白剣士「毎日が平和なこと」(335)


【少年剣士シリーズ】
少年剣士「冒険学校に入学します!」
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少年剣士「冒険学校で頑張ります!」
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少年剣士「冒険学校の休暇です!」
少年剣士「冒険学校の休暇です!」 - SSまとめ速報
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【幼剣士シリーズ】
幼剣士「待っていて下さい・・僕が・・必ず・・!」
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幼剣士「僕には夢が出来ました」
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青年剣士「運命ということ・・」
青年剣士「運命ということ・・」 - SSまとめ速報
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【冒剣士シリーズ】
冒剣士「…冒険酒場で働くことになった」
冒剣士「…冒険酒場で働くことになった」 - SSまとめ速報
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冒剣士「僕は最高の冒険者になる」
冒剣士「僕は最高の冒険者になる」 - SSまとめ速報
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上記作品のシリーズものですが、シリーズを読んでない方でも楽しめる作品(新シリーズ)でスタートします

 
光があれば、闇がある

表があれば裏がある

俺は、どっちかというと表舞台には立てない人間だった


まぁ…確かに普通に友人を作り、遊び、学校に通い、不自由が少ない生活を送ってたと思う


学校を卒業後、俺はのんびりと近くの店でバイトをして過ごし

それが当たり前の何もない日々…それが俺の日常だった

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【中央大陸・中央国】


…ドサッ!

白剣士「お疲れさまでしたー。あ、今日の配達分これで終わりなので…先にあがりますね」

店長「はいよー。白剣士くん、また明日な」

白剣士「はーい」


…トコトコ

白剣士「今日も仕事終わりっと…」

 
―――バイトが終わると、考えるのは今日の夕食

そして明日のバイト

それが毎日毎日、明日も明後日も、ずっと続くのだろうと…


"思っていた"

 
…パカラッパカラッパカラッ


白剣士「…ん?」

???「くっ…」ヨロヨロ

白剣士「…あの男、あのままだと馬車に轢かれるぞ!おーい!」


???「…」フラフラ

白剣士「お、おい!あんた!」


…パカラッパカラッ!!

 
白剣士「くそっ!」

…タタタタタッ!!


馬車商人「なんだお前ら、危ないぞ!どけ!」

白剣士「危ないのはお前だっつーの!」


ダダダダッ…ダキッ……ズザザ…ダァン!!

白剣士「うおっ!…ててて…」

???「…」


馬車商人「バカヤロー!!あぶねえだろ!」

 
…パカラッパカラッパカラッ……カラッ……

 
白剣士「お前も人見たら止まれっつーの!ったく…」チラッ

???「…」

白剣士「おい、しっかりしろよ。おい!何だこいつ…」

???「…」


白剣士「…っち」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【白剣士の自宅】


???「…」ハッ

白剣士「…」

???「…」ガバッ


白剣士「…お」

???「ここは…どこだ」


白剣士「ああ…気づいたか…ここは俺の家だ。あんた、馬車に轢かれそうになったんだぜ?」

 
???「…」

白剣士「…あんた名前は。命の恩人に名前くらい教えてくれてもいいんじゃねーの?」

剛闘家「…剛闘家だ」


白剣士「ふーん。俺は白剣士。見ろよ、お前のせいで腕擦りむいちまっただろ!」

剛闘家「…それはすまなかった」

白剣士「で、あんな所で何でフラフラしてたんだよ」


剛闘家「…今、何時だ?」

白剣士「さっき16時になったとこだけどな、お前、人の質問に…」

 
剛闘家「…俺はこんな事をしてる場合じゃないんだ。早く行かなければ!」ググッ

白剣士「お、おいおい!無理すんなって」

剛闘家「早く行かなければ…」

白剣士「どこに行くんだよ!」


剛闘家「…冒険酒場……」

…ガクッ


白剣士「…はあ~……、何するかしらねーけど、自分が倒れてちゃ世話ねーな…」

剛闘家「…」

白剣士「お前な……って、聞いちゃいねえか。はぁ~……」

 
…ヨイショッ

白剣士「思ったよりも軽いんだよお前…どうせ暇だし、連れてってやる。感謝しろよ?」

剛闘家「…」

白剣士「…ふん」



…ガチャッ……バタンッ…


That's where the story begins!
―――――――――――――
【白剣士「毎日が平和なこと」】
―――――――――――――


第四部、白剣士編がスタート致します。
が、従来と全く異なったテイストで、ストーリーなどが進むとわかりますが…かなり複雑な表現も絡みます。
今までのような"冒険"に縛られるのではないこと、複雑なことなど、今までのものとはかなり違う作品に仕上がると思います。

一度、今作のような展開で作品を仕上げてみたかったので、どうぞお付き合い頂ければ幸いです。

新作おつ

白剣士が白騎士に見えてポポロクロイスの白いフルプレート着たメタボ想像しちまった(´・ω・`)

皆様ありがとうございます。
>>14 そのネタがわからなかった(A´ω`)

 
…コンコン

店員「はーい、どうぞー」

…ガチャッ

 
白剣士「えーっと…」

店員「お泊りのお客様ですか?」

白剣士「あ、いや違う。こいつが用事あるっつーもんで…」


剛闘家「…」

白剣士「おい、起きろ。おい!」

剛闘家「…」

 
店員「…大丈夫ですか?」

白剣士「悪いな…そこの椅子に寝かせといていいか?」

店員「ええ。いいですが…」

白剣士「よい…しょっと」


…ドサッ


白剣士「ふいー…いくら軽いっつっても体には負担がかかるな」

店員「はは、休憩がてら何かお飲みになりますか?」

 
白剣士「そうだな…何か軽くくれ」

店員「わかりました…お飲み物はジントニック等でいいですか?…お名前は何とお呼びすればいいでしょうか?」

白剣士「白剣士だ。…酒は苦手だからな…、お茶でいい」


店員「白剣士さん、結構飲みそうな感じするんですけどね?」


白剣士「親父と一緒なんだよ。気にするな」

店員「あ…すいません出過ぎました」


白剣士「気にするな」

 
店員「…どうぞ」コトッ


白剣士「ありがとよ。しかしなんだ、冒険酒場って相変わらず雰囲気が苦手だぜ」

店員「今じゃすっかり冒険者たちの集会所ですからね。一般人には少し重い気もします」

白剣士「…ああ」


…ガタガタッ!!…ゴンッ!!

剛闘家「って…、ん…」


白剣士「お、気づいたか。ほらよ、冒険酒場に連れてきてやったぜ」

剛闘家「!」

 
店員「大丈夫ですか…?」

剛闘家「白剣士殿、面目ない。そ、それより…ここに英雄剣士殿がいると聞いてきたのだが!」

店員「…あぁ」


白剣士「…」


剛闘家「すぐにクエストを発注したいのだ!頼む!」

店員「オーナー…いえ、英雄剣士なら既に酒場も引退し、もうここにはいませんよ」

剛闘家「…何…だって…」

店員「ご期待に添えず、申し訳ありません…」

 
剛闘家「それでは一体どうすれば…」ガクッ

店員「どうしたのですか?お話なら聞きますよ?」

白剣士「…言えよ。そこまで言っといて、何も言わないのは許さないぜ?」


剛闘家「…私は"悠久国"の王国に仕える騎士団の一人なんだ」

白剣士「はあ!?」

店員「悠久国…、果ての国ですね」

白剣士「待ってくれよ、遠すぎるだろ!ここから何キロ離れてると…」

 
店員「…そうですね。珍しいことではないですよ。それで…?」

剛闘家「ああ…、そこの…姫様が誘拐されたのだ。それで…英雄剣士殿を頼ってきたのだが…」

店員「…そうでしたか」


白剣士「…よ」ボソッ


剛闘家「…へっ?」

店員「今、なんて?」

白剣士「ん…ああ、すまん何でもない。続けてくれ」

 
剛闘家「それでは…どうすればいいのだ…」ハァ

店員「そいつらからの要求とかはあるんですか?」

剛闘家「…500億ゴールド……」

店員「ごっ…」


剛闘家「もちろん、そんな金はない。それを断るのを分かってて、もう1つ…王政の交代を要求してきた」

店員「王政の…交代」

剛闘家「いうなれば、王様を自分たちの親玉と交換しろということだな」

店員「最初からそちらが目的だったってことですね」


剛闘家「そうなるだろう…。公にできるはずもなく、ここへと来たのだ…」

 
白剣士「…ふーん」


剛闘家「頼みの綱もここで途切れたか…」

店員「…申し訳ないです」


剛闘家「…英雄剣士殿と、連絡をとることは出来ないのか…?」

店員「今は行方が分かりません。恐らく、どこか遠い地で旅をしているかと…」

剛闘家「…そうか」

店員「新しくオーナーになった聖剣士さんもいますが彼は今、軍の任務にあたっていて留守なんです」


白剣士「ボロボロじゃないか」

 
店員「そう…ですね。元々は駆け込みのクエスト受諾も行っているのですが、日が悪いので…」

剛闘家「…ありがとう。この問題は公にはしないでくれ。こっちで何とかするように努力する」

店員「ご期待に沿えず、本当に申し訳ありません」

剛闘家「いや…いいんだ」シュンッ


白剣士「…」

剛闘家「それでは俺は戻らなければならないからな…。これで失礼する」

白剣士「…」


…ググッ……ガタンッ!!

 
剛闘家「…っ」

店員「だ、大丈夫ですか!?」

白剣士「何だか知らないが、体力が限界なんだろ。少し休んでけばいいんじゃねーの」


剛闘家「そんな…暇はない…姫様にもしもの事があったら…!」

白剣士「…」


…ドサッ


店員「あ…」

白剣士「言わんこっちゃねえじゃねえか。しゃあねえ、俺の部屋ででも休ませるよ」

店員「だったらうちの部屋を使ってもらっても…」

 
白剣士「どうせ金がねーだろうよ。さすがに見ず知らずのやつに、金出すほど俺はバカじゃねぇ」

店員「…」

白剣士「んじゃあな。飲み物ありがとよ」


…ガチャ……バタンッ


店員「自分の部屋を使わせるほうが、よっぽどだと思うんだけどな…」ハハ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【白剣士の自宅】


剛闘家「…む」パチッ

白剣士「目覚める度に場所変わってたらビックリするだろ?」

剛闘家「また手を煩わせてしまったな」


白剣士「気にするな」

剛闘家「…」

白剣士「つか、休むなら休んでから帰れよ。目の前で倒れてちゃ放っておけねーんだよ」

 
剛闘家「…優しいんだな」

白剣士「そういうことじゃねーよ!それが当たり前だろうが!」

剛闘家「…白剣士殿の言うとおりだな。少しだけ、休ませてもらってもいいか?」

白剣士「…勝手にしろ。食い物はそこのテーブルにあるのしかねえ。不味くても文句いうな」


…ムクッ

剛闘家「これは…白剣士殿が?」

白剣士「一人暮らしも長いからな。お手のもんだ」

剛闘家「…」

 
…カチャカチャ……パクッ…


剛闘家「…」

白剣士「…」

剛闘家「…」

白剣士「…ん?おい、どうした」


剛闘家「…」

白剣士「……おい!不味いなら食わなくてもいい……」

剛闘家「…」ポロポロ

 
白剣士「…どうしたんだよ」

剛闘家「…美味いんだ…美味い…」

白剣士「泣くほど美味いってか?」


剛闘家「今頃…姫様はどんな生活をしているのか…考えるだけで…涙が出る…」

白剣士「…」

剛闘家「俺は平和な場所で、こんな美味い料理を食べて…寝て…一体何をしているのだ…」


白剣士「バカか」

…ゴツッ

 
剛闘家「いてっ!」

白剣士「お前な、姫を助け出したいんだったら、自分自身をまずなんとかしてから…しっかりしてからだろうが」

剛闘家「…」

白剣士「お前自身が倒れてちゃ世話ないだろって言ってるだろ。忠誠心は立派だが、ちとお前はアホみたいだな」


剛闘家「…」

白剣士「美味いと思うなら食って、休め。それからだろうが」

剛闘家「…そうか、そうだな…では…頂くとするよ…」


…モグモグッ……ゴクゴクゴク…カチャッ…

……パクパクパク…

 
白剣士「…おーおー」

剛闘家「…」

ガツガツ…パクパク………フラッ


白剣士「おー……お?」


…ドサッ

剛闘家「…」

白剣士「何だ、今度はどうした」

 
剛闘家「…」グーグー

白剣士「ね…寝てやがる……マジかこいつ…」


剛闘家「…」グーグー
 
 
白剣士「…王族の守人ってこんな感じなのか……?だとしたらバカばっかだな…」

剛闘家「…」スヤスヤ

白剣士「……あ、布団1つしかねえよ………」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【次の日・朝】


…チュンチュン

剛闘家「…」

白剣士「おい、朝だぞ」


剛闘家「…」ユサユサ

白剣士「…おい!朝だっつってんだろ!」

剛闘家「…ごほっごほっ」

白剣士「…あ?」

 
剛闘家「…」ハァハァ

白剣士「…お前、まさか」

…スッ


白剣士「熱…あるな。お前な…台所で寝た俺が風邪ひきそうだっつうに…」

剛闘家「…」ハァハァ

白剣士「…ふん。まあいいや、おい、聞こえるか?」

剛闘家「…む……」

 
白剣士「俺は今からバイトがある。無理せずそのまま寝てろ、いいか?」

剛闘家「…し…しかし…」ゴホッ

白剣士「い・い・な!?」


剛闘家「…わかっ…た…」

白剣士「…よし。それなら良い。俺はバイト行ってくるぞ」

剛闘家「…」ハァハァ


…ガチャガチャッ……バタンッ…カチャンッ


剛闘家「…」ハァハァ

 
……ガチャガチャッ…バタン


剛闘家「…?」ハァハァ

白剣士「忘れてた。今日は涼しいしな、出しといても大丈夫だろ」

…ゴソゴソ……カチャッ


剛闘家「…」

白剣士「熱出してるとは思わなかったから固形物だが、ここに飯置いとくぞ」

剛闘家「…わか…った…」

白剣士「んじゃあ、また後でな」


トコトコ…ガチャッ……バタンッ…

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ガヤガヤ

店長「一生懸命でいつも助かるよ。ありがとうね」

白剣士「いえ、仕事っすから」

店長「それとー…お願いなんだけど。あのさ、今日少しだけ残業できないかなー?」

白剣士「残業ですか?」


店長「本当は来る予定だった他のバイトくん、1人いなくてさー」

白剣士「…」

 
店長「バイト代弾むからさ…だめかな?」

白剣士「…別にいいです…とは言いたいんですが、友達が熱出して今、うちに厄介になってるんですよ」

店長「あー…そりゃ大変だね…」

白剣士「…申し訳ないです」

店長「いやいや、気にしないで。友達大事だからね」


白剣士(友達でもねーんだが…)


店長「それじゃ、今日はあがってもらってもいいよ。ありがとね」

白剣士「はい、次の時は手伝うのでまたよろしくお願いします」ペコッ

 
白剣士「では、お疲れっす」

…タッタッタッタッタ……


店長「あの子から"友達"なんて聞いたの、長い付き合いだけど初めてかも…」

バイト「そうですね、僕も聞いたことないです」

店長「うん、ま!友達は大事!今日はバイト1人だけだから、残業しっかりね!」

バイト「白剣士、恨むぞ…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【ポーションショップ】


店員「いらっしゃいませー」

白剣士「あー…風邪薬あります?」

店員「どのようなものですか?」

白剣士「どのようなって?」


店員「熱風邪、咳風邪、鼻風邪など、症状にあわせて…」

白剣士「熱と咳なんすけど」

 
店員「それでは、その2つの調合ポーションでよろしいですか?」

白剣士「おけっす」

店員「少々お待ちください」

…タッタッタ


白剣士(俺は何してんだか…。見ず知らずの奴にここまでやる義理はねーっつーのに)


タッタッタ…

店員「それではこちらのポーションで、1980ゴールドになります」

白剣士(…たけぇ!)

