冒剣士「…冒険酒場で働くことになった」(446)

 
【少年剣士シリーズ】
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上記作品のシリーズものですが、シリーズを読んでない方でも楽しめる作品(新シリーズ)でスタートします。

 
冒険者というのは名ばかり。

実際は"冒険学校"を卒業しても、軍へと配属され、処理をさせられるだけ。

でも、そんな中で…英雄と呼ばれた男は、本当の"冒険"をしたという。


それが嘘か本当かは知らない。

小さい頃に、本の片隅に小さく乗っていた…わずかな記憶だけを頼っただけ。

 
現実を見ている僕は、有数国家である…中央国の有名な冒険学校への推薦を断った。

 
最近、冒険酒場と呼ばれる…宿も完備した初心者向けのクエストを配属してもらえる集会所があるらしい。


だから…僕は"冒険酒場"へと足を運んだ。

ここが僕の…スタートラインだと思うから…!

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

……ガチャッ…ガランガラン!!!


店員「はい!…いらっしゃいませ」

冒剣士「…こんにちわ。ここが…冒険酒場ですか?」


店員「そうですよ。お客様…お若いですね、そのお歳で冒険者に?」


冒剣士「…えぇ。自分で言うのもなんですが、まだまだ子供だと思います」

店員「いえいえ、あなたのような冒険者の方も沢山おります。まずは、お掛けになってください」

冒剣士「はい…」


…スッ……ガタンッ

 
店員「…それで、お泊りですか?」

冒剣士「いえ…あの…、ここに来れば宿やクエストの面倒を見て頂けるって聞いたんですが…」

店員「あー…やっぱりそういう口ですか」

冒剣士「そういう…口?」


店員「専属冒険者、って知ってます?」


冒剣士「いえ…」

店員「やっぱりか…、"冒険酒場"が近年、世界各地に増えてきたのは知ってますよね?」

冒剣士「はい」


店員「冒険酒場の役割は、本来…軍で処理されるクエストまたは、国から出るクエストの中継です」

冒剣士「はい」

店員「で、その制度のせいで…軍が最近、人不足なんです。それを危惧した世界が、自由なクエスト受諾は禁止にしたんです」

 
冒剣士「なっ…」

店員「そこで登場したのが、専属冒険者、またその許可証っていうわけです。その酒場に対し、一定人数までしか冒険者を登録を出来ないようになりました」


冒剣士「ち、ちょっと待ってください。それだと…ていの良い、小さな軍みたいなもんじゃないですか!」


店員「はは…そう言われるとそうなんです」

冒剣士「そ、それじゃクエストは…?」

店員「うちは見ての通り、小さな酒場ですので。宿は同時経営してないし、登録人数も3人。それもイッパイです…申し訳ない」


冒剣士「わかりました…」ハァ


店員「あ、ここより東に行った所に、大型の冒険酒場があるので行ってみたらいかがでしょう?」


冒剣士「………どうも!」


…ガチャッ!!!!
……ガランガラン!!!


店員「うひゃっ…乱暴な人だ。全く、きちんと国も説明しないから…ああいう若者が増えるんだ…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


…トコトコ…トコトコトコ…

 
冒剣士(一体どうしたらいいんだろう。どうせ大型の所いっても…無理だろうし…)ハァ


…トボトボ……


冒剣士(実家には大口叩いて出てきたし…帰れる訳ないもんなぁ…どうしよ本当…)


…ゴツッ…!!


冒剣士「うわっ!」ベチャッ!!!


…ベトベト……


冒剣士「転んで…昨日の降った水溜りに突っ込むし!最悪だぁぁぁぁぁっ!!!!」

 
…ザワザワ……
ナニ?アノコ……、シッ!ミチャイケマセン!!…


冒剣士「…」ハァ


???「大丈夫?」


冒剣士「…え?」

???「君だよ君。どうしたの…大丈夫?」

冒剣士「あ…」



…フワッ……

冒剣士「わっ…綺麗な人…」

???「えっ?」

 
冒剣士「あ、いえ!なんでもないです…あはは…」

???「ふふ、ありがとう。私の家、近くなんだ。夫も丁度…家にいるだろうし、その濡れた服、乾かそう?」

冒剣士「あ…、は、はい…」


…トコトコ……


冒剣士「あ…、あなたの名前は?」


吟遊詩人「私は吟遊詩人。こう見えても冒険者の1人なの…よろしくね」ニコッ

 
…ガチャッ

吟遊詩人「ただいまーっ聖剣士!」

聖剣士「お帰り…って、その子は?ドロドロじゃないか…」


吟遊詩人「そこの水たまりで転んじゃって…、家も近くだったし連れてきたの」

聖剣士「そっかそっか、いらっしゃい…えーと…」


冒剣士「あ、冒剣士といいます」


聖剣士「そっかそっか、ゆっくりしていくといいよ」ヨイショ

冒剣士「…ありがとうございます」


…キョロキョロ


冒剣士(居間に飾ってある防具、剣…、どれも本で見たことある高級品だ。もしかしたら凄い冒険者なのかな…?)

 
…タッタッタッタッタ……


吟遊詩人「はい、タオル。服は上だけ脱いで置いといて。乾かしておくから…ね?」

冒剣士「あ…何からなにまで…」

吟遊詩人「困った時はお互い様だから。気にしない気にしない」

冒剣士「…はいっ」


…ヌギヌギ……パサッ


冒剣士「…」



…トコトコ…

聖剣士「よし…よいしょっと、そこに座って冒剣士クン。これ、僕が作った新作のスープ。飲んで休んでよ」

冒剣士「…新作?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


…ゴクッ……ゴクゴクッ…

冒剣士「…わっ!美味しい!」

聖剣士「そうでしょー?魚介をふんだんに使って、西の港の鰹を贅沢に使った特製スープ!」

冒剣士「…体が温まります……本当に美味しい…」ホウッ


聖剣士「はは、そこまで喜んで貰えると嬉しいな。コストダウンさえ出来れば新作メニューにも出来るんだけど…うーん」


冒剣士「新作…メニュー?」

聖剣士「うん、僕は冒険酒場の料理を作ってるんだ。軍にも所属してるから、いつも…という訳にはいかないけどね」アハハ

冒剣士「冒険酒場…」


聖剣士「あれ?冒険酒場知らない?」

 
冒剣士「いえ…知ってますが…」ハァ

聖剣士「…どうした?」


冒剣士「いえ…、冒険酒場に夢を見て中央国に足を運んだのですが、どこもかしこも専属入りを断られてしまって…」

聖剣士「君…今いくつ?」

冒剣士「13歳です」

聖剣士「冒険学校のほうには入学しなかったの?」


冒剣士「いや何ていうか、結局は軍に入れられて、色々な処理ばかりさせられて、冒険という冒険が出来ないのが現実と聞いて…」


聖剣士「…」

冒剣士「だから、本当は特待学校に誘われていたのですが、それを蹴ってココへ訪れたのですが…」

 
聖剣士「うーん…、それは理屈であって、現実じゃない」

冒剣士「え?」

聖剣士「君は軍へ入った事があるのか?冒険学校を体験したのか?冒険というものは、何を意味するか分かっているのか?」


冒剣士「…い、いえ」

聖剣士「そうだろう。何もかも、食わず嫌いように体験もせず…愚痴を言い、夢ばかり見て足元をすくわれたんだ」

冒剣士「…」


聖剣士「だけどさ…、君は…もしかした強運を持っているかもしれないね…」

冒剣士「…えっ?」

 
タッタッタ…パサッ


吟遊詩人「はいっ、乾かしておいたからね♪」

冒剣士「あ、ありがとうございます」


聖剣士「あ、吟遊詩人。うちの冒険酒場って、何人か穴あったっけ?」

吟遊詩人「えー…どうだったかな。先週、1人が遠征部隊に参加するからって抜けたかも…」

聖剣士「なるほど…。じゃ、兄さんに頼んで、この子を専属にしてもらおうかな」


吟遊詩人「?」


冒剣士「……へっ?」

 
That's where the story begins!
――――――――――――――――――
【冒剣士「…冒険酒場で働くことになった」】
――――――――――――――――――

一旦終了です。
諸事情で本来書けなかったのですが、時間を得たので再び再指導致しました。
前ほどの更新速度はないかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。

これは番外編ではなくて第3シリーズ?
今後が楽しみです。

聖剣士の新作スープのんでみたいw

皆さんありがとうございます。
>>22 一応第3シリーズにあたります(A´ω`)

  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
……コンコン

???「はーいどうぞー」


……ガチャッ

聖剣士「あ、兄さん…、いたいた。よかった」

オーナー「…ん?聖剣士じゃないか…今日は休みだろ?どうした?」

聖剣士「いやー…実はこの子なんだけど…」


冒剣士「…ど、どうもです」


オーナー「お?誰だ?」

聖剣士「…ほら、先週さ、遠征部隊に参加するから1人抜けたっていったでしょ?その後釜の推薦」

オーナー「あー…そうだね。って、推薦…?聖剣士、その子の知り合いなのか?」


聖剣士「知り合いっていうか、知り合った」

オーナー「…?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


聖剣士「…というわけ」

オーナー「なるほどね、そりゃ災難だったね冒剣士クン。俺はこの酒場のオーナー。そのまんまオーナーって呼んでくれればいいよ」


冒剣士「あ…は、はい」


聖剣士「何とかならないかな?」

オーナー「うーん…、何とかならないこともないけど…」

聖剣士「何か?」

オーナー「うちは宿も経営してるし、武器や防具、料理酒場、クエストも何でも請け負ってるけど…小規模でしょ?」

聖剣士「あー…まあ」


オーナー「人数によっていっぱいいっぱいで、手が空かなくなることも多かったから、専属人数1人減らそうかなって思ってたんだよ」

 
冒剣士(やっぱり…だめか)


聖剣士「じゃあ、クエストがない時は経営の手伝いしてもらえば?住み込みでもそれなら出来るんじゃない?」

オーナー「なるほど。それなら問題ないかな…?」


冒剣士「!」


オーナー「専属冒険者になって、住み込みでうちの手伝い。クエストが回れば一部回して、月払いで給料。休みの日は自由に冒険…ってのはどうだろ?」

冒剣士「…ほ、本当ですか!?ぜひお願いします!!」

オーナー「そんなに喜ばれるとは…はは、いいよ。ただし忙しい時は手伝いに集中してもらう事になるけど…いいかな?」

 
冒剣士「ぜ、全然大丈夫です!宿なし、先もなし、このまま泣きながら実家に帰るより…全然いいです!お願いします!」

聖剣士「よかったね」ニコッ

冒剣士「ありがとうございます!!」



オーナー「じゃ、宜しく!」

冒剣士「宜しくお願いしますっ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


冒剣士「…基本業務は結構あるんですね」

オーナー「今日みたくさ、お客が少ない日はいいんだけど…基本的には、室内清掃、お客対応…、色々やってもらうよ」


冒剣士「沢山ありますね…、大変だ…」



聖剣士「時間があるときは、僕の厨房のお手伝いもしてもらおうかな。料理はできて損がないよ~」

冒剣士「は…はい」

オーナー「そうだね、料理だけは覚えといて損はないと思う。厨房担当は基本的に2人で賄ってるから」

冒剣士「2人?聖剣士さんだけじゃないんですか?」

 
オーナー「今は出かけてるけど、俺の嫁さんもここで働いてて、厨房も担当なんだ。吟遊詩人さんはたまに来て酒場のほうの接客をしてる」

冒剣士「へ…へえ…、いっぱい人がいるんですね」

オーナー「小規模だけど、業務だけは詰め込んでるからね…正直、人が増えてくれるのは嬉しいよ」

冒剣士「頑張ります」


聖剣士「あ、専属冒険者のことに関しては?」


オーナー「あ…そうそう。専属冒険者はうちの規模で6人。僧侶戦士、武道家、聖剣士、吟遊詩人、筋肉僧侶さんていう人と、君」

冒剣士「へえ…吟遊詩人さんも、聖剣士さんもですか?」


聖剣士「一応ね。軍にも所属してるっていったけど、自由業に近い軍役のほうだから。メインはこっちでやってるんだ」

冒剣士「なるほど…」

 
オーナー「と、まあ色々詰め込んだけど大丈夫?」

冒剣士「大丈夫です。とりあえず、清掃と接客、厨房の手伝いですね」

オーナー「とりわけではそんな感じ。あと、うちは1級だから…専属じゃなくても、うちを訪れた冒険者にクエストをお願いすることはあるかな」

冒剣士「…え?専属じゃないとクエストって受けられないんじゃ…」


オーナー「え?それは2級酒場のところ。うちは1級酒場だから、俺が自由に冒険者にクエストを渡すことが出来るんだ」


冒剣士「は…?」

聖剣士「…ん?」


オーナー「…どうしたの?」キョトン

 
冒剣士「いえ、最初に行った酒場で、クエストは基本的に専属の証がないとダメだから自由は禁止だとか…」

オーナー「…いやいや、1級酒場なら自由契約できるよ?」

冒剣士「な…」


聖剣士「え、冒剣士くん、専属断られたって言ってたから、てっきり専属志願なのかと…」


冒剣士「な、なななな…」


オーナー「何やら食い違いがあったようだけど…、ま!これからよろしくね」ニコッ


冒剣士「なんでぇぇぇぇぇ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

……ガチャッ…
…ドサッ


オーナー「よいしょ。2階の…ココが君の部屋。自由に使っていいよ」ニコッ

冒剣士「ありがとうございます」


オーナー「少し汚れてるな…きちんと掃除してもらわんとな…はぁ」フキフキ


冒剣士(結局、最初の酒場じゃ適当に断られたって事か…、せめて1級とか教えてくれれば良かったのに…酒場で働くことになっちゃったよ…)


オーナー「で、えーと…、何か聞きたいことはある?」

冒剣士「あ、は、はい!え、えー…働く時間と休憩とか、もう色々と…あはは」

 
オーナー「えっと、朝8時には昼食の仕込みの手伝い、朝10時に部屋の清掃。うちは部屋が少ないからすぐ終わると思う」

冒剣士「なるほど」


オーナー「11時になったら、その時にもよるけど…お客さんの対応。昼食やら宿泊客とかの対応だね」

冒剣士「ふむふむ」
 

オーナー「13時になったら14時まで休憩、午後は宿泊者が来たり、色々とお客さんが来るから清掃やら客対応はその時に応じて」

冒剣士「結構人くるんですか?」

オーナー「あはは、おかげ様でね。忙しいよ~?」

冒剣士「そ、そうですか…」


オーナー「そこから18時までで一応終了。夜は酒場がメインになるけど、そこはまだ子供だから…さすがに自由時間になるかな」

冒剣士「はい」

 
オーナー「君の門限は一応21時。…あ!親御さんに連絡してないや…連絡先わかる?働いてもいいのかなウチで?」


冒剣士「あ、問題ないです。元々、冒剣酒場でお世話になるために中央国まで行ってくると伝えてあるので」


オーナー「わかった。で、休みは毎週2日…といいたいんだけど、休日は忙しくなるから…」


冒剣士「あー…そうですよね」


オーナー「その時その時で、休みはあげることにするよ。一応休みは多くあげるし、慣れてきたらすぐにクエストを用意しよう」ニコッ

冒剣士「ありがとうございます!」

オーナー「あはは、それじゃ…何かあったら下に降りて来て。俺は酒場にいるから。町案内もするから、あとで身内を呼んでおくよ」


冒剣士「何から何までありがとうございます」

オーナー「いやいや、こっちこそ助かるよ。それじゃ…」


……ギィ…バタン…

 
ドサッ…ゴロン

冒剣士「…冒険に出るはずが、なぜか酒場で住み込みの働きをすることに……」


……ゴロゴロ

冒剣士「……あー…もう!一体僕は何をやってるんだ!」ゴロゴロ


…バンバン!…


冒剣士「確かに滑り込みみたいな形で入れたのはラッキーだけど、これじゃ冒険者というより…ただの冒険好きのバイト君だよ!」


…コンコン


冒剣士「んあ…、はーい?」


…ガチャッ

 
オーナー「や、ちょっと失礼」

冒剣士「お、オーナー!はい!」スタッ

オーナー「後で呼ぶつもりが、みんな来ちゃったから紹介するよ、1階に来てくれる?」

冒剣士「は、はい…?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
冒剣士「この方々が…?」

オーナー「そう。俺の嫁のえーと…、魔法使いと、女メイジちゃん」


魔法使い「君が新しい専属冒険者さんね?ふふ、よろしくね」ニコッ

女メイジ「…よろしく」


冒剣士「よ、宜しくお願いします」ペコッ


オーナー「一応、女メイジちゃんは一緒くらいの年齢だし、話も弾むかも?とりあえず、挨拶だけってことで」

女メイジ「…ちょっと、オーナーこっちきて」グイッ

オーナー「ん?わわっ、引っ張らないで…どこに…!」


冒剣士「…?」

 
オーナー「厨房に連れて来て…どうしたの?」

女戦士「なんなのあの子!私と一緒くらいなのに、専属を結ぶなんて…、そんなに強いの!?」

オーナー「いや…強さは見てないけど、専属希望だったとか聞いて、勢いで決めたんだけど…まだ書類も通してないし正式じゃないけどね」


女メイジ「む…むううう!なんでそんな簡単に決めるの!」


オーナー「な、何でって…、あの位の子を見ると、やっぱり放っとけなくなるっていうか…ね?」

女メイジ「むうう!オーナーはそんなんだから甘いって言われるのよ!」

オーナー「そ、そう…?」


女メイジ「見てて!私が判断してあげるんだから!」

オーナー「お、おい…」


……ダダダッ

 
冒剣士「あ、戻ってきた」


……ダダダダダッ!!


女メイジ「ちょっといい!?えーとあなた…冒剣士!私と勝負しなさい!」

冒剣士「はい、いいですよ……って、え!?」

女メイジ「今いいっていったわよね!よーっし、魔法使いさん!審判して!外で勝負する!」


…ドコツカンデ…ワァァ!!!ヒッパラナイデ!!……タッタッタッタ…!!


魔法使い「…な、なんで急に勝負……?」キョトン

 
…トコトコ

オーナー「…やれやれ、どうにも、俺があの子を勝手に迎えた事に納得いかなかったようだ」ハァ

魔法使い「あー…そういやあの子…あんたにホの字だし、ここの専属になるのが夢ですものね」ニヤニヤ

オーナー「俺は一応、妻子もちなんだけどな」ヤレヤレ

魔法使い「いつまでたっても若いってことで、いいんじゃないの?」クスッ

オーナー「俺は君と、息子、皆いれば充分若くいられると思ってるよ」アハハ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


女メイジ「よし…勝負っ!この武器を使って、ここにある擬似武器…あるいは魔法で一撃を入れたほうが勝ち!あなたは剣でいいわよね?」

冒剣士「いいよ…何がなんだか…と、とりあえず分かった」チャキッ

女メイジ「魔法使いさん!開始をお願いします!」


魔法使い「…わかったわよ…開始っ!」


女メイジ「…小火炎魔法っ!」ボワッ

…ドォン!!


冒剣士「うひゃっ!」

女メイジ「小水流魔法っ!…小風刃魔法っ!」バシャッ!!ビュゥン!!!


冒剣士「うわわわっ!」

 
女メイジ「逃げてちゃ勝負にならないでしょ!」

冒剣士「って、言っても…」ウジウジ

女メイジ「そんなんで、ここの専属冒険者になるなんて…百年はやぁぁい!中火炎魔法っ!」ボワッ!!



オーナー「中火炎…あれ、お前…教えただろ」

魔法使い「やー…なんのことだか…あはは…」



冒剣士「中級魔法!?うわっ!」


……ドゴォォン!!ベシャッ!!


冒剣士「うわっぷ!爆発で泥が…!」

女メイジ「隙ありぃ!小火炎魔法っ!」ボワッ

 
女メイジ「逃げてちゃ勝負にならないでしょ!」

冒剣士「って、言っても…」ウジウジ

女メイジ「そんなんで、ここの専属冒険者になるなんて…百年はやぁぁい!中火炎魔法っ!」ボワッ!!



オーナー「中火炎…あれ、お前…教えただろ」

魔法使い「やー…なんのことだか…あはは…」



冒剣士「中級魔法!?うわっ!」


……ドゴォォン!!ベシャッ!!


冒剣士「うわっぷ!爆発で泥が…!」

女メイジ「隙ありぃ!小火炎魔法っ!」ボワッ

 
オーナー「勝負あったかな?」

魔法使い「女メイジちゃんも結構強いところあるからねぇ」



…ギラッ

冒剣士「…負けない」


女メイジ「…へっ?」

冒剣士「はァッ!!!」チャキッ…ビュッ!!


……バキッ!!!

女メイジ「はぐっ!」

…………ドサッ…


冒剣士「…ふぅ」


オーナー「何っ!女メイジが吹き飛んだ!?」

魔法使い「何…今の?真横から円を描くように…物凄い速度の切り抜き…」

 
女メイジ「…ったぁい…」

冒剣士「だ、大丈夫?」スッ

女メイジ「…」ハッ


…バシッ!!


女メイジ「あんたの助けなんていらない!バカ!魔法使いさん、泥落とすからタオル借ります!」

魔法使い「ど、どうぞ~…」


……タッタッタッタ………バタン…



冒剣士「なんだよ、折角人の優しさを…」

オーナー「すごかったな今の。真横への切り込み、あんな速度の初めてみる。何かの技術か?」

冒剣士「あれは"居合い"です。本来なら、"鞘"が無ければ出来ないんですが…手で抑えをして無理やり…」


オーナー「居合い…?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


魔法使い「へー、冒剣士くんは東方出身なんだ」

オーナー「道理で見たことない技術だと思った。鞘ってことは、カタナってことだよね」

冒剣士「はい、鞘を滑らせるようにして加速をつけて、刃を円状…つまり弧を描きながら切り込むのが居合いです」


オーナー「なるほどね、冒険者としてのレベルは高そうだね」

冒剣士「高いかどうかは分かりませんが…」

オーナー「…簡単なクエストだけ渡そうと思ったけど、考えが変わった。それなりのクエストをお願いしてもよさそうだ」

冒剣士「本当ですか!」


……トコトコ…

 
女メイジ「ったく…か弱い乙女になんてことを…」

冒剣士「あ、さっきはごめん。大丈夫だった?」


女メイジ「大丈夫なわけないでしょ。見事に一撃入れられて…」

冒剣士「勝負っていうから…」


女メイジ「でもまあ…勝負は勝負。負けは…負け。認めるわ、あなたのこと」

冒剣士「あ、ありがとう」

女メイジ「…冒剣士…そんなに強いのに冒険学校には入らなかったの?」


冒剣士「うん。僕は最初から冒険酒場から何もかもスタートする気だったから…、君は冒険学校に通ってるの?」

 
女メイジ「いいえ?私は家が貧乏で、支払うお金がなかったの」

冒剣士「…そうなんだ」


オーナー「…」


女メイジ「だけど、冒険の夢を諦められなかった時、オーナーと知り合って、家にお金を入れながらクエストも出来る、冒険酒場の仕事をお願いされたのよ」

冒剣士「へえ…、それじゃ君もクエストを受けてるんだ」


オーナー「さっき分かったと思うけど、女メイジちゃんの実力は結構高いからね。俺も信頼して…それなりのクエストはお願いしてるんだ」


女メイジ「信頼なんて…そんな」ポッ

冒剣士(分かりやすっ!)


