モバマス五輪書 (66)
・このSSは、宮本武蔵の「五輪書」をベースにした作品です。
・作者の勝手な解釈、脚色が含まれます。ご了承下さい。
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~肥後・岩戸山~
宮本武蔵(脇山珠美)「ふう……ようやくたどりつきましたね」
珠美「播磨に生まれ、アイドル道を極めて幾星霜。
この岩戸山こそ、我が『二天一流』の総仕上げにふさわしい。
珠美のアイドル道の最後に、この二天一流の極意をこの世に残さねば!」
珠美「さて、早速執筆に取り掛かりますか……」
珠美「あ、題名を考えなければなりませんね……
気取った名前は、他の人から笑われるかもしれませんし……
え~っと……」
珠美「う~ん。思いつかない……ま、まあ、書いてるうちに題も思いつきますよ!」
『地之巻』
珠美は自分のアイドル道を、『二天一流』と名づけて修行を積み、
その成果を書物にするために肥後国の岩戸山に登りました。
珠美はアイドル時代、あるプロデューサー殿とともに働いていました。
最初のライブバトルは、有馬喜兵衛というプロデューサーのアイドルユニットと戦いました。
初ライブ、初勝利です!
二戦目は、秋山某というプロデューサーのアイドルと戦いましたが、
その勝負でも勝ちました。
その後、これはいける! とプロデューサー殿が確信し、珠美を連れてアイドル激戦区である京に進出。
さすがに強敵ぞろいでしたが、それでも負けることはありませんでした。
正確に数えてはいませんが、かれこれ60戦以上ライブをこなしてきたでしょうか。
振り返ってみるに、ライブバトルの勝利は珠美が二天一流を極めたからではなく、
珠美の生まれ持った才能が、相手との相性が良かっただけなのかもしれません。
その後、ライブバトルをすることはやめて、ひたすら鍛錬に打ち込んでいくと、
アイドル道が朧気に分かってきたと思います。
これ以降極めることも無くなってしまい、珠美は自分の好きなことばかりやっていますね。
そしてこの二天一流は師匠も無く、誰かに教わったことでもないので、
古典の言葉を引用してこの書物を書くことはないと思います。
さて、この世には“~道”という言葉が数多くあります。
茶道、剣道、柔道……などなど。
そして珠美が極めているのは、“アイドル道”というものです。
そもそもアイドルというものは、“文武二道”と言って、
学問とアイドル業の二つを両立しなければなりません。
しかし、これができていないアイドルの何と多いことか。
アイドルの常套句に、「ファンの皆さんのため~」という文言があります。
しかし、この言葉はアイドルである以上当然の心構えです。
わざわざ口に出して言うほどではありません。
人は誰しも、何かのために生きているのですから。
アイドルとは、できるだけ多くの人に夢や希望を与え、
そして現状に満足せずに、より高みを目指していく存在なのです。
これが真のアイドル道というものです!
一 兵法の道といふ事
我が国にとどまらず、多くの人々を魅了し続ける者のことをアイドルと言います。
ですからアイドルたるもの、人々をひきつける術を会得しなければなりません。
最近、アイドル道を少し齧っただけの者がアイドルを名乗っていますが、
これは外見だけで実が伴っていないのは言うまでもありませんね。
「生兵法は大怪我のもと」とはよく言ったものです。
この世には、士農工商売の四つの道があります。
第一は農の道です。
農民は農具をそろえ、季節や天気の移り変わりに気を配らなくてはなりません。
第二は商の道です。
商人は世の中の移り変わりに気を配り、
あらゆる手段を用いて利益を追求しなければなりません。
>>11ミス
× 士農工商売
○ 士農工商
第三は武の道です。
武士はあらゆる戦況を想定して、それに適した武器をそろえなければなりません。
それぞれの武器の特質を理解しなければ、武士として失格です。
第四は工の道です。
大工はあらゆる道具の使い方を習熟し、図面通りに正しく仕事を進めなければなりません。
これが士農工商の四つの道なのです。
では、アイドル道を大工の道に例えてみましょう。
大工は、何流、何風、何家など、あらゆる建物を想定し、
世間の流行を感じ取りながら、正しく仕事を進めていかなければなりません。
大工とは、「大きく工(たく)む」と書くのですから、アイドルと似ていると思いませんか?