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

……ガチャガチャッ…バタン

白剣士「おーい、帰ったぞ」

剛闘家「…」スゥスゥ

白剣士「…寝てたか。分かってたが、なんか複雑だな」


…ユサユサ

剛闘家「…」ハッ

白剣士「薬と体に良いもん買ってきた。飲め、食え」

剛闘家「…すまない…」

 
白剣士「気にするな。それより、起き上がれるか」

剛闘家「…」ググッ

白剣士「あー無理すんな。手貸してやる」


…スッ……グッ

剛闘家「…ありがとう」

白剣士「気にするなっつーに。えーとな…果物とお粥と、蜂蜜とか色々と栄養ありそうなもんと、とりあえず薬」

剛闘家「…はは」


白剣士「あん?なんか文句あんのか」

 
剛闘家「いや…俺はここで何をしているのかと思ってな」

白剣士「俺だって何でこうなってるか聞きてえよ。いいか食え」

剛闘家「そうか…では貰うとする…よ」


…カチャッ…ズズッ……モグモグ…


白剣士「んで、お前…シャワーとか浴びる?」

剛闘家「…におうか?」クンッ

白剣士「少なからず。風邪引いてるみてーだし、危ないとは思うが。体拭くか?」

 
剛闘家「む…ううむ…」

白剣士「どうしたよ?」

剛闘家「シャワーで…お願いできるか…?」

白剣士「大丈夫か?」

剛闘家「あ、あぁ大丈夫だ」


白剣士「んじゃ、準備しとくわ」

剛闘家「…すまないな」

 
…パサッ……ジャーーーッ…


剛闘家「…」


…トコトコ

白剣士「うっし、これで大丈夫だ。狭いけどな、浴びたら寝ろよ」

剛闘家「うむ…おっと…」ヨロッ


白剣士「おっと…大丈夫か?」

剛闘家「大丈夫だ…」

白剣士「シャワーで倒れんじゃねーぞ?」

 
…フラフラ……

白剣士「お前、やっぱり体を拭くだけのほうが…」

剛闘家「大丈夫だ…」


…ガチャッ…バタンッ…パサッ…

……カチャカチャッ……シャアアアッ…パチャッ…


白剣士「…大丈夫かー」

剛闘家「だだ、大丈夫だ!」

白剣士「そうか。じゃあ俺は買ってきた本でも読んで待ってるわ」

剛闘家「わかった…」

 
…シャアアッ……

…ペラッ

白剣士「…ふーん、この人の新作小説も中々…」


…シャアアッ…

…ペラッ

白剣士「…」


…シャアアッ……ガタンッ!!

白剣士「…」ビクッ!

 
…シーン

白剣士「…おい、剛闘家」

剛闘家「…」

白剣士「おい!」

剛闘家「…」


白剣士「中でぶっ倒れやがったな…。っち、裸の男介抱するほど俺は色物好きじゃねーぞ…開けるぞ!」

…カチャッ…

 
剛闘家「…」

白剣士「あーあー、見事にぶった…お…お?」

剛闘家「…」

白剣士「…っち」


剛闘家「…」

白剣士「はぁ…おい、後から文句いうなよ?」

剛闘家「…」

白剣士「俺は言ったからな。……よっこらしょっと」グイッ

剛闘家「…」

 
白剣士「…」チラッ

剛闘家「…」

白剣士「…ふん」


…カチャンッ…パサッ…バタンッ……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…チュンチュン

剛闘家「…!」ガバッ

白剣士「…」グーグー


剛闘家「…そうだ、俺は風呂場で倒れて…」

白剣士「…ん」パチッ

剛闘家「ま、まさか……」

白剣士「…お、起きたか」


剛闘家「白剣士殿…もしかして…と、聞きたいのだが…」

 
白剣士「…ああ、お前が…」

剛闘家「…」ビクッ

白剣士「"女"だったなんて気づかなかったぜ…参ったね」

剛闘家「…」


白剣士「ずっと男ばっかりだと思ってたぜ…口調やら態度やら…」

剛闘家「…」

白剣士「道理で体が軽かったり、まぁ弱々しい面があったりしたとは思ったよ」ハァ

剛闘家「お…俺は…」

 
白剣士「ああ、まあいいよ。風呂場覗いたことも謝る。んなことより、体は大丈夫なのか」

剛闘家「そ、それは大分楽になったが…」

白剣士「どれどれ…」スッ

…ペタッ


剛闘家「…っ」

白剣士「お、熱も下がってきたな。薬が効いて良かったぜ」

剛闘家「…聞かないのか?」

白剣士「ん?何を?」

剛闘家「なぜ男のふりをしているのか…とか色々だ」

 
白剣士「そりゃまあ、気になる所ではあるが……、聞かれなくないこともあると思ってな」

剛闘家「…」

白剣士「つか、まだ寝てろよ。今日もバイトあるんだが、どーせお前まだ本調子じゃないんだろ?」

剛闘家「ま、まあそれは…そうなんだが…」


白剣士「それなら寝てろ。ぶり返しほど酷いもんはねーしな」

…トコトコ…ゴソゴソ

白剣士「これ薬な。んじゃ、俺はバイトいってくるぞ」

…トコトコトコ……ガチャガチャ


剛闘家「…ま、待ってくれ!」


白剣士「…あん?」

剛闘家「もう1つ…隠していたことがある…」

白剣士「はぁ…なんだよ?」


剛闘家「俺…いや、私の本当の名前は"悠久姫"。悠久国の姫…王女とは私のことなのじゃ…」


白剣士「…は?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

白剣士「で、説明してもらおうか、姫様とやら」

悠久姫「…姫と知ってその態度もいかがなものかと思うのだがな…」


白剣士「…追い出すぞ」


悠久姫「実はな、この姿は我が部下の一人である剛闘家の姿と交換した姿なのじゃ」

白剣士「…自分に素直でよろしいことで」


悠久姫「賊に襲われた時、我が国のウィッチが変化魔法を掛け、今はこの姿という訳じゃ」

白剣士「…はあ、なるほど。んじゃその剛闘家が姫になってるのか?」

 
悠久姫「そうなるな…」

白剣士「つか、変化魔法でも女のままってことは、剛闘家も女ってことだろ?」

悠久姫「…その通りじゃ。私の子供からの友人で、私の身代わりになってくれたのだが…」

白剣士「なるほどな。そりゃ心配するわけだ」


悠久姫「…」シュンッ


白剣士「んで、お前写真とか持ってないの?本当の姫の姿とか、見たいんだけど」

悠久姫「写真ならあるぞ…」

ゴソゴソ…スッ


白剣士「ふむ…」

 
悠久姫「…どうじゃ?」

白剣士「なんつーか、姫らしい姫だな。金髪で…立派な王族の服着て…」

悠久姫「…」


白剣士「でも剛闘家と違って、か弱さが目立つっつーか…、変化の術どうなってんのこれ?」ギュッ

悠久姫「あいたたたっ!頬をつねるでない!」

白剣士「あ、つい」パッ


悠久姫「全く…なんてヤツじゃ…」

白剣士「ははは、許せ」

悠久姫「笑い事ではない!」

きりのいいところまで…と思っていたら更新量が久々に50近くに…。
本日はここまでです。ありがとうございました

ありがとうございます(A´ω`)

 
白剣士「…ま」ポンッ

悠久姫「うむっ?」

白剣士「姫なら姫なりに、しっかり休むことだ」

悠久姫「わ、わかっておる!子供扱いするな!」


白剣士「まんま子供だろうが…」

悠久姫「それと、相談なのじゃが…」

白剣士「…ん?」


悠久姫「もう、私はこの国に用事はない。今日休めば、きっと明日には体力も戻るだろう」

 
白剣士「まあ、そうかもな」

悠久姫「お主、白剣士…我が国へ来る気はないか?此度の謝礼をしたい」

白剣士「…やだ」

悠久姫「即答!?」


白剣士「だって今危ない状態なんだろ?そんな国へ行ったら命落としかねないじゃん」

悠久姫「そりゃそうなんじゃが…、一応均衡状態ではあるし…」

白剣士「それに面倒くさい」

悠久姫「めんど…」


白剣士「なんつうの、俺には俺の生活があるんだよ」

 
悠久姫「むう…確かに…」

白剣士「バイトやって、本読んで…ご飯食べてさ!」

悠久姫「…」

白剣士「次の日もまたバイトして…、ご飯食べて…」

悠久姫「…」

白剣士「…また、寝て……起きて…、バイト…」


悠久姫「…」

白剣士「あれ?俺って……何楽しくて生きてるんだ?」

 
悠久姫「…知らぬよ」

白剣士「毎日毎日…、同じ事の繰り返しじゃん…」


悠久姫「まぁ…もう1度聞く。来てみる気は…ないか?」


白剣士「…ちょっと、1日考えさせてくれ」

悠久姫「明日までは世話になる。考えておいてくれ」

白剣士「…」


…ガチャガチャッ……

悠久姫「どこへ行くのじゃ?」

白剣士「…バイトだって。夕方には戻る」


…バタンッ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…トコトコ

白剣士(…そういや俺、本当に何を求めて生きてるんだろ)チラッ


子供「ママー!待ってよ!」

母親「はいはい、待ちますよ」


白剣士(…何か愛が欲しいのか…恋人…?いや…違うな…)


冒険者A「今度俺、東区の遺跡調査隊に抜擢されたぜ!」

冒険者B「…はあいいなあー……」


白剣士(…冒険?いや違う。俺は冒険者の親父の事を恨んでる…今も)

 
…トコトコ…

…チラッ

ホームレスA「俺さー死ぬまでこうなのかな」

ホームレスB「俺もだろうよ。何か、変わる機転みたいなのとかこないかなー…」


白剣士(…考えてみれば俺も一緒だよな。あいつらと変わらない…毎日が一緒…)


…トボトボ

白剣士(そうか、これは俺の機転のチャンス…なのか?)

 
…トコトコ

白剣士(だが…俺は……)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
父親「…お前も、きっと立派な冒険者になれるさ!」

母親「お父さんはね、凄い冒険者だったのよ?」

父親「…はは、さ、今日も稽古するか!」

白剣士「うん!頑張る!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

白剣士(…親父のようにはなれなかった。皆の期待を背負うのに耐え切れなくなった俺は、冒険者ではなく普通の生活を選んだ)


…トコトコ…

白剣士(今回のことで、何か大きく動く気がする。一体神様とやらはどうしろと言ってるんだか…、ま!とにかく今はバイトだバイト!集中!)

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

店長「お前さ…今日集中できてなさすぎだろ!そんなんじゃ明日から使わないぞ!」

白剣士(ぜ、全然集中できなかった…!)



バイト「白剣士さん、しっかりしてくださいヨ」

店長「全く、明日は頼むぞ?」

白剣士「申し訳ないです。それでは、これで失礼します」ペコッ


…タッタッタ・・・


バイト「なんなんですかね?」

店長「さあな…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ガチャガチャッ…バタンッ


白剣士「…ただいま…って、お前!」

悠久姫「おかえり…」

白剣士「変化の魔法、解けてるじゃねえか!!」


悠久姫「白剣士が出かけたあと、突然変化が解けたのじゃ…」

 
白剣士「お前、どうすんだよ!姫の格好だったら、さすがにバレるぞ!?」

悠久姫「ど、どうすればいいのだ…」

白剣士「…おいおい、洒落にならねえぞ。解けた理由とか分からないのか」

悠久姫「国を出てもう1週間以上になる…もしかしたら…時間がたちすぎたのかもしれん…」


白剣士「ちょっと待て、待て。整理する。今考えればおかしい点が多い、きちんと答えろ、いいな」

悠久姫「わ、わかった」チョビッ

 
白剣士「お前、どうやってここに来た」

悠久姫「もちろん船と歩きじゃ。これでも剛闘家と一緒に鍛錬をしてたりしたのでな!」

白剣士「その国からはどうやって出てきた?」

悠久姫「無断で城から逃げてきた♪」


…ゴツッ


悠久姫「い、痛い!何をする!」

白剣士「あほ!お前、それ全員に心配かけてるだけじゃねえか!!」

悠久姫「元々こんなものだし…城のみんなも分かってると思うぞ」

白剣士「…」

 
悠久姫「それで、他の質問は?」

白剣士「お前の変化が解けたってことは、捕まってる剛闘家の変化も解けたってことじゃないのか?」

悠久姫「…あ」

白剣士「…一応女なんだろ…?その、最悪…」

悠久姫「…」


白剣士「…どの道、明日には出発だ。しっかり休んでおけ」

悠久姫「出発って…」

白剣士「…一緒に行くって言ってんだよ!」

 
悠久姫「ほ、本当か!?」

白剣士「こんな状況で、姫を放っといたり、女を見捨てたら俺は気が気じゃなくなるだろ。自分の為なんだよ、お前のためじゃねえ!」

悠久姫「結果的には私のためになる!御礼をいうぞ!」ダキッ

白剣士「だー分かった!ひっつくな!」


悠久姫「それにしても白剣士、神経が太いというか…肝が据わってるというか…」

白剣士「昔からこういう性格なんだよ!気にするな!」

悠久姫「ま、私もそっちのほうが絡みやすいからイイんだけどな!」ギュッ

白剣士「くっ…」

 
悠久姫「…ふふ」

白剣士「いいから寝ろ!明日は早く行くぞ!」

悠久姫「…ところで、バイトやらその"生活"はいいのか…?急な出発になるが…」

白剣士「いいよ別に。俺は考えたら何があるわけじゃなかった。お前が気にすることじゃない」


悠久姫「…そうか」

白剣士「いいから風邪ぶりかえしたら動けなくなるだろ。シーツ変えといてやるから、そのまま寝ろ!」

悠久姫「そうじゃな…わかった」


白剣士「…それでいい」

ガサガサ…パサッ


悠久姫「…」

 
白剣士「…ほらよ、これでいいだろう」

悠久姫「ありがとう」

白剣士「それじゃ、俺は色々やることあるから台所にいるからな」

悠久姫「…わかった、ところで白剣士はどこで寝ておるのだ?」


白剣士「気にするな」

悠久姫「…」

白剣士「それじゃあな、しっかり休めよ」


悠久姫「わかった…おやすみ」

白剣士「…」


……バタンッ

 
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・・・・
・・・
・・

 
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…ガバッ

悠久姫「…」キョロキョロ


…スタッ…トコトコ……ガチャッ


白剣士「…」グゥグゥ

悠久姫「こらーーー!起きろーーー!」


白剣士「なんだっ!?」ビクッ

 
悠久姫「白剣士!台所で寝てるとは何事じゃ!」

白剣士「朝からキンキンと…、お前が布団で寝てるから俺はこっちで寝てるだけだ!」

悠久姫「だったら私が台所で寝てたわ!」


白剣士「病人にそんなことさせるわけねーだろ!」

悠久姫「そういう問題ではない!ならば昨日は調子がよかったんだから、一緒に寝てもよかったじゃろ!」

白剣士「そっちのほうが問題あるわ!」


…ギャーギャー!!