オーナー「だけど、これで仲間が出来たことになるんじゃない?今まで1人だったのも、2人ならもっと楽にクリアできるようになるし」

 
冒剣士「2人…?」

女メイジ「それって…」


オーナー「冒剣士と女メイジの2人で、パーティを組んだらどうだろう」


冒剣士「僕はいいですが…」

女メイジ「えぇぇ!嫌っ!私は私で一人で出来るから…このままでいいです!」


オーナー「うーん、2人だと実力も高まるし、上位クエストを委託できたんだけど…だめか」


女メイジ「やります!」

冒剣士(えぇ~!?変わり身はやっ!)


オーナー「そっかそっか、じゃあ後で色々と調整したり書類書いたりしておくよ」


女メイジ「私の足を引っ張らないでね!」

冒剣士「は…はは…」

本日は終了です。

皆さんありがとうございます(A´ω`)!

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【冒険酒場・夜の自室】


…ホー…ホー…

冒剣士(何はともあれ…僕の新しい生活が…始まったんだよね…。あと…)


…パサッ


"冒険酒場で働くために"

"接客の基本"

"誠意を見せて働く為に"

"流通とマネージメント"

"ストレス解消法!"


冒剣士(あの後、聖剣士さんが持ってきてくれた本…多すぎ!ゆっくり読んで、しっかり覚えないとなぁ…)ハァ

 
………ゴロン

冒剣士(ま、明日から仕事も始まるし……今日は寝よう…、おやすみなさい…)



・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【午前9時】


オーナー「えー…おはようございます!」

4人「おはようございます!」


オーナー「今日は吟遊詩人、聖剣士、女メイジ、そして冒剣士と俺の4人でやっていきます」


4人「はいっ!」


オーナー「吟遊詩人はいつものフロア清掃のちに買出し、女メイジは吟遊詩人のお手伝い。冒剣士は聖剣士と料理の仕込みです」

4人「わかりました」

オーナー「あとは、それぞれに指示を出すので宜しくお願いします」


4人「宜しくお願いします!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【厨房】

聖剣士「よいしょっと、この白衣身に着けてね。安全第一、清潔第一!手もしっかり洗って!」

冒剣士「は、はい!」


聖剣士「えーっと…兄さーん!」

オーナー「んー!」

聖剣士「今日は何か仕入れモノあるー!?」

オーナー「冷蔵庫に、昨日安く入った豚肉と、果物が入ってると思うぞー!」

聖剣士「りょうかーい!」


冒剣士(何作るんだろ…)

 
聖剣士「それじゃ…えーと」


…ゴソゴソ


聖剣士「こりゃ上質な豚肉だね…、それとフルーツはりんごオレンジ、グレープフルーツと野菜が少し…、他の材料はあるとして…」

冒剣士(…)

聖剣士「今日のメニューは、"豚肉のりんごソース"と、果物ポークカレーにしよう」


冒剣士「な、なんて奇抜なメニューを…」


聖剣士「奇抜でもないよ?りんごは酵素を含んでて、肉をやわらかく仕上げるのに向いてるし…甘みがあって砂糖を使わずソースを作れる」

冒剣士「へえ…」

聖剣士「まあ、果物と合う豚肉だからこそ出来るっていうのもあるけどね」

 
冒剣士「…そうなんですか、牛肉だと出来ないと?」

聖剣士「牛肉だと、脂身が多かったりで…どちらかというと牛肉の味が強すぎて、果物と競争して難しいんだ。もちろん、出来ないわけじゃない」

冒剣士「…ふむ」

聖剣士「牛肉でも、おいしく仕上げることは出来るけど…やっぱり手間がね…、煮込み時間が長かったりで難しい」

冒剣士「なるほど!」


聖剣士「それじゃ…時間もないし早速作ろうか!」

冒剣士「はいっ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

……グツグツ…グツグツ…

冒剣士「暑いですね…」

聖剣士「あはは、火との戦いだからね。錬金術でガスの技術やら、冷凍技術が発展してない時はもっと大変だったから…だいぶ楽になったほうだよ」

冒剣士「それなら…文句もいってられませんね。頑張ります」

聖剣士「その意気さ」ニコッ



…グツグツ……ジリリリリリ!!!!!

聖剣士「とと、キッチンタイマーが…その鍋に少しだけ唐辛子を入れて」

冒剣士「はいっ」パラパラ

聖剣士「…うん」


冒剣士「わっ…、果物のいい香りが…、カレーと混じって凄い美味しそう…!」ジュルッ

 
聖剣士「はは…よいしょっと。はい、これ」スッ

冒剣士「スプーン?」

聖剣士「…さ、味見してごらん」


冒剣士「…」

…スッ…トロッ………パクッ…


冒剣士「……!」

聖剣士「…どう?」


冒剣士「…このまろやかで深い甘みと、後から来る…辛さが何ともいえない!美味しいぃ!」

聖剣士「はは、それは何より!」

 
冒剣士「…作る時は"うわっ"て思ったけど…」


聖剣士「これも…君のこの間の"食わず嫌いの話"と似ているってことだね。見た目や、噂、"これがこう"だからという概念…」

冒剣士「…」

聖剣士「それは、最後まで組み立てなければ分からない。実際にやらなければ分からない、料理だって…人生だって一緒ということだよ」


冒剣士「そう…ですね。料理に教えられた気分です…あはは…」


聖剣士「おっと、説教じみてしまった。ごめんごめん、それじゃ後は仕上げだけだから、冒剣士はオーナーに次の仕事を聞いてくるんだ」


冒剣士「いえ、教えていただけるのは有難いです。…はい、行ってきます!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


冒剣士(ここがオーナーの部屋だったかな…)

……コンコン


オーナー「はいどうぞー」

…ガチャッ


オーナー「おや、仕込みは終わったのか?」

冒剣士「はい、一応。それで次の仕事を聞いてこいと言われたので…」

オーナー「まだ買出し組みが戻ってないからなぁ…、戻ったら室内清掃の教えをしようとしてたんだけど…」

冒剣士「…」


オーナー「ま、丁度いいか。こっち来て、この書類にサインしてくれるかな?」

冒剣士「はい?」

 
オーナー「一応…国と繋がる事業をしてるからね。1人の専属が出たら、必ず報告しないと」

冒剣士「専属…僕ですね。サインはここに?」

オーナー「そう…そこ」


…スラスラッ……


オーナー「よし、ありがとう」

冒剣士「いえ、このくらい…」


オーナー「これで君も、正式に…うちの専属冒険者だ。これから宜しくね」

冒剣士「宜しくお願いします」


…コンコン

オーナー「おや、買出し組みが戻ってきたかな」

 
…ガチャッ

吟遊詩人「オーナー、買出し終わりましたよ」

女メイジ「疲れたぁ…」


オーナー「ありがとう、それじゃ次は清掃業務だけど…冒剣士にも教えながら頼むよ」


吟遊詩人「分かりました」

女メイジ「…足引っ張らないでよね、新人」

冒剣士「…は、はぁ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


吟遊詩人「……って感じ。基本的に、連泊のお客様の荷物は触ったりしちゃだめ。ベッドのシーツを入れ替える時、掃除の時のみ横にまとめること」

冒剣士「なるほど…入れ替えたシーツはどうすれば?」

吟遊詩人「部屋の廊下に、大きなリネンがあったでしょ?そこにまとめて、最後に締め上げて清掃室にまとめるの」


冒剣士「リネン?」


女メイジ「廊下にあった真っ白な大きな布のこと!そのくらい覚えておいて」

冒剣士「…聞いたことなかったから」

吟遊詩人「まあ確かにね…、宿泊施設では"リネンして"だけで通じるから…、私も教え不足だったのよ。ごめんね」


冒剣士「あ、いえ!自分も勉強不足でした!」

 
吟遊詩人「それと、お客様に会ったら必ず挨拶、"おはようございます"や"こんにちわ"くらいはすること」

冒剣士「なるほど」

吟遊詩人「男の子の君は、やっぱりベッドのシーツ入れ替えとか、机をどかして、きちんと掃除するとありがたいかな?」


冒剣士「分かりました、任せてください!」

……タッタッタ…グイッ!!


吟遊詩人「あ、いきなりベッドの間に指を入れると…」


…バチンッ!!!

冒剣士「あいたあっ!!」パッ


女メイジ「静電気にびっくりして手を離して…重いベッドが…」


…ドォン!!!

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【1階・オーナー室】


…ドォン!!……パラパラ…

オーナー「…はは、やってるやってる。ベッド落とし…最初は俺も静電気に驚いて床が抜けそうになったっけ…」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【2階・客室】


冒剣士「あわわわ…ごご、ごめんなさい!」

女メイジ「…最後まで人の話は聞くの。ベッドの間に使われてる金属が、シーツと擦れて静電気を起こすわけ。だから、一応手袋をはめてから…」


冒剣士「…ごめんなさい」ショボーン


女メイジ「はぁ、私も最初同じことやったし、気にしてると次にいけないから…、失敗は次に生かすの。わかった?」

冒剣士「あ…あぁ」


吟遊詩人(…ふうん)クスッ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


冒剣士「はー…疲れた……、これで小規模なんですか?」


吟遊詩人「客室は全部で16部屋、全然小さいほうかな。大型宿泊施設が併設されてると、300部屋とか400部屋とかになるし…」


冒剣士「…僕、ここでよかったと思います」

女メイジ「その話聞くと、私もいつもそう思うわ…」



吟遊詩人「えーっと…もう11時30分か。それじゃ、オーナーの所にいこっか」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


…コンコン……ガチャッ…


吟遊詩人「オーナー、客室の清掃終わりました」

オーナー「お、ご苦労様。それじゃちょっと早いけど、休憩とってくれる?今日の12時30分から、予約がもう入ってるんだ」

吟遊詩人「わかりました」


女メイジ「ええ…、今日は何人?休みだから相当多そうだけど…」


オーナー「んと…宿泊が13人、9部屋。今いる連泊さんが4部屋で、もう13部屋で…いっぱいいっぱいだね」

女メイジ「冒険者?」

オーナー「一応冒険者たちかな。今回は"シルバープレート"の人もいるよ」

女メイジ「銀プレート!?やった!お話聞かせてもらおっ!」

 
冒剣士「銀プレート?」

女メイジ「えー…そんなことも知らないの…?とりあえず昼ごはん食べながら教えるから…早く!」

冒剣士「わかったよ…わかったから引っ張らないでえー!」


…ズルズル…ガチャンッ……


オーナー「……な、仲良しになってるようで良かった」

吟遊詩人「そ、そうですかね…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


冒剣士「で、銀プレートって何?」モグモグ

女メイジ「あなたね…、本当に冒険者志願?プレートのことも知らないの…?」ゴクゴク

冒剣士「だから知らないって…。わ、カレー美味しい…」


聖剣士「談話しながら食べるのもいいが…ゆっくりしすぎて休憩時間終わらないようにな…」ハハ…


女メイジ「分かってますよ!」

冒剣士「善処します!」

 
女メイジ「それでプレートっていうのは、冒険者に付けられるランクみたいなものよ」モグモグ

冒剣士「ランク?」

女メイジ「軍の階級に近いかも。クエストとか、実績に反映して贈られる階級証みたいなものかな?」


冒剣士「ふむふむ、それで銀っていうのは凄いの?」


女メイジ「そりゃ…。白から始まって、青、赤、銅、銀、金。……銀といえば、かなりの場数を踏んだベテラン冒険者になるわね」


冒剣士「それじゃ、僕は昨日登録したばっかだから白かぁ」

女メイジ「私はもう赤だけどね~♪」

冒剣士「なんでっ!?」

 
女メイジ「なんでって…それなりにクエストをやってるし、軍事クエストについてった経験もあるし…」

冒剣士「…はーそっかぁ。でもまあ、スタートラインだし仕方ないか…」

女メイジ「1回、何でもいいからクエストを完了すれば青にはなれるしね」


冒剣士「うわー…かんたーん…」


女メイジ「大変なのはそこから。それぞれのプレートカラーには最低条件があって、それをクリアしないと次の段階にはいけないの」


冒剣士「でもさ、プレートって何のためにあるの?ただの証?」

女メイジ「そりゃ大事な証よ。クエストの中には、一定カラー以上じゃないと受けられないのもあるし…」

冒剣士「なるほどねー…僕も頑張ろう」

 
女メイジ「ちなみに、厨房の聖剣士と、吟遊詩人さんは銅色。オーナーも相当やり手っていうけど、登録してるのかは分からないわねー…」

冒剣士「ここの他の専属冒険者さんたちは?」


女メイジ「"僧侶戦士"さんが銀、"武道家"が銅。"筋肉僧侶"さんが銀…だったかな?」


冒剣士「へええ、うちの専属もかなり優秀なメンバーがそろってるんだ…」

女メイジ「みんな、本業は軍の仕事で…こっちは傍らで多くは難しいから、基本的に一般冒険者に自由委託で賄ってるのがうちのスタイルかな」

冒剣士「自由委託だけって…、それで採算というか…経営できるものなの?」


女メイジ「だからこそ、よ」

冒剣士「え?」

 
女メイジ「他の1級酒場とか、冒険酒場の多くは"専属便り"だけど、うちは"自由寄り"だから、一般冒険者の高位プレートが来てくれるわけ」

冒剣士「あ…あー!」

女メイジ「そもそも、冒険者っていうのはこんくらい自由なほうが良いんじゃないの?私だったらそっちのほうがいいし…」

冒剣士「あー…うん。確かにね、僕もそういうの目的で来てたってのあるし…」


女メイジ「でしょ?だから採算は取れるだろうけど、そもそも儲けの為だけにやってる場所じゃないのよここは」


冒剣士「なるほどなぁ…」

 
女メイジ「ご馳走様でしたっ!」

冒剣士「ご馳走様~」


聖剣士「はいよ~、そこに置いててくれれば片付けとくよ。オーナーに次何すればいいか聞いておいでー!」


冒剣士「はーい!」

 
……コンコン…ガチャッ


冒剣士「失礼します」

女メイジ「失礼します」


オーナー「おや少し早かったね。まだ休憩時間は少し残ってるけど…」


女メイジ「今日忙しいみたいだし、さっさと準備したほうがいいかなって」

オーナー「助かるよ。それじゃ、そろそろ接客のほうの準備お願いするよ」

女メイジ「冒剣士もですか?」

オーナー「一緒に教えてくれる?宿泊の他に、酒場の受付なんかのもやっといて損はなさそうだし」


女メイジ「わかりました」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


冒剣士「…ここ?」

女メイジ「そう…ここ。で、お客さんが来たら、宿泊の場合はここに、酒場のお客の場合はそっちのカウンターとか、席につくから」


冒剣士「宿泊対応は大体わかるけど、酒場の対応は?」


女メイジ「呼ばれたら行って、メニューを聞く。それを聖剣士に伝えればいいし、酒場のほうはオーナーも手伝うから楽だけどね」

冒剣士「わかった」


……ガチャッ

 
お客A「…ふぅ疲れた。思ったよりキレイなところだね」

お客B「商店街も近いし、滞在するには丁度いいかもねー」


冒剣士(ってもうお客さんきたー!)


女メイジ「いらっしゃいませ」

冒剣士「え、あの…い、いらっしゃ…」モゴモゴ


お客A「おやおや、どうしたんだい緊張して。新人クンかい?」


女メイジ「あ、あはは…慣れてないもので」ゲシッ

冒剣士「あいたっ!…い、いらっしゃいませ!」
 
 
お客A「ははは、ゆっくり慣れればいいと思うよ」

 
女メイジ「えー…と、お泊りのお客様でよろしいですか?予約の場合は、予約用紙のご提示をお願いします」

お客A「そうです…えーと…、この紙かな…」

…パサッ


女メイジ「あ、ご予約頂いていた方ですね。ありがとうございます、少々お待ちください…」ゴソゴソ


お客A「…」

お客B「酒場いい雰囲気じゃん、今日のメニューはフルーツカレーだってよ!」

お客「へえ、お昼食べてないし荷物置いたら食べようか?」

お客B「店員さん、フルーツカレーは美味しいのか?」


冒剣士「え、あ!僕ですか…えっと、フルーツの甘さとカレーの辛さがマッチして…かなり美味しいと思います!」

お客A「げ、元気だね…そっか、美味しいならすぐ食べにくるよ」

お客B「先に準備とかしてて貰えるのかな?」

 
冒剣士「え、えーと…」チラッ

女メイジ「…」ボソボソ

冒剣士「…わ、わかった」


お客A「…」

冒剣士「えーと、大丈夫です。準備し、席もご用意しておきますので、荷物を置いたらどうぞ足をお運びください」

お客A「わかった、ありがとう」ニコッ

冒剣士「へへ…」

 
女メイジ「…それでは、こちらが連泊の証明書です」スッ


お客A「ありがとう。それでは後また来るよ」

女メイジ「はい、お待ちしております」ペコッ


……トコトコ…


女メイジ「あんたも頭下げるの!」ボソッ

冒剣士「あ、そうか…」ペコッ

 
女メイジ「…」

冒剣士「…」


女メイジ「頭上げて、よし」

冒剣士「ふう、大変だね接客のほうも」

女メイジ「お客さんの前じゃなかったら、色々と言いたくなるような態度だったけどね…」

冒剣士「色々言ってたくせに…」


女メイジ「全然言ってないほうよ…お客さんの前で、大声…じゃなくても怒ったり、色々言うのはマナー違反なの」


冒剣士「そ、そっか…」

女メイジ「…ま、最初にしては良いんじゃないの?これからもっと忙しくなるから、ちゃんと慣れてね」

冒剣士「わかってるよ、足引っ張らないように頑張るよ」

女メイジ「よーろしぃ!」

 
……コソッ

聖剣士「えーと…昼食の注文があったら、一言来てくれると嬉しいんだけどな…はは」


女メイジ「あっ」

冒剣士「あっ」

本日は終了です、ありがとうでした

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【午後4時】


…ガヤガヤ……


冒剣士「ふうー…」

女メイジ「酒場のほうも賑わってきたわねー…」

冒剣士「あの後、一気に予約客が来るとは思わなかったよ」

女メイジ「珍しくないんだけどね、お疲れさま」


冒剣士「お疲れ…、でも酒場にいる冒険者さんたち…強そうだなあ…」

女メイジ「そうねぇ…」

 
???「おーい、そこの子供!2人!こっちに来いよ!」


冒剣士「僕たち?」

女メイジ「そうみたい…こういうのも珍しくないから、行こっ!」

冒剣士「う、うん…」


トコトコ…


孤高騎士「よーよー、俺は孤高騎士。孤高とでも呼んでくれ…」

女メイジ「孤高さんいつも同じことばっかり」クスッ


冒剣士「知り合い?」ボソッ

女メイジ「酒場の常連」ボソッ


孤高騎士「ところで…そっちの男の子は新人クンか?」

 
女メイジ「あ、そうです。一応専属冒険者になっちゃって、住み込みで働いてたりしてますよ」

冒剣士「よ、よろしくです」ペコッ


孤高騎士「専属だぁ!?俺ですら断られたのに…お前強いのか?」


冒剣士「いえ、言うほどでは…」

孤高騎士「よく専属に入れたな…、たまたま穴があったとかか?」

冒剣士「そうらしいです。先週に穴が開いた所に、僕が滑り込む形で入ったとか…」


孤高騎士「なんだ羨ましいやつだな…」

女メイジ「全くですよねー!」

 
冒剣士「あはは…」

孤高騎士「冒剣士だったか…お前のプレートは?」

冒剣士「まだ白です」

孤高騎士「白で専属かよ、何とも言えねぇな…」


女メイジ「孤高さんは赤でしたよね?」


孤高騎士「ん?……んっふっふ…」ゴソゴソ


女メイジ「プレートはきちんと着けておきましょうよ…」


孤高騎士「これを見よっ!」スッ

 
…キラッ

女メイジ「わっ、ブロンズ…銅色!上がったんですか?」

孤高騎士「おう。軍事クエストを規定回数終わらせてな…、やっとこれで単独での国家クエストの受諾件を得たぜ」


冒剣士「軍事とか、国家…単独?」


女メイジ「あー…って、そこまで知らないわけ…?」

冒剣士「なはは…せん越ながら…」


孤高騎士「冒険者なら勉強も必要だぞぉ?しゃあないな、俺が教えてやろう!」

冒剣士「お、お願いします」

 
孤高騎士「クエストは、民事、軍事、国家の3段階に分かれてるわけだ。それぞれの順で難易度が変わって、国家クラスになると危険度も非常に高い」

冒剣士「なるほど、単独というのは?」


孤高騎士「例えば、俺が国家を受ける場合は銅プレだから一人からの受諾が可能だ。それに加えて、仲間、つまりパーティを組んで受諾を出来る」

冒剣士「ふむふむ」

孤高騎士「その場合、俺がリーダーとなって下位プレートも連れて行ける。そうすれば下位でも国家クエストに参加したという記録が残るわけだ」

冒剣士「えっ!じゃあ、何もしなくても…それだけでプレートカラーが上がっちゃうってことですよね?」


孤高騎士「クエスト受諾の時点でリーダーの決定とメンバーカラーが記録されるから、そこまで直接評価には繋がらん」


冒剣士「あー…なるほど」


孤高騎士「それに、きちんとクエストでの行動は報告式だからな」

 
女メイジ「…孤高さんにお願いして今度、国家クエストに着いて行こうかなぁ~♪」

孤高騎士「うはは、みんなで行こうか。冒剣士クンも、謙遜してるがそれなりの腕はあるんだろ?」

冒剣士「あ、あはは…」


女メイジ「そこまで気になるなら、擬似試合やってみたらどうです?なーんて…」


孤高騎士「おっしゃ、やろう!」ガタッ

冒剣士「え、えぇ!」


女メイジ「オーナーに言ってくる!」

……タッタッタ


冒剣士「言ってくるって、仕事中じゃ…」

孤高騎士「こういうのも、冒険酒場の自由の心!諦めて…、戦うぞ!」ニヤッ

冒剣士「えええ…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


オーナー「面白いことになったな!孤高さんと戦うなんて」

冒剣士「オーナーまで…」

オーナー「そうそう、昨日さ、"カタナ"ほしがってただろ?擬似武器、仕入れといたぞ。試合用の」

冒剣士「!」

オーナー「それなら、少しは本気でやれるんじゃないか?」ハハ

冒剣士「ええ、そうかもしれません」


女メイジ(あいつの本気か…面白そう)


孤高騎士「みんなぁ!試合だ試合、見たいやつは外に出ろぉ!」

 
……ワァァ!!