一 兵法の道、大工にたとへる事
プロデューサーたる者、頭領としてアイドルたちをまとめていかなければなりません。
世間の流行を考え、アイドルにレッスンを施し、
あらゆる分野の知識を蓄え、そしてアイドルを使って人々を喜ばせる。
これは家を建てる時と一緒です。
プロデューサーは「木くばり」をしなければなりません。
まっすぐで曲がりも無く、見掛けも良い木は表にし、
少しクセがあっても強い木は、裏の柱として支えにします。
多少弱くても見た目の美しい木は、敷居、鴨居、障子、戸などに使いましょう。
そして、大工達の腕の差を知らなければなりません。
この大工には床廻りを、こちらの大工には天井を、という風にです。
人を見分けて効率よく仕事を進めていきましょう。
気をゆるめないこと、要(かなめ)を知ること、技量の差を見分けること、
勢いをつけること、無理をしないこと。
以上を心掛けていれば、プロダクションや、
それに所属するアイドルたちの人気は不動のものとなるのです。
一 兵法の道
アイドルとは、大工です。
常に研鑽を積み、プロデューサーの言いつけを聞き、自分の限界まで立派に仕事を仕上げる。
そして自らの腕を磨いていけば、成長できます。
一 此兵法の書、五巻に仕立つる事
この書物はアイドル道を五つの道に分け、巻ごとに違う分野で書かれています。
地・水・火・風・空、ですな。
まず地の巻においては、アイドル道の概要と珠美の二天一流について考察しています。
しかしアイドル道だけを習っていても、頂点には登れません。
大きいところから小さいことを知り、浅いところから深いところを知る。
まっすぐな道を地面に書くことをなぞらえて、
一巻目を“地之巻”と名づけました。
水を手本とし、心を水のようにする。
水は入れる容器によって形を変え、わずか一滴になったり大海になったりもします。
そして水は澄んだ色をしています。
その清らかさを用いて、二巻目を“水之巻”としました。
アイドル業とは、ライバルを潰し潰されの繰り返しです。
火は大きくなったり小さくなったり、一瞬ごとに形を様々に変えます。
これに対応するには、日々研鑽を積まなければなりません。
よって珠美のアイドル道を火になぞらえて、第三巻を“火之巻”とします。
第四巻は“風之巻”です。
ここで言う風とは、昔風とか今風とかの意味です。
他の流派を読み解くことによって、自分を知りましょう。
そのため、これを“風之巻”としました。
そして五巻目は、“空之巻”です。
空とは、入り口も無ければ出口もありません。
アイドル道もこれと同じように、自由なもので良いのです。
型にはまらなくても良いでしょう。
自然に技術を高め、自然にライブバトルを行い、自然にライバルを下す。
これが空の道です。
一 此一流、二刀と名付くる事
アイドルは歌って踊る職業なのですから、マイクが重要になってきます。
マイクでも、手に持つタイプやスタンドつきのもの、
ヘッドセットなど様々な種類がありますので、それぞれの用法や特性をしっかりと理解しましょう。
マイクを使いこなせなかったからライブに負けた、では話になりませんからね。
どんな道具でも、最初は使いづらいものです。
しかし、修練さえ積めば手に馴染んでくるようになるので、
要は「必ず勝つ!」という気概を持つことが大切でしょう。
一 兵法の拍子の事
ライブうまくこなすには、拍子(リズム)が重要です。
拍子や調子に合わせてレッスンをする。そうしなければいつまでたっても上達しませんから。
大から小へ。
長から短へ。
消える瞬間から、現れる瞬間。
栄える瞬間と、衰える瞬間。
などなど……
いままで述べた二天一流を会得するには、朝夕鍛錬をかかさず、
以下のことを心掛けなければなりません。
一、実直で正しい道を思うこと。
二、鍛錬を欠かさないこと。
三、多くの分野に興味を持つこと。
四、多くの職業・技術に興味を持つこと。
五、物事の利害関係を知ること。
六、あらゆる物事の虚実を見極める目を養うこと。
七、わずかなことにも気を配ること。
八、役に立たないことはしないこと。
以上に気をつけて鍛錬すれば、どんなアイドルとライブバトルしても
負けることは無いでしょう。
『水之巻』
二天一流の奥儀は水を手本としたものですから、この巻を水之巻と名づけました。
