しか」

怜『須賀くんは大切なことを忘れとる』

京太郎「はぁ、というと?」

怜『うちも女の子ってこと。とき太くんはないんとちゃう?』

京太郎「切っていいですかねぇ?」

怜『ほな、テイク2いってみよかー』





怜『なんとかしてよキョウえも~ん!』

京太郎「しょうがないなぁ、とき美ちゃんは」

怜『ありがとうキョウえもん!』


京太郎「で?」

怜『でっていう?』

京太郎「ヨースター島に生息してそうな恐竜は置いといて」

怜『そうして今日も赤い帽子の配管工に乗り捨てられるんやな……』

京太郎「おいやめろ」



京太郎「……で?」

怜『でっていう?』

京太郎「まぜっかえすな。もうスーパードラゴンは奈落の底だよ」

怜『ブロック叩けばあら不思議。ちゃーんと元鞘やで?』

京太郎「あれってどこから湧いてくるんだろうな?」

怜『そもそも、Tなんたらムンチャクッパスさんは緑のでええんかな?』

京太郎「同時に二体出てこないし、その時いるのがムンチャクッパスさんでいいんじゃねーの?」

怜『ちょっと待った、それやと名字っぽくない?』

京太郎「なるほど、じゃあTが名前か」

怜『なんの略やねん。寺生まれなん?』

京太郎「寺生まれのスーパードラゴンって何事だよ」

怜『破ぁ!! みたいに叫ぶんかな?』

京太郎「あいつが口から出すのは長い舌だろ」

怜『時々火ぃ吐いとらん?』

京太郎「でも白くて丸っこい幽霊は倒せないからなぁ。そもそも建物の中に入ってこないし」

怜『やっぱりここはスターで無敵化アタックやな』

京太郎「でっかいのは滑り台アタックでワンパンだしな」

怜『除霊(物理)やん』

京太郎「まったくだ。って、倒してるのは全部配管工じゃねーか」

怜『つまり、M・Mは寺生まれだった……?』

京太郎「あいつはコウノトリに運ばれてきたんだよ。そもそもイタリア人だろうが」



怜『で、なんやったっけ?』

京太郎「俺が聞きたいぜ」

怜『え、うちの声が聞きたくてたまらなかった?』

京太郎「言ってないんだよなぁ」

怜『だいじょぶだいじょぶ、いつでもウェルカムやでー』

京太郎「……えっと、清水谷竜華さんの番号は」

怜『うそうそっ、ちゃんと話しますー!』





京太郎「ほうほう、受験勉強したくないと」

怜『二次試験はよ終わって! せやけど来ないで、ホンマに……』

京太郎「あぁ、うん」


京太郎(すっげーよくわかる……)

京太郎(試験とかなくなんないかなー)



京太郎「まぁ、あれだ。俺も同じ気持ちというか」

怜『え、うそ。告られてもうた』

京太郎「どうしてすぐ脱線するんですかねぇ?」

怜『人生、多少寄り道せんとつまらない人間になってまうやろ』

京太郎「人生の寄り道と話を脱線させるのとではまた違うからな?」

怜『人の一生を物語と捉えれば……どうやろか?』

京太郎「どうやろか、じゃねーよ。保護者に連絡するぞ」

怜『むぅ、この塩対応……もしかして彼女できた?』

京太郎「いや、正直そんな暇ないし」

怜『なるなる……朗報ゲット』ボソッ

京太郎「朗報?」

怜『……竜華にとってって意味』

京太郎「あ、そうか……って、納得するのも恥ずかしいな」

怜『やーいこの色男ー』

京太郎「たしかになぁ……」


京太郎(客観的に見たら否定できないよな)

京太郎(あんまりおいしい思いした実感はないけど)



怜『ついに認めたっ』

京太郎「あーもう、俺のことはどうでもいいんだよ!」

怜『と、容疑者は述べており――』

京太郎「勝手に容疑者にするな」

怜『じゃあ、被疑者?』

京太郎「それでなにか変わったとでも?」

怜『なんか響きが被害者っぽいやん』

京太郎「たしかにAを一個引っこ抜けば同じだけどな」

怜『ひがいしゃ、ひがぃしゃ、ひぐぃしゃ、ひぎしゃ……一致してもーた』

京太郎「してねーよ」

怜『コナン手前味噌からの古代米味噌よりはマシマシ』

京太郎「まさかパン食べてラスボスになるとは……」

怜『まぁ、人間とパンが融合するような世界やから』

京太郎「リアクションが激化してきた時から、まさかとは思ったけどな」



『怜ー? そろそろご飯ー』


京太郎「お、清水谷と一緒だったか」

怜『そろそろお暇やなー』

京太郎「おう、帰れ帰れ」

怜『せやけど、ご飯の後は……』

京太郎「……言うな。強く生きろ」

怜『須賀くん? もし、無事に帰って来れたら……ううん、やっぱやめとく』

京太郎「いや、お前のホームはあっちな」

怜『死亡フラグについては?』

京太郎「いいから飯食え。俺も飯食いたいんだよ」

怜『はーい』





京太郎「やっと終わったか……」

京太郎「あいつと話してるとついつい長くなるよな」

京太郎「いつの間にか乗せられているというか……まったく、関西人ってやつは」

京太郎「愛宕姉とだったら物理的なツッコミをかいくぐる展開になるし」

京太郎「……いや、あれは俺がおちょくってるのもあるか」

京太郎「なんにしても、大阪の人間はコントが好き……って一纏めにすんのは失礼か?」

京太郎「ま、今回は時間潰れたからいいか」


『京太郎ー? ごーはーんー』


京太郎「はいはーい」





怜「あーん、勉強もーやだー」

竜華「もうちょっとやん、頑張ろ?」

怜「無理ったらむーりー」

竜華「でも、ご飯前にも休憩したし……」

怜「提案! 休養日をもうけるというのは!?」

竜華「せやから、もうちょっとだし頑張ろうって言うとるやん」

怜「やーすーみーたーいー」

竜華「うーん……」


怜(もうちょい押したら行けるかな?)

怜(ここで実現が難しい要求を突きつけて……)

怜(なんとしても一日休みを! ゴロゴロしたいっ)



怜「あーあ、場所が変わればやる気も出るんやけどなー」

竜華「たしかに……じゃあ、どこか出る? 図書館とかならよさそうやけど」

怜「えー? そんな近場とかやる気出ぇへんしー」

竜華「姫松の方にでも行ってみる? むこうにも図書館あると思うし」

怜「なんやねんその図書館推し」

竜華「え、だって静かで集中できるやん」

怜「とにかく却下ー。県外レベルやないとやーだー」

竜華「奈良とか?」

怜「近いわぁ、奈良近いわぁ。せめて長野ぐらい離れてないと」

竜華「長野……ちょい遠いかな」


怜(よーしよし、このまま諦めてくれれば……)


竜華「……」



竜華(長野に行けば……須賀くんに会えるし、怜も勉強に身が入る)

竜華(え、一石二鳥やない?)


竜華「決定、長野行こか!」

怜「そうそう、ここは諦めて……あれ?」

竜華「そうと決まれば早速準備せなな」

怜「あの……竜華、本気?」

竜華「なんか問題ある?」

怜「それは費用っちゅーか……ほら、うちあんま貯金ないし」

竜華「心配はいらへんで? うちはわりとお金持ちやし」

怜「たしかにタワマン暮らし……」

竜華「というわけで、明日は早起きして新幹線やな」

怜「……」


怜(ミスった、長野なんて言わなければ……)


竜華「楽しみやなー♪」





京太郎「あ゛~~」


久「見なさい、あれが二次試験を数日後に控えた受験生の姿よ」

まこ「こりゃあ、いつも以上に……ゾンビじゃな」

久「体は生きてるわ、多分」

まこ「つまり廃人かい」

京太郎「だれが廃人だ」

まこ「生きてたんかい」

京太郎「勝手に殺すな」

久「そうそう、こういうのは生かさず殺さずが基本だから」

京太郎「鬼か!」

まこ「鬼畜じゃな」

久「とまぁ、今のはあくまで一般論だから」

京太郎「嘘つけ! そんな非情な一般論があってたまるかっ!」

久「はいはい、だから気分転換にまこの店に行こうとしてるんでしょ」

まこ「じゃけぇ、うちの店は溜まり場じゃないと……」

京太郎「まさか……ゲン担ぎにあそこの名物のカツ丼でも食わせようってのか?」

まこ「こら、いつうちの名物がカツ丼になった」

久「え? 靖子がブログでそう書いてたわよ?」

まこ「店の名前は?」

久「出してたけど?」

まこ「くっ、客が増える気配がないのはなぜじゃ……!」

京太郎「商魂たくましいなぁ」





まこ「ただいまー」

久「ただいまー」

京太郎「ただいまー」

久「喉かわいたし、なんか飲みますか」

京太郎「ちょっと冷蔵庫のぞいてくるか」

まこ「やれやれ……勝手知ったる他人の家か」


竜華「あ、久しぶり」


久「あら、珍しいお客さんね」

竜華「受験勉強の気分転換にって。ね、怜?」


怜「……」グッタリ


京太郎「おい、なんか死んでるぞ?」

竜華「移動中に勉強頑張ってたからなぁ」

京太郎「お、おう……」



京太郎(哀れ……こっちに来た理由はわからないけど)

京太郎(強く生きてくれ……)


怜「ううっ」ギュッ

京太郎「……なんだ?」

怜「うちはもうダメや……せめて、死ぬ前に……」

京太郎「死ぬ前に?」

怜「死ぬ前に……スタバでめっちゃ名前長いの注文してみたい……」

京太郎「よし、まだ大丈夫だな!」

怜「見捨てないでっ」ガシッ

京太郎「ええい、はなせっ」

怜「後生、後生やからっ」


竜華「仲ええなぁ」

久「でも、店の中で騒ぐのはどうかと思うけどね」

まこ「あんたがそれを言うのかい」





まこ「ともあれ、うちの店にようこそいらっしゃい」

竜華「へぇ、実家がお店やっとるって聞いてたけど、雀荘なんやね」

久「そうなのよ。私の行きつけ」

怜「あと藤田プロのブログでお勧めされてたし」

京太郎「良かったじゃないか。宣伝効果あったぞ?」

まこ「ふむ……」

竜華「カツ丼が名物って。そういえばセーラが食べたがってたっけ」

まこ「そこか、そこなのか……」


久「それで、ここのカツ丼を食べに来たってわけじゃないわよね?」

竜華「うん、まぁ、そうなんやけど」

まこ「しかし、時期が時期じゃけぇ。受験勉強は大丈夫なんかいの?」

怜「……はぁ」

京太郎「遠い目だな。あっ……(察し)」

竜華「もちろん、ただ遊びに来たんやなくて、今回は勉強しにきましたっ」

久「……はぁ?」



京太郎「おい、胸張ってよくわからないこと言ってるぞ?」ヒソヒソ

怜「うちが、うちがあないなこと言ったばかりに……」ダンッ

京太郎「いや、なにがあったんだよ……」


久「まぁ、ずっと同じところで勉強っていうのもあれだし、気分転換に違うとこでするっていうのもわかるけど……」

まこ「さすがに大阪からここまでは遠すぎじゃな」

竜華「うちももうちょい近場でええと思ったけど、怜がここらへんまでこないと気分転換にならんて」

久「なるほど……」

竜華「同じとこじゃ勉強にならんて言うから」

久「ふむふむ……」


久(つまり、サボりたいから適当な条件突きつけたら……って感じね)

久(うちのもやりそうな手口ね)

久(まったく……真に受けちゃったのね。当てが外れた園城寺さんはお気の毒だけど)


竜華「怜の言う通り、長野やったら色々捗りそうなのもたしかやけど……」チラッ



京太郎「トキ、病んでさえいなければ……」

怜「せめて痛みを知らずに安らかに……」

京太郎「それじゃあお前が止めを刺す側だな」

怜「まぁ、デッサイダデステニーやな」

京太郎「ジョインジョイントキィか」

怜「もしくはジョインしてから相手が選んだ後にすかさずジョイントキィや」


久(……案外別の理由も絡んでそうね)ハァ

久(とりあえず勉強させとけば変なことも起こらないでしょ)


京太郎「――っ」ビクッ

怜「――っ」ビクッ


京太郎「……感じたか?」

怜「うん、感じた」

京太郎「これは――」


「「地獄(勉強)の気配……!」」


まこ「いいからさっさと座りんしゃい。他の客の邪魔じゃけぇ」





「「「「ごちそうさまでした」」」」

まこ「お粗末さまでした」


京太郎「いやぁ、また美味くなったんじゃねーの?」

久「トンカツ料理の店開いたら成功しそうじゃない?」

怜「けぷっ……もうお腹いっぱい」

竜華「ハーフ頼めば良かったやん」

怜「せやけど美味しかったから後でセーラに自慢しよ」

まこ「やれやれ、また妙なとこで評判になってしまいそうな……」


「さっき昼食べたけどまた腹減ってきたな……」

「俺にもカツ丼一丁!」

「こっちにもお願いな」

まこ「はいはいただいま」

帰還したので飯食ったら始めます

んじゃあ、始めます



京太郎「いいじゃないか、賑わってるみたいで」

久「雀荘としてはどこか間違ってるけどね」

怜「提案! せっかくの雀荘やん。ちょっと打つっちゅーのは?」

京太郎「おお、たしかにな。せっかく来たんだしな」

竜華「それええかも」

久「いや、良くないでしょ。勉強はどこいったのよ」

京太郎「うぐっ」

怜「くっ」

竜華「あ、そうやった」

怜「竜華、騙されたらアカン!」

京太郎「そうだっ、俺たちには休養が必要なんだ!」

久「やっぱり結託した! 清水谷さん、押し切られちゃダメよ」

竜華「え、えぇ?」

怜「竹井さん、うちらを苦しめて楽しいんかっ」

久「ちゃんと勉強しなさい受験生!」

京太郎「ぐあっ! その言葉は俺に効く……」

竜華「ちょっ、ケンカは……そうや!」


竜華「ここは仲直りに麻雀……なんてどうかな?」





久「東風戦で持ち点は25000、アリアリで赤は……三枚でいい?」

竜華「かまへんよ」

怜「たった4局かぁ。勝ったらなんか特典は?」

久「なし」

怜「えー?」

久「ウマもオカもなし。さっさと終わらせるわよ」

京太郎「そうだ、失点したら一枚脱――」

久「速攻で素っ裸にされたいの?」ジトッ

京太郎「――ぐのはなしですね、はい」


京太郎(危ない、殺されるところだったぜ……)

京太郎(迂闊なことは言うもんじゃないな)



竜華「うーん……でも、なんかご褒美みたいのあったほうが楽しめそうやない?」

怜「せやせや、せっかくの息抜きやん」

久「ご褒美ね……たとえば?」

竜華「膝枕とか?」

久「だれがするのよ?」

竜華「もちろんうちが」

久「あなたが一位になったら?」

竜華「あ……あはは、考えとらんかった」

怜「別のだれかにしてもらえばええやん。須賀くんとか」

京太郎「俺? 硬いし、枕にするには向いてないんじゃないか?」

竜華「うちはしてもらいたいかも……なんて」モジモジ

久「はぁ……早いとこ始めましょうか」

怜「ご褒美の件については?」

久「もうトップが最下位に何かさせるでいいんじゃない?」

京太郎「めんどくさくなってるだろ」

久「否定はしないけど」



久(ま、トップとればいいだけのはなしだしね)

久(京太郎を飛ばしちゃえば一石二鳥ってところね)

久(さて、さっさと勝って勉強させますか)


竜華「勝った人が最下位の人に……」


竜華(もし、うちがトップで須賀くんが最下位になったら)

竜華(またこの前みたく……)ポー

竜華(……よし、頑張ろっ)


京太郎「……」ゾクゾク


京太郎(なんか、ひたすらいやな予感が……)

京太郎(久ちゃんの目的はうっすらと見えるけど……)


怜「ふわぁ……」


怜(ねむ……)

怜(トップの特典は魅力的やけど、ここはおとなしくしとこ)

怜(巻き込まれると面倒やねん)





京太郎「……」


京太郎(珍しく良い配牌だ)

京太郎(局数も少ないし、せっかくの親番……ここは)


京太郎「リーチ!」


怜「……」


怜(アカン、二巡先でツモられる)

怜(連荘で長引くとこっちにも矛先が、なんてこともありそうやし)

怜(ずらせるチャンスがあれば……)


竜華「……」トン

怜「ポン」



怜(うんうん、ナイスタイミング)

怜(これで当面の危機は――)


京太郎「っしゃ、ツモ! ……裏乗って親倍!」


京太郎「さ、というわけで点棒よこせー」

竜華「須賀くんツイとるなぁ」チャラ

久「ま、ハンデにはちょうどいいんじゃない?」チャラ

怜「……なんでやねん」チャラ


怜(まさかそこにもあったとは……!)

怜(はぁ……やっぱおとなしくしとこ)


京太郎「連荘連荘、このままみんな飛ばしちゃうぜ」

久「いいからさっさとサイコロ振りなさい」

京太郎「また鹿倉みたいなこと言うなぁ」ポチッ





京太郎(またいい感じだな……おいおい、流れ来ちゃってるのか?)

京太郎(勝てる、勝てるんだ……!)


竜華「ツモ、一本場で2100・4100や」


京太郎「……」

久「短い天下だったわねぇ」

京太郎「うるさいっ、まだ俺がトップなんだからな!」





京太郎(って意気込んだのはいいけど……なにこの配牌?)

京太郎(もはや悪意しか感じねぇ……まぁ、いつものことだけどよ)トン


久「ロン、18000」


久「さ、点棒プリーズ」

京太郎「……うぃっす」チャラ


京太郎(早速まくられた……)


久「連荘よ。さっさと終わらせちゃいましょうか」





久「来た……ツモ! 4100オール」


京太郎「やべぇ、やべぇよ……」

怜「最下位……」

竜華「……」


竜華(うーん……このまんま好き放題させとくのは……)

竜華(出し惜しみせずにいこか)スッ


怜「……」トン

京太郎「……」トン

久「……」トン


竜華(怜は明らか力が入っとらん……あんまりやる気ないのかな?)

竜華(須賀くんは……表情筋が強ばってて、呼吸もちょい乱れとる……配牌悪そう)

竜華(竹井さんはポーカーフェイス。やけど、ほんのり上気して口角も僅かに上がっとる)

竜華(ここは拙速でも調子崩しといたほうが良さそうやな)



竜華「ポン」

竜華「チー」


久(……仕掛けてきた)

久(こっちの足を止めようって腹積もりだろうけど――)トン


怜「……ポン」


怜(危ない危ない……今度は跳満ツモられるとこやった)

怜(竜華ー、あとは頑張ってなー)


竜華「ツモ、700・1200」


竜華(今の副露……もしかして竹井さんがツモりそうだった?)

竜華(なら怜には感謝しとこかな……ありがと)

竜華(次はうちの親番……トキちゃん)


トキ『呼ばれて飛び出てやでー』ポンッ



怜(むっ、この感覚は……竜華の太ももから?)


トキ『きっちりナビしたるから頑張ってなー』


竜華(使用制限があるけど、この短い局数……使わな損や)

竜華(しっかり頼むで)


トキ『報酬に後で太ももスリスリさせてなー』


竜華(……怜に膝枕すればええんやろか?)


京太郎「……」


京太郎(なんも見えないけど、なんか変なのいるな)


トキ『変なのってなんやねん』

竜華(トキちゃん?)





竜華「ロン、5800」

久「はい」


久(なんかスタイル変わった?)

久(ちょっとやりづらくなったわね……)


怜(ふーむ……インハイ以降、こないな打ち方もしとったけど)

怜(まるで先が見えてるかのような……まさかっ)

怜(うちがスリスリしてた太ももに未来視パワーが……!)

怜(……なーんて、んなわけないやんな)






京太郎「……」


京太郎(そして安定の安牌なしおくん……もうやだっ)

京太郎(こっちか? それともこっちか?)

京太郎(ええい、ままよっ)トン


竜華「ロン、一本場で4200やな」

京太郎「……へい」


京太郎(……まあ、そこまで高いわけじゃないから良しとするか)

京太郎(まだ最下位じゃないしな)


怜「……」


怜(さすがにこのまんまはマズいなぁ)

怜(なんもせんでも、ツモでゴリゴリで持ち点が10000……)

怜(最下位は回避せんと……となると)チラッ


京太郎「?」

怜「……」ニコッ

京太郎「……」


怜(点数が一番近い須賀くんを引きずり落とす……!)

京太郎(……もしかして、ロックオンされた?)





怜「ロン、3900は4500」

京太郎「くそっ!」

怜「ふふん、これでビリとはおさらばや」


怜(とはいえ大した点差でもないし、だれかにツモられたら簡単にひっくり返る)

怜(ここはノミをかましておさらばやな)


竜華(トキちゃん、いけそう?)

トキ『ムリムリ、この局はあがれへんわ』フルフル

竜華(そっか……ならせめて聴牌はしとかんとな)


久(園城寺さんも仕掛けてきたわね)

久(トップを取る気はないみたいだけど、さすがに最下位はいやなのね)

久(ともあれ、あとは清水谷さんを警戒しとけば大丈夫そうね)



京太郎(あと一回、あと一回上がれれば……!)

京太郎(久ちゃんがトップにいる以上、最下位だけは……!)


怜「聴牌」

京太郎「……ノーテン」

久「聴牌」

竜華「聴牌」


京太郎(点棒取られてったよ!)


怜「一本場ー」





怜「……」


怜(聴牌……倍満かー、これ上がったらトップやん)

怜(さすがにそこまではなぁ)

怜(ま、無理してあがらんでもええか)

怜(ツモ上がりと放銃だけ気をつけとけば――)


竜華『ツモ、6100・12100』


怜(……アカン、竜華ツモる)

怜(しかも三倍満……そしたら親被りで最下位転落やん)

怜(須賀くんや竹井さんから直撃取りに行く可能性もあるけど……)


『怜? ちゃんと勉強せなあかんで?』


怜(勉強をさせられることも十分ありえる……)

怜(どうにかしてずらさななー……って、だれも鳴ける牌は出しそうに無し)

怜(せめてうちが捨てたので鳴いてくれれば……)トン



京太郎「……」

久「……」


怜(ありゃ、空振り?)

怜(……南無三っ)


京太郎「……」トン


怜「ろ、ロン」

京太郎「えっ」

怜「親倍で24300……あははー、見事に逆転やな」





久「あらら、負けちゃった」

竜華「もうちょいであがれたんやけどなぁ」

京太郎「結局最下位かよ……しかも飛ばされたし」

怜「ともに下手っぴやったころが懐かしいわぁ」

京太郎「あの頃のお前はどこに行ってしまったんだ……」

怜「もう、昔の私はいないの……だから、さようなら」

京太郎「待ってくれ! 俺はまだ君に言いたいことが……あいたっ」


京太郎「なにすんだよ久ちゃん……」

久「ほっとくとどこまでも脱線しそうだったから」

怜「せやせや」

京太郎「お前が乗せてくるからだろうがっ」

竜華「まぁまぁ、仲良しってことやん」

怜「ツーカーやし?」

京太郎「打てば響く?」

久「あーもう、また脱線する前にさっさと決めちゃってよ」

京太郎「あー……トップのご褒美ってやつか」



京太郎(最下位になったのは痛い。だけど、最悪とは言いがたい)

京太郎(なぜなら、俺と園城寺はある程度利害が一致しているからだ)

京太郎(勉強させたい勢の久ちゃんと清水谷、休みたい勢の俺と園城寺)

京太郎(少なくとも勉強に向かうことだけはないだろう、多分)


竜華「それで、どうするん?」

怜「せやなー……」


怜「うちと逃げて……とか?」


久「は?」

竜華「え?」

京太郎「なんだそりゃ?」


怜「よし決定、てなわけで……おいしょっ」ヒシッ

京太郎「いきなりのしかかってくんな」

怜「れっつらごー」

京太郎「いや、いきなり逃げてっつわれてもだな」

怜「うちはトップ、須賀くんは?」

京太郎「……わかったよ」



京太郎(そう、これはしかたなくだ)

京太郎(最下位はトップの言うことを聞かなきゃダメだからな!)


京太郎「そういうわけなんだ……逆らえないんだ……」

久「まこ、出口塞いで!」

まこ「じゃかあしいっ、今カツ丼のオーダーで手が離せんわ!」

京太郎「おさらばっ」ダッ

怜「ごーごー」


竜華「……行っちゃった」

久「私としたことが……」ハァ





京太郎「はぁ、はぁ……体力落ちたかな」

怜「うちが天使の羽のように軽いとはいえ、人一人背負ってあのスピードは大したもんやわ」

京太郎「そりゃどーも」

怜「怜ちゃん専用のでっていうに就職せぇへん?」

京太郎「却下。乗り捨てられて奈落の底はごめんだ」

怜「いけずやなぁ……んしょっと」ストッ


怜「さーて、なにしよか?」


京太郎「なにするかよりも、もっと切実な問題があるんじゃないのか?」

怜「せやな……須賀くんも同じ気持ち?」

京太郎「ああ、とにもかくにも――」


「「――寒いっ!」」



怜「コートも置いてきぼりで寒いの当たり前やん……」ブルブル

京太郎「あの状況じゃ持ってくる余裕はなかったよなぁ」

怜「と、とにかくどっか入らへん?」

京太郎「どっかねぇ……」


京太郎(適当に走ってたから、よく知らないとこ来ちゃったんだよな)

京太郎(ってか、ここらへんあんま開いてる店が……)


――ポツッ


怜「冷たっ」

京太郎「雨かよ……まぁ、最近気温上がってきたからな」

怜「濡れる前にはよっ」

京太郎「とりあえず軒下に避難するか」

怜「せやから寒いてゆーとるやん……あっ」


怜「あそこ、あそこのお城みたいな建物!」



怜「あれなら開いとるっぽくない? 今人出てきたし」

京太郎「お城みたいな……?」

怜「えーからはよはよっ」グイグイ


『平日ショートタイム(80分)1,990円均一』


京太郎「……」

怜「にわか雨っぽいし、一番安いこれでええんやない?」

京太郎「なぁ、俺も初めて入るけど、ここって……」

怜「なんやねん、ウブなネンネじゃあるまいし」

京太郎「それは男に使うセリフじゃないんだよなぁ」

怜「えーからラブホ入ろ」

京太郎「とうとうぶっちゃけやがった!」





怜「わぁ、思ってたより広ー」

京太郎「なんだってこんなとこに入ってんだか……」

怜「緊急避難緊急避難。なんか飲む?」

京太郎「こういうとこのは高そうだから遠慮しとく」

怜「せやなー……あ、テレビある。つけてみよ――」

京太郎「ストップ!」

怜「あぁん、リモコン返してー」

京太郎「ダメだ、テレビはダメだ」


京太郎(絶対変なのやってるから)

京太郎(もし大音量で流れてみろ。気まずいどころじゃなくなるぞ……)


『んううぅううっ! だめぇ! もうだめぇ! イクっ! イクイクイクゥ!』

『イキすぎィ!』


京太郎「……」

怜「お盛んやなぁ、おとなりさん」

京太郎「いやいや……」



京太郎(どうすんだよっ、なんか居心地悪くなったじゃねーか!)

京太郎(もうちょっと防音しっかりしとけよ!)

京太郎(こっちがなんかしたらむこうにも筒抜けってことじゃん!)

京太郎(いや、しないけどもさっ)


怜「……」


京太郎(こいつはこいつで平然としてるし……)

京太郎(まったく……内心で騒ぎまくってるのがバカらしくなってくるな)

京太郎(そうだ、こいつは清水谷が大好きだから滅多なことにはならないだろ)

京太郎(せっかく入ったんだし、文字通り時間一杯休憩してりゃいいんだよな)

京太郎(あくまでいつも通り。こんなふうに肩にゴミが付いてたら取ってやるぐらいの気安さで)スッ


怜「ひうっ」ビクッ


怜「な、なに?」

京太郎「悪い、ちょっと――」

怜「あないな声聞かされて落ち着かんのはわかるよ?」

京太郎「まぁ、それはそうなんだけど――」

怜「うん、うちもちょい変な気分なんやけど……イエスノー枕のイエスの方というか」



京太郎「だから、肩のゴミ取ろうとしただけだっての!」


怜「……」カァァ

京太郎「あー……断り入れてからやるべきだったな」

怜「……アカン、ハズい。めっちゃハズい」ボスッ

京太郎「悪かったよ……ちょっとシャワーで頭冷やしてくる」

怜「へ?」


怜「シャワーって……やる気満々?」

怜「どないしよ、どないしよ……」ゴロゴロ





――シャー


京太郎「……」


京太郎(なんでシャワー浴びてんだよ俺は!)

