真剣士「英雄の…血…?」(568)

 
―――現代。

魔法という存在が、昔はあったらしい。


だが、ふと気づくと魔法よりも"錬金科学"が世界を支配していった。

自らの力を使わずに魔法と同等の利便をもたらしたこの技術は、あっという間に世界に広がった。


今日という日、

スイッチ一つで明かりが点く。
スイッチ一つで水が出る。
スイッチ一つで火が吹く。

当たり前のようで、不思議な技術。気づけば、人の歴史から"魔法"は忘れ去れていった。

 
That's where the story begins
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【真剣士「英雄の…血…?」】
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Don't miss it!

 
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――――【現代国・東都】


ガタンガタン…ガタンガタン…


真剣士「…」

…ポチポチ…カチャカチャ…

真剣士「あいつ…、早く連絡くらい寄こせよ…」


ドンッ!!!

真剣士「うわっ!」

 
???「ほらぁ、きちんと前見ないと危ないよ!」


真剣士「いっつ…、黒髪乙女か…。さっきメール送った所だろうが!返事返せよ!」

黒髪乙女「あのね、あなたがメール打ってる時から、ずーっと私は声かけてたの」

真剣士「うそつけ!」

黒髪乙女「嘘じゃないし!」

真剣士「…まぁいいや。んで、何?」


黒髪乙女「今日の約束、覚えてる?」

 
真剣士「覚えてるよ。帰りに、ケーキ食うんだろ?」

黒髪乙女「やったー!」

真剣士「今月の小遣い少ないっつーに…」ブツブツ


黒髪乙女「ねっ、それより…昨日のテレビ見た?」

真剣士「特番のやつ?」

黒髪乙女「うん。魔法を使う人ってやつ。"大魔道"とかって自分で名乗ってた」

真剣士「ウソくせーやつな…妹が見るって言って、無理やり見せられたよ」

 
黒髪乙女「でも、本物っぽかったよ?」

真剣士「あんなの手品だろ。なんだっけ?零とかっていう魔法使いも、テレビ番組と組んでヤラセだったらしいじゃん」

黒髪乙女「…看板からハンバーガー出す手品なんてやってません!」


真剣士「だけど、手から火やら水やら出してただけじゃねーか」

黒髪乙女「種も仕掛けもなかったっていってたし!」

真剣士「あのな…」

黒髪乙女「それに、私たちと同じくらいの年齢でテレビに出れるのは凄いと思うよ?」


真剣士「まあ…そりゃそうだが」

 
黒髪乙女「あーあ。私も魔法を使えれば、空を飛ぶのになぁ」

真剣士「俺だって飛びてぇよ。夢の中だといつでも飛べるんだが」

黒髪乙女「魔法より現実…か。今は勉強だね」


真剣士「分かってるよ…つーか、学校始まるって!」

黒髪乙女「あ、いけない…走ろ!」

真剣士「あ、おい!待て!」


タッタッタッタ…

 
コケッ…ドシャッ!!

真剣士「…って…」

黒髪乙女「えーっ!何で転んでるの!」

真剣士(え…?)グスッ…ポロッ…


黒髪乙女「…え、泣いてるの?どこかぶつけたの?」アセッ

真剣士「…さ、さっき殴られたのが痛かったんだよ!」ポロポロ

黒髪乙女「え、ご、ごめん…」

真剣士「…冗談だっつーの!俺はウソ泣きが得意なんだよ」ゴシゴシ


黒髪乙女「…??」

真剣士「いいから学校行くぞ!遅れる!」ダッ

黒髪乙女「あっ、ずるい!」ダッ

 
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――――【 学校 】


キーンコーンカーンコーン…


黒髪乙女「ふぅ~っ…間に合ったぁ!」ハァハァ

真剣士「くそっ…相変わらず足が速いやつめ…」ゼェゼェ


黒髪乙女「へへーんだ!」

真剣士「でも先生来てないな。慌てて来る事もなかったか?」

黒髪少女「あー…そういえば今日、転校生が来るって言ってたかも」

 
真剣士「転校生だ?」

黒髪乙女「うん。帰りに先生の話聞いてなかったの?」

真剣士「いやバイトだったから学校サボったし」

黒髪少女「そういやそうだったね…」


真剣士「で、どんなやつ?」

黒髪乙女「転校生としか聞いてないかな。男子って話はあるけど」

真剣士「男子?女子がいいなぁ」

黒髪乙女「肉食系だなぁ…」

 
真剣士「可愛い女子とか、朝の曲がり角でぶつかって、パンを加えた美少女が…」

黒髪乙女「どこのファンタジーですか」

真剣士「夢はでっかく、だろ!?」


黒髪乙女「そんな夢やだよ…」

真剣士「冗談でも、乗れよ」


黒髪乙女「無理…、それに…私のほうも少しは…」ゴニョゴニョ

真剣士「聞こえないぞ」

黒髪乙女「なんでもないですっ!」

 
…ガラッ!!!

先生「おはようございまーす、皆さん」


真剣士「おっ」

黒髪乙女「きたっ!」


先生「はーい、皆さん注目。今日は、昨日言ってた通り…新しいお友達を紹介します」

ザワザワ…

男子生徒「高校2年の半ばでの転校ってのもキツイもんじゃね?」

男子生徒「俺だったら仲良かった奴もいるだろうし、絶対嫌だわー」

女子生徒「面白い奴だといいな」

女子生徒「かっこいい子で…お願いしますっ!」

 
先生「はいはい静かに。じゃ、入っていいぞ」

…コツ…コツ…コツ…


真剣士「…!!」

黒髪乙女「えっ!?」

 
大魔道「…こんにちわ」ニコッ


真剣士「おい、あれって!」

黒髪乙女「き、昨日のテレビの!?」

ザワザワ!!

男子生徒「おい俺テレビで見たよ!!大魔道だろ!?」

女子生徒「きゃーっ!?ど、どうしよう!」


先生「はいはーい落ち着いてください。大魔道くんは、メディアの仕事で少しの間だけ我が校の生徒になります」

大魔道「よろしくお願いします」ペコッ


女子生徒「きゃーっ、かっこいい!」

 
先生「はいはい。とりあえず…、あそこの真剣士くんの隣の席にお願いね」

大魔道「はい」ニコッ


トコトコ…、ザワザワ…

女子生徒「凄いねー、これからヨロシクね♪」

男子生徒「後で色々話し聞かせろよ、な!」

大魔道「あはは…よろしくお願いします」


黒髪乙女「きゃっ、こっち来たよ真剣士!」

真剣士「っせーな、分かってるよ。どうせインチキマジックだろ」

黒髪乙女「そういう事言わないの!」ビシッ

真剣士「いてっ!」

 
トコトコ…ストンッ


大魔道「君が隣ですね、これから宜しくお願いします」

真剣士「あぁ…まぁ、よろしく」

大魔道「僕は大魔道です、君の名前は?」

真剣士「…真剣士」


大魔道「へぇ…変わった名前ですね」

真剣士「お前だって変じゃねーか」

大魔道「僕は一応、芸名みたいなもんですから…」

真剣士「本名は?」

大魔道「それは、そのうち…」

 
黒髪乙女「ねえねえ、大魔道さんっ」ガバッ

真剣士「うっぷ、前が見えねぇ!」

黒髪乙女「アンタは黙ってて。大魔道さん、あなたのテレビ見ました!」


大魔道「あぁ、ありがとうございます」

黒髪乙女「私は黒髪乙女、この真剣士の幼馴染ですっ!」

大魔道「へぇ、そうなんですか」


黒髪乙女「真剣士、変わった名前してますよね」クスクス

真剣士「うっせー!」

黒髪乙女「何でも、昔は有名な剣士の家系だったらしいですよ」

真剣士「お前はペラペラと…」

 
大魔道「有名な剣士ですかぁ。じゃあ、真剣士さんの実家は武道場か何かを?」

真剣士「…」プイッ

黒髪乙女「答えてあげなさいよ!」

真剣士「あーもう…、別に普通の家庭だよ。アパート暮らしだし」

大魔道「なるほど」


先生「くおら、そこっ!!黒髪乙女、真剣士!ホームルームをしっかり聞かないか!」クワッ


真剣士「見ろ、怒られたじゃねえか!」

大魔道「あっ、すいません」

黒髪乙女「いけない、また後で色々話しましょ!」

大魔道「…はい」ニコッ

 
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カァ…カァ…


黒髪乙女「はー…びっくりしちゃった!握手もしてもらっちゃった、きゃーっ!」

真剣士「…あっそ、良かったね」

黒髪乙女「なぁに、妬いてるの?」

真剣士「そういうんじゃねーから。ケーキ買ってやらないぞ?」

黒髪乙女「あーウソですぅー!買って下さいー!」

真剣士「…はは」

 
黒髪乙女「…って、何で私が謝らないといけないの?元はといえば、真剣士が誕生日を忘れて…」

真剣士「あーごめんなさいね!」

黒髪乙女「分かればよろしい♪」


スッ…タッタッタッタ…


黒髪乙女「あれ?今通ってったのって、大魔道さんじゃない?」

真剣士「え?」

黒髪乙女「そっち側に急いで走ってったみたいだけど」

真剣士「そっち側って、何もなくね?」


黒髪乙女「でも確かにこっちに!」ダッ

真剣士「あ、待てよ!」

 
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――――【 町外れの廃墟 】


真剣士「…ここに入ったって?」

黒髪乙女「う、うん。見間違えじゃないと思う」

真剣士「冗談だろ?こんな場所、もうずっと人なんか住んでねーよ」


黒髪乙女「でも、見たよ!」

真剣士「っても、人の気配ないし。気のせいだろ?」

黒髪乙女「むー…」

 
真剣士「いいから戻るぞ。ケーキ屋閉まっちまうだろうが」

黒髪乙女「あっ、そっか…急ごう!」ダッ

真剣士「待てって!…俺を振り回すなー!」

黒髪乙女「えへへっ、早く~!」

タッタッタッタ…


…スッ

大魔道「…」

 
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――――【 次の日 】


キーンコーンカーンコーン…

…ガラッ!!

大魔道「おはようございます」

真剣士「おう、おはよう」

黒髪乙女「おっはよー♪」


大魔道「朝から元気ですね、黒髪乙女さん」

黒髪乙女「元気が取り柄だからね~」

 
大魔道「そうですか」フフ

黒髪乙女「そ、れ、よ、り!」

大魔道「?」

黒髪乙女「昨日、あの廃墟にいたでしょ。ね?」

大魔道「廃墟…?」


真剣士「お前、やめとけって…気にしないでくれ、大魔道」

大魔道「いえいいんですよ。廃墟とは何です?」

黒髪乙女「えーっ…大魔道さん知らないの?」

大魔道「……、すいません…存じ上げません…」


真剣士「だから言っただろ?」

黒髪乙女「んー…」

 
真剣士「悪いね、バカな幼馴染で」

大魔道「あはは…気にしないで下さい」 
 
黒髪乙女「バカってゆーな!」

真剣士「ふっ」


大魔道「はは、朝から本当に元気がいいですね」


黒髪乙女「私から元気をとったら、残るのは…何だろう」

真剣士「バ・カ」ボソッ

黒髪乙女「…」

…ゴンッ

 
真剣士「ぬぐおおう…」ズキズキ

黒髪乙女「純情な女の子に、バカバカいうな!」

真剣士「ってぇ~…たんこぶ出来たじゃねーか!純情な女の子が、暴力振るうな、バカ!」

黒髪乙女「むーっ!」

真剣士「あぁ!?」


大魔道「ふふ…これでも見て落ち着いてくださいよ」パァッ

真剣士「んお…」

黒髪乙女「!」

 
真剣士「指が…光ってる?」

大魔道「…」パァァ

黒髪乙女「す、凄い!魔法だぁ!」


真剣士「…マジックだろ、ただの」

黒髪乙女「魔法だよ!」

真剣士「タネありのマジック」

黒髪乙女「まほーなの!!」

真剣士「手品だっての!!」

 
黒髪乙女「大魔道さん!!」

大魔道「何でしょうか」

黒髪乙女「大魔道さんの魔法は、本物だよね?」

大魔道「…」


真剣士「そんなワケあるか。ただの手品、マジックだって」

黒髪乙女「どうなの、大魔道さん!」

大魔道「…」


真剣士「…?」

大魔道「それは…信じるのも、信じないのも、あなた方の自由です」ニコッ

 
真剣士「…出た!」

黒髪乙女「でた?」


真剣士「信じるのも信じないのも自由!それは、結局ウソだからだろ!」

黒髪乙女「違うよ…、何言っても信じないから、あしらうしかないんだよ」

真剣士「だったら、お得意の魔法で信じさせてくれよ」ハハハ


大魔道「…」


真剣士「な?それはできないだろ?」

黒髪乙女「むぅ…」

 
大魔道「…すよ」ボソッ

真剣士「え?」

大魔道「あ、いや…何でもないです」ニコッ


真剣士「なー、出来ないんだよ。だから手品だってば」

黒髪乙女「えー…魔法だもん…」


…キーンコーンカーンコーン

真剣士「あ、ホームルーム始まるぞ」

黒髪乙女「魔法談義はまたあとで!絶対信用させてあげるからねっ!」

真剣士「おー、信用させてくれ」

大魔道「…はは」

 
真剣士(…どうせコイツも似たような二流タレントに落ちぶれるだろ、そのうち)チラッ

大魔道「?」


真剣士(…って、あれ?さっき黒髪乙女に殴られた場所のたんこぶ、治ってる)

大魔道「…」ニコッ


真剣士(…まさかな)

 
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新作、始動致しました。
本日はここまでです。ありがとうございました。


大魔道「…すよ」ボソッ

この語尾は!(゜∇゜)

できれば
このシリーズの人物相関図をのせてほしいのですが、、

魔法って王政時か竜騎士の時がピークなんかね?

>>40
主人公のみの簡易な相関図です(過去作を知らない場合はネタバレ含みます)
白剣士「未来が平和なこと」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1379983305/349)

また、別の登場人物等で何かあれば気軽にお聞き下さい。

>>45
徐々に進むストーリーをお楽しみ頂ければ幸いです。

皆さま、沢山の感想等有難うございます。投下開始致します。

 
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――――【 放課後・帰路 】


真剣士「…何でお前が一緒に帰ってるの?」

大魔道「まぁまぁ」ニコニコ

黒髪乙女「芸能人と一緒に帰れるなんて、まだ信じられないなぁ」


大魔道「…」


真剣士「そのせいで、裏通りで遠回りで家に帰らないといけなくなったんだろうが!」

黒髪乙女「まぁまぁ、そのうちきっといい思い出になるって♪」

真剣士「だといいんだがな」

 
黒髪乙女「ね、大魔道さん」

大魔道「はい?」

黒髪乙女「何か、得意な魔法とかみたいなーなんて…」

大魔道「えぇ、いいですよ」アッサリ


黒髪乙女「はやっ!」

真剣士「軽っ!」


大魔道「…」パァッ

…ボワッ

 
黒髪乙女「…指先から炎が出てるぅ!」

真剣士「ライターを使ったトリックだよ」

大魔道「…」ボォォ


黒髪乙女「でも、手の中に何も持ってないよ?」

真剣士「精巧なトリックは見破れないんだよ」

黒髪乙女「うーん…魔法だよ!」


大魔道「では…これではいかがです?」パァッ

…キィン!!

 
真剣士「青い…炎?」

大魔道「触ってみます?大丈夫ですよ」

真剣士「危ないだろ、青い炎は温度が高くてー…」


スッ…キィィン…

黒髪乙女「わっ、冷たい!!」


真剣士「…本当に触るなっつーの!って、冷たいだって?」

黒髪乙女「真剣士、触ってみなよ!うん、すっごい冷たい!」

真剣士「冗談だろ?」

黒髪乙女「早く!」グイッ

真剣士「ちょっ、危ないっだろって!」

 
スッ…ヒヤッ…

真剣士「!」

大魔道「…」ニコッ

真剣士「つ、冷たい…何だこりゃ」


黒髪乙女「ねっ!?これのトリックは何だっていうの?」

真剣士「そ、そりゃあ何だ…、特殊なエフェクトとか…」

黒髪乙女「そんなの出来るわけないでしょ!」

真剣士「…ぐぬ」

大魔道「…」

 
黒髪乙女「やっぱ魔法なんだよ!」

真剣士「…んむぅ…」


大魔道「…目の前にある物が、全て真実とは限りません」

真剣士「?」

黒髪乙女「?」


大魔道「本物は、どこかで見落としているかもしれない。それに気づけるかどうか」

真剣士「…どういうことだ?」

 
大魔道「僕の国に伝わる言葉ですよ」

真剣士「だから、意味は…」

大魔道「…それは、貴方自身が知るべきことですよ」

真剣士「いやだから、意味がさっぱりわから――…」


…ブーーーン…キキィ!!

大魔道「!」

黒髪乙女「!」

真剣士「!」


大魔道「大型トラック…?」

黒髪乙女「こ、ここ…歩行専用だよ?」

真剣士「おいおい!このままじゃ轢かれるんじゃねえの!」

 
ゴォォォ…ブゥゥーン…!!

大魔道「横の塀を乗り越えて避けましょう!」バッ

真剣士「それがよさそうだ!」バッ

黒髪乙女「…待ってよ、私登れない!」


真剣士「塀に手かけろ!下から押し上げる!」

黒髪乙女「う、うん!」バッ

真剣士「大魔道、上から引っ張ってやってくれ!」

大魔道「わかりました、急いで」


真剣士「せーのっ、おらぁっ!」グンッ

 
黒髪乙女「ちょ、どこ触って!っていうか、パンツ見えてるってば!」

真剣士「死ぬよりマシだろうが、早く登れーーー!」

黒髪乙女「う~っ!」


大魔道「よっ!」グイッ

黒髪乙女「きゃっ!」ドサッ

大魔道「真剣士さん、早く上に!」スッ


真剣士「手はいらん、一人で充分だ」タァンッ

大魔道「…!」

 
黒髪乙女「お~…さすがだね、真剣士」

真剣士「昔から人より運動能力だけは良かったからな」ハハハ

大魔道「…軽々と塀を飛び越えるとは、凄いですね」

真剣士「まぁな」ハハ


黒髪乙女「あっ、そういえばトラックは…」


ブゥゥン…キイイイ………ブゥゥン…………

 
真剣士「…」

黒髪乙女「…」

大魔道「…」


ブウン……ゥン………


真剣士「はぁ、行ったみたいだな」

大魔道「寿命縮まりましたね」

真剣士「つーかさ…止まる気なかったよな。警察通報しといたほうがいいんじゃねえの?」

黒髪乙女「私たちが慌てすぎただけかも?」

真剣士「いやそもそもここ、歩行者専用通路だったし」

黒髪乙女「あっ、そっか…」


真剣士「お前さっき自分で言ってたじゃないか」

黒髪乙女「あはは…気が動転しちゃって」

 
大魔道「僕が通報しときますよ。ああいうドライバーは放置できませんし」

黒髪乙女「いいんですか?」

大魔道「メディアに顔のある僕のほうが、動いてくれるかもしれませんしね」

黒髪乙女「じゃあ…お願いします」

大魔道「はい」ニコッ


真剣士「…」


黒髪乙女「…真剣士?」

真剣士「ん…え?」

黒髪乙女「いや、ボーっとしてて…どうしたのかなって」

真剣士「あ、いや何でもない。それよか、日暮れる前に帰るか」

 
黒髪乙女「だね」

大魔道「そうですね、日暮れも早くなり始める頃ですし」


真剣士「んじゃ、俺らはこっち側だから」

大魔道「はい、僕はこっちなので」


黒髪乙女「じゃあね、大魔道さん。また明日♪」

大魔道「はい、また明日です」

真剣士「ん…じゃあな」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

………ブゥゥゥン…


女子生徒A「でさぁ…」

女子生徒B「うんうん、だよねー」

女子生徒C「あはは!」


ブゥゥゥゥン……

運転手『…』


女子生徒A「ね、ねえ…」

女子生徒B「ん?」

女子生徒C「どうしたの?」

 
運転手『…』

ゴォォォォ…


女子生徒A「あのトラック…スピード出しすぎじゃない?」

女子生徒B「…うん、危ないよね」

女子生徒C「っていうか…ここカーブなのに…大丈夫なのかな」


ゴォォォォォ!!

運転手『…』


女子生徒A「…え、ねえ、ちょっと!」

女子生徒B「きゃあああ!」

女子生徒C「いやぁぁ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ピーポーピーポー…


黒髪乙女「救急車と消防車、随分行くね?」

真剣士「まさか、さっきのトラックじゃねえだろうな…」

黒髪乙女「…」

真剣士「…」


黒髪乙女「ま、まさかね」アハハ

真剣士「…まさかな」ハハハ

 
黒髪乙女「はぁー、でも、大魔道さんいい人だよね」

真剣士「のんびりした奴だと思ってたが、意外と行動力はあるんだな」


黒髪乙女「ね。びっくりしちゃった…あっー!」
 

…ゴツンッ

真剣士「」プシュー


黒髪乙女「…思い出した」

真剣士「いってぇぇ!突然、何しやがる!」

黒髪乙女「思い出したの!真剣士、お尻触って、パンツ見たでしょ!」

真剣士「ケツ触るしかなかったんだから、仕方ねーだろ!それに、パンツは見てねーよ!」

 
黒髪乙女「本当?」

真剣士「本当!」

黒髪乙女「白かった?」


真剣士「水色だった」


黒髪乙女「…」カァァ

真剣士「…あ」

黒髪乙女「…天罰っ!」ブンブンッ
 
真剣士「あんな状況だったから、仕方ないだろうが!カバン振り回すな、危ないっつーの!」

 
黒髪乙女「ま…それもそっか」

真剣士「はぁ~乱暴者め」

黒髪乙女「もー…貸しにしとくからね!」

真剣士「何でだよ」


黒髪乙女「貸しは、ケーキで返してもらえればいいよ♪」

真剣士「お前、最初っからそれが目的だったな」

黒髪乙女「えー?」

真剣士「はいはい…分かったよ、今度な」

黒髪乙女「えへへ~」

 
トコトコ…

真剣士「っと、家についたし…また明日な」

黒髪乙女「うん、また明日~!」


真剣士「お疲れさーん」

黒髪乙女「ばいばーい」

 
トコトコトコ…トコトコ…

ガチャッ…バタンッ


真剣士「…ただいまー」


母親「おかえりなさい」

妹「おかえり~♪」


真剣士「ふわぁ…、すげぇ疲れたよ」

妹「もうすぐご飯できるから待っててねー」トントン

真剣士「はいよー。テレビ点けとけよ…リモコンどこ?」

妹「テーブルの上だと思うよ~」

真剣士「はいよ」

 
カチャカチャ…プチッ

…ヴーッヴーッ!!!


真剣士「ん?」

妹「今の音…何?」ヒョイッ

真剣士「なんか緊急ニュース速報だって」

妹「何~?」


ニュース"「ニュース速報です。本日夕方、東都にて暴走トラックが―…」"

 
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――――【 次の日・学校 】


ガヤガヤ…ザワザワ…


校長「はい…静かにしてください」


黒髪乙女「…」

真剣士「…」

大魔道「…」

生徒「…」

 
校長「既に知っていると思う人も思いますが、昨日の夕方、我が生徒が事故に巻き込まれました」

ザワザワ…

校長「暴走したトラックが、我が校の女子生徒3人を跳ね、重症を負わせられました」


大魔道「…」

真剣士「昨日の…か」

黒髪乙女「そんな…」

真剣士「はぁ…嫌でもため息は出るな…」

黒髪乙女「だね…」


大魔道「僕らがどうこう出来る問題ではありませんでした…けど…」

真剣士「あぁ。気持ち的に沈むってな」

 
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ザワザワ…

先生「以上です。という訳で、メディア関連がきても…あまり余計な事は言わないように」

生徒達「…」

先生「明日から1週間、学校は休校になります。粗相のないように…」


真剣士「1週間の休みか…」

黒髪乙女「素直に喜べないよね」

真剣士「当たり前だろ」

黒髪乙女「…」

真剣士「…」ハァ

 
大魔道「僕も、メディアの仕事は少し自粛ですね」

真剣士「学校関連だもんな」

大魔道「…」

真剣士「…」

黒髪乙女「…」


大魔道「そうだ、気分転換に…我が家に遊びに来ませんか?」

真剣士「家に?」

黒髪乙女「大魔道さんの家に?」ピクッ

大魔道「はい」ニコッ

 
真剣士「…どんな感じなんだ?」

大魔道「家ですが、ちょっとした別荘みたいなものなんですけど、いかがでしょう?」

真剣士「…えー」

黒髪乙女「今日じゃなく、明日ですか?」


大魔道「ですねぇ歓迎したいですし。準備もあるので、出来れば明日がいいかと」

真剣士「んー…でもなぁ」

大魔道「面白いものも用意しますよ」

真剣士「まー…そこまで言うなら…」

大魔道「はは、ありがとうございます」

 
黒髪乙女「明日、どこへ行けばいいんですか?」

大魔道「ちょっと入り組んだ場所なので、分かりづらいですが…町外れまで来て頂けますか?」

黒髪乙女「はーい♪」

真剣士「あいよ」


…キーンコーンカーンコーン

先生「っと…これで今日は終わりですね。それでは皆さん、お気をつけて帰ってくださいね」

生徒達「わかりましたー」

 
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・・・
・・

 
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――――【 次の日・町はずれ 】


大魔道「お待たせいたしました」

真剣士「歓迎するにしても、おせぇ!」

大魔道「ちょっと手間取ってしまいまして…」


黒髪乙女「真剣士落ち着いてよ。今日は招待してもらって、ありがとうございます」ペコッ

大魔道「いえいえ、遅れたのは自分の責任なので…それでは行きましょうか」


黒髪乙女「うんっ」

真剣士「おーう」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

トコトコ…

大魔道「ここが別荘です。今は一人で住んでますけど」

真剣士「…立派なもんだな」

大魔道「そうでしょうか?」


真剣士「一人住まいで、これで別荘だろ?立派なもんだよ」

黒髪乙女「本当にねー。立派だよ」


大魔道「あはは…とりあえず中に案内します」

 
ガチャッ…バタンッ

大魔道「居間でくつろいでください。面白いものを持ってきますよ」

黒髪乙女「はーいっ!」

真剣士「あいよ」

タッタッタッタ…


黒髪乙女「ね、凄いねー」

真剣士「んむ…まぁな。随分綺麗だし」

黒髪乙女「ねー。綺麗だよねー…」

真剣士「だけど、だいぶレトロだな。暖炉とか、初めて見たぞ」

黒髪乙女「テレビもないし、ピアノも少し古いタイプだよね」

 
タッタッタッタ…

大魔道「お待たせしました。僕の魔法道具ですよ」


ドサドサ…ガランガランッ!!


