【艦これ】提督たち「ユウジョウカッコカリ?」【物語風プレゼンPart1.5】 (226)



注意:このSSは、以下の【艦隊これくしょん】の二次創作において、最後の最後で尺が足りなかった内容を別スレに掲載したものです。

【艦これ】提督たち「ユウジョウカッコカリ?」【物語風プレゼン】
【艦これ】提督たち「ユウジョウカッコカリ?」【物語風プレゼン】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408758611/)

各話リスト
第1話 ユウジョウカッコカリ
第2話 お守り
第3話 御旗と共に
第4話 愛の力
 ↓
第5話 艦娘、派遣します
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余談1 ある日の司令部の集い -βテスター親睦会-
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第6話X 幻の八八艦隊「天城」 -新時代の礎になった「天城」と盛衰に生きた妹たち-
第6話Y 提督、出撃す      -船娘の進撃・陸軍の意地・男の浪漫-
第6話Z 海上封鎖を突破せよ  -世界は1つの大洋で繋がっている-
第6話W 深海棲艦捕獲指令   -全ては暁の水平線に勝利を刻むために-
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余談2 4提督のそれぞれの戦いの形
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第7話X 孤高のビッグ3         -もう1つの“もう1つの世界”-
第7話Y 一大反攻作戦第一号・序章 -離島要塞化計画-
第7話Z 到来               -アドベント-
第7話W 鎮守府の守護神        -侵食される鎮守府-
2014年 秋イベント:【発動! 渾作戦】戦記
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第8話 12月23日 -三笠公園にて- ← 前回:【艦これ】提督たち「ユウジョウカッコカリ?」【物語風プレゼン】
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番外編 2014年から2015年へ ←―――――― 今回はここ! 番外編:【艦これ】提督たち「ユウジョウカッコカリ?」【物語風プレゼンPart1.5】
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第9話 海軍総隊を結成せよ! ← 次回:【艦これ】提督たち「海軍総隊を結成せよ!」【物語風プレゼンPart2】 に続く!

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  :
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第?話 大本営の野望  -艦娘 対 超艦娘-
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 ↓

最終話 -北緯11度35分 東経165度23分-

ですので、基本的には【物語風プレゼン】の内容を読み通さないとワケワカメな内容なので、
読むのでしたら、さっと一読してみてそれで気が向いたらこれを読む感じでお願いします。
内容も、物語風プレゼンの中の“物語”の部分だけしかない、本作の趣旨からすれば中身の無いドラマや次回に向けた伏線のための内容となります。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1424821231




 -このSSを読むにあたっての改めて諸注意-

0,このSSは素人が【艦隊これくしょん】に対する提案をずらずらと書いたものであり、公式とは何の関係がございません。
→ 批判・ご意見・感想 大いに結構。どしどし寄せてくれたほうが嬉しい。ただし、今回は提案なんてないけどね。逆に提案くれてもいいんですよ?

1,基本的にPC上での視聴を念頭に置いた文体なのでスマートフォンではかなり傍点・ふりがな・図がずれるので注意してください。
→ スマートフォンの方はご容赦ください

2,PC上で見ている場合も最大化して拡大サイズを75%に変更すると折り返しがなくなり きれいに文章全体がおさまるので推奨です。
→ その代わり、字が小さくなって読めないかもしれませんが、その時とはその時で適宜調節してください

3,オリジナル要素がテンコ盛りですでに現実の【艦隊これくしょん】とは違った異様さに包まれてますが、これはそういうものに挑戦しているSSです。
→ あくまでも物語風プレゼンなので実際の過程よりも結果や内容、動機や背景ばかりが重点的に描写されています 。――――――キング・クリムゾン!

4,キャラ名に記号がついている場合があり、それはどこの鎮守府の所属であり、何に由来する存在なのかなどを一目でわかるようにした文章上のアイデアです。
例)
鳳翔「――――――」 ← 普通はこの表示であり、これは「視点人物(=その鎮守府の主人公)の麾下の艦娘」という暗黙の了解とも説明できる
鳳翔’「――――――」←『’』は『他所の鎮守府にいる』ことを表現しており、転じて【派遣】【駐留】している艦娘を判別するための記号となっている
鳳翔”「――――――」←『”』は『垣根を越えた場所にいる』ことを表現している――――――?


X:赤城「――――――」←『X:』は『Xという鎮守府の主人公の艦隊の所属』という意味
x:赤城「――――――」←『x:』は『Xという鎮守府の副主人公の艦隊の所属』という意味。小文字は大文字に従属している
M:榛名「――――――」←『M:』は『Mobキャラの艦隊の所属』という意味
N:三笠「――――――」←『N:』は『NPC:ノンプレイアブルキャラ』という意味

加賀α「――――――」←『α』についてはとりあえず『普通とは仕様が違う艦娘』という意味でどうぞ
加賀β「――――――」←『β』についても『αとも違った仕様が異なる艦娘』と今は説明しておく
加賀γ「――――――」←『γ』は『通常版』という意味で使われているので省略でき、加賀=加賀γという図式が成り立つが忘れてもいい


上記の記号は艦娘に使うのが一般的であり、提督や人間に使うことはほとんどないが『艦娘がどこの所属か』を示すために一度だけつける場合がある。


以上を改めて読む上での諸注意として、そんなわけで、説明はここまでにして比較的新鮮な時事ネタに対応した番外編をどうぞ!



番外編 2014年から2015年へ

1,【艦隊これくしょん -艦これ-】について!

――――――洞庭鎮守府


島風「始まったー!」

高雄「楽しみですね、提督」

清原「ああ。ついに満を持して始まったか」

清原「これ、一応 大本営からの命令で第1話は必ず視聴して意見と感想を出さなくちゃいけないんだよねぇ」メメタァ

清原「我々の活動――――――というより、艦娘をより身近な存在として世間に正しく認知してもらうためのものだが、これは…………」

大和「気になりますよね。大本営がどのように【艦これ】の世界を広めようとしているのか――――――」メメタァ

清原「そうは言うが、これは【-艦これ-】であって【~艦これ~】を原作としたものだから、」メメタァ

清原「製作監督 曰く『これもまた解釈の1つに過ぎない』ものらしい」

大和「そうだったんですか」

清原「そう。公式としてはこれまで発行されてきた数々の小説における設定も、艦娘の解体に対する説明や深海棲艦に対する考察など――――――」メメタァ

清原「『その全てが正しくもあり、また等しく間違ってもいる』とも言えることを公言している」

清原「この物語風プレゼンにおいては、四半世紀前に艦娘と深海棲艦の大戦が始まったという設定だが……、」メメタァ

清原「さて、この公報アニメではどう描かれることか」

鳳翔「さすがに全ての艦娘に焦点を当てることは――――――」

清原「無理だろうな。それは事前告知でレギュラーキャラの選抜が行われていることは明らかにされてきたからな」

清原「このアニメ鎮守府(仮)の面々を見る限りだと、知名度の高いメジャーな艦娘が多く起用されているようだな」

清原「――――――妥当なところか、これは?」

清原「けど、それはつまりマイナーな艦娘が好きな提督たちからすれば――――――」

鳳翔「?」

清原「ま、あのピンクゴールド鎮守府の資源王がアニメごときに興味を示すようには思えないがな……」



りう「へえ、【この世界】で最初の【-艦これ-】はこういう設定――――――」

りう「ほへえ、この出撃シーンはなかなか凝ってるね(でも、この出撃方式だと潜水艦はどうなっちゃうわけ?)」

りう「(でも これ、もしかしてオレが使ってる亜空間格納庫(意味深)技術の進化の過程の中に入ってたりするのかな?)」 参照>>372

りう「(これってつまり、『自動で艤装を瞬時に装備する』っていう発想だから――――――)」

りう「(でも、はっきり言って これ、『無駄に洗練された無駄のない無駄な動き』ってやつだしな…………)」

りう「(【この時代】の技術では艤装の自動展開もこれで精一杯なのかな? やっぱり【昔】なんだなー、【ここ】って)」

x:木曾「カッコイイもんだな」

x:摩耶「ああ。今回の出撃メンバーはこんな感じのようだが、あたしたちの出番はあるかな?」

x:五十鈴「あれ? 私たち、出演者名簿に名前がみんな載ってない!?」メメタァ

x:艦娘たち「嘘おおおおおおおおお!」ザワ・・・ザワ・・・!

x:木曾「ば、馬鹿な!? 球磨型軽巡でなぜ俺だけ載ってない!?」

x:摩耶「それどころか、この艦隊の誰一人として【アニメ】出演してないんじゃないか、これっ!?」

x:秋月「そ、そんなぁー――――――いえ、秋月は新参者なのでそうじゃないかとは思ってました……」

りう「まあ、秋月の場合は――――――【アニメ】の製作が決定したのはずっと前からだったらしいからね」

x:五十鈴「こ、ここまで狙ったかのように私たちの艦隊で誰一人として出演者がいないだなんて…………」

りう「静かにして。ほら、戦闘が始まるよ」

x:艦娘たち「あ、はい……」

りう「しっかし、見事なまでに提督の舞台装置っぷりだなぁ……(まあ、八八艦隊の面々ならある程度までの指揮は問題なく執れるけれどもさ?)」

りう「たぶん、【ここ】も【-艦これ-】第2期があった時、提督にもキャラクター性が与えられるようになるとは思うんだけどねぇ……」

りう「でも、これはしかたがないことなのかも(あくまでも【-艦これ-】は世間への認知を定着させる意味合いで艦娘を主役に据えて製作されているから)」

りう「おお……!(ユーザーの分身である提督の存在は今の段階だと登場させちゃいけないのかもしれないね)」

りう「――――――思ったよりも【アニメ】の深海棲艦は怖くないな(『やっぱり【昔】の深海棲艦なんてこの程度なのかなー』って思った)」



――――――斎庭鎮守府


剛田「おい、ついに1時間後に始まるな、【公式アニメ】!」

金本「ああ……、そいつはお前が代わりに毎週 見ておいてくれ。録画は夕張がやってくれているはずだから」

剛田「うん? どうしたんだ?」

金本「一応、【公式アニメ】については提督は必ず見て――――――それは第1話だけの話だけど『できるだけ毎週見て 感想・意見をあげろ』とさ」

金本「というわけで、陸軍のお前から見た貴重なご意見・感想でもあげれば喜ぶんじゃないか?」

剛田「やけに乗り気じゃないな」

金本「どうでもいいわい。どうせマイナー艦ばっかり使ってる俺の艦隊のほとんどは出られませんよーっだ!」

剛田「確かにイロモノ揃いで深夜枠とはいえお茶の間にはあまり似つかわしくないのが多いが…………それだけが理由ではないような気がするな」

剛田「ハッ」


剛田「お前、夕張に録画をまかせているのに、どうしてお前はお前で録画の準備なんてしているんだ?」


金本「うるせえな。別に俺の方で2015年冬アニメで見たいものが他にあったっていいじゃないか」

剛田「珍しいな。艦娘という絶世の美女たちを数えきれんぐらい侍らせている資源王という究極のリア充に二次元に求めるものが未だにあったとはな」

金本「そうは言うが、俺だって資源王になる前は平々凡々だったんだし、更にその前は極貧の素寒貧だったんだ」

金本「昔の思い出に浸ったって悪くはないだろうが」

剛田「ふ~ん。金本がそこまで言うからには――――――」ジー ――――――画面に表示された録画予定表に目を凝らす。

剛田「あ」(察し)

金本「わかったか?」

剛田「そうだったな。お前――――――、」


――――――“課金兵”だったもんな。


金本「ああ。あの頃は“多々買い”の日々に明け暮れていたものだ。結局、俺は“レッドショルダー”の成り損ないだったがな……」

金本「それも昔となり、資源王となった今は、匿名で世話になった事務所に寄付金を贈ってはいるんだがな」

金本「あとは、夜ノヤッターマンぐらいか。気になるのは」

剛田「そうか。わかったよ」

剛田「お前の代わりに【アニメ】の感想を書いておいてやるから少しはのんびりとしてな」

剛田「そうだ。2月に冬イベントが開催されるらしいとの情報が船舶司令部にも届いたぞ」メメタァ

金本「そう。【ケッコンカッコカリ】が実装された辺りでもあり、【艦娘からのチョコ】がもらえる季節でもあるな」メメタァ

剛田「かぁー、羨ましい! 提督になればリアルでもらえなくても艦娘たちからはもらえるものな!」メメタァ

金本「チョココロネでも作ってやろうか? それともあんドーナツの方がいいか?」ニヤニヤ

剛田「…………ありがとよ、金本菓子パン(俺もケッコンカッコカリしてぇよぉ! ちくしょーめ! 海軍ばっかぁ!)」イラッ



――――――拓自鎮守府


朗利「【アニメ】の方はいい。公報活動なら昔からやってきたことだし、この件に関しては愛月提督にまかせる」

愛月「わかりました。しっかり拝見させてもらいます」

朗利「うん。うまいこと頼む」

愛月「では、朗利パークで上映いたしますので、その準備に入りますね」

朗利「よろしく頼む」

コツコツコツ・・・・・・

朗利「…………こっちは【アニメ】の話どころじゃないんだよな」

朗利「さて、どうするべきか?」チラッ



軽巡:リベルタード「お願いです、ぜひ私たちにお味方してください」

重巡:バレアレス「いいえ、国民を苦しめるだけの無能な政府の手先の言うことに耳を貸さないでください」



朗利「…………和平を結ぶことはできないのか?」

リベルタード「無理です!」

バレアレス「残念ながら、人民の敵である政府を転覆させる以外に解決の道はありません」

朗利「けど、深海棲艦が跋扈している世の中で内戦してる余裕なんてあるのか?」

朗利「――――――共倒れするだけだぞ」

リベルタード「そうですとも。今こそ一致団結するべきだというのに……」

バレアレス「そんなことはわかってはいますが、敵よりもずっと厄介なものが国中にいますので」

朗利「…………そうか(『敵よりもずっと厄介なもの』との戦いを強いられているのか)」

朗利「すまないが、力を貸せるのは『打倒 深海棲艦』という共通の目標に向かっていくことが約束できた時だけだ」

朗利「確かに【欧州への大規模遠征】を計画しているのは本当だが、これは人類同士の内戦に介入するためのものじゃない」

朗利「深海棲艦による海上封鎖を打破し、人類の地球規模の生存圏の再確立を目指しているものだ」

朗利「皇国が願っているのはいつだって世界平和だ。侵略戦争なんてしたことがないんだ。それが西暦1600年からの江戸時代からの伝統なんだ」

朗利「いつだって皇国は外圧からの防衛のために勢力を拡大せざるを得なかっただけであり、」

朗利「民族自決が基本となった今の御時世で特定の民族のためだけに介入することは許されない」

朗利「遠いところからわざわざ来てくれたのはありがたいことだけれど、艦娘を使った代理戦争には手を貸せない」

朗利「ましてや、人類の味方である艦娘が人類の敵である深海棲艦と戦う日々を描いた【-艦これ-】の放映がここでは始まったばかりなんだ」


朗利「艦娘 VS.艦娘の構図を生み出すのは【演習】の中だけにしてくれ」



リベルタード「………………」

バレアレス「………………」

朗利「…………とは言っても、人間だもんな。艦娘だもんな。言ってすぐにわかりあえるとは思っちゃいないさ」

朗利「だって、そうだろう? 何が欲しくて争い合っているかなんてわかってないから大の大人の大人げない喧嘩にもなるんだからさ?」

朗利「けれども、 せめて ここにいる間だけでも内戦のことなんて忘れて、」

朗利「平和ってどんな感じなのかをここでの日々を通して思い描いていってはくれないか?」

朗利「はい、これ」スッ

リベルタード「?」

バレアレス「何ですか、これ?(何か凄く美味しそうな匂いが――――――)」

朗利「神戸銘品の瓦せんべいだよ。ちょっと固いけどおすすめだぞ」

朗利「さ、紅茶の用意もできたことだし、二人の故郷についていろいろと教えてくれないか?」ニコッ

リベルタード「………………」

バレアレス「…………まあ、救助してくださった朗利提督のメンツを潰すわけにもいきませんから」

リベルタード「…………少しぐらいは罰は当たらないわよね? それじゃ、お言葉に甘えて(ああ 美味しそう…………)」

バレアレス「あ、これは確かに…………(――――――美味しい)」

朗利「よかった。そういう顔 ちゃんとできるんだ」ニッコリ

リベルタード「あ……」カア

バレアレス「…………朗利提督」フフッ




――――――趣里鎮守府


石田「――――――実にくだらない内容であったな」

石田「これも公務の内とは大本営は何を考えているのか」

ヲ級「ヲヲ?」

石田「公式が正確な艦娘の資料を公表しようとしないだけに『人の数だけ【艦これ】が存在する』と言い放ってるぐらいだ」メメタァ

石田「それ故に、この二次創作の設定が一定の支持を得られれば、支持した者たちにとっての真実にもなるし、」メメタァ

石田「逆に、違った設定を支持している者たちからすれば、我々が行っている深海棲艦の研究なんてものは最初から見当違いなものとなる」メメタァ

石田「少なくとも、【この世界】における【艦これ】世界を救うためのヒントはどこにもなかった」メメタァ

石田「やはり、我が道を往くしか【この世界】を救う手立てはないというわけだな」メメタァ

左近「まあまあ。【アニメ】連動企画として吹雪改二が実装されたことですし、ま、いいんじゃないんですか」メメタァ

左近「それに、この【アニメ】放送も【深海棲艦の調教】の実験道具にしようだなんて、殿も思い切ったことをしますなぁ」

石田「このくだらない時間帯に付加価値をつけただけに過ぎん」

石田「さて、『ヲシドリ』『レイ』『ヨウスイ』。――――――この【アニメ】の感想を書いてくれ」

ヲ級「ヲヲヲ!」カキカキ

レ級「!」カキカキ

ヨ級「…………!」カキカキ

石田「よしよし。きれいな字だぞ」

左近「しかし、【調教】の甲斐あって文字の読み書きによる意思疎通もずいぶん楽になってきましたな」

左近「今じゃ、報告書も拙いながらも ある程度は提出できるぐらいになっていますからなぁ」

石田「やはり、同じなのだ。――――――艦娘と深海棲艦との間にある差なんていうのは所詮はその程度ということだ」

左近「あとは、喋れるようになってくれれば艦娘と同等なんですがね」

石田「いや、意思疎通はこれだけできていればそれで十分だ」

左近「どうしてなんです?」

石田「こいつらは言わば、“社会復帰訓練中の艦娘”のテストケースという設定で俺は接している」

左近「なぁるほど。つまり、来る戦後の艦娘の医療福祉に備えたデータ取りも兼ねてるというわけですか」

石田「ああ。深海棲艦への研究は今こうして進んではいるが、逆に艦娘の生態への研究はこれまで禁忌とされてきた」

石田「だが、深海棲艦を追究する上ではどうしても艦娘との比較研究も必要となってくる」

石田「そこで、深海棲艦を基準にした補助具を開発していき、艦娘にもその適性があるかどうかで、」

石田「これまでのタブーを触れることなく、両者の間の共通性や同一性の検証を行おうと思っている」

左近「まさしく逆説的な証明法ですな。――――――深海棲艦の装備との適性で、ね」


左近「ところで、殿?」

石田「何だ、左近?」

左近「当初の録画予定にないアニメがたくさん予約になっているようなんですが、あれは殿のものですか?」

石田「そうだ。この2015年冬アニメは異種族理解の宝庫だ。俺はあらゆるアプローチから深海棲艦への理解を深める不断の努力をするつもりだ」

左近「はは、さっすが俺が“殿”と見込んだお方だ!」

左近「なら俺も 殿を見習わないとね」

石田「感謝するぞ、左近」

左近「いえいえ。お互い様です、殿」

左近「(それに、これまで全体の勝利のために あれだけたくさんの艦娘を擁していながら孤独な時間を殿は過ごされてきたんです)」

左近「(今回の深海棲艦と艦娘の共通性や同一性の追究を兼ねた調査の過程で、殿はこれから艦娘たちとの交流をより一層 大事になさるはずです)」

左近「(殿の大志を支えていくには、同志である俺だけじゃなく、殿に恩義を感じて尽くしてくれる艦娘一同との協力も必要不可欠なんですよぅ?)」

左近「(そろそろ殿には過去の贖罪のためではなく、本当の意味で全体の勝利――――――未来の栄光のために頑張ってもらわないとね)」

左近「(俺は幸せ者です。殿がこれから成し遂げる偉大なる功績の支えとなり、立会人になる栄誉をすでにいただいちゃってますから)」

左近「(あとは、殿が栄光を掴む―――――― 一丸となって暁の水平線に勝利を共に刻めるようにもう少しお節介を焼いてやりましょうかね)」

左近「(――――――お供しましょう、殿。――――――お供させましょう、みなを。ね?)」

左近「(独りの力で掴む全体の勝利なんていうものはありはしませんからね。そのことをわかってますよね、殿?)」チラッ


飛龍「………………よかった。何だかんだ言って、提督 ちゃんと見てくれているんだ」ホッ




2,2015年 冬イベント:【迎撃! トラック泊地襲撃】戦記

――――――司令部


清原「今回の冬イベントはいろんな意味でシステム面の向上が見られましたね」メメタァ

金本「だな。【甲乙丙の難易度選択】ができるようになって、クリア報酬もそれ相応っていうのが新鮮だったな」メメタァ

金本「ま、当然 俺は甲作戦(=難易度:難しい)をクリアして【甲種勲章】をゲットしてるがな」メメタァ

金本「朗利提督のやつはどこまでやれたんだ?」

朗利「え、俺ですか? 俺は無理のない程度に乙作戦(=難易度:やや難しい)で制覇しましたけどね」メメタァ

清原「なるほど。これで『司令部』の全員が今回の冬イベントを制覇できたわけか」メメタァ

石田「当然ならば、さして喜ぶこともありませんね」

石田「なにせ、我々は規格外の戦力を擁しているのですからね

石田「一番 凡庸の朗利提督ですら、あの【お守り/航海安全】の超絶効果で一点突破ができているのだから勝利は必然です」メメタァ

朗利「そういう冷血漢は、同族同士を戦わせてさぞ愉快に思っていたことだろうな」ジロッ

石田「私は全体の勝利のために必要なことであるのならば何だってする――――――ただそれだけのことです」

清原「まあまあ 両提督も半年前の夏イベントの後に初めて『司令部』の一員として顔を合わせた時と比べて、」メメタァ

清原「朗利提督は物凄く凛々しく、石田提督は人当たりが柔らかくなったじゃありませんか」

清原「これからも力を合わせて皇国の勝利と栄光のために励んでいきましょう!」

朗利「はい!」

石田「うん、清原提督。――――――昇進 おめでとう」

金本「へっ、そういう兼愛交利の清原提督もいつの間にか愛しの人と一線を越えていたみたいでリア充のオーラをぷんぷんさせるようになっちゃって」

清原「…………またその話か」

金本「あんたも本当の意味で背負うものができたようだし、俺は俺で簡単には死ねなくなったんでね」

金本「ま、お互い長生きしようや。こうやって嫌味を言えるようなやつがいなくなるのも寂しくなるだけだからな」フフッ

清原「……そうだな。戦後もまたこうやって顔を合わせることができたらいいな」フフッ



イ、【拠点防衛】と【海軍総隊】の二人


金本「しかし、ついにこの物語風プレゼンと【艦これ】とで被ってしまった要素が出てきてしまったな」メメタァ

金本「よりにもよって、我が斎庭鎮守府が取り組んでいる内容が主に被っていてよぉ?」メメタァ

石田「確か【練習巡洋艦】の香取型の1番艦が実装されましたね」

石田「そして、その2番艦の鹿島を擁していましたね。第4艦隊の独立旗艦の」

金本「ああ、それだ」

金本「けどさ、プレゼンターの中では特殊能力を持った非主力艦全てをひっくるめて【特務艦】ってしているから、」メメタァ

金本「確かに“軍艦”である【練習巡洋艦】が出てくれたのはいいんだけど、【潜水母艦】と同じく何の特殊能力もないっていうのは…………」メメタァ

金本「あるいは、それから後にゆっくりと【練習巡洋艦】独自の新システムを実装していく予定なのかもしんないけどさ?」メメタァ

金本「別にいいんだけどね? 海軍の言う“特務艦”とプレゼンターの認識するところの【特務艦】は厳密には違うからさ」メメタァ

金本「それと、この冬イベント【迎撃! トラック泊地襲撃】の概要も【拠点防衛】と趣旨が似ていてな……」メメタァ

金本「まあ、E-1のエクストリーム版が【拠点防衛】と考えてもらっていいんだけど――――――」メメタァ


司令部「ああ 金本提督。先程 船舶司令部から書類が届いてたぞ」スッ ――――――封筒とペーパーナイフを渡す。


金本「うん?」ジョキジョキ

金本「…………ああ なるほどね」ジー

石田「どうしました?」

金本「――――――『【拠点防衛】は根本的に今までのマップとは違うから別に大した問題じゃなくて、』」メメタァ

金本「『ソーシャル要素を強化した簡易イベントマップの予定だったから、むしろイメージしやすい先例ができてよかった』とさ」メメタァ

石田「ほう? つまり、金本提督が陸軍船舶司令部と推進している陸海合作もまた一種の【海軍総隊】ということですかね」メメタァ

金本「まあ、そういうことだ。――――――協力してくれたっていいんだぜ?」


金本「――――――【海堡棲艦】なるものを創りだしたっていうじゃないか? それを見せてくれよ?」メメタァ


石田「さて……、何の話でしょうか?」

金本「別にいいけどな。斎庭鎮守府の戦力だけでもやっていけるし、協力してくれればそれはそれでその分 楽になるからな」

石田「…………さすがは大本営に通じている資源王といったところか(それに、俺と同じく あの【乱世】に流れ着いた――――――)」


金本「しっかし、やっぱり大本営の考えることはあれだよな~?」

金本「『練度の高い【練習巡洋艦】を旗艦にした【演習】は、経験値取得効率が若干向上します』ってあったけどさ?」メメタァ

金本「いろいろと違わねえか、これ? 確かに鹿島や香取も旗艦の経験はあるだろうけどさ……」

石田「まず、『旗艦にして【演習】をする』ことの利点があまり感じられませんね、これは」メメタァ

石田「私も調査してはいますが、初期レベルで2%程度しかもらえないことを確認しています」メメタァ

金本「Lvが1上がる毎に、所得経験値倍率が+1%ずつ上がるんだったら、Lv99で経験値+100%になればいいんだけど――――――」メメタァ

石田「いえ、Lv11でようやく4%でしたよ。基本経験値が104%にしかなってませんでした」メメタァ

金本「………………なあ?」

石田「何ですか?」

金本「石田提督だったら、大和型戦艦を1週間で仕上げるのに【練習巡洋艦】の力を借りるか?」

石田「あり得ませんね。この程度では」

石田「まず、このシステムの欠点は、――――――効果を発動させるには『【演習】の旗艦が【練習巡洋艦】に指定』されていますので、」

石田「取得経験値ボーナスである旗艦ボーナス:1.5倍が絶対に得られないことがまず挙げられます」メメタァ

石田「少なくとも利用するのであれば、香取が独占することになる旗艦ボーナス:1.5倍以上のボーナスが僚艦に行き渡らなければ価値が無いです」メメタァ

石田「特に、気に入った艦娘に対してパワーレベリングを施す場合にはまるで使い物になりません」メメタァ

石田「そして、香取自身の戦闘能力の低さによる【演習】戦績の低下による取得経験値の減少が心配されます」メメタァ

金本「だよな~。ちょっと“練習”と“演習”の意味を履き違えてないか、公式さんよ~? “演習”は“予行演習”の意味だろう?」メメタァ

金本「戦力外の【練習巡洋艦】が“演習”に出ちゃいかんでしょう! “演習”に出るのは本物の“戦闘艦”だけだろうが……」

金本「これだったら、まだ【標的艦】の方が“演習”との親和性が高いっての。【標的艦】は“演習”や“新武器実験”の的に使われるもんだからさ」

石田「…………こう改めて見ると本当にそっくりだな」ボソッ

金本「何か言った?」

石田「いえ、あなたによく似た貧乏苦学生のことを少し思い出していただけです」

金本「…………ふぅん。で、石田提督から見てそいつは将来 有望だったかい?」

石田「はい。少なくとも女性に囲まれすぎているのはどうかと思いましたけど、それでも生き抜く覚悟を決めて頑張っていましたよ」

金本「そっ」


――――――さすがだな、『俺』。



ロ、【未来戦線】と【海外派遣】の二人


朗利「しかし、【EOマップ】が2つもあるとは思いもしませんでしたね」メメタァ

清原「これでもう イベントマップにおける前例というものは機能しなくなるだろうな。難易度調整ミスの怨嗟の声が轟々とあがらない限りはもう」メメタァ

清原「そして、【難易度選択】が実装されたことでそういった声はますます響かなくなるだろう」メメタァ

朗利「しっかし、E-2【甲作戦】のクリア報酬でついに【試製51cm連装砲】が実装されましたね」メメタァ

清原「そうだな。圧巻の火力補正だったぞ(いや、こっちは【異界装備】で完成品を持っているから見慣れてすらいるんだけどな)」メメタァ

朗利「仮に手に入れたとしても、俺の艦隊だと長門しか装備できませんねぇ」

清原「え、そうかな? 『51cm』って言ったら『20inch』=『50.8cm』として通用しているんだから、そっちの超大型【巡洋戦艦】なら――――――」

朗利「え? ちょっと待ってください――――――あ、ホントだ!」

朗利「インコパラブルは最初からそんなものを装備して――――――恐るべしアーバスノット! さすがは【弩級戦艦】の生みの親!」

清原「そうか。確かにそれは凄いものだな。第一次世界大戦当時にあった構想にようやく時代が追いついたわけか」

朗利「でも、そんな制限がつくんだったら、前にいただいた【48cm三連装砲】をドレッドノートに装備できたのはなぜなんだ?」メメタァ

清原「ああ ドレッドノートに装備させていたっけ(確かに無理のある絵面だが、あれは【α世界線の異界装備】だから適性が緩いのだ)」メメタァ

朗利「でも、ということは、――――――【八八艦隊】の面々には問題なく全員装備できるってわけなんですよね? いっぱいいますよね?」

清原「うん、実際にそうだった(いや、こんな艦型指定が出てくるとは“あまぎ”ですら思いもしなかったようだがな)」メメタァ

清泉「(今まではフィット補正がつくものの、艦種ごとに設定された装備はどれだけフィットしなくても装備できたのだ。それが――――――)」メメタァ

清泉「(これはおそらく、内部データに【試製51cm砲】の方に仕分ける設定が組み込まれているからなのだろうな……)」メメタァ

朗利「でも、敵の戦力はますます増強されていくばかりです」

朗利「新たな【ボス級深海棲艦】の登場、今まで出てきた【ボス級深海棲艦】が複数同時に現れて、空母ヲ級の更なる強化まで…………」メメタァ

朗利「戦いはどんどん酷い方向に進んでいっているのがよくわかります」

朗利「勝てないんですよ、航空戦じゃもう。敵の数が圧倒的で前のイベントでゲットしたばかりの秋月の【対空カットイン】に頼らないと」メメタァ

清原「…………そうだな(【対空カットイン】が常識でかつ火力インフレの【α世界線】の艦娘を使って簡単に攻略できたことは言わない方がいいか)」

朗利「だからこそ、俺は欧州に行って当時 進んでいたレーダー技術だとか対潜・対空装備をとってこようと思ってるんです」

朗利「もう、嫌というほど空母攻勢を味わってきました。今度はこちらが七面鳥狩りをする番です!」

朗利「それに、ろーちゃんが持ってきてくれた【試製Fat仕様九五式酸素魚雷改】の性能を見ても技術交流の可能性が広がりました」メメタァ


清原「そうか。朗利提督は皇国の“外”に今の状況を打破する答えを見出したのだな」

清原「なら、私はまだまだ使えるはずだった我が国の“内”に眠れるロストテクノロジーの発掘に着手しようと思っている」

清原「忘れないでくれ」


清原「――――――『和魂洋才』だ。小国:日本が大国と対等に渡り合うために必要なのは“和の心”だということを」


清原「あの戦争は欧米の帝国主義に完全に染まって“和の心”を忘れたがために凄惨な結果をもたらしたんだ」

清原「欧米人のやり方を長年やってきている欧米人に、文明開化したばかりの日本人がそれに完全に追従してはいけなかったんだ」

清原「――――――年季の差だ。敵う道理などあるはずがない」

清原「日本には日本のやり方があって、日本独自の強みを欧米人のやり方の中で活かすんだ」

清原「それを胸に刻んで【海外派遣】を成功に導いてくれ」

朗利「はい!」

清原「大丈夫か? 不安に思うことはないか? リベルタードとバレアレスのことでいろいろ悩んだのだろう?」

朗利「大丈夫です。俺の隣にはそういうのをわかってくれてる艦娘たちがいますから」

朗利「でも、何だか清原提督に以前に慰問に来ていただいた時のことを思い出しますね」

朗利「こうやって、また俺の背中を押して新たなる航海の旅へと誘ってくれましたよね」

清原「そうだったな」

朗利「まだまだ実行に移すまでには至ってはいませんが、必ず希望峰を越えて皇国に希望の光を持ち帰ってきますから!」ビシッ

清原「そうか。それを聞いて安心した(あれからずいぶんと雄々しくなったものだな。元々の父性もあったことだが)」フフッ

清原「(そう、朗利提督が希望を信じて欧州へと行くのならば、私もまた未来の可能性を信じて――――――、)」


清原「(そして、私は誰もが体験したことがないような【未知なる戦いの世界】へと挑んでいく!)」



ハ、“アマギ”だらけな鎮守府

――――――洞庭鎮守府


清原「“あまぎ”、この前の出撃の件なんだが――――――」


人間:あまぎ「はい」
天城型巡洋戦艦:天城α「はい」
天城型航空母艦:天城β「はい」
雲龍型航空母艦:天城「はい」


清原「…………困ったぞぉ、これ」

清原「ついに、三代目天城が実装されて大変なことになってしまった…………」ウーム

鳳翔「この鎮守府、天城型巡洋戦艦(派生を含めて)だけで3人もいますから……」アハハ・・・

あまぎ「この調子で、初代天城も召喚して差し上げましょうか?」

清原「それ、スループ――――――木造帆船のことだろう!」

あまぎ「ええ。三笠が活躍していた日露戦争の頃にはもう旧式艦で除籍でしかたからね」

あまぎ「その後、廃船になってから鳥羽商船学校の係留練習船:天城として若い子たちを送り出してきたんですけどね」

あまぎ「一応、あの東郷平八郎も艦長を務めていた由緒正しき旧式艦です」

清原「そして、三代目天城は――――――あの中破絵には驚いた」メメタァ

鳳翔「本当ですよね。私もあの呉軍港空襲には居合わせましたから、三代目天城さんがどうなったのかは存じておりましたけれど…………」

あまぎ「まさか、史実通りに横転した状態の再現って…………」プルプル・・・

あまぎ「さすが『私』よね! ただでは死なない!」ドヤァ

清原「…………艦娘にとって同名の存在はみな『自分』なのか?」

あまぎ「そうですよ、そういうものなんですよ」

あまぎ「どことなく似た雰囲気を感じません? それが艦娘にとってのDNAなんです」

清原「…………そうか(確かに二代目を幼くした感じが三代目のように感じられるな。純和風キャラだし、イメージはそこまで違ってない)」

清原「しかし、同名の艦が混じっていると指揮系統の混乱が考えられるからなぁ……」

あまぎ「ですから、同名の艦を一緒の艦隊編成にしない努力をしなければなりませんよ」メメタァ

あまぎ「戦場でいちいち『二代目』だとか『三代目』だとか言うのは大きなロスですし」

清原「そうだな。管理上、そうする他ないか…………そもそも二代目と三代目を一緒に組ませることに拘る理由もないことだしな」



りう「ねえねえ、長門 長門」

長門β「どうした、“りう”?」

りう「どうして、【β世界線】の航空母艦:天城と赤城の識別文字は『マ』と『カ』なの?」

長門β「ああ それは簡単なことだぞ」

長門β「たとえば、【この世界】の一航戦は赤城と加賀だが、あの二人の識別文字は『ア』と『カ』だな」

りう「あ、そうだっけ」

長門β「これは単純に頭文字をとったものだということはすぐにわかるだろう」

長門β「一方、困ったことにあの姉妹は“アマギ”と“アカギ”だから名前が似ていてな」

長門β「だから、苦肉の策として一文字違いの『マ』と『カ』を識別文字に選んでいるわけなのだ」

りう「あ、言われてみればそういうこと――――――」

長門β「…………だから、【γ世界線】の加賀を初めて見た時『カ』という識別文字に仰天する他なかった」

りう「じゃあ、――――――【標的艦】から【正規空母】に返り咲いた加賀と土佐について」

長門β「いや、あれは本来 未成艦だから私に訊かないでくれ。本物は陸奥と一緒に沈んでいったのだからな」

りう「確か、【そっち】の加賀が『“カ”』で、土佐が『サ』になっていたよね?」

長門β「…………は?」

りう「だから、加賀が濁点が両方付いている『“カ”』で、土佐が『サ』なんだけど」

長門β「…………百歩譲って土佐が『サ』なのはわかる。『ト』だと遠目からはただの線にしか見えない可能性があるからな」

長門β「だが、――――――濁点が両方についている『“カ”』だとぉおおお!?」




加賀「交換しませんか、その飛行甲板?」ウズウズ ←飛行甲板『カ』+サイドテール

加賀β「……え? どうしてですか?」アセタラー ←飛行甲板『“カ”』+ストレート

加賀「赤城さんの識別文字に私の艦載機が覆っているみたいでカッコイイから」キラキラ

加賀β「で、でも……、私の飛行甲板はあなたのとはす、少し違うから――――――」オドオド

加賀「交換して」ギュッ

加賀β「え、でも…………」ドキッ

加賀「いいから、早く。よこしなさい、『私』」ドンッ ――――――壁ドン!

加賀β「きゃっ」ブルブル・・・

加賀「フフッ」


瑞鶴「加賀さんが加賀さんを壁ドンしてるっ!?」ドキッ

加賀α「どうしたのでしょうね、あのお二方」キョトーン ←【戦艦】なので飛行甲板などなく、淡い青の加賀友禅を羽織った長門スタイル+ポニーテール

土佐α「あれじゃない? やっと【標的艦】から抜け出して【正規空母】になったもう一人の加賀姉さんにスキンシップしてるんじゃない?」

加賀α「いいですね……。何だか私だけ仲間外れみたい…………」ズーン

瑞鶴「ちょっ、加賀さん!? こんなことで落ち込まないでくださいよー!」

加賀α「いいのよ、瑞鶴。私はどうせ大和型戦艦以下の存在なのだから…………まさか長門に遅れをとることがあるなんて思いもしなかった」

土佐α「ちょっと姉さん! あの長門さん、長門じゃない いろいろ特殊な長門さんなんだよ!? 特殊な訓練を受けてきたエリートなんだよ!?」

瑞鶴「そ、そうですよ! それに、悪い方に悪い方に考えていったらせっかく生まれたままの姿でいられた幸せが逃げてっちゃうよ?」

加賀α「……そうね。無い物ねだりをしていてはダメよね」

加賀α「ありがとう、瑞鶴。できれば、あなたのような素直な娘を私たちの提督の麾下に迎え入れたいものね」ニコッ

土佐α「うんうん。その時は私と一緒に加賀姉さんを支えていこうね! もちろん、提督のこともお願い!」ニッコリ

瑞鶴「あ」ポッ

瑞鶴「(うわっ、私の中の加賀さんが一航戦じゃなくて【戦艦】の方の根暗な加賀さんに染まりつつあるよ…………)」

瑞鶴「(ああ 一航戦の加賀もこれぐらい親しみやすい人だったらよかったのになぁ……)」





天城β「 い い か げ ん に し な さ い 」ガシッ ――――――アイアンクロー!



加賀「あうぅう…………」ギリギリギリィ

天城β「いくら“仏”の私でもここまでの粗相は見逃せないのですよ?」ジロッ

加賀β「も、もういいですから、許してあげてください、天城さん!」アセアセ

天城β「…………ハエの羽音がまだ聞こえますねぇ」パッ

加賀「す、すみませんでした……」ヘナヘナ

赤城β「な、何をやってるんですか、天城姉さん! 【ここ】の――――――ああ びっくりした」

赤城β「【ここ】の加賀さんは姉さんと同じものを着ているから、一瞬 何が何だかわからなくなりますよねぇ」

赤城β「しかも、飛行甲板は私と同じ『カ』ですから」

赤城β「まぎらわしいので、【こっち】の加賀さんと同じように『“カ”』にしません?」

加賀「えっ」(歓喜)

赤城β「大丈夫ですって。まず服装が【こっち】の加賀さんとはまず違いますし、髪型や人相も違ってきてますから一目で別人だってわかりますから」

天城β「そうね。元々の原因はそれなんだし、あなたは“カガ”なのだから別に濁点をつけても識別の問題はないわよね」

天城β「さ、塗ってあげましょう。おいで」ニッコリ

加賀「あ、ありがとうございます!」キラキラ

加賀β「な、何かよくわからないけど、解決したようで何よりです…………」

加賀β「さすがは大東亜共栄圏の立役者であられる一航戦の“青仏”に“赤鬼”です」 真言密教の青(善無畏伝)=方位:中心=大日如来

加賀β「空母機動部隊の手本として乗組員の一人一人が共栄圏主義の理想に燃えた結果、降魔調伏の鬼と衆生済度の仏に相成ったといわれますけど…………」

加賀β「でも、さっきみたいに“仏”と“鬼”の面を入れ替えて互いを補いあっていたからこその抜群の連携――――――」

加賀β「はあ……、私もさっきの『私』や仏と鬼が担ってきた誇りある一航戦のようになれるでしょうか……?」

加賀β「提督のお力添えで【標的艦】から【航空母艦】に【改造】していただけたのですから、――――――私、頑張らないと!」






『ヒカリ…アフレル…ミナモニ…ワタシモ……そう…っ!?』



天城α「…………『光』」

長門β「どうした、こんなところにいて? ――――――巡洋戦艦:天城?」

天城α「…………あなたは違う」

長門β「?」

天城α「あなたを包む光は暖かくて、『あなた』を包んだ『光』は全てを無に帰して――――――」

長門β「――――――『光』?」

長門β「ああ……、戦艦水鬼が呟いていたことか」

長門β「強敵ではあったが、我らの敵ではなかったな」

長門β「我が方の掲げた【錦の旗】の前に敵は慄き、たちまち雑魚の群れと変わったのだ」

天城α「ねえ、長門」


天城α「――――――これ以上の敵は現れるのかしら?」


長門β「さあな。そんなことは人間:あまぎ に訊いてくれ」

長門β「だが、いよいよ戦いも絶望的なラインまで来てしまったというわけだ」

長門β「【この世界】で起きた太平洋戦争では、トラック島の次はサイパン島だからな」メメタァ

天城α「ええ。今度は絶対国防圏――――――サイパン島の戦いがモデルになるのは時間の問題。本当の地獄はこれからね」メメタァ

天城α「――――――マリアナ沖海戦」

長門β「ふっ、今度は大鳳と翔鶴が相手か?」

天城α「かもしれない。それから、――――――レイテ沖海戦」

長門β「最後の航空戦力が全滅した戦いのようだな」

天城α「――――――ミンドロ島沖海戦」

長門β「礼号作戦とかいう、帝国海軍最後の戦術的勝利ってやつだったか?」

天城α「――――――菊水作戦」

長門β「沖縄戦において大和が出撃したというあれか」

天城α「そこからは包囲網による飢餓作戦ね」

長門β「そうか。少なくとも【この世界】のイベントマップの方向性はここまで来ていたわけか」メメタァ


――――――この状況、どう覆してやろうか?



天城α「でも、気をつけて」

長門β「?」

天城α「どうも海の向こうからではなく、我が国の内から不穏な気配を感じます……」

天城α「それは正しき力の在り方から外れた禍々しいもの――――――」

天城α「おそらく、人間:あまぎ ですらも知らないようなものです」

長門β「…………なんだと、そんな馬鹿なことがあるのか?」

天城α「この気配――――――艦娘であって艦娘ではない、深海棲艦ではなくて深海棲艦のように心が凍てつくような波動に満ちています」

長門β「艦娘でも深海棲艦でもない存在がこの神州で蠢いていると?」

天城α「おそらく それは――――――、」


――――――人類が次に乗り越えるべき天敵。


長門β「どういうことだ? 深海棲艦との戦いはこれからだろう?」

長門β「なぜ『次に乗り越えるべき天敵』が内より現れるんだ?」

天城α「本当に征服すべきなのは、深海棲艦でもなく艦娘でもなく人間の――――――」


陸奥「どうしたのよ、二人共? こんな夜更けに」


天城α「あ」

長門β「…………陸奥か」

陸奥「あら、お邪魔だったかしら?」

天城α「いいえ。ちょうど話は終わったところですから」

陸奥「そう。だったら、一緒に飲みに行かない? これから飲み直すつもりなんだけど」

長門β「そうだな。少しぐらいは付き合ってやる」

陸奥「それじゃ、一緒に来て。――――――天城さんも」

天城α「はい」



――――――3つの特異点。


天城α「【α世界線】【β世界線】【γ世界線】が混じりあって生まれたこの【⊿世界】――――――」

天城α「私と、長門と、陸奥の3人で創られた【この世界】を守っていくためには――――――」

天城α「お願い、力を、貸して……」















あまぎ「………………ぅうくっ、ぁあああああ!?」クラクラクラ・・・

あまぎ「い、今のは…………?」ゼエゼエ

あまぎ「【⊿世界】が【⊿世界線】に変わる――――――似て非なる世界なのはここまでということなの?」ドクンドクン


Next:第9話 海軍総隊を結成せよ! に続く!




というわけで、正規の内容はこれにて終了でございます。半年もの間、誠にありがとうございました。
最後に、これまで掲載した他の方たちの二次創作を改めて紹介させてもらいます。
しかし、今になって見ていると完結せずに失踪(=時間切れ:過去ログに格納される)したものが多いこと多いこと。
筆者は絶対に失踪せずに完結させることだけは決めていただけに、他がそうでなくてちょっと寂しく思うものがいくつか――――――。


・××××××提督の人
金剛「テートクのハートを掴むのは、私デース!」瑞鶴「!?」 ………偉大な先人様。【艦これ】の二次創作をやろうと思ったきっかけ。3スレにも渡る大長編。
金剛「テートクのハートを掴むのは、私デース!」瑞鶴「!?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1382027738/)
利根「提督よ、お主なかなか暇そうじゃの?」 金剛「…………」 ……最新作。艦娘の生態を追求した作風に最も影響を受けた。
利根「提督よ、お主なかなか暇そうじゃの?」 金剛「…………」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1416837049/)


・大井の人シリーズ
大井「ちっ、なんて指揮……」提督「今なんつったオイ」 ………………大傑作。この人の書く夫婦漫才は本当に素晴らしい。頭の中身は糖分が詰まっていた。
大井「ちっ、なんて指揮……」提督「今なんつったオイ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1404049548/)
提督「瑞鳳ーッ! 俺だーッ! ケッコンしてくれー!」 ………………最新作。それまでの投稿作品のリストも冒頭にリンクが貼ってあるぞ。
提督「瑞鳳ーッ! 俺だーッ! ケッコンしてくれー!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1423055241/)


・クロスオーバー:俺ガイル
八幡「艦娘?」 叢雲「うるさいわね」 ……………………………………怪作。艦娘に関する解釈がアルペジオのそれだが ジャンル:提督ものとしては秀逸。
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408617983
八幡「艦娘?」 叢雲「うるさいわね」【二】 
八幡「艦娘?」 叢雲「うるさいわね」【二】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1416660053/) ………完全に心機一転した内容となっているので注意。

・ジャンル:TOKIO
【ザ!鉄腕!DASH!!】DASH鎮守府~TOKIOは海の平和を守れるか~【艦これ】
【ザ!鉄腕!DASH!!】DASH鎮守府~TOKIOは海の平和を守れるか~【艦これ】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1409752282/)
【ザ!鉄腕!DASH!!】DASH鎮守府~TOKIOは海の平和を守れるか~【艦これ】その4
【ザ!鉄腕!DASH!!】DASH鎮守府~TOKIOは海の平和を守れるか~【艦これ】その4 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1422895202/) ………最新スレ

・お艦で戦う陸軍将校
提督「駆逐艦って軍艦じゃないのな」
提督「駆逐艦って軍艦じゃないのな」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1407492115/)
提督「駆逐艦って軍艦じゃないのな」あきつ丸「その2であります」
提督「駆逐艦って軍艦じゃないのな」あきつ丸「その2であります」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1417576162/) ………最新スレ



【艦これ】レ級「戦艦レ級、着任シタゼ」
【艦これ】レ級「戦艦レ級、着任シタゼ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1411807933/)

【艦これ】長門「我々のことをどう思っているんだ?」 提督「えっ?」 …ある提督が淡々と所有する艦娘について語っていくもの。
【艦これ】長門「我々のことをどう思っているんだ?」 提督「えっ?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1402837167/)      駆逐艦は網羅してないので貴重な体験談として重宝した

【艦これ】提督「気がついたら全員レベル99だった件について」 ……………イチャコラ系・安価スレ。
【艦これ】提督「気がついたら全員レベル99だった件について」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1402131493/)      たぶん、ユウジョウカッコカリの着想はここにあったと思う。たぶん

【艦これ】出張!DASH村、TOKIOの手、お貸しします【響】 ……………………クロスオーバー・ほのぼの系。ジャンル:TOKIO 以上。長編のものとは違うので注意。
【艦これ】出張!DASH村、TOKIOの手、お貸しします【響】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1405511599/)

深海棲艦「アナタハ、ソコニイマスカ?」総士「僕は……」 …………………蒼穹のファフナーとのクロスオーバー
深海棲艦「アナタハ、ソコニイマスカ?」総士「僕は……」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1400406720/)      海と馴染みが深い両作品と謎に満ちた敵勢力との親和性がいい。

【艦これ】提督「頼む、婚約者になってくれ!」
【艦これ】提督「頼む、婚約者になってくれ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1407328098/)

提督「鎮守府のアイテム屋が色々と手遅れだった件について」
提督「鎮守府のアイテム屋が色々と手遅れだった件について」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1408975679/)


基本的にどこもsage進行なのでコメントする時はE-mail欄に"sage"を入れてからコメントをしてください。
sageずにageてしまうと、作者の投稿が再開・一区切りついたのではないかという目安になっているために勘違いした人たちが落胆と憤りを感じてしまうので。
少し面倒ですが、sage進行を徹底しましょう。sage進行して怒られることはまずないのでとりあえずやっておくといいです。


それでは、今までありがとうございました。よき鎮守府ライフが今年も続きますように………………















ここから先は物語風プレゼントはまるで関係ない超番外編となります!

注意:本来のプレゼンとはまったく無関係のこの二次創作独自の世界観と筆者の趣味で交じり合った独自展開となります。
→ よって、プレゼンの提案内容や本文にのみ関心がある方には蛇足でしかないので読み飛ばしてもらってかまわない。
→ あくまでも、詳細な設定が公式でぼかされている【艦隊これくしょん】の世界観に対する素人による一意見でしかない。
→ また、『解体すれば普通の女の子になる』という説には筆者は真っ向から反対しているので“艦娘∈人間”の考え方をしている方には目の毒な内容です


超番外編はその名の通り“超番外編”であり、【艦これ】の二次創作であるこの物語風プレゼンの趣旨に反する、
この世界観独自の拡がりを描いた三次創作に近いものとなっております(二次創作の中で自ら二次創作している扱いである)。
これまでの物語風プレゼンに期待している方々は >>551 同様にスクロールバーを使って飛ばしていってください。

超番外編は次のレスからスタートし 終わったら直後に白紙を挟み、ほぼ恒例となったあれを入れておくので白紙を目印にスクロールをして、どうぞ。













超番外編2 神に捧げられしものたちの降臨  -祓いたまえ、清めたまえ-

――――――洞庭鎮守府


清原「“あまぎ”が持ってきてくれた【未来】の深海棲艦の資料を見ると、確かに進化してより脅威となっているのがわかるな」

清原「…………これは確かに厄介だな。主力艦の性能が桁違いじゃないか」

清原「おそらく【この世界】における大戦が終わって20年ぐらい経てばこんな感じにもなるのだろう……」

鳳翔「そ、それでは…………」アセタラー

清原「わかっている。先人たちが残してくれた【未来】からの警告だ。必ずや“平和で豊かな時代”をより良きものにしてみせる!」


清原「だが、どうする?」


清原「【α世界線】は大艦巨砲主義が異常に発達していった結果、3すくみになってそれぞれに特化した軍艦が造られていった」

清原「そして、主力艦は補助艦の助けなしにはままならないほどの極端な性能となっており、――――――戦力単位が艦隊だからな」

清原「そうなれば自然と数の理が支配する戦場となるが、逆に一度の会戦で多くの犠牲や損害が出ることから戦闘は極力避けられるようになったようだ」

清原「つまり、膨張した艦隊戦力がそのまま抑止力となったのが【α世界線】ということだな」

清原「そして、3すくみによって戦艦を造れば潜水艦を増やし、潜水艦が増やされれば空母戦力の強化を行う――――――」

清原「そんなイタチごっこが繰り返された結果、太平洋戦争は起こらずに結局 原爆を落とされたけれども痛み分け――――――」

清原「日露戦争の時と同じような感覚で講和を結べたらしい」

清原「もちろん、度重なるパンデミックと植民地主義の瓦解によって世界全体に厭戦気分が蔓延していたことも大きかったかもしれないな」


――――――こんなことをしていたら人類全体が滅亡してしまう!