 
…ドンッ!!!

隣人「朝からうるせーぞ!」


白剣士「…」

悠久姫「…」

白剣士「朝飯、作るからそこで座っておけ」

悠久姫「…わかった」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…カチャカチャ…モグモグ…


悠久姫「…白剣士」モグモグ

白剣士「なんだ」ゴクゴク


悠久姫「感謝する…本当に」

白剣士「気にするな」

悠久姫「お主、本当に優しいやつだな」

白剣士「普通だ」

 
悠久姫「…」

白剣士「…気にするなっつーの」

悠久姫「…わかった」


白剣士「んで、姫が通ってきたルートを辿っていけばいいんだろ?どういうルート通ってきたんだ?」


悠久姫「今は悠久国まで、西の港から船が往復している。途中の渓谷国を経由して来た」

白剣士「金は?」

悠久姫「ない」

白剣士「」

 
悠久姫「…ないぞ?」

白剣士「もう聞いたわ!お前、どうやってここまで来た!」ドンッ

悠久姫「密航」


…ゴツッ

悠久姫「痛いっ!すぐに殴るのやめないか!」

白剣士「お前、ご飯とかどうしてた」

悠久姫「あまり食べてないな?」


白剣士「そのせいだろうがー!!風邪引いたのも、ボロボロだったのも!」

 
悠久姫「お、怒るでない!」

白剣士「ったくよ…バイト代を途中の銀行で降ろして、ローブを買ってお前に着せる。そこから向かうぞ」

悠久姫「手をわずらわせてすまないな…」

白剣士「まあしゃあないだろ、気にするな」


悠久姫「…ごちそうさまでした」

白剣士「んじゃローブ買ったり、色々準備するか」


悠久姫「おーっ!」

本日はここまでです。ありがとうございました。

皆様、ありがとうございます。

 
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――――【4時間後・馬車の中】


…ガタンガタン……

白剣士「…」

悠久姫「馬車は楽じゃのう」

白剣士「当たり前だ。一昔前の冒険者じゃあるまいし、歩いてくるなんて正気の沙汰じゃないぜ」


悠久姫「ふうむ…」

白剣士「ところでさ、お前…なんかお気楽だが、隠してることとかないだろうな?」


悠久姫「え?」ギクッ

 
白剣士「…話せ」

悠久姫「な、何もないぞ?」

白剣士「…」ジッ


悠久姫「…そ、そんな眼で見つめるでない…」

白剣士「知っておく権利はあるだろう。話せ」


悠久姫「…その…、多分だが…、その……」


白剣士「…」

 
悠久姫「…その、恐らくだが…向こう側の変化は解けてないと思う…」

白剣士「何だって?」

悠久姫「変化をかけたウィッチが言ってたのだが、術をかけられた者の精神力や、術者から大きく離れた場合に魔法が解けやすいといっていた」

白剣士「…」


悠久姫「…私の場合は、空腹や風邪の上に、術者から大きく離れたせいだと…思うぞ?」

白剣士「ああ、そうか…じゃあある程度は安心していいんだな」

悠久姫「そうじゃな…それと…」


白剣士「まだ何かあんのか?」

 
悠久姫「誘拐したやつらは、恐らく剛闘家…姫には危害を加えないと思う」

白剣士「根拠は?」

悠久姫「その、誘拐したやつらは我が王国軍が率いる部下の者なのだ。危害を加えれば、どうなるか…国の仕組みをしっておる…」

白剣士「公にしない理由もそこにあるのか?」


悠久姫「国民は、王を信じきっておる。国の王に代わろうとした時、国民の信頼を得られなかったら代わる意味がないだろう?」

白剣士「…確かに」

悠久姫「それに、政治というものは一筋縄ではいかん。今、この国のトップが入れ替わり…すぐに上手く事が運ぶと思うか?」


白剣士「それは…思わないな」

 
悠久姫「そうじゃ。国は人と人が紡ぎあってこそ成り立つモノ。よっぽどな事がない限り、強行手段には出ないだろう」

白剣士「誘拐ってのが既に強行手段な気もするんだが」

悠久姫「…まあ、そりゃそうなんじゃが…」


白剣士「それにさ、誘拐するほど緊迫した国の情勢があったってことだろ?何か事件とか、王に不満を持ってたってことじゃないのか?」

悠久姫「…それはない!お父様は、しっかりと国民の心をつかんでいた!」


白剣士「じゃあおかしい話だな。王国軍も、王を信頼していたからこそ、だろうし」

 
悠久姫「…」

白剣士「ってことは、その部下が何か…お金や政治とは別の所に目的があった…ということになる」

悠久姫「じゃが…、あの時の要求はそれだけで…」

白剣士「…例えば、近辺の国と上手くいかなかった事や、何か問題になっていたことはなかったか?」


悠久姫「ふむ…」

白剣士「悠久の国のことは分からない。だけど、それが問題の1つだと思うぞ」

悠久姫「待ってくれ。考える」


白剣士(…っつーか、お礼されるだけなのに、嫌な予感しかしねぇ)

  
悠久姫「そういや…お父様は紛争が続いてボロボロになった星降町という場所への支援をやめた、と言っていた」

白剣士「…支援の取り止めねえ」

悠久姫「私は反対したのじゃ。なぜなら、剛闘家がそこの出身でな…私自身、友のためにも町を復興させたかった」

白剣士「…」


悠久姫「あの町は世界で最も美しいといわれた町。今は紛争の傷で見る影もないが…だからこそ…」

白剣士「自業自得だろあんなの。近辺にあった魔石を求め合って地区同士で争いしたんじゃねーか」

悠久姫「…」

白剣士「ま、俺にゃ関係ないこった」

 
悠久姫「…」

白剣士「…」

悠久姫「…」シュンッ

白剣士「あー…」


悠久姫「…」

白剣士「なんだその…悪かったよ」

悠久姫「なんでお主が謝るのだ」

白剣士「ちょっとひでーこと言っちまったからな…うん」

 
悠久姫「…別に良い。それに本当のことじゃ」

白剣士「…」

悠久姫「だがな、きっといつか…あの町は元通り美しく復興を遂げると信じておる」

白剣士「…」

悠久姫「…まあ、それより今は剛闘家の救出じゃ…いい知恵があればのう…」


白剣士「さあな、そっちは俺はからっきしだ」

悠久姫「ふむ…」


白剣士「…お」

 
…ガタンガタン!!…ヒヒーン!!…


…パサッ

馬車商人「お客さん、西の港に着いたよ」

白剣士「ありがとさん、いくらだ?」

馬車商人「1万6000ゴールドだ」

白剣士「結構かかるな…ほら、これでいいか?」

…チャリンッ


馬車商人「これでも少しサービスしたんだからさ、ありがとさん」


悠久姫「…よし、それでは船に乗って出発じゃ!」ダッ

 
白剣士「あ、おい待てよ!」

悠久姫「はっはっは!追いついてみるがいいぞ!」

白剣士「…ったく」


馬車商人「…気丈な娘さんだな」

白剣士「あ?お前、話を聞いてたんじゃ…」

馬車商人「ああ、何…客人の話はすぐ忘れる事にしてる。それが商人のマナーさ」

白剣士「…」


馬車商人「あんな風に元気に振舞って、心配をかけないようにしてるんじゃないのかね?」

白剣士「…」

 
馬車商人「大事にしてやんなよ?」

白剣士「…ふん」


悠久姫「何をしておる!置いてくぞ!」


白剣士「…ったく」

…タッタッタッタッ…

 
悠久姫「…何を話しておったのじゃ?」

白剣士「今夜の飯の相談」

悠久姫「おお…何が旨いのじゃ!?」


白剣士「やっぱ海のモンが旨いだろ。少し食ってくか」


悠久姫「いいのか!?」

白剣士「どうせ船の出発までは少し時間あんだろ…いいぜ。好きなもん食え」


悠久姫「…じゃああそこがいいぞ!」ダッ

白剣士「だから走るなって!」

 
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・・・
・・

 
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――――【悠久国行・船の中】


…ザザーン……

白剣士「一緒の部屋で良かったんか?」

悠久姫「気にするな!」

白剣士「そ、そうか」


悠久姫「それに、これでようやく数日ぶりに白剣士も布団で寝れるな?」

白剣士「まあな」

 
悠久姫「途中の渓谷国で一度休憩して、そのまますぐに悠久国だ」

白剣士「何日くらいなんだ?」

悠久姫「一応、快速便だからのう…。3,4日もあれば着くとは思うのだが」

白剣士「その分、俺の財布も吹き飛んだな」


悠久姫「気にするな!」


白剣士「…」ギュッー

悠久姫「い、痛い!だから、なぜ頬を引っ張るのだ!」


白剣士「なんとなくだよ!!」

  
悠久姫「…むう…しかし、少し疲れたな…」トロン

白剣士「本調子じゃないのに、暴れまくるからだ」

悠久姫「誰が…暴れてると…」ウトウト


白剣士「お前だよ…って」


…ドサッ

悠久姫「…」スゥスゥ


白剣士「…お前、気絶癖でもあんのか?」

悠久姫「…」クゥクゥ

白剣士「本当に子供だよな…、とはいえ…俺も少し疲れた」フワァ

 
…パサッ

白剣士「ったく…きちんと毛布かけねーと風邪ぶりかえすだろっつーの…」

悠久姫「…」スゥスゥ


白剣士「さてっと…俺も寝るか…おやすみ」


…モゾモゾ…パサッ……

……グーグー…

 
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・・・
・・

 
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――――【2日後・渓谷国】


…ユサユサ

白剣士「おい、朝だぞ。つーか渓谷国着いてるぜ」

悠久姫「…む」パチッ

白剣士「ここで8時間、船の整備と燃料の入れなおしだってよ。港町あるけど、外出るか?」

悠久姫「ん~…白剣士はどうするのだ?」


白剣士「なんかすげー絶景が近くにあるとか、渓谷の名前は伊達じゃないって話を聞いたから興味はある」

悠久姫「それじゃあ見に行こう」

白剣士「わかった、んじゃ準備していくか」

悠久姫「うむ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…トコトコ

白剣士「すげー。町の周りを緑の山々が覆ってるな…こんなの初めて見た」

悠久姫「人々の笑顔が絶えぬ素晴らしい町だな。我が国もこうありたいものだ」

白剣士「…お前時々、王女モードになるよな」


悠久姫「時々ってなんじゃ、時々って!」


白剣士「ま、いいさ。それよりも近くに休める場所は…」キョロキョロ


…ウ~!!!

悠久姫「…む?」

 
白剣士「サイレンか?」

悠久姫「何かあったのか?」


…ザワザワ

白剣士「…騒がしくなってきたな」


悠久姫「…そこの者!」

町人「ん?何だ!急いでるんだ!」

悠久姫「一体何があったのじゃ?あのサイレンは何だ?」

 
白剣士「お前は少しは慎みってものを…」

悠久姫「民が困っている時、話が聞けぬ指導者など!」

白剣士「…」


町人「急いでるってのに…、あのサイレンは事故があったってことだ!」

悠久姫「事故!?」

町人「ああ、別の町ともっと簡単に繋ぐ為に道路工事をしてるんだけどな、そこの道は険しくて事故が絶えないんだ」


白剣士「さすがは渓谷国だな」

 
町人「俺たちは俺たち…住民が一丸となって町を仕上げている。俺の息子も働いてるんだよ…もういいか!?」

悠久姫「そうか…引き止めてすまなかった」

町人「ああ、見たところ…あんたらは旅客だよな?あんたらは気にせず、町を楽しんでいってくれ…じゃあな!」

タッタッタッタッタ…


悠久姫「…」

白剣士「おい、姫…」

悠久姫「…行くぞ!」

白剣士「行くってお前…まさか…」


悠久姫「事故現場じゃ!」

白剣士「…マジで」

本日はここまでです。
ありがとうございました。

乙乙

>>25
>「…よ」ボソッ
ってどういう事なんだべ気になる

バイと先は簡単に止めれたんだろうか
忙しそうだったけど

皆様ありがとうございます。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ザワザワ…

…オーイ!!ハヤコーイ!!!…キュウゴハンマダカー!!


白剣士「すげえ人だな」

悠久姫「事故現場はこの辺なのか?」

白剣士「みたいだが…」


町人A「おーい!救助隊は何やってんだ!」

町人B「向こう側で手一杯だ!早く戦闘班と救助班呼んで来い!」

 
悠久姫「戦闘班とな…」

白剣士「そもそも、どんな事故が発生したか聞いてなかったな」


悠久姫「おい!そこの者!」

青年「へ?何スか?」

悠久姫「どのような事故が起きたのだ?」

青年「あー…道整備のために洞窟掘ってたみたいなんですけど、天然洞窟とぶち当たったらしいです」


悠久姫「それでこの騒ぎか?」

青年「いや、そこから魔獣が飛び出したとか。簡単なゴブリンみたいですけど、この町には一大事なんスよ」

 
白剣士「ゴブリンごときで一大事って…戦闘技術の心得くらいあるだろう?」

青年「どうッスかねえ…自分が言うのもなんですが、この町の戦闘技術は低いと思いますよ」

白剣士「軍の配備は?」

青年「中央から離れてますし、ここまではきてないっスよ。だから自分らで何とかするしかないんです」


…ドゴォン!!…キャー!!


