【艦これ】霞「阿武隈さんにはもっとしっかりして欲しいものね」 (39)

霞「この間もまた、阿武隈さんは夜中にバカ騒ぎしてた川内さんを一生懸命注意してたわ」

霞「あの人の夜戦馬鹿はいくら言っても直らないんから、時間と労力はもっと有意義なことに使うべきよ。ったく」

朝潮「たしかに神通さんや司令官も、度々川内さんには頭を抱えているようですけど」

霞「ただでさえ、普段から訓練で出来ないことがある子に丁寧に一から教えてあげたりしてて、忙しいんだから」

霞「過労で倒れたりしたら、こっちだって良い迷惑よまったく」

霞「自己管理くらいしっかりやって欲しいものね」

朝潮「阿武隈さんは面倒見がとても良いですからね。素晴らしいと思います!」

霞「最近一水戦の子達だけじゃなくて、昼間寝てるどっかの三水戦旗艦のせいで、三水戦の子達の面倒まで見る羽目になってるのよ」

霞「ほんっと、損な役回りばっかよねえ。霞達の上に立つ者として、もうちょっと上手く立ち回れないのかしら。どこまで不器用なのよ」

朝潮「え、えっと……」

霞「にも関わらず、時には司令官のご飯まで作ってあげたり、執務のサポートしたり……あーもう! 関係ないのにムカムカしてきた!」

朝潮「なるほど! 霞は阿武隈さんのことが心配なんですね」

霞「はあ!? なんでそうなるのよ!?」

朝潮「違いましたか?」

霞「これっぽっちも心配なんてしてないわよ! ただ見てて危なっかしいからハラハラしてくるだけだわ!」

朝潮「そうでしたか」

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霞「だいたい、司令官も司令官よ! 公私共に阿武隈さんに頼り切っちゃって! ちょっとは阿武隈さんが楽になれるよう立ち回ってあげなさいってば!」

霞「それが鎮守府トップとしての役目でしょうが!」

朝潮「なるほど! 心配なだけじゃなくて、自分に構って欲しいんですね!」

霞「はあ!? そんなことあるわけないでしょ!?」

朝潮「また違いましたか?」

霞「構って欲しいなんてあるわけないでしょ! 子供じゃあるまいし!」

朝潮「そうでしたか」

霞「そもそも、阿武隈さんにははっきり言って威厳が足りないわ!」

霞「ついさっきも緩んだ顔して『えへへ、霞ちゃん今日は手伝ってくれてありがとうね』とか言いながらあたしの頭を撫でようとしたのよ!」

霞「みんなの前で恥ずかしくてつい断っちゃ――もとい、水雷戦隊旗艦としてもっと一線引いてビシッとして欲しいわね!」

朝潮「なるほど! みなさんの前じゃ恥ずかしいから、誰もいないところで頭を撫でて欲しいかったんですね」

霞「さっきからなに変な勘違いしてんのよ! そんなこと全然思ってないわよ!」

朝潮「そうでしょうか?」

霞「その後も『霞ちゃんケーキ好きだよね? いつも頑張っているからご褒美にケーキ焼いてあげるね!』」

霞「なんで嬉しそうな顔しながら言ってくるのよ! 絶対食べ過ぎるわ! まったく虫歯になったり太ったりしたらどうしてくれるのかしら!」

朝潮「あまり甘いものの食べ過ぎはよくないと思います」

霞「だって阿武隈さんのケーキおいし――違うわよ! それに阿武隈さんは健康のことをちゃんと考えて、食べ過ぎないようにしてくれるわよ!」

朝潮「それもそうですね。でも、それなら健康の心配はないと思いますが」

霞「こっそりつまみ食いを……はっ!?」

朝潮「霞、そんなお行儀の悪いことはしてはいけません! めっです!」

霞「ち、違うわよ! 普段から隙だらけの阿武隈さんの警戒力を高めるために、敢えてつまみ食いをしてるのよ!」

朝潮「そうでしたか! 霞は偉いですね。私、つい勘違いしてしまいました」

霞(我が姉ながら、他の人に騙されたりしないか心配だわ……)