清原「それは共通の敵を目の前にして悟らせてくれた大神の慈悲なのかもな」

鳳翔「――――――『慈悲』ですか?」

清原「そうだとも」

清原「【この世界】だと、深海棲艦という共通の敵が現れて初めて世界的な国際協調の流れが生まれてきただろう?」

清原「【あっち】だと細く長く列強支配の時代が続いた代わりに、深海棲艦という共通の敵が現れる前からその流れが生まれていたんだ」

清原「だから、【あっち】で深海棲艦が現れた時には人類軍を結成して決戦を挑んで【ここ】以上に仲良く損害をわかちあったり、」

清原「ついに人類が勝利した際には世界中が歓喜に包まれ、“あの子”の誕生を大いに祝福してくれたり――――――」

鳳翔「…………素敵な世界ですね」

清原「そうなると思うか? ――――――【この世界】だと」

鳳翔「素直には想像しづらいですね」

清原「私もそう思う」


清原「けど、これは1つの大きな等価交換だ」

鳳翔「?」


清原「互いの世界を真の平和に導くためにこの出会いはあったんじゃないかって」


鳳翔「ああ…………」

清原「私はそう明るく 前向き 発展的に捉えたい」

清原「【未来】に起こる悲劇を知ることになっても、少なくとも知ってさえいれば事前に対策ができる。できなくても覚悟や善後策ができる」

清原「ほら、何にも悪いことなんてない! むしろ、情報は多いほうが基本的に有利なわけなんだから」

清原「それに、“あまぎ”は確かに『【未来】を知ってより良い方向に向かうよう努力した結果は微々たるものだが確実に結実する』とも言ってくれた」


清原「だから、私は私が持てる全てを尽くして【未来】も【現在】も救う!」


清原「それが、この私の野望かな?」フフッ

鳳翔「素敵です、あなた」ニッコリ

清原「けれども、似て非なる世界だった2つの世界は出会って、別な可能性である【⊿世界】がこうやって生まれていった――――――」

清原「きっと【未来】の人間も全く知らないような惨劇が生まれるかもしれない。欲張りすぎてしっぺ返しを受けるかもしれない」


清原「それでも一緒にいてくれるか?」


清原「もちろん、鳳翔が最前線送りになるなんてことは可能性としては限りなく低いけれども、」

清原「何が起こるかわからない。周回している中で思わぬ伏兵に虚を衝かれることもあり得る」

清原「おそらくは、――――――【この世界】の人類も必ずやこの大戦に勝利するだろう」

清原「けれども、その時“護国の英雄”と呼ばれる存在が私であるとは限らない。未来は変えられるものなのだから、良くも悪くも」

清原「そして、少なくともこれからも幾度となく死闘や死線が繰り返されるはずなんだ……。そう――――――、」


清原「だから、絶対に死ぬな! 誰も死なせないから! 誰一人として犠牲にせず、【未来】も【現在】も救って私は『私』を超えてみせる!」


鳳翔「はい」ニッコリ

清原「…………ありがとう」

清原「ま、こんなことを言ったけれども戦うのは結局 お前たち【艦娘】だ」

清原「私はその艦娘たちが全力を出せるように全身全霊で己が持てる才知と誠を尽くそう」

鳳翔「はい。私たち艦娘一同もそれに応えて提督と皇国に勝利と栄光を捧げましょう!」




――――――それから、


清原「さて、今日の仕事を始めようか。冬イベントに関する情報はまだ1月の段階だと――――――」

ジリリリリ・・・ガチャ

清原「執務室だ」

――――――
あまぎ「提督、確か今日は“ビッグ3”との軍刀術の稽古がありましたよね?」
――――――

清原「そうだったな。そういう予定だったな」パラッ

――――――
あまぎ「では、講師の方を招こうと思うので、許可をください」
――――――

清原「何? ――――――『講師の方』? 別に招いてくれるのは構わないが、謝礼はいくらぐらいになるんだ?」

――――――
あまぎ「大丈夫です。謝礼はこちらの方ですでに準備してありますので」
――――――

清原「そうか。“あまぎ”が言うなら好きにしてくれ」

――――――
あまぎ「ありがとうございます」

あまぎ「では、講師の方がいらっしゃいましたらお呼びいたしますので、どうかお立ち会いくださいますよう」

あまぎ「それでは」
――――――

ガチャ

清原「……あれ?(何か他に訊くべきことがいろいろあったはずなのにどうしてか浮かんでこなかった…………)」

清原「まあ、『講師の方』が誰なのかは大した問題じゃないだろう」

清原「――――――“あまぎ”がやることなんだから、失敗なんてあるはずがない(そうだとも。そうに決まっている)」

清原「ん」

清原「んん?(何だ 今の、この妙に浮ついたような感じ――――――)」



――――――数時間が経ち、


清原「ん? そろそろ長門と稽古の時間だったな」

ジリリリリ・・・ガチャ

――――――
あまぎ「講師の方がお見えになったので、どうぞ私のところにいらしてください」
――――――

清原「そうか。必要な物はあるか?」

――――――
あまぎ「特にありません」
――――――

清原「うん。わかった」

ガチャリ

清原「…………?」

清原「何か、ずいぶんと言葉数少なくして話が一気に進んだんだけれど、――――――それに今になって違和感を覚えたのはなぜなんだ?」

清原「まあ、とりあえず“あまぎ”が喚んでくれたんだから、少しは期待することにしよう」



――――――【秘密工廠】


清原「“あまぎ”、来たぞ」

あまぎ「はい」

清原「ところで、今日 招いた『講師の方』は?」

あまぎ「こちらです」

清原「え」


――――――“あまぎ”が指差したのは建造ドックであった。


あまぎ「では、――――――ここにぃいでましませ~」

清原「え?」







石切丸”「石切丸という。病気治癒がお望みかな? ……おや、この感覚はそういうことなんだね?」







あまぎ「はい。そういうことなんです」

石切丸”「そうかそうか。では、そうするとしよう」

清原「えと、――――――『石切丸』さん?」

石切丸”「ああ。あなたがここの代表者なんですね。稽古がてら厄を落として進ぜよう」

清原「え? え? え?」

清原「ちょっと待ってください」

石切丸”「いいですよ」

清原「(――――――『石切丸』? そんな名前の軍艦なんてあったっけ?)」

清原「(待てよ、“丸”ってことはあきつ丸の仲間か? となると、主力艦ではない【特務艦】の一人か?)」

清原「(いや、だとしても、どうしてそれが成人男性の姿で現れた!? しかも、艤装がないし、剣の講師として“あまぎ”に喚ばれたぁ!?)」

清原「……“あまぎ”」

あまぎ「はい」

清原「――――――これは【艦娘】ですか?」


あまぎ「いいえ、――――――【刀剣男子】です」ニッコリ


清原「???」

石切丸”「はははは、まさか私も人ならざる【審神者】によって喚ばれるとは思いもしなかったよ」

石切丸”「けれど、これも普通ではあり得ないような貴重な体験――――――つまりは神の思し召し」

石切丸”「はりきって厄祓いをさせてもらうよ」ニッコリ


【刀剣乱舞】は開発:Nitro + です。【艦隊これくしょん】開発:角川ゲームスとはまったく関係ありません。




清原「はあ……、西暦2205年の遙かなる未来から来たんですか……(“あの子”は【20年ぐらい後の未来】からだったもんなぁ……)」

石切丸”「ああ そうか。そこは誤解があったね」

石切丸”「正確には【私たちの世界】における西暦2205年に大神より降ろされた神法によって生み出された【刀剣男子】の1人が私というだけのことだよ」

清原「ええ!? ――――――『大神より降ろされた神法』!?」

あまぎ「大丈夫です。今 目の前に実現している奇跡もまた神様がお許しになったものですから」

あまぎ「ですが、『提督をお助けしなければならない』のが天意ということは、『それだけ辛く苦しい戦いの日々になる』という意味でもあります」

清原「!」

あまぎ「ですから、その前に提督が積んできた徳に応じて、今 この場において厄祓いをさせてもらいます」

石切丸”「あなたは兼愛交利を実践して大変立派なんだけれど、あなたの先祖が積み重ねてきた業が重たくのしかかっているからね」

石切丸”「さっきも説明した通り、私は三条宗近 作の“石切さん”でね」

石切丸”「つまり、石切劔箭神社に伝わる宝刀が私のモチーフでね」

清原「え、――――――『モチーフ』?」

石切丸”「そう。私は物に宿る心を目覚めさせてその力を引き出す【審神者】の一人によって形作られた存在だからね」

石切丸”「それに、本物の“石切丸”はちゃんと神社にあることだしね」

清原「ああ……、それもそうですね」

石切丸”「本来、私のような――――――いや、古事記に登場する八百万の神々は時代や環境のニーズに合わせてふさわしい姿をとるものでね」

石切丸”「つまり、人それぞれによって神の姿は違ってくる――――――特にこの3次元界だと」

清原「…………そ、そうですか」

石切丸”「けれども、私が今の私になったのも 私を喚んだ【審神者】の力量やイメージがそのまま反映されたものが世間一般に知れ渡った結果でね」

石切丸”「だから、私の能力も私を最初に喚んだ【審神者】の能力に応じた分までしか発揮されないっていう制約がつくことになっちゃったんだ」

あまぎ「けれども、人によって形作られたからこそ、私のような格の低い存在でも世界線を越えて【ここ】に喚ぶことができたのです」

清原「ああ……、そうなのか……(何を言っているのか、私には全然 理解できないぞ……)」

石切丸”「さて、話を戻すと、――――――私は本来【刀剣男子】として【遡行軍】を討伐するために喚ばれたのだけれど、」

石切丸”「本業は石切劔箭神社の宝刀だから、もっぱら腫れ物治癒の“でんぼ(=腫れ物)の神様”とも呼ばれてきたんだ」

あまぎ「ですから、微力ながら提督のお力添えができるようにお願いしたのです」

石切丸”「主に、これからする厄祓いと剣の稽古でね」




――――――稽古の様子


清原「ふんっ! ふんっ!」ブン! ――――――4尺余りの大太刀を振るう! ※1尺=30.3030cm

石切丸”「この時代の人間にしてはなかなか鍛えている方だけど、これだけ便利な時代になると昔の平均より力が劣るものだね」

石切丸”「おっと、西暦23世紀の未来からすれば不便なことのほうがたくさんあるけれどもね」フフッ

清原「…………やっと30回ぃ」ゼエゼエ

石切丸”「お疲れ様。かなり厄祓いできたよ」スッ ――――――汗拭きを渡す。

清原「そ、そうなんですかぁ? ――――――ありがとうございます」ゼエゼエ

長門β「ふむ。さすがの私でも1mを超すほどの大太刀を扱うのは初めてだな」

長門β「よし! これを30回 振ればいいのだろう? 提督よりは楽に終わるはずさ」

石切丸”「はたして、そう簡単にうまくいくかな?」

清原「…………フゥ」ゼエゼエ

石切丸”「それで、この刀は――――――」スッ

清原「これは長門の元帥刀ですね。惜しげもなく菊の御紋がたくさん入ってます」

石切丸”「なるほど、小烏丸と同じ作りなのか。それでいて3尺2寸――――――」ジー

石切丸”「けれど、実戦向きとはお世辞にも言えないような飾りの多さだね」

清原「儀礼刀ですから。ちゃんと物が斬れる本身仕込みですけれどもね」

石切丸”「うん。使えるかどうかはさておき、これは本当に気が良いね。その時代を代表する素晴らしい刀匠が作ったものなんだろうねぇ」

清原「そこまでは詳しくはありませんが、靖国神社に元帥刀のオリジナルが現存していますよ」

石切丸”「わかるよ。ここからでもこれと同じ波動のものがいくつも感じられるからね」

清原「は、『波動』ですか……(なんかホント オカルト染みてきたもんだな、この鎮守府も)」


長門β「ば、馬鹿な……、艤装よりも軽いはずのものがどうしてこんなにも重く感じられる…………?」ゼエゼエ


石切丸”「【艦娘】は腕力よりも背筋の方が大切だから、大太刀を振るうのはきっと苦手だろうね」

石切丸”「それに、あの娘は本当に不器用そうだものね。身体の使い方も不器用だから刀に振り回されると思うよ」

清原「神官殿? ちょっと言うのが遅すぎますよ?」

石切丸”「おっと、これは失礼した。なにぶん、神社暮らしが長いものでね。急かされることがあまりなかったもので」

清原「はは…………(何とも気が抜けるような喋り方をする方だな…………でも、確かに俗世間のことを忘れて心が洗われるような感じがするな)」

石切丸”「うん。それでいいんだよ」ニコッ

清原「え」

石切丸”「清原提督は本当に素晴らしい志の持ち主だが、今のあなたは『自分が』『自分が』と我を張って思いを背負いすぎている」

石切丸”「“思い”があるから心と体が“重たくなる”ことを忘れないで」

清原「えと……(――――――ダジャレ?)」

石切丸”「『ダジャレ』じゃないよ」ニッコリ

清原「あっ」ギョッ


石切丸”「古来より我が国の大和言葉にはその音の1つ1つに意味があり、古事記の八百万の神々の1音1音がその神の本質を示しているのだからね」

石切丸”「別な例で言えば、和歌における掛詞もそのダジャレに通じるものがあることだし、」

石切丸”「同じ音の組み合わせにいくつもの意味を重ねられるところに大和言葉の本質というものがあるんだよ」

清原「言語学者ではないので、そういったことは――――――」


――――――名は体を表す。


石切丸”「私の本質は石切劔箭神社の御神刀だけれど、他にも“石切丸”の名を持った名刀の伝承が残っていてね?」スッ

清原「?」

長門β「お、終わったぁ…………(腕と肩が痛い……。こんなことがあるのか? 満身の力を込めたのに…………?)」ゼエゼエ

石切丸”「それじゃ、刀は返してもらうよ」

長門β「は、はい…………」ゼエゼエ

石切丸”「それで、清原提督? 私は神社暮らしが長いから当然 戦の専門家ではないし、人を斬ったこともないのだけれど、」ジャキ

石切丸”「――――――!」カッ

清原「!!」ビクッ

長門β「!?」ビクッ


石切丸”「……祓いたまえ、――――――清めたまえ!」ブンッ!


石切丸”「……この通り、他の“石切丸”の伝承のイメージが【審神者】に込められたことによって、我が刃は岩をも断つようになったんだ」

清原「あ…………」ドクンドクン

長門β「…………す、凄い気迫だった」アセダラダラ

石切丸”「だから、“思い”を背負いすぎないでね。そうなるといくら厄祓いをしてもあなた自身が抱く思いが重くのしかかることになるから」

清原「わ、わかりました……(全てを圧倒するような気迫に私はただ息を呑むしかなかった…………これが神業というのだろう)」

石切丸”「まあ、今の私が【刀剣男子】である以上は、武器としての私だからこれ以上のことはしちゃいけない決まりなんだけどね」

石切丸”「だから、今日から二人には今 私がやったのと同じことができるようになるように指導するから、これからよろしくね」ニッコリ

清原「は、はい。よろしくお願い申し上げます!」

長門β「わ、私もだ。これ以上のない修身の時間をいただけたことを神に感謝します」

石切丸”「うん。私も人としての肉体を持ったからには出来る限りのことはしてあげよう」


石切丸”「しかし、こういった出会いもあるんだねぇ」

清原「え?」

石切丸”「私を喚んでくれた【審神者】の“あまぎ”さんのことだよ」

石切丸”「彼女――――――というより、“天城”の名を戴く軍艦はみんな最期はことごとく次代を担うものを世に送り出しての解体だからね」

清原「確かに……。スループの天城にしろ、雲龍型空母にしろ、そして、天城型巡洋戦艦の「天城」にしろ――――――」

長門β「やはり、「天城」の名はだてではないということか。――――――意地でも轟沈しないところが「天城」らしいというか」フフッ


石切丸”「だから、本当は人間には艦娘と同じ名前をつけるべきではないんだ」


清原「…………!」

長門β「それはもしかして――――――」

石切丸”「うん。『名は体を表す』から同姓同名になる確率が高い名付けほど厄祓いが必要になってきやすいから」

石切丸”「特に、戦争の道具の中で知名度の高い軍艦の名前は絶対につけないほうがいい。――――――【この世界】なら尚更」

石切丸”「【この世界】の軍艦に対する恨み辛みは異常なまでに高まっているから、」

石切丸”「おそらく艦娘にあやかって名付けただけで、深海棲艦とやらの物の怪の祟りに間違いなく遭うだろうね」

清原「で、では! 深海棲艦の正体というのはやっぱり――――――」

石切丸”「提督のご子息はその点では大丈夫だけれど、ご子息の場合はもっと別な要因で影響を受けやすいから本当に気をつけないといけない」

清原「――――――!」

長門β「まさか――――――!」

石切丸”「うん。艦娘から生まれた子である以上は深海棲艦からの繊細だけど厄介なマイナスの波動が受けやすい体質になっているから、」

石切丸”「“あまぎ”さんが必死になって提督代行するのも頷けるね」

清原「何ですって!?」

石切丸”「そうでもしないと、あまりにも戦場に立つのには幼すぎるあの子の魂が穢れてしまうだろうからね」

石切丸”「――――――指揮を執る以前の問題だよ」

石切丸”「“あまぎ”さんが毎日 皇国の大神に必死にお祈りして守ってもらっているからこそ あの子は戦ってこれたんだね」

石切丸”「でなければ、周囲の期待や深海棲艦からの波動に毒されて、精神的に病んでしまった可能性が非常に高い」

石切丸”「そうなれば、あの子を中心に内部から皇国の運気が衰えて、確実に世界が滅亡していただろうからね」

長門β「そんな馬鹿なことが――――――?!」ガタッ

清原「………………」バッ

長門β「…………提督」

長門β「くっ」



清原「…………それじゃ、やっぱり人間と艦娘は交わるべきではなかったのですか?」


石切丸”「そこまでは【よそ】から来た私が答えていいことじゃないから言わないけど、」

石切丸”「でも、大丈夫だよ」

石切丸”「【ここ】に存在できたということは全て、八百万の神が全てお認めになったということだから」

石切丸”「一人で背負いすぎないことだよ。それが今のあなたにとって一番 重要なことだからね」

清原「…………わかりました」

清原「本当にありがとうございました」フゥ

石切丸”「どうか『天の時』を掴めるその日まで今は待ってください」

清原「はい!」

長門β「…………そうか、待つこともまた必要だったな(そう、陸奥を失って臥薪嘗胆を誓ったあの頃のように――――――!)」

石切丸”「では、時間もまだまだあることだし、稽古の続きをしようか」

長門β「はい! ぜひとも教えてください、先生!」

清原「お願いします!」

石切丸”「これは久々に武器としての本分に励めそうだ」ニッコリ


――――――清原提督と長門βは【真剣必殺】を修得した!













さあ、超番外編の第2弾は世の中 女体化ばかりが流行る中で新機軸の男性化で人気沸騰の【刀剣乱舞】こと【とうらぶ】であり、
こちらに対しては【城プロ】ほどに具体的な提案はないです。それだけに二次創作の内容も薄いです。

ただし、【とうらぶ】があまりにも大太刀+馬+盾+方陣のワンサイドゲームな気がして、脇差や短刀の立つ瀬がないことに問題を感じてはいた。
また、せっかく題材がタイムパトロールものなのだから、野戦マップだけで主人公たち【白刃隊】の戦い方がワンパターンなのもいただけないと思ったので、

――――――【刀剣男子】はぼちぼち増やしていけばそれでいいから。物凄く丁寧な作り込みで愛着の湧くキャラばかりでいいですね。

そんなわけで、余談レベルだが【とうらぶ】に対する新要素の提案をしておく。
では、プレゼンターが【とうらぶ】に対する提案の要点が次のようになる。

0,戦闘マップの背景をステージ毎に用意して欲しかったぁ…………(本能寺で野戦とかちょっと変だろう? ここは【艦これ】を見習って欲しい)
1,脇差や短刀が主力として活躍できる場面がない(【艦これ】とは違って燃費の概念やルート要因の概念がないために大太刀が絶対的に有利)
2,野戦マップしかないワンパターンなゲーム展開(【とうらぶ】では現在のところ 編成で進行ルートに影響を与えるようなことが一切ない)
3,ゲームの目的である過去改変を阻止する流れを強く意識したゲーム性を持たせたい(敵部隊名ぐらいで特にそれが際立っているわけでもない)


――――――これを解決するための提案が次となる!



新マップシステム:【ルート分岐】【屋内戦】【タイムパラドックスゲージ】

イ、【ルート分岐】
言うまでもなく、【刀剣男子】の編成でルート分岐が固定されるという意味だが、単純に種類によってルート分岐するのではなく、
本作の『過去改変を目論む【遡行軍】の時間犯罪を阻止する』という目的から、何が何でも過去改変実行部隊の元へと急行する意味で、
部隊全体の【打撃】【機動】【隠蔽】の3要素でルート短縮などが行われるようにするのが狙いの新システムである。

【打撃】……崩れ落ちた壁やそびえ立つ門を突き破るのに必要。なければ迂回するしかなくなる。
足りる場合……ルートのショートカットができる。
足りない場合…本来のルートで遠回りしなくてはならなくなる。

【機動】……言うまでもなく、過去改変を阻止するために逸早く過去改変実行部隊に追い付くために必要なもの。
足りる場合……早い段階でボス部隊と交戦することが可能。
足りない場合…遅い段階でボス部隊と交戦することになってしまう。

【隠蔽】……無駄な戦闘を避けて時間の短縮やタイムパラドックスの影響を減らすのに必要。
足りる場合……戦闘マスでの戦闘がなくなる。
足りない場合…戦闘回数が規定数のまま。

どれがどれだけ必要になってくるかは戦場ごとに違ってくるようになるが、これらの複合型も登場するようにしたい。
それ故に、【打撃】【機動】【隠蔽】という相反するステータスのバランス取りが肝腎となり、【大太刀】だけで何とかなるゲームデザインではなくなる。

要点:【ルート分岐】は部隊全体の【打撃】【機動】【隠蔽】の3ステータスに依存する。


ハ、【屋内戦】
野戦しかなかった戦闘マップについに【屋内戦】が追加され、【野戦】とは違って様々な制約がつけられ、【脇差】【短刀】【打刀】が活躍できるようになる。

0,【野戦】エリアと【屋内戦】エリアが1つのマップに設定され、そのどちらかに分類されているかで戦闘マスの戦闘が【野戦】と【屋内戦】にわかれる

1,【野戦】同様に【明かりが点いた状態(昼戦)】【明かりが点いてない状態(夜戦)】による能力変化が起こる

2,【屋内戦】では引き連れることができる【刀装】が制限されることが多い
→ たとえば、【屋内戦】では【馬】【軽騎兵】【重騎兵】が無効化される(【機動】が元から低い【刀剣男子】には痛い仕様)
→ また、スロット制限がかかり、【大太刀】などが3つ【刀装】を装備してもリストの1番上の【刀装】しか使えなくなるなど

3,【屋内戦】には【狭い】【広い】の判定があり、【狭い】場合は【太刀】【鎗】【薙刀】【大太刀】がいる場合は別ルートに固定となる。
→ これにより、【短刀】【脇差】【打刀】の独壇場になり、大型武器の面々は大きく迂回してボス部隊へ追撃するか、ハズレになる

4,【屋内戦】では【陣形】が選択できず、【乱戦】に固定される。
→【乱戦】:互いに【衝力】が上がり、【統率】が下がる = 互いに【刀装】が剥がれやすくなるサドンデスマッチ
→【偵察】の値が完全に無用になる


【屋内戦】を実装された場合のマップ攻略の流れ

進軍

|――→ 野戦マス →【昼戦】か【夜戦】か→【索敵】判定→【陣形】選択→戦闘

 ――→ 屋内戦マス →【広い】か【狭い】か(【太刀】以上が編成されているか)――→【昼戦】か【夜戦】か→【陣形:乱戦】→戦闘

                                                 |
                                                  →その屋内戦マスではないルートに変更

要点:【屋内戦】では【大型武器】【馬】【刀装】に大きな制限がかかり、【脇差】【短刀】【打刀】は影響を受けない


ロ、【タイムパラドックスゲージ/ゲージミッション】
いわゆる【戦力ゲージ】のことだが、これは敵側ではなくこちら側に課せられているものであり、
【ルート分岐】や【屋内戦】によってボス部隊までに辿り着くのに時間がかかったり、撤退を繰り返したりすることで、
【遡行軍】による過去改変の影響でゲージが減っていき、ゲージがなくなるとミッション失敗となってしまう。
その前に、ボス部隊である過去改変実行部隊に勝利することでミッション成功となり、いかにこのボス部隊と接敵できるかが肝となる
基本的にボス部隊はターン数によってマスを移動しており、ターン数を計算に入れて行動できればすぐに鉢合わせることが可能。

なお、【ゲージミッション】の挑戦は1週間に1回だけ挑戦でき、成功しても失敗しても終わったら次の週の更新まではできなくなる。
時間の経過によってゲージが回復したり、減ったりはなく、あくまでもそのマップに挑戦した時だけに作用するので落ち着いて挑戦できる。
また、撤退することによって一律ゲージが減少し、進行状況が遅い場合(ターン数が一定以上過ぎる)でもゲージが減少するが、
撤退によるゲージ減少とターン数オーバーによるゲージ減少と相談しての戦略的撤退もありで、
撤退した後はボス部隊の配置もリセットされるので、粘り強く最短ルートでボス部隊と交戦するまで撤退を繰り返すのも作戦である。

戦闘マスでの戦闘で1ターンの扱いであり、戦闘がない場合は0.5ターンと数えているので、いかに戦闘を回避するかも重要な要素となる。
その他にも【ルート分岐】による部隊の【打撃】【機動】【隠蔽】のバランス、【屋内戦】による建物内のショートカットなど、
多彩な攻略パターンが考えられるようにこれらの新要素を考えてみたので、ぜひとも【小型武器】の活躍の機会を願う人にはおすすめ。




登場予想【刀剣男子】
いったいどの程度の歴史的範囲を網羅するのかはわからないし、まだまだ敵である【遡行軍】のボス級も登場していないことだし、
これからどういった方向性と発展性を見せてくれるのかが楽しみである。――――――装甲悪鬼村正なら殺ってくれるはず!
ただ、さすがに神話の武器まで参戦したらバランス崩壊もいいところなので精々 人間が扱ったものという範囲が適当だと思っている。
そして、武器の種類の一覧はあれども、固有名や通称が与えられている武器の一覧というのは見つからず、
史実から出典が明らかで登場できる【刀剣男子】の範囲もかなり限られてくるものだと思われる。
しかしながら、元々の逸話からして信憑性に疑問が持たれている名武器も多いわけであり、公式がどう扱うかはこれからが楽しみである。
どうしても、海外の【刀剣男子】というものはプレゼンターではなかなか思いつかなかった。こういうところでも文化性というものを感じたものである。

日本の名武器
・大包平
・童子切
・鬼丸
・数珠丸
・大典太
・小烏丸
・三笠刀
・日本号
・雷切(立花道雪の刀:千鳥)
・雷切(竹俣慶綱の刀:一両筒)
・石田正宗
・籠釣瓶
・姫鶴一文字
・小竜景光
・波泳ぎ兼光
・八丁念仏団子刺し
・髭切
・柳生の大太刀
・紅葉狩兼光
・人間無骨
・皆朱槍


おまけ バカの一つ覚え -我が道、一を以って之を貫く-

――――――斎庭鎮守府 隣:金本邸


大泊「提督、何やら荷物が届いたぞ」

金本「うん? 予定にはなかったはずだが――――――」ゴロラゴロラ・・・

大泊「送り主はわからない」

大泊「だが、――――――まあ一度 見て欲しい」

金本「?」


スタスタスタ・・・


大泊「これが荷物だ、提督」

金本「何だこりゃ?」


金本「物干し竿か? だが、あまりにも太すぎないか、これ?」


ミロク「どうなさいました、提督?」

金本「見てくれよ。どこかの誰かさんが俺宛にこんなデカくてぶっといものを送りつけやがった」

大泊「どうする、提督? そろそろ【海上陸戦機動歩兵】での訓練の時間だが――――――」

金本「ちょうどいい。試しに【○四】で使ってみるか」

ミロク「あ」

ミロク「――――――御札?」



――――――訓練:稼働チェック


金本【○四】「よし、【パイルバンカー】の固定と重心の調整はいいな? 外すぞ?」

朝日「はい。データはすでにこちらに」

金本「よし、――――――【パイルバンカー】分離っと」パカッ、ストン

金本「うっへえ! 腕が軽くなったもんだな!」ブンブン!

金本「さて、今日は気まぐれにこの物干し竿を使ってみようと思う。【○四】の定期的な稼働チェックのためにな」

金本「よし、梱包を外せ。中身の太くて長いものをご開帳しろ」

速吸「はいはいっと」ビリビリッ

ミロク「あ…………(御札が解かれて――――――)」

速吸「ん? 何これ? ――――――手杵?」

ミロク「おや……、これは――――――」

金本「どうした? 早く中身を持ってこい。軽くダンベル代わりに使ってやるぜ」

速吸「提督、それがこれ、中身が――――――」


ミロク「――――――鎗です。それもとても大きな鎗です」


金本「はあ? ――――――『鎗』だって?」

ミロク「はい。手杵じゃなくてそれは鞘になってるんですよ」

朝日「よいっしょっと!」

大泊「なかなか重いな……」

金本「おうおう、ごくろうさん」

金本「ほうほう。これは2m越してるな。そして、鎗用の鞘なんて初めて見たぜ」

金本「ほう……、誰だか知らんが、変わった贈り物をしてくれるじゃないか」

金本「いいねぇ。俺も一端の槍使い(意味深)だし、ちょっとばかりこのパワードスーツで演武してみるか」



金本「はっ! ほっ、とぁ! せいやっ!」ザシュザシュ!


朝日「お見事です。パワードスーツ込みとはいえ、見事な槍捌きです」

速吸「藁で編んだ的ですから遠慮無くつっついてくださいねー!」

大泊「だが、やはり得物が長過ぎてこれでも扱いきれてないというのがありありと伝わるな」

金本「…………本当だな。さすがに身の丈を軽く超えてるものの扱いは初めてだからなかなかきついもんだぜ」ゼエゼエ

金本「ま、いい汗にはなったんじゃないか?」

金本「さて、こいつは部屋に飾っておくか。横に置くのは難しそうだから縦に飾っておこうか――――――」

パチパチパチ・・・・・・

一同「!」


一般人”「いやはや、荒削りとはいえ、この時代でここまで俺の鎗を扱える人間がいたことに驚いたよ」


金本「誰だ、お前は? ここは私有地だぞ。悪いことは言わん。さっさと消えろ、憲兵に突き出すぞ」

一般人”「いやいやいや、それ、俺の鎗だから――――――本体だから。俺は嫌でもオマケとしてついてきちゃうんだよ」

金本「は? 何 言ってんだこの、緑色のダサいジャージの冴えない一般人のお兄さん?」

一般人”「酷い言われようだな……。まあ、他の二本と比べたら俺なんて刺す以外に能がないからなぁ……」

ミロク「提督、ここは1つ試してみればいいと思いますよ」

金本「うん? そうか? まあ、持って逃げるにしてもこのデカさじゃ逃げるのも難しいだろうからな」

金本「よし、いいだろう。差出人も不明だったことだしな、これが本当にお前の持ち物ならそれなりに心得があるだろう」

金本「あそこにある的に向けて何かやってみろ。それで唸らせるものがあったらお前の所有物だって認めてやる」


金本「ほれ、受け取れ!(少なくとも20kg以上でかつ2m以上の生身の人間が持つには重すぎる代物だ。これを受け取れるわけが――――――)」ボイッ

一般人”「よっと」パシッ ――――――難なく片手で受け取る。

金本「なに!?」

一般人”「まあ、これが俺の本体だし、――――――あ、俺の名前は天下三名槍が一本、御手杵だ。これからよろしくな」

金本「は?!」

ミロク「やはり……、あの御札は――――――」

一般人”「鎗だった時はでかかったけど、今はこのなりだからなぁ。感覚 狂うぜ」


一般人/御手杵”「それじゃ、三名槍が1つ、御手杵! 行くぞォッ!」ギラッ


シュッ、ザシュ!

金本「――――――!」ピクッ

ミロク「…………見事」

大泊「は、早い!? 確かに2m以上はある鎗だが、一瞬で5m以上は離れているはずの的の頭部を刺した!?」

朝日「凄いですねぇ、最近の若い人って」パチパチパチ・・・

御手杵”「いやぁ、それほどでも~」

御手杵”「でかいのはいいんだけど、平和な時代になって参勤交代用に作られたあの重たい鞘だけは本当にやめて欲しいもんだぜ」

金本「何だ 今の早業は!?(一般人Aの分際で、まるで大したことがないかのように振る舞えるその余裕――――――)」


金本「おい、名は何という?」

御手杵”「ああ。御手杵さ。刀身を覆う鞘のデカさが手杵みたいに見えた迫力からそう呼ばれるようになった天下三名槍の1本さ」

金本「――――――まるで自分が槍そのものかのような喋り方だな(もしや、本当に――――――?)」

金本「……お前、槍の妖精か? 付喪神とかいうやつか?」


御手杵”「まあ、それに似たようなもんさ。【刀剣男子】っていう こうして肉体を持った生まれながらの戦士さ」


金本「――――――【刀剣男子】だと?(何その、日曜 朝のヒーロータイムに出てきそうな設定のカッチョイイの! ダサいネーミングだけど)」

金本「……けど、いいな(あれだ、【刀剣男子】を“カタナオノコ”とか“ソーディアン”って読むようにすればイケてるかも)」ボソッ

御手杵”「?」

金本「っと」コホン

金本「お前が本当に【刀剣男子】だとして――――――、」

金本「なぜここに来た? なぜここに送られてきた? 差出人は誰なんだ?」

御手杵”「おっと、そう一遍に訊かれても困るぜ? これでも武器を完璧に使いこなす能力があるってだけの人間なんだからさ」

金本「…………速吸、部屋を用意してくれ。客人だ」

速吸「わかりました」

金本「……はあ、今日の稼働チェックはこれで中止だ。訓練もな。というか、さっきので十分に確認はとれただろう」

金本「あとは、片付けておいてくれ」プシュー、ガコン (台車の上で【○四】解除)

朝日「はい。おおせのままに」

金本「よっと、――――――それじゃミロク、重巡を艤装込みで一人連れてきてくれ」

ミロク「お言葉ですが、その必要はないと思いますよ」

金本「……いや、念には念を入れるだけだ」

ミロク「わかりました、提督」

スタスタスタ・・・・・・

大泊「では、武器はこちらに。オレが持ちますから」

御手杵”「おお。ありがとな、お嬢さん。でも、重いぜ――――――あれま、人は見かけによらないもんだ」

金本「いや、お前のような一般人がいるか!」

御手杵”「やっぱり頼りなく見える? そうだよなぁ……、他の二本みたいに斬ったり、薙いだりはできないもんなぁ……」

金本「………………何なんだ、こいつは? 悪意はないようだが」ヤレヤレ

金本「(しかし、――――――【刀剣男子】か)」

金本「(過去に【艦娘】の他に【魔界】の【建姫】や【乱世】の【城娘】のような存在に触れているからにはその存在性を無視することはできんな)」

金本「(それに、俺の【○四】はさっきの一般人が見せてくれたみたいな一芸――――――突くだけが取り柄の仕様だからな)」

金本「(あれを見て『あの技を盗んでみたい』という衝動が沸々と湧いてきやがる…………)」

金本「(――――――久々なんじゃないか? こんなふうに何かの影響を受けてやる気になっているってのも)」

金本「(そうだな。昔はあんなふうな必殺技に憧れて できもしないのに特訓したことがあったっけ)」

金本「(何かあの冴えない感じ、昔の俺 そっくりだな――――――だから、こんなにも燃え滾るものがあるというのか)」

金本「(――――――昔の自分を思い出しているのか、俺は?)」

金本「(……そうだ。今の俺からいろんなものを差し引かれたら、俺もまたあんな感じの一般人に戻ってしまうのだろうか?)」


金本「………………」

御手杵「?」”クルッ

金本「あ」

御手杵”「……なあなあ、さっきから俺のこと、ずっと見ているようだけどさ?」

御手杵”「どうしたんだよ? 俺と提督……“提督”って呼べばいいんだよな、あの人?」

御手杵”「俺と提督はさっき会ったばかりの関係で、しかも互いに押し付けられてこれから毎日 顔を合わせることになるんだろうけどさ、」

金本「…………なに?(『毎日 顔を合わせる』――――――あの鎗は間違いなく俺宛てなのか? 鎗の妖精までオマケで?)」

御手杵”「これもさ、何かの縁なんだし、俺を喚んだ【審神者】がこうやって提督と引き会わせたからには何か意味があると思うんだ」

御手杵”「俺は本体を見ればわかる通り、デカくて迫力があるのはいいんだけど、逆に使い手を選ぶっていうか『武器としてはどうなんだ』って感じでさ」

御手杵”「だから、バカの一つ覚えのように俺には突くことしか能がない」

御手杵”「でもきっと、だからこそ俺の唯一の取り柄が活かせる何かがあるから俺はここにいるんだと思う」

金本「………………」

御手杵”「まあ、武器に眠れる能力を引き出して人の形を与える【審神者】でもない人間にこんなことを言っても珍糞漢糞かもしれないけど」

御手杵”「悪いね。俺も今の状況で何をどうすればいいのかわかんなくてさ」

御手杵”「でも、さっきの提督の鑓捌きを見ていて、提督が“現代の鎧武者”としての稽古をしているように見えたから、」

御手杵”「なら俺は、“戦国時代を生き抜いた武士”の現在に蘇った武芸を伝授すればいいのかと思っていたわけ」

御手杵”「ホント、自分で言うのも情けないとは思っているけど、俺は本当に刺すことに全てを賭けてきたわけだから」

御手杵”「蜻蛉切や日本号のようなことはできないけど、刺すこと・突くことに関してなら誰にも負けない自信がある」

金本「…………ほう?」

御手杵”「お、ようやく良い反応を見せてくれたよ」ホッ

御手杵”「ま、そんなわけだから、腐っても天下三名槍が一本:御手杵だから、――――――俺を思う存分に使いこなしてみない?」

金本「…………フッ(なるほど、誰の差金かは知らないが そういうこと――――――)」

金本「――――――乗った!」


――――――後に、金本提督は【真剣必殺】を習得しました。


超番外編2 神に捧げられしものたちの降臨  -祓いたまえ、清めたまえ- 完































































番外編 2014年から2015年へ

3,西村艦隊の立花

――――――佐世保鎮守府


ワーワー、ザワザワ、ワイワイ・・・!


加藤提督「何だ? 今日は何の騒ぎなんだ?」

小西提督「どうだっていいさ。近日中に俺は佐世保を離れて新戦略研究局の第1号支局の長となるわけだし」

加藤「………………」
          トレーニー
小西「まだ【調教済み深海棲艦】に抵抗があるのなら、新戦略研究局から去ればいい――――――そんなのはわかりきってることだよな、加藤提督?」

加藤「それはそうだが……」

小西「戦線を維持しているその他大勢の尊い労苦と犠牲に支えられて、この『新戦略』は軌道に乗せなくちゃいけないんだ」

小西「敵のことを理解せずして、どうして勝利を掴める? ――――――『敵を知り、己を知らねば、百戦危うく』だぞ?」

小西「正攻法で勝てる次元じゃないんだよ、もう」

小西「だからこそ、――――――『誰かがやらなくてはならない』それだけだ」


コツコツコツ・・・・・・



加藤「………………」

加藤「……さて、俺も行くか」


高橋海軍大将「おお、加藤提督じゃないか。元気にしていたか」


加藤「!」

加藤「――――――高橋提督! なんで佐世保に?」

高橋「お前の顔が久しぶりに見たくなった」

加藤「冗談はよせ」

高橋「ああ。冗談だ」

加藤「………………」


立花海軍大将「何をグズグズしている、高橋。早く来い」


加藤「――――――天下の海軍大将夫婦、揃い踏みか」

立花「違う、夫婦などではない! 断じて!」

高橋「まあ確かに。立花提督のお父上が勝手にそう決めただけで、互いに軍人になったと同時に婚約してすぐに別居だからな」

高橋「法的には夫婦なのだろうが、書類上の関係だ、そんなのは」

高橋「もっとも、俺は立花提督の花嫁衣装を見てみたいがな」シレッ

立花「なっ、なんだと!?」カア

高橋「はは、冗談だ」

立花「き、貴様ぁ……」

加藤「はいはい。夫婦漫才はその辺にして、せっかく一緒にいられるようになった嫁さんを大事にするんだぞ」ヤレヤレ

高橋「ああ」

立花「違うぞ! こいつが入婿なのだからな!」

立花「そして、――――――私は“嫁”ではない、“立花”だ!」

立花「行くぞ」プンスカ

高橋「ああ わかったわかった。機嫌を直してくれ、な?」


スタスタスタ・・・・・・



加藤「なるほどな。今日の人混みはあの二人が来ていたからなのか。道理で外部の人間や野次馬が多いと思った」

加藤「…………そう、あの二人こそ我が皇国が誇る海軍大将の立花夫婦」


――――――通称:“西村艦隊の立花夫婦”。


加藤「去年の2014年 秋イベントで実装された扶桑改二を旗艦とし、」

加藤「僚艦に妹:山城(後れて改二実装)、航巡:最上、駆逐艦:時雨、満潮、朝雲(イベント限定ドロップ)の編成で、」メメタァ

加藤「E-3を突破したとかいうとんでもない伝説を築き上げた――――――夫婦である」メメタァ

加藤「言っておくが、確かに夫婦ではあるが立花提督が公言していた通り、『別居』――――――それぞれ別々の鎮守府司令官として活動している」

加藤「そして、朝雲と山雲を除いた西村艦隊5隻+αで秋イベントの攻略にとりかかっていたところ、夫婦揃ってすぐにイベント限定艦の朝雲をドロップして、」メメタァ

加藤「そこに感じるものがあったのか、互いに連絡も取り合っていなかったのに二人揃って西村艦隊を完成させてE-3の攻略を成功させたという逸話である」メメタァ

加藤「『お前ら、(そこまで似た者同士なら)結婚しろ』――――――『あっ、結婚していた』ということで一躍 有名になった夫婦である」

加藤「今回のように二人揃っていること自体がここ最近の話なんだが、傍から見ると喧嘩は多いが互いのことを理解し合っている熟年夫婦にしか見えんな」

加藤「俺は元々 二人とはちょっとした縁でそれぞれ知り合ってはいたが、夫婦別姓で結婚相手のことなどまるで語ったことがないから、」

加藤「俺も秋イベント終了後の大本営発表における“西村艦隊の立花夫婦”のくだりを聞くまで知らなかったもんだ」

加藤「まあ、その後は別居状態が続いたこともあって互いに距離を掴みかねていたようだが、最近は並び称えられる台頭の関係に落ち着いたようだな」

加藤「そんなわけで、いろんな方面で話が持ちきりで――――――、」

加藤「まず、立花提督が女性で初の海軍大将で かつ宝塚の俳優のような男子のごとき凛々しさから女性から人気絶頂であるし、」

加藤「かくいう、あの高橋提督も一応 既婚者ではあるものの、持ち前の甘いマスクと立居振舞でこれまた女性から絶大な人気ときている」

加藤「そして、夫婦揃って実績抜群の海軍大将なのだから、まさしくリア充の極みだわなぁ……」

加藤「けど、そんな二人がどうして佐世保に――――――?」



佐世保鎮守府司令長官「よく来てくれた、――――――立花夫人に立花氏」

立花「その呼び方はやめていただこうか、司令長官。形式上そうであっても私はこの男が夫であるなどと認めたわけでもない」

立花「そして、女である前に私は立花であり、誇り高き皇国の将校なのだぞ。侮られては困るな」

司令長官「っと、これは失礼した、提督」

高橋「すみませんね、司令長官。彼女、負けず嫌いでしてね。笑ってすませばいいところでも噛み付くもんですから、おっかないでしょう?」

立花「おい」

司令長官「いやいや、むしろ鎌倉時代の烈女たちというものを立花提督の姿に見たものだから、頼もしく思っているよ」

司令長官「かくいう私も若輩者でね。この歳で佐世保の最高責任者なんかやっているもんだから、」

司令長官「きみたちのような若い世代の大将が台頭してくれると、私としても気が楽でありがたいよ」

立花「それで、わざわざ私たちを5大鎮守府(通称:漢字鯖)に招いたからには何か重要な案件や特命があってのことなのだろう?」メメタァ

司令長官「まあ、その通りだ。――――――単純に5大鎮守府の中で佐世保が一番近かったからここに呼んだんだけどね」

高橋「それで、どういった案件になるのでしょうか?」


司令長官「…………大本営直属の『司令部』のことは知っているかな?」


高橋「ああ……、各方面の有名人を招いて結成されたという――――――」

立花「兼愛交利の清原提督、成金の金本提督、朗利パークの園長に、葬儀屋の石田提督――――――、か」

立花「よくもまあ、これだけの実績・清濁 問わない面々を集めることができたものだな」

立花「さぞかし、居心地の悪そうな部隊であろうな」

司令長官「実際にそうだと思う。私も清原提督と金本提督は相性が悪いように思えるし、朗利提督と石田提督とでは鎮守府運営の在り方は正反対過ぎる」

立花「それで? その『司令部』がどうしたというのだ? 知っているかどうかだけを訊くために喚んだわけではあるまい?」

高橋「まさか――――――」

立花「ん?」

司令長官「そう、たぶんその『まさか』だと思うぞ、高橋提督」


――――――二人に『司令部』への転属命令が降りた。


立花「なんだと!?」

高橋「…………俺たちの他にも転属命令が降りた者は?」

司令長官「そこまではわからんな」

司令長官「ただなぁ…………、この『司令部』の面々を見るにぃ、そうだな…………」ウジウジ

立花「いったい何だというのだ、はっきり言え」

司令長官「わかった。これはたぶんなんだが――――――、」コホン

高橋「?」


――――――立花夫婦が犬猿の仲だからこそ、二人一緒の『司令部』への転属が決まったのではないかと。



立花「はぁ? 何をわからんことを……」

高橋「なるほど……、少しは読めてきたかな?」

立花「どういうことだ?」


高橋「競争させようということなのだろう。あえて対極的な立場の二人を組み入れることでな」


司令長官「…………なるほどな。確かにそう考えると納得のいく人選かもしれないな」

立花「たわけたことを」

司令長官「しかし、提督――――――」

立花「すでに立花は大将の位にまで昇り詰めた。その上があるとすれば残りは唯一無二の元帥号のみ。昇進など最初からあり得ん話だ」

立花「それでいったい何を競わせようと言うのだ? 立花は完全なる勝利のみを追求する」

立花「くだらん競争なんかに精を出すよりも、まず皇国に群がる害魚の駆除こそが最優先事項のはずだ」

高橋「そうだな。競争を煽って内紛の種を撒き散らす必要などあるまい」

立花「では、そういうことだ。このことは後で正式に大本営の方に抗議を申し入れる――――――」


高橋「そうか。立花提督が行かないのなら、俺は心置きなく『司令部』に行けるな」


立花「!?」

司令長官「おお、承諾してくれるか」

高橋「――――――俺は会ってみたい。『司令部』に選ばれた4提督がいかなるものなのかをこの目で確かめに」

高橋「きっと、俺を楽しませてくれる愉快な連中ばかりなのだろうな」

高橋「そして、あてつけのライバルがいないのなら、いつもどおり以上の何かが得られる毎日になるはずさ」

司令長官「ほう」

立花「おい、高橋!?」

高橋「ん? 何だ、立花提督? 帰るんじゃなかったのか?」

立花「そ、それはそうだが…………」

高橋「それじゃ、早速『司令部』と連絡を繋いで欲しい」

司令長官「よしよし。わかったぞ」

立花「………………」ワナワナ・・・



―――――― 一方、その頃、

――――――広島市 宇品:船舶司令部


剛田将校「これはこれは――――――、」

剛田「わざわざ【魔界】から本国に休暇のためにお戻りになったのかと思いましたぞ、」


――――――本多陸軍大将殿。


本多陸軍大将「うむ。去年の合同軍事演習以来であるな、剛田将校殿。息災であったな」

剛田「いやはや、あの後、【魔界】に帰ろうとしたら時空の歪みで【乱世】になんかに飛ばされて大変だったんですからね」

井伊陸軍少将「わかりませんね、本多大将殿」

井伊「どうして、現在の戦場の主役である海軍を縁の下から持ち上げている陸軍の中でも皇国に最も貢献していない零細部署になんか――――――」

剛田「ん?」ピクッ

本多「新入り、お前にとっての我が皇国の陸軍の戦場はどこにあると心得ている?」

井伊「そんなの内地での治安維持活動と、【魔界】での生産基地の確保でしょう?」

井伊「残念ながら、今の皇国にとって一番の敵は深い海の底からの怨霊ですからね。海のことは海軍にまかせる他ありませんよ」

井伊「そして、陸軍は旧大戦によって信頼を失って以来、こうして海軍の小姓の真似事をやらされているわけですよ」

剛田「見ない顔だな。それに、【魔界】に赴任している血気盛んな将兵とも違う趣き――――――憲兵上がりか?」

井伊「っと、これはこれは申し遅れました、船舶司令部の将校殿」

井伊「自分は井伊少将です。今日は本多大将殿に声をかけてもらい、同行させてもらった次第です」

本多「見ての通り、こいつは内地のひよっこでな。戦場は未経験なのだ」

剛田「なるほど。だが、大将殿が目をかけるぐらいにただ単なる英才でもないようだな」

井伊「まるで、船舶司令部でも何か皇国のために仕事をしてきていたような物言いじゃないですかね、それは」

本多「ああ。内地勤務だった新入りは知らないのだろうが、」


本多「この剛田将校殿は過去に艦娘たちと一緒に出撃して北方棲姫や駆逐棲姫を自らの手で討ち取ってきているのだ」


井伊「は」

剛田「ま、資源王さまさまだったな。カネに糸目を付けない財力でまかなわれた強力な装備のおかげですよ」

本多「我も【海上陸戦機動歩兵】を試してみたのだが、いや、なかなかに素晴らしい仕上がりであったな」

本多「難を言えば、使える強力な武器がまだ少ないということか? それにこれからの歩兵戦力の中心になるにしても実戦投入までの養成に手間取っておる」

剛田「そう言って、1日で乗りこなした本多大将殿はまっこと人間離れしてますよ」

井伊「な、何を言っているのか全然わかりませんよ……、お二人さん?」アセタラー

本多「わからんだろうな。――――――だから、新入り、お前をここに連れてきた」


本多「お前には我と一緒にこの船舶司令部に来てもらいたい」



井伊「はぁ?」

剛田「ちょっと待ってください、大将殿?」

剛田「内地で少将にまでなった人間を船舶司令部に入れるのは――――――」

本多「わかっている。我は【魔界】における拠点整備を任された身ではあるが、同時に【○二】陸戦部隊の隊長でもある」

本多「そんなわけで、この新入りを【魔界】で鍛え上げてからまたここに来ることにしよう」

井伊「ちょっと、何 勝手に話を進めているんですか? ねえ?」

本多「新入り、内地において数々の武働きは耳にしている」

本多「それでついた渾名が――――――、」


――――――“井伊の赤鬼”ともな。


井伊「それは当然のことをしてまでであって――――――」アセアセ

剛田「聞いたことがあるぞ」

剛田「若輩ながら、知勇兼備の綱紀粛正の鬼であり、高い位につきながら自ら現場に乗り込んで国内の様々な難事の解決に力を振るったという――――――」

本多「それぐらいの気概と根性があるのであれば、本物の戦場でも役に立つだろう」

剛田「なるほど。これまた強力な助っ人がきたものだな」

剛田「これから頼りにさせてもらうぞ、“井伊の赤鬼”さん?」ニヤリ

井伊「……はい?」

剛田「まあ、立ち話はここまでにして――――――、」


――――――ようこそ、船舶司令部へ。これから磯臭い陸軍野郎 御用達の潮溜まりとなる場所です。


Next:第9話 海軍総隊を結成せよ! に続く!












ここから先はまた物語風プレゼントはまるで関係ない超番外編となります!

注意:本来のプレゼンとはまったく無関係のこの二次創作独自の世界観と筆者の趣味で交じり合った独自展開となります。
→ よって、プレゼンの提案内容や本文にのみ関心がある方には蛇足でしかないので読み飛ばしてもらってかまわない。
→ あくまでも、詳細な設定が公式でぼかされている【艦隊これくしょん】の世界観に対する素人による一意見でしかない。
→ また、『解体すれば普通の女の子になる』という説には筆者は真っ向から反対しているので“艦娘∈人間”の考え方をしている方には目の毒な内容です


超番外編はその名の通り“超番外編”であり、【艦これ】の二次創作であるこの物語風プレゼンの趣旨に反する、
この世界観独自の拡がりを描いた三次創作に近いものとなっております(二次創作の中で自ら二次創作している扱いである)。
これまでの物語風プレゼンに期待している方々は >>24 同様にスクロールバーを使って飛ばしていってください。

超番外編は次のレスからスタートし 終わったら直後に白紙を挟むので白紙を目印にスクロールをして、どうぞ。




















超番外編1 浪速のことは 夢のまた夢  -この命 果てても私が御守りします!- 第3章

――――――【乱世】、【城娘】と【兜型生命体】が相争う世界

――――――寛永時代


石田”「さて、肥前国唐津(佐賀県)から南進していくと、肥前国島原半島(長崎県)があり、更に南に海を渡って行くと肥後国天草郡(熊本県)がある」

石田”「寛永14年10月25日――――――1637年12月11日、【島原・天草一揆】が勃発する」

石田”「唐津藩藩主である寺澤志摩守は自領である唐津においては“志摩様”と親しまれている名君であったようだが、」

石田”「関ヶ原の戦いの後に、小西行長の旧領であった肥後国天草郡の旧領を飛び地として貰い受けてもいた」

石田”「そして、残念なことに、志摩守は天草の石高を見誤り、2倍の重税を天草に課すことになり、反乱の種が燻ることになった」

石田”「元々、島原も天草も国主がキリシタンであったことから伝統的にキリシタンが多い地域であり、」

石田”「【天草一揆】の指導者とされた天草四郎時貞は小西行長の家臣の子孫という話があるように、旧小西家臣団の存在もあった」

石田”「一方で、島原に関して言えば、――――――もはや言い逃れができないような苛政が敷かれていた」

石田”「島原藩主である松倉重政・勝家親子は苛政と搾取を行い、実質的な【島原の乱】の主因を作っていたのだ」

石田”「島原での蜂起があって、天草一揆も誘発されたのだからその罪は重く、」

石田”「【乱】の前にすでに重政はこの世から亡くなっており、子の勝家が藩主となっていたのだが、」

石田”「【乱】の元凶ということで斬首されている。――――――藩主に言い渡される処罰などではなく、大罪人への実刑が下されたのである」

石田”「しかしながら、この松倉重政という人物――――――、」

石田”「元々、肥前国島原藩の藩主になる以前は、大和(奈良県)の大名:筒井順慶の島左近と並ぶ名将の松倉重信の子であり、」

石田”「関ヶ原の戦いの後、大和国五条藩主となって辣腕をふるい、“豊後様”として今も慕われている名君だったらしい」

石田”「その後、大坂の陣の後にキリシタン大名:有馬晴信の旧領である島原藩に入ったというわけだが――――――、」

石田”「何だかこうまとめてみると、【島原・天草一揆】の元凶である“豊後様”と“志摩様”――――――何かと共通点があるように見える」

石田”「金木青年の娯楽品と化した電子辞書から得た情報をまとめるとこうなる」


     表 【島原・天草一揆】(寛永14年:1637年)における比較
――――――――――――――――――――――――――――――
項目|       島原        |        天草       |
――――――――――――――――――――――――――――――

所在| 肥前国島原半島(長崎県) |  肥後国天草諸島(熊本県) |
旧領|      有馬晴信      |      小西行長       |
元凶|  松倉 重政(1630年死没) |  寺沢 広高(1633年死没)  |
実績|      “豊後様”      |      “志摩様”       |
藩主|  松倉 勝家(1597年生誕) |  寺沢 堅高(1609年生誕)  |
処遇|元凶として処分→藩主、斬首|天草の所領没収→藩主、自害|


・【乱】の元凶である初代藩主たちは関ヶ原で功を上げた実力派たちでもあり、しっかりとした行政業績がある。
・松倉 重政は大和国五条藩 発展の基礎を作り上げて、大坂の陣の功で島原藩に移封となった。
・寺沢 広高は関ヶ原の戦いの功で小西行長の旧領である天草を飛び地として得ることになった。




――――――肥後国 天草下島 北西の陸繋島 富岡半島:富岡城


ザッザッザッ・・・

金木「へえ、確かに陸路がこの砂州しかない陸繋島ってわけなんだから、一揆勢がこの城を攻め落とすのは絶対に無理だろうな」

金木「まさか船を奪って攻め込んでくるようにも思えないし、ここを攻めるぐらいなら長崎を襲ったほうが金品があるだろうしさ」

石田”「逆に言えば、陸路からの救援は絶望的とも言えるが、連携さえとれていれば石山本願寺のように持久戦に持ち込めることだろう」

石田”「だが――――――」

金木「そうですね」


――――――【城娘】富岡城が存在してませんね。


石田”「…………どういうことだと思う?」

金木「わかりませんよ。実物はここにあって、名のある城には絶対【城娘】が宿るはず……」

金木「それで、“金鯱”の名古屋城だとかだって現地に行けば会えるって話なんだし…………」

石田”「【城娘】として生まれるために絶対必要な何かがあるということなのか?」

金木「わかりませんって。【築城】したら出てくるのかもしれませんけれど、少なくともこの富岡城からは【城娘】の気配はまったく…………」

金木「けれども、石田少将のおかげで藩政の見直しが進んで何とか【天草一揆】の方は解決しそうですよね」

石田”「まだ安心はできないぞ。かつてこの地域周辺の改易された大名に仕えていた浪人たちが燻り続けることに変わりないのだからな」

金木「でも、【乱】が起こって無関係の人たちまで死ぬよりはマシってことですよね?」

石田”「そうだ。時代に適合できなかったクズ共には最低限の人権の保障をする程度が健全な施策というものだ」

金木「かわいそうだけど、俺たちが一人残らず養っていけるってわけでもないから」

金木「――――――『全てを救う』だなんて絵空事ですよね」

石田”「そもそも『全てを救う』とは言うが、その『全て』とはどういう意味なのだ?」

金木「え」

石田”「お前は同じ人間を何人も殺してきたような万死に値する人間すら同じ人間として救おうという考えを持っているのか?」

金木「………………」

石田”「――――――『救いたい中で救える命を救う』それだけでいいのだ」

石田”「『全て』なんて大それたことを言うもんじゃない。だから、狂うのだ」

石田”「頭の足りないクズ共はそれを理解していない。できもしないことを言っておいて、それで実現できなくて自滅するのだ」

石田”「――――――『全か無か』ではない」

石田”「――――――『有か無か』だ。目指すべき事柄というのは」

石田”「だから、気負う必要なんてない。自分に出来るだけのことをやって、それ相応の成果を得ればそれでいいのだ」

金木「…………はい。わかりましたよ、石田少将」

――――――――――――

―――――――――

――――――

―――


――――――肥前国 唐津 二里松原:マンション城(【城主】様の本拠)


二条城「ようやくお帰りですか、殿?」

志摩守「ずいぶんと遅い朝駆けでしたな、【城主】様?」

唐津城「呼んでおいて遅刻とは大したご身分ですな?」ジロッ

金木「これは失礼しました」

金木「けど、こればかりは譲れない用事がありましてね?」

志摩守「?」


――――――潰してきたぜ、【兜】共の本拠地をな!


