藤原肇「コーヒー1杯のイマージュ」 (20)
モバマスssです
書き溜めあり
地の文あり
肇ちゃんssですが大丈夫な奴です
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席について一息。少し早く着いてしまったのでメニューを眺めてみることにしました…凄い
長々と書かれた横文字の商品名の数々の味をイメージしながら店員さんを呼んでコーヒーフラペチーノを頼んでみます
ヴヴヴ。とポケットから振動を感じたので携帯電話を取りだし画面を見てみるとプロデューサーさんから「遅れる」の旨が書いてあるメールでした
これで何回目だろうとぼんやり考え、それでも照れた笑顔に逢えるならといつも許してしまいます。きっと惚れた弱みでしょうか
「待つことも釣りの楽しみの一つ」
そう言い聞かせて広い海のような心に釣り糸を垂らしてみせます。
運ばれてきたコーヒーフラペチーノを眺めて、カフェでのレポーターのお仕事をする自分を想像しましたが、どうしても真っ先にこのガラスの器を褒めてしまいそうで
まだまだオシャレに慣れるのに時間がかかりそうだと小さく笑ってしまいました
アイドルの事以外にも勉強することがたくさんありそうです
少しずつ…少しずつこのカフェにも、プロデューサーさんにも馴染んでいけたら…そんな私をイメージして
窓の外を見てみればすっかり春の空が広がっていって、ぽつぽつと雲の間にある青に吸い込まれてしまいそうで眩しい陽射しに手をかざしてみます
「やるなら1番を目指せ」
厳しい言葉に聞こえますが小さな頃から一緒に居たから分かる
愛とほんのちょっとの寂しさに包まれた言葉…おじいちゃんも同じ空を眺めていたら良いなといつかの故郷に思いをはせてみます
待っててね、ちゃんと私の歌声が届くように頑張るから!
ふと、気付けばお店のすぐ側で見慣れたスーツ姿の男性がキョロキョロと辺りを見回していました
他の通行している人達より身体が大きいためか少し…いや、かなり目立ちます
やっと入口までたどり着き、お店の看板と携帯電話の画面を何度も見比べて意を決した様にドアノブに手をかけます
プロデューサーさんが店内に入っていき、カランカランとベルの音がなりました
どこか歩き方がいつもよりぎこちない…緊張しているのでしょうか
私がこの店に入るときも同じような感じに見られていたのだと思うと少し恥ずかしいですね
お店の中はそう広くは無いのですぐに見つかってしまうと分かっていますが、心の中ではじけ踊るタクラミについ甘えてしまい。持ってきた帽子を深く被ります
いつもと違う格好ですのでプロデューサーさんがどんな反応をしてくれるか楽しみで、ふふっと笑い声が漏れてしまいました
「肇…?」
「え、はい」
あ…つい返事をしてしまいました
肇「違います、肇などでは…」
モバP「いやもう、今更遅いって」
見つかってしまいました。自分の小さなミスを悔やみながら、それでも見つけてくれた事が嬉しくてつい声が弾んでしまいます
モバP「いつもと違う格好だったから少し自信なくて」
肇「ふふっ、美紗希さんにコーディネートしてもらったんです。このお店もその流れで…憧れだったんですかわいいカフェ」
モバP「そうか、いい雰囲気のお店だ…それにその服も似合っているぞ、とってもかわいい」
一気に顔に熱が昇るのを感じ慌てて帽子で顔を隠します。かわいいなんて言われるなんて…少し困りますね…困ります…。
肇「あ、あの…とりあえずなにか飲みませんか?」
モバP「そうだな…じゃあコーヒーでも頼もうかな」
モバP「ごめんなわざわざオフの日なのに時間作ってもらって。そのうえ約束の時間に遅れるし」
肇「別に構いませんよ、プロデューサーさんがお仕事頑張っているの知っていますし。それで何かあったんですか?」
プロデューサーさんがああ、そうだなと言いながら鞄から何かを取り出しています
よく見ると手が震えていました 何か大切なものでしょうか?