霞「……まあ良いわ。ということで、もうちょっと阿武隈さんにはしっかりしてもらわないと困るのよ」

朝潮「阿武隈さんは十分しっかりしていると思いますよ?」

霞「霞からすればまだまだ全然なのよ!」

朝潮「そういうものでしょうか。阿武隈さんになにか落ち度でも?」

霞「……いまちょっと不知火の顔が頭をよぎったわね。まあ、どうでもいいわ」

霞「ともかく、今のままじゃ駄目だわ。対処が必要なのよ」

朝潮「対処ですか?」

霞「というわけで、行くわよ」

朝潮「行くって……どこへでしょうか?」

霞「今の話の流れから予想しなさいな。阿武隈さんの行動を見て、まずいところを指摘して矯正させるのよ」

朝潮「私達がですか? むしろ私は阿武隈さんを見習いたいくらいで畏れ多いのですが」

霞「まあ、朝潮姉さんはそれでもいいわ。ともかく行くわよ」

朝潮「分かりました! 非才の身ですが、朝潮! 霞を全力で援護します!」

霞「なんかそこまで気合い入っていると逆に心配になるわね……」

――鎮守府、厨房

磯風「師匠(阿武隈)! 野菜は切り終えたぞ!」

阿武隈「ありがとう磯風ちゃん。わあ、上手上手! それにとても早いよ! すごいね磯風ちゃん!」

磯風「なに、師匠に教わり始めて随分経つからな。これくらいできなくては立つ瀬がないさ」

風雲「しかし、以前は料理が下手だったなんて、今の磯風からは考えにくいわね」

阿武隈「磯風ちゃん頑張りましたから」えっへん

風雲「なんで阿武隈さんが誇らしげにしているんですか」

阿武隈「教え子がこんなに良い子で嬉しいなって。あたしも誇らしいです」

磯風「その師匠……そう褒められると照れくさいのだが」

風雲「あら。いつもみたいにドヤ顔してればいいじゃない」

磯風「ちょっと待て風雲。この磯風がいつそんな顔をしたというのだ?」

風雲「さーて? いつかしらね」

霞「むー……ずるい、楽しそう……」

朝潮「霞、なんだか寂しそうですね」

霞「はっ!? まったく折角の空き時間に料理を教えているなんて、また疲れちゃうじゃないまったく!」

朝潮「今まったくを二回言いましたよ? 霞、落ち着かないときは人と言う字を手の平に書いて飲み込むと良いと聞きました。ぜひやってみましょう!」

霞「うっさい! ともかくこれはお説教が必要ね、さっそく注意しなくちゃ!」

朝潮「駄目ですよ、霞。みなさんお料理を楽しんでいるんですから、邪魔をしてはいけません」

霞「……そ、そうね。この場は見逃しておいてあげようかしら」

朝潮「霞も一緒にやりたいのなら、今からでも混ざってくれば良いと思います」

霞「そ、そんな恥ずかしいことできるわけないじゃない!」

朝潮「なるほど! 霞から言い出すのは恥ずかしいんですね! ならお姉ちゃんが言ってあげます!」

朝潮「阿武隈さん! 霞が阿武隈さんと一緒にお料理をしたくてたまらないみたいです! 是非ご一緒してあげてください!」

阿武隈「そうなの? うん、もちろんいいよ! 霞ちゃん、朝潮ちゃんも一緒にお料理しよ!」

霞「いきなりなにをしてくれてんじゃアンタはああああああああっ!?」

――翌日、鎮守府の庭。

霞「なんてことしてくれたのよ朝潮姉さん!」

朝潮「駄目でしたでしょうか?」

霞「あれじゃあ霞がものすごく恥ずかしいじゃない! あの後、磯風と風雲が霞にずっと生暖かい笑顔を向けてきたんだから!」