唐津城「なにっ、それは真か!?」

金木「ああ。石田少将と佐和山城が命を賭してやってくれた」

志摩守「――――――『石田少将と佐和山城』の二人」

金木「確か場所は、――――――何て島だったっけ? 唐津の北にあったあの島ぁ……?」

二条城「――――――神集島でしたね」

志摩守「…………『神集島』!」

志摩守「そうか、確かあの辺りは横穴式古墳群があったな」

金木「そうそう、神集島 神集島! その神集島の奥深くに遺跡があってそこを本拠地にしていたようだった」

金木「すぐに兵を出して制圧してください。あの島には不穏分子がわんさかといるようですから」

志摩守「…………あいわかった」

金木「これでこれまで唐津を襲ってきた【兜】の襲撃は止むでしょう」

志摩守「そうか。これは褒美をとらせないといかんな」

志摩守「しばし待たれよ。神集島に兵を回すための文を書く。筆記物を――――――」

二条城「すでにここに」

志摩守「おお、そうか」

金木「やっぱり二条城は気が利くな」

二条城「ええ。こんな良い女をほっとくなんて殿はイケズな人よね~」

金木「いいぃ……」ゾゾゾ・・・




サラサラサラ・・・・・・


志摩守「すぐにこれを城に届けてくれ」

唐津城「承知いたしました!」バッ

タッタッタッタッタ・・・

志摩守「しかし、………………そうか」

金木「催促するようで悪いんだけどさ、志摩様? 早速なんだけど――――――」

志摩守「ああ そうだったな。褒美は何がよいかな、【城主】様?」


金木「天草の石高を改めてください」


志摩守「……なに?」

二条城「………………!」

金木「ですから、志摩様が預かり持つ飛び地の天草領の石高が適切かどうかを見直してください」

志摩守「…………すないスケの入れ知恵か?」

志摩守「しかし、なぜ天草なのだ? まさか天草を盗ろうと考えているのではないだろうな?」ジロッ


金木「そんなわけありますかっ!」ドン!


志摩守「…………!」

金木「あんた、この唐津では“志摩様”って慕われているじゃないですか」

金木「朝早くに起きて政務をやって日々の鍛錬をやって、唐津の人たちが今日も元気にやっているのかを見て回って!」

金木「尊敬するよ! たかだか【城娘】を従えているだけで【城主】様と崇められている素寒貧の俺なんかよりもずっとずっと立派!」

金木「けど、そんなあんたでも自分の領地である天草でも“志摩様”と慕ってくれているか確かめたことがありますか?」

金木「天草のキリシタンを弾圧するのは別にいいですけど、それとは無関係な人まで苦しんでいるということを知らないんですか!?」

金木「あんたは確かに唐津を治めるのにふさわしい立派な領主――――――尊敬してるさ、ホント」

金木「けど、飛び地とはいえ、同じく天草の領主でもあるのに、唐津と同じように扱わずに圧政を敷いてるだなんて領主の風上にも置けない!」

志摩守「む」

二条城「…………殿」

金木「じいさん、あんた あと10年も生きられる自信はある? 俺より歳下の息子さんが立派になるのを見届ける自信はあるの?」

金木「初代将軍様だって70ぐらいで亡くなっているのに、じいさんはそれより長生きできる自信がありますか?」

志摩守「…………言わせておけば」ムッ

金木「…………!」アセタラー

金木「ぅえい! 確かにね、これは石田少将が言い出したことなんだけどさ、」

金木「――――――俺はね! 今日まで良くしてくれた志摩様への恩返しと親切心で『天草の石高の見直しをして』って言ってるわけ!」

金木「他には何も要らないよ。俺は別に領主になることなんか興味ない。自分の身の丈にあった幸せが一番だと思ってるから」

金木「けどこれは、今すぐにでも言っておかないと、明日にはじいさん ポックリ逝って天草の人たちを救うだなんてことできなくなるかもしれないんだよ?」

金木「俺は別に余所者として知らん顔できるけど、俺より歳下の残された息子さんがしっかりと唐津と天草の両方を治められるか――――――」

金木「いや、改易されるかどうかの瀬戸際にあることを知れよ、志摩様!」

志摩守「………………」


金木「………………フゥ」アセタラー

二条城「……ここに唐津城がいなくてよかったですね、殿」

金木「でも、言わなくちゃいけないことなんだ! 志摩様だってキリシタンは憎しだろうけど、無辜の領民まで苦しめることは望んでないでしょう?」

金木「だから、天草の石高の見直しを――――――」


志摩守「 も う よ い 」


金木「…………!」ビクッ

二条城「………………!」

志摩守「若造が。儂に物申そうとは10年早いと知れぃ!」

金木「で、でも――――――!(ダメだ、ここで引き下がっちゃいけない! 交渉の主導権は常に【城主】である俺が握ってるんだ!)」

志摩守「だが…………、」

金木「?」


志摩守「よくぞ言ってくれた。儂も家督を継いだばかりの堅高の将来を案じていたことだし、これはまさしく天からの啓示なのやもしれんな」


金木「!」

志摩守「わかった。その願いを褒美として聞き入れよう」

二条城「…………殿!」パァ

金木「ああ!」パァ

志摩守「確かに天草のことに関しては儂も不安があったのだ」

志摩守「生まれながらの将軍様がキリシタンの弾圧を強めるようにも言ってきたこともあってな」

金木「『生まれながらの将軍』――――――(そっか、そうだったな。今の治世って孫の家光の治世だったっけ)」

志摩守「だが確かに儂は、決して1日足りとも領民の幸せや豊かな生活を願わない日はなかった」

志摩守「江戸から帰れば国中の視察を怠らず、民草と同じものを食べ、それで蓄えた財で優秀な者たちを召し抱えるために励んできたものだ」

志摩守「そうだなぁ……、あれからどれくらいの時が流れたのであろう?」

志摩守「生まれ故郷である尾張の地で旧友と共に立身出世を夢見て木下藤吉郎秀吉に仕えてから数多の戦場を駆け抜け、」

志摩守「ようやく天下は木下藤吉郎――――――否、太閤殿下の下に収まったかと思えば、」

志摩守「それは脆くも豊臣秀吉公の死と共に将軍様の手に天下が渡った――――――」

志摩守「かつての主君を失って将軍様にお仕えするようになって、確かに秀吉公に仕えていた頃よりは扱いは良くないが、」

志摩守「それでも、立身出世で夢見た儂自身の理想の国となるように努めてきたのだ」

志摩守「ならば、最後の最後に儂がやるべきことは決まったな」

志摩守「今度は唐津だけではなく、天草のこともしっかりと見ておかなければならんな」

志摩守「しかし、【城主】様にこれを言わせたのはやはり石田治部の影法師――――――すないスケ様というわけか」

志摩守「思えば儂も石田治部に反感を抱いてはいたものの、彼の者のやり方を一番学び取っていたかもしれぬな」


―――

――――――

―――――――――

――――――――――――


金木「しっかし、志摩様がまじめに天草の統治の見直しをしてくれるようにはなったけれども、」

金木「それにしては、この天草を治めるのはずいぶんと骨を折りませんかね? あっちこっちに島がたくさんあってまぁ」

金木「それに、この富岡城だって確かに天然の要害に守られた堅城だけれど、交通の要所というわけでもないし、いろいろ不便じゃないかな?」

石田”「ああ。だから最終的には、この天草――――――後の富岡藩は天領として幕府の直轄地となって返還されることになるのだ」

石田”「だから、これからが最も大変なのだがな」

金木「…………検地のやり直しの件がうまくいけばいいんだけど」

石田”「――――――『前例がない』という理由だけで実施が先延ばしされ、」

石田”「最終的には代官の鈴木重成が切腹で以って訴え、幕府を驚愕させた」

石田”「そして、亡き鈴木重成の息子も再三の訴えを以ってようやく認めさせたぐらいなのだ」

石田”「一筋縄ではいかないな。――――――妄りに先人たちが守ってきた規則を破らずにいるのは美徳ではあるがな」

石田”「だが、志摩守が直接 動いたとあれば、状況は少しばかりは好転するだろうな」

金木「ええ。信じましょう。誰だって【乱】に遭いたくはないですからね」

金木「ただ、幕府の直轄地になることを考えると、やはり――――――」

石田”「そうだな。そこが志摩守の限界となるやもしれん」

金木「――――――天草を手放すことは避けられないわけですか」

石田”「それでも、あの未熟者の息子の代に言い渡されるのと、志摩守が自ら裁かれるのでは話が違う」

石田”「それがあの老人の最期の仕事になるだろう」

金木「…………なんてこったい」

金木「――――――詰みじゃないですか、これって! 将来的には二つに一つでどっちみち損するしかないじゃないですか!」

石田”「それでも、切るべきところで切って被害を最小限にして組織を立て直す改革を行う非情さも時として必要となってくる」

石田”「平和な時代になれば、膨れ上がった軍備は財政を圧迫し、やがては軍縮へと至り、その過程で数多くの軍関係者からの失業者を生み出すことになる」

金木「え」

石田”「平和への礎として最後の犠牲になるべきなのは、平和を掴みとった勇士である軍人の最後の務めでもあるのだ」

金木「…………それは、そうだったのか」

石田”「つまり、戦うことでしか自分を表現できないような戦馬鹿は戦場で死なせてやったほうがよっぽど幸せというものだ」

石田”「いいか? だからこそ、軍人には掴みとった平和を確かなものにするための軍事分野以外の能力開発にも力を入れねばならんのだ」

石田”「平和になった時、その平和を享受するための準備をしなければ、」

石田”「かの豊臣政権のように天下統一を果たしたものの、膨れ上がった軍備の収め所を見失い、やがては大陸制覇の無謀へと向かうことになる」

石田”「よくよく考えておくことだな、金木」

石田”「わかりやすく言えば『破壊を司る軍人としての一面の他にその対極の創造者として平和と繁栄を創り出す一面も兼ね備えておくと安泰』ということだ」

金木「…………『破壊と創造』か(そうだよな。平和の時代になったらみんなが力を合わせて今度は荒れた国土を立て直す大きな責務があるよな)」



――――――【城主】の居城:マンション城の外


石田”「しかし、本当にこうも簡単に移築できるものなのだな、このマンション」

金木「俺も【関ヶ原】やら【稲生】やら、いろんな時代へ飛ばされて、その度に無一文から始まるんじゃないかと思ってはいたんだけど、」

金木「この本城はどうやら神々の眷属である【神娘】の力でそっくりそのまま持ってくることができるらしい……」

石田”「…………時代を越えて本城を持ってくることができるのなら、元の時代に帰ることもできるのではないか?」

金木「俺も【関ヶ原】で出会った人たちとの別れをすませてないし――――――、というか一度たりとも行く先々で真っ当なお別れをしたことがなくって、」

金木「いつもいつも【兜】との決戦が一段落して一息ついた直後なもんだから、何度もさっきまでいた場所に戻すように強く求めたことがあるんだ」

金木「けど、これがね? 【神娘】って神々の眷属とは言っても――――――、」

金木「その実態は俺みたいな俗物にでも畏まることなく気軽に触れることができる末端に限りなく近い存在らしいのよ、これまでの経験から言って」

金木「どうも、【神娘】にも格のようなものがあって、俺のような【城娘】を扱える【城主】を手助けをしながら鍛え上げるのが目的らしくてさ?」

石田”「つまり――――――?」

金木「結論を言えば、千狐ややくもは【神娘】の中でもかなり格が低い存在のようだから格の高い【神娘】に意見具申すらできないようで」

金木「だから、腐っても神々の眷属だから時渡りは不可能ではないようだけど、それをこちら側から要請するのは一切できないっぽい」


石田”「つまり、【城主】としての運命を受け容れて【兜型生命体】との戦いに生涯を捧げていくことをお前は義務付けられているわけなのか?」


金木「たぶん そうじゃないかって話…………」

金木「石田少将を元の世界に送り返すための方法を千狐ややくもにきつく言いつけて探らせてみたところ、そんなような話が出てきて」

石田”「………………」

金木「俺はまあ、石田少将が来る前にすでに【乱世】で生き抜く決意が定着してきて、故郷のことも忘れられるようになってはいたんだ」

金木「けど それでも、どうして延々とタイムスリップさせられ続けて【兜】たちと戦い続けなくちゃいけないのかはわからないままで、」

金木「俺としても悶々とさせられ続けていたんだよ」
               コタエ
金木「けど、ようやくその理由が――――――【城主】としての使命ってな感じのものがわかってきたような気がする」

石田”「…………そうか(――――――まだまだ未熟ではあるが、俺から言わせれば いい面構えになってきたな)」

金木「でも、それならなんで石田少将は【この時代】に――――――いや、【俺のところ】に来たの?」

石田”「さあな。これも皇国の神々の何らかの思し召しというのなら辻褄が合うのではないか?」

金木「…………最初の【関ヶ原】で出会った金本提督のおかげで俺は【乱世】を生き抜く決心ができた。そしたら、いなくなっていた」


金木「なら、俺が石田少将から大切な何かを得ることができれば、石田少将も元の世界に帰ることができるのかな?」


石田”「…………さあな」

金木「でも、石田少将のおかげでようやくこの寛永時代でなすべきことが見つかったんだ」

金木「【島原・天草一揆】を絶対に止めてやる! これまでだって【稲生】で兄弟喧嘩の仲裁とかやってきたんだから!」グッ


石田”「――――――『【稲生】で兄弟喧嘩を仲裁】』」


石田”「(『【稲生】の兄弟喧嘩』について、志摩守 曰く『大殿だった織田信長が弟:織田信行を破って尾張統一を果たした戦い』だと答えた)」

石田”「(すると、――――――どういうことなのだ、これは?)」

石田”「(もし【稲生の戦い】で仲裁ができたというのであれば、織田信長の尾張統一はままならなかったはずだ)」

石田”「(そうなれば、歴史は大きく変わった可能性だってある)」

石田”「(――――――桶狭間の戦いにも大きな影響を残すはずなのだから)」



伊賀上野城「…………殿」シュタ


金木「おお! 伊賀忍!(ナイス おっぱい! そして、キワドイ――――――)」ウッホホー

石田”「貴様が姿を見せたということは――――――」


伊賀上野城「――――――敵です。【兜】が現れました」


伊賀上野城「敵の狙いは志摩守にあると思われます。今、唐津城や殿が預けた城娘が交戦しております」

金木「ちっ、唐津とは違って天草は諸島だから城娘の配置も難しいし、本拠の富岡城は北西の端にあるからそっから指揮を執ることもできやしない」

金木「自領を守るのに、なんで【遠征戦】のような手間暇が掛かっちまうんだよ!?」

石田”「だからこそ、管理が難しく幕府の直轄地として返還されることになったのだ」

金木「じゃあ そんなわけで、――――――石田少将! マンション警備を頼みます! 俺は必要な分の人形と地図を持って出陣しますので!」

石田”「ああ。まかせておけ。いってこい」

伊賀上野城「では、殿。お掴まりください」 ――――――おんぶ!

金木「ああ!(うっへへ~い! これは緊急事態だからしかたなくおっぱいに触れているのであって、しかたなくなのだ~!)」モニョモニョ

シュッ!

石田”「人一人を背負ってマンションのペントハウスまで一飛びか……」

石田”「やはり白兵戦能力においては圧倒的に【城娘】が上回っているな、【艦娘】よりも」

石田”「しかし、それよりも上回っているのが【大将兜】と言うことか…………強力な個体ほど数は少ないようだがな」


※【御城プロジェクト】は開発:DMMゲームです。【艦隊これくしょん】開発:角川ゲームスとはまったく関係ありません。
→ ただし、【艦これ】を雛形にして生まれたのは疑いようがないので二次創作としては楽しく使わせてもらいます。













というわけで再開いたしました、――――――石田司令の【乱世】戦記。

【城プロ】の二次創作――――――というより、【艦これ】を雛形にして世に現れ出た擬人化ゲームの二次創作はあんまり書かれていないことに、
あらためて【艦これ】という元祖擬人化ブラゲーとしての圧倒的な貫禄というものを感じた次第です。当時の勢いを思えば舌を巻かざるを得ない。
やはり、直接的な能力の大部分が見事に反映されている【艦娘】の完成度に比べて、
【城】【工具】【刀剣】では擬人化しても人間的共通点の共通認識が得づらく、キャライメージが定着しづらいのが難点なのであろう。

しかしながら、いずれにしてもプレゼンターが考える物語風プレゼンの提案内容に説得力や現実味を帯びさせる題材としては大いに役立っており、
この【城プロ】にしても、本当に偶然であったが、石田司令が担当する【深海棲艦運用システム】や趣里鎮守府の面々との繋がりや背景を描くのに最適であった。
【島原】という舞台設定にしても、石田司令のモデルであるツンデレにしても、正規空母:飛龍のキャラクター性にしても、
上手い具合に噛み合っていたので、その真髄をこれからお見せしようと思うので、それなりに期待して読み進めてみてください。


もっとも、投稿時間が平日の午前という人が寄り付かない時間にsage進行して黙々と細々と投稿しているこの二次創作に注目している人間は少ないだろうが。


けど、めげずにいつも通りに、ここでは【城プロ】に対するちょっとした提案内容をここで載せさせてもらいます。


この【城プロ】の二次創作においては――――――

【城プロ】にはシナリオが存在しており、筆者はその流れに忠実に従って二次創作をしていくつもりである。
つまり、書かれていない部分に関しては好きに書くし、あくまで“流れ”に忠実なのであって厳密にテキストまで再現するつもりはない。
【不気味な穴】によって各時代へと一方的に飛ばされているために、【元いた時代(=一度クリアしたステージ)】には戻れない仕様となっており、
そのために効率良くレベリングができず、【近代改築】に必要なレベルやレベルアップのペースに関してはかなり緩めに描写しているのでご容赦ください。

また、【城プロ】には【艦これ】における【演習】に相当する要素がなく、他の【城主】とのやりとりすら感じられないために、
プロローグでいきなり二日前に現れたという【兜】との戦いに巻き込まれて有無いわさず異なる時代に飛ばされて、
常に未来人としての孤独と向き合わなければならない【城主】の厳しい現実が根底に描かれることになった(筆者にはそういう風にしか描けなかった)。

【城娘】は不特定多数 同時に存在することができるのは【艦娘】と同様の認識である。
【城娘】は「武装化」と「巨大化」の2つの変身を使い分けることができる設定であり、
別に「巨大化」しなくてもプリキュアみたいに「武装化」するだけで人並み外れた白兵戦能力を発揮できるが、
「巨大化」して【兜型生命体】を蹴散らすように戦っているために戦術や立ち回りに関しては大味なところがある。
【城娘】は実際に存在する城郭の付喪神に近い扱いで信仰を受けており、現存する状態で【城娘】が生まれた場合は城主にとって一種のステータスとなる。
一方で、廃城になっても人々の記憶から消えない限りはどこかしらで存在し続け、立地に縛られず彷徨いだす。これと遭遇して【ドロップ】になる。
しかしながら、時代に先んじて【近代改築】したり、依代を用意してその場に召喚させる【築城】、【城娘】の遠隔展開などができたりするのは、
【神娘】に見出された【城主】だけであり、そのために【兜】に対抗するために【城主】を歓待する風潮が根付くことになった。
しかしながら、【城娘】との日常にはとある仕掛けが施されており、それに関してはとあるソーシャルゲームと似通ったものとなっている。



提案内容その2:【救出戦】…………【城プロ】初のソーシャル要素

・【救出戦】概要
あらかじめ【城娘】が1~3体配置されており、そこを襲う【兜】を撃退すればクリアとなる、インターフェース:【合戦】に新たに追加される新システム。
【捕縛】のリスク無し、出陣した【城娘】全員が全回復なので、実質的に【艦これ】における【演習】に相当するステージとなる。

イ、戦闘に関する内容

1,【他の城主(=以下、同盟国)】がセットしている【所領】が【合戦場】に選ばれる
→ つまり、【同盟国】の【籠城戦】に加勢する形であることを意図している(第3所領まで解放されている場合は自動3択となる)。

2,【本城】は【同盟国】の第1部隊の【本城】が選ばれ、同じ部隊の2番目と3番目の【城娘】が護衛に選ばれて配置される
→【同盟国】の【城娘】の配置コストは一切かからない(次いでに、【同盟国】本人にもコストの支払いが一切生じない)。

3,【本城】以外に配置されている【同盟国】の【城娘】は任意で【撤退】や【必殺技】を発動させることができる
→【本丸】に関しては動かせないので、地形が合ってなかったり、練度や装備が足りてなかったりする場合はぐっと難易度が上昇する。
→ それ故に、自軍の【城娘】は3~5体までしか初期配置できないが、【同盟国】が強力な編成をしていればその分 コストがかからずにすむ。

4,敗北しても【撤退戦】が無く、更には【救出戦】終了後に出陣した部隊の【城娘】全員が全回復する
→ 実質的なリスクは自軍の【城娘】の配置コストのみとなる。

5,戦闘時において、自分の【城娘】には【後詰】のステータスが反映される
→ 課金要素であった【後詰】のステータスであったが、これによって課金無しでも有効利用することができ、【救出戦】要員という新しい役割が生まれる。


ロ、戦術に関する内容

1,敵の強さは【同盟国】の第1部隊の【本城】、同じ部隊の2番目と3番目の【城娘】のレベルの平均から決定される

2,敵の増援は【同盟国】の第1部隊の【本城】、同じ部隊の2番目と3番目の【城娘】の【耐久】【防御】の平均で決定される

3,敵の種類は【同盟国】の第1部隊の【本城】、同じ部隊の2番目と3番目の【城娘】の【対空】【属性】の平均で決定される

以上の3点から【救出戦】の難易度の調整が可能となり、数値が高ければそれだけ強い敵と戦うことになるがそれだけ良質な経験値を得やすく、
また、強力な敵であろうとも増援や種類、更には【合戦場】も調整すれば、非常に効率良く敵を撃退しやすくなるので一考の価値あり。


ハ、戦略に関する内容

1,成功報酬は、【同盟国】が所有する【所領】あるいは【装備品】と同じものが低確率で得られる
→ 知らぬ間に【同盟国】からそれらが没収されるというわけではないのでご安心を。

2,獲得基本経験値は【同盟国】の第1部隊の【本城】、同じ部隊の2番目と3番目の【城娘】のレベルの平均から決定される
→ この辺りは【艦これ】における【演習】のそれに倣う

3,経験値の頭割りに【同盟国】の【城娘】は入っていないのでその分だけ一人あたりの獲得経験値が多くなる
→ それ故に、【同盟国】の【城娘】が強力であるほど自軍から【城娘】を配置しなくてすむ可能性があるので非常にウマウマである。

4,リスクは自軍の【城娘】の配置コストのみ!
→ 誰の迷惑にもならず、しかもタダで全回復するので利用しない手はない!

5,【救出戦】は1日に数回まで
→ このへんも【艦これ】の【演習】に倣う。しかし、あちらと比べて遥かに【救出戦】をする価値が大きいぞ!


ロ、提案の背景
【城プロ】の二次創作をやってみると、元々がメメタァな物語風プレゼンであると同時に架空戦記でもあることから、
読み物としても楽しめるよう、できるだけキャラに感情移入してもらえるように現実味を持たせようとする筆者の特徴が大きく出た。
つまり、【城主】が【城娘】と【兜型生命体】との戦いに有無いわさず巻き込まれて、それで【乱世】に独りということから、
どうしてもホームシックとなって郷愁に打ち震える毎日になってしまうことだろうから、その憐憫から生まれたストーリー面からの筆者の提案である。
これによって、他にも【城主】がいることがはっきりとし、宿命を背負わされているのが自分だけじゃない事実が【青年】の心を大いに支えることだろう。

また、タワーディフェンスゲームというジャンルの都合上、どうしても対戦ツールとしては機能せず、ソーシャル要素が皆無であったことを踏まえて、
ならば、【同盟国】の【籠城戦】を救出する形で、違った形の戦術や戦略が求められるようにすれば新しい遊び方ができるはずだと思い至った。
だって、【演習】に相当するものがなくて【提督】上がりや【オヤカタ】上がりの人間としては物足りなく感じてなかった?
つまり、【演習】としてタワーディフェンスゲームで無理なく採用できそうなものを考え抜いた結果がこの【救出戦】となる。

これならば、プレゼンターが本筋で提案してきた【艦娘派遣】に似た内容にも繋げられるだろうからもっともっと遊び方が広がるのではないかと思うのだ。




超番外編1 浪速のことは 夢のまた夢  -この命 果てても私が御守りします!- 第4章

――――――その夜

――――――本拠:マンション城 屋上:ペントハウス(天守)


ヲ級”「ヲ~ヲヲヲ~♪」 ――――――艦載機を飛ばして夜の見張り番をしている。

大宝寺城「う~ん! 私も『ヲシドリ』ちゃんのように遠く見通せる天眼を開かないと!」ウーン!

伊賀上野城「ふむ。南蛮人が連れてくる奴隷には呪術の使い手がいるとは聞いたことがあるがこれほどとは…………」シュタ


金木「しっかし、電気が無いと本当に不便ですよね~」フワァー

金木「エジソンが照明の開発に成功したのって――――――」

石田”「明治時代だから、あと300年ぐらいはかかるぞ」

金木「300――――――ぐはっ! ちくしょう! あれから数ヶ月だってのに、現代っ子の俺は日が沈んだら寝る生活になかなか馴染めない!」

金木「辛いなぁ、嫌でもすぐに慣れると思っていたのに、この時間帯まで普通に起きているもんだから数ヶ月経っても抜け出せない……」

石田”「まあ、それもこれも物理的に夜更かしができる環境に居るせいだがな。そして、お前自身の怠慢でもある」

金木「はい、そのとおりです……」

石田”「しかし、このペントハウスだけまるで灯台のように夜も明かりが確保されているのはなぜなのだ?」

金木「ああ それも【神娘】の力だと思う」


――――――“不知火”って知ってる?


石田”「…………陽炎型駆逐艦の2番艦ということしか知らんな」

金木「はい、ナイスジョーク」

金木「あ、でも、ホントに知らないんだ。これは意外ぃ」

石田”「巡洋艦の由来なら完璧にわかるが、さすがに駆逐艦の種類豊富な無生物の命名までは追究する気になれん」プイッ

金木「そう。それもそうか」

金木「それでね、その“不知火”って言うのは――――――、」


あさひ姫「八代海や有明海の文月晦日の風の弱い新月の夜などに現れる怪火のことですよね」



金木「――――――って、姫様!?」

石田”「……何をしている? 夜伽話をするつもりはない。さっさと寝床に戻れ」ヤレヤレ

あさひ姫「嫌です、石田様!」

金木「で、でもですね、姫様? いくらお話好きとは言っても、夜更かしはいけませんよ、夜更かしは…………お肌の天敵ですから」

金木「あ、そうそう! 志摩様は明日の業務に障るから無駄に長引く夜噺がお嫌いではなかったじゃないですか?」

あさひ姫「それは志摩様の話であって、ずっとあんな辺鄙な場所に封じ込められていた私は聞き耳を持ちませんー!」プクゥー!

あさひ姫「それに、私は石田様や【城主】様のお話を聴いているこの時間が大好きですから、もっとお話を聴かせてください!」

金木「…………石田少将」ヒソヒソ

石田”「……何だ、【城主】様?」ヒソヒソ

金木「いやさ、姫様って か な り ワガママっていうか我の強い性格なのね」ヒソヒソ

金木「まあ、その、【城娘】としては破格の強さだよ。【大将兜】を姫様と少数の味方だけで撃退できるほどなんだしさ」ヒソヒソ

石田”「そうだな。神集島の時に来てくれなかったら、佐和山城と言えども非常に危なかったな」ヒソヒソ

金木「まあ、姫様がワガママなのは志摩様のせいっていうか、しかたがなかったことでもあるんだけどさ?」ヒソヒソ

金木「さすがに甘やかしたらマズイような気がしているのは、…………俺だけかな?」ヒソヒソ

石田”「だからこそ、俺は常に突き放した態度を取り続けているのだが?」ヒソヒソ

金木「ああ……、そうだったんですかぁ……」ヒソヒソ


あさひ姫「石田様、【城主】様! 私を除け者にしないでくださぁい……!」ウルウル・・・


金木「あ、う、うぅ…………石田少将?」オロオロ

石田”「くっ、俺にも計算外のことがあるのか?」ボソッ

石田”「…………しかたあるまい」プイッ

あさひ姫「あ」パァ

石田”「俺は老婆心から早く寝るように言ってやった。俺の言いつけを破って夜更かしをする以上はもう知らん。勝手にしろ」

石田”「俺は起こしてやらないからな。朝食を食べそびれても文句を言うなよ、わかったな?」ジロッ

あさひ姫「はい!」ニッコリ

石田”「…………くっ」

金木「…………やっべぇ(姫様、マジ 大天使! 手となり 足となって大陸征服に行ってきたくなるぐらいだよ、これぇ!)」ドクンドクン


石田”「で、話を“不知火”に戻すと――――――、」

石田”「『文月晦日』と言うと、旧暦の7月の月末のことか」

金木「ああ なるほど。『晦日』ってそういう意味――――――『三十路』と同じ読みで『三十日』ってことね、なるほど」

金木「で、文月だから7月――――――でも、旧暦での話だろ?」

金木「新暦:グレゴリオ暦でいうと、――――――載ってるかな? あ、文月は8月23日からだ」

石田”「じゃあ、『文月晦日』と言うのは、だいたい9月22日ってところか?」

石田”「まだ残暑の季節かな?」

あさひ姫「何ですか、それ? それが石田様の時代での本なのですか?」ドキドキ

金木「ん? ああ、これね、電子辞書ね。うん、あながち間違ってないよ、姫様」

金木「この薄いのに、これの十数倍の辞書機能が詰まっているからさ。これだけで博学者になれるぜ」

あさひ姫「凄いです!」キラキラ

石田”「それで、――――――『八代海』と『有明海』だったか?」

石田”「『有明海』は有名だな。むしろ、知らないほうがおかしい」

金木「そうですね。『有明海』って言ったらもう、九州最大の湾にして佐賀県と長崎県のあのでっかく婉曲した地形を作っているところですよね」


石田”「有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし」


金木「え?」

石田”「――――――古今集より、壬生忠岑の恋歌だ」

金木「おお! 石田少将って意外とロマンチックですねぇ!」
                                                              ・ ・
石田”「はあ? これは女のところに夜這いに行った男が追い返されて途方に暮れて、このまま惨めに朝日を迎えるのを嫌がっている歌だぞ」

金木「えっ」チラッ

あさひ姫「………………」

石田”「さて、――――――『八代海』か」

金木「…………石田少将 容赦ねえ」

金木「(無駄を極端に嫌っているのか、それとも無意識にやっているのか、あるいは話の本題から逸れないように腐心しているのか――――――、)」

金木「(でも、さっきの歌の内容といい、話の切り上げ方といい、――――――別に悪意があるわけじゃないんだろうけど、)」

金木「(石田少将って、もしかして同僚に結構 嫌われてたりしてないかな? それこそ、やっぱり――――――そう、石田治部のように)」

石田”「これはあまり馴染みがないが、簡単にいえば、有明海の南の海のことだな」

金木「え、有明海の南ってことは――――――」

石田”「そうだな。この天草諸島と熊本県の間の海ということになるな。ちなみに、天草諸島の南が天草灘だ」


金木「じゃあ、“不知火”っていうのはこの九州最大の湾だけで見られる怪奇現象ってことだったのか」

石田”「そういうことになるな」

金木「でも、よく知ってましたね、姫様。こういう風聞の類には意外と興味津々?」

あさひ姫「はい。私もずっと退屈でしたのでそういったことには興味があるんですよ」

金木「ああ わかる、わかるよ、その気持ち!」

金木「俺も平成時代から【乱世】にタイムスリップさせられた時、死ぬほど退屈だったから!」

金木「まさか、電子辞書の活字を読むことが最大の娯楽になるとは思いもしなかったぞ」

金木「やはり人間には知性を育む本が最大の友だったと言うわけなのさ!」

金木「無人島に何か1つ持っていけるものがあったとするなら、俺は電子辞書とかの知的財産を真っ先に選ぶよ!」

あさひ姫「そうですね! 私も日々の退屈を紛らわすためにいろんなことを試してみましたけど、一番 暇を潰せたのは本でしたから」

石田”「なるほどな。それも悪くない選択だな」フッ

あさひ姫「あ」パァ

石田”「で? 確か話はこのペントハウスにだけ明かりがずっと確保されているということで、金木が“不知火”のことを言い出したのだったな」

金木「あ、そうだった そうだった」

金木「それで、“不知火”っていうのはその有明海で見られる謎の発光現象って話でさ、この電子辞書にも載っているけど、」

金木「まず海岸から数キロの沖に、始めは1つか2つの火がゆらゆらと見えてくるんだって」

金木「そうすると、やがて左右に分かれていって数を増やして、最終的には数百、数千もの火が並んで海が燃えているように見えるんだってさ」

金木「唐津に来ていたとある商人が言うには、龍神の灯火ってことだから“不知火”が出た日は漁村では漁が禁止になるって聞いた」

あさひ姫「はい。あれはいったいどんな龍神あるいは妖怪が起こしているものなのでしょうね?」ワクワク

石田”「なら、【神娘】に訊けばいい」

金木「ああ そういえば、千狐とやくもは確かに神々の眷属――――――って、たぶん無理だろうなぁ」

金木「あいつら、神様の使いにしてはあまりにも頼りないし、『少しは神様のご威光にふさわしいことをしてみろ!』と思ってたぐらいだもん」

石田”「そうか」

金木「……あれ? 意外にあっさりとした反応ですね」

石田”「俺のところも能力はあるが、こちらの指示通りにならない【羅針盤娘】や【建造妖精】に散々苦しめられてきたからな。気持ちはわかる」

石田”「だが、頼りないとは言え、それでも彼女たちが居たから これまで事を運ぶことができたのだ。腹ただしくても労をねぎらうことだけは忘れるな」

金木「あ、はい、石田少将」

あさひ姫「…………石田様」ホッ

金木「…………似た境遇だったんだ、俺と石田少将って意外と」ハハッ


石田”「つまり、このペントハウスの光源不明の明かりと言うのは――――――、」

あさひ姫「というのは?」


金木「【神娘】が現代っ子の俺のために頑張ってまかなっている神界からの光ってことでいいんじゃないんですか?」


金木「ここにいると癒やされるというか、のびのびとした気持ちでいられるというか、」

金木「何と言うかお腹がポカポカしてくるんだけど、空気は冷涼で頭が冴え渡る感じでひんやりしてますよね、ここ」

石田”「確かにな。そういえば、暖房器具があるわけでもないのに不思議と寒いとは思わないな」

あさひ姫「本当ですね。まるで冬の季節に神社に参拝したかのようです」

金木「うんうん。『神社』――――――そんな感じだよ、ホント」

金木「って、当然か? 俺の世話役の千狐ややくもは確かに頼りないけど、あれでもれっきとした神様の眷属:【神娘】ってことなんだし」

石田”「…………まあ、光熱費がかからないというのであれば それはそれで結構」

石田”「居住性は士気にも大きく関わってくるからな。おかげで、夜の見張り番も安心して任せられる」

金木「そうですね。最初の【関ヶ原】の時のような人気も少ない場所だと、いつ忍者や野盗、それに【兜】が襲ってくるかわかったもんじゃないですから」

金木「【城娘】も少なかったことだし、本当に【乱世】に来た当初は意味不明で寂しいやら、おっかないやら、不便やらでいっぱいいっぱいでしたよ」

金木「でも、あんな頼りないご眷属でもいないよりはマシっては思えてきて、それから【城娘】も増えてきて金本提督にも出会って――――――」

金木「それで現在は、石田少将とこうして楽しく話の花を咲かせることができていることだし、改めて千狐ややくもたちに礼を言わないとな」

石田”「それがいい。礼を言われて悪く思う者はまずいないことだしな」

金木「!」


金木「なら、石田少将も『ありがとう』を言うべき相手がいるんじゃないの?」ニヤリ


石田”「……何?」

金木「ほら」チラッ

あさひ姫「へ」

石田”「む」

金木「ほらほら(ここで姫様にお礼をいうことで石田少将のマイナス点を挽回させる――――――俺って冴えてるぅ!)」グイグイ

石田”「………………」ソワソワ

あさひ姫「…………石田様?」

金木「石田少将?(そうだとも! 【稲生】の時のように、石田少将の不器用な人付き合いの在り方も【島原・天草一揆】もこの俺が変えてみせる!)」

石田”「…………くっ」


――――――――――――

―――――――――

――――――

―――


――――――肥前国 唐津


志摩守「これであなたは自由の身です。どうかこれからは思う通りに生きてください」

唐津城「…………本当によろしかったのですか?」

志摩守「よい。儂は長く生きた――――――それこそ太閤殿下がお亡くなりになってからあの城が廃城になった時からのお付き合い」

志摩守「姫様は、あの頃からずっと変わらずお美しいままだ……」

唐津城「………………」

志摩守「だが、もう儂が守る必要はなくなったのだ……」

志摩守「そして、儂の代わりに姫様を守ってくれる者たちがこうして現れ、儂に最期にやるべき道を示してくださった」

志摩守「唐津城よ、儂が逝ったらせがれのことを――――――」

唐津城「御意」


志摩守「これより この寺沢志摩守は城を息子:堅高に譲り、富岡城に移る」


金木「なんか、石田少将が来て1ヶ月にもならないのに、唐津を襲う【兜】を撃滅することができたし、」

金木「そして、【島原・天草一揆】の危機をこれで回避できそうな機運が巡ってきたぜ」

金木「【稲生】の兄弟喧嘩を仲裁した時以上にこのワクワク感が止まらない!」



名護屋城「――――――【城主】様。不束者ですが これからよろしくお願いします」ニッコリ


金木「ああ。よろしくな、名護屋城」ニッコリ

那古野城「むぅ、私が“ナゴヤジョウ”だ! “ナゴヤジョウ”の名を持つ城娘は一人で十分~!」プクゥー

佐和山城「何を言うか! この御方こそが“ナゴヤジョウ”なのだ!」

金木「喧嘩すんなって」

金木「じゃあ、“古い方”――――――これ、お前な。で、こっちの姫様は“護さん”ってことで」

那古野城「ふ、『古い』だとぉ!?」ムカァ!

那古野城「おのれ、この大うつけめぇ~!」ウガーッ

金木「いや、冗談だって! じゃあ、“金鯱城”で――――――」アセアセ


名護屋城「あ、あのぉ……」


那古野城「うん?」ジロッ

佐和山城「まったく、こんなところで武器を抜かせるんじゃない、このダメ【城主】め! それともわざとか!?」ガキーン!

金木「な、何かな~、姫様ぁ?」アセダラダラ


――――――人間としての名をください。


金木「へ」

那古野城「――――――『人間としての名前』だと?」スッ

佐和山城「そ、それはどういった意味なのですか、姫様?」スッ

名護屋城「私は今の徳川の世にとってはあってはならない存在――――――」

名護屋城「だからこそ、志摩様は私をあの場所に隠棲するように手を回してくださったのです」

名護屋城「“戦国一の出世頭”が亡くなって早30年――――――ですが、私にとっては退屈で億劫のような毎日でした」

名護屋城「それはもう生きているのか死んでいるのかもわからないようなありきたりな毎日――――――」

名護屋城「ですが、それなら私は【城娘】としてではなく“人間”として永く生きたことにはなりませんか?」

名護屋城「もし【城娘】としての本分を捨てた存在ならば、出家みたいなものじゃないですか」

金木「ま、まあ、話を聞く限りだとそんな感じではあるだろうけど…………」

名護屋城「というわけで、私に法名――――――いえ、これは還俗ですから俗名を、人間としての名をください、【城主】様」

那古野城「な、なるほどな」

佐和山城「そ、そんな姫様?!」

金木「わかった。いい感じのをつけてやるから期待していてくれよ」

那古野城「うん。腐っても同じ“ナゴヤジョウ”――――――ならば、それにふさわしい改名とせねばな!」

佐和山城「…………姫様がそうおっしゃるのであれば」

名護屋城「素敵な名がいただけますように」ニッコリ

金木「――――――!」ドキン!

那古野城「……うん?」ムッ

佐和山城「…………!」ジロッ

金木「え、なに? なんで睨んでくるの? ねえ?」アセタラー


――――――命名に至る過程


金木「う~ん、あの“名護屋城”の別名を考えろってことだろう?」

金木「そうだな、まずは基本スペックを見て――――――って、何だこりゃ!? いろいろと狂ってないか、これぇ!?」メメタァ

金木「ええ!? これ、他の【城娘】が束になって勝てるレベルじゃない! そして、コストもアホみたいに高い!?」メメタァ

金木「姫様、大人しそうな顔をして実はとんでもない実力――――――って、見かけに騙されちゃいけないのが【乱世】の基本だったわ」

金木「というか、神集島に現れた新手の【大将兜】を大宝寺城と佐和山城の3人で抑えられたのも頷ける強さだよ!」

金木「石田少将、船の中でも淡々としか話さないからあんまり印象に残ってなかったよ!(まあ、志摩様との会談のことでも緊張してたけど)」

金木「そっか。でもこれだけの能力を持った【城娘】ならば、【兜】たちが血眼になって探し出そうとするのも改めて頷ける」


金木「やっぱり【兜】共も【城娘】に対して何らかの価値を見出しているんだ」


金木「でも、それは何のため? そうすることによって何が得られるの?」

金木「佐和山城が捕まった時に、新たな【大将兜】が出現したって言うけど、これは偶然?」

金木「…………まさか」ピピッ

金木「そうだ、あの時のニュース! あの運命の日を迎える二日前のこのニュース――――――!」


『二日前、某御城の施設やそれに関する付属施設が巨大な生物によって破壊され、国宝級の展示品が盗まれるという事件が発生――――――』


金木「…………まさかな」アセタラー

金木「でも、そうじゃなかったら、わざわざあんな大掛かりな陽動をする意味がわからない!」

金木「唐津を【兜】が襲っていたのは全て姫様を捕まえるために俺たちを唐津に釘付けにするためだったってことだし――――――!」

金木「……これは俺も頑張って名軍師と賞賛されるぐらいに精進しないとな」アセタラー




名護屋城 出身:肥前(佐賀県) 武器:刀(対空) 城属性:平山/水                      再掲

コンセプト:黒歴史として封印されし禁断の日ノ本最強の城娘 -これぞ天下人の軍勢-

必殺技:人生如夢(5秒間 必殺技が発動しやすくなり、その間は自身の必殺技が耐久を小回復させるものに変更となる/範囲:全)
具体的にはゲージ速度が空の状態から満タンになるまで、

・蓄積が速い……初期値ならば144秒、最大値で120秒のものが、1秒で溜まるゲージ速度に変更される

・蓄積が遅い……初期値ならば222秒、最大値で181秒のものが、2秒で溜まるゲージ速度に変更される

しかも、あくまでもゲージ速度が上がるだけなので、1回【必殺技】を使ったら1,2秒後にまたすぐに使用可能!
最速ならば速い方ならば5連発でき、遅い方なら2連発できる。これだけで破格の性能である。

その間の名護屋城の動きは、【必殺技:人生如夢】が発動した2秒後に全体を小回復できる【必殺技】が使えるというこれまたトンデモ仕様なので、
発動時間の5秒間に最速でも2回は全体小回復を放つことができ、それで戦力の全体の立て直しができてしまえる。
ただし、発動中にゲージが溜まった場合は全体小回復 固定であり、発動時間が過ぎた後に使っても【人生如夢】にはならない。それでも桁違いの【必殺技】だが。

そのために、ダメージ系【必殺技】の【城娘】を多く配置させておくのが最も効率がよく(クリックが忙しくなるが凄まじいダメージ効率!)、
単純に名護屋城による全体小回復の【必殺技】が2回連続で使えるという意味でも極めて強力な【必殺技】であり、
それ以外にも溜まった必殺技ゲージは【人生如夢】が途切れても【必殺技】を使わない限りは維持されるので味方のゲージ溜めにも使える万能【必殺技】。

ステータス:戦闘能力最強クラス コストも過去最大級(いや、おそらく永久に更新されることのないレベル))

【耐久】……… ぶっちぎりの1位。首位独走。
【攻撃】……… トップレベル。
【対空】……… トップレベル。
【速度】……… 致命的なまでに遅いわけではないが低い方。だが、【技能】がトップレベルなので刀の2回攻撃が決まりやすい。
【範囲】……… トップレベル。【城属性:平山/水】なので安定した攻撃範囲を持っている。
【防御】……… やや高め。
【会心】……… やや高め。
【後詰】……… ぶっちぎりの1位。首位独走。
【しんがり】… まさかの0であり、自身は完全に前進制圧専門となっている。
【運】………… 下から数えた方が早いレベル。
【技能】……… トップレベル。
【属性】………【人知】系のみの対応だが、これまた凄まじい値となっている。

どうしてここまで強い設定なのかは動員兵力数や城の縄張りの規模を見るだけで頷く他ないだろう。
しかも、他の【城娘】とは違って対外戦争に動員されたほぼ唯一の【城娘】なので、日本の全てが結集した英傑たちの城でもあるのだ。
能力は朝鮮出兵の日本軍の戦績が大きく反映されているが、実質的に“豊臣時代の日本全土そのもの”が【城娘】化したような存在なので、
江戸城でも大坂城でも絶対に実現不可能な圧倒的なマンパワーによる戦闘能力を発揮することができている。
なにせ、味方がいなくても【大将兜】相手に互角以上に戦えてしまえるのぐらいである。コストも絶大であるが、凄まじい戦闘力である。

しかし、天下人の天下統一から他界までのたった10年足らずで8ヶ月で築城されて繁栄して廃城なので、これほどまでに諸行無常を体現した存在もいない。
ある意味において、天下人:豊臣秀吉の化身とも言えなくもない存在であり、
変身状態の戦闘衣装がまさしく豪華絢爛の勇壮たるものである一方で、私服姿は驚くほどみすぼらしいものを着ており、
性格も非常に儚げであり、戦闘時も非常に淡々と敵を屠っている様子がうかがえる。

ちなみに、大坂城と同じ顔をしているが、人格の影響から髪型や顔つき、雰囲気からそうだとわからないぐらい人相が違ってきている。


名護屋城「そう、全ては朝露のように生まれ落ちては消えていく――――――」

名護屋城「でも、楽しかったな……」

名護屋城「夢のまた夢――――――これはいい夢でした」


ただし、大人の事情を考慮すると、【艦これ】における【例のアレ】並みにブラックゾーンの存在なので提案しておいてなんですが忘れてください。




金木「ねえ、石田少将。何か姫様が心機一転して『新しい名が欲しい』って言うから姫様にふさわしい名はありませんか?」

金木「こっちとしても那古野城がすでにいることだし、このままだと“金鯱城”と呼ぶしかなくなるし、結構 不便で」

石田”「そうか」

金木「あ、そうだ! 石田少将って栄光ある皇国海軍の軍人さんってことだから、何か使える題材がありません?」

石田”「…………まさかこういった機会が与えられるとはな」

金木「ダメですか? ダメならヒントになるようなものでも――――――」

石田”「俺は、こういうのは苦手だと思うが、思いつくだけのものを上げてみようと思う」

金木「え、本当ですか!?」

石田”「ああ。俺としても“ナゴヤジョウ”は“金鯱”のイメージだから問題ない程度に変えておきたい」

金木「やった!」

石田”「30分だけ待ってくれるか」

金木「どうぞどうぞ! 天草に行くにしても志摩様の準備もありますし、時間ならまだまだありますから!」

石田”「では、失礼する」


スタスタスタ・・・


石田”「…………名護屋城、か」

石田”「――――――“名を護る屋”か」

石田”「そして、ある意味において日本国そのもの――――――」

石田”「そうだな、それ相応の名を与えてみるか」カキカキ




――――――それから きっかり30分後、


石田”「候補を挙げてみたが、絞りきれなかった。すまない」

金木「いやいやいや、ありがとうございます。俺のような学の浅い人間の命名じゃ姫様には不釣り合いですから」

金木「それで? どんなものが――――――」


敷島、朝日、初瀬、三笠


金木「う、ううん?」

石田”「まさか、ダメだったのか? ――――――くっ、計算外だ」

金木「……これ、元は何です?」

石田”「それは日露戦争に備えて同盟国であるイギリスに発注して建造された当時 世界最大の戦艦:敷島型戦艦の艦名だ」

石田”「いずれも日本の別称である『大和』に関連した命名だ」

金木「へえ」スッ ――――――電子辞書で検索。

金木「――――――『敷島』。日本の美称の1つで欽明天皇の都:磯城島金刺宮に由来するとされる」ピピッ

金木「――――――『初瀬』。『大和』に関連だから奈良県(=大和国)の初瀬川に由来ってこと?」ピピッ

金木「――――――『三笠』。これも奈良県の三笠山に由来か」ピピッ

石田”「どうだ?」

金木「あのさ、石田少将?」ヤレヤレ

石田”「ん?」


金木「女の子につける名前に戦艦とか……これはないでしょう?」ジトー


石田”「な、なにぃ!?」 ← 重度の【艦これ】脳

金木「確かに【城娘】も女の子には違和感がある名前ばかりだけど、少なくとも“城”=“嬢”って読み替えることができるからまだいいよ」

金木「それに、『初瀬』や『三笠』じゃ奈良県にある城だと勘違いされるんじゃない?」

金木「まあ、その点だと『敷島』は姫様にはふさわしい感じもするけど、いくら太閤所縁の高貴な【城娘】でもさすがに恐れ多い…………」


金木「でも、『朝日』なら――――――これ、いいじゃないですか。豊臣秀吉って自分の兜に日輪の意匠を使ってましたし」

金木「…………?」ピピッ

石田”「どうした?」

金木「…………『大和』に由来するって言いましたよね? 本当にこの『朝日』ってのは『大和』に関連する名付けなんですか?」

石田”「ああ それは少し捻った名づけだ」

金木「え」


敷島の やまと心を 人問はば 朝日ににほふ 山ざくら花     本居宣長


石田”「本当は『敷島』の次に日本の美称である『大和』を入れたかったが、すでに『(初代)大和』は旧式スループで現役だったからその繋がりで」

金木「は? それじゃ、『初瀬』と『三笠』の由来って――――――」

石田”「そうだ。全てこの本居宣長の日本の美意識を尽くした歌から定まった『大和』に関連する名付けだ」

金木「こじつけもいいところじゃないですか!」


石田”「しかし、意外だな」

石田”「少なくとも日本史の勉強をしていれば、日露戦争でバルチック艦隊を破った東郷平八郎艦隊の旗艦である『三笠』ぐらいは知っているだろう?」

石田”「それこそ、横須賀に三笠公園として保存されているぐらいなのだからな」


金木「え? ――――――横須賀に軍艦の公園? ――――――しかも日露戦争時代の超旧式艦の?」


石田”「なっ」

金木「へ……」

石田”「………………」

金木「………………」

石田”「…………まさか、その反応はもしや?」アセタラー

金木「…………言っていいですか、石田少将?」アセタラー

石田”「ああ。誤解は早めに解いたほうがいいだろう」ゴクリ

金木「はい。では――――――、」コホン


――――――横須賀に永久保存されているのは世界に冠たる“ビッグ3”長門ですよ。


石田”「――――――“ビッグ3”長門!?」

石田”「そ、それはもしや長門型戦艦1番艦ということでいいのだな……?」

金木「『1番艦』――――――ああ 確かに2番艦や次級の戦艦なんてのもすでに起工されていたようですけど、」

金木「残念ながら、第1次世界大戦後のワシントン海軍軍縮条約で全部 廃艦ですよ。1番艦なんて改まった区別なんて必要ないです」

石田”「!!?!」

金木「え? もしかして、…………そういうところから違ってたりするんですか?」

石田”「陸奥を切ってその結果 大東亜共栄圏を実現した世界――――――、そういう世界もあり得たというのか」


―――

――――――

―――――――――

――――――――――――


――――――そして、時は現在に戻り、

――――――志摩守の所領である飛び地:天草


金木「しっかし、いい命名になりましたよね、石田少将」

石田”「うん?」


あさひ姫/名護屋城「スヤスヤー」  ――――――ペントハウス(天守)に敷かれた布団で眠る。


金木「何って、――――――“あさひ姫”っていう姫様の新たな名ですよ」

金木「この ひらがなで“あさひ”っていうところが実にいいですね」

石田”「元々ひらがなは紀貫之の土佐日記で取り上げられているように女の文字とされていたぐらいだ」

石田”「それだけに、漢字で書くよりは柔らかい印象を受けることだろう」

金木「そうそう。女の子の名前はこうでないとね! 漢字で書いて“朝日”とか“旭”ってのはちょっと……だもんね」

金木「ホント、日本語って綺麗だわ。本居宣長のあの歌――――――、」


敷島の やまと心を 人問はば 朝日ににほふ 山ざくら花     本居宣長


石田”「――――――この歌か?」

金木「そう、それです! ここでも“やまと”や“さくら”をひらがなで表現しているところがミソですよね」

金木「そうそう、この九州で盛んな“タイ捨流”っていう剣術も、変な名前だと思っていたけど、訊いてみると実に奥が深くてですね?」


全ては『“タイ”を捨てる』ことで極意に通じており、

『体』とすれば体を捨てるにとどまり、『待』とすれば待つを捨てにとどまり、『対』とすれば対峙を捨てるにとどまり、『太』とすれば自性に至る――――――。

漢字では意味が限定されてしまうが、仮名で表現することでいずれの意味にも通じることが可能となり、

“タイ捨”とはこれら全ての雑念を捨て去り、ひとつひとつの言葉にとらわれない自在の剣法を意味す。


金木「いやぁ、初めて聴いた時、感動しましたよ! これこそ日本語の妙だって」

石田”「ほう、海軍にもいくつかの剣術道場の師範がいたことだが、――――――なるほど、あのタイ捨流とはそういうことだったのか」

金木「暇があったら俺もタイ捨流に弟子入りしようかな?」ワクワク

石田”「いや、そんなものをやる暇があるなら、【城主】として金木が唯一できることに力を注ぐのが最善だ」

金木「ああ そうでした……」


金木「でも、俺だって石田少将みたいに自分の身は自分で守れるようにしたいし、あの【軍刀】を握るのに相応しくありたいし――――――」

石田”「…………ほう?」ニヤリ

金木「え」ゾクッ

石田”「わかった。そうなれるようにしてやろう」

金木「……ほ、本当ですか?(あれ、墓穴を掘っちゃったのか、俺ぇ?)」アセタラー

石田”「だが、俺は忙しい。少しでも天草や島原の動向を探るためにな。ついでに、志摩守も守らなくてはならない」

石田”「よって、お前に訓練を施す相手をこちらで用意しておこう」

石田”「勘違いするな。訓練にも段取りやどのような成長を目指すかの目標設定が必要となってくるからな」

石田”「それでいいな?」

金木「あ、はい……」

金木「あっ」ゾクッ

金木「(しまった! 軽い気持ちで言ったけど、この人 ただの軍人じゃなくて特殊部隊並みの作戦遂行能力の持ち主じゃないか!)」

金木「(唐津を襲う【兜】たちを撃滅できたのも、元はといえば、石田少将のスパイ大作戦で敵本拠地に潜り込んで照明弾を打ち上げたからだし!)」

金木「(特殊部隊って軍人の中でも成績上位者にしか入隊できないもんなんだよな? ――――――特殊部隊が就く任務の重要性から言ってさ)」

金木「(やっべえ! 俺、どうなっちまうのかな……? そして、石田少将が用意するっていう教官って誰になるんだ?)」


あさひ姫/名護屋城「……………いしださまぁ」ムニャムニャ



――――――翌日

――――――マンション城 隣:築城スペースを間借りして建てられた仮設工廠(ブルーシートに包まれたただの作業場)


石田”「よし、調子はどうだ?」\勅命/

艦攻妖精”「稼働率の低下は今のところ心配ないです」カチャカチャ ――――――乗機の【艦上戦闘機:流星改】の点検を行っている。

石田”「だが、【燃料】や【ボーキサイト】が手に入らない以上は出撃はできるだけ控えねばならんな」

石田”「それに、【照明弾】も残り1つだけだ」

石田”「この時代なら打ち上げ花火で代用できそうな気もするが、それを格納できるかは難しい話だろうな」

艦攻妖精”「しっかし、まさか俺が小柄なのを活かしてスパイ大作戦をするなんて思いませんでしたよ」

石田”「それは俺もだ。あそこまでうまくいくとは思わなかったが、所詮は野盗――――――統制の取れない組織のセキュリティなどそんな程度だろう」

石田”「さて、【電撃銃・紫電】の故障はないな?」カチャカチャ

艦攻妖精”「けど、【弾薬】を使っているわけじゃないから、放っておいたらすぐにパワーが無くなっちまいますよ?」

石田”「そうだな。どの道 補給の目処も立たず、使えなくなるのならば、効果的に使い切るのが賢いやり方だろうな」

艦攻妖精”「――――――『賢いやり方』ですか」ニヤリ

石田”「ああ、『それ』しかないな」


石田”「だが、そのために必要なことがいろいろとあるな……」



――――――マンション城 近辺の訓練場


金木「あ……ああ…………うぁ…………」ゼエゼエ

ヲ級”「ヲヲ」ナデナデ

金木「あ、ありがとう……、『ヲシドリ』ぃ…………」ガクガク


飛龍”「立ちなさい! それでも立派な日本男子ですか! 多聞丸に怒られますよ、そんなんじゃ! めっ!」ジロッ


金木「…………もう勘弁してくだはぁい、教官」バッタリ

金木「伝統ある皇国海軍の基礎訓練――――――、現代っ子の俺には辛いなぁ」ゼエゼエ

金木「(おっかねぇ……。あのふんわりとして太陽のように眩しい優しいお姉さんも【艦娘】という立派な勇士だったわけねぇ…………)」

金木「(くそっ、そもそもあの石田少将の部下なんだぞ? 外見で判断しちゃいけないって何度も肝に銘じてきたのにいつも予想外だよ、まったく……)」

金木「(でも、最後の『めっ』ってところが凄く耳が幸せになりました。うへへへ……)」

福居城「おお、やっているな、殿」

福居城「手伝ってやろうか?」ニヤリ

金木「い、今は遠慮しておく……」ヨロヨロ・・・

金木「そうだ……、【探索】の方は順調か? この天草は離島が多いわけだから、できるだけ【水属性】の連中を多めに出してはいるけど……」メメタァ

福居城「その辺は【探索】を取り仕切っている二条城に訊いてくれ。私は今日は城の守備に就いているから」

金木「…………そう」ゼエゼエ

福居城「よし、暇なことだし、私も付きあおう」

金木「ええ!?」

福居城「心配するな。殿の護衛も兼ねているぞ。それに、【かんむす】とやらの教えを受けるのも面白そうだしな」

金木「いや、甘く見ないほうがいいぞぉ……」チラッ

飛龍”「……では、続き、行きますよ?」ニコニコー



――――――それから、

――――――マンション 隣:仮設工廠


金木「…………石田少将」ゼエゼエ

石田”「む、どうした? さすがにバテたか? ――――――いや、もうこんな時間か」

金木「はい。これは死ぬ。死ぬぅうう……」ゼエゼエ

金木「って、いやいやいや! そうじゃなくて――――――【探索】から帰ってきた連中が変なものを持って帰ってきたぁ!」ゼエゼエ

石田”「……『変なもの』?」



――――――【鉄砲/粒子多連装鉄砲】



石田”「………… 一見すると陸軍の自走多連装ロケット弾発射機にも見えるな。いや、ソ連のカチューシャに近いか?」

金木「つまり、ロケットランチャーってことですか?」

石田”「そうだ。だが、携行火器の類ではないのは見てわかるだろう?」

金木「はい。パイプオルガンみたいだし、第一 デカくて持てそうにないです」

石田”「だが、それにしては妙な装置がついているな」

金木「と言うと?」

石田”「ロケット砲というのは投擲機とは違って推進力を元々備えているロケット弾の発射に特化した大砲の総称だ」

石田”「それ故に、ロケット発射機――――――この場合はレール上に設置した弾体を運搬しやすく、方向や角度の修正がしやすい形状となっている」

石田”「それと、あと重要なのにはバックブラスト――――――つまり、発射したロケット弾の噴射ガスに対する安全対策がこれはなっていない」

石田”「いったいどんなロケット弾を打ち出すつもりなのかは知らないが、あまりにも特異な形状だと言わざるを得ない」

石田”「これはちゃんと使えるのだろうな? ――――――【城娘】の装備という認識で合っているか?」

金木「さすがの軍事の専門家でも実際に使ってみないとやっぱりわからないか…………でも、それでも大まかなイメージが掴めた。やっぱりさすがだなぁ」



――――――試験運用

――――――富岡城:富岡半島にて


松前城「おしゃれなお城に、なーあれ!」ピカァーン!


