【艦これ】加賀さんのチョッキ (44)



雪風「聞いた話によると、大和さんと矢矧さんが沖縄旅行を企画してるそうです」


霞「うっわ、何考えてんのよあいつら……」


雪風「でも募集者0で頓挫したんだって」


初霜「ああ、でしょうねぇ」


鎮守府ではいつものように艦娘たちがのんびりしている。


外や廊下は寒いので、みな屋内に集まり世間話やテーブルゲームなどを楽しんでいた。



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ところで加賀さんはというとチョッキがマイブームであった。


加賀さん本人は『ジレ』であると言い張ってはいる。


しかし、鎮守府の誰もがそれは『チョッキ』だと認識しており、


新しい呼称にしてもせいぜい『ベスト』が限界であった。


だが問題はそこではない。
 



龍驤「う、うーん……」


赤城「似合って、ませんよねぇ……」


そう、似合っていないのだ。


かの大人しい磯波さんでさえも、


磯波「こ、個性的って言うか……あはは……」


といったふうである。


ファッションに厳しい者に至っては、


熊野「控えめに言って、ダサいですわね」


とまで言ってしまうのだ。


それもそのはず、加賀さんはいつもの道着の上にチョッキを羽織っているのである。
 



龍驤「前見たら胸当てが見え隠れしてなぁ」


赤城「そもそも加賀って、チョッキってキャラでもないですし……」


鳳翔「和服の上に着たらまるでちゃんちゃんこですね……」


龍驤「ブフッ……ちゃ、ちゃんちゃんこ……ククク……」


赤城「そうですよね、ちゃんちゃん……フフッ、ちゃんちゃんこって……ふひひ」


空母たちの間ではすげー爆笑のトークが繰り広げられていた。
 



龍驤「とはいえやなぁ……本人に言ってやるべきか……」


赤城「空母の沽券と名誉に関わりますね」


サラトガ「いえ、帝国海軍の空母の名誉とか第二次大戦の時点で失墜してますが」


赤城「そうだけどね?え、喧嘩売ってるんですか?え?」


鳳翔「誰かにお願いしてみては……直接言うのは憚られますし」


龍驤「せやな、何人かに頼んでみるわ、それとなーくな」
 



そしてある日、ウォースパイトさんが加賀さんに話しかけた。


ウォースパイト「ちょっと、そのチョッキ貸してくださる?」


加賀「……」


ウォースパイト「ベスト」


加賀「……」


ウォースパイト「ジレ」


加賀「いいわ」


ウォースパイト「……」


加賀さんの頑なな姿勢に若干戸惑いつつも、ウォースパイトさんはチョッキを羽織る。
 



ウォースパイトさんの作戦は、遠回しにバカにしてチョッキを諦めさせるという大変回りくどい作戦である。


ウォースパイト「そう……私はこれになりたかったの……」


加賀「これって?」


ウォースパイト「Lumberjack!」


加賀「えっ」


ウォースパイト「鼻を突く木の香り、倒れる巨木、愛しい娘を抱いて、SING!SING!SING!」


なんと、ウォースパイトさんは歌を歌いだしてしまった!※https://www.youtube.com/watch?v=QgaRd4d8hOY


ウォースパイト「I'm a lumberjack and I'm okay♪ I sleep all night, I work all day♪」


加賀「えっ」


加賀さんは混乱した。
 



チョッキと言えば木こり、木こりと言えば“Lumberjack Song”である。


しかし、そんなことは加賀さんの知る由ではない。


また加賀さんはこの独特のセンスについていけなかった。


加賀さんはウォースパイトさんの首に手刀を叩き込むとチョッキを引っぺがしその場を後にした。


ウォースパイトさんは、


ウォースパイト「アフッ」


とか言って泡を吹いて倒れたが、これもまた加賀さんの知ったことではなかった。
 



廊下を歩いていると、綾波さんと敷波さんが話しかけてきた。


敷波「加賀さん、あなたバカですかぁ!?」


綾波「こんな時、どういう顔をすべきかわかりませんねぇ……」


と、どこかで聞いたようなセリフを言ったのだが、加賀さんには何の事だかよくわからなかったので、


加賀「一体何のこと」


と問いかけると二人はばつの悪そうな顔をする。


敷波「いや、バカは言い過ぎたかな……その……それの事ですよ」


綾波「それって、気に入ってたりするんですか……?」


加賀「?」


二人は口をもごもごとさせていた。
 



それもそのはず、加賀さんに直接『ダサい』と指摘するようなものなので、


頼まれた事とはいえここにきて怖気づいてしまったのである。


敷波(だ、ダメだ、恐ろしい、声が出ない、び、ビビっちまってこ、声が出ない……ッ!)


綾波(なんか、指摘したらどうなるのか想像もできないから……くっ、ごめんなさい龍驤さん!)