朝潮「そうでしたか。霞が磯風と風雲と仲良くなれて良かったです!」

霞「どんだけおめでたい思考してんのよこの姉は!?」

朝潮「お褒めにあずかり光栄です!」

霞「あああああ!? もういいわ!」

朝潮「あっ、霞。あそこを見てください。阿武隈さん達が島風さん達と遊んでますよ」

霞「え?」

島風「おねーちゃん、島風に追いつける!?」

天津風「ちょっと島風! 前を向いて走りなさいな! 誰かにぶつかったりしたら危ないわよ!」

三日月「島風さん速いですね! でも鬼ごっこは足の速さだけで勝敗は決まりませんよ!」

秋津洲「もしかしなくても、この勝負秋津洲が不利かも!? 大艇ちゃんに乗って逃げちゃ駄目かなぁ?」

響「大艇ちゃんに頼らず逃げるんだ、秋津洲。立って走れ、前へ進め、あんたには立派な足がついてるじゃないか」キリッ

長波「おう他人の名言パクるのやめよーな」

秋月「ツッコミが薄い気がします……そう、ツッコミです!」

菊月「……秋月、お前はなにを言っているんだ?」

阿武隈「ふふっ、それじゃあ島風ちゃんを頑張って捕まえてみようかなっと!」

島風「ふふーん、いくらお姉ちゃんでも島風はそう簡単には捕まえられないよ!」

霞「むう……島風ったら、あんなに楽しそうに……生まれ持ったスペックで誇ったって、なんの自慢にもならないわよ」

神風「バカね、駆逐艦の実力はスペック『だけ』じゃないのよ!」

霞「どっから出てきたのよアンタ!?」

神風「霞、私は感心していたのよ。ほら、あれを見て」

霞「あれって……島風達が鬼ごっこしているだけじゃない」

神風「そうね、でもほら。天津風や阿武隈さん達が、島風と互角に鬼ごっこしているわ」

神風「すごいと思わない? 阿武隈さんは、私や鳳翔さんとほぼ同期の艦を元にした艦娘なのよ」

神風「もちろん、有り余る高いスペックをほぼ完璧に生かしている島風もさすがだけど。そうとう努力したのね、あの子も」

霞「……そうね、さっきの島風への言葉は撤回するわ。ごめんなさい」

神風「ふふっ、普段の霞なら私なんかに言われなくても、分かっているはずよ。ちょっとご機嫌斜めなのね」

霞「別にそんなじゃないわよ」

朝潮「神風、霞は阿武隈さんに最近あまり構ってもらえなくて寂しがっているんです。できれば励ましてあげてください!」

霞「いきなりなに言ってるのよアンタは!?」

神風「そう。だったらあの鬼ごっこに混ざってくれば良いじゃない」

霞「だからそんなんじゃないってば!」

朝潮「そうですか。なら、今回も私が言ってあげます!」

霞「やめなさいよバカ! 昨日と同じことしたら承知しないわよ!」

朝潮「安心してください霞! この朝潮、昨日と同じ間違いは繰り返しません!」

霞「……そう? なら良いけど」

朝潮「阿武隈さん! 霞が阿武隈さん達と鬼ごっこをしたくてたまらないみたいです! 是非ともご一緒してあげてください!」

阿武隈「あ! 霞ちゃんに朝潮ちゃん、それに神風ちゃんも! もちろんいいよ! 一緒に遊ぼ!」

朝潮「どうですか霞! 阿武隈さん『達』と複数対象にすることで、霞のターゲットを絞らせない作戦です!」

霞「アホかああああああ!?」

――翌日、鎮守府内。

霞「二日続けてなにしてくれてるのよ!」

朝潮「駄目でしたでしょうか? でも阿武隈さんとご一緒できて良かったのでは?」

