アイドルマスターシンデレラガールズ。藤原肇、鷺沢文香のssです。
書き溜めあり。
卒業シーズン。今は卒業シーズン。いいね?
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月下氷人 意味縁結びの神。転じて、男女の縁の仲立ちをする人。仲人なこうど。媒酌人。
▽略して「氷人」ともいう。
出典:新明解四字熟語辞典
藤原肇「文香さんは高校の卒業式に、何か思い出深い出来事などありましたか?」
鷺沢文香「思い出ですか……?」
肇「はい、せっかくこうして卒業式という舞台でお仕事を頂いたので、何か卒業をテーマにお話が出来たらと思いまして」
文香「そうでした。肇さんは、まだ……でしたね」
肇「ふふっ。そうですね、高校での卒業はあと二年先の話です」
文香「卒業式は特別な事は何も無かったですね……普通の日常となんら変わりのない……そんな日でした」
肇「普通……ですか?」
文香「はい、仲の良い友人とは進学先も同じだったのでそんなに特別な感じはしなかったですね」
肇「そうでしたか、変わらないということも良いことなのかもしれないですね」
文香「はい……あ、でも……」
肇「でも?」
文香「今想えば、もう一度あの学校の図書室に足を運びたいと……ええ。広くて綺麗で、差し込む西日が心地好くて……」
文香「……っ! すみませんつい郷愁に浸ってしまって……」
肇「いえ、文香さんらしいな。と」
文香「悪い癖ですね……こうやってすぐに思い浸ってしまうのは」
肇「私は好きですよ? 文香さんが何かを考えているときの横顔も」
文香「……なんだか照れてしまいますね」
肇「私もなんだか照れてしまいました」
文香「郷愁といえば……肇さん……」
肇「はい、なんでしょうか?」
文香「もうすぐ桜が咲きますね」
肇「……ええ、そうですね。もうそんな季節になってしまいました」
文香「今年も岡山の方へは戻られるのですか?」
肇「はい! しばらくはまとまった休みができると思うので、家族に会いに帰ろうかと」
文香「それは良いことです」
肇「文香さんは叔父さんの書店に?」
文香「ええ。久しぶりに書庫の整理をしようと……まとまった休みができると思うので」
肇「そうですか……」
文香「……ええ」
肇「プロデューサーさんも……少し意地悪な人ですよね」
文香「……?」
肇「この卒業式のライブを期に私たちのユニットも解散発表だなんて……」
文香「……そういう人ですから、語呂合わせや言葉遊びが好きな……」
肇「そうなると楓さんや茄子さんも『言葉遊び』が好きな人達になってしまいますね」クスッ
文香「物は言いようですね」クスッ
肇「……」
文香「肇さん……?」
肇「あ……いえ、解散ライブは別の日にちに組まれているとしても、私達の終わりは、今日から始まってしまうのですね」
文香「月満つれば則ち虧く……物事には必ず終わりが来ると言うものです」
肇「お別れはやっぱり寂しいですね」
文香「……肇さん」
肇「……はい」
文香「この時期は……叔父のお店に本を売りに来る方が沢山います」
肇「……?」
文香「新しい環境になって、部屋に本を置けなくなってしまったり……理由も人の数だけ様々です」
肇「人だけではなく、物にとっても別れの季節なんですね……」
文香「ええ。ですがその分、古書を求めて来るお客さんも沢山居ます」
肇「……思い出しました。実家の方でも春になると、おじいちゃんの作った作品が良く売れていました。気持ち良く新しいスタートをきるためだと……」
文香「だと思います。月並みな言い方になってしまいますが、出会いの数だけ別れはある」
肇「その逆も……って事ですよね。別れの数だけ出会いがある」
文香「はい、私達は月下氷姫。沢山の出会いを……歌と人を、人と人を繋いでいかなくてはなりません」
肇「そうですよね……! ありがとうございます」
文香「いえ、お礼を言うのは私の方です」
肇「文香さんが……?」
文香「私がここまで来れたのは肇さんのお陰でしたから」
肇「……私が……ですか?」
文香「はい。アイドルになる前は……自分が変わるなんて思っても居ませんでした」
文香「俯かないで前を見て歩ける……そんな自分に憧れても何も出来ずに物語の中の主人公に投影して……それでも本を読み終わればただの鷺沢文香に戻ってしまいます」
文香「プロデューサーさんに手を引かれ、日の当たる場所に出てやっと私は変われたのです」
肇「懐かしいですね、文香さんが入ってきたときの事は今でも覚えています」
文香「私も……肇さんとお会いできた瞬間のことはちゃんと覚えていますよ」
肇「私がレッスンをしていたときですよね」
文香「はい。真っ直ぐ鏡の中の自分と向き合いながら必死に……周りの声も聞こえていないぐらいに真剣に振り付けの練習をしていました」
肇「ふふっ。いまこうしてみるととても恥ずかしいですね」
文香「私はその姿に強く惹かれるものがありました……なにぶん、あのときの私は私自身と向き合える程強くは無かったので」