京太郎(バカなのか? 絶対勘違いされるだろうがっ)


京太郎「あーもうっ」ゴン

京太郎「いたた……」


京太郎(落ち着けよ、俺)

京太郎(シャワーを浴びたからなんだってんだ)

京太郎(普通に体拭いて、服着て、そんで園城寺にもシャワー浴びさせて……ってそうじゃなくてだな)

京太郎(ダメだな、予想以上に動揺してる)

京太郎(あいつがあんな反応するから……)


――キュッ


京太郎「転ばぬ先の杖ってのがあったらな……」

京太郎「ま、なるようにしかならないか」

京太郎「あいつは未来が見えたとき、どんなことを思うんだろうな」





怜「……」スゥスゥ

京太郎「……」


京太郎(そしてこのはしごを外された感……)

京太郎(別にいいけどさ。そういう目的で入ったわけじゃないし)


京太郎「……ふぅ」ボスッ

京太郎「寝るか。時間まではまだけっこうあるし」

京太郎「けど、その前に……バスローブでいいかな?」パサッ


怜「ん~……勉強やだぁ」ムニャムニャ


京太郎「病弱ってんなら体冷やさないようにしとけよな」

京太郎「さて、俺も……」





怜「んん……あれ、寝てた?」ハラッ

怜「バスローブ? いつの間に」

怜「須賀くんは……」


京太郎「……zzz」


怜「……寝てる」

怜「なんかされた気配もなし……なんやねんな」

怜「あれこれ考えとったのがアホらしくなるわ」

怜「ま、うちも寝てたんやけど」

怜「うーん、この無防備……これはなんかせんとあかんなぁ」

怜「そや、せっかくの機会やん。アレやってみよか」


怜「んしょ……頭重……」


京太郎(ん……なんだ? 頭を持ち上げられてる?)



怜「竜華に比べたら貧相やけど……って、膝枕じゃかなわへんな」

怜「恋敵とはいえ、認めざるをえんからなぁ」


京太郎(恋敵……そういや前にそんなこと言われたな)

京太郎(勝手に膝枕めぐって争ってることにされて)


怜「ところで須賀くん……起きとる?」

京太郎「……起きてる」

怜「寝たふりとか」

京太郎「今しがた起きたばっかだよ」

怜「ま、ええけど……で、うちの太ももの感想は?」

京太郎「スベスベしてる」ツツッ

怜「セークーハーラー」

京太郎「普段の自分を思い返そうぜ……よいしょ」

怜「もうええの?」

京太郎「いつまでも乗っかってたらしびれるだろ」

怜「その状態でグリグリするのも楽しいんやけど」

京太郎「やる方はな……それに、恋敵に膝枕してどうするんだよ」

怜「恋敵? うちと竜華?」

京太郎「なんでそうなる……お前らってそんな関係だったのか?」

怜「まぁ、そうなるんやないかな?」



京太郎(ちょっと待て、それだと……)


怜「今まで竜華の背中押してきたし、そろそろええかなって」

京太郎「……本気か?」

怜「うん、竜華の太ももと同じくらい須賀くんが好き」

京太郎「お前……もうちょっと例えようはないのか?」

怜「せやかて、それ最上級なんやけど」

京太郎「まぁ、そうなんだろうけど……」

怜「むぅ、いまいち反応薄いなぁ」

京太郎「悪い、どうもお前相手だと空気が」

怜「じゃあ……須賀くん、ずっと好きでした」

京太郎「なんだって! それは本当かい!?」


怜「……ふざけとらん?」

京太郎「いや、ほんとごめん。どうも条件反射で」

怜「む~」プクー

唐突にコンマ判定

高ければ高いほど(ry


直下

コンマ81以上 対面座位&キス


怜「……おいしょ」

京太郎「人の上に乗っかって何する気だ」

怜「行動は言葉よりも雄弁……そうやない?」

京太郎「……近いぞ」

怜「近寄らな、できないやん」

京太郎「わかった、もうわかったから」

怜「動かんといて、うちのこと嫌いでないなら……」

京太郎「お前……嫌われてないのわかってて言ってるだろ」

怜「もう、黙ってキスさせて……んっ」


怜「……どうやった?」

京太郎「どうもこうも……冷蔵庫からコーラ出して飲んだろ」

怜「てへ、バレちゃった?」

京太郎「まぁ、いいけどさ」

怜「お詫びに……もっかいキスする?」

京太郎「……もう好きにしてくれ」





怜「雨上がったなぁ」

京太郎「帰るのこえー……」

怜「ヤっちゃったもんはしかたないやん。デキちゃってた時は認知してな」

京太郎「ヤってないからデキもしないんだよなぁ」

怜「ひどいっ、うちとお腹の子は見捨てるのっ?」

京太郎「やめろ、この場所でそれはシャレにならない」


京太郎「相手の出方がわかれば対策できるんだけどな」

怜「備えあれば、的な?」

京太郎「転ばぬ先の、とかな。お前なんか見えないの?」

怜「そない便利やないしなぁ」

京太郎「そっかー、そうだよな」

怜「それよりも寒いからくっついてもええかな?」

京太郎「いいぜ。俺も寒いし、ここらじゃ知り合いもいないだろうしな」

怜「所詮うちらは人に知られたらいけない関係……そうなんやな」

京太郎「ちげーよ。ただでさえ俺はアレな噂が多いからってだけだ」

怜「噂? 事実の間違いやないの?」

京太郎「俺はまだ童貞だ」

怜「奇遇、うちも処女」



京太郎「……カミングアウトはさて置き、戻るぞ」

怜「ここは牛歩作戦でいこか。じっくり一時間ぐらいかけて」

京太郎「いや、上着もなしに一時間はさすがに辛い」

怜「せやせや。ほな、ぴったりくっつかんとな」ピトッ


怜「ね、ダーリン?」


京太郎「……まあ、寒いしな」

怜「あ、顔赤くなってる」

京太郎「寒いからな」

怜「ふふん、そういうことにしといたる」


京太郎(よく言うよな、自分だって赤くなってるくせに)

京太郎(ま、帰ったら揉めるのは目に見えてるし、今のうちに楽しんで――)


『覚悟は出来てる? 答えは聞かないけど』

『久ちゃんっ、この量は死ぬっ、死んじゃうからっ!』

『問答無用っ!』

『ぬわーーーーっっ!!』



京太郎「……」


京太郎(なんだ今の?)

京太郎(妙にリアリティが……)


怜「どしたん?」

京太郎「いや、なんでも。多分気のせいだろ」

怜「ふぅん」



京太郎(それが気のせいでもなんでもないことは、時計の長針が一巡する頃に明らかになる)

京太郎(もちろんそんな未来が待ってることは露知らず、俺たちは地獄へ向けて歩を進めるのみだったとさ)

京太郎(……めでたくなしめでたくなし)



というわけで終了

安価取りたいんですけど、人いますかね?

それじゃ、一応何らかの表です
一番上のグループはほぼエンディングが確定
あとは数字が高い順にエンディングに近いです
同じ数字でも上の方がエンディングに近いです
基本的に数値が低い人のほうが上がり幅がでかいです


久照:達成
久美穂子:達成
宮永姉妹:未
松実姉妹:未
はとこ二人:未 もうちょい
小蒔霞:達成
哩姫:未 もうちょい
怜竜:未

ED確定
大星淡
天江衣
桧森誓子
姉帯豊音
三尋木咏
神代小蒔
ネリー・ヴィルサラーゼ
宮永照
エイスリン・ウィッシュアート
白水哩
竹井久
福路美穂子
松実玄
薄墨初美
滝見春
石戸霞


真屋由暉子2


宮永咲5
清水谷竜華5
園城寺怜5
原村和
杉乃歩


小瀬川白望5
瑞原はやり
鶴田姫子


片岡優希4
龍門渕透華4
妹尾佳織3
小鍛冶健夜
染谷まこ
小走やえ
獅子原爽
国広一
石戸明星
松実宥


本内成香5
臼澤塞5
上重漫5
岩館揺杏5
雀明華5
狩宿巴5
花田煌5
ハギヨシ5
東横桃子4
弘世菫3
辻垣内智葉3
高鴨穏乃3
蒲原智美3
鷺森灼2
新子憧2
津山睦月2
針生えり2
郝慧宇2
加治木ゆみ2
内木一太2
高久田誠2
部長
メイド
井上純
荒川憩
愛宕絹恵
熊倉トシ
佐々野いちご
原村恵
夢乃マホ
南浦聡
久保貴子
メガン・ダヴァン
野依理沙
赤坂郁乃
福世恒子
アレクサンドラ・ヴィントハイム
戒能良子
鹿倉胡桃
十曽湧
宮永界


愛宕洋榎2
江口セーラ
藤田靖子
池田華菜
末原恭子
沢村智紀
吉留未春
文堂星夏
深堀純代
南浦数絵
二条泉
赤土晴絵
真瀬由子
村吉みさき
渋谷尭深
亦野誠子

そんじゃ、お好きなキャラを一人どうぞ

9分まで

締切

割ってきます

コンマ

由暉子:偶数
はやり:1-32内の奇数
宥:33-64内の奇数
一:65-82内の奇数
怜:83-00内の奇数

ゾロ目:?


直下

園城寺さんダブルっすか
未来読んでますね、これは

というわけでおいとまします



・二年、二月十四日、テンパリングとテンパることは別物である


京太郎「へへ、見てくれよこのチョコの数」

「お、これはなかなかの量だな」

「やるじゃない、このモテ男っ」

京太郎「やめろって……でも嬉しいよな、たとえ友チョコといえどもさ」


「……」

「……」


京太郎「なんだよ、二人して顔見合わせて」

「お前は本当にしょうがないやつだな」

「どうしてこうなっちゃったのかしらね?」





京太郎「なんで俺が呆れられなきゃいけないんだかな」

一「きっと須賀くんの(将来の)心配をしてくれてるんじゃないかな?」

京太郎「心配ねぇ……まぁ、心配はさせてたかもな」

一「ボクも色んな意味で心配かな」


一(そのうち刺されるんじゃないかってね)


京太郎「そういや、お前がキッチンの方にいるってのも珍しいよな」

一「そ、そうかもね」

京太郎「つってもバレンタインか。身内に配るチョコを生産中と見た」

一「う、うん、そうなんだ。透華とかにさ」


一(本当は他の人の分はもう出来てるんだけど……)

一(須賀くんのを作ってるなんて、本人を前にして言えないよね)

一(ほんともう、なんでこんな時に来ちゃうかな……)



京太郎「ぼーっとしてて大丈夫か? チョコ冷えるぞ」

一「え、あ……っとと、危なかったぁ」

京太郎「そんなテンパるなよ。落ち着けって」

一「はぁ……ま、いいけどさ」

京太郎「しかし、テンパリングとはまたこってんな」

一「今日はお休みで暇だしね」

京太郎「他の奴らも休みだったっけ?」

一「純くんは外出てるよ。今頃いっぱいチョコもらってるんじゃないかな?」

京太郎「ちくしょう、羨ましいなあいつ」

一「須賀くんだってチョコもらってるじゃん」

京太郎「あいつ絶対本命も受け取ってるだろ……」

一「……ボクは突っ込まないよ?」

京太郎「女同士だからって考えは甘いぞ?」

一「あ、ごめん。むしろそっちは思い至らなかったよ」



一「……それでさ、いつまでここにいるの?」

京太郎「え、邪魔だったか?」

一「見られてると落ち着かないかな」

京太郎「手先器用だし大丈夫だって」

一「テンパると手元狂っちゃうでしょ?」

京太郎「もうテンパってるだろ」

一「あのさ、テンパリングをテンパるとは普通言わないからね?」

京太郎「ごもっともだ……やれやれ」

一「なにかあった……じゃなくて、なにかやったの?」

京太郎「ちょっと待て。俺がなにかしたのは確定かよ」

一「違うの?」

京太郎「まぁ、違わないな」

一「ほらね?」

京太郎「ちょっと龍門渕をからかいすぎてさ……出口塞がれて逃げられないんだよ」

一「須賀くんって本当に楽しそうだよね」



『須賀京太郎! 隠れてないで出てきなさい!!』


京太郎「やべっ、こっち来た」

一「逃げたほうがいいんじゃない?」

京太郎「……だな」


透華「見つけましたわっ!」ガチャッ


京太郎「捕まってたまるか!」ダッ

透華「お待ちなさい!」ダッ


一「ふぅ……やっと静かになったよ」





京太郎「ひ、ひどい目にあったぜ……死ぬかと思った」フラフラ

京太郎「あそこまで手加減なしで来るとは……」


一「あれ、無事だったんだ」


京太郎「なんとかな……」

一「あんまり怒らせちゃダメだよ?」

京太郎「楽しくてつい」

一「つまり自業自得かな?」

京太郎「……そうとも言うな」

一「そうとしか言わないよね……はい、これ」

京太郎「チョコ……ああ、さっき作ってたやつ」

一「これで少し元気だしなよ」

京太郎「だな。ありがたく友チョコ受け取っておくよ」

一「……友チョコ」


一(ま、今はそれでいいや)


京太郎「早速食べていいか? 正直腹減って」

一「お好きにどうぞ」






京太郎「ひ、ひどい目にあったぜ……死ぬかと思った」フラフラ

京太郎「あそこまで手加減なしで来るとは……」


一「あれ、無事だったんだ」


京太郎「なんとかな……」

一「あんまり怒らせちゃダメだよ?」

京太郎「楽しくてつい」

一「つまり自業自得かな?」

京太郎「……そうとも言うな」

一「そうとしか言わないよね……はい、これ」

京太郎「チョコ……ああ、さっき作ってたやつ」

一「これで少し元気だしなよ」

京太郎「だな。ありがたく友チョコ受け取っておくよ」

一「……友チョコ」


一(ま、今はそれでいいや)


京太郎「早速食べていいか? 正直腹減って」

一「お好きにどうぞ」



あら、最後二重になった……
というわけで二年のバレンタインでした

眠いのでおやすみなさい



・二年、二月二十三日、普段余裕ぶってる人は不意打ちに弱かったりする


京太郎「一太ー、帰んねーの?」

一太「ぼくには使命がある……」

京太郎「使命?」

一太「そう……実はこの前、プロ麻雀カードの新しいのが出たんだ」

京太郎「あー、あれ。お前も集めてたんだな」

一太「そして今日というこの日……ぼくは必ず手に入れてみせるぞ」


一太「――うたたんのレアカードをっ!」


京太郎(これ、本人からカード送られてきたなんて言ったら殺されるな……)

京太郎(この前は義理チョコ送りつけてきたし)


一太「ふぅ……少し熱くなってしまったみたいだ。じゃ、ぼくは行くよ」

京太郎「お、おう……手に入るといいな」

一太「任せてくれ」グッ


京太郎(なんていい笑顔……夜空に浮かんでたら完璧だな)

京太郎(あ、それじゃ死んでるか)



久「内木くん、気合入ってるわねぇ」

京太郎「あいつはこれからせんべいとの戦いに明け暮れるんだとよ」

久「お菓子にトレカ付けるとか阿漕な商売じゃない」

京太郎「そんなの関係ないんだよ。きっとあいつはやるぜ?」

久「ま、日が日だしね」

京太郎「今日ってなんかあったっけ?」

久「たまには雑誌でも読んだら?」

京太郎「失礼な。漫画ならたまに立ち読みするわ」

久「……店に対して失礼なのはどっちなのやら」

京太郎「お堅いこと言うなって」

久「とにかくこれ、読んでみたら?」

京太郎「お、はやりん表紙。持って帰ってもいいのか?」

久「私は読んだから。それじゃ、また明日ね」

京太郎「ああ、じゃあなー」





京太郎「雑誌ねぇ……」ペラッ

京太郎「はやりんのグラビアでも載ってるんだったら毎回買うけどな」

京太郎「お、三尋木プロの特集か……なになに?」


――プルルル


『三尋木プロ』


京太郎「……なんつーか、またタイムリーな」


京太郎「もしもし」

咏『でさ、なんか感想とかないわけ?』

京太郎「開口一番なんだよ」

咏『悲しいねぃ、せっかく真心込めて贈ったのに』ヨヨヨ

京太郎「泣き真似泣き真似」



京太郎「ま、チョコはおいしかったよ」

咏『お返しに期待しても良かったり?』

京太郎「高校生にたかるな社会人」

咏『じゃあ推理作家になるってのは?』

京太郎「三尋木京太郎サスペンスか……」

咏『婿入りする?』

京太郎「冗談はさておいてだな」

咏『……冗談、ねぃ』

京太郎「常識的なお返しなら期待しててくれよ」

咏『というと、三倍返しじゃね? 知らんけど』

京太郎「そっちに都合がいい常識だなぁ」

咏『あ、お小遣いの三ヶ月分でいーよ?』

京太郎「指輪でも買えってのか……ってか、だから高校生にたかんなっての」

咏『ま、別に高いものがほしいわけじゃないしねぃ』

京太郎「真心込めてクッキーでも送るよ」

咏『そこはアメでいいんじゃね?』

京太郎「アメ? まぁいいけどさ」



京太郎(もしかしてアメって人気だったりするんだろうか?)


京太郎「あ、そうだ」

咏『やっぱ婿入りしとく?』

京太郎「そうじゃなくて、誕生日おめでとう」

咏『……』

京太郎「もしもーし?」

咏『ん、ああ……じゃあおにーさんの真心、期待して待ってるぜっ』プツッ


京太郎「……いきなりかけてきて、いきなり切りやがった」

京太郎「にしても、まさか今日が誕生日だったなんてな」

京太郎「一太が張り切るわけだ……電話かけてきたのも案外それが理由だったりしてな」

京太郎「はは、まさかな」





えり「三尋木プロ、明日のことで話が……なにかいいことでもありましたか?」

咏「別に、普段通りじゃね?」

えり「あなたがそんな風に笑っているのは珍しいことだと思いますけど」

咏「……笑ってないっての」

えり「ふふ、そういうことにしておきますね」

咏「だからえりちゃんさぁ……」



というわけで誕生日おめでとう

眠いのでおやすみなさい

こんばんはー

明日は休みだからやりますとも

それじゃ、もうちょっとしたらで

んじゃ、そろそろ始めます



・三年、冬、素敵な未来の探し方


京太郎「ぐふっ」バタッ

怜「げふっ」バタッ


久「今日はこのぐらいにしておきますか」

竜華「ど、どないしよ、二人が……」オロオロ

久「大丈夫、そのうち復活するでしょ」


怜「う、うちはもうダメや……せめて須賀くんだけでも助けたってや……」

京太郎「バカなこと言ってんなよ、二人で乗り越えるって決めたろっ」

怜「約束、守れへんかった……ごめん」

京太郎「おい、しっかりしろよ、おいっ!」

怜「最後は……名前、で……」ガクッ

京太郎「トキィィイイイっ!!」



久「ほらね? まだ平気そうだからもう一冊ぐらい増やそうかな?」


京太郎「それだけはっ」

怜「どうかご寛恕のほどをっ」


久「というわけで、二人なら大丈夫よ」

竜華「ならええけど……」

まこ「小芝居が終わったら出て行かんか。いつまでうちに居座るつもりじゃ」

竜華「部屋貸してくれてありがとうございます」ペコ

まこ「これは丁寧にどうも」ペコ

京太郎「俺らにとってはひたすら都合が悪かったけどなっ」

怜「まったくもってそのとーり」

久「はぁ……あんたたちこそ感謝しなさいよ」


久「もう遅いけど、今晩どこか泊まってくの?」

竜華「あっ……」

京太郎「まさか、考えてなかったパターンか?」

怜「そういえばなんも聞いとらんかったわ」

久「あるわよね、そういう気持ちだけ先走って行動を起こすの」


久(それが誰へのどんな気持ちなのかは置いておくとして)



久「ヒッチハイクで岩手まで行こうとか言い出したり」

京太郎「あれは無事着いたからいいだろ」

久「ダーツで行き先決めようとしたり」

京太郎「それは久ちゃんもノリノリだったろ」

まこ「まったくじゃ」ウンウン

久「……まあ、だれにでもそういうことはあるわよね」

怜「なにやっとんねん」

久「それよりも今日の寝床よ!」

まこ「あんたが困っとるわけじゃないけぇのう」


京太郎「それに、もっと差し迫った問題があるだろ」グゥ

怜「……せやな」グゥ

竜華「あ、そういえば……」グゥ

久「ご飯まだだったわね」グゥ



まこ「まったく……寝食忘れて勉強かい。さすが受験生」

京太郎「ふっ、受験生か……いやな響きだぜ」

怜「右に同じく」

久「もうちょっとなんだから頑張りなさいよ」

竜華「長野来たらやる気出すって言うたやん」

怜「ごほっ、持病の癪が……」

竜華「また具合悪いふりして」

怜「バレちゃった?」

京太郎「いいからメシ食おうぜ……」

久「そうね……」

京太郎「というわけでまこっちゃん、カツカレー一丁」

まこ「帰れ」





京太郎「叩きだされちゃったぜ」

久「今回は長く居座りすぎたわねぇ」

竜華「好意で場所貸してもろてたわけやん、しかたないわ」

怜「カツカレーがあかんかったわ」

京太郎「やっぱカツ丼じゃないと駄目だったか……」

竜華「え、そうだったん?」

久「その二人のペースに飲み込まれちゃダメよ」


久「さて、晩御飯どうする?」

竜華「うちらはどっかお店に入るつもりやけど」

京太郎「店ね……」


京太郎(ラブホで支払った金額が痛い……)



京太郎「お、俺は家で食べようかな?」

久「つまり、一食分の外食すら厳しい懐状況と」

竜華「それならうちが出してあげてもええよ?」

京太郎「それは、プライドが邪魔して……」

怜「おんぶにだっことか最高やん。特に須賀くんのは」

京太郎「お前がおんぶにだっこなのは清水谷だろうが」

怜「せやなぁ」

久「そこは否定しないんだ」

竜華「たしかに甘やかしすぎてる気がする……うちもちょい厳しくした方がええんかな?」

怜「それはとんでもない! 竜華、みんなちがってみんないい、やで?」

竜華「よそはよそ、うちはうちって?」

怜「せやせや」

竜華「う~ん……」


久「丸め込まれそうね、これは」ヒソヒソ

京太郎「ああ、まったくだ。久ちゃんもこれぐらい物分りがいいと助かる」ヒソヒソ

久「よし、明日のメニューは倍ね」

京太郎「ごめんなさいっ」



怜「お腹すいたー、はよどっか入らんと」

京太郎「俺はここでお別れだな」

竜華「ホンマに帰るん?」

京太郎「最悪自分で作ればいいわけだしな」

怜「うーむ、この高校男児とは思えぬ発言」

久「ホントね……しかもそこらの女子より料理できるっていうね」

竜華「ちょい気になるなぁ」

怜「あ、それなら須賀くんちに――」

京太郎「うちの母さんがうるさいから勘弁してくれ……」

久「うるさい、ね……まぁ、そうよね」

竜華「たしかにこないな時間にいきなりお邪魔するのも非常識やわ」

怜「案外堅いんやな、須賀くんち」

京太郎「そ、そういうわけだからさ」


京太郎(母さん会わせる=めんどくさいことになるの法則があるからな……)

京太郎(うるさいってことも嘘を言ってるわけじゃないし、久ちゃんも否定しないわけだし)


久「ところで、私に提案があるんだけど」



竜華「提案?」

久「せっかくだし、一人だけハブるなんて形はイヤじゃない?」

怜「ぼっちはややなー……かわいそうに」

京太郎「ぼっちじゃないし別にハブられてもいないから、とりあえず哀れむんじゃない」

怜「……わかっとる、よーくわかっとる。ぼっちはみんなそう言うんや」ポン

京太郎「べ、別にぼっちキャラとかじゃないから! ちゃんと男友達だっているから!」

怜「ほほう、どんな?」

京太郎「えーっと……」


京太郎「真面目くさったロリペド野郎に、ハンドル握ると性格変わる執事さんに、見た目の割に度胸のない後輩……とか?」


竜華「あはは……中々の面子やん」

京太郎「一部が尋常じゃないのは認める」

怜「竹井さん、真偽は?」

京太郎「なんで俺の言葉を信じないっ」

久「ふむ……」


久(内木くんに萩原さん、それにあの子は……高久田くんだっけ?)



久「まぁ、ウソは言ってないんじゃない?」

怜「ホンマに友達おったんやなぁ」

京太郎「だからぼっちじゃないって言ってるだろ!」

竜華「せやせや、須賀くんにはうちもおるし」

怜「そら竜華やうちみたいのも含めたらぼっちちゃうわな」

久「問題は男女比よね」

怜「3対……いっぱい?」

京太郎「お、男友達が三人だけとは言ってないから……」

怜「先生、真偽は?」

久「これはウソね」

京太郎「即答かよ!」

竜華「大丈夫……うん、須賀くんは友達がたくさんやんな」

京太郎「……ごふっ」ガクッ

竜華「えっ」


怜「あ、トドメ刺した」

久「優しさって時に痛いのよね……」





久「それで、私の提案の事なんだけど」

怜「やっと本題? 遠回りやったなぁ」

久「……毎度話を逸らしてる主犯がだれなのかは置いとくとしてね」


京太郎「……」ズーン

竜華「大丈夫?」

京太郎「もう、どうにでもなーれ……」


怜「須賀くんやさぐれてもーたし、話進めよか」

久「はぁ……ご飯の事なんだけど、一人金欠がいるわけでしょ」

竜華「須賀くんの分やったら払ってもええよ?」

久「でもプライドが邪魔してそれはできないと」

怜「そんなんポイーでええやん」

久「そこらへんのメンドくさいとこをどうにかしてあげるのも女の甲斐性じゃない?」

怜「なるなる」

久「つまりね、お金以外のもので対価を要求すればいいのよ」

竜華「お金以外のもの……」

久「率直に言うと、体で払えってことね」



竜華「体で?」

怜「漫画でよくあるやん。『ぐへへ、金がねぇなら体で支払ってもらうぜ!』みたいなん」

竜華「なっ!」カァァ


久「ここまで言えばわかるでしょ?」

京太郎「……わかってるさ、もう慣れっこだ」

竜華「慣れっこって、いつの間に!?」

怜「爛れまくりやなぁ」

京太郎「それで、どこでやるんだ?」

久「あんたの家がダメなら私の家しかないじゃない。まこには締め出されちゃったし」

京太郎「今日は誰もいないのか?」

久「おあつらえ向きにね」

竜華「……」


竜華(は、初めてが四人でだなんて……)ドキドキ



京太郎「じゃあその前に買い物しなきゃな」

久「そうね、色々切らしちゃってるし」


竜華(買い物て、もしかして……こ、こんどー……)ボンッ


竜華「あうぅ……」

怜「ふむふむ……」


怜(おもろいから黙っとこ)





京太郎「へい、おまち!」コト


竜華「……」

怜「材料や場所の提供と引き換えに労働力を差し出す……これが体で支払うってことやな」


竜華(食材買い始めてから、あれって思ったけど……)


京太郎「一か月ぐらい前にもこんなことしてた気がするな」

久「高校卒業の手前になって家出だもんね」

京太郎「泊めてもらってたぶんの労働力は提供しただろ」


竜華「恥ずいぃ……もうどっか隠れたい……」

怜「竜華ー、お夕飯冷めちゃうでー」


怜(それよりも、二人がサラッと重大なこと言うとるけど……家出とか泊めたとか)

怜(せやけど須賀くんがウソ言うとらんかったら、結局はなんもなかったんやろか?)



久「それじゃあ食べますか。大丈夫、清水谷さん?」

竜華「ううぅ~~」ゴロゴロ

怜「今は自分と向き合ってる最中やねん」

京太郎「ここに来るまでにどんな心境の変化が……」

怜「原因は主に須賀くん」

京太郎「って俺かよ。適当なこと言ってないだろうな?」

怜「残念。真実はいつも一つって死神もゆーとるやん」

京太郎「じっちゃんの名にかける方は……っていかんいかん、いつまでも同じ手に乗せられてたまるか」

怜「なん……やと……?」

久「ご飯がかかってるからじゃない?」



怜「ひどいっ! ご飯とうちとどっちが大事なのっ?」

京太郎「すまない、三大欲求には勝てなかったんだ……」

怜「こうなったら体を使ってでも……!」

京太郎「やめてくれ、そんなの間違ってる!」

怜「間違ってたってかまへん、須賀くんをつなぎとめられるなら……」

京太郎「園城寺……」


久(結局乗せられてるのよねぇ……)

久(この二人、波長が合うのかしらね?)


