モバP「雲居のあはれ」 (58)

モバマスSSです。


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文香「これくらい…かな?」

文香(足りないよりは少し余る方がいい…よね?)

文香「こんなことして迷惑じゃないといいけど…」

文香「あ、叔父さんに、電話しないと…」

文香「えっと…私、今日はお手伝いに行けないです」

文香「あ、はい。ありがとうございます。そうですお友達と」

文香「べ、別にそんな感じじゃないですって。はい。それでは失礼します」

文香「ふぅ…」

文香(選ぶほど服持ってるわけじゃないけど…)

文香「似合うかな…?」

文香「愛しているという言葉が月に例えられる時代じゃない…か」

文香「確かにそうかもしれない…ですね」

文香「あ、もう出ないと…」

頼子「随分…簡単に休みが取れましたね」

P「ん?あぁ、半強制的に取らされたな」

頼子「半強制ですか…?」

P「あぁ、ちひろさんにさ。そろそろ取らないと社長が捕まりますよって言われてさ」

頼子「なるほど」

P「そんなことになったら俺もちひろさんも職が無くなるからな」

頼子「そういう場合、私たちはどうなるんですか…?」

P「分からないけど、他の事務所で引き抜きがあればそっちに行って、もし、そういうのがなければ…」

頼子「廃業…という感じですかね?」

P「だと思うよ。まぁ、そんなことになったら俺の僅かなコネで、皆ちゃんとした事務所に入れるように――」

頼子「これからは…ちゃんと休んで下さいね?」

P「ん?」

頼子「休んで下さい…ね?」

P「あぁ、休むよ。この年でまた、職探しを一からやるのはちょっとな…」

頼子「きっと皆悲しみますよ。…私も含めて」

文香「あ、お二人共…お早いですね。おはようございます」

P「あ、どうも、おはようございます」

頼子「おはようございます。そう言えば、何時からここにいたんです?」

P「ちょっと朝、野暮用があってな」

頼子「…ちょっと待って下さい。もしかして仕事を?」

P「ちひろさんにスケジュールをちょっと」

頼子「その程度ならいいですけど…」

文香「その…お疲れ様です。折角のお休みだったのに…」

P「いえいえ、平気ですよ。むしろ誘って頂けて光栄です」

頼子「こんな機会は、滅多にないですから。それでは、行きましょうか」

P「そうだな。あ、鷺沢さん」

文香「…なんでしょうか?」

P「服、似合ってますね」

文香「あ、どうも…」

P「それじゃ行きましょうか」

文香「あ、あのっ…!」

P「はい?」

文香「その…どうも…ありがとうございます。う、嬉しいです…」カァァ

P「…両手に花だな」

頼子「…そうですか?」

文香「いえ、そんな…」

P(てっきり二人が前を歩くと思ったんだが…まぁ、道広いからいいけど)

P「たまに歩くのもいいな」

頼子「お仕事になると、移動はやはり、車が多いですからね」

文香「こういう景色を見ながら歩くのは風情がありますね」

P「晴れてくれてよかった」

文香「あ、古澤さんはその…変装とかしないんですか?」

頼子「変装ですか?」

文香「いや、私のイメージですと…芸能人の方は変装をするのかなと…」

頼子「平気ですよ。そこまで知名度があるとは思えませんし…」

P「いや、案外サイン求められたりしてな」

頼子「そんなことは…ないと思いますけど」

P「あるかもしれないぞ?」

美術館

P「やっぱり、朝だと静かでいいな」

文香「静謐という言葉が似合いますね」

頼子「お仕事の関係でこういう場所には縁がありますが、プライベートで来るのもいいですね」

P「いいよな、こういうの」

P「これは…鈴虫か」

頼子「そうですね、夕霧もありますね」

文香「源氏物語ですか」

頼子「そうですね」

P「昔書いた文章がこういう風に残って国宝までになるって凄いよな」

文香「歴史を感じますね」

P「考えてみると1000年近く残ってるのは凄いな」

頼子「千年ですか…。人生を十回やり直してもまだ届かない年月ですね」

文香「こうして、今の私達のように絵巻を見た人が千年前にもいたと考えると感慨深い物がありますね…」

文香「古くてよきものは、時を超えて残りますね…」

頼子「あちらには、紫式部日記絵巻でしょうか…」

P「学校の教科書にも載ってそうな感じだな」

P(歴史の資料集にあった気がする)