白剣士「なんだ?」

悠久姫「なんじゃ!?」

 
戦闘員「ゴブリンの群れだ!皆離れろ!」

町人A「息子はどこですか!」

戦闘員「後で確認しろ!相手は魔法を使ってきて、洞窟自体が崩れかねない!」


…キャーキャー!!ウワー!!


悠久姫「…ここは私が…!」

白剣士「姫、戦闘の心得あるのか?」

悠久姫「ない!」

白剣士「おい」

 
悠久姫「だが、民が困ってる時に動かないでどうする!」

青年「民…?姫?」

白剣士「あ、ああ!こいつは将来、王子のお嫁になるのが夢で、その練習なんだ!」

青年「へえー、夢はでっかいほうがいいッスよね」


悠久姫「なにぃ!私はな、悠久国の…」モガモガ


白剣士「ばっかやろう!正体バラして大事になったらどうする!」ボソボソ

悠久姫「そ、そうか…すまん」ボソボソ


青年「?」

 
…ドサッ!!

悠久姫「!」

白剣士「!」


…キィン!!キキィン!! 

戦闘員A「うわあー!」

戦闘員B「相手はたかがゴブリンだ!いけえ!」

戦闘員C「ですが、あんな真っ赤なゴブリン見たことないですよ!」


赤ゴブリン『…』


白剣士「…異種か」

 
悠久姫「し、白剣士、次々とやられているぞ!」

白剣士「見たところ、普通のより強めだな。面倒なやつ掘り当てやがって」

悠久姫「なんとかならないのか!?」

白剣士「…無理だろ。俺らは町に戻っておこうぜ、戦闘員が何とかしてくれるだろ…多分」


悠久姫「うう…」


戦闘員A「うおおおっ!」

…ズバシュッ…ドサッ


戦闘員B「隊長!くそお…うおおおっ!」ブンッ

ゴブリン『フンッ』ヒョイッ

…ズバッ……ドシャッ……

 
悠久姫「…」ブルブル

白剣士「ん?」

悠久姫「もう、止めぬか!このゴブリンども!」ダッ

白剣士「ばっ…!」


悠久姫「剣を借りるぞ!」

青年「えっ、ちょっ、俺の剣」


悠久姫「やあああっ!」

…タタタッ

 
ゴブリン『…女ガ、舐メルナヨ?』

悠久姫「…っ」ブンッ


…キィン!!…カランカランッ

悠久姫「うぐっ!」

ゴブリン『…フフッ、気ノ強イ女ハ嫌イデハナイゾ?』グイッ

悠久姫「くっ…」


…スパッ!!……ドサッ…

ゴブリン『…ハ?』

 
悠久姫「…え?」

ゴブリン『オ、俺ノ手ガ!!テメェ…!!』


白剣士「はー…だから、勝手に突っ走るなっつーの、このバカ姫が!」

悠久姫「なっ…バカとはなんじゃ!私は民の為を思って…」

白剣士「民、民、民…うっせえな!お前が立派なのは分かったが、自分が倒れてたら意味ねーって言っただろうが!」

悠久姫「…そ、それは…」


ゴブリン『…殺ス、覚悟シロ…』

白剣士「おっと、怖い怖い」

 
ゴブリン達『ヨクモ同胞ノ腕ヲ…殺ス…』ジリッ


…ザワザワ…アイツ…コロサレルンジャ…

ニゲロー!!


悠久姫「…囲まれたぞ…」

白剣士「まあ、そうだな」

悠久姫「私たちは…死ぬのか?」

白剣士「さあな。この剣に聞いてくれ」

悠久姫「…剣に?」

 
白剣士「ああ。この剣がな…」


ゴブリンA『シネィ!!』ブンッ

ゴブリンB『覚悟シロ!』ビュンッ


…ヒュッ……ズバ…ズバァン!!!

……ドサドサッ


ゴブリンA『』

ゴブリンB『』


白剣士「この剣が、最後まで壊れず無事だったら…って事だ」

 
ゴブリンC『ナッ…カカレ!』

ゴブリンD『…オオオッ!』


悠久姫「お、お主…」

白剣士「ま、願っておいてくれ……おらあっ!」

…タタタタッ…タァンッ!!


…ズバァンッ!!

キィン……キキキィン!!……ズバッ…ドサドサッ…ドサッ…

 
ゴブリン達『…』
 
赤ゴブリン『貴様…』


白剣士「ふむ、いい剣だ。軽くて使いやすいな」キラッ


戦闘員C「す…すげえ…」

青年「なんなんスか…あんた…」

町人達「う…うおおおおっ!」


悠久姫「…白剣士」

白剣士「ん?」

 
悠久姫「お主、強いのだな…」

白剣士「まー少しだけね。強いって言われる程ではないな」


赤ゴブリン『ゴチャゴチャと…俺の同胞をよくも…」

白剣士「あのね…お前らだって人間殺してるだろうが。そんな理屈通ると思うか?」

赤ゴブリン『貴様らが我が住処を侵すのが悪いのだ!』


白剣士「だからって殺すことないだろうが」


赤ゴブリン『…死ね!』ブンッ!!

白剣士「…ふん」


…ズバズバッ!!!

 
赤ゴブリン『…』

白剣士「…」


悠久姫「…」ゴクッ


赤ゴブリン『…くそが…』ドサッ


悠久姫「!」

白剣士「おっし。これで全部か?」キョロキョロ


ゴブリン達『』

 
白剣士「いないみたいだな。姫、立てんのか?」

悠久姫「お主は平然としてるな…私は腰が抜けてしまった…」


白剣士「ああ!?…背負ってやるよ、ほらよ」スッ


悠久姫「う、うむ…すまない…」ギュッ

白剣士「気にするな」ヨイショ


…トコトコ

白剣士「ほら、えーと…剣。お前のだったな。返す」

青年「あの…何者…なんスか…?」

白剣士「俺か?」

 
青年「はい…」

白剣士「何者でもねーよ。普通の人だ」

青年「旅客さんスよね?」

白剣士「ああ、それとこいつもな」


悠久姫「よろしく!」

青年「はは…お名前を聞いても?」

白剣士「俺は白剣士。こいつはえーと…」


悠久姫「悠久ひ…」ゴツッ

白剣士「お、女剣士だ!」

 
悠久姫「~…っ!ひあ…かんらっ…!」ズキズキ


青年「そうッスか。ありがとうございました、それと…」

白剣士「ん?」

青年「船で来てるなら今は悠久行きだけだし、あと数時間かかりまスよね?」

白剣士「まあそうだが…」


青年「しばらく、白剣士さんはこの町でヒーローになりまスよ?」チラッ

白剣士「ん?」チラッ

 
戦闘員達「…」

町人達「…」

救助隊「…」

…ザワザワ


白剣士「な、なんだ…!?」

悠久姫「?」

 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【渓谷国の港町・酒場】


町人A「うわーっはっはっはっは!」

町人B「まあ飲めよ!」

白剣士「だから飲めねーんだよ!」

悠久姫「あっははは!」


町人C「よくやってくれた、あんたすげーよ!」

 
白剣士「別に礼されるようなことはしてねーよ」フン

町人A「いやいや、あのまま俺たちだけじゃ被害も半端ないことになってただろうしな」

白剣士「お前らさ、もうちょっと戦いに関して覚えろよ…。このご時世、魔法や戦闘技術の一つないと…」

町人A「覚えたいんだが、軍はいないし戦闘に長けた人らもいねえんだよ」


悠久姫「ふーむ…悠久国からはそう離れていない場所…、いっそのこと私の国の騎士団をこの場所に…」ブツブツ

町人A「ん?何だって?」

悠久姫「あ、ああいや!何でもないぞ、気にするな!」


町人A「しっかし嬢ちゃん、ローブそんな深く被って前見えてるのか?」

 
悠久姫「ああ、ちょっとした趣味でな…き、気にするな」

町人A「趣味ね…若い人のファッションはわからんなあ」


白剣士はは…」


町人A「それにしても、兄ちゃんは何だってあんなに強いんだ?」

町人B「そうだ、それ気になったぜ」

悠久姫「私もじゃ」


白剣士「強いって…ゴブリン程度倒すくらいならな…うーん」

 
悠久姫「いやいや、普通の人はあそこまで剣も武器も使えぬものだぞ?」

白剣士「まー、昔…冒険学校とか通ってた時期があったからな。自然と体が覚えてるんだよ」

悠久姫「ほう!」


町人A「ほー!なるほどな、そりゃ強いわけだ。戦いのエキスパートじゃないか!」

白剣士「…ふん」

町人A「ま、それはそれだ!とりあえず…飲め!食え!」


白剣士「食うけど飲まねえっつってんだろ!」

 
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・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【数時間後・船の中】


白剣士「ててて…あいつら…、無理やり飲ませやがって…」キーン

悠久姫「本当に酒に弱いのだな」

白剣士「血だ血。親父もそんな飲めなかったらしいしな」


悠久姫「なるほどの。白剣士の父上はどのような方だったのじゃ?」

白剣士「…さあな」

悠久姫「…聞かせてはくれぬのか?」


白剣士「聞きたいのか?」

 
悠久姫「言いたくないなら…いいのだが…」

白剣士「…俺は親父が嫌いだ。家族が嫌いだ。これでいいか?」

悠久姫「何故じゃ?」


白剣士「…お前、本当にずかずか入ってくるな」

悠久姫「気になった事は、聞きたくなるのじゃ。この性格、父上にも直せとは言われてるのだが…」

白剣士「ふん…そういうお前はどうなんだよ」


悠久姫「私か?」

 
白剣士「どうせ、お前は愛されて育てられたんだろ?不自由なくな」

悠久姫「…」

白剣士「羨ましいぜ。ちやほやされてたんだろ?」

悠久姫「…それは良いものだと思うのか?」


白剣士「あ?」

悠久姫「お主、幼い頃から王の下に生まれ、友人は周りの使用人だけ…、対等な立場がいないという人間が…どれほど辛いか…」

白剣士「…」

悠久姫「本では良く読んだ。友達、冒険、遊び…じゃが、私はいつも勉学ばかりだった」

 
白剣士「…」

悠久姫「たまに同じ年代の子と会っても、私の前には敬語と頭を下げるばかり。ケガなんて知らないで育ってきた」

白剣士「…」

悠久姫「そんな時だった。剛闘家と知り合ったのは」

白剣士「あぁ…」


悠久姫「剛闘家は、他の者と違って私を対等に見てくれたのじゃ。楽しかった…」

白剣士「…へえ」

悠久姫「それから色々教えられて、成長していくうちに、今のようになったのだ」


白剣士「ほほう、おてんばなバカになってしまった、と」

 
悠久姫「…うるさいわ!バカバカ言うでない!」

白剣士「はは、悪い悪い。思ったよりシリアスな感じでびっくりしたぜ」


悠久姫「…まあ、そんなわけで…白剣士のような友達が出来て…その、嬉しいぞ…」モジモジ

白剣士「友達?」

悠久姫「え…ち、違うのか…?」シュンッ


白剣士「…あー……まあ、友達、だな」

悠久姫「そ、そうなのか!?」パァァッ


白剣士「お前自分で言ったんじゃねーか…、そうだな。友達だろ」

悠久姫「うむ!うむうむ!好きだぞ白剣士!」

白剣士「うっせ!」

 
悠久姫「うふふ」ニタニタ

白剣士「んま…なんつうの。俺もお前みたいなもんだから、気持ちは分からないでもねーよ」


悠久姫「そうなのか?」


白剣士「ああ。俺の親父、母親、叔父…、爺ちゃん…全員が冒険者の一家なんだわ俺の家」

悠久姫「なんと…」

白剣士「しかも何だかんだで、全員強いときたもんだ。そんな家系だから、冒険学校に入学した時も期待されてた」

悠久姫「そうなるな…」


白剣士「俺だって必死に頑張った。だけどな、残せるような結果はなかったんだ」

  
悠久姫(あんなに強ければ十分だと思うのじゃが…)


白剣士「自分の限界に気づいてきた歳になると、周りの期待がプレッシャーになった。思い出すだけで…嫌な気分になる」

悠久姫「…」

白剣士「だから俺は…逃げた。冒険学校を卒業後、軍を蹴って一人暮らしを始めたんだ」

悠久姫「…なるほど」


白剣士「そこから数年。まともに口も聞いてねえ。どこで何してるくらいかは聞いてたけどな」


悠久姫「寂しくは…ないのか?」

白剣士「さあな。俺も分からんよ。……ま、この話はこれで終わりだ」

 
悠久姫「そうか…話てくれて嬉しかったぞ、ありがとう」

白剣士「お前も話したんだから、どっちもどっちだろうが」


悠久姫「そう…なのか?」


白剣士「お前本当に世間知らずだな。そうなんだよ、覚えておけ」

悠久姫「…うむ、わかった」

白剣士「それより今日は色々あって疲れてるだろ。寝ておけよ」


悠久姫「そうじゃな、少々眠い…」


白剣士「あと、子供じゃねーんだからちゃんと毛布をかけて寝…」

悠久姫「…」スゥスゥ


白剣士「…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【次の日・悠久国…港】


…ボォーッ…

白剣士「うおー…なんだこりゃ!」

悠久姫「ふふ…紹介しよう、これが我が国が誇る大自然が織り成す景観の国…、悠久国だ!」


…サワサワサワ……

白剣士「風が心地いいな…」

悠久姫「ふふふ」

白剣士「噂には聞いてたが、すげー自然がいっぱいだな。空気が美味い」

   
悠久姫「私も久々の帰還じゃな」

白剣士「で、お前の城はどこにあるんだ?」

悠久姫「ここから歩いて結構早いぞ。渓谷国と同様、まだ発展しつつある場所じゃからの」


白剣士「なるほど。つーか、俺行って本当に大丈夫なのか?」

悠久姫「姫と一緒だぞ?」


白剣士「ま…そりゃそうか…ん?」


…ザッ

兵士「おい、お前!」

 
白剣士「なんだよ」

兵士「そちら側のフードを被った怪しい奴…姿を見せろ!」

悠久姫「む…私か?」

兵士「そうだ!」


白剣士「ここだったら良いんじゃないのか?」

悠久姫「そうか…、ようやくこのフードを脱げるな。ふふ、特と私の姿を見るがいい…それっ!」バッ


兵士「…なっ!」

悠久姫「私は悠久姫ぞ!頭が高い!ひかえい!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ガチャンッ


白剣士「おい」

悠久姫「…」

白剣士「おい!」

悠久姫「…」


白剣士「なんで、我が国で牢屋に入れられるんだよ!!」

悠久姫「知らぬ!」

本日はここまでです。ありがとうございました。

遅れながら 
>>123>>126様に言いますと、
おっ?ん?、など、少し違和感や何か変な部分があったら
それは物語の中に繋がる1つだと思ってください(A´ω`)

皆様ありがとうございます

 
牢屋番「おい!うるさいぞ…静かにしろ!」

白剣士「うっせーのはお前だコラァ!何で姫と俺が牢屋に入れられなくちゃいけねーんだよ!」

牢屋番「…」

白剣士「…っち…無言かよ」

 
悠久姫「一体どうなっておるのじゃ…」

白剣士「お前が留守の間に、だいぶ情勢が傾いたみたいだな…?」

悠久姫「…そ、そうだ……父上、母上はどうなったのじゃ!?」


牢屋番「…」

 
白剣士「…」イラッ

悠久姫「教えてくれ!頼む…」


牢屋番「…」シーン 
 
 
白剣士「…」イライラ

悠久姫「なぜ黙っておる!」

牢屋番「…」


白剣士「…」ボソッ

 
牢屋番「…」

…パチパチ

牢屋番「…?」


…ボワッ!!