お客A「お?試合だってよ!」

お客B「醍醐味だな!誰と誰だ…、お!あの新人クンじゃないか!」

お客C「いいぞー!やれやれー!」



冒剣士「あああ、何か大事に!」

孤高騎士「いいじゃねえか、こういうの大好きなんだよココの連中は!」


オーナー「あはは…よし、みんな特別な催しモノだ!」

聖剣士「へえ、孤高さんですか。いい勝負するかなー」

吟遊詩人「さー…、彼も相当やり手だからねー…」


……ワァァッ!!!

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


……スチャッ

孤高騎士「試合は相手に一撃を与えるまでの試合形式。それでいいな?」

冒剣士「大丈夫です」

孤高騎士「しかし珍しいモン使うな。カタナなんて、一方方向からしか判定ないのによ」

冒剣士「使いやすいだけですよ」ハハ


孤高騎士「ま、人の得物にケチつける気はない。俺はこの長槍でいくぜ!」ブンブン


冒剣士「いいですよ!」スッ

 
オーナー「お…、あの構えは」

聖剣士「女メイジが吹き飛ばされたって言ってた…"居合い"ですね」

オーナー「範囲、経験的には孤高騎士が絶対有利だけど…どう出るか」


女メイジ「試合…はじめっ!」


孤高騎士「…」スチャッ

冒剣士「…」


お客達「…」ゴクッ

 
孤高騎士「おりゃあああっ!"小突"っ!」ビュッ

冒剣士「…早い…けどっ!」

…ヒュンッ


孤高騎士「避けられた!?」

冒剣士「…はぁっ!!」


…ビュンッ!!……キィン!!!


孤高騎士「ぬああっ!重いっ!」ズザザッ…

冒剣士「居合いが弾かれた!?」


孤高騎士「ふぬっ…、思ったよりもやるじゃないか!」

冒剣士「…そちらこそ!」

…シャキン


オーナー「ほう、また刀身を鞘に納めるのか」

 
孤高騎士「変わった戦い方で、やりにくいぜ…」

冒剣士「あはは…、鞘を滑らせて戦うのが抜刀術ですから…」

孤高騎士「へえ、"抜刀術"か。面白い名前つけるな」


冒剣士「東方由来の業ですからね」


孤高騎士「"術"ってことは、居合い以外もあるって事だろ?」

冒剣士「まぁ…」

孤高騎士「見せて…みろっ!」


…タタタタッ


孤高騎士「大突っ!!」

…ビュンッ!!!!

 
オーナー「大突…本気かっ!」

聖剣士「い、いや!冒剣士は動いてない!」



冒剣士「…」スッ

孤高騎士(なぜ動かない!)


………スッ


オーナー「体を捻って避けた!?」

聖剣士「孤高さんの脇がガラ開きに!」



冒剣士「燕返しっ!!」

相変わらず投稿早いな

書き溜めてるの?

 
…ビュッ!!!!

オーナー「カウンター!!あそこからの居合いかっ!」

聖剣士「入ったか!?」



冒剣士(入った!)

孤高騎士「…んぬああああっ!」

…ガシィ!!!!


冒剣士「なっ…!」


お客A「うおおおお!?」

お客B「…膝と肘で刃の部分を挟んで止めやがった……」

 
冒剣士「う、動かない!」

グッ…グイッ…


孤高騎士「ここまでだ…おらあっ!」ビュッ

冒剣士「…小火炎魔法っ!!」ボワッ


孤高騎士「んなっ、魔法かよ!うおおおっ!」

……ドォン!!!
…パラパラ……



女メイジ(す、凄い…)


冒剣士「はぁ…はぁ…つ、強い……」

孤高騎士「お前も相当なもんだぜ、生半可な技術じゃない。どこでそんな技術手に入れやがった?」

冒剣士「…小さい頃から、剣術に楽しみを覚えていたので」

孤高騎士「ははっ、上等!」

 
……ポツッ…


…ポツッ……ポツッポツッポツッ…


孤高騎士「ん?」

冒剣士「雨が…」


……サァァァッ………ザアアアアアア!!


孤高騎士「うひゃっ!大降りになってきやがった、今日は止めとこう!」

冒剣士「そ、そうですね!」


オーナー「皆さん!酒場のほうでタオルを出すので、早く中にはいってくださーい!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


女メイジ「はい、タオル」ポスッ

冒剣士「あ…ありがとう」

…ゴシゴシ


女メイジ「驚いた、冒剣士…凄い強いんだね。孤高さんと打ち合うなんて…」

冒剣士「あの人も本気じゃないよ。まだまだ余裕を隠してた」

女メイジ「…」


オーナー「おーい!冒剣士、お客さんたちが呼んでるぞ!こっちにこーい!」


冒剣士「あ、はーい!じゃ、タオルありがとう!」

女メイジ「あ…うん」

…タッタッタッタ……


女メイジ("あの人も"本気じゃないって、冒剣士も本気じゃなかったって事か…)

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



……ガヤガヤ…

お客A「よー来た来た!」

お客B「冒剣士だっけ、すげーじゃんお前!最高だぜ!」

お客C「孤高があんなにボロにされてんの久々に見たぜ!」

孤高騎士「んなっ、俺が本気じゃないだけだっての!」

お客D「ははは、まあまあ。冒剣士、こっちこいよ!」


冒剣士「こ、これは…」


オーナー「ここは冒険者の酒場だ。あんな熱い戦い見せられたら、みんなお前の事を気に入るさ」

冒剣士「そ、そうなんですかね?」

オーナー「あぁ。もう時間も時間だが、みんなの所で話聞いておいで」ニコッ

 
冒剣士「は、はい!」

……タッタッタッタ…

…オオキタキタ!!ボウケンシ!!
コンドマタヤロウナ!!……ノメノメ!!


オーナー「やれやれ、1日目で人気になっちゃったな」

聖剣士「しかし、思った以上の強さですね…」

吟遊詩人「実力もあって、人を惹きつける何かも持ってる。ここの冒険酒場には充分すぎる逸材になりそうですね」

オーナー「ああいうの見ると、色々と思い出すよ」


聖剣士「はは…兄さんはまだまだ現役なんだから、年取ったこと言わないで」

オーナー「そうだといいんだけどね、よし!ほらほら、注文きてるぞ!」

聖剣士「わわ…、作ってきます!」


女メイジ「…」

 
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――――【夜・酒場】


オーナー「それでは、冒剣士くんの初日の仕事終わり、仕事デビューを祝し…乾杯っ!」

魔法使い「かんぱーい!」ガシャッ

聖剣士「かんぱいっ!」

吟遊詩人「乾杯!」

女メイジ「乾杯」


冒剣士「なはは…そんな…」

 
オーナー「ま、初日お疲れ様。どう?大変だったでしょ?」


冒剣士「清掃やら接客でしたが、人と話すのは嫌いじゃないので…苦ってほどじゃなかったです」

オーナー「そっかそっか、それは何より」ゴクゴク


吟遊詩人「戦い見てたよ、凄かったね。あれが"カタナ"の戦闘術なのかな?」


冒剣士「あー、僕がやってるのは鞘を使った"抜刀術"です。他にも、一刀術とか、二刀術とか、鞘を使わないのもありますね」


オーナー「なるほど。いくつかの"流派"ってことか」モグモグ

冒剣士「いうなればそうです。小回りが利きにくいのが弱点なので、物理同士のぶつかり合いが一番楽です」ゴクゴク

魔法使い「まだ13歳くらいだっけ?」

冒剣士「…です」

魔法使い「そっかー、若いのに強いんだねー」ゴクッ

 
女メイジ「ふーん、どうせ私は魔法くらいしか…」ブツブツ

冒剣士「ん?」


女メイジ「な、なんでもない」

オーナー「…」


魔法使い「ま、今日は飲んで食べてよ。明日も忙しいだろうけど、週末には紹介できそうなクエストがあるんでしょ?」


冒剣士「本当ですか!?頑張ります!」

オーナー「あ、そうだったね。…うん、それまで頑張ってね」ニコッ


女メイジ「…」ハァ

オーナー(…ふむ)

 
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・・・・・・・・・・・・・
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・・・・
・・

 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【深夜】


サワサワ…ホー…ホー…


…ガチャッ……バタン…


女メイジ「雨…すっかり上がってる。虫の声が心地いいかな…」


オーナー「さて…と、どうしたのか話を聞くよ?」スッ


女メイジ「きゃあっ!お、オーナー!?」

 
オーナー「さっきの試合の時、食事の時、妙に元気がなかったのは……」

女メイジ「そ、それは…」

オーナー「わかってる、冒剣士くんのことだろう?」


女メイジ「…」


オーナー「ひょっこり出てきて、専属になって、あっという間に人気者になって…。立場の問題…かな」

女メイジ「…」

オーナー「…ごめんな、色々気遣ってやれなくて。大事な仲間なのに…」


女メイジ「そそ、そんな…気にしないでください…」

オーナー「…うちの冒険者の専属枠、さっきもう1つ申請してきた。多分、通るはずだ」

女メイジ「専属枠…?」

 
オーナー「女メイジ、うちの専属冒険者になってくれるかい?」ニコッ

女メイジ「え、わ、私が!?」

オーナー「俺も昔から、年下に甘くてね…、状況が状況だとすぐ抱え込んじゃうんだよ」アハハ

女メイジ「…」

オーナー「だから、トントン拍子に今回の冒剣士クンのことも決めちゃったから、本当は先に君に専属をするべきだった」


女メイジ「知ってます、オーナーがそういう風に優しいところ…。冒剣士のことも、そう分かってました」

オーナー「…」

女メイジ「だけど、努力もしてきたつもりだったから…、それが自分の中で納得いかなくて…」


オーナー「…本当にごめんな」

女メイジ「…いえ、やっぱりオーナーは優しい人です。ありがとうございます」ペコッ

 
オーナー「そうか…明日から、また宜しくね」

女メイジ「はい!」


…コソッ

冒剣士(…僕が邪魔になってたんだよね。ごめんなさい、女メイジさん。明日、謝ろう…)ハァ



・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

本日はここまでですありがとうございました

乙です

乙です。毎日の楽しみです。
孤高剣士さん、全然孤高じゃないw
第1シリーズから見てるけどこういう兄貴タイプな人は好きだな。
聖剣士をみるに、オーナーも30代半ば~40前ぐらいかな?竜の血で見た目はもっと若そうだけど。

いつも応援してます!乙!

早い更新乙

冒険士が使った「燕返し」って納刀から抜刀で切り上げてるから
佐々木小次郎が使ったとされる「燕返し(虎切)」じゃなく
居合道 袈裟切り初動作の逆袈裟に切り上げをイメージすればいいのかな?

質問が多かったのでちょっと回答だけを。
>>122 >>124 ありがとうございます!
>>105 挟んでてわかりませんでした、一応、書き溜め+修正です
>>123 今後、その事に関しては出てくるので(´ω`)

>>125
それで大丈夫です。作中で燕返しは基本的にカウンターの役割的な居合いで扱ってます。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――【次の日・冒険酒場】


オーナー「…と、いうわけで。今日も宜しくお願いします」

聖剣士「よろしく!」

魔法使い「よろしく~」

女メイジ「宜しくお願いします」ペコッ

冒剣士「よろしくです」

 
オーナー「と、1つ報告があったんだ。今日から女メイジが、うちの専属になってもらったよ」


聖剣士「…!」

魔法使い「え、本当!?でも何で急に…?」

女メイジ「…」


オーナー「まあちょっと色々あってね」

魔法使い「まぁ何でかは大体分かるけど…」

オーナー「はは…でしょ?そういうこと。それじゃ、仕事にはいろっか」


女メイジ「皆さん改めてよろしくお願いします!」

聖剣士「うん、おめでとう」ニコッ

 
冒剣士「あ…そうだ、女メイジ…」

女メイジ「…何?」


…コンコン


オーナー「ん?こんな朝早くからお客…?」


…ガチャッ


孤高騎士「ちっす」


オーナー「孤高さん…いらっしゃいませ。朝ごはんでも食べにきましたか?」

孤高騎士「はは、そうそう。聖剣士の朝ご飯を…」

オーナー「仕方ないですね、用意してください」


孤高騎士「って、違うわ!クエスト受けにきたんだよ!」

 
オーナー「あ、なるほど」

孤高騎士「どんだけ俺が食い意地はってる人間なんだよ…、で。いいクエスト入ってるのか?」

オーナー「国家はないですが、軍事レベルのクエストならば」

孤高騎士「オーケー。で、相談なんだが…」


オーナー「はい?」


孤高騎士「パーティも選別したい」

オーナー「パーティ…といっても、今は冒険者たちはまだ…朝早いのでいませんが…」


孤高騎士「いるだろ…?新人クンと女メイジちゃんが」ニカッ


女メイジ「え?」

冒剣士「ん?」

 
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オーナー「こちらが今回のクエスト内容です。北部の猛雪山の調査ですね。洞窟の探索です」パサッ

孤高騎士「ほほう。すると、イエティ関連だな…女メイジはイエティ討伐の経験あるか?」


女メイジ「ないですね。ただ、それと同位のゴーレムなら遠征討伐に参加した経験が」

孤高騎士「上等。冒剣士はどうだ?」

冒剣士「いえ、ないです…が、あの…」

孤高騎士「なんだ?」


冒剣士「なんで僕なんですか?女メイジは経験があるとはいえ、僕はまだ白プレとやらですし…」


オーナー「あ、忘れてた、プレート渡すの…はいっ」スッ

冒剣士「あ、ありがとうございます」


孤高騎士「簡単な理由だ。手合わせして実力が分かった。擬似武器じゃなく、使い慣れた得物ならもっと戦えるんだろ?」

 
オーナー「…」


冒剣士「そ…それはそうですが……」


孤高騎士「…お前さ、冒険者になんだろ?」

冒剣士「え?」

孤高騎士「何で冒険のパーティに誘われてるのに、喜べないんだ?1日、2日の宿の仕事で、安定した職に就きたくなったのか?」


冒剣士「い、いやそういうわけじゃないんです」

孤高騎士「じゃあどういう訳だ?」

冒剣士「あの、何ていうか…実感がないというか…」


孤高騎士「あー…確かにな」

冒剣士「それに、オーナーの了解を得てませんし…」チラッ

 
オーナー「ん…了解?」

冒剣士「専属とはいえ、僕はここの従業員ですよね…?」

オーナー「あぁ。従業員だけど、専属冒険者。パーティに誘われた冒険者を、むげには出来ないよ」

冒剣士「そ、それじゃ?」


オーナー「うん、もちろん行ってきていいよ。ただし、安全には最善の配慮を…、ね?孤高さん」

孤高騎士「はっはっは、わかってるさ。俺の実力も知ってるだろ?」

オーナー「付き合いは長いですからね」アハハ


冒剣士「よ、よろしくです!」

 
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冒剣士「準備はこれでいいんですか?…重いですね」ヨイショ

オーナー「猛雪山はかなり天候が激しいから準備万端で望まないとね」


孤高騎士「防寒具、食料、武器のメンテ具、サブ武器…」


冒剣士(考えたら、本格的なクエストはこれが初めてだ。ドキドキしてきた…)ワクワク


オーナー「洞窟の前に、確か山小屋があるはずです。そこは結構広いし、他の冒険者が多いから中継地点にするといいですよ」

孤高騎士「あーあったな」


女メイジ「山小屋があるって…オーナーは猛雪山に登ったことがあるんですか?」

 
オーナー「うん、あるよ。もう25年も近く前になるかな…、冒険者としてね」アハハ

孤高騎士「へえ…そういや、オーナーって何歳なんだ?だいぶ若く見えるが…」

オーナー「俺?俺は今年で41になりますよ」


孤高騎士「はー!?見た目は20台なのになあ…」

オーナー「はは、よく若いって言われます」


魔法使い「私より、旦那さんが若いっていうのも…悲しい気分なんだけど…」

オーナー「そんなことないさ、まだまだキレイだよ」ニコッ

魔法使い「…もー」


孤高騎士「歳とっても仲いい夫婦か、素晴らしいことだと思うがね…」


女メイジ「…」ブスーッ

 
冒剣士「あ、あのー…それでいつ出発を…」


孤高騎士「あ、悪い悪い。それじゃ、出発するかあ…オーナー、大切な従業員、預からせて頂きます」ペコッ

オーナー「うむ!よろしくお願いします」


魔法使い「いってらっしゃいな!」

オーナー「気をつけてなー」

聖剣士「行ってらっしゃい!」


3人「行ってきます!」

 
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…トコトコ

孤高騎士「歩いて7日くらいだな…」

冒剣士「結構遠いですね」

女メイジ「……ゲートを使えれば楽なんですけどね」


冒剣士「ゲート?」

 
女メイジ「冒険の扉のこと」

冒剣士「…何それ」

女メイジ「…」


孤高騎士「簡単に言えば、ワープゲートだ。軍の支部同士を繋いでいる、瞬間移動装置のことだ」

冒剣士「へええ、そんなものあるんですね。一般人は使えないんですか?」

孤高騎士「なんだったかな…、生活に著しく影響を与え兼ねないから、一般公開は抑えてるとか聞いたぞ」


冒剣士「そんな影響与えますかね?」


女メイジ「…たとえば」

冒剣士「?」

 
女メイジ「その技術、それが一般普及したとして…、今"商人"をやっている人たちはどうなると思う?」

冒剣士「あ…」

女メイジ「それと、あれを設置するには相当数な魔石が必要になるの。だから、作られる場所も限定される」


孤高騎士「多大な魔力の影響は、周辺にも色々及ぼすからな」

女メイジ「そうですね。それを悪用してしまう人が現れてしまうかもしれませんし」


冒剣士「なるほどなー…」

女メイジ「それと、60年くらい前にも起きた魔王軍の侵攻…、20年前の塔の暴走とか…、そういう対応に関するところもあると思うけど」

冒剣士「いわゆる天災みたいなやつ?なんで?」


女メイジ「普段から多数の一般人が出入りしちゃうと、軍の緊急出動が対応できなくなるでしょ」

冒剣士「…そうだね」

 
女メイジ「ちょっと考えればわかるでしょ」

冒剣士「う…、そうだね……」


孤高騎士「はは、まぁまぁ。旅は長いんだ、仲良くいこうや」


女メイジ「…そうですね」

冒剣士「…はい」


孤高騎士(やれやれ、パーティはこんなピリピリした空気だと痛い目みるぞ。若いってことなんだろうが…ね)

 
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―――【6日後】


孤高騎士(あれか歩き続けて6日。もうすぐ着くし、少しは良くなると思ったが…)


女メイジ「…」

冒剣士「…」


孤高騎士(相変わらずの無言か…、きっついなー。リーダーとしても…)シクシク


女メイジ「あの…」

孤高騎士「ん?」

 
女メイジ「今回の調査は、どういった内容なんですか?"調査"としか聞いてないので…」

孤高騎士「ああ、猛雪山の山小屋から歩いて数キロの場所に洞窟が発見されたんだ。それの内部調査だよ」

女メイジ「なるほど…、イエティの巣だったりしません?」


孤高騎士「猛雪山はイエティの巣窟だからねえ…、猛雪山の裏側、裏山のほうはアイスタイガーが住んでるけどね」


女メイジ「アイスタイガー…か。洞窟は危険じゃないんですかね?」

孤高騎士「どうだろう。表側の猛雪山は、長年にわたってイエティ程度しか確認されてないから、軍事レベルなんだと思うよ」


冒剣士「軍が調査するわけにはいかなかったんですかね?」

孤高騎士「そうだなー…、正直"探索"は軍の処理じゃないからな。イエティの掃除とかなら軍処理になるんだろうけど…」

冒剣士「そうなんですね」

 
孤高騎士「明日にはふもとの町に着くし、そこで一旦休憩だ」

冒剣士「わかりました」

女メイジ「わかりました」


孤高騎士「それじゃ、もうすぐだからさっさと行くか」


2人「はいっ」

 
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・・・
・・

 
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――――【ふもと・雪降町】


…ワイワイ……ガヤガヤ…


孤高騎士「おー、久々だなこの町も!」

冒剣士「さ……寒い、この時期に雪を見るなんて思わなかった…」

孤高騎士「東方出身だったな、あっちは暖かいんだろ?」

冒剣士「いえいえ、四季があって春はサクラが咲いたり、そりゃまあ見事な…」


孤高騎士「サクラかあ、桜花っていうんだっけか?一度見てみたいんだよなぁ」

 
冒剣士「あはは…、それで、これからどうするんです?」

孤高騎士「ここにも冒険酒場があるからな、そこで宿泊する。出発は明日の朝だ」

冒剣士「今13時くらいですし、だいぶ時間ありますね」


女メイジ「孤高さん…だめ、ちょっと寒すぎる…」


孤高騎士「あー…やっぱり持ってきた防寒具だけじゃ無理だったか…俺は大丈夫なんだがな…」

女メイジ「防寒具売ってますよね…買ってきます…」


孤高騎士(あー…そうか)チラッ

冒剣士「?」


孤高騎士「よしっ!お前らっ!……」

 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


…トコトコ…

女メイジ「…」

冒剣士「…」


…トコトコ

女メイジ「…」

冒剣士「…」


…トコトコトコ…

女メイジ「…」

冒剣士「…」

 
…トコトコ

冒剣士(き…気まずい!しかしなんで…)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
孤高騎士「お前ら!荷物預かっておくから、2人で近くの店で買い物してこい。俺は飲んでる」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


冒剣士(むっせきにんだなぁ…、女メイジに謝りそびれてから何て声かければいいか分かんないし…)

