勇者「魔王を倒す旅に行ってくるね!」魔王「気をつけるんじゃぞ」(548)


※側近「魔王様を倒す旅に出かけてまいります」魔王「…は?」の続きです

あっちで半ば無理矢理くっ付けた側近と女騎士の子供がメインの話です


――魔王城――


魔王「ふっふっふ…よくぞここまで辿り着いたな、二人の勇者よ」


勇兄「魔王!お前の悪事もここまでだ!」


勇妹「……覚悟」


魔王「ふん、貴様ら程度片手で十分じゃ」


勇兄「くらえー!」チャキッ


ガキンッ


勇兄「なっ!?」


魔王「これが勇者の力…他愛無いのぅ」


勇兄「なら…!これで…どうだぁぁああ!」バチバチバチ!


勇妹「………えい」バチバチバチ!


魔王「ガハハハハ!この程度痒い痒い!ワシは昔から雷魔法を受けとるから、何もしなくても耐性があるのじゃ!」バリバリバリバリ!


勇兄「くそ…!」


魔王「どれ、少し反撃でもしてやるか」ビュオオオォォォォ!


勇兄「ぐああぁぁあああ!!」ズザァァァ


勇妹「お兄ちゃん!!」


魔王「ちょ、ちょっと強すぎたか?軽めの風魔法にしといたんじゃが…」アセアセ


勇妹「………」ギロッ


魔王「」ビクッ


勇妹「よくもお兄ちゃんを………」ゴゴゴゴゴゴ


魔王「ゆ、勇妹よ!一旦落ち着くんじゃ!」


勇妹「ハアァァ!」ピッ!


魔王「うむ、父親譲りの見事な拘束魔法だ」ピタッ


勇妹「……えい」グサッ


魔王「ぐはっ!ちょっ!?その勇者の剣はマズイって!割とガチでダメージが残るんじゃぞ!」


勇妹「お兄ちゃんを傷つける者は誰一人として生かしておけない……」グリグリ


魔王「ヤンデレモード発動!?そ、側近ーーー!!ヘルプミーーーー!」


ピッ!


勇妹「!?」ピタッ


側近「勇妹、それ以上は駄目ですよ」


勇妹「パパ…」


側近「それは遊びの領域を超えてます。最早ただの暴力です」


勇妹「……ごめんなさい」シュン


側近「私に謝っても仕方ありませんよ」


勇妹「……魔王様、ごめんなさい。やりすぎました」


魔王「う、うむ…今度からは気をつけるんじゃぞ」ナデナデ


勇妹「……うん」


側近「仲直り出来ましたね。じゃあ勇妹は勇兄の回復をお願いします」


勇妹「わかった」タタタタタタッ


側近「魔王様、娘が迷惑を掛けて本当にすみませんでした」ペコ


魔王「迷惑は掛かっておらんが…まったく、いらんとこまでお前に似おったな」


側近「そうですか?私は女騎士さん似だと思いますが…」


魔王「見た目はそうじゃが、ドSなとこがお前そっくりじゃ…いや、お前以上かもしれん」


側近「それは将来が楽しみですね」


魔王「ワシはまったく楽しみじゃないわい」


側近「そんなことより……意外と傷が深いですね」


魔王「おおっ、忘れておった!血がドバドバ出てるのぅ…意識も朦朧としてきたし……」フラフラ


側近「今僧侶さんを呼んできます。それまでご自分で応急処置しといてくださいね」スタスタ


魔王「移動系魔法を使えとは言わんがせめて走らんかい。主君のピンチじゃぞ」

今日はここまで

ゆっくり亀更新でいきます

ではまた

やっぱ女騎士とは無理矢理だったんかい
あと続編は嬉しいけど何で前スレ残ってるのに使わないの?

皆さんレスありがとうございます!
>>12
まさか約一ヶ月経ったのに前スレが落ちてないとは思いもせず立ててしまいました…すいませんでした

では早めに帰って来れたので少しですが投下します


____________________


勇兄「…ぅ……」


勇妹「お兄ちゃん!」


勇兄「……顔が近い」


勇妹「………」


勇兄「……離れろよ」


勇妹「うん、わかった」スッ


勇兄「で、俺は何してたんだっけ?」


勇妹「……私とイチャイチャしてた」


魔王「平然と嘘をつくな。ワシらと勇者魔王ごっこして遊んでおったんじゃ」


勇兄「そうか…俺、魔王の攻撃で気絶しちゃったんだった……俺って弱いね」


勇妹「そんなこと無い。お兄ちゃんは強い。お兄ちゃん大好き」


魔王「最後のはまったく関係ないぞ」


勇兄「ねぇ魔王、どうしたらお父さんや魔王みたいに強くなれるの?」


魔王「う~む…お前は剣術と雷魔法に長けてるから十分強いはずじゃが…」


勇兄「でも妹みたいに他の魔法は使えないし、剣術と雷魔法だって魔王には効いてなかったじゃん」


魔王「そりゃワシは最強じゃからのぅ!」ドヤッ


勇妹「じゃあこの剣をお兄ちゃんが持ってもう一回やればいい」つ勇者の剣


魔王「そ、それはやめておこうな?前に一度両腕を切り落とされたの覚えとるじゃろ?僧侶が居なかったら本当に危ないとこだったんじゃぞ」


勇妹「ほら、お兄ちゃんは魔王様がビビるぐらい強い」


魔王「ビビってはおらんぞ!これ以上問題を起こして側近に怒られるのが怖いだけじゃ!」


勇妹(パパにはビビってるんだ…)


勇兄「でもそれは勇者の剣だからであって、俺の実力じゃないじゃん。実際に普通の剣じゃ何も出来なかったし…」シュン


魔王「それはさっきも言ったがワシが最強だからじゃ!」ドヤッ


勇妹「そう、魔王様はとても強い。魔王様に効かなくても他の魔物さん達には効く。試しに近くの魔物さんを連れてきて戦ってみれば証明できるはず」


魔王「こら、罪の無い魔物をイジメるんじゃない」


勇兄「……そうだ!前にお母さんが旅をしたことでより成長したって言ってた!」


魔王「ワシを倒すことが目的じゃったからより一層鍛錬をしたんじゃろうな。それに側近も一緒に鍛錬をしたらしいし」


勇兄「そういえば、その旅がキッカケでお父さんとお母さんは結婚したんだったね」


勇妹「……行こう。今すぐ二人で旅立とう」


魔王「へ?」


勇兄「そうだな!よし、出発だー!」


魔王「待てぇぇいい!急すぎるわ!その行動力はホント父親そっくりじゃな!」


勇兄「そうだね、パンツとか持ってかないと」


魔王「そういうことじゃない!二人だけじゃ危険じゃろ!」


勇妹「大丈夫。私がお兄ちゃんを守る」


勇兄「何言ってんだよ!俺はお前のお兄ちゃんなんだぞ!俺がお前を守るに決まってんだろ!」


勇妹「……うん、守られる///」


勇兄「じゃあパンツ持ってここに集合な!」


魔王「もっと必要な物がたくさんあるじゃろ!何故そこまでパンツにこだわるんじゃ!
……って、そこじゃない!まだ子供のお前らだけで旅なんて危険でさせられないんじゃ!それに考えてみろ、側近や女騎士が許すと思うか?」


____________________


女騎士「頑張るんだぞ、二人とも。お小遣い渡すけど無駄使いはしないようにな」


勇兄「うん!ありがとお母さん!」


魔王「認めたーー!むしろ背中を押したーー!何でそんなにあっさり認めたのだ!?心配じゃないのか!?」


女騎士「心配に決まってるだろ。だが、それ以上にこの子達が一生懸命成長しようとしてるのが嬉しいんだ。それが親というものさ。それに今年はアレが開催される年だしちょうどいいだろ?」


魔王「た、確かにそうだが…二人というのはあまりにも危険じゃないか?」


女騎士「魔王は心配性だな…よし、お守りとしてこれをつけよう」ガシッ


スラりん「…へ?」


女騎士「二人を頼んだぞ、スラりん」


スラりん「嫌だよ!何で僕が行かないといけないの!?勇者か女騎士がついてってあげればいいじゃん!」


女騎士「それではこの子達の成長の妨げになるし、勇者は今も世界の治安を守る為に飛び回ってて旅をしてる暇などない。それにスラりんはこの子達と仲が良いだろ?」


スラりん「仲は良いけどさ…」チラッ


勇兄「やったぁー!スラりんも一緒だー!」


勇妹(せっかくお兄ちゃんと二人きりだったのに…)ジー


スラりん(勇妹だけめっちゃ嫌がってんだもん!)ビクビク


スラりん「ま、魔王や僧侶も一緒に行くってのはどうかな?(僕一人だけじゃ耐えられない!助けて!)」


魔王「それはいい考え…」ピタッ


勇妹「………」ジー


魔王「……城を空けると側近に怒られるから無理じゃ。僧侶も側近と一緒に治安維持の方に勤しんでるようだし…」シュン


スラりん(空気読んだー!魔王も成長したんだね!)


勇兄「じゃあお母さん、行ってくるね!」フリフリ


勇妹「行ってきます、ママ」フリフリ


スラりん「はぁ……しょうがないから行ってくるよ…」ピョン ピョン


女騎士「三人とも、怪我には気をつけるんだぞー」フリフリ


魔王「ワシもそこまで見送ってくる」スタスタ


女騎士「ああ、頼んだぞ…………よし、これで久しぶりに勇者と二人きりになれる///」


____________________



勇兄「じゃあ魔王を倒す旅に行ってくるね!」


魔王「気をつけるんじゃぞー!」フリフリ



スタスタスタ



魔王「…やっぱり心配じゃな………そうだ!」ピコーン!


スラりん「…で、どこに向かう予定なの?」


勇兄「とりあえずお父さん達と同じ道を辿ろうと思ってるけど…最初はスラりんの故郷でもある『始まりの町』だっけ?」


スラりん「うん。でもこっからだと始まりの町が一番遠いよ。戻って魔王に連れてってもらえば?」


勇妹「……私に任せて」スゥゥ…


勇妹「ピューーーーー!」


スラりん「口笛?」


バサッ バサッ


フェニックス「クァー!」


勇兄「そうか!カイザーに連れてってもらうのか!」


勇妹「うん」


スラりん「さすが勇妹だね。勇者と同じように色んな魔物と話せるなんてホント凄いよ」


勇妹「全ての魔物さん達は私のペット」


スラりん「考え方はまったく違うけど…」


勇妹「カイぴょん、始まりの町までお願い」


スラりん「あだ名は可愛いんだね」


勇妹「スラりんもあだ名つけて欲しい?」


スラりん「いや、僕は別に…」


勇妹「スリ」


スラりん「何を盗んだのかな?」


勇妹「じゃあ…ラリ」


スラりん「それだと常にラリってるみたいだからやめて」


勇兄「二人とも早く行こうよー」


スラりん「僕は基本的に誰かの頭の上に乗ってるんだけど…」


勇兄「じゃあ俺の頭の上―「駄目」

勇妹「お兄ちゃんの頭の上に乗るなんて万死に値する」


スラりん「じゃ、じゃあ今回は乗らなくていいや…」


勇妹「いえ、私の上が空いてる。遠慮なく乗っていい」


スラりん(…乗りたくないなぁ)ピョン


勇兄「じゃああらためて…魔王を倒す旅に出発だーーーーっ!!」

今日はここまで


一つ質問なんですがこの場合、前スレにリンク貼っといた方がいいんですかね?

前にもシリーズ物書いたことあるんですが、前スレが残ってるのは初めてなので誰か教えてください!

てきればはってほしい


勇妹がいい味出してるな
もちろんショタコンの竜騎士は出るんだよな?

>>27、28、30
アドバイスありがとうございます!とりあえず今日の投下が終わったら貼っておきます

>>29
竜騎士は次回にたっぷり書く予定です


では今日も少しですが投下していきます


――始まりの町――


勇兄・勇妹「zzZ」スヤスヤ


スラりん「……長かったから寝ちゃったよ。さすがは子供だね」


フェニックス(クァー)ヒソヒソ


スラりん(うん。ありがとね、カイザー。魔王によろしくね)ヒソヒソ


バサッ  バサッ


勇兄「…ぅ~ん…あれ?もう着いたの?」ムクッ


スラりん「もうっていうかやっとだよ。長すぎたから二人とも寝ちゃったんだ」


勇兄「そうだったんだ…ほら、勇妹。起きろ。てか俺に抱きつくな」ペシッ


勇妹「…ん……おはよう、お兄ちゃん…カイぴょんは?」ゴシゴシ


スラりん「二人を起こさないように帰っちゃったよ」


勇妹「お礼言ってなかったのに…帰ったら大好きなおやつを買ってあげないと」


スラりん(こういうところは勇者に似てるなぁ)クスッ


勇兄「で、これからどうすればいいの?」


スラりん(この旅ってホントに無計画なんだ…)


スラりん「とりあえず王様に会って報告した方がいいかもね」


勇兄「うん、そうだね。じゃあお城に行こー!」スタスタ


スラりん「オー!」ピョン ピョン


ガシッ


スラりん「へ?」


勇妹「……今度二人で寝てたら私を先に起こして。じゃないとお兄ちゃんの寝顔が見れないから」


スラりん「う、うん…わかったよ」


勇妹「じゃあ私の頭の上に乗ってていい」ヒョイ


スラりん(この子はブレないな…)


サキュバス「実は…この娘も勇者なのよ」


勇者「………はあ?いや、勇者は俺だから」


サキュバス「でも『天からのお告げが聞こえちゃうよぉぉおお!!ラミアたんが勇者じゃぁぁあああ!魔王城にイッちゃうぅぅううう!』ってその村長が昨日言ってたのよ」


勇者「…一つ聞いていいか?お前は昨日、俺の村に来たのか?」


サキュバス「ええ。ちょっとランチをしにね」


勇者「お前が犯人か!何がランチだ!!村外れの鍛冶屋から剣をもらって帰ってきたら、村の男全員光悦な表情しながら干乾びてたんだぞ!!」


サキュバス「殺しはしてないから大丈夫よ。貴重なタンパク源なんだから」


勇者「まだ搾り取るつもりなのかよ!?」

すいません!誤爆しました!>>35は無視してください!


王城


王「魔王を倒す旅は困難を極める。そなた達の無事を願ってるぞ」


魔王「うむ、ワシも影から見守っとるぞ」


勇兄「………」


勇妹「………」


スラりん「………何で魔王がここに居るの?」


魔王「王にアレの招待状を渡しに来たんじゃ。お前らに会いたくて来たわけじゃないから勘違いするでないぞ」


王「その通りだ(本当はずっと前に勇者から貰ってるけど…よほどこの子達が心配なんだな)」クスッ


スラりん「…二人が心配で先回りしたんだってさ。あと二人が居ないとさみしいんだって」


魔王「こ、こら!違うと言ってるじゃろ!」


勇兄「魔王!俺達は絶対に魔王を倒すぐらい強くなってみせるからな!覚悟しろよ!」


魔王「うむ、ワシも一緒にその手伝いを…」ピタッ


勇妹「………」ジーーー


魔王「………頑張るのじゃぞ」シュン


勇妹「魔王様…次、私達が行く先々で現れたら……魔王様がパパに内緒でおやつを買ってたことバラすから」


魔王「なっ!?お、お前達だって一緒に食べたじゃろ!?」


勇妹「そんな証拠はどこにも無い。食べてしまったのだから」


魔王「そんなぁ!?」ガーン


スラりん(その理論で行くと魔王にも証拠が無いと思うんだけど…)


勇妹「……魔王様、ちゃんとお土産を買って帰るからお城で待ってて」


魔王「…ペナントは無しじゃぞ?」グスン


勇妹「うん、わかった。なるべく食べ物にする」


魔王「うむ、では頑張ってこい」


スラりん(扱いに慣れてるなぁ…)


____________________


スタスタスタ


勇兄「ねぇスラりん、次の町はどういうところなの?」


スラりん「次は確か…勇者と女騎士が初めて出会った村だね」


勇妹「パパとママの運命の場所……つまり、私とお兄ちゃんの運命の場所ってこと?」


スラりん「いや、僕に聞かれてもわからないからね」


勇兄「そういえばその村ってあの人が居るんじゃなかったっけ?」


スラりん「あの人?…ああ、あのショタコンのことか…」


勇妹「………」

今日はここまで


同時に開いてたので誤爆してしまいました 本当にすいませんでした、見逃してください…


ではまた

>>35の誤爆は本当にすいませんでした
誤爆したヤツはまだ書き溜めの段階で、スレ立てすらしてないヤツですので気にしないでください


短編を書くのが好きなので過去作は意外と多いですが、あまり昔のヤツは恥ずかしすぎて晒せません
最近のだと…男「未来の俺の妻?」女「はい」と、天使「死んでください!」ぐらいですね ベタベタを書くのにハマってます

たまに頭がおかしくなって、男「くっ…鎮まれ!俺の右手…ッ!!」モミモミ 女「………」とかエレン「これでスレ立て出来てるのか?」ミカサ「ええ」シコシコみたいなのも書いちゃいます 
一切後悔はしてませんけど


では投下していきます


――子供村(旧古ぼけた村)――


スラりん「何というか…前来た時よりもまた建造物(学校)が大きくなってる…村の名前まで変わったみたいだし…」


竜騎士「それだけ子供が増えたってことさ」


勇兄「あっ、竜騎士さん!久しぶりー!」


竜騎士「勇兄ちゅあ~~~~ん!会いたかったよ~~~~!!」バッ


ピタッ


竜騎士「むっ!?この拘束魔法は…そ、側近様も居るのか!?」グググググ…


勇妹「…パパは居ない。この拘束魔法は私の」


竜騎士「勇妹ちゃんか!しばらく見ない間に随分と腕をあげたじゃないか!……で、そろそろ拘束を解いてくれないか?」


勇妹「…もうお兄ちゃんに抱きつかないって約束するなら解いてあげる」


竜騎士「…相変わらずのブラコンだな」ゴゴゴゴゴゴ


勇妹「…ショタコンの竜姉に言われたくない」ゴゴゴゴゴゴ


竜騎士「ショタコンだけではない!私はロリコンでもあるんだぞ!」ドヤッ


スラりん「大声で言う事でもないからね。それと今日はこの村でお世話になるんだからケンカはよそうよ」


竜騎士「フッ、別にケンカをしてるわけじゃないさ。スキンシップだよ、スキンシップ。ね、勇妹ちゃん?」


勇妹「ううん。さっきのは牽制」


竜騎士「勇妹ちゃんは本当に私に冷たいなぁ…」シュン


青年「竜騎士さん、そろそろ授業の時間です。早くしてください」


竜騎士「ああ、わかった。今行く」


青年「ん?……また子供を攫ってきたんですか?」


竜騎士「人聞きの悪いこと言うな!私は誰一人として攫ってない!それにこの子達は側近様のお子さん達だ。今日はこの村に泊まるらしいから二人+αの部屋を用意してやってくれ」


青年「わかりましたが……この子達を襲ったりしないでくださいよね」


竜騎士「う、うるさい!少しは育て親を信じろ!」


青年「信じられないから釘を刺しているんです」


竜騎士「ぐっ」


スラりん「アハハハ!竜騎士も成長した子供には頭が上がらないんだね!」


青年「じゃあ部屋に案内するのでついて来てください」


竜騎士(最近は青年や娘に『子供達に手を出さないでください』って注意されてしまってるからペロペロ分が不足してるんだよなぁ…せっかく側近様の幼い頃に瓜二つの可愛い勇兄ちゃんが来ているんだ、明日までに絶対ペロペロしてみせる!)


勇妹「そうはさせない」


竜騎士「うおっ!?」ビクッ


勇妹「絶対にさせない…」


竜騎士「ゆ…勇妹ちゃんは心も読めるのか?」


勇妹「ううん、そんなこと出来ない。でも…お兄ちゃんをいやらしい目で見てた。それだけで大体予想出来る…」


竜騎士(この子は大分変な方向に成長してるなぁ…本当は勇妹ちゃんともペロぺr…仲良くしたいんだけど…嫌われちゃってるからなぁ)シュン


____________________


部屋


青年「では、この部屋を使ってください。…あれ?妹さんはどこに…」キョロキョロ


スラりん「あっ、気にしなくていいよ。あの子も竜騎士と一緒でちょっとおかしなとこがあるから」


青年「そ、そうですか…」


勇兄「さっき授業って言ってたけど、ここでは何を教えてるの?」


青年「ここでは竜騎士さんが子供達に魔法、剣術、歴史等を教えています。私もここの卒業生で今は竜騎士さんのサポートをしてます」


スラりん「えっ?竜騎士が全部教えてるの?」


青年「歴史や一般常識などは私達も教えてますが、魔法と剣術は竜騎士さんが全ての子供達に教えています。竜騎士さんは教え方がとても上手なんですよ」


勇兄「………」


スラりん「意外…あっちのことばっか教えてると思ってたよ」


青年「それも前までは教えてましたが……私達が強制的にやめさせました」


スラりん「あっ…本当に教えてたんだ…」


青年「まぁ、過去にあんなことがあれば子供好きになったのも理解出来ますが…さすがに本番まではするのはちょっと…」


スラりん「ん?今、気になることが二つあったけど…まず竜騎士の過去って何?」


青年「知らないんですか?側近様からお聞きになってると思ってましたが…」


スラりん「前に聞いたのは魔王軍に入ってたことぐらいだけど…」


青年「その魔王軍に入る前のことです…竜騎士さんは魔王軍に入る前に…子供を授かっていたらしいんです」


スラりん「えっ!?竜騎士に子供!?」


青年「はい。ですがその時代はまだ前魔王様による恐怖政治が敢行される前で、魔物と人間の抗争が絶え間なく行われていたそうです。安全な場所が中々無い中、お腹に赤ちゃんを身篭っていた竜騎士さんは戦いながら何とか安全に出産出来る場所を見つけて、後は産むだけだったらしいんですが…激しい戦闘にお腹の赤ちゃんは耐えられなかったそうです」


スラりん「………」


青年「竜の一族は一生で一度しかその身に子を宿さないそうです。つまり竜騎士さんはもう……ご自分で子供を産むことは出来ません」


スラりん「僕…竜騎士のことちょっと勘違いしてたかも。それじゃ子供が恋しくなるのが普通だよ…」


青年「私はこの話を側近様から聞いた時に決心しました。あの方の子供として一生傍に居ると…」


スラりん「君は立派だね、竜騎士もきっと喜んでるよ。でも……本当に義理の子供相手に本番までしたの?」


青年「…はい、私達が子供の時はしてました……おそらくぽっかりと空いてしまった心の傷を埋める為、子供の愛情をその身に受ける為にそのような行為をするようになったんだと思いますが……さすがに容認することは出来ません。ですので今はもう子供達にはさせてません」


スラりん「子供達…には?」


青年「あっ……す、少しでも竜騎士さんの心を満たすことが出来ればと思っての行動で、れ、恋愛対象としては見てませんからご安心を!!」アセアセ


スラりん「別にそこまでは聞いてないんだけどな~…君は竜騎士をちゃんと女として見てるんだね」ニヤニヤ


青年「…はい///」


スラりん「そっかぁ…君は子供としてじゃなくて男として傍に居たいんだね……人間と魔族、子供と親、色々障害はあると思うけど僕は君を応援するからね。頑張りなよ」


青年「あ、ありがとうございます///」


勇妹「そう。私とお兄ちゃんみたいに、時に家族愛が恋愛に変わることもある。それは自然の摂理。私も全力で貴方を支援する。頑張って」


青年「あ、ありがとう…ございます…?」


スラりん(いきなり現れて何を言っているんだ?この子は…)


スラりん「…ちなみに彼と竜騎士は家族といっても血が繋がってないから問題ないけど…勇妹と勇兄は実の兄妹だからね。問題しかないよ?」


勇妹「ニープロブレム…だっけ?」


スラりん「半月板を損傷したのかな?多分言いたいのはノープロブレムだと思うよ」


勇妹「そう、それ。何も問題無い、何故なら愛に不可能は無いから。これは常識」


スラりん「……うん、そうだね。もう考えるのがめんどくさくなってきたよ。勇妹、頑張ってね」


勇妹「うん、ありがとうスラりん。で……お兄ちゃんはどこ?」キョロキョロ


スラりん「あれ?さっきまでここに居たんだけど…」


勇妹「まさか……」


____________________


竜騎士「今日の魔法の授業はここまで。予習や復習はしてもいいが、魔法は危険だから私の居ない時にはしないでくれな」


子供達「はーい!」


竜騎士「じゃあ次は…みんなお待ちかねのペロペロタ~~~イム―「駄目です」


娘「次の授業は私が教えるから、お母さんは夕飯の準備をしてね」


竜騎士「…わかったよ」シュン


子供A「あはははは!竜騎士お姉ちゃん、怒られてるー!かわいそー!」


竜騎士「だろー?だからお前達のペロペロで慰めてくr―「駄目だって言ってるでしょ」


娘「ハウス」ビシッ


竜騎士(何故成長した子供達は揃いも揃って私に厳しいんだ?)


トボトボ


竜騎士「…ん?」


勇兄「竜騎士さん…」


竜騎士「勇兄たん!」


勇兄「たん?」


竜騎士「おっと、気にしないでくれ。で、私に何か用かな?(ペロペロして欲しいのかな?それともしてくれるのかな?)」ハァ ハァ


勇兄「竜騎士さん!俺をもっと強くしてください!お願いします!」キラキラ


竜騎士(はわわわわ!な…なんて純粋で綺麗な目をしてるのだろうか…そんな目で見詰められたらキュンキュンしない方がおかしいだろ!)キュン


勇兄「竜騎士さん?」


竜騎士「(はっ!あ…危ない…穢れなき勇兄ちゃんの想いを踏みにじるところだった…)そ、それで強くなりたいのなら私が手取り足取りナニ取り教えてあげてもいいが…何でそこまで強さを求めるんだ?」


勇兄「それは……」


竜騎士「なるほど…魔王様と遊んでいて手も足も出なかったと……」


勇兄「うん…俺は将来、お父さんみたいになりたい…魔王を倒せるぐらい強くて立派な勇者になりたいんだ!でも今の俺はとっても弱い…だからもっと強くなりたいんだ…」


竜騎士(魔王様を倒すぐらい強くって……まぁ勇兄ちゃん的には友達に勝ちたいってぐらいの感覚なんだろうけど…)


勇兄「それで…教えてくれるの?」


竜騎士「ああ、魔王様を倒すぐらいは無理だがある程度ならアドバイス出来ると思うし、それに男の子なら強くなりたいと思うのは当たり前だからな。まずは勇兄ちゃんの実力をしりたいから私とペロぺr…手合わせしようか」


勇兄「うん!」


竜騎士「じゃあ道場の方に移動しような(勇兄たんと二人きりィィイイ!)」ハァ ハァ


スタスタスタ




・・・・・




ザッ


勇妹「…ここにも居ない……私もパパみたいに魔力で探知出来ればいいのだけれど……ん?」スン


勇妹「くんくん…僅かにお兄ちゃんの香りがする……こっち」スタスタ


____________________


道場


勇兄「フンっ!」ブンッ


竜騎士「くっ」ガキッ


竜騎士(驚いた…すでにそこら辺の魔物よりも強い!女騎士め、かなり鍛えてるじゃないか。だが……)


勇兄「ハアァァ!」バッ


竜騎士「なるほどな…わかった」パンッ


勇兄「なっ!?」


竜騎士「はい。私の勝ちだな」コツン


勇兄「ず、ずるい!素手で剣を弾くなんて…木刀じゃなかったら俺の勝ちだったよ!」


竜騎士「どこがずるいんだ?私は真剣も普通に素手で弾ける。私の竜の鱗をなめないでほしいなぁ」


勇兄「で、でも…」


竜騎士「ほら、その考え方じゃいつまで経っても強くなれないぞ」


勇兄「…わかったよ。今のは俺の負けでいいよ」シュン


竜騎士「(落ち込んでる勇兄ちゃんきゃわわわわ❤…じゃなくてここはフォローしないと…)ま、まぁそう落ち込むな、私がちゃんと強くなれるアドバイスもしてあげるからさ」


勇兄「本当!?」パアァ


竜騎士「」


ダキッ


竜騎士(うへへへ…いただきま~す❤)ジュルリ


勇兄「りゅ、竜騎士さん?いきなり抱きついてどうかしたの?鼻息が荒いし…」


竜騎士「はっ!す、すまん!何でもない!」パッ


竜騎士(あまりの笑顔につい…が…我慢だ、今は襲っちゃ駄目だ…勇兄ちゃんの為にもアドバイスをしないと…)プルプル


竜騎士「ふぅ……で、アドバイスだが、さっき勇兄ちゃんが私をずるいと言っただろ?まさにそれが不足しているんだ」


勇兄「??どういうこと?もっとずるくなれってこと?」


竜騎士「そういうことじゃなくて、勇兄ちゃんは私にとっての竜の鱗みたいな武器を使ってないってことだ」


勇兄「それは当たり前じゃないの?俺は人間なんだから」


竜騎士「…少しずつ教えるかな。まず勇兄ちゃんは女騎士から剣術を教わったんだろ?」


勇兄「うん!」


竜騎士「はっきり言ってあいつの剣術は私よりも上だ。だが、戦えば私が勝つだろう」


勇兄「えっ?」


竜騎士「さっきわかったように私は竜の鱗で剣を弾くことが出来る。つまり人間の攻撃などほとんど効かないってことだ。まぁ、あいつなら的確に鱗じゃない場所を攻撃してくるだろうがな」


勇兄「やっぱ人間じゃ魔物や魔族には敵わないの?」


竜騎士「一概にそうとは言えないが、パワーが違うから有利なのは変わらない。だが勇兄ちゃんは忘れてると思うが…勇兄ちゃんと勇妹ちゃんは血が薄いとは言え魔族の血が入ったクォーターだろ?」


勇兄「あっ…そういえばそうだったね。すっかり忘れてた」


竜騎士「今の剣術は女騎士が編み出した人間の戦い方だ。極限までスピードをあげ、圧倒的な手数で相手に反撃する隙を与えない恐ろしい戦法だが…手数が多い分、決め手に欠ける。
逆に本来の私は竜の鱗を最大限利用して、ある程度の攻撃は受けつつ一発で敵を仕留める…まさにパワーでゴリ押しの戦い方をする。このようにそれぞれに合った戦い方ってのがあるんだ」


勇兄「じゃあ…お母さんの戦い方をやめて、竜騎士さんの戦い方をしろってこと?」


竜騎士「別にやめる必要はないし、私の戦い方は勇兄ちゃんには無理だ。それにせっかく母親から教わった素晴らしい剣術なんだから、それをさらに魔族の血も入ってる勇兄ちゃんが自分流に磨いていけばいいのさ。女騎士もそれを望んで勇兄ちゃんに剣術を教えたんだと思うぞ」


勇兄「自分流か…難しいなぁ」


竜騎士「そんなに難しく考える必要ないぞ。例えば魔法だ。女騎士は魔法が使えないからその剣術には魔法を使うタイミングが無いだろ?」


勇兄「確かに…魔王と遊んでる時にたまに魔法を使うけど、全部止まって使ってたかも」


竜騎士「剣術と魔法の両方を使えて、さらに勇兄ちゃんは魔族と人間のクォーターなんだから、そこら辺を活かさないともったいないぞ」


勇兄「うん!ありがと竜騎士さん!」ニコ


竜騎士「……他にも色々と教えてあげようか?」


勇兄「本当!?」パアァ


竜騎士「じゃあまずは服を脱いd―ピタッ


勇妹「竜姉…お兄ちゃんに何を教えようとしてるの?」ゴゴゴゴゴゴ


竜騎士「チッ、もう見つかったか」


勇妹「…お兄ちゃん、竜姉から教わることはもう無い。それと魔法を使うのならここじゃなくて外で修行した方がいい」


勇兄「それもそうだな…じゃあ俺、さっそく修行してくる!本当にありがとね、竜騎士さん!」タタタタタタッ


竜騎士「ちょっ、まだ教えることがあるのに~!」


勇妹「………」


竜騎士「……勇妹ちゃんは行かないのか?」


勇妹「後で行く。心配無い」スタスタ


竜騎士「ん?」


ポフ


勇妹「………」


竜騎士(えっ?勇妹ちゃんが自分から私の懐に入ってきた!?)