細かく書くことはできませんが、書かれていることの意味を良く考え、
自分の身につくように工夫し、実践して下さい。
一 兵法心持の事
ライブの時でも、平常心を保たなくてはなりません。
緊張せず、かといって弛緩せず、心を広くゆとりを持ちましょう。
静止しているときでも心は静止せず、激しく動いているときでも心は平静を保つのです。
心が動作に、動作が心に引きずられてはいけません。
そのためには清らかな心をもち、事象の善悪を知り、
物事の利害を考え、知恵を磨きましょう。
一、兵法の身なりの事
体の姿勢は顔はうつむかず、かといって仰向かず、傾かず、曲げず、
目を動かさず、額に皺をよせず、眉の間に皺をよせ、
瞬きをしないような気持ちで目をやや細める。
おだやかな表情で鼻筋をまっすぐに伸ばし、すこし頤(おとがい)を出す気持ちで、
首をまっすぐ伸ばし、項にちからを入れ、肩から全身は同じものと考えましょう。
尻を突き出さず、膝からつま先までちからを入れ、
腰が曲がらない程度に腹を出す。
アイドル道にあっては、平常の姿勢や動作をライブ時の
姿勢と動作と同じようにしなければなりません。
よく研究しましょう。
一 太刀の持ちやうの事
マイクは親指と人差し指を浮かすような気持ちで、
中指はしめず、薬指と小指をしめる気持ちで持ちましょう。
態勢を変えるときでも、持ち変えるときでも、
親指と人差し指の調子を変えるぐらいで丁度良いと思います。
守らなければならないのは、手首の柔軟性です。
固着することがあってはなりません。
一 足づかひの事
足運びは、つま先を少し浮かせて踵を強く踏みましょう。
情況によって差異は生じますが、普通に歩くことな心持で結構です。
逆に、飛ぶような足、浮き上がった足、固着するような足はよくありません。
足捌きは、「陰陽」が肝心だとされています。
これは何かの動作をするときは、両方の足を使わなければならないということです。
片足で動作をすることのないよう、注意してください。
五輪書は名著だったんだな…
一 太刀の道といふ事
ダンスなどは、動こうと思って動くものではありません。
どのように足を、手を、体を動かすのか、
よく考えて自然な気持ちで動けばよいのです。
心が停滞していなければ、体を無意味に素早く動かす必要はありません。
ただ速く動くのは「小刀刻み」と言い、実戦では役に立ちませんから。
一 多敵のくらゐの事
アイドルなら、いろんなイベントに参加すると思うのですが、
ライブバトルで、こちらは一人なのに相手は複数ということはありませんか?
そんなときでも、気持ちを萎えさせてはいけません。
こちらは一人ですが、猟師のように逆に相手を追い回すぐらいの気持ちでよいのです。
どの相手が、どの順番で向かってくるのか、一瞬一瞬の情況をよく見極めてライブに望めば、
やがて五人十人を相手にしても、安心してライブができるでしょう。
ここまで二天一流のあらましを書き記しましたが、
要は、水のように臨機応変な心構えをすればよいということです。
基本を良く覚えてレッスンに励めば、やがて相手の動きや呼吸がわかるようになり、
自然な動作でライブに望むことができるでしょう。
千里の道も、一歩ずつ進むものです。
焦らず気長に取り組み、レッスンはアイドルの第一の仕事であると考え、
今日は昨日の自分に勝ち、明日は今日の自分に勝つ。
このような心構えをもって、一心に努力しましょう。
たとえライブに勝てたとしても、それがレッスン通りではなかったのであれば、
それは本当の勝利ではありません。
アイドル道の極意を会得するのが、目的なのですから。
『火之巻』
二天一流において、戦い(ライブ)を火に見立てるので、この巻を火之巻としました。
とかく、この世には基本を身に着けずに、小手先の技術を会得しようとする人が大勢います。
しかし、己の誇りを賭したライブで、そんな弱々しい小手先の技術で勝てると思いますか?
普段のレッスンを、何人ものアイドルと合同で実施するのは難しいでしょう。
ですから、一人でレッスンをしているときでも、
何人ものライバルを相手にしているという気持ちで臨まなければならないのです。
一 場の次第といふ事
ライブでは、場所取りも考えなければなりません。
ステージの端で歌うのか、中央で歌うのか、
どちらが観客によく見えると思いますか?
