【ミリマスSS】このみ「時にはレトロなゲームセンターで」 (43)

☆都内某所

このみ「ねえ、プロデューサー」

P「何ですか?」

このみ「こうして二人で一本の傘に入っていると、カップルみたいじゃない?」

P「相合傘ってやつですね」

このみ「ほら、もっと近づかないと肩が濡れちゃうわよ」

P「すいません、失礼します」

このみ「こんなところを誰かに見られたらスキャンダルになっちゃうかしら?」

P「大丈夫ですよ、人通りはありませんし」

このみ「そうよね。だって……」

P「誰も出歩かないレベルの豪雨の中ですからね!!」

このみ「ごめんね!! 私のせいで!!」

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このみ「ううっ……私がロケ終わりに寄り道して帰りたいなんて言ったから……」

P「いやいや、このみさんのせいじゃないですよ」

このみ「突然の夕立なんてついてないわ……」

P「これ以上雨が強くなると、傘があっても濡れちゃいそうですね」

このみ「ええ、どこか雨宿りできる場所を探さないと」

P「あっ、あの建物はどうですか?」

このみ「きっと何かのお店よ、行ってみましょう!」

P「良かった、営業中みたいですよ! あれっ、ここって……」

このみ「少し古いけどゲームセンターみたいね」

P「雨が上がるまで中で待たせてもらいましょうか」

このみ「そうね。おじゃましまーすっ」

P「おおっ、何だかレトロな雰囲気」

このみ「古いゲームが多いからかしら、どこか懐かしさを感じるわね」

P「最近はこういうゲーセンも減ってますからねー」

このみ「まるでこの場所だけ時間が止まっているみたい……」

P「二階はビデオゲームコーナーらしいですよ」

このみ「それってストⅡとか?」

P「ええ、対戦格闘ゲームやシューティングゲームのことだと思います」

このみ「色々ゲームがあるのねえ……」

P「このみさん、やけにキョロキョロしてますね」

このみ「あんまり来たことがない場所だから、珍しくて」

P「ゲーセンには行かないタイプだったんですか?」

このみ「ええ、学生時代に友達とプリクラを撮ったりはしてたけどね」

P「おおっ、女子中高生っぽい!」

このみ「だけど、ゲームで遊んだ記憶はほとんどないわ」

P「なら今から遊んでみましょうよ! きっと楽しいですから」

このみ「そうしましょうか。どちらにせよ、雨が上がるまで外には出られないんだし」

P「決まりですね。何かやりたいゲームはありますか?」

このみ「うーん……気になるのは、この辺かしら」

P「音ゲーですね。やったことはあるんですか?」

このみ「興味はあったんだけど経験はないわ。敷居が高く感じちゃって……」

P「あー、分かります」

このみ「初心者が遊んでもいいのかな? って考えちゃうのよね」

P「だけど、ここなら他のお客さんもいないし遠慮はいりませんよ」

このみ「……そう言えば人がいないわね」

P「この天気ですし、平日の昼間だからじゃないですか?」

このみ「なるほどね。ねえ、このゲームなんて面白そうじゃない?」

P「あっ、『ギターフリークス』と『ドラムマニア』ですね」

このみ「プロデューサーはやったことがあるの?」

P「ええ、少しだけですが。ギターとドラムでセッションできるんですよ」

このみ「へえー、面白そう!」

P「ただ、この機体はかなり古いバージョンみたいですね」

このみ「本当だ。収録曲も一昔前のものって感じがするわ」

P「このみさんはギターとドラムのどっちを演奏しますか?」

このみ「じゃあギターで! どう、似合うかしら?」

P「似合ってますよ。ただ、個人的にはギターよりもベースを持って欲しいところですけどね」

このみ「前にも私にチューバを持たせたわよね!? 低音楽器へのこだわりでもあるの!?」

P「こだわりと言うか、このみさんにふさわしい楽器だと思うんです」

このみ「なるほどね。低音の響きはアダルトな魅力があるから……」

P「いえ、小さい子が必死に大きな楽器を持っているところにアンバランスな魅力が……」

このみ「何か言った?」

P「な、何でもないです!! 俺はドラムを担当しますね!」

このみ「ごまかされた気がするけど、まあいいわ」

P「選曲はお任せしますよ」

このみ「あっ、じゃあこの曲にしない?」

P「『天体観測』ですか。いいですね」

このみ「青春らしくて素敵な曲よねー」

P「さあ、ゲームを始めましょう!」

このみ「私は初めてだから、足を引っ張ったらごめんね」

P「大丈夫です、俺についてきてください」

このみ「あら、今日のプロデューサーは自信満々ね」

P「ドラムはバンドでも超重要なポジションですから!」

このみ「ドラマーになりきってる!?」

P「このみさんもギターで思いっきり暴れちゃってください」

このみ「オッケー、じゃあセッションいくわよー……」

P、このみ「ゲームスタートっ!」

数分後

P「……大口を叩いてすいませんでした」

このみ「プロデューサー、音ゲーのセンスがないわね」

P「だって、手足を別々に動かすなんて人間業じゃないですよ!」

このみ「世のドラマーの人たちはすごいってことね」

P「それより、このみさんは上手過ぎですよ。本当に初めてですか?」

このみ「ええ、初めてよ」

P(歌も上手い人だし、音楽センスがあるんだろうな……)