真剣士「魔法道具だぁ?あぁ…手品道具か」

黒髪乙女「わぁ~!すっごーい!」キラキラ

真剣士「この杖みたいのとか、どうせ振ると花が出るんだろ?」スッ

大魔道「あ、それは違いますよ。火が具現するイメージで振るんです」

真剣士「はぁ?」

 
大魔道「貸して下さい…こうです」スッ…パァッ!!

ボワッ!!…ボォォォッ…


真剣士「…!」

黒髪乙女「すごーい…私もできる!?」

大魔道「イメージさえ上手くすれば、出来ない事はないですよ」ニコッ

黒髪乙女「…やってみても?」

大魔道「どうぞ」


…ヒュンッ…シュン…

黒髪乙女「…?」

真剣士「はっはっは、でてねーぞ!やっぱりタネが分かってないと無理なんだって!」

黒髪乙女「ち、違うよ!魔法だもん!私みたいな一般人は魔法なんか使えないの!」

 
真剣士「くっくっく…笑わせてくれる」

黒髪乙女「むぅぅ…」


大魔道「大丈夫です。黒髪乙女さん…魔法は、どんな人も使えるんですよ」

黒髪乙女「でも…」

大魔道「大事なのはイメージ。そして具現する力。人には忘れられた…その力が眠っています」

黒髪乙女「…」


大魔道「さぁ落ち着いてもう1度。この空間に浮かぶ魔力を集めるイメージで、火を念じて…振るんです」

黒髪乙女「…は、はい」スッ

…ヒュンッ…

 
…パァッ…ボワァッ!!

黒髪乙女「わぁっ!」

大魔道「…」ニコッ

黒髪乙女「真剣士、出来たよ!ほらほら!」

真剣士「はぁ!?」


黒髪乙女「やったー!私も魔法が使えた!」

真剣士「て、手品のタネを使っただけだ!お前ら、俺を騙そうと…!」

黒髪乙女「でも、朝から私と一緒だったし…そういう事できる時間ないじゃん…」

真剣士「くっ…」

 
黒髪乙女「私にも魔法が使えるんだ~♪」

真剣士「だ、大魔道…どうやったんだ?タネを教えてくれ!」


大魔道「…」


黒髪乙女「…?」

真剣士「どうした?」


大魔道「…魔法というのは」

真剣士「お、おう」

大魔道「タネも仕掛けもないです。魔力というのは、人間に元々ある性質の1つですから」

真剣士「だーかーらー…」

 
大魔道「本当の事です。それに気づいているか、気づいていないか…それだけなんです」

真剣士「どういうことだ?」

大魔道「さて…彼らも焦っているようだ」

真剣士「何?」


大魔道「…直球に言いましょう。貴方は、僕と出会うべくして出会った人間なんです」

真剣士「ちょっと待て、一体何を言ってるんだ?」

黒髪乙女「大魔道さん、どういうこと?」


大魔道「…気づいてください」

真剣士「あん?」

 
大魔道「あなた方が、どこにいるのかを」

真剣士「どこって…お前の家だろ?」

大魔道「…」

真剣士「?」


大魔道「…ここは、僕の家じゃありません」

黒髪乙女「どういうこと?」

大魔道「ここにあったものは…これです」パチンッ


パァァ…ボロッ…ボロボロ…

 
真剣士「は…え?お、おいおい…家が…腐ってくぞ!?」

黒髪乙女「わわっ…何これ!」

真剣士「一体なんだよこれ…大魔道!」


大魔道「それに、貴方たちにかけた意識の魔法を解きます…」パチンッ


真剣士「!」ハッ

黒髪乙女「!」ハッ

大魔道「…気づきましたか?」


真剣士「ここって…あの廃墟じゃねえか…?」

黒髪乙女「そ、そうだよ!ここは…あの廃墟じゃない!」

 
真剣士「で、でも…確かにここにさっきまで立派なソファーに…家が…」

黒髪乙女「暖炉も壊れてる…ど、どういうこと!?」

大魔道「これが、"魔法"です。まるで本物のように、気づかぬうちに幻影を見せる…"魔法"」


真剣士「…タネが」

大魔道「ありません。貴方も見て、感じましたよね。そこにあった、本物を」

真剣士「…っ」

大魔道「本当はもう少しゆっくり教えるつもりでした。ですが…時間がなくなってきたようです」


真剣士「…ど、どういう事だ?」

黒髪乙女「ねぇ…大魔道さん。教えてよ…何がなんなの?」

 
大魔道「僕は大魔道。世界に忘れられた、最後の魔道師です」

真剣士「魔道…師?」


大魔道「そして僕の使命は…英雄を血を紡ぐ者に、それを…伝えること」

 
-Eye catch !-
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
真剣士「英雄の…血…?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
-proceed to the next !-

本日はここまでです。ありがとうございました。

乙です!
これは胸熱な展開になってきましたな

皆さま有難うございます。投下致します。

 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大魔道「…」

真剣士「英雄を…紡ぐ?血を伝える?」

大魔道「はい」


真剣士「何を言っているんだ?」

黒髪乙女「うん…、大魔道さん、私もちょっと意味が…」


大魔道「…」

 
真剣士「もっと、分かりやすいように教えてくれないか?」

大魔道「…この世界の歴史、というものは知っていますか?」

真剣士「歴史?」


大魔道「錬金術による世界の技術が発展する遥か昔のことです」

真剣士「…?」

大魔道「その時代、この世は魔法で支えられていました」

真剣士「魔法で…?」


大魔道「もちろん、人々は今のように笑顔で、魔法と錬金技術が交じり合う世界に住んでいたのです」

黒髪乙女「…」

真剣士「…」

 
大魔道「何度の戦争もありました。忘れられる事の出来ないことが…沢山と」

真剣士「…」

大魔道「…少し、昔話をしましょう」

 
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――遥か昔。

人間の世界に、魔族という方達が現れました。

そして、魔族は人間の世界を奪わんと…戦いを挑んできたのです。


当時、その企みを阻止するため…人間たちは立ち上がりました。

一丸となり、魔族の王である"魔王"は一人の人間によって倒されたのです。


それが"英雄"の始まりです。

 
魔王の討伐により、世界は平和になりました。


ですが、それはほんの僅かな時間でした。


残党である魔物や、その混乱に乗じた人間たちが世界を掌握せんと企みました。

そして…戦争は絶えず起きました。


しかし、その度に…その英雄の血を引くものが、幾度となくこの世界を守ったのです。

やがて長い時が流れ…魔界と人間界は繋がり、本当の平和が訪れました。

 
そののち…魔族は魔界へと戻りました。


人間たちの争いもやがて落ち着き、錬金術に頼るようになると、魔法は徐々に廃れていきました。

魔法というものは体力を使い、それに頼らない錬金技術はとても楽だったからです。


そこから何年たったでしょうか…。

魔法は姿を消し、戦いの歴史は闇の中へと消えていきました…。

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大魔道「…これが、この世界の本当の歴史です」

黒髪乙女「…」

真剣士「…」


大魔道「そして、その英雄の血を引く者…それが…貴方です」

真剣士「お…俺…?」

大魔道「はい」


真剣士「魔族?英雄?…冗談きっついぜ」ハハハ

大魔道「…」

真剣士「…」

大魔道「冗談ではないですよ。その証拠、お見せいたします」

 
…ビキッ…ビキビキッ…


黒髪乙女「!」

真剣士「!」


大魔道「この腕を見てください。僕自身が、魔族の血を引く者…なのですよ」

真剣士「…っ」

黒髪乙女「漫画に出てくるのみたい…、本物なのこれ…」


大魔道「…おかしいとは思いませんか?」

黒髪乙女「え?」

 
大魔道「無から1を作り出すことは出来ません。それなのに、この世には"魔法"の言葉が溢れている」

真剣士「…」

大魔道「人々の想像から生まれる事は、少なからず"記憶"から生まれる事ですから」

真剣士「言われてみれば…そうか…」


黒髪乙女「じゃ、じゃあ…真剣士が英雄の血を引くものって本当なの…?」

大魔道「はい」


真剣士「それが本当だとして、一体何を言いたいんだ?そもそも俺は小さなアパート住みだぞ?」

大魔道「…」

真剣士「本当に英雄の血なら、今頃…大豪邸に住んでいてもいいんじゃないのか?」

 
大魔道「それはー…貴方が…」ハッ

真剣士「それは…?」


大魔道「い、いえ…。それは、必ずしも成功続きではないという事です」

真剣士「…?」

大魔道「お気になさらず…、それよりも、あなたにも1つの使命がある」

真剣士「…何だよ」


大魔道「この世界が壊れる前に、貴方に救ってもらわねばならない世界がある」

真剣士「はぁ?」

黒髪乙女「救うって?」

 
大魔道「もうじき、魔王の血を引く者がこの世界へ現れる事になります」

真剣士「…?」

大魔道「その前に、魔界へ乗り込み…その者を討ちます」


真剣士「…はぁ」

黒髪乙女「魔界に乗り込む?」

大魔道「…」


真剣士「…はっはっはっは!」

大魔道「?」

黒髪乙女「どうしたの?」

 
真剣士「割りと本気で聞いてたけど、魔界に乗り込むとか、魔法とか…やっぱ信じられないって」ククク

大魔道「…」

真剣士「大魔道もどこまで本気なんだか。魔王の血を引くものが現れるって…笑わせないでくれよ」

大魔道「本来なら、僕が討つべきです。ですが…これは貴方にしか出来ないことなんです」


真剣士「ひーっひーっ…お腹痛い。そんな本気で笑わせないでくれ!」

大魔道「…」


黒髪乙女「ちょっ、真剣士…笑いすぎだよ!」

真剣士「だってさぁ…」ハハハ…

大魔道「信じられないのも無理ないですけどね…」

 
黒髪乙女「わ、私は信じるよ!」

大魔道「…」

黒髪乙女「本当に目の前で見せられたのは、手品って言葉じゃ表せないし…」

大魔道「ありがとうございます」ニコッ


真剣士「くくく…で?いつその魔王とやらは現れるんだ?」

黒髪乙女「真剣士、そんなバカにしないでよ!」


大魔道「いいんですよ。名前は魔王とはいいません」

真剣士「じゃあ何ていうんだよ」

大魔道「"幻王"です」

 
黒髪乙女「げん…おう…?」
 
大魔道「もうじき、この世界に次元を破って、魔界から人間界へと侵攻をします」

真剣士「勝手なヤツだな」


大魔道「ですが、殺す事はないでしょうね。彼の得意な魔法は別にあるのですから」

真剣士「得意な魔法?」

大魔道「先ほど見せた、この廃墟を素晴らしい別荘と信じ込んでましたよね」

真剣士「あぁ…」


大魔道「それです。生かさず、殺さず。人間たちを奴隷にし、快楽と堕落を与えるのですよ」

真剣士「…」

 
大魔道「幻王の名前は伊達ではないです。今も、魔界ではその魔法で次々と落とされている」

真剣士「…」

大魔道「まさか、あの竜族をも飲み込むとは思いませんでしたけどね…」


真剣士「竜族?」

大魔道「それは、向こう側の世界にいって追々説明しますよ」

真剣士「…」

大魔道「お願いします。一緒に、幻王の討伐へと向ってください」


黒髪乙女「…」

真剣士「…ちょっと待ってくれ」

  
大魔道「…」

真剣士「お前の顔で、本気だなっていうのは少し理解した」

大魔道「はい」

真剣士「だから、万が一それが本当だとして…、普通の高校生の俺に何ができる?」

大魔道「…」


真剣士「今まで戦う事なんかしたことないし、黒髪乙女とずっと平和に過ごしてきた」

黒髪乙女「だね…」

真剣士「いきなり魔界だの、人間界だの言われても、無理にも程がある」

大魔道「確かに、そうですね」

 
真剣士「魔界に行ったとして、俺は命を自ら捨てる事などしたくない。分かるだろ?」


大魔道「…」

真剣士「どうなんだ?その辺は」


大魔道「その点は…問題ありません」

真剣士「…どうしてだ?」


大魔道「ちょっと失礼します」スッ

真剣士「なな、なんだよ!俺を燃やす気じゃないだろうー…」

大魔道「…」ピカッ…!!

 
真剣士「…っ!」パァァッ

大魔道「…」

真剣士「…」


大魔道「どう、ですか?」

真剣士「…」

大魔道「…」

真剣士「今の、何だ?温かい…」ボォッ

大魔道「それが、英雄を紡ぐ光。彼らの魔力です」

真剣士「…魔力?」

 
大魔道「僕は、今まで出会った全ての英雄の魔力を知っています。そして、それを伝えてきた」

真剣士「…」

大魔道「その魔力は、貴方自身を守ってくれる。そして、貴方を守るのは僕の役目でもある」

真剣士「…」

大魔道「まだ…信じてもらえませんか?」


真剣士「…」

黒髪乙女「真剣士…」

真剣士「正直、まだ信じる事はできねえ。だけど、あの温かさは…どこか信頼できる気がする…」

大魔道「貴方に流れる魔法、魔力を引き出すきっかけを与えました。あとは貴方自身です」

 
真剣士「なぁ、もし俺がここで断ったら…どうなるんだ?」

大魔道「人間は支配されるでしょう。気づかぬうちに、魔物たちの支配下に置かれることになります」

真剣士「どう…なるんだ?」
 
 
大魔道「…戦争の敗北者と一緒です。男は知らぬうちに労働させられ、女はー…」

真剣士「もういい…」

大魔道「…」

真剣士「…わかった。仮に信じる。じゃあ、俺が魔界にいったら俺の存在はどうなる?」

大魔道「魔界の時間の進み方が違うのです。あちら側で過ごした1日は、こちら側で1時間にも満たないんです」

真剣士「へぇ…」

大魔道「…」


黒髪乙女「魔界は、危なくないの?」

大魔道「少なからず、まだ魔界には幻王から逃げている隠れ里があります」

 
真剣士「…お前はどうやってココへ来たんだ?」

大魔道「?」

真剣士「こちら側にくる時、繋ぐ穴が開いてたってことだろ?それで他の魔物が攻め入るという事はー…」


大魔道「言ったでしょう。僕は"魔の血"を引く者。次元を開けるのは…幻王だけではありません」

…バキャァンッ!!!…ゴォォォォォ…


真剣士「!」

黒髪乙女「!」


大魔道「これが、魔界と繋がるゲートです。逃れている味方の魔物へと通じています」

ゴォォォォ…バチバチッ…

大魔道「…いかがですか」

 
真剣士「…」ゴクッ

黒髪乙女「CGとかじゃないよね…、本物だよこれ…」

真剣士「俺じゃないとダメなのか…?」


大魔道「あなたが、英雄の血を引く人だから。…です」


真剣士「…死ぬかもしれないんだろ?」

大魔道「先ほども言いましたが、その為に僕がいるのです。自分で言うのもなんですが、やりますよ僕は」ニコッ

真剣士「そうか…」

ゴォォォ…

 
大魔道「急ぎすぎたのもあり、信じる事は難しいと思います。ですが…全て本当のことなのです」

真剣士「…」

黒髪乙女「…」


大魔道「どう、しますか?」

真剣士「わかったよ…、妹が魔物に襲われるのは…想像したくねえ」

大魔道「では…」


真剣士「待ってくれ、黒髪乙女は?」

黒髪乙女「あ…うん、私は?」

大魔道「…一緒に来て貰います」

 
真剣士「待てよ!こいつを危険な目に合わせる訳にはいかない!」

大魔道「それは…聞けません。それも運命だからですよ…」


真剣士(な…なんて哀しい目をするんだよ…)

黒髪乙女(大魔道さんの…凄い寂しそう…)


大魔道「お願いします。僕が全力で守りきる…約束いたします」

真剣士「…大丈夫なんだな?」

黒髪乙女「…うん。大魔道さんを、信じる。それに、真剣士を一人で行かせるわけないじゃん!」

真剣士「無理にでも着いて来そうだよなお前…」

黒髪乙女「あったりまえ♪」


大魔道「…では、参りましょう。魔界へ」スッ

 
ゴォォォォ…バチバチッ…オォォォ…


大魔道「手をしっかり握ってください。絶対に離さないように」

真剣士「お、おう…本当に大丈夫なんだな?」

黒髪乙女「信じてるよ…」ブルッ


大魔道「では…行きます」スタッ

ゴォォォォォッ…!!!!

 
ギュウゥゥゥゥ…ッ!!

大魔道「くっ…」


黒髪乙女「か、体がねじれる…!!」

真剣士「ぬあああ!」

大魔道「絶対に離さないで下さい!」


真剣士「あああああっ…!!」

黒髪乙女「きゃあああっ…!!」


バチバチ…!!!

ゴォォォ…

ォォ…

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

 
…ガチャンッ!!!

母親「何の音?」

妹「お兄ちゃんのコップが落ちて割れちゃった」

母親「えー?それお気に入りだったやつよねえ…」


妹「どうして…勝手に落ちたんだろ…?」

本日はここまでです。ありがとうございました。

支援

乙女ちゃんも必要なのかな?

乙です!

黒髪乙女ちゃんも誰かの血を紡いでいたりするのでしょうか
これからの展開に期待です

>>126 >>127 展開をお楽しみ頂ければ幸いです。

ありがとうございます、投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 魔界・隠れ里 】


バチバチバチッ…!!


竜少女「…?」

竜母親「空中に亀裂…?危ない、離れなさい!」

竜少女「う、うん!」ダッ

 
ギュウウウゥゥゥン…ドォォォンッ!!!

モクモク…


大魔道「…」

真剣士「…げほっ、げほげほ!」

黒髪乙女「…うぅ…頭がクラクラする…」


竜少女「…あーっ!大魔道のお兄ちゃんだよ!」

竜母親「大魔道さん!」


大魔道「ふぅ、上手く戻れたようですね」ケホッ

 
竜少女「大魔道さん、お帰りなさい!」

大魔道「おやおや、竜少女さん、竜母親さん。ただいまです」ニコッ

竜少女「えへへー久しぶり!」


黒髪乙女「…」パクパク

真剣士「く、黒髪乙女…、これ現実だよな…」

黒髪乙女「な、殴ってみる…?」

真剣士「頼む…」


黒髪乙女「それっ!」ブンッ

…バキィッ!!

  
真剣士「…い、痛い!」

黒髪乙女「殴った手も痛い…やっぱり現実だよ…」ズキズキ

真剣士「竜みたいな尻尾を生えた人間なのか…?」


竜母親「ふふふ、竜族っていうんですよ」

真剣士「うおっ!」ビクッ

竜母親「今は人型ですが、きちんと大竜にも戻れるんですよ」

真剣士「は…はぁ…」


黒髪乙女「信じられない…」

竜母親「私達からすれば、人間の存在が信じられませんよ」クスッ

真剣士「は…はぁ」アハハ…

 
黒髪乙女「…心のどこかで、大魔道さんは冗談を言ってると思ってた。けど…」

真剣士「やっぱりか。誰だってそうだよ。だけど、これは…」

黒髪乙女「うん…」

真剣士「信じざるをえないな」

黒髪乙女「本当のこと、だったんだね」

真剣士「まだ夢じゃないかって疑ってるよ」ハハ


大魔道「さて…お二人方。ここが竜族の仕切る隠れの里になります」

真剣士「竜族…って、あの竜か?」

大魔道「はい」ニコッ

 
黒髪乙女「あはは…本当に信じられないって感じだよ…」

大魔道「今、魔界は幻王の手によって堕ちる寸前です。そこで、このような隠れ里に逃げているのです」

真剣士「へ、へぇ…」チラッ


竜少女「?」


真剣士(…何がなんだか)

大魔道「まぁしかし、竜族は魔界でも力を持った種族。そうそうたやすく堕ちることはありません」

真剣士「じゃあ、安全なのか?」

大魔道「と…思われていました。だが、幻王の魔力はあまりにも凶悪だったのです」

真剣士「え?」

 
大魔道「ここは隠れ里。竜族が逃げてきた、竜族の里。…意味は、分かりますよね?」

真剣士「…力を持った種族が逃げるって、どんな相手なんだよ…」

大魔道「ここは元々、温泉街でした。体を癒しつつ、反撃の時を伺っているのです」


真剣士「おんせ…。え、魔界にも温泉とかあるのかよ」

大魔道「体を癒すのは大事ですからね。人間界より、魔力が満ちていてよっぽど優れていますよ」

真剣士「ほ、ほぉぉ…?」ウキッ

大魔道「…温泉、好きでしたものね」


真剣士「何で知ってる…」

大魔道「…、色々調べたもので」フフ

真剣士「何か気持ち悪いわ!で、これからどうするんだよ」

 
大魔道「時間があり、温泉街。僕がいます。貴方はまだ力が劣る…これも…分かりますよね」

真剣士「…」

大魔道「特訓、ですよ」ニコッ


真剣士「そんな暇あるのか?体動かすのは嫌いじゃないけどよ…」

大魔道「向こうだって考えはあります。あなたは心配せず、今は僕に従ってください」

真剣士「…そ、そうか…?」

大魔道「はい」

真剣士「わかった…」


竜少女「…」クイクイ

真剣士「ん?」

 
竜少女「大魔道さんと一緒に来たってことは…お兄ちゃんが、英雄さんさんなの?」

真剣士「あー…、なんかそうみたいだな…、俺にもよく分からん」ハハハ

竜少女「英雄さんなの!?」キラキラ

真剣士「お…おう…!」


竜少女「そっかー…英雄さんなんだ…!」

真剣士「…」

竜少女「えへへ…」

黒髪乙女「…あなたの名前は?」


竜少女「りゅーしょーじょ!」

竜母親「ふふ、ちゃんと言いなさい。竜少女、っていうのよ」クスッ

 
竜少女「うん!あ、わたし…家のお手伝いの時間だったよね…」

竜母親「…そうね。宿場も忙しいし、行ってあげた方がいいかもしれないわね」

竜少女「うん、行ってきます!英雄さんたち、またねー!」ダッ

タッタッタッタッタ…


竜母親「…」

黒髪乙女「可愛い子ですね」

竜母親「…本当にね。彼女の母親も、可愛らしい人だったからねぇ」

黒髪乙女「…え?」

真剣士「あんたが母親じゃないのか?」


竜母親「私は、ああいう子の面倒を見ている"竜母親"。皆に母さんって呼ばれているのよ」フフ

真剣士「ああいう子?」

竜母親「…幻王の軍に親を奪われた子たちよ」

 
黒髪乙女「…」

真剣士「奪われた…?」


竜母親「幻王に、必死に抵抗した大人たちは…みんな犠牲になっていったの」

真剣士「だから、親を失った子たちの面倒を見ている…ってか」

竜母親「そういうこと。可愛い子が多いのよ」ニコッ


真剣士「…戦争、か」

大魔道「魔界も人間界も、戦争の悲惨さは一緒です」

真剣士「…」

黒髪乙女「…」

 
大魔道「色々と話すのは後にしましょう。魔界への扉を通ったことで、体力が削られているはずです」

黒髪乙女「そんなに疲労感はないんだけどなぁ?」

真剣士「まだまだ動けるぜ?」


大魔道「気づかない疲れですから。今日は宿場を紹介するのでそこで休んでください」

真剣士「わかった」

大魔道「黒髪乙女さんと、一緒の部屋がいいですか?別の部屋がいいですか?」


真剣士「別で」

黒髪乙女「一緒でもいいよ」


真剣士「…」

黒髪乙女「?」

 
大魔道「ど、どっちにしましょうか」


真剣士「別で」

黒髪乙女「一緒でもいいって」


真剣士「…あのね」

黒髪乙女「えー…別にいいと思うんだけどなぁ」

真剣士「いやお前がよくても」


黒髪乙女「…、察してよ」ブルッ

真剣士「…」

黒髪乙女「…」

真剣士「わかったよ…。大魔道、一緒の部屋で」

 
大魔道「了解しました。では、案内しますので此方にお願いします」

黒髪乙女「うん…」

真剣士「手、握ってやろうか?」ハハ

黒髪乙女「…」ギュッ

真剣士「…お、おい」


黒髪乙女「い、行こっ!どんな宿だか楽しみだなぁ♪」

真剣士「…だな。大魔道、変な場所だったら承知しないからな!」

大魔道「はは、きっとお気に召すと思いますよ」

 
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・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
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・・・・
・・・
・・

 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 宿 場 】


ザワザワ…ワイワイ…


大魔道「…はい、こちらが部屋の鍵になります」チャリッ

真剣士「ありがとうよ。思ったより、人…っていうのかな。多いんだな」

大魔道「一応逃げている方たちは大勢いますからね」

真剣士「こんなに人数がいて、食料とか賄えるもんなのか?」


大魔道「いい質問ですね」

真剣士「第一、竜とかめっちゃ食べるイメージあるんだけど」

大魔道「それは偏見ですよ」

 
真剣士「まぁ…確かに、さっきの少女が食べるとは思わないけどさ」

大魔道「中には大食らいもいますけど、普通に人型での維持は少量で問題ありません」

真剣士「そういうもんかね」

大魔道「ですよ」


真剣士「そういや、さっきから通る人らに英雄さんって呼ばれるんだけど」

大魔道「それは僕が反撃側の主要として貴方を連れてくることになっていましたからね」

真剣士「とはいえ、慣れないんだが」

大魔道「はは、気にせずに」

真剣士「うーむ…」

 
ドタドタドタ…

竜戦士「大魔道さん、戻ってらっしゃいましたか!会議があるので、お願いします!」


大魔道「あ、了解しました。…真剣士さん、部屋はわかりますか?」

真剣士「大体な。見た感じ、こっちと造りは一緒だし、のんびり部屋に行くよ」

大魔道「そうですか。えーと…あと…」

 
真剣士「なんだ?」

大魔道「この階を東側に抜けると、大浴場と露天風呂があるので、是非行ってみて下さい」

真剣士「…本当か!」

大魔道「えぇ。広いですよ…きっと休めると思います」

真剣士「わかった。部屋を確認したら行ってみる」


大魔道「それでは、ちょっと会議があるので。後で部屋に伺いますね」

真剣士「あいよ。んじゃ、行くか」

黒髪乙女「うん。大魔道さん、また後でねー」

大魔道「はい、失礼します」ペコッ

トコトコトコ…

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 部 屋 】


ドサッ…

真剣士「ふぅ~…」

黒髪乙女「わっ、広い部屋だね~」

真剣士「…まだ、俺は信じてないぞ」

黒髪乙女「ここまできてっ!?」


真剣士「というか、あっという間すぎて信じられていない、っていうほうが正解か」

黒髪乙女「うん…」

真剣士「だけど、ウソを言ってるとは思えないし…俺は英雄の子孫…なのか?」

 
黒髪乙女「真剣士が英雄の子孫かぁ…」

真剣士「とてもじゃないけど、そんな力があるとは思わないんだよなぁ」

黒髪乙女「うん、だよね」

真剣士「うっせ!」

黒髪乙女「なんでっ!」


真剣士「…窓開けてみるか」

黒髪乙女「どんな景色なんだろ?」

真剣士「…よいしょっと」

…ガラッ!!