野外ライブでは、太陽を後ろにしてはなりません。
逆光により、観客から見えづらくなるからです。
屋内でも、照明の前に立つのではなく、照明が当たる場所を占めるようにしましょう。
また、できることなら相手よりも高所にいたいものですな。
一 枕をおさゆるといふ事
「枕をおさえる」とは、敵に頭を上げさせないことを言います。
勝負事においては、常に先手を打ったほうが勝ちやすく、後手に回るのはよくありません。
要は機先を制するということですが、自分がそれを狙っているということは、
相手もそれを狙っているということであり、相手を思うように引き回したいのなら、
相手の意図を見抜くことが肝要です。
相手が歌おうとするならば「う」の時点でくいとめ、
相手が踊ろうとしたならば、「お」の時点でくじかねばなりません。
一 とをこすといふ事
「渡」を越すということは、危険な海路を行くが如く危険を乗り越えるという意味です。
勝負事においても、この渡を越すということは重要な意味を持っています。
彼我の能力の差を知り、どこが危険なのか、どこが安全なのかを見極めるのは、
優れた船頭が海を渡ることと似ていますな。
危険を乗り越えれば、後はこちらのものです。
渡を越すことによって相手の弱点を見抜き、自分は優位に立つことができます。
この場合、早々と勝利を掴むことができるでしょう。
一 四手をはなすといふ事
「四つ手をはなす」とは、自分も敵も張り合う状態になっていることを指します。
この状態になると戦いがはかどらなくなるので、
実力が伯仲していると察したら、何か別の方法で勝てるように考えましょう。
一 陰をうごかすといふ事
「陰を動かす」とは、敵の手の内が見えないときに採る方策のことです。
そんなときは、こちらからはったりを仕掛け、相手の手の内を探りましょう。
手の内さえ分かれば、あとはそれに対抗する手段を講じればよいだけです。
一 うろめかすといふ事
「うろたえさせる」とは、敵の心に怯えを生じさせることです。
敵の心を、早いのか、遅いのか、低いのか、高いのか、
右か、左か、などなど、できるだけ翻弄しましょう。
そうやってうろたえさせたところに付け入り、勝利を収めるのです。
一 ひしぐといふ事
「ひしぐ」とは、相手を弱いとみなし、
自分は気合をもって、一気に押しつぶすことを言います。
相手が自分よりも弱いと感じたら、相手と目もあわせずに一気に畳み掛けましょう。
このとき、相手に立ち直らせる暇を与えないことが肝要です。
一 さんかいのかはりといふ事
「山海の心」というのは、勝負事において同じ手は二度三度と通用しないということです。
同じ事を二度繰り返して敵に効果がないとき、その手はすぐに諦めましょう。
勝負で勝つ秘訣は、相手の意表をつくことなのですから。
これまで書いてきたことは、珠美の二天一流を用いたライブバトルの際、
絶えず心掛けていることを、思いつくままに羅列したものですから、うまくまとめることができません。
ですが、これから二天一流を学ぼうとされる方は、
前述のことをよく理解し、自己の鍛錬に勤めましょう。
アイドル道の正しい道とは、ライバルを凌ぎ、ファンの皆さんを喜ばせるということだけに尽きます。
『風之巻』
アイドル道では、他流を知ることが勝利につながると考え、
それらの考察をこの『風之巻』にまとめました。
今まで何度か記しましたが、世間では見た目や技巧のみ追求し、
真のアイドル道のなんたるかを知らないアイドルが多すぎます。
それらがどれだけ役に立たないかを、いまから解説していきましょう。
一 他流において、強みの太刀といふ事
勝負事において、力の強弱など関係ありません。
力を込めると動作が雑になり、力を抜くと相手に効果が無いからです。
どうすれば良いのか、どうしたら相手を倒せるのか、
それを考えるのがアイドル道というものなのです。
自分の実力以上に強がったりするのは、自分の体勢を崩すことにつながるため、
決して無理をしてはいけません。
一 他流に、短き太刀を用ゐるといふ事
アイドルの中には、ダンスだけを売りにしたり、歌だけを売りにしている人もいます。
しかし、これではライブバトルに勝つことはできません。
いかなるライブやイベントにも対応できるように、
歌もダンスも得意にしておかなくてはならないのです。
何か一つが突出しているということは、自分の選択肢を狭めることと同義なのですから、
よくよく幅広い分野に目をむけるようにしましょう。
一 他流に、太刀かず多き事
アイドルの中には、いろんなジャンルの歌を歌えるということを売りにしている人がいます。
素人からすれば、それはものすごいことなのかもしれませんが、
珠美からすればそれは児戯に等しいですな。
ライブやイベントに勝つには、様々な方法があると思いがちですが、
実は方法は限られているのです。
相手よりも多くの観客を魅了する。この一点に全てがかかっています。
一 他流に、目付といふ事
アイドルはレッスンやライブを行う際、いろんなことに目を付けます。
人によりますが、姿勢、声、振り付け、足捌き、目線、などでしょうか。
しかしこれも珠美に言わせれば、無駄な労力を割いているとしか思えません。
勝負事に勝つには、小手先の技術にとらわれず、常に大局を見据えなければならないからです。
細かいことを気にしてはいけません。
一 他流に、はやきを用ゐる事
アイドルの中には、ダンスの巧みさを自慢する人がいます。
しかしこれも、動作が速いだけでは何の自慢にもなりません。
物事には拍子というものが存在し、それにあっているかどうかが重要なのです。
上手なダンスが、下手な歌にあわせられますか?