勇妹「お兄ちゃんにアドバイスしてくれたお礼。私をナデナデしていい」


竜騎士「えっと…どうしてナデナデ?」


勇妹「前にママが言ってた。私達をナデナデしてると幸せを感じるって」


竜騎士「私の場合はペロペロなんだが…」


勇妹「もしペロペロしたらグリグリする。剣で」


竜騎士「怖いなぁ…じゃあせっかくだし遠慮なくナデさせてもらうかな」


竜騎士「どうだ?多くの子供達をナデナデしてきた私のテクニックは?」ナデナデ


勇妹「……普通」


竜騎士「ふふ、そうか…普通か(嫌ではないんだな)」クスッ


勇妹「………」ナデナデ


竜騎士「ん?どうした?いきなり私のお腹をナデナデして…」


勇妹「私も竜姉を慰めてる」ナデナデ


竜騎士「……私の過去を聞いたのか?」


勇妹「うん。だから今は私を本当の娘だと思ってナデナデしていい」


竜騎士「……勇妹ちゃんは優しいんだな」ナデナデ


勇妹「そんなこと無い。普通」


竜騎士「……今思えば側近様は幼い頃から私を気遣ってくださっていたのかもしれないな。嫌がってたのにいつも私にペロペロさせてくれたし…(本番はさせてくれなかったけど)」


勇妹「きっとそう。パパは優しい人だから」


竜騎士(あの頃の側近様を思い出したらムラムラしてきたなぁ…)


竜騎士「……ちょっとだけペロペロしていい?」


勇妹「駄目。私をペロペロしていいのはお兄ちゃんだけ」


竜騎士「さすがブラコンの鏡だな」


勇妹「それに…竜姉がペロペロする相手はもう決まってる」


竜騎士「ん?子供達のことか?それが最近、青年や娘がうるさくてまったくペロペロ出来てないんだよ」


勇妹「……少しは青年さんのことも見てあげて」


竜騎士「青年を?毎日見てるが…」


勇妹「はぁ…青年さんがかわいそう」


竜騎士「??」


____________________


部屋


スラりん「あっ、二人ともお帰りー…大分疲れてるね。何かあったの?」


勇兄「修行してたんだけど…ちょっとだけ無理しちゃったかな…」ハァ ハァ…


勇妹「でも、コツを掴んで随分と強くなった。これで打倒魔王様に一歩近づいた」


スラりん「打倒魔王って……魔王は友達でしょ?」


勇兄「当たり前じゃん!」


勇妹「友達というか…弟?」


スラりん「一応300歳以上年上なんだけどね…」


竜騎士「魔物・魔族の頂点に立つお方なんだが…弟と言われてしっくりきてしまうのが魔王様の凄いところだ」クスッ


勇兄「あっ、竜騎士さん!大分上手く魔法と組み合わせられるようになったから、後でもう一回俺と戦ってくれないかな?」


竜騎士「ああいいぞ。でもその前に夕飯にしよう。私達は家族全員で食べる決まりがあるから、勇兄ちゃん達も食堂で一緒に食べてくれ」


勇兄「うん!」


____________________


食堂


「「「「いただきま~す!」」」」


ワイワイ ガヤガヤ


スラりん「……こ、子供達が多すぎない?」


竜騎士「そうか?最近は成長した子供達が独り立ちし始めてるから、全盛期に比べると少ない方だと思うが…あっ、子供A!子供Gの分を横取りしちゃ駄目だろ!返しなさい!」


子供A「はーい…ごめんなさい」シュン


スラりん(ちゃんと母親してる…)


竜騎士「子供Zは人参を除けるな!この野菜達はお前らのお兄ちゃんが作ってくれたものなんだぞ!私が口移しで食べさせてやるから我慢して食べるんだ!」スタスタ


娘「口移しは駄目っていつも言ってるでしょ!」


スラりん「…お兄ちゃんが作ったって言ってたけどどういうこと?」


青年「ここの卒業生の一人が農家をやっていて、そこで採れた野菜を使っているんです。他にも商人や漁師など、ここで共に育った兄姉達から色んな物を譲ってもらったりしてます。みんな成長して独り立ちしても、竜騎士さんへの恩を忘れたことなんて一度たりともないですから…」


スラりん「…みんな竜騎士のことが大好きなんだね」


青年「はい」ニコ


スラりん「あっ、でも…君だけ『好き』の意味合いが違うか」ニヤニヤ


青年「か、からかうのはやめてください!///」


スラりん「僕って昔からこうやってからかうのが大好きなんd―ガシッ


勇妹「そう。ママがよく言ってた。だからそういう時の対処法も聞いてある」


スラりん「……お、お手柔らかにしてください」


勇妹「うん」


ブンッ!
         ピキ~~~~~~!!


勇兄「ん?スラりんはどこに行ったんだ?」


勇妹「ちょっと外の空気吸ってくるって。それよりお兄ちゃん、あ~ん」スッ


勇兄「いや、食べないからな。今自分で食べてるし」モグモグ


勇妹「じゃあ…あ~ん」パクパク


勇兄「いや、お前も自分で食べろよ」


パクッ


勇妹「!?」


竜騎士「ふっふっふ、どうだ?美味しいか?」


勇妹「……うん、美味しい。だから今回だけ私にあ~んしたのも許す」モグモグ


竜騎士(勇妹ちゃんも徐々に私にデレてきてる…これなら今夜中に夢の兄妹丼が食べれるはず!)


勇妹「……それは無いから安心して」


竜騎士「……絶対心読めてるだろ」


____________________


翌日


勇兄「じゃあそろそろ行くね。竜騎士さん、みんな、ありがとー!」フリフリ


勇妹「…ばいばい」フリフリ


竜騎士「勇兄ちゅあ~~~ん!勇妹ちゃ~~~ん!また遊びに来てね~!」フリフリ


スラりん「僕は!?」


勇妹「………」


スタスタ


竜騎士「ん?どうかしたか?勇妹ちゃん」


勇妹「…昨日は泊めてくれてありがとう。それと……たまには魔王城に遊びに来て。竜姉は全然遊びに来てくれないから」


竜騎士「えっ?勇妹ちゃんって私のこと嫌ってるんじゃないのか?」


勇妹「…嫌いな人に頭をナデナデさせたり、血も繋がってないのに姉って呼ぶわけ無い…好きに決まってる」


竜騎士「勇妹ちゃん…」キュン


勇妹「でも…いくら竜姉といえどもアレの時は全力で戦う。覚悟してて」


竜騎士「ああ、四年に一度のアレか…フッ、お姉ちゃんの本当の力見せてあげる!そして…夢の兄妹丼は私がいただく!!」


青年・娘「………」


竜騎士「あっ…」


青年「…アレには不参加って側近様に言っておいてください」


勇妹「うん、わかった」


竜騎士「待て待て!冗談だからそれだけはやめてくれ!」

今日はここまで


これは家族愛をテーマに書いてるので、どうしても側近と魔王の絡みは少なくなってしまいますね…
ちなみに前スレは一応主従愛をテーマにしてました

あと次の更新は一週間後くらいになる予定です


ではまた

たくさんのレスありがとうございます!
色々議論していただいているんですが…私は基本的にプロットやキャラ設定は書かないで適当に書いてます すいません
完璧に後付ですが…


竜の子は必ず双子で生まれる。生まれてくる双子の性別は雄と雌だが、二匹は生まれてすぐに戦い、勝った方だけを親は育てる。負けた方は基本的に餓死する。またほとんどの場合、雄が勝つ。その為、雌の竜がどんどん少なくなっていき、今現在生きてる竜は片手で数えられるほどである。
雌が少なくなったことで追いつめられたある一匹の雄の竜が、自分の子種を残すべく別の種族の雌を孕ませた。その結果、竜騎士の様な竜の血を引く亜人が生まれた。またその亜人も竜の血が濃く出てしまうのでより強い遺伝子を残そうとする。その為、種族の繁栄は難しく個体数は少ない。


こんな感じですかね
「竜(ドラゴン)がどうやって人型の魔族を孕ませたんだ?」とか突っ込まないでくださいね
つまり…減る一方というかすでに絶滅が確定されてる様な状態。だが竜は長寿なので中々絶滅しない…といった感じにしておきます 本当に適当ですいません


一応質問には全部答えますが、自分ではそんな議論するほどの作品じゃないと思ってるので、楽に見ていただけたら光栄です


では投下します


――海上――


スラりん「まさかまたこの船に乗るとは…この風景懐かしいなぁ…そして…」チラ


勇妹「……ぅっ」ウップ


勇兄「ほら、我慢するなよ。別に吐いたってお前を嫌ったりしないからさ」スリスリ


勇妹「お兄ちゃん…」


スラりん「この光景も懐かしいなぁ」クスッ


グラッ


勇兄「うわあ!?」ヨロ


勇妹「ぁ……」ヨロ


スラりん「えっ?ちょっ、待っ!」


勇妹「うっ……オェ―


===============================

ただいまお見苦しい映像が流れています。しばらくお待ちください。

===============================





勇兄「い…今の揺れは凄かったな……ん?」チラッ


勇妹「ご…ごめんなさい…!」ポロポロ


スラりん「………最悪」プ~ン


勇兄(うっ…これは酷い惨状だ…)


勇妹「は、早く洗わないと…!」ガシッ


スラりん「えっ!?」


ポイッ
    ザバァン!


スラりん「ピキ~~~~!ど、どうしてこうなるの!?」バシャ バシャ


勇兄「スラりん!!」


勇妹「あ…ご、ごめんなさいスラりん!い、今助ける!」ピョン


勇兄「バ、バカ!お前泳げないだろ!」


ザバァン!
      ブクブクブク……


スラりん「そのまま沈んでったー!?」バシャ バシャ


勇兄「くっ、二人とも!今助けるからな!」ピョン


____________________


スタスタスタ


勇兄(何とか二人を助けることが出来たから良かったけど…)チラ


スラりん(さすがにやりすぎだから怒ろうと思ったんだけど…)チラ


勇妹「………」ズーン


勇兄・スラりん(あんなに落ち込んでる勇妹初めて見た…)


勇兄「ほ…ほら!スラりんももう怒ってないから元気だせって!」


勇妹「………」フルフル


スラりん「ほ…本当に怒ってないんだよ?(これじゃ怒る気にもなれないよ…)」


勇妹「……スラりんが許してくれても、私が自分を許せない。大事な友達にあんな酷い事を…」ズーン


勇兄・スラりん(重症だ…)


勇兄「と、とりあえず気分転換に次の町で何か食べよっか!」


スラりん「う、うん!次の町に僧侶行きつけのすっごく美味しいお店があるんだよ!勇者や女騎士も絶賛してたよ!」


勇兄「ほ、本当!?わぁー楽しみだなぁー!」チラッ


勇妹「……わかった。私が居ると空気が悪くなるから二人で行ってきて。私はここで座って待ってる…」


勇兄「な、何でそういうことになるんだよ!いい加減にしろよ!!いつまでもウジウジしてちゃ駄目だろ!」


勇妹「………」ウル


勇兄「えっ!?」


勇妹「ごめんなさい…ひっく……ごめんなさい…」ポロポロ


勇兄「な、泣くなよ!俺がイジメてるみたいじゃん!」アタフタ


スラりん(普段しっかりしてる(?)分、一度失敗するとずっと引きずっちゃうタイプなのか…どうすればいいんだろう?こんな時勇者が居ればなぁ~)


――膜に包まれていた町――


食堂


勇兄「………」


スラりん「………」


勇妹「………」


魔王「おおっ!お前たち!偶然じゃな!」


スラりん「偶然って…また先回りしてたんでしょ?」


魔王「ち、違うわい!今回は本当に偶然じゃ!たまたま治安維持の為にこの町に寄ってたんじゃ!」


スラりん(いつも勇者に任せてるクセに…よっぽど一人がさみしいんだなぁ……ん?待てよ…)


スラりん「もしかして…勇者も一緒?」


魔王「側近はおらん。だが僧侶と一緒じゃ」


スラりん「そっか…勇者は居ないのか…」


僧侶「僕じゃ嫌だったみたいな反応しないでよ。地味に落ち込むよ?」シュン


スラりん「ご、ごめん僧侶!でも…今は勇者の力が必要だったから…」


僧侶「何かあったの?」


スラりん「実は…」


魔王「ん?おいスラりん、お前…少し臭うぞ?ちゃんと風呂に入っとるのか?」


勇兄・スラりん「あっ」


勇妹「………本当にごめんなさい」ダッ


魔王「…勇妹はどうしたんじゃ?いつもより元気が無いような…」


勇兄「ちょっと魔王!どうしてくれるんだよ!」


魔王「えっ!?す、すまん…」シュン


スラりん「いいから勇妹を連れ戻してきて!」


魔王「わ、わかった!」ダッ


スラりん「まったく…」


勇兄「お、俺も探してくる!」ダッ


僧侶「待って!よく事情がわかってないけど、無闇矢鱈に探すより魔力で勇妹ちゃんを探索出来る魔王に任せた方がいいよ。じゃないとこの町は結構複雑だから迷子になっちゃうし」


勇兄「で、でも……」


僧侶「…ねぇ、一体何があったの?」


僧侶「なるほど……だから勇者様が必要って言ってたんだね」


スラりん「うん…僕達じゃどうにもできなくて…」


僧侶「う~ん…確かに親である勇者様なら一瞬で何とかしちゃうだろうけど…きっと魔王も何とかしてくれるよ」


スラりん「えーそれは無いって」


僧侶「大丈夫だって。ほら、魔王って子供でしょ?」


勇兄・スラりん「うん」


僧侶(即答…否定はしないんだね。まぁ、僕もそう思ってるけど…)


僧侶「大人じゃなくて子供同士にしかわからないこともあるんだよ。大丈夫…きっとすぐに戻ってくるよ」ニコ


スラりん「…そうだね。なんたって経験豊富な300歳の子供だもんね」


勇兄「お兄ちゃんとしては…ちょっと複雑だなぁ」


スラりん「ははは、ヤキモチ焼いちゃってるのかな?勇妹に言ったら喜ぶだろうなぁ」


勇兄「い、言うなよ!恥ずかしいだろ!」


僧侶「ふふふ、勇兄くん達の旅は楽しそうだね…ねぇ、少し旅の話聞かせてくれないかな?」


勇兄「うん!いいよ!」


____________________


町外れ


魔王(おっ、こんなとこにおったか…ん?)


勇妹「………」グスン


魔王「………泣いておるのか?」


勇妹「魔王様……」ゴシゴシ


魔王「何で泣いておるんだ?」


勇妹「スラりんに…大事な友達に酷い事をしたから…」


魔王「酷い事?それは何じゃ?」


勇妹「……それは…」


魔王「ガハハハハ!あやつにゲロを被せたうえ、どうしたらいいのかわからなくなって海に放り投げたのか!それは酷い事をしたのぅ!」


勇妹「………」ポロポロ


魔王「あっ…す、すまん!」アセアセ




町人「おい、魔王様が小さい子供を泣かしてるぞ」ヒソヒソ

サキュバス「魔王ちゃん、最低ね…」ヒソヒソ




魔王「う、うるさい!外野は黙っておれ!それと魔王ちゃん言うな!」


魔王「まったく…魔法使いのせいで最近『魔王ちゃん』が浸透してきてしまっとるじゃないか……
ほれ、勇妹もいつまで泣いておるんじゃ。あやつは怒ってないんじゃろ?だったら気にすることなかろう。普通にせえ」


勇妹「……普通にするなんて無理。気にするに決まってる…それにスラりんにどうやって接すればいいのか…わからない」


魔王「…お前は少し勘違いしとるぞ」


勇妹「……勘違い?」


魔王「うむ。ワシも昔、お前の父親に酷い事をしてしまったことがあってのぅ…ワシは何度も何度も謝った。あやつは一度たりともワシを責めず、謝らなくていいと言ったが…あの時のワシは今のお前と同じように申し訳無い気持ちでいっぱいになっとったから、謝ることしか出来ずひたすら謝り続けたんじゃ…」


勇妹「………」


魔王「そしたらあやつはワシを怒り、こう言ったんじゃ…『本当に私に申し訳無いと思っているのなら、いつも通り我侭でだらしのない魔王様で居てください』って…主君に対して『我侭でだらしのない』じゃぞ!酷いじゃろ!?」


魔王「あっ、今は話の趣旨はそこじゃなかったのぅ。それでその後あやつは…『でないと私が魔王様を苦しめていると思い、私自身を責めてしまいます』と言ったんじゃ…
つまりあの時のワシと同じようにいつまでもそんなんだと、友達であるスラりんが自分を責めてしまうということじゃ。だから本当にあいつに申し訳無いと思っとるのなら、普段通りのお前で接してやれ。あいつもきっとそれを望んでいるはずじゃ」


勇妹「………うん。ありがとう魔王様」


魔王「これぐらい当然じゃ。ワシもお前の友達じゃろ?」ナデナデ


勇妹「……ううん。魔王様は私の弟」


魔王「まさかの弟!?ワシはお前より300歳以上年上じゃぞ!?」


勇妹「心配しないで。友達も弟も大事な存在なのは変わらないから。むしろ弟の方が大事」


魔王「そ、そうじゃな。ならいい……のか?」


勇妹「うん、それでいい。何も問題無い」


魔王「うむ。じゃあ戻るとするか」

今日はこれまで

不定期更新でいきます

ではまた


____________________


食堂


僧侶「へぇ~じゃあ竜騎士さんのおかげで強くなったんだ」


勇兄「うん!あとは雷魔法以外も使えるといいんだけど…」


スラりん「勇兄は勇者や魔王、勇妹みたいに色んな種類の魔法を使えるわけじゃないもんね」


僧侶「確かに色々な魔法が使えればその分戦いに幅が出来ると思うけど、自分が扱える魔法は生まれた時には既に決まってるらしいし、無理に覚えることも出来るけど数十年掛かる場合もあるからなぁ…」


勇兄「やっぱ無理なのか…」


僧侶「別に他の魔法に頼る必要は無いんじゃない?まぁ僕自信が回復魔法しか使えないからそう感じるのかもしれないけど…」


勇兄「一つの魔法を極めるってこと?」


僧侶「まぁそういうことになるのかな。例えば僕の場合、通常の回復魔法は掌全体に魔力を込めるんだけど、より早く傷を治す為に指先に魔力を込めるようにしてるんだ」


勇兄「なるほど…確かに俺の雷魔法はただ雷を放出してるだけかも……ありがと僧侶さん!何かつかめそうかも!」


僧侶「どういたしまして。じゃあ最後にもう一つだけアドバイスしちゃおっかな。勇兄くんにとって『強さ』って何かな?」


勇兄「『強さ』?…戦いに強いってことでしょ?違うの?」


僧侶「間違いじゃ無いけど…それは正解じゃないよ。勇兄くんは勇者様みたいな勇者になりたいんでしょ?」


勇兄「うん!」


僧侶「だったらいくら戦いが強くなっても勇者様みたいに本当に『強く』はなれないよ」


勇兄「??難しくてよくわかんない…」


僧侶「う~ん…説明するのは難しいんだけど…優しさや耐えることも『強さ』だし、時に冷酷になることも『強さ』なんだ」


勇兄「?????」


スラりん「さっきよりわからなくてなってるみたいだね」クスッ


僧侶「ははは、まだわからないよね。とりあえず身近に本物の『強さ』を持つ勇者様が居るんだから、勇者様に色々と教わった方がいいよ」


勇兄「……出来るならそうしたいけど…」シュン


僧侶「…あ、あれ?」


スラりん「ほら、勇者はいつも世界中を飛び回ってるでしょ?特にアレが開催する今年は警戒が薄くなるんだと勘違いして悪さをする魔物や人間が増えてるから、どうしても家族と居る時間が少なくなっちゃうんだよ。
最近は反人派が活発でより忙しいし、魔王のお世話もあるし、夜遅く帰って来ても勇兄達は寝ちゃってるし…」


僧侶「も…もしかして僕の方が一緒に居る時間が多かったりする…?」


スラりん「多分ね」


僧侶「うっ…ごめん」シュン


勇兄「いいよ…僧侶さんが悪いわけじゃないし、皆の為に頑張ってるお父さんを誇りに思ってるから…」


僧侶「勇兄くん……」


魔王「今戻ったぞー」


勇兄「あっ、勇妹!心配したんだぞ!」


勇妹「…ごめんなさい、お兄ちゃん、スラりん」


スラりん「もう大丈夫なの?」


勇妹「うん。魔王様に慰めてもらった」


スラりん「おおー偉いじゃん、魔王」


魔王「じゃろ?」ドヤッ


僧侶「ふふふ、勇者様に報告しなくちゃね」


魔王「ほ、報告せんでいいわ!ワシは子供じゃないんだぞ!」


僧侶(満場一致で子供だと思ってるよ)クスッ


勇妹「それよりスラりん…もう一度だけちゃんと謝らせて」


スラりん「別にもういいのに…」


勇妹「私のケジメの為。お願い」


スラりん「…わかった」


勇妹「スラりん…私は貴方に本当に酷い事をしてしまった。ごめんなさい。お願いだから…許して」ペコ


スラりん「許すも何も最初から怒ってないって。じゃあこれであの件はお終いってことでいいね?もう謝ったりしないでいつも通りにしてね」ニコ


勇妹「うん……ありがとうスラりん」


魔王「ほれ、ワシの言ったとおりじゃろ?」


勇妹「うん。あとはスラりんにお詫びの品を渡すだけ」


スラりん「お、お詫びなんていいよ!」


勇妹「駄目。これは私がどれだけスラりんを大事に想っているか伝える為でもある」


スラりん「うっ…そこまでストレートに言われると恥ずかしいなぁ///」


勇妹「これがお詫びの品。受け取って」ス…


スライム「ピキ!」


スラりん「…えっ?」


勇兄「…何でお詫びがスライムなの?」


勇妹「これはただのスライムでは無い。スラりんのお見合い相手」


スラりん「」


勇妹「さぁスラりん、受け取って」


スラりん「受け取らないよ!!何でお詫びがお見合い相手なの!?」


勇妹「私がそれだけスラりんを大事に想ってるってこと」


スラりん「めっちゃ重いね!嬉しいけど嬉しくない!!それと百歩譲ってお見合い相手はいいとしても…何で雄なの!?」


勇妹「私のテーマは禁断の愛。よってスラりんにも禁断の愛を提供しようかと思って」


スラりん「本当に僕を大事に想ってるの!?」


魔王「ほれ、漢(レディ)を待たせてはいかんだろ」


スライム(♂)「ピキキ…///」


スラりん「ちょっと魔王は黙ってて!あとお前も変なこと言いながら頬を染めるな!!」


勇兄「…ちなみ何て言ってるの?」


僧侶「『ウッホ、俺のタイプ…///』って…」


勇兄「ウッホ?」


ヒューー…ン


魔王「あっ…こ、この魔力は!?や、やばい!あやつに見つかった!」


僧侶「えっ?見つからないつもりだったの?怒られる前提で皆に会いに来てると思ってたんだけど…」


スラりん「あっ、やっぱり治安維持じゃなくて僕達に会いに来てたんだ」


勇妹「じゃあ約束通り、おやつの件はバラす」


魔王「慰めてやったのに血も涙も無いな!?だ、だが今はそれどころじゃない!か、隠れんと…!」アタフタ


勇兄「隠れても魔力で探知されてすぐにバレちゃうよ」


「その通りです」


スタッ


側近「お久しぶりですね、勇兄、勇妹、スラりん」


勇兄「お父さん!」


側近「二人とも元気にしてましたか?」ナデナデ


勇妹「うん、元気にしてた」ギュ


スラりん(やっぱり二人とも、まだまだ親に甘えたい年頃なんだよね…)


側近「貴方達の顔が見れたことは嬉しいですが……」


魔王(今のうちに逃げ―ピタッ


側近「逃げようとしないでください、魔王様」


魔王「…お前、ちょっと拘束魔法を使い過ぎじゃないか?」


側近「そう思うのなら使わせないでください」


魔王「ぐぬっ」


側近「それより魔王様、勝手に魔王城を空けないでくださいって言いましたよね?」


魔王「だ、だからちゃんと書置きしてったじゃろ!」


側近「『ちょっとあいつらに会ってくる』だけじゃ何もわかりません。まぁ私はそれでもわかりましたけど…そもそも書置きも禁止って言ったじゃありませんか」


魔王「き、聞いておらんぞ!」


側近「忘れたのを誤魔化さないでください。それと僧侶さんも僧侶さんです」


僧侶「は、はい!」ビクッ


側近「大方魔王様に泣きつかれて外出を許可したんでしょうけど、せめて一言私に言ってからにしてください」


僧侶「で、でも勇者様は魔王城に居なかったし、もし言ったら…止めてたよね?」


側近「当たり前です」


魔王「ワ、ワシにも自由をー!魔王にも人権をー!」


側近「魔王様の仕事が終わってたらここまで言いません。ですが…まったく終わってませんよね?」


魔王「……はい」シュン


側近「では魔王城に戻って仕事をしてください。魔王城周辺の土地の使用許可、人・魔共同農業施設の予算案、魔王軍の新人・新魔採用etc…とにかく書類の山がお待ちですよ」


魔王「あの量を一人は無理じゃろ…よくわからんし」


側近「5分の1ほど終わらせてくだされば、残りは私が夜にでも終わらせますから頑張ってください」


魔王「何だお前…今からまたどっか行くのか?」


側近「はい。反人間派の盗賊グループが雪山村の近くの洞窟に逃げ込んだと情報が入りまして、今から向かわないといけないんです」


魔王「せわしい奴じゃのぅ…」


僧侶「た、たまには勇者様も休んだ方が…」


側近「私の体を心配してくれてありがとうございます。ですが大丈夫です。この程度、魔王様のお世話に比べたら大したことありませんので」


魔王「そんなにワシの世話は嫌なのか!?」ガーン


側近「嫌とは言ってません。大変と言っているんです。私は魔王様のことで嫌なことなんて一つもありませんよ」


魔王「側近……すまん、ワシが悪かった。いつもお前に迷惑ばかり掛けてしまって…」


側近「そう思っているのなら今すぐ戻って仕事してください」バッ!


魔王「うおっ!?」ヒューーーーーン


魔王「拘束したまま飛ばすなといつも言っとるだろ!これだと頭から墜落することになって痛いんじゃぞーーー!!」


イタインジャゾーーー!!

             ンジャゾーー!!

                          ゾー……


僧侶(予想通りの結果だなぁ…)


スラりん「…べ、別に拘束して飛ばす必要なかったんじゃない…?」


側近「お仕置きも兼ねてますので痛くないと意味がありません。それにこの程度ではお仕置きにも入りませんよ」


スラりん「…確かにいつものに比べたら大したことないか」


勇兄「そう思えるのが凄いことだけどね」


側近「さて僧侶さん、私達も行きましょう」


僧侶「えっ!?もう戻るの?」


側近「はい。先ほども言いましたがこの後急いで雪山村の方に向かわないといけないので」


勇兄(……うん、そうだよね。お父さんは勇者だからしょうがないよね…)


勇兄「…お父さん、お仕事頑張ってね!俺達も旅を頑張るから!」


勇妹「……パパ、気をつけて」


側近「ありがとうございます。二人も頑張ってくださいね」ニコ


僧侶「………」


側近「スラりん、二人をお願いします。くれぐれも無茶だけはさせないでください」


スラりん「うん、任せて!」


側近「では行きましょう、僧侶さん」


僧侶「…はい」


ヒューーー…ン


勇兄「………勇妹、大丈夫か?」


勇妹「うん…私はお兄ちゃんが傍に居ればさみしく……ない」


勇兄「そうか…」


スラりん「二人とも……」


スライム「ピキ……」


スラりん「いや、ここはマジメなところだからお前は早く帰りなよ」


____________________

今日はここまで



ではまた

ちまちまとお正月ぐらいからスレ立てしないで書き溜めてたデータがぶっ壊れた…
ぶっ壊れたデータをバックアップの方にも保存したからそっちも駄目だった…マジで最悪

やる気が出ないのでしばらく空けるかもしれません

ではまた…


――雪山――


ビュォォォォォォ…


勇兄「二人とも大丈夫か?」


勇妹「うん」


スラりん「僕は結構大丈夫じゃないかも…」ブルブル


勇妹「スラりん。私の懐に入っていい」


スラりん「えっ?でも…僕、冷たくなってるよ?」ブルブル


勇妹「完全に凍る前に早く入って」


スラりん「う、うん…ありがと勇妹」ピョン


勇妹「っ……つ、冷たい」ブル


スラりん「だから言ったじゃん…やっぱり出ようか?」


勇妹「ううん。冷たいけど大丈夫。スラりんが凍る方が嫌だから…」ギュ


スラりん「勇妹…」


勇妹「雪山でカキ氷はさすがの私でも頭キーンってなる」


スラりん「凍った僕を食べる気なの!?しかも頭キーンってなるのが嫌なだけって酷くない!?」


勇兄「あっ、二人とも!雪山村が見えてきたよ!」


――雪山村――


宿


勇兄「ふぅ…砂漠の砂嵐やこの吹雪のせいで大分遅れちゃったなぁ…まぁ、アレにはギリギリ参加出来そうだけど…」


勇妹「うん。あとは吹雪がおさまってから山を下るだけ。そうすれば魔王城はすぐそこ」


勇兄「もうすぐ旅が終わるのか…長かったな」


勇妹「うん……ねぇお兄ちゃん、旅の最後の記念に一緒にお風呂に入ろ」


勇兄「やだよ」


勇妹「お願い」


勇兄「だーめ」


勇妹「じゃあ…一緒のベッドで寝るのは?」


勇兄「……まぁ、それぐらいだったらいっか」


勇妹「本当!?」パアァ


勇兄「ああ、寝るだけだしな。そういやお前、寝てる時に何かに抱きつくクセは治ったのか?」


勇妹「ううん、治ってない。治るはずが無い。この日の為に治さなかったと言っても過言では無い」


勇兄「過言だろ」


勇妹「じゃあ私はお風呂で体を綺麗にしてくる……お兄ちゃん、ドア開けとくから覗いてもいい///」ヌギヌギ


勇兄「覗かないからお風呂場で脱げよ」


ピョン ピョン


スラりん「二人とも…この吹雪は明後日までおさまりそうに無いってさ…」


勇兄「えっ!?う、嘘でしょ!?アレは明後日開催なんだよ!?」


勇妹「…無理にでも山を下りるしか無い」


スラりん「む、無理だよ!現地の人ですら絶対に外に出ないぐらいこの吹雪は強いらしく、僕達がここに辿り着けたのだって奇跡だって言ってたんだよ!?しかもこれからさらに強まるって言ってたし…」


勇兄「でも…せっかくここまで旅してきたのに…」


勇妹「…しょうがない。アレは諦めるべき。命には換えられない」


勇兄「だけど……」


勇妹「お兄ちゃん…」


勇兄「…………わかったよ」


スラりん「…とりあえず気分転換も兼ねて下でご飯食べよ」


勇兄「うん…」


____________________


勇兄「はぁ……」


スラりん「ほら、落ち込んでてもしょうがないでしょ。せっかくの料理が冷めちゃうよ?」


勇妹「そう。ここはレストランでもある。だからとっても美味しい。冷めてしまってはもったいない」


勇兄「わかってるよ……確かにうまいな」モグモグ


勇妹「…そこに私という調味料を加えればもっと美味しくなる」


スラりん「何を言ってるの?」


勇妹「ちなみにスラりんを加えると………何が起こるかわからない」


スラりん「まだその呪文は唱えてないよ」


勇兄「…それってどういう意味?」


スラりん「えっ?ふ、深く聞かれると困るんだけど…」アセアセ


コナイダノユウシャサマハ…


スラりん「ほ、ほら!向こうで勇者の噂話をしてるよ!」


勇妹「逃げた」


スラりん「い、いいでしょ!とにかく聞いてみようよ!」


勇兄「まぁちょっとは気になるけど…」






客A「いやーほんと勇者様は凄い方だな!あの有名な反人派の盗賊グループをたった一人で一網打尽にしちゃうなんて」


客B「あの方のおかげで世界は平和になってるようなもんだからな」


勇兄「…ふふふ、やっぱりお父さんのこと褒められると嬉しいな」ニコ


勇妹「うん」ニコ




客A「ホントなら今頃その盗賊達が居た洞窟に行って、武器やら色々と回収しないといけないんだが…」


客B「ま、この吹雪じゃ悪用する奴もあんな場所に行けないって……そうだ!それも勇者様に頼むか!」


客A「それはいい考えだな!」




スラりん(ん?何かちょっと変な方向に話が進んでない…?)


勇兄・勇妹「………」


客A「ついでにここら辺をうろついてるイエティ達も蹴散らしてもらって、後は…」


客B「この吹雪も勇者様に頼んで止めてもらうか!勇者様は頼めば何でもやってくれそうだしな!」ハハハ


客A「違いない!」ハハハ




勇妹「違う……パパは…!」ガタッ


勇兄「お、おい…!」


客A「ん?お譲ちゃんどうかしたのか?」


勇妹「パパは……パパは!!皆の都合のいい便利屋さんじゃない!!」


客A「…い、いきなり何を言ってんだ?」


客B「バ、バカ!話の流れからわかるだろ!この娘は勇者様の娘さんだ!」


客A「あっ……す、すまない!悪気があって言ってたわけじゃないんだ!」アセアセ


勇兄「……ほら、お客さんを困らせちゃ駄目だよ」


勇妹「で、でも…」


勇兄「お父さんは都合のいい便利屋なんかじゃない。それはこの人達だってわかってるって…」


勇妹「………うん。いきなり変なこと言ってすいませんでした…」ペコ


客A「い、いや…こっちが悪いんだし…」


勇兄「…部屋に戻ろう」


勇妹「…うん」


客A「……本当に悪いことしちゃったな」


客B「ああ…」


スラりん「ごめんね。あの子達が迷惑を掛けて…」


客A「いや、迷惑を掛けたのはこっちの方だ…(スライムが喋ってる?)」


客B「それより…ゆ、勇者様は一緒じゃないのか?(スライムが保護者?)」


スラりん「うん…勇者は多分今頃どっかの町で人助けをしてると思うよ」


客A「そ、そうか…」ホッ


スラりん「…確かに君達の言うとおり、勇者は頼まれれば何でもじゃないけどそれが本当に必要ならやってくれる…でも、君達が勇者を頼れば頼った分だけ、あの子達の父親と一緒に居られる時間は減るんだよ……お願いだからそれだけはわかっててあげてね」ピョン ピョン


客A・B「………」

今日はここまで


心配掛けてすいませんでした
まだモチべが戻っていませんがゆっくり書いていきます


ではまた

過去作晒すとこが自演臭くて読むのやめた。
最後に忠告として、進撃書いてるって言わない方がいいぞ。

!!?