女メイジ「…」


冒剣士(こういう雰囲気苦手なんだよな…どうしたらいいんだろ…)


女メイジ「ねぇ…」

冒剣士「!?」ビクッ

 
女メイジ「私、何かした?この間から、距離感も微妙だし…」

冒剣士「へっ?あ、いや…」

女メイジ「確かに日は浅いとは思うけど、あからさまに避けられてるような気がするんだけど…私のこと嫌いなの?」

冒剣士「ち、違うよ!」

女メイジ「じゃあ何で?」


冒剣士「そのー…えっとさ…、出発する前の日…実は…、トイレに起きて…聞いたんだよ…」

女メイジ「何が?」

冒剣士「僕のせい…なんでしょ?女メイジが悲しんだ理由って…」


女メイジ「…あぁ、あのこと……」

 
冒剣士「だから、謝ろうと思ってたんだけど、中々いい出せなくてさ…」

女メイジ「あのね…、あの…冒剣士…バカなの?」

冒剣士「バ…なんで!?」


女メイジ「確かに冒剣士のせいかもしれないけど、それは実力の世界でしょ。私だって冒険者なの…それくらいは理解してる」

冒剣士「…」

女メイジ「逆にそんな事されたら私怒ってるわよ?なんで負けた相手に情けをかけられないといけないんだって」

冒剣士「…」


女メイジ「だからそういうのは気にしないで。わかった?」

冒剣士「わかった…ごめん」

女メイジ「また!そうやってすぐ謝るクセ、やめたほうがいいよ?」ハァ

 
冒剣士「うん、気をつけるよ…ごめん」

女メイジ「…」

冒剣士「……あ、ああ!また間違った…ごめん!」


女メイジ「あなたのクセ、治りそうにないってのは分かった…」


冒剣士「う~ん…気をつけてみるよ…ごめん」

女メイジ「………それじゃ、さっさと服買って戻りましょっ。寒くてしょうがないの…」ブルブル

冒剣士「そ、そうだね…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ガチャッ


…ガヤガヤ…

孤高騎士「お、帰ってきたか」

冒剣士「うひゃ、酒場のほう凄いお客さんですね」

孤高騎士「まーな、一応ここは観光としても有名な町だし、山岳を登る人らの中継地点だからな」


女メイジ「えーっと…」ゴソゴソ


…ドサッ

 
孤高騎士「ん?これは?」

女メイジ「孤高さんの服も一応買ってきました…よいしょ」

孤高騎士「お、おぉ…ありがとよ」


冒剣士「安く売っててよかったよね」

女メイジ「ほーんとに…」


孤高騎士(お、仲良くなってるじゃねーか。少しはこれでパーティとしても…いい感じだな)


冒剣士「よしっと…これで後は明日、本格的に洞窟に向かうだけですね」

孤高騎士「そうだな、酒場の連中にも今の情報を聞き出したかったからな…、おい、アンタ聞きたいことがある」


???「ん?俺か?」

 
女メイジ「……?どっかで聞いたことある声…」

???「あ…あぁ…?なんで、女メイジがここにいるんだ?」


女メイジ「あーっ!」


冒剣士「な、何なに?」

孤高騎士「知り合いか…?って、あなたは!」


僧侶戦士「……お前ら、なんでここにいるんだ?」

本日はここまでです。
できるだけ毎日更新、1日20~のペースで維持できればいいんですが(A´ω`)

皆さんありです。これから色々展開されていくので…どうぞお付き合いください

 
女メイジ「なんでって…こっちのセリフですよ!」

僧侶戦士「いやいや…、ここ俺の実家あるし…」

女メイジ「あ…そういや雪降村っていってましたね…」


僧侶戦士「久々に親にも顔出しにな」


冒剣士「えーっと…」

僧侶戦士「ん?なんだそいつ」


女メイジ「オーナーのところの新しい専属冒険者です。今回は孤高さんのクエストに同行してます」

 
僧侶戦士「あー…なるほどな。その少年を見ただけで大体どんな事があったか分かるわ…」

女メイジ「たはは…」


僧侶戦士「えーと一応挨拶しておくか。俺は僧侶戦士だ、よろしくな」


冒剣士「えっ!…あの、うちの冒険酒場の専属の…?」


僧侶戦士「ああ、まあ一応な。っていうか、"うち"ってなんだ?」

孤高騎士「女メイジ、教えてやってもいいんじゃないの?」ハハ


僧侶戦士「面白そうだな、話聞くぜ。変わりに、一杯奢ってやるよ」

 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


冒剣士「…っていうことがありました」

僧侶戦士「ははは、なるほどな。アイツらしいな」


孤高騎士「僧侶戦士さん、お聞きしたいことがあります」


僧侶戦士「なんだ?」


孤高騎士「この辺に新しい洞窟がありますよね?その調査に訪れたのですが、何か情報とか知りませんか?」

 
僧侶戦士「洞窟なぁ…んー…」

女メイジ「何でも些細な情報があればいいんですが…」


僧侶戦士「って言っても、俺もここにずっといたわけじゃないし…」

孤高騎士「そうですよね…」

僧侶戦士「ちょっと待ってろ、白魔道ーっ!」


白魔道「…はいはーい!」


僧侶戦士「白魔道、お前だったらずっとここに住んでるし…洞窟の噂って聞いたことあるだろ?」

白魔道「洞窟…、あ~!山小屋から少し離れた場所にあるやつですね?」

僧侶戦士「この3人がその事について聞きたいんだってよ、教えてやってくれないか?」

白魔道「ええ、いいですよ」ニコッ

 
孤高騎士「それじゃ…えーっと、洞窟ってのは広いのか?」

白魔道「広いらしいですよ。周辺にイエティも見られますし、イエティの巣なんじゃないかって話もあります」

孤高騎士「内部に入った人は?」


白魔道「私です」


孤高騎士「えっ?」

冒剣士「へっ?」

女メイジ「ん?」

僧侶戦士「な…に…?」

 
白魔道「私がここでパーティを集ってイエティ討伐に行った時、見つけたんですよ」

孤高騎士「そ、それは話が早い!」

白魔道「って言っても、入ったのは入り口付近までですけどね」


孤高騎士「内部はどんな感じだった?」


白魔道「普通の洞窟となんら変わりませんが…魔石の宝庫ですよあそこ」


孤高騎士「魔石の?」

白魔道「原石の数が尋常じゃなかったです。あそこら辺は開発も進んでなかったですし、もしかしたら鉱脈があるのかもしれません」


冒剣士「鉱脈かあ…」

 
白魔道「そうですね、奥まで行ってないので何ともいえませんが」

孤高騎士「魔石の種類は?」

白魔道「氷属性です。かなり寒いですよ、普通の防寒着じゃ厳しいかもしれませんね」


女メイジ「だから新しいの買っといてよかったじゃないですか!ね?」


孤高騎士「はは…、そうだな。他に何か注意することはあるか?」

白魔道「特にないんじゃないですかね…、ただ…」

孤高騎士「ただ?」


白魔道「今まで、あんな近くに鉱脈があった、入り口があったのが発見されなかったというのが不思議ですね…」


僧侶戦士「まぁ確かにな。不思議だよな」

 
白魔道「天然洞窟ですし、何があるかは分かりません。専門装備ももしかしたら必要になるかもしれませんよ」

孤高騎士「まあ、危ないと思ったら一旦引き返すよ。情報ありがとう」


…ゴゴゴッ


冒剣士「…ん?」

女メイジ「なんか揺れ…」


…ゴゴゴッ!!!グラグラグラッ…


孤高騎士「地震か!」

白魔道「ああ、あわてなくても。最近多いんですよ」


…グラグラ……グラッ…

………


白魔道「ね?おさまりました」

 
孤高騎士「地震なんて久々だ…」


冒剣士「びっくりしたー…」

女メイジ「中央国のほうはあまり地震なんてないから…」

白魔道「こっちも最近多いっていうだけですからねえ…」


僧侶戦士「そういや、地震だけじゃなくて最近は山にも異変があったな」

白魔道「融解地区ですね…」

孤高騎士「融解…地区?」


白魔道「えぇ、万年雪山とも呼ばれた猛雪山ですけど、最近頂上から離れた部分に雪が解けて露出した部分があるんです」

 
孤高騎士「猛雪山に?そんなバカな」

白魔道「バカなも何も…実際あるんですから…」

孤高騎士「原因は?」


白魔道「不明です。その調査も行う予定ですが、一種の天候変化だろうと言うだけで、実際に調査はされていません」

孤高騎士「まぁな、寒い地区が暑くなったり…雪が降る地区に雪が降らないことだってあるわけだし…」

白魔道「ま、そうですね」


僧侶戦士「ふむ…」

 
孤高騎士「よしっと…では、情報ありがとうございました」

僧侶戦士「ああ、気にするな」

白魔道「また何かあったら、お気軽にどうぞ~♪」



孤高騎士「…今日はしっかり休んで明日に備えるか。部屋少なくてな、2人は一緒の部屋とっといたぞ」ニカッ


女メイジ「…え!?」

冒剣士「えええ!?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【部屋】


女メイジ「べ…ベッドがひとつ…」

冒剣士「ど、どうしよっか…」


女メイジ「一緒に寝るなんて嫌ーーっ!あなたは床で寝てよ!」


冒剣士「ええ!?」

女メイジ「レディーファーストでしょ!」

冒剣士「半分ずつ使って寝ればいいじゃないか!」

女メイジ「それは一緒に寝るっていうの!!」


冒剣士「むぅ…」

 
女メイジ「こ、こうなったらあれよ…」

冒剣士「あれだね…」


女メイジ「…」ググッ

冒剣士「…」ゴクリッ

 

女メイジ「ジャーン…!!」

冒剣士「…ケーン!!!」


「ポンッ!!!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


冒剣士「さ…さむっ!」ブルブル

女メイジ「うっさい!寝れないでしょ!」


冒剣士「っていっても、床は冷たすぎるよ…」ブルブル

女メイジ「勝負に負けたら文句いわないの!」

冒剣士「ぐぬう…」ブルブル

 
女メイジ「…」

冒剣士「…」

女メイジ「…」

冒剣士「…」


女メイジ「ねぇ…」ボソッ

冒剣士「ん?」

 
女メイジ「冒剣士は…さ、夢とかあるの?」

冒剣士「夢?」

女メイジ「うん」


冒剣士「夢かぁ…、そりゃやっぱり英雄って呼ばれる事かな?」

女メイジ「ぷっ…」

冒剣士「…何がおかしいのさ」ムッ


女メイジ「ううん、立派な夢だと思うよ…」

冒剣士「…そういう女メイジの夢は何?」

 
女メイジ「私はね…オーナーのお嫁さんになること…とか…?なーんて…」

冒剣士「もうオーナーには魔法使いさんがいるじゃないか…」

女メイジ「夢っていうのは夢だからいいの!」


冒剣士「そりゃそうだけど…」


女メイジ「…」

冒剣士「…」

女メイジ「寂しくは…ない?」


冒剣士「えっ?」

 
女メイジ「冒剣士は遠い…、東方から来たんだよね?その…寂しくないのかなって」

冒剣士「あぁ…どうだろう…、僕は冒険したい一心で中央大陸…、中央国に足を運んだから…」

女メイジ「そっか…」

冒剣士「女メイジは、寂しい?」


女メイジ「…んーん全然?私も冒険したい想いのほうが強いかな…」


冒剣士「…そっか」

女メイジ「…それに、みんな良い人ばっかで…」

冒剣士「みんな、本当に良い人ばっかりだよね」

女メイジ「うん…」


冒剣士「…」

 
女メイジ「…」

冒剣士「…」

女メイジ「…」


冒剣士「そういや、女メイジはどこの出身なの?」

女メイジ「…」

冒剣士「…ん?」


女メイジ「…」

冒剣士「…?」ムクッ

 
……トコトコ…


女メイジ「…」スゥスゥ

冒剣士「なんだ、寝ちゃったのか…」


女メイジ「…ん~……」パサッ


冒剣士「ああもう、寒いのに布団避けて…、きちんとかけないと風邪ひくよ」ハァ

女メイジ「…」


…グイッ

冒剣士「うわっ!」

……ドサッ…

 
冒剣士「寝ぼけてる…?ちょ、この状況は色々とまず…」


女メイジ「お母さん…」


冒剣士「…」

女メイジ「…」ギュッ

冒剣士「…」


…スッ

冒剣士「……、僕も寝よう…。おやすみ、女メイジ」


……トコトコ…パサッ…

 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


……ガヤガヤ…


孤高騎士「よっ、おはよう!」

冒剣士「…」ムニャムニャ

女メイジ「おはようございます!」


孤高騎士「なんだぁ、冒剣士眠そうにして…きちんと寝てないのか?」

冒剣士「いえ…朝にちょっと弱いだけです…」

孤高騎士「これから雪山登るんだからしっかりしろよ!」


冒剣士「…ふぁい……」ムニャッ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


孤高騎士「よし、装備は確認したか?」

冒剣士「大丈夫です」

女メイジ「防寒着もばっちり!」


孤高騎士「よっしゃ、それじゃ…出発だ!」


「オーッ!!」

 
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――――【猛雪山・二合目】


…ヒュウウゥゥ……

…シャクッ……シャクッ…


女メイジ「はぁ…はぁ……」

冒剣士「…はぁ…はぁ…」


孤高騎士「思ったよりも天気が荒れてきてるな。お前ら、脚大丈夫か」

 
女メイジ「アイゼンが重くて…少し辛いです」ハァハァ


孤高騎士「四合目まで登れば山小屋がある。このペースでいけば14時には着けるはずだ」

冒剣士「思ったよりも遠いですね…」

孤高騎士「山は目に見える場所は近いが、実際の距離は半端じゃなく遠いんだ」


女メイジ「空気も薄くなってきてる感じ…」

孤高騎士「もう相当な高さだからな、本当に辛い時は言えよ。仮拠点を張る」


女メイジ「あはは…全然大丈夫ですよ…!」

孤高騎士「…いい覚悟だ。一気に突っ切るぞ!」


冒剣士「はい!」


……ブォォォォォ!!!!!

 
孤高騎士「…ん!?」

冒剣士「今の音…、なんですか?」

女メイジ「遠吠えみたいな…」


…ブオオオオォォォ!!!!!!!


孤高騎士「ち…、イエティだ…」

冒剣士「どこに!」

女メイジ「吹雪がひどくてよく見えない…」


イエティ『…』

孤高騎士「…正面にいるぞ!みんな、一旦屈め!!」


冒剣士「!」

女メイジ「はいっ!」

…スタッ!

 
イエティ『…ブォォォ!!』

…ブゥン!!


…チッ!……

冒剣士「うわっ!かすった!」

女メイジ「くっ…!」


孤高騎士「そのまま屈んでろ!」スチャッ


イエティ『…ブォォ!』

孤高騎士「おりゃあああっ!大突っ!」ビュッ!!!


…ドシュ…!!!

イエティ『ガッ……』


…ドサッ

 
孤高騎士「もういいぞ、顔あげろ」


冒剣士「危なかった…」ハァ

女メイジ「イエティ大きすぎ…」


孤高騎士「今のは奇襲されたが、本来は動きが遅くて弱い魔獣だ。しっかり見切れば簡単に倒せる」


冒剣士「一応、武器は用意しといたほうがいいですよね」チャキッ

女メイジ「…」スッ


孤高騎士「準備も何も…」



…ブオオォォォォ!!!!!!!

 
冒剣士「は、はは…。もしかして、吹雪の向こう側にいる影…」

孤高騎士「2…3…4…、数え切れねえなあ?集団でやってきやがるとは…」

女メイジ「…こんなところで……絶望的…?」


孤高騎士「冗談、こんなの練習相手にすらならないぜ…しっかり着いて来いよ!お前ら!」

冒剣士「もちろんです!」

女メイジ「…はい!」



…ダダダダッ!!!!

……………………

本日はここまでです。ありがとうございました。

 
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――――【四合目・山小屋】


冒剣士「はぁはぁ…」


…ガチャッ……


女メイジ「つ…着いた……」

孤高騎士「ふぅ、とりあえず休憩はとれるな」

冒剣士「女メイジ、大丈夫…?」


女メイジ「なんとかね…」

孤高騎士「しかしお前ら、ケガ一つないっていうのは中々だぞ」

 
冒剣士「当然ですよ…」

女メイジ「あんなのにやられるわけないですよ…」


孤高騎士「はは、そうだな。よし…えーと…開いてる部屋は…」キョロキョロ


冒剣士「思ったより人少ないですね。猛雪山は冒険者も多いって聞いたのに…」

孤高騎士「そりゃ尾根だからなこっちは。新しいルートが開拓されてから、こっちの尾根ルートはほとんど人がいなくなっちまったらしい」


冒剣士「昔はいたんですか?」

孤高騎士「冒険学校のクエストにも使われたり、裏山へ抜けるのはこの道しかなかったからな。商人なんかも多かった」

冒剣士「へぇ…」


女メイジ「それより…腰を降ろしたいんだけど…」

 
孤高騎士「とりあえず部屋探してくるから待っててくれ」タッタッタ…


女メイジ「山登りなんて久しぶりだから…疲れたぁ…」

冒剣士「足がジンジンするよ…」


…タッタッタ

孤高騎士「部屋は空いてるみたいだったな。とりあえず今日はここで休んで、明日の朝早く出発するぞ」


冒剣士「まだ時間ありますが、向わないんですか?」

孤高騎士「あほ、山舐めるな。それに吹雪が遮って、普通よりも離れたルートを行くと危険なんだ」

女メイジ「それに体力もだいぶ削られちゃったし、今行ったら死ににいくようなものでしょ…」


冒剣士「なるほど…」

 
孤高騎士「さて…、冒険の前の豪華な晩餐だ!」

女メイジ「?」

冒剣士「?」


…ゴソゴソ……ドサッ

孤高騎士「高級フィレ肉、猛雪山の雪解け酒、調味料とか調理道具は山小屋にあるのを借りてやるぞ!」


冒剣士「わっ、どうしたんですかこの食材…」

孤高騎士「バーカ、こういう時こそ旨いもん食って、力つけて、後悔のない戦いをするんだ」

冒剣士「…?」


孤高騎士「……俺らはな、生死が関わる稼業をしているんだ。戦いの前は景気づけするのが普通なんだ」

 
冒剣士「…そう、でしたね……」

孤高騎士「女メイジ、あそこにある調理器具持ってきてくれ」

女メイジ「あ、はい」


…タッタッタ……カチャカチャ…


孤高騎士「明日の夜にはもうこの世にはいないかもしれない、もう二度と戦えない体になっているかもしれない…」

冒剣士「…」

孤高騎士「っと、まぁ怖いことばっかじゃないんだが…、とにかく戦いの前夜、冒険の前夜には旨いもん食っておくってのが良いんだ!」ニカッ

 
冒剣士「は、はい!」


女メイジ「お待たせしました、これでいいですか?」ドンッ

孤高騎士「おおう上等上等、ありがとよ。それじゃ、旨いモン食わせてやるからな!」

…カチャカチャ……

……ボワッ………


女メイジ「火…あったかいね」

冒剣士「…うん」

女メイジ「…」

冒剣士(…本当に、僕の全てが始まったんだ…!がんばるぞ…)

 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


……モゾモゾ…


冒剣士「…」

……


冒剣士「…」ハッ


…ガバッ

 
冒剣士「…」キョロキョロ


女メイジ「…」スゥスゥ

孤高騎士「…」グー…グー…


冒剣士「…今、何時だろ…」

…コチコチ…


冒剣士(午前4時か…、折角だし、朝の山景でも見るか…)

…スッ

……ギシ……

トコトコ……ガチャッ……バタン

 
……ヒュウウゥゥ…

冒剣士(寒っ…、陽は出てるけど…完全に風がとろんだ訳じゃないみたいだね…)


…ガタッ……

冒剣士(ん?)チラッ


………シーン


冒剣士(今何かいたような…、気のせいかな?)キョロキョロ

…シーン………


冒剣士(気のせいか…)

…ガチャッ

冒剣士(ん?)

 
孤高騎士「おお、寒い寒い」フゥッ

冒剣士「あ、孤高さん…もしかして起こしちゃいましたか?」


孤高騎士「ん?あぁ違う違う、単に早起きなだけだ」

冒剣士「そうですか、それならよかったです」ハハ


孤高騎士「お前も早いじゃないか…」

冒剣士「ちょっと眼が冴えてしまって…、あはは」


孤高騎士「しっかり休むことも冒険者、戦士の基本なんだがなあ」ジロッ

冒剣士「うっ…す、すいません…」

 
孤高騎士「ま、仕方ねーわな」フゥッ

冒剣士「…」

孤高騎士「…」

冒剣士「…」ジー

孤高騎士「……ん?どうした?」


冒剣士「いえ、孤高さん、かっこいいなって何か…」ヘヘ

孤高騎士「…そうか?ありがとよ」フッ

冒剣士「…孤高さんって、孤高って感じ、しませんよね」

 
孤高騎士「ん?あぁ……コリャもともと俺自身がつけた名前じゃないからな」

冒剣士「そうなんですか?」

孤高騎士「あぁ。ま…いいじゃねえか、気にするな」


冒剣士「…」

孤高騎士「…」

冒剣士「…は…はい」


孤高騎士「…はぁ、参ったね。そんなに気になるのか?」


冒剣士「不本意…ながら」

 
孤高騎士「ん~…。じゃあ一つだけいえば、この名前は俺のキズ、みたいなもんだ」

冒剣士「キズ…」

孤高騎士「すまねえな、それ以上はまだ言う気にならないんだ」


冒剣士「いえ…、キズだなんて…。訊こうとした僕も浅はかでした…」

孤高騎士「はっは、気にするな。ま…、そのうちふっと言うさ」

冒剣士「はいっ」


…ヒュウウッ!!!