 
真剣士「…っ!」

黒髪乙女「わぁっ…」


ガヤガヤ…チンチンドンドン…

薬売竜人『いらっしゃいませー、薬はいかがですかー!』

案内竜人『避難所は1番小屋からですー。竜族の方以外は、4番以降へお願いします!』

ザワザワ…ワイワイ…


シルフ『ダマスカスの鎧だよー!別の区から貰ってきた一級品だ!いかがかなー!』

竜傭兵『ほほー、いい品だ。幾らだ?』

巨人傭兵『騙されてるぞ、ヤメトケ!』

…ガヤガヤ…

 
真剣士「…はは、なんだこりゃ」

黒髪乙女「…凄い。何だろうこれ…、ドキドキする」

真剣士「さっきまで震えてたヤツが何を言う」

黒髪乙女「私だって女の子なんだから、怖くなることだってあるの!」

真剣士「だけど、この風景で少し落ち着けたか?」


黒髪乙女「うん…、皆…楽しそう」

真剣士「本当にここが避難所なのかって思うよな」

黒髪乙女「…うん、さっきの少女みたいな子も…大勢いるんだろうね」

真剣士「…あぁ、そうみたいだな」

 
…コンコン

真剣士「ん…はーい?」

ガチャッ…


竜少女「え、えっと…、中で動きやすい着替えの服をお持ちいたしましたっ!」

黒髪乙女「…あ!」

竜少女「あーっ!」

真剣士「…んお」


竜少女「英雄さん!」

真剣士「あー…さっきの。竜少女だっけ」

竜少女「うん!」

 
黒髪乙女「竜少女ちゃん…ここでお手伝いしてたんだ♪」

竜少女「うん…え、えっと…」モジモジ

黒髪乙女「?」

竜少女「名前…」


黒髪乙女「あ、そっか。私は黒髪乙女。改めてよろしくね」ニコッ

竜少女「宜しくお願いしますっ!」


真剣士「あー…んじゃ俺も。英雄さんとか呼ばれるのは苦手だ。真剣士って呼んでくれ」

竜少女「う、うん。じゃあ…真剣士…お兄ちゃん?」

真剣士「兄ちゃんか…はは。それでもいいよ」

 
竜少女「えへへ…、それでね。大魔道お兄ちゃんが、この部屋にこれを運んでくれって」パサッ

真剣士「これは?」

竜少女「なんか、こっち側でこれを着てれば楽に動けるからって」

真剣士「ふーん…作務衣っぽいな」

黒髪乙女「私のも似たようなのっぽいけど…」


真剣士「わかった。ありがとう竜少女」

竜少女「うん!じゃ、私はお仕事に戻るね♪」


真剣士「あいよ、またな」

黒髪乙女「またね~」

竜少女「ばいばーい!」フリフリ

ガチャッ…バタンッ…

 
黒髪乙女「竜少女ちゃん…可愛いね」

真剣士「はは、お兄ちゃんか」

黒髪乙女「妹いるし、親近感が沸くんじゃない?」クスッ

真剣士「そりゃな」


黒髪乙女「はぁー…これからどうなるんだろうね」

真剣士「さぁ…っと、温泉があるっていってたよな」ウキッ

黒髪乙女「真剣士…本気で入る気?」

真剣士「…いいだろ!」


黒髪乙女「私はまだパスかな…」

真剣士「タオルとかあるのか?」

 
黒髪乙女「普通ならこの辺に…」ゴソゴソ

…パサッ

真剣士「おっ」

黒髪乙女「あったね。行くの?」

真剣士「さっと見てくる」

黒髪乙女「私はちょっと休んでるよ。行ってらっしゃい」


真剣士「いってくるー」

カチャカチャ…バタンッ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 湯治場 】


モワモワ…ザバァ…


真剣士「…お、温泉だ!」

パサッ…

真剣士「なんかワクワクしてきた、よっしゃ!」ダッ

 
ガラガラッ…

真剣士「おぉ…かけ湯専用とか情緒あるねぇ。おしっ!」

ザバァ…ジャボジャボ…


真剣士「これでいいな。湯煙が濃いが…おっし!」

ザバザバ…ジャブジャブッ…


真剣士「ほぉぉ…あったけぇ…、温泉だぁ…」ヌクヌク

真剣士「…」

真剣士「…」ホゥッ

真剣士「…」

 
…ザバザバ

真剣士(…んー、後ろに誰かいる?先客がいたのか…)

ザバッ…ジャバァ…


真剣士(竜族とかっていうやつらかな…?挨拶しといたほうがいいだろうか)クルッ

???「…」

真剣士「…?」

???「…」

真剣士「…えっ?」


???「…っ!」

 
真剣士「お、女ぁ!?」ザバァッ!!


???「あっー!人間さんですよ、お姉ちゃん!」

真剣士「…に、人間さん?お姉ちゃん?」


???「人間さん…ってことは、もしかして英雄様の…?」

真剣士「…ま、まぁ…そうらしいけど…」


姉剣士「…そうでしたか!私、姉剣士と申します。大魔道さんからお話は伺っております」

妹剣士「私はその妹の、妹剣士だよー!」


真剣士「…はい?」

 
-Eye catch !-
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
真剣士「英雄の…血…?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
-proceed to the next !-

本日はここまでです。ありがとうございました。

黒髪乙女「…、察してよ」ブルッ
  ↓
真剣士「……分かった!!察したぜ」
  ↓
真剣士「ふ~じこちゃ~ん」
  ↓
黒髪乙女「キャァ!」ボカッ
  ↓
真剣士「何故??」

的な展開は絶対無いだろうな

黒髪ちゃんはロングかショートか
気になるな

>>167 イメージとしては…ボブ辺りの長さのイメージです。
皆さま有難うございます。更新時間がやや遅れました。

投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 休憩所 】


姉剣士「改めて…大魔道さんからお話は伺っておりました。冷たいお水、どうぞ」ペコッ

真剣士「は、はぁ…どうも」グビッ


姉剣士「大魔道さんから何か聞いてませんか?」

真剣士「いえ…何も」

姉剣士「そうですか…あの方の事だから既に伝えてると思ったんですが…」


真剣士「え、えーと…どういうことでしょうか」

姉剣士「…幻王のことはお聞きになっておりますか?」

真剣士「あ、はい」

 
姉剣士「私たち姉妹は、"姉妹堂"という傭兵家業をやっております」

真剣士「傭兵!?」

姉剣士「恥ずかしながら、そういう方面でしか活躍できないもので…」

真剣士「そういうつもりでは…」

姉剣士「いいんですよ。慣れっこですから」クスッ

真剣士「そ、そうですか…」


女剣士「話を戻しますね。幻王の討伐に、あなたの力が必要なのですが…」

真剣士「…」

姉剣士「剣の腕は未熟という話。そこで私が呼ばれました」

真剣士「はぁ…?」

 
姉剣士「私がしばらくの間、指南させていただきます」ペコッ

真剣士「指南…」

姉剣士「はいっ」


真剣士「…なんだかなぁ」


姉剣士「どうしました?」

真剣士「いえ、急に連れてこられて、急に指南とか、剣術とかいわれても…」ハハ

姉剣士「…急なことだったんですね」

真剣士「何もかも夢の中みたいですよ。未だに魔法なんか信じられませんし」

 
姉剣士「あちら側の世界は、魔法がほとんど残っていないそうですね」

真剣士「残っていないというか、存在が架空の世界の話のようなもので…」

姉剣士「まぁ…」


…ガヤガヤ

姉剣士「あっ、会議が終わったようですね。大魔道さんもいらっしゃるかも」

真剣士「ふむ?」


スタスタ…

大魔道「ふぅ、会議が長引きました。真剣士さん、お部屋は見られましたか?」

真剣士「あ…おう。いい部屋だったし、温泉も入ったぞ」

大魔道「そうですか。それはよかった」

 
姉剣士「大魔道さん、ご無沙汰してます」ペコッ

大魔道「姉剣士さん。もう、真剣士さんとは会ったのですね」

姉剣士「恥ずかしながら、温泉の中で会いました」フフ

大魔道「はは、そういえば混浴でしたね」


真剣士「そういう大事な事はもう少し早くいえ!」

大魔道「申し訳ないです。では…既に剣術のお話は聞いたのですか?」

真剣士「聞いたよ。この人に教わるんだって?」

大魔道「はい。腕は確かですからね」

 
姉剣士「ふふ、大魔道さんにそう言ってもらえると嬉しいですよ」

大魔道「少なくとも、あなた方の腕は一級品以上ですよ。謙遜なさらずとも」

姉剣士「ふふっ」


真剣士「…今日からやるのか?」

大魔道「先ほども申し上げましたが、今日は休んでください。本格的に動くのは明日以降にしましょう」

真剣士「…わかった」

大魔道「では、色々とお話があるので部屋に参りましょうか」


真剣士「んむ…じゃあ…えーと」

姉剣士「また、明日に会いましょう」

妹剣士「人間さん、またねー♪」


真剣士「あ、あぁ。またねー…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
そのあとの大魔道との話は深夜まで続いた。


今、この魔界の避難所が何箇所にもあること。

魔法の概念、もう1つの世界…魔界の歴史。まるで幻想のようだった。


そして、英雄の話。

真剣士に流れる血の歴史……。

 
ふと…外を見れば、見た事もない景色が広がっている。

あっという間の出来事で、今もまだ信じる事はできなかった。


だけど…、知らない匂いを感じながら静かに眼をつぶる時、

真剣士は"違う世界に来たんだな"と、ちょっとした高揚感、そして不安の中で、


ゆっくり。ゆっくりと、眠りの中へと堕ちていった………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日 宿場前の広場 】


大魔道「おはようございます」

真剣士「…おはよう」フワァ

大魔道「どうです?よく眠れましたか?」

真剣士「まぁまぁね」


黒髪乙女「私、枕が変わると寝れなくなるんだった…」

大魔道「そうでしたね…あとでご用意しておきますよ」

真剣士(そうでした…?本当によく調べてるんだな…)

 
大魔道「では、姉剣士さんを呼んで参りますね」

真剣士「あ、あぁ」

タッタッタッタ…


真剣士「…」

黒髪乙女「…」フワァ

真剣士「なーんだか、なぁ」

黒髪乙女「…うん」

真剣士「なんかフワフワするよな」

黒髪乙女「だね」アハハ

 
真剣士「っつか、本当に通り過ぎるやつら皆に"英雄さん"って呼ばれるの何とかしてくれないかな」

黒髪乙女「よく言われてるよね。変な感じ」

真剣士「俺自身は英雄じゃないし、本当に俺の祖先が英雄だったのかすら分からないっつうに!」

黒髪乙女「だよねー。でも、特別騒ぎ立てるわけでもないし…どういうことなんだろ」


大魔道「静かながらも、心には大きな期待があるからですよ」スッ


真剣士「ぬおうっ!急に現れるな!」ビクッ

大魔道「別に騒いでない訳じゃありません。ただ、こちら側の住民は粗相ですからね」

真剣士「…魔物が粗相って」

大魔道「だから、それは偏見なのですよ」

 
真剣士「ふむ…」

大魔道「あまり口にはできませんが、見た目によらないってことです」ニコッ

真剣士「本当にそういう事は言っちゃだめだろ…」

大魔道「まぁまぁ」


…スタッ

姉剣士「やれやれ、大魔道さんも胡散臭い見た目ですし…。言葉遣いには気をつけましょうよ」

大魔道「姉剣士さん、ひどいですね…」


姉剣士「ふふ、それじゃあ始めますか?」

大魔道「真剣士さん、それでは…」ゴソゴソ

 
真剣士「なんだ?」

大魔道「これが、あなたの"剣"です」スッ

真剣士「…本物だろ、これ…」チャキッ


大魔道「えぇ勿論。それは名工の作品と呼ぶべき剣ですよ」

真剣士「名工ねぇ…」ギラッ

黒髪乙女「わぁ~、キレイ」

真剣士「で、どうすればいいのよ。振ればいいの?」ブンッ


大魔道「ここからは姉剣士さんにお任せします。黒髪乙女さんは、こちらに」

黒髪乙女「え?」

大魔道「一応、覚えていて損はない護身の魔法を教えますよ」

 
黒髪乙女「う、うん」

真剣士「バカだけはやらないようにな」

黒髪乙女「そのまま言葉返しますよ、ッベーだ!」

真剣士「うっせ!」


大魔道「はは…、それではあとは頼みました」

姉剣士「はい、そちらも頑張って下さいね」

黒髪乙女「うん、また後で~」

真剣士「あいよー」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

真剣士「…」ブンブンッ

姉剣士「それじゃあ何から始めようかな…」


真剣士「そういや、今日は妹さんはいないんですか?」

姉剣士「妹は今日から、傭兵で前線に出ていきました。教えるのは私の役目ですよ」

真剣士「ぜ、前線?」

姉剣士「はい。傭兵稼業ですしね。この戦争時代、仕事は沢山あります」

真剣士「…」

 
姉剣士「まぁお気になさらずに…それじゃあ、まずは武器の理解から♪」

真剣士「は、はぁ…」

姉剣士「剣、槍、斧、弓。武器は沢山あれど、それぞれの長所は違いますよね」


真剣士「大体分かりますよ」

姉剣士「数ある中でも、最もバランスに優れているのがこの"剣"なんです」

真剣士「ふむふむ」

姉剣士「魔法にしろ、加工にしろ、威力、使いやすさ、どれも一級品になります」

真剣士「確かに、戦いといえば剣のイメージですが」


姉剣士「ですが、使いやすいということは…それだけ腕に差が出やすい。ということになります」

真剣士「聞いた事はありますけど…」

 
姉剣士「まぁ…論もいいですけど、まずは見てもらうのもいいですかね。打ち込んでください」スチャッ

真剣士「えっ」

姉剣士「どこでもいいですよ。力一杯、私に向かって打ち込むんです」


真剣士「え、いやでも…これ本物の剣…」

姉剣士「…」

真剣士「え、え…」

姉剣士「…」


真剣士「わ…わかりました…」スチャッ

姉剣士「腰が引けてますよ」

 
真剣士「あ、当たり前ですよ…、こんなことしたこともないんですから!」

姉剣士「男は度胸!素人に倒されるくらいなら、今まで生きていませんからね」クスッ

真剣士「わかりました…では!」スチャッ

ダダダダダッ…ブンッ!!!


姉剣士「良い踏み込みですね、ですが!」キィンッ!!

真剣士「ぬわっ!」

姉剣士「刃が立っていない。斬ろうとしていない、その気持ちが丸わかりです」

真剣士「…」

姉剣士「突然のことで、迷いもあるかもしれません。まだ、色々と信じられませんか?」

 
真剣士「…じゃあ聞きますよ。もしあなたが人間界に来て、戦いのない世界だといわれたら信じられますか?」

姉剣士「…」

真剣士「俺にとってはその逆です。突然、本物の剣を渡されて、戦えなんて…できるわけがないじゃないですか」

姉剣士「それも…そうですね」


真剣士「え?」


姉剣士「確かに、急ぎすぎかもしれません」フゥ

真剣士「あ、いや…うん…そうですけど…」


姉剣士「理解のない人には、分からせることが一番…ですよね」ギラッ

真剣士「…えっ?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 3時間後 】


トコトコ…

大魔道「さてさて、黒髪乙女さんの予想以上の覚えのよさにビックリしましたよ」

黒髪乙女「教えがいいんだよ~」

大魔道「真剣士さんたちは、どんな感じになりましたかねぇ」

黒髪乙女「さぁ…、意外と奮闘してたりするかも」

大魔道「どうでしょうかねえ…お」

 
キキキィンッ!!!…ドシャアッ…

真剣士「うあっ!」

師匠(姉剣士)「遅いですよ、まだ。飲み込みは良いんですから、もっと踏み込んでください」

真剣士「師匠…そんな事言ったって…」

師匠「足腰を軸にできていません。もっと、ねじるようにするんです」

真剣士「…くそっ、もう1度!」ダッ

ダダダダッ…キィンッ!!!


大魔道「おや…姉剣士さんが、完全に"師匠"になってますね」ハハ…

黒髪乙女「うわぁ…真剣士があんなに本気で…なんかシュール…」

大魔道「どうやら、真剣士さんを本気にさせることはできたみたいですね」

黒髪乙女「本気にできた?」

  
大魔道「真剣士さんは、心のどこかでまだ信用という言葉がありませんでした

黒髪乙女「あいつは頑固なところもあるからなぁ…」

大魔道「ですが、上手くいってるようでよかった」

黒髪乙女「うん…一生懸命さが伝わってくる」

大魔道「…体力面も、予想以上に優れているようですしね」


ダダダダダダッ…ズザザァ…

師匠「脇が甘いですよ!」ビュッ

真剣士「があっ!」バキィッ!!

師匠「今のが峰打ちでなかったら…」

真剣士「ごほっ…もう1本!」


師匠「よく体力が持ちますね…賞賛ですよ」

  
真剣士「…あんなの見せられたら、やらずにはいられないっての…」ペッ

師匠「そうですね、もう1本!」


黒髪乙女「…あんなの?」

大魔道「ふむ、なるほど…アレを見せてやる気にした、ということですか」

黒髪乙女「どういうこと?」


大魔道「恐らく、幻王が魔界から人間界へ攻め込んだ未来のビジョンを見せたのでしょう」

黒髪乙女「な、なるほど…」

大魔道「見ますか?僕にもできますよ?」

黒髪乙女「いや…私にそんな勇気は…」

 
師匠「あ、大魔道さんと黒髪乙女さん…」


ダダダダダッ!!!

真剣士「隙ありぃ!!うらぁっ!」ブンッ

ギギキィンッ!!!…キィンッ!!!!クルクルクル…ザシュッ!!


師匠「!」

真剣士「や、やった!剣を吹き飛ばしたぞ!」

師匠「やりますね、完全に虚をつかれましたよ」

真剣士「はっはっは!」


…パンパン

大魔道「お見事です。姉剣士さん、完全にやられましたね」ハハハ

真剣士「大魔道…、黒髪乙女も。そっちは終わったのか?」

大魔道「えぇ。凄い才能でしてね、どんどん吸収しますよ」

黒髪乙女「大魔道さんの教えがいいからだってば!」

 
真剣士「ふぅ…そうか。で、何か用か?」

大魔道「朝から続けてですし、丁度いい時間です。お昼にしましょう」

真剣士「あいよわかった。腹も減ったところだったしな」

大魔道「ちょっと姉剣士さんとお話があるので、真っ直ぐ進んだ赤い暖簾の店に入っててください」

真剣士「はいよ。んじゃ行くか」

黒髪乙女「うんっ」

タッタッタッタ…


大魔道「…」

師匠「…」

大魔道「どうです、か?」

師匠「思った以上の上達の早さですよ」

大魔道「そうですか、それは良かった」

 
師匠「ですが…どうするんですか?いくら無造作といえども、これ以上は負担になりかねません」

大魔道「恐らく、これが限度でしょうね。心身ともに予想以上の成果をあげている」

師匠「…恐らく、アレが効いたんでしょうか」

大魔道「…本当に申し訳ない事をしました。もう、過ちは犯しませんよ」


師匠「…」


大魔道「それにしても、姉剣士さんが"師匠"ですか。姉剣士さんが…」フフ

師匠「そ、それは…恥ずかしいんですけどね。真剣士さんが勝手に…」

大魔道「やる気になってくれて、良かったとは思いますが」

師匠「それにしても師匠と呼ばれるとは思いませんでした」

大魔道「…確かにそうですね。彼自身、知らぬうちに気づいているのかもしれませんよ…この、せ…」

 
師匠「あ、大魔道さんちょっと待って下さい…」ピクッ

大魔道「…」ハッ


…タッタッタッタ

真剣士「おーい!」

大魔道「…どうしましたー?」

真剣士「赤い暖簾の店、しまってるぜ?」

大魔道「…それじゃあ、隣のお店にお願いします!」

真剣士「りょうかーい!」

 
大魔道「…」

師匠「急ぎましょう、ね」

大魔道「そうですね」


師匠「それじゃ…行きましょうか」

大魔道「行きましょう」


タッタッタッタッタッタ…

遅れ更新となりましたが、本日はここまでです。有難うございました。

ありがとうございます、投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【黒暖簾の料理店】


ザワザワ…ガヤガヤ…


大魔道「混んでますねぇ」

師匠「昼時ですからねぇ。さて、何か食べたいのはありますか?」

真剣士「メニューはこれか」ペラッ

黒髪乙女「聞いた事ないのばっかり…」


大魔道「そちらと同じメニューもありますよ。うどんとか、そばとか」

真剣士「すっげー和風だな」

大魔道「そちら側の料理はこちら側でも伝わり、有名なのですよ」

真剣士「ふーん」

 
黒髪乙女「でも、折角だしこっち側でしか食べれないメニューを食べたいな」

師匠「それなら、これがオススメですよ」スッ

黒髪乙女「…カトブレパスのステーキ、ですか?」

師匠「そちら側でいう、牛みたいなものですね」

黒髪乙女「じゃあ、それで♪」

師匠「私もそれにしましょう」


大魔道「真剣士さんはどうしますか?」

真剣士「うーん…、堅実にうどんとかでいいんだけどなぁ」

大魔道「そうですか?」


黒髪乙女「真剣士も珍しいもの食べようよ~」

真剣士「つったってなぁ…」

 
大魔道「カルキノスの鍋とかどうです?」

真剣士「何だそりゃ?」

大魔道「蟹、ですね。ざっくりいえば」

真剣士「蟹鍋!?」

大魔道「蟹、好きですよね」


真剣士「だから、何で知ってるんだよ…」

大魔道「僕は色々調べてましてー…」

真剣士「わかったわかった!つかさ、俺ら金ねーよ?」

大魔道「そのくらい出しますから」ハハ


真剣士「じゃあ…"カスキノス"の鍋で…」

大魔道「カルキノスです…わかりました、僕もそれで。店員さーんお願いします」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ザワザワ…ガヤガヤ…

真剣士「それにしても、師匠」

師匠「はい?」

真剣士「師匠は、人間ですよね?」

師匠「…あぁ」

真剣士「師匠の妹もだったけど…何で、俺らを人間さんって呼ぶんだろ?」


師匠「私たちは、亜人…かな?」

真剣士「亜人?」

 
大魔道「僕も同じですね」

真剣士「何なんだ?亜人って」


師匠「人間に似て、非なる人。人にあらざる人、ですかね」

真剣士「人にあらざる人…」


師匠「2人とも、よく私の眼の辺りを見てください」

真剣士「おう?」

黒髪乙女「は、はい」

 
真剣士「…」ジッ

黒髪乙女「…」ジッ


師匠「…」ググッ

ビキッ…ビキビキ……


真剣士「…!?」

黒髪乙女「な、何…?」


師匠「眼の色が変わり、周囲から徐々に硬化しているのわかりますか?」

真剣士「う、うむ…」

師匠「これが、私の一族の魔物との混血の証拠です」スゥッ

黒髪乙女「…どういうことですか?」

 
師匠「亜人というのは、普通の人や、一般的な魔物よりも特異な性質を持って生まれてくるんです」

真剣士「…?」

師匠「私の場合は、普通の硬化魔法よりも格段に丈夫な硬化を、弱点優先で行う事ができるんです」


真剣士「なるほど…って、大魔道も普通と違う魔法を使えるってことか?」

大魔道「そうなりますね」

真剣士「どんな魔法なんだ?」

大魔道「それは…」


カチャカチャ…

店員「お待たせ致しました、ステーキと蟹鍋です」

大魔道「お、頂きましょうか」

 
真剣士「それより…気になるじゃないか、教えろよっ!」

大魔道「僕のは更に特異でしてね。真剣士さん、水に注意してください」

真剣士「水?」


…パシャッ!!!

店員「あっ、す、すいません!」

真剣士「冷たっ!あ、いや、いいッスよ」

店員「本当にすいません、今、おしぼり持ってきますね」ダッ

真剣士「あ…じゃあお願いします」


大魔道「と、言うように。少し先の未来が見えるんですよ」

真剣士「便利だな…」

大魔道「だからといって…何ができるわけではないのですが…」フゥ

 
真剣士「…?」

大魔道「さっ、それより温かいうちに頂きましょう。美味しいですよ」


真剣士「そ、そうだな。頂きます」

大魔道「頂きます」

師匠「頂きます」

黒髪乙女「いただきます~」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 午 後 】


大魔道「食べましたし、午後も気合を入れていきましょうか」

師匠「ですね。そちら側も頑張って下さい」

大魔道「もちろんです」


黒髪乙女「それじゃ、真剣士…頑張ってね」

真剣士「当たり前だ。お前も、自分を守る技くらい身につけておけよ?」ハハ

黒髪乙女「真剣士こそっ!」

真剣士「おう」

 
師匠「それじゃ、午後は基本の動きからやりましょうか」

真剣士「はい」スチャッ

師匠「あなたは動いて覚えるタイプみたいだしね」クスッ


真剣士「昔から、体を動かすのは得意だったからなぁ」

師匠「…」

真剣士「でも…、本当に俺が幻王を倒せるんですかね?」

師匠「…貴方には、自身でも理解できないほどの力があるんですよ」

真剣士「そう…なんですかね」

師匠「えぇ。大魔道さんや、これでも歴戦の私が言うんです。間違いありません」

 
真剣士「…あの、未来のビジョンも…本当なんですよね」

師匠「はい」

真剣士「わかった…信じます」

師匠「ありがとうございます。今は、目の前の事に集中しましょう」


真剣士「…」スチャッ


師匠「さて…行きますよ」

真剣士「…はい!」

 
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・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

 
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――――【 夜・湯治場 】


カポーン…ザバザバ…


真剣士「ふあ~…しかし良い温泉だ…」ブクブク

師匠「本当に、疲れが癒えますよね」ヌッ


真剣士「し、師匠!?」


師匠「ふふ、よく温泉で会いますね」

真剣士「お、俺そろそろあが…」


師匠「まぁまぁ、今入ったばかりじゃないですか」

グイッ…ザボォンッ!!