投下します


____________________


スラりん(あの子達にはちょっと酷すぎたなぁ…でも、勇妹より勇兄の方が怒ると思ったんだけど……勇兄もこの旅で成長したんだね)


ガサゴソ


スラりん「ん?」


勇兄「勇妹、準備できたか?」


勇妹「うん」


スラりん「ちょ、ちょっと!何で荷物まとめてるの!?」


勇兄「…やっぱり俺はアレに出たい。出なくちゃ駄目なんだ…出て一日も早くお父さんみたいになって……」


スラりん「で、でもこの吹雪の中を下山するなんて死にに行くようなもんだよ!?勇妹も一緒に勇兄を止めてよ!」


勇妹「止めない。私も一緒に行く。早く……パパとママに会いたい」


スラりん「だ、駄目だよ!僕は絶対に二人を行かせない!じゃないと勇者と女騎士に合わせる顔がない!」


勇妹「…ごめんなさい、スラりん」ピッ!


スラりん「ぐっ!」ピタッ


勇兄「吹雪がおさまったら迎えに来るからそれまで待っててね」


勇妹「スラりん…ありがとう」


スラりん「い、行かないで!!」


バタンッ


スラりん「……勇兄の…勇妹のバカァァァ!!」


____________________


スラりん(二人が出てってから結構経ったけど、外は大分吹雪いてきた……は、早くしないと二人が本当に死んじゃう…!)グググググ…


スラりん「くそ!拘束はまだ解けない!…だ、誰でもいい……お願いだから…二人を助けて…」


スラりん「お願いだよ……勇者」


ガチャ


スラりん「あっ…」








魔王「よっ」


スラりん「魔王かよ!!ここは勇者が来る場面でしょ!!」


魔王「何じゃ、せっかく助けに来たのに酷い言われようじゃのぅ」


スラりん「助けに来た?…そ、そうだよ!魔王、早くあの二人を助けて!」


魔王「あの二人なら大丈夫じゃ、安心せい。お前の言うとおり、あやつらを助けるのはワシじゃ駄目じゃろ?」


スラりん「あっ……そっか。なら安心だね」ホッ


魔王「さて、ワシらは一足先に魔王城に帰るとするか」


スラりん「…ねぇ魔王。さっきから気になってたんだけど…その両手にある物は?」


魔王「もちろん雪山村名物のアイスクリームじゃ。ほれ、お前の分も買っておいたぞ」ペロペロ


スラりん「……じゃあアイス食べてから帰ろっか」


魔王「うむ」


――雪山――


ザッ  ザッ


勇兄「だ…大丈夫か?」


勇妹「う…うん…」


勇兄「絶対に俺の手を離すんじゃないぞ」


勇妹「う…ん……」



ビュオオオオオオオ…



勇兄(くっ…本当に凄い吹雪だ…前がほとんど見えないから、もしかしたら道を外れてるかも…手の感覚も無くなってきたし…)


勇兄「……ん?お…おい、勇妹…?」クルッ



・・・・・



勇兄「う、嘘でしょ…?ゆ、勇妹ーーー!!ど、どこだーー!返事をしろよーーー!!」



・・・・・



勇兄(お…俺のせいだ…俺のせいで勇妹が……)


勇兄「…あ、諦めちゃ駄目だ!あいつは絶対に生きてる!絶対に見つけてやる!おーーーい!!勇妹ーーー!!」ザッ ザッ


ザッ


勇兄「勇妹!?」クルッ


イエティ「グルルルルル…ココ、オレ、ナワバリ」


勇兄「イ、イエティ!?くそっ…!」チャキッ


カラン


勇兄「あっ」


勇兄(け、剣が掴めない…!)


勇兄「な、なら雷魔法で…」チリッ…


ザッ  ザッ  ザッ


イエティ達「ココ、オレラ、ナワバリ…」


勇兄「こ、こんなにたくさん…!?」


イエティ達「…デテケ!」バッ


勇兄「くっ…た、助けて……お父さん」


ピッ!


イエティ達「!?」ピタッ


「イエティさん、すいません。すぐに縄張りから出ますので、私の息子を襲うのはやめてください」


勇兄「お…お父さん!」


側近「まったく…無茶し過ぎですよ、勇兄。こんな吹雪の中を子供二人だけで下山なんて不可能です。それぐらい貴方にだってわかるはずなのに…」


勇兄「ご…ごめんなさい…」ポロ


側近「…あまり心配掛けないでください。貴方達は私達の大事な息子娘なんですから」ナデナデ


勇兄「…うん」ポロポロ


側近「では、早く帰りましょう。このままでは凍え死んでしまいますし」


勇兄「ま、待って!勇妹が…!」


側近「勇妹なら大丈夫です」


勇兄「えっ?」


ザッ


女騎士「勇兄!」


勇兄「お、お母さん!?」


女騎士「何でこんな無茶なことをしたんだ!勇妹にまでこんな目に合わせて…もう少しでイエティに食べられるところだったんだぞ!」


勇妹「zzZ」スー スー


側近「普段温厚なイエティさんもこの時期は繁殖期で気性が荒くなってますからね。縄張りに入りさえしなければ襲ってきませんが…殺してませんよね?」


女騎士「ああ。ちゃんと峰打ちで気絶させといた」


勇兄「ゆ、勇妹…よかった……無事で本当によかった」ポロポロ


女騎士「……まったく、お前達は私と勇者の大事な息子娘なんだぞ。あまり無茶なことはしないでくれ…」


勇兄「うん…さっきお父さんにも同じ事言われた」グスン


女騎士「むっ、そうか。なら別のことを…」


側近「女騎士さん、その辺にしてまずは家に帰りましょう」スッ


女騎士「…そうだな」ギュ


側近「では勇兄もこっちの手を握ってください」スッ


勇兄「う、うん」


ギュッ


側近「…絶対に離しませんので安心してくださいね」ニコ


勇兄「…うん!」


側近「では行きます!」


ヒューーーー…ン




イエティ達「……ウゴケナイ」


――側近達の家――


勇兄「zzZ……お父さん、お母さん…ごめんなさい……むにゃむにゃ」スヤスヤ


勇妹「zzZ……パパ、ママ、お兄ちゃん…大好き……むにゃむにゃ」スヤスヤ


女騎士「まったく…これでは怒れないではないか」ナデナデ


ガチャ


側近「ただいま戻りました」


女騎士「おかえり。スラりんはどうだった?」


側近「二人が無事で安堵してましたが…それ以上に怒ってました」


女騎士「まぁ今回はこの子達が悪い。あとでたっぷりスラりんに怒ってもらおう」


側近「そうですね…その分私達は明日、存分に甘えさせてあげましょう」


女騎士「…ん?明日は休みなのか?」


側近「はい」


女騎士「だが…明日と明後日はアレの影響で帰る暇も無いほど忙しいと言ってなかったか?」


側近「そうだったのですが、実は…――」


女騎士「――…なるほど、僧侶がそんなことを…」


側近「はい…僧侶さんや協力してくださる方々には本当に感謝してます。ですが…まさかこの子達が私に甘えたいと思っていたなんて…僧侶さんに言われるまでまったく気づけず…情けないです」


女騎士「………」


側近「私はこの子達がしっかりしてるからこそ安心して治安維持に勤しんできました。確かに一緒に居られる時間は少なかったかもしれませんが、私はこの子達を大事にしてきました…いえ、そのつもりでした。ですが私は…この子達にさみしい思いをさせていたんですね」


女騎士「私もこの子達が一切さみしいなんて言わないから、早く大人になって親離れしたがってるとばかり思ってた…だからこそ今回の旅も許したのに……親失格だな」


側近「親というのは勇者よりも難しいのかもしれまん……私達もこの子達と一緒にもっと成長しないといけませんね」


女騎士「そうだな…」


側近「では、明日に備えて私達もそろそろ寝ましょう。明日は世界中を飛び回るより疲れるかもしれませんし」クスッ


女騎士「……ね、寝る前に私も雪山で体が冷えてしまったから、その……あ、温めてほしいんだが…///」


側近「…明日に疲れが残らない程度にしてくださいね」


女騎士「ぜ、善処しよう///」

今日はここまで


>>149
何か色々とすいませんでした
ですが別に進撃だけ書いてるわけじゃありませんよ?消えたデータにはバキssもありましたし…
迷惑を掛けたお詫びに久々に進撃ssを書いてみますね(笑)


ではまた


翌日


――魔王城――


魔王「おーい側近ーどこにおるんじゃー?」


僧侶「魔王、何してるの?」


魔王「いや、朝食が用意されてなかったから側近を探しているんじゃが…」


僧侶「あれ?昨日言ったよね?勇者様は今日はお休みだって」


魔王「えっ!?あれは勇者の仕事であってワシのお世話は入ってないんじゃないのか!?」


僧侶「そんなわけないでしょ。今日は一家団欒を邪魔しちゃ駄目だよ。じゃあ僕はケルやカイザーと一緒に勇者様の分も治安維持に勤しまないといけないからもう行くね。ケル、カイザー、今日はよろしく頼むね」ナデナデ


ケルベロス「バアウ!」


フェニックス「クアー!」


魔王「他の者達も確か側近の仕事をカバーする為に居ないらしいし……よし、スラり~~ん!!」


スラりん「何か僕に用?さっき勇兄達を怒鳴り散らしてきたばっかだから疲れてるんだけど…」ピョン ピョン


魔王「あやつらの家に行ったのか。じゃあワシも……いや、今日ぐらいは邪魔しないでやるか。そういうことで朝食が用意されとらんから、今から一緒に外で朝飯を食いに行かんか?ワシ、料理出来んし」


スラりん「あー…パス。今日は午後から魔国のカフェに行って明日の打ち合わせをする約束があるんだ。だからその前にもうちょっと眠っておきたいから遠慮するよ」


魔王「じゃあワシも後で一緒にそのカフェに……ん?魔国のカフェって…あのメイドカフェか?」


スラりん「うん。魔法使いが居るあのメイドカフェ」


魔王「……やっぱワシはいい。あやつとは馬が合わん」


スラりん「そう言うと思ったよ。じゃあおやすみ~」ピョン ピョン


魔王「今日は一人ぼっちか………さみしいのぅ」シュン


――側近達の家――


勇兄「大分スラりんに怒られちゃったな…」


勇妹「しかたない。それだけのことをした私達が悪い…」


女騎士「そうだぞ。本当は私ももっと怒りたいが…まぁ、せっかく今日は勇者が休みなんだ。許してやるから今日はお父さんにいっぱい甘えるんだぞ?」


勇兄「うん!」


勇妹「……ねぇ、ママ。一つ聞いていい?」


女騎士「何だ?」


勇妹「どうしてパパとママは雪山に来たの?私達が危険な目にあってることは知らなかったはずなのに…」


女騎士「それは…虫の知らせのおかげだな。私も勇者も何だか嫌な予感がしたから雪山に向かったんだ。そしたら案の定お前達が危険な目にあってたってわけだ」


勇兄「凄い!お父さんとお母さんは超能力も使えるんだね!」


女騎士「ああ、お前達限定だけどな。ちなみに魔王はただ単にお城を抜け出してお前達に会いに行こうとしてただけで、飛んでる最中に偶々遭遇したんだ。もちろん飛びながら勇者に説教されてたぞ」


勇兄「あははは!さすが魔王だね!」


ガチャ


側近「終わりましたか?」


女騎士「ああ。一応スラりんにも朝食を食べてくか聞いたんだが…気を利かせてくれたみたいだ」


側近「そうですか…後でもう一度お礼を言っておかないといけませんね」ジュゥゥゥゥ…


勇兄「わあー!いいニオイ~!」


側近「もうすぐ出来ますので三人とも座って待っててください。あっ、ちゃんと手は洗ってくださいね」トントン


勇兄「うん!」


勇妹「パパの料理が久しぶりに食べれる…嬉しい」


勇兄「お父さんは料理の腕も凄いからなぁ~」


女騎士「すまんな。私は料理の腕が凄くなくて」ムスッ


勇兄「そ、そんなこと言ってないよ!お母さんの料理も十分美味しいって!」アセアセ


勇妹「そう。確かにパパの料理は美味しいけど、私はママの料理の方が好き」


女騎士「料理は味じゃないってことか?」


勇妹「うん。料理は愛情」


側近「それだと私より女騎士さんの方が貴方達への愛情が深いってことになりますね…」


女騎士「ふふん♪母強し、だな」ドヤッ


側近「負けられませんね…本気を出します!」トントントントン


勇兄「…お父さんって意外と負けず嫌いなんだね」


女騎士「そんなことないぞ。勇者はどちらかというと負けを譲るタイプだ。だが、この勝負は譲りたくないらしい」クスッ


勇妹「それだけ私達は愛されてるってこと?」


女騎士「ああ、そうだ」


勇兄「引き分けでいいのに…」


女騎士「そうはいかない。やっぱり父親よりも母親の方が子供達を愛してるに決まってるからな」


側近「それはわかりませんよ?」ゴゴゴゴゴゴ


女騎士「ふっ…せいぜい頑張るんだな」ゴゴゴゴゴゴ


勇兄「そ、そんなことでケンカしないでよ!」アセアセ


勇妹「大丈夫。これは所謂、喧嘩するほど仲がいいってヤツだから。それに…仲がいいのはママの肌を見ればすぐにわかる」


女騎士「へ?」ツヤツヤ


勇妹「お兄ちゃん、もうすぐ弟か妹が出来るかも」


勇兄「えっ?」


側近(……かなり搾り取られましたからその可能性は捨て切れませんね…)


女騎士「な、何を言っているんだ!///ていうかそういうことはどこで覚えたんだ!?」


勇妹「………竜姉が教えてくれた(嘘だけど)」


女騎士「ほぅ…やっぱりあのショタコン野郎とは一度剣を交えないといけないらしいな…」ゴゴゴゴゴゴ


勇兄「ちょ、ちょっと!?」


勇妹「ママ、竜姉は野郎では無い」


女騎士「おっと、そうだったな」


勇兄「そこじゃないでしょ!竜騎士さんともケンカしちゃ駄目だよ!旅でも俺達に優しくしてくれたんだから!」


女騎士「な、何!?あいつ、私の可愛い子供達に…や、優しくシたのか!?」


側近「それはあの竜騎士さんといえどもさすがに………勇妹、シてませんよね?」


女騎士「やはり否定は出来ないのか」


勇妹「うん。させるわけが無い。お兄ちゃんは将来私と結婚するんだから」


勇兄「何回も言うけど結婚しないからな。いい加減しつこいぞ」


勇妹「…何も聞こえない」


勇兄「おい」


女騎士「お前達、本当にシてないんだろうな?」


勇兄「シてないの意味がわからないけど、竜騎士さんには泊めてもらったり、強くなれるアドバイスをもらっただけだよ。
…あっ、そうだ!お父さん、あとで俺と戦ってよ!俺、大分強くなったんだよ!」


側近「いえ、今日はやめましょう。せっかくの休みですし、貴方達の旅の話も聞きたいですから。それに…楽しみはとっておきたいので」


勇兄「えっ?それってどういう意味?」


側近「それは…まだ秘密ですよ」


勇兄「えー教えてよー」


側近「我慢してください。さあ、朝食が出来ましたよ。愛情たっぷり入れた私の自信作です。女騎士さんのより美味しくて、きっと好きになるはずですよ」


女騎士「まだ言うか」


____________________


勇兄「今日は楽しかったな!」


勇妹「うん。家族四人で丸一日一緒に居られるなんて…本当に幸せだった」


勇兄「……これじゃお願いを変えたくなっちゃうよ」


勇妹「お願いって…明日のアレの?」


勇兄「うん…」


勇妹「確かに私も今日みたいな日がずっと続けばいいって思った……そういえばお兄ちゃんは何をお願いするつもりなの?」


勇兄「それは……内緒に決まってんだろ」


勇妹「ずるい」


勇兄「じゃあお前は言えるのか?」


勇妹「……言えない。内緒」


勇兄「だろ?結局最後にお願いを叶えてもらえる者は一人だけなんだし、今言う必要はないよ。いや…もしかしたら一人も居ないかもしれないけど」


勇妹「弱気になっちゃ駄目。きっと私がお願いを叶えてもらう」


勇兄「いや、叶えてもらうのは俺だ!よぉーし!明日はお互いに全力を尽くそうな!」


勇妹「うん。明日は相手が誰であろうと負けられない。お兄ちゃんと私の幸せの為にも」


勇兄「…ん?」


勇妹「おやすみお兄ちゃん」


勇兄「う、うん。おやすみ…(今何か変なこと言ってなかったか?…ま、いっか)」


勇兄(ついに明日、アレが開催される……俺は絶対に勝ってみせる!あの…魔王に!!)


――魔国――

闘技場


魔法使い「レディーーーーッス・エンドゥ・ジェンテュルメーーーーン!…エーーッンドゥ!モンスターーーーーー…ッズ!!!やってまいりました~~!!四年に一度の大会、第3回魔王ぶっ殺し大会がッ!!」


魔王「おい、いつからワシを殺す大会になったんじゃ?マジメにやれ」


魔法使い「うっさい!ゲストは黙ってなさい!」


魔王「貴様…ッ!」イラッ


魔法使い「司会はわたくし!皆のアイドル魔法使いがお送りしま~~~す❤」


し~~~~…ん


魔法使い「………」


スラりん「えっと…せめて拍手をしてあげてね」


パチパチパチ…


魔王「…少ないのぅ」


魔法使い「…そっちの方がダメージ来るわよ。もうこの仕事やめようかしら」シュン


魔王「ワシを簡単に罵るクセにメンタル弱すぎじゃろ」


魔法使い「では他の方々も紹介しま~す解説はスライムのスラりんで~す」


スラりん「やる気のない紹介だなぁ…まぁいいけどさ。みんな、よろしくね!」


パチパチパチ   パチパチパチ


魔法使い「私の時より多い…」ギロッ


スラりん「た、たまたまだって!」アセアセ


魔法使い「で…ゲスト、これ」


魔王「いくらなんでもワシの扱い酷すぎるじゃろ!!」


魔法使い「そうね…ここはさすがにちゃんとしないと駄目ね……さあ!ゲストはこの方!この大会の主催者であり、過去2回のチャンピオンでもある魔物の王!!魔王ちゃんです!!」


魔王「だからちゃん付けするなといつも言っておるだろ!!」


マオウチャ~~~ン!アハハハハハ!


魔王「ほれみろ!最近お前のせいで町の奴らにも魔王ちゃんって呼ばれる時があるんだぞ!威厳がまるでゼロじゃないか!」


スラりん「それは最初から無かったよ」


魔王「いや、この姿は威厳しか無かろう」キリッ


魔法使い・スラりん「……うん、そうね(そうだね)」


魔王「やめて!哀れみの目で見ないで!」

キリが悪いけど今日はここまで


ではまた


魔法使い「では、魔王ちゃんは放っておいて大会の方法とルールを説明しま~す。まずは抽選で8つのブロックに分けてサバイバルを行い、その中からトーナメント出場者を16人選ぶんですが……今回は色々ありまして、いきなり16人のトーナメントにいっちゃいます!」


魔法使い「決勝トーナメントのルールは単純明快!1対1で戦って戦闘不能、もしくは『まいった』と言わせた方の勝ちです。ただし相手を殺したりするのは無しです。それ以外なら基本的に何でもOK!武器も魔法も使用化です!
そして、トーナメントを勝ち上がった方にはチャンピオンである魔王ちゃんと戦ってもらい、見事魔王ちゃんを倒す事が出来たら一つだけお願い事を何でも叶えちゃいます!!」


スラりん「一つ質問なんだけど観客席に攻撃が来ちゃったらどうするの?」


魔法使い「エルフさん達の協力で、リングと観客席の間に強力な防御膜を張ってますのでご安心を。ただし魔王ちゃんの攻撃は防げないので魔王ちゃんは魔法禁止で」


魔王「それは不利すぎるじゃろ!?そもそもワシが客に当てるようなことをすると思うか?そんなことしないで逆に守ってやるわい!」


マオウチャン、カッコイイ~~~!


魔王「だから魔王ちゃん言うな!」


魔法使い「ということで魔王ちゃん以外の選手は心配なく全力で戦ってください!もちろん全力で戦うと怪我をするリスクが高まります。せっかく勝っても次の試合に出れなかったら意味がありません…
ですが選手の皆さん、安心してください!もし怪我をしてもこの方が何でも治しちゃいます!魔王軍の紅一点!スマイリーエンジェルこと僧侶ちゃん!」


僧侶「紅一点じゃないし、スマイリーエンジェルって…僕ももう結構いい歳だよ?」


パチパチパチパチパチ! パチパチパチパチパチ!

キャアーー!ソウリョチャ~~~ン!


僧侶「あ、ありがとね、みんな…///」フリフリ


魔法使い「か…完全に負けたわ」ガクッ


魔王「側近と一緒に世界中を飛び回って人々の傷を回復させとるし、最近は医学の方も勉強してるらしいからのぅ…人気があるのも無理はない」


ウガァー!ソウリョチャ~~~~~ン!


スラりん「黄色い声援に交じって野太い茶色い声援が聞こえるんだけど…むしろそっちの方が多いかも」


魔王「種族、性別、全て者に区別無く優しく接するから怪我しやすい雄の魔物の方が多いのは当然といえば当然じゃ。あやつも魔物が大好きじゃし」


竜騎士「僧侶ちゃ~~~~ん!大きくなってもきゃわわわわ!」スリスリ


僧侶「りゅ、竜騎士さん!?顔を擦りつけないでよ~~!」ジタバタ


魔法使い「ちょっと、そこのショタコン。選手紹介の前に出てこないでちょうだい」


青年「ご迷惑をお掛けして大変申し訳ありませんでした。ほら竜騎士さん、行きますよ」ズルズル


竜騎士「そ、僧侶ちゃ~~~~ん!」


魔王「…あやつは変わっとらんのぅ」


スラりん「うん…あれじゃどっちが親だかわからないや」


魔法使い「じゃあ気を取り直して選手紹介いっきま~す!」


魔法使い「今大会最年少!三度の飯よりお兄ちゃんが大好き!完成されたブラコン、勇妹ォォオオ!!」


勇妹「お兄ちゃんと私の幸せの為に…必ず優勝する」


魔王「……この紹介アナウンスは誰が考えたんじゃ?」


スラりん「昨日、僕と魔法使いで考えたんだよ」


魔王「側近(勇者)の娘とかもっと伝えることがあるじゃろ」


スラりん「でも、勇妹といえばブラコンでしょ?」


魔王「…それもそうじゃな」


魔法使い「続いては…子供をこよなく愛する変態!ペロペロの魔術師の異名を持つ元魔王軍軍団長、竜騎士ッ!!」


竜騎士「フッ…夢の『兄妹丼 ~僧侶ちゃんを添えて~』は私がいただく!」クワッ


スラりん「増えてる…」


青年「竜騎士さん、子供達も応援に来てるんですから少しは自重してください」


魔法使い「その竜騎士に育てられ、魔法・剣術を巧みに扱う実力者!現在片想い中の青年だァー!!」


青年「ちょっと!!何を言っているんですか!?」


竜騎士「お前、好きな奴が居るのか!?初耳だぞ!ど、どんな奴なんだ!?お母さんに教えなさい!!」


青年「お、教えませんよ!///」


魔法使い「その剣術はまさに風神!二児の母でもある戦う母親、女騎士の登場ッ!!」


勇妹「…ママも参加するって知らなかった」


女騎士「私だけ除け者ってのもあれだしな」


勇妹「…?パパは治安維持で居ない。違うの?」


女騎士「あっ…まぁ今更隠しても意味ないか。実は…――」


魔法使い「どんどん行っちゃいます!こんなに大きくて硬いの初めて…///岩石の巨人、ゴーレム!!」


ゴーレム「ウオオオオー!」


魔法使い「そして今大会優勝の最有力候補!魔王ちゃんのお父さんである前魔王と魔王の座を争って敗れたサタン…その父親が成し遂げられなかった夢を叶えることが出来るのか!?魔神サタンの息子、ディアブロォォーーッッ!!」


ディアブロ「……フン」


魔王「あやつも出るのか…」


魔法使い「さらにもう一人、次期魔王の座を狙う者がいる!自称魔族のプリンス、ヴァンパイア!」


ヴァンパイア「フッ、今こそ私の美しく華麗な力を見せる時が―「ごちゃごちゃうるさいので一気にいきますね!」


ヴァンパイア「」


スラりん(かわいそう…)


魔法使い「月見大好き、狼男!ミノタ牛乳の社長、ミノタウロス!現在ダイエット中、ベヒーモス!オークの王、オーク王!などなど…」


魔物「紹介が雑になってきたのぅ」


魔法使い「そろそろ考えるのがめんどくさくなったのよ。次は…15人目ね。あなた達のお友達よ」


魔王「やっとか!」


魔法使い「小さな体に大きな夢!将来はお父さんみたいな立派な勇者!正義感溢れる勇者様の息子、勇兄!!」


勇兄(俺はこの大会で優勝して、立派な勇者になるんだ!)グッ


魔王(うむ…顔つきが少し大人になったかのぅ。旅に出たのは正解じゃったな)


竜騎士「勇兄たんのキリっとした横顔は最高だなぁ~」ウヘヘヘ…


勇妹「異論は無い。何時間でも眺めていられる」ジー


女騎士(娘がどんどん深みにはまっている気がする…)


魔法使い「そして今大会最大のサプラァーーーーイズッ!第3回大会でついに初出場!皆さんもご存知、英雄と言えばこの人!魔王ちゃんの側近でもある、勇者様だァァーーーッ!!」


魔王「えっ!?」


側近「凄い盛り上がりですね」


勇兄「お、お父さん!?どうしてここに?治安維持はいいの?」


魔法使い「その辺は私が説明しちゃいまーす!勇者様はいつもこの大会が開催される日は、治安維持の為世界中を飛び回っていますが、今回は勇者様の代わりに魔王軍の方々が治安維持の方に勤しんでいます。
ちなみに前回大会の後、多くの大会参加者がより強くなろうと魔王軍に入団した為、今回は参加者が大幅に減りサバイバルマッチを行わなかったのです」


魔王「じゃ、じゃが魔王軍だけでは全ての町や村を守るには足らんじゃろ」


魔法使い「その通り!ですので魔王軍だけでなく、国王軍も協力してくださいました」


側近「王様、我侭を聞いてくださって本当にありがとうございました」


王「いやいや、本来は我が軍だけで行うべきことだ。礼を言われることでは無い。むしろ今まで自国を守るだけで精一杯で、他の町や村の護衛をそなたと魔王軍に頼りっぱなしだった我らが悪い」


王「それに礼を言うなら私ではなく、そこの彼(僧侶)に言うべきだ。彼が私に直談判をしたから実現したのだ」


側近「僧侶さん、昨日の休暇の件もそうですが…私の為にここまでしてくださって本当にありがとうございます」ペコ


僧侶「そ、そんな頭を下げるほどのことじゃないよ!いつもお世話になってるのは僕の方だし、それに…勇者様の為だけじゃないんだ」


側近「…子供達の為ですか?」


僧侶「うん。いつも勇兄くん達から勇者様を取り上げちゃってるから、これが僕なりのせめてもの償いなんだ」


勇兄「僧侶さん…」


僧侶「それで昨日は楽しめた?」


側近「はい。おかげ様でとても幸せな時を過ごせました」


僧侶「そっか…よかったね、勇兄くん」ニコ


勇兄「うん!」


魔王「ほ、本当に側近が出るのか………ワシ、今回は棄権していいか?」


スラりん「いくら勇者が怖いからって逃げちゃ駄目だよ」


魔王「もちろんそれもあるが…逃げたい理由はそれだけではないんじゃよ」


スラりん「え?」


魔法使い「それでは事前にクジを引いてもらったので、ここでトーナメントの組み合わせを発表しちゃいまーす!組み合わせは以下の通りです!」

組み合わせは以下の通りと言いましたが今日はここまでにします!

ではまた

すいません、あげ忘れました


【第3回魔王ぶっ殺し大会 決勝トーナメント】


第1試合
勇兄 vs ミノタウロス

第2試合
ヴァンパイア vs 雑魚


第3試合
竜騎士 vs リザードマン

第4試合
狼男 vs 青年


第5試合
ゴーレム vs  ベヒーモス

第6試合 
側近(勇者) vs キマイラ


第7試合
女騎士 vs オーク王

第8試合
勇妹 vs ディアブロ


魔法使い「時間も勿体無いのでさっそく第1試合を始めちゃいまーす!第1試合は勇兄選手vsミノタウロス選手です!それ以外の方は一旦選手控え室もしくは観客席に移動してくださーい!」


女騎士「勇兄、頑張るんだぞ」


側近「私達は観客席で見てますからね」


勇兄「うん!」


勇妹「お兄ちゃん、私達の幸せの為にも頑張って」


勇兄「よくわからないけど頑張るよ!」



魔法使い「それでは……始めてくださーい!」


勇兄(まずは相手の出方を伺って…)


ミノタウロス「………」ゴソゴソ


勇兄(武器を取り出すのか?)チャキッ


ミノタウロス「君…今よりモゥーっと強くなりたいと思わないかモゥ?」


勇兄「えっ?……思うけど…」


ミノタウロス「そんな君に……これを!」バッ


勇兄「!?」


ミノタウロス「このミノタ印の牛乳を毎日飲めばあら不思議!見る見るうちに身長がモゥーっと伸びてモゥーっと強くなれるモゥ!」つミノタ牛乳


勇兄「な、何だってー!?」


魔法使い「宣伝してないで試合しなさいよ」


ミノタウロス「さあ、試しに1杯飲んでみるモゥ」つミノタ牛乳


勇兄「あ、ありがとう!」ゴクゴク


ミノタウロス「モゥー…」ニヤリ


勇兄「うっ…!」


魔法使い「おぉーっと!いきなり勇兄選手が俯き始めたぁ!これは一体どういうことでしょうか!?」


魔王「ま、まさか!?あの牛乳の中に毒物が!?ゆ、勇兄!!」


勇兄「う……うまい!!」パアァ


ミノタウロス「だモゥ?」


魔法使い・魔王「」ズザァァ


勇兄「濃厚でクセもなく、穂のかな甘みもある…今まで飲んだ牛乳の中で一番おいしいよ!」


ミノタウロス「人間の酪農家の皆さんと共同開発した傑作だから美味しいのは当然だモゥ!またこの牛乳は闘技場内の売店でも販売してるので、ぜひ皆様もお買い上げくださいませだモゥ」


魔法使い「いい加減にしろゴラァ。失格にしてやろうか?あーん?」


スラりん「その気持ちはよくわかるけど、キャラ崩壊しすぎだよ」


ミノタウロス「では、そろそろ始めようかモゥ…この牛乳を毎日飲んで得た猛(モゥ)パワーを見せてやるモゥ!!」ダッ


勇兄「俺もおいしい牛乳を貰ったお礼に全力で倒してあげるよ!」チャキッ


数分後♪


ミノタウロス「」チーン


魔法使い「ミノタウロス選手をまったく寄せ付けず、勇兄選手の完封勝利でーす!ザマァミロ!」


勇兄「よし!まずは一勝だ!」


女騎士「お疲れ様。今日は身体の調子が良さそうだな」


勇兄「うん!…あれ?お父さんは?」キョロキョロ


女騎士「今は王様と話をしてるよ。ちゃんと見てたから安心しろ」


勇妹「お兄ちゃん、とてもカッコよかった。私の心はもうお兄ちゃんの物」


勇兄「お前の物だよ」


パチパチ


勇兄「ん?」チラ


ヴァンパイア「とても美しい剣術だったよ」パチパチ


勇兄「ありがと!えっと…」


ヴァンパイア「私の名はヴァンパイア。次に君と戦う者さ。君とならとても素晴らしい試合が出来るはず…楽しみにしてるよ」スタスタ


魔法使い「それでは第2試合を始めちゃいます!第2試合はヴァンパイア選手vs雑魚選手です!」


ヴァンパイア「フッ、我が美技に酔わせてあげよう」


雑魚「」ピチピチ!