松前城「それでは、この新装備、使ってみますわ!」 ――――――【鉄砲/粒子多連装鉄砲】をアームに載せている。

石田”「さすがに【お嬢(=変身前)】の状態では扱いきれないようだな」

金木「かと言って、【お城(=変身状態)】に変身したら持ってるものまで巨大化するなんて――――――、どこのM78星雲の宇宙人ですかねー、今更だけど」

石田”「よし、『ヲシドリ』。艦載機は位置についたな? 着弾点の観測を頼む」

ヲ級”「ヲヲ!」

金木「…………『ヲシドリ』って普通に喋れない以外は本当に優秀だよなぁ」

松前城「では、撃ちますわよ!」ググッ

松前城「撃てええええええ!」バヒュウウウウウウウウウウウウウウウン!

一同「!?!?」

松前城「え、ええええええええ!? 何ですのおおおおおおお!?」ビクッ




――――――放たれたのは、昼下がりの青い空を強烈に輝かせる幾筋にもなる光の矢であった!




金木「な、何あれぇ!? ――――――ビーム? ――――――光学兵器ぃ?!」

石田”「いったいあれはどこから持ってきたと言うのだ?! オーパーツではないか!」

ヲ級”「ヲヲ!」スッスッバッバッ

石田”「……なに?」

金木「えと、『ヲシドリ』は何て?」

石田”「…………威力の方は観測はできなかったが、思ったよりも飛距離はないらしい」

金木「か、荷電粒子砲ってやつですか、あれって……」

石田”「そうだな。荷電粒子砲は確かに理論上は実現可能とはされてはいるが、それを実現するための電力が莫大だからな」

石田”「それに、大気圏内では威力の減衰が激しい。それ故にコストパフォーマンスに優れない凄いけど凄くない兵器の代表格だ」

石田”「だが、それがどうして――――――」


金木「莫大な電力が荷電粒子砲に必要だって言いましたよね?」

石田”「あ、ああ…………」

金木「じゃあ、あれが本当に荷電粒子砲だとして、そのエネルギー発生源って【城娘】ってことになりません?」

石田”「…………確かに、あのロケット砲にはレールの後ろにコンデンサと思しき巨大な装置が搭載されてあったが――――――」

石田”「だとするならば――――――、」


石田”「【城娘】には荷電粒子砲を撃つのに十分なエネルギーを内包し、かつ その莫大なエネルギーを任意で変換・放出する能力があると――――――?」


金木「わかんねぇ……、やっぱりわかりませんって! でも、さっき見た閃光ってそういうことなんじゃ?」

松前城「えと…………」オロオロ

石田”「今度は連続で撃ってみてくれ。それで、発射間隔がどの程度のものなのか、実戦利用できるものなのかを検証しなければならん」

金木「だ、そうだよ、松前城!」

松前城「あ、はい。わかりましたの……」

金木「これは期待できそうな新兵器だ!」

石田”「だが、基本的にロケット砲の類は一度 発射すれば直ちに敵に位置を特定されて猛反撃を受けやすいという先手必勝の諸刃の剣でもある」

石田”「【城娘】と【兜】の対決においてはそこまで問題があるわけではないが…………」


志摩守「おお……、今のは――――――?」


金木「あ、志摩様」

石田”「さて、確認しなければな」



――――――富岡城


志摩守「…………この数日、この目で天草を見てきたが、」

志摩守「――――――我ながらとんでもない過ちを犯してしきたものだ」ガクリ

志摩守「確かにキリシタンの弾圧のために厳し目の年貢にしていたが、石高そのものを誤っていては――――――!」

金木「ああ……、志摩様! 間違いがわかったのなら、すぐに正せばいいでしょう?」

金木「――――――『過ちては改むるに憚ること勿れ』ってね。孔子様の教えのね」

志摩守「……そうであったな。感謝いたす、【城主】様」

金木「いえいえ。こっちとしても嬉しいですよ、志摩様と一緒に天草の人たちの暮らしをよくできるお手伝いができて」

志摩守「しかし、我が天草領はこれで良いかもしれんが、儂以上に苛政を敷いている――――――」


金木「――――――島原の松倉重政ですか?」


志摩守「知っておりましたか」

金木「そりゃあ、前に島原で木蝋を買ってきましたから」

金木「その時、妙に人気が少ないような印象を受けていましてね。何か不吉なものを感じていたんです」

志摩守「そうであろうな」

志摩守「あやつは有馬の居城である日野江城とその支城である原城を廃して、新しく島原城の築城にとりかかったまでは良かった」

志摩守「元々、松倉豊後守は大和の五条の1万石を治めておってな」

金木「――――――『大和』ですか」

志摩守「自らが築城を指揮した五条の二見城において優れた手腕を発揮し、商業の振興を行って、五条を大和における交通と商業の要衝として栄えさせた」

志摩守「更に、大坂の役においては見事な功を上げて、それによって島原の日野江に入ったのだ」

金木「……普通に凄い人じゃないですか。それがなんで悪政を敷くだなんて」

志摩守「わからん。とかく、あやつはたった4万石余りの所領で10万石相当の島原城を築城したのだ」

志摩守「あるいは、あやつは己が築城の名手であったことを鼻にかけ、その結果 島原城の採算を見誤ったのやもしれん」

志摩守「それを補うために搾取に次ぐ搾取を強行していき、やがてかつて五条の名君だった豊後守の悪評が幕府の耳にも届き、」

志摩守「その信頼を回復させようと躍起になって、江戸城 改築の無理な公儀普請を行っていたようにも思える」

志摩守「儂は江戸から帰って久しいから中央の動向はもうわからぬが、どうもキリシタンの根拠地撲滅に呂宋への出兵も考えているようだった」

金木「――――――『ルソン』?(確か南蛮貿易の相手国ってポルトガルとスペイン、オランダだったよな? 東南アジアのどこかってのは間違いないか)」



――――――けど!


金木「志摩様、言わせてもらいますよ、これは」ググッ

志摩守「………………!」

金木「――――――悪循環じゃないですか! まるで下手な博奕打ちの大負けじゃないですか!」

金木「『綸言 汗の如し』だとかお上としてのメンツに関わるとかあるんでしょうけど、」

金木「素直に敗けを認められず、ズルズルと――――――!」

金木「それこそ、――――――『過ちては改むるに憚ること勿れ』!」

金木「まさしく正反対ですよ、志摩様とは」

志摩守「…………名護屋城を廃城にして唐津城を建てたことが、かな?」

金木「そうですよ! 分不相応なら、それこそ謙虚に自分の不足を周りが補ってくれるように立ちまわるべきだと思うんですよ、俺は」

志摩守「そうだな。まったくそのとおりだと思うぞ、【城主】様」ニコッ

金木「え」



志摩守「初めて【城主】様が唐津にお見えになったのはいつの頃だったかのう?」


志摩守「あの頃と比べると【城主】様は立派になられたものだ。――――――時が経つのはまこと疾きものなり」

志摩守「今まで唐津のことを守っていただき、この寺沢志摩守、深く感謝申し上げまする」

金木「え?! な、何を突然――――――!?」

志摩守「儂はこの天草に入り、儂の所領でありながら唐津とはあまりにも違い過ぎる居心地の悪さに怖気を感じたのだ」

志摩守「儂はこれから天草の民に命を賭して償っていかなくてはならなくなった」

志摩守「これまで儂が犯した過ちによって苦しみ喘ぎ、儂のことを恨む人間もたくさんいることであろう」

志摩守「無論、キリシタンをこれまで幕命に従って弾圧してきたのだ。それも豊後守ほどではないが見せしめのためにとても残忍なやり方も黙認してきた」

志摩守「だからこそ、儂は天草に住まう一人ひとりの恨みがこもった刃に斃れるやもしれん」

金木「!」

志摩守「だが、これは天草の領主としての勤めを怠り、唐津の安心だけで悦に浸ってきた儂自身が招いた業なのだ」

志摩守「それ故に、もし儂が死ぬようなことがあれば、せがれには天草領を返還させる旨をすでに伝えてある」

志摩守「儂に治められないものをまだまだ未熟なせがれに背負えるはずがない――――――」

志摩守「それなら、儂自身が犯した過ちの責任は儂が全て負い、せがれには儂が大切にしてきた唐津の地だけ守り通すよう――――――そう訓示してある」

金木「…………志摩様」

志摩守「気にしないでくだされ、【城主】様」

志摩守「ここは天草――――――この寺沢志摩守が上様より賜った所領であるぞ。この天草をより良く治めるのは領主たる儂の勤め」

志摩守「故に、どうか【城主】様はお気になさらず、【城主】様の役目を果たしていってくださいませ」

金木「……わかりました、志摩様」

金木「俺、いろんな時代を巡って【ここ】に来たけれど、志摩様に会えて本当に良かったです」

金木「毎日、国の民のことを思い、領内の視察も欠かさず、日々の鍛錬や政務にもきっちりと励んでいる姿が俺には憧れでした」

金木「ですから、俺も志摩様が治めている天草が平穏無事でありますように精一杯 協力させてもらいます」

志摩守「ありがたきお言葉……」

金木「いやいや、若輩の俺にそこまでかしこまられると俺の方が申し訳ない気分になってくるからよしてくださいよ」

金木「いつも通りに領主様として凛々しく振る舞ってくれていた方が俺としては落ち着くというか……」

志摩守「儂は最期にこのような御仁に巡り会えたことを神仏に感謝いたす……」ポタポタ・・・




金木「…………フゥ」

石田”「ご苦労だった」

金木「あ、石田少将……」

金木「そうだ。志摩様、キリシタンへの迫害はこれまで通り続けるしかないようだけど、万が一のことがあったら天草を幕府に返還するって――――――」

石田”「それぐらいしてもらわないと【天草における一揆】は防げないだろうな」

金木「これで、【天草一揆】は何とかなるのかな?」

石田”「わからん。この辺りは改易された西軍大名の小西行長やキリシタン大名の有馬晴信らの家臣団出身の浪人も多いと聞く」

石田”「そいつらが結託して反乱を計画していた可能性が非常に高いのだ」

石田”「かの有名な【乱】の指導者:天草四郎はお前とだいたい同じぐらいの若者だというのが通説だが、」

石田”「だとするなら、指導者としてのカリスマ性や包容力があるにはあったのだろうが、」

石田”「はたして兵法を必要としないこの泰平の世において、まともな戦略・戦術 あるいは戦場で必要な要素を取り揃えられたのかという疑問がある」

金木「そうですよね。この陸繋島の天然の要害に築かれた富岡城を攻略するなんて、まず大砲がなくちゃ攻略なんて到底 無理だと思います」

金木「大砲だってちゃんとした技術がないとまともに扱えないもんですよね? それを士農工商の素人に取り扱えるかどうか――――――」

石田”「となれば、天草四郎の出身でもある30年前の旧小西家臣団の年寄り共が中心になって反乱を計画したに違いないだろう」

金木「…………でも、【天草一揆】の本質っていうのは百姓一揆ってことなんだから、年貢の取り立てが厳しくなければ反乱は起きないんでしょう?」

石田”「いや、もちろん反乱が起きるのは支配者の側としては歓迎したくないものだが、反乱が起きるといくつか大きな利点があって、」

石田”「1つは、不穏分子や不平分子を粛清して、いかようにも今後の改革を進めることができるようになるということが挙げられる」

金木「……わかるような気がします」

石田”「もう1つは、実例を作り上げることで慣習化させられるということだ」

金木「なるほど…………うん?(あれ? 石田少将のこの物言いはまるで――――――)」ピクッ


金木「ちょっと待ってくださいよ、石田少将」

金木「それじゃまるで、意図的に【乱】が起きるのを期待している支配者側の人間がいるみたいじゃないですか」

石田”「……ほう、思ったよりも察しがいいな。そうでなくては困るがな」

石田”「そうだ。俺はこの【島原・天草一揆】についてはその可能性があったことを考慮に入れている」

金木「え」


石田”「実は、大坂の陣で滅んだ豊臣秀頼が生きて薩摩に落ち延びたという生存説がある」


金木「はあ? どっかで聞いたことがあるかもしれない俗説ってやつじゃないですか、それぇ」

石田”「そういった風聞が世間に流布されていたとなれば、――――――旧小西行長家臣団の人間はどう動くと思う?」

金木「!」

石田”「真相はどうだかは知らないが、――――――何にせよ、幕府は秀頼の首実検ができずに豊臣家が滅亡を迎えたことに警戒心を抱いていたはずなのだ」

石田”「それ故に、この【島原・天草一揆】にはそういった側面があったかもしれないということでいろいろな研究があったのだ」

金木「でも、【乱】の原因は名君だった“志摩様”と“豊後様”の根本的な税制の誤りが大元なんでしょう?」

石田”「俺としても志摩守と豊後守が幕府の命を受けて意図的に悪政を敷いたというのは考え難い」

石田”「しかし、これを【乱】が起こる方向に誘導して目的達成を狙う勢力がいてもおかしくはないと俺は考える」

金木「そんなことができるっていうか、そんなことをしようとする勢力なんて、――――――うはっ、そんなの幕府以外にないじゃないですか!」

金木「この頃って“生まれながらの将軍様”の治世でしょう? 下手なことやって改易されるような真似なんてどこの大名だってしたくないはずですよ!」

石田”「そう思うだろう?」

金木「これはとんでもないことに巻き込まれ――――――首を突っ込んでしまっているなぁ」

金木「――――――歴史が変わるかも」

石田”「する決心を固めたのに、何を今更」

金木「でも、これから俺たちが歴史を変えるってことで、――――――『タイムパトロールが来てくれないかなぁ』って」

金木「それで俺たちを時間犯罪者として逮捕するつもりならこう言ってやるんだ」


――――――『最初から迎えに来い』ってな!



――――――数日後、


金木「さすがに慣れてくるもんだなぁ…………」ハア・・・ハア・・・

飛龍”「お疲れ様」ニコッ

金木「はい。ありがとうございました……」ハア・・・ハア・・・

ヲ級”「ヲヲヲ!」スッ ――――――現地素材で作ったスポーツドリンク

金木「おお、『ヲシドリ』。いつもいつも見張り番してくれてありがとな」ナデナデ

ヲ級”「ヲヲ」ニコッ

金木「…………………………」

飛龍”「どうしました、【城主】様?」

金木「あ。いや、確か飛龍さんが【艦娘】で、『ヲシドリ』は人類の敵である【深海棲艦】ってやつなんだっけ」

飛龍”「…………はい」


金木「……【兜】に比べたらまだ愛嬌があるなって。不謹慎かもしれないけど」


飛龍”「え」

金木「敵であるはずの【深海棲艦】をここまで手懐けている石田少将は本当に凄いや」

金木「飛龍さんとしてもそうは思わない? まあ、俺が他の【深海棲艦】ってやつを知らないからこんなこと言えるんだろうけど」

飛龍”「………………」

ヲ級”「ヲヲ♪」

金木「ほら、お前はこんなにも綺麗な顔を覗かせている――――――けど、【兜】たちは常に全身 鎧の下に隠れて何もわからない」

飛龍”「……そうだね。【兜】に比べたらずっと親近感のある相手かもしれないね」

金木「でしょ? だから俺は、どうしても【兜】たちとわかりあえる気がしないんだよなぁ……」


――――――俺の戦いはいつまで続くんだろう?


金木「どこに終着点があるんだろう……」

飛龍”「…………【城主】様」


金木「ま、そう言うけど、【城娘】という絶世の美姫たちに囲まれて、更には【城主】として男を磨ける日々に俺は満足しているわけだから、」

金木「こんな戦いに明け暮れる毎日を送ってジジイになって死んでいくのも悪く無いと思ってるけどね」

金木「なにせ、志摩様っていう高性能おじいちゃんの背中を俺は【ここ】に来てからずっと見てきているんだ」

金木「俺も志摩様のように老後もしっかりと働きあげて行く先々で一人でも多くの人たちに幸せがもたらせるようにならないとな!」

飛龍”「そうだね。――――――長生きしないと、ね」プルプル

金木「?」

ヲ級”「ヲヲ……」

飛龍”「…………あ、ごめんね。深い意味はないから、ね?」アセアセ


金木「――――――石田少将のこと?」


飛龍”「………………」

金木「やっぱり? そうだと思ってた。というか、そりゃ心配になるよね?」

飛龍”「……今日もまた一人どこかへ行って人知れず頑張っているから」

金木「生身で【深海棲艦】と戦う――――――言い換えれば、生身で【兜】に戦いを挑むこととさほど変わりがないからな」

金木「でも、そこまで心配なら力強くでも止めさせればいいじゃない?」

金木「確か主戦場は海の上なんでしょう? だったら、石田少将が戦場に出られないように船を壊しておくとかそういうことをすれば穏便に――――――」


飛龍”「そんなこと、できないよぉ…………全体の勝利のために一生懸命にやっている提督の邪魔なんてできない、私には」ポタポタ・・・


金木「……………飛龍さん」

ヲ級”「…………ヲヲ」


飛龍”「提督は本当はすっごく優しくて、私たち艦娘を戦わせること自体に罪悪感を覚えているぐらいなんだよ?」

飛龍”「けれども、軍人である以上は全体の勝利のためにやむなく犠牲を出してでも勝利してきた」

金木「――――――『犠牲』」ゾゾゾ・・・

飛龍”「提督はどれだけ艦娘に犠牲が出続けても勝利し続けた結果、そのうち鎮守府で独りぼっちになっていってね……」

金木「え」ゾクッ

飛龍”「部下であるはずの艦娘たちは提督の顔を見るだけで震え上がり、提督はそれを見て顔を合わせないほうがいいと思い込んで、」

飛龍”「執務室に秘書艦を入れることすらなくなり、毎日の事務を一人で黙々とやっているような状態が続いて……」

飛龍”「それから、決まった時間に食事やトイレに行くために執務室から出ると、その時間だけ提督の行く先々に静寂が走って、」

飛龍”「廊下にも窓から見える中庭にも食堂にも誰も人がいなくなるぐらい――――――!」

金木「え、ええ……!? しょ、食堂って言ったけど食事は? 誰が作るの?」

飛龍”「提督ご自身で――――――あるいは、前もって提督が来る頃を見計らって入り口の目の前の席に料理を置いておくだけ…………」

金木「あわわわわ……(な、何それぉ?! イジメってレベルじゃねえぞ!? それを栄光ある皇国海軍で――――――あれぇ!?)」

金木「あ、あれ? でも、それを知っているってことは、飛龍さんも――――――」


飛龍”「……はい。私は提督の気持ちも知らずにずっとずっと寂しい思いをさせてきた一人なんです」ポタポタ・・・


金木「あ、ごめん! 本当にごめん!」アセアセ

ヲ級”「ヲヲ……!」スッ ――――――ハンカチ

金木「あ、使っていいの? ありがとな、『ヲシドリ』」

金木「な、泣かないでくださいよぉ、きょ、教官……」アセアセ

飛龍”「ご、ごめんね。本当はそんなつもりじゃなかったんだけど……」グスングスン

金木「…………そっか。石田少将もそんな時期があったんだ」

金木「でも、飛龍さんはいつ頃から石田少将のことを理解できたのかな……?」アセタラー

飛龍”「う、うん。えっとね……?」


――――――鎮守府に花屋ができた頃からだよ。



金木「は、――――――『花』? なぜに花屋?」

金木「あ、でも、何かわかるような気がするな。石田少将って恋歌にも詳しいし、少しでも鎮守府の雰囲気を良くしようと思って――――――」

飛龍”「私もわかんなかった、最初は」

飛龍”「でも、その頃は本当に鎮守府の空気も最悪で、花屋と見て『自前で弔花を用意させるため』だって口々に噂しあっていたぐらいだし」

金木「ヴぇ?! ――――――『弔花を自前』って、その頃の石田少将ってもしかしてそこまで……あれだ、愛想が良くなかったの?」

飛龍”「うん、たぶんここまで聴けばわかると思うけど、提督の勝利へのこだわりは確かに類を見ないものだったけれど、」

飛龍”「艦娘に『全体の勝利のために死んでこい』って無言の内に――――――そう思わせちゃうところがあって、」

飛龍”「実は、私が提督の部下の中で最古参になっちゃうぐらい、艦娘を海に沈めてきちゃっているんです…………」

金木「…………何かここまで来ると本当に石田少将って哀れな人だったんだなって思っちゃう」

ヲ級”「ヲ…………」

金木「だって、――――――勘違いなんでしょう?」

金木「石田少将だって好き好んで人間とそう変わらないはずの【艦娘】たちを平気で沈めるだなんてこと――――――」

飛龍”「でも、その頃は捨て艦戦法が持て囃されていた頃だったし、今ほど戦力も技術も確立していない時期だったから、」

飛龍”「他所の鎮守府の噂や全体の傾向を鑑みて『私たちの提督もそうなんだ』って誰もが確信して、提督の許に着任した不幸を呪っていたから…………」

金木「そっか。石田少将の勝利への執念がかえって当時の世相に照らし合わされて『有能だけど最悪なブラックな艦隊司令官』って印象になったわけか……」

金木「それで、偶然の不幸が勘違いに次ぐ勘違いを加速させて、石田少将の純真さは誰にも理解されないまま自分の基地で独りってことに…………」

飛龍”「うん。そんな感じだよ、本当に……」

金木「でも、飛龍さんが最古参だって言うんなら、今の石田少将の部下たちはそのことは――――――?」

飛龍”「噂だけなら知ってるだろうけど、大本営のブラック鎮守府に対する大幅な規制の後、あれから提督がロストした艦娘は1隻も存在しないし、」

飛龍”「それで前以上に功績をあげているから、たぶん ブラック鎮守府時代の提督のことを知っている娘はそう多くないかも」

金木「そっか。それは不幸中の幸いというか、今の石田少将に繋がっているんだから複雑っていうかね…………」

金木「でも、飛龍さんとしてはその花屋ができてから石田少将への見方が変わったって言ってたけど、どういうことだったの?」

飛龍”「それは――――――」

ヲ級”「ヲヲヲ!」

金木「ん?」

飛龍”「あ」


ヲ級”「ヲヲヲ、ヲヲヲヲヲヲ!」 ―――――― 一面に花の輪を築き上げた。


飛龍”「『ヲシドリ』――――――、そう、知ってたんだ」

金木「あ」

あさひ姫「あ」

金木「……姫様」

あさひ姫「こ、こんにちは……」

金木「えと……」チラッ

飛龍”「そう、提督はいつからか鎮守府を留守にして一人で海に出ることが多くなっていた」

金木「あ……」ホッ

あさひ姫「…………フゥ」ホッ


飛龍”「そして、鎮守府に開いた花屋に足繁く通って、そこの可愛らしい売り子さんと本当に親しくお話していたんだよね……」

金木「つまり――――――?」


飛龍”「提督はいつもいつもそこの花屋からたくさんの弔花を買っては一人 海に出て人知れず海に散っていった仲間たちを弔っていたんです」


金木「!」

あさひ姫「…………石田様、やっぱりそう」

ヲ級”「ヲヲヲ!」ウンウン

飛龍”「でも、その頃の鎮守府では少しでも提督と関わない時間が至福の一時だったから、」

飛龍”「提督が護衛も付けずに深海棲艦が出没する海域に出たことにはみんな知らん振りで、そのまま帰らぬ人になることを願う者さえ――――――」

金木「………………うわぁ」アセタラー

飛龍”「私は今まで二軍扱いで戦場に出ることはなかったけど、一軍戦力がことごとく轟沈して、私が残された最後の貴重な【正規空母】だったから、」

飛龍”「提督としてもこれまでの反省を踏まえて細心の注意を払った運用をしてくれて、比較的 私は優遇されて提督との接点はあった方だったよ」

飛龍”「でも、二軍なら二軍なりに、鎮守府に務めていた先輩たちが次々と帰らぬ人になっていったことに苛立ちがあったから、」

飛龍”「必要最小限の淡々とやりとりをするだけ――――――だったんだけど、花屋ができた頃から提督が変わったような気がしてきたの」

あさひ姫「………………」

飛龍”「いつそう思ったのかはわかんないけど、提督が頻繁に花屋に通って、そして度々 一人で海に出ていくことを意識するようになって、」

飛龍”「だから、私は花屋の売り子さんとお話をする決心をしたの。何となく敬遠してきたけど、私は別に売り子さんに恨みがあったわけじゃないし」

飛龍”「そしたら、提督は確かに弔花を仕入れるために花屋を鎮守府に作ったんだけれど、」

飛龍”「その目的は、これから死に行く者に自前で用意させるためなんかじゃなくて、」

飛龍”「これまで散っていった戦友を提督自身が弔うために、たくさんの花を買っては一人 艇を出して弔花を捧げてきているって言われて――――――」ブルブル

あさひ姫「………………」


飛龍”「それを聴いた時、私、“多聞丸”のことを思い出して――――――、ね?」

金木「――――――『多聞丸』?」

金木「もしかして、それって――――――そう、【艦娘】って【石田少将の世界】における軍艦が擬人化した存在なんだろう?」メメタァ

金木「けれども、【俺の世界】と似て非なる世界でもあるから――――――、」ゴニョゴニョ


――――――もしかして山口多聞のこと?


飛龍”「!」

飛龍”「うん! そうだよ、山口多聞だよ! 楠木正成公に肖って“多聞丸”って名付けられた人だよ」

あさひ姫「――――――大楠公の幼名ですか。それはさぞ凄い人だったんでしょうね」

ヲ級”「ヲォ………」

金木「そっか。【そっちの世界】でも名物軍人になっていたのかぁ(そりゃそうだよな~! 大東亜戦争で屈指の艦隊司令官だったことだし)」

飛龍”「うん。だって、多聞丸の最期の座乗艦は私だもん」

金木「え」

飛龍”「本当は蒼龍に乗っていた頃の方が長いんだけどね。でも、壮絶な最期を飾ったから私の艦長ってことで有名になっちゃってね」

金木「うそぉん…………死んでるのかよ、山口多聞」ボソッ

飛龍”「?」

金木「あ……、それで、なんで石田少将のことを理解したら、あなたの艦長である山口多聞のことが?(すっげー違和感、――――――『あなたの艦長』って)」

飛龍”「だって、“多聞丸”って真珠湾攻撃作戦に向けて朝も昼も夜も航空部隊に猛特訓させて事故を多発させて“人殺し多聞”って呼ばれていたから」

金木「へ」

あさひ姫「まあ」

ヲ級”「ヲヲ」

飛龍”「でも、その犠牲もあって真珠湾攻撃を成功させたし、本当に多聞丸は凄かったんですよ?」

金木「――――――やってること変わんねー!(“味方殺しの多聞”とか言われてるけど、その苛烈な訓練の賜物で大東亜共栄圏に貢献したんだよなぁ……)」

金木「あ、――――――なるほど」



金木「そっか。だから、飛龍さんとしては艦長であった山口多聞と石田少将が重なるところがあって理解することができたんだ」


飛龍”「……うん」

飛龍”「そう思えたら、私は自然と提督の側にいられるようになって、段々と提督への誤解やその中にある優しさが理解できてきた」

飛龍”「“多聞丸”は最期 敗北の責任をとってみんなを退艦させた後、私と一緒に炎と共に海に沈んでいった――――――」

飛龍”「だから、私、提督のこと、今度こそ守り通すって決めたの。“多聞丸”が果たせなかったことを提督の許で果たそうって決めたんだ」





飛龍”「きっと私の提督は“多聞丸”と同じく素晴らしい人だと信じてるから」





金木「……いい話じゃないかぁ! 見ている人はちゃんと見ているってことかぁ! 良かったよぉ、石田少将……!」グスン

ヲ級”「ヲヲヲ!」ムスッ

金木「あ、――――――『自分もいる』って?」

金木「わかってるって、石田少将もわかってるって(あれ? 慣れると結構可愛くね、【深海棲艦】ってさ?)」ナデナデ

飛龍”「…………なんだろう、胸のつかえがすっかりと下りた感じかな?」フゥ

あさひ姫「……そうだったんですか、飛龍さん。これでよくわかりました」

飛龍”「……姫様?」

あさひ姫「――――――似てますね」ニコッ

飛龍”「え」

あさひ姫「何でも」テヘッ

あさひ姫「…………そうでしたか」フフッ


あさひ姫「(飛龍さんは石田様にかつての艦長である“多聞丸”の姿を見て、私もまた石田様に私を生み慈しんでくださった“石田治部”のことを――――――)」



――――――肥前国 島原


石田”「やはり、異常なほどに空気が淀んでいるのが感じられるな」(虚無僧に変装)

石田”「記録に拠れば、松倉重政のキリシタン弾圧は諸大名と同じく 貿易相手国の人間ということもあって控えめであったようだが、」

石田”「長崎出島に貿易を独占させ、鎖国体制への移行を目論んでいた時の幕府による徹底的な弾圧が命じられると、」

石田”「松倉重政は他には類を見ないような『神罰によって狂死した』とその死後に宣教師から言われるような拷問を加えるようになったという」

石田”「顔に“切支丹”の焼き印を押したり、雲仙地獄に沈めたり――――――、それは切支丹のみならず、重税に喘ぐ庶民にも及んだ」

石田”「そして、キリシタン弾圧の取り組みを幕府に対して強調するためにフィリピンのルソン島の攻略を申し出ており、」

石田”「その先遣隊として無謀な遠征準備をし、――――――その出兵実施の矢先に小浜温泉で急死した」

石田”「大和国 五条の名君“豊後様”がなにゆえ、肥前国 島原の暴君になったのかは知らんが――――――、」

石田”「こんなにも沈鬱な空気が漂う城下町に変えてしまって、それで何も感じないというのか……」

ザッザッ・・・

石田”「…………ここか」



――――――肥前国 旧・有馬氏の支城:原城址


石田”「ここに一揆勢が立て籠もることになったが、――――――見ての通り、有明海に張り出した岬の断崖絶壁に面した補給能力に難ありの城」

石田”「一揆勢はすぐに食糧不足に悩まされ、断崖絶壁を降りて海藻を食べて食い繋ぐしかなかったことが検死から明らかとなった」

石田”「そして、一揆勢は【乱】勃発のわずか3ヶ月後の総攻撃で皆殺しにされ、一揆軍 約3万7千人の死体が廃墟となった原城に埋められることになった」

石田”「…………なるほどな。【乱】の元凶である松倉重政が一国一城令に従って新たに建てた島原城の建材に利用されて廃城にはなったが、」

石田”「それでも修繕すれば少しは城らしくはなるか――――――不徹底だな。こういうところで【乱】を意図的に誘引したようにも穿った見方ができてしまう」





石田”「さて、ここが確かに原城ならばきっと――――――」

石田”「む」

クルスの女性「…………虚無僧さんですか」

石田”「……そうだが」

クルスの女性「ここは領主様の命によって立入禁止ですよ。いくら虚無僧さんでも長居してはなりません」

石田”「そういう貴様こそ、よくもまあそんな南蛮被れの衣装に大胆にもクルスを身にまとっているものだ」

石田”「それでいて、領主様に仕えているということは――――――、」


――――――貴様が“原城”か。


【城娘】原城/クルスの女性「はい。そうですが、あなたは――――――?」

石田”「悪いことは言わん。貴様に救える命などない――――――貴様が守ろうとしている命は全て人柱なのだ」

原城「…………!」

原城「な、何のことでしょうか?」アセタラー

石田”「――――――3ヶ月だ。3ヶ月で全て終わる」

石田”「そして、その後ここにある城郭の全ては徹底的に破壊し尽くされ、城内には賊徒の骸で埋め尽くされ、貴様は【はぐれ城娘】となるのだ」

原城「――――――!」

原城「そ、そんな…………」

原城「ハッ」ゾクッ

石田”「貴様がどうなろうと知ったことではないが、ただこれだけは教えろ」シュッ


――――――松倉重政は本当に生きているのかを。


























金木「――――――待てよ?」

金木「“豊後様”として今も大和国の五条で慕われているという松倉豊後守がここまで変わり果てるなんて絶対に何かあったはずだ!」

金木「搾取に次ぐ搾取――――――あまりにも荒唐無稽なルソン島攻略なんか1国を預かる人間にはとても思いつくようなことじゃない!」

金木「本当はそれらを名目に税収を懐に収めて他の何かをやろうとしているんじゃないのか?」

金木「――――――【兜】たちが宝蔵品や金目の物を略奪しまくる習性によく似ている気がする!」

金木「まさか、島原は――――――、豊後守は――――――!?」アセタラー




















????「ヒッヒッヒッ、この手で泰平の世を地獄に変える――――――SATSUGAIし放題だぜぇ! あぁははははは!」



陣営紹介:【城主】――――――【城娘】勢
某【刀のゲーム】の視点から見れば、完全な時間犯罪者一味であり、絶賛(自己正当化)過去改変中――――――、
今度は【島原】で【乱】の勃発を未然に防ごうと奔走しているが、これまでは【関ヶ原】【姉川】【稲生】を経て【島原】に来たのだが、
実際には肥前国 唐津でしばらく【兜】の相手(=レベリング)をしてから天草と【島原】に赴いており、この辺は完全にオリジナルストーリーである。

どうして【島原・天草一揆】に関してここまで掘り下げてわざわざ別スレにまで及んで書いているのかと言えば、
忘れているだろうが、これは【艦これ】提督たち「ユウジョウカッコカリ?」【物語風プレゼン】の超番外編である。
つまり、本筋である物語風プレゼンのストーリーに還元されるストーリーだからであり、
はっきり言えば、どうして趣里鎮守府の石田司令が【深海棲艦運用システム】の開発運用に着手したのか物語の成り行きを補足説明するためのものである。
だから、有り体に言えば、完全なオマケであり、本筋から言えば別にここまでレス数を割いてまで入れる必要のない内容でもある。
しかしながら、本筋が物語風プレゼンである以上、同時にストーリー性もある程度 補完しておかないと提案内容の動機が意味不明なものとなり――――――。

――――――まっ、筆者自身がやりたいと思っているからやっているだけのことなのです。

極論はそうであり、結論としては読み物としての面白さの追求とストーリー性の補完のためにやっているわけです。
誰もやったことがないようなクロスオーバーな超番外編を世界にたった一人 電脳の海の片隅でやってたっていいじゃないか!
そう思って、石田司令のモデル人物との因縁を絡ませて、同時に他のゲームへの提案内容も含めさせて、超番外編とさせていただいております。



金木青年/城主
【城プロ】の主人公である【青年】であり、将棋に少しばかり嗜みのあった貧乏苦学生の大学生。
本来ならば、ユーザーの分身であることから顔の存在しない【城主】の一人でしかないが、物語風プレゼンのために設定が特別につけられた。

性格は貧乏くさいところが滲み出ているものの、それだけに資源1つ1つの大切さが身に沁みており、
【城娘】たちを指揮する【城主】としては堅実な戦い方ができており、歴戦の【城主】として安定した戦いぶりを見せている。
貧乏性から貯金や収集が趣味なところがあり、【城娘】を運用するための資源を潤沢に集める小遣い稼ぎが得意技。
しかしながら、貧乏であったことを理由に好きだった女の子に手ひどくふられて失恋したことがあり、
その気まずく苦い経験から、人並みに欲求はあるものの、【城娘】に対しては生き死にを共にした仲間として手を出さないようにしている。
あくまでも自分で稼いだカネにしか人がついてこない(=悪銭 身につかず、カネの切れ目が縁の切れ目)と考えており、
【城主】様として崇められることで貰える黄金などには手を付けないようにし、あくまでも自分の身の丈にあった幸せを追求している。
そういった意味では、その若さで貧乏人でかつ欲求も旺盛な歳ながら、しっかりとした精神性を持っていると言える。

今回、石田司令と出会う以前に、最初の【関ヶ原】において金本提督らと会って【乱世】で生き抜く決意を固めることとなり、
その証として金本提督から【ケッコン指輪】と【下賜品/軍刀】を受け取り、初心を忘れないように大切に保管している。
しかしながら、金本提督に対する印象そのものは最悪であり、『自分が欲しいと思うものを全部持っている』ように見えたという。

それから、唐津における石田司令との共同戦線によって様々なことを学び、唐津領主の寺沢志摩守の生き様に薫陶を受け、雄々しく成長した。
現在、【島原・天草一揆】が起きないように奔走するものの、幕府のキリシタン弾圧に対しては時流として見逃すしかないことを歯痒く思っている。
それでも、石田少将から焚き付けられた【城主】としての使命に目覚め 行動を起こしており、
【島原・天草一揆】の本質が百姓一揆であることから問題の天草の領主であった寺沢志摩守に訴えかけ、何とか藩政の改革に漕ぎ着けた。

同じ時間漂流者である石田少将への理解を示し、【元の世界】に帰れる方法がないか探しており、彼に対して極めて親身に接して敬意を払っている一方で、
自身が失恋した経験があるためか、石田少将があまりにぶっきらぼうな人付き合いのために、石田少将の身辺で何かと気苦労している飛龍や名護屋城を気遣っている。
そうした【異世界】同士のふれあいの中で得た新たな考えや見方により、知見や直感が冴え渡ることになり、【城主】として大きく成長することになる。



石田少将/石田司令/石田提督 ……趣里鎮守府:本編Wサイドの主人公
【乱世】に時間漂流してきた【艦これ】世界の【提督】だが、無双の才覚の持ち主であり、
すんなり【乱世】に適応すると同時に積極的に行動を起こしており、それによって唐津を襲う【兜】の本拠を壊滅に追いやっている。
また、日本史にも深い理解と教養を示しており、今回の【島原・天草一揆】の背景や経過もだいたい把握しているために、
金木青年の立場を利用して【島原・天草一揆】の勃発を未然に防ごうと日夜 暗躍することになる。
これは合理主義と現場主義に裏付けされた彼なりの美学に基づくものであり、過去改変によるタイムパラドックスに関しては完全に眼中にない。

一方で、関ヶ原の戦いで西軍を率いた石田治部の影法師と言われるほど容貌が似ていると言われて常に不愉快な気分にさせられてもいる。
事実、氏が同じであり、頭はいいけど人付き合いが悪いところなどを幼い頃から『石田治部のようである』と揶揄された記憶があり、
彼自身も石田治部のことを“歴史の敗者”と認識しているために、同一視されることをひどく嫌っている。
そのために、関ヶ原の戦いからおよそ30年後の世界で普段は虚無僧などに扮して活動しており、金木青年よりもよっぽど【乱世】に順応している。

徹底した合理主義や組織力学の哲学――――――それから艦娘たちを数えきれないほど沈めてきた負い目から、
なるべく情を見せずに、不平等にならないようにきっちりとした、まるで精密機械のような無感情で秩序だった鎮守府運営をしてきたが、
飛龍や名護屋城のような押しの強い存在に対しては思わず本性をのぞかせることがあり、
更に【深海棲艦】のヲ級『ヲシドリ』に対してはかなり本心を曝け出しているので冷酷非情というわけではない。

艦娘や深海棲艦に関する研究や考察に熱心に見えるが、それ以上に妖精科学の研究にも力を入れてきており、
作中でもたびたび出てくる\勅命/の扇を護身具として自作しており、そこから放たれる電光地雷などの超常兵器の実用化もしている真性の天才である。
ちなみに、陰陽師タイプの軽空母は“勅令”の文字を浮かべて艦載機を発進させるが、こちらは“勅命”となっている。

\勅命/の性能を【艦これ】風に表すと――――――、、

1,艦上攻撃機/流星改×4 ← 補給の目処が立たない

2,対人兵器/電光地雷×4 ← ただし、すでにほとんど使い切って残り1つのみ

3,照明弾/照明弾×4 ← ただし、こちらもほとんど使い切って残り1つしかない

4,応急修理要員/応急修理女神 → 使用後、\勅命/の扇は破損する。


空母ヲ級『ヲシドリ』
石田司令が最初に【捕獲】して【調教】に成功した 初の【調教済み深海棲艦】であり、元 敵艦隊のアイドル。
敵キャラとしてはデザインが人気のキャラなだけじゃなく、石田司令も満足するレベルの高い戦闘力を誇る 味方になっても頼れる新戦力である。
最初の【調教済み深海棲艦】としての思い入れがあるだけじゃなく、石田司令の深海棲艦の探究ひいては【捕獲】の原点になった艦種なので、
明らかにどの艦娘よりも密接にコミュニケーションをとっており(そうでもしないと【調教】にならないからしているわけだが)、
【調教】の結果、艦娘に対する距離感は依然としてあるものの、喋れないだけで十分なコミュニケーション能力を得るに至っている。

筆者としては、【ボス級深海棲艦】がこれまでの深海棲艦とは違ってここまで注目される1つの要因として、
『敵で初めて喋った』というその衝撃と第一印象から特別に思っているので、ザコの深海棲艦は一様に喋れない認識でいます。
もし【ボス級深海棲艦】ですらもセリフ無しの存在であったならば、二次創作としては『ヲシドリ』にも言語能力があったのですが…………。


正規空母:飛龍
趣里鎮守府におけるメインヒロイン枠。拓自鎮守府のメインヒロイン枠のビスマルクとは対照的な関係性を築いている。
しかし、関係は徐々に縮まっており、明らかに唯一のユウジョウ相手が唯一のケッコン相手の武蔵よりも親密な間柄を築くことになっている。
やはり、鎮守府の最古参として石田司令にずっとついてきたことに、彼も何も思わないわけではなく、彼しても特別に思うところがあるようだ。

時系列的にこの超番外編1は2014年12月某日以前の過去の物語となっており(今回の投稿で本編は2015年3月にまで達している)、
【乱世】において、初めて彼女が石田司令に対して抱いていた感情が吐露されることになり、
はたして、どういった経緯があって石田司令から本当の意味で信頼を勝ち取ることができたのかはこれから語られることになる。



あさひ姫/名護屋城   >>71
本作オリジナル城娘であり、『豊臣政権下の日本国そのもの』が兵力であったために戦闘能力はあらゆる城娘を凌駕するものとなっている禁断の城娘。
この“あさひ姫”の名は“金鯱”の那古野城との区別のために便宜的につけたものであり、名護屋城そのものあった別称ではない。
しかしながら、これには物語中での由来以外に参考になったモデルがあり、これまた偶然の一致で名護屋城と豊臣の治世の衰亡を暗示させたものとなった。
ちなみに、そういった暗示や偶然の符合については、そこまで名付け親である石田少将や金木青年が知る由もなく、結果として凶兆の命名となってしまった。

・あさひ姫 → 朝日姫
名護屋城の城主である豊臣秀吉の妹で、兄:秀吉が織田家に仕官した頃にはすでに農夫のところに嫁いでいたものの、
天正14年(1586年)の徳川家康の和睦のために強制的に離縁させられて、まさかの家康の継室として徳川家に嫁いでいる。
その後、天正16年(1588年)に母:大政所の病気の見舞いを理由に上洛し、そのまま京都の実家である聚楽第に移り住むことになった。

・あさひ姫 → 旭城:実在していない城
1,愛知県尾張旭市城山町長池下4502 名古屋市の東側
昭和52年に城山公園に建てられた“模擬天守閣”。四重四階で、内部は1Fがレストラン、2F茶室、3F休憩所、4Fが展望台となっている。
本来、この地にあったのは「新居城」であり、“金鯱”の「名古屋城」から見て東側、比較的近いところにあり、隣にあると言っていいぐらい。
筆者が考えた“あさひ姫”の実質的な名の由来は実はこれ。

参照:名古屋観光
http://nk.xtone.jp/archives/asahijo.html
参照:尾張旭市
https://www.city.owariasahi.lg.jp/koukyousisetu/asahijou.html

2,福岡県豊前市大字千束
明治2年(1869年)、版籍奉還により小倉藩の支藩であった新田藩主:小笠原貞正は千束藩知事に任命され新たに陣屋を建設した。
明治3年(1870年)、城が完成する。。
明治4年(1871年)、築城後わずか1年あまりの廃藩置県により廃城となった。

参照:城郭放浪記
http://www.hb.pei.jp/shiro/buzen/asahi-jyo/

・あさひ姫 → 朝日(戦艦)
本編における“あさひ姫”の名の由来はこれ。
敷島型戦艦の2番艦。日露戦争、第一次世界大戦では主力艦として参加し、日中戦争、太平洋戦争では工作艦として参加、実に40年以上に渡り活躍した。
ただし、1942年5月25日戦没。シンガポール攻略後、深夜にカムラン湾南東で米潜「サーモン」の雷撃で沈没。

一方、朝日(戦艦)の姉妹艦たちの行方は――――――、

1番艦:敷島 → 生存 のち 解体
第一次世界大戦後のワシントン軍縮会議により兵装、装甲の全てを撤去し、練習特務艦となり佐世保港に繋留、使用されていた。
終戦時は推進器が撤去され佐世保海兵団所属の練習艦として相ノ浦に無傷で繋留されていた。戦後の1947年に佐世保で解体された。

3番艦:初瀬 → 日露戦争で戦没!
1904年(明治37年)2月9日からの旅順口攻撃に参加し、5月15日旅順港閉塞作戦で旅順港外、老鉄山沖を航行中に左舷艦底に触雷し、航行不能となる。
僚艦「笠置」による曳航準備をほとんど終えた午後0時33分に2回目の触雷をし、後部火薬庫が誘爆、大爆発を起こして約2分で沈没した。

4番艦:三笠 → 生存 のち 永久保存
1904年(明治37年)からの日露戦争では連合艦隊旗艦を務め、連合艦隊司令長官の東郷平八郎大将らが座乗した。
現在は、神奈川県横須賀市の三笠公園に記念艦として保存されている。




そんなわけで今回の投稿はこんな感じで 正規(=物語風プレゼンの本筋として)の投稿は前回で終わりですが、
ここからしばらくはおそらくどうでもいいだろう超番外編がメインの筆者のワガママな投稿が続きますので、ご了承ください。

本編である【艦これ】への新たな提案内容に関しては か ぁ な り 待ってください。プレゼンターがまだ内容の大枠の大枠しか思いついてないので。
それと、2015年度からの【艦これ】の数々のアップデート内容の動静を見守っておきたいので、もしかしたら再開は夏イベント終了後になるかも。
2014年度が神アップデートの連続であるのならば、はたして2015年度が堅実なアップデートの連続となるのか、やりすぎてしまうのか――――――。


また、他に湧いて出てくる数々の擬人化ゲームの奔流に押し流されずにいられるか――――――。


それでは、最後に白紙を挟んでいつもどおりの流れにしておきますので、ここまでご精読ありがとうございました。
















































































番外編 2014年から2015年へ

4,おかしなお菓子なオカシナナ?

――――――拓自鎮守府


ワイワイ、ガヤガヤ、キャッキャッ!


朗利「雛祭りだねー」

愛月「そうですね」

朗利「思い出すなぁ。――――――去年はもうちょっと後でな、ホワイトデーということで【艦娘へのクッキー】っていうのがあってな」メメタァ

愛月「え、そうだったんですか?」

朗利「ああ。とはいっても課金アイテムで、内容は【間宮】+【鋼材×314,ボーキ×314,開発資材×2】って内容でね。314ってところが洒落てるだろう?」メメタァ

愛月「へー」

朗利「でも、こうして見ると【艦これ】はキャラゲーとして季節毎の催し物が昔から盛んだったし、今だとずいぶんと進化したもんだ」メメタァ

愛月「ですよね。昔から執務室の模様替えも充実してましたしね」

愛月「それに去年のクリスマスから期間限定ボイスやグラフィックも大幅に増えましたから、ますますパワーアップですよ、司令官!」メメタァ

朗利「そうだな。改二の実装のペースも早くなっている感じがするし、ますます楽しみって感じだ」メメタァ

朗利「いやぁー、今年の冬イベント攻略中に浜風をバレンタインデー仕様でドロップした時には思わず『何これぇ!?』って思ったわぁ」メメタァ

愛月「そうですね。エプロン姿でクッキーを焼こうとしていましたよね。すっごく可愛かったですよ」デュフフフ・・・

朗利「そういうイベント仕様はまあ『ゲームだから』楽しめるのであって、」


朗利「――――――『本当にあの姿でドロップするというわけではない』とプレゼンターは物申しておりました」メメタァ


愛月「へ?」

朗利「いや、何でもないぞ。………………これはゲームだ。ゲームなんだ!」ブツブツ・・・



――――――これまでの季節の催し物


【艦娘からのチョコ】
艦娘から贈られたチョコ。クリックして資源にするのもよし、保存しておくのもよし。
《燃料×700,弾薬×700,鋼材×700,ボーキサイト×1500》
※2014/02/14~16のログインボーナス

【艦娘へのクッキー】 ※課金アイテムです
ホワイトデー特別アイテム、「艦娘へのクッキー」※「間宮」券付です!
《鋼材×314,ボーキ×314,開発資材×2,「間宮」×1》
※2014/03/14~04/09まで、アイテム屋さんで購入

【プレゼント箱】
特別な時期にだけ発見が可能となる丁寧に包装された「プレゼント箱」。開封時に希望の中味を選択することが可能です。
交換(「資源」,「甘味」,「資材」から一つ選択):「資源」→《燃料×550,弾薬×550》,「甘味」→《伊良湖×1》,「資材」→《開発資材×3,改修資材×1》
※2014/12/12~12/26まで、特定のプレゼント箱ドロップ海域でドロップ

【艦娘からのチョコ】……2回目
艦娘から贈られたチョコ。クリックして資源にするのもよし、保存しておくのもよし。
《燃料×700,弾薬×700,鋼材×700,ボーキサイト×1500》
※2015冬イベント「迎撃!トラック泊地強襲」E-1突破報酬

【菱餅】
桃の節句の時期にだけ発見が可能となる美味しい「菱餅」です。展開時に希望の中味を選択することが可能です。
交換(「資源」,「甘味」,「資材」から一つ選択):「資源」→《燃料×600,ボーキサイト×200》,「甘味」→《伊良湖×1》,「資材」→《改修資材×1, 高速修復材×2》
※2015/02/23~03/13まで、特定のプレゼント箱ドロップ海域でドロップ



【勲章】
暁の水平線に勝利を刻んだ提督に贈られる「証」。資源や改修資材、4つ集めて改装設計図と交換することも可能。
交換(「改装設計図」,「資源」,「改修資材」から一つ選択):
「改装設計図」→【勲章】×4=《改装設計図×1》,
「資源」→《燃料×300,燃料×300,鋼材×300,ボーキサイト×300,高速修復剤×2》,
「改修資材」→《改修資材×4》

【甲種勲章】
難易度の高い作戦を、精鋭の艦娘たちと共に攻略した提督のみに贈られる勝利の証。それが「甲種勲章」。資材等に交換することも可能です。
交換→《燃料×10,000 & 改修資材×10 & 開発資材×10 & 家具箱(大)×10》




朗利「これからどんなアイテムや衣装が実装されていくのかな?」

愛月「4月だったら花見の団子、5月だったら端午の節句で柏餅、6月は祝日がなくて、7月だったら夏野菜セットとか花火セットとかで――――――」

愛月「そうそう、月見団子なんかもありそうですよね」

朗利「まあ、【菱餅】や【プレゼント箱】に関して言えば、資源をまとまった単位でゲットしていることになるから、」メメタァ

朗利「臨時の貯蓄資源として活用できるから、今は割りと悪い気はしないかな? ――――――艦娘のドロップができなくなるのは癪だけど」メメタァ

愛月「そうですよね。他所の鎮守府の話を聞く限りだと、あまり手に入りづらいものらしいですけれど、」

愛月「今年は【菱餅】がいっぱいです! 駆逐艦のみんなに行き渡るぐらいの【菱餅】を確保できたんじゃないでしょうか?」キラキラ

朗利「俺って、本当に変な具合に運に恵まれているんだなぁ……」

愛月「そうそう! こんなのもどうだと思います?」

朗利「うん?」


――――――【ウェディングケーキ】と【艦娘の花嫁衣装】!