霞「あの後長波とかだけじゃなくて、島風や響にまで『霞は甘えん坊さんだなあ』みたいな目で見られたのよ! どうしてくれるのよ!」

朝潮「別に恥ずかしがる必要はないと思いますけど」

霞「恥ずかしいわよ!」

阿武隈「こら、霞ちゃん。勉強中に大声出さないの」

霞「あ……すみません」

霞「もう、怒られちゃったじゃないの」

朝潮「そうね、ごめんなさい霞」

霞「えっと……私の方こそごめん。朝潮姉さんなりに霞のこと考えてやってくれたのに」

朝潮「ふふっ、そう言ってくれると嬉しいわ」

名取「えっと……じゃあ今日はここまでにしますね」

阿武隈「みんな、分からないことがあったらあたし達に気軽に訊いてくださいね!」

暁「阿武隈さん! 暁は訊きたいことがあるの!」

子日「はーい! 子日も子日も!」

白露「白露もいっちばーんになるための質問があります!」

時雨「もう姉さんってば。また一番かい?」

朝雲「はいはーい! 私も質問があるわ!」

潮「わ、私も質問よろしいでしょうか……?」

朝風「ここの鎮守府の人達はみんな元気ねえ」

名取「特に阿武隈ちゃんの周りはね……朝風ちゃん、もうこの鎮守府には慣れた?」

朝風「当然。爽やかさと鍛え方が違うのよ! 私に適応できない環境なんてそうありはしないわ!」

名取「ふふっ、良かった。でも、なにかあったらいつでも言ってね?」

朝風「そう? じゃあなにかあったら頼られてもらうわね、名取さん」

名取「うん、任せて……あまり頼りにならないかもしれないけど」

朝風「もう、すぐそういうこと言わないの。虚勢でもいいからもうちょっと胸張りなさい」

名取「ふえっ!? ご、ごめんなさい! びしっ! ……どうかな」

朝風「……まあいいわ。にしても」

阿武隈「つまり、ここはね――」

暁「なるほど! 分かったわ阿武隈さん、どうもありがとう! ……お礼はちゃんと言えるし」

阿武隈「えへへ、暁ちゃん良い子良い子」ナデナデ

暁「だーかーら! 頭をナデナデしないでよ! もう子供じゃないって言ってるでしょ!」

白露「阿武隈さん! 次は白露に教えて!」

阿武隈「あはは、うん良いよ。みんな順番にね」

時雨「うん、分かってるよ」

朝風「本当に阿武隈さんも周りの子達も楽しそうね」

名取「うん……阿武隈ちゃんは暁ちゃん達が大好きだから。だから暁ちゃん達も阿武隈ちゃんを信頼しているんだと思う」

朝風「ふうん」

春風「そうですね、とても素晴らしいことだと思います」

朝風「あら、春風」

春風「でも阿武隈様だけじゃなくて、その御姉様達も同じだと思います……ふふっ、やっぱり姉妹ですね」

名取「ふえ?」

霞「むー……」

朝潮「霞は阿武隈さんに質問はしないのですか?」

霞「あることはあるんだけど……でも」

朝潮「あら、このページはまだ先に勉強するところですね」

霞「それなのに、あの中に割り込んで質問するのもちょっと……」

朝潮「なるほど! では後ほど訊けばいいのでは?」

霞「それはそれで恥ずかしいわ。それに、あまり阿武隈さんの時間を取らせるわけにはいかないし」

朝潮「霞が遠慮する方が阿武隈さんは悲しいと思います! では私が阿武隈さんに訊いてみましょう!」

霞「ちょ、今度こそ怒るわよ!」

朝潮「大丈夫です! 霞が恥ずかしくないように考えてますから!」

霞「ものすごく不安なんだけど!?」

朝潮「阿武隈さん! 霞が教えて欲しいことがあるそうです!」