ヴァンパイア「………た、対戦相手の雑魚選手って…」


魔法使い「ええ、そこにいる小魚よ。それでは始めてくださーい!」


ヴァンパイア「ええっ!?何故こんなにも美しい私がただの魚と戦わなくてはならないのだ!?これは仮にも決勝トーナメントじゃないのか!?」


魔法使い「さっきも言ったように魔王軍が出払っちゃって参加者が居ないのよ」


ヴァンパイア「だ、だが闘技場の選手控え室には魔王軍に所属していない魔物達がたくさん居たはずだが…」


魔法使い「皆出場を辞退したのよ」


ヴァンパイア「な、何故なんだ!?ここまで来て何故辞退するんだ!?」


側近「確かに私も控え室で皆さんと挨拶しましたけど…何かあったのでしょうか?」


魔法使い(ほとんどの魔物が勇者様が怖くて逃げ出したなんて言えない…)


スラりん(実は魔王軍の魔物達も勇者が出場するとわかった瞬間に、自分達から治安維持の方を志願したなんて言えない…)


魔法使い「と、とにかくちゃっちゃっと始めちゃってくださーい!」


ヴァンパイア「くっ…しょうがない。早く終わらせるか……ん?」


雑魚「」ピチ…


ヴァンパイア「……既に死にそうなんだが…」


魔法使い「死んだら失格負けとなりますよ」


ヴァンパイア「理不尽だな!?」


魔法使い「ほら、早く人工呼吸しないと」


ヴァンパイア「くっ…し、仕方がない…!」つ雑魚


フーッ フーッ


魔法使い「ヴァンパイア選手、大胆にも雑魚選手に熱~い口付けをしています!」


クスクス…
サカナトキスシテルゾ


ヴァンパイア(何故私はこんな辱めを受けているんだ!?)フーッ フーッ


スラりん「…ねぇ、魚ってエラ呼吸じゃないの?」


魔法使い「そういえばそうね」


ヴァンパイア「貴様ら私で遊んでいるだろ!!」クワッ


雑魚「」ピチ…


魔法使い「私達にケンカを売る前に早くその雑魚選手を助けないと」


ヴァンパイア「あーもう!水があれば一先ず大丈夫だろう!」ポワン


魔法使い「おーっと!ヴァンパイア選手、水魔法でシャボン玉のような水の玉を作って、見事雑魚選手を救いましたー!」


雑魚「~♪」スイス~イ


ヴァンパイア「よし、なんとか生き返った……で、こっからどうすればいいんだ?攻撃すれば死ぬし、ただの魚では『まいった』も言わせられないではないか…」


魔法使い「あっ、もう十分楽しめたからあなたの勝利でいいよー。ヴァンパイア選手、見事一回戦突破でーす!」


ヴァンパイア「まさに茶番だったな!!」


勇兄「次の俺の対戦相手はヴァンパイアさんか…」


竜騎士「気をつけるんだぞ。ああ見えてもかなりの実力者だからな、あいつは」


勇妹「竜姉はあの人を知ってるの?」


竜騎士「残念ながらな…」ハァ…


ザッ


ヴァンパイア「フッ、君はその美貌だけでなく照れ屋なとこも変わっていないんだね」


竜騎士「うわぁ…こっちに来やがった」ヒキッ


勇妹「竜姉がガン引きしてる…珍しい」


ヴァンパイア「どうだい?50年ぶりの再開を祝って今夜一緒に食事でも…」


竜騎士「マジで無理。生理的に無理。まださっきの魚の方がいいレベルで無理」


ヴァンパイア「そ、そこまでかい…?」シュン


女騎士「それで二人はどういう関係なんだ?」


ヴァンパイア「おおっ!こんなところにも麗しき姫君が!」


女騎士「…こいつ頭大丈夫か?」


竜騎士「ああ、これがこいつの正常だ。基本的に♀なら魔族も人間も関係なく誰でもOKのキザ野郎なんだ」


ヴァンパイア「そこの可愛いお嬢さん、大きくなったら私の奥さんにならないかい?」


勇妹「私はお兄ちゃんの奥さんになることが確定してる。よってあなたは必要ない。消えて」


勇兄「いや、確定してないからな」


魔法使い「それでは第3試合を行いまーす!竜騎士選手とリザードマン選手です!」



竜騎士「おっ、次は私か」


勇妹「竜姉、頑張って」


竜騎士「ああ!勇兄ちゃんと勇妹ちゃんをペロペロする為にも全力で頑張ってくるからな!」


女騎士「母親の前でよく言えるな」イラッ


青年「ホントにすいません…」


魔法使い「それでは始めてくださーい!」


竜騎士「ふむ…大分鎧を着込んでるな」


リザードマン「そういうお前は随分と軽装だな。俺をナメてるのか?」


竜騎士「私は子供達以外は舐めない主義だ」キリッ


リザードマン「そういう意味じゃねぇよ!」


竜騎士「別にナメてるわけじゃないさ。ただ…お前程度の攻撃なら竜の鱗だけで十分なんだよ。そもそもトカゲが竜に勝てると思ってるのか?」


リザードマン「言うじゃねぇか。元魔王軍軍団長さんの力…見せてもらうぞ!」ダッ


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ゴーレム「ウオオオオー!」バキッ


ズシィィン!


ベヒーモス「グ……ァ…」バタンッ



魔法使い「ベヒーモス選手、ついに戦闘不能!超重量級を制したのはゴーレム選手です!


ゴーレム「ウオオオー!」


魔法使い「これで残すところあと3試合です!」


竜騎士「おい、いくらなんでも飛ばしすぎだろ。せっかくリザードマンを華麗に蹴散らしたのに…」


青年「わ、私は竜騎士さんみたいに余祐で勝ったわけじゃなく、かなりの死闘だったんですが…いいんですかね?」ゼェ ゼェ


魔法使い「いーのよ。戦闘シーンは長くてめんどくさいの」


魔法使い「じゃあとっとと次の試合に行っちゃいまーす!第6試合は側近(勇者)選手とキマイラ選手でーす!」


キマイラ「………」


スラりん「獅子の頭に尻尾が大蛇、背中には大鷲の翼かな?凄いいっぱい組み合わさってるね」


魔王「あのキマイラ、どっかで見た記憶があるんだが…どこじゃったかな?」ウ~ム


側近「はじめまして……ではなさそうですね」


キマイラ「…この姿でも俺が誰なのかわかるのか?」


側近「はい。私は基本的に一度会った方の魔力は忘れません。修行して強大な魔力を身に着けたとしても、魔力のニオイまでは変えられないものなのです」


側近「そして…色々な魔力が混ざってますが、貴方から知っている魔力のニオイがします。貴方は……ガーゴイルさんですね」


キマイラ「フッフッフ…さすがだな」


竜騎士「ガーゴイルだと!?確かガーゴイルは側近様に石にされたはずだが…」


キマイラ「その通りだ。俺はこいつに石にされて魔王城の独房に保管されていた……いや、保管される予定だった」


側近「どういうことですか?」


ガーゴイル「いいだろう…俺が石にされたあの日、何があったのか教えてやる!あの日…お前が石像にした俺達を魔王城に置いて去った後のことだ…――」


_
__
_____
__________
_______________
____________________

(※前スレ64の後)


――魔王城――


側近「もし戻ってきた時に鍛錬もしないで腑抜けてたら…私が魔王様を倒して魔王兼勇者となります」

魔王「」


側近「魔王様、お城の掃除と魔法の鍛錬を怠らないでくださいね。あっ、健康の為にもたまには外にお出かけください。お小遣いはここに置いておきますが、お菓子やオモチャばかり買わないでくださいね。では、行ってまいります」ヒューーーーーン!


魔王「」


魔王「…とりあえずこいつらを独房に入れるか。やらんと後でお仕置きされてしまうし…」ズルズル


魔王「それにしてもあやつ…本気でワシを倒すつもりなのか?そもそも君主に手を出せるわけ……出しまくってるな。それもかなり頻繁に…」


魔王「………ま、大丈夫じゃろ。あやつもきっとすぐに忘れるはずじゃ!」※忘れるはずもなく、ボロボロにお仕置きされました


魔王「久々に側近の顔を見て安心したら腹が減ったのぅ。だが食料は切れてしまったし…」


魔王「………あっ!たしか独房にはケルのエサ用の猛獣達も一緒に保管されてたはずじゃ!よし、それを焼いて食うか!」


独房


魔王「思ったとおり石にして保管してある。一匹だけ石化を解いて食べるか」ピッ


猛獣達「ガウゥ!?」


魔王「あっ、他の奴らも数匹解いてしまったか…やっぱりこういう繊細な魔法のコントロールは上手くできんのぅ」


猛獣達「ガルルル…」


魔王「ん?ワシを食うつもりか?やめておけ。さっきも言ったようにワシは魔法のコントロールが下手なんじゃ。だから…手加減できんぞ」ニヤリ


____________________


猛獣達「」チーン


魔王「少し焼きすぎたかのぅ。やっぱり上手く加減が出来ん…ん?」


ガーゴ/イル「」


魔王「あっ、こいつも壊してしまった………ま、まだ身体のパーツはそこら辺にあるから、ご飯粒でくっ付けておけば大丈夫じゃろ!」ガサゴソ


魔王「まずは頭……これじゃったかな?」つ獅子の頭


魔王「次はたしかこいつは翼を持っとったはずじゃから…これじゃろ!」つ大鷲の翼


魔王「尻尾は…ついてなかったかもしれんがもうちょっとだけ凄みをつけておこうかのぅ」つ大蛇


魔王「後はこれも、これもついでにここにつけてと………よし、出来たぞ!」


キマイラ「」


魔王「……うむ、我ながら素晴らしい作品じゃ!」エッヘン!


____________________
_______________
__________
_____
__
_


キマイラ「こうして俺は造られた…その後はペットのエサとして食われる瞬間に隙をみて何とか逃げ出し、こんな目に合わせたお前ら二人を殺す為ずっと力を蓄えていたんだ!」


スラりん「何をやってんの魔王…」


魔王「………」ソー


側近「…魔王様、逃げようとしないでください」


魔王「」ビクッ


魔王(これは後でお仕置きパターンじゃな…)ズーン


側近「魔王様が大変ご迷惑をかけました。すいませんでした」ペコ


キマイラ「元々お前が俺を石にしたのが悪いんだろ!」


側近「いえ、それは貴方が悪いので私に非はありませんよ」


キマイラ「うるせぇ!とにかくお前なんてブッ殺してやる!!」バッ


魔法使い「キマイラ選手、いきなり側近選手に襲い掛かったぁー!」


側近「しょうがないですね…」


キマイラ「ハッ!また俺を石にするつもりか?石化魔法はある程度実力差が無いと効かないんだぞ!!お前ら二人を殺す為に9年間ずっと鍛錬をしてきた俺に効くと思ってるのか!?」


側近「はい、思ってますよ」ピッ!


キマイラ「へ?」カチーン!


魔法使い「おーっと!なんとキマイラ選手を一瞬で石にしてしまいました!」


スラりん「たった9年修行しただけで勇者に勝てると思うなんて…無謀だね」


魔法使い「これはもう戦闘不能ですね。側近選手の勝利でーす!」


側近「ガーゴイルさん、安心してください。たしかまだ独房にパーツが残ってると思いますので、後で元の身体に戻してあげますね」


スラりん「石化は解いちゃうの?」


側近「…?石化を解く必要があるのですか?」


スラりん「えっ?そ…そうだよね!解く必要ないよね!(さすがにちょっとかわいそう…)」


側近「では……魔王様」


魔王「な、なんじゃ?」ビクッ


側近「ガーゴイルさんを魔王城に連れていくので一緒についてきてください」ニコ


魔王「……はい(お待ちかねのお仕置きタイムか…)」トボトボ


側近「女騎士さん、私は少し席を外します。次の試合頑張ってくださいね」


女騎士「ああ、勇者が戻ってくる前に終わらせておくよ」


魔法使い「第7試合は女騎士選手vsオーク王選手でーす!」


女騎士「さて…とっとと終わらすか」


オーク王「一回戦からお前と当たるなんて…運がいいな」


女騎士「ほぅ…そんなに私とやりたかったのか」


オーク王「ヤりたくないわ!!お前はまだ我らから搾り取るつもりなのか!?」


女騎士「……いや、貴様は何を言っているんだ?」


オーク王「お前は我がオーク一族の子種を根絶やしにした悪魔だ!お前のせいで我が一族は絶滅の危機に瀕しているんだぞ!昇天してしまったあいつらの為にも…お前との因果を断ち切ってみせる!!」


女騎士「まったく身に覚えがないんだが…」


魔法使い「それでは…始めてください!!」


オーク王「うおおー!」ブンブンッ!


魔法使い「オーク選手、自慢の怪力で大きな斧を振り回し始めたぁ!これは凄い!」


オーク王「うりゃああ!」ブンッ!


女騎士「どんな凄い怪力を持っていても当たらなくては意味がないぞ」サッ


女騎士「それにそんな軽装では『切ってください』と言ってるようなものだ」チャキッ


オーク王「フッ、我にはお前の攻撃は効かん」


女騎士「何?」


オーク王「この日の為に鍛えぬいたコレを見よ!!」ボロンッ


女騎士「」


魔法使い「ここでいきなりもう一つの武器、聖剣もとい性剣を取り出したぁー!!」


スラりん「子供達は直視しないでね」


オーク王「フッフッフ…今までのオークのモノと一緒にするなよ。我が性剣の太さと耐久力はドラゴンに匹敵すると言われているんだ!さあ、搾り取れるなら搾り取ってみろ!!」ビキビキ


女騎士「………」スパッ


ボトッ


オーク王「へ?」


魔法使い「オーク王の性剣もといソーセージを躊躇無く切り落としたぁーー!!」


スラりん「表現がどんどん直接的になってきたね」


オーク王「わ…我のチ○コがぁぁああ!!」


スラりん「それはさすがにアウトだよ」


女騎士「……死ね」チャキッ


オーク王「ひいぃ!?ままま、まいったぁ!!もう許してくれ!」


女騎士「却下だ」グサッ


オーク王「ぎゃあああーー!!」




勇兄「お、お母さん!殺したら失格になっちゃうよ!勇妹、魔法でお母さんを止めて!」


勇妹「汚いモノを見せた罰。もう一太刀食らわしてから止める」


勇兄「今すぐ止めろー!!」


魔法使い「少しだけ過激でしたが、オーク王選手のまいった宣言により女騎士選手の勝利です!」



女騎士「すまない…お前達に見苦しいとこを見せてしまった」


勇兄「そ、そんなことないよ!誰だっていきなりおチンチンを出してきたらビックリしちゃうって!(切り落とすのはさすがにやり過ぎだけど…)」


勇妹「そう。見苦しかったのは相手の方。ここはお兄ちゃんのおチンチンで浄化するべき」


勇兄「お前は何を言っているんだ?」



魔法使い「………ねぇ、おチンチンはOKなの?」


スラりん「うん、子供だしギリギリセーフ…かな?」


僧侶(まさかこんな治療をすることになるなんて…)ポゥ…


オーク王「おおっ!!わ、我が性剣がくっ付いていく!」パァァ


僧侶「はい、終わったよ」


オーク王「そ、僧侶ちゃんありがとう!このご恩は一生忘れないぞ!」


僧侶(出来ることならすぐに忘れたいなぁ……)


オーク「そうだ!お礼に我がオーク村の名産である極太ソーセージを―「遠慮するよ」

俺「僧侶ちゃん!俺の性剣も治してくれ!!」ボロン

僧侶「あと>>248さん、残念ながら包茎も治すことは出来ないんですよ」



昨日は寝落ちしてしまったので続きを少しだけ投下します


魔法使い「次の試合が一回戦最後の試合となります!第8試合、勇妹選手vsディアブロ選手でーす!」


勇兄「勇妹、頑張れよ!」


女騎士「無茶だけはするなよ」


勇妹「うん」


竜騎士「女騎士の言うとおりだ。ディアブロはかなりの実力者…ハッキリ言って私より強い。危ないと感じたらすぐに棄権するんだぞ」


勇妹「……わかってる」スタスタ


勇妹(そう…一目見ただけでわかる。あの人は私より全然強い。でも……負けられない)


勇妹「…待たせてごめんなさい」


ディアブロ「フン…」



魔法使い「それでは…始めてくださーい!」


____________________


ヒュー…ン
     スタッ


側近「少しだけ遅れましたね…魔王様が歩けなくなるからいけないんですよ」


魔王「ま、まさかお仕置きが正座とは思わなかったんじゃ!今も足が痺れてうまく歩けんし!」フラフラ


側近「ん?」


勇兄「そ…そんな……」


側近「勇兄、どうかしましたか?」


勇兄「お、お父さん…勇妹が……」


魔王「あっ…勇妹ぉ!!」


勇妹「ぐ……」プスプス…


ディアブロ「フン…他愛も無い」ポイッ


魔法使い「ディ…ディアブロ選手の圧倒的な力の前に、勇妹選手は手も足も出ません…」


魔王「ディアブロめ…!」ギリッ


ディアブロ「来たか魔王。これでやっとお前に聞かせることが出来る…大切な友達の悲鳴をな」ス…


魔王「や、やめろォ!」


ドオォォン!


勇妹「きゃああああ!」


魔法使い「ディアブロ選手が手をかざした箇所が大爆発!!こ、これは…勇妹選手は大丈夫なんでしょうか…?」


ドサッ


勇妹「ぐ……ま、まだ…負けられない……優勝して…ちゃんと法律的に兄妹で結婚できるようにするまで…は…」ググググ…


勇兄「勇妹!!もうあきらめて降参しろ!!」


ディアブロ「さて…そろそろ壊すか」スッ…


勇妹「お…お兄……ちゃん…」ガクッ


魔法使い「そ、そこまでです!!」


ドオォォン!


ディアブロ「ん?」


側近「…もう終わりですよ」プスプス…


ディアブロ「…この大会は乱入もありなのか?」



魔法使い「乱入は無しですが、最後の攻撃をする前に既に勇妹選手は戦闘不能であなたの勝利が確定してました。なので側近選手は失格にはなりません」



ディアブロ「フン…まぁいい。貴様は直接俺の手で始末してやる。楽しみにしてろ…」スタスタ


側近「ええ…楽しみにしてます」


勇兄「勇妹!!」タタタタタッ


側近「勇兄、すぐに勇妹を僧侶さんのところに連れていってください」


勇兄「うん、わかった!」


勇妹「お、お兄…ちゃん……うっ!」


勇兄「内臓をやられているんだ、喋らないでジッとしてろ」ヨイショ


勇妹「こんな傷……お兄ちゃんがキスしてくれれば…すぐに治る……がハッ!」


勇兄「喋るなって言ってるだろ!!」タタタタタッ



魔法使い「で、では一回戦の試合が全て終了したので少しだけ休憩に入ります」



側近「…さて」


____________________


ディアブロ「………」スタスタ


ザッ


魔王「ディアブロ…貴様ァ!!」


ディアブロ「フン…久々だな魔王。俺の親父がお前の親父に殺された時以来だから…150年ぶりぐらいか?」


魔王「そんなことどうでもよい!よくもワシの大事な友達を……殺してやる!」ゴゴゴゴゴ


ディアブロ「フン…上等だ。やってみろ」ゴゴゴゴゴ


側近「魔王様、落ち着いてください。いくら試合では無いとはいえ、今殺したら失格になりますよ」


魔王「側近…だ、だが!お前は娘があんな目に合わされて許せるのか!?」


側近「…この大会は基本的に死ななければ何でもありの大会です。勇妹もそれをわかった上でこの大会に参加してます。ディアブロさんだけを責めることは出来ませんよ」


ディアブロ「そりゃそうだろうな。俺は何もルール違反をしてないんだから」


側近「ですが……私も一人の親です。愛する我が子があんな目に合わされたら…許せるはずがありません」


ディアブロ「フン…許すも何も、貴様に俺を罰する力も権限もない。魔物にも人間にもなりきれん中途半端な存在のクセに図に乗るなよ…」スタスタ


魔王「ディアブロめ…」ゴゴゴゴゴゴ


側近「……魔王様、そろそろ魔力を抑えてください。この闘技場が壊れてしまいます」


魔王「…うむ」フッ


魔王「だが…あやつをこのままにしていいのか?次にあやつとあたるのは女騎士。へたをすると…殺されてしまうぞ」


ザッ


女騎士「心配するな魔王。私は次の試合を棄権する。魔法使いにはもう伝えておいた。だから…頼んだぞ、勇者」


側近「はい…任せてください」

今日はここまで


ではまた


____________________


魔法使い「先ほどの地震もおさまったみたいなので再開します!それでは見事一回戦を勝ち進んだ選ばれし8人で準々決勝を行っていきまーす!」


魔法使い「まずは宣伝しに来たミノタウロス選手を鮮やかに打ち破った勇兄選手と、公の場で濃厚な濡れ場を披露してくださったヴァンパイア選手の試合です!」


ヴァンパイア「君、いい加減にしないと私に惚れさせるぞ?」キラン


魔法使い「なんか気持ち悪いこと言っていますがスルーします」


ヴァンパイア「」


勇兄「だ、大丈夫?」


スラりん(さっきからかわいそ過ぎる…)


魔法使い「それでは始めてくださーい!」


ヴァンパイア「どうしていつも私はこんな扱いをされるんだ?」イジイジ


勇兄(隅っこでイジケてる…もの凄くやり辛いんだけど)


魔法使い「ちょっと、さっさと始めなさいよ」


魔王「これ、イジメるのはそのくらいにせんか。あやつはお前が思ってるよりずっといい奴じゃぞ」


魔法使い「魔王ちゃんはヴァンパイア選手のことを知ってるの?あの人、資料が少なすぎてよくわからないのよ」


魔王「あやつはワシが側近の次に信頼してる奴じゃ。魔王軍にも所属していたが、親父が死ぬと同時に魔王軍から去ったんじゃ…」


スラりん「てことは…実はかなりのジジイってこと?」


ヴァンパイア「ジジイではない!私は永遠の20歳だ!」


魔王「…×10ぐらいじゃ」


ヴァンパイア「魔王様まで酷いっ!?」


魔王「ちなみにあやつが魔王軍を辞めた理由は親父が死んだから…も、もちろんあるが本当は長年付き合っていた彼女にフラれたショックで辞めたんじゃ」


ヴァンパイア「苦い記憶を思い出させないでください!!つい最近やっと立ち直れたのに…」シクシク


勇兄「あの~…そろそろいい?」


ヴァンパイア「あっ…す、すまない。もう大丈夫だ。始めてくれて構わない…」グスン


勇兄「う、うん…まだちょっとやり辛いけど…いくよ!」チャキ


ヴァンパイア「ふぅ…では行くぞ……私の美技に酔いしれるがいい」ファサッ


魔法使い「マントを広げてカッコつけていますが全くカッコよくありません!」


ヴァンパイア「君は私に恨みでもあるのかい!?」クワッ


ザッ


勇兄「隙アリ!」ブンッ


ヴァンパイア「速いっ!」サッ


ヴァンパイア「だが…その程度の攻撃が私に当たると思うのかい?」フッフッフ…


勇兄「まだまだ!」シュバババ


ヴァンパイア「ちょっ!?速いって!」


ヴァンパイア「うおおおぉぉぉ!」ササササッ


魔法使い「な、なんと!勇兄選手の目にも留まらぬ速さの攻撃を、いとも簡単に避けましたぁー!」


ヴァンパイア「ど…どうだい?華麗に避けてただろ?」ゼェ ゼェ


魔法使い「訂正します。簡単ではなくギリギリでした」


ヴァンパイア「さ、さすがに剣術では敵わないか。そもそも私は素手だし…何よりこのままでは醜態を晒してしまう…」


ファサッ


ヴァンパイア「ということで、そろそろ私も反撃といかせてもらうよ…」


勇兄(さっきまでと空気が変わった…何かしてくるな)チャキ


魔法使い「緊迫した空気…両者お互いに相手の出方を伺っています」


ヴァンパイア「…フッ、最初に言っておくよ。私は色んな魔法を扱えるが、最も得意とする魔法は水魔法さ」


ヴァンパイア「好んで使う人は少ないけど私はとても気に入っているんだ。ただ…私の水魔法は普通の者達が使う水魔法とはちょっとだけ違うけどね」


勇兄(水魔法は変幻自在で対応し辛いけど、射程距離が長くなればなるほど威力が弱くなるという欠点がある。ここは距離をとって雷魔法で攻撃した方がいいな)タンッ


ヴァンパイア「ほら…そうやって水魔法と聞いただけですぐに距離をとる。まったく…隙だらけというのに」スッ…


勇兄(指をこっちに向けてきた?)


ピシュンッ!


勇兄「…へ?」ツー


ヴァンパイア「見えなかったかい?今のは水魔法と重力魔法を組み合わせて作り出した高圧水流というモノだよ。私はこれを…アクアストリームβと名づけた」


魔法使い「うわぁ…200歳なのに厨二病全開じゃん。ていうかダサいし、何でβなのよ…」


魔王「そうか?ワシは良い名だと思うぞ。甘くて美味しそうなアイスクリーム…β味ってどんな味じゃ?」


ヴァンパイア「アイスクリームじゃなくてアクアストリーム!!」


勇兄(頬が切れた!?切れ味もそうだが何より速すぎて見えない!…極限まで速く動いて的を絞らせないようにしないと!)ダンッ



魔法使い「勇兄選手、いきなり闘技場内を高速で移動し始めました!最早人間のスピードではありません!」


ヴァンパイア「…素晴らしい洞察力だ。それが正解だよ。さっきの攻撃の弱点はズバリ攻撃範囲。水を超高圧下で噴出しないといけないから、指先からしか出せないんだ」


ザッ


ヴァンパイア「そして接近戦に持ち込み、私にさっきの攻撃をさせる隙を与えない…見事!」パキパキ…


勇兄「ハアァ!」ブンッ!


ガキンッ!


ヴァンパイア「君の攻撃は美しく避けることは出来そうにないから、止めさせてもらったよ」


魔法使い「氷で剣を作り出し、勇兄選手の攻撃を防いだぁー!」


勇兄「まだまだ!」シュバババ


ガキンッ ガキンッ


ヴァンパイア(くっ…防ぐのがやっとだ!)


勇兄「くらえ!」バキッ


魔法使い「勇兄選手、隙を見てヴァンパイア選手を蹴り飛ばしました!」


ヴァンパイア「ぐっ…!」ズザァァ


勇兄「チャンス!!」ダッ


ヴァンパイア「やはり接近戦は私より君の方が全然上だ。だが…迂闊に懐に入るのは関心しないなぁ」ポワン


勇兄「しまった!?」


バシャン!


勇兄(ぐっ…!)ゴポゴポ


ヴァンパイア「ウォータープリズン・ザ・セカンド…」


魔法使い「勇兄選手、水の檻に捕まってしまったぁ!!」


ヴァンパイア「いや、だからウォータープリz―「果たしてこの水の檻から抜け出すことが出来るのでしょうか!?」


ヴァンパイア「……もう水の檻でいいよ」シュン


勇兄(は、早く出ないと息が…!)ゴポゴポ…


勇妹「お、お兄ちゃん!!……ッ!」ズキッ


側近「勇妹、まだ完治はしてないんですからあまり大きな声を出さない方がいいですよ」


勇妹「で、でもお兄ちゃんが…」


側近「たしかにヴァンパイア様は強いです。ですが…勇兄も負けてませんよ」


勇妹「えっ?」






ヴァンパイア「どうだい?そろそろ降参した方がいいんじゃないか?」


勇兄(……降参なんかしないよ)ニヤリ


バチッ…


ヴァンパイア「ん?」クルッ


ヴァンパイア「なっ!?」



魔法使い「なんとヴァンパイア選手の背後にはたくさんの球体上の雷が!!こ、これはいつの間に…」


魔王「ヴァンパイアの懐に飛び込む前に、既に仕掛けておいたんじゃ。あやつ…成長してるのぅ」



勇妹「雷を球体状にコントロールしてる…凄い。あんなこと出来なかったのに…」


側近「おそらくさっきのヴァンパイア様の試合を見て思いついたのでしょう…ふふふ、あの子はまだまだ強くなりますね」


勇兄(くらえ!!)ヒュン! ヒュン!


ヴァンパイア「くっ!」バサッ


バリバリバリ!


魔法使い「雷の玉が一斉にヴァンパイア選手に襲い掛かる!一気に形勢逆転か!?」


ヴァンパイア「ふぅ…今のは危なかった」


魔法使い「な、なんと!ヴァンパイア選手、さっきの攻撃を食らって平然としています!」


スラりん「無傷だなんて…二人にはそこまで実力差があるの!?」


ヴァンパイア「いや、そんなことはないさ。雷魔法の直撃を食らったらさすがに平然と立ってることなんて出来やしない」


魔王「そうか?ワシは雷魔法を食らってもわりとピンピンしてるが…」


ヴァンパイア「魔王様と一緒にしないでください…」


スラりん「でも、どうして直撃したのにヴァンパイアには効いてないの?」


ヴァンパイア「簡単なことさ。このマントで防ぐ事で直撃をさけたんだ」ヒラヒラ


魔法使い「そんなマント一つで防げるとは思えないけど…」


ヴァンパイア「このマントは雷を通さない特殊な防具なんだ。彼が側近の息子とわかってたから事前に用意していたのさ。ちなみに他にも10着ぐらい持ってきてるんだが…衣装チェンジでもしようかい?」


魔法使い「いえ結構よ」


ヴァンパイア「それは残念だなぁ……で、話を本題に戻すが、私はこのマントのおかげで雷魔法を防ぐ事が出来た。しかし…防御に回った為集中力が途切れ、彼を閉じ込めておくことは出来なかったというわけさ」


勇兄「はぁ…はぁ…」


ヴァンパイア「少しは体力を回復できたかい?」


勇兄「…ほんの少しだけね」


ヴァンパイア「よろしい…では続きを始めようか!」ファサッ


勇兄「うん!」チャキッ


魔法使い「盛り上がってまいりましたぁー!大会屈指の好カードとなったこの勝負、一体どちらが勝つんでしょうか!?」


側近「……ヴァンパイア様とあたったのはラッキーでしたね。勇兄にとっては最高の相手です。例え負けたとしてもこの経験が糧となって大きく成長するでしょう…」


女騎士「そうだな…」


勇妹「パパもママも何を言ってるの?まだ試合は終わってない」


側近「その通りです。ですが……おそらく勇兄は負けますよ。ヴァンパイア様と勇兄の間にはかなりの実力差がありますし」


勇妹「そ、そんなことない!パパとママはお兄ちゃんの勝利を願ってないの!?」


側近「もちろん応援はしています。ですが私達が願っているのは勝利ではなく、貴方達の無事だけですよ」ニコ


女騎士「そうだぞ。お前達はまだ走り始めたばかりなんだ。勝つ時もあれば負ける時もある。そうやってこれから成長していくんだ」


勇妹「そ…それでも、きっとお兄ちゃんなら勝つはず!(私と結婚する為にも!)」


側近「…そろそろ決まりそうですね」


____________________


魔法使い「勇兄選手、ついにヴァンパイア選手に捕まってしまいました!」



勇兄「はぁ…はぁ……く、くそぉ…」


ヴァンパイア「君は私との戦いの中でどんどん強くなっていた。君が成長していく様は見ていてとても楽しかったよ。だが…そろそろ終幕(フィナーレ)だ。降参したまえ」


勇兄「ま…まだだ!」


ヴァンパイア「手足を氷で拘束してるのにどうやって戦うと言うんだい?華麗な私でさえ過去には無様な格好で逃げたこともある…相手との実力差を知り、素直に負けを認めるのも時には必要なのさ」


勇兄「……嫌だ!俺は絶対に負けない!!」


ヴァンパイア(はぁ、困ったものだ…私はこういう尋問みたいなことは好きじゃないんだが……しょうがない、溺れさせて戦闘不能にするか)


勇兄「俺は……負けられないんだ…」


ヴァンパイア「……何故君はそんなにしてまで勝利にこだわるんだい?」


勇兄「…この大会で優勝して……俺もお父さんみたいに皆から認められる立派な勇者になるんだ!」


ヴァンパイア「なるほど…父親に憧れる息子、か……とても微笑ましいことだ。だが別にこの大会で優勝しなくとも、君なら数年後に立派な勇者になっているさ」


勇兄「……そんなに待てない」


ヴァンパイア「待てない?」


勇兄「…俺が立派な勇者になればお父さんの負担が減る。そうすれば……」


勇兄「昨日みたいに…お父さんと一緒に居られる時間が増えるから…」



側近「勇兄…」



勇兄「だから俺は…負けられない!!」


ヴァンパイア「………君の気持ちはわかった。だが今の状況をどうやって打開するんだい?」


勇兄「くっ…」


ヴァンパイア「どうやっても君が私に勝つことは出来ない…私が負けを宣言しない限り、だけどな」ニコ


勇兄「…えっ?」


ヴァンパイア「まいった、私の負けだ」


魔法使い「ヴァンパイア選手、ここでまさかのまいった宣言です!よってこの試合は勇兄選手の勝利です!」


パキンッ


ヴァンパイア「クリスタルアイスロック(氷の錠)は解いた。すぐに傷を治してもらった方がいい」


勇兄「ど、どうして降参なんかしたの!?」


ヴァンパイア「私より君の方が美しかった…それだけのことさ」


魔法使い「くっっっ…さぁーーーーーい!!最高にクサくてキザな発言をしております!」


ヴァンパイア「ちょっと君、さすがに空気を読もうか」


魔法使い「だけど…ちょっとだけカッコ良かったわよ」


ヴァンパイア「フッ…また一人美しい女性を虜にしてしまったか。私は罪な魔物だな」キラン


魔法使い「…ナルシスト野郎は放っておいて、次の試合に行っちゃいましょー!」


ヴァンパイア「」


魔王「最後までずさんな扱いじゃな…あとで慰めてやるか」

今日はここまで


ではまた

____________________


竜騎士「さて、次は私達の番か」



青年「まさか竜騎士さんと戦うことになるとは…少しは手加減してくれるかなぁ」


娘「手加減しても勝てないと思うけど…ただでさえ大好きなお母さんとはやり辛いのにね」


青年「うっ」グサッ


娘「ま、頑張ってね。私は子供達と一緒に応援してるよ」


子供A「お兄ちゃんファイトだよ!」


青年「うん…ありがとう。出来るとこまでやってみるよ」



竜騎士「おい、早く行くぞ」スタスタ


青年「は、はい!」タタタタタッ


魔法使い「次の対戦はなんと親子対決!!未だ健在の元魔王軍軍団長竜騎士選手vs気になるあの人の為に頑張る恋する乙メン青年選手の試合です!」


スラりん「ふっふっふ…」ニヤニヤ


青年(またあんなこと言って…スラりんさんには言うんじゃなかったなぁ)


竜騎士「やはり気になるな…よし、その好きな奴の名前を教えるまでは『まいった』って言っても続けるからな」


青年「そんなぁ!?」


魔法使い「それでは始めてくださーい!」


竜騎士「さて…どう調理してやろうか」ニヤリ


青年「ぐっ…こうなったら……意地でも勝ってみせます!」


____________________


竜騎士「どうした?意地でも勝つんじゃなかったのか?逃げてばかりじゃ勝てないぞ」バサッ バサッ


青年「逃げないと死ぬんですよ!!そもそも空を飛ばれてたらどうしようもありません!」タタタタタタッ


竜騎士(最近は青年と娘のせいでペロペロ不足だからな…ちょっとだけイジメてやるか)


竜騎士「ガアァァ!!」ボウッ!