このみ「ふふっ、本物のギターも練習してみようかしら♪」

P「じゃあ、次のライブでジュリアみたいに弾き語りをやってみます?」

このみ「いきなりハードルが高すぎる!」

P「冗談ですよ」

このみ「ねえ、二階にも行ってみましょう」

P「いいですね。……うわあ、筐体がたくさん!」

このみ「格闘ゲームが多いわね。美奈子ちゃんが喜びそうだわ」

P「しかも50円で遊べるみたいです」

このみ「それで採算が取れるのかしら……」

P「そんな大人な考えは必要ないですよ。さあ、遊びましょう」

このみ「うーん、だけど私、格闘ゲームってほとんどやったことないのよね」

P「ならシューティングやパズルもありますよ?」

このみ「そうねえ……あっ、このゲームなら自信があるわ!」

P「おおっ、『ぷよぷよ通』ですね」

このみ「懐かしいなあ……子どもの頃の記憶が蘇るわ」

P「思い出のゲームなんですか?」

このみ「それほど大げさなものじゃないけど、家族で温泉旅行に行った時に遊んだのよ」

P「ゲームコーナーのある旅館だったんですね」

このみ「ええ、ぷよぷよ自体はスーファミでやったことがあったから、すぐにクリアできると思ったんだけど……」

P「結果はどうだったんですか?」

このみ「ラスボスだけ倒せずに終わっちゃった」

P「全クリには至らなかったと」

このみ「ええ、本当はコンティニューしたかったんだけどね。家族にもう部屋に戻るよって呼ばれちゃって」

P「それは惜しかったですね」

このみ「それでも、家族旅行のいい思い出よ」

P「だったら、今日はコンピューターにリベンジしてみませんか?」

このみ「うーん……それもいいけど、プロデューサーと対戦がしたいわ!」

P「俺とですか? まあ、構いませんけど」

このみ「軽く揉んであげるわね。かかってきなさいっ」

P「こちらも手は抜きませんからね?」

このみ「当然よ。『ふたりでぷよぷよ』を選んで――」

P、このみ「ゲームスタートっ!」

このみ「まずは色をちゃんと揃えて……っと、四連鎖が組めたわ」

P「それ、三連鎖で止まってますよ」

このみ「!?」

このみ「何で私のフィールドを見てるのよ!?」

P「えっ、対戦の基本じゃないですか?」

このみ「普通はそんな余裕ないでしょ!」

P「俺はいつも杏奈と対戦してますから。このくらいは必須スキルなんですよ」

このみ「二人はどんなレベルで戦っているの……」

P「いやー、俺も杏奈には全く勝てませんけどね。いつも中盤戦で潰されちゃって」

このみ「ちゅうばんせん……?」

P「伸ばしの上手さや凝視力でもかなり差をつけられてるんですよねー」

このみ「プロデューサー、日本語で喋ってくれない?」

P「あっ、すいません。いつものクセで専門用語が……」

このみ「まあいいわ。受けてみなさい、私の大連鎖――」

P「ほいっ、隙ありっ!」

このみ「うわー! 一瞬で私のフィールドが埋まった!?」

P「あとは追い打ちをすれば俺の勝ちですね」

このみ「ちょっとプロデューサー、今のどうやったの?」

P「一連鎖での大量同時消し、通称『イバラ』です」

このみ「イバラ……? 一連鎖なのに三段以上のおじゃまぷよが降ってきたんだけど」

P「配色の運もありますけど、もっと威力が出ることもあるんですよ」

このみ「知らなかったわ……。でも、次の試合は負けないんだからっ!!」

数分後

このみ「……」

P「このみさーん、怒ってます?」

このみ「……別にー?」

P「本気を出しちゃってすいませんでした。ちょっと大人気なかったですよね」

このみ「プロデューサーは悪くないわよ、手を抜かれる方がイヤだもん」