牢屋番「うおっ!服に火が!?」


白剣士「しゃべれるじゃねーか」ハハハ

牢屋番「あっつ!お、おい!消してくれ!」

白剣士「自分で何とかしろ」

 
牢屋番「わ、わかった!しゃべるから頼む!!」

白剣士「それでいいんだよ」

悠久姫「白剣士…」


ボォォォッ

牢屋番「早く!早く!!」

白剣士「一回こっち来い」


…タタタッ…グイッ!!

牢屋番「…うぐっ!」

 
白剣士「小水魔法」

…バシャッ!!…ブシュゥ……


牢屋番「はぁ…はぁ…」

白剣士「火消した後、逃げられかねんからな。こうやって掴めばどうにでもなる…このまま首握りつぶすか?」

牢屋番「…わ、わかった…な、何を聞きたいのだ…」


悠久姫「父上と母上はどうなった!?この国は今どうなっておるのじゃ!」


牢屋番「…処刑された」

悠久姫「…何……」


白剣士「適当なこと言ってると喉マジで潰すぞ」

 
牢屋番「ほ、本当だ!2日前、王国軍や騎士団の中から反乱軍が出て…一瞬だったんだ!」

悠久姫「我が王国軍が…裏切りを…」

牢屋番「それに…姫がここに戻ってくることは…既に分かっていた」


白剣士「あ?…そりゃそうだよな。考えりゃおかしい話だ…、何でお前らが姫を見て驚かないんだ」

悠久姫「…どういうことじゃ」

白剣士「お前は本来、誘拐されていたはずだ。それが港で、連行されて兵士の中を歩かされた。なのに驚く様子がなかっただろ」

悠久姫「…そういえば…そうじゃな…」


牢屋番「…そ、それは……」

 
…カツン…カツンカツン…

???「おい」

???「はっ!」


…バシュウッ!!バチバチッ!!

白剣士「ぬああっ!!」

悠久姫「白剣士!?」


牢屋番「ごほっ…ごほごほっ…やっと離しやがって…」

 
悠久姫「…誰じゃ」


???「誰って…哀しい事言ってくれるじゃないか…」

???「全くですね」


白剣士「…ってえな、誰だこらぁ!」

悠久姫「…!」



剛闘家「…ふぅ、久しぶりだね…姫」

ウィッチ「お久しぶりです、お嬢様」

 
白剣士「なんだ?知り合いか?」

悠久姫「剛闘家とウィッチじゃ…」


剛闘家「ごめんねーこんな牢屋に入れちゃってさ」

ウィッチ「お嬢様、申し訳ありません」


白剣士「なんだそりゃ。お前、誘拐されてたんじゃないのかよ」

剛闘家「誰あんた」

白剣士「白剣士だ。ちょっとした理由で着いてきたんだが、なんか牢屋に入れられたんだよ」

剛闘家「ははは、そりゃ災難だったね!」

 
悠久姫「…どういうことなのじゃ!」


剛闘家「まあまあ。これは仕方ないことだったんだよ」

悠久姫「仕方ないことだと…?」

剛闘家「ウィッチ、説明してあげて」


ウィッチ「失礼します。僭越ながら、私が説明いたしますね」

悠久姫「ウィッチ…」


ウィッチ「簡単にいえば、今回の誘拐は元々仕組まれたことでした」

 
悠久姫「…何?」ピクッ

ウィッチ「裏でどういう事情が動いてたかご存知ですか?」

悠久姫「いや…」


ウィッチ「王が星降町の支援を切った理由は、支援に図に乗った星降町がこの国へ軍事介入をしてきたのです」

悠久姫「なんじゃと!?」

ウィッチ「国境付近で、小さな紛争が何度も起きていました」

悠久姫「そんな話…」


ウィッチ「聞いた事ないでしょうね。王は心配をかけない為に、平和のままだと見せていましたし」

 
悠久姫「だが、それだけで今回のような事は…!」

ウィッチ「もちろん、問題なのはそれからでした…。憤慨した王がそれを収めるために、見せしめで国境付近で戦士達を拘束し、処刑したのです」

悠久姫「しょ、処刑!?」


ウィッチ「図に乗った者を抑える為でした。ですが、処刑するのは"戦士たち"だけのはずだったのですが…」

悠久姫「…」

ウィッチ「どこで取り違えたのか、一般住民を含んで処刑してしまったのです」


白剣士「むちゃくちゃだな。結局、制度がきちんと行き届いてないだけじゃねーか」

 
悠久姫「そ、それでどうなったのじゃ!」


ウィッチ「…」

剛闘家「…殺されたのはアタシ…いや、俺の弟だ」

悠久姫「!」

白剣士「なるほどな」


ウィッチ「それだけじゃないんです。王はそれで一時的に収まるのを確認すると、それで次々と解決していったのです」

白剣士「まあ、確かに一番有効な方法だが…」


剛闘家「幼い頃からお世話になってた王だったが、さすがにそれは見過ごせなくなった」

 
ウィッチ「それに反発した一部の者たちが、今回の誘拐を企てました」

白剣士「その考えに共感したウィッチも剛闘家の案に乗ったってわけだな」

ウィッチ「その通りです。その後、姫様が城を飛び出たあとすぐに王は、剛闘家含む反逆者たちに捕らえられてしまいました」


悠久姫「…」


ウィッチ「しかし…王は拘束されながらも、星降町を愚弄し、それはそこの出身者を暴徒させるのに簡単な理由になりました」

 
白剣士「自業自得か」


ウィッチ「暴徒化した反乱を止めるのは難しく、王と貴方の母上は…」


悠久姫「…うぅ…父上…母上ぇ…」ガクッ

ウィッチ「…申し訳ありませんでした」

白剣士「…」

 
ウィッチ「…」

剛闘家「…ウィッチ、鍵を開けてくれ」


ウィッチ「…はい」

…カチャンッ


剛闘家「…姫様」

悠久姫「…?」グスッ


…スタッ

剛闘家「この度、母上と父上をお助けできず、申し訳ございませんでした」


白剣士「お前…」

 
剛闘家「全て、自分の責任です。弟を殺され、逆上した自分は同志を募り、結果的に王国をボロボロにしてしまった」

悠久姫「…」

剛闘家「…」ペコッ


白剣士「まぁ…待て…話をまとめさせてもらうぞ?」

剛闘家「…」

 
白剣士「支援にあやかって星降町が調子に乗り、国境から紛争を仕掛けた。それを止めるべく、王は見せしめの処刑を行った」

ウィッチ「そうです」


白剣士「それに反発心を覚え、再支援を望んでいた星降町の出身者や剛闘家が、自作自演で誘拐を演じたってとこか?」

ウィッチ「そうですね」

白剣士「んで均衡していた所に、王が星降町への暴言を吐いて…暴徒化した反発者が王たちを処刑した…だな?」


ウィッチ「大体のところは合ってます。問題はそこからなのですが」

 
剛闘家「ご名答。港付近から城までは反発隊…まあレジスタンス…うん、レジスタンス軍の領地ってわけ」

白剣士「領地まで奪い合いか。紛争じゃねえか」

剛闘家「…こんな大事にするつもりはなかった」


白剣士「バカが。お前の安易な考えのせいで、多くの人間が犠牲になってるんだろうが」


剛闘家「う、うるさい!じゃあ、自分の故郷の人間が次々殺されていくのをただ見ていろっていうのか!?」

白剣士「…王女の側近で、中途半端に権力を持っていて、中途半端に立ち上がるからこういう目に合うんだ!」

剛闘家「くっ…」

 
白剣士「結果的にどうあれ、お前が姫を哀しませた事には変わりねーんだぞ!」

剛闘家「わ…私だって…私だって……哀しんで…」

白剣士「父と母、その肉親を奪っといて…、この王国を破滅の道に歩ませてるんじゃねーか!!」


剛闘家「ち…違う…私は…故郷を救いたかった…だけで…」グスッ


白剣士「お前は…!」

…ガシッ

白剣士「…あ?」

 
悠久姫「もうよい…白剣士…」

白剣士「…」

悠久姫「…父上が…剛闘家の弟を殺したのには変わりないし…その罪を償っただけなんじゃ…」

白剣士「だけどよ!!」


悠久姫「何より…私は剛闘家も哀しんでいる事が誰よりも分かっておる…だからもう…やめてやってくれ…」

白剣士「…」

剛闘家「…」ポロポロ


白剣士「姫…人のこと言えねえぜ。お前だって、優しすぎるぞバカ野郎…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【悠久国・レジスタンス領の宿】


…ガチャッ

白剣士「へえ、いい部屋だな」

ウィッチ「レジスタンス側の領地に、このホテルがあるのは幸いでしたね」

白剣士「…姫はどうした?」


ウィッチ「先ほどから、一人にしてくれと部屋に篭っているようです」

 
白剣士「そうか」

ウィッチ「不思議な方ですね。姫があそこまで貴方を信頼しているとは思いませんでした」

白剣士「信頼…してるか?」

ウィッチ「あそこまで素直な姫様は久しぶりです」


白剣士「…ふむ」


ウィッチ「…それと訃報なのですが、船はしばらく出港しません」

白剣士「何だって?帰れないのかよ!!」

ウィッチ「一時的な紛争による閉鎖が決定しました。もちろん、道中は戦いがあちこちで起きているので抜けるのは難しいでしょう」

 
白剣士「…面倒なことを」

ウィッチ「…それと、お願いがあるのですが」

白剣士「何だよ…」


ウィッチ「姫様は、これから王国側につくか、レジスタンスに付くか決めることになるでしょう」

白剣士「何でだよ?レジスタンスで保護すりゃいいじゃねえか」

ウィッチ「…それが一番いいのですが、民を愛した姫様が、王国民を裏切る事は出来ない可能性が高い」


白剣士「…かもな」

ウィッチ「最悪、私たちの敵になる可能性があるということです」

白剣士「…」

 
ウィッチ「その際、姫様の側についていてほしいのです」

白剣士「何で俺が!」

ウィッチ「…」

白剣士「…」


ウィッチ「お願いします」


白剣士「…嫌だといったら」

ウィッチ「…」

 
白剣士「…」

ウィッチ「…あなたの望む事を叶えましょう。それで…お願いいたします」

白剣士「へえ…」

ウィッチ「…いかがでしょう」


白剣士「ふーん、じゃあ…今晩一緒に寝てもらおうか?」

ウィッチ「…それが望みなのですか?」

白剣士「俺の一晩に付き合えるか?もしかしたら凄ぇ変なクセとかあるかもしれねえぜ?」

 
…スッ

ウィッチ「それが望みなら…受け入れます」

…スルスル…パサッ…


白剣士「っ!」

ウィッチ「…」


白剣士「…」

ウィッチ「…優しく、お願いします」

 
白剣士「…いい」

ウィッチ「?」

白剣士「もういい!わかった!」


ウィッチ「…しかしそれでは……」

白剣士「もういいって言ってるだろうが!」


ウィッチ「私は…姫様の為なら…何でも受け入れるつもりです…」


白剣士「そういう問題じゃねえ!女が自分を安売りするんじゃねーよ、バカが!」

 
ウィッチ「自分が…言ったのですよ?」スッ

白剣士「だー!こっち来るな!」

ウィッチ「…」


白剣士「覚悟は…分かったよ。そこまでされちゃ、断れないだろうが…」

ウィッチ「…」

白剣士「いいから服を着ろ…」スッ


ウィッチ「…いいのですか?」

白剣士「…いいから服着ろ。もう一度言うぞ…自分安売りすんな」

 
ウィッチ「…それではあなたの望みが…」

白剣士「適当に考えとくからよ、安心しとけ」

ウィッチ「そうですか…」


白剣士「…」


スッ…トコトコ

ウィッチ「…よろしくお願いします」ペコッ

白剣士「おう」


…ガチャッ…バタン

 
白剣士「参ったね…はぁ~…面倒なことになった…まじかよー…」

…ブツブツ


白剣士(…ってまあ、文句ばかりいってても何が変わる訳じゃないんだがな…どうしたもんか…)


…コンコン


白剣士「あ?またウィッチか?入っていいぞ」

…ガチャッ


悠久姫「…」

 
白剣士「何だ…姫か。どうした?」

悠久姫「私は…どうしたらいいのじゃ?」

白剣士「…ん?」


悠久姫「…王国が2つに割れ、父上と母上を失い、私はもうどうしたらいいのか…分からないんじゃ…」

白剣士「…」

悠久姫「白剣士…教えてくれ…私は…どうすればいいのだ…?」


…スタッ

…ガタガタッ…スッ…

白剣士「…まあ、お座り下さい…お姫様」

本日はここまでです。
ありがとうございました。

今日はお休みかな?といっても毎日物凄い更新ペースだから充分に楽しんでおります

皆様ありがとうございます。
>>207 今日もあります(A´ω`)

後でも書きますが、明日以降2・3日ほど留守にするので3日分ほど更新しておきます

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ゴクッ


白剣士「この国のお茶、思ったより美味いんだな。改めて飲んでみてどうだ?」

悠久姫「…」

白剣士「温かいもの飲めば、少しだが落ち着くもんだ。とりあえず、色々ありすぎたな」

悠久姫「…」


白剣士「俺だって訳が分からねえよ。突然戦いだ、裏切りだ、処刑だの…、お前は俺よりもっともっと深く考えてるんだろうけどよ」

 
悠久姫「…」

白剣士「お前は、これからどうしたいと思ってる?具体的にはいらん。大まかに、だ」

悠久姫「国を1つに戻したい…」


白剣士「そう、それだ。その気持ちが大事なんだ」


悠久姫「…」

白剣士「お前の性格は、短いながらも付き合って少しだけ理解してる…と思う。お前は、人より人のため、犠牲にして動ける…なんつうか…」

悠久姫「…」


白剣士「すげぇ奴だ!」

悠久姫「…」

 
白剣士「すげぇ奴は、すげぇ事を出来るはずだ。これから何があろうと、流されない事が大事だと思うぜ」

悠久姫「流されない…こと?」

白剣士「ああ。姫が突然中央国で俺と出会ったように、他人に任せるんじゃなく…自分自身の考えで動く事が出来る奴…それが姫だろ?」

悠久姫「そう…だな」


白剣士「乗りかかった船だ。俺もお前に着いてってやるからよ、考えて考え抜け。夜は長いんだ」


悠久姫「お主…、私に着いて来てくれるのか…?」

白剣士「も、もちろんじゃねえか!」

悠久姫「そうか…白剣士…ありがとう…」グスッ


白剣士(冗談でも、ウィッチに一晩寝かせろとか言った事、口が裂けても言えねぇ…)