青年「くっ…!」ビュオオオ! ボウゥゥゥ!


ドオォォン!


竜騎士「ほら、私の吐き出した火球だって防げてるじゃないか」


青年「風魔法で火炎魔法の威力をあげてやっと相殺できているんです!二つの魔法を同時に扱うからかなり魔力と体力を消費しますし、なにより…」


竜騎士「どんどんいくぞ!」ボウッ! ボウッ!


青年「私の実力では防げるのは一個までなんですよ!!」タタタタタッ


ドオオォォン!  ドオオォォン!


魔法使い「青年選手、必死に逃げ回っております!」


魔王「一応青年も実力はあるみたいじゃが…さすがに相手が悪すぎるのぅ。これは竜騎士の勝ちじゃな」


スラりん「いや、まだわからないよ。たしかに竜騎士は強いけど、意外と弱点も多いからね」


魔王「弱点?」


____________________


竜騎士「さて…イジメるのもこれくらいにするか」スタッ


青年「イ、イジメてたんですか!?」ゼェ ゼェ


竜騎士「お前がはやく意中の相手を言わないのがいけないんだろ。言えば楽にイかせてやるからはやく吐け」


青年「イ、イかせるって…こういう場でそういうことは言わないでくださいよ///」


竜騎士「そういう意味じゃないぞ。このムッツリスケベが」


青年(どうしよう…このままだと本当にこの場で告白することになってしまう……二人に悪いから使いたくなかったけどあの手段でいくしかなさそうだなぁ…)


青年「……あっ、竜騎士さん!勇兄くんと勇妹さんがあんなところで濃厚に絡みあってますよ!」


竜騎士「な、何だと!?そんな私の妄想のような情事が現実に!?わ、私も混ぜてくれ勇兄たぁ~~~ん!勇妹ちゅあ~~~ん!!」クルッ




勇兄「??」

勇妹「………竜姉の馬鹿」ハァ…




竜騎士「…へ?」


青年「ハアアァァ!!」ビュオオオ! ボウゥゥゥ!


竜騎士「お前謀ったな!?」


スラりん「掛かる方もどうかと思うよ」


魔法使い「青年選手の隙をついた攻撃!これは避けられそうにありません!」



竜騎士「くっ!」


青年(あの近さで火球をぶつけて相殺させると逆にダメージを受けてしまうはず。だからきっと竜騎士さんは…両手の竜の鱗で防ぐ)


竜騎士「チッ!」バッ


ドオォォン!



魔法使い「青年選手の攻撃がクリーンヒット!!」



竜騎士「よくも卑劣な手をつかったな……お仕置きしてやる!!公開ペロペロの刑だ!!」クワッ



魔法使い「しかし竜の鱗で防いだ為ほとんどダメージは無さそうです」


竜騎士「…ん?青年はどこいった?」


ザッ


青年「ここです」チャキッ


竜騎士「し、しまった!?」


青年(脇下の隙間、そこなら鱗も無くダメージが通る!…だけど)ピタッ


青年「……くっ」


竜騎士「…ん?」



魔法使い「ど、どうしたことでしょうか!?青年選手、絶好のチャンスで攻撃の手を止めてしまいました!」



青年(やっぱり竜騎士さんの体を傷つけるなんて出来ない…)


竜騎士「フンッ!」バキンッ!


竜騎士「何で躊躇したのか知らんが…私は容赦しないぞ!」ガシッ


青年「がッ…!!」ミシッ



魔法使い「その隙に青年選手の剣を折り、ヘッドロックの体勢に!」


スラりん「やっぱり彼には出来なかったみたいだね…」


魔王「どういうことじゃ?せっかくのチャンスじゃったのに…」


スラりん「そういえば魔王には言ってなかったね。実は…――」


竜騎士「さあ…答えてもらうぞ。何でさっき攻撃を止めたんだ?」グググググ…


青年「そ、それは…っ!」


竜騎士「早く答えないともっと苦しくなってくるぞ」グッ!


青年「ぐッ!!」ミシミシミシ


竜騎士「早く吐け!私だって愛する息子を痛めつけたくないんだ!」


青年「…わ、わかりました……言いますから解いてください」


竜騎士「よし…あっ、もちろん好きな奴も吐いてもらうからな」パッ


青年「…その必要はありませんよ。同じ理由ですから…」


竜騎士「は?」


青年「さっき攻撃を止めたのは竜騎士さんの体を傷つけたくなかったからです。だって私は……竜騎士さんのことが…」


竜騎士「私のことが…?」



娘(頑張って、青年!)


魔法使い(めっちゃ茶々入れたいけど…さすがに黙ってないと駄目よね)



青年「……す……」






魔王「何じゃと!?青年は竜騎士のことを好いとるのか!?」


スラりん「あっ…」


青年(…い、言われたぁーーー!!せっかく勇気を振り絞って告白しようとしたのに、第三者に先に言われたぁーーー!!)


魔法使い「ほんっっっ…と魔王ちゃんって空気読めないわね!まったく…」


魔王「す、すまん…」シュン


魔法使い「……ななななんと!?青年選手の好きな女性は母親である竜騎士選手だったのです!魔物と人間、母親と息子…まさに禁断の愛!!果たしてこの恋の行方はどうなるのでしょうかぁ!!」


スラりん「魔法使いも大概だよ」



青年(告白するにしてももう少しちゃんとしたかったなぁ…)


竜騎士(まさか愛する息子に惚れられるとは……だから青年は私のことをお母さんとは言ってくれなかったのか。意外と気にしてたんだがな…)


青年(よ、よぉーし!こうなったら自分の想いを全部ぶつけてやる!)


青年「竜騎士さん…私は小さい頃からあなたのことが好きでした。もちろんその時はまだ母親としてしか見ていませんでした…ですが成長していくにつれ竜騎士さんのことを一人の女性として好きになりました」


青年「そして竜騎士さんの過去を聞き…ずっと傍に居たいと、支えてあげたいと思いました…」


竜騎士「青年…」


青年「だから……私と結婚してください!私があなたを幸せにしてみせますから!!」


竜騎士「無理」


青年「」


魔法使い「軽っ!?ま、まさかの即答で拒否!!青年選手、大きなダメージを受けてしまいましたー!これは戦闘不能でしょうか!?」


スラりん「さ、さすがにそれはひどくないかな?」


竜騎士「むっ、そうか…………すまんな、青年。無理だわ」ポンッ


青年「」ゴフッ


魔法使い「さらに追い討ちを掛けたー!血も涙もありません!」


青年「」マイリマシター


魔法使い「完璧に上の空ですが青年選手、このタイミングでまいった宣言です!よって竜騎士選手の勝利です!試合の決め手となったのは無慈悲な言葉の暴力でした!」


スラりん「うん、かなり深くまで突き刺さってたよ」


____________________


竜騎士(一応青年を僧侶ちゃんのとこに連れてったが…このあとどうすればいいのだ?)スタスタ


娘「ちょっとお母さん!!さすがにあれはひどすぎるよ!」


子供達「そうだそうだー!お兄ちゃんがかわいそー!」


竜騎士「じゃ、じゃあどういう対応をすればよかったんだ?こんなこと初めてで私も動揺してるんだ…」


娘「…お母さんは青年のことをどう思ってるの?」


竜騎士「もちろん愛してるさ。だがそれは…子供としてであって男としてではない。さすがの私も息子と結婚は考えられない…あいつの幸せを思うと尚更な」


娘「夫婦がするようなことシてるくせに…」


竜騎士「う、うるさい!」


娘「きっと青年もこうなることはわかってたと思うの。だから…もっとちゃんと向き合って断ってあげて」


竜騎士「…そうだな。ありがとな、娘。じゃあちょっと青年のところに行ってくるよ」タタタタタッ


娘「いってらっしゃ~い」フリフリ


子供G「さすがお姉ちゃん。まるでお母さんのお母さんみたいだね!」


娘「ふふふ、そうかも」


子供A「ねー、お姉ちゃんは僕と結婚してくれるー?」


娘「青年やどっかの妹さんみたいなこと言わないでよ…普通は家族で結婚は出来ないのよ。よ~く覚えておいてね」


勇妹「…私とお兄ちゃんは普通ではない。よって結婚しても問題ない」


勇兄「いきなりどうした?」


勇妹「いえ、今私の愛デンティティーを否定されたような気がしたから…」



魔法使い「続いての試合は…超重量級を制した怪力の持ち主ゴーレム選手と、まだその実力の半分も出していない側近選手の試合です!」



側近「では行ってきますね」


勇兄「お父さん頑張って!」


女騎士「相手に怪我させないようにな」


勇妹「そう。やり過ぎちゃ駄目」


側近「ははは、わかってますよ」スタスタ

今日はここまで

ではまた


____________________

医務室



青年「…ん……こ、ここは…医務室?」ムク


僧侶「や、やっと起きてくれた!」


青年「あっ、僧侶さん…………何をしているんですか?竜騎士さん」


竜騎士「何って…僧侶ちゃん成分を補給してるんだ」ギュウゥゥゥ


僧侶「く、苦しい……」


青年「竜騎士さん…僧侶さんが嫌がってるじゃないですか」ジー


竜騎士「何だ嫉妬か?」


青年「はい、嫉妬です」


竜騎士「…随分と開き直ってるな」パッ


僧侶(や、やっと解放してくれた…)ハァ ハァ


青年「開き直るしかないんです。もうフラれましたから…」


僧侶「……じゃあ僕は勇者様の試合を見てくるから、竜騎士さんは青年くんを見ててあげてね」スタスタ


バタンッ


竜騎士「…気を使わせてしまったか」


青年「…そうですね」


竜騎士「率直に言わせてもらうと…さっきの告白は嬉しかった。息子とはいえ異性から告白されるのは久々だからな」


青年「ヴァンパイアさんから告白されてたんじゃないんですか?」


竜騎士「あれは例外だ。異性とすら思ってない」


青年「酷すぎる…」


竜騎士「あいつも根は悪い奴じゃないんだがな…残念ながらあの性格は本当に受け付けないんだ。だから階級は上なのにあいつのことを呼び捨てにしてるし…」


青年「えっ?階級が上って…魔王軍軍団長より上の階級があるんですか?」


竜騎士「階級って言うよりも身分が上なんだ。ていうかあいつのことはもういいだろ。それよりもう一度ちゃんとフラせてくれ」


青年「まだ私の心をエグるつもりなんですか!?」


竜騎士「違う。もうあんな酷い言い方はしない…ちゃんとフッてお前を前に進ませたいんだ」


青年「………」


竜騎士「私はお前のことを愛している。これは事実だ」


青年「…はい、わかってます。子供として私を愛してくれているんですよね」


竜騎士「ああ、お前だけじゃなく娘も他の子達も皆愛してる。その愛に差異はなく、皆平等に愛しているつもりだ。だから…お前だけを特別愛することは出来ない」


青年「………」


竜騎士「それにお前はまだ若い。これから私よりもっと素敵な女性と巡り会うはずだ。そしてその女性と結婚し、愛し合い…子供が出来る。それは私には、私の体では…もう出来ないことだ」


青年「竜騎士さん……」


竜騎士「私の願いはお前達の幸せ…私の夢はお前達全員の孫をペロペロすることだ。だから早く私より良い女を見つけて孫を作ってくれな」ニコ


青年「…わかりました、努力してみます。ですが…中々居ませんよ。竜騎士さんより素敵な女性は」


竜騎士「お前は筋金入りのマザコンだな」


青年「竜騎士さんのショタコンのせいでもあるんですよ」


竜騎士「む、考えてみればそうか」


青年「だからこれからはそういう行動は控えてくださいね」


竜騎士「今以上に控えろって言うのか!?それは私に死ねと言ってるようなものだぞ!」


青年「安心してください。私が死なせませんよ。これからも私が竜騎士さんの子供としてあなたの傍に居ますから…」


竜騎士「だからお前はそろそろ親離れをだな…」


青年「しません。私は筋金入りのマザコンですので」ニコ


竜騎士「……はぁ、しょうがないなまったく。良い女が現れるまでは私の傍に居ることを許してやるか」


青年「ふふふ、ありがとうございます」


ワァー  ワァー


青年「随分と盛り上がってますね」


竜騎士「おそらく側近様が入場したんだろう」


青年「じゃあ私達も見に行きましょう」


竜騎士「まあ待て。どうせ側近様が勝つんだ。見なくてもわかる」


青年「そうでしょうけど…」


ズシィィィン


竜騎士「ほら、対戦相手のゴーレムが倒れた音だ」


青年「はやっ!?さっき入場したばかりじゃないですか!」


竜騎士「さて…ゴーレムがここに来る前に終わらすか」


青年「…何を終わらすんですか?」


竜騎士「何って…さっきの試合で私を騙した罰に決まってるだろ?」


青年「えっ!?」


竜騎士「よくもあんな卑劣なことをしたな…公開では無いがその分たっぷりとペロペロしてやる。覚悟しろよ」ジュルリ


青年「こ、こんなところでマズイですって!それに絶対にペロペロ以上のことしますよね!?」


竜騎士「もちろんだ。だから早く終わらすぞ。幸いお前は早い方だし」


青年「気にしてるのに…」シクシク


青年「……ってそこじゃないですよ!ヤりません!」


竜騎士「だがお前はさっき私を死なせないって言っただろ?私は今すぐに誰かをペロペロしないと死んでしまうんだ」キリッ


青年「絶対嘘ですよね」


竜騎士「それにこれは罰だからお前の意見は全て却下だぞ」


青年「そんな横暴なぁ!?」


竜騎士「それでは大好きなママによるお待ちかねの…ペロペロタァ~~~イムッ!」ジュルリ


青年「だ、誰か助けて~~~!」


____________________


娘「あの二人遅いなぁ…勇者様の試合終わっちゃったのに…」




勇兄「お父さん凄かったよ!バラバラになって攻撃してきたゴーレムさんの体(岩)を全て同時に拘束するなんて!」


勇妹「私じゃせいぜい10個が限界…やっぱりパパには敵わない」


側近「勇妹も鍛錬をすればきっと出来るようになりますよ」


魔法使い「続いての試合は女騎士選手vsディアブロ選手!……なのですが、先ほど女騎士選手がこの試合を棄権したのでディアブロ選手の不戦勝になりまーす!」


スラりん「女騎士は辞退したんだね…正直安心したよ」


魔王「うむ…もし試合をしてたら殺されてたかもしれん」


スラりん「えっ?殺したら失格だよ。さすがにそれは無いんじゃない?」


魔王「失格になろうが関係ない。あやつはそういう奴じゃ」


スラりん「つ、次に当たるのは勇者だけど…大丈夫だよね?」


魔王「ああ……多分のぅ」

少ないですが今日はここまで

ではまた


魔法使い「続いての試合ですが…一試合空いてしまったので少し休憩を取るのか、次の試合をするお二人に伺ってから決めます」


勇兄「俺はすぐでも大丈夫だよ。竜騎士さんと青年さんの試合で休めたし」


魔法使い「では竜騎士選手は……どこですか?」


娘「…さあ?」


子供A「あっ、帰ってきたよー!」


娘「ちょっとお母さん、何をして……ナ、ナニをしてたの?」


青年「」ゼェ ゼェ


竜騎士「やはり私も女だからな。告白されて上機嫌になり…す、少しだけハリキリ過ぎてしまったんだ」アハハハ…


娘「告白を断りに行ったのに何で盛ってるのよ!?」


竜騎士「す、すまん…」シュン


魔法使い「あの~竜騎士選手、次の試合に行く前に少し休憩を取りますか?」


竜騎士「さっきの今で疲れてるし、そうしてくれると助かr―「いえ、いけます」


竜騎士「な、何を言っているんだ!?さすがの私でもヤった直後はキツイぞ!」


娘「お母さんが勝手にヤったんでしょ。自業自得よ。観客の皆さんを待たせちゃ悪いから早く行って」


竜騎士「だ、だが…」


娘「い・き・な・さ・い」


竜騎士「……はい」トボトボ


魔法使い(完全に自分の娘に尻敷かれてるわね…)


魔法使い「で、では気を取り直して……いよいよ準々決勝を勝ち抜いた強者(つわもの)4人による決勝を掛けた戦いが始まりまーす!」


魔法使い「まずは準々決勝で大番狂わせの勝利をもぎ取った勇兄選手vs息子から告白されて少しだけ上機嫌の変態竜騎士選手の試合です!」


竜騎士(せっかく勇兄ちゃんとの試合なのにかなり体力を使ってしまったな…主に試合以外のところで)



子供達「竜騎士お姉ちゃん(お母さん)、頑張って~~!」フリフリ

娘「負けて少しは反省しなさ~い」フリフリ



竜騎士「せめて応援してくれよ」


勇兄「竜騎士さん、俺は竜騎士さんのアドバイスのおかげで強くなれた…感謝の気持ちも込めて全力でいくよ!」チャキッ


竜騎士(さっき全力でイッたばかりなんだが……さすがにこの状態で今の勇兄たんに勝つのはキツイ…なら、ヤることは一つ!)


竜騎士「…私の舌技をもってすれば一ペロぐらい出来るはず!勇兄たん…私も全力でイかせてもらうぞ!」ジュルリ


____________________


竜騎士「せ…せめて頬を一ペロさせて…」


勇兄「ハアアア!」バチバチバチ!


バリバリバリバリ!


竜騎士「ぐっ……!」バタンッ


魔法使い「おーっと!竜騎士選手、ここで戦闘不能!よって決勝のチケットを見事勝ち取ったのは勇兄選手です!」


魔王「マジメにやればもう少しいい試合になったろうに…」


スラりん「完全に空回りしてたよね」


勇兄「よし!これであと一回勝てば魔王と戦える!」


竜騎士(いくら疲れてたとはいえ、まさか本当に負けるとは……子供の成長は早いものだな)


勇兄「竜騎士さん大丈夫?」


竜騎士「ああ…おめでとう勇兄ちゃん。決勝も頑張るんだぞ」


勇兄「うん!」


竜騎士「じゃあ私は僧侶ちゃんにペロpr…傷を治してもらってくるかな」スタスタ


____________________


竜騎士(元々魔王様に勝てると思ってなかったから別に悔いは無いが……優勝して子供達に腹いっぱい美味い飯を食べさせてやりたかったなぁ)スタスタ


ディアブロ「フン…魔王軍軍団長であったお前が、少し魔物の血が入ってるとはいえ汚らわしい人間に負けるとは…情けない」


竜騎士「ディアブロ…」


ディアブロ「人間の子供なんぞ育ててるから弱くなるのだ」


竜騎士「…お前に言われる筋合いは無い」


ディアブロ「…貴様は何故人間の子供なんぞを育てているんだ?俺にはさっぱり理解できん」


竜騎士「そんなのあの子達が可愛いからに決まってるだろ」


ディアブロ「人間が可愛い?…フッ、そこまで落ちぶれたか。貴様はもう……魔物ではない」スッ


竜騎士「なっ!?」


竜騎士(今の状態でこいつの爆発魔法を食らったら、死…)


ザッ


ヴァンパイア「女性に手を出すなんて…そんなこと私が許すわけないだろ」バッ


竜騎士「ヴァンパイア!?」


ドオオォォン!


ディアブロ「……フン」


竜騎士「が…ッ!」ドサッ


ヴァンパイア「ぐっ!」ドサッ


ヴァンパイア「…た、対爆発魔法用のマントで防いだんだが…」プスプス…


ディアブロ「自惚れるな。そんな布切れ一枚で俺の魔法が防げるわけないだろ」


ディアブロ「…これでも俺は貴様らの考え方は理解出来んが実力は買っているんだぞ。貴様らは俺や魔王を除けば魔物の中でも一、二を争う実力者だからな……どうだ?今からでも遅くない。俺の部下にならんか?」


ヴァンパイア「フッ…なるはず無いだろ。私の主君は前魔王様だけだ。もちろん魔王様も尊敬…はちょっとし辛いが、私を弟のように可愛がってくれた魔王様を好かないわけはない」


ヴァンパイア「前魔王様の側近であった身としては魔王様のお力になることが正しいのだろう……しかし私は、前魔王様以外の下につくつもりは無い」


竜騎士「そうだ。私もあの方だからこそ力を貸したいと思い魔王軍に入ったんだ。魔王様ならまだしもお前の部下になんて死んでも御免だ」


ディアブロ「貴様らほどの魔物がここまで毒されているとは……やはり全ての元凶はあの偽善者である前魔王か」


ヴァンパイア「それ以上前魔王様の悪口を言うな…殺すぞ」ギロッ


ディアブロ「…フッ、床に這いつくばりながら凄まれても全く怖くないぞ」スッ


ヴァンパイア「くっ…!」


ディアブロ「!?」ピタッ


ディアブロ「これは…拘束魔法か」ググググ…


側近「大きな爆発音を聞こえたので来てみれば……一体何をしているんですか?」


ディアブロ「…腐れきった魔物達に制裁を加えていたところだ」


側近「制裁…ですか」


ディアブロ「まぁいい、お遊びはここまでにするか。次は貴様を本気で殺してやるから今のうちに家族に別れを言っておくんだな」スタスタ


側近「…ヴァンパイア様も竜騎士さんも大丈夫ですか?」


竜騎士「はい…何とかですが…」


ヴァンパイア「側近、あいつは恐らく君より強い……気をつけるんだぞ」


側近「はい…わかってます」


ヴァンパイア「……では私は彼女を医務室へ運ぶとするかな。ほら、肩を貸してあげるから私の手を取りたまえ。遠慮はいらないよ」スッ


竜騎士「助けてもらっといて言い辛いんだが……すまん、お前に触りたくない。お前って昔からすぐに勘違いするし」


ヴァンパイア「」

続きは書き終わってるんですが眠いので寝ます

ではまた明日


____________________


魔法使い「続いての試合は事実上の決勝戦!ゴーレム選手も軽々倒して決勝へ、未だ本気を出していない側近選手vsその実力は魔王ちゃんを凌ぐと言われているディアブロ選手の試合です!」


ディアブロ「さて…殺してやるぞ」


側近「………」


魔法使い「それでは……始めてくださーい!」


ディアブロ「フンッ!」バッ


ドオオォォン!


魔法使い「いきなりディアブロ選手の爆発魔法が側近選手にクリーンヒット!!爆発の煙で様子がわからないですが…側近選手は大丈夫なのでしょうか!?」


ディアブロ「どうした?もうお終いか?……っ!!」ピタッ


ディアブロ「フン、また拘束魔法か…俺を低俗な魔物と一緒にするな!」グググググ… バキンッ!


スラりん「勇者の拘束魔法を力尽くで解いた!?」


チリッ…


ディアブロ「っ!?」バッ


側近「ハアアァ!」バチバチバチ!


バリバリバリバリ!


ディアブロ「ぐっ…!」


魔法使い「今度は煙の中から出てきた側近選手の雷魔法が炸裂!!両者試合開始直後から全開です!」


ディアブロ「この雷魔法は厄介だな…」プスプス…



勇兄「お父さんの雷魔法を食らってピンピンしてるなんて…」


勇妹「…もしかしたら本当に魔王様を凌ぐ実力を持ってるかも」



ディアブロ「俺の爆発魔法は火炎魔法で相殺していたか……フッ、実に惜しいな」


側近「…何が惜しいのですか?」


ディアブロ「それだけの力を持っている魔物は片手で数えられるぐらいだ。出来るならお前も俺の部下にしたいところなんだが…貴様には人間の血が入ってる。だから惜しいと言ったのだ」


側近「…そんなに人間が嫌いなんですか?」


ディアブロ「ああ、嫌いだ…殺してやりたいほどな」


側近「人間への異常なまでの殺意……やはり貴方があの魔神軍のトップなのですね」


ディアブロ「…まあな」


ザワザワ


魔法使い「ななな、なんとっ!?ディアブロ選手はあの反人派で有名な、無差別に人間を殺す凶悪な殺人集団、魔神軍の首領だったのです!」



ディアブロ「魔物共よ、喜ぶがいい…俺が貴様と魔王を殺した暁には魔物達を元通りにしてやる…己の欲望のまま暴れる魔物本来の姿にな」


スラりん「なっ!?ぼ、僕達はそんなの望んでない!お前の勝手な妄想を押し付けるな!!」


魔王「スラりん…」


ディアブロ「フン、何を今更…貴様らだって平和という暴挙を俺達に無理矢理押し付けてるだろ。まぁ腑抜けたクズの傍に居るような欲望を失った魔物は皆殺しにしてやるがな…こうやってな」スッ


ドオオォォン!


魔法使い「きゃあっ!?」


スラりん「ぼ、防御膜が破壊された!?」


ディアブロ「これで貴様を守るモノは無くなったぞ…」スッ


魔王「させるか!」バッ


ディアブロ「フッ…そう来ると思ってたさ!死ね魔王!!逃げれば貴様の友達が死ぬぞ!!」グッ


スパッ


ディアブロ「なっ!?腕が…ッ!」


側近「………」ガシッ


ズボッ


側近「…ご自分で食らってください」


ドオオオォォン!


ディアブロ「ぐっ…!い、意外とエグいことするな…俺の腕を切り落とし、そのまま俺の体にその腕を埋め込むとは…」ポタポタ…


側近「私も一応魔物の血が入っておりますので…」


魔法使い「ディ、ディアブロ選手の上半身右半分が、ふ…吹き飛んでしまいました!」


側近「どうしますか?降参しますか?」


ディアブロ「…笑わせるな」グチュグチュグチュ…


スラりん「き、傷口が治っていく!?」


側近「…凄い再生能力ですね」


ディアブロ「この再生能力がある限り俺は不死身だ。しかし…痛みはある。よくも俺の体に傷をつけたな…」ゴゴゴゴゴゴ




勇妹「す、凄い魔力…闘技場が揺れている…!」


勇兄「お、お父さん!!」


ディアブロ「俺の爆発魔法でこの闘技場もろとも吹き飛ばしてやる!」グッ


側近「そんなことさせませんよ…ハアアァ!!」ピッ!


ディアブロ「ハッ、また拘束魔法か!くだらん!それは効かないとさっき証明してやっただろ!」ピタッ


側近「………なら解いてみてください」


ディアブロ「…な、何だと!?と、解けん!!」グググググ…


側近「貴方は二つほど勘違いなされてます。まず一つ、私は調教のエキスパート…例え貴方の実力が私より数段上でも力を押さえ込むぐらい簡単なんですよ」


ディアブロ「馬鹿を言うな!俺の方が力が上なら解けるはずだろ!」


側近「魔物の頂点に立つ魔王様の躾が私の仕事なのですよ?日頃から魔王様を躾る為に鍛錬をしてきた私の拘束魔法が、貴方程度に破られるわけないじゃないですか」


側近「それに貴方の実力は魔王様に到底及びません。魔王様が本気になられたらその拘束魔法ですら一秒で解きますよ」


ディアブロ「くっ…!」


魔王「さっきから調教とか躾とか言葉が悪いぞ」


側近「これは申し訳ありませんでした。一応表立ってではお世話係となってましたね」


魔王「一応ではなくそれが本来のお前の役職じゃ」


側近「…話を戻します」


魔王「スルーか」


側近「二つ目、貴方は私達が欲望を失ったと言いましたが…それは違います。私達は平和を欲し、貴方が言ったように欲望のまま平和を貴方達に押し付けているのです。それに反対する者は力で抑え込む…実に魔物らしいじゃありませんか」


側近「それにそれが嫌な方の為に魔王様がこの大会を開いているんですよ。貴方が私や魔王様に勝てば貴方の夢が叶う。もちろん他の方々も全て平等にチャンスがあります」


側近「1、2年程度では魔王様を超えることは不可能。なので4年に一度の開催にして、皆さんに鍛錬をする時間も与えているんですよ。このように魔王様は何も考えてないように見えて意外と考えてらっしゃるのです」


魔王「それは褒めてるんだよな?」


側近「もちろんです」


ディアブロ「何故だ…何故そこまでして平和を欲するんだ!?魔王!俺は別に父の仇などどうでもいいんだ!魔物の頂点に立つ貴様が何もしないのが気に食わんのだ!」


ディアブロ「貴様なら魔物達を従え人間を抹殺し、この世界の全てを己の物にすることだって出来るだろ!何故そうしないんだ!?」


魔王「そんなの…めんどくさいからに決まってるじゃろ」


ディアブロ「め、めんどくさい…だと?」


魔王「ワシも戦うことは好きじゃ。向かってくる奴を殺すこともある。だが戦争は嫌いじゃ。つまらんからのぅ」


魔王「さらにワシは戦うこと以上にのんびりゴロゴロすることが好きなんじゃ!!」ドヤッ


側近「ドヤ顔しながら言う事ではありませんよ」


魔王「人間を殺して何になると言うんじゃ。そんなことするよりも仲良くなった方が楽しいし楽じゃろ」


魔王「それに人間達の作る物はどれも凄いんじゃぞ。オモチャや色々な施設、料理…特にお菓子やアイスは最高なんじゃ!!」


側近「ちなみに現在人間側と共同で魔王様発案のテーマパークなる物を作っています」


魔王「前回優勝の褒美じゃからな」


スラりん「…魔王が主催者なのに自分のお願い事もありなの?ていうかその建設費用とかはどっから出てるの?」


魔王「それは……知らん!全部側近に任せとるから心配なかろう。きっと色々やりくりしてくれとるんじゃろ」


側近「全て魔王様のお小遣いから出してますよ」


魔王「えっ!?初耳じゃぞ!?だから最近おやつが少ないのか!!」


側近「意外と建築費が掛かってしまい、既にお小遣い3年分ぐらいは前借りさせていただいてます。それと魔王様の現在の貯金残高は…ゼロです。先日買った雪山村のアイスクリームで全て使い切りました」


魔王「」ガーン


側近「このように魔王様はご自分が楽しむ為に絶え間ない努力をしているのです」


スラりん(それって努力って言うのかな…?)


ディアブロ「馬鹿げたことを…」


側近「…たしかに魔王様の行動や仰っていることは馬鹿らしいかもしれません。私も今までどうにかして子供のままの魔王様を成長させようとしたのですが…もう諦めました。魔王様の駄目っぷりは底無しなのです」


側近「ですが…私はこの平和が続くのなら、魔王様が描く馬鹿らしい夢をこれからも実現させていきます。それが今の私の夢なのです」


ディアブロ「フン…なら俺の夢はその全てを破壊することだ!誰も俺の邪魔などさせん!」


側近「邪魔はしますよ。だって貴方は……私を怒らせたんですから」ゴゴゴゴゴゴ


ディアブロ「!?」ゾクッ


魔王(あっ…調教モードに入りおった)


側近「これから行うのは貴方が私の愛する娘を痛めつけた報い…そして、私の主君である魔王様を腑抜けたクズと言った罰です」ゴゴゴゴゴゴゴ


魔王(いつももっと酷いことを側近から言われとると思うんだが…)


側近「…エルフさん達、一つお願いしていいですか?防御膜を外から見えないようにしてください」


エルフ「えっ?」


側近「観客席には小さな子供達も居ますので、悪影響を与えてしまいます…」


エルフ「わ、わかりました…(一体何をするんだ…?)」


ブンッ


魔法使い「防御膜の色が黒くなり、中が完全に見えなくなってしまいました!ですが…私達実況席の防御膜は壊れているので、そこから漏れて聞こえる音だけで想像してください」



側近「それでは始めましょう…貴方の実力が私より上で、さらに高い再生能力を持っていて本当に良かったです。これなら殺さずたっぷりと…痛めつけることが出来ますね」ニコ


ディアブロ「お、俺は絶対に屈しない!!」


「俺は屈しない!!」



ボオォォォォォ! バリバリバリ!



「くっ…この程度!!」



グサッ グリグリグリ



「……ぐはっ…!」



ブチブチッ ザクザクッ



「も…もうやめ……」



グチャ


観客達(今絶対に聞こえちゃ駄目な音が聞こえたー!)


魔法使い「こんなの実況出来るわけないじゃん……」


スラりん「や…やり過ぎだよ…」ガクガク


魔法使い「……グロすぎて気持ち悪くなってきちゃった。ちょ、ちょっと吐いてきていい?」ウップ


魔王「うむ、我慢しないで行ってこい」


魔法使い「じゃ、じゃあ行ってくる前に…ディアブロ選手の戦闘不能を確認したので側近選手の勝利でーす…じゃあ行ってくるわ」タタタタタッ


スラりん「…魔王は慣れてるね」


魔王「まぁいつもやられる側だからのぅ…といってもさすがにあそこまではしないがな」


エルフ「し、試合も終わりましたしそろそろ解いていいですか?」



「あっ、もう少しだけ待ってください!再生が追いつかずまだ内臓が飛び出してるので」



エルフ(内臓って…)ゾクッ



「もういいですよ」



エルフ「じゃ、じゃあ解きます」


ブンッ


側近「大変お見苦しいとこをお見せしてしまってすいませんでした」ペコ


ディアブロ「ぁ……」ピクピク


観客達(む、虫の息!?一体何があったんだ!?)