阿武隈「そうなの? いいよ! 白露ちゃん達が終わったら教えてあげるね!」

朝潮「はい、ありがとうございます!」

朝潮「霞が後で質問するところは、まだ教えてもらってないところですけど」

朝潮「これは霞が勉強熱心だから訊くのであって、阿武隈さんにマンツーマンで教えてもらいたいわけじゃないですからね! 勘違いしないでくださいね!」

阿武隈「……はい?」

霞「ちょっ!?」

暁「もう、霞ってば甘えん坊さんね」

皐月「霞、かわいいね!」

潮「ふふ……霞ちゃん、阿武隈さんの妹みたいです」

霞「あ、あ、あ……朝潮姉さんんんんんんっ!?」

――翌日。

霞「……」むすー

朝潮「霞、機嫌を直してください」

霞「……とうとう暁や子日にまで温かい視線を向けられるようになったわ。もう私の威厳はズタズタよ」

朝潮「そんな肩肘張らないでください。霞は私達の妹なんですから、もっと頼ってくれて良いんです」

霞「そんな割り切れるなら苦労はしないわよ……」

朝潮「えっと……ごめんなさい、霞。私は少し不器用ですから、上手く霞をサポートしてあげられなくて」

霞「……別に。元々、無理矢理姉さんを付き合わせたのは霞だもの。姉さんが気に病む必要はないわよ」

朝潮「でも……いえ。分かりました。なにかあったら是非頼ってください。なんでも協力しますから」

霞「そうね。そのときは頼らせてもらうわ」

朝潮「はい! そろそろ司令官の執務室に着きます! 暗い顔を見せないようにしましょう!」

霞「ええ、分かっているわ」

――執務室。

電「司令官、報告書が出来たのです」

提督「どれどれ……ふむ、さすが電だな。よく出来ている。ありがとうな」

電「いえ、これくらい大したことないのです」

阿武隈「もう、電ちゃんってばすぐ謙遜(けんそん)するんだから」

電「そ、そんなに言われると恥ずかしいのです」

阿武隈「提督。こちらは、第一水雷戦隊がこの前遂行した任務の報告書です」

提督「ああ、ありがとうな……大変な任務なのに、よく何事もなくやってくれた。ありがとう」

阿武隈「いえ、これは皆さんのおかげですから」

電「阿武隈さんこそ、謙遜しているのです」

阿武隈「もう、そんなんじゃないからね電ちゃん」

電「そんなことないのです! 阿武隈さんがいてくれるから、電達は頑張れるのです!」

阿武隈「電ちゃん……えへへ、ありがとうね。あたしも電ちゃん達のおかげで頑張れてるよ」

電「なのです! 電も阿武隈さんみたいな一水戦旗艦を目指して頑張るのです!」

提督「あはは、電はすっかり阿武隈を目標にしちゃったなあ」

阿武隈「嬉しいんですけど、ちょっとこそばゆいです……」

提督「良いことじゃないか、それだけ信頼されているってことだ」

霞「むー……電ってば」じー

朝潮「どうしました霞?」

霞「かつて一水戦を阿武隈さんから継いだのは霞なのに……」

霞「だから……でも、それは……」

朝潮「……霞?」

霞「私が一水戦を継いだのは……阿武隈さんが……でもそれは昔のことで……今は……」

朝潮「……?」

霞「それでも、いつか……阿武隈さんがいなくなる? そんなの……ぐすっ」

朝潮「霞!? しっかりして!」

霞「そんなの……やだよぉ」

朝潮「霞! 霞ってば!」

霞「阿武隈さん!」ダッ!

電「霞ちゃん!?」

阿武隈「霞ちゃん……どうしたの!?」

霞「阿武隈さん、いなくなっちゃヤダ!」ぎゅ!