久「ほら、起きないとスカートめくるわよ」ピラッ

竜華「ひゃっ」





竜華「ごちそうさまでした」

怜「ごちそーさま」

久「ごちそうさま」


京太郎「洗っちゃうから食器下げてくれ」

久「お風呂洗いたいから急いでね」

京太郎「五分ぐらいで終わるって」


竜華「なんか手伝う?」

久「気にしなくてもいいわよ?」

京太郎「材料費出してもらったしな」

怜「せやせや、ドーンとかまえてればええやん」

京太郎「お前はなんかしたっけ?」

怜「マスコットとしてみんなの癒しになりました」

京太郎「そうかそうか、ならしかたないな」

怜「癒しは大事やねん」ウンウン



京太郎「清水谷、こいつが風呂の準備ができるまで勉強したいってよ」

怜「!?」


竜華「怜、やっとやる気出してくれた……」

怜「うっ、急にお腹が……」

竜華「照れんでもええやん。ほな、早速……」ゴソゴソ

怜「ちょっ」


怜「す、須賀くんの裏切り者~!」


京太郎「生きて帰ってこいよー」

久「いいからさっさと食器洗ってよ」

京太郎「うぃっす」





怜「」


京太郎「逝ってしまったか……」

竜華「今日は頑張ってたし、疲れてたんやな」

京太郎「うん、まぁ……なにも言うまい」

久「あんたも一回逝っとく?」

京太郎「一杯やる? みたいな気軽さで勉強をすすめるなっ」


京太郎「俺はもう帰るよ。こんな時間だしな」

竜華「うちらもどっか泊まる場所確保せんと」

久「うちに泊まっていけばいいじゃない。せっかくお風呂も用意したし」

京太郎「ま、パジャマはサイズが合わないと思う――いででっ!」

久「あんたの軽口は災いの元っていつになれば覚えるのかな……!」ギリギリ

京太郎「覚えた覚えた覚えたからっ」





怜「んん……ここは……」

竜華「あ、目ぇ覚めた? 竹井さん上がったらお風呂入れるよ?」

怜「もしかして、今日は竹井さんちにお泊り?」

竜華「感謝せんとな」

怜「せやな、ほぼほぼ無計画でこっち来たし」

竜華「あ、あはは……ごめん」

怜「そういえば、須賀くんは?」

竜華「帰った。もう遅いし」

怜「ふーん……竜華、残念?」

竜華「せやなぁ……ちょっと」

怜「もし、須賀くんも泊まるってことになってたら」

竜華「なってたら?」

怜「体を持て余した若い男女、始まるのはくんずほぐれつのらんこ――」


竜華「わー! わー!」



怜「なんやねん、いきなし大声出して」

竜華「怜こそなに言うとるの!?」

怜「え? 竜華も似たようなこと考えてたんやないの?」

竜華「それは……」

怜「体で支払うっちゅーのをエロいことと勘違いしてみたり」

竜華「うなっ!?」カァァ

怜「竜華やらしーわぁ」

竜華「い、言わんといてぇ……」


久「お風呂いいわよー」ガチャ


竜華「ううぅ~~」ゴロゴロ

久「……なんで逆戻りしてるわけ?」

怜「ちょいからかいすぎちゃった、てへっ」





京太郎「おはよ……」


「早起きね、今日なんかあったっけ?」

京太郎「例によって勉強会だよ」

「頑張ってるわねぇ」

京太郎「毎日死に体だよ……」

「ごめんね? 勉強に関してはあんまり教えてあげられないから」

京太郎「いいよ、別に。俺には鬼教師がついてる」

「久ちゃんのこと? だめじゃない、そんな風に言っちゃ」

京太郎「母さんはなにも知らないからそう言えるんだよ……」

「そうかなぁ?」


(一緒にいたいからって考えたら自然なんだけど)


「今日はうちで勉強するの?」

京太郎「いや、久ちゃんち」

「なぁんだ、楽しみだったのに」

京太郎「その一言で連れてこなくてよかったって安心できるわ」

「ちょっとぉ、どういう意味?」





京太郎「はよーっす」

怜「ねむ……おはよー」

京太郎「無事生きてたか」

怜「まさかあそこで裏切られるとは……」

京太郎「暇そうにしてただろ」

怜「暇でええやん、むしろ暇がええやん」

京太郎「ウソ言うな。お前は暇だったら構えって引っ付いてくるタイプだ」

怜「せやな、つまり暇やったらベタベタイチャイチャできるってことやん」

京太郎「……どっちにしろ俺らにそんな時間はないぞ」


久「さて、まずはお昼まで過去問でもやりますか」

竜華「なんの教科がええかな?」


怜「……うちと一緒に地獄まで来てくれる?」

京太郎「行くしかないんだろ? ならとことんまで付き合ってやるさ」

怜「嬉しい……ずっと、はなさへん」ギュッ

京太郎「ああ、俺もだ……」ギュッ


――そして二人は幸せなキスをして終了。





京太郎(――となるわけがなく)


京太郎「ぐふっ」バタッ

怜「げふっ」バタッ


久「そろそろお昼時ね」

竜華「二人共、お疲れさん」


京太郎「……生きてるか?」

怜「……死んどる」

京太郎「……そうか」

怜「……お腹減った」グゥ

京太郎「……死体でも腹は減るのな」

怜「……三大欲求には勝てないんや」

京太郎「……死んでるんじゃないのか」



京太郎「で、昼はどうする?」ムクッ

竜華「わ、復活した」

京太郎「例によって俺は金ないからな」

久「今のあんたってホント甲斐性ゼロよね」

京太郎「しかたないだろっ、バイトする暇がないんだよっ」


竜華「お昼どうする? 昨日の晩と同じ?」

京太郎「また俺が体で支払うわけか」

竜華「……」カァァ

京太郎「ど、どうしたいきなり?」

竜華「な、なんでもあらへんよ?」

怜「またいつもの妄想やねん。エロいこと――むがっ」


竜華「わー! わー!」

怜「むー! むー!」



京太郎「仲いいなぁ、と思っておこう」

久「そうね、深く突っ込んだら蛇が出るわよ」

京太郎「で、昼はまた俺が作るのか?」

久「それならちゃんと考えてるから。もうすぐ来るんじゃない?」


――ピンポーン


京太郎「出前でも呼んだのか?」

久「出前だとあんたが払えないでしょ」

京太郎「それもそうだ」


『久、いないの?』


京太郎「この声……みほっちゃん?」

久「そういうこと。はいはーい」


美穂子「こんにちは、お邪魔するわ」



久「悪いわね、来てもらっちゃって」

美穂子「いいのよ、忙しいわけじゃないし」

京太郎「これで今日の昼飯は安泰だな」

美穂子「待っててくださいね、今作りますから」

久「あそこでじゃれあってる二人の分もお願いね」

京太郎「俺もなんか手伝おうか?」

美穂子「ゆっくりしててください。勉強してたんですよね?」

京太郎「……ありがとう、その言葉だけで今日は戦える」


――ピンポーン


京太郎「まだ他にも呼んでたのか?」

久「せっかくだし声かけとこうかなって」

京太郎「となると候補は限られてくるな……加治木か?」

久「アタリ、というわけで出迎えて」

京太郎「はいはい……加治木ー、入っていいぞー」


ゆみ「お、お邪魔する……」フラフラ



京太郎「大丈夫か? 体調悪そうだけど」

ゆみ「蒲原が、送ると言って聞かなくてな……」

京太郎「……つらかったな」

ゆみ「いきなりで悪いが少し休ませてくれ……うっ」

京太郎「加治木……? 加治木ぃーーっ!」


ゆみ「……静かにしてくれないか?」

京太郎「悪い、つい雰囲気出しちゃって」





久「というわけで、今日の面子が揃いました」

京太郎「つっても知り合いしかいないんだけど」


怜「どうもどうも、園城寺怜言います」

竜華「清水谷竜華、よろしくお願いします」


美穂子「たしか、この前清澄でお会いしましたよね?」

怜「もちろん覚えとる。あんたの膝枕……あれはええもんやったわ」

竜華「え……と、怜?」

京太郎「見ろよ、複雑な三角関係だ」

ゆみ「突っ込みどころが多すぎるな……さて」


ゆみ「加治木ゆみだ。今日はよろしく頼む」


久「というわけでこの六人が今日のメンバーよ」

美穂子「私はお手伝いさせてもらいますね」

京太郎「みほっちゃんのサポートなら大歓迎だよな」

美穂子「ふふ、頑張ってくださいね」



竜華「……」

怜「あらま、やっぱ強敵やん」

竜華「……負けへんもん」

怜「なら決着つけんとな。ええ方法あるで?」


怜「福路さん、こっち来てもろてええかな?」

美穂子「なんですか?」

怜「そんで、ここに正座して」

美穂子「はい。あの、それで……?」

怜「じゃあ竜華、福路さんの隣に正座して」

竜華「えっと、失礼します……それで?」

怜「二人共、密着するぐらい近寄って」

美穂子「密着、ですか?」

竜華「怜、一体何する気?」

怜「ええからええから」



ゆみ「なんというか、彼女からは松実玄と似たような匂いを感じるな」

京太郎「なるほど、なにしようとしてるのか大体わかった」


美穂子「これでいいのかしら?」

竜華「言われた通りくっついたけど……」

怜「よしよし、それで仕上げに……」ゴロン


怜「ダブル膝枕……最高やん!」スリスリ

美穂子「きゃっ」

竜華「と、怜!?」

怜「もうちょい堪能せんと決められへんわー」スリスリ


ゆみ「なんだこれは」

京太郎「見た目はJK、中身はおっさんってな」

ゆみ「またこういう手合いか……」ハァ

久「安心して、蒲原さんに通じるところもあるから」

ゆみ「不安材料しかないな……」

京太郎「とりあえず飯食うから引っぺがすぞ」





京太郎「食べた食べた、おいしかったよ」

美穂子「お粗末さまでした♪」


怜「恋する乙女……もしくは新妻か」

竜華「……」


美穂子「今片付けちゃいますから」

京太郎「じゃあ、俺も手伝う――」


竜華「――うちがやるっ」


京太郎「そうか? じゃあ頼むわ」

竜華「うん、須賀くんはゆっくりしてて?」

京太郎「ああ、ありがとな」

竜華「福路さん、よろしく」

美穂子「えっと、はい」



ゆみ「火花が散っているように見えるな。気のせいか?」

久「多分気のせいじゃないのよね」

ゆみ「君にとっても頭が痛い問題だと思うが」

久「だから原因をちょっとだけ遠ざけますか」


久「京太郎、暇なら買い物行ってきてくれない?」

京太郎「……金ないぞ?」

久「代金は出すわよ」ピラッ

京太郎「わかった、腹ごなしに行ってくるよ。何買ってくる?」

久「お菓子とか適当に」

京太郎「りょーかい」



京太郎「というわけで行くぞ」

怜「うちも?」

京太郎「お前はだらけまくりだからな、ちょっとは動け」

怜「えー、やだ」

京太郎「やだじゃない。ほら」グイッ

怜「あーん、誘拐されてまうー」ズルズル


ゆみ「あれはいいのか?」

久「いいんじゃない? 逃げ出したら酷い目に遭うってわかってるだろうし」

ゆみ「また随分とアレな発言だな……」


ゆみ(それに、そういう意味じゃないんだがな……)





京太郎「外の空気がうまい……!」

怜「さむ……」

京太郎「これから暖かくなるって」

怜「ぬくもらせてー」ピトッ

京太郎「はいはい」


怜「……ね、またどっかで時間つぶしせぇへん?」

京太郎「金がないから却下」

怜「須賀くんと一緒なら十分」

京太郎「その言葉は嬉しいけどな……昨日の今日でやったらマジでやばい」

怜「むぅ……うちもとばっちりは勘弁やな」

京太郎「そういうことだ。ここは牛歩くらいで済ませてくれ」

怜「はーい」





京太郎「……勉強したくねーな」

怜「右に同じく」

京太郎「お前、やっぱり清水谷と同じとこ狙ってるのか?」

怜「須賀くんは竹井さんと同じとこ?」

京太郎「まぁな、記念受験みたいなもんだけど」

怜「気楽やなぁ」

京太郎「あんなに苦しんでるのに気楽だと?」

怜「うちに比べたらそれはもう」

京太郎「の割にサボってるような気がすんな」

怜「まぁ、逃げ出したいことは誰にでもあるっちゅーことで」

京太郎「それが頻発してるんじゃねーの?」

怜「うち、病弱やから……」

京太郎「はい、アピールいただきました」



京太郎「しかし、推薦組羨ましいな」

怜「せやなぁ」

京太郎「久ちゃんもみほっちゃんも清水谷も、決まってるんだもんな」

怜「ホンマ、かなわんわ……」ハァ

京太郎「ため息か、幸せが逃げてったな」

怜「その分須賀くんで補充するから」

京太郎「俺が不幸になるだろ」

怜「病弱美少女一人が特典ゆーたら?」

京太郎「胸がもうちょっと大きかったら考える」

怜「むぅ」ビシビシ

京太郎「はは、そんな攻撃が効くか」

怜「疲れた……おんぶ求む」

京太郎「本当にきついならしてやるよ」

怜「あらら、バレてた?」

京太郎「まぁな」


京太郎(しかしこいつ、清水谷の推薦に思うところでもあるのか?)

京太郎(気のせいならそれはそれでいいけど)





京太郎「こんなとこか?」

怜「重……」

京太郎「軽い方持たせてんだけど」

怜「麻雀牌より重いもの持ったことあらへんし」

京太郎「嘘つけ」


京太郎「でもまぁ、ちょっと買いすぎたかもな」

怜「もらった代金ほぼ使い切ったし」

京太郎「全部使うなとは言われてないからな」

怜「ちょっとつまんでもええかな?」

京太郎「……ま、休憩にはちょうどいいか」

怜「ほな、どっか座ろか」





怜「んー、高カロリーのスナック菓子うまー」

京太郎「そういうものの方がおいしく感じるって言うしな」

怜「つまり、これは生き物としての本能やな」

京太郎「それが延いては太ることにつながると」

怜「なん……やと……?」


怜「もう、体重どうこう言うのは反則ー」

京太郎「言わば極論だから気にすんな」

怜「このデリカシーのなさは減点やな」

京太郎「何点残ってんだ?」

怜「一万点ぐらい?」

京太郎「多いな……」

怜「まぁ、ダーリンやし」

京太郎「せめて受験が終わるまでは勘弁してくれ……」

怜「受験かぁ……もう目前やん」ハァ

京太郎「またため息が深いな」

怜「そう?」

京太郎「だな、推薦組がどーだとか話してた時もそうだったな」

怜「よく見とるやん、もしかして両思い?」

京太郎「ま、話したくないならそれでいいよ。俺も逃げたいのは一緒だしな」

怜「……せやな、吐き出しとくのもええかも」



怜「うち、友達作るのとか苦手な陰キャやん?」

京太郎「いや、初対面でもけっこうグイグイ行く印象なんだけど」

怜「最初はええんや、最初は。二回目以降は何話したらええかよくわからんし」

京太郎「なるほどなぁ、そういうもんか」

怜「須賀くんはわかりやすい陽キャやんな」

京太郎「まぁ、否定はしない」

怜「小学校のころもぼっち気味で、竜華に目をつけられたり色々あって、今はこうしとるわけ」


怜「高校まではなんとかなった……」

怜「せやけど、セーラはプロ入りするし、竜華は推薦とるし……」

怜「正直、置いてかれそうで怖い……」



京太郎「それで逃げ出したいってのはあれか、もしダメだったらって考えたらってことか」

怜「正解、ようわかっとるやん」

京太郎「しかしな、強豪校のエースだったなら麻雀で推薦はとれるだろ」

怜「それも考えた……けど、セーラ見てたらできんかった」

京太郎「麻雀真剣にやってるやつに失礼だと思ったってか?」

怜「たまたま未来見えるだけで、それ抜いたら大したことあらへんし」

京太郎「それだよ、明るい未来でも見られりゃ少しはいいんじゃねえの?」

怜「そんな未来が都合よくあればええんやけどな」


京太郎(陰キャと自分で言ってるだけあって結構ネガティブだな)

京太郎(普段のアレは殻かってところか……)

京太郎(まぁ、でも……それがなんだって話か)


京太郎「なら、俺が見てやるよ」

怜「須賀くんが?」

京太郎「ああ、素敵な未来ってやつを見つけてやるさ」





京太郎「……」

怜「……抱き心地どう?」

京太郎「……やわらかい」

怜「欲情した?」

京太郎「……そういう趣旨じゃない」

怜「否定はせぇへんのな」

京太郎「うるさいな、もっと強くするぞ」ギュッ

怜「ぁんっ……これなんか意味あるん?」

京太郎「色々あるんだよ。最初に言ったろ」

怜「しばらく麻雀で勝てなくてもって話?」

京太郎「そうだよ」

怜「具体的になにするとかは言っとらんかったやん」

京太郎「……いいから黙って抱かれてろよ」


京太郎(ダメだ、まだ足りないな……)

京太郎(どこかでブレーキかかってんのかな?)

京太郎(やっぱり問答無用でタガを外すなら……)



京太郎「……園城寺、悪い」

怜「見えへんかった?」

京太郎「違う……その、もっといいか?」

怜「やる気満々やん」

京太郎「いいのかダメなのか、どっちだよ」

怜「……ええよ、須賀くんがしたいなら」

京太郎「じゃあ……」

怜「うん……んっ――」


京太郎(来た……!)

京太郎(でも、見たい未来を自由に選べんのか?)

京太郎(一巡だか二巡だか、そういう制限があるとは聞いてるけど)

京太郎(あんまり遠くを見るとすごい疲れるとも……)

京太郎(……なんでもいい、とにかく明るいのだ)

京太郎(こいつが笑ってるような、そんな素敵な未来ってやつを……!)

唐突にコンマ判定
高ければ高いほど(ry


直下

コンマ21以上 怜との未来、希望編


『名前、もう考えとる?』

『ああ……男だったら望で、女だったら希とかいいんじゃないか?』

『そらまた希望に溢れとるなぁ』

『まだ全然膨らんでないのに気が早いかな?』

『今から未来でパンパンになるんやな、うちのお腹』

『まぁ、そうだな』

『目一杯パンパンされた結果やな』

『怜……もうちょっと言い方ないのか?』

『じゃあ、まぐわったとか?』

『また直球だな』

『ええやん。ともかくヤってデキちゃったんやから認知してな、ダーリン』

『結婚してるのに認知もなにもないだろうが……』

『ふふ、せやな』



京太郎「……今のって」

怜「なんか見えた?」

京太郎「怜……?」


京太郎(何巡……何年後だ?)

京太郎(わからないけど、俺とこいつが話してて)

京太郎(……子供のことだったか?)



怜「須賀くん?」

京太郎「悪い、なんか一気に体力がな……」

怜「うちは三巡くらいでもうフラフラやけど」

京太郎「何巡とかは意識してなかったけど……大人になってたな、俺たち」

怜「どんだけ遠くまで見とんねん」

京太郎「仕方ないだろ、初めてだったんだから」

怜「で、どないな未来やった?」

京太郎「……明るい未来?」

怜「せやから詳細」

京太郎「明るい未来は明るい未来だ」

怜「期待させといてなんやねんな」

京太郎「ともかくそういう未来があるってことだ」

怜「ぶーぶー」

京太郎「そろそろ帰るぞ。あんま時間かけすぎても怪しまれるしな」

怜「せやなぁ」



怜「ところで、うちら結婚してた?」

京太郎「……話飛びすぎじゃないか?」

怜「女の勘ってやつ?」

京太郎「それがなんで結婚になる」

怜「須賀くんが詳しいこと言わへんから」

京太郎「別に、大したことじゃないからだよ」

怜「言わへんのは明るいってのが嘘か、もしくは気恥ずかしいから……みたいな?」

京太郎「……明るいってとこに嘘はない」

怜「ならもう一個……さっきなんで名前で呼んだん?」

京太郎「名前? いや、あれは……」


京太郎(未来でそう呼んでたから、つられたんだ)

京太郎(なんて言えるかよっ)



怜「結婚かぁ、たしかに素敵で明るいやん」

京太郎「あのな、だから俺はそんなこと言ってないだろ」

怜「うん、うちが都合よく解釈しとるだけ」

京太郎「ポジティブだな」

怜「今まで散々ネガってたし、ここらでちょっと夢見てもええやん」

京太郎「……ま、見るだけならタダか」

怜「そういうこと。案外それが素敵な未来の見つけ方なんやないかなーって」

京太郎「ポジティブシンキングこそがってか」

怜「思いっきり苦手分野やけど」

京太郎「でもまぁ、一回出来たなら二回も三回もそう大して変わらないだろ」

怜「それこそポジシンやな」

京太郎「まったくだ」





竜華「ありがと、駅まで送ってくれて」

久「気にしないでよ。ホイホイ何回も来てるなら話は別だけどね」

怜「あと、泊めてもろたお礼とかも」

竜華「うん、ホンマに助かった」

久「……たまたまお母さんがいなかったから」

京太郎「ひゅーひゅー、照れてるぜこいつ――ぐはっ」

久「とまぁ、調子乗る奴がいるからこのくらいにしときますか」

竜華「だ、大丈夫?」

京太郎「あ、ああ……慣れっこだからな」

久「私がDV加えてるみたいだからやめてよ」


怜「聞きました奥さん? 家庭内暴力ですって」

竜華「もはや夫婦!?」



久「はいはい、もうすぐ時間じゃない?」

竜華「あ、せやな。行こか、怜」

京太郎「またな」

久「美穂子たちも、また来るなら連絡してくれって」

竜華「今度はいつになるかわからへんけど」

京太郎「ま、とりあえず受験は終わらせてだな」

怜「もうちょい頑張ろか」

竜華「怜もやる気出たみたい……来てよかった」

久「うちのもやる気出してくれればね……」


『間もなく、ホームに――』



竜華「須賀くん、竹井さん……また今度な」

怜「……あ、忘れもん」グイッ

京太郎「うおっ――」


怜「んっ……」


竜華「え……」

久「……」


怜「ほなな、ダーリン。さ、行こか」

竜華「と、怜? 今のって――」

怜「ええからええから」グイグイ


京太郎「……」

久「二人して逃げてた時とか、買い物行ってた時とか……なるほど、イチャイチャしてたってわけ」

京太郎「久ちゃん、多分ものすごく誤解がある」

久「はあ……目を離すんじゃなかった」

京太郎「ほら、ため息つくと幸せが逃げてくぞ?」

久「あんたが言うなっ」



長引いたっ!

とりあえず安価は明日(今日)にしておやすみなさい

おいっす

安価取りたいんですけど、人いますかね?

それじゃ、一応何らかの表です
一番上のグループはほぼエンディングが確定
あとは数字が高い順にエンディングに近いです
同じ数字でも上の方がエンディングに近いです
基本的に数値が低い人のほうが上がり幅がでかいです


久照:達成
久美穂子:達成
宮永姉妹:未
松実姉妹:未
はとこ二人:未 もうちょい
小蒔霞:達成
哩姫:未 もうちょい
怜竜:未 もうちょい

ED確定
大星淡
天江衣
桧森誓子
姉帯豊音
三尋木咏
神代小蒔
ネリー・ヴィルサラーゼ
宮永照
エイスリン・ウィッシュアート
白水哩
竹井久
福路美穂子
松実玄
薄墨初美
滝見春
石戸霞
園城寺怜


真屋由暉子2
清水谷瑠華2


宮永咲5
原村和
杉乃歩


小瀬川白望5
瑞原はやり
鶴田姫子


片岡優希4
龍門渕透華4
妹尾佳織3
小鍛冶健夜
染谷まこ
小走やえ
獅子原爽
国広一
石戸明星
松実宥


本内成香5
臼澤塞5
上重漫5
岩館揺杏5
雀明華5
狩宿巴5
花田煌5
ハギヨシ5
東横桃子4
弘世菫3
辻垣内智葉3
高鴨穏乃3
蒲原智美3
鷺森灼2
新子憧2
津山睦月2
針生えり2
郝慧宇2
加治木ゆみ2
内木一太2
高久田誠2
部長
メイド
井上純
荒川憩
愛宕絹恵
熊倉トシ
佐々野いちご
原村恵
夢乃マホ
南浦聡
久保貴子
メガン・ダヴァン
野依理沙
赤坂郁乃
福世恒子
アレクサンドラ・ヴィントハイム
戒能良子
鹿倉胡桃
十曽湧
宮永界


愛宕洋榎2
江口セーラ
藤田靖子
池田華菜
末原恭子
沢村智紀
吉留未春
文堂星夏
深堀純代
南浦数絵
二条泉
赤土晴絵
真瀬由子
村吉みさき
渋谷尭深
亦野誠子

んじゃ、お好きなキャラを一人どうぞ

27分まで

締切
ちょい時間もらいます

コンマ判定

由暉子:9-92
一:1-8,93-00

偶数ゾロ目:別判定
奇数ゾロ目:?


直下

ユキということで

むしろここまでよく当たらなかったなと

というわけで今日はおさらばします



・二年、三月十四日、朴念仁で唐変木とはつまり気が利かないわからず屋である


京太郎「よし、こんなもんだろ」


「なになに? ラッピングなんかしちゃって」

京太郎「ホワイトデーのお返しだよ」

「結構貰ってたもんね」

京太郎「せっかく送ってくれたんだ。相応の気持ちを込めて俺もお返しを送るよ」

「相応の気持ちねぇ……」

京太郎「なんだよ、おかしなこと言ったか?」

「いーえ、我が息子ながら愛がおおきいんだなーって思っただけ」

京太郎「なにそれ」

「それより、中身は?」

京太郎「ああ、なんかアメが人気らしいから詰め合わせた」

「あらら……下手したら当日は大惨事修羅場大戦ね」

京太郎「なんでそうなるんだよ」





京太郎「お、いたいた」

一「あれ、須賀くんもお買い物?」

京太郎「お前を探してたんだよ」

一「ボクを?」

京太郎「今日ってホワイトデーだろ。国広には手渡しときたくてさ」

一「え……そ、そんな、別にお返しなんていいのにさ」

京太郎「そう言うなよ。俺の気持ちも受け取ってくれ」

一「……開けてもいいかな?」

京太郎「ああ」

一「じゃあ……」ガサガサ


一「これって……アメ?」

京太郎「嫌いだったか?」

一「嫌いとかじゃないんだけど……本気?」

京太郎「本気もなにも、それが俺の気持ちだって言ったろ」

一「そ、そうなんだ……」


一(ホワイトデー、お返し、アメ……その意味ってたしか)

一(……ぼ、ボクもそういう気持ちがないって言ったら、ウソになっちゃうけどさ)

一(でも、やっぱりいきなりすぎるよ)

一(正直、心の準備がまだ……)



京太郎「あー、困らせちゃったか?」

一「ち、違うよ。嬉しいけど、戸惑っちゃって」


一「……うん、ありがと」

京太郎「受け取ってくれるか……」

一「ね、須賀くん……ボク――」


京太郎「じゃ、こっちも頼むわ」


一「え、こんなに?」

京太郎「ああ、屋敷の人たちの分な。今日はちょっとそっちに行く余裕がなさそうだからさ」

一「……もしかして、ボクを探してたのって」

京太郎「今日は買出しの当番だったろ。それだったらここら辺に来るんじゃないかってな」

一「……はぁ、そういえば須賀くんってそういう人だったよね」

京太郎「なんだ、遠い目して」

一「いいから早く行ったほうがいいんじゃないの? 余裕ないんでしょ?」

京太郎「そうだな、じゃあ行くわ」


一「……バーカ、須賀くんのバーカ」





――後日


京太郎「国広ー? ちょっとそれ取ってくんない?」

一「それぐらい自分で取りなよ」

京太郎「自分でってお前、手が塞がってるんだけど……」

一「じゃ、ボク忙しいから」スタスタ


京太郎「……俺、あいつが怒るようなことしたっけ?」





――おまけ


玄「あ、ああああっ、憧ちゃん!」

憧「なによ、騒がしいわね」

玄「キャンディからお返しの京太郎くんにホワイトデーが!」

憧「とりあえず日本語喋って」


宥「あ、クロちゃんももらったんだ」


憧「ということは宥姉も?」

宥「うん、アメの詰め合わせ」

玄「お姉ちゃんも? ま、まさか二人一緒にってことじゃ……」

憧「ふきゅっ!?」


憧(この前小走先輩とデートしてたくせに姉妹丼ってどういうことよっ)


玄「そんな……でも、お姉ちゃんとなら……」モンモン

憧「でもそういう浮気性なイケメンがマジになる展開って……ふきゅっ」

宥「あったか~い」



とかいうホワイトデー
もう日が変わってるけど気にしない

国広くんは一週間ぐらい冷たかったとさ


んじゃ、働いてきます

こんばんはー

このまま雪が消えて欲しいと思う今日このごろ

もうちょっとしたら始めます

湯上りほかほか

んじゃ、そろそろ始めます



・三年、冬、ゆきどけ


爽「いよいよ明日か……」

誓子「ちょっと緊張するね……」


成香「チカちゃん、頑張ってくださいっ」

揺杏「爽も肩の力抜いてさ」

由暉子「……」


由暉子(もうすぐ二月が終わってしまいます)

由暉子(そして雪が消える頃には、二人はもう……)


揺杏「そうだ、これからみんなでご飯食べにいかね?」

成香「壮行会ですね、素敵ですっ」

爽「しょうがないなぁ、奢られてあげよう!」

誓子「こら、後輩にたからないの」

爽「無礼講だってば」

揺杏「無礼講だからって支払いを迫ってくる先輩かー」

成香「素敵じゃないです……」

爽「うわ、心象が悪くなってる」

誓子「しかたないと思うけど……ね、ユキ?」

由暉子「……」ボー




誓子「ユキ?」

由暉子「え……なんですか?」

誓子「眠い? ボーッとしてたけど」

由暉子「……漫画で見たんですけど、卒業する男子からボタンをもらうのって、どう言う意味があるんでしょうか?」

揺杏「あー、あるある。なんで第二ボタンなんだろ?」

成香「第一ボタンじゃダメなんでしょうか?」

誓子「そうだなぁ、一番上だと目立っちゃうからとか?」

爽「もう着なくなるのに目立つもなにもあるのかな?」

誓子「む、たしかに……」

爽「つまりあれだね、第二だけと言わずに全部むしっちゃえばお得感アップだ」

揺杏「むしろプレミアム感はダウンじゃね?」

成香「そうですよ。たった一つだからこそ特別なんだと思います」

爽「なるほど、供給が増えたら需要が下がる……まいったね、こんなところで勉強の成果がでちゃってるよ」

誓子「本番も頑張ってね」ニコッ

爽「ま、なるようになるさ! なるようにしかならないとも言うけどね!」

揺杏「開き直ってるねー」

爽「もうやけっぱちだね!」

成香「や、やけになるのはダメですよっ」



由暉子(もう、こんな光景も……)


爽「……」


爽(またユキがボーッとしてるね)

爽(第二ボタンの件、そんなに気になるのかな?)