P「そうですか……」

このみ「よしっ、この鬱憤を別のゲームで晴らすわよっ!」

P「それなら俺も付き合いますよ。何やります?」

このみ「一階に下りましょう、レーシングゲームがあったはずよ」

P「それでもう一勝負といきますか」

このみ「アクセル踏みっぱなし!! ノーブレーキ!!」

P「このみさん、運転が荒すぎますよ!」

このみ「ふふっ、私のスピードについて来れるかしら?」

P「まさかハンドルを握ると性格が変わるタイプなんじゃ……」

このみ「ゲームの中だけよ、ゲームの中だけ! ――ああっ!」

P「あー……障害物にぶつかっちゃった」

このみ「まあいいわ、壁にぶつかろうが全力で進むのよっ。過去は振り返らない!」

P「ゴリ押し過ぎる!」

このみ「振り~返らな~い♪」

P「水中キャンディっぽく歌わないでくださいよっ! せっかくの名曲なんですから!!」

このみ「はぁー、負けたけどスッキリしたわ」

P「だけど、意外と僅差でしたね。ゴリ押しも時には有効なのかな……」

このみ「何だかテンション上がってきちゃったかも!」

P「気持ちは分かりますよ。ゲーセンってやっぱり楽しいですね」

このみ「うんっ、次はあれをやりましょう」

P「もぐら叩きですか?」

このみ「大人になるとやる機会がないでしょ? だから久しぶりにどう?」

P「確かにずっとやってないかも……」

このみ「ここは協力プレイよ、パーフェクトを目指すからねっ」

P「よーし、本気でいきますよ!」

このみ「プロデューサー、そっちにもぐら出てるわよっ」

P「このみさんの方こそ、さっきから見落としてませんか!?」

このみ「い、意外と難しいのよっ」

P「確かに。ただの子ども騙しじゃないみたいですね」

このみ「もしかして、反射神経が落ちてるのかしら……」

P「まだそんな年齢じゃないと思いたいですけど」

このみ「そうよね、まだまだ人生はこれからなんだからっ」

P「あっ、ゲームが終わった」

このみ「ふぅ……もぐらに翻弄されてばかりだったわね」

P「次はもぐら叩きより疲れないゲームがいいです……」

このみ「ワニワニパニックとか?」

P「似たようなものじゃないですかっ!」

このみ「じゃあUFOキャッチャーのコーナーでも見て回りましょうか」

P「いいですね。ブラブラするだけでも楽しいですよ」

このみ「見てっ、景品は新しいものを取り入れているみたいよ」

P「そうなんですか?」

このみ「ほら、このぬいぐるみも大流行のキャラクターでしょ?」

P「えっ……? この緑色で目つきの悪い生き物がですか?」

このみ「そうよ。若い女の子の間でトレンドなんだから」

P「言われてみれば、他の事務所にこのキャラのぬいぐるみを持っている子がいたような……」

このみ「よーし、私もこの景品を狙ってみるわ!」

P(これが可愛いのか……? 女の子のセンスは難解だなあ……)

このみ「これでも私、UFOキャッチャーは得意なのよ」

P「へえ、何かコツでもあるんですか?」

このみ「まずは様々な角度から景品を見ること」

P「なるほど、機体の横に回り込んでチェックするんですね」

このみ「そしてボタンを離すタイミングには、細心の注意を払う……!」

P「す、すごい集中力だ……!」

このみ「アダルティにキャッチするわよっ」

P「…………あっ。あのー、このみさん?」

このみ「ちょっと待って、話しかけるなら後にしてくれない?」

P「すごく言いにくいんですけど……胸元が見えそうになってますよ」

P(ただでさえ薄着なのに前かがみになると、シャツの隙間から見えてはいけないものが――)