 
真剣士「…ぷはっ!師匠、力強いよ!」

師匠「私に引っ張られるようではまだまだですよ。精進あるのみです」

真剣士「…」

師匠「…」


真剣士「…」チラッ

師匠「?」

真剣士「…っ!」プイッ

師匠「どうしました?」

 
真剣士「し、師匠は恥ずかしくないんですか!?」

師匠「え?あ、あぁ…」

真剣士「…」

師匠「こっちの世界では、人という存在自体が珍しいですからね…」

真剣士「な、なるほど…」


師匠「女風呂と男風呂…でしたっけ?分かれているほうが珍しいんですよ」

真剣士「で、でも…」

師匠「…おや、早速お客のようですよ」

真剣士「え?」

 
ガラガラッ!

黒髪乙女「ひゃ~っ!」

竜少女「わーい!」


真剣士「く、黒髪乙女!?」

黒髪乙女「…」

真剣士「…」

黒髪乙女「…き…」


真剣士「…っ!!」

 
黒髪乙女「きゃああ~~~っ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

真剣士「」プシュー…


黒髪乙女「鉄拳制裁!」

真剣士「…いってえなぁ!」

黒髪乙女「こっち向かないでよ、バカァ!」ゴツッ

真剣士「いて!くそっ!」


竜少女「ダメだよ~ケンカしちゃっ!」

師匠「…」クスッ

 
真剣士「…お、俺だって混浴だって知らなかったんだよ!」

黒髪乙女「…とにかくあっち向いててよねっ!」

真剣士「へいへい…」


師匠「仲がいいんですね、二人とも」

真剣士「…」

黒髪乙女「まぁ…長い付き合いですからね…」

真剣士「ふんっ」


竜少女「仲良くするのが一番だよっ!」

真剣士「なー。暴力はいけないよなー?」

竜少女「うん、暴力はダメだよ!」

 
黒髪乙女「…」

師匠「…」


真剣士「はぁ…」

黒髪乙女「ねえ、真剣士」

真剣士「ん?」

黒髪乙女「白剣士は、幻王を倒せると…思う?」

真剣士「知らん」

黒髪乙女「知らんって」


真剣士「…そりゃ、やれる事なら倒したいと思うよ?」

師匠「…」

真剣士「こんな体験滅多にできないし、平和の為に戦うとか誰しも1度は考える事じゃん?」

 
黒髪乙女「それは…まぁ…」

真剣士「でも、実際そうなったら…何も考えられなくなるんだなって分かったよ」

黒髪乙女「…」

真剣士「だけどまぁ…」


竜少女「~♪」バシャバシャ


真剣士「…、俺の存在で、こういう子が安心できるなら、助けたいとは思う」

師匠「…」ニコッ

黒髪乙女「真剣士…」

 
真剣士「まぁ…出る。熱い」ザバザバ

黒髪乙女「きゃあっ!前隠してよ、バカ!!」

真剣士「おっと、うっかり。最初に殴られてボーっとしてたよ!」


師匠「…」ジッ

竜少女「?」キョトン

 
黒髪乙女「いいから早く出て行けーっ!」

  
真剣士「へいへい!わかったっつーの!」

タッタッタッタ…ガラガラッ…ピシャッ


黒髪乙女「ふぅ…やっと落ち着けた」

師匠「ふふ」

黒髪乙女「いつも落ち着く暇がないんだから…全く」


師匠「…キレイな星空ですね」

黒髪乙女「ですね…今日は温泉にも浸かってよく眠れそうです」

師匠「ゆっくり休んでください。明日からは本格的な修行になるでしょうしね」


黒髪乙女「はい…でも…」

師匠「…」

 
竜少女「どうしたのー?」
 
黒髪乙女「ううん。竜少女ちゃんは気にしなくてもいいのよ」ニコッ

師匠「…」

竜少女「むぅ~」


黒髪乙女「…」

師匠「こんな事にまで巻き込んでしまって、本当に申し訳ないです」

黒髪乙女「いえ…そんなことっ」


師匠「お互い、頑張りましょうね」

黒髪乙女「…はいっ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

本日はここまでです、ありがとうございました。

白剣士がいたぞ

>>230 
ご指摘有難うございます…自然と書き込んでしまっていたんですね。

>>222 修正
黒髪乙女「真剣士は、幻王を倒せると…思う?」

の間違いです。修正分は、後日改めて記載致します。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ドクン…ドクン…

「…あとは、俺がやる…」


「まだ、早すぎました…!」


ドクッドクッドクッ…

「…や、やめてくれぇぇっ!」


『所詮…この程度…ハッハッハッハ!』


「あぁぁぁ…っ…!」

…ドクンッ!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日 自室 】

チュンチュン…

真剣士「…!!」

…ガバッ!!


真剣士「はぁっ…はぁっ…!ゆ、夢…?朝か…」


黒髪乙女「…うーん」モゾモゾ

真剣士「…」


黒髪乙女「むにゃ…真剣士…?起きてたの…?」

真剣士「…あ、あぁ…」ドクン…ドクン…

 
黒髪乙女「…凄い汗。どうしたの?」

真剣士「い、いや…、何か悪い夢を見てたみたいなんだ…」

黒髪乙女「大丈夫…?顔色、悪いよ…」


真剣士「…ちょっと汗流してくる」

黒髪乙女「うん…」

真剣士「…」

黒髪乙女「まだ少し早いから、私は休んでるね」

真剣士「…行ってくる」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 湯治場 】


ジャボジャボ…カポーン…

真剣士(…)

真剣士(何ともいえない、夢だった。思い出せない…)

真剣士(ただただ、寂しくて、冷たくて…一体あれは…)


ジャバジャバ…

真剣士「…何の音だ?」クルッ

 
師匠「悩んでいるようですね、真剣士」カポーン


真剣士「姉剣士さ…し、師匠!?」ザバッ!!

師匠「よっぽど温泉好きですね。私もなんですよ」フフ


真剣士「昨日の俺じゃないけど、師匠も前隠して下さいよ!」

師匠「私は別に気にしませんよ」

真剣士「そ、そんなこと言っても…」

師匠「…悪い夢でも、見ましたか?」


真剣士「な、何でそれを」ドキッ

師匠「やっぱりですか。いえ、引っ掛けただけですよ。顔色が悪かったもので」

真剣士「…」

 
師匠「悩んでいるようですね、真剣士」カポーン


真剣士「姉剣士さ…し、師匠!?」ザバッ!!

師匠「よっぽど温泉好きですね。私もなんですよ」フフ


真剣士「昨日の俺じゃないけど、師匠も前隠して下さいよ!」

師匠「私は別に気にしませんよ」

真剣士「そ、そんなこと言っても…」

師匠「…悪い夢でも、見ましたか?」


真剣士「な、何でそれを」ドキッ

師匠「やっぱりですか。いえ、引っ掛けただけですよ。顔色が悪かったもので」

真剣士「…」

 
師匠「…どんな夢でした?」

真剣士「…冷たくて、怖くて、寂しくて…。でも、何も覚えてない…そんな…」

師匠「…」

真剣士「温泉に入れば、温まると思ったけど…全然冷たいままで…」

師匠「分かりますよ。その気持ち」


真剣士「…」

師匠「哀しい事があった時、温かいお風呂に入ると、心が逆に冷たく感じてしまうんですよね」

真剣士「…」

師匠「…真剣士」

ジャボジャボ…

 
真剣士「わわっ、し、師匠…ちょっと…」

師匠「あなたのハートは、誰よりも強いはずです」ポンッ

真剣士「…」


師匠「見知らぬ土地で、どんな事にも全力で、誰よりも信じる力を持っている」

真剣士「…」

師匠「どんな夢かは分かりませんが、その不安からでしょう。ですが、必ず不安もなくなりますよ。大丈夫です」ニコッ


真剣士「…ちょっと、元気が出てきた…かな」ハハ


師匠「まだフワついている所もあるでしょうけど、そのうち慣れていきますよ」

真剣士「はい…。それと、思ったんですが…師匠とか大魔道で、その幻王は倒せないんですか?」

師匠「私や大魔道が、ですか?」

 
真剣士「少なくとも、魔界でもかなりの腕を持つんですよね」

師匠「確かに、同位に立つ相手は少ないでしょうね」

真剣士「だから…俺じゃなくても、師匠とかが倒せる…のではないかなと」


師匠「…もし倒せるなら、今のように隠れ里などにいませんよ」

真剣士「あ…」

師匠「…」

真剣士「でも、俺に師匠を倒せる姿が浮かばないんですが…」

 
師匠「…人の成長は、きっかけと、努力。魔力の面においては、その人に流れる"血"も重要です」

真剣士「…血、ですか」

 
師匠「そう。貴方に流れる…英雄の血が、この戦争を終わらせる鍵なのです」

真剣士「英雄の…血…」

 
師匠「はい。英雄の血…それは何にも変えられぬ貴方だけ持つ"力"なんですよ」

真剣士「大魔道も似たような事言ってたっけ…」

師匠「本来なら、あちら側で何も知らず…幸せに暮らしていてほしかったといつも言ってますよ」

真剣士「大魔道が…?」


師匠「ですが幻王の力はあまりにも強大で、そちら側にも影響を及ぼし兼ねなくなってしまった」

真剣士「…」

師匠「そこで、強大な魔力…それを保持する一族の"英雄"が再び必要になったんです」

真剣士「…」

 
師匠「もう戦いと魔法が忘れた世でしたが、貴方に流れる"血"は、必ず覚醒するはずです」

真剣士「…っ」


師匠「実をいえば…私も怖いんです。死ぬことは」

真剣士「…え?」


師匠「…死ぬ事は怖いし、誰かを失うのも嫌です。真剣士さんが目覚めてほしいのも、自分の欲望のせい…」

真剣士「…」

師匠「分かっています。自分が助かりたいから。きっと…良い格好で真剣士さんに話していることも」

真剣士「そ、そんなこと…!」


師匠「ですが、私は誰よりも世界が再び平和であってほしい。真剣士さんの力を信じています」

真剣士「…」

師匠「そして、貴方の幸せも願っている。矛盾していますよね…」

 
真剣士「い…いえ!!」ザバンッ!!

師匠「…」

真剣士「死にたくないのは普通だし、誰かを失うのが嫌なのも、当たり前ですっ!」

師匠「…真剣士さん」

真剣士「もし、俺を信じて安堵を得られるなら、信じてください」

師匠「ふふ、優しいんですね」


真剣士「女の人が哀しい顔は、どうも苦手なんです。何よりも耐え難いので…」ハハ

師匠「…」

ザバザバ…ギュウッ

 
真剣士「し、師匠…?」

師匠「有難うございます。貴方がそういう人で、本当に良かった…」

真剣士「恥ずかしいですって、ちょ、こ…これでも俺は男なんですから!」


師匠「ふふ、分かっていますよ」

真剣士「う、うぅ…」ブクブク…

師匠「さて、そろそろ上がりましょうか」ザバァッ…


真剣士「…」ブクブク…


師匠「…真剣士さん?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ソヨソヨソヨ…フワァッ…


真剣士(ん…んん…何だ?涼しい…)


師匠「何度も入って、湯あたりしちゃったのかもしれませんね」

黒髪乙女「…わざわざありがとうございました」


真剣士(あぁ…湯あたりしちゃったのか…)


師匠「大魔道さんには少し時間を遅らせるように言っておきますね」

黒髪乙女「迷惑かけて申し訳ないです…」

師匠「いえいえ」

 
真剣士(…)


黒髪乙女「…真剣士の様子、どうでしたか?」

師匠「大丈夫ですよ」

黒髪乙女「朝…凄い顔で…。見て不安になります。本当に大丈夫、なのか」

師匠「目覚めてもらうためにも、必ず倒して貰わないといけません」


真剣士(…俺の覚醒の話、か?)


黒髪乙女「…はい。私も、できる限りお手伝いしたいと思います」

師匠「ですが、犠牲になることはなかったんですよ…?」

黒髪乙女「いえ。真剣士のためですから…」

師匠「そうですか…覚悟があるなら、何も言いません」


真剣士(…)

 
…モゾッ

黒髪乙女「!」

師匠「!」

真剣士(あ…やべ、何か起きてるのバレたらいけない雰囲気…)


黒髪乙女「し、真剣士…起きてるの?」

真剣士「う…うーん…」モゾモゾ

黒髪乙女「…真剣士?」

真剣士(…)

黒髪乙女「…」


真剣士「む…むにゃむにゃ…」

黒髪乙女「なんだ寝言か…」

師匠「…それでは、私はこれで失礼しますね」

黒髪乙女「はい。それではまた後で」

 
トコトコ…ガラッ…バタンッ…


黒髪乙女「…」

真剣士「…」

黒髪乙女「…そうだ、お茶でも淹れといてあげよっ♪」


真剣士「…」

黒髪乙女「ふんふん~♪」

コポコポ…


真剣士「…ふわぁ…」ムクッ

黒髪乙女「!…真剣士、目覚めたの?」

 
真剣士「その変な鼻唄のせいでな」

黒髪乙女「し、失礼な!」

真剣士「って、あ、あれ…?風呂場にいたはずなんだけど…」

 
黒髪乙女「姉剣士さんが、倒れてた貴方を介抱してきてくれたの!」

真剣士「そ、そうなんだ。あとでお礼いっとかないとな」

黒髪乙女「そうだよー。あまり他人に迷惑かけないようにね!」

真剣士「お…おう…」


…カチャカチャ

黒髪乙女「はい、お茶。飲んで落ち着いてね」

真剣士「…ありがと」グビッ

 
黒髪乙女「…」

真剣士「…」

…ソヨソヨ…


黒髪乙女「窓開けてると気持ち良い風が入ってくるね…、硫黄が少し鼻を突くけど」

真剣士「…硫黄のにおいは、嫌いじゃないよ」グビグビ

黒髪乙女「真剣士は温泉大好きだもんね」


真剣士「ふぅ…ご馳走様」

黒髪乙女「早っ」

真剣士「ん…まぁな」

 
…コンコン

真剣士「誰だ…はいよーどうぞ」

ガチャッ…

大魔道「失礼します。湯あたりしたと聞いて…大丈夫でしたか?」

真剣士「大魔道か…何でもねーよ。何度も、長く湯につかりすぎただけだ」

大魔道「そうでしたか。一応、治癒魔法をしておきます」パァッ…

真剣士「…」


大魔道「問題はなさそうですけどね。本来、あまり治癒魔法は宜しくないんですけどね」

真剣士「そうなのか?」

大魔道「薬と一緒です。あまり多用すると、魔力による治癒の分解酵素が…」

真剣士「何言ってるかわからん!」

大魔道「はは…」

 
真剣士「とりあえず、俺はもう大丈夫だ」ヨイショ

大魔道「では、剣術の鍛錬をしますか?」

真剣士「あぁ。師匠に準備しておくって伝えておいてくれ」

大魔道「わかりました」


黒髪乙女「私は?」

大魔道「今日も魔法の練習をしましょう」

黒髪乙女「わかった~♪」


真剣士「…」

大魔道「…どうしました?」

 
真剣士「ん…いや、何でもないよ」

大魔道「そうですか…気分が優れない時は言って下さいね」

真剣士「わかってる」

大魔道「…では、参りましょうか」


真剣士「うんむ…」

黒髪乙女「じゃあ…修行開始!」

 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

 
――それからしばらく、隠れの里に篭りながらの修行は続いた。

本当に戦争をしているのかと思えるほどに平和な日常。

体を動かし、温泉に入って疲れを癒す。


真剣士は一日、一日の積み重ねが…その体を少しずつ、

魔界へと順応していくのをひしひしと感じてた。

そして………

明日の更新で1幕目が終了いたします。

本日はここまでです。ありがとうございました。

3おつ!

え、今夜でもう終わり?早い!毎晩のお楽しみが!

プロローグが終わりって事だろ

>>264 
>>265 の通り、プロローグまでとはいきませんが、
1幕目の終了ということで、まだ本編自体の終了はまだ少し先になります。

皆さまありがとうございます。少し遅れましたが投下開始致します。

 
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――――【 修行開始から20日目 】


…キィンッ!!!カキィンッ!!

真剣士「あぁぁっ!」

師匠「…良い感じですよ!」

真剣士「まだまだぁ!」ダッ!!


師匠「早い…くっ!」キィンッ!!

真剣士「足元が開いた…ここだ、脚蹴り!」

…ゲシッ!!!

 
師匠「きゃあっ!」ドサッ


真剣士「っしゃ…うらぁっ!」ブンッ

師匠「…まだです!」

クルッ…ヒュンッ!!


真剣士「うっそ、ダウンしたのに避けるのかよ!」

師匠「今度は、貴方の足元がお留守ですよ!」ゲシッ!!!

真剣士「うわっ!」ドシャアッ!!


師匠「相手を倒したら、すぐに首を抑え、剣を突き立てる!」スチャッ!!


真剣士「…っ!」

師匠「…」

真剣士「…ま、参りました…」

 
師匠「ふぅ~…さっきは危ないところでしたよ。よく動けましたね」

真剣士「段々と慣れてきましたよ」

師匠(それでもこの成長の早さ…やはり…)


真剣士「だけどやっぱり師匠には勝てる未来が見えないんだよなぁ」ウーン

師匠「…ふふ、そう簡単に負けては師匠の威厳もないですからね」

真剣士「まぁ体動かすのは嫌いじゃないし、剣術とか覚えてて損はないからなぁ」

師匠「そうですね。知識は幾らあってもムダにはなりません」


真剣士「さぁ…もう1度!」スチャッ

師匠「どうぞ、来てください」スチャッ

 
…タッタッタッタ

大魔道「そこまでです、お二方」

師匠「…大魔道さん?」

真剣士「大魔道?」


大魔道「困った自体が起きました。緊急招集がかけられました」

師匠「どうしたのですか?」

大魔道「わかりません。里長が戻ってきまして、召集だそうです」

師匠「分かりました。真剣士さん、あなたはここで待っていて下さい」

大魔道「あ、いえ。今回は真剣士さんにも会議に出ていただきます」

師匠「え?いや、しかし…」


大魔道「…出る必要がありそうですよ」


師匠「…わかりました。真剣士さん、会議にお願いします」

真剣士「あ…あぁ」

 
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――――【 会議室 】


里長(さとおさ)『…』

大魔道「…」

師匠「…」

戦士長『…』

守護隊長『…』


真剣士(お、重い!俺がいる場所じゃないだろこれ!!)

 
里長『…話は聞いてます。こうして顔を合わせるのは初ですな。英雄の血を引く者よ』ペコッ

真剣士「あ…は、はぁ」ペコッ

里長『自分も転々と隠れ里を回っており、顔合わせできなかった事を弁明致します』

真剣士「あ、いえ…」

里長『それと、この度は…こちら側の世界を救う為にわざわざ…御礼を申し上げる次第』

真剣士「…」


竜戦士長『…』

守護隊長『…』


大魔道「堅苦しい挨拶は抜きにしましょう。どうしたのですか?」

里長『直球に申し上げましょう。西側の巨人族の里が落とされました』

 
ザワッ…!!
 
竜戦士長『長…、それは本当ですか!?』

里長『本当だ。今朝早く、伝達部隊から連絡が入った』


大魔道「…」

師匠「大魔道さん、これは…」

大魔道「…少々、予想外な事ですね。決する時…とでもいいますか」

真剣士(決する時って、俺まだ全然修行不足が否めないんですけどーっ!)


竜戦士長『仮にも、あそこの守りは巨人族の中でも最強と呼ばれるタイタン族の先鋭部隊ですぞ!?』

守護隊長『実力は我ら竜族に劣らずのはず。よっぽどな相手だったのでしょうか』

里長『相手は…同じタイタン族だそうだ』

 
竜戦士長『同族討ちか…、おのれ…幻王めが!!』ドンッ

守護隊長『落ち着け。…里長、こちら側への被害は予測されますか?』

里長『ここまでは相当数な距離がある。今すぐどうこうする問題ではないと思うが』

竜戦士長『前の隠れ里を落とされた時も、その安寧が仇となった!今すぐ行動すべきだ!』


真剣士(だだだ、だから…どう考えても、俺は場違いだって!!!)


大魔道「姉剣士さん、どう考えますか?」

師匠「…早すぎます。私には考え付きません…」

大魔道「真剣士さんの覚醒を待つ前に、このままでは潰されかねない」

師匠「そうですね…時間もありません。本当にこれがチャンスと思うべきになってきた…ですかね」

大魔道「やはりここは、行動を起こして前に進むべきでしょうか」

師匠「荒療治というわけですね」

 
真剣士(一体何の話をしているんだよーっ!)


大魔道「姉剣士さん…もう失敗は繰り返せません。本当のことを伝えるべ…」

師匠「待って下さい!それはまだ早いと思います…!」

大魔道「…そ、そうですね。僕としたことが焦りすぎました」

師匠「…気持ちは分かりますが、落ち着きも大事です」


大魔道「では…真剣士さん」

真剣士「ん…な、何だ?」

大魔道「これから、我々はその巨人族の落とされた西側地区へ足を運びます」

真剣士「…え?え!?」


守護隊長『…大魔道殿!?』

竜戦士長『大魔道殿、それは…あまりに危険すぎます!』

 
大魔道「生きている者の可能性がある。我々は、その救出へ向うだけです」

竜戦士長『確かに、幻王の幻惑を打ち破れるのは貴方の魔法だけだ。だが…』

里長『大魔道さん。どこから攻めてくるか分からぬ今、貴方達にこの里を抜けてもらっては…』


大魔道「確かに、僕達の影響は大きい。ですが、今すぐ襲ってくるという保障もないでしょう」

里長『…』

竜戦士長『…大魔道殿、どうしても行かねばならない理由があるのか?』


大魔道「道がない。そして、時間がないのですよ」

師匠「余裕があった時とは違うんです。我々には、これ以上の犠牲は無理なんですよ」


守護隊長『我々を、見捨てるということか…!』

竜戦士長『大魔道殿…っ!』


大魔道「とにかく…僕たちは前へ進ませて貰わねばならない。邪魔するなら…」ゴォッ…

 
…ゴォォォォォッ!!!

竜戦士長『むおっ!』

守護隊長『ぬっ!』

里長『ぐっ!』

ビリビリ…

真剣士(か、体全体が震えるほどの…感覚!…これが、大魔道の魔力なのか…) 
 

師匠「大魔道さん!」

大魔道「!」…ハッ

師匠「落ち着いてください。ここで魔力を放っては、敵を呼び寄せるだけですよ!」

大魔道「も…申し訳ありません。ですが、これで僕の気持ちは感じて頂けたでしょうか」


里長『…分かりました。どうやら、行かねばならない理由があるらしい』

大魔道「…感謝します」

 
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――――【 広 場 】


黒髪乙女「…今日、出発?」

師匠「事情が変わりました。のんびりしている暇もなくなったのです」

黒髪乙女「…」


大魔道「持てる荷物、買える道具は揃えましょう」

師匠「ですね。ここから西側へはしばらく歩くことになりますし」


真剣士「ま、待ってくれよ!いきなり色々わけわかんねーよ!」

大魔道「先ほどの話の通り、西側のタイタン族の里へ向います」

真剣士「危なくないのか?俺、まだ戦える自信なんてないぞ!」

 
黒髪乙女「…」

師匠「…」


大魔道「…もう、時間がない」

真剣士「…だから、その意味もわからんし!黒髪乙女を危険な場所に連れて行くことは反対だ!」

黒髪乙女「真剣士…」


大魔道「…真剣士さん、聞いてください」

真剣士「あぁ!?」

大魔道「貴方には、まだ話しをしていない事があります」

師匠「大魔道さん!」

 
大魔道「大丈夫です、姉剣士さん」

師匠「…」

大魔道「真剣士さん…貴方自身が気づくべき事がある、とだけ伝えておきます」

真剣士「…どういうことだよ」


大魔道「…」

師匠「…」

真剣士(また…この眼…。一体何だってんだよ…!)

 
師匠「…真剣士さん。私たちが貴方の事はお守りします。信じてください」

真剣士「…師匠」

師匠「黒髪乙女さんも、貴方も。守り抜く。信じて…下さい」


大魔道「真剣士さん」

師匠「真剣士さん…」

黒髪乙女「真剣士…」

 
真剣士「…あーっ!!もう!!」ゴォッ!!!

ゴォォッ…ビリビリッ…!!!


大魔道「…!」

師匠「!」

黒髪乙女「…っ!」


真剣士「分かったよ…分かった!お前らの眼、見てたら断れないじゃねーか!」

大魔道「本当に…ありがとうございます」

真剣士「でもな、大魔道。お前の為じゃねえ、師匠のためだからな」

師匠「私…ですか?」


真剣士「言ったでしょう。俺は、女の人の哀しい顔を見るのはどうしてもダメだって…」

師匠「あ…」

真剣士「大魔道、師匠…守ってくれよ。俺よりも、コイツを」グイッ!