爽(たしかにユキがもらいたい相手のは競争率高そうだなぁ)

爽(前期の試験が終わればすぐに卒業式か……よしっ)

爽(ダメ元だけど、頼んでみるかな!)





京太郎「見ろよ、世界が輝いてるぜ」


まこ「……なんじゃありゃあ」

咲「久々に顔出したと思ったら……」

優希「なんか気持ち悪いじぇ」

京太郎「はは、酷いなお前ら」

まこ「ここ最近のグロッキー具合を見とりゃあ当たり前じゃけぇの」

京太郎「ああ、そんなこともあったな」

咲「えっと、悩み事なら相談に乗るよ?」

京太郎「心配してくれてありがとな。でも大丈夫だからさ」ナデナデ

咲「え、あ……だ、大丈夫ならいいんだけど……」

優希「あたりがなんだか柔らかい……これなら!」


優希「先輩、タコス一丁!」




京太郎「タコスか? よし、ちょっと待ってろ」

優希「おおっ、ついに思いが通じたじぇ!」

咲「最近は自分で用意しろの一点張りだったのに……」

まこ「臨時収入でも入ったんかい」


久「それはあれでしょ、二次試験が終わったからよ」


優希「元部長!」

咲「あ、そっか。もう二次試験終わったんだ」

まこ「しかし後期日程は残っとるけぇ」

京太郎「後期か……はっ、そんなの俺には必要ないな」

優希「凄い自信だじぇ、合格確実と見た!」

京太郎「よせよ、そんなんじゃないって」

咲「じゃあ諦めちゃったとか?」

京太郎「全力でやったんだ、諦めるなんてできるかよ」

まこ「慢心でも諦念でもない……拾い食いでもしたんかいの?」

京太郎「そんなに飢えてないから」

久「ぶっちゃけると、後期には出願してないだけなのよねぇ」

咲「……大丈夫なんですか?」

久「さぁね、だけどもともとそういう約束だったから」

京太郎「つまり俺は自由の身ってわけだ」



京太郎「ってなわけで、行ってくるぜ!」


咲「行っちゃった……」

優希「あっ、タコスがまだだじょ!」

まこ「あがぁなこと言うとるがの、正直どうなんじゃ?」

久「どうともね……でも、無理に付き合わせてたから」

まこ「……ほうかの」

優希「タコスー!」





京太郎「この解放感……やべぇな、逆に何すればいいかわかんねぇよ」

京太郎「……しかし、試験が終わったら次は卒業か」

京太郎「いよいよか……ってか、どうしようか」

京太郎「この期に及んで何も決めてないとか……」

京太郎「ま、合否がはっきりしてからでいいか」

京太郎「とりあえず当面は資金不足の解消だな」

京太郎「また龍門渕にバイトに行って――」


和「――先輩っ」


京太郎「お、どうした?」

和「二次試験が終わったって聞いて……」

京太郎「ああ、これで晴れて俺は――」


和「うちに来てください!」



京太郎「うん?」

和「今日はお母さんもいますから、その……ちょうどいいかなって」

京太郎「ああ、そういや普段は東京にいるんだっけ。仕事の都合なんだってな」

和「やっぱりこれからのことを考えると、避けては通れませんから。お父さんも気にしてますし」

京太郎「そうなのか……」


京太郎(やっぱり恵さんは東京行きたがってるのか)

京太郎(夫婦だし、一緒にいたいのは当然だよな)

京太郎(難儀だな……いや、だからこそか)

京太郎(卒業前の一仕事だ。かわいい後輩のために一肌脱ぐのも悪くないよな)


京太郎「よし、わかった。部活終わってからでいいよな」

和「はい……でも、ちょっと緊張しちゃいます」

京太郎「安心しろ、俺もついてるから」

和「……そうですね」



和(お母さんに認めてもらえれば……)

和(先輩は十八歳で私は十六歳、もはやなにも問題はなしですねっ)

和(今、婚姻届を出せば……)


和「あ、そうでした」

京太郎「忘れ物か?」

和「ちょっと書いてほしい書類が……」ゴソゴソ

京太郎「書類って――うおっ!」


――バサッ


京太郎(なんだ、今の……窓の外になんかいるのか?)ガラッ


和「外になにかあります?」

京太郎「いや、最近あったかくなってきたと思って……」ガシッ



京太郎(え、なんかつかまれてない?)

京太郎(それにすごい力で引っ張られ――)


京太郎「――なんじゃこりゃぁぁああああっ!!」

和「先輩っ、先輩!」


和「……い、一体何が……」


優希「のどちゃん発見! 遅刻者には厳しいばつが必要だじぇ!」

和「ゆーき……先輩が、先輩がっ」

優希「そうだじぇっ、タコスの件で問いたださねば!」

和「飛んでっちゃいました!」

優希「そんなオカルトありえないじぇ」

和「事実です!」




――バサッバサッ


京太郎「……」グッタリ


京太郎(生身で空飛ぶとか考慮してねぇよ……)

京太郎(てかなんだよこいつ、よく見えないけど鳥か?)

京太郎(ダメだ、気が遠くなってきた……どこまで連れてく気だよ)


――バサッ


京太郎(止まった……? てか放され――)


京太郎「――マジかぁ……」


京太郎(寒い、空気薄い……そして落下中)

京太郎(うわぁ……俺死んだな)

京太郎(そりゃいつかは死ぬだろうけど、こんなわけのわからないことで死ぬなんて)

京太郎(あ、やばい。地面近づいてくる)

京太郎(雪の上なら大丈夫かな……って無理に決まってんだろっ)



京太郎「止まれ止まれ止まれ止まれっ、止まれぇぇええええっ!!」


――ゴウッ


京太郎(いきなり風が……減速した?)

京太郎(これならいけそうな気が……ってやっぱ怖いっての!)


京太郎「いや、無理無理無理無理っ――うぶっ」ズシャッ


爽「お、着地成功?」

京太郎「……」

爽「うんうん、ボタンも無事みたいだし良かった良かった」

京太郎「……」ブルブル

爽「おひさし、元気してた?」

京太郎「とりあえず、寒い……ストーブにあたりたい」ガタガタ

爽「あー、うん。じゃあ成香の家が近いし、そこ行こうか」





京太郎「……で?」

爽「でっていう?」

京太郎「それはこの前散々やったからいいんだよっ」グリグリ

爽「あだだだだっ、意味わかんないってば!」


京太郎「お前の仕業だってことはなんとなくわかってる」

爽「これもある意味の信頼だね」

京太郎「いいから言え、なんでこんなことした」

爽「いやぁ、明日卒業式でさ」

京太郎「卒業式だからって人を自由落下させたってのか!」グリグリ

爽「あだだだだっ、割れる割れる割れちゃうからっ!」





京太郎「なんであんなことした! 言え!」

爽「す、すごい剣幕だね……」

京太郎「本当に死ぬかと思ったんだからなっ」

爽「ごめん……ちょっとした出来心で」

京太郎「出来心だと!?」

爽「か、カムイにさ、軽い気持ちで連れてきてくれたらなーって」


爽『いやぁ、ちょちょっと連れてこれないかな?』

『オッケー、朝飯前よ』

爽『マジメに?』


爽「みたいな感じで」

京太郎「なんか軽すぎない?」

爽「まぁ、要約したらそんな感じってこと」



爽「でも、まさか本当に連れてくるなんて……」

京太郎「俺もまさか軽い気持ちのせいで死にかけるとは……」

爽「でも落ちて無事だったのもカムイのおかげだからさ」

京太郎「もしかして、あの時の風か?」

爽「レラカムイって言うんだけど」

京太郎「バスケチームしか思い出せないな」

爽「わかりやすく言うと風の神様だね」

京太郎「たしか臨海にそんなやついたなぁ」

爽「とにかく、命を助けたことに関しては感謝してもいいよ?」

京太郎「どの口で言ってんだ、どの口で!」ガバッ

爽「ひえっ、グリグリはもう十分だってば!」



成香「ホットミルクお待たせしました――はうわっ!」


京太郎「ちょっと待っててくれ、今こいつにお仕置きするから」

成香「み、身を縮める爽さんに覆いかぶさるように……」

京太郎「……言っとくけど、そんな色っぽいもんじゃないからな?」

爽「きゃー助けてー」

京太郎「おい、下手な演技はやめろ」

爽「せめてもの復讐だねっ」

京太郎「ひどい目にあわされたのはこっちだ! そもそもそんな大根っぷりで信じるわけ……」


成香「こ……こんなのユキちゃんたちには言えませんっ」ダッ


京太郎「……まあ、あいつだけなら後で誤解解いとけばいいか」

爽「あ、ちなみにもうすぐユキと揺杏も来るってさ」

京太郎「よし、今すぐ追うぞ!」


眠いので次回に続く……!

こんばんはー

というわけで寝る用意したら始めます

んじゃ、はじめます




由暉子「積もりましたね」

揺杏「だなー」


由暉子(今日はアルバイトです)

由暉子(とは言っても成香先輩のお手伝いですけど)

由暉子(大雪が降って雪かきの手伝いがほしいみたいです)

由暉子(受験生の二人は忙しいからということで、今日は私と揺杏先輩だけです)


揺杏「でもさ、せっかくの日曜に雪かきとは……」

由暉子「アルバイト料はもらえるみたいですよ?」

揺杏「ま、気分転換にはいいかもね」

由暉子「なにかお悩みでも?」

揺杏「実は衣装のアイディアがさぁ」

由暉子「そういえば最近新作が少ないです」

揺杏「なんだかんだで爽が持ってきた話に合わせて作ってきたからなー」

由暉子「プロデューサー不在は深刻ですね……」


由暉子(そして誓子先輩や爽先輩と遊ぶ機会も減って寂しいのも事実)

由暉子(先輩たちと出会う前は、そういうのを気にしたことはなかったんですけど……)

由暉子(あのころと比べたら、少しは変われたということでしょうか?)



揺杏「牧場ともなると広いから大変だよなー」

由暉子「大部分は機械でやるんじゃないですか?」

揺杏「たしかに。置いてるね、おっきなの」

由暉子「そろそろ着きますね」

揺杏「げっ、結構量あるじゃん……」

由暉子「たまに身体動かすのも悪くないと思いますよ?」

揺杏「はぁ……諦めるか」


『待て、待ってくれ! 頼むから俺の話を……!』

『ごめんなさいっ、もうどうしたらいいかわかりませんー!』


由暉子「……目の錯覚でしょうか?」

揺杏「すごい、あんなに走ってるのに成香が転んでない……」

由暉子「あの、そこじゃなくて」

揺杏「うん……なんで今ここにいるんだろーな」


由暉子(その人はここにいるはずがない人で、でもそれよりも気になることがあって)

由暉子(雪を巻き上げながら走る姿は、まるで……)


揺杏「しっかしさぁ、あれじゃまるで逃げた恋人を追いかけてるみたいじゃね?」

由暉子「そんな、まさか成香先輩と……」シュン

揺杏「……とにかく二人を捕まえよっか」





成香「あうっ」ズシャッ


京太郎「はぁ、はぁ……もう逃がさないからな」

成香「うぅ……冷たいです」

京太郎「まったく……話も聞かずに飛び出すからだ」

成香「どうしたらいいかわからなくて……」

京太郎「ほら、立てるか?」

成香「あ……一人で立てます」


京太郎「さっきのはあいつの悪ふざけだ」

成香「……本当ですか?」

京太郎「むしろそこまで信用がないと落ち込みたくなるな……」

成香「あ、そんな……信じます、信じてますからっ」

京太郎「そうか、ありがとな」


京太郎(うわー、こいつきっと勧誘とか断れないタイプだな)

京太郎(なんか心配になってきた……)



京太郎「戻るか。ホットミルクが冷めちゃうし」

成香「そうですね――あっ」フラッ

京太郎「おっと……走りすぎて足に来てるんじゃないか?」

成香「ごめんなさい……」

京太郎「ちなみにさ、この場合もっと適切な言葉があるんだけど、なんだと思う?」

成香「え、ええっと……すみません、ですか?」

京太郎「違う違う」

成香「じゃあ……申し訳ありませんでした、とか」

京太郎「謝るって方向を変えてみようか」

成香「……苦しゅうない?」

京太郎「なんでいきなり偉くなってるんだよ……だからさ」



京太郎「ありがとうって、これだけでいいんだよ」


成香「……すみません、私なんかのためにって思うと申し訳なくて」

京太郎「そうじゃなくてさ、ほら」

成香「あ、ありがとうございます……」

京太郎「上出来だ。じゃ、戻ろうか」スッ

成香「あの、これって」

京太郎「手を握ってれば転びそうになっても平気だろ?」

成香「でも……」

京太郎「いいから行くぞ」グイッ





由暉子「……」

揺杏「でもさ、さすがににーさんと成香がってのは考えにくいと思うんだけど」

由暉子「……そうでしょうか?」


由暉子(あの人は面倒見がいい人です)

由暉子(誓子先輩や原村さんは綺麗だけど、そう言う意味で相性がいいのは……)

由暉子(どうしてでしょうか? こんなにネガティブになってしまうのは)

由暉子(言い知れない不安が、ずっと胸にわだかまっていて……)


揺杏「ユキ、大丈夫?」

由暉子「平気です」

揺杏「まぁ、あのにーさんがまぎらわしいことしてるのは、今に始まったことじゃないしさ」

由暉子「……」

揺杏「ありゃりゃ……」


由暉子(今の私には驚く程余裕がありません)

由暉子(インハイの時もここまではならなかったのに……)



京太郎「よう、久しぶり」

成香「あ……もう着いてたんですね」

揺杏「すごい勢いで走ってったから気になってさ。な、ユキ?」

由暉子「……手、つないでますね」

成香「こ、これは別に……」バッ

揺杏「あ、あはは……転んだら危ないからー、みたいな?」

京太郎「だな、さっき盛大に転んでたし」

成香「な、なんで言っちゃうんですかぁ!?」

揺杏「いや、言わなくてもわかるし」

成香「そんなっ」


由暉子(二人の手はもう離れていて)

由暉子(それなのに私の心は揺らいだままで)

由暉子(その焦りに突き動かされるように私は……)



京太郎「寒いから中入ろうぜ」

揺杏「今日はにーさんも手伝ってくれる感じ? てかなんでいるのさ」

京太郎「ホントなんでここにいるんだかな……」

成香「爽さんも笑ってごまかすだけなんです」

揺杏「なに、爽も来てんの?」

京太郎「そうだ、しっかり折檻しとかないとな」

揺杏「ははぁ、なんかやらかしたと」

京太郎「そういうことだ」


由暉子「……」クイクイ


京太郎「どうかしたか?」

由暉子「……です」ボソッ

京太郎「悪い、聞こえなかった。もう一回いいか?」


由暉子(彼の顔が近づいてきます)

由暉子(……ずるい手だというのはわかっています)

由暉子(でも、今の私にはこれ以外考えられなくて)



由暉子「……いなくなっちゃ、いやです」グイッ

京太郎「え――んむっ」

揺杏「うわっ」

成香「はわっ!?」


由暉子「……」

京太郎「……なにかあったのか?」


由暉子(こんな時でも、彼の声音は優しくて)

由暉子(いたたまれなくなった私は……)


由暉子「――っ」ダッ


成香「ゆ、ユキちゃん!」

京太郎「……」

揺杏「いいの、追わなくて?」

京太郎「そっとして欲しい時もあるだろ」

成香「そうなんでしょうか……」



京太郎(それに、今は何を言えばいいのかもわかんないしな)

京太郎(……いなくなっちゃいや、か)


揺杏「ところでさ、にーさんってなんか手慣れてなかった?」

京太郎「何の話だよ」

成香「その……なんだかあんまり動じてなかったように見えました」

京太郎「くだらない話はやめて戻るぞ」

揺杏「っべーな、あれ絶対経験豊富なパターンだよ」

成香「け、経験豊富ですか」カァァ

京太郎「戻るぞ!」


寝る準備が役に立った……!

今夜でラスト(にしたい)です

ちょい早いけど、ご飯食べたら始めます

満腹……んじゃ、始めます




由暉子「……」トボトボ


由暉子(やってしまいました)

由暉子(これはきっと取り返しがつきません)

由暉子(あの人はいつもと変わらずに接してくれるかもしれないけれど)

由暉子(表してしまった私の気持ちは、もうごまかせません)

由暉子(でも、なによりも気がかりなのは……)


由暉子「……最低です」


由暉子(正体のわからない不安から逃れるために、自分の気持ちを利用したことです)

由暉子(縋るものがあれば逃げ出せるのではないかと、そう思ったからです)

由暉子(それは私の恋心にも、あの人にも失礼なことで)

由暉子(だから気遣うような言葉をかけられて、逃げてしまいました)

由暉子(成香先輩のお手伝いもすっぽかしてしまいましたし、色々な意味で合わせる顔がありません)


「あれれ、もしかして真屋由暉子ちゃん?」



由暉子(かわいらしくて、でも落ち着いた声に呼び止められます)

由暉子(振り向くと、女性が立っていました)

由暉子(知り合いではないはずですが、なんとなく見覚えがあるような気もします)


「人違いだったかな? だったらごめんね」

由暉子「いえ、合ってます。ちょっと驚いてしまいました」

「あはは、由暉子ちゃんも有名人だからね。ちょっと慣れといたほうがいいかも」


「でも……うん、やっぱり実物だともっとかわいいねっ」


「ね、よかったらどこかお店入らない? 前から一回お話してみたいと思ってたんだ」

由暉子「あの……知らない人に着いていくのはちょっと」

「あ、そっか。じゃあこれでどうかな?」


「――はややっ☆」


由暉子「あ……もしかしてはやりん?」

はやり「うん、はじめましてだね」





久『それで、あんた今どこいるわけ?』

京太郎「北海道」

久『はぁ? もしかしてふざけてる?』

京太郎「冗談で済めばよかったんだけどな……」

久『にわかには信じがたいけど……なに、瞬間移動でも覚えたの?』

京太郎「なんか鳥っぽいのに運搬された」

久『ますますわけがわからない……』

京太郎「俺もわけわかんないから心配すんな!」

久『とはいっても、一番心配してたのは和よ?』

京太郎「だろうな。目の前でアブダクションされたからな」

久『とりあえず無事だって伝えとくけど、どうやって帰るつもり?』

京太郎「電車か船か飛行機」

久『お金は?』

京太郎「あ……」

久『やっぱりね』

京太郎「まぁ、それもなんとかするよ」

久『わかった。それじゃあ帰りに白い恋人でも買ってきてね』

京太郎「あいよ」





爽「電話終わり?」

京太郎「久ちゃんに伝えといたから、もう大丈夫だろ」

爽「さっきまですごい着信きてたからね。原村さんからだっけ?」

京太郎「それもこれもお前のせいだよっ」

爽「うっ……埋め合わせはするってば」


揺杏「てかさぁ、爽今日は暇なん?」

爽「卒業式の前ぐらい、のんびりしんみりしてもいいんじゃないかな?」

揺杏「あ、そう。チカセンにバレないようにね」

爽「ふふふ、任せときな!」


京太郎(こういう場合、大抵バレるんだよなぁ)



成香「……ユキちゃんは大丈夫でしょうか?」

揺杏「たしかに……爽のことよりかは心配だ」

爽「くそう、この扱いだ……でも、神様は乗り越えられない試練はよこさない!」

揺杏「にーさんはそっとしといたほうがいいって言ったけどさ」

成香「やっぱり心配です……」

爽「一応防犯ブザーは持たせてるけどね」

京太郎「小学生かっ」


京太郎(しかし、気になるよな)

京太郎(そのうち動かないといけないにしても、もう少し話は聞いておくか)



京太郎「そういえば、由暉子って最近調子悪いとかそういうのはなかったか?」

揺杏「なんだよ、やっぱにーさんも心配してんじゃん」

京太郎「茶化すな」

成香「時々ボーッとしてることはあったと思います」

京太郎「ボーッとね……」

揺杏「風邪ひいてるとかそんな感じではないと思うけど」

成香「じゃあ、やっぱり気持ちが募りすぎて……」

揺杏「なるなる、にーさんのせいだ」

京太郎「だからなんで……ああ、そういうことか」


京太郎(あんなことをされたんだ。その気持ちがなんなのかってのはわかる)

京太郎(だったらどうしてあそこで逃げ出す?)

京太郎(恥ずかしかったから? ないわけじゃないと思うけど……つらそうな顔してたよな)

京太郎(それに……)



『……いなくなっちゃ、いやです』


京太郎(あれって本当に俺に言ってたのか?)


揺杏「さすがのにーさんでもあそこまでされたら気づいちゃうか」

成香「お、思い出しただけで顔が熱く……」カァァ

揺杏「落ち着けー、成香は当事者じゃないぞー」

爽「ユキのこともだけど、須賀くんはどうする?」

京太郎「俺は……そうだな」


京太郎(帰るにしても先立つものがない……)

京太郎(なら、まずは金策だな)

京太郎(飛行機か電車か……フェリーって手もあるか)

京太郎(一番安いのはどれなのやら)


爽「あ、そうだ! 帰りも頼んでみようか?」

京太郎「お前は俺を殺す気か!?」





はやり「さ、遠慮しないで好きなもの選んでね」

由暉子「は、はい……」


由暉子(さすがに緊張してしまいます)

由暉子(だって、テーブルをはさんで向かい合っている人は、文句のつけようもないほどの有名人で)

由暉子(そういうことに疎かった、中学時代の私ですら知っていたほどのビッグネームです)


はやり「あはは、表情硬いよー?」ツンツン

由暉子「あ、あのっ、今日はどうしてここに?」

はやり「これから洞爺湖のほうで撮影があるから、今はそれまでの自由時間かな」


由暉子(その自由時間を私に割いてくれていると考えると、少なからず嬉しくなってしまいます)

由暉子(サインももらえちゃうかもしれません)


「ご注文はお決まりですか?」

はやり「私はこのサンドイッチのセットで。由暉子ちゃんは?」

由暉子「あ……じゃあ、紅茶で」

「かしこまりました。少々お待ちください」



はやり「飲み物だけで良かったの?」

由暉子「朝ごはん食べてからあまり時間が経ってないですから」

はやり「あ、そっかぁ。私はまだなんだ。もうお腹ぺこぺこだよ」


由暉子(少し話して気づいたことが一つ)

由暉子(今のはやりんは牌のお姉さんではないということです)

由暉子(テレビで笑顔を振りまいているときは、自分を指して私とは言いません)


はやり「……」ジー

由暉子「あの、顔になにか付いてます?」ソワソワ

はやり「ううん、やっぱりかわいいなぁって」

由暉子「……ありがとうございます」

はやり「うんうん、由暉子ちゃんなら牌のお姉さんできるかも」

由暉子「私が、ですか?」

はやり「あれ、違った? そういう風にプロデュースしてるから、そう思ってたんだけど」

由暉子「それは……」



由暉子(元々は、地味だった私を目立たせるということで始まったもので)

由暉子(いつの間にかポストはやりんにつくことが目標になってたりもして)

由暉子(でも、それは……)


はやり「ね、せっかくだから色々話そうよ。うつむいてても、話してるうちに顔を上げられるようになったりもするからさ」

由暉子「……はい、そうですね」





京太郎「よし、じゃあ雪かくか」

成香「サイズは大丈夫ですか?」

京太郎「うん、問題はなさそうだ。悪いな、一式借りちゃって」

揺杏「ま、にーさんがいればちょっとはラクできるっしょ」

京太郎「バイト代をもらう以上、しっかりやるつもりだ」

成香「お願いします」


成香(でも、ユキちゃん……)


揺杏「なに暗い顔してんのさ。ユキなら爽が探しに行ったしょ」

成香「そうですけど……」

京太郎「帰ってきた時に驚くぐらいキレイにしとこうぜ」

揺杏「えー? 程々でよくない?」

京太郎「帰りの移動費がかかってるからな、全力でいかせてもらう」

揺杏「やだ、にーさんってば現金」

京太郎「ほら、今は体動かそうぜ」バシッ

成香「は、はいっ」





京太郎「し、死ぬ……」ゼェゼェ


成香「お、おつかれさまです」

揺杏「うわ、偉そうなこと言ってた割にグロッキーじゃん」

京太郎「そりゃあなっ、機械でやるようなとこを、人力でやれば、こうなるよなっ」

揺杏「うっわ、あそこ一人でやったんだ……なに、化物?」

京太郎「その代償がこれなっ」

成香「そこまで頑張らなくても……」

京太郎「いや……バイト代がかかってるからさ」

揺杏「バカじゃん」

京太郎「お前もほぼ無一文で放り出されてみろ」

成香「とりあえず、中で休んでてください」

京太郎「そっちは終わったのか?」

揺杏「もうちょいって感じ?」

京太郎「そうか、なら先に入ってる」

成香「はい」





京太郎「疲れたぁ……こりゃ筋肉痛かな」

京太郎「勝手知ったるとは言えないけど、水でももらおうかな」


誓子「はい、どうぞ」


京太郎「お、悪いな」

誓子「どういたしまして」

京太郎「んぐっ……あ~、うるおったぁ」

誓子「雪かきお疲れ様。雪見だいふく買ってきたけど、食べる?」

京太郎「ああ、もらう」

誓子「驚かないんだね」

京太郎「パラシュートなしのスカイダイビングに比べたらな……」

誓子「?」


京太郎「ま、不法侵入ってわけじゃないんだろ?」

誓子「なるかたちには挨拶したから。須賀くんは頑張ってたから声かけづらかったけど」

京太郎「今日は遊びに来たのか?」

誓子「爽に用があったんだけど、いないみたいだね」

京太郎「ああ、ちょっとな」

誓子「そういえば、ユキがいないんだけど」

京太郎「話はそこに集約するからな……なんと言ったらいいかな」

誓子「むー、なんか仲間はずれみたいでやだな。話してよ」





はやり「はやぁ……そうだったんだ」

由暉子「私、失礼なことをして、逃げ出しちゃって……」

はやり「そういうのは誰にだってあると思うけどな。私だって、もうどうにでもなれー! ってなることはあるし」


はやり「でも、そうだなぁ……由暉子ちゃんって夢とかやりたいことってある?」

由暉子「……ポストはやりん、でしょうか?」

はやり「う~ん……それ、嘘だよね?」

由暉子「え……」

はやり「それがいけないってことじゃないけど、本当にやりたいことをはっきりさせとかなきゃ、いざって時に動けなくなると思うんだ」

由暉子「……」


由暉子(その言葉はどうしてか、胸の奥に刺さりました)

由暉子(耳に痛い言葉とは、大抵自覚していることを指摘するものだといいます)

由暉子(だから、私はきっと……)


はやり「さ、暗い話は終わり終わり。店員さーん、このスペシャルパフェって言うの二つお願いしまーす」

由暉子「もしかして私の分も?」

はやり「落ち込んだ時は甘いものだよね?」

由暉子「……そうですね、いただきます」





京太郎「それであいつが飛び出して行っちゃってさ」

誓子「爽はユキを探しに行ったんだ……」

京太郎「会うなり様子がおかしかったけど……なにか知ってるか?」

誓子「たしかに最近ボーッとしてることが増えたけど」

京太郎「それは他の奴も言ってたな」

誓子「……もしかしたら須賀くんのせいかも」

京太郎「それも考えたけど、多分違う。なんというかしっくり来ない」


京太郎(その理由は……やっぱりあの言葉か)


京太郎「いなくなっちゃいやだって、どういうことだと思う?」

誓子「離れたくない、寂しいってことじゃないの?」

京太郎「まぁ、そうだよな……」

誓子「それ、ユキが?」

京太郎「ああ、ずっと気になっててさ」

誓子「じゃあやっぱり須賀くんのせいだよ」

京太郎「だからそれは違うっての」

誓子「むー、どうしてそう言い切れるの?」

京太郎「勘だな」

誓子「根拠ないんだ」

京太郎「そっちこそどうして俺のせいにしたがるかな」

誓子「だって……私もそう思うから」

京太郎「あー、なんかすまん」

誓子「もう……いいよ別に」



京太郎(まずい、なんだか空気が……)