加賀「変なの」


加賀さんはなんだか妙な表情の二人を置いて、また歩き始める。


敷波「どうしよう……」


綾波「あとは、瑞鶴さんに任せるしか……」
 



加賀さんが談話室でのんびりとしていると、瑞鶴さんがやってきた。


瑞鶴「あ!」


加賀「……こんにちは」


瑞鶴「まだ着てるのそのチョッキ!」


加賀「これは『ジレ』よ。まぁ、五航戦とはファッションセンスの格というものが違うからわからないとは思うけど」


瑞鶴「ま、まぁね……」


いかにもしてやったりというふうの加賀さんであった。


瑞鶴「でもねぇ、加賀さん?それカールおじさんみたいよ」


加賀「えっ」


瑞鶴「というか……加賀ールおばさん?」
 



加賀「えっ」


加賀さんは衝撃を受け、思考が停止した。


瑞鶴「えーっと、加賀さん?」


加賀「」


瑞鶴「カールおじさんは言い過ぎたかな!えーっと、あ、和服の上に着てるからちゃんちゃんこに……」


加賀「ちゃ、ちゃーん……」


瑞鶴さんはフォローのつもりで言ったのだが、加賀さんには追い打ちとなる。


加賀「肝臓に響くわ……」


そう呟くと加賀さんは項垂れてしまった。


瑞鶴「いや、その……やっぱり、道着には合わないんじゃないかなって話なの」
 



加賀「そう、かしら……」


すると、


熊野「その通りですわ」


と、熊野さんが現れた。鎮守府一のファッショニスタ(自称)である。


熊野「あなたのその服装、ダサいですわ」


加賀「あ、あなたは鎮守府一のファッショニスタを自称しているという……!」


熊野「わたくし熊野ですわ。チョッキを道着の上に着るだなんて、カールおじさんと言われても仕方がありません」


加賀「ど、どうすれば……」


熊野「ま、随分とそのチョッキにこだわりがおありらしいですから」


そうして熊野さんは持っていた紙袋から服をいくつか取り出した。
 



熊野「色々と見繕ってみましたの、そのチョッキに似合う服装をね!」


加賀「くまのん……!」


こうして加賀さんは道着の上にチョッキ着た変な奴から、こだわりチョッキを着こなすおしゃれガールへと変貌した!


少しだけ薄着ではあったが、加賀さんの魅力を十二分に引き立てるものである。


熊野「シンプルなチェック柄のシャツにデニムとブーツ、そしてチョッキを合わせましたわ。カジュアルですが大人っぽさもあって素敵でしょう」


瑞鶴「うぉ~~……雰囲気変わるなぁ~……」


加賀「これが……生まれ変わった私……!」


熊野「こだわりは大事ですわ、でもそれに合った服装をしないと、せっかくのお気に入りの服も台無しになってしまいます。そのことを頭の片隅にでも」


加賀「くまのん……!」


かくして加賀さんのチョッキの評価は一変、鎮守府では軽いムーブメントまでも起きた。
 



そして、熊野さんのファッショニスタっぷりも頭角を現し、一目置かれるようになった。(本人談)


しかし、やはり時期的には薄着過ぎたのか加賀さんは風邪をひいてしまったという。


加賀「ゴホッゴホッ……」


サラトガ「あなた『一航戦の誇り』とか言ってるけどそんなものは掃けば飛ぶようなものですからね」


赤城「サラトガむかつくぅ~~~~!!」


加賀「……頭にきます」


赤城「ですよね!?」


加賀「いや、二人とも。出て行ってください。私の部屋なんですが」


おしまい





おまけ:曙「このクソ提督!!」


 




曙「このクソ提督!!出て行ってやるこんな鎮守府!」

提督「おう、じゃあな」

曙「ぐっ……!」

 




霞「クズ司令官に電文よ」

提督「きっと俺にクズさに磨きが掛かった事を大元帥閣下が褒めて下さるのだろうよ」

霞「上陸支援と言ってダーウィン港を更地にしたのを咎められてるのよ!!どうすんのよアレ!!」

提督「建て直せば?」

霞「もう建て直す人間もいないのに!!」

提督「見よ、ダーウィンは燃えているか」

霞「燃えるもの一つ残ってないわよ……」

 




五月雨「ふわっ!」コケッ

バシャ

提督「あっつ!!!」

五月雨「ごごごごめんなさい!!」

提督「ごめんで済むか馬鹿者!!貴様は秘書艦クビだ!!まだ手ぬるい!!拷問だ!拷問にかけろ!!」

五月雨「ひぃ~」

 




利根「特別任務とはなんじゃ!?」ワクワク

提督「深海棲艦に化けて敵船団を襲撃するんだ、得意だろ?」

利根「」

 