黒髪乙女「きゃっ…真剣士…」

 
師匠「…もちろんですよ」ニコッ

大魔道「約束します。もちろん、黒髪乙女さんだけでなく…真剣士さんもです」

真剣士「ふん…」


大魔道「それじゃ…タイタンの里へ出発します」スチャッ

黒髪乙女「うんっ」

師匠「武器の準備もよし。道具を揃えて…出発しますか」


真剣士「おう…出発だ」

 
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・・・
・・


-to be continued !-
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真剣士「英雄の…血…?」
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-Don't miss it!-

 
本日の投稿は、ここで終了となります。

また、これで1幕目が終了し、本来ならば恒例としていたスレ移動となるのですが…今回はこのまま続行致します。 
次の更新は、1~2日をあける予定です。

読んで下さってる方々、ありがとうございました。

皆さま有難うございます、第二幕、投下致します。

 
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――――【 西方の街道 】

トコトコ…

大魔道「…」

真剣士「…」

師匠「…」

黒髪乙女「…」


真剣士「大魔道」

大魔道「はい」

真剣士「もう数時間も歩いてるんだが…その、巨人族の里にはどれくらいで着くんだよ」

大魔道「早くて4日です。馬車だと2日もかからないんですけどね」

真剣士「4日…どのくらいのペースで歩いてだ?」

 
大魔道「朝から夕方まで歩いて、ですね」

真剣士「道中はどうすんだ?野宿か?」

大魔道「隠れ里は巨人族だけではないのですよ。途中途中で村はあります」

真剣士「…そうか」

大魔道「ただ、"操り人形"がいなければですが」

真剣士「操り人形?」


大魔道「幻王の幻惑に惑わされた戦士達です」

真剣士「なるほどな…強いのか?」

大魔道「魔界の戦士ですよ。魔法も使えば、戦いが当たり前の世界ですので」

真剣士「…」

 
黒髪乙女「今の真剣士で戦えるの?」

大魔道「少なくとも、その辺の敵には負けない…とは思いますよ」

師匠「そうですね、実力の伸びが凄いので」


真剣士「つってもよ、俺はまともな戦いなんかした事ないぞ?」

大魔道「だからこそ、模造刀ではなく本物の"剣"を握らせたんですよ」

真剣士「…なるほど」

大魔道「模造刀では、やはり本質が違いますからね。いざというとき動けません」

真剣士「…人、斬ることになるのか」

大魔道「人ではないです。操り人形、です」

師匠「…」


黒髪乙女「何で、操り人形なの?幻惑魔法にかかってるだけでしょ?」

大魔道「…幻王の名は伊達ではありません。僕をもってしても、その魔法を解除できるかどうか」

師匠「大魔道さん!」

 
大魔道「!」

師匠「それは…言ってはならない言葉ですよ」

大魔道「…すいません」

師匠「いえ…」


真剣士「まぁ…。俺は死にたくないし、死なないように頑張るだけだ」

大魔道「…」

真剣士「道中暇だな。何か面白い話とかないのかよ」

大魔道「…そうですね、また昔話でもいいですか?」

真剣士「いいよ」

黒髪乙女「うんっ!」


師匠「じゃあ、聞きたい話があるのですが」

大魔道「何でしょうか?」

 
師匠「歴史の話です」

大魔道「いいですよ。では、英雄剣士のお話を」

真剣士「英雄剣士…俺の祖先にあたる人ってやつか?」

大魔道「えぇ。英雄の歴史の最初はお話しましたよね」

真剣士「何だっけ、魔王を倒した最初のメンバーが初代英雄だっけか」

大魔道「そうです。貴方はその中でも最強と謳われた、英雄剣士の子孫にあたるわけです」


真剣士「…遠すぎてわからねーよ」

大魔道「長い歴史の中で、最も実力の高い人物としても名がよくあがりますよ」

真剣士「へぇ」


大魔道「初代、2代目、3代目、そこまでは歴史に大きく関ってきます」

真剣士「3代目…そこからは?」

 
大魔道「4代目以降は、表舞台にはあまり出なかった為、そこまで有名ではないんですよ」

真剣士「ふーん…」

大魔道「表舞台の英雄の歴史が再び始まるのは3代目から約700年後。人類におけるレジスタンス時代です」

真剣士「レジスタンス…」


大魔道「王政が確立し、あまりにも酷い生活を人類が送ることになるんです」

真剣士「そんな時代があったのか…」

師匠「それは有名ですね。2代目に瓜二つの剣士が現れ、レジスタンス達と共にそれを崩壊させたんですよね」

真剣士「不思議な話だな」


大魔道「その後、魔界と人間界のトップはお互いに干渉し合う事をやめました」

真剣士「何でだよ」

大魔道「問題が多すぎるからです」

真剣士「…問題?」


大魔道「一旦は共存し平和になりましたが、魔獣たちが暴れ…人間界に被害をもたらすようになったんですよ」

真剣士「…」

大魔道「前に食べた、カルキノスの鍋。あれは大蟹ですからね、ああいうのが繁殖したらどうします?」

真剣士「食うつもりが、食われるな」

大魔道「そういうことです」


真剣士「で、その後は?」

大魔道「そこからは前に言った通り、魔物のいなくなった世は戦いが廃れ、錬金術がどんどん発展しました」

真剣士「そして、魔法が忘れられた…と」

大魔道「そうです」


真剣士「何ともいえねえ話だ」

大魔道「…」

 
黒髪乙女「ねえねえ」

大魔道「はい」

黒髪乙女「さっき言ってたけど、初代英雄剣士が一番強い戦士なの?」

大魔道「…難しい話ですね」

真剣士「一番強いってわけじゃないのか?」


大魔道「どうでしょうね。話題としてよく持ち出されますけど、自分は2代目のほうが強い気がします」

真剣士「2代目…ねえ」

大魔道「青年剣士。彼は死を体験し、竜の血を手に入れ、初代のような強固な体力を持ち合わせていました」

真剣士「…竜の血?」


大魔道「死と隣り合わせの冒険を繰り返し、公式記録の人類としては初めて魔界へ訪れた方です」

真剣士「…すげえな」

大魔道「そして、竜族の王と懇意になりました」

 
真剣士「それで、竜の血を?」

大魔道「竜族の王女から血を分けて貰い、竜の力を手に入れたのです」

真剣士「へぇ~」


大魔道「…そして、彼の髪の毛は"赤く"染まりました。竜のように…ね」

真剣士「…!」

大魔道「…」


真剣士(俺もたまに赤毛が生えていることがあると思ってたけど…)


大魔道「…さて、もう少しで最初の村が見えてきますよ」

師匠「敵、いなければいいんですけどね」 

大魔道「あの村は住民も少ないですし、もしかしたら廃村になっているかもしれません」

師匠「…そうした場合は、無断になりますが宿とさせていただきましょう」

 
大魔道「ですね。一応、武器の準備はしておきますか」スッ

師匠「そのほうがいいでしょう」スチャッ
 
黒髪乙女「…」スッ


真剣士(…どうなることやら)

 
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・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・ 
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 西側の村 】


…ヒュウウ…カサカサ…


真剣士「…気配が何もないな」

大魔道「やはり廃村になっていましたか…」

師匠「私は村の奥のほうを確認してきます」


真剣士「えっ、大丈夫なんですか?」

師匠「言ったでしょう、私は傭兵ですよ」ニコッ


大魔道「彼女はこの程度以上の修羅場を抜けてきましたからね」

真剣士「そ、そっか」

 
師匠「では、また後で合流しましょう」
 
タッタッタッタッタ…


大魔道「行きましたか…さて、僕たちは宿代わりになる場所を探す事にしますか」

真剣士「おう」

黒髪乙女「…誰もいない村って怖いね」


ヒュウウウ……

 
大魔道「そこにあった生活の痕跡がそのままありますからね。まるで今も住んでいるように」

黒髪乙女「私はこういうの苦手だな…」

真剣士「お化け屋敷じゃないんだから」

黒髪乙女「で、でも何か出そうじゃん!」


大魔道「お化け、ですか。面白い事を言いますね」 

真剣士「魔界じゃお化けなんてもの、存在すらないだろ?」

大魔道「"完全に消失"した場合、死者の魂の考えはありますけど、人間界でいう洋風な考えですね」

真剣士「魂の考えはあるのか」

大魔道「魂というか、そのものですけどね」

真剣士「…ふむ?」

 
大魔道「まぁそれは置いといて。例えば…一人の人間が発狂し、やがて村人全員を殺した。そして自分は自殺した」

真剣士「?」

大魔道「それが幽霊村の異名となった…何て話、珍しくはありませんよね」

黒髪乙女「」ガタガタガタ


真剣士「まぁ、よくある話だな」

大魔道「お化けよりも、生きている人、"動くモノ"のほうがよっぽど怖いですからね」

真剣士「それは思う」

大魔道「ですから…もし、この村で住んでいた魔物たちが操り人形に殺された跡だとしたら…」

 
…ガキィィンッ!!!ドォンッ!!!

大魔道「!」

真剣士「!」

黒髪乙女「」


真剣士「…今の音は!?」

大魔道「姉剣士さんのほうです、行ってみましょう!」ダッ

真剣士「あ、待てよ!」ダッ

黒髪乙女「」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


師匠「やあっ!」ブンッ

…ズシャァッ!!!


大魔道「姉剣士さん!」スタッ

真剣士「師匠!」

黒髪乙女「あ、姉剣士さんっ!」


師匠「皆さん…やはり、この村は既に落とされた村でした」チャキン

大魔道「…レイス、ですか」


師匠「レイス、スペクターの部類です。幸い数は多くありませんでしたから」

 
黒髪乙女「れ、レイス?」

大魔道「先ほど言った通り、殺された魔物は一度"レイス"や"スペクター"となるんです」

黒髪乙女「な、なんでしょうかそれ…」

大魔道「そちら側で言う、"幽霊"や"お化け"ですよ」ニッコリ

黒髪乙女「」


師匠「一応見える限りの対処はしましたし、あとは大丈夫でしょう」

真剣士「すげー…幽霊って斬れるのかよ」

大魔道「本当は、僧侶なんかが光魔法で気持ちよく成仏させるほうがいいのでしょうが…」

師匠「操り人形に殺された者たちはレイスになっても幻惑魔法にかけられたまま…そんな余裕はありません…」


真剣士「し…死後もか…」

大魔道「意識がなくとも、幻惑で動き続ける。死者の冒涜ですね…本当に」

真剣士「…」

 
大魔道「…さて、落ち着いたようですし宿を探しますか」

師匠「家を借りましょう。火も使いたいですし、出来るだけ村の中央にしますか」

大魔道「ですね」


黒髪乙女「何でですか?」

師匠「この村を落とした連中が近くにいないとは限りませんし、気配はないですが一応です」

黒髪乙女「なるほど…」


大魔道「それじゃ、行きましょうか」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 付近の一軒家 】


パチパチ…ジュウジュウ…

黒髪乙女「~♪」

師匠「そうです、そうやって周りからゆっくりと焼き色を付けてください」

黒髪乙女「はいっ」

師匠「うまいですよ~」

黒髪乙女「♪」


真剣士「女性陣はお料理か」

大魔道「食料もたっぷり買ってきましたからね。食べ物に不自由はしませんよ」

真剣士「万が一なくなったら?」

大魔道「その時は道中でも、狩りをすれば新鮮なものが手に入りますし」

真剣士「…サバイバルだな」

  
大魔道「ですね。そういえば…サバイバルをした歴史の中でも有名な方がいましたねえ」

真剣士「ほう?」

大魔道「村を救い、死にいく島から生還し、天なる塔を昇り、軍のために忠誠を尽くした騎士がいましたよ」

真剣士「騎士か…さぞかし立派な人だったんだろうな」

大魔道「どうでしょうね、少しドジな女性と一緒だったっていう話も聞きましたが」

真剣士「…ははっ」


大魔道「ふむ…少し話し込むうちに、外も暗くなってきましたね」

真剣士「日暮れ、早いな」

大魔道「…光魔法っ」ポウッ

…パァァッ


真剣士「うおっ…明るっ!」

大魔道「光の精霊を使った明かりです。呼び出しだけの魔力で済むので楽なんですよ」

 
真剣士「便利なもんだ」

大魔道「ですね」

真剣士「…思ったんだが、魔界ってどういう場所なんだ?」

大魔道「?」

真剣士「人間界の太陽や月の存在はわかるが、こっちも一緒だし…」

大魔道「あぁ、なぜ同じように日が回っているか、ですね」

真剣士「そうそう」


大魔道「どちらも"次元が異なる"場所ですからね」

真剣士「次元?」

大魔道「どこか、違う星、そこには自分と同じ生き物が住んでいる…そういう話を聞いたことがありますよね」

真剣士「まぁ」

  
大魔道「その論と同じで、同じ星ですが"違う世界"…難しいですかね」

真剣士「もっと簡単に」

大魔道「…えーと」キョロキョロ

スタッ…トコトコ…


大魔道「この壁、ありますよね。こちら側が人間界、向こう側が魔界です」

真剣士「ふむ」

大魔道「で、星はこの家全体になります。こういえばわかりますか?」

真剣士「あ~…うん、なんとなく」


大魔道「そして、この壁を隔てるドア。これが魔界と人間界の出入り口になりますね」

 
真剣士「そのドアが開きっぱなしだったのが昔だってことか?」

大魔道「そうです。それを閉めて鍵をかけた事で、お互い独自の技術発展がされたんですね」

真剣士「…分かりやすいな」

大魔道「だが、幻王はこの"壁"を全て壊すつもり…そういうことなのです」


真剣士(ん…?ってことは、家全体を星とするなら…人間界、魔界…他の部屋は…?)


カチャカチャ…

黒髪乙女「ほらほら、何を難しい話をしてるのっ」

真剣士「お、ご飯できたのか?」

黒髪乙女「うん。姉剣士さんに教えてもらっただけだけど、私が作ったんだからね!」

 
ジュウウ…

真剣士「へいへい…うおっ、うまそ!」

黒髪乙女「ハイートのステーキ…だったかな?」

師匠「そうです。クセがなくて美味しいですよ」

真剣士「ハイート?よくわからんが、うまいんだろうな…」ジュルリ


大魔道「それじゃ、熱いうちに頂きましょうか」

真剣士「うむ」

黒髪乙女「それじゃ…」


全員「頂きます」ペコッ

 
カチャッ…モグモグ…

真剣士「う、旨いな…」

黒髪乙女「どっちかというと牛肉っぽいね」ムグムグ

真剣士「脂身もちょうど良くて、食べやすい」


師匠「相変わらずの美味しさです」

大魔道「ですね」


真剣士「食べたらどうするんだ?」

大魔道「村の探索もする必要もないですし、今日は寝ましょう」

真剣士「早くないか?」

 
大魔道「体力は回復できるときに回復。これが戦いの鉄則です」

真剣士「…そうか」

大魔道「明日は早くから出発しますので、宜しくお願いします」


黒髪乙女「あ…私の枕忘れてきちゃった…」

師匠「ご心配なく、持ってきましたよ」スッ

黒髪乙女「本当ですかっ!助かります!」


真剣士「…」モグモグ


黒髪乙女「…何よ真剣士、その目は」

真剣士「え?」

 
黒髪乙女「未だに枕離れが出来てないな~、子供だな~、っていう、目ぇー!」

真剣士「…バレた?」

黒髪乙女「仕方ないでしょ、私みたいな人は沢山いるんだからっ!」

真剣士「はは、分かってるよ」モグモグ

黒髪乙女「む~…」


大魔道「はは」

師匠「快眠する条件、体調を整えられる条件は個人によって違いますからね。気にせずに」

黒髪乙女「で、ですよねっ!」


真剣士「…いいから落ち着いて食べとけ!」

 
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本日はここまでです。ありがとうございました。

更新が遅れました。
皆さまありがとうございます、投下開始致します。

 
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ホウホウ…チチチ…


真剣士「…」ムクッ

…キョロキョロ


大魔道「…」クー…クー…

師匠「…」スヤスヤ

黒髪乙女「…」スゥスゥ


真剣士「…トイレ」ボソッ

モゾモゾ…ガチャッ…


大魔道「…」パチッ

 
ガチャッ…

ザッザッザ…
 
真剣士「外の離れにあるのか…、靴履くのも面倒だし…夜は少し冷えるな」ブルッ


ホー…ホー…

ザッザッザッザッザ……

真剣士「…」


…ヒュウッ

真剣士「…ん?」

ヒュウウッ…フヨッ…


???『…』フヨフヨ

  
真剣士「な…何だぁ?」

???『…』フヨフヨ

真剣士「布…?浮いてるのか…?暗くて見えねえな、よいしょっと」


ザッザッザ…ガシッ!!!

大魔道「そっちへ行ってはだめです」

真剣士「うおっ!?」ビクッ

大魔道「しー…静かに」


真剣士「な…何だ、大魔道かよ…驚かせやがって…」

大魔道「これは失礼をしました。物音がして、目覚めてしまったので」

真剣士「ああそう…」

大魔道「あれに近づいてはなりません」

真剣士「…ありゃなんだ?」

 
大魔道「あれが、レイスです」

真剣士「…あれが?」

レイス『…』フヨフヨ


大魔道「はい」

真剣士「…ただ浮いてるように見えるけど」

大魔道「…」

真剣士「人畜無害みたいな気がするんだが」

大魔道「こちらに気づいていませんからね。気づけば襲われますよ」

真剣士「…あれは、幽霊なのか?」


大魔道「そちらでいえば、それに近いものです」

真剣士「…」

大魔道「…まだ残っていたのが、夜に現れたのでしょう」

  
真剣士「どうするんだ?」

大魔道「…」スッ

真剣士「こりゃ…俺の剣じゃないか」


大魔道「恐らく、この家に住んでいた住人です。貴方がこの世と決別させるんです」

真剣士「…何?」

大魔道「…」

真剣士「え、いや…あれ、生きてる…だろ?」

大魔道「夕方のレイス同様、操り人形に殺められた者は幻惑に落とされ、意識がありません」

真剣士「…」

大魔道「一生、あのまま死に人形とするなら…解放をするのが生きる者の努めです」

 
真剣士「だ…だけどよ…」

大魔道「大丈夫です。彼らは完全に無になることはないですから」

真剣士「どういう…ことだ?」


大魔道「先ほどの星の話。覚えてますか」

真剣士「魔界と人間界、家が星ってやつか」

大魔道「そうです。実は、もう1つ…死後に訪れるもう1つの世界があるのです」

真剣士「…何」


大魔道「冥界、です」

真剣士「…冥界」

 
大魔道「人間界、魔界どちらも最後に行くのは冥界。いわゆる死後の世界ですね」

真剣士「驚いた…そんなのもあるのかよ」

大魔道「…えぇ。解放させてあげましょう…この辛い世界から」

真剣士「わ、わかった…。切れば…いいのか?」

大魔道「…」コクン


真剣士「…」スチャッ


大魔道「…」

真剣士「う…うおおおっ!」ダッ


レイス『!』ビクッ

  
大魔道「貴方の魂が、浄化されんことを―…」


真剣士「…うらあっ!!」ブンッ

…ズバァッ!!…

レイス『…』


ボゥンッ……


真剣士「…消えた」

大魔道「…」

真剣士「随分、あっさり…だな。これでいいのか?」

大魔道「えぇ。見事な一撃でした」

 
真剣士「…わかった」

大魔道「…」

真剣士「…っと、トイレに行くんだった」ダッ

大魔道「行ってらっしゃいませ」

タッタッタッタ…


スッ…

師匠「…大魔道さん」

大魔道「姉剣士さん、見ていましたか」

師匠「はい。見事なまでの魔力の練り、でしたね」

  
大魔道「無属性の彼らを斬るには魔力を相手に合わせて練らねばならない…上手いものです」

師匠「自然と練りを行なったとしたら、とんでもない成長速度ですね…」

大魔道「…」

師匠「明日からが俄然、楽しみになってきましたよ」フフ

大魔道「ははっ」


師匠「…それにしても、冥界ですか。さすがの私もそこまでは知りませんでした」

大魔道「そうですか?意外と知ってそうな気はしましたけど」

師匠「さすがにそこまで知識はありませんよ。死後の世界…とは、一度いく前に見てみたいものです」

 
大魔道「ふとしたことで、僕らの目に冥界は見えるのですよ?」

師匠「…そうなのですか?」

大魔道「例えば…水。水面に映った景色が、本来と違うもの…そんな一瞬の感覚を感じたことがあるはずです」

師匠「…ありますね」

大魔道「そう。鏡や、影、ガラス。その違和感を感じた時、そこは冥界の姿を映していた、ということです」

師匠「なんと…」


大魔道「生き物は死を恐怖する」

師匠「…」

大魔道「その一瞬でも"ん?"と思うのは、映し出したものが死後の世界だと感覚的に気づき、恐怖しているのです」

師匠「確かに何が映ったか、一瞬の恐怖は感じますね…」

大魔道「…はは、それでは僕たちも寝ましょうか」

師匠「ですね。明日も早いですし」


大魔道「…おやすみなさい」

師匠「おやすみなさい…」

 
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――――【 次の日・村の外 】


黒髪乙女「ふわぁ…」

真剣士「おはよ」

大魔道「よく眠れましたか?」

真剣士「少し早めに寝たせいで、何度かおきちまったけどな」

大魔道「寝れたならいいのです」


師匠「では、出発しますか?」

大魔道「そうですね」

 
ザッザッザッザッザ…

真剣士「…」

黒髪乙女「今日は次はどこの地点まで歩くの?」

大魔道「出来れば早めに里に着きたいのですが、日暮れも早いですしねえ」


真剣士「とにかく、体調を万全にして行ける範囲で任せるよ」

大魔道「それは勿論です」

真剣士「んむ」


師匠「…待ってください」ピクッ

真剣士「師匠?」

 
師匠「…いますね、2体…いえ、3体でしょうか。向こう側…」

大魔道「3体ですね」

師匠「どうします?あちらは気づいてなさそうですが」


真剣士「…何がいるんです?」

師匠「"操り人形"です」

真剣士「…!」


黒髪乙女「敵、ってことですね」

師匠「そうなりますね…一応、武器を構えてください」スチャッ

真剣士「わ、わかりました」

 
ザッ…

大魔道「…いましたね、あそこです」

師匠「剣士、兵士、魔道…、村を襲った面子でしょうか」

大魔道「どうですかね…」

師匠「厄介な場所にいますね、戦うしかなさそうですが」


真剣士「ま、待ってくれ…、操り人形って…ただの"人"じゃないか…」

師匠「人型、ということです」

真剣士「あれを…斬る…のか…?」

師匠「…」

大魔道「そうなります」

真剣士「人殺しに…なるんじゃないか…」

 
師匠「人ではないです…最早、幻王の手先…殺人鬼ですよ…」

真剣士「…っ」ブルッ

師匠「真剣士さん…?」


真剣士「違う…人だ。ひ、人ですよ…あれは」パッ

…ガランガランッ!!


師匠「ぶ、武器を落として…音が!」


操り剣士『!』バッ

操り兵士『!』バッ

操り魔道『!』バッ


大魔道「いけない、気づかれました!」

 
師匠「こっち側に…走ってください!」


操り魔道『…ッ!』パァッ!

タッタッタッタッタ…ドォンッ!!!パラパラ…


黒髪乙女「きゃああっ~!」

師匠「魔法は弾き返します、距離をおきましょう!」

真剣士「…くっ」


操り剣士『…』

操り兵士『…』

操り魔道『…』

タタタタタタッ…

 
大魔道「…予想外でしたね…こんなに早く現れるとは」

師匠「相手も速いですね…このペースで走っては次の休憩地点まで持ちません、応戦しましょう!」

大魔道「…あまり望ましくありませんが、仕方ないですね」


真剣士「く、黒髪乙女…俺の後ろに」

黒髪乙女「う…うんっ…!」


師匠「真剣士さん、私の横で前衛の敵から叩きます!」

真剣士「叩くって…人…だぞ…」


大魔道「攻撃増大魔法!」パァッ!!

師匠「ありがとうございます!」

真剣士「…体が軽くなった?」

 
大魔道「真剣士さんにはこれも必要そうですね…硬化魔法!」パァッ

真剣士「…何だそりゃ」ビキビキッ

大魔道「ある程度の攻撃を受けても弾くことが出来ます。あまり過信はしないようにしてください」

真剣士「…」


師匠「では真剣士さん、構えてください!」スチャッ

真剣士「は、はい…」スチャッ

ダダダダダダッ!!!


操り剣士『…』ブンッ!!!

真剣士「っとぉ…師匠の剣に比べたら遅い…が」ヒョイッ

操り剣士『…』ヨロヨロ

真剣士「隙もある…だけど…」グッ

 
師匠「…真剣士さん?」

真剣士(こいつらは操り人形だけど…まるで人だろうが…!そして、生きてるんだよな…)

師匠「…真剣士さん!」

真剣士(考えたら本当に斬るのは…これが初めて…。い、痛いんだろうな…俺はこいつを…斬るのか…?)


操り剣士『…』ブンッ!!!

師匠「真剣士さんっっ!!」


真剣士「!」ハッ

…ザシュッ!!!

 
黒髪乙女「し、真剣士ぃ!」

真剣士「いっつ…」ポタポタ…

大魔道「硬化魔法があって良かったですね…ヒール!」パァッ

真剣士「…」


師匠「ボサっとしてたら…殺されますよ!」ブンッ

ザシュッ!!!

操り剣士『ぐ…っ』ヨロヨロ


真剣士「だ、だけど…、こいつらまだ生きて…、人で…」

師匠「…っ」

真剣士「お、俺には…やっぱり…」

 
大魔道「真剣士さん、あなたが諦めては…黒髪乙女さんを見殺しにする、ということですね」

真剣士「…何?」ドクン

大魔道「確かに守れる部分は僕たちが守ります。ですが、最期は貴方の力がモノをいう」

真剣士「…」ドクン…ドクン…

大魔道「そうなっては、結果、黒髪乙女さんを見殺しにしてしまう…そういうことですよ」

真剣士「…」ドクッドクッドクッ

大魔道「姉剣士さんが貴方に見せた未来…、それは、黒髪乙女さんにも訪れることになりますよ…?」


真剣士「ぐ…」ブルブル

黒髪乙女「真剣士…」


真剣士「…あ、あぁぁぁあっ!」スチャッ

ダダダダダダッ!!

黒髪乙女「真剣士!?」

師匠「真剣士さん!?」

大魔道「…」

 
真剣士「うらあぁぁぁっ!」

ブンッ…ズシャアッ!!!!…ドサッ

操り兵士『…』


真剣士「…はぁ…はぁ」

黒髪乙女「…」


真剣士「師匠…」ギロッ

師匠「…っ!」

真剣士「俺は黒髪乙女を守る。戦って守れるなら…守る。戦いましょう…!」

師匠「…ですね。いきますよ!」

ダダダダダッ!!!