京太郎(しょうがない、方向転換だ)


京太郎「そういや、インハイに出たのもプロデュースの一環だったんだよな?」

誓子「そうだね、ユキを目立たせてやろうって」

京太郎「あいつだけ昔馴染みじゃないっぽいし、どうしてそういうことになったんだ?」

誓子「また露骨な話題転換だ」

京太郎「いいからいいから。気になっちゃったものは仕方ないだろ」

誓子「別に隠すようなものじゃないけどね……いいよ、話してあげる」





由暉子「……」


由暉子(はやりんと別れた後、一人で私はさっきの言葉について考えます)

由暉子(私の、本当にやりたいこと)

由暉子(それは……)


爽「あ、いたいた、ユキ発見!」


由暉子「爽先輩……」

爽「うんうん、無事みたいだね」

由暉子「ごめんなさい、いきなり飛び出してしまって」

爽「そんなこともあるよ。女心と秋の空とも言うしね」

由暉子「……謝らないと、いけないです」

爽「須賀くんに? ユキからのキスだったら役得じゃないかな?」

由暉子「そうなんですか?」

爽「ユキが信じる私を信じろってね!」ピロリンッ


爽「メール? ……げっ、チカが成香の家で待ち伏せてる……」



爽「……やっぱり二人でどこか行こうか?」

由暉子「心配かけてますし」

爽「だよなー……とほほ」ハァ

由暉子「……」クスッ


由暉子(私の本当にやりたいことは……きっとみんなと一緒にいることです)

由暉子(あたたかい居場所は、以前の私にはなかったものですから)

由暉子(そのことにすら気付けていなかったけれど……)

由暉子(でも、それは不安の正体ともつながっていて)


由暉子「……そうだったんだ」


由暉子(同時に気づいてしまいました)

由暉子(この居場所が、もうすぐなくなってしまうことに)





誓子「――というわけで、ユキは私たちと遊ぶようになったんだ」


京太郎「……そうか」


京太郎(聞いた感じだと、あいつの交友関係はほぼこいつらだけだ)

京太郎(こいつらが、あいつにとっての居場所になってるなら……)


誓子「どうしたの? 難しい顔して」

京太郎「もう卒業するんだって考えたらな……」


京太郎(そう、卒業するんだ)

京太郎(こいつと獅子原は、いなくなるんだ)


『……いなくなっちゃ、いやです』



京太郎(あの時の言葉が、二人に向けたものなら……)

京太郎(どうする? はっきり言って俺は部外者だ)

京太郎(……なーんて、ほっとくなんて選択肢、選べるわけないよな)

京太郎(俺の勘違いだって可能性もある)

京太郎(でも、それにしたって赤の他人ってわけじゃないんだ)


爽「ただいまー……」コソコソ


誓子「あ、爽」

爽「チカ!? 一瞬で見つかるなんて……!」


由暉子「……」

京太郎「話がある。いいか?」

由暉子「……はい」





由暉子「さっきはいきなりあんなことをしてしまって……ごめんなさい」ペコッ

京太郎「それはいいって。あんなの男にとっては役得だから」

由暉子「そうですか……」ホッ


由暉子「でも、違うんです。私が謝りたいのは……」


京太郎「いなくなっちゃいやって、俺のことじゃないよな?」

由暉子「え?」

京太郎「もうすぐ卒業だし、今まで通りってわけにはいかなくなる」

由暉子「――っ」

京太郎「無理に話せとは言わないけど、だれかにぶちまけて楽になるってこともあるからさ」

由暉子「……最初は、偶然だったんです」



由暉子「ゴミだし途中で転んでしまって、そこへ偶然先輩たちが通りがかって」

由暉子「それが縁で、一緒に遊ぶことが多くなって」

由暉子「先輩たちに会うまで、寂しいと思ったことはなかったんです」

由暉子「でも、夏が終わって、爽先輩と誓子先輩が忙しくなって」

由暉子「だんだんと会う機会も減っていって」

由暉子「そして卒業して、いなくなってしまう……」

由暉子「先輩たちは私を目立たせるために色々してくれました」

由暉子「けれど、そんなことは本当はどうでもいいんです」

由暉子「私はアイドルになることじゃなくて、みんなでいられた……陽だまりのような日々が大切だったんです」

由暉子「今までそれに気づけなくて、漠然とした不安だけ感じていて」

由暉子「それで……」




由暉子「ごめんなさい。自分の気持ちを、あなたのことも利用しちゃいました……」

京太郎「だからいいって。正直役得だったし、俺にだってそういう経験があるしな」

由暉子「……キスしたんですか?」

京太郎「俺も逃げ出したことぐらいあるって話だ」

由暉子「信じられないです」

京太郎「見栄っ張りだからな。でもけっこう優柔不断だし、面倒くさがりだし……人に事実を突きつけて傷つけたことだってある」


京太郎「だから言うぞ……欲しいなら声に出せ。もっと言わなきゃいけない相手がいるだろうが」


京太郎「それがだれかってのは言わなくてもわかるよな?」

由暉子「でも……怖い、です」


由暉子(それは、私のわがままです)

由暉子(相手のことを考えない、自分の気持ちを一方的に押し付けるようなことです)

由暉子(振り返ってみれば、みんなにそんなことを言った覚えはありません)

由暉子(もしそれで、自分勝手だと思われたら……)



京太郎「……しょうがないな」ブチッ


京太郎「ほら、これもっとけ」

由暉子「ボタン、ですか?」

京太郎「学ランの第二ボタン。ま、後輩にやるのが定番みたいだしさ」

由暉子「もう卒業しちゃうんですね……」

京太郎「第二ボタンは心を意味するらしいから、自分の気持ちだけじゃ不安なら俺の肝も持ってけってな」

由暉子「……」ギュッ


由暉子(そう言ってこの人は照れくさそうに笑いました)

由暉子(傷つけると言っておきながら、背中を押してくれている)

由暉子(見栄っ張りである以上に、素直じゃないのかもしれません)

由暉子(そんな彼がくれた第二ボタンの感触が愛おしくて――)



由暉子「……よかった」ボソッ

京太郎「ん?」


由暉子(あの時のように、彼が顔を近づけてきます)

由暉子(うつむきがちにつぶやいた言葉は、もちろんわざとで)

由暉子(今度は逃避じゃなくて、素直な気持ちで――)


由暉子「あなたのことを好きでいて、よかったです……んっ――」


由暉子(今日二度目のキスは、バニラアイスの味がしました)





誓子「とにかく、前期が終わっただけでまだ安心できないの」

爽「うぅ……の、乗り越えられない試練なんてっ」


揺杏「……受験って辛いんだ」

成香「怖いです……」


由暉子「……戻りました」


成香「ユキちゃん!」

揺杏「変な奴に絡まれたりしてない? 大丈夫だった?」

由暉子「はい。……それよりも、お手伝いをすっぽかしてごめんなさい」

成香「い、いいんですよ! ユキちゃんが無事だっただけで十分です」

揺杏「ま、にーさんが手伝ってくれて相当楽できたし」



誓子「ユキ、話終わったの?」

由暉子「心配かけちゃいましたね」

爽「先輩に心配をかけるのが後輩ってもんさ! ……あ、今けっこう韻踏んでなかった?」

誓子「そんなのはどうでもいいの」

爽「手厳しいっ」

由暉子「……聞いて欲しいことがあるんです」

誓子「なにかな?」

爽「そんなあらたまってどうしたのさ?」

由暉子「……」ギュッ


『欲しいなら声に出せ』



由暉子「いなくなっちゃ、いやです」

由暉子「ずっと一緒にいたいです……誰かが欠けるなんていやです」

由暉子「みんなでいられないなら、ポストはやりんなんてどうでもいいんです」

由暉子「だから……いかないでください」


誓子「ユキ……泣かないで」

爽「……チカもだよ」

由暉子「無理なのはわかってます……けど」


成香「ゆ、ユキちゃぁん……!」ポロポロ


成香「そんなに、そんなに思っていてくれたなんて……」グスッ

揺杏「成香泣きすぎだって」

爽「揺杏も目が潤んでるね」

揺杏「……爽の目も赤いじゃん」

爽「この際だ、みんなで泣いてスッキリしようか」





成香「今日はありがとうございました」

京太郎「こっちこそな。助かったよ」ピラッ

揺杏「帰りって五千円で足りんの?」

京太郎「ま、なるようになるって」

誓子「適当なんだから」

爽「旅は人を成長させるらしい」

京太郎「今回はしなくてもいい旅だったけどなっ」グリグリ

爽「いだっ、いだだだっ、痛いってば!」

京太郎「ま、こんぐらいだな」パッ


爽「ふぅ……あれ? 須賀くん、ボタン一個取れてない?」



揺杏「ホントだ。取れたんならちゃちゃっとつけちゃうけど」

京太郎「ああ、いいんだよ。自分で取ったんだし」

成香「自分でですか?」

誓子「あ……もしかして」


京太郎「どうだった?」

由暉子「よくわからないです。みんなで泣いて……でも、スッキリしました」

京太郎「俺の肝は役に立ったか?」

由暉子「はい」

京太郎「そうか」

由暉子「……変わらないものってないんでしょうか?」

京太郎「そうだな……人は年をとるし、気持ちだって移ろうもんだ」

由暉子「そうですよね……」

京太郎「それでも、変わらないものはある」



京太郎「一緒に泣いたことは、いつまでたっても変わらないだろ?」


京太郎「ま、そういうことだ。そろそろ行くかな」

由暉子「帰っちゃうんですか?」

京太郎「向こうには心配かけてるしな」

由暉子「……好きです」

京太郎「知ってるよ。あれだけされてたらな」

由暉子「行かないでほしいって言ったら、ここにいてくれますか?」

京太郎「それはなんというか……困るな」


京太郎「でも、少しぐらいわがままな方がかわいいもんだ」


京太郎「それじゃあな」

由暉子「はい、また今度」





京太郎「さて、どう帰る?」

京太郎「飛行機だったらお金が全然足りない。五千円じゃあな」

京太郎「電車も……青函トンネル通るなら足りないし」

京太郎「残るは海路か……ホント予期せぬ旅だな」

京太郎「なんにしてもフェリーの乗り場まで移動しなきゃな」

京太郎「……ヒッチハイクで行けるかな?」


はやり「あ、京太郎くんだ」


京太郎「あれ……はやりん?」

はやり「うんうん、きみのはやりんだよ☆」

京太郎「マジか……」

はやり「すっごい偶然だね。京太郎くんは旅行かな?」

京太郎「まぁ、色々あって……これから帰るとこなんですけど」

はやり「ふぅん……」



はやり(でも、このままお別れなんてもったいないかなぁ?)

はやり(……うん、せっかくだしもうちょっとお話したいよね)


はやり「帰りはどうするの?」

京太郎「フェリーですね。予算も心もとないですから」

はやり「それだったら、一緒に飛行機乗る?」

京太郎「え……い、いいんですか?」

はやり「お姉さんにおまかせだよっ☆」






京太郎「やっと帰ってきた。なが……くはなかったな、ギリ日帰りだし」

京太郎「しかし、至福の時間だった……」


京太郎(まさかはやりんにアーンしてもらえるとは……)


京太郎「卒業か……いよいよ終わるんだな、高校の三年間が」

京太郎「長かったような、短かったような……いや、やっぱり長かったな」

京太郎「……感傷に浸るのはもう少し後にしとくか」



というわけで終了

続いて最後の安価を取りたいんですけど、人いますかね?

それじゃ、一応何らかの表です
一番上のグループはほぼエンディングが確定
あとは数字が高い順にエンディングに近いです
同じ数字でも上の方がエンディングに近いです
基本的に数値が低い人のほうが上がり幅がでかいです

ちなみに千分の一を引くことができるなら、だれでもエンディング圏内です


久照:達成
久美穂子:達成
宮永姉妹:未
松実姉妹:未
はとこ二人:未 もうちょい
小蒔霞:達成
哩姫:未 もうちょい
怜竜:達成

ED確定
大星淡
天江衣
桧森誓子
姉帯豊音
三尋木咏
神代小蒔
ネリー・ヴィルサラーゼ
宮永照
エイスリン・ウィッシュアート
白水哩
竹井久
福路美穂子
松実玄
薄墨初美
滝見春
石戸霞
園城寺怜
真屋由暉子


清水谷瑠華2


宮永咲5
原村和
杉乃歩


小瀬川白望5
瑞原はやり
鶴田姫子


片岡優希4
龍門渕透華4
妹尾佳織3
本内成香1
小鍛冶健夜
染谷まこ
小走やえ
獅子原爽
国広一
石戸明星
松実宥


臼澤塞5
上重漫5
岩館揺杏5
雀明華5
狩宿巴5
花田煌5
ハギヨシ5
東横桃子4
弘世菫3
辻垣内智葉3
高鴨穏乃3
蒲原智美3
鷺森灼2
新子憧2
津山睦月2
針生えり2
郝慧宇2
加治木ゆみ2
内木一太2
高久田誠2
部長
メイド
井上純
荒川憩
愛宕絹恵
熊倉トシ
佐々野いちご
原村恵
夢乃マホ
南浦聡
久保貴子
メガン・ダヴァン
野依理沙
赤坂郁乃
福世恒子
アレクサンドラ・ヴィントハイム
戒能良子
鹿倉胡桃
十曽湧
宮永界


愛宕洋榎2
江口セーラ
藤田靖子
池田華菜
末原恭子
沢村智紀
吉留未春
文堂星夏
深堀純代
南浦数絵
二条泉
赤土晴絵
真瀬由子
村吉みさき
渋谷尭深
亦野誠子

それではお好きなキャラクターをどうぞ

57分まで

締切、割ってきます

コンマ判定

一:1-7
姫子:8-33
はやり:34-58
竜華:59-65
宥:66-72
成香:73-79
和:80-86
透華:87-93
マホ:94-00

ゾロ目:?


直下

こんな時にゾロ目……う~ん


ポイントボーナス
もう一人増やす

どっちかお選びください


13分まで

コンマ

ポイント:1-37
もう一人:38-00

ゾロ目:どっちも


直下

もう一人ということで

哩、姫子を除く新道寺のキャラ
のよりん、竜華、穏乃、和、優希

以上から一人どうぞ


23分まで

コンマ

穏乃:1-12
竜華:13-53
理沙:54-59
優希:60-65
煌:66-82
和:83-88
友清:89-00

ゾロ目:ポイントボーナス


直下

竜華さんで

追加キャラは学校関係、同卓した相手、友達の友達などからとってきました
淡? エンディング確定してますし……

竜華さんはエンディング確定ですね
姫子は……コンマ次第でギリ

ちなみにとある特殊エンドが確定しました
というわけでさようなら

怜竜エンドは怜のダブルの時で確定
哩姫エンドは今回の安価で確定
それ以外にもう一つです



・三年、夏、暴風――if


京太郎「……」コソコソ


ネリー「あ、不審者発見」


京太郎「いや、俺は怪しいものじゃ――ってお前か」

ネリー「今度は本当に不審者っぽかったよ?」

京太郎「いやまぁ、色々気になってな」

ネリー「キョウタロウのとこの先鋒? 頑張ってると思うよ?」

京太郎「お前はナチュラルに上から目線だな」

ネリー「あの子とネリーじゃネリーの方が格上だし」

京太郎「そりゃまた……」

ネリー「もう休憩時間も終わっちゃうし、行こうよ」

京太郎「そうだな……」



京太郎(結局、照ちゃんの顔は見れなかったし)


ネリー「じゃあこっちね」グイッ

京太郎「待て、どこに連れてく気だ」

ネリー「ネリーたちの控室」

京太郎「行かないぞ?」

ネリー「さっき同意したじゃん」

京太郎「ここから移動することにな」

ネリー「むっ、詐欺だね」

京太郎「アホか。これで詐欺なら世の中詐欺だらけだよ」

ネリー「なにさ、もう……」

京太郎「んー、じゃあ俺の部屋来るか?」





ネリー「ここが……」

京太郎「ボーッとしてないで入れよ」

ネリー「あ、うん」


ネリー「和風だね」

京太郎「そりゃ旅館だからな」

ネリー「このお菓子食べていい?」

京太郎「お好きにどうぞ」

ネリー「それで、部屋に連れ込んで何する気なのかな?」

京太郎「そんなの決まってるだろ」

ネリー「まさか……」ドキドキ

京太郎「そのまさかだ。逃げようとしても逃がさないからな」


ネリー(女の子と部屋に二人きりですることって、アレしかないよね)

ネリー(意外と大胆なんだ……)


京太郎「お前にもう一回タコスを食べてもらおうと思ってな」

ネリー「……帰る」

京太郎「その反応は予想済みだ。この前は失敗したからな」

ネリー「そうだけどそうじゃないの!」

京太郎「なんにしても食べてもらうぞ。俺のタコスをな!」

ネリー「バカっ、キョウタロウのバカっ!」



京太郎「さあ食え、食ってみせろ!」

ネリー「だからやだってば!」ドン

京太郎「うおっ」


京太郎(まずい、タコスが……!)

京太郎(でもここで確保しに行ったら盛大にすっ転ぶ)

京太郎(……食べ物を粗末にするよりはマシか)

京太郎(なに、背中を打ち付ける程度だ。大したことは――)


――ガツン!


京太郎「よ、予想外……」ガクッ

ネリー「キョウタロウ?」


ネリー「……し、死んでないよね?」ツンツン

京太郎「うぅ~ん……」

ネリー「……良かったぁ」ホッ

京太郎「おもちぃ……胸は大きいに限る……」ムニャムニャ

ネリー「……」プチッ


ネリー「ネリーの方がイイって、絶対にわからせてやるんだから……!」





京太郎「うっ……」


京太郎(なんだこれ、手が自由に動かせない……)

京太郎(それに、上がやけにスースーするような)


ネリー「あ、起きた」


ネリー「ちょっと待っててね、もうちょっとで準備終わるから」

京太郎「準備……って、なんで上半身裸なんだ、俺?」

ネリー「なんでって、ネリーが脱がせたからだけど」

京太郎「なんか動かせないと思ったら……ご丁寧に手まで縛りやがって。どういうつもりだ?」

ネリー「キョウタロウが煮え切らないから、もうネリーのものにしちゃおうかなって」

京太郎「これはお前風に言うと慰謝料が発生する展開じゃないのか?」

ネリー「こっちもちょっと脱いでるし、イーブンじゃないかな?」

京太郎「どうやったら等号で結べるんだよ……」


京太郎(しかし、縛りが甘いな)

京太郎(これなら……)



ネリー「思ったより余裕なんだ」

京太郎「慌てる必要がないからな」

ネリー「ふぅん、じゃあ……んっ――」チュッ


ネリー「こ、これでも?」

京太郎「明らかにお前の方が余裕ないよな」

ネリー「~~っ、余裕ぶっていられるのも今のうちなんだからっ」

京太郎「そうだな……それなら」シュル


京太郎「ここらで反撃開始と行くか」グイッ

ネリー「え……きゃっ」


ネリー「ど、どうして……」

京太郎「縛り方が甘いんだよ。もっとガッチリやんなきゃ抜けられるぞ?」

ネリー「そんなぁ……」

京太郎「さて、どう落とし前つける?」ギシッ

ネリー「ひっ」ビクッ

京太郎「……」



京太郎(やばい、なんかムラッときた)

京太郎(欲求不満か? 俺、貧乳属性はないんだけど)


ネリー「……ネリーをどうするの?」

京太郎「今考え中」

ネリー「ひどいことはしないよね? だってキョウタロウは――」

京太郎「ったく、どいつもこいつも好き放題言いやがって……俺を聖人かなんかと勘違いしてんのか?」


京太郎「決めた。多少痛くて苦しいかもしれないけど、我慢してもらう」

ネリー「な、なにする気? 痛いのはヤダ――んむっ」

京太郎「――ちょっと黙ってろよ。お前も俺にしようとしてたんだから、それこそイーブンだろ?」

ネリー「う、うん……」


ネリー(これはこれで結果オーライかも……)





ネリー「ただいまぁ……」

「おかえり、遅かったね」

ネリー「うん、ちょっとね……」

メグ「サトハの試合ももうすぐ終わりマスネ」

ネリー「もうそんな時間経ったんだ……」

明華「足、怪我しました? 歩きにくそうですけど」

ネリー「足は大丈夫だけど、まだ残ってるような感じで」

ハオ「残ってる? なにが?」

ネリー「それは……も、もうっ、ノーコメント!」




つづ……かない

というわけで誕生日おめでとう

それじゃあ

おひさし

風呂入ったら始めます

湯上りほかほか

んじゃ、始めます



・三年、三月、ダブルトライアングラー


姫子「まいるぜんばぁい、いがないで~」ボロボロ

哩「ひ、姫子……落ち着いて」


「うーん、こん扱いの差……なんもかんも政治が――」

「悪くなかよ?」

「……美子、持ちネタば潰すのやめて」

煌「江崎先輩に安河内先輩、お疲れ様でした」

「うんうん、花田にこん麻雀部は任した」

「そい、十月にも聞いたよ?」

「……なんもかんも政治が悪い」


姫子「なして行っちゃうんですかぁ~」ボロボロ


哩「ごめん、ちかっと席ば外す」

「はいはい、存分にイチャついてくっとよかよ」

「鶴田は哩にべったりやったし、しょんなかね」

煌「お別れを適当に済ませるのはすばらくないです」

哩「ん……みんな、すまんね」

煌「いえいえ、姫子を泣きやませてきてください」





姫子「うぅ……ひっく」

哩「なんか、中学ん時も似たようなこつしよったね」

姫子「あん時も哩先輩は泣きよらんかったやないですかぁ……」グスッ

哩「あー、そいね」


哩(あまりに姫子が泣きよるから、泣くに泣けなかった……)


姫子「……不公平です」

哩「どがんすればよかと?」

姫子「泣いてください、私ぐらい」

哩「なんね、そん無茶ぶりは」

姫子「むぅ、四月から私と離れ離れですよ?」

哩「やけん、中学卒業ん時も同じやりとりばしなかった?」

姫子「……まぁ、たしかに」

哩「ばってん、安心したよ」

姫子「安心て、後輩泣かしてなんば言いよりますか」

哩「姫子がいつも通りやったら、そいはそいでショックやけん」

姫子「むぅ……そいはこすか言い方ですよ」



煌「先輩、姫子泣き止みました?」


姫子「……花田」

哩「ああ、もう大丈夫」

姫子「んーん、まだ」

煌「えっと、これはどっちなんでしょうかね?」

姫子「もう、花田はあっち行ってて!」

煌「まさかの直球!」

哩「姫子、理由も聞かんで追い返すのは感心せんね」

煌「いえいえ、姫子のすばらくないわがままは今に始まったことじゃないですから」

哩「たしかに」

姫子「納得しちゃいますかっ」

哩「そいで、花田の用件は?」

煌「あ、そうでしたね」



煌「監督が最後に写真でもどうかってことなんですけど」

哩「写真か……すばら――」

姫子「うつってますうつってます」

哩「ん、んんっ! あー、よか提案やと思う」

煌「ですね! 思い出は心に残りますけども、形に残しておくのもすばら!」

哩「そ、そうやね……」


哩(くっ、さすが花田ん持ちネタ……がば強か)