このみ「きゃあっ! プロデューサーのえっち!」

P「す、すいません……」

このみ「……で、見たの?」

P「あっ、このみさん! ちょうどいいところでアームが止まりましたよっ」

このみ「えっ? ああ、景品が取れたわ……」

P「いや~、おめでとうございます! 良かったですね!」

このみ「プロデューサー、必死に話題を変えようとしてない?」

P「このキャラクターは可愛いなあ!」

このみ「まったく……他の子はえっちな目で見ちゃダメなんだからね」

P「心に刻んでおきます」

このみ「さて、一通り遊び尽くしちゃったけど……」

P「まだ雨が激しいままですね」

このみ「もう少しここで待った方がいいかしら」

P「ええ、ゲームは中断して休憩スペースへ行きましょうか」

このみ「いいわね。私、こういう場所でだらだら喋るのも好きよ」

P「ゲームの音が少し遠くから聞こえる……」

このみ「雨がアスファルトを打つ音と混ざって心地良いわ」

P「不思議と幻想的な気持ちになりますよね」

このみ「そうねえ、何だか夢の中にいるみたい」

P「掲示板にはチラシがたくさん貼ってありますね」

このみ「ふうん、対戦会なんてやってるんだ」

P「同じ格闘ゲームが好きな人が曜日を合わせて集まっているみたいですよ」

このみ「へえー、そういう文化もあるのね」

P「今じゃネットゲームが当たり前ですけど、こういう場所も残っているんですね…………あっ」

このみ「どうかしたの?」

P「このみさん。この張り紙、お店からのお知らせみたいです」

このみ「…………えっ?」

『当店は今月末をもって閉店させていただきます。長年のご愛顧ありがとうございました』

このみ「このお店、もうなくなっちゃうんだ……」

P「残念ですけど、そうみたいですね」

このみ「……どんなに素敵な場所でも、いつか終わりの時は来るのよね」

P「ゲーセンの経営が厳しいって話はよく耳にしますよ」

このみ「大人の事情、ってやつかしら」

P「世知辛いですよね…………んっ?」

P(気のせいかな、このみさんの様子がおかしいような……)

このみ「どうしたの? 急に私の方をじっと見つめて」

P「ええと、俺の思い過ごしかもしれないんですけど――」

このみ「あっ! 携帯が鳴ってるわよ。プロデューサーのじゃない?」

P「間が悪いな、こんな時に……」

P「仕事関係の人からの電話みたいです」

このみ「なら、すぐに出たほうがいいわよ」

P「ええ、そうなんですけど……」

このみ「ほら、私はちょっと店内をブラブラしてくるから」

P「すいません、せっかく二人でいる時なのに」

このみ「気にしなくていいのよ。私はやり残したゲームでもやっておくわ」

P「分かりました。電話が終わったら探しに行きます」

このみ「じゃあ、待ってるからねー」

P「はい、また後で。…………お世話になっております、765プロの――」

P(俺の考えすぎだったのかな? どこか寂しくて辛そうな顔に見えたんだけど……)

十分後

P「思ったより電話が長引いちゃったな、このみさんはどこだろう」

このみ「…………うーん、なかなか手強いわねっ」

P「あっ、見つけた。このみさーんっ」

このみ「プロデューサー? ちょっと待ってね、今は集中してるから」

P「また『ぷよぷよ通』をやってたんですか?」

このみ「ええ、今度はコンピューター戦よ」

P「もう最上階まで行ってるなんてすごいじゃないですか」

このみ「残る敵は二人だけなんだけど、苦戦しているところなの」

P「全クリを目指すつもなんですか?」

このみ「ええ、子どもの頃に勝てないままだったからね」

P「リベンジ戦ってことですね」

このみ「それに、今クリアしないともう機会がないかもしれないもの」

P「ああ、このお店もなくなっちゃうから……」

このみ「悔いのないように遊び尽くしておかなくちゃね……よしっ!」

P「勝った! 残るはラスボスのサタンだけですねっ」

このみ「最後は一発でクリアしてみせるわ!」

P「おおっ、強気の発言」

このみ「大人の勝負強さを見せてあげるんだから」

P(とは言え、ラスボスだけあって強敵だ。そう簡単には勝てないと思うけど……)

このみ「くっ……大連鎖を組む余裕がない……!」

P「ここまで来るとぷよの落下スピードもかなり速いですからね」

このみ「小さい攻撃で攻めるのがやっとだわ」

P「でも効いてますよ。相手のフィールドも埋まってきました!」

このみ「わ、私も結構ギリギリなんだけどっ」

P(お互いに画面上部まで埋まったような状態か……あっ!!)

P「このみさんっ、敵が大連鎖を狙ってますよ!」

このみ「ええっ!? こんな時に……」

P「五連鎖ありますね。……戦況は大幅に不利です」

このみ「プロデューサー、諦めるのはまだ早いわよ!」

P(そうは言っても、このみさんの方には連鎖がない……終わりだ)