文香「風流を感じる絵ですね。優雅という言葉がピッタリと当てはまります」

頼子「そうですね。創作が混じってるでしょうが、とても風流を感じます」

頼子「でも、私たちは同じ時間に立ち止れないですから」

P「……ん?」

頼子「いえ、なんでもありません」

文香「……?」

頼子「ここは、時間がゆっくりと流れていますね」

P「頼子これはなんて言うんだ?」

頼子「あ、これはですね――」

P「大体見れたかな」

頼子「まぁ、有名どころは押さえたと思いますよ。流石に細かい所まで全部見ようとすると恐らく一日掛かってしまうでしょうし…」

文香「時間も時間ですし、お昼にでもしましょうか」

P「それじゃ一回外出ますか」

頼子「そうですね」

P「さてと、何を食べ――」

頼子「あ…」

文香「あ、あの…一ついいですか?」

P「どうかしましたか?頼子も何か言いたいことあったみたいだけど」

文香「あ、それじゃ古澤さんからどうぞ」

頼子「いえ、そちらからで…」

文香「はい。えーと、その、つまらないものなんですけど…三人分のおにぎりを…作ってきました」

頼子「私も…あまり自慢出来るものでは無いですが…」スッ

P「豪華な昼になりそうだな」

P(おにぎりばかりだけど…)

公園

P「うん。美味しいですよ鷺沢さん」

頼子「おいしいですね」

文香「それは、良かったです。その…正直に話しますと、余り料理はしないので…自信がなかったんです」

P「シンプルな塩おにぎりですねこれは」

文香「あ…」

P「どうかしましたか?」

文香「すみません…それは中身を入れ忘れてしまったみたいで…」カァァ

P「あ、そうでしたか」

頼子「いい天気ですね…自然公園で食べていると遠足のような気分になりますけど」

文香「そうですね。懐かしい」

文香(あ、また具なしが…)

P「そういえば、頼子は何を作ってきたんだ?」

頼子「私はですね…卵焼きと、ホウレンソウのおひたしとおにぎりですね」

P「和風だな」

頼子「私も余り料理しないですが、本と睨めっこしながら作ったので…あ、でも、味見はちゃんとしたので…食べられないということはないと思うのですが…」

P「それじゃ、貰うな」

頼子「えぇ。どうぞ。あ、鷺沢さんもどうぞ」

文香「ありがとうございます」

P「…ん。美味しいな」

文香「味がよく染み込んでいて美味しいですね」

頼子「お二人に喜んでいただけたようで何よりです」

P「本読んでここまで作れるんだったら、料理番組でも出てみるか?」

頼子「え…そういうのはちょっと。出来ればああいう番組は遠慮させて頂きたいと…いえ、お仕事を取ってきたら勿論出ますけど」

P「本人が乗り気じゃない仕事はなるべく取らないようにするから安心してくれ」

文香「今、古澤さんはどんな番組に出てるんですか?」

頼子「そうですね…。あまり有名な番組には出てないです…ね」

P「教育テレビみたいなのに出てますよ」

文香「なるほど…。すみません、不勉強で」

頼子「いえ、別に構いませんよ」

P「さて…午後はどこに行こうか」

頼子「もう一つ美術館に行ってもいいのですが、少しマンネリ化しそうですね…」

文香「あ、それなら…」

P「古本屋巡りなんてお洒落ですね」

文香「いえ、その…なんて言うか本自体に歴史がある気がして好きなんですよ」

頼子「こういう所に来ると、本読んでますなんておいそれと口には出来ないと感じますね」

文香「えぇ、私達は自分達の周りのことしか知らないんだなぁと思います」

P(結構いい値段するんだよなぁ…古本って)

店主「綺麗な女の子とこんな場所って変わってるねアンタ」

P「かもしれませんね」

店主「まぁ、この子らの反応を見ると、遊園地とかよりこっちの方が良かった風にも見えるけどね」

P「なんにせよ喜んで貰ってるならいいですよ」

店主「野暮なこと聞いたみたいだね。……ん?」

P「どうかしましたか?」

店主「ちょっといいかお嬢ちゃん」

頼子「私…ですか?」

店主「どっかで見たことが…お!思い出した古澤って言うんだろ?違うか?」

頼子「え、いや、確かに…私は古澤ですけれど…」

頼子(どこかで会ったことが…?)