哩(いっちょん勝てる気がせんね……)グヌヌ


姫子「どしたんですか?」

哩「いや、なんでもなか……」





哩「……こいで本当にこん学校ともお別れやね」

姫子「……やっぱ慣れませんね、こいは」

哩「そいはしょんなか話やけん。まぁ、会えなくなるわけでもなか」

姫子「そうですけど……寮からは出てっちゃいますよね」

哩「生徒でもなし、いつまでも居座っとーと迷惑やろ」

姫子「そうですけど、そうですけどぉ……」

哩「……姫子、多少離れた程度で私らん繋がりは消えんよ」

姫子「わかってます……ばってん、卒業旅行行っちゃうやないですか」

哩「たしかに仁美たちに誘われとるけど」

姫子「そいってこすかって思います!」

哩「え、そがん言われても」

姫子「私は一緒に卒業旅行したことなかですよ!?」

哩「学年が違うやろ」

姫子「留年してください」

哩「また無茶ぶり……そいで、本音は?」



姫子「……今度の休み、一緒にどっか行きません?」

哩「別によかよ。どこ行く?」

姫子「ほどほどに遠くて、遠すぎないとこですかね?」

哩「またざっくりしすぎやね……大阪とか、そん周辺?」

姫子「ですね。温泉にでもつかってゆっつらーとしましょうよぉ」

哩「そうやね……って、予約は大丈夫? そがん時間もなかよ?」

姫子「まぁ、一応当てもありますから」





セーラ「おっしゃ、一位取った!」

竜華「ちょい届かなかったなぁ」

怜「息抜きに麻雀て……余計疲れた」

泉「一番悲惨なの、無理やり引き込まれた上に散々な結果だった私ですよ……」


泉「というか先輩たち、卒業したのにすぐ顔見せて……感慨もなにもないですよ、もう」

セーラ「俺は今んとこ暇やし」

怜「一応後期に備えておかんとあかんし」

竜華「そない寂しいこと言わんといてほしいわぁ」

泉「もうそれはいいですけど……対局相手なら他にごろごろいません?」

怜「って思うやん?」

泉「ちゃうんですか?」

竜華「あはは……一応他にも声かけたんやけどね」

セーラ「どいつもこいつも遠慮します遠慮しますて……根性なしか!」

泉「えぇ……私も遠慮したはずなのに」

怜「フナQは忙しそうやん。まぁ、当然の帰結?」



「先輩たち、なにしてはるんですか」


竜華「あ、浩子」

怜「噂をすればなんとやら」

セーラ「フナQ暇? 俺らと打たへん?」

泉「さっき忙しそうって遠慮してたでしょ」

「ふむ……まぁ、条件付きでなら」

泉「え、いいんですか?」

セーラ「さっすが! 部長様は話が早くて助かる!」

「それで、条件についてなんですけど……」ゴソゴソ


「江口先輩がこれ着て写真撮らせてくれるなら――」

セーラ「さいならっ」ダッ



「……ちっ、逃げたか」

泉「さすが江口先輩キラー」

怜「セーラは元気やなぁ。竜華、うちらはどないする?」

竜華「……」

怜「ノーリアクション……えいっ」ピラッ

竜華「ひゃっ! す、スカートめくるなぁ!」

怜「や、減るもんやないし」

竜華「減るのっ、色々減るのっ」

怜「そかそか……で、セーラ出てったけど」

竜華「え、いつの間に」

怜「どんだけぼーっとしとんねん」

泉「悩み事ですか?」

「もしくは燃え尽き症候群とか」

怜「それかお腹減ったか」

竜華「あ、たしかにお腹は減ったかも……」クゥ

怜「それならセーラ捕まえてお昼食べよか」


怜「てなわけで、ほななー」

竜華「みんな、春の大会も頑張って」





セーラ「フナQにはまいるわ……」

怜「もう諦めたらええんとちゃう?」

セーラ「コスプレ写真集とか、考えただけでも怖い……」ブルブル

怜「世間にはまんじゅうこわいとかいう話があって」

セーラ「なにそれ?」

怜「最後にはお茶がこわいとか言い出す始末やねん」

セーラ「なんか色々損してそうやなー、そいつ」

怜「ところがむしろ得してるっちゅう話やな」

セーラ「なんでや」

怜「とりあえず、セーラは着せ替えられるのが苦手ってことで」

セーラ「せやからそう言うとるやんか」


竜華「お待たせ」



怜「じゃあ罰ゲーム」

竜華「えっ、なんで?」

怜「お待たせ言うたやん。待たせられた身としては賠償してもらわんと」

竜華「う~ん……膝枕とか?」

怜「一年分で」

セーラ「一日一回なら、365回?」

怜「そんで一回の時間は無制限……」

セーラ「竜華……頑張れ」ポン

竜華「さ、さすがに冗談やんな?」

怜「……」フルフル

竜華「ちょっ」

セーラ「ま、別にいつもと変わらへんやろ」

怜「それ言うたらあかんなぁ」

セーラ「んじゃ、竜華戻ってきたしトイレ行ってくる」



怜「あないキッパリトイレ言えるのもセーラの強みやなぁ」

竜華「せやな」

怜「竜華待ってる間にカツ丼ペロリしちゃったし。食べるの速すぎやねん」

竜華「せやな」

怜「はよ食べんとうどん伸びてまうで?」

竜華「せやな」

怜「……えいっ」ザパッ



怜「はい、あーん」

竜華「んっ……辛っ! なにこれ!?」

怜「月見うどんをちょっと赤くしてみました」

竜華「赤くって……これ全部唐辛子!?」

怜「入れたのに気づいとらんかったとか、ちょいほうけすぎやない?」

竜華「うぅ……口ん中ヒリヒリする……」

怜「はぁ……で、なんやねん」

竜華「と、怜には関係あらへんし」

怜「ほほう、うちには関係ないと?」

竜華「うんうん」

怜「全く? 全然? これっぽっちも?」

竜華「せ、せやっ」

怜「うち、悲しいわぁ……竜華にとって、そないどうでもいい女やったなんて」ヨヨヨ

竜華「ちゃう! どうでもいいなんてことあらへんからっ」

怜「じゃあ話して」

竜華「うっ、それは……」



セーラ「おー、痴話喧嘩?」


怜「竜華の浮気相手について問い詰めてたとこや」

セーラ「三角関係かぁ……うへぇ、めんどそう」

竜華「三角関係……」

怜「……」


セーラ「せやせや、今度旅行行かへん?」



セーラ「ほら、プチ卒業旅行的なの」

怜「ちょい早すぎない?」

竜華「普通は下旬くらいやと思うけど」

セーラ「後の方になると俺が時間取れなさそうやし、揃っていくなら今の方がええんやないかなって」

竜華「まだ合格発表前なんやけど」

怜「せやなぁ……でもちょこっとだけならええやんな」

竜華「一泊二日とか? うーん、息抜きにはええかもね」

セーラ「決まり? おし、なら早速――行き先からやな!」

怜「え、そっから?」

竜華「どこか当たりつけとるもんやと思ってた」

セーラ「さっき思いついたばっかやねんな」

怜「どないする? 今から取れるかな?」

竜華「えっと……あっ、一個だけ当てあるかも」





玄「予約ですか? 今なら繁忙期のちょっと前だし、まだ空いてますよ」

玄「はい、一泊二日、三名様で一部屋ですね。了解なのです、私におまかせあれ!」

玄「いっぱいサービスしちゃいますから、楽しみにしててください!」

玄「いえいえ、おもちをお持ちのお方の頼みとあれば」

玄「わかりました、じゃあ今度の土曜日ですね。お待ちしてます」


宥「お友達から?」

玄「千里山の清水谷さんからなのです。プチ卒業旅行でうちに泊まりたいって」

宥「プチ?」

玄「今しか一緒に行けない人とシーズン前に、ということみたい」

宥「そうなんだ」

玄「なんにしても、お客様でおもちとあれば大歓迎なのです!」

宥「そういえばおっきかったよねぇ」

玄「彼女は千里山随一の戦力……是非とも親密になっておかねば!」



穏乃「くーろーさーん!」


玄「穏乃ちゃん?」

穏乃「ふぅ……今度の土曜なんですけど、空いてます?」

玄「えっと、その日は旅館にいなきゃならないかな」

穏乃「? 別に玄さんの予定は聞いてないですけど」

玄「はうっ」グサッ

宥「く、クロちゃん」

玄「だ、大丈夫だよ……お姉ちゃんのおもちがあればっ」モミモミ

宥「ひゃっ」

穏乃「玄さーん?」

玄「んっ……あらためてどうしたのかな?」

穏乃「今度の土曜なんですけど、旅館の方って部屋空いてます?」

玄「穏乃ちゃん、さっき明らかに言葉足りなかったよね!?」





玄「ふぅ~む、なるほどなるほどなるほどー」

穏乃「昨日鶴田さんから電話あって、松実館紹介してくれないかって」

宥「連絡先知ってたんだね」

穏乃「実はインハイの準決勝の後に。大星さんだけは決勝の後だったけど」

玄「でも、新道寺の鶴田さんと白水さんかぁ」

宥「清水谷さんたちも来るんだし、いいんじゃないかな?」

穏乃「千里山の人たちも? これで大星さんも来たら完璧だったんだけどなー」

宥「あの時の大将がそろい踏みだね」

玄「新道寺の戦力はお世辞にも高いとは言えないのです……」

穏乃「強敵でしたよ?」

宥「クロちゃん……そういうので差別するの、良くないと思う」

玄「そんなっ、ただちょっと残念だなってだけだよ!」

穏乃「えーっと、とりあえずオッケーってことでいいんですかね?」

宥「うん、良いと思う」





「ふむ、予約が二部屋追加か……」

玄「あれ、ダメだったかな?」

「いや、かまわないが……少し人数的に心もとないと思ってね」

玄「だれかお休みだったっけ?」

「仲居さんが一人、インフルエンザでダウンしていてね」

玄「あ、そういえば……」

「なに、当日休みの人に頼んでみるさ。玄は気にしなくてもいいよ」

玄「ううん、その分私が頑張るよ!」

「……じゃあ無理はしないこと、いいね?」

玄「おまかせあれ、なのです」


宥「……」





京太郎「今度の土日? またいきなりだな」

宥『ダメかな?』

京太郎「いいや、どうせ暇だしな」

宥『本当? よかったぁ』

京太郎「お前が頼み事してくるなんて珍しいな」

宥『そうかなぁ? なんだかんだで甘えちゃってると思うけど』

京太郎「ま、甘えられて悪い気はしないな」


京太郎「しかし、俺だけで大丈夫なのか?」

宥『具合悪くてお休み取ってるのは一人だけだから、大丈夫じゃないかな?』

京太郎「そうか、悪いな。高鴨たちも喜んで手伝ってくれそうかなって思ったからさ」

宥『それはそうなんだけどね……ほら、京太郎くんってあんまり会えないから』

京太郎「まぁ、そうだな」

宥『だから、会いたいなーって』

京太郎「……」キュン



京太郎(やばい、胸にきた)

京太郎(狙ってやってるとしたらとんでもないな……)


宥『ごめんね、私のわがままで。交通費はちゃんと出すから』

京太郎「いいって、どうせまたサービスしてくれるんだろ?」

宥『うん。お風呂でもお布団でも、精一杯あったかくしちゃうから』

京太郎「布団は……さすがにまずいだろ」

宥『一人より二人の方があったかいよ?』

京太郎「あったかくなりすぎるのが問題なんだよなぁ」


京太郎(正直我慢できなさそうだし)


宥『我慢なんてしなくてもいいのに……』ボソッ

京太郎「まあいいや。昼前にそっちに着いとけばいいか?」

宥『そうだね。私とクロちゃんでお昼ご馳走するね』

京太郎「わかった、それも楽しみにしとく」


さすがに眠い……次回に続く

ちなみにこんな感じ

久照:お互いを脅威に感じてるし敵視している
久美穂子:お互いを脅威に感じてるけど仲良し
松実姉妹:姉の方が遠慮気味、だけど我慢できなくなってきている
哩姫:お互い遠慮はしないけど仲良し

松美姉妹は今回メインじゃないのでダブルです


それじゃ、もうちょっとしたら始めます

メインじゃなくても話の展開によってはちょこちょこ増えたりもします
霞さんはポイントボーナスで一気に上昇
シロは大晦日の話でメインだったのと身内ボーナスです

んじゃ、始めます




玄「今日は忙しくなるから頑張らないと……よぉし!」


京太郎「ちわーっす」


玄「……え?」

京太郎「よう、人手足りないって聞いて手伝いに来たぞ」

玄「あ、あれ……なんで京太郎くんが」

京太郎「だから手伝いだっての」

玄「お、落ち着くのです私。これは京太郎くんに会いたすぎて見てる幻――」

京太郎「人を勝手に幻にするな」ピシッ

玄「いたっ」


宥「あ、もう着いてたんだ」


京太郎「ああ、今日はよろしくな」

宥「ちょっと早いけどお昼食べる?」

京太郎「用意してくれるか? 朝飯早かったから腹減ってるんだ」

宥「うん、ちょっと待っててね」



玄「お、お姉ちゃん!」


宥「なぁに?」

玄「これっ、どういうことっ?」

宥「今日は一人お休みしてるでしょ? だから京太郎くんに来てもらったの」

玄「聞いてないよ!」

宥「サプライズになるかなーって思って、黙ってたんだ」

玄「たしかに驚いたけど……」

宥「お父さんにはちゃんと話してるから大丈夫だよ」

玄「じゃあ知らなかったの私だけ!?」

京太郎「まぁ、来ちゃったもんはしょうがないだろ」

玄「そうだけど……ちゃんと知らせてくれたらおもてなししたのに」

京太郎「なら昼飯でも作ってくれよ。宥と一緒にさ」

玄「……うん、そうだね。じゃあ、お姉ちゃん」

宥「一緒に京太郎君にご奉仕しよっか」

京太郎「……」


京太郎(うーん、なんかエロい)





セーラ「着いたー!」

怜「ここがあの姉妹のハウスやねんな」

竜華「実際に旅館部分に住んどるわけやないと思うけど」


玄「お待ちしてました!」


竜華「玄ちゃん!」

玄「今日はいっぱいおもてなししますから、ゆっくりしていってくださいね」

竜華「やっぱかわええなぁ」ムギュッ

玄「こ、これは……前よりもさらに強力に!」


怜「うんうん、太ももが一番やけど、あれもいいもんや」

セーラ「怜、卓球やろ卓球」

怜「無理無理、セーラの相手はきっついわ」

セーラ「えー」



姫子「着きました、あそこですよあそこ」

哩「ここが松実館? 中々よかとこやね」


宥「お持ちしておりました」


哩「松実宥さんやったね」

宥「はい、私たちは直接面識はなかったですけど」

姫子「なんかもこもこしてますね」

宥「まだ寒いですから」ブルブル

哩「え、今日はよか天気やけん、むしろちかっとぬっかて思うけど」

姫子「あはは、そういえば夏場にマフラーしてましたね」

宥「それじゃあお部屋に案内しますね」

哩「ああ、よろしく」

姫子「先輩先輩、あい見てくださいよ」クイクイ

哩「ん?」



怜「竜華ー、はよ部屋でゴロゴロしよ」

セーラ「しゃあないなぁ、卓球ダメなら温泉やな」

竜華「ん、せやな。玄ちゃん、案内お願いな」

玄「おまかせあれ!」


哩「千里山?」

姫子「清水谷もいる」

宥「プチ卒業旅行みたいです」

姫子「プチ?」

哩「つまり、私らと同じ?」


竜華「あれ、鶴田さん?」



姫子「どもー」

哩「奇遇やね」

竜華「インハイぶり」

怜「なになに? 新道寺のコンビ?」

セーラ「お、卓球やらへん?」

哩「卓球ね。うん、よかよ」

姫子「ダブルスします?」

竜華「ええんやないかな、せっかくの機会やん」

怜「じゃあうちは審判で」


玄「ささ、立ち話もなんですから中に入りませんか?」

宥「ご案内しますね」





セーラ「あー、楽しかった!」

哩「明日は筋肉痛かな……」

姫子「完璧運動不足ですね……」

怜「せやけどええ勝負やったな。一勝一敗で」

竜華「麻雀以外でもコンビネーション抜群やん」

姫子「えへへ、なんか照れます」ピトッ

哩「姫子、ぬっか……」

セーラ「ぬっ?」


怜「あの二人、できとるんかな?」

竜華「できとる?」

怜「イケナイ関係ってこと」

竜華「えっ、それって……女の子同士ってこと?」

怜「せや、レーズンにDCの総裁や」

竜華「総裁?」

怜「つまりレズビアン」

竜華「れ、レズ!?」



哩「なんば話とーと?」

怜「お二人が同性――むぐっ」

竜華「なんでもっ、なんでもあらへんからっ」

姫子「仲良いですねぇ……あ、もしかしてそがん関係とか」

竜華「ちょっ」

怜「いやいや、うちらノーマルやし」

姫子「えー? ホントに?」

哩「姫子、失礼やろ」

怜「気にせんでもええよ。うちらが仲良しなのはホンマやねん」

竜華「う、うん……せやな」

セーラ「ま、竜華にはちゃんと男で好きな奴おるしなー」

姫子「あ、気になります」

竜華「終わり終わり! 汗かいたから風呂入ろ!」


日が変わったとこでこんばんは

もうちょっとしたら始めます

んじゃ、始めます




玄「ふふふ、清水谷さんたちは入浴中……」

玄「そして私はお仕事で女湯に入らなきゃいけない」

玄「つまりこれは不可抗力なのです! 不可抗力でおもちを見放題!」


京太郎「バカなこと言ってないでさっさと行ってこい」


玄「バカなことじゃないよ! 千載一遇のチャンスだよ!」

京太郎「お前って色んな意味で羨ましいよな」

玄「も、もしかして京太郎くんも見たいのかな?」

京太郎「あー、はいはい。あとで胸揉ませてくれ」

玄「うん、体綺麗にして待ってるから……」モジモジ

京太郎「いや、じょうだ――」

玄「じゃ、行ってくるね!」

京太郎「――あ、おい!」


京太郎「……あとで誤解を解かなきゃな」

京太郎「さ、俺もさっさと布団運ぶか」





玄「とはいえやっぱりおもちは気になるのです」

玄「いざ、清水谷さんのおもちと――」ガラッ


怜「お、玄ちゃんやん」

哩「どうも、風呂いただいてます」


玄「……あのー、清水谷さんは?」

怜「セーラは早風呂で、竜華はまだ来とらんよ」

哩「姫子もまだやね」

玄「そうですか……ゆっくりあったまってくださいね……」

怜「またえらいテンション下がったなぁ」





竜華「好きな人……」


『ほなな、ダーリン』


竜華「怜も……」


姫子「どしたんですか?」

竜華「あ、え……鶴田さん」

姫子「暗い顔してますよ」

竜華「そない顔してた?」

姫子「そいはもうちかっぱい。悩み事ですか?」

竜華「あはは……やっぱ一人になると考えてまうなぁ」

姫子「私で良ければ聞き流しますよ? 同じ卓囲んだ仲ですし」

竜華「聞き流す? 聞いてくれるわけやなくて?」

姫子「まぁまぁ、話せば楽にってこともありません?」

竜華「意外にぐいぐい来るんやな」

姫子「私のすいとー人の影響ですかね」

竜華「それって、白水さん?」

姫子「んー、さすがに哩先輩は恋愛対象やないですね」

竜華「うちもそないな意味で言うたわけやないんやけど」



竜華(そういえば、須賀くんもこうやって気分転換に誘ってくれた……)


竜華「……好きな人おるんやけど」

姫子「ノーマルって本当やったんですね」

竜華「それは怜も同じみたいで」

姫子「ははぁ、園城寺さんも意中の相手がいると」

竜華「うん……問題なのは、その相手が同じっちゅーことで」

姫子「あ、そい私たちもですよ」

竜華「そうなんか……って、そうなん!?」

姫子「私も哩先輩も、同じ男ん人ばすいとーみたいで」

竜華「さ、三角関係ってこと?」

姫子「はい」

竜華「えっと……それどうなん?」

姫子「んー、お互いそこまで気にしとらんですけど」

竜華「そか……やっぱ仲ええんやな」

姫子「お二人もそうやと思いますけど」

竜華「……うちらは――」



「すいませーん、そこ通りまーす」


竜華「あ、すみません」

姫子「あれ?」


「えーっと、この布団はこっちだったっけな」


姫子「やっぱり先輩だ!」

京太郎「ん? ああ、お前らか」

竜華「なんか須賀君の声する……うち、相当まいっとるんやろか」

京太郎「幻聴じゃないぞー」

竜華「幻聴はみんなそう言う――って本物!?」

京太郎「まぁな」

姫子「先輩はこがんとこでなんばしとーと?」

京太郎「なにって、バイトだけど」

姫子「あ、もしかして私に会いに来ちゃいました?」

京太郎「言ってねーよ。人の話聞け」

姫子「もう、ホントしょんなか人ですねぇ」

京太郎「寝言は寝て言え」

姫子「はい♪」



竜華(あれ、なんやこれ……)

竜華(鶴田さん、まるで――)


竜華「あのー、須賀くんと鶴田さんは知り合いなん?」

姫子「初めて会った時から、先輩は私んこつ気になってしょんなかですよね?」

京太郎「こいつの言うことは半分ぐらい聞き流していいぞ」

姫子「つまり、半分ぐらいは気になってるってことですよね?」

京太郎「やっぱ全部聞き流していいぞ」


竜華(なんか、仲良すぎっちゅーか……)


姫子「そいで、先輩たちは知り合いなんですね」

京太郎「高一の時からな。あちこち遠征行っててさ」

姫子「前々から似たようなこつしてたんですね」

竜華「福岡にも行ってたん?」

京太郎「二年の冬休みにな。北海道にも行ったっけな」

姫子「初対面なのにナンパから助けてくれたり、買い物に付いてきてラーメンおごってくれたり……どんだけ私んこつすいとるんですか、もう!」

京太郎「うんうん、ラーメン奢らされた挙句荷物持ちだもんな」

竜華「鶴田さん、ちょいええかな?」

姫子「はい?」



姫子「どうかしました?」

竜華「須賀くんとどないな関係なんかなーって」

姫子「そい、私も聞いてよかですか?」

竜華「うちと須賀くん?」

姫子「はい。ただの知り合いってわけやなさそうですし」

竜華「まあ……向こうに遊びに行ったり色々あったけど」

姫子「同じですね。私たちも先輩んとこに何回か遊びに行ってます」

竜華「そか、須賀くん知り合い多いし」

姫子「特に女子の割合多すぎって思いません?」

竜華「せやなぁ」


竜華(須賀くんのこと好きな子、結構おるみたいやし)



姫子「そいで、キスしたんですか?」

竜華「うん……ってなに聞いとんの!?」

姫子「むぅ、付き合っとるんですか?」

竜華「それは、その……キスも一方的やったし」

姫子「つまり、強引にキスするくらいじゃダメと」

竜華「やっぱり鶴田さんも?」

姫子「ええ、三角関係どころやなかてこつはよーくわかりました」


姫子「というわけで先輩! ……あれ?」


竜華「須賀くんが消えた?」

姫子「むぅ……逃げましたね」





怜「いい湯やなぁ」

哩「そうやね」

怜「時に、相方おらんのも珍しいんとちゃう?」

哩「姫子遅かね……なんばしよるんやろ」

怜「竜華もどこで油売っとるんやろなぁ」

哩「……花田が世話んなったね」

怜「インハイの時? せやなぁ、でもお互い様やん」

哩「こっちがお礼ば言いたかっただけ」

怜「そうなん? ならお風呂上がりにコーヒー牛乳奢ってくれてもええんやで?」

哩「お互い様ならこっちはフルーツ牛乳で」

怜「これで相殺やん。残念」



怜「それで、実際後輩といかがわしい関係とかあるん?」

哩「いかがわしい関係て、私と姫子が?」

怜「せやせや。百合の園が広がっとるんやないかって」

哩「そがんあるわけないやろ」

怜「他に好きな男がおるとか?」

哩「……まぁ、有り体に言えば」

怜「なるなる、新道寺のまいひめコンビに男の影と」

哩「こん話、続けると?」

怜「古来から恋バナは女子の大好物」

哩「はぁ……初対面は二年のインハイ」

怜「それで?」

哩「そっちも情報ば出さんと続きはなし。不公平やろ」

怜「しゃあないなぁ……初めて会ったんは一年の夏休みかな」

哩「そいは?」

怜「うちはノーマルやから、好きな男子くらいおるねん」

哩「続きは?」

怜「なんや興味津々やん。でも続きはそっちが話してからで」

哩「……しょんなかね」



哩「ベンチに座っとーと声ばかけられて」

怜「公園で暇してたら声かけられて」

哩「姫子待っとる間、話し相手になってくれたり」

怜「下手っぴ仲間同士、一緒にジュース飲んだり」

哩「冬に会った時には、冗談やろうけど……あ、愛してるとか言われて」

怜「フラフラになったとこをおぶわれて……思えばあれでやられたんかな?」

哩「姫子と喧嘩しとーと、仲ば取り持ってくれたり」

怜「一緒に勉強させられて、一緒に逃げて、ラブホ入ったりとか」

哩「そうそう、一緒に勉強したことも……ラブホ!?」

怜「せやせや、ちゅっちゅしたりエロエロしたりな」


怜(まぁ、最後まではいっとらんけど)

こんばんは
今回で終わらせたいけど微妙な気もする今日このごろ

本当に四人同時なんてことしたら長引きすぎて……

とりあえずもうちょっとしたら始めます

まさかの試合開始前から……

というわけで今夜で

こんばんはー

風呂入ったら始めます

んじゃあ、始めます



怜「そっちはなんかエロいことなかったん?」

哩「え、エロいて……一緒んベッド入って……キス、したけど」

怜「おお! あるやん」

哩「あ、あはは……」


哩(あん時は姫子も一緒やったけど)


怜「ところで自分、遠恋なん?」

哩「うん、向こうは長野やけん」

怜「長野? うちの相手も同じ」

哩「偶然やね」

怜「まさか相手まで同じやなんてことは……」

哩「まさかそがん……」

怜「……」

哩「……」



怜(否定しきれへんなぁ)

哩(よくよく考えっと、ありそうな気が……)


怜「身長は?」

哩「ふとかね、多分180以上……髪は?」

怜「まっきんきん。仲良しな幼馴染と一緒にいたり?」

哩「そん通りやね……高校は?」

怜「清澄」

哩「あん清澄?」

怜「インハイで優勝かっさらってった清澄」

哩「……」

怜「……せーので名前言おか」

哩「そうやね、まだ別ん可能性はあっけん」

怜「ほな……せーのっ」


「「須賀京太郎!」」





姫子「どーして逃げますか!」

京太郎「逃げるもなにも、仕事中なんだけど」

竜華「須賀くん、さっきのホンマなん?」

京太郎「さっきのって、ラーメン奢らされたってやつ?」

竜華「そこやなくて……ほら、アルバイトって」

京太郎「ああ、ここの旅館に縁があってさ」

姫子「もう、どうせ色んなとこで女子に声ばかけとるんですよね」

京太郎「かけてないかけてない。俺をなんだと思ってるんだ」

姫子「色々話聞いて確信しました。先輩、女誑しですよ!」

京太郎「ははは、バカ言うな」


『だって、私は……姫様がどうでもよくなるぐらい、あなたのことが……』

『でも、あなたといるのは楽しくて、もっと傍に寄りたくて』


京太郎「そんなことは……」


『うん、竜華の太ももと同じくらい須賀くんが好き』

『あなたのことを好きでいて、よかったです……んっ――』


京太郎「……」



京太郎(やばい、説得力が全くない)


姫子「むぅ……」

京太郎「自分で言っといてなにむくれてんだ」

姫子「先輩はやましいこつありありなんですね」

竜華「まぁまぁ、須賀くんはお仕事中やん?」

姫子「じゃあ終わった後、時間ばもらってもよかですかね?」

京太郎「うーん……それはどうだろうか?」

姫子「約束ですから! 絶対ですよ!」


京太郎「おい、人の話を――って、行っちゃったか」

竜華「付き合ってあげるん?」

京太郎「ほっとくわけにもいかないだろ」

竜華「優しいなぁ、ほんま」


竜華(だから怜も……)


竜華「それじゃ、うちもお風呂行くかな」

京太郎「ああ、ゆっくりしてけよ」





姫子「もう、先に上がっちゃうなんてあらかて思います!」

哩「そがん言うても、湯あたりしそうやったし」

姫子「こいはもう完璧先輩んせいですね」

哩「え、私?」

姫子「哩先輩やないですよ?」

哩「千里山んだれか?」

姫子「私と先輩が大好きなあん人ですよ」

哩「は? なしてさ」

姫子「ここでアルバイトしてるみたいで」

哩「また謎やね……」

姫子「ばってん、おるのはたしかですから」

哩「……姫子、さっき園城寺と――」


姫子「そいより、園城寺と清水谷もですよ!」

哩「はい?」

姫子「あん二人も先輩んこつすいとーみたいで」

哩「あ、ああ……そう」

姫子「反応薄くありません?」

哩「実は、さっき風呂で園城寺と話ばして」

姫子「そん話になったと?」

哩「そうやね」



哩(しかし、須賀くんモテる……さすがのイケメン)


姫子「どがんします?」

哩「どがんもこがんもね」

姫子「せっかく先輩もいますし、攻め時やと思うんですけど」

哩「進展か……」


哩(キスより先となっと……え、エッチとか?)カァァ

哩(さすがにそいはレベルが……)


姫子「キスばしたって言いよったんですよ?」

哩「!?」

姫子「こいは私たちも清水谷には負けてられませんよ」

哩「……ごめん、実は私もした」

姫子「え、したって……キスですか?」

哩「うん、二人で須賀くん家に泊まった時」

姫子「……わかりました」

哩「姫子?」

姫子「私だけ除け者なんてやです。やけん、押し倒してきます」

哩「姫子!?」





京太郎「うっ……」ブルッ

京太郎「なんだか寒気が……風邪か?」


玄「京太郎くん? そろそろ休憩してもいいよ?」


京太郎「ああ、もうそんな時間か」

玄「お疲れ様。お部屋のお風呂だったら入ってもいいから」

京太郎「そっちもな。俺なんてほとんど力仕事でかえって楽だったからさ」

玄「でも、私たちは助かったのです」

京太郎「ま、お金もらう以上はきっちりやるさ」

玄「それで、あの事なんだけど……」モジモジ

京太郎「あの事? なんだっけ?」

玄「お、覚えてないの? 私の……揉みたいって」

京太郎「……そういや、そんなこと言ったな」

玄「お客さんの布団の準備できたらお風呂に入ってくるから……そしたら」

京太郎「いや、それなんだけどさ」

玄「それじゃ、また後でっ」タタッ

京太郎「あ、おいっ、人の話を――」


京太郎「……どいつもこいつも落ち着きってもんが足りないな」

京太郎「仕方ない、追いかけるか」




姫子「先輩」


京太郎「悪い、今はちょっと相手できな――」

姫子「こっち来てください」グイッ

京太郎「だから待てって!」

姫子「せからしか!」


姫子「来てくれんと、乱暴されたって叫びます」


京太郎「……仕方ないな。ちょっとだけだぞ」

姫子「そいは先輩次第ですよ」





京太郎「で、お前は俺に何させたいんだ?」

姫子「とりあえず、そこに寝てください」

京太郎「なんとなく身の危険を感じるから断る」

姫子「なしてですか!」

京太郎「いきなりそんなことを言われて怪しまない奴がどこにいる」

姫子「むぅ……えいっ」

京太郎「のわっ」グラッ


京太郎「――ってーな……なにすんだよ、おい」

姫子「なんばすっと思います?」

京太郎「さぁな……マウント取られて、ボコられんのか?」

姫子「不正解です……んっ――」チュッ



姫子「正解、わかりました?」

京太郎「……本気か?」

姫子「にぶちんな先輩には、こんぐらいがよかて思いまして」

京太郎「俺は、お前にからかわれてるんだと思ってたんだけどな」

姫子「ほら、やっぱし気づいてなかったやないですか!」

京太郎「人を振り回すのに慣れてそうだから、てっきり他の奴にも同じようにしてるもんかと」

姫子「先輩は誰にでも優しか人ですもんね」

京太郎「なわけないだろ」

姫子「じゃあ、私ば跳ね除けんのは?」

京太郎「穏便に事を済ませるため、とか?」

姫子「とかってなんですか、とかって」

京太郎「いいからおりろ」

姫子「やです。先輩が突き飛ばすか、我慢できなくなるまでやめません」

京太郎「お前なぁ……」

唐突にコンマ判定
高ければ高いほど(ry


下1~下5

多分最後なんで範囲もボーナスも込み込みです



コンマ81以上 京太郎、うっかり本気になる


京太郎「とっくに我慢なんて限界なんだ、よっ」ガバッ


京太郎「どうだよ、押し倒される気分は」

姫子「今ん先輩、乱暴で力強くて……がばよかぁ」

京太郎「……黙ってろよ」

姫子「んんっ――」


京太郎(まずい、ちょっと怖がらせるだけのつもりが)

京太郎(こいつが喜んでるのはともかく、俺も思った以上にやられてる)

京太郎(まさか、自分からするなんて……)

京太郎(くそっ、生意気なくせにかわいいから!)