阿武隈「えっ? 霞ちゃん、どうしたの?」

霞「だって……電が一水戦旗艦になりたいって……それって阿武隈さんが一水戦旗艦じゃなくなるってことで……ぐすっ」

霞「阿武隈さんが一水戦旗艦じゃなくなるってことは……昔と同じように……ひっく、阿武隈さんがいなくなっちゃうんじゃないかって」

霞「そう思ったら……すごく悲しくなって……涙が止まらなくなって……」

阿武隈「霞ちゃん……大丈夫だよ、あたしはどこにも行ったりしないからね」さすりさすり

霞「でも……」

阿武隈「大丈夫、大丈夫だから。ねっ?」

霞「うん……」ぎゅ

提督「その通りだ。阿武隈はどこにも行ったりしないぞ。もちろん、電も朝潮も、私もな」

提督「だから霞が心配する必要はどこにもないからな、安心だ」

霞「うん、司令官……」

電「霞ちゃん、大丈夫なのです。心配いらないのです」

朝潮「そうですよ、霞。私達はいつでも霞の味方です。霞を放ってどこかに行ったりしません」

霞「電、姉さん……あり、がと」

提督(普段はしっかりしているけど、霞はまだまだ小さい子だもんな……不安になって、阿武隈や他の大人に甘えたくなることだってある)

提督(特に、駆逐艦『霞』は過去にとても多くの悲しい体験をしてきた。軽巡『阿武隈』を失う経験も大きな悲しい記憶の一つだろう)

提督(だからこそ、なおさら阿武隈と一緒にいたいという気持ちも大きいはずだ……)

提督(そして、そのような子は霞に限ったことじゃない……まだまだ私も配慮が足りないな)

阿武隈「えへへ、霞ちゃん。心配してくれてありがとうね。あたしはどこにも行かないからね、安心して」

霞「うん……」

阿武隈「良かった、霞ちゃんが泣き止んでくれて。霞ちゃんが悲しいと、あたしも悲しいから」

霞「えっと……ごめんなさい」

阿武隈「別に謝る必要なんてないよ? むしろ霞ちゃんがあたしを頼ってくれて嬉しいな」

霞「そんな、私は別に」

朝潮「もう、霞ってば。こんな時くらい素直になっていいんですよ」

霞「……朝潮姉さんってば」

霞「でも、そうね……あのね、阿武隈さん。もうちょっと、ぎゅってして欲しい」

阿武隈「それくらいお安い御用です」ぎゅー

霞「……あったかい」

阿武隈「ふふっ、霞ちゃんかわいい」

電「なのです、とってもかわいいのです」

霞「もう、電ってばからかわないでよ」

朝潮「そうですね! 霞はとってもかわいいです!」

霞「朝潮姉さんまで……まったく」

阿武隈「提督も、あまり気に病まないでくださいね」

提督「!? ……参ったな。阿武隈、分かったよ」

阿武隈「はい、提督一人が背負い込まないでくださいね」

提督「そうだな……急に解決する特効薬があるものでもないからな」

電「なのです」

朝潮「……?」

若葉「霞がやられたようだな」

響「……霞は我々四天王の中でも最弱」

山風「阿武隈ごときにほだされるなんて……あたし達クール四天王の面汚し……」

初霜「……三人とも、何をやっているんですか?」

五十鈴「放っておけば良いんじゃないの? また妙な遊びしてるだけでしょ」

初霜「そういうものでしょうか? ……あら。提督、それに阿武隈さんに霞、朝潮さんと電も。皆さんで何をしているんですか?」

電「初霜ちゃん! こんにちはなのです!」

初霜「ふふっ、こんにちは電。今日も阿武隈さんと一緒なのね」

電「なのです!」

五十鈴「本当に仲良いわねえ」

若葉「阿武隈さん……若葉達を懐柔するには食べ物が必要だと思っているようだが」

阿武隈「ふえ?」

響「別になくても勝手にじゃれつくよ、ハラショー」バッ!

若葉「この瞬間を待っていた!」バッ!