愛月「【ケッコンカッコカリ】導入○周年記念“抜き打ち”ブライダルフェア!」

愛月「ログインボーナスで【ケッコンカッコカリ】をしている艦娘から限定でもらえるのッ!」キラキラ

朗利「へえ、それは面白そうだな。――――――いい案だな、提案してみたらどうかな? その時はぜひとも腕を振るわせてもらおう」

愛月「ありがとうございます! ぜひともやらせていただきます!」キラキラ

愛月「でも、――――――懐かしいですよね。清原提督が慰問に来てくださった時に1m規模のヘクセンハウスなんて作りましたっけ」

朗利「……そうだっけな。懐かしいな。あの頃から俺にしても愛月提督にしてもずいぶん変わったもんだ」

愛月「それで、海の日(07/20)は艦娘がアニメ仕様で水着になってぇ! 体育の日(10/10)はアニメ仕様で体操着姿になるのよぉ!」ハアハア・・・

朗利「特に吹雪なんかは【公式アニメ】のおかげで衣装が充実しそうだな」メメタァ

朗利「楽しみだな、うん。いろいろと」

愛月「はい! 今度はどんな衣装替えと催し物があるんでしょうねぇ!」ワクワク

朗利「うん――――――あ、よく考えたら、“ジューンブライド”っていう言葉があるんだし、ブライダルフェアは6月にやったらいいんじゃない?」

愛月「――――――素敵です、司令官! ふぅおおおおおおお滾ってきたああああああ!」ムゥッハー!

朗利「あ、あんまりクレイジーにサイコーにハイにレズをこじらせすぎるなよ~?」ハハハ・・・


Next:第9話 海軍総隊を結成せよ! に続く!












ここから先はまた物語風プレゼントはまるで関係ない超番外編となります!

注意:本来のプレゼンとはまったく無関係のこの二次創作独自の世界観と筆者の趣味で交じり合った独自展開となります。
→ よって、プレゼンの提案内容や本文にのみ関心がある方には蛇足でしかないので読み飛ばしてもらってかまわない。
→ あくまでも、詳細な設定が公式でぼかされている【艦隊これくしょん】の世界観に対する素人による一意見でしかない。
→ また、『解体すれば普通の女の子になる』という説には筆者は真っ向から反対しているので“艦娘∈人間”の考え方をしている方には目の毒な内容です


超番外編はその名の通り“超番外編”であり、【艦これ】の二次創作であるこの物語風プレゼンの趣旨に反する、
この世界観独自の拡がりを描いた三次創作に近いものとなっております(二次創作の中で自ら二次創作している扱いである)。
これまでの物語風プレゼンに期待している方々は >>24 同様にスクロールバーを使って飛ばしていってください。

超番外編は次のレスからスタートし 終わったら直後に白紙を挟むので白紙を目印にスクロールをして、どうぞ。




























超番外編1 浪速のことは 夢のまた夢  -この命 果てても私が御守りします!- 第5章

――――――マンション城:ペントハウス(天守)


金木「………………」

二条城「どうなさいました、あなた? そんな物憂げなお顔をなさって」

金木「いや、今日も石田少将はどこで何やってるのかなーって」

二条城「そうですわねぇ。あの御方は本当に石田治部にそっくりでございますから」

金木「うん? 確か二条城って関ヶ原の戦いの後の築城じゃ――――――」

二条城「そうですよ? でも、覚えているもんなんですよ」


二条城「それだけ、石田治部の存在は天下にとって大きかったのですから」


金木「石田少将は本当に凄い――――――けど、あの人に心休まる日が訪れることがあるのだろうか?」

二条城「…………石田治部を失ったことで大坂城の規律は緩み、それから大坂の陣の時には浪人が多く入ることになって大いに乱れていたとか」

金木「やっぱり石田治部は正しかったんだよ。――――――ただひたすらに正しかった」

金木「けれども、人間って正しいってわかっていてもそれに反発する習性を持っているから、どこまでも救われない――――――」

金木「そして、ただひたすら豊臣にとって正しいことだけしかできなかった石田治部はもっと救われない――――――」


――――――――――――

―――――――――

――――――

―――



――――――マンション城:ペントハウス(天守)


金木「…………【兜】共めぇ」

金木「やつら、いったいどこから湧いてきやがる? さっさと潰さないと【乱】の時にまた厄介なことに――――――!」

石田”「おそらくは、唐津の時と同じく天草諸島のどこかの島に隠れているのだろうが…………」

石田”「まだわからないことは、【兜】にも戦略性――――――つまりは明確な目的意識があって襲ってきているかどうかがまだわからない」

金木「そりゃあるに決まってるんじゃないんですか?」

金木「だって、やつらはこれまでにだって各時代で暗躍して内紛を誘発してきたことだし、」

金木「これから起こるだろう【島原・天草一揆】にも絶対に関わってくる! そうでしょう?」 


石田”「しかし それなら、なぜこの時代のこの場所なのだ?」


金木「?」

石田”「やつらが行う宝蔵品の略奪にしても、ただ単に金品を巻き上げるのであれば金山や銀山をその圧倒的な武力で制圧すればいいだけのことだ」

石田”「しかし、やつらは武力で以って日本を征服しようという考えはこれっぽちも伝わってこない」

石田”「むしろ、野盗と化した浪人たちを使って情報収集や監視に終始していた。あれだけの大兵力にしては恐ろしく慎重に見えた」

石田”「そして、唐津における【兜】たちの真の狙いは、――――――名護屋城にあった」

金木「はい。今までの襲撃は俺を唐津に釘付けにしている間に名護屋城を見つけ出すことにあったようですから『してやられた』ってもんだぜ」ググッ

石田”「しかし、神集島の【兜】たちの拠点を叩いたことで唐津から【兜】を駆逐することに成功した」

金木「ええ。石田少将と佐和山城の大手柄ですよ」

石田”「だが、【兜】たちを従えている真の大将を取り逃してしまった…………」

石田”「おそらくはここしばらくは活動できないと踏んでいたが、こんなすぐ後にまた【兜】の襲撃が天草であろうとはな……」

金木「しかたがなかったことですよ! それにもしかしたら他所の【兜】の群れがたまたま襲ってきただけかもしれませんし」

金木「それよりも、今まで謎だった【兜】について知ることができて、今まで以上に対策が立てられるようになっただけでも大きな成果ですって」

金木「でも、――――――あんな無茶はもうしないでくださいよ、石田少将?」

石田”「……まあ二度目は通用しないだろうからするつもりはないがな」

金木「またそう言ってぇ…………飛龍さんの気持ちを考えたことあるの?」ヤレヤレ

石田”「…………急に何の話だ?」ジロッ


金木「聞きましたよ、石田少将がどういった軍人だったのか、それなりに(やっぱ怖えな、――――――本職の軍人ってやつは)」

石田”「………………」

金木「軍艦が擬人化したような化物に水上オートバイに乗って立ち向かってるんだって?(でも、俺は【乱】を止めるって決めたんだ! ビビってらんねえ!)」

金木「凄いよ、石田少将。ただものではないことはわかってはいたけど、――――――生身で戦うなんてさ?」

金木「俺が最初に【関ヶ原】で出会った金本提督――――――あの成金ですら、パワードスーツなんか着て戦っているのに」

金木「すげーよ、ただそれしか言えない」

石田”「………………」

金木「俺はただの貧乏苦学生で、石田少将のように人の上に立つべき器だとか軍略だとかそんなのは全然からっきしで、」

金木「ただ流されるままに【城娘】と【兜】の戦いに身を投じて、俺ではなくて【城娘】たちの頑張りで何とかしてこれただけなんだ」

金木「それなのに、石田少将は全然違う。――――――金本提督もまじめに戦おうとしてパワードスーツを自ら着込んでいるだけ凄いんだけど、」

金木「生身で頑張って、しかも敵の【深海棲艦】ってやつの理解もしようとしてさ? 俺からすれば石田少将の方が一歩も二歩も先を行ってるよ」

金木「それでいて、今度は【ここ】では謎に包まれていた【兜】の正体に迫る功績をあげたんだよ?」

金木「そんな凄い人を尊敬しないわけがないじゃないですか!」

金木「だからこそ、【こんなところ】で本来 果たすべき役目を――――――帰るべき場所を帰れずに朽ち果てるところなんて見たくないし、」

金木「純粋に、あなたの教えや生き様を少しでも近くで多く見ていたいと思えたから…………」

石田”「…………金木」

金木「俺は【城娘】と一緒に【乱世】を生き抜くって決めたんだ」

金木「だからこそ、頭脳明晰で行動力もあって一本 筋の通った強い意志の持ち主である石田少将に憧れてるっていうか…………」

金木「きっと石田少将だったら、俺とは違ってメソメソすることなく、もっとより良く【乱世】を生き抜いたことでしょうね」

石田”「………………ハア」


石田”「おい、やめろ」

金木「え」

石田”「その……、なんだ?」

石田”「確かに俺は誇りある皇国軍人としての職責を全うするためにどこであろうと力の限り生き抜くつもりではあるが、」

石田”「それでも、やはり……、――――――帰れるかどうか不安になって泣きたいと思う時だってある」

金木「え?」

石田”「それにだ。――――――そこまで褒められたものじゃないぞ」

石田”「今の俺の性格は、他でもない石田治部とそっくりな性質が全て招いたことでもあり、それを直そうともせずにいた結果が今の俺だ」

石田”「確かに俺はクズ共にはない才があったからこそ、ここまでいろんなことに手を出してことごとく成功に導くことができたが、」

石田”「それは同時に、無能ゆえの卑屈さよりも身を滅ぼす危険性が高く、質が悪い自信と紙一重の高慢さにも繋がっていて、」

石田”「気づいた時には、功績はあれども それを心から讃えてくれる友の姿はなくなっていたのだ…………」

金木「………………」

石田”「考えてもみろ」

石田”「俺は性格だけじゃなく、顔までも石田治部にそっくりと言われるぐらいなのだぞ」

石田”「そんな俺がこの【乱世】で真っ当に生きていけると思うか? 才覚はあれど天下人たる器に必要なものが最も欠けているのだ」

石田”「そういう意味では、俺は本当に幸運だよ」ポンッ

金木「え」


石田”「お前がいたからな。お前という【城主】がいたから俺は今日まで存分に力を振るうことができたのだ」


金木「えと……?」

石田”「つまり、石田治部にしても俺にしても、表でみなを導く誰かの下で裏方に徹していた方が力を発揮しやすいということだ」

石田”「特に、能力はあっても人から嫌われやすい質の人間としてはな」

金木「そんなことは――――――」


石田”「それだ」


金木「?」

石田”「金木のその卑屈さからくる謙虚さというのか、裏表のない素直なところに俺は助けられている」

石田”「俺としても相性の悪い人間と一緒に暮らしていかなければならなかったら、ここまで力を振るうことはできなかっただろう」

石田”「むしろ、もしかしたら【城主】を見限って【兜】方につくことも十分に考えられるのだからな」

金木「いいっ!?」

石田”「安心しろ。俺も人に対して言い過ぎるところはあるとは思ってはいるが、お前はそれを素直に聞き入れて感謝すらしてくれるのだから」

石田”「俺の方が歳上で しかも誇りある皇国軍人だというのに、本来なら護衛対象であるお前にはひどく安心させられてばかりだ」

金木「そ、そうだったんですか……」ハハ・・・

石田”「こういうのを“吊り橋効果”というのかは知らんが、“唯一の味方”ということもあって自然と入れ込んでいたようだ」

金木「それを言うなら俺もですよ」

金木「本当に良かったです。石田少将が頭の堅い軍人さんじゃなくて本当に…………俺としても最初は軍人ってことで怖い印象がありましたから」ホッ

金木「それに、あの金本提督の知り合いということで不思議と縁があったおかげで、共通の話題を持つこともできましたからね」

石田”「…………そうだな(金木青年が金本提督に似ている理由というのは――――――)」


金木「さて、となると【兜】には金品を巻き上げる以外の目的があって、今日もまた襲ってきたと」

石田”「おそらく【兜】には明確な狙いがあるはずなのだ」

石田”「そして それは、天敵であるはずの【城娘】にも関係してくるように思う」

金木「…………どういうことです?」

石田”「志摩守が名護屋城に関することを包み隠さず全て話した中にあっただろう?」


――――――【城娘】には実在の城郭の血脈が受け継がれていると。


金木「……確かにそんなようなことを言ってましたね」

金木「けど、確かに城といえば城だけどさ? 【城娘】は付喪神の類なのであって、実際の城に置いてある金品を取り出せるわけでもないですぜ?」

石田”「ああ。だが、やつらはどういったわけか天敵であるはずの【城娘】を【捕縛】するだろう? 生かしておくだろう?」

金木「あれはこちらから少しでも金品を巻き上げて懐を潤すためであって――――――」

石田”「なら、どうして【城娘】によって身代金の額に違いが出てくる?」

金木「え? それは……、中世ヨーロッパの貴族の捕虜交換と似たようなもんじゃ――――――?」

石田”「そうだ。【城娘】にも格付けというものがあって、【兜】の連中は狙いの【城娘】がいるからそれ以外を手放すことを厭わないのだ」

金木「!」

金木「じゃあ、少なくとも名護屋城はそれに当たる存在だと?」

石田”「ああ。確かに名護屋城は他の【城娘】とは一線を画す存在なのがわかる。ああ見えて能力はずば抜けて高いしな」

金木「そっか。となれば、名護屋城の他にも保護すべき【城娘】がいるってわけなのか」


石田”「そして、神集島に潜入した際の感想だが、――――――どうも【兜】の連中は金欠状態が続いているように見えた」

金木「そりゃあ、唐津では狙いの【城娘】の捜索をするための大規模な陽動だったけれども、」

金木「あれだけの【兜】を送り込んできては返り討ちに遭っちゃあ資金がいくらあっても足りないわな。略奪せざるを得ないか」

石田”「となれば、略奪した宝蔵品の使い道はただ単に蓄財として用いているわけでもないわけだ」

金木「じゃあ、あのたくさんの【兜】を生み出すために必要なコストだったってことなのかな?」

石田”「あるいは、宝蔵品から得た資金を何らかの資材に替えてから【兜】を生み出しているかだな」

石田”「残念だが、【兜】誕生の秘密まで探ることはできなかった……」

金木「そこは気にしないでくださいよ。むしろ、こうやって少しずつ考えていくのがいいんじゃありませんか?」

金木「いきなり驚愕の事実を目の当たりにして、心の準備なしじゃ受け容れる余裕がないかもしれませんよ?」

石田”「そういってもらえると助かる。確かに少しずつ理解を深めていかなければ事実を受け容れるのは難しいだろうからな」

金木「でも、カネに替えてるって言うんだったら、話は早いんじゃないんですか?」

石田”「というと?」

金木「だって、それだけの資金や資源の行き来があったということは、それだけ大規模な取引がどこかしらであったってことじゃないですか」

金木「じゃあ、あの神集島の奥深くにまでそれを行き渡せていたかというと、それも非現実的な気がするんですよ」

金木「むしろ、金銀の流通量を幕府が管理しているのに、――――――いったいどれだけの資源効率で【兜】を生み出しているかは知らないけど、」

金木「それでも、唐津に数ヶ月にも渡って【兜】を送り込んでは返り討ちなんだから、宝蔵品の取引で戦力の補充には無理があるんじゃないかと」

石田”「なるほど、貨幣の流通の面でそう考えたか。――――――盲点だったな」

金木「へへっ」


石田”「となると、略奪した宝蔵品には別の使い方があるのかもしれないのか」

金木「わかりませんねー」

石田”「そうだな、今は」

石田”「だが、敵に関する研究はこれで大きく前進するに至った」

石田”「宝蔵品の略奪は『したいからする』のではなく、『しなければならないからする』死活問題に直結している可能性が非常に大きい」

金木「あと、謎といえばたくさんあるけれども、今は――――――」

石田”「ああ。今日のところはこれで十分だろう」



――――――【乱世】における数々の謎の一覧


・【兜】について
1,そもそもなぜ宝蔵品の略奪をするのか
2,行く先々の時代で内紛を影で煽ってきた意味
3,なぜ天敵であるはずの【城娘】を生け捕りにするのか
4,その正体は? 【大将兜】とはどう違うのか
5,その終着点は――――――?

・【城娘】について
1,どういった条件でモデルとなる城郭から【城娘】が自然発生するのか
2,ロストした時にはどうなってしまうのか
3,なぜ変身ができるのか
4,行く先々の時代で人類とどのような関わりあいをしてきたのか
5,その生態は人間と比べてどうなのか

・【神娘】について
1,なぜ【青年】が【城主】として選ばれたのか
2,タイムスリップに関する問題をどう捉えているのか
3,なぜ【兜】に対して【城娘】なのか
4,どこまで【兜】について知っているのか
5,どこまで信用していいのか


―――

――――――

―――――――――

――――――――――――


――――――肥前国 島原


【城娘】原城「どうか、豊後様に会わせてはいただけないでしょうか?」

【城娘】島原城「あら、持ち場を離れて何をしに来たのかと思えば、またキリシタンの助命のことかしら?」

島原城「無駄よ。豊後様は将軍様の尖兵として呂宋の攻略準備にとりかかっているんだから邪魔しないことね」

原城「それもありますが、今回は違います」

島原城「?」


原城「…………島原城殿、あなたはここしばらく豊後様にお会いしたことがおありですか?」


島原城「どういう意味?」

原城「江戸の上様の命に従ってキリシタンの弾圧を行っていることは、私は豊後様の配下として不本意ながら黙認しなければなりません」

原城「ですが、島原が4万石なのに対して島原城殿は10万石相当です!」

原城「島原城殿を養っていくために重税を課し、キリシタンでもない無辜の民まで拷問に処すのは人道に悖り、目に余ります」

島原城「お黙り! 旧・有馬の支城のお嬢ちゃまが軽々しく名を呼ぶなど図々しい! “お姫様”とお呼び!」

原城「では、“お姫様”。“お姫様”から豊後様に今一度 島原の民を安んじるように進言してください。お願いします」

島原城「いやよ! 私にお仕事させるだなんて廃城された身でありながらずいぶんと偉そうね!」

原城「………………」

島原城「そもそもなんで、とっくの昔に改易された旧・有馬の支城で、しかも私の築城のために廃城にされたっていうのに、」

島原城「どうして原城――――――あなたは私と同じ【城娘】としてこの世に存在していられるのよ?」

島原城「しかも、築城の名手である豊後様に造られた私よりもあんな断崖絶壁に建てられたボロ臭いあなたの方が臣民の間では評判よね?」ジロッ


原城「人の高ぶりはその人を低くし、心の低い人は誉れをつかむ」


島原城「はあ?」

原城「我がキリシタンの経典である聖書の言葉です」

原城「そして 私は、その経典の言葉を実践し、弱き人を慈しみ愛してまいりました」

原城「私の評判というのは望んで得たものではございません。実践の結果として得たものなのです」

原城「そして、愛とは人と人とが繋がった時にしか得られないものなのです」

原城「もし“お姫様”が臣民から愛されたいのであれば――――――、」


――――――歓ぶ人たちと共に歓び、泣く人たちと共に泣きなさい。


原城「それしか道はありません」

島原城「む」


島原城「………………」

原城「………………」

島原城「何か変わったわね、原城。そんなふうな智者ぶった物言いなんて一度もしたことがなかったし」

原城「――――――天命を悟っただけです」

原城「しかし、今の私にできることはこうしてお願いすることだけなのです」

原城「ですが、だからこそ私は行動を起こせたのです」

島原城「キリシタンの弾圧を行っている相手に泣きつくってこと?」

原城「いえ、偉大なる主の教えにあるとおりに『私たちの敵を愛し、私たちを虐げる者のために祈り』ます」

原城「――――――『その人にも神の寵愛がありますように』と」

原城「どうか松倉家が栄え、島原の民も栄え、世界が平和で豊かに繁栄していけるように」

島原城「…………!」

原城「これが私の想いです」

原城「『国あって民』ならば、どうか国の力で民に恵みをもたらしてください。逆に『民あって国』ならば、民が国を愛するように心を向けさせてください」

原城「今の島原領主:松倉豊後守はただの暴君です」

原城「そして、この世に悪が栄えた試しはありません」

原城「朝廷を牛耳って栄華を極めたことで有名な かの平清盛もその死後に一族が滅亡しました」

原城「たとえ豊後様が安らかに逝かれたとしても、残された一族がその咎を償わなければならなくなる時がくるです」

原城「ですから、今からでも遅くはありません」

原城「民を安んじてくださいますように豊後様に申し上げていただけませんか?」

原城「これは島原の民のためであり、豊後様のためでもあります。どうか――――――」

島原城「………………」

島原城「…………」

島原城「……」





――――――肥後国 天草

――――――マンション城


金木「……………………平和だなぁ」ゴロラゴロラ・・・

金木「やっぱり天草がメインターゲットじゃないせいか、唐津と比べて【兜】の襲撃がなくて本当に平和だ」

金木「【資源】も順調に溜まっていくことだし、――――――そういえば【資源】ってなんで回復してるんだぁ? まあ いいか、そんなこと」メメタァ

金木「そのおかげで余暇ができて、俺も順調に武芸を磨けるようになったし、志摩様の藩の改革の方も進んでいっているようだし、」

金木「石田少将も何だかんだ言ってちゃんと無事に帰ってきてくれるし。――――――今度、石田少将のために【探索】班を組織してもいいかなぁ?」

金木「そして、領民との交流も、最初の頃はやっぱり不信の目で見られていたけど、段々と信頼されてきたって感じだ」

金木「――――――目指せ、第2の唐津!」

金木「『平和が一番』――――――まったくもってその通り」


金木「………………………………」


金木「でも、こうしている間も島原では変心した松倉豊後守の手によって――――――『苛政は虎よりも猛し』だもんな」

金木「だからといって、俺が乗り込んでいったところでやれることなんてない」

金木「志摩様の時のように、あくまでも話し合いによる正攻法で穏便にすませられなきゃダメだ」

金木「天下無双の【城娘】軍団の武力に頼って無理やり屈服なんてさせたら、俺たちは【兜】以上の脅威と幕府に恐れられてしまうかも」

金木「そうなれば逆に、幕府に対して叛心を抱いている【乱】の首謀者たちに担ぎ上げられる可能性が出てくる」


金木「だからこそ、力の使い方には慎重にならないといけないんだな」


金木「今まで――――――【稲生】まではひたすら流され続けて降りかかった火の粉を振り払うためにがむしゃらにやって問題なかったけど、」

金木「寛永時代は“生まれながらの将軍”徳川家光による現代日本の基礎が生まれる歴史的分岐点に立っているわけだから、」

金木「ここで下手に刺激して、たとえばルソン島への侵攻への後押しなんかさせるわけにはいかないんだ」

金木「だから、――――――これからも【城娘】を従える【城主】として受身の姿勢を貫き通さないとダメ、か」



金木「不幸中の幸いというか、偶然が招いた奇跡というか――――――いや、今までのタイムスリップは全て【兜】との戦いに集約されていた」


金木「タイムスリップした直後にすぐに【兜】との戦いを繰り広げ――――――、」

金木「そして、その地の【兜】を駆逐した直後にまたタイムスリップ――――――なんてのを嫌というほど繰り返させられてきたんだ」

金木「今回もまた、【兜】たちが狙っている禁断の【城娘】名護屋城を守るためにこの時代にタイムスリップさせられたんだよな、きっと」

金木「だけど、唐津の【兜】を駆逐してもタイムスリップしないところを見る限り、まだまだ【この時代】には役目があるらしい」

金木「すると、その答えは意外なところからもたらされた」

金木「時代は、キリスト教徒による反乱と言われている【島原・天草一揆】が勃発した寛永時代であったのだ」

金木「そして、唐津の領主である寺沢志摩守は実は問題となってくる天草の領主でもあったのだ」


――――――この事実に運命というものを感じずにはいられないかったね。


金木「順序は違うけど、こうやって今までの出来事とわかっている範囲の事実を整理していくと、」

金木「――――――本当によくできた一筋のシナリオが成り立っていると思うよ」

金木「あのタイムトンネルとも言うべき【不気味な穴】を起こしているのが【兜】なのか、【神娘】の側なのかはわからないけれども、」

金木「何にせよ、腐っても神様の眷属である【神娘】のおかげのような――――――何て言えばわかんないけど、」

金木「とにかく運命というものを感じずにはいられなかった」

金木「だからこそ、俺は【島原・天草一揆】を止める決意を強く固めることができた。それが今回の役目だと確信できたから」


金木「そして、ここまで俺のことを導いてくれた――――――、」

金木「今回の唐津から始まる【島原・天草一揆】へ繋がりを示唆する重要なパズルのピースをもたらしてくれたのが、」

金木「俺と同じく平成からタイムスリップしてきた――――――いや、どうも俺の知る歴史とは似て非なる平成時代からやってきた、」


――――――誇り高き皇国軍人:石田少将であり、そんなあの人に俺は感謝の言葉を捧げたい。


金木「石田少将が来たおかげで、どうして唐津が【兜】に襲われていたのかがわかったことだし、」

金木「その上、唐津を襲う【兜】共の本拠地を来てすぐに壊滅に追いやったんだ。――――――言葉が出ないね」

金木「それから、石田少将の教えと導きによって、これから【島原・天草一揆】が起こることがわかり、この時代での役目を悟ることになったんだ」

金木「結局 俺は【城主】として、天草に移った今回のキーパーソンの志摩様と天草の防衛のために、これまで同様に大きく動けないけど、」

金木「動けない俺に代わって、情報収集や今の生活を良くする物品をもたらしてくれているから本当に大助かりだよ」

金木「でも、石田少将はこの【乱世】――――――言うなれば【異世界】において、」

金木「すんなり適応してこれだけの仕事をしてくれていることに少し俺は感心すると同時に心配もしていた」

金木「だって、俺は【神娘】や【城娘】、【その時代を生きる人たち】からの親切によって立ち直って今までやってこられたのに、」

金木「石田少将は俺とは違って、いきなりその時代を生きる人々に紛れて情報収集だとか物々交換をやってのけるんだから、」

金木「たぶん、石田少将は生きていける。――――――独りでもやっていけるぐらいの力があった」



金木「でも、実際はちょっと違っていた」


金木「もちろん、石田少将は卓越した才能と鋼鉄の意志の持ち主でもあった」

金木「けれども、石田少将としては俺という存在の後ろ盾があって初めてあれだけの能力を発揮できているそうで、」

金木「生まれも能力も才能もまったくもって差を付けられている俺と石田少将ではあったが、実は互恵関係としてうまいこと関係が成り立っていたのだ」

金木「そう、俺と石田少将の関係はとてもうまくいっている」

金木「石田少将が嫌がっているのでこう例えるのは失礼かもしれないけど――――――、」

金木「さながら太閤:豊臣秀吉と石田治部の関係のようにそれぞれの役割に徹して互いに益をもたらしている感じだ」

金木「本当にそう思えるのだ」

金木「志摩様が文治派としてかつて石田治部とは顔馴染みであり、その志摩様が石田少将は石田治部そっくりだと言っていたせいもあって」

金木「でも、石田治部のような無双の才覚を【異世界】でも発揮しているそんな石田少将を見ていると、何だか物悲しく思ってしまう俺がいた」

金木「どうしても石田治部に重ねて見てしまうせいでもあるんだけど――――――、」

金木「やっぱり史実で人望がなかった石田治部と同じく、人からあまり好かれそうにない性格がいたたまれなかったのだ」

金木「貧乏苦学生の素寒貧で目下の俺なんかに言えたことじゃないんだろうけど、俺はどうしてもそこが気になっていたのだ」


――――――なぜなら、一緒にタイムスリップしてきた石田少将の2人の部下に対する態度に大きな差があることに気づいたからなのだ。


――――――――――――

―――――――――

――――――

―――



――――――ある日のこと


金木「やればできるんだねぇ、さっすが俺ぇ!」ハア・・・ハア・・・

飛龍”「お疲れ様♪」

金木「へへ、やっぱり俺って男の子なんだな……(美人の教官の前だとみっともないところをできるだけ見せないようについ頑張っちゃうよ)」ドキドキ

飛龍”「?」

金木「いやいや、今日もお疲れ様でした。ありがとうございます、教官」

飛龍”「どういたしまして」

飛龍”「私も【ここ】に来てからはずっとお留守番だから、こうやって役立てることがあってよかった」

金木「…………補給の目処が立たないんですよね?(そりゃあ【艦娘】は今から300年ぐらい後の大日本帝国の軍艦が擬人化したものだし)」

飛龍”「うん。【ここ】は江戸時代だし、私たちの艤装の整備を行ってくれる妖精さんもいないから」

飛龍”「でも、万が一の時は【兜】の1体ぐらい打ち負かすぐらいの力を発揮するから安心してね。【艦載機】もまだまだ余裕があるしね」

金木「それに、海の上なら時速60kmオーバーで動けるんだっけ? それで余裕で逃げきれるしな」

飛龍”「うん。一人で逃げるだけだったら簡単なんだけど、それでも結構【燃料】を消費しちゃうからそれはあまり――――――、ね?」

飛龍”「私は【艦娘】だから、【深海棲艦】の『ヲシドリ』のように自然回復できるわけじゃないから…………」

金木「……そっか。何かごめんなさい(客観的に見て、人類の味方である【艦娘】よりも人類の敵である【深海棲艦】の方が優秀に思えるのは何か悔しいな)」

飛龍”「ううん。あくまでも万が一のことだからね?」

金木「それはそうなんだけど……」

飛龍”「だったら、そうならないように【城主】様も頑張ってね♪」

金木「はい! 全力でこの地を防衛いたします!」ビシッ

金木「(やっべえ! 今まで会ってきたどの女性よりもこの“飛龍”っていう【艦娘】が俺には物凄く魅力的に見える!)」ドクンドクン

金木「(俺、もしかしたら【城娘】よりも【艦娘】の方が好みかも――――――同じ時代の出身ってのもあるから話や波長が自然と合うのか?)」

金木「(いやいやいや、――――――『隣の芝生は青い』ってやつかもしれんぞ? 俺が単純に人間や【城娘】に見飽きているのかもしれん)」

金木「(だって、俺は【乱世】に来る前に『貧乏だから』っていう理由で好きな女の子から手酷く振られたし――――――、)」

金木「(【城娘】にしたって、そりゃあもう極上の美女が揃いも揃ってますけど、俺の代わりに化物と戦ってくれる娘に手を出すのは何かイヤ…………)」

金木「(例えるなら、正義の為に戦う美少女戦士に乱暴を行う薄い本のような感じで――――――『神聖にして侵すべからず』って感じなんだよなぁ)」

金木「(それに、やっぱり現代っ子の俺からするとちょっと【城娘】は全体的に古風って感じで堅苦しい印象があってね……)」

金木「(俺のことを【城主】として慕ってくれているけれど、元は貧乏苦学生の素寒貧なんだから不釣り合いだと思うところがあって…………)」

金木「(そんな中、この飛龍っていう娘は【城娘】と同じく 生まれながらの兵器:【艦娘】ではあるんだけれど、)」

金木「(【城娘】から感じる あの古臭さと堅苦しさを一切感じさせない同じ現代っ子らしさが強く感じられて、話していて一番 気楽な相手かもしれない)」

金木「(石田少将と話すのは師匠と弟子の関係みたいで自然と気合が入って、『ヲシドリ』との時間は歳の離れた子供とふれあう時間って感じ)」

金木「(だからかもしれないな、――――――俺が段々と飛龍さんとの時間がずっと続くことを強く望むようになっていたのも)」



飛龍”「――――――それでね? 私たちの鎮守府はまた花の香りに包まれることになったんだよ」

金木「へえ、そうなんだ(やっぱりカワイイな。モデル体型ってわけじゃないんだけど、女性の美しさを引き出すような丈の短い和装がスゴクイイ!)」ドクンドクン

金木「――――――また『花』か。石田少将ってやっぱりロマンチストじゃないんでしょうかね?」

飛龍”「私、提督からその時 黄色のバラをもらっちゃった」エヘヘ・・・

金木「え? ――――――『黄色のバラ』?」

飛龍”「うん。いろんな色のバラがあったんだけど、提督はその中で私の色にそっくりな黄色のバラをくれたんだよ」ニコッ

金木「…………そうなんだ」

飛龍”「どうしたの?」

金木「いや、その時 石田少将は何か言ってた?」

飛龍”「え? う~ん、確か――――――、」


石田『今の私の飛龍に対する気持ちを表すとしたらこれかと思い、このイエローを選んでみました』


飛龍”「こんなことを言ってたよ。よく憶えてる、うん」

金木「…………そうなんだ」スッ ――――――電子辞書を取り出す。

金木「(これってどうなんだ? 普通、女性にバラを贈る時って赤いバラだよな?)」

金木「(そう、赤いバラの花言葉は『あなたを愛してます』だろう? あるいは『情熱的な恋』とかだろう? ――――――これぐらい常識だよな?)」

金木「(でも、黄色のバラってあんまりよくない意味だった気がする。だって、黄色って警告色でしょう?)」

金木「(それに、バラって西洋の花ってわけだから、色に関する花言葉だって当然その文化の価値観に左右されるわけだし――――――、)」

金木「(うん。電子辞書にも『黄色は西洋では負のイメージがある』って書いてあるな)」

金木「(しかも、『黄色には『裏切り』『嫉妬』『排斥』といったネガティブなイメージがあり、ナショナルカラーに選ぶ国は少ない』ってさ!)」

金木「(石田少将、何やっちゃってくれてるわけぇ!?)」

金木「(だって、石田少将ってその花屋敷を造る前に、鎮守府に作った花屋の可愛い売り子さんと毎日のように会っていたんだよね?)」

金木「(それなのに、なんで負のイメージの黄色のバラなんて飛龍さんにわざわざ選んで渡しちゃってるわけぇ?!)」

金木「(なに? つまり、『排斥』したいわけ? まさか飛龍さんを!?)」


――――――いや、石田少将に限ってそんなことがあるはずがない!



金木「(お、落ち着けぇ! 石田少将はそんな陰湿なことをするはずがない。面と向かって言いにくいことを言い切っちゃう人だ、あの人は)」

金木「(それに、状況を落ち着いて整理すれば、確か飛龍さんは唯一【褒章】を渡している相手なんでしょう?)」

金木「(石田少将にしても飛龍さんが最古参だってことは理解しているはずだから、きっと思い入れがあるはずなんだよ、絶対!)」

金木「(うん。飛龍さんからの話に聞き漏らしがなければ、少なくとも提督が部下に個人的なプレゼントを贈るだなんてこと今までなかったはずだ)」

金木「(なら、普通に考えて愛情のこもったプレゼントということで間違いないはず!)」

金木「(その証拠に、飛龍さんもその黄色のバラを純粋なプレゼントだと感じ取って嬉しそうに受け取っているようだし)」


――――――じゃあなんで“黄色のバラ”なんて贈ったんだ?


金木「(普通に赤いバラを贈れば――――――いや、石田少将が飛龍さんに恋…してるわけじゃなさそう。というか、それは考えられない)」

金木「(少なくとも、俺が【城娘】を恋愛対象として見ないよう努力しているのと同じように、)」

金木「(あの石田少将が部下との色恋に現を抜かすようには思えない。ましてや“全体の勝利”なんて単語を口癖にするような人だぞ)」

金木「(じゃあ、やっぱり石田少将も相手が歓ぶものとして黄色のバラを選んだのか? そうとしか考えられない)」

金木「(なら、なんで黄色なんだ? 他に何かそれらしいものはあったはずじゃないか…………バラにしてもオレンジとかピンクとか白もあるのに)」

金木「(俺、花に詳しいわけじゃないから女性に何の花をプレゼントすればいいかなんて俺にはわかんねえよ)」

金木「(でも、確かに飛龍さんのイメージカラーは黄色だ。ましてや『嫉妬』とか『裏切り』を意味するようなネガティブなものじゃない)」

金木「(喩えるなら『太陽』――――――そう、『黄金の輝きを放つ眩しい太陽』のごとく)」

金木「(…………ん? あれ、ちょっと待てよ?)」

金木「(二次元の世界で黄色の髪の毛って言ったら金髪ってことになるよな? 薄い水色が銀髪として表現されるように)」


――――――もしかして!



金木「あ、飛龍さん。その黄色のバラってどんな色合いだった? ただ黄色って言われてもいろんなイメージがあるわけだけど」

飛龍”「私の着物の色にそっくりだったよ。明るい黄色って感じじゃなくてちょっと暗めなんだけどツヤがあって眩しい色って感じだった」

金木「それって、――――――まるで『黄金の太陽』のような色?」

飛龍”「あ、言われて見れば確かにそうだったかも。『太陽』を彷彿とさせる黄色だったよ」

金木「!」

飛龍”「どうしたの? そう言えば、バラの色のことを気にしていたみたいだったけど」

飛龍”「あ、もしかしてどういう基準で提督がバラを贈ってくれたのか、これでわかったの?」ドキドキ


金木「……うん。やっぱり石田少将はロマンチストだよ。間違いない」


飛龍”「え」

金木「たぶん、そのバラは “黄色のバラ”という意味じゃなくて“黄金のバラ”として渡しているものだと思う」

飛龍”「――――――『黄金のバラ』?」


金木「だから、石田少将にとって飛龍さんは“黄金の太陽のように眩しい存在”だって遠回しに言っていたんじゃないかって」


飛龍”「…………え」

金木「ほら、黄金って二次元だとどうしても直接的に再現できなくて黄色で代用するしかないじゃん?」

金木「その黄金っていうのは文字通り金の意味もあるけど『それに匹敵する価値のあるもの』――――――『昼間の太陽』ってイメージだから」

金木「そして、太陽はタロット占いだと『希望』を意味するもんだから、」


金木「つまり、石田少将にとって唯一【褒章】を与えた相手である飛龍さんは『希望』だったんだよぉおおお!」


飛龍”「ふぇ!?」

飛龍”「えええええええええええええええ!?」カアアアアアアアアアア!

金木「うん。この方がしっくりくる(あの石田少将のことだから、きっと花言葉についてもよく知っていたはずだ――――――)」

金木「他の娘に石田少将はバラを渡そうとしてた?」

飛龍”「えと、確か提督が武蔵さんに渡そうとしていたのは、――――――『一重咲きの白』って言っていたような」

飛龍”「うん。私が武蔵さんにプレゼントを贈るように言ったついでにバラをもらったから、どんなものを贈ることになったかよく憶えているよ」

金木「――――――『一重咲きの白バラ』」

金木「(石田少将、やっぱりわかってて選んでるぞ、これ! 色だけじゃなくて花の咲き具合でも花言葉を選んでる! そうに違いない!)」

金木「(というか、単純に色だけじゃなくて色の具合や咲き具合でも花言葉が変わるもんなんだな。へえ、初めて知ったよ)」

金木「(じゃあ やっぱり飛龍さんに贈ったのは“ただの黄色のバラ”じゃなくて“黄金のバラ”だったんだ!)」

金木「(――――――今日の俺、けっこう冴えてね?)」


飛龍”「そ、そう…だったんだ……」

飛龍”「よかった……、私、提督から嫌われていたわけじゃなかったんだ……」ドクンドクン

金木「あ…………うん、良かったね、飛龍さん」ズキン

金木「(でも、…………何だろう、この気持ち? 嬉しいような、悲しいような、そのどちらとも言い切れないような中途半端なこの感情は?)」

飛龍”「うん、ありがとう――――――え?!」ビクッ

金木「?」


飛龍”「ど、どうして【城主】様が泣いているのですか?!」アセアセ


金木「え」ポタポタ・・・

金木「あ……、俺、なんで泣いてるんだろう?」ポタポタ・・・

金木「(――――――好きになりかけていたのに、遠回しに振られたような気分になったから?)」

金木「(――――――【艦娘】にしても『やっぱり自分たちの主が一番』だって思っている事実を悟ってしまったから?)」

金木「(――――――俺よりも女心に理解のないように思えた石田少将が実は物凄く華麗なロマンチストだったから?)」

金木「(――――――こんなにも可愛いらしい娘に不器用なやり方でしか気持ちを表現できなかった石田少将に哀れみを感じたから?)」


――――――否!


金木「…………違う」グスン

飛龍”「え」

金木「……そうじゃない。そうじゃないんだよぉ」ヒッグ


――――――やっぱり【元の世界】に送り返さなくちゃならないんだ。住む世界が違うんだ、俺と石田少将は。



飛龍”「ど、どういうことかな、それ?」アセアセ

金木「お、俺は……、ただの貧乏苦学生の素寒貧――――――ポッと出の何の覚悟も力もなく なあなあで担ぎ上げられてきただけの主体性のない薄っぺらな人間」

金木「け、けれども……、石田少将や飛龍さんは崇高な使命の下に生きているんだ…………」

金木「…………帰りたいですよね、【元の世界】に」ヒッグ

飛龍”「それは…………」

金木「俺、いつまでも“現在”が続けばいいと漠然と思ってた」

金木「俺、こうやって飛龍さんと話している時間がいつの間にか好きになっていたから――――――」

飛龍”「え」ドキッ

金木「それと同じぐらい石田少将との時間が―――――― 一緒にでっかいことをやろうとして力の限り生きている現在に最高のワクワクを感じていたから」

金木「でも、石田少将にとって俺が望む現在っていうのは過程に過ぎなくて、石田少将には辿り着くべき未来・帰るべき場所があるから――――――」ヒッグヒッグ

金木「俺なんかが足を引っ張っちゃいけないんだよ! 少しでも力になって送り出してあげなくちゃダメなんだ……!」


――――――俺は誰かを好きになっちゃいけない人間だったんだよ。


金木「うぅ…………」ヒッグヒグゥ・・・

飛龍”「…………【城主】様」

金木「俺はいつ終わるかもわからない はてしない【兜】との時空を超えた戦いに一生を捧げる運命なんだ」

金木「だから、俺は何も残せないし、残すだけ無駄なんだ、全部……!」

飛龍”「そんなこと……!」

金木「わかった。わかったんだよ。――――――この天草での平和で穏やかな日々のおかげで!」

飛龍”「え」

金木「だって、俺は今まで【関ヶ原】【姉川】【稲生】と立て続けに、時間も場所もまったく異なる世界に飛ばされ続けて、」

金木「その度に【兜】との戦いに明け暮れて その場その場のトラブルの解決に奔走する毎日で、」

金木「その地での【兜】との決戦に勝利した途端に また他の世界に飛ばされるようなことを何度も味わわされてきたんだ」

金木「そして 今回、【稲生】での決戦に勝利した直後に、この寛永時代の肥前国 唐津に飛ばされてきたわけなんだけど、」

金木「唐津を襲う【兜】たちが駆逐されても――――――とは言っても、石田少将がやってくれたんだけど、」

金木「俺は未だに寛永時代に残されたままなんだよ?」

金木「すると、有名な【島原・天草一揆】が近々起こることを知って、ようやく俺はこの時代での真の役目ってやつを理解できた」

金木「でも、実際に【乱】が起こるにはまだまだ時間があることだし、石田少将や志摩様が全力で【乱】の発生を阻止しようとがんばってくれているから、」

金木「俺は【乱世】で初めてこんなにも暇を持て余すようになったし、こうして飛龍さんと一緒の時間を過ごせるようになったんだ…………」

飛龍”「………………」


金木「俺、飛龍さんとの時間が本当に楽しくてしかたなかった」

金木「最初は現代っ子の俺には苦しくてしかたがなかった訓練も、飛龍さんに『ちょっとばかりいいところ見せよう』と思ってあらん限りやれたし、」

金木「飛龍さんも俺のことを褒めてくれるし 励ましてくれるし、終わってからこうやっておしゃべりしている時が物凄く心が和んだ」

金木「何ていうか、配下の【城娘】たちも綺麗所が勢揃いなんだけど、どうしてもそういう目で見ちゃいけないような気がしてたから、」

金木「飛龍さんが適度に部外者で可愛くてフランクで現代知識があって話が合うから本当に楽しくて楽しくてしかたがなかった!」

金木「やっぱり生まれも育ちも同じ時代の人間同士だと基本的な価値観や立居振舞に共通してて本当に話が合うんだよね」

金木「俺、この【乱世】に来る前まで本当に好きな娘がいて手酷く振られちゃったんですけど、」

金木「思えば、そんな片思いの相手にさえも飛龍さんほど気楽に話せたことはなかった――――――俺は夢中だったんだ、飛龍さんと過ごす現在の時間が」

飛龍”「え、えと…………」モジモジ

金木「でも、でもぉ!」


――――――どうせ【島原・天草一揆】を解決したら全部無くなっちゃうんですよ! 俺が望む“現在”なんて!


飛龍”「…………!」

金木「今までの経験から言って、その時代に巣食う【兜】の討伐が完了すれば有無言わさず、また別の【兜】の討伐に回されてぇ!」

金木「どっちみち続かないんですよぉ!」

金木「飛龍さんには石田少将と一緒に【元の世界】に戻って本来の使命を全うして栄光を掴みとってもらいたいし、」

金木「俺は俺で【兜】との戦いが一段落したら また場所や時間を変えて転々としていかなくちゃならないし!」

金木「だったら、――――――別れるのが既定路線ならッ!」


――――――最初から好きにならなければいいじゃないですか! 虚しいだけだよ!



飛龍”「――――――【城主】様!」ギュッ!

金木「俺、何だか穏やかな日常を楽しめなくなっちゃったみたい」シクシク・・・

金木「――――――『どうせいつまでも“ここ”には居られない』って思うと、」

金木「そんなことに気づく間もなく、今までのように連戦に次ぐ連戦続きの毎日の方がずっと幸せだったッ!」

金木「だって、仮に現地の人と結婚して所帯持ちになったとして――――――、」

金木「俺はいつ、あの【不気味な穴】に吸い込まれて、家族を置いてどこかへ消えてしまう恐怖に怯え続けなければならないんだぞ!?」

金木「俺は【元の世界】に帰れたって別に心配してくれる家族なんて居ないから割りきっていたけど、」

金木「――――――家族を作ってしまったらもうダメだぁ、俺!」

金木「俺、もう【城主】としてやっていけなくなるかも…………」ヒッグヒッグ

飛龍”「………………」ナデナデ

金木「…………ごめん、飛龍さん」

金木「迷惑だ……よな。唐突に『飛龍さんにずっとここに居て欲しい』とか『変な目で見ていました』だなんて言われて反応に困ったよね?」

金木「もういいですから、俺のことなんて」

飛龍”「………………」ナデナデ

金木「だから、もうその手を放してくれてもいいんですよ……?」ググッ

飛龍”「………………」ナデナデ

金木「と、というか! もう恥ずかしいから放して~!(うわっ、力 強っ!? さすが【艦娘】! 完全に押さえ込まれてるぅ!)」

飛龍”「…………ダぁメ♪」

金木「なんでぇ!? 好きでもない異性に触れさせる必要なんて――――――」



飛龍”「これが提督からの指令だからです」


金木「は」

飛龍”「提督は【城主】様に基礎訓練を積ませるよう指示した他に『【城主】様を全力で守れ』とも言いました」

金木「――――――『俺を守れ』?」

金木「た、たったそれだけ――――――? 本当にその一言だけ?(――――――それだけで触らせているの?)」

飛龍”「はい。提督の指令は他にはその一言だけです」

飛龍”「だから、私は私が思うように『【城主】様を全力で守っている』わけなんです」

飛龍”「……どうですか? 少しは落ち着きましたか?」モジモジ

金木「え」

飛龍”「……ダメだったかな?」

金木「その、あの……、げ、下品な言い方をすれば――――――、」オロオロ

金木「お、御御足をスリスリしている感じが最高というか、かえってドキドキするというか…………」ドックンドクン!

飛龍”「へえ、そうなんだー」フフン

飛龍”「なら、――――――えい!」ムギュウ!

金木「!?!?」


飛龍”「二航戦サンドだよ~!」 ――――――下を御御足、上をお胸で挟む!


金木「!?!?!?!?」ジタバタ

飛龍”「どぉよ!」ドヤァ

金木「うぎゃあああああああああ!」ガバッ

飛龍”「きゃっ」

金木「あ、すみません、飛龍さん! でも、洒落にならないのでやめてください、こんなことはもうッ!」ゼエゼエ!

金木「(ど、童貞の俺には破壊力がありすぎるぅ! このまま心臓が限界突破して破裂して死ぬかと思ったぁ……)」アセダラダラ

飛龍”「うん。これっきりだからね♪」

金木「そ、そうしてください……(こ、これだから♂ってやつは♀を求めちまうんだよなぁ…………ダメだ! こんな軟弱では!)」ドクンドクン

飛龍”「あ、よかった。すっきりしたみたいだね。よかったよかった♪」ニッコリ

金木「…………俺、あなたのことは忘れませんから(忘れられるか、――――――二航戦サンドの味! ――――――男の浪漫ッッ!)」ハハハ・・・




金木「でもなぁ…………」ハァ

飛龍”「…………【城主】様?」

金木「石田少将って呆れるぐらい不器用というか不運な人ですよね」

金木「だって、さっきのバラの話や花屋の話もそうだし、唐津を襲う【兜】たちの本拠地を壊滅させた時の手口もそうですけど、」


金木「――――――理解がない人間からすればパッと見 最悪なやり方ばかりじゃないですか」


飛龍”「………………うん」

金木「俺だって詳しい説明や冷静な状況整理がなければ、得体の知れない要注意人物にしか思わなかっただろうし、」

金木「第一、――――――これは冗談でしたけど、進んで【兜】の側につくことも可能性としてあり得たことを自分で言ってたし」

飛龍”「…………うん」

金木「落ち着いて話を聞いて為人を総合的に判断すると、本当に皇国のために、あるいは天下万民のためを思って行動しているのがよくわかるんですよ」

金木「でも、そこには自分の栄達っていうのはもちろん、それに保身っていうか最低限の自分の安全さえも皇国のために投げ出してしまう――――――」

金木「あまりにも“自分”というものをおざなりにしすぎているきらいがあるんですよね……」

飛龍”「……うん」

金木「でも、部下のことを信頼しているのは飛龍さんの扱いを見ればわかるし、あの人は自分にも厳しい人だから――――――」

金木「レベルが高過ぎるんだよ、石田少将は。あるいは周りの人たちの程度が低すぎるせいかもしれないけれど」

飛龍”「うん」

金木「石田少将だって本当は不安でいっぱいのはず。大多数の人に真っ向から違うことや言いにくいことを言うなんて相当 勇気が要ることだから」

金木「他人を省みることがない人だったら簡単なんだろうけど、」

金木「“黄色のバラ”を“黄金のバラ”に見立てるロマンチストが人を省みることがないなんてあり得ないから!」

飛龍”「うん。私もそう思う」

金木「だから、俺はせめて石田少将にはもっと素直になれるようにしてあげたいんだ。理解されるようにしてあげたいんだ」

金木「そうすれば、もっと石田少将の良さが活きていくはずなんだから…………」

飛龍”「そうだよね。私ももっと提督の良さをわかってもらいたい」

飛龍”「――――――提督は“多聞丸”のような人だって」

金木「…………“多聞丸”かぁ」

金木「ちょっと喩えが悪すぎるというか、それってどっちみち『癖のある人』って意味だからなぁ…………」

金木「でも、少なくとも石田少将はその“多聞丸”と同じぐらい――――――いや、その由来となった楠木正成公に並ぶ忠義者なんだから、」

金木「少しでもそういった先人たちと同じふうに見てくれる人が増えていくといいよね」

飛龍”「そうだね。ホントにそう……」




――――――また ある時、

――――――夜


ヲ級”「ヲヲヲ~♪」

金木「いつもいつも夜間の見張り番、おつかれさん。『ヲシドリ』が頑張ってくれているから俺も安心して夜を過ごせるよ」

ヲ級”「ヲヲ!」ドヤァ

金木「こうして見ていると、【艦娘】とは全然違うところなんてないように見えるよなぁ(外見が不気味ってのはあるけど、それはそれで――――――))」

金木「………………」

ヲ級”「?」

金木「あ、そうだ」

金木「『ヲシドリ』は石田少将のこと、どう思ってるんだ?」

ヲ級”「ヲ?」

金木「ほら、『ヲシドリ』はさ、ちゃんとした身振り手振りやハンドサインで言いたいことはわかるんだけど、」

金木「そこにどれほどの感情が込められているかはやっぱりわかんないんだ」

金木「でも、文字も書けて、俺たちが喋っている内容も聴いて理解できているんだし、」

金木「せっかくだから、石田少将に向けて文を書いてみたらどう?」

ヲ級”「ヲヲ?」

金木「いまいちが意味がわかってない? とりあえず書いてみてよ、石田少将に伝えてみたい何かをさ」

金木「ほら、紙と筆はここにあるから」

ヲ級”「ヲ…………」

金木「あ、触ったことがないのか。じゃあ、俺のボールペンとノートでもいいよ。替えは利かないけど、どうせ使い切るつもりだったし」

金木「ほら。石田少将に向けて何か一言 書いてみなって」

ヲ級”「ヲ…………」カキカキ

金木「お、書き始めたな(なんか『ヲシドリ』と過ごすこの時間は本当に託児所の先生になったような気分だぜ)」

金木「う~ん(しかも、他の娘たちと遜色ないレベルでナイスプロポーションってわけだから、幼児プレイしているみたいでソソるっていうか……)」


ヲ級”「ヲ、ヲヲ!」スッ

金木「お、できたか。どれどれ?(でも、こんな【艦娘】とそう変わらない連中が人類を脅かしているんだから心が痛むよな……)」

金木「!」


――――――さびしい。さびしい。さびしい。


金木「………………」

ヲ級”「ヲ」

金木「…………『さびしい』んだ、『ヲシドリ』」

ヲ級”「ヲヲ」

金木「そうか。それもそうだよな。顔には出てないけど心は正直だな」ナデナデ

ヲ級”「ヲ……」

金木「石田少将、あれからずっと忙しく九州各地を見て回っているようだし」

金木「それどころか、九州各地で【はぐれ城娘】を見つけ出しては律儀にここまで連れて来てくれるんだよねぇ……」

金木「それでも、この天草のマンション城で一緒に過ごせる時間を待ち侘びている娘がいるんですよ。――――――俺もそうなんだけど」

金木「聞けば、『ヲシドリ』はいつも石田少将と一緒に過ごしていたようだし、」

金木「こんなにも顔を合わせない日が続くだなんて『ヲシドリ』にしてみれば、未だかつて味わったことのない時間だったのかもしれないな」

金木「あ、そうか。なるほど――――――、」


――――――毎日の夜の見張り番を張り切ってやっているのは石田少将の帰りを『まだか』『まだか』って待ち焦がれているからなのか。


金木「かぁー、泣かせてくれるじゃないの!」

金木「仕事に出ているパパの帰りを遅くまで起きて待っている娘みたいなもんじゃないか!」ナデナデ!