ディアブロ「お…れは…ぜ、ぜったいに…屈しないぞ…」ピクピク


側近「まだ意識があるとは…さすがです。ですがまた勘違いをなされてますよ」スッ…


側近(今のは報いと罰って言いましたよね?本格的な調教は魔王城に戻ってからたっぷりしてあげますのでご安心を…)ボソッ


ディアブロ「ぁ……ぁぁぁぁぁぁ!?」ガクガク ブルブル


魔王「…何を耳打ちしたんじゃ?」


側近「いえ、些細な事ですよ」


観客達(絶対に些細なことじゃない…)


側近「あっ、皆さん心配しないでください。魔王様以外にはここまで強くしませんので」


魔王「おい、ワシにもするな」


側近「ですが…もし皆さんが悪いことをしたら……少しだけ調教しますけどね」ニコ


観客達「」ガクガク





勇兄「あ…あれが僧侶さんが言っていた……本当の『強さ』なのか!」キラキラ


女騎士「おそらく…いや、絶対に間違ってるぞ。だから目をキラキラ輝かせるんじゃない」


勇妹「今後の為にも調教シーンも見たかったのに…」


女騎士「い、一応聞いておくが今後誰を調教するつもりなんだ?」


勇妹「もちろん魔王様。私の夢はお兄ちゃんのお嫁さん兼魔王様の側近だから」


女騎士「そ、そうか……まぁ魔王ならいっか。勇兄のことだと思って少し心配したぞ」


勇妹「私がお兄ちゃんを調教するなんて絶対にありえない。だって…私がお兄ちゃんに調教されるのだから///」


女騎士「やめなさい」

今日はここまで


思った以上に長くなってて少しだけ書くのが苦痛になってきましたよ
完結まであと…2回かな?
頑張ります


ではまた


____________________


スタスタ


娘「あっ、お母さんおかえり。随分と遅かったね。勇者様の試合もう終わっちゃったよ」


竜騎士「ああ、ちゃんと別の場所でこいつと一緒に見てたよ。側近様全開だったな…」


青年(ヴァンパイアさんと二人きりで!?)ガタッ


子供A「お兄ちゃんどうかしたのー?」


ヴァンパイア「彼は随分と変な方向に成長してしまったんだな…」


竜騎士「お前が言えないけどな。そういやお前は魔王城を出てったから、成長した側近様はあまり知らなかったっけ」


ヴァンパイア「ああ、だから彼の成長に驚いているよ。小さい頃はあんなに可愛かったのに…」


竜騎士「ホントに側近様の小さい頃は可愛かったなぁ~」ウヘヘ…


娘「ほらお母さん、涎出てるよ。これで拭いて」


竜騎士「おお、いつもすまんな」フキフキ


ヴァンパイア「これはこれは見た目も心も美しいお姫様。よろしければ私とこれからデートに行きませんか?」サッ


竜騎士「私の娘に手を出すな」ベシッ


ヴァンパイア「き、君の方から触れてくれた!?これは愛の証と受け取っていいのかい!?」パアァ


竜騎士「うざ……燃やしていいか?」


青年「…いいかもしれません」


娘「だ、駄目に決まってるでしょ!あなたまで嫉妬して変なこと言わないの!」


ヴァンパイア「わ、私を庇ってくれた!?これはもう婚約ということでいいのかな?」


娘「違うわよ!…まあデートぐらいだったらしてもいいけどね」


ヴァンパイア「えっ!?」


竜騎士「な、何を言っているんだ!?こんな奴とデートなんてお母さんは許さないからな!」


娘「そろそろお母さんも子離れしてよ…」


青年「わ、私も反対です!子供達に悪影響を及ぼしますし!」


娘「あなたはただお母さんを取られるかもしれないからでしょ。マザコンは少し黙ってて」


青年「うっ」グサッ


竜騎士「だ、だが本当にどうしてこんな奴とデートなんかするんだ?」


娘「やっぱりあの学校を維持してくのに卒業生や魔王様と勇者様の支援だけじゃキツイでしょ?ならお金持ちと結婚して寄付させようかなぁ~って。自称魔族のプリンスって言ってるぐらいだからお金持ってそうだし」


青年(もの凄く計画的だ…)


竜騎士「自称っていうか一応本物のプリンスだから金はまあまあ持ってるはずだが…」


娘「もちろんそれだけじゃないよ。さっきの試合を見て良い人そうだと思ったのは本当だし、まあまあイケメンでもあるしね」


ヴァンパイア「私に一目惚れしたわけではないのか…まぁいい、これからたっぷりと私の魅力を認識させてあげようではないか」


娘「…一つ言わせて欲しいんだけど、あなたは女性なら誰でもいいの?」


ヴァンパイア「誰でもってわけではないが…私はこの世の全ての女性を愛してるつもりさ」キラン


娘「はい駄目ー」


ヴァンパイア「はい?」


娘「仮にもあなたは私を口説こうとしてるんでしょ?」


ヴァンパイア「もちろんそうさ」


娘「なら私の前で他の女性も好きだなんて言うのは私にも他の女性にも失礼よ」


ヴァンパイア「そ…そういうものなのかい?」


娘「そういうものなの。わかったら私と居る時はお母さんに色目を使ったりしないようにしてね」


ヴァンパイア「もしかして…嫉妬かい?」キラン


娘「そうして欲しいなら今言った事をちゃんと実行すること。わかった?」


ヴァンパイア「あ、ああ…そうしよう」


娘「よろしい。じゃあ期待してるね」ニコ


ヴァンパイア(……久々に本気になってしまったかも)


竜騎士(こいつがもし娘と結婚したら……私はこいつの義理の母になるのか!?無理!絶対に無理っ!!こんな可愛くない息子なんていらない!!)


青年「あっ、そろそろ決勝が始まるみたいですよ」

WCの影響でほとんど書いてない…すみません

今日はとりあえず適当に繋ぎの部分を書いて誤魔化しました
そして今日中に勇兄vs側近の試合を終わらす予定です

あと続編ははっきり言って無理です
出来て過去編をおまけで書くぐらいです

ではまた

上げ忘れ


____________________


魔法使い「ついに過酷なトーナメントを勝ち進んだ二人による決勝戦を行いたいと思いまーす!!チャンピオンへの挑戦権を得るのは果たしてどちらの選手なんでしょうか!?」


魔法使い「それでは選手入場でーす!!」


魔法使い「ただお父さんと一緒に居られる時間を増やしたい……その純粋な想いで次々と番狂わせを起こし勝ち進んできた、ただいま成長真っ盛り中の勇敢なる少年!!勇兄選手の登場ッ!!」


勇兄「ついに決勝……絶対に勝ってみせる!例え相手が…お父さんでも」


魔法使い「そして運命に導かれるように彼もまた決勝へ……勇兄選手最大の試練!息子は父を超えることが出来るのか!?勇兄選手の父親であり、魔王ちゃんの優秀なる右腕!皆さんご存知勇者様こと側近選手でーす!」


側近「まさか勇兄と決勝で当たるとは思いませんでした…ハッキリ言ってヴァンパイア様も竜騎士さんも貴方より強いですので」


勇兄「うん…ヴァンパイアさんには完全に負けてたし、竜騎士さんはよくわからないけど体調が悪かったらしいし…二人に勝てたのはほとんどマグレだよ」


側近「そんなことありません。お二人に勝てたのは貴方が強いからです。頑張りましたね、勇兄」


勇兄「『強い』か…俺は本当に強くなったのかな?」


側近「私や魔王様に比べたら実力はまだまだ弱いですが…既に私達に負けないぐらい貴方は『強い』ですよ」


勇兄「本当に?俺には全然わからないんだけど…」


側近「いつかわかりますよ…その為にも今はこの試合を大切にしましょう」


勇兄「うん!」


側近「ふふふ、では…いつでも来ていいですよ。全て防いであげますから」


勇兄「あっ、今俺のこと子供扱いしたでしょ!よぉーし…絶対に勝ってやる!!ていっ!」ダッ



魔法使い「戦いの火蓋が今切って落とされましたぁー!!果たして勝つのは息子か、父親か、どちらなんでしょうか!?」


勇妹「…二人とも笑いながら戦ってる」


女騎士「ふふふ、そうだな。まるで試合というより稽古をつけているみたいだ」


勇妹「………」


女騎士「…羨ましいか?」


勇妹「…うん、少しだけ」


女騎士「なら今度私がお前に稽古をつけてやろう」


女騎士(最近二人を勇者に取られがちだからな。私もこの子達とのスキンシップを多くせねば…)


勇妹「ううん。私は剣術を扱えないからいい。ママよりもパパに魔法を教わりたい」


女騎士「そ、そうか…」シュン


勇妹「あっ…な、なら今度お料理を教えてほしい!」アセアセ


女騎士「それもお父さんに教わればいいだろ…勇者の方が料理の腕はいいんだから」イジイジ


勇妹(いじけちゃった…)


____________________


勇兄「ハアアァ!」ズババババ


側近「くっ…!」


キンッ! キンッ!


魔法使い「勇兄選手、もの凄い剣捌きで側近選手を追いつめていきます!」


側近(ここまでとは…剣術では既に私より上かもしれませんね。それはとても嬉しいんですが……女騎士さん、ちょっと鍛えすぎですよ)


勇兄「たあー!」ブンッ


側近(ふふふ、攻撃の癖まで女騎士さんにソックリですね。そのおかげで隙がわかるのでまだ私の方が有利です)サッ


勇兄「かかったね!」バチッ…


側近「!?」バッ


バリバリバリ!


側近「あ、危なかったですね…まさか癖で出来る隙をおとりにして、雷魔法で攻撃してくるとは…やりますね」


勇兄「まだまだ!」ダッ


キンッ!


側近「くっ…!」


魔法使い「両者激しく交錯!そしてまた勇兄選手は雷魔法の体勢に!!」


勇兄「これだけ密着してればお父さんでも避けられないはず!」バチッ…


側近「…本当に強くなりましたね、勇兄。ですが…私もやられっ放しではありませんよ!」ブンッ


ガキンッ!


勇兄「あっ!」


魔法使い「勇兄選手の剣が宙に舞ったぁー!」


勇兄「な、なら雷魔法で!!」バッ


側近「無駄です」ガシッ  


グイッ


勇兄「なっ!?」バチバチバチ!


魔法使い「なんと勇兄選手の腕を掴んで、直接雷魔法の軌道を変えました!」


側近「女騎士さんの剣術に雷魔法を加えたのはとても素晴らしいアイデアですが…片手で両手持ちの私の剣を押さえ込むには、まだ貴方の握力では無理ですよ」


勇兄「くっ…!」


側近「剣も無くなりましたしそろそろ終わりにしますか…」


勇兄「俺が押してたように見えたけど、お父さんは何だかんだ一切魔法を使ってなかった……俺の完敗だね」


側近「そう簡単に負けられませんよ。私にも父親のプライドがありますし」


勇兄「…やっぱり俺の目標はお父さんだ。今はまだ勝てないけどいつかきっとお父さんみたいに強くなってみせるからね!」


側近「…私なんかを目標にしないでください。これから勇者は必要なくなりますし」


勇兄「えっ?」


側近「勇者や魔王が必要とされない争いの無い世界…それこそが前魔王様が必死に追い求め、魔王様が受け継いだ長年の夢なのです」


側近「さっきの試合を見てわかるように私では恐怖による支配が精一杯です。ですが魔王様は違います」


側近「なのできっと魔王様ならこの夢を実現するはずです。そして貴方にもその夢を魔王様と一緒に見て欲しいのです」


勇兄「…なら俺は魔王を目標にすればいいの?」


側近「それだけはやめてください。貴方が駄目になってしまいます」


魔王「遠まわしにワシの悪口言うのはやめんか」


側近「憧れを持つのは良い事です。ですが貴方はまず『強さ』を求める理由を見つけてください」


勇兄「強さを求める理由?」


側近「はい。どうして『強く』なりたいのか、そしてその『強さ』で何をしたいのか…それがわかった時、貴方は本当の『強さ』に近づけるはずですよ」


勇兄「…うん、わかった!まだ全然わからないけど頑張ってみるよ!」


側近「ふふふ、楽しみにしてますよ……では、少しだけ気絶してもらいますね」チリッ…


勇兄「えっ?」


バチッ!


勇兄「がっ!?」バタンッ


魔王「えー」


スラりん「い、今の流れからいくと勇兄の『まいった』でお終いだったんじゃないの?」


側近「自分で負けを認めるのは相当悔しいですからね。厳しいようですがあえて私の手で負けさせました」


魔法使い「側近選手、雷魔法で気絶させ戦闘不能に!親子対決はやはり父親の勝利でした!」


側近「さて、すぐに目を覚ますと思いますし、勇兄を観客席に居る女騎士さんのとこまで運びますか」ヒョイ


側近(……知らないうちに随分と重くなりましたね。…今まで知ろうとしなかった私がいけないんですね)


側近「…勇兄、私は貴方達に本当に辛い目にあわせてしまいました。出来るなら時間を巻き戻したいですが…さすがにそれは出来ません」


側近「ですので…これからその失った時間を全力で補っていくつもりです。その為にも……」チラ


魔王「………」


側近(魔王様には悪いですが…勝たせてもらいます)スタスタ



魔王「やっぱり側近が勝ちあがってきおったか……はぁ、側近にどうやって勝てと言うんじゃ」


スラりん「えっ?」


____________________


勇兄「…ん……」


勇妹「お兄ちゃん!」


勇兄「……だから顔が近いって。このやり取り何回させるんだよ、まったく…」ムク


勇妹「ママ、お兄ちゃんが目を覚ました」


女騎士「そうか…お疲れ様、いい剣捌きだったぞ。よく頑張ったな」


勇兄「うん、負けちゃったけどね」


側近「勇兄…」


勇兄「あっ、お父さん!……何で正座してるの?」


側近「いえ、『最後のはやり過ぎだ』と勇妹と女騎士さんに説教されまして…」


女騎士「わざわざ気絶させる必要はなかったからな」


側近「ですからそれは勇兄を思って―「言い訳はもう十分聞いた」


女騎士「しかし今回は勇者が間違ってる。今は黙って反省していろ」


側近「……わかりました」シュン


勇兄(お父さんが負けた…)


勇兄「ほ、ほらお母さん、俺は全然大丈夫だしお父さんも反省してるから許してあげてよ」


女騎士「…お前まで勇者の味方なんだな」


勇兄「えっ?」


女騎士「勇兄に免じて許してやる。勇者、もうやめていいぞ」ムスッ


側近「それは有難いんですが…」


側近(勇妹、どうして女騎士さんの様子がおかしいんですか?)ヒソヒソ


勇妹(たぶんイジけてお父さんに嫉妬中…)ヒソヒソ


女騎士(私がこの子達に出来ることなんか洗濯と食事ぐらいだ。それも勇者が居れば私以上に完璧にこなすだろう。つまり…私は必要ないんだ)ズーン


勇兄「えっと…よくわからないけど元気だしてよお母さん。さっきの試合のアドバイスも貰いたいし」


女騎士「勇者にアドバイス貰えばいいだろ…」イジイジ


勇兄「嫌だよ。だってお父さんは俺の超えるべき目標で、俺の剣の師匠はお母さんだもん。だから俺はお母さんからアドバイスして欲しいんだ」


女騎士「……勇兄!」ダキッ


女騎士「お前だけだ!私を必要としてくれるのは!」ギュウゥゥゥ


勇兄「ちょっ!?恥ずかしいから抱きつかないでよ~///」ジタバタ


勇妹「……ママ、私も常にママを必要としてる。今もママの力が必要。だから私にお兄ちゃんを!」ウズウズ


竜騎士「部外者だが私も必要としてるぞ。さあ、早く勇兄ちゃんをこっちに渡すんだ!」ウズウズ


女騎士「……いや、勇兄は渡さないぞ。そして竜騎士、貴様はさっさと自分の席に戻れ」


勇妹・竜騎士「」ガーン


側近(相変わらずですね竜騎士さんは…)


側近「…ではそろそろ行きます。女騎士さん、ほどほどにしてくださいね。でないと私が嫉妬してしますし…」


女騎士「ああ、わかったよ(嫉妬されるのも悪くないな///)」パッ


勇兄「ふぅ…苦しかった」


側近「ではすぐに終わらせてきます」スタスタ


女騎士「ん?」



_____________________

今日はここまで

ではまた


_____________________



魔法使い「皆さんお待たせしましたぁー!決勝トーナメントの覇者vsチャンピオンの戦いが今始まりまーす!」




勇兄「どっちが勝つかな?」ワクワク


勇妹「魔王様の方が実力は上。でもパパは魔王様の調教師。どちらにも勝つ可能性がある」


女騎士「だがさっき勇者は試合に行く前に『ではすぐに終わらせてきます』と言っていた。まるで勝利を確信しているみたいに…」


勇兄「何か秘策でもあるのかな?」


魔法使い「必然と言えば必然!チャンピオンを決める戦いは勇者vs魔王の構図となりました!」


魔法使い「決勝トーナメントの覇者である、伝説の勇者の血を継ぐ勇者こと側近選手!主君である魔王ちゃんに勝つことが出来るのか!?」


側近(普通に戦えば私が魔王様に勝つなんて無理なんですけど……まぁ、私が勝つでしょうね)


魔法使い「そして第1回、第2回の大会で手加減してるのに他を寄せ付けず…てか強すぎて見てて面白くないからトーナメント出場禁止になってしまった魔物の王!チャンピオン魔王ちゃん!第3回でついに本気の魔王ちゃんが見れるのか!?」


魔王「…残念ながら無理じゃな」


魔法使い「そして運命の試合のゴングが…今鳴り響きました!!」


スラりん「本当は鳴ってないけどね」


魔王「………」


側近「こんなことになってしまってすみません魔王様」」ペコ


魔王「ほんとだ…ワシにどうしろと言うんじゃ」


側近「全力で戦いましょう」


魔王「それが出来ないから困っとるんじゃ!!お前わかってて言っとるだろ!!」


魔王「なぁ…お前が棄権すればいいんじゃないか?」


側近「それは出来ません。本当はこうなることがわかっていたので決勝まで来たら辞退しようと思ってたんですが……私も叶えたいお願いが出来ましたので」


魔法使い「えっと……もう試合は始まってるわよ?」


側近「ほら、魔王様。このままグダグダ続けても意味がありません。負けず嫌いの魔王様には辛いでしょうけど…仰ってください」


魔王「ぐぬぬ…」


魔王「……ま………」


魔法使い「ま?」


魔王「まいった!ワシの負けじゃ!」ガクッ


魔法使い「……えっ?」


スラりん「ま…まさかの敗北宣言!?」


魔法使い「い、意外すぎる試合の結末…一体どうしたのでしょうか?」


勇兄「…ねぇ、どういうこと?」


勇妹「わからない…私もこれは予想外」


女騎士「後のお仕置きが怖くて手が出せないとかか?…いや、魔王が後のことを考えて行動するとは思えんし…」



ザワザワ


魔法使い「えっと…どうしてなの?会場の皆も呆気にとられてるし説明してちょうだいよ」


側近「実は…魔王様は私に手を出すことが一切出来ないのです」


スラりん「えっ!?そうなの!?」


側近「はい。以前一度だけ私に手を出した時があったのですが…――」


_
__
_____
__________
_______________
____________________


数十年前


側近「魔王様、何度言ったらわかるんですか?勝手に魔王城を抜け出してお菓子等を買わないでください」


魔王「う、うるさい!何を買おうがワシの勝手じゃろ!」


側近「お小遣いなら何も言いません。ですがそのお金は魔王軍の資金です。勝手じゃ済まされません」


魔王「じゃ、じゃが…」


側近「ハアァ!」ピッ!


魔王「うぐっ」ピタッ


側近「魔王様には魔物の頂点に立ってらっしゃる自覚が足りないのです。いつまでも子供みたいに自由気ままに生きるのではなく、もう少し君主らしく…」ガミガミ


魔王(また始まった…側近の説教はいい加減聞き飽きたわい)


側近「魔王様…ちゃんと聞いていますか?」バチッ!


魔王「痛っ!?」


側近「はぁ…しっかりしてください魔王様。お願いですからこれ以上私に手を出させないでください…私だって身を削る思いで魔王様に罰を与えているんですよ」


魔王「…だったらやめんか!いつもいつも拘束しおって!本当はこんぐらいの拘束魔法などワシには効かんのだぞ!見ておれ!」ググググググ…


側近「ま、魔王様お止めください!それ以上魔力を込めては…!」


魔王「うりゃあっ!!」グッ!


ズドオオォォォン!


側近「ぐっ!」ズザァァァ


魔王「フッ…どんなもんじゃ!」ドヤッ


側近「ま……魔王…さ……」バタンッ


魔王「えっ!?そ、側近!?」

____________________
_______________
__________
_____
__
_


側近「――その後、私は三日ほど生死を彷徨いました」


スラりん「手を出したっていうか死ぬ寸前じゃん…」


側近「その頃の魔王軍には僧侶さんほどの回復魔法のエキスパートも居ませんでしたし、完治までおよそ一ヶ月ぐらいかかりました」


魔王「ワシは自分の力を本気で呪った…危うく大事な部下を失うとこじゃったからな」


側近「魔王様は私が居ないと何も出来ませんから何度も謝ってきましたね。別に殺されかけたとはいえ、私が魔王様の下から去るなんてありえませんのに…」


魔王「そんなこと考えておらんかったわ!ただただお前に悪いと思って心から反省してたんじゃ…」



勇妹(前にお父さんを傷つけたって言ってたのはこのことだったんだ…)



スラりん「その時の事がトラウマになって勇者様に手を出せないってこと?」


魔王「うむ、ワシは側近を失ったら絶対に生きていけないからな」エッヘン


側近「嬉しいお言葉ですが自信を持って仰らないでください。それに…いつか必ず別れは来るんですから」


魔王「何!?お、お前!ワシの下から居なくなるつもりなのか!?」


側近「さっきも言ったようにそれはありえません。ですが人間、動物、魔物…生きゆく全ての者には寿命があります。そして前にも言いましたが、私は必ず魔王様より先に死んでしまいます」


側近「私が死んだ後、魔王様はちゃんとこの世界の平和を維持し続けてられるのでしょうか?悲しみに明け暮れ、毎日お菓子ばかり食べて不健康な暮らしになってしまうのでは?…私は心配でなりません」


魔王「……心配いらん。大事な者を失う辛さはクソ親父で経験済みじゃ。それに…お前の息子や娘がワシの面倒をみると言ってるしな」


勇兄「うん!俺が魔王と一緒にこの世界の平和を守り続けるよ!」


勇妹「私が魔王様をパパ以上に調教する。任せて」


魔王「調教はやめんか」


側近「……二人ならきっと魔王様のお力になれますね。これで私も安心できます」


魔王「安心するには早かろう。息子達の負担を減らす為にもこれからもしっかりとワシの世話するんじゃぞ」


側近「…はい。喜んでそうさせていただきます」


魔王「うむ」


側近「では…さっそく魔王様の教育を致しましょう」バチッ…


魔王「へっ?な、何故お前は雷魔法を放とうとしとるんじゃ?この試合はもうワシの負けで決着が着いとるじゃろ?」


側近「魔法使いさんはまだどちらが勝利か言ってませんよ」


魔法使い「あっ、そういえば忘れてたかも」


側近「魔王様が敗北を味わう機会は滅多にございませんので、それが棄権では勿体無いと思いまして」


側近「それにチャンピオンを決める試合が棄権で終了では、さすがに観客の皆様にも失礼かと…」


魔王「なら何故ワシに『まいった』と言わせたんじゃ!?」


側近「それも魔王様の成長の為です。上に立つ者は敗北や自ら身を引くことも知らないといけません」


魔王「ならちゃんと身を引かせんかい!」


側近「それはそれ。これはこれです」


側近「では魔王様…敗北はこういうモノだと噛み締めながら負けてください」バチバチバチバチ!


魔王「このドSがぁぁ!!絶対に身を削る思いじゃないだろ!!」


バリバリバリバリ!

ギャアアア~~~~~~!!
ガンバッテクダサイ、マオウサマ



魔法使い「…結局いつもと変わらないわね」


スラりん「うん」


30分後


側近「はぁ…はぁ…もう魔力が尽きてしまいました。ディアブロさんとの戦いで少し魔力を使いすぎたようですね」


魔王「」チーン


側近「では魔王様…まいったと仰ってください」


魔王「どこまでワシを虐めるつもりなんじゃ!?」ガバッ


側近「虐めでも調教でもございません。これはあくまで教育です。先ほど許可をくださったじゃありませんか」


魔王「教育じゃなくて世話を頼んだんじゃ!ワシはもう教育など必要ない!」


側近「そうですか…なら安心ですね」


魔王「な、何が安心なんじゃ?」


側近「優勝して叶えて貰う私のお願いですよ。2年ぐらい休暇を貰おうと思ってます」


魔王「」


側近「そして家族4人でのんびり旅でもしながら、勇兄と勇妹の成長を見守りたいのです」


魔王「そ、そんなこと許すわけなかろう!昔と違って今のお前は勇者の仕事もあるんじゃぞ!どうするんじゃ!?」


王「それは我々王国軍に任せれば良い。私達は今日まで勇者に頼り過ぎていた…彼ら(勇兄と勇妹)を悲しませていたのは他でも無い私達だ」


王「だからこれぐらいの我侭は聞いてあげるべきだ」


僧侶「もちろん魔王軍も協力するよ。皆には僕から伝えておくね」


側近「王様、僧侶さん…本当にありがとうございます」


魔王「ワ、ワシは反対じゃ!断固認めん!!」


ブー ブー
マオウチャン、ミトメテアゲロヨー!


魔王「うるさい!外野は黙っとれ!」


魔王「だいたいお前はさっきワシの世話をすると言ったじゃないか!」


側近「ですので二日に一回は世話をしに魔王城に戻ります。私も魔王様が心配ですし」


魔王「それなら良い……はず無いじゃろ!ただでさえ勇者の仕事をするようになってから会う機会少なくなったというのに…」


側近「魔王様……例え離れていたとしても私は常に魔王様のことを思って…」


魔王「騙されんぞ!毎回そうやって言い包めおって!」


側近「この手は駄目ですか…成長しましたね魔王様。とても立派です」


魔王「じゃろ?」ドヤッ


側近「私も部下として誇らしいです」


魔王「そうじゃろそうじゃろ」ドヤァァァ


側近「ここでお認めになられたら魔王様に一生ついていきます(元々一生ついていくつもりなんですけどね)」


魔王「うむ、よかろう!認めてやる!」


側近「…ありがとうございます魔王様」ペコ


魔王「……あっ」


スラりん「相変わらずチョロいなぁ…」


魔王「貴様計ったな!?」


側近「何のことでしょう?」


魔王「ぐっ…こうなったら意地でもお前を勝たせん!攻撃は出来んが負けることも無かろう!」


魔法使い「さっきの『まいった』が有効だから試合は勇者様の勝利で決まりよ」


魔王「そうじゃった!」ガーン


魔法使い「一応ちゃんと言わないとね……魔王ちゃんの『まいった』宣言により側近選手の勝利でーす!」


魔法使い「そして優勝賞金の代わりに側近選手のお願いを何でも叶えちゃいます!さあ側近選手、あなたのお願いは何ですか?」


側近「私のお願いは…2年ぐらいでいいので家族と暮らす時間が欲しいです」


魔法使い「わっかりましたー!では後日休暇を承認する書類をお渡しします。もちろん王様と魔王ちゃんの判子付きのね」


魔王「ワシは絶対に認めん…認めんぞ!!」


____________________


後日


魔王「―と言うことでワシもついていくぞ」


側近「駄目に決まってるじゃないですか」


魔王「ほれ、ちゃんと書類に王のサインもあるじゃろ?スラりんを魔王(仮)に任命し、魔王を自由にするって」


側近「…完全に魔王様の字です。偽装しないでください」


魔王「い…イヤじゃイヤじゃ!側近や勇兄達が居なくなるなんてイヤじゃ!!」


魔王「勇兄!勇妹!お前達もワシとしばらく会えなくてさみしいじゃろ?」


勇兄「意外と平気だよ」


勇妹「私も」


魔王「この薄情もんがぁ!!」


勇兄「でも一緒でも良いとも思ってるよ」


魔王「ゆ、勇兄!」パアァ


女騎士「まぁ魔王も家族みたいなものだからな」


勇妹「うん。魔王様は私の弟」


魔王「そうじゃ!ワシは勇妹の弟じゃ!」


側近「いつから私達の息子になられたんですか…」ハァ


女騎士「勇者、どうせ魔王は何を言っても言うこと聞かずに飛んでくるぞ。だったらある程度妥協して許しておいた方がいいんじゃないか?」


側近「…それもそうですね。わかりました、二日に一回私が魔王様に会いに行くので、魔王様も二日に一回私達に会いに来てください」


魔王「…どういうことじゃ?」


勇妹「つまりパパに毎日会えるってこと」


魔王「うむ、大賛成じゃ!それなら許してやろう!」


女騎士「それじゃそろそろ出発するぞ。じゃあな魔王。元気でな…って言っても明日会うんだけどな」


勇妹「魔王様、行ってきます」フリフリ


勇兄「また明日ね~!」フリフリ


側近「それでは魔王様、行ってまいります」


魔王「うむ、気をつけるんじゃぞ」



Fin

少し最後が早足になりましたがこれでやっと完結です
見てくださった方々ありがとうございました

書いてる期間が長い割りに意外とレス数が残ってるので時間が空いたらおまけでも書くつもりです


あと最後に転載禁止でお願いします


ではまた

意外と筆が走ったので少しだけおまけを投下します

おまけは全部本編の過去の話です
魔王とか側近が出てきますが、本編の魔王ちゃんや側近ではありません

では投下します

おまけ1




勇者「ぐああああ!!」ズザァァァ


勇者「くっ…俺もここまでか」


側近「………去れ。命を無駄にするな」


勇者「…魔物に情けをかけられるとはな」


側近「情けなどではない……たんに私がお前を殺したくないだけだ」


勇者「お前みたいな魔物も居るんだな……何故お前みたいな魔物が魔王の下についているんだ?」


側近「それは……」


勇者「…ん?」


グチャ


サタン「……フン、汚らわしい人間め」


側近「なっ!?サ、サタン!何故殺したんだ!?」


サタン「こいつが人間で俺達が魔物だからだ。それ以上でも以下でもない。むしろ魔王様の命を狙いに来た人間を逃がそうとした貴様の方がどうかしてるだろ」


側近「くっ…!」


サタン「…そんなに人間を殺したくなかったら向こう側につけ。そうすれば俺が貴様を殺してやる」


側近「………」


「…サタン、そこまでにしておけ」


サタン「魔王様!」バッ


側近「………」バッ


初代魔王「今更そんな畏まんでいい」


サタン「…魔王様、人間共を皆殺しにする準備は既に整っています。そろそろ頃合いかと…」


初代魔王「そうか……おぬしはそれでいいと思っているか?」


サタン「はい、もちろんです。私はすぐにでもあいつらを皆殺しにした方がいいと思ってます」


初代魔王「うむ……おぬしの意見はわかった。だが…今はまだ待機させておけ」


サタン「っ!?し、しかし…!」


初代魔王「たしかにおぬしの言うとおり今人間側の拠点となっている王国を攻めればすぐに陥落させられるだろう…」


初代魔王「しかしこちら側も無傷では済まない。これ以上兵を…仲間を失うわけにいかないのだ」


サタン「…わかりました。部下達にも伝えておきます」


サタン(チッ、腑抜けが…)スタスタ


初代魔王「…側近よ。おぬしはどう思う?」


側近「…私は間違ってると思ってます。そしてそれは…魔王様も同じなのでは?」


初代魔王「……心を見透かすでない」


側近「今現在行われている人間との抗争も魔王様の意思では無いと私は思ってます」


初代魔王「……その通りだ。私はどうしても人間を憎むことが出来んのだ…」


側近「では何故こんな無駄な争いをなさってるのですか?」


初代魔王「…おぬし達には言ってなかったが、はるか昔…私がまだ若かりし頃、我々魔物と人間は仲良く共同生活をしていたのだ」


側近「!!そ、そんなことが…」


初代魔王「お互いに足りない部分を補いながら本当に仲良く平和に暮らしていた……私にも親友と呼べる人間の友もいた。よくそいつと月を見ながら酒を飲んだものだ…」


初代魔王「しかし…ほんの些細な事をきっかけに我々魔物と人間の間には大きな溝が出来てしまったのだ」


初代魔王「それから人間は共に過ごしてきた我々を忌み嫌い、刃を向けてきた。そして黙ってやられるほど我々は大人しい種族ではない……すぐに人間と魔物の抗争が始まった」


初代魔王「当時からまとめ役であった私は皆にやめるよう説得したが…友を、恋人を、家族を失った仲間達のことを考えるとどうしても止めることは出来なかった」


側近「魔王様……」


初代魔王「そして今日に至るまで私は心を鬼にして、仲間の為にも『魔王』となって人間達を殺してきた……親友もこの手で殺した」


初代魔王「今更引き返すことなど出来ないのだ。引き返すにはあまりにも多くの血が流れすぎたのだ」


側近「……ではサタンの言うとおり、いずれ人間を絶滅させるおつもりなのですか?」


初代魔王「ああ、そうするつもりだ…これ以上仲間を失わない為にも私が最前線に出て、この手で…人間達を抹殺する。これは必要悪なのだ」


側近「そうですか……」


初代魔王「……側近よ。私は間違っていると思うか?」


側近「…私にはわかりかねます」


初代魔王「そうか……ではその答えは保留にしておこう」


初代魔王「それともし私が選択を間違いそうになった時は…おぬしが正してくれ」


側近「……魔王様のご命令とあらば」バッ


初代魔王「うむ…頼んだぞ」


____________________


側近(魔王様はああ仰っていたが、私はやっぱり……)スタスタ


側近(……いや、今は魔王様を信じてついていくことにしよう)


ガチャ


側近「帰ったぞー」


息子「おう、おかえりー」モグモグ


側近「…お前、何を食っているんだ?」


息子「何って…親父が隠してたつまみだ。これ、おいしいな。また買ってきてくれ」モグモグ


側近「私の唯一の楽しみを取るでない!この馬鹿息子が!!」ボカッ!