阿武隈「ふえええええ!? 危ないからいきなり二人で飛び付かないでくださーい!?」

霞「ちょ!? あんたらいきなりなにしてるのよ!?」

山風「四天王ごっこ……霞とあたし、それと響と若葉で四天王だから」

霞「勝手に妙な集まりの仲間にしないでってば!?」

初霜「ふふ、霞と山風さんがさっそく仲良くなれて良かったです!」

朝潮「ええ、私も嬉しいです!」

電「なのです!」

霞「どこをどう見れば仲良くなったように見えるのよアンタら!?」

山風「それにしても……響も若葉も楽しそう……あたしもやってみたい」

阿武隈「ふえ!? ちょっと待って!? さすがに三人は危険ですからやめてー!?」

電「響ちゃん! 危ないから降りるのです!」

初霜「若葉! 危ないから降りてきなさい!」

響「阿武隈さんを危険にさらすわけにはいかないか、仕方ないね」

若葉「同感だ。このままでは阿武隈さんが危ないな。降りるとしよう」

阿武隈「なんだか納得いかないんですけど……」

山風「んー」じー

阿武隈「山風ちゃん、どうしたの?」

山風「えい」ぽすっ

阿武隈「ふえ?」

初霜「あら、山風さんも阿武隈さんに飛び込んじゃいましたね」

山風「ん……んー? なにこれ、居心地いい、すごく安心する……」

阿武隈「そう? そう言われるとなんだか嬉しいです」

山風「うん……阿武隈、おかーさん?」

阿武隈「あはは、それはちょっと違うかなぁ」

山風「提督は……おとーさん?」

提督「はは、そういう風に思ってくれるのは嬉しいけどな」

響「なんてことだ……山風が司令官と阿武隈さんの子供だったなんて」

朝潮「そうなのですか!? ま、まさかお二人に既に子供がいたなんて……!」

阿武隈「違いますっ!」

若葉「しかしこの懐きようは一体どういうことだ……普通ならありえないぞ」

響「まったくだね。いくら小さい子でも普通はここまで懐いたりしないはずさ」

霞「あんたら、先ほどの自分達の行動を思い返してみなさい」

響「……分かった。つまり、私達駆逐艦の一部は阿武隈さんと司令官の子供だったんだよ」

朝潮「な、なんだってーっ!?」

霞「そんなわけないでしょうが! 朝潮姉さんも驚いてんじゃないわよ!」

山風「なるほど……納得」

初霜「山風さん、納得しないでくださいね」

五十鈴「提督……」ジャキッ!

提督「ちょっと待て五十鈴。その砲はどこから持ち出してきた?」

五十鈴「アンタそんな昔に阿武隈に手を出していたのかしら? ……答えによってはタダじゃ置かないわよ?」

提督「そんなわけないだろ! 阿武隈と山風の歳を考えろ!」

五十鈴「つまり鎮守府に来る前に、阿武隈にあんなことやこんなことをしていたわけね!」

提督「どうしてそうなる!?」

阿武隈「お姉ちゃん!? 誤解です! てーとくはまだ手を出してなんていません!」

五十鈴「まだ!? 提督はこんなかわいい阿武隈に魅力を感じないってこと!? あったま来たわ!」

提督「理不尽にも程があるだろ!?」

電「大変なのです! みなさん、輪形陣を組むのです!」

初霜「提督は、私達が守ります!」

霞「まったく世話が焼けるったら!」

五十鈴「提督、自分の行動を悔い改めなさい!」バッ!

阿武隈「させません!」バッ!