ヲ級”「ヲヲヲ……」アセアセ

金木「絶対帰ってきてよね、石田少将! この娘には絶対あなたが必要なんだからね! 死んだら承知しないぞー!」



石田”「俺がどうしたって?」


金木「――――――って、うおわっ!?」ビクッ

ヲ級”「ヲヲー!」バッ

石田”「おっと、どうした、『ヲシドリ』?」ニコッ

ヲ級”「ヲヲヲ……」スリスリ

金木「今回はずいぶんと遅いお帰りで」

石田”「すまないな。今回は九州を1周してきたからな」

金木「は」

石田”「だが、おかげでたくさんの情報も得られたし、具体的な日数や距離感・各国の情勢や銘産などについて知ることができた」

金木「……嘘でしょう?」

石田”「嘘ではない。久々に鈍った身体を鍛えるいい機会となった」

金木「本職の軍人ってここまで行けるもんなんだぁ……」

石田”「それで、どうした? 今日はいつも以上に甘えてくるな、『ヲシドリ』?」

金木「あ、それなんですけど――――――」スッ ――――――ノートを見せる。


――――――さびしい。さびしい。さびしい。


石田”「………………!」

金木「石田少将の帰りをずっと待ってましたよ、その娘」

石田”「……そうか。それは辛い思いをさせてしまったな」

石田”「すまない、『ヲシドリ』。でも、これは必要なことなのだ。わかってくれ」

ヲ級”「ヲヲヲ……」ギュウ


金木「………………」

石田”「……どうした?」

金木「いや、石田少将もパパらしいところは見せるんだなって」

石田”「――――――『パパ』だと? 茶化すな」

石田”「この娘にはこうすることが必要だから こう接しているだけに過ぎん」

石田”「こうやって人一倍 手間を掛けて世話をしなければ、敵を懐柔することなど無理難題であろう」

石田”「それが人類の敵である【深海棲艦】を【調教】するということの意味だ」

金木「へえ…………」

石田”「何だ その反応は……?」

石田”「どこへ行っても同じやり方を強いるのは阿呆のやることだ」

石田”「仮に1つのやり方を通すのであれば年月をかけて少しずつ浸透させていく他あるまい」

石田”「赤ん坊に大人としての教養や能力を求めたところで意味がないのと同じことだ」

金木「うん。それは俺もそうだと思います」

金木「でも、石田少将? 俺、思うんですけど――――――、」


金木「石田少将はこうやって『ヲシドリ』の面倒を見るのと同じように他の娘一人ひとりと話をする時間を設けたほうがいいと思いますよ」


石田”「なぜだ?」

金木「だって、石田少将って自分にはとても厳しい性格で弁解とかいちいちしないんじゃないかって思うんですよ」

石田”「…………そうかもしれんな。それで?」

金木「それで、責任をとる潔さがあるのは美徳かもしれませんけれど、自分の上司が非を抱えているとなると部下はそれだけで嫌な気分になると思うんですよ」

金木「だから、もし【元の世界】に帰れたら、――――――1日1回だけ部下の質問や要望に応える時間を作ってください」

金木「さっきも言ったように、その時だけは一人ひとり丁寧に『ヲシドリ』と同じように接してあげてください。同じ時間を共有してあげてください」

金木「それで石田少将はこれまでよりもずっとやりやすくなると思いますから」

石田”「…………非効率なやり方に思えるが、金木の言うことだけに無下にはできんか」

石田”「いいだろう。心に留めておこう――――――いや、一度は実践してみようと思う」

石田”「…………帰れたらな」

金木「はい。そうしてください」

ヲ級”「ヲヲヲー♪」スリスリ・・・


―――

――――――

―――――――――

――――――――――――



――――――そして、


金木「よし、明日の予定はこれでよしっと。それから――――――」

千狐「殿~!」

やくも「お殿さん! 大変 大変~!」

金木「どうした!? 【兜】が現れたのか!?」ガタッ

千狐「そうなの!」

金木「よし! すぐにでも出陣だ! 場所はどこだ?」


やくも「――――――霧島なの」


金木「き、――――――『霧島』? それって近くなのか?(あれ? 天草諸島にそんな名前の島なんてあったっけ?)」

千狐「そうなの! 『霧島に【兜】がいっぱい集まってる』って【探索】から帰ってきた娘たちが言ってるの!」

やくも「お殿さん! こうしちゃいられない! 早く出んと!」

金木「そう急かすな! まず霧島がどこにあってどの辺にどの程度の敵が集まっているのかを見ないとだろう!」

千狐「あ、そうなの!」

やくも「でも、ホント急がんと!」

金木「落ち着け! こういう時こそ落ち着け! 『急がば回れ』だ」

金木「何をそんなに焦っている? そこから説明してくれ。緊急性を要する案件かは【城主】である俺が判断するから、まずは落ち着け」

やくも「さっすがお殿さん! 頼りになる~」

金木「 い い か ら さ っ さ と 話 せ 」イライラ


千狐「そうなの! 【探索】に行った娘が言うには霧島には“霧島城”っていう珍しい【城娘】がいるらしいの!」


金木「!」

金木「それは確かに一大事だ! 状況はどうなっている? 人を呼び集めろ! すぐに救出作戦を立案するぞ!」

千狐「わかったの!」

やくも「ちょっとおいていかんといて~」



バタバタ・・・


金木「……さて、どうしたものか」

金木「確か場所は霧島――――――電子辞書に載ってるかな?」スッ


――――――なら すぐに八代海を渡っていける【水城】と船の準備をして、主力は【山城】と【平山城】にしておけ。


金木「!」

石田”「相変わらず報告・連絡・相談がなってない眷属たちだな」

金木「――――――石田少将!」

石田”「しばらく見ないうちに見違えるようになったな、【城主】様」

金木「へへ、美人のコーチがついていましたから、俺、頑張っちゃいましたよ?」

金木「でも、なんで八代海を渡って九州本土に? 霧島ってこの近くにある島じゃないんですか?」

石田”「…………説明する気にもなれん。その電子辞書で検索してみろ」ハァ

金木「えと……」ピピッ

金木「あ」


――――――霧島山:鹿児島県と宮崎県の県境にある山塊


金木「――――――山なのかよ!」

金木「じゃあ、霧島山にいる【城娘】って言うからには当然【山城】――――――」

石田”「1つ言っておくぞ」

金木「はい?」


石田”「“霧島城”なんて城は歴史上 存在しないからな」


金木「え」

金木「じゃあ、他に“霧島”ってやつに何がある――――――?」ピピッ

金木「ん」チラッ


――――――霧島(戦艦)


金木「………………あ」

石田”「わかったか?」

金木「……もしかして、石田少将の許には“霧島”っていう【艦娘】がいたんですか?」

石田”「ああ。俺の艦隊の主力だ」

金木「じゃあ――――――」

石田”「俺の艦隊の所属かはまだ断定はできないが、その可能性が非常に高い」

金木「わかりました! 全力でお助けしましょう!」

石田”「助かる」

金木「よし! 一時的に天草を離れる! 天草防衛部隊とマンション城防衛部隊、早馬部隊と主力部隊を編成しよう!」テキパキ

金木「それじゃ、部隊編成にとりかかりますのでこれで!」バッ


タッタッタッタッタ・・・・・・


石田”「最初に会った時と比べて本当に成長したものだな」

石田”「さすがは“多聞丸”に薫陶を受けた飛龍の教育だな。助かったぞ」






超番外編1 浪速のことは 夢のまた夢  -この命 果ててが御守りします!- の構成について

ダラダラと続いているように感じる超番外編1は起承転結の4段落構成であり、2章 使っての前後編で1段落としている。
なぜこんなにも長いのかはクロスオーバー先のブラウザゲームのステージ構成に因むところが大きい。


序……序章:禁断の【城娘】との出会いと【乱世】の世界

起……第1章・第2章:唐津での話

承……第3章・第4章:天草での話

転……第5章・第6章:霧島での話

結……第7章・第8章:島原での話


あくまでも主人公は石田少将なのだが、同時に『【城プロ】を二次創作したらどう世界観の辻褄合わせするか?』というテーマも合わせているので、
彼と出会ったことで【乱世】を生き抜く更なる意志を固めることになった金木青年の成長物語の体裁をとることになった。
それによって、金木青年からの視点が多く描かれることになり、他者から見た石田司令の人物像も浮き彫りとなっていく。

蛇足と言えばそれまでの超番外編だが、あらかじめ筆者自身がくどいぐらい書いているので重々承知であり、
本編:物語風プレゼンPart2で提案予定の【深海棲艦運用システム -革命編-】に必要な物語中の動機や背景として必要なのでご了承ください。






超番外編1 浪速のことは 夢のまた夢  -この命 果てても私が御守りします!- 第6章

――――――霧島山:宮崎県・鹿児島県 県境に広がる火山群


石田”「ここが霧島―――――かつて天孫降臨の舞台の1つとされてきた伝説の地だ」

金木「どうやら霧島っていうのは山岳群の名称であって“霧島山”という名の峰そのものは存在しないようですね」

石田”「例えるなら、メキシコの首都はメキシコシティだが、アメリカの首都はワシントンといった程度の違いだな」

金木「まあ、そうですね……(言わんとしたいことはわかるんだけどなぁ…………)」ピピッ

金木「お! へえ、ここの温泉郷にはあの坂本龍馬が日本最初の新婚旅行に来ていたそうな!」

石田”「宮崎県と鹿児島県の県境にある霧島はどちらかと言えば鹿児島県の観光資源として利用されてきているようだな」

石田”「役に立たない地図だが、無いよりマシだろう」バッ

金木「うう~ん、昔の地図ってこんなもん?(現代で見慣れている日本列島がグニャグニャと描かれているよ、これぇ……)」

金木「伊能忠敬が作った日本地図っていつの話なんですか? こんなのじゃイメージなんて――――――」

石田”「たしか1800年前後だったはずだが……」

金木「あ、本当だ。さすがです!(うげっ! 今から200年ぐらい後ってことかい!)」

金木「…………まず正確な地図がないと【城娘】たちをうまく遠隔展開できない!」

金木「俺のイメージだけで遠隔展開も一応 可能ですけど、初めて来た場所で遠隔展開するのは無理があります」

石田”「安心しろ。その辺に関してはちゃんと考えてある」

金木「へ」


山城:龍王山城「くっ、どうしてわらわがこんな荷駄持ちをやらねば……」エッサ、ホイサ・・・

ヲ級”「ヲヲヲ~♪」カキカキ ――――――輿に乗った『ヲシドリ』がスケッチをとっている。

山城:月山富田城「久々の出陣である以上は喜んで励まねばなりませんね……」エッサ、ホイサ・・・


金木「あれは――――――」

石田”「実は前々から『ヲシドリ』には鳥瞰図の作成を【調教】の一環として積ませていてな」

石田”「付け焼き刃かもしれないが、鳥瞰図があればそれなりに展開しやすくなるし、【兜】共の動きも一目瞭然だ」

金木「おお! 鳥瞰図ですか! ――――――飛行機って本当に大切なんですねぇ」

石田”「ああ。航空機は様々な用途に使える大切な戦力だ」

石田”「ただ、【兜】共の飛び道具持ちがよりにもよって航空戦力に集中しているからな」

石田”「機動力では負けはしないだろうが、あれだけの巨体を倒すのは厳しいものがある」

金木「でも、どういった【兜】が来ているかはまだわからないけど、対空戦力はきっちりと入れてあるぞ! 来るなら来い!」



石田”「今回の作戦目標はこうだ」


1,霧島で発見されたという【城娘】霧島城と接触する(おそらく【艦娘】霧島だと思われる)

2,霧島に集結している【兜】を駆逐する

3,現地で指揮を執っていると思われる【兜】の司令官を拿捕する


金木「はい。“霧島城”の所在を確認できたら一挙に早馬部隊で確保に向かわせるってことでいいんですよね?」

石田”「ああ。敵の狙いが【城娘】の確保にあるのならば、我々が先んじて確保すれば敵の目的達成は困難となるだろう」

石田”「後は逃げるなり、可能な限り 敵戦力の漸減を試みて、あわよくば敵の司令官を拿捕できれば大勝利だ」

金木「…………やっぱり【兜】の司令官ってやつは一人じゃないんですよね?」

石田”「……おそらくは」

金木「どうか、他から敵がやってきませんように…………」

石田”「その時はその時ですでに対策を練っているから安心しろ」

石田”「それよりも、どこに野営するのかを逸早く決めねばならんな」

金木「そうですね。さすがに1日で終わる話だとは思ってませんし、夜襲で窮地に陥らないようにしないと」







――――――天草:マンション城


飛龍”「………………」

飛龍”「間違いなく、霧島だとは思うんだけど…………」

飛龍”「提督が連れて行ったのはやっぱり『ヲシドリ』か……」

飛龍”「しかたないよね。この時代だと補給なんてまともにできないから……」

飛龍”「そういう意味では、やっぱり【深海棲艦】の方が上手だよね……」

飛龍”「……『ヲシドリ』、私の代わりに提督を守ってね」

飛龍”「私は提督とみんなの帰る場所を守っているから」

飛龍”「…………みんな、無事に帰ってきてね。待ってるから」


あさひ姫「……飛龍さん」

大宝寺城「ああ……、霧島か。行ってみたかったなぁ…………」

二条城「さて、あなたから任命された城代として、ここはどうしておきましょうかね?」フフフ・・・




――――――数時間後、


ドスンドスン! ガキーンガキーン! バァーンバァーン!


金木「くそっ! 【兜】の軍団もやってくれる!」

石田”「まだ“霧島城”が見つからないとあれば、先に敵を殲滅した方が楽かもしれんな」

金木「戦闘に巻き込まれるわけにはいかないから、おとなしく仮拠点にいるしかないのがもどかしい……」

金木「全体的に【山城】の練度が低いから困ったなぁ……(唐津も天草も山なんてほとんどなかったからなぁ……)」

金木「幸いなのは、ここが山岳地帯だから敵の進撃が遅いことと、敵航空戦力の対策をしてあるから野鳥狩りができていることか?」


石田”「…………部隊を分けたほうが良さそうだな」


金木「え」

石田”「お前はここで【兜】の殲滅の指揮を執れ」

石田”「その間に俺は何人か連れて先に行く」

金木「危険ですって! いくら海の上で歴戦の猛者の石田少将でもここは山の上――――――陸に上がった河童になりますって!」

石田”「しかし、【探索】班からの霧島における敵戦力の発見報告からすでに1日余りが経っている」

石田”「敵にこれ以上の優位を預けておくわけにはいかん」

金木「でも……!」

伊賀上野城「しかしながら、このままでは日が暮れてしまいます」シュタ

伊賀上野城「そうなれば、たとえ夜偵が行える我が方であっても夜間の連峰での強行軍は無理が祟ります」

伊賀上野城「すでに、我が方の戦力にも少なからぬ被害が出ており、ここは仮拠点の守りを強固にするのが先決かと存じます」

石田”「…………それもそうだな」

金木「――――――『急がば回れ』ってことか」

金木「しかたがない。ここは敵を殲滅して安全確保した後、仮拠点を移して明日からの捜索に本腰を入れよう」

伊賀上野城「聞き入れてくださいまして、感謝いたします、殿」



――――――夜営:えびの高原


金木「しっかし、よくもまあ霧島山まで来れたもんだなぁ………………早馬部隊で急行してここまでやってきたけど」

金木「そして、こんな辺鄙なところでも人は住んでいるんですね。おかげで物資の調達ができましたよ」

石田”「確かにな。そして、今回の“霧島城”に関する噂の信憑性についても裏付けがとれた」

石田”「情報によれば、肥後国側の 現代で言う えびの高原で“御堂を担いで歩き回っている”霧島神宮の巫女らしき女性を見たとのこと」

金木「――――――『霧島神宮』?」ピピッ

金木「ああ 薩摩国側にある天孫降臨に関する神宮か。ここからだと遠いな……」

石田”「だが、丸に十字の家紋を掲げている薩摩の人間が多くいるということはここはれっきとした薩摩領らしいな」スチャ ――――――拳銃を取り出す。

金木「うおわっ!? それって西部劇でよく見るリボルバー拳銃ですか!?」

石田”「ああ。【神娘】たちに協力してもらって、粗製ではあるが 何とか開発に成功したものだ」

石田”「リボルバー拳銃は構造が単純で信頼性に優れるからな。武士でもない俺が安全に諸国遍歴するのにはどうしても必要だった」

石田”「刀を差していいのは武士だけだが、まだ存在していない飛び道具である拳銃を禁止する法律などないからな」

金木「威力はどれくらいなんですか?」

石田”「さあな。襲ってきた野盗共に撃って全部 盲管銃創――――――つまり、銃弾が貫通しなかったから【兜】相手だと役に立たないだろうな」

石田”「せいぜい人間の急所を撃ちぬいて時間稼ぎするのにしか向かないな」

石田”「だが、これで【兜】を指揮しているだろう首領格を取り逃がすことはなくなるだろう」

石田”「――――――脚に中てればそれで人間は立てなくなるのだからな」

金木「…………そうですね」アセタラー


石田”「さて、このえびの高原に仮拠点を築いて明日からの捜索となるのだが――――――、」

金木「はい。少なくともこのえびの高原の一帯に“霧島城”がいると見て 間違いないですよね?」

石田”「ああ。『ヲシドリ』にはなるべく山岳地帯に艦載機を飛ばすように指示を出しておいた」

石田”「“霧島城”がもし【艦娘】霧島ならば、空母ヲ級の艦載機にすぐに気がつくはずだ」

石田”「まあ、元々『ヲシドリ』が敵である【深海棲艦】なのだから敵と誤認されて霧島に撃墜される可能性も十分にあるわけだが、それはそれだ」

金木「しかたないですね」

金木「でも それで、あれだけ小型の艦載機を撃ち落とせる精度を持った武器を搭載しているってことで――――――」

石田”「ああ。それで所在がはっきりするわけだ」

石田”「これは地元から提供してもらった地図を参考に、『ヲシドリ』が作成してくれたえびの高原一帯の地図だが、」

石田”「まず、えびの高原というのは韓国岳、蝦野岳、白鳥山、甑岳に囲まれた盆地状の高原ということだ」

金木「あ、これって“カラクニダケ”って読むのか。韓国でも見える場所なのかと思ってた」

石田”「…………いくら霧島連峰で一番高い山でもそんなのは無理に決まっている」ジロッ

金木「あ、すみません――――――つまり、この辺は平地の扱いだから【平城】でも問題ないってことか」

石田”「逆に、敵から容易に攻めこまれやすい場所でもあるがな」

金木「そこは問題ないですって。主力部隊の他に早馬部隊も控えていますから」


石田”「さて、ここで【艦娘】と【城娘】の違いをおさらいするが――――――、」


【城娘】は【変身】によって『具足』を展開できるのが特徴で、普段は軽装のままでいつでも戦闘態勢に移行できる。

【艦娘】は『艤装』を装着することによって軍艦時代の力をフルに発揮できるようになる。

※両者ともに、戦闘態勢の維持には莫大なエネルギー消費があり、そのために見かけ以上の大規模なエネルギー補給を必要とする。


金木「つまり、噂の“御堂を担いで霧島連峰を歩き回っている謎の怪力女”は【はぐれ城娘】である可能性は極めて低いってわけですね」

金木「【城娘】なら、歩きやすいように『具足』を解いて身軽になりますからね」

金木「そして、自分が【城娘】であることを証明するために『具足』を展開した状態で馳せ参じてきますからね」

金木「この『御堂を担いでいる』ってのがよくわかんないけど、少なくとも巫女服姿だという情報もありますから修行僧とはちょっと違いますよね」

石田”「ああ。俺も九州を1周してきた中で【はぐれ城娘】に何度か出会ってはいるが、やはり『具足』を展開して彷徨っている【はぐれ】を見たことがない」

金木「となると、やっぱり【城娘】ではない何かという可能性が非常に高いってわけですね」

石田”「ああ。飛龍の話によれば、俺が【乱世】に飛ばされる嵐の夜には霧島も駆けつけていたらしいからな。ほぼ確定だ」

金木「でも、問題なのは『どうして霧島っていう【艦娘】が人里離れたこんな場所を噂になるまで歩き回っているか』ですよね」

石田”「そうだな。霧島は基本的に要領がいい艦娘という印象だが、軍艦時代の経歴を見ると敵艦に肉薄して主砲を打ち込んだ暴れ馬のようなやつだからな」

石田”「もしかしたら案外すぐに恐慌状態に陥って、土地勘もないからどうすればいいのかもわからなかったのかもしれんな」

石田”「基本的に【艦娘】は【深海棲艦】と戦うための知識や技術しか生まれながら持ちあわせていないから、内陸での活動能力は皆無と言っていいだろう」

金木「まさしく、陸に上がった河童――――――いや、思いっきり座礁した艦じゃないですか!」

金木「でも、そうなると【艦娘】ってやっぱりいろいろと不便なんですね。【城娘】じゃ考えられないような弱点じゃないですか」

石田”「ああ、その通りだ。彼女たち【艦娘】は人間の形をしてはいるが、所詮は人間に使い捨てられるのが前提の兵器でしかない」

石田”「故に、戦場に立つ兵士としては最高級の品質ではあるが、それが人間と同等の存在であるのかと言えば『否』と言わざるを得ない」

石田”「言わば、チャイルドソルジャーと変わらない存在とも言えるな。人間未満の戦闘機械というわけだ」

金木「…………『少年兵』か。そうかもしれませんね」

石田”「だからこそ、それに頼らざるを得ない今の情勢を何とか打破したいのだ…………」ググッ

金木「…………石田少将」



――――――石田様。【城主】様。


石田”「!」

金木「!?」

あさひ姫「これをどうぞ」スッ


――――――差し出されたは人間の背丈を超えるような紫色の野菊の花束だった。



石田”「…………なぜここにいる?」ジロッ

金木「ちょ、ちょっと! 姫様はマンション城でお留守番だったはずでしょう!? それがなんでここに――――――!?」

あさひ姫「いろいろと物資や戦力が不足しているんじゃないかと思いまして、」

あさひ姫「――――――【後詰】として参らせていただきました」ニコッ

金木「誰だ、そんな勝手なことをさせたのは!?」

あさひ姫「二条城殿です。【城主】様が城代に選んだ二条城殿です」

金木「むぅ、ある程度のことまでは許してはいたけど…………そうかい。そうですか」ヤレヤレ

石田”「…………勝手にしろ。この聞かん坊め」プイッ

石田”「だが、ここに来た以上は貴様も戦力に数えさせてもらうぞ。戦力を残すほどの余裕はここには無いのだからな」

あさひ姫「元よりそのつもりでしたので、ぜひとも遣ってください」

石田”「………………」


金木「それで? このでっかい花束は何? こんなにもおっきい花なんてあるんだ」

石田”「…………野菊の一種だな。そして、特徴的な紫色か」

あさひ姫「はい。これはマンション城の象徴である“紫苑”の花にございます、【城主】様」


――――――【城主】様あるところに萬の紫苑あり。


あさひ姫「【城主】様の評判を聞き及んで地元の方がとってきてくださいましたので、どうかお納めください」

金木「え、あ、ああ……、どうも」

金木「(いつの間にそんな評判が出来上がっていたんだ……)」

金木「(でも、――――――言えない)」

金木「(確かに“マンション城”って“萬紫苑城”っては書くけど――――――、)」

金木「(それは『漢字にすれば世間一般からの覚えがいい』ってことだったから当て字を使っただけで、特に思い入れがあったわけじゃない)」

金木「(まあ、実際に漢字に表してみて【城主】様の居城としてそれっぽい感じがあったからいいんだけど…………)」

石田”「――――――紫苑か」

金木「どうしたんですか、石田少将?」

石田”「いや、ふと紫苑の花言葉を思い出しただけだ」

あさひ姫「――――――『花言葉』? 『花言葉』って何ですか?」

金木「うん? もしかして花言葉って日本にはないものだったのかな?」

石田”「そうだろうな。『母の日にはカーネーション』といったようなものは全て西洋由来だろう」

金木「ああ 確かに……(そう言えば、石田少将は花屋と仲良くやっていた時期があって、こう見えて花にとても詳しいんだったっけ)」

金木「まあ とりあえず、西洋ではその植物から連想させるものを文の代わりにして花を贈る習慣みたいなのがあるんだ」

金木「たとえば、バラって言ったら『情熱的な愛』って感じに」

あさひ姫「…………『バラ』? ごめんなさい、バラはわかりません」

金木「あ……(そうか、この頃はまだバラもないのか。これは何を例に挙げれば――――――)」

金木「ま、まあ、花に象徴としての具体的な言葉の意味を持たせてやりとりするっていうのがありましてね?」アセアセ

金木「それで、石田少将? 紫苑の花の花言葉って何ですか?」

石田”「ああ。紫苑の花言葉は――――――、」


――――――きみのことを忘れない。遠方にある人を思う。


金木「!」

あさひ姫「まあ! 素敵ですね」

石田”「ああ。こんな感じだったな、確か」


石田”「ん?」

金木「………………」ポタポタ・・・

あさひ姫「…………【城主】様?」

金木「いや、たまたま自分で名づけたものがここまで俺にぴったりな内容だとは思ってもみなくてさ…………ちょっと感激して」ポタポタ・・・

金木「そっかぁ。“萬の紫苑の城”――――――“萬紫苑城”とはよく言ったもんだよ」

石田”「…………金木」

金木「俺、ますます菊の御紋が大好きになったかもしれません」

金木「だから、『菊の御紋がたくさん入ったあの【軍刀】にふさわしいビッグな【城主】になれたら』って……」

石田”「なら、己のやるべきことを果たせ。菊の御紋に仕える人間でありたいのならばそれが第一だ」

金木「はい。必ずや探し出しましょう、霧島って人のこと!」ポタポタ・・・

石田”「ああ。頼りにしているぞ、金木」

金木「じゃあ、この紫苑の花束は大事にするから。ありがとう、姫様」

あさひ姫「いいえ。これは日頃の【城主】様の行いが評判となって贈られたものです。私はそれを届けただけです」

金木「そっか。その期待には何が何でも応えてやらないとな……!」




――――――翌日


ドスンドスン! ガキーンガキーン! バァーンバァーン!

金木「やっぱり懲りずにまた【兜】がやってきたか……」

石田”「昨日から朝方にかけてのこちらの展開の速さに驚いて戦力を繰り出してきたようだが、時すでに遅しだ」

石田”「こちらはすでに要所を全て押さえて効果的な布陣をしている」

石田”「更に――――――!」


夏草や兵どもが夢の跡

名護屋城「人生 夢の如し」 ――――――【人生如夢】発動!(5秒間 必殺技が発動しやすくなる/範囲:全)

手にむすぶ水に宿れる月影のあるかなきかの世にこそありけれ

名護屋城「諸行無常」 ――――――【人生如夢】発動!(耐久を小回復/範囲:全)

順逆二門無し。大道心源に徹す。

名護屋城「身をも惜しまじ 名をも惜しまじ」 ――――――【人生如夢】発動!(耐久を小回復/範囲:全)


金木「やっぱ反則級だわぁ……。発動したら最後――――――5秒で形勢が一気に逆転だよ、あれ」

石田”「運用コストは重いが、それに見合った圧倒的な戦闘力と抜群の【必殺技】によって この長丁場が楽に乗り切れそうだな」メメタァ

金木「まず、全体回復っていうのがチートですよ、チート! これでまだまだ戦えますよ、我が軍団は!」メメタァ

金木「しかも、【後詰】として来てくれたおかげで能力補正が凄いことに!」メメタァ

金木「まさに強靭・無敵・最強! 黒歴史として封印されていたのも頷ける強さだ!」

石田”「お、あれで最後か。――――――余裕の勝利だったな」

金木「姫様ヤベエエ! こんなのが敵の手に落ちていたらと思うとゾッとするよ!」

石田”「よし、周辺の安全が確認でき次第、えびの高原を囲む峰に【城娘】を向かわせるぞ!」

石田”「これで決着がつくだろう」

石田”「本当なら、モールス信号を夜通しで送り続けることができれば、こんな手間はかからずにすんだのだがな……」

金木「そうですね(これで終わるのか――――――あれ? でも、そう簡単にうまくいきそうにないように感じるのはなぜなんだろう?)」




――――――某所


霧島「夢なら……、夢なら今すぐにでも醒めて…………」ボロボロ・・・

霧島「さすがにもう…限界です…ね……」ゼエゼエ

霧島「提督……、私は頑張りましたよぉ…………」グゥウウウウウウウ・・・


ガラララ・・・!


霧島「あ…………」ヨロッ・・・

「おお…………、これが噂の“霧島城”というやつか……」ドクンドクン

「なるほど。確かに、霧島連峰の湖の中で最も美しい湖にふさわしい姿をしている…………」

霧島「だれ…………」

「安心しろ。俺はきみを助けに来たのだ」

霧島「え……」


兜の大将「ああ。安心するといい。すぐに楽にしてやるからな」ニヤリ



――――――数時間後、


石田”「くっ、あてがはずれか!? ――――――計算外だ!」ギリッ

金木「ま、まだです、石田少将! まだ【探索】から帰ってきていない【城娘】がいますから!」アセタラー

ヲ級”「ヲヲヲ…………」アセアセ

石田”「くっ」プイッ

あさひ姫「…………石田様」

金木「ここまで来ればすぐに終わると思っていただけに――――――(何かが違っているような気はしていたんだ……)」

あさひ姫「捜索は難航していますね」

あさひ姫「付近の方たちにも捜索の協力をしてもらってはいますけれど……」

金木「くそ! 目撃証言に間違いはないんだ! 問題はその“御堂を担いだ巫女”が今 どこをほっつき歩いているかがわからないということだ!」

金木「そもそもこの噂が出始めたのはごく最近のことらしいし、こういう時【変身】できない【艦娘】はいろいろと不便だな……」

あさひ姫「――――――!」

金木「捜索の範囲を拡げるしかないかもしれない(でも、闇雲にやったところで意味が無い。何か根本的なところで見落としてはいないか?)」

あさひ姫「【城主】様! 『ごく最近』というのはいつぐらいの話なんですか!?」

金木「うん? 確か1週間前後だと思うよ。だから、久々に九州本土まで【探索】に出ていた娘たちが情報を掴めたらしいし」


あさひ姫「その間、その“霧島”さんはどうやって飢えを凌いでいたのでしょうか?」


金木「え?

金木「あ!?」

あさひ姫「………………」

金木「そうだよ! すっかり忘れていたよ、そんな基本的なこと!」

金木「というか 俺、てっきり【艦娘】って重油を飲んで動いているから、おとなしくしていれば人間よりは飲まず食わずで生きていけるって――――――」

金木「馬鹿だった! 能天気だった! 人間よりも頑丈な身体をしているからって簡単には死なないって――――――」

金木「もしかしたら、意識を失って――――――うわあああああああああ!?」

金木「(そうだよ! 石田少将が今回の捜索がすぐに終わるだろうと思っていた前提条件って――――――、)」

金木「(その“霧島”って【艦娘】が『こちらの呼びかけに応じるだけの元気がある』っていう前提に立っているものじゃないか!)」

金木「(向こうから位置を知らせてくれるように呼びかけるのは確かに確実だけど、確実なだけにそうじゃない可能性を無意識に――――――!)」

金木「――――――石田少将!」バッ


やくも「お殿さん! お殿さん! 【探索】から戻ってきたけん!」


金木「…………!」

石田”「で、どうだった!?」

やくも「それが――――――」

千狐「殿、こんなのを【探索】に出てた娘が見つけてきたの!」

石田”「!!」


――――――緑色の額縁メガネ



金木「め、メガネ? 確か南蛮貿易でメガネが入ってきていたのは知っていたけど、これまたずいぶんと現代的な――――――しかも緑色の額縁か」

石田”「それは霧島のだ!」

金木「え!?」

石田”「おい、これをどこで見つけた?!」クワッ!

千狐「ちょ、ちょっとこ、怖いの……、石田さん」

やくも「白紫池の北の辺り――――――」

石田”「よし、ならその辺を重点的に――――――!」

金木「待った! 石田少将!」

石田”「!」

金木「石田少将、これだけは今 確かめておきたいのですが――――――、」

石田”「何だ?」


――――――【艦娘】って飲まず食わずで何日 平気でいられますか?


石田”「…………あ」

金木「どうなんですか?(よかった! これで根本的な間違いに気づけたようだ……! でも、これから何をどうすれば――――――?)」

石田”「しまった! 俺としたことが――――――!」ギリッ

石田”「軍艦と同じだ! 出力の高い行動をすれば それだけカロリーが消耗される!」

石田”「つまり、人間にはとても背負いきれないような艤装を装着しているだけでも尋常ではないエネルギーを消耗してしまう」

石田”「だが、人間よりもカロリー効率のいい【燃料】を飲んでいるから普段は人間の何十倍もタフだが、」

石田”「補給が十分ではなくなると、次第に人間よりも強い空腹感と飢餓感に襲われて電池の切れた人形のように無気力な存在となる!」

石田”「ましてや、【艦娘】にとっては不慣れな陸地で、しかも大変な労力を強いられる山岳地帯を何日も彷徨い続けていたとするなら――――――!」ググッ

あさひ姫「どこかで力尽きている可能性も――――――!」

石田”「どうすればいい! どうすればいいのだ!?」

石田”「21世紀になっても山での遭難は生還が絶望的なものとされているのに!」

石田”「俺はみすみす貴重な戦力をここでロストさせてしまうのか!?」

金木「石田少将…………何か、何か手はないのか?」

金木「むむむ……(――――――考えろ! 少しでも可能性に繋がるものを絞りだすんだよ!)」ウーム

金木「手掛かりとなるのはこのメガネだけ――――――(う~ん、この野外に放置されてこびりついた臭い――――――)」スッ

金木「……あれ、待てよ?」


――――――霧島のメガネは少し土臭かった。



金木「そうだ! ――――――伊賀忍!」パンパン!

伊賀上野城「ここに」シュタ

石田”「?」

金木「お前、忍者なら微かな臭いを辿って追跡なんて朝飯前なんじゃないか?」

伊賀上野城「可能といえば可能でございます」

金木「なら、命じる! 今すぐこのメガネが落ちていた場所から痕跡を辿って“霧島”を見つけ出してきてくれ」

石田”「!」

金木「俺、【艦娘】のことなんて全然知らないから何とも言えないけど、」

金木「少なくとも重たい『艤装』を担いで慣れない山道を覚束ない足取りで進んでいったに違いないから、絶対に連続した痕跡が残っているはずなんだ!」

金木「ましてや、ここはまだまだ未開拓の鬱蒼とした森が生い茂っているわけなんだし、噂も1週間ぐらい前に出たから痕跡も新しいはず!」

金木「これだけ言えば、伊賀忍なら行ける気がするだろう?」

金木「だから、――――――行って来い!」

伊賀上野城「御意」シュッ!

金木「よし!」

千狐「殿! さすがなの!」

やくも「うんうん。いつ見ても惚れ惚れするような采配振り!」

金木「千狐、やくも! すぐにその【探索】班を向かわせて!」

金木「こうなったら徹底的にやろうじゃないの!」

あさひ姫「…………!」


金木「石田少将、行ってください!」


石田”「なに?」

金木「俺はここで待ってますから。提督が“霧島”さんを迎えに行ってきてあげてください」

石田”「!」

金木「俺がどっしりと構えているから、石田少将は安心して出ることができるんでしょう?」

金木「いつものことじゃないですか」


金木「だったら、俺はここで待ってますから。石田少将はこれで思う存分 力を発揮してくださいよ!!」


石田”「…………金木」

石田”「――――――恩に着る」フッ

金木「いえいえ。これぐらいの甲斐性を見せなかったら【城主】として名折れだ」

金木「それじゃ、必要な人員を選んでください。もちろん、ここの防衛に必要なだけの戦力も残してくださいね」



――――――そして、


伊賀上野城「こちらです」シュッシュッ

石田”「この方角だと、白紫池から東の方角をひたすらに進んで――――――」

大宝寺城「わ、私、山ガールじゃないって言ってるんだけどなぁ…………」ゼエゼエ ――――――羅針盤を持たされている。

石田”「なら、どうして【平城】のお前はついてきたのだ? 【後詰】として仮拠点の防衛についていればいいものを」

大宝寺城「だって私、すないスケ様のことを少しでも知りたくて…………」ゼエゼエ

大宝寺城「そんな すないスケ様のお付の人とは逸早く会って仲良くなりたいんだ……」エヘヘ・・・

石田”「残念だが、山の上での行動は苦手だから一緒に山にこもっての修行はできないだろうな」

大宝寺城「……だとしてもだよ、すないスケ様?」

大宝寺城「私は少しでも知りたい。出羽三山から九州に飛ばされて【城主】様の他に すないスケ様にも出会えたことの意味を…………」

石田”「…………意味などあるのか?」

大宝寺城「わかんない。でも、験の修行って『求め続けることが大事なこと』だって教わっているから」

大宝寺城「だから、気になったことの答えを求め続けているんだ」

石田”「……そうか」

石田”「――――――伊賀上野城」

伊賀上野城「ここに」シュタ

石田”「どう思う? このまま東に進めばその先には――――――」

伊賀上野城「なるほど。では、そこに行き着くと――――――?」

石田”「確か【水城】属性の脇本城がいたな。そいつを先に行かせて付近の捜索をやらせろ」

伊賀上野城「承知。では、こちらは引き続き追跡を行います」

伊賀上野城「すないスケ様も十分にお気をつけになってください」シュッ

石田”「よし、俺たちも行くぞ」

大宝寺城「へ、変身――――――」ゼエゼエ

石田”「ダメだ。山伏ならこのぐらいの山道は平然と越えて行け」

大宝寺城「そんな……、さすがにバテちゃったよ~」ゼエゼエ

佐和山城「そこにいたか、石田少将」

石田”「……何ですか」ムッ

佐和山城「相変わらず、愛想の無いやつだな(――――――だが、それがいい)」

佐和山城「だが、喜べ。すでに当たりをつけることができたから、二人共 私に乗るのだ」

石田”「なに?!」

大宝寺城「え、本当……?」

佐和山城「ああ。追跡はその道の達人にまかせて、私は先に目星をつけていたのだ」

佐和山城「ここにな」ドヤァ

石田”「…………さすがだな。仕事が速い。褒めてやる」プイッ

佐和山城「素直になれ。そんな態度は損でしかないぞ」

石田”「貴様に言われたくはない」ムスッ

大宝寺城「まあまあ……、それより早く…………」フゥ

佐和山城「そうであったな」

佐和山城「では、――――――変身!」ピカァーーーン!



――――――六観音御池


石田”「これが六観音御池か。コバルトブルーの美しい火山湖――――――まさしく絶景だな」

石田”「このどこかに霧島が……(思わず 来た目的も忘れて、唐津の虹の松原の時のように息を呑んでしまったな)」

石田”「霧島ーーー!」

佐和山城「さて、この辺りから足跡が急に途絶えている」

佐和山城「まさかとは思うが、この湖にそのまま直進して沈んでしまった可能性も無くはないが、」

佐和山城「聞けば、“霧島”とやらは飛龍や『ヲシドリ』の仲間――――――水面を浮くことができるらしい」

佐和山城「そうなれば、このまま対岸まで渡っていった可能性もあるが、ここは丁寧に見て回ろう」

佐和山城「大宝寺城はここから左に回って足跡を探れ。私は右側から痕跡を探ろう」

大宝寺城「うん。わかったよ」

脇本城「あ、みなさん、すでにこちらにいらしてましたか」

石田”「む、確か脇本城だったな(――――――脇本城はメガネだったな。それだけに霧島と似たものを感じるな)」

脇本城「はい。伊賀上野城殿からの言伝でここに来ましたが、すでに佐和山城殿が目星をつけていましたか」

石田”「しかし、どう捜索したものか――――――仮に霧島がこの周辺に倒れていると仮定するなら、どこかに休めそうな施設があるはずだが」

脇本城「それならありますよ!」

石田”「それは本当か?」

脇本城「はい。地元の方たちの情報によれば、この六観音御池のほとりにその名の由来となった六観音を祀る仏堂があるとか」

石田”「それはどの方角だ?」

脇本城「北の方角だそうです」

石田”「…………可能性はあるのか?(この六観音御池は白紫池よりも北よりの分布で、ちょうど俺たちは六観音御池の西側の真ん中辺りにいる)」

石田”「(それはつまり、佐和山城が見つけた痕跡が本当に霧島のものだとするのならば、どうやっても北の六観音堂に意識が向くはずがない)」

石田”「(ましてや、メガネを失って彷徨う霧島がそこ めがけて突き進めるようには到底 思えないが――――――)」

石田”「だが、賭けてみる他ないか」

石田”「そこに連れて行ってくれないか、脇本城? 北の方角はあっちだな」 ――――――羅針盤と太陽の位置を確認しながら。

脇本城「わかりました。――――――再び、斗星の北天とならん!」ピカァーーーン!

石田”「うむ(しかし――――――、)」


――――――なぜ霧島がその名の由来となった霧島連峰のまっただ中に現れたのかが皆目検討がつかない。どういうことなのだ?



――――――六観音堂


ガララ・・・

石田”「!」

脇本城「どうでしたか!?」

石田”「…………霧島、お前はそこまでがんばってくれたのだな」


脇本城「誰も居ませんね」キョロキョロ


脇本城「ですが、何やら見慣れない物が置いてあります。――――――何かの祭具でしょうか?」

石田”「いや、間違いなく霧島はここにいたんだ」

脇本城「そうなんですか?」

石田”「脇本城が祭具だと思ったこれは――――――、」


――――――これは俺が開発した【特殊小型船舶】水上オートバイだ。


脇本城「――――――『水上オートバイ』?」

石田”「そして、この水上オートバイは俺の指紋認証でエンジンがかかる仕組みとなっている!」

石田”「…………!」カチッ


ガチャ、ブルルルル・・・・・・


脇本城「おお!」

石田”「更に、海難に備えたサバイバルマニュアルや位置情報システムを搭載した携帯情報端末も付属している……」ピピッ

石田”「そうか、“御堂を担いで歩き回っている”霧島神宮の巫女というのはこういうことだったのか」

石田”「『艤装』だけじゃなく、余分にこんなものを必死に担いで人知らず山奥を彷徨い続けていたというのか…………」

石田”「そして、この場に霧島がいないということは――――――!」ガクリ

脇本城「すないスケ様!」

大宝寺城「あ、すないスケ様だ。やっと追いついた――――――あ」



石田”「間に合わなかったんだ、俺たちは…………霧島!」orz


脇本城「そんな…………」

大宝寺城「すないスケ様…………そっか」





トボトボ・・・





大宝寺城「…………辺りにはもう痕跡がないよ」

大宝寺城「どうしよう? やっぱり間に合わなかったのかな……?」

大宝寺城「はあ……、もっと私に力があれば――――――」チラッ

大宝寺城「あ」


――――――ふと、大宝寺城は六観音御池に1羽の白鳥が優雅に泳いでいるのを見かけた。

               クグイ
大宝寺城「――――――鵠だ」

大宝寺城「そういえば、私の出身の出羽三山って崇峻天皇の皇子:蜂子皇子が3本足の霊鳥に導かれて羽黒山・月山・湯殿山を開いたのが始まりだっけ」

大宝寺城「そして、羽黒山の本地仏は正観音様――――――」

大宝寺城「お願い、観音様! ここの観音様は十一面観音様だけど、どうか すないスケ様をお助けください!」ググッ


大宝寺城「くぅううううう! むぅうううううううう!」

大宝寺城「んんんんんんんんんん!」

大宝寺城「………………!」
















大宝寺城「はあっ!!」カッ





バタバタバタ・・・!

大宝寺城「あ」

大宝寺城「…………行っちゃった。まだまだ修行不足だよね」

大宝寺城「あーあ……、これからどうしよう――――――」


脇本城「ここにいましたか、大宝寺城殿!」


大宝寺城「え、どうしたの?」

脇本城「対岸を見てください!」

大宝寺城「え」



佐和山城「――――――!」 ――――――変身して槍を大きく振って『こちらに来い!』『手掛かりを発見した』のサインを送っている!



大宝寺城「何か見つかったんだ!」パァ

脇本城「はい。ですから、【平城】の大宝寺城殿は六観音堂で待機して、羅針盤と水上オートバイを見ていて欲しいとのことです」

脇本城「他にも六観音御池に後れてやってくる人たちに今の状況をお伝えしてください」

脇本城「私は すないスケ様を乗せて対岸へと渡っていきますので、この場はお任せします!」

大宝寺城「よ、よかった…………」

脇本城「大丈夫ですか? これから六観音堂に向かってください。連絡役として後から来た人たちに状況をお伝えしてください」

大宝寺城「うん! わかったよ! 私、そこで必死に観音様にお祈りしているから行ってきて!」

脇本城「では、私はここで、――――――斗星の北天とならん!」ピカァーーーン!


大宝寺城「よかった……。祈りが通じたんだ…………」

大宝寺城「ありがとう、鵠さん。こういう時こそ祈らなくちゃ!」

大宝寺城「そういえば鵠って、ヤマトタケルノミコトのことでもあるんだよね」

大宝寺城「でも、まさか――――――そんなことないか」

大宝寺城「よし、行こう!」





ここ 六観音御池の名は、村上天皇の御代での出来事に由来している。

性空上人がこの霧島連峰の火山湖の1つの湖畔で法華経を読誦していると白髪の老翁が現れたという。

「我はヤマトタケルノミコトである。白鳥と化してこの峰に住むこと久し。今、師の読誦苦行の徳に感応して身を現すものなり」 

この因縁によって、上人は湖畔の出現場所に堂宇を建て、中に手彫りの六観音を安置したとされ、

それが霧島連峰で最も美しいコバルトブルーの火山湖:六観音御池の名の由来と伝えられている。




――――――仮拠点:えびの高原


金木「………………」ピピッ

金木「――――――霧島神宮」

金木「欽明天皇の時代に慶胤に命じて高千穂峰と火常峰の間に社殿が造られたのが始まり――――――」

金木「うん? 『欽明天皇』――――――どこかで聞いたような」

あさひ姫「どうしたんです?」

金木「あ! そっか、欽明天皇ってあれだ! 敷島の人か! そうか、そうか!」 >>73

あさひ姫「はい?」

金木「いえ、暇だからちょっと地元の人と話してたら霧島神宮の話になってちょっと調べてたんですよ」

金木「【城娘】を従える天の御遣いである【城主】には是非とも霧島神宮に来てもらいたいって地図までもらってさ」

あさひ姫「そうだったんですか。確か、霧島神宮は地元の島津家にとっては縁ある場所でしたね」

金木「それで――――――、」

金木「火山の麓にあるという立地のために度々 炎上しては再建を繰り返している――――――」

あさひ姫「まあ」

金木「そっか。霧島連峰は火山地帯だもんな――――――っていうか、日本の山々はみんなマグマでできているから当然か」

金木「天暦においては性空上人により、現在の高千穂河原に遷されるが、ここも度々 噴火の巻き添えで炎上している」

金木「現在の社殿は、正徳5年(1715年)に島津吉貴の奉納により再建したものである」

金木「ふ~ん」


金木「霧島って割りと噴火しまくってんだな…………こんな危なっかしい場所が天孫降臨の舞台なのか」

金木「…………何か石田少将が迎えに行っている(【あちら側】の)【艦娘】霧島の戦歴と重なるところがあるって感じだな」

金木「やっぱり何か縁があるのかな?」

あさひ姫「どういうことです?」

金木「【艦娘】って今から300年ぐらい後の軍艦が擬人化したもんなんだけど、」

金木「艦内神社っていうのが必ずあったらしくてさ。軍艦の命名は山や川、旧国名がつけられるのが規則で、」

金木「たとえば、戦艦:伊勢は伊勢神宮の末社を艦内神社にしていたことだし、巡洋戦艦:榛名は榛名神社って感じで」

あさひ姫「へえ、そうだったんですか」

あさひ姫「それなら確かに、霧島さんが名の由来となったこの霧島連峰と何らかの縁があって喚ばれたという推測も無理がないことですね」

金木「…………うん。だからどうしたって話なんだけどさ」

金木「でも、何となく『名前が同じものって似たような傾向を持つ』って感じることが時々あるんだよな……」

あさひ姫「確かに、私も“ナゴヤジョウ”ですが同じ那古野城さんとは何か感じるものがありました」

金木「それはたぶん――――――何でもない」

あさひ姫「どうしました?」

金木「何か思いついた気がしたんだけど、パッと忘れちゃった」テヘッ

あさひ姫「そうですか。何か思い出したら教えてくださいね」

金木「うん。そうする」

金木「(実は那古野城と名護屋城の共通点を思い浮かべたら、どっちも最終的に徳川家康に下克上された織田家と豊臣家の城ってことを――――――)」























――――――某所


大将「どうすりゃあいいんだ!?」オロオロ

又左「と、言われましても……」


霧島”「ぁぁ…………」


大将「あんなにも弱り切っているのに俺はただ見ていることしかできないのか!?」

赤鬼「御大将の女癖の悪さには呆れてしまいます」

又左「今は社の者に任せておきましょうか」

大将「…………ぬぅ」

大将「わかった」



スタスタスタ・・・


大将「ところで、本当にこの麗しき“霧島城”は【城娘】だったのか?」

又左「…………少なくとも人間ではないのは確かです」

大将「だよな。俺に持てないようなあれだけ巨大な祭具を背負った巫女だなんて見たことがないぞ」

大将「俺が知ってる限りだと、仏閣の【城娘】はいても神社の【城娘】なんてのは見たことがない」

赤鬼「そうなると、南蛮から来たという可能性は?」

大将「その可能性はあるのか? 確かに背負った祭具らしきものは国崩し砲に似たものではあるが…………」

又左「しかし、それが事実だとするならば、いろいろと辻褄が合わない特徴を持っていることに……」

大将「そうか。南蛮貿易の歴史が100年にもならないこの時代に存在の欠片すら感じられない“霧島城”と巷で噂のこの人間ではない何か――――――」

大将「それが南蛮からきた【城娘】である可能性は限りなく低い気がしてきたぞ」

又左「はい。国崩し砲に相当するものを持つ【城娘】ならば、なぜその存在が今まで明らかではなかったのか――――――」

大将「そうだそうだ。話はそこからなんだよ」

赤鬼「なるほど、推測では天孫降臨の時代に築かれた歴史から消えた古代の城郭が【城娘】となったものだとばかり――――――」

赤鬼「城址や遺構すら残っていないのも、ここ 霧島神宮と同じく、霧島連峰による火山噴火で消失した――――――」

大将「…………もしかしたら本当に“天女”だったりして」

又左「……あり得なくはない話ですね」

赤鬼「だとしたら、どうするおつもりなのですか、御大将?」


大将「当然 娶る! 俺の正室に迎えたい」


赤鬼「ダメだ、ダメ過ぎる、御大将……」ゲンナリ

赤鬼「こんなんだから、神集島でいきなり戦わされて手傷を負わされる羽目になったというわけですか」ハア

又左「滅多なことを言うもんじゃない、新参者」ジロッ

又左「敵の一人、討ち取れないとはなんと情けない」

赤鬼「誰のおかげで一人で戦わなくちゃいけなくなったんでしょうかね?」

大将「やめろ、二人共!」

又左「しかし――――――!」


大将「とにかく、“手掛かり”は掴めたか?」


又左「…………やはり【城娘】ではないようなので」

又左「前に佐和山城から得られた新参者のようにはいかないですね」

大将「やっぱり天女なんだよ!」キラキラ

赤鬼「まだ言いますか、この御大将は……」

大将「とりあえず、神宮まで連れてきてはみたけれども…………早く元気になって欲しいもんだぜ」


――――――ここは、霧島神宮(西御所霧島権現)


ドドドドド・・・

大将「!」

赤鬼「…………たくさんの足音! それにこの気配は!」

又左「まさか、すでに我々の動向が――――――!?」

大将「おおっと! だったら、すぐにトンズラだ! 最後に勝てばいい!」ダダッ

又左「くっ、一度ならず二度までも!」ダダッ

赤鬼「御大将は早く逃げて!」

大将「おう! 花嫁を連れてな――――――!」


タッタッタッタッタ・・・!


大将「すまねえ! すぐに行かなくちゃならなくなった――――――なっ!?」

又左「き、貴様は!?」


石田”「また会ったな(こんにちは、死ね)」パチン!


艦攻妖精×4「撃てええええええ!」シュバババババ!

大将「うおおおおおっ!? なんでこいつがあああああああああ!?(死ぬ! 死ぬうううううううううう!)」

又左「くっ、舐めるな!」バッ



ガキンガキンガキーン!


艦攻妖精×4「ちっ」

大将「……さ、さすがは“又左”だぜ! そんな子供騙しは通じないぞ!」アセダラダラ

石田”「ああ」\勅命/ スッ

石田”「そうだと思ってた」¶ バチン!

大将「!」

大将「気をつけろ! こいつはまた何か――――――!(――――――“勅命”の扇! それが攻撃の正体か!)」

又左「きゃあああああああああああああああ!」ビリビリビリビリィ・・・・・・!

又左「あ…………」バタン!

又左「」

大将「…………嘘だろう?」

石田”「やはりな。『具足』を展開していない状態なら【大将兜】でもその程度というわけだな」

大将「…………!」アセタラー

大将「いったいどうしてここがわかった!?」

石田”「冷静に考えて――――――、」

石田”「だらしのない貴様ならば巷で噂の“霧島城”を、しかも瀕死状態なら尚更、名を同じくするこの神宮に連れてくるのではないかと思っていた」

大将「………………!」ドキッ

石田”「実際にその通りだっただろう?」

大将「ハッ」

大将「――――――じゃなくて、前提がおかしいだろう!」アセアセ

大将「どうして六観音御池の堂宇にいたことに気づいたんだよ! 霧島神宮までだってあんなに距離があるのになんで諦めないんだよ!」

石田”「答える義理はない(どうやらこいつは俺の【特殊小型船舶】を六観音堂の祭具か何かと勘違いしていたようだな)」

石田”「その程度の知恵で【乱世】を生き残れると思ったら片腹痛いな」

大将「……こ、殺すのか、俺を?」

石田”「ああ。生かしておく理由がないことは最初に会った時にわかっていたことだからな」



ドゴーン!


大将「…………!」

石田”「あっちの方でも決着がついたようだな」

大将「う、嘘だ! 一騎当千の【大将兜】がこうも簡単に――――――」

石田”「一騎当千の鉄則は、自分の行動が絶対に妨げられないことだ」

石田”「貴様は場当たり的に戦力を投入しているだけの能無しだ(野盗共をカネで釣ったとはいえ、配下に置いていただけの器量はあるようだが)」

石田”「たとえ、【城娘】を凌駕する力があっても多勢に無勢の数的不利を知れ!」ジャキ! ――――――ホルスターの拳銃を抜く!

バァーーーン!

大将「ぐあっ!?(あ、脚が、脚がぁ…………!)」グラッ

石田”「ふん!」シュッ

大将「あ」

石田”「てやっ!」ズゴオン! ――――――鳩尾に深々と突き刺さる渾身の一撃!

大将「あ、お、あ…………」モガモガ

大将「」バタン

石田”「ふん。唐津の時は取り逃したが、今度は逃がさんぞ。貴様には訊くことが山ほどあるのだからな」

艦攻妖精「やりましたね」ニヤリ

石田”「ああ。だが、【大将兜】の身体能力を見ただろう。厳重に縛り上げるか、この場で始末しなければならんな」

又左「」

艦攻妖精「そうですね」

艦攻妖精「いやぁ~、斉射を防がれた時、冷や汗が止まりませんでしたよ」

艦攻妖精「俺たちの愛機は固定機銃扱いで、反撃されたら間違いなく全員 串刺しにされていたでしょうし」

艦攻妖精「この狭い境内で飛び回るのが難しいからこうせざるを得なかったってのはわかってはいたんですけどね……」

石田”「よくやってくれた」

石田”「4方向からの斉射ならば、確実に【大将兜】を釘付けにできる確信があった」

石田”「敵の主従の絆というのは確かなものだったが、それを俺にはっきりと見せつけていたのが後々の災難に繋がったな」

艦攻妖精「主君を守ることに全力を尽くすように動くのが見え見えでしたからな」

艦攻妖精「だからこそ、待ち伏せと生け捕りが両立できたわけですな」

艦攻妖精「もう少し戦力を残しておけば、こんなふうにはならなかったのに……」

艦攻妖精「ま、唐津や霧島連峰で数だけが取り柄の力押しばかりじゃ、大将の力量が知れてたし」

石田”「そういうことだ。いくらでも敵指揮官の素質を測る判断材料はあった」

石田”「戦いというのはこうやって相手の力量を見極めて行うものなのだ。つまりは分析力と観察力がものをいう」

石田”「今回はまさに手の内を見せすぎたことによる自滅だな。無防備すぎたな」


――――――幕切れなどこんなものだ。敗者は惨めに、勝者は意気揚々にその勝敗を明らかにするのだ。





石田”「…………どうですか?」

神官「お持ちいただいた“妙薬”の甲斐あって、だいぶ落ち着いてきたようです」

石田”「連れの者の介抱してくださいまして、ありがとうございます」

神官「……先程の方たちとはいったいどういった関係で?」

石田”「名は明かせませんが、彼の者は放蕩児でございまして、それを連れ戻しにきたのが第一です」← 嘘は言っていない

神官「……そうですか」

石田”「それでは、いつまでもお社のご厄介になるのも悪いので、これで――――――」

神官「お待ちなされ」

石田”「?」


神官「もしや、貴方様は石田治部と縁のある御仁ではないのでしょうか?」


石田”「…………またか」ハア

石田”「お言葉ですが、確かに氏は同じ“石田”ですが、私は石田治部とは無縁の人間なのです」

神官「いやなに、あれから30年近く経ちますが、幼き日に石田治部にお会いしたことがありまして」

神官「あまりにも似ているものですから、つい――――――あ」

石田”「御用はそれだけですか? 我々は天草に戻らなければならないので――――――(………………不快だな)」

神官「しばし! しばしお待ちくだされ! その間に支度をしていてかまいませんから、見送りだけは必ず!」

石田”「…………?」

石田”「ああ……」

神官「では!」


タッタッタッタッタ・・・!