青葉「強豪鎮守府に演習で勝利しましたね!でもどうして勝てたのかな」

提督「そりゃあお前、相手鎮守府に大量の機雷をばら撒いた上に無制限潜水艦作戦の実施と戦略爆撃、定期的なハラスメント砲撃にプロパガンダ、諜報部隊の暗躍による政治的孤立と破壊工作、陸上部隊による包囲と全力を尽くしたからな」

青葉「そ、そういえば相手がやけに痩せてると思ってた……!そこまでする必要がありますかぁ!?」

 




日向「提督、深海棲艦が民間人を人質に都市に立て籠もっているそうだ」

提督「この機を逃す手はない、陸上航空隊に出撃命令を出せ!絨毯爆撃だ!!」

日向「……まぁ、そうなるな。報告しなきゃよかった」

 




偉い人「ヤツの暴走を止めなくては!」

「し、しかし、ダメです!」

偉い人「なぜだ!」

「先日北朝鮮に押し入った時に、核を持ち出したみたいで、LINEでそのことをしきりに自慢してくるんです」

偉い人「核……だと……!?」

偉い人「……」

偉い人「え、君、あいつと仲いいんだな!?LINEって!」

 




赤城「つかぬ事をお伺いしますが、これだけ手段を選ばないのにどうして核を使おうとしないのですか?」

提督「一瞬でケリがついたら面白くないからな」

赤城「な、なるほど……」

 




天龍「オレの名は天龍。フフフ、怖いか?」

提督「怖い?ああ怖いとも。そんなカス同然の性能で粋がるその馬鹿げた脳みそには心底恐怖を感じるよ」

天龍「……ぐすん」

提督「だが!その刀は気に入った。是非とも敵のカスどもを八つ裂きにしてくれ」

天龍「! お、おう!任せろ!」

 




北方棲姫「待て!海底のレアメタルやる!酷いことするな!」

提督「ふむ……大淀」

大淀「はい」

提督「二つ案がある。一つはレアメタルを貰った上でこいつらを殺す」

大淀「は、はあ」

提督「もう一つはレアメタルを頂いた後、こいつらをいたぶって殺す、だ。どっちがいいと思う?」

大淀「……えっ、どう違うのですか?」

 




龍驤「ちょっち待った!これ以上の徴発は無理やで!?住民たちだって苦しんでいるのに!」

提督「住民どもが苦しんでいる……だと?バカが、それがなんだと言うのだ?私たちに尽くして死ねばいい。豚の呻きなど知ったことか」

龍驤「なんちゅうこと……」

阿武隈「ところで、住民どもが金目の物を隠しているとしたら?」

龍驤「!?」

提督「好きにしろ」

龍驤(なんてこった!くそマインドがどんどん受け継がれていくッ!!)

 




レ級「ヒーッヒッヒッヒ!……あれ?なんであいつらガスマスクなんて……」

チ級「なんか変な臭いが……うぐっ!!」

レ級「ぐがが……毒ガスか……!?く、苦しい……!」

若葉「我らクソ提督一味、容赦はしない」

磯波「これがホントの……鬼畜艦……なんちゃって」

 




プリンツオイゲン「この間、初めて酸素魚雷を使ったんだけど……」

加古「うん」

プリンツオイゲン「あの威力!深海棲艦が一撃で粉々になっちゃった!笑いが止まらねーぜ!げひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」

加古「ごはははははははははははははははは!」

龍驤(あかん……くそマインドがパンデミックの様相を見せてきた……!何とかしなくちゃ!)

 




提督「貴様が妙な動きをしていたのは察知していた……泳がせていたのだ」

龍驤「な、なにぃ!?うちをどうする気や!?」

提督「貴様の代わりなど……建造すれば幾らでも作れるんだからなぁ!」

龍驤「うおおおおお!!こ、殺される!?」

コツン

提督「いいこなんだから、もう告げ口なんかしちゃだめだぞ☆」

龍驤「うんっ♪」

 




ホワイト提督「艦娘は、お前が好き放題するための道具じゃない!」

提督「わからんなぁ、バカの考えることは。俺が好き放題するための武器として建造し育成した艦娘が、なんで俺の好き放題するための道具じゃないんだ?」

ホワイト提督「やはり くそ」

提督「だが俺に愚かにも意見を具申したのは気に入った。褒美に死をくれてやろう。やれ!」

妙高「はい」ジャキッ

ダラララララ

ホワイト提督「うわぁん」

 




電「どうして、そんなに深海棲艦を憎んでいるのですか?」

提督「奴らには……親や家族、故郷の人たちを皆殺しにされたからな」

電「えっ……それって、本当なのですか?」

提督「嘘だ。理由などない、ああいうカスどもをいたぶるとスカッとするからやるんだよ」

電「は、はあ、やっぱりそうですか……やっぱり……」



-END-

おかしい……私はねずみくんのチョッキみたいな加賀さんを書きたかったのにどうしてこんな話に……
今回もあまり良い出来ではなかったがまっいいか!投稿しよっと!という精神は多分大事

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