姫子「もっと、もっと……頭ん中とろけるくらい、ください」

京太郎「……」グイッ

姫子「ぁんっ……こっから、どがんします?」

京太郎「言わなくても、わかるだろ」

姫子「先輩……めちゃくちゃにしてください」

京太郎「ああ……」



宥「京太郎くーん?」


京太郎「――っ」

姫子「……」


宥「あれ、こっちから声したのに……」


姫子「こがん時に……」

京太郎「静かにしろ、見つかったらまずいだろ」

姫子「……問題あっと?」

京太郎「ありありだろ」

姫子「むぅ……」


宥「お風呂でお背中流そうと思ったのになぁ」


京太郎「……!」ガタッ

姫子「……」ギリッ

京太郎「いてっ」


宥「うーん……あ、お部屋に戻ってるかも」



京太郎「……」

姫子「……行きました?」

京太郎「多分な」

姫子「じゃあ――」

京太郎「……俺らも戻るぞ」

姫子「――っ、なしてですか!」

京太郎「バカ、さっきのあれはその……お前をちょっと怖がらせるためにやっただけだって」

姫子「おっきくしてるくせになんば言いよっとですか!」

京太郎「とにかく終わりだ。はい、解散」

姫子「~~っ、こんふうけもん! ひーたれ!」

京太郎「はぁ? 人の気も知らないで好き放題――」

姫子「やけん!」


姫子「押して押して、絶対そっちからすいとーって言わせますから!」

姫子「そいぎ!」



京太郎「……すぐにでも言えればいいんだけどな」

京太郎「さて、風呂入ってくるかな」


哩「須賀くん、本当にいた」


京太郎「鶴田から聞いてるっぽいな」

哩「姫子は?」

京太郎「どっか行っちゃったよ」

哩「……なんもされんかった?」

京太郎「いきなり押し倒されたな」

哩「なっ!?」

京太郎「落ち着け、んな大したことは……うん、なかったしな」

哩「そう、姫子があがんこつ言いよったけん……んなっ!」カァァ

京太郎「なんだ、面白い声出して」

哩「そ、そいって……」

京太郎「ん? ……あ、やべ」ギンギン

哩「……私ならよかよ?」

京太郎「……そっとしておいてくれ」



哩「じゃあ、一つ質問」

京太郎「ん?」

哩「園城寺と……ら、ラブホ入ったって?」

京太郎「なに話してんだあいつ!」

哩「や、やっぱし本当に……」プルプル

京太郎「あー、待て待て、とりあえず落ち着こう。ほら、ひっひっふー」

哩「ラマーズ法? まさかもう赤ん坊まで!?」

京太郎「飛躍しすぎっ」


――このあと滅茶苦茶言い訳した。


寝落ち防止のために寝ます

姫子に関しては……最後に選択肢出すんで、それで正解をひければ
もう最後なんで色々ゆるゆるです

おやすみなさい

こんばんはー
今回で終わらせたい所存ー

というわけで風呂入ったら始めます

んじゃ、始めます




怜「お夕飯楽しみやなー」

竜華「うん……」

怜「竜華?」

竜華「なに?」

怜「ん、反応あるならええわ」

竜華「なにそれ」

怜「最近ボケっとしとること多いから」

竜華「そう?」

怜「激辛うどん事件」

竜華「事件て……あれ辛くしたの怜やん」

怜「普通目の前で入れとったら止めるやろ」

竜華「う……」

怜「……そろそろええんやない?」

竜華「ええって、なにが」

怜「なんか溜め込んどるっぽいから」

竜華「そないなこと……」


竜華(他の子が須賀くんのこと好きって言うても、負けへんって思う)

竜華(でも、怜だけは……)



怜「そういえば、お風呂でおもろい話聞いたわ」

竜華「だれかと一緒に入ってたん?」

怜「竜華遅いから、白水さんとしっぽりとな」

竜華「白水さんと……おもろい話って?」

怜「うちらが三角作っとるように、向こうも須賀くんと三角関係みたい」

竜華「――っ」

怜「二重で三角関係? あの分やと他にもありそうやけど」

竜華「怜は……気にしてへんの?」

怜「須賀くんやったらそんなもんやない?」

竜華「そか……」

怜「ま、他に取られるのだけは気を付けんとな」

竜華「……」


竜華(うちに、できることは)





京太郎「ふぅ……スッキリした」

京太郎「やっぱここの風呂はいいな」

京太郎「色んな疲れが流れてったような気がするぜ……」


セーラ「なんや、須賀やん。おったんか」


京太郎「そういうお前は江口」

セーラ「奇遇やなー。卒業旅行?」

京太郎「アルバイトだ。ここも馴染みの場所だからな」

セーラ「ふーん、竹井おらへんの?」

京太郎「久ちゃんは来てないぞ」

セーラ「そーなんか。ま、そこまでうまくはいかへんっちゅーことか」

京太郎「なんか用でもあったのか?」

セーラ「プロ入りする前に決着つけとこうて思て」

京太郎「愛宕姉あたりも同じようなこと言いそうだよな」

セーラ「は? 洋榎と一緒にすんなや!」

京太郎「なんだ、お前らって仲悪いの?」

セーラ「別に。あいつとはプロでやりあうこともあるからええわ」

京太郎「じゃあ、あいつもプロ入りか」

セーラ「許せんのは……あいつ、一人だけインハイで決着つけて!」

京太郎「……まさか久ちゃんのことか?」



太郎(二年の時と違って絡みなかったからなぁ)


セーラ「決着ついとらんのは俺も一緒なのに!」

京太郎「うわぁ……久ちゃんモテるなぁ」

セーラ「とにかく、竹井にふらっとこっち来いて伝えといてや」

京太郎「てかネト麻でいいんじゃねーの?」

セーラ「ネト麻は好かん。生打ちのほうが断然ええわ」

京太郎「まあ、そういうと思ったよ」


セーラ「せや、怜と竜華ってなんか喧嘩しとった?」

京太郎「なんかあったのか?」

セーラ「最近、ちょい空気微妙になる時があんねん」

京太郎「だとしても、お前の方がわかってるだろ」

セーラ「それがな、この前二人で長野行ってからなんや」

京太郎「あの時から? 特別なことは――」



京太郎(二年の時と違って絡みなかったからなぁ)


セーラ「決着ついとらんのは俺も一緒なのに!」

京太郎「うわぁ……久ちゃんモテるなぁ」

セーラ「とにかく、竹井にふらっとこっち来いて伝えといてや」

京太郎「てかネト麻でいいんじゃねーの?」

セーラ「ネト麻は好かん。生打ちのほうが断然ええわ」

京太郎「まあ、そういうと思ったよ」


セーラ「せや、怜と竜華ってなんか喧嘩しとった?」

京太郎「なんかあったのか?」

セーラ「最近、ちょい空気微妙になる時があんねん」

京太郎「だとしても、お前の方がわかってるだろ」

セーラ「それがな、この前二人で長野行ってからなんや」

京太郎「あの時から? 特別なことは――」



京太郎(あった、超あった)


セーラ「俺も話聞くぐらいはできるけど、基本相談とかに向いてへんからなぁ」

京太郎「わかったよ、暇があればいっぺん話してみる」

セーラ「ん、頼んだわ」

京太郎「言っとくけど、そんな期待すんなよ」

セーラ「大丈夫やろ。須賀は竜華が惚れた男やん」

京太郎「……」


京太郎(直球で言われると、どう返していいかわかんなくなるな)

京太郎(にしてもすごい信頼だな……まぁ、俺じゃなくて清水谷に対してだけど)

京太郎(……ま、やってみますか)





京太郎「さて、どっちからあたるかな」

京太郎「清水谷か園城寺か……」

京太郎「こういう時ボロ出しそうな方といえば……」


宥「京太郎くん?」


京太郎「ん、どうした?」

宥「ちょっと早いけど、お夕飯持ってきたよ」

京太郎「ああ、悪いな。食べたら休憩終わりかな」

宥「うん。後はお布団の用意して今日は終わり」

京太郎「今日は気持ちよく寝れそうだ」

宥「ふふ、そうだね」

京太郎「となれば飯だな。そういや腹減ったような気がしてきた」

宥「いっぱい食べてね」

京太郎「いただきま……あれ、箸は?」

宥「私が持ってるよ?」

京太郎「それないと食えないんだけど」

宥「大丈夫だよ」


宥「はい、あーん」


京太郎「……マジか」






哩「夕飯も中々やったね」

姫子「うまかもんも食べましたし、というわけで行ってきます」

哩「というわけでって、いきなしなんば決めとーと?」

姫子「攻めて攻めて、先輩ば負かしてくっとですよ」

哩「あー……さっき押し倒してくって言いよったね」

姫子「あ、一緒に行きましょうよぉ。ほら、一人より二人って言いますし」

哩「そいも悪くなかね。ばってん、私は行くべきやなかて思う」

姫子「なしてですか?」

哩「姫子、目的ば間違えちゃいかん」

姫子「やけん、あん人に――」

哩「そいばもやーもんにすんのはざっとなかね」

姫子「……なしてそがん言うんですか」

哩「私と須賀くん、姫子と須賀くん、別々のもんやけん」

姫子「――っ」

哩「一緒にいたい、そがん思ってくれとるんは嬉しい。ばってん、須賀くんば利用すんのは違うやろ」

姫子「……あはは、バレちゃいました」



姫子「やっぱし離れ離れはやです」

姫子「やけん、つながりが欲しかったんやて思います」

姫子「一緒に初体験なんて、がば強烈やないですか」

姫子「ばってん、失礼ですよね。哩先輩にもあん人にも、私にも」


姫子「てなわけで行ってきます」

哩「うん、頑張れ」

姫子「あ、さっきはあがん言いましたけど、混ざりたいなら来っとよかですよ?」


姫子「そいぎ、朝までには戻ると思いますから」パタン


哩「……ふぅ、こがん世話焼けんのも、あとどんぐらいかね」

哩「しかし、朝帰り宣言……やっぱし、私も行ったほうが……いやいやいや」





竜華(怜のためにできること……そんなん決まっとる)

竜華(ちょい辛いけど……ううん、大丈夫、きっと)


竜華「でも、よう考えたら須賀くんがどこにおるのかわからへんな」

竜華「携帯にかけてもええけど、仕事中やったら迷惑やんな」

竜華「うーん……」


玄「おっ風呂ー、おっもちー♪」


玄「やや、これは清水谷さん」

竜華「楽しそうやん、なんかええことあった?」

玄「あったというか、これからといいますか……」モジモジ

竜華「ふふ、かわええなぁ」

玄「そんな、かわいいだなんて……」テレテレ


竜華「あ、そういえば聞きたいことあるんやけど」

玄「はい?」





京太郎「終わり終わりー!」

京太郎「さて、後は風呂入ってまったりしようかな」


――コンコン


京太郎「はいはーい」ガチャ


姫子「来ちゃいました」


京太郎「ふぅ……疲れてると妙なもんが見えるな」

姫子「幻やないですから。とりあえず上げてくださいよ」

京太郎「お前な、どうやってここを嗅ぎつけた?」

姫子「普通に後ついてきましたけど」

京太郎「マジかよ……」


京太郎(気づかなかった……仕事終わりで浮かれてたせいか)



京太郎「……まぁ、いいや。ちょうど暇になったし」

姫子「最初からそがん素直にすっとよかて思います」

京太郎「はいはい、大したもんはないからな」

姫子「先輩がいれば十分です」

京太郎「お、おう……」


京太郎(ストレート……結構来るな)



姫子「せーんぱいっ」ギュッ

京太郎「動きづらいんだけど」

姫子「どーせ部屋におるだけなら問題なかですよ」

京太郎「風呂に入りたいんだよ」

姫子「あ、一緒に入ります?」

京太郎「寝言は寝て言おうな」

姫子「じゃ、一緒に寝ます?」

京太郎「寝ねーよ。風呂入るっつったろ」

姫子「やけん、お背中流しますねー」

京太郎「話が戻ったなぁ」

姫子「先輩がはいって言えば進みますって」

京太郎「はいはい、また今度な」

姫子「今度っていつですか?」

京太郎「今じゃないいつかだな」

姫子「却下です」

京太郎「んなこと言われてもな……んー」



京太郎「まぁ、いいぜ」


姫子「え、ホントに?」

京太郎「互いに見ない、接触なしならな」

姫子「そいのどこに意味があっとですか!」


『ささ、はよ行かんと』

『竜華、サプライズって? スペシャルゴージャス膝枕?』

『なにそれ……ともかく、着けばわかるから』コンコン


京太郎「清水谷たちか?」

姫子「むぅ……」

京太郎「とりあえず放せ。出られないだろ」

姫子「私が行きますから」


姫子「はーい」ガチャ



竜華「こんばんは……って、鶴田さん?」

怜「なんや、サプライズってまいひめコンビの部屋?」

竜華「えっと……なんでここに?」

姫子「そがん気になります? 私と先輩がなんばしよったか」

怜「え、百合の薗にご招待? ごめん、うち同性愛はちょっと……」


京太郎「人の部屋を百合の園にすんな」


怜「須賀くん? なにしとんの?」

姫子「これから一緒にお風呂です」

竜華「ホンマに!?」

姫子「先輩がよかって言ったんですよね?」

京太郎「あんまりしつこいからな」

竜華「……鶴田さん、ちょい話あるんやけど」

姫子「なんですか?」

竜華「他の人の前じゃちょっと……」

姫子「後じゃダメですかね?」

竜華「うん、急ぎで」

姫子「しょんなかですねぇ」



姫子「じゃ、ちかっと待っててくださいね」

竜華「怜のことお願いな」


京太郎「……と、言われてもな」

怜「結局なんでここにいるん?」

京太郎「アルバイト。伝手があってな」

怜「そういえば、泉が須賀くんと玄ちゃんにいじめられた言うてたなぁ」

京太郎「ま、俺は顔が広いらしいからな」

怜「その分毒牙にかけた女も多いと」

京太郎「人聞き悪いことを」

怜「世の中では客観の方が事実になることが多いんや」

京太郎「つまり?」

怜「やーい、女誑しー」

京太郎「ぐふっ」





姫子「そいで、話ってなんですか?」

竜華「あ、えっと……」


竜華(なんも考えてなかった!)


姫子「特に用がなかてこつなら、戻りますけど」

竜華「そうだ! 麻雀やらへん?」

姫子「麻雀?」

竜華「また打ってみたいて思っとったから」

姫子「うーん……今は友情より恋愛って気分です」

竜華「半荘だけでええから、ね?」

姫子「……まさか、先輩から引き離したとですか?」

竜華「それは鶴田さんの考えすぎやない?」

姫子「わかりました。邪魔ばできんように叩きのめします」

竜華「どうかな? そう簡単には行かへんと思うけど」



セーラ「俺も混ぜろっ」


竜華「セーラ、聞いとったん?」

セーラ「なんか麻雀とか聞こえたから」

竜華「まぁ、ちょうどええかな」

姫子「まだ面子揃わんですね……」


哩「気になる……気になっけど姫子の邪魔すんのは……」


姫子「哩先輩、よかとこに!」

哩「ひ、姫子? こいは散歩やけん、他意はなかよ?」

姫子「麻雀しませんか?」

哩「へ?」





京太郎「……戻ってこないな」

怜「見事に置き去りやなー」

京太郎「早く風呂入りたいんだけどな」

怜「一緒に入る?」

京太郎「入りません」

怜「えー? ぬるぬるプレイせぇへんの?」

京太郎「ぬるぬるって、お前な」

怜「ま、最中に戻ってきたらまた面倒やんな」

京太郎「そうだな」


京太郎(そういや、江口から頼まれてたっけ)

京太郎(まず清水谷に話聞こうと思ってたけど、こいつからでもいいか)



京太郎「お前らって喧嘩することとかあんの?」

怜「お前らって、うちと竜華?」

京太郎「ああ」

怜「まぁ、ときたまくだらんことで言い合いになることはあるけど」

京太郎「あるのかよ」

怜「ゆーても違う人間やし? 衝突ぐらいはあるんとちゃう?」

京太郎「そういうもんか」

怜「でも、最近はちょい噛み合わんことも多くなったかも」

京太郎「噛み合わない?」

怜「竜華の方が引っ込んどるというか、ボケっとして反応ないこともあったり」

京太郎「なるほどな……」

怜「それ、セーラから聞いたん?」

京太郎「なんだ、気づいてたのか」

怜「なんとなく、そないな気がしただけ」

京太郎「大した勘だよ。最近お前らの空気が微妙だって言ってたからさ」

怜「おお、セーラが空気読むとは」

京太郎「それだけ心配してるってことだろ」

怜「せやな……」



怜「正直、理由はあれやと思う」

京太郎「……この前のあれか」

怜「それで、竜華はうちとどう接したらええかわからんくなっとんのかなーって」

京太郎「俺もそれはちらっと考えたな」

怜「やーい、自惚れ男ー」

京太郎「うぐっ……話進めるぞ」

怜「須賀くんがプレイボーイなんはしゃあないとして、一回竜華とちゃんと話さんとアカンかな」

京太郎「まぁ、そうなるよな」


――コンコン


京太郎「戻ってきたか?」

怜「タイムリーやなぁ」

京太郎「鍵開いてるから入っていいぞー」


玄「京太郎くん、お待たせ」



怜「玄ちゃんやん」

玄「あれ、園城寺さんがどうして」

怜「なんか竜華に置いてきぼりにされた」

玄「あ、さっきは清水谷さんにお世話になったのです」

怜「そうなん?」

玄「はい、抱きしめてもらっておもちをいっぱい堪能できたのです!」

怜「ええなぁ、うちも後で膝枕してもらお」

玄「その膝枕にかける情熱は尊敬するのです」

怜「そっちも大したもんやと思うで?」

玄「園城寺さん……」

怜「玄ちゃん……」


「「同志よっ!」」ヒシッ


京太郎「こりゃしばらく戻ってこない雰囲気だな」

京太郎「よし、ゆっくり風呂に入れそうだ」





竜華「眠……」

怜「眠……」


セーラ「なんや二人とも、ぐったりやなぁ」

竜華「なんでセーラはそない元気なん?」

セーラ「んー、勝ったから?」

怜「勝ったって……なにしとったん?」

セーラ「麻雀。新道寺の二人と俺らで」

怜「ガーン! うちだけ仲間はずれ……」

竜華「と、怜も遅かったけど」

怜「ふっ……おもちと膝枕、奇妙な縁もあったもんやな」

セーラ「なんやねんな」

竜華「よくわからんわ」


竜華(鶴田さんを引き止めるために始めた麻雀が、あない長引くなんて……)

竜華(おかげで須賀くんとこ行くって雰囲気やなくなったけど)


竜華「ふわぁ……眠気覚ましにちょい散歩行ってくる」

セーラ「おう、朝飯までには戻るんやで」

怜「じゃあうちはゴロゴロしとるー」





竜華(怜、遅かったってことは……)


竜華「――っ」ブンブン


竜華(考えたってしゃあないやん)

竜華(そう仕向けたのはうちなんやから……)


京太郎「清水谷、おはよう」

竜華「あ、須賀くん」

京太郎「早いな。いつもこんな感じか?」

竜華「セーラにつられて」

京太郎「ああ、あいつは早起きしそうだな」

竜華「須賀くんもちょい眠そう」

京太郎「ちょっと夜更かししてな」

竜華「そ、そう……」


竜華(やっぱり怜と……)



京太郎「松実妹と園城寺が意気投合してよ……人の部屋で延々と語り合ってたんだよ」

竜華「え……」

京太郎「途中で松実姉を召喚したからなんとかなったものを……ほっといたら朝までコースだったぞ」

竜華「……」

京太郎「なんだ、複雑そうな顔して」

竜華「そ、そないな顔しとらんよ?」

京太郎「そうかぁ?」


京太郎(なーんて、カマかけだけどな)

京太郎(それでそんな反応したってことは、胸中は複雑だってことだ)

京太郎(さて、なに考えてるんだかな)

京太郎(玄のことで驚いてたってことは……俺と園城寺を二人きりにしたかったからとか?)

京太郎(だとして、なにがしたかったんだ?)

京太郎(まるで、後押ししてるような……)



京太郎「……園城寺ってさ、お前にとってどれだけそんな大事なのか?」

竜華「なに? いきなしそないなこと聞いて」

京太郎「いいからさ」

竜華「……大事に決まっとるやん」

京太郎「そうか……なら行くか」ガシッ

竜華「ど、どこに?」

京太郎「園城寺のとこだよ」


京太郎(推測に推測、さらに自惚れも重ねた結論だ)

京太郎(これで外れてたらとんだ赤っ恥だな)


京太郎「そんなの続けてたら、多分そのうちお前らの関係が壊れるぞ」

竜華「……」





セーラ「竜華に、須賀? どした?」


竜華「……」

京太郎「お宅の園城寺さん、借りてってもいいか?」

セーラ「爆睡中やけど」

京太郎「しかたないな、起こすか」


京太郎「おい、起きろ」ペシペシ

怜「う~ん……後五時間」ムニャムニャ

京太郎「長すぎだ。さっさと起きろ」グニグニ

怜「ん……あれ、須賀くんやん」

京太郎「ちょっと来てもらってもいいか?」

怜「おはようのちゅーならいつでもオーケーやでー」

京太郎「ああもう、めんどくせぇな」グイッ

怜「わっ」


京太郎「んじゃ、園城寺は連れてくわ」

セーラ「おう、任した」

怜「ゆーかいされるー」

京太郎「清水谷も行くぞ」

竜華「……うん」





京太郎「よし、俺の随伴はここまでだ」


怜「随伴て、思いっきり主導してたやん」

京太郎「こまけぇことはいいんだよ」

竜華「それで、うちらになにさせるつもりなん?」

京太郎「二人で話し合え。それだけだ」

竜華「話し合うことなんか……」

京太郎「ないならそれはそれでいい。園城寺は?」

怜「んー、竜華に聞きたいことならチラホラ」

京太郎「ならそれでいいや。じゃ、また後でな」


竜華「いきなしなんなんやろな」

怜「竜華はどう思う?」

竜華「どう思うもなにも、今更取り立てて話すことなんかあらへんよ」

怜「ホンマに?」

竜華「うん、ホンマに」

怜「……じゃあ、うちから質問」



怜「あれ、どういうつもりなん?」

竜華「あれって、なに?」

怜「鶴田さん連れ出して、須賀くんと二人きりにして」

竜華「せやから、話したいことがあっただけやて」

怜「最近ボーッとしとんのは?」

竜華「あ、あはは……具合悪いんかな?」

怜「それがこの前、長野から帰る時から続いとんのは?」

竜華「……ちょうど悪いタイミングだったんやな」

怜「なるなる、ようわかったわ」


怜「竜華、そないうちと須賀くんをくっつけたい?」


竜華「……なんのこと?」

怜「わからへんと思った? 多分須賀くんも気づいとるよ」

竜華「そか……バレとったんやな」

怜「で、なんでなん?」

竜華「怜のためやから」

怜「……それってつまりあれかい」



怜「うちは身を引いてもらわんと、竜華に須賀くん取られてまう……そういうことやな」


竜華「違う! うちは――」

怜「うっさい!」バシッ

竜華「いたっ……!」


怜「そないなこと頼んだ覚えないわ! 勝手に解釈すな!」

竜華「せ、せやけど、怜が須賀くんのこと好きって気付けんかったし……」

怜「なんでそうなるん!? うちなんて横から割り込んできた邪魔者やんか!」

竜華「怜が邪魔者なんて……!」

怜「たしかにうちは竜華に甘えとるけど、自分を犠牲にしてまでやってほしくない!」

竜華「じゃあなに……うちが悩んどったのも全否定!?」

怜「アホみたいなことで悩んで、もっと早く頬張っとけばよかったわ!」

竜華「アホってなに!? なにが怜のために一番ええかって悩んどったのに!」

怜「それこそ下に見とる証拠やんか!」

竜華「~~っ、こんのわからず屋!」

怜「竜華の高慢ちき!」

竜華「もう怜なんて……!」



竜華「怜なんて……」

竜華「……」


竜華「どうでもええなんて、言えへんよ……」

怜「……そんなん、うちかて一緒」

竜華「怜……」

怜「なんで気づかへんの? 竜華のこと、大事に思ってへんなんてこと、あるわけないやん」グスッ

竜華「ごめん……ごめん、怜」グスッ

怜「うちも……ごめん」

竜華「うん、うん」





セーラ「どうなったー?」

京太郎「さぁな。でも、そろそろ雨は上がるんじゃないか?」

セーラ「晴れとるやろ」

京太郎「ものの例えだ。言わせんな、恥ずかしい」

セーラ「ま、ええわ。ありがとな、須賀」

京太郎「大したことはしてないって。結局本人たちの問題だし」

セーラ「そんなもんか」

京太郎「そんなもんだ」


京太郎(まぁ、そもそもの原因が俺だとすると、いよいよなんにも言えなくなるんだけどな)


セーラ「んじゃ、行ってくるわ」

京太郎「ああ、三人で朝飯でも食ってこいよ」





京太郎「これでここの片付けは終了っと。次は……」


竜華「須賀くん」


京太郎「ん、清水谷か」

竜華「色々ありがと」

京太郎「俺がなんて言うかもわかってきたんじゃないか?」

竜華「そうかも……せやけど、これは私の気持ちやから」

京太郎「そういうことだったら受け取っておくよ」

竜華「……それとごめん。須賀くんにも失礼なことするとこやった」

京太郎「まあ、気にすんな。そこらへんで俺の右に出るやつはいないから」

竜華「あはは、そうかも」


竜華「……うん、やっぱり諦めるのを諦める」ボソッ


京太郎「なんだ?」

竜華「こういうこと……んっ――」

京太郎「んんっ……!?」


竜華「そ、それじゃ……うちらもうちょっとでチェックアウトやからっ」タタッ

京太郎「……」


京太郎(舌、入れられた)





京太郎「ん~、これで完全終了か」


玄「お疲れ様だね」

宥「これ、今回のアルバイト代」

京太郎「ああ、悪いな」

玄「すぐ帰っちゃうの?」

京太郎「そうだな、ちょっと知り合いたちに挨拶してくるかな」

宥「うん、穏乃ちゃんたちも喜ぶよ」

京太郎「その後またここに寄るよ」

玄「わかったのです。待ってるね」

宥「泊まりたかったらいつでも言ってね」

玄「今度は私の部屋にご招待しちゃうよっ」

京太郎「ははっ、考えとくよ」





姫子「ん~……」

哩「ちかっと眠たかね……」

姫子「もう、あがん遅くまで打っとったし、しょんなかですよ」

哩「そうやね……」


京太郎「お前ら、帰りか?」


姫子「あ、先輩!」ピトッ

京太郎「ええい、くっつくな」

姫子「昨夜はなんもできんかったですからね」

京太郎「それとこれと関係あんのか?」

姫子「ありありです!」

京太郎「白水、こいつなんとかして――」

哩「な、なんね?」ピトッ

京太郎「……寒いのか?」

哩「うん、まだまだひやかね」

京太郎「右も左もホールドされて……なに、これから連行されんの?」

姫子「よかアイディアですね、福岡まで連れて帰ります?」

哩「せめて最寄りん駅までやね」

京太郎「わかった、駅まで送るから放せ」

姫子「はーい」





京太郎「よし、ここまでだな」

姫子「むぅ、なしてこっちまで来てくれないとですか」

京太郎「切符なきゃ改札通れないだろうが」

姫子「買ってこっち来てください」

京太郎「無茶言うな」


哩「須賀くん、またいつか」

京太郎「ああ」

哩「……すいとーよ、京太郎」

京太郎「あー……元気でな、哩」


哩「姫子、そろそろ電車ば来っとよ」

姫子「んー、先行っててください」

哩「ん、わかった」



京太郎「それで、なんだ?」

姫子「名前、呼んでください」

京太郎「は?」

姫子「私ん名前ですよ!」

京太郎「え、なんで?」

姫子「そがん、決まっとるやないですか」

京太郎「んー……名前ねぇ」

姫子「先輩って私には意地悪ですよね。すいとー子にはってこつですか?」

京太郎「はいはい、寝言は夢の中でな」

姫子「もうっ、じゃあ名前ば呼ぶまで無視しますから! そいぎ!」ポロッ


京太郎「まったく……ってかあいつ、財布落としていきやがった」

京太郎「しかたないな……おーい、鶴田ー」

京太郎「聞こえてない? ……鶴田っ! 財布落としてんぞー!」

京太郎「あいつ、なんで気づかないんだ……くそっ」

選択肢

1 「――鶴田っ!!」
2 「――姫子っ!!」


下3まで



京太郎「――姫子っ!!」


姫子「なーんですかー?」

京太郎「……お前、わざとかよ」

姫子「えー? なんのこつですかね?」

京太郎「まったく、やられたな」

姫子「お財布、ありがとうございます」

京太郎「わかったわかった、さっさと行け」

姫子「そん前に……先輩も忘れ物です。んっ――」グイッ


姫子「えへへ、別れ際にキスなんてロマンチックですね」

姫子「次はもっとしましょうね、先輩」

姫子「そいぎー」


京太郎「……なんだかなぁ」


京太郎(とかなんとか言いつつ、あいつの言ってることは大体当たってる)

京太郎(要するに、なんとなく素直になれないだけなんだ)

京太郎(まぁ、こんなこと言うと調子乗りそうだから言わないけど)


京太郎「さて、俺も行くかな」



というわけで終了
最後の最後で甘甘判定でしたが姫子さんもエンディングです

それじゃ、今後のことは明日(今夜)にして眠ります

おやすみなさい

こんばんはー
そろそろエンディングなんでぼちぼち安価でも

また多数決取りたいけど、人いますかね?