息子「痛っ!な、何すんだ!このクソ親父!!」バキッ!


側近「ほぅ…少し痛い目に合わないとわからないらしいな…」ゴゴゴゴゴ


息子「いつまでも自分の方が強いと思うなよ…俺の強さはもう親父を超えている!」ゴゴゴゴゴ


バキッ! ドカッ! 
ズドォォォン!






近所に住む魔物(またか…あの親子が喧嘩すると大地が震えるんだよ…マジ迷惑)


____________________


息子「くっ……!」


側近「ど…どうした?私より強いんじゃないのか?」ゼェ ゼェ


息子「じ…自分だって肩で息をしてるクセに…!」ギリッ


側近「…なぁ息子よ。そこまでの実力があるんだ。そろそろお前も魔王様の下で兵士として働かないか?もう100歳超えたんだし…」


息子「えーめんどいー」


側近「はぁ…我ながらとんだ駄目息子に育ててしまったな」


息子「それより腹減ったー」


側近「人のつまみを食っておいてよく言えるな。自分で勝手に買って食え」


息子「お小遣いが尽きた」


側近「もうか!?あれだけ渡したのにもう使い切ったのかお前は!?」


息子「俺は我慢が嫌いだから欲しい物は全て買うんだ。お小遣いがすぐに無くなるのは当然だろ?」キリッ


側近「息子に殺意が湧いてきた」


息子「…なんてな。冗談だよ。プレゼント買ったら無くなったんだ。今日は親父とお袋の結婚記念日だろ?ほい、プレゼント」ポイッ


側近「お前……」


息子「ま、一応俺をここまで一人で育ててくれたし、少しは感謝してるんだぞ」


側近「ほんとに少しなんだな…プレゼントがチョコ板一枚って」


息子「もう少しあったんだが……今は俺の胃袋の中にある」


側近「…フッ、お前は全くブレないな」クスッ


息子「だろ?」ドヤッ


側近「いや、褒めてないから少しはブレてまともになってくれ」


息子「それより今日は全然張り合いが無かったんだが……何かあったのか?」


側近「負けといてよく張り合いが無いって言えるな…まぁ当たっているけど」


側近「…実は今日、魔王様がはっきりと明確に人間達を滅ぼすと仰ったんだ。あの御方は本当はそんなことしたくないと思ってらっしゃるのに…魔物の未来の為に自ら手を下すおつもりなんだ」


息子「ふ~ん…」


側近「…お前はどう思う?やっぱり人間達が憎いか?お前の母を殺した人間が…」


息子「んーん、全然」


側近「に、憎くないのか?」


息子「だってお袋を殺した奴は親父が殺したんだろ?ならもうそこで復讐は終わってるじゃんか。別に今生きてる人間達がお袋を殺したわけじゃないんだし、憎む必要性が全くないだろ?」


息子「逆に聞くけどお袋を殺したのが魔物だったら、親父は魔物を憎んで絶滅させるのか?」


側近「…しないな。殺した奴は許さないが…」


息子「そっ、憎む意味が無いってわけ。だから俺は人間ってだけで憎んだり殺したりしない。その労力が無駄、というより疲れるだけじゃん」


息子「親父だって本当はわかってるんだろ。だからお袋を殺した人間以外は一人も殺してないんだろ?」


息子「そもそも親父は優しすぎるんだ。俺との喧嘩だって手を抜いてるし、今まで本気で怒ったことあるのか?」


側近「…妻を殺された時ぐらいだな」


息子「俺が生まれてすぐじゃん。じゃあもう100年は怒ってないってことか」


側近「お前のダメダメっぷりに何度も本気でキレそうになったけどな」


側近「……でもまさか何も考えてないお前に気づかされるとは…」


息子「おい、俺は常に何か考えてるぞ」


側近「ほとんどが食うことだろ?」


息子「ぐぬっ」


側近「…息子よ、礼を言う。ありがとな、私は道を間違えるとこだった」


息子「へぇ~親父でも間違える時があるんだな」


側近「当たり前だ。私だってただの一匹の魔物だ。道(選択)を間違える時もある」


側近「そして……私もこれからある一匹の魔物が選んだ間違った道を正すつもりだ。それが…私の主君である魔王様の意志だから……」


____________________


翌日


側近「魔王様、昨日の答えが出ました」


初代魔王「……そうか」


側近「魔王様…やはり私は人間を滅ぼすことに反対です」


サタン「…血迷ったか側近よ」


側近「血迷ってなどいない…私は至って冷静だ。早くこの馬鹿らしい抗争を止め、少しずつでいいから人間達に歩み寄る…それが我々魔物が取るべき道だ」


サタン「……そうか。貴様はそこまで落ちぶれてしまったんだな。なら同士として…友として俺が貴様を殺してやる」ゴゴゴゴゴゴ


側近「サタン……」


初代魔王「やめろサタン。これは命令だ」


サタン「…いくら魔王様の命令でもこいつをこのままにしておくことは無理です」


初代魔王「誰もこのままにしておくとは言ってなかろう」


サタン「…ではどうするおつもりですか?」


初代魔王「…私が直々に罰を下す。お前は下がってろ」


サタン「…わかりました」スタスタ


初代魔王「さて……やるか」


側近「やはり私が止めなくてはならないんですね…」


初代魔王「ああ…自分で足を止めるには血が流れすぎているんだ。多くの部下達の想いを裏切ってまで止まるわけにはいかない…私はもう誰かに止めてもらうしか止まる方法が無いのだ」


初代魔王「……側近よ。私が無能なばかりお前に辛い使命を与えてしまってすまない」


側近「いえ…これが魔王様の意志ならば、私はその意志に従うまでです」


初代魔王「…私はお前のような部下が持てて幸せ者だな」


側近「魔王様…それは私の台詞です。今まで本当に……ありがとうございました」


____________________


ドオオォォォン!……



サタン「…終わったか」


ガチャ


サタン「……やはりこうなったか」





側近「はぁ…はぁ…」


初代魔王「ぐっ!……さ、最後の仕上げだ。さあ……私を殺せ」


側近「そ…それは出来ません。いくら魔王様の命令といえどもそれだけは絶対に出来ません」


初代魔王「ふっ、優しいお前では殺せないことぐらいわかっておる…少しだけからかっただけだ」


サタン「……魔王様」


初代魔王「おお、サタン。見てのとおりだ…私は側近に敗れた。私は魔王の座を降り、今からこいつが新しい魔お―グサッ!


初代魔王「がッ!?」


側近「魔王様!!」


サタン「笑わせるな…貴様以上の平和主義者であるこいつが魔王になったら、我々魔物は廃れてしまう。だから……魔王の座は俺が貰うぞ」ズボッ


初代魔王「ぐっ…!」バタンッ


側近「サ、サタン!!貴様ァ!!」ゴゴゴゴゴゴ


サタン「フン、魔王と戦って疲労しきった今の貴様では俺には敵わんぞ」ゴゴゴゴゴゴ


側近「殺す…殺してやる……コロシテヤルッ!」ギロッ


サタン「ッ!?」ゾクッ


サタン「…長年貴様と切磋琢磨してきたつもりだったんだが、その貴様は初めてみるな。久々に恐怖というものを感じたぞ…今の貴様はまるで全てを破壊する破壊神のようだ」


サタン「俺は貴様を少し見くびっていたようだ。悔しいが今の俺ではその状態の貴様には勝てそうにない……次に会う時まで魔王の座は貴様にくれてやる」


サタン「……またな、友よ。俺が殺しに来るまで元気でな」バサッ


側近「ニガスカァ!!」ボオォォォォ!


サタン「フンッ!!」バッ


ドオオォォン!!


サタン「俺の全力の爆発魔法が火炎魔法で掻き消されるとは……やはり今の貴様と戦うのは得策ではない。貴様の得意な拘束魔法に捕まる前に消えさせてもらうぞ…」スッ…


側近「ドコダァ!?ドコニイル!?」


初代魔王「む…無駄だ側近よ。既に爆煙に紛れて逃げおった」


側近「マ…魔王様!!」フッ


側近「だ、大丈夫ですか!?」


初代魔王「いや…心の臓を握りつぶされた。持ってあと十数秒だろう…ぐっ!」ガハッ


側近「サタンのヤツ…!」ギリッ


初代魔王「ふ、復讐に呑まれるでない…おぬしなら私よりも立派な魔王になれると信じてる。部下達を…頼んだぞ」


側近「魔王様…」


初代魔王「あぁ……我が親友よ。今そっちに行く。また月でも見ながら酒でも飲もう…ぞ…」


側近「…魔王様、向こうでもお元気で……」


ザッ


部下「そ、側近様!今しがたサタン様が魔王様を殺したと言って魔王城を去ったのですが…ま、魔王様は大丈夫なんですか!?」


側近「いや、魔王様はもう…」


部下「そ、そんな…」ガクッ


側近「……そんなんでは魔王様に笑われてしまうぞ。しっかりしろ」


部下「し、しかし…人間との抗争も膠着状態の今、魔王様が亡くなられたと皆に知れ渡ったら兵の士気は一気に落ち込んでしまいます」


部下「…側近様、これから私達はどうすればいいんですか?」


側近「…これからは兵などいらない。ゆっくりでいいからそういう時代を我々で築き上げていけばいい。それが…初代魔王様の意志だ」


部下「初代魔王様…?」


側近「ああ…これからは…」





二代目魔王「私が魔王だ」


______________________________


とりあえずおまけ1はこれでお終いです

二時間ぐらいで書いたんですが意外とレス数がありましたね
本編の最後の方なんて1週間でこのぐらいだったのに……


一応次から
側近→二代目魔王  息子→魔王子
でやっていきます

ではまた


おまけ2



初代魔王が死んでから数十年

多くの血を流し続けてきた人間と魔物の抗争は魔物側の撤退により一時休戦状態となっていた

当初、ほとんどの魔物達が反発していたが…蓋を開けてみればまだお互いに手を取り合ってるわけでは無いが、人間にとっても魔物にとっても平和な時代が訪れていた

しかし…全ての者がそれを望んでいるわけではない



男「ぐっ…ぁ…」


??「………」チュウゥゥゥゥゥ


村人A「い、居たぞー!」


??「!…貴様らに安泰が訪れると思うなよ。毎日怯えながら生きるがいい…」バッ


コウモリ「キキッ!」バサバサッ


村人A「なっ!?マントの下からコウモリが…!」


バサバサバサ……


村人A「くっ…逃げられたか」


男「ぁ…」ピクピク


村人A「大丈夫か!?」


村人B「また血を吸われてたか…これで13人目だぞ」


村人A「くそっ!せっかく平和になってきたっていうのに、まだ俺達は魔物に怯えながら暮らさないといけないのか!?」


______________________________


スタッ


??「…運んでくれてありがとな、コウモリ達よ」


コウモリ「キキッ!」


??「さて…そろそろ次の村を襲うとするか」


コウモリ「っ!?キキーッ!!」バサバサバサバサ!


??「ん?コウモリ達がまるで逃げるように飛び去っていく……何かがここに来るのか?」


ヒュー…ン  
スタッ


??「高度な移動系魔法……貴様、何者だ?」


二代目魔王「私か?私は…魔王だ」


??「なっ!?何故魔王がこんなとこに!?」


二代目魔王「お前を止めに来たんだ…お前だな?次から次へと人間を襲っているのは…」


??「……ああ、そうだ」


二代目魔王「ふむ…見たところお前はまだ若い。なのに一人で行動している」


二代目魔王「……親を人間に殺された恨みってとこか」


??「…そうだ。貴様らが勝手に人間達と争っていたおかげで、俺達は何もしてないのに人間に襲われ……父さんも母さんも殺されたんだ!!」


??「それなのに貴様が抗争を止めてから父さん達を殺したアイツらは平和にぬくぬく生きているんだ!そんなこと許せると思うか!?」


二代目魔王「…お前の意見はもっともだ。勝手に争っていた私達が悪いし、争いをやめたからと言ってそれで生じた悲しみや憎しみを完全に消すことは出来ない…」


??「なら貴様が俺を止める道理はないはずだ」


二代目魔王「いや、私はお前を止める」


??「魔物の俺よりも人間の肩を持つのか!?」


二代目魔王「そんなんではない。私はただ…お前を救ってやりたいだけだ」


??「俺を救う?…俺は別に救いを求めなどない!」


二代目魔王「ああ…これは私のただの自己満だ。だからお前に拒否権もない」


??「力尽くってわけか…上等だ!!」バッ


______________________________


??「ぐっ…チ、チクショウ……」ゼェ ゼェ


二代目魔王「ふむ…筋はいい。しかし使う魔法の選択が間違っているな」


??「な…何?」


二代目魔王「お前は火炎魔法よりも水魔法や氷魔法の方が相性がいいはずだ…何故使わない?」


??「…使わないんじゃない。そんな魔法は教わってないから使えないんだ」


二代目魔王「そうか勿体無いな……ならどうだ?私が教えてやろうか?」


??「馬鹿なこと言うな!人間と仲良くしようとしてる貴様なんかに教わりたくないッ!」


二代目魔王「…いい加減その憎しみを脱ぎ捨てろ。そうすればきっとお前も変われるはずだ」


二代目魔王「憎しみを持つことが全て悪いとは言わない。それが生きる糧になる場合もあるからな」


二代目魔王「だがお前の場合は憎しみが悪い方向に作用している…まぁ正確に言うと憎しみではないがな」


??「うるさい!貴様に何がわかると言うんだ!?」


二代目魔王「……わかるさ。私も人間に妻を殺されたからな」


??「ッ!?」


二代目魔王「当時の私も憎しみに駆られ、妻を殺した人間をこの手で殺した。そして全ての人間を抹殺しようと心に誓ったんだ」


??「………」


二代目魔王「しかし私にはそれは出来なかった…妻を殺した者しか殺すことが出来なかった」


??「…何故だ?」


二代目魔王「私も自分の気持ちがよくわからなかった…だが、私の息子がその答えをいとも簡単にはじき出した」


二代目魔王「私は人間が憎かったわけじゃない…妻を殺した犯人が憎かっただけだ。人間という種族を憎むのはお門違いだと息子に気づかされたのだ」


??「…そんなの綺麗事だ」


二代目魔王「ならお前が殺した人間の家族はお前のことをどう思う?」


??「俺と同じように悲しみ、苦しみ、そして憎むだろう…それが俺が望むことだ」


二代目魔王「…ならその家族がお前と同じように魔物を憎み、お前とは別の魔物を殺したとしたらその魔物の家族はどうなるんだ?」


??「そ、それは……」


二代目魔王「…お前はこの世に憎しみをばら撒いてるだけだ」


二代目魔王「そしてもう一つ……お前は知らず知らずの内に親の愛情を探しているんだ」


二代目魔王「私は妻を失った…しかし私には息子が居た。だからそこまで憎しみに駆られることもなかった」


二代目魔王「だがお前は両親を失い一人になった……その悲しみは計り知れないものだ」


二代目魔王「今までお前が間違った道を進んでいても誰も正してくれなかった、正す者が傍に居なかった」


??「………」


二代目魔王「…だがそれも今日でお終いだ。これからは私がお前を正してやる。共に来い」


??「俺は……俺は!今までも、これからも一人で生きていくと決めたんだ!貴様の施しなどいらない!」


二代目魔王「ふむ…そうか。なら…無理矢理連れて行くかな」


??「なっ!?」


二代目魔王「さっきも言っただろ?これは私の自己満だと。お前に拒否権は無いとな」ヒョイ


??「や、やめろ!!離しやがれ!」ジタバタ


二代目魔王「少し静かにしてろ。飛んでる最中に落としてしまうだろ」ピッ!


??「ぐっ!?」ピタッ


二代目魔王「私の拘束魔法は強烈だろ?」ニカッ


??「く、くそぉ…」


二代目魔王「…お前は私以上に優しい奴だ。本当は人間を憎んでないんだろ?」


二代目魔王「だってお前は…今まで誰一人として殺してないんだからな」


??「………」


二代目魔王「お前は親を失った悲しみをどこにぶつければいいのかわからなかった…だから人間にぶつけていただけだ。別に憎くて人間を襲っていたわけではない」


??「そんなことは……」


二代目魔王「無いと言えぬだろ?これからはお前ももっと自分の気持ちに素直になって生きろ」


二代目魔王「それがお前が出来る最高の親孝行だ。きっと親御さんもそれを望んでいるはずだ」


??「…余計な……お世話だ」ポロポロ


二代目魔王「じゃあ出発するぞ…飛べば目を擦る必要も無いし、下に落ちても雨と思われるだけだ。だから…遠慮せず泣いていいぞ」


??「な、泣いてなどいない!!」


二代目魔王「そうかそうか。わかったから背中に鼻水を垂らすのだけはやめてくれよ」クスッ


??「くっ…!こうなったらいっぱい垂らしてやる!!」


二代目魔王「やめろって言ってるだろ!まったく…馬鹿息子みたいなこと言うんじゃない」


二代目魔王「……そういえばお前の名をまだ聞いてなかったな。何て言う名だ?」


??「……ヴァンパイア」


二代目魔王「そうか…良い名を両親に貰ったな」


ヴァンパイア「……ああ」


二代目魔王「これからは私がお前の親代わりになってやるからな。遠慮せず父さんと呼んでいいぞ」ニカッ


ヴァンパイア「…俺にとって父は父さんだけだ。だから父さんとは呼べない」


二代目魔王「そうか…」


ヴァンパイア「でも……ありがとな、魔王」ニコ


______________________________


おまけ3 




二代目魔王「竜の騎士?」


ヴァンパイア「はい。我々と同じような志を持った気高き戦士が、人間を襲う魔物達を次々と打ち負かしてるそうです」


二代目魔王「ふむ……面白い。よし!ヴァンパイアよ、さっそく会いに行くぞ」


ヴァンパイア「駄目です。いい加減大人しくしてて下さい」


ヴァンパイア「私を含め部下はたくさん居るというのに全てご自分で問題を解決してしまわれたら私達の立場がありません」


二代目魔王「しかし私は部下を危険な目に合わすことがどうしても出来ない…なら私が自ら出向くしか無かろう」


ヴァンパイア(はぁ…魔王様は優し過ぎる。その優しさがご自身を傷つけているというのに…)


二代目魔王「それに今回は危険では無いだろ?竜族の血を引く者は珍しいし、我らと同じ考えを持つなら一度会っておいた方がよいはずだ」


ヴァンパイア「…わかりました。ではすぐにその『竜の騎士』の居場所を特定いたします」


二代目魔王「うむ……ちなみに最後にその『竜の騎士』が現れたのはどこだ?」


ヴァンパイア「魔王様……お願いですからそれまで絶対に待機しててくださいね」


二代目魔王「わ、わかっておる!ちなみに聞いてみただけだ!」


ヴァンパイア「…十日ほど前は砂漠で見かけたらしいのですが、先日近くの雪山で暴れる魔物達を鎮圧してますので、一定の場所に滞在しない方のようです」


二代目魔王「雪山か…私の移動魔法なら一瞬だな」


ヴァンパイア「ま、魔王様!!」


二代目魔王「冗談だ。それより…あの馬鹿息子はどこ行った?あいつも呼んでいたはずだが…」


ヴァンパイア「それが…また逃げ出してしまいました」


二代目魔王「はぁ…ほんと駄目息子だな、あいつは」


ヴァンパイア「私の監督不届きです…すみません」


二代目魔王「お前のせいではない。そもそもお前は一応あいつの弟ということになっているんだし」


ヴァンパイア「ですから私なんかが魔王様の息子なんて恐れ多いです。私と魔王様の関係はあくまで主従関係ですので…」


二代目魔王「お前も頑固だな…まぁよい。お前がどう思おうと私やあの馬鹿息子はお前のことを家族だと思ってるからな」


ヴァンパイア「……ありがとうございます」


二代目魔王「本当は側近の仕事もさせたくないんだが…お前がどうしてもと言うからやらしてるんだぞ」


ヴァンパイア「……息子なら父親の仕事に憧れるものですよ」ボソッ


二代目魔王「ん?何か言ったか?」


ヴァンパイア「いえ、何でもございません」


息子(以下魔王子)「おーい帰ったぞー」スタスタ


ヴァンパイア「魔王子様!どこに行かれてたんですか!?」


魔王子「ちょっとだけ外を散歩してただけだ。それより親父に客だぞ」


二代目魔王「客?」


竜騎士「…お前が魔王様か」


ヴァンパイア「なんとお美しい!どこかの王女様でしょうか!?」


竜騎士「……なんだこいつは?」


魔王子「あーシカトしていいぞ。そいつは女性なら誰にでも同じことを言うんだ」


ヴァンパイア「失礼な!微妙にニュアンスは変えてますよ!」


二代目魔王(……また私は息子の育て方を間違えてしまったみたいだな)


ヴァンパイア「さあ見知らぬ王女様、あなたの為にバラを摘んでまいりましたので受け取って下さい」サッ


二代目魔王(摘んできたって…今氷魔法で作っただけじゃないか)


竜騎士「………」つバラ


ヴァンパイア「バラを受け取った…つまり私の愛を受け取ったってことですね!では私の…いえ、私達の愛の巣へご案内します!」


竜騎士「ガアァァ!」ボウゥッ!


ヴァンパイア「わ、私の愛がぁああ!?」


魔王子「溶けて水になったな」


二代目魔王「口から火球を吐けるとは…竜族の者か?」


竜騎士「ああ…私は『竜の騎士』。名は竜騎士だ」


二代目魔王「竜の騎士!?そうか…まさか噂の竜の騎士が女性だったとは思わなかったな」


竜騎士「…女が騎士をやっていて何か問題でもあるのか?」


二代目魔王「いや、何も問題無いぞ。女性だって戦う理由ぐらいある」


二代目魔王「まして人間を襲ってる魔物を打ち負かすということは…あの抗争で何か大切なモノを失ったのだろう」


竜騎士「……その通りだ」


二代目魔王「…これ以上深くは聞かない。女性の方が男よりも愛情が深い…その分失った時の悲しみもより深くなるからな」


竜騎士「…部下と違って女との接し方がわかってるんだな」


二代目魔王「まあな。亡くなった妻に嫌ってほど『あんたは無神経だ』って怒られたからな」


二代目魔王「それより私に何か用か?」


竜騎士「抗争を止めた後も反発する者達を無理矢理力で押さえつけている魔王様に一度会っておきたかったんだ……思ってた以上にお人好しそうだ」


二代目魔王「そうか?」


竜騎士「……では魔王様、私はこれからも人間と魔物の抗争が起こらないよう努力するつもりです。今日は遅くなりましたがその許可を貰いに来ました」


二代目魔王「そんな畏まらんでよい。それと許可を取る必要も無い。今まで通り頑張るがよい」


二代目魔王「しかし…一つだけ提案してもよいか?」


竜騎士「何でしょうか?」


二代目魔王「目指すモノが同じなら一人でやるより皆でやった方がよいだろ?」ニカッ


竜騎士「…フッ、そうですね」


ヴァンパイア「大賛成です!その方もぜひとも我が魔王軍に入団してもらいましょう!」


竜騎士「魔王軍?」


ヴァンパイア「人間との抗争を再び起こさせない為に、心優しき魔王様の下に集った軍隊のことです」


魔王子「表向きは、だろ?」


ヴァンパイア「そ、そうですけど…」


竜騎士「…じゃあ裏向きは何なんだ?」


ヴァンパイア「実は…」


ザッ


部下「ま、魔王様!魔国でまたサタンの手下が暴れています!」


二代目魔王「なに!?」


ヴァンパイア「被害状況は!?」


部下「民家が燃やされ、一般の民の死傷者は数十名かと…」


ヴァンパイア「くっ…!酷いことを!」


竜騎士「サタンとは一体誰だ?」


魔王子「親父の昔の同僚で、初代魔王を殺した張本人だ。今は人間や平和ボケしてる魔物を無差別に殺し回ってるみたいだぞ」


二代目魔王「あの馬鹿……今度という今度は許さん!部下もあいつも全員……コロシテヤル!」ゴゴゴゴゴゴ


ヴァンパイア「ま、魔王様!!落ち着いてください!!」アセアセ


竜騎士「な、何なんだこれは!?」


魔王子「あーまたキレてしまったか。昔は全くキレなかったんだけどなぁ~」


魔王子「…やっぱり同族を力で抑えることすら親父にとっては苦痛なんだろう。要するにストレスだな」


ヴァンパイア「冷静に解説してないで止めてください!!」


魔王子「それは魔王軍の仕事だろ?俺、魔王軍に入ってないしめんどいからパス。頑張れよ弟よ」


ヴァンパイア「この馬鹿兄貴ィィイ!!」


魔王子「そういうことで…ほれ、お前の初仕事だぞ。魔王軍の仕事はあのクソ親父を止めることだ」スタスタ


竜騎士「ええっ!?」


ヴァンパイア「くっ…魔王様!少しだけ我慢してください!ハアァァ!!」


二代目魔王「ウ?」パキパキパキ…


二代目魔王「」カチーン!


竜騎士「おおっ!氷魔法で凍らせて止めたのか!」


ヴァンパイア「……これぐらいで止まってくださると本当に嬉しいんですが…」ウルウル


竜騎士「えっ?」


二代目魔王「……ウガアア!!」バリーン!


竜騎士「余祐で出てきたぁー!?」


ヴァンパイア「くっ…二人で全力で止めるしかなさそうですね」


竜騎士「…そうするしかなさそうだな」チャキッ


ヴァンパイア「…もしやこれが初めての共同作業!?」


竜騎士「黙って集中しろ!!」


______________________________


魔王子「おーい終わったかー?」


ヴァンパイア「な、何とか…」ゼェ ゼェ


竜騎士「私はとんでもない方の部下になってしまったみたいだな…」ゼェ ゼェ


二代目魔王「す、すまない…また迷惑を掛けたみたいだな」ズーン


ヴァンパイア「い、いえ…気にしないでください魔王様。稽古をつけてもらってただけです…」


竜騎士「よくそんなこと言えるな……お前って凄いな」


ヴァンパイア「惚れ直したかい?」キラン


竜騎士「直すも何も最初から惚れてないぞ」


魔王子「親父、いい加減少しは部下を頼ったらどうだ?何でもかんでも自分だけでやってるとキレやすくなるだけじゃなく早死にするぞ」モグモグ


二代目魔王「何だ珍しく私の心配をしてくれてるのか?てかお菓子を食いながら喋るな。行儀悪いだろ」


ヴァンパイア「あっ、私達が死に物狂いで魔王様を止めてる間にまた勝手にお菓子を買って………ま、まさか魔王子様、魔国に行ったんですか?」


魔王子「うむ、お菓子を買うついでに魔国で暴れてた馬鹿共も半殺しにしてきてやったぞ」


ヴァンパイア「魔王子様…ありがとうございます」ペコ


二代目魔王「すまんな、お前にまで迷惑を掛けてしまって…」シュン


魔王子「だからお菓子を買うついでだって言っただろ。一々落ち込むな」


魔王子「ホント最近の親父は俺よりダメダメだな」


二代目魔王「……そんなにか?」


ヴァンパイア「…はい。魔王子様とはベクトルが違いますが」


二代目魔王「そうか…」


ヴァンパイア「…魔王様のお考えはとても素晴らしいことだと思います。ですが魔王子様の言うとおり、このまま心を鬼にして自ら反発する者達を鎮圧し続けるのは無理があります」


ヴァンパイア「お優しい魔王様では心が先に根をあげてしまいます。お願いです魔王様…私達をもっと頼ってください」


二代目魔王「しかし…」


ヴァンパイア「部下達に怪我などさせません。その為に我々は日頃から鍛錬をしているんですから…」


魔王子(本当は親父を止める為だろうに…)


竜騎士「…せっかく皆魔王様を慕って集まったんだ。ならそいつらを信じてやるのも魔王様の責任だ」


二代目魔王「だが…」


魔王子「」イラッ


魔王子「『しかし』とか『だが』とかうるさい!これは今多数決で決まったんだ!もう親父に決定権は無い!」


魔王子「ヴァンパイアが魔王軍の軍団長で、竜騎士がその補佐をすれば親父の負担も被害も大分抑えられるはずだろ?」


ヴァンパイア「私は魔王様の側近ですので軍団長までやるのはちょっと…」


魔王子「じゃあ竜騎士が軍団長で、ヴァンパイアはその補佐ぐらい出来るか?」


ヴァンパイア「はい。竜騎士さんもそれでいいですね?」


竜騎士「今日入団したばかりの新参者なんだが…本当に私でいいのか?」


ヴァンパイア「もちろんさ!夫婦二人で頑張ろう!」


竜騎士「やはり私一人だけでいい」


ヴァンパイア「そんなこと言わず二人ならどこまでも、何でも出来るはずさ!さあ、二人手を取り合って明るい未来へ駆け出そうではないか!!」スッ


竜騎士「………ガアァ!!」ボウゥッ!


ヴァンパイア「熱っ!?て、手が燃えてるぅぅう!?」


魔王子「ガハハハ!早く水魔法で消さんと手が焼け落ちるぞー」


二代目魔王「………」


竜騎士「…まだ心配なのか?安心しろ。私は魔王様達と違ってまともだから部下達を一人も死なせたりしない」


魔王子「まるで俺がまともじゃないみたいな言い方だな」


ヴァンパイア「ハッキリ言ってまともじゃありませんよ」


魔王子「お前もな」


二代目魔王「……わかった。私の負けだ。ヴァンパイア、竜騎士……部下達を頼んだぞ」


竜騎士「はっ!」バッ


ヴァンパイア「お任せください魔王様!」バッ


魔王子「さて、一件落着だな」


ヴァンパイア「魔王子様は魔王軍に入ってくださらないんですか?」


魔王子「これからは親父を止める機会も少なくなるだろうし俺は必要ないだろ。何よりめんどい」


魔王子「それに俺には魔王城の警備という重要な役目があるからな!」ドヤッ


二代目魔王「お前は本当にブレないな」


竜騎士「やっぱり皆まともじゃないな」クスッ


ザッ


部下「ま、魔王様…」


二代目魔王「…今度は何だ?またサタンの奴がしでかしたのか?」ピキッ


ヴァンパイア「ま、魔王様またですか!?」アセアセ


部下「い、いえ…恥ずかしながら魔王城を見学させていた私の子供達が迷子になってしまって…」


竜騎士(子供達!?)ピクッ


魔王子「何だそんなことか」


ヴァンパイア「…はぁ、脅かさないでくれ」ホッ


二代目魔王「それは一大事だな。私もすぐに探すとしよう」


竜騎士「いえ、魔王様がするほどのことではありません」


ヴァンパイア「そうですよ。ここは私達にお任せを」


竜騎士「いや、ここは私一人でいい。そうじゃなきゃ駄目だ。子供といったら私だろ?」


ヴァンパイア「ん?」


竜騎士「おい、その子供達ってのは可愛いのか?」


部下「えっ?」


竜騎士「どうなんだ?」


部下「あっ、容姿ですか。まだ幼いですので身長はだいたい私の膝丈ぐらいで、少し獣人の血が入ってて狼耳があります。息子も娘も私に似ずとても可愛いんですよ。親バカですかね」ハハハ


竜騎士「なるほど…兄妹か。ま、ショタもロリもいける私に死角はないがな」


魔王子「ん?」


竜騎士「ではすぐに二人をペロpr…見つけてまいります!」ジュルリ


二代目魔王「(ペロ?)う、うむ…よくわからないが涎を拭いてから行った方がいいぞ」

今日はここまで

おまけもあと二回で終わるかな?