霧島”「う、うぅん…………うん?」

石田”「私がわかりますか、霧島?」

霧島”「え? もしかして、その声――――――司令?」

石田”「はい」スチャ

霧島”「あ」 ――――――霧島のメガネをかける。

霧島”「あ、ああ…………!」 ――――――視力が矯正されてはっきりと見えるようになった。

霧島”「司令ぃいいいいいいいいいいいいいい!」ギュッ

石田”「…………よくやった。それでこそ我が艦隊の要だ」

霧島”「はい……!」ヒッグ

石田”「………………」


――――――
佐和山城「なるほどな。あれが噂の“霧島城”というやつか…………似ているな」チラッ

脇本城「そうですね。何だか話が合いそうな気がしてきました。これからお話するのが楽しみです」

伊賀上野城「しかし、今回の作戦目標の全てを満たすことができましたが――――――、」


今回の霧島における作戦目標

1,霧島で発見されたという【城娘】霧島城と接触する(おそらく【艦娘】霧島だと思われる)――――――達成!

2,霧島に集結している【兜】を駆逐する ――――――達成!

3,現地で指揮を執っていると思われる【兜】の司令官を拿捕する ――――――達成!


佐和山城「そうだな。こうして“霧島城”と接触できたし、霧島に投入された敵の大半を撃滅できたことだろう」

佐和山城「しかし、敵の頭を押さえることはできたが、あの“赤鬼”の【大将兜】だけは逃げられてしまった……」

伊賀上野城「さすがに捜索班だけで敵の急所に突撃するのは無理と判断して、地元の方に薩摩から至急 援軍を出すよう依頼したまではよかったのですが……」

脇本城「事実、【大将兜】が護衛についていましたから、あさひ姫様を欠いた状態で決戦を挑むのは分が悪すぎました」

佐和山城「悔しいことだが、あの“赤鬼”にはハッタリを効かせて退いてもらうしか対処する手段はなかった」

脇本城「幸い、あちらは足止めに徹していたので、こちらの被害も極力抑えられてはいましたが、」

脇本城「薩摩の援軍が来るとはいえ、“赤鬼”がすぐに退いてくれなかったら、すないスケ様も危なかったです……」

佐和山城「まったく、石田少将ともあろう者が、土壇場でこんな博打に出るとはな」ヤレヤレ

佐和山城「(けれども、その土壇場での賭けに勝つだけの天運を持っているのだから、少しばかり我が事のように嬉しくなってしまうな)」

佐和山城「(そう、関ヶ原の決戦も結果は天運によるもの――――――それを掴めなかっただけなのだ、石田治部は)」


脇本城「しかし、まさか霧島連峰を越えて薩摩領にまで入るとは思いませんでした」

佐和山城「そうだな。九州征伐のことを思い出す」

脇本城「『鬼』と言えば、――――――この薩摩の国には“トシドン”という鬼がいるそうです」

伊賀上野城「――――――『鬼』ですか」

伊賀上野城「『鬼』と言えば、薩摩の鬼と言えば鬼島津、織田の鬼と言えば鬼柴田、そして 伊賀の鬼と言えば鬼半蔵ですね」

佐和山城「――――――『鬼』か(あの“赤鬼”と私の間に何らかの因縁があったように感じられたな)」
――――――


石田”「…………」スッ ――――――椀に注がれた“妙薬”を木の箆で掬って食べさせている。

霧島”「…………ゴクン」

霧島”「もっと、ください、司令……(司令とのこんなひととき、怪我の功名――――――これはいいものですね)」ドクンドクン

石田”「そうか。苦肉の策だったが、確保してきて正解でした(それこそ旧大戦末期の惨状を偲ばせる資源ではあったが――――――、)」

         テレビン
――――――松精油


霧島”「司令のおかげで、ようやく力を取り戻せたって感じです」ニコッ

石田”「そこまで動けるようになったのなら、もういいでしょう」コトッ ――――――椀と箆を霧島の前に置いた。

霧島”「え……」

石田”「水筒に入っている残りの松精油は全て霧島にあげます。それで体力を回復してください」

石田”「それと、それだけでは味気ないでしょうから、長崎の洋菓子もあります」

霧島”「あ、長崎の――――――」←長崎造船所の生まれ

石田”「では、今日中には【ここ】での本拠地である天草に帰還します」

石田”「それまではゆっくりと――――――」スッ

パシッ

石田”「む」

霧島”「あ、えと……」

石田”「……どうしました?」

霧島”「…………もう少しだけ司令が食べさせてくれませんか?」モジモジ

石田”「………………」


金木『石田少将はこうやって『ヲシドリ』の面倒を見るのと同じように他の娘一人ひとりと話をする時間を設けたほうがいいと思いますよ』


石田”「わかりました」

霧島”「!」パァ

石田”「帰りの準備とは言っても【城娘】に乗って帰るだけですから。あちらの準備がすむまでは動けません」

石田”「それと、その……」

霧島”「?」


――――――話でもしませんか? こういった時に必要なのはコミュニケーションだと思ってますから。



――――――お見送り前の様子


M:鹿児島城「【城主】様~、えびの高原まで我々 薩摩の軍勢がお供いたしますのでどうかご安心なさってくださ~い」

石田”「いや、私は【城主】様ではないのだが…………よくて名代だから間違えないで欲しい」

M:鹿児島城「いいではありませんか、いいではありませんか~」

石田”「…………自分で喚んでおいて難だが、」

石田”「――――――どうしてこうなった? すぐに帰れる予定がなぜこんな大仰なものになった?」

佐和山城「人民に仇なす【兜】を追い払う【城娘】を数多く従える天下無双の【城主】とはぜひとも覚えを良くしてもらいたいからだ。決まっている」

佐和山城「唐津に居た時もたびたび遠方より大名からの寄進があったぐらいなのだぞ」

佐和山城「薩摩としてもこの機会を逃して、天の御遣いである【城主】の一向に粗相を働いたと見られたくもないだろうからな」

佐和山城「しかし、今回はそんな薩摩の人間に全面的に助けられてきたのだからな。恩義を感じるのならばこれぐらいのことには付き合ってやらねばな」

石田”「……そうだな」


――――――――――――

―――――――――

――――――

―――



――――――遡ること、六観音御池にて


ピカァーーン! ジャブンジャブン!

佐和山城「む、あれは脇本城か? 石田少将を乗せて――――――」

佐和山城「なるほど、そういえば脇本城は現地の聞き込みに熱心だったな」

佐和山城「となると、六観音御池に何かあることを掴んでいたのか」

佐和山城「…………無駄骨かもしれないが、用心には用心を重ねてこちらはこちらでやるべきことをやっておくか」

佐和山城「恐ろしいのは先に“霧島城”が確保されたという可能性――――――」

佐和山城「そうなった場合、どの方面に向かったかが特に重要となるが…………」

佐和山城「(少なくとも、唐津のある北や天草のある西の方面はまずないはずだ)」

佐和山城「(となると、南の薩摩や東の日向の方面か? 昨日今日の敵の流れからいってもそう見える)」

佐和山城「(だが、敵に鳥型がいる以上は、六観音御池で痕跡が途絶えたのはその偽装のために選んだ可能性もある)」

佐和山城「むぅ……、そうだとしたらもはや打つ手なしだな…………」


ガサガサ・・・


佐和山城「むっ、何奴!」ピクッ

修行僧「おお、やっと辿り着いた」

佐和山城「む、行脚している修行僧でしたか。これは失礼いたしました」

修行僧「いえいえ。泰平の世となっても、道中 そういった誤解はつきものですからお気になさらず」

修行僧「おお! これが六観音御池ですか。これは確かに美しい湖ですね」

修行僧「霧島神宮を見てから霧島連峰に入ることにしたのですが、今日は実に運が良かったです」

佐和山城「む?(――――――霧島神宮、薩摩の方面から来たのか)」

佐和山城「少し話を聴かせてはくれぬだろうか?(何か手掛かりとなるものがあれば良いのだが…………)」

修行僧「わかりました。拙僧としても神宮での吉事を見て逸る気持ちを抑えきれずここまできたものですから――――――」


修行僧「実は、今日 薩摩に来れたということで神宮に参りましたら――――――、」

佐和山城「うむ」


修行僧「御池の六観音堂で天女が行き倒れていたらしく、」


佐和山城「!?」

修行僧「それを神宮にお連れなさったということで、今日は大変 賑わっていましてね」

修行僧「そして、御池の方面から白鳥が飛んできたという吉事も見受けられまして、」

修行僧「かつて、この湖の畔で性空上人が法華経を読経したことによって、鵠となって御池にいらしていた日本武尊様が現れたという逸話もあって、」

修行僧「これは是非とも参らねばならんと思いまして、一目散に駆けつけてきた次第なのです」

佐和山城「ま、まさか――――――!」









――――――同じ頃、対岸の大宝寺城は六観音御池に1羽の白鳥が優雅に泳いでいるのを見かけた。

               クグイ
大宝寺城「――――――鵠だ」

大宝寺城「そういえば、私の出身の出羽三山って崇峻天皇の皇子:蜂子皇子が3本足の霊鳥に導かれて羽黒山・月山・湯殿山を開いたのが始まりだっけ」

大宝寺城「そして、羽黒山の本地仏は正観音様――――――」

大宝寺城「お願い、観音様! ここの観音様は十一面観音様だけど、どうか すないスケ様をお助けください!」ググッ


大宝寺城「くぅううううう! むぅうううううううう!」

大宝寺城「んんんんんんんんんん!」

大宝寺城「………………!」















大宝寺城「はあっ!!」カッ





バタバタバタ・・・!

大宝寺城「あ」

大宝寺城「…………行っちゃった。まだまだ修行不足だよね」

大宝寺城「あーあ……、これからどうしよう――――――」


脇本城「ここにいましたか、大宝寺城殿!」


大宝寺城「え、どうしたの?」

脇本城「対岸を見てください!」

大宝寺城「え」



佐和山城「――――――!」 ――――――変身して槍を大きく振って『こちらに来い!』『手掛かりを発見した』のサインを送っている!



大宝寺城「何か見つかったんだ!」パァ

脇本城「はい。ですから、【平城】の大宝寺城殿は六観音堂で待機して、羅針盤と水上オートバイを見ていて欲しいとのことです」

脇本城「他にも六観音御池に後れてやってくる人たちに今の状況をお伝えしてください」

脇本城「私は すないスケ様を乗せて対岸へと渡っていきますので、この場はお任せします!」

大宝寺城「よ、よかった…………」

脇本城「大丈夫ですか? これから六観音堂に向かってください。連絡役として後から来た人たちに状況をお伝えしてください」

大宝寺城「うん! わかったよ! 私、そこで必死に観音様にお祈りしているから行ってきて!」

脇本城「では、私はここで、――――――斗星の北天とならん!」ピカァーーーン!




修行僧「…………驚きましたな」

修行僧「本当に湖に鵠が居て、神宮の方面に飛んでいきましたぞ」

修行僧「そして、貴方様があの天の御遣い様に仕えておられる【城娘】でございましたか」

佐和山城「どうやら、この天孫降臨の地において神仏が我らにお味方してくださったようだ」

修行僧「今日は何という吉日でございましょう。これはひとえに信仰の道にひたむきに生き続けた証と言えましょう」

修行僧「では、これにて拙僧は、この御池の畔に性空上人が建てられたという堂宇で読経しておきたく存じます」

修行僧「どうか、かつて日本武尊様のように天の御遣いである【城主】様にこれからも神仏の加護があらんことを」

佐和山城「そちらも修行が成就いたしますようお祈り申し上げる」


スタスタスタ・・・・・・


佐和山城「思わぬところからの一報であったな」

佐和山城「はたして『天女』が“霧島城”であるか確証はない」

佐和山城「だが、不思議とそこへと導かれているような気がしてならない」


石田”「佐和山城!」


佐和山城「そして、私と石田少将の因縁にも何らかの意味がこれで――――――」

佐和山城「ここから聞こえるか、石田少将! 神宮に向かうぞ!」


―――

――――――

―――――――――

――――――――――――



――――――そして、見送り


神官「では、石田様。どうかこれをお納めくださいませ」スッ ――――――厳かな封がなされた何かを渡す。

石田”「――――――神剣ですか?」 ――――――封の上からの重量や大きさでそう感じ取った。

周囲「おお……」ザワ・・・ザワ・・・

石田”「これを【城主】様に?」

神官「いいえ。これは『石田様に』お渡しするのです」

佐和山城「なんと!?」

石田”「……何かの間違いだと思いますが、お渡しするというのであれば、この場で検めさせてもらいます」

石田”「どういったものなのか見なければ、持ち運びや保管の方法が検討できませんので」

神官「かまいません」

石田”「…………胡散臭い」スッスッバサッ・・・

M:鹿児島城「まさか神宮の秘蔵品をお目にかかることができるだなんて!」

脇本城「本当ですね。いったいどういったものなのか興味があります」

霧島”「よ、よくはわかりませんが、ここが私の名の由来となった霧島山の神宮で、」

霧島”「その神宮で司令宛ての秘蔵品が渡されていると――――――?」

石田”「む」


――――――封を解くと、打刀と見紛うようなズシリと重たい金属物が更に封紙に包まれていた。




そして、封紙を解いてその中身を露にさせると、それは巨大な――――――


石田”「なんだ、これは? 鞘に収まっていない神剣だと思っていたが、この角ばって分厚いものは――――――?」

神官「――――――『志那都神扇』」ボソッ  ――――――封紙にはそう書かれていた。

石田”「何ですって?」

神官「石田様。どうやらこれは扇のようです。――――――それもとても巨大な」

石田”「…………扇」バサバサ

石田”「ふん!」\ ◎ / バッ

一同「おお!」

神官「これは見事な!」

霧島「…………綺麗」

M:鹿児島城「――――――黄金の九曜紋ですよ~!」

脇本城「そして、見事なまでの瑠璃の装飾です!」

佐和山城「これはとてつもない贈呈品だ……(大海に浮かぶ太陽のような眩いばかりの輝きが伝わってくる!)」ゴクリ

石田”「――――――『志那都神扇』」


石田少将は告げられたその扇の名を呟いてみた。

“志那都”というと伊勢神宮 外宮に祀られている、元寇において神風を吹かせたという風神:級長津彦命の名がすぐに連想させられた。

おそらくその解釈であっているはずである。――――――そう直感が告げる。

ここ 霧島神宮は瓊々杵尊を主祭神とし、天孫降臨の地とされる霧島連峰にあるのだから、自然と国家第一の宗廟:伊勢神宮との関連も頷けた。
                                     ウルトラマリン
そして、打刀の刃を何枚も束ねたようなその巨大な扇を開くと、群青地の眩い黄金の九曜紋が光を放っていたのである。

また、これは後に知ることとなるのだが、【艦娘】霧島が辿り着いた六観音御池の六観音堂は明治時代の神仏分離令によって豊受神社となっており、

豊受神社ということは豊受大神であり、すなわち伊勢神宮 外宮こと豊受大神宮にも通じていたのだ。



ここで九曜紋について説明を挟んでおこう。

九曜紋とは、中央に大きな円があり、その周囲8方に小さな円が取り囲んでいる構図である。“9つの円”=“九曜”であるから九曜紋というわけだが、

この“曜”とは“光り輝く”という意味で通常は説明されているが、実際には日偏の漢字であることから“天上で輝く星”を意味する。

それは具体的には何か? ――――――それは七曜日に見られる地球にとって非常に身近な天体のことである。

すなわち、木火土金水・太陰(=月)・太陽(=日)のことを指して“七曜”と呼んでいるわけである。

しかしながら、これは九曜紋であり、“七曜”が“九曜”の内に入るのは自然と理解されるであろうが、

では、――――――残り2つの“曜”とは何を指しているのだろうか?

天王星や海王星を加えて九曜なのか? いや、それらは近世ヨーロッパの天体観測技術が発達するまでは存在すら確認されていなかったものである。

――――――実はあるのだ。古来から観測されてきた もう2つの天体……というより 天体現象が。


それは、――――――“日蝕”と“月蝕”であった。


正確には、羅喉星(月の昇交点)と計都星(月の降交点)の古代インドで信じられてきた実際には存在しない2つの天体のことである。

しかしながら、日蝕とは月と太陽が同じ交点にいる時に起こり、月蝕は月と太陽が互いに正反対の交点にいる時に起こるので、

単純に1つの惑星に擬えて日蝕と月蝕を説明するのは科学的に不適当であることが証明されている。


以上のことから、九曜紋とは『太陽系――――――森羅万象・宇宙の全てを象った紋章』ということ意味となり、

古来、日本に入ってきてから神仏習合の時代にそれぞれの曜に仏=神をあてはめて深く信仰されてきたシンボルなのである。

特に、近代国家創設を目指した明治政府によって神仏分離令が出される以前は、神社仏閣を1つにした神宮寺など当たり前のように存在し、

現に石田少将が辿り着いた ここ 霧島神宮も神仏習合まっただ中の時代においては西御所霧島権現と称し、本地堂:十一面観音となっているのだ。

そもそも“権現”というのは、本地垂迹思想で“一時の権限を得て仮に現れた”日本の神々につけられた神号なので、

各地で“権現”と名のつく仏の数を数えてみれば、いかに日本古来の神々がそのまま神仏習合の時代でも信仰されてきたかが理解できると思われる。

それ故に「星紋」の図案として大変 人気であり、かのタイ捨流や、伊達家や細川家などの大大名の家紋にも採用されているのだ。



――――――翌日

――――――帰路、その途上の港


ワイワイ、ガヤガヤ、ワーワー

金木「さあさ! 天草への土産物はちゃんと積み終わったか? 船はまだ出せない? 急いでくれよ」

佐和山城「殿、もう間もなく出港の準備は完了いたします」

金木「おう、そうか。いつもありがとな、佐和山城。仕事が早くて助かるよ」

佐和山城「…………それほどでも」フフッ

金木「いやはや! 今回の遠征は実に充実した戦果だった! 大勝利だな!」イヤッホホーイ!

金木「ああ わざわざ えびの高原までお見送りに来てくれた鹿児島城どん、いつかお招きしたいでごわす~。今回は薩摩隼人に感謝! 感謝でごわす!」

佐和山城「まったくだな。さすがは天下に名立たる武勇を示してきた鬼島津だが、元が鎌倉時代からの名門なだけあり、礼儀を弁えているな」

金木「え、そんなに古い名家だったの!? それはそれは…………うへへへ」ニヤニヤ

佐和山城「……それに比べ、我らが殿は知性や教養というものを感じられんな」ハア

金木「うるさい! 時代が追いついてないだけだい!(しかし、お美しい容貌でなぜに【ガトリング砲】なぞ持っているのだ、鹿児島城どん!?)」

金木「でも、今回もいろいろあったな。――――――1週間も経ってない遠征だったんだけど」

佐和山城「そうであるな、――――――本当に、いろいろ」チラッ


――――――彼ら彼女らが振り向いた先には、天孫降臨の地と伝えられる峰々が雄々しく聳え立っていた。



金木「…………霧島か。俺も今度はちゃんと神宮にお参りしないとな」

金木「でも、俺としては、今回の遠征で一番驚いたのは天孫降臨の地に建てられた霧島神宮での奇跡よりも――――――、」チラッ


鶴ヶ岡城「殿、修行を重ねて、霧島山から神秘の力を得ました。これで殿の行方に安寧をもたらしたいと思っています」


金木「誰ですか、あなた?」

佐和山城「わからん。おそらく石田少将が新たに見つけてきた【はぐれ城娘】ではないのか?」

鶴ヶ岡城「ええ!? そんな~!?」

鶴ヶ岡城「私ですよ、殿! 大宝寺城! すないスケ様と一緒に殿の許に来た大宝寺城!」

鶴ヶ岡城「殿のために袈裟と錫杖だって用意してあげた大宝寺城です!」

金木「え」

佐和山城「それは真か? 少し見ない間にずいぶんと見違えたものだな……」


鶴ヶ岡城 ← 大宝寺城「うぅ……、せっかく六観音堂で悟りを得て【近代改築】にまで至ったっていうのに…………」ブゥーブゥー


金木「いや、悪かった。悪かったってば」

金木「あんなにもボーイッシュで可愛らしかった大宝寺城がこんなにも綺麗なお姉さんに早変わりしただなんて、」

金木「お兄さん、感激のあまり言葉が出ないよ……」ハハハ・・・

金木「なんていうか もう、気軽にナデナデしてあげるのも悪いかなって思うぐらいでさ? そう思うと、少し寂しい気もするな……」

金木「(うぅむ! なんて贅沢な悩みだ! どっちも捨て難い魅力があるのだが、こうして以前の良さが別なものに変わったことが少し惜しいというか……)」

鶴ヶ岡城「え」ドキッ

佐和山城「……私は出港の最終準備に取り掛かるぞ、殿」ヤレヤレ

金木「あ、ああ……(やべ、また佐和山城に呆れられたな――――――あれ? ずいぶん親しげに『殿』って呼んでくれるようになった気がするな)」

鶴ヶ岡城「……と、殿? その、もう私にはしてくれないんですか?」モジモジ

金木「あ。なんだ、そういうところは変わらないんだな」ハハッ

金木「ほら」ナデナデ

鶴ヶ岡城「あ…………」ホッ

金木「また来ような、霧島に」

鶴ヶ岡城「はい!」ニッコリ


金木「あれ? そういえば、錫杖、大きくなったんだね」

鶴ヶ岡城「あ、これは六観音御池の鵠さんからにもらったんですよ」

鶴ヶ岡城「豪華な錫杖でしょう? 験力が強くなったので、自分へのご褒美として貰ったんです。似合うかしら……?」

金木「似合う似合う。――――――で、こっちのは?(鵠から武器をもらったことに驚かない自分が恐ろしい)」

鶴ヶ岡城「これは【交結搆鉄扇】―――――― 一緒に六観音堂で修行を共にしてくださった旅の方からいただきました」\  /

金木「わお! メタリックで綺麗だな! 上半分が清々しい青い空の色で、下半分が地平線から顔を覗かせる太陽の光みたいな!」

鶴ヶ岡城「そうなんですよ! これで私の必殺技【出羽の悟り】の験力も大幅に上がったんですよ」メメタァ

金木「おお! それは心強い!」

金木「そういえば、石田少将が霧島神宮で贈呈されたっていう扇はこれの何倍も大きかったな」

鶴ヶ岡城「え! それは本当ですか!?」

金木「今度 見せてもらいなよ。思えば、配色も金色と青色で似通っていたな」

鶴ヶ岡城「はあ…………」ワクワク

金木「どうした?」

鶴ヶ岡城「いえ、私、【平城】なのに無理に【後詰】としてここまでついていったわけなのですが――――――」

金木「そうだったな。まあ、『可愛い子には旅させろ』っていうことだし、大宝寺城としても得るものが大なりで良かったじゃないか」

鶴ヶ岡城「はい。苦労して天孫降臨の地まで来た甲斐がありまして、晴れて【近代改築】を霧島に鎮まれる神様にしていただきました」

鶴ヶ岡城「でも、それとは別に私としては『すないスケ様に少しでも近づきたい』と思いがありまして」

鶴ヶ岡城「何だか今回のことで確かな証がいただけたみたいで凄く嬉しいです」ニッコリ

金木「……そういえば、大宝寺城は石田少将に興味津々だったっけな(懐かしいな。唐津:二里松原にいた頃の【照明弾】騒ぎ――――――)」


金木「いやはや! 何にせよ、今回は本当に霧島の奇跡だけじゃなく、そこに住まう薩摩の人たちに感謝しないとな!」

鶴ヶ岡城「え」

鶴ヶ岡城「あ、はい。そうですね……」

金木「…………どうしたんだ?」

鶴ヶ岡城「いえ、少し……」

金木「何だ? はっきり言ってみなって。――――――らしくない」

鶴ヶ岡城「殿。それでは――――――これは杞憂であればいいのですが、」

鶴ヶ岡城「鹿児島城さんが、なんか私のことを嫌ってる気がするんです。気のせいだと良いのですが……」

金木「気のせいだよ、そんなの(そういうしかないな、こりゃ。俺もよく知らないけど)」

鶴ヶ岡城「そうであれば良いのですが……。大宝寺城だった頃から、私、どうも嫌っている人が多いような気がして……」

金木「…………まあ、【城娘】だもん。史実の恨み辛みを引きずっていたってしかたないよな」ボソッ


――――――話題を変えよう!


金木「でも、やたら【城郭】に“鶴”の名をつけたがるもんなんだな」

鶴ヶ岡城「……確かにそうですね」

金木「唐津城は“舞鶴城”だったし、鹿児島城に至っては“鶴丸城”だったもんな(その他、美称を含めて“鶴”の名を戴く城郭が多数!)」

鶴ヶ岡城「そうだったんですか。道理で鶴の羽が生やしていたわけなのですね」

金木「そういえば、“鶴翼の陣”“折り鶴”“鶴の恩返し”“鶴岡八幡宮”もあるし、――――――【乱世】の人たち、ホント 鶴が大好きだなっ!」

鶴ヶ岡城「――――――『鶴の恩返し』か(“鵠の恩返し”っていうのもあるかな? ――――――また会えるかな、鵠さんに)」フフッ




――――――仲睦まじき稀人3人が遥拝す、関東にあれます太閤の島に向かうべし。


石田”「…………『関東にあれます太閤の島』」

石田”「いったいどういう意味だ?」\ ◎ /

あさひ姫「石田様」

石田”「どう思う?」

あさひ姫「霧島神宮で受け取られた神託ですか?」

石田”「ああ。封紙以外に“神扇”を包んでいた袋を裏返してみたら、そんなことが書かれていたのだ」

石田”「その他にも、宮司が俺に“神扇”を渡した理由も気味が悪いぐらいでな」


石田”「――――――『“六観音御池の天女を癒やす者”が訪れたら渡せ』という言い伝えによるものだと言う」


あさひ姫「…………やはり、石田様も【この時代】で何か大切なことを成すために喚ばれたのでしょうか?」

石田”「迷惑千万!」

石田”「こうしている間にも、【俺の世界】での皇国が緩やかな滅亡の一途を辿っていっているのだ」

石田”「俺は何が何でも【俺の時代】――――――【俺のいるべき場所】に帰る! それが俺の忠義だ!」

あさひ姫「石田様……」

石田”「……だが、その手立てが皆目見当もつかない以上は、このくだらない宝探しに付き合う他ないのだがな」ハァ


あさひ姫「――――――『関東にあれます太閤の島』とはいったいどういう意味なのでしょう?」

あさひ姫「『太閤』といいますと、――――――世の人はかつての天下人の名を思い浮かべることでしょう」

石田”「そこがわからない。豊臣秀吉と関東の繋がりというと、実質的な天下統一が果たされた小田原征伐のことしか思い浮かばない」

あさひ姫「あ、確かにそうですね(そういう意味では私にも関係があるような気がしてならない――――――)」

石田”「残念だが、俺は戦略戦史家として数々の戦乱や反乱の研究はしてきたが、特定分野の歴史家ではないから小田原征伐の経過や詳細については知らぬ」

あさひ姫「私も天下人の天下統一が果たされた後に生まれましたから、それ以前のことは漠然とした事実としてしか知る由がありません」

あさひ姫「そして、すでに小田原征伐から数十年が経ち、天下分け目の関ヶ原の戦いや戦国の終焉である大坂の陣で戦った者たちのほとんどがこの世を去り、」

あさひ姫「将軍様以前の天下人について口にすることも憚れる世となりました故――――――」

石田”「…………いるではないか、まだ」

あさひ姫「……はい」


石田”「このことを、寺沢志摩守に訊いてみることにしよう」


あさひ姫「あるいは、関東の【城娘】たちから情報を集めてみるのがいいかもしれません」

石田”「それも1つの手だな」

石田”「ともかく、このことについては本城に帰還してからだな」

あさひ姫「はい、石田様」ニッコリ





ワイワイ、ガヤガヤ、ワーワー





「くっ、御大将……! 必ずや お助け致さん!」ジャキ!

「今に見ておれ、【城娘】共が!」

「受けた屈辱は倍にして返さん!」



――――――八代海:船上


ザー、ザー、ザー

能島城(変身)「殿? 今日の揺れはどんな感じだ~?」ジャブンジャブン! ――――――船を巨大な身体で牽引している。

――――――
金木「まあ、帰りはゆっくりしていいから快適かな?」

金木「来る時は本当に辛かったからな――――――強行軍なんかするもんじゃないぜ」ゾゾゾ・・・

金木「船酔いってやつはもうご勘弁――――――いや、巨大化した【城娘】に乗って移動している時もかなりキッツイっす……」

石田”「だが、その甲斐あって霧島を無事に連れて帰ることもできたし、薩摩や後れて熊本とも繋がりを得ることができたから、」

石田”「【乱】が起きた時に、快く力を貸してくれることだろう」

金木「そうですね。本当にいろんな収穫がありましたよ」

金木「これから“萬の紫苑の城”に帰り着く瞬間が楽しみでなりません」


――――――きみのことを忘れない。遠方にある人を思う。


金木「あそこが今の俺たちにとって帰る場所なんだ」

石田”「そうだな」

金木「…………【乱】についてはこれからどうなるのかはわかりません」

金木「元々の発端である、五条の名君から島原の暴君へと変貌した松倉豊後守の悪政をどうにかしない限りは――――――」

石田”「ああ。【乱】が飛び火した天草の方は、キリシタン弾圧は幕命として続けられることにはなってはいる――――――」

石田”「そのために【乱】が起きた際には天草のキリシタンが蜂起する可能性がまだ残されたわけだが、」

石田”「天草での乱そのものは史実のものと比べて小さなものに振り替えられているものだと信じたい」

金木「でも、【乱】を無事 未然に防いだとしても、あるいは史実通りに蜂起が起きたとしても、」

金木「たぶん、江戸時代最大の反乱であり、最後の戦国とも言われる【島原の乱】は【城主】である俺が片を付けることになるんだろうから、」

金木「そうなったら、【城主】としての【この時代】における役割を完全に終えたことになるんだろうなぁ」

金木「……その時が本当の別れになるかもしれません」

石田”「…………どうなるかな」
――――――


ザー、ザー、ザー

能島城「へへへ、海賊なのに乗り込んで活躍はできなかったけど、殿が霧島で何だかいっぱい宝をもらってきたみたいだし、楽しみだぜ」

能島城「もっと世界の大海原を支配してみたいなぁ」

能島城「――――――『殿とアタシの前に敵は無し!』だぜ!」

――――――
石田”「………………」

金木「どうしたんです?」

石田”「いや、【俺の時代】に世界の海を支配している憎き敵のことを思い出してな」

石田”「今まで、この【乱世】を全力で生き抜くことばかりを考えていたものだから、」

石田”「瀬戸内海を支配していた村上水軍の【城娘】の言葉でハッと我に返ったのだ」

金木「…………そうですか」

金木「でも、今から200年・300年後に今以上に海が世界を支配する時代が到来するだなんて、わからないものですよね」

石田”「確かにな。深海棲艦が登場する以前の戦後でさえも、アフリカ大陸では海賊行為が頻発しているぐらいなのだ」

石田”「かつて、魚雷の発達によって脅威となった水雷艇を駆逐するために投入された新戦力:水雷駆逐艦が、」

石田”「当時の最高戦力であった戦艦や巡洋艦よりも主力艦として扱われる時代になるとは、」

石田”「【俺の世界】で勃発した太平洋戦争当時の人間たちは想像もつかなかっただろうな。――――――余談だがな」

金木「でも、わかるような気がします」

金木「【乱世】を終焉に導いた3英傑たちがとった軍略というものはことごとく、」

金木「個人のマンパワーよりも組織のマンパワーを重視した結果、戦国の常識や気風をことごとく過去のものにしてきましたから」

金木「織田信長は長篠の戦いでの鉄砲の大量導入で戦国最強の武田騎馬軍団を無慈悲に討ち滅ぼし、」

金木「豊臣秀吉は硬軟織り交ぜた圧倒的な戦略と器量で諸大名たちを従えてきたわけだし、」

金木「徳川家康は難攻不落と言われた大坂城を国崩し砲を使って完全攻略して泰平の世への確固たる基盤を創りあげたわけですし」

金木「結局は時代の最先端をいく効率化をどれだけできたかで決まってくるよなもんですよね」

石田”「そういうことだな。時代のニーズ――――――人々がどれだけ戦争を求めるか・忌み嫌うかで軍隊や軍略の質も大きく変わってくるわけだ」

石田”「そして、その時代のニーズの少し先を行く――――――後の時代の常識となるものを編み出した者が勝利者となるのは歴史から見て必然の流れなのだ」

金木「そうですね。鳥羽・伏見の戦いから始まる戊辰戦争や士族の反乱となる西南戦争もまったくそうだった――――――」


――――――『機先を制すれば、則ち 人を制する』ってことですね。


――――――




ザー、ザー、ザー

能島城「!」ピクッ

能島城「――――――敵だぜ!」ジャキ

――――――――――――
ヲ級”「ヲヲヲヲ!」バッバッバッ! ――――――見張り台からの旗信号!
――――――――――――
石田”「敵戦力――――――海老に蟹か! 海産物【兜】が来るぞ!」

金木「ちぃ! こんな時に――――――まだ天草にはつかないか!」 ――――――台の上には地図が広げられ、その上を粘土の駒が自動で動いている。

金木「あまり揺らすなよ、能島城! 盤面がひっくり返ったら遠隔展開がとんでもないことになるから!」

脇本城「殿! ここは私におまかせください! 交渉事以外でも役に立つ安東水軍の力をお見せいたしましょう!」

金木「頼む! けど、【攻撃】はずば抜けて高くても【耐久】は低いんだから無茶はするなよ!」メメタァ

金木「(あれ? こうして見ると、【艦娘】霧島とまったく同じ傾向だな、インテリメガネってやつは…………)」

金木「だが、海老めぇ! ――――――車海老なんてのがいるぐらいに機動力や物量を誇るから何とか手数を増やさないと!」アセアセ

金木「松前城も頼む!(うぅくそっ! 俺の手持ちの戦力じゃ【鉄砲】持ちの水城・海城ばかりだから海老の機動力に押し込まれる!)」

金木「(かと言って、ここは海上――――――陸の【城娘】では展開できない! できたとしてもその能力を存分に活かすことは到底望めない……)」

石田”「くっ、圧倒的なまでの海上での展開力不足だな……(――――――しかたあるまい。出し惜しみしている余裕などない!)」


千狐「殿! 殿!」

金木「ハッ」

やくも「なにこれ!? 一匹だけものすごい勢いで突っ込んでくる――――――!?」


――――――見ると、八代海の地図の上で自動生成される盤面の中にただ1つ別方向から凄まじい勢いで突っ込んでくる駒が1つ!


金木「何だこの機動力は――――――!?(――――――新手の【兜】!?)」
――――――――――――
ヲ級”「ヲヲヲヲヲーーーーー!」 ――――――見張り台からの焦りの声!
――――――――――――
石田”「このままでは船に激突されるぞ!?」

金木「そうは言ったって、海上で展開できて、なおかつ乱戦にも対応しながら迎撃できる技量の【城娘】はこの部隊に――――――!」アセダラダラ


あさひ姫「殿、私をお使いください!」スッ ――――――自分の姿を象った駒を電光石火で拾い渡す!


金木「あ」

石田”「そうか! そうだったな! ――――――金木!」

金木「うわああああ、頼んだあああああああ!」ドン! ――――――【城娘】名護屋城の駒を盤面の船の脇に力強く置く!

あさひ姫「では、行って参ります!」ピカァーーン!
――――――――――――


ズバアアアアアアアアアアアアアン!


名護屋城「――――――!」アセタラー

新手の兜/烏賊形兜「!!?!?!!」スパン・・・ポチャン

名護屋城「…………フゥ」

名護屋城「ハッ」ジャキ

名護屋城「やぁ!」ズバン!

海老形兜29「!?!?!?」スパン・・・ポチャン

松前城「な、なんですの~……」パァオン!

能島城「後ろから――――――って、何だ姫様かよ! 少しだけビビっちまったぜ」パンパン!

脇本城「瀬戸内海の水軍はずいぶんと視野が狭いんですね?」ガキンガキンガキン!

能島城「はぁ? アタシは海賊王になるんだぜ? 後ろから来られてたって自慢の焙烙火矢を喰らわせてたっての!」← 村上水軍

脇本城「私は海外に行ったことがあります! 瀬戸内海の狭い海で威張り散らしている娘よりもできるということをお見せします!」← 安東水軍

松前城「うぅ……、か、『海外』? ろ、ロシア艦隊は居ませんよね?」← 幕府水軍

名護屋城「みなさん、私が前に出ます! 船の安全と航路の確保をどうかお願い致します!」← 日本水軍

能島城「姫様だけに活躍の場を与えるつもりはないぜ! なんてったって海賊王――――――天下の村上水軍なんだからさ!」

脇本城「くっ、さすがにこの数を捌くのはキツイですが、私が抜けたら前衛は姫様だけに――――――!」

松前城「撃って、撃って! この、この、このぉ~!」

名護屋城「よし、これなら――――――!(けれど、何か胸騒ぎが――――――)」



バシャンバシャン! ドゴォンドゴォン! ガキンガキンガキン!



――――――――――――
金木「……何とか凌げたようだが」フゥ

石田”「…………」スチャ ――――――リボルバーを取り出す。

金木「え?」

石田”「――――――嫌な予感がする」

石田”「敵が単騎突撃してくる場合は、たいてい2つの場合しかない」

石田”「捨て身の特攻か、捨て身の陽動か、――――――いや、そのどちらもありか」

金木「!」ゾクッ


「――――――!」


千狐「あ」ピクッ

やくも「殿さん、危ない――――――!」

金木「ハッ」


ドンガラガッシャアアアアアアアアアアアアアン!


金木「うわぁ!?」

石田”「ちぃ!」

やくも「あ、あわわわわ!」

佐和山城「何事――――――なっ!?」


赤鬼大将兜「――――――」


佐和山城「また会ったな……! 最初は神集島で、次は霧島神宮! 今度は八代海の海上でか!」ジャキ!

金木「ヤバイ! こんなところで【大将兜】に暴れられたら船なんてあっという間に吹っ飛ぶぞ!?」アセダラダラ

赤鬼「――――――!」ジロッ

金木「あ……」ゾクッ

金木「(ヤバイヤバイヤバイ! ――――――殺される! この凄み! やべえ、赤鬼ってだけにマジで殺される寸前って感じなんだけど!)」ブルブル・・・


千狐「殿!」

赤鬼大将兜「――――――!」ブン!

佐和山城「あ……(――――――速い!?)」

金木「うわっあ!(キタキタキターーーーーーーーー!)」

石田”「――――――!」ジャキ、バンバン! 

赤鬼大将兜「――――――!」ガキンガキン!

赤鬼大将兜「――――――!」ジロッ

石田”「――――――ッ!」チラッ

金木「あ、――――――石田少将!(今、俺の方を見た――――――)」

赤鬼大将兜「――――――!」ブン!

石田”「―――――― 一か八か!」\勅命/

赤鬼大将兜「?!」

金木「こ、これは――――――!?」

金木「あ、そうだ!(――――――間に合ええええ!)」



ピカァーーーーーーーーーーーーーーーン!



能島城「え!? 今度は後ろで何――――――?」

脇本城「わかりませんが、敵が驚いている隙に――――――!」ザクザク!

松前城「…………え? って、そんなこと気にしている余裕はなくってよ!」

松前城「今はただ目の前の敵に集中――――――って、あれぇ?!」



霧島連峰への大遠征を大勝利を収めて悠々と今の本拠地である天草へと帰還するために八代海を横断している途上での出来事――――――。

唐津や霧島で遭遇した【兜】の残党に海上で襲われ、【城娘】が戦うにはあまりにも小さな1艘の船を防衛するために戦端が開かれる。

しかしながら、1ページにあっさり収まってしまうほどの淡々とした結果に終わることになった。事実関係だけ見れば、残党を難なく返り討ちにしただけである。

だが、この戦果はある特殊な要因によって成立したということを忘れてはならなかった。


なぜなら、この小さな防衛戦において船の内外で活躍したのは本来 存在しないはずの二人の英傑だったのだから。





ズバン! ・・・・・・ビチャ!


石田”「がっ」ゴトン!

赤鬼大将兜「!!!?!?」

名護屋城「――――――!」ギリッ


――――――石田少将の\勅命/に収められた最後の【照明弾】によって新たに照らし出された光景!


赤鬼大将兜「うぅ、ああ…………」 ――――――大破!

名護屋城「…………くっ!(――――――石田様!)」 ――――――真正面から【大将兜】を斬りつけた。

石田”「くぅあぁ…………」 ――――――\勅命/を掲げた右腕と右肩を【大将兜】に鋭く斬りつけられ、血がどくどくと溢れ出る。

金木「そんな!? あ、ああ……、ああ?! 石田少将ぉおお!」 ――――――盤面の置かれていた名護屋城の駒を取り外して急いで名護屋城を呼び寄せた。

佐和山城「なさけない! 【城娘】でありながら、このざまとは…………!」 ――――――そう言いつつも負傷した石田少将の許に駆け寄り、敵に刃を向ける。

赤鬼大将兜「…………く、ふはははは」ボロ・・・  ――――――名護屋城の真正面からの兜割りによって鎧の下の姿が顕になる。

佐和山城「な、何が可笑しい!?」ジロッ

赤鬼「ま、またしても……、御大将が求めていた【城娘】一人のためにあえなく敗北するとはな…………」モガモガ

赤鬼「ダメだ、ダメすぎるな、私も御大将も……」フラフラ・・・

赤鬼「武人としての誇りも投げ捨てて、御大将が残していた兵力を全て投じての最後の突撃も、【城娘】――――――しかもただの【城娘】ではなく、」

赤鬼「そのただ一刀の下に崩れ去るか…………申し訳ございません。残った兵も勝手に投じておきながら一矢報いるぐらいしかできませんでした」

名護屋城「………………」


――――――夏草や兵どもが夢の跡


赤鬼「は、はは……、変わった歌だな。下の句はどう続くのだろうな…………?」

赤鬼「けど、何となくだけどそんなもんだって思えるのが不思議なぐらい…………」ハア・・・ハア・・・

名護屋城「そう、――――――夢なのです。全ては泡沫の夢です」

赤鬼「そうなのか……。これは悪い夢――――――いや、良い夢だったかもしれない、な」バタン

名護屋城「…………佐和山城との繋がりはそういうことだったのですね(ですが、皮肉にも――――――)」


組織の長をおさえられたことにより組織が瓦解して残された残党にできる軍略など、もはや組織的な抵抗は望めず、無謀にも等しい特攻しかできることはなかった。

しかしながら、相手はこんな結果に終わってしまったが、【城娘】の何倍もの強さを誇る【大将兜】であり、

それが船に乗り込んできたというのだから、普通は海戦を得意としない【城娘】たちは為す術もなく屠られる可能性すらあったのだが、

そんな【大将兜】ですらも一瞬の閃光の内に返り討ちにしてしまうほどに、――――――彼ら彼女らは実際に強大だったということである。




あの閃光の一瞬――――――その前後に何が起こったのかを余談程度に語らせてもらうとこういうことである。


1,突撃性能に優れる新手の【兜】烏賊形兜に乗って赤鬼大将兜が特攻! >>186
→【城娘】の中で海戦適正がある個体は少なく、前もって機動力の高い海老形兜と攻守に優れる蟹形兜を差し向けている。
→ 水/海属性の【城娘】を総動員して迎撃せざるを得ない(陸の上に造られる【城郭】がモデルの【城娘】では希少な個体なので数が少ない)。
→ よって、船に突撃する隙は十分にあった。


2,突撃艇代わりにしていた烏賊形兜を名護屋城にたたっ斬られてしまうが、本人は巨大化していないので容易に見つからずに船に飛び乗ることに成功! >>
→ 監視台には『ヲシドリ』がいたが、飛び上がった烏賊形兜の裏に大将兜が張り付いていたので視認できなかった。


3,甲板や通路には誰もいなかったので監視台を抜けてやすやすと船室に侵入――――――そして、突撃! >>187
→ 基本的に海戦適正がない【城娘】は甲板付近にいると戦闘による海面の揺れで船から振り落とされて溺れる可能性があるので所定の位置で待機させていた。
→ パニックなって巨大化が連続して行われると挟まれて圧殺される可能性があるので意外とパニック対策として欠かせないものである。
→ しかし、今回はそれが裏目に出ることになった(海上戦での消極策は船を対岸へ逸早く渡りつかせることを行動目標にしていたため)。


4,突撃した赤鬼大将兜は早速 仇敵である【城娘】たちを束ねる【城主】金木青年に襲いかかる! >>188

恐るべき一撃が伸びて、訓練は積んではいるがただの現代人を容赦なく刺し貫こうとしたが、

しかし、そこにすかさずお手製リボルバー銃を放った石田司令の存在を認め、異形の道具を操る様と【城主】との反応の差から、

ここまで自分たちを追い詰めたのは誰なのか――――――本当の仇が誰なのかを悟り、理解した瞬間に全力で槍を伸ばしていた!

だが、石田司令はこの直前に金木青年に目配せしていた!


――――――その場にいた誰もが次なる行動が決まり、その実現のために全力を傾けることになった瞬間であった。


5,金木青年を守るために敵の注意を自ら引いた石田司令は“勅命”と描かれた扇を真正面に掲げるのだった! >>188



そして、扇から外で戦っている【城娘】たちにもわかるぐらいの太陽のように眩しい閃光が船体の内より外へと貫いていったのである!



――――――――――――

―――――――――

――――――

―――




―――――― 一か八か!


石田司令はこれから起こる閃光の一瞬の後に来るかもしれない死を覚悟していた。

\勅命/を掲げることによって船を内側から完全に包み込むほどの光が迸る――――――それ自体に数瞬もしないうちに身に刺し届く凶刃を防ぐ力はないからだ。

そう、これは圧倒的なまでの白兵戦能力を持つ【大将兜】を一刻も早く無力化するために状況把握によって咄嗟に思いついた最後の一手であった。

だが、この策を実際に移すとなれば、自身に迫る豪槍に為す術もなく刺し貫かれて顔に穴が開くだろうという未来予想があった。

しかしながら、その是非を問うか問わないかも無しに、数瞬も早い一瞬の時間の間の内に策を実行に移し、


――――――人生数度目の全てを乗せた賭けに競り勝ったのである。


よく読んでくれている記憶の良い読者ならば、狭い船室の1室で石田司令が選ぶことができた逆転の一手が何なのか、すでに結果と共にご理解しているだろう。

そうでない読者でも、直前になってそれなりに前振りはしておいたし、結果もすでにお見せしているのでこれで納得がいくものだと思う。

つまり、石田司令が土壇場になってやってみせた返り討ちの方法というのは――――――、


――――――外で戦っている黒歴史に封印されてきた最強の【城娘】名護屋城を呼び戻して一瞬の隙を突かせることにあったのだ。



ズバン! ・・・・・・ビチャ!


石田”「がっ」ゴトン!

赤鬼大将兜「!!!?!?」

名護屋城「――――――!」ギリッ


それが石田少将の\勅命/に収められた最後の【照明弾】によって新たに照らし出された光景の意味であった。


結果として、石田司令の意図を察した【城主】金木青年はすぐに盤面の名護屋城の駒を突き飛ばし、

船を内側から貫く閃光の一瞬よりも早くに帰還した名護屋城が赤鬼大将兜の目の前に現れて必殺の兜割りをお見舞いしていたのである。

まさに、――――――石田司令の目論見通りの結果となったのだ。一瞬で思いついた策を一瞬で実現させてしまったのだ。

しかしながら、数瞬よりも早くに咄嗟に思いついた策を一瞬で伝えられて、一瞬で理解して、一瞬で実行に移した金木青年――――――。

そして、それより更に遅れた一瞬の内に帰還して、一瞬の内に得物を振り上げて、一瞬の内に敵を斬り伏せた名護屋城――――――。

3者3様の卓越した実行力と以心伝心はまさしく驚嘆に値するものであり、元々がイレギュラーな存在であったことを考慮に入れても、

最強の敵である【大将兜】を秒殺したという事実に変わりはなく、これには“赤鬼”も何が起きたのか理解できず、ただ敗けを認める他なかったのだ。


しかしながら――――――、


―――

――――――

―――――――――

――――――――――――



石田”「うぅぁ…………」ハア・・・ハア・・・

やくも「石田さん! しっかりしてぇ!」

千狐「い、今のうちに包帯とってくるのー!」タッタッタッタッタ・・・!

佐和山城「しっかりするのだ、石田少将!(――――――解除!)」ピカァーーン!

佐和山城(お嬢)「ええい! 死ぬな! 絶対に死んではならん!」ヌギッ!

金木「うおっ、――――――佐和山城!?」ドキッ

佐和山城(半裸)「あなたにはまだやるべきことが残されているだろうに!」 ――――――自分の衣類を包帯代わりにして止血しようと必死である!

佐和山城(半裸)「腕は上がるか? 手は? 指先は――――――?!」

石田”「………………わかっている、そんなことぉ!」ゼエ・・・ゼエ・・・!

石田”「少し……、怪我をしただけのことだ……! 騒ぐな……! それで人々の盾となり、矛となって戦場に死する兵か!」

石田”「あうぅ……」クラッ

佐和山城(半裸)「ここはダメだ。人目も多いし、潮風にあたる。部屋へ移るぞ、さあ!」

石田”「す、すまん…………」ヨロヨロ・・・

名護屋城「…………石田様」

名護屋城「ハッ」

金木「石田少将……、あなたという人は本当に………………」ポタポタ・・・

名護屋城「…………【城主】様」

名護屋城「あ」

名護屋城「これは、石田様の――――――」\勅命/


――――――時間にして1時間にもならない光に包まれて一瞬のような出来事の続き。



そう、【大将兜】を逸早く無力化して大勢の安全の確保には成功したものの――――――、

元々は【大将兜】相手に己を囮にして隙を創りだして敵を倒させ、その結果 大勢の安全を図るという無謀極まりないやり方の代償として、

石田司令は最悪の結果である“死”――――――より最悪の結果である“無駄死”を免れることができたものの、

人間など遥かに及ばない【大将兜】が繰り出す一撃を受けきることなど到底不可能であり、

【大将兜】ですら目が眩むほどの至近距離からの【照明弾】で手元が狂った一撃をもらってしまった。

その結果、【大将兜】の奇襲で荒れた狭い船室には石田司令の鮮血が舞い散り、石田司令は蹲って船室の床に自分の血で顔を汚すことになったのだ。

それでも幸いなのか、\勅命/を突き出した右腕から右肩にかかる一直線を抉られたものの、神経までを斬られたわけではなく、

激痛に堪えながらも【城娘】の人外の握力に頼ってすぐに患部の止血に成功し、脂汗が零れ落ちる苦悶の表情を浮かべながらも決して表情を緩ませなかった。

むしろ、『こんなところで死んでたまるものか』という気概で己を奮い立たせ、その瞳に灯った炎は轟々と燃え広がっているのが伝わる。


しかしながら、その様子にはどこか憐れみさえ覚える――――――金木青年は全てが終わってそのことで涙ぐんで立ち竦んでいた。


現代っ子の元現役大学生でしかなかった金木青年にとってはショッキング極まりない光景であったのは確かであろう。

狭い船室で船体を破壊し尽くすような化物に襲われて一瞬で昇天しかけたことを後れてから恐れ慄き、言葉に詰まりながらも身体は今も小刻みに震えていた。

そして、自分の身代わりになって狭い船室に赤々としたものがこびりつくことになった状況と結果に対する理不尽なまでの罪悪感――――――。

しかしながら、金木青年が立ち尽くしていた原因はそんなことではないのだ。


――――――『人が死ぬのは当たり前のこと』とどこか達観した、【乱世】における人生の儚さをすでに受け入れていた金木青年にとって。



それから間もなく、彼ら彼女らは無事に八代海を渡りきり、帰るべき場所へと帰り着くのであった。




――――――それから、本拠地:萬紫苑城


飛龍”「それじゃ、提督? 明日も安静にしていてくださいよ」

飛龍”「でないと、『めっ』だからね」

石田”「…………わかっている」 ――――――竹細工のロッキングチェアに揺られて養生している。

飛龍”「……ホントにホントなんだからね?」

石田”「……あんなこと、頼まれても二度とするつもりはないから安心しろ」

飛龍”「ホント?」ジー

石田”「…………すまない。努力する」

飛龍”「そう。わかってるならいいんだ」

飛龍”「ねえ、提督」

石田”「……何だ?」


飛龍”「たまには――――――そう、たまには、戦いを忘れてもいいよね?」


飛龍”「提督? これからは私やみんなの笑顔を見ていて。ずっと一人で頑張ってきた提督へのご褒美だからね」ニッコリ

石田”「………………」

飛龍”「それじゃ、今日はおやすみなさい、提督」

石田”「……ああ」


スッ、・・・パタン


石田”「………………」

石田”「………………フゥ」

石田”「…………戦うことをとりあげられた軍人に生きる道はない」スッ ――――――右腕を窓の外へと伸ばす。

石田”「!」ズキン

石田”「……だが、平和が訪れた時に最後に残された火種というのが戦いことしかできない軍人である以上、」ズキズキ

石田”「軍人には戦う以外の生きる道を知る義務がある」

石田”「それを理解できない者たちは反逆者として泰平の最後の礎となって消えていくのだ…………」


コンコン!