孤高騎士「お…風がまた少し出てきたな」

冒剣士「…ちょっと寒くなりました。まだ時間がありますし、僕はもう一眠りしてきます」ペコッ

 
孤高騎士「ああ、時間になったら起こす。ゆっくり休んどけ」

冒剣士「はい、また後でです…」


…ガチャッ…バタン


孤高騎士「…」

…ヒュウウウウッ……


孤高騎士「……キズ、だよな」

  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


孤高騎士「おはよう、諸君!」

女メイジ「おはようございます、いよいよ今日ですね」

冒剣士「不謹慎ながら、ちょっと楽しみな気がしてきました」ワクワク


孤高騎士「はは、不謹慎じゃないさ。探索…冒険することは、俺たちの血、元気の源だ!」

冒剣士「…」ウズッ


孤高騎士「生死の問題っていうのは、昨日は重く言ったが、あくまでも"一つのエンディング"っていうだけで、本質は戦う事、冒険することにある」

冒剣士「そうですよね!」

孤高騎士「結構重く受け止めすぎないか心配してたが…、心配無用だったみたいだな」

 
冒剣士「あったりまえですよ!」

孤高騎士(ま、そういやさっきもそんな様子はなかったしな…)


女メイジ「それで、どうしますか?もう出発します?」

孤高騎士「えーと…、外の風も穏やかになってるしな。出発だ!」


冒剣士「はいっ!」

女メイジ「はい!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【猛雪山・洞窟前】

…ザッ…ザッザッザ…


冒剣士「ふぅ、思ったより遠かったですね」

孤高騎士「だから言っただろ?遠いんじゃなく、雪に足を取られて…山の傾斜やらで体力を奪われるんだ」

女メイジ「それで…ここが洞窟なんですね…」


…オォォォォ…


女メイジ「暗っ…、全然中が見えない…」

冒剣士「雰囲気もなんか怖いね…」

 
孤高騎士「まぁな、"白坊主"だっけ?あの女が入り口付近まで入った以外、未踏の地だからな。何が出るか分からないワケだ」

冒剣士「白魔道さんです…。女性ですよあの人…」

女メイジ「未踏…か」


孤高騎士「君ら、そして俺はこの未開の洞窟の…第一探検者になるわけだな!」


冒剣士「第一…探検者!」

女メイジ「…」ドキドキ


孤高騎士「よし、いざ出発だ!魔力の消費を抑える為に、ランタンを使って進むぞ」

冒剣士「…わかりました」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

冒剣士「…」

女メイジ「…」

孤高騎士「…」


ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…


冒剣士「心なしか、外より寒い気がします」ブルブル

女メイジ「ぼ、冒剣士も…?私も…」ブルブル


孤高騎士「いや、気のせいじゃないな」


 
冒剣士「え?」

孤高騎士「これを見てみろ…」スッ


…ガリガリ……キラッ…


女メイジ「わっ…小さな石が光ってる…?」

孤高騎士「…明かりを消すぞ。周りを見てみろ」


…フッ………


冒剣士「わあ…」

女メイジ「っ…!」

 
……キラキラ…

ピカッ……サァァ…キラッ…


冒剣士「洞窟の中全体が…小さな輝きが…」

女メイジ「これって…もしかして…」


孤高騎士「白坊主が言ってた氷の魔石の原石だ。岩肌に隠れてるが、巨大なもんがゴロゴロしてやがる」


女メイジ「それで冷気を放って…寒いんだ…」

冒剣士「白魔道さんです…」


孤高騎士「まだ裏側に隠れてるからいいが、表に突起し始めたら、さすがに"抵抗魔法"の展開がないと進めなくなるな」

冒剣士「とりあえずゆっくり進んで状況を見ましょう」

孤高騎士「ああ、そうだな」


…ザッザッザッザ…

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


…ズルッ!!

冒剣士「うわっ!」ドテッ


女メイジ「ちょっと、大丈夫?」スッ

冒剣士「いてて…ありがとう」ギュッ


孤高騎士「大丈夫か…って、うおっ!」ズルッ


女メイジ「孤高さんまで…って、きゃあ!」ズルッ


冒剣士「この辺…よく滑るね…」

 
孤高騎士「んー…?…確かにこの辺がぬかるんでるな…」ヌルヌル

女メイジ「おかしいですね…」イタタ

孤高騎士「そうだな…」


冒剣士「何がおかしいんです?」


女メイジ「あのね…さっきあった氷の魔石の冷気がここにはないのよ」

冒剣士「あ、あーー!」

孤高騎士「…もう1度明かりを消すぞ」


…フッ……

冒剣士「あっ…!」

 
孤高騎士「…みろ!」

女メイジ「冒剣士が転んだ辺りから、途切れたように魔石の輝きがない…」

孤高騎士「鉱脈が途切れてるのか…?」


女メイジ「…」スッ

ガリガリ…ヒョイッ…


女メイジ「いえ…、原石の魔力が失われてるだけみたいです。これ…原石ですよね」スッ

孤高騎士「天然の魔力が失われるだと…?どういうことだ?」


冒剣士「天然の原石が失われることって、珍しいことなんですか?」

 
孤高騎士「少なくとも、有り得ないな。原石は、魔力を溜め込むのが普通だ。放出なんて聞いたことないが…」

女メイジ「…」


冒剣士「あ、そういえば白魔道さんが"雪が解けて露出してる部分がある"って、これが原因なんじゃないですか?」

女メイジ「そういえば言ってた!」

孤高騎士「ハハーン…ってことは、万年雪山になっている原因は、この大量の原石たちってことか…」


女メイジ「でも何で放出が…?」

孤高騎士「難しい問題だな…だが、雪山の問題の1つになっていた"謎の融解地区"っていう原因は分かったわけだ」


冒剣士「こういうのを、報告していくのが僕らの役割でもあるんですね」

 
孤高騎士「ま、そうだな」

女メイジ「探索での成果はまずは少しだけ挙げれたかな…」


孤高騎士「しかし…放出か…原石が…。そういや、魔石の特性で、強制的に魔力が失われた石は、もろいって聞いたが…」

ググッ……ボロッ…


孤高騎士「っ!?」

冒剣士「握ったら…石が砕けた!?」

女メイジ「ってことは…もろい…石?」


孤高騎士「はは…おいおい、洒落にならないぞこりゃ…。…何かが、原石の魔力を奪い取ったんだ…」

 
冒剣士「何かがって…何がです?」

孤高騎士「分からないな、少なくとも入り口からココまでは原石の魔力が残っていた」

女メイジ「と、すると…逆ですね」

孤高騎士「そう…、この魔力の失われた原石が続く道の先に…何かがあるってことだ」


冒剣士「…」ゴクッ


女メイジ「…どうします?」

孤高騎士「危険かどうかは全く分からないが…、ここからは慎重に進もう」

冒剣士「…はい」


…ザッ……ザッ…ドロッ………

…………………………………

 
…ザッ…ザッ…ドロッ……ドロッ…


孤高騎士「下へ向ってるな。深いぞ…」

女メイジ「さっきより道のぬかるみが酷い…完全に氷の魔力が失われてるんですね」

孤高騎士「…」


……ドロッ…ドロッ…


冒剣士「…」


…ドロッ…ドロッ…


女メイジ「…」


ドロッ…ドロッ………ザッ…ザッ…

 
女メイジ「あれ?道のぬかるみが…」

孤高騎士「ん?また道が凍り始めてるな」


冒剣士「融解地区を抜け…うわっ!」ツルッ

…ズザザーッ!!


冒剣士「ちょ!急に氷が…すべ…うわああああっ!」


女メイジ「冒剣士!!」

孤高騎士「おい!そこ穴になってるぞ!!落ちちまう…早く止まれ!」


冒剣士「って言ってもつかまる場所がないですうぅ!」

 
女メイジ「このロープに捕まって!」ビュッ

…ビューン…ガシッ!!


冒剣士「たすかっ…」グイッ

…ドサッ

冒剣士「どさっ…?」


女メイジ「ちょっとおお!強く引っ張ったから転んじゃったじゃない!」

…ズザザザザーッ!!!

冒剣士「女メイジまで滑ってきたー!?」


孤高騎士「お、お前ら…」


2人「穴に落ちるーーーーっ!」

 
…スポッ……ヒュゥゥゥ…

…ウワアアアアアアッ!!
…キャアアアアアッ!!!



孤高騎士「って、見てる場合じゃねえな!今行くぞ!!」ダダダッ

…ズザザッー!!!

……スポッ………ヒュウウウ!!!

本日はここまでで終了です。ありがとうございました

今日はお休みかな?
まあ毎日あのボリューム更新し続けるだけで凄いと思うw

皆さんありがとうございます。
>>228 
いえいえw一応毎日朝6時~昼12時までの間の更新ですので。
休むときは前日かその日に言います(A´ω`)

 
…ドサドサッ!!!


冒剣士「いってて…」

女メイジ「あんたがクッションになってくれて助かった…」

冒剣士「重いって!早くどいてって!」ググッ


女メイジ「なっ…重いって何よ!って、どこ触ってんの!!」

冒剣士「脚が圧迫されて痛いんだって!」

女メイジ「ちょっ…そこはダメだってば!」

冒剣士「わかんないから!」


…ヒュウウウウ!!

女メイジ「!」ハッ

 
…スッ

冒剣士「やっとどいてくれた…」


…ドスン!!!

冒剣士「…」ピクピク


孤高騎士「ん?おお…冒剣士、下敷きにしてしまったか…大丈夫か!」

冒剣士「お…重いんで早くどいてください…」


女メイジ「せ…セーフ!危なかった…」

冒剣士「僕は…アウトだけどね…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


…ヒュウウ……

冒剣士「…それで、だいぶ落ちましたねー…」

孤高騎士「登れない距離ではないが…しっかし広い場所だな。向こう側までドーム状になってるな」


女メイジ「ここは氷がちゃんと張ってるけど…風も吹いてる?」

孤高騎士「どこか出口があるのかもしれないな」

女メイジ「う~ん…」


冒剣士「…ん?」

女メイジ「どうしたの?」

 
冒剣士「あのさ…僕らが落ちたところ…見て」

孤高騎士「?」チラッ

女メイジ「…」チラッ


…ボロッ……


孤高騎士「…っ!」

女メイジ「ちょ、これって原石!?ボロボロ…」

孤高騎士「…そんなバカな!」

…ガリガリ……


孤高騎士「…この辺の原石も全て魔力が失われてやがる!」

 
女メイジ「え、じゃあ…この寒さは…?氷は?」

孤高騎士「この辺一帯が氷に覆われてるのに、原石がない…?単純な山の温度の問題か…?」

女メイジ「それだったらさっきの原石がなかった場所も凍ってないと…」


孤高騎士「それより何より、ここでも"魔力がない原石"があることが問題だ」

冒剣士「じゃあ、この辺を凍らせている原因は一体…」



……ガアアアアアッ!!!!

孤高騎士「!」

冒剣士「!」

女メイジ「!」

 
孤高騎士「っち…今の叫び声は…」

冒剣士「な、なんですか!?」

女メイジ「…!?」

孤高騎士「……アイスタイガーの叫び声だ」


冒剣士「アイスタイガー…!」


アイスタイガー『ガアアアッ!!!』


女メイジ「こ、声が近い!」

冒剣士「ど、どこにいるんだ!」

孤高騎士「あわてるんじゃない!落ち着いて、まずは周囲の状況を把握するんだ!」

 
冒剣士「は、はい!」

 
女メイジ「…」ハァハァ

冒剣士「…」

孤高騎士「…」キョロキョロ


アイスタイガー『グウウ…』


冒剣士「…」

女メイジ「…アイスタイガーの息遣いが聞こえる…」


孤高騎士「…」ハッ

 
冒剣士「い、いた!正面…あそこです!」


孤高騎士「武器を用意しろ!」スチャッ

冒剣士「はい!」チャキッ

女メイジ「わかりました!」スッ

 
冒剣士「…」ゴクッ


アイスタイガー『…ガアアッ!!』ギロッ


孤高騎士「こっちに気づいた!くるぞ!」


アイスタイガー『グウウアアア!』

……ダダダダダッ!!!

 
…ミシッ


冒剣士「…ん?」


ミシミシッ…グラ…グラグラグラグラ!!!


孤高騎士「こ、ここで地震!?」

女メイジ「きゃああああっ!」

冒剣士「くっ!」



アイスタイガー『…グウアアアア!!』


孤高騎士「地震にアイスタイガー…!こりゃちょっとマズいんじゃないの…ん!?」

 
…ドゴォォン!!!

アイスタイガー『ガアアッ…!!』

…ズザザザッ……



冒剣士「あ…アイスタイガーが吹き飛んだ!?」

孤高騎士「一体何が起きた!?」

女メイジ「ゆ、揺れがひどくて…」グラグラ


アイスタイガー『ガッ…』ギロッ


孤高騎士「あいつ、どこを見てる!?」

冒剣士「僕たちじゃないです!右側を見てま…す…」

 
ドォン…グラグラ…ドォン……グラグラ…ピタッ…

???『…』

アイスタイガー『グルル…』ギロッ



冒剣士「な…んだあれ…」

孤高騎士「笑うしかねーな…、そうか…全部わかったよ…」

女メイジ「揺れが…収まった…?」


孤高騎士「あれ、見てみな…」

女メイジ「…?」チラッ



???『…』

 
女メイジ「ひっ…!」
 
冒剣士「あれ…なんですか…?」


孤高騎士「"巨人族"…、氷の巨人のフィルボルグだ…。俺も初めて見る…」


フィルボルグ『…』


女メイジ「…っ」

孤高騎士「地震の原因はあいつが暴れてる影響だ。暴れる度に魔力が暴走してたんだ…」

冒剣士「…」


孤高騎士「それと…あいつは氷の魔力を吸収し、自らの体内から放出する。原石が砕け、融解したのはその影響だろう…」

女メイジ「この辺の原石が全滅してたのに、氷が張付いてるのは放出の影響ってことか…」

 
冒剣士「それで…どうすればいいんですか僕らは…」ガクガク

孤高騎士「とりあえずあの2匹の様子を見よう…」

女メイジ「…」ゴクッ


フィルボルグ『…アァァァッ!!!』ビリビリ

アイスタイガー『グウオオオオオッ!!!』ビリビリ



女メイジ「み、耳があああ!」

孤高騎士「くっ…」

冒剣士「…っっ!」

 
フィルボルグ『…』ビュッ

…ドゴォォ!!!


アイスタイガー『グアアッ!!』

フィルボルグ『…アアアアッ!!!』ブゥン!!

…ドシュッ…

アイスタイガー『ガッ…』


孤高騎士「手刀でアイスタイガーの体突き刺しやがった…」

冒剣士「魔物同士の打ち合いってことですよね…一体これは…」

孤高騎士「さあな…」

 
フィルボルグ『…アアッ!!』

…ズブッ……ジュプッ…ドロッ…


アイスタイガー『…』


孤高騎士「な、何やってやがる…」

冒剣士「アイスタイガーの体から何かを探してる…?」

女メイジ「気持ち悪い…」


フィルボルグ『……』ジュポッ…


…ドクン……ドクン…

  
冒剣士「し…心臓を取り出し…」オエッ

女メイジ「一体何を…」ブルブル

孤高騎士「アイスタイガーの心臓…氷のようだな…」



フィルボルグ『…』バクッ…


孤高騎士「く、食いやがった…」

冒剣士「うぇ…おええぇっ…」

女メイジ「もうだめ…」オエッ…



フィルボルグ『…』ジュルッ…


孤高騎士「…」

 
フィルボルグ『…』ギロッ


孤高騎士「俺らも…殺されるのか…」

冒剣士「はっ…はっ……」

女メイジ「…」


フィルボルグ『…』

ドォン…ドォン…グラグラ……ドォン…



孤高騎士「こっちに来る!…お前ら、早く立て!逃げるぞ!」

冒剣士「足が…動きません…」

女メイジ「…」

 
孤高騎士「ちっ…何してる!死ぬぞ!!」


冒剣士「…」ブルブル

女メイジ「…」グスッ…ヒクッ…


…ドォン…グラグラ…


フィルボルグ『……』


孤高騎士「もう…ダメか…」


…スチャッ

孤高騎士「だがな…、俺だって冒険者の端くれ…抵抗くらい…してやるぜ!」

 
冒剣士「…」ガクガク

女メイジ「もう…だ…め…」ドサッ



フィルボルグ『…』


冒剣士(僕…初冒険で…終わりか…)

フィルボルグ『…』


女メイジ「…」

孤高騎士「…」


冒剣士(…もっと、冒険したかったなぁ………)

 
フィルボルグ『……怯えるな、人間よ』

冒剣士「…っ!?」

フィルボルグ『私はフィルボルグ。巨人族の1人である』

冒剣士「しゃべっ…た…?」


フィルボルグ『…』

冒剣士「…」


フィルボルグ『…こちらでは60年前か。私は、魔術師らに封印され、この山で長い眠りについていた』

冒剣士「60年前…って、魔王が攻めてきたっていう…」


フィルボルグ『結界の力が弱まり、やがて解ける時間が訪れた。だが、力を失いつつあった私は、ここで雪の魔物達を食したのだ』

 
冒剣士「…」

フィルボルグ『今、世界はどうなっている?』

冒剣士「…」

フィルボルグ『あれから数十年、私が山から降りることは問題ないのか。共存はされているのか…、魔界はどうなっているのか』


冒剣士「え…えと…」


フィルボルグ『まぁ…お前たちが私に刃を向けた。それだけでどういう事かは察しがつくがな…』

冒剣士「…」

フィルボルグ『…』


冒剣士「あの…僕たちは殺される…んですか…?」

フィルボルグ『…殺してほしいのか?』

 
冒剣士「そ、そんなわけ…!」


フィルボルグ『…』チラッ

孤高騎士「…」



フィルボルグ『……殺しはせぬ…』

冒剣士「!」

フィルボルグ『…信じられぬかもしれぬが、無闇な殺戮は好まぬ』

冒剣士「…」

フィルボルグ『…』


冒剣士「ううん…信じます」

 
フィルボルグ『ほう…』

冒剣士「アイスタイガーを吹き飛ばす威力で孤高さんを叩いたら、きっともう…だめだったと思う。けど、加減してくれたんですよね…信じる理由は充分です」

フィルボルグ『…なるほどな』


冒剣士「はいっ。それと…フィルボルグさん…ですよね」

フィルボルグ『…なんだ?』


冒剣士「この場所のことは誰にも言いません。ですが、地震を起こしたり、できるだけ原石を壊すのはやめてくれません…か?」

フィルボルグ『…それを守れば、私の存在を言わないと?』

冒剣士「はい。あなたは僕たちに危害を加えようとはしなかった。ただ暮らしているだけ…、それを侵害する理由がないです」


フィルボルグ『ふふ…はははは!』ビリビリ

 
冒剣士「…!」キーン


フィルボルグ『今度は私がそれを、信じろと?』

冒剣士「…」

フィルボルグ『…』


冒剣士「僕は殺戮を好まないと言ったあなたを心から信じました。いえ、信じています」

フィルボルグ『…』

冒剣士「話してみて、あなたがきっと良い方なんだろうなって…思いました」

フィルボルグ『…」

冒剣士「上手く言えないですけど…だから、僕があなたを信じるように、あなたも僕を信じてください」


フィルボルグ『ふむ…』

 
冒剣士「ただ、地震や融解を起こすと、やがて他の冒険者や調査隊が入ることになります。だから、それは出来るだけ抑えてください…」

フィルボルグ『…』

冒剣士「だめ…ですか…?」


フィルボルグ『…』

冒剣士「…」

フィルボルグ『…』

冒剣士「…」


フィルボルグ『…面白い子供だ。私も信じてやろう」

 
 
冒剣士「ありがとうございます!」

フィルボルグ『しかしなぜ、お前は私の居場所を知らせないようにしようと思ったのだ?』

冒剣士「僕たちを逃がす事もですが、あなたはアイスタイガーを倒し、結果的に助けてくれました」


フィルボルグ『…まあ、そうなるな』

冒剣士「それに応えるのは当然だと思います」ニコッ


フィルボルグ『はは、そうか』

冒剣士「さてと…そろそろ戻らないと、夜道になったら危ないですし…」

 
フィルボルグ『…そういえば、お前たちはどこから来たのだ?』

冒剣士「ここから南側のふもとの雪降町です」


フィルボルグ『そこの2人を担ぎ、出口まで案内をしよう。私の魔力で出入り口は吹雪で見えないようになっている』

冒剣士「…そうなんですか」

フィルボルグ『そこからは面倒は見れぬ。その2人は自分で何とかすることだ」

冒剣士「大丈夫です、ありがとうございます」


フィルボルグ『あぁ…、では、着いて来い」

冒剣士「…はい!」

 
…トコトコ……

冒剣士(そういえば、猛雪山側の入り口は…吹雪が少なくなったのは何でなんだろう…な)

フィルボルグ『…』

冒剣士(まさかフィルボルグさんが入り口側をわかるように…?いや、そんな危険なマネはするわけがない…ん?)


…コソッ


冒剣士(誰かいる…?)

フィルボルグ『どうした?』

冒剣士「…」キョロキョロ


…シーン

 
冒剣士「これは…?」

フィルボルグ『ここで見つけた。何に使えるかはわからぬ。だが、私が持っているよりはマシだろう』

冒剣士「…はい」


…キラッ

冒剣士「綺麗な玉だな…、ピカピカに光ってるや…」

フィルボルグ『…それではな。機会があれば、また会おう』

冒剣士「…はいっ!」ペコッ


…ズシン……ズシン……ズシン………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

本日はここまでです。ありがとうございました。

 
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――――【8日後・中央国冒険酒場】


オーナー「…なるほどね。そりゃ報告できないね」

孤高騎士「命を助けられたのは本当だし、今回の調査は失敗扱いになっちまうよなあ?」

冒剣士「…申し訳ないです、僕のせいで…」


孤高騎士「いやいや、あのフィルボルグも俺ら気絶してて話聞けなかったが…、俺らが生きてる事が、お前の話が真実だって伝えてるだろう」

オーナー「しかし参ったな、どう報告するべきか…」

 
女メイジ「失敗したと報告すれば…」

オーナー「ダメだ。そうすると、そのフィルボルグさんに改めて別の冒険者が向かってしまう」

女メイジ「謎の解明はしたけど、そういう理由じゃあね…」

冒剣士「うん…」


孤高騎士「どうしたもんかね…」

冒剣士「アイスタイガー…」ボソッ

オーナー「ん?」


冒剣士「アイスタイガーの巣にして、アイスタイガーが原石を食べていたとか…そういう話じゃ…ダメですかね…?」

オーナー「…ふむ!」

冒剣士「そうすれば、一般冒険者も近づかないし、原石のなくなった鉱脈は掘られなそうだし…」

 
オーナー「なるほど!異種がいたってことにすればいいか!」

冒剣士「い…異種?」

オーナー「魔獣、魔物には必ず異種がいてね。普通と違う特性を持つ相手なんだ。原石を吸収する力を持つアイスタイガーがいたってことにしよう!」


冒剣士「…!」

孤高騎士「はっは、お前も考えるときは考えるじゃねーか!」

女メイジ「ちょっとだけ見直したかも?」アハハ

 
オーナー「そういえばさ、さっきの話で出た…玉っての見せてくれる?」

孤高騎士「おお、そうだ。俺らもまだ見てなかったんだ。見せてくれ」


冒剣士「あ、はい…」ゴソゴソ

…コロンッ


オーナー「…っ」

女メイジ「宝石みたい…」

孤高騎士「…すげえな……引き込まれそうだ…」


冒剣士「一体何をするものなんですかねぇ」

 
オーナー「…うーん、ちょっと調べたいから少し貸しててくれるかな?」

冒剣士「別に、いいですが…」

オーナー「よし、ありがとう。それじゃ、冒剣士はプレートの手続きがあるから俺の部屋まで来てくれる?」

冒剣士「あ、はい。じゃ皆、ちょっといってくるよ!」


女メイジ「はーいっ」

孤高騎士「おう!」


……トコトコトコ…

 
…ガチャッ

冒剣士「失礼します」

オーナー「…まあ座って」

冒剣士「…はい」


オーナー「さて…ここなら誰もいないな。この玉なんだけど…」


冒剣士(え?プレートの話じゃない…?)