 
黒髪乙女「大魔道…さん」

大魔道「はい?」

黒髪乙女「これで、良かったんですかね」

大魔道「…貴方を守ろうと思える力が、彼の力にもなる。それは確かです」

黒髪乙女「…でも、苦しめてますよね…」

大魔道「貴方が彼を立ち上げるきっかけになる。そして、貴方が彼の笑顔の種になる…大丈夫です」

黒髪乙女「うん…」


キィンッ!!!ズバァッ…

真剣士「らああぁっ!」

師匠「ああぁっ!」


大魔道「それより…、今は彼らを援護しますよ!」

黒髪乙女「うん、任せて!」

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆さま有難うございます。投下開始致します。

 
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――――【そして…】


ハァ…ハァ…

真剣士「…」


大魔道「…ご苦労様でした」

真剣士「うっせ…」


師匠「…初めての相手が、こんな形で申し訳ないとは思います…」

真剣士「いえ…昨日の夜すでに体験はしました。ですが、人型は…」

師匠「…」

黒髪乙女「真剣士…大丈夫…?」


真剣士「大丈夫なんかじゃねえよ…。気持ち悪くて吐きそうだ…」

 
黒髪乙女「…聖なる加護よ」ボソッ

真剣士「あ?」

パァッ…


真剣士「…?」

黒髪乙女「教えてもらったヒーリング魔法…。私にはこれくらいしか…出来ないから」

真剣士「…」パァァッ…

黒髪乙女「…」

真剣士「…ありがと。少し、気分が落ち着いた気がするよ」


師匠「真剣士、こんな戦いが道中は続く事になります。…大丈夫ですか?」

真剣士「…わかりません」

師匠「…」

真剣士「けど、やらなければならないこと…ですよね」

 
大魔道「…そうですね」

真剣士「一つ思ったんだが、大魔道」

大魔道「はい」


真剣士「黒髪乙女をさ…これ以上の戦いになるなら…俺たちの世界に戻せないのか?」

黒髪乙女「え?」
 
真剣士「改めて思ったんだが、ここは危険過ぎるし…、キズつくお前を見たくない…」

黒髪乙女「で、でも…」 


大魔道「…戻す事はできます。ですが、戻せない理由があるんですよ」

真剣士「どういうことだよ」

 
大魔道「第一、ここでもう1度次元を割っては魔力の動きを感知される可能性が高いんです」

真剣士「敵が集まるってか?」

大魔道「はい」

真剣士「どのくらいだよ」

大魔道「下手すれば、一個小隊くらいですかね」

真剣士「…対処できないのか」

大魔道「出来なくはないでしょうが、危険をさらすことになります」


真剣士「…だけど、俺らが危険になるくらいで、黒髪乙女を逃がすなら…」


大魔道「それはつまり"姉剣士さん"も危険になるということですが」

真剣士「あ…」

 
師匠「…」

大魔道「…いいのですね?」

真剣士「そ、そうか…、そうだったな…」


師匠「私は何も言えません。傭兵である前に、女性という弱さは…どうしようもできませんから…」

真剣士「あ、そ、そういう事じゃないんですよ!!いや…そうだけど…」

師匠「…」

真剣士「で、でも師匠はやっぱり強くて…け、けど心配になるっていうか…」

師匠「相変わらず優しい人ですね、あなたは」ポンッ


黒髪乙女「真剣士らしいなあ、もう。私は大丈夫だから、先に進もう!」

真剣士「だ、だけどよ…」

黒髪乙女「守ってくれるっていったのは、真剣士もでしょ!」

 
真剣士「う…」

黒髪乙女「今更他の人にあたるのはダメ!着いてきたのも、真剣士の決断でしょ!」

真剣士「うっ…」

黒髪乙女「竜少女ちゃんとか、姉剣士さんとか、みんなの笑顔を守りたいって言ったでしょ!」

真剣士「ぐぬっ…」

黒髪乙女「だけど、私に出来ることは小さな魔法だけ。それはごめんね…」

真剣士「…いいよ、そうだったな。俺が戦うのは俺が決めたことだった」


大魔道「…真剣士さん、今度こそ…決断、できましたか?」

真剣士「わかった、わかったよ。わかった…」

大魔道「…」

真剣士「…出発しよう」

 
師匠「行きますか」

大魔道「改めて、ここが出発地点…ですね」

師匠「ですね」

黒髪乙女「出発進行~!」


真剣士「…」フゥ

 
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・・・・
・・

 
それから一行は道中の戦いを続けながら、巨人族への里へと進んだ。

真剣士のその実力は、実践を通し、目に見えて成長していった。


――そして3日目の夜。

ついに巨人族への里の領地へと足を踏み入れる…

 
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―――【 巨人族の里 】


ゴォォォ…パチパチ…


真剣士「…な、何だこりゃ」

黒髪乙女「燃えてる…」

大魔道「まだ一部で戦いは続いているようですね」クンッ

師匠「感じますね」


真剣士「まだ戦ってるのか?」

大魔道「わずかばかり、魔力の動きが感じる。巨人族のものですね」

 
師匠「どうしますか?」

大魔道「…今までの相手とはレベルが違う。極力、戦いは避けましょう」

師匠「そうですね」

真剣士「巨人族ってのは、そんなに強いのか?」


師匠「厳密にいえば、最上位クラス…ですね」

真剣士「…?」

師匠「魔界では、4つの最上位種族があります」

真剣士「四天王ってことか…?」


師匠「竜族、神族、魔族、巨人族。それをそう呼ぶのです」

真剣士「魔族って、ここに住むやつら全員じゃないのか?」

師匠「詳細としては、私たちのような"亜人"、"魔の血を引く特異質な魔物"のことです」

 
真剣士「…師匠たち、そんな強さだったのか…」

師匠「私はまだ下位のほうですけどね。大魔道さんなんかは、相当ですよ」

大魔道「いえいえ」


黒髪乙女「じゃあ、…神様の名前をもってる、神族というのはかなり強いの?」

師匠「それ1つの固体で、1つの種族となりうる魔界で最も強い種族です」

黒髪乙女「何を言ってるかちょっと…」


師匠「そちらで言う、ガイアやゼウス、アプロディーテーなどですね」

真剣士「た、ただの神様じゃねえか!」

師匠「元々はこちら側との交流で信仰が出来たものですしね。実在する種族ですよ」

真剣士「…想像もつかねえ」

 
大魔道「その神族の1人。それが…幻王なんです」

真剣士「…は?」

大魔道「その者の本当の名は…時間の神"クロノス"」

 
-Eye catch !-
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
真剣士「英雄の…血…?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
-proceed to the next !-

本日は非常に短いですが、ここまでです。ありがとうございました。

皆さま有難うございます。投下、開始致します。

 
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真剣士「クロノス…?」

大魔道「本来は巨人族なのですが、巨人族の異質の血を持った者です」

真剣士「巨人族に神族の強さを持ったハイブリットってことか?」

大魔道「そうなります。だからこそ、強力な魔力を持つ者となってしまった」


真剣士「…」

大魔道「自らの実力に溺れ、この世界の真理に気づき、もう1つの世界を知ってしまった」

真剣士「…」

大魔道「そして、その扉の全てを壊す方法でさえ…」

 
真剣士「面倒くせーやつだ…」

大魔道「確かに強力な強さを持つ相手ですが、太刀打ち出来る光があった」

師匠「それが…」


真剣士「俺の血…か」

大魔道「それとこの僕の魔法…、そして…」チラッ

黒髪乙女「…」

真剣士「…ん?」


大魔道「いえ。そういうことです…必ず、勝てます」

真剣士「…あぁ。信じる…よ」

大魔道「ありがとうございます」

 
ゴゴゴゴゴ…!!

真剣士「な、なんだ!?」

師匠「魔力による振動…」

大魔道「中に入るのはやはり危険ですね…。周囲から様子を伺いましょう」

真剣士「わかった」

黒髪乙女「うん!」


大魔道「急ぎましょう、コチラです」

タッタッタッタッタ…

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 付近の丘 】


大魔道「…」

真剣士「なるほどな、ここからなら里を見渡せるな」


大魔道「だいぶ燃えてますね…」

師匠「何か確認できますか?」

大魔道「見えずらいですが、中央部に高見やぐらがありますよね」

師匠「ありますね」


大魔道「そこの右側…あそこの地下への入り口、あそこが恐らく本部でしょう.。残った面子がいそうですね」

黒髪乙女「うっわ…周りに巨人さんいっぱいいるよ…」

大魔道「少し数が多い…救出は無理そうですね…」

 
真剣士「ところで、ココまで来たのは俺の成長のほかに何か理由があるのか?」

大魔道「本当なら、ここにいる巨人族は仲間となりうるはずでした」

師匠「…」


真剣士「でもよ、あれじゃあ…」

大魔道「…ここまではやや順調気味だったのですが」

真剣士「…」

大魔道「…どうしたものか」


黒髪乙女「…あ、ねぇ!あれ…何か、外から来るよ!」

真剣士「何だ?よく見えねえぞ?」


ドドドドド…

大魔道「あ、あれは…」

 
師匠「巨人族…の戦士たちが集まってる…?生き延びた方々でしょうか」

大魔道「なるほど、そういうことでしたか!」バッ

真剣士「な、なんだよ…急にびっくりするじゃねえか」ビクッ


大魔道「あの先頭にいるのはティターン族の…クレイオスさんですよ」

真剣士「く、クレイオス?」

大魔道「恐らく、里が落とされた時に外側に逃げ、一度拠点を張ったのでしょう」

真剣士「そ、それで?」


大魔道「残された者のために、ああして救出へと向っているのです!」

真剣士「なるほどな」

大魔道「こうしてはいられない、あのクレイオスさんの部隊と合流します」ダッ

真剣士「何だって?お、おい!待てって!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 クレイオス部隊 】


クレイオス『皆の者!我が同胞を救う為、その命に全てを賭けよ!!」

巨人達『おぉぉー!!!』


ザワザワ…

クレイオス『む…どうした?』

巨人戦士『何か、我が軍に用事がある者が来たようです』

クレイオス『来客だと?…こんな時に、今は無理だと蹴り飛ばせ!』

巨人戦士『で、ですが…』


クレイオス『何だ?』

ドゴォンッ!!!

巨人戦士『むおっ!』

 
クレイオス『!』

モクモク…


大魔道「やれやれ…、相変わらず手荒い歓迎ですね」パサッ

クレイオス『だ、大魔道!?』

大魔道「実力主義とは分かりますけど、用事のある時くらいはケンカ腰じゃなく素直に通してくださいな」ケホッ

クレイオス『…客というのはお主だったか』

 
大魔道「はい。久しぶりですね、クレイオスさん」

クレイオス『本来なら、酒を飲み交わしたい所だが…今はそうも言っていられん』

大魔道「仲間の救出、ですよね」

クレイオス『…知っていたのか』


真剣士「げほげほ…大爆発させやがって…大魔道、お前の知り合いなのか?」

師匠「…」

黒髪乙女「巨人さんかぁ…大きい~…」


クレイオス『む…その後ろの者たちは?』

大魔道「"英雄の血"…ですよ」

クレイオス『!』

大魔道「とりあえず、落ち着きましょう。貴方の仲間たちは、必ず助けます」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

クレイオス『…お主が英雄の血か。俺はクレイオス、気高きティターン兄弟の1人だ。宜しくな』

大魔道「巨人族の中でも神族に匹敵する血を持つ一族の戦士ですよ」


真剣士「あ、始めまして…」ペコッ

師匠「こんにちわです」

黒髪乙女「こんにちわですっ!」


クレイオス『しかしこんな子供がな…、世も末というものか』

大魔道「大丈夫です。幻王を討つ実力は充分に秘めていますから」

クレイオス『ふむ…』

 
大魔道「それより、相談があります」

クレイオス『何だ?』

大魔道「今回の救出作戦、僕に任せていただきたい」

クレオイス『…大魔道に任せられるなら、安心にこしたことはないが』


真剣士(そういや竜族もだったが、大魔道って一体どこまで信頼がある人物なんだよ…)


大魔道「はい。ただ、条件があります」

クレイオス『なんだ?』

大魔道「救出が終わったら、幻王への道を切り開いてほしいのです」

クレイオス『…何だと?』


大魔道「いくら僕らでも、実力のある幻王の直属軍を破るのは難しい。兵力を、貸してほしいのです」

クレイオス『…』

 
大魔道「…」

真剣士(要は、柱になれってことか…?そんな条件飲むわけが…)


クレイオス『わかった、飲もう』

真剣士「って…えぇ!?」ガクッ

クレイオス『…どうした?』

真剣士「ちょっ…それって、ていの良い犠牲、つまり柱ってことですよ!?」

クレイオス『まぁ、考えようではそうだな』

真剣士「考えなくても、わかりますよ!そんな条件、飲むなんて…」


クレイオス『…英雄の血よ、お主は自らを柱としての自覚はないのか?』

真剣士「え?」

クレイオス『まぁ…死の覚悟もなしに、よもやこの戦いの場にいるのではないか、ということだ』

真剣士「…っ」

 
クレイオス『誰かがやらねば、この戦いは終わらぬ。誰かが犠牲にならねばならぬのだ』

真剣士「だ、だけど…」

クレイオス『なら、我が戦士たちではなく、血路を開くのに…その辺の生存する村人にでも頼むのか?』

真剣士「…」

クレイオス『俺たちには柱になる覚悟がある。よもや、英雄の血と戦えるなら…本望だ』


真剣士「…だけど、命は、そう簡単に決断していいものじゃないでしょう」

クレイオス『分かっている。捨てるつもりはない。大魔道がいるから決断したのだ』

真剣士「どういうことですか…」


大魔道「僕が、何のためにいると思っているのですか」ニコッ

真剣士「…大魔道?」

 
クレイオス『この魔界において、戦闘事の実力において大魔道に勝るものはそういないだろう』

真剣士「そう、なのか…亜人や上位種にあたるっては言ってたが…」


クレイオス『大魔道に限らず、そこの剣士」

師匠「…」

クレイオス『高額な傭兵で名高いが、その実力は天下一品と聞く。あの"姉剣士"であろう』

真剣士「…有名だとは思っていたが、そこまでだったのか…」


クレイオス『まぁ…何よりの決め手は、お主だがな』

真剣士「お、俺?」


クレイオス『"英雄の血"。この戦争を終わらせる血…、お主を信じるからこそ、だぞ』

真剣士「…」

クレイオス『…もう、いいか?時間がないのだ。大魔道と作戦を練らねばならぬのでな』

真剣士「あ…はい…」

 
クレイオス『それで、大魔道、作戦だが…』

大魔道「救出は任せてください。あの土地と、この軍の陣形があれば余裕で崩せます」

クレイオス『わかった。詳細な支持は俺から伝えよう』

大魔道「では、作戦を伝えます…」

 
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・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・ 
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
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・・

 
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――――【 巨人族のベース 】


ゴォォ…パチパチ…


クレイオス『見事なまでの作戦だった。感謝する』ペコッ

大魔道「いえ、あなた方の実力があったからこそですよ」


黒髪乙女「し、真剣士…凄かったよね…、巨人さんたちが歩く度にドシンドシンって!」

真剣士「あぁ…めっちゃ凄かった。まさに戦いって感じだったな」

黒髪乙女「真剣士がケガなくてよかったよ…」ホッ

真剣士「大魔道の保護魔法だとか、師匠に助けられたけどな」


師匠「いえいえ、充分な実力ですよ」

真剣士「まだまだですよ。師匠の剣捌きにはついていけませんし」

 
師匠「…ほぉ~」ピクッ

真剣士「…師匠?」

師匠「それは…わかりまへんよ…?」ヒック


黒髪乙女「あれ、姉剣士さんの様子が…」

大魔道「クレオイスさん、もしかしてお酒飲ませました?」

クレイオス『…あ、ダメだったのか?」

大魔道「…、お酒弱いんですよねあの人。まぁ面白いもの見れそうですが」


真剣士「ちょ、しし、師匠、酔ってますよね!」

師匠「そんなことはありまへんっ!」ビシッ

真剣士「キャラが違う~っ!」

師匠「いいでしょう…、改めて実力を見るとしまふよ!」スチャッ…フラフラ

 
真剣士「え、えぇっ!」

師匠「さぁ…かかってきなさいっ!」クイクイ

真剣士「い、いや師匠酔っ払ってるし…」

師匠「酔ってないれすってば!そっちから来ないなら…私からっ!」ブンッ

真剣士「へっ?」


…キィンッ!!!

真剣士「うおっ、重っ…!」グググッ

師匠「んふふ…やりますね真剣士…」ググッ

真剣士「め、眼が本気だよ!大魔道、何とかしてくれ!」


大魔道「良い機会じゃないですか。最初の頃と比べて、どのくらい成長したか」

黒髪乙女「頑張れ~!」

真剣士「く、黒髪乙女まで!俺のこと心配しろよ!」

黒髪乙女「でも姉剣士さんだし、手抜いてくれると思うし…大丈夫だよ多分!」

 
真剣士「くっそ、こんにゃろ…お前ら…!」

師匠「スキありぃ!」ブンッ

キィンッ!!!

真剣士「ぐっ!」


ザワザワ…ガヤガヤ…

巨人戦士『なんだなんだ?』

巨人戦士『面白そうな見世物だな』

クレイオス『英雄の血と、覇の剣士の戦いだぞ!いい肴だ!酒をもってこぉい!』


真剣士「く、クレオイスさんまで!」

 
師匠「ほらほら!足元が…お留守れすよっ!」ヒュッ

真剣士「…うおっ!」ドサッ


大魔道「いい足蹴りですね、さすがです」

黒髪乙女「真剣士、負けるなー!」


師匠「…すかさず、腹に剣を突き立て―…」ビュッ

真剣士「もうそのパターンはやられない!うらあっ!」クルンッ!!

師匠「!」


大魔道「いい体の捻りです、姉剣士さんの得意な固めから逃げましたね」

クレイオス『ほぉ~、さすがだな英雄の血』

大魔道「まだまだ、面白いものは見れますよ」

 
師匠「真剣士…やりますね…」フラフラ

真剣士(酒に酔っててもキレは変わってない…さすがだ)

師匠「れすが、逃げてばかりでは勝てませんよぉ!」


真剣士「何を、小火炎魔法っ!」ボワッ

…ドォンッ!!!

師匠「!」

真剣士「へへっ、みんなのを見てるうちに覚えたんだ、びっくりしたでしょう!」

師匠「ん~…れすが、その程度の魔法ではキズ一つ付きませんよ~?」

真剣士「そうなんですよねえ…だから、こういう使い方です!」

師匠「?」


真剣士「"火炎魔法"」

…シュボッ…ボワッ…ボォォォォッ!!!

 
大魔道「やはり、そこに辿りつきましたか」

クレイオス『ほう…』

師匠「なるほど、これは…面白いですね」ギラッ

黒髪乙女「姉剣士さんの顔が本気に…大魔道さん、あれは一体何…?」

大魔道「…かつて、英雄剣士が得意とした魔法…、"属性装填魔法"ですよ」


真剣士「こうして、剣に火を着ければ少しは威力が上がるんじゃないかなーとか思いましてね」ボォォ

師匠「独学でそこにたどり着くとは…さすがですね」

真剣士「まぁ、ものは考えようかなって…」ハハ

師匠「いずれそれが決する武器になる…その前に、私がその動きを体験させてもらいますか!」ブワッ!!!

真剣士「うおっ…、師匠、本気になりすぎ…!」ビリビリ

 
師匠「はぁっ!」ダッ

タンッ…タタタタタタッ…


真剣士「は、早い!」

師匠「遅いですよ!」ブンッ

真剣士「後ろ!いつ間に…ぬぐあっ!」キィンッ!!!

ギリギリ…

師匠「良い反応です」

真剣士「ぐ、ぐぬ…」ブルブル

師匠「女性の私に力で押し負けますか?」

真剣士「純粋な押し合いでは、ね!足蹴り!」ビュンッ

師匠「!」

 
バスッ…ドシャアッ!!!

真剣士「すぐに腹へと剣を突き立てる!」ビュンッ

師匠「まだですよ!」ガシッ!!

真剣士「お、俺の脚をつかん…」

…ドシャアッ!


黒髪乙女「2人で倒れた!」

大魔道「ツメが甘いですね、真剣士さん」


真剣士「くっ…!」モタモタ

…チャキッ

真剣士「…あ」

師匠「いかなる時も油断してはならず。立ち上がる速度の差…これで首をハネられていましたね」

 
大魔道「勝負、ありましたかね」

黒髪乙女「…いや、まだっぽいよ…?」

クレイオス『…酒が美味い』


真剣士「師匠、そこ、危ないですよ」

師匠「何ですって?」

ヒュウウ…ボォンッ!!!!ゴォォォッ!!!

師匠「熱っ…!そ、空から炎…!?」


真剣士「転ぶときに、空に火種を放っておいたんですよ!」

バッ…スタッ

師匠「私の間合いから距離を置かれましたか。やりますね」

真剣士「へへ…師匠はやっぱり強いですね」

 
大魔道「姉剣士さん、聞こえますか!」バッ

師匠「どうしましたか?」

大魔道「一つよければ、真剣士さんに助言を差し上げたいのですが!」

師匠「もちろん構いませんよ」


真剣士「…お前の助けなんかいらねーっつーの!」

大魔道「まぁそういわずに。その剣に装着した炎、全部飛ばすのではなく、魔力を練るようにして飛ばして下さい!」

真剣士「…はぁ?」

大魔道「まぁ、やってみてください。面白いことがおきますよ」

真剣士「ま…やってみるか」スチャッ


師匠「大魔道さん、さすがにその技術はいきなりでは難しいのではな…」

ビュウウウンッ…ボォンッ!!!!

師匠「なっ!」ビリビリ…


真剣士「おぉぉ!?火種を剣に着けたまま炎が刃状に飛んでったぞ!?」

 
師匠「…まさか、この一瞬で…」タラッ

真剣士「何だこりゃ、すげえな!」

大魔道「それこそが火炎刃。ただ、使いすぎると魔力の消費が大きいので注意を」


真剣士「…わかった。この距離なら、この攻撃の範囲だな!」スチャッ

師匠「少し分が悪いですね。近づかせてもらいますよ!」ダッ

真剣士「わわわっ!こっち来ないで下さい!」ビュビュビュビュンッ!!!


ドォン!!!ドゴォン!!!ドンドンドンドゴォォン!!!!

クレイオス『はっはっは!』

巨人戦士『おぉっと!すげえ攻撃の連打だな!』

黒髪乙女「あぶっ…ちょ、危ないって!飛ばしすぎ!!こっち飛んでるってば!」

大魔道「素晴らしい…連打まですぐにモノにするとは…」

 
師匠「無闇やたらに打っていても、あたりませんよ!」ヒュンヒュンッ

真剣士「わったったった…、師匠早すぎる!」

師匠「この範囲なら、私の範囲内…はぁっ!」シュバッ

真剣士「うおっ!」キィンッ!!


師匠「まだですよ!剣術連撃!」シュババババッ

真剣士「うおおおおっ!」キキキキキィン!!!

師匠「このラッシュに着いてくるとは…まだまだぁ!」

真剣士「早すぎる~っ!!!」



大魔道「…素晴らしい成長速度です本当に」

黒髪乙女「…だね」

大魔道「元々備わってた実力ですが、ココに来ての開花…ようやくですね」

黒髪乙女「…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ドサッ

真剣士「あ~っ…疲れた…」


師匠「引き分け、でいいですよ」

真剣士「師匠、全然硬化も使ってないし本気じゃないじゃないですか…」ハァハァ

師匠「それは別ですよ。充分すぎる実力です」

真剣士「そういってもらえれば、少し嬉しいかな…」ハハ


黒髪乙女「…凄い、強くなったね真剣士」

真剣士「まぁな!」

黒髪乙女「最初はあわわあわわ言ってたのに」クスッ

真剣士「いうな…」

 
真剣士「…それで、これからの予定はどうなんだ?」

大魔道「明日から幻王への元へと出発します。いよいよ、決戦に向います」

真剣士「…そうか」


クレイオス『道は俺らに任せろ!』

真剣士「…お願いします」ペコッ

大魔道「では、今日はもう良い時間ですし…休むとしますか」

真剣士「おう」


巨人戦士『おーい、あんたらのキャンプに案内するぜ』

 
黒髪乙女「はーい!それじゃ、クレイオスさんお休みなさい」

真剣士「おやすみです」

大魔道「おやすみなさい」

師匠「それでは、また明日です」


クレイオス『あぁ、お休み』

大魔道「ゆっくり休んでくださいね」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

本日はここまでです。有難うございました。

>>392>>393の間に抜けがあったので修正します。


大魔道の指示した作戦は的確で、

不利だと思われた状況を簡単にひっくり返してしまった。

クレイオス軍の被害はほぼ皆無。

無事、里に残されていた戦士たちも無事に救出することが出来た。


そして、その夜…

>>392 >>412 >>393
と続きます。中途半端に繋ぎが安定していたので、
無理やり飛ばしたようになっていました。
申し訳ないです。

皆さま有難うございます。投下、開始致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「覚悟しやがれぇっ!」

『ククク…』

「な、なんだと…!?」

「…ぃぃっ!」


『所詮…』

「ま、待てっ!」

『最期のあがきだ…!』

「うあああっ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ガバッ!!!

真剣士「あぁぁっ!」

黒髪乙女「!」ビクッ!!


真剣士「はぁ、はぁ…」

黒髪乙女「…ど、どうしたの…?」


真剣士「わりぃ…起こしたか…?」ハァハァ

黒髪乙女「凄い汗だよ…」

真剣士「また、変な夢を見ちまったみたいだ…」

 
黒髪乙女「…大丈夫?」

真剣士「ま…まぁ…」ハァハァ

黒髪乙女「…」

真剣士「それより…朝か」


黒髪乙女「う、うん。私も早く起きて外に出たら、もう少し休んでろって言われたら一緒に寝ちゃってたみたい」ヘヘ

真剣士「…そうか。なら、そろそろ時間になりそうだな」

黒髪乙女「えっと…うん、そうだと思う。みんなの所に行く?」

真剣士「あぁ…行こう」

黒髪乙女「う、うん…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ガヤガヤ…

真剣士「おはよう」

大魔道「おはようございます」

黒髪乙女「おはよーっ」

師匠「おはようございます」

 
真剣士「もう準備してるんだな」

大魔道「突撃は一応命がけですからね。それと、幻王の場所がしっかりと把握できました」

真剣士「…どこだ?」

 
大魔道「恐らく、ここから北部にある谷の古城…そこに巣食ってるはずです」

真剣士「…距離は?」

大魔道「普通のペースで3日といったところですね」

真剣士「そうか…。近いんだな」


大魔道「普通のペースで、です」

真剣士「?」

大魔道「巨人族の歩幅、体力なら1日もかからないでしょうね」

真剣士「っていっても、俺らじゃ遅れるだろ」

大魔道「だから…いい案があります」ニコッ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ズズゥン…ドシンドシンドシン…!!!


真剣士「うひょーっ!はえええ!」

黒髪乙女「高い~っ!」

クレイオス『はっはっは!振り落とされるなよ!』


真剣士「とかいいつつ、クレイオスさんしっかり支えてくれてるじゃないですか!」

クレイオス『当たり前だ!』

真剣士「肩に乗せてもらうとは、考えたなぁ」

大魔道「この位しないと、色々とペース不足ですからね」ダダダダダッ

真剣士「って、大魔道足はえぇ!」


大魔道「敏捷魔法ですよ」

真剣士「なんかずるいな」

 
師匠「私は普通に速度で維持できるので」ダダダダダッ

真剣士「師匠もはえぇ!」

師匠「鍛錬を怠らなければ、この程度はできますよ」

真剣士「そ、そうですかね…」


ドシンドシンドシンッ…!!