上手な歌が、下手なダンスにあわせられますか?
そういうことです。
この風之巻では、他流のアイドル道についてふれてきましたが、いかがでしたか?
ここまで偉そうに書いておいてなんですが、他流については具体的には書いていません。
これは、人それぞれに違う見解があるものでして、何が正しいというわけではないからです。
唯一つ言えることは、珠美の二天一流には奥儀も秘伝も無いということです。
心の正しい動きによって、アイドル道をわきまえる。
これが肝要ですな。
『空之巻』
この巻では、二天一流のアイドル道を空之巻として書きあらわします。
空(くう)とは、決まった形が無いということ、決まった形を見ることができないということを指します。
物事があるということを知って、無いことを知る。これがすなわち空です。
世間では、物事を知らないことを空だとしていますが、
物事を知りすぎて迷うことも空ではありません。
アイドルが自分の方向性を見失い、これから何をなすべきか迷うことも空ではありません。
アイドルは、あらゆる分野について広く深く精通し、
心に迷いが無く、朝夕鍛錬を怠らず、物事を観る目を磨く。
これらをよくわきまえて大局を掴み、あらゆる物事を見通すことができたなら、
それが究極の空というものでしょう。
正保二年 五月十二日 寺尾孫丞殿
新免武蔵
寛文七年 二月五日 山本源介殿
寺尾夢世勝延
珠美「ふう……ついに完成しましたね。
題名は、『五輪書』。
五つの章に分けているのですから……気取った名前じゃないですよね?」
珠美「あとは、これを寺尾殿と山本殿に届けるだけです!」
珠美「と言いたいところですが……う~ん。
読む人が分かり易いように、もっと簡潔に書けないものでしょうか」
珠美「これはおまけです。
この五輪書と一緒に、要点をまとめたものを添付しておきましょう……」
『独行道』
一、世々の道にそむく事なし。
一、身にたのしみをたくまず。
一、よろづに依怙の心なし。
一、身をあさく思、世をふかく思ふ。
一、一生の間欲心思はず。
一、我事において後悔をせず。
一、善悪に他をねたむ心なし。
一、いづれの道にも、わかれをかなしまず。
一、自他共にうらみかこつ心なし。
一、恋慕の道思ひよるこころなし。
一、物毎に数寄このむ事なし。
一、私宅においてのぞむ心なし。
一、身ひとつに美食をこのまず。
一、末々代物なる古き道具所持せず。
一、わが身にいたり物いみする事なし。
一、兵具は格別、余の道具たしなまず。
一、道においては、死をいとはず思ふ。
一、老身に財宝所領もちゆる心なし。
一、仏神は貴し、仏神をたのまず。
一、身を捨ても名利は捨てず。
一、常に兵法の道をはなれず。
正保弐年 五月十二日
新免武蔵 玄信
おわり
名パロディ作品でござるな!乙!!
・読んでくださった方、ありがとうございます。
・「五輪書」の名前の由来は、仏教の「五輪(万物を構成する五つの要素)」ですが、
「独行道」を読む限り、武蔵本人は神や仏を頼みにするような人物ではなさそうです。
・宮本武蔵といえば二刀流のイメージが強いですが、五輪書で触れているのは剣術だけではありません。
槍、弓、鉄砲等々、情況に応じた武器を使い方や、それぞれの長所短所の詳細な説明が記述されているあたり、
武蔵は色々な武器の扱いに精通していたのでしょう。
以下は作者の過去作です。
歴史・古典ものですが、興味のある方はどうぞ。
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やはりいつもの方でしたか、乙です。
乙
つまり珠ちゃんはお風呂嫌いということかクンカクンカ
いいssだた、かけ値なしに
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