肇「私だって強かった訳では……」
文香「分かっています。それでも変わりたいと思いながらも誰かが手を引いてくれるのを待っていた私は、自分の世界を変えるために必死に手を伸ばしていた肇さんの姿がとてもキラキラとして見えていたのです」
文香「だから……一緒のユニットになれてとても光栄だと。そう思っていました」
肇「そう思っていただけたなら、私もこんなに嬉しいことはありません」
文香「ありがとうございます。新しい世界の中で迷ってばかりの私の前でいつも貴女は挑戦の二文字を掲げて……挑みつづけていました」
肇「そんなっ……!」
文香「いえ、私の憧れ……それは昔も今も……そして、これからも先も変わらずにいると思います」
肇「……私だって……文香さんから学んできました! 言葉の持つ意味、ちから、伝えることの大切さ! 全部全部……あなたからっ!」
文香「……ありがとうございます。きっと私達は埋め合って高め合って、そうやって……ここまで来れたのだと思います」
肇「文香さん……私達は……」
文香「えぇ。それでもその前に……涙で折角のお化粧が……」
肇「……! すみません! えぇと、その……」
文香「ふふっ、座ってください。お化粧のことなら僅かながら勉強をしてきました」
肇「でも文香さんも……その……」
文香「え……? これは……ふふっ。道理で目の前の景色が滲んでしまっている訳ですね」
肇「ひとまず、座りましょうか」
文香「ええ……」
ーーーーー
ーーー
ー
肇「覚えていますか? 初めてのライブで、お互い化粧も一人じゃ全然できなくて、二人で慌てていたのを」
文香「覚えています。雪菜さんをはじめ、ハートウォーマーの方々が手伝ってくれましたね」
肇「朋さんにも海さんにも迷惑をかけてしまいましたね」
文香「ライブも緊張で……戸惑いながらも無事に成功できて」
肇「沸き上がる声援の中でずっとここに居たいだなんて思ってしまって」
文香「ええ。氷の姫と言うには、いささか熱量が有りましたね」
文香「覚えていますか……? ライブバトルで負けてしまった時の事を」
肇「覚えています。トライアドプリムスのあの三人のパフォーマンスも……悔しさも、今も胸の中に居続けています」
文香「アイドルとして生きていく壁は厚く……とても高くそびえていると身をもって体験しました」
肇「そのあとのレッスンの量を倍に増やしたら、お互いに力尽きてしまってしばらく動けなくなってましたね」
文香「……私は途中から記憶が無くなってしまいました……」
肇「いっぱい泣きました」
文香「沢山、笑いました」
肇「踊りを踊って、会場いっぱいの笑顔を見てきました」
文香「歌を歌って、想いを歌詞に乗せて人の気持ちを動かすことができました」
肇「なにひとつ」
文香「ええ……なにひとつとも」
肇「忘れられませんよね。こうやって歩んだ道のりも出会いも、とてもとても大切なもので、私の一部で」
文香「そうやって物語は続いていくのだと思います」
肇「……それでも私達はお互いに、自分の道を進まなくてはなりませんね」
文香「ええ……お互いに叶えたい夢がありますから」
肇「おかしいですね。明日からも文香さんとは会えるのにさようならだなんて」
文香「左様。なら、またね。がよろしいかと」
肇「またね……そうですね、ちなみに今のは」
文香「言葉遊びです」クスッ
肇「そうでしたね」クスッ
文香「肇さん。これをお渡しします」
肇「これは……栞ですか……?」
文香「ええ。本に挟む栞です」
文香「栞を挟んでおけば、いつでも……どこでも物語の途中からはじめられることができます」
文香「私達……月下氷姫の物語も……これでおしまいではありません」
肇「……そうですね。道は続いていますが、どこかでまた一つに繋がるかもしれません」
文香「ええ。その時があれば、またここからはじめられるように……そう思えたら素敵だなと」
肇「ありがとうございます。大切にしますね」
文香「ありがとうございます。肇さんならきっと……物を大切にしてくれると信じていますから安心して渡せます」
肇「古書も伝統工芸も温故知新の精神が大切なのかも知れませんね」
文香「ふふっ。かもしれません」
肇「私達の呼ぶ声が聞こえてきます」
文香「もう時間、ですね」
肇「行きましょうか」
「はい。今日も……新しい1ページを」
「ええ。次の私を……いえ、私達を作る為に」
短いですが終わります
総選挙始まってしまいましたね。
月下氷姫の二人がステージで歌っている姿が見たいと思っています。
鷺沢文香ちゃん、藤原肇ちゃん共々どうかよろしくお願い致します。
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira105555.jpg
肇ちゃん過去作。
もしよろしければ。
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