クレイオス『はっはっは!』


真剣士「クレイオスさんは、幻王と対峙した事はあるんですか?」

クレイオス『一応な。我がティターン族は十二の兄弟から成るのだが、ほとんどがやられてしまった』

真剣士「そんな…」

クレイオス『まだ生きている者もいるがな。クロノスは同胞でもかなり暴れん坊だったからな』

真剣士「知り合いなんですか!?」

クレイオス『知り合いというか、同じ種族だし自然と耳に入ってくるといった感じだ』

 
黒髪乙女「幻王は…暴れん坊なんですか…」

クレイオス『うーむ…まぁ子供がそのまま大人になったようなやつだ』

黒髪乙女「どういうことですか?」


大魔道「簡単にいえば、虫を殺すのをためらわない精神のまま、ですよ」

真剣士「何だって…」

大魔道「彼の力は強大すぎて、周りの大人たちは正しい道を教えられなかったんです」

真剣士「…なるほど」

大魔道「そして世界の真理に気づき、自らの力に溺れ、このような事態になってしまった」

真剣士「…っ」


クレイオス『あいつは同胞殺しだ。これ以上の被害を防ぐためにも、全力でかからねぇとな』

真剣士「…はいっ」

 
大魔道「…むっ」ピクッ

クレイオス『前方に敵が…いるな。数自体は少なそうだが」

師匠「どうしますか?」


真剣士「また…敵か」

大魔道「はい。クレイオスさん、正面突破できますか?」

クレイオス『最初からこの陣形は特攻用だ。俺らが先頭で突っ切るぞ」

大魔道「わかりました」


真剣士「俺も戦うのか?」

大魔道「あなたと黒髪乙女さんは、そのまま肩で待機していて結構ですよ」

真剣士「わかった」

黒髪乙女「うん」

 
師匠「では、私たちは先行しましょうか」

大魔道「攻撃増大魔法!敏捷化!」パァッ!!!

タッ…ダダダダダダッ!!!!


真剣士「おいおい、どこまで早くなるんだよ…」

黒髪乙女「すっごーい…」

真剣士「それを耐える体力がある事でも驚きだけどさ」


クレイオス『俺らも突っ込むぞ、しっかりつかまってろよ!』

真剣士「わかりました!」

黒髪乙女「はいっ!」

ダダダダダダッ!!!

 
大魔道「…見えました、あそこです!前方に敵影ですよ!」

師匠「…はぁぁぁ」ビキビキッ

クレイオス『ぬぅぅぅっ…』ビキビキッ

大魔道「支援します!」


操り戦士たち『…!』

操り魔道たち『…!』

操り巨人兵達『…!』

 
タァンッ…!!

師匠「聖斬っっ!!」グワッ!!!

クレイオス『地割りっ!!』ゴォッ!!!

ドドドドドド…ドッ…

ドゴォォォンッ!!!…ビキビキビキビキッ!!!ゴバァァァッ!!!!


黒髪乙女「きゃーっ!」ビリビリ

真剣士「す、すげぇ…一掃かよ…」


大魔道「大火炎魔法っ!」

キュゥゥゥン……、ドゴォォォォッ!!!ミシミシミシ…


操り人形達『アァァっ…!!』

 
クレイオス『すまぬ…同胞よ…、必ずこの報いは…するぞ』

真剣士「クレオイスさん…」

黒髪乙女「うん…」


クレイオス『まだまだぁぁっ!』

大魔道「どんどん進みますよ!」

クレイオス『後方部隊、遅れるんじゃないぞ!!』


巨人戦士達『おおおおっ!』

大魔道(士気は高い…!幻王のもとまで無事に辿りつけそうですね)

 
師匠「…前方!更に敵の数が増えている模様ですよ!」


操り人形たち『ア…アァァ…』

ガサガサ…スチャッ…ザッザッザ…


黒髪乙女「うげえぇ、うじゃうじゃ出てきたぁぁっ!」

真剣士「大丈夫ですか、クレオイスさん!」

クレイオス『俺を誰だと思っている!最強のティターンの戦士、クレイオスだ!』ワハハハ

ズシンズシンズシンズシンッ!!!


大魔道「この敵の数が急激に増えてきた事…やはり幻王はこの先にいるでしょう」

師匠「このペースで突っ込んで、城門を破れますでしょうか?」

大魔道「大丈夫だと思います。破ることなら…いけるはずです」キッ

師匠「わかりましたっ!」ダッ

 
真剣士「ちょ、ちょっと待ってくれ大魔道!」

大魔道「何ですか?…っと、大雷撃魔法っ!」

パァッ…バチバチバチッ!!!!

操り人形達『ガァァアッ!』


真剣士「考えたら、このままいきなり幻王行っても…俺に倒せる実力は…!」

大魔道「大丈夫です。信じてください…貴方には勝てる力が"眠っている"のです。必ず倒せます」

真剣士「わ…わかった」


師匠「む…後方部隊が少し遅れてるようです。何かあったのでしょうか」

クレイオス『何…飛ばしすぎたか?』

大魔道「…いえ、違います。これは…」

 
ガヤガヤ…ザワッ…!!!

操り巨人戦士『ガアアアッ!!!』

巨人戦士『な、何だ!?おい、しっかりしろ!』

操り巨人戦士『ハァァッ!』ブンッ

巨人戦士『一体何を…うあぁっ!』ブシャァッ…ドサッ


大魔道「…もう、幻王の魔力の敷地に侵入しているようですね」

クレイオス『く…大魔道、何とかできないか!?』

大魔道『やってみますか…解除魔法っ!』パァッ


操り巨人戦士『ガァァッ!』ブンッ

巨人戦士『くぅっ…目を覚ませぇ!』キィンッ!!


大魔道「解除魔法も効かないようだ…だめですね…。強力すぎる…」

クレイオス『ちっ…』

 
ダダダッ!!

操り巨人戦士『…ク…、クレイオスゥ…』ブンッ…!!


黒髪乙女「きゃあああっ!」

クレイオス『ぬっ!』


ビュンッ…ボォン!!!ドシャアッ…

真剣士「火炎刃だ。…黒髪乙女もいるのに、クレイオスさんに手出させるかよ!」チャキンッ

黒髪乙女「真剣士ぃ!」


クレイオス『ほぉ…やるではないか!』

真剣士「肩につかまりながらだから威力も出せませんけど、自分も戦いますよ!」

クレイオス『うはは!さすがは英雄の血、援護は任せるぞ!』

真剣士「もちろんです!」

 
クレイオス『みなの者!幻惑にかかった同胞は…苦しめず切り捨てよ!その恨みで、前進あるのみだ!』

巨人戦士達『おおおおっ!』


師匠「いいですね、このまま城へ入りましょう!」

大魔道「遠目ですが、城も見えてきました。相手も僕たちの存在に気づいているはずです」

師匠「…ようやく、ですね」

大魔道「えぇ。どうなるかと肝を冷やしてきましたが、これで…救われます」


師匠「全てが終わる事を願って…」

大魔道「前進、あるのみ!」

クレイオス『ぬぅぅおおお!!』

ダダダダダダッ……!!!!

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
幻王『…来た、ね』ニタッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 幻王の古城・正門 】


…キィン!!!キキィン!!

操り剣士『…アァ』

師匠「くっ…さすがに警備が多い…!」ググッ


大魔道「全てを吹き飛ばします…爆炎魔法っ!」パァッ

ドゴォォンッ!!!!…ミシミシミシ… 

操り剣士『…ッ!』

操り戦士『ガァァッ!』

ドシャドシャアッ……


真剣士「なんつう火力だよ」

黒髪乙女「すっごーい!」

師匠「さすがです!」

 
クレイオス『正面、門を破るぞ!しっかりつかまれよぉ!』

黒髪乙女「はいっ!」

真剣士「はい!」

ダダダダダッ…ドゴォォォッ!!!!

ズザザザザ…


クレイオス『正門、破ったぞ!』

師匠「後方部隊、しっかり着いてきてください!」

巨人戦士たち『おぉぉーっ!』

 
ダダダダダッ…

クレイオス『周りの圧力がジャマだな…任せろ!入り口のほうは頼む!』

真剣士「火炎刃っ!!」ビュンッ…ドゴォン!!

黒髪乙女「え…えっと…ひ、ヒーリング魔法~っ!」パァッ


師匠「わかりました!私が城の入り口の扉ごと突き破ります!」

大魔道「攻撃増大魔法っ!」パァッ


師匠「ありがとうございます…聖斬っっ!!」ブンッ…

ビュビュビュッ…ズバズバァッ!!!

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 幻王の古城内部・1階 】


…ドゴォンッ!!!パラパラ…

操り戦士『…侵ニュウ者!』

操り剣士『!!』


師匠「ジャマですよ!」ブンッ!!

ズバァンッ!!!…ドシャドシャッ


大魔道「…変わりませんね、この城も」

師匠「侵入までは上手くいきましたね」

大魔道「あと少しです…頑張りましょう」

 
真剣士「ここが城…なんて禍々しい感覚なんだ…」ドクンドクン

大魔道「それは貴方の魔力が上がってるから感じることが出来るんですよ」


真剣士「城の2階…その奥。そこに…何かいる」キィィン…

大魔道「それが幻王、です」

真剣士「…強い。心臓が…飛び出しそうだ…」ドクンドクン

大魔道「…」


師匠「…大丈夫です。きっと」

真剣士「…くっ」

 
黒髪乙女「真剣士、ヒーリング魔法っ…」パァッ

真剣士「…!」

黒髪乙女「私も一緒にいる。真剣士だけに辛い思いはさせない!」

真剣士「ふっ…お前に心配されたら俺も終わりだな」ハハハ

黒髪乙女「なんでぇー!」

真剣士「はっはっは、お前といると緊張感も何もあったもんじゃねえな」

黒髪乙女「ひどいなぁもう!」


大魔道「はは」

師匠「…」クスッ


クレイオス『いいコンビじゃないか。ハハハ!』

 
師匠「そうですね…あっ!階段…あそこですね」


操り人形たち『アァァッ!!!』

操り剣士たち『ァ…』

操り戦士たち『…』

操り魔道たち『…』

ガサガサガサッ!!!


クレイオス『ぬおっ!』

大魔道「!」

師匠「な、何て数!」

クレイオス『…これはちょっと、倒すのに時間がかかりそうだな』

真剣士「こ、ここまで来て!」

黒髪乙女「…っ!」

 
巨人戦士長『クレイオスさん、いいですか』スタッ

クレイオス『…戦士長か。どうした』

  
巨人戦士長『クレイオスさん方は2階へ。ここ…1階は我らにお任せを』ペコッ

クレイオス『…やれるのか』

巨人戦士長『最早我らの部隊で生き残っているのは本当の猛者。全ての敵を砕いてみせましょう!』

クレイオス『…任せるぞ!』


巨人戦士長『はっ!いくぞ、皆のものぉぉ!』

巨人戦士たち『うおおおおっ!』


大魔道「…クレイオスさん、恩にきりますよ」

クレイオス『当たり前のことだ。それより…行くぞ!』

大魔道「ですね」

真剣士「…決戦の時か」


ダダダダダダッ…

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【幻王の古城・2階】


ガチャガチャッ…バタァァンッ!!!!

ズザザザ…


クレイオス『…』

真剣士「…」

黒髪乙女「…」

師匠「…」

大魔道「…」

 
トコ…トコ…ピタッ

真剣士「幻王ってのは…あの奥のイスに座ってるヤツか…?」

師匠「そうです…」

大魔道「幻王…!」

黒髪乙女「…」

クレイオス『よぉ…』


幻王『…』

 
真剣士「お前が…幻王か」

幻王『…』

真剣士「…」


幻王『…やれやれ、騒がしい』


大魔道「騒がしいのはどちらですかね。僕たちにとって貴方は迷惑千万ですよ」

幻王『ふん…』

 
真剣士「…」

幻王『…まさか、ここまで来るなんてね』

大魔道「もう、降参したらどうですか?」

幻王『それは却下だね。分かってるだろ』

大魔道「…」


幻王『確かに、英雄の血は大分…力が戻ったんだね』

大魔道「貴方は負けますよ」

幻王『さぁ…やってみないと分からないだろう』


クレイオス『何をごちゃごちゃと話している!!』

幻王『…クレイオス』

クレイオス『我が同胞の敵…ここで晴らさせてもらうぞ!』クワッ

 
黒髪乙女「…クレイオスさん!」

真剣士「クレイオスさん!?」


クレイオス『うおおおっ!』ダダダダッ

幻王『所詮、君は俺の操り人形なんだよー…」パチンッ

クレイオス『!』


幻王『君には少々、痛い目に見てもらおうかな』

クレイオス『な、何を…う、動けん!』ブルブル

幻王『例えば、眼球と内臓に狙って火魔法…とか』パチンッ

ボォンッ!!!

 
クレイオス『…がああっ!!!!』ブシャアッ

真剣士「く、クレイオスさぁぁん!」

クレイオス『あ…熱い…う…』


真剣士「や、やめろぉ!」ダッ

幻王『助ける気?遅いし、意味ないよ』パチンッ

ドォンッ!!!ベチャベチャッ…


クレイオス『…』ドサッ…


真剣士「…!!」

黒髪乙女「く…クレイオスさ…」

師匠「…」

大魔道「…」

 
幻王『…』ニコッ

真剣士「お、お前…クレイオスさんを…」ブルブル


幻王『え?仲間一人やられたくらいで悔しがってるの?』

真剣士「…ぁ?」

幻王『何怒ってんの?』

真剣士「お前…!」ブルブル

 
大魔道「…」

師匠「大魔道さん…どうしますか」

大魔道「…まだ、様子を見ましょう」

黒髪乙女「…」


真剣士「…幻王」

幻王『何?』

真剣士「これ以上、戦うのはやめてくれないか…」

幻王『やだよ』

真剣士「…なぜ」


幻王『だって、俺にはもうこの世界しか戦う事ができないからだろ』

真剣士「…どういうことだ」

幻王『どういうことだって…、は?』

 
真剣士「…?」ピクッ

幻王『どういうことって…どういうことだよ…おい』

真剣士「…なんだ」

幻王『……!なるほど、そういうことか?』

真剣士「だから、何だ!」


幻王『は、ハハハハ!!!』

真剣士「何笑ってやがるんだ、こらぁ!」

幻王『わかった、そういうことか…大魔道!』


大魔道「…」

師匠「大魔道さん!」

 
幻王『悪いけど、待ってられないんだ。面倒だし、さっさと死んでもらうよ。大風刃魔法っ』パチンッ

…ビュンッ!!!

真剣士「!」


師匠「危ないっ!」キィン!!

真剣士「師匠!」


大魔道「あ、姉剣士さん!」

師匠「これ以上は見てられません!私たちでやりましょう!」

真剣士「し、師匠…?大魔道…?」

大魔道「くっ…やるしか、なさそうですね」

 
幻王『いいよ、相手するよ…おいで』グワッ!!

師匠「!」スチャッ

大魔道「…」スッ


幻王『…大風刃魔法』パチンッ

ビュビュビュビュンッ!!!スパァッ!!!


師匠「くっ、なんて魔力!」


大魔道「姉剣士さん!硬化魔法、攻撃増大魔法!」パァッ

師匠「ありがとうございます!」


幻王『硬化魔法は面倒だな…大雷撃魔法っ!』パチンッ

バチバチバチッ!!!

 
大魔道「その程度の攻撃では、僕の硬化は弾くことなど…」

…バキィンッ!!!パラパラ…
 
大魔道「なっ!」

師匠「だ…大魔道さんの硬化魔法を弾くなんて…」

幻王『魔法合戦やるかい?』ニコッ


師匠「…なら、この速度について来れますか!?」ビュンッ

ダダダダダッ!!!


幻王『肉弾戦か…後ろだっ!』バッ…カキィンッ!!!

師匠「こ、この速度で見切りますか…!」

 
幻王『近づいたのは失敗だったね。…爆炎魔法』パチンッ

キィィィン…

師匠「しまっ…」

ドゴォォォンッ!!!…パラパラパラ…


真剣士「し、師匠!!」


ズザザザザ…スタッ

師匠「はぁ…はぁ…、今のは焦りましたよ…」ビキビキッ

幻王『なるほどね、亜人の特異術…部分硬化か。速度も速いし厄介だね』

師匠「つ、強い…」


大魔道「幻王、こっちです!…これならどうですか?」キィィン…

幻王『!』ハッ

大魔道「極氷結魔法っ!!」パァッ

 
カキィン!!カキンカキンカキィン!!!

幻王『がっ!』

大魔道「術者に比例する絶対零度の氷結…逃れる術はありませんよ!」

幻王『か…体が、凍る!』

大魔道「詠唱が長いのが厄介ですが…姉剣士さんのお陰で上手く行きましたよ…」


幻王『や…やられるぅぅ…とか、なんつって』ニタッ

大魔道「!」

 
ユラァ…

幻王『君が俺に攻撃を当てたと思っているのが…幻惑なんだなこれが』

大魔道「まさか…幻惑魔法を!?いつの間に…!」


"『そして…僕がどこにいるか分かるかな?』"


大魔道「姿が消えた…ど、どこに!」


幻王『後ろ』ニコッ

…ズバアッ!!!

 
大魔道「…っ」ポタ…ポタ…

幻王『まだまだだね大魔道』

大魔道「くっ…」ドシャッ


師匠「大魔道さん!」

真剣士「だ、大魔道!!」

黒髪乙女「大魔道さぁん!」

本日はここまでです。ありがとうございました。
また、予定では明日の更新で最終回となります。


ところどころでクレイオスがクレオイスと呼ばれてるから、あだ名なのか殆ど真剣士が呼んでたから聞き間違えてたのかと思ってたけど違うっぽいな

皆さま有難うございます。遅れながら、投下開始致します。

 
幻王『大魔道…君は一足先に…この世界からご退場願おうか…!』スッ

師匠「…やらせませんっ!」ダッ!

ダダダダッ…タァンッ!!

師匠「落撃っ!!」ヒュウウウッ


幻王『君もあとで面倒見るから大人しくしてて…大風刃魔法っ』パチンッ

ビュウウウッ…ズバァンッ!!!

…ドシャッ…


真剣士「!!」

師匠「…わ、私の特異硬化を…切り裂くなんて…」ズキンッ…


真剣士「し…師匠…あ、脚…脚が…!!」ブルブル

黒髪乙女「いやああっ!」

 
幻王『…あれ?胴体狙ったのに右足が取れただけか』

師匠「くうっ…!」ズキズキ


真剣士「な…何なんだよ…こいつ…」

幻王『…』


黒髪乙女「大魔道さん!姉剣士さん…ひ…ヒーリング魔法ぉぉっ!」パァッ

真剣士「!」

 
…シュゥゥッ

大魔道「…!」

師匠「痛みが消えた…」

黒髪乙女「み…みんなが戦ってて…私にはこれくらいしか…」グスッ

師匠「ふふ…ありがとうございます…」

大魔道「立派な…魔法ですよ」ニコッ


幻王『…』


真剣士「…でも…大魔道がやられて、師匠もやられて…ど、どうしろっつーんだよ!」


師匠「真剣士さん…思い出して下さい…!もう、貴方しかいないんです!」

真剣士「い、一体何を思い出せって…」

 
幻王『うるっさいなぁ。もう君たちの負けだよ…また今度かかっておいで』ニコッ

…パチンッ…ドゴォンッ!!!


師匠「きゃああっ!」

ズザザ…ドシャアッ…


真剣士「し、師匠!」

黒髪乙女「姉剣士さん!待って下さい…今、回復魔法を…!」パァッ


幻王『そういうの…いらないから』パチンッ…ビュンッ!!!

 
…ブシュッ!!!…ドサッ…

真剣士「…え?」


黒髪乙女「…」ドバッ…


真剣士「…黒髪乙女?」

 
師匠「く、黒髪乙女さ…!」

大魔道「…っ」

真剣士「黒髪乙女ぇぇぇ!」ダッ


黒髪乙女「…」ドクドク

真剣士「ち、血が…!だ、誰か…止めてくれぇ!!」

大魔道「…っ、今の魔法には強力な呪縛がかかっている…。血が…止らない…!」

真剣士「で、でも、じゃあ…どうすりゃいいんだよ!!!」


幻王『あっはっはっは!』

真剣士「て…てめぇ…、幻王…!」ギロッ

幻王『次は君たちだよ』

 
黒髪乙女「…っ」ハァハァ

真剣士「黒髪乙女っ…」

黒髪乙女「ごほっ…」ドバッ

真剣士「…もういい、しゃべるな…」グスッ

黒髪乙女「…何で、泣いてるの…?」


真剣士「…な、何でって…!」

黒髪乙女「痛っ…!あ、そっか…私、やられちゃったんだ…」ズキンッ

真剣士「お、俺は…、お、お前を守って…守るって…」


黒髪乙女「ううん…」

真剣士「…た、助けてくれよ…師匠、大魔道…」

 
黒髪乙女「真剣士…」ボソッ

真剣士「…っ」

黒髪乙女「…ごめんね」

ガクッ…


真剣士「…!!」

師匠「…っ」

大魔道「…」


真剣士「…」ブルブル

幻王『あ、死んだんだ』ニコッ

 
真剣士「…」…ゴッ!!!!

ゴゴゴゴゴッ…

 
大魔道「…きた」

師匠「ごほっ…まさか…」 
 

幻王『…ッ!』

真剣士「…お前は…絶対に殺してやる…」ゴォォォッ

幻王『な、何て魔力…』タジッ

 
真剣士「…」スチャッ

幻王『だけど、今の君じゃまだ力量不足だ!』パチンッ

…ドゴォンッ!!!!


幻王『僕の火炎魔法も受けきれないようじゃ』

モクモク…

幻王「…!』


真剣士「…痛くもねえな」

幻王『…』

 
ビキッ…ビキビキビキ…

大魔道「竜の皮膚…、3代目の力…」


幻王『…これならどうですか』パチンッ

ゴォォォッ!!!!


師匠「や、闇の魔法…あれに飲まれては一瞬で灰になってしまう…避けてください…っ!」

大魔道「…大丈夫でしょう」


真剣士「…うぜぇよ!!」スチャッ…パァッ!!!

…キキキィンッ!!!ズバァンッ!!!!

幻王『な、何だと!闇を…切り裂くなんて!』

大魔導…やっぱりそういうことか…

 
大魔道「2代目の切り札…、剣への光属性の付与…」

師匠「…」ゴクッ


幻王『まだまだぁっ!大雷撃魔法っ!」パチンッ

バチバチバチッ…!!

真剣士「…」ビキビキッ

ザッ…ザッザッ…


幻王『な…何だってたんだよ!!何で倒れない!』

 
幻王『…極火炎魔法!極雷撃魔法!極水流魔法!』パチパチンッ!!!

…トゴ゙ォォォオオオオンッ!!!グラグラグラ…

真剣士「!」

ズバァンッ!!!…ドシャッ…


真剣士「…」

幻王『はぁ…はぁ…』


師匠「し、真剣士さん!さ、さすがに今の攻撃では…!」

大魔道「いえ大丈夫でしょう…。彼には、あの血…」


真剣士「ぬ…ぬうおおおっ!」ムクッ


大魔道「"初代"の英雄の血…、打たれ強さがある!」

 
幻王『な、何なんだよ…くそぉ!』

真剣士「…」

ザッ…ザッ…ザッ…

幻王『…こ、こんなバカな…』


真剣士「俺の頭に、色々と囁いてくれているよ。これが、血ってやつなのか…」ユラッ


幻王『お…俺は…!幻王だ!!極幻まほ…』クワッ
 
真剣士「うおおおっっ!!!」


キィィィンッ!!!!ズバァァンッ……

 
幻王『…がっ…』

真剣士「…」

幻王『…ま…"また"…か…』

…ドサッ


真剣士「…」

師匠「し…真剣士さん!」

大魔道「や、やった…」


真剣士「これで…終わりか…?」

幻王『…』

真剣士「本当にあっけない…幕切れ…だな」グスッ…ポロポロ

 
師匠「…真剣士さん」

大魔道「…」

真剣士「黒髪乙女…、お、俺は…」グスッ


ミシッ…ミシミシミシ…ゴゴゴゴゴ…


真剣士「な…なんだ…?」

師匠「…これは」

大魔道「崩壊…ですね」

 
ゴゴゴゴ…バキィンッ!!

真剣士「城が崩れる…?いや…違う…」

大魔道「…真剣士さん、覚えていませんか?」

真剣士「この感覚は…あの時の…!」


大魔道「そうです。真剣士さんは、これを覚えているはず」

真剣士「あの廃墟の幻惑魔法が解ける…感覚…」


大魔道「…」


真剣士「…違う、もっと前…大魔道と出会う前に…何だこれ…。うぅっ…」ズキンッ!!!

ズキンズキンズキン…

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
幻王『ここまでの…力だったなんて…』ゴホッ

真剣士「幻王、これで終わりだ」チャキンッ


黒髪乙女「やった…!」

師匠「これで、平和が戻る…」

大魔道「…そうですね」ニコッ


幻王『…こ、これで…終わらせるものか…!』ギロッ

大魔道「…何だ!?いけない、真剣士さん、離れてください!」

幻王『あぁぁぁっ…!!』パァァッ


真剣士「ぐ、ぐあああっ!」

バシュウゥッ…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
真剣士「…!」ハッ

大魔道「思い出しましたか…?」

真剣士「こ、この世界は…まさか…!」


大魔道「まだ"世界が崩れる"までは時間がある。説明しましょう…」

師匠「…」

 
大魔道「この世界は、幻王によって作られた幻影の…世界なのです」

真剣士「幻影の…世界」ドクン


大魔道「幻王が息絶える時、幻王の術を受け…貴方は、この幻影の世界に残されてしまったんです」

真剣士「…」

大魔道「その魔法とは…"時間の霧"」

真剣士「時間の霧…?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
現実世界で貴方は、現実世界で幻王を倒しました。

ですが幻王が息絶える瞬間、彼は…最期の抵抗をしました。

その時、貴方の体は"謎の霧"の中へと沈んでしまった。


もちろん僕たちは、貴方を救出するために霧の中へと突入したのです。


その中で見たのは…信じられない事に全く同じ世界。

いうならば"幻想世界"といいますか。

 
そして…信じられない事に…

そこには倒したはずの幻王や、死んだ仲間達がいました。


その世界で貴方を探し出し、再び出会うことが出来ました。


その時はまだ、貴方がどういう状況に陥っていたか記憶があったんです。

僕たちが救出に来たこと、現実ではないこと…全てを覚えていました。


そして…幻想世界から抜け出すには、

やはり幻王を再び倒さなければならなかったのです。

 
だが…その世界では幻王は更に上手だった。

戦いは敗北し、全てが終わったと思いましたが…世界はループしたのです。


そう。その霧は"永遠の時間"の世界でした。


そして世界がループした時、僕らの魔力、体力が奪われていたのに気づきました。

もちろん…真剣士さん…自身も。


ゆっくりとした永遠の時間は…貴方、そして僕たちを確実に殺していった…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
真剣士「永遠の時間…か」

大魔道「…その当時、貴方は"自信家"だった」

真剣士「…」

大魔道「4度目でしたか…その時の敗北が問題でした」

真剣士「なんだ…?」


大魔道「黒髪乙女さんが先に亡くなった。今までは貴方が先にやられていたのですが…」

真剣士「…っ」

大魔道「そのショックで、次にループした世界で貴方は記憶を失っていた。その後、何度かループするのですが…」

真剣士「…」

大魔道「どうしても最初の死を忘れる事は出来なかったようです。不自然な涙や感覚、ありませんでしたか?」

 
真剣士「あ…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
コケッ…ドシャッ!!