 
悠久姫「…恐らくだが、私はこれからどちらか付くか、選択を迫られると思う」

白剣士(そこまで分かってるのか)

悠久姫「ウィッチや剛闘家がいるレジスタンス側か、王国軍率いる国民側か…のどちらかじゃ」


白剣士「…そうだな」

悠久姫「お主なら…どちらに付く?幼馴染がいる側と、私たちを信じてくれた民…」

白剣士「…居心地の考え的に、王国側だろう」


悠久姫「…」

白剣士「それにな…このままレジスタンス側についても、姫が危険になる可能性がある」

悠久姫「どういうことじゃ?」

 
白剣士「簡単な話だ。その…お前の一家というか…、お前の事を未だに恨んでいる奴が必ずいるはずだからな」

悠久姫「…っ」


白剣士「単純にいえば、姫がこちら側についている場合…自身が"最悪な結末"を迎えることになりかねないってことだ」


悠久姫「…」ブルッ

白剣士「剛闘家やウィッチがいようと、それは変わりないだろう」

悠久姫「それでは…剛闘家たちを裏切れと…?」


白剣士「そういう事じゃねえ。あいつらも姫を全力で守ろうとするだろうし、一概にどっちがいいとは言えない」

 
悠久姫「…」

白剣士「それも含めて、ゆっくり考えてみろ。そこは俺が決められるところじゃないだろう?」

悠久姫「そう…じゃな」


白剣士「さっきも言った通り、俺はお前が決めた方向へ向く。それだけだ」

悠久姫「その言葉だけでも、私は心強いぞ…ありがとう」ニコッ

白剣士「…ふん」


悠久姫「話…感謝する。それじゃあ私は部屋に戻って…考えてみる」


白剣士「おう」

 
…ガチャッ…バタンッ…


白剣士「…」


…ゴロン…

白剣士「少し…寝よう…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【次の日・朝】


…ムクッ

白剣士「…今何時だ」

…チラッ

 
白剣士「9時か…姫の様子でも見にいってやるか…ふぁぁ…」

…ゴソゴソッ…

トコトコ…ガチャッ…バタンッ…

 
…トコトコ

白剣士「…ん」

悠久姫「…おはよう」

白剣士「ああ、丁度よかった。姫の様子見に行こうと思ってた所だ、寝れたのか?」


悠久姫「私も白剣士の部屋に行こうとしてたところじゃ…寝れなかった」


白剣士「まあそりゃそうだろうな…部屋でお茶でも飲むか?」

悠久姫「…」コクンッ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…コトン

白剣士「ほらよ」

悠久姫「…うむ」


白剣士「で、考えてみたのか?」

悠久姫「ああ…考えた」

白剣士「どうするつもりだ?」

 
悠久姫「…私の子供の時の話は覚えているか?」

白剣士「この間言ったやつだろ。剛闘家のこととか」

悠久姫「そうじゃ。剛闘家のおかげで、私の気持ち…いや、人生は大きく変わった」

白剣士「…」


悠久姫「…彼女がいなかったら、私は今…どうなっていたか分からない…」

白剣士「まあ…そうだな」


悠久姫「…」

白剣士「それは…つまり、レジスタンス側に…」

 
悠久姫「…しかしっ!!!」

…ドンッ!!!

…カチャンッ…ビチャビチャッ…!!


白剣士「…」ビクッ

 
悠久姫「私は…、誰よりも…国民の事を考えておる…。自分よりも、他人の明日のために!」

白剣士「…」

悠久姫「レジスタンスはあくまでも反逆軍…、国民を率いる王国側ではない!」

白剣士「…」


悠久姫「…私は…、王国側に…付く…」

白剣士「…」

悠久姫「どうなるかは…わからん…。きっと、戦いにも巻き込まれると思う…」

白剣士「多分、そうなるな」

 
悠久姫「私は…昨日、白剣士の着いてきてくれるという言葉だけで…少し、落ち着けた…」

白剣士「…」

悠久姫「お主の優しさは、ちと目に染みてな…」

白剣士「…」

悠久姫「…だから、そんな白剣士を…このまま危険な場所に一緒には…」


…ガシッ

悠久姫「うにゅっ」

 
…ギュッ

悠久姫「にゃ、にゃぜ頬を引っ張るのだ!」


白剣士「…ったく、大声出して暴れるから、お茶がこぼれちまったじゃねえか…」

悠久姫「そ、そんな事より…」


カチャカチャ…ジャー…トプトプッ…


白剣士「…ほらよ」

悠久姫「…今はお茶など…私は、それよりもお主の身を案じて…!ウィッチに言えば国から逃げ出すことなど…」

 
白剣士「その美味いお茶飲んだら、お前の決意を一緒にウィッチと剛闘家に伝えにいくぞ」

悠久姫「…っ」

白剣士「…早く飲めよ。冷めるぞ」


悠久姫「お主…本当に…いいのか?」


白剣士「…約束は守らないと、ウソつきになるだろうが。俺はウソつきは大嫌いなんだよ!それだけだ!」

悠久姫「白剣士…」


白剣士「っていうわけで…お前は、何も気にするな」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【レジスタンス・本部】


白剣士「…ってわけだ」

剛闘家「そうか…」


白剣士「まさかこのホテルの下がレジスタンスの本部だったとはな」

剛闘家「…」

ウィッチ「お嬢様、本当によろしいんですね」

 
悠久姫「…決めたことじゃ」


剛闘家「…そしたら、今日を境に…姫と俺たちは敵同士ってことになるな」

…バッ!!

…ガチャンッッ!!

 
白剣士「…なんだ?」
 
兵士A「…」チャキッ

兵士B「…」チャキッ

兵士C「…」チャキッ

 
剛闘家「すまない。姫を敵にするわけにはいかないんだ…無理やりでも拘束させてもらう」


悠久姫「ご、剛闘家!」


白剣士「…んなことだろうと思ってたぜ」

剛闘家「姫をキズつけない為の得策だ、悪く思わないでくれ」

白剣士「そんな事されちゃ、姫が一晩辛い思いで考え抜いた意味がなくなるんだが?」


剛闘家「そもそも、人の陣地で敵になる宣言をされて逃がすと思っていたのか?」

白剣士「特別視してくれるんじゃないかっては考えていたが…、思ったよりイイ女だな」

 
剛闘家「…褒めても何も出ないぞ?兵士たち!2人を拘束しろ!」

悠久姫「…っ!」


白剣士「んなろおっ!!」

…ガシッ

兵士A「ぐっ!人の武器を!」

白剣士「長い槍じゃ、近接は厳しいよなあ?」


剛闘家「…早い」

 
白剣士「…お前の帯刀、借りるぞ」スッ

兵士A「…殺す気か?」

白剣士「姫様がいなけりゃ、人質にとった後に殺してたかもな。殺しは姫の前じゃ見せられないからな」


剛闘家「…何をしている兵士たち!姫を捕まえ、逆に人質にするんだ!」


兵士B「はっ!わかりました!」バッ


白剣士「…させるか!兵士の兜って、武器にもなるんだぜ?」ガシッ

兵士A「俺の兜を!」

スッ…ビュンッ!!

 
…ゴツンッ!!

兵士B「ぬぐおっ!」


白剣士「あと1人…、姫、頭下げろ!」

悠久姫「わかった!」スッ


白剣士「この槍も借りるぜ…おらあっ!」

…ビュッ!!


兵士C「っ!」

ガツンッ…ヨロヨロ…ドサッ

 
剛闘家「長槍をあの位置から容易く扱うとは…」

白剣士「さってと…、兵士サン、このまま人質で来てくれるかな?」

兵士A「…くっそ…」


悠久姫「…剛闘家…」

剛闘家「姫…行くな!俺と一緒にいるんだ!」


悠久姫「…私は民を裏切れぬ…」

ウィッチ「…」


剛闘家「ウィッチ!何をしてるんだ…魔法で引き止めろ!」

 
ウィッチ「私の魔法は少々強力…今唱えては兵士と姫様ごと吹き飛ばしてしまいます」

剛闘家「くっそぉ…」


白剣士「…姫、体力には自信あるよな?」ボソッ

悠久姫「一応あるが…」


白剣士「さっき地図を見たんだが、このホテルから南下すれば王城の裏手に出る。そこはまだ王国軍の領地だろう」ボソボソ

悠久姫「そこまで行けばいいのか?」

白剣士「部屋を出たらこいつを吹き飛ばして、一気に逃げる…いけるか?」

悠久姫「…わかった」コクン

 
剛闘家「…」


白剣士「おい!剛闘家!」

剛闘家「な、なんだ…」

白剣士「姫様は、俺が守ってやるよ。安心しとけ」ニカッ

剛闘家「何っ…」


…ゲシッ!!!

兵士A「うわっ!」ドサッ

 
白剣士「走れ!!」ダッ

悠久姫「…っ!」ダッ


…ダダダダダッ……!!


剛闘家「ちっくしょお…、緊急招集をかける!もっと人手を増やしておくべきだった…」

ウィッチ「…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…タッタッタッタッタ


白剣士「姫、大丈夫か?」

悠久姫「大丈夫じゃ…」ハァハァ


白剣士「ウィッチの話だと城を境に王国軍の領土だと言っていたな…城があそこだから…そろそろのはずだ」

悠久姫「何がそろそろなのじゃ?」

白剣士「拠点だ。紛争状態なら、必ず周辺に拠点があるはずなんだ」

 
悠久姫「拠点?」

白剣士「城は国の中心に立っている。つーことは、その城を戦いの中心として扱ってるはずだ」

悠久姫「ふむ…」


白剣士「見たところ、大きな"戦争"の状態じゃないからな。レジスタンスの主要拠点があのホテルだってことは分かったろ?」

悠久姫「うむ」

白剣士「城を占拠したってことは、そっちも重要な拠点のはずなんだ。目に見えた戦いは起こってないって事は、休戦状態にあるらしい」

悠久姫「ふむ…?」


白剣士「城を巡って戦うのが普通になるはず。つーことは、その周辺にお互いの重要な防衛地点を設置するはず」

 
悠久姫「なるほど…?」

白剣士「…見えた、あそこだ!」

悠久姫「王国軍じゃ!」

白剣士「っと…ここで止まれ」


タッタッタ…ピタッ…


悠久姫「どうしたのじゃ?」

白剣士「万が一、あれがレジスタンスだったら俺らは拘束されちまう。姫、見覚えのある奴はいないか?」


悠久姫「…」ジー

 
白剣士「…」

悠久姫「…あれは!」

白剣士「どうした?誰かいたか?」


悠久姫「側近…」

白剣士「側近…か。王に忠誠心はあったのか?」

悠久姫「あった…。誰よりも父上に忠誠を誓い、自らを犠牲にしていた…」


白剣士「信用…できるか?」

悠久姫「…できる」

 
白剣士「わかった。俺が呼んだら…顔を出せ」

悠久姫「…」コクリ


…ガサガサッ!!


側近「…何の音だ?」

王宮兵士A「…そこの、茂みからです」チャキッ

王宮兵士B「敵かもしれません」チャキッ



…ガサガサガサッ!!

…スタッ…

 
側近「…ん?」

王宮兵士A「見ない顔だな…何者だ!」ググッ


白剣士「わーっ!待て待て!怪しいものじゃない!」


王宮兵士A「茂みから突然出てきて、怪しいも何もあるものか!」

白剣士「ち、ちょっと待て!お前、側近だろ!」


側近「…そうだが、何故知っている」

白剣士「ちょっと聞いたもんでな…、あんたに聞きたいことがある」

側近「ふむ…話くらいは聞いてやる」

 
白剣士「ここは…王国側の拠点でいいんだよな…?」

側近「そうだ」

白剣士「…王とその妻は、既に処刑されたと聞いた。王国側のトップは誰だ?」

側近「王、そしてその妻が亡くなり、姫様まで誘拐され…、もはやこの国のトップなど実質存在しない」


白剣士「見た所、あんたが指揮をしてるようだが?」

側近「…人がいないのだ」

白剣士「…もしも、だ。姫が戻ってきたら、あんたらはどうする?」


側近「…夢物語だ」

 
白剣士「…そうだと思うか?」

側近「どういうことだ」

白剣士「…姫、顔を出していいぞ」


…ガサガサッ……スッ…


側近「ひ…姫様……!?」ビクッ

王宮兵士A「なっ…」

王宮兵士B「姫…様…」


悠久姫「久しぶりじゃの…側近。白剣士、すべて私の口から話をしてもいいか…?」

白剣士「…もちろん」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


側近「…そういうことでしたか」

悠久姫「うむ。側近、お前が無事で本当に嬉しいぞ…王の亡き後、この国を支えていてくれた事…心から感謝する」

側近「そ、そんな…勿体なきお言葉!」スタッ


悠久姫「いい…頭を上げるのだ…。もはや…私は一人の女に過ぎぬ」

側近「それはありません!自分にとって、あなたは…王女様そのもの!」

悠久姫「ふふ…側近、そなたは変わっておらぬな…安心したぞ」


側近「ははっ!」

 
白剣士(普段を知ってるだけに、なんかウソくせぇ)

悠久姫「おい、白剣士…今何か失礼なことを考えなかったか」

白剣士「え?あ、いや何も?」

悠久姫「…怪しいな」


側近「ところで…この男は一体?」

悠久姫「わ…私の…友達…じゃな?」チラッ


白剣士「お…おう…そうだな…」

悠久姫「そ、そう!友達じゃ!」


側近「そうでしたか…先ほどはご無礼を…申し訳ない」

 
白剣士「あーいやいいよ」

悠久姫「そうじゃ、気にするでない」


白剣士「何でお前が言うかな」ギュッー


悠久姫「いたたっ!な、なんでスグつねるのじゃ…頬が伸びるだろうが!」

白剣士「元々ふにふにして伸びて…」


…ザワッ…

白剣士「…ん?」

 
王宮兵士A「あいつ…王女に何を…!」

王宮兵士B「ゆるさねえ…」

王宮兵士C「いいなー」

王宮兵士D「我らの秘めに…慣れ慣れしい!」
 
 
側近「…っ!!貴様ァ!!王女様に何をするっっ!!」クワッ

 
白剣士「あ…しまった」


王宮兵士A「貴様!なんという無礼を!」チャキッ

王宮兵士B「死んで詫びよ!」スチャッ

王宮兵士C「羨ましい!」ジャキンッ

王宮兵士D「抵抗するでないぞ!」


悠久姫「み、みんな良いのじゃ!落ち着いてくれ!」

側近「しかし、お嬢様へのご無礼…許せぬものではありませぬ!」

 
悠久姫「武器を下ろすのだ!そういう感じで付き合ってきた…別に気にすることではない!」

白剣士「…はー、どうして国のエリートって融通が効かないのかねえ」


側近「そういう問題ではない!」

白剣士「はは、そうね」

側近「…お前ら、その白剣士とやらを拘束しろ!」


悠久姫「白剣士」

白剣士「ん?」

悠久姫「やっちゃって構わん」

白剣士「えーっ」

 
悠久姫「というか…分からせてやれ」

白剣士「だるい」

悠久姫「一緒にいるといったではないか!ウソになるぞ!」

白剣士「…うーん」


王宮兵士A「何をごちゃごちゃ言っている!おらあっ!」

…ビュッ!!