オーナー「本当にその巨人族から貰ったんだね?その洞窟の奥で…」

冒剣士「そ、そうですけど…」

オーナー「フィルボルグにあった場所からそこから出口は近かったのかな?」

冒剣士「いえ、少しだけ歩きました」

  
オーナー「と、すると裏山のほうか…。裏山の調査はそれなりだし…巨人族やアイスタイガーの住む穴ならすぐ分かるはずだ…」ブツブツ

冒剣士「…?」

オーナー「おかしいとは思わないかな?」

冒剣士「何がですか?」


オーナー「俺らが任されたクエストは"未踏、未開発の洞窟の調査"だったはず」

冒剣士「そうですね…」

オーナー「なら、なぜ……人工物のような"コレ"がそこにあったんだ?」

冒剣士「あ…!」

 
オーナー「吹雪で隠していた…という話もおかしい。それはフィルボルグがおこした嵐だろう?」

冒剣士「はい」

オーナー「なら、目覚める以前にそんな巨大な洞窟は見つかってもいいはずだ」

冒剣士「…!」


オーナー「つまり、吹雪はその前から吹き続けていた…ということになる。わからないな…」

冒剣士「…」

オーナー「…いや、宛がないという訳じゃない。この玉の存在も…」


冒剣士「その玉、何か知ってるんですか?」

 
オーナー「知ってるというか、聞いたことがある。今はないが、魔力を肥大化させる"宝玉"という存在があると」

…コロコロ…キラッ…


冒剣士「宝玉…」

オーナー「もちろん、魔力が増大する技術は今日という日に存在していない」

冒剣士「昔はあったんですか?」


オーナー「古代にはあったらしい。使い方も分からないけどね…」

冒剣士「…じゃあ、その宝玉が"ソレ"だと?」


オーナー「確証はないけど、昔読んだ本にそれに近いことが書いてあった。自然に隠された秘宝だってね」

 
冒剣士「…でも、まさかそんな簡単に秘宝が見つかるはずが…」

オーナー「宝物や、歴史の残るものは…ひょっこり出てくるものさ」

冒剣士「…」


オーナー「未来で……見たことが…あ、いや。何でもない。つまり、もしかしたらコレは歴史に名を馳せるモノかもしれないってことさ」

冒剣士「…歴史に名を馳せるモノ…」


オーナー「ま、使い方が分からないんじゃ意味がないけどね!…返すよ」スッ

冒剣士「これ…僕が持ってていいんでしょうか…?」

オーナー「君が貰ったものだからね…大事にするんだよ」ニコッ

冒剣士「わかりました…」


オーナー「彼らは本来戦いを好まない優しい素晴らしい種族なんだ。だから、そのプレゼントにもきっと意味があるはずだよ」

 
冒剣士「オーナーは巨人族のことを知ってるんですか?」

オーナー「あーいや、直接的にかかわったことはないけど、同位の他の神獣らとは交流があった時もあったよ」

冒剣士「神獣…!」


オーナー「ああ。ま、色々やってきたからね~」アハハ

冒剣士「凄いんですねオーナー…もしかして、ものすごい冒険者だったんですか…?」

オーナー「あっはっは、いやいや、俺はただの冒険酒場の親父だよ」


冒剣士「…」

オーナー「しかしこの部屋暑いな…、ちょっと窓あけようか」


…ガラッ

 
……ビュウウウッ!!!

オーナー「うわっ!風が!」


…カランッ……カランカラン…

バサバサッ!!


冒剣士「オーナー、書類と何か落ちましたよ…」

オーナー「あらら…、よいしょ…」


冒剣士(…何だこれ、プレート…?)

…キラッ

冒剣士(銀…じゃない。白でもない…、金色でもない、何だこの色…)

オーナー「よいしょっと…、ごめんごめん、そこらへんに散らばってる書類も拾ってくれる?」


冒剣士「あ、は、はい」

 
…パサッ…ペラッ…

冒剣士(クエスト受諾書…、予約証明書…、納税報告書…、色々大変なんだなオーナーも…)


…ペラッ…

冒剣士(ん?なんだこの真っ赤な封筒…)

オーナー「あ、それは国家クエストの受諾書だね。最重要書類だから…」

冒剣士「わかりました」


…チラッ

冒剣士(内容…人物の調査、探偵…、密偵…?これが国家クエスト…?)

オーナー「おーい、まとまったらこっちに持ってきて!開いて読んじゃだめだよ!」

冒剣士(ま、いっか)


…トコトコ…パサッ

 
オーナー「ありがとありがと!それじゃ一旦戻ってて、今日は休んでもらうからね」

冒剣士「仕事はしなくていいんですか?」

オーナー「さすがにクエスト帰りじゃ休ませるよ」アハハ

冒剣士「そうですね…さすがに疲れました」アハハ


オーナー「聖剣士がきたら、初クエストのお祝いに盛大なパーティを開かせよう!」

冒剣士「…そうやって、騒ぎたいだけじゃ……」ジー


オーナー「…ばれた?」


冒剣士「ばれますよ!あははっ!」

オーナー「はははっ!」

 
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――――【数日後】


…ガヤガヤ……

お客A「こっちに酒と、今日のオススメメニュー!」

お客B「こっちは鴨肉と、スモークサーモンくれー!」


冒剣士「はーい、ただいまー!」

女メイジ「豚肉のソテーを注文されていた方、お待たせしましたー!」


オーナー「…で、彼はまた倒れちゃって」アハハ

お客C「そりゃ面白い!」アハハ

 
女メイジ「オーナーも忙しいんだから働いてくださいよっ!」


オーナー「お、おおすまん!」

お客C「部下に叱られてちゃ世話ないな!」

オーナー「まったくですね!」アハハ


冒剣士「こちら、オススメメニューです!」

お客A「おお、来た来た!」


…ガヤガヤ…

 
女メイジ「もーっ!猫の手も借りたいくらい!」

冒剣士「今日は吟遊詩人さんが留守だから余計ね…忙しい」


…ガチャッ


孤高騎士「いやー!今日は大繁盛じゃねーか!」

冒剣士「孤高さん!」

女メイジ「いらっしゃいませ!」


孤高騎士「よいしょ…オーナー、今回の報告書だ」パサッ

オーナー「お、ありがとう」


冒剣士「今回は短期で砂漠の調査に行ってきたんですよね?」

孤高騎士「そうだな、暑かったぜ。軍との合同だったから、冒険の扉で楽できたし…まあチョロイ調査だった」

 
女メイジ「冒剣士!話すのは後で…今は働いて!」

冒剣士「わわ、じゃあ孤高騎士さんまた後で!」

孤高騎士「怒られないようにしっかりやれよ~」ハハハ


お客A「そういや聞いたか…?」

お客B「何をだ?」

お客A「西の港の地殻変動。海の様子がおかしいんだってよ」


孤高騎士「…」

 
お客B「海の様子って、何がおかしいんだ?」

お客A「魚が獲れないんだってよ」

お客B「へええ…西の港って、世界で有数の漁港なのにな。調査されないのか?」

お客A「どうだろうな、どこかしらにクエストは来てそうだが…」


孤高騎士(へぇ…お?)


オーナー「えーと…、大剣傭兵さんどこだろ…」キョロキョロ

大剣傭兵「どうした?」

オーナー「いたいた、確かこの間、銅プレートに昇格しましたよね?」

 
大剣傭兵「ああ、したが…」

オーナー「軍事クエストで遺跡調査のクエストがあるんですが、いかがですか?」

大剣傭兵「遺跡調査?」

オーナー「西の漁港の遺跡です」パサッ

大剣傭兵「ほう、新しい遺跡が見つかったのか」


オーナー「海の異変に関連する可能性がゼロじゃないですから、危険は伴いますよ」

大剣傭兵「出発はいつだ?」

オーナー「調査隊の入り口周辺の調査が完了次第ですから、公開は2週間先ですね」


孤高騎士「俺、やるぜ!」ガタッ


大剣傭兵「…ん?」

オーナー「ん?」

 
孤高騎士「遺跡調査だろ?それ、俺にやらせてくれねーか?」

オーナー「いやしかし…この調査は大剣傭兵さんに…」

大剣傭兵「あー…まあいいよ、そいつに譲ってやってくれ。その代わり割のいい仕事、俺に紹介してくれよ!」

オーナー「そうですか…孤高さん、それじゃ2週間後に出発ですので準備はしといて下さい」


孤高騎士「おうよ!それと、今回もあいつら…」チラッ


冒剣士「っ!」

女メイジ「!」


孤高騎士「お願いするかな!」ハハ

本日はこれで終了です(A´ω`)

白、青、赤、銅、銀、金じゃないならレインボーだな

皆様ありがとうございます(A´ω`)
>>290 虹w

 
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――――【2週間後】


孤高騎士「それじゃ、再確認してくれ」

冒剣士「西の漁港から離れた場所にある遺跡の調査。敵はマーマン等が考えられる…ですね」

女メイジ「雪山の次は海…、中央国はこんなに暑いのに涼しい場所ばっかりで温度感覚が…」


冒剣士「雪山は最早"寒い"だったけどね…」ハハ…

 
オーナー「今回は既に調査済みだった部分もあるけど、再調査のお願いも来てるからしっかりよろしく!」


冒剣士「はい!」

女メイジ「わかりました!」

孤高騎士「それじゃ、行ってくる。しっかり預からせてもらうぜ」

オーナー「はい、よろしくお願いします」


…ガチャッ…バタン

 
孤高騎士「漁港までは全然時間はかからないし、今回はリゾート気分でのんびり行こうぜ」

冒剣士「はい」

女メイジ「それにしても、また誘ってくれるなんて…冒険の機会が増えて本当に嬉しいです」


孤高騎士「…まあな、お前ら見てると…ちょっとな」

女メイジ「?」

冒剣士「僕らを見てると…ですか?」

孤高騎士「ああ、なんつうか…思い出すっていうか…生きてたらっていうか…な」

 
女メイジ「…?」

冒剣士「どういうことですか?」

孤高騎士「ははっ、まぁ気にするなよ。ただお前らのことを気に入ってるだけだ!」

冒剣士「そうですか…楽しいです、ありがとうございます!」

孤高騎士「おうよ!」


女メイジ「しかし最近暑いですね…もうすぐ10月だというのに…」

孤高騎士「異常気象っぽいな」


冒剣士「まあ海に行くってことだけでも、ちょっとしたリゾート気分に…」

女メイジ「遊びに行くんじゃないの!」ゴツッ

冒剣士「あいたっ!」

 
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――――【3日後・西の漁港】


…ミャア…ミャア…

…サァァッ…

ボッボー……


女メイジ「海だーーーーっ!」

冒剣士「潮風のいい匂い…、船の汽笛が心地いい感じ…」

孤高騎士「んー…と、こっちだ」

冒剣士「は、はい!」


…タッタッタッタ……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


冒剣士「…ここは?」

女メイジ「海水浴場…?」


孤高騎士「はっはっは!今日はもう時計の針が午後になる。今日は楽しんで、明日の朝から出発しようじゃないか!」


冒剣士「あ、遊んでいいんですか?」

孤高騎士「いいも何も、冒険家のたしなみじゃないか!」

女メイジ「って言っても…、水着なんて持ってきてないし…」


孤高騎士「2人とも、手を出せ」

2人「?」スッ

 
孤高騎士「…」

…チャリンッ


孤高騎士「オッサンからのおこづかいだ!そこの販売所で水着を買ってくるんだ」

冒剣士「いいんですか?」

女メイジ「って言っても、水着買うには多すぎるような…」


孤高騎士「屋台もあるからな、その分もだ。のんびりしようぜ、な?」ニカッ

女メイジ「…♪」

冒剣士「海で泳ぐなんて久々だなあ…買ってきます!」


孤高騎士「おう!」

 
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――――【最寄のショップ】


冒剣士「僕はこのシンプルなのでいいかな~…」

女メイジ「私もシンプルなのがいいなぁ…これとか」

冒剣士「ええ、それはちょっと…きわどいような…」


女メイジ「きわどいって…、冒剣士…エッチ」

冒剣士「そ、そういう意味じゃないよ!」

 
女メイジ「ま、いいや…じゃあ、こっちの普通の水着にしよ~っと♪」

冒剣士「はいはい…それじゃ、着てくるよ」

女メイジ「またあとで~!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


冒剣士「…遅いな」


…シャッ


女メイジ「お待たせ~っ」

冒剣士「…っ!」ドキッ

女メイジ「うりうりっ!どう?その辺の女子よりはスタイルいいと思うんだけどな~?」

冒剣士「べ、別に!」プイッ


女メイジ「…」ムッ

冒剣士「そ、それより早く行こうっ!」

女メイジ「ちょっ、引っ張らないで…、危ないから!」

 
…タッ…タッタッタ…

……ザッザッザッザッザ…


冒剣士「ひゃ~、砂が熱いや!」

女メイジ「人もまだまだいるし、今日も暑いし~…」

冒剣士「ところで孤高さんはどこにいるんだろう?」


女メイジ「…」キョロキョロ

冒剣士「いないなあ」

女メイジ「海の家とかで飲んでそうだけど…」


冒剣士「ちょっと探してくるよ!」ダッ

女メイジ「あっ、ちょっと!」

 
……ザッザッザッザ………


女メイジ「もう、ビーチに女子一人を残すなんて……なーんて」


チンピラA「…おやおや、どうしたのかな?」

チンピラB「どうやら彼氏に捨てられちゃったみたいじゃなーいの?」


女メイジ「っ!」


チンピラA「結構可愛いじゃん。この位の子でも、俺は好きだぜ」クイッ

女メイジ「ちょっ!」

チンピラA「ん~?」

多忙のため、本日は短いながらここまでです。
ありがとうございました。

皆さんありがとうございます。

 
女メイジ「この…」ブンッ

…バキッ!!


チンピラA「いって…」

チンピラB「何すんだコラァ!」

女メイジ「こっちのセリフよ!いきなり何するのよ!」


チンピラA「てめ…、このやろ…」

チンピラB「こっち来いや!」グイッ

女メイジ「やだってば!」

 
チンピラA「うへへ、嫌がる姿も可愛いねぇ」

チンピラB「とと、怖い怖い。ほーら…掴まえたっと!おお、なんだこの感触はぁ?」

女メイジ「は、離して!やっ…どこ触って…!」



チンピラA「腕さえ抑えりゃ何とでもなるぜ…、殴った分のお礼はさせてもらうぞ…つれて来い!」

チンピラB「そういうこと…へへ、楽しく遊ぼうぜ」


女メイジ(調子に乗って…魔法で吹き飛ばしてやる!)バッ

チンピラB「暴れるなっつーの!なんつう力だ…」


女メイジ「やっと離れた…調子に…乗るな!小火炎まほ…」

ズルッ…

 
女メイジ(砂に足をとられ…!)

…ゴツッ!!!
……ドサッ…


チンピラA「あっ…」

チンピラB「うわぁ…岩場の階段に頭から落ちたぞ…」


チンピラA「…お?」


女メイジ「…」


チンピラA「へっへっへ…おい、見ろよ。気失ってやがる」

チンピラB「好都合だな…」

チンピラA「裏の岩場なら人も来ねえだろうし、連れて行こうぜ」

チンピラB「へへ…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


…ザッザッザ……

冒剣士「う~ん…、どこにもいないなぁ」


…ガヤガヤ

冒剣士「海の家…屋台にいるのかな?」


…イラッシャイマセー!
ヤキソバイカガッスカー!!!


冒剣士「いなーい…、全く、どこにいったんだろう…」

 
…キョロキョロ

冒剣士「とりあえず、遊んでたらひょっこり現れるかな。遊んでこよ…」

ダッダッダッダ…

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


冒剣士「あれーーーー!?」

…シーン

冒剣士「今度は女メイジが消えちゃったよ!みんな迷子…?」


お姉さん「ね、ねえちょっと君…」

冒剣士「あ、はい?」

お姉さん「女メイジって、ここにいた黒色の髪の女の子?」


冒剣士「あ、はい…そうですが…」

 
お姉さん「さっき、2人の男がその子を抱えてどっか行ったけど…」

冒剣士「えっ!?」

お姉さん「結構地元でも有名な不良だから、一応声をかけたら"友達"が暑さで倒れたから介抱するだけだって言ってたけど…」

冒剣士「…倒れた!?」


お姉さん「海の家にいなかったら、多分…あそこかな…」

冒剣士「どこですか!?」

お姉さん「ここから向こう側にある岩場。あそこは人が来ないし、不良のたまり場になって…」


冒剣士「っ…!」ダッ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

チンピラA「早く脱がせろ!」

チンピラB「待ってろって…おらっ!」

…パサッ


チンピラA「うひょー!たまんねーなおい!」

チンピラB「見た目はガキだと思ったけど、女は女だなやっぱ」

チンピラA「…お?」

 
女メイジ「…」パチッ


チンピラA「気づきやがったな」

チンピラB「よー、おはよう!」


女メイジ「…あれ…私…」


…ユラユラ

チンピラA「…」

チンピラB「…」

 
女メイジ「…!」ハッ


チンピラA「おーい、生きてるか~?」

チンピラB「恥ずかしくないんですか~?」ハハハ


女メイジ「…っ!!」カァァッ

…バッ

チンピラA「おっと隠すなよ!」ガバッ

女メイジ「や…嫌ぁ!」


チンピラA「はっはっは、こうやって両手を塞がれれば何もできねーだろ?」

 
女メイジ「やだ…やだ!!!」

チンピラA「どうせ誰もこねーよ。ここは地元しか知らない場所だからな」

チンピラB「そうそう。大人しくしてろって」サワッ


女メイジ「触らないでっ!やめてよ…お願いだから…」グスッ


チンピラA「…面倒だからさっさとやっちまうぜ」

女メイジ「なんでこんな…助けてよ…冒剣士ぃ!!」



ヒュッ…

冒剣士「…ああああっ!」

…ドゴォン!!!

チンピラA「がっ…!」

 
女メイジ「ぼ、冒剣士…?」グスッ


冒剣士「お前ら…、僕の仲間に何やってんだよ!」

チンピラA「ってぇなコラァ…」

チンピラB「おい、大丈夫かよ…」


冒剣士「…」


チンピラA「…」ドロッ

チンピラB「お前、頭から血出てるぞ…?」

チンピラA「あん…?」

 
冒剣士「…」

チンピラA「クソガキが…」

冒剣士「それ以上はやめろ!じゃないと…」


チンピラA「なんだ…?ガキ…」イラッ


冒剣士「…斬る」スッ


チンピラA「…ぷっ」

チンピラB「ぶはっははっははははは!」

冒剣士「…」

 
チンピラA「そんな木の棒でどうするつもりだよ!」

チンピラB「笑わせんなよ!」


女メイジ「冒剣士ぃ…」

冒剣士「すぐ助けるから待っててね」ニコッ


チンピラA「なめんんじゃねーぞ…ガキが!」ビュッ

冒剣士「遅い!」ヒュッ

チンピラA「…!どこいきやがった!」

 
冒剣士「…僕らは冒険者…戦士だ。たかが木の棒…?あなたたちを倒すのはそれで充分なんだよ…」

チンピラB「…」ゾクッ

チンピラA「後ろだ!ちょこまかと!」ブン!


冒剣士「…」ゴツッ!!

女メイジ「あぁっ!」


…ドロッ……


チンピラA「…石で殴られると痛ぇだろ…?お返しだぜ…いきがるからだよ……ん!?」

チンピラB「…な…」

冒剣士「…その程度?…女メイジをいじめた分……、痛い目を見てもらうぞ…」ギロッ

 
チンピラA「何…お、おい…こりゃやべえ…逃げるぞ!」

チンピラB「お、おう!」

…タタタタッ


冒剣士「…逃がすか!」


女メイジ「だめ…待って…」ギュッ

冒剣士「女メイジ…」

女メイジ「…」ギュッ


冒剣士「…」

 
女メイジ「さっきから…震えが止まらないの…、お願い。一人にしないで…」

冒剣士「…わかった」

女メイジ「…」

冒剣士「その…」


女メイジ「何…?」


冒剣士「ごめん…一人にしたせいで…」

女メイジ「…」

冒剣士「…」

女メイジ「私が…弱いのがいけないのかな…」

冒剣士「そ、そんなこと!」

 
女メイジ「私がもっと強かったら、冒剣士にも迷惑かけなかったんだよね…ケガしなかったんだよね…」

冒剣士「…違う!」

女メイジ「…」

冒剣士「悪いのはあいつらだ。女メイジが強いとか、弱いとか…そういう問題なんかじゃない!」

女メイジ「…」


冒剣士「…」

女メイジ「…そうなのかな」

冒剣士「そうさ…そうだよ。当たり前だ。悪いやつが悪いだけで、君は何も悪くない…だから大丈夫…」

女メイジ「…」

冒剣士「…」

女メイジ「…」

 
冒剣士「…」

女メイジ「…」


冒剣士「…僕は全然平気だし、今回のことは君の責任なんかじゃない。それだけは分かってほしい」

女メイジ「…でも、冒剣士にも迷惑を……」

冒剣士「そんなことない!迷惑だとか思わないよ。そんなことより…、君は…大丈夫なの?ケガは?何もされてない?」


女メイジ「冒剣士も…キズが痛いはずなのに…、そうやって人の心配ばっかり…」グスッ


…ギュッ

冒剣士「…お、女メイジ……?」

女メイジ「うわああっ…怖かったよ…冒剣士……」グスッ…

冒剣士「…うん、遅れて…ごめん…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


孤高騎士「ああっ!?お前、そのキズどうしたんだ!?」


冒剣士「やー…いや…、岩場にぶつけてしまって…」

女メイジ「…」


孤高騎士「…大丈夫か?」

冒剣士「なんとか。それより、孤高さんどこに行ってたんですか…」

 
孤高騎士「ビールを買いながら、遺跡の話を聞いてきたんだ」


冒剣士「そ、そうですか…」

女メイジ「…」ギュッ


孤高騎士「ん?なんだなんだ、お前ら手をつないで。海の雰囲気に酔ってしまったか!?」

冒剣士「いやまあ色々ありまして…、孤高さんが思うような事じゃないとは思いますが…」

孤高騎士「うーん…?んで、結構遊んでるのか?」

冒剣士「あ…えーっと…」

 
女メイジ「…いこっ、冒剣士」

冒剣士「え?う、うん…?」

孤高騎士「気をつけて遊んでこいよー!俺はここにいるからな…、はぁ~若いって…いいなぁ」ノホホン


…タッタッタ……

冒剣士「わわっ、危ない危ない!」

女メイジ「…全部忘れる……」

冒剣士「えっ?」

女メイジ「全部忘れる!忘れたい!今はとにかく遊びたい!!!」


冒剣士「…そうだね」

 
女メイジ「でも…今は…一緒にいてね…」

冒剣士「もちろん…!女メイジが楽しめるように…いっぱい遊ぼう!」ニコッ

女メイジ「…」ドキッ…


…タタタタタッ……ザバァン…

冒剣士「わわわっ!いきなりは冷たい…って!」

女メイジ「それっ!」

…ジャバッ!!


冒剣士「うぷっ…!やったなー!」ザバァッ

女メイジ「きゃーっ!冷たい!」バシャッ!!



…アハハハ…
……………………

 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【夜・漁港の冒険酒場】


…ホー…ホー…


女メイジ「…」クゥクゥ

冒剣士(ん…)モゾッ


…ムクッ


冒剣士(…トイレ……)

…トコトコ……ガチャッ…バタン…

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 

…トコトコ……

孤高騎士「…」


冒剣士「あれ、孤高さん…。廊下で何してるんですか?」

孤高騎士「…お?お前こそどうした?俺は海の夜風が好きでな…、涼んできたところだ」


冒剣士「ちょっとトイレに…」

孤高騎士「おぉそうか…、今、何時だった?」

冒剣士「たぶん、0時過ぎるくらいだと思いますが…」


孤高騎士「いい時間だな…、丁度いい。お前、トイレ終わったら俺の部屋に来い。一杯やろうぜ」ニカッ

冒剣士「…?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…コンコン…ガチャッ


冒剣士「失礼します」

孤高騎士「おー来たか!まぁ座れ、酒飲むか?飲めないか」アハハ

冒剣士「まだ飲めませんよ」ハハ


孤高騎士「それじゃお前はこのジュースでいいな…よし、乾杯だ!」スッ

冒剣士「…乾杯です」


…チンッ

 
孤高騎士「…」ングッ…ングッ…

冒剣士「…」ゴクゴク


…プハァッ!!


孤高騎士「旨いなぁ…」

冒剣士「美味しいですね…」


孤高騎士「…なあ冒剣士、ちょっとだけ話を聞いてくれるか?」

冒剣士「…はい」

 
孤高騎士「俺が冒険者になったのは…、今からもう20年も前のことなんだ」

冒剣士「20年前…」

孤高騎士「まだ10台の若造でな、軍に所属してそりゃあ無茶ばっかりやったよ」グビッ

冒剣士「…孤高さんらしいですね」


孤高騎士「その頃、俺は早い結婚をして、早く子供が生まれた」

冒剣士「既婚者だったんですか!?」

孤高騎士「なんだよ、その意外だなっていうのは!一応妻子がいたんだよ!」


冒剣士「…"いた"?」

 
孤高騎士「…あぁ。死んじまったよ、13年前にな」

冒剣士「…」

孤高騎士「…住んでいた所は小さな田舎だった。いい町だったよ…」グビッ


冒剣士「なんで…ですか?」

孤高騎士「…捨てられたんだ。軍にな」ブルブル

冒剣士「捨てられた…?」


孤高騎士「あぁ…、元々俺らの町は資金力もなく、観光施設もなければ何もない、ただの無駄な土地が広い町だった」

冒剣士「…」

 
孤高騎士「軍の支部長は、そこを管轄におく中で"金はないが土地はある"といつも言っていたのを覚えている」

冒剣士「…」


孤高騎士「土地があれば、巨大な軍の施設を作れる。だが、住民たちはそれに反対をしていた。それは当然の話だ」

冒剣士「そうですね…」

孤高騎士「だがな…ある夜、俺らの町に大型魔獣が侵入しやがった。だが、俺らは遠征に出ていて…その連絡を受け取ることができなかった」


冒剣士「…!」

孤高騎士「冒険の扉を使えばすぐにでも帰れた。だが、支部長のやつは……その侵攻を…ただただ見ていやがった!」

冒剣士「…っ!!」

 
孤高騎士「理由は簡単だ。住民が消えれば、施設を作り、地位があがる。それだけの…理由のために!」

冒剣士「…そんな……」

孤高騎士「その数日後、俺らが戻って見た光景は…凄惨すぎるものだった…」

冒剣士「…」


孤高騎士「この話は、その時の支部長の近くにいた同僚がバラしたんだ。それからほどなくして、支部長は謎の死をとげた」

冒剣士「それは…殺された…んですかね」

孤高騎士「…さぁな。俺らとしては、ざまぁみろって感じだったけどな」

 
冒剣士「…」

孤高騎士「…それと当時、俺は特級の称号を受け特級騎士と名乗っていたんだ。だが、その事件があって軍をやめた」グビッ

冒剣士「そりゃ…そうですよね」


孤高騎士「それからは人との付き合いも億劫になった。そりゃ態度も変わるさ…、友人らと距離を置いて、俺はひっそりと暮らした」

冒剣士「…」

孤高騎士「やがて、人々は俺の事を"孤高"の騎士と呼び始めたんだ」

冒剣士「それが、孤高さんの由来…ってことですか」


孤高騎士「俺もそれに慣れちまった。やがて、俺自身がそう名乗るようになっていった」ゴクゴク


冒剣士「…、でも、今は皆に囲まれて……、"孤高"なんて似合いませんね」アハハ

孤高騎士「はは…そうかもな」

 
冒剣士「…でも…なんでその話を急に僕に…?それが前、まだ話せないって言ったやつですよね…」

孤高騎士「……息子と娘、もし生きていたら…息子と娘は今日…、13歳の誕生日を迎えていた…」


冒剣士「…そう、なんですか。あ!だから0時を過ぎて丁度いいって…」


孤高騎士「一人で…あいつらにおめでとうというのは…寂しかったんだ…って言うのは、情けないか?」

冒剣士「…いえ、全然そんなこと!」


孤高騎士「…」

冒剣士「おめでとうございます、13歳の…誕生日」

孤高騎士「…おめでとう」

…チンッ


孤高騎士「ありがとよ…」

冒剣士「こちらこそ、誕生日に孤高さんとお祝い出来て…よかったていうのも変で…何ていえばいいか分かりませんが…」

 
孤高騎士「言いたいことは分かるさ。歳をとると、色々と…感慨深くなるもんだな」

冒剣士「そうかもしれませんね」

孤高騎士「いつの間にか、お前らを俺の息子と娘に重ねていたのかもしれない」


冒剣士「僕も孤高さんは、身内のようで…優しくて、頼りにしています」ニコッ


孤高騎士「そういわれると…もっとお前らと旅に行きたくなっちまうな」

冒剣士「どんどん誘ってください!僕らも楽しいんですから!」


孤高騎士「…そうか。ありがとうな」

冒剣士「いえ…そんなこと…」

 
…ボーン…ボーン…


孤高騎士「おっと、もうこんな時間か…そろそろ寝ようか。こんな時間まで、話付き合ってもらって悪かったな」

冒剣士「いえ、お話ありがとうございました」
 
 
孤高騎士「明日も朝早くおきて、一番に調査に向かう。お互い、がんばろうな!」

冒剣士「はい!」

孤高騎士「それじゃ…おやすみ」

冒剣士「おやすみなさい」ペコッ


…ガチャッ……バタン…



孤高騎士「俺が優しい人…か」


…グビッ………

 
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・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

本日はここまでです。ありがとうございました。

もうちょい下の頼れる兄貴的年齢化と思ってたぜ
オーナー達前作キャラに近い年齢なんだな

皆様ありがとうございます
>>348 そうですね、イメージはそれに近い感じなのですが。

 
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――――【次の日・遺跡前】


冒剣士「…ここが遺跡ですね」

女メイジ「うっわ…、そこら中…小さな…貝…?でビッシリ…」

孤高騎士「元々海に沈んでいたのが地殻変動で現れたらしいからなぁ…、ヌルヌルしてやがるし…」ヌルッ


女メイジ「転んだら潮まみれ…」

冒剣士「あはは…、気をつけよう…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


…トコトコ……


冒剣士「…とはいえ、一般的な遺跡みたいで中もあまり変わりませんね?」

孤高騎士「そうだなぁ、貝やら海のものが多いくらいで…そんなに他とは変わらないな」

女メイジ「マーマンとかも出てきませんね」


孤高騎士「あいつらは意外と知識があるからな。意外と、スキを狙ってるのかもしれん」スチャッ


…ビュンッ!!キィン!!

孤高騎士「っと…こんな風にな…」


冒剣士「矢!?」

 
孤高騎士「おいでなすったぜ…ほら」


マーマン達『…』


女メイジ「うわ…いっぱいでてきた…」

冒剣士「な、なんか武装してますが…」

孤高騎士「半漁人だからな。知性は高いのもいる」


マーマン『…サレ。オマエラガアラシテイイバショデハナイ』


孤高騎士「…嫌だといったら?」


マーマン『コロスマデ』

孤高騎士「…上等!」

 
…ダダダダッ!!

冒剣士「このぬかるんだ床を何ともなく走るなんて…!」


孤高騎士「おらああっ!大突連弾っ!」ビュビュビュビュッ

女メイジ「…続きます!中火炎魔法っ!」ボワッ!!


…ドシュッ・・・ドシュドシュ…

カッ…ドゴォォン!!


マーマン『グ…!』


孤高騎士「おらあどうした!数で勝負できる相手だと思うな!!」


マーマン『…イッタンヒケ!アノオカタノモトニハトオスナ!』


冒剣士「…あのお方…?」

 
孤高騎士「面白いことを聞いた、冒剣士!」

冒剣士「は、はい!」

孤高騎士「気絶だけ狙ってあの剣を持ってるリーダー格のマーマンを捕まえろ!」

冒剣士「…やってみます!」

女メイジ「気をつけて!」


…タタタタッ…ズルッ

冒剣士「う、うわ滑る!」

マーマン『フハハ!ナメルナ!ワガ"ケン"ノ、エジキトナレ!』ビュッ


女メイジ「危ない!」

 
冒剣士「くっ…居合いっ!」ビュンッ!!

マーマン『アタルカ!』ヒュッ


孤高騎士「外した…いかん!居合いの後のスキが大きすぎる!」


マーマン『シネ!』ビュッ!!

冒剣士「ぬあああっ!…虎切っ!!」ユラッ…ビュンッ!!


女メイジ「えっ!?」

孤高騎士「外した居合いからの切り替えしだと!?」


…キィン!!ドスッ……!!

マーマン『…っ!』

冒剣士「…っ!」

 
…ドサッ

マーマン『』


冒剣士「…ふう、うまく峰打ちできました」シャキン

女メイジ「い、今のは…?」

孤高騎士「おいおい、居合いからの切り替えし術があるなんて聞いてないぜ…?」


冒剣士「これは体を大きく捻って、無理やり戻すんで負担が大きいんですよ…」イタタ

女メイジ「凄い速度で斬り直しをしてたけど…」

冒剣士「全身をバネにして戻すからね…、腰とわき腹の筋肉が痛い…からあんま使わないんだよ…」ズキズキ


孤高騎士「まったく…大したやつだ。それより…このマーマン…」

マーマン『…』

孤高騎士「縛り上げるぞ、手伝え」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

マーマン『…』ハッ


孤高騎士「よーおめざめか」

マーマン『クッ…ホドケ!』

孤高騎士「そういう訳にはいかないねぇ」


マーマン『ナニガモクテキダ!』

孤高騎士「あのお方って、誰のことだ?」

マーマン『…』

孤高騎士「…いわないつもり?」


マーマン『ニンゲンフゼイガ…』

 
孤高騎士「……く……が…」

マーマン『ナニ?キコエヌゾ?』


…バキッ!!

マーマン『ガッ…!』

孤高騎士「もう1度聞く。あのお方は誰だ。この遺跡は何の意味がある」

マーマン『イワヌ…」


孤高騎士「…」ブンッ

…バキッ!!!ドゴッ……


マーマン『…ウッ!……ウグッ…』

孤高騎士「言え」

 
冒剣士「…」

女メイジ「…」


マーマン『フン…コロセ…』

孤高騎士「殺すのは簡単だ。だが、俺らには情報がほしい。別にいいんだぜ?いわなくてもよ」

マーマン『…』

孤高騎士「その眼を1個ずつくりぬいて、指を1本ずつそり落とす。ただ落とすんじゃねえ、千切りのように薄く…薄く…」

マーマン『…っ』


冒剣士「…」ブルッ

女メイジ「痛い…痛い…」

 
孤高騎士「俺らも遊びでやってるんじゃねえんだ。命かけてんだ。冗談じゃすまねえぞ」

マーマン『…ダ』

孤高騎士「あん?」


マーマン『コノオクニ…ヒュドラサマガ…イラッシャル…』

孤高騎士「…おい、それ本気でいってるのか」

マーマン『…コノジョウキョウデ、ウソハイワヌ』


孤高騎士「…」

冒剣士「ヒュドラ…?」

孤高騎士「一体何が起きてるんだ…?フィルボルグにヒュドラ?神獣のオンパレードだなこりゃ…」

 
冒剣士「神獣って…」

孤高騎士「あぁ。あのフィルボルグ…ほどじゃあないが、魔王軍の時代の封印された強力な敵だ…」

女メイジ「…」


マーマン『ヒュドラサマハ、フタタビワレラノマエニコウリンサレタ!』

孤高騎士「封印はどうしたんだ」

マーマン『ショセン、ニンゲンノ"フウイン"ナド…ソンナモノヨ!』

孤高騎士「…お前ら、何を企んでやがる」


マーマン『ヒュドラサマノカンガエ?サアナ…、シラヌナ』ハハハ


孤高騎士「そうか、じゃあ死んでおけ…」ビュッ

…ドシュッ……ドサッ

 
冒剣士「…」

女メイジ「…」

孤高騎士「まずいな、あいつらの言い草だと…確実に人間界への侵攻を考えている…としか思えん」


冒剣士「…どうするんですか」

孤高騎士「…うーん……」

冒剣士「ヒュドラって、結構手ごわい…ですよね」ハハ…

女メイジ「手ごわいも何も…」


冒剣士「どういうやつなんですか?巨人のような感じです?」

 
孤高騎士「いや…蛇だ」

冒剣士「へび…?」

孤高騎士「あぁ。頭を9個もつ、強力な神獣だ」


冒剣士「頭が9つの蛇ですか…ヤマタノオロチみたいだ」


女メイジ「何それ?」

孤高騎士「聞いたことあるな。東方に住む魔物だろ?」

冒剣士「そうですね、古来から伝わる魔物です」

孤高騎士「まあ…戦える相手じゃないし、ここは一旦引退くかないな」

 
冒剣士「そうですか…」

孤高騎士「残念だが、さすがに危険が分かっていては進めない。一旦退くぞ」

女メイジ「またこの間みたいな思いするのは沢山…」ハァ


…ミシッ

孤高騎士「…ん」


…ミシミシッ…


冒剣士「なんか、そこ盛り上がってません?」

孤高騎士「ああ…地面が…盛り上がってきてるようだな…」

女メイジ「…このパターンって、何かいやーな…予感が…」

 
ミシミシミシッ…!!

ドゴォン!!!………ウネウネ…


女メイジ「何…あれ…イカの触手…?」

孤高騎士「…あぁ、触手だな」

冒剣士「ボケーっと見てて大丈夫なんですか…アレ」


…ウネウネ


孤高騎士「…」

冒剣士「僕たちが戻る方角ですが…」

女メイジ「…」


…ミシミシッ

 
…ドゴォン!!
……ドゴォン!!……ウネウネ…ウネウネ…



冒剣士「いっぱい…出てきましたが…」

孤高騎士「…道ぃ、塞がったな……」

女メイジ「…」


…ザッ…ザッ…ザッ…


孤高騎士「…お?」


マーマン達『イタゾ!』

セイレーン達『クスクス…あれがヒュドラ様に逆らう輩…なのね』

 
孤高騎士「…奥からは敵の大群、出口は触手で封鎖か…」

冒剣士「あはは…なんか、妙に落ち着いちゃってる自分がいるんですが」

女メイジ「奇遇ね、私もよ…」


孤高騎士「ピンチに次ぐピンチで、慣れちまったんじゃないか?俺みたいにな」ククク


冒剣士「さて、どうします?」

孤高騎士「武器の準備だ。さすがに奥には進めん。逃げるが勝ち…触手を切り開いていくぞ」


女メイジ「了解です!」スッ

冒剣士「いつでも…」スチャッ

 
マーマン達『イクゾ!!』ダッ

セイレーン達「クスクス…」~♪


…ブワッ!!
……キーン!!


女メイジ「な、何この音!…歌!?耳がっ!」

冒剣士「頭が…痛いっ!」

孤高騎士「セイレーンの歌だ!波動による直接攻撃だ、歌を聴くな!」


冒剣士「って言っても…聞こえますよ!」


セイレーン『ア~♪』


孤高騎士「それか意識をするな!」

女メイジ「そんなのも…無理…頭が割れる…」

 
孤高騎士「仕方ねえ…!」ダダダッ

冒剣士「そ、そっちは敵の大群が…!」



…ダダダッ!!

キィン!!ズシャッ……ドスッ!!

…キキィン!!…ダダダダッ…


孤高騎士「おりゃあああっ!」

マーマン『ヒルムナ!』

セイレーン『…っく!』

 
……シーン

冒剣士「歌が途切れた!」

女メイジ「戦える!」


孤高騎士「はっは…、世話のかかる仲間だぜ!お前らで出口側の触手をなんとかするんだ!」


冒剣士「はい!」

女メイジ「わかりました!」

 
冒剣士「…居合いっ!」


…ビュンッ!!……ザシュッ…グニュッ…


冒剣士「き、切れない!?」

女メイジ「何やってるの!どいて…中火炎魔法っ!」


カッ…ドゴォン!!!

…ウネウネ……



冒剣士「そんな、攻撃が効かない!?」

女メイジ「…小雷撃魔法!」


バリバリッ!!!……ウネウネ…

 
孤高騎士「くっ…まだか!?」

キィン…キン!!!…ズバッ…


冒剣士「待ってください!触手が硬すぎて…っ」

女メイジ「どうすればいいの!?」

冒剣士「…大きな相手か、アレならいけるか…?」

女メイジ「"アレ"?」


冒剣士「…」スチャッ


女メイジ「居合いは効かないんじゃ…」

冒剣士「…おりゃあああっ!」


…ダダダダッ…タァン!!

女メイジ「飛んだ!?」

 
冒剣士「おりゃああああっ!」

シュバッ……ザシュッ!!!


冒剣士「や、やった!触手が裂けた!」

女メイジ「た、縦の…居合い…?」

冒剣士「わったったた…うわっ!」


…コケッ…ドサッ!!


冒剣士「あいたた…、なんか最近よく転んでる気がするよ…」

女メイジ「す、すごいじゃない!今のは!?」

 
冒剣士「兜割りっていう縦の居合い斬りだよ。威力が高いけど、使いづらくて…」

女メイジ「残りは2本…いける?」

冒剣士「やってみる!女メイジは孤高さんの支援をお願い!」

女メイジ「わかった!」


孤高騎士「こいっつら…、斬っても斬っても…出てきやがる…」

マーマン『グフフ…ドウホウノウラミ…ハラサセテモラウゾ』

セイレーン『うふふ…、人間の悲鳴って大好き…、聴かせて頂戴…」


孤高騎士「俺は嫌いだよ!くっそがぁ…」

…キィン!!ズバ…!!

 
…タタタタッ

女メイジ「加勢します!」

孤高騎士「お、触手は?」

女メイジ「冒剣士が兜割りとかっていう技で1本1本落としてます、大丈夫だと思います」


孤高騎士「ほう、さすがだな。女メイジも、しっかりついてこいよ!」

女メイジ「わかってます!」


 
冒剣士(向こうは大丈夫みたいか…問題はこっちだな…)


…ウネウネ…

 
冒剣士(何とか2本は仕留めたけど、あと1本が…)チラッ

…ドロッ…ズキズキ…

冒剣士(参ったな…親指に負担をかけすぎて血だらけで力が出ない…)


…ウネウネ


冒剣士(だけど…やるしかないって事だよな…!)ギロッ


…タタタタッ……タァン!!


冒剣士「おりゃああっ!兜わ…」

…ズキッ!!

冒剣士(しまっ…構えがズレ…)


…ウネウネ……ビュンッ!!

クルクルッ…………、ギュッ…

 
冒剣士(絡まれた!?く…)



女メイジ「…はぁはぁ、敵が一向に減らない!」

孤高騎士「冒剣士はまだか…って、触手に締め付けられてるぞ!?」

女メイジ「…あの馬鹿!何してんのよ!」


冒剣士(動けない…くそっ!何とかしないと…何とか…)キョロキョロ


孤高騎士「その触手は動くものに反応し、締め付ける!あまり動くんじゃない!」

冒剣士「で、ですが!」

孤高騎士「今行く!」

  
…ウネウネウネ…ユルッ…

冒剣士「緩まった!う…うおおお…!」ギリギリ



女メイジ「…孤高さん、助ける必要はないみたいですよ」

孤高騎士「どうした?」

女メイジ「…」クスッ


冒剣士「おりゃああああっ!」スポンッ!!


…スタッ

冒剣士「…今度はこっちの番だ!…居合いっ!」


…ビュンッ!!!

 
ウネウネ……ドシュッ………スパァッ!!

…ドサッ……


冒剣士「ふぅ…やった!」


孤高騎士「へえ…頼れる仲間になってきたじゃねーか」

女メイジ「私もあんなふうに、頼れる仲間になりたいな…」

孤高騎士「ふ…、お前らはもう、俺は頼りにしてるけどな」


…キィン!!!
……ズバッ…


マーマン『コ…コンナバカナ…、ワガドウホウヲスベテ…』

 
孤高騎士「俺らを倒したきゃ…小粒だろうが、数でも揃えてから来るんだったな…」

…ビュッ……ブシュッ…ドサッ


マーマン『…』



女メイジ「はぁ…はぁ…」

孤高騎士「さすがに俺もちょっと疲れたぜ…」

冒剣士「…ふぅ…、ふぅ…」


孤高騎士「お疲れサン、冒剣士」ポン

冒剣士「はは…、なんとかですよ…」

 
女メイジ「ほとんどこっちは孤高さんが倒しちゃったけどね…」

孤高騎士「女メイジの支援があってこそ、楽に立ち回れたんだ。ありがとよ」ニカッ

女メイジ「いえ、そんな…」


冒剣士「それじゃ、一回戻りますか?」

孤高騎士「お前、まだ進む気でいたのか?」ハッハッハ

冒剣士「い、いえいえ!そういう意味じゃなくて…」


孤高騎士「そうだな、それじゃ一回戻って再度報告だ」

冒剣士「そうですね!」

 
…ミシッ…

冒剣士「…ん?」

……ミシミシッ…


女メイジ「この感じ…また何か来る…?」

孤高騎士「いや…これは…」


ゴゴゴゴッ!!!


孤高騎士「地震だ!!」

冒剣士「ど、どうします!?」

孤高騎士「どうするったって…、とりあえず出口に…」

 
ズズ…ズズズズ…


冒剣士「な、なんか…遺跡…沈んでませんか…?」

孤高騎士「…俺もそう思う」

女メイジ「ちょっ、早く出口に!」


…パリンッ!!
バシャッ!!……

孤高騎士「海水が入ってくる!だめだ!奥に逃げるぞ!」

冒剣士「ひええっ!」

本日はここまでです。
ありがとうございました

追記します。
明日の更新で一部は終了になりますので、よろしくお願いいたします。

みなさまありがとうございます。

 
…ドォォォッ!!バシャアアンッ!!


孤高騎士「走れぇぇ!」

女メイジ「きゃああっ!」

冒剣士「くっそおおっ!」


ダダダダッ……!!

……ガチャッ…


孤高騎士「そこを閉めるんだ!」

冒剣士「はいっ!」


…バタン!!

 
…バシャアンッ!!…ミシミシッ…


孤高騎士「水…止まったか…?」

冒剣士「止まりました…ね」

女メイジ「一体なんなの…」

孤高騎士「とりあえず、戻れないなら…進むしかないな」


冒剣士「そうですねー…」

女メイジ「結局、ヒュドラに出会う事になりそう…ね」


孤高騎士「でもほら、巨人族みたく優しいヤツかもしれんじゃないか?」

冒剣士「僕には、閉じ込められたのはヒュドラのせいにしか思えないんですけどね…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…トコトコ…ピタッ


孤高騎士「お前、あれどう思う?」

冒剣士「どう見ても、ですよね」

女メイジ「はぁ~…」


…キラキラ

孤高騎士「あんな立派な建前のドア、俺には"そこにいます"としか思えないんだが」

冒剣士「…行きますか」

 
…グッ…

冒剣士「開けますよ」

女メイジ「慎重にね」


…ギィィィ………


冒剣士「…」

孤高騎士「…へェ」

女メイジ「…」

 
ヒュドラ『…ようこそ』


孤高騎士「あんたが…ヒュドラってやつかい?」

ヒュドラ『いかにも』


冒剣士「フィルボルグさんも大きかったけど…、ヒュドラも…」

女メイジ「どうなるの…?」

冒剣士「わからない…」

 
孤高騎士「ヒュドラさんよ、話では頭が9つあるって事だったが…今は1つしかない、ただの大蛇に見えるが?」

ヒュドラ『力が完全には戻っておらぬのだ』

孤高騎士「そうかよ…、で、俺らをここに呼んだ理由はなんだ」


ヒュドラ『…寄越せ』


孤高騎士「…あん?」

冒剣士「寄越せ?」

女メイジ「何を…?」


ヒュドラ『"宝玉"だ』

 
冒剣士「…宝玉!?」

孤高騎士「なんの…ことだ?」


ヒュドラ『トボけても無駄だ。そこの小僧、お前が持っていることは匂いで分かる』


女メイジ「そんなの…持ってるの?」

孤高騎士「なんだ、宝玉って…」

冒剣士「これの…ことですか」


スッ…キラッ

 
女メイジ「それってこの間、巨人にもらったっていう…」

孤高騎士「それが…宝玉なのか?」


ヒュドラ『おぉソレだ…早く、それを寄越すのだ…』


冒剣士「…なぜ欲しいんですか?」

ヒュドラ『我が力を復活するためだ!それがあれば…、我は再び力を手にすることが出来る!」


孤高騎士「一体…その玉は何なんだ?」

冒剣士「魔力を増大させる秘宝、と聞きました」

孤高騎士「魔力の…増大だと」ピクッ

 
冒剣士「ですが、使い方が分からないと意味がないと…」

女メイジ「そんなものが…」


ヒュドラ『ふ、ふはは!それは貴様ら人間が、であろう』

冒剣士「人間が…?」

ヒュドラ『そもそもそれは我が魔族が生みしモノ…、貴様らが使えるような代物ではない…!』

冒剣士「…」


ヒュドラ『さあ…早くそれをこっちに…!』

 
冒剣士「ひとつ聞く。これを使って力が戻ったら…何をするつもりだ…?」

ヒュドラ『ニンゲンの…殲滅…」ニタァ

冒剣士「なっ…」

ヒュドラ『我を閉じ込めた恨み…晴らす為に…』


冒剣士「フィルボルグさんや、知り合いが…神獣は本当は優しい生き物だって…言ってました…」

 
ヒュドラ『残念だったな…、我は"戦争が大好き"なのだ…、さあ…寄越せ…」

冒剣士「っ…!」

孤高騎士「…」


女メイジ「ダメ!」

 
冒剣士「そうです、これは渡せません!」


ヒュドラ『ふっ…そういうと思っていた。ならば死んで奪おう…!"極水流魔法"…』

…ドドドドッ…バシャアアアッ!!!!


冒剣士「!?」

孤高騎士「極流クラスの魔法だと!?」

女メイジ「つ、津波!?」
 

…バシャアアアッ!!!

冒剣士「う、うわああああっ!」

孤高騎士「ぬああああっ!」

女メイジ「いやあああっ!」

 
…ザバア……


ヒュドラ『…ふはははっ!』


冒剣士「…」

孤高騎士「…」

女メイジ「…」


ヒュドラ『さぁ…宝玉を…』

…キラッ

ヒュドラ『見つけた……』

 
冒剣士「う…そ、それは渡さない…」ググッ

孤高騎士「…くっ…」

女メイジ「……だ…め…」


ヒュドラ『己の弱さを悔いるがいい…!さあ…今こそ我が元に…!』

…キラッ!!!…ゴクンッ…

ヒュドラ『つ…ついに手に入れたぞ……!』


冒剣士「宝玉を…飲み込んだ…」

女メイジ「ああ…」

孤高騎士「…ちっ……」

 
ヒュドラ『…おぉ、全身から……湧き上がる…力が…!』

…グググッ


ヒュドラ『我が兄弟、その首よ、今こそ再びこの世に…!』

冒剣士「くっ…」


ヒュドラ『うははははっ!』

ググググッ……

ヒュドラ『…む?』

グググググググッ…

 
ヒュドラ『いささか…力の増大が…強すぎる…』

…ビキッ…ビキビキ…


冒剣士「…?」


ヒュドラ『か、身体が…熱い…何だこれは…!』

…ビキビキビキッ!!

ヒュドラ『か、身体が崩れる…!?ぬうあああっ!!』


………バァン!!!!


ヒュドラ『がはぁっ!』

 
…ベチャベチャッ……ボトボトッ…


冒剣士「一体どうしたん…だ…?」


ヒュドラ『…我が…身体が…』


冒剣士「ヒュドラが…吹き飛んだ…?」

孤高騎士「ごほごほっ…ヒュドラが自爆したのか…?」ググッ

女メイジ「…?」


…コロコロ…キラッ

ヒュドラ『宝玉……そ、そうか…フィルボルグのやつ…』

 
冒剣士「…?」


ヒュドラ『許さぬぞ…許さぬ…く…』


孤高騎士「そ、それにしてもコレの"宝玉"は凄いモンなんだな…」


ヒョイッ…バチッ!!


孤高騎士「うおっ!?」

冒剣士「孤高さん!?」


ヒュドラ『…っ!』


孤高騎士「一体なんだ…?拾っただけで電撃が…」

 
冒剣士「さ、さぁ…僕は拾えますよ」

…ヒョイッ


ヒュドラ『…ほう』

孤高騎士「…ん?」


ヒュドラ『…く、クハハハ!!』

孤高騎士「何笑ってんだよ!」


冒剣士「?」


ヒュドラ『なるほどな、なるほど。なるほど…面白い。これは面白い!」

孤高騎士「突然…気味の悪い声で笑いやがって…」

ヒュドラ『憎しみか?孤高とやら…」

孤高騎士「…」

 
ヒュドラ『…ふっ』

孤高騎士「…首だけでいつまでも粋がってんじゃねーぞ!」ビュッ…


…ドシュッ!!!

ヒュドラ『…がっ…』

孤高騎士「死んでおけ…お前は危険すぎる…」


ヒュドラ『…』ドシャッ…

孤高騎士「…」


冒剣士「孤高さん…?」

女メイジ「…終わったの?」

 
……ガチャガチャッ!!


孤高騎士「…なんだ?」

冒剣士「入り口が騒がしいですね…?」


…ガヤガヤ

軍人A「大丈夫ですか!?」

軍人B「こちら、先発部隊!冒険者を発見しました…3名とも無事です!」

軍人C「もう大丈夫ですよ!」


冒剣士「わわっ、軍人さん…?」

孤高騎士「あー…そりゃあな…そうなるわな…」

女メイジ「そうなる?」

 
孤高騎士「あんな大規模な地震と、遺跡自体が沈んだんだ。軍に報告も行くだろう?」

冒剣士「あー…」

孤高騎士「多分、冒険酒場に連絡をとって冒険者がいないか調べたんだろう」

女メイジ「それで私たちが入ったのが分かった、ってことですね」

孤高騎士「ま、そうなだわな」


軍人A「うわっ、なんだこれ!」

軍人B「気持ち悪い…これ…あなたたちが…?」


孤高騎士「おいおい、軍人がビビってるんじゃねーぞ!」

軍人A「…」

 
孤高騎士「ま、やったのは俺じゃねーけどな」

軍人A「…では、誰が」

孤高騎士「そこの剣士だ」


冒剣士「ぼ、僕でもないですよ…これは宝玉の…」

孤高騎士「ば、バカ!」ゴツッ

冒剣士「あいたっ!」


孤高騎士「いいか、宝玉が表に出てみろ。あっという間に広まっちまうぞ…」ボソボソ

冒剣士「あ、そうですね」ボソボソ

孤高騎士「ここはお前がやったことにしろ。女メイジと一緒にな」

冒剣士「わ、わかりました…」

 
冒剣士「えーと…ごほん!結果的に、3人で討伐しました」

女メイジ「え!?」

孤高騎士「おいおい…」


軍人A「そうですか…それでは報告しておきます。冒険酒場のほうにも連絡はいれておきますね」

軍人B「では、脱出しましょう」


孤高騎士「はぁ…戻ったらとりあえず…いろいろやることはありそうだ」

冒剣士「…とにかく、無事に帰れるようでよかったです」

女メイジ「…だね」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【3日後・冒険酒場】


冒剣士「…というわけで、今回も色々ありました…」


オーナー「今回もお疲れ様。遺跡と一緒に沈んだって聞いたときは肝が冷えたよ…」

女メイジ「本当ですよ…、死ぬかと思いました…」

オーナー「今回の報酬は弾んでおかないとね…」


孤高騎士「色つけて頼むよ、オーナー」ニカッ

 
オーナー「ああ、もちろん……ん?」


冒剣士「…」

オーナー「…どうした?冒剣士」

冒剣士「あ、いえ…一度…、実家に戻ろうかなって…」

オーナー「実家に?」


冒剣士「今回のこともですが、前も…死にかけました。こんなことしてたら、いつ倒れるか分からないので…」

女メイジ「…」

冒剣士「出来るだけ、元気なうちに顔を見せておこうかなって…」


孤高騎士「本当はこんな国家級のクエストが連続することなんてないんだけどな…、運がいいんだか悪いんだか…」

 
冒剣士「だから、次に連休が入ったら戻ってみようかなって…」

オーナー「なるほどね…うん、いいよ」ニコッ

冒剣士「本当ですか!?」


オーナー「確か、3週間後からしばらくは軍から遠征要請が入るから、酒場のほうも少し暇になる。休みを長くあげるよ」

冒剣士「ありがとうございます!」

オーナー「うんうん、親にはきちんと顔を出すほうがいいさ」


孤高騎士「東方か…」

冒剣士「僕の故郷…そうですね」

 
孤高騎士「東方は錬金術にも長けていて、技術水準が高いんだよな?」

冒剣士「そう…ですね」

孤高騎士「もしかしたら、"宝玉"の秘密も分かるんじゃないか?」

冒剣士「…なるほど」


オーナー「…」


孤高騎士「ヒュドラが吹き飛んだ原因とか、な」

オーナー「うーん…それは多分、強力な封印魔法…いや、放出魔法…?が掛かっていたんじゃないかな」

 
冒剣士「?」

オーナー「例えば、冒剣士以外が使えないとか、色々と憶測は出来る」

冒剣士「僕だけ…?」


オーナー「昔から、高貴な魔族は少しの未来を読む力があると言われているんだ」


孤高騎士「…」

オーナー「だから、もしかしたら冒剣士がフィルボルグの前に現れることも、すべて知っていたのかも…ってこと」

冒剣士「…なるほど」

オーナー「…とりあえず、東方にいったら羽を伸ばしてきなよ!」

冒剣士「はい、休ませていただきます!」

  
孤高騎士「あのよ、俺も行っていいか?」

冒剣士「え?」


女メイジ「!」


孤高騎士「ほら、サクラとか色々見たいって言ってただろ?一回いってみようと思ってたんだよ」

冒剣士「い、一緒にですか?ぜひ!」

孤高騎士「お、いいのか?」


冒剣士「お世話になってるって、お母さんにも紹介したいです!」

孤高騎士「はは、ありがとうよ!」


女メイジ「あの…オーナー」

 
オーナー「ん?」

女メイジ「私も…東方に行っていいいですか?」

冒剣士「え?」


女メイジ「そ、その…、最近はずっと3人一緒だったし…、私も…だめかなって…」

冒剣士「僕はいいよ!もちろん、女メイジと一緒にいけたら楽しいし」ニコッ

女メイジ「…むぅ」テレッ


オーナー「2人も穴が開くのは…うーん…むむむ…」

女メイジ「…」

オーナー「ま、いいか。いっておいで!」

 
女メイジ「…ありがとうございます!」

冒剣士「やった!色々町も案内するね!」

女メイジ「…楽しみにしてる!」


孤高騎士「はっはっは、楽しくなってきたな!そうと決まれば準備だ!」


冒剣士「え、ええ!?3週間後ですよ!?」

孤高騎士「善は急げってね!オーナー、とりあえずこの2人と買い物いってくるぜ!」

女メイジ「準備しに行きましょうっー!ほら、冒剣士も急いで!」


…ヒッパラナイデー!!

…ドタドタ…ガチャッ………バタン…

 
…シーン

オーナー「…」


…コンコン……ガチャッ


オーナー「お…」

僧侶戦士「よっ…みんないるんだろ?」

オーナー「僧侶戦士…」


トコトコ…スタッ

聖剣士「…ここに」

魔法使い「…もちろんいるわよ」

吟遊詩人「…隠れるのって、案外疲れますよね」

 
僧侶戦士「よしよし…で、どうなんだ?」

オーナー「…話を聞く限りでは、恐らく…」

聖剣士「…」

吟遊詩人「どうにも…ならないんですか?」

魔法使い「…」


オーナー「まだ何か始まったわけじゃないけど、充分すぎる役者は揃いすぎている…」

聖剣士「分かってます。心に変化が起きてるということでしょう…」

オーナー「…」

 
僧侶戦士「…どうするんだ?俺らは」

オーナー「今は…どうしようもないよ」

魔法使い「…何にしろ…、もしアナタの考えが合っているとしたら…」

オーナー「……話を聞いた限りでは、繋がるという話で…」


僧侶戦士「お前の気持ちも分かるが、哀しい思いをするのは…あいつなんだぞ?」


オーナー「…」

僧侶戦士「…」

 
オーナー「…」

僧侶戦士「…」

聖剣士「…」


僧侶戦士「これからどうするべきか、お前がどう考えているかも分かる。だが…」

オーナー「…かといって、今から動くのは…」

僧侶戦士「元々は別のクエストだったのが、お前がダダこねて招いたのがこの結果でもあるんだぞ!?」

オーナー「…くっ」


僧侶戦士「今からでも遅くないだろ!?」

オーナー「だめだ…今は、もう…」

 
僧侶戦士「…あいつらが…そこまで気にかかるか、お前らしいがな」

オーナー「…」

僧侶戦士「…分かってるよ。俺だって。じゃあどうする!?宝玉の反応が、全てを物語っているじゃないか!」


オーナー「…もし、何かが起きたら俺も出る。それに…軍も弱い訳じゃない。よっぽどじゃない限りは大丈夫だろう」


吟遊詩人「でも…どっちの選択も、どっちの結果も…、辛い結果になりますね…」


オーナー「…今は、願うしかないだろう…」

僧侶戦士「頼むぜ…"英雄剣士"」

オーナー「…あぁ」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

冒剣士「えー、これはハデすぎますよ!」

孤高騎士「ははは、いいと思うんだけどな!?」

女メイジ「孤高さん…センス悪いですね…」

孤高騎士「何だと!?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

オーナー「…悲しませることだけは、したくないんだけどな」

僧侶戦士「考えが、改まればいいんだが…」

聖剣士「このタイミングで、こうなるのは運命だったんでしょうか」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

冒剣士「次は女メイジの選んでくださいよ!」

女メイジ「やだー!こんなハデなの着たくないー!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

オーナー「…偶然という名の、運命…か」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【オーナーの部屋】


…ビュウウウウッ!!!


…バサバサバサッ…!!…


ヒラヒラ…



…パサッ…

 
"国家クエスト"

英雄剣士及び、その経営する専属冒険者たちへ

本クエストは、人物の調査を行ってもらう


元、国際指名手配者であり
"軍人殺し"を行った者の身辺調査、及び観察である

当該する酒場に通い"冒険者"として活躍する現在の情報を定期的に送って欲しい


反逆を行う意思がないか、これは非常に重要なことである

彼は一人でも十二分に国軍への影響を与える可能性があるからだ



"「孤高騎士」"の調査を宜しく頼む

 
【TO BE CONTINUED】

 
読んでくださった方々、ありがとうございました。
次回作は別スレで、第二幕としてスタートいたします。

修正分、ファンタジー辞典を張って、今回は終了です。


次も期待してます

 
【ファンタジー辞典】

■ヒュドラ
ギリシア神話に登場する怪物で、古代ギリシア語で"水蛇"という意味です。
しかし、もう1つ意味があり、それはヘラクレスに退治されたヒュドラーという意味もあるようです。
星座の中にある"うみへび座"は、ヒュドラのことです。


■フィルボルグ
ケルト神話、アイルランドに伝わる神族の巨人"フィルボルグ族"が元ネタです。
元々はエリンという世界で、5つの種族が繁栄、滅んだという神話のストーリーの種族の1つです。

早起きは三文の得った
まさかのリアルタイム遭遇 乙!!

 
★カタナ
ご存知のとおり、日本に伝わる武器の1つです。
実は刀の歴史は平安時代まで遡り、そこで生まれた"太刀"が今日の刀の原型の1つとも言われています。
その時代から、武人の一般的な武器と認知され、今は平安時代以降の太刀などを"日本刀"と呼びます。

●居合い
鞘を滑らせて、摩擦を使って加速させて切り込む"居合い"という剣術です。
"抜刀術"の中にある1つ、居合いとして認識されることも多いですが、実際は"抜刀術"の別称が"居合い"なのです。
本作では、認識の多くである"抜刀術の1つ"として扱っています。

●燕返し
佐々木小次郎が得意とした"虎切"を燕返しと認知されています。
作中ではカウンター技でしたが、実際は"二回の攻撃による切り替えし術"が基本です。

分かりやすくいえば、居合いや刀の切り込みは必ず1度目のあとに"スキ"が生じます。
それを利用し、大きく1度目の攻撃を外し、そこを狙った相手に更に早い速度で斬りを入れるという技と伝えられています。

●居合い刀
本作では何度も使っていますが、"居合い専用の刀"というのが日本にはあります。
なぜなら、鞘を通して加速する技なので、その度に刀身が削れ、やがて刃先がボロボロになってしまうのです。

その為、居合い刀は"消耗品"として扱われており、現在の刀も居合い刀は一般的な日本刀よりも値段が落ちます。
(ただし歴史的な価値品を除く)

>>38 修正分です
 
冒剣士「この方々が…?」

オーナー「そう。俺の嫁のえーと…、魔法使いと、それと従業員の女メイジちゃん」


魔法使い「君が新しい専属冒険者さんね?ふふ、よろしくね」ニコッ

女メイジ「…よろしく」


冒剣士「よ、宜しくお願いします」ペコッ


オーナー「一応、女メイジちゃんは一緒くらいの年齢だし、話も弾むかも?とりあえず、挨拶だけってことで」

女メイジ「…ちょっと、オーナーこっちきて」グイッ

オーナー「ん?わわっ、引っ張らないで…どこに…!」


冒剣士「…?」

 
今回はこれで終了になります。
もう1度時間を得て、新たなステージの作品を書けて嬉しい限りです。

ありがとうございました、次回作もお付き合い頂ければありがたいです。
次回作の目処が立ち次第、こちらにURLを張らせていただきます(A´ω`)ソレデハ

>>435 >>437
お早い乙ありです(A´ω`)v

冒剣士「僕は最高の冒険者になる」
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