モバP「…これを」
差し出されたのは赤いリボンをかけられた小さな箱
肇「…開けて見ても?」
モバP「…あぁ」
誕生日はまだ先ですし箱の中身について全く検討が着かなく、なんだろう?と考えながらリボンをしゅるりと丁寧にほどいていきます
カパッ
少しマヌケな音をたてながら開いた箱の中身は…
肇「えぇ…とこれは…」
小さなガラスの靴。それが意味するものとは
モバP「おめでとう、総選挙1位で肇がシンデレラガールに選ばれた。それはサンプルモデルというか…とにかく本物のガラスの靴はちゃんと事務所に用意してある」
モバP「流石に本物を持って行こうとしたらちひろさんに怒られてね」
ガラスの靴。総選挙。シンデレラガール。様々な単語が頭の中をぐるぐる回り今何が起きているのかを理解するのに時間がかかってしまいました。
予想を超えるサプライズ。視線を小さなガラスの靴から真っすぐ向き直しプロデューサーと目を合わせます。
まず何を伝えれば良いのかあれこれ考えている内にプロデューサーさんが笑顔で何度も何度もおめでとうと声をかけてくれています
その度にどんどん視界がぼやけていってカフェの風景もコーヒーもプロデューサーさんも全てが溶け合ってとても…とても!暖かくて心地好くて…!
肇「私の夢は、あなたと夢をかなえること。きっと、そうなんだって信じて来ましたっ…私…本当にっ!」
もう溢れて止まらない、今まで積み上げてきた想いを、言葉をプロデューサーさんはうんうんと頷いて受け止めてくれて…
モバP「もう落ち着いたか?」
肇「すみません…恥ずかしい姿を見せてしまって…」
結局数10分の間も私は泣き続けてしまったようで…冷静になってみると顔が真っ赤になってしまいます
モバP「いや、肇がどんな想いで頑張ってきたのをいつもすぐ側で見ていたから。大丈夫、分かってるよ」
肇「…1番になれたんですね」
モバP「あぁ、だけどここでゴールじゃないさ。またここからスタートだ」
分かっています。窯焚き一生…私がアイドルである限り終わりはありません…ただ…もうしばらく夢見心地で居させてくれてもいいのに…
エレベーターのときもそう。少し乙女心に欠けるといいますか…。
モバP「肇…?」
肇「なんでもないですよ」プクーッ
肇「少し、外の空気が吸いたいです」
カフェを出て公園に着きました
夜の帳が下りてきてすっかり冷たい風が吹いています
そのせいか誰も居ない静かな公園。なんとも不思議な気分になりますね
肇「…やっと天に手が届いたと思ったらもっと高い空が広がっていたんですね」
モバP「不安か?」
肇「いえ。そんなことは、改めてよろしくお願いしますね」
モバP「ああ、これからもよろしくな」
肇「…そのままベンチに腰掛けて下さい」
モバP「あ、あぁ。このままでいいんだな?」
肇「はい♪」
カフェで涙と共にひとしきり出した感情の中に一つだけ残っていたものがありました
シンデレラガールになって舞い上がっているのかもしれません
普段なら考えないようなタクラミが…今ならきっと…
肇「そのままですよ」
少し冷えた両手をプロデューサーさんの頬に当てて一息…
「…っん」
私のその初めてはとびきり甘くて…温かくて…なんとも素敵なものでした
モバP「…っぷは…お前!」
肇「ごめんなさい、でも本気なんですプロデューサーさんのこと、勿論アイドルのことも、どちらも生半可な気持ちで居たくないから」
器に想いを込めるように丁寧に一つ一つ言葉を選んでいきます
モバP「険しい道になるぞ」
肇「構いません。プロデューサーさんとだから行ってみたいです。もっともっと、ずっと」
モバP「……情けないなぁ俺は、女の子にこんなこと言わせるなんて」
プロデューサーさんが立ち上がって…急に視界が真っ暗になってしまいました
プロデューサーさんの匂い…あぁ…私は…
モバP「必ず幸せにするよ。アイドルとしても…魔法が解けた後も」
…私はもう幸せですよ。
世界で誰よりも近くあなたと居るこの時間がなによりの幸せ ありがとう
短いですが終わります
ありがとうございました。
肇ちゃんss過去作 もし宜しければ
藤原肇「ゆめと憧れ」
藤原肇「ゆめと憧れ」 - SSまとめ速報
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書き忘れていましたがタイトルにある通り765のコーヒー1杯のイマージュという曲を下地に書いてます
新しく出てる亜美のCDに収録されているので、もしよろしければそちらも
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