店主「いやね、さっきテレビ見てて、若いのに美術とか古典が好きだなんて珍しい子だなぁって思ってたんだよ」

頼子「あ、そうなんですか…」

店主「ああ言う役作りかと思ったけど、違うんだな」

頼子「役作りなんてそんな…私にそんな器用な真似出来ませんよ…」

文香(凄いなぁ…)

店主「お、そうだ。どうせだったら、サイン書いてくれねぇか?」

頼子「さ、サインですか?」

店主「おう、ウチの店も箔が付くからさ」

頼子「そ、そんな…私がしても…」

P「頼子やってあげなよ。して欲しいって言ってるんだから」

頼子「…分かりました」

店主「これにお願いしてもいい?」

頼子「はい。あの…あんまり面白い物は…期待しないで下さい」

店主「ほー。ありがとうございます」

頼子「いえ、私のことを…知っている人がいたってだけで…嬉しいです」

店主「頑張ってくれよ。毎週番組観るようにするから」

頼子「あ、はい。その…なんて言うか…ありがとうございます」ペコリ

P「それじゃ、失礼しますね」

店主「お、兄弟か何か知らないけど、兄ちゃんも頑張ってな」

P「えぇ、それでは失礼します」

P「凄かったな頼子」

頼子「えぇ、正直まだ余り実感が湧きません」

頼子「見ている人はいるんですね」

P「あぁ、良かったな」

頼子「はい。カメラの向こうの人を実感することが出来て、その…嬉しいです」

文香「……」

文香(遠いなぁ…)

頼子「どうかしましたか?」

文香「あ、いえ、なんでもないですよ。次は…どうしましょうか」

P「他の古本屋も周りますか?」

文香「あ、いえ、平気です」

頼子「それなら、どこか喫茶店にでも入りませんか?」

P「そうするか。鷺沢さんもそれでいいですか?」

文香「あ、はい。勿論」

喫茶店

店員「ご注文はお決まりでしょうか?」

P「えーっと、コーヒーブラック一つと…二人はどうする?」

頼子「私は紅茶で」

文香「あ、私も同じで…」

店員「畏まりました。それでは失礼します」

頼子「中々いい雰囲気ですね」

文香「穴場なんですか?」

P「どうだろう。この間、打ち合わせで連れて来て貰った所なんだけどな」

頼子「時間帯の関係もあると思いますけどね…」

ピリリリ

P「あ、電話だ。ちひろさんからか。どうしたんだろう。ごめんちょっと出て来るな」

頼子「はい。ごゆっくり」

文香「どうぞ…こちらは気にせずに」

P「ごめんな。はい。どうかしましたか?え?あぁそれはですね――」カランッ

文香「忙しいみたいですね…」

頼子「Pさんが忙しいから私の仕事もあるので私は、何とも言えないのですけどね」

文香「確かにそうですね」

頼子「……」

文香「……」チラッ

頼子「どうかしましたか?」

文香「あ、いえ、なんでもないです」

頼子「――昔に生きる。変化を求めず、情緒溢れる予定調和の中で風情を感じながら暮らすのは悪くないとは思いますよ」

文香「え…?」

頼子「いえ、ちょっと思っただけです」

文香「どういうことですか?」

頼子「そうですね…意味はあってないようなものだと思いますよ」

文香「そうなんですか?」

頼子「えぇ」ニコッ

文香(とてもそうは、思えないですけど…)