五十鈴「阿武隈!? 電達もどうしてそいつをかばうのよ!」

阿武隈「お姉ちゃんこそ少し落ち着いて!」

五十鈴「五十鈴は冷静よ! 阿武隈こそ頭を冷やしなさいな!」

阿武隈「提督を傷つけるなんて駄目です!」

電「なのです!」

五十鈴「ううう……」

神通「五十鈴さん、そこまでです!」

五十鈴「神通!? なんで神通が五十鈴の前に立ちふさがるのよ!?」

神通「何故……? そんなの決まってます」

神通「――友のため」

五十鈴「友……阿武隈の為だって言うの?」

神通「提督が傷つけば、阿武隈が悲しみます。五十鈴さんだって本当は分かっているでしょう?」

朝潮「じ、神通さんかっこいいです……!」

霞「そうかもしれないけど、争いの理由はすっごくくだらないわよね」

若葉「霞、それは言わない約束だ」

五十鈴「……そうね、五十鈴はちょっと混乱してたみたい。ごめんなさい、提督、阿武隈。他のみんなも」

提督「まあ、いいさ。五十鈴が阿武隈のことを大切に思ってたことはよく分かったからね」

阿武隈「うん。ありがとうね、お姉ちゃん」

電「ちょっと誤解しただけで、五十鈴さんがとても優しいことは電達もよく知っているのです」

初霜「そうね。普段から私達にとても親切にしてくれているわ」

山風「阿武隈と同じくらい……面倒見いい」

若葉「そうだな、五十鈴さんには良くお世話になっている」

五十鈴「あんた達……その、ありがとうね」

響「いいさ、特に何事もなかったんだし」

霞「まあそれは良いけど。にしても、この鎮守府はアホらしい騒ぎが本当に多いわね。まったく疲れるわ」

朝潮「そうですか? 私は楽しいと思いますけど」

霞「そんなの朝潮姉さんくらいよ……霞はごめんだわ」

響「霞、君もこの鎮守府の大切なメンバーだよ」

若葉「その通りだ」

霞「一緒にするな! ぶっ飛ばすわよ!」

山風「……朱に交われば赤くなる」

霞「ならないわよ!」

朝潮「もう、霞も少し落ち着いてください。楽しい仲間が沢山いるのは良いことです!」

霞「姉さんも相変わらずね!?」

――数日後。

霞「ふう……今日も無事やるべきことはやり終えたわね……あら?」

阿武隈「あ、霞ちゃんこんにちは! えへへ、元気?」

霞「ええ、まあまあってところかしら」

阿武隈「それは良かったです。なにかあったらまた相談してね」

霞「別に大丈夫よ」

阿武隈「そう? そうだ、霞ちゃん、今時間ある?」

霞「時間? ええ、大丈夫よ」

阿武隈「それなら、この前霞ちゃんが訊きたいことがあるって言ってたよね? 霞ちゃんが良ければ今から教えてあげたいなって」

霞「本当!? いいの?」

阿武隈「もちろん、あたし的にはOKです!」

霞「ありがとう阿武隈さん!」ダッ!

阿武隈「わっ!? 霞ちゃんってば、急にあたしに飛び込んできてちょっとビックリしました」

霞「あ……ごめん」

阿武隈「ううん、あたしは大丈夫だよ」ナデナデ

霞「ん……」

阿武隈「霞ちゃん、ちょっと響ちゃんみたいです」

霞「……はっ!? もしかして私……毒されてる!?」

朝潮「うん、いいわ」

霞「良くないわよ!? つーかどっから出てきた!?」

朝潮「朝潮、ツッコミならいつでも受けて立つ覚悟です!」

霞「ツッコミを受けるようなボケをするなあああああぁ!?」

これで終わりです。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

本作は下記の話の設定を引き継いでおります。
ですが、読まなくても本作を理解するのに支障はないと思います。

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乙です!怒涛の速さで笑ってしまったw
やっぱりデレッデレなのも面白いなあw

おつ

笑えたし和めたし
よかった

おっつおつ
霞ちゃんはマジメデレかわいい
ところでポッキーゲームのは別時空になるんですか?



山風ちゃん適応早すぎィ!?

四天王に山風は草

朝潮ちゃん真面目チョロかわいい

みなさま乙とコメントありがとうございます。
とても励みになります。
楽しんで頂けたらとても幸いです。

>>31さん
こちらも同じ設定になりますね、ありがとうございます。

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ところで紫電提督とかは別時空?

>>36さん
紫電提督という言葉にピンとこないですし、私ではない他の作者さんの作品ではないでしょうか。
紫電を作中で出したこともありませんし。

>>36
アレは深海勢と長月とエターが特徴だからこの作者のスレとは当てはまらんがな
なぜ勘違いしたのか


山風の適応力高い

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年12月08日 (木) 04:13:24   ID: tzo1uPmJ

かしゅみママのおかーさんはあぶぅくま
あぶぅくまはぼくのおばあちゃん!

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