ではまた


______________________________


おまけ4  





ヴァンパイア「魔王様、エルフ達が人間達と一緒に海辺沿いに新しい町を作ったそうで、その町にぜひ魔王様を招待したいと言っておりますが…」


二代目魔王「そうか……だが私が人間の前に出ると色々と問題が生じるだろう」


ヴァンパイア「ですからエルフ達も人間達に魔王様のお考えを知ってもらう為に魔王様を招待しようとしているんです」


ヴァンパイア「エルフ達の言葉だけでは魔王様が人間に敵意を持っていないことを信じてもらえませんし、もしかしたらこれをキッカケに人間と魔物の交流がもっと盛んになるかもしれませんよ?」


二代目魔王「……いや、まだ距離をつめるには早すぎる。反乱が完全に治まってからまだ100年しか経っておらんとこに私が行っても、人間達に恐怖を植え付けエルフ達との関係を悪化させるだけだ」


ヴァンパイア「それは少し考えすぎではないでしょうか?」


二代目魔王「これでよいのだ……ヴァンパイアよ、支援はするが招待は辞退させてくれと向こうに伝えてくれ」


二代目魔王「…あと私は少し休む。お前も今日はもう私の部屋に入ってこなくてよい」


ヴァンパイア「……わかりました」


______________________________


ヴァンパイア「はぁ……」


竜騎士「…まだ魔王様は引きずってるのか?」


ヴァンパイア「ええ…もうすぐあれから100年になるというのに…」


竜騎士「サタンを殺したことで反発していた魔物達も皆、魔王様の力に畏怖し反乱行動を控えるようになったというのに……」


ヴァンパイア「敵対していたとはいえサタンは魔王様にとって旧知の友。その友を自らの手で殺した…」


ヴァンパイア「それによって得た物も大きいが、魔王様の心にも決して消えない大きな傷が残ってしまったのだろう…」


竜騎士「……魔王子様は帰ってきたか?」


ヴァンパイア「…いえ」


竜騎士「そうか…魔王子様が家出してから今日で三日目。そろそろ腹を空かして帰ってくる頃だと思ったんだが…」


ヴァンパイア「あの大喧嘩からもう三日か……魔王子様はよほど今の魔王様の状態が気に食わないのだな…」


竜騎士「こんな時こそ傍に居てやるのが家族なのにな…」


ヴァンパイア「きっと本当の家族だからこそ今は一人にした方がいいと判断したのさ。『何かキッカケが無い限りあのクソ親父は元に戻らん』と仰ってましたし…」


竜騎士「キッカケか…」


ヴァンパイア「……私と君とで子供を作るのはどうだろうか?」


竜騎士「…殺されたいのか?」ギロッ


ヴァンパイア「ほ、本気で怒らないでくれ!じょ、冗談だから!」アセアセ


竜騎士「…お前には言ったはずだよな?私はもう…子供を産むことが出来ないって」


ヴァンパイア「あっ……す、すまない!私としたことが…君を深く傷つけてしまった」ズーン


竜騎士「お前もかなり無理してるみたいだな…魔王様があんな状態じゃ無理もないか」


ヴァンパイア「何とか魔王様のお力になりたいのだが……所詮は拾われた身である私ではあのお方のお力になることは出来ないんだ…」


竜騎士「……そんなことないさ。魔王様が今も完全に壊れてないのは傍でお前が支えてやってるおかげだ。お前は十分過ぎるほど魔王様の力になってるはずだ」


ヴァンパイア「……ありがとう。その言葉で私は救われたよ……どうやら私はまた君に惚れてしまったみたいだ」


竜騎士「マジ勘弁。頼むから早く別の奴とくっ付いてくれ。魔国なら良い女が結構居るぞ」


ヴァンパイア「フッ…この辺りに住む美しい女性達は全員既に告白済みなのさ」


竜騎士「……結果は?」


ヴァンパイア「…おっと、目にゴミが……」ウルウル


竜騎士(惨敗か…)


ヒュー…ン
      スタッ


ヴァンパイア「あっ、魔王子様!やっとお戻りになられたんですね!」


魔王子「う、うむ…」


ヴァンパイア「…どうかなされたんですか?」


魔王子「じ、実はな……ワシだけではどうしようもない問題が起きてしまってのぅ…」


オギャー!


竜騎士「むっ、子供の声!?しかもこれは…生後一週間ぐらいの赤ちゃんの泣き声だ!」


ヴァンパイア「ま、まさか魔王子様……」


魔王子「ははは……」



==
=====
==========
===============
====================


スタッ


サタン「久しぶりだな側近よ…いや、今は魔王か」


二代目魔王「サ、サタン!?」


サタン「遅れて悪かったな。約束通り魔王の座を貰いに来たぞ」


二代目魔王「…相変わらずだな。長らく私の前に現れなかったからもう改心したと思ったぞ」


サタン「思った以上に魔物達が腐っていてな。兵を集めるのに苦労したのさ」


ザッ


ヴァンパイア「ま、魔王様!魔王城に反乱軍が攻めてきました!」


二代目魔王「知っておる…既にそのトップが攻め込んできてるからな」


ヴァンパイア「なっ!?ま、魔王様!私も加勢します!」


二代目魔王「やめろ!邪魔になるだけだ!」


サタン「その通りだ。貴様のような小童では俺達の戦いに割り込むことすら出来ん」


サタン「それより早く下に行った方がいいぞ。俺の息子ディアブロは限度という物をしらんからな」


ヴァンパイア「くっ…!」


二代目魔王「ヴァンパイアよ…おそらく下で馬鹿息子も戦ってるはずだ。あいつが暴れだす前にお前が止めろ。じゃないと部下達もろとも城が壊れてしまう」


ヴァンパイア「……わかりました。魔王様……どうか死なないでください」


二代目魔王「…わかっておる」


タタタタタタッ


サタン「…貴様にしては優秀そうな部下を持ったな」


二代目魔王「部下ではない。私の息子だ…馬鹿じゃない方のな」


サタン「孤児か。ま、そんなことどうでもいい…早くヤルゾ」ゴゴゴゴゴゴゴ


二代目魔王「私はお前も救ってやりたいのだが……」


サタン「無駄だ。俺に何を言おうと貴様みたいには絶対にならん。魔物は魔物らしく暴れてるぐらいが丁度いいんだ」


二代目魔王「なら人間を殺す必要はないだろ!喧嘩相手なら私がしてやるというのに何故お前は人間を殺そうとするんだ!?」


サタン「特に理由など無い。目障りだから殺す。それだけだ」


サタン「本来俺達魔物はそういう種族だろ?欲しい物は力で勝ち取り、気に食わない者は力でねじ伏せる。まぁ、貴様らのような腑抜けた魔物には理解できんだろうな…」


二代目魔王「……ああ、さっぱり理解できん」


サタン「なら争うしかなかろう…さあ、楽しい殺し合いの始まりだァ!」


二代目魔王「………このワカラズヤガァ!!」


______________________________


グサッ


サタン「ぐっ!」


二代目魔王「はぁ…はぁ……お、お終いだサタン」ズボッ


ドサッ


サタン「…フッ、およそ50年…全てを貴様を殺す為に費やしてきたんだが…やはり本気になった貴様には敵わんか」


サタン「さすがだ…貴様は昔からいつも俺の一歩先を行く…」


二代目魔王「私だってこの平和を維持する為にずっと力をつけてきた。お前だけが成長してると思うな」


サタン「平和を維持、か。無駄なことを……」


サタン「我々は争いを好む種族。いくら力で押さえつけても完全に押さえつけることなど出来ん。いつか必ず爆発するぞ……ぐっ!」ゴフッ


二代目魔王「………」


サタン「はぁ…はぁ……そ、その爆発を止めることが貴様に出来るのか……あの世で見ていてやるよ」


二代目魔王「……サタン、すまない」


サタン「フン……最後まで…気に食わん奴…だ……」


二代目魔王「私は……サタンを…友をこの手で…」


====================
===============
==========
=====
==



二代目魔王「ぐ……っ!」ガバッ


二代目魔王「はぁ…はぁ……ま、またあの夢か」


二代目魔王(…手加減すれば私が殺されていた。だから本気になるしかなかった……その結果がこれだ。私はこの手で友を……殺した)


二代目魔王(いつかはこうなるとわかっていた。魔王になった時から決心していた。しかし……友の死がこれほどとは…)


二代目魔王(…初代魔王様が抗争を止めなかったのもこれが理由だったのか。既に人間の友を殺した初代魔王様にとって、残された仲間達を殺してまで抗争を止めるという選択肢は最初から無かったんだ…)


二代目魔王(魔王様…友を殺してまで手に入れたこの平和もいつか壊れてしまうかもしれないのに……私はこの先この手で何を掴んでいけばいいのですか?)


二代目魔王(うっ!)ズキッ


二代目魔王(……いや、もう私には何かを掴む時間すら残されていない)


赤ちゃん「zzZ」スヤスヤ


二代目魔王「ん?…な、何故こんなところに人間の赤ん坊が!?」


魔王子「やっと気がついたか。随分とうなされておったな」


二代目魔王「む、息子よ!この子供はどうしたんだ!?」


魔王子「拾った」


二代目魔王「」


魔王子「いやー家出したはいいがワシ一人じゃ何も出来んことに気がついてな。二日間ふて寝した後、帰ろうと思った時にその子供が川で流されておって拾ったんじゃ」


二代目魔王「犬や猫を拾ってくる感覚で人間の子供を拾ってくるでない!」


魔王子「しょ、しょうがなかろう!最初桃が流れてきたと思って間違ってかぶりついてしまったんじゃから!」


二代目魔王「かぶりついたのか!?だ、大丈夫か?お前怪我はないか?」アセアセ


魔王子「回復魔法で治したから心配ないぞー」


二代目魔王「…お前って奴はどうしてそんなに馬鹿なんだ!!」


魔王子「なっ!?馬鹿とはなんじゃ!捨て子を拾って何が悪い!!」


二代目魔王「悪すぎるわ!まず捨て子じゃないかもしれんだろ!近くの村で誤って川に落ちてしまったとか…」


魔王子「もちろん近くにあった村に寄ってこの子供のことを聞こうとしたが……誰もワシに近づこうとせんかった」


二代目魔王「当たり前だ。お前みたいな老け顔の魔物がいきなり現れたら誰だってビビって逃げるわ」


魔王子「今タブーを言いおったな!!この10年で一気に老けたんじゃからしょうがないだろ!!」


二代目魔王「まぁ私も通った道だから辛さもわかるが…その喋り方は何だ?」


魔王子「せっかくだし見た目に合うように練習したんじゃ。威厳のある喋り方じゃろ?」キリッ


二代目魔王「なら威厳のある行動をしろ」


魔王子「親父に言われたくないわ!友を殺したぐらいでいつまでもイジイジしやがって!」


二代目魔王「なっ!?お、お前に何がわかる!?」


魔王子「何もわからん!」


二代目魔王「だろうな!!」


魔王子「いいからシャキッとしろ!ワシのお小遣いが減るだろ!」


二代目魔王「ワシよりもお小遣いが心配なのか!?」


魔王子「当たり前じゃ!親父の心配なんてするだけ無駄じゃ!親父はワシよりしっかりしてるってわかっとるからな!」


二代目魔王「お前…」


魔王子「いつまでもウジウジしてないで働け!このクソ親父!」バキッ


二代目魔王「痛っ!?な、何故このタイミング!?」ドザァァ


魔王子「ムカついたからじゃ!さあ立て!もっと殴ってやる!」


二代目魔王「ニートのクセに言いたいこと言いやがって……いい加減しないと私もキレるぞ?」ゴゴゴゴゴゴ


魔王子「上等だ…三日前みたいにまた負かしてやるわい!」ゴゴゴゴゴゴ


赤ちゃん「おぎゃー!おぎゃー!」


魔王子「あっ、忘れておった!と、とりあえず親父、こいつを泣き止ませてくれ!」アセアセ


二代目魔王「そ、そうだな!」アセアセ


赤ちゃん「zzZ」スヤスヤ


二代目魔王「ふぅ…何とか泣き止んだか」


魔王子「さすがに子供の扱いは慣れとるのぅ」


二代目魔王「ホントどうしようもない子供を男手一つで育てた経験があるからな」


二代目魔王「それより早くこの子を村に返さないと大問題になるかもしれん。魔物が子供を攫ったのだからな」


魔王子「それなら多分大丈夫じゃ。村に寄った時にワシから逃げる村人達が『魔王が悪魔の子を連れているぞ!?』って言っとったからな。ワシ、魔王じゃないのに」


二代目魔王「悪魔の子?」


魔王子「うむ。どうやらそいつは魔物と人間のハーフらしいんじゃ。まだ魔力に目覚めてないからわからないがのぅ」


二代目魔王「な、何だと!?この子が…」


魔王子「もしそうだとしたら珍しいよな…」


二代目魔王「人間との抗争のせいで、中立の立場であった人間と魔物のハーフは全て抹殺されたからな…」


魔王子「どうする?そいつは人間達によって捨てられた…ワシらもそいつを捨てるのか?」


二代目魔王「……そんなこと出来るわけないだろ」


魔王子「じゃあそいつの面倒頼んだぞ」


二代目魔王「待て!お前が拾ってきたんだろ?お前が育てろ」


魔王子「えーダルいー」


二代目魔王「この魔物のクズが!!」


魔王子「もちろんワシだってさすがにそうするべきだと思ったが…ワシに子育てが出来ると思うか?」


二代目魔王「……無理だな」


魔王子「だろ?」


二代目魔王「はぁ…しょうがない。私がメインで育てる」


魔王子「メイン?」


二代目魔王「お前も手伝うに決まってるだろ。もちろんヴァンパイア達にも手伝ってもらう」


二代目魔王「この子は私達みんなで育てる…立派な大人になるようにな」


ヴァンパイア「…でしたらその子の為にも立ち直ってください、魔王様」


二代目魔王「ヴァンパイア…」


ヴァンパイア「勝手に部屋に入ってしまって申し訳ありません。ですが私の言ってることは正しいと思います」


ヴァンパイア「人間と魔物のハーフであるその子が平穏に暮らせる世界…それは私達が目指している夢そのものではありませんか?」


二代目魔王「………お前の言うとおりだな」


二代目魔王(あと十数年といったところだな、私の体が持つのは……その間にやれることはやっておかないと…)


二代目魔王「…ヴァンパイアよ、さっきの件。承諾しよう」


ヴァンパイア「魔王様…」


二代目魔王「この子の為にも早く人間と本当の意味で共存を出来る関係にならなくてはならないからな」


ヴァンパイア「元に戻られてとても嬉しいのですが…少し状況が変わってしまったようです」


二代目魔王「何かあったのか?」


ヴァンパイア「はい…先ほどサキュバス達から町近辺の海にクラーケンが棲みついたと情報が入りまして…」


二代目魔王「……そのクラーケンが暴れていると?」


ヴァンパイア「はい…」


二代目魔王「…イカ風情ガ調子に乗リヤガッテッ!」ピキッ


ヴァンパイア「ま、魔王様!!」アセアセ


魔王子「おい!赤ん坊が起きてしまうじゃろ!」


二代目魔王「そ、それはいかん!」フッ


赤ちゃん「zzZ」スヤスヤ


二代目魔王(……また道を間違えるとこだった。力で押さえつけてはこの子の未来を守ることが出来ん)


二代目魔王「…やはりエルフ達の招待は辞退するしかなさそうだ。だがせめてクラーケンを他の海へ移動してもらうよう説得してくるとしよう」


ヴァンパイア「では、私もお供します」


二代目魔王「いや、一人で大丈夫だ。お前はこの子の面倒を頼む。馬鹿息子一人だけではこの子がかわいそうだからな」


ヴァンパイア「わかりました。では魔王様、あまり無茶をなさらないように…」


二代目魔王「わかっておる……あっ!最後にもう一つ、この子は私達全員で育てるつもりだが、竜騎士が面倒を見る時は必ずもう一人付けるようにしてくれ」


二代目魔王「でないとこの子の貞操が危ぶまれる」


魔王子・ヴァンパイア「そうじゃな(そうですね)」


バンッ!


竜騎士「それは横暴過ぎませんか魔王様!?お願いします!私にもその可愛い赤ちゃんをペロペロさせてください!本番はちゃんと大きくなるまで我慢しますから!!」


二代目魔王「それが駄目だと言っているんだ。大きくなっても我慢しろ」

今日はここまで


ではまた


十数年後



二代目魔王「――というわけだ。魔物と魔族の違いはこの辺りにするか」


少年「はい」


二代目魔王「では次はスライム語を教えて……ん?」チラッ


魔王子「zzZ」ガー ガー


二代目魔王「……この馬鹿息子はいつから寝てた?」


少年「…始まって5分ほどです」


二代目魔王「」プツンッ


二代目魔王「お前はもっと真剣に授業を聞かんか!!」バッ


魔王子「うおっ!?」ヒューーーーン!


少年「……今のは移動系魔法を応用して飛ばしたんですか?」


二代目魔王「ああそうだ。頭を冷やすように近くの雪山に飛ばしてやったわ」


少年「…魔王様、その魔法もぜひ私に教えてください」ペコ


二代目魔王「もちろんいいぞ。お前は勉強熱心だけでなく、魔法の才も素晴らしいからな」


少年「それは魔王様やヴァンパイア様の教えが良いからですよ」


二代目魔王「そんなことはない。お前の努力と才のおかげだ」


二代目魔王「しかしこの間教えた拘束魔法もそうだが、お前に教えた魔法のほとんどは危険な魔法ということをしっかりと頭に入れておくんだぞ」


少年「はい、無闇矢鱈に使って誰かを傷つけたりしませんので安心してください」


二代目魔王(どうやら今度はまともに育ったみたいだな…少し出来すぎなぐらいだ)


少年「では拘束魔法の復習からしましょう。魔王子様を拘束するにはまだまだ鍛錬が必要ですし…」


二代目魔王「…ん?」


少年「魔王様、外に移動しましょう」テクテク


二代目魔王「あ、ああそうだな…(今なんか変なこと言わなかったか?)」


ズキッ!


二代目魔王「ッ!?」ヨロッ


少年「だ、大丈夫ですか!?」


二代目魔王「あ、ああ!どうやら昨日の酒がまだ少し残ってるらしい!」ガハハハハ


少年「…では今日の魔法の鍛錬はやめにしましょう」


二代目魔王「こ、これぐらい大丈夫だ!ほら早く行くぞ!今日はさっきの移動系魔法の応用と石化魔法も教えてやるぞ!」ニカッ


少年「………」



______________________________



ヴァンパイア「えっ?魔王様の様子かい?」


少年「はい…最近体調を崩しているとかありませんでしたか?」


ヴァンパイア「う~ん…君が拾われてからは逆に体調が良いように見えていたんだが…」


少年「そう…ですか」


ヴァンパイア「昨日はかなりお酒を飲まれてましたからきっとそれで体調が悪いように見えたんだよ」


少年(私の勘違いならそれで良いのだけれど…)


ヴァンパイア「それよりさっきの魔法の鍛錬見ていたよ。凄いじゃないか、拘束魔法まで使えるようになるなんて」


少年「まだまだ未熟ですよ」


ヴァンパイア「それでも私は君が羨ましい……拘束魔法などの魔王様の得意な魔法は私には扱えなかったからね」


少年「…覚えた魔法の種類なんて関係ありませんよ。魔王様から教わった…その事実が重要なんだと思います」


ヴァンパイア「…そうだね」


少年「ではそろそろ魔王子様が帰って来る頃なのでこの辺で失礼します」ペコ


ヴァンパイア「君は本当にしっかりしてるなぁ……そうだ!今少し暇だから君におやつを作ってあげよう」


少年「おやつですか?」ピタッ


ヴァンパイア「先日調査も兼ねてエルフ達の町に寄った時に人間達が作った『シュークリーム』という珍しいおやつがあってね。魔王様と私のカ・ノ・ジョに食べさせてあげたくてレシピを聞いてきたんだ」


ヴァンパイア「えっ?彼女がどんな魔物かって?しょうがないなぁ~彼女の魅力をたっぷりと教えてあげよう!」


少年「(余程彼女が出来て嬉しいんですね)時間も無いのでそれはまた今度じっくり聞かせてください」


少年「それよりしゅーくりーむ……ど、どのようなおやつなんですか?」ワクワク


ヴァンパイア「フフフ、それは見てからのお楽しみさ。楽しみに待っててくれ」


少年「は、はい!」


______________________________


少年(しゅーくりーむ…一体どんなおやつなんでしょうか?)テクテク


竜騎士「………」ソー…


竜騎士「少年ちゅあ~~ん!」ダキッ


少年「……またですか竜騎士さん」ハァ


竜騎士「今日も相も変わらずきゃわわわわ❤」スリスリ


少年(本当は嫌なんですが……これで竜騎士さんの心の傷が少しでも癒されるのなら我慢してあげますか)


竜騎士(嫌がりながらもいつもこうやって頬を擦りつけるのを許してくれている……つまり!少年たんもこういうことが大好きなんだ!)


竜騎士(なら…少年たんの期待に応えなくては!)ジュルリ


少年「ん?」


竜騎士(少年たん美味しい~~❤)ペロペロペロペロペロ


少年「ちょっ!?頬を舐めないでくださいよ!」


竜騎士(やばっ…滾ってきちゃった。これはもう…最後までするしかない!!まずは少年たんの可愛いおティンティンを拝見しないと…)スッ


少年「こ、これ以上は駄目です!」ピッ!


竜騎士「ぐっ!?」ピタッ


竜騎士「こ、これは…魔王様の拘束魔法!?ここまで使えるようになってるとは…さすが少年たんだね!」


少年「…まったく反省してませんね」バチッ…


竜騎士「えっ?」


少年「少しだけお仕置きです」バチバチバチ!


竜騎士「ぎゃあああああ!」バリバリバリバリ!


竜騎士(い…今のは雷魔法!?弱かったとはいえどうして少年ちゃんが雷魔法を…?)プスプス…


少年「う~ん…威力を上げるのでは無く、気絶しない程度の雷を永続的に帯電させるのは難しいですね。すぐに気絶してはお仕置きになりませんし…」


竜騎士「しょ、少年…ちゃん?」ゾクッ


ヒューー…ン


少年「…あっ、魔王子様が帰ってきてしまいました。魔王様の所にケンカしに行く前に止めないと…」


少年「では竜騎士さん、失礼します。これからは少しでいいのでこういう行為は…控えてくださいね」ニコ


竜騎士「は、はい!」ビクッ


タタタタタタタッ


竜騎士(…今はまだ拘束魔法も雷魔法も弱いけど、大きくなってさっきと同じことをされたら……考えただけ恐ろしい)ゾクッ


竜騎士「………これからは少年ちゃんをペロペロするのは控えるか」シュン


______________________________


少年(少し遅れてしまった…これはマズイかもしれませんね)タタタタタタタッ


ズドオォォォオオオン!


少年「…はぁ、やっぱり間に合いませんでしたか」





魔王子「このクソ親父!!気持ち良く寝とったのにいきなり雪山に飛ばしおって!!」バキッ


二代目魔王「ぐっ!そ、そもそも寝てるのが悪いんだろ!この馬鹿息子がァ!!」ピッ!


魔王子「ぐぬっ!?」ピタッ


二代目魔王「今度は火山のマグマに飛ばしてやる!!」バッ


魔王子「この程度の拘束魔法でワシが止まるわけなかろう!」バキンッ!


魔王子「逆にワシがクソ親父を火炎魔法で吹き飛ばしてやるわ!」ボウゥッ!


ザッ


少年「魔王様も魔王子様も止めてください!」バッ


魔王子「ば、馬鹿もん!」ダッ


二代目魔王「なっ!?危ない!!」ダッ


ズキッ


二代目魔王(ぐっ!こ、こんな時に!)ヨロッ


ズドオオォォォン!


二代目魔王「しょ、少年!!」


魔王子「熱ちちち…少し本気で放ち過ぎたのぅ」プスプス…


二代目魔王「な、何とか助かったみたいだな」ホッ


少年「魔王子様、大丈夫ですか?」


魔王子「馬鹿もん!急に出てきおって!もしワシが助けなかったらお前を殺してたとこなんだぞ!?」


少年「はい。ですが魔王子様なら必ず助けてくださると思ったからお二人の間に出たんです」


少年「もしの話などするだけ無駄です。全てわかっていたことですから」


魔王子「だがワシは現にこうして傷を負っとるじゃろ。これもわかってたのか?」


少年「はい。少しだけお灸を据えた方がよろしいかと思いまして」


魔王子「お前までそういうことするのか!?」


魔王子「もう良い!皆でワシをイジメるのなら家出してやる!」


バタンッ


二代目魔王「……どのくらいで帰ってくると思う?」


少年「そうですね…もうすぐお昼なので30分ぐらいかと」


二代目魔王「家出とは言えんな」クスッ


少年「それにしても…また派手に壊しましたね。すぐにヴァンパイア様に伝えておきます」


二代目魔王「言わんで良い。これぐらいなら自分で直せる。私は日曜大工も得意だし」


少年「……ですが魔王様のお体は弱っているので負担が掛かってしまいますし…」


二代目魔王「さすがに日曜大工が負担になるほど弱ってはない」


少年「…やはり弱ってはいるんですね」


二代目魔王「ッ!?……まさかお前に気づかれるとは…このことは他言無用にしてくれ」


少年「はい。それで魔王様…お体はどのぐらい悪いのですか?」


二代目魔王「…あと1年持つかどうかといったところだ」


少年「ッ!?そ、そんなにですか…」


二代目魔王「皆を力で押さえつけていた代償がこれだ…」


二代目魔王「……今現在世界は私という絶対的抑止力によって偽りの平和を維持している。だが…私はもうすぐ死ぬ」


二代目魔王「そうすればまた抗争が起きてしまう…いや、あの時代を知らない人間達では魔物側による一方的な殺戮となってしまうだろう」


二代目魔王「そうならない為にも色々と死力を尽くしたつもりなのだが………私は反乱軍のトップであった友を殺した」


二代目魔王「だからいくら力ではなく言葉で説得しても、反発する者は殺す…そう思われて力で黙らせているのと同じ状態になってしまっている」


二代目魔王「結局私は友の言うとおり…爆発を止めることが出来なかった」


少年「………」


二代目魔王「本当にすまない…お前達の未来を守ることが出来なくて…」


少年「…心配要りません。自分達の未来は自分達で守ります」


少年「それにきっと魔王子様が魔王様の意思を受け継いでくださると思います」


二代目魔王「そう見えんから悩んでるんだがなぁ…あの馬鹿息子が魔王になったらこの世界はどうなるかまったく想像出来ん」


少年「きっと最初はグダグダになりますね。ですが……必ずや今以上に平和な世界へと導いてくださると思います」


二代目魔王「あの馬鹿息子がか?」


少年「はい。今の魔王子様では無理ですけど、これからたっぷりと教育をすればきっと」


二代目魔王「教育と言っても私には時間が残されておらんし…」


少年「私が魔王子様を教育しますのでご安心を」


二代目魔王「……ワッハッハッハ!そうか!それなら安心だな!」


二代目魔王「少年よ……馬鹿息子を頼んだぞ」


少年「はっ!」


二代目魔王「それともう一人の息子のことも頼む。あいつは私が死んだらきっと悲しみに明け暮れてしまうだろう……なんせ二回も親を失うことになるんだから」


少年「…わかりました。ではこの部屋を修理する工具を持ってまいりますので一旦失礼します」


ガチャ…
      バタンッ


少年「……ヴァンパイア様、大丈夫ですか?」


ヴァンパイア「ああ……気を利かせて工具を持ってくるべきではなかった」ゴシゴシ


ヴァンパイア「でももう大丈夫さ…涙と一緒に今聞いたことも捨てたとこだからね」


ヴァンパイア「工具は持ってきてるが少し時間を置いた方がいい……少し歩こうか」


スタスタ


少年「…ヴァンパイア様は強いですね」


ヴァンパイア「強くない…ただのやせ我慢さ。魔王様が私を想ってくださって隠すのなら…私はこのやせ我慢を貫き通す」


少年「やっぱり強いです…私はもう…我慢の限界です」


ヴァンパイア「…泣いていいさ。どんなに大人びていても君はまだ子供なのだから…」


魔王子「おっ、二人ともこんなところで何をしとるんじゃ?」モグモグ


ヴァンパイア「魔王子様、もうお帰りになられ………な、何を食べているんですか?」


魔王子「キッチンにあった珍しいおやつじゃ。これは美味じゃな!何ていうおやつじゃ?」


ヴァンパイア「それはシュークリームというおやつで……少年くんの為に作ったものです」


魔王子「えっ?」


少年「………」ジワ…


魔王子「えっ!?」


魔王子「す、すまん!泣くほど食べたかったのか!」アセアセ


少年「そ…それも……ひっく…ありますが…」ポロポロ


魔王子「こ、今度ワシのお小遣いで同じものを買ってやるから泣くでない!」


ヴァンパイア「……我慢しないで声を出して泣いていいんだよ。今なら全部魔王子様のせいなるから…」ナデナデ


魔王子「な、何を言ってるんじゃお前は!?」


少年「ぅ…うわあああああああああん!」ポロポロ


魔王子「あーもう!泣いてしまったではないか!」


ザッ


竜騎士「少年たん!泣きたいのなら私の胸で泣くんだ!私がその涙を舐め取ってあげるから!」


魔王子「お前は出てくるな!ややこしくなるじゃろ!」


______________________________


一年後


少年「魔王様は誰よりも強く、誰よりも優しいお方でした…」


ヴァンパイア「ああ、だからこそ心に大きな負担が掛かってしまったのだろう…」


少年「…本当に行ってしまわれるのですか?ヴァンパイア様」


ヴァンパイア「……ああ」


竜騎士「別に出て行く必要は無いだろ」


ヴァンパイア「魔王様が亡くなってしまわれたから、すぐに今まで不満を持っていた魔物達が暴れるはずだ。私は魔王軍とは別でその者達の鎮圧にあたるよ」


ヴァンパイア「それに……今は一人になりたいんだ。こんな見っとも無い姿の私を君達に見せたくないんだ」


竜騎士「そうか…私はしばらく魔王城に留まる。サタンの息子が反乱軍の時みたいに攻め込んでくるかもしれないしな」


竜騎士「だから新しい魔王様のことは私と少年ちゃんに任せてくれ」


ヴァンパイア「すまない…一応魔王子様には心配を掛けないよう失恋のショックと嘘を言っておいたが…」


竜騎士「つい先日彼女とも別れたからそれも嘘ではないんだろ?」


ヴァンパイア「まあね…」


竜騎士「おいおい。そこは『また別の女性を愛せるからショックじゃないさ!』みたいなこと言うとこだろ」


ヴァンパイア「…当分恋はしないつもりさ」


竜騎士(相当ダメージがデカイな……なぁ少年ちゃん、やっぱりこいつを行かせるのは止めにしないか?)ヒソヒソ


少年(……いえ、きっと大丈夫です。だってヴァンパイア様は血は繋がってませんが、魔王様の本当のご子息なんですから…)ヒソヒソ


ヴァンパイア「じゃあそろそろ行くよ……竜騎士さん、少年くん、魔王子様を…兄を頼みます」ペコ


竜騎士「ああ、任せろ」


少年「必ずや私が魔王子様を立派な魔王に育ててみせます」


ヴァンパイア「フッ、なら安心だ。じゃあコウモリ達よ、行こう」


バサバサバサバサ……


竜騎士「…行ったな」


少年「はい…」


竜騎士「……私も魔王子様が落ち着いたら魔王軍を抜けた馬鹿な部下達を懲らしめに行くつもりだ。あの方が全快なら護衛する意味が無いし」


竜騎士「つまり少年ちゃん一人で魔王子様の世話をすることになる……出来るか?」


少年(以下側近)「はい…私は魔王子様の側近ですので」


側近「竜騎士さんもこれからは少年ではなく側近と呼んでくださいね」


竜騎士「わかりました側近様」


側近「敬語はやめてくださいよ。そこは今まで通りでいいですって」


竜騎士「じゃあそうさせてもらうかな」


竜騎士(少し不謹慎だが……確実に少年たんと二人きりになる機会が増えた!)


竜騎士(私も魔王様が亡くなられてショックだし…少年たんにいっぱい慰めてもらわなくっちゃ!)


側近「では竜騎士さん。まずは魔王様が亡くなられてすぐに魔王軍を抜けた方々をリストアップしてください」


竜騎士「ああ、了解だ」


側近「あっ、もしその方達を見つけたとしても殺さないでくださいね」


竜騎士「…魔王様の意思ではないんだが、私は時には殺すことも必要だと思うぞ」


竜騎士「ましてやあいつらは魔王様の下についていたというのにこんなことをして……私は絶対に許せない!」ギリッ


側近「もちろん私もあの方達には頭にきています。殺すのも時と場合だと思ってますし…」


側近「ですが…無駄な殺生はしたくないんです。それでは魔王様が悲しまれます」


竜騎士「……そうだな。私が間違って―「なので調教するつもりです」


竜騎士「…へっ?」


側近「今まで魔物と人間のハーフである私をしつこくイジメてきた方々には軽めの調教しか出来てませんでしたが、これからは遠慮なく調教出来ます」


竜騎士(えっ!?既に調教してたの!?そういえば私の部下の中に少年たんに敬語を使ってたヤツが居たっけ…)


側近「それでも改心しない方は…残念ですが石にするしかありませんね」


側近「では竜騎士さん、リストアップの方をお願いしますね」ニコ


竜騎士「は…はい!かしこまりました側近様!」ビクッ


側近「敬語はやめてくださいって言ったじゃないですか」クスッ


側近「じゃあ私は落ち込んでらっしゃる魔王子様の様子を見てきます」スタスタ


竜騎士(…ペロペロはもう控えるんじゃなくて完全にやめよ)シュン


側近(魔王様……再び世界は荒れ始めました。そして皆気づくはずです。魔王様が如何に偉大なお方だったのかと…)


側近(そしてその意志を受け継いだ魔王様が必ずや再び世界を平和にしてくださいます。その時こそ魔王様が望んだ本当の平和が訪れるはずです)


側近(だから…)


側近「魔王様…いつもみたいに優しい笑顔で私達を見守っててください」


______________________________


そして五十年後…


魔王(元魔王子)「おーい側近よー」


側近「何でしょうか魔王様」


魔王「おっ、ここに居たか……何故出掛ける準備をしとるんだ?ピクニックにでも行くのか?」


側近「昨日話したじゃありませんか。私の故郷の村に行ってまいりますって」


魔王「あーそうじゃったな。で、いつ頃戻るんだ?」


側近「今日の夜には戻る予定です。掃除や食事などの雑務は他の者に頼んでおきましたのでご安心ください」


側近「では魔王様、行ってまいります」



Fin

これで本当に終わりです

ダラダラと長くなってすみませんでした
そしてこんな駄文を読んでくださりありがとうございました

ではまたどこかで

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom