☆都内/某ファミリーレストラン
恵美「あ~、やっぱり店内は温かいね! 外は寒かった~」
P「冬に屋外での撮影は大変だったよな。お疲れさま」
恵美「仕事終わりにファミレスに来られるなら、それくらい頑張れるって!」
P「ははは、恵美はこの店が大好きだもんな」
恵美「だって落ち着くんだもん。ソファもふかふか……」
P「おいおい、くつろぐ前にまずは注文を決めてくれよ」
恵美「あっ、アタシはいつものメニューって決めてるから」
P「いつものメニュー?」
恵美「ミラノ風ドリアとドリンクバー!」
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P「この店のドリアっておいしいよな」
恵美「プロデューサーも好きなの? 気が合うね~!」
P「俺も同じものを頼もう。じゃあ、店員さん呼ぶぞ」
恵美「はーい」
P「すいません、ミラノ風ドリアとドリンクバー2つずつお願いします」
恵美「お願いしまーす♪」
P「……さて、料理が出来るまでしばらく時間があるな」
恵美「うんっ、何の話しよっか?」
P「実はさ、恵美に話したいことがあったんだ」
恵美「えっ? どしたの、急に改まって」
P「これから先のアイドル活動についてなんだけど、いいかな?」
恵美「う、うん……」
P「突然だが、定期公演でのリーダーをやってみないか?」
恵美「えっ?」
P「だから、定期公演でのリーダーだよ。聞こえなかったか?」
恵美「聞こえてるけど……えっ? リーダー?」
P「うん、恵美に適任だと思うんだ」
恵美「いやいやいや! アタシはそんなガラじゃないって!」
P「やりたくないのか?」
恵美「そういう訳じゃないけど、うーん……」
P「……」
恵美「やっぱ、リーダーは他の子に譲るよっ。その方がいいと思うし」
P「そうか……残念だけど仕方ないな」
恵美「ゴメンね、せっかく誘ってくれたのに」
P「いや、無理にとは言わないよ。本人の意思が一番だ」
恵美「代わりにサポート役で頑張るから!」
P「おう、頼りにしてるぞ」
恵美「ちなみにリーダーなら、琴葉やエレナの方が向いてると思うよっ」
P「そうだなあ、声をかけてみるか」
恵美「ねえ、プロデューサー。リーダーって、やっぱ一番目立つポジションだよね?」
P「ああ、全体曲のセンターやMCも担当するから注目度も高いよ」
恵美「だったらやっぱ、他の子がやった方がいいよね……」
P「ん? どうかしたか?」
恵美「な、なんでもないっ! ちょっとドリンクバー行ってくるから!」
恵美「ただいまっ。はい、こっちがプロデューサーの飲み物ね」
P「俺の分も持ってきてくれたのか? 悪いな」
恵美「いいから飲んでみてよっ。味の感想も聞かせてね」
P「味は市販のジュースと同じだろ……んぐっ!?」
恵美「どうかな? 実はアタシが独自にブレンドしてみたんだ~」
P「……」
恵美「あ、あれっ? おいしくなかった?」
P「……いや、飲めなくはないよ」
恵美「アタシも一口もらうね………………えっと、甘い」
P「ジュースだからな」
恵美「あと、あんまりおいしくないね」
P「こういうのって、そうそう不味くはならないものだけどなあ」
恵美「ごめんねプロデューサー、次はおいしくブレンドするように頑張るからっ」
P「いや、ブレンドする必要ないんだが……」
恵美「アタシは色々試してみるのが好きなのっ。その方が楽しいでしょ?」
P「まあ、そうなのかな」
恵美「話のネタになれば何でもいいんだけどね。どうでもいい話題って好きだからさ~」
P「ふーん……じゃあ逆に真面目な話は苦手?」
恵美「んー、苦手ではないよ。たまにはマジなことも話すもん」
P「そうなんだ」
恵美「でも、しばらくはまったり喋りたいかな。真面目な話はさっきしたし」
P「リーダーをやるかどうかって件か」
恵美「そうそう。あっ、ドリアが運ばれてきたよ!」
P「おお、おいしそうだな」
恵美「はい、プロデューサーのスプーンね。タバスコもいる?」
P「ありがとう。恵美は気が利くなあ」
恵美「ねえ、早く食べよっ! アタシもうお腹ペコペコだよ~」
P「そうだな、いただきます」
恵美「いただきまーすっ!」
P「うん、久しぶりに食べたけどやっぱりおいしいな」
恵美「だよね~! さすがミラノ風ドリア、本場の味がするよっ」
P「本場って……ミラノへ行ったことなんてないだろ?」
恵美「そんな細かいことはどうでもいいんだって。ノリだよノリ!」
P「俺、そろそろ女子高生のノリについていけなくなってきたかも……」
恵美「そんなこと言わないでよ~。アタシはもっとプロデューサーと話したいのに」
P「はいはい、悪かったよ」
恵美「今日は時間もたくさんあるんでしょ? ゆっくり話せるねっ」
P「そうだな。この後も特に予定はないし」
恵美「じゃあさ、後でひとつ相談に乗ってくれない?」
P「相談? どんな内容だ?」
恵美「食べ終わったら話すよっ。ドリアは熱いうちに食べなきゃね」
P「ん、オッケー」
恵美「この焦げ目のところもおいしいんだよね~」
P「ドリアだけで足りなかったら言ってくれよ。何でも追加するからな」
恵美「えっ……でも、そんなにお金使っちゃマズいんじゃない?」
P「経費で落ちるから気にしなくていいよ」
恵美「ケイヒ? うーん、大人が使う言葉は難しいね~」
P「ははは、そんなに難しい言葉じゃないよ」
恵美「そうなの?」
P「高校生でも簿記の勉強をしてる子なら知ってるんじゃないかな」
恵美「あー、簿記ね。そう言えば、友達が試験を受けるって話してたような……」
P「恵美も受けてみたらどうだ?」
恵美「いやいや、アタシ勉強ってあんま得意じゃないからさ」
P「合格すればアイドルの仕事につながるかもしれないぞ」
恵美「ええっ? そんな簡単にいくかな~?」
P「実際に、簿記の公式サイトに写真が載ってるアイドルもいるしな」
恵美「そうなの?」
P「この子だよ。346プロの新田美波さん」
恵美「へぇー、綺麗な人だね!」
P「趣味の資格取得が高じてコラボに至ったんだってさ」
恵美「ふーん……プロデューサー、やけに新田さんについて詳しくない?」
P「そうかな? 別に普通だと思うけど」
恵美「もしかしてプロデューサーって、こういう清楚で大人っぽい人が好きなの?」
P「ちょっ、急に何を言い出すんだよ!」
恵美「ウチの事務所にいないタイプだもんね~」
P「そんなことないぞ! 765プロにだって清楚な大人のお姉さんが…………いるだろ」
恵美「言いよどんでるし!」
P「まったく……俺の女性の好みなんてどうでもいいじゃないか」
恵美「どうでもよくないんだけどな~」
P「まあ、清楚なのはいいことだとは思うよ。正統派って感じで」
恵美「じゃあ、もしかしてギャルっぽい子は嫌い?」
P「嫌いじゃない。それはそれで好きだ」
恵美「ふーん、そうなんだ……良かった」
P「どうかしたのか?」
恵美「何でもないよっ♪ ねえ、ピザ追加してもいい?」
P「もちろん構わないよ。なんたって経費だからな!」
恵美「わーいっ」
P「ところで、そろそろ聞きたいんだけど……」
恵美「ん? 何を?」
P「さっき恵美が相談したいって言ってたことだよ」
恵美「ああ、それね! プロデューサーみたいな大人の男性に相談したかったんだ!」
P「そうか、何でも聞いてくれていいぞ」
恵美「恋愛相談なんだけど、いいかな?」
P「……んっ?」
恵美「だから、恋愛相談だよ~」
P「……えっ? ちょっと待て、恵美って好きな人がいるのか?」
恵美「ち、違う違うっ! アタシじゃなくて友達の話だからっ!」
P「友達の話?」
恵美「……うん、実はね、友達が最近彼氏に振られちゃったんだ」
P「失恋か、辛いな」
恵美「かなり落ち込んじゃっててさ、元気になって欲しいけど、どう接していいのか分かんなくて……」
P「なるほど、その子を励ましてあげたいんだな」
恵美「うん……アタシにできることって、何かないかな?」
P「難しいな、それは」
恵美「付き合ってた人に振られる気持ちすら、アタシにはいまいち想像できないんだよね」
P「そうなんだ」
恵美「ん……だって、そんな経験ないもん」
P「とは言え、俺に相談されてもなあ」
恵美「プロデューサーは恋愛経験も人生経験も豊富そうだから、相談してみようと思ったんだけど……」
P「恋愛経験か……全く豊富じゃないんだけどね」
恵美「本当に? プロデューサー格好良いのに」
P「ははは……お世辞でも嬉しいよ」
恵美「別にお世辞じゃないんだけどな~」
P「まあ、俺のことはどうでもいいとして……友達が落ち込んでるって話だったな」
恵美「そうそう、どうしたらいいのかな?」
P「失恋の解決法って、何もせずに過ごすくらいしかないと思うぞ」
恵美「えっ? どゆこと?」
P「ほら、時間が解決してくれるってヤツだよ」
恵美「じゃあ、アタシにしてあげられることって何もないのかな……」
P「そんなことないよ。恵美は普段通りにその友達と一緒にいればいいんだ」
恵美「普段通りに?」
P「ああ。その友達は今、寂しい思いをしているんだろう?」
恵美「うん」
P「だったら一緒にいてあげればいい。恵美って近くにいるだけで安心する存在だからさ」
恵美「ええっ!? アタシ、そんなんじゃないって!」
P「シアターでの様子を見ていればわかるよ。恵美のいる集団はいつも楽しそうだ」
恵美「それ、アタシのおかげじゃないと思うけど……」
P(随分と自己評価が低いんだな……。他でもない、恵美だけの魅力なのに)
恵美「うーん、恋愛って難しいなあ…………あれっ?」
P「どうかしたか?」
恵美「ほら、あの子大丈夫かな? 迷子かもしれない」
P(小さい子がキョロキョロと店内を見回しながら歩いてる。どうしたんだろう……?)
恵美「ねえボク、どうしたの? お母さんは?」
P「お、おい恵美っ」
恵美「そっかー、はぐれちゃったんだね。店員さーん」
P「……」
恵美「よしよし、すぐにお母さんのところに戻れるからね~」
P(困っている子に迷わず声をかけるなんて、さすがだなあ……)
数分後
恵美「あの子、お母さんのところに戻っていったよ」
P「母親が目を離した隙に遠くの席まで来ちゃってたのか」
恵美「お別れする時に手を振ってくれたよ。バイバイ、って」
P「へえ、いい子だな」
恵美「うん! やっぱり子どもってかわいいよね~」
P「恵美って子ども好きだよな。シアターでも年下の子の面倒をよく見てるし……」
恵美「あはは、桃子たちを子ども扱いしたら怒られちゃうかもよ~」
P「そうだな、本人には内緒にしてくれ」
恵美「分かってるって」
P「それにしても、改めて思ったんだけどさ……」
恵美「ん?」
P「恵美って優しい子だよな」
恵美「ちょっ!? どしたの急に!」
P「落ち込んでる友達を励まそうとしたり、困っている子どもを放っとけなかったり」
恵美「それは普通のことでしょ」
P「なかなかできないことだよ。恵美にとっては当たり前だとしてもな」
恵美「もうっ、そんなストレートに褒められると照れちゃうよ……」
P「……俺はその魅力を、もっとたくさんの人に知ってもらいたい」
恵美「プロデューサー?」
P「なあ、やっぱり定期公演のリーダーやってみないか?」
恵美「ええっ!?」
P「さっきは断られちゃったけど、もう一度考え直して欲しいんだ」
恵美「でもっ、アタシより他の子の方が……」
P「どうしても恵美に任せたい、って言ってもダメか?」
恵美「……」
P「きっとファンの人たちも、もっと恵美のことが好きになるよ。俺はそう信じてる」
恵美「アタシにそこまで期待してくれるの、プロデューサー?」
P「当然だ。いつも一番近くで恵美のことを見てるんだからな」
恵美「……プロデューサーがそこまで言ってくれるなら、挑戦してみようかな」
P「えっ!? じゃあ……」
恵美「うん。やってみるよ、リーダー」
P「そうか! 頑張ろうな、恵美!」
恵美「で、でもっ、上手くできるか分かんないからね……?」
P「大丈夫、公演は絶対に成功するよ」
恵美「ど、どうしてそう言い切れるの!?」
P「シアターのみんなが支えてくれるからさ。今まで、恵美がそうしてきたみたいにな」
恵美「…………そっか、みんながいるもんね」
P「ああ。恵美は一人で頑張りすぎることもあるけど、時には人にも頼るんだぞ?」
恵美「……うん」
P「当たり前だけど、俺にも頼ってくれよな? 何でもするからさ」
恵美「うんっ! 頼りにしてるよ、プロデューサー!」
P(……やっぱり恵美は、笑ってる顔が一番かわいいな)
恵美「アタシがリーダーで、みんなで一緒に公演……ふふっ」
P「もう不安じゃなくなったか?」
恵美「うん、大丈夫だよっ。今ね……胸のあたりが、温かいなって思ってた」
P「どういうことだ?」
恵美「シアターのみんなが一緒なら、きっとどんなライブでも成功させられるって思えるんだ~」
P「改めて仲間との絆を感じたのか」
恵美「そうそう! でも、どうして胸が温かくなるんだろ? やっぱり、心がこの辺にあるのかな?」
P「さあ、どうだろうな」
恵美「プロデューサー、ちょっと触ってみる?」
P「な、なに言ってんだよ!?」
恵美「にゃはは、冗談だよ~っ」
P「まったく……大人をからかわないでくれよ」
恵美「あ~、今日はプロデューサーとたくさん話せて楽しいなあ」
P「俺も楽しいよ。だけど、そろそろ店を出ないか?」
恵美「あれっ、もうこんな時間!?」
P「長居しすぎるのも良くないからな」
恵美「そうだね……あーあ、まだプロデューサーと一緒にいたかったんだけどなあ」
P「じゃあ、この後どこか寄ってくか?」
恵美「えっ、いいの!?」
P「今日は予定を空けておいたからな。恵美のリクエストに応えるぞ」
恵美「じゃあカラオケ! すっごく歌いたい気分なんだ~」
P「決まりだな。行こう!」
恵美「カラオケ、カラオケ~♪ ううっ、お店の外は寒いね……」
P「大丈夫か? 風邪をひかないように――」
恵美「プロデューサー。手、貸してっ」
P「お、おいおいっ!?」
恵美「こうして二人でくっついてないと、寒くて風邪ひいちゃうよ~」
P「まったく、カラオケ屋に着くまでだからな」
恵美「うんっ! プロデューサーの隣りにいると、心も身体も温かいな~……」
P「ははは、そう言ってもらえると嬉しいよ」
恵美「これからも、アタシの隣りにいてくれる?」
P「もちろんだよ。来年の冬も、再来年の冬も一緒にいる」
恵美「えへへ……ありがとっ! プロデューサー、大好きっ♪」
おわり
以上で完結です、ありがとうございました。
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