真剣士「…って…」

黒髪乙女「えーっ!何で転んでるの!」

真剣士(え…?)グスッ…ポロッ…


黒髪乙女「…え、泣いてるの?どこかぶつけたの?」アセッ

真剣士「…さっき殴られたのが痛かったんだよ!」ポロポロ

黒髪乙女「え、ご、ごめん…」

真剣士「…冗談だよ!俺はウソ泣きが得意なんだよ」ゴシゴシ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

真剣士「…!」

 
大魔道「ありますよね。それに、貴方の力…」

真剣士「力?」

大魔道「普通の人間が、高い塀を軽々と飛び越すことが出来ますか?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

真剣士「手はいらん、一人で充分だ」タァンッ

大魔道「…!」


黒髪乙女「お~…さすがだね、真剣士」

真剣士「昔から人より運動能力だけは良かったからな」ハハハ

大魔道「…軽々と塀を飛び越えるとは、凄いですね」

真剣士「まぁな」ハハ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

真剣士「…」

大魔道「それだけじゃないですよ。覚醒の話もです」

 
真剣士「俺の覚醒は…、血の覚醒じゃなく…」

大魔道「はい。貴方は本来、剣術も戦術も覚えていました。それを取り戻すという事です」

師匠「…数時間で、スキを取られたとはいえ私の"剣"だけを吹き飛ばせませんよ」


真剣士「…あ、じゃあまさか…俺が湯あたりで倒れた時にしてた二人の話は…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

黒髪乙女「…真剣士の様子、どうでしたか?」

師匠「大丈夫ですよ」

黒髪乙女「朝…凄い顔で…。見て不安になります。本当に大丈夫、なのか」

師匠「"目覚めてもらう"ためにも、必ず倒して貰わないといけません」


黒髪乙女「…はい。私も、できる限りお手伝いしたいと思います」

師匠「ですが、犠牲になることはなかったんですよ…?」

黒髪乙女「いえ。真剣士のためですから…」

師匠「そうですか…覚悟があるなら、何も言いません」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
師匠「やはり聞いていたのですね…。そうです。犠牲は…幻想の霧への突入の事です」

真剣士「師匠…もしかして目覚めるっていうのは…」

師匠「現実世界で、永遠の時間から脱出し、目覚めてもらう…ということです」ゴホッ


真剣士「…おい、大魔道」

大魔道「はい」

真剣士「黒髪乙女が、最初から魔法を信じるって連呼してたのは…」

大魔道「恐らく、思い出させるためでしょうね」


真剣士「な…何で最初っから本当のことを言わなかったんだ!」グイッ

大魔道「信じましたか?」

真剣士「えっ…」

大魔道「全てを話したとして…思い出しましたか?信じましたか?剣術を。戦いを。みんなを」

 
真剣士「…それは」

大魔道「貴方は"真実を射抜く剣士"、真剣士。自身で気づく意外…道はなかった」

真剣士「…だ、だからって…」


大魔道「今回、急いだのは次が絶望的だったからです」

真剣士「絶望…?」

大魔道「僕も含め、体力、魔力も気力も…これ以上ループについていけなかった」

真剣士「…!」


大魔道「貴方と一緒に死ぬか、生き延びるか。そういうことでした」

真剣士「今回、上手くいったのは何でだよ…」

 
大魔道「失敗を繰り返し、ようやく貴方を再び覚醒させる方法が…わかったんですよ」

師匠「私のせいで…失敗しかけましたけどね…」

真剣士「黒髪乙女が…死ぬ…ことか…」ガクッ


師匠「…真剣士さん」

真剣士「じゃあ…この世界で今まで見たものは…すべて偽者ってことなの…か…?」

大魔道「あ、それはご心配なく」ニコッ

真剣士「え?」

 
大魔道「この世界の時間進行は、おおよそ"貴方の記憶に基づいて"なっていたようですし」

真剣士「!」

大魔道「現実では竜少女さんや、クレイオスさん…貴方が主に出会った方々は今も生きていますよ」


真剣士「ほ、本当か…よ、良かった…」

大魔道「…」

真剣士「ま、待て。黒髪乙女は…どうなる。ループをしないと生き返らないんじゃないのか…?」

大魔道「幻想での死は魔力への負担のみ。この世界が完全に消失すれば、現実できっと目を覚ますでしょう」

真剣士「…よ、よかった…」グスッ

 
大魔道「真剣士さん…いえ、英雄剣士と呼ぶべきですか。本当に申し訳ありませんでした」ペコッ

真剣士「何が…」

大魔道「騙していた事。戦いを選ばせた事。全てに…です」

真剣士「…いや、いいよ。助けてくれて…礼を言う」


大魔道「そうですか…そう言っていただけると嬉しいです」

師匠「真剣士さん、本当にありがとうございました」

真剣士「師匠まで…」


ゴゴゴゴゴ…ミシミシミシッ…

真剣士「!」

 
大魔道「時間です。これで幻想世界が…終わる」

師匠「帰りましょう。私たちの…生きるべき世界へ」

真剣士「あぁ…」


大魔道「体を…楽にしてください。次に目覚めるのは…まぎれもない"現実"ですから…」

パァァァッ……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・ 
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・

 
そっか…いつも見てた哀しい眼…理由がようやく分かった…

ふとして見ていた泣く程の夢…

あれは俺が体験した幻想世界の物語だったんだな…


そっか…

そうだったんだな…


でも、これで…全てが…終わったんだ…

 
-Eye catch !-
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
真剣士「英雄の…血…?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
-proceed to the next !-

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 魔界・竜族の王城 】

モゾッ…

真剣士「う…?」

師匠「!」


真剣士「…ここは」ガバッ

師匠「真剣士さん…気づかれましたか!?」

真剣士「し…師匠…」

師匠「…現実では姉剣士さんでいいんですけどね…少し恥ずかしいので」

 
真剣士「もう、オレにとっては師匠ですから」ハハ

師匠「と…とりあえず…、大魔道さんを呼んできます…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

トコトコ…

大魔道「目が、覚めましたか」

師匠「大丈夫ですか…?」

真剣士「師匠、大魔道…ここは…現実なのか…」

大魔道「紛れもなく」

真剣士「…そうか」


師匠「体に異変はありますか?」

真剣士「いえ…」

   
師匠「そうですか…あなたが無事で本当によかったです…」

真剣士「霧からは…脱出できたんだな」

大魔道「霧が消え、僕らは戻ってきました。ですが…」

師匠「…」


真剣士「ですが…?」

大魔道「…」


真剣士「…!」ハッ

…キョロキョロ

 
真剣士「く、黒髪乙女はどこだ!?」

大魔道「よく聞いて下さい。黒髪乙女さんは…今、非常に危険な状態です」

真剣士「な、何だと!?」


師匠「彼女の魔力は限界でした。そして、幻想世界での死…それは致命傷となってしまったんです…」

真剣士「大魔道!気づかなかったのか!!」

大魔道「彼女は…気丈に振舞い、普通に魔法を使っていたので…それには気づけませんでした…」

真剣士「う…うわああっ!」ブンッ…ガツッ!!


…ドシャッ

大魔道「…」


師匠「真剣士さん!大魔道さんを殴っても…何も変わりません!」ガシッ

真剣士「もう、た…助からないのか…?」

 
大魔道「…いえ、彼女の症状は魔力の枯渇…。方法はあります」

真剣士「なんだ!」

大魔道「彼女が失ったの魔力…それに適合しうる魔力は…」

真剣士「…」

大魔道「あなたの持つ、英雄の魔力」


真剣士「!」

大魔道「それで…助かります」

真剣士「そこに案内してくれ!…早く!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ガチャッ…ギィィ…


真剣士「黒髪乙女…」

黒髪乙女「…」


真剣士「…っ」 
 
大魔道「貴方の魔力を使えば…必ず眼を覚ますでしょう」

真剣士「わかった…やってくれ!今すぐに!」

大魔道「ですが…、問題があります」


真剣士「何だよ!」

 
大魔道「これを行なえば…貴方の魔力は失われます」

真剣士「そ、それくらい!」

大魔道「それは、この魔界で過ごす事は出来なくなるということ」

真剣士「元々俺は…魔界の住人じゃないからな」


大魔道「魔力を失った体は、すみやかにあなた方の世界へ送還せねばなりません」

真剣士「だから、それくらい大丈夫だっていってるだろ!」

大魔道「そして、移動をしてきたゲートを覚えていますか?」

真剣士「当たり前だ!」


大魔道「そこを越すには、魔力がいる。魔力がない貴方は…」

真剣士「まさか…通れない…?」

大魔道「いえ、通るには通れます」

真剣士「だから…一体何を言いたいんだ」

 
大魔道「…記憶を失う事になってしまう、ということです」

真剣士「!」

師匠「…」


真剣士「こっち側の全てを忘れるってことか…?」

大魔道「少なくともそうなります。更に、魔力の代わりに体力…それをも奪ってしまう」

師匠「つまり、普通の人間に…戻るということです」


真剣士「何もかも失うのか…?」

大魔道「そうなります」

真剣士「師匠も、お前も、竜少女も…クレイオスさんも…あの料理も全部忘れるのか…?」

大魔道「そうです…」

 
真剣士「…」

大魔道「ですが、黒髪乙女さんを救う術は…それしかない」

真剣士「…どうすりゃいいんだよ」

大魔道「貴方が決めること、です」


真剣士「…」

師匠「私の本音は…忘れて欲しくはありません。黒髪乙女さんだって、他に助け出す手段があるかもしれない」

真剣士「で、ですよね!」

師匠「ですが…時間がないのも事実。もう、答えは…決まってますよね」

真剣士「…っ」


大魔道「こんな事になって…申し訳ありません…」

 
真剣士「黒髪乙女も、ゲートを通れば全てを…忘れるのか?」

大魔道「供給された安定のない魔力で、記憶を保持するのは難しいですからね」


真剣士「俺がこっち側の事を忘れて…こっち側はどうなる?何か変わるか?」

大魔道「こちら側では、貴方はもう名前の刻まれた英雄です。それは、永遠に続くことでしょう」

真剣士「…そうか」

師匠「貴方が忘れても、私たちは貴方を決して忘れません」


真剣士「でもさ…俺、やっぱり黒髪乙女を助けたい…」


師匠「やっぱり…そう言うと思ってました」ニコッ

大魔道「…準備は出来ています。時間もない…早速、はじめましょう」スッ

 
真剣士「…師匠、大魔道」

師匠「…」

大魔道「…」


真剣士「楽しかった事、辛かった事もあるけど…とりあえず礼を言っときます。ありがとう」


師匠「礼を言うのはこちらです。ありがとう」

大魔道「…ありがとうございました」


真剣士「手術ってことだよな…痛いのか?」

大魔道「眠ってる間に終わりますよ。目覚めたら…あちら側です」

真剣士「わかった…」

 
大魔道「睡眠魔法…」パァッ

真剣士「…っ」


クラクラッ…ドサッ…


大魔道「…魔力の供給を始めます。本当に感謝します、現代の"英雄剣士"さん…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・ 
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 現代国・東都 】


ガタンガタン…ガタンガタン…


真剣士「…ん?あれ…俺、今何してたっけ」

…ポチポチ…カチャカチャ…


真剣士「あ…そうだ!あいつ…、早く連絡くらい寄こせよ…」


ドンッ!!!

真剣士「うわっ!」

 
???「ほらぁ、きちんと前見ないと危ないよ!」クスッ


真剣士「いっつ…、黒髪乙女か…。さっきメール送った所だろうが!返事返せよ!」

黒髪乙女「そんなの来てないし、ずーっと私は声かけてたじゃない!」

真剣士「うそつけ!」

黒髪乙女「嘘じゃないし!」

真剣士「…まぁいいや。んで…何の用?」


黒髪乙女「今日の約束、覚えてる?」

 
真剣士「覚えてるよ。帰りに、ケーキ食うんだろ?」

黒髪乙女「やったー!」

真剣士「今月の小遣い少ないっつーに…」ブツブツ


黒髪乙女「ねっ、そうだ…昨日のテレビ見た?」

真剣士「特番のやつ?」

黒髪乙女「うん、それそれ!謎の爆発が東都の夜空を切り裂いたとかっていうの!」

真剣士「あんなのただのCGだろ」

 
黒髪乙女「でも、本物っぽかったよ?」

真剣士「中から人が飛び出してる姿が確認!とか、ありえねーから」ハハハ

黒髪乙女「そうだよね~…。4人とか飛び出してたし、やっぱりヤラセかなぁ」

真剣士(あれ…4人とか詳細、書いてあったっけ?)


黒髪乙女「う~ん…」

真剣士「まぁ、ヤラセだよヤラセ」

黒髪乙女「でも、そういう事ばっか言ったら夢がないでしょ!」

真剣士「あのな…」

 
黒髪乙女「でも、もし本当だったらその人たちは何をしに来たんだろうね」

真剣士「…東都の観光」

黒髪乙女「何で…」


真剣士「どうでもいいよ…つーか、学校始まるって!」

黒髪乙女「あ、いけない…走ろ!」ダッ

真剣士「あ、おい!待て!」


タッタッタッタ…

 
コケッ…ドシャッ!!

真剣士「…って…」

黒髪乙女「えーっ!何で転んでるの!」

真剣士「…」グスッ…ポロッ…


黒髪乙女「…え、泣いてるの?どこかぶつけたの?」アセッ

真剣士「…」ポロポロ

黒髪乙女「真剣士…?」

真剣士「転んで痛かったんだ…なんて!俺はウソ泣きが得意なんだよ」ゴシゴシ


黒髪乙女「…?」

真剣士「いいから学校行くぞ!遅れる!」ダッ

黒髪乙女「あっ、ずるい!」ダッ

タッタッタッタ…

 
ソロソロ…

…………スッ…


大魔道「やはり、記憶は失われていたようですね」

師匠「これで…見納めですか。やはり…寂しいものですね」

大魔道「…僕たちの役目は本当にこれで終わりました。帰りましょう…僕たちの世界へ」

師匠「そうですね…」


大魔道「…」パァッ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

バチバチバチッ!!ドォォンッ!!!


タッタッタッタ…

真剣士「!」ピタッ

黒髪乙女「きゃっ!な、何…今の光…」ピタッ


真剣士「さ…さぁ…」

黒髪乙女「…」


真剣士「まぁ…とりあえず、学校遅れるぞ!」

黒髪乙女「……、そうだった、いっそげ~!」

 
真剣士(…大魔道、師匠。いたのは分かってたよ)

真剣士(俺に流れる血は、全てを忘れるのは許されなかったらしい)

真剣士(また…きっと会えるよな)

真剣士(…)


真剣士「まぁ…それでも、転んだ拍子に黒髪乙女の顔見て涙流すとは情けない…」トホホ

黒髪乙女「…何か言った?」

真剣士「はは、いや何でも」


黒髪乙女「?…変な真剣士」

 
真剣士「…また、きっと会おうな…みんな!」

 
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・・・・
・・

 
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――――【 魔 界 】


姉剣士(師匠)「それにしても、平和が戻って本当によかった」

大魔道「そうですね」

姉剣士「これで、私たち姉妹は傭兵稼業に戻れます」

大魔道「妹さんは、もう少しで戻ってくるんでしたっけ?」

姉剣士「ようやく前線も落ち着きましたからね」


大魔道「"姉妹堂"、久々の営業開始ですね」


姉剣士「…大魔道さん」

大魔道「はい?」

 
姉剣士「…今更ですが…あなたは一体何者ですか?」

大魔道「…」

姉剣士「私たちが知らない技術や、戦術。知るはずのない英雄の歴史…貴方は一体…」

大魔道「気になり、ますか」


姉剣士「…気にならないといったら、ウソになります」

大魔道「貴方なら…いいでしょう。僕は"魔王"の血を引きし者、です」

姉剣士「!」


大魔道「…幻王は、その魔王の血を別に引いた…いうならば親戚でしょうか…」

姉剣士「そっ…そんな…」

 
大魔道「…僕は数千年…この世界を生きてきました」

姉剣士「数千年…ですか」

大魔道「愛する者が死に、僕に流れる魔王の血は、僕が死ぬ事を許さなかった」

姉剣士「…」


大魔道「辛かったですよ。ですが、こうして…再び"友の力"を見れました」

姉剣士「友の力…ですか?」

大魔道「はは、僕がまだ子供の時、2代目英雄剣士と学校の友達だった時代があるんです」

姉剣士「と…突拍子もない話ですね…」

 
大魔道「そこから彼の子、彼が関わった世界を救った人々の助けに回ってきました」

姉剣士「だから…あんなに詳しかったんですね」

大魔道「そして、魔界の扉が閉じられ…もう二度と友と会えなくなってしまった…と思っていました」

姉剣士「…」

大魔道「不謹慎ですが…僕は、再び英雄剣士の血を引く子孫と出会え、正直…嬉しかった」

姉剣士「そんな…こと…」


大魔道「僕はいつ死ねるのか。僕の使命はまだ終わらないのか。僕自身、どうすればいいか分かりません」

姉剣士「…」

 
大魔道「ですが僕がいる理由は…、いつの時代も一緒です。僕を信じてくれた人…それを支える事」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
少年剣士「中級魔道、ありがとう!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大魔道「…僕を最後まで信じて、僕を最後まで支えてくれた人がいた。あの一言がなければ…僕は…第二の魔王に…」


姉剣士「大魔道さん…良かったですね。真剣士さんも…その人のように信じてくれましたし」

大魔道「…真剣士さんは、彼とは性格は違いますが、やはりどことなく…似ていました」


姉剣士「…大魔道さんは、これからどうするんです?」

大魔道「僕ですか…また、隠遁生活に戻りましょうかね」ハハ

 
姉剣士「…とはいっても、人並みにお腹がすいたりはするんですよね?」

大魔道「まぁ…死ぬ事はなくても…、痛みや辛さはそのままですよ」

姉剣士「じゃあ、うちで働かないですか?」


大魔道「え?僕がですか?」

姉剣士「姉妹堂のサポート…とか」

大魔道「いや…でも」


姉剣士「私たちが元気なうちですけど、亜人同士で寿命も長いですし…お世話くらいできますよ」

大魔道「…」

姉剣士「妹もきっと喜ぶでしょうし、強力な仲間ですからね」クスッ

 
大魔道「姉妹剣士の、仲間…ですか」

姉剣士「無理にとはいいませんが、給料も安いですしね」

大魔道「…少しだけ、お世話になりましょうか」

姉剣士「…はいっ」


大魔道「それじゃ、とりあえず妹剣士さんにでも挨拶しに行きましょうか」


姉剣士「ですね♪」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

―――現代。

魔法という存在が、昔はあったらしい。


だが、ふと気づくと魔法よりも"錬金科学"が世界を支配していった。

自らの体力を使わずに魔法と同等の利便をもたらしたこの技術は、あっという間に世界に広がった。


今日という日、

スイッチ一つで明かりが点く。
スイッチ一つで水が出る。
スイッチ一つで火が吹く。

当たり前のようで、不思議な技術。気がつけば、人の歴史から"魔法"は忘れ去れていった。

 
しかし、この世に残る"魔法"という言葉。

その真理、真実に…気づいている人は、少なからずいる。


…君が住んでいる世界が"全て"だと思っているのなら、それは間違いだろう。

なぜなら、壁を隔てた先に…もう1つ、"魔界"に生きる者たちがいる。


ウソだと思うなら、呼んでみるといいかもしれない。


―――そうすれば、ほら…どこからともなく…君を呼ぶ声が…

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
大魔道「さぁ、貴方が…英雄を血を引く者です。僕と一緒に魔界へ行きましょう」

…ニコッ

 
【E N D】

 
■あとがき

本編が終了し、ひとまずはいつも通りのあとがきです。

(今回は少しだけ長めに書きます)


剣士編の第5部目となる、真剣士編を読んでくださった方々、ありがとうございました。

現行にて抜けなどが目立ち、修正が多かった事など、失敗したなと思うことも多々あります。

ですが、こうして終われた事、皆さんへ感謝致します。


今回の作品は、シリーズでいえば過去の作品をモチーフにし、遠い未来でおきた集大成の作品である、と思います。

かつ、今回もシリーズ共通で過去の作品を知らなくても読める作品に仕上げたつもりです。

 
…少年剣士の冒険学校、その義弟と戦争、冒険酒場と東方編、少年剣士の息子、そして現代編。

剣士シリーズを通し、現状では"英雄剣士"の物語としてはこれで完結になります。


最初から今まで付き合ってくださった方々…本当に感謝致します。

また、1度でも自分の作品を見て頂いた方々、

様々な意見、感想があるとは思いますが、全ての人へ…心よりお礼を申し上げます。


ありがとうございました。

P.S最後に修正分を上げ、過去作品のまとめをし、最後となります。

 
【 修 正 内 容 】 
■①
>>222の「白剣士は、幻王を倒せると…思う?」の部分

 
黒髪乙女「…」

師匠「…」


真剣士「はぁ…」

黒髪乙女「ねえ、真剣士」

真剣士「ん?」

黒髪乙女「真剣士は、幻王を倒せると…思う?」

真剣士「知らん」

黒髪乙女「知らんって」


真剣士「…そりゃ、やれる事なら倒したいと思うよ?」

師匠「…」

真剣士「こんな体験滅多にできないし、平和の為に戦うとか誰しも1度は考える事じゃん?」


■②
>>392の後に書き込みが抜けていた部分

>>392 >>412 >>393

と続きます。


■③
>>387
クレイオス『…大魔道に任せられるなら、安心にこしたことはないが』

>>394
大魔道『クレイオスさん、もしかしてお酒飲ませました?』

>>396
真剣士「く、クレイオスさんまで!」

>>429
真剣士「クレイオスさん…」

>>430
真剣士「大丈夫ですか、クレイオスさん!』


※クレイオスがクレオイスに名前が変わってました。
ストーリーには問題はありませんが、一応の為です。

【冒剣士シリーズ】
冒剣士「…冒険酒場で働くことになった」
冒剣士「…冒険酒場で働くことになった」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1375843192/)
冒剣士「僕は最高の冒険者になる」
冒剣士「僕は最高の冒険者になる」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1377051292/)

【白剣士シリーズ】
白剣士「毎日が平和なこと」
白剣士「毎日が平和なこと」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1378431450/l50)
白剣士「明日が平和なこと」
白剣士「明日が平和なこと」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1379292369/)
白剣士「未来が平和なこと」
白剣士「未来が平和なこと」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1379983305/)

【真剣士編】
真剣士「英雄の…血…?」
真剣士「英雄の…血…?」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1383997828/l50)

 
 
 
以上、"剣士シリーズ"のまとめです

読んでくださった方全てに、心より…感謝致します。ありがとうございました。

>>463
遅れながら、指摘有難うございます。

>>477
読んでいただきまして、有難うございました。

剣士シリーズ完結おつ

魔法が常識から非常識になった科学が発達した状態から
何があって300年程度で内臓はちゃんと火魔法で処理したか?と
当たり前のように話す竜騎士の時代になったのか気になるな

超大作乙でした
冒剣士、白剣士、真剣士と確かに良かったけど、やっぱり青年剣士(2代目英雄)が忘れられないな。
いつか、彼の話をもう一度読みたいなと思った

乙乙
真剣士の時代と大家魔王の時代とは同じ頃なのかな

勇者パーティーと魔王が現代に飛ばされてアパート暮らしするって奴は違う世界観なんかな?

竜騎士のあたらしいのが出てたの気づいてこっちの存在にも気づいた!
リアルタイムで一番最初からずっと追ってきたけど、ずっと見てて飽きなかったよ

次は構想の段階の竜騎士の塔の話ですかね?

竜騎士の新しいのってなんてタイトル?

冒剣士と女メイジがどうなったのか気になるわ。できれば書いて欲しいな~(*^_^*)

乙女ちゃんと剣士くんはどうなったんだろうな?

皆さま、沢山のご感想等、本当に…嬉しく思います。有難うございます。
質問が多かったようなので、少しだけ答えさせて頂こうと思います。

>>549
初代英雄剣士~3代目>竜騎士>真剣士
の進みなので竜騎士編よりも更に時代の進んだ"現代"が今回の舞台でした。

>>555 >>556
勇者魔王は全く異なった世界としております。

>>557 >>558
竜騎士の新たな冒険はもうすぐだと思います。楽しみにして頂ければ嬉しいです。

>>554 >>561 >>563
"剣士シリーズ"の物語としては完結致しました。が、短編物で(シリーズそれぞれの後日談的なもので)
再び彼らは冒険に行くかもしれません。


それと、いつもの報告を忘れておりました。
新たな作品が描かれる場合は、こちらと竜騎士等に報告いたします。

それでは、ありがとうございました。

みれるかわからないけど
竜騎士「田舎に飛ばされ自給自足生活」
竜騎士「田舎に飛ばされ自給自足生活」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1379945614/)
竜騎士「孤島に残されサバイバル生活」←まとめからのひっぱり
http://ssin.blog.fc2.com/blog-entry-3280.html

>>567 簡易なまとめ等、ありがとうございます。

そして、皆さま有難うございます。

少し間をおきましたが、

竜騎士「空を翔けて冒険生活」
竜騎士「空を翔けて冒険生活」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1386507003/)


新編を開始したことをご報告致します。

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