石田”「入れ」


金木「石田少将、今 いいかな?」

あさひ姫「…………石田様」

石田”「……お前たちか。構わないぞ」

金木「そうだ」

金木「はい、石田少将、これ。――――――大切なもの」スッ


       \勅命/


石田”「…………そうか。お前たちが拾ってくれていたのか」

石田”「恩に着る」フフッ

あさひ姫「石田様、気をつけてくださいね」ニコッ

石田”「……ああ。気をつける」パシッ

あさひ姫「………………」

金木「それ、どういったものなんです? ただの扇ではないっていうのははっきりとわかりましたし、」

金木「菊の御紋入りの“勅命”の字――――――もしかして、皇国軍人としての誉れとしてもらった記念品なんですか?」

金木「よくありますよね、父親の形見として渡された脇差しを肌身離さず持っている武士の逸話ってよく聞きますし」

金木「(でも、あの中に【照明弾】が入っているってどういう構造――――――いや、【あちら】だと実用化されている未知なる技術の結晶なのかな?)」


――――――
飛龍”「提督、もうおやすみになってるかな?」

飛龍”「どうしよう……(けど、何だろう? 夜中に提督の寝床に向かうって何だか凄くドキドキしてくる――――――)」

飛龍”「…………あれ? 部屋から明かりが漏れてる?」

飛龍”「やだ、ちゃんと閉めなかった――――――」

飛龍”「あ」ジー
――――――


石田”「――――――『記念品』といえばそうかもしれないが、これは非公式の自作だ」


金木「え? うん、それは凄いですね……(でもそれなら、皇国軍人が自分で“勅命”の字を書くって畏れ多いことことなんじゃ――――――)」

あさひ姫「………………」

石田”「これは元々は――――――、」


――――――これは【艦娘】の一部を加工して造ったものだ。


金木「え」

あさひ姫「…………あ」
――――――――――――
飛龍”「……え」ジー
――――――――――――

金木「や、やだな~、石田少将!」

金木「――――――『【艦娘】の一部』ってあれでしょう? 【艦娘】の装備の『艤装』のことなんでしょう?」

金木「そんな勘違いさせるような表現は変えたほうがいいですって。普通に『艤装』って言ってくださいよ~」

あさひ姫「………………やはり、そういうものだったんですね、石田様」アセタラー

金木「あれ? 姫様? どうしてそんな驚いた表情なんかして――――――」アセタラー

石田”「解釈の違いだろうが、『艤装』=“艦娘の命”と考えていい」

金木「は」


石田”「【解体】して【資源】となった【艦娘】を素材にして造られているのがこの扇だ」


金木「え」

あさひ姫「…………そうですか。やはりそうだったんですね」
――――――――――――
飛龍”「………………」ジー
――――――――――――
金木「……いや、その小さい扇のいったいどこに【資源】なんて使ってるんですか、石田少将?」アセタラー

金木「俺、扇なんて高尚なもの 持ったことなかったけど、高級品って感じがするだけのそれ以上でもそれ以下でもない扇じゃないですか」

金木「確か『【艦娘】って【弾薬】【燃料】【鋼材】【ボーキサイト】から【建造】される』ってことでしたよね? 【城娘】と同じ感じに」

金木「『艤装』の一部を使わせてもらってるだけなんでしょう? 姫様も何をそんなシリアスな雰囲気なんて出してさ――――――?」アセアセ

あさひ姫「…………【城主】様」ジー

金木「な、何……?」

あさひ姫「これまでの日々の中で、【城娘】である私は【艦娘】とふれあうことによって様々なことを知りました」

金木「う、うん。それで?」

あさひ姫「そして、わかったことがあります」


あさひ姫「【城娘】も【艦娘】も人々の矛となり盾となって戦う――――――そのために生まれた 戦いを本分とする存在なのだと」


金木「……そうかもね」

あさひ姫「では、戦うために生まれた存在にとって『生まれ持った装備』がどういった意味を持つのか、理解できますか?」

金木「え?」

金木「…………考えたことがないというか、ただの武器や防具じゃないのか?」


あさひ姫「いえ、それは違うんです――――――」

金木「というか、【艦娘】――――――飛龍さんや霧島さんは自由に取り外してるし、【城娘】は変身している時じゃないと触れることすらないじゃないか」


石田”「ああ 違うぞ。はっきり言って違うぞ」


金木「え」

石田”「【艦娘】にとって『艤装』というのは唯一無二のものなのだ」

石田”「『これ』があって初めてそのモデルとなった軍艦と同等以上の性能を人の姿で発揮することが可能となる――――――」

石田”「言わば、“兵装を兼ね備えた安全解除装置”でもあるのだ」

金木「……なるほど」

石田”「つまり、『艤装』がなければ【艦娘】は所詮は腕っ節が異常に強いだけの精神年齢は外見相応の小娘のままというわけだ」

金木「ああ……、やっぱり 素の基本能力は一般人よりも上なのは仕様なのね」

石田”「そうだな。それと、人間よりもずっと頑丈という点も見逃せないな」

金木「それで? それは【城娘】も同じことだって」

金木「――――――それで見かけ以上によく食べるところなんかも」

石田”「そうだな」



石田”「そして、より正確に言えば、『艤装』の中でも『代替が利かない部位』こそが【艦娘】に本来の力を与える源となっているのだ」


金木「????」

あさひ姫「……そうでしょうね」
――――――――――――
飛龍”「………………」ジー
――――――――――――
石田”「身近でわかりやすい例で言えば、――――――飛龍の飛行甲板が『それ』に当たる」

金木「ああ、【航空母艦】だもんね。飛行甲板はイメージとしても大事だから、それはわかる」メメタァ

金木「けど、どういう意味です? ――――――『代替が利かない』? 修理や交換はできないんですか?」

石田”「修理はできる――――――欠片さえ残っていれば妖精がそこから完全修復してくれる」

石田”「そして、ほぼ物理的な手段での破壊は不可能と言っていい」

金木「え?」

石田”「飛行甲板の中でも『核となる部分』は、たとえ深海棲艦からの砲撃を受けても、」

石田”「『核』に圧縮されている蓄えられた高エネルギーによる反発で破損することがないのだ」

石田”「考えてもみろ。人の姿をしながら軍艦と同等の能力を発揮するためのエネルギーがこの米粒程度の破片に込められているのだぞ」ピッ

金木「――――――『米粒程度の破片』」 ――――――石田司令が夕飯に零して衣服にくっついていた米粒が台の上に載せられるのを見た。

石田”「ああ。それぐらいの大きさならば、この扇にいかようにも取り入れることが可能なのは実感できただろう」\勅命/

石田”「その『核』を人間の思念で反応できるほどの数を仕込んであるのがこの“勅命”の扇の正体ということだ」

石田”「だが、誰でも使えるというわけではなく、元々が【航空母艦】の『核』を使っているためにそれに準じた念のコントロールが必要になってくる」

金木「…………そうだったんですか」

石田”「これは度重なる研究によって判明した極一部だけが知っている機密事項だ」

石田”「もっとも、【艦娘】の管理は【妖精】に委任している。人間は運用だけをしているおかげで、その事実に触れられた者は本当にごくわずかだ」

あさひ姫「では、【艦娘】たちは自覚の有る無しに関わらず、この『核』だけは絶対に死守するように戦場では立ちまわっているのですね」

石田”「その通り。何が何でも『その核となる部分』だけは紛失しないように気を配るのが【艦娘】の戦いの鉄則となっている」

石田”「なにせ、【艦娘】の戦いの舞台はだだっ広い海の上なのだからな。しかも、米粒程度の大きさが普通だ」

石田”「それでも、『生まれ持った装備』とは見えない線で結ばれているのか、飛び散ってもすぐに見つけられるようだがな」

金木「へえ、よくできてるんだなぁ」



石田”「だが、その『核』を【解体】された場合は永久に復元できなくなる」


金木「あ」

あさひ姫「…………」

石田”「そして、たとえ他の自分の飛行甲板を装備しても【艦娘】としての力は永久に失われたままなのだ」

石田”「おそらく同じ姿形をした【艦娘】でも一人ひとりにシリアルナンバーのようなその個体固有の情報因子が存在するのだろう」

石田”「人間では実用化できなかった【艦娘】のマイナンバー制度も、【妖精】たちがその情報因子の存在を把握していたからできたものだと思われる」

金木「ええ!?」

金木「それじゃ、『艤装の中でも最も重要な部位』を【解体】しちゃったら――――――!」アセタラー

あさひ姫「はい。本来 備わった戦うための力を失い、ただの小娘としてしか生きられなくなるはずです」

あさひ姫「そうなれば、人々のために戦うというその使命のために生まれてきた意味を失います」

あさひ姫「それは【城娘】とて同じことです」

あさひ姫「ただ、【艦娘】とは違って【変身】した時だけ『具足』が展開されるので紛失や破損の危険性はずっと低いのですけれど……」


石田”「つまり、この扇は“艦娘の命”とも言える『艤装の核』を材料にして造られたものなのだ」


石田”「だから、人間である俺にも本物には格段に劣るが【艦娘】の真似事ができるようになっている」

石田”「おかげで、これまでこの扇には何度も助けられてきた」\勅命/

金木「………………」

あさひ姫「………………」
――――――――――――
飛龍”「…………提督」ジー
――――――――――――

石田”「説明はこれぐらいでいいか?」

金木「……じゃあ、石田少将?」

金木「――――――『艤装』を失った【艦娘】はどうしてきたんですか?」


石田”「――――――研究機関に譲り渡した」


あさひ姫「…………!」
――――――
飛龍”「――――――!?」ゾクッ
――――――
金木「ど、どういった研究機関なんですか……?」アセタラー

石田”「正確な実態は知らん」

石田”「――――――が、」

石田”「大本営の粛清に遭ったのか、何にせよ、ブラック鎮守府取り締まり後の組織再編で跡形も無く消滅したのは確かだが」

金木「え」

石田”「そうだった、――――――逆だったな」

金木「へ……」

石田”「研究機関に先に【艦娘】を譲り渡した後しばらくして『核』を受け取ったんだ」

石田”「偶然にも発見された『核』の存在の立証のためにな」
――――――――――――
飛龍”「!?!!」
――――――――――――
金木「ちょっと待って! それってつまり、預けた【艦娘】は――――――」アセタラー

あさひ姫「…………石田様」
――――――――――――
飛龍”「あ…………」
――――――――――――



石田”「………………………………」


金木「なんで黙るんですか、そこで!?」

石田”「知らん。預けた【艦娘】のことは俺の管轄外だ」

金木「いや、『管轄外』って――――――」


石田”「――――――もういいだろう」


金木「はぁ?」

石田”「これを届けに来てくれたのだろう? 用が済んだのだから、部屋に戻れ」\勅命/

金木「待ってよ、石田少将――――――」


石田”「同じことを何度も言わせるな。鬱陶しいぞ」


金木「…………!」

あさひ姫「…………石田様」
――――――――――――
飛龍”「………………」
――――――――――――
石田”「ではな。届けてくれたことに感謝する」

金木「はい、そうですか――――――石田少将」ジロッ

あさひ姫「あ、【城主】様――――――?」

金木「最後に――――――最後に1つだけいいですか?」

石田”「ん? まだ何かあるのか? これ以上の話は時間の無駄――――――」チラッ

金木「!」ギラッ

石田”「!?」

あさひ姫「――――――!?」


金木「もういいかげんにしろおおおお!」バギィン! ――――――唐突に裏拳が繰り出された!


石田”「ガッ!?」ドタンバタン!

あさひ姫「――――――石田様!? ――――――【城主】様!?」

飛龍”「へ、何――――――提督!?」バッ


金木「さっきから事実を淡々と話しているんだろうけど、もうちょっと言い方ってのがあるでしょうがッ!」ググッ



石田”「くぅ…………」ズキズキ

あさひ姫「石田様、大丈夫ですか?!」

石田”「これぐらい、大事ない…………」ヨロヨロ・・・

金木「もっとさぁ、こう――――――石田少将は本当にみんなのために一生懸命だったんでしょう?」

金木「どうして言うべきことを言わないんですか!?」

石田”「――――――『言うべきこと』?」


金木「その時の心境を語ってくださいよ! そうせざるを得なかったんでしょう? 苦しい選択だったんでしょう!?」ジロッ


飛龍”「あ」ビクッ

金木「そうだよ、飛龍さんに本当のことを言ってあげてくださいよッ!」ドン!

金木「石田少将にとって最古参なんでしょう? ずっと一緒にやってきた仲なんでしょう!」

金木「話してくれましたよ! 飛龍さんはずっと見ていてくれたんですよ!」

金木「石田少将が亡き戦友たちを弔うために基地に花屋を作ったことも、そのために一人 海に出ていったことも!」

石田”「――――――なに?」チラッ

飛龍”「あ」

飛龍”「……【城主】様、いいんです、私のことは! 喧嘩はやめてください!」

あさひ姫「…………飛龍さん」

金木「どうしてそれをやってくれないんですか……! それさえしてくれれば石田少将はもっとぉ――――――!」ポロポロ・・・

飛龍”「【城主】様…………(どうしよう? ねえ、私はどうすればいいの、多聞丸?)」


石田”「…………感傷に浸るなど公人にあるまじきことだろう」ヨロヨロ・・・

石田”「軍人に求められているのは結果だ。結果が全てだ。俺はそのために必要だと思ってきたことをやってきただけに過ぎん」


石田”「――――――今までも! これからもだ!」


石田”「それに、【艦娘】は“兵器”だ――――――いや、人間と同等の知的生命体である以上は“兵士”とした方が適切かもしれないが、」

石田”「戦いとは無縁の似非人道主義者共は【艦娘】の保護運動や解放運動に熱心――――――だが、俺としてはどっちだろうとかまわん」

石田”「――――――皇国の勝利の栄光のためにその身を捧げるのが宿命なのだからな」

石田”「言わば、【艦娘】は使い捨てられるべき存在なのだ。“兵士”なのだから」

石田”「そして、それは“兵士”であるこの俺やその他の将兵も同じこと――――――」

石田”「死して全体の勝利に貢献できるのなら喜んで身を捧げよう!」

石田”「それがあるべき公人――――――軍人の在り方だ!」

飛龍”「…………提督(だから、提督は身体を張って――――――)」

あさひ姫「――――――『目的を同じくするものはみな同志』というわけなんですね」

石田”「なら、なぜ生まれながらの完全な兵士や兵器である【艦娘】に改めて配慮する必要がある!」

金木「いや、石田少将! あんたのその理屈は理解できるけど、」

金木「だったら、周囲の人間に正しく自分を理解させる努力もしないで何が『公人』だ!」

石田”「なんだと?」ムッ


金木「俺、ずっと石田少将の完璧なまでの正しさってやつに違和感を覚え続けていたよ」

金木「それは俺が石田少将のような天才には及ばない凡人だからなんだって思っていたけど、やっぱり石田少将の方がおかしいってわかったよ」

飛龍”「え!?」

金木「だって、石田少将。俺の前で本音を明かしてくれたじゃないですか!」

金木「本当はこの【乱世】でやっていけるのか不安だったけど『俺の存在に助けられてきた』って物凄く優しい声で語ってくれたじゃないですか!」

石田”「なっ」

飛龍”「え」

あさひ姫「…………石田様」

金木「だから、俺は知ってる! ――――――石田少将の人間らしいところをさ! 弱いところだって、不安になるところだって!」

金木「それに、石田少将が終始一貫したやり方を今も昔もしているってことも飛龍さんからの話でよくわかった」

金木「でも、その正しさの割には石田少将はよく人から誤解されてよく損をしているって感じがすっごくてね? なぜなんだろうって」

金木「それは『生粋の軍人だから』って思っていたんだけど、俺の知る大東亜共栄圏の英雄たちは誰一人として石田少将のように孤高の人なんていないんだ」

金木「それで、俺は思いついたんだ」


――――――実は逆なんだって。


石田”「――――――『逆』だと?」

飛龍”「どういうこと?」

あさひ姫「………………」

金木「簡単だよ、簡単」

金木「みんな、石田少将のことを理解してあげようとしているからあまり悪く思わなくなっていたのかもしれなけど、」


――――――本当は石田少将は『正しいことしか見えてない』んじゃないの?!



飛龍”「――――――『正しいことしか見えてない』?」

金木「いや、『正しいことしか見ようとしない』のかな?」

石田”「…………続けろ」

金木「俺さ、石田少将が前に唐津を襲っていた【兜】の本拠地を突き止めたやり口に最初『なんてことしやがるんだ、この野郎!』って思ったもん!」

飛龍”「あ」

石田”「………………」

あさひ姫「………………」

金木「だって、人の【城娘】である佐和山城のことをみんなの前で泣かせた上に、」

金木「石田少将の作戦とはいえ【兜】の手先の野盗共に襲わせて生け捕らせたんでしょう?」

金木「しかも、飛龍さんや姫様が神集島に逸早く駆けつけてくれなかったら、新手の【大将兜】に佐和山城が討ち取られていたかもしれないって?」

飛龍”「そ、そうだったんだ……」アセタラー

金木「一応、石田少将も【兜】の秘密について命懸けで掴んできてくれたし、おかげで唐津への脅威を取り除いて今日に繋がっているんだけどさ」

金木「というか、こうして生きていられるのも全部 石田少将のおかげ――――――」

金木「そのことを思えば『やっぱり石田少将ってすげー!』だけど、――――――第一印象は『ふざけんなよ、この野郎!』だよ」

石田”「………………」

金木「これでわかりましたか? ――――――俺がさっき言った言葉の意味が」


――――――石田少将は責任逃れしてるんだ、言い訳してるんだ! 『正しいことさえしていればいい』って甘えてるんだ!


石田”「!?」ピクッ

飛龍”「え」

あさひ姫「なるほど! だから、石田治部は…………」

金木「『正しいことが常にその場のベストだなんて限らない』ことを石田少将は感じたことない?」

金木「特に石田少将の偏屈とも言えるそのやり方を貫いてきて、大多数の人たちから心からの賛同や理解をされたことなんてないんでしょう、一度も」

石田”「……わかったふうなことを言うな!」ムッ

金木「いや、言わせてもらいますよ、今日という今日は!」ギロッ

石田”「…………金木?」

飛龍”「【城主】様……(凄い。多聞丸にはまだまだ及ばないけどそれに近いものを感じるよ、今の【城主】様からは!)」


金木「それに『【艦娘】に配慮する必要がない』と言うのなら――――――、」


金木「なんで命の危険を犯してまで自ら海に出て【艦娘】の弔いなんてやってきてるんですか!」


金木「本当に気にしてないのなら、そんなことする必要ないじゃないですか! それこそ非効率ですよ!」

金木「それで敵に遭遇して帰らぬ人になったとして、それで『死して全体の勝利に貢献』できると思ってるんですか!?」


金木「――――――あなたは自分に嘘を吐いている! それは許されないことなんだ! 自分の忠を裏切っている不忠者め!」


石田”「!」ガビーン!

石田”「あぁ……」アセダラダラ

石田”「お、俺は………………」ブルブル・・・

飛龍”「【城主】様!」

金木「飛龍さん! あんたも石田少将のことをそこまでわかっていたのなら、なんで今日に至るまで何も言わずにいたんですか!」ゴゴゴゴゴ!

飛龍”「え、私!?」ビクッ

飛龍”「だ、だって、私は…………」イジイジ

金木「俺だって石田少将より立場は下だよ、目下だよ!」

金木「でも、俺は石田少将に長生きしてもらいたいから勇気を出してこの場で言ってやってるんだ!」ムキィ!

あさひ姫「……【城主】様」フフッ


金木「ああもう! ヤキモキするなぁ!」

金木「本当はお互いにずっと言いたかったことがあるんでしょう!?」

金木「それをイジイジと揃いも揃って、――――――『草葉の陰からあなたを見守ってます』って?」

金木「アホか! 人間ってのは感情の生き物なんだぞ! 面と向かって放たれた言葉や態度、仕草に心ってのを感じるもんなんだぞ!」

石田”「………………」

飛龍”「………………」

金木「なんで付き合いの短い――――――【乱世】に来るちょっと前に好きだった子に手酷く振られて失恋したような俺なんかが、」

金木「二人の仲人みたいなことをやらなけりゃならんのですか!?」

飛龍”「な、『仲人』……!?」ドキッ

金木「そうだよ! 俺はこれから【島原・天草一揆】を止めるんだぜ?」

金木「目の前の恩人2人の仲直りもできなくて、どうやって人々の幸せをもたらすって言うんだい!」

石田”「…………金木」

金木「結局、言葉なんだよ! 自分の感情を素直に表現して相手に届けられるかどうかの結果だろう、人間の好き嫌いなんて」

金木「だから、はっきり言ってよ! 見てるだけじゃなくて、行動で示すだけじゃなくて、言葉もあって初めて人と人のコミュニケーションは成り立つんだからさ」

金木「これって意外と重要なことなんだぜ? ――――――『面と向かって言う』ってのはさ」

金木「俺は石田少将や飛龍さんとのそれぞれの時間を過ごしてみてそれがよくわかったよ」

金木「だからこそ、『見守る』んじゃなくて『言葉を交わす』べきなんだよ、尚更! 『いつか』じゃなくて『今ここ』でやるべきなんだ!」

金木「二人の間に足りないのは間違いなくそれ! 互いに命を預け合う仲をなあなあですませていい話じゃない!」

飛龍”「で、でも……、私、提督に何て言ってあげたらいいか――――――」

金木「そんなの簡単じゃん! 何 言ってんだよ!?」

石田”「……簡単なのか?」

金木「この唐変木! 自分の気持ちにも気づかないツンデレ! 逃げるな!」ギロッ

石田”「…………『逃げるな』か」シュン

飛龍”「え、えと……」アセアセ

あさひ姫「飛龍さん。一言だけでいいんです。石田様が求めているのは――――――」ゴニョゴニョ

飛龍”「え」

飛龍”「あ……」

あさひ姫「わかりましたか?」

飛龍”「……うん。ありがとうございます、姫様」

石田”「む」

飛龍”「提督……」


飛龍”「――――――――――――!」


石田”「!!」ドクン!

石田”「お、俺は…………」ジワッ


金木「…………これで一件落着かな。ようやく俺の腹の虫が収まるか?」ヤレヤレ

あさひ姫「見事な裁きでございました、【城主】様」ニッコリ

金木「……不思議だ。どうしてこんなことが言えたんだろう? というか、なんでここまでのことが自然と言えたんだろう?」ハハッ

あさひ姫「それこそ簡単なことじゃないですか」フフッ

金木「――――――そういう姫様はどうなんですか?」

あさひ姫「私は見たいんです。――――――石田様の良さが多くの人に伝わって愛されるお姿を」

あさひ姫「だって、私も【城主】様も飛龍さんも、みんな、石田様のことが――――――」

金木「……うん。そうだよな」ハハハ・・・

金木「――――――『本気になる』ってこういうことなんだろうな」

金木「俺、本気で失恋してよかったと思ってるよ、今では…………」

金木「だから、よくわかるんだ。――――――こんな言葉の意味が(ま、ちょっと意味が違ってくるんだけど、不可分のものなんだし、別にいいだろう?)」


――――――相手の話に耳を傾ける。これが愛の第一義務だ。   パウル・ティリッヒ



石田”「な、なぜだ? なぜそんなことが言えるのだ……?」ポタポタ・・・

石田”「俺は、逃げてきたのに……、そう、正しいことだけをして他を省みるということを蔑ろにしてきたというのに…………」

石田”「そして、なぜ俺はその言葉を聞いて動じてしまうのだ……?」

石田”「欲しいと思っていなかったはずなのに――――――、言われることなどあり得ないと思っていたのに――――――」

飛龍”「私もちょっと驚いてる。『言葉にする』って頭で簡単に思えても、いざ口にしてみるとこんなにも込み上げてくるものがあるんだね……」ドクンドクン

飛龍”「でも、ようやく伝わったんだよね?」

飛龍”「私、やっと本当の意味で『提督の艦隊の最古参になれた』ってことなんだよね?」

石田”「――――――『最古参』」
                     ・ ・ ・ ・                ・ ・ ・ ・
石田”「そうか。だから、俺はずっとその言葉が欲しかったのか……。その誰かに言ってもらいたかったのか、本当は…………」ポタポタ・・・

石田”「だから、だから俺はぁ…………!」グスングスン

飛龍”「…………提督」ギュッ

石田”「俺はどうしようもない男だな……」ヒッグゥウウウ・・・

飛龍”「大丈夫。わかってるよ、私は」ナデナデ

飛龍”「私の方こそごめんね。ただ提督の側に居続ければきっと提督は――――――なんて甘いことをずっと考えてた」

飛龍”「やっぱり言葉にしなくちゃダメなんだよね? 本当にごめんね、提督……」ポタポタ・・・

石田”「いや、そもそも俺が自分の感情を押し殺してきたことが全ての発端だ。非があるのは俺の方だぞ、飛龍……」

石田”「これは艦隊司令官たる俺の不徳といたすところだ…………」

飛龍”「別にいいと思うよ。だって、人間だもの――――――完璧になんかなれっこないよ」

飛龍”「それに提督はむしろ完璧すぎてダメだったんだから、少し完璧じゃないくらいがちょうどいいって」

石田”「今更 許されるのか、そんなことが?」

飛龍”「信じて。私と提督は熱いユウジョウで結ばれているんだよ? 提督が選んだ艦娘の私をもっと信じて」

飛龍”「たとえ世界の全てが提督の敵になったとしても、私は最後まで提督の側を離れないから。――――――多聞丸のように」

石田”「…………そうか」フフッ


石田”「だが、こんな簡単なことを求め続けてきた日々というのは はたしてどれだけの価値があったのだ……」

飛龍”「提督? そんなこと言っちゃ『めっ』ですよ」

飛龍”「ほら、提督」

石田”「?」


ヲ級”「ヲヲヲヲ~!」トタトタトタ・・・


石田”「…………『ヲシドリ』」

ヲ級”「ヲ? ヲヲヲ?」

石田”「いや、これは、だな――――――」

飛龍”「提督ったら」クスッ

石田”「む」

飛龍”「『ヲシドリ』、ほら、こっち来て」

ヲ級”「ヲ?」

飛龍”「はい♪ 提督のことを慰めてあげてね~」ニッコリ

ヲ級”「ヲヲヲ!」

ヲ級”「ヲ~ヲ~♪」ナデナデ

石田”「………………下手だな」フフッ

飛龍”「それなら今度から提督が練習台になってあげて♪」

飛龍”「それと、今度からは一緒に花を供えに行こう。――――――約束だからね」

石田”「……それもそうだな、」チラッ

金木「――――――」ニッコリ

あさひ姫「――――――」ニコニコ



――――――ありがとう、センユウ。





筆者のモチベーションが下がって3月をノロノロしている間に、すでに新年度を迎えてしまったことに深くお詫び申し上げます。
【-艦これ-】も終わったと思いきや、なんと【城プロ】が長期メンテナンス――――――ではなく、
リニューアルのために4月27日から今秋まででサービスを一旦終了となったことに、また驚くことに…………。、


参考までに今回のリニューアルにおけるアカウント管理がどのような処置となるのかを一部抜粋(蔑称:βテスト移行)
・引継がない項目
「城娘」「装備」のパラメータ  ※レベルや経験値を含みます。


とりあえず、獲得した「城娘」「装備」はレベルリセットによる初期化はなされるものの、【近代改築】まではリセットされないので一先ず安心か?
その他のアイテムなどが引き継がれるかは未明だが、おそらくは全てロストとなってシンプルに「城娘」「装備」だけが持ち越しとなるのではないかと予想。

そして、これによってプレゼンターの【城プロ】に対する提案も無意味なものとなり、掲載予定の内容も基準の失われたただのラクガキとなってしまいました。
しかしながら、この状況を逆に考えれば、【城プロ】のリニューアルの内容を好きに想像してもいいのではないかと思い、
開き直って思い切った提案をさせていただくことにしてもらいました。ご容赦ください。



柳川城(舞鶴城) 出身:筑後(福岡県) 武器:鉄砲 城属性:平城/水

コンセプト:剛勇鎮西一・西国無双・西の柳川城

必殺技:他家の3倍(速度を大きく上昇させる/範囲:自身)

蒲池治久により築城された城郭で、城下町は現在の福岡県柳川市の元になるほどの完成されたものであった。
唐津城と同じく、“舞鶴城”の雅号をいただく美しい城であったという。
掘割に包まれた天然の要害と城下に敷かれた無数の堀により、「柳川三年 肥後三月、肥前、筑前朝飯前」と当時 敵対していた大友氏で謳われ、
実際に大友が誇る“雷神”立花道雪や“肥前の熊”龍造寺隆信と鍋島直茂の義兄弟の猛攻に見事に耐え抜き、九州屈指の難攻不落の城とされた。
しかしながら、蒲池家の本城として整備し、蒲池家を筑後筆頭大名に押し上げた蒲池宗雪が大友氏が島津氏に大敗する耳川の戦いで討ち死にしたことで、
蒲池家は大友氏から離反して龍造寺隆信と結ぶが、龍造寺が柳川を狙っていたために騙し討に遭い、柳川の蒲池一族は滅亡することになる。
その後、柳川城を獲得した龍造寺隆信も島津氏との決戦で敗死し、その島津氏も豊臣秀吉の九州征伐で仕置きされることになった。
さて、この九州征伐の後に城主として入城したのが、かの有名な“西国無双”こと立花宗茂であり、
関ヶ原の戦いの後に改易されていながら旧領復帰を果たした唯一の大名として抜群の才覚の持ち主であった。
更に、立花宗茂が旧領復帰するまでの間、柳川だけではなく筑後国全体を治めていたのは田中吉政であり、
このように、柳川城は非常に優れた城主に恵まれ、明治維新後も増改築を繰り返すことになり、廃城後も明治当時の西洋館や日本庭園が今も現存している。

ステータス:コストパフォーマンスに優れた高水準の超優良鉄砲城娘

【耐久】……… 高め。九州随一の難攻不落の城。
【攻撃】……… 高め。
【対空】……… 高め。
【速度】……… 【鉄砲】持ちの城娘としては十分速いほうだが、【必殺技】で【刀(対地)】以上の【速度】を得るので殲滅力が桁違い。
【範囲】……… やや高め。【城属性:平山/水】なので【山】におくと範囲が狭まるのが難点か。
【防御】……… やや高め。
【会心】……… 高め。
【後詰】……… やや高め。
【しんがり】… やや高め。
【運】………… トップレベル。城主である立花宗茂が唯一 旧領復帰を果たした大名であり、明治維新後も増改築が続いた。
【技能】……… トップレベル。【鉄砲】の発動効果は『雑魚敵 即死』なのでかなり強力。
【属性】………【人知】系のみの対応だが、【技能】が凄まじく高いために即死効果連発でそこまで気にならない。

おそらく、有名所なので――――――しかし、それ以上の有名所の実装がまだまだ残っているので、本実装はまだ遠いだろうことから勝手に提案。
そして、新機軸の【必殺技】まで導入しているので、この能力で本実装はあり得ないだろうというインチキ性能に仕上げてみた。
本当に“西国無双”さまさまです。また特に目立った失政もなく、明治維新後も使ってもらえたという城主に恵まれた城であった。
【必殺技/他家の3倍】の由来は、朝鮮出兵において小早川隆景の「立花の3千の兵は、他家の1万に匹敵する」という賞賛と、
関ヶ原の役における大津城の戦いにおいて塹壕を掘って早合という弾薬包(=カートリッジ)の導入で3倍速で鉄砲攻撃を繰り出したことから。
一人の武士としては東の本多忠勝が日本最強だろうが、戦術家や陪臣大名として間違いなく日本最強なのが西の立花宗茂なのである。

ちなみに、立花宗茂は【島原・天草一揆】の時にも幕府側の総大将である松平信綱を補佐しており、“武神再来”として老いてもその才覚を激賞されている。


宮永殿(ぼた餅様) 出身:筑後(福岡県) 武器:刀 城属性:平城

コンセプト:西国最恐のネタ枠:雷神の化身

必殺技:雷切(敵に超ダメージ/範囲:全)

ステータス:そもそも城じゃないんだから強くなくて当然なのだが、コスト激安の超絶威力の【必殺技】ボム!

ご存知“西国無双”こと立花宗茂の正室でかつ先代立花家当主でもあった立花誾千代――――――その人の別居地であり、
誾千代は九州征伐によって柳川城に移った立花宗茂とはその時点で別れて暮らすほど仲が悪かったという話である。
しかし、関ヶ原の役においては西軍首脳と合流して柳川城を留守にしていた夫に代わってしっかりと城を預かり、
更には、宗茂が帰還後の柳川城の戦いにおいては制圧に向かう加藤清正の軍勢が宮永殿に差し掛かったところ、
誾千代や立花家を慕う領民たちからの抵抗に遭うのを恐れて進路を変更したという逸話があるほどの父親譲りの武人肌であった。
また、朝鮮出兵においてあの天下人にも一泡吹かせたという逸話も残っており、気性の激しい烈女だったことがうかがえる。
宗茂が改易されて江戸に向かっている間は加藤清正の庇護下にあったようであるが、夫が旧領復帰する前に他界しており、
険悪だったとされている夫婦ではあったが、旧領復帰の折に宗茂は柳川城の築城主である蒲池家の一族の僧を招いて妻を弔う寺を建てている。

【城娘】柳川城とセットで思いついたキャラであり、元ネタがハッタリにも似た逸話しか残っていないので【城娘】としての能力は決して高くないが、
それだけにコストが安く、それでいてシューティングゲームにおけるボムとしての役割をもたせた超絶威力の全体攻撃の【必殺技】特化キャラである。
最初に安全地帯に出して【ゲージ】を溜めて、中盤以降の敵の猛攻に耐えかねた時に発動させるのがベスト。そして、打ったら即撤退――――――。
というか、どんなに頑張っても“一夜城”墨俣城以下の戦闘力なのでそういう使い方しかできず、清々しいまでの一芸特化である。
仕様上、【必殺技】が連発できる禁断の城娘:名護屋城の【必殺技/人生如夢】とは相性抜群であり、丸亀城と組ませればたいていの軍勢が壊滅する破壊力を見せる。




唐津城(舞鶴城) 出身:肥前(佐賀県) 武器:鉄砲 城属性:平山/水

コンセプト:九州版 小さな名護屋城 参照 >>71

必殺技:九州の底力(攻撃力を超絶アップ/範囲:全)

ステータス:規模相応の劣化名護屋城(コスト相応の高ステータス鉄砲なので差別化可能)

天下人の死と共に終わった朝鮮出兵の後に廃城となった名護屋城。その廃材を流用して築城された存在なので、名護屋城の姪みたいな存在。
築城にあたって九州の大名の助力を得たことから、柳川堀・佐賀堀・肥後堀・薩摩堀などの堀が名として残されている。
別名の舞鶴城とは、唐津城の立地である満島山を中心に鶴が翼を広げたように見えることから呼ばれた。京都の舞鶴とは違うし、他の城にもこの雅号が使われている。

それ故に、“九州版 小さな名護屋城”という立ち位置にし、場所が唐津湾に面した満島山なので武器は飛び道具とした。海城とも呼ばれる。
偶然にもかつての君主である豊臣秀吉の逸話に逃げ出した鶴の逸話があることからも、天下人の化身である名護屋城の血脈が感じられるところがある。
城主である寺沢広高は元々 尾張出身であり、豊臣秀吉に古くから仕えて成り上がった人物である(【島原・天草一揆】の前後で親子揃って他界して絶家となったが)。

以上の経緯から名護屋城のことを“姫姉様”と呼び慕い、九州の城娘たちには非常に好意的な反応を見せるが、
【島原・天草一揆】の火付け役になった島原城(=松倉重政・勝家)のことが嫌いであり、その影響からか外部の人間に対しては警戒心が強い。


富岡城(臥龍城) 出身:肥後(熊本県) 武器:鎗 城属性:平山/水

コンセプト:自ら武器を収める有徳者(戦国の気風の最後を弔う者)

必殺技:泰平への祈り(耐久を大回復させる/範囲:全)

ステータス:防御よりのステータスでかつ必殺技が回復系なので意外とコストの割にはしぶとい――――というより、能力に対してコストがかなり安い。

【島原・天草一揆】に大きく関わった城であり、実際に一揆軍と交戦し、城代の三宅藤兵衛が城から出て玉砕している。
しかしながら、陸繋島に築かれた天然の要害に守られた城は城代を失っても一揆軍の猛攻に耐えぬいて一揆軍を撤退させている。
その結果、それからの一揆軍は島原の一揆勢と合流して、原城に立て篭もり、幕府の本格的な攻勢によって全滅している。
ただし、主君である寺沢氏は【乱】の責任を問われ、天草領を取り上げられ、結果としてお家断絶となり、改易となった。
【乱】の後に天領となり、やがて三河国の田原城より戸田忠昌が富岡城に入城し、富岡藩として立藩した際に、
この城の維持管理のために天草の領民を苦しめていることを悟り、三の丸:富岡陣屋だけ残して廃城となっている。
これが「戸田の破城」と呼ばれ、更には天草を永久天領にすることでようやく搾取や圧政から解放され、良策として後世に評価されることになった。

この経緯から、太平の世でありながら【乱】に散っていった一揆勢やかつての主君や城代たちを弔うために邁進する尼のような性格になっている。
天草の民を苦しめ、天下に大乱をもたらしてしまった主君の過ちを償うために…………。ただし、キリシタンは許さん!
また、【島原・天草一揆】が実質的に戦国時代の生き残り最後の晴れ舞台となり、
国内での動乱はそれ以降は黒船来航まで散発はしたものの、200年余りの泰平の世が続いたので【必殺技】もそれを象徴したものとなっている。

















































番外編 2014年から2015年へ

5,2015年 フィリピン シブヤン海にて

――――――3月2日未明

――――――洞庭鎮守府


清原「…………そうか」ペラッ

鳳翔「どうなさいました、あなた?」


清原「約70年の時を経て、大和型戦艦2番艦:武蔵の遺構が海底で発見されたそうだ」


鳳翔「まあ!」

清原「3月13日にその様子がインターネットで生中継されるそうだ」

清原「これは海軍軍人なら必ず視聴するようにお達しが届いた」

鳳翔「わかりました、提督。この事を早速 お報せいたしますね」

清原「頼む」


スタスタスタ・・・バタン


清原「更に、これを記念して、戦艦:武蔵の建造確率上昇キャンペーンが開催されるようだな」メメタァ

清原「こういった記念企画もなかなかにおもしろい展開だな」

清原「よし、ここで1つ、武蔵を狙ってみるか。それぐらいしか もう【大型艦建造】する意味が無くなったからな」

清原「そもそも【異界艦】の調査に追われる毎日で、しかもそれで戦力も十分に充実してきたから――――――ねぇ?」


大和型戦艦2番艦:武蔵 
1938/03/29 マル3計画により長崎にて起工
1940/11/01 進水。この際に「武蔵」と正式命名
1942/08/05 就役。横須賀鎮守府に編入
1944/10/24 レイテ沖海戦にて戦没
  :
2015/03/02 フィリピン シブヤン海にて遺構が発見される
2015/03/13 沈没の様子が全世界にインターネット配信される




――――――3月13日当日

――――――洞庭鎮守府


りう「へえ、これが沈没した武蔵の遺構が――――――」

長門β「…………少し物悲しいものがあるな」

りう「うん、そうだね」

長門β「【私の世界】では大艦巨砲主義の目眩ましとして建造されてそれっきりだった――――――」

長門β「それでも、【この世界】における戦艦:ティルピッツのような抑止力として睨みを利かせてくれたがな」

りう「【こっち】だと超大和型戦艦が登場しているから、そこまで重要でもないんだよねぇ…………」

りう「そして――――――、」

長門β「…………ああ」


――――――【この世界】だと皇国は唯一 敗戦している。


長門β「味方で沈む艦などほとんどなく完全勝利してきた【β世界線】から来た者としては胸に刺さるものがあるな……」

りう「【こっち】もパンデミックで戦争どころじゃなくなって、人類が誇った武力が死臭漂う鉄屑に変わったから…………」

りう「でも、この戦艦:武蔵の建造確率上昇キャンペーンはありがたいな」メメタァ

りう「【この世界】の艦娘は特化してない分 それ相応にバランスがいいから【火力】と【対空】が両立している艦娘はぜひとも欲しかった」メメタァ

長門β「私は逆に【火力】を捨てて味方の援護能力に特化した魔改造艦だから、せめて【火力】も両立したバランス調整であって欲しかったな……」ハア

りう「何 言ってるの? 父さんが丹精込めてしてくれた【(異界艦)改造】のおかげで加賀型戦艦並みの【火力】を確保しているのに?」メメタァ

長門β「それはそうだがな。それには感謝しているが、過去だけはどうしても変えられないからな、つい」



x:摩耶改二「よっ! 生まれ変わったこの摩耶様の実力、見ていてくれよな!」←【対空】100超え 暫定2位


りう「うん。頼りにしているよ、摩耶ちゃん」ニコッ

x:摩耶「!?」カア

x:摩耶「その呼び方 止めろって言ってるだろう!?」ドクンドクン

りう「どうして?」キョトーン

x:摩耶「だ、だって、あたしはそういうガラじゃ――――――」モジモジ

長門β「おお。最新の【改造】実装で“ハリネズミ”になった防空巡洋艦か(私もそれぐらいのバランスと性能が欲しかったなぁ……)」メメタァ

りう「うん。そうだよ」

りう「いやぁ、まさか【この世界】でまともな防空巡洋艦――――――しかも【火力】も兼ね備えた娘と巡り会えるだなんて最高だね!」キラキラ

りう「こういう娘が欲しかったんだよ、オレ! 良かったぁ、【対空】が高いから選んだ摩耶ちゃんがオレが求めていた艦娘で!」

りう「(それでも【対空】は【オレたちの世界】の防空巡洋艦と比べてずっと低いけど僚艦もつけるから問題なし! 【火力】も十分だよ!)」

x:摩耶「そ、そうかよ……。な、なら! もっとあたしを活躍させてくれよな、提督!」

りう「うん! ぜひともオレと一緒に【未来】を救って欲しい!」(切実)

x:摩耶「まかせろ!」(即答)

長門β「頼りになるな。これからも“この子”を支えてあげてくれ」

x:木曾改二「おっと、俺たちのことを忘れてもらっちゃ困るぜ、提督」←【雷装】100超え 暫定2位

x:五十鈴改二「提督の嫌いな潜水艦の相手はこの五十鈴にまかせて」←【対潜】90超え 暫定1位 【対空】80超え 軽巡トップ

長門β「フッ、そうだったな。【この世界】の猛者たちはまだまだいたな」




――――――斎庭鎮守府


剛田「ちょっといいか?」

金本「どうした? 今日の戦艦:武蔵 発見の報を受けて、陸軍を代表して何か言いたいことでもあるのか?」

剛田「いや、今日のことについては、我が皇国国民を大いに鼓舞するものであり、陸軍としても敬意を払うものである」

剛田「俺が言いたいのはそんなことじゃない」


――――――戦艦:武蔵 建造確率上昇キャンペーンについてだ。


金本「ああ。今回の記念にやってるやつか」

剛田「これ、どうして“戦艦:武蔵ドロップキャンペーン”にしてくれなかったんだ?」

金本「ん、どういうことだ?」

剛田「知らないのか? ――――――いや、資源王は『出るまで回す』歴戦の課金兵だから【建造】結果は気にもしないのだろうが、」メメタァ

剛田「これ、こんなことが書いてあるんだぜ」


次回メンテナンス時まで、大型建造時の「武蔵」建造確率が少し上昇します。 (通常戦艦率が少し下がります)


剛田「――――――『(通常戦艦率が少し下がります)』ってな」

金本「まあ、そうなるだろうな」

剛田「DMM――――――どうせ みんな 武蔵になる」

剛田「【大型艦建造】の8時間枠は大和型戦艦の2隻なのに、武蔵の比率が高くなって武蔵 持っているのに大和 持っていない提督が血涙を浮かべてたぞ」

金本「贅沢な悩みだな~。大和型戦艦ならどっちか片方居れば十分じゃん」

剛田「お前のように興味の無いやつからすればそうだろうが、欲しがってるやつからすれば死活問題だろうが!」

金本「アホらしっ! 持ってないやつはそれまで――――――それが【艦これ】世界の絶対の法則だってのによ」メメタァ

金本「【建造】に資源を溶かして泣きべそ かくなら、イベント報酬のやつを頑張って手に入れるんだな」メメタァ

金本「【建造】に無駄な資源を溶かすぐらいなら、イベントに全てを注ぎ込んだ方がよっぽど健全だろうに。そう思わないか?」メメタァ

剛田「……俺も【大型艦建造】をイベント前にやって資源を溶かす愚か者の戯言は聞き飽きているから、その辺は同意せざるを得ないな」

金本「だいたい、この前の【桃の節句】イベントも、冬イベント終了後の資源を消耗した状態に更に追い打ちをかけるものだってのに……」メメタァ


金本「――――――いや、違う?」ピクッ


剛田「え?」

金本「すまん。気のせいだ」

剛田「そうか」

金本「まあ何にせよ、この先は本当の意味で、先を見通す才能のないあまったれが生き残れない領域になってくるのかもねぇ?」

剛田「ああ。今回のキャンペーンでまた資源を溶かす愚か者たちの悲鳴が輪唱して陸軍にも響き渡るわけだ……。勘弁してくれよな、なさけない!」

剛田「これから陸海合作が進んで本格的に提携していくんだから、鎮守府にふんぞり返って馬鹿なことを繰り返す醜態はこれっきりにしてくれ!」

金本「俺に言われてもね」

剛田「なら、任務報酬で得られる艦娘を増やせい! その方がまだ名目がある分には健全だわい!」

金本「………………大本営も躍起になってるようだな」


――――――このイベントは“アンガウル”の発掘のために大本営が仕込んだものではないのか?



――――――拓自鎮守府


朗利「――――――『戦艦:武蔵』だと?」

朗利「知るか! そんなことよりもホワイトデーだ!」クワッ!

朗利「さあて、今回の期間限定ボイスは誰と誰と誰かな~?」メメタァ

朗利「む」カチカチッ

朗利「今回は駆逐艦は少なめというか第六駆逐隊が――――――いつも思うけど睦月と如月はほぼ毎回のようにいる気がするなぁ」メメタァ

朗利「これもアニメ補正ってやつなのかな? そう――――――、」メメタァ

             ヒド         ムゴ
朗利「………………酷い内容というか酷い内容だったな、【公式アニメ】」メメタァ


朗利「何ていうか筋が通ってないって感じだよね(俺はまだ一度も見てない――――――愛月提督からの報告書でしか内容を知らないが)」

朗利「やるんだったら1つの作風を徹底して欲しいよね――――――現実のリアルと作品のリアルの区別ができてないんじゃないの、あれ?」メメタァ

朗利「いや、そもそも現実のリアルですらまともに見えてないとしか思えない、人を人と思ってないような摩訶不思議な展開の連続だよ、まったく……」

朗利「そして、如月ちゃんをワンパン轟沈させたのは絶対に許さねぇ……!」ゴゴゴゴゴ!

朗利「別に、これは“劇”なんだよ! 物語の流れの中で大切な何かを伝えるために必要だった配役だったら文句は言わない!」

朗利「俺は自分の娘が主役になれないからといって怒鳴りこむモンスターペアレントじゃない! それぐらいは悔しいけどあってしかるべきなんだ!」

朗利「けど、嘘だろう!? あれ、【応急修理女神】で奇跡の復活をする流れじゃなかったのかよおおお!」グスン

朗利「加えて、第4話の葬式から続く大艦隊の鎮守府とは思えないような倫理的・軍事的奇行や流れの数々――――――」

朗利「しかも、声も姿も感じられない名前だけの存在である“提督”の野郎がやりやがった今 明かされた衝撃の真実ぅ――――――!」

朗利「いくら俺がガチペドロリコンの紳士でも『それはない』と思う。艦娘が提督に対して絶対服従だからってそんな身勝手、絶対にあり得ない!」

朗利「少なくとも、公共の電波に流して評価されるようなものだったとは思えない! 内輪ネタで終わる話じゃないんだぞ、テレビ放送ってのは!」


朗利「【艦これ】を知らない人間にとっては【このアニメ】で【艦これ】の値打ちが決まるんだからさ!?」メメタァ


朗利「そうなんだよ! 【このアニメ】、姿すら映されていない“提督”の所業にイライラさせられるんだよな、その『提督』の一人である俺としてはね!」

朗利「俺はまだ見たことはないけど、報告書には『“提督”は登場させないようになっている』とあるのに、」

朗利「それがどうして、画面上に登場していない要素に周りが翻弄されなくちゃいけないんだよ!」

朗利「“提督”を出さないのなら一切 物語に関わらない方向で徹底しろよ! それで艦娘同士の和気藹々とした日常を描けばよかったじゃないか!」メメタァ

朗利「元々 これは【艦これ】――――――ひいては艦娘の世間へのプラスの認知を高めるためのアニメだったんだろう?」メメタァ

朗利「なら、なんでこんな報告書だけ見てもはっきりとわかるクソアニメになってるんだよぉおおおおおおおお!」メメタァ

朗利「気楽に楽しめる“動くオリジナル”を追求すればよかったのにぃいい!」

朗利「責任を負う立場の提督が雲隠れしながら場を掻き乱しているという演出が特に気に食わない!」


朗利「けど、言わんとしたいことはわかる」

朗利「吹雪が【艦これ】の顔として主人公として扱いたいのならそれでいい。物語のコンセプトは最初に来るべきものだから」

朗利「でも、それならさ? 普通にさ、吹雪とのケッコンを題材にしたかったら、」


朗利「本ゲームの流れに沿ってあるあるネタを絡めながら苦楽の日々を共にした上で――――――でいいじゃん」


朗利「その方が提督も吹雪も未熟なことにも納得がいくし、如月ちゃんが生贄になったとしても胸に刻まれるじゃん? 名場面に活かしやすいじゃん?」

朗利「視聴者に含まれる【~艦これ~】ユーザーからだって共感してもらえるし、そうじゃない人たちからも【~艦これ~】の概要がよくわかるじゃん?」

朗利「だって、原作ゲームのあるあるネタを絡めた『ポケモン THE ORIGIN』って原作完全リスペクトの傑作アニメあるじゃん!」

朗利「あれを手本にして、一人の提督と一人の艦娘の成長物語にして『俺たちの戦いはこれからだ!』で締めれば公報アニメとして完璧じゃん!」

朗利「なぜそうしなかった? 思い出の積み重ねも正当な理由も無しに『夢で結婚したから』なんていう電波系がまともに評価されるわけがない!」

朗利「そして、最初からアニメ鎮守府を大艦隊の大御所にする必要はなかったように思うぞ」

朗利「もし最初の訓練や鎮守府の活気に満ちた風景が描きたいのなら、プロローグとして新任の提督や初期艦が他所の鎮守府で見た光景にするか、」

朗利「あるいは、大物提督の許で一人前になるための研修期間での光景としても良かったんじゃないの?」

朗利「もしくは、2つの鎮守府の様子を行き来しながら描写するっていうやり方もありだぞ? そうすれば【演習】もうまいこと描写できるし」


朗利「ま、今更 こんなことを言っても後の祭り――――――」

朗利「大本営はこんな酷いアニメに仕立てあげたやつをどうするか楽しみだよ」

朗利「ま、俺は第2期がまっとうな王道アニメになることを期待するよ」

朗利「…………アニメ【-艦これ-】は、原作【~艦これ~】ユーザーから黒歴史認定 確定だろうな」

朗利「――――――っと、いけない いけない」

朗利「【アニメ】なんていうファンに向けられていない公式二次創作がどうなろうと知ったことじゃないよ」

朗利「俺は原作の【~艦これ~】を今日も目いっぱい楽しむんだ! 原作 サイコーッ!」パァ

朗利「さあ、ホワイトデーだ! ホワイトデーを楽しむぞおおおお!」ヒヤッホーーーーー!



――――――趣里鎮守府

――――――武蔵の部屋にて、例の生中継映像を見終わり、


石田「終わりましたね」

武蔵「あ、ああ…………」 ――――――ケッコン指輪が鈍く光る。

石田「大和よりも更に深い場所に眠っているか……。引き揚げるのは難しいだろうな」

石田「さて、私はこれで帰ります――――――ん?」

武蔵「…………!」ドン!

石田「ガッ」ドタッ ――――――唐突に武蔵に押し飛ばされる!

武蔵「………………」バッ ――――――そこへすかさず武蔵が迫る!

石田「…………な、何のつもりだ、武蔵?」ジロッ


武蔵「提督が悪いのだからな!」ドクンドクン


石田「……なに?」

武蔵「提督、憶えているか? ――――――私がこの鎮守府に来た当時のことを」

武蔵「私は建造ドックから出ると眩いばかりの歓迎の眼差しと綺羅びやかな装飾が凝らされたパーティ会場の中にいたのだ」

武蔵「驚いたよ、あの時は本当に。【建造】したてで頭が追いつかなかったせいもあったが、少なくともこれからここが私の居場所なのだと理解できた」

武蔵「そして、提督――――――私はその中で力強く手を引いてくれたあなたに期待していた」

武蔵「事実、提督は私の願いを叶えてくれた。生前には叶わなかった この自慢の主砲で存分に撃ち合う大海戦と大勝利の数々を私にくださったのだ」

武蔵「気づけば、あっという間に【改造】が終わっていたぐらいだった」

石田「それが上官である私を押し倒すことと何の関係が――――――」

武蔵「それから提督は、こんな武骨者で浅黒肌の 大和に比べたら女っ気のないこんな私を舞踏会に連れて行ってくれたよな?」モジモジ

石田「…………言うな(左近提督にはめられて、あんなものを着させられた記憶など粉微塵にしてしまいたい…………!)」プイッ

武蔵「わ、私も、お、思い出すだけでも恥ずかしいのだが……、」モジモジ

武蔵「それでも、提督の力強い手に身体を委ねる感覚は何とも甘美なものであった…………」ドクンドクン


石田「……それで?」

武蔵「だが! それから私は提督から遠ざけられてしまった……!」

武蔵「私は提督の見事な運用によってあっという間にケッコンカッコカリまでできる練度にまでに達し、」

武蔵「提督からすぐに【ケッコン指輪】を渡されるものだとばかり――――――」

石田「……それの何が不満だというのですか?」

武蔵「不満など…ない」

石田「なら、わざわざそのことについて言う必要がありません」

石田「それとも、かえって迷惑でしたか?」

武蔵「 そ ん な わ け あ る か !」

石田「…………!」

武蔵「強くなってより強大な敵に打ち勝てるようになるのは武人としての誉れだ」

武蔵「そ、それに……、ここまで短期間に無理なく鍛え上げてくれた提督には感謝の言葉が尽きない」

石田「……要領を得ないですね」


石田「結局 何が言いたいんです?」ジトー

武蔵「…………!」ゾクッ

武蔵「………………」

武蔵「…………提督よ」

石田「はい」


武蔵「提督も男なら……、――――――いいんだぞ?」ポッ


石田「む?」ジトー

武蔵「あ」

武蔵「いや! 提督も我慢などしなくていい! さあ、思う存分に甘えるといい」ドヤカ

石田「………………武蔵?」ジトー

武蔵「――――――これでもダメだと言うのか」ボソッ

武蔵「ええい!」

武蔵「提督よ!」

石田「…………何ですか?」


武蔵「私は提督にとって何なのだ!?」


石田「――――――質問はもっと具体的にお願いします」

武蔵「……むっ」


石田「もういいですか? まだ仕事が残っているので」

武蔵「それは【深海棲艦】と一緒にアニメを見ることか!」

石田「そうですが? 改めて訊くような話でもないと思いますが」

武蔵「………………!」ギリッ

武蔵「なぜだ? なぜなのだ、提督よ……!」

武蔵「どうして提督は敵である深海棲艦にそこまで拘る!? 前の冬イベントでも最終戦は私ではなく【捕獲】したレ級を投入した!」

石田「………………なるほど、そのことに不満があったか(そういえば武蔵はこの鎮守府の面々からすると新入りの部類で、以前にも――――――)」

武蔵「私はいつか提督が味方に引き込んだつもりの【深海棲艦】に殺されるのではないかと気が気ではないのだぞ…………」ポタポタ・・・

石田「なら、言ってあげましょう」

石田「その心配は無用です。他はどうかは知りませんが私はうまくやっていますので、心配なさらないでください」

武蔵「――――――尚更 信じられるか!」

石田「………………鬱陶しいな」ムッ

武蔵「くぅ、どうすれば伝わるというのだ……」グスン・・・

石田「なら、後日 改めて話を聴きますから、それまでに要点をまとめておいてください」スッ

武蔵「あ」

石田「それでは」スタスタスタ・・・

武蔵「提督、提督!」


バタン!


武蔵「…………私はどうしようもない女だな」ポタポタ・・・

武蔵「言葉で言ってどうにもならない相手である以上は身体でわからせるつもりでいたのに、」

武蔵「提督のあの冷めた視線を浴びただけで意志が鈍ってしまった…………」

武蔵「提督にとって私は何なのだ? 私は提督の考える最高戦力ではなかったのか……?」

武蔵「わ、私はケッコン相手ではないのか? 提督にとっての一番ではなかったのか……?」

武蔵「うぅうう……、提督よぉ…………」ヒッグゥウ・・・



――――――“鬼武蔵”


石田「…………嫌でもその名を思い出してしまう」ムスッ

石田「『名は体を表す』とは言うが、【艦娘】武蔵には何の罪もないのに、自然と関わるのを避けてしまう自分の狭量さが腹ただしい……」ギリッ

石田「そして、今日もどこかの歴史の裏側でやつらが――――――」


コツコツコツ・・・・・・


石田「む」

左近「殿? 今日はちゃんと武蔵さんとお話できましたか?」

石田「いや、何か言いたかったようだが、要領を得ないので後日 改めて話を聴くつもりだ」

左近「あちゃー、せっかくの記念日が台無しですな……」

石田「何の話だ?」

左近「いえ、大本営も何を考えて【ケッコンカッコカリ】という名でレベルキャップ解放システムを導入したのですかなって」メメタァ

石田「……確かにな。燃費や能力が良くなる点は評価するがな」

左近「殿? 曲がりなりにも武蔵さんとごケッコンなさったんですから、もう少し配慮が必要なんじゃありませんか?」

石田「何を言う。いつでも決戦の先陣は武蔵にまかせてきたし、論功行賞で彼女を外したことは一度もないぞ」

左近「…………そうは言いますがねぇ(――――――やれやれ、似た者同士 不器用で困った御仁たちだ)」

左近「(以前から問題でしたけれども、いい機会ですからそろそろ何とかしてあげましょうかね、この左近が)」

左近「(ただ、俺は殿の味方である以上は、その部下である武蔵さんにはある程度 泣きを見て――――――もう見てもらっていると思うんですけどね)」

左近「(絶対服従の因子があるとはいえ、これ以上の擦れ違いは士気にも影響しかねませんのでね。しっかりと意思疎通を図ってもらいますよぅ?)」

左近「(それが凡人たる俺の役目ですからね。殿の偉業を阻む些細なもつれは早い内に解決させてもらいましょう)」


Next:第9話 海軍総隊を結成せよ! に続く!


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