P「残念ですけど、コンティニューして次の一戦に賭けましょう」

このみ「まだまだっ、麻雀で鍛えた勝負強さを甘く見ないでよねっ!」

P「麻雀で言えば相手だけテンパイしてる状態ですよ? さすがにここから逆転なんて……」

このみ「よしっ、いいツモが来たわっ!!」

P「あっ! もしかしてこのみさんの狙いは――」


このみ「一連鎖の大量同時消し…………『イバラ』よ!!」


P「き、決まった!?」

このみ「ねっ、諦めるには早かったでしょ?」

P「まさかさっき知ったばかりのテクニックで勝つなんて……」

このみ「ふふっ、プロデューサーが教えてくれたおかげね♪」

P「全クリおめでとうございます」

このみ「ありがとう。ああ、何だかどっと疲れた……」

P「また休憩スペースへ戻りましょうか」

このみ「そうしましょう。私、お腹が空いちゃったわ」

P「確かホットスナックの自販機ならあったはずですよ」

このみ「それって高速道路のサービスエリアとかにあるやつ!?」

P「ええ、たまに食べたくなるアレです」

このみ「私はホットドッグが食べたいわ~」

P「いいですねえ」

このみ「……うん! なかなかの味ね」

P「場所補正のおかげで余計においしく感じますよね」

このみ「海の家で食べる焼きそばみたいなものかしら?」

P「そんな感じです」

このみ「ちょっと分かるかも」

P「人のいないゲーセンの一角、っていうのがいいんですよ」

このみ「私もこの雑多な感じは嫌いじゃないわ」

P「椅子はボロいし、掲示物も古いものが貼られたままになっていたりしますけど……」

このみ「むしろそういう部分に歴史を感じるわね」

P「たくさんの人がここで過ごしてきたんでしょうね。……おや? このノートは――」

このみ「どうしたの?」

P「見てください、交流ノートが置いてありますよ」

このみ「交流ノート?」

P「お客さんが自由に書き込んでいいノートなんです。今じゃほとんど見なくなりましたけどね」

このみ「へえー、面白いわね。ゲームの話題だったり、とりとめのないことだったり……」

P「イラストを描いている人もいるみたいですよ。しかもすごく上手い!」

このみ「これが最新のノートね。中身は……」

P「おおっ、これは――」


『このお店がなくなってしまうことがすごく残念です。今まで本当にありがとう』

『閉店する日まで通い続けます!』

『子どもの頃から遊んでいたこの場所は私の青春です。ずっとずっと忘れません』


P「みんな、このゲーセンがなくなることを惜しんでいるんですね」

このみ「とても愛された場所だったのね」

このみ「……実はね、ここが閉店するって知った時、ちょっと怖くなったの」

P「えっ、どうしてですか?」

このみ「どんな楽しい場所にも、いつか終わりが来るんだなあと思って」

P「このみさん……」

このみ「私、765プロで過ごしていると毎日が楽しいわ。劇場のみんなのことも大好きよ」

P「ええ、俺も同じ気持ちです」

このみ「だけど、そんな日々もいつか忘れられる時が来るのかなあ……なんて、自分を重ねちゃったの」

P「そんなことを考えていたんですか……。様子が変だとは思っていたんですよ」

このみ「でも、それは違うって気づいたわ。楽しかった場所はなくなっても、思い出はずっと誰かの心に残り続けるのよね」

P「……そうですね。まあ、俺たちの時間はまだまだ終わりませんけどね!」

このみ「当然よ、私たちは全力で走っている途中だもの!」

P「それじゃあ、そろそろ店を出ましょうか」

このみ「そうね、名残惜しいけど帰らなくちゃ……。うわあ、外に出るとむし暑い……」

P「もうすっかり夏ですからねー……おっ?」

このみ「あら、すれ違いで高校生くらいの子たちが店に入っていったわね」

P「いい笑顔でしたね」

このみ「青春を謳歌してるみたいで羨ましいわ~」

P「いやいや、俺たちの毎日だって充実してるじゃないですか」

このみ「確かにそうよね。シアターの仲間もいて、同じ目標に向かっている……それってまさに青春だわ!」

P「ははは、俺たちはもう大人ですけど……」

このみ「きっと青春に年齢なんて関係ないのよ」

P「そうかもしれませんね。そういう考え方、俺は好きですよ」

このみ「ところで、世の中にはオトナならではの楽しみもあるわよね」

P「えっ? それって……」

このみ「プロデューサー、今から莉緒ちゃんたちを誘って飲みに行かない?」

P「絶対そう言うと思いましたよ!」

このみ「最近は仕事ばかりだったし、そういう時間も必要でしょ?」

P「……まあ、確かに。今日くらいは夜まで遊んじゃいましょうか」

このみ「さすがプロデューサー! 話が分かるわねっ」

P「ただ、明日からはまた仕事のスケジュールがぎっしりですからね?」

このみ「分かってるわよっ。ファンの期待に応えるためにも頑張らなくっちゃ!」

P「ええ、これからも一緒に進んでいきましょうね」

このみ「もちろんよ! ずーっと私の隣りにいてね、プロデューサー♪」


おわり

以上で完結です、ありがとうございました。

☆過去作

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