 
白剣士「ウソつきは…ごめんだね!」

…ガシッ!!


王宮兵士A「なっ、槍を放せ!」

白剣士「だからさー、長い得物は軌道が分かりやすいからもっと鍛錬積んだほうがいいぞ?」

王宮兵士A「くっ…、王宮に仕える兵士がこれしき…ぬおおおっ!」ブルブル


白剣士「お…おおお!?」

悠久姫「し、白剣士ごと持ち上げた!?」

 
王宮兵士A「…おらあっ!」

…ダァンッ!!…ドサッ

王宮兵士長「…我が名は王宮兵士長!その辺の騎士、兵士と一緒にするでない!」


白剣士「…てぇな…コラ…」イラッ

悠久姫「…っ!」


白剣士「死ぬ覚悟あるんだろうなテメェ」ギロッ

側近(!)

王宮兵士長「死ぬ覚悟?そんなもの従事した時からとっくにあるわ!」


白剣士「いい度胸だ…殺してやるよ…」ダッ

 
王宮兵士長「かかってこい!」スチャッ

白剣士「…」スッ


王宮兵士長「む…貴様、武器なしとは舐めているのか!」

白剣士「てめーみてーな思い上がりには、これくらいで充分だ」


王宮兵士長「ならば…容赦はせぬ!食らえ!大突連弾っ!!」ビュビュビュッ


…ヒュッ…ヒュヒュッ・・・


白剣士「図体がでかければ、攻撃もおせぇ。あたらねえよ」

王宮兵士長「ぬううおおお!」ビュビュビュビュッ!!

 
白剣士「…」

…スイッ…ヒュンヒュンッ!!


王宮兵士長「ぬははは!避けてばかりでは勝てぬぞ!」ビュビュッ

白剣士「面倒くせースタミナしてやがるな…」

王宮兵士長「…まだまだまだ!」


白剣士「…おらあっ!」ガシッ


王宮兵士長「っ!…一度ならず二度までも槍を掴むとは。いいだろう、また吹き飛ばしてやる!」

 
白剣士「…おい」

王宮兵士長「なんだ」

白剣士「綱引き派は…好きか?」


…ビキッ…ビキビキ…


側近(見て分かるほどの浮き出る腕の筋力…!)


白剣士「…ふんっ!」

…グイッ!!


王宮兵士長「ぬおっ!力比べか…面白い!」

 
…グググッ…

王宮兵士長「…き、貴様…」

白剣士「それで本気か?」

王宮兵士長「…っ、そんな体のどこに…ここまでの力が…!」


白剣士「…さっきのお礼だ!」

…グイッ!!…ドタァン!!


王宮兵士長「…むお…、こ、小僧~…!」

白剣士「転ぶってのは、悪いもんじゃねーだろ?クソ兵士長が」

 
王宮兵士長「よかろう…ならば本気で相手をしてやる!」バッ

白剣士「最初っから本気でこいよ」


王宮兵士長「…」

白剣士「…」

…ダッ!!


王宮兵士長「ぬおおおっ!」

白剣士「…うおおっ!」

 
…スッ

側近「…そこまでだ!!」


…ピタッ

白剣士「…ぁ?」

側近「もういい、分かった。姫様とお前は友達なのだろう…自分たちが口を出す問題ではなかった」

白剣士「…」


王宮兵士長「しかし!」

側近「今こんな状況で内輪揉めをしてる場合ではない…そうだろう?」

王宮兵士長「…はい」


白剣士「付き合ってらんねえ…」

 
…トコトコ

悠久姫「あっ、どこへ行く!私も行くぞ!」

白剣士「…ふん」


…タッタッタッタ…


王宮兵士長「…なぜ止めたのですか」

側近「あいつの目は尋常じゃなかった。並の人間ではあの気は放てない」

王宮兵士長「…」

側近「一体何者なのだ…?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…トコトコ……

白剣士「…」

悠久姫「…」

白剣士「何で着いてくるんだよ」

悠久姫「…何となく」


白剣士「俺は周り歩いて頭冷やすだけだ。危ないから戻ってろ」ボリボリ


悠久姫「危ないのは白剣士も一緒じゃろ」

白剣士「…ふん」

 
悠久姫「さっきの…怒ったのか?」

白剣士「久々に、愚弄するような上から目線でイラっとしただけだ」

悠久姫「…昔の関係か?」

白剣士「…」


トコトコ…


悠久姫「…すまん、出過ぎた言葉だった」

白剣士「気にするな。俺がまだまだ子供なだけだ」


悠久姫「…」


白剣士「!」ハッ

 
…ガバッ…

悠久姫「むぐっ!」

白剣士「静かにしろ…」

悠久姫「どうしたのじゃ?」モガモガ


白剣士「人がいる…どっちだ?レジスタンスか、王国軍か…」


悠久姫「…」

白剣士「…何かしゃべってるな」

 
…ガヤガヤ
 
兵士A「…それ本当か?」

兵士B「ああ。マジだぜ…剛闘家が命令を出したらしい」


兵士A「…ついに本格的に始まるのか」

兵士B「市民を巻き込む事になるが…大丈夫か?」


兵士A「…さあな。避難はある程度完了してるが…」

兵士B「…今晩から総攻撃か。奇襲になる分、城を占拠しといてよかったな。有利になるぜ」

 
兵士A「でもよ…向こう側には俺の友達がいるんだ…鉢合わせたらどうしよう…」

兵士B「俺だって一緒だ。何でこんな事になっちまったんだろうな」


兵士A「王がいなくなって、秩序も何もなくなっちまった」

兵士B「俺らのせいといえば俺らのせいだしな…文句もいえねえけどよ…」


兵士A「とりあえず今は、夜に備えて休んでおこう」

兵士B「そうだな、拠点に戻っておこう」


…ザッザッザッザ…

………………………

 
白剣士「…聞いたか?」

悠久姫「うむ…今晩から…か」

白剣士「どうするよ」

悠久姫「どうするとは?」


白剣士「情報を伝えれば、逃げの道になるか、戦いを選ぶか迫られるぜ」

悠久姫「また…私が決めるのか…」

白剣士「側近がいる分、側近に任せるのも有りかもしれないけどな」


悠久姫「戦えば犠牲が出る。逃げれば父上側についた意味がない…ということになるのか?」

 
白剣士「…そうなる」

悠久姫「私はこちらの状況を把握してない。まずは側近に聞く…ことがいいと思う」

白剣士「まあ、そうなるか…とりあえず時間がない。とりあえず側近に伝える事にするか」

悠久姫「…そうじゃな」


…タッタッタッタッタッタ…

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


側近「お嬢様!心配いたしましたよ!」

悠久姫「すまぬ…それより、レジスタンス側の兵士の会話を聞いてきた」

側近「何ですって?」


悠久姫「…今晩から総攻撃をしかけるつもりらしい」

側近「…ついに相手も本気で来ましたか」


白剣士(紛争の最前線に立つことになるなんて、数日前に考えもしなかったぜ…)

 
悠久姫「…どうする?」

側近「一応、このような事態に備えて各地区に戦士は配備しておきました。迎撃準備は整っています」

悠久姫「…戦うのか?」


側近「相手がそのつもりなら、合わせるしかありません」

悠久姫「出来るだけ被害を抑え、国民への負担も減らしたい。どうすればいいか…」

側近「難しいですね。城下町があるので…」

悠久姫「うぬう…」


白剣士「はぁ…地図、見せてみろ」

 
…ペラッ

白剣士「ふむ…赤が敵の陣地、緑がこちら側でいいんだな?」

側近「…そうだが…」


白剣士「この国はグルリと回りを森が囲み、中心に城、それが東西に分かれて西にレジスタンス、東に俺たちだな?」

側近「ああ」

白剣士「城下町はこちら側だが、城は向こう側の領地ってわけか…」

側近「そうだ」


白剣士「…なるほどな」

悠久姫「何かわかったのか!?」ベタッ

白剣士「だー!ひっつくな!」


王宮兵士C(いいなー)

 
白剣士「…城下町は戦いの場にするにはちと大きすぎる。被害も大きくなるだろう」

側近「それは分かっている。だが、相手も城を中心にして攻めてくるだろう?」


白剣士「…城の兵士を全て北と南側へ回せ。城下町の兵力を全て森側の拠点に入れるんだ」

側近「それでは城下町が堕ちてしまう!我が国の最後の砦だぞ!?」

白剣士「まあ聞けよ。そうすれば市民への影響は著しく低くなる」


側近「それはそうだが…」

白剣士「それに、相手も城下町ではなく森側を攻めてくると思うぞ?」

 
側近「何故分かる?」

白剣士「どちらも市民が第一だからだ」

側近「…?」

白剣士「向こう側も、極力の国民を避難させたと言っていた。これは城下町を攻める兵力は相手も低いと思う」

側近「ふむ…」


白剣士「と、なると…狙われるのは城の周りを囲む森だ」


側近「なるほど、一理あるな」

 
悠久姫「ところで…私は…これからどうすればいいのだ?」

白剣士「ん?」

悠久姫「私もこのまま、この前線にとどまっていいのか?」


側近「それはなりません!」

悠久姫「だが…みんな戦うというのに…」


側近「姫様…あなたは残された希望なのです」

悠久姫「…」

白剣士「俺はどうすっかな…」

 
悠久姫「お主も…戦うのか?」

白剣士「いや…俺は命懸けなんてしたくねえよ。姫と一緒にいる約束もあるしな」

悠久姫「そうじゃなっ!」


側近「…姫様のこと、よろしく頼む」


悠久姫「…」

白剣士「おう」


側近「では、白剣士の言った作戦を基本にして、再度作戦を練り直したいと思う」

 
白剣士「それがいいだろう」

側近「夜までは少し時間はありますが、今のうちに避難所…高台へ逃げていたほうがいいでしょう」

白剣士「どこだ?」


側近「兵士に案内させます。姫様、どうか…ご無事でお願いいたします」


悠久姫「…うむ、側近……お主も…な」

側近「私は姫様を残して死ぬ気はありません。どうか、ご安心を」ニコッ

悠久姫「…」

 
王宮兵士「それでは、避難所へご案内いたします!」ビシッ


悠久姫「うむ…よろしく頼む」

白剣士「…」

…トコトコ……


王宮兵士長「ふん…」

白剣士「…ああ、そうだ。兵士長っつったっけアンタ」

王宮兵士長「何だ」

 
白剣士「…俺を吹き飛ばしやがって。決着つけるまで死ぬんじゃねーぞ、クソが」

王宮兵士長「ふん。貴様も姫様をしっかり守れ。何かあったら、また吹き飛ばしてやるわ」

白剣士「…っけ」


悠久姫「…みんな、無事でな」


王宮兵士長「姫様に、敬礼っ!!」


王宮兵士達「っ!」ビシッ!!

側近「…」ビシッ!!


悠久姫「…」ビシッ!!

 
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・・・
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本日はここで終了です。
先述しましたが、今日から3日ほど留守にするので多めの更新をいたしました。
次の書き込みで、1幕は終了となります。

2幕は間髪いれる開始する予定ですが、よろしくお願いいたします(A´ω`)

皆様、ありがとうございます。
最終回、投稿いたします。

 
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――――【夜・高台】

…ガチャッ…バタンッ


白剣士「…ん」

悠久姫「…」

白剣士「…どうした」

悠久姫「戦いは、いつから始まるのだ?…もう夜になっただろう」


白剣士「さあな。ここから全体はよく見渡せる。何かあったら確認できるだろうぜ」

 
悠久姫「これで…よかったのか」

白剣士「いまさら収拾がつく状況じゃねえ。言わずもがな、こうなっただろう」


悠久姫「そうではない。流れに飲まれ、結局戦いのまま来てしまった」

白剣士「ああ…夜間戦か。逃げる道もあったかもってことか?」

悠久姫「…そうじゃ」


白剣士「まー…なくはないと思うが、あいつら…王宮兵士らのプライドが許されないと思うぜ」

悠久姫「プライド?」


白剣士「慕っていた王を失ってるのに、戦える兵力をもってながら撤退できると思うか?」

 
悠久姫「…だが…」

白剣士「戦争…戦いが始まる理由なんて大体些細なもんさ。喧嘩と一緒だ」

悠久姫「私には…わからん…」

白剣士「誰だってわからねーよ。人に赦す心ってのがあれば、もっとも戦争なんて起きないのかもしれないがな」

悠久姫「…」


…ヒュゥゥゥ…ドォォンッ…!!


白剣士「!」

悠久姫「!」

 
白剣士「北側の森で閃光…、始まったか?」

悠久姫「…」ブルッ


…ドォォンッ……ドォン…


白剣士「…始まったみたいだな」

悠久姫「この音はなんじゃ…?」

白剣士「魔法戦だな。赤く燃え上がっている…」


悠久姫「…っ」


…ドゴォォォン……ビリビリッ…

 
白剣士「なんつう轟音だよ…ここまで空気が振動してきやがる」

悠久姫「…あの1回の光で、一体何人の命が…」

白剣士「あまり考えるな。心がやられちまうぞ」

悠久姫「…」


白剣士(あいつらは、亡き王もだが…姫の為に命を落としているんだ…なんてさすがに口に出していえねえよ)

 
…ビリビリッ……ドォン…


白剣士「今度は南部側の森か。城下町はどうやら見る限り、戦線にはなってない…か」

悠久姫「何とか民だけは守れているようじゃな…」

白剣士「側近のやつ、上手く立ち回ってくれてるみたいで何よりだ」


悠久姫「この戦いが終わったら、側近には勲章を授与せねば」


白剣士「…そうだな」


悠久姫「…む?」

白剣士「どうした?」

 
悠久姫「あの…向こう側の光も、魔法なのか?」

…ピカッ…ドォン…


白剣士「…西側の森林で光?もうあそこまで王国側が進行したのか…?」

悠久姫「いや、爆発はまだ最初の場所でも見えるが・・・」


白剣士「…?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【レジスタンス領・本部】


剛闘家「…お互い、城下町への干渉を少なくする考えでよかったよ」

ウィッチ「姫様が上手くやってくれてるようですね」

剛闘家「姫…くそっ!あの時逃がしてなければ!」

ウィッチ「…」


…コンコン


剛闘家「入っていいぞ」

 
ガチャッ!!
 