それじゃ、この中からお好きなのをどうぞ
済がついてるのは選べません


個別

大星淡
天江衣
桧森誓子 済
姉帯豊音
三尋木咏
神代小蒔
ネリー・ヴィルサラーゼ
宮永照
エイスリン・ウィッシュアート
白水哩
竹井久
福路美穂子
松実玄
薄墨初美
滝見春
石戸霞
園城寺怜
真屋由暉子
清水谷竜華
鶴田姫子


特殊

久照
久美穂子
小蒔霞
哩姫
怜竜


11分まで

締切
割ってきます

コンマ

照:末尾が1
美穂子:末尾が2と3
咏:末尾が4
豊音:末尾が5
淡:末尾が6
ネリー:末尾が7と8
久:末尾が9
小蒔:末尾が0


直下

第二の幼馴染ということで

昨日の戦いが尾を引いてるので寝ます
それじゃ、近いうちにでも

おやっす

もうちょっとしたら始めます

そんじゃあ、そろそろ始めます



久「ほらほら、早くする」

京太郎「んな急かすなよ。急いだって結果が変わるわけじゃあるまいし」

久「結果は変わんないけど混んじゃうでしょ」

京太郎「ごもっともで」


京太郎(合格発表か。落ちてるのは流石にいやだな)

京太郎(まぁ、落ちていようといまいと、これからすることに変わりはないんだけど)

京太郎(……実を言うと、合否よりそっちの方が気が重い)





照「私、出てくから」

淡「どーしてそんなこと言うの!?」

照「どうしてと言われても……」


誠子「今日も淡は元気だなーと」

尭深「お茶もおいしいよね」

誠子「淡が静かだとおいしくないの?」

尭深「気になっちゃうから」

誠子「なるほど、たしかに」


菫「なんだ、騒がしいな」


淡「聞いてよ!」

菫「わかったからそんなに喚くな」

淡「なにさっ、胸縮んだくせに!」

菫「ほうほうほう、ちょっと話があるからこっちに来てもらおうか!」ガシッ

淡「ちょっ、はなしてよ――」ズルズル



淡「――あわーーっ!!」


尭深「うん、やっぱりお茶がおいしい」ズズッ

誠子「あはは……淡いも学習しないというかね」

照「お饅頭があるから食べよう」

誠子「私たちももらっていいんですか?」

照「もちろん」

尭深「じゃあ二人の分のお茶、用意しますね」

照「おねがい」





淡「うぅ……」


照「お帰り。今日は長かったね」

淡「もう卒業したのに……おーぼーだ!」

菫「だれが横暴だ」

淡「四月から二年生なのに! 実力的には二百年生だけど!」

誠子「うわぁ、すごいことになってるなぁ」

尭深「百一年生じゃないだね」

菫「全く反省の色が見えないな……」ハァ


菫(しかし、こいつはこれでいいか)

菫(――と思っている自分もいるから恐ろしい)



照「二人の分のお饅頭もあるよ」

淡「ホント!? いただきまーす」

菫「和菓子は珍しいな」

照「お茶に合うと思って」

菫「……そうか。私もいただこう」


菫「ところで、さっきは何を騒いでたんだ?」

照「私が寮を出てくって言ったら淡が」

菫「なるほどな」

淡「む~! なんで納得しちゃってるのさっ」

菫「卒業したんだから、寮は出払うのが当然じゃないか」

淡「そーだけどそーじゃないの!」ガバッ

菫「ええいっ、掴みかかって来るんじゃないっ」

照「ちょっとトイレ行ってくる」

菫「あ、ああ……」

淡「スミレのわからず屋ー!」





照「ふぅ……」


照(トイレに行くつもりがなぜか入口に……)

照(いけない、このままじゃまた菫にため息をつかれる)

照(それ以前に、もう我慢が……)ブルブル


京太郎「照ちゃん、なにやってんだ?」


照「きょ、京ちゃん……」ブルブル

京太郎「寒いのか? 上着なら貸してやれるけど」

照「と、トイレに行こうとしたら」

京太郎「大体わかった……空のペットボトルあるけど――」

照「京ちゃんっ!」

京太郎「わかったわかった、一緒に探せばいいんだろ」





照「ふぅ……間一髪だった」

京太郎「近くにコンビニあって良かったよ……しかし、なんで馴染みの場所で迷子になるかなぁ」

照「今日はたまたま。いつもは違う」

京太郎「ま、無事たどり着けることもあるってことはわかってるけどよ」

照「それじゃ迷子になることのほうが多いように聞こえる」

京太郎「違ったっけ?」

照「違う、全然違う」

京太郎「よし、弘世に確認だな」

照「それはダメ」

京太郎「またわかりやすい……」

照「それより――」



照「会いたかった……」ギュッ

京太郎「そうか……俺も」

照「今日はどうしたの?」

京太郎「忙しくなる前に言っときたいことがあるから」

照「うん、私も好きだよ」

京太郎「……あのさ、先回りやめてくんない?」

照「なんとなくそんな気がしたから」

京太郎「なんとなくで出鼻をくじかれるとは……」

照「それじゃあ、はい」

京太郎「なに?」

照「ちゃんと聞きたいな」

京太郎「わかったよ……好きだよ」

照「じゃあ私は愛してる。京ちゃんは?」

京太郎「どんどんグレードアップしてくなっ」





照「……それで、あの女には?」

京太郎「言ったよ、いの一番にさ」


久『……まさか、こんなタイミングで言われるなんてね』

京太郎『決めてたんだ、この日を目処にしようって』

久『よりにもよって最初ってわけ』

京太郎『久ちゃんに言うのが一番キツイから、最初にしようって』

久『そう……相手は?』

京太郎『……照ちゃんだよ』

久『また、なんともやるせないわね……』

京太郎『ごめんな、散々待たせといて』

久『ホントよね……でも、待ってることにする』

京太郎『久ちゃん、それは――』

久『悪い状況で待ち続けるのは、今に始まったことじゃないしね』

京太郎『……おすすめはしないぞ』

久『せいぜい私のこと気にして、さっさと振られてきなさい』



京太郎(強がりなんだろうけど、笑ってたよな……)

京太郎(……背中、押してくれたのかな)


照「そう……」

京太郎「……お菓子でも食いたいのか?」

照「どうして?」

京太郎「いや、浮かない顔してるからさ」

照「そっか、私そんな顔してたんだ」


照(竹井久は嫌いだし、絶対に渡さないって思ってたけど……)

照(やっぱり、共感もしてたのかな?)



京太郎「さて、用も済ませたし、そろそろ帰るかな」

照「本当に私に会いに来ただけなんだ」

京太郎「まぁな。今は貯金しなきゃいけないし」

照「貯金?」

京太郎「ちょっと旅行に出ようと思ってさ」

照「どこ行くの?」

京太郎「あちこちだよ」

照「ふーん……一緒にいてくれないんだ」

京太郎「……旅行が終わったらさ、どっかに部屋借りて暮らそうと思ってるんだけど」

照「どっかって?」

京太郎「照ちゃんはどこがいいと思う?」

照「それはね――」





照「京ちゃん、起きて」ユサユサ

京太郎「……あと五分」

照「じゃあ……」ゴソゴソ

京太郎「……照ちゃん?」

照「起きるまで、好き勝手しようかなって」

京太郎「朝から疲れそうだな」

照「お休みならいいんじゃないかな?」

京太郎「わかったわかった、起きるから」





京太郎「ごちそうさま」

照「お粗末さま」


京太郎「しかし、せっかくの休みだし照ちゃんも休んでりゃいいのに」

照「せっかくの休みだからだよ」

京太郎「ま、いいけどな。女の子の手料理ってのはそれだけで嬉しいし」

照「……女の子?」

京太郎「……訂正、照ちゃんの手料理な」


京太郎(旅行が終わった後、俺と照ちゃんは二人暮らしを始めた)

京太郎(……正確に言うのなら、俺が照ちゃんの部屋にいついたというのが正しい)


京太郎「次の試合はいつだっけ?」

照「明後日かな?」

京太郎「なら、早いとこぶっぱなしとかないとな」



京太郎(俺のオカルトについてわかったことがいくつか)

京太郎(なんでも、奪うだけじゃなくその先があったらしい)

京太郎(奪ったものを漫然と使うのではなく、研ぎ澄まして己の武器とする……)

京太郎(奪うのが蛇で、武器の方が剣……というのは照魔鏡で見えたイメージだそうだ)

京太郎(そして、剣は使ったら元の場所に戻る)

京太郎(つまり、早い話がだれかと麻雀すればいいということだ)


京太郎「どっか行って相手見つけるか」

照「チームの人たち、呼ぶ?」

京太郎「……やめてくれ、それはさすがにまずい」

照「でもこの前、雀荘で出禁くらったって言ってなかった?」

京太郎「照ちゃんのが強すぎるんだよなぁ」

照「いっそプロ入りする?」

京太郎「勘弁してくれ……三尋木さんの誘い断っといてそれはないだろ」

照「残念……」

京太郎「まぁ、就職先はバイトしながら探すさ」

照「あ、それだったらいいのがあるよ」


こんばんはっ
結構早く帰れたので続きをやろうかと

それじゃ、もうちょっとしたら

んじゃあ、続きから始めます




「君が須賀くん? いやぁ、助かるよ」

京太郎「えっと、まだ履歴書も見てないですよね?」

「大丈夫大丈夫、君の噂はよく聞いてるから」

京太郎「自分で言うのもなんですけど、素人ですよ?」

「平気平気、スケジュールの管理とか調整とかその程度だから」

京太郎「……もう何人か匙投げたって聞いたんですけど」

「……たしかにそれは事実だ」


「彼女は目を離すとすぐ居なくなるし、お菓子代がかさむし」

「テレビ局に行くと言って車に乗せようとしたらいつのまにか電車に乗っていて新幹線で移動しようとしたらなんでか向かいのホームにいたりするしっ」

「カメラの前ではまともなのにねっ!」


京太郎(うわぁ……振り回されてんなぁ)


「その点、君は付き合いが長いらしいじゃないか!」ガシッ

京太郎「ま、まあ、小学校の時からの付き合いですね」

「君しかいないっ! 君に決めた!」

京太郎「そんなポケモンを選ぶノリで……」

「それじゃあ頼んだよっ」





京太郎「……というわけで、今日からマネージャーを務めることになりました、須賀京太郎です」


照「よろしくおねがいします」ペッコリン

京太郎「照ちゃんさ……聞いてた話と違ったんだけど」

照「なにが?」

京太郎「たしか、マネージャーが不甲斐ないから、とかそんなこと言ってなかったか?」

照「だって、勝手にいなくなるしお菓子の選択も微妙だし……」

京太郎「とりあえず、勝手にいなくなってるのは照ちゃんな」

照「むっ」

京太郎「お菓子のチョイスだって付き合ってりゃ覚えてくようなことだしな」

照「……京ちゃんは一緒に居たくないの?」

京太郎「……まぁ、就職口が見つかったのはありがたいと思ってるよ」

照「一緒に居たくないの?」

京太郎「それとこれとはまた話が――」

照「一緒に居たくないの?」

京太郎「……んなわけないだろ」

照「うん、そうだよね」



京太郎「はぁ……せめて公私は分けていくぞ」

照「やだ。それじゃアピールできないし」

京太郎「アピールってなんだよ」

照「私の物ってアピール」

京太郎「だれに」

照「他の女」

京太郎「あーうん、気をつけます」

照「それだけじゃダメ……んっ――」

京太郎「いてっ」

照「これでマーキング完了」

京太郎「……もう少し目立たないとこにして欲しかったな」

照「それじゃ、行こっか」

京太郎「はいよ」



京太郎「……照ちゃん、髪伸びてきたな」

照「まだちょっと背中にかかるぐらいだけど……短いほうがよかった?」

京太郎「いや、中学のころを思い出すよ」

照「……あの頃の夢、叶ったな」

京太郎「夢? プロか?」

照「こうやって一緒にいること」

京太郎「まぁ、慎ましいことだ」

照「京ちゃんは?」

京太郎「中学校の時なんて、別に夢とかなかったな」



京太郎「ただまぁ……大人になってもこんなふうにしてるんじゃないかとは思ってたよ」


照「つまり、両思いだったんだ」

京太郎「んー? そう、なのか?」

照「両思いだったんだよね?」

京太郎「まあ、そう取れなくも……」

照「両想いだったんだよね?」

京太郎「……はい、そうです」

照「そっか……京ちゃんっ」ギュッ

京太郎「うおっ」

照「ん……京ちゃんの匂い」

京太郎「公私分けるっつったそばから……」



照「ね、いつ結婚する?」


京太郎「結婚ね、結婚……結婚!?」

照「子供もほしいな」

京太郎「は、ははは……子供ね」

照「……京ちゃんはいや?」

京太郎「そうじゃないけど、男ってのはそういう話題に入ると身構えちゃうもんなんだよ」

照「そうなの?」

京太郎「そうなんだ」



京太郎「だけど、そうだな……俺が養えるようになったらな」

照「別にお金には困ってないけど」

京太郎「俺のプライドの問題だな」

照「うん、わかった。待ってる」

京太郎「そうと決まったら、お仕事に行くか」

照「お仕事?」

京太郎「挨拶回りってやつ。照ちゃんも来るか?」

照「うん。妻ですって言って回らないと」

京太郎「だからそれはダメだっつーの」





 プロ入りしてから一年後、宮永照は自身のマネージャーと入籍。

 そのさらに一年後には第一子を出産、一児の母となる。



京太郎「まぁ、これからもよろしくな」

照「うん、末永く」




『エンディング――これからもずっと寄り添って』

というわけで終了
ついでに安価取りたいんですけど、人いますかね?

それじゃ、この中からお好きなのをどうぞ
済がついてるのは選べません


個別

大星淡
天江衣
桧森誓子 済
姉帯豊音
三尋木咏
神代小蒔
ネリー・ヴィルサラーゼ
宮永照  済
エイスリン・ウィッシュアート
白水哩
竹井久
福路美穂子
松実玄
薄墨初美
滝見春
石戸霞
園城寺怜
真屋由暉子
清水谷竜華
鶴田姫子


特殊

久照
久美穂子
小蒔霞
哩姫
怜竜


24分まで

締切
割ってきます

コンマ

ネリー:末尾が1
咏:末尾が2、3
豊音:末尾が4
初美:末尾が5、6
霞:末尾が7
玄:末尾が8
淡:末尾が9
久:末尾が0


直下

あわあわということで

んじゃ、また今度

おひさー

もうちょっとしたら始めます

んじゃあ、そろそろスタートします



淡「もう、バカバカバカー!」


誠子「ちょっと淡、落ち着きなよ」

尭深「気持ちはわかるけど……」

菫「まぁ、なんだ……お前にそんなに悲しまれるとは」

淡「テルもスミレも知らないんだからっ」

照「淡」

淡「……なにさ」ムスッ

照「麻雀、打とうか」

菫「今からか?」

照「私と淡以外の面子は誰でもいいから」


誠子「もう最後だからってことかな?」ヒソヒソ

尭深「どうだろ。淡ちゃんになにか思うところがあるのは間違いないけど」ヒソヒソ

誠子「きっとそうだって! いやぁ、感動的だなぁ」ウンウン



尭深(それだったら、私たちがほっとかれてるのはちょっと納得できないかな)

尭深(付き合いだって一年長いはずだよね)


菫「わかった。私は観戦してよう」

尭深「いいんですか?」

菫「ああ、この先は滅多にこんな機会は来ないだろうからな」

尭深「……わかりました。ありがとうございます」

誠子「そうと決まれば早速!」ガタッ

淡「ちょっとちょっと、まだやるって言ってないんだけど!」

照「やらないの?」

淡「それは……」

菫「よし、なら淡を抜いた四人で打つか」

淡「あわっ!? やるやるっ、やればいーんでしょっ!」


尭深「それで、先輩」

照「なに?」

尭深「なんでいきなり麻雀を?」

照「……ちょっとした憂さ晴らし」

尭深「……お茶いれてきます」


尭深(淡ちゃん、またなにかやったんだね)





照「うん、こんなとこだね」


淡「うぅ~……」

誠子「い、いつにも増してキツかった……」

尭深「結局巻き添え……」ハァ

菫「これは、なんというか……うん」


菫(面子に入らないで良かった……)


照「それじゃ、そろそろ行こうかな」

菫「そうだな。みんな、部を頼むぞ」

照「またね」

誠子「任せてください、今年こそ優勝してみせますよ!」

尭深「お元気で」

淡「いつかリベンジするから!」



淡「私もテルみたいに勝ちまくって、いっぱい雑誌に載って!」

淡「卒業するころには高校千年生ぐらいの実力つけてプロ入りするから!」

淡「そしたら……そしたらまた一緒に打ってよぉ……」グスッ


照「……わかった、楽しみにしてる」

淡「それまで負けちゃダメだから! あの……アラフォーマスター? みたいにさっ」

菫「……」タラッ

誠子「大丈夫ですか? 顔色良くないですけど」

菫「し、心配ないさ」


菫(あの恐ろしさを知らないからあんなことが言えるんだろうな……)



照「それと……ううん、これはいい」

淡「なにさっ、気になる!」

照「淡はきっとよろしくお願いされる側だから」

淡「なにそれ?」

照「私に麻雀で一度も勝ったことがない淡だけど」

淡「あわっ!?」グサッ

照「それでも……私の一番欲しい物を勝ち取っていったから」グニィ

淡「いひゃいいひゃい!」


誠子「何の話かな? お菓子を横取りでもされたとか?」ヒソヒソ

尭深「ありえなくはないけど、多分違うと思う」ヒソヒソ


菫「照、行くぞ」

照「わかってる」パッ

淡「もうっ、テルのバカー!!」





淡「ホントに行っちゃったんだね……」

尭深「寂しいけど、仕方ないかな」

誠子「私たちは切り替えて春の大会に備えなきゃね」

淡「あーあ、キョータローに会いたいなぁ」

誠子「そういえばあの人も卒業だっけ」

淡「どうするんだろ? 大学行くのかな?」

尭深「だれかのヒモとか」

誠子「ちょっ、尭深!?」

淡「ひも? びろーんて伸びるやつ?」

誠子「い、今のはきっと冗談だから気にしなくてもいいからっ」

尭深「冗談だから」

誠子「そうだよね、あはは……」


尭深「でも、この前来てたよね」


淡「来てたって……いつっ!?」

尭深「十一日だったかな? 寮の入口で宮永先輩と――」



尭深(先輩の一番欲しい物ってまさか……)


淡「む~! どーして私に会いに来てくれないのさっ!」

誠子「たしかにね。弘世先輩とも仲良いみたいだし、挨拶しに来てもおかしくはないけど」

尭深「多分だけどね、宮永先輩にだけ伝えたいことがあったんじゃないかな?」

淡「テルに……」

誠子「淡、まだそうと決まったわけじゃないからさ」

淡「……そんなのわかってるもん」

尭深「うん、そうだね。久しぶりに会うから照れちゃってただけとか」

淡「そーそー、それだよ! まったくもう、しょーがないなぁ」


淡「というわけでちょっと電話してくるねっ」


誠子「ポジティブというか、単純というか……ちょっと羨ましい精神構造だね」

尭深「そういうところが勝因だったのかもね」

誠子「勝因って……え?」





淡『んふふー、ホント素直じゃないよねっ』


京太郎「……いきなり電話してきてなんだ」

淡『キョータローが私の声聞きたいかなーって思って!』

京太郎「お前はいっつも元気だな」

淡『知ってるんだからっ、私のそーゆーとこが好きなんだよね?』

京太郎「えーっと、通話終了のボタンは――」

淡『あわっ、どーして切ろうとするのっ』

京太郎「アルバイト中なんだよ」

淡『お仕事中? ねーねー、なにしてるの?』

京太郎「掃除したり軽食作ったりお茶淹れたりとか」

淡『メイドさん?』

京太郎「たしかにまぁ、やってることは一緒だけどな? メイドは普通女だろ」

淡『漫画で男のメイドさんもいたよ? ムキムキで仮面つけてるやつ』

京太郎「それは相当特殊な例だ!」



京太郎「それでよ、結局なんかあったのか?」

淡『用がなきゃダメ?』

京太郎「……だから仕事中だって」

淡『む~、私は久しぶりにキョータローの声聞けて嬉しかったのにっ』

京太郎「そりゃどうもな」

淡『あ、そーだ。どーしてこの前会いに来てくれなかったの?』

京太郎「この前って……」

淡『テルとなんか話してたんでしょ?』

京太郎「まさか、照ちゃんからなんか聞いたのか?」

淡『んーん、さっきタカミに聞いただけ。たまたま見かけたんだって』

京太郎「見られてたのかよ……」

淡『やっぱり私に会うのが照れくさかったんだよね!』

京太郎「あー、はいはい」


京太郎(違うって言えないのが辛い)

京太郎(……結局こいつの言うとおりか)



京太郎「そろそろ切り上げてもいいか?」

淡『えー? もうちょっと話したーい』

京太郎「また今度な」

淡『もう、いっつもいっつもそれじゃん!』

京太郎「まぁ、たしかにな」

淡『会いたい会いたい、会ーいーたーいー!』

京太郎「お前さ、いい加減に――」


京太郎(するのは俺の方か……)


京太郎「……来月の二十二日、絶対空けとけよ」

淡『それって……デート!?』

京太郎「まぁ、なんというか……そうともいうかな」

淡『えへへ~、デート誘われちゃったぁ』

京太郎「とにかく、そういうわけだから」

淡『うん、待ってるから! じゃあねっ』プツッ



京太郎「ふぅ……あー、言っちゃった」

京太郎「これで後戻りはなしか」

京太郎「覚悟決めるか……もう一番きついのは通り過ぎたしな」


純「須賀ー? ちょっとこっち来てくれー」


京太郎「さて、仕事に戻りますか」

京太郎「あちこち回るためにも貯めとかなきゃな」





淡「うん、こんなもんだね」


誠子「や、やっと終わった……」

淡「なんで疲れてるの?」

誠子「かわいい後輩に付き合ってたからかな」

淡「セーコに褒められちゃった」

誠子「先輩をつけて呼んでくれてた頃が懐かしいよ……」


誠子(弘世先輩も宮永先輩にこうやって振り回されてたんだろうなぁ)

誠子(尭深はいつの間にか避難してるし……)



誠子「それで、デートっていつだっけ?」

淡「んー、二十二日だったかな」

誠子「二十二日って……まだ二週間以上先じゃないか!」

淡「備えあれば嬉しいなってゆーじゃん」

誠子「嬉しいなじゃなくて憂いなしだよ……今から服選びに何時間もかける必要あるかなぁ」

淡「あるの! だってキョータローがデートに誘ってくれたんだもん……」

誠子「恋する乙女ってやつだね」

淡「そーそー、だから晩御飯ご馳走してくれてもいいよ?」

誠子「だからってなんだよ、調子乗るな」ピシッ

淡「あわっ」


尭深「終わった?」



誠子「尭深……さっきは逃げたな」

尭深「ごめんね、ちょうどお茶の時間だったから」

誠子「そんなの関係なくいっつも飲んでるよねっ」

淡「タカミも一緒にご飯行く?」

尭深「うん、折角だしみんなで行こうと思って」

淡「虎姫ネオのみんなで?」

誠子「ネオって……というか、流石にそれは気が早いんじゃないか?」

淡「私がいるからとーぜんだよね!」

誠子「はぁ……お前はそういうやつだよな」

淡「もっと褒めてもいーよ?」

誠子「褒めてないって」



尭深「それにしても、二十二日ってなにかあったかな?」

淡「なんもないよ? 絶対空けとけって言われたし」

尭深「そうじゃなくて、なんで日にち指定したのかって」

誠子「たしかに。誘われたのって結構前なんだろ?」

淡「んー、私もなんでかその日がいいなーって思ったよ?」

尭深「淡ちゃんがそう言うなら、多分悪いことじゃないのかな」

誠子「そもそも適当に言った可能性もあるけどね」

淡「なんにしても、キョータローが一緒ならそれだけでじゅーぶんだしね!」キラキラ

誠子「うわ……」

尭深「眩しい……」


((これには勝てない……))





京太郎「……来ちまったな」

京太郎「このまま立っていてもただの不審者……」

京太郎「ここは思い切って――」


淡「あ、キョータロー!」


京太郎「――っ、よう……元気だったか?」

淡「えへへ、やっと会えたぁ」ギュッ

京太郎「ひっつくなって」

淡「どーして?」

京太郎「めっちゃ見られてるから」

淡「私は気にしないよ?」

京太郎「はぁ……まぁいいか。準備は出来てんのか?」

淡「一時間前にはもう」

京太郎「また気が早いな」

淡「ね、前髪変じゃない?」

京太郎「変じゃないな」

淡「今日の服、どう?」

京太郎「似合ってる」

淡「ならバッチリかな」

京太郎「よし、じゃあ行くか」

淡「そーいえば、どこ行くの?」

京太郎「そりゃあ、行ってみてのお楽しみってことで」





淡「海!」

京太郎「時期外れだけどな。去年ここ来たの覚えてるか?」

淡「うん、インハイの後だよね」

京太郎「花火もしたな」

淡「それに……キスも」

京太郎「ああ、そんなこともあったな」

淡「もうすぐ暗くなるね。また花火する?」

京太郎「そんな用意はないな」

淡「じゃあ……ん~」

京太郎「……なにやってんのお前」

淡「シチュエーション的にキスかなーって」

京太郎「そういうのには順番ってもんがあると思うんだけどな」

淡「順番通りにすればキスしてくれるってこと?」

京太郎「……まったく、バカらしいな」

淡「む~、バカってなにさ!」

京太郎「お前のことじゃないから」グイッ

淡「あわっ」




京太郎「……淡、好きだ」

京太郎「お前の言うとおりだよ。なんとなく素直になれなくて今までちょっと意地悪してた」

京太郎「今日だって俺のわがままに突き合わせてるわけだしな」

京太郎「お前の気持ちに変わりがないなら……って」


淡「うぅ……」ポロポロ

京太郎「なんで泣いてんだよ」

淡「らって、キョータローが……キョータローがやっと好きって……」グスッ

京太郎「淡……」ギュッ

淡「ごめんね……キョータローは明るい私の方が好きなのに……」

京太郎「お前が不安に思ってることは、なんとなくわかってたっての……ホントごめんな」


京太郎「だから、これから埋め合わせさせてくれよ」

淡「……会いたいって言ったら、会いに来てくれる?」

京太郎「ああ」

淡「……私が好きって言ったら、キョータローも言ってくれる?」

京太郎「ああ」

淡「じゃあ……んっ」

京太郎「ああ、わかった……んっ」





淡「……すっかり暗くなっちゃったね」

京太郎「そうだな。寒いか?」

淡「潮風はちょっと冷たいかも」ブルッ

京太郎「ほら」パサッ

淡「いいの?」

京太郎「俺は丈夫だからな。上着がなくても平気だ」

淡「うーんと……えいっ」ガバッ



淡「どーかな、あったかい?」ギュッ

京太郎「そうだな……重い」

淡「あわっ!? どーしてそーゆーこと言うのっ」

京太郎「冗談だって冗談。本音を言えば、温かくて柔らかいな」

淡「もう、最初っからそー言ってよね」

京太郎「悪かったって。お前があわあわしてるのを見るのが楽しくて、つい」

淡「む~、キョータローの意地悪っ!」

京太郎「お、流れ星」

淡「そんなこと言ったって誤魔化され――あ、ホントだ!」

京太郎「ほら、まだ来るぞ」

淡「流れ星がいくつも……これってプラネタリウムで見たやつと一緒だ」

京太郎「お前と本物が見たいって思ってさ」

淡「うん、だから今日だったんだね」



淡「……キョータローはなにかお願いした?」

京太郎「お前は?」

淡「もう叶ってるから」

京太郎「俺もかな」

淡「ホントにそーしそーあいってやつだね!」

京太郎「そうなっちゃうな」

淡「ね、もう一回……」

京太郎「ああ」

淡「んっ……」


淡「えへへ、だーい好き!」




『エンディング――星空』

というわけで終了

眠いので安価はまた今度……

こんばんはー

今日は安価だけなんですけども、人いますかね?

それじゃ、この中からお好きなのをどうぞ
済がついてるのは選べません


個別

大星淡 済
天江衣
桧森誓子 済
姉帯豊音
三尋木咏
神代小蒔
ネリー・ヴィルサラーゼ
宮永照  済
エイスリン・ウィッシュアート
白水哩
竹井久
福路美穂子
松実玄
薄墨初美
滝見春
石戸霞
園城寺怜
真屋由暉子
清水谷竜華
鶴田姫子


特殊

久照
久美穂子
小蒔霞
哩姫
怜竜


1分まで

締切
割ってきます

コンマ

ネリー:1-8
咏:9-20
豊音:21-38
衣:39-50
玄:51-68
小蒔:69-76
怜:77-84
哩姫:85-92
由暉子:93-00


直下

ユキということで

ついでに次スレの時期なんで安価を

天江衣:1-11
姉帯豊音:12-22
白水哩:23-33
薄墨初美:34-44
滝見春:45-55
石戸霞:56-66
園城寺怜:67-77
清水谷竜華:78-88
鶴田姫子:89-00


直下

はっちゃんということで

それじゃ、立ててきます

というわけで新スレ

京太郎「俺が三年生?」初美「もっと傍にいてもいいですかー?」
京太郎「俺が三年生?」初美「もっと傍にいてもいいですかー?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1492788369/)

1000に関してはいつも通りで
何らかの数値に影響を及ぼすものもありといえばありです

それじゃ、煮るなり焼くなり埋めるなり好きにしちゃってください

1000なら戒能プロが京太郎に落とされる

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