P「いやー、悪い悪い。ちょっと仕事関係の電話で」

頼子「大丈夫ですか?」

P「平気だよ。明日以降のスケジュール確認くらいだし」

頼子「なら、いいですけ…」

ピリリリリ

P「また、俺…あれ?違うな」

頼子「あ、私です。はい…え、お母さん?」

P「電話してきなよ」

頼子「はい。失礼します」

P「お、コーヒー来てたのか。あ、紅茶も冷める前に飲んじゃいましょう」

文香「…はい」

P「頼子と何かありましたか?」

文香「え、いえ、全然なにもないですよ。なにも…」

P「――サインですか?」

文香「えっ…」

P「いえ、古本屋を出た辺りから、鷺沢さんの態度がちょっと変わった気がして…」

文香「あ、いえ、その…」チラッ

P「まだ、頼子は時間掛かるみたいですし」

文香「…はい。遠いなって思いました」

P「遠い?」

文香「はい。以前古澤さんと話していた時に似てると言われ――」

頼子「Pさん少しいいですか?」

P「おっ、おう。鷺沢さんすみません少し抜けます」

文香「は、はい…」

文香(どうしたんだろう…?)

P「なんだ?」

頼子「あの…申し訳ないんですが、私帰らなくちゃいけなくなりまして…」

P「何かあったのか?」

頼子「いえ、折角私がオフなので、外食に行こうということで…」

P「それならしょうがないな。お疲れ。今日は楽しかったよ」

頼子「…はい。私も楽しかったです。また、明日お会いしましょう」

P「あぁ」

頼子「あ、鷺沢さんのこと頼みますね」

P「ちゃんと送るよ」

頼子「はい。それでは失礼します」ペコリ

文香「あれ?古澤さんは?」

P「何でも、家族での用事があったらしくてね。帰ったよ」

文香「はぁ…そうですか」

P「それで、話の途中だったけど、どうしたんですか?」

文香「はい。以前、古澤さんは私と似ているって言っていたんですよ」

P「まぁ、似ていると言えば分からなくない部分もありますね」

文香「はい。私も恥ずかしながらそう思っていました。でも…」

P「知らない人からサイン頼まれてるのを見て、差があると感じたということですか?」

文香「あ、はい…。そうなんです」

P「…アイドルのプロデューサーである人間がこんなこと言っても説得力がないのは分かっているのですが」

文香「はい。なんでしょう」

P「アイドルになった、ならないで人間としての差はないと思います。確かに世間的に有名にはなるでしょうが、それが偉いと等号で結ばれるわけではないと思います」

文香「勿論…それも分かっているつもりです。けど…」

P「けど?」

文香「待っているだけじゃ嫌なんです…」

P「何をですか?」

文香「あ、今のはナシでお願いします」カァァ

P「はい。分かりました」

文香「あ、ありがとうございます」

P「……人の心を奪いたい」

文香「はい?」

P「頼子がアイドルになった理由です。人の心を虜にしたいということなんでしょう」

P(流石に俺の心を奪いたいと言ってたとは言えないけど…)