偵察隊員「報告します!」


剛闘家「どうした」

偵察隊員「北側、南側で我がレジスタンス軍は王国軍と交戦中でしたが、勢力均衡状態になっています!」


剛闘家「そうか、ご苦労。下がっていい」

偵察部隊「はっ!」


…バタンッ

 
剛闘家「兵力的にこちら側が不利なんだが、ウィッチの作戦のおかげで上手くいってるね」

ウィッチ「戦士が少なくても、領地があればある程度はカバーできますからね」

剛闘家「…」

ウィッチ「どうしたのですか?」


剛闘家「いや…、姫は大丈夫かなと思ってさ。あいつバカだから、前線に行こうとしてないかなって」


ウィッチ「大丈夫でしょう。あの御仁が姫様を引き止めていると思いますよ」

剛闘家「…っ」

…ガシッ!!

 
ウィッチ「…」

剛闘家「何であんたは、あいつをそんなに信用しているんだ?お前があの日、部屋に行ったことも知ってるぞ?」

ウィッチ「…部屋を案内しただけですよ」


剛闘家「…」ググッ

ウィッチ「…」


…バッ!

剛闘家「っち…ごめん。頭に血が上りやすくなってるんだ」

ウィッチ「いえ、こんな状況ですし仕方ないですよ」

 
剛闘家「…姫、無事だといいな」

ウィッチ「あなたは本当に姫様が大好きなのですね」ニコッ


剛闘家「…大好きって、そ、そういう好きじゃないからな!?」

ウィッチ「ふふ」

剛闘家「くっ…、こんな話してる場合じゃない!次の作戦もどんどん立てるぞ!」


…コンコン

剛闘家「またか…入っていいぞ!」

 
…ガチャッ!!

偵察隊員「ほ、報告します!!」

剛闘家「血相変えて、どうした?」


偵察隊員「レジスタンス領の西側…、星降町の国境域から謎の戦闘集団が出現!交戦状態に入りました!!」

剛闘家「…っ!?」

ウィッチ「…それは、ちょっと不都合な話ですね」

剛闘家「相手の情報は!?」


偵察隊員「手薄になった所を襲われましたので、何も…!」

 
剛闘家「王国軍の奇襲じゃないのか?」

偵察隊員「わかりません!」


剛闘家「…っち、本部に残るやつらに西側の配備を固めろと伝えろ!」


偵察隊員「…はっ!」

…タッタッタッタッタ…


ウィッチ「何が起きてるのでしょうか」

剛闘家「…わからない」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【王国軍側・本部】


…タタタタッ!!

伝令隊員「伝令!北部と南部にて、交戦状態に突入した模様!」


側近「ご苦労。様子はどうだ?」

伝令隊員「均衡状態が続いております!」

側近「わかった…下がれ」

伝令隊員「はっ!」


…タタタッ

 
王宮兵士長「…均衡ですか。…兵力的にはこちらが有利だというのに」

側近「仕方ないな。相手にはあの"ウィッチ"がいる…」


王宮兵士長「ですが、お互い城下町への被害は考えていたようで安心しました」

側近「それは確かに…」


王宮兵士長「あの白剣士というやつ、お嬢様のことちゃんと守ってますかね」

側近「きっと大丈夫でしょう」

王宮兵士長「側近殿がそう言われるなら…いいのですが…」

 
…ダダダダッ!!

伝令隊員「き、緊急通達!」


側近「…どうした」

伝令隊員「レジスタンス領の西側の国境沿いで、レジスタンス軍が謎の勢力と交戦状態になった模様!」

側近「何?」


王宮兵士長「それは手薄に見せかけた、レジスタンス側の罠かもしれん」 

側近「ふむ…」

伝令隊員「いかがなさいますか」


側近「情報が確定しないまま動くのは得策ではありません。少し様子を見ましょう」

伝令隊員「はっ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――――【高 台】


白剣士「…様子がおかしいな」
 
悠久姫「どうしたのじゃ?」

白剣士「火の手が上がるはずのない場所で、次々と戦火が見える」


悠久姫「…戦いが本格的になってきたのではないのか?」


…カサカサ…


白剣士「わからん…」

悠久姫「ふむ…」

 
…カサカサカサ…


白剣士「とりあえず、いったん部屋に戻って…」クルッ

悠久姫「うむ」

 
…スタッ!!

???「…」

…ビュッ……ドゴォッ!!


白剣士「ぐっ!?」

悠久姫「な、なんじゃ!?」

 
…ズザザ…ドサッ

白剣士「いっつ…」


???「…今の一撃で沈まないとは」

???「側近とやらか?…だが側近は今は前線のはず。こいつは誰だ?」

???「どうでもいい。俺らは目的だけ果たして帰るぞ」


悠久姫「し、白剣士!?誰じゃおぬし等は!」


???「おおう…姫様、噂どおりお美しい」

???「ちょっと申し訳ありませんが、ついてきてもらいますよ」

 
白剣士「何だテメェら…姫から離れろ…」ググッ


???「黙っていてくれるかな」

…ゴツッ!!!…ドシャッ…


白剣士「ぐっ…」

…ドサッ


悠久姫「し、白剣士ぃ!!」ダッ

???「おおっと、姫はいかせる訳にはいかないんでね」


悠久姫「ど、どかぬか!」

???「やれやれ、おてんば姫の名前は伊達じゃないね。ちょっと眠っててもらうよ」ドスッ

悠久姫「むぐっ…」

…ガクッ

 
???「えーと…これであとは、姫を連れてって仕事は終わり?」

???「そうだな。これでいいはずだ、俺らは戻るぞ」

???「結局こいつが誰か分からなかったが…まあいい。いくぞ」


白剣士「…」


…タッタッタッタッタ…

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…チュンチュン


側近「…起きろ白剣士」

白剣士「…んむ…」


側近「ひどくやられたな。後頭部から血を流してたのは死んだと思ったぞ」

王宮兵士長「立てるか」


白剣士「そっ…そうだ…姫は…!」

 
側近「おそらく誘拐された。相手もプロだな…足跡すら残っていない」

白剣士「くっそ…くっそおお!」ダンッ!!

王宮兵士長「…あいつらにはしてやられた」


白剣士「…あいつら?」


側近「昨日の戦いの途中で、第三の勢力が現れたのだ」

白剣士「そっ…そうだ。戦火があちこちで上がりはじめて、その直後に…」

側近「…困ったことになった」ギリッ

 
白剣士「すまねえ…俺のせいで姫が…」

側近「…それに関連することで、姫の誘拐と同じくらいの大問題が生じている」

白剣士「どういうことだ?第三の勢力とかいっていたな?」


側近「…」

王宮兵士長「…星降町の奴らが、この紛争に乗じて王国へ侵攻してきたんだ」


白剣士「なっ…」


側近「どうしたものか。恐らく姫を誘拐したのはその一味だろう」

 
白剣士「…っ」

王宮兵士長「元々内争で素人とは呼べぬように軍人化していた町民だ。恥じる事はない」

側近「…姫様の救出がてら、その本部を叩ければいいのだが」


白剣士「…本部の場所は?」

側近「検討はついている」

白剣士「教えろ」

側近「…危険すぎる」


白剣士「こういう場合は集団より単独行動のほうが楽だ。それにこのキズのお礼…まだなんでな」ギロッ

 
側近「…」

王宮兵士長「…ふん」


白剣士「…教えろ!!」グイッ


側近「…」

白剣士「…」

側近「…分かった」

白剣士「…感謝する」

 
王宮兵士長「…正直なところ、俺らは今…動ける状況ではない。姫様のこと…頼むぞ」

白剣士「あ?」

王宮兵士長「…」

白剣士「…任せろ」


側近「…必要な装備は準備する。行動はすぐにでも出来る、大丈夫か?」


白剣士「…上等!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――――【中央軍・本部】


元帥「事態は緊急を要する!もはや、これは一国の問題だけではない!」

大将「あの美しい悠久国が、星降町のように堕ちてもらっては困りますからな」

中将「現在の状況を教えてくれ」


元帥「悠久国は2分し、レジスタンスと王国側で戦っていたが、そこへ星降町の民軍が侵攻したらしい」


大将「ははっ、星降町は堕ちる所まで堕ちたみたいですな」

元帥「…困ったことだ」

 
中将「…で、どうするんだ」

元帥「今のまま見過ごすことは出来ん。本日11時をもって、中央軍の鎮圧作戦を実行する!」


大将「…了解!」

中将「了解!」


元帥「…頼むぞ。嫌な予感がする」

大将「元帥殿の嫌な予感、意外と当たるんですよね」

中将「…」


元帥「こんな時に…英雄剣士がいてくれれば…どんなに楽か…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【レジスタンス領・本部】

剛闘家「まさか…星降のやつらが裏切るなんて!」ドンッ!!

ウィッチ「…予想外でしたね」

剛闘家「ちくしょう…間に挟まれた俺たちは分が悪すぎる!」


ウィッチ「このままでは全滅するのは目に見えています。国民への影響も考え、王国側に白旗を揚げるべきでは…」


剛闘家「それで…レジスタンス側が納得するか…?」

 
ウィッチ「…しないでしょうね」

剛闘家「…この状況をどうしろというんだ」

ウィッチ(いずれ、私の考えではもっと酷いことになると思うのですが…言わないでおきましょう)


…ガチャッ!!バァン!!

偵察隊員「報告します!星降側から再び攻撃を受けました!前線部隊が壊滅!」

剛闘家「すぐに援軍を送ってくれ!」

偵察隊員「はっ!」

…タッタッタッタ

 
剛闘家「く…くそっ…」

ウィッチ(私がうまいことしないと、本当に壊滅しかねない。側近殿に後で連絡しておきましょう)


剛闘家「…俺は、英雄になるつもりだったのかもしれない…」

ウィッチ「…ふむ?」

剛闘家「町を救い、国を安泰させ、姫にも認められ、英雄と呼ばれてみたかったのかもしれない…ふと、そう思った」

ウィッチ「なるほど。英雄は誰しも憧れるもの。気持ちは分からないでもないです」


剛闘家「…」

 
ウィッチ「…ですが、英雄とはなる者ではなく、そう呼ばれるようになるもの」

剛闘家「はは、笑えるな。気がつけば今回の騒動の親玉みたいなもんだ…どうしてこうなったんだ…」

ウィッチ「私も似たようなものですけどね」


剛闘家「本当に英雄がいたら…私はそいつに倒されるのかもしれないな」

ウィッチ「どうでしょうね。意外と、もうそんな方と会ってたり…するかもしれませんよ」フフ


剛闘家「…どういうことだ?」

ウィッチ「私にとって、姫様を案じる人たちは…全員"英雄"と呼ぶべきだと思っていますので」クスッ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【王国軍側・本部】


側近「…白剣士は行ってしまったか」

王宮兵士長「…大丈夫でしょうか」

側近「さあな」


王宮兵士長「…昨日の戦いで、多くの仲間が命を落としました」

側近「本当にすまないことをした…」

王宮兵士長「自分も、守れた命があったのではないかと…悔やみきれません」

 
側近「この戦いは、どうなっていくのだろうか」

王宮兵士長「星降町を救いたかった剛闘家が行った自作自演の誘拐…それがまさか…ここまで広がるとは」

側近「それを裏切り、侵攻してきた星降町の民軍…はは、笑えてくるな」


王宮兵士長「…人々は、今一度望んでいるでしょうね。特に、戦争の中心に立たされている国民たちは」

側近「何をだ?」


王宮兵士長「…英雄の再来です」


側近「この戦いを静められる人間がいると思うか?」

王宮兵士長「いいえ…だからこそ、ですよ」


側近「この戦いを静められる人がいたら、それを"英雄"って呼ぶだろうよ」

王宮兵士長「…そうですね」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ガサガサ…

…タッタッタッ…タッタッタッタッタッタ…!!

白剣士「…っ、あいつの教えた道、走りずらいんだよクソが!」


ドクン…ドクン…

白剣士「はぁ…はぁ…!!待ってろよ、姫!!」


…ドクンッ!!


next story.......
【TO BE CONTINUED】


1幕はこれで終了です。読んでいただいた方々、ありがとうございました。
後書き、修正分で終了です。


次回は早くて明日、遅くても数日以内に投稿開始します。ありがとうございました。

>>19

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


…コンコン

店員「はーい、どうぞー」

…ガチャッ

 
白剣士「えーっと…」

店員「お泊りのお客様ですか?」

白剣士「あ、いや違う。こいつが用事あるっつーもんで…」


剛闘家「…」

白剣士「おい、起きろ。おい!」

剛闘家「…」

 
悠久姫「~…っ!ひあ…かんらっ…!(したかんだ!)」ズキズキ


青年「そうッスか。ありがとうございました、それと…」

白剣士「ん?」

青年「船で来てるなら今は悠久行きだけだし、あと数時間かかりまスよね?」

白剣士「まあそうだが…」


青年「しばらく、白剣士さんはこの町でヒーローになりまスよ?」チラッ

白剣士「ん?」チラッ

■後書き
今回は先述していたとおり、かなりゴチャゴチャした展開になり、わかり難い部分が多かったかなと思います。
こういうストーリーは書いてみたかったので、自分なりに工夫しながら展開をわかりやすく書いたつもりですが、こうすればよかった、というのが多いです。

次回も既にある程度できているのですが、今回よりも会話パート(個人の生活)に当てた部分が多いので
4部にあたる今回は完全に自己満足な世界観で展開しています。

まあ、SSはそもそも自己満足の世界観で展開されるもの、ですが(A´ω`)

それでは、ありがとうございました。

どっかにまとめありますか。1のurlに飛んでも見られないんですが

次スレはどこよ?

次回
白剣士「明日が平和なこと」
白剣士「明日が平和なこと」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1379292369/)

>>333
今日から書き込み始めです。ぜひ(A´ω`)
>>330
多数まとめられている場所があると聞いているので、
調べるとすぐに出ると思います(冒剣士などで調べればすぐ出るかと)

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