文香「心を奪う…」

P「まぁ、普通だったら、子供の頃からアイドルに憧れていたとか、スカウトされたからとか色々あると思いますけどね」

文香「その、プロデューサーさん」

P「はい」

文香「私にはそんなことはとても言えませんが、それでも私達は似てるのでしょうか?」

P「似てますよ」

文香「そうなんですか?」

P「えぇ、頼子だって、そこまで人と話すのも得意じゃないでしょうし、列挙していけば被る所はあるでしょう」

P「あ、そう言えば、以前、鷺沢さんに、『月が綺麗ですね』 の訳を聞いたことがありましたね」

文香「あ、はい…」

P「頼子とそれに近い話をした時ですけど、もし、漱石は見上げた月が雲っていた場合どうしたのでしょうと」

文香「……」

P「あなたと見る月が綺麗に見えない。ですと、思いは伝わりませんよね。鷺沢さんならどうしますか?」

文香「わ、私ですか?そ、そうですね…雲が晴れるのを待とうと思います」

P「…なるほど」

文香「古澤さんはなんて答えたんですか?」

P「そうですね…。多分今聞いても、答えてくれないかもしませんが、『愛している』と伝えるそうです」

文香「え…」

P「自然に左右されず、誰かに頼ることなく伝える。そう、話してくれましたよ」

文香「…やっぱり違いますよ。私なんかと」

P「鷺沢さん…?」

文香「私は、人前で話すのは抵抗がありますし、目を合わせるのも苦手です。明るく振る舞うことも出来ません。似ても似つかない贋作です」

文香「すみません…場所を移動させて貰っていいですか?」

公園

P「ここでいいですか?」

文香「公園ですか?」

P「えぇ、気に入ってるんですよ」

文香「確かに、見上げるとビルの明かりが綺麗ですね」

P「公園自体は余り明るくないですしね」

文香「そうですね。だからでしょうか…落ち着きます」

文香「…プロデューサーさん」

P「はい」

文香「私…。朝、古澤さんが言っていた言葉の意味が分かりましたよ」

P「朝…?」

文香「時が止まった世界では何も起きないということですね。変化を求めるなら何かをしないといけないということ。諸行無常ですね」

P「鷺沢さん…」

文香「分かってたんです。プロデューサーさんや、古澤さんから事務所のお話を聞く度に、心が動かされていたことに」

文香「でも、気づかないフリをしてました。そうすれば、何も起きないから」

文香「羨む心さえなければ、これから先もずっとプロデューサーさんと大好きな本のお話が出来るんじゃないかって」

文香「自分の中の時を止めてしまえば、絶えず変わる状況を読み物のように読めるから」

文香「待っていればいつか来てくれるだろうと消極的な安定を望んでいました」

文香「プロデューサーさん、アイドルってなんですか?」

P「アイドルですか?」

文香「はい。人には向き不向きがあるのも知っています。けれど…」

P「私見ですが、きっかけですね」

文香「きっかけ…?」

P「えぇ、自分が自分以外の何かになるための。灰被りが魔法を掛けられて姫になるように」

文香「一歩踏み出すということですか?」

P「そうとも言えますね。まぁ、私は魔法使いではないのでいきなりシンデレラには出来ませんが、最初の一歩の踏み出し方を教えること位は出来ます」

文香「…どうするのでしょうか?」

P「この手を取って下さい。劇的に変わるなんてことは言えませんが、少しだけ世界が変わりますよ」

文香「は、はい…そのよろしくお願いします」ギュ

P「えぇ、こちらこそ」

文香「はい…。私も変われますかね?」

P「はい」

文香「もしかしたら…私はお店でずっとこうなるのを待っていたのかもしれません」

文香「もう、待ってるだけでは嫌になってしまいました」

文香「これからは、近くに、傍にいることが出来ますね。よろしくお願いします」

P「こちらこそ。よろしくお願いします」

翌日

ちひろ「それで、まーたスカウトしてきたんですかー」ムスー

P「なんでそんなに不機嫌なんですか」

文香(私のせいでしょうか…?)

ちひろ「別に、不機嫌じゃないですよーだ」

周子「きっとあれじゃない?益々構ってくれないなーって拗ねてるんじゃないの?」

ちひろ「ち、違いますよっ!わ、私は、プロデューサーさんの体調を…」

周子「あー、そうだね。うん。そうだった。ごめんねちひろさん」

ちひろ「なんですかもう…」

泰葉「お二人共喧嘩は止めて下さいね?」

凛「おはよ。誰?新しい子?」

文香「よ、よろしくお願いします…」

文香(あ、渋谷さんだ…)

凛「ふーん。昨日休んだと思ったらこういうことだったんだ?」ジロッ

P「いや、偶然だぞ?」

凛「そうは思えないけどね。ま、今度一緒にどこか行こうよ」

P「まぁ、最近頑張ってるみたいだし、俺でいいなら」

凛「それじゃ、約束ね」

ガチャ

頼子「あ、おはようございます…」

文香「あ、どうも…おはようございます」

頼子「ここにいるってことは…そういうことなんですね」ジッ

P「まぁ、そういうことになるな」

頼子「まぁ、私がPさんの決定に何か言うことはしませんよ。…鷺沢さん?」

文香「はい…なんでしょうか」

頼子「遅れてきた車に譲る場所はありませんから」

文香「私はそこまでではないと思いますが…」

頼子「そうでしょうか? それでは失礼します。塩見さん行きましょうか」

周子「あ、レッスンだっけ?行く行く。じゃあねPさん」

P「あぁ。じゃあな」

周子「そう言えば、今のセリフどういう意味なの?」

頼子「え、あ、大した意味はないですよ。ただ…」

周子「ただ、なに?」

頼子「ちょっと…」チョイチョイ

周子「ん?」

頼子「後から来た人に…Pさんは渡さないという意味ですよ…」ボソボソ

周子「なーるほどね」

凛「二人共なにしてるの?行かないの?」

周子「あ、行く行くー」

P「頼子がなんて言ったか分かりますか?」

文香「えぇ、分かりますが…秘密です」

ちひろ「なんだか私が分からない所で、勝手に納得して話が進んでいる気がするんですが…」

泰葉「なんか図書館の司書さんみたいな方ですよね」

P「あながち間違ってないぞ」

泰葉「え?」

文香「その…古本屋のお手伝いをしていまして」

泰葉「なるほど、そうなんですね」

幸子「なんですか?まさか古本屋のピンチに颯爽と駆けつけたPさんが八面六臂の活躍で事件を解決して、そこのお手伝いさんが惚れてアイドルになったとかそんな漫画みたいな展開じゃないですよね…?」

P「流石にそれはないな」

P「とりあえず、今日はちひろさんに挨拶程度の予定だったからもう帰っても平気ですよ」

文香「あ…分かりました」

P「これから頑張りましょうね」

文香「はい。あ、あのっ…!」

P「はい?」

文香「私、栞作るのが趣味で宜しければ一つ差し上げたいんですけども…」

P「本当ですか?本は良く読むんで重宝しますよ」

文香「あっ、よかったです。それでは、これを」

P「綺麗な押し花の栞ですね」

文香「それでは…失礼します」ペコリ

P「あ、お疲れ様」

夕美「Pさん今の誰?」

P「新しく入った子だよ?」

夕美「また、Pさんの担当するアイドル増えたんだ」

P「まぁな」

夕美「頑張るねぇ…」

P「流石にこれ以上は支障が出そうだけどな」

夕美「今平気なのも凄いと思うけどね」

P「ちひろさんが有能だからな」

夕美「へぇ、そうなんだ」

P「意外そうな顔するなよ」

夕美「つい…ね。ん?何持ってるの?」

P「あぁ、なんでもさっきの鷺沢さんって言うんだけど、彼女が栞作りが趣味だって言っててくれたんだ」

夕美「ふーん。確かに良く出来てるね」

P「押し花みたいなんだが、この花に意味ってあるのか?」

夕美「そりゃ、あるよね。えーと…オシロイバナか」

P「よく分かるな」

夕美「まぁ、色々観たりしてるからね。図鑑とか」

P「なるほど」

夕美「えーと、花言葉は…。ちょっと待ってねPさん一つ聞いていい?」

P「どうした?」

夕美「なんかしたの?」

P「いや、特に」

夕美「ふーん。ならいいけどさ。花言葉は…内気、臆病かな」

P「なるほどな」

夕美「思い当たる節があるの?」

P「そんな自分を変えたいって言ってたからさ」

夕美「ふーん、じゃ、そういうことなんだね」

P「ありがとな。夕美はこれからレッスンか?」

夕美「うん。それじゃ」

夕美(正直、もう何個か花言葉があるんだよね…)

夕美「オシロイバナは、確か、『あなたを想う』とかだったんだよねぇ…確か」

夕美「ま。いいか。Pさんは気づいてなさそうだし」

文香「あ、もしもし、叔父さんですか?はい、文香です」

文香「あの…申し訳ありませんが」

文香「その…お手伝いに行ける頻度下がってしまいそうです」

おしまいです。
こんな時間まで見て下さった方がいらしたらありがとうございます。

今回は、源氏物語第九帖『葵』です。

あらすじは…少し説明が難しいので割愛させて頂きます。

頼子は六条御息所の立ち位置であり、文香は葵の上の立場で話を進めてみました。

今回のタイトルである『雲居のあはれ』ですが、これは、亡くなってしまった葵の上を思って源氏が詠んだ歌とされています。

のぼりぬる煙はそれとわかねども

なべて雲居のあはれなるかな。

空に登った火葬の煙があの雲なのか分からないが、

押しなべて雲を見るとしみじみするという意味です。

何かあれば、どうぞ。

書き終わってから言うセリフではありませんが、古典シリーズでした。

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